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15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界だったら - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/01(火) 00:17:17.63 ID:gTmE/nA0
すばらしいですね


避難所 http://jbbs.livedoor.jp/study/7864/
まとめ http://www8.atwiki.jp/tsvip/

まとめではまとめ人募集中
wikiの編集法の知識有無関わらず参加待ってます
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/01(火) 00:24:15.80 ID:4YddHnko
まちがいなく人口の50パーセントは死亡する
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/01(火) 00:37:11.95 ID:Sc35NiQo
昔オーガスってアニメがあってだな
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/02(水) 01:27:28.21 ID:8vlfXrM0
女が減ること前提であと一万年ぐらいしたらそんなこともあるんじゃね?
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/07(月) 23:07:18.22 ID:rClasSUo
たて乙
6 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/08(火) 10:50:45.03 ID:iw3DTyw0
新スレ乙

リクエスト「女体化したら女の子にモテるようになって困る」
暇ならだれかお願いします
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/09(水) 00:24:20.71 ID:c.g5TQAO
>>6

 あっ、もしもし。……俺。

 いや、登下校一緒だったろ。声で解れよ。

 ……あ、そっか。ごめん。

 っ、笑うなっ! まだ女だって実感がねーんだよっ!!

 ………。ん、うん。今日はマジで助かった。ホント、サンキュ。

 あ……うん。

 あの、さ。マーフィの法則って知ってるか?

 いや、コメディ映画に出てる黒人の俳優じゃねーよ。

 いや、だからラッシュアワーじゃねぇって。

 だーかーらー! ジャッキーでもねーっての!

 ……わざとだろ? 絶対お前わざとだろ!?

 ……はぁ。あのさ。あれだよ。あれ。別に前から望んでたワケじゃねぇけどさ。

 んー……。今になって女の子からキャーキャー言われる立場になるって思ってもみなかったし……。

 それじゃ、代わりにお前がお姉様って呼ばれてみるか? ん?

 ……ちっ、違ぇーよっ!! 俺はだなぁ……っ!! ……あーもうっ、大丈夫だよ、お前なら絶対大丈夫だからっ。

 えっ、その……なんとなくだ。

 ん、友情だ。

 うん? あぁ。なんだよ?

 いや、それは、お前の魅力次第だろ。

 冷たくない。むしろ俺は優しい、感謝しろっ!

 ……ん、なんだよ?

 ふつーに白だけど?

 ………っ!? バカっ!!!

 ―――ピッ!!
8 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/09(水) 00:26:14.46 ID:c.g5TQAO
1レスだけでおしまい。
……なんかその、ごめん。
9 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/09(水) 02:11:44.74 ID:KQjzOQg0
白ハァハァ
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/09(水) 08:46:04.97 ID:Y9bkQtE0
仄かに見える友情→愛情?とか百合成分とかそういうもの一切合財
「白」が持って行ってしまった件について

ぐっじょびwwww
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/10(木) 08:01:19.84 ID:1YQbVCAo
白に便乗

「お前、この間のツケ払わずじまいだよな」

「仕方無いだろ・・・?こんな事があったんだから」

こんなこと。つまり、こいつは女体化したわけで。
まぁ、経緯はこうだ。
金曜日をいいことに夜明けまで徹夜マージャンをしていたところ、こいつが急に倒れこんで女体化しちまったわけ。
しかも、2回ハコテンしたうえ、そのままドロンしやがった。
だから、仕方なくツケという事でその場を収めてやったわけだ。

「ツケの請求を求める」

「ぐぅっ・・・・無理・・・」

「はぁ!?あの時俺がどれだけ苦労して場を治めたと思ってる!」

「ぐぐ・・・でも無理なんだ・・・」

「なにぃ!?理由を述べろ!」

「・・・服とか色々使った・・・だから、無い」

「なんということを・・・・」

支払いを期待した俺はバカだった。
無いものを払えと言ったところで、これは堂々巡りだ。
しかし、このままではツケ提案者の俺が支払わされる事となるだろう。
まぁ、これは確定・・・悔しいが確定だ。
しかし、これでは俺の気持ちも治まらない。場が治まっても俺が治まらない!

「ならば、いい案がある。これを飲めば俺はお前のツケを払ってやる」

「ほ、本当か!?」

以前とは似ても似つかない可愛らしい顔を、眼前に突きつけられて俺は少々ひるんでしまった。

「うぐ・・・本当だ」

「よかった〜〜あいつらじゃ来月まで待てとか無理だもんなぁ〜」

「・・・色だ・・・」

「え?」

「今すぐ・・・今着用している下着の色を言え」

「ええ!?」
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/10(木) 08:15:03.49 ID:1YQbVCAo
「これが俺の請求する対価だ・・・言え!今すぐに言え!」

「えぇぇぇぇ!?な、なんで!?」

「何でも糞もあるか!俺はこれから貴様のとんでもないツケを払わされるんだ!」
「これくらいの役得があってもいいはずだ!!俺の今月を返せ!!」

「ぐ・・・わ、わかったよ・・・」

こいつは、俯きながら顔を赤らめて頷いた。
これが堪らなく可愛くて、それだけで満足した気分になった。

「えっと・・・その・・・・あぁ・・・恥ずかしいって・・・」

「うほ、これはたまら・・・」

「え?」

「いや、なんでもない・・・・」

「んと・・・それが・・・その・・・・・・ま・・・」

「ん?あんだって?」

「しましま・・・・上下共々しましま・・・です・・・・」

「なんとーーーーー!!」

「ど、どうした?」

俺は鼻血をたらしてその場に倒れこんでしまった。

「あらら、こんなにウブだったなんてね・・・・仮に見せてやったら次はどうなることやら」

「そうだ!次もこの手でいこう!次は何にしよっかなー」
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/10(木) 08:18:36.56 ID:TrpwN.AO
>>12
まずトばない麻雀を打てとwwwwwwww

……小悪魔な子が上手く表現出来ないオイラ涙目。GJ
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/10(木) 08:43:50.71 ID:7/XnJ6g0
ここはいつの間にかにょたっこぱんつスレになってしまっていたようだ
いいぞ、もっとやれwwww
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/10(木) 18:52:16.66 ID:SrfVq6SO
あれからまた、結局同じ手にひっかかった俺は奴の二度目のツケまで払うはめになっていた。
流石に三度目の対局前に奴の手を察した俺は…

「一度目は俺が言い出した事とはいえ、流石に俺が破産してしまう」

「あ、ひどいなぁ。今日もあたしが負ける事前提なんだ?」

「そうだ。もうこれ以上お前の勉強代を肩代わりできん」

「えっとねぇ、今日の色はぁ…」

「あーあーあー!!何も聞こえない!!」

「やだなあ、冗談だよ」

「だといいが…」

「あ、そうだ!あの二人に試してみようかな?」

「!?…ゴホン!そう言う事俺の前で言う!?」

「…ふぅん。あの二人にはダメなんだ?」

「え!…ダメってか…その」

「あはは、いいよ。言わないから」

「そ、そっか」

「でも、どうしてダメなのかな?」

「お、俺はなにも脱衣麻雀やりに行ってるわけじゃないん…」

「あ、話題そらしたな!わかってるよ?それ、ドクセンヨクってやつっしょ?」

「うっ!そ、そんなんあるか!元男相手に!」

「あ、それ傷つくなぁ…あっ!」

突然の神風に奴のスカートがめくりあがり、下半身に着用しているアレがあらわになる。

「し、しまぱん!!」

どうやら、本当にしまぱんだったようだ。
「み、みたなぁ〜!!」

「あ、今のノーカンね」

「あうぅ〜……」

今日の所は俺の勝ちだな。
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/10(木) 21:49:25.80 ID:l2iDKhk0
えるしっているか
ぱんつはいいものだ
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/10(木) 22:28:39.71 ID:fsFEuQU0
GJ!!!
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/11(金) 09:17:02.37 ID:4q0omIg0
今回は勝てても
どう見ても次戦からはボロ負け確定です、ごちそうさまでしたwwww
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/17(木) 00:03:43.95 ID:0SUCSdc0
「ちょ、ちょっと!何めくってるんだよ!」

「巷では今にょたっ子のぱんつチェックが流行中らしいわよ」

「何だよそのろくでもない流行は……」

「で、グレーのボクサー、と」

「わ、悪いかよ!」

「何も言ってないじゃない」

「女っぽいのは嫌なんだよ」

「トランクスじゃないんだ」

「う、だって、スカートはくとスースーして……ってなんで俺こんな余計なことまで言ってんだよっ!」

「(・∀・)ニヤニヤ」
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/17(木) 12:22:01.16 ID:mKHdLzQ0
GJ…の前にちょっと待ってほしい
コレはあの>>7に出てきた可愛いにょたっこが履いていた白というのはつまりそのブr

省略されました
21 :じゃあ [sage]:2009/12/17(木) 23:31:49.17 ID:0SUCSdc0
「へえ、上はスポブラなんだ」

「むりやり脱がすなんて……もうお嫁にいけない」

「私が貰ってあげるから心配しないで」

「できれば男のときに貰ってほしかったよ……」
22 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/18(金) 12:36:47.90 ID:tD8q2fg0
下ボクサーの上スポブラか…
無理やり脱がされたにしては満更でもなさそうだし
ここからにょたっこを好みの嫁に染め変える訳ですね!
とりあえず「ちょっとお化粧とか練習してみよっか」と
優しくイジワルにリップを塗ってあげる所から始めるんだ!
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/18(金) 13:55:25.20 ID:e6xguMQo
世界の果てで愛ましょうがたぶんここ住民にはジャストでくるとおもう
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/18(金) 16:21:42.20 ID:Bjw//QAo
>>23
安心しろ、すでにチェック済みだ
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/18(金) 19:10:16.90 ID:TPyFfXI0
最近TS漫画・ラノベが豊作です
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/18(金) 23:42:55.30 ID:e6xguMQo
>>24
2巻もよろしくね!!
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/20(日) 06:45:24.61 ID:s5uiWXQo
>>26
購入済みよゆうでした^p^
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/20(日) 20:37:05.00 ID:slc1E3ko
人類史上初の犯罪・・・だと・・・
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/21(月) 08:36:23.65 ID:g72TqrA0
TS豊作…
つまり民意がにょたっこを求めていると言う事か!
30 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/21(月) 16:54:31.72 ID:09DGZFEo
世界がにょたっこを望んでいるのだ!!
31 :さまのすけ ◆tUUMAZGdHU :2009/12/22(火) 01:02:36.49 ID:o1VykCY0
「鶴岡」
と楷書が張り付いた家の前で俺は立ち尽くしていた。その灰色の板の真下にあるインターホンに向かって指を伸ばし、程なくして垂れ下がる。それをさっきから延々と繰り返している。
これは端から見たら間違いなく不審者だよな…
しかし何と言えば良いのか、どんな顔をして会えば良いのか分からない。だから踏ん切りが付かないのだ。
そんな俺に人当たりの良さそうな声が話し掛けてきた。

「こんにちは。うちに何かご用でしょうか?」

「あ、こんにちは。えー、用事って程じゃないんですが… その…」

「『俺が田口宏紀だ』なんて言ったら斉明さんは驚きますよね?」

前述の好青年、もとい斉明さんは俺を見回している。なんか恥ずかしい。
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/22(火) 01:03:35.24 ID:o1VykCY0
「ああ、なんだ。やっぱりヒロ君か。」

「やっぱり? と言うか驚かないんですか?」

「驚くも何もさっきから見てりゃ分かるって。行動とかクセとか。なんか言い訳してる時とかに斜め上を見てたり。」

そんなクセあったのか?

「ああ、あとさっきの家の前だね。見ててかなり面白かったよ。」

うっ…
見られてたのか…

「それでちょっとからかってみたんだ。まあ、からかうと言うか遠目に見て雰囲気が似てるなとは思ったよ。それで顔を見たり喋ったりして確信した、ってのが正しいな。」

「さ、さいですか…」

何だろう…
この負けたような感は…
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/22(火) 01:04:03.63 ID:o1VykCY0
「まあ、立ち話もなんだし上がってきなよ。」

「あ、すいません。ああ忘れてt…」

「嘉成だろ? そろそろ帰って来るよ。」

「そうですか…」

「用があるんだろ?」

「えーと…」

「そう考え込むなって。いつも通りで、な?」

いつもこの人には簡単に見透かされる。

「ヒロ君は分かりやすいからね。」

駄目だ、完全に読まれてる…
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/22(火) 01:04:34.77 ID:o1VykCY0
「アイツが何かいらん事をしたなら僕に言うと良い。タダじゃ済まさんから。」

「それはそれは頼もしい限りです。」

笑顔で恐ろしい事を良いなさる…
別に痺れたり憧れたりはしないけど。

「アレを思い浮かべると上手く出来ると思うよ。」
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/22(火) 01:05:10.55 ID:o1VykCY0
アレ…だと…?
いかん、アレと言われるだけで笑いが止まらん…

「その調子なら大丈夫だ。僕もアレには噴いたよ。」

アレとは嘉成が妙な寝言を言っていた事である。

『ちょっと寝るから起こしてくれ。』と言われ、しばらく後に突然
『園長先生選挙に出馬…』
と言い、更に
『京都二区じゃ勝てんでしょ…』
と言った。

一時間くらいと言われていたので起こしてみると
『せっかく良い所だったのに何で起こすんだ!』
と、頼まれたのに怒られた話である。


鍵の開く音が聞こえる。
いよいよおいでなすったか。
少し冷めたお茶を一気に飲んで玄関へと歩みを進めていった…
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/22(火) 01:08:43.17 ID:o1VykCY0
終われ





かなり無理矢理だな…
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/22(火) 12:18:45.57 ID:WOZ2XsU0
生殺しキタコレ
続きマーダー?AA略
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/23(水) 04:38:17.32 ID:3lJvqcAO
 【ある新聞のある社説】

 ―――第xx回 "プライオリティ"
 
 思春期の性交渉未経験の男子が突如、女性になるというセンセーショナルな病が流行してから久しい。
 現在では、それを"病気"ではなく"個性"として捉える柔和な見識も広まっており、その垣根は徐々に取り除かれつつある。それが世間一般の見識である。少なくとも、私はそう思っていた。
 だが、未だ根深い問題を抱えている人達の意見が多数寄せられる内に、私の持論は揺らぐこととなる。
 今回は教育現場を例に挙げてみよう。
 2009年10月某日。ある裁判が話題を呼んだ。
 公立小学校の女性教師が"性教育の一環として生徒にこの病気を説明することがセクハラに値する"と国を相手取り、360万円の損害賠償を請求する民事裁判を起こした。
 結果は原告の敗訴に終わる。
 "子供の人権を守るため、子供に偏見を持たせない為ためも、事実を伝える事は教育者として必要不可欠であり、セクハラには値せず"との見解を示したが故を判決である。
 しかし、この事実を知った婦人団体が原告を支持する署名活動を敢行。それが切欠となり控訴に踏み切る形となる。
 裁判を継続して傍聴している記者に話を伺ったところ「今では子供と教師、どちらの人権が優先されるのかの水掛け論が続いており、泥沼の様相を呈している」とのことだ。
 人口比率を一変させる症候群の治療法が確立されていない昨今、このようなトラブルは後を絶えない。
 果たして、この症候群にまつわる数多の問題に、氷解が訪れる日は来るのだろうか?

    ―――記者 村崎(元)
39 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2009/12/23(水) 04:42:07.74 ID:3lJvqcAO
やば。鳥入れ忘れ。
まったくもってエロくも萌えもない。ごめんなさい。新聞をいかに呼んでいないかがまるわかりですな。

想像して書いてて勝手に妙な憤りを覚えました。
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/23(水) 06:49:57.65 ID:gAoNcUkP
いや凄くワクテーカです
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/24(木) 04:29:02.46 ID:3Qx.F3Ao
         ☆
            人
           ノ::oゝ
          ノ;;;;; ゝ
           ノ(,,゚Д゚)           ___旦_
          ノ(ノ; ◎;つ         ∠二二二二/\
          ノ..&, ,......ゝ""_~_~_~_~_~_(三(゚Д゚,,)三()三()
        /~,へニニニニ7 「从erry ]’mas |.三三()三()ヽ
         !<介>  ,ヘ   .,ヘー―,ヘ―‐.,ヘ┘ ,ヘ .<介> i
.        |ヽ。.,,_ <介> <介>  <イト>  <介> <介>.,_,,。ィ
    人.  |    ~~"""''''''''ー―-゛-"-――'''''''"""~~  : :|  人
    (::0::) |                             ::| (::0::)
   (,,゚д゚)..|               人            ::| (゚д゚,,)
  .,(__)-|   .人        (::0::)      人     ::|-(__)、
  ヽ__ ヽ。,,(::0::)       ∧i∧     (::0::)  _,,。ィ ___ノ
    /    (,,゚д゚)"''''''''ー―-(,,゚Д゚)――'''(゚д゚,,)"    \
    (_ イ  (__)  へ    /  |  .へ (__)  ト 、_ノ
       ヽ。  _/  .\ 〜(,,_/ ./  \_  _ノ
          ̄      .ヽ、_  _./      . ̄
                    ̄
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/24(木) 22:37:16.57 ID:EXg.dIM0
「サンタさん、クリスマスプレゼントが巨乳って何の冗談ですか…」
43 :コンニャク ◆FNYATSXT5E [sage]:2009/12/26(土) 06:35:44.65 ID:R/QOU06o
「寒い」
「ああ、寒いな……」
「凍死しそう」
「ああ、凍死しそうだ……」
「なんでコタツ壊れてるの」
「今朝方、天寿をまっとうされたのだ」
「……なんで布団が一組しかないの?」
「一人暮らしの男なんだ、これが普通だろう」
「じゃあ、しょうがないね」
「うむ、しょうがない」
「……ところで、もうちょっと離れてほしいんだけど」
「何を言うか、離れたら寒いじゃないか」
「じゃあ、触るの禁止で」
「不可抗力だ。狭いんだからしょうがないだろう」
「むぅ……うう、それにしても寒い」
「確かに寒い!確かに寒いが最高のクリスマスだ!
夜空に向かって、『にょたっ娘一人おーくれー!』と
叫んだ甲斐があったというものだ。やはりサンタは実在したんだよ!」
「お、お前のせいか……!」
「お、おいコラ、暴れるな!寒いだろっ!」
「む、むぅ……うう、布団が冷えた……寒い……」
「第一、お前がにょたっ娘になったのは、お前が童貞だったのが悪いのであって
俺に1_も原因などないではないか」
「ぬう……」
「だから安心して、俺にスリスリされるがいいわ!」
「ちょ、変なところ触るのやめー」


「ハッ……!ゆ、夢……だと!?だが何だこの違和感は……
おかしい、デジャヴという奴か……?いや、デジャブとは違う!
この違和感は、主に俺の頭、胸、股間から発せられる感触が元……!
つまり――!」
「あ、朝飯できてるよー……あ」
「我々の業界ではご褒美というやつですね。わかりました」
「これはこれで、っていう奴だね」

知ってる人も知らない人もお久しぶりです。
そもそもコテこれでよかったのかすら覚えてないくらい久しぶりでス
クソッ!クソッ!クリスマスににょたっ娘用のニーソを吊るしておけば
こんなことにならんかったんや!
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/26(土) 06:41:48.19 ID:R/QOU06o
それではよい年末ヲー

   ∧∧
  /(*゚Д゚) フトンサイコー
  /  У~ヽ
 (__ノ、__)
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/26(土) 22:30:37.44 ID:7xVTYeY0
GJ!
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/28(月) 08:40:29.87 ID:1UbacDg0
むむむ、にょたっこソックスを吊るせば、にょたを貰う事は出来るかもしれない
自分がにょたっこになるにはどうすればいいのか…
童貞を吊るせばいいのか!?
とにかくGJ!!
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/29(火) 12:21:17.06 ID:Au4aHtMo
「はぁ・・・今年も野郎3人で年越しパーティーか・・・」
毎年恒例のこの行事も、色恋に目覚めてしまうまでは純粋に楽しめたんだけどな。
「うるさいうるさい。俺が秘蔵のブツを持ってきてやるから、そう言うな」
「おいおい、新作入ったのか!?」
「はぁ・・・」
「ふん。そのため息、後悔するなよ?」
そして数日後、大晦日を迎えた。

「ええと、お二人さん。どちらさま・・・・?」
目の前にいる二人の少女に俺は戸惑いを隠せなかった。
「わかんないみたいだな」
「そりゃそうだろう」
「え・・・と・・・・あの・・・」
「しかたないなぁ、種明かしするかぁ」
「そうだな」
「は・・・?」
「秘蔵のブツを用意した」
「新作だぜ?」
「・・・・!?もしかして!?お前ら・・・!」

すさまじい状況が出来上がった。
この俺が両手に華ともいえる状況だ。
さらにはそれだけにはとどまらず、目の前で胸の大きさがどうとか、下着がどうとかキャッキャウフフ。
終いには・・・・。
「うは・・・すご・・・」
「どうだ?凄いだろう・・・?」
「おーい、なに黙りこくってんだよ」
どうにもこうにも、新作のブツの映像を二人の少女が真剣に鑑賞しているこの状況に耐えられず
不覚にも俺のズボンがテントを張っていた。
「お前ら自覚ないのかよ・・・」
「ま、そういうなよ。俺たち女になったばかりで不安なんだよ。男の時のあのときめきを確認したくてね」
「大丈夫。俺はまだときめくぞ!ちょっと感覚が違うけど」
「なんだよ。その感覚って」
「普通さ、むくむく・・・じゃん?でもさ、いまなんかやばいかも」
「うむ。そうだな。なんというかこう・・・あそこやばいな」
「なっ・・!?」
「いいよな。3人だけだし」
「そうだな・・・俺もう我慢できないかも」
「えーーーー!!」

行く年来る年
俺は、大切なものを失い、そして、新たに大切なものを得た。


変な落ちでスマン
俺の行く年来る年は職場だ

48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/29(火) 23:17:56.09 ID:6w/41vc0
GJ!
49 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/02(土) 02:33:49.96 ID:txCz6Pko
「そうだ、お年玉をあげよう」

 俺にとって、去年まで一年にこれほど嬉しい言葉は無かったと言って良いだろう。年始のうんざりするような親戚回り、それで得られる戦果の獲得を確定するものだった。
 しかし、今の俺にとってはどうにも不快感の拭えない言葉になってしまっていた。
 例年通りの親戚回り、毎年のように少しの挨拶と親の長い世間話に暇そうに付き合うはずだったが、そうも行かない事態になったのだ。
 晴れて15歳の誕生日を迎えた去年の9月のこと、彼女も居ない俺にそれを避けることも出来ず。あえなく女体化してしまっていた。そしてほとんどの親戚に新生俺を初お披露目というこの正月である。

「あ、ありがとうございます……」

 姉と母親のスパルタ教育により表ではもうすっかり女として振舞う俺に、親戚のオッサンたちはいつにもまして顔を緩ませ話しかけてくるのだ。正直ぞっとしない。
 それを俺は苦笑いで受け取るのである。お年玉袋の中身も心なしか豊かで、それ自体は喜ぶべきことのはずなのだが。

「あの凛々しかった男くんがこんなに可愛い娘になるなんて」

 そんなようなことを最後にちょんと付け加えられるだけで、まるでこのお年玉が汚いお金に思えてくるのだ。例年以上に俺への接触も多い。
 お茶を一緒に飲むだけだから? お話してくれるだけで? 女体化して寄ってくるようになったやつらが親戚とダブる。

「あの、すいません…お手洗い貸していただけますか…?」

 仕舞いには俺はそう言ってトイレに逃げ込むのだった。
 そして、残りの親戚回りを指折り数えて溜息をつく。

 親戚回りが終って、私の戦果が多いことに目ざとく気づいた母親が「そのお金、預かっといてあげるわね」と、悪魔の台詞を囁いた時、私は素直にそれを差し出した。
 母親は少し疑問に思ったのか「本当にいいの?」と言いたげにこちらの顔をうかがったが、俺が何も反応を見せないで居るとそれを鞄にしまい込んだ。

「はい、お年玉!」

 と、小さくてファンシーな封筒を俺に渡したのは、すでに成人している姉だった。姉はにかっと笑ってその封筒を無理やり俺に握らせて囁いた。

「来年にはもう慣れてるはずだから、それまでお母さんに使われないように私が見張っといてあげる」
「ありがと……姉さん」

<了>
50 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/02(土) 05:54:59.80 ID:JbV.xE2o
>>49
あけおめおつ!

いい年になりそうだぜ!
51 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/02(土) 10:09:23.70 ID:oTnPbVEP
>>49
おつおつ
あけおめ♪今年も楽しみにしてるお♪
52 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/04(月) 13:32:25.07 ID:4gYQ9mw0
明けましておめでとうございます。初めまして
質問ですが、もし自分がこの15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界にいたら
貴方は男のままでしたか?

自分は中学の卒業式のあとに告白しましたが振られているので高確率で女性になってるでしょう
53 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/04(月) 13:53:33.34 ID:7ta4Dbwo
>>52
ここで良く題材にされる"そういう世界だったらありそうなモノや行動"を加味しても
俺はまず確定と言って良いだろうな
TSにはある種の憧れすらあるし

特に誕生日設定だと早いほうだから、友人に防止のためにタカられる側になってると思うww
54 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/04(月) 16:47:45.19 ID:S.6qeaIo
俺もなってるだろうなぁ・・・中学生の段階で3次に興味なくなってたし・・・
55 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/04(月) 21:43:41.67 ID:k/I4AgDO
俺はまだ三次の炉利ものでぬけるからセーフだな
56 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/04(月) 23:03:03.52 ID:S.6qeaIo
3次炉は別!
でもたぶん童貞のままなのは変わりない
57 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/05(火) 21:24:56.30 ID:w39u.xco
「えっと・・・話って、なんですか・・・?」

上級生に体育館裏で話があると呼び出された。
これはもしや告白というものではなかろうか。
淡い期待ばかりが僕の心をよぎる。

「えっとさぁ・・・やっぱり、ここじゃちょっとはずかしいな」

彼は明後日の方を向いて恥ずかしそうに頭をかいている。
それを見ていると僕も恥ずかしくなって、地面とそんな彼を交互に見つめる。
そもそも、まだ告白だと判明したわけでもないのに。

「ちょっと場所、移動しよっか」

「え、あ、はい」

僕はなぜ場所を変えるのか、それほど疑いを持たずそれを承諾した。
ただ、恥ずかしいだけなのだと。

そして、つれて来られたのは人気のまったくない、体育館内の倉庫。
ここで何の疑いすら持たなかったのは、初めての告白?に舞い上がっていたのかもしれない。
どんなことを言われるのか。これから先に何が待つのか。
どうしようもない期待が僕の心を支配して、何の疑いの念すらも持ち合わせてなかった。

「さて、ここなら安心」

僕は彼を見る。彼は先ほどとは違い、安心した面持ちで余裕すら伺えた。

「おーい、釣って来たぜー」

「どれどれ、お、結構いいんじゃね?」

「つ〜れま〜すかぁ〜っと」

彼の掛け声と共に物陰から二人の男子生徒が姿を現した。

「え?」

この時、僕はまだ状況を理解できないでいた。

僕が女体化したのは中学三年生の卒業前。その後卒業して郊外の高校へ進学した。
今は高校生活が始ってまだ間もない4月。
僕には女性としての危機感というものが欠けていたのだろう。
この短期間でそれを知れというのも無理からぬ話ではあるが。
後に引けない状況になってからそれを学んだのでは、何もかもが遅すぎたのだが。
58 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/05(火) 22:07:36.07 ID:J1hzx6Ao
わ、わっふるわっふる!!
59 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/05(火) 22:21:09.58 ID:w39u.xco
「こいつにホイホイついてくるなんて、天然記念物なみ〜」

軽そうな男が笑いながら彼を茶化す。

「俺、もう我慢できねーかも!」

目をギラギラさせた男が僕をなめ回すように見つめる。

「バカな"女"だな君は」

女・・・そうだ、今僕は女だ。
自分が女だから告白してくるのは男であるわけだが、こういう状況を想定しない女は居ない訳で・・・。
確かに、僕はバカだ・・・。

「え、あの・・・・」

「そのまま、大人しくしててもらおう・・・か!」

ダン!

「あぅっ!!」

と、間髪要れずに目をギラギラさせた男がのしかかってくる。

「逃がさんぞぉ!さて、下の具合はっと」

何かが僕の内股に触れ、男の手が僕の下半身に達しようとしている。
ここまできてやっと全てを理解した。
僕はこの男たちの性欲の捌け口にされようとしているわけだ。
相手の同意を得ない強制的な性行為。強姦だ。この先にあるものはなんだろうか。
ただ、犯されそのままで終わるだろうか。開放されるのだろうか。殺されるのだろうか。
頭の中が恐怖で埋め尽くされ、気が付いたら暴れていた。

「あぁぁぁぁぁ!!いやだ!いやだぁぁぁ!」

「ちっ!やべぇな・・・おい、黙らしとけよ!」

「へいへい。そりゃ!」

バン!

「ぎゃう!」

あまりに強烈な平手打ちを左頬にくらって、衝撃で視界がまどろむ。
その痛みに恐怖と悔しさを与えられて、僕の手足はそれ以上動かなくなってしまった。

「あららぁ。今までで一番素直じゃん?」

僕はもう、思考することを放棄しかけていた。
60 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/05(火) 22:53:17.50 ID:w39u.xco
その時──

「なぁ〜んだあんた?俺たちの仲間には──ぐぇっ!」

突如乱入した大柄の男に、軽く襟首を掴まれあっさり倒れた。
軽い口調の男がトレーナーを着ていたのが災いしてか、あっさりクビを占められて落されたようだ。

「あ・・・やめっ・・・」

バキッ!

大柄の男は彼の象徴である綺麗な顔に一発裏拳を入れて昇天させた。

「顔はやめ・・・かお・・・・ぐふぅ・・・」

そう言う状況になっているにもかかわらず、僕に覆いかぶさった男は僕の股間をまさぐることを止めない。
言いようのない嫌悪感が下半身から全身へ悪寒を走らせる。

「あぁぁぁぁぁぁ・・・・!」

「無視かよ」

大柄の男は今だ気づかぬ己の存在に腹を立てたのか、額に青筋を浮かべていた。

「そらよっと!」

目のギラギラした男は、そのまま襟首を掴まれ一本背負いを食らって昇天した。

恐怖と嫌悪感から開放された僕は、安堵感からか急に泣き出してしまった。

「うぅっ・・・ふぅ・・・・」

男だったときは安堵したからといって泣くなんて好意は恥ずかしかったものだが、この時は女であることを嬉しく思った。

「まったく、この野郎共は見境ってものをしらねぇ。おい、何もされなかったか?」

「ぅ・・・・はい・・・大丈夫です・・・」

「ちょっとこいつら始末してくるわ」

大柄の男はそう言うと、一人は担ぎ、一人は余った手で引っ張り、最後の一人は足蹴にしながら倉庫から連れて出て行った。
僕はこのまま逃げてしまえば良かったのだろうが、なにぶん腰が抜けてしまって動けずその場にへたり込んでいた。
僕を助けてくれた人は実に男らしかった。僕を襲おうとしていた相手をちぎっては投げちぎっては投げ・・・。
格好よかったなぁ・・・。それに比べて僕は・・・。
腰の抜けたままそんな思いに浸っていると、大柄の男が倉庫の中に戻ってきた。

「なんだ?まだ居たのか」

61 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/05(火) 23:29:27.66 ID:w39u.xco
「あっ・・・」

「お前な、俺があいつらと同じような事しようとするかもしれないとか、考えなかったか?」

「えっ!あっ・・・」

とはいえ、腰が抜けて動けない。ましてや、これ程の強い男に取り押さえられてはひとたまりもない。
僕は再度恐怖を覚悟して、強く両目を閉じる。

「な、何もしねーよ!」

「え!?」

「まぁ、いいさ。たまたま俺が通りかかって、お前に覚えがあったから助けにきてやったんだからな。礼の一言くらいあってもいいと思わないか?」

「え、あ、ありがとうございます・・・その・・・すみません・・・」

ん?覚え?僕は彼に見覚えなんて・・・。

「ま、覚えてないか・・・」

「ご、ごめんなさい・・・」

「・・・昔、川原沿いに秘密基地にもってこいの空き地があったよな」

「──あ・・・タケシ君・・・?」

小学生の時、よく遊んでいた近所のタケシ君。あの秘密基地は僕と彼しか知らない、本当の意味での秘密基地。だとしたら、彼は本当に・・・。

「まぁ、ちゅーぼーから・・・まぁ、やんちゃやってお前とは付き合いなくなったけどな」

「うん・・・」

彼とは中学校に通い初めてから付き合いがなくなってしまった。彼が、家庭の事情から荒れ始めたって事くらいしか僕は知らなかったけど。
彼は確実に僕を避けていたようだったから、僕からは何もできなかった。

「名前、前から・・・変わったのか・・・?」

「うん・・・今はナナ・・・・」

「ナナオがナナか・・・しっくりくるんだかこねぇんだか」

「も、もう!僕は結構気に入ってるんだよ!」

「わるいわるい」

彼は昔とぜんぜん変わってなかった。どんなに悪びれて乱暴になっていても、彼は彼のままだった。
今度の事は僕にとってトラウマ同然の出来事で、男性の前ではもうマトモではいられないと思うが、彼だけは・・・特別・・・。
僕は、彼をもう昔のままの彼として見られないだろう。
昔の・・・友人としてではなく、今の彼は──
62 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/06(水) 00:02:37.19 ID:o2gDVIko
「なぁ・・・より、もどさねぇか?」

「ぷっ!それ、恋人同士が使う言葉じゃないの?」

「な!?て、てめぇ・・・!」

「あはは・・・ごめんね。タケシくん・・・本当にありがとう・・・嬉しかったよ」

「ぐぅっ・・・そ、そうか」

彼はぶっきらぼうな彼なりに僕と友達に戻りたかったらしい。
中学時代も、恐らく今も狂犬とか狼だとか言われて常に孤立していたから寂しかったのかも知れない。

「でも、僕が僕だってわよくかったね」

「そ、そりゃ・・・俺はお前のこと前から見てたからな・・・」

「え・・・」

「お前との付き合いを一方的に無かったことにしちまってから・・・その・・・やっぱ気になるだろ!」

「そっか・・・なんか嬉しいな。じゃぁ、復活しよっか!」

「そ、そうか・・・それは良かったぜ」

「でも、一つだけ良くないことがあるかも」

「な、なんだよ!?」

「もう・・・他の男の人じゃだめなんだ・・・」

「は?」

「タケシ君じゃなきゃダメみたい」

「はぁ!?」

「責任とってくれるよね?」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

タケシ君はしばらく固まっていた。
63 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/06(水) 00:07:16.44 ID:Ldd7sjM0
続きwktk
64 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/06(水) 00:13:49.36 ID:o2gDVIko
その後──

「ごめん、待った?」

「いや・・・」

「じゃ、帰ろっか!」

「お、おう」

彼が歩き出すと自然と周囲に人気が無くなる。
彼の本質を知らない人はおのずと彼を恐怖するのだろう。
本当の彼を知ったら彼らもきっと──
いや、止めておこう。
じゃないと彼を独り占めできないから。
だから、私はそんな周囲の目なんて気にも留めないようにしている。

「私、甘いものが食べたい」

「はぁ?俺は甘い物は・・・お前も昔は・・・」

「女の舌は特別甘いものを求めるんだよ」

「ちっ・・・しゃーねーなぁ・・・」

おわり


適度どころか展開を急ぎすぎたか!?

新年ぽくない投下でごめんよ
65 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/06(水) 01:00:05.61 ID:xTK59z6o
問題ない、実にいい仕事だ
66 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/07(木) 16:12:52.74 ID:06SOKrYP
GJ!!!!!!!!!!
67 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/08(金) 00:58:42.27 ID:igGlKko0
GJ!!
68 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/08(金) 03:32:01.90 ID:YP6FCAAO
GJ!!
69 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/08(金) 21:53:10.88 ID:1cNE6rso
久々に安価下
70 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/08(金) 22:05:54.90 ID:ACG7Oewo
教科書のラクガキ
71 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/09(土) 17:12:20.31 ID:SsatgVU0
わっしょい
わっしょい
72 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/09(土) 17:13:24.72 ID:SsatgVU0
 店の外を出ると夜が明けきっていた。来た時にはまだ暗闇に包まれていたはずだ。
「んん……」
 まだ冷え冷えとした空気に身震いしながら、欠伸を噛み[ピーーー]。大学の期末試験で提出しなければならないレポートと格闘していたので、二時間程度しか寝ていない。母が叩き起こして来なければ、昼まで寝ていられたのに。二十代にもなって宿題に追い立てられる生活を送るとは思わなかった。それにしても――。
「……気が進まねえ……」
 単位取得のかかったこの忙しい時期に、何が悲しくて老人の肩肘張った祝辞など聞かね
ばならないのか。祭り好きの親を持ったのが不幸の原因かもしれない。いや、これらは全
部ただの言い訳に過ぎない。一生に一度の成人式。大抵の若者は出席すると聞く。個人的
にもう一度会いたいと思っている中学時分の親友も、何人かいる。手紙で来た二次会への
出席の誘いは既に断っていたが、会場で顔を見つけられれば御の字だろう。九分九厘、向
こうはこちらに気付かないだろうが。
 まあ今日はスパイごっこだと思って楽しもう。というかそう考えないと、泣けてしまう。
それでなくとも下駄は歩きづらいし結い上げてもらった髪は頭皮を引っ張るし着物は重い
しで見事な三重苦なのである。これ以上現状を悲観すると、眠気と精神状態から来る疲労
感に飲み込まれてしまう。
 深い藍色の振袖に身を包み、独特の足音を立てながら駅前の大通りへ向かうことにする。

「んん……」
 正午近くに解放されたのだが、肝心の内容をほとんど覚えていない。どうやら椅子の上
で寝ていたようだ。途中、スピーチ中の市長に飛びかかっていく袴の集団がいたことと、
明らかに酒に酔っている集団がつまみ出される際のゴタゴタ程度しか記憶に残っていない。
あの珍騒動が一生の思い出になるのだとしたら、なんとも言えない気持ちになる。
 ホールを後にした。廊下やエントランスでは、そこかしこで再会を喜び合う若者たちの
姿があった。できるかぎり人の顔を確認しながら進んだが、旧友らしき人間は見つけられ
ない。入り口のすぐ横で配られていた景品の紅白まんじゅうを貰って、バッグに入れる。
 建物を出てすぐの前庭でも、似たような光景が広がっていた。あちこちに視線を漂わせ
ていると、一番気の合った友人の顔を見つけた。性別が変わる前までは、よく連絡も取り
合っていた。携帯電話を持って突っ立っているスーツ姿の男に近寄っていく。
「おーい」
 見知った顔を発見した嬉しさから反射的に片手を挙げたが、失敗だったとすぐに気付く。
73 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/09(土) 17:16:49.29 ID:SsatgVU0
「あ……」
 手を挙げたまま固まるという、実に間抜けな格好で硬直した。
「どちらさんで?」
 中学生の時と寸分違わぬ懐かしい声が飛んできた。
「いや、あ、そのお」
 どうしたものだろうか。人違いでごまかしてしまおうか。しかし少しくらい会話をしたい
という気持ちも強い。
「わ、私のこと、覚えてない、かな?」
 何をやっているのだろう、俺は。緊張のせいかもじもじしてしまう。これではまるで、片
思いをした相手を見つけて恥ずかしがっている女子である。
 こちらの顔をしばし見つめた後、友人が言った。
「うーん……悪い、分かんねえや」
「ああ、そう……よ、良かった」
「は?」
「何でもないです」
 自慢じゃないけどほぼノーメイクで済ませていたのだが、ばれなかったらしい。朝利用し
た店では、カットメイク担当の姉さんにこのままで完璧なんていうお墨付きまで頂いた。素
直に喜べなかったが。
「お友達と一緒に来たんですか?」
「いや、一人だけど。卒業してすぐ仕事始めたから、学生時代の付き合いとか大体切れちま
ったし」
 高校を出てすぐに働いていたのか。どことなく大人びた雰囲気はあったが、そのせいかも
しれない。レポートをため込んでひーひー言っている自分とはえらい違いだ。
「……ところで君、誰?」
「あ、え〜と、中学の時同じクラスでした」
「いやそうなんだろうけどさ。俺男子高だったし。名前は――」
「そ、それはクイズということで……」
 我ながら苦しい言い逃れだったが、幸い相手が勝手に納得してくれた。
「高校デビューとかでキャラ変えたクチなのか。なら訊かないでおいてやるよ。――あ、も
しもし?」
 胸を撫で下ろしているうちに、友人は携帯片手に通話を始めていた。
「ああ、今終わった。ん? いや戻んねえよ。別にスーツのままでも気になんねえし、この
まま二次会始まる時間までその辺で時間潰すから。……ちょ、何で頼んでもないのに用意し
てんだよ……ああ、帰ったら食うから。うん、じゃあ」
74 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/09(土) 17:17:45.74 ID:SsatgVU0
 電話を終えたのを見計らって、友人に尋ねる。
「誰と電話してたんですか」
「嫁と。勝手に昼飯作ってやがった」
 ……よめ?
「嫁……っていうと?」
「嫁は嫁だよ。奥さん。ワイフ」
「……はぁぁぁ!?」
 完全に裏返った声が広場を駆け抜けたが、周囲もざわついていたのでそれほど目立つとい
うこともなかった。
「嫁って……結婚したのか!?」
「うん。もう息子も二人いるけど」
「むすこぉ!?」
 再度悲鳴を上げる。
「いちいちうるせえな……そんな驚くなよ」
「いや驚くって! 全然聞いてねえぞ俺は!? 確か俺がお前と連絡できなくなったのが高
二の冬あたりだから……仮に卒業後に生まれた子供だとしても、一年ちょっとでのゴールイ
ンになんのか!? いや、お前俺に彼女いること隠してたろ! じゃなきゃそんなスーツ着
込んでこの場に立ってるわけないじゃん!」
「ああ、なんか今お前の正体が掴めた気がする……全然記憶にないからおかしいと思ったん
だよ……こんな顔の女がいたら、絶対覚えてるもんな……」
「……と、突然何を言ってるんですか? 私は謎の同級生Xですよ」
「まあ、弁解はゆっくり聞かせてもらうよ。突然親友にシカトされた少年時代の俺が負った
心の傷は、お前の体で癒してもらうからな」
 ぐいと手を掴まれ、絶叫した。
「い……嫌あああああああ! やられるうう!」
「冗談に決まってんだろ馬鹿! 頭の出来は全く進歩してねえな!」
「何だと! こちとら最高学府で教育を受けてんだからな! てめえらみたいな低学歴とは
育ちからして――ぐはぁ!」
 頭を痛打されたその一時間後、車に拉致され振袖姿のまま親友の家にお邪魔することにな
るのだった。
75 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/09(土) 17:19:40.33 ID:SsatgVU0
改行できてんのかわかんなくてこわいパー速
76 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/09(土) 17:43:10.65 ID:2rOl4D6o
続きwwktk
77 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/09(土) 18:02:50.26 ID:1ezsFZU0
>>52
俺なんか、一周して男に戻ってるぜ!
魔法使いになれました


しにたお
78 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/10(日) 00:09:14.19 ID:rCiiT2A0
GJ!
79 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/10(日) 17:21:10.62 ID:0w.0a0M0
不倫ですね分かります
80 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/11(月) 23:51:12.53 ID:QnVqlUDO
不倫か・・・・堪らん響きではないか
勿論、奥さんと女体化だよな?な!
81 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/12(火) 16:42:51.98 ID:wHG7u9A0
>>77
おまおれ
俺が女体化魔法を習得した暁にはスレの住人片っ端から美にょたっ娘にしてやるから
そっちが先に習得したら頼むぜwwww

不倫…女体化→先生に相談→見るだけって言ったのにぃ、ですね分かります
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:16:54.97 ID:y0iuq3U0
誰もおらん
さっき書いたのを投下する


 私はいつも空回りばっかり。
有名なお菓子屋さんの前で並んでいても私の目の前で売り切れ。
急いでいるときに限って自転車がパンク。
勇気を出して好きな男の子に告白しても、既に彼女持ち。
人生の歯車が噛み合ってないのだろう。
そして――…。



 最初は誰か分からなかった。
ただ、アイツが休んで二日後、私の知っている席にひどく小さな女の子が座っていた。
高校二年生で転校してくる人なんているわけない。
きっと一年生か、他のクラスの子なのだろうと思った。
高校生にしては小さいすぎるが、それでもうちの高校の制服を着ている。
なんでここにいるのかは知らないが。
教室に入ると、私に気が付いたのかこちらをバッと見て、チラチラと目線を泳がせている。
なんだと思い、近づき、顔を覗いてみる。

と、すぐに顔を背ける。
ますます不思議に思い、どうしたのと、声をかけてみた。
そしたら彼女は「笑いたかったら笑えよ」と、今にも泣きそうな声で言う。
少し肩が震えている。
いまひとつ状況が掴めない。
彼女が振り向く。
顔をしっかりと見たら、何となく誰か分かってしまった。


小さい頃から家が近所で一緒に遊んでいた彼。
近くにいることが当たり前で、男女とか、そういうのに関係ない親友だと私は思っている。
軽い相談や、女の子同士でしにくい相談も、いつも彼を頼っていた。
よく一緒にいるのでカップルと勘違いされていたが、ちょっと前までは彼をそういうふうに見たことは無かった。
ただの幼馴染で、これといった特別な感情は抱いたことはないと思う。

でも何故か彼が彼でなくなったと思ったら、どこか心に穴が開いた気がして、不安になる。
いままで通り、友達で、親友で、変わらない関係。
それを私は望んでいる。
なのに胸が針金に締め付けられるように痛い。
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:18:05.53 ID:y0iuq3U0
気が付いたら朝のホームルームのチャイムが鳴ったので私は自分の席にさっさと座ることにした。
担任の先生が入ってきて、適当に話をする。
もちろん私はそんな話は聞かずに、ずっと彼女を見ていた。

「あー…。昨日、一昨日と休んでいた赤塚だが、珍しくこの時期で女になってしまった。
 ほら、赤塚、前に来なさい。」

珍しい苗字だからクラスには一人しかいない。
教室が少しざわめく。
だって、皆が知っている赤塚と今呼ばれた赤塚は全然違うから。
先生がそう言うと彼女は席から立ち、小さな歩幅で教卓まで進む。
身長が縮みすぎたのか、どうなのか分からないが、髪が肩まで伸びている。
寝起きなのか、天然なのか、セットしていない髪はボサボサだ。

「えっと…。あー…女になりました。よ、よろしく。」

隣にいる先生がとても大きく見えるほど彼女は小さい。
彼の身長は170cmよりちょっと大きいくらいだったが、今教卓の前にいる女の子は140p程しかないだろう。
顔も小さくて、幼くて、高校の制服を着ていないと中学生、もしかしたら小学生に見えるかもしれない。
胸も服を着ていれば膨らみを確認できない。
その道の男子ならばストライクゾーンど真ん中だろう。
どこからか、「貧乳…萌え…。」「か、かわいい…。」という声が聞こえたような聞こえてないような。
きっとこのホームルームが終わればもみくちゃにされるだろう。

私はずっと彼女を見ていたが、彼女は一度も私を目を合わせることなくホームルームは終わった。
そして案の定、質問攻めが始まった。
童貞の男子が女の子になる確立は高くない。
せいぜい1%あるかないかくらい。
現在、この高校で在学中に女になってしまったのは彼女を含めて4人。
15歳から16歳にかけての間になってしまうのが普通らしい。
他の3人も高校に入学してから半年以内で全員女の子になっている。
だから彼は結構特殊なケースみたい。
だってもう高校2年生の冬、もうすぐ3年生になる頃なのだ。
しかも彼はもう17歳の誕生日を終えており、女の子になる確率は皆無に等しかった。
その珍しさというか、なんというかでクラスのほとんどが彼女の周りに集まっている。
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:19:29.17 ID:y0iuq3U0

授業の合間の休みにも、昼休みにもクラスの人間に囲まれしまって、私は話しかける時間がなかった。
幼馴染だからなのか、何なのか分からないけど私が支えてあげないといけない気がした。
彼女が開放されたのは皆が部活に行った後の放課後だった。

私自身も部活があるのだが、今日はサボることにする。
彼女も男だった頃は野球部に入っていたが、さすがにこの体になってしまえば野球はできない。
帰る人は帰って、部活がある人は部活に行っている。
いつの間にか教室には私と彼女だけが残っていた。

傾いた太陽が教室をオレンジ色に染める。
外からはサッカー部や、野球部達の声が聞こえる。
綺麗に消された黒板の端に明日の日直の名前が書いてある。

「ねぇ…。」

私はささやくほどの小さな声でそう言い、彼女の隣に座った。
少しビクッと震えたのが分かった。
顔は俯いていて、私から避けるように椅子の端っこに動く。

「身長、いくつ?」
「……142…。」

ふてくされたような言い方だった。
わざとなのかは分からないが、朝のときよりちょっと低い声。
甘い、ハスキーボイス。
以前の彼とは比べ物にならない程違いのある、女の子の声。

「そっか。そんなに小さくなっちゃったんだ…。」

私は女子にしたら高めの身長だった。
それでも彼よりは小さくて、5pくらい小さかった。
でも今の彼女は私より遥かに小さい。
頭は私の肩くらいまでしかないだろう。
本当に同い年なのかと、疑いたくなるほどの差。
彼女はそこまで変化してしまった。

「ふん。仕方ないだろ…。」

と、チラッと私の方を見て、またそっぽを向く。
これは彼のいつもの仕草だった。
中学生くらいからか、私をチラ見してはすぐ明後日の方を向くようになった。
高校生になってからもそれは変わらなかった。
その度に友達の女子からニヤニヤした目で見られていたが、私にはよく分からなかった。
頭の上にクエスチョンマークを出すたびに、友達からため息が出ていたのは覚えている。

「…ごめん…。」

と、彼女の口から言葉が漏れる。
私にはその意味が分からなかった。
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:20:32.61 ID:y0iuq3U0
何故、私に謝る必要があるのか分からない。

「え?どういうこと?」
「いいんだ…。もう…いいんだよ。」

ポタポタと、机には液体が落ちている。
彼女の涙腺から出て、頬を伝う。
しゃくり声を上げながら彼女は泣いていた。
我慢しようとも我慢できない…。
そんな感じで必死に声を殺そうとしながら泣く。
涙は止まらないらしい。

私はどうしたらいいか分からない。
何故、泣いてしまったのか、何が「ごめん」で、何が「もういい」のか。
それすら私には理解出来ない。

「ちょ…!?ど、どうしたの?」

そういいながら背中をさすってやる事しか出来ない。
支えにもならないし、慰めることも出来ない。
私はきっと幼馴染失格だな。
そう思うと私も悲しくなってきた。

「う…?あ…お前は悪くないんだ…。グスッ…。俺が…俺が悪いんだ。」

両手で私の肩を掴む。
正面を向いた彼女の顔は涙でクシャクシャになっている。
ひたすら自分を責め、私に謝る続ける。
本当に私は何がなんだか分からない。

そして彼女は私の目を見たと思ったら、一気に教室から駆け出してしまった。
まだ肩には掴まれていた感触が残っている。
太陽はいつの間にか顔を隠してしまった。
外からはお疲れ様という声が聞こえる。
私はただ呆然と、椅子に座ることしか出来なかった。

86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:21:42.17 ID:y0iuq3U0

 次の日、いつもより早めに学校に来たら、もう彼女は自分の席に座っていた。
ノートと教科書を広げている。
覗いてみると、今日の小テストの勉強をしているようだ。
というか、今、彼女がやっているのを見て小テストがあるのを思い出した。

彼女は昔から何事にもくそ真面目に取り組んでいた。
体育の持久走も、家庭科の調理実習も、とにかく頑張っている。
そのおかげか、中学の頃からテストはいつも上位をキープしている。
とくに数学に関しては誰にも負けたくないという、よくわからないプライドがあるらしい。
学年で常にトップを維持していた。

もちろん高校でも学力はトップレベル。
国公立の大学でもハイレベルなところも狙えるらしい。
うちの高校はそこまで進学に力を入れてないし、偏差値も高くない。
本来なら進学校に行っても不思議じゃないのに、なぜか彼はこの高校に進学した。

以前、そのことに聞いてみたことがあるが、彼は答えてくれなかった。

「また勉強してるの?」
「…あぁ。」

一瞬、ピクッと震えた。
チラッと私を見て、消え入りそうな声で答える。
ノートを覗いてみると、私より綺麗な字でまとめられていた。

「そっか。」

昨日、あんなに泣いてクシャクシャだったのに、今は綺麗になっている。
よく見てみれば、男だったときよりも遥かに肌が白い。
まぶたは二重になっていて、まつ毛も長くなっている。
栗色の髪は今日はきちんとセットされているようだ。
昨日のようにボサボサでなく、サラッとしたストレート。

「髪、自分で整えたの?」
「…姉貴にしてもらった。女の子ならもっと身だしなみに気を使いなさいだってさ。」

ふぅ、とため息をつきながら遠くを見る。
ふっくらとした唇には何もつけていないらしい。
それでも桜色で綺麗な唇。
空気が乾燥しているのか乾いているみたいだ。

「唇、何も塗らないの?」
「…化粧とか…別に…。」
「違う違う。薬用だよ。ほら、男の子でも割れないように塗ってるでしょ?」
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:23:19.68 ID:y0iuq3U0

そういいながら私はバックからポーチを取り出す。
今時の女の子ならではのグッズを机の上に並べる。

「ふーん…。」

興味を持ったのか、一つ一つ手に取って凝視する。
本当に薬用の物もあるし、女の子向けの、ピンク色のリップもある。
あとは付けまつ毛とか、マニキュアとか、さっきの話に関係ないものも手に取っている。
はじめてそういうのに触れるのか、取るというより、つまんでいる。

「女って大変なんだな…。」
「そうだよ。女の子にとって「かわいい」は命だからね!」

と、胸を張って言ってやる。
私は女として先輩だから、なんとなく面倒を見てやらないといけない気がした。
よく分からないけど、そんな気がする。
彼女はつまんでいたリップを机に戻すと、目を細めて、また遠くを見た。
どこか寂しげで、悲しそう。

私はハッとした。
よく考えてみれば、つい数日前まで男だったんだ。
それがいきなり女になってしまった。
体は女の子になっても頭の中はきっと男のまま。
そんな中で女扱いしてしまったら、きっと不快になるに違いない。
ひょっとしたらすでに機嫌を悪くしてしまっているかもしれない。

私が固まっていたら、彼女は「ありがとう」と言ってそのまま教室から出て行ってしまった。
なんとなく悪いことをした気になり、しょんぼりしながら机の上のグッズを鞄にしまう。
教室に何人か人が入ってきた。
もうそろそろホームルームが始まる時間だった。

 昼休み、私はいつものように友達とご飯を食べる。
購買で買ったパンと、お弁当。
今日はちょっと贅沢だ。

「ねぇ、あんたどうすんの?」

いきなり親しい子から話しかけられる。

「え?何が?」
「やっぱ気づいてないか…。ね、どうする?」
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:24:32.97 ID:y0iuq3U0
そう言って何人かとコソコソと話を始める。
なにがなんだか分からない私は仲間はずれにされた気分ですこしイラっとした。

  …でも喋るなって口止めされてるじゃん…
  …いや、でもそれだったらめっちゃ可哀想…
  …どうすんの?絶対気づいてないよ、あれ…
  …わかった。私聞いてくる…
  …おk…おk…おk…

「ちょっと何?私にも教えてよ。」

友達は皆私を、諦めたような、呆れたような笑顔で見た。
そしてぽんと肩を叩かれて、「ご飯、食べよか」と言われた。
一人はどっか行っちゃうし、皆哀れむような目で私を見る。
正直生きた心地がしない。

その後、昼休みが終わった後も、休み時間になると友達はいっせいにどこかに行ってしまうし、「彼女」もどこかに行ってしまった。
私はなんだか寂しさを覚えながらも部活に行くことにした。


次の日も、その次の日も、友達はコソコソ話をしながらどこかへ走り去る。
聞き耳を立てると、「許可下りた?」とか、「もう話そうよ」とか、よく分からない内容ばかり。
疎外感と苛立ちを感じる。


そんな生活が2週間も続けば私の堪忍袋は限界を超える。


我慢できなくなり、私は一番仲のいい子を放課後、呼び出した。
「彼女」と話した時みたいに教室はオレンジ色で綺麗。
でも私の心は真っ赤にどす黒く燃えている。
イライラしてしょうがない。


「ねぇ、なんで最近皆私を避けてるの?」
「……。」
「答えてよ!」
「ふぅ〜…、避けてるっているかね…まぁ、私からは言えないわ。言っちゃいけない。」
「どういうことよ!」
「…そうね…ある程度話しておかないとアンタは気が付かないもんね。」
「は?」
「いいわ。話してあげる。そこに座りなさい。」
89 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:26:04.16 ID:y0iuq3U0
私は「彼女」の席に座り、友達はその隣に座る。
友達はいやに真剣な顔で、私はさっきまでの怒りがどこかへ行ってしまった。
それどころか、緊張してきた。
いつもは一緒に話して、遊んで、面白おかしくしている友達がいままで見たことも無い表情で私を見る。
その顔は怒っているみたいで、なんだか怖くなった。

「赤塚って知ってるよね?」
「あ、当たり前じゃない。あいつがどうかしたの?」
「幼稚園から一緒に過ごしてきたのにアンタって酷い女だね。
 こういうのは男の方が鈍いっていうのに。」

「言っている意味が分からないわ。」
「そりゃそうよね。いままで気が付かなかったんだもん、今さら気づくわけが無いわ。
 貴女、赤塚との約束覚えてる?」

「約束?…いつのこと?」
「貴女はそんなことも忘れたの?けどあの子はずっと覚えているわ。女の子になった今でも。
 そしてもう、その約束は果たせない。」

「…貴女、ちょっと前に佐藤先輩に告白したわよね?」
「…うん。フラれたけど。」
「皮肉なもんね。赤塚はその日に女の子になったのよ。本当に運が悪かったわ。
 あと一日でも遅かったらこんな結果にはならなかったのかもしれないのに。」
「……?」

「赤塚は貴女が佐藤先輩のことが好きだってことをかなり前から知っていたわ。
 だから動かなかった。いや、動けなかったのね。貴女のために。」
「…一体何を話しているの?」

「…貴女、赤塚に何回か呼び出されたことあったわよね?」
「ええ。なんでそんなこと知っているの?」
「そんなことはどうでもいいの。で、貴女はその時どうしたの?」
「…別に家が近所だし、言いたいことがあるならいつでもいいじゃない。
 行こうと思ったけど、部活の大会があったときもあったし、忘れていたときもあったわ。」

「それで一度も行ったことは無いのね?」
「そういうことになるわね。」
「とことん可哀想だわ。」
「だからさっきから何が言いたいの!はっきり行って頂戴!!」

「まったく…なんでわざわざ呼び出す必要があるのか考えたことはないの!?
 なんでいつも貴女の相談に乗ってあげていたのか分からないの!?
 なんで佐藤先輩のことについて知っていたのか気にならないの!?」
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:28:45.42 ID:y0iuq3U0
えっ?
なんでだろう?
え?え?
なんで?
私とアイツはただの幼馴染で、小さい頃からの友達で、それだけなハズだ。
いつもそばにいて、それが当たり前。
それがいつもの感覚。
今までも、そしてこれからも、一生変わらない距離。
変わらない関係。
私はそう思っていた。

なら彼は?
いつも何だかんだで一緒にいて、いつも私のそばにいる。
つらいときは相談に乗ってくれるし、遊ぶときも一緒。
近所に住んでいて、小さい頃からの遊び相手。

それなのに私を呼び出して言いたいことがあった。
私の好きだった人が気になる。

いや、それはない。
まさか、アイツに限ってそんなことはないよ。
だって、私とアイツはただの同級生なんだ。
ただ近くに住んでいて、それだけなのに。
ありえないよ。
でも…でも……。


先輩にフラとき、何故かそんなに悲しくなかった。
死ぬほど落ち込むと思っていたのに、全然平気だった。
なんか別にどうでもいいって感じ。
そう思ったらなんであんな先輩を好きになったのかわからない。
けど、フラれても平気だってことは、そこまで好きじゃなかったのかもしれない。
フラれてもどこかに心の支えがあって、それが崩れない限り、大丈夫。
告白するときも保険をかけていた気がする。


フラれてもアイツがいる。


そうやっていつも保険をかけて告白していたんだ。
中学生のときも高校のときも、つい最近も。
そうやっていつも心に保険をかけいたから、フラれても何も感じなかったんだ。
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/17(日) 23:30:02.20 ID:dVhJTUDO
魚で性別変わるやついたよな

てかオレとっくに女になってるなorz
92 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:30:02.22 ID:y0iuq3U0
だから…だから……!

「あぁ…!あああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!!」

いつもの「彼」はもういない。
私の心の保険はもうない。
幼馴染の「彼」はもういない。

「彼」はいない。

そう考えただけで何故か涙が止まらない。
叫び声も止まらない。
脳裏に浮かぶ「彼」の顔。
一緒にいるのが当たり前すぎて気が付かなかった。
そばにいるのが普通で、何も疑問に思わなかった。

私はその場で崩れ落ちた。
私は友達に支えられて、その胸で泣く。

「やっと分かった?ったく、馬鹿ねぇ…。」
「あああぁぁぁ!!私…私…!!」
「でも今さら後悔しても遅いわ…。」

そうなんだ。
私の「彼」はもういない。
私のことが好きな「彼」もいない。

私の……好きな「彼」もいない。

やっと、やっと分かった。

「アンタが佐藤先輩に告白した後ね、私が赤塚に連絡しといたんだ。
 ”アイツフラれた”ってね…。そしたらさ、赤塚、なんていったと思う?」
「え…?」

「”大丈夫か?傷ついてないか?”だってさ。普通は好きな女がフラれて、心配はするけど、ちょっとは安心するもんだろ?
 俺にもまだチャンスは残ってる、って。でもそんな感情は微塵もなくってさ、敵わないよ。
 赤塚は本当にアンタのことを愛していた。ずっと、ずっと前からね。」

「う…わああああああぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「あ…、あと最近は赤塚のことで皆忙しかったんだ。トイレとか、生理用品、服装とかね。
 なんかアンタには頼れないからって、一人で頑張ろうとしてたんだよ。
 でもさ、ほっとけなくてね。それにさっきみたいなこと話していいか、とか、いろいろあったんだよね。
 だから誰も避けてなんていないよ。つらい思いさせてゴメンね。」
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:30:57.69 ID:y0iuq3U0
それから私は泣いた。
泣いて、泣いて、泣いた。
友達はそれでも私を抱きながら、頭を撫ででくれた。


外はすっかり暗くなっていて、見回りの先生がくる時間になっていた。
家に帰ると、目が真っ赤になっていたので親に心配された。
私はなんでもないと言って、部屋に入る。
そしてベッドに倒れた。

明日、アイツになんて言ったらいいんだろう。
そんなことを考えながら眠りについた。
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:31:51.38 ID:y0iuq3U0
いくら朝が来てほしくなくても、来るものは来てしまう。
今日も学校がある。
足が重い。学校に行きたくない。
それでも私は行かなくてはならない。
アイツに会わないといけない。
そして、謝るんだ。
約束を忘れていたこと、好きだってことに気がついてあげられなかったこと。
全部、しっかりと謝らないといけない。

そんことを考えていたらいつの間にか学校に着いた。
靴を下駄箱に入れて、教室に向かう。
向かう途中、胸が針金に締め付けられてような痛みに襲われたが、今はそんなことに屈している場合じゃない。
教室に入りたくなくても入らないといけない。
不安と恐怖があるけど、それでもアイツに会って、自分の気持ちを言ってやるんだ。

私は教室の扉を勢いよく開けた。
既に何人か登校しており、その中には私の知っているちっちゃい女の子もいる。
その姿をみただけで、何か重いものに胸が押しつぶされる。
締め付けられる。
痛い。
その、ちいさな背中が痛い。

ひざが笑っている。
そこまで緊張しているのだろうか。
声もうまくでない。
名前を呼んで、用があるって言って、話をするんだ。
そして謝るんだ。
心で何度もそう言って自分を奮い立たせる。

でも足は動いてくれない。
一歩が重過ぎる。
床にへばりついたみたいだ。
そうしているうちに時間が経っていく。

「はい、皆席に着いて。」

先生のその言葉を聞いて、私はようやく我に帰った。
急いで席に座る。
さっきまであんなに重かった足が驚くように動いた。
私は自分が情けなくて、泣きそうになった。
でも、「彼女」の苦痛に比べたら私のなんて屁でもないだろう。
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:32:45.83 ID:y0iuq3U0
その彼女は前髪をいじっている。
つまらないときはいつもそうしていた。
男のときも、野球部のくせにちょっと長い前髪をいじっていた。

あくびをする。
口に手を添えずに堂々とあくびをする。
小さな口を精一杯開けて、やる気の無い声を漏らす。

彼女の仕草の一つ一つが私の心に刺さる。

その後の授業のことは覚えていない。
気がついたら昼休みで、皆、弁当を広げ始める。
彼女も自分の弁当を机の上に広げている。
いつもは仲のいい男子と食べていたが、女の子になってから一緒に食べているとこを見たことが無い。
一人で、黙々と食べている。

いつもなら気軽に声をかけれるのだが、今はそれにとんでもなく勇気がいる。
怖いのだ。
理由はよく分からないが、声をかけるのすら恐怖に感じる。
それでも私はなんとかしないといけない。
またひざが笑い出した。

ポン。
と、背中を誰かが叩く。
振り向くと私の親友とも呼べる友達がいた。

「頑張れ。」

耳元でそういうと、そのまま彼女はどこかへ行ってしまった。
そうだ。
頑張らないといけない。
頑張るんだ。
96 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:33:39.61 ID:y0iuq3U0
「あ…えっと、ねぇ?」

私の声に気がついたのか、こっちを向く。

「ん?」
「い、いつも一人なの?」
「ん、まぁ…。」
「じゃあさ、えっと…、一緒に食べよ?ほ、ほら皆で食べるとおいしいって言うじゃない?」

言えた。
なんとか言えた。
彼女は弁当をじっと見ながら静止している。

「だ、駄目かな?」
「…わかった。ちょっと待ってろ。」

そいうと、食べかけの弁当をババっと片付ける。
男のときより圧倒的に小さい弁当箱だ。

「で、どこで食うの?」
「えっと、屋上…でいいかな?」
「いいけど、今の時期、寒いぞ?」
「だ、大丈夫、大丈夫!」
「ふーん…。」

彼女は私を見ていたが、私はどうしても目を合わせることが出来なかった。


 屋上は誰もいなくて、風が強い。
小さい彼女ならちょっと突風がしただけでどこかに飛ばされてしまいそう。
そう思わせるほどに彼女は弱く見えた。

「寒いけど、食うか。」
「うん。」

彼女が弁当を広げるのと同時に私もお弁当を広げる。
女の子になってから買ったのか、彼女の弁当箱はオレンジ色のかわいいもの。
2段になっていて、上にはオカズ、下にはご飯がつめられている。
私にはそれだけじゃちょっと足りないくらい。
でも彼女は半分も食べないうちに箸が止まってしまう。
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:34:53.25 ID:y0iuq3U0
食欲がないのか、何か間食でもしてしまったのだろうか。
なかなか箸が進まない。

「ふぅ…。もう食えねぇ。」
「どうしたの?食欲無いの?」
「いや、なんか女になってから食べられる量が一気に減ってさ、これくらいの弁当でも食べきれない。」
「そっか…。」

ああ、どうしよう。
会話が続かない。
本当はいっぱい話したいことがあるのに。
でも、勇気を出さないと。


ふと、風が止んだ。
外は晴れていたので日光がまぶしい。
季節は冬なのにちょっとぽかぽかして暖かい。
それでも気温は低いから息は白い。

私は唾を飲み込んだ。

「あのさ…。」
「ん?」
「私のことさ、その…、好き…だったんだよね…?」
「…。」
「でもさ、私さ、そのことさ、分かんなくてさぁ…。」
「………。」
「でさ、やっとさ、気がついたんだ…。私もね…私も…」
「これ以上は言うな!」

バッと立ち上がり、ひときわ甲高い声で叫ぶ。
私の目には大粒の涙がいつの間にか、たまっていた。

「これ以上は…言うな…。」

涙声なのに気がつき、私は彼女を見上げる。
昔から私の前では泣いたことがないのに、また、ぽたぽたとこぼれ落ちる。
眉をひろめて、今にも崩れそうな表情で、私を見る。
それに触発されてのか、私も止まらない。
抑えていた感情が一気に爆発し、表に出てくる。
でもどうしたらいいか分からない。
だから涙が止まらない。
しゃくり声も止まらない。
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:35:50.44 ID:y0iuq3U0

「だって、俺は、もう…もう…、お前を好きになる資格もないんだよぉ……。
 もう約束も守れない!愛することも許されない!
 俺は…俺は女になっちまんだ…ウゥ…ヒッグ…。」

ポロポロと、とめどなく溢れ、落ちる。
それをなんとか止めようと手で拭うが、まったく効果はない。
私は立ち上がった。
ゆっくり、彼女に近づく。

「え…?」

私は抱きしめた。
本来だったら私が抱きしめてもらうはずだったのに。
でも、今の「彼」は女の子で、私よりも圧倒的に小さい。
彼女が抱いたつもりでも私に抱かれるように見えるだろう。

何が起きたのか分からないのか、あどけない顔で私を見上げる。
涙と鼻水でカワイイ顔が台無しになっているが、それでも私には愛おしく感じる。

だって、こんなにドキドキしているんだから。
いつの間にか涙は枯れていて、跡だけが残っている。
胸が張り裂けそうになりながらも私は優しく彼女を抱擁する。

「ゴメン。気がつかなくて…ゴメン。」

私は耳元でささやいた。
それが引き金になったのか、彼女はまた大声で泣き出した。
私の胸に顔を押し付けて、泣きじゃくる。
制服が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっているが、どうでもいい。
今は、そんなことはいいんだ。

私はさっきよりも強く、抱きしめた。
華奢で、細くて、白くて、小さい身体。
もう少し強くしたら壊れてしまいそう。

「ねぇ…、私のお嫁さんになってよ。」
「ふぇ…?」
「だから、結婚しようよ。」
「でも、だって、だって、……!」
「ちょっと難しいけど、女の子同士でも結婚できるんだよ?それに…「約束」でしょ?
 将来結婚しようって、…ね?」

それから彼女は何か吹っ切れたのか、私に抱きつき、ひらすらに泣いた。
まるで子供みたいに泣いた。
抱く力はそこまで強くないけど、しっかり私の服を掴んでいる。
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:37:00.61 ID:y0iuq3U0
何か喋ってるみたいだが、聞き取れない。
でも、それは拒絶ではないのが何となく分かって、私も嬉しくて涙が出た。
彼女の涙もさっきとは違う、別の意味での涙なのだろう。

私もまさか女の子と結婚するだろうとは思ってもいなかった。
けどいままでずっと一緒にいて、一番近くにいる人。
やっと好きだって気がついた人と愛し合うことができるのならそれでもいい。
生活は厳しくなるかもしれなけど、一緒にいられるならそれ以上はいらない。
高校二年生だから、もう法律上は結婚できる。
私はそれに心が暖かくなる。
きっと嬉しいのだ。

「高校卒業して、大学卒業したら、式を挙げようよ。」
「うん…!うん…!」
「子供はできないからさ、養子でもいいかな?」
「いい!ずっと、ずっと一緒に…!」

昼休みが終わって、次の授業のチャイムが鳴ったけど、別にいい。
今は彼女といられれば、それだけで十分。

100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/17(日) 23:39:14.52 ID:y0iuq3U0

 私と彼女が泣き終わって、落ち着いたとき、友達が来た。
あまりにもタイミングがよかったのでずっと影で見ていたのかもしれない。
でも、それでもいいと思った。
私が気がつけたのは、まぎれもなく彼女のおかげなのだから。

私の胸にいる婚約者は泣きつかれたのか、規則正しく寝息をたてている。
屋上は寒い。
私に寄り添うように身体を丸め、身体を預ける。

「ふぅ、ようやくゴールインってことね。」
「…ありがとう。」
「どういたしまして。って、…プっ、あんたら何その顔?真っ赤じゃん。」
「え?あっ…、そう?」
「うん、そう。だから、さっさと保健室に行きな。ここは寒いし、もう授業中なんだよ?」

私はそう言われ、まだ泣き疲れている彼女をおぶった。
制服が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっているので寒い。
二つの弁当箱を持って保健室に向かうことにした。

外は快晴。
さっきよりも青空が広がっている。

やっと、歯車が噛み合った。



これで終わりだぜ
もし続きがほしかったら

百合百合しな〜い?

って書き込んでください
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/18(月) 00:06:17.34 ID:26chdbQo
百合百合しな〜い?
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/18(月) 01:17:08.05 ID:ThfPvNco
wwwwww とりまGJ!!
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/18(月) 02:06:45.20 ID:8xKT4Js0
さて、百合百合しようか
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/18(月) 02:26:23.97 ID:0IhQzQAO
百合百合しな〜い?
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/18(月) 12:58:58.52 ID:cC9yyqI0
おk
ならあと一週間くらい経ったら投下するわ
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/18(月) 23:45:50.24 ID:.mGHmAE0
百合百合!百合百合!
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/19(火) 00:26:41.21 ID:oOfk9sEo
お、少し間が空くのか

なら今から書こうかな・・・・まさに今からだけどww
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/19(火) 16:31:35.63 ID:G9JpTfk0
たまにはVIPに建てたいね
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/19(火) 20:31:17.58 ID:Tbq1WYw0
Docomo規制いまだに解除されないよな・・・
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/22(金) 20:38:51.09 ID:Q3ov01wo
「よっしゃ決まりだ!」

「あっ・・・うん」

今度の休日の予定が決まり、いつものように今までのように、ひろが僕と肩を組んできた。
今までと変わらぬ対応に、僕は安心感を覚える。
ああ、この人は僕のこの姿を軽蔑や差別のような感情をもって接してきているわけじゃないと。

「こら!気安く体を触らないのっ!」

「え?いーじゃん別に」

「いいよ、僕も気にしてないし」

「だーめっ!!ゆうちゃんはもう女の子なんだからっ!」

「そーいわれてもなぁ、今までの感覚が抜けなくてよ」

「だから言ってるんでしょっ!は な れ な さい!!」

「いだだだだ!おいっ真菜!いてぇって!!」

真菜ちゃんは、ひろ君の方耳を掴んで僕からひっぺがす。
僕の肩にあった大きな腕が力なく抜き取られて少し寂しい。
肩に残った感触をもう一度確かめようとそっと肩に手を当てる。
しかし、その感触もだんだん薄らいできて、さらに寂しい。
男同士だったころとは比べ物にならないくらい、彼の大きな腕。
今まではごく当り前だったことも、今ではもう──。

「ほらぁ!ゆうちゃんが黙ってんじゃんっ!」

「いや、だから耳はなせって!!」

「えっ!ちっちがっ・・・」

僕がいま感じた事、その仕草に何か感じ取られたと思って少し焦った。
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/22(金) 20:39:44.39 ID:Q3ov01wo
「わ、わかった!わかったって!わるかったって!」

「え、えぇっ!?そんなっ!真菜ちゃん!違うんだってば!」

「何が違うっていうの!?もっとはっきり言わなきゃだめだよ!警戒心を持って!」

どうやら、3人の会話が全然噛み合ってないようだ。

「警戒心って・・・ひろ君は大丈夫だよ」

「だめっ!あたしは許さない!!」

「わ、わかったよ・・・触らなきゃいいんだろ!?わかったよ、たくっ!」

僕たちの関係を否定されたような気持ちになった。
真菜ちゃんには悪いけど、僕にはそれが僕の存在を否定されているように感じられた。
だから、つい・・・

「ダメ・・・そんなのダメだよ!」

「「えぇ!?」」

二人の素っ頓狂な声が、ハーモニーとなって教室内に響き渡った。

「ちょっ・・・ちょっとゆうちゃん!?」

「そんなの僕は耐えられないよ・・・今までと一緒がいいよ・・・寂しいよ・・・」

「・・・・そ、そうだ!そうだゆう!そのとおりだ!もっと言ってやれ!お、男同士・・・?の友情はそう簡単に引き剥がせないと!!」

「なっ・・・!?なによ!二人して!ゆうちゃんはだまされちゃだめ!こいつは、合法的に女の子に・・・あんたに触りたいだけなの!」

「ひっでぇなぁ!仮にそうだったとしても、あいつがイイって言ってるんだからいいだろ!?」

「そういう問題じゃないの!!」

「い、いいよ・・・僕は・・・ひろ君だったら大丈夫だよ」

「おっ!心の友よ!いいこと言ってくれるじゃないか!」

ひろ君の顔はとてもにやけていたけど、僕はそれでもよかった。
彼がスケベなのは昔からよく知っている。
それでも、彼ならいいとさえ思った。
これは特別な感情?今だから?それとも──。

「ダメ・・・それだけはダメ!!そんなの許さない!!だってあたしは・・・!それに、横から急に卑怯よっ!」
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/22(金) 20:44:36.80 ID:Q3ov01wo
そこから先は言わなくても何となくわかった。真菜ちゃんはひろ君の事が好きなんだと。
横から急に現れた女としての僕は、真菜ちゃんにとって邪魔な存在なのだと。
でも、僕はこのまま引き下がるつもりはなかった。

「ま、負けないよ・・・」

「なっ!?女じゃあたしの方が上なんだからね!負けないわよ!」

「「勝負!」」

決して何も起こりそうでなかった、三すくみのような関係にひびが入り、それは三角関係へと進化を遂げた。

「えっと、俺、なんだか蚊帳の外みたいで寂しいんだけど・・・」

「誰のためだと思ってんのよ!この鈍感!」

バチン!

真菜ちゃんの平手打ちが、ひろ君の頬に直撃する。

「いってぇ!!あにすんだよ!」

「真菜ちゃん!乱暴はだめだよ!大丈夫、ひろ君?」

「あ、あぁ・・・大丈夫だけど・・・」

僕はそう言って、第一戦目の勝者となるべく先手を打つ。
彼の頬を優しくさすり、心配そうに彼の顔を見上げる。
僕は知っている、彼はこういう従順で大人しい女の子が好みであると。
ならばこちらの勝算は高い。

「離れて・・・離れなさいよ!ゆう!!」

「い、イタい!なにするの!?やめてよ!」

「もう女気取り!?あたし、いくらゆうちゃんでも許さないから!!」

「だってもう女だもん!」

「えっと・・・二人とも?」

「「うるさい!!」」

「ひぃっ」



よくありがちな展開でした
113 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/22(金) 22:15:59.71 ID:3ZYs1XA0
GJ!!!
114 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/23(土) 02:06:44.64 ID:LE5gbgA0
裏山
115 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:50:33.72 ID:9YfaHYc0
>>100からの続きだぜ


 穏やかで、規則的な寝息。
授業中なので保健室には私と彼女しかいない。
先生はちょっと会議があるとかなんとかで外出中。
目じりをすこし赤くさせて、頬には涙の跡がある。

真っ白なシーツに包まれている彼女はとてもカワイイ。
泣き疲れた子供みたい。
ぷにぷにで、透き通るように白い肌。
桜色のちょっとぷっくりとした唇。
全てが愛おしい。

ああ、私は変態さんになってしまったのかもしれない。
だって私は女の子で、彼女も女の子。
普通に考えたらおかしいのは分かっている。
でもこの気持ちには逆らえない。
欲しい。
彼女の全てが欲しい。

気がつくと私は彼女に顔を近づけていた。
肌と肌が触れ合うギリギリの所にいる。
やっぱり男っぽくて暑苦しい匂いではなくて、ほんのり甘くていい匂い。
髪からなのか、身体全体からなのか分からないけど、いつまでも嗅いでいたい。
理性で抑えておかないとすぐにでも襲いたくなるほどだ。

その唇も、つぶらな瞳も、華奢な身体も、全部私のものにしたい。
誰にも譲りたくない。

どこにもいないハズの架空のライバルに嫉妬してしまう。
それは男なのか、女なのか分からない。
でも、もしそんなことがあったのなら、彼女が私から離れていってしまったら、今度こそ私は絶望してしまう。
私の心の拠り所。
私が一番安心できる場所。
それがなくなってしまうのは嫌だ。

多分、私は男とか、女とか、そんなのに関係なく目の前で寝ている一人の「人間」を好きになったのだ。

だから、これくらいはしてもいいと思う。
私は自分の唇を彼女の小さな唇に少しずつ近づける。
またいい匂いが嗅覚を刺激する。
身体がすこし火照ってきた。
恥ずかしさと、ちょっとの興奮。
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:51:43.01 ID:9YfaHYc0

キスするシーンを思い浮かべただけで胸がはち切れそうになる。
愛おしくて、切なくて、幸せ。

「ん…すぅ……」

コロンと寝返りをうってしまった。
仰向けに寝ていたのだが、私の方を向き、横になる。
気を取り直してまた近づいたところで、保健の先生が帰ってきてしまった。
いつもは綺麗で、優しい女の先生なのだが、このときは恨めしく感じてしまった。
もちろん本人は何のことだかさっぱり。

私は運が悪かったのだと適当に自分を納得させて、先生への苛立ちを抑えることにした。

「でも、よかったわね。」
「え?なにがですか?」
「えっと…赤塚さんかな?思いっきり泣いちゃったんでしょ?」
「あ…はい…まぁ。」

いきなりこの先生は何を言い出すのだろうか。
よく分からない。

「だいたいね、女の子になっちゃった子はいろいろ溜めてしまうのよ。
 ご家族のこととか、友達のこととかでね。私たちはそのつもりがなくても、本人は結構ストレスとかが溜まってしまうものなのよ。」
「はぁ…。」

「だから、思いっきり泣いても大丈夫な人がいてくれてよかったね、ってこと。
 これでも保健の先生だからね。
 もうすこし時間が経ったらいろいろ聞こうと思っていたけど、あなたがいてくれるのなら大丈夫ね。」
「はい…。任せてください。」
「でも、面白いわね。」
「はい?」
「こういうのは大体仲のよかった男の子と解決するものなんでけどさ、まさか女の子とはねぇ。
 もともと仲が良かったのかしら?」

私はテレながらも首を縦に振った。
それを見た先生は安心した表情で私を見る。
私は俯いてしまったが、口元は緩んでいた。
と、先生が人差し指を口にあてて、なにやら考え込む。
117 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:52:44.39 ID:9YfaHYc0
「もしかして、お楽しみの邪魔だったかしら?」

顔がボッと、赤くなるのが分かる。
ニヤニヤしながら目を細める先生を私は「違う!」何度も全力で否定した。
それでも先生はどうかしら?とかいいながら全く信じてくれなかった。
ま、実際…してみたかったし…。
私も女だけど、女の勘っておそろしいと改めて実感した。

「それじゃあ、貴女も授業に戻りなさい。」
「え?あ、はい……。」
「心配なのは分かるけど、今は静かに眠らせておいた方がいいでしょ?
 大丈夫よ。とって食ったりはしないわ。」
「よ、余計なお世話です!」

ピシャリと扉を閉めて私は教室に向かうことにした。

ここ最近、イライラしていて心がモヤモヤしていたけど、今はそんなこともなくてスッキリしている。
いつもより身体が軽い気がする。
階段も楽に上がれる。
いつもより若干テンション高めで教室に入った。

  
 授業が終われば部活があるのだが、サボることにする。
そんなことよりも彼女のことが気になって部活どころではない。
私は帰りのホームルームが終わると、残像を残す勢いで保健室に向かった。

保健室には数人の生徒がいた。
調子が悪い子と、その付き添いの子。
雰囲気からして一年生だ。
先生からいろいろアドバイスやら、薬やらしてもらっている。

私は先生に目で語りかけ、ベッドに向かう。
プライバシーからなのか、よく分からないが、彼女の寝ているベッドの周りには厚いカーテンがある。
それをソーッと開けて中に入った。
彼女は私に背を向けてまだ寝ているみたいだ。
小さな寝息が聞こえる。
 
私はまたソッと、カーテンを閉める。
と、同時にさっきの子達の「失礼しました」という声が聞こえた。

「そんなに彼女が心配か?」
118 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:53:36.00 ID:9YfaHYc0

後ろから声を掛けられる。
先生はいつの間にか背後に移動していたみたいだ。

「えぇ…。」
「それはそうと、今日、これから県の方で会議があるんだ。
 だからもう保健室を閉めないといけないのだが…。」
「あ…そうですか…。えっと…どうします?」

そう言いながら私はチラッと目線を彼女に合わせる。
視線の先では安定した呼吸が聞こえる。
先生は呆れた感じでため息をついた。

「さっき、両親に連絡してみたのだが、出てくれなくてなぁ。
 お姉さんもなんだか忙しいらしいんだ。どうしたもんだか…。」

そりゃそうだ。
彼女の両親は共働きで、夜にならないと連絡すらとれない。
お姉さんも大学の卒業論文がもうすぐあるとかで、忙しいってもの知っている。

「あの…、私近所に住んでいますから、送っていきます。
 この時間帯なら母もしますでしょうし…。」
「おぉ。そうか、すまないね。このまま起こすか、職員室に移動させようかと思ったのだがね。
 こんなに気持ちよさそうに寝ているのを起こすのも気が引けるし、かといってうるさい職員室に行かせるのもなぁと、困っていたのだ。」
「じゃあ、任せてください。今から母を呼びますので。」

と、私は急いで携帯電話を取り出してお母さんに電話をする。
専業主婦なので家事やらなんやらが終われば暇なのだ。
さすがにこの時間帯だと、くつろきながらドラマでも見ているに違いない。
すぐに電話に出たお母さんに説明したら、すぐ来てくれることになった。

「だいたいあと10分ほどで迎えに来てくれます。それまで大丈夫ですか?」
「ああ、構わないよ。ありがろう。」
「いえ…そんな。」
「ふっ…こんないい彼女がいて、赤塚は幸せものだなぁwwwwww」

ちょっ…情報広まるの早すぎない?
というか、なんで先生がそんなこと知ってるの?

「ふむ、なんで知っているのか気になるかい?」
「あ、当たり前じゃないですか!」

「君の友達から聞いたのさ。まぁ、彼女はいろいろと相談に来ていたしね。
 もちろん、赤塚のことで。ほら、女の子になってまだほんの少ししか経っていないだろ?
 だからさ、よくここに来ていたんだ。そのついでに恋の話もしたわけだ。
 で、さっき君達が保健室に来たときにこっそり教えてもらったのさ。
 心配しなくていい、これでも教師だ。生徒の秘密は絶対に守るよ。」

「ほ、本当ですよね!?お願いしますよ!?」
「ああ、大丈夫だ。任せておけ。」
119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:55:14.97 ID:9YfaHYc0

私の友達ということは、アイツだ。
なら結婚とか、恥ずかしいことまで話したの!?
あ、あれは一時のもので、流れ的に言ったもので…。
でで、で、でも、それはそれで嬉しいし、実際してみたいし…。

「ま、知っているのは君の友達と私しかいないから安心したまえ。」

や、やっぱり事細かに知っているらしい。
あのとき、あんな事を言った自分が恥ずかしくなってきた。

顔を赤くさせて、そのことを忘れようとしていたとき、調度お母さんが到着した。
なかなか起きない彼女をなんとかおぶり、車に乗せて、家まで車を走らせた。


120 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:56:07.23 ID:9YfaHYc0



 ピンポーン…

やはり彼女の家には誰も帰っておらず、インターホンを押しても何の応答もない。
電話で預かっていると連絡しようにも、お家の電話番号は分かるのだが、直接の連絡先を知らない。
ということで、私の家で寝かせることにした。

私の家はそこまで広くないし、部屋の数も多くない。
客間は一応あるけど、寝られるところではない。
なんというか、必然的に私のベッドで寝かせることになってしまった。

今もぐっすり眠っている。
送ってくる途中も、私のベッドに運ぶときも一回も起きていない。
よほど寝つきがいいようだ。

あどけない表情で、気持ちよさそうに寝ている。
その寝顔がとてつもなくかわいい。
元男とは思えないほどだ。


だから、少しイタズラをしたくなってしまうのは必然に近いだろう。

ほっぺをつついてみる。
ものすごく柔らかくて、暖かい。
女の子っていうより、子供に近いかも。
身体も小さい。
もしかして若返っているんじゃないかと思えてくる。

もう少しイタズラしてやろうと思い、布団を引っぺがす。
と、私の目に飛び込んだのは、はだけたブラウスと、めくれたスカート。
これが絶対領域というやつか。
見えそうで見えない。

私の視線はそこに釘付けになる。
心臓の鼓動が早くなる。
変な汗が出てきた気がする。

いや、決してこれはいやらしい気持ちとかじゃなくて…その…あれだ!
確認さ!
ちゃんと女の子になっているか確認しないとね。
あと、スカートを元に戻してあげないと風ひいちゃうかもしれないし…。

震える手で、スカートの端を掴む。
なんか自分のと手触りが違う。
おそらく新品だからだな。
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:57:13.32 ID:9YfaHYc0

私は思わず唾を飲み込んだ。

太さの変わらない綺麗な太もも。
そしてその先には、水色のしましまパンツがあった。

もうドキドキが止まらない。
これはお姉さんの趣味なのだろうか。
それとも元々こいつにはこんな趣味があったのかもしれない。

神秘の場所を私は凝視してしまう。
目が離せない。
息がすこし荒くなってきた。

この下が気になる。
自分にもあるものなのに、とても気になる。

…触ってみたい。
どこからかそんな衝動が襲ってくる。
それに逆らえずに、少しずつ、手が伸びる。

「おい…何やってんだ?」

心臓が飛び出すかと思った。

「えっ?あっ…いや、これは…」

言葉を詰まらせつつ、すぐにスカートを元に戻す。
彼女はこっちを見ているみたいだが、私は顔を上げられない。
恥ずかしさと罪悪感でもう、何がなんだかよく分からない。
冷や汗が出てくる。
きっと顔は真っ青に違いない。

「お前…元々そういう趣味があったのか?」
「ち、違う!た、ただ…その…」
「?」

少し、首を傾けて下から覗いてきた。
だから上目遣いでこっちを見てくる。
122 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:58:04.93 ID:9YfaHYc0

なにか、自分の中で切れた気がする。

「好き…」
「えっ?」
「好き…だから…しょうがないじゃん…」

ボンって音がしたかもしれない。
彼女の顔は真っ赤になっていて、俯いてしまっている。
またその仕草がかわいくてどうにかなってしまいそうだ。

なぜいままで気がつかなかったのだろう。
こんなにかわいいなんて。
心臓の鼓動がものすごく早くなっている。
彼女に聞こえてしまうかもしれなくらい、ドキドキいってる。

私はもう、どうしても気持ちが抑えられなくなった。
気がつくと私は彼女を抱いていた。
ふわふわしたいい匂いがする。

彼女は何が起きたのか分からないのか、声にならない声を上げている。
好き、大好き、と、私は何度も耳元でささやく。
その度に彼女の身体はピクッと振るえ、熱を持つようになってきた。

1分か、それとも5分くらいだろうか、ずっと抱いていた。
そして彼女が私を引き剥がし、自分から離れていく。
そこで私は―――

「んぐっ…!」

キスを、した。
すぐに彼女は離れようとするが、私は再びきつく抱きしめる。
絶対に離れないように。

柔らかくて、ぷにぷにしていて、暖かい。
なんかふわふわして気持ちがいい。
彼女もそんな感じなのか、だんだん力が抜けてきた。

「んっ……ふっ…」
「んんっ…!?」
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 06:59:04.97 ID:9YfaHYc0

もっと、欲しい。
その一心で私は舌を入れる。
ちゅぷ、っと、水音が立つ。

おいしい。
それが始めの感想だった。
彼女の歯茎も、唾液も、唇も、全部舌でなめまわしてやる。
その度に、くちゅ、ぴちゃ、と音がする。

気持ちいい。
身体がふわっとして、幸せな気分になる。

とても、嬉しい。
キスできることが嬉しい。

さっきは私を引き離そうとしていた腕が、私に絡みついてきた。
そして今度は彼女の方から舌を入れてきた。

「ん…ちゅぷ…ふっ…ん、…」
「くちゅ…んっ…っ…」

ただひたすらにお互いを求めた。
舌を絡ませ、唾液を交換する。

抱き合い、ベッドに倒れこんだ。

「ん…はぁ…ぁ…ぷぁ…」
「ふっ…んっ…ちゅ…ふぁ…」

二人の混ざり合った唾液がキラキラとした橋をつくる。
お互いに名残惜しそうな声をあげ、見つめ合う。
そしてまたキスをする。
今度は軽い、フレンチキス。

「ふふっ…キス…しちゃったね…」
「…お前が強引にしたんだろ…」

と言いながらも表情は満足げである。
だから、また唇を奪ってやる。
もうさっきみたいな抵抗はない。
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:00:00.98 ID:9YfaHYc0

舌を絡ませ、吸い、互いを貪る。
無音だった部屋にいやらしい水音が響く。
お母さんにみられたらどうしよう、とかそんなことは全く頭に浮かばない。
ただ、目の前の人と、愛し合いたい。

そう思ったら、自然と彼女の身体に触れていた。
服の上からでも分かる。
もう、男じゃないんだ、と。

キスをしながらブラウスを脱がしていく。
カッターのボタンを一個ずつ、はずしていく。
彼女は気づいてないのか、全く抵抗しない。

「ん…ふぅ…んっ…ぷはぁ…」
「ふっ…はぁ…ぁ…」

見つめ合い、確認した。

私はゆっくり、ブラジャーに触る。
ほとんど胸はないけど、おそらく家族から言われたのだろう、ちゃんとしてある。
まだ後ろで止めるのは苦手なのか、前で止められるタイプのブラジャーだ。

「んっ…」

ブラをはずしたときにちょっとどこかに触れたみたいだ。
声にならない声をあげる。
それがあまりにかわいくて、私は目の前の小さなおっぱいに触ってやる。
僅かな膨らみしかないけど、ものすごく柔らかくて、さわり心地がいい。
手に吸い付くようで、でも確かな弾力がある。
スベスベなのにしっとりしていて、まるでシルクを撫でているみたいな感覚。

「んっ…ぁっ…んんっ…くぅ…」

桜色の、これまた小さなポッチにはまだ触っていないのに、すこしずつ感じ始めているみたいだ。
淫乱とかそういうのじゃなくて、多分彼女の感度が良すぎるのかもしれない。
私は痛くないように、最大限優しく撫でてやる。
125 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:01:01.46 ID:9YfaHYc0

ピクピクッと身体を震えさせ、口からは小さな喘ぎ声が聞こえる。
たまらず私は右乳首にキスをした。

「んあっ…そ、そこ…あっ…ひっ…!」

少し汗をかいていたのか、ほんのりしょっぱい。
でもどこからともなく甘い匂いと、味がする。
たまらなくいい味がして、おいしい。

コロコロと舌の上で転がし、たまに吸う。
私がされたら嬉しいこと、感じることを一つずつ、丁寧に彼女にしてやる。
舌で押さえつけたり、唇ではさんで引っ張る。
左乳首も指の先で割れたガラスを持つくらい、優しく触る。
そうしているうちに段々、先がツンと、固くなってきた。
そこを柔らかく舐めてやるとますます立ち上がってくる。

「あっ…あ、だ、駄目っ、だってっ…ん、あっ!」

かわいい声で鳴くからよけいやめたくなくなってしまう。
チュウチュウと吸いながらも、たまに甘噛する。

「んぁあっ!?」

口からだらしなくよだれをたらしながら、喘ぐ。
目はもう半開きになり、荒い息を上げている。
私はもう一回軽くキスをして、あそこに手を伸ばした。

スカートをたくし上げ、太ももを撫でてやる。
むっちりしていて、でも細い。
そして本当に羨ましくなるほどのさわり心地。
いつまでも触っていたくなる。
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:02:03.01 ID:9YfaHYc0

もはや身体全体が性感帯になっているみたいで、触れれば触れるほど声を上げる。
太ももから徐々に手を伸ばし、お尻に触れる。
まだ、肝心なところには触ってはいけない。

幼児体系なのでそこまでお尻は大きくないけど、マシュマロみたいな柔らかさ。
ついつい揉んでしまいたくなる。
私も自分の胸を触るけど、それに良く似ている。
まるでお尻におっぱいがついているみたいだ。

と、太ももをこすり合わせてモジモジしてきた。
女の子はこうなるともう止まらないんだ。
お腹の奥がキュンってなって、もどかしくなる。
どうにかしてアソコのむずむずを抑えて欲しくなってくる。

私は乳首から離れると、彼女の首元からうなじにかけて、フッと息をかける。

「ぅんっ!」

こもった声。
首をすくめてグッと肩に力が入る。

耳元を舐めてあげる。
ツツツッと、だんだんうなじに向けて舌をなぞらせる。
ぞわりと彼女の肌が粟立つ。

「んっ、ひぅ…あ、ひ…ぁ…!」

片手は乳首、もう一方はお尻を揉んでいる。
舌で首元を舐めてやり、ときおり息をかけてやる。
で、また乳首を吸ったり、太ももを撫でてやる。

その度に軽く喘ぎ、息を荒げ、小さく震える。

本当だった私が彼にそうして欲しかったけど、もうそれは叶わない。
「彼」が「彼女」になってから、やっとそれに気がついた。
これは、私は悪いんだ。
だから私がリードしてあげないといけない。
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:03:17.10 ID:9YfaHYc0

せめて「彼女」が「彼女」になりきってしまう前に、「彼」のかけらを感じたい。
私の胸で小刻みに震えるこの子を、もっと愛したい。
その想いで精一杯の愛撫をしてやる。

「あっ…ん…はぁっ、な、なぁ…ん…」
「ぷはっ…どうしたの?」

顔を赤くして、視線をそらす。
太ももをモジモジさせながら、私の服を掴んできた。
私は彼女がなんて言いたいかは分かっている。
でも彼女に言わせたい。
かわいすぎるのがいけないんだ。
だからちょっと意地悪なことをしたくなるのも仕方の無いことだ。

「えっと…さ…、んっ…」
「何?言わないと分かんないよ。」
「ぁ…そこ…」
「え?何?」
「アソコが…む…むずむず、するんだ…んっ…切ないんだよぉ…うっ…ひっく…!」

少し調子に乗りすぎてしまったようだ。
涙を目にいっぱい溜めて、懇願されてしまった。

私はお尻を揉んでいた手を前に持っていく。
スカートを脱がせるとかわいいしまパンが目の前に現れた

一度彼女を起こし、カッターやブラウスを床に置く。
これで彼女はパンツ一丁。
私はルパンダイブしたくなる衝動を何とか抑え、ゆっくり彼女を抱いてやる。
もう準備ができているみたいで、小刻みに震える身体はほんのり暖かい。

軽くキスをして、右手を下半身に伸ばす。

「ひぁっ…!」

ビクリと全身を震わせ、身体を私に預けてきた。
触ってみると、もうぐしょぐしょに湿っていて、彼女のアソコの形が良く分かるほどになっていた。
感度の方もすごくて、ちょっとなぞるだけですぐ喘ぐ。
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:04:15.55 ID:9YfaHYc0

私はそこをパンツの上から擦ったり、押さえつけたりして優しく触ってやる。
直接は刺激が強すぎると思ったからだ。
私自身、自分でそういうことをしないといったら嘘になる。
いきなりそのまま触るのは痛いし、気持ちよくない。
だから、少しでも気持ちよくなって欲しい。

痛くないよう、強すぎず、でも物足りなさを感じさせないくらいの強さをこめる。
引っかくように中指と人差し指を動かす。

「あっ…ふっ、ぅぁ、あ、あっ、ああっ、ひぁっ、あっ!」

と、一番湿っている部分からちょっと上に、パンツの上からでも分かる小さな膨らみを見つけた。
そこを重点的に、人差し指のお腹でしごくように刺激してやる。
小さな動きだけど、リズムカルに、頂点に上り詰められるように。

ひざとがくがくさせ、彼女に身体に力がこもる。
指に彼女の愛液がつくくらい濡れた部分からさらに液体が出てくる。
もうパンツの意味がないくらいに。

くちゅくちゅと卑猥な音が響く。
少し指を離してみると、糸が引いて、とんでもなくいやらしく見える。

「あっ、ああっ、んっ…はぁ…あ…?」

私が指を離したからか、彼女が私を見上げてくる。
何かに絶望したかのような表情で。

「あ、あっ、…や、やめる…な、やめないで…!」

胸が高鳴った。

私は彼女を押し倒し、パンツを脱がす。
むわッと、雌の匂いがした。
トロトロと、透明な汁がとめどなく溢れてくる。
まだ毛も生えていなくて、ピンク色なそこはかわいくて、とても綺麗。
ビラビラはまだ外に出てなくて、一本の縦筋だけしかない。
それに私はますます興奮し、彼女のアソコにむしゃぶりつく。

「ああぁああぁあっ!」
129 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:05:09.68 ID:9YfaHYc0

ビクビク!っと身体をのけぞらせ、大きく喘ぐ。
私は無我夢中で彼女のアソコを舐める。
止まらない愛液をひたすら飲んで、吸う。
ズゾゾゾっと音がすると、さらに大きな声を上げる。

「ああっ!くぅ!そこ…っ!キタナイっ…!いっ、あああぁあ!」

キタナイところなんてどこにもない。
全部かわいくて、綺麗だ。

私は彼女の中に舌を入れて、中をかき回す。
その度に甘酸っぱい匂いと共に、トロトロとしたねちっこい液体が溢れてくる。

「いっいぃ、あっ、あ、くぅ…んはぁ、あ!あっ、く、来る!なんか、来る!」
「ん…ちゅ…は、いいよ、イッっていいよ」
「ん、あっ、あぁあっ、こ、怖い、あっ、駄目、いっ、もぅっ、あっあっあぁっあっ!」

私も最初にイクときは怖かった。
自分にある感覚が信じられなくて、自分が自分でなくなるような感覚。
目の前がチカチカして、頭の中が真っ白になるんだ。

彼女は身体を丸め、私の頭を両手いっぱいに抱く。
130 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 07:06:50.35 ID:9YfaHYc0

切羽つまったような、余裕の無い声を上げ、必死に「来る」のを抑えている。
苦しいようで、切ない悲鳴。
中がビクビク!っと震えるのが分かった。
その瞬間、私は一番敏感なお豆を一気に吸ってやった。

「あぁ!い、きゅぅぅううぅうぁあぁぁああぁあああぁあん!」

全身ががくがくっと揺れ、身体をのけぞらせる。
ピュピュッと、アソコから愛液が漏れ出す。
私の愛撫でイッてくれたのが嬉しくて、全部口で受け止めた。
腕に力が入り、私の頭をキュッと抱きしめる。

「うっ、あ、あっあっ、ふっ、んんっ…くぅっ…!」

何回も軽くイッてるみたいで、ピクピクとアソコが震える。
最後に声を飲み込み、身体から力が抜けていく。
彼女はくったりとして、全てを私に預けた。
私は手を伸ばして彼女を抱きしめる。

そのままベッドに倒れこみ、また軽くキスをする。
反応が無い。
彼女は気を失ってしまったみたいだ。
息がまだ少し荒いけど、安らかな寝顔をしている。
私はもう一度彼女を強く抱きしめ、耳元でこう言った。

「大好き」

その日、朝まで二人で抱き合いながら眠った。


ここまでなんだぜ
誤字脱字あったらスマソ
あと、レズっちまった
スマソ
131 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/25(月) 07:49:29.98 ID:fjwwk1so
超GJ
これ絶対に母親は気付いてるよなwwww
132 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/25(月) 09:26:42.20 ID:CLMxP4Uo
イイヨイイヨーエロイヨー
133 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/26(火) 01:57:21.55 ID:2.exDEgo
えろいよえろいよいよいいよ
gjgjgjgjgjgj!!
134 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/01/30(土) 14:35:41.02 ID:ARwHFIEo
女の華は短い。老いというものが非常に憎い。
今与えられた華も非常に脆く敏感である。
恋愛的なもので例えると、いい男を伴侶とするための嗅覚とも言える。
しかし、今回の場合、性的な意味では甘美さとリスクを伴っているとも言える。

「お前女になったら、ころっと態度変えたよなぁ?」

「わ、わるい・・・・かよ・・・あんっ」

こいつは、女になったとたん「俺と付き合え」なんて言い出した。
最初はそっちの気で突き合うと思ってしまったが、女の体のあいつじゃディルドつけない限り突き合えないわけで。
俺は簡単に誘惑されてしまったわけだが。

「ここがええのんか?ここがええのんか?」

「きゃうっ!」

あいつはどんどん女になって、俺を引きつけていった。
これが自然の摂理と言えばそれまでなのだが、理性的な生き物としては理由というか・・・言葉がほしかった。
この関係を決定づける言葉が。

「でも、こうしてすぐ女とお近づきになれたわけで・・・あ、もしかしてお前・・・」

「ち、ちがぁあぁんっ!・・・ウホッ!でもアッー!でもないんだからな・・・」

「じゃあ、なんなんだよっ!おらっ!!」

コンマ1秒あるか無いかの間隔でひきしに前の穴を手で掻きまわす。

「ああぅ!あああぁぁぁぁぁひあぁぁぁぁぁぁ!!あふぅ!!あぁぁぁぁぁん!きゃぅ!!」

ブジュ!プシャッ!ピチャッ!という嫌らしい音が股間から溢れ出す。
股間から愛液なのかどうかを疑うほどの液体が噴き出して、そこを中心にあちこちに淫らな液体が飛び散っていた。
中にはつーんとした匂いも混じっていることから、おそらく失禁もしているのだろう。
だが、そんななすがままになっている姿を見てしまうとさらに興奮してきてしまう。
更に攻めを増してみる。

「ひぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!んあふぅっ!!きゃふっ!」

すると、出たり引っ込んでいたりしていた液体がしぶきをあげて一気に噴き出した。
何度も何度も訪れる絶頂に耐えられず、完璧に失禁したらしい。

「はぁはぁ・・・・女ってすげぇ・・・!!」

俺は素直に関心した。男からすれば女の性的快感は素晴らしものだと教えてくれる。
135 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/01/30(土) 14:36:26.40 ID:ARwHFIEo
「あぅっ!はぅぅっ!・・・・あっ!・・・んんっ・・・」

どこで絶頂しているのか分らない声を上げる度、残ったおしっこがぴゅっぴゅっと噴き出している。
下の穴は上の穴から流れ落ちる滝に打たれて、苦しそうに口をパクパクさせている。

「どうだ・・・言う気になったか?」

「あぅっ・・・んくっ・・・」

「答える気がないようだな!!ならば!」

残った体力をかけて、一気に挿入!そして、一心不乱に腰をふる。
先ほどの手マン程の勢いは出せなかったが、それでもアソコがかなり敏感になっているらしく、俺の息子の付け根には生暖かい液体がいまだに流れているのがわかる。

「あぁっ!あぁぁぁぁぁんっ!あうっ!あうっ!あうっ!あうっ!あうっ!」

ピストンに従うように声をあげられては、こちらもうれしくなってくる。
俺の感情が一気に高まっていき、次第に俺も限界を迎えようとしていた。

「だ、だめだ・・・で、でるんっ!!」

「え!?あぁぁっ!」

「あぁぁぁ、中は気持ちえぇぇぇぇ!!」

「こ、子供が出来たら困る!!今はまだ困るぅ!あぁぁぁん!できちゃうよぉぉ!!」

俺の一言で我を取り戻したのか、息子たちを中に解き放つのを全力で拒んできた。

「うはぁぁ・・・!!さすがにこれ以上は・・・・!!」

が、俺は止めない。俺はまだこいつから答えを聞いていないのだからな。

「お前と幸せになりたいからぁ!あっあっだめぇぇぇ!!」

「その言葉!待ってたぜぇ!!」
136 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/01/30(土) 14:39:38.80 ID:ARwHFIEo
ずるっ!どくどくぴゅっぴゅ!!
間一髪で本心を聞けたので、中出しだけはまぬがれた。
もとよりするつもりはなかったのだが、イク寸前の中は相当気持ち良くて一瞬抜く気になれなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・・」

「ずるいよ・・・お前・・・ぐす・・・」

「そういうなよ。俺もこれで男だ。お前が奇麗な華のうちに俺がもらってやるよ」

「え・・・・」

「ま、できるだけ長い間、華やかな花でいてもらわないと困るけどな!」

「ああ!がんばるよ!!」

へたすりゃ学生の身で父親という未来が待っていたが、そんなリスクを冒してでも欲しいものが手に入ったのだ。
女の華は短いというが、女体化したものはさらに短いと言える。
なら、身近な元同性だったとしても、一緒になってやっても構わないだろ?

おわり
137 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/01/30(土) 18:37:18.42 ID:lXMPhlYo
GJ
もう勃って立てない
138 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/08(月) 14:33:01.66 ID:fM.J3pM0
「にょたちゃん……」
「んー? どしたの女ちゃん、そんなモジモジしちゃって……」
「えっと、えっとね? ……えっちの仕方、教えてほしいの」
「え……っちぃいっ!?」
「こここ、声が大きいょぅ
 にょたちゃんって、男の子だったでしょ? だから、そういうの詳しいかなって……」
「詳しくないから女体化しちゃったワケなんですが……」
「あっ! ご、ごめんなさぃ……」



「ね、女ちゃん」
「ふぇ? なあに?」
「えっとね、ちょっと女の子の事で教えてほしいんだけど……」
「にょたちゃん女の子になってまだ日が浅いもんね うん、私でよかったら……」
「ありがと♪ あのね、女の子のえっちの仕方なんだけど……」
「えっ? ……えええ!?」
「ほら、いつカレシが出来るか分んないし……こんなコト女ちゃんくらいにしか聞けないし……」
「ででで、でも、その、わ……わたしだってよくわかんなぃょぅ……?」
「大丈夫! 男の子のえっちなら分かってるから
 そこにベテラン女の子な女ちゃんの知識が合わさればマスター出来ると思うんだ」
「う、うううううぅー」

と、どっちも捨てがたいわけだが、どうすればいいんだと思う?
139 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 00:19:15.31 ID:veVGNH20
どっちも書けばいいんじゃないかな
140 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/09(火) 14:26:53.07 ID:dFXi.6AO
前スレで投下した話を続きを投下しようと思うんだが、一応アタマから投下した方が良いのかな。
141 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/09(火) 21:18:08.61 ID:8UqNzy6o
>>140
できれば前の話から投下して欲しいな〜
142 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/09(火) 22:59:19.12 ID:dFXi.6AO
>>141
冒頭部分が消えてたから書き直し+直さなきゃいかんとこを修正したら改めて投下します。

スッゴいごめんなさい。
143 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/09(火) 23:33:47.62 ID:8UqNzy6o
>>142
おろろ・・・消えてたとは
wktkして待ってますww
144 :140 [sage]:2010/02/10(水) 01:08:48.64 ID:0oKT1UAO
お待たせ致しました。すっげぇ長いです。
145 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:16:06.34 ID:0oKT1UAO

「……うっ」

 女がえずく声が、焦げ臭いアパートの一室に響いた。
 まったく。人間の丸焼きなんて誰だって拝みたくないモンだっていうのに。

「―――宮前っ、いつまで交通課のつもりだ、嫌ならとっとと辞表を出してこい馬鹿野郎っ!」
「……っ、す、すみませんっ」

 俺の叱咤激励で、ようやく平静を取り戻したのか日和っ子がカラ元気で答える。……まぁ、吐かないだけマシ、か。

「お前は消防から状況を確認して来い。こっちは俺らでやる」
「っ、でも―――」
「―――いいから行ってこいってんだ馬鹿野郎っ!」
「はいっ!!」

 ……ったく。男女で差別されてる被害妄想に取り付かれる前に自分の与えられた仕事くらいやってのけろっての。

「―――仏さんの死因は?」

 俺が飛ばした檄のせいで、気まずい雰囲気の中で遺体の写真を撮影し続ける鑑識に声を掛ける。あくまで、普通の声色でだ。

「直接の死因は銃殺、ですね」
「銃殺?」
「遺体はかなり焼け焦げてますが、恐らく。
 火事による死体損壊が激しいので司法解剖に回さない限り詳しいコトはわかりませんが」

 確かに、側頭部"らしき"部分に風穴が開いてて、そこから血"らしい"ものが流れた焼け跡がこびり付いている。

「撃たれ死んでから、ここに点いた火に巻かれて仏さんは焼け焦げたってコトか」
「今の所は推測の域を出ませんが」

 ……ということは、犯人はかなりの恨みを持った人物か? 仏さんの財布らしきものも消防署員が見つけたらしい。
 ……キナ臭い事件だな、色々と。

「……宮前ぇッ!!」
「っ、拝島さん。耳元で叫ばないでくれますか」
「あ、悪い」
146 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:17:48.33 ID:0oKT1UAO
――――




『―――次のニュースです。
 本日未明、新宿区のアパートで火災が発生しました。
 ……消防隊が駆けつけた時、周囲の空気が乾燥していた為、完全に鎮火するまでに二時間程掛かり、アパートの中から身元不明の男性の遺体が発見されました。男性は40〜50歳と見られており、警察では放火の可能性も視野に入れ捜査を進めています』

 ―――うわ、この近くじゃねーか。

 街頭ビジョンにデカデカと映し出された物騒な事故を報じてた女子アナに背を向け、区が備え付けた灰皿に、フィルターぎりぎりまで焼け焦げた赤ラークを投げ捨てて、その場を後にする。

 やれやれ、仕事も一息吐いたトコだし……今日は店仕舞いにするか。

 ―――早いもんで、西暦が2000年を数えてから10年が経つ。
 過去を懐古するような大層な年月も生きてねぇけどよ、変わったよなぁ世の中ってのも。
 時に目まぐるしく、時に欠伸が絶えないくらいに鈍い速度で。
 ……あくまで俺の主観だが。

 それが、どこぞの誰かの差し金なのか、地球が誕生してからン億年と繰り返してきた自然の摂理みてぇに生き物全てに端っから決定づけられたモンなのか、そんなもんは知らん。
 そこまで突き詰める探求心も根気も持ち合わせてないもんでね。

 俺は、その変化に便乗して数年前から"ある商売"を始めた。
 が。何番煎じかもわからん商売を始めた俺にはロクなお鉢が回って来ない。
 衣食住だけで事務所は火の車。
 出てくんのは溜め息と金ばっかで、良いコトなんてなーんもねぇ。
147 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:19:27.98 ID:0oKT1UAO


 ―――そんな俺に追い討ちのごとく叩きつけるような雨がいきなり降り出しやがった。
 ヒトが珍しく仕事に勤しんでたって時に限ってなんでだ。
 日頃の行いのせいか? 善良な市民を捕まえて酷ぇことしやがるな、お天道さんよ。
 ったく、折角の一張羅のコートが台無しだ。どこぞのファッションセンターで4980円だったんだぞ畜生。
 ……とりあえず適当にコンビニの傘立てにあった壊れかけのビニール傘を拝借し、人ごみに紛れるて帰ろう、と―――

 ―――そんな中の出来事だった。

 落としモノを交番に届けて褒められるのは小学生まで。
 人生の処世術めいた言葉が頭を掠めた。
 足がつきそうにない金目のモンならガメちまえば良いし、そうでなければ目もくれないで大抵スルーだ。
 生憎、他人様を助けるために余力を残してるような真っ当な生き方をしてないもんでね。
 まぁ、表向きに真っ当な生き方をしていても俺みたいな考え方の奴は少なくないのが今の御時世ってやつらしい。
 社会の底辺を絵に描いたようなアウトロー気取りが言えた義理じゃないのは、分かってるつもりだが。

 ……冷たいモンだな、雨も人も。

 薄暗いビルの狭間で―――行き交う人々に"ないもの"として扱われてたアイツに声を掛けたのは単なる気まぐれだった。
 ……と思う。

「風邪ひくぞ」
「………」

 折り目正しい体育座りをしていた"落としモノ"が、一瞬だけこちらを向いて、視線を真向かいの雑居ビルの壁に戻す。

 ……無視かよ。

 ―――長い黒髪、真っ黒なTシャツにノーブランドのジーンズ。年の頃は……10代半ばつったとこか。
 ったく、可愛らしい面してんのに色気もなんにもありゃしない。……いや、Tシャツが張り付いてる身体のラインはなかなかだが。

 ヤク中かなんかか? 視神経がキチンと機能してるかも怪しいほど目が虚ろだし……いや、その割にはシャブ痕も見当たんねぇし、血色も悪くねぇ。
 ……多分、違うか。
148 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:20:56.37 ID:0oKT1UAO

「……アンタ、誰?」

 あれこれと思い倦ねていると、愛想もへったくれもない質問が雨を跨いで飛んできた。
 ……相変わらず、目線は灰色の壁に向けたまんまで。

「―――ヒトに名前を訊くんなら、まず自分が名乗るのが社会のルールだろーが」
「……悪い」

 まず"悪い"と思ってんならそんな謝罪の仕方があるか。
 とかクレーマーみてぇな言葉が口からはみ出しそうになったが、そこは、ほらオトナの度量の見せどころってヤツだ。
 ボックスの中の、ラスト一本の赤ラークを口に含んで、100円ライターで火を着け、言葉を待つ。
 ……くそっ、この雨の湿気を十二分に含んだせいか、吸い込んだ煙がちっとも美味いと思えねぇ。
 済し崩し的に味わうタバコの灰が濡れたアスファルトに落ちる刹那、ようやく奴が口を開く。

 それは、"落としモノ"の正体を表すのに十二分なものだった。

「―――オレ……誰なんだ?」
「………あン?」

 ―――この話は、単なるフィクションにもなりそこねた、気狂いの手記だ。
 そう思って、本気にせずに軽ぅい気持ちで流し読んでくれ。


  【赤羽根探偵と奇妙な数日-1日目-】

149 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:22:54.42 ID:0oKT1UAO

 ―――先に言っとくとだ。

 この商売ってのは拳銃を携帯したり、どっかの怪しい組織に薬を飲まされて小学生にされたり、あまつさえ殺人事件に出くわしては国家権力を差し置いて事件を解決に導くなんてコトは九割九分無い。そんなんは推理小説だけの話だ。
 大抵は、やれ居なくなったペット探せとか、やれ旦那の素行を調査しろとか、そういう地味ぃな作業を繰り返し、漸くオマンマにありつける訳だ。

 ……要約しよう。

 俺にはガキ一匹養うだけの余力がある訳ねぇっつー話だ。
 付け加えるなら、あのガキが記憶喪失だろーが同情で バカと偉そうな人間は例外なく高い位置が好きだと言うが。


「こんばんはっ、赤羽根のオジさん」
「"おにーさん"だっ。何度言やぁ分かるんだ」
「あははっ、若さを主張するようになったら老いの前兆ですよ〜? オジさんっ」
「………ちっ」

 通された執務室に居たのは―――目当ての奴……じゃなく、そいつお抱えの口の減らない―――青いリボンで短いポニーテールに結った大人とも子供とも付かない綺麗な笑みを浮かべた嬢ちゃんだった。
 そういや、今日は土曜日だったな。学生である嬢ちゃんが居るのも納得出来る。
 嬢ちゃんの名前、なんつったっけか。
 えーと…………忘れた。

「あ、せんせーなら外出中ですよ?」


 手持ち無沙汰なのか、嬢ちゃんは手のひらサイズのルービックキューブをカチャカチャと弄くり回しながら言う。
 ……仮にも"委員会"の長の執務室――しかも委員長席――で何やってんだ……?
 

「………官僚ってのは国民からの血税を湯水のように使いながら、暇こいてるモンだと思ったが」
「あははっ。
 別にせんせーを擁護するつもりもないけど、そーいうヒト達はご自分で勧んでそう仕向けてるみたいですよ?
 そうじゃない人種も沢山居ますって」

 諭すような口調で嬢ちゃんは言う。それから、俺の影に隠れて微動だにしない黒髪の少女に漸く気付いたらしい。
150 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/10(水) 01:25:21.32 ID:0oKT1UAO
>>149ミスりましたごめんなさい
151 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:30:39.36 ID:0oKT1UAO
 ―――先に言っとくとだ。

 この商売ってのは拳銃を携帯したり、どっかの怪しい組織に薬を飲まされて小学生にされたり、あまつさえ殺人事件に出くわしては国家権力を差し置いて事件を解決に導くなんてコトは九割九分無い。そんなんは推理小説や少年漫画だけの話だ。
 大抵は、やれ居なくなったペット探せとか、やれ旦那の素行を調査しろとか、そういう地味ぃな作業を繰り返し、漸くオマンマにありつける訳だ。

 ……要約しよう。

 俺にはガキ一匹養うだけの余力がある訳ねぇっつー話だ。
 付け加えるなら、あのガキが記憶喪失だろーが同情で手を差し伸べられるような真っ当な精神も持ち合わせてないね、悪ぃけど。
 ま、そんなこと知ったこったと再度路上に放置することも出来たが、それじゃ流石に夢見が悪い。
 野垂れ死なれて、枕元にバケて出られた日にゃ……安物ベッドの骨組は間違いなく崩れ落ちるだろーしな。


 ――だからこうして、わざわざ会いたくない奴のオフィスまで来てるわけだ。
 ま、依頼料の請求も兼ねて、だがな。

 ……しっかし、こんなデカいビルのてっぺんで何をやってるんだか、あの坊ちゃんは。
 バカと偉そうな人間は例外なく高い位置が好きだと言うが。


「こんばんはっ、赤羽根のオジさん」
「"おにーさん"だっ。何度言やぁ分かるんだ」
「あははっ、若さを主張するようになったら老いの前兆ですよ〜? オジさんっ」
「………ちっ」

 通された執務室に居たのは―――目当ての奴……じゃなく、そいつお抱えの口の減らない―――青いリボンで短いポニーテールに結った大人とも子供とも付かない綺麗な笑みを浮かべた嬢ちゃんだった。
 そういや、今日は土曜日だったな。学生である嬢ちゃんが居るのも納得出来る。
 嬢ちゃんの名前、なんつったっけか。
 えーと…………忘れた。

「あ、せんせーなら外出中ですよ?」


 手持ち無沙汰なのか、嬢ちゃんは手のひらサイズのルービックキューブをカチャカチャと弄くり回しながら言う。
 ……仮にも"委員会"の長の執務室――しかも委員長席――で何やってんだ……?
152 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:33:32.54 ID:0oKT1UAO
「………官僚ってのは国民からの血税を湯水のように使いながら、暇こいてるモンだと思ったが」
「あははっ。
 別にせんせーを擁護するつもりもないけど、そーいうヒト達はご自分で勧んでそう仕向けてるみたいですよ?
 そうじゃない人種も沢山居ますって」

 諭すような口調で嬢ちゃんは言う。それから、俺の影に隠れて微動だにしない黒髪の少女に漸く気付いたらしい。

「で、そちらの可愛らしい子はどちら様ですか? ひょっとして―――赤羽根さんの……これですか?」

 ―――小指を立てんな。いつの時代のリアクションだ。

「―――生憎、俺の守備範囲外だ」
「……前に同じく」

 背後からキッパリとお断りの言葉が飛んでくる。……別に悔しくなんてねぇよ。

「あれ、もしかして―――」

 俺とコイツのやりとりを聞いて、嬢ちゃんは漸く事態を把握したように首を傾げて見せた。

「もしかしなくても例の病気の患者だよ。嬢ちゃん」

 今まで、無邪気に笑っていたポニーテールの少女の顔つきが一瞬にして引き締まる。
 へぇ、そんな凛々しい面も出来るのか。

「……異性化疾患、ですか」
「ご明察」

 ―――タダでさえ世の中はどっかトチ狂ったみたいな状況下だって言うのに、それに追い討ちを掛けたのが、嬢ちゃんの云う"異性化疾患"。

 ここ数年で、インフルエンザ並の発症率を以て猛威を振るう奇病にまで伸し上がった病気だ。
 思春期に差し掛かった男のみが発病するこの病気は、未だに原因も完全な治療法も見いだせていない。
 唯一、分かってるコトは、15、6歳までに女の味を覚えないとゲームオーバー―――その後の一生を女として過ごさなきゃなんねぇってことくらいだ。
 俺の背後に隠れて黙りこくってるコイツもその被害者らしい。
 最近じゃ、国でも異性化疾患を無視する事は出来ないらしく、対策委員会を設けてまで対応に当たっている。
 ま、そのオコボレに俺も与ってるわけだがな。
153 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:35:48.84 ID:0oKT1UAO

「しかも―――」
「―――随分と早かったな」

 ……っと、ちっとばっかしお喋りが過ぎちまったみてぇだな。
 もうちっとばっかし可愛らしい"自称、敏腕秘書"の嬢ちゃんとの会話を楽しんで居たかったが、本命の御到着か。

「よぉ、お坊ちゃま」
「……。
 すまねぇが、少し席を外して貰って構わないか?」

 相変わらずの鉄仮面っぷりで俺の冗句混じりの挑発を無視して、この執務室の主は嬢ちゃんに声を掛ける。
 よし、コイツに便乗しない手は無いな。

「あー、嬢ちゃん。出来ればコイツの話し相手になっててくれっと、もれなく"おにーさん"が喜ぶぞ」
「あれあれ? いいんですか"赤羽根のオジさん"? このコだって当事者みたいなものじゃないですか」
「ガキんちょに聞かせられねぇような下世話な話もするンだよ。
 聞きたいか? どこのキャバクラやピンサロに上物がいるかとか、生本番は幾らだとか」
「……けっこーです。いこっ、スケベ菌が伝染っちゃうから」

 ガキと言っても女は女だ。こういう話に嫌悪感を抱かないワケがない。話を逸らすには打ってつけなのだが……スケベ菌ってなんだよオイ。
 と、反論する前に素早い扉の開閉音がそれを拒む。

「……自業自得だな」

 相変わらずの嫌味ヤローに睨みを利かせて訴える。
 が、奴は取り合う様子もなく、さっきまでポニーテールの嬢ちゃんが座っていたキャスター付きの豪勢な椅子にゆっくりと腰掛けた。
 ……その一連の仕草が一々サマになってるのも何かムカつく。
 だが、四の五の言っては居らンねぇか。こいつぁビジネスだかんな。

「……へぇへぇ。俺が悪う御座いました。
 さて。人払いも済ませたこったし、商売の話でもしましょーかねぇ、神代さん?」
「その方がありがたい。下劣な冗句に付き合えるほど僕は人間が出来ていないからな」
「……チッ」

 ……この嫌味なくらいに爽やかな面をぶら下げたヤローの名は神代 宗。
 下の名前は官庁のHPにでもアクセスすりゃ出てくる(らしい)が俺は興味が無いので知らん。探偵事務所にあるまじきことだが、ウチのパソコンは専らスタンドアローンなんでね。
154 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:38:04.12 ID:0oKT1UAO

 ……奴さんは俺が商売を始めた中で1、2を争うほどの上客だが人間としては全く反りが合わない。
 所謂"お堅い"人種だ。
 プライベートじゃ絶対に付き合いがないと言い切れる。

 コイツとの仕事の上での付き合いは数年前からだが、それについては割愛させてもらう。
 人間、20余年も生きてると暴かれたくない臑の傷なんて幾つもあるもんだろ?
 好奇心は猫を[ピーーー]っつーくらいだ。ま、気にすんな。

 ―――神代は、件の異性化疾患に対するサポートを行う"異性化疾患対策委員会"とかいう何とも捻りもない機関の委員長代理を務めている。

 そーいうのは大抵、時間の余ってる割には余生の短いジジババの仕事かと思っていたが―――なんでも、このお坊ちゃまは政治の名家の出らしく、20代後半(30過ぎてたか?)の若さで委員長代理の役に就いているらしい。
 いいねぇ、親の黒光りってよ。……なんか違うか? まぁいい。

 兎に角。

 コイツは異性化疾患の案件に対する全権限と責任を背負って立つ人間なんだとよ。想像もつかねぇ世界だが。

 俺は、コイツから度々依頼を受けている。
 その内容は厚労省から15、6の健全な童貞男子諸君に発行される"性別選択権行使に関する通知"に対する裏付け調査だ。
 その"通知"があれば漏れなくタダでオンナを抱ける。ただし、一回限りだけどな。
 そんなオイシイ話を世の中の思春期真っ只中のガキんちょが放っておくわけねぇから、そこンところで悪巧みしねぇように目を光らせるのが俺達、民間業者ってワケだ。
 ま、マジで童貞なのかとか、オンナの二重食いをしてねーかとか、そんなトコの調査をするわけだな。

 ……俺なら、どんな手段を使おうが両手じゃ数えらんねーほどオンナを抱いてやろうとか思うがね。
155 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:40:08.83 ID:0oKT1UAO
「―――それで、あの娘は何だ? 一応、此処は一般人は立ち入り禁止なのだが」

 ヤケに豪勢な作りの扉の向こう側に、人の気配がなくなったと分かるや否や神代は不服そうに溜め息を吐く。

「ンだよ、好みじゃねぇってか? あのポニーテールの嬢ちゃん並みのルックスなんてそうそう居ねぇんだよ。こーの面食いが」
「………」
「……んなマジな顔で睨むなよ。
 冗談が通じないとモテねぇぜ?」
「―――用向きは何だと訊いている」

 不機嫌そうな面の眉間に更に深ぁいシワがよる。
 ……ったく。この坊ちゃんには、話の要所要所にワンクッション置くっていう、コミュニケーションの作法を求めるだけ無駄なのか?
 それとも、俺にその必要が無いと言いたいのか。
 ……いや、どっちにしろ失礼だろ。

「まー、その、なんだ―――」
「―――金なら貸さんぞ」
「違うわっ!!」
「以前にパチンコで7万スッたとか言ってなかったか?」

 言うな。その話は言うな。確率1/99が1200回当たんなかった悪夢を思い出させンなっ!

「……では、なんだ?」
「……あのガキを預かって欲しい訳なんだが」
「……? あの娘はキミの親族か何かか?」
「んにゃ。昨日、新宿三丁目の路地裏で拾っただけだ。名前も知らん。生憎、身元が分かるような物も持ち合わせてなかった」
「家出か? そのような捜索は警察の仕事だろう。
 何故、警察ではなく"委員会"を選ぶ?」

 無論、サツに届けを出すコトも考えたさ。でもよ、下手すりゃ未成年者略取とかで俺が捕まるかもしんねぇし。
 しかも、アウトローな稼業をしてるせいか委員会を除く公的機関と頗る相性が悪い。
 ……それに、あのガキに幾つか気になった事もある。

「嬢ちゃんと話してたのを聞いてたんだろ?」

 無論、先ほど俺にスケベ菌が云々と言った青いリボンのポニーテールの"自称、敏腕秘書"の嬢ちゃんのことだ。

「不本意ながらな」

 ……この野郎はどこまで潔癖症なんだか。

「自己弁護なんざ要らん。
 それに、別に盗み聞きしたことを責めるつもりはねーよ。余計な面倒が省けるしな」

 俺は漸く本題に入る。
156 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:41:33.15 ID:0oKT1UAO
「……あのガキんちょは異性化疾患が発病しちまったんだろう。それも、ごく最近にだ」
「ごく最近?」

 鸚鵡返しに神代は呟く。

「そーじゃなきゃ、いくら元男だからってノーブラでトランクスなんて下着で、いつまでも新宿なんか彷徨くかっての」

 奇妙な沈黙。

「とりあえず、身柄を拘束していいか」
「……は?」
「僕の前で婦女子暴行を公言しておいてその態度か。恥を知れ」

 ……何か、この坊ちゃんはとてつもない誤解をしているようだ。
 しつこいようだが俺は目の前でふんぞり返ってるイケメン嫌味野郎とは違い、ロリコンのケは無い。
 俺の名誉の為に補足しておくが、目の前で身構えてるイケメン嫌味野郎のアタマで想像してるようなコトも断じてしていないぞ。断じて。

「単に風呂を貸して、その間にびしょ濡れになってた服を洗濯しただけだっつの。
 生憎、あの位のガキんちょは守備範囲外なモンでね」

 その後に、"ロリコンのお前さんと違ってな"と付け加えてやろうかと思ったが、これ以上話がコジれるのは色々と面倒だと判断し、俺は返事を待つことにした。

「………。冗談だ」

 真顔で誤魔化しても説得力は無いぞ、坊ちゃん。

「……へーへー。異性化疾患対策委員会の委員長代理様はユーモアのセンスもおありなようで」
「………」

 ……勝った。内心でガッツポーズを取る。

「なんだ、その顔は」
「生まれつきだっつの。
 んで、いいか。話を先に進めても」
「……ああ」

 再び、顔を背けて俺はほくそ笑んだ。

157 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:43:26.16 ID:0oKT1UAO
「―――記憶喪失?」

 俺がコトのあらましを話し終えると、神代は推理小説のテンプレート的な反応を示した。

「あぁ。名前すら覚えてねんだとよ。
 一応、あのガキんちょの外傷は調べたが、それらしき痕は見当たんなかった」

 素人目の判断だから断言はしかねるが。

「外傷性の記憶障害じゃないと?」
「その可能性が皆無たぁ言わねぇが―――」

 あまり建設的な考え方じゃない。俺はその確認を含めて此処に来てんだからな。

「―――それより異性化疾患の知識に明るいアンタに話を訊いた方が手間が省けると思ってな。色々と」
「―――併発症、というコトか?」

 流石、代理とはいえ伊達に公僕組織の長を務めては居ないらしい。流石に頭の回転が早い。
 俺は賺(すか)さず首を縦に振った。

「性別が変わって、脳から分泌されるホルモンバランスだって一変しちまうくらいの病気なら、アタマのネジが弛んだっておかしな話じゃねーだろ?」

 いくら素人の俺が想像で語った所で、勝手な推測の域を出ない。的を射た意見ではあると思うんだが。そこは、餅は餅屋に訊けってこった。

「……前例はないな。
 異性化疾患に於ける併発症―――則ち、第一次性成婦人症と定義されているものだが―――その大分類であるT種、U種、V種の中に言語野や海馬に障害を来す症例は今のところ確認されていない。
 確かに、発病の際にアセドアルレヒドに似た分泌物が体内精製される、という事例はあったがそれは頭痛や目眩、吐き気といった、所謂"二日酔い"の症例に似たもので、自らの名前を忘却するほどの強い記憶障害を伴うような症例は―――」
「―――長えよ。一行で言えっての」

 タイムイズマネーって言葉を知らねーのか、このロリコンは。

「……その仮説は99.98%有り得ない」

 0.02%の可能性は残るってか。
 どこからそんな数値が算出されてんのかはさておいて。

「んじゃ、何だ? 心因性の記憶喪失だってことか? はぁ、ドラマじゃあるまいし」

 そこで、会話に奇妙な間が生まれる。
 ……神代の野郎が会話に詰まる時、それは大抵―――俺に取って良い意味を為さないことが大半だ。

「………一つ頼めるか?」
「あン?」

 ―――そらきた。
158 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:45:27.16 ID:0oKT1UAO


 ――――昔、俺に依頼をしてきた中年のオヤジが言ってたが、家族がデパートを訪れる際、男の立ち位置ってのは大抵ドライバー兼荷物係と相場が決まっているらしい。
 誰が決めたか知らんが、迷惑極まりないルールだなオイ。

 詰まるところ、そういう紋切り型の不文律に縛られんのが嫌で独身貴族を気取ってたのに、エスカレータ脇に据えられたベンチには―――何故か俺と、両手の指じゃ数え切れないほどの紙袋が放置されていた。
 某有名デパートの紙袋の中身は、暴利を貪ってるとしか言いようが無い値段の衣類がわんさか詰め込まれていて、そんな俺をあざ笑うかのように、幸せそうな一家が今日の晩飯について熱く議論しながら横切っていく。
 俯いた視線の先には、鏡のように磨かれた床と、そこに映り込んだ憔悴しきったオッサン……じゃない、"お兄さん"の顔。
 ……誰に主張してんだ俺は。

 はぁ……これだけのモンをイチドキに買える財力があったら俺はどんだけの間、豊かな生活を送れると思ってんだ、あの嬢ちゃん達は?

「あっかばっねさんっ!」

 その大量の紙袋をこさえた張本人が、跳ねるような口調と足取りで駆け寄ってくる。自称"神代の敏腕秘書"の嬢ちゃんだ。

「そんなとこでヘタってないで、ちょっとは見てあげてくださいよー」

 別にヘタってた訳じゃない。人生の理不尽さを嘆いてただけだ。

「……あのなぁ、嬢ちゃん―――」
「―――いつになったら名前、覚えてくれるんですか?」

 不満そうに頬を膨らませる嬢ちゃん。いや、覚えてない訳ではない。今さっきまでド忘れしちまってただけだ。

「"坂城 るい"。 元プロ野球選手、坂城 亮のむす―――」
「―――そんなコトはどうでもいいんですっ!」

 強い語気。
 どうやら嬢ちゃんの地雷を踏んじまったらしい。……面倒臭ぇな。

 ―――ついつい容姿とか普段からの振る舞いで忘れちまいそうになるが……。
 今、目の前で手を腰に当てて、俺を睨みつけてるポニーテールの嬢ちゃんは――俺が拾ったガキんちょと同じ―――異性化疾患に冒された元少年だ。
159 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:46:34.99 ID:0oKT1UAO
 なんでも世間で蔓延ってる症例とは違う稀なモンだとかで、神代が手元に置いているとか何とか。
 ま、イケメンロリコンの考えてる建て前なんぞ知らん。知りたくもねぇし。

「……そんなコトよりも、あのコの服、少しは見立ててあげてくださいよ」

 物思いに耽っていた俺を現実に引き戻したのは、今し方よりも少し低いトーンで不貞腐れるような嬢ちゃん――坂城るいの声だった。
 嬢ちゃんの言う"あのコ"とは……無論、昨日俺が保護した元男の少年のことだ。
 今は、若者向け婦人服コーナーであれこれと勧めてくる店員にあたふたしている。
 ……見ている分には面白いので、放っておくか。

「……そもそも、なんで一週間アイツを預かるだけなのに、こんなに服を買い込む必要性があるんだ?」
「思春期の子のキモチに鈍感な赤羽根さんには、多分一生解りませんよーだ」

 いや、解りたくもねぇよ。
 ―――って口に出してしまいたいが、るいには服選びに付き合って貰っている手前、これ以上嬢ちゃんに不機嫌になられても困るから、だんまりを決め込むことにする。

「……あのコ、きっと不安なんです」
「そりゃぁ、てめぇの名前すら覚えてねぇんだし不安にもなるだろうが」

 ついでに言えば、アイツの不安の大部分は、未だに店員のお勧め攻勢から放ったらかしにしてるからじゃねぇのか?

「―――赤羽根さんが思ってる以上に、もっと、ずぅっとです」

 ……何かしら自分と重なる部分があるのか、ポニーテールに結った髪をふるふると揺らしながら、るいは洋服売り場を店員と共に右往左往するアイツを遠い目で見つめながら呟いた。

「だからこそ赤羽根さんに、あのコを守って欲しいんです」

 ……ん?

「"守る"たぁ、随分と大袈裟な言い回しだな?」
「っ……あはは、特に深い意味なんてないですよ。なーんていうのかな。
 私なりの文学的誇張だと思ってくれたら幸いですっ」
160 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:47:54.53 ID:0oKT1UAO

 嬢ちゃんはそう言って、殊更に綺麗な笑みを浮かべた。
 だが、その直前、
 "しまった"
 そう言わんばかりの彼女の一瞬の虚を映した表情を、俺は見逃さなかった。
 ……が、今それを此処で指摘したトコで、どうにもならないだろう。
 俺の観察眼が曇ってなきゃ―――この嬢ちゃんは、知己に対しての物腰こそ柔らかいよう見えても、頭の回転が頗る早いし、度胸も据わっている。
 流石は高級官僚(ロリコン)の御墨付きと言ったところか?
 恐らくはお茶を濁され、やんわりと話を流されんのが関の山だ。
 どこぞの臑に傷を抱えた破落戸を相手にするよりも組し辛い相手だと言える。

「……ま、こいつもお仕事だ。それ相応に対応させてもらうさ」
「……そーいう考え方、嫌いじゃないです」
「奇遇だな。俺もだ」
「あはっ、赤羽根さんてお茶目ですねっ」
「だろ?」

 互いの腹をさぐり合った笑みが交差した。

「じゃっ、次行きますよーっ」
「……は?」

 こんな山みたいに洋服がありゃぁ一週間の生活には事は足りるだろう?
 背伸びをしてから、俺とアイツを手招きする少女に、目で訴える。

「あれ、今言ったじゃないですか?」

 るいはクスクスと右手で口元を押さえながらイタズラっぽい笑みを浮かべた。

「お仕事でしょ? それ相応の対応、してくださいねっ」

 こンの野郎。
 いや、野郎じゃねぇか……。
 くだらないコトをを考えてる内に、俺の怒りのボルテージは下がっていく一方で、結局、下がり切った怒りを溜め息に乗せて吐き出すしか無かった。


 ―――んで。
 大量の紙袋を抱えて憔悴しきった俺と、
 未だに俯いたまんま依然として口を開こうともしない黒髪のロングヘアの元少年(仮)と、
 イヤホンから流れる音楽に合わせて短めのポニーテールを小刻みに揺らし、ルンルン気分で鼻歌を歌いながらデパートを見渡す元少年(こっちは確定)の三人がエスカレーターを登っていく。
 全く以て珍妙極まりない構図だ。

 ……ったく、端から見たらどう見えるんだ、この怪しい集団は?
161 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:49:26.28 ID:0oKT1UAO

「こっちこっちっ!」
「いらっしゃいませー。本日はお父様の服をお探しですかぁ?」
「……」

 ……勢い良く駆け出した嬢ちゃんに声を掛けた紳士服売り場の店員が全てを物語っていた。って、違う! 断じて違うぞっ!
 俺はこんなでっかいガキを持つような歳じゃねぇっつの!!
 ―――って、紳士服?
 しかも、……なんつーか、フォーマル臭がしない。
 所謂オッサン服じゃなくて……客層が若い者向けの服が所狭しと並んでいる。

「さぁ、第二ラウンド開始っ!」

 狐に両頬を摘まれたような面をしていたであろう俺達を後目に、嬢ちゃんは、アタマの中でゴングを鳴らしたように飛び出して、ハンガーに引っかかっている無数の洋服をあーでもないこーでもないと選び始める。

 ―――いくら神代に預かった魔法のカード(金)があるからって、嬢ちゃんの購買意欲は異常だろ……。
 はぁ。
 昨今の異性化疾患の元男って、こんなにバイタリティに溢れているモンなのか……?


 付き合いきれず"よっこらせ"の掛け声を皮切りに、俺は再びエスカレーター脇の冷えた金属の椅子に山程の紙袋を置き、腰掛ける。
 相も変わらず、浮かれたテンションで服を買いあさるポニーテールの少女に溜め息をつきながら。

「んで、お前さんは行かねぇのか?」

 紙袋の山を挟んで反対側に、ちょこんと腰掛けた黒髪の少女に俺は声を掛ける。

「……サイズは覚えたからって、あの子が言ってた」
「それにしたって、テメーの着る服くらいテメーで選んだらどうな」「キョーミない」

 言い終える前の拒絶。
 ったく、見た目と違って可愛げがねぇなぁコイツ。もーちっと愛想良くしてれば、それなりに見えんのに。
 ……ま、中身が男じゃそれすらも屈辱なのかもしれないが。

「こんな布切れに必要以上に金を使うなんてバカげてる」

 大量の紙袋を睨み付けながら言う。
 ……ま、その意見に同意出来ない訳じゃねぇんだけど。
162 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:51:10.04 ID:0oKT1UAO

「テメーの金じゃねぇんだし、せっかく嬢ちゃんが選んでくれたんだから、あんま文句は言わねー方がいいぞ?
 さて、と」
「っ、どこ行くんだよ?」
「んぁ? 便所だよ便所」
「……オレも、行く」

 ……何が悲しくて女と連れションなんて初体験をこんなとこで経験せにゃならんのだ。
 頭ん中で少し毒づいてから、まぁ、催しちまったモンは仕方ないと割り切って、俺達は男子便所へと歩を進め―――
 ―――って、ちょっと待て。
 ちーっとストップ。

「なんだよ?」

 いやいやいや。何でそんな"当然だ"っつー面してるんだ?

「……お前さんは、あっちだ」

 "あっち"に必要以上のアクセントを加えて俺は入り口前で足を止め、ピンク色のタイルで敷き詰められた壁の、男としての不可侵領域を指差した。
 ………が。

「入りづらい」

 弱々しい返答が返ってきた。
 理由は……まぁ、分からなくはないぞ。うん。
 男として、人生で関わりを持つことはないであろう、その聖域に足を踏み入れるんだからな。

「それに、その……仕方も分からない」

 どうやら小さい方らしい。って、冷静に分析してる場合じゃないだろ、俺!

「俺だって分かんねーよっ!」
「アンタ、大人だろ?」
「大人だって知らねーモンは知らねーんだよッ! それが世の常なんだっつの!」
「世の中のせいにして逃げるなよ、知る努力をしてくれよ」
「そんなとこに努力を注ぐ気なんざ起きねぇよっ!!」
「じゃあ……じゃあ、どうすればいいんだよっ」
「知るかっ!!」

 ……不毛だ。
 あまりに不毛過ぎる口論が男子便所の前で繰り広げられていた。
 先に言っておくが、探偵の仕事ってのはゴミに塗れたり人の言動に難癖をつけたりもするが、男性用トイレの入り口で思春期の少女と用の足し方を論争するなんて要項はねぇぞ。
 ……多分。
163 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:53:02.14 ID:0oKT1UAO

「……どうすれば、いい、んだよ……」

 とりあえず涙目でこっち見んな腿擦り合わせんな! あらぬ誤解を受ける前にその仕草をやめ―――

「―――お客様、申し訳ありませんが―――」

 ―――あぁ、遅かった。
 背後から大人びた女性の声。

「す、すンませ―――」

 恐る恐る固まった筋肉を無理矢理に動かして振り返ると、紙袋を両手に持ったポニーテールの……って。

「―――ぷっ、あっははは! 赤羽根さんってば、へーんな顔」

 ……自称敏腕秘書の嬢ちゃんだった。
 俺達が男子便所の前で不毛を通り越して無毛の口論をしてる間に買い物を済ませたらしく、俺よりも二回りほど小さな両手には弥次郎兵衛を連想させるほどの紙袋がぶら下がっている。
 恐るべし、魔法のカードの魔翌力。計画的にご利用していない。


「……で、何でこんなとこで痴話ゲンカなんてカップルっぽいことしちゃってるんです? もしかして……フラグ立ちました?」
「「立ってないっ!」」
「……す、凄いシンクロ率と殺気ですね」

 ―――んで。
 俺は今し方起きた諸事情を、ビビりまくっていた嬢ちゃんに話すと、元少年と共に意気揚々と男子便所へと旅立った。
 アイツは色々と喚いて抵抗していたが……嬢ちゃんのことだ、上手くやってくれるだろう。一連の話を聞いた途端凄い笑顔になってたしな。

 ……俺が用を足してるコンクリートの分厚い壁を隔てた向こう側では、思春期男子が唾垂モノのピンクーい世界が広がってるンだろうな、あの個室トイレの1.5畳くらいの空間で―――

『ほら、ここに座って……あーほら、下着も脱がなきゃ』
『や、だ……やだぁ……っ!』
『だいじょぶ、私も女の子だよぉ?』
『あ、ぅ……』

 ―――的な。………興味ねーけど。
164 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:54:41.78 ID:0oKT1UAO

 神代ならムッツリした面で悦びそうなネタだが。
 ……あー会話だけでも録音するべきだったかもしれねーなぁ、高く売れそうだし。

 ……ふぅ、スッキリした。
 ………。
 ………あくまで排泄的な意味でだからな。

 ……待つことが苦手な性分なんで、俺は手洗いと生温いエアータオルでなるべく時間を掛けた上で、男子トイレを後にしたつもりだったが……売り場に見知った顔は無かった。
 ……やっぱ女ってのは不便なんだな、イロイロと。

 ―――ブーッ、ブーッ

 呑気なコトを考えていると愛用のジャケット(4980円)の内ポケットが震えだした。
 どーせ、口うるさい大家からの―――滞納してる家賃請求だろう、なんて誤魔化そうかと思索しながら携帯を弄る。
 ……が、サブディスプレイには予想に反した名前が表示されていた。

 "ロリコン"と。

 仕様がなく通話ボタンに親指を伸ばす。

「あいはい、こちら赤羽根探偵事務所の所長、赤羽根です。ただいま電話に出ることが出来ません、ご用の方は発信音の後に―――」
『―――使い古した冗句に付き合うつもりはない。何度目だと思ってるんだ?』

 スピーカーの向こうから、呆れ果てたようなイケメンボイスが返ってくる。

「両手両足の指じゃ足りないくらいか?」
「今ので18回目だ」

 げ。律儀に数えてやがった。

 ……この一連の言動には、一応、相応の意味があるんだが―――説明するのが面倒なので割愛させてもらう。

「ったく、ノリが悪ぃな。そんなんじゃモテねーぜ坊ちゃん」
『その切り返しにも飽きたのだが』

 ……くそ。
 異性化疾患対策委員会の委員長代理様にも煽りに耐性がついて来やがったか。
 つまんねぇな。
165 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:55:23.35 ID:0oKT1UAO

「んで、今や単なる荷物持ちと成り下がってる俺に、お役人様が何の御用でしょーか」
『今し方、業者から連絡が入った』

 精一杯のイヤミで返してやったが、神代は意に介することもなく話を続ける。

『今居るデパートの6Fで、今後の仕事には必要不可欠となる代物を受け取って欲しい。取り急ぎで作らせたものだ。
 詳しくは彼女に訊いてくれ』

 このロリコンと俺との間に共通する女の知己は……悲しいかな、あの嬢ちゃん―――坂城るいと、彼女と一緒にトイレに入っていった、あの黒髪の元少年しか居ない。

「……嬢ちゃん、にか?」

 消去法で考えると、事情を知っていて、尚且つ神代の動きを理解のしているのはただ一人だ。

『そうだ。受け取りには恐らく合い言葉が必要になる』
「……合い言葉だぁ?」

 ……何か急激にキナ臭い話になってきたな。嫌いな話じゃねぇが。

『……キミも探偵の端くれだったな。合い言葉はキミに推理してもらうことにしよう』
「あぁん? ンなの俺に何のメリットが―――」
『―――正解して、品物を受け取れたら、依頼料を上乗せしよう』
「乗った」

 ん? 何か、釣られた気がしないでもないが……まぁいい。

「ただ、ノーヒントってのは……ちぃと厳しくねぇか?」
『……そうだな。ではヒントだ。
 合い言葉は
 "平仮名だと七文字"。
 それと"キミは一週間の間、あの娘の保護者だということを忘れるな"。
 これだけだ』

 ………。
 なんだそりゃ。

『では健闘を祈る』

 ブツっ、ツッ、プーッ、プーッ……

「ってオイっ!? 待て、まだてめーには聞きたい事が山ほど―――!」
「……なぁに一人で盛り上がっちゃってるんです?」
166 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:57:36.48 ID:0oKT1UAO
 ……いつの間にか俺の背後には、るいと……ん? 誰だ、この娘?
 腿のギリギリの辺りまでカットされたジーンズ、そこから伸びる黒いストッキングが脚線美を強調させている。
 そして、上半身は花の刺繍をあしらった薄いピンクのワンピースに身を包んだ少女の姿がそこにあった。
 ……まさか。

「可愛いでしょー? どうです、私のファッションセンスも捨てたもんじゃないですよね!」

 まるで人形を愛でる小さな女の子のように、うっとりとその対象を見つめながら嬢ちゃんはエヘンと胸を張った。
 C……いやDはあるか?
 ……っと。いかんいかん。
 つまり、嬢ちゃんの言動から察するに、この少女は俺が拾ってきた元男に間違いない。……のだが、その変貌ぶりに俺は言葉も出なかった。
 ボサボサで伸び放題だった髪はヘアゴムとピンで綺麗に整えられていて、まるで別人だ。
 遠い昔、想いを寄せていた初恋の美少女すら霞んで見える。

「うーん。
 やっぱり、もうちょっとユニセックスなのが良かったかなぁ?」
「………うぅ」

 ……何だこの男子禁制の排他的な空気。両者とも元男だというのに、この二人とは海溝よりも深い溝を感じる。
 ……別に寂しくねぇよ。

「でもねっ、ほら、赤羽根さんだってあまりの可愛さにきっとガッチガチになってるよー?」
「なってねーよ。新感覚ガムもビックリのフニャンフニャン具合だっつの!」
「あはっ、別に"どこが"とは言ってませんけど? それともそっちまで"淋しん棒"さんなんですかぁ?」

 可愛い面を下げて俺の下半身を指差しながら、嬢ちゃんはとんでもなくお下劣なコトを口走りやがった。
 スケベ菌が云々と罵ってた奴の言葉とは到底思えない。

「……アンタ、淋びょ―――」
「―――断じて違うっ! てめぇまで俺を遠巻きに見るんじゃねぇよ!!」
「あれあれ、必死になると本気で疑っちゃいますよ〜? "オジさん"?」

 ……このガキ共、いつか泣かす。絶対ぇ泣かす。
 って、マズい。今日はとことんペースを崩されてる気がする。ンな茶番に付き合ってる場合じゃねぇってのに。
167 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 01:58:53.88 ID:0oKT1UAO

「ったく……今し方、嬢ちゃんのボスから連絡があった」
「え、せんせーからですか?」

 前々から気になってたんだが、どうしてこの嬢ちゃんはロリコン―――神代のことを"先生"呼ばわりするんだ?
 確かに神代は政治家の家系の息子らしいが、官僚であって厳密に言えば"先生"と呼ばれるような地位には居ないはずなんだが。
 ………ま、気にしても仕方が無さそうだ。
 訊いたところで、この嬢ちゃんは笑ってはぐらかすのが目に見えているしな。

「―――あぁ。此処に来た本来の目的の代物を回収しろってよ」
「……ふぅん」

 楽しげに自分の作品に熱視線を送っていた嬢ちゃんの声のトーンが急に下がる。

「随分と淡白な反応だな?」
「ん〜……。
 せんせーって偶にボキャブラリーがズレてるんですよね。
 なーんていうか、若干中二病みたいな感じ」

 浮かれた雰囲気を纏っていても嬢ちゃんはかなりのリアリストらしく、随分とドライに言ってのけた。
 ……現役女子高校生に言われたい放題だな神代。少し同情が湧かなくもない。

 ……同情ついでだ。少しフォローに回るとするか。

「その中二病、今回のは多分、俺のせいだな」
「……へ?」



「―――大人って、想像してたよりも子供っぽいヒトのが多いんですね」
「ガキだな」

 コトのあらましを説明したら、思春期真っ只中の二人から一笑に伏された。
 くそっ、バカにしやがって。

「しょーがねぇだろ? こちとら生活が懸かってんだからよ」
「パチンコなんか打つからですよ。あーんなの、胴元が有利に決まってるじゃないですか」
「ダメ人間だな」
「ぐ……っ」

 返す言葉もない。
 ………神代、今ならお前に親近感が湧かなくもないぞ、ありがたく思ってくれ。
168 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:00:54.53 ID:0oKT1UAO
「と、とにかくっ、嬢ちゃんは何か神代に聞いてねぇのかよ?」
「あれ、ズルするんですか?」
「ズルじゃねぇ。手段を選ばないだけだ」
「日本語って便利ですよねー」
「いくらイヤミを言われようと、こっちは今後の生活が掛かってんだ。一歩も譲る気はねぇぞ」

 年下相手に言われ放題に言われたんだ、もはや意地もプライドもあったモンじゃない。ならば、相応の戦い方をするだけだ。

「はぁ……」

 少女達の青息吐息の二重奏が聞こえてくる。
 ……やがて、諦観じみた顔で嬢ちゃんが口を開いた。

「……多分、神代せんせーの言ってるのは、"コレ"のコトですね」

 そう言って、嬢ちゃんは自らの胸元を指差した。……どうしても制服のリボンの下の膨らみに目が行くのは男としての不可抗力なのだろうか。

「どこ見てるんですか? えっち」
「指差したから見ただけなのに、酷ぇ言われ様だな」
「そーじゃなくて―――っ!」
「―――制服?」

 回答したのは出題された俺ではなく、事の成り行きを見守っていた元少年だった。

「そっ、正解っ! キミはどこぞの探偵さんよりも推理力あるねっ」

 ぐ……耐えろ。耐えるんだ俺。

「制服だぁ? なんでンなモンを用意する必要があるんだ?」

 ……あのロリコン官僚の趣味か?

「いくら赤羽根さんが暇だからって、四六時中この子を見張るなんてムリがありますからね」
「失礼にも程があるだろ」

 ―――今、確かに嬢ちゃんは言った。

 突っ込みを入れても構わなかったが、嬢ちゃんから得られそうな情報が制限されちまう可能性があるから黙っておくか。

 ……"見張る"、ねぇ。
 どうして記憶喪失の元少年に、こんなにも委員会が肩入れするんだかな。何か特別な理由でもあんのか?

「―――て、事はコイツの制服を受け取る時の"合い言葉"を推理しろってことか」
「さぁ? 手続きをしたのはせんせーですし、その時に私は居ませんでしたから。
 私は、せんせーにこの子の服の大体のサイズを教えたくらいですよ?」
169 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:03:07.00 ID:0oKT1UAO

 本当に知らないのか、それとも持ち前の演技力でトボけているのかは分からないが、嬢ちゃんは腕組みをしながら何かを考えてる素振りで答える。
 ……ったく。

「ほんじゃま、行きますか」
「「えっ?」」

 一つオクターブの高い疑問の声の二重奏。

「売り場は何階だ?」
「だ、ちょっ、待っ、ストップストップっ! 待って下さいよ!」

 慌てた口調の嬢ちゃんが、フロアの案内掲示板に向かおうとする俺の上着の裾を掴んで引き止めてくる。

「なんでだよ」
「合い言葉も分かってない状態で行ったって、素直に店員さんが渡してくれる訳ないじゃないですかっ!」
「……素直に負けを認めた方がいいと思う」

 ………どうやらコイツらの中での俺は、とことん過小評価らしいな。


 ………ん?

 ―――今、誰かに見られてたような……?
 いや、"見られてた"というよりは"見張られていた"と言った表現の方が近い。
 売り場を行き交う人の流れに紛れちまったのか、今は何も感じないが。
 ……気のせいか?
 単にロリコン官僚の中二病が感染しただけか?
 だとしたら……この上なく恥ずかしいだけじゃねーか。


「……ほら、行くぞ」
「だからぁ、待って下さいよ!」

 俺は両手に一杯の紙袋を肩に担ぎ上げて、エスカレーターに向かった。
 嬢ちゃん達も慌てて俺の後に付いてきている。

 その後を、誰かが尾けてくる様子は無い。

 ……気にするだけ無駄だったか。



 ―――しかしまぁ、こうやって売り場に足を運ぶのなんて久々だな。
 俺が学生だった頃に比べても、売り場に並ぶ制服の種類はそれほど大差無いような気がする。
 店頭に並んでるようなテンプレートな着方をしてるガキんちょをあんまし見かけないせいか、少し意外に感じた。

「なぁに、女子の制服まじまじ見てるんですかっ? すけべー」
「……あのな」

 そういう理由で見てた訳じゃねーのに、賺さず嬢ちゃんは俺をからかってくる。
170 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:04:56.49 ID:0oKT1UAO

「ねー、キミもそう思うでしょ?」
「……ん? あぁ」

 嬢ちゃんに急に話を振られた元少年は、意にも介せず店頭に並ぶ制服を茫然と見つめるだけ。

「あ、はは……」

 途端に嬢ちゃんの顔が複雑なものへと変わっていく。
 ……やっぱ、自分と重なる部分があるのかもしれねーな。
 ……うぉっ?!

「……赤羽根さん」

 急に嬢ちゃんがシャツの襟元を掴んで、俺を引き寄せる。

「……あのコを傷付けたりしたら、私……比較的本気で怒りますからね」

 小さな声で、嬢ちゃんはそう耳打ちしてきた。
 ……声こそ小さいが間近に迫った嬢ちゃんの目は、さながら猛禽類のように鋭く光っていた。
 下手を打ったら俺が殺されかねねぇな、こりゃ。

「……前に言ったろ? コイツは仕事だ。それ相応の対応をさせてもらう」

 ―――例え、探偵業から一線を画した仕事だとしてもな。 ……さて。

「すんませーん」

 俺はレジカウンターで電卓を叩いていたオバサン店員に声を掛けた。
 俺の風貌も相俟ってか、オバサンは一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐに張り付けたような笑みに変えて、こっちに駆け寄ってくる。

「はい、いらっしゃいませー」
「今日が、コイツの制服を受け取り日だっつーんで来たンスけど」

(ちょ……っ、赤羽根さんっ!?)
(でーじょーぶだっつの)

 未だに呆然と女子用の制服を見つめてる元少年を指差して俺は言う。
 隣で自称、敏腕秘書様があたふたしてるが知ったこっちゃない。

「……失礼ですが、お名前をよろしいですか?」

 ちっ、こんな中途半端な時期でも一応確認は取るのな。
 向こうさんが勝手に勘違いしてくれりゃあ、こっちのものだったんだが。
 最近はやっぱ異性化疾患の影響があるのか、予約は少なくないらしいな。
 どうやら正面突破しか無ぇみたいだ。……はぁ、面倒臭ぇ。
171 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:06:23.14 ID:0oKT1UAO

 ……今一度、ロリコンとの電話口の会話を反芻する。

 ―――合い言葉は平仮名で七文字。

「赤羽根―――」

 そんでもって、俺は"一週間"の間、このクールビューティ候補を預かる立場な訳だ。

 ……ったく、センスのねぇネーミングだな、神代大先生よ?

「―――なのか。
 "赤羽根 なのか"です」

 ………しばしの静寂。店内放送のリードサックスが耳に痛い。

「はい、赤羽根様ですね。承っております。少々お待ちください」

 足早に、オバサン店員は裏に引っ込んで行く。
 姿が見えなくなった途端に、俺と嬢ちゃんは盛大に溜め息をついた。

「……すっっげぇぇ緊張した。
 当てずっぽうにしちゃ上手くいったな」
「もーっ、もし間違ってたらどーするつもりだったんですかっ!?」
「全速力で逃げた」
「……サイテーだこの人」

 俺らが下らない仮定の話も、元少年には届いていなかったようだ。
 だから、俺は声を掛ける。

「おい―――」
「………」

 反応が無い。昨日、俺が拾った時とおんなじような面をして固まったまんまだった。
 ったく。

「……"なのか"っ!」
「―――っ?」

 そこで、漸く元少年……いや、"なのか"の視線がこちらに向く。

「……多分、今から制服の調整するから、用意しとけよ」
「……なの、か?」

 黒髪をふわりと揺らしながら、なのかは自分の"名前"を反芻する。

 ―――へぇ、そーいう面は、もうしっかりオンナになってんだな。

 そう口に出そうとして、やめる。
 傷つけんなって釘刺されてんのに、そんな事を口走ったら隣に居る敏腕秘書様にぶん殴られそうだしな。
172 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:07:47.64 ID:0oKT1UAO

「そうだ。
 今日からお前は俺の家族だ」
「……かぞく」
「だから本当の名前を思い出すまで、お前の名前は
 "赤羽根 なのか"だ。……いいな?」
「………センス悪いね」

 うるせぇ。俺が名付け親じゃねーんだ、クレームならロリコン官僚につけてくれ。

「……嫌なら、1日でも思い出す努力をするこった」
「そうする」

 ちっ、ルックスはともかく、やっぱ可愛げねぇな。
 そもそも"なのか"なんて可愛らしい名前、コイツの柄じゃねーだろ。

「―――お待たせ致しました」

 営業用だと思われる茶色い声と共に店員が姿を現す。
 その手には、今嬢ちゃんの着ているものと同じ様な制服が掛けられていた。
 整理用のタグには"赤羽根 名佳"の文字。……あれで、"なのか"って読むのか?

「……俺、アンタんとこに編入になるのか?」

 なのか―――分かりづらいな、名佳が、不安そうに囁いた。
 そりゃそうか、何も覚えてねぇのにフツーの生活をさせるっつーのはなぁ。
 実際に記憶喪失の人間の側に居合わせるのはコイツが初めてだが、大抵、病院なり何なりで検診を受けたり入院したりするもんだろう。
 それが、いきなり学校に通うなんて無理がある。

「ん〜。ま、そんな感じかな」

 事も無げに嬢ちゃんは軽い調子で頷く。
 ……そんな事が分からないくらい想像力が欠如してるような脳みそはしてねぇと思うんだが。

「だいじょぶだいじょぶ! 私が付いてるし、学校には私の"親友"が居るからっ。
 ……ほらほらっ、試着してきなよっ、ねっ?」
「あ、あぁ……」

 半ば強引に名佳を試着室へと押していく嬢ちゃん。
 慌てて、その後をオバサン店員が追っていく。

 ………試着室に名佳を押し込んでから、嬢ちゃんは戻ってきた。
173 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:08:47.22 ID:0oKT1UAO
「―――どういうつもりだ?」
「……何がです?」

 視線を交わさず、言葉をやりとりする俺達。視界の先では試着室のカーテンが不思議な踊りをしている。こちらのMPが下がりそうだ。

「今回のあのガキ―――名佳の一件は、どうも手回しが良すぎるし、委員会の正規の対応策とも著しくかけ離れてる。
 勘ぐらないのが無理ってモンだろ」
「あれあれ? 探偵サンって依頼者の詮索はしないのがルールじゃないんですか?」
「茶化すな。こっちが実害を被るリスクがあるのであれば話は別だっつってんだよ」

 再びの静寂。店内放送のリードサックスが、耳に痛い。
 しばらくして漸く観念したのか、小さな溜め息が聞こえてきた。

「実は、私もよく分かってないんです」
「あン?」
「いくら私設の敏腕秘書を自称しても肝心なコトは私に流れてはきません。
 ……当然、ですよね。一介の女子高生に与えられる情報量なんて、大したコト、ないんですから」

 俺の視線の端っこで、どこか寂しげに嬢ちゃんは俯いた。
 ………チッ、嬢ちゃんが言ってるコトがホントにしろウソにしろ、ズルい逃げ方を知ってやがる。

「過度は信頼はするなよ。
 俺は単なる調査係だ。……年頃のガキのお守りなんざ仕事の範疇外だからな」

 ―――誰かを守るとか、んなの、俺に出来っこねぇんだからよ。

「……でも、あの子――"なのちゃん"は赤羽根さんを信用してくれてますよ。それだけで十分だと思います」
「なのちゃん?」
「あだ名です。今決めました」
「新聞の四コマ漫画みてーだな」
「うるさいです」
「へーへー」
「へーは一回でいいです」
「へー」

 ……ったく。
 どこをどう見たら、あのガキが俺を信用してるように見えんだか甚だ疑問だ。
174 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:11:19.02 ID:0oKT1UAO

「―――っと、じゃあ、私はお暇しますねっ、急がないと門限に遅れちゃいますっ」

 思い出したように、嬢ちゃんは俺に向き直り、青いリボンで結った短いポニーテールをふわりと揺らすように頭を下げる。
 腕時計で時刻を確認……っと、もうこんな時間か。

「名佳に挨拶しなくていいのか?」
「お邪魔かなぁって思いまして。"家族のコミュニケーション"の」

 ―――家族、ね。

「私も、"今の家族"や"仲間"が大好きなんで、そこは空気を読んだワケですっ」

 "今の家族"か。
 ……まぁ、それこそ余計な詮索は無用だな。

「―――大事にしろよ、そーいうの」
「……はいっ」

 満面の笑みを浮かべて嬢ちゃんは言う。
 いつも生意気でヒネくれっけど、そん時ばかりは、年相応の可愛らしい女の子に見えた。
 多分、この嬢ちゃんは過去さえ知らなきゃ相当モテるんだろーな、きっと。

「―――お待たせ致しましたー」

 試着室から茶色い営業用ボイスが聞こえる。

「それじゃ、失礼しますっ」

 嬢ちゃんが、再びアタマを下げてから跳ねるような急ぎ足でエスカレーターへと向かう。

 さて、そんじゃあ名佳の制服姿を拝んだら今日の仕事はシマイだな。

 ―――――っ!?

 妙な違和感が全身を走り抜けた気がした。
 視線? いや、そんな間接的なモンじゃない、もっと何か、こう……だぁっ、面倒臭ぇっ!
 どこだ、どっからだっ!? 名佳……じゃねぇ、俺か?! ……いや、違う。
 ……まさか!

「―――嬢ちゃんっ!」
「え………っ!?」

 クソったれが……!
 名佳に気を取られすぎて嬢ちゃんにまで気が回んなかった!
 嬢ちゃんのすぐ側まで、マスクと黒のニット帽、コートで身を包んだ男か女かもわかんねぇような奴が駆け寄ってってやがる!
175 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:12:05.34 ID:0oKT1UAO

「きゃ……っ!?」

 嬢ちゃんの右肩に下がってた学生鞄をひったくり、そいつは非常階段へと逃げていく。

「嬢ちゃんっ!!」
「っ!?」

 その一部始終を目撃していた俺と名佳は、直ぐに嬢ちゃんの元へと駆け寄る。

「大丈夫かっ!?」

 見たところ、派手にすっ転んだだけで嬢ちゃんに目立った外傷は無い。

「待ってろ、直ぐに―――」
「―――ダメっ! 赤羽根さんは此処にいてなのちゃんを見ててっ!!」
「あ、おいっ!?」

 俺の制止を振り切って嬢ちゃんは、どこぞの陸上部員も真っ青の速度で、逃走経路である非常階段へと消えていく。

「……大丈夫、かな」

 カタカタと小刻みに震えながら、名佳が呟く。

「わかんねぇ、とりあえず―――」

 ―――致し方なくケータイでサツに連絡を取ろうとしたその刹那。
 非常階段に鋭い音が響き渡った。
 なんつーか、スリッパかなんかでアタマをぶっ叩いたような音。
 とりあえず人の命を奪うような物騒なモンじゃねぇ事は確かだが……。

「………っ!」
「あ、おいっ!?」

 指で弾かれた輪ゴムのように駆け出す名佳。
 くそっ、放っとくワケにもいかねーしな……。ネガティブな義務感から二人の跡を追う。

 二人は………階段の中腹に居た。

 ひったくり犯はその場には居なかったが、嬢ちゃんの鞄はどうやら無事らしい。

「……っはぁ、はぁ……」

 くそっ、ちょこっと全速力で走っただけなのに、俺の心肺機能は悲鳴を上げている……ちっと禁煙するべきか……?

「大丈夫ですか?」

 呼吸を整えているうちに俺の台詞を取られてしまった。逆に台詞を奪った張本人はケロリとしている。
 一体何をしたんだ……嬢ちゃん?
176 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/10(水) 02:14:29.33 ID:0oKT1UAO
「飛び降りて犯人を蹴るなんて……無謀だって」
「うーん、あと3センチ右ならクリーンヒットしてたんだけどなぁ」
「そういう、問題じゃなくて……」

 ……二人の会話が全てを物語っていた。とりあえず、今後嬢ちゃんの機嫌を損ねないコトを心に誓いながら、俺は口を開く。

「……嬢ちゃんが無事なのは分かった。荷物は大丈夫か?」
「ん〜、中には貴重品とか壊れたりするものは入ってませんから大丈夫だと思います」
「一応、中身を確認しといた方がいい」
「……ですね」

 ―――結論から言うと、嬢ちゃんの荷物は無事だった。無くなったり壊れたりしてる物はないらしい。

「―――うん、バッチリです。
 せんせーから預かったクレジットカードも無事だし。うん、良かった良かった」

 ―――ちっとも良くねぇよ。
 結局、あの不審者が嬢ちゃんの鞄を狙ってた理由もハッキリしねーし。金目当てだったにしても、カードなんざ直ぐに差し止められんだろ。
 金だって高校生が持つレベルの上限程度だし、こんな人の行き交う場所でひったくりなんざリスク高すぎる。
 ……一体、なんだったんだ?

「遅くなっちゃったし警察と神代せんせーへの報告は、後日私から行います」
「いーのかよ、そんなんで」
「いーんです。ほら、その為の"神代家"の看板ですしっ」

 ……政界の名家の看板ってすげーのな。

「赤羽根さん達はとりあえず戻った方がいいですよ? このままだと逮捕されちゃいます」
「なんでだよ」
「だって、なのちゃんの、それ」

 嬢ちゃんはあっけらかんと名佳の制服を指差した。
 ………マズい。まだ、サイズ調整の途中だったんだ。

「やべ……戻るぞっ!」
「あ、え、う、うんっ」

 ……俺達は、急いで非常階段を上っていき、事情を説明しに制服売り場まで戻っていく。
 ……そして、嬢ちゃんは。

「……まさか、ね」

 誰もいない非常階段で、ポツリと呟いた。


  【赤羽根探偵と奇妙な数日-1-】

  完
177 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/10(水) 02:22:28.84 ID:0oKT1UAO
すみません、趣味全開な上に長いです。
エロくも萌えもないです。が、投下ミスはあります。
とある話と繋がってたりしますが、分からない人でも読める仕様にしたつもりですが自信はまったくありません。

……失礼しました。
178 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/10(水) 02:41:27.72 ID:bim3xVko
GJ!!

携帯からだと大変でしょうが続きwktkして待ってるぜ
179 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/10(水) 03:17:27.05 ID:0oKT1UAO
>>178
そう言って頂けると本当にありがたいです。
前スレにも書いたけど携帯は、書くのはいいけど投下の際が一苦労です。
気が付くと、フラグをバラまいて回収し忘れたり。
操作ミスって半分以上文が消えたり。


何番煎じかもわからない探偵ネタですが、読んでいただければ幸いです。


今度ネカフェ行ったら前作共々、一通りまとめます。



……そういや、エロシーンって要ります? 前作同様まぐわらない可能性大ですが。
そうだ、>>181に決めてもらおうそうしよう。
180 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/10(水) 06:53:07.83 ID:5hjNEVIo
エロは無くてもいいけど有ってもいいよね

181 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/10(水) 07:39:00.26 ID:WQE7epgo
いる
182 :青色1号 [sage]:2010/02/10(水) 22:57:30.03 ID:0oKT1UAO
>>181
把握。
誰のエロシーンになるかは不明ですが。
183 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 02:30:03.67 ID:Nli4GLk0
>>181
非情にいい判断だ
184 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/02/14(日) 00:56:29.60 ID:Y.QjA.AO
エロシーン誰にしようか迷い中。

@赤羽根 なのか(今作ヒロイン予定)
A坂城 るい(避難所投下作品のサブヒロイン、今作にも登場済み)
B御堂 初紀(〃のメインヒロイン、今作登場予定)
Cその他、こんな子作れや

さて、どうしませう?
>>185
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/14(日) 02:16:31.51 ID:LL3xTXIo
C 赤羽根探偵 の 幼馴染 の にょたっこ
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/14(日) 02:22:29.64 ID:nB79QgUo
@〜Bでお願いしたかったのにwwwwww
にしても初紀の相手はわかるが、なのかとるいは誰と・・・まさかの百合とかww

とりまCに期待
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/14(日) 09:25:29.61 ID:Y.QjA.AO
>>185
把握。
……てか、何でそれっぽいポジションの人が出てくるの知ってるんですか?

>>186
初紀になったら、話の進行上入らない話になるんですけどねww
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/14(日) 20:28:21.27 ID:LL3xTXIo
>>187
組み合わせ的に空席の部分があるので、探偵といえば助手だろうという
勝手な憶測を込めて指定してみた。
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/27(土) 10:59:00.51 ID:P7vqX22o
静かだ…
190 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/27(土) 21:11:53.36 ID:84O1BN6o
サーイレントヴォーイスー
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/02(火) 05:25:07.05 ID:GrmDF96o
0日目

朝起きたら女体化していた。
まぁ、童貞卒業はあきらめていたから女体化自体にはそれほど驚きはなかった。
ともかく、これからの事を考えるのが先決かつ重要だ。
まずは容姿の確認。

これは・・・・髪の毛が伸び放題だ。
前髪を掻き上げて軽く後ろへ流す。
悪くない。
元々二重だった目元はそのまま、元々小顔だったのが幸いし良いバランスに仕上がったようだ。
問題は伸び放題の髪の毛に、だらしない眉毛。
これは床屋・・・・いや、これからは美容院コースか。
そしてボディーチェック。
着ていたTシャツを脱ぎ捨てる。
目に前の鏡に小ぶりな乳房があらわになる。
これが生まれて初めてみる母親以外の生の女性のおっぱいだ。
そのまま視線を上げると、顔を赤く染めた少女が移っている。
いろんな意味で恥ずかしい。
生で女の体を見るのはこれが始めてだというのだから、赤くならない方がどうかしている。
だが、俺の口からはため息がこぼれた。

「ちょっとこれ・・・小さすぎるだろ・・・」

荒い口調には似つかないか細い声でつぶやく。
もういい、見なかったことにする。胸のサイズを気にする女性の気持ちが痛いほど分かった瞬間だった。
下の方は・・・スウェットパンツに手を突っ込んでそのまま股間をまさぐってみる。
自分のもののようでそうでないような奇妙な感覚を味わいながらも、恐る恐る秘部へと指を伸ばす。

「ぎゃぅぅ!!」

どうやら、相当敏感なようだ。色々通り越して痛かっただけ。前戯なしではお触り禁物らしい。
まあいいさ、こっちのほうが焦らなくても逃げも隠れもしないんだから。後でゆっくり味わうとする。

さて、重要なのはこれからだ。
人間関係の再構築が今後の課題ともいえるが、友人を作る上ではさほど問題はないだろう。
問題は恋人だ。相手に自分が"元男"である事を認識してもらった上で理解ある男を捕まえる必要がある。
女体化後における人生設計とも言えるだろうか。
相手に関してはもうターゲットを絞っている。
まぁ、もとより絞れるほどの人間関係が多いほうではない。
だが、俺にはたった一人だけ古くからの友人がいる。
幼稚園時代からの付き合いで、彼の事は誰よりも知っている。
知らないことを探すほうが難しいくらいに。
容姿や性格云々は問題ないのだが、如何せん奥手なのだ。
ある意味ここまで"生き残ってくれた"と、言うべきか。
腹黒いのはここまでとしよう。
彼を自分の物にしたい理由はこれだけではない。
彼は優しすぎるのだ。こんな彼を何も知らない女共は彼をもてあそぶに違いない。
俺ならば・・・彼に辛い思いをさせる事はしないだろう。
よし、どうする・・・・?
192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/02(火) 08:35:14.58 ID:YWWT9bg0
彼の前でだけウサミミ付けて
ウサシッポはいらない、あくまで清楚系にょたぴょんを目指す
華奢でさみしんぼで構ってほしいなアピールだ!
193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 22:34:31.42 ID:wAEdVZQ0
続きwktk
194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/03(水) 01:15:55.72 ID:b0x5/tYo
1日目

さて、本作戦の内容を確認しよう。俺はこのままでは登校できないだろう。
手続きも服も新しい学校生活へ向けての準備がまったく整っていない。
手早く身なりを整えておきたかった。女としての。
幸いまだ登校時間ではない。
そこで、彼・・・卓美を呼び出し、そのサポートを行って貰おうというものだ。
ただ、買い物に付き合ってもらうだけだが。
お決まりのようだが、これがお互いの信頼を深めるには願っても無い機会なのだから。
問題は真面目な彼が、学校を休んでまで俺に付き合ってくれるかどうか?という点だ。
が、そこはもう手を打っておいた。おばさんに電話で涙ながら事情を説明し、同情をかっておいた。
もとより、おばさん・・・いや、卓美の母親にはよく世話になっている。そう昔から。
これだけは言っておく。卓美の母親とは決して浅い付き合いではない。
俺の両親は共働きなので、俺は自宅ではなく卓美の家でよく遊んでいた。
ご飯をご馳走になったり、いい事をした時には褒められ、時には叱られたり。
いくら親同士が友達とはいえ、俺んちは放任主義にも程があると思う。
話を戻すが、親同士の話し合いの結果、付き合いの長い卓美を派遣する事で話が治まったらしい。
しかも、いくらかの軍資金あり。だ。多分、後で俺の親が返しにいくんだろうけど。

計画通り卓美がやってきた。
芋男から美少女へとレストアされた俺を見て、卓美はしばらくモジモジしていた。
決して悪い感触ではないようだ。しかし、終始これでは埒が明かないどころか、会話が成り立たない。
俺は男だったときのように、彼に接した。
そのことが項をそうしたのか、段々と卓美のぎこちなさが抜けていくのが伺えた。
卓美いわく、どことなく以前の面影があるようだ。
「どちらさま?」という言葉を聞かなかっただけ、俺たちの関係は浅くなかったと言う事か。
嬉しかった。

買い物を済ませて帰路につく。
出先で購入した衣類はかなり多かった。その殆どは下着類だったが。
おばさんに下着類だけは数を揃えておけとキツく言われていたからだ。多くは語るまい。
数点買った衣類のうち1つは丈の短いスカートがあり、思うところがあって帰りしのトイレで着替えてみることにした。
なんか、股間がスースーするが、異様な開放感を感じた。俺って実は変態?
ところで、しばらくは落ち着かない様子で俺の後ろを手ぶらでトボトボ付いてきてた卓美だったが、どんな心境の変化か荷物もちをかって出てくれた。
公衆便所の外で俺の着替えを、手荷物もって待ってる姿はちょっと滑稽だったが、奥手な卓美が少しでも男らしい所を見せようと頑張っていたのが見え見えで可愛かった。
これは後で気づいた事だったが、下着が入っていた袋が一度丁寧に開封された後があった。うぷぷ、むっつり卓美め!
そして、そのまま俺んちへGO。
荷物降ろさなきゃならないからねぇ。
本来は何かの理由をつけて自宅に誘うつもりだったが、荷物もちがいい理由作りになってくれた。
お礼にお茶をだすから〜と言って、俺は卓美を自室に呼び込む事を承諾させた。
さて、ミッション開始。
俺は二階にある自室に彼を誘導すべく、先行して階段を上がる。
スカートに着替えたのはこのときのためである。そして、このスカートはとても短いのである。
さぁ、見てるんだろ?スカートの中身を!
不意を突いて後ろを振り向く。同時に卓美の頭が横を向いた。
「ぅっ!」
小さなうめき声が聞こえた。卓美。これが俺の尻とパンツだ。よぉ〜く覚えておくんだよ。
俺は気づかぬ振りをして心の中でガッツポーズをした。

ミッションコンプリートってね。
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/03(水) 01:51:25.44 ID:b0x5/tYo
2日目−その1

流石に今日は学校に行くようだ。卓美が。
本当は何もするつもりは無かったのだが、親とおばさんから美容院に行けと指令が下り、今だ見ぬ新天地へと一人向かう事となった。
別に嫌なわけではない。今後の作戦において容姿を整えておく必要はあったのだから。
長い髪は手入れが面倒なので肩までにしておいた。後は顔面を軽く手入れしてもらい、今後の手入れの方法とか道具とかも聞いておいた。
よし、ばっちし。

また買い物に付き合って欲しいと昼休みを狙ってメールを送っておいた。
学校が終わったら俺の家に迎えに来るとの事。
大事なものを買い忘れていたのだ。アレを。
考えが甘いだのなんだのこってりしぼられたっけか、おばさんに。
俺んちの親形無し。

色々と良い意味で変わり果てた俺の姿を見て、卓美は顔が真っ赤になっていた。可愛い奴め。
俺としては、「かわいいね」とか「綺麗になったね」とか軽口たたかれるよりよほど快感だった。
例のアレ売り場を前にして急に卓美が立ち止まった。
まぁ、そうだよな。普通は見てみぬ振りするか、恥ずかしくて近づかないわな。
ちょっと意地悪してみた。

「どれが良いか卓美が選んでくれ」

「えあのそのくぁwせdrftgyふじこlp;@」

日本語になってなかった。でも、可愛かった。

今日は何も言わなくても、卓美が家まで付いてきた。
ほら、きた。昨日のアレが効いてる。このむっつり卓美め!
同じように部屋へ通し、同じように見せ付けてやった。今日は違う奴だぜ?

ところで、今日はトラップを仕掛けておいた。
ちょっと汚い話だが、昨日はいてたアレをベッドの上へ置いたままにしているのだ。
俺は「ちょっと茶でもいれてくる」と自室を後にした。ように見せた。
俺の家は古臭い造りで、扉の鍵穴から中が見えるようになってある。
当然、男だった当時はナニをナニするのを覗かれるのも滑稽だったので、ガムテープで塞いでいた。
今は塞いでない。中の状況を確認するために。
どれどれ?卓美よ卓美卓美さん。貴方の動向みーせて!
俺の部屋は以前と何も変わりなかったので、俺が一緒に居たときと比べてずいぶん落ち着いている。
一部違うところがあるとすれば、部屋に昨日買った服が壁に掛けられていることと、ベッドの上のこれ見よがしにワナがそっと設置されている事くらいか。
と、思いきや、突然ソワソワし始めた。
どうやら獲物に食らいついたらしい。
その獲物。俺としては餌とも言うが、それを手にした卓美がその"しまぱん"を掲げて口をパクパクさせている。
どうやら、ジャストミートしたようだ。
「こ、これは・・・まぱん!!」とか「・・・のうのパ・・・」とか「あらあらあら・・・ない!?」とか言ってるようだ。
普通の女やにょたなら、バカー!とかアホー!とかスケベー!とかへんたーい!!かえれーー!!が定石なのだろうが、俺は違う。
卓美を手に入れる為、惚れさせる為には何でもする。
それが、如何に常軌を逸した行為であろうとも・・・・!

その2へ続く
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/03(水) 13:07:16.57 ID:b0x5/tYo
2日目−その2

卓美はそのしまぱんを食い入るように見ていた。
外側から観賞し、裏返して中身を確認している。
当然だがシミは付いている。何せ、昨日まで履いていたんだから。
男なら当然の行為なのかも知れないな。メスの尻の臭いの残り香がそこにあれば嗅ぎたいと思うのが心情か。
俺は女体化してまだ2日目だが、卓美はそんな俺をもう女と認識しているとも言える。
まぁ、アレだけ綺麗になって見せたんだ。それくらいは当然だろう。

卓美はくんかくんかと俺の秘部があった部分の臭いを確認している。
段々と俺の呼吸が荒くなってくる。
さぁ、どうする。卓美?
すると、卓美は自らの股間を押さえ始めた。
どうやらそろそろ股間が我慢できなくなってきたらしい。
そして、俺の秘部が当たっていたであろう場所を舐め始めた。
その瞬間、俺自身にも変化が訪れた。
下腹部の中から腰が引けるような、ぐっと何かが来るような感覚に襲われた。
さらに息が荒くなる。
初めての感覚だった。
卓美に気づかれないように、そっと自分の股間に手を当ててみる。
確実に股間が湿っている。これは女が性的興奮を覚えた時に起こるもの。
男だった時は四六時中悶々としていたが、女になって2日たっても同じような感覚に襲われることはなかったのだが。
ここに来て急に変な気分になってきた。
そのまま下着の中に手を入れてみる。
にちゃ・・・
中は生暖かくてヌメヌメしていた。これが濡れるという事なのか。
はぁ・・・卓美・・・お前は俺のアソコの臭いをどうおもう?本物はここにいるぞ?
本物を臭いたいか?俺はいつだっていいぞ?というか、好きなだけ舐めろ・・・!
「・・・・・」
扉を開ける勇気が沸かなかった。
どうしてだか分からない。
このまま扉を開けて問い詰めれば、期待していた行為に望めるかも知れない。
けど、それ以上に不安な気持ちにさいなまれていた。

・・・・。
まぁ、目の前の獲物に暗い付いている卓美には絶好の機会なのだから、別にこのまま見ていてもかまわないのだが。
俺の股間も気持ちも治まらない状況になってきた。
ダメだ、弄りたい、触りたい。気持ちよくなりたい。
そのまま、そっとその場から移動し、トイレへ向かう事にした。

「あっあぁ!ふぅんん!!あっあっ!」

男の時からと比べると、触れた一つ一つがイッているような快感。女ってこんな感覚だったのか。ずるい。ずるいぜ・・・!
調子に乗ってどこかで見たオナニー動画のように激しく指を動かして、自分の豆を刺激してみた。

「かはっ・・・!ひゃああああああ・・・・・・・・!!」

体がビクンビクンと跳ねて体が自然と指から離れた。
その3に続く
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/03(水) 19:32:07.11 ID:87z3WW.o
2日目‐その3

シューーーージャボジャボジャボ・・・

急な刺激に耐えられなくなって失禁してしまった。
こんな・・・・もし激しく舐められたりしたら普通に出てしまうじゃないか。
しかし、これじゃイクとどうなるのか想像できそうにない。
おっと、こんなことをしている場合じゃなかった。

「さ、皐月〜〜?」

げ、卓美に呼ばれている!?
さっさと茶を入れて自室へ向かう。
かかった時間は適当に誤魔化しておいた。
卓美はお茶を一気に飲み干すと、用事があるからとそのまま帰って行った。
急に言いだすものだから、何か理由をつけて呼びとめることも出来ず、そのまま帰してしまった。
くっ・・・!!これからだったのに。
あんな誘惑に負けた所為で貴重な時間を無駄にしてしまったじゃないか。
ところで、餌はどうなったかな?
確認すると餌は釣り針に掛ってはなかった。
食い逃げられた・・・・。
はぁ・・・って、おい!お持ち帰りされたってことか!?
じゃあ、あいつが焦って帰った理由って・・・
ズリネタ。
はぁはぁ・・・俺のパンツであいつが・・・一番臭う所を鼻にくっつけて舐めて・・・そして、あそこに巻きつけて・・・こう!
最後に・・・出してやったぜ!!的な・・・・。
やば、また来た。

・・・・・・

パンツが相当やばい事になっていた。ネトネトのぐちゃぐちゃ。
そのまま放ったらかしにしてたら、ガビガビになっていた。
色んな意味でおばさんに感謝。さっそく着替える羽目になっていた。

しかし、卓美がああも"変態"だったなんて・・・ふふふこの先が色々と楽しみになってきた。
むっつりなのは以前から分かってはいたが、外見に似合わず大胆にもお持ち帰りなんて。
さて、これからどうしてやろうか。ま、しばらくは知らないふりをしていてやるよ。
たっぷり味わいな。
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/03(水) 22:37:15.34 ID:GmnXZgM0
GJすぎる!
続きwktk
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/03(水) 22:50:30.37 ID:ihVDy8w0
今北だけど俺もあと一ヶ月で童貞捨てないと女になってしまうのか
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/03(水) 22:53:54.28 ID:r1MOzYDO
15で童貞捨ててる自分からしたら女の子が増えて天国です
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/04(木) 00:55:35.59 ID:iPq5.J2o
一体何日目まで続くやら。終わりを考えていない。
書き溜めた奴が荒すぎるので修正に手間取ってるぜ・・・

ところで、俺はギリアウトだな。
女になってたらとっとと結婚して家庭持ってたのかねぇ。
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:30:30.03 ID:jDYkzFYo
3日目

今日は最悪だった。
例のアレが来たのだが、辛いのなんのって・・・。
思春期の男児が想像するピンクい世界なんて吹っ飛ぶほどのリアルが俺の体を襲っている。
仕方ないのでおばさんを助っ人に呼んで、色々手ほどきしてもらった。
今日は赤飯を炊いてくれるとの事・・・どうやら、俺の親にも連絡をつけたらしく、合同でお祝いとやらをやるらし

い。
頼むから今日は寝かせてくれよ・・・・。
予定では今日は卓美と顔を合わせる計画ではなかったのだが、晩飯の席ではち合わせとなることになった。
正直な話、計画として動いている時の俺は何か割り切っている部分があり、ちょっとした事でも恥ずかしくはなかっ

た。
がしかし、今日は計画外の出来事。
なんか恥ずかしくて卓美と目を合わせられない。
しかも、このパーティーの理由が俺のアレにある事から色々と・・・。
まったく、もっと違う意味で気を利かせてほしかった。

あぁ、グロッキー。
なんか食べられたもんじゃない。
とはいえ、せっかく作ってもらった赤飯を食べない訳にもいかず、茶碗一杯分なんとか平らげておいた。
しかし、無理が祟ったのか、さらにグロッキーに。
そのまま寝込んだ。
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:31:15.99 ID:jDYkzFYo
4日目

さらに辛いんですが。
こんなのが月1なんて不公平にも程がある。
その辺の動物みたいに、垂れ流せたらと思ってしまう。
卓美も来ないし。
お前は今日も俺のパンツでナニをナニしてるんだろうな。
バカ。アホ。


5日目

すっかり楽になった。
まだアレは外せなくてイライラする。もう嫌だ。
今日も卓美は来ない。
心配して見に来たんだ。
とか気の効いた事してくれてもいいのに。
あぁ!もう俺のアレの日覚えられた!
今頃それを想像してナニをナニしているに違いない!!
本物を差し置いて!!


6日目

日曜日だというのに親に連れられて、学校へ。手続きだのなんだの面倒臭い。
卓美に会いたい。
どうやら初日に寸法合わせした制服が出来上がったとの事でそれを取りに行った。
親に着方を教えてもらっていざチェック。
うむ。なかなか良いじゃないか。さすが制服マジック!
胸元が少しさみしいがな!!
だが、我ながらいいスタイルだ。

今日も卓美が来ないので、しびれを切らして呼びつけた。
明日から学校に行くつもりなので、いち早く卓美に見せてやった。
固まっていた。
気の利いた事を言ってほしくて少し?れていると、急にそわそわし始めた。
どうやら、そわそわしているのは?れている理由を察してもらった訳ではなく、おそらく別の理由だろう。
この変態め!いつか落してやるからな!
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:34:32.29 ID:jDYkzFYo
7日目 - その1

一緒に登校することになった。
同じクラスだったらよかったのにな。連れだって教室に入りたかった。
見せつけてやるために。

予想通り、周囲に女共が寄ってたかってきた。
彼女らの発言から推測するに、俺の容姿と今後の行動を相当警戒しているようだな。
心配するな。あんたらの意中の男共など興味すらない。
だが、それが卓美なら覚悟しておけ。

それからしばらくして、以前から浅い付き合いだった男共が寄ってきた。
当然だが、以前とは俺を見る目が違う。
こう、全身を舐めまわすように見てくる。
気持ち悪いったらなかった。どうせ頭の中で俺にぶっかけてるんだろ?
女達はいつも男たちからこんな目で見られてたのか!?
そういや、俺もそうだった気が・・・・。
まぁいい。気を取り直そう。

とにかく、このままではいかん。
周囲の人間を掻き分けてでも昼飯は卓美と・・・!!
卓美のクラスにお邪魔することにした。

だ、誰だあれは!?
健康美あふれるポニーテール少女の定番は!!
な、仲よさそうに話しを・・・俺は知らないぞあんな娘!!!
あの娘・・・まんざらでも無さそうな顔しやがってぇぇ!!
いつからだ!いつからなんだ!卓美!!
許さない許さない許さない許さない許さない!
卓美に手を出すなんて許しはしない!!
嫉妬渦巻く俺の心。
しかし、ここでボロだして大騒ぎなんてした日には、明日から卓美とぎこちなくなりかねない。
落ち着け、落ち着くんだ。まずはアレが誰なのか確認するんだ。

「たっくっみ!一緒にご飯食べよ!」

「あ!皐月!?」

なんだか、凄まじく焦っている。
ちょっと、マジなのか!?俺は三角関係なんて認めないぞ!!

「えっと、如月君。誰?」

は?誰だって?なんだよその、この人だれ!?見たいな二股鉢合わせシーンは!!

「あ、ごめんね、園田さん。かれ・・・あっ、彼女は村雲皐月さん。僕の幼馴染なんだ」
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:35:20.25 ID:jDYkzFYo
7日目 - その2

園田・・・?あれ?どこかで見た名前なような・・・?

「幼馴染なんだ・・・。あたし、園田咲」

この娘、「よろしく」とは言わないんだな。ふーん。
とりあえず、愛想を振りまいて笑顔で返答しておく。

「卓美。お昼ご飯」

勿論心は穏やかじゃない。つい口数が減ってしまう。

「ご、ごめん。ちょっとその・・・園田さんと話があって・・・」

お、お呼びじゃないってかよ!!
た、耐えろ!絶えるんだ俺!!
まずはあの娘の名前を確認しておくんじゃなかったのか!!

「・・・そっか・・・じゃ、一人で食べる!じゃあね!」

くっ・・・!耐え切るつもりだったが、つい口に出てしまう!

俺はそのまま卓美のクラスを後にする。
一度自分のクラスへ戻って、弁当を机に投げてそのままひとりになれる場所。
トイレの個室へ移動した。

ダン!!

個室の壁を足で蹴り飛ばす。
隣の個室から「キャッ!」という叫び声が聞こえてきた。
ふざけるなふざけるなふざけるな!!
ふざ・・・けるな・・・・!
目頭が熱くなって視界がぼやける。
目からあふれた何かが、頬を伝って口の中へ入ってきて、それが塩っ辛い。
そこで初めて、あぁ、俺泣いてるんだな。と、感じた。
泣くな、泣いている暇があったら掠め取れ!
それくらいの気持ちで行くんじゃなかったのか!
計画から外れるとこうも弱いなんて・・・。
しかし、あの娘が卓美の意中の存在であるとは限らないのだ。
いいさ、俺には卓美との長い付き合いがある。
この後、自宅に呼び出してでもその真偽を確認すればいいのさ!!

断られた!
用事があるそうだ!!
バカバカバカバカ!!!
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:38:07.22 ID:jDYkzFYo
8日目

毎朝恒例のフェイス&ヘアーチェック。
我ながら幼い顔つきだと思う。どこぞのマニアが見たら放っておかないだろう。
いや、放ってかれたほうがいいのか。誘拐とか洒落にならない。
肩までの髪を入念にチェック。
うーむ。そのまま下ろすのは捻りがないか?
ふと昨日のポニーテール娘が頭に浮かぶ。
くっ!だめだ!思い出してしまう。
馬の尻ヘアなんかがあんなに良いのか?卓美?

やっぱり今日も断られた!!
少し遅めに卓美に電話してみたが、電話すら出ない!
おばさんにも聞いて見たが、帰りは遅いらしい。

なぁ・・・卓美
せめて、昼くらい一緒したい・・・。
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:38:51.26 ID:jDYkzFYo
9日目 - その1

やっと俺の申し出に答えてくれた。
まぁ、家に来て欲しいだけだが。
二日ほどまともに話ができなかっただけなのに、どうしてこうも気持ちが焦るのだろうか。
当初は作戦通り卓美を落としにかかる予定が、今は卓美に振り回されているだけだ。
それもこれもあの女!!
卓美が悪いんじゃない!あの女が悪いんだ!

き、きた!卓美きたー!

「卓美」

「ん?」

「あの女、何?」

「え?」

「俺との誘い断って、毎日遊んでんだろ?」

「えぇ!?そ、そんなんじゃないよ!」

「ふーん。俺に隠し事するようになったんだな。俺が女になったから?壁感じてるんだ?」

「ち、ちがうよ!そんなんじゃないよぉ!な、なに怒ってるんだよぉ・・・」

「怒ってない!!」

「うぅ・・・」

「そういえば、下着が1枚足りないんだよなぁ・・・どこいったっけ・・・?」

「な、なななななんのはなし!?」

・・・・。
なにか怪しい。
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:39:05.99 ID:jDYkzFYo
9日目 - その2

「なぁ・・・卓美・・・」

「はへ?」

「あの女、好きなのか?」

「えぇ!?ち、違うよ違うよ!そんなんじゃないよ!」

「一緒に居るの・・・気になる・・・」

「え・・・どうして・・・?」

言わせるのか・・・まぁ、いい。言わなきゃ伝わらない事だってある。

「卓美を・・・取られたくない。それだけ・・・」

「あ・・・そっか・・・」

「だから・・・」

「ごめん、ちょっと用事思い出したんだ」

「はぁ?ど、どうして!?」

そのまま卓美は足早に帰っていった。
色々と伏線っぽいの残して帰らないで欲しいんですけど!!
あぁぁぁん!もう!あの女の所為でろくな会話にならなかった!!
しかし、卓美の気持ちがどうこうって部分では俺の圧勝だな。
だが、災いの芽は早々に摘んでおいた方がよさそうだ。
覚悟しろ園田咲!!
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:43:58.10 ID:jDYkzFYo
10日目

今日は俺のクラスに呼び出して、昼ご飯を一緒した。
あの女、少し恨めしそうにこっち見てたっけ?ふふ、ざまあみろ。
クラスの連中が俺たちを見る目が明らかに違う。
俺たち、どんなかんけーに見えるのかな?

今日も放課後から卓美は用事があるらしい。
本人は何も話さないものだから、ここは奥の手を使わせてもらう。

おばさん曰く、"らぁめん園田"でバイト中らしい。
園田・・・通りで何処かで聞いたことある名前だと思った。
近くにある商店街のラーメン屋じゃないか。
バイトだって!?どうして俺に黙る必要がある?
なんか怪しい。
って、園田!?
あんの女!!

いいさ、今から乗り込んでやる!
あの女と話を付けにな!

状況から察するに、園田咲はあのラーメン屋の娘って所か。
んで、何らかの理由でバイトすることになった卓美は・・・よりにもよってあの女の所で・・・。

「いらっしゃい──さ、皐月!?」

「たっくっみ!おばさんから聞いてきちゃった」

「村雲さん!?」

前置きは無しだ。ちょっと面ぁかせや女。

「話・・・ね・・・」

「うん」

「あたしもアナタに話があったんだ」

へぇ〜そぉなんだぁ・・・?

「アナタ、ちょっと前まで男だったよね。村雲皐月君?」

調査済みって訳か。もういい、建前とか無しでいいか。
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:44:24.47 ID:jDYkzFYo
「よく知ってるんだな。俺の事嗅ぎまわってたわけ?」

「お互い様じゃない?」

「ふん。もういいや、ハッキリ言うよ。卓美に手を出すな。それだけ」

「は?どうして?アナタにそんな事言う権利なんてないんじゃない?」

「あるから言ってるんだけど。あんたの知らないこんな事やあんな事する関係って分かる?」

「な!?何言ってるの!?」

分かってるくせに。

「ハッキリ言おうか?」

「い、いい!聞きたくない!お、幼馴染がなんだっていうの!?彼の事わかった振りとかしてるだけなんじゃない?」

焦ってるな。俺の知らない卓美を知っているとか何とか言いたいんだろうか?

「如月君が何のために頑張ってるか知らないくせに・・・」

「ふーん。それで?」

「あんた最低ね」

くっこのアマ!!

「この卑怯者!」

「な、なんで俺が!?ふ、ふざけんな!」

取っ組み合いの喧嘩が勃発した。

「実はあんたの事前から知ってたよ!いつも如月君と一緒に居たよね!本当はホモなんじゃないの!?」

「うるさい!お前に何がわかる!」

「こんなに小さくなって!如月君をロリコンなんかにしないでよね!」

「うるさい!うるさい!卓美はこんなのが好きなんだよ!」

「バカじゃない?本当の女に勝てると思ってんの?」

「!!」

俺の体が一瞬フリーズして、相手に押し飛ばされる。
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:44:29.84 ID:jDYkzFYo
俺の体があの女より一回り小さいせいもあって、あっけなく吹っ飛んだ。

「あっ・・・」

「いったぁ・・・」

「・・・うっ・・・ふぅっ・・・だから・・・女なんて嫌い・・・なんだよ・・・」

歪んだ視界で、あの女を睨み付ける。
なんか変な顔でこっちを見ていた。
でも、今はそんな事気に留めるだけの余裕はない。
まだ痛むお尻をかばいながら、その場をそのまま後にした。
女なんて嫌い、か。俺は心の中で女を嫌悪していたのだろうか。
そんな俺が、女になってしまうなんて何て皮肉。

完璧にとは言わないが、あの場は負けた気がする。
俺の弱点を突いてきた。アレは今日そこらで考えたような言葉じゃない。
やはり、あの女は卓美を・・・・!
これは直接対決は臨まないほうがよさそうだ。口ではあの女に勝てない。
まぁ、それ以上にあの女に勝てる部分があるとすれば、俺が一番卓美に近い存在という点だ。
アドバンテージはまだ俺にある!

そういえば、一つ気になることがある。
「卓美が何の為にバイトしていると思ってる」
と、言う言葉だ。
その言葉を口走るあの女の表情は非常に悔しそうだった。
ということは俺のための何か、か?
ならば、さらに一つ俺にアドバンテージってわけだ。

今日のところは退く。いや、戦略的撤退!!負けるもんか負けるもんか負けるもんか!!
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:49:30.71 ID:jDYkzFYo
11日目

卓美くん
ああ卓美くん
卓美くん

数学の授業中にくだらない俳句が浮かんでくる。
ふぅ・・・頭の中は卓美で一色だった。
だから卓美にメールを送る。
『今日からずっと昼ご飯一緒がいい』
と、一言だけ。

卓美からの返信を待つ間、色んな女が寄ってくる。
うざいんだが。
「今誰にメール送った?」とか「男?女?」とか・・・
時々男も寄ってくる。
寄ってくる男は軽そうな奴ばかり。
「今日一緒に遊びに行かね?」とか「カラオケいこーぜ!他の女の子も来るし!」とか・・・
今まで俺が男だった事なんてお構いなし。目の色変わりすぎでこえぇよ。
普通の女なら、「誘われることに対して、自分に魅力がある」とかだとか思うのかもしれない。根拠はないけど。
男が女を誘う理由なんて、裏返せば手を出す口実をどこかで狙っているにすぎない。節操無い奴らなんだ。
けど、男はみなそういう奴ばかりでもない。逆に消極的な方がまだ可愛らしいとさえ思えてしまう。
ま、結局はみんなスケベなんだけどね。男って悲しい生き物だったな。と、今しみじみ思う。
ねぇ、むっつり卓美くん。

メールが来た!
『いいよ。でも、今日園田さんも一緒になるかも』
・・・・・・・
最悪だ。
213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:50:26.32 ID:jDYkzFYo
12日目

昨日は最悪だった。
あの女、卓美にと特製チャーハンを作ってきやがった。
他にも色々出来るんだよとか何とかほざいてた。

俺もちゃんとした料理覚える!!!

心に新たな目標と信念が芽生えた瞬間だった。

今日は土曜日で学校は休み。卓美はバイトとかで家にいない。
というわけで、卓美の家でおばさんに料理の手ほどきを受けることとなった。
卓美には賄い食べて帰るなよ。と、一言メールを入れた。

なかなかセンスが良いと褒められた。
伊達に晩飯一人とか食べてなかったからな!!
まぁ、以前は豪快そのものな男料理だったがね・・・。
今回は意気込みが違う。丁寧に、細心の注意を払って・・・だ。

しかし、卓美はなかなか帰ってこなかった。
なかなか帰ってこない卓美を心配してオロオロしていた俺を見たおばさんは、そっと頭をなでてくれた。
ちょっと涙が出た。
卓美は夜の9時を回って、フラフラになって帰ってきた。しかも、賄いまで食べて。
それを聞いた俺は心身喪失状態になりかけて、へたり込んでしまった。
計画を外れるとこんなに弱いなんて、なんでだろう?あれ?おかしいな、目から汗が・・・。
ちなみに、俺のそんな様子を見たおばさんは、次の瞬間卓美を見るなり鬼の形相だった。

卓美はたっぷり絞られていた。
もういい、もういい。と止める俺を見て、さらに絞られていた。
今日はもう帰ろう・・・。
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:51:31.15 ID:jDYkzFYo
15日目

今日もおばさんと特訓。
卓美はまた今日もバイトでしたとさ。
居ない分には、帰ってきたところを驚かせるみたいな事ができるわけだが。

おばさんとワイワイ料理教室の開始。
俺の事は昔から"さっちゃん"と呼ばれている。どっちつかずの名前なので今もその呼び方は変わっていない。
料理の手ほどきの途中、急にこんな事を言われた。
「娘が出来たみたいでうれしい」とか「健気で可愛い」とか。
後者の言葉を聞いたとき、少し心が痛んだ。
当初は"利用"までしていたんだから。

ジャガイモの皮を剥きながら、自分の気持ちを再確認してみた。
最初は体よくパートナーを得ようと、不順な気持ちで卓美に手を出そうとしたのは確かだ。
二日目だってそうだ。女の色香で卓美の気を惹こうとしただけだ。
けど、今はどうだろう。
確かに、料理を覚える事で卓美の気を惹こうとしているだけかも知れない。
あの女に勝ちたいだけかも知れない。
最近卓美の笑顔とか、優しいところとか見ていない気がする。
一人で空回りしているだけなのかもしれない。
気がついたら手が止まっていた。
おばさんが、どうかした?大丈夫?と優しい言葉を投げかけてくれる。
気がついたらおばさんの胸の中に飛び込んでいた。

「どうしたの?泣いて・・・」

認めたくなかった俺は擦れた声で

「ちがうよ・・・」

と、強がってみた。
おばさんに抱きしめられた。

「まったく・・・のりちゃんってば、こんなに寂しい思いさせて・・・もう・・・」
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:51:39.60 ID:jDYkzFYo
のりちゃん。俺の母親の名前だ。
おばさんがそう言った理由は、甘える相手の事だったのか、相談相手のことだったのか。俺には分からなかった。

「ごめんね、うちの卓美が不甲斐なくて。けどね、もう少し我慢してあげてね」

何か知っているような口ぶりだった。

「ありがと、おばさん。俺、元気でた」

「いえいえ。あ、そうそう。そろそろ、"俺"って言うの止めてみたら?せっかくこんなに可愛らしいんだから、ね?」

ちんちくりん。な、だけな気もするけど。

「あ・・・んと・・・すぐには無理かも・・・」

"私"か。他人等の人前での便宜上使うことがある。そのときは何も恥ずかしくない。
ただ、素で使おうとすると何か恥ずかしいのだ。

料理はレシピ通りで作れば誰でもそれなりになる。
盛り付けや色合いなどの見栄えも合わされば更に良い。
ただ、大切な部分は気持ちだと、恥ずかしいことを色々叩き込まれた。

ところで、もう夜の9時。
昨日より遅いってどう言う事!?
先におじさんが"カレー"を平らげてしまった。
カレーを食べつつ嫁に来いと言われて、焦っているとおばさんが鬼の形相になっていた。
怖いよおばさん。
結局10時になっても卓美は帰ってこなかった。
流石に家に帰れと促され、自分で作ったカレーをひとり食べて帰る事になった。
なんか、ぜんぜん美味しくなかった。
でも、俺は諦めない。絶対に諦めない。諦めたらそこで試合終了とか偉い先生が言ってた気がする!!
明日は早朝から弁当を作るのだ。
おばさんが家に来てくれて、手伝ってくれる約束をもう取り付けてある。
卓美には内緒である。
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:54:17.56 ID:jDYkzFYo
16日目

卓美に昼を一緒しようとメールを送れなかった。
なんか、急に恥ずかしくなってどうメッセージを送ったらいいか迷ったのだ。
その上、昨日の事もあって、どうにも気まずいのもあった。
諦めないと決めたのに、どうしてこうイレギュラーにはテンパってしまうんだろうか。
しかし、昼までには約束を取り付けないと、あの女に先を越されてしまいかねない!

結局昼休みになってしまった。
とにかく、弁当を持って卓美のクラスへ向かう。
そこに卓美の姿はなかった。あの女の姿も無い。
焦りながら最悪の事態を想像する。トイレ?購買?どこに居る?

屋上なんて、ベタな場所で二人はご飯を食べていた。
何で先に伝えられなかったのかと、心の中で繰り返し悔やむ。
卓美と目が合う。あの女はしてやった。あんたには出来るのか?みたいな得意げな顔をしている。
心の奥底から、怒りや悲しみの感情があふれて来る。
反射的に手に持った弁当を投げたくなる。
けど、投げたくても投げられない。
この弁当には様々な気持ちが詰まっている。
おばさんや俺の・・・。
本来なら制御できるはずも無い衝動をかろうじて抑え、卓美の下へと歩いていく。

「お願い、食べて・・・ね」

その一言が精一杯だった。
そっと弁当を渡して、俺はその場を後にした。

そして、また後悔した。
空気など読む必要はない、どんな状況であろうともあの場に残って一緒に食べればよかったのだ。
卓美は嫌だ何て一言も言ってない。言葉のキャッチボールすら交わしてなかったのに。
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 02:56:08.92 ID:jDYkzFYo
眠いよにょた・・・

あぁ、しまっちゃうおじさんがみえるよ・・・

もぉだめだぁぁぁぁ

おやすみ
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 22:37:16.00 ID:2ddp7jM0
GJGJGJ!!!
続きが楽しみだ!
219 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/06(土) 01:29:14.27 ID:BdKCBUko
有難う、もうしばらく続くと思う。

あらすじってしっかりしておかないと後で大変だね
220 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:04:22.30 ID:HLfwWAYo
17日目

苦しい。
心が苦しい。
卓美が迎えに来たのに苦しい。
でも、頑張るのだ。

「えっと・・・弁当・・・どうだった?」

「うん。美味しかったよ!全部食べるの大変だったけど・・・」

この言葉で何かが爆発した。

「大変って・・・なんだよ」

「え、えと・・・ごめん・・・」

「もういい!バカ!アホ!!」

「あ、あのっ・・・」

「もういいよ・・・ばかぁぁぁぁぁうわぁぁっんっ!」

卓美の前で号泣してしまった。
恥ずかしいのに、何でこんなに涙が止まらないのか分からない。

そっか、自分でも自覚してないくらい好きなのか。
打算でもなんでもない。純粋に。

俺が泣き止まないものだから、一限目さぼって付き合ってくれた。
俺ってこんなに泣き虫だっけか?
恋がそうさせるのか、自分が弱いだけなのか。

昨日のは卓美は悪くないよな。俺がひとりで空回りしてただけ。
そう思えるくらい落ち着いたのは事実だ。
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:07:36.19 ID:HLfwWAYo
18日目

今日は最初から弁当を手渡しておいた。
ただ、少し浮かれていたのもあり・・・
「二人一緒に食べてくれなきゃまた泣くぞ」
とか恥ずかしいことが口走ってしまった。
卓美は恥ずかしそうに受け取ってくれた。


19日目

今日はバイトが休みらしい。
だから早速約束を取り付ける。
まぁ、ただ家に居てもらうだけだけど。
ええ、今日こそ食べてもらいます。

俺とおばさんが、今まで以上に仲良くなっているのを見て卓美が驚いていた。
ただ、時々チラチラとこっちを覗いていた。
エプロン姿に萌えたか?ふふん。

今日は肉じゃがを教えてもらった。
確か卓美の好物なんだよな、これ。

食べてる食べてる。ほらほら、沢山あるんだからそんなにがっつくなって。
おばさんが頭を撫でてくれた。
今日は気分がいいな。


20日目

今日はバイト休みのはず・・・。
卓美は急用とかで一人でどこかに出かけて行った。
一緒に行くとせがんでみたが、断られた!!
女じゃないよな?

何で最近こうも隠し事が多いんだろう。
俺じゃなくてもムクれるよこれは!
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:09:50.34 ID:HLfwWAYo
21日目

昨日の事を問い詰めなくては。
今日は両親ともに土曜出勤で居ないからな。
とにかく朝一で卓美を呼び出す。今日はすんなりOKの返事が来た。

何か手荷物を持ってやってきた。
その中にはあやしい道具でも入ってんのか?
そのまま俺を拘束して、あんなことやこんなこと・・・・。
嫌がる俺をにこやかな笑顔で・・・。

「どうしたの?顔赤いよ?調子でも悪い?」

「なっ、何でもない!そ、それより・・・何、その荷物は」

「あっ・・・うんっ。えっと」

カバンの中に手を突っ込んで何かごそごそしている。
あぁ・・・覚悟を決めないと・・・。
妄想の中で俺はすでに両手を拘束されていた。
別にそう言う願望があるわけじゃないが、卓美にならそうされてもいい。

「はい、これ・・・」

「え?なに?これ?」

「何って・・・今日、皐月の誕生日だから。プレゼント」

妄想消去、雑念撤廃、我は羞恥心を捨て去る者也!

「も、もしかして・・・これの為に?」

「ごめん、内緒にしてた理由はそれなんだ」

なんか良くあるよな。
こういうサプライズ的なものを用意されている間、皆にそっけなくされて悶々とするキャラって。
はぁ・・・なんか気が抜けた・・・。
223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:10:31.18 ID:HLfwWAYo
純粋に嬉しいのは確かなんだけど、それと同じくらい大きなため息が漏れた。

「はぁ・・・ありがとう、卓美」

あれ、あまり喜ばないんだ。とか言わないのか?
けど、中身はなんだろう。結構軽い・・ってかやわらかい物でも入っているのか?

「なぁ、開けていいか?」

「えっ・・・あ・・・う、うん・・・」

な、なんでそんなに歯切れが悪い?
まぁ、いい。気になるからもう開ける。

びりびりびり。

「んな!?ぱぱぱぱぱ・・・パンツ!?」

な、何で下着なんだよぉ!!しかもこれ、あの時と同じしまぱんじゃないか!
そ、それに!!下着のプレゼントなんて、普通恋人とかにしかあげないだろ!?
い、いや、でもその・・・恋人ってのも・・・・悪くないかも・・・。
って、ちがーーーーう!!
頭に血が上ってしまって顔が熱い。

「た、卓美ぃ!!」

「ご、ごめんなさい!!」

「え!?」

卓美はこう続けた。
俺の部屋に落ちていたパンツをついお持ち帰りしてしまい。
返すに返せなくなってずっと気に病んで居たと。

「・・・・ばか・・・」

「ご、ごめん!」
224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:11:26.26 ID:HLfwWAYo

「ちがう!アレはお前にやったの!」

「えぇ!?」

「わっかんないかなぁ・・・この超鈍感!お持ち帰りされたの、気づかないワケないだろ!?」

「そ、そんな・・・」

「全部見てたんだぞ。むっつりだってのは知ってたけど、あんな事するなんて・・・」

「あぅ・・・」

「あれ、どうしたんだ?正直に言いなさい」

「取り返しのつかないことになりました・・・」

「そう・・・じゃ、はい」

そう言って、俺は今は居ているパンツを脱いで卓美に差し出す。

「好きなんだろ?これが」

「あっ・・・その・・・ええと・・・」

はぁ・・・いぢめるのもうやめよう。
段々可愛そうになってきた。

「それっ!」

「うヴぁ!」

「やーい!変態仮面!!」

「ふがふがふが!!うぅっ!!」

あれ?目がやヴぁい?

「ぷはっ!・・・・・」

えと、この間は・・・何?

「も、もう・・・」
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:12:20.64 ID:HLfwWAYo
なんか、やばそうだったので先手を打って抱きついてみた。

「え!?」

「ありがとう、卓美。嬉しいよ・・・むぐぐ!!」

荒っぽくキスをされた。
キスをされている。
あぁぁぁぁ、なんかやばい。体が熱い。
こ、腰が引ける・・・なんか奥からじわじわと・・・
あぅっ!体中に電気が走ったかのような感覚に襲われた。
やばい、耐えられそうに無い。
やばいやばいやばいやばいやばい!
長いキスのあと、卓美が俺の体をゆっくりと離す。
体中の力が入らなくてそのままへたり込んでしまう。

「はぁ・・・はぁ・・・あぅっ・・・うっ!」

体が小刻みに震えては、波が押し寄せるたびに体がびくんびくんと跳ねる。
これは、あの時の感覚に近い。
そんな、キスだけで感じてるなんて!?
ありえるのか?こんなこと!

「あっ・・・ご、ごめん!つい!ごめん!!」

はぁはぁ・・・卓美が謝ってる。
ひっきりなしに謝ってる。
そんなんじゃないんだけどな・・・恥ずかしくて動けない理由が言えないだけなんだけどね。
今、下着を着けてないから良く分からないけど、相当濡れてるんだろうな。
その場から少し動くと、床に雫が・・・大量・・・・。
今度は俺が我慢できないかも。
勢いに任せて押し倒そうとしたが、卓美が重くて動かない!!
恥ずかしい大失敗!!
慌てる卓美にそのままべちゃっと飛び込んでしまった。

「っ!ふぁぁぁ!!」

俺の大事なところに何か硬いものが当たって擦れる。
必死に耐えて見せるが、更に体がビクビクと跳ねる。
卓美はそんな俺の顔をみて、真っ赤な顔をしている。
けど、俺が一人で暴走しているだけなんだがね。

「ごめん!もう無理!!」

「きゃあ!」

いきなり押し倒されて、無意識に黄色い声が出る。
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:13:32.47 ID:HLfwWAYo
しばしの沈黙。
ここはもう覚悟決めておいたほうが良いみたいだな。
少しでも冷静さを取り戻したら、この状況は無かったことになりそうだから。

「い、いいよ・・・ねぇ、見たい?」

「え・・・?」

「アソコ」

「あっ・・・」

「いいよ・・・」

人間も動物なのに変だわ。お互いの了承を経て互いの性器を見せ合う。
こういう気持ちになったとき、文化や法律なんてルールなくなってしまえば良いのにと思う。
と、物思いに耽っていると、いきなり足を大また開きにもっていかれて、一気に大切な場所が露になる。
こ、こんな格好させられると途端に恥ずかしい!!
つい両目を閉じて顔をそむける。

「あ・・・っ・・・」

しばらく、股間で指らしく物がもぞもぞと動く。
どんな気持ちなんだろうな、卓美は。
正直今は、自分のアソコについているあれはグロテスクで、鬱陶しい不便なものだ。
時には、快感を与えてくれるものでもあるが・・・。
こんなもの、今までずっと見たい見たいと思ってたんだよな。
え?あ、なにかざらざらするものが当たって・・・

「あぅっ!!」

俺の股からチロチロ、ぴちゃぴちゃと音が聞こえてくる。

「くっぅっ・・・あっはぁ!!はぁ・・・あぅ!!」

それは段々と速さを増してきている。
だ、ダメだ!そんなに強くやったら!!

「だっ・・・あっあっああああああ!!んっめっ・・・!!んんんん!やぁっ!!・・・てぇ!!」

それでも舌の動きは止まらない。多分、ダメだ、止めてくれとは伝わっていない。
伝えたくても、上手く喋れない。
腰は勝手に浮くし、足が勝手に閉じて卓美の頭を太ももで固定している。
これじゃ、止めないでくれと言っているようなものだ。
でも、このままじゃ・・・・!
で、でそう・・・!
このままじゃ!!あぁぁぁ!やばいやばいやばいやば・・!!
とどめに、皮をめくられて強く舐め上げられる。
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:14:00.95 ID:HLfwWAYo

「きぃああああぁぁあぁああ・・・!!」

ぴゅっぴちゃちゃちゃちゃ!

「ああああぁぁぁ・・・・」

か、顔に・・・顔にかかってるんですけどおぉぉぉぉ!!
と、止まれ止まれ止まれ止まれ!
あぁ・・・もう最悪だ・・・・。

「も、もうバカ!!ダメだって!止めろって言ったじゃないか!」

「あわわわわわ!!」

「あぁぁぁもぅ!!めちゃくちゃだって・・・うぅ・・・」

なんかもう冷めてしまった・・・。

「きょ、今日はここでお終い!!」

「え、えぇぇぇ!?」

そうだろうさ、生殺しだろうさ!でもな!誰がこれを片付けるんだ!

「顔洗ってこい!床も拭け!!じゃないともう知らないからな!!」

「ごぉめんなさぁぁぁぁあい!」

半泣きで慌てて後始末する卓美を見て、可愛いなと思った。
節操無いのは俺のほうかも。

今回のはいい教訓だろう。
これで、必要以上に舐めてこないはず。
だめなんだよ、直接やられるのは・・・・。敏感すぎってのも考え物だ・・・。

すっかり綺麗になった。
卓美は何か物足りない様子で一人たたずんでいる。
というか、凹んでるような気がする。
まったく、仕方がないなぁ!

「今日の事は許してあげるから、そんなにしょんぼりしないで」

少し女っぽく慰めてみた。
すると、卓美の顔がぱぁっと明るくなる。
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:14:28.78 ID:HLfwWAYo
ところで、未遂とはいえ男と女の体の付き合いってのをお互いに初体験だったわけだが、今思うとすこし恥ずかしい。
同年代のカップル達はみんなこんな事やっているのだろうか?
俺が男だった頃の周囲の人間と来たら童貞連中ばかりだった。
早く女とやりたいだの、処女相手がどうだの、せいぜいそんな話ができる程度である。
現段階では女友達と言える付き合いもない。
情報収集のために付き合ってみるのも悪くないかもしれないな。

「ねぇ、卓美。アソコってどんな味?」

「え!?」

卓美曰く、とにかく生塩っ辛かったらしい。
おいしいおいしいって舐めてるのは、塩分足りない連中なのか?と思ってしまった。

「えっとさ、次からは舐めすぎ禁止・・・ね?」

「う、うん・・・ごめん、え、次もしていいの?」

言わせるかそれを。まったく、どこまでも察しが悪い奴!
もういい、言わなきゃ分からないなら全部言ってやる。

「その・・・ちょっと怖いけど、気持ちいいのは確かだから!それに!このままじゃ卓美まで・・・」

「あっ・・・」

「だから・・・よいしょっと」

卓美の久座にちょこっと腰かける。
小さくなってしまった体は簡単に卓美の膝の中に納まってしまう。
そのまま卓美の首に手をまわして、今度はこちらからキスをした。
卓美がプルプルと震えている。
一度やってみたかったディープキスというもの。どこかで仕入れた情報を元に、出来る限り実践してみる。
お尻の横に堅いものが当たり始める。あっちはスタンバイOKのようです。
俺もまた感じてきた。やばい、またスイッチ入った。
別に延長戦をする気はなかったのだけれども、感じやすい体ってのも考えものだ。
下腹部から全身へと何か満たされないものが広がってくる。
続きをして欲しい、と。
こうなったら俺はもうダメみたいだ。下半身の事しか考えられなくなる。
そのまま全体重をかけて卓美を押し倒す。
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:14:43.62 ID:HLfwWAYo
「もう・・・だめ・・・いいよね?」

卓美の頭はすごい勢いで上下していた。
そんなにしてほしかったのか。我慢していたんだな。
そうか、俺は大切にされていたのか。こういうのって女の喜びなんだろうか?

卓美のズボンのチャックを開けてやる。
中に馬鹿みたいにデカイのが詰まっていたみたいだ。
ちょっと前まで俺にもあったものだが、自分のと比べてどうだ?
もうわからない・・・な。ないものを今更比べられない。
しかし、これ、入るの・・・か?
俺の体結構小さいからなぁ・・・。
しかも、処女。以前一度確認してみたが、それらしいグロテスクなものがあったのは覚えている。
ここに来て言葉通り尻ごみだなんて、卓美は待ってやくれないだろうか?

「ごめん、も、もう無理!!」

「ちょ、ちょっとまっ!」

お腹の中身を押しのけるかのような気持ち悪い感覚と、激しい痛みが襲ってくる。

「はっ!あぁぁああぁぁぁああぁ!!くぅっふぅぅぅぅっ!!」

この声は卓美に届いているだろうか?
卓美の頭は今、人?それとも獣?
卓美・・・そんなに強引に入れて痛くないのか!?

「い、痛いっ!痛いって!!」

卓美はそのまま少しだけ入った先っちょを出したり入れたりしている。
マジなのか。もう止まらないって事か?そうだよな、男って一度ナニしだしたら止まらないもんな・・・。
そもそも、自分で受け入れたからこうなっているんだ。覚悟決め・・・

「うぅっ・・・・出る・・・・」

「いっ!え、えぇぇぇぇ!?」

もう?もう出るのか?早すぎやしないか!?って、中出しはやばいって!!
前回の生理から、いつがやばいのか計算した事が一度だけある。
このタイミングは少々やばいかもしれない。ていうか、どちらにしても生でやってる時点で妊娠を想定してないとやばい

のは確か。

「あっ、だ、だめっ!中はぁぁぁぁ!!だめぇぇぇぇ!!」

ドンドンドン!と卓美の胸をたたいて訴え続ける。

「うぅっ!やばっ・・・!!」
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:15:18.21 ID:HLfwWAYo
これで妊娠したらと思うと、頭の中が真っ白になる。
と、なんかお腹の上にポタポタと生温かいものが落ちてくる。
何かと思って、手でそれを触ってみる。ぬるっとしていて、目で確認すると赤い色の混じった白濁液だ。
次に、残った片手で自分の膣口の周りに触れて確認する。
こちらは赤い血だけだった。
かろうじて中出しは避けられたみたいだ。
そして、ふぅっと一呼吸置いた。
バカ!と言いたかったが、今回誘ったのは俺なわけで、ゴムの準備すらしてなかったのにもかかわらず生本番。
卓美に悪いことしたかな。
ぐふ、股間が気持ち悪い。
これ、しばらくはまともに出来ないんだろうなぁ。

一方、卓美はというと・・・
「ごめんね、ごめんね」と謝りながら俺の腹に残った精液と破瓜の血を拭いていた。
お前の童貞は剥いてやったぞ・・・。
けど、これで終わりとは無いよな・・・?
やり逃げなんて簡便だからな?

「卓美・・・順番変だけど・・・わ、わ、私と付き合って」

「う、うん!」

俺の女の部分がこの男を絶対に逃がすなとささやいている。
卓美の腕を掴んで、ぎゅっと握り締める。

「好き・・・だから・・・」

「ありがとう、僕も同じだよ」

なんて甘酸っぱい言葉だろう。
甘酸っぱ過ぎて照れてしまう。

明日、二人で出かける約束をした。
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:15:56.61 ID:HLfwWAYo
22日目

人生初のデートとなる。
暫くは俺の家で談笑して、昼前から出かけた。
適当に商店街をぶらぶらしてゲームセンターに行ったり、服を見たり。
小さな町だが、二人一緒だと思うとどこでも楽しめた。
その昔、連れ立って歩いてた町も違って見えるのだ。
昼も真っ只中で、町からは食欲を誘う臭いが漂ってくる。
「おなかすいたね。ラーメンが食べたいな」
と卓美が言う。
ラーメンというと、この近所じゃらぁめん園田しかない。
急に気が重くなる。
あの女とは今だ遺恨を残したままなのだ。
行きたくない。あの店には。
けれども、このカップリングを見せ付けて、相手にダメージを与えておくには良い機会でもあるのだが。
本当にそれでいいのか?
フェアじゃないとかそう言うのじゃなくて、こういう陰険なやり方を俺の中の男の部分が嫌っている。

「そうだ、帰って食べようよ。何か作ってあげるから」

「でも、らーめん・・・」

「むっ・・・2回もすっぽかした人が断る権利なんてない」

「あぅ・・・わかりました・・・」

ごめん、卓美。本当は一緒にラーメン食べたいんだよ。

家に帰ると、母さんが緊急出勤とかで居なかった。
父さんはというと、腹減ったーとか叫びながら居間でゴロゴロしているだけだった。
ついでなので、卓美と二人分こしらえることにした。
二人とも男同士の会話に花をさかせている。そういえば、この二人むっつりだっけ。
なんか二人ともニヤニヤしながら食べていた。
気味が悪かったので見てない振りした。

居間で未だに二人が談笑している。
凄い壁を感じてしまう。
ま、まぁ、み、未来の旦那様の義父になるんだから・・・?仲が良いに越したことはないんだけど・・・。
俺が一人、部屋の隅っこで不貞腐れているのに気づいてもくれなかった!!

微笑ましい?談笑を他所に、俺は考え事を始めた。
俺の心の中には今、女に成り済まそうとしていた自分、男の心の自分、女になった自分。
この三つが互いにせめぎ合っている。
三すくみ。こんな言葉が例えに一番相応しい。
俺が今後、この体に適応するにあたって、そのうち2つは排除しなければならない。
しかし、今の俺にはどれも欠かせない心でもある。
成り済まさないと取り繕えない部分。16年の男としての人生。
そして、これからの自分。
齢16歳。女0歳にこんな選択させるなんて、神様は残酷だ!
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:16:33.83 ID:HLfwWAYo
23日目

女子生徒複数人に絡まれた。
なんか、俺を問い詰めようとしているっぽい。
あぁ・・・こんなの中学校までかと思ってたよ。

俺が、何?この幼稚な人たち。見たいな顔をしていると、リーダー格っぽい人が一歩前に出てきた。
私達の卓美君に手を出さないで!
だとさ。
まさか、こんなライバルが潜んでいたとはね。
なんだかんだと因縁をつけてくる。
おふざけになられるのもいい加減にして欲しい。
こんな徒党を組んでも所詮は烏合の衆だ。
ホモだの卓美が迷惑だのどっかの女みたいなこと言って俺を攻め立ててくる。

好きに言うが良いさ。
何を言われたって、卓美の心は俺にしか向いていないんだから。


24日目

体操着がびりびりに破かれていた。
まさか、こんなにも早く嫌がらせに出てくるとは。
恐れ入ったよ。
仕方ないので体育は休みって事で。
まぁ、アレも近いからそっとしておいて欲しかったって事で一件落着!


25日目

弁当が見当たらない。
卓美の分も俺の分も。
誘拐現場は教室の屑篭の中だった。
卓美が俺の事を心配していた。
それだけで俺は何も考えずに済んだ。


26日目

体育のあと、制服が消えていた。
まったく芸のない連中だ。
クラスの女子達が、何かに警戒している。
あいつら、どうやら相当陰険な連中らしいな。

俺は負けはしない。だから、卓美と一緒に要るときは満面の笑みを浮かべて楽しんだ。
こればっかしはうそ偽りない。
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:17:12.18 ID:HLfwWAYo
27日目

来た。少し早い。
かなりグロッキーだ。

またもやあの連中に絡まれる。
グロッキーすぎてまともに取り合ってられない。
とりあえず、全部聞き流してその場を耐えるつもりだった。
あれ?なんか見覚えある馬の尻女が近づいてきたぞ?
「ちょっとあんた達なにやってんの!」と勇敢にも突っかかっていく。

それがあの女の口の悪い事悪い事。
烏合の衆が散り散りに逃げていった。

「はぁ・・・・」

「・・・・大丈夫?」

「え、何が?アイタタタ・・・」

お腹を押さえてその場にうずくまる。

「まったく、空気読めない連中だよな、ったく」

「言葉の使い方少し違うよ・・・どしたの?調子悪いの?」

「うぅ・・・生理・・・きつ過ぎる」

「多分、一生慣れないよ。ほら、保健室行こう」

今、この瞬間。この女の事好きになりかけた。ふぅ、やばいやばい。
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:17:27.80 ID:HLfwWAYo
誰も居ない保健室に寝かされる。
あの女、そのまま立ち去ると思いきや、隣のベッドに腰掛けて動かない。

「あ、ありがと・・・」

「い、いいよっ!寒気がするから止めて・・・」

こいつ、ツンデレか!?
よし、ついでだからいぢって見よう。

「あのさ、今、俺男の気持ちなんだよね。あんたの事好きになった」

「は、はぁ!?なななななななに言ってんの!?」

ははっ慌ててらぁ。
けど、そう言った半分くらいは本当の気持ちだったかも。

「二つの気持ちが共存する感覚ってわかる?」

「な、なによそれ・・・意味わかんないんだけど」

「そりゃそうだわな。あんたには一生理解できないよ」

「あっそ!」

「で、さ・・・今段々と消えかかってる男の部分の俺がさ、お前に言いたいんだって」

「え?」

「ありがとう。それから、ひどい事ばかり言って・・・ごめん」

「なんなのそれ・・・やっぱり、あんた卑怯だよ・・・」

「はぁ・・・少しはデレたら?」

「ひ、人をツンデレみたいにいうなー!」

「自覚してるんだ?」

「うるさい!」
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:17:37.80 ID:HLfwWAYo
「そうそう、女としては絶対に負けないから。もう既に勝負ついてるけどね」

「ど、どういう意味!?」

「そのままの意味」

「けどさ、もし、本当に卓美の事好きなら・・・。女の私が卓美に愛想突かされる位酷い女になってたら、その時は卓美

をよろしくたのむよ」

「村雲君・・・?」

「これは男として、卓美の友達としての願いだ」

「うん」

物分りが良くて、す・・・いやツンデレだ。こんなましな女も居たんだな。
男のままだったらそのまま惚れてるかも。

「で、も!さっきの意味。聞き捨てならないんだけど!!」

「ご想像にお任せします」

「あぁぁぁぁあんた!まさか!」

「私の可愛い卓美君は、もう女の子にはなりません!」

「う・・・そ・・・」

「嘘のような本当の話」

「こ、この!えっちすけべ変態!尻軽!」

「尻軽とは失礼じゃない?」

互いに沈黙のまま時間が流れていく。
しばらく沈黙した後、あの女は「それじゃ」と言って立ち上がった。

「あ、卓美には手を出さないでよ。私達、もう付き合ってるんだから」

あの女は何も言わない。
手をぎゅっと握り締めて背中が震えている。
それが逆に怖く感じて、一抹の不安を覚える。
大丈夫だよね、卓美?

それから暫くして、先生がやってきた。
無くなったはずの制服も出てきたとかで、手渡された。
これは俺の知らないところで手が回ったな。
あの女か、卓美か。
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:23:01.01 ID:HLfwWAYo
28日目

折角の休みだって言うのに調子が悪い。
まぁ、動けないほどでもないが。

卓美が家にきた。
あの後、あの女と何も無かったかちょっと確認してみる事にする。

「昨日、あの後どうしてたの?」

制服を探してたとの事。
どうやら、あの女も手伝っていたらしい。
違う、その後の事が聞きたい。
何度か、しつこく聞いてみる。
これって嫌な女?

あれ?卓美がモジモジしている。
あー・・・やりたいんだな。
でも、今はやばいぞ。

・・・・・・

まさか、口ですることになるとは思わなかった。
正直な話、これは結構きついとすら思っていた。当初はね。
でも、今はなんか大丈夫。目の前に突きつけられるとくらっと来てしまう。
しかし、卓美はこれでは満足できないと言い出した。
ワガママな奴!

気がついたら、上半身ひん剥かれていた。結構恥ずかしい。小さい胸だろう?
それでも卓美はブラの上から強引に揉みしだいてくる。

「ぱ、パイズリしてほしい」

はぁぁぁぁぁ!?ど、どうやってするんだ?この胸で・・・!?「一度やってみたくて」とか言っている。
あの女を思い出す。あの女は胸のサイズだけは一人前なのだ。あ、あんの女に負けるもんか!

「やる!やるやる!」

で、できない・・・。た、足りない・・・。サイズが足りない!!それでも頑張ってみる。挟めない。
う、うう・・・うわぁぁぁぁぁん!!惨めさで涙がちょちょぎれる。

「か、かわいい・・・」
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:23:32.00 ID:HLfwWAYo
は?えぇぇぇぇ?
卓美のアレがもう一回り大きくなった気がする。
もしかして、ひんにゅー少女にこういうことさせたい願望があるのか?卓美って奴は基本引っ込み思案なところがある。
だから、こういう時くらい優位に立ちたいと思っているのかもしれない。可愛い奴だ。
じゃあ、好きにやらせてあげようか。

頑張ってありったけの胸というか周辺の脂肪を集めて胸を寄せてみる。かろうじてアレに触れるだけのモノは集まった。
ゆっくり慎重に動かして、さきっちょをチロチロとなめる。
恐らくこれだけじゃ物足りないだろうからと、それを口に含んで一気に吸い込む。急にアレが脈打ちはじめる。来たっ。

「うあっ!」

限界に達して弾けたアレから白濁液が飛び出し、顔や口へと放たれていく。

「ひゃ!」

この間からぶっ掛けられてばっかりだ。
卓美は自信満々の顔で俺を見下げている。やっぱりこういうの好きなんだな。
男の優越感というのはこういうものなのだろうか。俺としてはもう味わう事の出来ない感覚か。
そういえば、あのあとあの女と何も無かったのかちゃんと聞いてない。

「あの女にもこんな事したの?」

「し、してない!してない!!」

「本当かな・・・だって男って浮気だろ?」

「そ、そんなぁ!」

「わかるんだよなぁ。俺、元男だろ?女の体見てその気にならない男は・・・」

「ど、どうしてそんな事!」

「心配なの・・・」

「そんな事しないよ!」

「口ではなんとでも言えるもん」

俺の仲には男の自分と女の自分が混在している。話し口調も思考もぐちゃぐちゃになってきていた。
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:23:44.91 ID:HLfwWAYo
「どうして・・・」

「卓美にその気がなくても、あの女にその気があるから」

「えぇ!?そ、そうなの!?」

おっと、これは白か。よかった。

「もう、やっぱり卓美って鈍感すぎ」

「な、卓美。あの女、結構いい体してるよな」

「な、なんで急に・・・男口調・・・」

どうやら、男の喋り方に不満があるようだ。

「そう言うなって、俺としての男はそろそろ居なくなるからな」

「よく意味がわからないよ」

「まぁ、聞けって、男としてお前はあの女と、女の俺とどっちがいいか?」

「どっちって・・・」

「好みの話を聞いてるんだよ。お前がむっつりなのは知ってるけど、こういう話あまりしてくれなかっただろ?」

「俺は断然、乳のでかい女がいいがな。お前は?」

「・・・・・」

「言え!俺だけに言わせて逃げるつもりか!」

「ひ、ひんぬーがいい・・・こう、幼い体つきに似合わない巨乳より無い乳がいい・・・」
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:23:49.99 ID:HLfwWAYo
「うわっ変態!ロリコン!」

「も、もう!!」

「つまり、この体がいいんだな。それでぶっかけて喜んでたんだな」

「さ、皐月!!」

「ごめんごめん、さて、もう男の俺は幕引きかな」

「え・・・」

「だってさ、段々消えていくんだよ。もう体すら残ってないんだぜ?」

「皐月・・・そんな、それは寂しいよ・・・」

「じゃあな、卓美。けれど、私がしっかり変わり努めるから。安心してよ」

「さ、さつきぃ〜〜〜!!」

「もう、泣かないでよ・・・」

これで、よかった。これでよかったんだ。さようなら、俺だった私。
泣きついてきた卓美を胸の中で優しく頭を撫でる。

「あぅ・・・寒い」

そういえば、服を着てなかった。上半身裸で卓美を胸で抱いている。

「ねぇ、卓美。もう一度しようか?生理来てるからあっちは無理だけど」

体を使って男を癒す事が出来るのは女だけ、そういうのは女の特権かも。
240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:42:04.09 ID:HLfwWAYo
とりあえず前半部が終了したって感じ。
起承転結の転が一番やっかい

ところで、暫く見ない間にスレが寂しい状態になってるねww
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 21:48:51.58 ID:dR4ep0.o
書き込んでないけどちょくちょく覗いたりはしてるるるよ
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 21:50:17.29 ID:TfNYBOEo
まぁパー速だししかたないだろwwwwww
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/08(月) 00:04:22.62 ID:jDOV3Y.0
待ってました
GJ!
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/09(火) 00:02:23.71 ID:UA7Py/Eo
もとより、ニュー速の方に立てても続かないくらい人口も減った感が
まぁ、パー速はパー速で淡々と投下できる雰囲気でいいっちゃいいんだが
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/11(木) 05:31:13.03 ID:SV/sQH6o
よーし、久しぶりになんか書いてくるかー
まぁ暫く書いては消してを続けるからすぐ投下ってわけでもないが
のんびりいこうぜい
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/11(木) 05:38:16.23 ID:XEkMsC6o
>>245
よし、パンツ脱いでまってるぞ!風邪ひかせんなよ!
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/11(木) 07:22:57.44 ID:SV/sQH6o
「パンツ脱いで待ってたら、いつのまにか息子が家出していたでござる」
「いいからパンツを履け」
「だがちょっと待ってほしい。息子と一緒にパンツも家出していた」
「俺も家出するわ」
「待って兄者!いかないで!」
「なんだよ?っていうか兄者じゃないし」
「せめてパンツを置いていって!」

パンツ脱いでまってる。が、ずっと頭から離れなかったぜ
ようやくすっきり
さーてネタをひねり出しにいこう
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/11(木) 19:32:11.32 ID:6BKIskso
「弟!弟!」
「なんだよ兄・・・・・・貴?!」
「ホラホラ!すげぇ!マジで女になってる!チンコとか完全に無くなった!」
「ちょ、ばか見せるな服着ろ!胸とかしまえ!」

兄弟でここまで想像した
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 22:10:49.83 ID:liOBxtc0
投下wktk
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/13(土) 04:18:15.90 ID:R0/I2wAO
 「はぁ…」
自分でも少し驚く程度にため息が漏れた。
「どうしたの?生理?」
帰り道のファミレスで向かいあって座っているこのデリカシーの欠片もない男は、俺が童貞のまま15歳の誕生日を迎えて女体化し、その二か月後に付き合い始め交際二週間目になる、いわゆる彼氏というやつである。
俺はため息の理由を説明するために、「ある事実」を、顔を伏せながら告白する。

「太った」
「そうかぁ?俺の目にはその辺の女子より細身に見えるけど」
「太ったね、紛れもなく太ったよ」

突っ伏しながらカミングアウトする俺に、なおも懐疑的な視線が浴びせられる。

「足がさ、男の時に比べて12%増しって感じ」
「比べてって言われても男の時のお前の足にキョーミねーわ」

笑いながら言いやがっただと?
あんまりだ、彼女に向かって興味ないだなんてあんまりだ。
俺は激怒した。

「興味もないのに付き合ってんのかよ?俺は悲しい道化かコノヤロー!」
「男同士の時に足を性的な意味でチェックしてたら完全にホモの人じゃねーか!」

あまりの正論につい笑ってしまった。
笑ってしまったので今日はご褒美にこの肉付きの良くなってしまったフトモモちゃんで膝枕をしてやろうと思う。
そんな適当なオチをつけて俺たちはファミレスを後にした。

おしまい
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/13(土) 04:18:23.59 ID:R0/I2wAO
 「はぁ…」
自分でも少し驚く程度にため息が漏れた。
「どうしたの?生理?」
帰り道のファミレスで向かいあって座っているこのデリカシーの欠片もない男は、俺が童貞のまま15歳の誕生日を迎えて女体化し、その二か月後に付き合い始め交際二週間目になる、いわゆる彼氏というやつである。
俺はため息の理由を説明するために、「ある事実」を、顔を伏せながら告白する。

「太った」
「そうかぁ?俺の目にはその辺の女子より細身に見えるけど」
「太ったね、紛れもなく太ったよ」

突っ伏しながらカミングアウトする俺に、なおも懐疑的な視線が浴びせられる。

「足がさ、男の時に比べて12%増しって感じ」
「比べてって言われても男の時のお前の足にキョーミねーわ」

笑いながら言いやがっただと?
あんまりだ、彼女に向かって興味ないだなんてあんまりだ。
俺は激怒した。

「興味もないのに付き合ってんのかよ?俺は悲しい道化かコノヤロー!」
「男同士の時に足を性的な意味でチェックしてたら完全にホモの人じゃねーか!」

あまりの正論につい笑ってしまった。
笑ってしまったので今日はご褒美にこの肉付きの良くなってしまったフトモモちゃんで膝枕をしてやろうと思う。
そんな適当なオチをつけて俺たちはファミレスを後にした。

おしまい
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/13(土) 04:19:08.02 ID:R0/I2wAO
大事な話なので二回投下しました
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/13(土) 16:13:13.33 ID:2iJcN3ko
乙 主にもっと肉付きのよくなった部分でまたどうにかするんですねわかります
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 23:39:18.02 ID:k4BbY660
GJ!!!
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 22:44:32.91 ID:FzGriQSO
書きたい
けど眠い
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/15(月) 01:44:55.82 ID:skkBYHEo
男子禁制。
女子禁制。
にょたっこだけに許される世界がある。
どちらにも属さない。どちらにも属せない。女になりきれない。女になりたい。
そんな彼?彼女?達は日々どうしているのだろうか?

「おはよー」

「あ、おはよう」

「おはよーっす」

教室の中には男子グループ、女子グループと複数のグループに分かれて仲の良い者同士がそれぞれ集って朝の憩いのひと時を過ごしている。
その中には元男子である女子グループが存在した。所謂にょたグループだ。
類は友を呼ぶ。一人、また一人。同志である彼女らは自ずと集まってくるのだ。
当然ながら、彼女らにも以前までの付き合いもある。
幼馴染の男女関係。友人関係。お互いの立場が一変し、付き合いにくくなったもの達も居る。
異性だったものは同性なり、同性だったものは異性ととなる。
前者については、淡い思いを打ち砕かれる結果となり、後者については複雑な思いとなる。l
他のグループと比べ、少々特殊な境遇である彼ら、もとい彼女らは、お互いに同じ悩みを抱えた者同士である。
だからこそ、息が合うのだろう。それは、至極当然の結果なのかもしれない。

「みんなー、おっぱいよー!」

一際元気の良い声でにょたっこ3人グループに挨拶をする女子生徒が一人現れた。ただ、思春期真っ只中の女の子が放つような挨拶ではなかったが。

「ちょっと、なにそれ!」

「ひゃはは!それ、もらい!!」

「朝から元気すぎ・・・」

3人ともそれぞれ個性的な反応を見せる。
一人は嫌悪感を抱き、一人はその行為を増長させ、一人は呆れた表情をしている。
個性と言えば個性だが、その発言には明らかな違いがある。
皆の反応と発言は女暦を物語っていた。
嫌悪感を抱いたにょたは、女暦1年以上である。
下ネタに反応したにょたは、女暦2週間未満である。
呆れた表情の低いにょたは、女暦3ヶ月である。
ただし、一部例外がいる。乙女にあるまじき発言をしたにょたは、これでも女暦半年以上である。
そんな彼女は胸元を大きく開放させて、豊満な胸の谷間を見せ付けている。
ある意味彼女は上手く女に適用しつつ、男心を忘れていないのである。


257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 08:00:55.88 ID:zHMNQo60
おっぱいよーなついな。
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 21:11:05.06 ID:7fTQ3UQ0
続きwktk
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/19(金) 19:31:00.69 ID:PwPYthMo
パー速復活したな
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/19(金) 23:12:49.10 ID:Mxrcpk6o
復ッ!活ッ!
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 18:04:01.86 ID:R8wO35w0
「女の子みたいな男の子って女々しいって言うでしょ?」
「そうだな」
「じゃぁ、にょにょしい子ってどんな男の子なのかな」
「あー……エロハプニングが発生しやすい奴……か?」
「そっか(ゴソゴソ)」
「女体化前の男の下着姿なんぞ吐き気がするだけなんだが?」
「ちゃんと女ものだよ?」
「余計悪いわ!」

実際にょにょしい子っていうのは男の子に使うのか?それとも女の子に使う言葉なのか?
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/26(金) 20:07:27.49 ID:eXQ7kgMo
どうだろな
女々しいは女のようだ だから
にょにょしいはにょたのようだ

つまりにょたこに近い振る舞いの生来女子では無かろうか
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 22:14:30.82 ID:MvCZruIo
にょにょしいとかグッとくるんだがGJ
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/06(火) 17:44:12.34 ID:GKWNVzAo
今VIPでTS流行ってるようだけど規制でレスできなくてくやしい
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/06(火) 21:50:08.50 ID:I1nIkxw0
まじで?
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/06(火) 23:32:12.29 ID:8NO48p6o
このスレの存在もちらっとふれられてたww
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/06(火) 23:39:38.36 ID:GKWNVzAo
あまりに同時過ぎて1人でやってるのかと思ったくらい

女「…女になってる…」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1270478601/

男「どうしてこうなった」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1270533969/

男「うわあああああああああ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1270535893/
268 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 05:46:45.60 ID:NjZilkAO

 ―――赤羽根探偵事務所。

 名前こそ立派だが、雑居ビルに押し込まれた狭っ苦しい部屋だ。
 入り口に直接繋がってる客間はまだしも、事務所兼寝室である奥の部屋は俺の女っ気の無さを象徴するみてぇに、トランクスやら靴下やらが乱雑に散らばっていて、他人から見れば安物ベッド以外に足の踏み場もない。
……昨日まで、そんな状態だったんだが。

 その生活が一変した。理由は言うまでもなく―――。

「……すぅ、……すぅ」

 ―――今、俺の安息の地で静かな寝息を立ててる俺の"妹"のせいだ。


 事務所の外に置いたまんま何年も新調してなかった洗濯機をフル稼働させた挙げ句、客間は客を招き入れられるような状態ではなくなった。
 好き好んで事務所を訪れた奇特な客は、漏れなく俺のトランクスと靴下で出来た何重もの暖簾トラップの餌食と仕組みになっている。未だに生乾きだから少し……いや、大分臭っせぇんだわコレが。

 煙草用の普段回んねぇ換気扇が、外の洗濯機よろしく昨日今日と終日フル稼働な理由もそれだ。

 んで、事務所にそんな大混乱を招いた当の本人は、ノラ猫みてーに毛布にくるまったまんま、今さっきまでガラス戸越しに俺を睨みつけてた。

 事務所兼寝室と客間の間には薄っぺらいガラス戸―――鍵なんて豪勢なもんはない―――しかない。プライバシーの欠片も無い。
 カラダが女になっちまった、そこそこのルックスの女子がンな状態でベッドで無防備に寝姿を晒すなんて無理がある。

 ……ちなみに、昨日もこんな感じだったな。

 今日との違いはただ一点。

 昨日は名佳も俺も、ある種の緊張状態にあったから四六時中起きてられたんだが。

「すぅ……すぅ……」

 見てのとおり、ついに体力の限界がきたらしく名佳は今さっき眠った。
 ……というよりオチた。

269 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 05:51:01.95 ID:NjZilkAO
 ただ、俺は眠る訳にはいかねぇんだよな……別に何もする気は起きねーけどよ。
 かと言ってアイツより先にグースカ寝ちまったら、最悪、逃げられちまう可能性がある。
 契約不履行で依頼金がパァになったら、財布的にかなり痛い。
 だから、今もこうして重たい瞼を無理矢理にこじ開けてる訳だ、が。
 ……くそ、眠ぃ………。

 ……いや、まぁ、文句を垂れても仕様がねぇのは分かる。

 いきなり、見知らぬ野郎との共同生活を余儀なくされて、はい、そうですかって素直に従うバカがどこに居るかって話だ。

 くそっ、楽な仕事だと思ったのに。

 内心でボヤきながら、赤ラークに火を点ける。
 朝の一服が、睡眠を求める脳みそにガツンと来た。
 初めて重てぇ煙草吸った時のガキか俺は?

「………ふぅう」

 ゆっくり、紫煙を吐き出してから無防備な寝姿を晒す名佳を見やる。

 ―――赤羽根 名佳。
 ―――"なのか"、ねぇ。

 フルネームを尻上がりに発音すると、なんか疑問系に聞こえるな。

 ………。

 そんな下らない考えが頭をよぎったのは、ここ二日間の寝不足のせいだろう。事務所の輪郭がボヤけた視界の中で、ぼんやり、そう思った。



  【赤羽根探偵と奇妙な数日-2日目-】

270 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 05:51:54.49 ID:NjZilkAO

 …………。

 …………。

 ………っ?

 ……やっべぇ、俺もいつの間にかオチてたらしい。
 さっきまで白むだけで、姿も見せてなかったお天道さんが、俺の座っているデスクをかなり鋭い入射角で照りつけていた。

 そこまで、ぼんやりとしたアタマで考えて、一気に血の気が引いたような音がした気がした。

 ―――今さっきまで、向こうの部屋のベッドで寝ていた筈の、名佳の姿が見当たらない。

 いつの間にか俺の身体には、アイツをくるんでた筈の毛布が掛けられてて、当の本人は蛻(もぬけ)の空。

「………クソったれがっ!」

 慌てて、イスに引っ掛けてた安物コートに羽織り、ドラマで一度は見たことがありそうな探偵のトレードマークである黒いハットを被り、俺は何重にも仕掛けられた暖簾トラップを潜り抜け、出入り口のドアノブに手を掛けようとした―――。

 ―――そん時だった。

 内側から見れば、引いて開ける仕組みのドアが俺の意志とはカンケー無しに勢い良く開き、

 ――――ゴンッ

 という鈍い音と共に、頭にヒットしたドアのせいで俺は身体ごと玄関に弾き飛ばされた。

「お……おぉ……ぅ」

 間違いなくコブが出来たな、こりゃ……。

「―――そんなトコで何悶えるんだアンタ?」
「……ヒトのドタマにドアお見舞いしといて、"何悶えてんだ"はねぇだろ……っ」

 俺にドアの一撃を放った犯人は名佳だった。
 その細い両手にはコンビニのビニール袋がいくつかぶら下がっている。

「……つーか、ドコ行ってたんだ?」
「買い物」

 事も無げに名佳は両手に持っていたビニール袋を乱雑に放り投げた。
 ……つーか事も無げに何言ってやがる。

「勝手に彷徨くんじゃねぇっつのッ!」
「……っ、オレの勝手だろ」

 ……しまった、つい声を荒げちまった。下手に名佳の機嫌を損ねたら、ここから出て行きかねねーぞ。
 それは、色んな意味でヤバい。とりあえず落ち着け、俺。
271 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 05:52:45.31 ID:NjZilkAO

 だが、俺の危惧など知る由もなく、名佳は不満げに口を開く。

「この部屋、なんにも食べるモノがなかったんだから仕様がないだろ」
「そっちの収納棚になんかあったろーが?」

 此処に越してきてから一度として使ったことのないキッチンの横を俺が指差すと、名佳は深ぁい溜め息を吐く。

「確かにあったよ、焼きそばパン」
「そらみろ―――」
「―――カビてたけどな。……いつのだよ、アレ」
「ぐ……」

 まだ大丈夫だろーと思ってたんだがな。……確か、1ヶ月前に。

「オレの"家族"は、カビてた焼きそばパンを食べろっていうのか?
 ネグレクトっていうんだぞ、それ」
「ネグ……なんだそりゃ?」
「ネグレクト。虐待の一種。
 衣服を洗濯しなかったり、食事を与えなかったりすることだよ。今ある育児虐待の約10%を占める社会問題で―――」
「―――だぁああっ! わぁった! わぁったから、どこぞロリコン官僚みてぇなテンションで喋んな、眠くなるっ!!
 ネグレクトだかネブラスカだか知らんが俺が悪かったっつのっ!」
「……そんなの知ってて当たり前―――っ」

 嫌味を言おうとした名佳の口がフリーズして、奇妙な静寂に事務所が包まれる。

「ンだよ、急に通夜みてーな面しやがって」
「……オレ、何偉そうなコト言ってるんだ?
 そんな知識よりも、もっとずっと……覚えていて当たり前なことも、忘れてる、くせに……」

 フェイドアウト気味に言って、名佳は俺よりも一回り小さな掌で自らの額を覆う。

「―――生きてりゃ、どうにかなる」

 俺は無対象に―――半ば、自分に言い聞かせるような言葉を呟いていた。

「無責任な慰めだ、そんなの」

 不貞腐れるように、名佳はそっぽを向く。心なしか、その背中は一回りほど小さく見えた。

「可能性はあんだろーが」
「可能性? そんな絵に描いた餅をぶら下げたところで何が出来るんだよ」

 怒りというには冷たく、悟った割には苛ついた言葉が背中越しに帰ってくる。
272 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 05:53:38.61 ID:NjZilkAO

「……はっ、それに自分が誰かを思い出したところで、今度は変わり果てたこの身体に絶望して首を括ってるかもな?」
「―――っ、てめーは考えられるだろ、動けるだろ、ふてくされられる感情があんだろっ、あぁっ!?
 思い出した所で自殺だぁっ? ふざけんのいい加減にしやがれッ!!」

 我に返ると、目の前には両腕で頭を多い隠すように縮こまる名佳の姿があった。
 俺の右手が、拳を固めて勢い良く振りかぶられていたからだ。

 ……何ガキ相手にムキになってんだ俺は。
 二日間寝てねぇだけでこうも苛つくなんてトシなのか、俺も。
 跋が悪くなって、名佳から身体ごと向きを逸らす。

「……悪ぃ、今のナシ、忘れてくれ。
 幸不幸の匙(さじ)加減なんざ、人それぞれ違ってて当然だ。
 自分の価値観を押しつけあってどーこーする方が間違ってんだ」
「………」

 名佳は俯いたまんま何も答えない。

 オイシイ仕事だと思ったが、共同生活初日からこんな調子じゃ一週間なんぞもつワケねぇよ。
 それに、コイツを守りきれる保証も無い。
 ……仕様がねーな。

「……おい」
「? ……や……っ!!?」

 俺は……意を決して、無防備に目を逸らしていた名佳を床に押し倒した。

 弾みで、昨日買った名佳用の衣服がバサバサと床に散らばる。

「なんだよっ、なんなんだよいきなりっ!!?」

 輪郭がハッキリとした綺麗な瞳が、驚きと困惑の色に染まる。
 コイツだって年頃だ、言葉を濁してはいるが"その先"のコトだって分かってんだろう。
 名佳の色白な頬が紅潮していくのが見て取れた。

「溜まってンだよ、俺。最近、オンナ抱いてねーから」
「知るか……っ、離せ、離せよっ!!」

 押さえつけた細い両腕が熱を帯びる。その心中にあんのは、怒りか、焦りか、または、無自覚な"女"としての羞恥心か。
 ……そんなコトに興味はねぇ。
273 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 05:57:34.52 ID:NjZilkAO
「……オレなんか、興味ないんじゃなかったのかよ?」
「さぁな。気持ちと下半身は別の生きモンだろ、男だったンなら分かるだろーが?」
「サイテーだなっ、アンタ……!」
「ありがとよ」

 鋭利な刃物を連想させるような恨み辛みの視線が向けられる。

「そう思えるんなら、まだてめーは真っ当な神経を持ってンだろ。
 ……やっぱお前は神代ンとこで預かって貰え。その方がいい」
「………」

 名佳のマウントポジションを取ったまんまの体勢で、強姦ごっこの動きをピタリと止める。

「アイツん家はいいぜ? 広いし、こんなとっちらかった部屋とは月とスッポンだ」
「………」
「こんな破落戸と暮らすより、よっぽどいいんじゃねーのか、安全性も、精神衛生面上にもよ」

 頷いたのを確認してから、俺は名佳を拘束していた両手を離す。

「……わぁったら、さっさと支度だ。
 こっちも一応仕事だ、送り届けるまでは一緒に居る、それまでは我慢してくれ」
「………。ああ」

 ……さて、この判断が吉と出るか凶と出るか。

「……?」

 それまで黙々と荷物をまとめてた名佳が不意に作業の手を止めた。
 その白い小さな手には、古ぼけた写真。
 ……って、それっ!?

「それ俺ンじゃねーかっ!? 返せっ」

 名佳から引ったくった写真に写っているのは、まだガキだった頃の俺と、肩を組んで屈託無く笑っているもう一人の少年。

「……ホモだ」
「違うわっ!!」
「じゃあショタ趣味?」
「だから違うっつってンだろがっ!!」

 ガキの頃の写真一つでどこまで想像が飛躍すりゃ気が済むんだっつの?!

「……どーだか」

 必死扱いてホモ疑惑を否定する俺をからかい飽きたのか、名佳は気のない返事をすると再びに荷物のまとめ作業に着手した。……言っておくが俺はホモでもショタ趣味でもねーからな。ノンケだからな。

「最初から、そんなことする気なんて無かったくせに」
「………」

 低い声で名佳が何か呟いた気がするが、俺は返事をしなかった。
274 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:06:39.50 ID:NjZilkAO
 ……そっから先は会話もなかった。
 ただ淡々と、ただ黙々と。
 昨日、買い揃えた衣服やら日用品やらを、嬢ちゃんがセレクトした紅色のスーツケースにまとめて。
 ついでに俺はとっちらかった部屋を片付けて。
 やたらと広くなった事務所に施錠をし。

「……んじゃ、行くか」

 名佳からの返事は無かった。
 ただ黙ったまんま、事務所への入り口を見据えていて動こうとしない。

「おい」
「………」

 最近のガキは何考えてんだかさっぱり分からん。
 ……ったく。

「野外プレイのが好みか?」
「……っ」

 俺が言うと、名佳は逃げるように先を歩き出した―――。

「……[ピーーー]ば?」

 ―――と、離れた位置で毒づいて。
 おい、ビビるのか挑発すんのかどっちかにしてくれよ、面倒くせぇ。

 ……ま、恨まれるのなら仕事柄慣れている。一々気にしてたらストレスで禿げちまうからな。
275 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:08:42.18 ID:NjZilkAO

 ……兎に角、漸く俺らは委員会のあるビルへの道を歩き出した訳だが―――。

 ―――その、道中のことだった。

「―――路上喫煙は罰金刑」

 汚らしい街並みを、通夜みてぇな面をして並んで歩いてる俺達に、空気を読まずに高圧的態度と高周波な音階で話しかけてくる女の声がした。
 目を向けると、フェンダーミラーの黒塗りの車から、相変わらずの童顔と背丈、そしてハニーブラウンの長い髪を拵えた女が降りてくるのが見える。

 ……こんな時にツイてねぇ。赤ラークを堪能してるとこを厄介な奴に見つかっちまった。

「……ンだよ、"ゴロリン"か」
「―――"ゴロリン"言うな、バカバネっ!」

 端から見ればフォーマルスーツに着られた女子中高生くらいのガキが俺に突っかかって来る珍妙な構図が出来上がる。
 ……信じがたいコトだが、下手すると名佳よりも年下に見えるコイツは、新宿区警察署捜査一課の新人の女刑事だ。

 本名が言いづらいってことで、俺が"ゴロリン"ってあだ名を付けてやったんだが、気に入らないらしい。

 ―――コイツとは、交通課の頃からの知り合いで、キッカケが何だったかは忘れちまったが第一印象は最悪だった。
 それ以来、俺が何らかの仕事で出場ってくると大抵コイツが立ちふさがる―――所謂腐れ縁って間柄だ。
 普段なら、コイツの"保護者"が場を収めてくれるンだが……。

「けほっ、けほっ。あー煙い煙い」

 ……大仰に咳き込む振りをしながら俺を睨みつけるコイツを見るあたり、今は保護者不在らしい。
 相変わらずイヤミな奴だ。
 致し方なく俺はジャケットの内ポケットに仕舞いっぱなしになってたソフト携帯灰皿に、まだ半分以上残ってる赤ラークを突っ込む。
 ……あぁ、勿体ねぇ。

「ふぅ………拝島は一緒じゃねぇのかよ」
「呼び捨てにすんなっ! 年上でしょ拝島さんは!!」
「少なくとも俺はてめーより年上だぞ、ほれ、敬え」
「ばっかじゃないのっ!? 誰がバカバネなんか敬うもんですか!」

 ―――誰がバカバネだ、コラ。

「それに、アタシがいつまでも拝島さんにおんぶにだっこだと思ったら大間違いなんだからねっ!」
276 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:14:59.36 ID:NjZilkAO
 勢い良いゴロリンの啖呵を最後に、しばしの間、街頭ノイズが俺達三人を支配する。

「………微笑ましいな」
「……うん」

 顔を見合わせた名佳と初めて意見が一致した。

「二人してアタシが拝島さんにおんぶやだっこされてるトコを想像するなぁっ!!」

 冗談はさておいて。―――車には、拝島の姿は無い。
 ンだよ、新宿区警察イチの問題児を放ってどこ行ったんだぁ、あのオッサン。……はぁ、面倒くせ。

「んじゃな、急いでんだよ俺達は―――」
「―――待ちなさいよっ」

 ゴロリンが俺の二の腕にぴょんと飛びついて来た。身長差の関係で肩まで手が届かねーらしい。……本当に面倒くせー女だなっ。

「そっちの女の子、誰?」

 ゴロリンが、俺の腕にひっつきながら名佳を指して言う。……鬱陶しいな、てめーは俺の古女房かなんかかよ。

「……答える必要あンのかよ」
「っ、あるわよ、答えなきゃ未成年者略取、児童買春の疑いで逮捕するわよっ!?」
「うっわ、うぜぇ」
「サービスで公務執行妨害の現行犯も追加して欲しい?」

 本心を言っただけなのに、なんだこの権力の横暴は。

「……赤羽根……なの、か、です。兄が……その、いつも、お世話に……なっております」

 なんて誤魔化そうか考え倦ねていると、おずおずと名佳は口を開き、ゴロリンに頭を下げた。……ったく、そんな建て前なんざどうでもいいのに律儀な奴だな。それに、"お世話"になったことなんざねぇぞ、少なくともコイツには。

「……へぇ、妹さん?」
「は、はい」

 ゴロリンの興味のベクトルが名佳に向いてくれたお陰で、漸く、右腕の過負荷が無くなる。

「末っ子?」
「え、はい……まぁ」

 ゴロリンは名佳を嘗めるようにジロジロと見つめる。しばらくすると満面の笑みで――

「二人ともお兄さんに似なくて良かったねっ」

 ―――と、名佳の肩をパシパシと叩いて笑うゴロリン。……チッ、余計な事言いやがって。
277 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:17:52.04 ID:NjZilkAO
「オイ、さらりとロリータスマイルでひでーコト言うなよ、失礼だろが」
「なっ、どっちが失礼よっ!?」
「間違いなくゴロリンだろ」
「だからゴロリン言うなぁっ!!」

 ……はあ。何が悲しくて、見た目は中高生の女刑事と路上コントまがいな事をしなきゃなんねぇんだか。

「あーもぉっ、そんな事よりっ! ……アンタ、この近くのアパートの火事があったの知ってる?」
「あン?」

 そう言うと、ゴロリンは目の前で腕を組みながら鋭い視線で訊いてくる。
 ……一昨日、この辺に設置された街頭ビジョンで見た臨時ニュースの事か? 此処から現場が近いトコだったか。

「あぁ、火事で野郎が一人おっ死んだアレだろ? おーやだやだ、焼け死になんざ痛そうじゃねーか」
「……火事……?」
「残念だけど、焼死じゃないんだよね。
 直接の死因は、……コレ」

 そう言って、ゴロリンは右手をピストルの形に見立てて自らのコメカミに突き付ける。
 おいおい、んな物騒な話をガキの前ですんなって。

「……ニュースじゃやってなかったぞ。いいのかよ、ンな機密事項垂れ流して」
「……い・い・の! どーせ、今日の夕方には正式に発表されるし」

 いや、そういう問題じゃねーだろ。
 可愛い子ぶりっ子したって誤魔化されねーぞ俺ぁ。

「……け、拳銃……?」

 ほら、名佳もビビっちまったじゃねぇか。
 でもまぁ、俺好みの―――文字通りのキナ臭さも後押ししてくるせいか、頭で考えるよりも先に口から質問が飛び出していた。

「……拳銃で撃たれた後での火事、ねぇ」
278 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:22:23.61 ID:NjZilkAO

「……事故や自殺だってんなら、事件から丸二日以上経ってんのに捜査一課の刑事が熱心に聞き込みなんざする筈ねぇよなぁ?」
「―――勘違いしないで。アンタに捜査協力して欲しいなんて一言も言ってない」

 低身長にはアンバランスなハニーブラウンのロングヘアを靡かせてゴロリンは言う。
 ……否定しないっつーことはだ。
 要するに警察はこの案件を放火殺人事件として捜査してるんだな。
 ま、コイツが俺に知恵を貸せなんざ言うわけねぇし、興味が湧いたら詳しい経緯を拝島のオッサンにでも訊いてみるか。

「そうかい。んじゃ俺にはカンケー無いね」
「そう、言い切れる?」

 話を打ち切ろうとした途端に、妙な含みを持たせた言い方でゴロリンが詰め寄ってくる。
 ……まるで、俺がその事件に関係を持ってる確信があるみてーな口振りだ。

「気を遣うのもアレだから、この際はっきり言っとく。
 今度の事件、アンタも容疑者候補の一人だから」
「はぁっ!!?」

 写真一枚で俺にホモ疑惑をかける名佳といい、ゴロリンといいなんでそんな突飛な発想に行き着くんだよ最近のガキはよっ!?

「……バカじゃねーの? つーかバカだろお前」
「一応訊いておくけど、一昨日の午前2時頃、アンタ、何処に居た?」

 人の話、聞いてねぇな。

「事務所で寝てたっつの」
「それを証明―――」
「―――出来るわきゃねぇだろっ」
「妹さんは一緒じゃなかったの?」

 不意に名佳にゴロリンの視線が向けられる。
 ……マズい。
 何度か警察とやりあってる俺ならまだしも、コイツは素人だ。
 下手な受け答えをしたら痛くもねぇ腹を探られるコトになる。

「コイツがこっちに来たのは一昨日の20時頃だから証明なんざ出来るわけねぇよ」
「……ふぅん」

 ……あっぶねぇ。
 アドリブで受け答えした割には上手くいったな。少なくともこれで名佳に疑いが掛かることはない。
 後は俺に掛けられた疑いを晴らすだけでいいだろう。
279 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:24:03.23 ID:NjZilkAO

「そもそもだ、何で俺が名前も知らねーような野郎を殺さなきゃなんねーんだよ」
「……神代 宗」
「あ?」

 そこで、なんでアイツの名前が出てくるんだ?

「警察は身元不明なんて発表してるけど、とっくに身元なんて判明してる。……その情報を止めるように指示したのはアンタと関わりのある――あの人なんだよ」

 ゴロリンは、悔しそうに唇を噛み締めながら呟く。一応、キャリア組でありながら圧力や権力という言葉を嫌うゴロリンらしい反応だ。
 ……って、ちょっと待て。

 神代家がいくら凄ぇ権力を持ってたとしても、警察の発表より早く事実を知っていなければ被害者の情報なんざ、せき止めようが無い。
 つまり、だ。
 少なくとも神代は被害者が殺された事を―――または被害者に何らかの異変があった事を明るみに出る前に知っていたってことになる。

「……誰なんだよ、その殺された"被害者"って」
「言ったでしょ。その情報は警察から発表することを止められてるの。これは、お互いの組織の信頼に拘わる問題だから」

 感情を押し[ピーーー]ように、女刑事は言う。そういう顔はちゃんと大人びて見えたような気がした。
 ……流石に、公僕が特記事項を漏らすような真似は出来ねぇか。

「ま、被害者が誰かは知らねーけど、あのロリコン官僚を経由して俺が疑われてンのは分ぁったよ。……ただな、一つだけ言っとく」
「後学の為に聞いてあげる」
「てめーの正義の為だけに好き勝手動いてたんじゃ、いつかしっぺ返しを喰らうぞ」
「っ……ご忠告、どうも」

 どうやら俺は知らず知らずの内にガンを飛ばしてたらしく、ゴロリンは怯んだ自分を見せないようにそっぽを向いていた。
 ……話を切るなら今の内か。

「……行くぞ、名佳」
「あ……うん」

 俺達は、ゴロリンに背を向けて、再び委員会のあるビルの方へと歩き出した。

「………次に路上喫煙見つけたら逮捕だかんねっ!」

 背後で恨みがましい声が聞こえた気がしたが、俺は聞こえない振りをして先を急いだ。
 つーか路喫って罰金刑じゃねぇの? てめーで言ってたくせに。

 ったく、余計な道草を食っちまった。
280 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:26:44.38 ID:NjZilkAO

「……なあ」
「あン?」

 仏頂面で名佳は訊いてくる。さっきまでのしおらしい態度が嘘みてぇだな。
 ………いや、十中八九嘘なんだろーけど。

「あの刑事さん、名前なんていうんだ?
 まさか……あのあだ名が本名なワケないよな?」

 あー、ゴロリンのコトを言ってんのか。勿論、本名なワケない。

「宮前 芽依(みやまえ めい)だ。言いづれぇからゴロリンって呼んでる」
「……本名となんの関係性もないあだ名だな」
「そりゃそうだろ。アイツの見た目で決めたあだ名だからな」
「……見た目?」
「"合法ロリ警官"の略だからな」
「………っ」

 ……今、名佳の奴、笑わなかったか?

「……勿体ねーな」
「……? 何がだよ」
「なんでもねーよ」
「………変な奴」

 お前にだけは言われたくねぇよ。
281 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:38:19.57 ID:NjZilkAO
――――
―――
――

「申し訳ありません。只今、神代は席を外しております」

 漸く辿り着いたロリコン官僚のネグラの一階。
 そのフロントに居た受付のねーちゃんにサラリと言われ、俺はガクリと頭を垂れた。

「嬢ちゃん―――秘書の坂城 るいも居ねぇの?」
「お答えしかねます」

 受付のねーちゃんが慇懃無礼に即答する。

「……アンタが不審者みたいだから受付は答えてくれないんじゃないの?」

 そして、俺の横でサラリと毒づく名佳。

「余計なお世話だっつの。……あ。
 あーそうだ忘れてた」
「……なんだよ」
「向こうさんにも事情があるんだよ、イロイロ」
「……ふぅん」

 ……一応"私設秘書"っつー扱いで籍を置いちゃいるが、嬢ちゃんはまだ高校生だ。
 委員会は厚労省直轄の公的機関だし、嬢ちゃんの存在は世間的によろしくねぇってことで一般人には知らぬ存ぜぬを通してるんだった。
 体面を繕うのも大変だな。

 ……ま、急ぐワケでもねぇし、事務所で気まずい思いをしながらダラダラ過ごすよりはまだマシか。

「……んじゃ、気長に待たせてもらいますかね」
「……」

 拭いきれないぎこちなさを抱えたまんま、誰も座っていないフロントの長椅子に向かおうとした―――そん時だった。

「―――あれあれっ? こんなお堅い場所でなーにしてるんですか、おっふったっりさんっ!」

 飛びハネたような歩調を体現したような可愛らしさをまとった声が、入り口から飛んでくる。

「坂城……さん」

 トレードマークの青いリボンで結ったポニーテールのおかげか、遠目からも分かる。
 嬢ちゃん―――坂城るいだ。……つーか、仮にも自分の仕事場を"お堅い場所"なんて言ったら他の職員に睨まれるんじゃねーのか?
 どうやら高校の帰りらしく、制服姿で学校指定の鞄を肩から下げていて、音楽を聴いてんのか両耳にハマったイヤホンをしきりに弄っている。
282 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:42:37.13 ID:NjZilkAO

「ん?」

 その嬢ちゃんの両サイドに、見慣れない男女二人の姿。

 ブリーチを失敗したみてーな斑な茶髪が痛々しい学ランのガキと、嬢ちゃんと全く同じセーラー服を着ている女子。
 ……嬢ちゃんのクラスメートかなんかか?

 そこに神代の姿はない。くそっ、相変わらず大事な時に空気を読まねぇな、あのロリコン。

「よぉ、19時間ぶりくらいか?」

 嬢ちゃんだけが俺達に駆け寄ってくる。他の二人は少し離れた場所で何かを話してるみたいだが……まぁ気にするだけ無駄か。

「……ごめん、ひーちゃん、初紀ちゃん。先に行っててっ、すぐ戻るから!」

 何かを察したのか、スカートをふわりと翻して嬢ちゃんは連れの二人を促した。
 高校生の男女二人組は顔を見合わせた後に、こくりと頷いて、奥のエレベーターに乗り込んで行く。

「……あー。あの子達は私と同じ"被験者"ですよ」

 嬢ちゃんはイヤホンを片耳だけ外しながら、俺の質問の先回りをするように平坦な口調で答えた。……曲を止めるつもりはないのか、もう片方のイヤホンとプレーヤーをしきりに気にしながら。

「いや、まだ何も言ってねぇんだが」
「目がそう言ってますよ?」

 ……まぁ、確かにフツーの高校生が役場やら病院やらをすっ飛ばして、いきなり異対(異性化疾患対策委員会)の本部に来るわけはねぇから、気になってたっつーのは事実だが。
 なるほど、嬢ちゃんと同じっつーことは、あの二人も運悪くレアな貧乏くじを引いた不幸なヤツってことか。南無。

「で、どうしたんです? 二人してクマなんて作っちゃって?
 あ、もしかして……一線越えちゃいましたか? 一戦交えちゃいましたか?」
「「越えてないし交えてないっ!」」
「あはははっ、相変わらずのシンクロ率ですねっ」

 嬢ちゃんがしたり顔で言った冗句があながち間違ってないのが怖い。例え本気じゃなかったにしても、だ。
 ……あーもうっ! 今はそんな冗談に付き合ってる場合じゃねぇだろ。
 さっさと本題を切り出そう。
283 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:45:58.76 ID:NjZilkAO

「あのよ―――悪ぃがこの仕事、降りようと思ってよ。コイツも嫌がってることだしな」

 俺は努めて事も無げに言ってのけた。
 ……嬢ちゃんは、ほぼ無反応のまんま何も言わないで居る……そのまま無拍子に殴られそうで少し怖ぇ。

「ホントに?」

 漸く口を開いた嬢ちゃんの質問は、意外にも平静さを持っていて、少し驚く。
 昨日の今日だから、食ってかかられるのも覚悟のつもりだったんだが……何だか拍子抜けしちまうなぁ。

「ああ、マジもマジ、大マジ―――」
「―――"オジサン"には訊いてません」
「っ」

 ……おぉ、恐ェ。
 ……どうやら、嬢ちゃんの平静さは名佳に用意されていたものだったらしい。
 今、捕食する猛禽類の目をしてたぞ嬢ちゃん。マジで殺されるかと思った。

「ねぇ、なのちゃん。答えて?」

 名佳に視線を戻す一瞬で、嬢ちゃんはまた菩薩みてぇな優しい表情に戻る。
 ……なんつー変わり身の速さだ。

「……」
「なのちゃん、お願いだから」

 答えあぐねている名佳を見て、嬢ちゃんは優しい声色と懇願するような声で言葉を繋げる。
 ……名佳が腹の底で何を思ってんのか知る由もねぇけど、少なくとも嬢ちゃんの期待する答えが返ってきそうにないことだけは俺にも察しがつく。

「……ごめん」

 しおらしげに、一言添えて嬢ちゃんに頭を下げる名佳。
 本心かどうかさておいて、事務所での時よりはマシな反応で、俺は内心で安堵の溜め息を吐いた。

「そっかぁ……」

 ……それでも敏腕秘書サマにとっちゃあ厄介事に変わりねぇんだろう。
 悩む時の癖なのか、嬢ちゃんは前髪の指先で巻き付けながら天井を見つめている。

「……でも、坂城さんが条件を飲んでくれたらもう少し頑張ってみようと思う」

 まるで嬢ちゃんの困り果てた表情を待ってたみてぇに、名佳は間髪を入れずに口を開いた。

「―――」

 ん……何だ?
 今、名佳の奴、嬢ちゃんには見えないように、俺に何か口パクで言わなかったか?

 ………"悪い"?
284 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:48:13.88 ID:NjZilkAO

「えっ、何だろ? 言ってみてっ、私に出来ることだったら協力するからさっ」

 嬢ちゃんにとって名佳の言葉は渡りに舟ってとこだったんだろう。困り果てた表情が途端に明るくなる。

「オレの質問に……答えて欲しい」

 ―――その言葉で、俺は漸く名佳の真意を悟った。あんにゃろ……俺とほぼ同じコトを考えてやがったのか。
 ……くそっ、先を越された。
 さっき名佳が口パクで言った"悪い"ってこのコトかよ!?

「質問?」

 コトの成り行きを知らない嬢ちゃんはキョトンとした表情で首を傾げてみせる。

「簡単なコトだよ。何でオレは警察とかに届けられてないんだ?」

 ……あーあ。言っちまった。

「……っ」
「どう考えても、こんなの異常だと思うんだけど」

 名佳の言う『こんなの』っつーのは、恐らく異対のとる自分への待遇のことだろう。

 組織のトップが異性化疾患に対して御執心だからっつってもだ。

 ケーサツに届けも出さずに自前の魔法のカード(金)から保護費用を捻出するとか、
 赤の他人で―――しかも男一匹で暮らしている俺を保護者に指名するとか、
 いきなり学校への編入手続きをするだとか、
 ……身も蓋もなく言っちまえば名佳の言う通り、異常そのもの。
 記憶を喪ったガキだって、ちっとアタマを使えば分かる話だ。

 ……だが、問題はその次だ。

「女になったからとか、記憶を喪ったとかじゃ、説明が追い付かないことだらけじゃないか」

 今のところ、女になったから記憶を喪ったっつー明確な根拠が無い以上、あのロリコンが……異性化疾患の"被験者"として扱うとは考えづらい。
 万一、名佳を被験者として扱う仮定で考えたとしても先程挙げたような違和感は残る。

「その理由を訊かない限り、オレは―――」

『実は、私もよく分かってないんです』
『あン?』
『いくら私設の敏腕秘書を自称しても肝心なコトは私に流れてはきません。
 ……当然、ですよね。一介の女子高生に与えられる情報量なんて、大したコト、ないんですから』

 不意にデパートでの嬢ちゃんとのやりとりを思い出す。

 ……そこに、妙な違和感を覚えた。
285 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:50:48.88 ID:NjZilkAO

「なっと―――んぐっ!?」
「―――そーガッつくなよ」

 畳み掛けるような名佳の詰問を遮ることにする。……無論、物理的にだ。

「んーっ! んぅーんっ!!」

 俺の両手に塞がれた小さな口が何を言おうとしてるのかさっぱりわからんが、とりあえず俺を非難するような罵詈雑言だろう。聞くだけ無駄だ。

「悪ぃな嬢ちゃん。その質問、今は答えなくていいわ」
「は、はいっ!?」

 内心では、俺が名佳を使ってコトのあらましを聞き出そうとしてると踏んでいたのか、嬢ちゃんはオクターブ高い素っ頓狂な声をあげる。
 ……いや、正直俺も気になってたんだが今、その話をすんのは得策じゃない。

「んーぅっ!」
「ちっと黙れ。てめーの訊きたいことは後にしろっての」

 辺りを見回すがそれらしい姿は無い。
 ……クソっ、何でそこまで考えが回らなかった?

「んーぐぅっ!!」
「いっつっ!!?」

 右手の平に激痛が走る。……名佳のバカが噛みつきやがったからだ。
 おー痛ぇ……歯形がくっきり残ってら。

「けほ、けほ……っ、何する……――――!?」
「―――なぁ、嬢ちゃん。最近、その音楽プレーヤー、調子悪くねぇ?」

 抗議する名佳を無視して、俺は嬢ちゃんの片耳にハマったまんまのイヤホンを指差した。
 嬢ちゃんに思い当たる節は……あるみてーだな。
 名佳は相手されないのが不服なのか、そっぽを向いている。

「……よく、分かりましたね?」

 嬢ちゃんの持ってる音楽プレーヤーは少し古いものらしく、メインのプレーヤーにワイヤレス機器をくっつけて情報を飛ばし、小型の受信機にイヤホンをくっつけて曲を聴くっつー仕組みになっているらしい。
 その証拠に、嬢ちゃんの首にぶら下がってる機器はサイコロみてーに小さい。操作出来るのは、せいぜいアナログなスイッチのオンオフくらいだろうな。
286 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 06:53:32.23 ID:NjZilkAO

「しきりに耳を気にしてたからな」
「へぇ、伊達に探偵さんやってませんね。ちょっぴり見直しました」
「惚れ直したの間違いだろ?」
「………。昨日からイヤホンから偶にノイズが聴こえてくるんですよ」

 俺の渾身の冗句を半周も年下の女の子にスルーされた。……いや、凹んでる場合じゃねぇんだけどよ。

「……"偶に"っつーか、主に登下校中とか、こっちに来る時だろ? それ以外はフツーに聴ける筈だ」
「そんなコトまで分かるんですか?」

 嬢ちゃんは目を丸くしている。……どうやら当たりらしい。

「……十中八九、原因は"それ"だな」
「ちょっ、赤羽根さんっ!?」

 俺は嬢ちゃんの肩から下がってる学校指定の鞄をひったくり、中身の物色を始める。

「もぉっ、何ですかいきなりっ!? プライバシーって言葉知ってますかっ!!?」
「知ってっから今、こーしてんだろーが」
「え……っ?」

 鞄のファスナー付近を調べていた指先に何か小さなものが当たる感覚。
 この感触は……ビニールテープか? 乱雑に貼り付けられたのか、そこかしこに気泡のような凹凸。
 ……兎に角、剥がしてみるか。

 ―――すると、接着面に張りついた4センチくらいの黒い長方体が白日の下に晒される。

「これ……!?」

 ……ビンゴみてーだな。

「コイツは嬢ちゃんの持ち物か?」
「……違いますね」

 その物体の正体に気付いてるのか、嬢ちゃんは嫌悪と驚きが入り混じった表情を浮かべていた。

「……なんだよ、それ」

 成り行きだけは聞いていたであろう名佳が、好奇心に負けて振り返る。……が、その正体は分からないらしい。
 ……ま、身近なトコに存在するような代物ではないから致し方無いんだが。

「いいから見てろ」

 俺はその黒い長方体を床に落とし、そのまま全体重を掛けてそいつ踏み壊す。

「な……っ!?」

 そん中から、緑色の基盤、剥き出しになった丸い機械、そして、一昔前のポケットゲームに使ったような極小のボタン電池が姿を現した。
 ……どうやら間違いなさそうだな。
287 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/04/07(水) 07:08:06.66 ID:NjZilkAO

「小型の盗聴器だ。
 恐らくコイツが発する電波障害でイヤホンにノイズが入ったンだろう。
 ……問題は、"いつ、どこで"そいつが仕掛けられたって話だが」
「……あっ」

 嬢ちゃんと名佳は多分同じキッカケを思い付いたんだろう。
 二人して顔を見合わせている。

 ―――デパートであった、ひったくり事件。

「盗られたモンは無かったってコトであん時スルーしちまったのがアダになったな、嬢ちゃん」
「………っ」

 流石の嬢ちゃんでも皮肉を返す余裕無しか。
 おー、嬢ちゃんが奥歯を噛み締める音がこっちにまで聞こえてくるわ。
 虚勢は張ってるが、所詮は思春期真っ只中のお子様だっつーコトか。
 まぁ、ちっと予定は狂っちまったが、あの口の堅い野郎を呼び出す手筈は整っただろう。

「さて、アタマの回転が早い敏腕秘書様なら理解してンだろ? 俺が言いたいコトが」

 嬢ちゃんは、真顔でコクリと頷く。
 ……その真横で一人、話の真意を読み取れずに、自分は蚊帳の外だと言わんばかりの名佳が不貞腐れていた。

「まぁ経緯はどうあれ、てめーの目的は達成したんだ。そーイジけんなよ。名佳」
「……イジけてなんかないっての」
「……どーだか」

 俺は名佳に言われた事をそっくりそのまま返してやった。

 さぁて、どんな裏事情が飛び出すことやら。


【赤羽根探偵と奇妙な数日-2日目-】


   完
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/07(水) 07:09:30.28 ID:NjZilkAO
ごめんなさい。エロ盛り込めませんでした。死にたいです。
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/07(水) 08:13:21.79 ID:q.Yq02ko
イイヨーイイヨー
盛り上がってまいりました!
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/07(水) 09:01:04.56 ID:RsFoheoo
青色さんは頑張るのぅ 乙乙
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/16(金) 03:24:07.58 ID:AJS6rAAO
パー速復活キター
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/16(金) 03:39:12.95 ID:iA6uNC.o
>>291
も、もしや・・・
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/20(火) 01:16:13.14 ID:MNqJdN6o
乙乙まじ乙
いいねー
本当に盛り上がってきた
楽しみだ

俺も久しぶりに書きかけを・・・
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/23(金) 04:21:22.17 ID:eKeaTl6o
OK牧場
295 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/05/07(金) 23:30:40.06 ID:41nH6AAO
 現実逃避がてらに今作の登場人物の紹介文を作ってみたり。


 ・赤羽根 真司(26)

 雑居ビルの一室に構える探偵事務所を経営する若い探偵。
 事務所の所長という立場にあるが、従業員はゼロ。
 荒っぽい口調と下品な会話センスで誤解されがちだが、冷静で、鋭い観察眼と頭の回転の早さを持ち合わせており、探偵としてのスキルや知識は一通り備わっているが、世相には疎い。
 普段からハードボイルドを気取っていて、黒い帽子と安物のコートを一年を通して一張羅として愛用している。
 趣味はパチンコだが収支はズタボロで常に金欠病。
 ヘビースモーカーで、愛用の煙草は赤ラーク。

・赤羽根 名佳(なのか)(??)

 素性が一切謎の黒髪の少女。
 自分に関する記憶が一切なく、自分の名前も覚えていない。一人称が"オレ"なことから、ごく最近異性化疾患が発病した患者だと赤羽根から推測される。
 名前も覚えていないため、仮称として一週間の間、赤羽根の被保護に入るという意味合いで"赤羽根 なのか"と名乗る。
 年齢差が微妙な為、兄妹だと名乗るが、見掛けだけだと親子に近い。
 歯に衣着せぬ性格で赤羽根を手玉に取ったりする一面も。
 赤羽根曰く"黙っていれば美人"と言わしめる容姿の持ち主。

・神代 宗(??)

 15〜16歳の性交渉未経験者の男子が発病する"異性化疾患"。それを管理する"異性化疾患対策委員会"の委員長代理を務める男性(委員長は現在空席となっている)。
 赤羽根 名佳の名付け人でもってある。
 政財界の名家の出身であるが、過去に医師職に従事し、数年の間"委員会"の資料係を経由して現在の職に就く、という官僚にしては珍しい経歴を持つ。
 委員会の長代理として、探偵に仕事を依頼することがしばしばあり、赤羽根と接点を持つようになった。
 年齢は赤羽根より年上の筈だが、それにそぐわない甘い風貌を持ち、女子高生である坂城 るいを私設秘書に置いていることから、赤羽根からは"イケメンロリコン"や"坊ちゃん"の蔑称を付けられている。
 軟弱な優男のように見える容姿とは裏腹に、実戦空手の段位を取得しており、赤羽根曰く"マジ喧嘩になったら殺される"程の腕前。
296 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/05/07(金) 23:37:45.63 ID:41nH6AAO

・坂城 るい(16)

 委員会の長、神代 宗の私設秘書を務める女子高生。青いリボンで結った短めのポニーテールがトレードマーク。
 人懐っこい可愛らしい笑顔に騙されてがちだが、彼女も異性化疾患の元男。
 その柔らかい物腰と見た目とは裏腹に強気で、強情な性格をしており、大人とも渡り合う話術の才を持つ。
 それ故に神代を除く他の委員会役員と対立することもしばしば。
 空手道場を営む"御堂家"に下宿しており、本人も空手を習っている。
 自分と重なるせいか、異性化疾患に冒された人間を見ると色々と世話を焼きたがる傾向がある。名佳もその例外ではない。
 神代曰く、"経験を積めば委員会の長を任せられる器"だとのこと。

・御堂 初紀(16)

 坂城 るいが下宿している御堂家の一人娘。彼女も突発性の異性化疾患に冒された元男。セミロングの艶やかな髪と細身のスタイル、そして母親譲りの整った顔立ちで、実家の営む空手道場の看板娘の一人として貢献している。
 るいよりも空手歴は長く、体躯に恵まれないものの、その脚線美から放たれる足技は大の大人でもノックダウンさせる破壊力を持つ。
 良くも悪くも常識人で、周囲に対して挑戦的な態度を執ってしまうるいを窘める場面もしばしば。
 神代とも個人的な面識があり"宗にい"と彼を呼称する。
 ある少年を巡って、るいと争っているらしいが、意外と悶着は少ない。
 最近の悩みは母親が趣味で縫うコスプレまがいの衣服のマネキン役にされてしまうこと。

・前田 陸(16)

 神代が"とある切欠"で知り合った、異性化疾患に対する抗体(16歳の誕生日を過ぎても男で居られる)を持つ少年。
 まだらな茶髪と、人を寄せ付けない切れ長の目がトレードマーク。
 坂城 るい、御堂 初紀と同じ学校に通っており、互いに交遊がある。
 バイクの免許を取得しており、レーサー顔負けの運転技能を持つが、現在はとある理由でバイクに乗ることを自粛している。
 義理堅く、短気で実直な性格。
 自らをバカだと自称しているが単純に知識に疎いだけで、直感力と観察眼は赤羽根に勝るとも劣らない。
297 :青色1号 [sage]:2010/05/07(金) 23:40:52.55 ID:41nH6AAO
 本編、そろそろ投下予定ですが諸々迷ってます。このまま赤羽根の視点で行くべきか、なのかの視点でも書くべきか……。
 ご意見頂ければ幸いです。
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/08(土) 00:25:36.38 ID:CZquUUUo
赤い羽根募金視点に1票
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/12(水) 00:26:28.60 ID:.1aWtPw0
どちらでも書きやすい方でお願いします
続きwktk
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/12(水) 08:02:25.06 ID:ls5FA.AO
童貞が悪口になる現実は何なんだろう(´・ω・`)
恋愛弱者は高校卒業後に生涯劣等感に苦しむ(´・ω・`)
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/12(水) 11:26:12.11 ID:TODHMP60
「ぼく、分かったんだ」
「何が?」
「女の子と仲良くなれなかった男の子が女体化するのって
 男性として不適合だったから……みたいに言われてるでしょ?」
「うん、女体化後に男の子とお付き合い始めるにょたっこっていっぱい居るね」
「そうすると世の中に女の子が増えて余っちゃうよね?
 でも、女の子が男体化することはないでしょ?」
「そういえばそうだね……」
「だから自然界のバランスを考えると……にょたっこは女の子と付き合うのが正しいんだよ」
「そ、そうなる……の?」
「つ・ま・り、女体化というのは同じ姿に変態する事で女性と親密になるための生理現象だったんだよ!」
「ナ、ナンダッテー!?」
「そういうわけで女ちゃん、ぼくと楽しいコトしよう?」
「にょ、にょたちゃん、ちょっと待って」
「ぼくのこと、キライ?」
「う……にょたちゃん可愛いし頼りになるし良い匂いするし優しいし理想のお友達とは思うけど……」
「元オトコだから、女の子同士がどうすればいいかも知ってるよ……だいじょぶ、ぼくに、任せて」
「はぅ……そんな……らめぇ……」

みたいなのを誰か何とかしてくれ
302 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:38:51.30 ID:nA8LAQAO
 【赤羽根探偵と奇妙な数日-3日目午前-】

 ―――辛うじて人と人との間から引き抜いた左手の腕時計を見やる。
 午前7時13分。正確に言うならもうちっと早い時刻か。
 ……あー、クソ眠ぃ。
 結局、昨日も延々とロリコン大先生のよく分からん講義に付き合わされて殆ど寝てねぇんだぞ畜生。
 なのに……何が悲しくてリーマンやら学生でごった返す乗車率250%オーバーの満員電車で、ハンバーグの気分を味あわなきゃならねーんだかな、ったく。

 両手両足の動きも制限された車両の中、俺は中刷り広告のキャミソール姿のグラビアアイドルに向けて小さく溜め息を吐く。
 ……その微かな音に反応したブレザー姿の少女が俺を睨んできやがった。

『嫌なら帰れよ』

 俺の歩幅で約7歩ほど離れた位置に居るそいつが、目でそんなようなコトを訴えてくる。
 つーか、こっち見んなっつの。何のために離れて同じ車両に乗ってるんだと思ってンだ?
 俺の危惧なんざ露知らず、名佳はつんけんとした態度のまんま再び窓に視線を戻す。
 ったく、思春期真っ只中のガキの保護者っつーのは、こんなダルいモンなのか?
 ……当分、独身でいいわ俺。


 ……俺がこんなとばっちりを受けてんのは他でもない、神代を始めとする異対委のせいだ。

 ―――ぼんやりと昨日のコトを反芻する。

303 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:41:18.65 ID:nA8LAQAO

『っ……大体の話は訊いた』

 平静を装ってはいるが、肩で息をしている様を見る限り、濃縮された予定の殆どをキャンセルして文字通り、すっ飛んで来たんだろう。珍しく額に汗まで浮かんでやがる。
 委員長室のソファでダラダラとしていた俺を見るなり、神代は呻くみてーに呟いた。

『そーいきり立つなよ。コイツまでビビって固まってンだろーが』

 ビビってない。そう言いたげな名佳の視線が横から飛んでくる。
 その視線を無視して、俺は先ほど踏み潰したばっかの中身がはみ出た盗聴器をテーブルに差し出した。

『報告は受けてンだろ? コイツが嬢ちゃんの鞄に入ってた』
『やはり……昨日の事件で?』
『俺はそうニラんでるがな』

 寄りかかれば何処までも沈んでいきそうな柔らかなソファに全体重を預け、俺は依頼主の言葉を待った。
 ……が。

『―――それは単に坂城さんがストーカー被害にあっただけじゃないのか』

 それよりも前に、興が削がれたような低いトーンで、名佳がそっぽを向きながら呟いていた。
 ……ったく、物事の順序ってモンを知らない奴だなコイツ。

『だとしたら、なンで、わざわざ人目に付くデパートなんかでひったくった鞄に盗聴器を仕掛ける必要があるんだ?
 気付かれちゃ元も子もねぇだろ』
『っ、それは……』
『―――それに、単に嬢ちゃんをストーキングするだけなら、半永続的に使える嬢ちゃんの部屋のコンセントにでも仕掛けるだろ』

 ……ま、それもそれでリスクは伴うが、わざわざ不特定多数の人間の前で犯罪を行うよりリスクはずっと低いだろう。

『それに、わざわざ電池式の盗聴器を使うのも変な話だ。……まるで、彼女の情報は"一定期間のもの"しか必要としていないみたいにね』

 補足どーも、ロリコン官僚様。

304 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:42:49.00 ID:nA8LAQAO

『じゃあ、何でそんな不完全な盗聴器が仕掛けられたって言うんだ?』

 いつまで経っても自らの疑問にたどり着けないせいか、多少苛ついた口調で"妹"が結論をせっついてくる。
 おいおい、他人様から強制されない考察ってのは楽しいんだぞ? 俺の妹を名乗るんだったらそれくらい分かってくれよ。

『―――嬢ちゃんには悪いが、個人的な趣味嗜好であの不完全な盗聴器を仕掛けた訳じゃねぇってことだよ』

 コイツは推測だが、それに嬢ちゃんは気付いてたんだろう。じゃなきゃ、事実を知った際にもっと恐怖心を煽られてるはずだ。だが、そうじゃなかった。あの私設秘書サマは心底から悔しがっていた。自らの浅はかさを呪うかのように、奥歯を噛み締めていた。
 ……気付いた理由は知る由もねぇがな。

『他に理由があったから、あんな派手な事をしてでも坂城さんのバッグに盗聴器を仕掛けた……そういうこと?』
『お、段々と結論に近付いてきたじゃねーか』
『茶化すなっ』
『へーへー。となると、次に何を考えるべきか見えてくるよな?』
『……リスクを顧みずに坂城さんのバッグに盗聴器を仕掛けた、その"理由"?』

 妹の答えは60点ってトコか。ま、及第点はやってもいいだろう。

『もしくは、"そうせざるを得なかった理由"だな』

 そこで、俺は話を黙って聞いていたであろう神代に視線を移す。
 けっ、推理小説みてぇな臭い言い回しをするなら"真相に近付きつつある"ってのに、この野郎涼しい顔してやがる。

『……まさか、"ここ"を?』

 っと、どうやら知らず知らずの内に名佳にヒントをやっちまってたらしい。

『―――"委員長室の会話を盗聴するため"にリスクを承知で犯人はあんな真似に出たっていうのか?!』
『可能性は高い』

305 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:43:33.77 ID:nA8LAQAO
 私設秘書という名目で委員会のビルはおろか、委員長室でルービックキューブ遊びが出来るくらいの顔パス、それが坂城 るいだ。盗聴するならば彼女は打ってつけの相手だろう。

 だが……今までの話を統括すると一つ、不自然な点が残る。
 名佳はそれに気付く様子もない。
 ……ま、そいつは追々訊かせてもらうとしようかね。目の前のお偉方によ。

『んで、漸くスタート地点な訳だ、分かるか?』

 バカにするな、と言わんばかりの少女と少年の間のようなの鋭い視線が向けられる。

『"何故、委員長室を盗聴したのか"―――だろ?』
『良く出来ました、と』

 ―――そこで、俺達は神代に視線を向けた。

306 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:50:40.54 ID:nA8LAQAO
―――――
――――
―――


『毎度ご乗車下さいましてありがとうございましたー次は―――』

 ―――抑揚の少ない車内アナウンスが流れ、俺は現実に引き戻されたような気がした。
 視線の先で、名佳が停車駅表をチラチラと見やりながら不安そうにしている。
 ……俺は何の合図も出さず呆けていた。無論、ちゃんとした理由があるのだが。

 ―――空気が抜けるような音がして同時に幾つもの扉が開いた。

 自分の意志とは無関係な流れに身を任せて出口を目指し……俺は溜め息を吐いて、自動ドアの横で身を守るように両手で自分と鞄を抱いたまま動こうとしない不精者の少女の手を掴む。

「え……?」
「降りンぞ」
「わ……っ!?」

 困惑した表情のまま固まった名佳を車内から引っ張り出した。
 それと同時に自動ドアが閉まり乗車率が軽減した電車が動き出す。

「先に合図しろよっ」

 名佳が小声で非難してくる。
 ま、"騙す側"の人間がこんだけ驚いてんだ。もし尾けられてたとしても、これで撒けた筈だ。

「"向こうさん"に気付かれたら元も子もねーだろ」
「それは……っ、そーだけど……」

 十分な回答をしたはずなのに、名佳は俯きながら口をもごもごさせていた。長い前髪で隠れて見えないが、不服そうな目をしてるんだろうな。多分。
 理解はしているが、納得はしていないといったところか。

「文句だったら、あのロリコンに言え」
「やだ。あの人、なんか怖い」
「駄々っ子か、お前」

 ……ま、気持ちは分からんでもないがな。
307 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:52:40.93 ID:nA8LAQAO

「行くぞ」

 非接触型のICチップ電子マネーカードで自動改札を抜けて、看板の案内通り南口の方面の階段を降りていく。……いつもより歩調がゆっくりになってンのは、多分名佳のせいだろう。
 人間、頭一個半くらいタッパに差があるだけで、こうも歩行速度に差があるもんなのかね。
 どうせなら、もっと年相応の美人を連れて歩きたいモンだが。……まぁ、横でとてとてと歩いてる名佳も黙ってりゃ相当美人の部類に入る。
 ……ま、この際、贅沢は言ってらんねぇか。

「……なんだよ?」

 ふと、視線が名佳とかち合う。
 自分が意識してないところを見られて恥ずかしいのか、頬が若干紅潮してるように見えた。

「似合ってんじゃねーか、そのブレザー」

 ちなみに、今名佳が着ているブレザーは万一俺らが尾行されてた時のカムフラージュ用のもので、嬢ちゃんの通う学校とは別の物だ。無論本物は別に用意してある。

「っ、そーいう言葉は恋人にでも言えよっ」

 制服が似合う恋人って、俺からしたら淫行罪になるんだが。
 一丁前に真っ赤になりながら何言ってんだ?

「……あのな、コイツは潜入捜査の一環だ。周囲に違和感なく溶け込むっつーコトは探偵にとって必要なスキルなんだぞ?」
「……潜入捜査、ね」

 何を大袈裟なことを言ってんだ、と言わんばかりに溜め息をつく名佳。

「ちなみに俺は過去に仕事でオカマバーに潜入したことがある」
「ホントかっ?!」
「ウソだ」

 いてっ。
 二の腕にパンチされた。
 世の中の妹持ちの兄貴はこんな苦労を背負って生きてんのかね、同情を禁じ得ないな。
 ……ま、そんな苦労でも居ねぇよりはマシなのかもしれねーけどな。
308 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:56:29.24 ID:nA8LAQAO

 ―――さて、件の待ち合わせ場所はココだったっけか、どこにでもありそうな駅前のバスロータリー……の、どこにでも……は無さそうなマッチョな銅像の前。
 ……こんなパッツンパッツンのブーメランパンツを穿く奴の前で待ち合わせたくねぇもんだが、これ以外に目立つモンがねぇからなぁ。

「あ、居た」

 幾分テンションの低い声がして、そちらを振り向く。
 バス停の近くに二人の少女。
 名佳とは違うセーラー服に身を包んだ見覚えのある姿が駆け寄ってくる。

 ……嬢ちゃんと、委員会で見掛けた被験者の片割れか。

「ふぁあ……おはよございまーす」

 緊張感の欠片もなく口を開ける嬢ちゃん。
 ―――昨日の今日だから、もうちっとピリピリしてんじゃねーかと思ったらコレか。
 ……もう少し緊張感を持っててもバチは当たんねーと思うんだが―――。

「―――大丈夫ですよ、探偵さん」
「あン?」

 不審に思う俺の真横から嬢ちゃんでも名佳でもない、おとなしい声が俺を呼び止める。
 昨日も委員会で見た、セミロングの黒髪が似合う線の細い少女のものだった。

「るいちゃんは、大丈夫です」
「………」

 何を根拠に、何が大丈夫なのか全く以て理解しかねるが、その優しい声に騙されて思わず頷きそうになる。

「あ、すみません。ご挨拶が遅れました。"御堂 初紀"です」
「……あ、あぁ、ご丁寧にどうも」

 深々と頭を下げられて、すっかり自分のペースを乱されてしまった。
 ……何つーかか、嬢ちゃんとは違った意味で組みし辛い相手だな。

 御堂 初紀、か。

 どっかで聞いたことのある名前だが……面識は無い。
309 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 11:59:06.21 ID:nA8LAQAO

「赤羽根だ。こっちは"妹"の―――」
「―――"なのか"ちゃん、でしたっけ? よろしくお願いしますっ」
「……よろしく」

 にこやかに手を握って名佳に挨拶してくる初紀嬢ちゃん。
 ……どうやら、名佳も同じ印象を彼女に抱いたらしい。
 あまりに無警戒で距離感が掴めない美少女に、半歩退く我が妹。
 ……昨日、嬢ちゃんが言ってたことから推察するに、この御堂 初紀という少女も名佳達と同類項なんだろうが……同じ異性化疾患の人間でもこうも違うとは。

「―――なぁに呆けてるんですか赤羽根さん? 初紀ちゃんの方が私よりタイプですか?」
「……」
「あ、やっぱり、なのちゃん一筋―――」
「「……」」
「あの、兄妹揃って睨まないでくれますか……」

 嬢ちゃんの冗句に付き合ってる暇はない。それは俺も名佳も同意見らしい。

「んじゃ俺は行くわ。嬢ちゃん、後は頼んだ」
「……なーに他人事ちっくなこと言ってるんです?
 赤羽根さんも行くんですよ、学校」
「は?」

 ……今、嬢ちゃんから信じられない発言を聞いた気がする。気のせい、ではないようだ。それを嬢ちゃんの目で確認する。

「まさかとは思うが、この年になって学生服に身を包めとか言うんじゃねーだろうな?!」
「鏡を見ます?」
「見ます?」
「見る?」

 ―――言い得て妙だが―――元少年の三人娘から思ったよりも辛辣な言葉とコンパクトの鏡が差し出される。

「……見飽きてるからいい」

 そりゃ、そうか。……あぁ、分かってたとも、分かってたさ。
 だからそんな目で俺を見るな。

「変質者と間違われてもいいならどーぞっ」

 清涼飲料水のコマーシャル顔負けのさわやかスマイルで毒を吐くな嬢ちゃん。
310 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:01:15.22 ID:nA8LAQAO

「……お前、ぜってーロクな死に方しねぇぞ」
「末路が選べるほど、平坦で退屈な道を選んだつもりもありませんよ?」

 たかが十代の小娘が、人生悟ったような口振りで俺に笑いかける。
 ……なんなんだ、この敗北感は。

「素直に負けを認めろよ」
「……言うな、妹」



「さ、冗談はさておき。
 一応、なのちゃんには今日、編入試験を受けて頂くカタチになりますっ」
「一応?」
「……諸事情を加味してますからね」

 流石に"記憶喪失"なんて非日常的な言葉を口にするのは躊躇われるらしく、嬢ちゃんは辿々しく笑いながら言う。

「それってまさか……裏口にゅうが―――んぅっ!!?」
「―――はぁい、初紀ちゃん、人聞きの悪いこと言わないでねー」

 事情を正確に把握していないセミロングの少女が素っ頓狂な声を上げそうになった途端に、嬢ちゃんがその白く細い指先で彼女の耳を艶めかしくなぞり、言葉を遮る。

「や、ちょ……る、い……ちゃ…はぅ…ん……っ!?」

 ……朝から何ともまぁ官能的な光景だこって。

「あ、う……」

 おーおー、名佳も顔真っ赤にしてやがる。

 ―――この初紀っつー娘は耳が性感帯か。……十中八九、俺には必要のない情報だな。

「や、……っは、……はぁ……はぁ……」
「くすっ、興奮しました?」

 漸く弄びから開放されて、涙目になりながら必死に息を整える少女を、横目で見ながらイタズラっぽく笑い、意地の悪い質問を投げかける委員会の私設秘書。

 ……おい、神代。お前、人選間違えてねーか?

「……脱がないエロに興味はねーな」
「ありゃりゃ、残念。寂しい"性活"を送ってらっしゃる"オジサン"には、いいオカズ提供になると思ったのになぁ」

 大きなお世話だ。

「っ、もうっ、るいちゃんっ! 次やったら本気で怒るからねっ!!?」

 ……大きなお世話ついでに言わせて貰うと、涙目で主張しても嬢ちゃんの加虐心を余計に煽るだけだと思うぞ、初紀嬢ちゃん。
311 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:04:11.06 ID:nA8LAQAO

「―――っと」

 ―――不意に、安物の一張羅の内ポケットからケータイのバイブが鳴り響く。はぁ、今度こそ、あのイヤミな大家からの督促か……。
 サブディスプレイには……"ロリコン"の文字。……またかよ。

「ちょいと失礼」

 三者三様のリアクションをもーちっと楽しんでいたかったが、そうもいかない。仕方なしと割り切ることにして、俺はケータイを開き、通話ボタンに親指を伸ばした。

「……あいはい、こちら赤羽根探偵事務所の所長、赤羽根です。ただいま電話に出ることが出来ません、ご用の方は―――」

『―――19回目だな』

 電話口から呆れ返ったイケメンの声が返ってくる。

「律儀に数えてんじゃねーよ」

 最早テンプレートになりつつあるな、このやりとり。

『その様子だと無事に二人と合流出来たみたいだが』

「無事かどうかアヤしいモンだが」

『何かあったのか?』

「今さっきまで初紀嬢ちゃん……だっけか? 彼女が身悶えてた……いてっ!?」

『……はぁ』

 ありのままの報告をしてるだけなのに、何で二人の嬢ちゃんからは二の腕をパンチされ、電話口からは溜め息を吐かれなきゃなんねーんだよ?!

『名佳くんに関しては大丈夫か?』

「あぁ、ピンピンしてる。男だったらビンビンっつった方が……いってっ!!?」

『……はぁ』

 今度は名佳から二の腕をパンチされた。加減を知らない分、嬢ちゃん二人よりタチが悪い。くそっ……今日一日だけで二の腕いくつ青痣を作ることになるやら。

「……んで、今や三人娘のパンチングマシーンに成り下がってる俺に、お役人様が何の御用でしょーか」

『そんな冗句が言えるのであれば首尾は上々なのだろう? ならば、名佳くんは二人に任せて、キミには別行動を取って貰いたい』

「あン?」

『警視庁捜査一課の拝島刑事、宮前刑事の両名に接触して欲しい』

 拝島とゴロリンか。……苦手なんだよなぁ、あのコンビ。特に後者は野良猫みてーに敵愾心剥き出しで、気を抜くと肩に青痣がまた一つ増えるハメになるしな。
312 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:05:50.58 ID:nA8LAQAO

『昨晩から委員会の人間は、まともに身動きが取れない状態なんだ。今は、少しでも情報が欲しい』

 そういや、ゴロリンの奴が言ってたな。昨日の夕方には警察の知ってる情報はマスコミに公開されている。
 ……ま、委員会組織の人間が殺られたんだ。神代が行動を制限されちまうのも、当然っちゃあ当然か。
 委員長に情報が早く回ってきても可笑しい話じゃない。

「依頼主の御要望とあらば、断る道理はねーな」

『すまないがよろしく頼む。
 キミの事だから分は弁えているだろうが、一応は注意してくれ

「言われなくても、てめーの身はてめーで守るさ」

『どうだかな。……と、すまない。―――あぁ、はい、今行きま――』

 尻切れ蜻蛉に通話が途切れ、一定感覚で鳴る電子音を確認してから終話ボタンに親指を伸ばす。
 ―――恐らく、神代家の坊ちゃんは今回の一件で矢面に立たされることになるんだろう。
 委員会の人間……しかも、その現行のトップともなりゃまともに身動きがとれないのも頷ける。

「―――今の、せんせーからですよね?」
「あぁ」

 俺と神代の通話終わりを見計らって、イの一番に口を開いたのは、嬢ちゃんだった。
 一応の公私のけじめはついてるらしく、その表情は引き締まって見える。

「先生って……宗にい?」
「……うん」

 初紀嬢ちゃんの質問に小さく頷いてみせる私設秘書。

 ―――こいつは、驚きだ。

 イケメンの割に浮いた話を全く聞かない神代のことを、下の名前で、しかも"にい"って親しげに呼ぶ女が居たとは。

 だが、その相手は高校生。

 ……俺の中で、神代のロリコン疑惑が真実味を帯びてきた瞬間だった。
313 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:07:14.40 ID:nA8LAQAO

「―――で、神代さんは、何て言ってきたんだよ?」

 あまりに意外な出来事に我を忘れていた俺を、漸く平静さを取り戻した名佳がイラついた口調でせっついてくる。

「あ、あぁ、……こっからは別行動を取れってよ。
 ……とりあえず、学校への挨拶は後回しだな」
「ありゃ、ってコトは赤羽根さんは新宿までそのまま逆戻りですか?」
「まー、そうなるわな」
「埼京線で、ですか?」
「わかりづらいボケをかますな」
「んー、面倒ですねー」
「そうでもねぇさ」

 嬢ちゃんが言うほど大した事じゃない。俺自身、今横で不貞ってる妹を学校まで送ったら、そのまま個人的に事件を調べてみるつもりだった。そのタイミングが少しばかり前後しただけだ。

「そんじゃまぁ、後は頼むわ」
「じゃあ、気を付けて」
「おう」

 上着のポケットから赤ラークを引っ張り出し、フィルターをくわえ、100円ライターで火を点ける。
 その片手間で右手を振って別れの挨拶に代えることにした。……が。

「―――ちょっと待てよ」
「あン?」

 不意に名佳の白い掌が差し出される。

「……ンだよ?」
「―――路上喫煙は罰金刑、だろ」

 お前はどこぞの合法ロリ警官か。つーかお前に払うのかよ、罰金。
 ………あ、そういうことか。

「ったく、こちとら万年金欠病なんだぞ。……ほれ、罰金」

 俺は致し方なしに、財布から樋口さんを取り出して名佳の掌に叩くように置く。俺の趣味である1円パチンコ代がパーになっちまったが、背に腹は代えられねぇ。

「これだけありゃあ足りんだろ」
「……サンキュ」

 目的を達成して満足そうに笑う名佳。
 ……ったく、帰りの電車賃が欲しいなら素直にそう言えっての。
314 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:08:50.56 ID:nA8LAQAO

「ま、気楽にやれや」

 試験なんて堅っ苦しい言い方をしちゃいるが、所詮は出来レースだ。
 神代の家柄と繋がりを持ちたい奴なんざ、いくらでもいる。
 それに万一、編入試験に落ちた時はそん時考えりゃいい―――が。

「……そうも言ってられないだろ」

 名佳はそれでも不安そうな面を浮かべていた。

「心配すんなって。神代のヤツが手を打ってあるっつの」
「そうじゃなくて!」
「なんだよ?」
「その、……もういいっ」

 何が不服なのか、俯いたまんま機嫌がよろしくなさそうな面で踵を返す名佳。
 ……一体なんだっつーんだ?

「まーったく、折角イイ雰囲気だと思ってたのに。これだから赤羽根さんはー……。
 ね、初紀ちゃん?」
「……」

 溜め息混じりに嬢ちゃんに非難され、同意を求められた初紀嬢ちゃんは黙ってこそいたが、彼女の沈黙は無言の肯定とも取れた。
 二人は今、俺に対して同じ感情を抱いているに違いない、が、それがどういった意味合いを持ってんのかまでは分かるワケもなく。

「な、なんだっつーンだよ……?」
「いーえ、べっつにー」
「……なんでもないです」

 至って普通の質問をしただけなのに、威圧と嫌みとガッカリ感を混ぜ合わせたような冷めた表情で、二人から目を逸らされた。

「いやっ、今、あからさまに何か言いたそうだったじゃねーか―――」「―――あ、バス出ちゃうよ、行こっ!」
「あ、おいっ!?」

 あからさまに俺を疎外するような嬢ちゃんの明るい声色の号令で、三人はバスに乗り込んで行く。
 そして俺が抗議の言葉を発する前に、バスの中扉が閉じ―――

 ―――そのままバスは走り去って行った。

 ……はぁ、ここ数日、アイツらに振り回されっぱなしじゃねーか。
 なんなんだ、厄年過ぎたよな、俺?
315 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:10:26.39 ID:nA8LAQAO


 そんでもって―――まだ災難は続くらしい。

「―――俺に何か用かぁ? そこの学ラン」

 さっきから、マッチョの銅像の陰に隠れてこっちを見てた学ランのガキんちょに声を飛ばした。
 名佳と二人で電車に乗ってた時にあんな野郎は見掛けなかったから、恐らく"事件"の関係者ではねぇと思うが。
 ったく、本業にそんな見え見えの監視が通用すると思ってンのか?

「………チッ」

 もう誤魔化せないと腹を括ったのか、舌打ちが聞こえてくる。……こっちが舌打ちしてぇよ畜生。

 ―――ま、とにかく本業を見張るなんて馬鹿げたマネをした間抜けの面を拝んでみますかね。

「「……あ」」

 銅像の陰まで歩を進め、互いの顔を認めた瞬間に、そいつと俺は同じ口形で数秒固まっちまった。
 チラッと見ただけでも強烈に印象に残る斑な茶髪と、無愛想な切れ長の目。
 ―――間違いない。昨日、委員会で初紀嬢ちゃんと一緒に奴だ。

「……ちわっス」
「お、おう」

 向こうも今気付いたらしく、慌てて勢い良く頭を下げてくるモンだから、何か調子が狂っちまって、上手く言葉が出て来ない。
 ……なんで野郎同士、マッチョの銅像の前で何となく気まずい空気にならなきゃなんねぇんだ?

「嬢ちゃん達の乗ってたバス、もう行っちまったけど……いいのか?」
「え……、あぁ、ハイ。大丈夫ッス」

 腕時計を見やる。現在8時35分。
 こっから、あのバスで……学校までは案内板曰わく約15分。次のバスが5分後に来ると仮定して、朝の時間帯で道路混雑も加味するってーと……。

「いっつっ!?」

 とりあえず、その学ランの頭を軽く小突いとくことにした。
316 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:12:48.65 ID:nA8LAQAO

「何すんだ―――!?」
「―――大丈夫じゃねーだろ。遅刻する気満々じゃねーか」
「ぐ……っ」

 正論を言われ、抗議の声が止まる学ラン。
 ……まぁ、俺も学生の頃は頻繁に遅刻したりサボったりしてたから本当ならこんなコト言える立場じゃねぇんだけどな。

「んで、どうして俺らのコト見張ってたんだよ? お前さんなら嬢ちゃん達とも面識があんだろーが」
「いや、その……」
「あぁ?」

 さっき嬢ちゃん達に体よくやり込められたストレスも相俟ってか、俺は高圧的な態度で学ランに詰め寄っていた。

「だからっ、るいの奴、何か最近様子がおかしいし、盗聴されてるって聞いたから……少しでも、アイツの力になれたらなって思って……」

 ま、確かに盗聴されてたっつのは事実だし、様子がおかしいのは十中八九"事件"の所為だからなんだろうが……なんつーか空回りしてんな、コイツ。
 単なる知り合いにしちゃあ、行動が行きすぎてる。

「……まさか、嬢ちゃんに惚れてんのか?」
「いや、そのっ、なんつーか……」

 うっわ、分かりやすい奴。
 お前は塩酸垂らされた青のリトマス紙か。

「……あーいい、大体分かった」

 ……今時こんな純情なヤツが居るんだな。俺が動物愛護団体なら迷わず天然記念物に指定するわコイツ。
 ま、この学ランが嬢ちゃんみてーなジャジャ馬娘の相手になるかどーかはさて置いて、だ。
 どうやらコイツは悪ぶってはいるが性根まで腐ったアホではないらしい。……コイツなら力になってくれっかもな。
317 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:14:21.00 ID:nA8LAQAO

「そういやぁ、昨日も見掛けてっと思うけど、さっきまで嬢ちゃん達と一緒に無愛想なブレザーの女の子が居たろ?」
「あ……はい」
「あれ、今度お前さんの学校に転入する俺の"妹"だ。事情は……まぁ嬢ちゃんにでも聞いてくれ。
 まーアイツ、俺と違って偏屈でヒネくれた奴だけど悪いヤツじゃねぇと……思うから仲良くしてやってくれ」
「……分かりました」


「んで、お前さん、名前は?」
「……人に名前を尋ねるときは自分からって小学校で習わなかったンスか?」

 ンの野郎。俺、コイツ嫌いかも。

「……赤羽根だ。一応、名刺も渡しとくか」

 神代に渡してからとんと出し入れもしていなかったカードケースから一枚名刺を取り出して、生意気なガキんちょに手渡した。
 そこで漸く納得したのか、学ランは自己紹介を始める。

「……前田です。前田 陸(ひとし)」
「前田クン、ね」

 ……個性の欠片もない名字と名前で覚えづらい。やっぱあだ名は学ランで決定だな。たとえ学ラン着てなくてもそう呼ぶ。コイツは決定事項だ。

「っと、もう行かねーとな」

 気付くと結構話し込んじまってた。流石に、そろそろ仕事に掛からないと神代にどやされる。

「んじゃな、学ランクン、学校サボんなよー?」
「前田っス!」

 何か、背後から抗議の声が聞こえたような気もするが、まぁいい。

 俺は再び駅への階段を登り、新宿方面の電車へと乗り込んだ。


318 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:15:31.96 ID:nA8LAQAO

 ―――通勤ラッシュの時間帯を抜けたせいか、帰りの電車は余裕綽々で隅の座席を確保することに成功した。

 いつもなら、ここで直ぐに眠りこけるトコだが……。
 一応、今回の"事件"と"名佳"についての情報を整理しとくか。

 ―――上着の内ポケット使い古したメモ帳と万年筆を取り出す。




 【新宿アパート放火殺人事件】

 現場:新宿3丁目のアパート ノワール旧館
 被害者:藤崎 充(53)
 職業:官僚(異対委の役員の一人)
 死因:銃殺?(要確認)
 備考:事件発生の数日前より、犯行予告とも取れる脅迫文が委員会に送付されていた。
 内容は"来週までに審議が決する異性化疾患の新法案の資料提出を止めろ、さもなくば委員会に関わる人間を無差別に殺していく"というもの。

 ※ 事件発生のほぼ同時期に、現場より50メートル程離れた地点にて記憶喪失の少女を保護(名佳)。
 事件に関与している可能性、神代や坂城るい等の委員会主格人物と接触していることを加味し、神代委員長代理の判断により法案が可否が採決されるまでの間、警察への届け出を見合わせている。

 ※2 後日、私設秘書 坂城 るいの鞄にひったくりを偽装して盗聴器が仕掛けられる事件が発生。同一犯?


 ―――こんなとこか。
319 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:16:47.07 ID:nA8LAQAO

 正直言って、今の段階で―――このメモを改めて見る限りでは―――名佳が事件に関与してる可能性っつーのは皆無に近い。
 ゴロリンの様に可能性がある限り疑いの目を向ける奴以外なら、吐いて捨てるような確率だ。
 言っちまえば、警察や他の公的機関に任せずに委員会(というか神代)が名佳を保護している理由は―――
 ―――皮肉にも俺が名佳を拾い、委員会のビルに連れて行ったことに端を発していた、ということになる。

 もっと言っちまえば、ひったくり事件の時に終始監視されてたとなると、向こうさんに名佳の存在を知られただろう。
 ……かと言って、今、完全に委員会から離れるのはもっとヤバい。
 委員会から入手出来る情報が制限されちまうし、神代家の庇護から離れるっつーことは……警察に名佳を引き渡すコトを意味する。

「……ふぅ」

 気付くと溜め息が出てた。久々に来た身入りのデカい仕事だっつーのにだ。

 ……"家族"か。

 ―――てめーが言った言葉に、てめーが一番縛られてんじゃねーか。……世話ねぇな。
 窓の外を流れてく灰色の風景を眺めながら自嘲する。

 ……思春期まっさかりのガキか、俺は。
 っと、もうすぐ終点か。さぁて、楽しい楽しいお仕事の時間だ。……気張ってかねーとなぁ―――

「―――ちょっとバカバネっ!」
「……あン?」
320 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:19:08.00 ID:nA8LAQAO

 近くで、息混じりの甲高い声がして視点のピントを、いつの間にか目の前に立っていた子供に合わせると、吊革のギリギリの辺りに掴まって、フラフラしながらこちらを睨んでいた。

 ………って、オイ。

 なんで新宿区警察の女刑事がこんな時間の電車に乗ってんだ? 遅刻じゃねーか?

「しょーがないでしょ?! アンタ達が急に降りるから!」
「何も言ってねーだろ」
「言わなくても分かるっての」

 ……ん、今なんつった? アンタ"達"?

「お前、性懲りもなく俺達を尾けてたのかよ」
「気付いてなかったの!?」

 ……どうやら、念の為に尾行を撒くような行動をしてたのも、無駄じゃなかったようだ。
 つーか、満員電車で遠くの他人に気付かれるようなタッパなんぞねーだろ、お前。

「失礼ねっ!」
「……だから心を読むな、ゴロリン」
「ゴロリン言うなっ!!」

 ……面倒な奴。
 でもまぁ、お陰様で面倒は省けそうだ。俺が直々に警察に向かうと面倒が起こりそうだしな。

「……見たぜ、ニュース」

 俺のこの一言で、ゴロリンの顔が途端にシリアスになる。が、警察と対峙するような重圧感を持ち合わせてないのが玉に瑕(キズ)か。

「被害者は、委員会役員だった。
 奴さんが情報を止めンのも無理ねーじゃねーか。
 どうして、俺や名佳に固執すンだ?」
「……本気で調べがついてないと思ってるの?」
「……はぁ?」

 疑いの眼差しで俺を睨みつけてくるゴロリン。

「何が言いたいんだ?」

 委員会の代理の長として、上代が情報を止めたいと思うのは山々じゃねーか?

「……とぼけるのは上手いのね、それとも赤羽根探偵事務所々長サマは、委員会にとってその程度の存在なの?」
「……もしかして、ケンカ売ってんのか?」
「どう捉えようと、アタシは構わないけど」

 真っ正面から睨み合う椅子に座ったまんま俺と立ちっぱのゴロリン。
321 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:21:36.56 ID:nA8LAQAO

『次はー新宿ぅ、新宿です。JR線、私鉄各線、地下鉄―――』

 低い抑揚の車内アナウンスを皮切りに、呆れたように女刑事は視線を逸らした。

「―――いいわ、イイ機会だから教えてあげる。付いて来て。……アンタは気乗りしないでしょうけど」
「任意同行かよ?」

 そこで、一瞬会話が静止した。

「………アンタを引っ張れる材料があるなら最初からそうしてる。こんなコソコソした真似なんかしない。
 分かってるクセに訊くのは無粋だと思わないの?」
「いーんだよ。探偵なんてそんなモンだろ」
「……今、全国の同業者を敵に回したわよ、アンタ」
「知るか」



『新宿ぅー、新宿です―――』

 電車のドアが開くと同時に、俺達は雑踏に紛れる。
 やっぱ、新宿の人混みっつーのは好きになれねぇが、慣れちまえば楽だ。誰も俺なんかに興味を示さないからな。

「……逃げないでよね」

 そんな俺の考えを知ってか知らずか、ゴロリンは釘を刺してくる。

「なんで逃げんだよ」
「バカバネは信用ならないから」
「バカバネ言うな」
「じゃあ、ゴロリン言うなっ」
「やだね」
「じゃあ、アタシもやだ」

 なんともまぁ、身のない会話だな。とても20代同士の会話とは思えない。
 まぁ……ゴロリンは年相応の振る舞いにしか見えねぇけどな。
322 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:24:16.66 ID:nA8LAQAO

「……そういえば、その……っ」

 何かの会話の口火を切ろうとしてんのに、何故かその一言目で詰まるゴロリン。

「ンだよ?」
「その、……"妹さん"は、どうなの?」
「あ? 今日見てたんじゃねーのか?」

「名佳ちゃんじゃなくて……
 その、"上の"妹さん」

「―――っ!」

 心臓の裏側を押しつぶされたような気がした。

「……次、"妹"なんて軽々しく言ったら、殴るぞ」
「あ……ごめん、なさい」

 いつも顔を合わすと悉く意見が食い違い、口論になるゴロリンだが、こん時ばかりは大人しくなるらしい。
 ……お陰で、こっちもペースが乱されちまう訳だが。

「―――あの寝坊助は、まだ寝てんよ。……こっちの気も知らねぇでな」
「そっか、早く、起きるといいね」
「……どう、なんだかな」
「バカバネ?」

 昨日――演技とはいえ――事務所で名佳に言われた事が脳裏をよぎる。
 何が本人にとって幸せで、何が不幸か。その結論を出すのは、結局のところ他人ではない。てめー自身だ。
 それを、頼みもしねぇのに、選択肢を与えた状態で保留にしてることが正しいかどうかなんざ分からねぇ。
 常識で考える、なんて無駄だ。
 平均値なんざ意味が無い。
 だが結局は、その平均値に縋ることしか、俺には出来ない。

 ―――そんな状態が続いて、もう7年も経つ。

「……バカバネ……?」

 いつの間にか、歩みを止めていた俺の顔を覗き込んでくるゴロリン。
 やめろ、そんな顔すんな。
323 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/05/12(水) 12:25:49.83 ID:nA8LAQAO
「―――お前なんかに同情されるほど俺は落ちぶれちゃいねーよ」
「……はいはい」

 突き放すように言ったつもりだったんだが、ゴロリンは気にする様子もなく、ニコリと持ち前のロリータスマイルを浮かべて明るく返してきた。

 ……ったく、名佳といい、嬢ちゃん達といい、ゴロリンといい……オンナゴコロってのはよう分からん。

「ほら、何してんのっ、行くよバカバネっ!」

 歩みを止めていた俺を、促すようにゴロリンは言う。ったく、コイツは俺を捕まえたいのか、励ましたいのか、どっちなんだ?

「……誰がバカバネだ、コラ」

 その狭い歩幅でとてとてと早歩きをするスーツの後ろ姿を、人混みで見失わないように俺は追った。

 ……その合間に、チラリと時計を見やる。

 ―――午前11時54分、か。

 ……今日は長い一日になりそうだ。


 【赤羽根探偵と奇妙な数日-3日目午前-】


  完
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/12(水) 12:30:07.68 ID:nA8LAQAO
 主要人物の邂逅が8割方書けました、が。またエロシーンがっ、エロシーンがあぁああっ!!!

 ………このままいくとゴロリンとになりそうです。

>>301
それはぜひとも何とかして欲しい。
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/12(水) 12:32:05.43 ID:nA8LAQAO
 追記、御意見下さった本当にありがとうございます。ただ、話の進行上また視点があっちゃこっちゃと飛ぶかもしれません。

 それでも暇つぶしになれば幸いです。
326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/12(水) 12:50:36.25 ID:1IbyTy.o
エロは無理にいれなくてもいいよ!あるとうれしいよ!乙だよ!
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/12(水) 22:22:00.97 ID:.1aWtPw0
GJ!!!
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 02:33:33.14 ID:/U.AQCgo
「管理者は狂ってる。男を女に変体させるウィルスをばら撒くなんて。狂ってる」

硝煙と血が混じった臭いが立ち込める施設の中で、ぼろぼろになった戦闘スーツを身にまとった小柄な少女は、"狂ってる"その台詞を念仏のように何度もつぶやく。

「その台詞何度目だよ」

同じくぼろぼろになった戦闘スーツを身にまとった背の高い少女が呆れてため息をつく。

「2530回目。いや、2350回かな?」

「どっちでもいいよ・・・」

「そうだな。もうすぐ管理者の居る中枢だ。奴らを潰してこんな戦いは終わりにする」

小柄な少女はそう言うと、自分の体を自分で包み、ぎゅっと力を込める。その姿は恐怖や憎しみなど、様々な感情が伺えるほどだった。

「あぁ・・・。沢山の仲間が犠牲になった。こんな戦いはもう終わりにしよう」

自分達の部隊の戦力であり、仲間だった男達の女体化を抑制するために自らの体を差し出してまで"管理者"と戦ってきた。
女になった男達は自らの心を殺し男を抱き、真の意味で男になった男達はその女達の為に戦った。
しかし、彼女らの部隊も管理者の部隊との戦いで壊滅。
多くの男達、いや同志を失った。

「そうさ!終わりに──うぐっ!」

「・・・・やはり君は来るべきではなかった」

「ぐぅ・・・まだやれる!」

「だめだ・・・どの男の忘れ形見かは知らんが、私達の為に散っていった男の子だ。生んでやれ。それがあいつらへのせめてもの弔いになる」

「くっ・・・!」

「いいさ、どの道私はもう長くない。自棄になって始めたこの戦いにもこれでやっと理由が生まれた気がする」

「け、けど!!んぐ!!」

背の高い少女は小柄な少女の唇を強引に奪った。

「私の愛しい人、私は必ず帰る。待っていてくれ」

二人は抱き合う。

「俺もだ・・・愛している・・・だから、この子の為にも・・・・行ってらっしゃい・・・」

「ふっ・・・行ってくる」


あれ?おかしいな、世界観間違えた?
329 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/05/13(木) 03:05:21.67 ID:VTeO8gAO
>>326
ありがとうです。エロは入れます。言ったらからには絶対入れます。ハズくて死にそうになるけど入れます。

>>327
その言葉が活力です。

……正直、女体化の認識が他の方と大分かけ離れてるよーな気がする。

>>328
世界観? なにそれおいしーの?


 何となく中二病的な次回予告投下して寝ます。
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 03:08:52.77 ID:/U.AQCgo
デレゴロが見たいです
331 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/05/13(木) 03:30:17.77 ID:VTeO8gAO
 とある探偵に降り注ぐ、突然の雨と数多の災難。

「てめーは考えられるだろ、動けるだろ、ふてくされられる感情があんだろっ!?」
「ノッた」
「文句ならアイツに言ってくれ」

 記憶を喪った少女との出会い。

「オレ……誰なんだ?」
「カビてたけど」
「ネグレクトっていうんだぞ、それ」
「っ、そーいう言葉は恋人にでも言えよっ」

 他人事と思っていた、二人に忍び寄る殺人事件。

「焼死体?」
「直接の死因は……コレ」
「黙ってたってイイコトねぇぞ?」
「……神代 宗」

 軋み、瓦解する絆。

「ほら、私って天邪鬼だって知ってるでしょ? ……どいてよ」
「代替品に用なんか無いだろっ!?」
「責められるのは、もとより僕一人で十分だ」
「今のてめーは信用出来ねぇ」
「あーあ、知らねーっと」
「与えられた理由に喜んで飛びついといて、それ? ガッカリさせないでよ」

 謎が紐解かれるごとに、彼らに迫るものは、真相か―――

「潜入捜査……ねぇ」
「こいつぁ単なる殺人事件なんて生易しいもんじゃねぇ」
「次、見つけたら即逮捕だかんねっ!」
「子供は狡猾な生き物だからな」
「数の暴力の前じゃ、命なんか……羽根より軽いってだけ」
「死にたく……ねぇ、なぁ……」

 ―――破滅か。

「家族が待ってるんだろう?」
「いいから走れっ!」
「指差して笑われンのがオチだっつの」
「死亡フラグが満載だな」
「"家族"を見殺しにしろって言うのかッ!!?」
「アンタだけには、知られたく……なかった」
「……よぉ、寝坊助」
「オレは……オレの名前は……!」

 【赤羽根探偵と奇妙な数日】
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 03:31:00.09 ID:VTeO8gAO
 もう寝ますお休みなさい。

>>330
デレゴロ?
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 03:38:08.86 ID:GCSEUbso
青色さんさっきまでいたのか・・・ニアミスorz

いつもGJなんだぜって言いたいのに・・・

そういや初紀って身長そんなに高くはないのかな・・・

おやすみっす
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 03:49:42.38 ID:VTeO8gAO
あ、まだいたりします。

初紀はるいよりちょい低いくらい155cmくらいかも。
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 04:09:08.97 ID:GCSEUbso
>>334
青色さん大丈夫かな・・・最近昼夜の気温差が激しいので気をつけてくださいね

その位なんですね、ありがとです
(170位なのかと初めの頃思っていたけど・・・背の高い設定のにょたっこも出してくれると(*´Д`)ハァハァ

次回作に期待して・・・おやすっす
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/13(木) 21:12:03.54 ID:1xC2GBY0
にょたの最萌えはロリ(少女化)がデフォだと思ってる
もちろん異論は認める
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/14(金) 08:55:35.28 ID:gRnTXUI0
ふむ、つまり……

「こんなに幼いのに、ちゃんと女の子してるんだな……」
「んくっ……そんなするなよぅ」
「無理したり我慢しなくてもいい……女の子ならこれが普通なんだから」
(じ、じぶんでしても何にもだったのにっ、なんで、こんな……っ)

みたいなシチュがお好みか?それとも…

「ふーん、普段ロリコンなんて人間のクズとか言ってたくせに、こぉんなに反応しちゃうんだ」
「くっ……こんな男のツボを心得てるロリなんて想定が」
「やさーしく抱きしめてくれちゃってもいいんだぜ? ……おにぃちゃん♪(つん)」
「うあああああ!」

こっちの方かい?
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/14(金) 12:48:24.72 ID:NK.aay.o
どっちもいい
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/14(金) 22:24:10.57 ID:7Bp0IPg0
上もいいが下が好みだ
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 03:51:11.85 ID:jjpo1wAO
久々に本スレが立ったのに規制が……
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 14:20:41.02 ID:RhCzpGQo
スレが落ちた
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 15:08:25.11 ID:N.Jr9UQo
はええよwwwwwwww
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 20:41:49.49 ID:b9aPFiU0
早くはない。二人だけで大分持ったよ
規制でVIP全体が過疎なんだろうが、その規制で書ける人も少ない・・・
あちらを立てればこちらが立たず
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 23:28:14.07 ID:RhCzpGQo
二人きりはさびしかったお……
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 23:33:39.43 ID:nl724Mco
自分のとこのプロバイダは永久規制で2重規制になってるのだ・・・
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 00:24:25.58 ID:0.IlNW60
私のようにP2を買うしかないかも
最近値上がりしてオワタけど
また立てたいときに立てようかねぇ

>>344
帰ってきたら落ちてたお・・・
それにしてもコブラツイストって流行ってるのか
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/16(日) 06:15:24.59 ID:wtqwpSc0
立ってたのか
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 06:36:27.10 ID:sIK69YAO
>>346
別に流行ってないと思う。流行ってるのはジャーマン・スープレックスじゃないかい?(嫁の必殺技的な意味で)

>>347
立ってたね。
オイラは規制で乙すら言えんかったけど。
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 12:09:59.20 ID:0.IlNW60
ジャーマン・スープレックスとバックドロップの違いがわからない
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 12:51:00.33 ID:EgmdI6.o
って規制中だったのか
次立つまでに弾準備しておきますしおすし
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 15:27:41.38 ID:sZ9PDDEo
>>249
ジャーマン:後ろから抱きついて引っこ抜くようにブリッヂして叩きつける
バックドロ:後ろから抱きついて若干肩に担ぐような格好まで持ち上げつつ一緒に倒れる

だったと思う
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/17(月) 12:20:14.32 ID:7akrdIk0
バックドロ
後ろから抱きついて若干肩に担ぐような格好まで持ち上げつつ
(「お前軽すぎ、ホント女の子なんだな」って言ったら
 「あぅ……」とか呟きながら儚げに見つめ返してきたので)
一緒に倒れ(そのまま二人の世界に嵌)る

ジャーマンは誰か頼む
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/17(月) 16:36:45.56 ID:zsLW1wAO
ジャーマン

後ろから抱き付いて「お前、胸ないよな」って言われたにょたっ子が、女性特有の柔軟性を駆使し、そのまま引っこ抜くようにブリッヂして叩き付け、野郎に天国を見せる。
要スカート、不要パンチラ。

これでおk?
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/17(月) 22:57:06.42 ID:AcYp15s0
萌えた
355 :青色1号 [sage]:2010/05/18(火) 00:41:01.79 ID:.LStDQAO
なのかが赤羽根探偵にジャーマンスープレックスしてる画像下さい。
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/18(火) 08:24:26.86 ID:lcwP0E.0
ちょww
いつのまに安価「にょたプロレス」が発生してんだwwww
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/20(木) 13:48:51.92 ID:RY45nYDO
安価おくれ↓
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/20(木) 14:25:50.07 ID:/PJRg/Uo
バクダン
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/22(土) 02:04:06.35 ID:2nEz0/c0
さあて、今日にでもスレ立てようかんぇ
弾なんてなくても立てちゃえ立てちゃえ!
VIPにこのスレを復活させるんや!
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/22(土) 02:30:10.62 ID:mgjsg/Uo
立ったらまたなんかやるお
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/22(土) 19:06:11.05 ID:2nEz0/c0
タテータ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1274521818/
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/22(土) 22:14:41.94 ID:mgjsg/Uo
おい 落ちたぞ

                    おい


最終レスから1時間で落ちる仕様なのか……
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/22(土) 22:26:46.65 ID:2nEz0/c0
一時間と経たずに落ちたね
よくわからんな……。
こないだはレスなくても数時間もったのに
安価は後日投下するは
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/23(日) 00:22:07.06 ID:LBC5asAo
http://up3.viploader.net/pic2d/src/viploader2d658181.jpg
とりあえずお題消化してみた
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/23(日) 00:24:47.79 ID:KBT/R9c0
>>364
GJすぎる
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/23(日) 15:05:57.96 ID:bqpxCXAo
>>364
gggggg GJ イラストとか燃えるわ
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/24(月) 09:28:35.14 ID:1B9/1eUo
sageろカス
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/24(月) 12:04:47.55 ID:78wToQk0
おし、下げついでに安価くれ
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/24(月) 12:05:42.31 ID:ZwP0q4ko
チャイナ服
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/24(月) 12:23:40.57 ID:78wToQk0
はあく、てゆかレス早!
371 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/24(月) 13:51:55.32 ID:78wToQk0
どこで間違えてしまったのか……まぁいいや
安価「チャイナ服」


某高等学校――修学旅行当日、校長先生の挨拶。

「ついにこの日がやって来ました
 PTAや教育委員会からの糾弾を退け、貯めに貯めた3年分の旅費予算……
 慣例であった京都旅行から脱却し、我が校は本日、新たなる一歩を踏み出す事となります!」
「ウオオオー!」
「今回は予算の都合及び関係各所への説得が足らず、行き先が中国となってしまいました……
 金髪スキーには正直、すまなかった!
 だがしかし、諸君らが尖峰となり前例となる事で、
 後に続くであろう愛すべき後輩達を更に先へ送り出す事をここに誓うものであります!!」
「校長!! 校長!! 校長!!」
「我が同胞よ! 志を同じとする者どもよ!!
 もはや我らを隔てるものは無い、この5泊6日の旅を心から愉しみ、
 お目当ての学友達がチャイナにょたとして美しく成長する様を魂に刻みつけてくるのだ!!」
「チャイナ!! チャイナ!! チャイナ!!」
「養護教諭にはイザという時のために大小長短さまざまなチャイナドレスを用意させた!
 何も問題は無い、4000年の歴史と女体の神秘に――
「校長、来ました! 南口ゲートに市民団体が集結! 総数、およそ5000!!」
「来おったか!
 ――聞いての通りだ……追手はこの私が食い止める!
 諸君ら若人よ、君らは行け! 行って世界と……にょたを頼んだぞ!!」
「校長閣下に万歳!」「万歳!」「必ず帰ってきます!」「夢を……夢をありがとう!」

――女体化後の容姿は、女体化を発症した土地の影響を受ける。らしい。
この高校が後日「今度は北欧ロリにょたを目指せ!」となったかどうかは……記録に無い。
372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/24(月) 22:54:46.86 ID:TyDd.eE0
GJ!
373 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/25(火) 12:38:21.87 ID:w9PeSo60
安価コジキでございます
旦那さま、お慈悲を…
374 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/25(火) 13:05:16.42 ID:ym/vJMAO
>>373
事業仕訳
375 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/25(火) 13:26:16.60 ID:7P/zCoQo
蓮舫「童貞にはちんこはいらないですよね?」

こうですねわかりますん^p^

376 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/25(火) 13:52:11.28 ID:w9PeSo60
>>375にハードルを高くされた件ww
REN4×にょた…どうしろというのか…でも把握
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/26(水) 11:13:49.76 ID:lHwBLrs0
安価「事業仕訳〜童貞にはちんこはいらないですよね?」

「そんな行政刷新会議が15の夜に行われていると思うないか?」
「……勃起しても相手がいないから無駄だと指摘され、事業廃止を言い渡されると?」
「うむ、宇宙事業から備蓄塩まで容赦無しだからな……撤廃されてもおかしくないだろう」
「けど性器が仕分けされるからって女体化する理由にはならないんじゃ?」
「わかってないな、冷え込んでいる恋愛景気を回復させるには……」
「――性権交代!?」
「そうだ、性治主導による抜本的改革で旧性権では出来なかった構造改革を行う」
「思い切った事を……」
「一番の目玉は基地移転だな、重要拠点を股間から胸部に移動する」
「た、確かに旧性権では無理な話だけど……地元住人や諸外国の反対は?」
「安保破棄」
「なっ!?」
「そう、新性権では今までの進展しない女性関係を刷新し、新しい関係を深める事になるんだ」
「それは各国とのパワーバランスが大きく歪む事に!」
「カンケーない」
「いや、カンケーないって……」
「CHANGE」
「ちょ……」
「YES We Can」
「それちがムグ……んっ…………」
「…………これが民意だ」
「それお前の我儘だろ……バカだな、もぅ」


こんな風にしてみたけど俺は麻生の方が良かったよ……
378 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/26(水) 12:55:59.33 ID:k4.HKoQo
麻生をムリヤリ引き摺り下ろした民主は滅んでくれ
事業仕分けとか子供手当てとか、馬鹿じゃねーの?
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/26(水) 14:37:46.32 ID:0GE5ZG.0
そうだねぇ、でも叩き一辺倒になるのはよくない傾向だと思うよ
ムカつくからこそもっと知らなきゃいけないこともある
380 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/26(水) 19:31:46.19 ID:YVVdmnYo
ここなにスレだ?
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/26(水) 20:49:46.99 ID:ZilfCoAO
 両親からの誕生日プレゼントは、女の子として生きる為に必要な物全てだった。
 部屋は誕生日前の三日で壁紙や床板ごと変えられ、前は無かったウォークインクローゼットや全身が映る鏡とベッドで部屋の半分が消費されている。残りの半分は勉強机とテーブルと少しのぬいぐるみ達。
 誕生日当日、パステル色の部屋を目の前に俺は笑うしかない。
「あたしの部屋より女の子だね、お姉ちゃん」
 俺の隣で、変わり果てた部屋を見ていた妹が言う。
「まあ、女の子だしな、俺」
 この部屋と同じく、変わり果てた俺にはお似合いだろう。
 一方部屋に入ると、鏡にまだ慣れないスカートとレースの付いたブラウスを着た自分の姿が映った。
「似合ってるんだけど似合ってないな」
 感じた事を言葉にしたら妹に笑われた。
 早く慣れてしまいたいと思う反面、この慣れない感覚が男の俺だと思うと慣れるのが怖い。ああ、でも下着には数時間で慣れてしまったのだから男の俺はもう薄れているのだろう。
 そう考えて、気付くとスカートに違和感がなくなっていた。
「ばいばい、俺」
 なぜか涙が流れ落ち、この一人称もこれで最後だと思った。


お わ り
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/26(水) 23:00:11.61 ID:iDuEfFU0
どっちもGJ!

とりあえず非実在青少年に関しては民主頑張れ
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/02(水) 01:08:57.81 ID:h7VRIfQ0
なんか過疎ってるね
安価しよか?
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/02(水) 12:08:24.40 ID:IQPm4W60
安価なら「女子力<<<にょたぢから」
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 00:07:26.54 ID:hN3xjRY0
投下wktk
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 15:59:44.14 ID:78qfVHE0
レス遅れました「女子力<<<にょたぢから」ではあく
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 22:22:05.32 ID:78qfVHE0
でけたでけた〜
投下するぜい
388 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 22:26:11.80 ID:78qfVHE0
安価「女子力<<<にょたぢから」

 「女の子と女体化した子、この違いはなんだろうね?」
 「なんだ?馬鹿の哲学か?いくら女体化してもお前の残念な脳みそはアップグレードはしないぞ」
 「ちょっとはやさしく扱ってよ!頭はアレでも女体化した女の子だよ!レディーは優しく扱うものだよ!」
 「そうか・・自分の頭の具合はしっかり理解してるんだな・・・えらいぞ」
 「ちょ・・なんで頭をなでるの?てかなんでチョット上目線!なんで哀れみっぽい目で見てるの?ねー!」
 「所でさっきの女の子と女体化した子とかの話はどうした?」
 「え?あれ?流された?う〜ん・・まいいか」
 「切り替えし早くていいな・・・お前」
 「へっへっへー羨ましいだろ〜多分コレは女体化したからだZE☆」
 「いやソレはないと思うぞ、昔からお前はそんな感じだったから」
 「最近ねウチは女の子と女体化した子の見分けがつくようになったんだよ!」
 「流し返しか、こざかしい」
 「なんで見分けられるんだろーな〜って思ったのよ〜、そしてつい最近気がついたんだよ!それはオーラ!!女の子には女の子のオーラ、コレを女子力と名づけよう
そして女体化した子のオーラをにょたぢからと名づけよう!その二つのオーラはね、性質が違くて、運動に関しては 女子力<<<にょたぢから くらいの性能の差があるんだよ」
 「その斜め上にぶっ飛んだ理論と根拠は何処からきた」
 「うむ!その根拠はウチだよ!女体化したのに男顔負けの運動神経でしょ?これはにょたぢからが女子力より運動性能がいいからに違いないんだよ」
 「それはお前の運動神経はその残念な知能をささげて手に入れた物なんだろう、等価交換って奴だろう、そしてその頭で運動神経も同レベルだったら人間として最て・・・」
 「シャァラァァップ!!お黙りあそばせ!そんなに言うなら今ここで女体化した子を見分けてみせようじゃないかぁぁ!!」
 「無理はするんじゃない、少ない脳細胞が壊滅するぞ」
 「ムキーーーー!!絶対当ててやるんだから!!そしたら土下座だ!!土下座しろぉ!!」
 「いいぞ、じゃあお前が外したら・・」
 「おう!土下座の1回や3回や4回やって・・」
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 22:28:17.79 ID:78qfVHE0
 「土下寝な」
 「なんで土下寝!なんでウチの方が厳しいの!」
 「コレはお前のためにやっているんだ」
 「どこが!!どう考えたって失うものは土下寝の方が多いじゃないか!」
 「追い詰められる事によってお前の秘めたる力が目覚めるかもしれないぞ」
 「!!」
 「秘めたる力に目覚めたらかっこいいぞ」
 「わかった!その条件のもう!」
 「馬鹿は扱いやすくていい」
 「なんか言った?」
 「いいえなんでも」
 「よ〜〜〜しこの勝負絶対負けないじぇ〜〜、ウチのにょたぢからを受けてみろぉぉぉ!!まずあそこの娘、あの娘は〜〜〜・・・・・・にょたぢからだ!!」
 「あ〜そうだな、ありゃこの前女体化したクラスの田中だからな、俺でもわかる」
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 「え〜っと・・・そこの娘は多分にょたっ子ぉ・・・」
 「良く見ろアレは男だ」
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 「あの娘はにょたっ子だ!絶対そうだ!」
 「アレは絶対あり得ない」
 「なんで!!」
 「アレは俺の妹だ」
 「え?マジ?」
 「マジ」
 「弟から妹にぃ?」
 「なってない、元々女だ」
 「・・・・」
 「・・・・」
 「うわ〜〜ん!!覚えてろよぉぉ〜〜!!」
 「あ!おま!何処行く!コラまて!」
 「土下寝なんかしてたまるかぁぁぁ・・・」
 「・・・・・・なんで俺あんなのに惚れたんだろ・・・・・」

   おしまい
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 22:32:21.37 ID:78qfVHE0
以上です
久々のssで楽しかったです
お疲れ様でした
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 23:53:34.94 ID:hN3xjRY0
GJGJGJ!
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/04(金) 11:45:14.33 ID:uhKbNw.o
sageてないからNG
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/04(金) 17:30:56.65 ID:tZ2UV/.0
ああゴメンsageなきゃダメだったんだね
気をつけます
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/05(土) 12:47:34.18 ID:46G3ERg0
いや、別にそういうルールないよ
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/06(日) 03:23:12.59 ID:VB3V1lU0
え?そうなの?ウチそう言う知識がないからマナー違反したのかと
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/06(日) 06:37:38.96 ID:ZsTcXxso
特定した
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/06(日) 19:01:24.08 ID:VB3V1lU0
え?なにを?
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/08(火) 21:30:12.94 ID:CJiX/eoo
あんかくれくれ↓
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/08(火) 23:04:17.47 ID:VPsly7I0
にょたっ子と童貞
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/09(水) 14:02:36.27 ID:gadt85Uo
「お前、本当に女になったんだよな?」

「何を今更・・・この声とこの格好を見れば判断つくじゃん・・・」

「そう・・・だけど。けど、なんとなく信じられなくてさ」

彼はそう言って彼女から視線を逸らすとボリボリと頭をかく。
彼は友人が女になってしまった事が今だ信じられないと何度も同じことを彼女に問いただしていた。

「む、なら、これ触って確認してみるといい!」

彼女はそういうと、自分の胸をぐいっと押し上げて、それを彼に障れと強調する。
そんな大胆な彼女(元男)に驚いた彼は慌てながら真偽を確認する。
すると、彼女は更に自分の胸を突き上げて、男は度胸!ほらほら!と茶化してくる。
それでも、モジモジして彼女の胸を触ろうとしない彼に、

「なんだよ。さっきはあんなに触りたそうに言ってたじゃん」

「い、いいのか・・・・?」

「もったいぶってるだけの他の女と一緒にしないで欲しい」

「・・・・ではちょっと失敬・・・」

意外と小さいな・・・と思いながらも慎重に触っていく。
そんな手つきに耐えられなくなった彼女は・・・・

「あはははははは!む、むり!くすぐったい・・・!!」

おっと、と言って彼は彼女の胸から手を離し、何か手つきが悪かったのか?と自分の手を見返している。

「どうだ?おんなだろ?」

ああ、そうだな。と若干歯切れの悪い返事が帰ってきて、彼女は内心にやりと笑む。

「で、さ。お前のも触らせてよ。こっちだって触らせてあげたんだからさ」

「は?俺の!?」

彼女は彼の胸元を見て少しモジモジしている。
今は衣替えが終わった後で、夏の制服になっている。比較的薄着で男性の胸元もそれなりに強調される形になっている。

「そ。胸元を触らせて欲しい」

ああ、そんな事か。とそんな簡単な事に承諾など必要ないと言わんばかりに半そでのシャツを脱ぎ捨てる。

「え?で、何で男の胸なんて触りたいの?」

シャツを脱ぎ捨てた後、我に返った彼は彼女の言葉を聞き返す。
すると、顔を真っ赤にした彼女がこういった。
401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/09(水) 20:30:08.38 ID:rtsmDsc0
くっ、いつまで焦らせば気が済むっていうんだッ
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/09(水) 21:44:37.38 ID:VU4G2oEo
なんという焦らしプレイ
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/09(水) 23:25:42.75 ID:ktFyQDE0
続きwktk
404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/10(木) 01:16:28.48 ID:BBBX9tgo
仕事行ってたんだよっと
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/10(木) 01:50:01.19 ID:BBBX9tgo
「む、胸を・・・胸の筋肉を触らせて欲しい!!」

改まって言ったのが恥ずかしかったのか、彼女は更に顔を赤くした。
なんだか可笑しな頼みだなと、彼は深く考えずに承諾した。

「ほれ、好きなだけ触れ」

「む、えと、力入れてもらえる・・・?」

上目使いに言われて彼は少し怯んだように頷いてこれに同意した。
彼はフンと鼻から息を漏らして胸に力を入れる。鍛えられた胸元はすぐに厚い肉の壁となった。
それを目と手の感触で確認した彼女はうっとりとした表情で

「うわぁ・・・凄い・・・」

そういいながら細い指が彼の大胸筋を縁からなぞるように動かしていく。
その様子は映画のハリウッドスター同士のベッドシーンのように見えたかもしれない。

「凄い・・・硬いです・・・」

「おおぅ・・・!!」

「鍛えてるんだな・・・」

「ま、まあな。伊達に毎日80回プッシュアップしてないさ。あ、腕立ての事な」

そっかぁ・・・と相槌を適当に彼女は彼の大胸筋に注意を向けたままだ。
その手は更に激しくなっていく。突っついたり、手のひらで撫でたり。
そんな事をされていては大の男の下半身が元気にならない方がおかしい。
彼の下半身は既に臨戦態勢であった。
必死に胸を撫でる彼女に対し、彼は少しずつ居たたまれなくなり、ソワソワと周囲に目を泳がせる。
そうでもしないと股間のテントは天井を突き破りそうな勢いだったからだ。
彼は気づかなかったが、彼に対して彼女も両足の太ももをもじもじさせていた。
彼はどうして良いか分からず身を固めていると、彼女がこう言った。

「俺ってさ、昔から力弱かったじゃん?だからさ、こういうの憧れてたんだ。男らしい体ってさ、好きなんだ」

告白じみた様な言い方に彼は沈黙を続ける。

「で、でさ・・・もう手に入らないからさ・・・だから・・・」

「いいさ、好きなだけ触れ。その方が鍛え甲斐がある。けど、条件がある!」

彼女は、え?と嬉しそうな顔のまま彼の顔を見上げた。

「俺も触らせろ!それが条件だ!」

彼女は一瞬驚いた表情になって暫く沈黙する。
彼としては一種の賭けの様な提案ではあったが、一度言い出した事を撤回する事はなかった。
彼はじっと彼女の返事を待った。ただし、ここは二人以外誰も居ない放課後の教室である。
406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/10(木) 08:35:33.78 ID:LAYabTIo
続きは?
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/10(木) 23:13:34.20 ID:9XvwcBM0
続きwktkwktk
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/11(金) 00:25:51.09 ID:Vc7cd.SO
すまない
仕事ばかりで投下する時間がががが
409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/11(金) 08:29:17.71 ID:aX97o0g0
これが投下を始めると世界が牙を剥く法則か…
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/11(金) 22:02:25.80 ID:Vc7cd.SO
彼女は首を縦にこくんとぎこちなく頷く。
彼は思う。これは彼女は女として男の自分を受け入れたと。
彼女は思う。自分を女として受け入れてくれたのだと。ただ、女としてこのシチュエーションはまずかったかな?とは思ったが。
しかし、彼はすぐに動き出した。一度動き出した雄の本能は止まる事を知らない。

「あっちょっと、そ、そこは!」

彼の手が彼女の肢体へと伸びた。
彼女が懸念したのは女としての恥じらいもあったが、それ以上に自分のアソコが濡れている事実を知られる事。要するに、自分が筋肉フェチであった事を性的な意味で知られてしまう事にあった。
だが止まらない。雄は止まらない。
えあちょっ、とか言っている間にスカートの中に彼の手が入り込む。
それを阻止すべく彼の腕を両手で捕まえる。
彼の腕は素晴らしく筋肉質だった。彼女は一瞬うっとなってうろたえる。
頭の中がよくわからなくなってきた彼女は次第にその抵抗を弱めた。いや、弱めずには入られなかった。女になった自分の性癖をど真ん中の直球で打ち抜く彼の体。

「はぁっ…んん!!」

体中に電気が走って自然に腰が逃げる。同時に、自分自身から信じられない声があがる。
彼は確信した。彼女は欲情していると。彼は彼女が初めての女性ではない。所謂非童貞であるがゆえ、彼女のスイッチが入った事を。
対して彼女は、迫り来る初めての快感に、もうどうなってもいい。自分が元男とか、筋肉フェチだとか、そんなのはどうだっていい。目の前の男に抱かれるのを良しと決意した。
何度も言うが、ここは放課後の教室である。

キーンコーン

二人がはっと我に帰る

「場所、替えっか」

笑いながら言う彼に、彼女はしばらくの沈黙の後、荒っぽいようでいて、かつ甘えた声でこう言った

「ばか…その前にキスだろ…」

彼は彼女をリードするように口づけをした。

再三申し上げるが、ここは放課後の教室である。
411 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/11(金) 22:06:52.96 ID:Vc7cd.SO
やっと投下できた。

凄まじく遅いのは携帯だから勘弁してね

次は何を書こうか
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/11(金) 22:22:59.89 ID:ptzGnWs0
GJ!!!
413 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/12(土) 13:04:14.89 ID:Ka.WT9go
GJ 放課後の教室いいね
414 :「にょた勇者クエスト」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:18:25.33 ID:Ka.WT9go
 そこは、深い、深い、人里離れた森の奥。その場所を知る人間はその場所を「聖なる森」と呼んでいた。百年前に魔王を倒した勇者が使っていた聖剣が安置されているという事実が、その場所が聖なる森と称されるゆえんだった。
 その森の最深部、聖剣の元に俺がたどり着いたのは、獣道のような道を藪を掻き分けながら丸2日経った頃だった。

「ん……あったあった、あれかー、聖剣」

 石の台座に突き刺さっている聖剣が姿を現した。誰が手入れしているわけでもないのに台座の付近には大きな植物が茂ることも無く、かつ聖剣の刃にサビのひとつもうかがえない。自分の腰に帯びている剣も名剣のはずだったが、その剣を見た瞬間にかすんでしまうほど聖剣は神々しかった。

「よし……」

 この聖剣を手に入れ俺は魔王を倒すんだ。と意気込んで台座の正面へ歩み、俺は聖剣の柄をぐっと握り締めた。手の中に妙なぬくもりのある聖剣。光っているわけではないのだがどこか眩しい、そんな不思議な感覚。

「っ……」

 腰に力を入れて、一息に剣を台座から抜き放った。鉄と石の擦れる音は一瞬で、抵抗もなく抜けた剣を俺はしげしげと眺めた。これがあれば魔王も倒せる。今までの相棒だった腰の剣に手を伸ばし、ご苦労様と外したところですぐ左に妙な気配を感じて顔を上げた。

「つぎの勇者はおまえか?」
「あぁ」

 突然そこに現れたのは、妙に高価そうな金色の繊維で編まれたローブに身を包んだ少年だった。年の頃は俺と同じぐらいだろう。筋骨隆々とまでは言わないが大柄なそいつは、めんどくさそうに頭をぼりぼりと掻いていた。俺は生返事だけを返しておく。

「じゃ、また魔王退治? しっかし人間も魔族も飽きないな〜」

 少年は眠そうにあくびをひとつしてローブのフードを脱いで、たった今聖剣を腰に帯びた俺をじろじろと見てきた。
 そこでふと、聖剣には守護精霊が居るという話を思い出した。聖剣の行く末を見守る守護精霊、名前からしてその辺に居る小型精霊の類かと思っていたがまさか人間サイズとは予想外だった。

「えっと、聖剣の守護精霊……だよな?」
「そう。俺、聖剣の守護精霊」
「は、はぁ……」

 俺はなんとなく妙なおまけがついてきた聖剣を再度眺めて、少し気の抜けた返事を返した。するとおもむろに近づいてきた守護精霊は俺の背中を少し強めに叩き、正面に回りこんで言った。

「はいはいしゃんとする! どうせやることは魔王を倒すだけなんだ」
「魔王を倒すだけって……あんた簡単に言ってくれるなよ!?」

 俺の使命、天命とも呼べる目的を“だけ”と言われ、頭に血が上りそうになる。守護精霊といったってたいしたことが出来るわけじゃないだろう、と荒げた声のまま言葉をぶつけた。

「簡単簡単。ちょいちょいーっと経験積んで魔王城行って魔王倒してはい。しゅーりょー」

 俺の怒りのこもった声を聞いても悪びれることなく軽いふうに守護精霊は言った。

「ってことで、早く森を出るぞ」
415 :「にょた勇者クエスト」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:18:58.02 ID:Ka.WT9go
「ちょ……待て、お前、そんな簡単な問題じゃな――」

 いきなり俺と肩を組み、そのまま守護精霊は森を出ようと俺を急かした。なんなんだこいつは。あの残虐非道、強靭強大な魔王を打ち倒すのは並大抵のことじゃないんだぞ。そう思った瞬間、妙な感覚に襲われた。
 一瞬視界がぼやけ、妙に動悸が激しくなったかと思えば、どこか思考がぼやけるが、すぐにそれも収まった。

「――いんだぞ大体、お前は魔王の恐ろしさを知らないからそんなことが言えるんだっ!」

 俺の心の中をその甲高い声が代弁してくれた。と思ったら自分の口からその甲高い声は出ていた。
 何なんだコレは、幻術の類か。
 それになぜだか息苦しくなり、着ている甲冑が倍の重さのように感じた。まさか敵が!?と、回りを見渡しても誰も……。

「あ」

 すぐ隣から聞こえた声。間の抜けたその声は守護精霊の声だ。表情も間の抜けたものになっている。

「まさか……お前、童貞?」
「あ、ああ……そうだけど」

 そんな無礼なことを聞いてくるのを聞いて、頭にきながらも正直に返事をするあたり自分は律儀だった。そしてその返事をした声は女の声だった。
 もう間違いない。俺は女の声、いや、女になっていた。

「……このヘタレ野郎」
「待てよ、俺、何で女になってるんだ!?」

 ヘタレと言われたことについては反論する気も起きず、ただ現状俺より詳しそうな目の前の守護精霊に問うだけだった。

「実はこの世界、15歳のとき童貞の男は…女になるんだ」
「15……って、で、でもそんなことがあるはずが……俺はそんなことになった奴を見たことはおろか聞いたこともないぞ!」

 あまりに荒唐無稽な話だった。だが守護精霊は声を荒らげる俺を気にもとめず説明を続けた。

「それは簡単。お前さんの先祖に聞いたが、この世界の人間は13歳までには大抵妻を娶るんだってな。若い盛りに夫婦生活が無いなんて、ありえないだろ?」
「だ、だからって……」

 それは、勇者の家計に代々伝わるある掟を、今までの勇者が破っていたという証明だった。ショックのあまり頭を落とす。

「大体、お前勇者の癖になんで童貞なんだよ」
「家の掟に『勇者は魔王を倒すまで無垢であれ』というのがあるんだ……俺は、それを守っていた」
「嘘だろ……お前の家の勇者達、先代も先々代もそれ以上前もどっかのお姫様や、宿屋の娘やパーティーの僧侶とか、よろしくやりまくってたぞ……聖剣を手に入れてからだけでも」

 先代たちがそんなに掟を破ってふしだらな行為に及んでいたなんて、と俺は衝撃を受けた。勇者という自分の使命を疑いたくなったが、そこを疑ってしまっては俺の人生は一体なんだったのだろうかと虚しくなってしまうだけなので無視する。
 そして、俺はある重大な事実に気づいた。

「このままじゃ、魔王なんて倒せないぞ……」

 とある鍛冶屋街で手に入れた自慢の黒鎧が重すぎて動けないのだ。筋力が落ちたどころの騒ぎではない。試しに一歩踏み出そうと足を
416 :「にょた勇者クエスト」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:19:37.62 ID:Ka.WT9go
上げようとした瞬間のことだった。

「ぅわ!」
「おっと」

 バランスを崩し転びそうになったところを守護精霊に支えられ助けられた。なんだか癪に障る。
 とりあえず防具を肩当から外していき、簡素な布の服のみになると、改めて自分が女になったことがわかる。
 頭ひとつ分は低くなった身長、妙に細くなった腕や腰回り、柔らかくなった足に、胸にある圧倒的な脂肪……乳房。それと顔を覆う長髪、鼻につく匂いまでどこからどう見ても女だった。
 そこまで確認して、守護精霊を睨みつけて俺は言ってやった。

「ありがとう。で、さっきお前何て言った? 『ちょいちょいーっと経験積んで魔王城行って魔王倒してはい終了』……だっけか」
「あ、あー。こりゃ、時間掛かりそうだなぁ」

 ばつの悪そうな顔をして頭を掻く守護精霊を横目で見ながら先ほどまで腰に帯びていた聖剣も一度外し、再び持ち直してみるとずしりと重く、とても扱えそうにない。構えようと切っ先をあげると腕が震える。こんなことでは、ゴブリンとも渡り合えそうに無い。

「聖剣、重くて構えることすらできないし、剣も無理、防具も無理、魔法も……」

 呟いていて気づいた。肉体は弱体化してしまったが、魔法は使えるはずだ。取り合えず思いつくままに呪文を唱えてみる。

「ラ○デイン」

 俺の言葉に呼応するように突如雷雲が轟き曇天になり、天から一筋の光が目の前の木に降り注いだ直後、爆音が俺の耳を打った。俺は事前に耳を塞いでいたが、静まってみると隣に居た守護精霊はひっくり返っていた。

「わーお、すごい威力。前はギ○モみたいな小さい雷雲しか呼び寄せれなかったのに」
「……やってくれるな」

 若干声を震わせながら彼は起き上がった。意外とタフだ。きっと守護精霊だから人間と同じようにはいかないのだろう。

「でも、魔法だけじゃ……魔王を倒すことはできない」

 威力の上がった魔法。しかし俺は絶望していた。剣ひとつ満足に振れない体で魔王と渡り合えるか? そんなことは言うまでもなかった。

「おっと、忘れてもらっちゃ困る。今手に入れた聖剣があれば魔王なんて楽しょ――」
「聖剣を扱えない勇者に価値なんてないっ!!」

 俺はその場に崩れ落ちた。こんなどこぞの姫様のような細腕でどうにか出来る魔王なぞ存在しない。もう俺は存在価値も無いのだ。やれることは一刻も早く次の子孫を産み、育て上げることだけだった。地面に叩きつけた拳、ひ弱な皮膚は裂け血がにじむ。鈍いその痛みは罪の償いにもならないだろう。噛み締めた唇から血の味がした。

「お、おい……落ち着けよ!」
「うるさい!」

 気遣うように近づいてきた守護精霊を片腕で振り払うように押しのける。すると地面に転がる聖剣が目に入り、さらに後悔に駆られた。

「お前、そんな簡単に諦めるな。勇者だろ! 聖剣は、持ち主に応じて姿を変える!」
417 :「にょた勇者クエスト」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:20:16.05 ID:Ka.WT9go
 守護精霊がそう俺に告げた時だった。聖剣のあった場所にはいつの間にか、細身のマシェットが転がっていた。マシェットは茂みなどを歩くときに使う木払いの刃物。長さも60cmほどで少々心もとない。
 だが、それでも。それを拾い上げ握ってみると先ほどと同じ、聖剣を握った感覚があった。

「これ……は?」
「これがお前の聖剣だな……確かに聖剣には見えない貧相さだけど、女でも扱える」

 その剣は、こぢんまりとしていたものの、やはり聖剣なのか威厳はあった。軽く振ってみると、先程とは違い剣にいなされることもなく綺麗に振ることができた。

「はは……憧れの聖剣がこんなナイフもどき……残念だ」

 そう言いつつも。嬉しかった。先程の喪失感もどこ吹く風と消えていく。

「贅沢いうなよー。使えるだけでよかったと思ってくれ」
 
 守護精霊は自慢げにそう言った。その頭を小突いてやる。

「いてっ! なにするんだよ!」
「うるさいバカ、こんな機能があるなら最初から言えよバカ」
「バカって言うな、普通抜いた瞬間変わるんだよ!」
「じゃあ自慢げに言うなバカ!」

 そんな小突き合いをしばらくして、俺はまた気づいた。

「待て、これじゃ、勇者が居なくなってしまわないか」
「はぁ?」
「よく考えてみろ。女になっただなんて誰が信じると思う? きっと魔物の仕業だとされて俺は良くて牢屋行き、悪ければ火あぶりの刑だ」

 と、自分で言っていて恐ろしくなりつつも、ふと俺は閃いた。

「いやまてよ、そうだ……こんなところにいい勇者様がいるじゃないか」

 俺は守護精霊を眺めつつ、近くに転がっている防具も見て。

「よし、そのローブ俺によこせ。代わりにお前はその鎧着ろ」
「おい、待て、俺が勇者!? そんなの無理に決まって……」

 慌てる守護精霊のローブを引っ張りながら俺は説明を続けた。

「どうせもう大都市を回るわけでもない。その辺の村やましてや魔族の領土に入ったら人間に会うかも怪しい。勇者がどんな顔してようがバレない」
「わかった、わかったから! 自分で脱ぐからちょっと待て!」

 守護精霊は俺の目を見て観念したのかそう言って、おもむろに金のローブを脱いだ。その下からは金の腰巻だけになった少年の体が出てくる。俺はあまり気にせず、渡された金のローブを受け取る。すると絹をも超えるような滑らかさの布地に舌を巻いた。

「うお、なんだこのローブ。めちゃくちゃさらさらじゃねぇか、お前これを渡したくなかったんだな!?」
「どこの精霊が好き好んで人間の鎧なんか着たがるかよ」
418 :「にょた勇者クエスト」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:20:53.25 ID:Ka.WT9go
 ぶちぶちと不満そうに文句を垂れる守護精霊を横目に俺は先程からうっとおしい自分の髪と格闘していた。とりあえず聖剣で散髪するのは気が引けたので道具袋の中の、へんな塔で拾った使いみちの分からない糸で髪を後ろでひとまとめにする。だぼだぼになった元のぬののふくを適当に紐で縛ってサイズを調整してから、金のローブを纏った。ついでに拳の傷を薬草とボロ布で巻いておく。

「ほら着たぞ。こんなので勇者に見えるのか?」
「見える見える、ほら剣も持って、これで立派な勇者だ」
「そ、そうか? しっかし、長年守護精霊やってるがこんな役割は初めてだな」

 まんざらでもなさそうな守護精霊を適当に調子に乗せておく。どこからどう見ても勇者その人だ。悔しいがやはり守護精霊だけあって品格がただよってやがる。とりあえず俺は聖剣を腰に差し、道具袋を掴んで持ち上げようとして、持ち上がらなかった。

「よし“勇者様”この道具袋持って」
「はぁ? なんで俺がそんなこと……」

 守護精霊がまた文句を垂れるので、袋から財布だけ抜き取りながら手短に説明する。

「重くて持てないからだよ。それに今からそっちが勇者、俺が守護精霊だ。そんなもの持って労働している姿なんてイメージに合わないだろう?」
「単に楽したいだけじゃないのか?」
「いいから、少しでも早く魔王を退治してお役御免になりたいんだろうお前?」
「はぁ……しょうがないなぁ」

 しぶしぶ守護精霊は荷物を担いだ、それを見てから俺はもと来た道の方へ歩きながら今更ながらの自己紹介をする。

「俺はリアン。勇敢かつ誠実な勇者だ」

 と、自分が自己紹介をしてからまだ守護精霊の名前を聞いていないことに気づいた。

「守護精霊、お前には名前はないのか?」

 そう聞くと、守護精霊は少し悩むように首をかしげてから言った。

「んー、名前なんてないんだ。歴代の勇者は普通に『精霊』とか呼んでたから」
「そっか。まあこれからは俺の名前を使ってくれよ。勇者リアン様」
「俺がリアンになるのはいいが、そっちはどうするんだ?」
「ナイラでいいよ。普通に綴りの逆読みだからひねりが無いかもしれないけど」

 そういうことで、俺は新たなる名前を得た。故郷にいる両親には、魔王を倒してももう会うことはできないだろう。俺は一抹の寂しさを感じながら守護精霊改め、リアンに話しかけた。

「とりあえず、この森を抜けて近くの村へ行こう。聖剣があるとはいえ、このまま魔王城を目指したところでどうにもならないだろうし。策を練らないと……」
「わかった。それはそうとして、この道具袋重すぎないか?」
「気のせいだろ、たいしたものは入ってないよ」

 嘘だった。実はこの道具袋王様の支給品の中では最も役立つもので、何でも大量に入る魔法の道具袋。しかし重さは減らしてくれないので、俺の性格もたたってかものすごい重量になっているのだが、それを捨てていくワケにもいかない。俺はとぼけることにして。先を急いだ。

「それよりナイラ……ナイラ?」
419 :「にょた勇者クエスト」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:22:20.73 ID:Ka.WT9go
「あ、あぁ。何だ?」
「口調、直さないと後々不便じゃないか?」
「えぇ……いいだろべつに」
「良くない。せっかく女になったんなら最悪女の武器を駆使することも考えろ。俺にこんなことさせておいて自分だけ楽するのは無しだぞ」

 背後の荷物を指し示しながら恨みげにリアンは俺をジト目で見てくる。その気迫に押されて俺はしょうがなく、応じておくことにした。

「……ちっ、しょうがねぇなぁ」
「言い直し」
「……わかったよ。しょうがないね」
「よろしい」

 かくして俺たちはひとまずの目標として近隣の村を目指すこととなった。魔王を倒すにはまだまだ遠い道のりであるが、その道のりを確実に一歩、俺たちは踏み出したのだった。

<つづく>
420 :ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/12(土) 21:23:43.80 ID:Ka.WT9go
とりあえず序章だけ。プロットはあるがここから先は本文は真っ白だよ! 脳内出力が膨らんだ結果がこれだよ!! 
萌えとかなんとかは続きがあれば。期待しないで待っててね!
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/12(土) 21:45:20.45 ID:7QElxXAo
俺が期待してやんよ!
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/12(土) 21:48:01.31 ID:/QuG7zwo
GJ!!

じゃあ俺は大分前にもらったお題の魔法使いネタを行こう
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/12(土) 22:41:32.92 ID:/QuG7zwo
「お疲れ〜今日はこれで上がっていいよー」

軽い口調な渋い声の主はコーヒーバー『魔法茶碗』の店長、浦芝利一(うらしば りいち)。通称リチャード。
如何にも取ってつけたような通称である。
年のころは35歳で、グレーを基調としたスーツをびしっと着こなしている。
鼻の下のちょび髭が如何せん年齢と不相応なイメージがぬぐい去れない。

「ねーフォックス!この後一緒にゲーセンいこー」

年少特有の甲高い声の主は、店長の娘で小6の浦芝恵美衣(うらしば えみい)。通称エミィ。
コーヒーバー『魔法茶碗』のマスコットキャラ的存在で、キャラモノのTシャツにプリーツスカートの可愛らしい少女だ。
そしてフォックスと呼ばれたのはこの物語の主人公で、真田フォックス。父が日本人。母が英国人の所謂ハーフだった。
年齢は15歳で身長は165センチと標準より少し小柄だが、線の細いしなやかな出で立ちと優しげな顔立ちで、常連のOLから絶大な人気を誇っている。
今まで仕事中だったので、ウェイターの格好だ。

「えぇ!ええと・・・・ど、どうしようかな〜はふぅ・・・」

疲れきった声がフォックス少年の口からこぼれた。

「もぉー!行くったらいくのー」

「はっはっは。エミィ。今日はお店のお手伝いの番だぞ」

「げぇー!?そうだっけーーー??」

「ごめんね、エミィちゃん。マスター、今日はなんだかどっと疲れたんで部屋で休みますね」

「はいはい。夕食には起こしてあげるから、ゆっくり休むといい」

「ありがとうございます。じゃあ・・・・おやすみなさ〜い・・・」

そう言ってフォックスはふぁぁ・・・と大きなあくびをしながらフラフラと店の奥に引っ込んでいく。

「フォックスのばかぁ・・・」

「こらこら、八つ当たりしない」

マスター、もといリチャードはフォックスが自室へと戻っていく姿を見届け、

「そろそろ・・・かな?」

と、一言。

「なんのことー?」

きょとんとしたエミィをなんでもないよ。と頭を撫でて優しくあしらう。
フォックス少年は深い眠りに落ちた。
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/12(土) 23:00:44.92 ID:xH0kwgs0
続きwktk
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/12(土) 23:41:34.19 ID:/QuG7zwo
彼は両親から離れて生活している。両親との折り合いが悪い。というわけではない。単に浦芝利一の下に下宿している身なのだ。
その下宿の理由。フォックス少年は魔法茶碗の店長、浦芝利一からとある魔術の教えを受けているからだ。要するに、彼とは師弟関係にある。彼ら彼女ら、『魔道』を目指すものは必ず誰かの元で修行を積んでいく。

魔法。それはそう簡単に扱えるものではない。モノによっては宗教的な崇拝や、書物や口伝により知識を身につけることから始まり、とある時期を迎えるまでにそれを行い続けることで初めて覚醒を迎える。
それは、様々な分野においても同じ事象で、一般人に無い大いなる力を手にする際に必ず発生するとされている。
生命エネルギーの暴走。俗に言う『reckless life』。それは成長期におけるホルモンバランスを狂わせるという神秘的な現象でもあった。

体が熱い。焼けるように熱い。そんな異常な熱さを感じてフォックスはベッドから上半身だけを起こす。
朦朧とする意識の中、微かに体中から痛みを感じ取る。軽く指を動かそうとしてみるとピリっとした痺れのような小さく鋭い痛みが走る。

「ぅぅっ・・・」

小さなうめき声を上げると、か細い高い声が頭の中を刺激する。悪い夢でも見た?もしかして熱?風邪かな?とゆっくりとした思考しか持たない寝起きの頭脳が少しずつその思考回路を取り戻していく。
頭に溜まった冷たい汗が雫となって頬を伝う。相当寝汗をかいたらしい。
少しでもこの不快感を和らげようと、机に投げ置いてあったフェイスタオルを取ろうと起き上がろうとしたが、足元に力が入らなかった。参ったな、風邪だ・・・。と心の中でつぶやくと同時にノックも無しに自室の扉が開いた。

「おや、起きてたのか」

「マスター・・・・」

「ほぅ、不謹慎だが可愛い声だね」

「は、はい?茶化さないでくだ──」

「えぇぇ!?」

聞き覚えの無い甲高い声が自分の頭と自室に響き渡る。暫くパニックになって、動きの悪い両手をばたばたと動かしていたが、それもじきに落ち着きを取り戻して。冷静にあーとかうーとか発生してみた。

「な、なんなんですかこれ!!」

甲高い素っ頓狂な声が自らの聴覚を刺激して脳の神経を揺さぶる。

「あいたたた・・・」

「ほら、病みやがりのようなものなんだから、少しは安静にしなさい」

「はい・・・・って、マスター」

「ん?」

フォックス少年は、自分自身に起こった『声が女の子になっている』現象をひとまず受け止めた。しかし、自然の摂理では少なくともこんな現象は存在しない。それはつまり──

「また変な魔法つかいました・・・・?」

「確かにボクは悪戯が大好きだけど、呪術は専門外だよ。それは君も知っているはずだよ?」

このマスター、フォックスの師匠にあたる人物は年甲斐も無く悪戯が趣味なのである。仕事中はそんな姿は微塵も見せないのだが、私生活となるとその本性を表すのだ。つまり、フォックス少年は彼が遊び半分の悪戯でこんな目にあわされているのだと思っていたのだが。

「今こそ、魔術。いや、『魔道』についての真実を話さなきゃならないね」
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 00:22:25.63 ID:ecMJJtso
マスターの顔は真剣そのものだった。
その真剣な眼差しに少しばかり気おされたフォックスは黙って彼の言葉を待つ。

「まずは、君の体に起こっている現象。それは生命の暴走と言うね」

彼は良く分からないまま、はぁと相槌をうつ。

「つまり、君は今その生命の暴走、所謂『RL現象』が起きているんだね」

RL現象・・・?彼にはとても理解できない言葉だった。
魔術を学ぶ彼は頭脳の中に蓄積された情報を検索してもそんな言葉は見つからない。
せいぜい、ゲームコントローラーのLR?見たいな知識しか思い浮かばなかった。

「すまないね。これは暗黙のルールみたいなものでね、RL現象に関してはその現象が起こるまで本人には隠しておかなければならない事になっているんだ」

「・・・・よくわかりません」

「ああ、ごめんごめん。回りくどいのはボクの悪い癖だね。つまり、君は今女の子なんだ。肉体的に・・・ね」

「・・・・・・・」

フォックス少年は言葉を失った。

「RL現象っていうのは、分かりやすく言えば性転換。男の子の場合は女体化といった現象になるね、逆もまたしかり」

「女・・・・体化・・・・・」

「何の因果なのかな。魔道を志し、その力、魔翌力を得るとどうしても避けられない現象なんだね。ボクもその体験者だよ」

「は・・・はは・・・」

「君はこの2年半で様々な知識を得たよね。魔術の基本、魔術の力、魔術の源、それはを知る行為というのは一種の身体改造、ドーピング見たいな行為なんだ」

「・・・・!!そんな理由とか根拠とかどうでもいいです!どうしてこんな大切な事を黙っていたんですか!?」

「・・・・・・君はなぜ魔術を学んでいるのかな?どうしてボクに弟子入りしたんだい?」

「そ、それは・・・・それは!」

彼はどうしてこの身体変化の事を今まで黙っていたのか最後まで教えてくれなかった。上手く言い逃れられたのかもしれない。
ただ、この現象が魔道を進む上で必ず通る道なのであれば、慣れないこの体にも耐えられるかもしれない。
フォックス少年には魔道を進むべき理由があったのだ。
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 00:50:36.35 ID:ecMJJtso
それじゃあ夕食にするよ。そろそろ体も楽になった頃だと思うから。と、マスターはフォックス少年の自室から出て行った。
彼はベッドの上から動かず少し物思いに耽った。
なぜ、マスターは性転換の知識を自分に教えてくれなかったのか、やはりこの事はどんな理由があっても拭い去れない。
そこまで来て彼は一つの疑問点に気づく。
我々の先輩にあたる魔道を進む者たちはこの現象に合っているはず。ならばその情報が世間的にも知られていてもおかしくはない。
ならば、なぜ自分がそれを今まで知りえなかったのか、と。
しかも、これから対面するエミィにはそれこそこの現象の事を知られてしまう。
ならば、黙っている必要性とか社会的ルールみたいなものはどう説明したらいい、と。
何かがおかしい、そう思いながら今一度その真偽を確認すべく重たい体を動かして自室の扉を開けた。

白い世界。何も無い世界。ただ、ずっと地平線すらない白い空間の世界が目の前にあった。

「体はどうだい?」

不意に後ろから声を掛けられてぎょっとして後ろを振り向く。

「こ、ここは!?」

「エミィに知られる訳にはいかない・・・・よね?」

飲み込みの早いフォックス少年は、これがマスターの引き起こした魔法だという事に気づく。
そして、マスターの言葉はフォックス少年が懸念した事象をそのまま言い当てた。

「夕食・・・・じゃないんですね」

「あぁ。もう深夜の3時だよ。エミィはとっくに寝ているし、今の君がバレることもないんだけど・・・・一応、ね」

「な、何をするんです・・・・?」

「・・・・・そう身構えないで欲しい。僕は一言こう言いたいんだ。おめでとう。君は魔翌力を手に入れた」

「!!」

「君の想いに一歩近づけたわけだよ。けど、失うものもある。それが魔道なんだ」

「なんとなく、わかりました。けど、こうまでして隠す理由って・・・・納得できません・・・・」

「こればかりはボクには答えられない。けど、それを教えてくれる次なる学び舎を用意したよ」

次なる学び舎という言葉を聞いてフォックス少年は驚きを隠せなかった。
一般的に後悔されている情報は、師匠の下で魔道を教わるという事だけ。

「いいかい?君はこれからここに行ってもらう事になる」

すると、虚空から何かパンフレットのような冊子が現れ、マスターの指図でフォックス少年の手元まで自動的に飛んできた。
その冊子の表紙にはこう書いてあった。

『ミュテリア魔法学園』と

「」
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 01:33:52.05 ID:ecMJJtso
入学式の当日、フォックス改めフォクシーは学生寮の一室で身なりを整えている最中だった。
フォクシーは女子生徒用の制服のブラウスに対して慣れない手つきでボタンを留める。スカートはまだはいておらず、ブラウス一枚の極めて際どい格好だったが、同室になるはずの人物達が居なかったため、特に気に留めることはしなかった。
学園の学生寮は三人一組の部屋になっている。本来なら後二人の同居人が居るはずなのだが、何の手違いかまだ学園に到着していないらしい。
はぁ・・・・また掛け間違えた・・・と、ブラウスのボタンを掛けなおそうとしたとき、外からドタドタドタと騒がしい音が聞こえてきた。
と、その時、不意に部屋のドアが開き、二人の少女がなだれ込んできた。

「こ、ここか?ここなのか!?薔薇・・・じゃなかった百合の女子寮は!!というか俺っちの部屋ーーー!!」

「あーーーもう!うるさい!お前の所為だぞ!!寄り道なんかして迷子になるから!!」

「ひっ!」

なだれ込んできた二人の少女は言い争っていたと思うと、次の瞬間フォクシーを見て目を点にする。

「あ、これはその!!!ごめん!!み、見てないから!!」

「うひゃー絶景ですよー!まぁ!見た目に似合わず派手nうわなにをふぁふだ」

バン!という音と共に扉が閉められる。

部屋にフォクシーが一人。彼女は逆に目を点にしたまま固まっていた。


西洋的でかつ、和を取り入れたようなデザインの学生服姿の3人の少女は入学式が始めるまでの時間まで談笑していた。

「ご、ごめんな。入学式に遅れるかと思って、慌ててね」

「いいじゃん、結果的にちゃぶちゃぶ言う時間まであったんだし」

「あはは・・・いいよ、気にしてないから」

フォクシーはそう言って、自然な笑顔で彼女らに掛け合う。と、その途端、二人の表情が真顔になって固まる。

「も、萌えた・・・」

「ぐ、不覚にも・・・俺も・・・」

「え?え?なに!?」

「い、いや、なんでもない!なんでもないよ!」

「恥かしがって慌ててる沙羅ももぇうわなにあfぁ」

ドガン!と沙羅と呼ばれた少女がもう一方の少女の脳天に鉄拳を振り下ろした音が室内に響き渡った。

「ひ、ひどい!ひどいわ!」

「ごめんな、アイツ放っておいていいからさ、でもさ・・・・君・・・も、本当に元男・・・・なんだよね?」

二人の掛け合いを呆然と眺めていたフォクシーは、元男という言葉を聞いてふと我に返った。
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 02:13:04.07 ID:ecMJJtso
彼女らは自分と同類なのだ。それもそのはず、この魔法学園にやってくる生徒達、自分と同じ性を女性とする者は皆元異性なのだ。
となれば、彼女らにも自分とも同じ"悩み"があるはずなのだ。
彼女は同じ身の上の彼女らにそれを確認して見たかった。君たちはどういう想いでここにやってきたのか、と。
すると、後ろの方で、頭を抱えていた少女はいつの間にか、先ほど殴られた頭を忘れたかのように、スカートを両手でバタバタさせながら、あぁ、涼しいよぅ。風が気持ちいいよぅ。とか言っている。
そんな少女を尻目に二人は会話を再開させた。

「う、うん。僕の名前は真田フォックス・・・今は改めフォクシーって言う名前なんだけどね」

「やっぱそうなんだなー。って、外人さん!?」

「ん、ハーフかな。父さんが日本人で母さんが・・・・・イギリス人・・・・」

最後の言葉が少し曇ったように聞こえたが、沙羅と呼ばれた少女は特に気にせず

「はぁ〜〜〜それで!いやぁ、日本人離れした顔だと思ったら!あ、俺、前谷沙羅!元はサトシってしょうも無い名前だったよ」

「前谷・・・さん・・・だね」

「あぁ、沙羅でいいよ。その方が可愛くて気持ちいいし。あ、それとあっちのバカが松平吾平ね」

「む!吾平ちゃうわ!その読み方で呼ばんでくれ!俺っちの名前は姶良!アイラちゃんって読んでね!」

「え、ええと・・・ご・・・」

「ちがーーーう!ア・イ・ラ!ほら復唱!」

「あ、アイラちゃん・・・・よ、よろしく」

騒がしい二人だが、何とかやっていけそうな気がして、フォクシーの顔が自然と緩んでいった。

二人の会話に流されて、聞きたかった事を聞けずに居ると、寮内放送らしき声が室内に響いた。
『これより入学式を行いますので、新入生の方々は講堂前に集合してください、その際──』
と、事務的な言葉が続けられた。

「じゃ、一緒に行こうか!」

ベッドに座っていた3人は意気揚々ドカっと立ち上がる。それぞれ女性らしさのかけらも無かったが。


3人は教室へ向かっていた。今日は入学式だけなので、それ以外には大した行事はないのだが、一度教室に集まることになっているらしい。
フォックス、沙羅の二人はつかれきったように肩を落としていたが、それに対して姶良は元気そのものだった。少々顔が熱っているようにも見えたが。

「はぁ・・・校長もとい・・・学園長の話ってやっぱどこも長いね・・・・」

「そうでもないぞー、前に座ってた娘、いい体してたよーじっくり堪能させてもらったお」

「こいつのエロパワーは女になっても不滅かよ・・・」

実際女になってからというもの、男の時ほどの性的衝動は少ないように思える。魔法茶碗で働いていた時に様々な女性に声をかけられた。
産な少年であったフォックスは気恥ずかしいもはありはしたが、それでも異性に対してそういった衝動を持ってないわけではなかったからだ。
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 03:20:28.90 ID:ecMJJtso
「いやーまぁ、でも、やっぱり男を見てもときめかねーわ」

「それはわすれたまへ。百合があればそれでいいんだお」

今までバタバタしていて、あまり気に留めてなかったが、ここに来て二人の容姿を観察して見た。
前谷沙羅、通称沙羅。年のころは同じとして、整った顔立ちに綺麗に切りそろえられた前髪。後ろ髪は背中まであり、綺麗な黒髪ストレートヘアだ。
胸の大きさは・・・・ブレザーだとよくわからない。

「ん?どした?あぁ、この髪な。結構手入れ大変なんだぞこれ」

もう一人、松平姶良。くりっとした目が印象的で、短めのショートヘアは毛先から3センチくらいのところでくりんと丸まっている。
胸の大きさは・・・・触れないで置こう、本人が気にしているかもしれないし。まぁ、全体的に幼い印象だ。発言以外は。

「き、気にしてなんかないんだからね!」

「ご、ごめん」

対して自分はというと、身体変化で髪の毛の色が抜けてしまい、銀とも白とも言えない色になっていた。
正直なところ長くなった髪を最低限の手入れで終わらせ、後ろで束ねてポニーテールを作っているだけ。
身長は少し縮んで160センチ。女性としては背の高い部類に入るだろう。
胸に関しては・・・・正直人前で見せるには少々大きいのではないかと思っている。それに、ゆれるし、重いし、なんにしてもブラジャーが高かった。

「傷ついた・・・から癒して〜〜〜!!」

むぎゅーっと姶良の顔がフォクシーの胸元に埋まる。

「あわわわわわわ!!」

「ふぁ〜やわらかいよぉ・・・・おかぁちゃーん」

ゴチン!以前部屋で聞いた音と同じ音が響いた

「合法的にさわってんじゃねぇ!!」

足元であうあうあうと呻いている姶良が少し可愛そうだったが、どうしていいか分からずフォクシーはわたわたしていた。

「しっかし、胸も外人級・・・ずるいぞ。それにこの髪の色も反則!てか、校則違反!」

「そう・・・かな?でも、沙羅の黒髪、僕は羨ましいかな。綺麗だよ」

彼女としてはこれが素の言葉だったのだろうが、それを受け取った沙羅は驚いて顔を真っ赤にしてしまった。

「え!?そ、そんな・・・改まって言われると・・・・その・・・・」

案外ほめ言葉に弱いらしい。恥かしがった彼女は、普段の男らしい口調とは一転してこの場はただの少女だった。

「惚れたか・・・・?惚れたのかー?いやぁぁぁん!沙羅ちゃんのえっちーーー!」

ふと我に返った彼女は怒りに震え、眉間にしわを寄せ、コメカミには青筋すら浮だっていた。先ほどの可愛らしい仕草とは一遍してこの場はただの修羅だった。
追いかけ合う二人。そんな二人は姿かたちが変わろうとも、友達同士である事を教えてくれた。
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 03:52:46.76 ID:ecMJJtso
入学式が終わり、その後集められた教室では、沙羅だけが別のクラスだった。
一人座席について、はぁ・・・・とため息をつく。
すると。

「へぇ、しっかり手入れしてるねぇ〜綺麗だよ、うん。綺麗」

「え!?」

後ろから大きな手で髪を撫でられて慌てて後ろを振り向く。
その大きな手の主は、沙羅の後ろの席に座っていた男子生徒だった。
短髪で髪の毛はツンツンと逆立っている。如何にもチャラチャラ星からやってきたチャラ男ですよー。といわんばかりの容姿だった。

「手入れ何時間かかってんの?」

と、馴れ馴れしくも絡んでくる。
が、綺麗と言われて少し喜んでいると、そこに畳み掛けるように男の猛攻がやってきた。

「爪とかどうやってんの?見せてよ」

「え、そ、えと!」

どう答えていいか迷っているうちに、男に手を掴まれてぐいっと引っ張られる。

「ふぅ〜ん、まぁこんなもんか。うん、いいじゃんいいじゃん」

「あの、えっと・・・・」

「ああ、わた・・・じゃなかった!俺、柴又魔裟斗!いや、男ってのもなかなかいいね!」

彼女は暫く沈黙する。目の前のチャラ男はつまり元女であって、元男の目から見てもそれなりに男っぽい雰囲気をかもし出している。
女ってのはつくづく変わり身が早いな、と呆れていた。

「ねぇ、名前!名前教えてよ!」

「え!?えと・・・・前谷沙羅。です」

「沙羅ちゃんかー!可愛い名前だねー!ちょっとうらやま・・・・じゃなかった!」

ところどころ歯切れが悪いところがあるが、男になり切ろうと努力をしているんだなと、彼女は少し親近感が持てた。
しかし、この親近感こそが彼が仕組んだ巧妙なワナであることは彼女は気がつかない。女素人、元男(童貞)の底の浅さだったのかもしれない。

「つまんねーホームルーム終わったらさ、いっしょにどっか遊びにいかない?」

手の早い男。彼女にはそう思うだけの知識はなかった。修行時代は俗に言う修行僧。今は僧尼となるが。
ともかく、彼女にはそういった色恋の経験が無い。実質ご法度なのだが、それは修行時代のみ。時代が時代か、寺の跡継ぎ等の問題もあるため、今はそれほど問題視されてはいない。

「え、ええと・・・どうしようかな・・・」

彼女にもそれなりの考えや悩みはあった。彼女もまた、フォクシーと同じく性転換に対して悩みは当然あった。彼女は彼女なりに考え、女になったのなら、女として生きていくのもありじゃないか?と考えていたのだ。
ならば、今までご法度だった恋愛を女という形で成していってもいいじゃないか?と。
432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 04:34:34.86 ID:ecMJJtso
一方その頃、フォクシーと姶良は同じクラスとなっていた。

「むむむ!あのこいい足してまんなー」

とか

「うはおk!あの乳好み!」

とか、おやじくらい台詞をフォクシーにだけ聞こえるように耳打ちしてくる。
この上なくうざったい絡み方なのだが、人の良いフォクシーはあははと笑って聞き流す事しかできなかった。

「あ〜あ、早く女子寮に帰りたいなーお腹すいた」

「あ、でも、食事が出るのは夕方だけど?」

「うそ!マジっすか!俺っちたえられんよー」

「じゃあ、沙羅も誘ってこの後食事っていうのは?」

「あ、あ、でもね!食事って言うのはそういう意味じゃなくてね!」

皆まで言うな、フォクシーは心でそうつぶやいて、沙羅を見習って見た。

ゴチン!

「あふん!うわーん!フォクシーまでーーー」


ホームルームが始って、やっぱりか。といわんばかりに自己紹介が始った。
自己紹介といえば名前をはじめとする自己アピールの場なのだが、ここミュテリア魔法学園ならではと言ったものがある。
それは、自分が使う『魔法分野』。要するに職業の紹介である。
スタンダードに魔法使いと答える者、そして・・・

「はいはーい!私、松平姶良と言いまーす!アイラと読んでね!吾平とか読まないよーに!好きなものは女の子でーす!職業は・・・・大僧正!うそでーす、今は僧尼でーす」

ストレートなのか、はたまたウケを狙ったのか良く分からない自己紹介にクラス中の生徒が大爆笑する。
彼女のような、僧尼もいれば、巫女に転身した者もいた。巫女と言っても様々で、俗に言うヒーラーや、戦闘用呪術(牛の刻参り等)を使用する危険なもの、淫を意味する巫女と様々である。
式神を利用する陰陽師や、中国から伝来した風水師などもいた。
代々武士の家系をつぐものだと、戦闘用の補助魔法的なものを使用する念術師もいる。自分は強い。自分は早い。そう言い聞かせ、念じる事でそれを実現させる魔術。
新撰組で有名な沖田総司はその生命と引き換えに身体能力を向上させる術を持った魔術師だったとも言われている。

「ええと、真田フォクシーと言います」

この名前を聞いてクラス中がどよめく。周辺からマジ!?ハーフ!?ものほん!?うわ、負けた。とかよく分からない言葉まで飛び交う。

「あの、その・・・・職業は、舞踏魔術です・・・・」

それを聞いたクラス中の生徒がさらに騒がしくなる。特に、男性陣(元女)達は少し顔を赤らめてすらいた。それはそれは複雑な心境だったろう。
舞踏魔術は魔術の中でも特別で、女性の場合魔翌力の持った踊り子の服(下着のようなもの)を纏い、それを晒しながら踊る事で足元で魔方陣を描く戦闘術師の事である。
つまり、男性陣が顔を赤らめたのは、元女としての羞恥と男としての性的衝動があったわけで・・・・。ああ、だから言いたくなかったんだ。といわんばかりの表情で彼女は席に座る。
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 06:08:08.10 ID:ecMJJtso
一風変わった自己紹介も無事?に終わり、ホームルームも終了した。後は寮の門限までは自由な時間。それぞれが者が各々のグループにまとまり、男と男、女は女で固まって集っている。こういった風景はどこも同じようなものだった。
やはり同性と言うのが一番落ち着くらしい。それもそうかと、フォクシーは周囲を見渡すのを止め、姶良に視線を戻す。

「じゃあ、沙羅のクラスに行こうか?」

「あーい!おらぴざくいてえ」

この人本当に僧侶?と思うほど欲塗れな残念な人を連れてフォクシーは沙羅の居るクラスへ急いだ。

「あれー?沙羅ーさーらー?さとしーーーー!・・・・・居ないねぇ」

「そう、みたいだね・・・・」

「どーこいったか・・・あいつ・・・・はっ!もしかして、俺っが迷子になったときに見つけたあの店に・・・・一人でぇぇぇ!!」

うぉぉぉぉぉ!!とかはしたない声と走り方で猛然と走り出す姶良。

「あ、ちょっと!ま、まってーーー!!」

フォクシーもそれを追って走り出した。

─────────────────
「なぁ、どこに行くんだ?」

「ははっまぁまぁ。それからさぁ、そんなに可愛いのに、そんな喋り方じゃもったいないよ?」

「か、可愛い!?お、俺が!?」

可愛いと言う言葉に過剰反応する沙羅。その顔はあからさまに真っ赤になっていた。どう反応していいか分からなくなった沙羅はあたふたしている。

「ははっほら、行こうよ!いい店知ってるんだ」

「え?いい所って?」

少々舞い上がっていた彼女には、いい店というあまりにもアバウトで行き先の見えない曖昧な発言に対して何の不信感も抱かなかった。

「まぁまぁ、着いてのお楽しみ〜」

「あっ!ちょ、ちょっと・・・もぅ・・・・」

と、沙羅はここぞとばかりに女っぽくして見せる。対して柴又の口元はにやりと引きつるような歪だ笑みを浮かべていた。

─────────────────
「ちょっと!ちょっと待ってって!」

姶良を追いかけて走っていたフォクシーは、何かを見つけてワナワナと震えている彼女にぶつかって、あいたっと声をあげる。

「あっ・・・・あっあっあ・・・・アッーーーー!!」

何かを目にした姶良から素っ頓狂な雄たけびが発せられる。彼女が見たその先に居たのは、チャラチャラ星のチャラ男と一緒に歩く少女。整った顔立ちに綺麗に切りそろえられた前髪。後ろ髪は背中まであり、綺麗な黒髪ストレートヘアの少女、前谷沙羅だった。
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 06:08:51.00 ID:ecMJJtso
疲れたので寝ます
そして起きたらまた仕事・・・・

勇者様助けて
435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 10:35:27.43 ID:FyyVnaYo
ファンタジーとは別の作品?
436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 12:52:45.98 ID:levwVYSO
にょた勇者と同じ作者って意味?
それとも違う意味?
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/13(日) 17:57:56.38 ID:hYQGCQE0
なんか書いてみたくなった。
安価↓
438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 18:09:24.32 ID:6VitajMo
安価なら「ドッペルゲンガー」
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/13(日) 22:57:10.52 ID:.sW7WRw0
GJ!
続きwktk
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:21:51.02 ID:levwVYSO
ありがとう
続き書きたくて仕方ないのだが、まだ仕事終わらんぜ

ところで、魔法学園のやつ、エロとかあったほうが良い?
441 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 23:50:10.17 ID:6VitajMo
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 『俺はにょた勇者クエストの一話を書き終えたと思ったら第二話も書き終えていた』
 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

ということで投下
442 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:52:10.83 ID:6VitajMo
「なぁなぁ、“奇跡の呪文”って、知ってるか?」

 そんなうわさ話が聞こえてきたのは、俺が大変な目にあってからかれこれ一週間、聖なる森に近い村を離れて、魔王妥当の手段を探し当てもなくたどり着いた人間の領土の端にある港町の酒場でのことだった。
 俺はカウンターに、リアンとともに座って酒を軽く飲んでいた。前よりは酒に弱くなったこの体で少しぼやける頭だったが、後ろのテーブルについた船乗りの男二人の噂が耳に入ったのは、本当に偶然のことだった。

「“奇跡の呪文”〜? なんとも胡散臭い話だな」
「なんでも、唱えるだけで奇跡が起こせるって代物らしい」
「はいはい、どっちにしろ、俺ら船乗りにゃ縁のない話さ。海が穏やかになるにはたまのお祈りも必要だがな」

 唱えるだけで奇跡が。もしかしたら俺の体も取り戻せるかもしれない。希望を持って振り向こうとすると、さっきまで隣にいたリアンが既にその船乗りたちの席へと移動するところだった。
 ここ一週間の旅で村には2つ寄ったが、そのどちらでも勇者様は歓迎を受け、いい気になっているのだろう。出発当初のめんどくさそうな言い草とは打って変わってリアンは積極的に動くようになっていた。

「その話、詳しく聞かせてくんない?」

 いい勢いでその卓に置かれた酒ビンは、俺が今飲んでいる銘柄のものだった。リアンが勝手に注文したこの銘柄は酒場で最も高い酒だ。しょうがないので俺も相伴に預かっていたが、いつの間にか俺たちがカウンターで飲んでいた酒のボトルまで持っていきやがって。この勇者様め。これで情報聞き出せなかったら承知しないぞ。

「アンちゃん、興味あるのかい?」
「あるさ、奇跡の呪文なんて、すごいじゃないか」

 船乗りの片方、得意げに噂を喋っていた恰幅のいいヒゲのおっさんがそう言うと、すぐにリアンは酌をしながらニコニコと話した。
 するともう片方の船乗り、髪をオールバックにまとめた少し細身だが筋肉のついた、小麦色の肌のおっさんはやれやれといった様子で呆れていた。

「やめときなやめときな、どうせまたいつものくだらない噂話なんだから」
「なんだと! 俺の話のどこがくだらないってんだ!」

 恰幅のいい船乗りが握りこぶしを叩きつけると、酒場の机が軋んだ。しかしそれにひるむ様子もなくオールバックの船乗りは酒を傾けて続ける。

「沖の大ヒトデだとか、魔物に寝返った王侯魔術師がいただとか、エルフの美女と寝ただとか」
「ま、まぁまぁ、面白い話をたくさん知ってるってことだろ? で、奇跡の呪文ってのは?」

 なんとかリアンは言い争いで収めたようだった、しきりに恰幅のいい船乗りに酒を勧める。その船乗りは顔をクシャッとしかめたが、すぐにリアンに向き直り話し始めた。

「実はな、この港の近くの小島に寂れた神殿があるんだが、そこに奇跡の呪文を記したと言われる巻物があるらしいんだ」
「その小島の場所、わかるか?」

 徐々に酒が回っていい気分になってきたのか、恰幅のいい船乗りはよく滑る口で楽しそうに話す。
 くそ、酒場での情報収集なら俺だって……。と悔しい気持ちに駆られるが今の体は女、酒場で男に言い寄ろうものならばどうなっても文句は言えないだろう。任せるしか無い。

「あたぼうよ! 何だ、行きたいのか? 今ならこのうまい酒の礼も兼ねて安くしといてやるぜ」
「じゃあ、お願いできるか? できれば早いうちがいい」
443 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:53:17.12 ID:6VitajMo
「んじゃ明日だな、アンちゃん運がいいな、俺ほどの船乗りはこの港に二人といねぇぞ。明日船着場に来な」

 ガハハ、と豪快に笑いながら船乗りは胸を張った。隣でやれやれともうひとりの船乗りが苦笑している。
 俺も苦笑したくなったが、とりあえずと戻ってきたリアンの腕を引っ張り酒場から連れ出した。

 しばらく歩いて、俺たちが取っている宿に戻り、海を望む二階のその部屋に戻ってきた。木造の部屋にベッドが2つ、調度品は小さな机ひとつ。安宿だが、勇者の旅には倹約が必要なのだ。もう一度言う、勇者の旅には倹約が必要なのだ。だというのにこの勇者様は。

「ばかやろう! 高い酒勝手に頼みやがって」
「情報料だよ情報料、それに明日の船代も安くなっただろうし。それより。言い直し!」

 リアンは俺が男言葉を言ったのを見つけて、鬼の首を取ったような顔をして嬉しそうに言い直しをさせるのだった。よっぽど勇者の代わりをさせたのを根に持っているのか、言い直さないと俺が苦労して手に入れた鎧や剣や道具を捨てていこうとするからたちが悪い。それを俺が持っていけないのをわかっているからだ。

「っ……」
「言い直し」
「バカっ! 高い酒勝手に頼んでっ!」
「よろしい」

 おかげでこの一週間の道中で俺の男としてのプライドはボロボロだった。女言葉を喋っていると心まで女になっているようで気分が悪い。
 それはともかく、奇跡の呪文について気になった。

「それより、おま……リアンは、“奇跡の呪文”について何か知ってるの…?」
「知ってる、というほどは知らない。でも、たしか前々々回の旅ぐらいに噂を聞いたことがある」
「その噂って?」
「確か、時間が戻るとか」
「時間、それって……」

 時間が戻る、もしそれが本当ならば俺は男に戻り、童貞を捨て去ることによって男のままでいられる、そういうことではないのだろうか。つまり、男に戻れる……。

「そう、男に戻れるかも、ってことだ。で、時間が戻るっていう噂があるってことは、きっと術者の記憶は戻らないはず」
「そうすれば……男に……」
「試してみる価値は、あると思わないか?」

 えらく楽しそうに、リアンはそう話した。俺は半信半疑だったが、やらないよりはやる方がましだ。と思い、その奇跡の呪文に賭けてみることにした。

 そして翌日、船着場に行くと、昨日の恰幅のいい船乗りがそれなりのサイズの木造漁船で待っていた。
 本人曰く、

「俺が乗れば何でもガレオン船に匹敵するぜ」

 だそうだが、そう言われると逆に不安だった。
 船は日が登った直後から動き始めた。潮風を浴びてもまったく気にならないこの金のローブに改めて感服する。本当にリアンはこれを手放したくなかったんだろう。さっきから俺を恨めしそうに見ているのはきっとそうに違いない。

「アンちゃん達、結局迎えは夕方でいいのか?」
444 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:53:54.01 ID:6VitajMo
「ああ、そうしてくれ。何かがあっても、何もなくても夕方で切り上げる」

 船から左手を見ると、そこは魔王領である。魔物のひしめくとても恐ろしいところだという噂だ。洞窟や山などのダンジョンに魔物が棲み付いているなんて生易しいものではないと聞く。

「リアン、魔王領って、どうなってるか知ってるんだろ?」
「言い直し」
「知ってるんでしょ?」
「よろしい」
「はぁ〜」

 リアンに聞くと、もう一度や二度ではない数行っているであろうがまた語尾を咎められた。これくらい見逃せよ。

「魔王領ね、確かに魔物は多いぞ。気をつけて進んでいればあんまり戦わずに済んだけど、バレたらうじゃうじゃやってくるな」
「はぁ……まあ魔王以外には魔法も効くんだし、そんなに心配することはないのかな」
「魔王も聖剣のダメージが残ってるときは魔法効くけどな」
「だからといって聖剣を刺す前にやられたら終わりだろう?」
「言い――」
「終わりでしょう?」

 こんな口調の訂正混じりのやり取りを繰り返していると、船乗りのおっさんが声を上げた。

「ほら、もう着くぞ。あれだ」

 船乗りのおっさんが指差した先を見ると、小島というにはあまりにも小さい、王国の城一つ建てることもできないような島だった。その中心に、確かにぽつんと神殿が一つ建っていた。寂れているというか、すでに廃墟のような様相だった。
 しかし、こんなわかりやすい場所にある神殿なのに誰も入ってみようとしないのは不思議だ、と思っていたら。その疑問はすぐに解決された。

「そういやアンちゃん腕の立つ剣士みたいだからべつに大丈夫だろうが、神殿のなかには魔王領から流れてきた魔物が棲み付いてるって噂もある。気を付けなよ!」
「あ、あぁ」
「そんなことだろうと思ったよ……」

 リアンは魔物と聞いてめんどくさそうな表情になった。俺だってそうだった。女になってからと言うもの雑魚にも多少手こずるようになってしまっている。
 船が岸に着いて、飛び降りるように船から降り、その島の土を踏みしめ俺たちは歩き出した。船乗りのおっちゃんに手を振りながら。
 神殿はすぐそこだった。入口が階段の上、少し高い位置になっているので多少時間はかかったが、すぐにたどり着く。
 薄暗い神殿内、そこを進んでいくにはおそらく松明がいるだろうと思い、俺は道具袋から松明を取り出した。こういう準備をしていないと不安な正確なのだ。もちろん松明は人数分の倍はある。

「ずいぶんと準備がいいな」
「勇者だったら当然でしょ」
「じゃ、行くか」

 松明に火をつけ、俺たちは神殿の中へと足を踏み入れた。
 神殿の中は、肌寒かった。重苦しい石造りの屋根のせいだろうか、あちこちにクモの巣が張っていて、長年使われていないことが伺い知れた。魔物に気をつけながら、奥へと進んでいく。
 神殿は外から見ると狭いようだったが、中は意外に広かった。見通せないため慎重に進む必要がある。俺たちは松明を振りかざし奥へ奥へと進んでいった。
445 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:54:41.81 ID:6VitajMo
「おい、これ……階段じゃないか?」
「あ、そ、そうだね…」
 
 しばらく進んだ頃、下へと続く階段を見つけた。幅はわりと広い、人間二人が余裕を持ってすれ違える程度。ただ高さはぎりぎりだった。リアンは頭を少し下げないと通れないようだった。俺はいいか悪いか女の体になって背も縮んだのでそのまま普通に通ることができた。

「その体も便利だな」
「うるさい。リーチ短いし胸は邪魔だし、いいこと無い」

 階段は思いのほか長かった。途中から壁面が湿ってきたので、おそらく地下に入ったのであろう。肌寒く、俺はローブを今一度身に強く巻いた。

「ウォォォゥゥゥォ」

 その瞬間だった。階段の終わりが見えたところで、湿ったうめき声が俺たちの進む先から聞こえてきた。風邪が穴に反響して鳴ったのかとも思ったが、その楽観的な予測を打ち破るように松明の明かりを跳ね返す不気味な双眸が覗いた。

「おい、あそこに、何かいる」
「ん、わかってるよ。魔物か……?」

 俺は後ろ腰に差してある聖剣を抜き放ち、構える。隣のリアンも腰の剣を抜いて構えた。炎を怖がる魔物もいるので、そろそろと、松明を前に掲げたまま下りていくことにする。影が壁を照らし床を照らし、その双眸のあたりを照らしたところで、そいつの正体が見えた。
 そいつは獣型の魔物だった。四足歩行、毛むくじゃらの細い足をついて鋭い牙を口から覗かせている。頭を下げ、かすかに光を嫌がるようにしていた。しかしその目はこちらを見据え、いつでも飛びかからんと俺たちを獲物として狙っている。

「魔物……だな」
「そうだね」

 俺たちが言葉を交わした瞬間だった。石畳の床を蹴って、その獣は跳ねた、天井近くまで飛び上がり身長の低い俺の方に飛び掛ってくる。うわーやっぱりそうなりますよねー。などと言っている場合ではない、すぐさま松明を振り回し、二歩分ほど後ろに下がって回避した。着地を狙ってリアンが剣を振り下ろす。苦しげな鳴き声とともに浅く獣の身が切り裂かれた。魔物は一度距離を取る。
 リアンはなんちゃって勇者様なので剣技は得意ではなかった。とりあえず型と振り方くらいは教えたが、それで魔物を一撃で仕留めようというのは虫のいい話だ。そんなにうまくいくはずもなく、剣の切れ味も手伝ってあの程度だった。

「うわ、硬い」
「バカ、俺の剣使い物にならなくするなよ!?」
「言い直……っ!」

 言い直し、とリアンが言おうとした瞬間だった、魔物は傷の程度を確かめ終わったのか、再び俺を目標として、今度は跳ばずに地面を這うように駆けてくる。さすがに速い。俺はとっさに置くように聖剣を斜めに構え、魔物の鼻頭のあたりに刃を置くように待った。
 魔物は刃をくぐるようにさらに身を低くし、俺の懐に飛び込んできた。すぐに聖剣の切っ先を振り下ろすが、魔物の硬い皮膚に阻まれ弾かれてしまった。くそ、これだから女の体は。

「きゃっ!?」

 そのままの勢いで魔物の突進を食らい、下腹部に衝撃が来たと思った次の瞬間には石畳に仰向けに倒れていた。天地がひっくり返るような錯覚。獰猛な獣の匂いに、しかし倒れた痛みは大したものでは無かった。頭を打たなかったのが幸いだ。さらに途中で松明を取り落としてしまったのが効いたのか、魔物はやはり火が怖いようでまた距離をとってくれた。
446 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:55:25.19 ID:6VitajMo
「大丈夫か!」
「なんとか」

 リアンが気遣うように俺を見やるが、手を貸して起こしてくれようと言う気はないらしい、まあそれでいいのだが。俺は少しもの寂しく思いながらなんとか立ち上がった。獣の突進ごときでふらふらとは、いよいよもって勇者失格である。お腹痛い。
 やはり、と思い直し、俺は燃え盛る炎を思い浮かべて、魔物を睨み一声つぶやく。

「べギラマ」

 突如火種も無い中空、魔物の頭上あたりが紅に歪み、ゆらりと揺れたかと思うとそこから水を注ぐように炎の濁流が魔物に襲いかかった。魔物はジタバタと逃げようとするが、炎の濁流にすぐに飲み込まれ、肉の焼けつく嫌な匂いがその場に立ち込めた。俺は思わず顔をしかめる。魔物は黒焦げの状態で床に転がることとなった。

「強いなぁ」
「魔翌力が上がったのはほんと不幸中の幸いというかなんというか」
「さ、先行くか」

 剣を収め松明を拾い、地下通路を進んでいく。そこは石が組み合わさった複雑な地形で、歩きづらい。おそるおそる進んでいくと、少し広い空間に出た。松明で照らしてみると、天井はドーム状に石が組み合わさった場所で、小さな石造りの祠がその中央に位置していた。俺とリアンは顔を見合わせる。

「地下に、祠……?」
「ん、上の神殿はダミーみたいなもんか。本物はこのちっこい石の祠のようだな」
「祠の中に、あるかな、奇跡の呪文の巻物」
「見てみるか」

 背後も警戒しながら、恐る恐る俺たちは祠に近づいていった。祠は観音開きの扉がついている。取っ手として削り出しの石がはまっているようだった。

「いかにも、って感じ」
「確かにな、開けるか?」
「ん、俺――私が開ける」

 取ってを握ると、ゴツゴツとしていて、少しひんやりとしていた。長い間開けられていないのか、扉の隙間や取っ手にも苔が生えている。そのまま力を入れ、手前に扉を開いた。
 ぎりぎりと石の擦れる嫌な音がした。扉は見た目以上の重さだ。完全に開ききることはできず、両方を半開きにした段階で何やら石版のようなものが見えた。

「これか……」

 しげしげとリアンは石版を見つめた。俺は石版をひょいと持ち上げ、松明を近づけて文字を読み取ることにした。彫り込まれた文字は、説明文なのか小さな文字が数行と、大きな文字でしっかりと掘られた文字が一行。小さい文字はかすれていてほとんどが読めなくなってしまっているが、大きい文字ははっきりと読み取れた。

「ん、なになに…『此の呪―、術者に―――奇跡―与えたる―のなり』って、説明はこれだけしか読み取れないね」
「奇跡、与えたる…ね、どこまで本当なんだか」
「男に戻れたらいいんだけど」

 と、半信半疑で呪文であろう部分を読もうとしていたところだった。ギギギ、とまるで大地が唸るような音がして、パラパラと頭上から土埃が降り注いだ。何かと思って頭上を見上げ、すぐに俺は硬直した。
447 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:55:59.40 ID:6VitajMo
「て、てて、天井が……」
「んぁ?」

 リアンも俺の声で今更気がついた様子で天井を見ると、固まる。

「天井がずれてるっ! ここ、崩れるぞ!?」
「やば、出るぞ!」

 俺の手を引いて走り出すリアン。俺も必死に走ったが、しかし階段までは少し距離がある。天井は今にも落ちてきそうだっていうのに、到底間に合いそうにない。と、俺はふと気づいた。奇跡の呪文の存在に。

「ぴゃぁ…いや違う、ぱる……パルピュ……」

 くそ、旧来字体のせいで読みづらい。なんて読むんだ……。俺は焦りながらいろいろと試す。こんなことならもう少し古語の話真面目に聞いておけばよかったなんて思いつつ、読み続ける。

「何してんだナイラ! 急ぐぞ、階段も持ちそうにない!」

 こんな時だけ頼り甲斐を見せるリアン。今階段に飛び込もうとしているが、確かに階段も持ちそうになかった。順次崩れていくだろう。でも、だからこそ、俺は奇跡を起こさなければいけなかった。

「うるさい黙ってて! っと……パルプンテ!」

「……あれ?」

 驚くほどの静けさだった。先程までの石の軋む音、地面の吠える音、全てが止まっていた。ふと、手をつないでいたリアンを見ると、ポカンと口を開けて回りを見ていた。俺も口は開けないがそれにならう。
 すると、まず驚いたのは、頭上に今当に落盤しようとしている天井の石組みが、絶対にバランスの取れないような状態で止まっているということだった。その他にも、摩訶不思議な状態で落下物や土煙が空中で静止していたりする。これは――

「――時間、止まってるな」
「そ、そうだな」
「言い直し」
「あーもう、そうだね」

 こんな状態でも言い直し要求してくるリアンに呆れつつ、俺は奇跡の呪文、その力について確かな確信を持っていた。奇跡、与えたる。確かに奇跡は起きた。

「これ、どれくらい保つかわからないから、早く出よう」

 俺はそう言った。もし俺の魔翌力でこれを発動しているのなら、いつまでも保っているなんて保証は無い、一刻も早く脱出するべきだった。リアンも頷いてまた俺の手を取り走り出す。

「そうだな、早く出よう。奇跡の呪文も手に入ったことだし」
「男に戻れるかは怪しいけどな」

 そんな軽口を叩きながら、石段を駆け上り、俺たちは神殿の外へと出た。途中、持っていた石版を落としてしまったが。呪文は忘れることはないし、外に出してしまっていいものだとも思えず諦めた。それより、石段を駆け上ったことによって息も切れ、フラフラとした足取りで海岸へと向かう事の方が俺には重大問題だった。
448 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:56:29.33 ID:6VitajMo
 外に出ると、いつの間にか日が傾いてきていた。ずいぶんと中で長く過ごしていたようで、それに気づくとさらに全身疲労感に襲われた。

「いやー、しかし無事で良かった」
「死ぬかと思った……」

 しばらく休んでいると、どこからともなく朝も聞いた快活な声が聞こえてきた。

「おーい、生きてるか〜い!」
「大丈夫だー!」

 リアンが大声でそう返事をした。元気だなぁと思いつつ、俺は安堵の息をここでやっとつくのだった。
 帰りの船旅で、船乗りにはいろいろと聞かれた、リアンは笑いながら、俺たちの小さな冒険を嘘と真をおりまぜつつ話していた。

「で、結局奇跡の呪文とやらはあったのか?」
「いやそれが、一番奥の祠は落盤で壊れてて、どこになにがあったかなんてわかったもんじゃなかったよ」
「ガハハ、そりゃ災難だったなぁ。俺も奇跡の呪文がありゃぁ、毎日大漁なんだろうが」
「毎日大漁じゃ魚が余って腐っちまうぞ」
「ちげぇねぇ、何事もほどほどが一番だな」

 なんて馬鹿話をしてる二人を横目に、俺は早く自分にこの呪文を試してみたいと思っていた。男に戻れたら、今度こそ魔王城を目指すのだ。今はリアンに大きい顔をさせているが、もとの守護精霊にさっさと戻してやる。と意気込んで。

 陸に着いて、宿に戻った俺達。すぐに俺は部屋に戻り、高なる胸を押さえながらその呪文を唱えた。

「パルプンテ!」


 結果から言えば、俺が男の体に戻ることは無かった。呪文を唱えた瞬間大地が揺れ、立っていられないほどの地震が起きたのだ。そして俺はこの呪文を封印することにした。奇跡とは、常識では理解出来ないような出来事。つまり、良いことばかりとは限らないと、そう気づいたためだ。
 こうして、俺たちの今回の冒険は徒労に終わった。使い道の無い危険な呪文を一つ得ただけだ。

 俺たちがまた次なる噂を聞きつけるのは、もう少し先の話である。


<つづく>
449 :「にょた勇者クエスト2」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/13(日) 23:58:26.06 ID:6VitajMo
前回は伏字にしていましたがドラクエ魔法を伝わりやすいように伏字なしでお送りしております。前回を読んでくださった方はありがとうございます。今回のを読んでくださった方もありがとうございます。
今後も結末に向かってしっかり書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/14(月) 00:33:27.27 ID:zqoQYnA0
GJ!!!
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 00:40:22.92 ID:5LmObsAO
gj!
なんか新連載ラッシュだなぁ。

オイラ書いてた探偵物は打ち切りでもいいような気がしてきた。
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 00:47:52.09 ID:kOqN6Ywo
>>451
楽しみに待っているので打ち切らないでくださいお願いします
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:00:46.17 ID:agBG7ISO
新作投下したせいで赤羽さんが消えてなくくらいなら…
俺の打ち切りにする!
ってくらい止めて欲しくない。
たのむこのとおり
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:37:39.74 ID:5LmObsAO
>>451
あ……いや、求める声があるからには終わらせますんで。皆様からイラネって言われるまでは頑張ります。

>>452
いやいやいや。
活気づいてきて嬉しい限りなんで頑張ってほすぃです。
……意外とバカバネって人気なんでしょうか?
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 01:53:48.67 ID:47lnxUUo
GJ!
にょた勇者大好きだぜ
にぎわっていい最高だよ

では、僕ちゃんも投下しようかな
456 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/14(月) 02:41:01.18 ID:47lnxUUo
姶良の体がワナワナと震えていた。その体からはどす黒いオーラが湧き出ているように見える。

「あいつ・・・あいつ・・・俺っちに黙って・・・美味しいもの食べる気だなぁ!!いいさ、あぁいいさ!」

姶良の体が更に震えていく。そして一呼吸置いて

「しかも、あんな男を釣ってただ飯かます気だなぁぁぁ!?うがぁあぁぁぁ!!お、お・・・・俺っちも仲間に入れろーーー!」

フォクシー達が居る場所から、数十メートル先の廊下から階段に差し掛かっていた沙羅達を見て、姶良は地団駄を踏んで大騒ぎ。
一方フォクシーは納得がいかない様な顔で階段へと消える二人を眺めていた。彼女が見た沙羅の様子は、明らかにチャラを風の男に手を引っ張られながら歩いていた。
この距離からでは沙羅の表情は分からなかったが、彼女が男を釣ったと言う風な感じには見受けられなかった。
けれど、自分が見て思ったものが全て真実と言うわけではない。沙羅という少女がこの状況を悪いものとしているかどうかなど定かではない。もしかしたら、我々はただの邪魔者になってしまう可能性もあると。

「待って!姶良!」

焦るように走り出そうとした姶良の両手を掴んで強引に引き止める。

「ぎゃふん!!」

ぎゃふんなんてギャグ的な台詞を始めて耳にしたフォクシーは少し呆然としていたが、すぐに気を取り直して沙羅に話しかける。

「ちょっと冷静に考えて見てよ!」

「だー!じゃまするなぁ!!」

「僕は沙羅との付き合いはまだ無いに等しいけれど、あのこはああいう軽い感じなの?」

「・・・・いや、軽いも何も修行時代は色恋系は禁止だったから、そう言うのには疎いはず・・・・あ」

「じゃあ、男を落としにかかる戦術とかそんなのは知らないわけだ」

「・・・・あたりまえじゃん。女人禁制をなめちゃだめよ」

「だったらさ、友人として暖かく見守るってのもありなんじゃない?」

姶良はそうフォクシーに諭され、暫く沈黙を続ける。姶良はあの時のことを思い返していた。この魔法学園への扉をくぐる前、沙羅が口にしていた決意の言葉を。
彼女らもまた、フォクシーと同じくせい転換するまでRL現象なんて言葉や知識すら知らなかった。異性として生きていく覚悟や決断なんて各々経験してきているはずだ。

「わかったよぉ・・・でも!沙羅に悪い虫に集られないように、守ってあげるのも友人の務めである!うむ!」

へぇ・・・いいこというじゃん。とフォクシーは心の中でつぶやくと、素直に感心した。これが心許せる親友と言うものなのか、と。

「というわけで、早速尾行かいしー!」

そう言うと、尾行するようにこそこそと歩き出す。あらら・・・とフォクシーは心の中でつぶやくと、素直に落胆した。まぁ、でも何かあってからじゃ遅いし。と同じようにフォクシーも尾行を開始。

「ところで、姶良ちゃん?」

「なによー?」

「尾行対象、既に見失ってるんですけどー?」
457 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/14(月) 05:06:20.79 ID:47lnxUUo
ミュテリア魔法学園の外は巨大な魔法で作られた大きな街があった。
現代の日本風にアレンジされたミュテリア魔法学園日本校の周囲に取り巻く都心部の町並みは、現実世界の日本で言うところの東京都や京都、様々な都市や名所をごった煮にしたような都市だった。
しかも、ところどころに実践訓練用の施設や森林部や砂漠があったりと、不自然極まりない構成となっていた。
そして、沙羅と魔裟斗が歩いているのは、都市部でも一番魔法学園に近い東京都にも似た街の繁華街を歩いていた。
ところどころから食欲を誘う香りが漂っていて、沙羅のお腹がぐぅ〜となりそうになる。
お腹すいたな・・・飯でも食べに連れて行ってくれれば嬉しいなぁ。とかのんびりと構えていると、そんな繁華街をそのまま魔裟斗は通り過ぎていく。
あれ?と少し期待をそがれた沙羅は、腹ペコになったお腹を軽くさすって空腹を少しばかり堪えようとする。
気がつけば何処か殺風景な場所が目の前にあった。空腹に気を取られているうちに、よくわからない場所につれてこられていた。

「えっと・・・・どこに行くの・・・かな?」

相手の意図が読めなくなり、魔裟斗に対して少し不安げに尋ねてみた。

「ははっ、ちょっと殺風景だけど、こっちに俺達の仲間がいるんだ。遊ぶなら、多いほうがいいでしょ?」

仲間?遊ぶ?多い方がいい?仲間と待ち合わせ?と沙羅は少しでも良い方向へ考えようとする。
取り方によっては、複数の男女で楽しくワイワイカラオケにでも出かけるような言葉にも聞こえる。悪い方・・・正直考えたくなかった。集団リンチ。
いや、この場合、この体の場合、女である自分自身に訪れる最悪の事態──
考えるまでも無く、こういう事態になる可能性を想定しておくのが女性として生きていく事なのかもしれない。
何らかの施設らしき建物が並ぶ建物の間の薄暗い隙間が見える。魔裟斗が足を止めて、幾つかの隙間を探している。沙羅がここまでの考えに至る前に、どうやら目的地周辺へ到着したらしい。

「あっ、あの!!」

「ん?なに?」

「俺、帰る」

「は?何言ってんの?ここまで来てそれはなんじゃないかな?」

「け、けど!ここで何をするんだよ!」

「はぁ・・・安心しなよ。この奥にちょっとしたライヴハウスみたいなバーがあるんだよ。結構オシャレだぜ?」

「い、いい!帰る!」

逃げそうになる獲物を少しでも繋ぎ止めようと必死に安全だとアピールを続ける魔裟斗だったが、彼の中で何かがぷちっと千切れる。

「あーうぜー!元男の癖に何怖気づいてんの!?だせぇーんだよ!あたし等にしてみりゃテメェみてぇな奴は腰抜けっつぅんだよ」

乱暴な口調で自の都合を正当化する魔裟斗。

「ひっ!」

気おされるような大きな罵声に、沙羅は体をびくつかせる。
こういった乱暴で気性の荒い人間とはこれまで距離を置いて生きてきた沙羅にとっては、身を震わせ思考を鈍らせるほどの大きなショックを与えられている。
どうやって立ち向かう。いや、そんなのは無理だ。自分と違って相手はそういった事柄に慣れ親しんできたような人間だ。自分に適うわけが無い。
この女の細腕でどうしたらいい。この女の細い足でどう逃げたらいい。この状況の打開策を考え始めても、すぐに行き着く答えは。
無理──だった。
少年は動かなくなった少女の腕を乱暴に掴んで、闇の中へと引きずり込んで行った。

458 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/14(月) 05:12:04.20 ID:47lnxUUo
ダメだ、今日はぜんぜん書けなかった
もっと細かく書いて行きたいんだけど、行数とか区切るのが面倒だ・・・・そして更に投下が遅くなりそ

ところで、主人公が極めて存在感がない
自分で書いててなんだかなぁと思う
459 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/14(月) 06:10:02.12 ID:47lnxUUo
とある少年は見知らぬ道を歩いていた。右も左も分からず途方に暮れつつ人気の少ない路地を歩いていた。
少年はこの地の地理に疎かった。それもそのはず、彼もまたミュテリア魔法学園の新入生だったからだ。
少年の風貌はミュテリア魔法学園の男子生徒用のブレザー姿だ。一般的な日本人男性に流行している髪形とは色も形も違い、まっすぐと伸びた金髪は背中まである。
そして、そのキリリとした整った顔立ちは、時折すれ違ったOL風の女性を度々振り向かせるほどの美貌だった。
男性とも女性とも取れるその顔立ちはまさに中性的と言えるものだった。
少年はただひたすらに歩く。その肩には何やら1メートルほどの長細い物が専用の袋に仕舞割れた状態で担がれていた。
少年が一つ足を踏み出して次に地面と捕らえたときに、カチャという音が、袋の材質に阻害されて曇って聞こえてくる。
ただひたすらに歩いていた少年はついに足を止める。そしてこう言った。

「ここはどこだ?」

そんな美貌を持つ少年は正真正銘の方向音痴だった。

「参った。寮を立った時は問題なかったのだが・・・帰り道ともなると、こうまで風景が違うとは・・・・」

彼はかれこれ1時間は迷子になっていた。しかし、肩に重そうな何かを担いで歩いているのもかかわらず、彼に疲れの色はこれっぽっちも無かった。

「やはり、男性用の衣服は動きやすいように作られている。機能美とはまさにこのことか?お師匠様、なぜ今までこの私にあんな服を着せていたのか、理解に苦しみます」

淡々と、丁寧な口調の少年は明後日の方向を見上げて一人つぶやく。どうやら、彼の疲労の色を少しも見せなかったのは衣服によるものが起因しているらしい。
つくづく男は楽だ。と、そう少年が感慨に耽っていると、一つ二つ先の建物の脇あたりから、男性の罵声が聞こえてきた。
こんなところで喧嘩か?と下らないな。
と大して気に留めずそのままその場を立ち去ろうとしたとき、彼の目に足を引きずられながら建物の影へと消えていく少女の姿が見えた。
一瞬の光景だったが、彼はその鋭い眼光で一瞬で状況を判断した。
怯えた少女の顔。怒り狂った少年の顔。口喧嘩というにはあまりにも一方的すぎる状況。
少年は肩に担いだ物をぎゅっと握り締めると、嫌悪感を抱いたような声でこう言った。

「どこにもいるのだな。ああいう族は」

はぁ、とため息をつき、少年は少女が消えた暗闇に向かって一人足を踏み出した。


一方、フォクシーと姶良は途方に暮れていた。尾行対象であった沙羅が一向に見つからず、沙羅を見守ると言う彼女らの決意が早くも破綻しかけていた。

「おなかすいたね・・・・」

「あうーーー!それいうなー!」

「はぁ・・・・僕は沙羅の携帯番号は知らないしね・・・・とはいえ、電話して居所を吐かせるなんてナンセンスだよね・・・」

「お、おお!おおおおおお!その手があったぁぁ!!」

「だから、それはマナー違反っていうか、尾行にならないでしょ!」

「ちっちっち!それは違うぜセニョリータ」

フォクシーは、なにが?と眉間にシワを寄せて怪訝な顔で沙羅の顔を見つめる。

「お友達GPSアプリ〜」

沙羅は、何処か聞き覚えのあるアニメキャラの口調で天高々に携帯電話を掲げた。魔法学園にそんな科学技術は、それこそナンセンスだ。と、フォクシーは思った。
460 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/14(月) 06:11:52.41 ID:47lnxUUo
とかいいながら、つい書いてしまった。

もう遅いからねります

赤羽さんとにょた勇者の両方、投下待ってます
互いに刺激しあえればきっと・・・・・
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 08:45:05.83 ID:cvPw6Foo
GJ

なんか活気が戻りつつあるようなきがするってばよ!
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 11:12:55.11 ID:NhG1ZVQo
saga を入れよう
463 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/15(火) 03:23:54.69 ID:gPGcU4go
「魔法で作られた空間にGPSなんて意味があるの?」

フォクシーの素朴な疑問に、あっと言葉を失う姶良。

「そんな事だろうと思ったよ。とにかく探そう?門限一時間前になっても見つからないようだったら、電話しようよ」

「むー!そんな事は無いのだ!」

名案を一瞬で潰されたのが悔しかったのか、ピポパと携帯アプリの操作を始めた。

「ビンゴ!沙羅はっけーーん!!」

そんなばかな、ありえない!とキョトンとしたフォクシーをよそに、一人沙羅の現在地を調べていく。

「おろ、ここって繁華街じゃないよね?」

と、携帯の画面をフォクシーにも見えるように傾ける。
フォクシーは、姶良に寄り添う格好で一緒に携帯電話の画面を覗き込む。
携帯の画面にはGPSアプリがしっかり起動されており、パンフレットで確認した事のある魔法学園周辺の地図が表示されていた。
そこには姶良が設定したと思われる沙羅のパーソナルマークが、その地図の中心に表示されていた。
信じられないものを見たかのように目を点にしていたフォクシーは、その真偽を確認すべく姶良から携帯を奪い取る。
更に細かく調べていくと、そこは特殊訓練施設が立ち並ぶ一帯であることがわかった。

「なにこれ、すごい。昨日確認したパンフレットの地図と一緒だ!確かここは特殊訓練区みたいだね。なんか動いてないけど」

どういうわけか、魔法空間でもGPSは機能するらしい。なんだか色々とナンセンスだが、あまり深く考えると頭がおかしくなりそうだったのでそれ以上考えない事にした。

「あれ・・・?でも、ここって授業が始らないと開放されないはずだよ?今は人も居な──」

途中まで言いかけてそのまま沈黙するフォクシー。

「ん?なに?どしたんだい?」

「なんか変じゃない?デートって言うなら繁華街周辺が相場っていうか定石じゃないかな?普通」

「え?うーん。そう・・・なのかな?」

「そうなの!」

修行寺出身の坊さんにはその類の知識は疎いらしい。エロやオタクな知識だけ一人前なようだけれども。
うーん。と考え込んだまま動かなくなる沙羅。

「怪しいよこれ!絶対に怪しい!男が人気の無いところに女の子を連れて行くなんて・・・・そんなの──」

「!!俺っち達・・・・今女の子?」

「そうだよ!ほら!」

「はうわぁ!!ななななな、何するんだよぉーー!!」

フォクシーはそう言うと、沙羅の小さな胸を乱暴に揉みしだく。エロイという程の手つきではなかったが、姶良は他人に胸を触られた事が初めてだったので、顔を赤らめて恥らう。
464 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/15(火) 05:45:37.15 ID:gPGcU4go
「ううう・・・何するんだよぉ・・・弱いんだぞ胸・・・」

恥ずかしがってばかりで何も気がつかない姶良に対し、はぁ・・・とため息をついた。

「つまり・・・・沙羅の貞操が危ないかもしれないってこと!!」

「なっ!そ、そんな!そんな!沙羅のあの綺麗な体は俺っちだけのものなんだぞ!許すまじーーー!!」

はぁ、まぁいいか・・・と、とにかく沙羅の危機に気がついた姶良を連れてGPSの発信地を目指すために走り出す。

「行こう!こんなのは許せない。絶対に許しちゃダメなんだ!」

もちろん、フォクシーとしてはこの予想が真実で無い事を祈っていた。だが、その疑念を払えず苛立っていた。彼は弱者への理不尽な暴力が何よりも嫌いだった。



建物と建物の間にある、黒い隙間の先にあった建造物の中に沙羅とツンツン頭のチャラ男、魔裟斗が居た。その部屋は確かにライヴハウスをモチーフにしたようなバーで、天井にはスポットライトやカラーボールで飾られていた。
カウンターの向こうには棚に酒瓶に似せたソフトドリンクの瓶が置かれている。魔裟斗は沙羅の腕を乱暴に掴んだまま、カウンター脇にある扉の方を見つめていた。その時間は沙羅の精神を安定させるには十分な時間だった。

「放せ!放せぇぇ!!」

冷静になった沙羅は魔裟斗の手を振り払おうとがむしゃらに腕を振り回そうとする。しかし、男性の握力は女性の腕力にも匹敵しない。魔裟斗は涼しい顔でそれをあしらう。

「ちっ!さっきまでビビってたと思ったら急に騒ぎ出しやがって・・・うぜぇ!」

と、が腕を振り上げて沙羅の頬を平手打ちで吹き飛ばそうとする。

「ひぃっ!」

沙羅は身を強張らせるが、彼の振り出される事は無かった。いや、やりたくてもできない香のようにワナワナと震えてその手を止める。

「がぁっ!な・・・!!どうして!でき・・・ない・・・・!」

「そりゃそうさ」

すると、カウンター脇の扉がキィという音と共に開かれ、その奥から身長180センチくらいの男が現れる。その姿は暗くてよく見えないが、ブレザーらしき制服を着ていた。
ブレザーのボタンは止められておらず、シャツの第一、第二ボタンははずされている。その胸元からは数珠にも似たシルバーネックレスが不適に輝いていた。その男は現れたその場で更に言葉を発した。

「そう言うように"念じた"からなぁ。ん?」

男は歩き出した。ゆっくりと。そしてその姿が更に露になる。髪の毛は黄色に近い金髪で顔立ちは黄色人種だ。耳にはなにやら細長いピアスが右耳にだけつけられていて、そのピアスの先端からは丸いわっかが複数ぶら下がっている。男が歩き出すたびにそのわっかがシャリンシャリンと小さく部屋の中で響き渡る。

「ご苦労さん、お前帰っていいぜ」

「な、渋谷さん!どういうこ──」

渋谷、そう呼ばれた男は軽く頭を振ると、ピアスの輪がシャリンと部屋に響く。

「ぐぅっ!!・・・・・は・・・い・・・」

「んあ、やっぱいいや、お前、入り口見張ってろ。邪魔が入るのも・・・シャクだからなぁ!」
465 :『ミュテリア魔法学園〜魔法にょたこフォクシー〜』 by.haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/15(火) 06:41:26.48 ID:gPGcU4go
はい、と歯切れ悪く魔裟斗が返事をすると、部屋の外へとフラフラしながら歩いていった。

「はいはい。邪魔者は退散退散」

前谷沙羅はその状況をずっと眺めていた。
苦しそうに何かに抗っていた様にも見えたが、渋谷と呼ばれた男の一言でいとも簡単にその言葉に従ったあの少年。
それと、あの男が扱った何かを。

「僧が使う念・・・幻術の一種・・・・」

「ふん、同業者な。さてと」

沙羅の言葉にさして興味も見せず、沙羅の方へと歩き出す。

「俺、帰ります。じゃあ」

沙羅はそう言って振り返ると、そのまま部屋を出ようとする。

「おっと、逃げらんねぇぞ。アイツには入り口見張ってろ俺の邪魔をするな。と念じてある。誰も通さねぇぜ?」

「なっ・・・・くっ!」

それでも沙羅は、渋谷の言葉を無視して出口へ向けて走り出す。

シャリーン

と、部屋に音が響き渡る。

「動くな」

その言葉を耳にした沙羅は急に動きを止める。と言うか、動かなくなった。金縛りにかかったかのように、体の自由が利かず、足はコンクリートで固められたかのように動こうとしない。

「なぁ!?うごけ・・・ない!?」

シャリーン

「そして、こちらを向け」

己の意思と反して、体が勝手に渋谷の方へ動き出す。そして、渋谷を正面に捉える角度まで振り返って体が止まる。
すると、渋谷は動かなくなった沙羅の目の前にまでゆっくりと歩いてやって来た。そして、腰を落として沙羅の顔を覗き込んできた。
沙羅の容姿を確認して何かに満足したのか、口元をにやりと歪ませた。

「いいねぇ、俺好みだわ」

そう言うと、沙羅の黒くてサラサラと伸びた髪の毛を頭の上から毛先まで指を這わせる。
その指は腰の辺りで止まり、一呼吸置いて更に腰から下へと這わせていく。

「くぅぅぅぅ!!」
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 13:26:51.10 ID:/4yz2IAO
エロいのの練習したいのでいいパスおくれ 安価↓
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 14:16:52.67 ID:dNYcDHAo
にょた化後初めてのナニ
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 15:54:34.54 ID:/4yz2IAO
安価はあく。しかし意味深すぎて深読みが止まらない
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 20:35:42.58 ID:M.DLEwSO
俺ももエロいの練習したい
案をおくれ
470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 21:34:04.58 ID:EhS1mbMo
安価なら「脱衣麻雀」
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 21:39:48.40 ID:o8vkkwAO
くすぐったがり。
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/15(火) 21:55:42.95 ID:M.DLEwSO
脱衣麻雀はあく

意外とすたんだーどでおどれーた
473 :「にょた化後初めてのナニ」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:22:57.31 ID:EhS1mbMo
「おぉぉ、なっつかしー! やっぱこの感覚だよなー」
「おま、ちょ、あんまり強く握るな!」

 俺の目の前には、可愛い長髪黒髪の少女が背を向けて座っていた。否、単に座っているなどという生易しい状態ではない。少女は仰向けになった俺の上で、俺のナニを太ももと柔らかいアソコの夢の三角地帯で挟むように俺の上で女の子座りをしている。その上俺のナニを嬉々として握っているのであった。うぁっ、布が、パンツの布が擦れる! 俺の息子は元気いっぱいだ。本能には逆らえないらしい。

「前の俺のよりでけぇ! なに友、こんなに立派なものもってんのになんで彼女のひとりも居ないの勿体無い」
「恥ずかしい! んなことその声で言うなバカにょた!」
「いいじゃないか誇るべきことだようんうん」
「こんな状態でナニも誇れねぇよ!」

 どうしてこんな状態になったかというと、話は一週間前に遡るのだった。


「おはよー! ほらほら女になったよ俺、女女! 胸こんななって!」

 教室のドアをガラリと開けて飛び込んできたのは腰下まである黒髪をまとめるでもなくさらりと流した、見慣れない女子だった。しかしなぜそいつが俺の席に向かって歩いてきつつ開襟して豊満な胸の谷間を見せつけてくるのか理解できない。

「は、はぁ!? お前だれだよ俺こんな痴女に知り合いいねぇよ」
「いや俺、にょただよにょた! いやはや、こんなにせくすぃに生まれ変わるなんて自分でも思わなかったね!」
「あ、あー、そういえばお前もう15だっけ。ってか、胸をしまえ胸を!」
「えぇー、いいじゃん別に、たいして見えてないし、熱いんだ、蒸すんだよぉ」

 そう言いつつ俺の机にあった下敷きをひょいと拾い胸元を仰ぎ始める。ああいかん、昨日まで親友だったのに劣情を抱きそうだ。

「ふっふっふ、ほら見てるじゃないか! 見たいなら見たいとはっきり言ってくれれば……」
「うるせぇ!」

 そんなこんなで俺はそれから事あるごとににょたにからかわれ続けた。
 その1、昼休憩。

「えいやっ!」
「おい何すんだよ!」

 俺の弁当のメインディッシュとも言える唐翌揚げを一つかすめ取ったにょたは、それをウマそうにもぐもぐごっくんと食べ終えにっこりと笑って。

「んーやっぱお前の母ちゃんの鶏唐うまいなぁ」
「わかってるだろうが、おかずはトレードだぞ?」

 俺はにょたの前より小さくなった弁当箱を覗き込むと、もう既に空っぽだった。このやろう、昼弁鉄の掟を破りやがった! と憤っていると。

「お前、覚悟はできているんだろうな!」
「いやいや、“おかず”のトレードだろ、わかってるって、ほら!」
474 :「にょた化後初めてのナニ」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:23:42.26 ID:EhS1mbMo
 いきなり俺の両腕を掴んだにょたは、それを自分の方に引っ張って。俺はふにゅりと柔らかいものに触れさせられた。

「じゅー、きゅー、はち」

 カウントを始めるにょた。本能のままにその双丘を揉みしだかんとする両手を必死に自制しながら(手を引っ張るという考えが浮かばないあたり男ってものはバカな生き物だった)俺はカウントを続けるにょたを見た。

「お前、なにやって!」
「ななー、ろくー、ごー、よん」
「おい、無視すんな!」
「さん、にー、いち。ゼロ!」

 カウントが終わるとにょたはにかっと笑い、俺の腕を離した。俺はすぐさま手を引っ込める。

「おかず交換。これでいいよね? 帰ったらしっかり励みなさい!」
「励むかっ!!」

 辛うじて、それはおかず交換となることはなかった。そう、辛うじて。

 その2、体育の時間

「ほら友ペア組むぞ!」
「ぇぇっ、女子と組めよお前……」
「いや、あれそう簡単に馴染めないって」
「そうか? しょうがないなぁ……」

 体育の時間、準備体操のペアであぶれたらしいにょたは俺のところに来た。まあ仕方ないと思いつつ、屈伸運動なりをだらだら消化していた時のことだった。

「うわぁっ!」

 ちょうど背中合わせで体を伸ばす準備運動をやっていた時、いきなりにょたが暴れて、バランスを取ろうといろいろとまずい部分に触れてしまったような気がした。案の定触っていたようでにょたが小声でつぶやいた。

「えっち」
「るせぇっ 文句あるなら女子としろよ」
「ふふ、ウブだね」
「おまっ! わざとか!?」
「なんのこと?」

 そしてその3、放課後

 いつもの調子で放課後俺の家ににょたは上がりこみ、いつものようにテレビ台からゲームをごそごそとあさる。無防備に頭を突っ込むように四つん這いになっているにょたは、スカートがまくれ上がって非常に危険な状態になっているのに気づいているのだろうか。いや
、どうせわざとだろう。俺は顔を背けて適当に飲み物を用意する。

「これもやったし、あれもやったし……んー」
「あんまり散らかすなよ?」
475 :「にょた化後初めてのナニ」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:24:31.10 ID:EhS1mbMo
「なんか新しいのないの?」
「んな金ねぇよ、適当に選べ」
「あ、じゃ、これ」

 と、にょたが差し出したのは一昔前の格闘ゲーム。俺とにょたの対戦成績はにょたが9割勝ちだ。持ち主なのに情けない。
 嬉々としてにょたがゲームをセッティングし、座布団を持ってきて片方にぽふんと座った。以前と違って、座り方だけは女の子座りになっている。なんでもあぐらは座りにくいらしい。骨格の問題だろうか。

「よっし、今回は負けないぞ」

 と俺は隣に座り込みながらにょたに言ってやる。するとにょたはぐるりとすごい勢いで俺の方を振向いて。

「ほほぉ、言ったな? よし、俺が負けたら何でも……」
「いらねぇよ。どうせ俺からかうつもりだろ」
「む、バレたか」
「はぁー」

 と、いざ始めて見ると、今日は俺が妙に強かった。

「あれ、なんだよくそ…おまっ…」
「おお、今日は調子いいなぁ」

 いや、違った、俺が強くなったわけではなく。どうやらにょたが弱くなっているらしかった。

「なんか画面についていけねー。くっそー」
「女になったからか?」
「たぶんそう」

 かくして、俺が勝利し、しかし賭けなんてしてないので何もなく、ただくやしがるにょたと勝ち誇る俺がいた。

「しっかし、にょた、お前可愛くなったよなぁ」
「だろだろ? なのにお前と来たらせっかくのチャンスをいろいろ勿体無い」
「いや、お前親友だったし、嫌われたくねーし、そういう目で見れねーよ」

 揺さぶられはするけど。

「なんだよ、別にお前が俺でオナニーしようが別にいいんだぞ?」
「いや、頼むからその顔でオナニーとか言うな」
「じゃあ自家発電」
「もういいよ……」

 もともとの性格も下品だったが、女体化してからはより一層積極的な気がする。俺は近づいてくるにょたを、肩を掴んで引き離した。
 すると、にょたはうつむいて、何かを決心したようにうんと頷くと、開口一番とんでもないことを言い出した。

「お前のナニ見せてくれ」
「はぁ!?」
「お願いだよ」
「バカかお前、そんなことできるわけ……ってうわ!」
476 :「にょた化後初めてのナニ」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:25:11.05 ID:EhS1mbMo
 否定の言葉を口にしていると、いつのまにかにょたは俺のズボンのベルトを外し、ジッパーを下ろすところだった。さすがに見た目美少女にそんなことをされれば俺の息子だって反応しないわけにはいかない。するとすぐさまにょたはそれに気づいて言葉を続ける。

「なんだ、お前もまんざらでもないんじゃないか」
「うるせ……って脱がすなぁ!」

 気づけば俺のナニは御開帳していた。さすが元男、手際がいい。怖い。

「おぉー、やっぱこれぞ男だよな」
「まじまじと見ながら感想を述べるなっ!」
「ふっふっふ、もう逃げられないよ」

 と不敵な笑みを浮かべながら、俺は押し倒され、冒頭のような状態に持ってこられたわけである。

「えいっ! ほりゃ!」
「ちょ、俺のナニはオモチャじゃねぇ」
「俺にとっちゃなつかしいオモチャだよ」
「んぁ! やめろ、擦るなぁ!」

 元男だけあってにょたは心得ていた、普段とは違う柔っこい指で俺の息子は縦横無尽に撫で回され、時に締められ時に緩められ、俺は情けなく息を漏らすだけだ。悔しいが抵抗できず、早くも限界が近づいてきた。

「それ以上すると……っ!」
「あ、出る? じゃ、ストップ」

 いきなりにょたは手を離し、いたずらっぽい笑みを浮かべたままこちらを振り返った。

「はぁ……はぁ……危な。出る所だったじゃねぇか」
「出すなら顔射がいい?」
「そんなマニアックなことは言ってない!」
「じゃ、このまま出しちゃう?」

 ゆっくりとまた指の腹を俺の息子の裏筋あたりにジグザグに這わせ始めた。どんどん俺の脳内はエロいことで埋まっていって。

「にょた……お前、落ち着いて……っ」
「俺は、落ち着いてるよ」

 ピタリと、にょたは手を止めた。そして女体化してから始めてではないだろうか、落ち着いたトーンで真剣な口調になる。

「にょた……?」
「……俺は友に、女になった実感を、もらいたいんだよ」
「……え?」

 にょたは、振り向いていた顔を戻した。にょたの声は心なしか震えている…のか?

「気づかないのか? 俺、女になってから、お前意外とほとんど話せてない」
「それは……」
「みんな避けるんだ、男も、女も。それは俺が男を捨て切れてなくて、女にもなりきれない宙ぶらりんな存在だから……」
「にょた、それは……」
477 :「にょた化後初めてのナニ」ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:26:04.25 ID:EhS1mbMo
「時間が解決してくれる? 俺は耐えられないんだ、クラスの男子と馬鹿騒ぎしてた昔に戻りたいとは言わないけど、わがままだからお前だけで十分なんて言えない」

 ここからではにょたの顔は見えない、見えないが、小さく丸まっていく背中が全てを物語っていた。

「だから、俺は。お前をからかって、けしかけて。それでもお前は“いつも通り”で」

 俺は、悔しかった。あんなからかってるだけに見えたにょたの行動は、全部俺へのSOSだったのだと。まったく気づかなかったなんて。悔しくて、でも、やっぱり親友を親友以上に見ることに抵抗は残っていた。
 
「俺を……“俺”を、“私”にするきっかけ……ちょうだい?」
「……俺で、いいなら」

 俺が答えられたのはそれだけだった。でも、その言葉を返した時に振り向いて見せた彼女の表情を、俺は一生忘れないだろう。

「ん、友がいい!」

<了>
478 :ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:27:03.88 ID:EhS1mbMo
エロって難しいね! 今回は官能表現はあえてほとんど省きました。
479 :ぴぬ ◆zK/vd3Tkac [sage]:2010/06/15(火) 23:31:39.62 ID:EhS1mbMo
連投スマヌ。途中送信しちゃった。
お題について。「女体化後初めてのナニ」とあったので、ナニの解釈に困りました。Hやなんやならわざわざ女体化後初と断らないだろうと思い、息子のことにしてしまいましたがww
描き終わってみたら最萌えキャラはにょたではなく主人公だった事実。やはり乙女攻めはいいですな。
あと、純粋なハッピーにエロエロしてるのは苦手だったりするので、そのへんはさらに要勉強ですね。
最後に、お読みいただきありがとうございました。みなさんの声援で次への活力が生まれています。
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/16(水) 00:10:11.16 ID:29T/9OQ0
GJすぎる!
481 :haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 01:38:32.12 ID:uEkAdwIo
gj!

俺もかくー

今からだけど・・・・・・・・・・
482 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 01:58:04.05 ID:uEkAdwIo
「皆々様!よくぞ集まってくれましたー!」

僕の友達、青木佐和子ちゃんは、私の為だとかで麻雀パーティーを開催してくれた。

「いえーい・・・・」

そう言う僕はあまり乗り気じゃなかった。なぜならば。

「いえーーーい!!」

「どんどんぱふぱふー」

このパーティーには二人の男性が居たからだ。
一人はスポーツマンタイプの黒髪短髪体育会系、もう一人は茶髪ロンゲの遊んでそうなの。
開始早々から飛んでもないハイテンションで、それだけで僕は着いていくのがやっとだった。

「まずは自己紹介からーー!はい!」

と、佐和ちゃんは張り切って声を上げる。

「○×体大の修造です!ほら、もっと熱くなれよ!!」

暑苦しい程の熱意を迸らせるのは黒髪短髪体育会系の修造君。

「○□大のエイジだよん!よろしくね!えっと、君は?」

佐和ちゃんが紹介を促す前から僕に名前を聞いてきた馴れ馴れしい茶髪ロンゲの遊んでそうなのはエイジ君。

「ほら、そこ!手ぇ早すぎ!はい!ほらほら!」

と、背中をパンパン叩かれてケホケホと咳き込んでいると、3人の視線が僕に注目する。ううう・・・恥ずかしい・・・。

「えと・・・えと・・・・"私"は・・・藍那・・・です」

くっはーーー!とエイジ君が身もだえすると、佐和ちゃんの顔を見てこう言った。

「佐和子さー、ほんとにお前の友達なわけ?俺、すっげー感動した!」

すると、佐和ちゃんはジト目でエイジ君を睨んで

「あんた、殺(やら)れたい?」

「いや!いやいやいや!!どっちも簡便!!!」

半笑いにもマジメにも取れる感じで佐和ちゃんの提案を拒否した。

「え・・・どっち?って?」

僕の素朴な質問に修造君はにやーと顔を緩ませて耳打ちしてくる。

「それはね・・・・」
483 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 02:12:45.07 ID:uEkAdwIo
「ほら!そこ!!こっそりいちゃいちゃしない!ゲームはまだ始ってないの!」

修造君は佐和ちゃんにそう釘を刺されて、がっはっは!と笑いながら僕から離れる。

「と、言うわけで、自己紹介も終わったことだし・・・・早速始めましょ、ほら、藍那、こっちくる!」

佐和ちゃんは立ち上がって僕の手を掴むと、強引に引っ張って部屋の外へ連れて行こうとする。

「えっ?えっ?な、なに!?」

「ほら!折角呼んだ男の子をほっぽらかして、一人黙々麻雀するつもり?だめだよねーいけないよねーサプライズは最低限の義務だよねー?」

なにをわけのわからないことを・・・佐和ちゃんは昔からこうだ。
とか考えていると、ぽいっと部屋から放り出されてしまった。

「じゃーん!これなーんだ?」

「せ、セーラー服?って、なんで二着も!?」

「うふふふふ!あんたも着るの☆」

「えーーーーーーー!!」

廊下に僕の叫びがこだました。


仕方なくセーラー服に着替えて、再び部屋の中に戻ると、男衆から歓喜の声が上がる。
そんな視線に僕が顔を熱らしていると、修造君が目をキラキラさせて僕のほうを見ているような気がした。

「セェラァ服を〜〜ぬ〜が〜さ〜ないで!びっくりどっきりお色気脱衣麻雀大会の開始ーー!!どんどんぱふぱふーーー!!」

おぉぉぉぉ!!と雄たけびを上げる男衆に対して、僕はえぇぇぇぇぇ!と悲痛な叫びを上げた。
484 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 02:32:07.39 ID:uEkAdwIo
かくして『セェラァ服を〜〜ぬ〜が〜さ〜ないで!びっくりどっきりお色気脱衣麻雀大会』が開催された。

しかし、麻雀となれば僕にも勝算はある。
佐和ちゃんと二人打ちで鍛えた腕は伊達ではないのである!

「む、むむむ。これで・・・・倍返しだぁぁぁぁぁぁ!」

と、何処かのシローさん張りの台詞で捨てハイをバチーンと卓に叩きつける。
僕はその瞬間を見逃さない。

「ふふ。ふふふふふふ!おやおや、ありがとうございます。ロンです☆」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!はこったぁぁぁぁ!!!」

乗りに乗りまくった僕の配パイは、実は麻雀素人だったエイジ君の服をあっという間にひん剥いていく。
一方体育会系の修造君は経験者だったのかかなり検討している。
タンクトップにジーパンを維持したままその丸太のような腕を露にさせているにとどまっている。

「あーん・・・修造君のそれ、見たいかも!ロン!」

「げ、マジかよ!ありえねぇぇぇぇ!!」

ここぞとばかりに飛び出した佐和ちゃんの役マンは薄い生地のタンクトップを指名。
そして、鍛え上げられた胸元が露となった。

我々女性陣(一人にょた)は何一つ脱いでは居ない。
佐和ちゃんと僕のやりたい放題の戦場と化していた。

「ちょっとぉ、藍那手加減くらいしてあげなさいよー」

「佐和ちゃんこそ」

「む、お、俺がんばる!熱くなれ!もっと熱くなれーーー!!」

「あぅあぅあぅ・・・俺もうまっぱなんだけど・・・・」

女性陣の脱衣に燃える修造君と既に恥ずかしいものを身をかがめて隠しているエイジ君。

「俺頑張るよ!藍那ちゃん!俺藍那ちゃんの脱衣シーンみたいな!!!」

「やだ。だって負けるの悔しいからだめだもん」

「も、も、も、萌えてキターーーー!」

どうやら乗りに乗っている僕の発言は迂闊だったらしい。彼の煩悩の炎に油を大量にぶちまけてしまった。
そして、戦況は思わぬ事態へと発展していった。
485 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 02:57:34.43 ID:uEkAdwIo
「だっしゃーーーーー!!ろん!ロン!RON!!」

「う、うそ・・・」

「えっへへへへへ!藍那ちゃんのスカーフいただきまーす!」

流れるだろうと思われる捨てハイの流れからは読みきれなかった闇ロンが僕へと炸裂した。僕も元男だ。と勇気を振り絞ってスカーフを取り去る。

「よーし!次はどこだ!どこにする!」

「お、俺も応援しちゃうぞーー!」

崖っぷちすら飛び降りたエイジ君は、修造君となにやらアイコンタクトを行うと、次の局面もなにやら怪しい流れへと変貌していく。

(まずいわね、藍那。奴ら、連携を始めたわ。このままだとこっちも危ういわよ)

(そ、そんな!)

しかし、佐和ちゃんの声は何処か楽しそうだった。対して僕は段々とその余裕が無くなっていく。

「あ、あぁ・・・・そんな!」

「きたぜ・・・ぬるりと・・・!」

修三君の顔が何か尖ってきたような気がする。そんな彼にスカートを指名される。散々エイジ君を3ループ程ひん剥いてきた僕にそれを拒否する事もできず、指名されるままスカートを脱ぎ出すしかなかった。僕の顔が今までに無いくらいの熱を帯びて、視界がぼやけてくる。

「うっ・・・うっ・・・・うぅ・・・」

3ループ目のエイジ君は遠い目をしながらもこう言った。

「焼かれながらも・・・人は・・・そこに希望があればついてくる・・・!」

ちょっと!どこの闘牌伝説ーーーー!?やばい、やばいよこれ。二人の男達がどんどん変貌していく!ま、負けていられるか!

「ふ、ふん!3ループも負けていて何が希望よ!絶望よ!マイナス千円・・・いえ、マイナス1万円よ!それがあなたの男の価値です!」

「がーーーーーーーん!!あわあわあわ・・・俺もう帰りたい・・・助けてください・・・」

しなしなしな、と萎れた植木の様にしなびていくエイジ君。しかし、そんなエイジ君にすかさず修造くんのフォローが入る。

「命乞いなど・・・自分のプライドまで明け渡すな!失うものなど、服だけでたくさんだ・・・!胸を張れ・・・!手痛く負けた時こそ・・・胸を・・・!」

「あ、ああ!!ありがとう・・・修造!俺、もっと熱くなる!!」

「くっ・・・・!」

その声の主は佐和ちゃん。ワナワナと震えて何かに耐えているみたいだった。

「だーーーーー!!私をのけ者にするなーーー!3人だけで楽しんでんじゃないわよーーーーー!!」
486 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 03:23:28.03 ID:uEkAdwIo
すると、大騒ぎして服を脱ぎだす佐和ちゃん。あっという間に真っ裸になって、男二人の視線を釘付けにする。

露になった胸元はツンと上を向く見事なマスクメロン。腰から足先まで見事な曲線を描いている。

「もういいわ!あんたら二人とも・・・・覚悟なさい!!」

「うぉーーーー!」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」

熱い雄たけびを上げてがっつく修三君。何か悪い夢でも思い出したかのように頭を抱えて青白くなるエイジ君。二人は対照的だったが、ふたりまとめて相手してやんよ!とベッドへダイブした。

ここから先は僕の口からでは形容しがたい。あまりの驚愕の事態に、僕はそれを呆然と眺めているしかなかった。そして、事も次第にエスカレートし、僕は恥ずかしさのあまり、部屋の隅っこで体育座りで身をすくめていた。

「はっはっ!うあ!!」

「あら、もう出ちゃったの?もうすこし頑張りなさいよ」

「む、むりだって!」

「だーめ!エイジはもう枯れ果ててるんだから、修造!あんたが気張りなさい!」

「ひ、ひぃぃぃ!!」

「ほら!元気にしてあげる」

佐和子は、修造の萎えた肉棒を乱暴に掴むと、それを口に含む。ちゅっぽじゅぽといやらしい音が部屋に響き渡り、それを聴覚で捉えた修造はあっという間に息子を元気にさせる。

「いっちょあがり」

「くぅっ!す、すげぇ・・・!!」

「まだ、本番はこれからなだもんねー」

「くっ、毒を食らわば皿まで・・・!S・E・X・・・セックス!やぁってやるぜ!!」

第5ラウンドの開始である。修造は佐和子の体を強引に仰向けにすると、佐和子の秘部をまさぐって壷の入り口の位置を確認する。そして、その上部にある突起を親指で確認すると、親指に絶妙な振動を与えつつ、それをヴァイブレーションさせる。

「あっ!んんんんんん!!」

「まだまだ!」

親指のヴァイブレーションを維持したまま、壷の入り口の位置を確認した人差し指と中指は十分な湿り気を確認すると、それを一気に差し込んだ。

「はうっ!んああああああ!!」

「へっへっへ!熱くなれ・・・もっと熱くなれよ!!」

「はぁん!す、凄い・・・!い、今までで一番いい・・・かも!!あんっ!」

実はゴールドフィンガー修造だった彼は、その強弱を上手に調節しながら佐和子を絶頂に導いていく。
487 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 03:44:27.42 ID:uEkAdwIo
佐和子の両手はベッドのシーツを快楽から耐えるかの様に握り締め、足先はピンと爪先立ちで腰を浮かせては落とし、浮かせては落としている。

「あっ!あ!んんん!!はっ!い、いい!お○んこいっちゃ・・・イッちゃう!!」

その声を聞いた修造は、はぁはぁっ!と呼吸を荒げながらもラストスパートをかけた!

「あぁ!!んんんん───!!」

佐和子の体が一瞬硬直したように固まると、太ももが修造のゴールドフィンガーを力強く挟み込む。そして、
彼女から声にならない甲高くも細い声が上がり、下半身がビクンビクンと跳ね上がる。
それを佐和子が絶頂を迎えたというサインと受け取り、修造がゴールドフィンガーの動きを止める。
佐和子の目は空ろで、口元からはだらしなく涎をたらしている。時折「あっあぅ!」と喘いでは下半身もだらしなく蟹股に開いたままビクンビクンと痙攣させていた。

「いっしょあがりだ。どうだ!」

「はぁ・・・はぁ・・・うふふふふ・・・・やってくれるじゃな・・・あんっ・・ないの」

佐和子は、よいしょっと体を起こすと、悦に入る修造の体を力いっぱいに押し倒す。

「あんっ!・・・・ふふふ・・・・まだ、感じてる・・・けれど、まだ始ったばかり・・・よね?」

「な、なんだこの女は!!!」

「理由はお解りよね・・・?あんたにはここで何度も果ててもらうわ!」

アッーーーー!と修造からだらしない声が上がって、その言葉の通り、何度も何度も果てていた。

「く、狂ってる・・・がく・・・」

ついに修造が枯れ果てた。

「あら、もう終わり?でも、欲頑張った方かしら?」

室内は男と女の異様な熱気と臭いで充満していた。



僕はそんな一部始終を耳で聞き取り、竦めた足をモジモジと動かしていた。下半身に貯まる卑猥な感覚に少しでも耐えるために。

「ん〜〜っと・・・藍那?大丈夫?」

「・・・・・・」

「ゴメンね・・・ついかっとなっちゃって・・・・折角、藍那のためにセッティングしてあげたんだけど・・・・やっちゃった☆」

「いいよ・・・・別に"僕"、最初からそんなつもりなかったし」

軽い風だがアレでも反省しているのだ。彼女なりの照れ隠しなのだ。

「けど・・・・!」
488 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 03:56:41.51 ID:uEkAdwIo
「けど?」

「佐和ちゃんのあんな所見たくなかった!」

僕の感情は爆発した。彼女は・・・・僕の気持ちを何も分かっていない。
だから、こんな男達を用意して・・・・こんなこと・・・・!

「え・・・・と、どういう意味?」

「まだわからないの!?僕は・・・僕は!ずっと佐和ちゃんの事が好きだったのに!!」

「・・・・・・」

佐和ちゃんは何も言わなかった。驚いて身を固めていたが、表情はどこと無く複雑な感じだった。

「やっぱ、そうだったんだ」

「え?」

僕は佐和ちゃんの意外な答えに耳を疑った。

「知って・・・たの?」

「そりゃ、そうよ。昔から、あんたはずっと私にべったり。おち○ちんが、こーんな小さなときからね」

「なぁ・・・!」

僕は顔を熱らすと、佐和ちゃんははぁ・・・とため息をついて言葉を続けた。

「あんたがそんなウブだからイケナイの。女の子は何時までも待ってくれないのよ?」

「・・・・・・」

「こうこうしてる間に、あんた女の子になっちゃったじゃない?アタシ、あーあーって感じ」

そ、そんな!佐和ちゃんが、僕・・・を?

「じゃ、じゃあ!じゃあ、どうして・・・・!」

「・・・・・そんなの決まってんじゃない。あたしもアンタのこと好きだったから!ずっと襲われるの待ってたんじゃない!」

!!そ、そんな・・・・そうだったなんて・・・・最後の方は少し下品だったけど、佐和ちゃんも僕の事が好き・・・だったなんて・・・。
僕は・・・・僕は・・・・

「馬鹿だ・・・・うっ・・・うあ・・・うわああああああん!!」

唐突に襲ってきた激情に僕は抗う事もできずに目頭を熱くさせて泣き喚いた。頬には沢山沢山、熱いものが流れ落ちていく。

「ほんと、馬鹿よ・・・」

そう言って、佐和ちゃんは僕を優しく抱き寄せた。暖かかった・・・。
489 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 04:10:02.10 ID:uEkAdwIo
「ふふ、こっち来なさい」

「うん・・・・」

「まったく・・・どっちが元男なのかしら」

「佐和ちゃんは最初から女の子だよ・・・・」

佐和ちゃんは黙って僕のセーラー服を脱がせていく。
僕は下着だけの姿になったが、自然と恥ずかしくなかった。逆に嬉しかったのかもしれない。
けれど、顔がどんどん熱くなっていく。

「綺麗ね、男も女も知らない体・・・・純潔っていうのかな?」

「・・・・・・」

「汚したくなっちゃったかも☆」

その言葉を皮切りに、佐和ちゃんが動き出した。
佐和ちゃんの手が僕の肢体へと伸びる。そして、小さなぽっちを人差し指の内側で優しくノックする。

「あっ!」

本当に優しかったそれに、頭が麻痺するような刺激が前進に駆け巡る。

「わお。すごい」

「え・・・・?」

「凄い感度ね」

「ええ!?」

自分でしたときのそれは、こんなものでは無かったと思う。ただ、小さなぽっちがピリピリと疼くだけだった。

「もうだめ、脱がしちゃう!」

佐和ちゃんはそう言うと、ブラジャーを置き去りにしたまま僕のパンツに手をかけて一瞬で剥ぎ取った。

「ブ、ブラは取らない・・・の?」

「やーよ、藍那の胸の形は女の理想系だもん。見たらショックでアタシが萎えちゃうじゃない」

「そーなの・・・?」

「もぅ!二度も言わせないで!とりゃ!」

「ひゃう!!」

今までに上げた事のない女の子な声が自分から上がる。
490 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 04:23:18.03 ID:uEkAdwIo
「藍那」

「佐和・・・ちゃん?」

「アタシたちのセックス見て、濡らしてたでしょ」

「なっ!?」

図星を突かれて一気に顔から湯気が上がるのがわかった。

「ふふふ、ねぇ、藍那。男だった時ちゃんとしこってた?」

「えぇ!?そ、そんな!そんな事・・・!」

「ないって?ふふふ、本当のこと聞きたいなー」

優しく耳元で囁かれて嘘を貫きとうせなくなる。

「1度だけ・・・」

「う、うそ・・・・」

「ほ、ほんとだよ!でも、なんか凄い罪悪感で・・・・佐和ちゃんに綺羅割るかと思った!」

「あんた・・・アタシを想像して・・・・また何と言うか・・・・普通の男なら、好きな女の顔にぶっかけて悦に入るもんでしょ?おかしいんじゃないの?」

「!!そ、そんなことない!」

「まぁ、いいわ・・・あんた、女の子に生まれ変わるために生きてたようなモンだったんでしょ・・・・もうそう言うことにするわ」

か、勝手に結論付けないで!まだ何も言ってないのに!!

「なのに・・・・女の子のここは・・・・こーんなに大洪水!」

そのとき、じゅるじゅるという音が聞こえて、下半身にありえない衝撃が走る。腰が自然に浮き上がって太ももで佐和ちゃんの頭を挟み込む。

「かはっ!!あぁぁぁぁぁぁ!んんん!くぅ───」

一瞬にして意識が真っ白になった。それが元に戻りそうになるたびに、下半身から全身に電気が走ってまた意識が真っ白になる。
そして、下半身からちゅうっと言う音が聞こえたと思うと──

「ふぅんん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!あっ!」

僕の意識が途絶えた。
491 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 04:36:11.40 ID:uEkAdwIo
「ん・・・」

気がついたたら部屋は薄暗かった。
体を起こすと、いつの間にかベッドに寝かされていたらしく、胸元から掛け布団がずり落ちた。
周囲を見渡してみると、もう誰も無い。
テーブルにはトンシーマットと呼ばれる薄いジャン卓と牌が転がったままだった。

「みんな・・・帰ったんだ・・・・」

そこでふと我にかえる。
恐らく意識を失う前は、佐和ちゃんとあんなことやこんなことを・・・・というか一方的にやられてたはず。多分。
男の子がいる前で!!
そう思うと顔がやけに熱くなってくる。
下着姿のまま一人身もだえしていたので、一気に体が冷えてきてしまった。
ううっとぶるぶる体を震わせてしまう。
そして、冷静になってから、一度自分の股間にてを這わせてみる。
綿生地のサラリとした感触と、ざらざらとした感触がそこにあった。

「本当に・・・やってたんだ・・・」

すると、ガチャっと突然部屋の扉が開かれて、佐和ちゃんが入ってきた。
寝巻きにするようなTシャツとハーフパンツのラフな格好で濡れた髪をタオルで水気を取りながら足でどけしと扉をしめる。

「あー起きたんだー」

「・・・・・・佐和ちゃん・・・・」

僕が不安げに佐和ちゃんを上目遣いで見上げると、彼女は優しく微笑んで

「大丈夫、処女はしっかり守ってあげたから☆」

「なっ!!」

空気が読めない人!僕は心でそう叫ぶとぷいっと顔を背けた。
492 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 04:48:14.03 ID:uEkAdwIo
熱りの冷めた意識では下着姿ではあまりに滑稽だったので、もと着ていた服に着替えてベッドに腰掛けていた。
その脇には佐和ちゃんが少し間を置いて座っていた。
薄暗い部屋のなか、佐和ちゃんの体からお風呂上りの香りが漂ってくる。
自分も体の臭いが気になって、くちゃくちゃになった髪の毛を指先で大丈夫かと確認してみる。
ついでに臭くないかとその指をにおってみた。

「くんくん・・・」

「あはは・・・・ごめんねー一人だけお風呂に入っちゃって」

「ん、いいよ。そんなの」

佐和ちゃんとの間に妙な間が発生した。
なんだか、佐和ちゃんから発せられるオーラみたいなものがそうさせているように感じられた。

「あのね、藍那」

「なに?」

「あたしね、好きな人がいるんだ」

「!!」

気を失う前の佐和ちゃんの会話を思い返してみる。
自分に対してはどうだった?好きだ。ではなく、好きだった。では無いか?
ならば、好きな人がいる。これは一体何を意味するというのだろうか!?

「ごめんね、藍那じゃないんだ。別の人。あたしさーこんな性質だからさ、つい色んな男とやっちゃうんだけどさ、もうこういうのもヤメにしようと思ってるんだ」

「・・・・・・」

藍那じゃない。僕じゃない。じゃあ一体誰?誰なの?
僕の心の中に嫉妬のようなドス黒い感情があふれ出していく。

「ほんとにゴメンね、でもね・・・・・藍那の所為なんだよ?あたしも、あんたが女の子になっちゃってホント動揺した。いっそのこと襲ってしまえばよかったなんて、何度も後悔した・・・・忘れようとした」

「・・・・・・・」

「でもね、やっと楽になれたの。藍那の気持ち聞いて、そんで今好きな人と本気で一緒になりたいって思った」

「うぅ・・・・・」

「彼にね、大学卒業して就職できたら・・・・結婚しようって・・・・プロポーズされたんだ。本当に嬉しかった。こんなアタシを本気で好きになってくれてるんだって・・・・」

「うぅ・・・あぅぅぅ・・・・」

「でも、彼にはまだ返事をしてないんだ」

「あぅぅ・・・・え・・・・?」

「あんたの所為よ」
493 :『脱衣麻雀』haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 05:05:23.41 ID:uEkAdwIo
期待と不安が入り混じっていた。この先に続く言葉が希望か、絶望か。

「でも、あんたのおかげ」

「うぅぅ・・・・うあぁぁぁぁん・・・・」

その言葉はおそらく、ごめんなさい。あんたのおかげで彼のプロポーズを受ける決心がついたよ。だろう。
辛かった、正直辛かった。泣き叫ぶほどに辛かった。でも、佐和ちゃんの嬉しそうな声は・・・・嬉しそうな声だけはとても嬉しかった。

「もう・・・泣かないでよ・・・・」

「だってぇぇぇぇ!!」

「ねぇ、藍那。これからさ、アタシのことなんてきっぱり忘れて、新しい恋人を探して、ね?」

「むりだよぉ!そんなの、できないよぉ!!」

「・・・・ホントに困った子・・・でも、アタシ彼に返事する。はい。って」

佐和ちゃんの言葉の一つ一つが僕の心に突き刺さっていく。痛くて痛くて心が砕けそうになる。

「あたしが言える筋合いじゃないんだけど、失恋して、失恋して、次頑張っていい人見つけて・・・・ね?」

「さわちゃん・・・・」

「アタシだって、苦しかったんだから」

「ごめんね・・・さわちゃん・・・・」

「いいの・・・今回謝るのはアタシ!ごめんね。そして、ありがとう」


2年の月日が過ぎ、大学も無事卒業。そして、佐和ちゃんの結婚式を迎えた。
式場には私も呼ばれた。佐和ちゃんは沢山の友人に囲まれてとても幸せそうだった。
そして、私の傍らにも一人の男性がいた。
○×体大を卒業して晴れて体育教師になった修造君だった。あの後、何度も頭を下げれれて困り果てた私は、じゃあお詫びにという事で何度か食事にも連れて行ってもらった。
私はあの後、佐和ちゃんの助言を下に、恋人というものを模索してみる事にしたのだった。その後、彼の暑苦しい猛アピールを受け、半ば強引なその熱意を受け止めてみた。
私が元男であることも告げたが、そんな事は気合で払拭したらしく、一緒に乗り越えてくれた。
そんな事もあり、今彼が隣にいる。

「いよっ!熱い!熱いよ!二人とも!!」

彼の馬鹿でかい声が会場に響き渡る。
それを聞いた佐和ちゃんは、ありがとーー!と。
そしても私も。
「ありがとう」と──

「おわり」
494 :haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/16(水) 05:06:45.25 ID:uEkAdwIo
文章も時間も無駄に長くなった
正直スマンかった

寝る
495 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/16(水) 07:30:56.74 ID:ztc6aUAO
乙!
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/16(水) 08:11:20.09 ID:VJDbxgAO
GJ! パロ色強いかと思ったら真面目で驚いた。よかったよ
497 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:02:17.15 ID:vSAOWoAO

 一応、主張しとくが俺は独身だ。
 んで、隣でスーツスカートを着て―――つーか着られて――とてとてと歩いているロングヘアの少女は娘じゃねーぞ。
 なんで、こんなコトを確認してんのかと言うと。

「―――パチ屋、テレクラ、カラオケ、……子供服新店オープン、と」
「最後でこっち見んなっ!」

 ……新宿駅東口を出てから行く道々で配られたポケットティッシュのラインナップを読み上げただけなのに、その"少女"から凄ぇ勢いで睨まれたからだ。

「見ただけじゃねーか。自意識過剰め」
「……うるさいっ、いーからこっち見ないで黙って付いてくるっ!!」

 言ってることが支離大爆発じゃねぇか。

「だから、うるさいって言ってるでしょバカバネ!!」
「だから、何も言ってねっつの」
「アンタの顔がうるさいのっ!」
「……喧嘩売ってンのか」
「どーぞ、ご自由にお受け取り下さい?」

 スーツジャケットの内ポケットから銀色の輪っかとブラウス越しに薄い胸をちらつかせるな。
 くそっ、横暴も甚だしいだろ……このロリータ刑事め。

「うっさいうっさい! ヘボ探偵!」

 だから何も言ってねーっつの。
 ……この広い世の中、こういうヤツの罵倒が大好きだっつー奴が居るらしいが、正直理解に苦しむ。

「……ったく。ガムやるから、ちっと黙ってろ」
「命令すんなっ」

 内ポケットから取り出した板ガムをゴロリンに差し出すと、彼女は不機嫌そうに俺からガムを一枚ひったくって口に運ぶ。
 ……文句言っときながら結局は食うんじゃねーか。

「……皮肉な話よね」
「あン?」

 急にゴロリンがガムを咀嚼しながら冷めた口調で呟いた。

「犯人はわざわざ脅迫状まで送って来てたんでしょ?」

 いきなり事件の話題に方向転換するなっつの。
 ……。
 お、今度は読心術を使ってないらしい。

「一体どっから仕入れたネタか知らねぇけどよ、それの何が皮肉なんだ?」
「……そうやって、いつまでトボけるつもりなんだか」

 ったく、"妹"といいコイツといい、結論を急ぎたがるのは若い女の傾向なのか?
498 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:02:46.97 ID:vSAOWoAO

「―――ま、いいわ。詳しいことはココで訊かせて貰うから」
「……まるで犯人扱いだな」

 ―――ピリピリとしたムードが漂う中で、俺達は漸く目的地に辿り着こうとしていた。
 委員会の本部とは違った威圧感が漂う無彩色の建造物。
 なるべくなら足を踏み入れたくない場所だが、虎穴に入らずんばってトコか。

 俺は誰にも訊かれない程度に小さく溜め息を吐いて、ゴロリンの後を追った。


 【赤羽根探偵と奇妙な数日-3日目午後-】
499 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:04:25.78 ID:vSAOWoAO
―――――
――――
―――

「―――ダメダメ。はいっ、もう一回」
「や、その……っ、ち、ちょっと休憩―――」
「―――だーめ」

 青いリボンで結ったポニーテールの女の子が、テーブル越しにニコニコと笑いながらオレの顔を見つめてくる。
 その、天真爛漫な可愛らしさに騙されてたけど……Sだ、天性のドSだ、この子。

「る……るいちゃん、可哀想だって。少しくらい休ませてあげても……」

 坂城さんの真横で事の顛末を見届けていたセミロングヘアの女の子―――御堂さんが、おずおずとした口調で助け舟を出してくれる。
 ………が。

「甘いっ、甘いよ初紀ちゃんっ!」

 当の坂城さんが聞く耳を持っていないから、何の意味もない。
 はぁ……何が悲しくて喫茶店で"女の子講座"を受けなくちゃならないんだろうか。

 まだ編入試験の結果すら出ていないのに、既に学校に入る仮定で物事が進んでいることも……腑に落ちないし。

「こーんなクール可愛い女の子が男口調で喋ってたら、すぐ噂の的になっちゃうでしょっ!?」
「いや、でもるいちゃ―――」
「―――デモもストライキもメーデーも春闘もないのっ!
 私達みたいに事情を知ってるならまだしも、ボロが出て痛くもない腹探られて困るのは、なのちゃんなんだよっ!?」

 鼻息荒く熱弁する坂城さんに、御堂さんも困り果てている。
 正直、"痛くもない腹"かどうか怪しいものだけど。
 ……というか坂城さん。その"なのちゃん"って呼び方、どうにかならないのか?

「……なのちゃんが、平穏無事に学校生活を送るためなんだよ……?」

 ……う、ズルい。そんな言い方するなんて。
 ……"兄"曰わく、彼女もオレと同じく異性化疾患に掛かった元男らしいけど、その仕草や立ち居振舞からは、その"匂い"を全く感じさせないのが恐ろしい所だ。

「―――るいちゃんの言いたい事も分かるけど……でも、名佳ちゃんの気持ちも分かるから、何とも言えないよ。
 ……最初はみんな、そうだと思う」

 テーブルを挟んで向かい側に居るオレにチラリと視線を向けながら、御堂さんが呟いた。
500 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:06:25.77 ID:vSAOWoAO

 ―――って……え、まさか、御堂さんも……?

「……あ、ごめんね。ちゃんと話してなかったよね」

 迂闊にも、オレは表情に出してしまっていたらしく、御堂さんは申し訳なさそうな顔をしていた。

「……私も、キミと同じだよ」

 言いながら、彼女は坂城さんと同じデザインの学校指定の鞄から、何かを取り出して、テーブルの上に丁寧に置く。
 ……それは青みがかった比較的新しい封書だった。
 その中心には、御堂さんの現住所らしき地名と番地、そして彼女の名が明朝体で印字されている。

 差出人は―――"市役所 医療福祉新課"とある。

 ……なんとなくだけど、この封書、見覚えがある………ような気がする。

「あっちゃー……来ちゃったんだ、それ」
「……ごめん、申請するの忘れてて」

 坂城さんは、封書を認めた瞬間にどこか歯がゆそうな表情を浮かべた。
 御堂さんも複雑な顔付きをしているところ見ると、どうもこの青い封書は二人にとってあまり良い意味合いがある代物ではないらしい。

 それが、どんな意味を持っているのかオレには分からないけど。

「"これ"は……?」

 とにかく二人に置いてけぼりを食らう前に質問してしまおう、とオレは意を決して話の口火を再び切った。

「……あ、そっか。ごめんごめん」

 どうやら、坂城さんが先に気付いてくれたみたいだった。

「この封書はね、通称"青色通知"って呼ばれてるものだよ」
「……青色、通知」

 ……その、知らないはずの単語を反芻した瞬間に、オレは何故か心臓の裏側が締め付けられるような気がした。

「正式な名前は……"異性化疾患に於ける性別選択権行使についてのお知らせ"だったかな」

 随分と長い名前だな。

「―――簡潔に言っちゃうと……異性化疾患を発病させずに居たいなら国が相手を用意するから、えっちして予防してくださいって通知」
「るいちゃんっ!」
「事実でしょ?」

 恥も外聞もない言い方を御堂さんに咎められても、坂城さんは毅然としていた。
501 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:07:50.32 ID:vSAOWoAO

 御堂さんが返す言葉もなく、下を向いて黙ってしまっている所を見ると、どうやら間違いではないらしい。
 坂城さんがコホンと咳払いをして再びオレに向き直る。

「……青色通知は、国が保有するあらゆるネットワークを駆使して、全国各地に居る15歳前後のチェリー君に、秘密裏に郵送される最後通告みたいなものなんだ。
 ―――その通知にある"性別選択権"を受けた人の手元には、この封書は"完全な形では"絶対に残らないような仕組みになってる」

 つまり、御堂さんが今なお"青色通知"を所持しているってことは……。

「……理解ってくれたかな?」

 御堂さんから少し寂しそうな笑みを投げ掛けられ、オレは曖昧な首肯でしか返せなかった。
 ……その度に、顔にまとわりつく長い髪が邪魔で仕様がない。

 ――――"青色通知"、か。

 二人共、さも当然のように受け入れてるけど―――。

「―――納得は、しなくていいよ」

 まるで、オレの思索の先を読んでいたかのように、坂城さんは平坦な口調で呟いて、湯気の立たなくなったカフェラテを口に運ぶ。

「こんな付け焼き刃な対策で、心底から納得してるのは、自分にしか興味が無い可哀想なヒト達だけだからさ」
「え……っ」

 あくまでも平坦な口調で、サラリと毒づく坂城さん。
 その顔はあくまでも凛としていて、何故か寒気を覚えるほどに冷たく感じた。

「―――例の脅迫のこと、覚えてる?」

 坂城さんの質問に首肯で返す。

 "来週までに審議が決する異性化疾患の新法案の資料提出を止めろ、さもなくば委員会に関わる人間を無差別に殺していく"というもの。

 ……そして、現に神代さんに次ぐ委員会の上層部の人間が一人殺された。

 ―――でも、今、重要なのは殺人に関しての話題ではないらしい。

「その脅迫にあった"新法案"って、要は"青色通知"の改正案なんだ」
「「改正案?」」

 異口同音に今度はポニーテールの女の子が得意気な表情で頷く。
502 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:09:24.70 ID:vSAOWoAO

「ま、詳しいことは部外秘なんだけどね。
 少なくとも今より少しはマシなルールになると思うよ。……需要する側、供給する側、その双方にね」

 そう熱弁する坂城さんは、どこか誇らしげだった。

 ……でも、そうなると疑問が残る。

 ならどうして、改正案の資料提出停止を求める脅迫文が委員会に送り付けられたんだろう?
 "兄"の言い方を借りるなら、それにも、ちゃんとした理由があるはず。
 坂城さんの言う"新法案"は、脅迫状を送りつけた犯人にとって何か不都合な―――

「―――まーったく、役所もちゃんと管理してほしいよね」

 思索に耽ろうとしていたオレを現実に戻したのは、坂城さんの声だった。
 彼女の右手人差し指が、テーブルに置かれたままの"青色通知"をトントンと小刻みに叩く音がする。

「―――こーいう不手際があって怒られるのは、役所じゃなくてこっち側なんだから」
「し、仕方無いよ、ちゃんと届けなかった私も悪いんだし―――」
「仕方無くないっ、戸籍に書き換えがあった時点で役所は気付くべきたよっ」

 何の話をしているんだろう? 御堂さんの"青色通知"に、何かしらの不具合があったことは分かるけど……。

 そう思った矢先に、御堂さんと目が合う。

「あ、えと、そんな大した話じゃないんだけどね」

 別に表情に出したつもりも無かったけど……オレの内心の疑問符を敏感に察知したらしく、御堂さんは慌てて両掌を左右にパタパタと振りながら、そう前置いた。

「―――実はこれ、手違いで届いちゃって」

 跋が悪くなったのか、話題とテーブルの中心にあった封書を鞄に仕舞いながら 呟くように言う御堂さん。

 流石にそれくらいの想像はオレにもつく。最初に"青色通知"の話をする時に、そんな会話をしてたような覚えもある。

 ……けど、一体"何が"手違いなんだろう?

 現に御堂さんは男だった事実を自分から認めているし、今、オレの目の前にいるのは"彼"ではなく"彼女"に他ならない。
 さっきの坂城さんの説明と照らし合わせても、別に不自然な点は見当たらないし……。
503 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:10:38.88 ID:vSAOWoAO

「―――私には、必要のないものだったから」

 言い終えてから何かに気付いたのか、ハッとした表情を浮かべ、再び両掌をあたふたと左右に振る御堂さん。

「あ……、いやっ。
 別に、その……私の感情論とか人生観とか、そういう類の話じゃなくてね? 違うからねっ?」

 いや、そんな慌てて主張しなくたっていいのに。
 ……まぁ、"兄"なら余計な茶々を入れそうな気がするから、気持ちは分からないでもないけど……。
 あの人と同レベルに見られてるのかと思うと、正直複雑な気分だ。

「―――異性化疾患の殆どは、潜伏期間や前兆症状を経て、15、6歳の誕生日に発病するっていうのが普通なんだけど―――」

 上手い説明を思い付かないらしい御堂さんを見かねたのか、その方面の知識に明るい坂城さんが横槍を入れてくる。

「―――稀に"例外"があってね?」
「例外?」
「うん。
 ある程度予測がつく通常の症例とは違って、誕生日とは全く関係の無い日に突然発病したり、逆に時間をかけてホルモンバランスが崩れていって最終的に―――とかね。
 ―――初紀ちゃんは、前者だったんだ」
「あ……そっか」

 誕生日よりも前に発病したのなら青色通知なんて意味がない。
 確かに御堂さんには"必要のないもの"に違いない。
504 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:11:22.44 ID:vSAOWoAO

「……あれ?」

 ―――思わず声が出た。

 御堂さんに間違って青色通知が届いた経緯については理解出来たけど……何か引っ掛かる。

『この封書はね、通称"青色通知"って呼ばれてるものだよ』

『―――簡単に言っちゃうと……異性化疾患を発病させずに居たいなら国が相手を用意するから、えっちして予防してくださいって通知』

『―――その通知にある"性別選択権"を受けた人の手元に、この封書は完全な形では絶対に残らないような仕組みになってる』

 坂城さんの言葉を反芻して、咀嚼して、再び飲み込む。
 そうか……。
 なんだ、単純な引き算じゃないか……!

「……坂城さんっ!」
「ぅわわっ!?」

 気が付くと、驚き、たじろいでも綺麗な顔立ちがすぐ間近にあった。普通なら赤面モノの距離なんだろうけど、今だけはそれも気にならない。

「"性別選択権"を受諾したら、そのヒトの手元に青色通知は"完全な形"では残らないって言ったよね!?」
「う、うん……」
「それって、どういう仕組みでそうなってるんだ……!?」
「あ、えっと……"性別選択権"は受諾の際に予防の相手役になる"通知受取人"に青色通知の控えを渡すルールがあるんだよ」
「どうしてッ!?」
「や、だって、そうしないと、下手すると悪用されちゃうでしょ? 要はタダで、女の人とえっち出来ちゃう権利なワケだから……」
「……っ、やっぱり……!」

 一人の人間が多重に性別選択権を行使出来ないなら、結論は一つ。

 ……国は把握しているんだ。

 誰が性別選択権を行使してるか、していないかを。

「……びっくりしたなぁ、もぉ」
「あ、……ご、ごめん」

 何故か顔を赤らめながら抗議する坂城さんの声に、オレは漸く正気に立ち返れた気がする。
 ……でも、その二人の恥じらいの表情に感化されてる場合じゃない!

「坂城さん、調べて欲しい事があるんだけど―――!」
「―――無理だよ」

 燻った火種に打ち水が浴びせられる。
 平静さを取り戻した坂城さんから向けられたのは、そういった表現が似合う言葉だった。
505 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:12:28.41 ID:vSAOWoAO

「まだ、何も言ってな―――」
「―――青色通知の未返送分を調べて、なのちゃんの手掛かりを探すってコトだよね?」

 坂城さんの柔らかい口調が、言葉尻を掻き消す。

「そこまで分かっているのに、何でそんな簡単に無理なんて―――!?」
「―――なのちゃんが"いつ"女の子になったかを証明出来ないからだよ」

 いくらオレが声を荒げても、平静さを取り戻した坂城さんは全く動じない。

 むしろ、オレがこういう考えに至ることを最初から予想していたみたいに、淀みなく言ってのけられる。

 ……確かに、そうだ。

 少なくとも今の段階では証明なんかできやしない。

 ―――オレがオレという人物を忘れてる以上は。

「それに、青色通知の送付履歴は個人情報保護法に基づいて、第三者への開示は基本的に禁止されてる。
 相手が委員会の人間だとしてもね」

 "基本的に禁止"……か。
 坂城さんの言葉の裏を返せば何かしらの特例があるってコトになる。
 でも、彼女の言い方から察するに……。

「―――もちろん、緊急事態だって事はわかってるよ」

 まるで、オレの想像する事なんてお見通しだと言わんばかりの冷静な声がする。

「警察の協力が得られるのであれば、捜査権限で青色通知の送付リストを閲覧できる可能性は高いかもしれないけど―――」

 前髪で隠れて表情が読み取れないけど、坂城さんの含みを持たせた沈黙が何よりも雄弁に語っていた。

 ―――"それが出来るなら、とっくにやっている"って。

 そう、か。

 警察に協力を求めたら、あの放火殺人事件について訊かれてしまう。
 憶えが無い以上は疑われるだろうし、弁明すら出来ない。
 期間はどうあれ、警察に拘束されるのは必至だろう。
 他に犯人らしい人間が捜査線上に浮かぶまでは……身動きをするべきじゃない。

506 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:13:14.46 ID:vSAOWoAO
 ……彼女は、盗聴器が仕掛けられたコトを知った時と同じく、しばしの間、口を真一文字に結び、ギリギリと奥歯を噛みしめていた。
 彼女の表情にどんな意味があるのかは、わからない。
 けど、少なくともオレに取って有益なモノではないというコトだけは確かだと直感した。

「……るい、ちゃん」
「平気だよ」

 僅かに生まれた沈黙を埋めるみたいに御堂さんが心細い声をあげる。
 坂城さんはそれに応えるように湯気も立たなくなったカフェラテをまるで酒を呷るような勢いで飲み下し、小さくため息を一つ吐いた。

「―――もし、仮に……あくまでも仮に赤羽根さんに会ったその日から1ヶ月遡って、青色通知の未返送分のリストを調べられるとしよっか?」

 ……感情の整理が着いたのか、坂城さんは平静さを取り戻したかのような軽い口調で再び話し出す。

「なのちゃんが自身を特定する情報を持ち合わせていない以上、居住地域を金銭面と行動範囲で限定するにしても、関東地方くらいだよね?

 ―――さ、ここで問題ですっ。

 2010年度現在の日本の14、5歳の総人口が約241万人。

 計算がややこしくなるから、総人口の男女比が仮に1:1だとして。

 北海道から九州までの全地方に総人口を……うーん、これも均等に分配したとしよっか。

 その中の8割に青色通知が送付される。

 現状では、その内の大体2割が返送されてるね。

 で、残りは未返却。

 最後に、過去1ヶ月に送付されたものに限定する―――あ、これも平均として考えてね。

 この条件で青色通知の未返却分を全部調べるとしたら……一体何人分の量になるでしょーか?」

 ………坂城さんの問いは、言い方が複雑なだけで、要は……桁の大きいだけの単なる乗除算だ。

「出生月も、平均化して考えていい?」
「そだね。それで構わないよ」

 ―――大きな数値をいちいち計算するのは面倒だから式を変えよう。
 で、各数値を入れて大まかな計算にすると―――

 ―――2410000÷262.5、か。

「……多分合ってると思うけど、約9180人」
「え……っ!?」
507 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:13:52.19 ID:vSAOWoAO

 ごく普通に回答しただけなのに、御堂さんが感嘆の声を漏らす。
 こんなの、大したことじゃない。

「凄いね、ソラでそこまで計算出来るんだ」
「……坂城さんは人が悪いよ」

 溜め息混じりのイヤミでしか返せなかった。
 万一、青色通知の未返送分を調べられる状況下にあったとしても、警察の協力を得ないままだと、約一万人近い個人情報を閲覧し、そこからオレに関する手掛かりを探すしかない。
 それなら、新法案の審議が終わるまでの間、大人しくしていた方が効率が良いのも頷ける。
 ……結論から言ってしまえば、オレがあれこれと画策する必要性は最初からどこにも無かったってコトだ。

「ごめん、ね」

 頭を擡げたのを、泣いてると勘違いしたのか、坂城さんがオレの表情を覗き込んでくる。

「坂城さんが謝ることじゃないよ」

 彼女はいくら若くても公的な組織の人間だ。見ず知らずの他人の為に規律を破るなんて、出来やしない。
 寧ろ、こんな話を訊けるだけでもありがたいんだ。
 感謝こそしても、恨むなんて筋違いも甚だしい。

 ―――ピリリリリッ

 そこで、甲高い携帯の着信音が鳴り響いた。
 その携帯の持ち主は……坂城さんだ。

「……ほんっと、空気読まないんだから」

 どうやらメールだったらしい。
 重苦しい空気の中、坂城さんは溜め息混じりに開いた携帯ディスプレイの文章を読み終えると、その携帯をこちらに向け―――

「―――合格おめでとう、なのちゃん」

 ―――と、小さく笑った。

 向けられたディスプレイには、何やら小難しい字面が並んでいる。
 要約をするなら"赤羽根名佳、翌日付けで編入決定"といったところか。

 ………なんて、御都合展開だ。

 こんな時間じゃテストの採点程度しか終わってないだろうに。
 ……それだけ、あの神代っていう人の権力が強いっていうコトか。

 ホントなら、喜ぶべきことんなんだろうけど……オレは結局何にもしていない。
 ただ流れに身を任せるまま、漂っただけでしかない。

 ……それが、なんだか腹立たしくて。

 オレは俯くしか出来なかった。
508 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:17:46.58 ID:vSAOWoAO
「―――これから、じゃないかな」
「え……っ」

 声がする方を向くと御堂さんが、柔らかい笑顔を向けている。

「これからだよ。……名佳ちゃんはキチンと向き合ってる。
 だから、きっとだいじょぶだよ」
「………」

 そんなの、何の根拠もない励ましだ。御堂さんの言う精神論で何とかなるほど、世の中甘く出来てないってコトは今し方思い知ったばかりだし……。
 ……でも、なんでだろう。

「……だと、いいけどね」

 口にこそ出せなかったけど、その何もかもを包むような御堂さんの笑顔を、オレは何故だか……信じたくなった。

「そうそう、法案が可決するまでの一週間さえ乗り切れば大丈夫なんだから、平気でしょ」

 オレの身の安全が保障されるまでの期間を坂城さんが明示する。
 ……一週間、か。"赤羽根 なのか"としての、七日間。

「……ダジャレかっつの」
「「えっ?」」

 思わず呟いた一言に、二人が目を丸くしていた。
 ―――そう、たった一週間。
 無為に過ごしていれば簡単に過ぎ去ってしまう筈なのに、今のオレには限りなく遠い時間に感じられる。
 時間は、平等で不平等なもの。
 矛盾した言い方だと思うけど、オレはそれを今、痛感してる。オレを忘れる前のオレが、それに気付いてなかったとすれば、なんて皮肉な話なんだろう。

 ………。

 やめよう、後ろ向きに考えたって今のオレには振り返るモノすらないんだ。だとしたら、もう開き直るしかないじゃないか。

「―――坂城さん、御堂さん」

 遠目の窓ガラスに映る、未だに慣れない自分の姿に一瞥をくれて、オレは二人に向き直る。

「……続き、しよう」

 主語の抜けた言葉に、二人は首を傾げていた。

「だからっ、……そのっ」

 こんな局面になっても、捨てられないプライドがつきまとって上手く言葉にならない。
 ……あぁ、もぉっ!

「……だからっ! お、"女の子講座"の……続き」

 生きるために言っているはずの言葉なのに……一瞬、死にたくなった。
509 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:18:08.59 ID:vSAOWoAO

 一瞬、キョトンとした表情で二人は顔を見合わせていたけど……
 オレの言葉の意味を理解するや否や、嫌な予感しかしない満面の笑みが向けられる。

 下手に身動きが取れない以上、オレがするべきことは一つなんだけど……既にオレは半ば後悔の念に駆られていた。

 はぁ、どうなっちゃうんだオレ……?
510 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:19:01.79 ID:vSAOWoAO
―――――
――――
―――

 ―――警視庁東新宿署。

 土地柄もあってか、マル暴絡みの事件が多く、ヤーさん顔負けの屈強な警察官が多いと専らの噂だが……例外もある。

「……なによ」

 その例外の典型がオレを睨んできた。……迫力もへったくれも無い位置関係で。

「なんでもねぇよ」
「ならこっち見んなっ!」

 こういうやり取りをしていても、入口に立ってる下っ端の警察官が介入するどころか文句すら言わない。
 ただ、"またか"と言わんばかりの溜め息を吐いて視線を逸らされるだけだ。
 ……習慣っつーのは末恐ろしいものがあるな、畜生。

「―――よぉ、シンジ」

 嗄れた声で馴れ馴れしく俺の名前を呼ぶ声がする方を向くと、屈強そうなYシャツ姿の中年が署内から姿を現していた。
 ……徹夜続きなのか、シャツは皺だらけで、顎には無精髭、目にはクマが出来ている。相変わらず不健康な生活をしてんだな、このオッサン。

「……保護者がガキから目ぇ離さないでくださいよ」

 ちょうど楽な位置にあるハニーブラウンの頭頂部を掌で軽く2、3度叩きながら俺は言う。
 ……痛っ、手の甲を引っかかれた。

「バカバネはちょっと黙ってて」

 俺が話しかけられたのに何で俺が黙らなきゃなんねーんだ?

「拝島さん、遅れて申し訳ありません」

 本人は真面目に謝罪してるんだろうが、その小っこい見た目と幼い声色とのアンバランスさに違和感を覚える。
 だが、オッサンもう慣れちまったんだろうな。ゴロリンを特に茶化すこともなく頷いている。

「おう。
 ……その様子じゃ任意で引っ張ったってワケじゃねぇみてぇだが、どういうこった?」

 入り口から少し外れた位置にある喫煙所に設置された灰皿に向かって歩きながら、愛用のフィリップモリスに愛用のジッポで火を点け、オッサンは俺に対する声よりオクターブ低い声でゴロリンに質問した。

「その―――」

 嫌煙家であるゴロリンは、副流煙が気になるのか眉をひそめながら言葉を探している。
511 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:20:10.89 ID:vSAOWoAO

「―――ちぃと野暮用で。ついでに"たまたま駅で会った"迷子を連れてきたンスけど」

 いてっ、ゴロリンの奴、また引っかきやがった……。

 素直にゴロリンに尾行されてましたっつっても良かったんだが、一応ここまで一切の面倒を省いて貰ったっつー義理立ても踏まえてフォローしてやったっつーのに。

「はっはっはっ! お前さんがピンじゃあ、取調室に直行で案内されちまうかも知んねぇからなぁ!」

 ……余計なお世話だ。
 そう俺が思う中で、ブラックジョークに一仕切り笑ったオッサンは、部下に鋭い眼光を浴びせかける。

「宮前、お前は現場付近の聞き込みに合流しろ」
「え、あの、拝島さんは……?」
「返事は!?」
「……はいっ!」

 あわよくば俺の取り調べでもしようとでも画策していたのか、ゴロリンはその上司命令に少し不服そうな表情を浮かべてから踵を返す。

「―――」

 ……すれ違い様に、ゴロリンが何か呟いたような気がしたが、どうせイヤミか無意味な煽りだろう。気にしたら負けだ。

「―――さぁて、と」

 2、3口程度しか含んでいないフィリップモリスが灰皿の茶色い水溜まりに消えていく。
 生粋のヘビースモーカーの吸い方らしいが、俺からしてみたら勿体無いの一言に尽きるな。

「お前さんがわざわざ出張ってるっつーことは、ウチの管轄の事件絡みか?」

 流石、長年の付き合いだ。察しがよろしいこって助かる。

「新宿3丁目で起きた放火殺人について、ちょいいと」
「神代の次男坊からの依頼か?」

 ……そこまで察しが良いなら、探偵業の守秘義務ってのも察して欲しいモンだ。まぁ、この親父っさんが俺に気を遣うなんて思えないのも事実な訳で。

「―――半分は」
「ほう」

 依頼主から仕事を得てから初めて動き出す探偵と言う業種からすりゃあ、言い得て妙な話だが、そうとしか言い様が無い。
512 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:20:48.03 ID:vSAOWoAO

「こっちは、守秘義務を反故にしたんだ。それなりの情報は貰わないと割に合わないと思いますが」
「……つってもなぁ」

 そう言い淀んだ渋い顔を見る限りだと、警察の捜査にも進展が無いのか?
 ………だが。

「……今から言う情報は、あくまで推論だ。的外れでもキレるんじゃねーぞ?」

 珍しく言い淀むオッサン。

「何を今更」

 正直な感想だった。
 何故か俺が犯人として疑われたくらいだ。別にオッサンの推論がどうであれ、驚くには値しない。

「動機だけで考えたら……一番怪しいのは神代の次男坊、お前さんの依頼主だ」

 ……神代 宗か。
 随分と大仰な前置きをした割には大したことない推論だな。

「別に、アイツは単なる得意先だ。驚きもキレもしませんよ。
 んで、何でアイツが怪しいと思うんです?」
「……委員会役員が、内部分裂してる話を知ってるか?」
「いや、初耳ッス」

 正直に答えただけなのに、拝島は大きな溜め息を吐いた。

「……お前さん、それでも委員会を出入りしてる人間か?」
「余計な詮索をしてないだけですよ」
「モノは言い様だな」

 そもそも、異対委は実質神代のワンマン組織だと思っていたが。
 複数人の役員が存在してるっつーことも今回の事件で初めて知ったからな。

「……今週末に決議される予定の"異性化疾患に関する新法案"を巡って、神代 宗を筆頭とする推奨派と、被害者を筆頭とする反対派が真っ向から対立してるんだよ。
 ……ま、他にも因縁は山ほどあるんだが、それは割愛しよう」

 ありがたい話だ。政治絡みの小難しい話を連発されちゃあ俺のアタマがパンクする。

 肝心なポイントは、神代と被害者が組織内で対立する関係にあったという一点だけだ。

「で、神代は被害者が邪魔だったから殺した、って推測したワケですか?」
「話はそう単純じゃねぇよ」

 相手が"神代家"だから捜査が進まない、そう踏んでいたが……意外にもそれをあっさりと否定する拝島。
513 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:21:33.34 ID:vSAOWoAO

「……奴さんにはアリバイがある。
 事件当日は新法案の資料をまとめる為に奔走してたっつー話で、四六時中誰かしらが奴さんの姿を目撃してる。
 時間を総合すると、アイツが単独で行動出来たのは精々4〜5分だ。
 現場までどんなに急いでも30分は掛かる位置に居た状態でな」

 ……そんな中で、被害者と接触し、ドタマに弾丸をぶち込み、アパートに火を点けて戻るなんざ……天地がひっくり返っても出来やしない。

「つまり、神代は犯人じゃないと」
「さぁな。誰かに殺しを依頼したかのもしれねぇ」

 そこで、拝島が俺に鋭い視線を向ける。
 なるほど、ゴロリンが言ってたのは、そういう可能性か。……"馬鹿馬鹿しい"の一言に尽きるな。

「探偵に殺人請負なんて業務は、無ぇっスよ」
「だろうな。お前さんはそういう手合いの人間じゃねぇ」

 どうやら、御理解頂けたようでなによりだ。

「……つーかお前さんなんかより、もっと怪しい人物が居るんだよ」

 そりゃ初耳だ。

「なら、何でそいつをしょっ引かないンスか? 俺に変な疑いを掛けるくらいなら、そっちのが手っ取り早いと思いますが」
「証拠が無ぇ。下手すりゃ警察全体の責任問題に発展する」

 ……大袈裟な話だ。

「そう思うか?」

 そう言い放つ、嫌みを含んだ拝島の笑みが妙に重苦しかった。
 ……つーか読心術は警察官の必須科目なのか?

「……相手が権力者なら話は別ですけど」
「権力者か、あながち間違いでもねぇな」

 なんだ? ……さっきから、はっきりしない物言いだな。拝島らしくない。

「勿体付けンのはやめにしましょう。
 一体誰なンスか? 警察が今の段階で目星をつけてンのは?」

 あくまでも、冷静に、真摯に先を促す。
 拝島がどんなぶっ飛んだ答えに辿り着こうが、俺は動じるつもりはない。動じることもない。

「お前さんもよく知ってる奴だ」
「……クラブ"アクア"のケツ持ちとか、通り占い師の婆さんとか、ホームレスの頭目とか……そこら辺スか?」

 俺が知っていて、尚且つ裏の道に通じてそうな奴らの名前を適当に挙げてみる。
514 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:22:13.43 ID:vSAOWoAO

 どいつもこいつも臑に傷を抱えたまんま、新宿っつー不夜城で、限りなく黒に近いグレーゾーンを生きてる奴らだ。

 ま、アイツらなら疑われても仕方ないとは思うが、俺としては違うような気がする。

 "同じような人種"ならまだしも、相手は堅気の人間だろ?
 そんな不義理が罷り通るほど、奴らの掟は甘くない。
 事件現場が東京湾に切り替わるっつの。
 奴らの臑の傷に甘んじて捜査したって、今度のコロシの件に関しては何も出てきやしないだろう。自ら被った埃なら幾らでも出てきそうなモンだが。

「そんなスジモンやハグレモンの仕業じゃねぇってコトくらい、お前さんだって気付いてるんだろ?」
「……ンじゃあ、誰なんスか?」


「―――"坂城 るい"、だ」


「……は?」

 拝島の言っている意味が一瞬理解出来ず、俺は空虚な言葉を吐き出して固まるしかなかった。

515 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:22:57.37 ID:vSAOWoAO
「聞こえなかったか? 知らない訳ないよな?
 異性化疾患対策委員会の長、神代 宗 委員長代理の私設秘書だ」

 知らない訳が無い。つーか朝、会ったばっかだっつの。
 ……って、問題点そこはじゃない。

「……そういう結論に至った理由は?」

 一般的な常識の概念をすっ飛ばして、俺は聞き返す。
 脆弱な常識に縛られた反論をしたトコで、時間の無駄だ。
 未成年だとか、女だとか、そんなコトは先刻承知の上で、このオッサンは嬢ちゃんを―――坂城 るいを疑っているのだから。

「―――動機がある、凶器を入手した経路も説明出来る、アリバイが立証できてない。
 以上だ」
「……簡潔な説明、どうも」

 ……とりあえず、情報が欲しい。
 嬢ちゃんが犯人であると考える根拠の中に、何かしらのヒントがあるかもしれない。

「言いたいこと山ほどあるが……嬢ちゃんが被害者を[ピーーー]動機ってのは?
 まさか、神代が"殺せ"と言ったから殺したとでも言うンですか?」

 あの髪型までジャジャ馬な娘が他人の言うことに黙って従うような性格をしているのであれば、話は別だが。

「さっきも言ったろう? 被害者は委員会の中じゃ、新法案反対派の急先鋒だったんだ。
 現に、委員会内での会議中に、神代の代理で出席していた坂城 るいが、被害者と激しい論争をしていた所を関係者が目撃してる」
「……だからって、即刻殺意に直結するモンなんスか?」
「―――知らねぇのか?」

 意外だと言わんばかりの、主語が抜けた言葉が返ってくる。

「何を……です?」
「坂城 るいは、過去に委員会に拘束されている。書類送検の一歩手前まで行ったらしいが、神代の次男坊が手回しをしたからコト無きを得たとか」

 ……確かに知らなかった。
 あの嬢ちゃん、一体どんな"おイタ"をやらかしたんだ? 書類送検なんて、相当悪どいコトでもしてねぇ限りそんな対応にはならねぇ筈だろ?
516 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:24:46.28 ID:vSAOWoAO

「―――どうやら、過去に色々と"おイタ"をやらかしていたみたいでな。
 調べてみたら神代 宗が就任する以前、委員長を務めていた人物と浅からぬ関係があったらしい」
「……それが、今回の件と何の関係があるンスか?」

 嬢ちゃんについて随分と意外な事実が芋蔓式に顔を出してきてはいるものの、それでもまだ被害者を[ピーーー]動機に直結したとは言えない。

「坂城 るいにとって、今回の法案決議は、弱冠16歳で彼女が委員会に身を置く"理由"そのものなんだよ」

 拝島のオッサンは、そう呟きながら再びフィリップモリスにジッポの火を近付ける。

「その"理由"は殺意に結びつく、と?」
「俺がそう考えてるってだけだ。
 ―――ま、詳しくは坂城 るい本人から訊け」

 あのジャジャポニーテール娘が素直に答えてくれるとは思えねーが。
 ……でも、ま、本人の与り知らねぇトコでヒトの秘密を根ほり葉ほり訊くのも野暮ってモンか。
 後は凶器の入手経路やアリバイに関してだが……これは多少想像がつく。
 要するに神代と嬢ちゃんが共犯関係にあったとすれば難しい話じゃない。

 ――――今は、オッサンの推測を覆せるだけの材料を持ち合わせてねぇ。

 そもそも、下手に捜査方針を転換させちまったら、ケーサツが名佳に行き着いちまう可能性も考えられる。それは喩え本人が疑われてようとも、依頼主が望むトコじゃねぇからなぁ。
 ……ここは、一旦退散すんのが得策かもしれねぇな。

「―――そんじゃあ、嬢ちゃんに話を訊きに行きますかね。
 ……参考になりました、ども。
 そンじゃあ―――」
「―――待て」

 回れ右の体勢を採ろうとして、半身になった左耳に鋭く低い声が投げ掛けられる。
 ……ヤバいな、なんか感づかれたか?

「なンスか?」

 内心の焦りを気取られないように、気だるそうなフリをしてオッサンに向き直る。
 ……奴さんは跋が悪そうに紫煙と一緒に溜め息を吐き出してた。
517 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:26:36.85 ID:vSAOWoAO


「……あの子は、"のぞみ"はどうだ? 元気か?」
「―――ッ」

 ……懲りねぇな、このオッサンも。

「―――アンタの知ったこっちゃねぇだろ」

 俺は他人行儀な敬語のオブラートで包むのも忘れて、言葉を吐き捨て、再びオッサンに背を向ける。
 ……それでも、オッサンは俺を責めることはなかった。

「……そうだな、すまん」

 やめろ。同情を誘うような台詞はアンタにゃ似合わねーってことを、いい加減自覚したらどうなんだよ?

 ……。

 あぁ、くそっ!

「………アイツなら……まだ寝てんよ。
 謝るなら俺じゃなくて、本人にしてくれ。
 アイツが起きた時に、土下座でも何でもしてやれよ。
 ……そんで、殴られちまえ」

「………」

 こんだけ暴言を吐いたとしても、拝島は黙ったまんまだった。
 ……当然と言えば当然なんだが、居心地は悪い。

「―――ンじゃ、失礼します」

 俺は、探偵として拝島刑事に深々と頭を下げて警察署に背を向ける。

「……おう、また、な」

 辛うじて聞こえたオッサンの声に背を向けたまんま手を軽くあげて返事をしといてやった。あんな調子じゃロクな情報を持ってきちゃくれねぇしな。


 ―――ったく、名佳のコトだけでも手が足りねーってのに、厄介なコトを思い出させやがって。

 ………。

 ……考えてみりゃ、アイツも名佳も同じ境遇か。喪ったものに差があるかもしんねぇけど……根は同じだ。名佳のヤツは、それでも前を向こうとしてる。
 だからこそ、俺をダシに使ってまで委員会に乗り込み、事の真相に迫れたんだ。

 ……アイツも、前を向けんだろうか? 尤もそれを確かめることは―――
518 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/16(水) 11:28:25.25 ID:vSAOWoAO

 ―――ブーッ ブーッ

 内ポケットで、携帯が小刻みに振動する。

 ……っと、メールか。差出人は――はぁ、つくづく色気がねぇなぁ、俺。

『―――急ぎの案件なのでメールで失礼する。
 赤羽根 名佳の編入が内定した。
 翌日付けで市立第三高校の学生となるので手続きを含め、翌日、第三高校に出向いて欲しい。
 ―――――
 ――――
 ―――尚、手続きの費用は既に支払っているので、現地では保護者として掲示される書類に目を通し、自署名と捺印をするように 以上』

 ……随分と早い対応だな、流石、神代家の黒光りは一味違う。

 ……ま、だから拝島のオッサンに疑いを持たれてんだから、ある意味じゃ哀れなのかもしれねぇが。

「……さぁて、行きますかね」

 携帯を閉じ、俺は歩き出した。
 まだ時間はある。
 今の内に調べられっことを済ませちわねぇとな。

 だが―――

 ――――現場に辿り着いた時には、既に太陽がオレンジ色に変わっていた。
 原因は、現場まで電車を使えるまで手銭が無かったせいだ。
 くそっ、やっぱ名佳に5kも渡すんじゃなかった。


 ……貧乏は、やっぱ辛いもんがあるな、くそったれが。


 【赤羽根探偵と奇妙な数日-3日目午後-】

  完
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/16(水) 11:34:13.91 ID:vSAOWoAO
 約1ヶ月の書きためでこれだけです。仕事が遅いにも程がある。
 登場人物が多いと書き分けが面倒だったり、複数人居たりすると誰かが空気になったりします。

 今回もエロ無しとか[ピーーー]ばいいと思う。
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/16(水) 12:14:24.82 ID:uEkAdwIo
おはいよ

実はエロ期待してたけど、なのか視点になった時点であきらめたww
でも、それ以上に良かったよ
なかなか面白くなってきた。
次は来週か再来週か来月かわからないけど楽しみに待ってるぜ!
GJ!!

やっぱ、俺も少し書き溜めてから投下させるかな。
でも51行までに治めて投下するのが苦手だ(編集して投下する時に抜けができる)
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/16(水) 13:35:09.11 ID:APgNMnko
みんなおっつんかれー。俄かに新作ラッシュだなぁ。

多数の登場人物をそれぞれ生き生きと動かすなんて芸当は特殊性癖の持ち主じゃないとね。
あんまり本は読まないけど、東野圭吾とか頭のつくり違うなぁと思うもん。
522 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/06/16(水) 23:46:04.50 ID:vSAOWoAO
 また、現実逃避がてらに登場人物紹介。本編書くときより文が進むのは何故?

・宮前 芽依(24)

 県警捜査一課に属するキャリア組の新米女刑事。
 嫌煙家で、腐れ縁である赤羽根とは全くソリが合わず、現在は自他共に認める天敵で、顔を合わせる度にトラブルが巻き起こると署内では専らの噂。
 警察官としては体格にも顔付きにも恵まれて居らず、赤羽根と並ぶと親子と間違われたことも。
 赤羽根には"合法ロリ警官"、略して"ゴロリン"との蔑称を付けられているが、その見た目と相反して射撃の腕前は一級品。
 真っ直ぐな性格なせいか必要悪や理不尽に対して容赦がなく、権力に屈することを嫌うため、赤羽根だけでなく本来なら敵対すべきではない筈の神代も毛嫌いしている。
 事件が発生した際、現場付近に居た赤羽根と名佳の二人に疑いを持つ。

・拝島 啓次(??)

 祐子の上司である捜査一課の刑事。名前も啓次。フランクな性格で、赤羽根が苦手とする警察機関の中での唯一の理解者。
 現場の叩き上げで、仕事に関しては厳格で、相手が身内でも容赦がなく課内では"鬼の拝島"の名で通っている。
 愛煙家でフィリップモリスを吸っており、職場で芽依に睨まれているが気にする様子はないらしい。赤羽根とは探偵業を始める前からの付き合いであるが、その理由を知るものは警察署内でも少ない。
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/17(木) 02:33:32.54 ID:Y.Uk5Zko
エアコン付け初めて1週間、なんか熱いなと思ってたら暖房の25度だった俺が通りますよ
今では立派な冷房設定です

青色さん。
頑張ってください。
応援します。
ところで、セッター=ヤンキーなイメージ
これをどう思われますか

さて、今日も書き溜めるぞ!
524 :haze ◆pF5vJv3b.E [sage]:2010/06/18(金) 05:01:37.35 ID:y6PONvMo
突然思いついたネタ投下

息抜きをゆるしてつかぁせぇ
525 :haze ◆2i.3/77fSo [sage]:2010/06/18(金) 05:03:15.96 ID:y6PONvMo
あれ、とりっぷ変 てすてす
526 :haze [sage]:2010/06/18(金) 05:04:07.34 ID:y6PONvMo
もういいや、トリップなしでいく
527 :『長電話の法則』 haze [sage]:2010/06/18(金) 05:12:26.18 ID:y6PONvMo
『今日の運勢は…』

登校の時刻までリビングのソファーでうとうとしていると、朝のニュース番組の間で行われる毎日恒例の星座占いが始まって一気に目が覚めた。

『一位は牡牛座!恋愛運、金運、仕事運共に最高!ラッキーカラーは〜』

モデルのお姉さんがコスプレ姿で踊る傍らに表示されている文字を、続けて食い入るように見つづける。

『山羊座はごめんなさ〜い!十二位!すべてにおいてうまくいかな日〜』

「そ、そんな…」

あまりの結果に対して声に出ていた。今日の運勢は最低らしいのだ・・・そんな俺は結果にうなだれて頭をかかえるしかなかった。
そうやって落胆の色を体全体で表現していると、

「おにい…じゃなかった。なかなか慣れないなぁ」

俺の背後から妹の声が聞こえてきた。

「わっ!なんだ…妹か…背後からなんて卑怯だぞ」

と、慌てて振り向きざまに物申す。すると、長い髪が頬にかかってくすぐったい。こっちもまだ慣れないなぁ。

「む、ちゃんと『おはよう』って言ったのに。おねぇちゃん正座占いに気をとられてて気づいてないんだもん」

「あ〜ごめんごめん」

妹の挨拶を無視した件について謝ると、妹はニタニタした表情で俺に問いかけてきた。

「で、なぁ〜んでそんなに占いの結果が気になるのかなぁ?」

妹はニタニタした表情のまま、俺の前方にしゃがんで顔を覗き込んでくる。

「な、そ、そんなことは…!断じて!断じてない!うん!」

「ふーん。今までは、占いなんて論理的じゃない!なんて言って見向きもしなかったのに。なぁんでかなぁ?」

何かに探りを入れるかのような妹の言葉に、俺は一瞬焦ってしまう。しかし、このままでは悟られてしまう。
とにかく女の子と言うものは厄介なのだ。まぁ、『先輩達(女体化者)』にも言えることだが。
特にうちの妹に関しては、事あるごとに井戸端会議のネタを収集しようと何かと食いついてくる。
最悪学年中の噂に成りかねない。言い過ぎかも知れないが、これくらいの警戒はしておいて損は無いはずだ。
と言うわけで、どう言い訳るか考えているのだが、それを待たずに妹が言葉を続ける。
528 :『長電話の法則』 haze [sage]:2010/06/18(金) 05:12:46.30 ID:y6PONvMo
「あっー、もしかして…」

心の中を読まれたかと思い一瞬びくっとなる。とにかく女の子と言うのは鋭いのだ。迂闊な事は言えたもんじゃない。

「もうお小遣使っちゃったんでしょ!」

「ちがうわ!」

「えーなら、またテストで赤…」

「もっとちがうわ!つーか、まだ中間テストにもなってねぇ!!」

俺が前のめりになって妹の質問に対して次々に全力で否定していくと、なにかを掴んだかのようにニヤリと笑っていた。
ん?なにか様子が変だぞ?と、こちらの警戒が追いつく前に──

「好きな人ができたんだ?」

「なっ!わわわわわ!!」

妹の狙い済ましたような質問に、ズリズリとソファーから床へ体がずり落ちてしまった。ドゲシ!と妹の質問が、ドシン!とフローリングの床が、俺に手痛いダメージを与える。
目を開けると、自分の膝小僧と白い太腿が俺の目に飛び込んでくる。我が妹に対して、スカートの中の白いものをおっぴろげる姿となってしまった。
これじゃ『図星ですよ』と言っているようなものだ。
俺は、いてててて・・・と、捲れたスカートを直しながらソファーに座りなおすと、妹が俺の真横に飛び乗るように腰掛けてきた。
ソファーがぎしっとしなって俺の体が揺さぶられる。両手を軽く広げ慌ててバランスをとると、美佳はすかさず俺の左腕に両腕を絡み付けてきてこう言った。

「だーれ?」

「違う!そんなんじゃない!」

「うそばっか!」

「う、うそじゃないぞ!お、おにい・・・じゃなかった、おねぇちゃんはうそつかないゾッ!ほら目を見て!」

「ジーーー・・・・嘘だもん!おねぇちゃん、嘘つく時いつも瞬きの回数が増えるんだもん」

どうやら裏目に出てしまったらしい。

「あーもう勘弁してー」

そんなこんなで、こんなやり取りが学校につくまで続いた。
529 :『長電話の法則』 haze [sage]:2010/06/18(金) 05:14:05.21 ID:y6PONvMo
登校後、ホームルームが始るまでの時間、クラスのにょたグループの中でたわいもない会話に花をさかせ?ていると、それは次第に今朝の星座占いの話題へと切り替わって行った。

「ねぇ、にょた子、今日の運勢どーだった?ウチは十一位…最悪…」

「僕は三位!恋愛運が一番よかったんだ〜。・・・・はぁ・・・」

顔を少しばかり赤くして遠くを見つめるにょた子。その視線の先は校庭で未だ朝連に勤しむ同じクラスのサッカー部員が居た。
そんなにょた子は相変わらずのミーハーぶりであった。

「にょた子ファイト!ウチは応援しているぞ!で、にょにょ佳は?」

「うぇっ!?」

「あー・・・にょにょ佳は山羊座だったねー」

「山羊座って確か・・・」

「ふ、ふん!占いなんて論理的じゃない!ばかばかしい!」

「あれあれー?見たのかなぁ?見てないのかなぁ?」

「ほら、にょた子!それくらいにしてあげなって。あーもぉーそうふてないの!ちゃーんと対策してれば克服できるんだからね?見たのならちゃんとやりなさいよー」

「・・・茶色のネリ消なんて、今時売ってないって!」

「なんだ、しっかりチェックしてんじゃん・・・」

「うぅ!」

「ふふふ、そんな意地っ張りな所がかわいいなぁ」

って、意地っ張りな女ってあまりかわいくないんじゃ…?と俺は考察する。
って、墓穴じやんそれ!と自問自答して勝手に落ち込んでしまった。
にょた子の奴、可愛らしい顔の割りに発言が酷い!
俺がうな垂れていると、後方から男子生徒の声がにょたグループに届いた。

「おっす!」

「あ、男君おはよー!」「おはよー!」

にょた奈についづいて、にょた子もその声に元気の良い挨拶で返す。対して、物思いに耽っていた俺は、その人物が誰か分からず俯いていた顔を上げて確認する。

「男・・・!?お、おはよ・・・」

突然の男時代の親友の登場にびっくりして、おはようとうまく言えなかった。
同時に顔の表面が段々と熱くなっていくのがわかる。急に心臓の鼓動が高まって、体内から鼓膜に響き渡る。
そんな様子を悟られまいと、また俯いてしまう。

「ん?にょにょ佳、なんか今日は元気がねーなぁ。どーした?」
530 :『長電話の法則』 haze [sage]:2010/06/18(金) 05:14:26.81 ID:y6PONvMo
男は、俺に近づきながら心配そうに俺に声をかける。

「な、なんでもない・・・」

近づかれると顔が赤いのがばれてしまう。男との距離を置くために二歩程後ずさる。

「つれねぇなあ、ん?本当に大丈夫か?顔真っ赤だぞ?」

察してくれない・・・・のがこの男である。男はあいた距離を詰めるため一歩近づいて俺の顔を覗き込んでくる。

「!!・・・なんでもない!」

「そそ、野暮なことは聞かないの!女の子にはそう言う日があるの知らない?」

男は「うぇ!?」と素っ頓狂な声を上げて慌てて数歩後ずさる。
そういうと、にょた子とにょた奈は俺の腕を引っ張って別の場所へ移動してしまう。
にょた奈はゴメンねと男に愛想を振りまいて、ちゃっかりフォローを入れていた。
男は困った顔を数段階安堵の表情へ近づけると、じゃな!と自分の席へ着いた。
こういう気遣いができるにょた奈に対して、俺は尊敬と嫉妬をらせんの様に絡ませた心境で見つめる。

「はぁ・・・そんなんじゃ本当にに占い通りになっちゃうよ」

俺の心境を悟られたのか否か、ため息混じりに言葉を吐いた。

「うるさい、うるさーい!」

意地っ張りな自分がいやになって、目頭がすこし熱くなる。

「こういうのツンデレっていうんだっけ?」

「にょた子ってば・・・空気読めない子・・・」

にょた奈から更に大きなため息が漏れていた。

男との距離は日に日に開いていってる気がした。あいつはいつだっていつも通り。問題があるとしたら俺の方。
互いの関係が男と女になってしまってから、何か大切な繋がりを断ち切られてしまったかのように感じていた。
しかも、男の顔を見ると顔面に火がついたみたいに熱くなる。これが恋というものならば、どうしてこんなに苦しいのだろう。恋というものは明るく楽しいものではなかったのか?

「はぁ・・・・」

自然とため息が漏れた。

「好きなんでしょ?」

俺は、にょた奈の言葉を否定せず無言でコクリと首を縦に振った。

「どうしよう・・・どうしたらいいんだろう」

「そんなの簡単じゃん」

それからにょた奈は俺にある提案をした。
531 :『長電話の法則』 haze [sage]:2010/06/18(金) 05:15:14.99 ID:y6PONvMo
自室のベッドに突っ伏して、にょた奈の提案を頭の中でずっと考えていた。
その提案の内容とは、長電話の法則。だそうだ。要するに、なんとか長電話出来るように持ち込んで、後は話の流れで遊びに誘ってしまえ。
というものだった。しかし、今の俺にはそれすら論外に近い提案だった。それが出来れば今こんなに苦しんでいない。

「どう理由つけて、電話かければいいんだよう・・・・」

すると、突然携帯の着信メロディーが鳴り出した。
このメロディーは電話だ。誰から?と疑問に思いながら、億劫な気分で手だけを携帯に伸ばして拾い上げ、頭だけ横にかいてんさせてそれを確認する。



そう表示されていた。

俺は、はわ!っと変な声を上げてベッドから飛び起きると、その拍子に携帯が手からこぼれ落ちる。
刹那の間に様々な思いが駆け巡る。
どうやってでればい。早くでないと切れてしまう。でもこれは良い機会。だと。
慌てて携帯を拾い上げると、ベッドの上で正座してから一つ深呼吸。意を決して携帯の受話ボタンを押した。
さて、ミッション開始である。

「もし・・・もし」

『お、にょにょ佳、もしかして寝てたか?』

ううん、とそっけなく返事をする。

『そっか、なぁ今日やっぱ元気なかったろ?』

「そんなことないって」

『うーむ。お前が嘘言ってるかどうかなんて、目を見れば分かるんだが・・・見えん』

「そりゃそーだろ。電話なんだから」

『じゃあ、質問です。にょにょ佳の瞬きの回数は「そんなことないって」から何回目ですか!』

「・・・・0回!!」

『ぶっ!そりゃお前失明するぞ!』

「あははっ!そうだな!」

そこから、調子を取り戻した俺はしばらくたわいもない会話を続けた。
ただし、その会話の端々にいかにあの事を伝えようと狙いながら。
もちろん、会話の内容なんてぜんぜん頭に入っていない。
532 :『長電話の法則』 haze [sage]:2010/06/18(金) 05:15:47.32 ID:y6PONvMo
『でさー、──の奴、俺と一緒に居たお前見てどういったと思う?』

「え?そんなの決まってるだろ。あの可愛い子誰!?紹介しろよ!だろ?」

『ぶっぶー!残念でした!』

「はぁ?そいつ死刑!」

『お前もやっと彼女が出来たのか!めでてぇ!!だってさ』

「なっ!?」

『彼女』と言う言葉に過剰反応した俺は、顔が一瞬で熱ってしまったみたいで、恥ずかしくて顔を枕に突っ伏してしまう。
その後、暫くの間、長い沈黙があった。
勝手に妄想して勘違いしそうで恥ずかしくて何も言えない俺と、急に黙ってしまった男。
お互いに何も言わない長い沈黙。
そして、その静寂を破ったのは──

『あのさ、今度俺と──』


そういえば、この時の俺は今までで一番女らしかったんじゃないかと思う。
ちなみに、俺は山羊座で最下位だったけと、男は牡牛座だった。
二つを足してイーブン。
やっと関係が元通りって感じだった。でも、俺たちにはそれで十分だった。

ところで、このやり取りの後、ちゃっかり盗み聞きしていた妹が「男君とデートなら〜」と水をさしてきたのは言うまでも無かった。


続くとgdgdになりそうなので
おわり
533 :haze [sage]:2010/06/18(金) 05:18:58.88 ID:y6PONvMo
継続は大変也
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/18(金) 11:26:47.34 ID:X6KsOVIo
GJ!
二つを足してイーブンって何かいいな
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/18(金) 22:33:04.68 ID:Dxuxayc0
GJ!
536 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/18(金) 22:48:20.79 ID:QVETlYAO
  【赤羽根探偵と奇妙な数日-記述a-】


 ―――吐き気がして目が覚めた。

 目を開けても閉じても変わらない暗がりの中で、吊り下げられた水銀灯の紐を探す。ない、ない、ない、あった。

 甲高いパキンパキンという音が光を灯す。
 その白昼色の光のせいで、僕の視界が霞んでいて歪んでいることを自覚する。

 不満や不平、疑問なんて二の次で、僕はトイレに直行し、あらかたのモノを吐き出した。

 最後あたりなんてモノじゃなかった。ただ、酸っぱいだけの液体だ。

 荒々しくなった呼吸を整える。
 次第に落ち着いてきた。
 そこで気付く。奇妙な音に。

 ―――高い、高過ぎる。

 吐き出した自分自身の荒い息の音域が自分の聞き慣れたものから逸脱してる。

 そんなバカな。

 そう思い、虚ろに小さく嘲笑を上げた途端に血の気が引いた。
537 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/18(金) 22:48:56.77 ID:QVETlYAO

 そんなバカな。

 わずか数秒で全く同じ言葉が、全く違う意味合いの確信に変わる。

 洗面所に走った僕を出迎えたのは姉さんだった。……いや、違う。髪の長さが姉さんより少し長い。

 そこで漸く気付いた。
 鏡に映ったそいつは紛れも無く僕なんだと。

 訳が分からなかった。悪い夢だ、そうに違いない。

 急いで階段を駆け上り、僕は自室に戻る。
 正確に言えば戻ろうと、した。

 ドアを開けた途端に、僕はうずくまって、えずいた。
 なんだ、この匂い。
 ダメだ、耐えられない。

 ついさっきまで安眠を貪っていた筈の僕のテリトリーが宿主を拒否している?
 そんなバカな。

 この部屋の何がそんなに僕の鼻孔を刺激するんだ? 気休め代わりにパジャマの袖で鼻を覆ってみる。

 そこで、ココロとカラダが硬直した。
538 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y :2010/06/18(金) 22:50:26.50 ID:QVETlYAO

 その匂いは、僕だった。

 今まで僕が知らずに発していた僅かな匂いを、僕自身が拒否している事実。

 なんで?
 どうして?

 カラダが拒絶する匂いの中で自問自答を繰り返す。発狂しそうになるくらい何度も、何度も。

 人間という生き物も元は動物だ。自身を保つ為のヒューズは存在する。

 そんな狂った時間を過ごしている内に、僕は気を失っていた。



 次に僕が目を覚ました場所は、アルコールの匂いに塗りつぶされた真白い部屋だった。

 ここは何処だろう?

 考える間もなく、自分のものとは思えないほど細くなった手を握りながら瞼を腫らして眠りに就く姉さんが目に入る。

 その時だけは、何故か不思議と幸せな気分で微睡むことが出来た。疑問も、不安も、不快な匂いもない。

 だって―――

 ―――まだ、事実に目を向けるまでのモラトリアムがあったから。

 ………そう、僕は振り返る。


  【赤羽根探偵と奇妙な数日-記述a-】

  完
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/18(金) 23:04:21.81 ID:QVETlYAO
 短い上に訳が分からない、The 苦肉の策の投下でございます。読んでくださってる皆様方には多大なるご迷惑をお掛けしていますことを心よりお詫び申し上げござ早漏。


>>521
各キャラが生き生きと動く様を想像することと、それを表現することを両立出来るなんてド変態だと思います。


>>523
まりがとです。
セッターは優柔不断な人や、いい加減な人が吸う煙草なイメージが。

>>533
ぐっずぉぶ!
長い話を考えると短いのを単発で書きたくなる法則ってあると思います。
540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/19(土) 00:53:23.81 ID:kTOUCUSO
ぐっじょぶ

誰の事なのかなのかのかこなのか妄想ちう

今の書き手は三人〜四人ってとこか
まだまだいると思うがね

俺っちは波があるから、書いてる時と書いてないときの差が激しい
書きかけの駄文がデスクトップに山ほどある
どうしよあれ
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/19(土) 11:51:43.38 ID:N.HXVFgo
なんという投下ラッシュ・・・乗るしかないこのビックウェーブに
542 : ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:49:32.10 ID:JP2EgZ6o
tst
543 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:54:23.22 ID:JP2EgZ6o
『この世界でいつの間にか始まっていた男性の【 】化。
所謂『女体化』は、主に【 】付近の男に起こる。
最も発生者が多い時期としては【 】から【 】。
そしてかなり特異な発生要因として知られているのは、【 】である、ということ。
発生確率はおよそ【 】%である。』

(えーと、女性化、第二次性徴、中3、高1、童貞、50……っと)

見直しを終えて顔を上げると、ちょうど前の席の彼女も終わったところなのか、ぐぐっと伸びをしてペンを机に置いた。
軽く辺りを見回してみると、既に机に伏せて寝息を立てているものもいれば、頭を抱えて何やら唸っているものまで様々だ。
私も前の席の彼女を見習って軽く伸びをした。 肩だか首だかが小気味よい音をたてて、少し楽になる。
欠伸を噛み殺しながら、堂々と伏せている友達の事が少し恨めしく思った。

まあ最後くらいは起きておこう。どうせこの時間が終わったら夏休みだ。

そう、ただ今学期末テストの真っ最中。
私の気持ちは早くも夏休みの事でいっぱいになり始めていた。
544 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:54:57.95 ID:JP2EgZ6o
あっと言う間と呼ぶには少し長すぎるSHRを寝過ごし、帰途に着いたのは忌ま忌ましい太陽が孤の頂を踏み締める頃だった。
冬生まれのせいか単に体温調節が下手な身体なのか、どうも夏場の暑さには生まれてこの方逆らえた試しが無い。
このふにふにとした身体になっても変わらないところをみると、もう諦めるしかないのだろう。

「おいっすー」

そう後ろから声を掛けられても振りむく気にはなれずに、無視を決め込もうと歩みを続ける。
以前までと変わらない態度で接してくれるのはありがたいけれど、コイツも私になんか構わずに彼女とか作ればいいのに。

「おいおい無視すんなー」

頭を鷲掴みにされ、ぐりぐりと撫で回された。 
こういう事をするから無視しているというのに、少しは解って欲しいもんだ。
手首を掴み頭から無理やり引き離すと、伸びっぱなしの髪を手で梳く。
するりと通る感触も、熱を持った今は不快なものでしかなかった。

「寄るな……あっつくるしい……」

はたはたと温い空気を掻き混ぜるだけの手扇でもって隣を歩く男を払おうとするも失敗。
帰る方向が同じなので何も文句を言えないのが、少し悔しい。
545 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:55:47.33 ID:JP2EgZ6o
「ぅひゃぅ!?」

首筋に当てられた感触に思わず声が出てしまう。
脇を見ると、スポーツ飲料を持った幼馴染の姿があった。
してやったり顔のワカにデコピンを喰らわせて、ペットボトルを奪う。
額に押しつけると、先程よりも少しだけ、ぼんやりとした思考も回復したような気がする。

「キョウはほんっとに変わったの、見た目だけだな」

おい幼馴染、こんな美人とっ捕まえて言うセリフがそれか。
こくこくと喉の奥へ流し込んでいた頃には、幾分言い返す元気を取り戻していたためか、ついつい乗せられてしまう。

「うるっせ! 俺もこれでも色々苦労して……」

そこまで言って、はっと口を噤んだ。 
辺りを見回すと私とワカ以外に人はいなく、私はほっと胸を撫で下ろす。
危ない危ない、こんな男のような言葉遣いを親に聞かれたら何を言われる事か―――。

「……まさか、まだ親に色々言われてんのか?」

どきり、と心臓がひとつ大きく波打って、私はワカの方を振り向いた。
落ち着け、落ち着くんだ私。 そう言い聞かせながら、反論の言葉を頭の中で紡いでゆく。

「そそそ、そんなわけないでしょーぅ?」

「……言っとくが、自分では会心の出来なんだろうがすこっしも隠せてないぞ」

分かってた。 私がワカに嘘を吐き通せたことなんてないくらい。
ただやっぱりこいつに余計な心配をかけると、なんだかしっくりこないのだ。
546 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:56:36.53 ID:JP2EgZ6o
「……と、まぁそんな」

処変わってワカの部屋。 ソファーに腰掛けながら、私は事情を説明していた。
些細な口論からつまらない意地を張ってしまった私が悪いのだが、約束してしまった事を要訳するとこうなる。
『立ち居振る舞いを直さないとこの先何もできない。 さしあたって今後如何なる時も昔のような言葉遣いはしない』

「あほだろ」

自分でしようと思っている事をしろと言われたり、理解している事を重ねて言われると、遣る瀬無い気持ちになると思うんだ。
わかってるんだって、でも言っちゃったモンは仕方ないだろ。
そんなもやもやを吐き出すわけにはいかず、クッションに顔を埋めて溜息を吐いた。

「まあ俺の前では楽にしとけ。 俺もいきなり“私”なんて言われても怖いだけだ」

制服を脱ぎながら、ワカはそう答える。
なんだかその言葉は、望んでいたのに納得のいかないものだった。

「やっぱ、いきなり女らしく、ってのは難しいな」

初恋の彼女、クラスメート、知人。
ありったけの女性陣を思い浮かべてはみたものの、女らしいって何だろう? という壁に突き当たってしまう。

「女らしいって、どんな事だと思う?」

そう尋ねたら、おっぱい、と返されたので手刀を叩きこんでおいた。
547 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:57:26.99 ID:JP2EgZ6o
鼻を押さえながら、ワカはオレンジジュースを持ってきた。

「うーん、やっぱちったぁ変わったか」

とはワカの発言だが、私に心当たりは無かった。
ころころとストローで氷を回しながら、訝しげな目線をワカへと向けた。

「いや、変わってないって言ったけど、やっぱり少し変わったな、って。
前までのお前なら、そんなかわいい悩み相談なんてしてこなかったよ。 いや、かわいいって良い意味でな」

言いながら通学鞄を漁るワカ。 私はクッションへと再び顔を埋めた。 反論は、出来なかった。 
ワカまでそういう事を言うのか。 それ程、今と前では違うものなのか。 そういったショックもあった。
ただ、かわいいという言葉を嬉しいと感じている自分に驚いた。
かつてない程、顔が熱くて上げられなかった。

クローゼットの戸を引きながら、ワカは続けた。
教科書を入れ替えているのだろう。 常々、真面目奴だとも思う。

「まあさ、いんじゃね? ほら、隣のクラスの木村も言ってたろ。 彼女が少しずつ女っぽくなってく、って。
お前も急ぐ事ねーよ。 変わろうと思ったら、変わればいいんじゃん?」

それ以降は、言葉が続く事は無かった。 後ろから覆い被さるように、私が彼によりかかったからだ。

突然部屋に訪れた静寂は、気まずいどころか心地良かった。
心なしかワカが震えているのは分かっていた。 けれど私は、離れようとはしなかった。
548 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 04:59:56.67 ID:JP2EgZ6o
沈黙を破ったのはワカだった。
耐えきれずに、と言った方が合っているような、絞り出すような一言。

「お、おいキョウ……その、どいてくれないと色々とその……」

「あててんだよ」

普段の自分では考えられない言動のはずなのに、妙に落ち着いていた。
ワカの首筋がほんのりと赤く染まっている。 

「おいワカ。 俺はさっきみたいなこと言われて嬉しかった。 わかるか? 嬉しかったんだ。
お前が俺にこうされて、嬉しいかどうかを知りたい。 勿論、そこらの女じゃなくて俺にだ。
元が男で一緒に馬鹿ばっかりやってた俺でも、お前は嬉しいか?」

少し間をおいて、ワカは首を縦に振った。 
コイツが私の親友で良かった。 私はまだ、私でいられる。

私は肩口に回していた腕で彼の頭を抱え、そっと耳打ちをした。 

「これは私からのお礼だ。 こんな女ですまんが受け取れ。 あぁそれと、夏休みはいつでもあいてんぞ」

―――そうして私は、ワカの部屋から逃げるように帰った。
口には、少ししょっぱくてざらざらとした感覚が暫く残っている。

明日からは、少しずつ、俺は私らしく―――。
西に傾いていく太陽を見ながら、去年までとは違う夏休みに胸躍らせる自分がいた。


おわり
549 :安価『にょたっ子と童貞』 ◆CI4mK6Hv9k [sage saga]:2010/06/21(月) 05:01:07.37 ID:JP2EgZ6o
以上、複雑な心境が色々と描き切れておりませんが仕様です。

キョウ=京という名前  ワカ=“川”本という苗字

そんな蛇足。
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 10:22:59.32 ID:GxZLaNMo
おおう、GJだぜ
ずいぶん進んでると思ったら全部投下で吹いたわwwwwww
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 12:05:41.91 ID:cM5RhyAo
GJ!

間で何が起きたか問い詰めたい

はげーーーしく問い詰めたい!!!!
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 17:36:20.73 ID:Z0r3KYAO
GJ! メ欄にいつだか誰かが言った通りsagaが入ってて噴いた
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 17:41:16.53 ID:NTY0ejs0
そうだよな、1516って中学三年でもあるから受験シーズンなんだよな
女体化で頭良くなれば受験勉強いらねンじゃね?
むしろ、受験勉強嫌なやつはみんな女体化狙いすればいんじゃね?
そうすりゃ実力で男のまま高校行けた奴は必然的にハーレム状態じゃね?
OK、受験生の無意識が女体化を肯定した、これで勝つる!
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 18:35:26.82 ID:GxZLaNMo
>>553
だが、頭の良い秀才だった男が
逆にあんまり勉強出来ない、巨乳のちょっと抜けてる天然娘になって
おろおろするのも良いのではないだろうかと!
555 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 21:24:39.08 ID:k97yNRs0
>>554のやつ今書いてる。
終わったらうpするからよろしく。
556 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 22:21:21.50 ID:k97yNRs0
>>554

―ジリリリリリリリリ!
「ふわぁ〜」
朝起きて、ベッドから降り、そのままテレビをつける。
『…女体化による世界的な性別の割合は低下の一方で、政府は今後の対応について明…』
プチ
ため息をついてテレビを消した。
まあご存知の方もいるだろうが、この世界では《15,16歳まで童貞だと女体化する》
と言う何とも迷惑な病気がはやっている。正式名称は…
何でも原因は不明、対処法も分からず、政府もなすすべが無いらしい。
「優太!何やってるの早く起きなさい!」
俺の名前は小野優太。成績は結構いい方で、クラスではしょっちゅう解き方を俺に聞きに来たりする。
友達の健―こいつについては後述する―が言うことには、「顔はいいけど性格でモテない」らしい。
なにはともあれ今は学校に遅刻しないことが一番なので、足早に家を出た。
557 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 22:23:18.10 ID:k97yNRs0
「なあお前もう卒業した?」
「まだだ…やばいよ俺」
「あいつかわいくなったな…」
など、教室では早速この話題で持ちきりだ。他のクラスでも2,3人発症したやつがいるらしい。
しかし、俺もそろそろやばいよな…そんなことを考えていたらこいつが早速は増しかけてきた。
「お前はもう卒業してんだろ、秀才君。」
こいつが先ほど言った友達の与田健。こいつとは小学校からの付き合いで、今もよく一緒に遊んでいる。
そしてこいつの今の発言どおり、俺は卒業済みだと思われている。それは女子も例外ではなく、俺がこうも焦っているのはこのせいだ。
「あ・ああ・・・。」
しかしここで見栄を張るのが俺の悪い癖だ。この癖のせいで、俺はいまだに童貞のままだ。
558 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 22:23:59.32 ID:k97yNRs0
「でもお前が女体化した姿も見たかったような…。」
嫌味にも聞こえるつぶやきに苦笑いで返した俺は、チャイムを聞いて席に着いた。
この時点では誰も気付いていなかったんだ。その翌日にはもう、俺が「俺」ではなくなっていることに…
その日の夜は、やけに体がだるかったのだけ覚えている。はて、風邪でもひいたかな?そう思っていた。
親に体がだるいことを伝えると、いつもしている予習も少しにして寝た。
実質それが最後の「秀才君」だった。
−その夜は妙な夢を見た。
俺が俺じゃなくなるような感覚とともに、俺から何か大切なものが流れ出ていくような夢。
これは…?
559 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 22:25:43.26 ID:k97yNRs0
―チュン、チュン
朝だ。それはもう恐ろしく晴れているだ。例えるならそうだな、卑弥呼を10人呼んで晴れさせたぐらいだ。
「んううぅ〜ん。」
ん?なんだか声がおかしいな。これは本格的に風邪をこじらせたか?
そんな事を思いながら時計を見る。
5時28分
まだ母さんは起きてないな。そんなことを考えながらベッドから降りる…
「…うわわっ!」
ドシン!
大きな尻もちをつく。
「いてて…」
ダメだ、なんかやっぱり声が変だし、調子が悪い。くらくらする頭を抱えて洗面所へ向かう。
「ええっとコップは…っ!!」
コップを手にして、鏡の前に立った瞬間に俺の思考は停止した。
―目の前にいたのは美少女だった。
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 22:33:59.44 ID:cv58ROg0
wktk
561 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 22:38:05.20 ID:k97yNRs0
落ち着け!落ち着くんだ俺!
いろんな主人公たちが言ってたじゃないか、「素数を数えろ」って。
よし。素数、素数、そす…
「『素数』って何だっけ?」
そこにもう「秀才君」の姿はなかった。
「は!こんなことをしてる場合じゃない!まずは母さんを起こして…いたっ!」
勢いよく走ろうとして、裾を踏んで転んだ。
どうやら本格的に変わってきているらしい。
「まぁそんなに急がなくていいか。」
ほら、性格がゆっくりになってきた。でもまぁ、そんなに焦ることもないよね。
そんな風にして、しばらく俺は鏡の前で寝ていた。
寝ていた俺を見つけた母さんが何か言っていたが覚えていない。
…眠いな。
562 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 22:39:32.70 ID:k97yNRs0
とりあえずここまでです。
でも書いたらまたうpするのでよろしく。
563 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 23:13:49.01 ID:k97yNRs0
続きです

それからが大変だった。
まずは無理やり親に起こされた後にいろいろ聞かれた。
「優太!あなた童貞だったの?なんかもう卒業しました見たいな感じだったじゃない!」
よくそんなことサラっと言えますねあなたは。
そもそもこんな時期に女体化すること自体が珍しいことで、大丈夫だと思っていた息子がこのタイミングでは驚くのも無理はない。
俺の誕生日は冬なので、夏に女体化など想像したこともなかった。
「すみませ「まぁいいわ。」へ?」
「よく見れば結構かわいいじゃない。胸なんかは私より大きいかもしれないわ。後、服もたくさん買わないといけないしそれに…」
あ〜母さん変なスイッチ入っちゃってるよ…
でもかわいい服も見てみたい気もするし、とりあえず良いか。
―余談だが、やはり母さんより俺の方が胸がでかかったらしい。
564 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/21(月) 23:28:44.49 ID:k97yNRs0
ここまででストップ。
眠すぎだ・・・また明日来るから保守よろ
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/22(火) 00:18:57.93 ID:W4V7g2I0
続きwktk
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/22(火) 01:03:28.77 ID:SwsMVwIo
くっ!俺が、この俺がwwktkするだと!?
認めん、認められるか!
567 :haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:10:23.60 ID:SwsMVwIo
もうこのトリップでいいかな?
どこで間違った

書き溜め投下。
ちなみに寄り道である

本編はまだ差ほどたまってない
568 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:16:23.62 ID:SwsMVwIo
この物語はとある硝煙臭い世界をモデルにしております
ただの妄想から来たネタなのでご容赦を


『傭兵と少女』

少女は女性達がひしめき合う控え室に居た。
煌びやかで胸元や背中が開けたドレスにゴージャスなアクセサリーを身にまとっている女性達の中に。
何れの女性も男性の目を引いてもらう為の衣服であり装飾であり、そのために磨きを掛けたセクシーな女性であった。
そんな女性達に囲まれ、気おされ、ただ一人部屋の隅で縮こまっていた。

「ほら、あんた!行くよ」

「は、はい・・・」

「まったく・・・なんでアタシが・・・」

少女の先輩として新入りの指導を頼まれた女性はいやいやながらも少女をホールへと連れ出すべく促す。
そのほかの女性は自分の磨き上げに余念がなく、ずっと鏡に向かい合っては自分を高める。
一見殺伐としているだけの様にも見えたが、少女は疎まれていた。

「ほらっ!早くしな!あんたトロいとか以前なのよ!」

先輩の女性は少女のドレスをつかんで乱暴に引っ張る。

「あっ・・・」

胸元がはだけて少女は慌ててそれを元に戻す。それは慣れない手つきでなかなか元に戻らないようだ。
周囲からクスクスと笑い声や「どこの田舎娘よ」や「もしかして"アレ"?」などと声が聞こえる。
口元は縫いとめたかの様にぐっと閉じられて、そんな悪口に耐えている。少女の目に涙が滲む。

「ちょっと、客の前でそんな顔すんじゃないわよ!?もし、アタシらに迷惑の一つでもかけて見なさい。すぐにでも叩き出してやるから」

「はい・・・」

少女は耐えるしかなかった。こんなダメな自分が生きて行くには、こんなドロドロした世界で大金を稼いでいく必要があったからだ。
この世界で生きるためには、両親すら、身内すら失った少女が生きていくには大金が必要だった。
生きていくため、悪徳高翌利貸しから大量の借金を抱え、その返済の為やむなく"水商売"を選んだ。
恐らく、ここがダメなら次は"体"を売るしか方法がない。
ならば、最低限ここで耐えていく必要があった。
しかし、どちらにしても少女の心と体がボロボロになって行くのは目に見えていた。
そんな少女の目の前には暗闇しかなかった。
569 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:17:18.78 ID:SwsMVwIo
事は3年前にさかのぼる。
とある企業が極秘裏に開発していた細菌兵器の奪取や破壊を目的とした大規模な企業間抗争が起こった。
それは壮絶だった。
多数の傭兵が雇われた。その傭兵とは地上最強と謳われた"人型巨大兵器"を縦横無尽に操るもの達だった。
多数の企業は金と地位をちらつかせて各々の目的の為に利用した。
とある企業は自らの社運を賭けそれを奪い取るために、とある企業は自社製品以外の兵器を認めないために。
傭兵は名声を得るため、金を得るため、己が傭兵である証を得るために。

結果、抗争は最悪の事態に終わった。

細菌兵器は所持していた企業の研究施設から運搬途中に流れ弾を受けて爆散。
その細菌は爆発により多くは死滅したが、生き残ったものは瞬く間に空気中に飛散し、増殖し変貌していった。

俗に言うホルモンバイオハザード。

その細菌は15,16歳の健全な男性にのみ効果を発揮し、ホルモンバランスを破壊、再構築する奇病を発生させた。
所謂童貞で年頃の男性を女性へと変貌させてしまう奇病だった。
真っ当に生きていた少年は絶望した。そんな絶望を両親達も受け止められず、多くの元少年たちが路頭に迷った。
多くの少年犯罪や性犯罪が横行し、街は荒れた。

そして、3年たった今。そんな奇病にも慣れ始めた大人たちは、新たに設立された法律も相まって、落ち着きを取り戻す。
少年少女達の大きな危機は去った。

3年前の抗争。それに参加した傭兵達の多くは死んだ。
生き残った傭兵は20人弱。その中の一人の男。
傭兵の中の傭兵。傭兵至上最高の力を持ち、負けや失敗を知らなかった傭兵。そんな傭兵はその日、たった一つ敗北を味わった。
ボロボロになり機体のあちこちから火花や煙の上がる状態で、初めて自分の命だけを優先させた。
人として当たり前の行為だろう。生き残るための生存本能だろう。
傭兵はその流れ弾を見過ごした。自機を流れ弾にぶつければ避けられたであろうあの事故を。自分の命と天秤に賭けた事を。
傭兵はそれを、たった一つの"敗北"とした。
そんな傭兵は人生最大の敗北を抱えながら、今も戦場に身を置いていた。
570 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:18:58.52 ID:SwsMVwIo
「熱源反応だ。南西から敵増援・・・
 早いな、来るぞ」

「淡々と言ってくれる・・・!」

人型巨大兵器のコックピットに搭乗している男は、軽く足元のペダルの一つを踏み込む。
機体後部にあるジェットノズルの様なバーニアから一瞬火柱が吹き上がる。
その浮翌力を受け、少しばかり機体が浮き上がる。
バシュン!
と両肩に付属していた大型のバーニアから右は前方、左からは後方へと高温の火柱が瞬間的に吹き上がる。
すると、機体は南西方向に向けて急速旋回する。方角のずれを軽く機体をゆすって細かく修正する。
外側から見れば、一見軽々とこなしているようにも見えるが、かなりのGがパイロットに襲い掛かる。
鍛えられた体つきの男は口から「ぐぅっ」と漏れそうになる声を押し[ピーーー]。

「ちっ奴か!予定より早いな」

「そのようだな。心してかかる事だ。奴は今復讐の鬼だ。お前にやられた顔の傷が疼くそうだ」

「細かいリサーチご苦労さん。
 奴さんぶち切れモードか!女だてらに傭兵なんて止めておけと言っておいたんだがな!
 しかし、あっちがその気なら・・・今度こそヤル!
 サイス!邪魔が入らねぇように、例の用意しておいた奴らを急がせろ!」

「もうやっている。存分にやるんだな」

「ちっ、人の金を人の許可なしに・・・」とサイスと呼ばれたオペレータ件リサーチャーの男に気づかれないようにつぶやく。

「何か言ったか」

「なんにも。
 よし、マイノリティー出るぞ!
 ヒステリーな淑女を諌めるのは紳士の役目だ」

皮肉のこもった洒落を口にしていると、通信側のレーダーが敵影を確実に捉えた。

「映像で確認できた
 あれは・・・予想通りだ
 台詞が無駄にならずに済んだな」

「けっ、言ってろ。
 "セラフィス"に御搭乗のお嬢様は差し詰め地に堕ちたルシフェルってとこか?」

「距離1200、どうやら無駄口はこれまでのようだ
 気張れよ」

「言われなくても・・・・!?」
571 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:19:28.62 ID:SwsMVwIo
「レーダー反応・・・長距離型ミサイル・・・来るぞ!」

「伏兵か。周到だな」

その場で停止していた機体のバーニアに火が入る。
急速に加速すると、自機目掛けて高速接近するミサイルを誘導させるために機体を右方へ。
ミサイルが距離100を切る直前で機体を左へと振り返してミサイルの誘導を断ち切った。

「速いのは急には曲がれないってな!」

「波状攻撃だ。来るぞ」

「見えてるっての!」

男はミサイルの雨をいとも簡単にあしらうと、先行してやってきたステルス特殊迷彩兵器が姿を現した。
その特殊迷彩兵器は自機に対して包囲する形で集まってきていた。

「反応が遅れたなサイス!新型か!?」

「そのようだ。だが次はない。そうだろ?」

相変わらず負けず嫌いだな。ま、俺もだがな。とつぶやくと男は前方を凝視する。
そしてその後方、自機から距離900のところに見覚えのある人型巨大兵器を視認し、男は操縦桿をぎゅっと握り締める。

「来たな、雑魚にはかまうな、奴の砲弾が・・・来るぞ!」

「うるせぇよ!言われなくても・・・!増援はどうした!?」

「近隣に待機させていた増援部隊の到着まで180秒だ。それまでやられるなよ」

増援は間に合わない。そう踏んだ男は余裕を見せた表情で

「けっ!どうやっても俺をヤリたいらしいな!
 いいだろう。格の違いってものを見せてやる」

先行して飛来してきたスナイパーライフルの太い砲弾と共に女の声で強制通信が飛び込んできた。

「おっと!狙いが甘いな、じょーちゃん!」

「オリベロス・・・忌々しい男!
 あなたはどれだけ私を辱めれば気が済むの・・・!」

「はっ!戦場に花なんて咲かせる必要はねぇっつっただけだろ。
 そんで、大事な花嫁の顔に傷がつくのが嫌ならお屋敷にでも引き篭もってりゃ良かったんだよ!」

「貴様ぁぁぁぁぁ!」

女の声とは思えないほどの太く、怒りのこもった雄たけびだった。
対して男の声は冷静そのものだった。ただ、少しだけ皮肉のこもった同情であったが。
572 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:20:21.76 ID:SwsMVwIo
「だから俺はその機会を与えてやったんだがな・・・
 いらん世話だったな。悪かった」

「こ、[ピーーー]!貴様だけはぁぁぁぁぁ!!」

「怒りで狙いが狂ってるぜ、スナイパーのじょーちゃん!
 サイス!落し物の回収は頼んだぜ!」

「わかった。
 ただし、60秒でけりを付けろ。
 それ以上は保障できんぞ」

それ以上は敵のミサイル攻撃の爆風でオシャカになりかねないと言っているのだ。
彼なりの気遣いだろう。現状を受け止めそれを瞬時に判断し、解析して彼に伝えるのが彼の仕事なのだ。
それが、どれだけ残酷で絶望的な状況でさえ。

「上等!」

右手に持ったライフルと手から離して出来るだけ痛まないように投げ置くと、胴体のハンガーユニットが開かれ、そこに格納してあった射突型ブレード、大型の戦闘用パイルバンカーが右手に装着される。

「消耗したライフルじゃ、ジリ貧なんでな・・・!
 行くぜじょーちゃん、これが傭兵ってもんだ」

「舐めた真似を・・・!やらせない!!」

背の上部にあるハッチがカチリという音と共にそのロックが解除される。その音がコックピット内部に響き渡る。
男はそれを合図に軽く前方に機体を加速させて最低限の慣性を機体と自らの体に与えて、これから来る大きな衝撃に供える。
ハッチのロックが解除され、展開されたそこには大型のバーニアのノズルがあった。
ヒュイーと、吸気口から大量の空気を吸い上げる音が聞こえ、その2秒後にそのノズルに特大の火柱が吹き上げる。
ドン!!という強烈な衝撃が機体と男の身体に加わる。
時速800キロという音速をも超えるスピードで、マイノリティーが軋みも上げず加速を乗せた。
逆に人にはとんでもない軋みが襲い掛かる。
直線的に飛び掛ってはどれだけ速かろうが相手の砲弾を真正面から受けてしまう。
男は時速800キロのまま左右に機体を振り回して、目標のど真ん中を狙って特攻する。

「な、なんだ、あれは・・・!!」

信じられない物を見たような、未知の怪物でも目にしたかのような、そんな驚きを隠せない彼女は敵機を追いながらも動揺する。

「アレは・・・本気ではなかったというの・・・!?」

軋む全身を巧みに制御し、精密な操作で目標を追い詰める。
男がふっと口元を緩めたとき、コックピットのカメラは敵機体の胴体部を捕らえていた。

「なっ・・・」
573 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:20:48.77 ID:SwsMVwIo
勝負は一瞬だった。
ガッシュン!というパイルバンカーが放たれた音が聞こえた瞬間、バン!とセラフィスのコックピットより上部が吹き飛ぶ。
あまりにも一瞬に装甲や内部機構を吹き飛ばした結果、機体は炎上すらしていない。

「あぁ・・・ガーランド・・・」

「あばよ、恋人と幸せにな」

一呼吸置いて、男は急速に爆発の安全圏まで機体を後退させる。
すると、無残な姿となったセラフィスの断裂した内部機構の隙間から燃料が漏れ出し、近くでパチパチいっていた火花に引火し──
ドドーーーン!と大きな爆風と共に各部を飛散させながら爆散した。
その一部始終を惜しむ事も無く後方に展開した特殊迷彩兵器に向けると男は声のトーンと落として言った。

「増援部隊に言っとけ
 間に合わなければ報酬は無いってな」

「間に合わんよ」

「ふん!」

「わかった。程ほどにな」

「ちっ・・・胸糞わりい!!」
574 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:21:58.28 ID:SwsMVwIo
作戦を終え無事帰還した男、オリベロスは機体を整備班に任せてガレージ内の休憩所の椅子に深く腰掛けて窓から見える自機を横目で眺めていた。

「今回の損傷は軽微、だったな」

「まぁな。二度目はない。だろう?ところで、シルキーの方はどうなってる」

「整備班曰く、ありゃダメだ。
 だそうだ。」

整備されている自機、マイノリティーを眺めながら表情を変えずに

「ちっ・・・やってくれるぜ」

「不測の事態だった。だから、今回はしてやった。
 だが、お前、彼女に一体何をした?」

「わかってんだろ?俺に何を言わせたい」

「恋人の仇をとりに来た女を返り討ちにし、
 それでも容赦なく殺した最強の傭兵が感傷に浸っている所を茶化したかっただけだ」

「ふんっ・・・傭兵なんてそんなもんだろ。
 殺し殺され、騙し騙され、戦い抜いて最後に待つのは・・・・」

「それは、俺に対する侮辱と取ってかまわないか?」

「あーあーわーってるって!お前と俺は最高のコンビだって。
 敵なんかねーよ!
 ただ・・・な・・・」

その言葉を聞いてオリベロスとサイスは沈黙する。

「・・・・・・」

オリベロスも言葉を続ける事はなく、サイスもその続きを求めようとはしない。

「まぁいい。んじゃ俺は出かけるぞ」

「ほどほどにな」

「お前は俺のにょーぼーかっての!」

オリベロスは適当に悪態をついてガレージを後にした。
誰も居なくなった休憩室でサイスは一人たたずんでいた。
彼の女房役ともいえるサイスは、彼の置ける状況や心境を言葉で表さなくてもよく分かっていた。

「いつまで苦しみ続けていくつもりだ。たった一つの敗北で・・・。
 あれは俺の判断だった。俺がお前を守るために判断したものだった。
 俺ではお前の支えになれないのか?」

誰も居ない休憩室で彼の声だけが響いた。
575 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:22:34.70 ID:SwsMVwIo
男は一人繁華街を歩いていた。
戦場で見る閃光とは違った煌びやかな光だ。
鼓膜を酷く揺さぶるような爆音も無ければ、悲痛な叫びを上げ、助ける求める仲間の声もない。
ただ見えるのは乾いたネオンに、聞こえてくるのは男女のたわいも無い会話のみ。
世界が違う。
そう思いながらも彼はただ歩く。

繁華街から少し進んで女人禁制の雰囲気が立ち込める町並みに変わり、男女のたわいも無い会話から男の呼び込みの声に切り替わる。
男はなれた足並みでたくみ勧誘を回避し、とある店に足を運んだ。
男は女好きだった。戦場では男だろうが女だろうが無慈悲に撃ち抜く男は、ここぞとばかりに無類の女好きを発揮する。
そんな男の行きつけの店、ルナージュの入り口に立ち止まるや否や「いらっしゃいませ、ジョーンズ様!さぁこちらに!」と、呼び込みの男に馴れ馴れしくVIP席へと案内される。

「いや、今日は一般席でいい」

「そ、そんな事を言われましても・・・」

「今日くらいはいいじゃないか」

「いやぁ・・・」

「おまえなぁ、俺が一体この店にどれだけ金を落としていると思っている?常連"クライアント"の要求は最低限飲めよ」

「は、はい!」

「わりぃな」

「では、こちらに・・・」

どかっと一般席に腰掛けた男はジーパンに白いTシャツというあまりにも場違いな格好だ。
周囲の一般客がチラっと一瞬こちらを伺うそぶりを見せては、見てみぬふりをする。
ま、この腕の傷じゃあな。と腕の傷を摩りながら口元を緩める。

「しかし、女がこねぇ!なにやってやがんだ?」

どうやら、彼を一般席に通した事が"失礼極まりない"事だったとして、店の裏で大問題に発展していたようだった。
それを知る由もない彼は近くに居た新人ウェイターに声をかけた。

「にいちゃん、女よこしてくれ。これじゃ何しにきたのかわかんねーだろ?」

「は、はいぃ!」と緊張して返事をした新人ウェイターは慌てて女を呼びに置くの部屋へ消えていった。
576 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:23:22.58 ID:SwsMVwIo
しばらくして、ようやく女が回されてきたらしく、二人の女が姿を現した。
一人は、年のころは23くらいだろう。少々きつめで高飛車な感じだ。
それを見て、うんうんと心の中で親指を立てる男がもう一人の女に目をやる。
もう一人は、年のころは肌の張りからして18,19くらいだろう。
怯えたような目つきになれない足取り。新人か。初々しいね。ともう一方の手を心の中で親指を立てる。
しかし、20からじゃなかったか?未成年はまずいんじゃ・・・?俺の目利きが正しければ・・・と、彼は怪訝な表情で彼女を見つめる。
そんな彼の目に、怯えたような目つきの少女の目つきが顔全体に広がっていく。
それを気取った無類の女好きの男オリベロスは、ここぞとばかりにニカっと笑顔を作って見せる。
すると、素直にもその表情に安心感を得たのか少女は安堵の表情を見せる。
ジョーンズと呼ばれた男は思った。今日はこの娘に決めた!と。
しかし、いくら客商売とはいえ、相手も女だ。
そんなジョーンズの心境を経験で察知したのか、少女を押しのけ高飛車そうな女が我先にと、ジョーンズの横に擦り寄るようにちょこんと座り込んだ。

「あたし、ア──」

「わりぃなじょーちゃん」

「え?」

「今日はあの娘の気分なんだ」

「え?え?」

訳が分からない表情のままきょとんとする高飛車そうな女。

「ど、どうして!?」

「どうして・・・って言われてもな。そういう気分なんだ。ここはそーいうとこだろ?」

「なっ!?あっあんな小娘のどこがいいわけ!?」

凄い剣幕で怒りだした高飛車な女に頭をポリポリかきながら困って見せるオリベロス。
そんな小さなサインも気づかない高飛車な女は仕事を忘れて憤っていた。

「あんな、どこの野良犬か分からない田舎娘より、アタシの方が綺麗にきまってるじゃない!あんた馬鹿なの!?」

まいったな、と更に困って見せるが女の怒りは有頂天らしい。
そして、さりげなく後方で立ちんぼしていた少女に目をやると、口をつぐんで、目には涙を浮かべてじっと耐えている。
まるで、少年が人前で泣くのを恥ずかしがるような、見せないように耐えるような。
彼の思考が止まる。この娘は・・・・もしかして?と。

「も、もうしわけありません!ジョーンズ様!うちの者がとんだ粗相を!やはりジョーンズ様にはあちらに・・・・」

「悪いね、スコット。俺は今日ここって決めたし、女の子も決めた。それでいいだろう?」

スコットと呼ばれたベテランウェイターはそう言って目でジョーンズに訴えるが、彼はそれを頑なに拒否する。

「しかし・・・・」

「余計な世話だっつってんだろ!!」
577 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:23:59.56 ID:SwsMVwIo
ホールに男の大声が響き渡る。
周囲の一般客がジョーンズに対して一斉に視線を浴びせる。
まずった、とおもったジョーンズは周囲の一般客を安心させるため、慌てて安直な手を打った。

「いやー失礼失礼!スコット!皆さんに俺からの1本奢りだ!お詫びといっちゃ安い手だがどうにか簡便しちゃくれないか?」

酒も入っている所為か、周囲から一瞬にして歓喜の声が上がる。
「よっ!あんちゃん太っ腹!」「どこの社長さんだい!」「キャーさすがジョーンズ様!」
などなど。

「スコット、悪いが今日はこれで勘弁してくれ。おっと、それから、この娘は置いていけよ」

「承知いたしました・・・・」

しぶしぶと下がっていくスコットと、未だ納得がいかない表情で下がっていく高飛車な女。
残ったのは目を点にさせて立ちんぼしていた少女だけ。

「えんりょするなよ、こっちに座れ。おっと、失礼。お座りくださいお嬢様」

「え、あ、は、はい!」

歯切れ悪くも元気良く挨拶をする少女。慌しくジョーンズまで駆け寄ると、30センチくらい開けてちょこんと座り込んできた。
これが、所見の女の子の距離か。と初々しさを実感するかのように少女を視姦するジョーンズに少女は嫌悪を覚えたような表情に変化した。

「おっとぉ、わるいね、俺の悪い癖だ。ゆるしちゃくれないか?」

「え、あっ!も、申し訳ありません!」

「お互いに謝ってばかりだな!いいね、こういう新鮮なのも!がはは!」

ジョーンズはソファーに腕を広げて豪快に笑う。そんな男の左手は少女の背中の後ろに回されるような形になっていて、少女はギクリとその腕の行き先を確認する。
しかし、少女は違う意味でその腕にギクリと身を硬直させた。

「ん?この傷か?そうだな・・・クイズでもしようか」

「あっ・・・・」

なかなか自分から会話を進めようとしない少女にジョーンズは新鮮味を覚えて、あえて自分から話しかける楽しみを思い出す。

「1、滑って転んだ傷 2、あっち系の人に無謀にも喧嘩うって返り討ちの傷 3、女に引っかかれた傷
 さぁ、どーれだ?」
578 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:24:29.19 ID:SwsMVwIo
ポカーンとした顔で少女はジョーンズを見つめる。

「おいおい、せめて『4、見掛け倒しのタトゥー!』とかって答えてくれよ」

「ぷっ・・・!」

と、少女は何か吹っ切れたかの様に噴きながら笑い出した。

「あはははははっ!おじさん面白いね!」

「お、おじさん・・・・って、おいおい・・・俺はまだ29だぞ・・・」

ショックを隠しきれずにうな垂れて少女にそう告げる。

「あはははは・・・・ご、ごめんなさい!でも、アラサーはもう十分おぢさんだよっ」

「わ、若いって罪・・・」

こんな冗談と本音が混じった会話を皮切りに、少女が一変して積極的に話しかけてきた。

「でも、この傷・・・本物だよね?」

「ああ、そうだな。色んな目にあったからなぁ。死にそうになったときもあった」

「本当?下手うったんじゃないのー?」

「なっ!そー見える?そー見えちゃう!?あー俺ショックー・・・これでも俺、一流の"傭兵"なんだけどな・・・」

少女の顔がまた一変する。今度は驚きの表情に。
ジョーンズはしまったと、表情を強張らせる。
どこの世に、世の中のパワーバランスをたった一人で打ち崩す事の出来る力を持つ傭兵を恐れない者がいるだろうか。
ましては、女ともなれば大概の者は嫌悪感を抱くだろう。強大な暴力の象徴に対して。
だから、"オリベロス=ジョーンズ"は今までその素性を隠してこういった店に出向いていたのだ。

「わ、悪い。今の忘れてくれ・・・」

苦肉に一言も今更通用などしないだろう。女は怖がって逃げてしまう。彼はそう思った。
しかし、彼女の示した態度は違った。驚きや嫌悪感。軽蔑の眼差しではない。
今まさに彼女は、一流の傭兵に対して"少年"の様に目を輝かせ、オリベロスを羨望の眼差しで見つめていた。

「ほ、本当に傭兵なんですか!?」

「しっ!声が大きい!」

「わわっ!ごめんなさい!」
579 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:24:52.59 ID:SwsMVwIo
理解ある女。そんな女も世の中にいる。そんな女を始めて見たオリベロスは彼女に気を許す。
無類の女好き。そんな彼も心のどこかで女たちに壁を作っていた。
だから、こんな客商売で男に接する女共とその場限りの関係を維持していたに過ぎなかった。

「ま、そんなところだな。あんまりいいもんじゃないさ」

「わ、私はそう思いません!地上最強の人型巨大兵器・・・それを自分の手足のように縦横無尽に操る傭兵・・・私の憧れです!」

「・・・・・・」

「強大な力。世界のパワーバランスを揺るがすほどの力。そんな力・・・私も・・・・」

「言ったぜ、そんないいもんじゃない」

「え・・・?」

「昔からあるよな、こんな言葉。強大な力は自らをも滅ぼすってな」

「そう・・・でしょうか・・・?私はそんな力が欲しい。こんな下らない毎日を振り払える位の力が・・・」

「なにがあったか知らねぇが、その先に何がある?殺し殺され、騙し騙され、戦い抜いたその先に」

「え・・・・・」

「何にもないんだよ。たった一度の敗北も拭えない。あるのは虚無だ何もしてくれねぇんだ」

「・・・・・・」

「っと、辛気臭くなっちまったな、この話題はこれくら──」

「私は!私は・・・父さんと母さんに捨てられました。3年前に・・・」

「!?」

オリベロスは3年前という言葉を聞いて驚きを隠せず、そのまま少女の前で固まってしまった。
少女は俯いていたが、オリベロスの方をちらっと見上げて話を続けた。

「ここだけの話ですよ・・・?」

「あ、ああ・・・」

「私は元は男でした」

「なっ!?」

男は絶句した。どこからどう見ても女である少女。透き通るような女性特有の声の発生源にのど仏は見当たらない。
ならば、そんな少年を少女に変えるような出来事、いや、奇病は一つしかないのだ。
そして、過去のあの瞬間が脳裏にフラッシュバックする。
忘れようとしても忘れられないあの大規模抗争。傭兵として受けた依頼。
完遂できなかったミッション。
そして、彼の人生に大きな穴を開けたあの生まれて初めての敗北を。
580 :単発ネタ『傭兵と少女』 haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:26:13.00 ID:SwsMVwIo
「・・・・の・・・・だい・・・う・・・すか!?」

「は!?あ、あぁ?」

「あの・・・大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、だ、大丈夫だ・・・」

俺が我に返ったのを確認すると少女は続けた。

「私はあの後、突然の事に自分を認められなくて絶望しました。
 結果的に──」

オリベロスはショックのあまり、少女の話を全部聞いてやれなかった。
ただ分かった事は、女体化したことで彼女は身の回りのもの全てを失った事。
自分のたった一つの敗北の所為でこんな所で金を稼ぐためだけに働かなければならない暗い人生になってしまっている事。
そして、彼は思った。
この少女を救う事が出来たなら、きっと自分も救われると。

「なぁ、俺と来ないか?」

「え?」

「俺と来れば、お前の望む力。手に入るかもしれない」

「えぇ!?」

少女にとってそれは一つの希望。男にとってそれは一つの贖罪。
互いの有益が一致する提案だった。

暗い暗い、先の見えない道をアテも無しに歩き続けた二人。
どれだけ途中で逃げ出そうとしたことか。
何度地に膝をついて諦めようとしたことか。
俺たちが出会ったのはそんな夜だった。

<つづく?>
581 :haze ◆cAPL8r2vcE [sage]:2010/06/22(火) 06:27:16.97 ID:SwsMVwIo
寄り道は楽しい

もうだめかもしらん

俺の心が俺に叫ぶ

消えろイレギュラー!

582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/22(火) 09:37:06.84 ID:cUR/2Fco
エロSSマダー?
583 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/22(火) 10:28:57.32 ID:ZdWKI6DO
安価↓
584 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/22(火) 11:02:16.70 ID:805LEUAO
反面教師
585 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/22(火) 23:19:07.19 ID:W4V7g2I0
>>581
乙!
586 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 08:28:15.85 ID:8IgoC5Q0
おいらも安価欲しいな↓
587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 08:47:50.67 ID:KIv4bIAO
かくれんぼ
588 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 09:37:00.48 ID:8IgoC5Q0
かくれんぼ把握
さて、どう持っていくか…
589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 17:47:38.98 ID:nFQKWvAo
最近マタ活気にあふれててうれしいことだ
590 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/23(水) 19:28:18.05 ID:XJz.LCk0
やべsage忘れてた。
てか昨日は学校終わったらすぐ寝ちゃったからいけなかった。
それじゃ続きです。

その後母さんにフリルのついたスカートやら何やら散々(俺の意思関係なし!)買わされた後に、
最後にたどり着いたのがこの女体化した奴ら(以下にょた)最大の敵!
《下着売り場》
いやね、確かに当たり前といえば当たり前なんですよ。
女になった→服買う→残りは?→下着
これのどこに間違いがある?そう言われれば仕方がない。
現に今の性別を聞かれたら女と答えるだろう。女湯だって法律上問題なく入れる。
591 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/23(水) 19:28:44.22 ID:XJz.LCk0
しかし、なぜか今まで入りたくてしょうがなかったのに、今は入りたくないんだよこれが。
何というかこう、「純」女性をだまして入っている気がするというかなんというかその
「何一人でぶつぶつ言ってんの。早く行くわよ。」
「いぃやぁぁぁぁぁ〜(泣)」
はたから見れば駄々をこねてる高校生だったと思う。
「今日はどうなされました?」
「いえ、息子が女体化しちゃって下着買いたいのよ。」
ああ出たよ店員さんの「あ〜なるほどね」みたいな視線!
なんかいろいろふっきれたのでサイズ測って買って帰った。
なに?サイズが何だったかって?うるさいこの変態!
592 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/23(水) 19:35:28.13 ID:XJz.LCk0
ここで安価。
・主人公の新名前
・この先の大まかな流れ↓
1,クラスのみんなに変化なし→また安価
2,友達の健もにょた化→名前も安価→終わり
3,クラスの女子(名前安価)が友達になり、健とも友達に、そして三角関係へ→続く
4,その他
ごめんなんかネタがない。
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 19:57:16.41 ID:ep/xYcDO
書かない
594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 20:22:46.00 ID:.z55EAso
>>593
外道すぎるwwwwww
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 22:42:48.72 ID:QfTZ.fI0
>>593
続きwktkしてるのにその安価…
596 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/23(水) 23:18:15.31 ID:XJz.LCk0
お願いです書かせてください。orz
もう一度安価

・主人公の新名前
・この先の大まかな流れ↓
1,クラスのみんなに変化なし→また安価
2,友達の健もにょた化→名前も安価→終わり
3,クラスの女子(名前安価)が友達になり、健とも友達に、そして三角関係へ→続く
4,その他
書かない・最終回・終了系はなしでよろしく。
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 23:41:12.27 ID:.z55EAso
そこまで書きたいなら好きに書けばいいと思うんだが
598 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/23(水) 23:43:03.91 ID:XJz.LCk0
↑ですよねー
599 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/23(水) 23:51:17.74 ID:XJz.LCk0
そろそろ寝ないと親が起こるので寝ます。
できれば安価お願いします。
ではおやすみノシ
600 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/24(木) 00:04:21.02 ID:c5wmqu60
今PSPから書いてますが、トリップ合ってますか?
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/24(木) 00:18:31.25 ID:eOBbRfY0
男は15,16歳で女体化。

確立はかなり低いらしい。

俺の住んでいる地域ではまだ事例の無いことだ。ただニュースで聞いたことがあるだけ。

「あ〜、女にならないかな〜」

珍しい事例故にそんなことを言う男もいる。

俺はごめんだ。別に女という生き物を嫌っているというわけではないが、別段なりたいわけでもない。

でもそんな俺もあと2時間で16歳。ちなみに今日は6月24日だ。

「そろそろ寝よ・・・」

考えるだけ無駄だと考え、寝ることにした。


「ん・・・」

いつも通りの感覚で目が覚めた。

「もうこんな時間か。早く支度しないと・・・」

いつもかかせず食べている朝ごはんをカットして、鏡の前で寝癖を整える。

鏡に映っているのはいつもと変わらない自分。容姿は・・・まあ普通といったところだろうか。

「なんだ、やっぱり変わってないじゃん」

別に期待していたわけでもなかったが。
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 00:20:10.73 ID:eOBbRfY0

準備が終わり家を出た。


「おはよう」

いつも通り挨拶をしてきたのは同じクラスの小島である。

「そういえば今日って絆の誕生日じゃなかったけっか?」

覚えていてくれたのか。こいつにはそういう律儀なところがある。

「ああ、そうだけど?」

「おめでとう」

「どーも」

素気なくなってしまったが実は少し嬉しかった。

「絆女の子にならなかったのかー・・・」

「童貞じゃなかったのかよ・・・」

この会話を聞いてた周りの奴らがそんなようなことを言ってきた。

「ならなくて悪かったな。そして俺は童貞だ。そもそもどうして俺がならなくちゃならないんだよ」

苛立ち気味に答えてやる。

「似合いそうだから。」

突然そう口を開いたのはさっきまで黙っていた小島だった。

「はぁ?」

「もし絆が女の子になってたら俺が嫁にもらってあげてたのになー」

頬杖をつきながら小島はそう言った。

俺はホモではない。男である以上、そんなこと言われても気持ちが悪いだけでだった。


そんなこんなしてるうちに授業が始まり、これもまたいつもと何も変わらない形で過ぎていった。




ごめんsage忘れた。文章力もなくてごめん。
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 00:21:05.68 ID:eOBbRfY0
――昼休み

突然激しい頭痛が襲ってきた。

「うっ・・・」

意識が朦朧とする。

だがそれも一瞬のことだけですぐに痛みはなくなった。

「なんだったんだ・・・」

普段頭痛なんて起こさない俺は妙な感覚を覚えた。



「んじゃ小島、先帰るわ」

「おう、大事になー」

昼間の頭痛の件もあって今日は部活の途中で早めに帰ることにした。

梅雨時ということもあって、外はどしゃ降りの雨だった。

「しまった・・・」

今朝慌てて出てきたこともあって、傘をもってきてなかった。

こんなことなら小島に傘を・・・。

今更しょうがない。

ずぶ濡れになることを覚悟で走って帰ることにした。


走ること5分、突然またあのときの頭痛が俺を襲い始めた。

「痛・・い・・・」

明らかに昼間よりも長く、そして痛みが強い。

「っ・・・」

ダメだ、もう立っていられない。

目の前が真っ白になった。
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 00:22:33.24 ID:pNi/W320
wktk
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 00:30:13.12 ID:eOBbRfY0
「ここ・・・は・・・?」
目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。俺はというと、髪が濡れた状態でベッドに横たわっている。服は知らないTシャツだ。
「気が付いた?」
部屋に入ってきた男が自分にそう言った。
「柿野・・・くん・・・?」
入ってきたのは隣のクラスの柿野という男だった。容姿端麗で名前は知っていたが、話したことも無いという関係だった。
「俺のこと知ってるの?」
不思議そうな顔でこちらを見る。
「だって隣のクラス・・・」
「君、隣のクラスの子なの?一度も見たことなかったな。」
そうか、俺が知っていても柿野くんが俺を知っているとは限らないか。
「君みたいな可愛い子6組に居たっけ・・・?」
ん?聞き間違いかな?今可愛いとか言われなかったか
「そんなことより寒くない?とりあえずジャージずぶ濡れだったし俺のTシャツだけど着せておいたから。あ、大丈夫、裸は見てないから」
彼は母さんが着せたから、と付け足した。
何か変だ。可愛いの次は裸見てない?男に何を言って――
そのとき俺はようやく自分の体に起きた異変に気が付いた。
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 00:31:03.38 ID:eOBbRfY0
「えっ・・・あっ・・・ええ!?」
胸がある・・・。
「どうしたの急にww」
「ちょっと鏡借りてもいいですか!?」
「いいよ、洗面所すぐそこだから」
動揺が隠し切れない。鏡に映っているのは肩くらいまで伸びた髪、ミディアムといったところだろうか。
大きくも小さくもない胸。目に見える範囲ではこれくらいだ。
これくらい?いや、十分すぎるくらいだ。
「女に・・・なってる・・・」
ショックを受けている場合じゃない。
下手したら死んでいたかもしれない自分を助けてくれたのは紛れも無く柿野くんだ。
目が覚めてから一度もお礼を言ってないことに気が付き、彼の部屋に戻ることにした。
「顔赤いよ?大丈夫?」
動揺していたせいか顔が赤くなってしまっていたようだ。
「あ・・大丈夫ですっ それと・・・ありがとうございました!」
命の恩人とも言える彼に頭を下げた。
「いいよいいよww軽かったし余裕余裕」
あははと笑いながら言う。顔もいいけど性格までイケメンなのか・・・。そんなことを思っていると彼から質問が飛んできた。
「で、君は・・・」
「絆です。斉藤絆って言います」
「絆ちゃんはどうしてあんなところで倒れてたの?」
ちゃん付けをされて違和感を感じるが今は質問に答えるほうが先だ。
「よくわからないんです。昼間も同じ頭痛がして・・・」
「そっか・・・。まぁ今日はもう遅いし、うちに泊まっていきなよ」
優しすぎるお言葉。だけどそこまで甘えるわけにはいかなかった。
「悪いですし帰りますよ」
「いいよいいよwwそれに俺の家からの帰り方わからないでしょ?」
立ち上がった俺の腕を彼は掴んでそう言った。
「あ・・・」
「ほらwwだから、ね?遠慮せずに泊まっていきな。あ、もちろん部屋も分けるしww」
「別に分けなくても・・・」
「え?」
何言ってるんだ俺・・・!
「あ・・そうじゃなくて・・・」
「よし!とりあえず泊まることは決定だね?それじゃ隣の部屋に布団敷いてくるから待ってて!それと、タメなんだし敬語じゃなくていいからね!」
そう言って部屋を出て行く彼の後姿を俺はただ見ているだけだった。


とりあえず今日はここまでです。お粗末さまでしたorz
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 12:57:32.21 ID:NI4XMUAO
なにこのやさしさ怖い GJ
608 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/24(木) 19:41:15.27 ID:eOBbRfY0
「風呂先いいよ」
一挙に多くの出来事が起こったために風呂に入ることすら忘れていた。しかしここは俺の家ではない。
「いや・・・悪いし・・・」
「だからいいって。体まだ冷えてるだろうしあったまってきな?」
ずいずいと俺の方を押して風呂場に案内してくれた。
結局言葉に甘えて風呂に入ることになったわけだが・・・
「ん〜・・・・ほんとに女だな」
湯に浸かりながら自分の胸にある膨らみを触りながらつぶやく。
ビリリとした感覚が走る。やはり本物のようだ。
「柿野くんに事情話さないとなー・・・」
思わぬ形で彼と接点を得たとはいえやはり事実として話しておくべきだと考えた。
「ちょっとのぼせたかも・・・。あがろう」
「ふーん・・・なかなかいい体してるわね・・・。顔も可愛いし・・・私好みっ!」
出た瞬間いきなり体に抱きつかれた。
「ちょっ・・・!?」
「あいつったらこんなに可愛い子連れてきちゃって・・・。そんな弟に育てたつもりはないのになぁ」
とかなんとか言いながらギュッとされる。なんなんだ・・・。弟とか言ってたしこの人は柿野くんのお姉さんか?
「あなた下着持ってないみたいだし持ってきてあげたの。この下着かしてあげる!」
事前に準備してきたわけではないので無論何も持っていない。とはいえ渡されたものは水色の可愛らしい下着。
「・・・ありがとうございます」
「うんうん!言われて来て見ればこんなに可愛い子が!お姉ちゃんも嬉しいよ〜」
訳の分からないことを言いながら行ってしまった。
「風呂あがりなのにどっと疲れたな・・・」

トリップつけてみた
609 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/24(木) 19:52:42.95 ID:eOBbRfY0
「これを履くのか・・・」
改めて渡されたモノを見て躊躇してしまう。
しかし着替えの無い俺はどうこう言える立場じゃなかった。
「なんか・・・窮屈っていうか妙にフィットするな・・・」
履き慣れない感触に戸惑いながらも服を着て部屋に戻ることにした。
「あったまった?」
部屋で漫画を読んで待っていた柿野くんが俺にむかって言う。
「うん、気持ちよかった。ありがとう」
何か言わなければならない。何か大事なことを忘れているような・・・
「あっ」
思い出した。事情を話さないと。
「ん?」
思わず声を出してしまった俺の顔を心配そうに覗き込んでくる。
「大事な話が・・・」
彼に事の流れを全て話した。俺が元男であることも全て。
はじめはまじかよと驚いていた彼も、どうにか信じてくれたみたいだ。
「まあ元男だろうがなんだろうが関係ないよ。今は確かに可愛い女の子なんだし」
なかなか褒め言葉に慣れない。というか何故こんな言葉をサラッと言えるのだろう。一体この言葉で何人の女子を・・・
「とりあえず俺も風呂入ってくるからさ、ゆっくり休んでてよ」
そう言って出て行ってしまった。
「うーん・・・どうすっかな・・・」
610 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/24(木) 20:24:28.22 ID:eOBbRfY0
外で鳥が鳴く声が聞こえる。
「んっ・・・今何時だ・・・?」
携帯で時間を確認する。
「6時半!?やばっ遅刻するっ!!」
ガバッと起き上がるとそこには制服姿の柿野くんが立っていた。
「やっと起きたww疲れてるみたいだったし寝かしておいたんだけど、悪かったかな?」
「いやいやいや、しかも俺がベッドで寝ちゃって・・・」
「あー、風呂から戻ったら気持ちよさそうに寝てたもんだからそのままにww」
どこまで図々しいやつなんだ俺は。
「姉貴が制服用意してくれたからさ、着替えてきなよ」
「え・・あ・・・でも・・・」
「早くしないと遅れるぞ?」
「着替えてくるっ!」
結局お姉さんの協力もあって女子の制服を貸してもらえることなった。本当に面倒見のいいお姉さんだ。
「どうもありがとうございます」
「いいのいいの。似合ってるよ〜!」
照れくさい気持ちを抑えながらもう一度鏡の前に立つ。
髪の毛も昨日と違ってしっかりと整えられ、耳の辺りからランダムにパーマがかかっている。ミディという髪型らしい。
恥ずかしながら自分の姿に少しドキッとしてしまった。
「あっ時間」
自惚れてる場合ではなかった。あと登校時間まで15分ほどしかない。
「絆ちゃん早く後ろ乗って!」
待ちきれなくなったのだろうか柿野くんは俺の手を引いてひょいっと持ち上げて自転車の荷台に俺を乗せた。
「うわっ」
「しっかり掴まってて」
言われた通りに大きな背中に掴まるとペダルを漕ぎ始め、ものすごい勢いで自転車が走り出した。
611 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/24(木) 20:40:32.01 ID:c5wmqu60
ただいま。
なんか知らないうちにすごい人が来てる…
俺も続き書かないと!展開は自分で決めたから、主人公のにょた後の名前だけ安価でお願いします。
現名前:優太
新名前:安価
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 20:55:27.34 ID:7JXJ56SO
桃萌(ももえ)
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 21:28:21.76 ID:vv.8exoo
太いものが無くなる意味で 優
614 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/24(木) 21:31:13.51 ID:c5wmqu60
>>612のもかわいくていいけど、
>>613がつぼったんで優に決定。
615 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/24(木) 22:07:09.89 ID:c5wmqu60
それじゃ続きです。
基本ゆっくりいきます。

その翌日。
「早く起きなさい!遅刻するわよ!」
「ん〜?まだ眠い…zzz」
いつもなら普通に朝ごはんを食べている時間だ。
女になってからというもの、どうも朝が弱い。
しかし、いくら眠くても時間が時間だ。急いで朝ごはんを食べる。
「今日が初登校だから、職員室によって行きなさい。」
そうだった。そういえばそのあとはクラスのみんなに自己紹介だったな。
考えただけで休みたくなってきた。第一恥ずかしい。
「あら、恥ずかしくなんてないわよ。制服もにあってるし。」
そういうことじゃなくてさ。
と、出かかった一言を飲み込んで家を出ようとして、
「ふぎゃっ!!」
転んだ。
616 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/24(木) 22:10:40.97 ID:c5wmqu60





―キーンコーンカーンコーン
HR開始の鐘が鳴る。
いよいよだ。
『みんなおはよう。』
『おはようございます先生』
『前向けよ〜』
『それでこいつがさ…』
『昨日のラブリー桃萌見た?』
クラスのやつらのくだらない話が聞こえる。
しかし今はそれすら緊張のもとだ。
『え〜最近小野(優の名字)が休んでいるのは周知の事実だな?』
『そうそう秀才君何してんだろうね〜』
『え〜その「秀才君」だが女体化した。』
え〜!マジで〜あいつが?
クラスがざわつく。緊張が一層高まる。
『よし、入ってこい。』
ついにこの時が来た。俺はある種の覚悟を決めて教室に入った。

それと桃萌は、この世界の萌アニメにしました。
617 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/24(木) 22:58:13.14 ID:c5wmqu60
寝る。
親がうるさくて遅くまで起きてられない。
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 23:02:57.90 ID:pNi/W320
どっちもGJ!
619 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/25(金) 00:04:49.96 ID:D233pis0
「いや〜絆ちゃんはやっぱ軽いねえ!」
俺を乗せて自転車を漕いでいる人物が言う。あれだけスピードを出したというのに呼吸を少したりとも乱していない。
というか『ちゃん』付けはやめて欲しい。
「体重まで軽くなったのかな俺・・・。あと絆ちゃんっていうのやめてくれるかな。」
「どうして?もう女の子なんだしいいじゃん」
確かに女にはなったが一日でハイ今日から女ですとはいかないわけで、何にだって慣れというものが必要だ。
「どうも慣れないんだ。だからやめてほしい」
「ふーん、わかった。じゃあ『ちゃん』は付けない。その代わり、」
「その代わり?」
何を言おうというのだ。嫌な予感がしてたまらない。
「一人称を俺っていうのは無しな?身も心も女の子にってことだ」
なんだそれだけ、と思うかもしれないがこれは俺にとっては結構苦痛な話だ。
「じゃあ自分のことを何って言えばいいんだよ・・・」
「普通に『私』といくか。『うち』っていうのもありだな」
などと完全に他人事で話を進めている。他人事には間違いないのだが。
『私』、人生でまだ一度も自分のことをそう呼んだことは無い。
嫌だ!と言いたい所だったが、『ちゃん』付けをやめてもらうには仕方のないことだったし、昨日からお世話になり続けている柿野くんには頭があがらない。
「うっ・・・私、か・・・」
「そうそう。女の子っぽくていいよ!あとついでに、俺のことは呼び捨てでいいから」
「そんな急に色々言われてもなぁ」
「そのうち慣れる慣れる」
はははっと笑いながら自転車を降りて先に行ってしまう。どうやら話をしている間に学校に着いたみたいだ。
昨晩知らない間に寝てしまったせいで学校の誰とも連絡はとっていなかった。もちろん小島とも。
だから自分が女になってしまったことは誰も知らない。色々説明しなければならないとなると憂鬱な気分になった。
「なんだぁ、柿野ー?彼女でもできたのか?」
隣のクラスの名前は分からないが男子と柿野が絡んでいる。
「可愛いだろ」
「なっ・・・!」
慣れない言葉にいちいち反応してしまう自分をどうにかしたい。こういうさらりと恥ずかしくなることを言ってしまう柿野は苦手だ。
「え、まじで付き合ってんの?つーかそんな子うちの学校にいたっけ」
男がそう言うのも無理がない。昨日女になったんだからな。
「付き合ってはいないよ。まあ色々あったんだよな」
俺の頭をぽんぽんと叩きながらそう言う。つーか付き合って『は』ってなんだよ・・・
「・・・。んじゃあ俺、ああええと・・・私、はもういくよ」
時間ももうギリギリだったこともあって柿野とは別れることにした。




フラグがなかなか立たない。
>>607のフラグ折るんじゃなかった
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 00:14:16.55 ID:ejo3myE0
楽しみにしてますGJ!
621 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/25(金) 00:37:49.74 ID:D233pis0
いよいよ教室へ入る時。入学式とか新学期でもなんでもないのになんだこの緊張感は。
だがいつまでも廊下でうろうろしてるわけにもいかない。両手を握り締めながら教室へ一歩踏み出した。入ったとき数名がこちらを見たような気がする。
まったく気にしない素振りで自分の席に着いた。
視線が痛い。たぶんクラスに大半が見てる。怖くて周りを見れない。
「ん、誰だ?」
隣の席からそんな言葉が聞こえてくる。隣の席はというと小島だ。
「お前まさか・・・絆・・・?」
「あはは ・・・女に、なっちまった・・・」
周りがざわつく。ある程度は予想していたことだ。何も気にすることは無い。
それより気にすることは小島が黙ってしまったことだ。俺のことを一番に俺だと気付いてくれたことは嬉しいが、俺だと確認するなり黙りこくってしまった。
「小島・・・?」
「・・・何これ・・・超かわうぃい!!!」
ガッと強引に腕を引っ張られまたもや抱かれてしまった。昨日の柿野のお姉さんといい小島といい・・・。
同時にクラスから様々な声があがる。
「あれが絆なのか・・・?」
「超美人じゃねーか・・・」
「斉藤君女の子になったんだってー・・・」
「やだすごく可愛いじゃん」
可愛いだとか美人だとか言われるのは悪い気はしないが気恥ずかしい。
そんなことより危うく小島に抱かれたままであったことを忘れるところだった。
「いつまで抱きついてんだお前は」
手を払いのけてまた自分の席に座る。
「制服とかどうしたんだよ」
「隣の柿野のお姉さんに借りてる」
「絆接点あったっけ?柿野と」
「いやなかったけど」
昨日の流れを説明してやった。すると何故か小島は興奮して立ち上がった。
「なにい?柿野と寝ただとぉ?」
「どうしてそうなるんだよ」
腹に一発グーをいれてやるが女になったせいかダメージがまったく入ってないように見える。
「まぁなんにせよ何とも無いみたいでよかった」
こいつの目は腐ってるのか?
「これがなんともないように見えるか?」
「制服も抜群に似合ってるし文句のつけようがないぞ」
「はいはい」
この類は話を流すに限ると考えた。

――昼休み
それにしてもこう女でいると視線が物凄いな・・・。
特に男からの視線が凄い。男とはそういう生き物だから仕方ないというのは元男である自分が一番わかっている。
わかっていても授業中、休憩中どんな時でも視線を感じるのは気分が悪い。世の中の女子はきっとこれに対する多大なストレスをかかえていることであろう。
昼休み、初めて女として振舞うことに疲れた俺は仮眠をとることにした。
622 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/25(金) 00:47:37.53 ID:D233pis0
ワールドカップの日本戦まで仮眠してくる。
ほんと文章力がなくてごめんなさい。
こんな駄文でもお付き合いいただければ嬉しいです。
623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 13:54:06.82 ID:idl8GcSO
wktk GJ!!

どっちも応援してるぜ!
624 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/26(土) 21:54:42.32 ID:Y4xyV4s0
続き

先生の居る所まで歩く。
その間も俺の顔は真っ赤だったろう。
「ど、どうも…」
多少どもりながら挨拶をする。
「ええと、先日女になりました小野優太改め小野優です。これからもよろしくお願いします。」
よしこれでだいたいいいはずだ。下げた頭を上げる。すると。
―シーーーーーーーーーーン
クラスの奴らはおとなしい奴はおろか、普段なら間違いなく騒ぎ出している奴らまで黙り込んでいた。俺は何か間違えただろうか?
「え、えと…あの。「「「かわいい!」」」ふぇ?」
「ありえね〜よ!なんであいつがこんなになるんだ!?」
「なんかこう、もっとおかたい感じを想像していたのにこのふわっと感!」
「今の不安げなとことか最高!」
625 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/26(土) 22:11:21.12 ID:Y4xyV4s0
少なくとも、大きな失敗はしてないみたいだ。
―昼休み
クラスの奴らの質問攻めをかいくぐり、うまいことトイレに逃げ込んだ。
長いことトイレで飯食うのはいじめられてる奴だけだと思ったが、こんな理由で来ることもあるんだな。


だめだ。眠い。また来る。
626 :ぽん ◆0hSLdgVuAc [sage]:2010/06/26(土) 22:31:01.32 ID:Y4xyV4s0
また来るといったけど都合が変わった。
テスト期間なので一週間ぐらい開けます
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/26(土) 22:54:44.59 ID:B7D8gsE0
GJ!続き楽しみに待ってるよ
だが、自分語り嫌がる人もいるからさらっと落として行った方がいいかも
多少間空いても気にしないから
628 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/27(日) 00:10:36.94 ID:FUmjy6Y0
「ん・・・」
ふと目が覚めた。どうして目が覚めたのかは分からない。身に危険を感じたからなのだろうか。
目の前には自分の肩を掴んで今にも何か仕出かそうとしている小島の姿があった。
「何やろうとしてんだお前」
「えっ、ちょっと愛の接吻を」
ふっ飛ばしてやった。
「冗談だってば」
叩かれた場所を押さえながら小島が戻ってきた。
「冗談に見えないわ!俺元男だぞ?お前ついに頭がおかしくなったか?」
「いやぁあんまりにも寝顔がかわいくてさ・・・」
こいついつから俺を観察してたんだ・・・。
「とにかくだな、お前みたいなやつがこんな中庭なんかで無防備に寝てたらそのうち襲われるぞ」
珍しく真剣な顔になった小島が言ってくる。
「襲おうとしてたお前が何を言う」
そういってささっと立ち上がり、教室に戻る準備をする。
少しの睡眠ではあったけど休息はとれたみたいだ。体が軽い。
「ほら小島、行くぞ?」
「お、おう」
どこか小島の様子がおかしい。気のせいだろうか、視線が下向き加減だ。
「どうした?」
「お前そういう趣味だったのか・・・」
「は?何言って―――っ!!!」
視線を追って下を見ると自分のスカートがめくれあがって、水色の下着が顔を覗かせているのに気が付いた。
自分でも顔が赤くなっているのが分かるくらい顔が熱い。まさに顔から火が出るとはこのことを言うのだろう。
「ちがっ、これは・・・」
説明しようと前を向いたら鼻血を出して小島が倒れていた。
現実で鼻血出して倒れるなんてあるんだな・・・。
629 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/27(日) 00:43:04.45 ID:FUmjy6Y0
なんだかんだあって放課後。
「疲れた・・・。」
女になってから始めての学校がこれほど疲れるものだとは想像してなかった。
「お疲れッス!まじ絆のパンツ見れて最高ッス!」
隣でやたらテンション高く小島が騒いでいる。
さっきまで鼻血が原因で保健室で倒れてたのに調子のいい奴だ。
「うっさい。騒ぐな。それと忘れろ。」
げへへと笑っている小島を尻目に帰りの支度を進めていると、廊下から柿野の声が聞こえてきた。
「絆ー!」
うわぁ・・・。そんなに大きい声で呼ばないで欲しい・・・。
案の定クラスの大半がこちらを見ている。
「何?」
「一緒に帰ろうよ」
「別にいいけど」
「よくなああああああいっ!!」
いきなり小島が教室から飛び出してきて割って入ってきた。
小島のせいでまた注目の的に。
周りからは色々な言葉が聞こえてきた。
「何々?これっていわゆる三角関係?」
「柿野くんと斉藤さんってお似合い〜」
「いや、小島くんとの方がお似合いだと思うけどなー」
勝手なことを言ってくれる。みんな俺が元男だということを忘れたのだろうか。
さすがに頭にきて俺が怒鳴ろうとした瞬間、柿野に手を引かれた。
「えっ!?」
「とっとと行くぞ」
走り出す柿野。後ろで小島とギャラリーが騒いでる。
「こんなことしたら余計疑われるじゃん・・・」
「何が?」
しばらくの間走り続けて後ろから誰もついてきていないのを確認して歩きながら言った。
「だから、その・・・」
何がと聞かれるとなんとなく言いづらい。
もじもじしていると柿野の方が口を開いた。
「俺と噂になるのがそんなに嫌?」
「え・・・?」
「なんでもないwwそんなことより昨日のジャージ俺の家に置きっ放しだったろ?」
「え、ああ、うん」
なんでもないと話を変えられてしまったので、再び話題を戻すことは敢えてしなかった。
結局昨日のジャージを取りに戻るということで柿野の家に行くこととなった。
因みに俺は下宿生活を送っているので、帰りの時間がいつになろうと構わない。
そういうこともあって時間は遅かったが柿野の家に行くことを決めた。
630 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/27(日) 02:08:15.90 ID:FUmjy6Y0
自転車で走ること15分、柿野の家に着いた。
朝が異常なまでに早かったことがよく分かる。
「お邪魔します・・・」
他人の家を朝出てまた夜戻ってくるのは不思議な感じがする。
「おっかえりー!ってあれ?絆ちゃん?」
玄関の扉が閉まる音が聞こえたのか、リビングから勢いよく柿野のお姉さんが飛び出してきた。
「あ、どうも。ジャージ取りにきました」
「あら、ゆっくりしていってねー」
ニコニコと手を振りながら頭を下げた俺に対して言いながら、再びリビングへと戻っていった。
ゆっくりと言われてもすぐ帰るつもりなんだけどなぁ・・・。
さすがに失礼なのでそうは言わず、少しだけお邪魔することにした。
「なんか食べる?」
カップ麺しかないけどと付け足しながらあとから柿野がやってきた。
「もう帰るしいいよ」
「お、そっか。じゃあ俺送ってくわ」
そう言って自転車の鍵を取り出す柿野。
さすがに朝も夕方も夜も悪いと思い断るが、こう言い出したら柿野は譲らない。
仕方なく言葉に甘えさせてもらうことになった。
「ほんと悪いな・・・」
「いいってwそれに女の子一人夜は危ないから」
自分が女の子扱いされてることに嬉しい感情と悔しい感情が合わさって生じる。
しかし柿野がわざわざ送ってくれていることには感謝しているので、何か恩返しをしたいと思った。
「はい、着いた」
道案内のもと、無事自分の家に着いた。
昨日は帰っていないのでなんとなく懐かしい。
「んじゃ帰るわー」
「あ、ちょっとまって」
すぐに方向を変えて帰ろうとする柿野を止めて、何か恩返しをすることにした。
「夕飯まだなんでしょ?作るから食べていってよ」
「お、いいの?じゃあそうさせてもらおうかな」
こちらから誘うのは初めてなので少し恥ずかしかったが、恩返しができそうなので嬉しかった。
「お邪魔しまーす」
「はい、どうぞ」
俺の家には柿野の家みたく迎えに来てくれる人間はいない。
愛猫ならいるが・・・どうしてだろうか、いつもなら飛び出してくる愛猫がやってこない。
「たまー?」
名前を呼んでみるも出てこない。
リビングにいるのだろうかと思い、近づいてみるとなんとそこには人影が見えた。
「っ!!」
「どうした?」
後ろにいた柿野が言ってきた。
俺が男だったなら飛び出していけたけれど、女になって自分には力がないことが分かった今では飛び出していく勇気など無かった。
女になることでこうも変わってしまうものなのか、と落胆せざるをえなかったが、今はそんなことを思っている場合ではない。
「リビングに誰か・・・」
情けないと分かっているが本気で怖い。柿野が居てくれることでだいぶ気持ちが楽になる。
「先にいく」
そう言って柿野がリビングのドアノブを捻った。
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/27(日) 02:34:01.96 ID:hH1ECzoo
ファーーーファッファ!!
細かい事気にしてたら世の中生きてけねぜぇぇぇぇぇえ!!

GJ!
632 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/27(日) 03:01:42.63 ID:FUmjy6Y0
すると中からにゃーと我が家の愛猫の声が聞こえてきた。
「おかえり!ってあれ」
中を覗くとこちらに手を挙げて愛猫の相手をしている小島の姿があった。
「なんで柿野が?」
「いやこっちとしてみればなんで小島がなんだけど」
小島に話を伺うといつも鍵があけてある家の裏口から入ったのだという。
昔から何度かうちに遊びに来たことのある小島は度々うちの裏口から入れることを知っていた。
「それってただの空き巣じゃあ・・・」
「それよりなんで柿野がここにいるんだよ」
ぼそっとつぶやいた柿野に対して小島が問う。
「絆が夕飯作ってくれるっていうから」
「ええええ!俺だって一度も食ったことないのに!」
だからなんだっていうんだ・・・。
「頼む絆!俺の分も作ってくれ・・・!」
手を合わせて頼んでくる小島。そこまでして食べたいのか。
「うーん・・仕方ないなぁ」
断るのも可哀想だったので小島も合わせて3人分の夕飯を作ることにした。
親元を離れて下宿し始めてもう結構経つので、料理はそこそこできる。
「はい、どうぞ」
変わっていると言われるかもしれないが、出来上がった料理を客へと持っていくこの瞬間が一番好きだ。
「うまそう!」
「うまいに決まってる!」
口々にそう言っているのは男二人。
そのあと自分も席に着いて、3人でいただきますをして食べた。
久々に自宅で複数で食べたので美味しかったし楽しかった。
「ふぅ〜上手かったー。ご馳走様、絆」
「あとは寝るだけだな〜」
ん?何かおかしなことを言ったような。ちなみに前者は柿野、後者は小島の発言だ。
「今何て?」
「あとは絆ちゃんと寝るだけだなーって」
「んなこと言ってなかっただろーが!」
ぼこっと小島の頭をたたいてやる。
「小島泊まってくなら・・・。絆、俺もいいか?」
色々と世話になった柿野には頭が上がらないというかこちらとしても是非どうぞと言いたいほどである。
明日は土曜日とうこともあるし、結局今日は二人が泊まる事になった。
633 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/27(日) 03:04:36.55 ID:FUmjy6Y0
クラスのこととか文化祭の準備だとか色々なことを話したあと、時間も時間だし風呂に入ることになった。
こういうのは客から入るものだろうと先を譲った。先に風呂に向かったのは柿野だった。
「なぁ絆」
「ん?」
突然小島が口を開いた。
「お前と柿野って・・その・・・できてるのか?」
「はぁ?!」
あまりにくだらない質問過ぎて声が裏返ってしまった。
「何を言いだすかと思ったら・・」
ほんとに突拍子もないことを言ってくる。
「で、そこんとこどうなんだ?」
まじまじと小島が見てくる。
「ないって!」
「ほんとか?」
「ほんとだって」
いつになく真面目な顔な小島だ。
「よかったー」
「よかったってどういうことだよ・・・」
「俺にもまだチャンスあるなって」
つまりどういうことだ・・・?
俺が『?』な表情を浮かべていると小島が言った。
「俺、お前のことが好きになった」
「――っ!!?」
いきなりのこと過ぎて初めは耳を疑った。でも小島の表情は真剣だった。
「本気・・・なのか・・・?」
「本気だ。女としてしか見れない」
634 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/27(日) 03:05:02.96 ID:FUmjy6Y0
これはえらく気まずいことになった。何と答えたらいいのだろうか。
小島のことは嫌いじゃない。昔からの付き合いだしちょっとずれたところがあるが小島のいいところはたくさん知っている。
でもさすがにいきなり好きだと言われても返事ができるはずがない。
俺が困っていると柿野が風呂からあがって戻ってきた。
「気持ちよかった〜」
「あ、俺次いいか?」
「う、うん・・・」
小島が立ち上がって行ってしまった。
唐突過ぎた言葉にしばらくぼーっと考えていたら今度は突然柿野が口を開いた。
「あのさ・・・」
「ん?」
「さっきの小島と絆の話、聞こえてたんだ・・・」
「!!」
驚きが隠しきれなかった。まさか聞かれていたなんて。しかも柿野に。
「丁度風呂から戻ってきたときにさ・・。盗み聞きするつもりはなかったんだけど・・・」
分かっている。柿野が盗み聞きをするような人じゃないことくらい。
「うん・・・」
「・・・俺もこの際だから言っておく」
なんだ、この緊張感・・・。
「俺も絆のことが好きなんだ。出会ってからずっと・・・」
頭がおかしくなりそうだった。整理がつかない。つくはずがない。
ついさっき小島からの告白があり、そして今柿野からの告白。
しばらくの沈黙のあと柿野が切り出した。
「今すぐに返事とかはいいよ。いつも通りでいいから」
「うん・・・」
そんないつも通りと言われたって簡単なことじゃない。それにいつかは小島か柿野か決めなければいけないときが来るということじゃないか。
大変なことになった。
「うーいすっきりー」
小島が戻ってきた。
「おかえり」
柿野が場の空気を切り替えるように明るく言った。
「・・・そ、それじゃ次入ってくるね・・・」
とりあえず一人になる時間が欲しかったので、すぐに風呂に入ることを選んだ。
まさかお泊り会でこんなことが起ころうとは。全く予想をしていなかった事態に動揺せざるを得なかった。


今日はこれで寝ます
続きはまた明日
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/27(日) 22:15:53.50 ID:3cOj.e.0
GJ!続きwktk
636 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/28(月) 00:29:07.33 ID:TBqHFi.0
そういえばみなさん何歳ですか?
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/28(月) 00:54:38.10 ID:bdym0rc0
おお、しばらく見ないうちに進んでる・・・
頑張ってくだしあ

>>636
ROMだけど20歳。お前らもちろん女体化してるよな?
638 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/28(月) 10:47:31.22 ID:Qsba4Uko
>>636
23
>>637
勿論
639 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/28(月) 16:38:32.84 ID:q1XL8sMo
>>636
33
>>637
とっくに
640 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/28(月) 19:27:13.30 ID:TBqHFi.0
つまりみなさんは基本的に成人という訳ですね?
>>637
危ない年齢です。
641 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/28(月) 20:58:39.26 ID:jLdqR.AO
>>636
25

>>637
恥ずかしながら。
642 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/28(月) 21:34:56.05 ID:EMh5P6E0
「二人が・・・俺のことを・・・」
別々ではあるがついさっきまで居た部屋で、二人から好意を伝えられたことを考えていた。
相手は二人とも男。今となっては自分は女。
「好き・・・か・・・」
二つの関係を複雑に思いながら、浴槽のお湯に顔を半分浸けてぶくぶくと泡立てる。
自惚れてはいなかったが、あまりに唐突で想像していなかったことだったのでぼーっとしていた。
部屋に戻るのが気まずい。
出来るならこのままずっとお湯に浸かっていたいくらいだ。
そんなことを言ってものぼせやすい体質なので、長いことお湯に入っていることはできないことを悔いながら部屋に戻ることにした。
「ふー、いいお湯だった」
なるべく平生を装うことにした。せっかくの泊まり会だ。来客に気を悪くしてほしくない。
「おかえr・・・!!」
部屋の扉を閉めて振り返ると二人ともこちらを見て固まっていた。
「ん?」
「え、ああ、なんでもない・・・」
そう言って目をそらしたのは柿野。
気のせいか少し顔が赤い。彼もまたのぼせたのだろうか。
「お前ほんと女になったんだな」
何を今更。散々そう言ってからかってきたのはお前じゃないか、小島。
「どこ見て言ってるんだよ」
「おま、胸とか見てないぞ!ただ俺は・・・」
そう言ってまた小島も柿野のように目をそらしてしまう。
この二人一体どうしてしまったのか。さっきから挙動がおかしい。
「なんだよ」
「正直に言う。お前の湯上りの姿に興奮した」
「なっ・・・!」
なんつーことを言うんだこいつは。デリカシーというものがないのかって言いたいくらいだ。
それに何と反応すればいいんだ。まさに反応に困るというのはこのことだと思う。
時計の針は11時をさしている。風呂前に散々に語ったので時間が過ぎていたのだ。



>>636
18
643 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/28(月) 22:51:09.56 ID:EMh5P6E0
「そろそろ寝る?」
明日は土曜日だが気まずさ故に寝ることを提案した。
「ああ・・・そうだな」
ようやくこちらを見て反応してくれたのは柿野。
「それじゃベッドは二人のどっちかが使いなよ。残りは布団でって・・・あ!!」
今更大変なことに気付いてしまった。
うちには二人分も布団がない。一人はベッドを使えばいいが残りの二人は・・・?
二人で一つという案も浮かんだがこれは・・・と頭を振る。
「どうしたんだよ」
二人の言葉にはっと我に返った。
「いやぁ・・・そのぉ、今更で悪いんだけどさ・・・。布団が一つしかないんだ・・・」
「なんだってえええ!!」
ナイスリアクションといわんばかりの反応を見せてくれる。
「まてよ・・・」
言い出したのは小島。何故か良い予感はしない。
大体小島がこういう無駄に真剣な顔つきをしたときは期待をしてはいけないのだ。
「ベッドか布団のどちらかは二人で寝ればいいんじゃ?」
想像通りだ。というかさっき考えたしそれ。
「なるほど、いい考えだな」
まさかの柿野が同意。たとえここで俺が反対しても2対1で多数決的に負けるじゃないか。
「ここは女の俺が一人で野郎がベッドだよな?常識的に考えて」
「いや、どう考えても男二人が一つの寝床に入れるわけないんだが?それに汗臭いし」
後者はどうでもいいが、前者は的を得た発言なのには間違いない。
体格的に考えても筋の通った意見である。
こういうときに限って小島は嫌なところばかりついてくる。
「んー・・・。仕方ない、俺ともう一人どっちかがベッドであと一人が布団ってことでいいか?」
来客に悪い思いをさせないということが自分流でもあったので、初め思いついた通りのことを提案する。
「ようし、そうとなったらこの勝負・・・」
「絶対負けるわけには・・・」
やたら気合を入れてじゃんけんをし始めた柿野と小島。
その間に別の部屋の押入れから布団を取り出すことにした。
「よいしょっと・・・」
やはり女になって力が落ちているらしい。
布団を引きずって部屋に持ってくると、そこにはさっきとうって変わってテンションがガタンと下がった小島がいた。
どうやらじゃんけんに負けたらしい。
下心があるからだ、と言いたかったが、あまりにも気の毒そうに見えたのでやめておいた。
「んじゃ電気消すよ」
電気を消してそれぞれの指定の寝床に入り込む。
柿野と俺は背中を合わせるように寝ることになった。
いくら女だから小さいとはいえ、シングルベッドに二人の人間が入るのは少し窮屈だ。体がどうしても密着してしまう。
柿野の体温が背中越しに伝わってきて少し変な気分になる。
そんな状況にも関わらず小島が早々に寝息をたてている。ふて寝というやつか。
柿野は・・・寝ているのだろうか・・・。何も反応がないので分からない。
644 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/29(火) 00:09:51.72 ID:Hv5npfE0
――ん・・・
ここはどこだ・・・?
手足を動かせることができなく、ただぼんやりと辺りが見える。
これは夢なのだろうか。
今日は柿野と小島が泊まりに来て・・・さっき寝ることになって・・・確か俺と柿野は一緒の・・・
「っ・・・!」
そこまで思考が進んだとき、はっきりと目が覚めたのが分かった。
目と鼻の先に柿野の顔があったからだ。
あと1秒もないうちにキスをされてしまいそうな距離に。
しかし当の柿野はというと寝ている。
確か寝たときは背中合わせだったはずだが、お互いに寝返りを打った結果がこうなってしまったのだろうか。
しかも柿野ががっちりと俺の背中に腕を回すようにして寝ているではないか。
よって身動きがとれないわけだ。
起こすのも悪いし・・・。
何より顔が近い。
そらすこともできないので仕方がないのだが、こんなに人の顔が迫ったことなんて無かったから戸惑ってしまう。
それにしてもやはり柿野の顔は整っている。逆に言えばこれほど近くで見れるのは運がいいのかもと思えるくらいだ。
さすが男女ともに言われているだけのことはあると顔を凝視していると、突然柿野が動き出した。
「んっ・・・ちょっ柿野、痛・・・」
急に俺の背中に回していた腕の力を強めたかと思ったら、今度は更に抱き寄せられるような形になった。
そして次の瞬間、柿野の顔がぐっと近づいてきた。
「!?」
思わず顔をそらした。きっと間違っていない反応だろう。
その結果頬にキスされる形となった。
相変わらず体は柿野の腕によって強く寄せられている。
ようやく唇が離されたが相手は男だというのに不思議と嫌な気持ちは無かった。
柿野に寄せられた感覚は心地よいと言えるほどだった。
何故かは分からないが。
もしあのとき自分が顔をそらしていなかったら・・・と考えると顔が熱くなってくる。
これも女になったという理由からの補正なのだろうか。よく分からない。
床では相変わらず寝息を立てて小島が寝ている。
時計の針は3をさしていた。まだ十分寝れる時間が残されている。
再び俺は柿野の腕の中で眠ることにした。
645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/29(火) 00:31:45.80 ID:jkDsVH.0
wktk
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/29(火) 02:04:58.46 ID:CijKP/Eo
wwktk

俺は27

ぎりアウト
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/29(火) 02:59:18.87 ID:l2SInEs0
あなたもう女じゃない
私と一緒だわ^^
648 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/29(火) 10:14:36.53 ID:Y.6PTYDO
「結局眠れなかった…」
閉められているカーテンから外の光が差し込んでいる。
柿野が一度も腕をゆるめないのである。
よって落ち着いて寝られるわけもなかったというわけだ。
「ん…なんで絆が…」
目をしばしばさせていると、柿野が目を覚ましたようだ。
「ここ俺んち。そんでこれは俺のベッド」
眠かったので、ぶっきらぼうに説明してやる。
「……はっ!ご、ごめん!!」
何かふと我に帰ったらしく、背中に回していた腕をほどいて謝ってきた。
「別にいいけどさ…」
なんとなくさっきまであった柿野の腕が無いことを心細く感じた。
当の柿野は真上を向いて口を固く結んでいる。
それにしても客観的に見れば変な光景だと思う。
男女が並んでベッドの中に入っている。
別に踏み込んだ関係ならば変なことでもないのだが…。
夜中に起きた出来事を思い出すと急に恥ずかしくなる。
「服、着替えてくるっ」
恥ずかしさ故に一眠りしたい気持ちを抑えてベッドから出ようとしたその時――
カバッ
「っ!?」
勢いよく再びベッドの中に戻された。
柿野の表情は伺えない体勢―後ろから抱き締められている形になっていた。
「柿、野…?」
表情も伺えないため、柿野が何を考えているのか分からなく、体が硬直する。
「好きだっ……!」
そう言ってまた抱き締める力が強くなる。
「柿野…――んぅっ!?」
一瞬どうなったのか分からなかった。
ただ理解したてきには柿野が上に重なり、手が握られた状態で俺の口と柿野の口が重なっていた。
恥ずかしくて前が見ることが出来なくて、唇が離されるまでじっと目をつむっていた。
「――っはぁ」
鼻で息をすること忘れていたため、唇が離されたとき大きく口から空気が入ってきた。
「ごめん…」
「ん…」
謝ってきたが、どうしてこんなことをしたのか問いただす気にはならない。
何故だ。抵抗する気すら起こらなかった。
体全体の力が抜けていく感じがする。
「んーっ!よく寝たなあ!」
しばらくの緊張状態をようやく目を覚ましたらしい小島が破った。
649 :ren ◆caHNbmR6wA [sage]:2010/06/29(火) 10:46:02.42 ID:Y.6PTYDO
誤字ごめん
「カバッ」てなんだよ
正しくは「ガバッ」です
あと理解した「てき」ではなく、理解した「とき」です
650 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/06/29(火) 21:23:29.19 ID:3OZM4b.0
GJ!
まだしばらくパソコン使えないから、PSPからです。
パソコン使えるようになったら続き書きます。
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/30(水) 01:59:26.63 ID:Tb4xgToo
待つぜーどこまでも待つぜー
地獄の底まで待つぜー
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/30(水) 09:56:15.24 ID:QOqB7Gko
エロSSマダー?
653 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/07/01(木) 00:03:50.69 ID:8DpApNM0
>>651
ありがとうございます
>>652
エロは無理ですねだいたい学生だし自重します
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/01(木) 01:33:51.79 ID:JcJe1.DO
>>652
新参に優しくない続き物、しかも途中でいいなら落としてくがね
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/01(木) 02:33:52.71 ID:4zVuk/go
wktk
656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/01(木) 06:44:46.95 ID:nrD0QkAO
ガタガタ言わずに投下しな!
657 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/07/14(水) 21:22:38.00 ID:x4pKuuE0
誰もいない?
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/14(水) 21:26:03.71 ID:TFr/gMDO
誰もいなきゃ投下しないとでも?
甘えんなよ
馴れ合いたいなら他所でやれ
投下したら何も言わずにさっさと去るぐらいしろやksg
659 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/14(水) 21:26:51.50 ID:fvBDzgAO
\ここにいるぞ!/
660 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/14(水) 21:35:53.29 ID:wn68UTI0
俺はいるぜ
661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/15(木) 10:10:20.41 ID:W4iPzUAO
>>658
何をカリカリしてるか知らんが落ち着けよ
662 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/16(金) 15:09:30.90 ID:SGlW06M0
>>661
多分アレよ女の子の日なのよ
女体化して初めてのアレなのよ
663 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/16(金) 23:39:30.09 ID:6I3k4SU0
そういうことか!
イライラしてるのも納得の理由だな
辛ければ経験者である俺らに相談しろよ
664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/17(土) 00:21:18.08 ID:73KpigDO
何このキモい流れ^^;
本当にこのスレは終わったな
665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/17(土) 09:49:02.32 ID:4Gert/ko
>>658-664は荒らし
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/17(土) 22:02:22.28 ID:OhTPZic0
なんか知らんが馴れ合いは必要だ
667 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/07/20(火) 23:10:17.26 ID:D.0JTk.0
な、なんか見ないうちにやばい空気に・・・
今PC壊れてるからPSPからです。
文変だったらすいません。

全く、人のことを何だと思っているんだか。
確かに前までと雰囲気が変わったと自分でも何となく思うし、
・・・まあ自分で言うのも何だが可愛くなったから質問したくなるのもわかる。
しかし何だあの男子の対応の急変ぶり!
いきなり「胸のサイズは?」から始まり「どんな感じ?」「○○○したことある?」「好きな食べ物は?」などきわどい質問からバカなものまで勢ぞろい。おい、思い出せ。俺は転校生じゃない。
そんなこんなで逃げ出す方法を考えて実行してみた。かわいこぶって
「一番にグランドを百週した人にご褒美をあげます。」ニコリ♪
と言ったら。予想通りクラスの半分以上が一斉に走り出した。
そしてバカが走り去り、見えなくなるのを確認してから逃げてきた訳だ。
668 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/07/21(水) 06:47:27.80 ID:GKadu520
続き
「しっかしそろそろトイレからでないとまずいか「でさー」っ!」
な、何で男子が!?そう思って思い直すと、俺は男子トイレに入ってしまったという結論に至った。
つまり今の状況は、
<女である俺が男子トイレに入り、勝手に個室に入っていて、そこにリアル男子が来た。>
何いってるかわかんねーと思うが、我慢してくれ。俺自身軽いパニック状態だから。

誰も居なそうだが書いた。
学校行ってくる。
669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/22(木) 02:53:26.80 ID:G3mhQoDO
renさん、ぽんさんGJ!
670 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/07/22(木) 23:27:11.82 ID:EpQCK1U0
>>669
俺なんかの駄文に反応してくれるなんて軽く感動。
眠いけど書けたら続き書く。
671 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/07/22(木) 23:56:39.93 ID:EpQCK1U0
続き

男1「あれ?人入ってる?」
男2「腹でも壊してんじゃね?」
ここで気づかれたらまずいので、自分の今出せる最低音で応答した。
優「腹壊したからほっといてくれ・・・」
男1「そうか、じゃあお大事に〜」
そういって、用を足した男子二名はトイレから出た。
優「危なかったぁ〜・・・」
ほっとして体の力が抜ける。ほんと気づかれなくてよかった。
ちなみにその後出るタイミングを失い、そのまま15分経過したのを教えておこう。俺の二の舞だけは踏むんじゃないぞ。

てかrenさんは今何処・・・
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/26(月) 22:00:44.73 ID:MUz2Y5Qo
レイプとか近親相姦が多発するだろ
673 :ぽん ◆YsiWhCnWQc :2010/08/12(木) 22:31:40.79 ID:eIoPSg60
過疎すぎて泣けてきた
てか酉これであってたっけ?
674 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/08/12(木) 22:52:17.42 ID:eIoPSg60
まちがえた
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/13(金) 00:05:01.79 ID:I283TYc0
投下待ってます
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/13(金) 01:34:03.71 ID:SmAypbIo
十日ぐらい待ってます!
ウソ!もっと待ってます!
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/21(土) 10:43:51.82 ID:7ZQd.S.o
エロネタマダー?
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/23(月) 08:29:46.01 ID:mZ126aA0
エロいのがいいのか?
えっちいのがいいのか?
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/23(月) 09:19:08.96 ID:MFSBvbwo
結合SSがほしい
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/23(月) 10:46:44.91 ID:mZ126aA0
にょた「友くんのとボクのが近づいてくの、見える?」
友くん「やだ……やだよぉ……」
にょた「ふふふ、もうすぐ友くんは女の子になれなくなっちゃうんだよ」
友くん「おねがい、許して」
にょた「ダメー♪ こんなに固くて熱くなっちゃってるんだもん、説得力無いよ?」
友くん「ううう」
にょた「怖い? それじゃ手を握っててあげるね」
友くん「あ……」
にょた「ほら、ボクの瞳を見て……いくよ……」

結合ってこういうの?
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/24(火) 00:08:10.93 ID:NQdjHiQ0
>>680
続きwktk
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/24(火) 10:20:06.82 ID:ejFvfYAo
>>680は荒らし
683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/27(金) 10:34:36.98 ID:YjhLJO20
SS系はGEPに行けとさ
684 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/08/27(金) 21:05:04.32 ID:7Jk9VrA0
GEPに立てた。
後でURL貼るけどとりあえず探して
スレタイは「15、16歳までに童貞を捨てないと女体化する世界だったらinGEP」
です。
685 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:08:25.68 ID:0kHL4IAO
  【赤羽根探偵と奇妙な数日-3日目夜-】

「どーして来んのよっ!?」

 ……金切り声、とはこの事だな。
 昼夜を問わず同じテンションで疲れねーのかコイツは?

 陽が沈んだ住宅街の中で、街灯に照らされたせいで余計に明るく見えるハニーブラウンのロングヘアを拵えた―――見掛けだけの―――少女が不機嫌な顔付きで、詰め寄ってくる。
 ……腹を減らした野良猫みてぇな敵意を剥き出しにして。
 "どうして"って言われても、"仕事だから"としか言い様が無ぇんだが……残念ながらコイツは、そういう理屈が通じるような奴じゃない。

「……日本の警察っつーのは優秀な人材の集まりだと思ってたが、考えを改めるわ」
「……なんですってぇ……!?」

 お、ノッてきたか。適当に煽っただけだが、意外にもゴロリンの反応は良い。

「仕様がねぇだろーが。
 有力な手掛かりが無いからって、善良な市民に当たり散らすよーな程度の低い奴が優秀"だった"組織に居るんだからよ?」
「バカにするのもいい加減してよねっ! こっちだって伊達に足を棒にしてるワケじゃないわよっ!!」
「ほーぉ? じゃあ何かな? その短いオミアシで手に入れた情報は役立っているのかなお嬢ちゃん?」
「なんですってぇっ!!? 失礼ね、当たり前―――」「―――宮前刑事!!」

 内心で舌打ちをした。

 俺がゴロリンの扱いに慣れているのは警察署内じゃ周知の事実だったらしく、頭に血が上り、口を滑らせようとしていたゴロリンの言葉を、駆け寄ってきた制服姿の警察官が遮る。

「―――無線連絡です」
「……わかりました。今行きます」

 うー、と犬か猫みたいな威嚇の声と共に俺を睨み付けてから、ゴロリンは近くに停車していた覆面パトカーにとてとてと走っていった。
 ……相変わらず変わり身の早い奴。

「―――さ、一般の方は立ち入り禁止ですよ」

 ―――直属ではないにしろ―――ゴロリンの部下と思しき制服の警察官がにこやかに笑いながら、俺を拒絶する。
686 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:11:34.48 ID:0kHL4IAO
「ンだよ、つれねーな」
「公務執行妨害ってご存知ですか?」
「ご存知なかったらどうなるんだ?」
「署でゆっくり御説明して差し上げますよ」

 どこぞのロリコン官僚を彷彿とさせる嫌味っぷりだな、この警官。
 ……やっぱ正攻法じゃダメか。
 今はまだ現場付近の状況を直接調べられるようなタイミングじゃねぇみてーだし。
 しゃーねぇな……他を当たってみるか。そう思い、踵を返そうとした刹那―――

「―――あ、そうそう、探偵さん」
「あン?」

 その嫌味な警察官が俺を呼び止めてくる。

「一昨日のひったくり事件ですが……」

 ……あぁ、名佳と嬢ちゃんとでデパートに行ったあの日のコトか。

 ―――大胆不敵にもデパート店内で、男か女かも分かんねぇような不審な奴に嬢ちゃんのバッグがひったくられたアレだ。

 結果から言っちまえば、何も盗られはしなかった、が代わりに……嬢ちゃんのバッグには盗聴器が仕掛けられていた。

 その場に名佳が居たっつーコトもあって、通報が少し遅れちまった(つーか意図的に遅らせた)から、捜査も進んでねぇんだろう。

 一応、俺も間近で見ていた目撃者だから証言でも取らされんのか?

「―――捕まりましたよ、犯人」
「………へ?」

 普段より2オクターブ上の素っ頓狂な声が出た。……いかん、俺の固茹でなイメージが崩れる。

「……随分と早ぇな」
「目撃者が居ましたからね」

 ……まぁ、あんなデパートのド真ん中で、ひったくりなんざ起こしたら不特定多数の人間が目撃してて然るべきなんだが……だとしても、早過ぎやしねぇか?

「―――実行犯が逃走の際に使用した車のナンバーを携帯カメラで撮影していた方が居たのが決定的でした」
「………」

 ……なんか、引っかかンな。イロイロ。
 とりあえず疑問は一個ずつ解決していくか、埒が空かない。

「わざわざ俺にそれを話してどうなるんだ?」
「坂城 るいさんと面識がおありのようですので」

 ―――なるほど。
 一応、委員会を―――引いては神代家を―――通じて、お上から圧が掛かった案件だから、内密に報告をしろって魂胆か。
 って……小間使いか、俺は。
687 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:13:35.66 ID:0kHL4IAO

「それと、拝島刑事からも貴方への報告を言付かっていましたので」

 ……ったく。あのオッサンは。

「……色々と言いてぇ事はあるが、それはそれだ」
「ご理解が早くて助かります」

 嫌味ったらしく笑いながら、警察官は使い古された安物のメモ帳を取り出す。

「被疑者は、ひったくりの常習犯で―――」
「―――ちょっと待て」
「はい?」

 出鼻を挫かれた警察官が、目を丸くする。

「常習犯って、あんな目立つ場所で犯行に及ぶモンなのか?」

 普通、犯罪を犯す人間が前提として考えるのは捕縛されないことだろう。
 まぁ犯罪の目的が、その場の感情に流されたものではない場合に限るが。
 ただ、多少なりともノウハウが備わった常習犯ならそういうアタマが働く筈―――。

「―――流石ですね」
「あん? ……ナメてんのか?」
「素直に感心してるんですよ」

 やっぱナメてんじゃねーか。

「ま、ま。そんな顔しないで下さい。怖いですから」
「これが地だっつの。いーから話を進めろ」

 ったく、最近はタイムイズマネーって言葉を知らない輩が多いのか?

「ご指摘の通り、確かに不自然極まりないですね。
 被疑者に、被害者との接点はありませんでしたし……あんな目立つ場所で一介の女子高生を相手に、ひったくりをするメリットなんて無―――」

 そこで、警官は一つ咳払いをした。

「……あったとしても微々たるものです」

 いくら警察官でも、流石に"無い"と言い切れはしないらしく、妙に歯切れが悪い言い回しをされた。
 ヒトサマの価値観なんざ、それぞれだ。そう言われたら終いなんだが……まぁ、人それぞれの価値観っつー不確定要素を差っ引いたとしても、違和感は拭えない。

「―――んで、奴さんが犯行に及んだ際の不自然さに説明は付くのか?」
「それが……」

 警官の顔が曇る。そりゃもう、どんよりと。

「……犯行は認めているのに動機に関しては、とかく口が堅いらしいんですよ」
「……何の参考にもなりゃしねぇな」
688 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:16:10.82 ID:0kHL4IAO
 あからさまに落胆した表情を作って警官を一瞥する。

「いやいやいや、ただ―――妙な点もありまして」
「あン? 何がだ」

 ……あくまでも警察をアテにしていない体を装うのも楽じゃねぇな。

「証拠物件そのものはお見せ出来ませんが―――その被疑者の銀行口座には、多額のお金が振り込まれていたんです。
 しかも、犯行の前日にですよ?」
「………」

 よく推理小説や二時間のサスペンスドラマで聞くような話題だが、具体的な金額は明かさないのが通例なのか?
 その俺の機微を察したのか、警官がおずおずと口を開く。

「……まぁ、一生遊べる額には程遠いですが、当面の生活には困らない筈です」

 とどのつまり、ひったくり犯には嬢ちゃんの鞄を狙う理由が無いと言いたい訳か。

「その金について犯人は?」
「過去の犯行で得た盗品を売り裁いたと供述していますが……」

 警官の尻切れトンボな言い回しがあからさまな不一致を物語っていた。

「……今の所、振り込まれたお金と犯行の間に関連性が見当たらないので、こちらも強く出られないのが本音なんです」

 取り調べの時に、刑事が多少の揺さぶりを掛けるにしても、犯人にシラを切り通されちゃあ警察に打つ手が無いのも頷ける。

 ―――恐らく、警察は盗聴器の件は知らねぇンだろーな。

 今、新法案の審議で微妙な時期にあるから、異体委――つーか、神代――は、これ以上警察を介入させたくねぇってのが本音なんだろう。

 ……だとしたら、ひったくり事件の真相に近いのは―――むしろ、俺らなんじゃねぇか?

 こりゃ、ますます嬢ちゃんに話を訊く必要が出てきたワケだ。
 ……気は乗らねぇけど。

 あと、引っ掛かるのは……。

「さっきは聞き流しちまったが、犯人の車のナンバーを撮影したっつー"目撃者"ってのは?」
「……個人情報は流石に漏らせませんよ」
「ンなのは分ぁってんよ」

 確かにそこいらの情報は欲しいが、今はそれよりも訊きたいことがある。
 それを説明するには……クチで言うよりも実際にやってみた方が早ぇな。
689 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:20:20.29 ID:0kHL4IAO

 俺は携帯を取り出して、カメラのレンズを警官に向けた。

「な、なんですか?」

 怪訝そうな顔をする警官。

「動くなって、……そのままそのまま。……あい、バター」

 カシャ、という大時代的なシャッター音が携帯から発せられる。
 ……パブロフ現象なのか、画面の中で反射的にピースする警官が痛々しく映し出された。
 1メートル程度の距離しかねぇのに、2インチサイズ画面の中の警官のピース写真は僅かにブレている。

「……って何ですか、バターって!?」

 我に返った警官の突っ込むとこがおかしいのは放っておこう。

「携帯カメラってよぉ、起動してピントを合わせて、撮影するだけでも随分と時間が掛かるモンだなぁ」
「え……っ?」

 機種によって多少のタイムラグはあるかもしれねぇが、それも微々たるモノだとすれば―――

「―――目撃者ってのは、車が撮影出来る位置に居たンだろ?」
「は、はい」
「しかもナンバーまで正確に割り出せる画像ってコトは、逃走車の真正面か真後ろに、その目撃者が居たってことになる」
「画像は、デパート正面口から発進する車の背面を写していましたね」

 なるほど。
 ―――そこで、当然の疑問にぶち当たる訳だ。

「んじゃあ、"どうしてそんな写真が存在するんだ"?」
「どういう意味ですか?」

 言い方が悪かったのか、警官は首を傾げる。

「……事件が起こったのがデパートの中だろ?
 "外に居た目撃者"が"デパート内のひったくり事件"を把握して、携帯カメラを起動、撮影するまでの間、犯人は悠長に撮影されるのを待ってたっつーのか?」

 漸くの俺の言いたいことを理解したらしく、警官の頭上に電球マークが点灯した。

「……あっ、そういえば妙ですね。
 他の目撃者はそんなタイムラグもなく一目散に逃げたって証言で一致してるらしいですし……」

 つーことは……だ。
 目撃者の行動には多少不自然なトコがあるってことか。

「……まさか、目撃者は予め事件を知っていた、と?」
「あくまで可能性の話だっつの」

 俺は、あくまで写真の問題点を指摘しただけだ。推測の域を出ない。
690 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:27:23.23 ID:0kHL4IAO

「……どう思いますか?」

 改めて、警官は俺に質問を投げ掛けてくる。
 どう思うも何も、推測の域を出ない話をコレ以上広げて何の意味があるんだっつの。

「目撃者を調べてみねーとわかんねーよ。
 ひったくり犯の動機だって、単なる偏った趣味で事件を起こしただけかもしれねーだろ?
 女子高生の鞄が大好きで、見るだけで自分のモノにしてぇとか、匂いを嗅ぎたいとか、むしろ、その鞄の中に入りてぇとか」
「……とんだド変態ですね、それ」
「むしろエスパーだな」

 この警察官の中でひったくり犯の人間性の評価が下がろうと、脳内で某ネズミの国の電気パレードのテーマが流れてようと知ったこっちゃねぇ。

 なるほどなるほど、と真面目に頷きながらメモを取る若人の姿は、なかなかに滑稽だったから、まぁ良しとしよう。

「ま、そっから先は警察のオシゴトってこった。
 ……そーだろ? ゴロリンっ!」
「―――ゴロリン言うなバカバネっ! ……あ」

 電柱の影に隠れて俺達のやりとりを聞いてたゴロリンが脊髄反射で声を上げてから、しまった、と言わんばかりの表情を浮かべる。

 ……コイツに尾行やら張り込みは多分無理だろうな。
 タッパがないから標的を見失い易い上に、見た目年齢に相応しくないスーツ姿は浮いているという次元の話じゃない。

「あ、ぅう……よ、余計な仕事増やすなっ、バカバネっ!!」

 近所迷惑顧みず、叫びながら走り去るゴロリン。
 ……あの合法ロリ警官はまともに礼の一つも言えねぇのか?
 いや……期待するだけ無駄か。

「好かれてますね、赤羽根さん」
「……どう見たら、そういう解釈が出来るんだ?」
「分かりませんか?」

 まるで、愛娘を見守る父親のような顔付きで笑い掛けてくる警官がウザったらしいコトこの上ない。
691 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:30:29.58 ID:0kHL4IAO

「………チッ」

 その笑みから逃れる意味も合わせて、俺は焼け焦げたアパートの屋根を見上げる。
 ……夜の闇に溶けちまいそうな程に黒く染まったそれは、昭和の匂いを残した外観だ。身も蓋もなく言うなら古臭い。
 新宿付近の立地条件を含めた所で、異対委の委員を務めるような富裕層の人間が住みそうにないものだった。

「……それにしても、何でったって被害者は、わざわざこんなトコに来たんだ?」

 視線を逸らしたまんま、警官に聞こえるように呟く。

「呼び出された可能性がありますね」
「……可能性ねぇ。随分と曖昧な言い方だな」
「目下、捜索中なものですから」
「要は証拠や手掛かり見つかってないってだけだろうが」
「見つからない事が手掛かりってことだってありますよ?」
「あン?」
「被害者の携帯電話が、見当たらないんですよ。
 被害者の衣服や現場付近は勿論、被害者宅や仕事場からも発見されてません」

 ……持ち去られたってことか?

「犯人によって隠匿された可能性が高いですね」

 ………それも含めて、拝島のオッサンは委員会に関わっている人間を疑ってるっつーワケか。

 ……とりあえず現場を調べることは出来ねぇし、このまま駄弁ってても時間の無駄だな。
 神代への報告もあることだし、今日の調査はココまでにするか。

「……詳しいコトがわぁったらまた来るわ」
「はい、お気を付けて」
「おー。特にゴロリンには気を付けるようにする」

 警察の人間にしちゃ珍しく、俺に大して敬礼をする警官に背を向けて、ネオンの眩しい駅の方面へと足を伸ばした。
692 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:33:28.77 ID:0kHL4IAO

 ―――目に悪そうな強いLEDの光を遮って安物時計を見やると、もうそろそろ20時になるとこだった。
 ……随分と遅くなっちまったが、名佳はおろか委員会組織の人間からも音沙汰が無い。
 一応、嬢ちゃんには名佳から目を離さないように指示をしてはいるが……。

「……」

 なんだか、あの三人娘の構図を考えてたら不安になってきた。
 一応、連絡しとくか。
 ……淀みなく接続する音が流れてから、コール音が三回。

『―――っ、もしもし、あ、赤羽根サン……?!』

 ―――小さなスピーカーの開口一番に、緊張が走った。

 この声、嬢ちゃんじゃない。

 ……名佳だ。

 電話口の喋り方から察するに随分と取り乱してるみてーだが、俺まで一緒になってパニクってたって何の解決にもなりゃしねぇし……。

「名佳か。どうした? 何かあったのか?」

 極力、不安を煽らないような口調を心掛けながら、俺は駅への歩みを早める。

『実は、その―――っ、やだ、やめ……―――っ!』
『―――はい、お電話替わりました、異性化疾患対策委員会、坂城です』

 不意に、名佳の慌てぶりとは対称的な嬢ちゃんの冷静な声がスピーカーに割って入ってきた。
 それで漸く電話の向こう側で起こっている騒ぎが事件性の薄いものだと察知する。

「……よぉ、嬢ちゃん」
『あ、なぁんだ。本当に赤羽根さんだったんですね』

 俺の声を聴くや否や、嬢ちゃんの口調から力みが消えたのを感じる。
 ……とてつもなく複雑で深ぁい溜め息が吐いて出た。

「……人が必死扱いて調べモンしてたっつーのに、ナニやってんだてめーらは?」
『あ、一応言っときますけど、疚しい事はしてませんよ?』

 事も無げに嬢ちゃんは言う。
 いつにも増して淀みない嘘の吐き方をしやがる。

「じゃあ、今さっきから聞こえてる名佳の声は一体何だっつーんだよ」
『あー……それは、ですね……』

 スピーカーの奥の方から聞こえる名佳と思しき悲鳴をBGMにして、嬢ちゃんとの会話が途切れる。
693 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:35:26.27 ID:0kHL4IAO

『……実はなのちゃん、見つかっちゃマズい人に見つかっちゃいまして』
「はあっ? 脅迫犯にもうバレたってのか?!」
『や、その……そーいうマズい人じゃなくて』
「んじゃ、どーいうマズい奴なんだよ?」
『と、兎に角、マズい人なんですっ!』

 ……なんか実に不毛な会話をしてる気がしてきた。
 状況を把握しようにも"名佳が事件性は薄い騒ぎに関わっている"ことくらいしか情報が伝わってこない。

「あーもう、わぁったよ。俺がそっちに行く。その方が多分手っ取り早い」
『あはっ、助かります』
「んで……今何処だよ?」
『あ、今、周辺地図を赤羽根さんの携帯に転送しますね。最寄り駅は……わかりますよね?』

 不安そうな声で嬢ちゃんに訊かれた。
 バカにすんなっつの。
 朝方に嬢ちゃん達が迎えに来たとこだろ、間違えようが無い。

「あぁ、大丈夫だ」
『……じゃあ、待ってますねっ』

 ―――終話音がスピーカーから鳴り響く。

 ……こうして会話をしてた限りじゃ、単なる悪戯好きなポニーテール娘っつーイメージしか湧かないんだがな……。

 "坂城 るい"。

 オッサン……拝島の中では、殺人事件の容疑者候補の一人、か。
 訊きたい事は山程ある。

 ―――ちょうどメールが来た。簡略化された地図の画像もある。
 ……電話口の騒ぎの原因にも興味があるこったし、一先ずは、足を使うとするか。
694 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:38:03.39 ID:0kHL4IAO

――――
―――
――


「……ここか」

 嬢ちゃんから送られたメールの地図を頼りに、辿り着いた先に待ち構えていたのは……随分と立派な門を構える古風な家だった。
 門の横には暗がりでよく見えねーけど、道場らしき達筆な文字が書かれた板がぶら下がっている。
 ……なんつーか、圧迫感に満ち溢れていて、俺みてぇな破落戸(ゴロツキ)は近寄りがたいの一言に尽きるような場所だった。

「……ふぅ」

 意を決して、俺は門柱に設置されたインターホンに人差し指を伸ばすと―――

 ―――チリンチリーン。

 何故か、鈴の音が鳴った。
 "呼び鈴"っつー意味では確かに間違っちゃいねぇけど……あぁ、何だ、このモヤモヤ感。

『はぁい』

 大仰な門の向こうから、道場という場所には不似合いな若い女の声がする。
 ……名佳や嬢ちゃん達の声ではない。聞き慣れない落ち着いた声だ。

「夜分すいません、赤羽根と申します。名佳……あー、妹がそちらにお邪魔してると訊いて参りました」
『あ、はい、伺っています。ちょっと待って下さいね、……よいっしょ、と』

 慣れない言葉に歯を浮かせていると、おっとりした掛け声と共に重々しい門がゆっくりと開いていく。
 ……そこから現れたのは、初紀嬢ちゃん……ではなく、彼女に似た白いワンピース姿の女性だった。
 ……初紀嬢ちゃんの姉、だろうか? 暗がりでも分かるくらい顔立ちがよく似ている。
 髪の長さと身長が違っていなければ見間違えても不思議じゃない。
 多分近所ではちょっとした評判になってんだろうな。
 こんな美人姉妹が空手道場に居るんだとすりゃあ。

 ……つーか……この人、どっかで見たことがあるような―――。

「―――初めまして。赤羽根探偵さん、ですね? 御堂 初葉と申します」

 ―――御堂 初葉……?

「……ご丁寧にどうも、赤羽根 真司です」

 ―――刹那に表情筋が硬直しそうになるのを寸での所で堪え、表情を悟られまいと頭を下げた。
 その下げた頭から横目で、門柱にぶら下がる看板に再度見直してみる。
695 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:47:09.37 ID:0kHL4IAO

 ―――御堂空手道場。

 やっぱり、そうだ。

 格闘技好きだったら、その名を知らない者は居ない。
 ………良い意味では勿論のこと、悪い意味でも。

 だが、決定的に覚えのある話と食い違う部分がある。それが、何を意味してるんだろうか?

「―――どうぞ、お上がりください。妹さんも待っています」
「はい、お邪魔します」
「こちらです、お足元に気をつけてください」

 高級旅館のテンプレート的な応対よろしく、清楚な笑顔を崩すことなく俺を出迎えてくれた"彼女"への興味は尽きないが、一先ずは……名佳の事が先決だ。
 胸の中で燻ぶる好奇心を振り払い、初葉と名乗る女性の先導で名佳達の元へ向かう。

「探偵さんも、宗くんのお知り合いなんですよね?」

 くるりと、振り返り様に無邪気な笑顔を浮かべながら、彼女は言う。
 その何の気なしの微笑みですら一々絵になっているところを見ると……おそらくは血縁者であろう初紀嬢ちゃんの将来は有望そうだ。

「え、えぇ、まぁ……そんなところです」
「ふふっ、良かったです」

 何が良かったのか知る由もないが、彼女の中で合点がいったらしく、満足そうに振り返り、跳ねるような軽い足取りで再び俺の先導をし始める。

 ―――あの神代を"宗くん"呼ばわりとはねぇ……。

 此処の家の人間―――少なくとも初紀嬢ちゃんと初葉さん―――は神代の奴を物怖じすることなく一人の男として見てるんだな。家柄とか、権力とか、そういう神代が嫌ってそうな要素を一切合切抜きにして。




 ―――何気ないやりとりをしている内に、俺達は目的の場所の前まで辿り着いていた。
 そこだけ増設したばかりらしい新しいドアの真ん中には、丸みを帯びた文字で"るい"と書かれた小さな看板がぶら下がっている。
 ……ドアの向こうは俺の予想とは裏腹に、静かだ。
696 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:50:30.93 ID:0kHL4IAO

 ―――コンコンっ

「初紀、るいちゃん、名佳さん。
 赤羽根さんがお見えですよ?」
『あ、はぁいっ』

 ―――思春期真っ只中の娘の部屋に入るっつーある種の役得感は、ドアを開けた瞬間に吹っ飛ぶことになる。

 ガチャ。

 その光景を見た瞬間、時間が停滞したような気さえした。

「………………何やってんだ」

 まるで、日曜の朝にテレビでやってる子供向けのアニメみたいなフリルがこれでもかという程にあしらわれた現実味の無い服装で、
 名佳達がお互いにデジカメを向けるという異様な光景がそこにあって、俺が思索を重ねに重ねて漸く捻り出せた言葉がそれだった。

 俺の言葉を受けての三人の反応は様々だ。

 気まずく笑いながらポーズを決めて誤魔化す赤い服の嬢ちゃん、
 世界の終わりみたいな顔をしてからベッドに突っ伏して足をジタバタさせる青い服の初紀嬢ちゃん。……つーか下着見えるぞ。
 目の輝きを失ったまんま呆然と立ち尽くす白い服の名佳。

 ……やっぱ、女になっても個性は残るんだということを感じた。

「―――良かった、サイズぴったりですねっ、名佳さんっ」
「……初葉、さん?」

 まじまじと名佳の白い服を眺めながら無邪気に喜ぶ初葉の姿を見て、俺はなんとなく悟る。

 ―――主犯は初葉だ、と。


 後で訊いて分かった話だが、御堂空手道場の稽古代だけでは収入が足りないらしく、御堂 初葉は自らの特技を生かしてネット販売で服を売って家計の足しにしているのだとか。
 ……まぁ見て分かる通り、普通の服ではなく、所謂コスチュームと呼ばれるモンだが。
 んで、手近に居る人間をモデルにしたりする微妙にアブない趣味を持っているらしい。

 ……人の妹使って何やってんだこの人は。
697 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:53:12.65 ID:0kHL4IAO



「―――ふぅ、もういいよ……」

 色々と大事なものを失ったような深い溜め息を吐きながら、制服に着替えを終えた名佳が嬢ちゃんの部屋からひょいと顔を出す。
 ……心なしか顔が赤いのは、嬢ちゃん達の着替えを目撃しているからだろう。
 そんな不謹慎なコトを考えながら俺は改めて嬢ちゃんの部屋にお邪魔する。

 ……部屋ン中は想像していたよりもシンプルなものだった。
 必要最低限の家具と、棚に置かれている使い古された小さい野球のグローブくらいしか目に付くものがない。
 外見が三人の中で一番女の子らしい嬢ちゃんらしからぬ部屋だ。

「どーしました? 想像してたのと違います?」

 物珍しさが顔に出ちまったのか、嬢ちゃんが首を傾げながら問いかけてくる。

「シンプルで好きだぜ、俺ぁな」
「ふふっ、そう言ってくれると思ってました。これが私の趣味ですから」

 清々しいほどに嬢ちゃんは開き直っていた。

 ―――女だろうが男だろうが自分は自分。

 それが嬢ちゃんのポリシーなんだろう。良くも悪くも一本筋な奴だ。
 んで、他の二人は……嬢ちゃんとは打って変わって静かだった。

 名佳は、一連のバカ騒ぎに付き合わされた疲労感が表立ってきたのか、下を向いて黙ったまま。
 初紀嬢ちゃんは………フリフリなコスプレ姿を、ほぼで他人であるに俺に目撃されたのが余程ショックだったらしく、部屋の隅で体育座りをしたまんま泣きそうな目をして微動だにしない。
 ……あからさまにこっちの方が重症だな。

「あー、初紀嬢ちゃん。あれは不可抗力だ。他言無用にするから機嫌を直してくれねーか、頼む」
「っ……本、当に……ですか?」

 鼻を啜りながら俺を上目遣いに見つめ、震えた声で訊いてくる初紀嬢ちゃん。
 ……そんな顔したら約束を反故にしたくなる加虐心を煽るんじゃねーか? 特に俺みてーなヒネくれモンが相手だと。

 ……ま、相手は仮にも思春期の娘なワケだから、オトナ気ねぇコトは止しておこう。

 ―――正直に言うなら……おふざけの代償が、あの御堂空手道の教えを受けた者達のWキックというのが割に合わないだけだが。
698 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 19:59:16.76 ID:0kHL4IAO
「あぁ、約束する。探偵は守秘義務厳守、信頼第一だからな」
「あ……ありがとうございますっ!」

 初紀嬢ちゃんの表情、雨のち晴れといったところか。うむ、めでたしめでたし。

「……赤羽根さんって、時々紳士ですよねー」

 失敬な。俺は常に紳士だぞ。と心の中で嬢ちゃんにツッコミを入れた瞬間に―――

「―――あの……」

 ―――おずおずと名佳が、らしからぬしおらしい声を上げる。……その際に嬢ちゃんがニヤニヤしてたから、なーんかヤな予感はしたが……まぁ、いい。

「どーしたよ?」
「その、……調査、お疲れ」
「ん? おぅ」

 身構えてた割には随分と普通な言葉が返ってきたせいか、拍子抜けしちまったが……。
 まぁ、いいか。
 気を取り直して初葉が用意してくれた冷めかけのコーヒーを口に含む。

「あの、そ、その……」
「なンだよ?」
「―――お、お兄ちゃん……」

 ―――ぶーーっ!!!

「わわっ、汚なっ!?」

 俺が吹き出した悪役レスラー顔負けの茶色い毒霧に、嬢ちゃん達が怯んだ。
699 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 20:03:13.55 ID:0kHL4IAO

 ……無理だ、無理!

 プロボクサーのボティブローをモロに食らったような威力に耐えられるような強靭な肉体を俺は持ち合わせてねぇっ!
 それほどまでに、名佳の恥じらいながら放った"お兄ちゃん"口撃はあらゆる意味で破壊力抜群だった。

「けほっ、げっほ……っ」
「だ、大丈夫か!? お、お兄ちゃん……?」
「がはっ!!?」

 名佳の言葉はピンポイントで俺の気管支を狙っているような気さえする。
 そんな噎せ狂う俺の姿を見て、ニヤついている嬢ちゃんが目に映った。

「―――もぉ、少しは慣れて下さいよ〜、お・に・い・ちゃ・ん?」

 ……てめーか、てめーが主犯か、坂城 るい。

「ぜぇ、ぜぇ……一体……何が目的だ」

 そこだけ切り取って見たら事件の核心に近付いてるみてーなセリフだが、そんな兆候は一切ないぞ、くそっ。
 嬢ちゃんはあっけらかんとした体を繕いながら、まだニヤついている。

「んー……目的っていうか……。
 そもそも"妹"が"兄"を"苗字"って呼んでるのはおかしいですよね?
 ねー初紀ちゃん?」
「えっ? あ、その……ぅ……う、うん……」

 いきなり話を振られ、慌てて首肯を返す初紀嬢ちゃん。
 嬢ちゃんの意図する所には同意しかねるが、否定は出来ずに戸惑っているらしい。
 ……安心してくれ、そのモヤモヤ感は間違ってないぞ絶対。
700 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 20:22:55.44 ID:0kHL4IAO

「明日赤羽根さんは保護者として、なのちゃんに付き添うんですから慣れてなきゃ一発でバレちゃいますよ?」
「いや、そん時はちゃんとするっつーの!」
「ふぅん? そうですかぁ……」

 嬢ちゃんは何か腑に落ちないらしく、名佳に視線を送る。
 それを受けて名佳はおずおずと上目遣いで俺を見つめて―――

「お、……お兄ちゃん」
「ぶふぅっ!!!!?」

 ―――耳元で消え入りそうな声で囁いてくるモンだから、ダメージがデカい。そりゃもう、イロイロと。

 そんな俺のリアクションを見て、クスクスと見下すみたいに笑う嬢ちゃんが憎たらしいことこの上ない。

「ほーら、めちゃくちゃ動揺しちゃってるじゃないですかぁ?」

 くそ、このアマ……絶対ぇ俺で遊んでやがる!

 ……。

 つーか、名佳を傷つけんなーって再三に渡って俺を警告してきたヤツの所行とはとても思えねぇぞ。

「……ごめん」

 嬢ちゃんを恨みがましく睨んでいると、何故か名佳がアタマを下げた。

「何がだよ?」
「オレ……じゃなくて……わ、わたしが頼んだ……の」

 辿々しい、取って付けたような口調の名佳と、微笑ましいもの見ているような顔の嬢ちゃん達。

「何をだ?」
「……あ、その、オレ……じゃなくて! わ、私……が、女として、違和感なく振る舞えるように特訓して……って、坂城さん達に」

 辿々しい口調で必死に弁護しようとする名佳。
 ……やれやれ、嬢ちゃんに何を吹き込まれたんだか。

「そうしなきゃ、アンタに迷惑が掛かる。そんなの……嫌だ」
「―――バカか?」

 名佳の言い分が分かった瞬間に俺の口から言葉が漏れていた。
 その瞬間に、緩んでいた空気が一気に収縮していく。
701 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 20:24:11.14 ID:0kHL4IAO

「てめーが転がり込んで来た時点で迷惑してんだ、俺ぁよ」
「な……っ!!?」
「わかんねーか?
 天邪鬼だし、可愛げねーし、勝手に何でも決めちまうしよ。
 迷惑なんざ、とっくに山ほど掛かってるっつってんだよ」

 名佳の顔色が、余計に暗くなる。
 多感な思春期の"妹"を傷付けてるっつー罪悪感を無理矢理に心の隅に押しのけて、俺は名佳を睨みつけた。

「赤羽根さ―――」「―――"余所の人間は黙ってろ"っつってんのが聞こえねぇのか?」

 名佳が責め立てられているこの状況がやはり気に入らないらしい嬢ちゃん達の抗議の口火を、腹の奥底からの低い声で強に掻き消す。
 ―――俺の理不尽な様を見ていた、名佳が漸く顔を上げた。
 ……"妹"の表情は俺への怒りの色で満ちている。

「……なんだよ、それ。
 オレはアンタに―――!!」
「―――ンなトコにアタマ働かせる余裕があンなら、てめーの先のコトをもっと考えろっつってンだよっ!!」

 名佳の主張を、自分でもビビるくらいのデカい声を上げ、感情の赴くままに女物のブラウスの首根っこを掴んでいた。
 気が付くと、眼前には恐怖と困惑の色に染まる名佳。

 ……まどろっこしい"妹"の言い分なんて聞く必要がなかったから、強引に話を切るだけのつもりだった。
 なのに名佳の言葉が、すげー苛ついて、声を荒げてた。

 ……なんでだ?

「あか、ばね……さん?」

 嬢ちゃん達の戦慄いた声に、ふと我に返る。
 この部屋に居る人間は俺を除いて、皆同じような表情をしていた。
 恐怖と混乱と怒りが混濁したような……そんなツラだ。

「……っ、悪ぃ。ちぃとドタマ冷やしてくる」

 ……名佳の襟元から手を離して、そそくさと立ち上がる。

「あ、赤羽根さんっ!? 赤羽根さんったらっ!?」

 聞こえないワケがないのに、俺はお構いなしにドアノブに手を掛けて、勢いよく戸を閉める。

 空気を読んでくれたのか、俺以外の誰も嬢ちゃんの部屋から出て来ることはなかった。
702 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 20:25:09.23 ID:0kHL4IAO

 ……部屋から出たは良いものの、流石に俺一人で事務所に戻るのはイロイロとマズい。

 あのロリコン官僚から違約金なんか請求された日には、どんだけアイツの下でタダ働きをさせられるか分かったモンじゃねぇし……。


 ……結局、俺には、御堂家の縁側で立ち尽くす位しか出来ない訳で。

「……どうされました?」

 背後で、柔らかな女性の声がする。それが誰かを確かめるのに振り返る必要はない。

「……すみません。お邪魔した上に、大声を張り上げてしまって」

 元来のマナーならば、相手に向き直り頭を下げるのが普通だが、俺にはそれが出来なかった。
 自分でも、よくわかんねーような今のツラを他人様に見られンのが堪らなく嫌で。
 ……その事をイの一番に責められて然るべきなのに彼女はそうしなかった。

「いつも、うちは騒がしいですから、お気になさらないでください」

 ……毎夜毎晩、さっきみてーなコスプレパーティまがいなことを彼女が強制しているのであれば、強(あなが)ち社交辞令とも言えないところが恐ろしい。
 優しさで言ってるにしろ、事実にしろ、俺には有り難い話だが……。

 ―――とにかく。話のベクトルが俺の方に行く前に先手を打とう。

「ひとつ、訊いてもいいですか」
「なんでしょうか?」
「あなたは、初紀……さんの―――」
「―――あ、はい。母です」

 ……その何気ない返答で確信する。
 彼女は――――。

「では、初紀嬢ちゃん―――娘さんは知ってるんですか?」
「っ、何を……でしょうか?」

 俺の聴覚に間違えがないのであれば、彼女は言葉に詰まった。

 ―――思い当たる節が無ければ、決して生まれない……ごく僅かなタイムラグ。

「―――"御堂 初葉"さん」

 俺がゆっくりと彼女の名前を呼ぶと、再び、彼女は息を飲んだ。
 ……別に、俺は彼女を追い詰めたくてこの話をしてるワケじゃないんだが……。

「勘違いしないで下さい。俺は強請屋じゃあない。
 ……ただ、その返答によりけりで娘さんとの会話に注意を払う必要性が出てくるので」

 生温い湿った風が俺と、彼女の間をゆっくりと通り過ぎた。
703 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 20:25:57.82 ID:0kHL4IAO

「―――流石は探偵さん、ですね」

 その風の去り際に、諦観にも似た穏やかな声を背中で聴く。

「多分、探偵さんがお察しの通りです」
「………そう、ですか」
「―――ただ」

 彼女のこれまでで一番強い語気が、最後の二文字に宿っていた。

「"あの人"は……何も知りません。
 娘と等しく……何も」

 まるで許しを請うような、か細い声で彼女は呟いた。
 彼女の言う"あの人"が誰のことを指しているのか俺には分からないが、それ以上のことは興味本位で訊いちゃマズい部類だろう。

「……分かりました、このコトは墓場まで持っていきます」
「申し訳、ありません」

 こんな御時世だ。
 イロイロと複雑な家庭事情があったって、おかしくもなんともない。

 ……さっき、嬢ちゃん達に"余所の人間は干渉すんな"とか嘯いてた人間の行動とは思えねーな。

 ―――職業病っつーモンはつくづく恐ろしい。

「―――探偵さん」

 屁の役にも立たないような言い訳を頭で呟いていた俺を、真後ろの声が現実に引き戻した。

「なんです?」

 脊髄反射で振り返りそうになるのを抑えて、俺は背中越しのまま応えを返す。

「家族って、難しいですね」

 多分、母親であれば誰もが直面するような初葉の何気ない一言。
 その言葉が、妙に心臓の周りに引っ掛かったような気がした。

「―――さ、早く戻ってあげてください。妹さんが心配されてますよ」

 こちらの返答を待たずして、柔らかな声で囁く初葉に向き直る。

「……どうでしょうかね?」

 上手く苦笑出来ているかを心配しながら、再び玄関に向かう。
 流石に、縁側から靴を脱いで上がり込むのは気が引けるしな。

704 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/28(土) 20:51:58.07 ID:0kHL4IAO

 ―――だが、名佳と対面するのはもう少し後になるらしい。

「………」

 その理由は、玄関先で眉間に皺を寄せたポニーテールの少女が仁王立ちで待ち構えていたからだ。

 俺の姿を認めても、嬢ちゃんは一言も発することもなかった。

 ……俺からの謝罪の言葉でも待ってんのか?

 だとしたら生憎だが、それよりも先にお前さんに確認してぇことがあるんだよ。
 さっきは名佳や初紀嬢ちゃんが居た手前、槍玉に挙げることも出来なかったが今は1対1だ。遠慮することは何もない。

「何か、云うことは無いんですか?」
「そいつぁ、こっちの台詞だな」

 俺の返しに一瞬だけ戸惑った表情を見せたものの、嬢ちゃんは怯むことなく俺を睨み続ける。
 そこに、普段の少女然とした嬢ちゃんの姿はなかった。
 ……丁度いい。畳み掛けるなら今しかない。

「名佳を保護したあの日の夜、てめーはどこで、何をしていた」
「………どういう、意味ですか?」

 警察でも手が出せない委員会の私設秘書に、直々に尋問する日が来るとは思ってもみなかったが。
 意外に優越も感慨も何も無かった。
 確証なんてモンも何一つない。
 ただ、後顧の憂いだけは払いたかった。
 俺は……質問に返された質問の意図を―――嬢ちゃんに伝えた。

「新宿三丁目で起きた殺人事件の犯人が……坂城 るい。
 てめーかって訊いてるんだよ」
「っ………!」


 嬢ちゃんからの返事よりも先に、玄関の外側で庭に植えてあった木々の葉が揺らぐ音が聞こえた。


  【赤羽根探偵と奇妙な数日-3日目夜-】


  完
705 :青色1号 [sage]:2010/08/28(土) 20:59:12.59 ID:0kHL4IAO
 エロを盛り込もうとしても全然エロ行く気がしないです。
 自然なエロって難しい。ネイチャーエロイズディフィカルト。

 ……ネイチャーエロって言うと一昔前の飲料水みたい。

 
706 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/28(土) 20:59:24.92 ID:86jkFJAo
相変わらずの投下量というかさらに増えてやがるwwwwwwwwwwwwwwww

読むのが追いつかねぇけどとりあえず乙!
707 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/28(土) 22:51:14.97 ID:NjTWQcc0
GJ!
708 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/29(日) 00:47:49.53 ID:W09NMkAO
  【赤羽根探偵と奇妙な数日-記述b-】

 僕に告げられた病気の名前は"異性化疾患"という奇病だった。
 原因は不明。
 症例も数少なく、ハッキリとした治療法も確立していない病気。
 命を奪う代わりに、人としてのあらゆる尊厳を奪う病気。根絶して然るべき病気。僕を冒した病気。

 シャーペンを走らせる作業に没頭しようとしても、僕の全身は震えている。この字体を見れば解ってくれると思うけれど。

 "理不尽な病気は、呆気ない程に残りの人生を食らい尽くす。"

 この言葉は、どうやら命に拘わらない病気にも当てはまるらしい。

 残された選択肢は大まかに分けて2つ。

 残りの人生を女として過ごすか、残りの人生を捨て去るか。

 出来るなら僕は後者を選びたかった。でも、それだけは出来ない。
 僕が僕の命を奪うことは自由だ。なんの罪にも問われない。
 けど、僕が姉さんの命を奪うコトは罪だから。

 姉さんは、未だに弟離れが出来ていない。
 僕がこっそり姉さんに「自[ピーーー]る」と言うと、姉さんは決まって「私も死ぬ」と言う。
 姉さんがそう言ったから[ピーーー]ないんじゃない。

 姉さんは、覚悟を示そうとする。切実かつ愚直に。
 ある時は果物ナイフ、ある時は睡眠薬、またある時は、麻縄。
 それらを僕に目を真っ赤にさせながら突き付ける。それらで、自分を殺してから死んでと。
 ただの演技ならまだタチが良い方だ。
 前述した通り、姉さんは覚悟を示そうとする。いや、何度も示してきた。
 ナイフを細い手首に突き立て、ビンが空になる程に睡眠薬を頬張り、挙げ句には縄を病室の天井からぶら下げようとさえした。
 いずれも大事には至らなかったけれど、真っ白なベッドシーツが赤く染まっていく様だけは、今でも頭からこびりついて離れない。

 結局、僕には生きる以外の選択肢は用意されていなかった。

 それでも、生きろと。
 同じ日に生を受けた幼い姉の必死の懇願に僕は、負けた。
709 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/08/29(日) 00:52:45.21 ID:W09NMkAO

 共同の病室に移された僕を待っていたのは、退屈な生活だった(共同と言っても他のベッドは空っぽで、仕切りなんてなんのイミもないけれど)。

 テレビはおろか新聞や週刊の雑誌すら見ることを禁止されていて、
 病気が感染をすることを恐れた病院が、異性化疾患に掛かった僕の行動を制限したからだ。

 退屈しのぎの遺書まがいに書き始めたメモが僕の生活サイクルの一部になるなんて何とも皮肉だと思う。

 姉さんも最近では随分と元気になってきた。偶に部屋着を着替えさせに着てくれる度に「私より胸が大きい」とフテる余裕も出て来たくらいだ。

 弟、もとい妹としては嬉しい限りだけど。
 妹、か。
 今度から、一人称を変えてみようか。そんなことを画策し、姉さんの驚いた顔を思い浮かべて笑う僕……じゃなくて私は、端から見たら奇人に見えるのかもしれない。

 それならそれでいい。

 とりあえず、今は、少しずつでいいから私の性別と私の個性に折り合いを付けていこうと、ふくらんだ胸に決意を込めることにした。

 それで、姉さんを元気に出来るなら私は喜んで残りの人生を受け入れよう。

 その内に新しくこの人生に価値を見いだせるかもしれない。
 そんな淡い期待を秘めて、今日のところは、おやすみなさい。


  【赤羽根探偵と奇妙な数日-記述b-】
710 :青色1号 [sage]:2010/08/29(日) 01:00:18.27 ID:W09NMkAO
 本編練りに練った後にアドリブで書いてたらこんな時間とかバカですオイラ。

>>706-707
読んでくれてありがとです。相変わらず短く纏めるの下手でごめんなさい。


 ……どうでもいいけど、書き込みページの上のエロバナーのせいで下手に人前でこのページ開けないよちくしょー。

 あ、本編でわからんことあったら質問ください。いらねーよって場合は淡々と進めていきますので。
711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/29(日) 17:32:01.33 ID:es85s2.0
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/news/1271729165/

なるほどと思った。
男が女になるためには女子ばかり多くては世界観としては説得力ないよな・・・
でも男ばかりが多い世界って誰得って感じなんだけど
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/30(月) 06:33:43.55 ID:bzPg6wAO
>>711
 女が多いと説得力がないってのは結論として、ちと早計じゃないかい?



異性が居る状況だとしても自分自身が種を残せる状態にない。

 ↓

「この状況ヤバい、人類滅びるマジ滅びる」って本能が勝手に錯覚。

 ↓

「俺が女になりゃいいじゃん!」ってコペルニクス的展開にカラダが順応。

 ↓

 そして伝説へ。

 ……みたいな展開なら筋は通るかなと愚考してみたり。

 >>711の考える説得力に繋がる答えかどうかは分からんが。
713 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/30(月) 21:22:27.98 ID:kojm9Ew0
つまり、
・周りに女がいる
・ブサメンで相手にされない結果童貞のまま
・だから危機を感じて本能で女体化
・子孫を残すためになるべく美少女になる

これでブサメンが女体化すると美少女になる理由がわかった
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/31(火) 06:37:21.92 ID:EvyOiOE0
>>712
それなんてセカイ系?
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/31(火) 06:39:43.20 ID:uH1VY..o
この世界って15、16歳までの男を対象にした風俗とか普通にありそうだよね
女体化したくないやつは金払ってでもみたいな
716 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/02(木) 08:32:11.90 ID:Rek944g0
>>715ソレを利用した犯罪もありえそうだよね?
15、16歳までの男を対象にした風俗に来る客の殆どは童貞だから
お店に入ったら捕まえて女体化させて強制的に水商売とか
717 :※初投稿故非常に文章が稚拙です [sage]:2010/09/03(金) 03:49:03.16 ID:zGvwc7.0
「やべぇ、俺明日誕生日だよ」

この世界では何故か15〜17の間に童貞の男が突然女になるTS症候群という現象が起きている。
そして、その奇妙な現象は誕生日に起きる確率が高い。
そしてそれはどういう条件で、どのように発生するかも分からないので実際の所は病気なのかそうじゃないのかも分かっていない。
それはともかく、自分は童貞を捧げる相手もいないし、風俗なんて行く金も度胸もない。
だから自分、清川 恵一(16)は自分がTS症候群にならないか、なってしまったらどうすればいいのかと色々不安なのだ。
そんなことを考えながらため息をついていると不意に後ろからからかうような声をが聞こえた。

「きよっちの誕生日プレゼントは女物の服だな(笑)」
「町田か、誕生日が先の奴は余裕だな・・・」

こいつは町田、何となく俺と波長が合うので良く二人でふざけたりしている。
家はそこそこ裕福らしく、最新ゲームの発売後は自慢しまくるので買えない貧乏人には非常に鬱陶しがられてる。

「まぁな、そんな訳でメイド服とゴスロリどっちが萌え?」
どうやらこいつは俺に自分の趣味の服を着せたいらしい、
「まだ女体化すると決まった訳じゃないんだから別のにしてくれ」
「いやいや、女体化せずとも女装すればいいじゃん(笑)」
「いい加減にしないと殴るぞ」
「サーセン(爆笑)」

そんな感じでふざけて

-翌日-

俺は目が覚めて直ぐに自分の体をチェックした。

「・・・ついてる、ちゃんと男だ」

登校途中に見知らぬ女子生徒に声をかけられた。

「きよっちー、おはよー!」
「・・・お前、だれ?」

はて、どこかで見たことあるような・・・

「オレオレ、俺だよ」
「オレオレ詐欺じゃないんだから名前を言えよ」
「町田 将平改め町田 翔子(苦笑)」

あろうことか、町田が女になっていた。
混乱した俺は三秒間ゆっくりと深呼吸をし冷静に・・・

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

なれなかった。

「落ち着けよきよっち、お前ももうすぐこうなるんだ・・・」
「そんな事いわれて落ち着けるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
718 :※初投稿故非常に文章が稚拙です [sage]:2010/09/03(金) 08:48:19.14 ID:zGvwc7.0
-昼休み-

清川「そういえば町田」
町田「ん?」
清川「その制服は一体どこで手に入れたんだ? それに女になった当日に学校来てるのも気になる」
町田「あぁ、それか きよっちの為に用意した物が制服からなにまで一式あったから買い物とかしなくてよかったのだ(笑)」
清川「あぁなるほど、俺の為に用意したものを自分で使ってるのか」
町田「すまんな、もう一度買い直すからさ」
清川「いや、買わんでいい。 てか、いくら親友の誕生日プレゼントとは言えそこまで用意するのは気持ち悪い」
町田「褒めても何もでないぞ〜」
清川「普通に褒めてねぇ」
町田「照れんでもええぞ〜」
清川「照れてもいねぇ!」


一人で妄想している段階だと色々浮かぶのに文章に書き出そうとするとテンパってうまく行かない・・・orz
719 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/03(金) 12:31:07.55 ID:yX3cnc6o
新人・・・だと? えぇいもっとやれ!!
720 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/09/03(金) 22:00:11.76 ID:pXgovzA0
きたきたきた!
てか続き待ってる人なんかいんのかな?

その後はいつもと何ら変わらない日常だった。
なにやら落ち込んでいる女子と、目が怖い(前は俺もこんなんだったのか?)男子を除けば順調だった。
順調という割にはやたらと問題があるが、そこに突っ込むのは無粋というものだ。
そして放課後
サドルが下がった自転車にまたがり、あくまでいつも通り家に帰ろうとした。
自分でもなぜいつも通りを目指しているのかは分からなかったが、大きな変化が生まれる予感……
ー嫌な予感がしていた。
元々部活には入っていなかったから、退部とかそういうたぐいではないと思っていた。
確かにその推測は当たっていた。退部ではなく入部なのだから……
「そこの貴女止まりなさい!」

なんか変な展開にしてしまった……
721 :※初投稿故(ry [sage]:2010/09/03(金) 22:03:07.35 ID:zGvwc7.0
-帰り道-
(>>718の続き)

町田「なぁ、家帰って着替えたら買い物行かねぇか? 服を買いたいんだ」
清川「どうした? お前服用意してたんじゃねぇのか」
町田「良く考えたらメイド服やゴスロリで外でたら浮きまくりだということに気づいてな(笑)」
清川「もっと早く気づけよ」

そんな訳で俺たちは一旦家へ帰った後、駅前の商店街で適当に町田の服を買うことになった・・・

-放課後、商店街-

町田「やぁ、待たせたね(笑顔)」
清川「・・・あ、あぁ」

町田黒いワンピースを着て現れた。
某(元)電脳街や年に二回東京で開催されるイベントにいそうなメイドだとかゴスロリを想像していた俺は少し驚いた。

町田「どうした? もしかして俺に惚れちまったとか? 勘弁しろよな俺(元)男だぞ?」
清川「別にそんなんじゃねぇよ ところで服がロクでもないのしかなかったんだろ、そのワンピースは親戚とかから借りたのか?」
町田「これはメイド服の一部だ。 これにエプロンメイドキャップetc付けると本格的メイドさんの出来上がりなんだぜ」
清川「へぇ・・・」

そうか、メイドカフェとかそういうのじゃないメイド服だったのか。

-そこらへんの安い洋服屋-

町田は何故か女物の服を選ぶセンスがよかった。

町田「こんなのどうだ?」

町田が試着室から出てくる。
どこからどう見ても普通の女の子としか思えない服装だ。

清川「いいんじゃね?」

それに、さっきから仕草まで女の子っぽくなってる気がする。
さっきから試着する度に見せてきては『かわいいか?』なんて聞くのだ。

町田「かわいいか?」

ほら。
かわいいって素直に言うのもなんか恥ずかしいので誤魔化すように
清川「普通」

と答えた。

町田「そうか、ちょっと他の服も見てくる」
722 :※初投稿故(ry [sage]:2010/09/03(金) 22:10:49.71 ID:zGvwc7.0
やっぱり、何かおかしい。
体が女になると心までそうなるのかな〜。
それにしても、まるで俺たち恋人みたいなシチュじゃね?

町田「何ニヤニヤしてんだよ」
清川「秘密」
町田「いーえーよー!」
清川「いーやーだー!」

あぁ、町田は気づいてないみたいだけどレジの店員さんが『他所でやれよこのバカップル!』みたいな目線で睨んでくる・・・
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/09/04(土) 21:18:34.06 ID:i459ZCA0
パー速にあるの全く気がつかなかった…
いずれかまたVIPに戻れればいいかなと思っている今日この頃
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/09/05(日) 00:04:21.91 ID:r4DpCm.0
新しい書き手さんが増えてオラわくわくしてっぞ!

てなことで、このスレにある作品はwwikiにまとめておきました
何か抜けてるところ等々ありましたらご一報くだしあ><
725 :※初投稿故(ry ◆srrPp.nAa. [sage]:2010/09/05(日) 02:57:33.79 ID:8orTa4I0
>>724
ありがとう。
やべぇ、本当に俺の文章が乗ってるやべぇ。
いつか先輩方のような素晴らしい文章を書きたいお

--買い物後--

俺は日が沈むまで散々試着に付き合わされた後、荷物持ちをさせられることになった。
これじゃ彼女の買い物に付き合わされる彼氏に見えるじゃねーか。

清川「おもうぃ〜」

ちなみに町田は試着した服を全部買った。
この量をどうやって紙袋に収納したのかは謎だ、もしかしたら未来の技術が使われているのかもしれない。

町田「がんばれ少年(笑)」

こいつは少し自分が持とうとかそういう気は無いようだ、コンチクショウ。

清川「てか、お前もつい昨日まで少年だっただろ」
町田「そうだっけ?」
清川「そうだろ」

こいつ、女になった事を楽しんでやがるな・・・
何て思いながら会話をしていると駅前についた。
ここからは二人の帰り路は別なのだ。

町田「・・・ここで分かれるか」
清川「あぁ、そうだな。 ほれ荷物」

重い荷物を差し出す俺、名残り惜しそうな表情で受け取ろうとする町田。
しかし、ドスンと地響きのしそうな音をたてて紙袋は地面に落ちた。
町田の小さくなった手は明らかに比重のおかしい紙袋の重みを支えきれなかったのだ。

町田「ちょwおまwやっぱコレ無理(爆笑)」
清川「そらみろ買いすぎだバカww(苦笑)」

結局家の前まで荷物持ちをしたのは言うまでもない。
726 :※初(ry ◆srrPp.nAa. [sage]:2010/09/05(日) 05:58:28.01 ID:8orTa4I0
―翌日の校内新聞の朝刊―

『男×元男! 女性化初日からバカップル!! 女性化前から付き合っていた?』
昨日の放課後、2-1の清川 恵一と町田 翔子(元・町田 将平)が駅前商店街の洋服屋「クロシチ」にて目撃された。
証言によると仲睦まじく長時間に渡り試着をし、バカップルぶりをアピールした模様。
女性化一日目でこれほどのバカップルぶりはありえないだろう、もしかしたら二人は禁断の恋をしていたのかもしれない。


―朝の教室―

朝、俺は珍しく早起きしたので学校へ早めに行くことにした。
いつもより早い時間帯だけあって通学路は空いていて朝の鳥のさえずりが心地よかった。
しかし、教室に入った途端その爽やかな気分は台無しになった。


町田「おいきよっち、コレ見てみろよ。 愉快痛快な事が書いてあるぞ(懲笑)」

そういって怖い笑い方をした町田が差し出したのは『校内スポーツ速報(朝)』と題された新聞風のプリントであった。

清川「あれ? うちの学校って新聞部あったんだ」
町田「それよりこの記事」

ふむふむ、男×元男・・・

清川「って、なんじゃこりゃー!!!」

思わず大声で叫んでしまった。
まさか翌日にこんな形で昨日の出来事が広まるとは・・・

町田「ひでぇを通り越して、むしろ愉快だろ」
清川「いや一文字足りない、『不』愉快だ」

芸能人のスクープならまだ仕方ないと思えるが(芸能人のスキャンダルは宣伝にもなっているらしいし)
でも俺たちはただの学生で一般人だ。
プライバシーって物がある。

町田「コレ書いた奴、ブチコロしにいこう(微笑)」
清川「・・・ブチコロしなくてもこれは明らかな名誉毀損なんだから、先生に出せばアウトじゃね?」

いま一瞬、町田の笑顔が般若に見えた・・・これはマジで傷害事件になりかねねぇ。
そう思った俺は咄嗟に、比較的平和な解決方法を提案した。
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/05(日) 12:29:53.86 ID:CLBpO/Eo
付き合って事実にしちゃおうぜ!
728 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/09/05(日) 17:20:15.23 ID:pjzijQ60
クロス的なのをさせていただきます。
必要なかったら書き直します。

しばらく辺りを見回した後、俺にかけられたとされる声の主の方を向く。
「あなた、新聞部に入らない?」
声をかけてきたのはこのメガネっ娘だったらしい。
なかなか可愛い。しかしメガネはいらんか……じゃなくて!
「今なんて?」
「だから新聞部に入りなさいって言ってんの!」
なんか命令口調になっとる。
「いや俺は……「決定ね!」んぎゃ!」
話の半分も言わないうちに、気がついたら拉致られていた。
連れてこられたのは古い部室。こんなとこあったっけ?
「ここが新聞部よ」
説明ありがとう。でも見れば誰でもわかるだろ。戸に新聞が張り付けてあったら。
「新入部員連れてきたから。ところで翼、記事はどう?」
[ところで]ですますな、と言いたかったが、それより先に記事の方に目がいった。
<男×元男!女体化初日からバカップル!!>
……プライバシーって何だっけ?
729 :青色1号 [sage]:2010/09/06(月) 05:42:57.00 ID:ZOLPLEAO
 作品無しなので鳥無しで。

>>718
いらっしゃいませです!
謙遜せずにバシバシ投下しちゃってくださいませ。

>>720
読み手のリアクションって、すンごく気になるけど、にょたはドM精神で黙って投下するのが正義! ……だと思います。確証は皆無だけど。
あ、あと、お節介かもだけど……
クロスは基本的にその作品の作者の方に許可を得てから投下した方がいいと思います。
"別に良いかな"って思う人も居れば、"勝手に使われだ"って思う人も居ますし。


>>724
あ、あ、ありがどごぜぇまずぅうっ!!
感謝の極みでございますです!!
まさか毎回まとめる詐欺してるオイラまで……本当にありがとです。


―キ―リ―ト―レ―マ―セ―ン―


 しかし……こうしてまとめ読み返すと多いですな。
 量はもう諦めたとしても、誤字脱字書き違い[ピーーーー]云々。
 誤字脱字書き違いは自己責任としても、荒らし防止の強制変換は辛いです。せめて投下時くらい言論の自由をっ!

 もうね、逆手に取って

 ゆけっ! ピッ[ピーーー]!

 とかみたい遊ぶしかない。上手く強制変換出来てたら叫んでるみたいになるはず。ならなかったら恥ずかしくて死ぬ。


 明日あたり赤羽根さんの短めのを投下する予定です。




 校正は
 "やってるつもり"じゃ
 いかんのね

          あほいろ。
730 :※初(ry ◆QahwJQI2lA [sage]:2010/09/06(月) 06:26:14.25 ID:jX4MB120
>>729
どうも、これからちょくちょく投稿しますのでよろしくお願いします!

> 校正は
> "やってるつもり"じゃ
> いかんのね

良い言葉です・・・肝に命じておきます。

あと、何となく自分の酉でググったら自分以外にたくさん出てきたので変えます。
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/06(月) 18:34:29.06 ID:79wkvIg0
>>729
ちなみにピー防止はメル欄にsagaを入れるといいですよ
基本sage sagaいれとけばおk
732 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/09/06(月) 22:37:55.46 ID:wkIc5Xw0
>>730
それとクロスは続けても良いのでしょうか?
嫌ならやめます。
733 :※初(ry ◆QahwJQI2lA [sage]:2010/09/06(月) 22:50:17.86 ID:jX4MB120
>>732
どうぞ続けてください、というか大歓迎です!
734 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/09/07(火) 00:04:06.87 ID:kd1ADNQ0
記事を見て唖然としている俺に気づいたのか、部長?が声をかけてきた。
「凄いでしょ大スクープ!これでわが新聞部の名もどっと知れ渡るはずよ!」
確かに……今まで新聞部の存在すら知らなかった。
と、ここでようやく俺は正気を取り戻した。
「じゃなくてお前は誰だ!というか何で俺はここにいる!」
「私は新聞部部長の大間美咲。あなたはいわゆる客寄せパンダね。某団長様もいった通り、萌えは必要よ!」
つまり俺は萌えのためだけに連れてこられたと。これには未来人もびっくりだな。
「それはいいとして、俺はまだ入るとは言ってない。それにこの記事はプライバシーを配慮しなさすぎだ!これは職員室に抗議が来るレベルだぞ?」
この写真の人物は……町田と清川?こいつらは確か隣のクラスだったはずだな。
それはいいとして、とにかくここから出たい。そう思った矢先に、部長の口から悪魔の言葉が飛び出た。
「ふ〜ん。入らないなら、こればらまいちゃうけど?」
そう言って、部長は制服から一枚の紙を取り出した。
これは……昔先輩に告白したときの写真!何でこんなものがここに?
「ここは校内の全情報が集まるいわば大宇宙。脅しのネタには事欠かないわ。で、入るの?」
735 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:23:22.93 ID:sTbBrYAO

「それ食い終わったら支度だ」
「………」
「聞いてンのか?」
「………」
「まぁだキレてンのかよ?」
「………」
「おい」
「………」
「機嫌直せよ、好い加減」
「―――うるさい」
「あん時ゃあ俺も頭に血が上ってたんだよ」
「………頭に血が上ってたら、"あんなこと"言っていいのかよ!!?」
「騒ぐなっつの、苦情来んだろ」
「〜〜〜〜っ!」

 一体、何なんだこの人は……!
 昨日、あれだけオレに激昂していたのに、今朝になった途端、急に掌を返したみたいにおとなしくなって!?

 挙げ句の果てに"昨日の一言"だ。

 ……別に、赤羽根サンがオレに対して言う文句なんて、仕方のない部類だと思う。
 オレが、それくらいの迷惑を掛けてるコトくらいは理解しているつもりだ。
 理由はどうであれ、あーだこーだ文句を言いながらも、自分自身でもドコの馬の骨ともわからないオレを"妹"として事務所に置いてくれている。

 ……そりゃ、昨日の一件はちょっとはカチンときたけど。

 だからといって、こんなことで赤羽根サンと冷戦状態になるほどオレだってバカじゃないぞ。うん。

 でも……昨晩、事務所に戻ってきた赤羽根サンが呟いた理不尽な言葉だけは……どうしても許せなくて。

『今後、坂城 るいには近付くな。
 もしどうしても必要があって、接触する際には俺を通せ』

 訳が分からなかった。
 自分から坂城さんに接触を試みたクセに、なんで今になって彼女を敵視し始めたのか。
 ……勿論、理由も問い質したさ。

『坂城 るいが、委員会役員殺害事件の犯人の可能性があるからだ』

 赤羽根サンの返答に、オレは思わず自分の耳を疑ったよ。
 生憎、言い間違いでも聞き違いでもなかったけれど。
736 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:25:09.87 ID:sTbBrYAO

 ……なんで、そんな結論に到ったのかは知らない。
 理由を問い質す前に、赤羽根サンは即座に寝入ってしまったから。
 事務所机に据えられたキャスター付きの古びた椅子に座り、トレードマークの帽子を目深に被ってから、所要時間、僅か3秒。

 ……α波が出るまでが早過ぎだろ、このヒトの脳みそ。

 そのあとで、オレが肩を揺さぶろうが頭を叩こうが起きるどころか微動だにしなかったし……。

 ―――結局、一晩経っても、赤羽根サンの主張は変わることはなく。
 "坂城さん犯人説"の詳しい理由を尋ねても、はぐらかすばっかりで答えてくれやしなかった。

 ……だから、今のような冷戦状態に至るワケだけど。


 ―――坂城さんは、確かに少し変わっているとは思う。

 オレと同じく、異性化疾患を発病したと元男だとは思えないほど立ち居振る舞いは女の子そのものだし、物腰は柔らかいし、頭の回転も早い。
 誰が相手であっても気が強かったり、何を考えてるか分からない面もあるけど……。
 でも、仮にも信を置いていた相手を簡単に疑えるなんて、どうかしているとしか言いようがないじゃないか!?

「………なぁ、名佳」

 どう考えても美味いとは思えない煙をゆっくり吐き出してから、赤羽根サンはそっぽ向いたまま口を開いた。
 オレは返事をしなかったけど、赤羽根サンは構わずに言葉を繋げる。

「―――俺は嬢ちゃんに面と向かって言った。
 ……まぁ、なんだ。色んな情報を加味した上で"警察も俺も、てめーを疑ってる"ってよ。
 そしたら嬢ちゃん、なんつったと思う?」

 知るかよ、そんなの。

「ンな面してねーで、まぁ、聞けや」


737 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:26:57.26 ID:sTbBrYAO

  【赤羽根探偵と奇妙な数日-4日目早朝-】


『んー……残念だけど、私にアリバイはありませんねー』

 それまで俺への敵意に満ちていた嬢ちゃんの表情が、何故か緩む。
 その穏やかな面構えに釣られてやるほど、俺が素直な人間じゃねぇってことは嬢ちゃんも重々承知してると思うが。

『……随分と余裕綽々だな』
『だって事実を誤魔化したって仕様がないじゃないですか』
『胸を張るとこじゃねぇだろ』
『あはははっ、確かにそうですね。
 ……よい、しょと』

 楽しげに一仕切り顔を綻ばせると、立っていることに疲れたのか、嬢ちゃんはぺたんと玄関のフローリングに腰を下ろした。腿の半ばまで裾上げされたチェックスカートの中身を見せないためか、正座を崩したような座り方で。
 ……まるで、アイドルのグラビア撮影にでも立ち会ってるような錯覚に俺が陥っていると、
 嬢ちゃんの白く細い人差し指が、空中に幾何学的な何かを描きだした。
 ……なんかを考える時の癖か?
 その証拠に自らが指先で描いた幾何学的模様とは明後日の方面に視線が向いている。

『―――動機はあるし、アリバイもない、状況証拠は出揃ってるけど、物的証拠がない。
 更に、私の身分と神代せんせーの名前が邪魔をして、警察は手が出せないでいる。
 ……そんなとこですか?』

 ……随分と、この私設秘書サマは自分の置かれた立場を理解しているようで。

『あれあれっ、何で驚いてるんです? 警察に情報を貰いに行くって言ったのは赤羽根さん自身じゃないですか』
『どうしたら、この状況そんな飄々としてられンのか理解に苦しんでンだよ』

 殺人犯として疑われてる自覚があんのかどうかも怪しいような天真爛漫とした笑みを浮かべ続ける嬢ちゃんが小憎たらしい。
738 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:42:16.89 ID:sTbBrYAO

『ん〜……、客観視したら疑われても仕様がないですからね、私の立ち位置って。
 そんなの、今更どうこう言ったところで、どうにもなりませんし……。
 それに……赤羽根さんは、私の過去の経歴もバッチリ知っちゃってるんですよね?』
『……そういう言い回しをすれば、俺が疑わないとでも思ったか』
『いいえ、全然』

 即答だった。

『仮にもプロを相手に、疑いの目を逸らそうなんて白々しいと思いませんか?』
『……人をナメんのもいい加減にしろ』
『ナメてるワケじゃないです、なのちゃんをイジメた仕返しです』
『………チッ』
『あはははっ。さ、冗句はさて置き』

 笑みを崩さないまま、嬢ちゃんは声のトーンだけを落とした。


 ――――そして、珍妙極まりない頼みを受けることになる。

『もし―――赤羽根さんが、私を殺人犯だと思うのなら……なのちゃんを出来るだけ私から遠ざけて下さい』

739 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:44:09.53 ID:sTbBrYAO
―――――
――――
―――

 ……言葉が出なかった。
 訳が分からない。
 坂城さんは自らに殺人の疑いが掛かっても、否定すらしないなんて……。

「だから、坂城 るいには近付くなっつったンだよ。これで満足か?」

 気だるそうな欠伸混じりに赤羽根サンは言った。

「………なんで」
「あン?」
「なんで、それでアンタは納得出来るんだよっ!!? どう考えたってオカシいだろっ!!?」

 狭い事務所にデスクを叩いた音と、自分でもヒステリックだと思う声が反響する。
 それでも、赤羽根サンは微動だにしないまま、目線だけをこちらに向けて―――

「……うるせぇよ」

 ―――と唸るような声でオレを窘めるだけだった。

 くそっ、なんなんだよっ!?

 そんなバカげた話に乗ってしまう赤羽根サンも赤羽根サンだけど、坂城さんも坂城さんじゃないかっ!?
 どうして"自分は犯人じゃない"って主張しないんだよ!?

「―――誰が納得したっつったよ?」
「え……?」

 愛用の帽子を目深に被り直しながら呟く赤羽根サン。
 ……オレの見間違いじゃなければ赤羽根サンの口元は、力が入っていたように見えた。
 何があったんだろう?
 ……そう言えば、今し方、赤羽根サンが話してくれた昨日の出来事は少し尻切れ蜻蛉な気がする。

 もしかしたら―――
740 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:45:18.86 ID:sTbBrYAO

「―――とっとと準備しろ。遅れンぞ」
「赤羽根……サン」
「てめーも"赤羽根"だろうが。
 言っとくが、外ではそんな素振り見せんじゃねーぞ」

 赤羽根サンはそう釘を差すと、そっぽを向いて再び紫煙を吐き出していた。
 ……オレばっか言われっぱなしで、ちょっと悔しい。

「わかってるよ、……お、おにいちゃん」
「っ」

 よし、赤羽根サンの奴、ちょっと噎せた。
 恥を忍んで言った甲斐があったぞ、よくやったオレ!

「んだよ、そのガッツポーズ」
「べっつに?」
「……チッ、いいから早くしろっつの!」
「はいはい、わかりましたよーだ」

 あれだけオレに騒ぐな喚くなって言ってたクセに、自分だって同じじゃないか。
 ……ま、ガラス戸を閉めようとした背後でブツブツと文句を垂れる赤羽根サンが面白かったからヨシとしよう。
741 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:47:11.07 ID:sTbBrYAO

「……ふぅ」

 ゆるゆるとブラウスに袖を通している時に―――意図せずに溜め息が出た。

 こんなにも訳が分からない生活も、いつの間にか折り返しに来ている。

 ……慣れというものは恐ろしいもので、女性モノの服も―――装飾が特殊なものでないのが前提だけど―――基本的なものは独りで身に着けることが出来るようになってる。
 ……足元の風通しの良さにも、慣れてきたし。

「………っ」

 ―――不意に目頭が熱くなった。

 別に悲しい訳でもないのに。記憶なんてないのに、オレは男だった時のことを思い出して悔やんでいるのか?

 いや、多分そうじゃない。

「……っふ……ぅう……っ、ひくっ……」

 多角的に状況を見たら、とてもそうは思えないんだろうけど。

「ぇ……うっ……く……ひくっ」
『名佳……!? おい、どうした名佳っ!!?』

 カーテンの向こうから慌てた"兄"の声が聞こえて我に返る。

「っ、なんでもないっ! つーか、どさくさに紛れて覗こうとするなよ!!」
『誰が妹の着替えなんぞ覗くか!! 紛らわしいンだっつのっ!!』
「だって、っく、朝から……ひくっ、サイダーなんて……えぐっ、飲ませるから……しゃっくり……っく、止まんないんだよっ!!」
『ったく……あんまヒヤヒヤさせんなっつーのっ』
「ひ……っく、わ、悪かったなっ!」

 ―――本気の本気で心配くれる"友達"が居てくれて。

 ―――だらしないし、いい加減で、口も悪いけど、オレを必死で守ろうとしてくれてる"家族"が居て。

 それが、堪らなく嬉しくて。
 それが、終ってしまうことが決まっていることが堪らなく寂しくて。

 だって、今オレは、多分……幸せだから。

 どうしよう。今、目が真っ赤だと思う。鏡なんか見なくても、瞼の周りの熱で分かる。
742 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/07(火) 04:58:54.25 ID:sTbBrYAO
 しっかりしろ、オレ。今オレがコケたら、みんなが積み上げてきてくれたものが全て水の泡になるんだぞ。
 ―――それだけは、絶対に避けなきゃいけないんだ。

『気負うんじゃねーぞ』
「……えっ」

 カーテンと、ガラス戸越しに赤羽根サンが低く呟いた。

『赤羽根の家の人間っつーのは下手に気張るとロクなコトになんねーンだよな』

 ……なんだよ、それ。オレも"赤羽根"だからか?

「っ、ひくっ、大丈夫だってば! だい、じょ……ひっく……」

 ……バカ兄のせいで、落ち着いてきてた呼吸がまた苦しくなったじゃないかバカ!
 ……それなのに、嬉しがってるオレのが……よっぽと、バカかもしれないけどさ。

 ………。よし。
 制服もバッグも準備完了だ。

『……あのよ、名佳』

 ガラス戸越しに頼りない兄の声が聞こえてくる。

「ん?」
『その、昨日は……悪かったな。あー、その……怒鳴っちまって』

 オレは別にもう怒ってないんだけど、すんなり許してしまうのも面白くないからって―――

「今更だよな」
『……言わねーよりマシだろ』
「……そーいう問題かよ」

 ―――まったく、素直じゃない。お互い様だけど。

『んで、準備、出来たか?』
「ん。……なぁ」
『なんだ?』
「頼りにはしてるから」
『……おう』
「……それじゃあ」
『……行くとしますか』

 問題は山積みで、決してオレも赤羽根サンも楽観出来ない状態には変わりは無い。
 でも、不思議とココロは軽くなってたような気がする。

  【赤羽根探偵と奇妙な数日-4日目早朝-】

  完
743 :青色1号 [sage]:2010/09/07(火) 05:05:12.50 ID:sTbBrYAO
 毎月7日は名佳の日っ!
 ………嘘です。ごめんなさい。

>>731
mjsk!?
うーむ知らなんだ。ありがとです!!
まだまだ未熟だのぅオイラ。
744 :※初(ry ◆QahwJQI2lA [sage]:2010/09/07(火) 05:15:32.77 ID:K.48vdc0
―昼休み―

町田「ゴホッゴホッ!」
清川「ほらやっぱりむせた、ハムスターみたいに食いもん詰め込むと逆に遅くなるぞ」
町田「うるへー!」

昼休みの始まりを告げる鐘がなると、俺らは弁当を素早く胃の中に押し込で職員室へ急行した。

清川「すみません2-1の清川ですけど、新聞部の顧問の先生いますか?」
先生A「あぁ例の君か、ちょっと待って。 厚木先生〜! 2-1の清川くんがお呼びです!!」

中年の先生に呼ばれて出てきたのはショートカットで気の弱そーな顔の女の先生だった。

厚木「お待たせしました〜、新聞部顧問の厚木です。 えーと、今朝から出回ってる校内新聞の話よね?」
町田「あぁそうだ、書いた奴に一発蹴り入れないと気が済まん!」

町田が既に臨戦態勢って感じで気の弱そうな先生に言う。

厚木「それだけど、アレ書いたのウチじゃないの」
町田「ふざけんな! 餅は餅屋、新聞は新聞部だろ!」
清川「おい町田、落ち着けよ・・・」

その後の厚木先生の話をまとめると、正規の新聞部の活動は月一回に作った真面目な内容の新聞を掲示板に張り出すだけらしい。
それに加え、最近は正規でない校内新聞(以下例の新聞)に関する苦情の対処まで部の活動になりつつあるとのことだった。

清川「新聞部も大変だねぇ・・・」
厚木「生徒会でも犯人探しやってくれてるんだけど、なかなか成果が上がらなくて」
町田「納得行かねぇ」
清川「たしかに勝手にそんなもの配ってたら目立つし怒られないはずが無い」
厚木「それが、毎朝違う人の机に例の新聞が入っているらしいの」
清川「あの、それだけじゃここまで広まるか疑問なんですけど」
厚木「残念だけど、そういうのって面白がって広める人がいるのよ・・・」


(おまけ)

清川「そういや、俺らなんでこんな大事になってる事件を知らなかったんだ?」
町田「作者の都合じゃねぇの?」
清川「もっとそれっぽい答えを考えようぜ、ウチにはスキャンダル好きな奴がたまたま居なかったとか俺らが自分たちの会話に熱中してて気付かなかったとか」
町田「なるほど(笑)」

えーとポンさん、展開が全然別物でごめんなさい。
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/07(火) 12:29:27.36 ID:PjnaKYc0
新人さんが来て賑やかになった、素晴らしい

「なんだこれ、DSのゲームソフト……か?」
フラっと入った中古ゲーム店から帰り
戦利品をホクホク顔で眺めていたら買った覚えが無いゲームが出てきた。
どうやらカバンの中にいつの間にか紛れ込んでいたらしい。
「えーっと、タイトルは……『にょたプラス』?」
ラ○プラスのパクリ同人ゲーか?と起動してみる。
セーブデータ……『恋人になってから1日目:佐藤陽子』
驚いた。まさか先日女体化してしまった親友の名前が出てくるなんて。
興味をそそられスタートボタンを押して見る……が、
流石にキャラクターの容姿までは一致していない。
「ま、そりゃそうだよな」
その勢いで3日目まで進めてみる。
うむ、にょたプラスと掲げるだけあってとてもにょたにょたしい。
自室では主人公の事を想いつつ、
いざ呼び出されると「オレはオトコなんだよ!」と突っぱねるとかもうね。
主人公にみつあみ似合うカモとか言われて、
恥ずかしげにクネクネするアイツの名前のヒロインに苦笑しつつセーブして終了。
コレは明日見せてやらねばな〜、なんて呑気に考えていたんだ。

翌日みつあみにしてきたアイツに会うまでは。
746 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/09/07(火) 19:10:06.86 ID:kd1ADNQ0
適当に話合わせます。

「……つまりここは正規の新聞部じゃなかったと。」
「いいえ、ここは「新」新聞部よ!あのクソマジメな本家に嫌気がさしたから、新新聞部として独立したのよ。」
話が長いので後は割愛する。
つまり真面目に行事のお知らせなどしかしない本家がイヤになり、新しく人を集めて再結成したらしい。
どうりで聞いたことないと思った。
「この部室は?」
「物置よ。もはや管理すらされてないから、勝手に使わせてもらってるの。いいでしょ。」
ますます危なそうじゃないか。バレたら怒られるかもしれないし、そもそも部活じゃない。
しかし、部長のこの言葉に俺はこう返すしかなかった。
「じゃあよろしくね、客寄せパンダちゃん。」
あちらには脅しの武器があるからだ。
「これからよろしく、部長さん。」
こうしてデマと真実と胡散臭さにまみれた、女としての生活が始まった。
747 :ぽん ◆0hSLdgVuAc :2010/09/07(火) 19:22:00.29 ID:kd1ADNQ0
おまけ

優「新聞部に入ったはずなのに、偽物だったってどういうこと?」
俺「いやそれは……無理にクロスしようとしたらこんなことになっちゃって……」
優「そもそも部活に入る予定なんかなかったのに勝手に詰め込まないでよ!」
俺「悪かったってほんとに。まあここから題名は「新」聞部にしちゃうし、もういまさら怒っても……」
優「バカっ!」

題名:「新」聞部
優「決めるなぁ〜(泣)」
748 :今日のバーーローー:犯人から電話 [sage]:2010/09/09(木) 00:54:19.90 ID:0ICz3vw0
        *'``・* 。
        |     `*。
       ,。∩      *    もっと賑やかにな〜れ
      + (´・ω・`) *。+゚
      `*。 ヽ、  つ *゚*
       `・+。*・' ゚⊃ +゚
       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・ ゚
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/13(月) 22:52:56.74 ID:yyHWjcgo
久々に書いてみた

リハビリがてらの投下なので、駄文です……
750 :久々投下1/2 ◆yhNqGdIG7M [sage]:2010/09/13(月) 22:56:27.73 ID:yyHWjcgo
9月だっていうのに、まだまだ暑い日が続く。
たまにお天道様がお休みして過ごしやすい日もあるけれど、今日は元気に顔を出している。
今年は頑張り過ぎだよ……

「ねー、帽子買ってよ」
「この前買ったばっかりでしょ?」

ふらっと立ち寄ったお店に、気になっていた帽子が置いてある。
一緒に買い物をしている母親におねだりをしてみるが、予想通りの答えが返ってきた。

「買ったばっかりって、あの帽子はもう被れないの」
「被れないって……ああ、そういえばそうだったね」
「そうだったねって……それくらい覚えておいてよ」
「ごめんごめん。でもこれでいいの?」
「これでいいよ、前から気になっていたしね」

購入すると同時に被ってみる。
少しぶかぶかかもしれないけれど、まあいいか。

「……でもアンタも女の子になったんだから、女の子らしい格好をしなさいよ」

ショーウインドウで自分の格好を映し出している自分に対してため息をつく母親。
別にいいじゃんとぶっきらぼうに答え、ぶうと顔を膨らませる。

「そんな顔しないの。せっかくの可愛い顔が台無しよ」
「うっさい、好きでこんな風になったんじゃないし」
「まあ、お母さんは可愛い娘が欲しかったから、丁度よかったんだけれどね」
「親父は号泣したけど?」
「いつものことだから大丈夫よ」
「大丈夫って……強いね、お母さんは」
751 :久々投下2/2 ◆yhNqGdIG7M [sage]:2010/09/13(月) 22:57:07.17 ID:yyHWjcgo
自分の言葉を待ってましたと言わんばかりに、鼻息を荒くする。
ふふふ、と不気味な笑みを浮かべている。

「じゃじゃーん、だって私、元男だもーん」

そう言うと母親は顔の皮をべりべりと引き剥がす。
皮の下にはガテン系のごつい男の顔があり、ほっそりとしたその体にそれは思いっきり違和感があった。
それを見た瞬間、自分の中に電撃が走る。
頭がぐるぐる回ってきて、ふわふわとした不思議な感覚に包まれる。

−−−−
−−−
−−


「ハッ!」

ハッとした。
内容が帽子だけにハッとした。
大事なことなので2回言いました。
すいませんでした。

びくんと体が浮き上がり、机に置いてあったものが床に散らばる。
涎で腕がべたべたしており、教科書がいい感じでふやけていた。

「なんだ……夢か……」

夢落ちでした。
さらにすいませんでした。

−−−−

これで終わりです
もうどう書けばいいか忘れてしまいました

生暖かい目で見守ってくださいorz
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/14(火) 00:16:11.54 ID:tTx/DEw0
GJ!
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/22(水) 01:58:52.64 ID:NseCrFco
ここもずいぶん寂しくなったな・・・
754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/22(水) 01:59:45.61 ID:SmuHCMEo
駄作ばかりだしな
755 :※初(ry ◆BbCzJ9oVbU [sage]:2010/09/22(水) 06:52:53.94 ID:YDqeGPw0
話が上手い来ないかねぇ。
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/22(水) 22:42:09.65 ID:zhSnn.AO
なにこのとうかしにくいふんいき
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/23(木) 00:12:52.11 ID:EN6G5po0
気にせず投下待ってます
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/23(木) 09:53:52.47 ID:L0elUU.o
おいでおいで〜
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/23(木) 23:32:55.27 ID:VL0.gLoo
こっちゃこ〜い・・・こっちゃこ〜い・・・
760 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:34:07.38 ID:fvEBAIAO

 【赤羽根探偵と奇妙な数日-4日目朝1-】


 "『異対委の役員死亡、どうなる新法審議』


 ―――先週の金曜日未明、新宿三丁目のアパートにて発生した火災の際、焼死体で発見された身元不明の男性が、厚労省の異性化疾患対策委員会の役員であることが警視庁の調べで明らかとなった。
 死因は、焼死と見られていたが解剖の結果、銃殺と判明。
 被害者の遺留品や凶器が現場から発見されていないことを含め、警察は強盗放火殺人事件として調べを進めている。
 昨今、新法の審議を巡り世間から注目を集めている、異対委の役員が殺害されたことを受け、同委員の長を代理で務めている神代 宗氏は報道陣を前に
「誠に遺憾であります。警察には一刻も早い事件解決を求めます」―――とコメントするに留まった。
 過去に異性化疾患に関する暴露本を出版し、世間の注視を集めたことも記憶に新しい神代氏。
 今回の報道を受け、大胆かつ実直な政界のサラブレッドと謳われた同氏でも、流石に疲労と困惑の色は隠せないようだ。"



 ―――誰か噛み砕いた訳にしてくれ、日本語じゃねぇよ……これ。

 記事にも載ってた神代サンの暴露本以来久しぶりの睨み合いは、活字の勝利で終わりを告げようとしていた。

「なぁに難しい顔して似合わないモノ読んでるかな」

 さっきコンビニでスポーツドリンクと一緒に買った新聞を眺めていると、後ろからハネたようなソプラノの声がした。
 ……似合わないというのは承知の上だが、本人に向かって言うかフツー?

「おはよー、健全な青少年くんっ」

 振り返ると、いつもの青いリボンで結った短めのポニーテールが映る。

「よ、よぉ」

 視線を少しだけ下に向けると、砕けた様子で笑う、るいの姿があった。
 ……珍しい、今日は初紀は一緒じゃねぇのか?

「今日から、初紀ちゃんとは別登校なんだよ〜」
「そうなのか。って……別になんも言ってないだろ」
「あははっ、ひーちゃんってば目が正直だし、お喋りだから分かりやすいんだよね」

 左脇に抱えた新聞の表現を借りるなら、ダテに"政界のサラブレッド"の下で働いていないらしい。
761 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:36:36.97 ID:fvEBAIAO

 ………。

 それにしても、珍しいコトもあるもんだ。
 "仕事"にかまけて初紀にべったりな奴が、一人で登校するなんて。様子を見る限りじゃ、初紀とケンカしたって訳じゃなさそうだが……。

「そ、そんなに見つめると照れちゃうよ……」
「わ、悪いっ」

 自身を抱くようなポーズをとりながら、顔を赤らめるるい。凹凸がはっきりとしている身体のラインについ目が……

「……ひーちゃんの、えっち」
「っ」

 ……っ、ヤバい。
 思わず下半身が漲るところだった。
 ……と、とりあえず、流れていく雲にでも視線を向けて、心と下半身を落ち着かせろ、俺、可及的速やかにだ―――。

「―――……ぷっ、あっはははっ! おっかしー!
 相変わらず純情だね、ひーちゃん! おねーさん安心したよっ!」

 俺の内心なんか露知らずと言わんばかりに、るいはくびれた腹を抱えた。……なんか、今、すげーバカにされた気がする。

「あはっ、ごめんごめん、お詫びに……ちゅーしてあげよっか?」
「ち……!?」

 人通りも多い通学路でなんつー破廉恥なことを耳打ちしてくるんだっ!?

「あははっ、冗談だよ、じょーだん」
「……」

 軽くウインクをしながら可愛らしく笑うもんだから、なんか怒るに怒れない。
 つーか……なんで朝っぱらからこんなテンション高いんだ?

「ひーちゃんから定期的に純情成分を補給しないと、やっぱり生活にハリが出ないねっ」
「ヒトを化粧水みてーに言うなっつーの!」

 理不尽だ。なんでこんなにも、俺だけ慌てふためかなきゃなんねぇんだろう。
 ……言わずもがな惚れた弱みだろうな、十中八九。
 そんな俺の心境を、知ってか知らずかるいは、誰もが元の性別を悟ることが困難な悪戯っぽい笑顔を向けてくる。

「くすっ、ひーちゃんは、そうじゃなきゃ」
「……ヒトをからかって楽しいかよ?」
「うんっ」

 楽しそうに即答すんなっつの。

「だって赤羽根さんなんか、何しても無気力な返事しか返ってこないから、つまんないし」

 るいは不貞るように言って、不満そうに口を尖らせた。
762 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:37:43.05 ID:fvEBAIAO

「赤羽根……? あぁ、あの口の悪ぃ探偵サンか」
「うん、でも、ひーちゃんが言えたコトじゃないと思う」

 放っといてくれ。

「……そういやぁ、確かあの人の妹が転入してくるんだっけか」
「ありゃ? よく知ってるね」
「その赤羽根サンから、よろしく頼まれたからな―――」

 兄がああなら妹の性格は柔和するもんだと、自身の経験則から勝手に想像していたが、例外は存在するらしい。

「―――そう考えると今月は転入生ラッシュだな」
「そーぉ?」

 キョトンとした顔で、るいは首を傾げてみせた。

「そうだろ。
 この前にウチのクラスに転入してきた"佐伯"ってヤツを含めて"三人"だぜ?」
「三人? その子―――佐伯さん―――と、なのちゃんの二人じゃなくて?」
「もう一人居るんだとさ。三人ともすげー可愛いってウワサがクラスで持ちきりなってる」

 件の転入生の内、二人は顔を知っている。
 その内の片方は――今から考えたら俺のバカげた行動のせいで――遠目からでしかその姿を見たことはねえけど、確かに顔立ちは整っているような印象を受けた。

 探偵サンの妹は年齢の割に大人びていて、言うなれば同性異性を問わず、人気が出そうな雰囲気を身に纏っている。
 まだ直接話したことは無いから断言は避けるが、あれで人当たりが良かったら、一部の女子連中が"お姉さま"とか言い出しかねない。

 ――佐伯 琴夜は、なんつーか、つかみ所がない奴だ。
 彼女が転入してから何週間か経つが、既存の生徒から転入生に向けられる興味の視線を気にする様子すら見られないし、
 来るもの拒まず去るもの追わず精神の持ち主なのか、特定の誰かと仲良くする訳でもない。
 間延びしたような喋り方と、自分が興味を示したものをところ構わず携帯で撮影する癖のせいで、クラスの連中の評価は二分化している。
 主観的に言わせて貰えるのなら、苦手な部類だ。
 佐伯と十秒間会話しただけで、えもいわれぬフラストレーションが溜まる。
763 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:39:29.70 ID:fvEBAIAO

「ふぅん……?」

 ……何かの地雷を踏んだのか、るいは右手の人差し指を唇に当てがいながら、細い目で俺を一瞥してきた。

「他のコのコト、そんな気になるんだぁ?」

そこに普段よりトーンの高い大袈裟な声色も付け足される。

「ち、ちげーよっ!」

 事実無根……の筈なのに、るいに凝視されると反射的に言葉に詰まっちまうのはなんでだ畜生。

「クラスに居たらそーいうウワサはイヤでも聞こえて来るんだっつの―――!」
「―――別にいいんだよ? 私だって気持ちは分かるもん。男のコが可愛い女のコを気にしたってさ……うん」

 故意と、無意識。
 その、どちらとも取れるような憂いた顔から乾いた笑みを向けられて……心臓が高鳴った気がした。
 純粋に、その憂いを帯びたるいの笑顔が綺麗だったからか、俺が答えを先延ばしにしている罪悪感からか、あるいはどっちもか。

「……なーんてねっ」

 居心地の悪い心音に言葉を詰まらせている俺を見かねたんだろう。
 るいは取り繕うように破顔してから、まるで、ダンスの振り付けのようにくるりと背を向ける。
 遠心力に従ってふわりと跳ねる短めのポニーテールが、やけにしょぼくれて見えた。

「……なぁ」

 繋ぐ言葉も見当たらないまま、いつもよりも小さく見える彼女の後ろ姿に声を掛けた。
 でも、るいは、振り向かない。

「その……何かあった―――」

 自分でも苦笑しそうなほど白々しい言葉を寸でのところで飲み下す。
 るいの愛用してる鞄に盗聴器が仕掛けられた直後だってのに……"何も無い"なんて言わせるつもりなのか?

 ……バカか、俺?!
764 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:42:18.10 ID:fvEBAIAO

「―――ちょ、タンマ、今の無し!」
「……ほぇ?」

 唐突且つ無拍子なリテイクに、会話が再び止まる。他に登校してる学生やら、これから仕事場に向かうサラリーマン達からしたら、俺達は奇妙に見えたと思う。……互いが互いに、戸惑い、考え、悩んでいることなんか知らねぇんだから。

「……ぷっ、ふふっ、ひーちゃんってばおっかしーんだぁ!」

 その、他人から見たら空白にしか見えない珍妙な無言の間に耐えきれず、吹き出す、るい。

「〜〜〜っ、しょーがねぇだろっ、適当なワードが見当たらなかったんだっつの!!
 ……だから笑うなっ!!」
「いや、ごめん、無理っ! ぷっ、くくく……」

 るいは心底愉快そうに、俯き、身体中を震わせ、笑って―――
 ―――……笑ってんのか?

「るい……?」
「……っく、くくっ、……あーすっきりしたっ」

 嗚咽なのか嘲笑なのかも分からない声を一仕切りあげたるいは、再び俺から背を向けて大きく伸びをする。

 ―――すっきりしたなら、なんで俺から目を逸らすんだよ? なんで指で目ぇ擦ってんだよ……?

「………ねー、ひーちゃん?」

 背を向けたままの水向けに、とっさの言葉が出なかった俺を責める訳でもなく、るいは曇天を仰ぐ。


「死亡フラグ、立ててもいい?」
「………は?」


 あまりに突拍子も無い、本気とも冗談とも取れる言葉に、俺は一音のリアクションしか返せなかった。

 その戸惑いの一音をイエスと解釈したのか、るいはふわりと振り向き、その持ち前のポニーテールを逆さに垂らす。


 ……るいの様子が尋常ではないことを頭よりもカラダが悟った。
 肌がざわつき、口が乾き、顔が熱くなる。

 ―――……ワケがわかんねぇぞ、おい。

 ―――なんだよ、なんなんだっつのっ!?

「……楽しかった。
 キミに会えて、初紀ちゃんに会えて、この数ヶ月、すっごい私は幸せでした。
 ホント、ありがとう」
765 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:43:18.65 ID:fvEBAIAO

 イヤな予感しかしなかった。

 以前のゴタゴタのように、るいが両親の居る海外に連れ戻されるなんて生易しいモンじゃなくて。
 もっと、こう……直接的な何かだ。
 なんて表現すればいい……?
 ………。
 ………バカ言うな、るいは……とっくに答えを出しただろーが!



 『死亡フラグ』って。



 日常では冗句混じりにしか使わない言葉なのに、それに寒気を覚えざるを得ないって、どういう状況だっつの!?

「っ、はは……っ、ワケ、わかんねぇよ」

 笑っていたのは声と膝だけだった。
 ………十秒もしない内に、それも意図しない笑いだけになる。
 それが、るいに聞こえているのかは定かじゃないが……彼女は踵を返しながら頭を上げ、また曇天を見上げた。

「……私が、もっと"男の子"だったら。
 もっとキチンと伝えられたのかな」

 言い得て妙な言い回しでるいは呟く。
 多分、それは俺みたいな男には、知る由もない感覚。
 共感することを許さない見えない壁が、俺とるいとの間に横たわったような気がした。

「………それでね、お願いがあるんだけど、いいかな?」
「あ、あぁ、……いいぜ」

 背を向けたままのるいの問いに、安易に答えたのは、平たく言えば失敗だった。
 ……膝の笑いを誤魔化したくて、苦し紛れに嘯きに返ってきた言葉は―――。

「もう、私に――――――で」
「…………へ?」
「聞こえなかったかな。

 もう、私に近寄らないで欲しいんだ」

 ―――強い拒絶だった。

766 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:47:33.42 ID:fvEBAIAO

 イヤな予感しかしなかった。

 以前のゴタゴタのように、るいが両親の居る海外に連れ戻されるなんて生易しいモンじゃなくて。
 もっと、こう……直接的な何かだ。
 なんて表現すればいい……?
 ………。
 ………バカ言うな、るいは……とっくに答えを出しただろーが!



 『死亡フラグ』って。



 日常では冗句混じりにしか使わない言葉なのに、それに寒気を覚えざるを得ないって、どういう状況だっつの!?

「っ、はは……っ、ワケ、わかんねぇよ」

 笑っていたのは声と膝だけだった。
 ………十秒もしない内に、それも意図しない笑いだけになる。
 それが、るいに聞こえているのかは定かじゃないが……彼女は踵を返しながら頭を上げ、また曇天を見上げた。

「……私が、もっと"男の子"だったら。
 もっとキチンと伝えられたのかな」

 言い得て妙な言い回しでるいは呟く。
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/24(金) 02:48:36.77 ID:fvEBAIAO
>>766は脳内あぼーんでお願いしますorz
768 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:49:57.02 ID:fvEBAIAO

「……ねっ?」

 また、るいは笑う。

 見たことがない……いや、たった一度だけ見たことがある笑みだった。
 普段浮かべるような悪戯めいたものでも、自嘲するような乾いたものでもない。

「じゃ、ね、ひーちゃん……よろしくね」

 いつもと変わらないようで、いつもと全く違う表情を作ってみせると、るいは……直ぐさまに走り去る。

「…………っ」

 俺は、その後を追い掛けた、いや……追い掛けようとした。

「―――よ、学ランクン」

 ……不意に後ろから呼び止められたりさえしなければ。るいを見失うこともなかったのに。
769 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:52:06.86 ID:fvEBAIAO
―――――
―――
――

 なんで俺、一周り弱も年下のガキに、振り返り様に睨みつけられなきゃなんねぇんだ? なんかしたっけか?
 まぁ、ンなことでは俺の防御力は下がらねぇがな。

「……おはよ、陸」

 道案内役として駅で合流した初紀嬢ちゃんが普段よりも低いトーンで学ランに声を掛けた。
 そのテンションに負けず劣らずの溜め息を吐きながら、斑な茶髪少年は―――

「……おう」

 ―――とだけ返す。
 ……学ランは、他にも何か初紀嬢ちゃんに言いたいことがあるような面をしているし、初紀嬢ちゃんは初紀嬢ちゃんで苦虫を噛み潰したような渋い面のまま何も語ろうとはしねぇし……。
 部外者の俺は居心地が悪いことこの上ない。
 多分、名佳も同じだろう。
 気まずそうに萎縮してながら、初見である学ランと初紀嬢ちゃんを交互に見ている。

 ……もしかして、嬢ちゃん絡みで何かあったのか? 俺や警察が嬢ちゃんを犯人として疑ったことを伝えた昨日の今日だ、その可能性は大いにある。
 が。
 ……それにしたって妙な話だ。
 嬢ちゃんは、事件発生時から警察の疑いが自分に向けられていることに気付いてる。
 今更、わざわざ友人と距離を空けるっつーのもオカシな話だ。
 仮に嬢ちゃんが犯人だとして、逃げる算段を目論んでいたとしても、行動に移すまでが遅すぎる。
 アタマの回転が早い嬢ちゃんなら尚更―――。

「……あの」

 ―――不意に、沈黙に耐えかねたように名佳が口を開いた。

「……一応、初めまして」

 次いで、おずおずと斑な茶髪の学ラン少年に向かって頭を下げる名佳。
 "一応"と付け足したのは、学ランとの顔合わせ自体は初めてでは無いからだろう。
 嬢ちゃんの鞄に盗聴器が仕掛けられていた事件が発覚する―――その少し前にお互いに顔は見知ってるんだからな。

「今日から一緒の高校に通う、あ、赤羽根……名佳です。よろしく、お願いします。……えと、学ランさん」

 素直に俺が付けたあだ名を復唱し、丁寧に自己紹介をする名佳の―――妙なとこだけで発揮される―――天然さが可笑しくて吹き出しそうになった。
770 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:54:31.66 ID:fvEBAIAO

「アンタ、自分の妹に何教えてンスか?」

 と、俺への低い声での非難があった上で―――

「―――陸」
「え?」
「前田 陸。大陸の"陸"って書いて"ひとし"って読む。間違っても、アンタの兄さんみてーな呼び方はしないでくれ」

 ぶっきらぼうに名佳から視線を外しながら学ランは言った。

「仕様が無ぇだろ、名前に特徴ねぇンだから」
「……だからといって"学ラン"ってあだ名もどうかと思うンスけど」

 テンション低いクセに、いちいちうるせーなこの学ラン。

「んじゃ、"プリン"とか"マダーラ"とか呼んでやろうか?」
「……名前で呼んでくれっつっても無駄なンスね」

 半ば諦めた風に、学ランは俯いた。

「……前々から思ってたけどさ、ネーミングセンスないよな、アンタって」

 俺にだけ聞こえるようなトーンで名佳が呆れたように呟く。自分の仮の名付け親と同格同列な風に言うんじゃねーよ。

「……ん?」

 ふと、学ランの左脇に抱えられた高校生には似合わないモンに目が行く。……新聞だ。無彩色なところを見る限りだと、スポーツ紙じゃない。
 昨日の朝、バスロータリーで会った時にはそんな高尚なモンを持ち合わせちゃいなかった筈だが。

「……読みます?」

 っと、俺もまだまだ未熟だな。こんなバカそうなガキに思考を読まれるなんて。

「いや、いい」

 差し出された新聞の見出しだけで内容は大体伝わったからな。
 学ランは少し不服そうな顔をしてから、視線の矛先を名佳に向ける。

「……"赤羽根 なのか"っつったっけ?」
「は、はい」
「……疲れねぇ?」
「……えっ?」

 学ランの意図の汲み取れない言葉に俺を含む一同がキョトンとした。
 その一瞬の間も意に介することなく、学ランは斑な後頭部を掻きながら、少し気まずそうに話を続ける。

「初紀達は気を遣ってか何も言わねーし、身内である探偵サンは勿論黙ってるけどよ―――その、アンタも、元男だろ?」
「っ!」
771 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:56:24.24 ID:fvEBAIAO

 ………こいつぁ驚きだ。

 俺が学ランと初めて接触した時には、名佳が異性化疾患に掛かった人間だということは伏せていたし、
 学ランの口振りを聞く限りじゃ、二人の嬢ちゃんから何かしらの前情報を貰った―――ってワケでもなさそうなのにも拘わらず、こいつは……名佳の正体をあっさり見破りやがった。
 事情を知ってる人間は全員、思わず言葉を失っちまってた。
 これじゃ暗にハイって言ってるようなモンじゃねーか。

「……俺の勘違いだっつーんなら殴ってくれ」

 ただ、学ランの中での確信はないらしい。
 変に情報が漏れて、後手に回ることを考えたら、俺が学ランを殴っとくべきかもしれないが。

「なんで……なんで、わかったんだよ……?!」

 それも一足遅かったみたいだ。
 俺と出会った時のような無防備な状態ならいざ知らず、
 入念な準備をした現段階で、正体を赤の他人である学ランに見破られたのは名佳としてもショックだったのかもしれねぇが……。
 ……それにしたって白状するのが早すぎねぇか? こりゃ、名佳が警察で尋問されたらひとたまりもねぇぞ……。
 ……でも、ま、学ランが名佳の正体を見破った切欠は気になるトコだし、俺は黙って会話の顛末を見守ることにした。

「……勘っつーか、なんつーか」

 期待外れの回答に俺達兄妹は盛大につんのめっちまった。

「う、嘘だろ……?」
「勘だけで、そこまでハッキリと断定した言い方が出来るかっつの!」
「あ、いや、その、所々で『あれ?』って思っただけッス」

 学ランの中でどういった理論が構築されてんのか読めない。多分、第六感的なモンもあったんだろーが……それだけで核心に迫るとは到底思えねぇし。

「……ねぇ、陸。最初になのかちゃんに違和感を感じたのはいつだったか、覚えてる?」

 付き合いが長いのか、初紀嬢ちゃんから助け舟が出る。

「初っ端からだよ。初めて……その、……探偵サンの妹サン―――」
「―――呼び捨てでいい」

 いきなり鍍金が剥がされたのか余程ショックだったのか、名佳は拗ねるように横槍を入れる。
772 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:57:48.42 ID:fvEBAIAO

「―――その、赤羽根が委員会に居た時から変な感じはした」

 "呼び捨てで良い"と言われ、何故俺と混同するかもしれない苗字を選んだのかは……この際、言及しないでおこう。
 
 ……漸く合点がいったとこでもあるしな。

「俺が名佳を連れて委員会を訪れたあの日、俺は学ランと初紀嬢ちゃんを見掛けて異性化疾患に何かしら関係する人間だと当たりを付けた。
 学ランも同じタイミングで同じようなことを考えてたワケか」

 尤も、その違和感の正体にまで学ランは気付いちゃいなかったみたいだが。

「……まぁ、そんなとこッス。後はちょこちょことした違和感が積み重なって、もしかしたらって……」

 人を勘ぐることが好きではないのか、学ランは気まずそうに目をアスファルトに向ける。

「―――赤羽根が、どんな理由があって隠してたのかは知らねーし、別に無理に暴くつもりもねーけどよ。
 ……あんま無理すんなよ」

 よくもまぁ、邪な心なしにそんな台詞が吐けるもんだなこの学ラン。……流石、恋愛天然記念物ってトコか?
 だが。

「……大きなお世話だ」

 名佳が、そっぽを向いて呟いた。
 思わず空を仰ぐ……何か雲行きが怪しくなってきていた。

「そうやって善人ぶって、アンタは何がしたいんだよ?」
「っ」
「……あか……"兄さん"が何て言ったか知らないけど、うざったいんだよ」

 オイ、今危うく、兄妹の秘密までバラしそうだったぞ。

「もっとハッキリ言わなきゃわかんないか? 訳知り顔で他人に気を遣ってるフリをして、自分に酔ってるようにしか見えないんだよっ、アンタは!」

 何故、名佳は学ランにこうも突っかかるんだろうか。
 学ランも学ランで、なんで何も言い返しもしねぇンだ……?

「"無理するな"?
 "疲れるだろ"?
 分かったような口を利くなよっ、どうせお前は―――!」「―――なのかちゃんっ!」

 水を打ったような静けさが、広がる。
773 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:58:58.92 ID:fvEBAIAO

 ……名佳の怒りに任せた口撃を遮ったのは、初紀嬢ちゃんだった。
 流石に、家で空手を嗜む者ということもあってか直接名佳に手出しはしなかったものの、音で殴られたような錯覚に陥りかねない声量で訴えた。

「……ごめんなさい、赤羽根さん、なのかちゃん」

 しばしあってから、何故か、初紀嬢ちゃんが頭を下げた。
 容赦なく名佳の口撃を浴びた学ランも、下を向いたまんま黙っているだけで、名佳を責めるようなコトはしなかった。

「―――悪い、先に行くわ。
 行くぞ、名佳」
「………っ」

 努めて何事も無かったように言い、俺は名佳の左手を取る。
 微弱な抵抗はしたものの、この場に留まるよりはマシと判断したんだろう。抵抗を止め、妹は沃(そそく)さと俺と共に歩き出した。

 その時、学ランが背後で言ってた言葉が妙に気になった。

『本当の意味で理解出来てたら、苦労なんざしねぇよ』

 ……世の中、異性化疾患になってもならなくても、苦労っつーモンは付いて回るコトを、体現したような言葉だった。

774 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 02:59:50.03 ID:fvEBAIAO



「――――で。
 なんでわざわざ、波風立てるようなコトを言ったンだ?」
「……わからない」

 俺の手から離れ、右隣をトボトボと歩く名佳は虚ろに言った。
 さっきまで学ランに対して烈火の如くキレてたのが嘘みたいな消沈っぷりだ。

「単にヤンキーまがいな格好が嫌いだったんじゃねーのか?」
「……」

 あの切れ長の目と斑な茶髪とか見る限りじゃ誤解されかねねぇが、悪い奴ではないンだろうな。
 でなければ、わざわざロリコン官僚に付き合って委員会の本部にまで出向き、"被験者"なんて面倒なことはしねぇだろうし。
 その辺りの知識は公共に出回ってねぇから、名佳が知る由もないのは、まぁ、当然といえば当然だが。

「……ごめん、嘘ついた」
「なにがだよ」
「前田 陸にあんなこと言った理由。本当は分かってた」
「……そんじゃ、参考までに訊こうか」

 それから数秒、名佳の躊躇うように口元を右手で覆ってから、大仰に溜め息吐いた後に―――

「……嫉妬だよ」

 ―――嫌悪感を全面に押し出すように呟いた。……その嫌悪の対象が誰なのかまでは分からないが。

「嫉妬?」

 振り幅の小さい首肯が返ってくる。

「……アイツからは、焦燥感が感じられなかった。
 ……多分、御堂さんか坂城さんを相手に、もしくは……"青色通知"だっけ?
 その、いずれかで"予防した"んだろ」

 "青色通知"、ね。
 名佳が来る以前は、委員会から受け持ってたメインどころの仕事だったワケだが、こうして名佳からその単語聞くと酷く懐かしく思えた。

「……要するにアイツ自身は、もう発病する心配なんて無いじゃないか」

 ―――だから嫉妬か。

775 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 03:02:10.37 ID:fvEBAIAO

「その、優越感に浸られた。少なくともオレはそう感じた。
 その証拠に……アイツは御堂さんが止めてからも何も言い返さなかったじゃないか」

 苦々しく吐き捨てる名佳を見て、人間のコミュニケーションの本質を垣間見た気がした。
 なるほど……コミュニケーションに一切の打算が無くなると、こういうコトになるワケか。

「……そんで?
 その一連の学ランクンにふっかけた行動には、これから、自分が、より安全に、学校生活を送る上で、どんなメリットがあったンだかな?」
「っ………」

 意地悪く語意を粒立てて言ってやる。
 それは、遠回しに自分の首を絞めたことになってるんだと、思い知るキッカケになればいい、と。

 だが、妹は返事をしなかった。

 代わりに、俺にとってはノスタルジックな予鈴の音が鳴り響いてただけだった。

――――――
――――
――
776 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 03:04:41.18 ID:fvEBAIAO


 赤羽根サンの言うことは尤もな意見の筈なのに、何故かオレは素直に聞き入れることが出来なかった。

 ……ただ、単なる醜い嫉妬のせいだと言い聞かせる自分と、アイツ―――前田 陸―――が悪いんだと思う自分がせめぎ合って、息苦しくて仕方がない。

 一人じゃどうしようもない境遇に諦めをつけようとしていたオレの前に、何の不自由もなく元来の性別を享受しているアイツが現れたのが、悪いんだ。

 男としての快楽、悦楽を味わったことのない……髪の毛から爪先までコンプレックスの塊に成り果てたオレからしたら、あんな言葉限りの気遣いなんて……単なる辱めだ。

 確かに、あの時はそう思った。

 でも、もしも……これを切欠にオレが異性化疾患を発病した元男だとクラスにバレたら?
 ……下手をしたら、今まで事情を知るみんなが積み上げてきたものが無駄になるかもしれない。
 何のために恥を忍んで女の格好をして、坂城さん達から女の子講座を受け、学校転入したのか分からないじゃないか……!
 朝方に決意した事が、限りなく無駄になってしまうことを……オレはやらかしたんだ。
 ………なのに、赤羽根サンは特別オレを責めようとはしなかった。
 愛想を尽かされた訳でもなく、至って普通にオレの横に居てくれた。

 ………それだけが、唯一の救いだった。

「……佳……名佳っ!」
「っ」

 気がつくと、怪訝そうな顔で俺の見つめる赤羽根サンが居た。
 辺りを見やると、そこはこれから少なくとも数日間は世話になるだろう高校の正門前だった。

「なぁに呆けてんだ。行くぞ」
「あ、ああ」
「……言葉遣い」
「う、ん……」

 赤羽根サンから咎められても、スイッチが錆び付いた電灯みたいに、上手く口調の切り替えることが出来ない。
 まずい、しっかり……しっかりしないと。

「とりあえず、さっきの学ランとのやりとりは忘れろ」

 目線を校舎に移しながら、赤羽根サンは呟くように言った。
 つられてオレも校舎の方に目線を移すと、陸上部らしきジャージ姿の男女が各々、リラックスした雰囲気で昇降口に向かっているところだった。
777 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 03:07:57.49 ID:fvEBAIAO

「……難しい注文だよ、それ」

 乾いた笑いしか出なかった。
 忘れようと意識するなんて、思い出すのと、ほぼ同義じゃないか。

「そうかもな」

 愛用だという帽子の縁を軽く叩きながら、しばらく考えた後に赤羽根サンは―――

「そンじゃあ……今日の昼飯に、購買で何買うかでも考えてろ」

 ―――と言ってきた。

「なにそれ」
「いーから」
「う、ん………わかった」
「……何買うか当ててやろうか?」
「そんなの無理だって」
「やってもいねぇのに無理とか言うなよ」
「……じゃあ当ててみてよ」
「コーヒー牛乳」
「…………っ」

 ……問題も間違っていないし、確かに当たっていたけど、なんだか凄い腑に落ちない気分になる。
 そんなの、オレがこの数日間、コンビニでいつも買ってたのを見てただけじゃないか。

「んじゃ、行くか」

 さっきの回答が合ってるのかどうかも確認せずに、赤羽根さんは正門をくぐる。
 まったく……呆れるのを通り越して笑うしか出来ないじゃないか。
 オレは、ダラダラと歩く赤羽根サンの後ろをついていった。


「―――おはようございます。本日より貴校に転入することになりました、赤羽根 名佳の保護者です。担任の先生はいらっしゃいますか?」

 赤羽根サンの似非爽やかなアルカイックスマイルが来賓兼職員用通用口の受付で炸裂する。この探偵の素を知ってるオレからすると……不気味の一言に尽きる。

「はい、少々お待ち下さい」

 ―――ンだよ?

 ―――別に。

 慇懃無礼な事務員が奥の内線電話に向かうのを確認してから、目配せで兄とそういった意味合いのやり取りをしていると―――
 ―――脇の廊下に居る女子生徒が目に映った。
 後ろ姿しか見えないけれど、あの背丈と青いリボンで結った短いポニーテールは……。
778 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 03:08:38.45 ID:fvEBAIAO

「坂城さ―――んぐっ!!?」
(騒ぐなっつの)

 ただ彼女に声を掛けようとしただけなのに、ゴツゴツとした大きな掌がオレの口元を塞ぐ。

「んーっ!」

 くそっ、何するんだよ、このバカ兄貴はっ!?

(嬢ちゃんが、何のためにわざわざ自分に疑いが向くようにしてンのか分からねーのか?)
「……っ?」

 掌が離れて、新鮮な空気に触れた口元がひんやりとした。
 再び坂城さんらしき後ろ姿が居た廊下に目を移したけど、その可愛らしいポニーテールの少女はもう居ない。

「なにする……のっ!?」

 慌てて口調を修正したものだから、変につっかえたような言い方になってしまう。

「言っただろ、嬢ちゃんには近寄るなって」
「でも―――」
「―――何のために、嬢ちゃんがそんな真似してると思ってンだ」
「っ、ど、どういうことだよっ」
「……わからねーなら、その方が都合いいかもな」
「だから、どういう意味―――」「―――お待たせしました」

 ……なんてタイミングの悪さだ。
 オレが赤羽根サンを問い質そうとしていたその瞬間に、内線で連絡を終えた事務員がこっちに戻ってきたのだから。

「"赤羽根 名佳"さんですね。まず担任を紹介しますので、職員室までお願いします」
「「……わかりました」」

 事務員に負けず劣らずの慇懃無礼さを伴った異口同音だった。
 オレはまだ履き慣れない真新しい上履きに、赤羽根サンはサイズの少し小さいスリッパに履き替えて、それぞれ職員室へと向かう。
779 :青色1号 ◆YVw4z7Sf2Y [sage]:2010/09/24(金) 03:16:02.61 ID:fvEBAIAO


 ―――独特の匂いがした職員室にて、担任だという中年の先生と対面した。
 その先生は、オレや赤羽根サンに対して妙に媚び諂っていたような気がする。
 恐らくは、便宜上、あの神代っていう人の親類だということにでもなっているんだろう。

 ……でも、そんなの、どうでも良い。

 ただ、オレは赤羽根サンが言ってたことが気になってた。

『―――何のために、嬢ちゃんがそんな真似してると思ってンだ』

『……わからねーなら、その方が都合いいかもな』

 それが分かれば苦労しないっていうのに、赤羽根サンは意地の悪い言い方しかしない。

 ……自分で考えろってことか?

「―――そういえば、今日はキミとは別にもう一人、転入生が来るんだよ」
「え……?」

 ―――気がつくと担任教師が、オレに話を振っていた。

「珍しい時期の転入生同士、仲良くするといい」

 こちらの意志なんて全く無視した無責任な言葉に少し苛立っていると、示し合わせたかのように、職員室の扉が開く。

「お、ちょうど来たみたいだね」

 ご都合展開のそれよろしく、そこには保護者らしいスーツ姿の男性に連れられた背の小さい女生徒が立っていたが――――

「「……あ」」

 ――――お互いの姿を認めた、その刹那に時間が止まった気がした。
 それは、赤羽根サンも同じだったらしい。


 低い背丈と、可愛らしい童顔とはアンバランスなハニーブラウンの長い髪を拵えた、一見するとオレよりも年下に見えるヒトが、わなわなと震えながらこちらを見ている。

 今、一つだけ疑問を述べるとすれば。

 ―――赤羽根サンとは腐れ縁だという、新宿警察所属の女刑事さんが……何故、オレと同じ制服に身を包んでいるんだろう……?


  【赤羽根探偵と奇妙な数日-4日目朝1-】


 完
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/24(金) 03:16:34.58 ID:i9iuWxso
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/24(金) 03:19:37.65 ID:fvEBAIAO
 主観が変わりまくりです。

 一応、ダッシュ線が主観の切り替わりなので、それを目安にして読んで下さると助かります。
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/24(金) 14:44:05.23 ID:zfw3LiAo
ゴロリンwwwwwwwwww
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/26(日) 01:21:05.46 ID:yrp3p2AO
脳内会議の結果、女体化するタイミングの予測って生理日予測や出産予定日みたいな信頼度じゃないかと結論づけた秋の夜長。

凄く遅くなったけど、まとめてくれてる方、ホントにありがとうです。頭が下がる思いです。
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/27(月) 16:36:00.36 ID:UK3W5t.0
女体化による男女比の不均衡。
旧政権はこれまで女体化候補者への公的補助
(公的な女体化防止施設など)を行ってきたが、目立った成果が出ていなかった。
しかし、世論の圧倒的支持を受けた新政権は違った。
彼らはマニフェストに掲げた「にょた撲滅」を遂行するため、前代未聞な政策に乗り出したのだ。
すなわち、男性性放棄したものはそのまま人権放棄・国賊とみなし『にょたっこは誰でも孕ませおk』。
道徳や良識ブッチぎりな決定に有識者達がこぞって反論するが
その中で無理矢理行われた第一回にょた狩り……サバトの夜を経て彼らの声は消え去った。
ついでに粛清されたのか、それとも彼女達の美しく乱れる様にあてられたのか。
かくして支援団体および当のにょた達は地下に潜り、
守り手を失った少年少女達は、悲劇の渦中へと放り込まれる。
疑念と淫靡に支配される世界で、にょた達の瞳に映るのは絶望か、それとも……。

みたいなえっちぃのよみたいなー
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/27(月) 22:24:55.22 ID:yG5JLiAo
ヒント:言いだしっぺの法則
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/10/07(木) 19:09:05.62 ID:6f4CDqk0
にょたってさ、男の子として失格だから女の子になっちゃったわけでしょ?
つまり子孫繁栄のために変態したってコトになるわけで
だからこそ、男性に種付けしてもらいやすいように、見目麗しい美少女になるわけ。
だけど、もしそんな美少女になっても男性に相手して貰えなかったら?
そうなったら、もうにょた同士で生殖行動を行って子を成すしかないよね?
その場合、どっちが母親なのかな?どっちも母親なのかな?
そもそもどうやって妊娠するのカナ?しちゃうのカナ?

みたいな、そのヘンのとこのちょっとえっちぃお話読みたいなー
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/09(土) 22:54:35.17 ID:dNaJzoSO
ヴァンドレットっていうアニメがあってだな

女だけで子孫繁栄を続けていた惑星があった
遺伝子提供側の女性と出産側の女性とかあったな

逆に男だけってのもあるけど
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:11:24.87 ID:V8.izQAO
>>787
最後の一行やめろwwww
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:37:01.49 ID:xygyZ7so
一番序盤にお前いい体してるな子供つくらないかって軽い感じで言い合ってるシーンがあったな
>ヴァンドレット
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/11(月) 22:04:38.77 ID:ZBC0y2SO
帰ったら子をつくらんか?おぉお前との子か!

みたいな会話だったな


二人とも男だったがな
男は工場で生まれるがな
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/12(火) 22:04:12.92 ID:UASUP6wo
久しぶりに来たんだけど
最近のエロありでオススメの作品教えて
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/13(水) 01:30:09.72 ID:QfHndsAO
最近のって、どれくらい最近だろう?
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/13(水) 22:43:29.03 ID:RMg5HDwo
ここ1年くらい
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/10/26(火) 13:01:26.05 ID:Ga/vXsk0
いきてるかい?
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/26(火) 18:32:01.29 ID:uc/5DXco
さっき心拍戻りました
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/26(火) 18:37:55.79 ID:U7TW0REo
また心肺停止
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/26(火) 19:00:39.59 ID:4WBm7v2o
脳波反応有りません
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/27(水) 12:07:48.95 ID:TS5TOik0
ここまでの連携に30分要らないとか…
てか逝きかけてるー!?
にょたっ娘>>798が膝枕してくれるから頑張るんだ!
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/28(木) 12:08:49.20 ID:oeJ5b9M0
一日経ってレス付いたかとオモタら
間違えて自分にレスしてるはIDがTSだわ…orz

オーケィ、いくらでも膝貸してやるからドンとコイ!
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/28(木) 16:08:16.96 ID:PfYAAdUo
膝枕のしてもらいながら胸揉むし!
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/28(木) 18:27:30.59 ID:aScVogDO
揉めるほどの大きさか…?

でもおっぱいに変わりはない!
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/10/29(金) 12:20:18.41 ID:.s9m.V60
にょたっ娘に膝枕してもらいながら
自分の胸弄っちゃう>>800のプロフェッショナルっぷりに戦慄したッ

>>800「はふ……ね、にょたちゃんも一緒に……」
にょた「>>800ちゃんえっちぃ……でも、膝枕してるからボク動けないよ……」
>>800「じゃぁ、気持ちよくなっちゃうところ見守ってて?」
にょた「う、うん……」

なんだこの俺得シチュ
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/11/11(木) 00:19:15.88 ID:z/nnx82o
>>801
翌日、豊乳機具で乳を大きくしようと頑張ってるにょた娘を発見する>>801だった。
数時間後、鼻から血を流して横たわる>>801の胸部には、おっぱいを大きくする機具がくっついていたとか。いなかったとか
こういう感じでもいいネ!
804 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/21(日) 03:09:51.02 ID:4QMJcp.o
たまには生存確認
805 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sag]:2010/11/23(火) 20:49:36.51 ID:38Jq/Ks0
なにっ
806 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 23:47:07.77 ID:HmrblSQ0
もう過疎とかそういうレベルじゃないとこまで来てる気がするこのスレ
807 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/28(日) 00:40:38.60 ID:xm4ZOqYo
存在していることに意義がある

またいつか浮上してくれるはず…
808 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/29(月) 10:19:37.91 ID:2j.w7Dwo
入り交じり過ぎで過疎化加速
809 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sag]:2010/11/30(火) 12:15:15.53 ID:X0Xysww0
SSスレの宿命すなぁ・・・
810 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/30(火) 14:26:42.02 ID:.UHCN/Qo
1本終わってから別のやつが書きゃいいのに
811 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/06(月) 17:35:00.09 ID:xzfPh2AO
生存確認
812 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/09(木) 08:29:18.33 ID:BtACbwA0
ノシ
813 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 20:27:58.49 ID:2lClGFk0
だれか風邪のせいで女体化するSS書いてくれ
814 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 21:40:54.12 ID:zPiRPgAO
もう女体化の年齢か…
815 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/13(月) 22:44:00.11 ID:YDsXY8s0
816 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 22:47:18.02 ID:Vo4b/nQo
>>814
二回目の
って付け忘れてるぞ
817 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/14(火) 10:44:11.60 ID:Eww/u16o
いや、童貞じゃないし
818 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/14(火) 19:46:31.95 ID:JeobBoQ0
一度目の女体化で美少女に
二度目の女体化で魔法少女になる、というのか
819 :Are you enjoying the time of eve? :2010/12/25(土) 00:37:57.52 ID:f4hRb.o0
とりあえず>>813案を元に書いてみたが……
随分過疎ってるな。どうしよう、駄文だし。多分続かないし。
820 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [sage]:2010/12/25(クリスマス) 05:11:35.93 ID:/Ow8.YAO
投稿するつもりなら応援するよ
821 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/25(クリスマス) 23:53:41.36 ID:f4hRb.o0
じゃあ、投稿。正直駄文、駄作すまん。

 考え事をしていた。
 この先に起こってしまうであろう、出来事について。
 今でなくても、このままではほぼ確実に起きてしまう。
 ――女体化。別に腐女子とかが色々妄想するためのものではなく、いわゆる非リア充達の最も恐れる現象である。
 女体化してしまう原因は曰く「童貞」であること。今では保健の授業ですら習う、一般常識だ。女体化する日にちはだいたい誕生日。それも江戸時代辺りではおおよそ成人と言われる年齢――つまり15、16歳頃である。
 もしもその日までに童貞を捨てられなかった場合、大切な息子が存在を消してしまうと思うと、怖気が立つ。
 ――ただ、特別な女体化も発見されている。一つは若くしての女体化。13歳辺りで女体化してしまうっていうやつだ。二つ目は、誕生日ではないのに女体化してしまうこと。どちらも非常に珍しい症例だそうだ。そして最後に――

「誕生日の有る年に、免疫力が落ちることで発症……か」

 上記二例よりは比較的頻繁に起こっているであろう、症例。
 ベッドに横たわっている状態で俺は保健のノートを音読し、ため息をつく。
 どうして女体化などという現象が起こってしまうのか。まったくもって俺には理解が出来なかった。
 ノートを閉じ、再びため息。
 どうしてこんなにため息が出るかというと、俺が童貞で、今年で16歳で、尚且つ“今現在風邪を引いている”という事が原因。
 ――察してくれるよな?
 つまり今俺は女体化という爆発寸前の爆弾を抱えていることになり。

「どうすっかなぁ……ゲホッ……」

 普段は風邪を引かない俺なんだが、なんでこんな年に限って風邪を引くかな? と頭の中で思う。
 まあ、三つの症例のうち一番確率が高いってだけであって、全体を見るとそこまで確率が高いわけではない。むしろ風邪を引いたが女体化しなかった――なんてのを何回も聴いた気がする。
 ――手に伝わるノートの冷たさが心地良くなってきた。
 イカン。そろそろ眠らなければ、ヤバい。主に体調面で。
 しばらくはノートに触れて寝ていよう、そう思い目をつぶる。

 ……朝起きたら女でしたー! とか、ない……よな?
 一抹の不安を感じつつも、思考は暗転して行った。
822 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/25(クリスマス) 23:55:56.00 ID:f4hRb.o0
――。
――――――。

 なにやら、まぶたの裏が明るくなっている。その明るさの理由を探るのは、さほど難しいことではなかった。
 朝日だ。まだ重たいまぶたをうっすらとだけ開ける。目の前には……保健のノート? ああ、昨日熱冷ましに腕に敷いていたんだっけか。
 なんで保健のノートなんだっけ?
 ……う〜ん。思い出せん。
 しばらく唸っていたが、おおよそ一分。ようやく、思い出す。

「やばいのかね。俺も」

 女体化だ。落ち着いているようで落ち着いては居ない。内心はひどく焦っているがそれがあまり表には出ないタイプなのだ。とにかく慌てつつ、念のためしゃべってみた。声は普通だった。恐らく、女体化はしていないのだろう。
 少し安心し、念を入れワイシャツ式になっている根巻きの胸元をひらく。
 どこにも起伏はない。それどころか昨日着替える時に見たものと何ら変わりはなく、ほっと胸をなで下ろす。
 ――女になったらこんな動作もある物質により突っかかってしまうのだろうか。
 閑話休題。とにかく、女体化はしていなかった。ひと安心して壁掛け時計を見る。

「11時半か。……いつもと変わらないな」

 念のために書いておこう。今日は日曜日だ。要するに部活に入っていない俺がこの時間に起きることは何ら不自然ではない。
 もう一眠りでも、そう考えていたら突然携帯電話が低いバイブレーションで唸った。
 枕元を探りつつ携帯電話を手に取り、画面を見る。

『着信:三上 悠希』

 こりゃまたどうして。わが友からの連絡だった。

「もしもし」

 少しダルそうな声で応答する。もちろん、本当はもう少し元気だが一応風邪だと言う事を知らせる為に、な。

『こりゃまた随分ダルそうだな。どうした? 寝過ぎか?』
「似たようなものだよ。風邪引いた」

 淡々と告げると、心配でもしてくれているのか普段より少しだけ大きい口調の返事が帰ってくる。

『風邪引いた? 大丈夫なのか? その――』

 オーケイ。言わんとしていることはなんとなく理解した。だが、
823 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/25(クリスマス) 23:56:24.63 ID:f4hRb.o0

「女体化か? 声で判断できないかい?」

 そもそも女体化してたら間違い電話かけちまったと焦るだろう。声変わってんだし。
 男に掛けたつもりが女が出るんだし。

『あー、そう言えば。じゃあ、大丈夫なんだな?』
「大丈夫大丈夫。しかし、なんでそんな慌ててる?」

 言うと少し唸り、

『明日学校だろ? いやー、お前が女体化したらその風邪の菌は女体化因子を動かしちまう菌って事になるじゃん? だとしたら』

 だとしたら、なんだよ。

『俺が危ない』

 そんな回答に即答。

「童貞乙」
『んなっ! お前も童貞だろう!?』

 だからどうした。さっきのは明らかに女体化に怯えるも卒業できない男の台詞だ。
 ――俺のことは気にするな。うん。
 視界が揺れた。立っているわけでもなく、ベッドに横たわっているだけなのだが、めまいだ。
 頭がぼーっとしてきた。
 そう言えば、薬飲んでないな……。

『おーい? どうした?』

 すっかり忘れてた。すまん。

「あー、風邪がやばそうだから、そろそろ切るな?」
『そうか。じゃ、お大事になー』

 疑われるかと思ったんだが、ダルそうな第一声が効いたようだった。
 そして『俺に移すなよ〜』の言葉を最後に通話が切れ、無機質なダイヤル音が響く。
 その音も、どこか遠くで鳴っているような感覚で。
 いつしか視界もぼやけてきていた。
 本格的にまぶたがくっつきそうだ。薬は……確か枕元に水を入れたペットボトルと一緒においていたはずだ。
 飲ま――な――――きゃ……
 起きて数十分。俺の意識は再び暗転した――。
824 :クリスマス終了のお知らせ :2010/12/26(日) 00:17:13.09 ID:GKVEqhg0
続きwktk
825 :クリスマス終了のお知らせ [sage]:2010/12/26(日) 00:43:40.93 ID:.AWKmcAO
よし、来てた
826 :2010/12/26 3:24:13Daisy x Daisy - Brave your truth [sage]:2010/12/26(日) 03:28:41.94 ID:B4Iul1E0
まさかwktkされてしまうとは思っていなかった。
続き書いたんで載せまする。 そう言えばさっきからずっとsageてなかった。すまん。


 目が覚めた。どうやら、あの後相当眠ってしまっていたらしく辺りは紅に染まっていた。
 どうにも体の重い感覚が抜けていない。そんな体で伸びをする。
 熱は引いているようだった。どうしてわかったかというと、シーツがぐしょぐしょだったからだ。これは洗濯しなくちゃいけないな、と思いつつ脱衣所に向かうことにした。
 そうそう。俺は一人暮らしだ。親に頭下げて全寮制の高校に行かせてもらったからな。
 理由は、美術系。もとより美術家を目指していた俺は中学の先生から今いる学校に行くことを進められ、俺も学校説明会等でこの学校を気に入りって流れだ。
 話がそれた。とにかく、ここは学生寮。ただ、不便なことに炊事洗濯等家事は自分でやらなくてはならないこと。
 昼は学食という形で提供(それでもその都度お金がかかるから負担になる。どうせなら引き落としにして欲しかった)されているから作る必要はないが、朝と夜は別。
 そんな生活の中で俺に身についた食生活は朝・カップラーメン、昼・学食、夜・自炊というなんとも言いがたいものだった。
 ――何が言いたいのかって?
 風邪引いても家事やってくれる人が居ないってことだよ。つまりどんなに辛くても一人でやらなくては行けない。そのおかげでだいぶ家事が出来るようにはなったのはせめてもの救いか。
 とにかく、俺は汗で濡れたシーツと凹んだお腹を満たすために脱衣所に向かった。



 人間、対応しきれないことがあるとその場で表情が無くなる、とか言うのを聴いた気がする。俺の場合はいつも「実奈斗君は無表情というか、冷静そうだよね」と言われるほど無表情だが。
 閑話休題。脱衣所と来れば当然、そこには鏡が設置されている。そこを見た瞬間、背筋が凍りつくのを感じた。
 そこには、美をつけても問題はないくらいの少女が、初めこそ目を丸くしていたものの、妙に冷静な顔でこちらを観察していた。
 幻覚だ。そう言い聞かせたかった。でも頭というのは時に情報を正しく理解する。目の前の少女は、俺であると淡々と脳は告げてくるのだ。
 震えが止まらない。危惧はしていた。でも、実際になってしまうとは、一切思って居なかった。

827 :2010/12/26 3:28:30fripSide - future gazer [sage]:2010/12/26(日) 03:29:42.89 ID:B4Iul1E0
 ――夢。そうだ。夢。きっとこれは風邪の所為で見ている悪夢だ。
 そう――言い聞かせる。妙に思考が鋭いのは明晰夢だからだ。
 足元に冷たい感覚。気付くと手に持っていたシーツが消え、足元に落下していた。
 ただ、こんなにも震えているのに鏡の中少女は冷静な顔つきをしている。
 ――なんでそんな顔が出来るッ!
 怒りにも似た感情を抱き、一瞬本気で鏡を割ろうとした。夢なんだから……構わない。そう思った。
 冷静なのは、少女だけではなかった。――自分。自分の脳は、否定したい気持ちを抑えつけ“女になった”という事実を必死に摺りつけてくる。……納得させようとして。
 目がしょぼしょぼし、頬を生暖かい液体が伝う。最初は何かはわからなかったが、涙だとわかった。俺は気付くと泣いていた。

「ふぇ……えぐ……」

 止まらない。乾き始めたシーツに、涙が滴り落ちる。
 認めたくは無かった。以前けりをつけたはずの感情。――いざとなったら男を捨てる覚悟。いや、諦め。
 モテる事が無かった俺は、年齢=彼女いない歴というしょうもない経歴を持っていた。
 だから、女になるのはしょうがないこと。そう思っていた。
 なのに、いざ女になってしまったという現実を付きつけられると気持ちの整理がつかなくなってしまっている。
 それが、情けなかった。ひょっとしたら泣いている理由はこれかもしれない。これじゃないかもしれない。
 自力では収まらなくなっていた涙をせき止めたのは一つの音だった。
 隣室で、低く唸るバイブレーション。その単調なリズムは紛れもなく俺の携帯電話の物で。
 震える足を無理やり引き摺り、固いフローリングの床を這う。
 これが一軒家とかだったら、階段辛いかったかな。どう仕様も無い考えが頭に浮かぶ。気持ちは落ち着いてきたのだろうか。
 ようやく、部屋に辿り着く。簡素な絨毯の上を再び這うように歩き、携帯電話を手に取る。そこには、今来たメールと、その他に着信が有ったことを知らせるマークが有った。
 とりあえず、メールをひらく。

『Mail:三上 悠希』

 そのまま決定キーを押す。

『件名:お見舞い
 本文:大丈夫かー? 電話しても出なかったし、メールにも気づいてない様だったから直接来た。とりあえず気づいたら開けてくれ! 見舞い品も持ってきたしな』

 急いで涙を拭く。腐れ縁とは言え、流石に涙を流してるところを見られるのは、そこまで気分のいいものではなかった。
 いつの間にか、足は震えなくなっていて、どうにか立ち上がる。
 俺は部屋から徒歩10秒ほどにある、玄関を目指した。
828 :2010/12/26 3:28:30fripSide - future gazer [sage]:2010/12/26(日) 03:32:54.33 ID:B4Iul1E0
とりあえず終了。いや続くかもだけれど。
>>820>>824-825の三人サンクス! もしかしたら二人かもしれないけど。

じゃあ寝まする
829 :T.M.Revolution - crosswise [sage]:2010/12/26(日) 22:01:40.86 ID:.AWKmcAO
830 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:17:31.90 ID:FTvKDVA0
>>827の続き

 いつもなら少しで辿り着く場所でも、今の俺にはとてつもなく遠く感じた。
 それでも足を引きずりながら部屋に戻ったあの時よりはマシだったのかもしれないが。
 ようやく玄関に辿り着く。あんなメールを寄越したくらいだから、帰っちゃいないとは思う。
 それでも、もしかしたら帰ってるかもという不安がよぎる。
 ――不安? まあいいや。
 ドアに付いている鍵を回す。ガチャ……という金属音が響き。
 まだ荒い息を少し整え、ドアノブに手を伸ばし――回した。
 そこには、紛れもない三上の姿があり、深く息を吐く。別にため息を付いたわけじゃないぞ?
 だがどこか素っ頓狂な顔をしていた。なぜだと思考を巡らすが直ぐに思い当たる。

「あ……えと。その……“俺”だ」

 言うと三上はようやくその顔をやめる。代わりに、少しばかり真剣な顔をする。

「……なっちまったか」
「…………」

 その言葉の返事が詰まる。どうにも、問い詰められているようで、気分的には宜しいものではなかったからだ。――なぜだか、とても申し訳ない気持ちにもなった。

「っと、とりあえず……上がれよ」
「ん? ああ、そうだな。おじゃましますっと」

 立ち話をしているのもアレだろうと思い、家に上がらせる。
 三上が靴を脱ぎ終わり、廊下に上がっている。それを確認し、俺も廊下に戻る。
 さっきまであんなに長く感じられた廊下。それが嫌に短く感じた。否、短いのだ。
 すたすたと移動する三上を追いかける。迷いもなく、俺の部屋に入っていき、いつもの指定席に座り込む。
 俺もその対面に座る。いつもなら四角い座卓のちょうど左隣に座るのだが……、今日は話すことが有る。お互いに。

「さて、と」

 何を言われるのか。初めてだ。友達の視線を怖いと思ったのは。――友達の発言がこんなにも恐ろしく感じたのは。
 ガサッという音が聞こえ、おそらくははたから見てもわかるほどに驚く。
 三上も目を丸くしていた。
 その目も直ぐにもとに戻り座卓の上に桃缶を置き、プルを引っ張り開けると恐らく自らの部屋から持ってきたであろうお椀へと移すと――スプーンと一緒に俺に差し出した。
831 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:19:04.79 ID:FTvKDVA0

「――へ?」

 女になってしまったことを追求されると思っていたから、思わず力のこもっていないなんとも間抜けな声が漏れる。

「なに不思議そうな顔してんだ? お見舞いと言えば、フルーツだろ。桃だろ」

 さも当然のように残りの半分をもうひとつのお椀にとりわけ、スプーンで食べ始める。

「食わないのか? ……ひょっとして、まだ調子悪いのか? もしあれだったらラップ持ってくるから、冷蔵庫にでもいれて後で食べ――」

 その言葉を断ち切る。いや、話しかけられていることに半ば気づいていなかったってのが正しいか。

「色々と訊くんじゃないのか? ……その、女体化したことについて」

 視線を合わせずにつぶやいた俺の言葉に、三上は再び目を丸くして。

「はぁ?」と呆れが見え見えの口調で言った。「なんでそんな事訊かなくちゃいけないんだよ。俺はあくまでも、お見舞いにきただけだぞ? 女になってようが、男のままだろうが、関係ないじゃねーか」

 そんな言葉にそれもそうかと納得をしてしまう。いや……そうじゃなくて。そこじゃなくて。

「じゃあ……」
「ん?」

 どうしても言葉につまる。更に、下手に相槌を打たれたことで余計言いづらくなってしまった。
 どうにか必死に言葉を搾り出す。

「……じゃあ、最初の、『なっちまったか』ってのは、なんだったんだよ!」

 必死になっていた所為で音量の調節が効かなくなっていた。恐らく、ボリューム大。
 一瞬顔をしかめた三上だが、

「あー、あれな。いや、ほら。俺も危ないからさ。覚悟決めなきゃいけないかなーとか?」

 絶対嘘だ。勘だけど、嘘って言い切れるきがした。あの時の三上の顔は、そんな事考えている表情じゃなかった。普段のコイツなら、もっとばかみたいな顔して言うはず。

「お前にしては珍しい。……疑ってるな?」
「何が珍しいんだ。疑うことなんて結構有っただろ」
「いやいや、そこじゃないよ。表情が顔に出てる」

 言われ始めて表情を気にする。俺はあまり表情が顔に出ないタイプだ。だからこそ、今までどんな状況だろうとポーカーフェイスでいていられた。
 なんでだ? なんで感情が顔に出る?
 二つ。――二つの可能性が出てきた。一つは、女体化。その所為で顔の筋肉の動かし方がビミョーにずれちまったって可能性。二つ目は……泣いた所為。いろんな場所が力が入っていないというか変に緩んでいるというか。だからちょっとの表情変化で気づかれちまうのかもしれない。
 後者だとしたら非常に癪な話だが。……前者も同じか。

「本当に今日は表情豊かだな」
「うっさい黙れ」
「おおっ……睨まれた!?」

 くだらない。全く、くだらない。感情が出やすいせめてもの報復として睨みつけてやった。
 だいぶ気が晴れたのはコイツとのやりとりのおかげだったのかもしれない。睨みつける傍ら、そう思った。
832 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:20:24.70 ID:FTvKDVA0
 その後、いつものばかみたいなやりとりの最中俺のお腹が間抜けな音を立てた。
 朝も昼も食って無かったから当然といえば当然か。それで目の前の桃缶を頬張り、両者ともにおなかがすいたという面で意見一致したのだった。

「あー、とりあえず夕食をつくろうと思う。食べるか?」

 言って気付く。こいつは絶対に、

「遠慮しておくわ」

 ――絶対に、断る。わかってたんだよ。こういう性格だ。
 だから、

「わかった。食ってけ」
「いやでも病に――」
「食っていけ。お見舞いに来てくれたお礼だとでも思ってくれ」

 命令にしてやる。実際、コイツが来なかったらもしかしたらずっと泣いていた可能性も有るからな。そうなると精神面で不安が残る。だから、感謝はしている。
 それに、

「ひとり分もふたり分も変わんないから、さ」
「へいへい。じゃあ美味しいの頼みますわ」
「俺をなめるなよ? 伊達に一年、飯を作っておらぬわ!」

 夕飯だけなんだけどね。作ってるのは。兎に角、俺はふたり分の夕飯を作り始めた。


――――――。
――――。

「お待たせ」

 と、出来上がった料理を部屋へと運ぶ。ちなみに、贅沢なことにここの学生寮はキッチンと部屋が別なばかりかトイレ、風呂が個室で付いてくる。挙句の果てには共有風呂まで有るという至れり尽くせりな作りとなっていた。
 話がそれたな。

「おー。オムライスか。コイツは旨そうだ」
「無いとは思うけど、残すなよ?」

 冗談交じりに言う。

「残さないって。――で、巷で有名なあれとかはあるのか?」

 なにやら突拍子も無い事を訊いてくる。ただ――すごく下心が見える台詞だ。なぜだろう。

「あれってなんだよ」

 座卓にケチャップとスプーンを並べ言う。

「ほら……某喫茶でやってくれる、ケチャップで好きな文字を書いてくれるあのサービス」
「なるほどなるほど。……君は元男をそういう目で見ている、と」

 フォークを持ってくればよかったかな。
833 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:21:18.87 ID:FTvKDVA0
「冗談だ、冗談。……ケチャップ取ってくれ」

 殺気でも伝わったのか、なにやら怯えながら俺の手の中のケチャップを催促する。
 流石に俺もそこまで鬼じゃない。あんな事言わなきゃ普通にケチャップかけてやったのに。
 さておき、とりあえず俺のオムライスの方にケチャップをかけ、三上に渡す。

「そう言えば、半熟とろとろのオムライスで良かったか?」

 俺は卵料理は半熟が大好きなもんで、おおよそ二ヶ月かけて半熟で美味しいオムライスを研究していた。それの所為か今ではすっかり半熟しか作れなくなってしまっていたのだ。

「流石に病人につくってもらって文句とかは言わないって。でもまあ、強いて言えば……」
「言えば?」
「好きだな」

 思わずツッコミたくなったが、なんというか女になってこの事に対してツッコンだら色々と負けな気がしてきたから、やめた。

――――――――。
――――。

 食事も終わり、皿洗いをしている時だった。

「なあ、実奈斗」

 今までテレビを見ていた三上が急に話しかけてきた。正直、俺はメンタル強くないんだからやめてくれないかな。
 喉まででかかった文句を押し[ピーーー]。

「なに?」
「明日どうするんだ? お前は休みになるだろ?」
「そうだな」

 すると、そこで急にまごつき始めた。

「その――俺も一緒に」
「はあ、休みたいのか?」

 最後まで言い切る前に言ってやる。こう言うのはてきぱき済ませたい派だ。
 何時までもうじうじ話を考えてるのとか、ぶっ飛ばしたくなるからな。

「そうそう! じゃあ、明日連絡するときに伝えといてくれ。俺だけだと怪しまれるだろうから」
「わかったわかった」

 再び、皿洗いの作業に戻る。
 ――三上はいつまでこの部屋にいるつもりなんだ? いや、まあ同じ学生寮だからいいけど。アイツも元男をどうにかしようなんて思わないだろうし、構わないけど。
 寮監が回ってきたときのことを考えると恐ろしくなる。
 だから、

「なあ三上。そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか? 今までは良かったかもしれないが、流石にもう寮監、黙ってないだろうし」
「そうだな。そう言えばお前も病み上がりだったし。おじゃましたわ」

 そうして、色々有った一日が、終を告げた。
 この日既に気持ちの整理がついてしまっているとは露知らず――――。
834 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:23:17.21 ID:FTvKDVA0
今日の分終わり。見直してみたけど、昼に起きたのに朝日とかもっと推敲すべき点が沢山あって凹んだ。
835 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 20:55:37.84 ID:xB7r/rw0
GJ!
836 :以下、名無しにかわりまして いとう たかふみ がお送りします [sage]:2010/12/27(月) 22:10:56.70 ID:kJKZn1c0
乙!
[ピーーー]を避けたければメ欄にsage sagaと入れるといいお
837 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage sage]:2010/12/27(月) 22:30:05.86 ID:FTvKDVA0
本当になるかどうかのテスト

押し[ピーーー]
838 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/27(月) 22:31:32.78 ID:FTvKDVA0
みすってた。無駄にレス消費しちまってすまん

押し殺す
839 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:47:19.82 ID:juFRVb60
>>833の続き

 俺は早朝のまだ四時半という時間に、髪の毛を乾かしていた。
 理由としては、なぜだか四時に目が覚めた事、そして汗まみれだったということ。汗に関しては十中八九風邪の所為だが、目がさめた事についてはさっぱりわからん。
 この時間に無音なのは、なんとなく心細い。だから、テレビを付ける。この時間ならもうニュースはやっているだろう。
 案の定、ニュースもとい天気予報がやっていた。その天気予報の音声をバックに再び髪の毛を乾かす。
 ――今日は晴れ、か。雨とかふらないで良かった。せっかく先週開花を始めた桜が散ってしまっては大変だからな。この季節はどうにも駄目だ。毎年雨に降られてお花見が出来なかったからな。
 先までの話と無関係で申し訳ないが、昨日三上が帰った後に恐る恐る実家に連絡を入れた。
 出てきたのは母さんで、初めは戸惑っていたが俺だということを告げると呆れのため息が聞こえてきた。そして、「なっちゃったものはしょうがないわ。明日色々と買いに行くのよね? ならとりあえず振りこんであるお金の中からやりくりしなさい。後でその分振りこんでおくから」と言ってくれた。
 ちなみに、この時初めて母さんの教えに感謝した。――無駄遣いだけはするな。そう言われ続け、無駄遣いを極力避けていた俺は当然のごとく送られてきたお金は夕飯位にしか使っていない。おかげで、今回買い物に回せるお金がたんまり有るのだ。
 たくさん買い物をするつもりなのかと問われれば、電話中母さんに「女になったからには、洋服はたくさん持っておきなさい」と三回ほど言われたので、母さん的には無駄遣いにはならないのだろうと解釈。つまりオーケイだ。
 今日の、主に午前は忙しくなりそうだった。午後は適当に時間を潰せそうだが。
 一日の予定を考えつつ時計に目をやる。もうそろそろ五時だな。
 さて……。学校へ連絡するのは六時過ぎだとして……今からだと相当時間が余る。
 その間どうしようか、と考えていたが、

「学食に行けない分、昼は外食になっちまうのか。だったら――」

 お弁当でもつくろう。なぜだか頭にそう浮かんだ。実際食費も浮くしいいかなと思えた。


――――――――。
――――。

 ひと通り買い物を終えた俺は、既に朝の服装では無くなっていた。
 と、言うのも今まで着ていた男物のシャツはぶかぶか。ズボンも裾を折り曲げやっとという状態だったのだ。身長が低くなったとは思っていたが……まさか153センチにまで落ちていたとは……。
 道理で、まっすぐ見たときに三上の肩までしか見えないわけだ。
 ちなみに体重もだいぶ減りましたよ。ええ。30キロ代とか……幼女かっての。
 今まで着ていた服はバザー行きだな。いくらで売れるだろう。そんな事を考えていると、

「なあ、飯どうする? 今日は学食寄るわけには行かないし」
840 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:48:11.13 ID:juFRVb60
 三上からそんな言葉が投げかけられる。当然時間のあった俺はそれを考慮していた訳で、

「あ、食費勿体無いからお弁当作った。デパートで食べるのもなんだし、近くの公園でも行こう」

 と自然な感じで振舞う。なんでそんなふうに振るわなければいけないのかは自分でもわからん。

「え? あ、そうか。珍しいな」
「何がだ」
「いや、いつも学食で済ませてるから、てっきりレストランで食べるのかとばかり」
「言っただろ? 食費が勿体無いんだって」

 そう言うと、三上は自らの手にぶら下げている紙袋に目を落とし「ああ……」とため息混じりにつぶやいた。
 なんで三上が紙袋を持ってくれてるのかというと、一応俺を休む口実に使ったわけでその御礼とか言う感じらしい。
 というか、

「失礼だな。お前だってこれくらいの服は持ってるだろ?」
「持ってるけど……流石に一年程かけて買い揃えた物を一日で買うわけあるまい?」

 む……ごもっともだった。

「大変だったんなら、持たなくてもいいぞ? 俺が持つ」

 なんだか持ってもらってるのを悪く感じてきたから、三上の手元を見ながらそう言った。

「そういう問題じゃないって。大丈夫」
「そう? ならいいや」

 大丈夫、の一言で納得してしまう。つくづく自分は現金な奴だと思う。

「公園だっけ? さ、早く行くぞ。お腹も減ったしな」
「あ、うん……」

 俺と三上はデパートを後にした。
841 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:50:10.83 ID:juFRVb60
――――――――。
――――。

 公園にやって来た。ちなみにこの公園は運動場有り、プール有り(今は春だからそもそも立ち入り禁止だが)の兎に角でかい公園だった。まず、どこに座るかという点で歩きまわったが、あまりにも人がいなさすぎる。いや、平日の昼間だからなんだけどさ。ただ、ある一点だけは様子が違っていた。
 その、ある一点とはどこか? カップルやら家族連れやらがたくさんいる区域だ。
 今朝のニュースでもやっていたが、今は桜が見頃だ。平日とは言え、それなりに人は集まるのだろう。あからさまに学校をサボってるようなチャライ奴らもいるが。
 そのへんは見なかったことにする。絡まれたら嫌だし。

「このへんにしようか」

 俺が三上にそう提案する。三上からは「そうだな」と返事が帰って来たのでレジャーシートを敷き、バッグと靴を重石代わりに四隅に置く。
 そしてシートの上に座り、弁当を開けた。ちなみに――、学校等によく持っていくお弁当を想像した奴には悪いが――ただのタッパーに入れてきた。
 どうせ二人分を作るんだから、こうしたほうが持ち運びも楽だと考えたのだ。
 件の想像していた奴の一人だった三上は、少しばかり唖然としていた。

「なんだよ」

 愛想なく言うと、

「いや、なんかこう、もっとお弁当らしい箱に入れてきたのかと思ってたから」
「悪かったな。お弁当箱を二つも持ってないんだよ。俺だけってのもなんかアレな光景だろうからタッパーにした」

 上記の理由もあるが、これもきちんとした理由ではあった。一人暮らしなのに、お弁当箱を二つも必要とする理由もないだろう?

「まあ、いいか。いただきます」

 言うが早いか、おにぎりを片手に箸でミートボールをつまみ始める。

「いただきます」

 どことなく微笑ましい光景に感じられたが直ぐその感情を振り払い、俺もお弁当に手をつけることにした。


――――――――。
――――。

「悪い、ちょっとトイレ」

 そう言い、俺はトイレへと移動した。そう言えば、女になってからトイレへと言っていない気がする。
 大丈夫かな。ちゃんと出来るだろうか。今朝お風呂に入ったおかげでアレがないことには耐性が付いていると言えるが、まだそう言ったことはしていない。
 若干……いや、かなりドキドキしつつもいろんなコトを考え、トイレへと向かっていた。
 ――衝撃。比喩ではなく、実際に、俺の肩が何かにぶつかったのだ。それなりに柔らかかったから恐らく木や壁ではない。ということは、

「って〜……」

 その声に振り向くと、そこにはかなり長身の人が居た。恐らくこの人にぶつかったのだろう。なにやら痛がっているし、相当当たり所が悪かったのだろう。

「あ、すみません――」

 深々と頭を下げ、謝った。
842 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:50:50.40 ID:juFRVb60
「気をつけ――……」

 何をためらっているのか、そっちに目を向けると、なにやらお仲間四人とヒソヒソ話をしているようだった。
 って……こいつらは……あの明らかに学校をサボっているようなチャライ人たちじゃないか?

「お嬢ちゃん……結構痛かったぜー? 今の」

 ぶつかってしまった相手に、そのぶつかった箇所をさすりながら言われる。

「す……すみません!」

 再び頭を下げる。すると今度は別の男が、

「謝礼は、なにか別のことでしてもらわなくちゃ……ねぇ?」

 そう、言い放った。元々男である俺には、その言葉の意味が十二分に理解できた。
 ――失念してた。自分が、仮にも自分が写った鏡を見てなんと思ったかを。今まで冴えない顔をしていた俺も、女体化症の患者の例外にもれずある程度可愛いと言われる部類の顔になってしまっていると言うことに。
 まわりでは、男達――四人が「そうそう」などと言っている。
 怖いっ……。こう言った人たちが何をするか、なんてのは解っている。俺も、そういうシチュの漫画を何度も読んだことがあるし、そう言ったシチュで……その、抜いたこともある。
 でも、所詮それは妄想、空想。今はそれが現実になろうとしてしまっている。
 それも、最悪の形で。
 何をされるのか――嫌、……厭っ!

「ほら、嬢ちゃん。トイレ行こうぜ?」

 そんな長身の男の言葉に、四人がゲラゲラ哂う。
 厭……嫌々々々イヤイヤイヤイヤ……
 体がこわばり、動けない。そんな自分の腕を、大きな手が掴み引っ張られる。
 今まで、どうしてこんな人達が男のままで居られるのだろう、と考えたことが有った。
 でも、よく考えれば当然のことだ。――女になりたくないのだから、こういうふうに女を獲得する。チャラくて、ダメ人間臭バリバリの男が男で居られるという構図の出来上がり。
 気付くと、トイレとは全然違う場所――雑木林の奥に連れられていた。
 嫌ッ! 今更。今更の事だが、心のそこから、女になったことを後悔した。女にならなければッ! 女になりさえしなければ、俺はこんな目に合わずに済んだのにっ

「強がってんのかい? 嬢ちゃん。ほら、泣き叫べば誰かきてくれるかもよぉ?」

 俺の“顔”を見て、そう言う。表情が出ない事が裏目にでしまったのか。いや、結果は同じ方向に進むのか。
 ……気持ちが悪い。こんな下郎の考えに、同じ下郎は馬鹿丸出しに哂う。

「“俺”は……」
「あん?」

 言ってから気がついた。そうだ……こいつらも、女が元男と知れば諦め――
843 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:51:36.40 ID:juFRVb60
「おい、聴いたか? コイツは元男だ! これから何をされるかわかってるってのにこの表情、大したものだなぁ!?」

 絶望的だった。もう既に哂い声はどこか遠くで響いているような。頬を何か、冷たい物が伝う。
 自分で確認しようにも、とうとう体のこわばりは腕にまで到達してしまっていて、どうにも出来ない。初めて気がついたが、足もろくに力が入っていない。せっかく買ったワンピースが……汚れてしまっていた。

「泣いてんのか嬢ちゃん。ここらへんにするか?」

 とうとう、地面に投げられる。
 あぁ……このままこいつらに犯されるのだろうか……。
 そんなのは……理不尽だ。嫌で、厭で、イヤだった。

「誰か……助……け、て」

 叫んだつもりだった。でもこわばった体では声すらまともに出せないと、気付く。
 本当に、終わりだ。そう思った時だった――

「お前ら……何をやってる」

 聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 声の主は雑木林の入口付近で仁王立ちをしていて。
 顔は、素っ頓狂でも、目を丸くしたものでもなく。
 見たこともないような“怒り”に、“恨み”に染まった顔をしていた。

「なんだぁ? コイツの知り合いですってかぁ?」

 長身の男が声を荒げる。

「そうだよ。いいからそいつを離せ。さもないと」
「さもないと、どうするんだ?」

 その声に、おちょくるような、そのバカの一声に反応するように“怒り”は確実に殺意へと変わっているのがわかった。

「さもないと――命の保証が出来ねぇ」

 言うと同時に、ポケットから彫刻刀とカッターナイフを取り出す。カッターナイフの方は、チキチキと音を鳴らし刃を伸ばし――
 そしてゆっくり、こちらに近づいてくる。

「命の保証ねぇ? そんなに大事な人ですか? ……ああ。彼女ね。守りたいんですかぁ?」

 口調は丁寧だが、口は悪い。そして――頭も。もう俺の頭には希望の二文字しか残っては居なかった。安心しか、してなかった。
 神経を逆なでされ――逆鱗に触れられた竜は怒りに身をまかせるだけ。
 そうして三上は、いつまでも減らず口を叩く性犯罪者の一人の喉元にカッターを突きつける。

「お前ら、動くなよ。動脈の位置くらいは把握してる。うごけばコイツ……死ぬぞ?」
844 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:52:05.97 ID:juFRVb60
 チャンスは今だ。必死に足を引きずり、三上の後ろに移動した。
 それと同時に、喉元にカッターを付きつけられた男の右腕が少し動く。
 三上はそれにすら、反応した。

「動くなと言っただろ? 武器は一本じゃないんだ。さっき見せてやったのに、それぐらいもわかんないのか? 本当に……馬鹿なんだな。馬鹿だから、こんな事しか出来ない」

 そいつの右腕に彫刻刀を押し付ける。男の顔が歪んだようだが、こっちはそんな事木にしてられない。
 俺は緊張しきった喉を必死に開け、大声で――

「だ、誰かっー!」

 と叫ぶ。掻き消えるかもしれない、そう思ったが、心配はいらなかったようだ。
 遠くから「なんだ?」「どうした?」という声が聞こえてくる。

「チィ……。お前ら、逃げるぞ」

 長身の男が、そう発する。鶴の一声。そんな言葉が最も似合うであろう。一斉にバタバタと逃げ出して行った。
 三上は、そんな男達を見て、彫刻刀とカッターナイフを元ある場所に戻す。
 事情聴取されたとしても、俺達は美術高校の生徒だと言う事で逃れられるだろう。
 幸い、あっちにも傷らしい傷は負わせていないだろうし。
 力が抜けた。あんな事が有った後だから、一気に緊張が抜けたせいだろうと思う。
 俺はその場に倒れこむ。

「実奈斗? 大丈夫か!?」
「大……丈夫。安心……しただけ」

 息も絶え絶えに、そういう。

「三上ぃ……」
「うぉ……どうした……」

 溢れでてくる物が何かは、直ぐにわかった。女になって二日目。俺はその間に三回泣いた。
 一回目は否定。
 二回目は絶望。
 そして、三回目は――

「あり……がと……う」

 安心の涙だった。そして……気付いてはいけない感情が、表に現れ始めた瞬間の涙だった。
845 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage saga]:2010/12/28(火) 01:55:06.52 ID:juFRVb60
なんだか書いてるうちに完結しちまいそうだったから最後の一文付け加えた。
付き合ってないし。俺の書きたかったシチュ書いてないし。

俺ごときが言うのも何だけれど、なにかリクエストあったら承ります。……例えばエロとk(ry
846 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 02:19:38.81 ID:QrgzQcAO
もう寝よう思ってパソの電源落としちゃったからケータイからすまん。

>>836 サンクス!
847 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 03:04:34.04 ID:2y04cZYo
>>845
続きが気になる
これから2人が付き合うまでどういったことが起きるのか楽しみ
リクエストはほのぼのとした日常生活がみたいです
848 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/29(水) 01:51:41.71 ID:Pi.roTs0
>>844の続き

 アレから一時間、結局警察のお世話になり。色々と聞かれたが、まあ事情が事情だったので仕方がない。
 今俺の前には女警官、そして隣には三上が座っている。なぜ女警官なのかというと、こういう事件の場合は男警官が出てくると相手に余計な不安を与えてしまうから、だそうだ。確かに、男をよく知らない純粋な女だとしたら強姦に有った時点で男は恐怖そのものでしかないと思うしな。
 ――警察の人は俺の高校に連絡を入れたようで。「今変わります」の声と共に、俺に受話器が渡される。

「もしも――」
『文徳君……いえ、文徳さんね? その……大丈夫だったかしら』

 電話の相手は俺のクラスの担任の先生だった。口調こそ落ち着いてはいるが、慌てているのがわかった。
 ――色々な人に心配をかけてしまっているんだな。三上然り、先生然り。この後で両親とも電話することになる。だとしたら、両親にも。

「はい。一応は、大丈夫です」
『そう。大丈夫なのね? ――処女とか、失ってない?』

 その瞬間、俺は口に何か含んでいなくて本当によかったと思った。
 ただ、つばだけはものすごい勢いで交番内にまき散らしてしまったが。

「なんつー事を言うんですか!? 先生!」
『その様子なら大丈夫ね。びっくりしたわよ。女体化しちゃったんだから、自分はもう強くないって事を自覚しておいてちょうだいね』

 ――自分はもう、強くない。確かに、男の時ならあの程度のチンピラなら、やり過ごせた気がする。だが、今は違う。為す術がないどころか、されるがまま。
 悔しくて、その事実が、只々悔しくて唇を噛み締める。

『……それで、明日の学校だけれど、来れるかしら?』
「明日……頑張ります」
『無理はしなくていいのよ。でもまあ、頑張れるなら、頑張ってみてね。ダメだったら、先生に言ってくれればいいから』

 心が救われるきがした。ここで無理に“休め”とか言われていたら、その後学校へ行きづらくなるだけだと思ったから。

「あの……!」
『なに?』
「この件は……出来れば、内密に……」

 知られたくは無かった。もしかしたら男友達の会話とかでぼろが出てしまうかもしれないけれど、公に知られたくは、無かった。
 きっと、この先生なら、この気持が分かってくれる。

『わかりました。大丈夫、任せておいて』
「ありがと……ございます」
『じゃあ、また明日、学校でね。――あぁ、そうそう』

 何か言い残したことでも有るのだろうか? 電話越しなので伝わらないだろうが、首を横に傾ける。

『明日は朝一で職員室に来ること。女体化の手続きって事にしておくから』
「はい。じゃあ、また明日」

 そう言うと『はい、また明日』と言う声が聞こえ、通話が切れた事を表すダイヤル音が聞こえてくる。
 ――次は親か。これ以上……心配はかけたくないんだけれどなぁ……。
849 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/29(水) 01:52:30.60 ID:Pi.roTs0


――――――――。
――――。

 案の定、親からは滅茶苦茶心配された。普段はある程度物静かな父さんが、声を荒らげて居たから、相当なものだったのだろう。
 そして母さんは父さんじゃまともな話が出来ないと踏んだのか受話器を取り上げたようだった。
 そして、本当なら学生寮から実家に置いておきたいであろう状況だと言っていた。こっちとしては流石にそれは勘弁願いたいと思ったが、母さん達もそうしたい、というだけでそうするつもりはないらしく安心。
 ただ――、

「今週末、一回帰ってこい、だとさ」

 隣を歩いている三上に話しかける。――ちなみに。俺は今三上に手首を掴まれている。なんというか、何かあったら直ぐわかるように、だそうだ。
 その気持はとても有難かった。

「そうか。で、なぜ俺にその話をした?」
「いやそれが、この帰省は俺だけじゃなくてお前も含まれているらしい」
「なんでだ?」

 そんなもん、こっちが聞きたい。だがおおかたは、

「お礼とかなんじゃないか? 助けてくれたわけだし」
「そうか」

 なんとも淡白な返事だこと。まあ、いいか。

「……ありがとな?」
「もう良いって。別に俺はお礼がされたくて助けたわけじゃない」
「それもそうか。でも、俺はお礼がしたいから。何度でもしてやる」

 本当、感謝してもしたりない。女になって二日でいきなり辛い目に有ってしまったが、コイツが居なければもっとひどい目にあっていたのは明々白々であり。
 なにより、助けてくれたことがすごく嬉しかったから。

「これからどうする?」

 唐突に、三上が俺に訊いてくる。俺は少しだけ迷い、

「そうだな、とりあえずワンピース汚れちゃったし……洗濯?」
「了解。じゃ、行こうぜ」

 汚れたワンピースを、少し忌々しい目で見つつクリーニング屋に急ぐことにした。
850 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/29(水) 01:53:35.05 ID:Pi.roTs0
――――――――。
――――。

 七時か……。部屋の壁掛け時計を見ながらそうボヤく。
 暇だ。暇々……暇すぎる。ニュースも既に二週目に突入してしまってるし、天気予報は既に四週目を数えている。
 何が言いたいか。つまり今日も早く起きてしまった。また四時起きですよ。昨日寝たのは遅めなはずなんだけど。
 それで、もう暇で暇でしょうがなかったから、昨日クリーニングしている間に買ってきた“二つ目”のお弁当箱に具を詰めてしまっていた。
 なんとなくお風呂を沸かし、お風呂も入ってしまったし、学校の準備も終わっている。
 正直、こんなに早く起きてしまうのは勘弁願いたいのに、どうしてもその後が眠れない。寝過ごしてしまうのも怖かったしね。
 ……普通なら学食で済ますんだけどなぁ。昨日作ったお弁当をまともに食べれなかったってのもあったし、ちょうどいいか。なんて感覚で弁当を作ってた。……解せぬ。
 そして今俺はいつもどおり三上が来るのを待っているわけだが。
 正確にはいつもどおりではないか。慣れない女子制服を、制服屋でもらった取説読みながら必死に着ているし。先に書いておこう。我が校はセーラー服ではなく、ブレザーだ。それがどうしたと言われたらおしまいなのだが。
 最終確認よろしく、脱衣所へと移動する。髪の毛は……オーケイ。後ろは確認し辛いが、まあ前面に関しては違和感なく着込めているのではないかと思う。
 あくまで俺主観だが、そこは気にしない!

「……テンションおかしい気がする」

 一人しか居ない部屋でそうボヤく。
 わかってる。わかってるよ。明らかにおかしいことぐらい。普段なら、早く起きたからと言ってお風呂入ったり、お弁当作ったりとかなんてしない。
 昨日は汗をかいていたからお風呂に入ったし、食費の問題でお弁当にした。
 でも今日は汗もかいていなければ、外食より格安で食べられる学食が存在する。
 どうしてこんなになってしまったのか。そんな事、わかったもんじゃない。わかりたく……ない。
 そんな俺の無駄な思考をかき消したのはインターホンの高い音だった。その音に滅茶苦茶驚き飛び上がってしまったが、兎も角。軽いダッシュで短い廊下を駆けるのだった。


――――――――。
――――。

「おはよう」

 玄関前まで来た三上に挨拶する。すると、三上も手を上げ、
851 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/29(水) 01:54:03.80 ID:Pi.roTs0

「おはよう。……制服、似合ってんじゃん」

 そんな事を言ってきた。

「そ、そうか? ありがと」

 ほめられるのは、嫌いではない。むしろ好きな部類と言っていいだろう。嫌いな褒められ方というのもあるが、そこは割愛。
 とにかく、素直に嬉しかったから、お礼を言う。男の時はそんなに素直になれる性格じゃなかったが、女になったからには、せめて性格だけは素直になろうと努力しているのだ。素直にならない顔の代わりに。

「ど、どうした?」

 気付くと、三上の顔が、いや動きが全て停止してしまっていた。なんとなく不気味ではあるので声をかける。

「え? あ、ああ。なんでもない。ちょっと、な」
「すっごく気になるんだけど」

 何が「ちょっと、な」だよ。話せよ。もやもやするんだよ。
 あくまで白を切るつもりなのか、三上は手を顔の前で左右に振り否定をアピール。

「何でもないって」
「そうは思えないんだけど」
「いや、だから、本当に――」
「わかった。言わなくていいよ」

 出来る限り、にこやかな顔で言ってやる。にこやかになってくれてるかどうかはわからないけれど。よく考えればコイツは俺が女体化したことについて、話題として触れようともしていないのだ。そんなコイツになぜ静止していたのかと根掘り葉掘り訊くのはどうかと思ったのだ。人には、訊かれたくない事、知られたくないことが存在してるのもわかってるからね。

「じゃ、行きますか?」

 三上が自分の携帯電話を確認しつつ、俺に向かって言う。

「うん」

 俺と三上は学生寮を出発した。
852 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/29(水) 01:59:56.59 ID:Pi.roTs0
今日は短め。……なんつーかごめん。
プロット即日に練って、三分の一無視して書いてる結果がこれだよ……orz
>>847 リクエストありがとう。付き合った後の話に盛り込むつもりだけどおkですかね?
極力ストーリーもほのぼの日常にするけれど、今考えてるストーリーだとまだ先の話になりそうだから

関係はないけれど、トリ付けてみた。コテハンについては、普段「青」って名乗ってるんだけど明らかに青色さんにかぶるから検討中w
853 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/29(水) 23:00:14.61 ID:hzPJsMg0
続きwktk
854 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/30(木) 02:00:24.32 ID:tewtAhE0
昨日の俺はなんだか偉そうだな……
気に触った人はすまん。

学校に話が移ったことで登場人物が増えて混乱しております。
書き分けムズ過ぎる。
推敲重ねたいからうpは明日になるかもしれない。楽しみにしてくれてた人は後一日待ってください(汗

>>853のような言葉が私の活性力です。この一言があればリゲインが無くても24時間働けそうです。
855 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 21:27:19.79 ID:eaOy4r6o
>>854
続き楽しみにしてます
リクエストした人だけど日常シーンみてほのぼのするのが好きなだけなんで書きやすいように書いてください
付き合った後のほのぼのに期待してます
856 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:06:28.78 ID:DpNbcd.0
――――――――。
――――。

 学校に付いた俺は、真っ先に職員室へと向かった。昨日の電話で言われていたしな。
 それで、「失礼します」の言葉と共に職員室へと入ったわけだが、

「随分可愛くなったのねぇ〜」

 さっきから担任である、西川先生はずっとこの調子だった。

「先生、先生が呼び出したんですから、要件をお願いしたいのですが」

 率直に言う。前々から気付いては居たけれど……もしかしてこの先生は、極度の可愛い物好きなのではないか? ――俺の想像は外れていなかったようだ。

「いいじゃないのよー。もう少し眺めていても」
「眺めているのなら、話しながらでも出来ますよね?」

 正直、クラスに戻りたい。まわりの先生から、呆れの表情がこちらに向けられている。もしかして、女体化者が出るたびにこの調子なんじゃないだろうな?

「つれないわね……。わかったわよ」

 大人とは思えない、ムスッとした表情を浮かべる。これは……女になった今でもクラッときそうだ。大人の表情じゃねえよこれ。確実に拗ねてる年下の顔だって……。
 あー、男の頃だったら身長すらも年下クラスだったけ?

「とは言っても……警察に被害届は既に出ているし、こちらからはすることは一つしかないのよね〜」
「一つ、ですか?」

 何かやり残したことが在ったのか。そう思い、不安になる。

「大丈夫よ。えっとね……」

 先生はそう言い、自身の机の引き出しを開けなにやらゴソゴソと漁りだす。
 そして、妙に高級そうな紙を取り出し、俺と先生の間に置く。

「――『女体化者による名前変更の手続き』?」
「そうよ。女の子になったとして、運良く女の子でも通用する名前だとは限らないでしょ? そういった場合専用の改名手続きの用紙」

 それを、「はい、じゃあこれ」と手渡される。

「出来れば、今週中にお願いね。原則として学校側が提出する決まりだから、私にだしてくれれば結構よ」
「そうですか。ありがとうございます」

 言うが早いか、先生は目の中にLEDでも埋め込んでいるのではないかと思ってしまうほどに輝かせ(もちろん、すべてが比喩だが)、こっちを見る。

「でね――名前案なんだけれど!」
「丁重にお断りいたします」

 さっきから嫌な予感しかしなかったが、原因はこれか。でも何だ? まだ嫌な感じが残ってる。――まあいいか。
 とにかく。この先生に決めさせてしまっては色々とマズいだろう。即答しておいた。
857 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:07:34.09 ID:DpNbcd.0
「まだ案言ってないわよ?」
「言っても、言わなくてもダメです。親と相談しますので」

 先生から「ちぇ……」というぼやきが聞こえてくる。イヤイヤイヤイヤ。おかしいでしょ。

「他には、なにか無いんですか?」

 この先生なら何か忘れているんじゃないかと思い、一応確認を取る。
 しばらく首を捻り、「う〜ん……」という唸りを上げた後、先生は、

「特には……ないわね。強いて言えば、貴方を休養目的で停学にとか言う案があったのだけれど」
「それは……俺が断りましたからね」
「うん。そうね。だからさっきの件でおしまいね。 ――ああ、そうだ」

 やっぱり何かあるんじゃないか。喉まででかかったが、留める。

「一応、あなたのカウンセラーをすることにしたわ。言おう言おうと思ってたんだけどねぇ……。確認してくれて助かったわ。今後、何か困ったこととかあったら、先生に相談してくださいね」

 それはありがたい。下手にプロのカウンセラーとかに頼むよりも、こういう知り合いの方が相談に乗りやすい。
 でも――、

「カウンセリングと銘打って、なにか別のことをしようとしてません?」

 どうにも、裏があるような感じがしていたのだ。予想は的中したようで、あからさまに顔を引きつらせている西川先生の姿があった。

「もう第六感が発達したのかしら? ……手ごわいわね」
「まあ……」

 貞操の危機とかは無いと思うし、相談に乗ってくれる大人の人というポジションは非常にありがたい。だから素直に、

「お願いします、ね」

 ちょっとだけだけれど、素直になってみた。

「へ? あ、ええ……」

 そしたら、一生見ることがないかもしれないぐらい、間抜けな先生の顔を拝むことが出来た。
858 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:08:09.02 ID:DpNbcd.0
――――――――。
――――。

 かなり緊張しつつも、クラスの前にやってきていた。
 緊張する理由は、注目をあびることと、質問攻めにされるだろうという事。あがり症な俺は既に足がおぼつかなくなってしまっていた。
 先生曰く、昨日の欠席は風邪扱いにしておいてくれたそうだったから、色々と混乱するだろう。主に俺が。
 ――大丈夫。大丈夫。
 落ち着くには、深呼吸だっけ? スーハー、……スーハー。大きく息を吸う。
 あんまり落ち着いた気がしない。そうだ、素数だ。
 えっと確か……二、三、五、七、十一、――

「なーにやってんだ、こんなところで」

 誰だッ! 順調に進んでいた素数数えを邪魔する奴は!
 そう思い、声の方向に振り向くと声の主は真後ろに居て。
 目にうつるのは、男子ブレザーのネクタイだった。
 流石にその光景に驚き、三歩ほど後ろに下がる。

「な、なんだ。三上か……。驚かすなよ」
「別に驚かしたつもりはないんだがな」

 そう言うと「ふう」と辺りを見まわし、

「入りづらいのか?」
「……うん」

 ちょっとだけ、入りづらいというその事実が恥ずかしくって、顔を背けつつ言う。

「大丈夫だ。なんかあったら、俺がフォローしてやるから」
「ほ、本当か?」

 三上は「本当だって。安心しろ」と言う。その言葉でだいぶ落ち着いた。
 もう、素数を数える必要はなさそうだ。

「よ、……よし!」

 覚悟を決め、扉を横にひらく。そして、皆の視線が痛い中、自席へと歩いた。
 三上も、俺の席の側まで付いて来てくれていた。いや、結構いつものことなんだけどな。
 机の横に、かばんを引っ掛け、椅子を引き座ると、案の定側に寄ってくる奴がいた。

「実奈斗、だよな?」
「……そうだよ」

 友達の――、今では男友達、という部類に入るのか。――斉藤和哉(さいとう かずや)だった。と言っても、高校からの友達であり三上ほど親密ではない。
 さて、質問について答えようか迷ったが、答えておいた。というか、一応の確認であり疑っているわけではないから白を切ったところで無駄だろう。

「どうして女になったんだ? ――まさかッ」
「どうした」

 荒ぶるバカ殿のようなポーズで大声を上げて来た斉藤に言ってやる。
859 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:08:40.36 ID:DpNbcd.0

「風邪か! 昨日の休みは風邪だと聞いていたが……まさかのまさかなのか!?」

 妙に鋭いなこのやろう。

「……そうだよ。なんでわかった」
「んー、消去法?」

 そうか。言われてみれば、俺が女体化した。誕生日じゃないから例外だったんだろう。昨日風邪で休んでたな。じゃあ、風邪が原因? となるわけだ。
 馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、テストで妙に点数が取れてるのはこれが理由か。

「俺には移すなよー?」
「――ッ」

 悪気はないんだ。コイツには。俺のことは気遣ってくれてるんだとは思う。……思う。
 馬鹿だから、悪気があってこう言ったことを言える奴じゃない。これでも一年一緒のクラスにいるから、信じられる。

「はいはい、おしまいだ、斉藤」

 割り込んできたのは、隣にいた三上だった。

「実奈斗だって好きでなったわけじゃない。本人は苦しんでるんだぞ?」
「わかってるよ……。その、なんだ。すまん」
「そうか。……大丈夫だから、そこまで気にすんな」

 手を顔の前で振って、否定をアピールする。
 すると斉藤は「そ、そうか?」と言って、

「とりあえず、実奈斗の事をとやかくいう奴が出ないように俺が根回ししてくるぜー」
「お、おう。ありがたいんだが……なんて言うつもりだ?」

 今日は感が冴える。なんとなーく、嫌な予感がした。

「えっと……『あそこにいる女の子は、実奈斗じゃありません! 実奈斗は女の子と変わりましたっ』かな?」
「それ、俺が女体化したってのと同等だから」

 俺と三上で共に呆れ顔になる。斉藤は「あれぇ?」とか言いながら頭をかしげているが。
 ふと、クラスを見渡すと妙に二人と仲良く話す見知らぬ女の子(俺)を少し不思議な視線で見つめていた。だがまあ、感づいている奴は感づいているらしく、どこか不安げな表情をしていた。
 風邪を移されたくないのだろう。勝手にそう解釈しておく。
 ――女体化したくないのだろう。だれだってそうだ。自分の体が丸々変わってしまうなんて、正直御免だ。
 兎に角、

「いずれバレるんだから、素直に言っとくことにするよ」

 その言葉の直後、ホームルーム開始のチャイムが響いた。
860 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:10:52.35 ID:DpNbcd.0
――――――――。
――――。

 俺の机と、後ろの席の子の机をドッキングさせ、準備は完了した。
 後は――、

「三上!」

 アイツを呼び止めるだけ。当の三上は呼ばれたことに対して疑問を持っているのか、頭

の上にクエッションマークを付けていそうな顔でこちらに振り向く。

「どうした、実奈斗?」

 まずは場を見て状況を判断してもらいたかったのだが……。まあいい。

「とりあえず、ほら。こっち来いって」
「はあ……」

 恐らく、頭の中で既に学食のどの位置に座るかを決めていたのだろうが、そんな想像は

必要ない。
 何しろ今日は――、

「とりあえず、お弁当を作ったから」
「へ?」

 俺の一言にあっけらかんとしてやがるぞコイツ。
 せ、せっかく作ったんだからな。うん。食べてもらわないと。

「『へ?』、じゃないって。な? ほら」

 言いつつ、“ふたり分”のお弁当を取り出し、それを両席に並べる。

「な、なんでまた……お弁当なんて作ったんだ?」
「その言葉、すっごく失礼だと思ったことはないか?」
「そういう意味じゃないって。普段なら学食にするだろ、お前」

 ――、そこを突かれると痛い。実際、俺もどうしてお弁当を作ったかなんて把握してな

いんだ。早く起きて、なんとなーく、今日はどうなるんだろうと想像してたらエプロンス

タイルに変わっていて。気がつくと二つのお弁当に具を詰めて終わった後だったんだから


 そんな事を言ったって信用されないだろう。
 ――というか。
861 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:12:36.72 ID:DpNbcd.0
>>860ミスった(汗

訂正↓

――――――――。
――――。

 俺の机と、後ろの席の子の机をドッキングさせ、準備は完了した。
 後は――、

「三上!」

 アイツを呼び止めるだけ。当の三上は呼ばれたことに対して疑問を持っているのか、頭の上にクエッションマークを付けていそうな顔でこちらに振り向く。

「どうした、実奈斗?」

 まずは場を見て状況を判断してもらいたかったのだが……。まあいい。

「とりあえず、ほら。こっち来いって」
「はあ……」

 恐らく、頭の中で既に学食のどの位置に座るかを決めていたのだろうが、そんな想像は必要ない。
 何しろ今日は――、

「とりあえず、お弁当を作ったから」
「へ?」

 俺の一言にあっけらかんとしてやがるぞコイツ。
 せ、せっかく作ったんだからな。うん。食べてもらわないと。

「『へ?』、じゃないって。な? ほら」

 言いつつ、“ふたり分”のお弁当を取り出し、それを両席に並べる。

「な、なんでまた……お弁当なんて作ったんだ?」
「その言葉、すっごく失礼だと思ったことはないか?」
「そういう意味じゃないって。普段なら学食にするだろ、お前」

 ――、そこを突かれると痛い。実際、俺もどうしてお弁当を作ったかなんて把握してないんだ。早く起きて、なんとなーく、今日はどうなるんだろうと想像してたらエプロンスタイルに変わっていて。気がつくと二つのお弁当に具を詰めて終わった後だったんだから。
 そんな事を言ったって信用されないだろう。
 ――というか。
862 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:13:06.29 ID:DpNbcd.0

「お前、昨日俺がお弁当箱買うところ見てたんだろ? だったら昨日のうちに察してろよ」
「……お言葉に甘えるぞ?」
「はいはい。いいから、食えって」

 椅子を引きふたり座る。弁当箱をお互いに開け、

「これ、昨日のおかずか?」
「うん。なんだかんだ有った所為で、あの後食欲わかなかったから。勿体無いじゃん?」

 これ理由にしときゃ良かった。よく考えたらさっきの台詞恥ずかしい。無しにしたい。
 一人で勝手に悶えてるのを不思議に思ったのか、三上が目の前で手をゆさゆさ(意識が有るか確認するアレ)としつつ、「大丈夫か〜?」なんて言ってきていた。
 いやいや。近い。近いよ?

「へ!? 大丈夫! 大丈夫。……問題ない」

 正直びっくりしてました。心臓は軽くバクバクいってます。

「問題あるから。話し聞いてたか?」
「えっと……なんの?」

 言うと三上は盛大にため息をつき。

「先生になにを言われたのか、って訊いてたんだ」
「ああ。色々と……訊かれたけれど」

 主にすごい一面を知った。

「どんな?」
「いや、先生が直にカウンセリングしてくれる、とか。あ、後……」

 言いつつ、俺は自分のバッグを漁る。目的は、もちろん。

「これ、渡された」
「これは、朝見た奴だな。……えっと、『女体化者による名前変更の手続き』?」

 三上に用紙を見せる。先生から言われたことで重要なことはさっきのカウンセリングとこの手続きの事だけだろう。

「やっぱり、覚えてたか」
「まあな。で――改名するのか?」

 問われた。
863 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:13:41.55 ID:DpNbcd.0

「迷ってるんだよね。名前の最後に斗って付いてるじゃん? アレがあると元男だとバレやすくなるとおもうんだよね。バレたからどうとかはないんだけどさ」

 もし本当にバレたく無いのなら、今頃俺は一人称を“私”にでも変えているだろうし。

「で、今の名前も親が考えてくれたものだし、やっぱり親に連絡しようと思ってさ」
「ふ〜ん。そうか。アレ? 今週末家族のところに行くんじゃなかったのか?」

 箸で卵焼きをつつきつつ、三上が言う。ついでに「俺も行くんだっけ」と付け加えて。

「いや、結構急を要するらしいんだ。つか早くしないと西川先生に決められて親に相談入りそうだから」
「なんだそりゃ」

 人をおかしいものを見たような目で見るなよ。事実なんだからしょうがないだろ。
 なんかあの先生、テンション以上に高かったし。

「兎に角、先生だけじゃなくて、俺も急を要してるって訳だから、今週中に親と相談しなきゃいけない」
「自分では案があったりすんの?」

 頭を捻る。案……案か。スレだったら安価で頼むんだが。いやいや。自分の名前だ。そんな事は出来ない。
 ……だが、ありそうで怖いな、と思考を巡らす。
 【名前】女体化した俺にいい名前を教えてくれ【募集】みたいなスレが。
 いかんいかん。本題から逸れそうだ。

「特には……ない」
「マナ――」
「は?」

 少し、訳がわからないというか、言っている言葉の意味を理解しかねた。
864 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:14:17.56 ID:DpNbcd.0

「だから、お前の名前。実奈斗だろ? そこから斗を抜いて、実奈(みな)。実って漢字は“マコト”って読むから、当て字になりかねないけど“マ”って読む。それで“実奈(マナ)”ってのは――」
「一応親に言ってみるよ」

 採用されるとはあまり思っていなかったのか、三上は目を丸くする。

「なーに呆けてんだ?」
「いや、なんでも、ない」

 なにやら言葉がいまいちはっきりしない三上を見つつ、ミートボールを口に運んだ。

「クラスの奴ら……案外あっさり認めてくれたな」

 咀嚼を終えた俺はふと三上にそんな事を言っていた。
 話題がとびすぎているせいでポカンとしていた三上だが、直ぐに戻る。

「そうだな。色々と訊かれるよりは良かったんじゃないか?」
「その点は良かったんだけど……」

 その続きを小さい声で囁く。

「うちのクラスの女子……俺のことになるとなんだかテンション上がってないか?」

 果たしてどうして。このクラスの女子――西川先生含む――は皆そう言った趣味嗜好の持ち主なのだろうか。
 その証拠に今でも俺のことを見てなにやらキャーキャー言ってる女子がいる。
 三上も小声で、こちらに返す。

「確かにな。いいんじゃないか? 妬み事言われるよりは」
「そりゃ……そうだけど」

 女子の嫉妬は怖いと聞くし、恨みとかそう言った負の感情は買わないほうがマシだろう。勝手に購入される場合が殆どらしいが。

「どうせなら、男の時にキャーキャー言ってもらいたかったけどね」

 相変わらずヒソヒソと話を続ける。これくらいの音量ならまわりの喧騒のおかげで勝手に掻き消える。

「まあ、それもそうだよな」

 そんな会話で昼休みは終を告げた。
865 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2010/12/31(金) 02:18:11.73 ID:DpNbcd.0
今日の分は終了です!
一日開けちゃってスミマセン(汗

>>855 色々とありがとう! なるべく期待に添えるよう、頑張ります!

そう言えば、もう大晦日ですね。
過疎スレと化してるからあまり覗いてる人は居ないかもだけれど、良いお年を!
(次回投稿は時間的には1月1日になるだろうから)
866 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 08:37:51.04 ID:aRQotOQo
久々の投下が来て素直に嬉しい
867 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(クリスマス) 00:04:58.02 ID:oJPwoHY0
明けましておめでとー!
さて、一旦初詣言ってから執筆作業にもどりますお
868 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 02:11:13.82 ID:iKdLJYko
あけおめ
今年も楽しいスレになるようがんばろう
869 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 02:13:21.33 ID:oJPwoHY0
>>868
ですね。もう少し活気が出ればと思います。

あ、小説のほうはもう少しかかりそうですw ガキ使見ててだいぶパソコンから離れてたんで(汗
870 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 03:36:34.35 ID:oJPwoHY0
――――――――。
――――。

 放課後、部活に入っていない俺と三上は適当に時間を過ごし、気付は日が暮れ辺りは真っ暗になっていた。
 今は三上の部屋にいるわけだが、差し込む光は街灯以外には無くなっていた。
 もちろん、学生寮な事にかわりはないから下から上から、騒がしい声が聞こえてくる。

「今更言うのもなんだけど……そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか?」
「んー? そうだな」

 三上の気遣いに、そっけなく答える。まあ確かに、そうなるわな。元男とはいえ、先日の……アレが有る。学生寮の中を移動するだけだから危険は少ないけど、それでも不審者が目撃されたりするから。
 だが、まあそれより……

「なあ、三上。飯どうするよ」

 何とはなしにそんな事を訊く。いや……正確には“何とはなしを装って”、と言うべきだろうか。

「飯? なんでそんな話になるんだよ」
「いや、家で一人で作って食べるのもなんかなぁ、と思って」

 家で一人で食べてるってのは、ものすごく、ものすっごく寂しいんだよ。なんか、哀愁ただようような……もう、兎に角寂しい。それに、怖いし、な。

「前も何度かあっただろ、飯振る舞ったの」
「いや、そうだけどさ。そしてそうじゃなくてさ」
「なんだよ」

 三上は手を前に出し、俺を制止させる。

「お前さ、最近ずっと俺に食べ物つくってくれてるじゃん?」
「……そうだけど」

 それがどうかしたのだろうか。もしかして、

「迷惑……だったか?」

 自分ではわからないが、迷惑だったのか?
 確かに、昨日も今日も……いや一昨日も、か。俺は気がつくとご飯を作ってた。それが、迷惑だったのだろうか?

「……そういうわけじゃないけどさ」
「じゃあ、なんなんだよ」

 そう言うと、三上は申し訳なさそうな顔して、
871 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 03:38:19.02 ID:oJPwoHY0
「流石にそろそろ悪いって。そっちの食費だって、結構――」

 そんな事か、と呆れる。何度も言っているだろう、と。

「料理ってのは、ひとり分も、ふたり分もそんなに変わらないから」
「じゃあ、手間が――」
「同じだ。ちょっと多めに作るだけだぞ」

 どうしても、作らせたくないのか? そんなに、作ってほしくないのか、と心のなかで思う。

「そうか。……じゃあ、頼むわ」

 ちょっとだけ顔を背けながらそういう三上に対して、俺はどんな顔をしていたのだろうか。
 ――これで、確認は済んだ。

――――――――。
――――。

 食事も終え、俺と三上は俺の部屋へと向かっていた。これは、俺と三上で意見合致だった。
 すごく怖いんだ、“男”が。この学生寮、美術高校だから女子が多いとはいえ、俺とか三上みたいに男子だっている。そして、もう二つ有る学生寮には体育系でこの学校に入ってきた奴らがいる。そいつらがこっちの学生寮に入ってこないとも限らない。
 昔はむさくるしいだけで済ませていた体育系だが、今では近づいてほしくない。汗だくで、常にギラギラしてて。……それでいて、いわゆるエッチ系な話で盛り上がる。
 男の頃は、あいつら変態だなで済んだ。女になってからも、そう軽くあしらうつもりだった。
 でも、俺は。“男にとっての男”と“女にとっての男”というものの決定的な差というものを知ってしまった。女は男に逆らうことが出来ない。
 あんな状況、金的とか、そう言ったことが出来るようなもんじゃない。三上が来なかったらと思うと、ゾッとする。
 あいつらからは、もうギラギラを通り越してデロデロとした物を感じた。
 あの時俺は初めて「ああ、男は本当に性欲にまみれてるんだな」って思った。
 だから、たとえ見知った学生寮だったとしてもひとりで歩くのは、“怖い”。

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」

 三上には、あの場面で助けてもらったからなのか“怖い”という感情は一切感じ無かった。斉藤には悪いが、アイツには少し“怖い”って思ってしまった。でも、その斉藤も他の男ほど怖くはない。
 ところで、――今俺は恐怖とはまったく違う感情をいだいていた。
 ――認めたくなかった。ああ。絶対に認めるつもりはなかった。俺は小説とかすきだから、結構読むけどその中にもやっぱり女体化を扱ってる小説が存在する。大抵は女体化した人物が男に惹かれて、っていうストーリだったけど自分はそうなるまいって思ってた。
 でも、無理だった。無理なんだよ。好きになる事なんて、一種の生理現象なんだ。心には逆らえないんだと思う。
 最初は、早く起きてしまう理由も風邪だからって思ってた。
 助けられた後に感じた感情も、どうせ吊り橋効果だって。そうやって“逃げてきた”。
 友達として居られなくなることが、すごく怖い。この関係が崩れることはとっても嫌で。でも、これ以上の関係を望んでいて。
 でも、今日確信した。俺は――俺は。

「なあ、三上……」
「うん? どうした、実奈斗」
「ありがと――」

 俺――文徳実奈斗は、三上悠希のことが、好きだ。
872 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 03:40:34.25 ID:oJPwoHY0
――――――――。
――――。

『もしもし』
「あ、もしもし。実奈斗だけど」

 俺は実家に電話をかけていた。もちろん、改名の件について。
 早いうちに相談しておいたほうがいいかな、って思ったから。

『実奈斗、どうしたの?』
「あー、あのさ」

 でも、やっぱりいざとなると言葉につまる。なにを言われるのか――、勇気を出して言う。

「――改名、なんだけどさ」
『あら、手続き用紙もらったのね。……まあ、そうねー。せっかく女の子になったって言うのに何時まで経っても“実奈斗”じゃマズイわよねぇ。なになに? そっちから言い出すってことはもう名前案決まってたりするの?』

 随分とハイテンションですね、母さん。まあ、いいや。

「俺が考えたわけじゃないけど、一応」
『早く教えてちょうだい! あと、誰が考えてくれたのかも』

 それは、言いたくないんだけれど。だが、母さんの言葉には圧力が有るような気がした。言わなきゃ……駄目だろうか?

「えっと、実奈斗から“斗”を抜いて、読み方を“まな”っていうのを――」
『いい名前じゃない! 誰? 誰が考えたのかしら?』
「その……み、三上」

 滅茶苦茶恥ずかしいんだけど。さっき気持ちの整理が付いちゃったから、名前出すのもアレなんだけど。心臓がバクバクしてる。

『三上くんが考えたの? ……へぇ〜。なるほどねぇ……』

 な……なんだよその意味深な態度はっ! まさか、気付いたわけじゃ……ないよな?
 ない……よな? 母さん。 

「な、なんだよ、その反応は!」
『別にぃ? 母さんはなんにも言わないわ。父さんはどうなるかわからないけど』

 こ、こりゃ絶対に気づいてやがるな……。
 そう言えば、今週末に一回実家に帰るんだっけ。――ん? い、いい一緒に寝たりするのか? 俺と三上を分けるほど部屋数ないぞ、実家……。
873 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 03:41:09.01 ID:oJPwoHY0
「と、とりあえず、改名の手続き今週中なんだけど」
『ああ、さっきのでいいんじゃない? 私たちの考えた漢字とかはそのまま残ってるし、かわいい名前じゃないの。あの人も異論はないと思うわよ』
「父さんの意見は訊かないのか?」

 そう訊くと、『大丈夫よ、私の意見には弱いから』と帰ってきた。
 ……尻に敷かれてるのかな、父さん。少し父さんを哀れむ。

『ところで、実奈』
「ッ! いきなりその名前で呼ぶのか?」

 母さんはもう頭の中で俺の名前の改名を終えてしまったようだ。色々問題がある気がしないでもないが、これで心置きなく提出は出来る。それより、質問だ。何故か質問を受けてしまった。

『いいじゃないの。どうせその名前に変わるんでしょ?』
「――ま、まあそうだけど、さ。で、なんだよ」

 気になる。滅茶苦茶気になるよ、母さん。

『そうねぇ……三上くんと上手くいってるの?』

 ――ゲホッ! 勢い良くむせた。なに訊いてきてんだ? この人はっ!

「な、なッなにがだよ」
『なぁに? その反応は。まるで“気がある”みたいじゃない』
874 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 03:41:51.59 ID:oJPwoHY0

 ハメやがったな、母さんめ。――これは、ぼろを出させるための作戦だったってか。よくあるパターンだなオイ。こんなに簡単に引っかかるとは思ってなかった。
 今まであんなもんに引っかかるのはアホだと思ってたが、――すまん。いや俺がアホなのか?

『で、どうなの? その反応からすると、気はあるみたいじゃない?』
「う、うるさいな! なんでそんな会話になるんだよ!」

 あぁ……言って気が付きました。この台詞はミステリ物で「証拠はどこにある!」っていうあの台詞と同等です。本当にありがとうございました。

『上手く行く為のアドバイスでもしておきましょうか?』
「い、要らないよ!」

 俺が必死に否定するのにも関わらず、母さんは勝手に話をすすめ、

『もう少し、言葉遣いに気をつけなさい。そうねぇ、少なくとも一人称。“俺”じゃダメよ』
「……要らないって言ってるじゃん……」

 だが、言葉でそう言っても、心では母さんの言葉に納得していて。
 でもやっぱり身内に好きな人がバレるのは滅茶苦茶恥ずかしくて、どうも反抗的になる。母さんだってこの気持はわかるだろ?

『この先、絶対必要になるわよ。だから、今直ぐには無理でもせめてそれだけは心がけなさい』
「……わかった」

 それで話が終わるかと思ったが、

『あ、家に帰って来たら矯正するから、それまでに頑張ってね』

 それ、ほとんど日にちないじゃないですか。俺があっけらかんとしているとしていると、『じゃあ、頑張ってね〜』という声を最後に受話器がツーツーという音を鳴らし始める。
 虚しくなり、受話器を元あった位置に戻す。
 はぁ、というため息を吐きながら思う。
 ――明日から、“私”で生きてみようかな、と。
875 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/01(正月) 03:57:48.57 ID:oJPwoHY0
昨日のと比べると少ないです。
>>866
そう言えば、私の投下の前って青色さんの9月のですからね。
個人的に青色通知の前田陸の声は中村悠一さんで再生されてます。


現実逃避というか、作品把握の為に設定とか書き出したけど、みたい人とかいたら言ってください。
876 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 21:01:29.24 ID:1gzspkUo
>>875
話が終わってからならみたいかな
途中で設定みてしまうとクリア前に攻略本を読んでる気分になってしまう
877 :以下、名無しにかわりまして アナ・コッポラ がお送りします [sage]:2011/01/01(正月) 23:16:17.49 ID:xK1NAdk0
設定とかじゃなくて人物紹介でいいと思うにゃ
新しく読む人もそれがあれば入りやすいんじゃないかしら?
878 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/02(日) 02:19:56.15 ID:Cyyabl.0
>>876
確かにそうですね。細かい設定等は書き終えたらうpします

>>877
そうします! なるべく核心に迫るものは省きましたので大丈夫かな、と思います


女体化する世界だったら、登場人物紹介

文徳 実奈斗(もんとく みなと)
 16歳。誕生日は9月22日。
 女体化前 → 身長168センチ、体重58キロ
 女体化後 → 身長153センチ、体重36キロ
 全寮制美術高校に通う二年生。専攻は水彩画。
 食事が付いてこないタイプの学生寮で、無駄遣いをしないという親の教えから朝ごはん「カップ麺類」、昼ごはん「学食」、夜ごはん「自炊」という歪な食生活になっている。
 意思とは関係なく、常にポーカーフェイス。そのせいで「落ち着いている」だの「冷静そう」だの言われる。
 女体化症の危険年齢中であり、その状態で風邪を引いてしまったため、女体化してしまった。

三上 悠希(みかみ ゆうき)
 16歳。誕生日は2月8日。
 身長173センチ。専攻は造形。
 全寮制美術高校に通う二年生。ゲームが大好きで、ほぼすべてのゲーム機を所持。基本的にゲームを持たない文徳を、よく部屋に誘って遊んでいる。
 文徳とは、いわゆる腐れ縁。一緒に高校に入学した。中学以前は文徳の家に泊まることもしばしば。
 普段は冷静だが、特定の状況下では冷徹で一切の手段を選ばなくなる。
 平然としているが童貞。

斉藤 和哉(さいとう かずや)
 16歳。誕生日は5月3日。
 身長167センチ。
 全寮制美術高校に通う二年生。文徳、三上とは一年からの付き合い。基本的にボケ不在なグループだったが、こいつのおかげでツッコミが映えるとか映えないとか。
 サッカーやってそうな名前だが、専攻はコンピュータグラフィクス。
 三人のうち、唯一部活に入っている。但し、弓道。
 基本的に学力面では馬鹿だが、雑学もといムダ知識が有るため消去法は得意。そのためテストで妙に点数がいい時がある。

西川 美妃(にしかわ みき)
 全寮制美術高校の教師。文徳、三上、斉藤の担任。
 身長は159センチと小柄で、容姿の所為もあり美しいでは無く“可愛い”。居酒屋の入店を断られたという伝説が語られている(本人談ではない)。
 真面目な教師に見られるが……?

作中の時間は、2012年のカレンダーを採用してます。物語開始時は4月28日(土)です。


今日は執筆を見送ります(汗
昨日は思いっきり搾り出したんですが、今日はなんにも思い浮かばなくて。すみません
879 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/02(日) 13:01:58.20 ID:0QH8W1Mo
設定大好きの俺歓喜

これはまとめざるを得ない
880 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/02(日) 13:12:18.42 ID:JbV.xE2o
あけおめ!!
881 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/03(月) 03:35:09.50 ID:Re..mGs0
――――――――。
――――。

 俺は朝から悶々としていた。何故かって? 母さんから矯正すると言われた口調についてで、だ。
 あー、また“俺”って言ってるな……。治らないって。15、6年間も使ってきた口調だよ? そう簡単に治るほうがおかしいんだよ。
 と、兎に角! お……じゃなかった。今日からは頑張って、“私”として生きていかないと。どうせ今週末にみっちり仕込まれるんだから。
 治すのは、一人称だけじゃないんだよな……。今のこの口調、完全に男口調だし……。
 どれぐらいかかれば、完全に女口調になるだろう。想像するだけでも気が遠くなりそうだった。
 さて、と。辺りに有るバッグ等の荷物を見ながら、

「準備はオーケイかな?」

 とつぶやく。ふと壁掛け時計を見ると、もうそろそろ針は7時に到達しそうだった。
 や、ヤバい。心臓がバクバクしてきた。それもそうだよな。ついこの間、気持ちを理解して、会うだけでも恥ずかしい相手なのに。それでいて女口調で過ごさなきゃいけないなんて。
 あーッ、もう! そう言い頭を振る。考えるな――、考えるなッ。必死に忘れようとする。しかし、こう言った場合、決して心から離れないことぐらい承知で――
 ――ピンポーン!

「――――ひゃうっ!」

 普段なら、少なくともこんなふうに驚いたりはしないが、無機質なインターホンの音を聞くと、比喩ではなく飛び上がる。
 ねことかが垂直跳びをしたのは見たことがあったけど、まさか人間が垂直跳びをするとは夢にも思っていなかった所為で、その事象にも驚く。
 随分と驚き、まさに頭にクエッションマークを浮かべているような状態だったが、三上が来ていることを思い出し、早く開けてやらねばと思いドアに向かった。
 鍵を開け、ノブを捻る。そこにはいつもとなんらかわりがない様子で三上が立っていて。
 俺を一瞥し、言った。

「どうした? なんつーか、顔赤いぞ?」
「――ッ!?」

 言われて初めて気付き顔を両手で隠す。すると三上は、

「反応を見るからに、熱ではないのか。じゃあ――」
「うッ、うるさい! それ以上は、言うなッ」

 慌てて事を隠すように言うと、三上は不思議そうな顔で、

「俺は心配要らないなって言おうと思ったんだが……」

 とか言ってきた。
 ――へ? ひょっとしてアレですか。語るに落ちるってやつですか? お、私は最高にアホですか?
 ますます顔に血が上ってくるのがわかる。

「だ、大丈夫か!?」
「大丈夫だからッ! 気にするな!」

 恥ずかしい気持ちを隠すために、必死になってしまっていた。だからといって、撤回するのも非常に恥ずかしい。
 ハッキリ言って泥沼状態だと思う。会話すればするほど、恥ずかしさが増していく。
 昨日だいぶ平常だったのが嘘みたいだ。

「本当に大丈夫か? さっきからうつむいてるけど――」
「だから、大丈夫だって! さ、さっさと行こう!」
882 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/03(月) 03:36:25.48 ID:Re..mGs0
 ありえないほど動転している俺の態度に、ポカーンとしつつ三上は俺の後を付いて来た。


――――――――。
――――。

 俺は一日ぶりに職員室へと足を運んでいた。いや、普通は一日置きに職員室へ入ること自体がまれなのだが。
 今日の要件は、いわゆる改名手続きの書類の提出だ。
 昨日の会話の通り、親から(母さんだけだったが)は改名案の許可が出た。なるべく早いうちに方が先生に迷惑かからないから。

「はい、確かに預かったわ。じゃあ、後でおうちの方に連絡させてもらうわね」

 そう言うと、早速妙に高級そうなその用紙をファイリングした。

「ありがとうございます、先生」
「いいのよ〜。実奈ちゃん、ねぇ〜。かわいい名前じゃないの」

 先生はそう言うと、とっても輝いた眼光で私を見つめてきた。

「あの、あんまり見つめないでもらえますか?」

 男の頃ならクラっときただろうその瞳は、女となった今では裏になにがあるのかが見えてしまうのだ。
 そう。この先生は私を「可愛い、弄りたい対象」として見ているのだ。だから、少しばかり突き放す。

「つれないわね〜。ちょっと位いいじゃないのぉー」
「まあ……見るだけなら構わないですよ? あくまで見るだけならですけど」

 そう言うと先生は何かを諦めたようにはぁ、とため息を吐く。

「ねぇ、実奈ちゃん」

 いきなり改名後の名前で呼ばれる。

「先生もいきなりそれで呼ぶんですか?」
「だって、明日には正式に改名も終わるんだし、これが突っぱねられることもないじゃない? それよりも、今日は妙に女の子っぽい口調だけど……なにかあったの?」

 ニヤニヤしてる西川先生。その顔はまさに女子高生……って、違うか。先生の変な噂が流れる理由がわかった気がする。これ、男なら一溜まりも無いもんな。こんな笑顔されたら普通は落ちるよ。
 ――って、なんか先生が妙に鋭いこと言ってるよ!? 確かに、意識はしてるけど三上とかには気付かれなかったし……。それくらいの変化でとどめてるはずなんだけどな、口調。

「鋭いですね。なんでわかったんですか? “私”が女口調を意識して話してる事」
「なんとなく、って言うのが一番正しいわね〜。他にも理由は有るんだけど、一番大きいのが『なんとなく昨日までの口調と違う』って思ったことなのよ」

 一旦区切り、

「まあ、男子は気づかないわよ、きっと」

 そう言う。すると、先生の顔が一変。さっきまでの可愛いニヤニヤから、何かを考えついたニヤニヤへとかわり、
883 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/03(月) 03:37:01.41 ID:Re..mGs0

「もしかして。……もう気になり始めちゃったのかしら、男子のこと」
「――んなッ! そ、そんなこと、」

 女ってものを侮ってました。ほんと、どうしてこうも鋭いの!? 母さんと言い、先生と言い、皆に気づかれてる気がする。
 そして、恥ずかしい。こう言った恋愛ごとは、なるべく一人、もしくは相手とふたりだけで共有したいタイプなのだ。第三者に見抜かれるのは、すっごく恥ずかしい。

「図星みたいねぇ〜。いいのよ、その件で相談しても」

 言いつつ、携帯電話を取り出す。そう言えば、昨日カウンセリングの為にメールアドレスと電話番号を教えてもらったんだっけ。

「し、しませんよッ!」

 多分。――日が経つと恥ずかしさを忘れ相談してしまうのではないかという心配があった。だから多分。
 出来るならしたくはないけれど。

「ふ〜ん……。そう言った人が今までにも……」
「居たんですか?」

 恐る恐る訊く。

「あえて言いません」

 何だそりゃ! 驚きを隠せていないのだろうか、まあ顔に表情はでてないだろうけど。

「これでお相子よ。実奈ちゃんだって言って無いことが有るでしょ? だから、私はこれ以上は言わないわ」
「そ、それはずるいような……」

 先生は誇ったように言った。そして、

「もうこんな時間だったのね。さ、ホームルーム始まるから、教室戻ってね〜」
「あ、は、はい……」

 なんだか腑に落ちない。でも私が言うまで、絶対に言わないんだろうなぁ、そう思い職員室を後にした。
884 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/03(月) 03:37:59.42 ID:Re..mGs0
――――――――。
――――。

「ねえ、えっと……実奈ちゃん……だっけ?」

 突然、クラスの女子に話しかけられた。って、あれ。私に話しかけてる? 一応挨拶はしたことがある女子だったが、あまりに唐突な事だったから、返答に迷っていた。
 しかも、さっき先生が伝えた名前で来たよ……。

「そう、だけど……」

 正直、私が読んだ作品ではこう行った場合女子に話しかけられるといいことは余り無い。ほんと、なんにもない。
 だが、

「――抱きしめていいかなっ?」
「へ?」

 二言目は到底ありえないような台詞で。いきなりそんな事を言われて気が動転する。

「え? ぇ? な、なに!?」
「それだよ! その態度!」

 何か悪いことをしたのだろうか。大声を出されたので思わず萎縮する。責められるのは、嫌だ。
 でも、彼女の顔は怒っているようには見えなかった。

「くぅー! アレだよね! 最ッ高の、“萌え”だよね!」
「……も、もえ?」

 アレか? 秋葉原とかで有名な、オタク文化の“萌え”? これで“燃え”だったら大変だから、恐らく有っているのだろう。勝手に自己完結し、

「もしかして……オタク?」
「痛いところを突いてきますねぇ、実奈ちゃん! でも私は動じないよっ!」

 彼女はなんだか、オタクと呼ばれたことに対して妙に誇らしげだった。
 それはさておき。そろそろ彼女の名前を聞いておいたほうがいい気がする。ずっと“彼女”じゃ、それこそ彼女に悪い。

「あの、すみません。名前を教えてください」
「あ〜。そう言えば、私たちからすれば有名だったから話してたけど、そうだよね。クラスが同じなのは今年からだし、名前知らないのは当然かー」

 私が申し訳なさそうにしてると、気さくにそんな事を言い、笑う。
885 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/03(月) 03:38:27.83 ID:Re..mGs0

「私は、敷島 恵奈(しきじま けいな)。実奈ちゃんが気付いたとおり、オタクっ子なわけですよ〜」
「その、よろしく、敷島さ――」

 そこで、敷島さんは首を横に振り、

「ノーノー。私のことは恵奈って呼んで。そんなお固い敬語じゃ嫌なのです!」

 にこやかにそんな事を言う。そう言えば、さっきからずっと敬語だった気がする。
 ……女子とすんなり話せたら、女体化なんかしないよね。

「わかった。け……恵奈……ちゃん」
「よろしいよろしい。よろしくね、実奈ちゃん」

 そう言って、頭をなでられた。……なんだろう、この幸福感。今までは男だったから頭をなでられるって事が無かったからかな。
 さてさて、こんなに会話が流れればさっきの件は忘れて――

「――で、本題に戻るけど、実奈ちゃん! 抱きしめてオーケイですかな?」

 忘れてくれなかった。なんだろうか、恵奈ちゃんの眼光には有無を言わさぬ何か強い意志が感じられる。ただ、否定することは出来た。でも、

「……ん、いい、よ」

 気がつけば、その問に対して私は肯定していた。
 女の子に抱きしめられるなんてレアな経験はなかなか無い。少なくとも、彼女とかが居なければ。いや、いたとしても抱きしめるのは男のほう? それに私は、彼女とかいた経験がないし……。
 そして私が抱きしめられることを許可した何よりの理由は、女の子同士ならほぼ確実に合法で居られるということ。
 そんなくだらないことを考えたりしていると、ブワッと恵奈ちゃんが重なってきた。
 私より幾分か大きい身長と……あからさまに大きい胸が私を包む。
 ――柔らかい。いい匂いもする。

「やっぱり可愛いよぉー、実奈ちゃん! ……是非このまま妹にっ」
「それは、無理、だと思うよ」

 苦笑しつつ、恵奈ちゃんに言う。ほんと、温かい。

「そのまま、寝ちゃってもいいんだよ〜」
「まだ授業が残って……るよ」

 優しい問いかけに、心が落ち着く。
 こうやって、優しくされるのは、嫌いじゃ――な、

「あ、あれ? ほんとーに寝ちゃった?」

 そんな声がとても心地よかった。
 ――ちなみに。男子がとっても“アレ”な目で私たちを見ていたことと、その後の授業は丸々寝ていたことがわかったのは後の話である。
886 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/03(月) 03:44:34.43 ID:Re..mGs0
今日の分の投下は終了です!
百合展開は確実に私の趣味ですサーセンw
応援してくださってる方、ありがとう!

>>879
まとめ人ですか! 出来れば私の作品は作中の日付で分けていただきたいです。
あくまで希望なので、無視してもいいですが。
題名は……「幸せ」でよろしく頼みます。

>>880
明けましておめでとうございます!
今年はこのスレが過疎から脱出しますように……w
887 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/03(月) 21:09:32.46 ID:cBnlE4Y0
GJ!
888 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/04(火) 03:36:49.28 ID:jfT0RGo0
――――――――。
――――。

 困った。本当に、困った。
 素直に恵奈ちゃんと一緒にクラスに帰っていれば良かった。
 なにが困ったのかというと、それは今眼の前に居る“男子”についてだ。
 あからさまに体育会系で、がっちりとした体。その男子が、否。男が。私と対面している。
 普通、女の子になっちゃったばかりの人間を体育の後、体育館裏に連れ込み――、

「なあ、どうなんだ? 付き合ってくれるの?」

 ――告白するなんて真似が出来るのだろうか。正直やめてほしい。接点がない。私はこの男を知らない。明らかに美術で入ってきたとは思えないから、スポーツ推薦で入ってきたのだろう。
 そしてなにより。私は、男が怖いんだ。だから、最近は家から出ない。もちろん、三上が居るときは別。アイツがボディーガードをしてくれているから。
 でも、今はその三上も居ない。そりゃ、四六時中私の側に居るわけには行かないし……なにより、今は……体育の、後だ。
 私自身、寒いから早いところジャージなり、なんなり着たいのだけれど、どうしても、動くことが出来ない。
 言い訳をさせてもらうとしたら、男と対面しているだけでも体はガチガチで。声もろくに出せないから、つまるところ逃げられないでいる。
 どうしてだろう。ちょっと怖い目にあっただけで、体は、頭はこんなふうに判断してしまう。相手の顔を直視できない。でも、相手は直視してくる。
 その視線が怖い。――恐い。
 そして、男はしきりに「付き合ってくれる?」とか「返事してよ」とか言って来る。なんで、自分から迫ってきておいて……。一人の女の子……いや、元男だけどさ。女の子を、苦しめてるとも気付かずに、こんなことが言えるのだろうか。

「そんな顔してないでさ、ほらどうなんだ?」

 そんな顔、というのは恐らく私の“冷静そうな顔”の事だろう。表情が出ないのが、こんなにも裏目に出るとは、思わなかった。もっと、表情が豊かだったら。もっと喜怒哀楽に富んだ顔が出来たら、この男は私が嫌がっていることに気がついただろうか。
 ――助けてほしい。でも、助けてくれる人が居ない。
 ふと、頭に今日親しくなった恵奈ちゃんが浮かぶ。けど、それを必死に振り払う。恵奈ちゃんも、かなり可愛いほうだ。こういう男は、……面識もないのに告白してきてることから考えて、顔だけで物を判断するのだろう。だとしたら、恵奈ちゃんにも迷惑がかかる。それだけは、駄目だ。

「どうなんだよ?」
「――ッ」

 肩が震えたのがわかった。それくらいあからさまに相手の態度が変わった。
 泣きそうだった。そうしている間にも男は一歩、私に近づき。
 遠ざかりたいけれど、私の足は言うことを聞かない。心臓が痛い。圧迫されているのがわかる。
 もう涙腺は決壊寸前なのに、顔ばかり強ばっていて、なにもすることが出来ない。せめて泣き出せたらどんなに楽だろうか、と思考を巡らす。
 一歩、――また一歩。男がどんどん私に近づいてくる。
889 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/04(火) 03:37:38.34 ID:jfT0RGo0
 体の強ばりが一層高まり、足も完全に竦んでしまっている。奥歯を強く噛みあわせ、必死に耐える。
 もう少し、もう少しすれば――、時間が、
 ――時間? 嫌な予感がする。今は体育の終了の時刻。そして、それは次は“昼休み”で有ることを表していて。次の着席のチャイムまでは、あと30分以上も有る。
 助けは来るのだろうか。ヘタをすると、このまま昼休み中口説かれ続ける、なんてこともあり得る。
 気づけば、相手のワイシャツの胸元が、私の目の前に有り。

「……答えてくれよ」

 そう言いつつ、両肩を掴まれる。
 体が激しく震えた。感づいてくれただろうか?
 恐る恐る、上を見上げる。すると、そこに見えたのは、怒っているような、何かを我慢しているような。良いとは言えない顔で。
 その体勢から、まるで動けなくなる。私が苦しんでいることに、怖がっていることに気付いていなければ、返事をよこさないことに対しての不満が顔に出ている。
 その顔はまるで私を責めているようで、いたたまれない気持ちになる。
 もう、自力では絶対に逃れられない状態になってしまっていた。少しでも、さっき、少しでも勇気を振り絞って逃げていれば良かった。そんな後悔が頭をよぎる。
 今はもう、肩を捕まれ足は動かず、体は硬直しきっていて。
 涙腺も硬直しているのだろうか? 顔は――元からかもしれないけど。せめて、顔だけでも、表情が出れば。そうすれば、きっとこの男も察してくれる。
 声……。声を出そう。そう考えた。でも、それすら無理で。

「ぁ…………」

 必死に搾り出した声は、相手にすら届かず。空中で虚しく掻き消える。
 助けてよ、察してよ! 頼むからッ……。
 泣きたい。……泣けない。声も出ない。苦しみは顔に出ない。足は動かない。
 呼吸をしているのかも、わからなくなってきた。
 ――恐い、怖い、コワい!
 こんなに男が思ってしまうのは、どうしてだろう。私が、男を理解しているから? なにをされるのか、わかってるから? 男に、犯されそうになったから?
 違う。きっと、どれも違う。どれも違くて、どれも正しい。
 支離滅裂な思考。必死になって搾り出そうとする言葉。それら全て、意味が無い。
 きっと、助けを待っていた。それしか出来ないから?
 ――違う。助けて、欲しかったから。
 どうして、抵抗出来なかった? 体が動かないから?
 ……違う。多分、心配して欲しかったから。
 どうして、冷静になったの? ――それは、

「お前……実奈になにをしている?」

 最近も聞いた。あの、怒っていて、頼もしい声が、聞こえたから。
890 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/04(火) 03:40:47.07 ID:jfT0RGo0
今日は短めにしました。
あえてです。続きは書いてあります。
ちなみに続きは、初めてとなる実奈以外の視点で書きました。
一時的なものですけど。
続きが読みたい場合は、GJもしくはwktkと二人以上が入力すると明日のお昼にはうpが終了してると思います。

って言うのをやってみたかったからやった。後悔はしてないと思うw
891 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/04(火) 20:03:13.36 ID:4nk3D7A0
続きwktk
892 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/04(火) 23:57:24.98 ID:9ey3p2s0
wktk
893 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/05(水) 03:42:17.49 ID:dPnxOOM0
――――――――。
――――。

 おかしい。なにがおかしいかって、それは実奈が居ないこと。昼休みももう10分を過ぎている。他の女子は、既に体育から帰ってきていて、でも実奈だけが帰ってきていない。
 俺の昼ごはんが無いって事もあるが一番心配なのは、また何かに巻き込まれてしまっているのではないか? ということ。
 居ても立っても居られなくなった俺は、今日休み時間中に実奈と親しくしていた女子生徒に話しかけることにした。

「な、なあ、えっと……」

 よく考えたら、俺はこの女子の名前を知らなかった。どう呼んでいいか、迷っていると、

「おや、三上くんですかな?」
「……なんで俺の名前を知ってるんだ?」

 俺は知らないのに――、ってこれは暴論か。帰ってきた答えは、意外というか、当然なもので、

「いやいや、いつも実奈ちゃんと一緒にいるし、今日実奈ちゃんの口から語られた男子は、三上くん。貴方だけだったのですよ?」
「なるほど――、ってそれはどういう事だ!?」

 この女子が、あまりにもニヤニヤしながら俺に言ってきたもんだから、思わず強い口調で聞き返す。恐らく言葉の裏に隠れた何かが有るのだろうとも思えた。

「んー、私的には三上くんは実奈ちゃんの彼氏さんですかな、と訊きたかったり」
「んなっ……! ち、違う! す、少なくともアイツはそう思ってないだろ!?」

 言うと、あからさまにニヤニヤされる。絶対に誤解してる。

「じゃあ、少なくとも両思いなんだねっ?」
「ち、違うと思うぞ?」

 俺は……確かに好きだが。迷惑だろうと思う。あいつからしたら、頼れるのは俺だけ見たいなものだから、それで頼ってきているに違いない。

「まあ、惚気(のろけ)話は置いておくとしましょう」
「なにが惚気話だ!」

 思わずツッコむ。ちくしょう、斉藤との会話で鍛えられたツッコミスキルがこんなところで披露されることになろうとは……。

「で――、三上くんはなんでそんなに慌てながら私に物を訪ねてきたのですかな?」

 相手から本題を打ち出されるとは思ってなかったから、少し驚く。そうだ。そうだった。こんなエセ漫才みたいなことやってる場合じゃないんだ。

「なあ、実奈……見なかったか?」
「そう言えば、戻ってないみたいだね。さっき私の誘いを断って、先に帰ったかと思ってたんだけど……」
「なんで先に帰ったのに、クラスに着いてないんだよ!」

 言うと、女子は困惑した表情を浮かべ、
894 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/05(水) 03:44:44.06 ID:dPnxOOM0
「わ、私に言われても……。……あ、そう言えば」
「そう言えば、なんだ!?」
「そんなに慌てないで。落ち着かなきゃ、色々取り返しが付かなくなっちゃうかもしれないよ?」
「そ、そうだな……。すまん」

 言われて初めて、自分が慌てていることにも気付き、頑張って平静を保とうとする。

「……さっきね、他クラスの人間が、実奈ちゃんを気に入っていたようだった、って話を思い出したの」

 何だそりゃ、と聞き返す。

「お昼休みで外に出てる生徒さんは少ないから、ひょっとしたら告白とかされてるのかもしれない」

 アイツが、告白か。まあ、普通に可愛いし、当然の結果なのだろうか。これだから顔だけで全てを判断する奴は、まったく。いや、中身も全然悪くないが。
 って、待て待て待て待て。ヤバイんじゃないか? 実奈が自力で相手から逃げられるとは思えない。実奈は学生寮の部屋から部屋への移動ですら、怖いと言ってきたんだ。だとしたら、男と二人っきりになっちまうのが当然の告白の現場なんて、耐えられるのか?

「ヤバいな――。なあ、つまり実奈は外に居るのか?」
「ど、どうしたのかな、三上くん!?」

 気づいたら、思わずその女子の肩を掴んでしまっていて。「すまん」と言って肩から手を離す。

「実奈ちゃんが告白されてるのは、嫌?」
「そう言うんじゃない……いや、それもあるけど、問題は“そこ”じゃないんだ」

 あっけらかんとしている女子に、理由を。実奈も信用している相手だし、それこそなにも言わずにただ「駄目だ、ヤバい」とか言っても信じられないだろうから。告白されてるなら助けださなきゃ行けない理由を話す。

「アイツは、実奈はいわゆる“男性恐怖症”状態なんだよ。ちょっと、色々有ってな」

 小声でそう伝える。まだ核心には触れていないものの、女子の方も理解してくれたようで、

「……三上くん? ならこんなところで立ち話してる場合じゃないんじゃないかな?」
「そ、そうだな、言って来る」

 そう言い、教室を後にしようとする。だが、その女子に止められた。

「まって。……私も行くよ。仮にも実奈ちゃんの友人だから、ね」
「そうか、じゃあ行くぞ、えと……」

 ここに来て、名前を知らないことがバレた。この状況じゃ、名前を訊こうにも訊けなかっただろうと頭の中で勝手に言い訳をし、

「私は、敷島恵奈、だよ。覚えといてね三上くん」
「ああ、わかった。行くぞ、敷島……」

 察してくれたのか、名乗ってくれたことに感謝しつつ、教室を後にした俺たちが体育館の裏で見た光景は、大柄な男にがっしりと両肩を捕まれ、顔は強ばり恐らく平静を保てていないだろう、実奈の姿だった。

895 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/05(水) 03:46:14.75 ID:dPnxOOM0
――――――――。
――――。

「誰だよ、お前」

 私を掴んでいる男が、その声の主に向かって言う。その声に驚きつつも、ようやく男の手から開放される。
 やっと、助かった。思わず、今まで緊張でガチガチになっていた涙腺が緩みそうになった。もう、どうでもいいかもしれない。
 もう、来てくれたから。どうしてかは知らないけど、ここに。

「お前こそ、誰なんだよ。……実奈と、面識あったのかよ?」

 声の主にそう言われ、たじろぐ男。その男が、恐らく苦肉の策だったのだろう。言い出す。

「お、お前こそ、……どうなんだよ!」
「俺がコイツを、実奈を名前で呼んでる時点で気付けないのか?」

 苦し紛れの一言は、揺るぎない口調にたたき落とされて。顔は怒りに染まっていた。いや、それ以前に言葉の主――三上は何か呆れたような目でその男を見ていた。
 足が、掬(すく)われたような感覚。安心しきったことで、体中の力が抜けたのか――、私は後ろに倒れこみ、

「っと、だいじょーぶかな? 実奈ちゃん」
「け……恵奈ちゃん……」

 後ろに立っていたらしい恵奈ちゃんに抱えられる。
 ――って、え? どうして恵奈ちゃんまでここにいるの?
 しかしそんな思考は長く続かず。

「お前、この女の彼氏か何かなのかよ!?」

 男のほうが、声を荒らげて言った。切羽詰っているのだろうか。そんな事を口にするなんて、常識ではありえない気がしないでも無い。
 三上の方も、だいぶ冷静で、

「それがどうしたんだ? 逆に訊くがお前は実奈と付き合えるとでも思ってたのか?」
「――っ! この野郎! 調子に乗りやがって……」

 その声の大きさに、思わず萎縮する。そんな私の肩を、恵奈ちゃんは優しく包んでくれて。
896 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/05(水) 03:46:35.83 ID:dPnxOOM0

「そんなふうにしか反論出来ないってことは、自信は無かったんだな。――いや、無理矢理にでも付き合わせるつもりだったのか……」

 三上はそう言うとため息を吐き、言う。

「お前、最低だな」
「野郎……!」

 そうとしか言い返せない男が哀れに見えてきた。でも、このまま恨みを買うようなこと――、

「図星なんだろ? だったら最低だ。図星じゃなかったとして、告白してるってことは最低限顔は好きになったんだろ? だったら……」

 一旦区切った三上は私のことをチラッと見て、

「その顔の僅かな意思表示すら見抜けないなんて、少なくとも俺ならそんな奴を実奈の彼氏になんてさせられない」

 既にうつむいてしまっている男に三上は迫り、

「これ以上実奈に近づくな。次お前が実奈に迫ってるところを見たら、次は言葉じゃなくて手が出るぞ」

 男を真正面から睨みつけ、言った。
 それを聞いた男は、さっさと退散していく。逃げ際に何か言っていたような気がするが、私には聞き取れなかった。
 今は、三上がこんなにも私を気遣っていてくれていることが、すごく嬉しくて。
 一緒に来てくれた恵奈ちゃんも、同じ。二人して、助けに来てくれた。
 それが只々嬉しくて。

「ありがと……」

 それしか、言えなかった。残り少ない昼休みを、私はずっとそれを言い過ごした。恵奈ちゃんと、三上と一緒に。
897 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/05(水) 03:49:11.61 ID:dPnxOOM0
今日はこれで終了です!
昨日の書き込み、明日のでは無く、“今日の”の間違いでしたすみません。

書いてて言うのもなんですが、三上くんかっこいいですね。
898 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/05(水) 21:25:51.51 ID:vcocIYoo
GJ!
さっそくまとめてみたけど、こんな感じでいいですかね?
後から見たら日付順ってあったので、また次回、日付入れたモノで直しておきますね
899 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/05(水) 22:55:11.02 ID:dPnxOOM0
>>898
超GJです!
推敲とか足りてない部分があったんで後でwikiの方で修正とかします。
900 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 03:06:39.75 ID:K/SvIDA0
――――――――。
――――。

 今日、いつも通りに学校に来ると騒がしいアイツが来ていなかった。遅刻か? と三上と二人で言っていたけど、実は違ったようで。
 西川先生が今日はお休みだと伝えてきた。
 それで、今三上と二人で半ば会議状態になってしまっているわけなんだけど……

「三上、やっぱり……。風邪、なのかな?」

 俺が会話を切り出す。俺と接点がある人物で、尚且つその週内に休むということは、つまり高確率で俺の風邪が移ってしまっているということを意味しているような気がしたんだ。
 それを聞いた三上はなにやら神妙な面持ちをし、

「それ以外に、休む理由が見当たらないからな。多分、そうなんだろ」
「ま、マズイのかな? ……その、私はこうなっちゃったし。ひょっとして斉藤も……」

 二人して、低くうなる。もしこれで斉藤が女体化したとして。恐らく私の精神が耐えないと思う。
 と、そんな負のオーラを察知したのか、明るく振舞おうと近づいてくる人物が一人いた。

「や、やあー実奈ちゃん、三上くん! げ……元気?」

 普通に接しようとしているのだと思うけど……負のオーラに負けてるよ、恵奈ちゃん!
 私は恵奈ちゃんに返事を返す。

「元気……かな?」
「元気、だな」

 三上も同じく、返事をした。
 まあ、はたから見ても、私たちから見ても元気そうなムードには見えないわけで。

「い、色々あるよね……」
「そういう事だ。忘れてくれ敷島」

 三上にそう言われた恵奈ちゃんは「うん、そうしますよ〜」とおどけて見せて、
901 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 03:07:18.81 ID:K/SvIDA0

「――で、いつも一緒にいるあのボケ担当君はどうしたのかな?」
「敷島。何一つ話が変わっていないんだが……」

 きっと、このどんよりムードは忘れてくれたのだろう。けど恵奈ちゃん。その質問の答えはそのどんよりムードを作っていた原因で、三上から言葉が漏れる。

「あ、あのね、そういうつもりじゃ」

 自分の言った言葉の意味と、ムードの原因がわかったのだろう、恵奈ちゃんは慌てて取り繕う。

「いいよ、恵奈ちゃん。まだ、なったって決まったわけじゃないし……」
「な、なんのことかな?」

 そうか、と一人納得する。恵奈ちゃんはまだ知らないんだ。斉藤が童貞だってことを。

「えっとね、そのボケ担当君こと斉藤なんだけど」
「う……うん」

 恵奈ちゃんから、ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえる。

「今日休んでるじゃん?」

 そう言うと、想像していない言葉が帰ってくる。

「え? ――あー、じゃあ今日休んだ男子イコール、ボケ担当君なのですねー。なるほどなるほど……」

 道理で、最初に斉藤の事を訊いてきたわけだ。恵奈ちゃんの頭の中では、斉藤と今日休んだ男子が同一人物だと認識されて居なかったのだろう。名前も覚えていないようだったし、当然かと思う。

「うん。でね、休んだでしょ? 今日学校を」
「そうだね」

 ものすごく真剣に聴いている恵奈ちゃんに言う。
902 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 03:08:13.64 ID:K/SvIDA0
「私の風邪が移っちゃったんじゃないか……って」

 それを聴いた恵奈ちゃんは、目を丸くして。

「それなら、別に実奈ちゃんのせいじゃないんじゃないかな?」

 と言ってきた。そこに三上が加わる。

「それだけなら問題じゃないんだが、アイツまだ……その、童貞、なんだよ」
「つまり、風邪の所為で女体化してしまったんじゃないか……って事なのかな?」

 私はコクリと頷く。

「だいじょーぶだよ、実奈ちゃん。私は、そんなに実奈ちゃんが背負うことは無いと思う」

 恵奈ちゃんは「それに」と話を続ける。

「斉藤君……だっけ? あの人はそういった事で人を責める人じゃ無いと思う。少なくとも、私からはそう見えたよ」

 妙に真剣な口調で恵奈ちゃんはそう口にした。
 やっぱり、女って言うのは誰しも鋭いものなのだろうか? 気がつくとそんな事を思い浮かべていた。

「だから、実奈ちゃんがそんなに硬くなることはないのですよ?」
「ありがと、恵奈ちゃ――ん!?」

 言うなり恵奈ちゃんに抱きしめられる。私よりふくよかなその胸部に顔が埋まった。
 やっぱり……気持いいなぁ……。気づけば心が安らいでいるような、そんな気分になれた。

「敷島……。また寝ちゃったらどうするんだ?」

 三上がそんな事を言っている。寝ちゃったら、……なんとかしてくれるかな?

「その時はその時だよー。……もしかして、嫉妬してる?」
「んなこたねーよっ!」

 恵奈ちゃんの言葉に、三上は必死に反論したところで、放送の鐘の音が休み時間の終を告げた。
903 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 03:14:44.97 ID:K/SvIDA0
――――――――。
――――。

 斉藤が居なかった点を除けば、今日は普段と特にかわりなく過ぎて行った。
 先ほど、私の部屋で食事を終えた三上が帰宅したところで。なんだか名残り惜しかったけれど、どうせ明日も会えるんだからと納得させる。
 ――今、私は考えなければいけないことがある。女体化。私はもう女体化してしまって、女の心も受け入れてしまったからもう「男だったころもあったなー」位の感覚になってしまっている。私の体だからこそ、そんな考えで済んでいるが、考えなければいけないのは別の問題。
 斉藤は風邪を引いたのかもしれない。先生は休んだ理由を言わなかったから、どうとも言えないけれど、それはつまり女体化の危険が有るということで。
 ひょっとしたら明日女体化して登校してくるかもしれない。
 ……でも、友達ならまだいい。問題は“好きな人”だ。
 私の好きな人――み、三上の事だけど。三上は未だ童貞だ。そして、私みたいに突発的に女体化してしまう危険性がある。それだけは、避けたい。
 そしてそれを避けられたとして、結局三上の誕生日には女体化してしまう可能性があるわけで。
 もし、三上が女体化なんてしてしまったら、それこそ泣き崩れてしまうかもしれない。
 それに、今までは男だったから私のことを守れたけれど、女体化してしまったらむしろ“狙われる側”へと変わってしまう。そんな事になってほしくなかった。
 そして、それを一人で考えている、というわけである。

「……一番簡単な方法は、“私が三上を襲う、三上に襲われる”こと、なんだけれど」

 そううまくいかないのが、人間関係である。もちろん、三上も男だから本能に訴えかける事をすれば、……私を、襲う可能性もある。
 でも、三上がそれをしてくれるとは、到底思えない。
 そして、私が襲うっていう案だけれど、恐らく三上に怒られてそれで終了だ。あの三上が、そんな事を許すはずがないと思う。
 どっちにしろ、この二つの案はそもそもが達成不可能なのだ。なぜなら――

「は……恥ずかしぃ……」

 こうやって想像しているだけでも顔から火を噴きそうだったから。そんなんで、三上に襲ってもらうとか、私が三上を襲うとか。そういうのは出来るわけがなかった。
 よって、第二案に移行しなければいけなくなってしまうわけで。でも、その第二案というのは、所謂「私が三上に告白をして、付き合いその過程で“行為”に及ぶ」という物。
 それも例によって、恥ずかしい。
 でも、今はそれしかない。それしか、出来ない。

「でも……母さんは、兎も角父さんは許してくれるかな……」

 そもそも告白する勇気があるかどうかという面でも不安が残るけど、一番の不安はそこだ。
 恐らくだが、私が付き合うというだけでも否定されそうな、そんな気がしてならない。
 だとしたら“行為”そのものにも反対に決まっている。知れたら、どんなことをされるか……。
 考えるだけで恐ろしい。
 ちょっとだけ、本当にちょっとだけ相談をしてみようと思った。
 もちろん、先生や母さんではなく、恵奈ちゃんにだけれど。
 思い至った私は、携帯電話を取り出しアドレス帳のボタンをプッシュする。
 手も小さくなってしまったおかげで、携帯電話が妙に大きく感じる。現に今両手で包むように携帯電話を握っているわけだけれど。――閑話休題。

「えっと……『け』っと……」

 最近になって、名前の登録をフルネームから呼びやすいものに変更したのだ。だから、恵奈ちゃんは「敷島 恵奈」ではなく「恵奈ちゃん」と登録してある。
 ちょっとばかり恥ずかしいけれど、ついさっき三上を「悠希」に変更した。絶対三上に携帯電話を見られるわけには、いかない。
 兎も角、恵奈ちゃんの番号に掛ける。
 ――プルルルル……。
 という機械的に繰り返されるコール音が響く。そして、

「もしもしー、どうしたのかな、実奈ちゃん!」
904 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 03:15:03.76 ID:K/SvIDA0
 昼にも増して元気そうな恵奈ちゃんの声が私の耳に届く。

「夜遅くごめんね、恵奈ちゃん」
「かまわないよー! 私は夜型人間なのです!」

 なるほど、道理でハイテンションなんだなと一人納得し、話を切り出す。

「あのね、その、相談が有って。……三上の事なんだけど……その、」

 やっぱり、人に言うとなると言葉に詰まってしまう。けど、勇気を出して言葉にする。

「私、ね、三上に女になってほしくないって、思った。今日、改めて“自分じゃない誰かが女体化するかもしれない”っていう自体に直面して、そう思ったの」

 声が震えているのが、自分でもわかる。恐らく、恵奈ちゃんは既に気づいているのだろう。でも、そこを追求せずに話に相槌を打ってくれて。

「だから……さ、あの……その……三上が……私を、私を好きになってくれるにはどうしたらいいのかなって。つい最近女になった私じゃ、全然わからなくて……それで」

 そこまで言ったところで、恵奈ちゃんが話し始める。

「そっか、それで悩んでたんだね、実奈ちゃんは。そーだねー……」

 恵奈ちゃんは「うーん……」と唸って、

「実奈ちゃんは全然可愛んだから、もっと猛アタックしていいと思うよ? きっと、実奈ちゃんにアタックされちゃったら三上くんもイチコロまちがいなし!」

 電話口から「バキューンッ!」という声が聞こえてくる。

「そ……そう、かな?」

 正直、猛アタックして三上が彼氏になってくれるのか、不安がある。
 だって、三上が私に優しくしてくれてるのは腐れ縁の友人で、危ない目にあってるからで。
 でも恵奈ちゃんは相変わらずの答えで。

「大丈夫、だいじょーぶ! 信頼はあるんだし、後は告白するだけで落ちちゃうかもしれないよ〜?」
「そうだといいけど……」

 言うと、恵奈ちゃんは「それに」と続ける。

「女の子になってほしくないんでしょ? だったら、実奈ちゃんが行動するしか無いんじゃないかな? 私も最大限サポートしてあげるから、実奈ちゃんも精一杯アタックしてみてよ」
「う、うん。そう、だよね。頑張ってみる、よ」
「そーそー! 何事も“当たって砕けろ”精神で行かなくっちゃね!」

 と言われ、思わず

「あ、砕けちゃダメだね!」

 恵奈ちゃんは笑いながら自分の言葉にツッコむのだった。
905 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 03:17:25.37 ID:K/SvIDA0
投下して初めて気付いた。
電話での会話なのに「」のままだ……

まとめの人、まとめ終わったら言ってください。
訂正しに行きます……orz
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/06(木) 12:35:30.16 ID:EMpFZwQo
毎度おつおつ
電話の会話部分は普通のかぎカッコでも大丈夫じゃないのかな?
そのまままとめておきましたので、後は焼くなり煮るなりよろしくどうぞ!
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/06(木) 17:33:51.83 ID:Ec7ganQo
読んでてなんていうかニヤニヤできるような話だ
無事くっついて欲しいね
続き楽しみにしてます
908 : ◆3FT9LO.i/6 [sage saga]:2011/01/06(木) 23:25:10.46 ID:K/SvIDA0
明日から学校で忙しくなってしまうので、今日は投下できません
代わりに三連休中はかなり頑張る予定です

>>906
こちらこそ、まとめ乙です
訂正の方、終わりました!

>>907
応援どうもです!
どういうふうにくっつくかは私自身分かっていなかったり
行き当たりばったりで書いてますからね、これ
909 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/09(日) 01:44:01.93 ID:ZUo6Dj20
――――――――。
――――。

 今日は、かなりドキドキしながら学校へ出向いた。ひょっとしたら斉藤が女体化してしまっているかもしれない。そうしたら、どうしよう。そのことばかりを考えていたのだ。
 素数を数えても落ち着かないし、手のひらに人と書いて飲み込んでも落ち着かない。深呼吸も無駄だったし、ましてや無機物に例えたところで言葉を発してくるから意味は皆無だった。
 だけれど私の心配を他所に斉藤は一昨日と寸分かわらぬ姿で「おはよー」と言ってきた。どうして昨日連絡をよこさなかったのかというと、それすら出来ないほどに休んだ原因である下痢・腹痛が凄かったらしい。今日も少し腹痛の気があるらしく、お腹をさすっていた。
 女体化の可能性はというと、運がいいのか悪いのかどうやら昨日が斉藤の誕生日だったらしい。おめでとうと同時にご愁傷さまと告げておいて。
 兎に角それによりだいぶ平静を取り戻した私だが、やはりもうひとつのとても大きな比重を持つ心配事は消えてくれなかった。
 ――三上が女体化してしまう可能性。三上の誕生日は遅い。少なくともあと一年弱待たなければ危険年齢から脱出することは出来ないままで、それまでに風邪を引かない保証などどこにもない。
 更に言えば、突発的に女体化してしまう可能性も有る事を考慮すると尚更早く手を打つ必要があった。
 私が、三上に告白する。そして行為を要求する。それだけでいいはずなのだけれど、それがうまくいかない。普通に会話する分には平気(前とはちがってかなりドキドキするけれど)なんだけれども、どうしても告白は勇気が出ない。三上と並んでいるときに「好き」とか「告白」とかいう単語が耳に入ってくるだけでもカチカチになってしまう始末だった。
 だから、恵奈ちゃんに相談した。私の持っている知識は男から見た女でしか無かったから。女から見た女という面で、ある種の躾をしてもらいたかったのだ。
 そして今現在いる場所は恵奈ちゃんの部屋。ちょうど私の部屋の一個上の階に位置する部屋である。
 こんなに近いとは思っていなかった。それでも怖いわけだから、送り迎いを恵奈ちゃんに頼んでるけれど……。

「でね、実奈ちゃん。男の子っていうのはね、やっぱり家事をする女性に弱いと思うんだよね」

 恵奈ちゃんの机を挟んでの講義に「うん」と頷く。

「その点……実奈ちゃんは三上くんにお弁当を用意してあげてるようだけど、それだけじゃ足りない! もうマンネリ化してしまってるかもしれないのですよ!」
「そ、そうかな?」

 言うと、恵奈ちゃんは元気よく「そう!」と言い放ち、

「だから、いっそ夕飯も作ってあげてですね」
「あの、夕飯は……作ってる、よ?」

 ポカーンとした恵奈ちゃんの表情。鳩が豆鉄砲食らったような顔、とでも形容しようかと思えてしまったほどだった。
 恵奈ちゃんは「コホンっ!」と仕切り直しすると、

「じゃあ……朝ごはんも作ってあげるのですよ! 実奈ちゃん、朝はなに食べてるのかな?」
「えっと、普通にスクランブルエッグとか、焼き魚とか……かな?」
「いいよ! すっごくいいよ! まさに、家庭的な娘って感じだよねっ!」

 恵奈ちゃんの目がキラキラしている。って……このパターンは……

「それ、恵奈ちゃんの萌え属性なんじゃない?」

 休み時間毎に話をしていると、いやでもそういう単語が頭に入ってくる。うん、別に嫌ではないよ?
 ただ、それは図星だったようで、恵奈ちゃんは少しばかり顔を引きつらせ、

「な……なんでわかったのかなぁー、実奈ちゃん」
「初めて私に話しかけてきたときと同じ感じがしたんだよ、恵奈ちゃん」
910 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/09(日) 01:44:33.83 ID:ZUo6Dj20

 そう言うと初めて己の感情の高ぶりに気付いたようで、

「そんな事言ってると……抱きしめちゃうぞ!?」

 とか言ってきた。もちろんこれに対しての返事は決まっている。

「いいよ? 恵奈ちゃんいい香りするし、柔らかいし、その……胸大きいから気持ちいいし……」

 本当に、恵奈ちゃんに抱きしめられると安心するというか。三上のそばにいるときと同等の安心を得られる事がつい最近発覚したのだ。それに、私より明らかに大きいその胸は、心地が良い、の一言に尽きる感触で。何時までもその場所に頭をうずめていたいという気持ちすら起こさせる。

「んー……。寝ちゃうからダメだね」
「えー?」

 欠点としては、なにやら睡眠薬効果が有るらしく、抱きしめられると私は寝ずには居られないのだ。おかげで何度か授業を聞きはぐってしまっている。気持いいからいいんだけどね。

「埒があかないから、話しを戻すよ実奈ちゃん!」
「うん」

 相変わらずとびっきりの笑顔で私に告げる。

「三上くんに朝ごはんを作ってあげよう! そうすれば、三食一緒にいるわけだから、ベッドインがしやすく……」
「――ッ!」

 とたんに顔が熱くなる。一瞬で想像してしまったのだ。私と三上が……一緒に寝ることを。寝れる気がしない。

「それぐらいじゃないと三上くんは兎に角。実奈ちゃんの踏ん切りが付かないんじゃないかな?」
「……仰るとおりです」

 思わず、頭をさげる。

「少なくとも、そーだね……一日お泊りしてもらうっていうのはどう?」
「うぇ!? そんな、いきなり? 今日じゃ、ない、よね?」

 またしても熱を感じ、動揺する私に向かって恵奈ちゃんは、

「なーに言ってるの実奈ちゃん。……今日に決まってるじゃー、ないですか」

 ある意味冷徹とも取れる発言をしたのだった。
911 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/09(日) 01:46:05.73 ID:ZUo6Dj20
――――――――。
――――。

 自室。普通なら落ち着けるはずの場所だろう。安息の地、という場所でもある。いや意味は同じだけれどさ。
 でも。今私は最高に緊張している。心臓がバクバクしている。顔に熱が溜まりきって、汗が出てくる。それに、思考も安定しないような気がする。
 なんでこんなに緊張しているのか。今部屋に三上がいるからである。
 ――否。それだけでは理由になってないよね。
 正確には、恵奈ちゃんから言われたとおりあの後直ぐに三上を部屋に誘った。もちろん、夕飯を作るという名義で。実際、それもあるけれど本当の理由は“三上を部屋に泊まらせる為”で。
 どうやって話しを切りだそうか、と躍起になっているけれど結局恥ずかしいから想像すら出来ていないというのが現状。
 想像以上におぼつかない手つきでエプロンの紐をほどき、脱ぐ。
 ふたり分のご飯を机に並べ、考える。
 どうやって誘うのがいいのだろうか。普通に「今日泊まっていかない?」では駄目だろうか? ……駄目だ。どう考えてもそれで三上が承諾するはずがない。
 じゃあ、言い訳を付けよう。「今までだって泊まったことは有る」。……ボツ。今と今までとは勝手が違うよ。
 どうすれば、――どうすれば、

「どうしたんだ実奈?」
「――いひゃぅッ!」

 心臓の鼓動が、リミッターでも解除されたかのように加速した。ああ、寿命近づいたかな、とかとりとめのない事を考えているが、実際はそれくらいしか考えられないほど焦っていて。
 ついでにこんなことでビビっている姿を見られたというのも既に恥ずかしい事象の範疇に入っていて、もう頭から火を吹くのを通り越して爆発でもしてしまいそうになった。

「どうした、実奈!?」

 異常な反応を見せた私を三上は心配してくれたのか、声を荒げる。

「い、いや。大丈夫。うん。大丈夫だよ?」

 荒い息で返事をした。三上はというと滅茶苦茶訝しげな表情でこちらを見据え――、

「……何か心配事あったら俺に言えよ?」

 言えないよ! 絶対、言えないよッ! 「三上の女体化を食い止めたいから、とりあえず今晩私の部屋に泊まってもらいたいんだけど、どうかな?」なんて相談できないよ!
 でもとりあえず形だけは「うん」と返事をしておく。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう! 余計言いづらくなっちゃった。もうこのまま倒れこんでもいいかもしれない。それぐらい恥ずかしい。
 もう三上の顔は直視が出来ない状況で、明らかに顔が真っ赤に染まってしまっているのもわかる。
 そんな最中――三上の手のひらが私のおでこに、
912 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/09(日) 01:47:10.09 ID:ZUo6Dj20

「――ひぅ!?」
「熱は、無い、のか? 大丈夫なのか?」

 全ッ然、大丈夫じゃないよ? 主に三上の所為で。でも私は口をパクパクさせることしか出来なくて。
 いや、動けないんでもの。触られた瞬間全身の筋肉が硬直して、そこから硬直を治す力が根こそぎ持って行かれた。
 しかも、発言から察するに、明らかに紅潮しているのを気づかれている。
 それを考えると余計に身動きが取れなくなり。

「ぁ――……か……」

 意味不明な言葉が口から出てしまう始末だった。

「どうしたんだ、実奈? お前……全然大丈夫じゃないよな? 今日も何かやられたのか? 男に、何か」

 その瞬間、私は名案を思いついた。そうだよ。初めっから、そうやって誘えばよかったんじゃないか。
 緊張を解(ほぐ)すように、言葉を紡ぐ。

「あ、あの、さ。三上?」
「なんだ? 実奈」

 名前を呼ばれるだけでも緊張ってするんだね。
 今まであまりの緊張の中に居たから気がつかなかった。

「怖い、からさ」
「怖い? ……なにが、だ?」

 そう言うと三上はちょっと不安そうな顔をした。
 大丈夫だよ、三上の事じゃないから。
 私は三上を嫌いになったりしないし怖いとも、思ってないから。
 ――ああ、今の恥ずかしい!

「一人で……居るの、が。すっごく……寂しいの。……だからさ、今日――」

 ものすごく恥ずかしい、誘いの言葉。いうだけでとろけてしまいそうだけれど、それを口にする。

「今日さ、私の部屋に……泊まっていって、よ」
913 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/09(日) 01:51:17.95 ID:ZUo6Dj20
あれ? トリ一言一句変えてないのに表示トリが急に変わったぞ?
ん? とりあえず、◆3FT9LO.i/6です。
どうしてだろう。なぜトリが変わったのだろうか……。

次はいよいよ、ベッドです。
明日のこの時間までのGJ等の個数でエロ度が変わったりしてくれたりするかもしれません。
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/09(日) 11:07:29.65 ID:L7ppEgg0
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/09(日) 20:51:43.85 ID:8KimquQNo
これはGJせざるを得ない
実奈かわいいなぁ
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/09(日) 22:05:12.26 ID:Tm/qBmjIO
いままでROMってたが、
これはGJ
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/10(月) 01:21:18.37 ID:hbjDTJVso
wktkしてるぜ
GJ
918 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/10(月) 03:16:43.54 ID:MQ+3cN6J0
――――――――。
――――。

 お風呂に入ったあと、体も心もゆでダコのようになってしまった私は、汗ばむ手と焦る心を必死に抑えふたり分の布団を並べた。
 別にベッドも有るのだけれども、それじゃなんにも出来ない気がしたから。だから「寂しいから、と……隣で寝て!」と無理を言い布団を二枚敷くという結論に至った。
 ――で、今私の背中には、同じく背中を向けた状態の三上が居る。心臓が早鐘を打つ。胸がはちきれそうな、そんな感じがした。
 息もかなり荒くなってしまっていて、さとられないようにするのがやっとだ。
 三上はピクリとも動かない。寝てしまったのだろうか?
 でも、それじゃ、困る。どうしても“しなければ”。後悔なんてしたくない。私は、私は。

「ねぇ……三上?」
「どうした?」

 小さくつぶやくと、きちんと声が帰ってきた。良かった。寝ていない。
 どうしよう? どうやって誘うのが、一番いいのだろうか? ハッキリ言わせてもらえば、三上は「女体化を食い止めたい」という理由じゃ、行為をしてくれない気がする。
 絶対に断られる。だから、結局は言わなければならないことがある。けど、今言うのも、ものすごく恥ずかしい。
 段階を踏んで言わなければ行けない言葉。すっとばすことは不可能で、第一段階に立とうと思った。

「あの、さ。呼び方、だけど……。み、三上は私のことを実奈って名前で呼んでくれてるじゃない?」
「そう、だな」

 まずは、呼ぶ名前。『ノーノー。私のことは恵奈って呼んで。そんなお固い敬語じゃ嫌なのです!』不意に、恵奈ちゃんのそんな言葉が頭をよぎる。今まで、今でも。私は三上のことをずっと苗字で呼んでいた。だから、携帯電話でそうしたように、言葉でも。

「……悠希って、呼んでも……いい、かな?」
「べ、別に……構わないけど」

 良かった。よく考えれば勝手に悠希って呼べばよかったのかもしれないけれど、否定的な顔をされるのは嫌だ。これで、段階を一つ、踏めた。
 大丈夫――大丈夫。落ち着いて、そうすればきっと大丈夫。

「どうしたん、だ? 急、に」

 悠希が切れ切れにそんな事を言って来る。
 駄目だ。悠希の言葉を聴いただけで、私の心臓はより一層血を送り出すことに力を入れてしまう。
919 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/10(月) 03:17:19.11 ID:MQ+3cN6J0
 勇気を出せ――、頑張れ。心なしか恵奈ちゃんがそう言ってくれているような、そんな気もした。だから、頑張るよ。

「悠希は、さ。私がどうして女体化しちゃったか、知ってるでしょ?」
「えっと……告白する勇気がなかった、からか?」
「……正解。いっつも……いつも。私は結局告白する勇気が出なくて。そのたびに後悔して、さ」

 必死に言葉を搾り出す。

「馬鹿なんだよね、結局。何度も何度も、告白出来なくて失敗して。……ううん、そんなの失敗じゃないよね。だって、行動してないんだもん……」

 悠希は黙っている。そりゃ、突然こんな事を言い出したらそうなっちゃうよね。
 多分私だって同じことを言われたら、なんにも言えなくなっちゃうと思う。悠希に言われたら、多分死んじゃうと思うけど。

「私はね、……もう後悔したくないんだよ」
「ま、実奈? いったい……」

 鈍いなぁ……。そろそろ気付いてくれても、いいと思うよ? 少なくとも私は。こうも鈍いと、思わずいいたいこともとどまっちゃうよ。
 でも、それじゃ、ダメなんだ。言わなきゃ行けない。楽観視して後悔は絶対にしたくない、この気持に嘘偽りは無かったから。

「私はね、悠希。……ゆ、悠希の、事、ね」

 迷惑かもしれない。元男にそんな事を言われたら、気味が悪いかもしれない。

「こんなふうに思っちゃってるのはおかしいかもしれないけどさ……私は……その!」

 一言、それだけ。たった一言。

「私は……悠希……、あなたの、ことが、大好き、です……」

 それは、精一杯の告白だった。
920 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/10(月) 03:18:20.69 ID:MQ+3cN6J0
――――――――。
――――。

 場は硬直していた。もちろん、私の一言により。言った本人の私ですら緊張で、完全に硬直していた。
 口を開くことすら出来なくなってて、只々布団に顔を埋める。

「え……な……、……え?」

 それは悠希も同じだったみたいで。言葉にならない言葉を、さっきから繰り返していた。

「え……ま、な?」
「嫌……だった、かな……」

 ここまで来ると、いっそ行動出来た。相変わらず背中を向けたままだけれど、言う。

「迷……わ、く、だった? ご、ごめ……」
「な、なに、謝ってるんだよ」

 今はどんな言葉でも、胸に突き刺さってきて。怖い。否定されるのが、突き放されるのが、怖い。そんな思いで胸中がいっぱいになる。
 だから、悠希の言葉がとても怖く感じて。否定的な考えだけが頭をめぐる。

「ごめ、……ん、ね。後悔は……したく、ない、から」
「だから……」
「悠希の、さ。返事、聴かせて……」

 悠希の言葉を遮りそう言った。もちろん、返事は怖い。断られるかもしれない。受け入れてもらえないかもしれない。マイナスな思考。
 突き返される、その言語が怖い。

「実奈……」

 ちょっと間延びするだけでも、その時間は永遠のように感じられて、どうしてこうも長い時間の中に居るのか、不安になる。
 答えが怖い。布団に潜り込もうとする体を必死に押さえつけ、それで聴く準備をする。

「……俺なんかで、いいのかよ」

 悠希から帰ってきたのはそんな言葉で。

「私は……ね。悠希に沢山感謝してるの。何度も、何度も助けてくれて。でもその過程で悠希以外の男の子は……怖いって、体が心が、否定するようになっちゃって。でも、悠希だけは特別だったんだよ?」

 そう。特別だった。その特別を私は“普通”で片付けようとしていて。でも、

「悠希がいなくなったときに、初めてわかったの。“私は悠希が居ないとなんにも出来なくなっちゃったんだ”って。現に、外を歩くときも、悠希が居ないと怖くてダメに成っちゃった」

 只々、私の思いを信じてもらうために言葉を紡ぐ。その思いを悠希は受け入れないかもしれないけれど、もう止まれない。
921 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/10(月) 03:19:04.68 ID:MQ+3cN6J0

「だから、ね。こうして寝ているのもすっごく嬉しい。なのに、“俺なんか”なんて、言わないでよ……」
「だったら……」

 悠希が口を挟んできた。その言葉はどこか刺があり、思わず萎縮する。

「だったら、さ。謝るの、やめろよ。俺はまだ答えを返してない。なのに、そんなの、実奈が勝手に結論づけちまってるじゃねぇか」

 そして「俺は、」と話を続ける。

「……俺は、いや、“俺も”。好き、だよ、実奈の事が」

 聴いた瞬間、私の頬を、何かが伝う。久しぶりな感覚に一瞬戸惑う。
 只々嬉しかった。“好き”だと行ってもらえたことに。
 悠希の言葉はそれだけでは終わらなかった。

「お前が女体化して、初めてご飯を作ってくれたとき、俺は思わずみとれてた。反則だよ。知り合いとは言え、美少女がさ、親しげに接してくれるなんて。俺が実奈の買い物に付き合ったのだって、休みたいのが目的じゃない。純粋に、手伝ってあげたい。そう思っちまったんだ。だからこそ、お前が公園で“あんな目”にあってるのが許せなかった。殺してしまおう、そうすら思えた……」

 一区切りして、悠希は更に続ける。

「その後も、お前は色々と世話を焼いてくれて。ほんと、どうにかなっちゃいそうだった。いつか自分は襲っちゃうんじゃないだろうか、とか、な。最低だよな、そんなこと考えてたなんて。……いつか、告白しようとは思ってた。でも、男から告白されてどうなるんだろう、って思って。俺のことが怖くなってしまうのではないか、そんな考えだけが頭を回ってて。
 だから、本当に、嬉しい。実奈が、俺のことが好きだって事がわかって、さ」

 頬を伝う生暖かいそれは、何時までも止まらず、私は目を閉じていた。
 ――嬉しい。

「実は、さ。今日も本当はドキドキしてたんだ。色々と、な。隣り合わせで寝るって事自体、心臓に悪すぎるんだ。だから今、俺やばいかもしれないんだよ……」
「なに……が?」

 問いかける。悠希も私も、声が震えていた。
922 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/10(月) 03:19:36.55 ID:MQ+3cN6J0

「も、元男のお前にだからこそ告げる、ぞ? ひ、引くな、よ?」
「わかった、よ。……大丈夫」

 なにを言い出すのか。ゴクリと生唾を飲むその口すら震えていて。

「襲っちまいたいって……衝動に、駆られてるんだ。実奈、助けて、くれ」
「え……、ど、どうい、う」

 つまり、悠希は私を襲いたいって……うぇ!?

「ゆ、悠希?」

 万々歳なのだろうか? これで襲われれば、私は、いつまでも男な悠希と一緒に居られるわけで、否定する要因なんてとうに存在していなかった。

「わた、しは……その、えっち、も構わ、な……い、よ?」

 体はサウナにいるかのごとく熱され、もうどこから熱を発散すればいいのかも分からなくなっていた。
 そんな中、震える言葉で言う。

「ゆ、うき……」
「実奈、や、めてくれ。本当に、我慢が、出来なくなるっ……」

 その声は、必死に欲望を押さえつけているのがわかる声で。

「……じゃあ、そ、その、さ。キス、だけでも、しよう?」
「実奈ッ――!」

 言い終わるのが早いか、悠希は私に覆いかぶさるようにして居て。
 その行為に、不思議と恐怖は無かった。
923 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/10(月) 03:23:43.81 ID:MQ+3cN6J0
結局トリもとに戻らない……
一体全体、どうしたのだろうか……分かる人教えてくれると助かります

話の方、エロまでたどり着きませんでしたサーセン
でもまあ次回は間違いなくエロになるかな

大勢のGJありがとう! 次の話をニヤニヤしながら待っててね!
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/10(月) 20:29:32.46 ID:OA7JY4ke0
GJ!
エロが楽しみすぎる
925 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:36:00.33 ID:sFDH8+q30
――――――――。
――――。

 悠希の唇が、私の唇に覆いかぶさる。とうに心臓の鼓動など聞こえなくなり、耳に届くのはふたり分の呼吸だけだった。

「――はぁ……、んぅ……!」

 荒い呼吸と唾液の混ざり合う水音が聞こえる度に、頭は真っ白に、なんにも考えられなくなってしまい。

「ゆぅ……きぃ……! ふぁ……!」

 名前をだしただけなのに、それだけでも強い快楽が私の体を包み込む。どうしたらいいのか、わからない。
 ――もっと長く……。しかし、その思いは通じず、悠希は私に覆いかぶさるような体勢をやめた。

「ぇ……、ゆぅ……き?」
「ごめん、な」

 言われている意味がわからなかった。どうして、謝ってるのか。なんで謝られているのか。

「気、使わせちまってたんだろ? ……ごめん」
「なに、が……?」

 頭は真っ白で、他のことを考えていることなど出来ない状況で。
 言われている言葉の意味など考えもしないで、ただ快楽を求めていた。

「ごめんな、実奈……。斉藤の件だよ。アイツは女体化しなかったけど、もし……俺が女体化したらとかそういう事、考えてたんだろ?」

 見抜かれていたのか? その悠希の一言で、頭の中は一気に色が付き、思考回路が正常のものへと戻った。
 もし。もしも本当に私の意図を汲み取っているのだとしたら“謝っていること”についての説明が一切出来ていない――。
 そんな事を考えていて。

「ど、いう……こと?」

 私はまだ荒い息で訊く。

「俺が、俺が女体化してしまったら、お前はきっと自分の所為とか思うに違いない。だから、償おうとか、思ってるんだろ……」

 途方も無いほど間違っている想像を聴いてしまった。
926 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:36:57.90 ID:sFDH8+q30
「それは、ちが……、わた、しは……」

 違う! 私の話を……きちんと……。でも、それは悠希の堅い言葉に遮られて。

「どこが。普通は、告白の直後にその、行為になんて及ばないだろ」

 それは、確かに悠希に女体化してほしくないって言うのも有ったけど、違う!
 だからハッキリ言わなければ、いけない。……いけないのに。

「俺が女体化しちまうのは、俺の所為だから。……だからお前が無理に食い止める必要とかは……」

 悠希は好き勝手に言って。気に食わない。久しぶりかもしれない。

「だから、な。――そんな、辛いことすること、無いから」

 私の意見を聴いていてくれていた悠希だからこそ、この発言は許せない。

「自分の体を大切に――」
「悠、希……」

 悠希は止まってくれない。なら、止めるしか、無い。

「――悠希!」

 喝を入れるつもりで、上半身を起こした。けど思ったより体は安定していなくて、倒れそうになった私は、思わず悠希に抱きつく形になり。
 ――その瞬間、こらえていたものが溢れ出した。
 ポロポロポロポロ……。目から溢れ出るそれは尽きることを知らない、無尽蔵な泉のようで、悠希のシャツを濡らし始めて。

「ま、実奈!?」
「…………ば、か」
927 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:37:22.64 ID:sFDH8+q30

 シャツを握り発したのはそんな一言で。

「どうしたんだ、よ、ま――」
「――馬鹿ッ!」

 一言発しようとする度にしゃくりがそれを邪魔する。

「う、ふぇ……ば、か! ゆぅ、きの馬鹿!」

 今まで抑えていた感情が、気持ちが全てが決壊した。

「わた……しが、……どん、なに苦し、かったか! 知らないくせにッ!」
「ま、な……?」
「ど、して!? にょた、いかするの、が……誰、の所為、とか……せき、にんとか! そんなの……かんけ、い、ない!」

 力任せの言葉を悠希にぶつける。

「だめ、なの? ゆ、ぅ……き」

 私は悠希に問いかける。精一杯が続いているせいか、勢いも無くなってきているけれど、それでも頑張って。

「なに……が」
「……す、すきな、ひと、が、すきな……ひとに、男のまま、で居て……ほしいって思うのは……だめ、なの?」
「実奈……」
「わだ……、私、は、悠希に、女の子になって、欲し、くない、から……。だから――」

 一瞬、なにが起こったのかわからなかった。ふわっとした感覚。よく似た感覚を知っていたけれど、それとは違う。

「実、奈……。ごめん、な。俺は、なんにもわかってなかったんだな……」

 気がついたときには、既に腕が背中に回っていて。そうか、抱きしめられてるんだって理解した。
928 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:38:40.02 ID:sFDH8+q30
――――――――。
――――。

 二対の布団の片方。そこに、仰向けに横たわる私。そして上に覆いかぶさる形の悠希がいた。

「ゆぅ……き……。キス、し……て?」

 悠希に、催促する。私自身は、もうストッパーと思しきものは外れてしまっていて。恥ずかしいという感情もマヒしているに等しかった。だから、幸せを求められればそれでいい。

「……むぅ、……はぁ、んぅ……」

 ゆっくりと近づいてきた悠希の柔らかい唇に、私の唇が重なった。
 そして、口の隙間に、舌が侵入してくる。
 悠希の舌は、口腔の上部を撫で、私の舌と絡みつき――、

「んぅ……! ふぅ……ぁ!」

 ディープキスがここまで気持ちいいものとは思っていなかった。頭の中はもう、キスで一杯になってしまっていた。

「あぅ……もっと……」

 舌と舌が絡みあう、水音が響き渡る。その音は部屋内だけではなく私の脳内でも反響して、ますます変な気分になる。
 一旦、唇が離れる。

「平気、か?」
「う、ん……」

 少し冷静になったからか、体の異常に気付いた。
 股が濡れている。これが愛液って……やつ、なの、か?
 そのことを認識したとたん、キスだけでは物足りないという感情に駆られた。

「悠希……もっと、いろんな、ところ、を見、て……」

 そう言いながら、カチカチの指を動かしてワイシャツ風の根巻きのボタンを外していく。根巻きがなくなったそこには一週間前までは無かった双丘が有り、申し分程度にそれを包みこむブラジャーが顕になった。背中に手を回し、ブラジャーのホックを外す。手慣れたものだ。かれこれ5日は着け外しをしているのだ。当然と言えた。
 ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえる。

「ち、さくてごめ、な?」

 思わずそんな事を言ってしまった。かろうじてBと言われた、下手をすればAになりうるこの胸のサイズだから、結構コンプレックスになってたりするんだ。

「俺は、サイズで決めたりはしないぞ?」

 悠希はそう言って、私の頭を撫でた。こうやってされるのは、かなり嬉しかったりする。なんだか、とっても可愛がられている気がするんだ。
 私の頭を撫でていたその腕が離れ、胸に移動する。

「ひゃぅ……んっ……」

 乳房を軽く包まれただけだというのに、キス以上の気持よさが伝う。
 声をこらえていることは当然ながら出来なかった。
929 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:39:38.94 ID:sFDH8+q30
「ふにゃぁ! ぁぅ……」

 悠希に乳房を揉まれる。大きな手が、小さな胸を何度も行き来する。そのたびに体が小刻みに動いてしまって。 
 そして悠希が、訊いてきた。

「……ここ、触っても、いい、か?」

 そう言って指さしたのは、紛れもない私の、淡い色をした乳首で。
 改めて見ると小さめのそれは、私から見てもわかるほどに立っていた。

「いぃ、よ……」
「じゃあ……触、るぞ」

 指先が、乳首に触れ――

「――ひゃぁぅ! ん、はぅ……だ、めぇ……」

 あまりの快感に、体がついて行けていない。心と体が離れそうになる。

「ダメだったか?」
「ちが、……あんまり、気持ち、よか、った、から」

 息も絶え絶えに、否定する。
 そうしないと悠希はここでやめてしまいそうな。そんな気がした。

「大丈夫、なん、だな?」
「だい、じょうぶ。もっと、おね、がい……」

 一声悠希が何かを言った。聞き取れなかったが、次の瞬間、両手の指が私の乳首をつまみ、

「――――――――ッ! んぅ、は、――あぅ!」

 今までで一番強い快感に、エビ反りになる。
 こんなんじゃ、そう、にゅうは出来ないかも、しれない……。
 そんな事を思った時だった。
 ――ふと、悠希の股間に目が動いた。男の頃は、私にも付いていたアレ。二日に一回は、だしてくれと唸るどう仕様も無い物。
 他人のなんてみたくもないと思っていた。けれど、相手が悠希なら、そんな気持ちは一切感じ無い。

「悠希……勃ってる、ね」
「――んなっ! そ、そりゃ勃つだろ……」

 その返事に私は思わずクスっと笑う。そして、悠希が怯んでいるスキに上体を起こし、

「ねぇ……下、脱いでよ」

 そう言うと、悠希は顔を真赤にさせて。

「脱がないなら……私が脱がすよ? ……男のズボンなんて、脱がすの楽ちんなんだから」
930 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:42:45.24 ID:sFDH8+q30

 悠希が硬直してしまってるから、そう言いつつ手を伸ばす。しかしその手を掴まれて、

「い、いい! 自分で脱ぐから!」

 そうして立ち上がる。
 ――立ち上がると、勃起してるのがよくわかった。私の体で、興奮、してくれてるってことがわかって、嬉しい。
 ズボンを脱ぐと、チラチラこちらを見ながらもパンツを下ろした。

「大きい、ね。……お、おちん、ちん」

 言っていて、ものすごく恥ずかしかった。でも、それは言われた側も同じだったらしい。

「俺だけがぬぐって、ずるくない、か?」

 はっとした。両者が脱がなければ、行為は成立しないんだ。そう言えば、実感はわかないけれどこれが自分に入ってくるのだっけ。そう思うと、少し怖くなる。
 入るのだろうか? 結構な大きさだけれど。
 ――なるようになるだろう。私はそう割り切った。

「脱がせてくれる、の?」

 私が男だった頃は、脱がせてって言うシチュは結構好きだった。だから、同じかどうかはわからないけれど悠希にもそれを試す。
 悠希はどうしたらいいのかわからないようで、どぎまぎしつつも、私の腰に手を伸ばす。
 根巻きのゴムに触れ、横に伸ばされ、布を下にずらされる。今まで見せたことなど無かったパンツが顕になる。
 そして――、

「すごく、濡れてるな」
「――い、言うなっ」

 クチュ……。という音が響く。

「ひゃ……!」
「大丈夫か? ちょっと触れただけだぞ?」

 分かっている。ちょっと、指先が触れただけ。それも、パンツの上から。なのにこんなに感じていて。
 最初はキスですら強いと思ったのに、その快感は下に行けば行くほど強いものになっていて。

「だい、じょ、ぶ」
「……そう、か」

 悠希は、パンツのゴムを、さっきと同じように掴むと“片足だけ”脱がした。

「悠希……もしかして、そういう……」
「う……」

 当たりだったらしい。所謂最後まで脱がさないで途中でパンツを残しておく派なのだ。私は……ずらし派だったかな?
 ……私のことはどうでもいいね。

「指、挿れるぞ」
931 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:44:26.78 ID:sFDH8+q30

 頷いて返す。恥丘を撫でるように指を移動し、その過程でエビ反りになる。
 けれど、指は止まらない。
 ヌルリと、指が愛液にまみれた陰部へと挿入される。

「――――――い、ぁ! ――ふぁ……んぅ、――あぅ!」

 そして、一瞬指が止まる。

「その、まま、ほぐして、く、れ……」
「いい、のか? すごくキツそうだ、ぞ」
「そ、しないと、後で入ら、ない! ふぁぁ……!」

 私は指が入っているだけで既にあふれんばかりの快楽に襲われているというのに、やせ我慢でそんな事を言った。
 当然、指は私が指示したとおり、動きまわり。

「ん、んぁ……ぁ! ひぃぁ! や、だ」

 そこで歯を食いしばる。これ以上言ってしまうと、耐えられないかもしれないから。
 でも、そこで止めたことで、悠希は気付くことなくほぐし続け。

「あぅ、ひ、それ、いゃあ――!」

 結局、体は心に負けてしまっていた。

「い、や、ふぁ……こわ、れ、ぁ――」

 体が、心が壊れてバラバラになってしまいそうだった。イキたい。男の頃ならば、そんなにかからずイケたのに、女の今では、こんなに強い刺激でもイク事が出来ない。
 それがとてもつらかった。

「実、奈! もう、俺……そろそろ……」

 悠希の苦しそうな声を聴き、股間部に視線をずらす。すると、我慢汁でたらたらになって、ビクビク言っているソレが有り。

「ゆぅ、き……きて……いい、よ」

 次の瞬間、何かが切れたかのように、悠希が完全に覆いかぶさり。

「挿れ……る、ぞ……」
「ん……」

 先っぽが、私の所にあたる。
 ――ヌルヌルしている。すっごい我慢汁だった。

「ひぅ……だい、じょ、ぶ?」
「あ、ああ……大丈夫、だ」

 必死に挿入使用としている悠希がとても愛らしく見えて。
 そして、挿った。
932 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:45:07.00 ID:sFDH8+q30

「あ、ぅ……ひ、……や、ぁ!」

 すぐそこの、悠希の背中に両手を回し、気づけば自ら腰を浮かして、完全に繋がろうと。
 竿の部分が、徐々に私の膣に挿ってくる。

「――――――――ッ! ぁ、あぅ――ゆぅ、きぃ!」

 中程まで、挿る。壊れてしまいそうな体で、がっしりと悠希に捕まる。そして互いに腰が動き。

「あっ、あぁああああ、ひぃ――壊れ、やぅ! ――壊れ、る! うぁぁ!」
「ま、なっ! お、俺……も、う」

 徐々にピストン運動は激しくなり。腰が打ち合う音と、愛液と我慢汁の水音、荒い息、喘ぎ声が最高に感度を高めて。

「いッ――、ゆ、……き! い、イク、いっちゃう、よぉ、助け、壊れ――」
「実奈! ま、な!」

 絶頂の最中からは、よく覚えていなかった。
933 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 00:47:08.07 ID:sFDH8+q30
お待たせしました!

エロです。頑張りましたが、えろくなってるかは不明。

ちなみに作中の翌日は実奈が実家に帰る日ですw
どうするんでしょうかね、こんなコトしてw
そして多分次あたりが最終話(?)になるかもしれない。
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/12(水) 11:02:44.18 ID:4R0UYNRMo
ついにお待ちかねのエロキタキタキタ!
って思ってたら、次が最終話なんて…
全力で正座して待ってます

明日仕事終わったら前回分と合わせてまとめておきますね
935 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/12(水) 22:51:03.72 ID:9Ia8n1S10
GJGJ!
まとめもありがとうございます
936 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 23:03:53.25 ID:DaHsBUnr0
――――――――。
――――。

 朝、まだ日が登りかけな時間帯に私はエプロンを外す。
 たった今ふたり分の朝食を作り終えたところだった。
 ……昨日、エッチを、したのだけれども、今日は実家に帰る日だってこと、すっかり忘れていた。
 なんと言われるだろう? いや、隠し通せるだろうか。付き合っていることは、告げる予定だ。その後、追求されない様に頑張らなければ、いけない。
 そんな事を想像しつつ、お皿を机に運ぶ。

「はい、朝ごはん」
「お、おう。ありがとな」

 悠希も、やっぱり緊張しているのかさっきから言葉がおぼつかなかった。
 なるべく……昨日のことには触れないようにしようと思った。
 ……恥ずかしいし。
 悠希はお皿を見て、

「オムライス、か」
「うん」

 言った。つい最近作った気がしないでもないけれど、悠希が好きだと言ってくれた料理だし、わざとだ。
 絶対に悠希は、ある言葉を言う。

「あ、ケチャップ、取ってくれ」

 そらきた。予想通りだ。私たちの関係は、付き合い始めたからといって、そう変わるものではなかった。あの後恵奈ちゃんに連絡を入れたけれど、言われたのは「そもそも、付き合ってるみたいだったよ」って言葉だった。なんだか、そういうふうに見えていたのにも関わらず気付かずにいたことが情けない。

「ねえ、悠希」
「ん?」

 ケチャップを渡さずに、言う。勿論、策略通りの行動である。
 恵奈ちゃん直伝の、少し上目遣いとやらを試しつつ、

「――なんて、書いて、ほしい?」

 そう言った。悠希はポカーンとしていて、続けざまに訊く。

「ほら、ケチャップで、さ」
「へ? ……え?」

 何時まで経ってもその顔は治りそうになかった。ただ、理解はしたようで。顔が紅潮していくさまが見て取れた。
 仕方がないから、あらかじめ考えていた文字をケチャップで書き入れる。

「よいしょ……これで、よし……」
「あの、さ、え……実奈?」

 悠希の言葉に、「うん?」と返す。

「俺からも、ありがとう、な」

 悠希の見下ろすオムライスには『ありがとう、幸せだよ』と、記されていた。
937 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/01/12(水) 23:11:53.87 ID:DaHsBUnr0
これで完結です!
応援してくれていた方々ありがとうございました!
いやー、楽しかった。四百字詰め原稿用紙換算で「183枚」だって。
そしてなにより、これが自分の書いてる小説で完結した唯一のものですw

最終話、短くってすみません。

よく見直すと矛盾点とかすごいけどスルーしてくれると助かったりします。
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/13(木) 22:11:43.33 ID:he8KoOHz0
GJ!
939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/14(金) 00:58:08.00 ID:J0viY3yDO
よかったよ、最後までよくやったと思う
940 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:09:26.62 ID:hQ1zO/KMo
乙です
GJ
941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/17(月) 23:44:36.41 ID:XebVJwNLo
>>937
お疲れさまでした
久しぶりに長めの作品を見ましたよ
次回作や派生作品に期待しますぜぃ

遅くなりましたが、まとめておきましたので確認お願いします

俺も久しぶりに書こうかな?
と毎回書きながらなかなか書けず仕舞い…
942 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/01(火) 14:35:44.70 ID:BNkS2eDG0
スレに反応がない…
寝てるのかー?
はやく起きてSS書かないとイタズラしちゃうぞー?
943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/02(水) 05:21:19.96 ID:n9cEgZXpo
「なーなー、しりとりしようぜ」
「……何で?」
「いいからいいから。しりとり」
「? まぁいいけど。リハーサル」
「ルーマニア」
「アルコール」
「ルクセンブルグ」
「グローバル」
「ルチル」
「何それ?」
「元素名だよ。る、な」
「ルーブル」
「う……卑怯だ」
「卑怯じゃない。る」
「る、るー、……ルピー」
「ピッケル」
「またかよ!? うー、る、る……ああ、ルテニウム!」
「何それ?」
「これも元素名だよ。聞いたことないのか?」
「ない。む、……む? んー、むじな」
「やっと来た。なな」
「何が。ナムル」
「好きだ」
「へぇ、ナムル好きなんだ?」
「そうじゃない。なな、お前のことが好きだ」
「えっ……と、突然何言ってるわけ? 元男だし、愛想悪いし、元男だし、胸ぺったんこだし、元男だし」
「好きだ」
「ななな何言ってんのよ! 元男が好きなんて趣味悪いんじゃないの!?」
「好きだ」
「だから!」
「なな、好きだ」
「あぅ……」
「好きだ」
「……」
「何度でも言う。なな、大好きだ」
「……ずるい」

みたいな。
944 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/02(水) 22:31:52.53 ID:SRnJJQvC0
続きはないのか
945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/25(金) 03:55:47.48 ID:SoqKWsaTo
「『はぁ…今年もダメか…』
『あ、いたいた…ほら』
『ん…?なにこれ…も、もしかしてチョコ!?』
『それ食って元気出せ、あんたのことだからどうせ一個も貰えてないんでしょ?ま、まあ元男の私から貰ってm』
『い…いいのか!?うおお!!ありがとう!!』
『ぅ、うん…じっくり味わっt』
ビリビリッ!ムシャムシャ!
『ってオイ』
『うめぇ!マジうまいよこれ!』
『もっと落ち着いて食べなよ…』
『だって俺初めて女の子からチョコ貰ったんだぞ?これが喜ばずにいられるかっての!』
『っ!…こ、こんな時だけ女扱いしやがって……普段から、私のことももっと…ブツブツ』
『ん?なんか言った?』
『な、なんでもないっ!』
『しっかし妙に凝ってるなこれ、手作りだし…貰うやつによっちゃ本命と勘違いするんじゃねーか?ww』
『バカ……本命だよ』
『…え?』
みたいな感じでもう一度最初から頼む」

「長いって、つうか文句言うなら返せよ」

「いや!食う!食うって!ありがたく召し上がるから持っていかないでっ!」

「ったく…それじゃまた明日、バイバイ」

「じゃーなー!……さ・て・と、それじゃ頂くとしますか!…って…あれ、これマジで手作り…?」

「ああ、ひとつ言い忘れてた」

「うわっ!?…な、何だよ?」

「お前のために頑張って作ったんだから…じ、じっくり味わって食べろよ」

「……へっ?」

「〜〜ッ!やっぱり返せ!」


SSって難しい
946 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/25(金) 12:11:50.41 ID:bkQrNnO/0
危なかった
『ホントのプレゼントはね、わたし……なの』
『い、いま食べても、いいのか?』
『……ぅん』
だったら即死だったゼ

こういうフェチはいってるスレでのSSなんて
作者の欲望とかリビドーとかを文章に表現して
賛同者がGJ!GJ!すれば良いと思うんだ乙GJ!
947 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/25(金) 23:17:07.48 ID:/iIIiqjt0
GJ!
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/25(金) 23:28:35.70 ID:wlQmsqVq0
少しずつ女体化するのか?
それとも朝起きたら・・・みたいな感じ?
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/26(土) 07:37:08.73 ID:7987AMMao
>>948
後者が多いけど
前者のパターンも少なからず存在する
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/28(月) 04:10:47.25 ID:2tdh0DBKo
こんな時間の眠気のせいか久々に迷い込んだので
寝る前に安価でも出してみる↓
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/28(月) 15:32:03.42 ID:sOQwbLjQo
海に行く当日に女体化とか
952 : ◆440BCpUd8Bib [sage saga]:2011/03/01(火) 21:06:08.85 ID:+EuH3o8c0
色々と忙しくてここにこれなかった。
まとめの人、ありがとうございます。

>>951
書こうかどうか検討中
953 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/03(木) 18:23:54.83 ID:HlgQhkxDO
>>952 安価は絶対なんだな……


wktk
954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/05(土) 21:13:07.35 ID:KxLakoDDO
久しぶりの安価+1
955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/05(土) 22:28:37.43 ID:0KB8t8kw0
にょたとショタ
956 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/06(日) 21:35:07.30 ID:4wSoHilw0
>>951 安価書いた。途中までだけど、希望が有るなら書きます

 俺はクラスの友達と海に来ていた。とは言っても昨日から泊まりこみで、今日帰るという感じだ。
 滅茶苦茶なのだが、何故か姉貴が付いて来た。なにやら、夏休みは予定が詰まっていて、この日位しか遠出できる機会が無いのだとか。
 そして俺は、本来なら楽しいはずの海水浴も、ものすごくつまらなく感じられた。
 はしゃぐ女友達+姉貴を、即席ビーチパラソルの下から眺める。
「はぁ……」
 そんな彼女らを尻目に、俺はため息を吐いていた。
「なんだよ、随分つまらなさそうだな」
 軽薄な親友が俺にそんな事を言ってきた。
「そりゃそうだ。俺は泳げないからな」
 この場合の泳げない、というのは別に水泳が苦手という意味ではない。
 もっと別の要因がある。
「あー。でも、ほら、運がいいことにお前のお姉さん来てるんだから……」
「無理」
 なにを言いたいのかはだいたい理解した。貸してもらえ、と言うのだろう。
「なんでだよ、現に今着てる洋服だって……」
「無理なんだって。俺と姉貴じゃ……決定的に違う場所がある」
「なんだよ、その、違う場所って」
 真剣なまなざしで訊いてくるから、姉貴の、主に胸部を指さす。同様にして女友達のものも見させたうえで、
「ほら」
 俺の胸部を指さす。そこには"女になった"ということを微塵も感じさせないほどにまっ平らな、ひどく言えば平地が連なっており。
 男だったときは存在していたリヴァイアサンが消えた事により、その平地は更地になってしまったとも言えるだろう。
 こいつも、指の流れにそって、俺の胸部を見た後で申し訳なさそうな顔をする。
「あんなデカい水着……付けられん」
「は、はは……」
 頬が引きつってる。
「俺のことはいいから。ほら、呼んでるぞ。行って来いよ」
「そうか? ……じゃあ、行ってくるわ」
 そう言い残し、影から出て行く。
 楽しそうなこいつらを見ていると、とても、羨ましい。

957 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/06(日) 21:37:02.87 ID:4wSoHilw0
――――――――
――――

 少しぼーっと空を眺めていたら、なにやら声が聞こえてきた。
「おーい、気付いてるかー?」
「なんだよ、姉貴。気付いてるよ」
 姉貴だけが、こっちに戻ってきて、それでいてなにやらニヤニヤしている。
「いやー、一個だけ、余ってる水着が有るんだけど……、今思い出してさ」
「余ってたって、俺は着れないだろ?」
 ため息混じりにそう言うと、姉貴はチッチッチ、とつぶやき指を横にふる。
「じゃーん! 今日私が持ってきた、余っている水着とは、これでーす」
 姉貴の宣言のもと、高らかに掲げられたその水着は、あからさまに黒く、ビキニタイプの水着とは真逆の、手足顔以外、つまり胸部から腹部まで全てを包み込む、あれ。
 胸元には俺の苗字が書かれた白い――
「はぁ!? なんでスク水なんて持って来てるの!?」
 そう。姉貴のかばんから姿を表したのは紛れもなくスク水であった。
「いやー、だってほら。あんたの友達が……」
 ちらっと、海のほうを、否。俺の女友達を見て。
「あんなに大きいとは……」
「姉貴は俺の友達にいったいなにを求めていたのさ!?」
 まさか、姉貴そっちの気が有るのでは……、と一瞬疑ったが事実だろう。諦める。
「でも、ほら! ここに、恐らくスク水を着させても違和感がないだろう逸材が生まれたから!」
「今度はおと……妹にまで!?」
 とんでもないヘンタイだ。どうして今まで気がつかなかったんだろう。
「違うわ。紳士よ」
「勝手に思考に侵入するな!」
「ほら。海の家、着替えるスペースあるから。ね?」
 言うなり、姉貴に腕を掴まれる。
「ちょ……姉貴! 着ないからな! 俺は、絶対――」
 どうにかして逃げないと。何か、いい策は……。
 ――そうだ!
「荷物番! 荷物番はどうするんだよ!」
 ここに居るのは俺と姉貴。姉貴が離れれば俺は着替えない。俺だけ離れれば、やはり俺は着替えない。
 なんとも素晴らしい案――
「ちょっとここお願いねー」
「了解ですお姉さん!」
 なんでお前ここにいるの? そしてなんで引き受けてるの?
「いや、お前でも着れる水着が見つかったって言われsたから」
「う、うらぎりものっー! あぁ……ああああ!」
 俺の言葉に首を傾げるこいつを残し、断末魔と共に海の家へと引きずられて行った。
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/06(日) 23:28:48.59 ID:SJX4S3dp0
スク水wktk
959 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/07(月) 00:08:27.45 ID:t1JqhIMJ0
>>958
wktk出来たなら幸いです。

今回は登場人物を固有名詞で書かなかったけど、名前出すのとどっちのほうがいいかな。
960 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/07(月) 12:41:39.29 ID:bWwzNSgN0
乙GJ
個人的には2,3レスの単発モノなら無しのが好き
ただし女体化物だと女性名への変化とそれに戸惑うヒロインとか
今まで友達だと思ってたやつに名前で呼ばれたらキュンとか
そういう描写が入るなら必須になるし…
作者側の都合とかさらけ出したいモエポイントとかで決めちゃえばいいのでは
961 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/08(火) 18:28:42.46 ID:GYH2XylK0
>>960

じゃあ今回は名前は無しで行きますね。
今から続き執筆します。明日までには投下できると思う
962 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/09(水) 21:46:32.37 ID:KEhRADVh0
――――――――
――――

 恥ずかしい。今の状況を、感情を端的に表現するならこの一言に限るだろう。
 なにが起こっているのか、と訊かれれば羞恥プレイですと答えるのが普通かとも思われる。
 俺はスク水を着せられ、友人の目の前に佇んでいた。
「うひゃー、かわいぃー……」
 この発言は姉貴の物ではない。正確には姉からも聴いたものだ。
「ぁ……あまり、ジロジロ……見ないで……」
 タオルでかくして居れば大丈夫と甘い考えを持っていたのだが、そんな幻想は姉により打ち砕かれてしまった。曰く『せっかくのスク水なんだから、タオルで隠したらダメでしょ! タオルは水からあがったときに縮こまりながら包まる為にあるんだから!』だそうだ。
「うは。ご、ごめん。海に戻ってくる!」
 俺に可愛いと言ってきた女友達はなにやら顔を抑え、そして背けると駆け足で海へと戻っていった。
 背けるといえば、もう一人。我が親友が顔を背けるどころか、文字通り背を向けている。
 近づこうと思ったが、流石にこの格好では恥ずかしい。姉貴の手からバスタオルをひったくると体に巻き付ける。
 うん。これで恥ずかしくなくなったぞ。
「お前……さっきからこっち向いてないな。どうしたんだ?」
 返事がない。
「おーい」
 言いつつ、回りこんでみようと、歩いて行くと、
「ばっ、おま……こ、こっち来るな!」
「はぁ?」
 またしても俺に背を向ける形になる。なにがしたいんだろう。目線を姉貴にそらすと、引きつったような笑みを浮かべている。なにがあったんだ?
「どうしたんだよ。おい」
「お、俺も海に戻ってくる!」
 もう一度、今度は強い調子で訊いてみたら、逃げられてしまった。
「なんなんだ? 一体……。なあ、姉貴なんかわかる?」
「あぁー……。自分の身に置き換えてみたらどうかなー……?」
 この姉貴、ちんぷんかんぷんである。

963 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/09(水) 21:47:58.09 ID:KEhRADVh0
――――――――
――――

 結局俺はプールに入らずに、その日を終え帰宅することになった。
 そして、帰りの電車の中での出来事である。
「なあ」
 海水浴中の出来事が気になった俺は、ふと質問をした。
「あん?」
 いつもとかわらぬ返事が帰ってくる。良かった。調子は戻ったのか。
 俺は本題を切り出す。
「どうしてあの時逃げたんだ?」
「――ブッ!」
 言った瞬間、コイツは盛大に吹き出しやがった。失礼だな。というか、電車の中なんだからもっと自重しんしゃい、と心のなかでツッコむ。
「い、いい今はもういいだろ!? そんな事より、ほら。今日楽しかったな」
「俺は泳げなかったけどな。……す、スク水で泳ぐわけには行かないし……」
 思い返すだけで恥ずかしい。もうあんな体験はしたくないね。
「今度はきちんと水着買って、プールにでも行こうな」
「そうだな。そのときゃおごれよ?」
 しれっと言ってやる。
「なんでだよ!?」
「なんで逃げたのか教えてくれたらおごらなくていい」
 俺は交渉に持ち込もうと必死だった。なんか、もやもやして仕方が無いのだ。だから、どうしても確かめたい。
「――おごるわ」
「なッ……」
 コイツ……意地でも言わない気だな? じゃあ、最終兵器を出すしかあるまい。
「あの時姉貴が見てたってよ?」
 俺はあの後、姉貴に『私が見ていたって言えば、口を割るかもねー?』と言われたのだ。ハッキリ言ってなんのことやらさっぱりだったが、もしかしたらという希望を込めて言ってみた。
「――んなッ! ぇ!?」
 顔が真っ赤になった。どういう事なの?
「冗談だけど」
「冗談でもそういう事は言うべきじゃないだろ!? 心臓に悪いわ……」
 なにが心臓に悪いんだよ。教えろよ。
「口が裂けても言わねーからな」
「ふぅん……」
 決心は堅そうだった。ならば。ボディーブローことスキンシップの出番である。
 俺はコイツの肩に顎を乗せ、腕を抱え込む。電車の中とはいえ、俺の体は小さいのだ。方向転換や無茶な動きもお茶の子さいさい。
「――なッ、な……」
「言わなきゃ離さないぞ」
 コイツが葛藤しているのが手に取るように伝わってくる。
 あぁ……なんだろ。眠くなってきた。電車って、眠くなるよね? 前読んだ本に書いてあったけど、レールが等間隔に途切れてるから、ソレによる揺れも等間隔で、眠気を誘うらしい。
 だめかも、……知れない。

 次に目がさめた時、見えたのは自分の部屋の天井で。側にいたのは姉貴でしたとさ。

964 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/09(水) 21:48:26.04 ID:KEhRADVh0
――――――――
――――

親友視点の物語。

 海の家から出てきたコイツは、見事なまでのスク水で。
「うひゃー、かわいぃー……」
 一言で言えばものすごく似合っていた。横にいる友だちなんて、鼻血たらしてやがる。
 どうやらコイツは気づいていないらしいがな。
「ぁ……あまり、ジロジロ……見ないで……」
 鼻血隠すのに必死で、「うは。ご、ごめん。海に戻ってくる!」なんて言って海の方向へとダッシュして言った。他の人に迷惑かけなければいいけど。海が赤に染まる的な意味で。
 しかし、可愛いの一言で頬を朱に染め体を手で隠し恥じらう姿は、元男だと知っていても……その、来るものがある。
 気がつくと、俺のモノが膨張を初めている感覚が海パン越しに伝わってくる。
 や、やばいぞこれ……。もし、勃起しているなんてバレた日には社会的に抹殺されかねん。
 そう思い、とっさに背を向ける。これでバレないだろう。目の前の海水浴客にはバレてるかもしれないが、知り合いにバレるのと見ず知らずの人にバレるの……どっちが恥ずかしいかなんて、わかるだろ?
 ところがコイツはそんな俺を案じたのか、
「お前……さっきからこっち向いてないな。どうしたんだ?」
 なんて言ってきやがった。
「おーい」
 言いつつ、足音が近づいてくる。――ま、まさかッ!
「ばっ、おま……こ、こっち来るな!」
「はぁ?」
 なにその冷たい声。男として通常の反応をしたまでですよ俺は。と毒づく。いやいや、俺が悪いんだ。勝手に勃起しちまうんだからな……。
「どうしたんだよ。おい」
 位置を変えつつ、俺に追撃を食らわせてきやがる。やめろ! こっちに向くな!
 ここであることに気がついた。見られてる。コイツの姉にバリバリ見られてる。
 流石にヤバい。これはヤバい。苦笑してるもん。笑顔じゃないもん!
「お、俺も海に戻ってくる!」
 そしてダッシュで海に向かい、海の中で「沈まれ……沈まれ!」とつぶやいていたのだった。

 ……帰りの電車だが、コイツになぜそっぽを向いたのかとしつこいくらいに訊かれた。
 言えるわけねぇだろうが。
 “お前のスク水姿で勃起したから隠してました”……なんてよぉ。

安価『海に行く日に女体化』完。
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/09(水) 22:29:09.04 ID:EpixXUAH0
GJ!
966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:11:08.50 ID:3n9ouvMN0
そうだよな、そこは海に向かってダッシュだよな、――若いってイイネ☆

1つだけ不満を挙げるとすると
親友よ、思わず青春が青春して青春しそうになったのは分かるが
帰りの電車で無防備に身を預けてきた彼女に何をしたいと思っちゃったのか…
黙ってるのはよくないと思います!
967 : ◆440BCpUd8Bib [sage]:2011/03/10(木) 23:09:52.24 ID:SJ1tbWUI0
>>966
書けと言っているのですね、わかります
というわけで書きました

――――――――
――――

 電車の中、乗り始めて直ぐのことだった。
「なあ」
「あん?」
 コイツは、なにを思ったのか、俺に質問をしてきた。
「どうしてあの時逃げたんだ?」
「――ブッ!」
 どうして、今そんな事を訊く!?
「い、いい今はもういいだろ!? そんな事より、ほら。今日楽しかったな」
 俺は必死に話をそらす。
「俺は泳げなかったけどな。……す、スク水で泳ぐわけには行かないし……」
 どうやら、話題変更は成功したようだった。思わず胸をなで下ろす。
「今度はきちんと水着買って、プールにでも行こうな」
 機嫌を取らなければ、いつ会話が戻るのかわかったもんじゃないからな。
「そうだな。そのときゃおごれよ?」
「なんでだよ!?」
 なんで俺が奢らなきゃならない!?
「なんで逃げたのか教えてくれたらおごらなくていい」
 コイツ、話題を忘れていないって訳か。
 でもな、教えるわけには行かないんだよ。
 教えたらお前、引くだろ。だから、
「――おごるわ」
「なッ……」
 驚き、目を見開いているが、しょうがないだろ。教えたらこれの比じゃないくらい驚くだろうし。
「あの時姉貴が見てたってよ?」
「――んなッ! ぇ!?」
 な、ま、まさか、喋ったりしてないよな、お姉さん!?
 コイツに知られていたとしたら、一大事な訳で。
「冗談だけど」
「冗談でもそういう事は言うべきじゃないだろ!? 心臓に悪いわ……」
 良かった。冗談か。つか俺、動揺しすぎだな。……あれ、ハメられた?
「口が裂けても言わねーからな」
「ふぅん……」
 俺がそう言うと、訝しげな目で見つめてくる。
 だ、ダメだ……これはヤバイ。
 そう思っていた時だった。腕に、柔らかい感触が伝わる。
 なんだろうなー、この感触。あ、勿論わかってはいるけれども。現実逃避である。必死に、腕に伝わる感触を忘れようとする。ヤバイし。また勃起しちまうかもしれない。そんなところを見られたら、恐らく二度と顔を合わせられなくなりそうなきがした。
 しかし、そんな努力も虚しく、
「――なッ、な……」
 力を強めてきやがった。決して大きくない胸が腕を圧迫する。心臓の鼓動が腕に伝わり、どうにかしてしまいそうだった。
「言わなきゃ離さないぞ」
 どうしろってんだ……。言わぬは地獄、言うも地獄って。
 この状況をどう脱するかを考えていたんだが……。
 チャンスは思わぬ方向からやって来た。
「……スー……、スゥー……」
 可愛らしい寝息が、隣から聞こえ出したのだ。
 このチャンスを逃すものかと、腕を引き抜こうとする。
 ――が、思いのほかがっしりと掴まれているのと、その、……なんだ? 腕を動かすと、胸の柔らかい感覚が直に腕に伝わってくる、と言えば理解してもらえるだろうか。
 つまり、動かすのも恥ずかしいのだ。
「……どうしちまったのかな、俺……」
 元男なんだから、今まで通りの態度で接すればいいのに、女になったコイツの、女を証明する部分にドキドキしっぱなしだ。
 横を見る。寝顔が、ものすごく近くにあった。女体化患者の例にもれず、コイツもかなり可愛くなってるんだよな。
 ……って、一体なにを考えてるんだ!? 俺は……。
 女になった親友を、その日のうちに、既に女として見てた、とか……どうかしてる。
 本当に、どうかしてる。
「……んぅ……」
 心臓が高鳴っている。頬も熱い。いい加減どうにかなってしまいそうだった。
 不意に聞こえてくる寝息も相まって、心臓がはちきれそうなまま、電車は進んでいった。
968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/11(金) 00:06:57.72 ID:OjvTJ73+0
GJ!
969 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/13(日) 18:27:58.92 ID:uPgB5x2qo
G(od)J(ob)
970 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/20(日) 22:51:47.95 ID:3jH79IxIO
記憶喪失モノ書きたいんだけどな…
971 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/21(月) 22:04:13.65 ID:QkEBRF2Y0
書いてるわ
972 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/22(火) 19:23:26.49 ID:iwiinP8SO
記憶喪失、みたいなのなら


書いてる


ものごっつい 微妙だが
973 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/22(火) 20:02:53.38 ID:eWpSgjUb0
オイラも書いてた気がする。
974 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/23(水) 02:13:12.58 ID:krO1/h/1o
>>946
な、なるほど…作者の欲望、かぁ…thx……っと」

貴重な意見に感謝の言葉を返しておく

「後は…こ、これ…言わなくちゃいけないのか…?でも…即死、するんだ…」

顔を真っ赤にしつつ、放課後の教室で一人携帯を弄る
つい一ヶ月前の“俺”が携帯を見つめながらうんうん唸っていたのであればさぞや不気味に見えたことだろう
もっとも今の“私”は不気味とは程遠い容姿だから特に問題なし、などとくだらないことを考えながら時間を潰す

それにしても遅い!…あいつが来るまではまだ時間がありそうだし、ちょっと練習してみようかな…
「…じ、実は、ホントのプレゼントは、わ、わた、わたし…なの!…あぅ…」

や、やっぱり恥ずかしすぎる…面と向かってなんか絶対言えない…

「よっ!悪いな、遅くなっちまった」

突然後ろから声を掛けられ文字通り跳び上がるほど驚いた

「ひゃああ!?わ、わたわた!わわた!」

…もとい驚きすぎてちょっと涙目になってしまった

「だ、大丈夫か?」

「っ…き、急に話しかけるんじゃねーよ!吃驚しただろ!」

こいつにしては珍しい心配そうな声を聞いて少し嬉しくなるが、それを気取られるのが恥ずかしくつい大きな声が出てしまう

「わ、わりぃ…実は結構前からいたんだけど、なんというか…声掛け辛かったもんだから…」

「べ、別に、来たらすぐに教えてくれてよかったのに…」

…そんなに申し訳なさそうにされると、こっちまで申し訳なくなるじゃないか…………ん?

「ちょっと待て…結構前って、お前いつからいたんだ!?」

「え!?…え〜っと、その…『自分の欲望』あたりから…かな!」

「なっ、ななな…」

「ま、まあ気にすんなって!俺はお前もプレゼントだったほうg」

「〜〜ッ!!全部聞いてたんじゃねぇかあああ!!!」


後日本当にプレゼントする羽目になったのはまた別のお話

当初は保守のつもりで投下したはずなのに、いつの間にやら職人様が光臨されていたGJでございます
いつの日かあなた方先人達の作品のような長めでキュンッとなるSSを投下したいものです・・・
975 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/03/23(水) 02:52:21.02 ID:qUAl8QAPo
超GJ 残レス数も心もとなくなってきたな
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/03/23(水) 22:26:49.02 ID:ksEzMzuk0
GJ!
977 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/03/24(木) 17:37:30.57 ID:q7ZqOWe3o
>>971-973
wikiにあるなら作品名教えて
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(栃木県) [sage]:2011/03/26(土) 20:38:13.34 ID:cL9YesOWo
目の前には、一人の少女がいた。
手を伸ばすと、その少女もこちらに向かって手を伸ばす。
でも、決して触れる事は出来ない。
頬を微かに上気させ、潤んだ瞳でこちらを見つめる。
つ、と伸ばした指先が硬い物に触れる。
鏡。
彼女は、薄っぺらな鏡の中にしか存在を許されなかった。
硬い感触しか返さないソレを越しに、彼女の唇に触れる。
それに答えるかのように、彼女はゆっくりとその唇を開き、
「俺やべえ……」
と、呟いた。

ぶっちゃけて言ってしまえば、俺は女が好きだ。
女の胸が好きだ。尻が好きだ。うなじが好きだ。太ももも素晴らしい。
だがとても残念な事に、俺の周りには女っ気が全く無かった。
そんな13歳を迎えたある夏の日。
暑さで腐りかけた俺の頭は、まるで電球が点灯するかのように唐突に閃いた。
――そうだ、女がいないのなら女になればいいじゃない。
俺は天才だった。
そう。自分が女になれば、何をしても良い。
男が夢みるアレやコレ。何だってやり放題。
やはり俺は、天才だった。あくまでも脳内で。

数年前から、日本ではある奇病が蔓延している。
大よそではあるが、15歳前後になると、性別が反転してしまう。という病気だ。
未だ完全な解明に至ってはいないものの、あるウィルスが原因らしい。
爆発的な感染力を持ち、宿主が一定まで成長すると100%の確率で発症する。
また、そのウィルスは男性にしか感染しないという。
そして、宿主を女へと改造すると、女の身体には寄生できないため、死滅。
だが、この謎のウィルスの発症は、女性との性交によって回避できる。
ついでに言ってしまえば、この病気の治療センターなんていう物もあったりはするが、俺が行くわけがない。
俺にはパラダイスが待っているのだから。
なんて、ついさっきまでは思っていた。
「はぁ……」
軽くため息をついて、再び鏡に目を向ける。
なんとも微妙な表情をした少女がうつっている。
これは紛れも無く俺だ。
そして、自分で言うのも何だが、少女の前に美の一文字がつくのは間違いない。
昔の偉い人、かどうかは知らないが、先人はこう言った。
『美人は三日で飽きる』
これは真っ赤な大うそだ。なぜならば、俺は30時間で飽きた。
触って触って、弄って弄りまくって、30時間で飽きてしまったわけだ。
何て事はなかった。
ああいや、飽きない部分はある。
女の身体はとてもイイ。何がイイのかはあえて触れないが、とてもイイ。
が、それ以外は概ね飽きたといっても言い。
どうでも良い物が、ものすごく面白そうな物に見えて、親にねだって買って貰った時の事を思い出す。
買ってもらうまでは、すごくドキドキした。
買ってもらったら、なんだか凄くつまらない物に見えた。
よく覚えている。買ってもらって満足してしまった時のこと。
つまりこれは、あの時と同じ事。
手に入らないと思っていたからこそ、成りたかっただけで、本心で成りたかったわけじゃあないんだ。
13歳のあの暑い夏の日。
やはり俺の頭は腐っていて、俺は心底馬鹿だった。
(とは言うものの……)
なってしまったものはしょうがない。
ならば、女を楽しめば良い。
よくよく考えると、男とヤるのは絶対に回避しなきゃいけない。
となれば、レズでいけば問題無し。
「ああ、なるほど」
ぽん。と手を打ち、自分の天才的閃きに感謝する。
レズと言えば百合。百合といえば女の園。
つまり、
「そうだ、女学院に行こう」
やはり、俺は天才だ。
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(栃木県) [sage]:2011/03/26(土) 20:38:37.16 ID:cL9YesOWo
久しぶりに投下。コテは忘れたのでナシッ
ちなみに続きは無いので妄想で補完してください
980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/03/26(土) 22:22:23.75 ID:/MEGshwS0
GJ!
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/27(日) 12:04:40.97 ID:r1eqazAU0
安価>>982
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/03/27(日) 14:49:26.02 ID:vkV/MiIho
コンタクトとメガネ
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/03/28(月) 01:31:35.64 ID:GMIIg6Z0o
クラスメイトの鈴木君。もとい鈴木さん。俺の隣の席に居る彼女は、女体化してから早3ヶ月が過ぎている。
性別が変化してからというもの、彼女の身の回りの環境は一変していた。
それまで友達であったろう男子生徒が急によそよそしくなり、彼女の周りを離れていった。
さらに、未だ女子にもなじめないでいる。
これは、我が校の女体化率が著しく低いからではないかと俺は考える。
彼女自身が周囲になじめないのではなく、周囲が彼女になじめないのだろう。
前例というものが極めて少ないからだ。かくいう俺もその中の一人ではなかろうか。
横目でチラリと彼女を窺う。
決して容姿が悪いわけではない。中の上のその上を行くかもしれない。スタイルも良いだろう。
俺はCカップ以上ではないかと睨んでいる。
そんな彼女を俺がなんで、こんなに気にしているかって?
そうだ、あれは1カ月程前の話だ。
科学の実習授業で彼女とペアを組んだ事があった。
実習中のやりとりで、しどろもどろになる彼女に対して俺は冷静に対応した。
俺自身はそれが俺のペースであり、居たって自然な対応だった。
それからである。彼女は時折寂しそうな表情で俺の事を目で追うようになっていたのだ。
かくいう俺は相当のスケベで彼女の胸元や足元をチラチラと見ていたから気付いたようなものだった。
休憩中、物思いにふけっていた俺は、隣から何やら視線を感じて、頬杖をつきながらその視線に対して向き直ってみた。
すると、彼女がこちらを見つめているではないか。
寂しさゆえか、はたまた特別な思い入れがあるのか、別にモテるわけでもない俺に対して、そんな視線を送っている。
俺は堂々と視線を返す。
彼女はそれが恥ずかしかったのか慌てて視線をそらして俯く。
これは脈ありか?
この学校では女体化者と純正男子がくっついたなんて事例は風の噂でも耳にした事はない。
俺にとっても、このような事態は前代未聞である。
はたまた、俺の勘違いかもしれない。彼女は友達を求めているだけなのかもしれないのだから。
ま、どっちでもいいか。直接話してみなきゃ分からない事だってあるだろう。

「なぁ、どうかしたんか?」

「え!?」

非常にか細い声である。俺の好みでもあるが。

「何か、俺に用でもあったんじゃ?」

「え、あ、そ、そのっ・・・な、なんでもないよ・・・」

「・・・・」

何か言いたい事でもあるのだろうか?
言いたい事があれば、ここですぐ言えばいいのにな。
彼女は俯いたままだんまりを決め込んでいる。
こうなっては気になって仕方がない。何とかして彼女の口を開かせるためあの手この手で攻めて見たくなった。
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/03/28(月) 01:34:11.64 ID:GMIIg6Z0o
「なぁ、鈴木。ここで話しにくい相談とかそういうなら、後で別のどっかで聞いたるで?」

「そ、そんなんじゃ!そんなんじゃないんだよ・・・」

「わーってる。わーってるって」

俺は手をぱたぱたさせて、あたかも彼女の考えを分かっているかの様に振舞ってみせる。
すると、彼女はまた寂しそうな表情に戻ってしまう。なんか分かりやすい奴。
俺自身こういった女性経験?見たいなのは無いに等しいのだが、彼女に対してはなんだかやりやすい。
・・・・俺が彼女を見下しているから・・・だろうか?
まぁ、ええわ。俺が上手ならそれでいい。手玉に取られてどん底に落とされるよりは。
主導権は俺のまま、会話を進める。

「そんな緊張すんなって、話相手くらいなったるがな」

「う・・・うん」

「最近どうよ?友達はできたんか?」

「うんん。ダメ・・・かな。みんなよそよそしくて・・・」

「だろうなぁ・・・この学校、鈴木さんみたいなの少ないしな」

「・・・・・」

「あ〜・・・悪りぃ悪りぃ。けどま、高校卒業さえすりゃ今よりはましなんじゃ?」

「そう・・・なのかな?」

「だってよ、ちょっと他所の大学にでも進学すりゃ、周りはみんな知人ですらないんやぞ?」

「・・・・それは・・・でも、知らない人が沢山──」

「う〜ん。まぁ、そやな。でも、ゼロからってのも悪くはないで?」

俺は関西から転校してきた身分なもんで、心機一転新天地での生活を余儀なくされた。
それは悪い事ばかりでもなく、その昔の嫌な思い出もすっかり笑い話のレベルだ。

「分かるけど・・・嫌な事もあるかな・・・」

嫌な事。彼女からしてみれば、今そのものが嫌な事ではないか?
俺はそう考えていたが、そうではないようだ。
だから、俺は聞いてみた。

「具体的にどんな?」

「言わなきゃダメかな・・・・?」

言わなきゃ分からない事もある。

「ゆーてみ?」

「えっと・・・あ、あのね・・・連絡先・・・その・・・携帯の・・・聞いてもいい?」

ここでは言いにくい事。そう、言いたいのだろうか。
俺がそう思わなければ、大胆な女の子・・・じゃなくて、元男からのお誘いって感じだが。
しかし、これは彼女らしからぬ大胆な行動だ。
だからこそ甲乙付けがたかったが、甘んじて受けてみようと思った。
変わり者。そう思われるかもしれないな。でも、気になるんだわ。アイツがな。
かくして、俺は鈴木さん。もとい、鈴木佳織と友人関係になった。
元の名前はなんてったかな。彼女が男だった頃は約1週間程度の付き合いだったから覚えてない。
佳織・・・か。はは、元の男の顔は記憶にはあるが、似ても似つかんな。
985 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国地方) :2011/03/28(月) 20:41:18.69 ID:jDNqykJC0
続きwktk
986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/29(火) 00:56:55.51 ID:LBDX8Qzxo
続き楽しみに待ってます。
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/03/29(火) 04:56:37.85 ID:7cpOiMEEo
『近藤君はさ、進路先とかどう?』

彼女との電話の機会は日に日に増している。
これは彼女が学校での会話を避けているのが理由でもあるが。
俺はさほど気に留めてはない。気持ちは分かる。いや、気を使われているのかもしれない。

『ん?そやなぁ・・・。これといって考えてないわ。まだ早いんちゃう?』

『・・・・そっか。私さ、関西の大学を考えてるんだ』

『へぇ、関大とか?』

『かな。まだわかんないけど。関西ってどんなの?』

『・・・・・せやな。お笑いには厳しいわ。間違いなく関東のウケは通用せんわ』

『あはは、そうなんだ』

『そうそう、いまだにあんなネタでゲラゲラ笑っとる奴らが信じられへんわ』

『はは・・・あはははは!』

『そんでな──』

こうやって電話でのやり取りは二日に一回くらいのペースである。ただ、相変わらず外に出て遊ぶ事はない。
理由は多分あれだ。人目に付きたくないからだろう。だから俺も誘わないし、彼女も誘ってこない。そう思っていた。
しかし、俺の予想を他所に翌日彼女の方から誘いがあった。一緒に大阪に遊びに行かないか・・・と。


「大阪にとうちゃーく!何して遊ぶ!?」

「いやいや、まだこれから電車に乗り換えやし」

最初の頃と比べて彼女は本来の明るさを取り戻したのか、毎日がやけに楽しげだった。というよりハイテンション・・・。今もこうして、友人としてなのかどうなのか、緩やかな上方線を進みながら今に至る。
特に大阪の地を踏みしめてからの彼女には、"あっち"での足かせが解けたかのような軽やかさだ。こいつ、元男の時はこんな奴だったのか。
しかしまぁ、複雑な気分だ。元男と二人でデート、か。俺は一体何を考えてるんだろうな。体は女とはいえ、元男とどうにかなろうというのだろうか。
好き嫌いとかそういう概念ではなく、人一人として興味があったからだろうか?どちらにしても、人として惹かれつつあったのかもしれない。

「楽しそうで何よりやな。うんうん。ええこっちゃ!」

「うん!男同士ならちょっと寂しい感じもするけど、ね・・・?」

大阪の大地は彼女を開放的・・・いや、素直にさせるのか。それでも、相手に対して同意や確認を求めてくるところは相変わらずか。俺はそう考えながらほくそ笑む。

「へーへー、片手に華で少しばっか足りんけどなー。片手が遊ぶわー・・・って、おお、ええ女発見!」

俺がかまをかけると、彼女はあからさまに頬を膨らませて凄まじい視線を俺に向ける。

「は、はははは・・・・すんんすまん」

「むーーー」

彼女とはまだそういう関係ではない。単に、彼女が進路希望の地を見てみたいというからと理由で案内人として同行した。
幾度ものコミュニケーションの末、大阪が俺の古巣という事を知ったのが理由だ。ひとまずは梅田を適当にぶらぶらと案内する。
アレがヘップファイブだの、観覧車だのと適当な案内にも彼女は目を輝かせては時折たこ焼き食べたいと言う。電車の高架下のマックでシェイク飲んどるやつが何を言う。
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/03/29(火) 05:12:31.96 ID:7cpOiMEEo
「沙織な、ほんまに関大に進学するんか?」

「うん。するよ」

「・・・・俺、どないしよ」

「毅はまだ決めてないんだよね」

「・・・・・・沙織は、何で関大なん」

「・・・内緒」

「はぁ?なんでやねん」

「内緒」

「ほな、俺も内緒」

「はい?毅はん、まだ決めてないって前からゆーてまんがな!」

慣れない・・・というか、関西弁色々間違えとるし!!

「漫才やっとんとちゃうで・・・ほんまにな、決められんのやわ」

これといって進学の目的もない。正直言ってやりたいことなんてなんもない。世の大学生ってのは、そんなに目的意識の高い存在なのか?と思ってしまう。
案外、コンパに明け暮れるアホ学生も多いとも聞くが、俺にとっては未踏の地なので実感がわかない。

「そっか・・・・」

どうやら、俺の感慨がシェイクを濁らせたらしく、沙織があからさまに辛気臭い顔をしていた。
そんな俺は、沙織を直視できず視線を逸らせる。すると、逸らせた先に懐かしい・・・というか、憎らしい面々がこちらに向かってきていた。
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国) :2011/03/29(火) 09:01:02.29 ID:7FSm/4PAO
イイぞ、こういうの好きなんだぜ。
続きに期待。
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/04/13(水) 07:59:11.43 ID:X4xfkNGAO
関西弁いいね
暖かい感じするね
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/04/15(金) 08:36:21.92 ID:jxvHCHhi0
貴重な1レス分使って申し訳ないが>>990も超えたし次スレどうしようか?
進行中のSSもあることだし準備する方向で良いと思うが
もうすでにどっかに立ってる?or新しく立てるならだれか頼む
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/04/15(金) 12:06:06.25 ID:Y/RmhFP60
>>991

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1302836584/

立った
久しぶりに立てたわ

993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/04/15(金) 12:07:07.19 ID:Y/RmhFP60
さぁ先ずこっちを埋めてしまおうか
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/04/15(金) 12:53:25.04 ID:jxvHCHhi0
乙GJ!

ご褒美に15歳の誕生日に女体化する権利を進呈しましょう

ところで新スレの方何か書かないと即死とかってあるのかな?
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/04/15(金) 14:08:47.92 ID:jxvHCHhi0
埋め埋め

「女の子になるってどういう事なんだろう」
「今までの自分に、さよなライオンってことじゃない?」
「じゃぁ、僕たちが女体化したら……」
「うん、双子の兄弟じゃなくなってるかもしれない」
「なんだか勿体ないね」
「せっかく双子なのにね」
「どうすればいいんだろう」
「そうだ、一緒に女体化すれば双子の姉妹になれるかもしれないよ」
「うまく一緒に女体化できるかな?」
「先に女体化しそうになった方は出来るだけ我慢したらどうかな?」
「我慢するの、むつかしそう……」
「じゃぁ我慢してる間に、もう片方は出来るだけ早く女体化に追い付くのはどう?」
「努力して女体化するの?」
「うん」
「わかった、頑張る」
「頑張ろう、えいえいおー!」
「おー!」

もうとっくに15歳を超えてるけど、俺も頑張れば女体化できますかね?
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/04/15(金) 16:33:32.58 ID:2ywdVxSs0
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/04/15(金) 17:23:26.20 ID:Y/RmhFP60
安価↓
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) :2011/04/15(金) 19:40:37.27 ID:jxvHCHhi0
「美人は三日で飽きるっていうけどサ」
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/04/17(日) 09:52:18.52 ID:fYKu7S8DO
にょたは初日から萌える

999
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/18(月) 06:22:50.26 ID:o1q7W3uq0
1000なら次スレに神降臨
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/

ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
仁美「私、マミお姉様に一目惚れいたしました」マミ「えっ!」 @ 2011/04/18(月) 03:34:17.03 ID:zxyJEYgXo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303065256/

助手「私ってもしかしていらない子ですか?」 @ 2011/04/18(月) 03:25:34.28 ID:k0Glf3bq0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303064733/

百合子「これで私の130連勝ね」美琴「128勝2引き分けよっ!訂正しなさいっ!」 @ 2011/04/18(月) 02:49:29.41 ID:hflxQzlu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303062569/

隣のお兄さんとつきあいたい!! @ 2011/04/18(月) 02:27:03.32 ID:a6C61knAO
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艦長「漂流中なう」 @ 2011/04/18(月) 01:20:14.42 ID:qZp9xJYb0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303057214/

女ってなんでそんなにめんどくさいの? @ 2011/04/18(月) 00:05:19.17 ID:tepGbDUAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1303052719/

トンキンはクズ @ 2011/04/18(月) 00:03:58.88 ID:O8sVf2IDo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1303052638/

別に新ジャンルじゃない「ひょんなことから女の子」Part4 @ 2011/04/17(日) 23:55:06.63 ID:ZcoMrkbn0
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