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らき☆すたSSスレ 〜こなた is あRevenger〜 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/14(木) 04:43:56.92 ID:d3k3m2M0
ここは「らき☆すた」のSSスレです。

・どんなジャンルでもどんどん投下したまへ〜 by こなた
・でも、他所からの作品の無断転載は絶対ダメよ! by かがみ
・あとね、あんまりえっちなのはちょっと恥ずかしいから遠慮してほしいな by つかさ
・メール欄に「saga」と入力するとこの板特有のフィルターを回避できます。「sage」ではありませんよ。
 代表的な例が「高翌良」です……よろしくお願いしますね by みゆき
・長編作品はタイトルをつけてもらえるとまとめるときとかに助かります! by ゆたか
・それと、できればジャンルを明記するようにしてほしいの。
 特定のジャンルが苦手な人もいると思うから…… by あやの
・パロディとかクロスオーバーとかもおっけーだけど、
 あんまり度が過ぎると他の人に引かれっから気をつけろよなー by みさお
・シラない人へのハイリョがアればgoodネー byパティ
・初めてでもよっしゃーいっちょ書いたろかって人大歓迎するでー by ななこ
・まとめてくれる人募集中です……そして、現在のまとめ人には感謝してます…… by みなみ
・お題を出せば書いてくれる職人さんもいるっス。ネタのため……
 いや、いろんなお話を読んでみたいんで、いいお題があったら書いてみてください! by ひより
・そしてそして、SSだけじゃなくて自作の絵もOK!
 投下された絵は美術室に展示されるからジャンジャン描くべしっ! by こう
・注意! 荒らしへの反応は絶対ダメ。反応する悪い子は逮捕だ! by ゆい


(避難所)
 PCから->http://jbbs.livedoor.jp/auto/5330/
 携帯から->http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/auto/5330/

(まとめサイト)
 http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/

(SSスレ用画像掲示板)
 http://www.sweetnote.com/site/luckystar/
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/14(木) 04:52:51.91 ID:d3k3m2M0
スペース入れ忘れたorz
3 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/14(木) 07:01:25.65 ID:EkT.CMSO
テスト
4 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [saga]:2010/01/14(木) 07:49:48.78 ID:8Q7vfMSO
こなた「>>1乙ー」
かがみ「お疲れ様」
こなた「出戻りイベントktkr」
かがみ「やめい、人聞きの悪い…」
5 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [saga]:2010/01/14(木) 19:30:03.09 ID:8kz2AIM0
景気づけにもならんでしょうが、投下いきます。
6 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [saga]:2010/01/14(木) 19:31:31.28 ID:8kz2AIM0
アニ研部長後任問題

アニ研部室。

「ひよりん」
「なんスか、先輩」
「そろそろ、私の後任の部長を決めなきゃいけないんだけど」
「ああ、もうそんな時期っスね」
「ひよりんで決まりだから」
「えっ、なぜっスか!? 私は部長なんて向かないっスよ!」
「まあ、そうなんだけどさ。今の二年部員に部長向きの人材ってそもそもいないんだよね」
「なら、せめてアミダとか……」
「それでもいいんだけどさ。でも、この部ってなんつーかみんな自由すぎて規律がゆるいっていうかそんな感じだから、せめて熱意っていうほど大げさでもないけどそんなのがある人間じゃないと、部長は務まんないかなぁってね」
「でも、私じゃこうちゃん先輩の後釜なんて務まらないっスよ」

 今まではこうの統率力があったからこそ、このゆるゆるの部もなんとかまとまってきたというところはある。
 その後任となると、今の二年部員は誰もが力量不足だった。
 かといって、学校の部組織として部長なしというわけにはいかない。
 となれば、少しでもマシな人材をあてるしかなく、そうなるとひよりが筆頭があがるのも、仕方のないところであった。
 なんだかんだいっても、今の二年部員でアニ研の活動に一番熱心に取り組んでいるのは彼女なのだ。

「嫌なら、ひよりんのクラスの委員長を引っ張り込むんだね。あの若瀬さんなら適任だよ。これは毒さんも同意見」
「う〜……」

 確かにいずみは適任だった。こうとは全く違うタイプだが、学級委員長としての仕事ぶりには申し分なく、部長としてもうまくやっていけるだろう。
 でも、彼女は隠れオタ。無理やりアニ研に引っ張り込むのは、気が引ける。
 オタクの目から見れば、彼女が隠れオタなのはバレバレだったが、少なくても一般人にはまだバレてはいないから。

「八坂。少しは田村にも考えさせてやれ」
 顧問のひかるがそう発言した。
「まっ、そういうわけだから、前向きに考えてくれよ」
 こうはひよりの肩を軽く叩くと部室をあとにした。


7 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [saga]:2010/01/14(木) 19:32:30.40 ID:8kz2AIM0
翌日、昼休み。

 お弁当を食べながら、ひよりは上の空だった。
「田村さん、どうしたの?」
「何か悩み事でも?」
 ゆたかとみなみが心配そうにひよりを見る。
「まあ、悩み事といえば悩み事かな……」

 ひよりは、事情を話した。

「Oh! ヒヨリがブチョウでスか。ダイシュッセね!」
 バティがズレた感想を述べる。
「いや、部活は会社じゃないから」
 いっそのこと、このパティを引っ張り込んでしまえば解決するのかもしれないが、いくら何でも途中でいなくなってしまうことが確実な留学生を部長に据えるわけにもいかない。

「ひよりなら大丈夫だと思う」
 みなみがそう言った。
「でも、私じゃ八坂先輩みたいにはいかないし……」
「何もかも八坂先輩のようにする必要はないと思う。ひよりはひよりなりのやり方でやればいい」
「そうだよ、田村さん。田村さんは、ええっと……いろんな人とうまく付き合っていけるっていうか、そういう人だから、うまくやれると思うよ?」

 確かに、自分がこうのようにやれるわけはない。
 自分は自分なりのやり方でやるしかないのだろう。

「ジブンにジシンをモちましょう!」
 パティに背中を叩かれた。
「痛いよ、パティ」
「アイのムチね」
「それ意味不明だから」

 でも、なんとなく決心はついた。
「みんな、ありがとう」

 ひよりは、お弁当を食べ終わると、3年C組に向かった。


8 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [saga]:2010/01/14(木) 19:33:32.86 ID:8kz2AIM0
数ヵ月後、アニ研部室。

「おっす、ひよりん。久しぶり」
「あっ、こうちゃん先輩、お久しぶりっス。今日は、どうしてこちらに?」
 卒業式があったのは一週間前。
 何か用事がなければ、こうがこの学校に来る必要性はない。
「ようやく大学決まったから、担任に報告してきたところ」
「おめでとうございますっス」
「やさこ、決まったんだ。オメデト」
 制服姿のたまきが、さも当然といった態度でそこにいた。
「よかったじゃん」
 そして、その隣では、同じく制服姿のみくが本を読んでいる。

 たまきとみくは、推薦で早々に進路が決まっていた。
 そして、このゆるゆるの部活は、三年部員の引退という概念があいまいだ。
 よって、二人は、以前と変わらず放課後はアニ研部室に入り浸り、それは卒業しても変わることがなかった。
 顧問のひかるがその辺に寛容だということもあって、そんな状況が続いていた。

「ひよりんも部長としてなんとかやってるみたいだな」
「それなりに何とかなってるっス」
 部誌原稿のスケジュール管理さえ何とかやれば、あとはほぼ自由放任でもどうにかなる。アニ研はもともとそんな部活だ。
 その部誌原稿で四苦八苦してるというのは、相変わらずのことだけど。

 それから、ひよりとこうとたまきで久しぶりに雑談しながら、時をすごした。



 翌日以降、たまきもみくも、そしてこうも、部室に来ることはなかった。
 ひよりは、そのとき初めて、三人がもう卒業してしまったのだということを明確に認識した。

終わり
9 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/14(木) 19:58:35.54 ID:tcThIQ20

こっちに帰って来たんだね
あっちはたまに規制で書き込めないからなぁ
10 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/15(金) 02:24:07.81 ID:9c/RV6.0
>>1
>>8 GJ!ひよりは原作でもほんとにアニ研部長にんるんじゃないかと思ってるww

----------------------------------------------------------------------------
ここまでまとめておきました
11 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [saga]:2010/01/15(金) 02:43:55.82 ID:3rqIHkSO
−まとめ人への感謝の以下略−


こなた「まとめ乙」
かがみ「お疲れ様です…ってーかやる気なさそうね」
こなた「まとめに引っ掛けてなんかやろうと思ったんだけど、何にも思いつかなくてねー」
かがみ「いやまあ…」
こなた「よし、しりとりしよう…まとめ」
かがみ「明太子」
こなた「コチジャン」
かがみ「…うわーやる気ねー」
12 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! [sage]:2010/01/15(金) 18:31:19.46 ID:19cxNUDO
かがみ「最近新しいスレ増えたわよね〜 え?全てチェックなんてしてないわよ」

こなた「そうなんだよ?2つもあるんだよ?どっちに投下しようかすっごく迷うんだ〜 あーもぅ投下するのやーめた」

みゆき「まぁどのSSスレを読もうか悩んでるのですか?でしたら、らき☆すたSSスレがいいですよ?」

つかさ「今日どこまでまとめるんだったけ?えーとえーと、うーんと…」

巻き舌でランチ

魚っ魚っ煮ても焼いてもよし
13 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/15(金) 22:48:09.79 ID:qNCp0kg0
スレ重複してんのかと思った…びっくりした
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/17(日) 18:27:58.66 ID:F4EDYMAO
みさお「重複してんのかとビビったってヴァ」
あやの「あわてて見なくてもいいのに…」
みさお「あれ?あやの黒いベレー帽なんて持ってたっけ?」
あやの「これ?この前フリマで買い物した時にオマケでくれたんだけど…」
みさお「似合うというべきか…」
♪誰っだ♪光あふれ…
あやの「着メロ変えたの?」
みさお「ちびっ子が勝手に変えたんだよまったく」
♪まぶしい太陽♪隠す黒い雲を♪
みさお「プッ」
あやの「………今のが本音なのねみさちゃん」
みさお「ちびっ子ー!なんてタイミングで電話すんだよ!!」
こなた『何が?!』
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/19(火) 10:01:29.79 ID:c3PceiY0
かなた「ふっしぎし〜ぎ〜摩〜訶不思〜議〜る〜わ〜…」
こなた「!?…悪寒が…」
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/19(火) 10:46:45.45 ID:wElXu.DO
前のような活気がねえな
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/19(火) 22:09:07.19 ID:D4h.dMDO
らき☆すたアナグラム

水居宗次郎
高井奈純
出田菜美子

限界orz
頭プスプスする
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/19(火) 23:09:15.34 ID:cXdwTISO
意味が分からナグラム
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/19(火) 23:42:39.51 ID:X9lh1mgo
みずいそうじろう→そうじろう
たかいなずみ→かなた
いずたなみこ→こなた

だな
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/20(水) 01:25:17.00 ID:qB0kkMSO
−某コピペ改変−

こなた「ちょwマジで売ってってwww」
兄沢「ないないwwwマジでマジでwwww」
こなた「いやwwまだあるってwwwwwそこ!wそれ100%そうだってwwww」
兄沢「いやいやwwwこれ予約分wwwwこの一個マジ予約分wwwww」
こなた「立っとくからwwwwわたしずっと立っとくからwwwwww」
兄沢「はい時間切れ閉店ガラガラ〜wwwww」
こなた「wwwwwwwwwwwwww」

かがみ「…帰っていいか?」
こなた「あれ!?めっちゃ冷めてる!?」
兄沢「このネタはダメか!?」
21 :メッセージ [saga]:2010/01/22(金) 02:12:31.08 ID:.vzYLpo0
投下行きます。

少しばかり鬱な展開がありますので、苦手な方はご注意を。
四レスほどです。
22 :メッセージ [saga]:2010/01/22(金) 02:13:24.33 ID:.vzYLpo0
「ちょっとこなた。昨日なんで携帯でなかったの?」
 とある日の朝。登校途中にこなたと合流したかがみは、挨拶もそこそこにそう言った。
「え?昨日?」
 こなたは首をかしげると、鞄の中から携帯を取り出して画面を覗き込んだ。
「あ、ホントだ。着信入ってる…メールもだ」
 のんきにそう言うこなたを見て、かがみは溜息をついた。
「どうせまたマナーモードにしたままで、ゲームかアニメに夢中になってて気がつかなかったんでしょ…」
「あはは…まあ、家電にかけ直さなかかったって事は、大した用事じゃなかったんでしょ?いいじゃない」
「大した用事だったらどうする気だったのよ…」
 かがみはもう一度溜息をついた。
「ってかメールも。つかさみたいに延々返事返すとかしなくていいけど、一回くらい返して…」
「返事こないと寂しい?」
 かがみの言葉をさえぎるこなたの一言に、かがみは顔そむけて頬を赤らめた。
「そ、そんなんじゃ…も、もういい!早く行かないと遅刻するわよ!」
 かがみは誤魔化すように大声を出すと、学校に向かい少し早足で歩き出した。その後を、こなたがニヤニヤしたまま付いていった。



― メッセージ ―



 その日の晩。撮り溜めしておいたアニメを見ていたこなたは、傍らに置いた携帯が震えているのに気がついた。
「誰だろ…かがみか。今いいところだから、後でねっと」
 今朝注意されたにもかかわらず、こなたはかがみからの電話を取らずに、携帯をベッドに放り投げた。
 そして、アニメを見終わった頃にはそのことは完全に忘れ、そのまま寝てしまっていた。


23 :メッセージ [saga]:2010/01/22(金) 02:14:21.83 ID:.vzYLpo0
 翌日の朝。目を覚ましたこなたは、放り出したままの携帯を鞄に入れようとして、昨日かがみから電話があったことを思い出した。
「あー…昨日の今日だし、怒られるなー」
 今日のところは素直に謝っておこう。そんなこと考えながらこなたは携帯を眺め、メールの着信もあることに気がついた。
「うわー、メールまで来てる…って七件も?」
 携帯を開いて確認してみると、届いたメールは全部かがみからですべて無題。何件か内容を見てみると、本文も何も書いていなかった。
「…なにこれ…無言メールとか、かがみ怖すぎるんだけど…」
 そして、こなたは携帯を閉じようとして留守電が一件入ってることに気がついた。だが、そこにかがみの悪口雑言が入ってるかと思うと聞く気にならず、そのまま携帯を閉じた。


「おはよう、ゆーちゃん、お父さん」
「おはよう、お姉ちゃん」
「ああ、おはよう、こなた」
 こなたはリビングに入ると、先にテーブルについていたゆたかとそうじろうに挨拶をし、自分も席に着いた。ついているテレビにふと目をやると、複数の車が煙を上げている、交通事故らしい画像が出ていた。
『…トラック二台、乗用車三台、その他数名の通行人を巻き込んだ事故は、死者五名、負傷者七名…』
 アナウンサーが淡々と読み上げる事故の内容に、こなたは顔をしかめた。
「…大きい事故だね」
「うん…昨日の晩だって。結構近くだし、怖いよね」
 こなたの呟きに、ゆたかがそう答えた。こなたはとりあえず朝食をとろうと、手を合わせて箸を手に持った。
『…柊かがみさん、十八歳…』
 聞こえてきたアナウンサーの声に、こなたは弾かれた様に顔をテレビの画面へと向けた。画面に映るテロップ。その死者の欄に、柊かがみの名が書かれていた。



 学校では、朝から事故の話で持ちきりだった。何人か見かけた、泣いている生徒はかがみの友達だったのだろう。こなたはそう思いながら、自分の席でずっと窓の外を見ていた。
 何かしなければいけない。けど、何をすればいいのか思いつかない。そんなもどかしい、心に穴が開いたかのような気持ちを抱えて、授業中も休み時間も、こなたはずっと窓の外を見ていた。


24 :メッセージ [saga]:2010/01/22(金) 02:15:14.88 ID:.vzYLpo0
「…泉さん」
 昼休みになり、自分の名を呼ばれたこなたは、ようやく窓から視線を教室の中に移した。そこには、泣いているような戸惑っているような、複雑な表情をしたみゆきが立っていた。
「みゆきさん…大丈夫?」
 こなたは、思わずそんなことを聞いていた。
「…わかりません」
 みゆきは、力なく首を横に振った。
「自分がなにを考えてるのか…どうすればいいのか…頭の中が真っ白で…何も…」
 こなたはみゆきの答えを聞くと、また窓の外に顔を向けた。
「…おんなじだね」
 ふと、一人の女の子の顔が頭に浮かんだ。かがみに一番近かったその子は、今何を考えているんだろう。こなたはそんなことを思った。
「つかさは…大丈夫なのかな」
「…わかりません」
 返ってきたみゆきらしくない返事に、自分たちは本当に何も考えられなくなっているんだと、こなたは溜息をついた。
 不意に静かだった教室の中がざわめきに包まれた。何事かと思い、教室の中に視線を戻したこなたは、そこに立っていた人物に驚き、目を見開いた。
「つ、つかさ!?」
 こなたは立ち上がり、つかさの方へと向かった。つかさもこなたに気がつくと、ふらついた足取りで近づいてきた。
「どうしたの…どうして来たの…」
 自分に倒れ掛かってきたつかさを抱きとめ、こなたはそう聞いた。
「…こなちゃんに、どうしても聞きたいことがあって…」
 つかさは消え入りそうな弱弱しい声で答えた。
「…お姉ちゃんの携帯…最後の…事故があった時間に…こなちゃんへの発信履歴があったの…電話とかメールの…」
 そう言いながら、つかさはポケットから携帯を取り出した。こなたも何度か見た、かがみの携帯だ。それを見たこなたは心臓が締め付けられるような感覚を覚えた。
「…みゆきさん、つかさお願い」
 こなたは傍に居たみゆきにつかさを託すと、自分の席に戻り鞄の中から携帯を取り出した。そして、二人のところに戻って携帯を開いた。
「…どうして、わたしだったんだろ」
「…かがみさんのアドレス帳は五十音順になってますね…泉さんの名前が一番上になってます」
 ふと感じた疑問を口にしたこなたに、かがみの携帯を見ていたみゆきが答えた。
 今朝はちゃんと見なかったかがみからのメール。今度は一件一件開いてみる。六件目までは何も書いていなったが、最後の七件目にたった一言だけ書いてあった。
『きづいて』
 その文字を見た瞬間、こなたは心臓の締め付けが強くなるのを感じた。呼吸がしづらくなり、息が荒くなる。
 これはメッセージだったんだ。こなたはそう思った。こなたが携帯をとらないと思ったかがみが、気づかせるために必死でメールを送り続けていたんだ。
 そして、こなたは留守電が入っていることを思い出した。今朝は悪口が入ってると思って聞かなかったメッセージ。こなたは震える手でボタンを押した。


25 :メッセージ [saga]:2010/01/22(金) 02:16:12.45 ID:.vzYLpo0
 …こんな時くらい、でなさいよ…バカ…
 …手しか動かないの…何も見えないの…
 …聞かせてよ…
 …最後に…声くらい聞かせてよ…
 …あんたで…いいから…


 こなたは携帯を取り落とした。
「…わたし…そんなつもりじゃ…ごめんなさい…かがみ…ごめん…なさい…」
 ボロボロと涙がこぼれてくる。最後を悟ったかがみが願った、たった一つの小さなこと。それを自分はあっさりと踏みにじってしまったのだ。
 みゆきはこなたが落とした携帯を拾おうとして、そのまま泣き崩れてしまっていた。
 つかさは何かをこらえるように、じっと上を向いたままだ。
「…うわぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
 そして、悲鳴のようなこなたの泣き声が教室に響き渡った。




 朝。待ち合わせの場所にこなたの姿を見つけたかがみは、昨日の文句を言おうと声をかけた。
「ちょっと、こなた。あんた昨日も携帯でなかった…」
「か、かがみーっ!!」
 しかしその文句は、急に自分の名前を呼びながら抱きついてきたこなたに中断させられた。
「え、ちょ…な、なに?なんなの?」
「…ごめんなさいもうしません…ちゃんでるから…でるから…うぇぇぇーん」
 謝りながら泣き出したこなたに、かがみはどうすることも出来ずにうろたえていたが、周りの人たちがひそひそと何か呟きながらこちらを見ていることに気がつき、顔を赤らめた。
「こ、こなた…いいから…もういいから、そんな怒ってないから…周りの人も見てるし、落ち着いてよ…ね?」
 かがみは周りの視線を気にしながら、必死にこなたをなだめにかかった。

 その後、かがみは落ち着いたこなたから、原因は昨日見た怖い夢だと聞き、ひたすらに長い溜息をついたのだった。


― 終 ―
26 :メッセージ [saga]:2010/01/22(金) 02:17:22.90 ID:.vzYLpo0
以上です。

すいません。夢オチがやりたかっただけなんです。
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/22(金) 06:39:43.55 ID:eI6mILQo
誰だって、いつ突然事故やらなにやらで亡くなってしまう可能性はありますもんね……
いやでも、夢オチで良かった。
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/22(金) 18:22:17.98 ID:eGNa6Ys0
>>26
乙 同じく夢で良かった…
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/24(日) 00:52:57.40 ID:7/.Jm2I0
---------------------------------------------------------------------
ここまでまとめた
---------------------------------------------------------------------
30 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/24(日) 01:02:10.75 ID:8Y31mkSO
>>29

31 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/25(月) 03:35:38.46 ID:DydNsEDO
ふと思ったんだが
高校卒業したらさ、ますますみゆきさんが影薄くなるんじゃ…
ん、誰だろこんな時間に?
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/25(月) 08:00:46.75 ID:d3bH82SO
このまま影が薄くなって注目されなくなれば、みゆきさんは俺だけの天使になるから問題ない。



けして、今のネタストックの中にみゆきさんメインが無いことの言い訳では無い。
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/25(月) 08:12:19.28 ID:S9pwPsSO
みゆきさんがミニスカ穿くと痴女に見える不思議!
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/25(月) 15:10:47.07 ID:d3bH82SO
−遭遇−

ひより「あ、かがみ先輩。こんにちはっス」
かがみ「こんにちは…そっちの人ははじめましてかしら?」
いずみ「あ、はい。田村さんのクラスメイトで若瀬いずみです」
かがみ「…いずみ…なんかそそる名前ね…」
いずみ「そそっ!?」
ひより「委員長にげてーっ!」
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/26(火) 01:15:16.75 ID:F00OKgDO
>>34
しかしまわりこまれてしまった!

いずみ「ひぃっ!」
かがみ「いずみいずみいずみいずみ…こなたこなたこなたこなた…ハァハァ」
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/01/26(火) 11:22:47.27 ID:UtCS5wAO
>>35
だが、その時である!!
ひより「かがみ先輩×委員長かぁ…」
いずみ「田村さん?」
ひより「…そのネタ、いっただきー!!」キラーン
いずみ「ちょっ…田村さん!?」
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/26(火) 12:17:29.42 ID:eAf5wISO
こなた「第一回説得力の無い宣言大会ー!」
みゆき「説得力の無い宣言…ですか」
つかさ「難しいのどうなのか分からないね…」
かがみ「…こなた…あんたがわたしに何を言わせたいのか、分かる気がするわ…」
こなた「さー、なんのことやらー…ま、とりあえず一番手の方どうぞ!」

そうじろう「明日からロリコンやめる」

みゆき「…えーっと…」
かがみ「…何この異様な説得力のなさは…」
つかさ「…勝てる気しないよ…」
こなた「…お父さんぱねぇ…」
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/26(火) 22:50:09.85 ID:hgTk2rc0
久しぶりに投下します。42レスほど使います。
時間がかかると思いますがお付き合い下さい。
42レスに見合うような内容でないかもしれませんがよろしくです。
39 :つかさのネタノート 1 [saga]:2010/01/26(火) 22:51:53.59 ID:hgTk2rc0
ひより「うーん」
一言唸る。・・・ネタが出ない。気分転換でお風呂に入ったり、
運動もしてもみた。空しく時間ばかりが過ぎていく。今夜も徹夜かな・・・。

ゆたか「おなよう、田村さん・・・どうしたの、顔色悪いよ」
小早川さんにそう言われるとは・・・
ひより「いやー、徹夜でネタ考えたんだけど、全然浮かばなくて・・・」
ゆたか「大変だね、私で何か手伝えることあるかな」
手伝える事?・・・何かどこかで聞いたことがあるような・・・なんだろ
ひより「これは自分との闘い・・・人からどうこうされても・・・」
ゆたか「そうだよね、余計なこと言っちゃったね」
・・・っとは言っても小早川さんと岩崎さんにはいつもお世話になっちゃってる。
今回も二人のネタで行くしかないのかな・・・。
そんな話をしていると岩崎さんが教室に入ってきた。
みなみ「おはよう・・・田村さん、ゆたか」
ひより・ゆたか「おはよう」
みなみ「田村さん、顔色悪い、保健室へ・・・」
ひより「いや、大丈夫、昨夜徹夜しから」
ゆたか「漫画のネタを考えてだって」
みなみ「そう・・・私は力になれそうにない」
ひより「二人とも、もう気にしないで」
私は話題を変えようとした。
みなみ「ここ最近、何か物足りないさを感じる・・・何だろう」
突然岩崎さんが話し出した。自分から話し始めることは滅多にないのに。私は驚いて岩崎さんの顔を見た。
ゆたか「みなみちゃんもそう思うの?、私も最近何か物足りなさを感じて」
小早川さんまでもが同じ事を言い始めた。シンクロにしては出来すぎてる。
ひより「物足りない、って何が」
ゆたか「そう言われると・・・何だろう、みなみちゃん分かる」
みなみ「私も漠然としているだけで、分からない」
二人は見合ったまま首をかしげた。
ゆたか「田村さんは何も感じない」
ひより「何も感じないけどね」
ゆたか「そういえばこなたお姉ちゃんも昨日同じような事言ってた」
ひより「泉先輩も?、それはきっとそろそろ卒業が近いからじゃないの」
私の言葉に二人は納得しないような表情をした。そこにチャイムが鳴り、先生も入ってきた。
ここで話は途切れてしまった。この話は少し興味があったけどそれ以降放課後までこの話は話題にならなかった。
40 :つかさのネタノート 2 [saga]:2010/01/26(火) 22:53:23.14 ID:hgTk2rc0
 放課後、部室に着くと先輩が私を睨みつけて迎えた。
こ う「ひよりん、部誌の原稿はもうできた」
この言葉に私の身は凍りついた。
こ う「その表情だとまだみたいね」
ひより「昨夜徹夜したけど・・・だめだったっス」
先輩は呆れた顔をした。
こ う「もう締め切り近い、分かってるでしょうに・・・」
先輩のお小言が始まった。しばらく黙って落ち着くのを待つしかなった。しばらくすると言い疲れたのか、先輩は一息ついて席に座った。
こ う「いっその事、以前言ってたネタ帳使ったらどうなの」
ひより「ネタ帳?」
こ う「・・・以前言ってなかったっけ、先輩からネタ帳もらったって・・・」
ひより「先輩から・・ネタ帳?・・・泉先輩っスか?」
こ う「名前は聞いてないから知らないねぇ、あれ、気のせいだった?、みかんで手が黄色くなるのとか言ってたでしょ」
なんの事だかさっぱり分からない。先輩と言えば八坂先輩と泉先輩くらいしか思い当たらない。
こ う「まあいい、明日までに原案だけでも出しなさいよ」

 結局、部活が終わっても原案すら提案できなかった。もう一晩徹夜するしかない。悪夢だ。
帰り道ふと思い出した。先輩のネタ帳の話。泉先輩からそんなノートをもらった覚えもない。それに、にそんなノートがあったらとっくに使っている。
先輩の勘違いだ。今の私にこんな事を考えている余裕はない。家路を急いだ。

 家に着くなり自室の机に向かって原案を考える・・・思いつかない。夕食も食べずに考えた。だめだ。
こうゆう時は漫画を呼んでインスピレーションを膨らますしかない。本棚の漫画に手をかけた時だった。
一冊のノートが本棚からこぼれ落ちた。拾って表紙を見た。

『つかさのネタノート』
41 :つかさのネタノート 3 [saga]:2010/01/26(火) 22:54:53.65 ID:hgTk2rc0
 タイトルはそう書いてあった。つかさのネタ帳・・・つかさって誰だ、まったく覚えがない。ノートを広げてみた。いつこんなノートを誰から貰ったのだろうか。
先輩の言っていたノートってこの事を言っていたのだろうか。
つかさ・・・聞いたこと無いし会ったこともない・・・更にノートをめくっていった。
・・・つかさ・・・何か引っかかる。今朝の岩崎さん達の会話を思い出す。そういえば何かが足りない。何だろう。
私は考えた。つかさ・・・つかさ・・・柊・・・つかさ・・・ん?
柊つかさ・・・つかさ先輩。確か泉先輩のクラスメイト。そして、お姉さんのかがみ先輩・・・高良先輩・・・
なんてことだ、今までの私の記憶につかさ先輩が居なかった。今までとは違う記憶が私の脳裏に浮かんだ。三年は泉先輩以外赤の他人。

 その時私はとんでもない事になっていることに気が付いた。
人が一人完全に忘れ去られている。その存在すら忘れられている。まさか・・・最後につかさ先輩に会った時の事を思い出した。

 数ヶ月前の事だった。小早川さんの家、つまり泉先輩の家に遊びに行った。その後につかさ先輩も遊びに来たんだた。遊びだったかな・・・よく覚えていない。
しかし、小早川さんも泉先輩も丁度買い物に行っていておじさんに居間で待つように言われたのだった。
そこで二人で何気なくした会話・・・
つかさ「最近は漫画の調子はいいの?」
ひより「・・・今回は順調に進んでます」
こう言う以外に選択肢はなかった。ネタ切れなんて言ってつかさ先輩のネタを使わされたら・・・。
つかさ「私のネタ、使ってもいいからね」
つかさ先輩は私の手に持っているノートを見た。
つかさ「嬉しい、私のノート使ってくれてたんだね」
あの時、持ってきたノートは自分のネタ帳のはずだった。暇対策でネタを考えていた時に丁度つかさ先輩がきたんだった。
ひより「これは・・・参考資料に・・・」
つかさ「ひとつネタ思いついたんだけど」
ひより「何ですか」
つかさ「もし、誰か突然居なくなったらどうなるだろうって」
ひより「えっ?」
つかさ「ネタにならないかな、例えば・・・私が突然居なくなるの、そしてそれを誰も気が付かない」
つかさ先輩はノートを取り、書き出した。
ひより「あまりに唐突で、何も思い浮かびません」
つかさ「そっか、唐突か・・・私ってお姉ちゃんの足ばっかり引っ張ってるし、居ても居なくてもあまり変わらないような気がして」
ひより「考えすぎのような気が、私も兄がいますけど、兄妹、姉妹ってそんなものかもしれない・・・」
つかさ先輩の手が止まった。
つかさ「そっか、考えすぎだよね」
つかさ先輩は私にノートを返した。
つかさ「でも一度試してみたい、私が居なくなった世界はどうなってるか、今とそんなに変わらないような気がする」
ひより「平行世界ですか、人一人居なくなると大きく世界は変わるって聞きますけど」
つかさ「ひよりちゃん、もし、居なくなっても、私の事、思い出してね」
ひより「つかさ先輩が居なくなったらすぐに分かりますよ、私的には存在感ありますよ、かなり」
つかさ「そう言ってもらえると嬉しいな」

 この会話の後どのくらいしたかな泉先輩と小早川さんが帰ってきて・・・あれ?
そういえばあの後のつかさ先輩を知らない。それどころかみんなつかさ先輩が居たこと自体を忘れている。
まさか、つかさ先輩の言った通りの事が起きてしまった。そう考えるしかない。このノートもしかして。
ノートを見回した・・・値札の跡が着いている。どこにでも売っている大学ノート。
ノートが原因かと思ったけど違うようだ。つかさ先輩が書いた『私が居なかったら』の字を消しゴムで消そうとした。
消えない。どう見ても鉛筆で書かれているのに。やっぱりこのノートが怪しい。
私の知る限りこういった呪いの類は本を燃やせば解ける。燃やしてしまおうか・・・いや、待て。
燃やしてしまってもし解き方が違ってたら、永遠につかさ先輩は戻って来れない。どうする。
そういえば・・・先輩はネタ帳の存在を覚えていた。そうかあのネタ帳がつかさ先輩の物って知らないから記憶が消えなかったのか・・・
数ヶ月も忘れていたなんて。つかさ先輩との会話で言ってた事が恥ずかしい。とりあえずノートを燃やすのは止めよう。いつでも出来る。
でも何で私だけつかさ先輩の事を思い出せたんだろ?。
42 :つかさのネタノート 4 [saga]:2010/01/26(火) 22:56:13.66 ID:hgTk2rc0
 自分の中で想像がどんどん膨らんでいくのを感じた。部誌の締め切りの事を忘れつかさ先輩の呪いの解き方を永遠と考えていた。
とりあえず朝になったら小早川さんと岩崎さんにこの事を話そう。まずはそれからだ。気が付くと窓が明るい。朝が来てしまった。

 学校に着くと早速小早川さんと岩崎さんにつかさ先輩の事を話した。
ゆたか「つかさ・・・先輩?」
みなみ「柊つかさ?」
ひより「そう、泉先輩と同じクラスの」
二人は見合って首をかしげた。
ひより「昨日、何か物足りないっていってたじゃん、きっとつかさ先輩のことだよ」
ゆたか「つかささん、聞いたこともないし、お姉ちゃんにそんな名前の友達居たなんて聞いてないよ」
ひより「ほら、双子で違うクラスにかがみ先輩も居るでしょ」
みなみ「かがみ・・・先輩?」
二人はまた見合って首をかしげた。かがみ先輩も知らない。何で?・・・そうか、今はつかさ先輩居ない事になってたんだ。
泉先輩とかがみ先輩は三年間同じクラスになったことがない。つかさ先輩が居ないから出会う接点がないんだ。
ゆたか「んー、いくら思い出しても柊つかささんって人思い浮かばない」
みなみ「私も」
二人はまったく思い出せない様、名前を出せば思い出せると思ったのに。これじゃつかさ先輩は私の想像だけの人物になってしまう。
つかさ先輩がリボンをつけていた事、料理が得意な事等、思い当たる特徴を言ってみたが効果はなかった。空しく授業の始まるチャイムが鳴った。

 一時限目の授業が終わる頃だった。突然二人は立ち上がった。
ゆたか・みなみ「つかさ先輩!」
叫んだ。クラスメイトの視線が二人に集中する。二人は周りを見渡し顔を赤らめた。
先生が二人を注意しようとした時、授業終了のチャイムが鳴った。

 チャイムが鳴り終わる前に二人は私の座る席に駆け寄ってきた。
ゆたか「つかさ先輩、思い出したよ、お姉ちゃんといつも一緒にいた」
みなみ「お姉さんのかがみ先輩といつも一緒に登校してた」
私は昨夜のノートの話をした。
ゆたか「そのノートの呪い?」
ひより「ノートの呪いか、つかさ先輩自身の想いがそうさせているのか、昨夜考えた限りだとこの二つしか思いつかない」
みなみ「これからどうする?」
ひより「ノートが原因なら燃やしちゃえばいいような気がするけど、つかさ先輩が原因なら・・・それに関係する人の記憶を蘇らせばいいような気がする」
ゆたか「つまり、お姉ちゃん、高良さん、かがみ先輩の記憶を?」
私は頷いた。
ひより「とりあえずお昼、泉先輩のクラスに行ってみようと思うけど・・・」
ゆたか「あっ!、お姉ちゃん今日お弁当忘れててお姉ちゃんに渡そうと思ってたんだ」
みなみ「私も行く、みゆきさんならきっと力になってくれる」

 お昼休み、私達三人は泉先輩のクラス三年B組に向かった。
教室に着き、中を覗いてみて私達は顔を見合わせた。泉先輩と高良先輩はそれぞれ自分の机でお昼ご飯を食べていた。
ゆたか「あれ、お姉ちゃんと高良先輩・・・一緒にお昼食べてない、それにかがみ先輩は?」
ひより「つかさ先輩を思い出す前、どうだった?」
ゆたか「・・・お姉ちゃん高良先輩の話したことない・・・かがみ先輩も家に遊びに来たことない・・・」
泉先輩は小早川さんに気付いた。それとほぼ同じく高良先輩は岩崎さんに気付いて教室の入り口に来てくれた。
ゆたか「お姉ちゃん、ごめんなさいお弁当持ってきたんだけど・・・お昼前に渡せなくて」
こなた「忘れたの私だし、それより三人も来てどうかしたの」
みゆき「みなみさん、何か御用ですか」
みなみ「ここでは話せないので、お昼食べ終わったら屋上へ」
ゆたか「お姉ちゃんも、いい?」
二人は不思議そうな顔をして了解した。
43 :つかさのネタノート 5 [saga]:2010/01/26(火) 22:57:41.52 ID:hgTk2rc0
 屋上へ向かう途中隣のクラスの三年C組を通ったので何気に中を覗いた。かがみ先輩が居た。クラスの友達と楽しそうにお昼を食べていた。
かがみ先輩のトレードマーク、ツインテールをしていない。長い髪の毛をそのまま下ろしていた。
かがみ先輩と話している友達は・・・峰岸先輩と日下部先輩。この様子だと泉先輩と高良先輩はこの二人とも会っていない。
本当はかがみ先輩達も呼びたかったけど、私達の事はまったく知らない他人、呼び出方すら分からない。今は泉先輩と高良先輩の事に集中しよう。

 屋上に着くと私達はそこでお昼ご飯を食べた。
ゆたか「私、屋上に来る途中かがみ先輩を見かけたけど、なんか感じが違ってた」
みなみ「私も見た」
ひより「もしかしたら、かがみ先輩が一番難しいかも、どうやってつかさ先輩の事を伝えるのか思い浮かばない・・・かがみ先輩実はあなたに双子の妹が居ます・・・なんて言えない」
突然会話が止まってしまった。沈黙がしばらく続いた。

 ほどなくして泉先輩と高良先輩はほぼ同時に屋上に来てくれた。私は二人につかさ先輩の事を話した。二人はしばらく黙っていた。
こなた「私のクラス、席が一つ空いてたんだよね、私ずーと不思議に思ってた」
ゆたか「それだけ?」
こなた「それだけって?」
ゆたか「お姉ちゃん、つかさ先輩とは親友だよ、お姉ちゃんのことをこなちゃんって言ってた、高良先輩のことをゆきちゃんって言ってった」
泉先輩は顔を赤らめた。
こなた「こな・・・、恥ずかしいな、そんな風に言われるの・・・、柊つかさ・・・思い出せない、ってか記憶にないよ」
ひより「高良先輩はどうです?、何か感じますか」
高良先輩は目を閉じて瞑想でもするように考えていた。
みゆき「ゆきちゃん・・・何か懐かしい響きですね」
みなみ「思い出しそう?」
みゆき「いいえ、残念ながら全く」
岩崎さんが悲しい顔をした時だった。
みゆき「柊つかささん、私と泉さんととても親しい関係だったとすると、私と泉さんも今より親しい関係になっていたと思いますが」
ひより「お昼、一緒に食べていました」
こなた「私と高良さんが?」
みゆき「柊つかささんが居て私と泉さんが親しく成りえた、縁とはそんなものです、もしかしたら私達はその人の縁が消えた為に失った縁があるかもしれませんね」
さすが高良先輩。私は感心してしまった。
ひより「隣りのクラスからもお昼を食べに来た人が居たんだけど・・・」
みゆき「・・・もしかして柊かがみさんですか」
ひより「そ、その通りです、記憶蘇ったのですか」
こなた「うわ、成績学年トップの・・・信じられない」
みゆき「柊つかささんは相変わらず知りません、苗字が同じ人が居たので言ってみたのですが・・・双子の姉妹でよろしいのでしょうか」
ひより「そうです、そしてそのかがみ先輩のクラスの友達とも交流がありました」
みゆき「興味深いですね、貴方方の記憶にある柊つかささんは確かに実在していたようですね、しかし、私を含め全ての人がその存在を忘れてしまっている、
    田村さん・・・でしたね?、どうして柊つかささんの存在を知ったのですか」

 そっか、高良先輩は私と小早川さん初対面。泉先輩と高良先輩に交流がないから岩崎さん以外は知らないんだな。岩崎さんが来てくれて助かった。
私は数ヶ月前の出来事とノートの話をした。
みなみ「不思議な話・・・」
ゆたか「それ、覚えてる、つかさ先輩と田村さんが来るのが重なった日だよね、お姉ちゃんと一緒に買い物に行った時だ」
こなた「・・・そんなことあったっけ???」
泉先輩は腕を組んで考え込んだ。
みゆき「・・・柊つかささんの行為から察すると、柊かがみさんと何かあったのではないでしょうか」
ひより「何かあった?、何でしょう?」
みゆき「そこまでは分かりませんが、私は喧嘩だったと思います」
確かに、自分が居なくなったらなんて考えるのはそんな時くらい、ますます高良先輩に感心してしまった。
44 :つかさのネタノート 6 [saga]:2010/01/26(火) 22:58:54.87 ID:hgTk2rc0
 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
みなみ「時間・・・」
ひより「もう時間、高良先輩、泉先輩、来てくれてありがとうございました」
みゆき「いいえ、何も思い出せなくてすみませんでした」
こなた「んー、全く思い出せない」
私達は屋上を後にしようとした。
こなた「あ、ひよりん、その柊つかさってどんな人なの」
私、小早川さん、岩崎さん、三人で顔を見合わせた。
ひより「えーと、なんて言ったらいいのか、料理が得意で・・・」
私達はまごついてしまった。
みゆき「とても素敵な方だと思います、こんなに親身なっている人が三人もいらして・・・それに、柊さんが私のクラスにお昼を食べに来るなんて・・・」
ひより「かがみ先輩と何かあるのですか?」
みゆき「いいえ、気にしないで下さい」
みなみ「行こう、授業が始まる」
私達は屋上を後にした。

 教室へ戻りながら私達は話した。
ひより「岩崎さんが来てくれたのは正解だったね、私じゃ高良先輩は呼べなかったかもしれない」
みなみ「いいえ、私は何も・・・つかさ先輩・・・戻ってこれるのだろうか」
ひより「分からない、でも、とりあえずつかさ先輩と親しい人の記憶を戻していけば何か分かるかもしれない」
ゆたか「それしかないね」
教室に戻ると授業の始まるチャイムが鳴った。

 放課後、私は部室に入った、先輩と目が合ったとき、部誌の原案の事を思い出した・・・
こ う「ひより、原案はもう出来てるでしょうね」
昨日よりも口調が荒い。つかさ先輩の事でそんな事を考えてる余裕はなかった。
ひより「昨夜も徹夜した・・・っス」
こ う「どうする、今回は部誌諦めるかな・・・ん?、ひより、その手に持ってるノートは?」
ひより「これは・・・」
つかさ先輩のネタ帳、私はそれを持っていた。
こ う「なんだ、ネタ帳じゃない、見せなさい」
ひより「いや、こっ、これは・・・」
隠す暇もなく取られてしまった。先輩はノートをめくる。しばらくするとページをめくる手が止まった。
こ う「・・・いいネタだ、これいいじゃない」
ひより「へ?」
このノートでそんな事を言われるとは思わなかった。
こ う「この最後の項・・・忘れ去られた少女の物語」
最後の項、つかさ先輩の書いた『私が居なかったら』の後に私が今までの経過を書いてまとめておいた。それを読んで言っているのかな。
こ う「・・・なんだ途中じゃないか・・・でもなんかインスピレーションが湧いてきた」
ひより「それは、原案じゃなくて・・・」
いや、本当の事と言っても信じてくれない、ってか先輩は私の話を聞いてない。ノートを目を輝かせて見ている。
こ う「どうだろ、ひよりんのこのネタをお題に私がストーリ作る・・・合作という事で」
ひより「私は・・・構わないっス・・・」
こ う「んー、このストーリだったら漫画より小説が良さそうだ、・・・長編になりそう、ひよりの枠がなくなるかも」
お、これは都合がいいかもしれない。このノートがこんな所で役に立つとは。
こ う「挿絵をお願いするかも・・・ノートはもういいや、そこに置いておくよ」
この言葉を最後に先輩は机に向かって考え始めてしまった。私も机に向かった。挿絵か・・・どうせならつかさ先輩をモデルにするかな。
私はつかさ先輩の姿を思い出しながら何枚かの絵を描いた。写真でもあればもっといいのが描けたかもしれない。
下絵を描き終わった頃、終業時間を告げるチャイムが鳴った。
45 :つかさのネタノート 7 [saga]:2010/01/26(火) 23:00:42.27 ID:hgTk2rc0
 それから一週間が経った朝、教室に入ると岩崎さんと小早川さんが私の所に寄ってきた。
ゆたか「田村さん、高良先輩、つかさ先輩の事思い出したって」
あの時の様子だと思い出すのは時間の問題と思っていた。でも思い出すのに一週間もかかるなんて。
みなみ「お昼休み、図書室に来て欲しいって言っていた、もし持っていたらきていたらノートも一緒にと」
高良先輩になにかいい案でもあるのであろうか。なにか希望の光がさしてきたような気がした。

 お昼休み、私達は図書室に向かった。図書室に入ると、高良先輩と泉先輩が親しそうに会話をしていた。
ひより「お待たせしました、泉先輩も・・・先輩も記憶が戻ったのですか」
こなた「いやー私は、さっぱり、でもみゆきさんが来て欲しいって言うから」
ん?、泉先輩、高良先輩の事をみゆきさんって呼んでいる。この短期間に二人の関係はつかさ先輩の居た時と同じになってる。
みなみ「どうして記憶が戻ったのですか」
みゆき「昨日、私、眼鏡を壊してしまいまして、授業の殆どノートが取れなかったのです、泉さんにノートを借りたのですが、
    何故か同じ状況、もう一人誰かから借りた事があったような気がしていたら・・・思い出しました、ところで早速ですが
    ノートはお持ちですか?」
私は持ってきたノートを高良先輩に渡した。高良先輩は最初のページをめくって見た。
みゆき「やはり、この筆跡はつかささんのですね、丁寧で綺麗な字・・・」
懐かしそうにそう言うと高良先輩はノートを泉先輩に渡した。
みゆき「これがつかささんの字です、何か思い出しませんか」
こなた「確かに丁寧な字だね、私とは大違いだ・・・・」
泉先輩はノートを立てにしたり横にしたり見ていた。
こなた「・・・何も思い出せない・・・私は柊つかさに対してそんなに思い出がないのかな」
泉先輩は高良先輩にノートを渡した。
みゆき「そんなことありません、気長に思い出して下さい、所で皆さんをここに呼んだのは、かがみさんの事です」
ゆたか「かがみ先輩、この前・・・随分感じが違っていたけど」
みゆき「そうです、学級委員の会議で何度も会っていますけど・・・思い出のかがみさんとはまるで別人です」
こなた「その人、確か柊つかさの双子の姉妹って言ってたよね、姉なの妹なの?」
みゆき「かがみさんが姉ですね・・・」
こなた「ふーん」
泉先輩はあまり興味なさげに気のない声を出した。
みゆき「実は今朝、私はかがみさんに放課後、屋上に来るように言ってあるのです」
ひより「つかさ先輩の事を話すのですか」
みゆき「そうです」
私はかがみ先輩につかさ先輩の事を話す自信がない。なんて言い出していいのかも分からない。
ひより「私・・・話す自信が・・・」
みゆき「かがみさんには私から話します、今の状態で一番かがみさんの事を知っているのは私です、田村さんは私の隣に」
ゆたか「私達はどうすればいいですか」
みゆき「あまり大勢ですと不審に思われるかもしれません、屋上の給水タンクの陰に隠れて下さい、泉さんも」
こなた「私も行くの?」
泉先輩は驚いた顔をした。
こなた「あの人苦手・・・合同の体育の授業でもなにかとムキになってくるし・・・この前の百メートル走の時だって・・・」
みゆき「私とかがみさんの会話から記憶が蘇るかもしれません、今はあらゆる可能性を試すしかありません」
高良先輩・・・何か危機迫るような迫力を感じた。かがみ先輩と話すのはそんなに大変な事なのだろうか。
俗に言うツンデレ、メリハリがあったには確かだけど、いつもは笑顔が絶えない人だった。
このつかさ先輩の居ない世界でかがみ先輩がどんな別人になったのか、興味が湧いてきた。
 
 放課後、約束に時間より早く屋上に向かうとみんなは既にスタンバイ状態だった。高良先輩が私に気付くと、
みゆき「田村さん、私、一人でかがみさんと話したいので、田村さんも隠れていただけますか」
ひより「別に私は、それでもいいですけど」
私は泉先輩達が居る給水タンクの陰に移動した。
46 :つかさのネタノート 8 [saga]:2010/01/26(火) 23:01:56.07 ID:hgTk2rc0
 かがみ先輩は時間通り現われた。この前見たのと同じ、ツインテールをしていない。高良先輩が言うより早くかがみ先輩が切り出した。
かがみ「高良さん、私を呼ぶなんて珍しいわね、しかもこんな所に、よほど周りに知られたくないことかしら」
かがみ先輩はすこし不機嫌そうだ。きつい言い方。
みゆき「すみません、ここにお連れしたのは、御察しの通りです」
高良先輩は深々と頭を下げた、かがみ先輩は少し口調を和らげて話す。
かがみ「何かしら、委員会の事、それとも他に何か?」
みゆき「・・・約三ヶ月前の事です、私達に重大な出来事が起きました」
かがみ「重大なこと?」
かがみ先輩は首を傾げた。高良先輩はさらに続ける。
みゆき「何かが抜けたような、喪失感、私はそんな気持ちに・・・」
抽象的な言い方・・・そうか、高良先輩は誘導尋問みたいにつかさ先輩の記憶を引き出そうとしている。直接言えば現実的なかがみ先輩のこと、
現実離れした話を否定するに違いない。すごい、高良先輩はそこまで考えているのか。
かがみ「喪失感・・・」
かがみ先輩は腕を組み、やや上を見上げ考え込んだ。
みゆき「三ヶ月前、私と柊さんの間に大きな溝が出来てしまいました・・・」
この言葉にかがみ先輩は反応した。
かがみ「・・・思い出したわ、三ヶ月前、確かに高良さんと大きな溝ができたわね」
みゆき「思い出しまたか?」
かがみ「三ヶ月前、成績順位が私と高良さんとが入れ替わった」
みゆき「えっ?」
かがみ「喪失感・・・確かに・・・高良さん、私に負けたのがよほど悔しかった、そういうことね」
みゆき「私はそんな事は・・・」
かがみ「こんな所に呼び出して、そんな事を言うために、大人しそうに見えて侮れないわね」
うわ、これは・・・話が違う方向へ、高良先輩はいきなりシドロモドロになってしまった。そこにかがみ先輩は追い討ちをかける。
かがみ「私もこの二年間、あなたに負けっぱなしで喪失感を味わったわ、次のテストだって負けない、宣戦布告として受け取るわよ」
かがみ先輩と高良先輩いつも成績は学年トップクラス、ライバル関係だったとしてもまったく違和感ない。むしろこれが自然なんだろう。
つかさ先輩はこの二人をライバルではなく親友にしてまったのか。この状況を見てそう確信した。
かがみ「果し状は受け取ったわ、お互い悔いのないようにしたいわね」
かがみ先輩は高良先輩に背を向け屋上を出ようとした。
みゆき「待ってください柊さん」
かがみ先輩は立ち止まり振り返った。
かがみ「まだ何か?、もう話すことはないわよ」
みゆき「私の言い方が抽象的で誤解を生んでしまいました、私は柊さんの記憶を取り戻そうと、その為に・・・」
かがみ「私の記憶・・・そっちの方が分からない、私の何を知ってるのよ」
高良先輩は目を閉じ、両手を胸元で組んで一度深呼吸した。祈っているように見えた。そして目を開けたと同時に・・・
みゆき「柊つかさ・・・この名前を聞いて何か感じませんか」
かがみ「柊・・・つかさ・・・苗字が私と同じ、そんな子聞いたことない」
みゆき「目を閉じて、深く、深く、思い出して下さい、柊さん、貴方の双子の妹です、三ヶ月前までこの学校に居ました、私のクラスメイトです」
かがみ「・・・っぷ・・・ふふふ、」
かがみ先輩は吹き出して笑った。そして腹をかかえて大笑いした。
かがみ「何を言い出すかと思えば、私には二人の姉がいるけど妹なんか居ないわよ」
みゆき「不思議な事が起きました、私の記憶には、柊つかさ、が居るのです、その方は私の親友でした・・・そして柊さん、貴方はその妹とお昼を食べに
    度々私の教室に訪れています、そして、私たちと一緒に食事を・・・」
かがみ「・・・高良さん、大丈夫?、そこまでいくと妄想を通り越して幻覚でもみてるんじゃない、それに私はね例え妹が居ても
    高良さんと一緒になんか食事はしないわよ、さっきの会話で分かるでしょうに」
みゆき「これはつかささんが書いたノートです、これが唯一残されたつかささんの居た証拠です」
高良さんがノートを差し出すと黙ってかがみ先輩は受け取った。そしてパラパラとめくって中をみた。
その間高良さんはつかさ先輩が居なくなった経緯を話した。
47 :つかさのネタノート 9 [saga]:2010/01/26(火) 23:03:35.00 ID:hgTk2rc0
かがみ「取って付けたような話じゃないことだけは認めてあげる、高良さん、文芸部にでも入れば、きっと賞が取れるわよ」
かがみ先輩は話をまともに聞いてない。棒読み。感情が入っていない。
みゆき「かがみさん、一年の頃からつかささんといつも一緒でした、登校も、下校も、いつも二人とも笑顔で私達に・・・楽しい日々でした、
    そして、かがみさん、泉さんと親友になられて・・・」
高良先輩は切々とつかさ先輩との思い出を語りだした。よく見ると目が潤んでいる。いや、目から涙が出ているのが分かった。
つかさ先輩を助けたい。高良先輩のこの気持ちが私にも伝わってくる。高良先輩に比べれば私はゲーム感覚であった。今になって事の重大性に気付いた。
私、泉さん、小早川さん、岩崎さん、ただ黙って二人を眺めていた。私も高良先輩と同じくつかさ先輩の事を知っているのでもどかしい気持ちになった。

かがみ「もうそんな作り話聞きたくない」
強い口調で高良先輩を止めた。
かがみ「宣戦布告したと思えば、今度は泣き落とし、高良さん、貴方が分からなくなったわ、それに、泉さん・・・
    あの人も高良さんと同じく友達になれるとは思わない、 もういいでしょ、私はもう帰るわよ」
再びかがみ先輩は屋上を出ようとした。
みゆき「かがみさん」
かがみ「そんな呼び方止めて、高良さんらしくない、・・・・仮に、その話が本当だとして私にどうしろと言うの」
高良先輩は何も言わなかった。
かがみ「私のクラスには中学時代からの友人がいる、家族も父と母、姉が二人いる、もうそれで私は満足、・・・私の記憶をどうこうして何のつもりなの、
    この世界に居ない人間をどうするつもりなのよ」
高良先輩は何も言わない。多分言えない。私にも言い返す言葉が見つからなかった。
かがみ「高良さん、私達にはそんな事を考えている時間はないはず、もうすぐ受験、現実は厳しいわよ」
高良先輩はひざを落としてしまった。かがみ先輩はそんな高良先輩を見て気の毒に思ったのか肩に手をかけて、ノートを返した。
そして・・・そのまま屋上を後にした。

 かがみ先輩が視界から消えると私達は一斉に高良先輩に駆け寄った。
みゆき「私は何もできませんでした、私一人でだなんて、あまりにも無謀でした」
ひより「私が側にいても、ただ傍観していただけでした」
高良先輩は私にノートを渡した。
みなみ「そんな事は、きっとかがみ先輩の心に残ったと思います」
こなた「みゆきさん・・・」
ゆたか「高良先輩のつかささんへの思い、きっとかがみ先輩に届いたと思います」
みゆき「私は、つかささんだけでなく、かがみさんまで失ってしまうのですね」
高良先輩の涙は止まっていなかった。私達の言葉はなんの慰めになっていなかった。
48 :つかさのネタノート 10 [saga]:2010/01/26(火) 23:04:41.38 ID:hgTk2rc0
 膝をを落とした高良先輩を泉先輩が起こしてあげた。
ゆたか「かがみ先輩・・・確かに私の知っているかがみ先輩とは違う気がする」
みなみ「私にはそうは思わない」
ゆたか「そう?」
みなみ「つかさ先輩の話の反応は、かがみ先輩でなくても似たよなものになる、むしろ私達の反応の方が稀」
ゆたか「・・・でも、私は田村さんに言われたとき、自然に受け入れられた」
みなみ「それは、田村さんが私達と親しいから、高良先輩とかがみ先輩は委員会が同じだけで、それほど交流してない」
ゆたか「それじゃかがみ先輩と親しい人から言ってもらえれば少しは違うのかな」
みなみ「親しい人・・・峰岸先輩、日下部先輩、あとはかがみ先輩のお姉さん、ご両親・・・」
かがみ先輩の家族は論外、峰岸先輩、日下部先輩、つかさ先輩の居なくなったこの世界では私達に何の接点もない、おそらく泉先輩、高良先輩も、
ひより「さっきの岩崎さんの話を参考にすると、それだとかがみ先輩より話し辛いくない?」
行き詰ってしまった。何をしていいのか分からない。
こなた「柊さん・・・本当に私と親友だったの」
私達は泉先輩の方向を向いた。
こなた「みゆきさんとの会話で、私とは友達になれないって・・・」
ゆたか「それは・・・本当のお姉ちゃんを知らないからそう言ってる・・・と思う」
泉先輩が少し悲しそうに見える、ああ言われれば誰でもそうなるか。
こなた「柊さんじゃないけど、私も記憶が戻らなくてもいいと思ってきた・・・」
ゆたか「・・・え、どうして、つかさ先輩も、かがみ先輩も、いつもお姉ちゃんと一緒に居たんだよ」
こなた「それを知らない・・・でもそれを知ったらみゆきさんと同じ苦しみを受けることになるよ、記憶と違う現実なんて・・・」
高良先輩とかがみ先輩の会話は泉先輩にとっては逆効果だったみたい。このまま終わってしまいそう。
みゆき「私はそうは思いません」
高良先輩はもう涙は引いていた。
みゆき「泉さん、私と親しくなったのもつかささんが居たからです、泉と私を会わせてくれた、そう思いませんか」
泉さんは高良先輩の方を見ている。
みゆき「かがみさんも、仮に本当だとして・・・と言ってくれました、そう考えてくれたのです、全く否定していません、まだ望みはあります」
こなた「私にはそんな考えできないよ、聖人君子みたいに・・・」

 秋も深まる季節、日が落ちるのが早い、外はすっかり夕焼けになっていた。高良先輩の提案で最低週に一回は会うことになった。
とりあえず来週会う日を決めると私達は屋上を後にして教室に戻った。そこで泉先輩と高良先輩とは別れた。

 教室で帰り支度をする。
ゆたか「田村さん、今日は部活大丈夫だったの」
ひより「今日は大丈夫、だから高良先輩に同行できた」
ゆたか「それにしても、かがみ先輩・・・高良先輩をライバル・・・と言うより敵対視しているようにも見えたけど」
ひより「あそこまでとは・・・高良先輩も別人って言ったけど・・・お昼の高良先輩の危機迫るのを感じたけどこの事だったんだね」
ゆたか「でも、なんでそこまで変わっちゃったんだろ、高良先輩、お姉ちゃんはまったく同じなのに」
みなみ「かがみ先輩にとってつかさ先輩の存在が大きかった、かがみ先輩のライバルはつかさ先輩だったのかもしれない」
ゆたか「そうかな、あの二人、いつも一緒で仲良かったと思うけど」
みなみ「双子ならなおさら、周りの目もあるし、意識してしまう、でもつかさ先輩はあの性格だからかがみ先輩のライバル心を吸収してしまっていた」
ゆたか「岩崎さん、一人っ子なのによくそんな事が分かるね」
慕うように岩崎さんを見つめる小早川さん・・・この二人もまったく変わらない。そして、それを腐った目線で見ようとしている私も変わらない。
今はそんなことを考えている場合ではない。私は咳払いをした。
ひより「それより早く帰ろう、この時間になると部活が終わってバスが混むよ」
49 :つかさのネタノート 11 [saga]:2010/01/26(火) 23:06:01.42 ID:hgTk2rc0
私達は教室を後にした、帰りながら私達は話した。
みなみ「私は泉先輩が心配、別れ際もなにか元気がなかった」
ゆたか「そうだった、記憶なんか戻らなくていいなんて言ってたね」
ひより「まぁ、あの高良先輩を見たら誰でもそう思うよ」
ゆたか「帰ったらお姉ちゃん元気付けにつかさ先輩の話でもするよ」
ひより「あ、それはかえって逆効果かも、その話題は当分しない方がいいと思うよ、どうせ週一回は会うんだし」
ゆたか「そっか、知らない人の事を話されてもね・・・わかった」
駅で私達は別れた。


 知らない人か・・・自分の記憶とは違う現実、高良先輩とかがみ先輩との会話でそれを目の当たりにした。
帰路を歩いていくと見知らぬ人々とすれ違う。登校の時も同じ、今まで何人の人とすれ違っただろう。
一瞬で出会っては別れていく。この中で私を知っている人は、私が知っている人は何人居るだろうか。
知らない人から知ってる人になる切欠って何だろう、たまたま道を聞かれたりしたのが切欠になったり、
買い物に行くお店が偶然一緒だったりするけど・・・結局偶然か。岩崎さんや小早川さんと友達になれたのはたまたまクラスが一緒になっただけ・・・
いや、クラスが一緒になった人でも殆ど会話すらしない人だっている。
これが高良先輩が言ってた縁ってやつなのかな。例え同じ場所にいても知り合いになったりならなかったり、別に自分で選んでいるわけではないのに。
なにか不思議な気持ちになった。

 それから数日が過ぎた放課後だった。私は部室の扉を開けようとした時だった。後ろから私を呼ぶ声がした。
「田村さん・・・だよね」
聞き覚えのある声だった。振り向くと。そこには峰岸さんが立っていた。
ひより「峰岸・・・先輩」
その呼ぶと峰岸先輩はほっとした様子で私に話しかけてきた。
あやの「やっぱり、私の事知ってるでしょ」
ひより「・・・知っていると言えば知っていますけど・・・」
返答に困った。そんな私を見て峰岸先輩は私に雑誌を見せた。
ひより「これは・・・私の部でつくった雑誌・・・」
あやの「これ、書いたの貴方よね」
雑誌を開き私に見せた。それはこの前先輩に頼まれた挿絵だった。
あやの「もしかして、この絵の子、妹ちゃん・・・柊つかさじゃない」
驚いた。この絵を見て峰岸先輩はつかさ先輩の事を思い出したみたいだ。これは嬉しい。もしかしたら私達の事も思い出したかもしれない。
ひより「ここで話もなんですので、中にどうぞ」
私は部室に案内した。部室には誰も居なかった。
ひより「つかさ先輩の事を思い出したって事は、私の事も分かりますよね」
あやの「・・・泉ちゃんの従姉妹と同じクラスの、田村さん」
これは思ったより確かな記憶、私どころか泉先輩、小早川さんまでしっている。
あやの「私、何がなんだか分からなくて・・・柊ちゃんに聞くのも恥ずかしくて、この絵を描いた本人に聞くしかないと思って・・・」
ひより「いつ、思い出されたのですか」
あやの「昨日・・・この雑誌の小説と挿絵を見てるうちに・・・」
峰岸先輩がうちの部誌を読んでくれていたのは嬉しい誤算だ。先輩の小説の元ネタは今現実に起きていること、それに挿絵はつかさ先輩。
これなら思い出す人も居るかもしれない。私は峰岸さんに今までの経緯を話した。
50 :つかさのネタノート 12 [saga]:2010/01/26(火) 23:07:01.52 ID:hgTk2rc0
あやの「・・・それじゃもう既に、高良さんは・・・」
ひより「ええ、かがみ先輩にこの事は話しています、結果は散々たるものでした」
あやの「そういえば、ここ数日柊ちゃん元気なかったわね・・・」
そういえばこの人はかがみ先輩とは中学時代からの友達だった。聞いてみたいことがあった。
ひより「今のかがみ先輩って、峰岸先輩の記憶のかがみ先輩と違いますよね」
あやの「んー、私達には変わりなく接しているわね、確かに性格がきつくなった面もあったかもしれないわね」
意外な答えだった。もっとも誰でもあんな態度なら峰岸さんも友達にはなっていないか・・・。
ひより「峰岸先輩が居てくれると心強いです、かがみ先輩に話してくれると助かりますが」
あやの「高良さんでもダメだったのに・・・私じゃ力不足ね」
峰岸さんは俯いてしまった。私は話を変えた。
ひより「週一回、この事について話し合いをすることにしてるのですが、参加していただけますか、丁度明日の放課後がその日になります」
あやの「それなら是非、参加したい」
ひより「できればでいいのですが・・・もう一人のお友達・・・日下部先輩はどうでしょうか」
あやの「みさちゃん・・・みさちゃんは私から話しておくわ、来れるかどうか分からないけど、期待しないでね」
ひより「それじゃ、明日の放課後、自習室で」
あやの「分かったわ・・・妹ちゃん、助けられるといいわね」
そう言うと、部室を後にした。そこに入れ替わるように先輩が入ってきた。

こ う「ん、さっきの人誰だ」
ひより「三年C組の峰岸先輩っス」
こ う「ひよりん、意外と顔が広いね、てか、あの人うちの部誌持ってなかったか」
ひより「持っていました、それより部室を空けるなんて無用心っスよ、どこ行ってたんスか」
こ う「いやね、先日発行した部誌が意外と好評でね、再発行の手続きを先生としてたんだ」
私は机においてある部誌を手に取り開いて読んだ。
ひより「・・・この小説、途中でおわってるじゃないっスか、長編になるって息巻いていたじゃないですか」
こ う「・・・いやね、連載物にすればいいかなって・・・だから一緒に考えて」
ひより「私の時は助けてくれないのに・・・」
と言ってもこのおかげで峰岸先輩が力になってくれる。これはいい方向に向かっていくような、そんな気がした。
51 :つかさのネタノート 13 [saga]:2010/01/26(火) 23:08:19.71 ID:hgTk2rc0
 あくる日の放課後、すぐにでも自習室に向かいたかったが、先生に書類整理を頼まれたおかげで遅れて向かうことになった。
自習室に入ってみると、峰岸先輩は日下部先輩を連れてきてた。日下部先輩は私を見るなり懐かしそうに話してきた。
みさお「お、田村さんってこの人だったか、ちびっ子とよく話してるの見てたよ」
ひより「あの、もしかして日下部先輩の記憶・・・」
みさお「・・・柊の妹、あやのの持ってた雑誌の絵を見て思い出した、柊といつも一緒にいたっけな・・・その割りに私たちとはあまり話さなかったな」
みゆき「田村さん、あの挿絵の効果は絶大でした」
ひより「いや、別にこれを狙ったわけじゃなかったのですが・・・」
ゆたか「これであとはお姉ちゃんとかがみ先輩だけだよね」
みさお「しかし、なんだろ、一番最初に思い出してもよさそうな二人が残ったな」
ん、私は辺りを見回した、泉先輩の姿が見えない。
ひより「その泉先輩は・・・見当たらない」
ゆたか「お姉ちゃん・・・アルバイトがあるって・・・」
みゆき「私がいけなかったのです・・・」
みなみ「みゆきさんが悪いわけじゃない」
一気に雰囲気が暗くなった。
みさお「記憶が戻らないんじゃそんなもんだ、別に気にするこないんじゃない」
日下部先輩・・・軽く言っているけど的を得ている。確かに泉先輩、かがみ先輩・・つかさって名前を聞くだけで思い出しそうな気がする。
私達一年三人も思い出すのに一日かからなかった、峰岸先輩、日下部先輩もすぐに思い出した。そういえば、高良先輩は思い出すのに一週間掛かってる。なんでだろ?
でもそんな事はどうでもいい、これからどうするかが重要。
ひより「これから・・・どうしよう」
みさお「どうするもこうするも、柊の妹を元に戻す方法考えるしかないよな、でも・・・柊の妹が居ないだけでこんなになっちまうもんなのか」
みゆき「それが、出会い、と言うものです」
みさお「そうなのか」
みゆき「極端な例ですが、お父さん、お母さんが出会わなかったらどうなると思います」
みさお「・・・それりゃ、私はこの世にいない・・・な」
みゆき「出会いは良くも悪くも大なり小なり、人に影響を与えます、時には人の一生を左右するほどに、時には歴史まで大きく変わるほどに・・・」
みさお「わかった、わかった、スケールが大きすぎて・・・分かったよ、要は柊の妹がB組とC組の仲を繋いでたんだよな」
あやの「一年からでしょ、妹ちゃん、泉ちゃん達と三年同じクラスだわ」
みさお「そうだった・・・柊の陰で目立たなかったけど、今思うと結構存在感あるんだな」
しばらく沈黙が続いた。なかなかいい考えはないもの。私も含め皆考え込んでしまった。
まてよ、泉先輩の家でつかさ先輩に最後に会った時の事を思い出した。確かつかさ先輩は試してみたい・・・そう言ってノートに『私が居なかったら』と書いた。

ひより「これはつかさ先輩が自分を試すために仕掛けた呪いじゃないかなって思うのだけど」
皆の視線が私に集まる。更に話し続けた。
ひより「みゆき先輩が言われたように、あの日、かがみ先輩とつかさ先輩は喧嘩した、多分かがみ先輩からつかさ先輩を否定するような事を言われて、それなら
    自分自身が居なくなったらどうなるか見てみたいって願望がこの世界を生んだとしたら・・・」
みさお「姉妹喧嘩か・・・あの二人の仲の良さからすると想像できない」
あやの「仲が良いほど喧嘩する時は激しくなるね、考えられなくはない」
ゆたか「・・・それなら、もう充分つかさ先輩が必要な人って事は証明できてるんじゃないかな、高良先輩もそう思われるのでは?」
みゆき「そうですね、でもつかささんは私達にそれを求めているのではない」
みなみ「・・・かがみ先輩がそう思うのを望んでいる」
また沈黙が続いてしまった。
52 :つかさのネタノート 14 [saga]:2010/01/26(火) 23:09:19.03 ID:hgTk2rc0
日下部先輩が痺れを切らせて話した。
みさお「これで方向性はきまったな、柊の記憶を戻す、そうすれば柊の妹の存在がどれほどのものかって分かる、呪いが解けて柊の妹が復活・・・ってことかな」
ゆたか「でも、お姉ちゃんの記憶は・・・放っておいていいのかな」
ひより「泉先輩・・・今私達と一緒に行動しても辛いだけじゃないかな、つかさ先輩の事知らないから私達の話についていけないし、三年C組の事だって知らないでしょ」
ゆたか「・・・そっか、お姉ちゃんここに来なかった理由、今分かった・・・記憶が戻ったらなら先頭になって協力してくれるよね」
外からチャイムの音が聞こえる。終業の時間だ。
みさお「もうこんな時間か」
みゆき「方向性が決まっただけでも成果はありました、今度はどうやって二人の記憶を戻すか、それについて話しましょう」
私達は解散した。

 私は買い物があったので皆とは別行動する予定だったけど、高良先輩に呼び止められた。
ひより「何か?」
みゆき「あの雑誌の事で・・・」
ひより「雑誌・・・ああ、部誌のことっスか」
しまった。つい癖の『ス』を出してしまった。先輩以外では使わないようにしていたのだが・・・
みゆき「そうです、あの小説を載せたのは田村さんのご意思ですか」
ひより「い、いえ、あれは部長・・・八坂先輩にあのノートを見られてしまいまして・・・一応共同制作としているのですが・・・先輩がえらくこのネタを気に入りまして・・・」
まずい、高良先輩は相談無く載せた事を怒っているのだろうか。
みゆき「そうですか・・・」
高良先輩は目を閉じて何か考えている様子だった。
ひより「高良先輩、すみません、勝手に載せてしまって・・・止められませんでした」
みゆき「あっ、別に私はそれがいけないとは言っていません、むしろして頂いて結構です、私ではそこまで気が付きませんでした」
私はほっと胸をなでおろした。
みゆき「それで相談があるのです、その小説の結末についてなのですが」
ひより「結末・・・ですか」
みゆき「結末は、少女は結局助けることができなかった・・・と、して頂きたいのです」
私は驚いた、ハッピーエンドにした方がいいに決まっている。
ひより「悲話にしてしまうのですか・・・どうしてです」
即座に聞き返した。
みゆき「この小説、かがみさんにも読んで頂きたいからです、悲話にすればかがみさんの奥底にある記憶が蘇るかもしれない・・・」
ひより「逆療法ですか・・・私一人では決められないですけど・・・やってみます」
みゆき「ありがとうございます」
私は自習室を出ようとすると。
みゆき「あの雑誌の挿絵・・・つかささんの雰囲気が出ていてよかったです、絵でしかつかささんの存在を確かめられないのですね」
悲しげな表情だった。私の絵を褒めてくれた。嬉しかったけど素直に喜びを表せなかった。
ひより「このノートが在ります、これはつかさ先輩の書いたノート」
みゆき「そうでしたね」
微かに笑った・・・様に見えた。
53 :つかさのネタノート 15 [saga]:2010/01/26(火) 23:10:26.38 ID:hgTk2rc0
 高良先輩とも別れ、一人で帰宅することになった。腕時計を見た。まだ買い物をする時間はある。近道をした。
ふと高良先輩の言葉を思い出した・・・出会い。
つかさ先輩が居ると居ない。こんなに違う世界になるなんて。一つの出会いが歴史も変えるか・・・少なくとも私達の周りではそれが起きた。
つかさ先輩が居た世界の方が楽しい。それはみんなそう思っている。つかさ先輩と知り合いになれたのは泉先輩が友達だったから。いや、
小早川さんが泉先輩の従姉妹だったから。その繋がり。それじゃ私は・・・私が居なくなったら・・・つかさ先輩の様に誰かが思い出してくれるかな・・・
うわ、そんな事考えて私まで消えたらやだ、まだ私はこの世に未練がある。
「Excuse me」
突然後ろから誰かの声が聞こえる。周りを見渡したけど私しか居ない。私を呼んでいるだろうか。
「Excuse me」
同じ方向からもう一度聞こえた。間違えない私を呼んでいる。しかも外人だ。これも縁ってやつかな。英語で道案内くらいの事はできる。
私は声の方向を向いた。思わず見上げた・・・天を突くような大男、二メートルはあろうか。もう冬も近いというのに半袖・・・筋骨隆々・・・私の前に立ちはだかっている。
外人「〇#★ЭЩ@$?」
私は硬直した。何を言っているのか分からない。少なくとも英語ではない。・・・身振り手振りで私に何かを聞こうとしている。道を聞いているのはなんとなく分かった。
外人「〇#★ЭЩ@$?」
同じ事を言っているけど分からない。私は呆然と外人を見ていた。外人は急いでいるらしい、イライラしているのが伝わってくる。私は何かしようとするけど体がついてこない。
思わず私は身を竦めてしまった。それでも外人は執拗に同じ言葉を私に話してきた。

 大男が揺らめいた。大男の後ろから誰かが押したみたいだった。大男はゆっくりと後ろを振り返る。大男はその人にも同じ言葉をかけた。するとまた大男が揺らめいた。
何をしているのだろうか。大男の陰で相手が見えない。
外人「$$$$””””!」
外人はなにやら喚いたかと思うと両腕を天に上げて拳を下ろした。大男の陰から稲妻のように誰かが飛び出し彼の拳を避けると振り下ろした腕を掴みそのままその力に逆らうことなく
大男の腕を捻った・・・大男はまるで木の葉が風に舞うように宙に浮いた。大男は背中から地面に叩きつけられた。
大男は喚きながらその場を立ち去った・・・・。一瞬の出来事だった。私はその場にしゃがみ込んでしまった。

O「ゆい姉さん直伝・・・小手返し・・・その変形」
まるで戦隊物のヒーローのようにポーズをとりながら聞き覚えのある声で・・・って
ひより「泉・・・先輩?」
こなた「ひよりん・・・どうしたのこんな所で」
そう言うと私の腕を掴み起こしてくれた。
ひより「泉先輩・・・何か格闘技でもやってたんスか」
こなた「まあね・・・それより間一髪だったね、大丈夫だった?、最近物騒だからね・・・」
ひより「・・・外人の後ろからなにかしたっスか」
こなた「うしろから蹴った」
ひより「・・・振り返ってから何かしったスよね」
こなた「蹴った」
ひより「・・・助けてもらって何ですが、あれは道を聞いてきただけだったような」
そう言うと泉先輩は何も言わず呆然と私を見ていた。
ひより「どうしたんスか?、泉先輩?」
聞き返しても私を見ているだけだった。私は泉先輩の顔の前で手を振った。
こなた「・・・これ、どこかで同じことがあったよ・・・」
ひより「同じこと??、どういうことっスか」
こなた「そう・・・あれは・・・一年生の時・・・」
泉先輩は腕を組み、首を傾けて考えている。私はそれを見守った。
こなた「・・・つかさ・・・つかさに初めて出会った時だ・・・つかさ!」
何度もつかさ先輩の名前を呼んでいる。
ひより「もしかして、思い出したんスか」
泉先輩は急に悲しい顔になった。
こなた「・・・かがみ・・・なんであんな事言うんだよ・・・」
あんなこと、高良先輩とかがみ先輩の会話の事を言っている。そう思った。泉先輩の記憶が戻ればこれほど心強いことはない。
ひより「ここに居てもなんなんで、近くの喫茶店にでも・・・」
54 :つかさのネタノート 16 [saga]:2010/01/26(火) 23:12:20.02 ID:hgTk2rc0
 近くの喫茶店でコーヒーを頼み、しばらく気を静めた。そして、泉先輩に放課後で行った会議の事を話した。
こなた「・・・記憶を取り戻す方法・・・」
ひより「そうっス、でも泉先輩はもう大丈夫っスよね、しかし凄かったっスよ、あの大男を投げ飛ばすなんて」
こなた「いいや、たいした事無いよ、私が小さいから油断しただけ」
ちょっと照れくさそうに手を頭に当てた。泉先輩はすぐつかさ先輩の話題に戻した。
こなた「かがみが最後に残った・・・って事だね」
ひより「・・・身内だけに、一番厄介なんっス」
こなた「かがみの性格もあるね、何かと現実主義だし、例え思い出しても、夢か幻かと思っちゃうかもね」
ひより「かがみ先輩とつかさ先輩が出会った時の事でも分かれば・・・」
こなた「・・・ひよりん、二人は双子だよ、生まれた時、いや生まれる前から出会ってるよ」
ひより「・・・なんか絶望的な事を聞いたような気がするっス」
会話がなんの抵抗も無く進んでいく。泉先輩は本当に記憶が戻った。そう思った。それと同時にかがみ先輩の記憶を戻すのがどれほど難しいかも分かってしまった。
こなた「絶望的、そうでもないよ」
ひより「何か秘策でもあるんスか」
泉先輩は笑みを浮かべた。自信があるようだ。
こなた「秘策って程の物じゃないけどね、これはみさきちと峰岸さんの記憶が戻っているのが条件なんだ」
ひより「それなら問題ないっス」
こなた「さっきの放課後の会議の話を聞いて思いついた」
ひより「その策は?」
こなた「それは・・・直接本人に話したいな、明日、全員集まれるかな、放課後、私も準備しないといけないし」
ひより「多分大丈夫・・・私、部活があるっス」
こなた「話は数分で終わるよ、私、明日もバイトだし」
ひより「それなら・・・」
こなた「よし、明日の放課後、自習室集合で、三年の方とゆーちゃんは私から話しておくから」
ひより「私は岩崎さんに話せばいいっスかね」
泉先輩は頷いた。そして何故か不思議そうに私を見ている。
ひより「どうしたんスか?」
こなた「そういえば、ひよりんの口調が戻ったね、これもつかさの影響なのかな」
しまった。大男のショックで癖がそのまま出てしまった。
ひより「いや、これは関係ないっス、いままでのは癖を直そうとしたけっス・・・あれ・・・」
こなた「・・・無理しなくていい、そっちの方がひよりんらしいよ」
ひより「いや、恥ずかしいっス・・・あ、また」
泉先輩は大笑いした。どうやらこの癖、直すのは無理みたい。

こなた「ところで何でこんな所に」
ひより「買い物に・・・」
こなた「買い物ってこれの事かな」
泉先輩は一冊の漫画を見せた。
ひより「それは・・・それを買いに来たっス」
こなた「残念、これはもう売り切れているよ、私が最後だったから」
ひより「えー、」
泉先輩は鞄から同じ漫画の本を取り出し私に手渡した。
ひより「これは・・・」
こなた「布教用・・・あげる、記憶を戻してもらったお礼に」
私はその本を受け取りお礼を言おうとした時だった、私と泉先輩の携帯電話が同時鳴った。私達は同時に着信を確認した。
こなた「誰から?」
ひより「お父さんから・・・早く帰って来いって」
こなた「私もだよ・・・親って考えることって同じだね、帰ろうか」
ひより「そうっスね」
私達は駅で別れた。
55 :つかさのネタノート 17 [saga]:2010/01/26(火) 23:14:08.89 ID:hgTk2rc0
 次の日の放課後、約束どおり皆自習室に集まった。しかし泉先輩はまだ来ていない。
みさお「ちびっ子本当に記憶もどったのか、言いだしっぺが遅刻かよ」
ひより「何か準備があるっていってたっス」
日下部先輩は腕を組んで少し怒り気味だった。丁度そこにドアを開けて泉先輩が入ってきた。
みさお「おい、ちびっ子、呼び出しておいて遅刻な・・・・」
日下部先輩の口が止まった。私も泉先輩の姿を見て驚いた。
こなた「ごめん、ごめん、準備にてまどっちゃって、ところで、どう、似合うかな」
泉先輩はその場でクルリと一回転してポーズを決めた。泉先輩の髪の毛は肩までスッパリ切ってしまっていた。
そして頭に黄色いリボンを・・・アホ毛を隠すように。つかさ先輩の髪型を真似ている。すぐに分かった。

ゆたか「お姉ちゃん、どうしたの、まさか・・・」
こなた「時間がないから・・・早速話すね、明日のお昼から、みさきちは私のクラスでご飯食べて、みゆきさんと私と一緒に、そして、一週間経ったら今度は峰岸さんも
    私達と一緒にお昼を食べる・・・」
私達は黙って泉先輩のを眺めていた。
こなた「分かったかな、みんな」
この言葉に私達は我に返った。
みさお「みさきちって・・・、B組で飯を食べるだけでいいのか」
泉先輩は黙って頷いた。
みゆき「どうゆう事ですか、私にはさっぱり分かりません、それにその髪は・・・切ってしまったのですか」
こなた「かがみはいつも私のクラスでお昼を食べていた・・・それを再現するんだよ」
みゆき「再現・・・ですか」
こなた「みさきちと峰岸さんがこっちでお昼を食べれば、否応にもかがみはB組を意識するでしょ、そこにつかさに似た私を見れば・・・どう? この作戦」
高良先輩は黙ってしまった。
こなた「かがみはあれで寂しがりやだからね、みんな集まればきっとB組にくるよ」
みなみ「私達はどうすれば・・・」
こなた「昼休みなんだし、こっち来てお昼食べたら、一年が三年の所でお昼食べちゃいけない校則なんてないよ、それに半分以上は学食に行っちゃうから席は空いてるよ」
みさお「なんで、柊の妹の真似なんかするんだ、リボンだけもいいじゃん」
泉先輩は人差し指を立てて『チッチッチ』と舌打ちをした。
こなた「分かってないね、これはイメージが大事なんだよ、イメージが・・・他に質問は?、無ければ明日からみさきち、よろしく」
みさお「・・・分かったよ・・・」
その返事を聞くと泉先輩は足早に自習室を出て行った。どうやらアルバイトに向かったようだ。

みさお「いきなりみさきちって・・・あいつ、あんなんで柊が気が付くとでも思っているのか、それに髪型が似てるだけで、柊の妹と全然似てないぞ」
あやの「そうね、泉ちゃん、少し強引過ぎる気が・・・」
二人はやや呆れたようにそう言った。
みさお「記憶が戻って、まるでゲーム感覚だよな・・・」
その言葉は私の耳にも痛かった。高良先輩とかがみ先輩が話すまでは私もそうだった。
ゆたか「違います、お姉ちゃんのやろうとしている事は、少なくとも・・・本気だと思います」
みさお「本気?」
ゆたか「髪の毛を切るなんて・・・普通はやれない、女の子なら・・・解る・・・・それにお姉ちゃんの長髪は・・・おばさんの髪型を真似て・・・」
日下部先輩は黙ってしまった。そしてそのまま俯いてしまった。
みゆき「私も髪の毛を切るとしたら・・・かなりの覚悟が要ります、泉さんの並々ならぬ気持ちが解ります、どうでしょうか、泉さんの方法に賭けてみるのは」
日下部先輩と峰岸先輩は顔を見合わせた。
みゆき「かがみさんの性格は泉さんの言われた通りの一面があると私も思います、少なくとも、私がかがみさんにした事よりはるかに良いかもしれません」
みさお「そこまで言うなら・・・それに、ちびっ子を見直したぞ、熱い想い・・・私、そうゆうの嫌いじゃない」
あやの「そうね、私もそれでいい、でも何故、私は一週間後なのかな」
みゆき「それは、おそらく、いきなり二人とも私のクラスに来てしまったら怪しまれるからではないでしょうか、怪しまれると、記憶が戻る妨げとなりますし・・・」
みさお「あいつも色々考えてるんだな、それじゃ明日から」
そう言うと二人は自習室を後にした。
56 :つかさのネタノート 18 [saga]:2010/01/26(火) 23:15:21.29 ID:hgTk2rc0
ゆたか「高良先輩、ありがとうございます、お姉ちゃんちゃんと説明しないから・・・」
みゆき「泉さんはあまり自分の事は言わない方ですからね、少し補足しただけです」
みなみ「この方法、どこかで聞いたことがある」
みゆき「そうですね、岩戸隠れですね」
ひより「岩戸隠れ?」
みゆき「アマテラスが岩戸に篭ってしまう神話です、アマテラスは太陽の化身、世界は闇に覆われてしまう」
みなみ「篭ったアマテラスを八百万の神が笛や太鼓で岩戸を開けさせる・・・」
ひより「・・・ああ、そういえば、その話知ってる・・・」
みゆき「泉さんがこの神話を意識しているかどうかは分かりませんが、今のかがみさんは記憶は岩戸に篭っているアマテラスと同じだと思います、こちからから開けようとしても
    岩は開けることはできません、しかし、内側からなら、閉めてしまった本人なら開けることができます」
ひより「かがみ先輩自身が記憶の扉を開けるように私達が?」
みゆき「つかささんと私達での昼食はかがみさんにとってもきっと楽しかった思い出に違いありません、私達が楽しそうに食事をしているのを見れば・・・そんな気がします」

 高良先輩と岩崎さん、敵わない、神話まで持ち出して泉先輩の作戦を解説してしまうなんて、この人達ほどの知識があれば私もネタには困らないのに。
それにも増して、かがみ先輩の性格をそこまで知り尽くしている泉先輩も凄いと思った。何より、髪の毛を切ってまでそれを演出しようとしている。泉先輩にとって長髪は特別な想いがあるようなのに。
私も髪の毛を伸ばしているけど、バッサリ切るのは抵抗はある。それを気付かれないように明るく振舞う・・・・
ひより「泉先輩・・・漢(おとこ)だね・・・」
みなみ・ゆたか「おとこ?」
ひより「いや、何でもない・・・」

 次の日、私だけが三年B組にお昼を食べに行った。小早川さんが急に熱を出してしまったので保健室で休んでいるからだ。岩崎さんは付き添い。保健委員じゃしょうがない。
教室に着くと既に三人はお昼ご飯を食べていた。
こなた「こっちだよ、あれ、ゆーちゃん達は」
ひより「実は、熱を出してしまって」
こなた「・・・最近調子良かったのに・・・」
ひより「泉先輩、小早川さんから聞いたっス、先輩の長髪って特別な想いが・・・」
こなた「ゆーちゃん、言っちゃったな・・・」
ひより「何でそこまでして・・・」
こなた「髪の毛なんて時間が経てばまた伸びるよ、大げさだな、私から言わせればひよりん達がそこまでつかさを思ってくれるのは何故だいって聞きたいね、知り合ってそんなに経ってないでしょ」
ひより「そう改まって聞かれると・・・ネタ帳をつくってくれた・・・かな」
こなた「あのノートね、ひよりん、そのノートのネタ、まだ使ってないでしょ、それなのに?」
ひより「使えるネタだったら、そんなにつかさ先輩が好きになれなかったっスね」
こなた「ほぅ、その心は?」
ひより「自分の得意じゃない事なのに、ネタを考えてくれる人なんて・・・今まで居なかったっス、それだけで嬉しかった・・・」
みさお「おっと、柊がこっちみてるぞ、みんな楽しくしようぜ」
チラッと廊下の方を見た。かがみ先輩が確かにこっちを見ている。一日目にしてもう効果が出ているのだろうか。
ひより「先輩、これは思った以上の効果っスね」
こなた「まだまだ、あの目はただ見ているだけ、何も感じてないよ、しかし髪切ったせいで首元がスースするよ」
そう言いながらチョココロネを頬張る。
みさお「そういえばB組で昼飯食べるの初めてだ」
ひより「日下部先輩はかがみ先輩達と中学同じだったっスよね」
みさお「柊、あやのとはクラスも同じだったぞ」
ひより「つかさ先輩とはいつ知り合ったっスか」
みさお「そういえばいつだったかな・・・柊と知り合った時には既に居たけど・・・」
ひより「日下部先輩は今までこっちでお昼たべなかったっスか、つかさ先輩と気が合わないとか・・・」
みさお「いや、そんな事はなかったけど・・・何でだろう」
こなた「そういや三年になるまでC組の友達、正式に紹介してくれなかったな・・・かがみ・・・つかさをみさきちに会わせたくなかったとか」
みさお「何でだよ」
日下部先輩は少し怒り気味だった。
57 :つかさのネタノート 19 [saga]:2010/01/26(火) 23:22:19.90 ID:hgTk2rc0
みゆき「つかささんが居なくなって、かがみさんの代わりに日下部さん来るようになった・・・これも何かの縁のような気がします」
こなた「つかさが居なくなっても、私達はつかさが居た世界の記憶があるからこうやって居られるんだよ、私とみゆきさんは二年とちょっとのだけの記憶」
みゆき「そうでしたね・・・」
高良先輩は少し悲しいそうな顔をしてた。
ひより「そうだ・・・つかさ先輩が消えた日の事覚えています?・・・確か泉先輩の家で・・・私が来たときには小早川さんも泉先輩も買い物で居なかったっス
    そこに丁度、つかさ先輩が来たっス」
泉先輩は両手を組んで上を見上げて考えた。
こなた「あの時は・・・丁度ゆーちゃんの友達が来るのと重なった時だったね・・・あれ、なんでつかさだけなんだ・・・確かかがみも来る様な話だったような」
ひより「かがみ先輩も来る予定だったっスか・・・かがみ先輩・・・何かあったんスかね」
こなた「何かって・・・かがみは約束を破ったことないし、何かあれば必ず連絡してた・・・」
みさお「ん・・・その日って私達も来る予定じゃなかったか、あやのと一緒だった気がするぞ」
みゆき「・・・私は確か・・・みなみさんと泉家に行く予定だった気がします・・・」
一同「・・・あれ???・・・」
その日はみんな集まる日だった?、何かのパーティ?、そんな事はない。よく思い出せない。少なくとも泉先輩とは別の用事だったような気がする。
こなた「そうだ、大勢集まるからゆーちゃんと買い物にいったんだ・・・確か・・・勉強会???」
みさお「そんな感じだったかな・・・少なくとも遊びじゃなかったと思う」
こなた「かがみどうしたんだろ、いつもつかさと一緒に来てたのに」
ひより「高良先輩が言ってた姉妹喧嘩説・・・かなり濃厚の気がするっス」
みゆき「かがみさんにとってそれは思い出したたくない事・・・もしかしたら、つかささんをイメージすることが」
こなた「それじゃ今やってることって・・・私、余計な事をしたかな・・・」
泉先輩は急に悲しい顔になった。
みさお「おいおい、楽しく食べるんじゃなかったのか、この話は皆が集まった時にしようぜ、ほら、柊居なくなっちまったぞ」
みゆき「すみませんでした、気を取り直しましょう」
こなた「そうだった・・・」

 私達はつかさ先輩以外の話をした。日下部先輩の話は面白かった。泉先輩と日下部先輩はかがみ先輩とは違った雰囲気、まるで小学生同士でじゃれ合う様な、
こっちまで楽しくさせてしまう。そんな楽しい昼食をすごした。時間を忘れ私達は会話を楽しんだ。すると、高良先輩が時計を見た。
みゆき「そろそろ時間ですね」
みさお「おお、もうこんな時間か・・・楽しかったぞ」
ひより「お邪魔したっス」
こなた「ひよりん、ゆーちゃん達によろしく言っておいて」
私が席を立とうとすると。
みさお「・・・私達って、一年からこうやってみんなで食べることが出来たんだよな、今頃になって・・・もっと早く気付けばよかったよ、
    明日からあやの連れてきていいか、一週間なんか待ってなくていいんじゃないか」
誰も反対を言う人はいなかった。
58 :つかさのネタノート 20 [saga]:2010/01/26(火) 23:23:46.08 ID:hgTk2rc0
 自分のクラスに戻ると小早川さんと岩崎さんが居た。もう戻ってきた。小早川さんの調子はどうなのだろうか。
ひより「小早川さん、もう調子いいの」
ゆたか「あ、田村さん、もう熱引いたから、それに午後の授業、私苦手科目だから、休んでられないよ」
みなみ「ゆたか、熱はまだ完全に引いていない・・・」
ゆたか「みなみちゃん、大丈夫だよ」
そう言って見つめあう二人・・・あれ、いつからこの二人名前で呼び合うようになったんだ。保健室で何かあったのか・・・まさかお昼の密室で・・・
頭のなかに妄想がどんどん膨らんでいく。
ゆたか「ところで田村さん、お昼はどうだった?」
この一言で我に返った。自重しろ、私。
ひより「とても楽しかったよ、特に日下部先輩と泉先輩がね、それと泉先輩がよろしくだって、小早川さんのこと心配してたよ」
ゆたか「いいな、私も行きたかった・・・」
ひより「まだ始まったばかりだし・・・そうそう、明日から峰岸先輩もくるみたい、日下部先輩がB組気に入っちゃってさ、明日から呼んでいいって話になって」
ゆたか「何か良い方向になってきてるね」
その時、つかさ先輩の話を思い出した。
ひより「お昼、つかさ先輩が消えた時の話をしたんだけどね、私達ってなんで泉先輩の家に来ることになったんだっけ」
みなみ「その日は・・・勉強会だった気がする」
ゆたか「うん、夏休みが終わってすぐの土曜日だったよね」
そうか、泉先輩達も勉強会。別行動だけど目的は一緒だったのか。
みなみ「何故そんな話に・・・」
ひより「つかさ先輩が消えた日の事ってモヤモヤした感じで曖昧なんだよね」
みなみ「・・・そういえば」
ひより「あの時、私達全員集まったような気がしてきて・・・」
その時、午後のチャイムが鳴り出す。私達は慌てて席に着いた。
59 :つかさのネタノート 21 [saga]:2010/01/26(火) 23:29:34.36 ID:hgTk2rc0
 それから二週間が過ぎた・・・峰岸先輩も加わり、小早川さんが調子の良い時は小早川さん、岩崎さんも同席した。女六人、これだけ集まれば会話も
弾む、その笑い声は隣りのクラスへも聞こえるだろう。聞こえているはずだ。おかしい。一向にかがみ先輩は私達の元に来ない。
それどころか様子を見に来ることもなくなった。日下部先輩達に聞いても変わった様子はないと言う。神話のようにはいかないのだろうか。
 
こなた「いったいどうして・・・こんな筈じゃない、かがみ・・・どうしたんだよ」
焦りの色を隠せない。短くなった髪の毛を両手で押さえている。
みさお「そう焦ることもないいじゃないの」
こなた「もう、あれから一ヶ月、なにも進展がないよ・・・ごめん、皆、私の作戦・・・失敗だよ」
そう言うと泉先輩は頭に付いていたリボンを解き始めた。
みゆき「泉さんのせいではありません、私たちも賛同したのですから責任は同じです、でも進展がない以上他の方法を考えた方がよさそうです」
みさお「他の方法って、他に何かいい方法あるのか」
みんな何も言い出さない。私も何も思い浮かばない。
あやの「これはタイムリミットががるような、私達が卒業してしまえばこれほど頻繁に会うことはできない、それに柊ちゃんに会う機会もぐんと減る・・・」
ゆたか「卒業・・・もうそんなにありませんね・・・」
みゆき「そうですね、大学と高校では時間が違いますしね、それぞれの生活もありましょう」
こなた「それで終わっちゃうの・・・つかさは・・・もう戻らない・・・これじゃアニ研の小説とおなじじゃないか・・・」
みゆき「これは・・・すみません、この結末は私が田村さんに提案したもので・・・これもかがみさんに呼んで欲しいと思いまして・・・」
こなた「私・・・記憶なんて戻らなければよかった・・・」
ゆたか「お姉ちゃん・・・」
泉先輩はリボンを外すとそのまま机に埋まってしまった。すすりなく音が聞こえる。これは、高良先輩が屋上で見せた光景によく似ている。
私達はあれから全然状況が変わっていない事に気が付いた。
私は何も策はないけど、一つだけ方法を知っている。でもこの方法は成功、失敗するかどうかもわからないし、後戻りもできない危険な賭け。
ひより「あと一つだけ方法があるっス、でもこれはとても危険な方法・・・」
皆は一斉に私の方を向いた。
ゆたか「危険な方法って?」
ひより「もともとつかさ先輩が消えたのは、このネタ帳につかさ先輩が書き込みをした時からっス、だから、このノートを燃やしてしまえば・・・もしかしたら呪いが解けるかも」
みなみ「燃やす・・・確かに危険」
ひより「燃やすから後戻りできないっス、燃やすことで考えられる出来事は三つ、一つは、今までどおりなんの変化もない、二つは、呪いが解けてかがみ先輩の記憶が復活、
    つかさ先輩も蘇る、そして三つは、全ての人からつかさ先輩の記憶が消えてしまう・・・」
みさお「確かに、後戻りできないな」
こなた「一つ目になるんだったら三つ目の方がいい・・・何も知らないほうがいい・・・」
みゆき「それは・・・確かに賭けですね、それにこの三つ以外の事が起きるかもしれません、例えば、かがみさん、いいえ柊家に何かが起きるかもしれません」
ひより「そうっス、だからこれは少なくともかがみ先輩の記憶が戻ってもつかさ先輩が復活しなから提案しようと・・・」
みさお「つまり最後の手段ってことだろ、まだ早い」
日下部先輩は泉先輩の外したリボンを取り泉先輩に突き出した。泉先輩は不思議そうに日下部先輩を見る。
こなた「何?」
みさお「何、じゃないだろ、もう諦めるのかよ、卒業までまだまだ日はあるぞ、この作戦はまだ終わってない」
こなた「でも・・・」
みさお「なんだ、柊の妹を助けたくないのか、髪を伸ばしていた想いってその程度だったのか」
泉先輩は俯きなにも言い返さなかった。
あやの「私は今までやってきて全く効果がないとは思わない、柊ちゃん少しだけど確かに変わってるの分かる」
みゆき「人の記憶は何が切欠で思い出すのか分かりません、私は他の方法とが良いといいましたが、継続するのもの一つの手段でしょう」
ゆたか「お姉ちゃん、諦めないで」
みなみ「継続は力なり・・・」
皆が泉先輩を励ます。すっかり日下部先輩のペースになってしまった。体育会系のノリ・・・こうゆう雰囲気は初めてだ。でも私も胸が熱くなった。
こなた「これが最良の方法じゃないかもしれないよ・・・」
みさお「それは最後にならいと分からないぞ」
泉先輩は日下部先輩からリボンを取りまた付けた。
みさお「これで卒業まで突っ走るぞ、それでダメなら後悔はないだろ」
こなた「まさかみさきちに説教くらうとは・・・」
60 :つかさのネタノート 22 [saga]:2010/01/26(火) 23:34:38.70 ID:hgTk2rc0
みさお「まさかとは何だよ、まさかとは、それにいつも、みさきちってなんだよ」
こなた「だってみさきちじゃん」
この会合で泉先輩は初めて笑った。一気に和んだ。そして、泉さんの作戦、これを最後まで続ける事になった。っと言ってもこれ以外に選択肢はなかった。

 月日は過ぎていく。かがみ先輩の様子は変わらない、そして、三年の皆の進路がほぼ決まっていく時期にさしかかった頃だった。アニ研部に一通の手紙が届けられた。
ひより「私宛?」
こ う「そう、なぜかひよりん宛なんだよね、ファンレターだな」
ひより「ファンレター・・・・私にッスか」
こ う「屋上に来て欲しいそうだ、サインはもう作ってあるのか」
ひより「もう考えてあるッス・・・差出人の名前がないッスね・・・って今日じゃないですか」
こ う「そうだった」
先輩は時計を見た。
こ う「時間は今行けばまだ間に合うぞ、別に行きたくなければそのまま無視すればいい」
ひより「そう言うわけにもいかないッス、ちょっと行って来ます」
 この手紙は何日か前に届けられたみたいだ、ここ最近の部誌で載せた漫画なのだろうか、どんな人なんだろう。そんな期待を胸に屋上へと向かった。
屋上に着くと、一人の女生徒が立っていた。よく知っている人だった。かがみ先輩・・・・。どういう事だ。緊急事態だ。私は高良先輩みたいにかがみ先輩と
言い合うような度胸も知識もない。下手なことを言えば突っ込まれてしまいそうだ。ファンレター・・・何か違うような。緊張感が急に出てきた。冷や汗が手から出てくる。
屋上の入り口で止まっていると、かがみ先輩が私に気付いた。
かがみ「すまないわね、急に呼び出してしまって、田村さん」
口調はいたって穏やか、顔の表情も高良先輩と会った時のような威圧感はなかった。つかさ先輩が居ない世界、かがみ先輩は私の事はしらないはず。
初対面だ、敬語・・・癖が出ませんように・・・・。
ひより「あの、ファンレターありがとうございます、用件はなんでしょうか」
かがみ「田村さんをこんな所に呼んだのはね、ひとつだけ確かめたいことがあったから・・・ファンレターって偽ってごめんない
    それの方が部活動から抜け出し易いと思ったから・・・貴方、柊つかさ って知ってる」
もしかして、かがみ先輩は記憶を思い出した。思い出そうとしているのか。これはチャンスかもしれない。
ひより「柊つかさ先輩、私は知っています、かがみ先輩もご存知のはずです、双子の妹の名前ですから・・・」
そう言うとかがみ先輩は急に悲しい顔になった。
かがみ「やっぱり、本当だった・・・みゆき、こなた・・・」
私は嬉しかった、泉先輩の作戦が成功した。
ひより「かがみ先輩、記憶もどられたのですか」
かがみ「皆・・・やっぱり皆も記憶が戻っているみたいね、この雑誌の物語、途中から急に悲話になってるけど、みゆきあたりの提案じゃない、」
そう言うと、最新の部雑を私に見せた。
かがみ「峰岸に勧められて読んだわ・・・この主人公、つかさがモデルね、」
凄い、当たってる、それにかがみ先輩は記憶が戻っている。皆に教えないと。
ひより「その小説は偶然が重なって載ることに・・・みんな、かがみ先輩が来るのを心待ちにしていますよ、丁度明日が集まる日なんですよ」
かがみ「それは、できない」
ひより「えっ?、なんでですか」
かがみ先輩は、私に背を向けて屋上から校庭を見下ろした。
かがみ「出来ない、私につかさの話をしろ言うの、出来ないわ、だから田村さんを呼んだの、もう、つかさの事は諦めて・・・そう皆に言って欲しい」
ひより「そんな・・・高良先輩がここで話し事、覚えていますよね」
かがみ「・・・田村さん、あの時の会話どこかで見てたみたいね・・・みゆきから見たらさぞかし私は冷たい女に見られたでしょうね」
かがみ先輩の態度が許せなかった。私は本当の事を言う事にした。
ひより「泉先輩も見ていました、かがみ先輩を見て記憶が戻るのが遅れたと思ってます、その泉先輩だって今は・・・」
かがみ「日下部と峰岸がB組でお昼食べてるわね、それで私の気を引こうって作戦ね、あいつらしいわ」
ひより「そこまで知っていて・・・何故来れないのですか、そのために泉さんは髪の毛を・・・」
かがみ「だから、私はこなたを見れないのよ・・・」
突然私に振り返った。かがみ先輩の目には涙が溜まってた。
61 :つかさのネタノート 23 [saga]:2010/01/26(火) 23:38:30.12 ID:hgTk2rc0
かがみ「こなたのお母さんの写真、二年の時に見た、こなたと同じ髪型だった、すぐに分かったわ、こなたが髪型を真似していることくらい・・・
    それを切ってつかさと同じ髪型にして・・・バカだよ、そんな事したら私、こなたを見れない・・・・その姿を見たとき、私はここで泣いた・・・」
泉先輩が髪を切った時にはすでに記憶が戻っている。かがみ先輩は記憶が戻っていたことを黙っていた。
ひより「かがみ先輩・・・いつ記憶がもどったのですか・・・」

 かがみ先輩はハンカチで涙を拭い話し始めた。
かがみ「みゆきがつかさの話をした日、みゆきのあまりに感情がこもった言葉が忘れられなくてね、その日の夜、何気なしに家族につかさの名前を出した、
    そうすると、急にみんな改まってね、私が二十歳になるまで秘密にするはずだったってね、つかさはね、生まれて間もなく亡くなってしまった、
    そう、お母さんが言ったわ・・・」
ひより「亡くなった・・・」
かがみ「早期胎盤剥離・・・が起きた、緊急だった、二人同時には出せなかったからどちらかが犠牲になる必要があった、先に出された私が助かった・・・
    そう聞かされた・・・違う、先に出されたんじゃない、つかさが先に私を出してくれた・・・そんな気がした時、全てを思い出した・・・」
私は言葉を失った。泉先輩の記憶が戻るのが最後だった。だけどつかさ先輩は復活していない。この世界につかさ先輩が存在しなかったわけじゃなかった。
存在していた。死んだ人を生き返らすことは出来ない・・・。
かがみ「田村さん、つかさは貴方にノートを渡したわね、普段そんなことする子じゃないわ、だから私は田村さんを選んだ、今の話、皆に言って欲しい・・・」
私から皆に言えるような話ではなかった。
ひより「私は・・・そんな事話せません、それより、明日のお昼ご飯、放課後の自習室に来て下さい・・・私にはそれしかかがみ先輩に言えません」
思わず強い口調で答えた。一瞬かがみ先輩の反撃を恐れた。
かがみ「それが出来るようだったらこんな事しない・・・」
高良先輩との会話が嘘のような弱気なかがみ先輩。つかさ先輩が居た世界とも違う。こんなに変わってしまうものなのか。どっちが本当のかがみ先輩だろうか。
ひより「すみません、私もう戻らないと、部活動がありますので・・・」
何故かもう話をする気になれなかった。
かがみ「待って田村さん、貴方たち集まって何をしようとしてるの」
ひより「つかさ先輩を元に戻そうと・・・」
かがみ「そんな事出来るの、方法なんてあるの」
ひより「分かりません、だから集まっているんですよ」
かがみ先輩は黙り込んで俯いた。
ひより「高良先輩は言いました、考えられる事は何でもやろうって・・・と言っても泉先輩の作戦しか思いつかなかったんですがね・・・あれだけ集まって・・・たいしたことないっスね」
私は苦笑いをした。
かがみ「田村さん・・・」
私はそのまま屋上を後にした。かがみ先輩は動こうとせずそのまま私を見送った。一人屋上に残ったかがみ先輩、何を思い、何を考えるのだろうか。

こ う「おかえり、丁度いい、山さん、毒さんも集まった事だし来期の新人獲得の為の作品のことで会議を・・・ってひよりんどうした、ファンと会ったんじゃないの」
私を見て驚いたようだった。自分的には至って普通にしているつもりだった。鏡を見てみたい。
ひより「いや、なんでもないっス、いやあ、ファン持つと色々たいへんっスよね」
こ う「のろけかい、いいから会議始めるぞ・・・」
会議に集中できない、怒る先輩たち。結局私は今度発行する部誌の編集をやらされることになった。成り行きとは言え・・・また徹夜になりそうだ。

 次の日、いつもの昼食風景、今日は小早川さんも調子がいい。何気ない会話に皆は夢中になっていた。お昼休みも中盤。私は何気なく辺りを見回した。
かがみ先輩が来てくれるような気がしたから。
ゆたか「どうしたの、田村さん」
ひより「何でもない・・・ところで、かがみ先輩の様子はどうです」
みさお「相変わらずなんにも変わってないな」
あやの「今朝も普段どおり・・・何か?」
ひより「何でもないっス」
こなた「さっきから落ち着きがないけど、どったの?」
かがみ先輩はもうとっくに記憶は戻ってる。そしてつかさ先輩の事。・・・言えない。確かに。かがみ先輩が言えない理由が今頃になって分かった。
そして、高良先輩にした言動を思い出すと会えない理由も理解できた。昨日、もっとかがみ先輩と話すべきだった。この雰囲気に耐えられない。
ひより「徹夜したせいかな・・・ちょっと調子が悪いっス、私、先に戻るっス」
みなみ「それなら、保健室で仮眠を・・・」
ひより「あ、そこまでしなくても大丈夫、それじゃ・・・」
62 :つかさのネタノート 24 [saga]:2010/01/26(火) 23:40:05.35 ID:hgTk2rc0
逃げるように教室を出た。これじゃかがみ先輩と同じじゃないか。途中三年C組を通る。思ったとおり教室にかがみ先輩の姿がなかった。きっと屋上に居るに違いない。
でも屋上に行く気になれなかった。それにお昼休みもそんなに残っていない。これじゃ放課後もかがみ先輩はきっと来ない。私が言うしかないのかな・・・。

 放課後の自習室、みんなが集まってもう一時間は経っている。なぜか今日は誰も発言しない。沈黙が続いていた。さすがにこれだけ進展がないと話すこともない。
私の知っていることを話せば何か反応があるかもしれない。逆にみんなもっと黙ってしまうかもしれない。もんもんとこんな事を考えている自分自身が嫌になってきた。
こうなったら話すしかない。私は覚悟を決めた。
「オッス、みんな」
突然ドアが開いた。元気な声が響いた。みんなドアの方を向いた。そのまま私達は口を開けていた。
「何辛気臭くなってるのよ、そんなんじゃつかさを元にもどすことなんかでかいないわよ」
いつも見慣れたツインテール。片手を腰に当てて少し口を尖らせている。かがみ先輩は周りを見回して一回おおきく深呼吸をした。そしてそのまま私の方に近寄ってきた。
かがみ「田村さん、昨日はありがとう、おかげで決心がついたわ、やっぱり私が言わないとだめだよね」
小早川さんと岩崎さんの方に向かった。
かがみ「つかさの事、そんなに思ってくれてありがとう、妹に代わってお礼を言わせて・・・ありがとう」
かがみ先輩は日下部先輩と峰岸先輩の元に向かった。
かがみ「こなたの作戦に付き合ってるみたいね、まさかあんた達がB組に行くとは思わなかった、もっと早くこなた、みゆきを紹介してれば良かったわね」
今度は高良先輩のに近寄る。
かがみ「屋上でとんでもない思い違いをしたわ、私がみゆきだったら殴っていたわよ、よく我慢したわね、知らなかったとはいえ悪かった、それに・・・あの涙、心に響いた」
みゆき「かがみさん・・・」
かがみ「その呼び方・・・屋上でも言ってくれたわね」
そして最後に泉先輩のに近寄った。
かがみ「こなた、その姿全然似合わないわよ、悪いけどこなたの作戦は効果ゼロだった、私はとっくに記憶は戻っていたのだから・・・だから間が抜けているのよ」
こなた「かがみ・・・」
かがみ「悔しいでしょ、どうしたのよ、さっさと殴りなさいよ、その髪の毛切らせたの私なんでしょ、伸ばしていた理由知らないとでも思ってるの」
こなた「かがみ・・・戻ったんだね・・・やっぱりかがみはツインテールじゃないとダメだよ」
かがみ「そっちかよ、私の話聞いてないのか、私はねあんたの好意をふみにじった・・・」
泉先輩はかがみ先輩に抱きつき泣いてしまった。
かがみ「放せよ、皆がみてるでしょ・・・そんな事したら・・・私まで涙が出るじゃないの・・・」
そのまま二人は抱き合って泣き崩れた。ツインテールのかがみ先輩。髪を短くしてリボンを付けた泉先輩。何故かかがみ先輩とつかさ先輩が再会を喜んで抱き合っている
姿が頭の中に浮かんだ。二人を囲むように他の皆も見ている。小早川さんは目を潤ませていた。皆も私と同じ事を考えていたと思った。
しばらく私達はその余韻に浸っていた。
63 :つかさのネタノート 25 [saga]:2010/01/26(火) 23:41:54.13 ID:hgTk2rc0
こなた「そんな・・・つかさはもう既にいない」
かがみ「こなた、もうそのリボン要らないわよ・・・もう作戦終了」
かがみ先輩は話した。昨日私にしたように・・・皆はさすがに動揺した。雰囲気は一変した。
こなた「いや、外さないよ、つかさが戻ってくるまでは、かがみだってさっき私をつかさだと思ってたでしょ」
かがみ先輩は反論しなかった。
みゆき「すると、私達の記憶は別の世界、つまりつかささんが死ななかった世界の記憶だった・・・」
こなた「呪いの類じゃないね、平行世界、私達はつかさのいる世界に戻らなければならい、つかさも助かった世界に」
みなみ「その考えはまだ早い、まだ記憶が戻っていない人がいるのでは、例えばかがみ先輩のご家族・・・」
かがみ「それはない・・・私の記憶が戻った時家族に話したわ、つかさの事を、するとね次々にみんな思い出した・・・お父さん、お母さん、いのり姉さん、まつり姉さん、
    それでね、倉庫になっている部屋がつかさの部屋だって事が分かってね、家族みんなで探したわ、つかさの痕跡を・・・何も見つからなかった・・・」
ゆたか「記憶って考えたらつかさ先輩を知っている人私達だけじゃないよ、いままでつかさ先輩と関わった人って数え切れないほどいるよ、
    小中学校の友達、先生・・・通学ですれ違った人や買い物をした時の店員・・・高校だって先生や一、二年生でクラスが一緒だった人も・・・限がない・・・」
みゆき「そうですね、さすがにそこまでの人たちのつかささんの記憶を戻すことは不可能に近いですね、私達は近くの事しか考えていませんでした」
こなた「するとキーワードはやっぱりつかさのネタ帳・・・」
皆は一斉に私を方を向いた。
かがみ「田村さんノートはあるかしら」
ひより「持ってますよ」
机の上にノートを置いた。皆はノートに注目した。
みさお「これって、どう見ても普通の大学ノートだよな」
あやの「そうね、呪いの類ならもっと古風なイメージがあるね」
岩崎さんはノートを手に取りパラパラと開いて見た。
みなみ「中身もいったって普通」
岩崎さんはノートを元に戻した。

みゆき「かがみさん、一つお聞きしたい事があります」
かがみ「なによ改まって」
みゆき「つかささんが居なくなる前、つまり泉さんの家に行く前、かがみさんとつかささんで何かありませんでしたか・・・例えば喧嘩・・・」
するとかがみ先輩はどこか一点を見て考えているみたいだった。
かがみ「それが・・・分からない、それだけが思い出せない、あの日の事は全て思い出せない」
こなた「勉強会だってことも?」
かがみ「勉強会・・・その為につかさはこなたの家に?」
こなた「かがみも来るはずだった・・・私たちもこの日の記憶ははっきりしてない」
かがみ「それで何で私とつかさが喧嘩したって言うのよ」
ひより「それは、このノートにつかさ先輩が書いた事を見れば・・・」
かがみ先輩にノートを渡し、その項を広げて見せた。
かがみ「・・・『私が居なかったら』・・・何よこれ、まるで今の事じゃないの、この前みゆきに見せてもらった時は・・・バカにして見てなかった・・・」
みゆき「それを見て何か感じませんか、つかささんがそんな事を書く理由を考えると結論はかがみさんとの喧嘩・・・でした」
かがみ「なんで・・・そうなのよ」
こなた「かがみ、つかさに何か酷い事言ったんじゃないの、じゃなきゃつかさはそんなの書かないよ、それにね、私の家に来たのはつかさだけだった、でしょ、ひよりん」
私は頷いた。
64 :つかさのネタノート 26 [saga]:2010/01/26(火) 23:43:42.37 ID:hgTk2rc0
かがみ「つかさだけ・・・喧嘩・・・どこで、何の喧嘩、そんな事した覚えない、他に何かないの」
ひより「そういえば・・・ノートに書く前、かがみ先輩の足を引っ張ってるからとか言ってました」
かがみ「なによそれ・・・足なんか引っ張っていないわよ、昔は・・・小さい頃はよくつかさの面倒をみたけど、でもつかさは可愛いってよく言われて・・・」
こなた「それでツインテールをするようになったんだよね」
かがみ「うるさい、余計なこと言うな」
かがみ先輩は拳を握った。泉先輩はしゃがんで頭を両手で押さえて防御の姿勢をした。
かがみ「と、とにかく、子供の頃はそうだったかもしれないけど、今じゃ私よりも優れてる所もあるし、そうゆう喧嘩は考えられない」
みさお「喧嘩じゃなくてもコンプレックスってことも、妹が姉に対して認めてもらいって思う事はよくあるんじゃないか」
こなた「みさきちが横文字使うとは」
かがみ・みさお「さっきから、足引っ張るな」
みゆき「それを言われるなら、揚げ足を取るではないでしょうか」
かがみ「なんだ、この緊張感のなさは・・・今まで何やってたのよ・・・」
かがみ先輩はため息をついた。

 何か懐かしいノリだった。でも何か足りない。こんな時、つかさ先輩はいつも笑顔でいたっけな。
つかさ先輩がきえた日のかがみ先輩の記憶・・・。これを思い出せばつかさ先輩の居る世界に戻れる。これがこの日の結論になった。
そして、数日が過ぎた時だった。突然かがみ先輩からみんな集まるように連絡が入った。
三年生はもう自由登校になっていたので三年B組に集まることになった。教室には私達以外誰も居なかった。
65 :つかさのネタノート 27 [saga]:2010/01/26(火) 23:44:53.26 ID:hgTk2rc0
かがみ「悪いわね、急に呼び出して」
みさお「急に呼び出したってことは何か分かったことでもあったんか」
かがみ「まずはこれを見て」
そう言うとかがみ先輩は一冊のノートを机の上に置いた。見ると大きなシミが付いている。飲み物でも溢したのだろうか。
こなた「ノートだね、見たところ普通のノートだけど・・・」
かがみ「みゆき、このノート、心当たりある?」
高良先輩はノートを取り、何枚か頁を捲った。
みゆき「・・・私の字ですが・・・覚えがありません、このノートの内容は授業で受けた記憶がありません」
かがみ「これはね、家族みんながつかさの記憶を思い出したとき、倉庫、つまりつかさの部屋だった所を探していのり姉さんが見つけたノートよ」
こなた「なんで倉庫にみゆきさんのノートがあるのさ」
かがみ「私も最初は訳が分からなかった・・・でもね、これは田村さんが持っているノートと同じ、つかさが残したものだって分かった」
言っている意味が分からない。なぜ高良先輩のノートがつかさ先輩のノートになっているのか・・・。周りを見ても皆首を傾げている。
かがみ「このノート、三年の夏休み前、私がみゆきから借りたノート、もちろんつかさが居た世界でね」
みゆき「思い出しました・・・任意参加の特別授業ですね、確かかがみさんは風邪で欠席されました」
かがみ「つかさが消える日の前日、勉強会の準備でこのノートを写していた、悔しかったけど内容が全く理解できなかった・・・」
みゆき「そうですね、あの授業は任意参加でしたし、私も講義を聞いて半分理解できたかどうか・・・ノートだけでは不十分だったと思います」
かがみ「勉強会でみゆきに教えてもらおうとノートの整理をしてたらつかさがコーヒーを持ってきてくれた、ところがそのコーヒーをみゆきの
    ノートに溢してしまった・・・私のノートになら怒らなかった、いや、みゆきのノートでも怒らなかったかもしれない、でもね、なぜかあの時、
    私は激怒してしまった、今思えば自分が理解できなかったノートを汚されてただ怒っただけ、八つ当たりよね、感情むき出しでつかさにぶちまけた、
    つかさは平謝りだったけど、私は許さなかった、そしてノートをつかさに渡して元に戻してみゆきに返せって言った」
こなた「酷い、そりゃないよ・・・」
かがみ「出来ないと分かって言った、それでもつかさはノートを受け取って自分の部屋に戻った、そこで何をしたのかは分からないけどつかさなりに復元
    しようとしたんだろうね、私が寝ようとトイレに行った時もつかさの部屋から灯りがこぼれていた、次の日、今にも泣き出しそうにして、
    直せなかったからみゆきに謝りに行くって言ってね、私は行かないから勝手にしろって言ってしまった」
みさお「喧嘩というよりは、いじめだぞ、柊らしくない」
かがみ「・・・私もそう思ってね、しばらくしてつかさの後を追った、結局追いつかなくてこなたの家の前まで来てしまった、一言、ごめん、って言いたかった、
    どのくらい居たかは忘れたけど、諦めて家に帰ろうとした・・・そこから先は真っ白・・・覚えてない」
ひより「その先はつかさ先輩の居ない世界っスよ、多分」
かがみ「みんな、私、思い出したわよ・・・」
私達は黙ってかがみ先輩を見ていた。
かがみ「つかさは、どこよ、この教室の席にも居ない、私の家にも居ない、つかさの部屋にも居ない・・・帰ってくるんじゃなかったの」

みさお「この様子だと、柊の妹・・・復活してないな」
みゆき「そうなると、記憶はつかささんの復活とは何の関係もなかった・・・これが結論です」
かがみ「私ね、皆とは別に色々試していた、お父さんに呪術関係の事を聞いた、黒井先生につかさの事を聞いたりした、図書室や図書館でも関係しそうな本を
    読んだ、だけど何も分からなかった・・・・もう万策尽きたわ」
あやの「そうね、もう私達に出来ることはないわね」
みなみ「私達はこの世界で一生過ごす以外に道はない」
みさお「まだあるぞ、最後に残った方法が」
ゆたか「ノートを燃やしちゃうって・・・田村さんのノートだよ、それに唯一残ったつかさ先輩の居た証拠なのに」
ひより「私は・・・別にそれでも、一番最初に思いついた方法なので・・・でもこれは満場一致でないとできないっス」
こなた「それじゃ多数決をとるよ、ノートを燃やしていいと思う人手を上げて」
66 :つかさのネタノート 28 [saga]:2010/01/26(火) 23:46:25.50 ID:hgTk2rc0
 一人、一人、と手を上げていく、すると、かがみ先輩と小早川さんだけが手を上げなかった。
こなた「二人反対だね、燃やすのは止めにして・・・どうする?、二人を説得するわけじゃないけど、このノート、残しても良いことないと思うよ」
ゆたか「私、入学前につかさ先輩に会った時の事が忘れられない、とても親切だった・・・」
かがみ「私は燃やすことは反対しない、でも、せめて卒業の日にして欲しい、それだけよ」
ゆたか「かがみ先輩がそんな事言うとは思いませんでした、つかさ先輩を消したのはかがみ先輩ですよ、私・・・」
目にいっぱいに涙を溜めて、教室を出てしまった。当然のごとく岩崎さんがその後を追った。
かがみ「言われてしまったわね、まさかゆたかちゃんに・・・そうよね、私がつかさを消したと言われても反論できない」
みさお「まあ、程度の違いはあるけど、このくらいの事なら普通の兄弟姉妹ならなくはないよな、その度に誰か消えてたら誰もいなくなっちまうぞ」
あやの「そうね、気にしないで・・・」
かがみ「私もここに居るのは場違いね、帰らせてもらうわ・・・つかさも言ってたっけ、ゆたかちゃん妹みたいだって・・・」
小早川さんに言われたことがこたえたのかうな垂れたまま教室を出て行った。
みさお「おい、まだ話終わってないぞ、どうするんだ、このノート・・・行っちまった、」
みゆき「小早川さん、入学前からつかささんとお会いになってたのですね」
こなた「かがみも会ってるよ、春休みの時、私の家に遊びに来たんだよ」
みさお「いいのかちびっ子、柊思いつめてたぞ」
こなた「ああゆう態度の時のかがみは何言っても無駄だよ、そっとしておこう」
みさお「これから、どうする」
こなた「どうだろ、卒業式後、もう一回ここで多数決取るのは」
みさお「異論なし、あやのは?」
あやの「私も、柊ちゃんには私から言っておく」
みゆき「賛成です」
ひより「同じく」
日下部先輩と峰岸先輩は教室を出て行った。
みゆき「かがみさん、ノート忘れてますね」
ひより「そのノート私が預かりますよ、あ、このノート高良先輩のでしたね」
みゆき「いいえ、そのノートは私が持っていても・・・私も失礼します」
高良先輩も教室を出て行った。私と泉先輩だけが残った。泉先輩は大きく一回ため息をついた。私は泉先輩を見た。泉先輩はまだリボンを付けてる。
ひより「泉先輩まだリボンつけてるっスね、もしかしてまだつかさ先輩の復活諦めてないっスか」
こなた「諦めてないよ、私は今すぐにでもノートを燃やしたいね」
ひより「ノートを燃やすと元の世界に戻れると?」
こなた「そうだよ、それに・・・もし、つかさの記憶が無くなってもこの髪型がつかさ居たって証拠になるからね・・・誰も知らない、私さえも知らない証拠になるけどね」
ひより「私の言った三つ目っスか・・・切ないっスね」
こなた「・・・ゆーちゃんには私から言っておくから、みなみちゃんはひよりんからお願い」
泉先輩は教室を走り去った。そして私だけが残った。

 シミの付いたノートをしまうと教室を見渡した。三年生の教室か・・・。私達はあと二年この学校にいる。
この教室が私のクラスになったらきっとつかさ先輩の事を思い出すに違いない。そう思うと小早川さんのあの行動も大げさじゃないと思った。
つかさ先輩が復活してもしなくてもこの学校につかさ先輩が来ることはもうない。つかさ先輩、卒業の時は笑顔見れるかな・・・いや、泣いちゃってるかな・・・つかさ先輩のことだから。
おっと、長居しすぎた。私も帰るかな。
67 :つかさのネタノート 29 [saga]:2010/01/26(火) 23:47:45.78 ID:hgTk2rc0
 家に帰ってもまだやることがあった、部誌の編集。っと言ってももう殆ど出来上がっていた
あとは提出するだけ。さっさと仕事を片付け、明日の準備をする。鞄を空けるとシミの付いたノートが出てきた。
よく見ると半分以上がシミだ。みごとにコップの中身を全て溢してしまったようだ。頁を開いてみると。うわー字がにじんで読めない。ただでさえ難しい内容なのに・・・
これはかがみ先輩じゃなくても怒るかな・・・。おや、最後の頁、字が違うな・・・ゆきちゃんへ・・・ゆきちゃん、そう呼ぶのはつかさ先輩だけ。
よく見るとこの字、つかさ先輩の字だ。ネタ帳と同じ字・・・
『ごめんなさい、ゆきちゃん。私、飲み物をこぼしてノートをダメにしてしまいました。元に戻そうとしたけど、シミを取ろうとすればするほど
紙が傷んでしまうので手が付けられませんでした。せっかくお姉ちゃんに貸してくれたのに、お詫びのしようがありません。・・・つかさ』
これって、謝罪文じゃないのか・・・。短い文だけどこれを高良先輩にに渡すつもりだったのかな。下手な細工でごまかすよりよっぽどいいかな。
この項にだけ違うシミが付いている。飲み物・・・コーヒーのシミじゃない、丸く色の付いていないシミ・・・これは涙だ。
この謝罪文泣きながら書いたに違いない。思わず私も目が潤んだ。かがみ先輩はこれに気付いていたのだろうか。この話は一切していないから
気付いていないと思った。このネタ帳の他にまだつかさ先輩が残したものが在ったなんて。このシミのノートは最後に皆に見せるかな。
きっとネタ帳と一緒に燃やすことになる・・・。本当に燃やしていいのかな?。今考えてもしょうがない。全ては卒業式後だ。


 卒業式が終わり、卒業生達は学校を後にする。すっかり静かになった校舎。もう誰も居るはずもない三年B組の教室に私達は居た。
始めは行かないと言っていた小早川さんも参加している。欠席すると反対票が無効になるからだと言っていた。多数決の結果は見えていた。
泉先輩が多数決を取ろうとするとかがみ先輩がその前に話があると言って止めた。すかさず私も話したい事があると言った。私は先輩に譲った。
かがみ「悪いわね、先に話させてもらうわ、私は今日の事を家族に話した。そうしたらお母さんがこれを渡してくれた」
そう言うと小さな箱を机の上に置いた。
みゆき「何ですか」
かがみ「つかさのへその緒よ・・・もしノートを燃やしてつかさが帰って来なかったら一緒に燃やしてって・・・これが私達家族の答え、家族もつかさを元に戻そうと
    いろいろ試したみたい、結果は見ての通りよ、父、母、姉に代わってお礼を言うわ、みんなありがとう」
みゆき「柊家はノートを燃やす事に異論はないと・・・」
かがみ「そうよ、どんな結論が出てもそれに従うわ」
この発言に小早川さんはかなり動揺している様子だった。
こなた「ひよりんは何の話かな」
ひより「私はこの前のシミノートを預かったのですが、家で中を見ていると、つかさ先輩が書いた頁が見つかったので皆に見てもらおうと持って来ました」
つかさ先輩の書いた頁を開いて机の上に置いた。皆は机に寄ってきた。
みゆき「これは・・・」
こなた「つかさの字だ・・・」
あやの「謝罪文・・・みたいね」
ゆたか「つかさ先輩、かがみ先輩に追い詰められてこんなことまで、かがみ先輩・・・・」
小早川さんが言うのを止めたので私はかがみ先輩の方を向くと、かがみ先輩はノートを見ていなかった。
かがみ「私はわざとこのノートを置いていった、やっぱり見つけてくれたわね、でも私の見てもらいたかったのは謝罪文じゃない、そのノート、頁が全部捲れるでしょ、
    紙は濡れるとくっ付いちゃうよね、つかさはくっ付かないように一頁、一頁、丁寧に乾かしたのよ、それににじんだ字は分かる範囲で修正してある」
私はそこまで気が付かなかった、小早川さんは頁を捲って確認している。
かがみ「つかさはねああ見えて自分が納得しないと誰の言う事も聞かない子でね、私と同じ高校に行くと言った時もそうだった、だから私が怒らなくてもつかさはそうたわよ」
みさお「それじゃこのノートも家族は知ってるのか」
かがみ「私がつかさにした仕打ち、家族は知っている・・・だからそのノートも踏まえて焼く事を決意したのよ、焼いたらどうなるか分からない、
    うまくいけばつかさは助かるかもしれない、今のままかもしれないし、もっと違う事が起きるかもしれない、ただ私達は選ぶ事ができない」
みさお「その話は前にした、もう私は決まってる、いつでも良いぜ、多数決」
こなた「それじゃ、ノートを焼くの賛成の人手を上げて」
全員の手が上がった。
68 :つかさのネタノート 30 [saga]:2010/01/26(火) 23:49:08.41 ID:hgTk2rc0
 ノートを燃やす場所は柊家の庭に決まった。日下部先輩が部活の関係でもう少し学校に残ると言うので燃やす時間は午後7時になった。
そして一度解散した。一年の私達は特に用事はないのでそのまま柊家に向かった。これも縁というのであろうか、駅でかがみ先輩とばったり会った。泉先輩、高良先輩も一緒だ。
こなた「奇遇だねひよりん達、どうせ行く所は同じだし一緒にいくか、かがみの家行くの初めてでしょ」
ひより「そうっスね、あれ、峰岸先輩は・・・」
こなた「峰岸さんはみさきちを待つって」
ひより「へーあのお二人仲がいいんっスね」
こなた「中学時代から仲がいいらしいよ、ね、かがみ」
かがみ「・・・そうね」
気のない返事、かがみ先輩はどうやら小早川さんを意識しているらしい、この前の発言がまだこたえているのだろうか。ふと小早川さんを見ると、彼女も急に話さなくなっている。
岩崎さんの陰に隠れているような、そんな感じに見えた。
こなた「ところでゆーちゃん、賛成したね、どうしたのさ、家でも反対するって言ってたのに」
ゆたか「えっと、・・・」
何か言い辛そうな感じだ。かがみ先輩が居ることを知っててあんな質問を。泉先輩はあえて聞いているのか、それともただの興味本位なのか、全く分からない。
かがみ「ゆたかちゃん、言いたいことがあるなら言った方がいいわよ・・・あの時みたいに・・・あの言葉、胸に響いたわよ」
にっこりと小早川さんに微笑みかけた。
ゆたか「私・・・ごめんなさい、かがみ先輩のご家族がそこまでの覚悟だったなんて・・・それにかがみ先輩・・・あの時何も隠さず話されましたね」
かがみ「嘘ついたって現実が変わるわけじゃないわよ・・・真実をありのまま・・・それだけよ」
いい雰囲気になった。まさか泉先輩これを狙ったのか。
こなた「胸に響いたねー・・・響くほどないくせに」
かがみ「なんだと、あんたに言われたくないわ」
軽く泉先輩の頭を小突いた。
こなた「殴られたーゆーちゃん、たすけてー」
かがみ「子供か、もう電車くるぞ」
小早川さんの陰に隠れて身をかがめる泉先輩。高良先輩はただ黙って見ている。なるほどね。全てこの三人は分かり合ってる。私達はまだこの三人、いや四人の域に達していないな。
みなみ「ゆたか、もう戻った・・・ゆたかが教室を出て追いかけた時、すぐにあんな事言ったのを後悔していた、タイミングが難しい、でも泉先輩のおかげで助かった」
ひより「そうだね、私達、泉先輩達みたいになれるかな」
みなみ「なろうとしてなれる訳じゃない、なってしまってしまうもの、難しい・・・」

 私達はかなり早くかがみ先輩の家に着いた。
かがみ「こなた、そのリボン取りなさいよ」
こなた「この前言わなかった、取らないよ」
かがみ「知らないわよ・・・ただいまー」
かがみ先輩はドアを開いた。奥から何人かが出迎える。
「おかえり、かがみ、あら、皆さんおそろいで・・・泉さん、高良さん・・・覚えているわ、つかさが居たとき、遊びに来たことあった・・・その髪型・・・」
かがみ「ちょっとお母さん、やめてよこんな所で・・・」
この人がかがみ先輩のお母さん・・・かがみ先輩に似ている・・・おばさんは泉先輩の前に近寄り涙ぐんでいる。
また奥から二人来たが同じく泉先輩の前で涙ぐんでしまった。泉先輩も気付いたみたいだったけどもう遅かった。泉先輩は三人に囲まれてしまった。
この二人は姉なのだろう、かがみ先輩、つかさ先輩と似ている。。
おばさんは気を取り直た。私達はつかさ先輩の部屋になるはずだった部屋に案内された。
69 :つかさのネタノート 31 [saga]:2010/01/26(火) 23:50:20.34 ID:hgTk2rc0
ひより「ここがつかさ先輩の部屋・・・倉庫じゃなかったっスか」
かがみ「とりあえず荷物は別の部屋に移した、さすがに全て元にもどせないから何もないけどね、とりあえずここで日下部達を待ちましょ、お茶もってくるわ」
かがみ先輩は部屋を出た。そこに入れ替わるように泉先輩が入ってきた。
こなた「やっと開放された・・・かがみの言った意味がわかったよ」
ゆたか「お姉ちゃん、記憶を戻す作戦でその髪型にしたんだよ、記憶が戻ったかがみ先輩の家族に会えばどうなるか・・・」
みゆき「そうですね、これで泉さんの作戦の有効性が証明されました」
こなた「なんだ、みんな知ってたのか・・・かがみもはっきり言わないから・・・」
ひより「所で、泉先輩の所にいたお二人は誰っスか、かがみ先輩のお姉さんなのは分かるけど・・・」
こなた「ああ、ひよりん達はまだ知らないか・・・私も直接話したことはなんだど・・・あれ、みゆきさん覚えてる」
みゆき「確か・・・釣り目の方が長女のいのりさん、そして垂れ目の方が次女のまつりさんだと・・・」
ゆたか「まつりさん・・・つかさ先輩に似てますね」
かがみ「性格はぜんぜん違うけどね・・・」
お茶とお菓子を持ってかがみ先輩が入ってきた。
「誰の性格がぜんぜん違うって、聞き捨てならないな」
かがみ「げっ、まつり姉さん、いつの間に・・・」
かがみ先輩のすぐ後ろにまつりさんが居た。そしてすぐにいのりさんもやってきて、私達は学校でのつかさ先輩の話を、がかみ先輩姉妹は家でのつかさ先輩の話を
交換するように話し合った。つかさ先輩の居ないこの世界で私達の記憶と思い出だけが楽しげに交差した。お互いの欠けた記憶を補填するように。
程なく日下部先輩、峰岸先輩が来ると話は一段と盛り上がった。もうここにつかさ先輩が居るようだった。

ゆたか「もう、時間すぎてますよ・・・」
この一声で皆の会話は止まった。予定の時間はとっくに過ぎていた。
まつり「楽しかった、私は立ち会えないけど・・・つかさもきっと喜んでるよ」
まつりさんが部屋を出た。
いのり「私は立ち会わせもらうわ、準備が出来たら呼んで、かがみ」
かがみ「準備なんてすぐよ、庭で待ってて」
いのりさんは手で返事すると部屋を出ていった。
こなた「さて、私た達も行こうか、ひよりん、ノートは持って来てるよね」
ひより「もちろん、ここに二冊あるっス・・・って両方ともっスか」
みさお「片方残す理由もないぞ、行こう」
私達は部屋をでて庭に向かった。

 みんなを見渡すと暗く沈んでいる。燃やしてしまってどうなるか不安なのだろう。
泉先輩はいまだにリボンを外していない。その表情もなんとなく明るい。日下部先輩もそんな感じだ。
ノートを燃やすことにかなりの期待をしているのが伺える。確かに私も最初に考えた事だし今更ネガティブになってもしょうがないな。

 庭に出ると既にいのりさんが待っていた。そしてその隣りにはおばさんとおじさんもいる。まつりさんは見当たらない、別れ際に言ったことは本当だったようだ。
み き「ここにマッチがあるわ、誰が火を点けるの」
そんなの決めてなかった。皆を顔を見合わせた。
みゆき「火を点ける方はかがみさんの他に居ないと思います」
即答だった。皆は一斉にかがみ先輩に注目する。かがみ先輩はそう予感していたのか、立候補するつもりだったのか、手に持っていた小箱、つかさ先輩のへそ緒を持って
おばさんに向かってマッチと小箱を交換した。
かがみ「お父さん、お母さん、いのり姉さんその箱燃やすことにならないように祈って・・・皆も祈って・・・田村さん、ノートをここに・・・」
私は二冊のノートをかがみ先輩の足元に置いた。
かがみ先輩はしばらく目を瞑るとマッチに手をかけた。
70 :つかさのネタノート 32 [saga]:2010/01/26(火) 23:51:46.77 ID:hgTk2rc0
 何分経っただろうか、かがみ先輩はマッチに手をかけたまま動こうとしない。
かがみ「・・・出来ない、やっぱり私には出来ない」
かがみ先輩はマッチに手をかけるのを止めた。
いのり「私達、決めたじゃないの、今更そんな・・・友達だって納得しないわよ」
かがみ「まつり姉さんだって、最後まで反対してたじゃない、だから・・・居ないんでしょ、分かるわよそのくらい」
いきなり姉妹同士で言い合いが始まった。家族一致の決断じゃなかったのか。私達でさえ一致するのに時間かかった。まして家族ともなれば・・・。
おじさんとおばさんも止めには入らない。
私達はいのりさんとかがみ先輩の言い合いをただ見ていた。
こなた「マッチ貸して、私が燃やす」
痺れを切らしたようにかがみ先輩に近寄り手を伸ばした。
二人は言い合いを止めた。

かがみ「こなた、あんた分かってるの・・・もう二度とつかさに会えないかもしれないのよ・・・」
こなた「今でも充分会えないよ、いいから貸して」
さっきよりも口調がきつくなった。しかしかがみ先輩はマッチを渡そうとしなかった。
かがみ「今になって分かった、私はつかさが居ないとダメだって、小さい頃から世話したのはつかさが私から離れないようにしたかったら、
    なんで消えたのよ、あれだけで、何も言わないで簡単に消えちゃって・・・コーヒー溢したのなんて・・・大したことないじゃない・・・」
そのままノートの前にしゃがみこんで泣き崩れた。
こなた「もういいよ、かがみ、もう、かがみがつかさを必要だってことはもう分かった、もう他に方法ないよ・・・私だってこんな賭け・・・」

 泉先輩も涙を流し始めた。さすがの私も目が潤んできた。確かにつかさ先輩はノートに書いて簡単に消えた。簡単に消えた・・・。

 かがみ先輩は全てを託すように泉先輩にマッチを渡した。泉先輩はマッチに手をかけるとすぐに火を点けた。

 簡単に消えた。つかさ先輩は簡単に消えたんだ。シミの付いたノートに謝罪文を書いている時じゃない。ノートを補修している時でもない、
ネタ帳にったった一言書いただけ、それだけでまるで消しゴムで消したように消えた。

 あれ、消しゴム。私は燃やそうと思う前に確か消しゴムでつかさ先輩の書いた文字を消そうとしたんだっけ。でも消えなかった。
つかさ先輩は言った。私がいなくなったらどうなるか試したいって。かがみ先輩の足をひっぱるから・・・。
かがみ先輩はさっき言った。つかさ先輩が居ないとだめだって・・・。もうこのノートのシミの件は解決している。つかさ先輩の目的はもう果たせた。
私では消せなかった文字・・・まだ一つやっていない事があった。

ひより「火を点けるの待った」
こなた「えっ?」

 叫ぶと同時にノートを見るとメラメラと炎を上げて燃えて上がっていた。
ひより「まだあった、やっていない事、まだ燃やすの早いっス」
それを聞いた泉先輩はノートを手で煽り始めた。かなり慌てていた。
かがみ「ばか、煽ってどうする、砂をかけろ」
二人は足元の土を手で掴んでノートにかけた。途中から小早川さんも参加した。炎はみるみる小さくなった。

こなた「びっくりした」
かがみ「びっくりしたのはこっちだ、まったく」

 皆は私に注目する。
こなた「なんだい、まだやっていない事って」
ひより「いや・・・もう遅いかも、ノートが燃えちゃたらダメっス」
小早川さんがノートを拾った。
ゆたか「シミの付いたノートは半分焼けてる、田村さんのは、表紙が少し焦げただけみたい」
ひより「よかった、小早川さん焼けてない方貸して」
71 :つかさのネタノート 33 [saga]:2010/01/26(火) 23:53:13.84 ID:hgTk2rc0
 ノートを受け取ると私はかがみ先輩に消しゴムを渡した。
かがみ「何・・・これをどうするの」
ひより「つかさ先輩は簡単に消えた、だからもっと簡単に考えて・・・」
ノートを開いてつかさ先輩が最後に書いた頁を開いてかがみ先輩に渡した。
ひより「つかさ先輩が書いた『私が居なかったら』をその消しゴムで消して下さい」
かがみ「何よ・・・そんな事したって、何も変わらないわよ」
ひより「その字、鉛筆で書いた字っス、私では消えませんでした、かがみ先輩はこの字を否定してるっス、今のかがみ先輩なら消せるかもしれません」
かがみ「無駄よ・・・消してどうなるのよ・・・」
みゆき「消しゴムで消すだけです、燃やしたら、それすらも分からなくなります、それでもいいのですか」

 かがみ先輩は黙って消しゴムでこすり始めた。文字は消しゴムで鉛筆の字を消すように消えていく。
かがみ「普通に消えるじゃない・・・何も起きないわよ」

 うーん、よく寝た・・・あれ、私は寝ていたようだ。辺りを見回すとそこは泉先輩の家の居間だった。慌てて私は携帯電話の日付を確認した。
一年西暦が戻ってる。卒業式どころか夏休みが終わったばかり、・・・さっきまでのは、お約束の寝落ちか・・・。
そういえば今日は勉強会だった、小早川さんが買い物から戻ってくるのをまってたんだな。こんなリアルな夢をみるほど人の家で寝てたなんて、徹夜もすこし控えるかな。
ノートが開きっ放しだ。ネタを考えてたんだな。このノートつかさ先輩のネタ帳じゃないか寝ぼけて私のと間違えたみたいだ。
私はノートを鞄にしまおうとした。ノートが少し焦げていた。まさか。
ノートを広げた。私の字でさっきの夢の出来事が綴られていた。タイトルの部分は・・・うっすらと跡が残ってる。かがみ先輩が消しゴムで消した跡・・・
本当だったんだ。夢じゃない、私はつかさ先輩が消える前まで戻ってきたんだ。呪いが解けたみたいだ。つまりつかさ先輩が消える前まで戻った。

 するともうしばらくするとつかさ先輩が来るはず。私のする事は・・・これしかない。さてと、完成させるかな。

『ピンポンー』
そうじろう「いらっしゃい、つかさちゃん、今、こなたは買い物中なんだよ、悪いね、ゆーちゃんの友達の田村さんがいるけど
      ゆーちゃんも一緒でね、お話でもしながら待っててくれるかな」
つかさ「はい、お邪魔します」

 おじさんはつかさ先輩が消えた事を全く知らないみたいだ。他のみんなはどうなのかな。私が覚えているからきっと・・・。

 玄関からつかさ先輩が入ってきた。
つかさ「こんにちは、ひよりちゃん、ひよりちゃんもこなちゃんに用なの」
ひより「こんにちは、私は小早川さん達と勉強会っス」
つかさ「あ、私達と同じだ、偶然だけど、ふしぎだね・・・どうしたのひよりちゃん・・・」
ひより「いや、なんでもないっス」
思わず涙が出そうになってしまった。またつかさ先輩に会えるとは。
つかさ「最近は漫画の調子はいいの?」
思った通りの質問が来た。
72 :つかさのネタノート 34 [saga]:2010/01/26(火) 23:54:31.96 ID:hgTk2rc0
ひより「・・・今回は順調に進んでます」
こう言う以外に選択肢はなかった。ネタ切れなんて言ってつかさ先輩のネタを使わされたら・・・なんて思ってたな
つかさ「私のネタ、使ってもいいからね」
つかさ先輩は私の手に持っているノートを見た。
つかさ「嬉しい、私のノート使ってくれてたんだね」
ひより「これは参考資料に・・・」
つかさ「ひとつネタ思いついたんだけど」
ひより「何ですか」
つかさ「もし、誰か突然居なくなったらどうなるだろうって」
ひより「えっ?」
つかさ「ネタにならないかな、例えば・・・私が突然居なくなるの、そしてそれを誰も気が付かない」
つかさ先輩はノートを取り頁をめくると手が止まった。
つかさ「この字私のじゃない、ひよりちゃんの字だよね・・・小説?」
ひより「そんなところです、漫画にするつもりですけどね」

つかさ先輩は読み始めた。こうなることは何となく分かった。でも、ここからはどうなるか分からない。

つかさ「この小説なんで私のノートに・・・」
ひより「それは・・・つかさ先輩がくれたネタだからっスよ」
またつかさ先輩はノートを読んだ。

つかさ「この子、こなちゃんにそっくりだ」
私を外人から助けた場面だろうか、

つかさ「なんで・・・黙ってたの・・・」
これはかがみ先輩の事だな。

つかさ「何これ・・・これ、昨日の場面と同じ・・・」
ノートにコーヒーを溢した時かな・・・
つかさ先輩は読むのを止め私の方を向いた。目が潤んでいる。
つかさ「・・・私、昨日これと同じような事があったんだ・・・なんで、ひよりちゃん、この小説、私の境遇と同じなんだけど・・・」
73 :つかさのネタノート 35 [saga]:2010/01/26(火) 23:55:50.61 ID:hgTk2rc0
 嘘を言ってもしょうがないし。ごまかしたって意味はない。真実をそのまま語ろう。
ひより「つかさ先輩はそのノートに呪いをかけたんですよ、自分が居なくなった世界を・・・そしてその世界を見てきたっス、今読んでいるのはその世界で起きた事・・・」
つかさ先輩は首を傾げている。
つかさ「どうゆうこと・・・」
ひより「それは、つかさ先輩居なくなった世界の話、さっき言ってたじゃないっスか、それが本当の事になったんっスよ」
つかさ「それじゃ今日、私がここに来た理由も知ってるの、本当の理由を・・・」
ひより「高良先輩に謝る・・・っスか」
つかさ先輩は驚いた様子だった。そしてつかさ先輩は自分の鞄からノートを取り出した。
つかさ「ゆきちゃんのノート、私の不注意でね・・・この小説と同じように・・・・なっ・・・なんで・・・このノート、こんなになっちゃって・・・」
つかさ先輩が持っているノートは半分焦げている。
つかさ「違う・・・こんな事してないよ、これじゃ謝れない・・・ゆきちゃん、お姉ちゃん・・・もう私は謝ることもできないよ・・・」
このノートを見て確信した。私は戻って来た。そして他のみんなも。
つかさ先輩は机の上に焦げたノートを置いて泣き崩れている。
ひより「私、そのノートが焦げた理由をしってますよ・・・」
私はつかさ先輩にネタノートを差し出した。
つかさ「なに・・・」
ひより「最後まで読んでください」
つかさ先輩は黙って受け取り読み始めた。

 ここに戻ってきてからつかさ先輩が来るまでの時間を利用して残りの出来事を書いておいた。言葉では説明できなかったから。つかさ先輩は必ず読むと思った。

つかさ「これ、本当なの・・・」
ひより「燃やしている所は高良先輩も立ち会ってます、だから問題ないっスよ」
つかさ先輩は黙って佇んでいる。
ひより「一度外に出てみませんか、そこには、怒った事を後悔した人が居るはず・・・玄関の呼び鈴を押せないくて・・・この家の前まで来てるっスよ」
つかさ「お姉ちゃんの事?・・・お姉ちゃんは来ないって言った、居るはずないよ、来ないって言った時は絶対に来なかった・・・」
私はかがみ先輩の名前は言ってない。つかさ先輩はもう心では分かっているはず、この小説は事実だったことを。

 扉の開く音が聞こえる。玄関の方から声がした。
こなた「ささ、入った、入った、玄関の前で突っ立てたてて」
ゆたか「そうですよ、上がって下さい」
みゆき「おじゃまします、つかささんはもういらっしゃるみたいですよ」
もう一人、泉先輩の家に入りたがらない人が居るようだ。泉先輩達に見つかってしまったらしい。
ひより「あ、外に出る事はないみたいっス、向こうから来ましたよ」
つかさ先輩は玄関の方を向いた。少し遅れて私も玄関の方を向いた。

 玄関には少女がいる。その手を小早川さんが引いている。その後ろから泉先輩と高良先輩がついてくる。
力で振り払えば小早川さんからならすぐに振り切れる。でもそんな事をしたら小早川さんはただでは済まない。
それを知っている優しい人。小早川さんにひきずられるように居間に案内される。

こなた「つかさ、ひよりんいらっしゃい、一人、入り辛そうにいたから引っ張ってきたよ」
ゆたか「奥へどうぞ」
ひより「おじゃましています・・・」

 つかさ先輩は呆然とその少女を見ていた。小早川さんは更にその少女の手を引き、つかさ先輩の目の前に連れてきた。二人は黙ってお互いを見ているだけだった。
74 :つかさのネタノート 36 [saga]:2010/01/26(火) 23:57:05.03 ID:hgTk2rc0
 高良先輩が机にある焦げたノートに気が付いた。
みゆき「つかささん、このノートは・・・私は全く気にしていません・・・・だから・・・」
泉先輩は自分の口に指を立てて『シー』と高良先輩の方を向いて音を出した。そして私の方を向いて手招きしている。確かに私は邪魔かもしれない。
ゆっくり泉先輩の方に移動した。

つかさ「お姉ちゃん・・・どうしたの、来ないんじゃなかったの」
かがみ先輩はただ黙ってつかさ先輩を見つめる。その目にはいっぱいの涙がたまっていた。
つかさ「どうして黙ってるの」
かがみ先輩はそのままつかさ先輩を抱きしめた。
つかさ「ちょ・・お姉ちゃん、皆が見てるよ・・・」
困惑するつかさ先輩、まだ自分の立場が分かっていないみたいだ。

 その二人の姿を確認するように見届けると泉先輩はため息を一回ついた。
こなた「さて、私の部屋に移動しようか、皆が揃うの待とう」
泉先輩は居間の扉を閉めた。
ゆたか「かがみ先輩達は・・・」
こなた「そっとしておこう、お父さんには居間に入らないように言っておくよ」
みゆき「いいのですか、つかささんに会わなくて・・・」
こなた「つかさには私もいろいろ言いたいことがあるよ、でも、身内が優先するよね、みゆきさんも同じ質問を返すよ」
みゆき「無粋でした・・・」
なんか今までの泉先輩じゃない、高良先輩をさとしているなんて。
ゆたか「高良先輩、みなみちゃんは・・・・」
みゆき「もう来ると思います、私は急いで来ました・・・焦げたノートが気になりましたので」

 泉先輩の髪型は元の長髪に戻ってる。そしてつかさ先輩の消える前に戻っている。つかさ先輩はもう消えない。
全てが元に戻った。でも私たちの記憶はそのまま残ってる。つかさ先輩が消えた世界の記憶・・・。
どうせ元に戻るならこんな記憶は要らなのに。

 ほどなく岩崎さん、日下部先輩、峰岸先輩が来た。
みなみ「・・・このメンバーの集まり、なんかもう恒例のようなきがする」
こなた「私達、もう一回卒業するんだね、なんか変な気分だよ」
みさお「ちびっこ、そういや大学同じだったような気がするけど」
こなた「そういえば・・・そっか私は少なくとも大学に行くことになってるんだ・・・このままでいいんだ」
部屋のドアが突然開いた。
かがみ「どうかな、そんな調子で留年しなければいいけどな、あの世界とはもう違う世界だぞ」
こなた「ちょ・・・かがみ、つかさいつ来たのさ」
かがみ「ついさっきよ・・・気を使わせて悪かったわね、こなたらしくない・・・けど、ありがとう、おかげで話ができた・・・」
かがみ先輩は私の方に向いた
かがみ「つかさはほとんどの話を田村さんから聞いたって・・・流石ね」
ひより「いやあ、そう言われると照れるっス」
かがみ「ほら、つかさ、何か言いたい事あるんでしょ」
かがみ先輩に隠れるようにしていたつかさ先輩を部屋に引き入れた。つかさ先輩はしばらく俯いてなにも話そうとしなかった。
75 :つかさのネタノート 37 [saga]:2010/01/26(火) 23:59:00.92 ID:hgTk2rc0
つかさ「みんな・・・ありがとう、私が知らない間に大変な事になってたみたいで・・・ひよりちゃん、私を最初に思い出してくれたんだね」
私にネタノートを渡した。そのまま高良先輩の元に向かった。
つかさ「このノート、私が汚して・・・」
みゆき「そのノートは復習するために別のノートに全て写してあります、貸すではなく差し上げるべきでした、なにも気にすることはありません、
    余計な気遣いをさせたのは私です、そのノートはつかささんの手で破いて下さい・・・」
かがみ「みゆき・・・何故今になって・・・」
みゆき「かがみさんからこのノートの話を聞いた時、つかささんの消えた原因は私のノートだったことに気付きました・・・でも・・・話せませんでした・・・すみません・・・すみません」
何度も謝る高良先輩。かがみ先輩もそれ以上聞かなかった。でも私は知っている。このノートがなかったらネタ帳が焦げてしまった事を、高良先輩のノートはつかさ先輩のノートを守った。

つかさ「それじゃゆきちゃん、破るよ・・・」
半分焦げたノート、コーヒーも被っている。ノートは簡単に破れてしまった。泉先輩がごみ箱を差し出した。
かがみ「あっけないわね、こんな物の為に私は・・・」

つかさ「こなちゃん・・・私は知ってるよ、こなちゃんはお姉ちゃんの記憶を戻そうとして髪形を私と同じにしたんだよね・・・」
今度は泉先輩の元に。私の書いた事なのか、かがみ先輩が話したことなのかは分からないけど知っていた。
つかさ先輩も泉先輩の長髪の理由は知っていると思われる。しかし泉先輩はそんなつかさ先輩の質問にいつもの調子で話す。
こなた「まあね、見てごらん、髪は元通りだよ、だからもうその話はしなくていいよ」
つかさ「でも・・・」
こなた「つかさ、やっぱりかがみの妹だよ、まったく同じ反応して、つかさ達が思ってるほど髪の毛に執着してないよ」
みさお「柊の妹、ちびっ子がそう言ってるんだ、あまりしつこいと逆効果だぞ、それに、柊みたいに一人一人挨拶するのか・・・柊の妹らしくないぞ」
あやの「そうね、妹ちゃんはいつも笑顔だったね、それで私はいいと思うよ」
みゆき「まだつかささんに言っていなかったですね・・・・おかえりなさい」
一同『おかえりなさい』
つかさ「私・・・こなちゃんの家に来ただけなのに・・・何かへんな気分・・・ただいま・・・」
つかさ先輩には短い時間だった。でも私達は半年近い時間を過ごした。このギャップが埋まるのはまだ少し時間がかかりそうだ。
つかさ先輩はしばらく考えていたみたいだったが何かひらめいたようだった。

つかさ「私・・・皆に料理を作りたい、これが私の出来る唯一の事・・・」
みさお「お、柊の妹の料理か・・・食ってみたいな」
みなみ「食べてみたい・・・」
つかさ「こなちゃん・・・台所借りていいかな」
こなた「・・・いいよ、でも、食器とか調味料とかいろいろ必要でしょ、つかさじゃ場所分からないよね、私が手伝うよ・・・」
二人は部屋を出た。
あやの「それじゃ私も手伝う」
みさお「それは止めておいた方がいいぞ・・・」
あやの「なぜ」
みさお「びっ子の顔見てて思い出したんだよな、三年のクラス替えの時の柊を・・・・」
峰岸先輩は上を見て考え込んだ。
あやの「・・・ああ、そうね、あの時の柊ちゃんと同じ」
かがみ「何が同じなのよ・・・」
みさお「一緒のクラスになれなくて悲しそうにしてた・・・でしょ」
あやの「そうそう、柊ちゃんが独占してたから・・・早く会いたいって顔だった」
かがみ先輩の顔が一気に赤くなった。
かがみ「なっ、何言ってるのよ、あれは・・・」
二人は笑い出した・・・それを見ていた高良先輩はクスリと笑っている・・・からかい半分には違いないけど・・これは・・・私の妄想に近いじゃないか・・・すっかり忘れていた・・・。
今頃ににって私の脳裏に妄想が浮かんできた。
みゆき「料理はお二人にお任せしましょう、きっと募る話もあるでしょうから、そうですよね、かがみさん」
かがみ「なんで私に聞くのよ、料理はあの二人に敵わないからどうでもいいわよ」
少しすねてしまった。この反応がまた私の妄想に拍車を掛けた。
ゆたか「どうしたの、田村さん」
小早川さんの声に私は我に返った。自重しないと・・・
76 :つかさのネタノート 38 [saga]:2010/01/27(水) 00:00:17.40 ID:b3P8m.M0

待っている間、私達は雑談やら、思い出話に花がさいた。
日下部先輩と岩崎さんが話している・・・こんな光景は今までなら考えもしなかった。小早川さんとかがみ先輩もか・・・もうすっかりあの時のわだかまりはないみたいだ。
そうこうしているうちにつかさ先輩が私達を呼んだ。私達は台所に向かった。

かがみ「ちょ・・・フルコースじゃないの・・・デザートまで付けて・・・張り切りすぎよ・・・しかもこんなに作って・・・」
こなた「大丈夫、残りはかがみが全て食べてくれるから」
かがみ「こなた、一発殴って良いか・・・」
みさお「おお、うまそうだな、柊の妹が戻った祝いだ・・・」
かがみ「調子いいな、なんの為に私達が集まったか忘れたのか・・・」
みゆき「よいではありませんか、この日くらいは・・・」
かがみ「みゆきまで・・・」
つかさ「お代わりもあるから、沢山食べてね」

 さながら立食パーティのようになってしまった。確かに当初の目的から大きく逸脱していた。かがみ先輩も観念したのかみんなと一緒に食べだした・・・かなり早いペース・・・。
泉先輩が言ったことも強ち嘘ではなさそうだ。そのうちにパーティそのもののように楽しい食事会になった。私は皆とは一歩引いて食事をした。皆を観察するために・・・。

こなた「ひよりん、どうしたんだい、楽しくない?」
私に近づき声をかけてきた。
ひより「いや、今までの私達ならこんなにはならなかったと思って・・・皆変わったっスね」
こなた「変わった?、皆変わってないよ、何も変わってない、ちょっとこうなるのが早くなっただけ」
ひより「言い切ったっスね、特に泉先輩が変わったように見えましたけど」
泉先輩は笑った。
こなた「私から言わせれば、一番変わったのはひよりんだよ」
ひより「私?・・・なぜっスか?」
こなた「つかさのネタ、使おうとしてるでしょ・・・じゃなきゃノートにあの小説書かないよね」
ひより「え?」
使うつもりはなかったけど、今の泉先輩の質問で何となく使いたくなった。
こなた「それに、つかさとかがみを二人きりになってる時も妄想してなかった・・・これは大きい変化だよ」
ひより「妄想してる時の私分かるっスか?、あの二人には気付かれないのに・・・」
こなた「ゆーちゃん達は気付かないだろうね・・・私には分かっちゃうよ」
やばい、泉先輩が近くにいる時は気をつけよう。
こなた「今思ったんだけどね、つかさが消えたのは、つかさ自身の呪いでもない、ましてはかがみでもないと」
いきなりつかさ先輩の消えた事を話し出した。しかも二人は関係ないと言っている。
ひより「じゃ何が・・・まさか高良先輩って?」
こなた「ちがう、目の前に居るじゃん、ひよりんだよ、あの世界はひよりんのが作った世界、つかさが居なかったどうなったかってね、妄想が生んだ世界」
ひより「私・・・」
そう言われるとそんな気がした。私は硬直して動けなくなってしまった。そんな私を見て泉先輩は大笑いをした。
こなた「嘘だよ、う・そ・・・そんなに本気にするなって、さ、一緒にこっちきて食べよう」
・・・確かに泉先輩は変わっていなさそうだ・・・。
77 :つかさのネタノート 39 [saga]:2010/01/27(水) 00:01:49.89 ID:b3P8m.M0
かがみ「こらーこなたー、付き合い悪いぞ、こっちコイ・・・」
いきなり泉先輩を呼びつけた。なんか様子がおかしい、かがみ先輩は顔が真っ赤だ。
こなた「なんだよー、今ひよりんと話して・・・って」
かがみ「いいからこっち来て座れ、だいたい私は初めからそう思ってたんだよ、だらしなくて・・・何度言ったらわかるんだ・・・」
こなた「かがみ・・・なんかおかしいよ、言ってる意味が分からない」
かがみ先輩は泉先輩を隣りに座らせていきなり説教をはじめた。・・・なんか酔っているようにも見える。まさかお酒が置いてあるようには見えないし。あったらまずいよ。
つかさ「こなちゃん、このデザート隠し味でブランデー入れたんだけど、完全にアルコール飛ばしてなかったみたい・・・量も間違ってる」
こなた「うそ・・・かがみ・・・正気になろうよ」
かがみ「正気だ?、私は正気だ・・・」
これは・・・完全に酔ってる。
みさお「柊は酒乱だな・・・」
かがみ「日下部、この前の勉強会のあの態度なんだったんだよ、おまえもこっちきて座れ」
今度は日下部先輩にからみはじめた。もう酔っ払いそのものだ。
あやの「このデザートは食べない方がよさそうね」
みゆき「そうですね、かがみさんが先に食べていただいて助かりました」
こなた「それじゃ私達も助けてよー、かがみも食べすぎだよ、もうデザートに手を出すなんて」
かがみ「なんだと、食べろって言ったのはこなた・・・う・・・おぇー」
こなた「ぎゃー ・・・私に向かって吐くなんて・・・この酔っ払いなんとかしてー」

 面白い、面白すぎる。この人達にはネタがいっぱい詰まっている。
もうなんだか飲み会の様な感じになってしまった。もうこうなってしまったら誰も止められそうにない。
しばらくかがみ先輩はみんなにからんでいたがそのまま机にうつ伏せになって寝てしまった。

つかさ「またやっちゃった・・・私ってだめだよね・・・」
こなた「デザートは私が作ったから・・・やっぱりつかさに任せれば良かったよ、つかさのせいじゃない」
あやの「二人であの量を作るのは大変だったでしょ・・・しょうがないね」
皆は後片付けを始めた。

みゆき「つかささん、もう家に帰られては、家の方もきっと待ち焦がれていると思いますよ」
つかさ「私もそうしたいけど・・・お姉ちゃんが・・・」
かがみ先輩は熟睡しているようだ。当分起きそうにない。
こなた「大丈夫、ゆい姉さんに送ってもらうように言っておくから・・・」
みなみ「その人警察関係の人、未成年の飲酒なんてばれたら・・・」
こなた「ゆい姉さんはそうゆうの寛容だから、OK」
ゆい姉さん・・・そうか成実さんの事か。小早川さんのお姉さん。一度会ったことがある。確かにあの人なら大丈夫なような気がする。

かがみ「つかさ・・・どこに・・・どこなの」
皆はかがみ先輩の方向を向いた。寝言だ。目には涙が流れている。
みゆき「つかささんが戻ってよっぽど嬉しかったでしょうね、もしかしたら、デザートにお酒が入っているのを承知で食べたのかもしれません」
こなた「私はかがみが羨ましいよ・・・行けるならお母さんが生きていた世界に行きたい・・・・・・ごめん、辛気臭くなった・・・着替えてくる」
泉先輩は部屋を逃げ出すように出て行った。泉先輩にも涙がみえたような気がした。
つかさ「やっぱりお姉ちゃんが起きるまで待ってる・・・いいかなゆたかちゃん」
ゆたか「構わないと思いますけど・・・」
つかさ先輩はかがみ先輩を介抱し始めた。
78 :つかさのネタノート 40 [saga]:2010/01/27(水) 00:02:56.64 ID:b3P8m.M0
みさお「勉強会・・・できなかったな」
あやの「ごめんね、田村さん達、関係ないのに巻き込んじゃって」
みなみ「関係ないわけじゃないです・・・」
ゆたか「もう充分関係してますね」
みゆき「明日も休日なので、良かったら私の家で勉強会しませんか、良かったらですが・・・」
つかさ「それならお姉ちゃんも賛成するかも、あのノートの内容が分からないって言ってたし、悔しいって・・・」
あやの「あのノート、よっぽど悔しかったみたいね、妹ちゃんが居ない世界でやけに高良さんを敵視してたみたいだけど・・・この悔しい気持ちだけが残ったのかしらね」
こなた「それはありえあるね、かがみは負けん気強いから・・・」
着替え終わった泉先輩が入ってきた。

 岩崎さんと高良先輩は明日の準備があると言って先に帰った。
こなた「みさきち達はどうする?、確かかがみの家の近所だったよね、かがみ達と一緒に送るけど・・・」
あやの「柊ちゃんいつ起きるか分からないし・・・明日もあるしね」
みさお「今日は帰るよ・・・柊の妹、明日、柊の家に迎えに行くから一緒に行くか」
つかさ「うん、お姉ちゃんに言っておく」
こなた「そう・・・それじゃひよりん、送るよ、このままもう少し居てて・・・かがみ次第だけどね」
ひより「お言葉に甘えまして・・・」

 だいぶ人数が減った・・・いきなり静かになった。祭りの後の静けさのような寂しさががあった。
泉先輩が玄関で日下部先輩達を見送って台所に戻ってきた。つかさ先輩と小早川さんはかがみ先輩の介抱をしている。私は残りの片付けをしていた。
こなた「かがみの様子はどうだい」
つかさ「相変わらず・・・・」
そうじろう「無理せずに泊まっていってもいいぞ、車なんか乗ったらもっと酔いは酷くなるぞ、俺はちょっと締め切り近くでお構いもできんが・・・」
そう言うとおじさんは部屋の方に戻っていった。
ゆたか「無理しなくていいですから、つかさ先輩」
つかさ「ありがとう」
こなた「そろそろゆい姉さんがくる頃だよ、ひよりんももういいよ、片付けありがとう」
私が片づけを終わり、椅子に座った時だった。
かがみ「みんな、すまなかったわね、ぶち壊してしまって・・・」
いきなりかがみ先輩が起きた。
つかさ「お姉ちゃん・・・これ飲んで・・・水だよ」
かがみ先輩は水を一気に飲み干した。そして一回深呼吸をした。
かがみ「こなたには余計な事を思い出させてしまった、そんなつもりじゃなかった」
こなた「そんなつもりって・・・私がお母さんの事を言ったこと?、かがみ起きてたの?」
かがみ「・・・寝言言ったみたいね、その時から意識はあった」
つかさ「お姉ちゃん・・・何で?・・・」
かがみ先輩は急に涙目になってしまった。
かがみ「みゆきが言うように、私は知ってて食べた・・・私は酔いでもしないと居られなかった」
こなた「かがみ、今度は泣き上戸かい・・・もうちょっと酔いを醒まそう・・・」
かがみ「私は正気だ!」
怒鳴った。泉先輩は怯んだ。私、小早川さんも一歩後を引いた。つかさ先輩だけはその場に留まっていた。

かがみ「消しゴムであの文字を消して・・・気付いたらこなたの家の前に居た・・・入れなかった・・・これじゃ前と同じじゃない・・・・
    こなたの家につかさが居る、それは分かってる、でも、入れなかった、こなた達が来るまで」
こなた「まだみゆきさんのノートの事で・・・もうそれはかがみだって・・・」
かがみ「違う・・・そんなんじゃない、つかさが居ない世界で18年も生きていた・・・そこに突然もう一つの世界の記憶・・・
    相反する出来事・・・私は・・・分からない・・・・今、つかさが居る世界にいる、そしてそこにつかさが居る、
    嬉しい・・・だけど、お母さんにつかさが既に亡くなってるって聞いたときの記憶もしっかり覚えてる、
    あの時の悲しさ、空しさ、あれは嘘なの、幻なの、違う、私にとってそれも真実・・・
    みんなが楽しくすればするほど自分が分からなくなって・・・そんな記憶・・・なぜ消えなかった・・・
    みんなは何事もなかったように振舞って、私だけがおかしいのか、こなた、ゆたかちゃん、田村さん、教えて」
79 :つかさのネタノート 41 [saga]:2010/01/27(水) 00:05:11.15 ID:b3P8m.M0
いきなり振られても即答できるような質問じゃない。酔っていて目が虚ろだがしっかりした口調だった。
さすがの泉先輩も冗談でかわせるような余裕はないようだ。かがみ先輩を見たまま固まっていた。小早川さんも同じように固まっていた。
そして私も・・・えっ?。かがみ先輩と目が合ってしまった。何で私なのか。潤んだ瞳で私の目を見ている・・・何も言葉が浮かんでこない。
高良先輩がいてくれたら・・・。

つかさ「おかしくないよ」

 私達はつかさ先輩の方を向いた。
つかさ「私とこなちゃんは外人さんが私に話しかけてこなかったら友達になれなかったかもしれない、同じクラスなのに、外人さんにお礼言わないとね」
まったく的外れな事を言い出した。でもそれで私が答えなくて済んだ。
かがみ「つかさには聞いていない、つかさの居ない世界の話につかさが話しても意味無いでしょ」
かがみ先輩の制止を無視するかのように更に話し出す。
つかさ「こなちゃんとお姉ちゃんが初めて会ったのは、こなちゃんが教科書忘れた時だったよね、私が居なかったから会えなかったんだね、ゆきちゃんとお姉ちゃん、
    委員会でも会ってるはずなのになんで友達になれなかったのかな、ちょっとした事なんだよね切欠って・・・それが私だったら嬉しいな」
かがみ「つかさ、あんた何がいいたいのよ・・・」
つかさ「出会いがあれば別れも・・・お姉ちゃんと私だっていつかは別れる」
かがみ「つかさ、いい加減な事を・・・」
つかさ「私が居なかった世界って私は生まれてすぐに死んじゃったんだよね、お姉ちゃんと別れたんだよ、出会ってすぐに・・・
    これから来る別れの為の練習だと思えば」
かがみ「練習って・・・別れなんてずっと先の話じゃない」
つかさ「そんなの分からないよ、明日、どちらかが死んじゃうかもしれないし」
かがみ「ばか、死ぬなんて軽々しく言うもんじゃないでしょ」
つかさ「生きていればいつか死んじゃう、当たり前のことなのに嫌がるんだね、でも出会いと別れも同じ、そうでしょ、お姉ちゃん」
なんか話がつかさ先輩のペースになってきた。ってかつかさ先輩がこんな話をするなんて。私達はつかさ先輩を固唾を呑んで見守っていた。
つかさ「でも、やっぱり別れはやだよね、悲しいよね、お姉ちゃんの今の気持ち分かるよ、だから おかしくない」
かがみ「そんな事言って・・・答えになってないわよ」
いや、答えになってる。充分すぎるほどに。私にはそう思えた。でもかがみ先輩は納得してない、と言うより納得しようとしてない。
そんなかがみ先輩を尻目に つかさ先輩が静かに話し出す
つかさ「もう黙ってても意味無いよね、私の居ない世界で起きたこと、今の世界でも全く同じことが起きた、私達が生まれるとき、その時はお母さんの命も危なかったんだって」
かがみ「・・・まさか、いつ聞いたの」
つかさ「昨日だよ、お姉ちゃんから見ると何ヶ月も経ってるのかな、お姉ちゃんが寝てからお母さんが私の部屋に入ってきてね、お姉ちゃんの怒鳴り声が
    気になったって・・・本当は二十歳まで内緒だったって、お姉ちゃんには言わない約束で聞いた、
    ほんのちょっと向こうより運がよかったんだね、私達二人とも助かった、ちょっとした違いだったんだろうね、でもその先は全然違っちゃったけどね、
    お母さんからこの話を聞いたらお姉ちゃんが居なかったら私、どうなってたか考えちゃって・・・
    まつりお姉ちゃん、いのりお姉ちゃん二人とも優しいけど学年が違ってるからいつも一緒にはいられないよね、クラスは違ってたけどいつも私の側に居てくれた、
    そんなお姉ちゃんが居ない世界・・・考えられない、考えたくない。一人じゃ何もできないよ・・・私、お母さんの前で泣いちゃったよ・・・子供みたいに・・・」

 ・・・と言いながら本当に子供のように泣いてしまった。かがみ先輩の目はもう虚ろではなくなっている。泣きじゃくるつかさ先輩をただ見つめていた。泉先輩がため息を一回した。
こなた「酔いは醒めた?、かがみ・・・さっきの答えなんじゃないの、今のつかさなんか私がノートを燃やそうとして拒否したかがみと同じだよ」
かがみ「覚めたわよ・・・いままで子供扱いしてた、同じ年なのにね、つかさのイメージは甘えん坊の頃のままで止まってた、だからコーヒーを溢したくらいであんな態度になった、
    どうやら子供だったのは私の方ね・・・もう姉妹ごっこは終わり、ごめん、つかさ・・・」
つかさ先輩はさっきよりも激しく泣いてしまった。

・・・姉妹ごっこか、これからは本当の姉妹ってこと・・・二人は今、初めて出会ったんだ。そんな気がした。
80 :つかさのネタノート 42 [saga]:2010/01/27(水) 00:06:45.02 ID:b3P8m.M0
そうか、つかさ先輩は高良先輩のノートを汚したしたのではなく、ましてはかがみ先輩に怒られたからネタノートに『私が居なかったら』って書いたわけじゃなかった。
おばさんから出産の事を聞いてかがみ先輩が居なくなった世界を想像していたんだ。そして私に合った時に今度は自分が居なくなったら・・・
なんて考えて私にネタとしてノートに書いたのか。もしかしたら、ただかがみ先輩が消すだけで良かったのかな。
最初からかがみ先輩に消しゴムを渡していたらもっと早く戻れたかもしれない。

 つかさ先輩の話から考えるとかがみ先輩の居ない世界も考えられなくもない。かがみ先輩が居なかったらつかさ先輩はどうなってだろうか。
陸桜学園を受験するなんて選んだだろうか。もし選んでいなかったら・・・私は永遠に会うことはできない。さらに、もし、二人とも死んでいたら・・・考えたくもない。
 
 泣きじゃくるつかさ先輩を見て小早川さんが話しかけてきた。
ゆたか「田村さん、つかさ先輩の話聞いてたらみなみちゃんとの出会いを思い出しちゃった」
ひより「なんで?」
ゆたか「あの時、気持ち悪くなってトイレに入った、でも学校にあるトイレはあそこだけじゃなかった、そこに丁度みなみちゃんが来た、ほんの数分違ったら会えなかったし、
    私の調子が良かったらトイレにも行かなかった、こう考えると不思議だよね」
ひより「そうだね、岩崎さんだから声をかけたのかも、私だったら薄情だからスルーしちゃうよ」
ゆたか「そんなことないよ・・・それから、どんなに仲良くなっても、いつかは別れちゃんだね、当たり前のことだけど、こっちの事はあまり考えないよね、
    卒業の時、就職、・・・最後は・・・その時まで私達友達でいられるかな」
ひより「・・・どうだろうね・・・」
私は答えを出さなかった。出せなかった。つかさ先輩達を見ているといい加減な事は言えなかった。

かがみ先輩が頭を両手でおさえている。
かがみ「つかさ、もう泣かないで、頭痛に響くわ」
こなた「かがみ、まだ酔ってるじゃない、二日酔いって言うんだよそれ・・・あれだけ食べれば当然だけどね」
かがみ「言ってくれるわね、そもそもこなたが作り方を間違ってなければこんな事にならなかったんだぞ」
こなた「知ってて食べたくせに・・・」
かがみ「なんだと、こなた、ちょっとここに来て座れ、だいたいこなたは・・・」
こなた「うわー、また酔っ払いの説教だ、就職してもかがみの部下にはなりたくないよ・・・」
かがみ「つかさ・・・こいつ殴っていいか・・・」
つかさ「こなちゃんと、お姉ちゃん・・・面白すぎだよ・・・」

 つかさ先輩が笑った。この世界に戻って初めて見た。つかさ先輩の笑顔。やっと戻ってきた実感がわいてきた。

ゆ い「やっほー、こなた・・・って、なにこれ・・・」
勢い良く戸を開けて入ってきた。私達をみて唖然とする成実さんだった・・・まあちょっと雰囲気は違っているかな。
説明が必要だろうか。そんな心配は無用だった。泉先輩が今までのことを成実さんに話し始めた。

ゆ い「不思議な話だね・・・それでこの子達を送ればいいの」
こなた・ゆたか「お願い」
かがみ・つかさ・ひより「ご迷惑をおかけします」
ゆ い「夜道は危ないからね、私にまかせなさい、さ、送るから・・・」

車の中で・・・
ゆ い「かがみちゃんにつかさちゃん、あの話が本当だとすると、帰ったら大変な騒ぎになるね・・・」
かがみ「・・・多分・・・」
ゆ い「つかさちゃん、甘えられるのも今のうち、帰ったら甘えちゃいなさいよ」
つかさ「はい」
ゆ い「いい返事だ、早く会いたいでしょ・・・行くよー」
81 :つかさのネタノート 43 [saga]:2010/01/27(水) 00:07:51.56 ID:b3P8m.M0
 ここから先はよく覚えていない、あまりに凄い運転だった・・・かがみ先輩が備え付けのエチケット袋を持って唸っていたのだけが印象に残った。

 家に帰るとどっと疲れが出てきた。たいした事をしたわけじゃないのに。
また明日みんなに会えるか・・・何気にネタノートを手にとってみた。
私・・・変わったのかな。泉先輩は人をのせるのうまいからな、真に受けちゃだめだな。
でも、つかさ先輩のネタ・・・使わせてもらいます。この話は面白い。でも今すぐじゃない。私が三年になったら・・・
それにつかさ先輩達が卒業するまで、つかさ先輩達はまだまだいいネタをくれそうな・・・そんな気がした。
アニ研の部室にノート持って行くのは止めるかな・・・三ヵ月後か、それまでに別のネタ考えるしかない。

 今頃柊家ではつかさ先輩を囲んで再会に歓喜しているに違いない。特にまつりさんなんかは抱きついて泣いちゃってるかも・・かがみ先輩は酒酔いと乗り物酔いで潰れているかな・・・
泉家では泉先輩と小早川さんでつかさ先輩の話について語り合っているに違いない。日下部先輩と峰岸先輩、かがみ先輩を置いて帰ったけどかがみ先輩の気持ちを察して先に帰ったのかな。
岩崎さんと高良先輩、明日の準備で忙し・・・明日か・・・おっと妄想はこのくらいにして続きは明日直接聞くか。

そうだ、まだやっていない事があった。これをやっておかないと。私はノートを広げ、かがみ先輩が消しゴムで消した所に上書きをした。

『出会い』

このタイトルがいいね。
あくびが自然と出た。腕を上げて背伸びをした。さてと明日も早いしお風呂に入って寝るか。ノートを閉じ、本棚にしまった。

おやすみ。




82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/27(水) 00:14:31.70 ID:b3P8m.M0
 ひよりメインは初めてです。 正直ひよりの妄想はあまり得意でないので中途半端になってしまった。
あと・・っスの付けかたが難しかった。パティは出したかったけど出せなかった。
反省しっぱなしですが全部読んでいただければ嬉しいです。


15レス目にOのマークが入ってしまいました。もし纏められるとき取っていただけるとありがたいです。この関係で宣言より1レス少なく終わりました。
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/27(水) 01:20:53.96 ID:nlgKEuQo
>>82
口調あたりまま気になるとこはあったけど、細かいことはおいといて
すごく面白かった、乙! 発端から解決方法を見つけるまでの道筋
その中でのそれぞれの苦悩とか感情とか、よく出てたと思う
帰ってきた後もそれだけで終わらないと言うか、書いた言葉の真実とか色々楽しかった

結構なレス数だと思うんだが、それでも一気に全部読んでしまったww
GJした!
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/27(水) 05:13:31.10 ID:6o/NH2E0
 GJ
 さすがはひよりん、妄想的状況に対する適応力が高いな。
 普通だったら、最初はかなり混乱するもんだと思うが。
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/01/28(木) 01:29:15.10 ID:NlGkNO20
ひよりんメインとは珍しいww俺は好きだから嬉しいけど
確かにこなた達の関係ってつかさが中心だったんだよな
お互いが赤の他人っていう関係もまた何か新鮮に感じた
話の流れもまとまってて良かったと思う
久々の長編GJ&乙です
86 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/01/29(金) 21:45:34.74 ID:o1Zz8kAO
ゆたか「友(ひより、パティ、いずみ)よ、君達は何故、悪魔(ヲタク)に魂を売ったのか?!」
ひより「…じゃ私オブラーで」
いずみ「ずるい!じゃ私は爆弾抱えて突撃する」
ひより「パティは…ギルドスかな…」
いずみ「ブッチーじゃないわね…って仙田と月形がいないわね」
ひより「アニ研の先輩にでも…そんで」
こう「誰がビアスなのかなぁひよりん」
やまと「誰がガードノイドなのかしら、ひよりちゃん」
ひより「ギャー!」
みなみ「慣れないネタフリは…しない方がいい…」
87 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/01/30(土) 22:43:39.30 ID:rSj4d6M0
こなた 「 吸血鬼に血を吸われている時って性的な快楽を得られるんだってぇ〜。 」
ゆたか 「 や〜ん お姉ちゃんえっち〜 でも何か見た目的には痛そうだよねぇ〜。 」

いずみ 「 ・・・・・・・・・。 」

ゆたか 「 ・・・ ? 若瀬さんどうかしたの・・・ ? 」

いずみ 「 ・・・・・・うぅ・・・。 」

こなゆた 「 ・・・・・・ ? 」

いずみ 「 うぅ・・・う・・・うあああああああっ !!!! 」

こなゆた 「 !!! 」
ゆたか 「 ど、どうしたの若瀬さん ?! 」
いずみ 「 ううぅ・・・血・・・血が・・・。 」
ゆたか 「 えっ ? ち・・・ ? 」
いずみ 「 ・・・血が・・・吸いたい・・・。 」
こなゆた 「 えっ・・・。 」
いずみ 「 私だけじゃ寂しいわ・・・。 貴女達も私の仲間になってよ・・・。
     私が貴女達の血を吸えば貴女達も私と一緒・・・。 一石二鳥でしょ・・・ ? 」
こなた 「 え、え〜と と・・・とりあえず落ち着こうか・・・ ! そ・・・そのぉ・・・
     若瀬さん・・・ ? 」
ゆたか 「 がくがくがくがく 」
いずみ 「 ・・・ええ・・・。 私は落ち着いてますよ・・・ ? さあ・・・
     観念なさいっ !!! 」
こなゆた 「 ああああああ・・・・ !!! 」


 その後三人は仲良く吸血鬼になりましたとさ。 めでたしめでたし。
88 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/01/31(日) 02:22:30.67 ID:Q4SE4MDO
>>87
で、こなたがかがみに
ゆたかがみなみに噛み付くわけですね?
わかります。
89 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/01/31(日) 10:55:33.59 ID:D3OZ3WU0
もっと色んな吸血鬼ネタが見たいなぁ・・・。
90 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/01/31(日) 13:15:19.87 ID:s57Ubec0
※もういいです
91 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/01/31(日) 15:53:23.29 ID:D3OZ3WU0
そ・・・そんなぁ・・・。
92 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/01/31(日) 18:47:22.10 ID:8RDLJ8A0
浮いた話の一つも出ない人々


こなた「というわけで、第一回私たちに浮いた話が一つも出ないのはなんでだろう考察大会〜」
かがみ「相変わらず唐突だな」


こなた「まず、みゆきさんは、高嶺の花のうえにフラクラなのが原因ってことでいいよね?」
かがみ「まあ確かに、あの副委員長さんも一緒に委員会の仕事をしてて全くそういう素振りがなかったわけじゃないでしょうしね」
こなた「副委員長が建てたフラグをことごとくへし折るみゆきさん。さすがは天然キャラですなぁ」
みゆき「はぁ……そうだったのでしょうか? わたくし全然気づきませんでして」
かがみ「みゆきの場合は、いざとなればお見合いとかで結婚するんでしょうから、将来的には心配ないんじゃないかしら?」
みゆき「親の紹介でということはあるかもしれませんね」
こなた「そんなのつまんないよ。父親の反対を押し切って大恋愛を成就させるとかいう展開を希望したいところなんだけど」
かがみ「それはおまえの勝手な妄想だろ」


こなた「つかさがモテそうなのに告白されないのは、どう見てもかがみが後ろでにらんでるからだよね」
かがみ「どういう意味だ!?」
みゆき「つかささんの家は地元の名士の家柄ですから、かがみさんに限らずご家族のお眼鏡にかなう男性の方でないと、というところはあるのでしょうね。そういう点で、気後れしてしまうのかもしれません」
つかさ「そうなのかなぁ……」
かがみ「婿取りしなきゃならないいのり姉さん以外は、そんなこと気にする必要もないのに」


こなた「かがみの場合は、ツッコミが厳しすぎるからだね。ツッコミ耐性のある人じゃないと付き合ってくのは難しいよ」
かがみ「一概に否定できないのが悔しいわね」
みゆき「かがみさんの場合は、雰囲気もさることながら、学業も優秀ですし、将来は弁護士を目指しておられるということですから、男性の方から見ると気後れしてしまうところはあるのでしょうね。実際、高学歴でステータスの高い職業に就いている女性は晩婚の事例が多いという統計結果もありますし」
かがみ「みゆき〜、鬱になりそうなこと言わないでよ」
みゆき「あっ、すみません。あくまで一般的な話ですから、かがみさんに当てはまるとは限りませんし」
こなた「いや、かがみにはばっちり当てはまると思うね、それ」


かがみ「そういうあんたは、口ではいろいろ言ってるけど、実際のところ恋愛も結婚も興味ないだろ?」
こなた「いきなり核心をついてくるね、かがみんは。まあ、それで当たりだけどね。私の嫁は二次元にしかいないのだよ」
かがみ「胸張っていうことかよ。あんたのせいで、私らまで同類だって思われてるってことはないだろな」
こなた「あっ、それはあるかも」
かがみ「そう思うなら、少しは自重してくれ」


こなた「みさきちの場合は、馬鹿キャラなせいで鈍いから」
かがみ「妙に納得できるな、それ」
こなた「みさきちみたいなのって、体育会系の中じゃ結構モテるはずなのだよ。でも、みさきちは鈍いから全然気づかない」


こなた「ゆーちゃんは、みなみちゃん以上の人格者じゃないと、相手にもならないね」
かがみ「みなみちゃんみたいな親友がいるとなると、それを超える男じゃないとってところはあるわよね」


こなた「みなみちゃんの場合も、ゆーちゃん以上にみなみちゃんを理解できる男じゃないとね」
みゆき「みなみさんにそのような方が現れてくれればいいのですが」
93 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/01/31(日) 18:47:52.55 ID:8RDLJ8A0

つかさ「ひよりちゃんはどうなんだろう?」
こなた「ひよりんは、趣味が恋愛を邪魔してるね」
かがみ「その手の趣味に寛容な男じゃないと無理ってことね」
こなた「いや、そんな聖人君子が彼氏でもうまくいかないよ、たぶん」
かがみ「なんでよ?」
こなた「ひよりんは、あれでいろいろ気を使っちゃうからさ。相手に一方的に負担をかけちゃうような関係って耐えられないと思うんだよね。自分の方から別れを切り出して終わりっことになるんじゃないかな」
かがみ「それなら、むしろ同好の士の方がいいってことか」
こなた「それは最悪だよ。同趣味カップルだと、お互いにこだわりがあるせいで些細なことから大喧嘩になって別れるってパターンが多いしね」


こなた「パティの場合は、私と同じくリアルでの恋愛に興味なしだろうね」
かがみ「異論はないわね」


こなた「黒井先生は、口ではいろいろと言ってても、本気で欲しがってないよね。寂しがり屋のふりしてるけど、実際一人でも生きてける人って感じだし」
かがみ「確かに」


こなた「桜庭先生の場合は、天原先生がいるから男はいらないってのが真相だよね」
かがみ「事実だろうけど、おまえがいうとそっち系の危ない話に聞こえるぞ」


かがみ「むしろ、その天原先生に彼氏の一人もいないというのが、信じられないわね」
みゆき「天原先生は大変格式の高い家柄のお嬢様だとお聞きしますので、その辺りが障害になっているのではないでしょうか?」
こなた「いや、あのらきすた世界ナンバー1聖人君子につりあう男なんて、この世界には一人もいないってのが真相なんじゃないかな? この世界の男のレベルって正直低いしね」
かがみ「おいおい、いくら事実でもそれはぶっちゃけすぎだろ」


こなた「以上、終わり!」
かがみ「終わりも唐突だな」
94 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/01/31(日) 19:07:01.96 ID:lyoRXMSO
ぶっちゃけみんな男運悪いだけで、普通に好きな人出来たら普通に恋愛しそうだけどな

ちょうど恋愛物書いてる最中なんだがPCが完璧にいかれてて頓挫
続き書きたくて血を吐きそうだ
95 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/01/31(日) 21:25:17.48 ID:D3OZ3WU0
トマトジュースがないよ〜
96 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/01(月) 19:29:59.18 ID:LKu3RkDO
こなた「バレンタインキッス☆」
かがみ「唄ってないでさっさと作りなさいよ」
こなた「およ?終わってるよ?かがみんが遅いんだよ」
かがみ「え?だってつかさも」
つかさ「ごめん、お姉ちゃんこれ2つめ…」
こなた「普段の料理スキルがこーゆーとこで表れるんだよね〜」
かがみ「うぐっ……。」
こなた「しかたがない、私が手とり何とり手伝ってあげ」
かがみ「いいわよ!手伝ってもらったら手作りの意味がないでしょ!」

もうすぐバレンタイン
恋なんて私たちには無縁、あの時はそう思ってふざけあっていたけれど今は違う
みんなそれぞれ好きな人ができた、自分の思いを愛情いっぱいに詰め込んだチョコレート受け取ってくれたらいいな


……って、この時はまさか思わなかった、3人同じ人を好きになるなんて




白石「え?」
97 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/01(月) 21:48:56.15 ID:KxJgGxk0
白石はダメ〜ッ !! やはりここは 「 Lily 」 的展開でなければ・・・。
98 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/01(月) 22:22:00.85 ID:AqQlxsSO
同意。ネタでも白石はないわ
99 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/01(月) 22:23:24.21 ID:KxJgGxk0
(^q^)
100 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/02(火) 00:35:01.20 ID:t3KAA060
そういや白石って原作には出てこないな
101 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/02(火) 00:56:33.39 ID:EMS3tgSO
そりゃそうだ
声優の宣伝キャラみたいなもんだし
102 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/02(火) 01:17:25.78 ID:g9e/pu2o
やまとはありだが、白石はないわ
103 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/02(火) 03:36:09.02 ID:i/0icMSO
>>82
今読んだめちゃくそ泣きました。
皆の気持ち、特につかさ、特にノート復元してる時のつかさの心情 を考えたらそら泣くわ
柊姉妹の今出会ったってとこと最後のひよりの“出会い”って書き直すとこ変な声でた
ありがとうありがとうもう何書いてるかわかんね本当いい作品ありがとう
104 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/02(火) 19:29:02.85 ID:pdcuOQAO
>>102
やまと「私は白石と同類…同レベル…」
105 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/02(火) 20:54:09.70 ID:mUyWD1g0
>>104
いやいや、やまとちゃんもいずみちゃんと同じ吸血鬼の仲間だろ。
>>96 の黒魔術によって禁断の白石が召還されてしまったので、
とりあえず白石にはお尻ぺんぺん 1000回 されてもらおう。
106 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/02(火) 22:23:19.10 ID:t3KAA060
結局、モテモテの白石に嫉妬しているだけのような・・・
107 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/02(火) 22:41:08.43 ID:EMS3tgSO
そもそも白石ってモテるのか?
108 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/02(火) 22:53:45.93 ID:t3KAA060
>>107 
>>96の反応に対してのコメントです。
109 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/02(火) 23:09:43.43 ID:mUyWD1g0
恐ろしく驚異的な運の悪さを持つ男が何故モテなくてはならないんだ ?
性格的にも容姿的にも何か全てに置いて 「 超微妙 」 なので
本人には悪いが何となく見ているとムカつく。
110 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/03(水) 00:09:51.81 ID:R6fCo.SO
こなた「あー…だるい…」
かがみ「またあんたは…」
こなた「五月病ってのがあるなら、二月病ってのもあるんじゃないかなってふと思った」
かがみ「…なんだそりゃ」
こなた「受験やら就職やら、将来への不安が今まさに渦巻いて、精神に苛酷なダメージを…」
かがみ「やめい!生々しい!…ってかあんたに将来の不安とかあるの?」
こなた「んー…とりあえず、佐〇急便がちゃんと荷物を届けてくれるかどうか」
かがみ「将来って言わんわ、それ」
111 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/03(水) 00:16:50.15 ID:3OB35EAO
隠し味は愛
かがみ「ほら、チョコよ」
かがみは手作りチョコをこなたに手渡した
こなた「えっ?かがみが?私の為に?」
かがみ「いらないならいいわよ!!わ、悪かったわね!!形がイビツで!!」
こなた「いやいや、味とか形云々の前にかがみが作ってくれたのが嬉しいのだよ」
かがみ「ばっ…バカじやないの!!何を言ってんのよ!!別にそんなんじゃないんだから!!」
こなた「表向きはこう言っているかがみんではあったが、実はとても嬉しいのだ」
かがみ「お前は何を言っているんだ」
つかさ「(言えない…こなちゃんに言えないよ〜…)」ブルブル
それは一体、何なのであろうか?
こなた「つかさ?」
回想
つかさ「あれ?台所の明かりがついてる。何してるんだろ?」
かがみ「♪いつだって、真っ直ぐに走れLOAD OF THE SPEED」
つかさ「お姉ちゃん?」
つかさは台所にいるかがみを覗き見した。その時である!!
かがみ「こなた…こなたハァハァ…隠し味〜、隠し味〜♪こなた…ハァハァ…///」ハァハァ
かがみは何かをしていた。それは一体、何なのであろうか?
つかさ「(お姉ちゃぁぁぁぁん!?何それ、何の隠し味!?)」ガタガタ
回想、おしまい
こなた「どったの?つかさ」
つかさ「(言えない…言えないよー!!お姉ちゃんがあんなモノを隠し味に使うなんて…)」
こなた「…つかさ?」
かがみ「……こなた……ハァハァ……///」ボソ
こなた「ん???」
112 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/03(水) 07:27:26.00 ID:nSYBu6AO
誕生日と黒歴史

たまき「やさこ、誕生日おめでとう!これ私と毒さんから」
こう「ありがと……って今度出来た店の食べ放題券?うれしいけど、なんでまた?」
みく「あれ、アクセサリだったんじゃないの」
たまき「いやいや、『ぱくちゃん』ならこれかなって」
こう「…山さん、怒らないからそのアダ名誰から聞いたか答えてくんない?」
たまき「あっはっは、偶然入ったお店でね〜」
みく「また気まぐれ起こしたのか…」

こう、誕生日おめでとう

113 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/03(水) 21:38:45.09 ID:V63Cfo60
かがみアウトォww
こーちゃんおめでとう
114 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/03(水) 21:55:10.95 ID:s5zSfsDO
みゆき「そうして、節分の時には柊の枝に鰯の頭をつけるようになったんですよ?」

こなた「へーさすがみゆきさん (じーっ」

かがみ「何よ?」

こなた「いや別にぃ」

かがみ「あんた今、私に鰯の頭つけようかなぁってなんて思ってたんじゃない?」

こなた「思ってない思ってない」

かがみ「あんたは嘘つくとアホ毛が小刻みに揺れるのよ」

こなた「Σっ!?え、嘘!」

かがみ「やっぱり思ってたわね」

こなた「あ、ひどい!みゆきさーん、かがみんがね、かがみんがね」

みゆき「まぁまぁ、よしよし」

鬼は外、福は内
115 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 21:20:23.97 ID:JYzt0Rg0
誘導尋問とは・・・
116 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/04(木) 22:27:28.32 ID:5BLzs4Yo
おれもみゆきさんによしよしされたい
117 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 22:40:15.55 ID:LK6GKds0
みゆきさんの胸に顔を埋めたらさぞ気持ち良いだろうなぁ・・・。
何か温かいって言うか・・・お母さんって感じがして・・・懐かしくなったり
甘えたくなったりとても不思議な気持ちになりそう。
あれ・・・ ? ってかみゆきさん何者 ?! ローレライじゃないよね ?
118 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/05(金) 04:44:02.86 ID:FWRgU2SO
こなた「よし、学校でチョコを売ろう」
かがみ「いきなり何を言い出すんだ…」
こなた「いやね、バレンタイン当日に、みゆきさんに売り子してもらったら、チョコ貰えなかった男子が慰みに買っていくかなって」
かがみ「…あのな」
こなた「さらに最初の何個かには、限定版と称してみゆきさんの秘蔵ショットを封入すれば…おおっなんか売れる気がしてきたよっ!」
かがみ「いいから、やめとけ…」

バレンタイン当日

つかさ「こなちゃん、ホントにやるのかな?」
かがみ「まさか…ってかみゆきが引き受けないでしょ」
みゆき「はーい。お買い上げありがとうございます…チョコいかがですかー?」
つかさ「ってゆきちゃん普通に売り子してるっ!?」
かがみ「引き受けたのかっ!?ってかどうやって言いくるめたんだ!?」
こなた「あ、おーい二人共見て見てー。限定版買えたよー」
かがみ「ってお前も買ったのかよ!」
つかさ「こなちゃんが売ってるんじゃなかったの!?」
こなた「だって限定版…」
かがみ「それ設定したのお前だろ!自分で引っ掛かるなよ!ホントその言葉に弱いな!」


みゆき「つかささんも、お一ついかがですか?」
つかさ「え…えーっと…(なんでゆきちゃんこんなに楽しそうなんだろ…)」
119 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/07(日) 15:33:21.47 ID:AZ3XFgAO
まつり姉さん、トランスフォーマーアニメイテッド出演決定記念
かがみ「まつり姉さん、こなたから伝言があるんだけど」
まつり「こなたちゃんから?どんな伝言?」
かがみ「『トランスフォーマーアニメイテッド出演決定オメ』だって…」
まつり「は?トランスフォーマー???」
かがみ「何で私じゃないのよ…私が出てたら、こなたに『かがみーん、トランスフォーマーアニメイテッド出演決定オメ』とか言ってもらえるのに…」ボソボソ
まつり「……かがみ?」
120 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/07(日) 16:14:19.05 ID:Uvj.Zbw0
>>83-85 >>103
感想ありがとうございます。遅れながら御礼を言わせていただきます。
感想を見た自分の方が感動してしまう。
口調の違和感は初作から指摘されています。もう10作目なのに未だに直ってないようです。
これでも原作、アニメを結構見ているのだが・・・まだ見足りないのか。
まとめサイトの呼称リストはすごく重宝しています。今回はフルに使用させて頂きました。

>>119もそうなのだが 何人かsageで投下している。フィルター解除はsagaなんでは?
>>1のテンプレよく見るとsageじゃだめだって書いてあるけどかえってそれが混乱の元となっ
ているような気がする。sage の所は消した方がいいような気がするがどうでしょ?
それともルールが変わってsageでいいのかな?自分でも分からなくなった。????
121 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/07(日) 16:54:51.75 ID:vKW9TkSO
別に間違えてるわけじゃなく、単にフィルターされる言葉が入ってないって分かってるからじゃないかな?


口調に関しては、間違ってたらゴメンだけど、台詞も地文も同じような感じで書いてる気がする。
あまりお勧めは出来ないけど、書いた台詞をキャラの声で脳内再生とかしてみると違和感に気がつくかも。
あとはキャラ毎の特徴を強調するようなルールを作ってみるとか。
俺の場合は、こなたは間延びした感じを出すために台詞の所々を延ばすとか、ゆたかはだよもんを多用するとかしてます。
122 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/07(日) 19:38:27.00 ID:Uvj.Zbw0
>>121
そいえば台詞部分は脳内再生していない。
キャラの特徴を強調するのか。確かにキャラごとのルールは特に決めていない。
その辺りからやり直すか。また一から出直します。ご指摘どうも。
123 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 21:14:03.84 ID:HNlJP9Y0
かがみ 「 おらおら ! 」バシバシ
こなた 「 はひぃ・・・やめてくらはい /// 」ビクビク
かがみ 「 お黙り ! ほらほら ! ここが良いんでしょっ ! 」バシバシ
こなた 「 はああっ !! そ、そんな・・・/// 」ビクビク
かがみ 「 そうだもんね〜、こなたは痛めつけられると感じちゃう変態さんだもんね〜。
     しかも私じゃなきゃダメなんだもんね〜。 そんなエッチな子には
     お仕置きが必要よね〜。 さぁ、覚悟おしっ !!! 」パチンッ !! パチンッ !!
こなた 「 ふぇ ?! は・・・はあああぁぁぁ /// 」ビクンビクンッ !!



いずみ 「 ・・・何なの・・・これ ? 」
パトリシア 「 Ah Izumi. Das ist [ Lilie ] ! HAHAHA !! 」


124 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 12:30:08.63 ID:bXd9ScSO
?????????
125 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 20:33:06.60 ID:JH65o.s0
>>123
??????
分からない。無知なだけなのだろうか、分かる人教えて
126 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/08(月) 20:47:37.97 ID:.LcauASO
エキサイト翻訳してみた

「ああ、和泉。 ダスist Lilie!HAHAHA!」

??????
127 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:03:29.81 ID:7lrJUdwo
ああ、イズミ。これは百合デス!
ってことだろう
128 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/08(月) 21:40:19.02 ID:.LcauASO
まったく百合には見えなんだ
ただのSMだよな
129 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:50:37.63 ID:bXd9ScSO
んだんだ
130 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 23:20:26.93 ID:D9vA6QSO
−つかもうぜ−

こなた「ついにドラゴンボールが七つ揃ったよ!早速、いでよ神龍わたしの願いをかなえたまへー!」
神龍「我が名は神龍。さあ、お前の望みを言うがいい」
こなた「わたしをみゆきさんのような、ナイスバディにしておくれ!」
神龍「その願いは我の力を超えた願いだ」
こなた「………マジで?」



こなた「…ってな夢を見ましてな」
かがみ「…神龍超えるか」
つかさ「…ゆきちゃん凄いね」
みゆき「あ、あの、それはあくまで夢ですから…その、わたしそんなに凄くは…」
131 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 16:58:18.59 ID:wlcNc.Q0
こなた「チョココロネってホラ貝にも見えるよね」
かがみ「いきなりだな。まぁ、見えなくもないが・・・」

こなた「吹いてみたり・・・」フーフー

チョココロネ「ぶおぉ〜〜ぶおぉ〜〜〜」

こなた「え?」
かがみ「は?」

ドシン! ドシン!

かがみ「なに? 地震!?」
こなた「ちょ! 外!!」


 こ な た ん イ ン パ ク ト 登 場 ! !


こなた「なにあれ私――ってうわぁ!」
かがみ「こなた!?」
こなた「飲み込まれ――」
かがみ「こなたぁぁぁあぁぁぁぁぁ」


がんばれコナタン3
柊かがみんの萌え萌え卍がため

好評発売してない!!
132 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 17:23:26.80 ID:IduaRWg0
Gehen heim !!!
133 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/11(木) 20:41:44.63 ID:kuU62EA0
CMww
134 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/12(金) 10:13:24.23 ID:eT0ZBESO
>>122
読み手のくせに生意気かもしれないけど、
他の書き手の人達みたいに会話中に「!」とか「?」使ってもいいかなって思った
例えば、かがみがからかわれて「なんだと」って言うときは「なんだと!?」の方が迫力あったり
「何してるの」って尋ねるときは「何してるの?」とか。つかさとかだったら「何してるの〜?」みたいな
なんかこう、記号がないと会話が淡々としたイメージになるというか。単に俺が想像力不足なのかもだけど…
135 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 15:26:21.30 ID:mmBoSZo0
>>134
俺みたいにその淡々とした感じがいいと思う人もいるし、その辺は好みじゃなかろうか。
136 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 17:49:10.06 ID:6JV4bX20
>>134

 まぁ個人個人書き方も違ってくるし、色々な読み方をしてみれば中々
面白いものが味わえたり出来る訳でゲスよ。 確かに私も会話中に記号を用いた方が
人物の感情が解りやすいので好みだが、内容は面白いし表現の仕方が違ってくれば
また違った雰囲気を楽しめるし・・・。 どちらにせよ >>135 さんの言っている事は
正しいでゲスよ。
137 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 19:08:27.82 ID:9qWeZpU0
>>134-134 
作者ですけど記号より三点リーダを多用しているのを指摘されると思った。
会話の【間】を表現したのですが、それなら文字で正確に表現すべきって言われそう。

漫画とかだと結構使っているからつい使ってしまう。難しい。

138 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 02:32:15.38 ID:xV9cGQA0
話変わるけど、次のコンクールはいつあるんだ
139 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/13(土) 03:44:14.12 ID:o1W1z3A0
3〜4ヶ月ごとじゃなかったかな
この前が11月だったから2〜3月が次ぎじゃないの?
140 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/13(土) 08:49:05.59 ID:o1W1z3A0
コンクールの投票方法を変えようって提案出てるけどどうなんでしょ?
141 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 12:32:13.86 ID:LvbZsESO
反対意見はまだ出てないね
俺は賛成だよ
142 :パー速のローカルルールが変わりました [#fox]:2010/02/13(土) 18:03:46.62 ID:ilWOyvg0
俺も賛成だ
143 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 19:01:48.36 ID:xV9cGQA0
俺も賛成。
問題はそれをどう実現するかだが。
144 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/14(日) 06:40:58.05 ID:hnzzQ.AO
〜色々ショック受けたんで勢いで書いた〜

ひより「委員長、パティから借りたDVD間違ってなかった?私の頼んだやつと間違えたらしくて…」
いずみ「…コレでしょ?はい」
ひより「なんか暗いけど…(ボソッ)家族の前で見たとか?」
いずみ「違うわよ。ただね、中身でね」
ひより「中身?」
いずみ「…ジースタッグが…ブラックビートの部下で…アゲハがニンジャレッドとタイムファイヤーに…星獣剣で斬られて…ドルに…乗り込むなんて…」



ひより「こっちが本物ですよ」
たまき「ありがとひよりん。やっと見れるよ」
こう「なにそれ」
みく「パワーレンジャーワイルドフォースのDVDだって」
こう「あぁ、前に言ってた歴代レッドが出てるやつか」
ひより「委員長が『スパイダーマンの復讐にちがいない』とか呟いてましたけど…」
みく「しょぼい復讐だね」
たまき「毒さん、今度こそ一緒にみよう」
145 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/14(日) 09:01:10.61 ID:ufHQKQSO
投票所を複数作れば良いのかな。
それだったら協力できるよ
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/14(日) 23:52:55.00 ID:vBmXU2Y0
よろしくお願いします。
147 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/16(火) 01:05:02.62 ID:LPlBLYSO
すいません
携帯での投下がどんな感じなのかちょっと試してみます



登校する生徒はほとんどいない、とある日の早朝。
「つかさ、おはよー」
 校門前で見知った背中を見かけた泉こなたは、手を振りながら声をかけた。
「ふえ?…え、こなちゃん?」
声をかけられたこなたの友人柊つかさは、振り返ってこなたの姿を見つけると、微笑みながら挨拶を返した。
「おはよ。今日は早いんだね」
 こなたは少し早足でつかさの隣に並び、二人は連れだって校舎に向かい歩き出した。
「いやー、なんか日の出前に眼がさめちゃってねー…折角だから、教室一番乗りでもやってみようかと思ってね」
「そうなんだ…わたしだったら、もう一度寝ちゃうな」
「つかさはどうしたの?」
「わたしは日直だよ」
「あ、そういやそうだっけか」
駄弁りながら二人は校舎内へと入り、教室の鍵を取ってくると言うつかさと別れ、こなたは一人で教室へと向かった。



失礼しました
148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 18:19:22.53 ID:PP1UdYAO
>>147
なかなか綺麗な文章なんじゃない?
149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 19:30:55.37 ID:V3vtpSQ0
最近何かちょっとページの調子が悪かったなぁ・・・。
「 ページが表示できません 」 っちゅーのが連続で出てきて
閲覧出来んかったわ。 みんなはどうだったえん ?
150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 20:42:47.16 ID:PP1UdYAO
>>149
3連続規制のせいで、ここに書くのは二ヶ月ぶりだったりww
関係ないかww
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 21:17:50.57 ID:V3vtpSQ0
>>150

 何かやらかしたのですか ? はたまた巻き添えを食らったか・・・。
何にせよ現在は正常な状態に戻りまして、安心して閲覧する事が出来まして
ホッとしている次第でございます。 どうも私は定期的にチェックをしないと
気が済まない性格でございまして、不具合が生じていた頃は
「 Wahnsinnig 」 状態でした・・・。

 それにしましても今回のコンクールでは是非 Frau いずみ をお話に
登場させて頂きたい次第でございます。 彼女は容姿が吸血鬼みたいで
とても美しく、そして魅力的です。 性格もまだ何処となく屈託の無いところが
ありまして可愛らしいですね。 お兄さんが羨ましい限りでございます・・・。

 お話の内容は長編の感動ものが好みでございます。
楽しみに待っております。 o(^q^)o
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/21(日) 13:43:31.84 ID:Scdk16SO
↑なんか文に狂気を感じるな…
もしくは4〜50歳くらいの人の文章みたいな
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 17:23:38.59 ID:PfnqBGw0
>>152

 いいえ、私は Dreizehn でございますが ?
何せ私は Wahnsinnig でございますので・・・。
154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:33:46.24 ID:elKxD3c0
初投稿
まとめスレ 1レス物:ネタ系6Pの
=============================================================================
けど、こなたはヤバイ。そんなの気にしない。成長してない。
アルバムの写真とか比較してもよくわかんないくらい変わってない。ヤバすぎ。
成長障害って言ったけど、もしかしたら遺伝かもしんない。でも遺伝って事にすると
「じゃあ、そうじろうの遺伝子はどうなったの?」
=============================================================================
について考えてみた。 電波注意


=====================================================================================

「とある医師の手記」

○月△日

今日は気になる患者が来た。その女性は妊娠検査薬の反応が陽性だったと
いうことで夫と病院に来た。そこまで聞けばただの幸せの絶頂にいる夫婦
である。しかし、その夫婦をみてどうしても違和感をかんじてしまった。その
女性は信じられないほど若く見えた。いや、むしろ幼いと言えるかもしれない。
検査や診察の結果は、陽性。そのことを彼女らに伝えたが、喜んではいたのだが
どこか浮かれない様子。彼女のことをここに記すことにした。

△月○日

三ヶ月検診。彼女らに胎児の性別を知りたいかどうか尋ねたところ。その女性は
「女の子でしょ?」
と即答した。あまりにはっきりと言われたので悔しかったが、その後彼女が夫を
連れずにもう一度来院し
「そう君には内緒で性染色体検査をお願いします。」
と言ってきたので驚いた。あんなこと言っていたのに
「でも夫婦のいずれかが染色体異常の保因者でないと」
「それなら…そうね、私を検査してください」


□月◇日

検査の結果に驚いた。染色体がX一本だったのだ。ターナー症候群。
なるほど、道理でこれほどまで幼く見えるわけだ。要望の通り胎児のほうも検査を
しよう、胸騒ぎはまだするが。

△月×日

胎児のほうも検査の結果、胎児のほうも彼女と同様性染色体がX一本。ターナー症候群
って遺伝したっけ?といってもそんな話は報告されていない。そのことを彼女に話して
みたところ、
「ためしに親子鑑定してみてください。そう君には内緒で。」
何を急に言い出すかと思ったが、ここまで珍しいことが重なると何かあるように思えて
しまう。私はそれを承諾し、作業に取り掛かった。
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:34:23.74 ID:elKxD3c0
□月○日

親子鑑定の結果を一言で言うと、
「これなんてクローン?」
彼女に話したところ、
「やっぱりそうだったんだー。私の家系は先祖代々この姿だったから私が妊娠したら
 そのことについて調べてもらおうとずっと思ったの。生物で単為生殖を習ったとき
 からもしかしたら…とは思っていたんだけど。性染色体の数が奇数になると
 減数分裂ができなくなってそれがそのまま発育することがあるんでしょ?」

私は反応に困った。

「でもそう君には内緒にしていてほしいの。この子を普通の子として育ててほしいから。」

今日は早く寝よう。そしてあとはなるべくこのことを気にしないで接していこう。彼女
の望みでもあるし。

×月×日(数年後)

新聞のお悔やみ欄に彼女の名前を見つけた。それでこのことを思い出した。

彼女の夫はその女の子を彼女の形見とするのだろう。


私にも女の子と同い年の娘がいる。しかし、妻とは私の血が半分入っているだけ差異が
生じている。だからもし妻が死んだとしても別の人格としてみることができるだろう。
もしその「半分の差異」がなくなってしまったら…と考えてしまうと怖くなってしまう。
彼女の上に記してある言葉はそれを恐れていたためであろうか。でも私がそれを考えて
いてもしょうがない。でも、もしその女の子とつながることができたのなら、ちゃんと
その女の子として育てられているか確かめたい。


=====================================================================================

みゆき「何でしょうかこれ…。あれ確か『そう君』って時間移動した時泉さんのお母様が
   言ってたからまさかこれが…」
156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 22:30:31.50 ID:xqfCj6AO
ゆーちゃんを忘れていけない
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 12:23:45.10 ID:tgJSGPU0
 ターナー症候群の主な症状は低身長と無月経ですよね。 確率的には無月経に陥ってしまう
例は何とも言われないような微妙な感じですが、少なくともかなたさんがこなたを産んだ
という事ですと、発病の心配は無いか、もしくはそれ程危険因子を持っていないかという
事になると思われます。

 あ、あと無月経に陥ってしまった場合でも性行為は可能です。
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 17:57:43.78 ID:VOaUa2AO
>>157
性行為についてkww(ry
159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/23(火) 20:20:05.84 ID:wtS0ckAO
こなた「ヤハリソウイウコトカ、かがみんや」
かがみ「一体何なんだ」
こなた「パティのキャラソン『こすぷれノこころえ』のあの歌詞の謎が解けたよー!!」
かがみ「あの歌詞って何よ?」
こなた「『♪狭くて深い〜』ってあるじゃん?狭くて深いのはパティのあ」
かがみ「スト〜〜ップ!!」スパーン!!
こなたは頭をはたかれた
こなた「いたた…何をするのさ、かがみん」
かがみ「ご、ごめん…何か言わせないようにしなきゃいけないと思って」
こなた「何?何を言わせないようにしなきゃいけないの〜?」ニマニマ
かがみ「(こなたハァハァ…じゃなかった、コイツ…ムカつく!!)」プルプル
ひより「泉先輩!!長年の謎がわかったッス!!」
こなた「どったのひよりん」
ひより「パティちゃんのキャラソン『こすぷれノこころえ』の『♪狭くて深い〜』って歌詞の狭くて深いのはパティちゃんのあ」
かがみ「お前もか!!」
160 :こなたは知らない気がする [saga]:2010/02/23(火) 21:36:13.00 ID:mVR.iYAO

こう「…うーん」
ひより「こうちゃん先輩、ED集聴きながらどうしたっスか?」
こう「いや、泉先輩が歌ってるとこなんだけど…なんでキョーダインで泣いてアクマイザー3は平気なのかなぁって」
ひより「確かに泣いてましたけど…アレなんでっスか?」
毒島「キョーダインのラストは主人公二人が敵に特攻したりとか自分達のオリジナルを名前で呼んだりとか、結構泣けるとこ多いんだよ」
ひより「なるほど。ならアクマイザー3は?」
山辺「たしかね〜、ボスは主人公3人が相討ち覚悟の技でなんとか倒すんだけど。裏ボスにその魂を封印されてTHE END」
ひより「駄目じゃないっスか!」
山辺「でもだからこそ悲壮感漂うじゃんか」
こう「だよね。平和党三人の最後とか、残されたダイアナやノッペラーJrとか」
ひより「でもボスが無事なのは」
毒島「いや、倒したけど」
ひより「え゛」
毒島「倒したって。次のヒーローの『超神ビビューン』が」
こう「ああ、一話でアクマイザー3の魂を引き継いだ三人だっけ」


ひより「ってな話を部活でしてまして」
こなた「…(超神ビビューンって何?)」
161 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 21:41:26.30 ID:tgJSGPU0
>>158

 性行為につきましては・・・申し訳ございませんが私自身からご説明するとなりますと
とても恥ずかしい次第でございますのでご自身でお調べになられて頂けないでしょうか ?
面目の次第もございません・・・。

 まぁ・・・現にこなたが生まれたという事でございますので泉夫妻が性行為をしたと
いう事は間違いなく必然的でありますよね。 その他の方々も同じです。
162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/23(火) 22:09:18.33 ID:q7meJw60
口直しのネタ
かがみ「そういえばあんたの髪の毛のアホ毛が直っているのを見たことないんだけど」
つかさ「そうだね〜」
みゆき「言われてみれば…そうですね。いつからだったのですか?」
こなた「お父さんによると髪の毛が生え始めたころからだって。」
みゆき「直そうとは思わなかったのですか?」
こなた「思ったことはあるんだけど、お父さんがどうしても許さなくてずっとこのまんまなんだよね。
    自分でやろうとしたところでどんなワックス使っても直らないし。」
かがみ「ためしに押さえつけてみようか。こなたは私の髪で遊ぶこと結構あるから許してくれるよね?」
こなた「ん〜、いいよ。何か分かるかもしれないし。」
かがみ「じゃあ遠慮なく・・・(あれ?根元のほうがなんかかたい。えいっ。)」


   ガタン
かがみ「今『ガタン』っていわなかったか?」
こなた「…あれ?ここは…こなたの学校?何がどうなっているの?」



みゆき「少しの間目をつぶっていただけませんでしょうか?」
こなた(?)「これでいい?」  ガタン



こなた「…ハァ、あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
    おれはアホ毛をいじられていたと思っていたらお花畑のど真ん中にいた
    な… 何を言ってるのか わからねーと思うが おれも何が起きたのかわからなかった…」
    頭がどうにかなりそうだった…
    テレポートとか臨死体験とかそんなチャチなモンじゃ断じてねぇ
    もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
三人 「…」
163 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/23(火) 22:10:25.77 ID:q7meJw60
↑誤字」が一つ余計
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 23:13:50.22 ID:NVPlpsSO
ヤハリソウイウコトカ!!

こなた=かなた

バーロー「ないないww」
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 07:58:45.29 ID:0wBeosA0
>>164
ヒント:バーロー母の変装技術
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 10:14:47.95 ID:c/yOIyU0
>>165

 え・・・ ? まさかナイトバロンと一緒にいたあのメガネ[ピザ] !?
167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 21:11:26.43 ID:0wBeosA0
>>165
分からない人は「工藤有希子」でググるといいよ
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 21:55:43.55 ID:350p3.AO
あの変装術はキッドの親父直伝だったな
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/25(木) 19:16:32.98 ID:bML2nEU0
>>162の設定使って遊んでもいいよ
170 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/26(金) 09:33:59.26 ID:pDA.Ib60
>>169

 ではお言葉に甘えまして・・・。


かがみ 「 いい加減あんたの雰囲気にはウンザリさせられるわ・・・。 そのアホ毛といい、
     腑抜けた顔といい・・・。 どうも盆暗に見えて仕方がないわ ! 」

こなた 「 そ、そんなぁ・・・ ! 酷いよかがみん ! 」

かがみ 「 顔はまず問題無しとして、問題はそのアホ毛ね ! どうも鬱陶しいわ !
     毟り取ってやる ! 」

こなた 「 毟るって・・・ !? ひいいいぃぃぃっ !? 止めてよぉぉっ ! 」

かがみ 「 Shut up, asshole !!! 」


    ブチリッ !!


かがみ 「 HAっHAっHAっ ☆ 無様な ! 」

こなた 「 ・・・・・・・・・。 」

かがみ 「 ・・・ ? こなた ? どうしたの・・・ ? 」

こなた 「 ・・・あら ? ここは・・・ ? それと・・・何方様でしょうか ?
     そ、そうだ、貴女そう君を知らない ? 」

かがみ 「 げっ !!! な、何と !! こんな秘密があったとは・・・ ! 」


つかさ 「 でも泣き黒子はそのままなんだねぇ〜。 」


こなかが 「 あ・・・。 」

171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/26(金) 21:11:02.85 ID:d.rUH6s0
今さらだけどこのスレ製作速報VIP(クリエイター)に移さね?
こなた「綺麗、興奮するよ…」
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1267010818/l50
もあることだし
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/26(金) 22:13:53.68 ID:gN4xMhg0
どうだろうね? 移しても規制とかが多いと投下し難くなるしね微妙。
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/26(金) 23:11:16.83 ID:d.rUH6s0
>>170

こ「ああ、これですか? 『私』はもぐさでとりました。」
174 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 14:44:25.91 ID:rEwljDU0

いずみ 「 遂に完成したわ・・・ ! フタナリの薬が・・・ ! 」

ゆたか 「 若瀬さん、フタナリってなぁに ? 」

いずみ 「 You don't need to know it・・・. 」

ゆたか 「 ・・・ ? 」

いずみ 「 色々研究して良かったわ・・・。 女性でもこの薬を飲めば半日の間だけ
     男性器と男性生殖器が備わって、女性同士でも性行為は勿論、新たな生命を
     誕生させられる事だって出来るわ ! 子孫に影響される遺伝子も、しっかりと
     二人の遺伝子がそのまま維持され続けられる ! こんなに幸せな事は無いわ ! 」

ゆたか 「 委員長が壊れちゃったよぉ・・・。 」

いずみ 「 今度は猫の遺伝子と人間の遺伝子とを組み合わせて可愛い猫人間を作って
     みようかしら ! 法律的には違法だけど全国のオタク達に夢を与えるんです
     もの ! ・・・ってか、法律が怖くてオタクをやってられますかっての !!
     どっちの薬も試してみたいわねぇ・・・。 フフフ、これでやっと
     泉先輩と・・・。 ・・・・・・ねぇ・・・小早川さん ? 」

ゆたか 「 は、はいいっ !? 」

いずみ 「 今日は泉先輩お家にいらっしゃるかしら ? 」 ニッコリ

ゆたか 「 ( うう・・・。 ど、どうすれば良いのぉぉぉ !? ) 」

175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/27(土) 19:46:29.61 ID:69N7ssAO
Need not to knowwじゃないのか
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/27(土) 20:02:39.28 ID:emSquEAO
>>174
医学用語で「半陰陽」「intersexual」「androgyny」とも言いますな
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 20:15:33.77 ID:9QM7cp.0
>>174
かがみ「その薬を私に渡しなさい」
ひかる「私にも」
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 20:26:46.38 ID:rEwljDU0
>>175 様へ

 劇場版 名探偵コナン 〜瞳の中の暗殺者〜 で白鳥警部が小五郎さんに向かって
仰られた刑事用語ですね。 しかしこれはとても省略した言い方でございますので
正しい英文法とは言えないのでございますよ。
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 20:28:39.58 ID:9QM7cp.0
>>178 You need not know.
かYou don't need to know.
どちらも正しいが前者のほうが会話向き
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 20:46:17.81 ID:rEwljDU0
>>179 様へ

 少し欠けた言い方が素敵ですね。
181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 22:21:07.46 ID:9QM7cp.0
俺も嘘予告作ってみた テラパロ注意

こなた「此処はどこだ。私は誰だ。」

作られたのは偽り

そうじろう「われわれは世界で一番美しいと言われるキャラからお前を作りだした。」

夢を押しつけられた偽りは

こなた「私は今此処にいるだけだ。」

抗うために

こなた「私は何のために生まれたんだ!!」

その力を行使する・・・

かがみく「てやぁぁーーーーーーーーーーっ!」
初音ミク「うわぁ」

ーーー「偽物」が”間違い”で

パティ 「アナタとブカツできてコウエイデスワ」
レナ  「嘘だ!!」

ーーー「本物」が”正しい”のか

拓海  「コース取りが同じ・・・溝落としまで!」
ゆい  「常に相手の前を行けば負けない!」
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 22:21:39.71 ID:9QM7cp.0
上の続き

誰がそう決めた?

みなみ 「agiapnnesimuzioteruketisinnnegakiithgiesseldne」
長門  「eteatutourietisnnekiatawuojiiabnnesonatanaahisatawiniapnnesonosaran」

「偽」の何が悪い?

みゆき&なのは「スターーライトォーー!ブレイカァァァァアアアーーーーーー!!!」

偽りたちは牙を剥く

ふゆき 「いきもの、同じ種類のいきものは自分のなわばりを渡そうとはしません。
     相手を追い出すまで戦います。」

ーーそれが萌えの真理ーー

主(桜藤祭)「俺は、俺の萌えを、俺の仲間を、守る!」
こなた 「パロだらけの私は、キャラですらない!」

ひなた 「同じキャラ同士は、勝ち負けがあるわけ・・・」

白石  「自分で自分をいじめてる」
あきら 「昔の自分を見るなんて・・・」

主   「もうやめてくれぇ!」
こなた 「ヲタはまた萎えを生む!」
主   「やめろおおおおぉぉぉ!」

『らき厨の逆襲』  公開してみろ
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 22:51:41.06 ID:rEwljDU0
 私の様な池沼族もお忘れなく。
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/28(日) 05:37:16.65 ID:926ajEAO
>>181
…どうでもいいが、初音ミクの方がかがみより後に作られてるはずだよな
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/28(日) 16:33:38.74 ID:FlLeMTo0
だれも居ないようなので投下します。9レスほど使用します。
186 :卒業  1 [saga]:2010/02/28(日) 16:34:51.19 ID:FlLeMTo0
今日もだ。お姉ちゃんはまた無断で私の部屋に入ってきている。嫌がらせなのかな。きっとあの時のことをまだ怒っているんだ。

そう、卒業式の前日、学校で何気なく皆と会話しているうちにこなちゃんとお姉ちゃんが喧嘩になった。最初はいつもの事だと思ってたんだけど、
だんだんとエスカレートしてきて私とゆきちゃんが止めに入った。喧嘩の理由を聞くと、一ヶ月前のお弁当のおかずを取った取らないの話だった。
私とゆきちゃんは笑った。そしてこなちゃんの味方をした……。こなちゃんの味方をしたのは冗談のつもりだった。
それ以来お姉ちゃんは私と口をきいてくれなくなった。

 卒業式も終わり短い春休みは三日目になる。私の留守の間、お姉ちゃんは私の部屋に入り何かをしている。もう三回目になる。
何をしているのかは分からないけど、誰かが入って来ているのは分かる。私の部屋だから。
そして、私の部屋に入って来るのはお姉ちゃんしかいない。きっとこなちゃんの味方をしたのを怒ってるに違いない。
お姉ちゃんらしくない。今までこんな事したことないのに。

 私はもう我慢できない。お姉ちゃんの部屋に向かった。部屋の扉は開いていた。私はノックもせずにお姉ちゃんの部屋に入った。
つかさ「お姉ちゃん、さっき私の部屋に入ったでしょ、何してたの?」
お姉ちゃんは机に座っていた。何か本を読んでいるようだった。私の問いにお姉ちゃんは無反応。そんな態度に私は少し頭に来た。
つかさ「お姉ちゃん、私の部屋に入ったのは分かってるんだから、黙ってても無駄だよ」
お姉ちゃんは無反応だった。この態度を見て確信した。やっぱりお姉ちゃんが犯人だ。
いのり「かがみ、最近無断でつかさの部屋に入っているでしょ」
突然後ろからいのりお姉ちゃんの声がした。振り返ると部屋の入り口に立っていた。その声にもお姉ちゃんは反応もせずに本を読んでいた。
いのり「かがみ、聞いてるの」
かがみ「……うるさいわねさっきから、聞こえているわよ」
言うのが気だるそうにゆっくりと椅子に座ったまま振り返った。
いのり「つかさの部屋に入ってるでしょ、勝手に入らない約束したじゃない」
そんな約束してたっけ……。まあいいや、いのりお姉ちゃんはお姉ちゃんの行動をしっていたみたい。
かがみ「私は別に何もしていないわよ」
いのりお姉ちゃんは黙ってお姉ちゃんを睨んでいた。
かがみ「……入った、入っただけ、それだけ」
いのり「いくらかがみとつかさが双子の姉妹でも許されないわよ」
かがみ「分かったわよ、もう黙って入らない、これでいいでしょ」
そう言うと椅子を回転させてまた本を読み始めた。いのりお姉ちゃんは一回大きくため息をつくと部屋を後にした。
私も一言言いたかったけど、いのりお姉ちゃんが一喝してくれたのでもういいと思った。私もすぐににお姉ちゃんの部屋を出た。

 次の日の朝、私はふと目覚めた。空がやっと明るくなった頃だった。春休みだからまだ寝ててもいいけど、たまには早起きもいいかな。
眠い目を擦りながら階段を下りた。居間の方からまつりお姉ちゃんの声が聞こえた。
まつり「ん、つかさが降りてきたかな」
私はそのまま居間に入ろうとドアに手をかけようとした。
かがみ「姉さん、つかさが降りてくるわけないでしょ」
まつり「そうだった、降りてくるわけないね」
お姉ちゃんも居る。しかもあんな事言ってる。私だって早起きする事だってあるよ。そう言いたかった。居間から二人の笑い声が聞こえる。
そういえばまつりお姉ちゃんも最近私を避けているような気がする。どうしてだろう。
まさかお姉ちゃんとグルになってる?。そんな思いが急に浮かんだ。私は居間に入るを止めて忍び足で自分の部屋に戻った。

 しばらくすると階段を昇る音が聞こえた。お姉ちゃんだ。昇る音の間隔が早い、こんなに朝早くからそんなに慌ててどうしたんだろ。
半開きになっていたドアから覗いて様子をみた。お姉ちゃんは外出用の服を着ていてた。こんな朝早くから何処に?。
こなちゃん、ゆきちゃんと会うなら私にも話があっていい。まさかデート?。お姉ちゃんが男の子と付き合ってる?。
いつ男の子と出会ったんだろう?。謎が謎を呼んだ。
かがみ「いってきます」
私の部屋にも聞こえるような元気な声でお姉ちゃんは外に出て行った。
187 :卒業  2 [saga]:2010/02/28(日) 16:35:59.17 ID:FlLeMTo0
 お姉ちゃんは何処にいったのだろう。気になる。いままで一人で出かける時は私に言っていたのに。私には言いたくない場所……。
まだ間に合うかな。私は身支度をしてお姉ちゃんの後を追うことにした。

 とりあえず駅の方向に向かった。まだこの時間なら電車はそんなに来ない。ホームにいるはず。駅の改札口からホームを覗いた。
お姉ちゃんは見えなかった。駅に向かったのではないのかな。
???「どうかしましたか?」
突然後ろから話しかけられた。声では誰かは分からなかった。振り向くと見知らぬ女の子が立っていた。歳は私と同じくらいかな。
私がホームを覗いているのが気になったのか不思議そうに私を見ていた。
つかさ「あっ、なんでもないです……ちょっと人を探して……私と同じ髪の色でツインテールをしている女の子を」
私の返事に少し間を置いて女の子は答えた。
女の子「ああ、その女の子でしたら駅前で立っていたので覚えてるますよ、青い長髪の女の子と眼鏡をかけた女の子と一緒に
     向こうの公園の方向に向かっていきました、待ち合わせですか?」
つかさ「えっ、い、いえ、そんなんじゃないです、ありがとうございました」
私は女の子の教えられた方向に向かおうとした。
女の子「ちょっと」
女の子が私を呼び止めた。私は女の子の方を向いた。
女の子「なんでもないです、呼び止めてすみません」
何か私に言いたいようだったけど私も急いでいたのでそのまま別れた。

 青い長髪の女の子と眼鏡をかけた女の子、私の知っている限りこなちゃんとゆきちゃん。私に内緒でお姉ちゃんに会っている。何で。
私、皆になにか悪い事でもしたのかな。卒業式前の喧嘩まではこんな事なんかなかったのに。私は急に淋しくなってきてしまった。
仲間外れにされたような。いや、もう既に仲間外れだよ。あの時の喧嘩で私が何か悪い事をしたのなら謝るよ。

 公園の辺りをお昼を過ぎるまで探したけど結局お姉ちゃん達を見つける事はできなかった。私は諦めて家に戻った。

つかさ「ただいま」
返事がない。皆出かけているようだ。私はゆっくりと居間の方にむかった。すると二階の方から話し声が聞こえてきた。
時より笑い声もする。お姉ちゃん達だ。どうやら行き違いになっていたみたいだった。家に来るなら私に一言あってもいいよね。
二階に向かうとお姉ちゃんの部屋から話し声が漏れている。とても楽しそうに話している。このまま扉を開けて皆の話しに入りたい。
なぜか入れるような雰囲気じゃなかった。もしからしたら私が勝手にそう思っているだけかもしれない。しかし今朝までの
お姉ちゃんの態度から考えるとそう思うしかなかった。私はお姉ちゃんの部屋の前でただ立って皆の話を聞いているいるだけだった。

こなた「かがみ、そういえばつかさの事なんだけど、もう話してくれてもいいよね」
さっきまでの楽しい会話がこなちゃんのこの一言で止まった。そしてしばらく沈黙が続いた。こぼれるお姉ちゃん達の話を聞いた。
かがみ「話すって、何を話すのよ」
こなた「つかさの死因だよ」
こ、こなちゃん、何言って言ってるの。
みゆき「つかささんが亡くなってもう一周忌、そろそろ私達に教えてくれてもいいかと思います」
ゆきちゃんまで、悪い冗談はよしてよ、私はここに居るよ。私は部屋の扉を開けようと扉に手を掛けた。扉がまるで雲を掴むように透りぬけてしまった。
何度試しても扉を掴むことがが出来ない。え、何、分からない。何がなんだか分からない。
かがみ「それを知ってどうするのよ、そんなの知ったってつかさは帰ってこないわ」
こなた「そんな事分かってる、でも知らないのは気持ちわるいだけ……それだけよ」
かがみ「分かったわよ……つかさは窒息死よ、寝ている時にもどしたみたいで……それが喉に詰まって」
みゆき「……確か、かがみさんが第一発見者と伺っていますが」
かがみ「卒業式の日の朝、最初は朝寝坊だと思った、つかさの部屋から目覚まし時計の音が聞こえた、それでもつかさは起きてこない、
     お母さんが私につかさを起こしに行ってって……つかさの部屋に行ったら、冷たく……寝ているように穏やかだった……
     もういいでしょ、思い出したくない、」
私は叫んだ。私はここに居るって何度も。皆には聞こえないようだった。部屋の扉が開く様子はない。
こなた「つかさの部屋、見れないの?」
188 :卒業  3 [saga]:2010/02/28(日) 16:37:22.70 ID:FlLeMTo0
かがみ「……つかさの部屋は去年まま何もしていない、そして明日まで誰も入らないって家族で約束をした……私はその約束を破って
     つかさの部屋に入ってつかさの為に日記を書いてあげてた、つかさでも近況は知りたいと思ってね、でも昨日いのり姉さんにバレてしまった、
     悪いけど明日まで待って……」
みゆき「明日以降、つかささんの部屋はどうするのですか」
かがみ「……全て処分する」

つかさ「うそ、嘘だよね、皆、私はここにいるよ……まだ生きているよ」
何度言っても皆は気付いてくれなかった。

 私は走って家を飛び出した。走った。とりあえずこれしか私にすることはなかった。
私はもう一年前に死んでいた。死んだことに気付いていなかった。お姉ちゃん達が私を無視してたんじゃなかった。もう私はこの世にいなかった。
自分の部屋のカレンダーは卒業式前日のままだった。ベットも机も椅子も。本棚もその時のまま。そして私も、その時のままだった。

 気が付くと今朝来た公園に立っていた。春の暖かな日差し、子供たちが元気に遊んでいる。私は公園の隅にあるベンチに腰を下ろした。
お姉ちゃんは言った窒息死だって。寝ている間に起きたこと。だから私は死んだことに気付いていなかった。
これからどうしよう。どうしようって言ったって、私、死んでるんだよね。どうすることも出来ない。
私が死んでから一年経ってるってことはお姉ちゃん達、もう大学二年になるんだね。

 公園で遊んでいる子供たちをボーと眺めていた。
『にゃー』
気付くと猫が私に向かってきた。私が見えるのだろうか。
『にゃー』
私の目の前で止まった。触ろうとしたけどやっぱり雲を掴むような感覚、猫を触ることができなかった。
つかさ「猫さん、私が見えるの?」
猫は私の目を見つめている。やっぱり私が分かるみたい。あれ、そういえば今朝、お姉ちゃんを探しているとき駅前で私に話しかけてきた女の子がいた。
なんで彼女は私が見えたんだろう。もう一度会ってみたい。
「猫、犬は幽霊を見ることができるのよ」
突然後ろから声がした。後ろを振り向くと、今朝私に話しかけてきた女の子だった。私はただ彼女を見つめていた。
女の子「やっぱり自分が死んでることに気付いていなかったみたいね、突然死する人はこうなっちゃうのが多いわね」
なんだろう、この女の子、私を見ても何の疑問も持たないで、しかも友達のように話しかけてきて。
つかさ「私を見て怖くないの?」
女の子「別に、怪物じゃあるまいし、それに見た目は普通の女の子にしか見えないわよ」
女の子はクスリと笑った。
つかさ「何で私……幽霊が見えるの?、霊能者?、超能力者?」
彼女はしばらく黙ってしまった。
女の子「そんな所ね、自己紹介遅れたわね、私は榎戸ひろみ」
つかさ「私は……」
ひろみ「柊つかさ……さんでしょ、私は貴女が死ぬ前から知ってるわよ、初めて話すけど他人のような気がしない、よろしくね」
つかさ「よろしく……」
私をしってる?。私は彼女を知らない。私を知っているなら同じ学校?小学、中学、高校、見覚えはない。
つかさ「私、これからどうすればいいのか分からない」
ひろみ「付いてきて」

 そう一言言うと彼女は歩き出した。私は彼女の後を付いていった。公園から少し離れた霊園に案内された。
ひろみ「今朝、探していた人達が来た所よ」
お姉ちゃん達は霊園に来ていた。案内された墓石には私の名前が書いてあった。そして、墓には花が手向けてあった。
つかさ「私の、墓?」
ひろみ「そう、彼女達はここで花を手向けていったわ、そして暫くしてから別の人が来たわよ、夫婦と姉妹」
つかさ「それ、お父さん、お母さん、いのりお姉ちゃん、まつりお姉ちゃん、私、本当に死んだのか、幽霊なんだね」
189 :卒業  4 [saga]:2010/02/28(日) 16:38:57.78 ID:FlLeMTo0
 お姉ちゃん達はこんな所に来ていた。いくら探しても見つからない訳がわかった。
ひろみ「ふーん」
彼女は私をまじまじと見ている。
つかさ「どうしたの、榎戸さん?」
ひろみ「この墓を見て泣き崩れると思ったんだけどね、意外だったな、いつも泣き虫な子だったのに」
まるで私を小さい頃から見ているような言い方だった。そういえば涙が出てこない。
つかさ「私、皆から無視されていたと思ってた。特にお姉ちゃん、卒業式の前日に喧嘩しちゃって、それが原因かと思ってた、
     でもそれは違ってた、私が死んでも、私が生きてるようにしてくれてた、私が死んだことに気付かないくらいに、だから悲しくないよ」
榎戸さんはまたまじまじと私を見た。
ひろみ「普通ね、自分の墓をみると自分の死を悟って天国に行くのよ、それでも天国に行かないのは生前の強い思念が残っている場合ね」
つかさ「強い思念?」
ひろみ「そう、例えば……あの人のように」
榎戸さんが指を指す方向を見ると、男の人が立っていた。顔が青ざめていている。そしてとても悲しそうだ。
つかさ「誰?」
ひろみ「何時しかの戦で亡くなった落武者よ、もう何百年もあそこに居る、もう彼の仲間はもう居ない、それでも彼は助けが来ると信じて待ち続けている」
つかさ「あの人も幽霊なの、何故私にも見えるの?」
ひろみ「幽霊同士は見える」
つかさ「かわいそう、私、祈ってあげてくる」
わたしは彼の方に向かおうとした。
ひろみ「行っても無駄よ、幽霊が祈っても何の効果もない、かえって彼の悲しみを深めるだけ、彼を救えるのは生きている人の祈りか、仲間が来てくれる
     時だけ、墓石も崩れて、仲間も居ない、誰も彼の存在に気付かない、永遠に……」
私は向かうのを止めた。私にそんな思念なんかあるのかな、
つかさ「私にあの人のような思念があるとは思えないんだけど」
ひろみ「そうね、見たところそんな感じはしないわね、でもまだここに居るって事は強い思いがつかさちゃんに在るんだわ」

 強い思い。何だろう。確かに死んで未練のない人なんか居ないけど、まったく身に覚えがない。それよりも榎戸さんって不思議な人。
霊能者っていつも幽霊とお話をしているのかな。それに生きている時の私の事も知ってるみたいだった。私に親しく話しかけてきて。
私は榎戸さんに話しかけようとした時だった。
ひろみ「あっ、もう時間、私、戻らないと」
突然の大声だった。何かを思い出したようだった。
つかさ「戻る?」
ひろみ「約束の時間、公園で待ち合わせ、急がないと」
榎戸さんは慌てて走り出して公園の方に向かっていった。まだ聞きたいことがあったけど待ち合わせがあるんじゃしょうがないね。

 気が付くともう夕方。日は落ちかけて空を真っ赤に染めていた。ここに居てもしょうがない。家に戻るしかない。
落武者の男の人、名前も知らないけど天国にいけますように。そう心の中で祈って霊園を後にした。

 帰り道の途中、公園を通りかかると公園の中央に榎戸さんが立っていた。もう公園に子供たちの姿はない。こんな時間の公園で誰を待っているのかな。
まあいいや、もう会えないかもしれないし、挨拶しよう。私が死んでいることを教えてくれたお礼も言いたい。私は公園に入って榎戸さんに近づいた。
つかさ「あの、榎戸さん、今日はありがとう」
返事がない。ただ公園の外をじっと見つめているだけだった。さっきまでの榎戸さんと様子が違う。
つかさ「あ、あのー」
同じだった。幽霊の私が居たら邪魔なのかな。そうに違いない。このまま帰ろう。
ひろみ「今日も来なかった」
呟くように言った。
つかさ「ごめんなさい、私、邪魔だったかな」
ひろみ「謝ることはないわ……来るはずないわよね」
つかさ「待ち合わせ場所が違ってたとか?」
ひろみ「うんん、来ないことは知ってる、でも待っていないと」
つかさ「もしかして、恋人?」
190 :卒業  5 [saga]:2010/02/28(日) 16:40:21.46 ID:FlLeMTo0
ひろみ「……同性の友達よ、ここで会う約束をした」
つかさ「来ない、みたいだね」
ひろみ「喧嘩したから、来なかった」
喧嘩をした。なんか私と同じような境遇。そう思っていると。猫が私の前にやってきた。さっきの猫だ。榎戸さんはその猫を触ろうとした。
すると、彼女の手は雲のように猫の体を透りぬけてしまった。
つかさ「榎戸さん、まさか……」
ひろみ「喧嘩をした、だから来なかった、そう思ってた、でも違った、来なかったのは私の方だった、喧嘩で渡せなかった
     誕生日のプレゼントを渡すつもりだった、私は時間通りにここに来た、彼女も来た、でも彼女は私に気が付かない、目の前に居るのに、
     私は何度も叫んだ、気付いてくれない、そして日が沈んで……彼女は帰ってしまった……」
つかさ「プレゼント、渡せなかったんだ、仲直りするつもりだったんだね」
ひろみ「自分が持っているのが苦になるからこの公園の倉庫裏にしまっておいた、卒業式の日、ここに来る約束だった、もうその日しか渡すチャンスがなかった、
     でも、約束した本人がこれじゃもうどうすることもできない」
つかさ「霊園で私に教えてくれた事、みんな自分の体験だったんだ、そして榎戸さんが天国に行かない理由なんだね」
榎戸さんは黙って頷いた。
ひろみ「卒業式が終わって下校中の交通事故だった、一瞬だった、痛くも苦しくもなかった、私は自分が死んだことに気が付かなかった、
     公園から家に戻って初めて知った、家族の会話でね」
つかさ「その気持ち、分かるよ、でも私もどうすることも出来ない」

 日はすっかり沈み公園の街灯が点き始めた。公園には犬の散歩をする人が行き交う。犬が私達の方を向いて不思議そうに首をかしげている。
つかさ「もうすっかり暗くなったね」
ひろみ「そうね……」
つかさ「いつまでその友達待ってるの?」
ひろみ「いつまでも、気付くまで」
つかさ「いつまでもって、それじゃ霊園の落武者さんと同じになっちゃうよ」
ひろみ「そうね……」
つかさ「だめだよそんなの、ちゃんと天国に行かないと」
榎戸さんは笑った。
ひろみ「そう言うつかさちゃんはどうなの、貴女だって天国に行ってないじゃないじゃない、私と同じよ」
つかさ「もう一回お姉ちゃん達に会って、別れの挨拶すれば未練なんかないよ」
ひろみ「いいわね、帰る家があって、私の家はもうない、私が死んでから私の家族はこの町を離れてしまった、私はこの公園しか居場所がない」
つかさ「……ごめんなさい」
しばらく沈黙が続いた。公園にはもう誰も居なくなった。とても静かだった。
ひろみ「もう帰りなさい、私が貴女に言う事はもうないわ、いろいろ付き合ってくれてありがとう、もう会うこともないでしょう」
榎戸さんは私に背を向けて歩き出した。
つかさ「何処に行くの?」
ひろみ「倉庫、私の安らぐ唯一の場所」
そう言うと、倉庫の壁に吸い込まれるように消えた。

 私一人公園に残された。渡せなかったプレゼントの側が安らげる場所なのか。なんだか切なくなった。
でも榎戸さんは私の事をちゃん付けで呼んだ。それに私も榎戸さんをただの他人とは思えない。境遇が似てるからかな。
そんな事考えてもしょうがないか。私も帰ろう。そして別れを言おう。あの落武者さんみたいになりたくない。

 家の玄関の前に着いた。ドアは閉まっている。手で開けることはできない。さてどうしよう。そういえば榎戸さんは倉庫の壁に吸い込まれるように消えていった。
私もできるかな。ドアに体当たりをした。何の抵抗もなくドアをすりぬける事ができた。居間から話し声が聞こえる。もう皆帰ってきてるみたい。
居間に入ろうとした。足が止まった。入ることが出来ない。入っても誰も私に気が付かないことは分かりきっていた。
話し声にお姉ちゃんの声がない。きっと部屋に居るに違いない。
二階の部屋にお姉ちゃんは居た。机に向かって何かを書いている。そっと後ろから覗いてみた。難しい法律の本を片手になにか論文ののうなものを書いている
みたいだった。凄いね、さすがお姉ちゃんだ。
扉をノックする音がした。
191 :卒業  6 [saga]:2010/02/28(日) 16:41:49.34 ID:FlLeMTo0
いのり「入るわよ」
かがみ「今、忙しいから後にして」
それでもいのりお姉ちゃんは扉を開けて入ってきた。
いのり「それならそのまま聞いて、お母さんから聞いた、あんたつかさの為に日記書いていたんだってね、何故黙ってたの」
お姉ちゃんの手の動きが止まった。後ろを向いたまま話し出した。
かがみ「どっちにしろ部屋に入っていた事に変わりない、約束を破ったわ、だから黙ってた、それだけよ」
いのり「……つかさの部屋に入らないって約束誰がきめたのかしらね、私も破ってたわよ」
お姉ちゃんは振り返っていのりお姉ちゃんの方に向いた。
かがみ「いのり姉さん、今頃なんでそんな事言うの、もう明日はつかさの部屋を片付ける日なのよ」
いのり「そうね、何故かな、さっき聞いたんだけど、まつりも何度もつかさの部屋に入っているわよ、お父さんもお母さんもね、約束は最初から意味がなかった」
かがみ「意味なんかなかったわよ、最初から分かってた、それより本当に明日片付けちゃうの」
いのり「けじめはつけないとね」
かがみ「そう」
お姉ちゃんはうなだれてしまった。
いのり「明日は友達も来るんでしょ、最後につかさに報告していいわよ、昨日の出来事も含めてね、墓参り行ったんでしょ」
かがみ「これ片付けたら報告する」
いのり「邪魔してわるかった、それじゃ」
祈りお姉ちゃんは部屋を出ようとした。
かがみ「いのり姉さん、ありがとう」
返事をせずそのまま部屋を出て行った。お姉ちゃんはそのまま机に向かって続きを始めた。

 私の為に……嬉しかった。この会話を聞いただけで私は天国に言って良いとおもった。でも明日はこなちゃん達も来るみたいだ。
明日なら皆にさよならが言える。さて、自分の部屋も見納め。壁を透りぬけて直接自分の部屋に移った。こんなに移動が楽だとは思わなかった。
幽霊もそんなに悪くない。
自分の部屋を見回した。私が死ぬ前、そのまま、机も、椅子も、カレンダーも、本棚には教科書とノートがある。もう、それらを使うこともない。

 扉が開いた。お姉ちゃんが入ってきた。レポートが終わったのかな。お姉ちゃんはおもむろに私の椅子に座った。そして本棚から本を取り出した。
見覚えのない本だった。日記帳だ。きっとお姉ちゃんが用意したものだろう。そして頁を開いて語りかけながら書き出した。
かがみ「今日、こなた、みゆきとお墓参りをしたわよ、実はこれが初めて、つかさが死んだなんて未だに信じられなくってね、本当は行きたくなかった、
     こなたがしつこく行こうってね、私もそろそろ現実を見ないといけないし、誘いに乗った……、
     こなた、は相変わらずなにも変わってないわよ、日下部とうまくやってるみたいね、みゆきとは最近あまり会わなくなったわ、
     まあ、学部が学部だし、予想してた通りね、ゆたかちゃん達も三年生になったわね、そうそう、ゆたかちゃんね、こなたの身長より伸びたわよ、
     こなたが悔しがってた、笑っちゃうわね……あっ、いけない間違えた……消しゴムは」
おねちゃんは自分の持ってきた筆箱の中を探しだした。
つかさ「お姉ちゃん、消しゴムなら右の引き出しに入ってるよ」
聞こえないのは分かってたけど思わず言った。引き出し、何だろう。私はこの引き出しに何かを仕舞った。そうだ、思い出した。
卒業式が終わった皆に御守りを渡すつもりだったんだ。ゆたかちゃん達の分も用意したんだった。
お姉ちゃんは立ち上がり私の部屋を出て行った。自分の部屋に消しゴムを取りに行ったのだろう。

 私が今まで天国に行かなかった理由が分かった。引き出しに入っているお守りを皆に渡したい為。お姉ちゃんが戻ってきた。
つかさ「お姉ちゃん、机の右の引き出しを開けて、そこに渡したいものが入ってるよ」
聞こえるはずもない。榎戸さんと同じだ。私は榎戸さんと同じ理由で残っていたんだ。今になって榎戸さんの気持ちと同じになるなんて。

かがみ「つかさ、私、どうすればいいか分からない、いきなり居なくなるなんて、じっとしてると涙がでてくるわよ、今は勉強で気を紛らしているけどね」
お姉ちゃんは書くのを止めて言葉だけになった。
かがみ「喉に詰まらせて死んだ、バカじゃないの、そんなの一回咳き込めば出せるじゃないの、私よりも元気なくせに、呆気なさすぎ……
     ごめん、つかさ、最後に愚痴になってしまったわね、明日はこの部屋の物は全部処分するわ、未練になるから机の中は詮索しないわよ」
机の中を見て欲しい、そうじゃないと私は永遠に天国に行けない。お願い、引き出しを開けて、引き出しを。
192 :卒業  7 [saga]:2010/02/28(日) 16:43:29.31 ID:FlLeMTo0
 ふと気が付いた。寝ていたのだろうか。幽霊も寝るみたい。窓がうっすらと明るい。部屋には私一人。結局お姉ちゃんは御守りを見つけてくれなかった。
もうこの部屋に、家に居たって意味はない。そうだ、どこか遠くに行こう。幽霊なら何処にでも行けそう。私はそう決めて部屋を出ようと……
『ゴン!』
つかさ「ふみゅっ…」
鈍い音が部屋に響いた。私は倒れた。額に激痛が走った。あれ、扉に額をぶつけた。透り抜けできない。私は額を手で押さえて考えた。
もしかして。私は恐る恐る扉に手を伸ばした。扉に手が引っかかった。
音を立てて扉は開いた。これってどうなってるの。部屋を出て階段を下りた。
まつり「おはよう、つかさがこんなに早く起きてきた、珍しいこともあるね」
まつりお姉ちゃんが私を見ている。
つかさ「まつりお姉ちゃん、私、見えるの?」
まつり「つかさ、寝ぼけてるね、それにその額どうしたの、ベットから落ちたんじゃないの?」
まつりお姉ちゃんは笑った。私は生きている。じゃさっきまでのは何だったんだろう。夢なのかな。
みき「これから卒業式でしょ、かがみを起こしてきて」
まつり「つかさがかがみを起こしに行く?、今日は雪でも降りそうだ」
違う、これは夢じゃない。これからそれを確かめる。
つかさ「お母さん、御守り二つないかな、後でお金渡すから」
みき「いきなり唐突ね、御守りは……」
まつり「御守りなら在るわよ、二つでいいの?、持ってくるよ」
つかさ「ありがとう」
私はお姉ちゃんを起こしに行った。

 卒業式が終わると私はさっそく御守りを皆に渡した。こなちゃん、ゆきちゃんは喜んで受け取ってくれた。
そして、こなちゃんがゆたかちゃん、ひよりちゃんに渡してくれるって言ってくれた。
ゆきちゃんも、岩崎さんに渡してくれると言ってくれた。でもお姉ちゃんは受け取ってくれなかった。
自分の家の御守りを改まって貰うこと無いって。お姉ちゃんらしい。だけどそれでもよかった。御守りを渡したいと言う気持ちが伝えられただけで満足だった。

 こなちゃん、ゆきちゃんとも別れて、お姉ちゃんと家路を歩いていいると、
かがみ「ふーん」
私をまじまじと見ていた。
つかさ「どうしたの」
かがみ「いやね、卒業式でつかさ、あんた全く泣かなかったわね、泣くとばかり思ってたけど、高校生ともなるとやっぱり違うわね」
つかさ「私、もっと悲しい事を見てきたから」
かがみ「はぁ?、なに言っているの」
つかさ「あっ、お姉ちゃん、私これから寄り道して行くから、先帰ってていいよ」
お姉ちゃんはまた私をまじまじを見た。
かがみ「そういえば今朝つかさに起こされた、こんな事なかった、つかさ、何か隠しているわね」
つかさ「隠すつもりはないよ、そうだ、寄り道お姉ちゃんも付き合う?」
かがみ「そう言われると行きたくなるわね、これから別に用事もないし」
つかさ「それじゃ付いてきて」

 駅から公園を越えて霊園に向かった。
かがみ「つかさ、こんな所に何の用があるのよ」
私の墓の場所は空いていた。初めてくる所なのに、まったく同じ風景。初めてじゃない。
つかさ「えっと、確かこの辺りだったような……あった」
崩れた石が転がっている。一見するとただの荒地。私は石を拾って積み上げた。
かがみ「何をしているのよ、まったく分からない」
193 :卒業  8 [saga]:2010/02/28(日) 16:45:16.51 ID:FlLeMTo0
つかさ「ここに居る落武者さんの霊を供養してあげるの、落武者さんの墓だったんだよ」
かがみ「墓って、確かにここは霊園だけど、どう見てもそれはタダの石ころにしか見えないわよ」
つかさ「だから忘れられていたんだ、もう何百年も待ってたんだね、落武者さんの家族でも友人でもないけど、生きている人の祈りだよ、」
積み上げた石の天辺に御守りを乗せて祈った。

つかさ「お姉ちゃん、行こう」
かがみ「ん?」
つかさ「どうしたの?」
かがみ「いや、向こうでお参りに来てた人が連れていた犬がやたらこっち向いて吠えてたけど、静かになった」
つかさ「犬は幽霊が見えるんだって、私の祈りで落武者さん、天国に行けたみたい」
かがみ「つかさ、いったい何があったのよ」
つかさ「あと一箇所、寄りたい所があるんだ、いいかな?」

  私は移動中に今までの事をお姉ちゃんに話した。そして、公園に着いた。

かがみ「さっきの霊園はその幽霊の子が教えてくれた?」
つかさ「うん、それで私の体験が本当ならこの倉庫の裏に女の子が用意したプレゼントが在るはずだよ」
かがみ「この倉庫鍵がかかっているわよ、確かめようがないわね」
つかさ「女の子も鍵なんか持ってなかったと思うよ、だから倉庫の中には入れなかったんじゃないかな」
かがみ「ん?屋根の日差し避けの隙間に何か在るわよ」
私は隙間から小さな箱を取った。そしてその箱を開いた。
かがみ「……櫛のようね、鼈甲で出来ているわよ、かなり高価な櫛ね、でもつかさ、この櫛を誰に渡したかったのかしら、分からないんじゃどうしようもないわよ」
箱を閉じて元の場所に戻した。
かがみ「諦めるのね」
つかさ「うんん、違う、やっぱりここで渡した方がいいと思って」
かがみ「渡すって、その幽霊、渡す相手を言ってなかったんじゃないの」
つかさ「言ってないよ、でも分かった、プレゼントの中身を見て誰だか分かった、帰ろう」
お姉ちゃんは釈然としてない様子だった。

つかさ・かがみ「ただいま」
私は家に着くとそのまま台所に向かった。台所でお母さんといのりお姉ちゃんが夕食の支度をしていた。
つかさ「お母さん、お母さんの卒業式の日、公園で誰かと会う約束をしなかった?」
お母さんの動きが止まった。
いのり「お母さん、そんな約束したんだ、卒業式で会うなんて、もしかしてお父さん?」
つかさ「その人、榎戸ひろみ、って人じゃない?」
いのり「女の人か、期待しちゃったじゃない」
みき「誰にも言ってないのに、つかさ、どうしてそれを」
お姉ちゃんは驚いて私を見ていた。
つかさ「私、榎戸さんに会ったから、お母さん、榎戸さんがお母さんと会って何をしたかったか知ってる?」
みき「知らない、知るはずもないわ、彼女は私に合う前に既に……」
つかさ「お母さんが公園に来たとき、榎戸さんも居たんだよ、でも何度も話しかけても気付いてくれなかったって」
お母さんは振り返って私の方を向いた。
みき「日没まで待ったけど来なかった、悪戯、いやがらせ、かと思った、喧嘩をしていたから……家に帰って訃報を聞いて……」
つかさ「榎戸さん、お母さんに渡したい物が在ったんだよ、それでね、今でもお母さんが来るのを待っているよ」
みき「ひろみ!」
お母さんは叫んだ。私は時計を見た。
つかさ「毎日約束の時間になると公園でお母さんを待ってた、そろそろ時間だよ、行こう、公園に、待っているよ」
お母さんは飛び出すように家を出て行った。
194 :卒業  9 [saga]:2010/02/28(日) 16:46:31.39 ID:FlLeMTo0
いのり「あんなお母さん始めて見た、つかさ、なぜそんな事知ってるの」
私に驚きの眼で聞いてきた。
つかさ「後で話してあげる、私、公園に行ってくるよ、お母さん、プレゼントのある場所分からないからね」
玄関で靴を履いているとドアが開いた。まつりお姉ちゃんが帰ってきた。
まつり「さっきお母さんとすれ違ったわよ、なにか慌てるように走って行ったけどどうかしたの?、って皆、何処に行くの?」
後ろを向くとお姉ちゃんといのりお姉ちゃんが出かける準備をしていた。
つかさ「まつりお姉ちゃんも行く?、駅の先の公園、お母さんが向かった所に」

 公園に向かいながら私は全てを話した。お姉ちゃん達は黙って私の話を聞いていた。
まつり「駅の先の公園、そういえば幼い頃、あの公園に行ったことない、お母さん連れてってくれなかった」
いのり「そうね、そう言われればそうかもしれない」
つかさ「人に伝えたいことが伝えられない、これほど辛いことはない、私、今度の体験でそう思った、だから死を恐れるんだね」

 公園に着くとお母さんが公園の中央に立っていた。日は沈み、公園はすっかり静かになっている。
私はお母さんを倉庫の裏に案内した。そして屋根の日差し避けの隙間を指差した。お母さんはすぐに小箱の存在に気が付いた。
つかさ「お母さんの誕生日に用意したみたいだよ、6月12日、卒業式まで渡せなかったんだって、長い喧嘩だったね」
みき「喧嘩ね……何で喧嘩してたのかしらね、今になってはその原因すら覚えていない」
お母さんは小箱を手にとって開けた。
つかさ「これを見て榎戸さんの友達がお母さんだったって確信したよ、お母さんずっと長髪だったでしょ、そのプレゼントが一番お母さんに合うね、
     私の名前をちゃん付けで呼んだ、近所のおばさんが私たちを呼ぶように、榎戸さん、ずっとお母さんを見守ってきたんだ、そして、
     私も助けてくれた、私一回死んじゃったんだよ」
みき「つかさ、もういい、何も言わなくても、分かるわよ、全て……何も言わなくても……ひろみ、ありがとう」
お母さんは小箱を両手で抱きかかえ膝を落として泣き崩れた。私はその場を離れた。お母さんは何度も榎戸さんの名前を呼んでいた。
私は榎戸さんのお礼の代わりに御守りを箱のあった隙間に供えた。

 少し離れたところでお姉ちゃん達は見ていた。私はお姉ちゃん達の所に近づいた。
いのり「まさか、半信半疑だったけど、つかさ、本当だったんだね」
まつりお姉ちゃんとお姉ちゃんはただ黙ってお母さんを見ていた。私もなにか大きな重荷が取れたような気がした。私はそのまま家に帰ろうとした。
かがみ「つかさ、何処へ、お母さんを置いていくの?」
つかさ「そのままそっとしてあげようと思って、榎戸さんとの再会」
かがみ「再会って言ったって彼女、死んでいるんでしょ、つかさは見えるの?」
つかさ「見えないけど、ほら、お母さんの横に猫がいるでしょ、あの猫、お母さんじゃない方向をみているよね、そこに榎戸さんがいるよ、猫も見えるんだよ」
かがみ「霊園の犬と同じって事ね、なんか不思議ね」
つかさ「死んだら思いを伝えられないって言ったけど、今、母さんを見ていると生きていても同じなんだなって思った……お姉ちゃん私、帰ってご飯の支度
     するよ、お姉ちゃん達はお母さんを見てあげてね」
 公園を離れるとお姉ちゃんが追いかけてきた。
かがみ「待って、私も手伝うわよ、但し、戦力になるかどうかは分からないけどね」
つかさ「ありがとう、お姉ちゃんは良いの?、お母さんを見てなくて」
かがみ「いのり姉さんとまつり姉さんがいるから大丈夫でしょ、それより、つかさ、今更なんだけど、御守り……くれないかな」
つかさ「え、お姉ちゃん、要らないって、自分の家の御守りなんか……」
お姉ちゃんが心変わりした理由が分かった。お姉ちゃんに御守りを渡した。
かがみ「これを渡したかっただけなのに、それすらも出来ない、つかさと、榎戸って人の気持ちが少し分かったようなしたから」
つかさ「分かったなら、それで充分だよ、ありがとう、 さて、帰ろう、お姉ちゃん」

 日が沈み空は真っ赤に染まった。ちょっと寒くなった。今日の晩御飯はお母さんに代わりに精一杯作ってあげる。体の温まる料理だよ。
今日は二人の本当の卒業式だね。お母さんが帰ってきた時には榎戸さんはもう天国に行ってるね。
 
 お母さん、榎戸さん卒業おめでとう。


195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/28(日) 16:48:02.64 ID:FlLeMTo0
そろそろシーズンなので書いてみました。
オリキャラありを宣言してませんでした。すみませんです。
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 17:35:53.61 ID:5dq9EkQ0
オリキャラ(゚听)イラネ
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/28(日) 18:32:03.56 ID:.RD5XYMo
乙。
いい話とは思うし、オリキャラもこのくらいならかまわないとは思うけど。
いきなり時間が戻ってつかさが生き返ってることに何の説明もないのがちょっと気になる。
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 19:51:25.69 ID:xkol0.co
>>195
>>197も言ってるがつかさの事の説明と
>>193のみきさんが出て行くあたりにもうちょっと欲しかったかな
でもオリキャラもそんなに気にならなかったし、ストーリーよかったよ! 乙!
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 21:12:30.46 ID:dn/L2kk0
 私ももし死んでしまった場合には幼女を捜し求めて闇夜を徘徊する
ナハトゲンガーになるのでございましょうね・・・。 d(^q^)
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 22:38:10.02 ID:MfDgH.SO
>>199

ただお「極楽浄土ぉ南無阿弥陀仏!!」
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 23:02:49.75 ID:dn/L2kk0
 ぐあああぁぁっ !!!! よくもやりましたね !? こうなりましたら黒いスーツに
黒いロングコート着て徘徊しますよ !? 身長189cmの私に敵う幼女などいなぁい !
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 23:17:10.23 ID:MfDgH.SO
幼女を侮った貴様の負けだ!!!!
このラッキースターは幼女の戦闘力を400倍に跳ね上げる力を持っている!!!!
その力の前ではあらゆる変態を無力化する!!!

いけっ!ゆーちゃん!!
(´・ω・`)つ☆

ゆたか「な、なんだか急に力が……よ、よーし!」


こうして、ゆたかパンチの圧倒的力の前に、変態は跡形もなく消えて行ったとさ

めでたしめでたし
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 23:46:32.85 ID:dn/L2kk0
 ・・・私の敗北でございます・・・。 大人しく年齢が20代前後の身長160〜165cm、
胸はFカップでお尻のあたりまで伸ばした黒いロングヘアーの血液型がO型でほんわか
していてツリ目のゴスロリ服を着た女の子をGETしたいと思います・・・。

 らき☆すた のキャラで例えますと 若瀬いずみ ちゃん。
けいおん! のキャラで例えますと 秋山 澪 ちゃんですかね。

 実は彼女らが私の本当の好みなのでございます。 美し過ぎます・・・。 (^q^)
逆にロリっ娘が趣味なのよりもこちらの方が著しく変態なのかもしれませんね・・・。

 How do you think about what I saying ?
Please tell me about that, Immediatery ! I'll waiting for your answer .

204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/01(月) 00:02:54.22 ID:v/qcaTM0
>>197-198
短くしようとして省きすぎたか。確かに説明不足すぎた。
最低限の説明は必要だったか。オリキャラ出す前にストーリをもっと煮詰めるべきした。
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/01(月) 06:00:14.20 ID:r.OQSAc0
田村ひよりという人物

 田村ひよりがどういう人物かといえば、腐女子である(でもある)というのが、とりあえず適切な表現なんだろうけど。
 ただ、それだけでは言葉が足らないのも事実。
 一般的な腐女子のイメージとは違って、彼女はとても接しやすい人物だ。
 相手にあわせて話題を選ぶし結構気を使うところもあるから、一般人にとっても付き合いやすい。実際、オタク・腐女子・一般人の別を問わず、友人は多い。
 でも、ある程度親しくなってくると感じるのが、彼女との間の距離だろう。彼女は、わずかに半歩ぐらい引いた位置というかそういうのを確保しようとする。間合いというべきか、彼女が適切だと判断したその距離を常に維持し続ける。
 一度その距離が定まってしまうと、それを縮めることは難しい。彼女は、ことさらに意識するまでもなく、自然にその間合いをとるからだ。
 だから、彼女には本当に親友といえるような相手は皆無なんじゃないかとも思える。どんなに親しい相手であっても、最小限の距離はきっちり確保しているから。
 部活の先輩としての私に対しても、親しい友人である小早川さんや岩崎さんに対しても、ディープな部分を共有できるオタク仲間であるパティや泉先輩に対してさえも、彼女はそうだ。


 自分の本当の意味でのプライベートな部分へは誰にも足を踏み入れさせない。そんな態度。
 腐女子であるという自意識が強いからというよりは、むしろ腐女子であることが彼女にとって自分と一体不可分であるほどに自然であるからなんだろうと思う。
 だからこそ、そんな態度を意識するまでもなくごく自然にとる。


 それは、男に対しても変わらない。
 彼女は、オタク男子から見れば、結構理想的な女である。
 オタ趣味に充分すぎるほど理解があって、とっても気が利く付き合いやすい性格で、容姿だって(当人は無頓着だけど)磨けば光るタイプだ。
 だから、密かにモテてるのだが、当人はその方面には興味なさそうに見える。自分が主体となる恋愛関係なんて、最初から想定外なんだろう。
 腐女子にまっとうな恋愛なんて無縁といったところか。これもまた、強く意識するまでもなく、彼女にとってはそれが当たり前なのだ。
 彼女に好意を寄せる男性諸氏にとっては、これは困ったことだった。
 フラグをへし折られるという以前に、フラグを建てることすらできない。充分すぎるほどの間合いがとられてるため、フラグを建てられる距離までなかなか近づけないのだ。
 それでいて、友人・仲間として接するならば、関係はきわめて良好。これは、しんどい。
 たいがいの男子は、それに耐え切れずに諦めてしまう。
 直接フッてしまうよりは優しいのかもしれないが、ある意味では残酷でもある。
 ときどきその距離を強引に突破して直接コクる勇敢な男子もいないではなかったが、彼女から返ってくるのは丁重なるお断りの返事だ。
 今、私の隣の席でズーンと沈んでいる男子(クラスメイトであるとともに、アニ研の仲間でもある)が、ちょうどその犠牲者だった。


「八坂〜。俺の何がいけなかったんだろうなぁ」
「別にあんたに悪いところがあったわけじゃないよ。気にするな」
 いさめにもならない言葉をかける以外にやることもない。
 別に彼の何が悪いわけでもない。誰がコクったって結果は同じだっただろう。
 腐女子にまっとうな恋愛なんて無縁──ひよりにとってのその常識を覆せるほどの男でもない限りは。


終わり
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/01(月) 20:56:36.78 ID:v/qcaTM0
>>205
ひよりはアニメと原作でイメージが違う。原作よりアニメの方が腐女子が誇張されている気がする。
原作のひよりの方が自分的には好きなんだけどね。
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 21:40:29.27 ID:tyfyaU20
俺も原作派だがアニメのひよりんも好き
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 23:26:53.28 ID:PA/.OMAO
マンガでも一年生三人組の中では明らかに浮いてるがなww
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 23:28:27.33 ID:PA/.OMAO
オオッ、書けた!
四回連続で規制を受けててさ〜
マジ、俺と同じホストの誰かが許せんわww
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/03(水) 19:44:42.26 ID:qUAYzOo0
かなた「リバースカードオープン!『現世と冥界の逆転』!!!!」
こなた「ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
211 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:18:06.25 ID:o9eM3ESO
投下いきます。

一応、百合モノです。
212 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:19:34.66 ID:o9eM3ESO
 登校する生徒はほとんどいない、とある日の早朝。
「つかさ、おはよー」
 校門前で見知った背中を見かけた泉こなたは、手を振りながら声をかけた。
「ふえ?…え、こなちゃん?」
 声をかけられたこなたの友人柊つかさは、振り返ってこなたの姿を見つけると、微笑みながら挨拶を返した。
「おはよ。今日は早いんだね」
 こなたは少し早足でつかさの隣に並び、二人は連れだって校舎に向かい歩き出した。
「いやー、なんか日の出前に眼がさめちゃってねー…折角だから、教室一番乗りでもやってみようかと思ってね」
「そうなんだ…わたしだったら、もう一度寝ちゃうな」
「つかさはどうしたの?」
「わたしは日直だよ」
「あ、そういやそうだっけか」
 駄弁りながら二人は校舎内へと入り、教室の鍵を取ってくると言うつかさと別れ、こなたは一人で教室へと向かった。



− あの日あのとき −



 教室についたこなたは、何となく教室のドアに手をかけてみた。
 すると、鍵がかかっているはずのドアがカラカラと開いてしまった。
「ありゃ…鍵かけ忘れかな…」
 こなたは呆れながら教室に入ると、後から来るつかさを驚かそうと隠れる場所を探して教室を見回した。
 そして、黒板に何か書いてある事に気がついた。
「…なにこれ」
 こなたは唖然とした表情で黒板の文字をを眺めていたが、誰も来ない内に消してしまおうと黒板へと近付いた。
「あれ、開いてる?こなちゃん、鍵かかってなかったの?」
 そして、黒板消しを手に取ったところで、つかさが教室へと入って来た。
「職員室に鍵ちゃんとあったのにね。昨日の最後の人、だいぶ慌てて…」
 そこまで話したところで、つかさの動きが止まった。
 つかさの視線の先。こなたが消そうとしている黒板の文字。
『柊つかさは男の子より女の子の方が好き』
 大きく書かれたその文字を、つかさは微動だにせずに見つめていた。
「た、質の悪い悪戯だよね…とりあず消すよ…」
 こなたは持っていた黒板消しを動かして、文字を跡が残らないように丁寧に消し去った。
 こなたが黒板を消し終わっても、つかさはまだそちらの方を見つめたままだった。
「…つかさ?」
 少し心配になったこなたが声をかけると、つかさはゆっくりとこなたの方に顔を向けた。
「…これ、書いたのこなちゃん?」
 そして、ポツリとそう呟いた。
「ま、まさか!わたしが教室入った時には、もう書いてあったよ!」
 こなたが首と手を振りながら否定すると、つかさは顔を伏せて聞き取れない声で何かを呟いて、そのまま自分の席に座ってしまった。
 こなたはとりあえず、動きそうにないつかさの代わりに日直の仕事をする事にした。



213 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:22:45.80 ID:o9eM3ESO
「…んー」
 昼休み。柊かがみは一緒にご飯を食べているこなたとつかさを見ながら、唸り声にも似た言葉を発した。
 二人の様子がどうもおかしい。つかさは元気なさそうにずっと俯いているし、こなたはそのつかさを気遣うようにチラチラと視線を送っている。
 一緒に食べているもう一人、高良みゆきも様子のおかしさに気付いているのか、二人の顔を交互に見たり、かがみの方をちらっと見たりしていた。
「…ねえ、こなたもつかさもどうしたのよ。なんか変よ?」
 場の空気に耐え兼ねたかがみがそう聞くと、こなたはビクッと体を震わせた。つかさはかがみの声が聞こえていないのか、俯いたまま身じろぎ一つしなかった。
「な、なんにもないよ…」
 明らかに不審な態度を取るこなたに、かかみはため息をついた。
「こなた。ちょっと来て」
 そして、こなたの腕を掴んで無理矢理立たせた。
「え?ちょ、ちょっとかがみ、なに?」
「いいから来なさい」
「わ、わたしまだ食べてる途中…」
「歩きながら食べなさい」
 かがみはそのまま、こなたを教室の外まで引きずって行った。
 取り残されたみゆきはどうしていいか分からず、相変わらず俯いたままのつかさとかがみ達がでていった教室のドアの方を交互に見ていた。

 かがみはこなたを、人のいない廊下の隅まで引っ張ってきた。
「で、何があったの?」
 そして、こなたの顔を真正面から見据えてそう聞いた。
「それは…その…」
 こなたは言葉を濁しながら顔を背けたが、かがみがその顔を両手で掴んで自分の方へと向き直させた。
「ごまかさずに答えなさい」
「か、かがみ…なんか恐いよ…」
 こなたは冷や汗を垂らしながらも、持ってきてしまっていたチョココロネを一口かじった。そして、かがみに言いづらそうに話し出した。
「実は…かがみのせいなんだ」
 スパーンッ!という軽快な音と共に、こなたは頭頂部に強い衝撃を受けた。涙目になりながらかがみの方を見ると、手になぜかスリッパを持っていた。
「真面目に答えなさい。今朝家で顔合わせた時は普通だったのよ。そこから昼休みまで会ってないんだから、わたしのせいなわけないじゃない」
「…だよね…ってかそのスリッパなに?」
「こんなこともあろうかと、持ってきといたのよ」
「こんなこと想定しないでよね…いや、やっちゃったけどさ…」
 こなたは仕方なくといった風に、今朝あった事をかがみに話した。

「…なるほど」
 こなたの話を聞き終わったかがみは、顎に手を当てて考え込んだ。
「多分、つかさはわたしが書いたって思ってるんじゃないかな…」
 こなたがそう言うと、かがみは手は顎に当てたままでこなたの方を向いた。
「あんたは違うって言ったんでしょ?」
「うん、そうだけど…」
「あんたは、なにかと信用ないからね」
「ひどっ」
「でも、つかさがこういう事であんたを疑うとは思えないし、わたしもあんたがつかさにシャレで済まないような真似をするとは思ってないわ」
「信用、あるんだかないんだか…」
 ため息をつきながら、複雑な表情をするこなた。かがみは少し苦笑したが、すぐに真面目な表情に戻った。
「で、犯人探しはするの?それとも学校側に言っちゃう?」
「え、あーそれは…」
 かがみの言葉にこなたは少し考えた後、真剣な表情をして言った。
「しばらくは両方しない。わたしとしてもあんまり事を大きくしたくないし、なによりつかさを先になんとかしたい」
「…そう、わかったわ」
 かがみは少し納得のいかない顔をしながらも、こなたの言葉に頷いた。
214 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:24:25.67 ID:o9eM3ESO



 放課後。こなたはつかさと二人きりで下校していた。
 その方がつかさと話しやすいとこなたは思ったのだが、つかさはずっと暗い表情をしたまま黙っ黙っていて、こなたは話し掛けるきっかけが掴めずにいた。
 こなたはつかさに気付かれないように、こっそり後ろの方を見た。念のためにとかがみとみゆきが後をつけてきているはずだが、上手く隠れているのかその姿は確認出来なかった。
 こなたはため息をついて視線を前に戻し、そして自分の隣を歩いていたはずのつかさがいない事に気が付いた。
「あ、あれ?つかさ?」
 慌てて周囲を見回すと、つかさの姿はすぐに見つかった。いつも通る通学路。その真ん中でつかさは立ち止まっていた。
「こなちゃん。ここ、覚えてる?」
 たった一日だというのに、久しぶりに聞いた気がするつかさの声。今までの暗い顔が嘘だったかのように、微笑んでいる。こなたは少しホッとしながら、つかさに近づいた。
「…えーっと、なんかあったっけ?」
 周りに特別なものなどなにもない、どう見ても普通の道。こなたが困惑した表情をすると、つかさはクスッと笑った。
「うん。こなちゃんはそうだと思った」
「あれ、なんか馬鹿にされてる?」
「違うよ…ここはね、わたしがこなちゃんに助けてもらった場所。外人さんに道を聞かれて、困ってた時に」
「あー…ここだったんだ。よくこんなに細かい場所まで覚えてたねー」
 こなたがそう言うと、つかさは少し目を伏せた。
「うん、覚えてるよ…わたしにとって、ホントに大切な出来事だったから」
 二人が友達になったきっかけだったというのなら、こなたにとってもそれは大切な出来事だ。しかし、こなたはなんとなく自分とつかさではその意味が違うような気がしていた。
「ねえこなちゃん。今朝の落書きどう思った?」
「え、どうって…」
 急に話を変えられて、こなたは答えに詰まった。
「わたしを…嫌いになったりしないかな?」
「え?」
 こなたは驚きに目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんでわたしがつかさを嫌うんだよ。逆ならわかるけどさ」
「ええっ?」
 今度はつかさが驚きに目を見開く。
「それこそわけがらからないよ。こなちゃんを嫌う理由なんて無いよ」
「だってつかさ。あの落書きわたしが書いたって思ってるんじゃ…」
「…あ」
 つかさはポカンと口を開けて固まったが、すぐにクスクスと笑いだした。
「思ってないよ、そんなこと。だってこなちゃん違うって言ったもの」
「そ、そう?だったらいいんだけど…」
 つかさは笑い終えると、こなたの目をじっと見つめた。何かを決意したような表情。しかしこなたはその中に、諦めのようなものがまじっている気がした。
「こなちゃんに嫌われるって思ったのはね…書いてある事がホントだったからだよ」
 一瞬、こなたは何を言われたのか分からなかった。
「…え、今なんて?」
 少ししてその意味を理解したものの、そのことにまったく自信がなく、こなたは思わずそう聞いていた。
「わたしね、男の子を好きになったことないけど、女の子を好きになったことはあるの」
 こなたはなんと言っていいか分からず、唖然とした表情でつかさの顔を見つめていた。
 つかさはこなたの視線に、少し恥ずかしそうに頬を染めて下を向いた。
「えっと、ちょっと違うかな…なったことがあるんじゃなくて今も好きだから」
「え、現在進行系?」
「うん、今も…あの日、あのときからずっと好き。今この瞬間も」
 つかさは顔を上げた。その表情を見たこなたは、全てを理解した気がした。
215 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:25:43.48 ID:o9eM3ESO
「わたし、こなちゃんが好き。家族を好きとか、友達を好きとか、そんなんじゃなくて…こなちゃんが好き。大好き」
 今までに見たことないつかさの表情。赤く染まった頬に、熱っぽく潤んだ目。これは本気だ。こなたの頬を一筋の汗が流れた。
「なんでわたし…ああ、ここで助けたからか」
 こなたはつかさの立っている場所の意味を思い出し、納得したように頷いたが、つかさはそのこなたに首を振って見せた。
「ううん、違うよ。こなちゃんを好きになったの、それよりもっと前…こなちゃんは覚えてないかも知れないけど、稜桜に入学して最初にわたしに話しかけてくれたの、こなちゃんなんだよ」
「う…ご、ごめん。ちょっと覚えてないや…」
「うん。そうだと思う。こなちゃんには特別なことじゃないって…でも、わたしは凄く嬉しかった」
 そう言いながら、つかさは自分のトレードマークともいえる、頭の大きなリボンをさわった。
「リボン、可愛いねって言ってくれたんだよ…お姉ちゃんにだって子供っぽいって笑われたのに」
 こなたは徐々にその時の事を思い出していた。
 某ギャルゲのヒロインに似ている髪型だったから思わずじっと見てしまい、目があってしまってとっさにリボンを褒めたのだ。
「今日、ずっとこなちゃんに言おうかなって迷ってたんだけど…うん、ごめん。こんなこと言われても、こなちゃん困るよね」
 つかさはそう言いながら微笑んだ…が、すぐに泣きそうな表情に変わる。
「…自分でも分かってるんだよ?おかしいって…でもどうしようもなかったから…こなちゃんに聞いてほしかったから…分かってたのに…変だって…変だって…」
 つかさの目からぽろぽろと涙がこぼれはじめた。それを見たこなたはとっさにつかさの手を握っていた。
「待って待ってつかさ。なんか一人で勝手に結論出そうとしてない?」
 つかさは握られた自分の手を見て、次にこなたの顔を見た。つかさと目があったこなたは、少しぎこちないながらも笑顔を見せた。
「わたし、まだ何も言ってないじゃん」
「…でも、こなちゃん…」
「そんな一人で勝手に傷つかないでよ。確かにいきなりそんなこと言われて驚いたよ。でも…驚いただけだよ。そんな程度でつかさを嫌いになったりとか悪い方に思ったりしないよ」
 つかさはこなたの言葉に俯き、すぐにまた顔を上げた。涙はまだ流れたままだったが、つかさは精一杯の笑顔を見せていた。
「…やっぱり、こなちゃんは優しいね」
 こなたは急に気恥ずかしさを覚え、空いた手で頬をかきながらつかさから少し視線を逸らした。
「ほ、惚れなおした?」
 そして、思わずそんなことを口走っていた。
「うん…こなちゃんのこともっと好きになったよ」
 涙を拭きながら笑顔でそう言うつかさを、こなたはまともに見ることができず、顔を赤らめながら完全に顔を逸らしていた。


「さて、つかさ」
 つかさが落ち着いたところで、こなたはつかさの手を握ったままで切り出した。
「う、うん」
 つかさは不安げな顔で、こなたの手を強く握り返した。
「正直に言って、わたしソッチの趣味は無いんだよ…えーっと、ソッチのってのは同性でお付き合いするとかそういうの」
「うん…そうだよね」
 つかさは手の力を抜いてうなだれた。それを見たこなたは少し苦笑した。
「だからさ、つかさ。わたしを攻略してみてよ」
「…え」
 こなたの言葉に、つかさは顔を上げた。
「少しずつでも、わたしがつかさを…その…ソ、ソッチの意味で好きになるようにさ、頑張ってみてくれないかなって…それが、今のわたしの精一杯の答えかな」
216 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:27:12.36 ID:o9eM3ESO
 つかさは唖然とこなたの顔を見つめていたが、その目からまた涙がこぼれはじめた。それに気づいたつかさは、慌てて服の袖で涙を拭い、満面の笑みを浮かべた。
「うん!こなちゃん、わたし頑張るよ!」
 つかさのその笑顔を、こなたもまた笑顔で見つめていた。


「…出そびれたわ」
「…ですね…というか、とても出られるような雰囲気では…」
 こなたとつかさが帰った後、かがみとみゆきは隠れていた場所でため息をつきあった。
「にしても、つかさがこなたを…ねえ…」
「かがみさんは、気がつかれなかったのですか?」
 みゆきがそう聞くと、かがみはゆっくりと首を横に振った。
「まったく、よ…双子の姉の癖にド鈍いにもほどがあるわ」
 自嘲気味にそう言うかがみにみゆきは何も言えず、こなた達がいた場所に顔を向けた。
「…ねえ、みゆき」
「は、はい?」
 急に声をかけられ、みゆきは慌ててかがみの方に向き直った。
「いっそ、わたし達も付き合おっか?」
「えっ!?…そ、それはその…あの…か、かがみさんにはわたしなどよりもっと素敵な方が…い、いえ、それよりまだつかささんと泉さんがお付き合いすると決まったわけでは…」
「…いや…冗談なんだけど…」
 予想外のみゆきの慌てぶりに冷や汗を垂らしながらかがみがそう言うと、みゆきの動きがピタリと止まった。
「冗談…そ、そうですよね」
 ホッと胸を撫で下ろすみゆきに、かがみが怪訝そうな顔をする。
「えらくホッとしてるわね。もしかして、みゆきはわたしのこと嫌いなの?」
「ち、違います!い、今のはそういう意味では…」
「…冗談よ」
 再びそういうかがみに、みゆきは複雑な表情で黙り込んでしまった。
「え、えーっと…ごめん」
 流石に罪悪感を覚えたかがみが謝ると、みゆきはそっぽを向いてそのまま歩きだした。
「あ、ちょっと待ってよ。ごめんってば…そんなふて腐れないでよみゆきー」
 かがみはみゆきの後を追いながら、ひたすらに謝り続けた。



 数日後の放課後。こなたとつかさが並んで歩き、その二人に遠慮するかのように、かがみとみゆきが少し離れた位置を歩いていた。
「えへへ…こなちゃん、今日も綺麗に食べたね」
 つかさが心底嬉しそうに、空の弁当箱が入った自分の軽く叩きながらそう言うと、こなたは照れ臭そうに頬をかいた。
「そりゃ、つかさのお弁当おいしいからね。残す気になんかなんないよ」
 こなたがそう言うと、今度はつかさが照れながら頭をかいた。
「嬉しいな…ホントに」
 少し顔を赤らめながら、俯きかげんでそう呟くつかさ。その可愛いらしい仕種に、こなたは顔が熱くなるのを感じていた。
「そうだこなちゃん。なにかお弁当のリクエストとかあるかな?」
 つかさが急に顔を上げてそう聞いてきたので、こなたは顔の熱を冷まそうと自分の頬を軽く叩いた。
「と、特に無いかな…もずくさえ入って無かったら」
「もずく?…あ、そっか。こなちゃん、もずく苦手だったんだよね…そっかー…うーん」
 何か真剣に悩み始めたつかさに、こなたはなんとなく嫌な予感を感じていた。
「…お弁当にもずく入れるのは難しいなー…ワンカップのを添える…じゃ味気無いか…」
 漏れ聞こえてくるつかさの呟きに、こなたの血の気が一気に引いていった。
「ちょ、ちょっと待ってよつかさ。苦手だって言ってるのに、なんで入れようってことになってるの?」
「ダメだよこなちゃん。好き嫌いはちゃんと治さないと」
「そ、そうだけど、そうだけどさ…」
「みゆきなら良い方法知ってるんじゃない?聞いてみたら?」
217 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:28:18.53 ID:o9eM3ESO
 なんとかつかさを思い止まらせようと言葉を探すこなたの後ろから、いつの間にか傍にきていたかがみがそう言った。
「あ、そうか、ゆきちゃんだったら…うん、わかった。聞いてくるね」
 つかさは嬉しそうに頷くと、みゆきの方へと小走りにかけていった。
「…かがみ、わたしに何か恨みでも?」
「別に…可愛い妹が困っているのを助けるのは、姉としての務めじゃないかしら?」
 しれっとそう言うかがみに、こなたは大きなため息をついてみせた。
「ま、冗談よ。ちょっとあんたと二人で話がしたかったのよ」
 かがみはそう言いながらこなたの肩を軽く叩き、少し暗い表情で顔を俯かせた。
「…あと、みゆきと二人きりはきついわ」
「…みゆきさん、まだ怒ってるんだ」
 かがみがみゆきを怒らせたような事はこなたも聞いていたが、まだ根に持っているとは流石にこなたも思っていなかった。
「ま、まあそれは置いといて…あんたも大胆なことしたわね」
「大胆?」
「自分を攻略しろ、だなんて」
「ああ…うん、まあ…」
 こなたは言葉を濁して少し俯いた。
「なんてーか…これって逃げたみたいなもんだよね。つかさに丸投げして、結論先延ばしにした感じでさ」
「…そうね」
「でも、そんな答えになってないような答えでも、つかさは泣いて喜んでくれてさ…自分の得意な料理で頑張ってさ」
 こなたはそこで言葉を切って、照れ臭そうに頬をかいた。
「…ちょっと自分の気持ちがわかんなくなってきたよ…もしかしたら、わたしも本気になってきてるのかなーって思ったり…」
 こなたの言葉に、かがみは嬉しいような哀しいような、複雑な表情をみせた。
「そ…姉としてはちょっと喜べない部分もあるんだけど…でもまあ、順調そうでなによりだわ」
「さっきの選択肢ミスで、好感度ガクッと下がりましたけどねー」
「ふふ…そうね」
 茶化すように言うこなたに、かがみは思わず笑みをこぼしていた。
「どうするつもりか知らないけど、つかさの愛情を無下にするようならわたしがシメるわよ」
「うわ、怖いっすよ姐さん」
 そしてお互い軽口をたたきあった後、どちらともなく笑い出していた。
「まあ、ストーキングの事もそうだけど、つかさは変に真っすぐなんだよね」
 ひとしきり笑いあった後こなたがそう言うと、かがみは怪訝そうな表情をした。
「…は?ストーキング?つかさが?」
「あ、かがみ知らなかったんだ。えーっと、つかさがわたしのこと好きになったきっかけは知ってるよね?」
「リボン褒めたってのでしょ。それはつかさから聞いたわ」
「うん。で、その後わたしと何とか話ししようとして、放課後とかにわたしの後付け回してたんだってさ」
「…それは…何て言ったらいいんだろ…」
「まあ、なんかされたわけじゃないから、気にしてないけどね。そのおかげで、つかさが外人さんに絡まれたのを助けれたわけだし」
「…偶然じゃなかったんだ…」
「みたいねー」
 一途な思いから生まれた事とはいえ、あまりと言えばあまりな妹の奇行に、かがみは大きくため息をついた。
「一時期、一緒に帰らなかった時があったんだけど、そういうことか…あ、そうだこなた」
 神妙な顔付きで呟いていたかがみは、突如なにかを思い出しこなたの方に顔を向けた。
「結局、あの落書きは誰の仕業かわかったの?」
「あーあれね…んーわかったっていうか、向こうから名乗り出てきたよ」
「へー。で、誰?」
「同じクラスの女の子」
 こなたの答えに、かがみの顔が険しくなった。
「なにそれ?もしかしてイジメ?」
218 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:29:35.82 ID:o9eM3ESO
「あーいや、そういうことじゃないんだよ」
「じゃ、どういうことよ」
「えーっと、なんてーか」
 こなたは少し言いづらそうにした後、照れ臭そうに鼻の頭をかいた。
「その女の子も、わたしのこと好きだったんだってさ」
「…はあ?」
 こなたの言葉に、かがみの目が点になった。
「んでその子、つかさもわたしのこと好きだって気付いたらしくて、それであの落書きをしたんだって…アレ見たつかさがわたしから離れるんじゃないかって」
「なんとまあ…」
 かがみは呆れ果てた表情でこなたを見つめていた。
「結果は逆効果だったわけだけど…まあ、本人もかなり反省してたし、不問に付すことにしたよ」
「そう…いや、なんつーか…あんたモテるわね」
 かがみがそう言うと、こなたは不快そうに眉間に皺をよせた。
「いや、同性にモテても嬉しくないよ…」
 不満そうに言うこなたの後ろを見たかがみは、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。
「…だってさ。つかさ」
「え?」
 こなたが振り向くと、そこにはすでに涙目のつかさが立っていた。
「…ご、ごめんねこなちゃん…わたし、やっぱり迷惑…」
「うわーっ!違う違う違いますよつかささん!つかさは別!別だから!…おのれかがみ謀ったなーっ!」
「あーら、なんのことかしら?偶然よ偶然」
 なんだか楽しそうにもめはじめた二人を見て、つかさはこなたの言葉が深刻なものでは無いと思い、服の袖で涙を拭った。
「お姉ちゃん。ゆきちゃんが呼んでたよ」
 そして、かがみに向かってそう言った。
「え?み、みゆきが?…そ、そう…じゃあ、い、行かないとね…」
 それを聞いたかがみは急におどおどしだすと、ぎくしゃくとした動きでみゆきの方に歩いていった。
「…いや、あの二人もどういう関係になってるのやら」
 こなたは冷や汗を垂らしながらかがみを見送ると、つかさの方に向き直った。
「で、つかさ、結局もずくの件はどうなったの?」
「んー…えーっとね、好き嫌い無くすためでも、嫌いなものばかり入れるのはダメだと思うんだよ」
「うん」
「それで、こなちゃんの好きなものとあわせてみようかなって」
「わ、わたしの好きな…?」
 つかさの言葉に、こなたは凄まじい不安を覚えていた。
「うん。もずくコロネを作ってみようと思うんだ」
 こなたはコロネの穴から緑色の物体が垂れてくる様を想像し、顔色を一気に青ざめさせた。
「い、いやいやいやいや!ダメ!それ絶対ダメ!てーか無理!絶対無理だからっ!」
「えー」
 こなたは、なかなか諦めてくれないつかさを必死に説得しながら思っていた。
 自分が攻略されるのはまだまだ先になりそうだ、と。



− おしまい −
219 :あの日あのとき [saga]:2010/03/03(水) 23:30:54.36 ID:o9eM3ESO
以上です。

こういう話って難しいなあ。
220 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/04(木) 00:19:51.07 ID:tm52OAA0
 是非続きを拝見したい次第でございます。 現在の段階ですと 「 未完 」 といった
感じですね・・・。 それでもとても面白かったです。
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/04(木) 06:11:22.45 ID:mMeGVNoo
>>219
乙。思わずニヤニヤしちゃったぜ
こういう話だと結末が大体決まってるもんだが
攻略してみてってのはよかったな、なんとなくこなたらしいしw GJ!
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/04(木) 06:39:27.02 ID:3/5RxREo
>>219
GJです。まっすぐなつかさがすっごいかわいい。
かがみとみゆきさんの関係もどうなるのか気になるなあ。
223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/04(木) 06:41:21.57 ID:fpSVQ.SO
>>210
いきなり何だwwwwww
224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/04(木) 13:20:05.75 ID:rq/YwqY0
>>219
GJ!つかさ可愛過ぎるwwww
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/04(木) 23:47:16.01 ID:tm52OAA0
 ある夜の事、こなたは尋常ではない体全体に生じる痛みに耐えきれず、悶絶していた。

こなた 「 い・・・痛いっ !!! 体中の関節の節々が引っ張られる様に痛いよぉぉ〜 !!
     それに胸も締め付けられる様に凄く痛い・・・ !! うう〜 !! だ・・・誰か
     助けて・・・・・・。 」

こなた 「 ・・・・・・・・・。 」


 翌朝


こなた 「 ・・・・・・う・・・う〜ん・・・。 」

こなた 「 ・・・あれ ? 痛みが引いてる・・・。 何だったんだろぉ、あれ。
     まあいいや、早く起きてとりあえず顔洗おう・・・。 」

こなた 「 ・・・はて ? 以前よりも著しくベッドが小さく感じられるが・・・。
     ・・・ってあれ !? 何かいつもの目線の位置と違う・・・。 私こんなに
     大きかったっけ ? き、きっと成長したんだよね !?
     はは・・・う、嬉しいなぁ・・・。 」

こなた 「 それと何だかさっきから胸のあたりが苦しいなぁ・・・。 何だか締め付け
     られてる様な・・・。 」

 鏡の前に立つこなた

こなた 「 ・・・・・・・・・何これ・・・。 」


こなた 「 と言う訳で私は生まれ変わったのです ! 」

かがみ 「 はあ !? 何よそれ !? 私は小さいこなたしか認めないんだからねっ !! 」 プンスカ

こなた 「 いやいや、何か違うよ、それ。 」

つかさ 「 うわぁ〜、こなちゃんモデルさんみたいになってとっても綺麗だねぇ〜。 」

こなた 「 あ、どうもです。 /// 」

みゆき 「 それにしましても不思議ですね・・・。 泉さん、具体的に体の何処が
     変わられましたか ? 大体の察しはつきますが・・・。 /// 」

こなた 「 身長が 175cm になったのと、バストが 90 になったくらいかな ?
     今度は 3 サイズも測ってみるよ ! 」

かがみ 「 うきぃぃぃ !!! 私の永遠の幼児体型のこなたがこんな風になるなんて絶対に
     認めないんだからっ !! 国際条約違反で検挙してやるんだからっ !! 」 ポロポロ

こなた 「 いやいや、だから話がおかしいって ! つーか何で泣いちゃう訳 !? 」
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 18:34:49.46 ID:mYxEJQAO
現在、第18回コンクールのお題を募集しています。
ユーモアあふれるお題カモ〜〜ン
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 19:16:13.48 ID:vVudLuA0
お題 『休日』

幅が広い分いろんなジャンルで書けるからいいと思って。
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 19:30:08.96 ID:NQ/sRYAO
お題 「二人」

前回の水が範囲広すぎる気がしたので
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 20:53:29.05 ID:DKVc8OI0
小ネタ四部作
起:教室
こなた「うおおおおおおおおおお」
つかさ「うわあああああああああ」
かがみ「いきなり何なのよこなた!?」
こなた「『大人には聞こえない着信音』を試してみた。」
みゆき「モスキート音ですね。音の周波数が高いと
    年齢とともに人間の耳には聞こえにくくなりますよ。」
こなた「でさ、なんでみゆきさんは平気なの?」

承:高翌良家
みゆき「・・・ということがありまして・・・(泣)」
ゆかり「私も聞いてみていい?」
みゆき「いいですよ。」
ゆかり「変な音が少し聞こえるわね?」
みゆき「orz」

転:柊家
つかさ(ためしに夕御飯の時かけてみよっと)
まつり「おお!なんだ!?」
いのり「なになにぃ?」
みき 「ん?どうしたの?みんな?」
かがみ「よりによって今それかけるな!」
みき 「何?それって?」
ただお「ああ、今話題になってる『大人には聞こえない音』じゃない?」
まつり「ああ、それね、で、お母さん・・・」

みき 「ぎゃああああああああああ!!!!!!!!」
四姉妹「遅いよ。」

結:泉家
こなた「というわけなんだけどみんなも聞いてみる?私耳栓するから」
そうじろう・ゆたか「いいよ」

ゆたか「ううううううううううう」
そうじろう「うわあああああああああああああ」

こなた「ゆーちゃんが聞こえるのは分かるけどお父さん意外と若いね〜」
そうじろう「いや、違うかもしれん」
こなた「どゆこと?」
そうじろう「変な音はしなかった。だけど・・・」
こなた・ゆたか「?」
そうじろう「『こなたやめてええええええええええええええ』という悲鳴がな・・・」
ゆたか「こわいよ〜お姉ちゃん」
こなた「まさか・・・」

というわけでお題は四コマらしくの「起承転結」とか
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 20:56:00.09 ID:IsibHoSO
>>229
いや、起承転結はどの作品も当たり前なんだが
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 21:33:47.09 ID:DKVc8OI0
じゃあありきたりだけど「春」とか
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/05(金) 22:48:47.00 ID:7uBVmQw0


=============== ここまでまとめました ===============


初めてまとめに挑戦しました。小ネタはどこに入れていいのか分からないので誰かお願いします。

>>97-98 まとめでつかさの生き返る場面とみきの場面追加しましたので興味がある方は覗いてみてください。
頭の中で描いたイメージでしたが書かないと相手に伝わらないですね、大変勉強になりました。ありがとう。

233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 23:01:05.13 ID:tD1ro1s0
う〜ん・・・お題についてでございますが、『 温もり 』 は如何でございましょうか ?

 人の温かさとはとても甘い安心感のあるものでございますよね。 私自身、出来る限り
優しいお話を職人さんには書いて頂きたい次第でございますし、読者様にも同じく
温かい気持ちになって頂きたいと考えております。
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/05(金) 23:09:36.40 ID:uIxAzASO
>>232
乙です
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 23:32:00.96 ID:fjJg7Y60
>>232
お疲れ様です。
小ネタ分けはまとめ人さんの主観でおkだよ
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 00:43:55.75 ID:6.Xszqg0
小ネタもまとめてみました。

フタナリネタはまとめませんでした。
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/06(土) 11:28:26.99 ID:RFfWDMAO
お題、“出会いと別れ”はどうかな
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 18:35:53.50 ID:Cx5sMp20
投下行きます。
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 18:36:34.67 ID:Cx5sMp20
とある姪の就職

 弁護士になろうと思った最初のきっかけは、弁護士であるおば(母方)の存在だった。
 おばはマスコミでも取り上げられるぐらいの有名な弁護士で、自分の腕一本で生きているその凛々しい姿は、私にとって憧れだった。
 高校生になって真面目に進路を考えていたときに真っ先に相談した相手も、このおばだった。言っちゃ悪いけど、母も父も、こういうことに関しては、あまり頼りになる人じゃなかったから。
 年末年始は、母方の実家に母方の親戚一同が集まるのが慣例だった。とはいっても、忙しいおばは、正月の三が日をすぎてから来ることが多かったけど。
 高校一年生の正月三が日がすぎたある日、私はやってきたおばを捕まえて相談を持ちかけた。


「はっきりいって、いい仕事じゃないわよ。正直きついし。体力的にも精神的にもね」
 弁護士を志望しているという私の言葉に、おばはまず最初にそういった。
「仕事のタネは、人の欲望とか保身とか憎悪とか怒りとか、そういう醜いどろどろしたもの。それを濾過して無感情な法律用語で組み立てなおして法廷の場にもっていくのが、弁護士という仕事よ」
 それから、おばは、弁護士がどれだけきつい仕事かを延々と説明してくれた。半端でない覚悟が必要だといわんばかりに。
「でも、おばさんはその仕事を続けているんですよね。何かやりがいみたいなものがあるからだと思いますけど」
「そうね。依頼人から感謝されるのがうれしいからかしらね。もちろんお金もきっちりもらわないと商売にはならないんだけど、それ以外にもそういうのがあるから、やっていけてるってところはあるわよね」
 おばさんのその言葉で決意は固まった。
 人から感謝される仕事ができる弁護士になる。それが私の目標となった。


 それから猛烈に勉強して、大学の法学部に進学し、法科大学院に進んで、順調に卒業した。
 気合いれて挑戦した司法試験も一発合格。その後の司法修習も順調にこなして、無事に弁護士になれた。
 その後、私は関西のとある法律事務所のイソ弁として2年間をすごした。そのまま東京のおばのところに転がり込んでもよかったのかもしれないけど、身内に甘えるのはよくないと思ったし、たぶんおばもそれを許してくれなかったと思う。
 その2年間は、父母にもおばにも双子の妹にも年に数回しか会えないぐらい忙しい日々だった。
 その中で実務のこなし方をしっかりと身につけてから、私は北海道のある地域に事務所を開いた(事務所の開設費用は母方の実家から借りた)。
 そこは、いわゆるゼロワン地域(→弁護士がいないか一人だけの地域)。常駐の弁護士は一人だけで、私が来たことでようやくゼロワン状態を脱することができたというのが現状だった。
 いきなり弁護士なしの地域に飛び込むよりはマシとはいえ、きついことには変わりはない。イソ弁を卒業したばかりの身にはある意味無謀ともいえるかもしれなかったけど、人から感謝される仕事をするには有り余るほどの環境であることは確かだった。

240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 18:37:12.48 ID:Cx5sMp20
 とりあえず、それまでその地域唯一人の弁護士だった人の事務所に挨拶に行った。
「今後とも、よろしくお願いします」
 そういって、頭を下げる。
「いやいや、こちらこそ。まあ、法廷で対決することもあるかもしれませんが、お手柔らかに願いますよ」
 冗談めかしてそういって笑ったけど、今後、実際にそうなる可能性は高い。
 この地域には二人しか弁護士はいないのだから、住民同士で裁判沙汰になれば、二人がそれぞれの弁護につくしかない。
「ところで、つかぬことを聞くけど、白石弁護士は、親戚に弁護士さんはいらっしゃるのかな?」
「はい。おばが弁護士をしております」
「もしかして、柊かがみ弁護士?」
「はい」
「やっぱりそうか。そっくりだから、もしかしたらと思ったんだけど」
「父母よりもおばに似てるとはよく言われます」
「そうだろうね。いやはや、あの柊弁護士の姪っ子さんか。これは手ごわそうだ。ホント、お手柔らかに願いたいね、うん」
「おばはおばで、私は私です」
 何かとおばと比べられることが多かったから慣れているとはいえ、おばの名がもつ大きさというのを改めて思い知らされる。
「そうだね。まだまだ若いのに柊弁護士と比べられてしまうのは、何かとつらいだろうね。だからこそかな? こんな田舎にやってきたのは」
「そうですね。おばとは違う方向を目指してみたいというのはありましたから」
 おばの背中ばかりを追っていても、永遠に追いつくことはできない。
 だから、おばとは違うやり方でやってみたかった。
 そして、いつの日か、おばと並んで仕事の愚痴でも語り合えようなそんな立場になりたかった。
「その志やよし! 期待してるよ。正直、一人じゃきつかったんでね。二人になるだけでだいぶ助かる」

 その後、自分の事務所に初出所。
「あっ、白石所長。お待ちしておりました」
 事務員の女性がそういって出迎えてくれた。
「所長なんてこそばゆいから、やめてほしいんだけど」
 年上の女性に所長なんて呼ばれるのは、こそばゆい。
「何言ってるんですか。この地域に二つしかない法律事務所の所長なんですから、その自覚をきっちり持ってもらわないと困りますよ」
 確かに、二人しかいない事務所でも所長は所長。その自覚は必要なんだろうけど、でもやっぱりこそばゆい。
 この事務員さんは、この地元の出身で、最近までは札幌のとある法律事務所で事務員をしていた。いつかは地元に戻りたいという希望をもっていたところへ、私の法律事務所開設という話を聞いて、採用面接にやってきたというわけ。
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 18:37:46.56 ID:Cx5sMp20
 法律事務所の事務員としてはベテランなので、私としては非常に助かっている。
 彼女が準備万端整えてくれたおかげで、事務所は今すぐにでも業務を開始できる状態が整っていた。弁護士会への届出や税務上のもろもろの届出もすんでいたから、法律的にも問題はない。
 彼女から一通り状況の説明を受けたあと、
「あっ、そうだ、所長。私の父が是非とも歓迎会を開きたいとのことですので、これから私の実家にご足労願えますか?」
「そんな。悪いわよ」
「父が『うちの娘が世話になるのだから、是非ともおもてなししなきゃならん』と申しておりまして。ここは父を顔を立てるということで是非」
 むしろお世話になっているのは私の方なんだけど、これ以上断ることもできなそうな雰囲気なので、行くことにした。

 彼女の実家は漁業を家業としていた。
 となれば、歓迎会の席に並べられる料理は、新鮮な海の幸を中心とした豪勢なものになるのが当然で。
 最初こそ遠慮していたものの、勧められて料理に手をつければどれもおいしいことこのうえなく、ついつい箸がすすんでしまって。
 ついついお酒もすすんで、なんかもう、北海道万歳!って叫びたい気分。
 彼女のお父さんは典型的な北海道の田舎の漁師といった感じで、彼女のお母さんもいかにもおかみさんといった感じの人で、すっかり打ち解けてしまった。
 その夜は朝まで呑めや歌えの大宴会になった。

 後から振り返れば、これが、私の食生活1年365日のほとんどを彼女の実家に頼りきりになってしまう最初のきっかけだった。
 私の方から行かなくても、彼女のお母さんが「これ、食べなさい」とか言って毎日持ってくるし、それがまたおいしいんだもの……。
 おかげで、すっかり体重計恐怖症になっちゃったなぁ。
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 18:38:14.22 ID:Cx5sMp20
 それはともかくとして、その翌日。
「う〜、飲みすぎたぁ」
 私は事務所の自分の机の上でつっぷしていた。
「所長。あれぐらいで二日酔いとは情けないですね」
 彼女も結構呑んでたはずなんだけど、けろっとしている。
 そのとき、電話の着信音が鳴り響いた。
 彼女が電話をとる。
「はい、白石法律事務所です。あっ、はい。少々、お待ちください」
 彼女がこちらを向き、
「所長、○○警察署からお電話です」
「はい、白石です」
 内容は、被疑者が弁護士の接見を望んでいるとのことだった。
 もう一人の弁護士の方は別の警察署所管の事件ですでに事務所を出ており、ならばということでこちらに電話してきたということだった。
 都会なら当番弁護士も輪番制でぐるぐる回していけるが、弁護士が二人しかこの地域ではそんな贅沢はできない。行ける方が行くしかない。
「はい、わかりました。すぐに参ります」
 電話を切った私に、彼女が水が入ったコップと消臭用錠剤、そして、口臭消臭スプレーを差し出してきた。
 さすがに酒のにおいをぷんぷんさせて仕事に行くわけにもいかないからだ。
 錠剤は胃の中からにおいを消すタイプで、私はそれをコップの水とともに飲みほした。そして、消臭スプレーで口の中を念入りに消臭する。
 そのときには、二日酔いはもうどこかへ消し飛んでいた。
「私が運転しますよ。所長が酒気帯びで捕まったら、シャレになりませんからね」
「ごめん」
 私はかばんを手にとり、彼女とともに事務所をあとにした。

 独立してから最初の仕事。それが、いきなり冤罪事件なんてディープなものになるとは思いもよらなかったんだけど。
 その話はまたいつかするということで。


終わり
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/06(土) 20:39:29.85 ID:YZ7iSEM0
お題「バカ」
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/06(土) 21:48:56.89 ID:1LuNaESO
なんだみさおの事か
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/06(土) 23:22:16.46 ID:TfO1ofUo
>>242
乙です。
いくつか同一設定でSS書かれてますよね。
昔を思い出してもう一回読んでみようと思ったけど見つからない……どこに分類されてたっけ。
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 23:28:19.96 ID:6.Xszqg0
シリーズ物で柊かがみ法律事務所じゃないかな?
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/06(土) 23:40:50.83 ID:7lk6wGAo
>>232
まとめ乙

お題「時間」
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/06(土) 23:46:42.09 ID:TfO1ofUo
>>246
どうもです。
記憶にあるSSは、つかさと白石が結婚してて、子供が女の子の双子で、上の子がかがみに
憧れてるという描写もあった覚えがあるんですが、柊かがみ法律事務所シリーズのページに
リンクされてるものにはないみたいです。
設定は同じっぽくはあるのですが……もうちょっと探してみます。
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/07(日) 00:07:57.79 ID:n8NjmNE0
コンクールお題投票です。

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/link.cgi?url=http://vote3.ziyu.net/html/odie18.html
250 : ◆99/tzfnSzY [sage]:2010/03/07(日) 00:34:54.07 ID:MQViPAso
あけおめ
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/07(日) 08:00:45.68 ID:eD6cTn2o
投票所の直リン
http://vote3.ziyu.net/html/odie18.html

火曜のの24時に締め切るだから注意してくれ〜
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/07(日) 08:01:39.49 ID:eD6cTn2o
>>250
おそいぞ、あけおめww
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 12:51:02.08 ID:UE/3DQ20
現状を見る限り、過去最低な作品数になりそうなコンクールだ
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/07(日) 13:59:40.04 ID:eD6cTn2o
すまん月曜の24時だった

>>253
まぁそうなるだろうなー
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/07(日) 15:34:12.62 ID:n8NjmNE0
>>253
確かにそうかもしれんが悲観してもしょうがない。お祭り気分で楽しみましょう。
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/07(日) 22:35:28.78 ID:BQfYL.SO
全てはお題が決まってから
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/07(日) 23:08:26.29 ID:JbB8kcs0
こなた「火の鳥とか竹取物語のラストとかの不老不死系の話を聞くといつも思うんだけどさ
    痛くても死ねないのはそりゃあ困るけど歳とらないとそれはそれで
    周りから不自然に思われそうな気がするのはわたしだけかなぁ?」
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 23:21:56.82 ID:UZda0YM0
>>257
そうじろう「……。」

こなた「ね?どう思う?お父さん?なんで黙ってるのさ」

そうじろうは言えなかった。かなた=こなたなんだって。
そう、こなたは俺の娘ではないと。

新連載『永久の青髪』
来春スタート!
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/07(日) 23:33:27.84 ID:yEiU8cSO
>>258
かがみ「…そこは『お前がいうな』って突っ込みなさい」
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/07(日) 23:34:23.35 ID:pykv4qc0
父娘による近親相姦・・・。 ん〜、いいねぇ〜 !
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/08(月) 00:18:30.44 ID:hs8yEHI0
お題決まったと思ったら明日の0時だったのか
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/08(月) 08:59:10.02 ID:.qe19X20
>>258
>>162
ちなみに>>257>>162も俺です
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/08(月) 12:24:58.76 ID:OsB1qMSO
>>262
だから何?このスレで自己主張なんてウザいだけだからやめときな
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/08(月) 13:27:57.34 ID:.qe19X20
>>263
ごめんなさい。
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/08(月) 22:41:25.79 ID:XZxSn6SO
−堅い−

かがみ「最近、堅あげポテトってお菓子にはまっててねー」
みゆき「かがみさんのお気に入りなら、美味しいのでしょうね。今度わたしも食べてみますね」


みゆき(…美味しいのですが、かなり堅いですね)バリッバリッ
みゆき(結構強く噛まないとかみ砕けないです…)バリッバリッ…ガキンッ
みゆき(………)


みゆき「………」
こなた「で、銀歯かみ砕いちゃったみゆきさんが、口きいてくれない、と」
かがみ「…うぅ…これってわたしのせい?わたしのせいなの?」
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/08(月) 22:45:08.40 ID:tywpx/.0
>>265

大丈夫。 安心して。 みゆきには悪いが彼女自身の自業自得だよ・・・。
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 00:04:20.63 ID:PxEiCIoo
9日0時になりましたので、18回コンクールの御代投票を終了します
お題は「二人」に決定しました。
投稿期間は3月15日から28日まで、皆様の作品をお待ちしています

結果はこちら
http://vote3.ziyu.net/html/odie18.html
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/09(火) 00:14:29.70 ID:kCS1voSO
>>267

ヤマ張ってたお題がきたので個人的には喜ばしい
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/09(火) 00:18:33.15 ID:PhPFOUE0
想定外のお題だ……真っ白けになってしまった。
二人ね    間に合うかな?
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/09(火) 04:21:41.00 ID:ySKc0cAO
どの2人がいいか迷うな
ベタすぎない方がいいけど、意外性出すのも難しいし
お決まりの2人ってのもアリなのかな?
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 15:23:31.42 ID:4TGVh.AO
ウム、想定外だが問題なく書ける
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 20:07:52.94 ID:BPdPZJ20
やっぱここはこなたといずみのシチュエーションが王道でしょ

何の根拠も無いが・・・
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 20:46:52.94 ID:bujU2u6o
>>270
普通にありだとおも
基本お題に沿ってればいいんだし

>>272
あちこちに同人誌がばら撒かれてそうな道だなww
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/09(火) 22:05:44.12 ID:ISU3a2AO
かがみ「ふふふっ、お題は『二人』…さぁこなた!私と二人きりの愛の世界…へ……って」
こう「もぅ一回!もぅ一回お願いします泉先輩!」
こなた「なんどきても無駄無駄無駄」
やまと「…格闘ゲームという名の二人の世界に没頭してるわね」
かがみ「こ……こなた………」
やまと「みじめね」
かがみ「アンタはどうなのよ!」
やまと「…親友が楽しそうにしているのを見るのは、悪くないわよ」
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 22:53:11.19 ID:FR6fi2SO
>>274
かがみが凄く痛い子ww
あ、いつもの事でしたね^^
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 23:15:20.18 ID:BPdPZJ20
>>275

ひどっ !? かがみんは糞真面目で暴力主義ですぐ悪乗りして毒舌家で料理が全く出来ない
ただの人間なんだぞっ !? She is just a human !
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/09(火) 23:24:45.75 ID:kCS1voSO
>>276
自分に甘いところがあって糞がつくほど真面目というわけではない
暴力を実際にふるったことはほとんどない
すぐ恥ずかしがって悪ノリまではいかない
慣れた友人への口の悪さと毒舌は違うと思う


でも料理は擁護できない
かがみの作った弁当って冷凍のおかずをチンしただけだよなアレ
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 01:07:13.12 ID:uy29HSY0
桜藤祭では暴力ふりまくってたけどなww
少しキャラ崩壊の域だと思った
279 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 14:47:20.42 ID:MexIPSQ0
 つーかメリケンサックって場合によっては所持しているだけで軽犯罪法に触れるし、
正当な理由 ( ? ) が無ければ勿論の事役所の犬共にしょっ引かれちゃうだろうし・・・

 後顔面の殴り方によってはメリケンサックだけでも簡単に人を殺せちゃうから
結構危険だよね。 まあそんな事言い出せば素手でも暗[ピーーー]る方法は沢山あるのだが・・・

 それに完璧に校則違反だよね !? つーかそれ以前に危険物を所持している訳だから
下手すれば退学処分だぞ !? 購入したお店側としても

「 何でこんな可愛い子がこんな物買うんだろ・・・ ? それとこの子何歳だろう・・・ ? 」

 とも思わないのだろうか・・・ ? 多分どーせ

「 ま、いっか。 利益になるんだし。 」

 としか考えていないんだろうな。 恐らくは勿論の事両親供に実の娘が危険物を所持して
いる事実等知る由も無いだろうがそこは親なんだから気付こうよ。

 ましてや神聖なる神社の家の人間なのだからタチが悪いよなぁ・・・
絶対バチがあたるし。 常時所持しているって事はやっぱピンチの時とかに使用するんだ
よな。 仮に正当防衛であったとしても逆に傷害罪で訴えられるという極めて悪質なご時世
であるというのに。 かがみんや、少しはそっちの方も勉強してくれ。

 かがみん完璧に学校とか就職、それから世の中を舐め腐っているよね。
普通弁護士に本気でなりたい人間が少しでも自爆性がある行為をわざわざするだろうか ?
バレてしまった時の事を考えたりはしないのだろうか ?

 桜藤祭で主人公が頭部を強打された事実があるが、主人公自身が教職員に言いつけたり
もしくは訴える事だって可能な事例なのですぞ。 決して軽く見てはいけないよ。

 大袈裟に言えば美水先生も少し人間性が疑われたかもね。 女子高生が平気で犯罪行為を
している場面を映すだなんて・・・やっぱあんまり良くないよね。

 たかが二次元 & 非現実に無意味に熱くなってしまった私をご了承下さいませ。
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/10(水) 15:12:43.89 ID:8XviVESO
>>279
どこを縦読みすればいいんだ?

桜藤祭はギャグがパロ頼みなのがなあ
シリアスは結構ぐっとくるのがあったんだが
おまけシナリオもなかなかよかったし
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 15:17:55.86 ID:MexIPSQ0
>>280

 確かにシリアスなシナリオは中々良かったよね。 かがみんも本当はべっぴんさん
なんだから正確が損してるよね・・・。 そういう性格が好きな人からすれば魅力的
なのだろうが・・・。 まあ俺も拳銃二丁 ( エアガン ) 所持している身だからあまり
偉そうな事は言えないか・・・。
282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 17:53:03.02 ID:a5KDDwAO
熱くなるのは結構だが他所でやれ

お前の人間性を疑うわ
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/10(水) 19:57:35.39 ID:n4vyyTw0
もしもふゆきがSに目覚めたら
「ひれ伏せ愚民どもっ!」にのせて

立木軍団「(あ、ふゆきだ!)
     (おお〜)(ふゆきだ!)
     (あっ!ふゆきだ!)
      (ふゆきキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!)

     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!」

ふゆき 「いいこと?愚民ども 私のことは 姫様 と お呼びなさい!」

立木軍団「おおおおお!

     ( ゚∀゚)o彡゜ひーめ!ひーめ!ひーめ!ひーめ!
     ( ゚∀゚)o彡゜ひーめ!ひーめ!ひーめ!ひーめ!
     ( ゚∀゚)o彡゜ひーめ!ひーめ!ひーめ!ひーめ!
     ( ゚∀゚)o彡゜ひーめ!ひーめ!ひーめ!ひーめ!」

ふゆき 「だから!姫じゃなくて 姫様 と お呼びなさいっ!」

立木軍団「( ゚∀゚)o彡゜姫様!姫様!姫様!姫様!
     ( ゚∀゚)o彡゜姫様!姫様!姫様!姫様!
     ( ゚∀゚)o彡゜姫様!姫様!姫様!姫様!
     ( ゚∀゚)o彡゜姫様!姫様!姫様!姫様!」

ふゆき 「ひれ伏しなさい 生徒も教師も全て
     ひれ伏しなさい 地べた這いつくばれ
     ひれ伏しなさい 巫女も幽霊も魔女も   (かがみ「だが断る」かなた「だが断る」こなた「だが断る」)
     ひれ伏しなさい 天原の財力 く〜ら〜え〜♪

     我医者の姫 高良グループを求む      (みゆき「だが断る」ゆかり「だが断る」)
     我医者の姫 千年のお祭り
     我医者の姫 偽薬は体重減らし
     我医者の姫 蓬莱の樹海に しずんじゃえ〜♪」(白石「トラウマが・・・」)

立木軍団「ふゆき ふ〜ちゃ〜ん ふゆき〜
     ふゆき ふ〜ちゃ〜ん ふゆき〜 
     ふーちゃん ふゆき ふゆき
     あまはらさん! ふーちゃ〜ん
     ふゆき ふーちゃ〜ん ふーちゃんちゃんちゃちゃあああああん!!!
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/10(水) 19:58:03.06 ID:n4vyyTw0
     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふゆき!ふゆき!ふゆき!ふゆき!」

ふゆき 「だ〜か〜ら〜 ふゆきじゃなくて 姫様 と お呼びなさい!!」

立木軍団「( ゚∀゚)o彡゜ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!
     ( ゚∀゚)o彡゜ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!ふーちゃん!」

ふゆき 「『ふーちゃん』・・・ ひとの指示もまともに聞けないのかしら
     この愚民どもは」

立木軍団「( ゚∀゚)o彡゜レズ医者!レズ医者!レズ医者!レズ医者!
     ( ゚∀゚)o彡゜レズ医者!レズ医者!レズ医者!レズ医者!
     ( ゚∀゚)o彡゜レズ医者!レズ医者!レズ医者!レズ医者!
     ( ゚∀゚)o彡゜レズ医者!レズ医者!レズ医者!レズ医者!」

ふゆき 「ちょっ!なによ『レズ医者』って
     もぉ〜仕方ないわねぇ ちゃんと聞いてなさい
     二番行くわよっ 二番

     永遠のロリ 夜も更けるまで遊べ  (ゆたか「私だって大きくなるもん!!!」)
     永遠のロリ 今時のゆるさで
     永遠のロリ 腰が砕けても踊れ   (白石(中の人)「・・・」)
     永遠のロリ 倒れることはない た〜ぶ〜ん〜♪

     ほら ほら 足舐めなさい          
     これで 悦ぶの? 下衆めっ!
     足舐めなさい 肌色透き通る
     諦めなさい
     所詮 低所得者層なのよ! 
     諦めなさい 謎を
     あは あははっ
     あはははははははははははははっ!!!!!!!!」

立木軍団「ふゆき ふ〜ちゃ〜ん ふゆき〜
     ふゆき ふ〜ちゃ〜ん ふゆき〜 
     ふーちゃん ふゆき ふゆき
     あまはらさん! ふーちゃ〜ん
     ふゆき ふーちゃ〜ん ふーちゃんちゃんちゃちゃあああああん!!!」




ひかる 「で、『謎』って何なんだ?」
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 20:37:49.48 ID:MexIPSQ0
>>282

ごめんなさい・・・。
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 19:47:39.91 ID:qXpkGsSO
こなた「さて、かがみさんや。今回のコンクールは、投下数が少ないのではないかという懸念があるわけなのですが」
かがみ「うん」
こなた「奮起を促すためにも、我々が一肌脱がねばなるまいかと思う次第でありますよ」
かがみ「また変な事する気か…」
こなた「つーわけで…コンクールの大賞受賞者に、好きな女性キャラのツンデレをプレゼントーっ!」
かがみ「いや、なにをどうするのかわかんないんだけど、ツンデレという言葉に凄く嫌な予感がする」
こなた「大丈夫だよかがみー。かがみのツンデレなんてありきたりなんだから、みんな意外性のあるキャラリクエストするって」
かがみ「ふーん…例えばこなたとか?」
こなた「は?え?わ、わたし?…い、いやわたしのツンデレなんてつまんないって!へ、変な事言わないでよー」
かがみ「はーい、みなさん頑張って作品書いて、こなたを指名してやって下さいねー」
こなた「うわーん!煽るなー!かがみのバカー!」
かがみ「…それはそうと、最下位の人にはまた店長?」
こなた「あー、それは…」
兄沢「呼んだか!?呼んだな!?呼んだよな!?アニメ店長参上!この俺がアニメ店長としての全てをかけて、貴様に最高のツンデレを叩きつけてやろうっ!」
こなた「…これ書いてるアフォが『野郎のツンデレなんざ書きたくねぇ』とほざいてるので、ソレは無しの方向で」
兄沢「んなにぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
かがみ「…なるほど、それで女性キャラ限定なのか………つーかこんな小ネタ書いてる暇あるなら作品進めろっての」



サーセン
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 21:11:52.45 ID:AOZY.Gc0
 序盤から中盤までドッキリ & 軽い虐め系の話で終盤がネタ晴らし & 感動ってのも良い
かもね。 まあキャラ自身が苦痛に耐えかねて自ら生を止めてしまう最後は嫌だが・・・。

 後は百合系やほのぼの系の話が多いかもね。
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/12(金) 12:48:23.14 ID:/f82SMSO
お題:『2人』

王道四天王
 ・こなた&かがみ ・かがみ&つかさ ・ゆたか&みなみ ・みさお&あやの

準王道
 ・こなた&ゆたか ・みゆき&みなみ ・こなた&かなた ・ひかる&ふゆき etc.

微妙
 ・みなみ&みさお ・あやの&ひより ・いのり&ゆたか ・ななこ&みき etc.

大穴
 ・ただお&ゆたか ・つかさ&きよたか ・あきら&やまと ・いずみ&かがみ etc.
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/12(金) 23:03:41.27 ID:InzqbUE0
こなた&ふゆき
双方とも母親を亡くしておるのだ。これは行ける!?
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/13(土) 09:13:18.31 ID:lsq25MAO
>>288
微妙の みき&ななこ って三者面談の後の雑談ってイメージが浮かんだ
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/13(土) 09:41:29.03 ID:QcweIpo0
>>288
とりあえずこれに載ってないのにしたほうがいいかな?
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/13(土) 10:19:45.83 ID:DwSntQSO
>>291
気にせず好きに書いたらいいと思う
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/13(土) 10:27:22.20 ID:pHRlLms0
いろいろ予測しているみたいだけど、自分の思うとおりのストーリを書けばいい。
それに『二人』とはキャラのカップリングだけとは限らないしね。
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/13(土) 10:45:44.81 ID:r.KZ21Io
文章は難しいな
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 10:59:14.18 ID:fCPEJB6o
>>291
全然気にしなくておk


で、まぁ基本的に予測はやめたほうがいいな。作品に影響したりするから
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 15:09:31.58 ID:K3SGlII0
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ここまでまとめた
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297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/13(土) 15:26:00.07 ID:pHRlLms0
>>296 乙です
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/15(月) 22:57:29.10 ID:s5UX2TM0
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第十八回コンクール開催

投稿期間 3月15日(月)〜 3月28日(日)24:00

少しおくれましたが、みなさん振るってご参加ください。投稿まっています。


299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/16(火) 05:49:47.46 ID:Cp/qHN60
開催宣言乙です。

コンクール作品投下行きます。
300 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:50:42.95 ID:Cp/qHN60
1.幼馴染な二人

 とある街中。
「しかし、兄貴も薄情だよなぁ。クリスマスなのに、かわいい奥さんほっといて、仕事なんてさ」
「大事なお仕事なのよ」
 二人は、飽きることなく会話しながら、ぶらぶらと歩いている。
 幼馴染の二人は昔からそんな感じで、それは一方に彼氏ができても変わることはなかった。
「でもさぁ」
「今のお仕事がうまく行けば出世できるし、そうなれば収入も安定して……」
 彼女はやや顔を赤らめながら、こう続けた。
「赤ちゃんもできるし」
「兄貴に似なきゃ、絶対かわいいよなぁ。兄貴に似ないように柊の神社でお祈りしてくか?」
「もう。そんなこと言わないの」
「ごめん、ごめん。そんな怒らないでくれよぉ」
 相方の怒りゲージがわずかに上がったのを感じ取って、謝りモードに切り替える。
 その辺の呼吸も、幼馴染だからこそ。


301 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:51:25.51 ID:Cp/qHN60
2.双子な二人

 とあるビルの一階。
「お姉ちゃん。お待たせ」
 夜の営業が始まる前のレストラン。
 そのテーブルに、料理が並べられた。
「見た目も綺麗ね」
 姉がそういい、
「今度の新メニューの目玉だから」
 シェフ姿がすっかり板に付いた妹が向かいの席につく。
「いただきます」
 姉が料理に手をつける。
「ん、すっごいおいしい。絶対人気メニューになるわよ、これ」
「そうなるといいなぁ」
「絶対なるわよ。もう、これでレストランの経営もますます右肩あがりじゃない?」
 妹はとあるビルの一階に居を構えるレストランのオーナーシェフ。姉は同じピルの二階に居を構える敏腕弁護士。
 大学進学とともに一度は離れた双子は、下積みを経て独立するときに、ごく自然にこの近さに戻ってきた。
 生まれる前から一緒だった姉妹にとって、この近さは当たり前の近さ。
「うん、もうすぐお父さんに借りたお金を返せそうだよ。お姉ちゃんは?」
「私も何とかなりそうね」
 姉の方も、法律事務所の経営は順調で、収入はあがっている。むしろ、その金を使う暇がないぐらいに忙しいことの方が問題だった。
 二人とも、独立して開業する際の資金を実家から借りていた。それを律儀に返済し続けて、まもなく完済できる見込みということだった。
「そうなんだぁ」
「それはいいけど、お金の管理には気をつけなさいよ」
 危うく詐欺にひっかかりそうになった妹を助けた経験のある姉として、その辺が心配だった。
「お姉ちゃんがいれば大丈夫だよ」
 妹はすっかり姉に頼りきり。
 とはいえ、姉の方も、一日三食のほとんどをこの妹に頼りきりなのだから、お互い様だ。
 持ちつ持たれつ。そんな関係は、将来も不変だろう。


302 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:52:05.11 ID:Cp/qHN60
3.大親友な二人

 とある街中。
「ごめん、待った?」
「ううん。今来たとこだよ」
 そんなセリフを聞くと、まるで恋人同士の会話のようだった。
 実際、二人の共通の友人は、二人をしてそのような妄想の主人公とすることが多かった。
 もちろん、それは妄想にすぎず、二人の関係は友人だ。
 連れ添って歩く二人の間に会話は少ない。
 一方はもともと口数が少ない方だし、二人の間では言葉などなくても以心伝心だから。
 それでも会話が続いて、そして、
「それでね、プロポーズされちゃったんだ」
「返事はした?」
「うん」
 わざわざ待ち合わせしてまで会いにきた目的はこれだった。
 誰よりもまず親友にこの事実を報告したかったのだ。
「おめでとう」
「ありがとう」
「実は私も……この前……」
 その言葉に少し驚く。
 それは、偶然なのか、必然なのか。二人はそれぞれほとんど同じ時期にプロポーズをされていたということだった。
「お返事はしたの?」
「まだ……。私なんかでいいのかと考えてしまって……」
 いかにも謙虚な彼女らしい悩みだけど、
「大丈夫だよ。とってもお似合いだもん。待たせるのはよくないと思うよ」
 お互いに背中を押したり押されたり。そんな関係ももう長いこと続いている。
 それは、それぞれが結婚したとしても変わりはしないだろう。


303 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:53:19.59 ID:Cp/qHN60
4.熟成な二人

 とある高校の保健室。
「今なんて言った?」
 その問いの答えとして、もう一度同じセリフを繰り返す。
「今度の週末は、養護教諭の会合で出張です」
「そうか。じゃあ、メシはコンビニ弁当ですませるか」
「コンビニ弁当ばかりでは健康に悪いですよ」
「一人で鍋というのもむなしいからな」
「鍋料理以外にも挑戦してみてはどうですか?」
「めんどくさい」
「たいした手間ではないですよ」
「おまえにとってはそうなんだろうけどな」
 自分がいなくなってしまったら、この人はどうなってしまうのか?
 そんなことが心配になってくるが、当人はそんなことは思い浮かびもしないのだろう。
 養護教諭としてもちろん健康を保持して長生きするつもりではあるが、先に死なないという保証はないというのに。
 それでも、
「作り置きしておきますね」
 そんな言葉が自然と口から出てくる。
「あんがとさん」
 そういって、彼女は退室していった。
 つくづく甘いと思うが、仕方がない。
 二人の間柄はずっと昔からそうで、今さら変えようもないのだから。


304 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:53:54.41 ID:Cp/qHN60
5.母娘な二人

 とある高級住宅街の一宅。
「お母さん、お母さん。起きてください」
「んぁ? あら、お帰りなさい」
「夕飯は作っておきましたよ」
「ごめんなさい。お昼寝してたら、すっかり寝すぎちゃったわ」
 窓から見える景色はすっかり夜。昼寝というレベルではない。
 勤務先から帰ってくれば、この母はすっかり熟睡していた。仕方ないから、自分で夕飯を作ってから母を起こしたのであった。
 そのことについては、何もいわない。幼いころからこのようなことは当たり前であったし、そんなことにいちいち突っ込んでいては、この母と親子関係を継続していくことは難しい。
 夕食をとりながら、母娘でまったりと会話を続けていく。
「そうそう。みなみちゃんにお婿さんが決まったのよ」
 それは今日、本人からも聞いていたが、
「それはおめでたいことですね」
 母に話をあわせる。
「うちにもお婿さんほしいわよね」
「すみません。なかなか縁がありませんでして」
「この前、お父さんが紹介したい人がいるって言ってたわよ」
 父は、海外に単身赴任している。
 休暇が取れて、一週間後に日本に帰ってくるはずだった。
「そうですか。正式にお話があれば、お会いしてみますね」
 この母を一人で家においとくのは何かと不安だ。面倒を見れる人間は多いにこしたことはない。
 父が紹介してくれる人が、この母とうまくやっていける人だといいのだが。
 父の紹介であるから、その辺はぬかりはないだろうけど。


305 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:54:34.95 ID:Cp/qHN60
6.夫婦な二人

 とある古都。
 二人は、趣味の旅行で、ゆったりと歩いていた。
 二人とも、職業が神職で、日本史の教養があるとなれば、めぐり歩く場所もおのずと決まってくる。どの場所もたいがいは過去に何度か来たことがあるのだが、来るたびに何か新しい発見があって面白い。
 連れ添って歩く姿は、どこからどう見ても、完全無欠のおしどり夫婦。
「家の方は大丈夫かな?」
 夫がふとそんなことをつぶやく。
「大丈夫よ。もう子供じゃないんだから。お婿さんは家事もできる人だし」
 ちゃっかり者の長女が引っ張ってきた婿さんは、そんな人だった。もちろん、神職としてもしっかりした人。二人が長期の旅行で留守にしてても、家庭も神社も心配はいらない。
 次女以下の三人の娘も、それぞれ独立して、あるいはお嫁にいって、特に大事もなく順調だった。
 親としては、喜ぶべきことだ。父としては、もう少し手間がかかる娘でもよかったかもと思うことはあったが。
 そういうわけで、二人は以前よりも夫婦としてすごす時間が多くなっていた。
 その仲睦まじさは、年の離れた弟妹が増えるのではないかと娘たちが本気で心配するぐらいだった。


306 :二人たちの断片 [saga]:2010/03/16(火) 05:55:12.01 ID:Cp/qHN60
7.父娘な二人

 とある家庭の居間。
 テレビ画面の中で、二人のキャラが激しい格闘を繰り返していた。
「よっしゃー! 十連勝!」
「うぬぬ、腕をあげたな」
「お父さんもそろそろ老いを自覚すべき歳なんじゃないの?」
「まだまだ若いもんには負けんぞ」
「そういう言い方がもう年寄りだから」
「もう一勝負!」
 画面の中で再び対戦が始まる。
 ゲームに飽きたころには、ちょうど深夜アニメが始まる時間だった。
 テレビのチャンネルを合わせる。
「うーん。ヤンデレとツンデレのハイブリットか。これは新しいな」
「混ぜるな危険、って感じだけどね」
 視聴しながら、萌えについて語り合う二人。
 仲のよい父娘だとはよく言われる。
 でも、昔からそれが当たり前で、ことさらに意識するようなものではなかった。
 これからもそうだろう。父はやがてこの世から退場していくだろうが、少なくてもそのときまでは。
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/16(火) 05:56:54.86 ID:Cp/qHN60
以上です。

 残業の合間をぬってのネタ出し。年度末、社会人はつらい時期だ。
 というわけで、想定できる組み合わせ全部のネタ出しは無理でした。
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/20(土) 15:05:27.46 ID:VeLAfh20
>>307
オムニバス形式できたか。双子な二人が一番気に入った。
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/21(日) 23:22:06.37 ID:4hEb4cSO
かがみ「コンクールも後半でーす」
こなた「でーす」
かがみ「まだ一週間あるんで焦らずいきましょー」
こなた「しょー」
かがみ「こなた楽してるわねー」
こなた「かがみもたいしてかわんなーい」



みゆき「お二人とも、真面目にやりましょうね?」
かがみ「…はい」
こなた「…はい」
つかさ「ゆきちゃん、その笑顔怖いよ…」
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/22(月) 20:49:02.63 ID:CSFK1.AO
>>309みゆきさん怖ええ


コンクール作品投下いきます。
311 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:50:02.26 ID:CSFK1.AO

舞台には私と彼女しかいない。二人だけの勝負。先に二往復してきた方が勝者となり、もう片方は敗者になる。


ーなんて勝手な想像をしながら、私は『相手』が泳ぎ出すのを待っていた。
ここは勝負の場でもなんでもない、ただの市営プール。勝負も私が勝手に決めたことであって、ましてや『相手』の人はさっきたまたま隣を泳いでいただけの知らない人だ。

312 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:50:38.99 ID:CSFK1.AO

事の発端はたいした事じゃない。泳ぐ練習を兼ねてみんなで遊びに来たら、たまたまあの人が泳いでいたのだ。
「あの人、速いね」
「…うん。それに私より泳ぎ方が綺麗」
「みなみちゃんより?」
運動神経のいい親友が自分よりと言うのだから、もしかしたら部活とかしているのだろうか。
「ホント速い…そうだ。小早川さん、あの人に並列して泳いでみたらどうかな」
「え?」
「それは…相手に悪いんじゃ…」
「別に競争しようって訳じゃないし。一度か二度往復してちゃんと泳げてるか確認してみたくない?」
泳げてるのかどうか…確かに、みなみちゃんに教えてもらったまま往復ができるかは試してみたい。
けどそれとあの人を巻き込むのは関係ないような…。
313 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:51:19.02 ID:CSFK1.AO
「相手がいた方がいいと思うんだ。一人で泳ぐと、意識して覚えた通りにしようとして身についてるかわかんないし」
「それはそうだけど…だったらみなみちゃんか田村さんが一緒に泳いでくれた方が良いよ。いくらなんでも知らない人を相手にするのは良くないよ」
でもね、と田村さんが言うには。
みなみちゃんはフォームの乱れとか私達の中で一番わかるから見てもらう方がいい。
不測の事態(考えたくないけど足をつったりとか)になった時に助けてもらえるのも含めて。
で、自分(田村さん)はと言うと
「そろそろパティが復活してるんじゃないかなぁ、って思うから医務室行こうかと話してたんだよね」
そう。この場にはいないが、パトリシアさんも来ている。が、彼女は現在医務室にいる。
314 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:51:55.20 ID:CSFK1.AO
怪我をした訳ではなく、初めての日本のプールにはしゃいで準備運動無しで飛び込んで(もちろん禁止されている)お腹を打ち、そのまま泳ごうとして足をつった。
なので監視員さんのお説教を兼ねて医務室へと運ばれていってそのままだった。
「監視員さんは戻ってきてるから、お小言は終わってるはずだし」
「それならその後で泳いだらいいんじゃ」
「泳げなかったパティがその分はしゃいだりしない保証ができる?」
「…無理だね」
パトリシアさんのことだから。泳げなかった時間を取り戻すみたいにはしゃぐだろう。
そうなったら練習どころではなくなる。
315 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:52:24.22 ID:CSFK1.AO
そんなわけで今、あの人が泳ぎ出すのを待っている。
対決とかそんな風に考えてないと、その人への罪悪感みたいなものを覚えてしまう。
(はぅぅ…まだかなぁ)
その人は今、お友達と何か話している。…どこかで会った気がするなぁ、あの友達の人。褐色で胸が大きくて。
話が終わったのか、その人はプールに入った…もうすぐ『勝負』だ。
316 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:52:57.59 ID:CSFK1.AO
『相手』はとても綺麗な泳ぎで、私を引き離していた。練習していた平泳ぎでは追い付きそうにない。
もちろん、勝つ必要はないのはわかっている。けれど、せっかく『勝負』と思っているんだし、それにみなみちゃんに教わったことで負けたくない。
そう思うと、手と足に力が入った。まだいける。あの人に追いつけるはずだ。
いつも泳ぐ時より力がわいてくる。これならきっと………………あれ?急に身体が重く…………なに?みんな何か声を出しているけど聞こえないよ?……
そう考えていたら、頭に衝撃が走って、私の意識は途切れた。

317 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:54:39.01 ID:CSFK1.AO
目を覚ますと、何かの上だった。
「気がついたみたいね」
「ここは……あの…私いったい…」
声をかけてきたのは、『相手』の人だった。
「壁に頭を打ったのよ。水は飲んでないはずだから、もう少し休めば大丈夫。…一応医務室に行く?」
「いえ、大丈夫です。えっと…お名前は」
「永森やまとよ」
「助けて下さってありがとうございます永森さん。私、小早川ゆたかです」
「別にいいわよ。たまたま隣を泳いでいただけだもの」
「いえ、それは」
たまたまではなくて。わざと隣で泳いでました。
そう言おうとして。
「それに、あなたの気絶した原因は私にあるから」
318 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 20:55:22.46 ID:CSFK1.AO
「え?」
原因が永森さんにあるはずがない。だって私が頭を打っただけなのだし。
「あなた、私のペースにのまれていたのよ。いつもよりハイペースだったんじゃない?」
「そうですけど…でもそれは」
「だったら私のせいよ。泳ぐ練習をしているのを見ていたからなおさら、ね」
「知ってたんですか?」
「昔、同じ事をしたから。だからひとつアドバイスすると、そういう場合は負けん気を起こさない方がいいわよ。目的を忘れて勝とうとするから」
「…はい」
よろしい、と言って永森さんは立ち上がった。
「お友達も心配してるし、言って安心させてきなさい」
「そういえばいない…あの」
「私の親友が顔見知りらしくて、何か話してたのよ」
親友ってあの褐色の…あ、思い出した。前に紹介してもらった
「親友って、八坂先輩ですか?」
「…親友って呼んだのは秘密にしてもらえる?」
恥ずかしがる事じゃないのに。そう思いながらも、私は頷いた。
「じゃあ行きますね」
「ええ」
「また会えますか?」
「難しいわね。もう会えないかも…でも、会えたことは変わらない」
「なんですか?それ」
「気にしないで」
会えたことは変わらない…か。確かにこの先、会えるかはわからないし、覚えているかもわからない。
でも、こうして二人で泳いで(一方的な気がするけど)勝負して、話をしたのは変わらない事実。

そして私達は別れた。お互いの親友の元へ向かうために。
319 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 21:01:21.38 ID:CSFK1.AO


おまけ〜なぜみなみがいなかったのか〜

ゆたかが頭を打って気絶した直後の出来事。
やまとが少女をプールサイドに寝かせた時、友人とおぼしき人達が駆けつけてきたの…だが…
「ゆたか!今人工呼吸するからね!」
「落ち着きなさい。その必要はないから」
「必要がなくてもします!唇を」
「何言ってるのあなた」
「ぬぉ、永森さん×小早川さん←岩崎さん…ぐふふ」
ひよりちゃんもいた。…あぁ、これが百合というやつなのか。
「やめんか!まったく…やまと、その子お願い。私はこの二人に説教があるから」


「…なんてことがあったなんて、とても言えないわね」
「なんか言った?」
「別に。…やっぱり百合とかわからないわね」
「いきなり何言ってんの?」
320 :プールサイドで袖触れて [saga]:2010/03/22(月) 21:03:43.12 ID:CSFK1.AO
投下終了。

ガイドブックでやまとが水泳部なのを見てから書こうと思ってたネタを勢いで作った。反省はしない。

パティは今思い出した
321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 17:26:15.85 ID:8mVz2GY0
>>320
乙です
読み終わった後あっ今夏だわって錯覚した
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 17:32:27.07 ID:8mVz2GY0
>>286
本当ですか? 是非そうじろうでお願いしたいんですけどいいですか?
投下するんで大賞とったらお願いします! でも大賞とれなくてもお願いします!
323 :『かがみんと二人できゅんきゅんするSS 〜かがみん超可愛い〜』(1/2) :2010/03/23(火) 19:59:05.04 ID:8mVz2GY0
投下です><

 ふと気づいたら、かがみんが僕の後ろに立っていた
「お腹が減ったんだけど」
 なんて言う
 僕は作業をしていて、少し急がしい時だったからちょっと待ってって言った
 そしたらかがみんは「自分勝手なのね」
 って飽きれたように言った

 かがみんは庭で金魚に餌をやっている
 僕はそんなかがみんに近寄って「今日は何の日かわかる?」って聞いた
 かがみんは一言「仏滅」って答えた
「今日は僕たちが初めて出会った日だよ」
 と教えたら、「細かい人ね」ってかがみんはため息をつい後、「それで何くれるの?」って言った
 花束を渡すと、「バッグが良かったわ」ってかがみんは不満そうに言った

 二人で出かけてるとき、鞄が重そうだったから、「持ってあげるよ」って言ったら
「私自分の荷物持たれるの嫌いなの」
 って言った
 その後コンビニに寄って買い物をした。
 買い物した荷物を持たないでいると、「何してるのよ」ってかがみんは怒った
「これはあなたの荷物でしょう」
 そんなのわからないよ、って言ったら、「女の扱いがなってない」ってかがみんはいつまでも
 ぷりぷり怒ってた

 出かけ先でかがみんが「お腹が空いた」って言った
 辺りを見渡すとマクドナルドがあったから、「あそこに入ろうか」って言ったら
「嫌よ」
 ってかがみんは首を振るんだ
 この間何とかバーガーがおいしかった、って言ってたじゃないか。何でだよ
 ってちょっと怒ったら「デートでマックとかありえない」って言うんだ
 僕にその感覚はわからないよ、って言ったら、かがみんは「じゃあ私たち合わないのかもね」
 って言った

 帰り道夜空が綺麗だったから、僕は空を眺めながら歩いていた
 そしたらかがみんは「ねぇ何か喋ってよ」って不機嫌そうに言った
 星が綺麗だよ、って夜空を指差したら「似合わないこと言わないで。面白い話して」
 って言うんだ
 僕はちょっとむっとして、僕は君のおもちゃじゃないって言ったら、「小さい男ね」
 ってかがみんは言った
324 :『かがみんと二人できゅんきゅんするSS 〜かがみん超可愛い〜』(2/2) :2010/03/23(火) 20:00:40.50 ID:8mVz2GY0
 かがみんが背中にファスナーのある服を着ようと、四苦八苦していた
 僕が「手伝おうか?」って言ったら、「別にいい」って赤い顔で言うんだ「早くあっち行って」
 でも、って言ったら「あんたに弱み見せたくないの」って怒鳴った
 すごすご退散したら、背後でびりっていう音がした

 突然かがみんは「私、あなたのこと好きになりきれていなかったのかもしれない」って言った
 僕が「気持ちが変わってしまったの?」って言ったら、かがみんは「最初から間違えていたのかも」って言うんだ
 そんなこと言わないでよ、と言ったらかがみんは「もう別れよう」って言った
 好きじゃなかったのなら、何であの時、OKしてくれたんだ、って言ったら、かがみんは
「そんなこと一言も言っていないじゃない」
 って怒鳴った
 どういうことだか全然わからないよ、って言ったら、「わかってよ」って泣くんだ

 僕が愛してるよって言っても、かがみんは「そう」ってそっけない
 本当だよ、って続けたら「ふぅん」って僕のことを見もしない
 まだ君のことを想っているんだよって言ったら、「自分勝手なのね」って呆れて言う
「それで何くれるの?」ってかがみんは言うから、僕は花束を渡した
 かがみんは「女の扱いがなってない」って不満そうに言う
 でも綺麗な花だろうって言ったら、「私たち合わないわね」って言う
 僕は泣いているのに、僕の気も知らないでかがみんは「面白い話してよ」って言う
 君が病気だったなんて知らなかったって言ったら、「あんたに弱み見せたくないの」って怒鳴る
 君がもう助からないなんて信じられないって言ったら、
 かがみんは、「わかってよ」って泣くんだ
325 :『かがみんと二人できゅんきゅんするSS 〜かがみん超可愛い〜』 :2010/03/23(火) 20:02:10.00 ID:8mVz2GY0
以上です!
短いので読んでくれたら嬉しいです!
326 :『かがみんと二人できゅんきゅんするSS 〜かがみん超可愛い〜』 :2010/03/23(火) 20:03:40.23 ID:8mVz2GY0
言い忘れたけどコンクール参加作品です!
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/24(水) 01:44:04.98 ID:uWHPh6I0
人少ない…
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/24(水) 03:11:24.70 ID:Ztr7xoAO
いやまた最後に殺到するんじゃないの?
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/24(水) 12:39:24.26 ID:kPuUGgSO
かがみ「だから、その方程式じゃ解けないのよ。こっちのやり方でこうやって……」

みさお「うぅ〜……つまり、どーゆー事だってヴぁよ?」
かがみ「日下部ェ…」
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/25(木) 20:14:17.81 ID:Bqi7s220
驚くほどの人の少なさ
いつもこうなの?
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/25(木) 21:39:22.88 ID:4TMCk8wo
いつもっていうか、ちょっと前はもう少しいたかな
ここ数ヶ月で色々あって更に減った感じ

コンクールの方は締め切り近くで投下する人がいるからなんとも
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/25(木) 22:05:09.53 ID:Bqi7s220
>>331
ざっとスレ見返してみてなんとなく把握した
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 01:19:47.80 ID:I95MAEk0
久しぶりに来たけど前と変わらず人少ないな
334 :『彼女は綺麗ににっぽり笑い』(1/1) :2010/03/26(金) 23:47:54.07 ID:LngOb8M0
コンクール参加作品投下します。

 ちょっとあんたといきなり不躾に声をかけられて、振り向いてみれば上級生が立っていた
 何ですか、と訊いたら私はかがみんっていう者だけど、ちょっと男手が必要なもんで、少しばかり
 手を貸してくれないかいという
 無下に断るのもあれなので、ほいさと了承したら、花壇の手入れを手伝って、と中庭にまで連れて行かれた
 何でも学校がボランティアで配布していたパンジーが余ってしまったので、廃棄するのももったいないと、
 学校の花壇に植えることになったのだとか
 真面目にえいさと土をいじくっていたら、あなたは私の立場に疑問をお持ちでしょう、とかがみんは言う
 ええまあ、と答えたら私は緑化委員なのよ、という。
 次いで、どうしてあなたに声をかけたか不思議に思うでしょう、と言うので、ええまあと答えたら
 あなたは下級生だからと悪戯っぽく笑った
 その出会い以来妙なことなのだけど、事あるごとにかがみんとの付き合いが多くなり、その大抵が使いっぱしり
 ではありますが、いつしか彼女に恋心なんてものを抱くようにまでなってしまった次第
 だけども経験皆無の自分のことなので、こっちからアプローチなんてできる訳なくまた度胸もなく、
 何やらやきもきした関係が続きに続き、ああもうこんな関係でもいいかもね、と半ば諦め満足していたのだよ
 しかしまぁ、果報は寝て待てなんて言う通り、その日かがみんとプリントの配布を手伝っていたら
 あなた次の日曜日は暇かしら、と訊かれたのである
 どぎまぎして、ええまあ暇ですよ、と答えたら、彼女綺麗な顔でにっぽり笑い、良ければ遊園地なんか行きません?
 と言うではないか
 はやる気持ちを抑えて勤めて冷静に、ええまあ構いませんよ、と格好つけてクールに返したら
 私の友達ばかりが来るけどいいかしら? と見事に玉砕
 何でも知人に貰ったチケットが、余りに余って持て余していたのだという
 ショックのためか、その後のことはよく覚えちゃいないけど、気づけば遊園地もそれなりに楽しめた
 しかしまぁ彼女との奇妙な縁は、それぎりぱたと途絶えてしまい、廊下ですれ違えば軽い会釈をする程度の仲になってしまった
 でもまぁ経験皆無の自分のことなので、そんなもんだろうと諦めていたら、
 卒業間際の春先に、ちょっとあんたと声をかけられた
 振り向いてみればかがみんが立っており、何ですかと訊いたら、あなた次の日曜暇ですか? などと言う
 最早夢見ることは馬鹿のことと学んだために、すっかり平静に、ええまあ暇ですよ、と返したら
 遊園地に行きません? と訪ねてくる
 ええまぁ構いません、どなたたちと出かけるのでしょう? と訊いたらば
 彼女綺麗な顔でにっぽり笑い、
 いえ二人でね
 と言ったのだ。
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 23:49:38.49 ID:LngOb8M0
お題は二人でよかったよね
ちょっくら難しいお題で苦労したけど何とか書けたので良かったな
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/27(土) 00:05:23.87 ID:4iVBrTE0
コンクール作品レビューとか誰か書いてくれないかな
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/27(土) 00:07:45.98 ID:Cb.9n6Q0
それでは私もコンクール作品を投下します。計算では12レス使用予定です。
338 :呪縛  1 [saga]:2010/03/27(土) 00:10:03.51 ID:Cb.9n6Q0
 二年もう終わろうとするある日のこと、いつものように放課後、図書室で私達四人は会話に花が咲いていた。
みゆき「あ、もうこんな時間 私もう行かないと、皆さんは私におかまいなく」
かがみ「そうね、私たちも今日はこのくらいで帰りましょうか」
こなた「まだ早いよね、買い物つきあってくれないかな」
かがみ「どうせゲームなんでしょ……そういえば今日、私の読んでたラノベの続編の発売日だったかしら」
こなた「決まりだね」
こなちゃん達の話を聞きながら何気に本棚を見るとある本に目が止まった。
かがみ「つかさはどうする?」
このままお姉ちゃん達に付き合ってもいいけど、何故か本が妙に気になった。
つかさ「私はもう少しここに残る」
こなた「へー、つかさが図書室に残るなんて、今日は雨でも降りそうだ」
かがみ「それじゃ私達は先に行くわよ」
お姉ちゃん達は図書室を後にした。

 私は気になった本を手に取った。古い感じ。タイトルは『おまじない集』と書かれていた。高校の図書室にしてはやけに子供っぽい本。
ページを捲ると『貸し出し禁止』と大きな印が押されていた。貸し出し禁止?、確かに分厚い本ではあったがそんなに高価な本とも思えなかった。
私は本を持って席に戻った。何頁か捲ると古今東西のいろいろな呪いやおまじないが紹介されていた。
落し物を探すものから人を呪い殺すものまで多種多様だった。私はいつの間にはその本を夢中で読んでいた。

 読んでいくうちにおまじないを試したくなった。こんなに沢山あるおまじない。何を試そうか。私はしばらく考えた。
そういえばお姉ちゃん、今まで私と一緒のクラスになったことなかったな。高校を卒業したら進路は別になる。せめて三年生くらいは一緒のクラスになりたい。
一緒のクラスになるとしたらあと一回しかチャンスがない。ため息を一回ついた。そんな都合のいいおまじないなんかある訳ない……

 あった。『一緒のクラスメイトになるおまじない』。私が思った通りのもの。早速読んでみた。紙に魔法陣のような図形を書いて願を込めるような事が書いてあった。
思いのほか簡単そう、これに決めた。しかし図形がちょっと複雑なので覚えられそうにない。書き写すしかなさそう。
貸し出し禁止じゃここで写すしかない。私は一度教室に筆記用具を取りに教室に戻った。

 私は丁寧に図形を写した。そして願の掛け方も写した。最後の方に注意書きがあった。
『このおまじないは他人にばれると効果がなくなる』と書いてあった。ばれちゃいけないのか。内緒にするくらいどって事はないよね。
その他いろいろな注意書きが書いてあった。でもおまじないが成功するかどうかも分からない。とりあえず今日はこんな所かな。
私は本を本棚に戻した。ふと気が付くともう外はすっかり暗くなっていた。もうすっかり終業時間になっていた。私は慌てて図書室を後にした。

そして、その日がきた。
こなた「お、つかさ、みゆきさん、私達一緒のクラスじゃん」
つかさ「本当、やったー!、こなちゃん、ゆきちゃん、三年連続だね」
みゆき「また一年間よろしくお願いします」
あちらこちらで歓声とため息が聞こえる。クラスが一緒になった人、ならなかった人、これも運だからしょうがない。
さて、お姉ちゃんは……。
こなた「柊かがみ……、名前載ってるよ、三年B組、かがみ、やったじゃんお正月のお祈りが叶ったみたいだね」
つかさ「やったー!、お姉ちゃん、一緒のクラスだよ、小学校からの夢が叶ったよ、この前のお……」
私は慌てて両手で口を押さえた。あれ?、おまじないの事言っていいのかな?、まさか本当に願いが叶うとは思わなかったから注意書き見てないや。
でも、どうせお姉ちゃん達に言ったって偶然にそうなったって言われるだけ。私はこのおまじないで叶ったと思いたい。言わないでおこう。
みゆき「どうしたのですか?つかささん」
つかさ「うんん、なんでも……ないよ」
かがみ「つかさ、はっきり言っていいわよ、こなたとまた同じクラスになって先が思いやれるって」
こなた「つかさ、はっきり言っていいよ、お姉ちゃん、学校まで一緒になって鬱陶しいって」
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、私は……」
みゆき「ふふ、楽しいクラスになりそうですね、私は学級委員の引継ぎがありますので」
ゆきちゃんは笑顔のままその場を後にした。
ゆきちゃんも嬉しそう、私はあのおまじないの本に心でお礼を言った。
339 :呪縛  2 [saga]:2010/03/27(土) 00:11:59.11 ID:Cb.9n6Q0
 私はお姉ちゃんと同じクラスになる為にしたおまじないはこれが初めてじゃなかった。小学校の頃から人から聞いたり、本を読んだり、テレビを見たり、
毎年この時期になるといろいろ試してきた。結果は……まったく効果なし。でも今回は違った。高校最後でやっと願いが叶った。
高校を卒業したらもう同じ大学、進路になることはまず考えられない。こなちゃん、ゆきちゃんも二年の時より喜んでいる。
私はこれからの楽しい日々を想像していた。

それから一週間が経った。 
こなた「かがみ、何で壊したの」
かがみ「私じゃないわよ、勘違いもはなはだしい」
こなた「かがみ以外に誰がやったって言うんだよ」
壊した壊さないでお姉ちゃん達がもめている。何があったのだろうか。体育の授業を終え、教室にはいるとお姉ちゃん達は。睨みあっていた。
つかさ「どうしたの?」
こなた「つかさ、聞いてくれよ、かがみが私のDSを壊したんだよ」
かがみ「だから、こなたのなんていじっていないわよ、大体学校にそんな物もってくるのが悪い」
初めはただのじゃれ合いかと思った。今までこんな事は何度もあった。にらみ合う二人、そう、今までそんな事なかった。
どちらかが怒っても片方は受け流すような態度で喧嘩になることなんてなかったのに。今は二人の怒りが重なり合っている。
何とかしないと。私はあたふたしてお姉ちゃん達をなだめようとした。
みゆき「すみません、それは私がやりました」
こなた・かがみ・つかさ「えっ?」
私達はゆきちゃんを見た。申し訳なさそうに肩をつぼめ、俯いて立っていた。
こなた「なんで?、みゆきさんが?」
みゆき「鞄からはみ出していたのを見つけ、鞄に戻そうとしたのですが、手が滑って落としてしまいました、すみませんでした。泉さん」
ゆきちゃんは深々と頭を下げた。
かがみ「……どう、分かったでしょ、人を疑う前にちゃんと調べなさいよ」
そう言うと自分の席に戻っていった。
こなちゃんはばつが悪くなったのか無言で自分の席に戻った。
つかさ「ちょっと、ゆきちゃん」
私はゆきちゃんを呼んで教室の外に出た。

つかさ「ゆきちゃん、さっきの事、本当なの?」
ゆきちゃんは暫く黙っていた。
みゆき「いいえ、私は泉さんの鞄を触っていません」
つかさ「それじゃ何で嘘までついて罪を被って……」
みゆき「折角かがみさんが私達のクラスに入った、こんな事で終わらせたくありません」
つかさ「ちょ、ゆきちゃん、終わらせるって大げさだよ、確かにさっきのお姉ちゃん達の権幕は凄かったけど」
みゆき「そ、そうですね、大げさでした、でも、この場が収まってよかったと思います」
つかさ「そうだね、流石ゆきちゃん」
休憩時間の終わりを告げるチャイムがなった。私達は教室に戻った。

 三年生になって一ヶ月、お姉ちゃんとこなちゃんは些細なことで言い合いになったり、怒鳴りあったりする事が多くなってきた。
初めは私が間に入ったりゆきちゃんが止めて直ぐに収まったけど……。
つかさ「ゆきちゃん、最近お姉ちゃんとこなちゃん様子がおかしいと思わない?」
みゆき「そうですね、新しい環境がそうさせているのかもしれませんね」
つかさ「それなら良いんだけど、家でも最近こなちゃんの話しなくなって、私、心配だよ」
ゆきちゃんは黙って俯いてしまった。
つかさ「ゆきちゃん、お姉ちゃん達がこうなった原因、知ってる?」

ゆきちゃんは飛び跳ねるように顔を上げて私を見た。
みゆき「わ、分かりません、何かいい方法がないか私も考えている所です」
340 :呪縛  3 [saga]:2010/03/27(土) 00:14:10.07 ID:Cb.9n6Q0
つかさ「そうだね、私も考えるよ」
お姉ちゃんとこなちゃんが教室に入ってきた。
かがみ「ただいま、悪いわね、お昼待たせちゃって」
こなた「かがみ、何処に?」
かがみ「黒井先生に呼ばれてたのよ、こなたは何処行ってたんだよ」
こなた「私は購買行ってきた」
こなちゃんは牛乳とチョココロネを持っていた。
みゆき「お昼にしましょう」

 今日はなんのトラブルもなく楽しいお昼になった。でも、今までとは何かが違う。お姉ちゃんが同じクラスになったから?。
本当は別のクラスになるはずのお姉ちゃん。私がおまじないでどこかに無理がでてきちゃっているのかな。
そういえば私、あの本の注意書きを殆ど読んでいなかった。何か方法に間違えがあったのかもしれない。もう一度あの本を見てみよう。

 放課後私は図書室に向かった。本棚を見ると、おまじないのの本が置いてあった場所がぽっかり空いていた。本を読んでいる人も居ないようだ。
無い?。確かにここの本棚にあった。私は近くの本棚も探した。本が見つからない。誰かが借りていった?、それはない。あの本は貸し出し禁止。
かれこれ一時間は探しただろうか、見つからない。
???「何の本を探しているのですか」
突然後ろから声をかけられた、後ろを向くと男子生徒が立っていた。
???「一時間も探していたので、図書委員が何の為にいるのか分からなくなります」
図書委員さんか、確かに図書委員さんなら分かるかもしれない。でも、さすがにあのタイトルを言うのは恥ずかしい。
つかさ「いえ、貸し出し禁止の本を探していたもので」
図書委員「貸し出し禁止ですか、管理番号が分かればすぐに探せるのですが……」
つかさ「管理番号?」
図書委員「本の背表紙の上にある番号です」
つかさ「そんな番号付いていなかったような……」
図書委員「そんなはずはありません……あ、最近、悪戯で勝手に外の本を持ってきて本棚に入れる人が居るんですよ、困ったことです」
つかさ「そうですか……」
図書委員「力になれなくてすみません」
図書委員さんは受付に戻っていった。

 終業時間まで私は本棚を探した。結局見つけることは出来なかった。なんだろうあの本は幻だったのかな。そんな事はない、確かに私は
あの本から書き写した……あっ、そうだ、私の部屋に移した図形があるはず。確認してみよう。

つかさ「ただいま!」
家に着くと早速私は自分の部屋の本棚に向かった。たしかこの本に挟んでおいたはず……。 あった。間違えなくあの時写した図形。
まつり「つかさ、かがみと一緒じゃなかったの」
部屋の入り口にまつりお姉ちゃんがいた。私はとっさに紙を隠した。
つかさ「え?、お姉ちゃん、今日は別行動だったから……、こなちゃんと一緒だったよ」
まつり「そう、一緒かと思ったんだけどね、買い物を頼んだんだけど、遅いわね……それより、つかさ、さっき何隠したの、まさかラブレターじゃないでしょうね」
つかさ「そ、そんなんじゃないから、ぜんぜん違うもの」
まつりお姉ちゃんは笑った。
まつり「やっぱり何か隠してたんだ、つかさは隠し事ができないね、まあ、これ以上は追究しない、気をつけなさい」
笑いながらまつりお姉ちゃんは階段を降りていった。ほっとため息をついた。気を取り直して考えた。
おまじないをしたのが本当だとすると本も実際にあった。じゃ何処に?。誰かが隠した?。悪戯なのかな。
考えてもしょうがない。もうおまじないで願いは叶ってしまった。もうどうにか出来るものでもない。
それよりお姉ちゃんがまだ帰ってこない?。私よりも先に帰っていると思ったけど。心配になった。私は居間に向かった。

みき「ちょうどいい所に、食器洗ってくれない」
私は食器を洗った。そして食器洗いが終わった頃だった。
かがみ「ただいま」
341 :呪縛  4 [saga]:2010/03/27(土) 00:15:54.57 ID:Cb.9n6Q0
まつり「おかえり、遅かったね、頼んだものは……」
お姉ちゃんの目が赤い、急にどうたのかな。お姉ちゃんは無言で鞄の中の物をまつりお姉ちゃんに渡した。そしてそのまま部屋の方に向かってしまった。
まつりお姉ちゃんも無言でそれを見送った。私はお姉ちゃんの後を追った。

 ドアをノックした。
つかさ「入るよ」
返事がなかったけどドアを開けて入った。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの」
お姉ちゃんは自分の席について後ろを向いたままだった。更に聞いた。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの、その目、もしかして泣いてた?、こなちゃんと何かあったの」
かがみ「何でもないわよ、目が赤いのは、駅で強風に煽られて目にゴミが入ったからよ」
つかさ「帰りも遅かったね、私より先に帰ってたと思ったのに」
かがみ「こなたと別れてからまつり姉さんの頼まれごとを思い出してね、戻ったのよ、二度手間だったわ」
お姉ちゃんは振り返って渡しに笑顔で返した。でも作り笑顔だって事はすぐに分かった。お姉ちゃんも私と同じ、隠し事はできないみたい、
こなちゃんと何かあったことは分かった。でも今は答えてくれそうにない。

 この日を境にお姉ちゃんとこなちゃんの関係は変わってしまった。お互いに話し合うことが無くなった。それにお昼になるとお姉ちゃんは
となりのクラスの日下部さんの所に行ってしまう。これじゃ一緒のクラスになった意味がない。このままじゃだめだ。

 お昼休み。三人でお弁当を食べていた。私は思い切って聞いてみた。
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃんと何かあったの、最近全然会ってないみたいだけど」
こなた「……別に、なんでもないよ」
つかさ「そのセリフ、お姉ちゃんからも聞いたよ、この状況で何でもないなんてないよ、私には教えたくないことなの」
すこし強い口調で話した。こなちゃんは牛乳を一気に飲み干した。
こなた「やっぱり隠せないね、お察しのとおり、かがみと喧嘩しちゃってね、いま絶交中なんだ」
つかさ「絶交中……って、原因は何?」
こなた「……それはっ……」
つかさ「言えない事なの?、何で、私が知ったらいけないことなの」
こなちゃんは黙ったしまった。
みゆき「つかささん、言いたくない様ですしこのくらいで、私も聞いたのですが答えてくれませんでした」
つかさ「でも、原因が分からないと仲直りのお手伝いもできないよ、それでもいいの」
こなた「つかさ、これは私とかがみの問題なんだ、もう何も聞かないで」
つかさ「……何で、どうして、これじゃ意味がないよ、折角一緒のクラスになったんだよ……最後だったのに、何でこうなるの」
私は教室を出た。

 私のせいだ、私がへんなおまじないをしたせいであるはずのない事が起こってる。こんな事が分かっていたなら一緒のクラスにならなくていい。
中途半端なおまじないをしたみたいだった。ちゃんとしたおまじないをしたいけどもう本も無い。
みゆき「つかささん」
ゆきちゃんの声がした。私を追いかけてきたみたい。声のする方を向いた。
みゆき「泉さんが言うように私達ではどうすることもできません、でも、何もしない訳じゃないですよね、私もお手伝いできればいいと思っています」
つかさ「ゆきちゃん、もしかして、お姉ちゃん達の事を知っていた?」
みゆき「三年になってからすぐでしたね、様子がおかしいとは思っていました、でも、原因までは……それが何か?」
つかさ「喧嘩の原因が私だったら、怒るかな?」
みゆき「つかささんが原因?、つかささんが原因なら泉さんはあのような事は言わないと思いますが」
確かに私が原因なら直接そう言ってるかな。
つかさ「そうだね、ごめん、ゆきちゃん、それにさっきのありがとう、手伝ってくれるって言ってくれて」
みゆき「戻りましょう、お昼時間はもう終わりです」
つかさ「うん」

 次の日の放課後私は陸上部の部室へと足を運んだ。
342 :呪縛  5 [saga]:2010/03/27(土) 00:17:58.19 ID:Cb.9n6Q0
みさお「お、柊の妹じゃないか、どうかしたか?」
つかさ「日下部さんちょっといいですか、聞きたいことがあるんだけど」
みさお「聞きたいこと?」

 私は日下部さんを校庭の隅に誘った。暫く待っていると。
みさお「わりいな、待たせちまった、で、話ってなんだ?」
つかさ「お姉ちゃんの事なんだけど」
みさお「柊?」
日下部さんはお姉ちゃんとこなちゃんの事をしらない?。私は経緯を話した。
みさお「柊とちびっ子が喧嘩……、初めて聞いた、通りで私のクラスに顔を出すはずだよな」
つかさ「お姉ちゃんから何も聞いてない?、喧嘩の原因とか」
みさお「今初めて聞いた事だよ、そういやB組の話は一切してない」
つかさ「すみませんでした、貴重な時間を……」
日下部さんにも話していないってことは峰岸さんも同じかな。
みさお「ちょっと待った」
もう帰ろうとした時だった。
みさお「そういえば、喧嘩の事かどうか分からないけど、時間がない、って言ってたぞ」
つかさ「時間がない?、何だろう」
みさお「悪い、余計混乱させてしまった、関係なさそうだ、忘れてくれ」
『ピーポ ピーポ』
みさお「お、救急車だな、近くみたいだな、交通事故か?」
そういえばさっきからサイレンの音がしていた。救急車だけじゃない、パトカーのサイレンの音もしているみたいだった。
つかさ「日下部さん、部活の邪魔してすみませんでした」
みさお「気にするなって、意外ともう仲直りしてるかもしれないぞ」
校舎から男子生徒が走ってきていた。姿からして陸上部員かな。日下部さんに近づいてきた。
陸上部員「日下部、聞いたか?、さっき近所で人が刺されたみたいだぞ」
みさお「刺された?、物騒だな」
陸上部員「それで職員室が大騒ぎ、刺されたのがうちの女子生徒らしい、青い長髪だだって、又聞きだから眉唾だけどその刺した相手もうちの生徒らしい」
まさか、そんな事があるはずない。私と日下部さんは顔を見合わせた。
みさお「柊の妹も同じ考えか?、部活どころじゃないな、私、今日部活休む、多分近くの総合病院だ、急ぐぞ柊の妹」
陸上部員「なんだ、急に休むって」
みさお「その刺された女子生徒に心当たりがあるんだ」
陸上部員「……顧問の先生に言っておく、犯人はまだ逃走中らしいから気をつけろよな」

 お姉ちゃんが、こなちゃんを?、そんなことあるはずない、いくら喧嘩したってそこまで憎みあってたとは思えない。人違いであって欲しい。
ただそれだけを願って走った。

 病院の前にはパトカーが止まっている。日下部さんは私を抜いて既に病院に入っている。救急車はもう戻ったようだった。
病院に入ると待合室に日下部さんとゆきちゃんがいた。ゆきちゃんがなんでこんな所に。疑惑がどんどん確信に近づいていくようだった。
みさお「柊の妹……、刺された人は泉こなた……やっぱりちびっ子だったぞ」
頭が真っ白になった。
みゆき「出血は止まったようですがまだ予断を許さない状況だそうです……つかささん、実は……」
つかさ「やめてー!、」
私は耳を両手で塞いで病院を飛び出した。もうこれ以上聞きたくない。聞けなくなるくらい遠くに行きたかった。
お姉ちゃん、何でこなちゃんを刺しちゃんだよ、何も私に言わないで一人で悩んでその結果がこれなの?、
お姉ちゃんらしくない、そんな事をしたらどうなるか一番良く知っているはずなのに。誰からもこの事実を聞きたくない。お姉ちゃんから直接聞きたい。

 気が付くと家の玄関の前にいた。電車に乗っていたんだ。無意識に私は帰宅していたみたいだった。扉を開けるとお母さんが居た。
みき「つかさ、かがみは一緒じゃなかった?、最近どうしたの?、喧嘩でもした?」
お母さんはまだ知らないみたい。でも何時かは知ってしまう。私から話すか。だめだ。話せない。
343 :呪縛  6 [saga]:2010/03/27(土) 00:19:55.22 ID:Cb.9n6Q0

『ピンポーン』
呼び鈴がなった。
みき「はーい」
お母さんが扉を開けるとそこには男が二人立っていた。
男「すみません、警察の者ですが……」
警察手帳をお母さんにみせた。お姉ちゃんを捕まえに来たんだ。私は家を出た。私が逃げてもどうかなるとも思えなかったけど、警察とお母さんの会話を
聞きたくなかった。ただそれだけだった。

 携帯電話で何度もお姉ちゃんを呼んだけど留守電に繋がるだけだった。電源を落としている。私も携帯の電源を切った。そして、お姉ちゃんが
居るかもしれない所に向かった。幼い頃お姉ちゃんと見つけた秘密の場所。うちの神社の林の中に小高い丘がある。滅多に人が来ない場所。
私がいじめられて泣いているとお姉ちゃんがここに連れてきて遊んだっけ。

 林を抜け坂を昇り、小高い丘に着くと思った通り、お姉ちゃんが居た。丘から街を見下ろしている。私はお姉ちゃんに近づいた。
つかさ「お姉ちゃん、やっぱりここに居たんだ」
かがみ「つかさ、やっぱり来ると思った、幼い頃よくここで遊んだわね……、みゆきから聞いたでしょ」
私は首を横に振った。
つかさ「直接お姉ちゃんから聞きたいと思ったから」
かがみ「そう……」
力なくそう返事した。しばらく沈黙が続いた。
つかさ「お姉ちゃん、病院に行ってこなちゃんに謝ろう、それから、警察さんに……」
お姉ちゃんは驚いて私を見た。
かがみ「何いってるのよ、なんで私がこなたに謝らなければならないのよ、警察って?、どうゆうこと」
つかさ「お姉ちゃん、なんでそんな事言うの、それに、もう逃げられないよ、さっき家に警察が来て……」
かがみ「……犯人が捕まったんだね、捕まったら家に連絡してくれるって言ったから」
つかさ「えっ?、お姉ちゃん、こなちゃんを刺したんじゃないの」
かがみ「おいおい、勝手に犯人にするな」
急に涙が出てきた。私の早とちりだった。私はその場にしゃがみ込んで泣いた。よかった。お姉ちゃんは犯人じゃなかった。
でも、こなちゃんが刺された事は事実、嬉しさと同時にどうしようもない悲しさも湧いてきた。私は泣きながらお姉ちゃんに言った。
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん危険な状態だよ、早く病院に行こう」
かがみ「私は……もうこなたの苦しむ姿をみたくない、だから携帯の電源を切った」
私はお姉ちゃんの行っている意味が分からなかった。
かがみ「放課後、こなた、みゆきと歩いていたら、ガラの悪い二人組みの男に絡まれてね、でもこなたは格闘技経験者、一人はあっという間に倒した、
     でもね、もう一人の男がナイフを持ってて、私に襲ってきた……」
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「私の盾になってくれたのよ、あいつ、もうそんな元気もないくせに」
つかさ「元気がないって、どういう事なの」
お姉ちゃんは私をじっと見つめた。
かがみ「こなたはつかさには最後まで黙っていろと言われた、みゆきもそう言った、だけど、今となってはもう黙ってても意味はない、
     こなたは末期なの、もう半年も生きられないって」
つかさ「……う、そでしょ、なんでこなちゃんがそんな病気に、だって、顔色だってよかったし、お姉ちゃんとだって喧嘩するくらい……元気で……」
はっと気が付いた。
つかさ「もしかして、お姉ちゃんとこなちゃんの喧嘩って……」
かがみ「……いつ、つかさに話すか私と意見が合わなかったのよ、ただそれだけ」
つかさ「そんなの知らなかった、ゆきちゃんも知ってたなんて、お姉ちゃん達、いつ知ったの?」
かがみ「新学期になってすぐよ」
居ても立ってもいられなくなった。私は立ち上がった。
かがみ「どこに行くの、つかさ」
つかさ「病院だよ、お姉ちゃんも一緒に行こう」
344 :呪縛  7 [saga]:2010/03/27(土) 00:21:33.78 ID:Cb.9n6Q0

 お姉ちゃんは動こうとしなかった。
つかさ「どうしたの?、早く行こうよ」
かがみ「だから言ったでしょ、私はこなたを見ていられないって」
つかさ「そんなの分からないよ」
かがみ「とにかく、私は行かない」
こうゆう時の姉ちゃんは何言っても無駄、私は話を変えた。
つかさ「病院にゆきちゃん居たよ、日下部さんも」
かがみ「みゆきは分かるけどなんで日下部まで?」
つかさ「私、お姉ちゃんとこなちゃんの喧嘩の理由が知りたくて、日下部さんに聞きに行ったら、こなちゃんの怪我の事を聞いて……」
かがみ「口裏あわせ、喧嘩にしたのがまずかったわね、余計な詮索をさせてしまった」
つかさ「だからこなちゃんの所に行ってあげて」
かがみ「つかさ、何度も同じこと言わせないで」
つかさ「お姉ちゃん、私は勘違いしてお姉ちゃんがこなちゃんを刺したと思ってた……でもね、病気の事を聞いたら、お姉ちゃんが刺していた方が
     よっぽど良かったと思ったよ」
お姉ちゃんは黙って私を見ている。
つかさ「だってそうでしょ、生きていれば仲直りだって、再会だってやり直しができる、でも、死んじゃったらもう何も出来ないよ、お姉ちゃん」
かがみ「……、こなたが言った、つかさが知ったら一番悲しむって、そして自殺しちゃうかもしれないって……今のつかさはそんな気もないみたい……
     つかさは私達が思ってた以上に強いわね、私は……私はここで死のうとしてた……
     こなたの居ない世界なんて……でも確かに……死んだら何もできない……病気の事を知ってはいけないのは私の方だったかもしれない」
お姉ちゃんは私に抱きつき泣いた。何故だろう、私も悲しいのにもう涙が出ない。
つかさ「行こう、病院へ、こなちゃんが待ってるよ」

 私はお姉ちゃんを支えながら病院に向かった。病院に着くとゆきちゃんと日下部さんが待っていた。日下部さんは私達の姿を
見ると何も言わず帰った。その後、おじさん、成実さん、ゆたかちゃんが駆けつけた。特におじさんの悲しみ方は見るに耐えられなかった。
私達も日下部さんと同じように何も言わずに帰った。結局その日はこなちゃんに会うことはできなかった。

 次の日の朝。登校して、お姉ちゃんが席を外しているのを見計らったようにゆきちゃんが教室に入ってきた。
つかさ「おはよう、ゆきちゃん」
みゆき「おはようございます、早速で済みませんが放課後、私に付き合ってもらいたいのですがよろしいでしょうか」
ゆきちゃんの目は真剣だった。
つかさ「いいよ、でも、何に付き合うの?」
みゆき「放課後、お一人で自習室に来てください、大事な話があります」
つかさ「大事な話?、時間はかかるかな?、私、こなちゃんのお見舞いに行きたいんだけど」
みゆき「泉さんにも関わる大事な話です、いいですか?」
ゆきちゃんは念を押した。私もその意気込みに圧倒された。

 放課後、お姉ちゃんは飛び出すようにこなちゃんの入院している病院に向かった。私はゆきちゃんに言われた通り自習室に居る。貸切のようにだれも居ない。
適当な席に腰を下ろしてゆきちゃんを待っていた。約束の時間になるとゆきちゃんが入ってきた。
みゆき「お待たせしました」
私はゆきちゃんを見ようと振り向こうとした。
みゆき「振り向かないで、そのまま後ろ向きの姿勢でいて下さい」
へんな事を言うゆきちゃんだった。
つかさ「これじゃ話し難いよ、なんでこのままなの?」
みゆき「すみません許してください……、これからつかささんにいくつか質問をします、ですが、つかささんは一言も答えなくていいです、
     そのまま私の話を聞いているだけでいいですから、いいですね?」
更にへんな事を言うゆきちゃん、一言も答えちゃいけないのなら今、私に話した事も返事しなくていいのかな。沈黙が続いた……。
みゆき「ご理解いただき、ありがとうございます……、つかささん、私は泉さんを助けたいと思っています、それにはつかささんの協力が不可欠なのです、
     でも……これにはかなりの危険が伴います、失敗すれば命の保障ができません、それでも、私の話を聞く覚悟はありますか、もし、
     少しでも疑問に思うのでしたら、私に話しかけて下さい……」
345 :呪縛  8 [saga]:2010/03/27(土) 00:25:46.65 ID:Cb.9n6Q0
つかさ「……」
こなちゃんを助ける方法がある?。知りたい。危険って何だろう。少しくらいの危険は覚悟できる。それに、ゆきちゃんを信じる。
暫くゆきちゃんは私の返事を待っていたようだった。返事の無い返事……

みゆき「これからは後戻りできません、続けます……つかささん、図書室で『おまじない集』と言う本を探しませんでしたか」
つかさ「……」
え、なんで知っているんだろ?
みゆき「つかささんはもっと以前にその本を見て、おまじないを試しましたか」
つかさ「……」
ゆきちゃん、何で知っているんだろ、見られてはいないはずなんだけど。
みゆき「その試したおまじないは『一緒のクラスメイトになるおまじない』ではなかったですか」
つかさ「……」
みんな当たってる、何で、私はゆきちゃんが魔法使いのように思えてきた。
みゆき「最後の質問です、そのおまじないの解き方を知りませんね」
つかさ「……」
解く?、解くって何だろう。
みゆき「やっぱり、そうでしたか、質問は終わりましたけどそのままで聞いてください、私は図書室で聞きました、最近貸し出し禁止の本を探しに来た人が
     いなかったと、リボンをつけた女子生徒が終業時間まで探していたと答えました、直感的に分かりました、つかささん、
     ……クラス替えの日、かがみさんが一緒のクラスになったと分かったとき、悪夢が蘇りました、
     実は、私も以前その本のおまじないを試しました、おまじなは『一緒のクラスメイトになるおまじない』でした、そしてその対象者はかがみさんです」

 ゆきちゃんが私とまったく同じおまじないをしていた?。どうしてそんな話を私に。
みゆき「そのおまじないで三年年生のクラスは私達四人、一緒のクラスになりました」
それは私も知っているけど、なんで改まって言うのかな。
みゆき「その後、私は悲劇に見舞われます、かがみさんが急性白血病で亡くなってしまいました、そしてそれを苦ににして泉さんが後を追うように自殺、
     つかささんは私を……励ましてくれた……」
ゆきちゃんはすすり泣いている。こなちゃんが自殺?、お姉ちゃんが白血病?何を言っているのか分からない。
みゆき「……かがみさんが亡くなった、私はどうすることもできない、泉さんの自殺も止められなかった、こんな世界は納得できません、だから私は
     おまじないを解きました、そして、全ては元に戻りました、そして、今のつかささん見て確信しました、つかささんはまだこの呪いを解いていないのですから
     おそらく解き方を読んでいなかったのですね、私はつかささんにおまじないの事を一言も言わせたくなかった」
そうか、後ろから私の動きを見て、質問の答えを知ったのか、でもなんでこんな回りくどいことを?。
みゆき「私はあの本の全ての頁を写しました、だからおまじないの解き方も知っています、そのおかげで私はおまじないをかける前の状態に戻ることができました、
     つかささん、これからが重要です、よく聞いて下さい、この呪いは二重になっています、呪いを解いても鎖で繋がれて身動きが取れないのです、
     呪い、呪縛です……だから、つかささんも同じ呪縛にはまってしまったのです」
じゅばく、呪縛ってどういう事なんだろう。
みゆき「願いが叶った後、本はこの世界から一年間消えてしまいます、しかし、おまじないの事を誰にも話さなければ一回だけ、しかも一年以内なら願いが叶う前
     に戻ることができる、そう書いてありました」
そんな条件があったなんて、いままで内緒にしててよかった。私に喋らせなかったのはその為だったのか、さすがゆきちゃんだ。
みゆき「おまじないを解くとペナルティが三つ課せられます、一つは元に戻っても本人だけは願いが叶った後の記憶が残る、もう一つは二度と本を見つける事が
     できなくなると書いてありました、それは、別の本になって見えると分かったのです、何故なら私の次につかささんが本を使ったからです、本は消えた
     訳ではありません……本の知識と気が付いた事を全て教えました、つかささんはおまじないを解いてください、
     そして、戻ったらおまじないの本を探さずに、最初に見つけた場所にあった本を手にとって下さい、そして、その本を燃やしてください、
     もう私達のような体験は誰にもさせたくありません、おまじないの解き方は簡単です、おまじないの時に使用した図形を写した紙を燃やせばいいのです、
     私の言いたいことは以上です……かがみさんから聞きました、かがみさんの自殺を止めたと、つかささんなら……」
346 :呪縛  9 [saga]:2010/03/27(土) 00:28:04.84 ID:Cb.9n6Q0
沈黙が続いた。もう喋ってもいいのかな。名前くらいなら言っても問題よないよね。
つかさ「ゆきちゃん」
何の反応がない。
つかさ「ゆきちゃん?」
私は振り返った、そこに居るはずのゆきちゃんが居なかった。ドアの開閉の音もしなかった。まるで消えたみたい。消えた?。
そういえばゆきちゃん、三つ目のペナルティ言ってなかった。まさか三つ目のペナルティって本の事を話すと消えちゃう……。
急に恐ろしくなった。私はこんな事も知らないでおまじないをしてしまった。でも、あの時の私はこの事を知っていたとしてもおまじないをしていた。
おまじないなんて気休めみたいなもの、私はそう思っていた。ゆきちゃんだってきっとそう思ったから注意書きを読んでいてもおまじないをした。そうに違いない。

 こなちゃんは怪我と不治の病、ゆきちゃんは消えてしまった。これからお姉ちゃんにもなにか起きるかもしれない。ゆきちゃんは三つ目のペナルティで自分が消
えてしまうのを知ってて私におまじないの解き方を教えてくれた。ゆきちゃんは私に全てを託した。
ゆきちゃんが出来なかった事を私が出来るかな……。体がガタガタと恐怖で震えた。
ゆきちゃんは言った。もう後戻りできない。今、私が諦めたらゆきちゃんもこなちゃんも二度と会えない。もうやるしかないんだ!。
私はこれからこなちゃんの所にお見舞いに行く予定だった。でも、私は隠すのが苦手。こなちゃんに会えばちょっとしたことでおまじないの事を言ってしまうかも。
おまじない、違う、呪いを解くなら今しかない。

 私は自習室から出て誰にも会わずに直接家に帰った。家には誰もいなかった。都合がいい。部屋から呪いに使った紙を取り出し庭に向かった。
私は紙に火を点けた。火は瞬く間に燃え広がった……。

 気が付くと私は教室に居た。お姉ちゃん、こなちゃん、ゆきちゃんが私の席を囲うように立っていた。
かがみ「つかさ、何してるの帰るわよ」
こなた「ボーとしちゃって、置いていっちゃうよ」
いったい私はどこまで戻ったんだろう。ゆきちゃんは願いが叶う直前に戻るって言ってた。ふと黒板の日付とカレンダーを見た。
二年生の二月……。なんだもうこんなに早くクラスって決まっちゃうのか。
かがみ「つかさ!、聞いているの」
叫ぶように私を呼ぶ。私はゆっくり目を閉じて答えた。
つかさ「みんな、先に帰って、私はちょっと用があるから」
こなた「ちょっと用?、つかさ怪しいな、卒業生にこ・く・は・くじゃないの」
いつものこなちゃん、私をからかっている。まつりお姉ちゃんの事を思い出す。ここで本の事を言ってしまったら水の泡。
つかさ「想像にまかせるよ……」
意外な反応だったのか、こなちゃんはそれ以上私に何も言ってこなかった。

 その時だった。
みゆき「泉さん、かがみさん……」
二人の名前を呼ぶといきなり泣き出した。大粒の涙を、声を出して泣き出した。
こなた「ちょ、みゆきさん、いきなりどうしたの」
こなちゃんが慌ててゆきちゃんの元に駆け寄った。
かがみ「……、こなた、あんがあんな事言うから、昔の事を思い出したんだわ、みゆき……」
こなた「……ごめん、まさかみゆきさんが失恋……」
かがみ「ばか、何も言うな、こうゆう時は何も言わない……」

 お姉ちゃんはゆきちゃんをそっと抱き寄せた。ゆきちゃんは更に激しく泣き出した。感情を露ににしたゆきちゃん。
そういえば突然泣きだんだ。この状況を見て思い出した。こなちゃんは恋愛ゲームの話題を私としてたんだった。
こなちゃんと私の会話で泣き出した。私もそう思っていた。でもそれは違う。ゆきちゃんは呪いを解いて戻ってきたんだ。私と同じなんだ。
ゆきちゃんの呪いでこなちゃんとお姉ちゃんは亡くなった。お姉ちゃんとこなちゃんとの再会に感激した涙だったんだ。

 本当の事を言えないでただ泣いているゆきちゃん、呪いはまだ解けてない、ゆきちゃんの涙が私をそう実感させた。
今のゆきちゃんは私も呪いを解いていることを知らない。そして私が呪いを受けたことで知った本の秘密も知らない。
自分を犠牲にしてまで私に教えたのはこの為だったんだ。そして私が復活させるって信じてくれた。
347 :呪縛  10 [saga]:2010/03/27(土) 00:29:45.74 ID:Cb.9n6Q0

 泣き止まないゆきちゃん、これからこなちゃんの提案でゲームセンターに気晴らしに行くはず。
ゆきちゃん、後は私に任せてゆっくり楽しんでね。私は皆に気が付かれないようにそっと教室を出た。そして図書室に向かった。

 そいえば、私はこの数日後にあの本を見つけたんだった、クラス替えが決まっているのにあんなおまじないをしたのか……この本、おまじないの
どころのレベルじゃない、既に決まったことさえ変えることもできる強力な力をもってるんだ。でもその為に誰かが犠牲になるならこんな本は要らない。
呪いを解く前に戻っても記憶が残る。普通ならこれで本と関わりたくなくなる、更にその本は別の本に見えるために見つからない。
この本はこうやって今まで誰にも燃やされなかった。しかも本の事を話すと本人が消えちゃうなんて、この本を作った人の意地悪さに怒りを覚えた。
ゆきちゃんの為にもぜったいに本を燃やしてみせる。

 図書室に着くと私は本棚に向かった。そう、あの呪いの本があった本棚。覚えている。しかしその本棚には別の本が置かれていた。
私はその本を手に取った。タイトルは……英語で書かれていて読めない。
(だまされないよ)
心の中でそう本に言った。ゆきちゃんはこの事を教えるために……本を持って図書室を出ようとすると。出入り口が受付になっている。
勝手に本を持ち出したらきっと図書委員の人に何処に持っていくって聞かれる。なんて答える?。本を燃やすなんていえる訳がない。
どうする?。この本は私が探してる時……あっ、そうだ、疑われずに本を持ち出す方法を思いついた。私は受付に向かった。
つかさ「すみません、借りたいのですが」
図書委員1「はい、それでは本を……この本は貸し出し禁止ですね、すみませんがお貸しできません」
こうくると思った。
つかさ「どうしても借りたいんだけど、韓国語が読めなくて家で調べながらでないと……」
おまじないの本の事を話さなくても聞くことはできる。わざと違う本の事を言えばいい。
図書委員1「韓国語?、この本は日本語で書いてありますけど……」
やっぱり、この本の正体を確信した。……。私とのやり取りに気が付いた別の係りの人が近寄ってきた。
図書委員2「すみません規則なんで借りられない……あれ、この本、管理番号がないぞ」
図書委員1「あっ、本当だ、どうしてだろう、少しお待ちください」
二人はあちらこちらの帳面を引っ張り出して調べ始めた。暫く私は待った。呪いの本を追い詰めている。もう少し。
図書委員2「管理番号が無いので本のタイトルから調べたのですが、図書室で登録されていないんですよ、全部登録されているはずなんですが」
図書委員1「先生に確認とったよ、最近外から本を勝手に持ち込んで置いていく生徒が増えているから、悪戯かなにかでしょって」
思った通りの反応だった。私は透かさず切り出した。
つかさ「それじゃ、この本、持って帰っていいよね」
図書委員1「別に構いません」
本を鞄にしまって図書室を出た。
(捕まえた、もう逃げられないよ、そうやって何人も人を不幸にしてきた、その報いを受けてもらうからね、覚悟しなさい)
また心の中で本に言った。

 家に帰ると庭で早速焚火の準備をした。もう少ししたらお姉ちゃんはこなちゃん達を連れて帰ってくる。
皆が来る前に終わらそう。枯葉に火を点けた。焚火は勢い良く燃え出した。
つかさ「さあ、呪縛を解かせてもらうよ」
私は本を焚火に放り投げた。火は直ぐに本に燃え移った。パチパチと音をたてて本は燃えていく。

 周りが薄暗くなった。気が付くと炎が氷のように固まっている。周りを見渡すと、雲が、飛んでいる鳥が、外を歩いている人が写真のように止まっていた。
???「やっと呪いが解けた……ありがとう」
後ろから声がしたので振り向いた。そこにはローブのような物を着た女の人が立っていた。
つかさ「だれ?」
???「その昔、悪い魔法使いにこの本に封印されてしまった妖精、私は六千年の間この日が来るのを待っていました、エジプトで封印された時は、
     皆、私を呪いから助けてくれようとしてくれた、しかし誰も呪いを解く事はできなかった、次第に本は忘れ去れて……
     シルクロードを渡り、人から人へと流れ、この辺境の片隅にある学校の小さな図書室に置かれた……永かった……」
つかさ「妖精……さん?、封印されてた?」
348 :呪縛  11 [saga]:2010/03/27(土) 00:32:25.96 ID:Cb.9n6Q0
 
妖精「この本は私を封じ込める為に作られたもの、しかし人々は封印の事を忘れ、呪いの効力だけを求めるようになった、だからこの本は一つの場所に留まらず、    
    流浪の旅を続けました、ある人はこの本によって苦しみ、ある人は人を呪う為に使用した、時の権力者が使った事もありました、
    私はそれをただ見ていなければならなかった、この本に封印されてる呪いは強力です、ただ燃やしただけでは直ぐに復活してしまい
    封印を解くことはできない、封印を解くには呪いを分散すること、
    高良みゆきと柊つかさ、この二人に魔力が分散した為に本に火が移り、封印が解くことがでた」
つかさ「二人?、私とゆきちゃん……」
妖精「そうです、見事でした、真実を見抜く目、それを受け継ぐ素直な心、そして、実行する勇気を持った二人が居なければこの封印は解けなかった」
そんな事を言われても少しも嬉しくなかった。私は今までの怒りをぶつけた。
つかさ「その為に、こなちゃん、ゆきちゃんが酷い目にあったんだよ、お姉ちゃんだって、何より私は……こんな事したくなかった」

妖精「それはすみませんでした、この本の呪いを受けた全ての人間に謝ります、でも、心配は無用です、私がここを去り、呪いの本が燃え尽きれば
    この呪いの本に関わる全ての記憶が消えます、今までどおりの生活にもどれます、どうでしょう、私が去る前に貴女のその勇気を称えて
    一つだけ願いを叶えてあげます、もちろん呪いはありませんでご安心を」
つかさ「私だけ?、この呪いは二人じゃないと解けないんでしょ?、ゆきちゃんはどうするの?」
妖精「先ほど彼女の願いは聞いています」
いつの間に……、願いを一つ、か、何がいいかな。そういえばこなちゃん不治の病だった。元に戻ったこの世界でも病気になっちゃったら困るよね。
つかさ「こなちゃんの病気って本のせいだったんだよね?」
妖精は笑みを浮かべた。
妖精「なるほど、高良みゆきは柊かがみの病気を治してくれと言っていました、その願い叶えましょう」
つかさ「叶えるって、二人の病気は呪いじゃなかったの?」
妖精「本来、あの呪いで泉こなたと柊かがみは憎しみあって最終的にどちらかがどちらかを殺すはずでした、しかし二人の絆が強かったので、
    呪いは二人の関係を断ち切ることができなかった、呪いが効かなければ本の封印も解ける裏技です、こんな事はないと思っていました、
    二人の病気がなければ本の呪いを解いたのは泉こなた達が先だったかもしれません、いい仲間に出逢いましたね、しかし気をつけて下さい、
    強い絆は一歩間違えると悲劇になることを……話が長くなりました……忘れなさい、この本の関わることの全てを、そして、
    封印を解いたことにより開かれた新しい道を歩みなさい、貴女達にはその資格がある」
なんだろう、意識が遠くなっていく気がした。でも、ゆきちゃんにお礼を言わないと……
つかさ「みんな忘れちゃうとお礼が言えなくなっちゃう」
妖精「私との会話は……感情として残ります……貴女次第……貴女なら……」


かがみ「つかさ、つかさ、おーい、つかさ」
つかさ「あっ、お姉ちゃん、どうしたの?」
かがみ「どうしたの?、は私が聞きたいわよ、何やってたのよ」
つかさ「えっと、焚火……、そうそう、焼き芋も作ったんだけど食べる?」
こなた・みゆき「お邪魔します」
つかさ「あ、こなちゃん、ゆきちゃん、いらっしゃい」
みゆき「つかささん、何か学校で用事があったのでは、私達より早いお帰りですね」
つかさ「用事?、そんなのあったかな?、それよりゆきちゃん、泣いていたけど大丈夫なの」
みゆき「泣いていた?そんな事ありましたか?」
こなた「みゆきさんはふられたんだよ、悲しい恋物語……」
かがみ「こなた、見てきたような事は言わない方がいいぞ」
こなた「フラグが立ったと思って」
かがみ「また現実と幻想を一緒にして」
こなた「そんな事言うけどつかとみゆきさんの会話も幻想みたいで……」
私は二人の間に割って入った。
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、喧嘩しないで、はい、焼き芋できたよ」
私は皆に焼き芋を配った。皆は熱い焼き芋で手を温めた。
みゆき「寒い日は、このような食べ物が温まります」
焚火にあたりながら私達はお喋りをした。普段と変わらない普通の話なのにとても楽しく感じた。
349 :呪縛  12 [saga]:2010/03/27(土) 00:33:41.88 ID:Cb.9n6Q0

かがみ「もう二年生も終わりね、三年生のクラス替えどうなるかしらね」
こなた「またかがみだけ別のクラスだったり」
みゆき「そうですね」
つかさ「そうかも」
かがみ「……皆、なんだよ、いいわよ、どうせ私はのけ者ですよ」
私達は笑った。お姉ちゃんは少し不機嫌そうな顔をした。
つかさ「ゆきちゃん、ありがとう」
みゆき「どうしたのですか、急に改まって」
自然に出た言葉だった。何でだろう私も分からない。不思議そうにゆきちゃんは私を見つめた。
つかさ「なんとなく言いたくて、悪かったかな?」
みゆき「いいえ、全然構いません、こちらこそ、ありがとう」
こなた「何二人とも、意味無くお礼いってるんだよ、さっきの会話といい、おかしいよ」
つかさ「そうだね、意味無くお礼はおかしいね」
みゆき「そうですね……」
何か分からないけどとても幸せな感じがした。この感情を皆にも分けたくなった。
つかさ「これから、カラオケ行かない?、三年生になったらもう行く機会少なくなるし、どうかな?」
こなた「つかさから誘われるなんて滅多に無い、いいよ賛成」
みゆき「賛成です」
かがみ「私は……いかな……」
つかさ「お姉ちゃんも賛成、さあ、行こう!」
私はお姉ちゃんの手を引っ張った。
かがみ「分かったわよ、行くから手を離しなさい!」
手を離した。ふと焚火の方を見ると、ゆきちゃんが焚火をじっと見ていた。
みゆき「まだ焚火が燻っていますね、消さなくていいのですか?」
つかさ「もう全て灰になったみたい、出かける前の火の始末だね」
私はバケツの水を焚火にかけて火を消した。


350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/27(土) 00:34:48.11 ID:Cb.9n6Q0
『二人』のテーマで悩んだ、ふとつかさとみゆきが浮かんだ。普段は見られない二人を書いてみたかった。
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/27(土) 00:43:29.78 ID:4iVBrTE0
長いね。明日時間があるとき読むから簡単なあらすじ良ければ教えて
352 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:22:47.42 ID:nOJaCMs0
連続になりますが、コンクール作品の投下いきます。

二人、と聞くと、やっぱりこの二人が真っ先に思い浮かびました。
七レスほどになると思います。
353 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:24:42.85 ID:nOJaCMs0
 日はすっかり落ちて、空には星が瞬いている。昼間も寒かったけど、夜になると段違いに冷え込む。
 私は口の前に持ってきた両手に、はーっと息を吹きかけた。白い煙に包まれた手に温もりを感じたけど、寒風にさらされてすぐに冷たくなってしまった。
 「…さっむいよー」
 思わずそう呟きながら、息を吐くために下げたマフラーを元通り鼻の上まで引き上げる。
 まったく、こんな寒い日に家に手袋を忘れてくるなんて、ついてないというか間抜けというか…。
 私はちょっと行儀が悪いと思いながら、コートのポケットに手を突っ込んで足を速めた。


 ようやく辿り着いた我が家を見上げる。
 以前に住んでいたアパートとは違う、ちゃんとした一軒家。三階建てで部屋数もそれなりにある。
 この立派な家に私はまだ慣れない。
 なんていうのか…広すぎる気がする。私の体が小さいってことを差し引いてもそう思う。
 私は視線を前に戻して、玄関に近づいた。そして、ドアのノブを握ったところで、もう一度家を見上げた。


 この家に今は二人。そう君と私だけ。二人だとこの家は少し広い。そう、思う。



 ― 二人の手 ―



 家の中の暖かな空気に、ホッと私は安堵の溜息をついた。
 玄関の鍵をかけ、靴を脱いで二階へと上がる階段に向かった。
 階段に足をかけたところで私は足を止め、一階の廊下を見た。
 物音一つしない廊下。この家の一階はいつも静かだ。
 キッチン、リビングやお風呂といった普段使う部屋は全部二階にあるし、書斎、私室、寝室も一つの部屋で済ませている。
 一階に三つもある部屋はどれも空き部屋で、そう君が〆切前で徹夜するときなどに、邪魔をしないように私が寝室に使う程度だ。
 もの悲しさを覚えた私は、小さくため息をついて階段を上り始めた。


354 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:25:48.67 ID:nOJaCMs0
「そう君、ただいま」
 部屋の中にいるであろうそう君に声をかけながら、私はドアを開いた。しかし、そう君からの返事が無い。
「…そう君?」
 私が不審に思って部屋の中を見渡すと、そう君は座卓に突っ伏していた。その前では愛用のワープロが電源を入れたまま放置されている。
「…そう君。大丈夫?」
 もう一度声をかけるが、何の反応も無い。
「へんじがないただのしかばねのようだ」
 …何言ってるの私。油断すると変な言葉覚えちゃうな…気をつけないと。
 顔を近づけてみると、規則正しい寝息が聞こえてきた。どうやら仕事の最中に眠ってしまったらしい。
 そう君の顔を覗き込んでみる。実に幸せそうな寝顔だ。温かい家の中での居眠りなんだから、幸せなのは当たり前だ…私は今の今まで寒空の下を歩いてきたっていうのに。
 …うん、分かってる。そう君は別に遊んでたわけじゃない。頑張って仕事をしていたんだ。ここまで来る苦労をずっと見てきたし、今もけして楽してるわけじゃないことも知ってる。私だって今日はたまたまこんな遅い時間に帰ってくる用事があっただけで、普段は買い物くらいしか外には出ない。
 …でもなんだろう。なんだか…腹が立つ。
 私は鞄を置いてキッチンに向かい、冷凍庫から氷を一つ持ってきた。そして戻ってきて、寝ているそう君が着ている愛用の作務衣の後ろ襟を引っ張って、その背中に氷を落とした。
「うひょおっ!?」
 珍妙な悲鳴と共に、そう君の体が文字通り飛び上がる。胡坐の状態から飛び上がるって、何気に凄いよね。そう君は立ち上がって凄い勢いで部屋の中を見回した。なにが起こっているのかわかってないみたい。
「な、なんだっ!?…って、かなた?」
 きょろきょろしていたそう君が、ようやく私を見つける。
「おはよう、そう君。それと、ただいま」
 そのそう君に私は笑顔で挨拶をした。
「ああ、おかえり…なんだこれ?氷か?」
 そう君は自分の背中から落ちた氷を拾って、困ったような顔でそれを見つめた。
「そう君が寝てたから、起こしてあげたのよ」
 私がそう言うと、そう君は眉間にしわを寄せた。
「もっとましな起こし方してくれよ」
「たとえば?」
 私が聞くと、そう君は腕を組んで目を瞑って考え込んだ。その間に私はコートをハンガーにかけ、タンスの中から寝間着を出した。
「…そうだな。こう、ほっぺの辺りに軽くキスとか…」
「そう君、私お風呂入ってくるね」
 なにかブツブツ言ってるそう君にそう告げて、私は部屋を出た。部屋の中からそう君の「…おーい」と情けない声が聞こえたけど、私は気にせずお風呂場に向かった。



355 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:26:45.98 ID:nOJaCMs0
 チャプンと音を立てて、肩までお湯につかる。
「…ふいー」
 と、思わず気の抜けるため息が、私の口から漏れた。湯船に浸かるときって、なんでこんなため息がでちゃうんだろうね。
「ちょっと、やりすぎたかな…」
 さっきの事を思い出し少し反省しながら、私は湯船の中で足を伸ばした。そう君くらいの背丈になると無理だけど、私なら余裕なくらい広いお風呂。
『かなたなら泳げるんじゃないか?』
 初めてこのお風呂を見たときに、そう君にそう言われたのを思い出した…うん、やっぱ反省は無しで。
「…なんでだろう」
 思わずそう呟いてしまう。最近、考えてしまうことが多い。
 なんで私なんだろう、と。
 小さなころからそうだった。そう君はいつも私の前に居た。そして、私はいつもその後ろを歩いていた。
『あいつはもっと上の大学狙えたんだけどなあ』
 高校の同窓会の時に、当時の担任の先生にそう言われたことがある。あいつとはそう君のことだ。
 あの時、わたしは進路に悩んでいた。そう君と同じ大学に行きたかったけど、合格できるかどうかは半々だと言われた。
 誰にも相談できずに悩んでいると、そう君が志望校を変えたと言ってきた。そこは、私でも十分合格できるくらいのレベルの大学だった。
『いや、そっちの方が楽そうだったからさ』
 軽い口調でそう言うそう君の言葉を、私はそのまま信じていた。しょうがない人だなって呆れながら。
 ずっと後になって、それは私のためだったと気がついた。自分ではなく、私のため。私を無理させないため。
 今はもうはっきりと分かる。そう君はずっとそうやってきたんだ。
 そう君はやろうと思えばなんでも一人で出来る人なのに、いつも私のそばにいて、いつも私の手を引いて歩いていた。私が立ち止まれば、そう君も立ち止まって待っててくれたし、私が本気で嫌がれば手を離すこともしてくれた。
 気が重くなる。本当に、こんなこと気づかなければ良かったのに。
 人の手を引いて歩くなんて簡単なことじゃない。少なくとも私には出来ない。でも、そう君は小さなころからずっとやってきた。私はただ手を引かれていただけだ。そう君のあたたかい手に甘えながら。
「…なんで私なんだろ」
 思わず呟いてしまう。幼馴染で小さなころから一緒だったから…なんて簡単な理由だろうか。それだけの理由でなんのとりえも無い私とここまで一緒にいるのだろうか。
 頭の中をまとまらない考えがぐるぐると回っている。それにつられてか、目の前もなんだか回ってるような…あ、ヤバ…長湯しすぎたかも…。

 …そう君が呼んでる気がする…ねえ、そう君…こんな私とで…あなたは幸せなの…?



356 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:27:21.99 ID:nOJaCMs0
 涼しい風が私の顔にあたっている。
「…ごめんね」
 私は団扇を使って扇いでくれているそう君に謝った。のぼせて湯船に沈みかけてた私は、そう君に助けられてリビングのソファーに寝かされていた。
「気をつけてくれよ。風呂で溺死とか笑えないからさ…」
「うん…ごめん…もう、いいよ。だいぶ楽になったから」
 私がそう言うと、そう君は団扇を傍らにおいて、私の顔をじっと見つめてきた。
「な、なにそう君?…恥ずかしいんだけど…」
「俺は幸せだよ」
「…え?…なんで急に…」
「うわごとで、そんなこと言ってたからな。とりあえず、答えておこうと思って」
「そ、そうなの…」
 声に出てたんだ。恥ずかしいなあ…。
「ねえ、そう君」
 ついでに…と言うのはおかしいかも知れないけど、私はもう一つそう君に聞いてみることにした。こんなこと聞く機会なんて、そうそう無いだろうから。
「どうして私なの?」
 私の質問に、そう君は目を瞑って考え出した。そして、思ったより早く目を開けた。
「かなただからさ」
 …なんていうか…なんて言えばいいんだろ…。
「いや、これ以上説明を求められても困るぞ。そうとしか言いようが無いんだからな」
 戸惑いが顔に出てたのか、そう君は慌てて付け加えた。
「なんつーか、物心ついたときから傍に居たっつーか、傍に居るのが当たり前だっつーか…その、あれだ…」
 なにかきょろきょろしながら色々言っているそう君。思ってることがなかなか普通に出てこないんだよね、そう君は。
 そしてそう君は言葉を止めて、私の両肩を掴んでじっと顔を見つめてきた。この真剣な目には未だに慣れなくて、ドキドキしてしまう。
「かなたが居たから、俺はここまで頑張れてきたんだ。かなたじゃなきゃ駄目なんだよ…かなたが傍に居たら、俺は何でもできる気がするんだ」
 冗談で言ってるわけじゃないそう君の真剣な声。でも、私は思わず笑ってしまった。
「な、なんでそこで笑うんだ…」
 私の反応にそう君が不満そうに口を尖らせた。
「ごめん、なんだかどっかで聞いたことあるような台詞だなって…またアニメとか漫画から持ってきたの?」
「いや、自分で考えたつもりなんだが…無意識に混じったのか…うーん」
 悩み始めたそう君を見て、私は…私は凄く安心していた。さっきまで悩んでたことが嘘みたいに落ち着いていた。
 これで、いいんだ。今は、ここが私の居場所でいいんだ。そう君が私の手を握ることでどこまでも歩いていけるなら、私は手を引かれていこう。そう君に合わせて歩けるように頑張っていこう。
 声に出して言うのは恥ずかしいから言わないけど…私もたぶんそう君じゃなきゃダメなんだと思うよ。だから、そう君が疲れて手を離しそうになったら、今度は私から手を握るよ。
 私はそう思いながら、そう君の手を握った。そう君は少し驚いた顔を見せたけど、すぐに優しく握り返してくれた。
 うん、やっぱりあったかい。この手をずっと、握っていたいな。



357 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:28:24.74 ID:nOJaCMs0
 冷たい夜風が頬に当たる。なんとなく寝付けなくて、私は三階にあるベランダに出ていた。
 しっかり着込んできたけどやっぱり寒い。寒いのは嫌だけど、どうしてもこの場所に…この家の中でもお気に入りのここに出てみたくなった。
 自分の手を見る。そう君に引かれてきた手。何度も迷って、何度も確かめ合って、ここまでそう君と歩いてきた。
 もうそろそろ、迷うのは止めよう。そう、思う。
 他の道はもう選べない。いや、選びたくない。私の歩む道は…居場所はここなんだ。
 二人で歩いていく…だからこそ、思うことがある。
「子供…欲しいな」
 声に出してみるとやっぱり恥ずかしい。でも、なんだか嬉しさに似た気持ちが湧き上がってくる。
 思うだけで子供が出来るわけじゃないけど、でも楽しい。この家の静かな一階に、子供の声がする事を想像すると、とても楽しくなる。
 贅沢を言うなら、三人くらい欲しいな。一階の部屋全部が埋まるくらい。
 私は手を星空にかざしてみた。とても、小さな手。子供のころから全然大きくならなかった小さな手。
 こんな手でも、繋いでくれる人がいる。引っ張ってくれる人がいる。そして、こんな手でもしっかりと握り返して、一緒に歩いていける。
 子供が産まれたら、伝えたいと思う。教えてあげたいと思う。たとえ、私に似ちゃって小さいままだったとしても、どんな小さな手でも繋げる手があるということを。
 とりあえずは、私やそう君が引っ張ることになるかな。そして、いつか巡り会って欲しい。友達でも恋人でも、その手を握り合える人に。

 あなたのあたたかさを誰かに。誰かのあたたかさをあなたに。

 いつか、きっと。



 がばっと音を立てるくらいの勢いでわたしは体を起こした。
「…ん、んー」
 ぽりぽりと、右手の人差し指で自分の頬をかく。
「なに、今の…夢?…だよね?」
 思わず声に出して確認したくなるほどのはっきりとした夢。そして、不思議な感じの夢。
 夢の中のわたし…あれはお母さんの泉かなただろう。男の人はお父さんの泉そうじろうだと思う。
 なんだか、もやもやした変な気分だ。自分の夢なのに、自分の夢じゃないような…。
 時計を見ると、まだ真夜中の二時。昨日は珍しく早く寝たとはいえ、普段のわたしが起きるような時間じゃない。もっとも、この時間まで起きている…ということはしょっちゅうあるんだけど。
 見た夢のせいなのか、なんとなくベランダに出てみたくなって、わたしはベッドから降りて、部屋の出口に向かった。


358 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:32:03.97 ID:nOJaCMs0
 真夜中だというのにひどく暑い。夢の中は冬みたいだったが、現実は夏真っ盛りだ。
 夢の最後。お母さんがしてたように、手を星空にかざしてみる。
 小さな手。お母さんに似てしまった、ほんとに小さな手。恋人なんてまったく出来る気配は無いけど、友達は出来た。
「そういや、かがみ達と手繋いだことあったっけ…」
 少し考えてみたが、覚えが無い。友達になったときに握手くらいはしたかなあと思うけど、どうもはっきりしない。
 今度、意味も無くみんなと手を繋いでみようか。そんなことを思った。
 みゆきさんは、にこやかに応じてくれるだろうな。つかさはなんか戸惑うというか、モジモジと恥ずかしがりそうだ。かがみは…うーん…手を繋ぐ前に理由を聞かれそうだなあ…なにかこう、かがみを納得させる理由を考えとかなくちゃ。
「なんだ、こなた。こんな時間に」
 後ろからそう声をかけられた。振り向くと、お父さんが家の中から出てきたところだった。
「ちょっと目が覚めちゃって…星を見てたんだよ」
 わたしの隣に並んだお父さんにそう言うと、お父さんは眉間にしわを寄せた。
「…似合わないことしてるなあ」
「…ほっときんしゃい」
 いや、確かに似合わないけどさ。娘相手とはいえ、デリカシーの無い人だなまったく。
「お父さんはどうしたの?」
「ん…足音が聞こえたからな。何かあったのかと思ってな」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「いや、寝て無かったよ…ちょっと止めどころを見失っててな」
 たぶん、今やってるゲームのことだろう。わたしは三日ほど前にクリアしたけど、お父さんはちょっと苦戦してるようだ。
「歳取ると頭が固くなるからねえ。大変だ」
「おいおい、まだ俺は若いつもりだぞ」
「つもりだけじゃ若くはなりませんよっと」
 お父さんと話しながら、ふと家の中が気になった。お父さんとわたしがここに居るということは、今家の中には誰もいない。
 二人きりだ…そう思った。
 夢の中でお母さんが望んでいた通りにわたしが産まれたけど、お母さんはもうこの家には居ない。
 この家はまだ、広すぎるままなんだ。
「…こなた、どうかしたか?」
 急にわたしが黙り込んだせいか、お父さんが心配そうに聞いてきた。
「あ、うん。なんでもない…」
 お父さんにそう答えながら、わたしはあることを考えていた。
「ねえ、お父さん。ゆーちゃん、陵桜受けるんだよね」
「ああ、みたいだな」
 従姉妹のゆーちゃん…小早川ゆたかのことだ。来年高校生になるゆーちゃんは、わたしが今通っている陵桜学園を受験するつもりなんだと、少し前に本人から聞いていた。
「通学、どうするんだろね。ゆーちゃんちから陵桜はだいぶ遠いけど」
「んー…どうなんだろうなあ。ゆきはなんとかするようなこと言ってたが…」
 ゆーちゃんのお母さん。お父さんの妹でもあるゆきおばさんは、最初通学距離を理由に陵桜を受けることを反対していた。結局はゆーちゃんに押し切られる形で了承していたけど。
「それでお父さん、わたしからの提案なんだけど。この家から通ったらどうかな?」
 わたしの言葉にお父さんは少し驚いた顔をしたけど、すぐ納得したように何度か頷いた。
「確かに、それならだいぶ楽になりそうだな…っと、でもゆーちゃんを俺に預けるのを、ゆきの奴が納得するかどうか…」
「大丈夫だよ。わたしがゆーちゃんを守るって言っておくから」
「…うわーそれで了承されたら俺の立場まったくないぞー」
 項垂れるお父さん。ま、お互い冗談だとわかってるんだけどね。お父さんは本人が思ってるより信用あるから、おばさんも特に反対はしないと思う。
359 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:33:56.68 ID:nOJaCMs0
「なあ、こなた。一つ聞いていいか?」
「うん。なに?」
 項垂れたまま聞いてきたお父さんにそう答えると、お父さんは顔を上げた。なんか滅多にないような真面目な顔をしている。
「どうして、急にそんなことを思ったんだ?」
 どうして、か。さっき見た夢のせいなんだけど、それを素直に言っていいものかどうか迷う。
「なんていうかね…チャンスかなって。この家、二人きりじゃちょっと広いからさ」
 夢の中でお母さんが感じていたこと。そして、わたしも少し思ってたことを口にした。夢のことをそのまま言うのは気がひけるけど、嘘はつきたくなかった。
 お父さんは何も言わなかった。何故かわたしは、お父さんが泣きそうだと感じた。
「…お父さん?」
 わたしが声をかけると、お父さんはぶんぶんと首を左右に振った。
「お前は、ホントかなたに似てきたな」
 そして、何故かそんなことを言ってきた。
「そう?よくわかんないけど…」
 お母さんに似ている、か。なんでだろ、そういうこと言われると意地悪な返しをしたくなってくる。
「つまりわたしは、お母さんの代わりというわけですかな?」
「おいおい…」
 呆れたような口調だが、お父さんの顔は笑っていた。本気で言ってないことがバレバレだ。
「どんなに似てても、かなたはかなた。こなたはこなただよ。どっちがどっちの代わりにはならないさ…でもまあ、まったく同じところが一つだけあるな」
「ほほう、その心は?」
「俺が全部を賭けたくなるほど、大切な人だってことさ」
 …そんなくさい台詞、よく真顔で言えるなあ…変なところで純真と言うか真っ直ぐと言うか…。
「娘口説いてナニするつもりですか。このロリコンは」
「い、いやそんなつもりはまったくないぞ…」
 つい出てしまったわたしの言葉に、お父さんは慌てて手を振って否定した。不覚にも少しドキッとしたなんて、口が裂けても言えない。


 お父さんが部屋に戻った後も、わたしはベランダに残っていた。さっきと同じように手のひらを星空にかざす。
 わたしの手。お母さんと同じ小さな手。
 今はお父さんに引っ張ってもらってるようなものだけど、いつかこの手は違う誰かの手と繋いでいるのだろうか。その時は、引っ張られるより隣を一緒に歩く方がいいかな…なんて、柄にもないことを思う。

 わたしは目を瞑り、夢の最後の場面を思い出す。
 夢の中のお母さんの願い。
 かなうかどうかは分からないけど、忘れないでいようと思う。

 わたしのあたたかさを誰かに。誰かのあたたかさをわたしに。

 いつか、きっと。



― 終 ―
360 :コンクール作品「二人の手」 [saga]:2010/03/27(土) 03:35:32.40 ID:nOJaCMs0
以上です。

かなたの話だけだと少し短い気がしたので、こなたの話を追加したんですが、蛇足になっていないかが心配です。
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/27(土) 05:02:34.20 ID:wJsOAyoo
>>360
文章もさることながら、ストーリーもすごくよかった。なんというか感動した
蛇足なんてとんでもないぜ、GJ!
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/27(土) 07:29:21.96 ID:Cb.9n6Q0
>>351
あらすじを書くと他の作品との兼ね合いが崩れるのでとりあえず止めておきます。
やはり無駄に長かった。説明ばっかりでストーリ性に欠けてしまったのは否めない。
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 00:44:24.18 ID:F0CXpCk0
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第十八回コンクール開催

投稿期間 3月15日(月)〜 3月28日(日)24:00

期限も一日切りました。最後の追い込みがんばりましょう。
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 07:16:40.15 ID:gQniLYSO
らっきー☆レイサー(^ω^)
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 09:15:40.86 ID:.TQ/ens0
あれ?今日まで?
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 10:01:50.78 ID:F0CXpCk0
28日の0:00なら終わってるけど24:00なので28日いっぱいって判断したんだけど?
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 10:05:43.93 ID:Puq71gAO
確かに24:00になってるね
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 10:14:41.56 ID:F0CXpCk0
っと言うことなので、まだ諦めず投下よろしくです。
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 13:28:17.40 ID:KScScAIP
よォーし、パパがんばっちゃうぞー^^
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 14:19:21.41 ID:EJu/BM.0

                 _
               / /          ┼ヽ
             ,  -― (  /          d⌒)
.         /: : : :-=千</ ̄>
         /.:.:.:.: /.:.:.:.:.:/.:∧`ー<         -|r‐、.
.        ,'::::/::::/::/⌒イ::/ |:l_:::::::ヽ       ./| _ノ
       /::::,':::: W|/ j:/  j∧`::: ハ
        レl(|::::: | ○      j::/:/::::|       レ |
.        l/|::::: |      ○ん|/:∧|       __ノ
.         lヘ:: ト、  ◇   /::::: /
.          _ム:|-f`_r―ァ≠!:::::/
        /=、\「`}ヽ// j/          糸冬
         (   \{: リ ∧          ---------------
        ノ  _,}V/ }         制作・著作 NHK
371 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 15:16:35.20 ID:ovTaaUc0
うわ、このスレすごい懐かしい。
なんとなくスレ検索したらまだ続いていたんだ。
びっくり。

時間があったらまた投下してみようかね。
372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 18:26:28.29 ID:RPfLcVg0
コンクール作品投下します。
373 :ドア :2010/03/28(日) 18:29:07.29 ID:RPfLcVg0
今更言うまでもないが私は典型的なインドア派だ。
趣味は、ネット、ゲーム、マンガなどオタク趣味全開だし、時計の短針が3を回るころまで起きていることも珍しくない。
部活はやってこなかったし、友人とスポーツをしたりもめったにしない。
休日は家にいるか、オタク御用達のショップへ通う。
そしてなにより体育会系のノリは苦手である。

今更言うまでもないがみさきちは典型的なアウトドア派だ。
部活は陸上部。
それも大学に入っても続けるほどのレベル。
兄に連れられて小さいころからいろんなスポーツをやってるらしい。
休日も基本的には外に出かける。
かがみによるとマンガやゲームもするらしいけど、いまどき全くやらないって人のほうが珍しい気がする。
そしてなにより家でじっとしてられない性質なのだとか。

そんなわけで私とみさきちは、普通であったら交わらない性格であろうと思える。
実際、共通の友人がいて、同じ大学に行かなかったらここまで深くつきあうことはなかったと思う。
まったく縁とは不思議なものだ。

みさきち……
当然嫌いではない
苦手意識があるわけでもない。
かがみみたいにいじっても大丈夫だし、むしろ話しやすいと思う。
でも、なぜかみさきちとの間に隔たりのようなものを感じてしまうのは、その趣味の差があるからだ。

これから話すのはそんな風に考えていた、大学に入りたてのある日の出来事である。
とある金曜日、珍しく私もみさきちも真面目に講義に出席した時のことだった。
374 :ドア :2010/03/28(日) 18:30:25.00 ID:RPfLcVg0
「なー、ちびっこ。フットサルのメンバーが足りないんだけど明日来ねぇか?」
「ふっとさる?」
「うん、兄貴の作ったサークルなんだけど。男女混合のチームで大会があるんだけど」
「え?そんなの私が出ていいの?」
「ああ、大会って言っても初心者向けのやつだし、ちびっこの運動神経なら余裕だぜ」
「うーん」
「頼むよ。人足りてないんだ。じゃ、よろしく!」
「ちょ、ちょ……待っ」

私の返事を待たずにみさきちは軽快な動きで教室を出て行った。
残された私は、突然の誘いにため息をつくしかなかった。

「ただいま〜」
「お、こなた。おかえりなさい」

はぁ、私は思わずため息をついていた。

「どうした?こなた、元気ないぞ?」
「う〜ん、まぁね」

私は、明日のことをお父さんに話した。

「いいじゃないか。若いうちは運動しておいたほうがいいぞ」
「そうかなぁ」
「お父さんも大学生のころは、体育館に忍び込んでバスケしたり、二年生の時、新入生になりすまして歓迎会でおごってもらったり、コミケのために体力づくりのマラソンやったりしたもんだ」
「いや、後ろ二つはいろいろおかしいでしょ!」

どこまで真面目なんだかわからない。

「まあでもせっかく誘ってくれたんだ。そういう縁っていうのは大切にしたほうがいいぞ」

「ま、こなたに予定でもあるんなら別だけどな」

予定は特にない。
バイトも入ってないしこのままいくと、また特に当てもなくオタクショップを散策するか、ネトゲに興じるかいづれかだろう。
有意義とはいいづらいかもしれない。
と考えていると、いつの間にかお父さんは、お父さんも、かなたとの縁があったから云々、と自分の世界に入っていた。
こうなるとお父さんの話は長い。
375 :ドア :2010/03/28(日) 18:32:09.58 ID:RPfLcVg0
「あー、はいはい、貴重な意見をどうも」

適当に返事をしてリビングを出る。
後では、まだお父さんがぶつぶつ言っていたがまあいいや。

部屋のドアを閉めると、もうひとつため息をついて私はベッドに倒れこんだ。
体を動かすのは嫌いじゃない。
運動神経だって普通の人に比べればいいほうだと思う。
ただ、私は体育会系のノリがあまり好きじゃないのだ。
仲間内でスポーツをするのはいいが、見知らぬ人がいるとどうにも調子が狂う。

次の日、私は休日だというのに久しぶりに午前中に目を覚ました。

「泉さんだね、話は聞いてるよ。今日はよろしく」

大会が行われるという会場に着くといきなり男の人に声をかけられた。
はあ、これが……

「おっす、ちびっこ。これが私の兄貴な」

言われなくてもわかった。
顔の、全体的な形、目、鼻立ちなんかが良く似ていた。
それよりも私にとっては……
これが峰岸さんの彼氏かぁ……
ということしか頭になかった。

大会の参加チームはあんまり多くない。
トーナメント方式で三回勝てば優勝できるらしい。
なお、大会のルールで、1チームに二人以上は女子が入らなければいけないということだった。
なるほど、私と、みさきちと、あと一人……
あと一人?

「ちょっと待って、みさきち、私以外にもう一人女子がいるじゃん」
私は呼ばれる必要なかったんじゃ?
「ああ、何人かに声かけてたから。それにちびっこもその子も普段やり慣れてないから交代交代で出たほうがいいと思って」

まあ言われれば確かに万一三試合やることになったらスタミナ切れをおこす可能性は大だ。
代わりがいると思えば気も楽である。
そうこうしているうちにウォーミングアップがはじまった。

「ちびっこ、思った以上にうまいなー」
「そういうみさきちこそ」
「いやいや、初心者にしてはかなり上手いって!前にあやのを連れてきたときなんかボールから必死に逃げ回ってたんだぜ」
「あ〜いるよねー。体育でサッカーやっても女子の方は別種目みたいになっちゃったり」
「あ、そういえばちびっこはスタメンだかんな」
「わかった」
「前半で交代の予定だから体力出しきっちゃっていいぞ」
「ありがたいね」
376 :ドア :2010/03/28(日) 18:33:14.87 ID:RPfLcVg0
適度に体が温まったところで試合が始まった。
実際の試合は思った以上に楽だった。
相手とは大分実力の差があったからだ。
両チームの中でもみさきち兄が一番うまい。
みさきちも相手チームの男性陣にも劣らないうまさで、楽勝だった。
点差をつけて前半が終了した。
私の役目はひとまず終了である。

「ふー、楽勝だね」
「油断はまだできねーけどなー、ちびっこお疲れ」
「あんま動いてないけどね」
「体冷やさないようにしとけよ」
「ほーい」

後半も変わらず一方的な試合だった。
最後のほうは相手がかわいそうになってくるほどだった。

二回戦、今度も前半に出ていた私は、後半、ベンチで休んでいた。
チームも大差をつけて勝っていて、なんの心配もないと思われた。
そう思っていた矢先、事件は起きた。

「痛っ!」

私と代わって出ていた女の子が、急に足を押えてうずくまった。
相手と接触したときにひねったようだった。

「うわ〜、腫れてるね」
「こりゃ、試合に出るのは無理だな」

全員の視線が私に集中する。
マジですか?
このあと私はフル出場を余儀なくされることになった。

結局そのあとは何事もなく勝ち進み、あとは決勝を残すのみとなった。
コートで行われている準決勝の第二回戦を見ながら私はある考え事をしていた。
私が家でネトゲをしてる時、マンガを、アニメを見てる時、みさきち達はこうやって汗を流している。
将来、昔何をしていたか聞かれた時、胸を張って答えられる青春を過ごしている。
私はどうだろうか……
オタクも一昔前に比べれば、大分偏見も減ったように感じる。
でも、いまだに肩身の狭い思いをするのは確かだ。
少しだけ……みさきちがうらやましくなった。
377 :ドア :2010/03/28(日) 18:34:14.74 ID:RPfLcVg0
「何考えてんだ?ちびっこ」
「いや、みさきち達青春してるなーって」
「はぁ?ちびっこだって一緒にやってるじゃねーか?」
「まあそうだけどさ。なんていうか普段家に閉じこもってる私に比べて、みさきち達がまぶしく見えるっていうか」

みさきちは怪訝な顔をしていた。
そうしてしばらく考えてから、言った。

「私はそんなこと考えたこともないし、よくわかんないけど……今自分がやりたいことを一生懸命やってるだけだよ。ちびっこが思ってるほど立派なもんじゃないって。それにさ、ちびっこがアニメとかの話してる時もかっけーって思うぜ」
「なにそれ?」

思わずふきだした。
今までかっけーなんて言われたことがない。

「まあかっけーっていうか、すげー楽しそうだから、うらやましいって感じかな。何かひとつのことに情熱を注いでんのが」

笛の音が体育館に響いた。
準決勝の二試合目は大差がついていた。

「負けたくないね」

知らず知らずのうちにそう呟いていた。

決勝戦が始まった。
さすがに相手は強かった。
早いパス回しから隙ができるとどんどんシュートを打ってくる。
こっちもみさきちのお兄さんを中心に攻め込んでいくが相手の守りは堅く簡単には崩せない。
一進一退の攻防が続き、前半が終了した。

「はぁはぁ」
「大丈夫か?ちびっこ」
「……なんとか」

答えたものの相当にしんどい。
日ごろの運動不足がたたっているのか……
みさきちはさすがにまだ余裕がありそうだった。

「まああと後半だけだ。がんばろう」

ハーフタイム終了の笛が鳴る。
やけに休憩が短く感じた。

後半になると一方的に押し込まれる展開が続いた。
原因は明らか、スタミナ切れで私が動けなくなったからだ。
ほとんど戦力にならない。
事実上の5人対4人での試合。
不利になるのは当然だった。
378 :ドア :2010/03/28(日) 18:35:02.50 ID:RPfLcVg0
「ちびっこ!」

みさきちが叫んだ。
ボールが私のところに転がってきていた。

「あ!」

足がもつれてボールが大きく私から離れた。
その隙を見逃すはずもなく、相手にかっさらわれた。
前がかりになっていた私たちのチームはカウンターに対応できず、失点した。

「どんまい!ちびっこ」
「取り返せばいいよ。泉さん」

みさきち達の励ましの言葉も耳に入らず、私はただ情けなくなった。
リードしたことで相手は守りを固めてきた。
なかなか攻めきれない。
もう残り時間がわずかになったところだった。
一瞬の隙を突いてみさきち兄妹の見事なコンビプレイから同点に追いついた。
相手ががっくりと肩を落とす。
私はそのとき後ろのほうで見事なプレイを眺めているだけだった。

「おい、ちびっこ」

試合が再開されるまでのわずかな時間に、みさきちが話しかけてきた。

「あきらめていーのか?」

いつか、高校3年のとき、合同のバレーボールの授業でみさきちがつかさに話しかけていたことを思い出した。
あのときもみさきちは力強い目で、つかさを勇気づける目で、語りかけていた。

「そうだね」

私は一つ深呼吸をした。

「やれるだけ、やってみるよ」
379 :ドア :2010/03/28(日) 18:36:11.04 ID:RPfLcVg0
よおし、とみさきちは頷き私に耳打ちをしてきた。
試合が再開される。
私は前のほうから積極的に守備に参加する。
しかし、相手も技術が高く簡単にパスでかわされてしまった。
その先をみさきちが狙っていた。鮮やかにパスカット。
みさきちが顔を上げる。私と目が合う。

『私がとったら相手ゴールに向かって思いっきり走れ』

「ちびっこ!」

さっき耳元で囁いたとおり、みさきちはロングパスを送ってきた。
一回戦で私に出してきたのと同じ、ぎりぎり届くか届かないかの厳しいパス。

私は走った……

肺が空気を欲しがる。
心臓が暴れまわる。
足は言うことを聞いてくれない。
それでも走るしかない。

相手キーパーも前に出てきている。
なんとか先に触ろうと精一杯足を伸ばした。
フロアに倒れこみながら、視界の端に、キーパーの横をすり抜けゴールに吸い込まれていくボールを確認した。

そして試合終了を告げる笛が鳴った。
大きな歓声が場内に反響して耳に飛び込んできた。
誰のものかわからない声が次々と私に投げかけられ、歓喜に沸くチームメートにもみくちゃにされた。、
その中で私は、今まで感じたことのない充実感を味わっていた。
380 :ドア :2010/03/28(日) 18:38:16.51 ID:RPfLcVg0
帰り道、私はふらふらと危うい足取りで歩いていた。

「だらしねーなぁ。そんなに動いてないだろー」
「そうだね、日ごろの運動不足を体感したよ」

みさきちは余裕そうだ。
やはり普段の鍛え方が違うのだろう。

「まあでも今日は付き合ってくれてありがとな」
「いいよ。私も……」

楽しかったし。
そう言葉にするのがなんか照れ臭かった。
それにやっぱり私は体育会系のノリが苦手だ。
体もふらふらだし、明日の筋肉痛を思うと憂鬱になる。
でもまぁ……

「あのさ……」

みさきちが振り返った。

「たまにはいいもんだね、体動かすのも……。また、誘ってよ」

ほんの少しだけ、ドアを開けてみただけだけど、
みさきちがスポーツが好きな理由も少しは理解できた気がした。
やっぱり私はドアの内側がいいと思ったけど、
たまには、外側に出てみるのも悪くないと思った。

おう!と八重歯を見せて笑ったみさきちの顔は輝いていた。

「じゃあまた来週やるか?」
「えっ……それはちょっと」
「なんだよ、軟弱だなぁ」

私たちの笑い声が夕日で赤く染まった町に響いた。
その日、私とみさきちは、親友になった。





後日、みさきちは私に連れられてコミケに参戦するも、午前中で音を上げてしまい、私に「軟弱だなぁ」と言い返されることになるのだが、それはまた別のお話。
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 18:38:57.67 ID:RPfLcVg0
以上です。
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 22:30:34.56 ID:MfbxAGIo
やばいこれは間に合わんw終わらせ方が見つかんない\(^o^)/
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:34:19.55 ID:nPLhK..0
>>381
俺もほぼ似たような状態だし一緒に頑張ろうぜ!
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:35:02.74 ID:nPLhK..0
>>383
ミスったorz
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 22:53:46.73 ID:Xk5jjy.0
大賞とるのどの作品だろう
386 :ーまつりのプレゼントー :2010/03/28(日) 23:45:03.07 ID:GFlf.5M0
投稿するよ
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 23:45:20.92 ID:Xk5jjy.0
てかこんな人いないなかでコンクールなんて成り立つのか?
388 :ーまつりのプレゼントー :2010/03/28(日) 23:46:09.74 ID:GFlf.5M0
「素敵な所ね」
目の前に広がる湖を見て、みきはうっとり目を細めた。
「ああ。来た甲斐、あったな」
みきの肩に手を乗せるただお。
いのり以下柊家の四姉妹は、ここにはいない。
いのりは仕事中だし、まつりは休講なのをいい事にどこかをほっつき歩いている。
そしてかがみとつかさは家でお笑い番組を見ながら笑い転げている。
ここはさる地方の湖畔。周囲の草木は紅や黄色に染まり、訪れる人々の目を楽しませる。
今、ここにいるのはみきとただおの2人だけ。
2人の背後には一軒家が佇んでいた。
2人はこの機会をプレゼントしてくれた友人に感謝しつつ、
幻想的な光景にいつまでも目を奪われていた。

時は過ぎ、夕刻。柊家の台所ではまつりが夕食の準備に勤しんでいた。
「まつり、何?にやにやして。気色悪いわね」
仕事から帰ってきたのいのりがそこにやってきた。
ぴっしりとスーツを着こなしたその姿は、絵に描いたような美人OLの様。
いのりは鍋から漂う芳香に鼻をならし、今日の夕食は何かと考える。
「いや、ははは、ちょっと、ね」
いのりとは真逆の井出達で鍋の具合を見るまつり。その姿は極めてラフなものだった。
ストライプのトーレーナーに、下はチノパン。そしてその上にエプロンを着けている
「また変な事考えてるんじゃないでしょうね?あんた、ろくな事考えないんだから」
まつりは今、遠い所にいる両親の事を考えていた。
ただおの友人から2泊3日の予定で別荘を借り受けたただおとみき。
今頃、その2人はどうしているのだろう。
紅葉が綺麗だと言うから、湖の周辺を散歩しているのだろうか?
それとも街へ出てデートでも楽しんでいるのだろうか?
いや、自分達と同じく夕飯の準備をしているのかもしれない。
そしてその後は……
想像するだけでまつりの頬は緩み、おぞましさが顔全面に広がっていく。
喉から漏れる「くっくっく」と言う笑い声が不気味さを一層倍増させていた。
「あんたねぇ……」
未だ悪戯癖の治らない妹に呆れつつ、いのりは息を漏らし自室に戻っていった。
389 :ーまつりのプレゼントー :2010/03/28(日) 23:49:21.05 ID:GFlf.5M0

その頃、みきとただおの2人は色鮮やかな森の中を歩いていた。
ただおの腰に巻かれたポーチには、暫く前に購入したデジカメが納められている。
これまで幾度となく思い出を写してきたそれは、ただおの戦友ともいえる代物だった。
そしてただおはジッパーを引き、片手をポーチに差し入れた。
「どれみき、1枚取ってあげよう」
カメラを構えるただお。「ええ」と、みきも快く応じる。
ただおはモニターに映える妻の姿に何か妖精じみた不思議な魅力を感じつつ、夢中でシャッターを切っていく。
シチュエーションもあってか、一段とみきの姿に見惚れるただおであった

そんな2人を、近場の木の陰からぼうっと見つめる1人の女性があった。
赤い髪を後ろで結上げ、眼鏡をかけた理知的を印象を醸し出している、20代と思しき女性。
「あの、私達に何か?」
彼女に気付き、みきが彼女の元へとやってきた。
「え、あ、いえ、すいません。あの、失礼ですが、どこかでお会いしませんでした?私は」
「おーい」
自己紹介でもしようとしたのか、女性は胸に手を当てて言葉を紡ごうとしたが、
その声を遠くからの少年時じみた声が遮った。
森の奥から1人の少年がこちらに向って走って来ているのが見えた。
少年の口からみずほと出た気がしたが、それがこの女性の名前だろうか?と、みきは思った。
「ごめんなさい。人違いですよね?失礼しました」
女性は頭を下げ、「けいく〜ん!」と叫びながら彼の方に走って行ってしまった。
みきの元に置去りにされていたただおがやってきた。
「知り合いかい?」
「さぁ……」
でも、何となく声が似ていた、そんな気がする。という言葉をみきは飲み込んだ。
きっと気のせいだから。

周囲はすっかり暮れこみ、界隈を照らすのはこの別荘から漏れる照明だけであった。
夕食を終え、みきは、酒を持っていくと言ったただおを居間に残し、1人に寝室へやってきていた。
ベッドに腰を下ろすみき。彼女の視線の先には手提げ袋があった。
それは家を出る前に、まつりから手渡された物だった。
『2人だけの時に開けてみてよ。きっとお父さんも喜ぶから』
そう言ってソレを差し出したまつり。
何を渡したのか、まつりは『着いてからのお楽しみ』と答えるだけでそれ以上は教えてくれなかった。
まつりは他の姉妹以上にトリッキーな物の受け渡しをする子だ。
それは心を込めてありがとうと言える代物からヲイヲイと突っ込みを入れたくなる様な、ウケ狙い的なものまで、
あらゆる物をそういった方法で渡してくる。今回まつりが渡してきた物は、その手提げ袋だった。
みきは手提げ袋を手にとって見る。口のびっしり閉じられた謎の袋。
押した感触は柔らかく、ふんわりした何かが入っている様。
変な物だったら……みきの脳裏に嫌な予感が走る。
でも、折角の夫婦水入らずの旅。
わざわざそんな無粋なマネを……と考えたところで思考が切り替わる。
まつりならありえるかも知れない。
みきは思い切って袋の封を解いた。
そこへビールとグラスを持ったただおが入ってきた。
390 :ーまつりのプレゼントー :2010/03/28(日) 23:51:01.00 ID:GFlf.5M0

 「なんだい?それは」
ただおが目にした物は、今し方、みきによってベッドに広げられた、一着の黒いワンピース。
それと白のエプロン。更にフリルの着いたカチューシャだった。
「エプロンドレス……かしら?」
みきは困ったように頬に掌をあてている。
「ほぉ。そんな物まで持っていたのか。みき。初めて見たよ」
「っち、違うの。家を出る前にまつりに渡されて……もぉ、まつりったら、何を考えているのかしら。
 私、こんなの着れる歳じゃないわ?帰ったらキツク言っておかなくちゃ」
「ははは、まぁまぁ。まつりも気を使ってくれたんだろ?ふむ。TVで見たことあるよ。
 そういう服を着た女の子。確か、メイド喫茶とか言ったかな?
 メイドと言えば海外の家政婦というか、そんな印象だったけど、この国ではウェイトレスさんが着ているらしいね。
 いい機会だ。みき、着てみたらどうかな?きっと良く似合うよ」
「もぉ。着・ま・せ・ん」
ぷいっとそっぽを向くみき。
みきはちらと目を細めてただおをみる。ただおはそれ以上は言ってはこない。
ただおは嫌だというもの無理やりやらせようとはしない性分だった。
ただ「残念だな」等と言う限りで、そこでその問題は終わってしまう。
でも、言葉がないと言うだけで、それは無言の圧力と言うものに他ならなかった。
言葉はかけないかわりに、どうするべきかは自分で考えろ、と言うのがただおのスタンスであった。
これをスルーしたからと言って何かが変わるわけではない。
夫婦の絆に罅が入るわけでもないし、これからみきへの態度が変わるという事もない。
普段と変わらない、理想の夫婦と言わんばかりの2人でいられる。
今までがそうであったように。みきはそう確信していた。
でも、ただおは亭主で愛する旦那様だった。みきはそんな人の笑顔をずっと見ていたいと思っていた。
だから、みきは決意した。みきはそのセットを持って部屋を出て行ってしまった。
数分後、しずしずとその部屋に入ってくるみきの姿があった。見事メイド服を着こなしたみきが、そこにいた。
はにかんだ笑顔を見せるみきは、照れたように
「どうかしら?」
と、声を掛ける。自称4……17歳の美熟女メイドを目に、ただおは驚きを隠せないでいた。
若者にはない、まさに大人の色気を放つみき。
使用人でもウェイトレスでもない、なのにそんな不条理な格好をしているみき。
4人も子供を産んだというのに可憐さや美しさをまるで失わない愛しい妻、みき。
そんなみきが恥らいながらこの様な姿を晒している。
膝上20cm程度しかないミニスカートの裾を恥ずかしそうに押さえるみきの姿に、ただおは萌えていた。
「何だか新鮮な気持ちになるな。……みき、私の事を『ご主人様』って呼んでみてくれないか」
「あなたったら……」
ただおの細い目から注がれる熱い眼差し。
みきは半分呆れ気味にビールの乗ったお盆を持つと、ただおの眼を見た。
「ご主人様?ビールをお持ちしました」
首を傾げるみき。気恥ずかしさのせいでぎこちなかったかも知れない。自分は望む通りに出来ただろうか?
でも……楽しいかもしれない。そんな想いが込み上げてくるみきと、
そしてただおの中のナニカがぶち切れた瞬間でもあった。
391 :ーまつりのプレゼントー :2010/03/28(日) 23:52:32.55 ID:GFlf.5M0

 柊家の居間では4人の姉妹が揃っていた。
「ふぁぁぁ……眠い。まつりお姉ちゃん、今朝、お母さんに何渡してたの?」
「ん〜?ああ、あれね。あれはね……浪漫よ」
「浪漫?」
何だろうと少しだけ考えたつかさだったが、押し寄せる眠気には抗えず、
「ふ〜ん」
と言ったっきり居間から出て行ってしまった。
「つかさ、明日の境内の掃除、忘れないでよ」
そうつかさに声を掛けたいのり。でも返事は返ってこなかった。
「姉さんの事だから敢えて聞かないわ。どうせろくでもないことでしょ」
「失礼だな、かがみは。これは2人の仲を更に深める為の」
「はいはい。まつりも休みだからって遊んでるんじゃないわよ?不景気だからどこも渋んでるんだから」
一応まつりの進路を心配し、一声かけたいのりもそくさと部屋を後にした。
「はは、そん時は私がこの家継ぐから」
バラエティ番組に夢中のまつりは姉の苦言を軽く受け流す。
「んじゃ、私も部屋で勉強するから」
それだけ言ってかがみも自室に戻っていく。
1人になった居間で、まつりは1人悶えていた。


「あなた」
照明の落とされた薄暗い寝室。
1人のメイドが、横に座る彼女の亭主に淫靡な声を投げかけていた。
そんな斬新な妻の声色、艶姿に身も心もどうにかなってしまいかけたただおが、そこにいた。
「みき……」
生唾を1つ飲み込みただおは、みきの肩を優しく掴み、そしてベッドに押し倒した。
濃密な2人の時間が、始まろうとしていた。

〜おわり〜
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 23:52:49.06 ID:CePbPOEo
投下させてもらいます
393 :家族紡ぎ [sage]:2010/03/28(日) 23:53:43.82 ID:CePbPOEo
 ふたりで買い物を済ませて、いざ、台所で料理の準備をと腕まくりをする。
 まだまだ慣れない私の腕は手際も悪く、調理の手順は遅々として進まない。包丁を扱う私を、後ろから彼がハラハラした様子で見る。
 手伝いを請うことはしたくなかった。何事も経験。すぐ慣れるから。だから、慣れるまで、ちょっと待っていて――


 春休みの時期のある日。昼前の時間に目を覚ます。
 リビングに出てみるとゆーちゃんがテーブルで一枚の書類を手にしていた。
 おはよう、と挨拶をかわしあって。それからお互いに苦笑しあう。ぜんぜん早くない。家族がそろう朝ご飯の機会を潰したぐ〜たらな大学生がここにひとり。
「お父さん、出かけたの?」
「うん、編集部のほうに用事があるからって出かけた」
「そっか。そのプリント、パトリシアさんの?」
「うん、今日だから、ちょっとドキドキする。あ、おじさんが帰ってくる時間聞いてない。遅くなるのかな」
「んー、朝のうちに用事を済ませに行ったとも言えるから、午後のうちには帰ってくると思うよ」
 交換留学生のホストファミリーがうちの家に決まった。今日がそのひとが訪れる当日。到着は夕方ごろの予定と聞いている。
「迎える準備しなきゃね。せいいっぱい腕を振るうよ、期待してて」
 ぐ〜たらの失点を取り戻すべく意気込んでみる。
 うなずいてゆーちゃんが微笑む。頼りにしてますというその素直な表情が心地よくもあり微妙なプレッシャーでもあった。ひとを迎えるための準備なんてじっさい私もほとんど経験がない。しかも相手は外国人。上手くもてなせるかけっこう不安だったりもするのだけれど。
「買い物行こう、すこし待ってて」
 だけれど不安なのはゆーちゃんもきっと同じで。だから私は姉らしい見栄を張って平然を装う。部屋着を着替えて外出の用意をする。


 近所のスーパーで食材巡り。
 パトリシアさんの好みを探りつつ、家でふだん食べている食卓をいつもよりもめいいっぱいていねいに。私たちの現在のプランはそんなものだった。
「どっか日本の名物がある店に外食にいけば簡単なんだろうけどねえ」
「でも、外国のひとを迎えるのにぴったりなお店っていうのもあまり思いつかないなあ」
「値段の高い料亭とか」
「それ、ぜんぜん簡単じゃないよ」
 てくてくとてきとうに歩きながらメニューを吟味。
「和食を受け入れられないなんてことは気にしすぎないほうがいいのかな」
「日本に来たいって思うくらいだから、そのへんはきっとだいじょうぶだよね」
「いざとなったらエビフライを醤油で食べてもらおう」
 まだ会ったことのないひとへの想像をふくらませながら買い物を済ませてゆく。パトリシアさんに好みを聞かなきゃはじまらないのだし、いまはあれこれ考えすぎてもしょうがないのだと気を取りなおした。

「よ、っと」
 作業がはじまるまえのまっさらな台所のうえにドサッと材料を乗せる。ゆーちゃんの携帯に着信音が鳴る。
「おじさんから。もうちょっとで帰るって。留学生のひとが来るまでには間に合うね」
「あ、そう? じゃあどっか和菓子屋でなんかお土産買ってきてって返事しといてくれる?」
 とりあえずの下ごしらえが必要なだけを取りだしつつ、あとは冷蔵庫へ。メールの返事を済ませたゆーちゃんと視線を交わす。
「んじゃ、パトリシアさんが到着するまで待機、かな?」
 ちょっと緊張してきた、とゆーちゃんは言った。私もだよ、自分が緊張していることを茶化す。
 
 お父さんがちょっと高いお菓子を持って帰宅する。どうかなあ、パトリシアさんの口にあうかなあ、と三人でぐだぐだと雑談。 
 問題なく家に馴染んでくれたらいい。仲良くなれたらいい。そのためにできることを、私たちなりにこうしてやってみて。
 不安とワクワクの両方が大きくなっていく胸のうち。それはきっと、お祭りそのものよりもお祭りの準備のほうが楽しいということに似ていた。ひとりでは持てあましてしまいそうなその気もちをこうしてみんなで共有することにどこか安らぎを感じる。
394 :ーまつりのプレゼントー :2010/03/28(日) 23:54:17.48 ID:GFlf.5M0
以上です。どもでした
395 :家族紡ぎ [sage]:2010/03/28(日) 23:54:53.01 ID:CePbPOEo
 パトリシアさんは快活なひとだった。いろいろとダイナミックなところがアメリカっぽいと思う。
 特定の日本文化を好むその趣味は今日の私たちにとって良いのか悪いのか。とりあえず食べ物の好みは心配しないでいいと彼女は言った。是非、この家の食事に合わせてくださいと。
 ある意味、どんな希望よりも難易度の高い注文だ。これはちょっと気合いを入れねばと、いざ、腕まくりをして台所に立った。
 手伝おうか? と後ろからお父さんが声をかけてくる。
「いや、いいよ。配膳のときだけ手を貸してくれればいいかな。ゆーちゃんがパトリシアさんの勢いに飲まれないようにフォローしててよ」
「あー……たしかに」
 苦笑を浮かべる。手際よく手順を進める私に、良い娘を持ったなー、なんてつぶやきながらお父さんはその場を去ってゆく。
 なにを言っているんだか、と肩をすくめながら、私は目の前の作業から目を離さない。

 料理もお菓子も上々の評価をいただいて私は胸をなで下ろす。当初の私たちの心配なんてどこ吹く風で彼女は馴染みまくる。
 この様子だとなにも問題なく、四月からゆーちゃんといっしょに通学していってもらえるだろうと思えた。
 ゆーちゃんが自分の部屋へとパトリシアさんを案内していって、リビングでお父さんとふたりきり。どちらからともなく、ほっとした、と視線を交わす。
「じゃ、後片付けしてくるよ」
「うん」
 急に静かになった空気。立ち上がる際の身体やけに軽くて、ちょっとだけ戸惑いを感じた。

 食器洗いを終わらせて戻ると、ちょうどゆーちゃんたちも戻ってくる。そこで、パトリシアさんが真剣な表情でお父さんを見る。
「パパさん。この家のママさんにゴアイサツさせてくれませんカ」
 ゆーちゃんの部屋で私の家の家族構成の話題になったらしく、そこでお母さんのことに触れたようだ。
 べつに私たちとしてはそんなことを気にしてほしくはないわけで。そういうことを難しく考えなくてもいいよとお父さんは忠告する。
「イイエ。このファミリーのなかでオセワになるのですから、ちゃんと、この家のエライひとにお祈りをさせてほしいのでス」
 自分なら、きっと気を遣ってそれには触れないようにするだろうけれど。そういう考え方もあるのかと思った。
 これがアメリカと日本の違いなんだろうか。それともこの子が良い子だから、こうなんだろうか。パトリシアさんが到着してからここではじめて異文化交流というものを実感した。

 父の私室。仏壇の前に私たちは集まる。正面のパトリシアさんの傍らで、ゆーちゃんが正座のしかた、手の合わせ方を教えている。
 ゆーちゃんが、私のほうを振り向いた。私はうなずいた。
 線香の煙の匂いがする。鈴の音が響く。静謐な、お祈りの静寂が訪れる。

 私はパトリシアさんの背中に、口に出さずに胸の中で声をかける。
 最初は、お父さんと、そこにいるお母さんの二人からはじまったこの家族。私が生まれて、ゆーちゃんがやってきて。
 そして今日、こうして私たちのことも、お母さんのことも想ってくれるあなたが訪れました。

 ようこそ、あたらしい家族。


 パトリシアさんは今日はゆーちゃんの部屋でいっしょに寝ることになった。ベッドじゃなく床に敷く布団を体験することを楽しみにしていた。
 彼女たちが就寝するころの時間に、夜更かしのぐ〜たらが再発した私はリビングに出る。
 そこではお父さんが、ちびちびとお酒をやっていた。
「珍しいじゃん、お酒なんて」
「いや、さっきのパトリシアさんについ感銘されちゃってなあ」
「うん、あれはすごかった。なんていうか、すごかった」
「……最初はさ、オレとかなたの二人だけだったんだ、この家は」
「うん」
「お前が生まれて、ゆーちゃんがきて、そしてパトリシアさんが来て」
「……増えたね、家族」
「うん」

最初は父と母の二人だった。泉の家の人数が増えた明日からは、またきっと楽しい。

END
コンクール用です。よろしくお願いします
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 23:55:27.62 ID:MfbxAGIo
投下します
ラッシュ過ぎww
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 23:55:48.96 ID:nPLhK..0
ぎりぎりすぎる駆け込み投下行きます
「需給/二人s」
398 :二人旅 :2010/03/28(日) 23:56:04.89 ID:MfbxAGIo
「やふー、みゆきさ〜ん。おはよー」
「泉さん、おはようございます」
 土曜日の朝、私、泉こなたはとある駅前へ来ていた。
 そこには、みゆきさんが桃色の髪を揺らめかせながら、優雅にたたずんでいる。
 本当にどこでも絵になる人だ。
「あれ? かがみとつかさ、まだ来てないの?」
「ええ、でも時間にはまだ少し……」
 と、そこで私の携帯がなった。
「お、かがみだ」
 ディスプレイで名前を確認し、電話に出た。
「ふっふ〜ん、かがみんや、私の方が先についたぞよ」
『ってことは、そこにみゆきもいるのよね?』
「うん? いるけど」
『そう……ごめん!』
 え、と私は声を詰まらせる。
『急に家の用事が入って、行けなくなっちゃったのよ』
「なんですと!?」
 いつの間にか、耳を近づけて一緒に聞いていたみゆきさんと顔を見合わせる。
『実は今日、神社関連で集まりがあってね。本当なら、いのり姉さんとまつり姉さんが行くはずだったんだけど、二人そろって風邪引いちゃって……』
「それで、かがみとつかさが行くことになったと」
『そうなのよ』
「それは、時間がかかるのですか? 待っていても構いませんが」
『ああみゆき。うん、用意も含めてたぶん夜までかかるわね』
「そうですか……」
「ぬぅ」
『でまぁ、予約のキャンセル料もったいないし、先に二人で行って来たらどうかと思うんだけど?』
「二人で?」
「ですか?」
 再び、みゆきさんと顔を見合わせる。
『そこはあんたたちに任せるけど、せっかくだしね。明日私たちがあとから行ってもいいかと思って』
「うーん、そうだね」
『悪いわね。まぁ、そんなわけだからこれで』
「あ、一つだけ」
『なに?』
「つかさどうしてる?」
『あー……えっと、まぁ大体予想通りだと思うけど、半泣きで落ち込んでるわ。さっき姉さんたちが土下座して謝ってたわよ』
「病人すら地に伏すか……さすがつかさ」
『ま、泣くつかさにかなうやつは居ないわね。それじゃあ、またあとで連絡して』
「あーい、がんばってねー」
 電話を切り、パタ、と携帯を閉じた。
「残念ですね。かがみさん達も、旅行を楽しみにしてましたのに」
「んだねぇ」
 そう、今日ここに来たのは、四人で旅行に行くためだった。
 三連休だし、どうせならってことで泊りがけの旅行に行くことにした。
 旅館も予約して、みんな楽しみにしてたんだけど……。
「まぁ、仕方ないね。さて、どうしよっか?」
「そうですね……かがみさんもああ言ってましたし、せっかくですから私は行きたいですね」
「よーし、じゃあ行きますか!」
「はい」
 そうして、私たちは電車に乗り目的地を目指す。
399 :二人旅 :2010/03/28(日) 23:56:21.18 ID:MfbxAGIo


 途中で電車を乗りかえ、二、三時間でつくだろう。
 ボックス席で向かい合わせに座り、談笑しながら……のはずなんだけど。
 空気が……重い。何が悪いってわけではないけど、なんか気まずい。
 私とみゆきさんってこんなに話す事なかったかな?
 適当に話振っても上の空というか……。まぁ私のネタ選びに若干の問題があるような気がしないでもないんだけどね。
 それに、どうもさっきから落ち着かない様子だ。
 トイレかとも思ったけど、たぶん違う。そういうのはつかさの担当だ。
 かがみじゃあるまいし、通路向こうの人が食べてる駅弁が気になるってこともないだろう。
 なんて思っていると、少し腰を曲げたおばあさんが横切った。
 そういえば、あのおばあさんさっきも通ったん気がする。それも何度か。
 ああ、と納得しみゆきさんに言う。
「みゆきさん」
「は、はい?」
「いいんじゃないかな」
「え?」
 言いながら、みゆきさんの隣に移動する。
 不思議そうな顔をしていたが、すぐ理解したようで。
「あ……はい!」
 みゆきさんは、おばあさんに声をかける。
「あの、席が空いてないようでしたら、ご一緒にどうですか?」
 こうなるとみゆきさんは強い。申し訳なさそうに断るおばあさんをあっさりと説得? した。
「すまないねぇ、親子水入らずだったろうに」
「やっぱり……私ってそんなに年上に見えるんでしょうか……」
「いや! みゆきさん対比が私だからほら、うん」
 首をかしげるおばあさんを他所に、みゆきさんをなぐさめる。
 乗り換えの駅まで数十分、おばあさんを交え私たちは色々な話をした。
 定番だけど、おばあさんからみかんを貰ったり。
 ちなみに、みゆきさんとの関係についての誤解はちゃんと解いておいた。
400 :二人旅 :2010/03/28(日) 23:56:36.18 ID:MfbxAGIo
「それでは、私たちはここで」
「本当にありがとうね」
「元気でねー」
「よい旅を」
「はい、ありがとうございます」
 おばあさんと別れ、次の電車に乗る。
 なんというか、最初の重い感じもなくなったようだった。
「それにしても、さすがというかみゆきさんは優しいねぇ」
「いえ、そんな。泉さんこそよくわかりましたね」
「まぁ、なんとなくね。みゆきさんだし」
「それは、なんというかありがとうございます?」
「うん、一応ほめてるつもりだよ」
 笑いながら、ふと思っていたことを告げる。
「でもよかった。結局二人で来ちゃったけど失敗だったかなぁとか思っちゃった」
「なぜですか?」
「いや、なんか空気が重かった気がして」
「あ、すみません。その、緊張していたので……」
「なる、ほど?」
 可愛い人だなぁ、ホントに。
 いや、気持ちは分からなくもないんだけどね。
 そんなことを言いながら、二人とも笑顔になっていた。


 旅館に着いてからは、荷物を置いて近辺の観光に行った。
 お土産とか、おいしい団子のお店とか。
 かがみには連絡しておいたから、明日はみんな出回れるだろう。
 そしたら今日回ったところも案内してあげよう。きっと喜ぶはず、食い気的な意味で。
 旅館の料理もすごくおいしかった。懐石料理って言うんだっけ? あと、もずくが出たんで処理はみゆきさんにお願いした。
 しかしまぁ、なんとも時間が過ぎるのは早い。なんのかんのやってる間にもう0時前になっていた。
「結局、今日はかがみとつかさ来れなかったねー」
「そうですね。明日は大丈夫でしょうからゆっくり待ちましょう」
「んだねー。じゃぁ今日はもう寝よっか」
「ええ」
 みゆきさんは立ち上がり、明かりのスイッチに向かう。
「じゃあ、消しますね」
「はーい」
 電気が消え、部屋が暗くなる。
 するとどこからか、ふぎゅ、という声が聞こえた。
「……大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です」
 こけたらしい。
「じゃあ、おやすみ〜」
「おやすみなさい」
401 :需給/二人s 1 [saga]:2010/03/28(日) 23:56:44.93 ID:nPLhK..0
昼休み @保健室
みなみ「失礼します」
ふゆき「ああ、いらっしゃい」
みなみ「ゆたかが熱を出したので連れて来ました。」
ゆたか「何度もすみません…」
ふゆき「いいですよ。こちらのベッドで休んでいってください。」
みなみ「私も付き添っていいですか、私、保健委員ですから」
ふゆき「いいですよ。水差しと薬をどうぞ。」
みなみ「ありがとうございます。」

@廊下

ひより「こうして保健室をのぞいて今日もネタを収集・・・」
パティ「何しているのデスか?」
ひより「しーっ!ネタ収集っス。
    本人たちには悪いけど二人はもう本当にネタの源泉なんっスよ。」
パティ「ナルホド。だからアナタの同人誌のcharacterが二人に似ているのネ。」
ひより「そうっス。あの二人がいなくなった時の対策を一応は考えてはいるものの
    どうしてもあの二人に頼らざるを得ない現状が憎いっス。」
パティ「シー!デス。先生が話しかけようとしていマス。」

@保健室

ふゆき「小早川さん、体が弱くて向こうのおばさんとかに迷惑かけてませんか?」
ゆたか「あ・・・あの・・・なんていうか・・・その・・・
    いないんです。こなたお姉ちゃんに小さい頃亡くなったと聞きました。」
ふゆき「ごめんなさい。無神経なこと聞いてしまって。」
ゆたか「いいんです。おじさんもあまり迷惑そうにしてませんし。」
ふゆき「そうですか、でもおじさんにあまり無理させちゃいけませんよ。」
ゆたか「はい。」
402 :二人旅 :2010/03/28(日) 23:56:51.45 ID:MfbxAGIo


 眠ってからどれくらい経っただろう? かすかな物音を感じ、そっと目を開ける。
 すると、月明かりに照らされた何か、そうまるで人影のような――。
「ぎゃあああああああああ!」
「ひゃあああああああああ!」
「どっ、どど、どうしました!?」
 私の悲鳴に、誰かの悲鳴が重なる。 
「ちょっ、大声出すんじゃないわよ!」
「その声は、かがみさん?」
「……え? か、かがみ?」
 みゆきさんが部屋の明かりをつける。
 と、そこにいたのは紛れもなくかがみで、さっき悲鳴を上げたのは、どうやら私とみゆきさんの間で震えているつかさだった。
「何、してんの?」
「何してるも何も、なんとか用事が終わったから終電ギリギリで来たのよ」
「あ、そうなんだ……」
「つかささん、大丈夫ですよ」
「ふぇ? ゆきちゃ〜ん」
 半泣きになりながら、つかさはみゆきさんに抱きつく。
「何この可愛い生物」
「あんたのせいでしょ」
「いやいやいや、物音して目を開けたらツインテールのお化けが仁王立ちしてるんだよ? そりゃ悲鳴ぐらい上げるよ……」
「なんですって?」
「ひいいいい」
 よよよ、とみゆきさんに抱きつく。
「あらあら」
「はぁ、まったくもう」
 ふふふっ、とかがみが笑い出す、釣られて私もみゆきさんもつかさも笑う。
 うん、楽しい。二人も楽しいけど、やっぱりみんながいるともっと楽しい。
 明日も、楽しみだ。


-END-
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 23:58:14.22 ID:MfbxAGIo
以上です。中間端折って校正も出来てないけど勘弁してね!
404 :需給/二人s 2 [saga]:2010/03/28(日) 23:58:30.08 ID:nPLhK..0
@廊下

ひより「衝撃の事実っス。」
パティ「こんなこと知ってしまったらダレカにケサレマス!!!」
ひより「いや、いくらなんでもそれは・・・」
パティ「NO!コウいうことは早く忘れるに限ります!!!」
ひより「それより、その人どんな人か気になるなぁ・・・
    泉さんとそっくりだったりして・・・ってあれ?」
パティ「どうしたのデスか?」
ひより「学校の怖い話のひとつっす。
    先生に聞いたんっスけど、ときどき泉さんが二重にみえるらしいっス
    それが一人だけだったら、目の疲れとかですむんっスけど、
    複数人が証言してる上に、どう考えても
    目が疲れていない人にも見えるらしいっス。
    普通このテの話だと、『昔』の『とある女子生徒』がパターンなんっスけど、
    『今』の『特定の生徒』という珍しいパターンっす。
    だからオカ研の連中も必死に泉先輩に聞き込みしてるらしいっス。
    もしかしたらこの現象と関わってるかも・・・」
パティ「ア、ダレカキタミタイダ。」
ひかる「おーい、そこで何してる?」
パティ「ニゲナトコロサレテシマイマース!」
ひより「ちょっとパティ、まだネタが・・・」
パティ「いいから逃げるネ・・・」
ひかる「なんだあいつら・・・ま、いいか
あ、忘れ物した」
    
ふゆき「ん?」
ゆたか「どうしたのですか?天原先生。」
ふゆき「いいえ、なんでもありませんよ。
    さて、そろそろお昼ご飯の用意をしないと」

405 :393 [sage]:2010/03/28(日) 23:58:39.05 ID:CePbPOEo
冒頭の4行、コピペミスなので消した扱いにして欲しいのですが
こういうのは採点前の内容修正にあたるのでしょうか
406 :需給/二人s 3 [saga]:2010/03/28(日) 23:59:03.74 ID:nPLhK..0
数分後

@廊下

ひより「ふう・・・
    賢者タイムじゃないけど疲れたーネタ収集再開っと」

@保健室

ひかる「おーいふゆきー」
ふゆき「何ですか?」
ひかる「結婚してくれー」

@廊下

ひより&パティ「!!!」

@保健室

ふゆき「また冗d・・・って
    何ですかそれは!?」
ひかる「給料三カ月分だ。」

@廊下

ひより「新境地キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
パティ「これでユタミナから卒業でくるネ。」
ひより「求めよ、さらば与えられん。」
パティ「Halleluiahー Chance!!!!」
ひより「って続き続き!」
407 :需給/二人s 4 [saga]:2010/03/28(日) 23:59:32.90 ID:nPLhK..0
@保健室
ふゆき「指輪を買うなんて・・・
    冗談もほどほどにしてください!」
ひかる「前にも言ったと思うが、
    私はいつだって本気だ。」
ふゆき「本気だって・・・、この際正直に言います。
    私だってひかるちゃんのことは好きdす。
    でも、だからこそ、あなたにちゃんとした女性になってもらって、そして
    素敵な男性を見つけて結婚してほしい。だからあえてこのような態度をとっています。
    それなのに、ひかるちゃんは相手を見つけるどころかどんどん私に近づいてきて、
    その結果がこれです。
    あなたは私と一緒になれて生活ができればそれでいいかもしれません。
    でもそれではあなたの両親はどうなるのですか!」

ひかる「・・・分かった。
    でもなぁ、ふゆき。」
ふゆき「反論ですか?」
ひかる「ああ。あなたは親というものを分かっていない。」
ふゆき「どういうことですか?」
ひかる「おまえ、小さいころに母親亡くしているだろ。
    おまえの両親のイメージは本物の親のイメージではなくて
    メディアによって作られた偽物のイメージじゃないのか?」
ふゆき「苦し紛れの言い訳にしては上出来です。
    でも、同性愛に賛成する親なんてどこにもいませんよ。」
ひかる「だから、それが偽のイメージだ。」
ふゆき「どういうことですか?
    まさか、桜庭先生のお母様は賛成しているとでも
    嘘をつくつもりですか?」
ひかる「『嘘をつく』、ではなく『お前に教えておく』だ。
    この前母さんにお前のとの関係について言った。
    そして、『もし私がふゆきと結婚、あるいはそれと近い関係になったら
    母さんは賛成してくれるか?』と聞いた。
    そしたら母さんはこう言ったんだ。
    『世間体から見れば厳しいものであるかもしれん。
     だが、もし、ひかるとふゆきに
     世間体に何を言われても揺るがない強い意志があるんだったら、
     私はそれに賛成してやってもええ。』
    私にはその意志はある。だが、ふゆきが
    世間体を気にして自分の気持ちに素直になれないような人間なら、
    私のほうから求婚やめてやる!」

バタン!!!
ふゆき「ちょっと指輪を乱暴に扱わないで下さい。」
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 23:59:33.31 ID:Xk5jjy.0
ぐちゃぐちゃすぎてわけわからん
409 :需給/二人s 5 [saga]:2010/03/28(日) 23:59:56.70 ID:nPLhK..0
@廊下

ひより「逃げろ!!!」
パティ「私は桜庭先生を見てきマス!」
ひより「分かった。よろしく。」


ひより「ふぅ・・・ガチレズ・・・そして修羅場・・・
    ユタミナに引けを取らないっス!」
    仮に破局しても漫画では持ち直させればいい!」

放課後 @保健室

ふゆき「母親かぁ・・・」
ふゆきー、結婚してくれー
ふゆき「ん?泉さんの携帯から?」
ピッ
ふゆき「もしもし?」
???「もしもし、ええっと・・・あのぉ・・・超常現象に興味はありますか?」
ふゆき「ありますけど何か?」
???「今からそちらに向かいます。」
ふゆき「そういう勧誘はお断りしてま・・・」
ツーツーツー
ふゆき「あ、切れました。」
    さっきの電話の声・・・明らかに泉さんと違ってましたけど・・・」
???「やっほー」
ふゆき「えっと・・・?」
???「見えませんか?」
ふゆき「見えてますけど・・・泉さんですか?
    コスプレや変声機まで使って冷やかすのはさすがに怒りますよ?」
???「間違われることは結構ありますが、
    そこまで言われるとこちらの方こそ怒りますよ?」

・・・・・・・

@廊下

ひより「電話でもないのにこの内容で独り言・・・
    『見えてますけど』・・・
    『泉さん』・・・
    これらの符号が意味するものは・・・」
410 :需給/二人s 6 [saga]:2010/03/29(月) 00:00:11.87 ID:2m1l5SM0
@廊下

ひより「逃げろ!!!」
パティ「私は桜庭先生を見てきマス!」
ひより「分かった。よろしく。」


ひより「ふぅ・・・ガチレズ・・・そして修羅場・・・
    ユタミナに引けを取らないっス!」
    仮に破局しても漫画では持ち直させればいい!」

放課後 @保健室

ふゆき「母親かぁ・・・」
ふゆきー、結婚してくれー
ふゆき「ん?泉さんの携帯から?」
ピッ
ふゆき「もしもし?」
???「もしもし、ええっと・・・あのぉ・・・超常現象に興味はありますか?」
ふゆき「ありますけど何か?」
???「今からそちらに向かいます。」
ふゆき「そういう勧誘はお断りしてま・・・」
ツーツーツー
ふゆき「あ、切れました。」
    さっきの電話の声・・・明らかに泉さんと違ってましたけど・・・」
???「やっほー」
ふゆき「えっと・・・?」
???「見えませんか?」
ふゆき「見えてますけど・・・泉さんですか?
    コスプレや変声機まで使って冷やかすのはさすがに怒りますよ?」
???「間違われることは結構ありますが、
    そこまで言われるとこちらの方こそ怒りますよ?」

・・・・・・・

@廊下

ひより「電話でもないのにこの内容で独り言・・・
    『見えてますけど』・・・
    『泉さん』・・・
    これらの符号が意味するものは・・・」
411 :需給/二人s 6 [saga]:2010/03/29(月) 00:00:28.65 ID:2m1l5SM0
@廊下

ひより「逃げろ!!!」
パティ「私は桜庭先生を見てきマス!」
ひより「分かった。よろしく。」


ひより「ふぅ・・・ガチレズ・・・そして修羅場・・・
    ユタミナに引けを取らないっス!」
    仮に破局しても漫画では持ち直させればいい!」

放課後 @保健室

ふゆき「母親かぁ・・・」
ふゆきー、結婚してくれー
ふゆき「ん?泉さんの携帯から?」
ピッ
ふゆき「もしもし?」
???「もしもし、ええっと・・・あのぉ・・・超常現象に興味はありますか?」
ふゆき「ありますけど何か?」
???「今からそちらに向かいます。」
ふゆき「そういう勧誘はお断りしてま・・・」
ツーツーツー
ふゆき「あ、切れました。」
    さっきの電話の声・・・明らかに泉さんと違ってましたけど・・・」
???「やっほー」
ふゆき「えっと・・・?」
???「見えませんか?」
ふゆき「見えてますけど・・・泉さんですか?
    コスプレや変声機まで使って冷やかすのはさすがに怒りますよ?」
???「間違われることは結構ありますが、
    そこまで言われるとこちらの方こそ怒りますよ?」

・・・・・・・

@廊下

ひより「電話でもないのにこの内容で独り言・・・
    『見えてますけど』・・・
    『泉さん』・・・
    これらの符号が意味するものは・・・」
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 00:01:06.79 ID:5G5JSOA0
投下まにあえ

 あなたが帰ってくる時間は不規則だ
 まあ、勤務医だからしかたないと思うけど
 不意に、携帯がなる
 わたしは飛びつくように見るけれど、今日もあなたは午前様
 たまには早く帰ってきてくれたらいいのに
 
 高校の時は散々こなたにからかわれたけど、今ではそれなりにできるようになった
 でも、一番食べて欲しい人に食べてもらえない料理ほど悲しいものはない
 ふたりのための部屋に独りでいるのはとても寂しい
 寂しくて死んでしまいそう
 
 あなたが帰ってきたときに一番に顔を見たいから、わたしはいつも起きて待ってるの
 でも、待ってるだけって辛いのね
 わたしが鈍いせいで、あなたを十年以上待たせてしまったけど
 
 よし、決めた
 今日あなたが帰ってきたら、付き合い始めた頃のようにあなたとイチャイチャしよう
 それがわたしを待たせた罰よ
 だから早く帰ってきて
 みゆき大好きよ
413 :需給/二人s 7 [saga]:2010/03/29(月) 00:01:18.00 ID:2m1l5SM0
@保健室

ふゆき「間違われるって・・・じゃあ泉さんではないとしたらどちら様ですか?」
???「申し遅れました。三年B組泉こなたの母親の泉かなたです。」
ふゆき「ということはあのお・・・もしかして授業参観の件の・・・」
かなた「その話は廊下にいる人がいなくなってからにしましょう
    周りからは変な独り言にしか聞こえませんよ。」
ふゆき「廊下にいる人・・・よくいるんですけどね
    向こうは気付いていないと思っているんでしょうけど
    こっちは気付いていますよ。
    いらっしゃい。ひよりさん。」

@廊下

ひより「な!?」
ふゆき「勝手に他人を漫画の題材にしてはいけません。
    特に不順同性交友ものなんてもってのほかですよ。」
ひより「なんであなたがそこまで・・・」
ふゆき「なぜでしょう。」
ひより「・・・すいませんせしたぁーーーーーーーーーーーー!」

@保健室

ふゆき「人払いは済みました。
    しかし、オカルト本などで幽霊の話はよく読むのですがまさか実際に遇うとは・・・。
    どうしてここへ?」
かなた「えっとぉ・・・友達になってくださいませんか?」
ふゆき「いいですけど・・・理由は?」


かなた「私は自分の死期が近いことは分かっていたから、
    もし死んだら、遠くからこなたやそうくんを見守れると思っていた。
    でも、死んですぐは現世に来るのが許されなかったの。
    その間はずっとお花畑で独りぼっちで寂しかった。
    そして、最近になってようやく現世に自由に来られるようになったんだけど、
    この前のお盆に、こなたの家に久しぶりに行ったら、全く気付いてくれないの。
    それは霊感の問題だから仕方ないと思った。
    でも、びっくりさせようともって写真に写ってたら
    『呪われる〜』とか『お焚き上げだ〜』とか。
    これにはさすがに私もへこんだ。
    わざわざ苦労してこっちに来たってのは分かってもらえないかもしれない。
    でも私の気持ちがやっぱり伝わっていないんじゃないかって不安になった。
    それで、幽霊の存在を信じていてかつこなたに私の気持ちを伝えることができる人を探していたの。
    無理にとは言わない。たぶん私が言ってたなんて信じてもらえない。
    でも、あなたの口からでもいい。こなたに教えたいことがまだまだ残っているの。
    それを頼んでも・・・いいかな?」
414 :需給/二人s 8 [saga]:2010/03/29(月) 00:01:36.76 ID:2m1l5SM0
ふゆき「そう・・・ですか・・・」

    それじゃぁ・・・代わりにというわけではありませんが、
    私もあなたに頼みごとがあります。」
かなた「何?」

ふゆき「私とひかるちゃんは昔からの親友で・・・

かなた「ちょっとまって、もしかして頼みごとって
    あなたのお母さんに
    『もし私がひかるちゃんと結婚またはそれに近い関係になったら
     賛成してくれますか?』
    って聞いて来てほしいってこと?」
ふゆき「ええ、その通りだけど、どうして・・・」
かなた「昼休みのこと聞いていましたから。
    それで、ここに来るまでに聞いてきたの。」
ふゆき「それで・・・回答は・・・」
かなた「『自分の気持ちに素直になりなさい。
     あなたが養護教諭を目指すって言ったときお父さんが反対したの覚えてる?
     でも、あなたは今ここまで立派に務め上げたし、それにお父さんも認めてくれたじゃない。
     自分に素直になって、それで幸せになれば、お父さんだって認めてくれるはず。
     というよりむしろお父さんが反対していたのは、
     世間から非難を浴びることに耐えられるかどうか確かめるテストだってお父さん自身が言っていたのよ。
     大丈夫。ひかるさんとあなたならやっていける。』
    だそうよ。」

ふゆき「ひかるちゃんに謝って来てもいいですか?」
かなた「ええ、でもその前にもう一つ。
    こなたは私が見ていない間にもまだ不十分なところがあるけど
    立派に成長した。」
ふゆき「分かりました。」


@1D教室

ひより「パティ、ちょっと聞きたいことがあるっス」
パティ「ナンデスカ?」
ひより「アメリカだと一部の州で同性結婚が認められているんだよね?」
パティ「はい、なんで聞いたのですか?」
ひより「アメリカだったらあの二人は苦労しなかったのかなぁ・・・なんて」
パティ「トンデモアリマセーン!
    今デモ差別ハノコッテイマス。でもレズやゲイの二人はそのことを気にせず愛し合ッテイマス。」

ひより「もうひとつ。もし写真に死んだ祖先が写ってたらどうする?」
パティ「ンー、とりあえずビックリシマス。」
ひより「そう・・なるよね・・・
    さて、今日はカラオケ行かない?」
415 :需給/二人s 完 [saga]:2010/03/29(月) 00:02:19.78 ID:2m1l5SM0
以上だけど
たぶん間に会ってない
416 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 00:02:57.48 ID:h7bMOWI0
これどうなるんだろう。2分過ぎてるけど
417 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 00:03:35.00 ID:WqOH2n.o
>>385
投票終わるまでその類の話はなしな

>>405
誤字とかはともかく、コピペミスなら問題ないと思われ
418 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 00:12:22.10 ID:bmEXKoAO
ただの発表会ならいいけど
一応コンクールだしなあ
これ認めたら、今度は、
タイムオーバー何分まで多めに見る?
って議論になりかねないと思う。
419 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 00:13:41.86 ID:bmEXKoAO
安価忘れたww
>>416へのレスです
420 :412 [sage]:2010/03/29(月) 00:15:21.31 ID:5G5JSOA0
そして間に合わないorz 1分超過

一応2人の部屋ってことでかが×ゆきでした。
415さん途中乱入してごめんなさい
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 00:15:57.99 ID:WqOH2n.o
これはすごい微妙なとこだな
規約では締め切りまでに2/3投下し終わってればおkなんだが
8レス中5レスまで終わってるから2/3といえば2/3なんだよなぁ
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 00:30:25.49 ID:h7bMOWI0
>>421
>連続投稿規制に引っかかった場合
とあるから無効では
単にジカンに間に合わなかっただけという話しだし
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 00:35:03.69 ID:WqOH2n.o
とりあえず、皆さまお疲れ様でした!
まさか駆け込みがここまで多いと思わんかった
投票は3/30日火曜0時になるそうです

>>422
今見てきた。そういえば規制かかった時だけだったか(´・ω・)
じゃあ残念だけど無効になるね
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 01:07:14.05 ID:9kKCFISO
一応、順番待ちの時は避難所にってなってるからねえ
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 01:41:08.30 ID:9kKCFISO
こなた「はーいみなさーん。コンクールおつかれさま〜ん。うふっ(はーと)」
かがみ「キモい。やめい」
こなた「ひどっ」
かがみ「まー何て言うか…最後えらいことになってたわね」
こなた「だねえ。よくあれをまとめれたもんだ。まとめ人さんには感謝の正拳突き一万回を」
かがみ「…できるの?」
こなた「すいません。できません…まあ、なんだ。最後になって慌てないように、投下は計画的にって事だね」
かがみ「………」
こなた「…なにか言いたそうだね」
かがみ「いや、書き手の人もあんたにだけは言われたくないだろうなって」
こなた「うるしゃーい」
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 03:03:31.39 ID:.B39dhEP
あたし深山だけどコンクールつったってどうせ内輪だろ
べつに時間までに投下はじまってればいいじゃないの?
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 04:38:56.62 ID:7epan96o
内輪つったってコンクールだもん。内輪で定めた決まり事がある以上しょうがないよ
文句があるなら次回コンクールが始まる前に問題提起するのが筋じゃないの?
428 :415 [saga]:2010/03/29(月) 08:03:10.41 ID:2m1l5SM0
わかった。降ります。
じぶんでもたぶん無理だろうなとは思ってたし。
429 :415 [saga]:2010/03/29(月) 08:55:23.02 ID:2m1l5SM0
あとスレの皆さんに迷惑をかけてすみませんでした。
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 22:29:10.51 ID:2m1l5SM0
切り替えていきます。
>>286
誰のが見てみたい?
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 00:00:13.90 ID:pak86Wgo
3月30日0時になりましたので、これより第18回らき☆すたSSコンクール作品投票を開始いたします。
締め切りは4月5日24時となっておりますのでご注意ください。
皆さまの投票をお待ちしております。

また、今回「お題」「ストーリー」「文章」の三部門に分け、投票所を設置いたしました。
お手数とは思いますが、各一票ずつどうかよろしくお願いいたします。

お題
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaht.html
ストーリー
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahs.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahw.html
432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 01:47:27.77 ID:UzkuRxU0
これいつごろから投票状態見れないようになってんの? 秘匿性ばかり高くて楽しみが無い
失敗だと思うわ
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 01:54:50.95 ID:JRX3UnQ0
何で見れなくなったか
考えてみよう
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 01:58:42.93 ID:KGg3ijgo
>秘ww匿ww性ww
キャラクターの人気投票じゃねーんだからよww
ああ、秘匿性って言葉を覚えたばかりで使いたかったのかな?
可愛いなあ
435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 02:07:55.30 ID:UzkuRxU0
>>433
人気がある作品にとりあえず投票する人が多くなったから?
それとも0票の人がかわいそうだから?
多分、どっちもかなぁ
確かに自分が一生懸命書いた作品が0表って、その後作者さんがSS書いてくれなくなる可能性もあるからなぁ
自分で考えてみたら結構わかったわ。チラ裏ごめんね
436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 02:09:24.46 ID:WH7NYqIP
>>432
かなり前からだね。票数が見れると、票数が多いのしか読まれなかったり
とりあえず票数多いのに入れておこう、ってことになったりするから
それを避けるために、見れなくなったんだよ

票数自体は、終了後に公開するよ
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 02:31:01.23 ID:dI1pqv.o
なんでゼロ票がどうのって考えになったのかわからないけど
過去の投票結果のスクリーンショットは公開されてるだろ?
そんなことも確かめないで秘匿性なんていちゃもんつけたのか
438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 02:49:44.66 ID:UzkuRxU0
>>437
すみませんいちゃもんをつけたつもりではなかったんです
でも確かに「失敗だわ」という言葉遣いは本当に不躾で気分を悪くさせてしまうものでした
大変申し訳ありません
スレの雰囲気悪くしたことにも、謝罪させていただきます
本当に、すみません
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 02:58:02.87 ID:UzkuRxU0
あともう一つ謝らせてください
>>435の私の発現自体が、0票云々、失礼な言い方でした
これからはよく考えて、それから発言するようにします
何気ない一言に、どれほどの重みがあるのか、今回の件でわかることができました
また、秘匿性という言葉の響き自体にも、言いがかりのような要素があり、それを私は深く考えずに発言してしまい、不愉快な思いをさせてしまったことを、お詫びいたします
私の未熟な文で、どれほど謝罪の気持ちが伝えられるかわかりませんが、もう一度、謝らせていただきます
本当に、すみませんでした
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 01:38:58.29 ID:nXLDvHs0
あ〜あ
どうりでここは人が少ないわ
441 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 01:56:19.87 ID:1nTflnMo
人少ない投下少ないつってるやつは
人が来たとき投下があったとき何やってんの?
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 04:17:24.18 ID:nXLDvHs0
>>441
俺の発言なんて殆ど荒らしみたいなもんなんだから反応すんなや
上のやり取りみたいに、相手しなけりゃいいのに、そうやってつっかかってきて、スレの雰囲気を悪くする奴がいるから、人が少ないっつってんだよ
試しにちょっと書き込んでみたら思ったとおりつっかかってきたわ
わざわざ>注意! 荒らしへの反応は絶対ダメ。反応する悪い子は逮捕だ! by ゆい って書いてあんのによ
頭悪いよな〜
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 07:02:21.08 ID:jANh92SO
だよね
こーゆーレスの方がネタよりSSよりも反応来るんだよね
いつからだろうね

あぁ、俺にはレスしなくて良いです
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 07:14:09.61 ID:CE1DzIAO
ぶっちゃけ最初からじゃね
言っても2chだしな
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 10:32:38.05 ID:RxTuOi.o
>試しにちょっと書き込んでみたら思ったとおりつっかかってきたわ(笑)
>試しにちょっと書き込んでみたら思ったとおりつっかかってきたわ(笑)
>試しにちょっと書き込んでみたら思ったとおりつっかかってきたわ(笑)

荒らしにかまうのは確かにアホだが
そのアホより荒らしみたいなこと書く俺の方が偉い
って言い分はギャグそのものなんだけどww
頭悪いよな〜
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 12:17:41.08 ID:7HvamASO
ゆたか「ここまでの書き込みすべてが私の手の平の上だった…ということだよ…っと」タカタカ
こなた「なん……だと…?」
そうじろう「ゆーちゃん、はまってるなあ…」
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 15:34:16.36 ID:ouRVQ2o0
Dr.K 「 Wake up !!! 」
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 19:53:53.48 ID:nXLDvHs0
>>445
>荒らしにかまうのは確かにアホだが
ばーか
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 20:34:49.77 ID:ouRVQ2o0
>>448

 もう止しときなって。 それにしても何とも屈託の無い様な可愛らしい罵倒の言葉だなぁ・・・。
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/01(木) 21:04:18.11 ID:1yp4zcSO
こなた(そういや今日エイプリルフールだっけ…んーなんか嘘つきたいな…よし)
こなた「みんな…わたしの事で大事な話があるんだ…」
つかさ「え、なに?」
みゆき「なんでしょうか、あらたまって…」
こなた「実は…ボクは男の子だったんだ!」
つかさ「………」
みゆき「………」
こなた「あ、やっぱダメ?」
つかさ「う、うん、それはちょっと…」
みゆき「突拍子がなさすぎますね…」
こなた「んー即興で考えるとダメだねー…で、かがみ」
かがみ「なに?」
こなた「…なんでわたしのスカートに潜り込んでパンツに手をかけてるのかな?」
かがみ「えっと…一応確かめてみようかなって…あはは」
こなた「つかさ。今度のかがみのお弁当、貝料理のフルコースでお願い」
つかさ「うん、わかったよ」
かがみ「…ごめんなさいでした」





かがみ「…まあなんていうか、一人称がボクってのもなかなかアリね」
みゆき「…懲りてませんね…」
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/01(木) 21:45:41.88 ID:Rid063so
「かがみに通用しそうな嘘って何だろうね」
「お姉ちゃんに? どうして?」
「いやほら4月1日じゃん?」
「今日に限って言えば、かがみさんにはどんな嘘も通用しなさそうですね」
「「「う〜ん」」」
「またくだらんことを……」
「おお、ががみん」
「相手があんたなら、普通でも簡単に信用しないわよ」
「何をー!」
「お、お姉ちゃん……」
「つかさやみゆきなら信じたかもね。それも今なくなったけど」
「おぼえてろー!」
「おーおー、待ってるわよー」

(かがみめ……わが最終兵器ゆーちゃんの威力を思い知らせてやるわ……)
「フ、フハハ、アハハハハ!」
「こ、こなたお姉ちゃん?」

エイプリルネタ忘れてたなw
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/01(木) 22:13:21.97 ID:ROXTKsSO
まつり「そーいえば、前に買った宝くじが当たってたよ」
かがみ「へぇー、いくらよ?」

まつり「100円」
かがみ「……それって当たった内に入るのかしら」

まつり「なんちゃって、今日はエイプリルフールよ? かがみ」
かがみ「え、嘘なの? 現実的すぎて分かりづらいわ」

まつり「ホントは100万円当たっちゃったんだけど……」
かがみ「はぁっ!? 嘘でしょ!?」
まつり「うん、嘘」
かがみ「……」

453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/01(木) 22:42:51.02 ID:zkVf1ag0
 目を覚ますんだみんな !!
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 08:10:47.65 ID:vVKo.sSO
−定着−

みさお「んじゃ、つかさーちびっこーまたなー」
あやの「ひーちゃん、泉ちゃん、またね」
つかさ「うん、みさちゃん、あやちゃん、またね」
こなた「ほーい、またー」


こなた「しかし、あれだね。つかさもすっかりあの二人と気さくに呼び合う仲になったね」
つかさ「うん」
こなた「かがみの方はいまだに名字で呼び合ってるのに」
つかさ「あ、あれはもう定着しきってて変えにくいからだって…」
こなた「それはそれとして、つかさ」
つかさ「なに、こなちゃん?あらたまって」
こなた「…わたしがひーちゃんってあだ名使おうとしたら、自分で考えたのは嫌ってお断りされたよね…」
つかさ「ち、違うの!あ、あれは急だったから…と、とにかく違うの!そんなんじゃないの!こなちゃんには普通に呼ばれるのが定着してたからなの!」
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/02(金) 17:15:53.78 ID:kzA/XUA0
かがみ「おう、こなた。そいやあんたの欲しがってたグッズ、当たったわよ」
こなた「えっ、嘘!?マジ!?」
かがみ「うっそ、みっそ、はーなくそ!お前のかーちゃんでーべそwwwwww」
こなた「…お母…さん…」
かがみ「あ…」
こなた「…」
かがみ「…ごめん」
こなた「…」
かがみ「…ごめん」
456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/02(金) 17:37:22.47 ID:psL8RGE0
 かがみんは少々悪ノリする傾向が有るみたいだなぁ。
取り返しの付かない事を招かない様、程々にね・・・。
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 22:31:53.99 ID:bz0WGlY0
しかし、季節ネタを即興的によく作れると感心してしまう。こうゆうのは自分は作れない。
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/03(土) 01:54:41.66 ID:CUoYxeE0
思うところあって、久々に検索してみたら、
このスレがまだ現役でスゴク嬉しいですよ。
感慨に浸りつつも昔投下した作品を探すんだけど、一部はタイトルすら覚えてなかったですわww

vipで1000レス達成した時の思い出とか、懐かしいなぁ〜ww

今後も末永くこのスレが続きますように。
何よりらきすたが末永くみんなに愛されますように。
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/03(土) 06:45:23.70 ID:oOx0g8Io
vipの時ほどの勢いはないけれど、のんびり続いてるね

>覚えて〜
そんなものだよねww
末永く、あれたらいいなぁ
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/03(土) 06:46:33.97 ID:oOx0g8Io
>>454
ワロタw本編でありそうなネタだなw
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/03(土) 11:29:36.87 ID:URNZzG.0
 らき☆すた は漫画の方は結構お話が進んでいる事だしアニメで第2期が登場するのも
嘘では無いだろうね。 これは時間の問題だな。 気長に待っているとしよう・・・。
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/03(土) 13:24:26.96 ID:bvMjCQSO
今の京アニは何か余計な事しそうで
正直アニメ二期は無くてもいいかなって思う
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/03(土) 15:33:59.70 ID:URNZzG.0
>>462

 そんな悲観的な事を・・・。 (TqT)

 京都アニメーション さんって大体 2008 〜 2009 年頃から著しく絵柄が可愛くなった様な
気がするなぁ・・・。 まあその分同じっぽくもなってしまった訳だが・・・。
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/03(土) 16:02:46.53 ID:BjYhnVo0
らきすたのアニメ、特につかさは妙に媚っているような印象を受けた。
原作を見てつかさが好きになった。アニメ=原作じゃアニメにした意味がないし、難しいね。
465 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:17:52.61 ID:Q3ZMfPE0
投下いきます。

一応恋愛ものっぽい感じで9〜10レスほどです。
466 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:19:24.25 ID:Q3ZMfPE0
 どちらかといえば几帳面。よくそう言われる。そう言う性格を見込まれてか、クラスの副委員長なんてものをやらされている。
 放課後の時間とられたりするから最初は嫌だったのだが、段々と委員の仕事は楽しくなっていた。
 そう言うことに向いている性格だった…と言いたいが、ぶっちゃけると委員長の高良みゆきさんが、素敵な女性だったということに尽きる。
 ようするに彼女に惚れたのだ。もっとも、彼女の方は俺なんか眼中にも無いだろうけど。


 卒業も間近に迫ったとある日の朝。俺は登校すると、まず自分の机が空なのか確認しようと手を突っ込んだ。
 机の中のものは全部持って帰って、朝来たときにこうやって中を確認するのは俺の日課のようなものだ。友人にはよくそんなめんどくさいことできるなと言われるが、小学生のころからやってる慣習みたいなもので、俺はとくに面倒は感じてない。
 と、机に入れた俺の指先に何か触れるものがあった。取り出してみるとそれは一枚のコピー用紙。
「…おぉ」
 俺はそこに写っているものを、まじまじと見つめてしまった。携帯のカメラで撮ったものを、パソコンか何かでプリントアウトしたものだろうか。夏服の高良さんが写っていた。
 何かを拾おうとしているのか前かがみになっていて、胸の谷間がばっちりと見える。そして、端の方に一言。
『これで頑張れ』
 ………こんなものを俺の机に突っ込む奴に、一人だけ心当たりがある。俺はその紙を折り目がつかないように丸めて鞄に仕舞いこむと、机の中に教科書などを入れてそいつが登校してくるのを待った。



― 告白の木 ―



「だからさ、あのかがみの態度は心の中ではオーケーだって言ってるんだよ」
「そ、そっかな…お姉ちゃん心底嫌がってたと思うんだけど…」
 しばらく待ってるとその人物…泉こなたが友達の柊つかささんを連れて教室に入ってきた。
 俺は席を立って、おしゃべりをしながら自分の席に座った泉の傍に行った。
「おい、泉」
「あ、おはよう」
 俺が声をかけると、泉は朝の挨拶をしてきた。
「おはよう」
 その隣に居た柊さんも挨拶をしてきたので、俺はそちらに軽く手を挙げて挨拶を返した。
「おはよう、柊さん…でだ、泉」
「…わたしには挨拶無しかい」
 不満そうにしている泉を無視して、俺は話を続けた。
「お前だろ。俺の机にあんなもん突っ込んだのは」
 俺がそう言うと、泉は更に不満そうな顔をした。
「わたしのベストチョイスをあんなもんとは何事だ」
「たしかにベストだけど…いやいやベストかどうかじゃなくてだな…いや、もういいや…つーか何を頑張れってんだ」
「自家発電」
 さらっと言う泉に、俺は足を滑らせかけた。
「お前な…仮にも女の子なんだから、そういうことさらっと言うなよ…っていうかお前友達だろ…」
「仮にも、は余計です」
「自家発電?こなちゃん、バッテリーでも入れたの?」
「いや、違うけどつかさは知らなくてオッケー」
 俺と泉の顔を見比べながら聞く柊さんに、泉は手を振りながら答えた。なんと言うか、柊さんはこういうことには疎そうだ。ってかバッテリーで発電は出来ないと思う。
「でもまあ、ここで突っ返しにこないって事は、お気に召したと思ってよろしいかな?」
 ニヤニヤしながら妙な口調でそう言う泉。俺は思わずあさっての方向を向いてしまった。
「あ、あんまりああいうことするなよ…」
 俺は二人に背を向け、我ながら説得力の欠く台詞をはきながら自分の机へと戻った。
「ねえ、こなちゃん…なんだったの?」
 後ろからそんな柊さんの声と、泉の押し殺した笑い声が聞こえた。
467 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:21:23.06 ID:Q3ZMfPE0



「今日も学食だろ?行こうぜ」
 お昼休み。同じクラスの連れが昼飯に俺を誘いに来た。
「うし、行くか」
 俺はそう答え、椅子から立ち上がった…ところで誰かに腕をつかまれた。
「ちょーっと待ったー」
 俺を掴んだ手の主を見ると、泉だった。
「彼は今日はわたしとお昼食べるから、君は一人で行くように」
 泉の言葉に、思わず絶句してしまった。連れの方も唖然としている。っていうか教室が静まり返っている。
「…いや、泉…お前なに言って…」
 未だ何が起きているのか良くわかってない俺を、泉はお構いなしに引っ張っていく。
「あー、ご飯のことなら問題ないよ。君の分もわたしが作ってきたから」
 更にとんでもないことを言う泉に、俺の思考が乱される。言葉にすると簡単だ『泉が俺の昼飯を作ってきて、一緒に食べようと誘ってきた』。だが、肝心の『何故』が抜けている。なんでまた急にこんなことになったんだ。
 泉に引っ張られながら、教室のドアを抜ける。ふと、柊さんと同じ机に座っている高良さんの姿が目に入った。柊さんと一緒にこっちを見ている…って信じられないものを見たって顔をしてるんだけど…よく見ようとしたが、泉がドアを閉めたためにそれ以上見ることは出来なかった。
 俺たちが居なくなった教室からは、大きなざわめきが聞こえてきた。みんなして俺らのことをあれこれ想像してるんだろうなあ。俺はもう諦めの境地で逆らわずに泉についていった。


 泉に連れられてきた場所は、中庭の奥にあるちょっとしたスペースだった。学校の喧騒もあまり聞こえてこず、静かないい場所だった。
「泉、ここは?」
「わたしが見つけた穴場。一人でボーっとしたい時とかに利用してたの」
 三年間この学校に通っていたが、この場所の存在は知らなかった。まあ、見つかりにくいからこそ穴場って言うんだろうけど。
 その穴場に俺と泉が二人きり…という訳ではなく、すでに先客が花見の場所取りよろしくレジャーシートの上に座り込んでいた。
「おー、かがみ早いね」
「…まあね」
 上機嫌な泉とは逆に不機嫌そうにしてるのは、隣のクラスの柊かがみさんだった。
「まったく…なんでわたしがこんなこと…」
 ぶつぶつと文句を言いながら弁当を広げるかがみさん…ちなみに彼女は柊つかささんの双子の姉で、どっちも柊でややこしいためか、うちのクラスの大半は彼女を名前の方で呼んでいる。もちろん俺もだ。
「昨日、賭けで負けたからだよ…さ、わたしたちも座ろ?」
「お、おう…」
 泉に促されて、俺は靴を脱いでレジャーシートの上に座った。弁当を広げ終わったかがみさんが、胡散臭げな視線を俺に向けてくる。なんていうか居心地が悪い。
「はい、これお弁当」
 隣に座った泉から弁当箱を手渡される。女の子用だからか少し小さめだ。ふたを開けてみると、卵焼きやら唐揚げやらごく普通のおかずが入っていた。泉のことだから何かえげつない物が入ってると思ってたんだけど。
「…今何か失礼なこと考えたでしょ」
 俺の顔を覗き込みながら、泉がそう言った。鋭いな、こいつ。
「ま、いいや。いただきまーす」
 泉が手を合わせて箸を手に取った。俺も食べ始めようと箸を探したが見つからない。
「泉、俺の箸は?」
 俺がそう聞くと泉の動きがピタッと止まった。そして、箸をおいて手を合わせる。
「…ごめん、忘れてた」
 …まあ、なんだ。昼飯食べさせてもらってるんだから、文句とか言わない方がいいよな。俺はかがみさんのほうを見たが、黙々と弁当を食べているかがみさんは『あまりの箸なんて無いわよ』と言う様に、首を横に振った。
「手で食うしかないか」
 俺はとりあえず卵焼きをつまんで口に放り込んだ。
「…ホントごめんね?」
「いや、怒ってないけど…」
 本気で申し訳なさそうにしている泉に、俺は思わずそう言っていた。
「そか、良かった…味は大丈夫かな?男の子の好みの味って良くわからないから、お父さんの好みにしちゃったけど」
「いや、美味しいよ…かなり意外だけど」
「む、もしかしてわたし、料理とか全然できないと思われてた?」
 そりゃそうだろう…教室で見てる限り、昼飯はほとんどの日がチョココロネだし、アニメだのゲームだのの話しかしてないし、これで家事が出来るって思われるほうが難しい。
468 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:26:22.89 ID:Q3ZMfPE0
「ま、わたしはそう思われても仕方ないけどね」
 本人も自覚はあるらしい。
「で、みゆきさんにはいつ告白するの?」
「んぐっ!?」
 食っていた唐揚げが喉に詰まった!
「はい、お茶」
 苦しそうに胸を叩く俺を見かねてか、かがみさんがお茶の入ったコップを差し出してきた。俺はそれを受け取って、一気に飲み干して唐揚げを喉の奥へ流し込んだ。
「…し、死ぬかと思った…」
「大げさだよ」
 肩で息をする俺に、泉が笑いながらそう言った。ってか原因はお前だ。
「いきなりなんだよ!?不意打ち過ぎてマジびびったわ!」
 俺が大声を上げると、泉は困ったような顔をした。
「だってこういうのって、不意打ちじゃないと面白く無いじゃん」
「面白い面白くないで俺を殺しかけるな!ってかなんで告白とかそう言う話になるんだよ!?」
「なんでって…好きなんでしょ?みゆきさんのこと」
「ぐ…」
 言葉に詰まる。それは否定できない。いや、っていうか…。
「なんでそんなこと泉が知ってるんだよ…」
「ばればれだよ。だって他の女子と話してるときとみゆきさんと話してるときと、態度が全然違うんだもん」
「…そ、そうなのか?態度変えてるつもりなかったんだけどな…ああ、机の中にあんなもん入れてたのは、そういうことか…」
「ま、そういうこと…で、どうするの?」
「どうするって…なにがだよ」
「告白。するならみゆきさんを、人気の無いところに呼び出すくらいはするけど?」
 何気に物騒なこというな、こいつ。
「いらねーよ」
 俺の答えに、泉はかなり不満そうな顔をした。っていうか高良さんと二人きりなんてシチュエーションは、クラス委員の仕事で何度かある。そこでなんにもアプローチできてないんだから、今更二人きりになったって一緒だろう。
 情けないなあ、俺…。
「で、そういうこと言うために俺を昼飯に誘ったのか?わざわざ俺の分まで弁当作って」
「んー、これくらいしたら少しは焦るかなと思ってね」
「焦る?誰が?っていうかなんで?」
「それは内緒」
 本気でなんだか分からない。もしかして色恋沙汰を引っ掻き回したいだけなんじゃないだろうな…。
「ごちそうさま」
 俺が悩んでいると、かがみさんがそう言って箸をおいた。そういえば居たんだっけ。あまりに喋らないから忘れてた。
「そういや、かがみさんはなんでここに?賭けがどうとか言ってたけど…」
「見張り役よ」
 俺の質問に、かがみさんは素っ気無い態度で答えた。
「二人きりだと襲われるかもしれないから…ってこなたがね」
 なんつー信用の無さ。っていうか二人きりでも泉を襲う気にはならないと思う。その泉は、こっちの会話には興味が無いのか、なにやら携帯をいじっていた。
「…メアド、男の名前ばっかだね…女性っぽい名前が一件あるけど、名字が同じだから母親かな…」
「ってそれ俺の携帯じゃねーか!?」
 何時の間にスリやがったこいつ!取り返そうと手を伸ばすと、泉はあっさりと携帯を俺の手に渡した…が、俺のじゃねえよ、これ。
「ま、いいじゃん。わたしの見ていいからさ」
 どういう交換条件だよ。しょーがなく俺は泉の携帯のアドレス帳を開いた。友達居なさそうだったが、予想外に多いな。なんか半分以上名前がアルファベットなんだが、外人か?…高良さんやかがみさんや柊さんのもちゃんとあるな。
469 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:27:56.56 ID:Q3ZMfPE0
「わたしやつかさやみゆきのメアド、勝手に覚えようなんてしたら殴るわよ」
 ぼそりと、かがみさんが怖いことをおっしゃった。
「流石にそんないやらしいことしないよ…っていうか、泉。このアルファベットの名前なんだ?」
「…ん?あーそれネトゲのフレのキャラ名だよ…ほい、送信っと」
「ネトゲねえ…って送信?」
 俺の手の中の携帯が震える。見るとメールが一件入っていた。
「アドレス登録しといて」
「え、ああ…」
 泉に言われた通りに、携帯を操作する。
「ってなんの疑問も無くやってたけど、これ俺のメアドじゃねーか!」
 泉の方を見ると、なにやら携帯を操作した後、携帯を閉じて俺のほうに放り投げてきた。それを慌ててキャッチする。
「わたしのメアド、登録しといたから」
「本人の了承なしにメアド交換するんじゃねーよ…」
 俺も泉に携帯を返す。自分の携帯のアドレス帳を覗いてみると、確かに泉の名前が登録されていた。
「いいじゃん。華のないアドレス帳に、女の子の名前が入ったんだから」
「…お前の名前、字面だけ見てると女の子に見えないんだけど」
「失礼な」
 泉は不貞腐れた態度を取ったが、すぐに元に戻ると自分の弁当箱を片付け始めた。
「ま、今日はこんなところかね」
 なにか続きがありそうなことを言いながら、泉は俺の分の弁当箱も手際よく片付ける。
「んじゃ、教室戻りましょうかねっと…かがみ、後の片付けよろしくー」
「…へいへい」
 心底嫌そうに答えるかがみさん。賭けに負けたことでいいように使われているようで、なんか不憫だ。


 教室に戻ると、クラスの何人かに絡まれ、説明するのが面倒で大変だった。泉も柊さんになにか聞かれているようだったが、涼しい顔で受け流しているようだった。
 ふと、高良さんの事が気になってそっちを見てみると、こういったことには興味が無いのか、全然別の方向をじっと見ていた。




 そして次の日の放課後。勝手に俺とメアドを交換した泉から、早速メールが入った。
『今日、一緒に帰ろう。中庭にある大きな木のところで待っててよ』
 なんだかなあ…まあ、今日は委員の仕事も無いし、特に用事も無いから暇つぶしにはなるか。俺はとくに深く考えずに泉の指定した待ち合わせ場所に向かった。


470 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:28:46.01 ID:Q3ZMfPE0
 中庭の大きな木。その枝の下に立ち上を見上げた。何の木かは俺は知らない。
「このー木なんの木気になる木ー…っと」
 なんかのCMで流れていた歌を思わず口ずさむ。
「…ぷっ」
 ………やっべ誰かいたよ。恥ずかしいなあもう。
「す、すいません、急に聞こえてきたもので、つい…」
 木の反対側にいたであろう人が、謝りながらこちら側に顔を出した…え、高良さん?
「委員長…こんなところでなにを?」
「え、あ、えっと…」
 高良さんはなにか居づらそうにうつむいた。なんだろう、俺と会いたくなかったんだろうか。
「あ、あの、そちらはどういうご用件でここに…」
 はっきりとした答えを言わないまま、高良さんは俺に逆に聞いてきた。
「いや、泉に呼び出されてさ。なんか一緒に帰ろうって」
 俺がそう言うと、高良さんは俺に背を向けた。
「そうですか…では、わたしはお邪魔ですね」
 そう言って高良さんは歩き出した。
「ちょ、ちょっと待って」
 高良さんともう少し話がしたいと思い、俺は高良さんを引きとめた。っていうかなんで邪魔なんて言うんだ。
「泉と二人ってのもなんだし…用事ないんだったら、一緒に帰る?」
「嫌です」
 一蹴された。ってか、こんなにはっきりと拒絶表現する高良さんは初めて見た。唖然とする俺を残して、高良さんはそのまま歩き去ってしまった。
「…ま、しょうがないか」
 なんとなく割り切れない気分だが、俺は再び泉を待つことにした。
「なにやってんだよ!最悪の展開じゃんかー!」
 と、その泉の声が遠くから聞こえてきた。ってかなんか怒ってる?
「なんだ、いず」
「トンファーキーック!」
 俺が声の方に振り返ると同時に、腹に衝撃が走った。予想以上に速く接近していた泉の蹴りが俺に炸裂していた。完全に不意をつかれて、みぞおちにまともに入ったようで、俺は声も出せずにうずくまる。
「お、おま…なにしやがる…」
 なんとか顔を上げると、トンファーっぽい形をした木の枝を持った泉がふんぞり返っていた。
「ちっがーう!」
「…なにが」
「そこは『トンファー関係ねえ!』でしょ!」
「知るかーっ!!」
 今度は、立ち上がった俺の全力の脳天唐竹割りが泉に炸裂していた。



471 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:31:02.05 ID:Q3ZMfPE0
「…いや、ごめん。ちときつい突っ込みだったな…」
 俺はまだ痛む腹を擦りながら、同じくまだ痛むのか頭頂部を擦っている泉に謝った。
「…うん、まあわたしもちょっと熱くなりすぎたから、おあいこかな…」
 結局俺たちは、当初の予定通りなのか成り行きなのか一緒に帰ることになり、二人して痛む箇所を擦りながらの奇妙な下校になった。
「で、なんであんな怒ってたんだ?」
 俺がそう聞くと、泉は思い切りしかめっ面をした。
「せっかくみゆきさんと二人で帰れるように鉢合わせにさせたのに、台無しにしたじゃんか」
 高良さんがあそこに居たのは、泉が呼び出したからか。
「つーても、どうすりゃ良かったんだよ」
「そりゃ、アレだよ。しばらく雑談でもしててくれれば、わたしが二人に一緒に帰れなくなったってメールして、じゃあしょうがないから一緒に帰ろうって流れに…」
「んなもん分かるか」
 つーか雑談もなにもする暇なく、高良さん帰っちゃったよな。
「まあ、みゆきさんがあんなに過剰反応するとは、ちょっと予想外だったけどね…」
 泉もなにかしらおかしいと感じているらしい。
「…昨日のアレ効きすぎたのかな…うーん…」
 腕組んでなにか呟きながら考え込む泉。なにを企んでるかなんとなく分かってきたんだが…どうにも的外れと言うかなんというか。
「あのな、泉。今更二人きりになっても、どうとも出来ないぞ。今まで委員の仕事で何度も二人きりになってるんだから、できるならその時になにかしてるって」
「む、そっか…っていうか分かっててソレってキミ相当ヘタレだね」
「ほっとけ」
 そんなことは百も承知なんだよ。
「ま、それはそれとして…あの中庭の木には、一つの伝説があるのを知ってるかね?」
 いきなり泉が珍妙なことを言い出した。大丈夫かこいつは。
「なんかかなり失礼なこと思われてる気がするけど、まあソレも置いといて…卒業式の日にね、あの木の下で告白したカップルは永遠に幸せになれるらしいんだよ」
 うさんくさい。その一言に尽きる。つーかなんかどっかで聞いた事ある気がする。
「お前、それ今考えただろ」
 俺がそう言うと、泉は首を横に振った。
「うんにゃ、一週間くらい前だよ」
「たいして変わんねぇよ!」
 思わず大声で突っ込んでしまった。こいつ人に突っ込ませる才能はあるんだな。
「ふむ、あんま興味が無いみたいだね」
「…興味が無いっつーか色々あきれ果てるわ…」
「みゆきさんはつかさは素直に感心してくれたのに」
 友達に妙なこと吹き込むなよな…。
「ねえ、男のから見てみゆきさんって話しづらいの?」
 また話飛ぶし。
472 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:32:03.90 ID:Q3ZMfPE0
「なんでそう思うんだよ」
「いや、さっき二人きりになる機会あったのに、何もしなかったみたいな事言ってたからさ」
「話しづらくはないよ。むしろ普通の女子より格段に話しやすい」
 なんていうか、とっかかりやすいんだよな。話題ミスってもフォローしてくれるし。
「ふーん、そっか。なんか先入観で話しかけづらいって思われてるんじゃないかって考えてたんだけど」
「でもな、泉。話しかけやすいのと、その…告白とかそういうのは、また別の問題だぞ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんだよ」
「ふーん…」
 泉は少し考えるようなそぶりを見せた後、俺の顔を覗き込んできた。
「じゃ、さ…わたしはどうなのかな?話しやすい?」
「泉ほど話しやすい女子は初めてだな」
「あら、そうなんだ」
「なんつーか、女の子と話してるっていうより男の連れと話してるって感じなんだよな」
「うわーそれひどいなー」
 泉は不満そうにそう言うと、少し足を速めて俺の前に出た。そして、頭の後ろで手を組んで、少し上を向いた。そのまま黙って歩く泉の妙な雰囲気に何も話すことができず、俺も黙ったまま後をついていった。
「…ホント…ひどいな…」
 そんな中、泉はポツリとそう呟いた。



 それから卒業式までの間、取り立ててなにも変わったことなく日々は過ぎていった。
 一つ変わったことといえば、委員の仕事が無くなったことだろうか。
 まあ、正確に言えば仕事自体が無くなった訳ではなく、高良さんが全部一人で片付けてしまっているということなんだが。
 その仕事っぷりを見ていると、副委員長なんて役職は最初から要らなかったんじゃないかって思えてくる。ちょっと前までは高良さんから仕事振られることも結構あったんだが…。
 なんとなくやりきれない、胸に何かがつっかえた感じだ。
 しかし、俺はそのまま高良さんと話す機会もなく卒業式を迎えることになった。



 卒業式が終わり後は帰るだけとなったところで、俺は教室の出口で泉に呼び止められた。
「結局、なんにもなかったね」
 そして、そう言われた。多分、高良さんの事だろうから、俺は黙って頷いておいた。
「ま、なんだ。頑張れ」
 なんか励まされた。一応同情っぽいことはされてるらしい。泉は俺の背中を軽く叩くと、教室を出て行こうとした。
「泉」
 その泉を俺は呼び止めた。
「ん、なに?」
「…つぎ会うときはでかくなってるといいな」
「うわ、ひどっ」
泉はそう言った後、二マッと笑みを浮かべた。
「まったねーん」
 そして、ひらひらと手を振りながら廊下を駆けていった。


473 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:33:10.54 ID:Q3ZMfPE0

「ただいまー」
 そう言いながら家に入った後、俺はため息をついた。結局、何にも言い出せないまま俺の青春は終わったって訳だ。でも、なぜか卒業をしたって実感はまったく湧かなかった。
 玄関に突っ立ったまま、俺は高良さんの事を思い出していた。そしてもう一度ため息をついたところで、携帯が着信音を鳴らしていることに気がついた。
 携帯を開いてみるとメールが一件。泉からだった。
『次のメールが最後のチャンス。ゲームオーバーまで諦めるな』
 次のメール?何をするつもりなんだ?俺が悩んでいると、携帯が再び着信音を鳴らした。その差出人の名前を見て、俺は心臓が高鳴るのを感じた。差出人の名前は…高良みゆき。なんで高良さんが俺のメルアドを知ってるんだ?
「泉か…」
 あいつがメルアドを教えたんだな。俺は少し震える指でそのメールを開いた。
『中庭の木の下で待ってます』
 俺は携帯を握り締め、玄関を飛び出し走り出していた。


 中庭の木。泉がでっち上げた伝説のある木。卒業式にその木の下で告白したカップルは、永遠に幸せになれるという。
 泉は言っていた。高良さんは感心していた、と。つまり高良さんもこの話を知っている。知った上で、その場所で俺を待っている。
 それは、そういうことなのか?頑張れってそういうことなのか?最後のチャンスってそういうことなのか?
 いや、勘違いでもいい。最悪、泉の悪戯でももうかまわない。悔いは残したくない。結果がどうでも俺はスッキリと卒業したかった。
 校門をくぐり、中庭を目指す。息が上がってきてるが、走る速度は落ちる気がしない。
 木が見えてきた。その下で待つ人影も。
 人影が俺に気づく。俺が来ると思ってなかったのか、信じられないといった表情をしていた。俺も信じられない気分だ。
 本当に、高良さんが待っているなんて。高良さんは一度うつむき、そして顔を上げて近づく俺をしっかりと見てくれた。
 なんていえば言い?どう伝えればいい?いや、もうなんでもいい。このまま思いをぶつけよう。
 三年になって、同じクラスになって、クラス委員長と副委員長という立場になって、ずっと俺はあなたが…。
『あなたの事が大好きです!』
 俺と高良さん。二人同時にまったく同じ言葉を言っていた。





474 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:34:10.16 ID:Q3ZMfPE0

「やれやれっと…」
 安堵のため息をつきながら、こなたは隠れていた物陰から姿を現した。そして、さきほど一組のカップルが誕生した木の下に立った。
「…うまくいっちゃうもんだねー」
 なんともいえない表情で、こなたは木を見上げていた。その後ろから一人の人影がこっそりと近づく。
「はーい、お疲れさん」
 そして、そう言いながら持っていたジュースの間をこなたの頬に押し当てた。
「ひわぁっ!?」
 冷たい感触に悲鳴を上げ、こなたは慌てて後ろを向いた。
「…かがみ。いたんだ」
 こなたの頬に押し当てたジュースをプラプラさせながら、悪戯っぽい笑みを浮かべるかがみに、こなたは避難がましい視線を向けた。
「まーね。あんたみたいにずっといたわけじゃないけど…はい、これ」
 そう言いながら、かがみは持っていたジュースをこなたに手渡した。
「ありがと」
 受け取りはしたものの、こなたはジュースにまったく口をつけずに、手の中でクルクルと回しているだけだった。
「まあ、なんていうか…頑張ったわね」
 かがみがそう言うと、こなたはもう一度木を見上げた。
「そだね…みゆきさん、一度諦めたからね。わたしとあいつが付き合ってるんじゃないかって勘違いして…邪魔しないようにって委員の仕事全部自分でやったりしてさ…」
 こなたは大きくため息をついた。
「…好きだって気づいたんなら言えばいいのに、無理しないでさ」
「みゆきじゃないわよ」
 その言葉に驚いたように、こなたはかがみの方を向いた。
「…ああ、彼?あれは頑張ったって言えるのかなあ…最後はちゃんとやったけど、それまでがそれまでだったからねえ」
「あいつでもないわよ。こなたよ」
「…わたし?」
 こなたは自分を指差して、きょとんとした。そして、少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「ああ、えっと、まあ、似合わないことしたかなって思うよ…ちょっと途中逆効果になりかけたし…でもまあきっかけくらいにはなれたかなって…」
「そうじゃないわよ」
 こなたは再びきょとんとした表情になった。今度は本当に分からないといった風に、しばらくそのままだった。
「こなたも好きだったんでしょ?あいつのこと」
 かがみの言葉にこなたは一瞬顔をしかめたが、すぐに力のない笑顔になった。
「なんだ、ばれてたんだ」
 そして、素直にそのことを認めた。
「ばればれよ。他の男子と話してるときと、感じが全然違うもの」
「そう…だったんだ。なるほど、自分じゃわからないね」
 こなたは、また木を見上げた。
「しょーがないよ。みゆさんだもの。わたしなんかよりみゆきさんと引っ付いた方が、幸せになれるだろうし…みゆきさんは両想いだったけど、わたしは片思い…あの人はわたしのこと眼中に無かったみたいだしね。男の連れと話してるみたいって言われたんだよ」
 呟くように話すこなたに、今度はかがみがため息をついた。
「それでも、あんたの方が有利だったでしょ。みゆきはあんたに譲ろうとしてたんだし、告白でもしてたら状況変わってたんじゃないの?」
「…できないよ、そんなこと…友達だもん」
 うつむくこなたの肩をかがみは苦笑しながら軽く叩いた。そして、こなたの前に回ると木に背中を預けた。こなたもかがみの隣に立ち、同じように木に背中を預けた。
「泣きたいんなら、胸貸すわよ」
「泣かないよ…慣れてるもん。失恋なんて数え切れないほどしてきたよ」
「そりゃ、ゲームの中ででしょ」
「…まあね」
 しばらく二人は何も言わずに立っていたが、かがみはなにか思いだしたように携帯で時間を確認した。
475 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:35:35.00 ID:Q3ZMfPE0
「今からなら、みんなと合流できるかもね」
「みんな?…ああ、そういやいっぱい誘ってどっかでパーッとやろうって言ってたね…ってかがみ幹事やるって言ってなかった?」
「つかさに押し付けてきたわ。今頃涙目になってるかもね」
「…酷い姉を見た…っていうかそういうことなら峰岸さんとかの方が上手くやれたんじゃ…」
「………あ……いや、まあつかさならやってくれるわよ。うん、期待してるのよあの子には」
「……酷い友を見た」
 あきれるこなたに苦笑いを返しながら、かがみは木から離れた。
「まあ、そう言うわけだから、こなたも来なさいよ。みゆきの前途とあんたの失恋を祝してパーッとやりましょ」
「失恋祝すとか…ひどいなーもう」
 文句を言いながらこなたも木から体を離した。そして数歩歩いたところで、振り返ってもう一度木を見上げた。自分がでっちあげた伝説のある木。その伝説が本当になって欲しいと心から思う。そう思っているのに…いや、思うからこそ、割り切れない想いがこみ上げてくる。
「ねえ、かがみ」
「ん、なに?」
「やっぱり…ちょっとだけ胸貸してよ」
「…うん」
 自分に向かって手を広げてみせるかがみの胸に、こなたが顔を埋めた。
「十分百円ね」
「…金取るんだ」
「取らないわよ。わたしが払うの…あんたの涙はお金払う価値あるわよ」
「…百円ってすごく微妙なんだけど…ってか余計なこと言わないで普通に泣かせてよ…」
「…はいはい」
 かがみがこなたの体をやさしく抱きしめる。その手の中から、小さな嗚咽と呟きが聞こえ始めた。
「…何で…何でみゆきさんだったんだよぉ…」
 自分の胸に感情をぶつけるこなたの頭を撫でながら、かがみは木を見上げた。
 もし、立場が逆だったら、みゆきはどうしてたんだろう。そんなことを思った。その時は、こうして泣いていたのはみゆきだったのかも知れない、と。
「…幸せになんなきゃ、怒るわよ…みゆき…」
 かがみはこなたに聞こえないようにそう呟いて、自分の胸で泣く友達思いの小さな親友の頭を撫で続けた。
 涙が止まるまで、ずっと。




― 終 ―
476 :告白の木 [saga]:2010/04/03(土) 17:39:02.83 ID:Q3ZMfPE0
以上です。

少年Aって原作の中では唯一こなたに軽口たたいてる男子生徒なんですよね。
そう思ってたらこんな話になりました。
それにしてもかがみのキャラが安定しないなあ。
477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/03(土) 22:23:18.03 ID:DbEEl6SO
>>462
何てったって、らっきー☆れーさーだからな
何がらきすたスピンオフだよ……
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 09:48:12.54 ID:haHVsnco
>>476
最初、普通に二人をくっつける話かと思ってニヤニヤしながら読んでたけど
なるほど、こういう話か
よかったよ、乙!
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 12:03:03.79 ID:haHVsnco
★★★らき☆すた★★★

こ「現在、第18回SSコンクール投票中だよ!」
か「締め切りは5日の24時、あと一日半ね」
み「まだ投票なさってない方は気をつけてください」
つ「えと、あ、あなたの一票を!」

コンクール参加作品
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1598.html

お題部門
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaht.html
ストーリー部門
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahs.html
文章部門
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahw.html

★★★らき☆すた★★★
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 15:25:41.56 ID:I0r65pE0
投下行きます。
481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 15:26:28.69 ID:I0r65pE0
柊かがみ法律事務所──とある自治体の青少年なんたら条例


 かがみは、アキバのとある同人誌受託販売店を訪れた。
「すいませんね、先生。わざわざご足労いただきまして」
「いえいえ。歩いてすぐの距離ですから」
 売り場からは見えない事務スペースのテーブルで向かい合う。
「これなんですがね」
 店主が一冊の同人誌を差し出した。
 付箋が貼られたページをめくって内容を確認する。
「ちょっと微妙ですね」
「前まではこれぐらいで18禁指定を受けることはなかったんですがね」
 条例の文言に従うなら『不健全な図書類等の指定』だが、要するに『18禁指定』だ。
「最近、都の審議会のメンバーが入れ替わりましたから、その影響かもしれません」
「やっぱりそうなんですかね。ぎりぎり健全な百合や801ってことで売れてる人なんで、18禁指定はちょっと痛いですな」
 同人誌をぱらぱらとめくる。
 登場人物がなんとなく高校時代の後輩女子に似ているような気がした。
 そこまで思考が到達した時点で、かがみは思考をとめた。これ以上思考を進めると知りたくない真実に到達してしまうような気がしたからだ。
「対応措置は?」
「もうやってます。帯つけてビニールかぶせて18禁コーナーに移しました」
「なら、問題はないですね。作者には都から通知がいくでしょう」


 それを受けて都を訴える作者もいないわけではない。
 かがみもその手の訴訟の弁護を引き受けたことは何回かあった。勝率はほとんど0に近いが。
 条例自体は最高裁で合憲判決が出てしまったし、個別の18禁指定の妥当性を争う訴訟でもほとんど勝てなかった。
 かがみが弁護を担当した訴訟で勝訴したのは、源氏物語をアニメ化したDVDが18禁指定を受けたのが不当だとして訴えた事件が唯一だった。
 これは、作者ではなく出版社が18禁指定に反発して起こした訴訟だった。出版社の方針として古典のアニメ化に重点を置いていたということもあって、死活問題だったからだ。

482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 15:27:11.65 ID:I0r65pE0
「で、どうします? 訴えますか?」
「いや、そこまでするつもりはないですよ。ただ、審議会がそんな感じじゃ、じきに指導も厳しくなるんでしょう。一度同業者で集まって話し合わなきゃならんかもしれませんな。そのときは、先生もご出席願えますか?」
 法的拘束力のある『指定』とは違って、行政指導には法的拘束力はない。
 しかし、理由もなしにただ反抗するだけでは住民の理解は得られない。やるならやるで理論武装は必要だ。
「ええ、それはもちろんです」
 かがみは、東京都の同人誌受託販売業者のいわゆる自主規制団体の顧問弁護士にもなっている。要請があれば、話し合いに出席するのは当然だった。


 店主から相談料を受け取って事務所に戻ると、
「あっ、所長。ちょうどよかった。お電話が来ております」
 机について、電話をとる。
「はい。お電話代わりました」
「柊先輩、お久しぶりっス。田村っス」
「あら、珍しいわね。会社で何かあったの?」
 田村ひよりは、現在、アニメ会社のアニメーターをしている。
 会社との間で何か法的トラブルでもあったのだろうか?
「いや、仕事は順調なんスけど、ちょっと趣味の方でですね。……まあ、今でもときどき同人なんか描いて、委託販売をお願いしてたりしてるんスけど……」
 なんか嫌な予感がした。
「その関係で、なんか役所から通知とかいうのが来てっスね。まあ、いわゆる18禁指定ってやつを受けたみたいっス。私としては、18禁指定はちょっと心外なんで、柊先輩ならなんとかしてくれるかなぁなんて……」
 やっぱりあれはひよりの作だったのか。
 内心げんなりしつつも、口はひよりの言いたいことに対して答える。
「言っておくけど、その手の訴訟はほとんど勝ち目ないわよ」
「やっぱりそうなんスか……」
「あと、これ以上この件で話しするなら、相談料いただくわよ」
「厳しいっスね、先輩。そういうことなら、この話はもういいっス。お忙しいところ、すみませんした」
「田村さん」
 ひよりが電話を切りそうになったところを呼び止める。
「なんスか?」
「あなたの趣味にとやかくいうつもりはないけど、友達を同人のモデルにするのはどうかと思うわよ?」
「うっ、なんで知ってるんスか、先輩!?」
「さっき、その件で受託販売の店主さんの相談に応じてきたところだったのよ。キャラがどっかで見たような感じだったから、まさかとは思ってたけど」
「どうか本人には内緒にしてほしいっス」
 ひよりの声は懇願するかのようだった。
「タダというわけにはいかないわよねぇ」
「先輩! いつから悪徳弁護士になったっスか!?」
「冗談よ。本人には言わないけど、田村さんも少しは自重しなさい」
「できる限りは努力するっス……」
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 15:28:42.15 ID:I0r65pE0
以上です。
484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 19:09:08.97 ID:QFhQPco0
>>476
恋愛ものか。自分も以前に作ったが、いい評価は頂けなかった。
少年Aは6巻辺りで登場したキャラかな?殆ど登場していないのにそこまで書けるとは驚きです。自分ももう一回恋愛物を作りたくなった。
まとめサイトのカテゴリーに恋愛物を分けてもいいかもね。っと言ってもらき☆すたはあまり恋愛話に縁はないかな?w。

>>483
ひよりに自重しろってw?それは無理でしょw
485 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 22:17:21.69 ID:tH8K3gE0
>>484

 いやいや らき☆すた って言ったらやっぱり百合でしょ。
百合 でしょ Lilie でしょ Giglio でしょ。 でしょでしょ。
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 22:58:58.02 ID:DaCZIQSO
さよう
487 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 23:55:44.17 ID:QFhQPco0
百合か……原作全体をみるとあまり百合っぽくないんだけね。
何故かだろうね らきすたを知ってから百合だの薔薇だのって知るようになった。不思議だ。
488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/05(月) 00:15:24.07 ID:v0zSkS.o
百合キメェと思う俺のようなやつもいるぜ
489 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/05(月) 00:21:02.70 ID:Ma8mjk60
百合だろうがなんだろうが、書きたくなったら書くだけ
490 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 02:36:20.75 ID:kcvwTmk0
キメェと思うならスルーしような(^^
491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 04:58:39.54 ID:GC9r3qEo
>>483
乙。あの話かぁ
通ったりしたらコミケもなくなるか場所変えになるんだろうなぁ
行ったことないけど

>>487
そう見えるかは趣向の問題だなwBLみたいなもんさ
>百合だの薔薇だの
そういうネタがあるから……かな?w

>>490
らきすた=百合みたいなこと言ってるから、そうとも限らんってのを言ったんだろうよ
492 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 09:36:58.11 ID:6kbj2tg0
こな×かがはアニメの押しがあったけど、ゆた×みなもそんなないんだっけ、原作
まあその手のネタは1回限りでも流行ったりするもんだけどね
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/05(月) 11:17:21.28 ID:dYzYakSO
−故障−

みさお「ちびっこ。あたし思うんだけどな」
こなた「うん」
みさお「あたしのこと『みさきち』って呼ぶんなら、眼鏡ちゃんの事は『みゆきち』と呼ぶべきじゃね?」
こなた「………あー、もしもしかがみ?なんかバカが加速してるんだけど、どう修理したら…」
みさお「なんか家電扱い!?」



こなた「…『ソレの担当は峰岸だ』って怒られちゃったよ」
みさお「怒るとこちげぇよ柊!!」
494 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 16:07:35.34 ID:Fo.37pQ0
 京都アニメーション さんのアニメの中で一番 らき☆すた の絵柄が可愛いと思えて
しまうのは何故であろうか・・・ ? 瞳の色に黒色を使用しない事も関係ありそう
だなぁ・・・。 瞼の書き方も線が上手く書かれているし何よりもあの大きくて透き通った
瞳が可愛いなぁ。 OVA ver. では少し凛々しい感じの絵柄だったなぁ。

 京都アニメーション さんの他の作品も見たのだがやはり何かが違う・・・。
MUNTO ( 2009 年版 OVA と 劇場版映画 ) の絵柄も可愛いなぁ。 ハルヒ も可愛い
のだが・・・やはり何かが違う。 目の描き方かな ? 大きさ的には申し分ないのだが・・・。
495 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/05(月) 16:55:58.91 ID:gqTjFnMo
等身とほっぺたの造形じゃね?>可愛さを感じる要因
萌えキャラを可愛いと思う要因は、顔が猫や赤ちゃんに似てるからって説がある
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 17:18:17.73 ID:Fo.37pQ0
>>495 さん、御返事有難う御座います。

 成る程、それもあるなぁ・・・。 あの透き通った瞳も可愛さを引き出して
いるなぁ。 リアルさを少々求めつつ可愛さを引き出して描いている ハルヒ や けいおん !
は瞳の色に黒色を使用している為、キャラクターの雰囲気が暗くなる事は無いが
やはり らき☆すた には劣る。 ハルヒ も けいおん ! 程では無いが・・・いや確かに
可愛いのだが・・・う〜ん、何かシリアスっぽい絵柄な感じ・・・。

 私の性的傾向は ペドフィリア って事で良いのかな ?
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 20:07:09.13 ID:GC9r3qEo
別に可愛いと感じるイコールではないがな
デフォルメされたキャラが好きなんじゃね。子犬が可愛いとかいう次元の話で
強いて言うならロリコンだな、オタク的な意味での
498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 20:15:56.40 ID:GC9r3qEo
かがみ「投票も締め切り間近ね」
みゆき「ええ、かがみさんはもう?」
かがみ「当たり前でしょ。問題はつかさとこなたね」
つかさ「私ちゃんといれたよ!」
みゆき「それはよかったです。泉さんは……」
こなた「……」
かがみ「おい?」
こなた「ちょと、トイレいてくるYO」

こなた(URL、URL……これだ)
お題部門
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaht.html
ストーリー部門
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahs.html
文章部門
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahw.html

こなた「ふぅ……ただいま。あ、いや忘れてないし、全然だし」
かがみ(忘れてたな……)
みゆき(忘れてたんですね……)
つかさ(忘れてたんだね……)
499 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 22:02:30.15 ID:Fo.37pQ0
>>497

 うわぁ〜、妹に殺されちゃうよぉ・・・。 (TqT)
500 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/06(火) 00:01:50.87 ID:TuEyAHco
それでは4月6日になりましたので、投票結果を発表いたします。
今回、大賞に輝いたのは、ID:nOJaCMs0氏作『二人の手』です。
おめでとうございます!

また、今回は三部門に分け投票していただきました。その結果はこちら。
お題部門ID:Cp/qHN60氏作『二人たちの断片』
ストーリー部門ID:Cb.9n6Q0氏作『呪縛』
文章部門ID:nOJaCMs0氏作『二人の手』
皆さま、おめでとうございます!


作品を投下してくださった作者の方々、作品を読み投票してくださった方々
宣言、まとめ等、運営に携わった方々、皆さま誠にありがとうございました。
これにて第18回らき☆すたSSコンクールを終了します。
次回のコンクールもよろしくお願い致します。では、お疲れ様でした!

投票結果はこちら
お題
http://vote3.ziyu.net/html/lkstaht.html
ストーリー
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahs.html
文章
http://vote3.ziyu.net/html/lkstahw.html
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/06(火) 00:39:37.53 ID:r1NJdESO
かがみ「大賞ね」
こなた「やっちゃったね」
かがみ「大賞の人にツンデレ云々とか言ってたけど…あれ書いたのこの筆者なのよね」
こなた「…前にもおんなじこと無かった?」
かがみ「あったわね…」
こなた「どうすんのこれ…」
かがみ「まあ、お詫びもかねて部門者を取ったお二方に選んでもらいましょうか」
こなた「んだね…と、いうわけで『二人たちの断片』と『呪縛』の筆者さん、ツンデレさせたい好きな女性キャラを選んで下さい」
かがみ「運営に携わった方、お疲れ様でした」
こなた「でしたー」


すいませんでした。
そして投票してくださったかた、ありがとうございます。
投票結果を見るに、今回の方式じゃなかったら大賞取れなかったんじゃないかなあって思ったり。
502 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/06(火) 01:24:29.71 ID:UoFTV0w0
大賞おめでとう、部門賞もおめでとう。関係者各位お疲れ様です。

呪縛の作者です。ツンデレさせたいキャラはつかさでお願いします。

十四回から参加させてもらっていますが一番難しいお題だった。次回も参加できるか不安になってきた。




503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/06(火) 05:18:07.31 ID:i74PHok0
 『二人たちの断片』の作者です。
 お題に対してストレートにいったのが幸いしたか。部門賞がなかったら、副賞にもひっかからなかっただろうけど。

 ツンデレは、若瀬いずみ委員長でお願いします。
 新二年生組には足りないかがみんポジションを確保するためにも、この要素は欠かせない。
 ツッコミ大さじ一杯+いじられ適量+ツンデレ少々=かがみんポジション
504 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/06(火) 07:48:32.25 ID:r1NJdESO
ある程度覚悟はしてたけど
難しい二人がきたなあ…
505 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 18:59:09.75 ID:9NjnKkSO
−男達の挽歌−

某アニメショップ
男A(これが最後の一つ…だが…)
男B(こいつもこれを…?…こいつ…できる!)
男A(これは…)
男B(先に動いた方が負ける!)
こなた「お、一個だけ残ってた、ラッキー。これ下さいな」
店長「まいどありー」
男二人「「なにーっ!?」」
男A「ばかな…なんの気配も無かったのに…」
男B「ふ…まさかこんな決着になるとはな」
男A「お前といい、あの少女といい、まだまだこの世界は深いな」
男B「ああ、まったくだ」




ひより「なんか欲しい物買えなかった割には、嬉しそうだね兄ちゃん…」
男A「ふ…ひよりにもいつか分かる日がくるさ」
ひより「そっスか…」


いずみ「…兄さん、なにかあったの?雰囲気が違うんだけど」
男B「いずみ…俺は今日、強敵(とも)と出会ったんだよ」
いずみ「そ、そうなの…よかったわね…」
506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 19:31:19.94 ID:PlwAA4Q0
>>505
 ありそう。


 ひより兄といずみ兄って、なんか接点ありそうだよな。
 コミケで合同サークル組んだら一緒になったとか、大学のサークル同士の交流で鉢合わせるとか。
507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 20:31:17.78 ID:w6eaSSw0
>>505
世間は意外と狭い
508 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:36:19.87 ID:XDze6oSO
投下いきます。

コンクール賞品のツンデレです。
最初は小ネタでやるつもりでしたが、二人まとめてするためにSS形式になりました。
あまり期待しないで読んでください。
509 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:39:10.11 ID:XDze6oSO
 某日某所。つかさの控室。
「ほい、つかさ。これ台本ね」
「う、うん…」
 つかさはこなたから薄い冊子を受け取ると、小さくため息をついた。
「…うまくできるかなあ?」
「だいじょぶだいじょぶ。かがみの真似すればいいんだよ」
 肩を叩きながらそういうこなたに、つかさは黙って頷いた。

 一方そのころ、いずみの控室。
「…なんでわたしなんでわたしなんでわたしなんでわたしなんでわたし…」
 椅子に座って頭を抱えたいずみが、ぶつぶつと呟いていた。
「ご指名があったからなんだけど…が、頑張って若瀬さん」
 その傍らに立つゆたかが、困った顔で励まそうとしていた。
「…あー、ところで小早川さん」
「な、なに?」
「この台本書いたの、小早川さん?」
「え、違うよ。わたしの伯父さんが書いたんだけど…」
 親戚。確かこの前制服で学校に来た卒業生も、この子の従姉妹だったはず。
 いずみはそのことを思い出し、この一族には関わらない方が良いのではないかと思っていた。



− ツンデレをさせてみよう −



510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:43:11.36 ID:XDze6oSO
〜つかさ編〜


 太陽を完全に遮る黒い雲。町並みが霞むほどの大降りの雨。俺は学校の玄関口から、うんざりとそれを眺めていた。
「…まだいたんだ」
 後ろの方から、そう女の子の声が聞こえた。
 俺がそっちを向くと、同じクラスの柊つかさが靴を履きかえ、こちらに向かってきた。
 そして俺の隣に並び、空を見上げた。
「帰らないの?」
 柊は空を見上げたまま、俺にそう聞いてきた。
「帰れるかよ。傘忘れたんだよ」
「ふーん…」
 俺が答えると、柊は興味なさ気に呟いた。興味ないなら聞くなよ…。
「濡れて帰れば良いのに。男の子ってそういうの気にしないんでしょ?」
「限度ってもんがあるだろ。こんなんじゃ、風邪ひいちまう」
 他人事だと思ってとんでもないこと言うな。
「堂々と学校休めるんだからいいじゃない」
「いいわけないだろ」
 俺はため息をつきながら柊の方を見た。女の子には明らかに不釣り合いな、男物の大きな傘を両手で抱えている。
「お前はどうなんだよ。傘持ってるから帰れるだろ」
「…関係ないでしょ」
 …そうかよ。

 しばらく二人して無言で立っていると、柊が持っていた傘を開いた。どうやら帰る気になったらしい。
 それにしても大きな傘だ。俺がぼーっとそれを眺めていると、柊は睨むような目付きで俺を見た。
「…持ってよ」
 そして、そう言いながら傘の柄を俺に押し付けてきた。
「…は?」
 思わず間抜けな声がでた。
「この傘、重いから。疲れるの」
 それはそうだろうけど…。
「だったらもっと小さな傘を…」
「いいから」
 俺の言葉を遮って、柊はさらに強く傘を押し付けてきた。
「…わかったよ」
 仕方なく俺は柊から傘を受け取った。それにしてもでかい傘だ。俺は男にしては小柄なほうだから、少し持ちにくい。
 ふと隣を見ると、いつの間にか柊が傘の下に入っていた。なんと言うか…いわゆる相合い傘状態だ。
 しばらくその状態が続いた後、柊は急に歩きだし、雨に打たれて慌てて傘の下に戻ってきた。
「なんでついてきてくれないの」
 少し涙目になりながらそう言って俺を睨みつける柊。
「急すぎてわかるかよ…」
 俺の言い分に、柊は頬を膨らませ、また歩きだそうとした。俺はまた柊が濡れないように、それに合わせて歩きだした。

 傘を打つ雨の中を二人で歩く。俺も柊も無言だ。
「…偶然…だからね」
 そんな中、柊はぽつりとそう呟いた。



511 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:46:28.20 ID:XDze6oSO
「…はー、終わったー」
「つかささん、お疲れ様です」
 控室に戻ってきたつかさに、待機していたみゆきが冷たいお茶の缶を差し出した。
「ありがとう、ゆきちゃん…んー…ねえ、ゆきちゃん。一つ聞きたいんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「あの男の子って誰?高校の時のクラスメートとかじゃないよね?」
「ふふ、お気づきになりませんでしたか?あの方はかがみさんですよ」
 みゆきの答えに、つかさはポカンと口をあけた。
「…うそー…全然わかんなかったよー」
 そう呟くつかさを、みゆきは可笑しそうに眺めていた。




512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:47:33.84 ID:XDze6oSO
〜いずみ編〜


 目の前のプリントに必要な事柄を書き込みながら、僕は机を挟んで向かい側に座る女の子をちらっと見た。
「なに?わからない事でもあるの?」
 すぐに気付かれ、僕は慌てて視線をプリントに戻した。
 彼女は若瀬いずみさん。僕のクラスの委員長だ。
 放課後、僕はなぜかその若瀬さんにクラス委員の仕事を手伝わされていた。
 副委員長が休んでるからだってのはわかるんだけど、なんで僕が…。
「…はい、これもお願いね」
 僕の側にプリントの束が積み上げられる。
「ええ、ちょっと待ってよ。まださっきの終わってないよ」
 思わず不満を漏らす僕を見て、若瀬さんが大袈裟にため息をついた。
「だったら早く終わらせる。わたしのペースに追い付かないなら、どんどん貯まっていくわよ」
 なんかこう…理不尽だ。

 お互いのシャーペンの音だけが教室に響く。
 若瀬さんの方を見てみると、作業が終わったのか暇そうにシャーペンを回している。僕の方には積み上げられたプリント。終わったのなら手伝って欲しいなあ。
「…まだ?」
 若瀬さんがそう聞いてきたけど、答えてる余裕なんかない。

 ようやく最後の一枚を書き終え、そのまま僕は机に突っ伏した。
「時間かかりすぎよ。もう日が落ちそうじゃない」
 プリントを揃えながら、若瀬さんがそう言ってきた。
「…予定が狂っちゃったわ」
 その言い草に、さすがに少し腹がたった。
「だったらもうちょっと仕事の出来る人捕まえてよ。僕じゃなくてさ」
 僕の言葉に、若瀬さんは少し淋しそうな表情を見せた。
「…ごめん」
 そして、呟くようにそう言った。
 まさか素直に謝られるとは思ってなかったので、僕が面食らっていると、若瀬さんは机の上にラッピングされた小さな箱を置いた。
「ホントはね、仕事終わらせてからもうちょっと雰囲気の良いところで渡そうと思ってたんだけど…」
 僕はわけがわからず、箱と若瀬さんを交互に見ていた。
「…今日、誕生日」
 そんな僕を指差しながら、若瀬さんがそう言った。
「あ…」
 そう言えば、そうだっけ…じゃあ、この箱は…。
「へ、返品は受け付けないから…そ、それじゃまた明日ね」
 プリントを鞄に詰め終えた若瀬さんが、慌ただしく教室を出ていく。
 僕はそれを、何も言えずに見送っていた。



513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:48:51.66 ID:XDze6oSO
「…あー…終わった」
「…お疲れ様」
 いずみとみなみが連れだって控室に入る。
 いずみはそのまま椅子に座りこみ、みなみは帰る準備を始めた。
「いや、しっかし…相手が岩崎さんってわかっててもドキドキしたわー」
「…そう?」
「うん。岩崎さん普通にカッコイイしね」
「う…そ、そう…」
 みなみの反応にいずみは苦笑して、椅子から立ち上がりみなみの側にいった。
「ごめんごめん。やっぱり女の子だし、可愛いとかの方が言われたいよね」
「…え、えっと…別にそういうことじゃ…」


「イズミ×ミナミ…どーですかヒヨリ?」
「いや、なかなかアリなんじゃないかと…」
「…ヒヨリはナンでもアリですネ」
「えっ…い、いやそんなことない…と、思う…んだけど………自信ない」





数日後。

「ねえ、こなた…」
「ん、なにかがみ?」
「その…なんかつかさを見てるとドキドキするんだけど…なにか病気かな…?」
「…え、えっと…まあ、病気と言えば病気かな…草津の湯でも治らないとか、そんな感じの…」


「ね、ねえ田村さん」
「若瀬さん?どうかした?」
「な、なんか小早川さんにずっと睨まれてる気がするんだけど…」
「…なんスか、そのトライアングラー…」



− おしまい −
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 01:52:08.89 ID:XDze6oSO
以上です。

つかさは素のキャラでツンデレは難しいし、いずみはまだキャラがよくわからないので、お芝居という形に。
…すいません。逃げました。



それにしても…これってツンデレなのかなあ…。
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 04:56:21.13 ID:.fX3H8A0
>>514
 「二人たちの断片」作者です。

 いずみ委員長のツンデレ、ありがとうございます。
 そうじろうは、嬉々として台本書いてそうだよな。
 こなたがビデオで撮影して、そうじろうといっしょに鑑賞してそうだ。


>それにしても…これってツンデレなのかなあ…。
 ベタに行くなら、「なんかの拍子に小さな箱がポロリと出てきて、あわてて支離滅裂な言い訳をわめきつつ押し付けて走り去っていく」って感じですかね。
 それこそ、そうじろうが妄想しそうなツンデレ。
516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/09(金) 20:19:36.31 ID:aV6xLso0
>>514
堪能させていただきました。
確かにつかさは無理があった。普通にかがみにすればよかったな
517 :命の輪は変わる [saga]:2010/04/11(日) 03:08:20.61 ID:kIQ7CcA0
投下行きます。

命の輪のシリーズですが、今まで出てこなかったのが不思議な二人の話です。
518 :命の輪は変わる [saga]:2010/04/11(日) 03:09:37.96 ID:kIQ7CcA0
 洗い物をする手を止め、あやのは壁の時計で時間を確認した。
「ひーちゃん、後はわたしがやっておくから上がっていいよ」
 そして、掃除をしているつかさにそう声をかけた。
「え、でもまだだいぶやること残ってるよ?」
 あやのはタオルで手を拭くと、つかさの傍に向かった。
「今日、お見合いした彼が家に来るんでしょ?待たせたら悪いわよ」
 肩を叩きながらそう言うあやのに、つかさは驚いて目を見開いた。
「え、ええ!?なんであやちゃんがそれ知ってるの!?」
「さっき柊ちゃんからメールがあったの。彼氏が来るからさっさと切り上げさせろって」
「も、もうお姉ちゃんたら…それに、まだ付き合ってるわけじゃ…」
 持っていたモップをいじりながら顔を真っ赤にして呟くつかさに、あやのは優しく微笑みかけた。
「お見合いは上手くいったんでしょ?」
「う、うん…まあ、たぶん…一応…」
「だったら、今はちょっとでも合う時間増やして、自分をもっとわかってもらわなくちゃ、ね」
「わかってもらうって…うぅ…恥ずかしいな…」
「頑張って。ひーちゃん」
 つかさは少しの間うつむき、そして笑顔で顔を上げた。
「わかったよ、あやちゃん。それじゃ少し甘えさせてもらうね」
「…うん」


 つかさが帰った後、あやのは後片付けの続きをし、そして今日の授業で使った食材のあまりを使って何品かのおかずを作った。
「…そろそろかな」
 壁の時計を確認する。それと同時に、階下から元気な声が響いてきた。
「アネキっ!飯食わせてくれよーっ!」
 ほら来た。あやのは苦笑しながら、声の主を迎えるべく部屋のドアへと向かった。



― 命の輪は変わる ―


519 :命の輪は変わる [saga]:2010/04/11(日) 03:10:24.59 ID:kIQ7CcA0
「いやー、いつも悪いねアネキ」
「そう思うんだったら、少しは自炊してよみさちゃん。あと、食べながら喋らないの」
 あやのの用意したご飯を文字通りかっ食らいながら喋るみさおを、あやのは少し呆れた口調でたしなめた。
 大学を卒業してから、あやのは母が開いている料理教室を継ぐことになった。とはいえ、経営全般は母が行い、つかさが講師として手伝ってくれたりと、まだまだ継いだとは言えないのが現状なのだが。
 そんなあやのの元に、目の前の幼馴染で親友…そして今は義妹でもあるみさをがちょくちょく飯をたかりに来るのだった。
「みさちゃん、今日面接だったんでしょ?どうだったの?」
 あやのがそう聞くと、みさおは箸をおいて腕を組んだ。
「んー…まあ、大丈夫なんじゃねーかなーて感じかな」
「よくわかんないよ、それ…」
 みさおは大学を卒業しても進路が定まらずしばらくの間フリーターをしていたが、最近になってようやくしっかりと就職活動をするようになっていた。
「コネあったし。まあ、なんとかいけんじゃね」
 みさおの言葉に、あやのが首を傾げる。
「コネ?みさちゃん知らない会社だって言ってなかった?」
「そうなんだけどさ、面接受けにいったらアイツがいたんだよ。ほら、ちびっこのところのあのヌボーっとしたの」
 あやのは少し考え、みさおの言葉を理解して少し眉をひそめた。
「ヌボーって…もしかして泉ちゃんの旦那さんのこと?」
「そう、ソイツ。あの脳筋のダンナ」
 あやのの眉間の皺が深くなる。
「脳筋?」
「脳味噌まで筋肉で出来てるって意味らしいぜ」
 あやのは今度はため息をついた。
「もう、みさちゃん。あんまりそういうこと言わないの」
「いや、だってホントだぜ。アイツ大学の学祭のとき、他のヤローが二人がかりで持ってた角材一人で運んでたんだぜ」
「それは…すごいね」
 あやのは何度かあったことのあるこなたの旦那を思い浮かべたが、とてもそんなパワフルな人には見えなかったので、みさおは大袈裟に言ってるのだろうと判断した。
「んで、あたしより頭悪いんだぜ。通ってた高校聞いたら、滅茶苦茶レベル低いところだったんだぜ」
 その滅茶苦茶レベルの低い高校の卒業生と、県でもトップレベルの進学校である陵桜学園の卒業生が、同じ大学に通ってたという事実はどうなんだろう。あやのはそんなことを思ったが、とりあえず声には出さないでおいた。
「でも、泉ちゃんの旦那さんが勤めてるところって、力仕事だって言ってたけど大丈夫なの?」
 脱線気味な話を元に戻そうとあやなおがそう聞くと、みさおは難しい顔をした。
「そーなんだよなー。体力には自信あるって言っておいたけど、女だからって落とされんじゃないかって心配だよな」
「えっと、そうじゃなくて…怪我とかが心配なんだけど…」
 そもそも女性だから取らないなら、募集自体かけないだろうとあやのは思ったが、そこは言わないでおく事にした。
「まー、だいじょうぶなんじゃねーの?なんとかなるって」
 軽く言うみさおに、あやのはため息をついた。


520 :命の輪は変わる [saga]:2010/04/11(日) 03:11:20.73 ID:kIQ7CcA0
「なー、あやの」
「…えっ?」
 みさおが食べ終わった食器を片付けていたあやのは、不意に呼ばれて驚いて動きを止めた。
「…なんでそんなに驚くんだよ」
「え、だってわたしの呼び方が…」
 『アネキ』ではなく『あやの』に戻っていた。そのことに、あやの自身なぜだか分からないほど驚いていた。
「…んー…聞きたかったのもソレなんだけど、やっぱあたしにアネキって呼ばれるの嫌か?」
「そ、そんなことないと…思うけど…」
 みさおの質問に、あやのははっきりと答えることが出来ずに言葉をにごらせた。
「でも、なんで急にそんなこと…」
「いや、なんかな…アニキと結婚してから、小言が多くなったなーって思って」
「そ、そうなの…?」
 改めて言われるとそうかもしれない。あやのはそう思っていた。結婚前には気にならなかった事が目に留まるようになり、言い方も少しきつくなってる気もする。
「…それが、悪いっつってるわけじゃねーんだよ…あたしとあやのは、もう友達じゃないんだし」
 その言葉に、あやのは目を開かせられてような気がした。
 そうだった。あの日から…名が日下部あやのになったあの日から、日下部みさおは自分の家族になったんだ。
 間柄が変わり、見方が変わったから、知り尽くしていたと思っていたみさおの見えなかった部分が見えてきたのだ。
「でもよ…あやのが嫌だって言うんなら、やっぱ…」
「そんなことないよ、みさちゃん」
 みさおの言葉を遮り、あやのは微笑んだ。
「そ、そうか…?だったらいいんだけど…」
 みさおの懸念は分かる。あやのは二人の間柄が変わることを嫌がっているんじゃないか。そう考えたのだろう。あやの自身もそういうところがあると、うすうす感じてはいた。
 それにくらべ、みさおはあやの達が籍をいれた次の日から、あやのの事をアネキと呼ぶようになった。
 人の繋がりは広がったり千切れたりするだけでなく、変わることもある。みさおはその事を敏感に感じ取っていたのだろう。
「じゃあ、アネキのまんまでいいよな」
 変わることを受け入れる。あやのはそれを教えてくれている歳の変わらぬ義妹に、今まで以上の愛おしさを感じていた。
「うん…ありがとう、みさお」
 そして、自然とそう言っていた。
「え?…あ…へへへ…」
 頬をかきながら照れ笑いをするみさおに、あやののまた少し照れた笑顔を向けていた。



「おかえり、ダーリン」
「…ああ、ただいま」
 こなたは玄関で出迎えた夫が、どことなく元気が無いことに気がついて首をかしげた。
「そしたの?仕事でなんかあった?」
 こなたがそう聞くと、旦那は頷いた。
「いや、今日仕事場にみさきちが面接に来てな…」
「え、マジで…」
「うん…しかしなあ…女性の募集は事務仕事なんだよなあ…みさきちは事務なんて出来たっけか」
「出来るかどうかはわかんないけど…とりあえず、似合わないと思うよ」
「だよな…」
 そう言って額に手を置く旦那を、こなたは複雑な表情で見ていた。



― 終わり ―
521 :命の輪は変わる [saga]:2010/04/11(日) 03:12:59.20 ID:kIQ7CcA0
以上です。

みさおは多分深く考えてなく、あやのが勝手に感じ取ってるだけだと思ったり。
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 08:34:26.30 ID:i5htIsSO
ちょ、もうすぐ3ヶ月目だぜこのスレww
この調子だと後2ヶ月はもつな…
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 13:22:31.48 ID:m/We3Rk0
リレーやればおk
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 13:37:17.12 ID:mS7S39w0
リレーか 久しぶりにやりたいかも
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 13:37:37.00 ID:q4RPTYSO
>>521




だけでもSSにレスすりゃいいんじゃね
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/11(日) 13:40:34.80 ID:k117kV60
初めて書き込みます。

 「宇宙船lucky☆star号―300万年の時を超え、宇宙をさまよう孤独な宇宙船。
  予期せぬ事故で乗組員は全員あの世行き。偶然生き残った私はコナタ。相棒は
  ガチレズになっちまったカガミと、酢から進化したツカサ。そして、不時着し
  た船から救助したw○kipediaのミユキ。私たち一体どこに行くんだろうね?」

宇宙船レッド・ドワーフ号ネタだけど誰も知らないよね…。  
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/11(日) 13:58:03.83 ID:mS7S39w0
>>526
知らないね。NHKかどっかでやってたやつ?
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 14:41:07.95 ID:q4RPTYSO
確かイギリスかどっかのSF
読んだことはない
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/11(日) 14:42:26.34 ID:C5hLnMAO
おー(>ω・)
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/11(日) 16:44:51.79 ID:k117kV60
>>527
10年位前にNHKで深夜に放送してたイギリスのSFコメディです。
DVDボックスにもなってるよ
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 17:38:49.48 ID:m/We3Rk0
(・ω<)のー
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/15(木) 18:33:13.64 ID:CZiw4sSO
−楽器−

こなた「某軽音楽部アニメの二期が始まったね」
かがみ「ふーん」
こなた「一期の時に勢いで楽器買っちゃった人。被ってた埃はちゃんと落ちましたか?」
かがみ「…誰に向かって言ってるんだ」
つかさ「でも、楽器って高いんでしょ?アニメの影響で買ったりするのかな…」
こなた「少なくとも売ろうとはしてたね。一期の時、ショッピングモールの楽器店でけいおんフェアやってたし」
つかさ「そ、そうなんだ…」
こなた「意外と身近にいたりしてねー」
かがみ「そこでなぜわたしを見るか…そんなもの買う余裕なんかないし、そもそもそのアニメ自体見てないわよ」
みゆき「………」
つかさ「あれ、ゆきちゃんどうしたの?」
こなた「え…みゆきさん、まさか…」
みゆき「いえ…その…わたしでなく母が…ベースを」
つかさ「えー」
かがみ「…まあ、あの人ならやりかねない雰囲気はあるけど…」
こなた「なんでベース…」
みゆき「ベースの子が可愛いかったからだとか…」
つかさ「なんて言えばいいんだろ…」
みゆき「わたしが時々使わせてもらってしるので、一応埃は被ってません…はい」
こなた「…ゆかりさんは使ってないんだ」
みゆき「…お恥ずかしながら」
かがみ「みゆき。言いたくないけどあえて言わせて…それホントに恥ずかしい」
みゆき「…ですよね」
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/15(木) 18:55:20.39 ID:J1ShBu20
 百合ってそんなにイイモノなのかねぇ〜 ?
俺にとっては 「 若い男女による身長的な凸凹カップル or 夫婦 」 の方がよっぽど
魅力を感じるのだが・・・。 全体的に幼い容姿 ( 顔立ちも含める ) や服装というのが
可愛いねぇ。 あっ、ただのロリコンじゃん・・・。
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/15(木) 19:56:12.58 ID:bnkOLtk0
百合にしろ、BLにしろ、普通物にしろ、趣味、趣向は千差万別だよね。
百合物が好きな人でも全ての百合物が好きとは限らないだろうし。ただ自分の眼鏡で選ぶしかない。
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/15(木) 20:04:08.74 ID:VwNaQXo0
―知らぬが仏―

かがみ「そういえば日下部は何でコンニャク嫌いなの?」
みさお「…兄貴のせいだ…」
かがみ「?」
みさお「…中学入りたてのときに…

  コンコン

  みさお「兄貴―、入るぜー」
 みさお兄「うわっ、ちょっ、まっ待て!!」

  ガチャ
  
  みさお「ヴぁ…」
 みさお兄「…あ…」

みさお「兄貴が…、コンニャクで………」
かがみ「…ごめん日下部、変なこと聞いて…私も聞いたこと忘れたいわ…」
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/15(木) 21:21:45.25 ID:6bmgjP20
こんにゃくにそういう使い方があったとは初耳
537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/15(木) 21:25:27.26 ID:um15Kg2o
>>532
ありそうでワロタ。そして使えるのかみゆき

>>535
おいやめろ
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/16(金) 02:55:01.00 ID:gaqTRAAO

こなた「かがみんかがみん」
かがみ「どうしたのよ、こなた」
こなた「こないだ、夢を見たんだよー」
かがみ「へぇ、どんな夢だったの?」
こなたの夢
つかさ『お姉ちゃん、じっとしててね。ちょっとくすぐったいかも…』
かがみ『えっ?何?つかさっ…あっ…』
『ファイナルフォームライドゥ、かかかかがみ!』
ガキョンガキョンガキョン
かがぶー『………』
つかさ『………』
こなた「…とまぁ、かがみがモノクロブーにファイナルフォームライドする夢だったんだけど」
かがみ「それは、私に対する宣戦布告と受け取っていいのかしら?」
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/16(金) 07:24:31.71 ID:JK6u4USO
いつの間にパー速復活してたのかよ!
540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/17(土) 09:09:17.17 ID:67W56hk0
リレーの話はどうなってるの?
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/17(土) 11:05:18.69 ID:cGzDA1Ao
>>539
規制とかきついから帰ってきたのさ!
アニキャラの方が容量落ちして告知とか全くなかったがな!

>>540
ぶっちゃけリレーは計画立ててやってないから、どうなってるとかの話はないぜ
542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/17(土) 20:57:26.07 ID:FH29DHQ0
たまにはドクロちゃん並にふざけた内容の話も良いかも知れないね
543 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/17(土) 21:54:41.63 ID:jrkQECU0
>>542
 かがみんが最近太っちゃったって嘆いてたから僕はいてもたってもいられなくなって
 かがみんの腹に「脂肪吸引してあげゆ!」と叫びながら吸い付こうとしたら
 眼球を抉られた

 こんな感じのなら書けるけど、きっとこのスレではこういうのは受け入れられない
544 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/17(土) 22:03:21.21 ID:Ol/9bYAO
>>542
こなたを全員でハブったりとかするのか。
545 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/17(土) 23:17:32.15 ID:FH29DHQ0
>>543

 はぁ〜い

>>544

 ん〜、中々良いね !

546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/17(土) 23:37:26.44 ID:m.YqCYSO
その手のSSは最初は普通に読めてたけど
キャラに思い入れが出来てきたら段々読めなくなっていったな…
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 14:00:44.79 ID:PDO028I0
俺は百合でも鬱でもなんでもこいだぜ
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/18(日) 16:59:54.06 ID:3zU8uW60
確かにエロ表現以外はここはOKだからあまりジャンルにはこだわらないけど。
鬱や悲劇は作品数が極端に少ない。それは、らきすたの元々の性格から逸脱しているからかもしれない。
逆にそれでもらきすたらしさを出せるなら凄いと思う。
549 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 17:07:01.47 ID:z7DnLTU0
「 こなたとかがみの大喧嘩 」 は中々良かったなぁ〜
こなたは可愛いくて本当は良い奴なんだけど性格がなぁ・・・

 まず少々道徳的に腐敗している、毒舌家、金銭感覚が大いに麻痺している、
物凄く濃厚なオタク、将来的にニートになる可能性大、色々な意味で横着し過ぎ、
変態セクハラ Slacker ( 意 : 怠け者 ) ・・・等々

 と言う事で少々こなたには辛い目にあって貰わねば !
全員で ( 教職員・家族・血縁者 も含む ) でこなたをハブったら
果たしてどうなるんだろ ?

 やっぱり流石のこなたでも泣くかなぁ ?
( 泣きこなた萌えの自分にとっては是非とも泣いて欲しい ! )

550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 17:47:08.75 ID:6FP8hQSO
こなたは家事真面目にしてるし、単純な怠けものじゃなくて嫌いな物がはっきりしてるだけだな
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 19:41:08.00 ID:0/r/qRQo
これが俗に言うヘイトってやつか

普通にバイトして普通に家事して普通に勉強したりたまにさぼっちゃったりする
ごく普通の人間に対してよくもまあそこまで……
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 20:00:08.95 ID:.hzni4.0
鬱系の作品は嫌だな―。でも需要あるんだろうな… 
らきすた好きでもそうゆうの望む人いるんだ…
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 20:13:14.41 ID:e2kzMago
好きなこと、必要なことには真面目、それ以外はいい加減
ってタイプだな。なにかの為に陵桜受かったぐらいだからして

>>551
勉強……? たまに……?
お前さてはこなただな

>>552
本編とのギャップじゃないか。俺は苦手だが読んじゃうな
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 20:28:06.00 ID:0/r/qRQo
>>553
一夜漬けとはいえテスト勉強するし(失敗するときもあった)
大学受験前のときだって普通に自主登校してたじゃん
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 20:43:48.35 ID:e2kzMago
>>554
いやまぁネタのつもりだったんだが

マジレスすると、それは基本サボりでたまに(必要な時)勉強じゃねww
自由登校も勉強のため、ではないと思うが
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 20:56:16.33 ID:6FP8hQSO
自主登校はみんなに会うためだな
かがみも言ってたが、そういうところがいい子なんだよな
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 21:51:02.14 ID:z7DnLTU0
 すんません、調子に乗って酷い事書きました
自分も人の事言えた身分じゃ無いですしね・・・
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 22:11:19.89 ID:iDgZz.k0
>>557
あんまり気にしないでいいと思う。謝る必要もないよ
このスレには自分が少しでも気に入らないことがあればしつこく突っかかってくるキチガイがいるから気をつけて
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/18(日) 22:41:29.06 ID:gE.3WxU0
いちいち煽らんでいいから
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 22:53:27.75 ID:56QrHYSO
ID:6FP8hQSOがなんか必死
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 23:03:31.37 ID:6FP8hQSO
今回の贄は俺か

まあ、後つけたくなるくらいこなたが好きなのは否定しない
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 23:08:28.68 ID:0/r/qRQo
>>557
キャラを嫌うのはべつにいいんだよ。好みはそれぞれだし。
ただ、その憎悪の矛先を、なんでそんな架空の存在なんぞに向けるのかがわからない。
それを生み出した作者や編集部に対して辛い目にあってもらわねば! って考えたりはしないの?
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 23:20:29.33 ID:uBhGHKY0
いくらなんでも作者や編集部に憎悪を向けたらまずいだろ。 
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 23:28:38.42 ID:bS9WaqIo
いやそれはどうだろう。っつかそっちのが怖いわw

>>561
問題ない。こなた好きなんだろうなーとは思ったがさすがにこれぐらいで必死とは思わんw
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 23:31:25.92 ID:0/r/qRQo
>>563-564
美水が売れなくなったせいで
さいたま県民に責められる小説でも書いて憂さを晴らせばいいじゃんってことさ
犯罪をしろとまではさすがに言わないよww
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/18(日) 23:58:15.47 ID:JDTtxsAO
アニキャラにアンチスレ立ててそこで好きなだけやればいい

次の話題どうぞ
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/19(月) 00:07:33.36 ID:HBCX7oSO
こなたともなかって似てね?
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/19(月) 00:15:12.03 ID:IBL9rOE0
確かにそうだけど…SSのネタになるのか?
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/19(月) 06:30:46.83 ID:WBOn5QSO
>>556
その場面かがみは、こなたの良くも悪くも素直な気持ちをさりげなく伝えられる性格を
普段あまり素直になれない自分の性格と比較して尊敬したんだと思うよ

こなたはせいぜい“悪い奴ではない”って感じ
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/19(月) 17:31:15.98 ID:yvFK6j.0
こなたの様な物凄い美人さんをお嫁にしたいなぁ・・・
現実世界でもいるにはいるのだろうけど、これが中々見つけづらい
背丈が凄く小さい人が好きだけど顔立ちはゲルマン系かラテン系 ( ドイツとかイタリア )
の人が好きなんだよなぁ !!

でもヨーロッパの人達ってとても背丈が高い・・・
世の中って中々上手く行かないものなんだね・・・

                           凸凹カップルを愛する者より
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/20(火) 18:23:48.11 ID:qz.RcJko
こなた「私最近さ、難しく考えすぎてた気がするんだよ」
かがみ「まぁ、そう、ね?」
こなた「だから原点に立ち返ろうかと」
かがみ「ほお、それで?」
こなた「それでね、チョココロネの話でもしようかと」
かがみ「……なんか違わないか?」
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 19:19:55.41 ID:Z.w0D.SO
−禁−


ひかる「ふー…」
かがみ「…先生、禁煙するって言ってませんでした?確か一週間頑張ってみるって」
ひかる「記憶にないな」
かがみ「これでいいのか、日本の教育現場…」
ひかる「うるさいな…じゃあ柊は一週間ポッキーを我慢できるのか?」
かがみ「…すいません。無理です。ごめんなさい」
こなた「かがみよわっ」
かがみ「そういうあんたはどうなのよ。ゲームとかアニメとか一週間我慢できるの?」
こなた「一週間どころか一日も無理ですな!」
かがみ「胸はって言うことじゃないでしょ」
こなた「つかさやみゆきさんはどうなんだろ」
かがみ「あの二人は…うーん…」
みゆき「つかささんは、一週間かがみさんと会うこと禁止ですね」
つかさ「むりむりむりむりーっ!そんなことできっこないよーっ!」
こなた「おおっ効いてる…って、どったのかがみ?赤くなって」
かがみ「…いや…その…」
こなた「恥ずかしい?それとも嬉しい?」
かがみ「りょ、両方…って言わすな!」
こなた「みゆきさんはどうなんだろ」
かがみ「みゆきは…一週間家で勉強禁止とか?」
みゆき「試験後などはそれくらいの休養を取ってますので、特に不自由は…」
かがみ「マジで…」
こなた「がり勉でもないのにあの成績とか反則すぎる…」
つかさ「…ゆきちゃんは一週間質問に答えるの禁止…」
みゆき「ま、ままま待って下さい!それだけはご勘弁を!そんなことしたら死んじゃいます!」
こなた「ええっ!?それがダメなんだ!」
かがみ「ってか死ぬのか…」
つかさ「…あとうんちく言うのも禁止…」
みゆき「わー!わー!嫌です!聞こえません!聞こえませんーっ!!」
こなた「うわあ。凄い拒絶反応…まさかつかさがみゆきさんに勝つ日がくるとは」
かがみ「なんの勝負だ。ってかいつからそういう話になった」



ひかる(…わたしは完全に忘れられてるな)
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/20(火) 21:13:19.40 ID:3j2.mig0
 突如最近ドッキリ系のお話が読みたくなって参りました。
ターゲットはやはりこなたでしょう。 彼女は中々泣いてくれませんからねぇ、
一回位はこなたが泣くところを見てみたいものです。

 こなたはいつも他の人達をからかったりしますが、人一倍友達思いで
影ではとても周りに気を遣っていると思うんですよ。
原因も解らないまま突然友達に辛く当たられれば本人も戸惑う事でしょうし
何より大変傷ついて自分を責めてしまうでしょう。

 「 実はこなたの誕生日の為のサプライズだったのよ 」 と誕生日当日にネタ晴らし
でもされれば極度の安堵によりまるで幼い子供の様に大号泣を・・・

 という感じの話が良いですねぇ。 何方か書いてくれませんかねぇ・・・。
泣いてるこなたも可愛いです。
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 21:43:58.29 ID:mjPQ2zg0
>>573
そこまで考えたなら自分で書けそうなきがするけど。

自分がストーリを考えるときはラストシーンから考えます。そしてそのラストシーンに
なるように物語を進めて行きます。だからどんなに物語が二転三転しても脱線しても
ゴールは見えるので最後はうまく纏まる。どうでしょうか?、他の人はどうやって作っているかは知りませんが……。
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/20(火) 22:23:53.46 ID:3j2.mig0
 中々説得力のある素晴らしい案ですねぇ。
しかし僕は結構創作文とか苦手なんで・・・。
文章書くの下手なんです。
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/20(火) 22:55:27.98 ID:qz.RcJko
>>572
止まれば死ぬ。マグロかお前ら。かわゆす
俺はこなたタイプだな……。ネットかゲーム&アニメどっちかあればいけるがw

>>574
俺もそんな感じだな。まぁ、ラストシーンじゃなくて書きたいと思ったシーンだが
おかげでなかなか纏まらなかったり、途中で満足することもしばしば
577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/20(火) 23:01:28.88 ID:DCD.p6SO
こなたの号泣ってアニメにあるよ
凄い泣いてるよ(笑)
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/20(火) 23:09:06.88 ID:P/JjQBEo
原作が4コマ漫画なので
一つのギャグを言わせるために
場面や話の流れを決めていく
579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/21(水) 07:57:07.23 ID:yjRlywSO
こなたが泣く話ならまとめ漁ればいくつか出て来る気が

自分が書く時は大まかな台本作って、後はキャラに好きに演じてもらうって感じかなあ
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/21(水) 08:31:14.41 ID:C5nzui20
 皆さん、様々なアドバイス有難う御座います。
自分でも少し練習してみます。
581 :こなたんファンタジー 〜心を探す旅〜 予告 :2010/04/22(木) 22:08:32.38 ID:7YoJtwAO
こなた「もういいよ!かがみとは二度と話したくない!」

こなたです。かがみと喧嘩をしました。
代わりに私を迎え入れてくれたのは、剣と魔法と冒険でした。

つかさ「うん、『宙の目』が開眼するのを防ぐために冒険してるの」

そこは、私の理想の世界。

みゆき「こなたさん、その剣を握ってください!」

ドキドキ、ワクワク、時々ハラハラする冒険。
でも私は、本当にここにいて良いんだろうか?

こなた「お母さん止めてよ!なんでそんな酷い事するの!?」
かなた「ごめんねこなた。あなたはここにいてはいけないの」
かがみ「こなた?知らないわ。あんた、誰?」

私が本当にしたい事は……。

こなた「ねえ、つかさ」
つかさ「なあに?こなちゃん」
こなた「私、かがみに謝りたいだ」

世界が私を慰める。

こなたんファンタジー 〜宙を見つめるもの〜

近日公開
582 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:05:36.19 ID:SU0Ad4Y0
投下いきます。

大した事ありませんが、一応鬱注意ということで。
583 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:06:17.69 ID:SU0Ad4Y0
 気がつくと、わたしは何故か近所の公園にいた。しかも全裸で。
 確かわたしは部屋で寝ていたはず。なんでこんなところにいるのか、さっぱりわからない。
 寝てる間に強盗が入ってきて、身包みはがされて放り出された?…いや、なんか無理があるな。
 とりあえずわたしは手近な木の枝を使って身体を隠そうとしたが…わたしの手はソレをすり抜けた。
 そういえば、わたしは目を覚ます前に全裸でここに寝ていたはずなんだけど、公園にいる人たちは誰も気にしてない感じだ。
 頭の中に身包みはがされた説より最悪な考えが浮かんだ…もしかして、わたし死んでる?コレって霊魂状態?…いや、死んだとは限らないよね。生霊って手もある。
 どういう手だよ、と自分に突っ込んでから、わたしは公園の向こうに見える道路から、じっとわたしの方を見ている人物に気がついた。
 その人はしばらくわたしを見つめたあと、真っ直ぐにわたしの方に歩いてきた。
 そして、わたしのまん前に立ち止まって、しげしげとわたしを見つめるその人物は…友人のかがみだった。



― 幸運の星 ―



「…なにコレ?」
 酷い第一声をかがみが放つ。確かに怪しい格好だけどコレってなんだよコレって…と、突っ込もうとして、わたしは自分が喋れないことに気がついた。
「光?…なんか人っぽい形してるけど…」
 どうやらかがみの目には、わたしは人っぽい何かにしか見えないらしい。ますます自分が霊魂めいた何かになってると思えてきた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
 かがみの後ろから更に二人の人物…かがみの妹のつかさと、もう一人の友人であるみゆきさんが歩いてきた。どうやら三人でここに来たらしい。
「…あの…これなんですか?」
 みゆきさんが恐る恐るわたしを見ながらそう言った。
「わたしが聞きたいわよ…みゆきならなにか知ってると思ったんだけど」
「すいません…初めて見ます」
 うーむ。みゆきさんですらご存じない、得体の知れないわたし。結構落ち込む。
「お姉ちゃん、ゆきちゃん…あんまり時間ないから…」
 二人の後ろからつかさがせかすようにそう言った。それを聞いたかがみとみゆきさんは顔を見合わせ、わたしに背を向けた。
 そのまま公園にいてもしょうがないので、わたしは三人を追うことにした。ふと、足元に何か落ちてるのに気がついた。
 拾い上げてみると、それは星型のブローチだった。あれ、これには触れるんだ。わたしはソレを持ったまま、公園を出て行く三人を追うために足を速めた。


584 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:07:12.50 ID:SU0Ad4Y0
「…ねえ、アレ付いて来るよ…」
 つかさが不安そうにかがみとみゆきさんに話しかける。まあ、無理もない。得体の知れない人っぽい何かが後ろを付いてくるのだから。
「ほっときなさい。今んところ害は無いんだし」
 かがみの方は特に気にしてないようだ。みゆきさんは口にはしないが気になるようで、わたしの方をちらちら見ている。
 それにしても、道行く人々がみんなノーリアクションなところを見ると、どうやらわたしが見えるのは今のところこの三人だけのようだ。ビバ、友情パワー…いや、わたしと認識はしてくれてないけどね。
「…今からのこと考えると、かまってられないってのが正しいけどね」
 かがみが酷く気落ちした声でそう言った。他の二人も同感なのか、うつむいてしまう。ってーか、公園からのこの道のりは、間違いなくわたしの家への向かう道なんだけど…。
 なんかもう、凄く嫌な予感がする。三人が向かってるのはわたしの家。落ち込んだ三人の表情。霊魂じみた状態のわたし…え、なにこれ?もしかして家ついたらわたしのお葬式が始まってるとか?冗談でしょ?
「…ねえ、あんまり暗い顔はやめよ?こなちゃん、喜ばないよ…」
 つかさ、やめてー!そういう台詞やめてー!
「…そうね」
「…はい」
 ちょっとー!ほんとシャレにならないってー!


 辿り着いたわたしの家を見上げる。とりあえず、お葬式の垂れ幕とかは無い。けどまだ安心は出来ないね。お葬式はすでに終わっていて、みんなは仏壇に花を供えに来たのかもしれないし、もしかしたら植物状態のわたしが部屋で寝ているのかも知れない…やめよう。なんか切なくなってきたよ。
「…やあ、いらっしゃい」
 わたしが考え込んでいる間に、かがみ達がインターホンを押してたらしく、中からお父さんが出てきた。わたしが応対しないあたり、凄く不吉。
「今日は、大丈夫なのかい?」
 なぜか不安そうに聞くお父さんに、かがみが首を振ってみせる。
「…わかりません…でも、そうじろうさん…」
「…ああ、なにも…しないよ」
 何か凄く意味深な会話。一体どうなっているのやら。
 わたしが悩んでいると、みんなが家に入ろうとしてたので慌てて後を追う。わたしの目の前でドアが閉められたけど、すり抜けれるので無問題。
 しかし、なんでドアとかすり抜けられるのに、床とか地面はすり抜けないんだろうか。きっとこれはわたしは実際に床の上に立っているのではなく、立っていると思い込んでいるだけなんだ。
 空を浮いていると思い込めば浮けるんだろうけど、身一つで空を飛んだことの無いわたしはそう思い込むことが出来ない。床を歩くのはいつもやってることだから、無意識にイメージできるというわけだ………いや、それだとドアをすり抜けるなんてやったことないのになぜできる?
 などと、わたしが勝手に脳内で設定を組んで矛盾に悶絶してると、みんなを見失ってしまった。余計なことは考えないでおこう。たぶん、わたしの部屋に行ったんだろうな。


585 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:08:57.99 ID:SU0Ad4Y0
 わたしの部屋に入ってみると、予想通りみんながいた。何故か正座してる。そして、その前にあるベッドに座っているのは…わたしだ。
 わたしと寸分違わぬ顔形をした、泉こなたがそこにいた。じゃあ…わたしは一体誰?ってかなに?
「…三十分、遅刻だね」
 えらそうに腕を組みながら、みんなに向かってもう一人のわたし…えーっと仮にこなた二号としこうか…がそう言った。
「ま、まってよ。約束は一時でしょ?まだ十二時半じゃない…」
 かがみが慌てて反論する。三十分遅刻どころか三十分早いじゃん。ボケてるのかこのこなた二号は。
「うん、さっき気が変わって、集合時間十二時に変えたから」
「き、聞いてないわよ…」
「今言ったよ」
「そんな…」
 …なにこの理不尽。つかさと、みゆきさんも絶句してる。ってか、かがみよく怒んないな。いつもならゲンコツの一発でも飛び出しそうなのに。
「それじゃ、罰ゲームだね…つかさ」
「ひっ!?」
 つかさがビクリと身体を震わせ、泣きそうな顔になる。どういう罰ゲームか知らないけど、つかさの怯えようが尋常じゃない。そのつかさの前に、かがみが立ちはだかった。
「罰ゲームはわたしだけのはずよ…それだけは譲れないわ」
 必死さすら感じるかがみの真剣な声。それを聞いたこなた二号は、しかめっ面をしてベッドから立ち上がった。
「…まったく。かがみは妹思いだねえ…でも、かがみのそう言うところ」
 そして、かがみの右肩に手を置く。
「嫌いなんだよね」
 こなたに号が呟いた次の瞬間、二人の身体が床に沈んだ。
「いっ!?いだっ!ちょ、いきな…ひぃぃっ!」
 かがみの悲鳴が部屋に響く。こなた二号はかがみの右手をしっかりとロックして自分の腋に挟んでる。いわゆる腋固めだ。
「あ、そうそう。つかさにみゆきさん。二人はお互いに両手を握り合っててよ」
 かがみに腋固めをかけながらも、こなた二号は軽い口調でつかさとみゆきさんに指示を出す。二人は素直にそれに従って、お互いの両手をしっかりと握り合った。
 …え、いや、ちょっと待って。なにがどうなってんの?あんまりな出来事で、思考がついていかないんだけど。
「こ、こな…いた…痛い…シャレになんないって…これ…」
「何言ってんのかがみ。罰ゲームなんだから、痛いの当然でしょ?頑張って耐えなよ…っと」
「い、いいいいっ!?」
 こなた二号が体を反らせると、かがみの悲鳴が一段と大きくなった。無理だ。耐えれるわけが無い。関節技ってのはそんな甘っちょろいもんじゃない。
「…お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん…」
 つかさはそう呟きながら、目を瞑って必死に何かに耐えている。みゆきさんは唇を噛んで、つかさの手の色が変わるくらい強く握り締めていた。
 ああ、そうか。手を握り合わせていたのは、耳を塞がせないためか。かがみの悲鳴を二人に聞かせるためなんだ。
 これ…夢だよね?夢なんだよね?わたしがみんな相手にこんな悪意向けてるなんてありえないよね?
 夢なら早く覚めて。わたしがそう強く思った瞬間、ゴキンッという鈍い音が聞こえた。同時に、かがみの目が大きく開かれる。
「ひっいいいぃぃぃぃぃlぃっ!!」
 そして、聞いたことも無いような大きな悲鳴を上げた。肩だ。肩を外されたんだ。
 なんで?なんでこんなことするの?わけ…わかんない…。
「…あ…ああ…う…」
 肩を抑えながら床にうずくまってるかがみ。それを立ち上がったこなた二号が見下ろしている。
「あーあ。かがみがあんまり暴れるもんだから、外れちゃったよ」
 頬をかきながら、悪びれもせずにそう言い放った。
 違う。絶対に違う。こんなのわたしじゃない。
「お姉ちゃん…お姉ちゃん!」
 つかさがかがみのところに行こうとしてるけど、みゆきさんがしっかり手を握って行かせない様にしている。
「みゆきさん、正解。手、離したらかがみの肩がもう一個外れることになるよ」
 その二人の様子に気がついたこなた二号が、平然とそう言い放った。
 もういやだ。わたしは耐えられなくなって、部屋を飛び出した。なんで…なんでわたしがこんなもの見なきゃいけないの。どうしてあのこなた二号…いや、もうあんな奴はクソチビでいい…クソチビはあんな酷いことを友達に対してできるの。
 ぐちゃぐちゃになってきた思考の中で、わたしはお父さんのことを思い出していた。お父さんならわたしを止められるはず。でも、なんで来ないんだろう。かがみの悲鳴だって聞こえてるはずなのに。
 わたしは、お父さんの部屋に行ってみることにした。

586 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:10:05.05 ID:SU0Ad4Y0

 お父さんの部屋に入ったわたしが見たのは、部屋の中央で正座をしているお父さんだった。太ももの上にのせた拳がぶるぶると震えている。
「…すまない、すまない…すまない…」
 近づいてみると、そう呟いてるのが聞こえた。
 おかしいよ。なんでこんなところでじっとしてるの。なんで止めに行かないの。娘が友達にあんなことをしてるってのに、なんでなにもしないの。
 お父さんは、わたしを叱ってくれたでしょ。わたしが聞き分けないときは、頭殴ってでも止めたでしょ…なのに…なのになんでそうしないんだよ!滅茶苦茶してるじゃん!あんなのほっといてどうするんだよ!
 わたしはお父さんの体を揺さぶろうとしたけど、すり抜けて掴むことはできなかった。
 こんなわたしじゃ、どうにも出来ないんだから…なんとかしてよお父さん…。
「…やめてください!泉さん!」
 わたしがお父さんの横でうつむいていると、わたしの部屋の方からみゆきさんの悲痛な声が聞こえてきた。
 それを聞いたお父さんは、血が出るんじゃないかってくらい強く拳を握り締めた。目はしっかりと瞑り、ギリギリと音が聞こえそうなくらいに歯を食いしばっている。まるで、耐え難いものに耐えるみたいに。
 わたしはもうここにいることも耐えられなくなって、廊下に飛び出した。
「無茶です!出来るはずありません!」
 廊下でどうしようもなく立ち尽くすわたしの耳に、またみゆきさんの声が聞こえる。これ以上なにがあるっていうんだよ…。


 ふらふらと部屋に戻ったわたしが見たのは、もう一度かがみを押さえ込んでるクソチビだった。
「専門の知識も無いのにそんなことすれば、悪化させるだけです!」
 そのクソチビに、みゆきさんが何か必死に懇願している。
「大丈夫だよ、みゆきさん…やり方は漫画で見たから」
「…漫…画…そんなもので…」
 みゆきさんが卒倒しそうな勢いで、体をふらつかせる。それを支えてるつかさは、恐怖でなのか顔が真っ青だ。
「それじゃいくよ、かがみ。歯、食いしばってね」
 クソチビの言葉に、かがみの返事は無い。脂汗を流しながら、荒い息を吐いているだけだ。
 ちょっと待ってよ…もしかしてこいつ、かがみの肩を…。
「ほいっと」
 クソチビの軽い声と共に、外れているかがみの肩からゴリッと鈍い音がした。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
 かがみの悲鳴は、もう声になってない。クソチビは外れた肩をはめたんだ、漫画で読んだ程度の知識で。
「かがみ、生きてるー?ちゃんと肩はまったー?」
 うつ伏せに床に寝転んで、ピクリとも動かないかがみの顔を覗き込みながら、クソチビがそう聞いた。かがみは何も答えない。というより、答えられるような状態じゃないんだろう。痛みに耐えるのに精一杯なのか、それとも気絶してしまったのか。
 クソチビはしばらくかがみの顔を覗いていたが、立ち上がって眠そうに大きくあくびをすると、ベッドに寝転んだ。
「…眠いし飽きた。もう帰っていいよ」
 そのクソチビの言葉を聞いた瞬間に、わたしの頭の中で何かがぶちきれた。
 仰向けにベッドに寝転んでいるクソチビに近づいて、その顔面に思い切り拳を振り下ろす。拳はクソチビには当たらずすり抜けたけど、わたしはお構いなしに何度も拳を振り下ろし続けた。
 あたれあたれあたれあたれあたれ…あたれよ!一回でいいから!鼻へし折れて涙と鼻血まみれになってみんなに謝れよちくしょーっ!
 どんなにやってもかすりもしない。わたしは疲れきって、手を下ろした。ふと見ると、クソチビは目を瞑って寝息を立てている。わたしの怒りなんて、意にも介してない。いや、そもそもわたしが見えてないのかも…わたしは、なんにも出来ないんだ。悔しさで目の前が真っ赤になりそうだ。
 部屋を見回すと、かがみたちはもういなかった。わたしは呪われろとばかりにクソチビを睨みつけて部屋を出た。


587 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:11:06.01 ID:SU0Ad4Y0
 廊下に出ると、玄関の方から声がした。かがみ達が帰るところらしい。よく見てみると、お父さんがみゆきさんに万札らしきものを渡していた。お金で解決…?もう、なんて言っていいんだろ…。
「…ほんとに大丈夫かい?俺が利用してる接骨院を紹介しようか?色々と融通が利くと思うんだ…」
 お父さんが心配そうにかがみにそう言った。みゆきさんに体を支えられてるかがみは、そのお父さんに笑顔を見せた。
「だ、大丈夫です…そんなに心配することじゃ…ないですから…」
 顔引きつってるし、声が涙声になってるよかがみ…無理してるのバレバレだよ…。
「…それでは、わたしたちはこれで…」
 みゆきさんがそう言ってお父さんに頭を下げ、かがみを支えながら玄関から出て行った。顔を青ざめさせたままのつかさがその後に続く。
 わたしは、動かないお父さんが気になったけど…かがみ達の後を追うことにした。



 わたしはかがみ達の後ろを歩きながら、考えていた。かがみ達はどうしてあのクソチビに抵抗しないんだろうって。
 アレがわたしとまったく同じなら、格闘技経験者なんだろうけど、そんなことはどうということはない。わたしとかがみ達では体格でも人数でも違うからだ。
 わたしが通っていた道場の先生が言ってた。柔よく剛を制すってのはただの願望だって。そんなものが成立するのは、体格や体重が同じなときだけだって。本気の喧嘩になったら、小さい者が勝つには完全な不意打ちか武器に頼らないと無理だって。
 それに、運動音痴のつかさはともかく、かがみとみゆきさんはわたしにそう劣らない運動神経だし、筋力や体力となるとたぶんわたしより上だ。そこに体格差や人数差が加わると、わたしが勝つ可能性なんてまったくない。
 それに、お父さんがいる。あんまり信じられないんだけど、お父さんはわたしより運動が出来たりする。体格差は半端じゃないし、男と女の差で筋力等はいわずもがなだ。
 なのに、誰もアイツに逆らわない。みんなで申し合わせたように、好き勝手にやらせてる。じっと耐え忍んでる。
 ホントに、なんでだろ…。
「…かっこつけてあんな事言ったけど、やっぱり接骨院には行ったほうがいいわよね…」
 わたしが考え込んでる前で、かがみがポツリとそう呟いた。かっこつけてるつもりだったんだ、アレ。もう見栄っ張りにもほどがある。
「そうですね…脱臼は放っておくと取り返しがつかなくなるそうですから」
「ちゃんとはまってる気もするけど…」
「素人判断は禁物です。かがみさん」
「…そうね…でも、今回はどう言い訳しようかしら…つかさもちゃんと口裏合わせてよ?…ってつかさ?」
 かがみは後ろを歩いているつかさの方に首だけを向けてきた。そのつかさは、わたしの方を見ている。
「…お姉ちゃん。この子ついてきてるよ」
 そして、そう言いながらわたしを指差した。大きさで子供と思われてるのかな…。
「みゆき、ちょっと止まって」
 かがみがみゆきさんにそう言って、みゆきさんから離れてわたしの方にきた。少しふらつく足取りが痛々しい。
「あんた…こなた殴ろうとしてたでしょ?」
 かがみ…あんな状況で見てたんだ。
「余計なことはしないで。そのときが来たら、わたしがちゃんと一発いいの入れとくから」
 …言ってる意味がよくわかんない。アレを放っておけっての?
「あいつがどれだけ嫌われようとしたって、わたし達はそうならないわ…あいつの思い通りになんか、絶対なってやらない。一生好きでいてやるから」
 かがみの目が怖い。なにか執念みたいなものすら感じる。そして、興奮しすぎたのか後ろにフラッと倒れかけ、それをみゆきさんが慌てて支えた。
「…ごめん…みゆき…」
「いえ…あまり無理をしないで下さい…」
 そのまま、二人はまたわたしに背を向けて歩き出した。ふと見ると、つかさがこっちをじっと見ていた。
「そう言うことだから…キミ、何も言わないけど喋れないのかな?」
 わたしはうなずいて見せたけど、うまく伝わってるのかわからない。
「でも、出来たらこなちゃんに伝えて欲しいな…わたし達は絶対に引かないって」
 そう言って、つかさはわたしに向かって軽く手を振ってから、かがみ達を小走りで追いかけていった。
 わたしはそれをボーっと見送るしか出来なかった。
 かがみ達はあの仕打ちに抵抗しないどころか、受け入れている?…なんで?



588 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:14:07.33 ID:SU0Ad4Y0
 結局、わたしはそのまま家に戻ってきていた。ドアをくぐると、お父さんが玄関にまだいた。手には何故かゲームの箱を持っている。
 よく見てみると、それはわたしがずっと発売日を楽しみにしていたゲームだった。そういや、今日発売だっけか。
「君か…戻ってきたんだね」
 お父さんがゲームの箱を見ながら、そう呟いた。わたしはしばらく、自分のことを言われているのに気がつかなかった。当たり前の話だが、お父さんに君とか言われるの、初めてだったから…。
「君は、なんとなくこなたに似てるな」
 そう言って、お父さんはため息をついた。お父さんにも、わたしが見えていたんだ。そして、わたしにより近い人だからか、かがみ達よりわたしがはっきり見えるらしい。
 わたしはゲームの箱を指差してみた。なんとなく、お父さんならわたしの意図が通じるかもしれない。
「ああ、これかい?…かがみちゃん達、渡しそびれたらしくてね。後でこなたに渡して欲しいって」
 もしかしたら、かがみ達はあのクソチビにパシらされてたのかな…お父さんが渡してたお金は代金か。
 お父さんはわたしが見えてる。わたしの意図も少しは分かってる。だったらあの時、わたしが何かを訴えかけてるのが分かってたはず…お父さんもかがみ達と同じで、あのクソチビのことを受け入れてるっていうの?


 わたしは自分の部屋にゆっくりと入った。正直、あいつの顔なんか見たくも無いんだけど、なんとなくここに来なきゃいけないような気がした。
 クソチビはベッドに仰向けに寝転びながら、手に持った星のブローチを眺めていた。あれは、わたしが公園で拾った奴だ。殴りつけようとした時にでも落としたのかな。持ってたことすら忘れてたけど。
「…なんだ、戻ってきたんだ」
 クソチビはそう言いながら上半身を起こして、わたしの方を見た。こいつにもわたしが見えてたんだ。
「せっかく寝たふりまでしたのに…また、殴ろうとしてみる?ま、さっきがさっきだから、無理だろうけど」
 言うことがいちいち癇にさわる。ホント腹立たしい。
「それに、キミに殴らせるわけにはいかないかな…かがみとかお父さんとかならいいけど」
 なんだよそれ。かがみ達になら殴られてもいいっての?殴らせるためにあんなことしてたっての?
「キミはわたしにそっくりだね…ドッペルゲンガーって奴なのかな?だったらわたしはやっぱ死ぬんだろうね。ホント、ついてないな…」
 やっぱ死ぬ?なんのこと?…なんかおかしな事情がありそうな…ってか、こいつにはわたしがはっきり見えてるんだ。わたしにより近いってか、本人だしなあ…認めたくないけど。
「わたしさ、小さい頃からついてなくてね…いつも肝心なところで躓いててさ」
 なんか語りだした。まあ、なにか分かるかもしれないから、聞いておこうか…。
「高校入った時にかがみ達とあってさ、やっとわたしにも運が向いてきたって思ったんだよね。いい友達が出来たって。これで少しは色々まともになるかなって」
 なんか…わたしとコイツは随分と違う気がする。
「そうしたら、二年になったときにわたしに病気が見つかってさ…もって一年だってさ…わたしの命が」
 …なにそれ…病気?わたしは全然そんなの…もしかして、これって夢とかじゃなくてパラレルワールドってやつ?
「一応、治すための手術はするけど、成功率が低いらしくてさ…そんなの失敗するよね。わたし、運が無いんだし」
 ほんの少しだけ違う世界…わたしの運が無いだけの世界。
589 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:16:28.46 ID:SU0Ad4Y0
「最初はやっぱりってしか思わなかったんだ。やっぱり、ついてないやって…でも、友達が…いい友達が出来たこと思ったら、なんだか今までより辛くなっちゃって…わたしが死んだら、みんな悲しむだろうなって…かがみ達、優しいから…」
 自分が死んだら…わたしはそんなこと、考えたことも無い。
「だから、嫌われようとしたんだ。みんなに酷いことして、みんながわたしを嫌うようにしようって…そうすれば、誰も悲しまなくなるから…」
 かがみが言ってたのはこのことか…かがみは分かってたから、あんな風に…。
「でも、誰も嫌ってくれないんだ。何やっても、なに言っても、みんな変わらないんだ…」
 そして、コイツ…この世界のわたしは分かってない。
「…今日のは効いたよね?アレだけやれば大丈夫だよね?…みんな、わたしを嫌いになるよね…」
 もう一人のわたしは、懇願するような目でわたしを見ながらそう聞いてきた。痛々しいほどに伝わってくる。そうあって欲しいという願望が。でも、わたしは首を横に振っていた。ここで嘘をついても何も変わらない気がしたから。わたしの答えを見たもう一人のわたしは、絶望した表情を見せた後、ボロボロと泣き出した。
「なんで…なんでだよ…どうしてアレで嫌ってくれないの!?おかしいよみんな!こんな酷い奴をなんで嫌わないんだよ!」
 もう一人のわたしは、泣きながらわたしにすがり付こうとして、すり抜けて床に倒れ付した。
「…どうすりゃいいんだよ…もうわたし、明日から入院なのに…このまま…終わっちゃうの…?」
 そのまま泣き続けるわたしに、わたしは何も出来ない。この世界に来てから、最初から最後までわたしは無力なんだ。
 ホントに、なんでこんなことになってるんだろ…どこにも悪意は無いのに、少し歯車が狂っただけで、こんなにも歪んでしまうものなんだろうか。
 ふと、わたしの足に何かが当たった。この世界でわたしが唯一触れられるもの、星のブローチだ。わたしはそれを拾い上げた。
「…それ、キミのなの?…知らないうちに部屋にあったんだけど…なんか凄く気になって見てたんだけど、キミのなら返すよ…」
 いつの間にか泣き止んでいたもう一人のわたしが、こっちを見ながらそう言った。
 わたしは無力だ。わたしはわたしに何も出来ない。そんなわたしがわたしにあげられるものは、きっとこれくらいなんだろう。
「…え?」
 わたしが差し出した星のブローチを見て、もう一人のわたしがキョトンとした表情をした。
「くれるの?これ」
 そう呟くもう一人のわたしに、わたしは深く頷いて見せた。恐る恐るといった感じに、もう一人のわたしは手を伸ばして、わたしから星のブローチを受け取った。
「…ありがとう」
 そして、それを胸に抱いて、控えめに微笑んだ。
 …あれ…もしかしてわたし可愛い?…なんて、ナルシーな感覚を覚えたところで、急に目の前が暗転した。


590 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:17:20.82 ID:SU0Ad4Y0


「…ねえ、こなた」
「…うん、わかってる」
 肩になにか落ちた感触。上には旋回するなにか大きな鳥。かがみに言われるまでもなく、フンを落とされたことはわかる。
 わたしは無事にもとの世界に戻っていた。そして、何時も通りに登校しようとして、あの世界に置いてきたもの…星のブローチが何なのかを理解していた。
 アレは多分わたしの幸運の欠片なんだろう。なんていうか、朝から微妙についてないんだ。目覚まし時計は壊れてるし、朝ごはんの目玉焼きをわたしの分だけ焦がすし、靴紐は切れるし…鳥のフンは食らうし…。
「…あ、頭じゃなくて良かったね…こなちゃん…」
 いや、ホントに。一生懸命良いところを探してくれてありがとう、つかさ。
「泉さん、少しじっとしてて下さいね。今取りますので…」
 みゆきさんがティッシュを使って、わたしの肩からフンを取り除きにかかった。
「ごめんねみゆきさん」
「いえ、困ったときはお互い様ですから」
「お互い様…ねえ…」
「なにが言いたいの、かがみ」
「べつにー」
 わたしがかがみを睨んでる間に、みゆきさんは苦笑しながらフンを取り除いていた。
「少し跡が残りますね。ウェットテッシュかなにかあれば良かったのですが」
「いや、いいよ。十分十分」
 申し訳なさそうに言うみゆきさんに、わたしは手を振って見せた。
「ほい、みゆき」
 そして、かがみがみゆきさんに何かを投げ渡した。
「あ…ふふ、ありがとうございます、かがみさん。泉さん、もう一度肩をお借りしますね」
 みゆきさんが再びわたしの肩を拭きにかかる。手に持ってるのは、ウェットティッシュの箱だ。
「かがみ、なんでそんなもの持ってるの?」
「いいでしょ、別に」
「あーもしかしてかがみってあぶら」
「ちぇい」
 わたしの言葉はかがみのチョップで中断させられた。そのやり取りを見ていたみゆきさんとつかさが苦笑している。
「…泉さん、終わりましたよ。ほとんど目立たなくはなりましたが、代えの制服があるならクリーニングに出した方がいいかも知れませんね」
「うん、そうするよ。ありがとうみゆきさん…いやー持つべきものは友達だねー」
 わたしがそう言うと、かがみは怪訝そうな顔をした。
「ホントにそう思ってるの?なんかアンタが言うと嘘くさいのよね」
「ホントに思ってるよー…その証拠に後でみんなにジュースを奢ってあげよう」
 あの世界の、あのわたしを見た後だから、心から友達のありがたさを思う。今の関係は、あの世界のように少し歯車が狂えば歪んでしまうのかもしれないから。だから、今の心地よさを大切に思える…まあ、普段のわたしがわたしだから、急には伝わってくれないだろうけど。
 あのわたしはどうなったのだろうか。わたしの幸運で、少しはましな展開になってるんだろうか。
「…あ」
 かがみがわたしの方を見ながら、間抜けな声を上げた。
 少しましになったのなら、早めに幸運を返して欲しいな。まだ上を回っていた鳥からの、二発目のフンを逆の肩に食らいながら、わたしはそう思っていた。


591 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:19:19.33 ID:SU0Ad4Y0



 わたしは人気の無い中庭の一角で、校舎に持たれながら星のブローチをぎゅっと握り締めていた。
 あの日、わたしの部屋に来たわたしそっくりの何かがくれたものだ。この星のおかげか、わたしの手術は無事成功に終わり、半年の入院期間を経て復学することが出来た。
 そして、復学して最初に担任の教師に告げられたのは、留年の決定だった。まあ、無理もないことだ。半年の入院で出席日数は足りないし、成績も悪いし、入院する前に二回停学を食らってるし。
 ホントは、復学しないで学校なんて辞めてしまおうと思ってたけど、ちゃんとけじめはつけなきゃいけないと思って、ここに来ている。
 手術前も、その後も、かがみ達は一度も見舞いに来ることはなかった。手術の成功は一応みんなに伝えているはずだったけど。
 今頃になって…病気が治った今頃に、わたしは望みどおりに嫌われたみたいだ。この星がくれた幸運は手術の成功だけで、あとはいつも通りのついてないわたしだったんだ。
 失意を通り越して、放心してたわたしにかがみからメールが来たのは、退院する一日前だった。
 そして、そのメールに書いてあった通りに、わたしはこの場所でかがみ達を待っている。かがみ達が用意した、けじめをつける場所に。
「…お、ちゃんと来たんだ。えらいえらい」
 軽い口調でそう言いながら、ここにわたしを呼び出した張本人のかがみが歩いてきた。その後ろにはつかさとみゆきさんもいる。わたしは星のブローチをスカートのポケットに仕舞いこんだ。
「けじめはつけないといけないからね」
 抑揚の無い声でそう言うわたしに、かがみは苦笑した。
「そうね…じゃ、みゆき、つかさ、こなた押さえて」
 かがみの指示に従って、つかさとみゆきさんがわたしの左右に立って腕をしっかりと掴んだ。
「…こんなことしなくたって、避けないよ」
 わたしがそう言うと、かがみは首を横に振った。
「アンタ運動神経良いんだから、反射的に避けちゃうかもしれないでしょ?それに、軽いから吹っ飛んで威力が落ちちゃうかもしれないし」
 念入りだなー…ま、わたしがやってきたことを考えたら、仕方ないけどね。
「じゃ、いくわよ。つかさもみゆきも逃げちゃダメよ?」
「う、うん…」
 つかさは殴られようかってわたしより怯えてるなー。
「はい…でも、あまり全力では殴らない方が良いかと…」
「なに言ってるのみゆき。こいつ相手に手加減無用よ」
 わたしもそう思う。手加減なんてして欲しくない。
「てぇえいっ!」
 気合の入った声と共に、わたしの右頬に衝撃がきた。少し遅れて、激痛が来る。歯は折れなかったみたいだけど、口の中を切ったらしくて血の味が広がる。
「…いったーい…」
 そして、殴ったかがみは左手を押さえて半泣きでしゃがみこんでいた。たぶん、人を殴りなれてないから、手首を傷めたんだろう…。
「かがみさん…だから少し手加減しましょうって…」
 わたしから離れたみゆきさんが、かがみに近寄って傷めた手を撫で始めた。
「あー…さっきのはわたしのじゃなくて、かがみの手を心配してたんだ」
 思わず呟いてしまったわたしを、みゆきさんが真剣な目で見てきた。
「当たり前です」
 きっぱりと言われた。コレぐらい嫌われると、逆にスッとする。
「泉さんがわたし達にしたことは、けして許されることではありませんから」
「うん、分かってる…分かってるよ」
「わたし達に嫌われようだなんて…わたし達の想いを無視して、勝手にそんな事…」
 みゆきさんの目に涙が浮かんできた。そして、まだわたしの腕を掴んでいるつかさの手に力が篭った。
「…こなちゃん…だから、わたし達は絶対にこなちゃんを嫌いにならないって決めたんだよ…一生こなちゃんを好きでいるって:
 わたしのやろうとしてたこと…全部わかってたんだ…わかってて、あんな…。
「まあ、そう言うことだから…お見舞いに行かなかったのと、この一発はアンタにわたし達の決意を示す愛の鞭ってわけよ」
 痛めた手をプラプラさせながら、かがみがそう言った。いや、なんか意味が分かるような分からないような…。
「と、言うわけでね。コレで全部チャラ…それでいいでしょ?」
 そう言いながら、かがみがわたしに手を差し出してきた。わたしは、一瞬だけ躊躇して…その手を握った。その手に、さらにつかさとみゆきさんが手を重ねてくる。
「…みんなおかしいよ」
 わたしはそう呟きながら、笑っていた。
592 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:20:32.34 ID:SU0Ad4Y0
「でも、わたし留年決まって学年離れちゃうし、今まで通りには難しいかもね」
 わたしがそう言うと、かがみ達は顔を見合わせてクスッと笑った。
「心配ないわよ。わたし達も留年決まったから」
「………はい?」
 今のわたしは多分、目が点になってる。
「え、え、ちょ、なに?留年?みんなして?」
「そうよ。大変だったんだから。わたしとつかさはもう家の中じゃ痛い子扱いだし、みゆきは勘当されかかったしね」
「い、いやいやいや。おかしいよ…なんてーか、おかしい通り越しておかしいよ。なんでそんなことになってるの?」
「そりゃあ…」
 かがみがわたしの首に手を回してきた。顔近いって。
「アンタを逃がさないためよ」
 なんかゾクッと来た。
「うんうん。こなちゃんが違う学年になったら、新しい友達作っちゃうかも知れないしねー…こなちゃんの友達はわたし達だけだよ」
 怖い。つかさ、それ怖いって。
「友情に殉じるって素晴らしいですよね」
 いや、ちっとも素晴らしくないからみゆきさん。
「ゆきちゃん、またそれ言ってる」
「よっぽど気に入ったのねそれ…黒井先生の前で言って、思い切り頭どつかれたのに懲りてなかったのか…」
 わたしを挟んで談笑してる、歪んだ友情の友達たち。
 こんな友達が出来ちゃって…ホント、わたしはついてないな。


 ふと思い出して、わたしはスカートのポケットに手を入れた。
 用が済んで持ち主の元に戻ったのか、星のブローチはいつの間にか無くなっていた。




― 終 ―
593 :幸運の星 [saga]:2010/04/23(金) 01:21:01.65 ID:SU0Ad4Y0
以上です。

ビバ、友情。
594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/23(金) 10:13:06.05 ID:xTDyxD6o
>>593
乙です。
こういったお話は苦手なので自分からすすんで読みたいとは思わないのですが、
なぜか惹きつけられて一気読みしてしまいました。
読後感もいいお話でした。
GJ!
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/23(金) 21:36:08.15 ID:syie1EAO
>>593
あんた、すさまじいな。
クソチビがかがみを苛めてるシーンなんて、今まで色々なリョナ系やグロ系のSS見てきたけど、これだけ痛々しく感じたのは初めてだわ……。
こなた視点だから、語りもこなた風味の口調。この口調がなかなかうまい感じ。
ただ一つ、もう一人のこなた(クソチビ)のかがみを苛める気持ちだけが理解しかねるなww

GJでした。
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/24(土) 05:38:55.18 ID:m51R7eUo
>>593
乙。ただの黒こなたかと思ったら……
冒頭のおかげか、さほど欝っぽくは感じなかったな
よかったよ〜、GJ!
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 17:25:48.11 ID:Sy24YXA0
コンクール『呪縛』の作者です。この作品は当初二部構成で作る予定でした。
しかしつかさの部分を作った時点で既に締め切りの期限が近かったので二部目は諦めました。

もう一つの物語が完成したので、一般作品で投下します。(コンクールは終了しているので追加や修正はいいと聞いています)

興味ない方はスルーでお願いします。 11レス使用予定です。
598 :呪縛(みゆき編) 1 [saga]:2010/04/24(土) 17:27:48.11 ID:Sy24YXA0
 この物語は『呪縛』を既に読んでいることを前提に作りましたので注意して下さい。 

 二年の後半が過ぎようとしてたある日でした。私は放課後、学級委員の議題について調べ物を図書室でしていた。調べ物は思いのほか早く終わり、
図書室を出ようとした時だった。何気に本棚を見ると一風変わった本があるのを見つけた。何気に私はその本を手に取った。
古い感じの本。タイトルは『おまじない集』と書かれていた。頁を捲ると大きく貸し出し禁止と印が押されていた。更に頁を捲ると、古今東西の呪術が事細かに
紹介されていた。興味を持ったのが普通のおまじないの本と違い、解き方も書かれている事や使用上の注意書が書いてあることだった。
それにこの本のおまじないはほぼ全てに図形を書くようになっている。不思議な本だった。私は夢中になって本を読んだ。そこに気になるおまじないをみつけた。
『一緒のクラスメイトになるおまじない』……このおまじないを見て直ぐにかがみさんの顔が浮かんだ。高校になって二年、彼女と一緒のクラスになった事がない。
一緒のクラスになりたい。そう思った。そういえば、つかささんも泉さんもそれを望んでいた。この本のおまじないに願いを込めるのも悪くないかもしれない。
???「すみません、もう図書室を閉めたいのですが……」
みゆき「はっ、すみません、もうこんな時間だったのですか」
図書委員が私に話しかけてきた。もう終業時間がきてしまった。私は夢中でこの本を立ち読みしていたようだった。
図書委員「その本借りますか?」
みゆき「そうしたいのですが……貸し出し禁止のようです」
図書委員「すみません、今日はそこまでにして下さい」
みゆき「そうですね、それでは失礼します」
私は本を元に戻し、図書室を後にした。

 次の日、私は図書室に筆記用具を持って行った。貸し出し禁止の本ならば写すしかない。図書室に着くと早速目的の本を取り写し始めた。
呪文に必要な項目を写していると、おまじないの注意と叶った後の注意の二種類あるに気が付いた。どうせおまじないをするなら完璧にしたい。
私はそう思い、本を全て写すことにした。全て写すのに一週間もかかってしまった。この本を写して気が付いた事があった。
この本のおまじないは呪文を唱えるものは一切ない。紙に図や絵を書いて願いや呪いを込めるものだった。
私は早速『一緒のクラスメイトになるおまじない』をした。紙に図を写し願いを込める。ただそれだけ。気休めみたいなもの。月日は流れていく。
私はクラス替えの時がくるまでおまじないをした事さえ忘れていた。

 そして、その日がきた。
こなた「お、つかさ、みゆきさん、私達一緒のクラスじゃん」
つかさ「本当、やったー!、こなちゃん、ゆきちゃん、三年連続だね」
みゆき「また一年間よろしくお願いします」
こなた「さてと……かがみはどうなっているかな……お、一緒のクラスじゃん」
つかさ「やったー」
飛び跳ねて喜ぶつかささん、両手を握りガッツポーズをしている泉さん、この二人の顔を見て私はおまじないの事を思い出した。
まさか、あのおまじないの効果?。そう考えた方が良さそう、私は心の中で喜んだ。かがみさんが来た。
こなた「お、かがみ、今来たね、私達、一緒のクラスだよ」
かがみ「……そうね」
つかさ「お姉ちゃん、嬉しくないの?」
かがみ「……嬉しいわよ、ただ最近だるくて」
みゆき「具合が悪いのですか?」
かがみ「最近寒暖の差が激しかったからかしらね」
こなた「鬼のかくらん……」
かがみ「こなた、クラスが一緒だと、言っておくけどもう教科書とか、貸せないから、覚悟しなしよ」
こなた「あれ?、怒らない、どうして、本当に体が悪いみたいだ」
かがみ「そんな事で試すな!」

 いつもの泉さんとかがみさんのやり取りが始まった。この一年、一段と楽しくなりそうな。そんな気がした。

つかさ「お姉ちゃん!、お姉ちゃん」
こなた「かがみ、かがみ」
いきなり倒れた。二人がかがみさんを呼ぶ。しかしかがみさんは反応しない。クラスの皆が駆け寄る。先生もそれに気付きかがみさんに近づく。
599 :呪縛(みゆき編) 2 [saga]:2010/04/24(土) 17:31:19.12 ID:Sy24YXA0
 新学期が始まり最初の体育の授業だった。まるで力が抜けたように倒れた。私はかがみさんを起こそうと触った時だった。まるでストーブのように熱かった。
すぐに保健室に搬送された。しかし保健室では手に負えないのでそのまま病院へ運ばれた。付き添いにつかささんが同行した。

 数日が過ぎた。
こなた「白血病?……」
つかささんは黙って頷いた。
こなた「つかさ、悪い冗談を、かがみがそんな病気になるはずないじゃん……冗談だよね……冗談だって」
つかさ「私も、冗談だったらどれほど……」
つかささんの真剣な表情を見て泉さんはかがみさんの状態をようやく理解したようだった。私はつかささん達になって言っていいのか思い浮かばなかった。
こなた「な、何で?、そんなの聞いてないよ、かがみがそんな病気だなんて」
つかさ「最近お姉ちゃんがおかしいのは何となく分かってたけど……そんな病気だんて」
みゆき「白血病は血の病気、確か治療法は全く無いわけではないかと」
つかさ「そう、骨髄移植をすれば助かるって」
みゆき「確か血液の型が合わないと、血縁関係が深いほど型が合うと聞きましたが……」
つかさ「そう、私とお姉ちゃんは双子、二卵性だけど珍しく血の型が同じなんだって……一ヵ月後、骨髄移植することになったんだよ……」
こなた「それじゃ、助かるの?」
つかさ「うん……」
歯切れの悪い返事をする。
こなた「それじゃ、お見舞いに行かないといけないね」
つかさ「それは……治るまで会いたくなって、ゆきちゃんも……」
こなた「なんで」
つかささんは黙ってしまった。
つかさ「ごめん、もう私、お姉ちゃんの所に行かないと」
逃げるように教室を出て行った。泉さんは納得がいかないようだった。
こなた「私、何かかがみ悪い事したかな」
かなり落ち込んでいる様子だった。
みゆき「おそらく、かがみさんの本心は泉さんに会いたいのではないかと」
こなた「それじゃ何で会いたくないだなんて……」
みゆき「骨髄移植をするには、かがみさんの悪くなった骨髄をまず完全に消さなければなりません、それには放射線を照射したり、強い薬を使用します、
     その影響でかがみさんの髪の毛はすべて抜けてしまいます、それに免疫も下がってしまうので無菌室での入院になると思います、
     直接会うことは出来ません、もちろん家族とも、それに薬の副作用でかなり苦しい治療になると思われます……そんな姿を見せたくなではないかと」
こなた「……さすがみゆきさんだね、そこまで知ってたなんて、私達が出来ることって何もないの?」
みゆき「祈ることぐらいでしょうか……」
こなた「祈る……か、何も出来ないのと同じだね、つかさがだけがかがみを救えるのか、その手伝いも出来ないなんて、ごめんみゆきさん、私も帰るよ」
泉さんも教室を後にした。

ふとおまじないの本を思い出した。確かあの本に病気を治す方法も書いてあった。今日はかがみさんの代理で学級委員の会議に出席する。
帰りに図書室で本を見てみよう。

 図書室に入り、本棚を見て愕然とした。本が無い、丁度その本が置いてある所にが空いていた。思い出した。願いが叶うと一年間消えてしまうって書いてあった。
まさかその通りになるなんて。そうだ、家に帰れば写したノートがある。
私はノートを見て唖然とした。写したはずのノートは真っ白になっていた。書いた跡すら見られなかった。一週間もかけて写したはず。あれは全部夢だった?。
あ、そうだ、おまじないの時に使った図形を描いた紙があったはず。机の引き出しを開けて奥にしまった紙を探した……在った。図形を描いた紙は確かに在った。
私はおまじないをしていた。夢じゃない。そのまま図形を描いた紙をしまった。
私はもう一枚、白紙の紙を取り出し机に置いた。病気を治すおまじないに使用する図形を思い出そうと試みた。しかしその図形はかなり複雑で思い出せない。
諦めるしかない。この本は一年で一回しか使えないようになっている。そんな気がした。かがみさんの病気を事前に知っていたら私は病気を治すおまじない
を選んでいた。事前に知る?。今叶っているおまじないを解けばおまじないが叶う前に戻ることが出来る。そうすれば改めてあの本を使って……それはできない。
おまじないを解くと三つのペナルティが課せられることを思い出した。その中の一つに二度と本を見つけることが出来ないと書いてあった。
八方塞だった。私はとんでもない本を使用してしまったのかもしれない。
済んでしまったことをどうこう考えても仕方が無い。今はかがみさんの回復をただ祈ろう。 
600 :呪縛(みゆき編) 3 [saga]:2010/04/24(土) 17:33:03.45 ID:Sy24YXA0
 二ヶ月が過ぎた。かがみさんは一般病室に移るまでに回復をした。面会も許可されたので私達は早速お見舞いに行くことにした。しかし、泉さんだけは
用事があると言うので欠席した。
かがみ「皆、悪いわね」
つかさ「お姉ちゃんはそんな事気にしないで、元気になる事だけを考えて」
かがみ「そうだったわね」
みゆき「思ったより元気そうでなによりです」
つかさ「そういえばこなちゃんどうしてお姉ちゃんのお見舞い欠席したのかな、あれほど行きたがっていたのに……」
その理由に心当たりがあった。
みゆき「すみません、私がいけないのかもしれません、かがみさんの治療の話を泉さんにしたのですが、それが原因かと思います」
かがみ「あいつがそんな繊細な心があるとは思えない、気にするなって」
みゆき「それなら良いのですが……」
つかさ「あ、そうだ、食器を片付けるね」
そう言うとつかささんは食器を持って病室を出て行った。私とかがみさんだけになった。するとかがみさんは私に一枚の紙を渡した。
みゆき「手紙、ですか?」
かがみ「つかさが居ないから今のうちね、今朝、こなたが来てね、これを置いていったわ、そして直ぐに帰った」
みゆき「泉さんはお見舞いには行かないと言ったのですが」
かがみ「……こなたは、つかさに知られたくなかった、だから別行動をした」
かがみさんの言っている意味が分からなかった。
かがみ「つかさが帰ってくるといけないからそのまま手紙を持ってて」
みゆき「持っているのは良いのですが、内容は私が読んでもいいのでしょうか?」
かがみ「つかさに内緒って書いてあるだけだから構わないわ」
するとかがみさんの目が潤んでいた。
かがみ「あいつ、こなたは私よりも重い病気だって書いてあった、私が退院するが先か、こなたが亡くなるのが先か……別れの手紙だったわ」
みゆき「なっ?、」
かがみ「私はそんな手紙なんか受け取らないって言って、でも、つかさにはこの事は言わないで、それだけはこなたと同じ意見だから……」
かがみさんはそのまま布団の中に潜り込んでしまった。私は硬直して動けなかった。
つかさ「ただいま……って、お姉ちゃんどうしたの?、具合でも悪いの、ナースコールしようか?」
つかささんはベットに駆け込んだ。
かがみ「なんでもないわよ、久しぶりにみゆきが来たから……ちょっと疲れただけ……」
みゆき「すみません、長居しすぎました、今度は泉さんも連れてきますので」
つかさ「あ、ゆきちゃん……」
つかささんの制止を振り切り私は病室を出た。事態は私が思っているより悪い方向に向かっている。まさかあのおまじないのせいなのでは?。
おまじないの効果を切ることはいつでも出来る。しかしそれによるペナルティが私にとっては重過ぎる。まだなにか打開できる方法があるかもしれない。

 次の日の昼休み、私は泉さんを屋上に呼んだ。
こなた「みゆきさんが私をこんな所に呼び出すなんて、しかも二人きりなんて」
私は黙って昨日の手紙を泉さんに差し出した。流石の泉さんも驚いた様子だった。
みゆき「この手紙の内容、冗談や嘘ならこの場で破いて下さい」
私も泉さんの冗談であって欲しいと願った。しかし泉さんは破ろうとしなかった。
こなた「かがみ、この手紙受け取らなかったんだね……そうだよね、いつも私は嘘や悪戯ばっかりやってるから……自業自得だね」
この言葉は私が一番聞きたくなかった。
みゆき「……本当なのですか、何時からなのですか?」
こなた「三年なってすぐかな……気付いたの」
おまじないの願いが叶った時期と一致している。私は確信した。あのおまじないせいでかがみさん、泉さんがこんな事になってしまった。
こなた「私、これからどうすればいいかな?、何していいか分からないよ……」
みゆき「えっ?」
励ましの言葉をかける?、それとも慰めの言葉……、病気で死んでいく人になんて言葉をかける?。何も思い浮かばない。
みゆき「と、とりあえずこの事をつかささんにも……」
601 :呪縛(みゆき編) 4 [saga]:2010/04/24(土) 17:34:29.30 ID:Sy24YXA0
こなた「それは止めたほうがいいと思う」
みゆき「しかしながら、時が経てば必ず分かってしまいます」
こなた「そうだね、でも、出きれば私が死ぬ直前までつかさには知られない方がいい、みゆきさんだってそう思ったからこんな所に私を呼んだんでしょ、
     ここに人が来るのはゲームでは告白か自殺の時くらいだよ、みゆきさん」
私は無意識につかささんを避けていたことに気が付いた。泉さんもかがみさんも同じことを考えていた。もうこの話は続けなくていいかもしれない。
みゆき「すみません、泉さんのこれからどうすればいいと言う質問に明確な答えを私は持っていません、でも、もう一度、かがみさんに会われてみては?」
こなた「近いうちにね、いくらみゆきさんでも、即答できる質問じゃないことくらい分かるよ……もう戻ろうか、あまり遅いといくら鈍感なつかさでも怪しまれるよ」
みゆき「戻りましょう……」
私は逃げてしまった。答えを出せないから代わりにかがみさんに答えてもらおうとしていた。かがみさんもそれどころではないはずなのに。

 教室に戻ると……つかささんの姿が見えなかった。
こなた「あれ?、つかさはどうしたんだろ?」
クラスメイト「あっ、泉さん、高良さん、さっき黒井先生が来てつかささんを連れて行ったよ、何か先生、慌てていたよ」
私と泉さんは顔を見合わせた。まさか……私達は職員室へ急いだ。職員室に着くとすでに先生とつかささんは病院に向かったの事だった。
かがみさんの容態が急変したようだ。泉さんは教室に戻るように言われた。私は学級委員代理として病院に行くように言われた。
みゆき「私は昨日すでにかがみさんと会ってきました、今、かがみさんが一番会いたいと思っているのはおそらく泉さんだと思います」
こなた「みゆきさん、私は……」
みゆき「手紙を返却された、それなら本人の言葉で伝えなければ、これが最後かもしれません……私は構いません、泉さん!」
先生「それなら二人とも行ってきなさい、と言いたいが他の生徒の示しもつかない、どうするかね」
こなた「みゆきさん、ごめん、私、行ってくる」
みゆき「いってらっしゃい」
泉さんは駆け足で走り去った。私はそれを見送った。

 午後の授業を終え私は病院に向かった。病室に入ると、日下部さんと峰岸さんが既に居た。いや柊家のご家族の方々も揃っている。まさか……。
つかさ「お姉ちゃん、ゆきちゃん来たよ……もうちょっと早ければ逢えたのにね」
その場で泣き崩れるつかささん、黒井先生もがつかささんを支えている。
みゆき「かがみさん……まさか」
みさお「一足遅かったな、最後に会いたいって言ってたぞ」
頭が真っ白になった。昨日はあんなに元気だったのに。峰岸さんが私をかがみさんの所へと手を引いた。ベットに横たわるかがみさん、
顔には白い布がかけられていた。
あやの「高校になって高良ちゃん達と一緒のクラスになりたいって何度も言ってた、何か言ってあげて」
みゆき「かがみさん、私、今来ました……」
これ以上言えなかった。しかし何故か涙はでなかった。冷たい女だと思われそう。しばらく私達は悲しみに包まれた。

 一通りの手続きが終え、私達は病室を出て控え室に移った。ふと気が付くと泉さんの姿が見えない。
みゆき「泉さんは……どうしたのですか?」
つかささんは泣き崩れていて私の質問など聞こえないようだった。
みさお「ちびっ子なら学校へ戻るって言ってたぞ、なんでも屋上へ行くって、何でだろう」
屋上へ、泉さんの言葉が浮かんだ『屋上に行くのは告白か自殺くらい』……自殺……この言葉が頭の中に響いた。
みゆき「早まってはいけない!」
私は叫んで病院を飛び出した。そして学校に向かった。

 屋上に着くと私は辺りを見回した。屋上の端に泉さんが立っていた。一歩足を出せば落ちる位置に立っている。
みゆき「泉さん!」
叫んだ。しかし泉さんは振り返ろうとはしなかった。
こなた「やっぱりみゆきさん来たんだ、流石だね、屋上での会話で私が何をするか分かるなんて」
みゆき「そんな事はどうでもいいです、早まった事は考えないことです」
こなた「私の命と引き換えにかがみが助かるなら……そう思った、でもそれも無理だった、それに私に残された時間も無い」
みゆき「そんな事はありません、私とつかささん、いえ、泉さんが知りうる全ての人の為に、生きていて下さい」
こなた「つかさ……自分の身を削ってまでしても助けられなかった、今の私じゃつかさの支えどころか余計に苦しめるだけ」
602 :呪縛(みゆき編) 5 [saga]:2010/04/24(土) 17:36:33.26 ID:Sy24YXA0
みゆき「違います、違います」
こなた「かがみ、一人じゃ寂しいよね、一緒に行ってあげる……」
泉さんは私の目の前で屋上から飛び降りた。それから先はよく覚えていない。救急車が来た。それから暫くして屋上に先生と警察が来た。
そして何時間か職員室で質問された。質問の内容も答えた事もあまり覚えていない。夜遅くなり、お母さんが迎えにきた。
そこで初めて泉さんが亡くなった事を知った。それでも私は涙がでなかった。一日に二人の友人を亡くしたと言うのに……。

 もう真夜中の三時を過ぎていた。家族は皆寝静まっている。気が付くと私はおまじないの紙を持って台所に立っていた。そしてコンロの前に居る。
私はおまじないの効果を消そうとしていた。そう、この紙を燃やせば元に戻れる。かがみさんと泉さんの笑顔がまた見られる。
いや、まだ燃やす事はできない。あの本の正体を知りたい。そして、燃やす事によって課せられるペナルティも消したい。私は紙を燃やすのを止めた。
私は紙を貯金箱の中に入れて鍵を閉めた。おまじないの効果を消す期限は一年間とあの本には書いてあった、まだ半年以上残ってる。
それまでに全てを元に戻す方法を見つける。私は固く誓った。亡くなった二人の為に。

 それから私は学校の図書館を始めに街中の図書館を調べた。最終的には国立図書館まで足を伸ばした。しかし、あの本と同じものは無かった。
似たような本はあったが図形が曖昧だったりしている。この本はかなり古いものだった。二千年前の中国で書かれたものの写しらしい。
おそらく学校にあった本が原本と思った。少なくともあの本は二千年前より古い。それと、全てのおまじないは火を使うことによって
解除できる。おそらくあの本を燃やせば全ては解決する。分かったのはそれだけだった。

つかさ「ゆきちゃん、最近忙しそうだけど、体大丈夫なの?、黒井先生に居眠り注意されてたし」
心配そうに私に話しかけてきた。あれから三ヶ月、つかささんは少し元気を取り戻してきた。とは言っても事あるごとに涙ぐむことはしばしばあった。
みゆき「ご心配なく」
つかさ「ゆきちゃんは凄いよね、また学年で一位だったんでしょ、希望通りの大学も行けそうだし」
みゆき「私は、ただ調べるのが好きなだけです」
つかさ「私はね、料理関係の専門学校に行くことに決めたよ」
みゆき「つかささんなら、お料理は上手いし、手も器用なので良いと思いますよ」
つかさ「ゆきちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな……私が作った料理、お姉ちゃん喜んで食べてくれた、誰か知らない人もそんな喜んで食べてくれるような
     料理を作りたい、私にはそれしか出来ない、ゆきちゃんは医者になるんだよね、こなちゃんやお姉ちゃんの病気なんかすぐ治せるお薬作って、
     そうすれば、だれも悲しまなくて済むから……」
つかささんの料理を喜んで食べてくれたかがみさん、それを聞いて私は初めて目から涙が出た。私はあのおまじないの本と戦っていた。
おまじないを解く事はあの本の力に屈服したとことになる。そう思っていた。でもつかさんの言葉を聞いてそんな事はどうでもよくなった。
私に課せられるペナルティなんて、泉さんやかがみさんの苦痛に比べれば大したことじゃない。それにこれ以上あの本の正体に迫れそうにない。
みゆき「そうですね、泉さんとかがみさんの笑顔、もう一度見たくなりました、つかささんありがとう」
目を涙に潤ませたつかささんに私はそう答えた。今日、おまじないを解こう。
家に着くと私は貯金箱の鍵を開けて紙を取り出した。そして庭で紙に火をつけた……。

 気が付くと私は学校の教室に居た。泉さん、かがみさん、私がつかささんの机を囲むように立っている。教室のカレンダーで今の日付を確認した。
二年の二月だった。
こなた「それでね、そのルートを選ぶとヒロインに振られちゃうんだよね」
つかさ「そんな、それじゃそのゲーム終わっちゃうよ」
かがみ「もう、ゲームの話は止めて帰らないか?」
久しぶりに聞いた泉さん、かがみさんの声だった。
何故だろう、あの時はまったく涙が出なかったのに、今にになって溢れるように涙が出てきた。そしてこみ上げてくる感情、抑えられない。
みゆき「泉さん、かがみさん……」
思わず二人の名前を呼んだ。
こなた「ちょ、みゆきさん、いきなりどうしたの」
慌てて私の元に駆け寄った。
かがみ「……、こなた、あんがあんな事言うから、昔の事を思い出したんだわ、みゆき……」
こなた「……ごめん、まさかみゆきさんが失恋……」
かがみ「ばか、何も言うな、こうゆう時は何も言わない……」
かがみさんは私をやさしく抱き寄せた。そのやさしさに私は声を出して泣いた。
あの悪夢は私だけの胸に、そして本は永遠に見つからない所へ……。これで良い。これで……。
603 :呪縛(みゆき編) 6 [saga]:2010/04/24(土) 17:40:37.73 ID:Sy24YXA0
 そして、クラス替えの日が来た。今度はもうおまじないの効果はない。かがみさんには申し訳ないけどもうクラス割の結果は分かっている。
つかさ「やったー」
つかささんの喜ぶ元気な声が響く……クラス割表を見て自分の目を疑った。
何故?、どうして?、かがみさんが一緒のクラスになる?、そんなはずはない。あのおまじないの効果で一緒のクラスになった。その効果がないのなら
必然的に逆の結果になるはず。誰かが私のおまじないを解いた後、あの本を使った……。いや、ペナルティであの本は見つからない所に移る。
つかさつかさ「やったー!、お姉ちゃん、一緒のクラスだよ、小学校からの夢が叶ったよ、この前のお……」
途中で会話を中断したつかささんだった。
みゆき「どうしたのですか?つかささん」
つかさ「うんん、なんでも……ないよ」
かがみ「つかさ、はっきり言っていいわよ、こなたとまた同じクラスになって先が思いやれるって」
こなた「つかさ、はっきり言っていいよ、お姉ちゃん、学校まで一緒になって鬱陶しいって」
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、私は……」
みゆき「ふふ、楽しいクラスになりそうですね、私は学級委員の引継ぎがありますので」
確かにつかささんの態度が急に変わった。もしかしたら……引継ぎは嘘。私はそのまま図書室に向かった。確かめたい事があった。

 図書室であの本があった本棚を確認した。一冊分の空間が空いている。おまじないを解いてからも何度か図書室は使って、その度にこの本棚は確認
しているけどこの場所には違う本が置かれていた。違う本?。まさか、見つけられないと言うのは私の事だった?。別に違う場所に移ったわけじゃない。
私の目にはあの本は別な本に見える。それならば別人がおまじないの本を使う可能性がある。それがつかささん。つかささんならこの本に興味を持つ
のは理解できる。いや、まだつかささんがおまじないをしたと言う確証はない。まだ泉さん、かがみさん本人がいる。直接聞きたいけど、それは出来ない。
聞いてしまったらおまじないの事を知ることになる。それだとおまじないを解除できなくなってしまう。悪夢が蘇った。これはおまじないなんかじゃない。
呪い。呪縛。この呪いでまた悪夢を見るのでは。もうそんなのは沢山。何とかして呪いを行った本人を特定して。真実を話して本を燃やしてもらわないと。
でも、一度呪いを解いた人が本の内容を他人に伝えると、伝えた人はこの世から消えてしまう。このペナルティが私を最後まで呪いを解くことを躊躇させた。
失敗は許されない。

 私の心配とは裏腹に楽しい日々が続いた。確かにかがみさんと泉さんが以前よりも喧嘩が激しくなった感じはあるけど、それはクラスが一緒になったから、
そう思っていた。そんなある日、私は泉さんから屋上に来るように言われた。屋上……。いやな予感がした。

 屋上に着くと、泉さんの他にかがみさんが居た。泉さんは私だけを呼んだのではなかった。
みゆき「お待たせしました」
かがみ「……みゆきも呼んだの?、つかさは、何故つかさは呼ばないのよ」
二人の顔は暗い表情だった。もう泉さんが何を言うかは想像できた。
こなた「かがみだって分かってるでしょ、つかさが知ったらどうなるくらい……」
かがみ「……分かるわよ、でも、それじゃつかさが、つかさが……」
みゆき「あのー、詳しくお話していただけますか?」
二人は既に話し合っているようだった。と言うよりは意見の違いがある。そんな感じだった。
こなた「……」
かがみ「どうしたのよ、みゆきに話しなさいよ、私に話したように……」
泉さんは話す様子がなかった。じれったくなったのかかがみさんが話し始めた。
かがみ「……こなたね、病気なの、もう末期らしいわ……」
同じだった。あの時と同じ。状況は微妙に違うけど同じことが起きている。あの時は涙はでなかった。何故か今は自然と涙が出てきた。
泉さんは同じ苦しみを二度も受けることになるから。
こなた「ごめん、みゆきさん、みゆきさんには知ってもらいたかったから、今後の事も相談したかった……」
かがみ「それでつかさには教えなくていいって言うの?、おかしいじゃない」
こなた「それじゃかがみから話して、出来る?、話したらきっとつかさ、自殺しちゃう、死なないまでもいままでのつかさじゃなくなっちゃう、そうでしょ?」
二人の話を聞いて思い出した。亡くなったかがみさんの側で泣きじゃくるつかささんの姿を、誰の話を聞こうとしないほどの激しさで泣いていた。
みゆき「私も泉さんの意見に賛成です、今話すのは早いような気がします、しかしこのままではいつかは気付かれてしまいす、何か対策が必要かと」
かがみ「みゆきがそう言うなら……」
こなた「ありがとう、みゆきさん、で、その対策って?」
604 :呪縛(みゆき編) 7 [saga]:2010/04/24(土) 17:41:49.49 ID:Sy24YXA0
みゆき「そ、そこまでは考えていませんでした、すみません」
かがみ「それなら、私とこなた以前DSの事で大喧嘩したでしょ?、喧嘩で絶交した事にしない?、それならつかさだって気が付かないわよ」
こなた「喧嘩ね、それほど大喧嘩じゃなかったけど……それはいいけどお昼とかはどうするのさ、少しでも話しかければ喧嘩してないのバレちゃうよ」
かがみ「そうね……お昼は私、日下部達のクラスに行くわ、それでいいかしら?、みゆきは中立的な立場でいれば問題ないじゃない?」
こなた「つかさが喧嘩の内容とか聞いてきたらどうするのさ」
かがみ「そんな所まで話し合わないといけないのか」
みゆき「そうですね、つかささんに内緒にしたければ出来るだけ合わせた方がいいと思います」
かがみ「逆に喧嘩の内容を話したらつかさが何かしようとしてややこしくなるわ、喧嘩の内容は内緒にしましょ」
みゆき「それで良いと思います」
こなた「決まったね、さすがみゆきさんが来ると話しが早いね、これからお茶でも飲んで解散しない?」
かがみ「いいわよ」
みゆき「はい」
こなた「それじゃいつもの喫茶で、先に行って席とっておくよ」
泉さんは駆け足で屋上を後にした。かがみさんはため息を一回ついた。
かがみ「ふぅ、あいつ本当に病気なのか、まったくもう……」
みゆき「まだ不満があるのですか?、今のうちに解決しておいた方がいいですよ」
するとかがみさんは私を睨み付けた。
かがみ「みゆきが賛成するとは思わなかった、つかさの何を知ってるって言うの?、話すのは早い?、見てきたような言い方をして!」
珍しく私に感情を露にした。見てきたような言い方……確かに私は見てきた。でもそんな事、言えるはずもない。
我に返ったのかかがみさんは直ぐに元の口調に戻った。
かがみ「ごめん、みゆき、私は内緒にする自信がない、こなたやみゆきは学校と放課後だけつかさと一緒にいればいい、でも私はつかさの家族なの、
     放課後、朝、夜、休日、つかさと一緒の家で生活しているのよ……一人っ子のあんた達じゃ分からないわね、行きましょ喫茶店」
私は黙って頷いた。かがみさんが病気を秘密にするのを反対していた理由が分かった。

 喫茶店では雰囲気は変わった。さっきまでの暗い話とは違って、いつもの話題で楽しい時間が過ぎていった。泉さんが時計を気にした。
こなた「ごめん、薬の時間になっちゃた、もうお開きにしよう」
みゆき「あ、もうこんな時間ですね、私も帰ります」
かがみ「あっ、いけない、まつり姉さんから買い物頼まれていたの忘れてた、みゆき悪いけど付き合ってくれない?」
みゆき「買い物、ですか、構いませんが……」
こなた「悪い、私急ぐから、今日は私のおごり、そのまま出ちゃっていいから」
泉さんは伝票を鷲づかみにするとレジに向かった。

 買い物に同行して欲しいと言っていた。しかしかがみさんは商店街の方向とは逆に歩き始めた。そして寂れた公園に入り立ち止まった。
みゆき「あの、買い物は……」
かがみさんはそのまま立ち止まったままだった。
かがみ「あいつ、薬の時間だ、って言った」
みゆき「言いましたけど、それが何か?」
かがみ「病気なんだな、あいつ、今まで半分冗談かと思ったけど、あの言葉で初めて実感した」
みゆき「そうですか……」
かがみ「みゆきなら分かるよね、末期の患者が使用する薬」
みゆき「強力な痛み止め、モルヒネ、後は……」
かがみ「ばか、本当に答える奴がいるか!、私は、私は、そんな事聞いているんじゃない」
かがみさんの目が真っ赤に腫れていた、
かがみ「もうあいつを見ていられない」
そう言うと私に抱きつき、泣き始めた。
かがみ「泣かせて、もうつかさの前で泣くことも出来なくなる、だから……」
かがみさんの覚悟を感じた。私はやさしくかがみさんを抱き寄せた。呪いを解いたとき、かがみさんが私にしてくれた様に。

 どのくらい時間が経ったか、かがみさんは我に返ったように私から離れた。
かがみ「ごめん、みゆき、もう気が済んだわ、ごめん」
605 :呪縛(みゆき編) 8 [saga]:2010/04/24(土) 17:43:07.85 ID:Sy24YXA0
みゆき「私こそ、何も気が付きませんで」
かがみ「まずい、本当に閉店しちゃう、急がないと」
みゆき「……買い物の件は本当だったのですか?」
かがみ「まあね、あれで忘れたなんて言うと凄いんだから、まつり姉さん、それでいつも喧嘩よ」
みゆき「それじゃ、急ぎませんと、それにどこかで顔を洗った方がいいですよ、涙の跡が……」
かがみ「分かってるわよ、悪いけどここで別れましょ」
挨拶代わりに片手をあげて走り去って行くかがみさんを見送った。
姉妹か……。お姉さんの事を良く言っていないのに私に話しているときは自慢げだった。確かに親子とは違う関係、一人っ子の私には理解できない。
羨ましいと思った。

 次の日の放課後、私は先生の依頼で日誌の整理を図書室でしていた。三年前の日誌がどうしても見つからなかった。本棚を探していた。
???「何の本を探しているのですか」
突然後ろから声をかけられた、後ろを向くと男子生徒が立っていた。
???「一時間も探していたので、図書委員が何の為にいるのか分からなくなります」
みゆき「そうですか、三年前の日誌を探しているのですか……」
図書委員「管理番号はわかりますか?」
みゆき「管理番号?、二年前の日誌はあるので、これですか?」
私は二年前の日誌を図書委員に見せた。すると図書委員は受付の方も向いてもう一人の図書委員に管理番号を告げた。
図書委員「この番号からすると倉庫の方にしまってあると思いますよ……」
みゆき「そうですか、ありがとうございます」
図書委員「昨日も終業時間まで探している子がいて、あれは可哀想でした、せめてタイトルくらい覚えててくれてば……」
就業時間まで本を探していた子?、そういえば昨日、つかささんとは別行動だった。
みゆき「その人、どんな人でしたか?」
図書委員「貸し出し禁止の本って漠然と言ってたから印象に残った……ショートヘアーでリボンをしていた女の子、多分三年生だと思いますけど」
間違いない、つかささんだ。タイトルを教えなかったのは本の内容を読んでいるから、でもおかしい、本の内容を読んでいるのなら就業時間まで探すのは
不自然、願いが叶うと一年間は消えてしまうと書いてある。どうしてだろうか。
図書委員「はい、お探しの日誌です」
私は日誌を受け取った。

 先生の依頼を全て終え、教室にもどった。教室には誰も居なかった。今日は一人。そういえばつかささん、二年生の時、図書室に何回行っただろうか、
私が知る限り、数回くらい?、内緒で行ったとしても私と同じか早い時間に帰宅している。私はあの本を写すのに二週間、つかささんは丁寧に書くから
全て写すには倍以上の時間がかかるはず。すると短時間で要点だけを写しておまじない、いや、呪いを行ってしまった。するとつかささんは
注意書きを全て読んでいないことになる。ペナルティの事、呪いの解き方。そうか最初の願いが叶うまで内緒にすると言うのをそのまま守っているだけかも。
それなら好都合、黙って呪いを解除されたら本を燃やす機会を失ってしまう。しかし、つかささんに全てを話して私の言うと通りに行動してくれるかが問題。
気が動転して失敗してしまうかもしれない。これ以上何も考えることができなかった。つかささんには悪いけど、全てを託すまでの気持ちにはなれなかった。

 それから何週間か経ったか、私、泉さん、かがみさんで帰宅途中の時だった。
こなた「昨日、つかさ、怒っていたね……」
みゆき「ええ」
かがみ「昨日?、どうしたのよ、つかさは昨日の事は何も言ってなかったわよ」
こなた「私とかがみがあまり会っていないから何故って聞かれて……打ち合わせ通り喧嘩の事内緒にしたら怒った」
かがみ「つかさは言われたことを真に受けるから、今思えばもう少し考えるべきだったか」
こなた「本当にこれで良かったのかな」
かがみ「何今更言ってるのよ、言い出したのはこなたの方でしょ、もう後戻りできないわよ……ってそのつかさが来てないけど?」
みゆき「何か用事があると言っていました、先に帰っていいと、それに、泉さんとかがみさんはつかささんの前では一緒に居ない方がいいと思いまして、承知して
     つかささんと別れました」
何か泉さんの歩き方が辛そうに見えた。

みゆき「それより泉さん、辛そうですけど大丈夫ですか?」
こなた「大丈夫、って言いたいけど、ちょっと辛いや」
606 :呪縛(みゆき編) 9 [saga]:2010/04/24(土) 17:44:22.72 ID:Sy24YXA0
かがみ「ちょっとここで休みましょ」
皆が足を止めた時だった。
???「お嬢ちゃん達、何してるのかな」
???「この制服、陸桜学園じゃないか、私立金持ち高校、金もってそうじゃないか」
二人組みの男達が私たちの目の前に立ちはだかった。私は畏縮してしまった。私の前にかがみさんが立った。
かがみ「何よ、あんた達!」
チンピラA「威勢のいい姉ちゃんだ、何、ちょっとばかり金を恵んでくれれば直ぐに立ち去るさ」
かがみ「あんた達に渡すお金なんか無いわ」
こなた「あのー、かがみさん、そんな強気で大丈夫ですか?」
チンピラA「痛い目見ないとわからんようだな……ぐえっ!!」
何がなんだか分からなかった。男が振りかぶった瞬間泉さんが何かをしたようだ。男はその場に倒れ込んだ。
チンピラB「やってくれたな」
こなた「いや、そっちの方が先だったよ、正当防衛だよ」
男は懐からナイフのような武器を取り出した。
こなた「……流石に武器は辛いな……逃げて」
私は震えて動けない。かがみさんが私の手を引く。男は泉さんではなく私達の方を目掛けて突進してきた。私は目を閉じてしゃがんだ。

 何も音がしなかった。
チンピラB「お、俺は知らないぞ、お前たちがいけないんだからな」
走り去る足音が聞こえた。私はゆっくり目を開いた。
かがみ「こ、こなた」
こなた「技、失敗しちゃった……」
泉さんはその場に倒れた。泉さんの腹部に男の持ってたナイフが突き刺さっている。
かがみ「こなた、しっかりしなさいよ、こんなの取ってやる」
かがみさんは刺さっているナイフに手をかけた。
みゆき「触ってはいけません、そのままにして下さい」
そう、刃物を無理に引き抜くと余計に出血が酷くなるを何かで聞いたことがあった。わたしはかがみさんにハンカチを渡し、傷口を直接押さえるように言った。
通行人が通報してくれたのか、すぐに救急車とパトカーが来てくれた。それから泉さんはベルトコンベヤーのような流れ作業のように病院に搬送された。
私達もパトカーで病院に向かい、病院の待合室で警察官の質問を受けた。一通りの質問を終えると、大半の警察官はその場を去った。
犯人がまだ逃走中とのことなので数人の警察官が残った。

かがみ「応急処置がよかったせいか、なんとかなったみたいね、さすがみゆきね」
みゆき「いいえ、通報が早かったからです」
かがみ「私がいけなかった様ね、勝算のないから威張りで……」
みゆき「聞くところによるとあの二人組みは凶悪犯のようです、どんな対応しても結果は同じだったのかもしれません、しかし、何故あんな事を?」
かがみ「あんな連中にこなたと会える短い時間を取られたくなかった、それだけよ」
急に弱気な声になった。
みゆき「かがみさん……」
かがみ「今朝も、さっきもこなたの辛そうな姿、もう見ていられない、薬も利かなくなってきてるみたいだし、それなのに私たちをかばうなんて……」
私は何も言えなかった。
かがみ「頭冷やしてくるわ」
かがみさんはそのまま病院を出てしまった。私はそれを引きとめることができなかった。

 しばらくすると日下部さんが駆け込んできた。辺りを見まして私に気付くと近寄ってきた。
みさお「眼鏡ちゃんじゃないか」
みゆき「いったいどうしてここに?」
みさお「いや、校庭で柊の妹とはなしてて、うちの生徒が刺された話が来てね、まさか、ここに眼鏡ちゃんがいるってことは?」
みゆき「はい、泉さんが、刺されました」
みさお「柊!!!、なんでちびっ子を刺すんだよ!」
日下部さんの言葉を聞いて驚いた。なぜそんな話になっているか。
607 :呪縛(みゆき編) 10 [saga]:2010/04/24(土) 17:45:41.33 ID:Sy24YXA0
みゆき「日下部さん、何の話ですか?」
みさお「え?、違うの?柊の妹が、柊とちびっ子が大喧嘩してるって聞いて、その矢先にこの事件、タイミング悪すぎる」
みゆき「泉さんは今重態です、しかし、刺したのは他の人です」
みさお「そうか……犯人が柊じゃないだけでも良かったと言う事か」

 するとつかささんが息を切らせて入ってきた。
みさお「柊の妹……、刺された人は泉こなた……やっぱりちびっ子だったぞ」
私を見て真っ青な顔になっている。日下部さんと同じ勘違いをしているに違いない。
みゆき「出血は止まったようですがまだ予断を許さない状況だそうです……つかささん、実は……」
つかさ「やめてー!、」
つかささんは両手で耳を塞ぎながらまた病院を走り去っていった。私はそれを追いかけようとすると日下部さんが私の腕を掴み止めた。
みさお「ちょっと話が聞きたい、柊の妹について……」
みゆき「しかし、つかささんが……」
みさお「柊の妹はそのまま放っておいても大丈夫、それより何故こうなったか聞きたい」
日下部さんは真剣な顔で私を見ている。私は待合室の奥に案内して椅子に座った。そして経緯を話した。

みさお「それで柊の妹に嘘をついた?、口裏合わせて?、眼鏡ちゃん、三年もクラスが一緒で……その程度の仲だったのかよ」
そんな言い方をするとは思わなかった。
みゆき「どうゆうことですか?」
みさお「それって、ハブるって言うんだぞ」
みゆき「そんな事していません、ただ、つかささんが泉さんの病気を知れば……」
みさお「知ったらどうする?、本当に柊の妹が死ぬと思ってる?、私が柊の妹だったら何故ちびっ子の病気の事を教えてくれなかったって死んじゃうぞ」
私は黙ってしまった。反論できなかった。
みさお「いつも仲良く楽しいときは一緒に笑って、悲しいときは別だなんて、柊の妹それを知ったら怒るぞ、部室に来た時の柊の妹の真剣な表情、
     あれだけ真剣に仲直りさせようとしている柊の妹の心を三人で踏みにじった、違うかい?、眼鏡ちゃん」
私達は間違っていた。都合が悪いときだけ仲間はずれだなんて、本当につかささんの事を考えていなかった。
みゆき「私は、どうすれば……」
みさお「ここで待ってればいいと思う、柊の妹は戻ってくる、それに眼鏡ちゃんが居ないとちびっ子も寂しがるぞ」

 どのくらい待ったか、つかささんはかがみさんを連れて帰ってきた。泣き崩れたかがみさんをしっかり支えながら病院に入ってきた。
すると、後から泉家の方々が続々と入ってきた。特におじ様の取り乱しようは見るに耐えがたかった。
その後、しばらく待ったが今日はもう面会できないので泉家以外の人は帰ることになった。皆が待合室を出るとかがみさんが私を呼び止めた。
かがみ「私、つかさに助けられた……」
みゆき「どうしたのですか?」
かがみ「私がこなたの死んでいく姿は見られないって言ったら何て行ったと思う?、私がこなたを刺した方がよっぽど良かったって言いった、
     それならやり直しも仲直りもできるって、それを聞いたら私は……自殺する気が無くなった、それに、嘘をついた事を少しも怒っていなかった、
     私達はつかさを子供だと思ってたけど、つかさの方がよっぽど私達より大人、つかさには悪いことした」
かがみさんはそのまま退室した。

 つかささんがかがみさんの自殺を止めた。もし、泉さんが自殺しようとしていた時、つかささんが居たら同じように止められたかもしれない。
そういえば私が呪いを解く切欠を作ってくれたのもつかささんだった。もしつかささんの言葉が無かったら期限内に呪いを解いただろうか。
意固地になって本の正体を調べ続けていたかもしれない。そして一生あの本の呪いに苦しみ続けたかもしれない。何故もっと早く気が付かなかった。
つかささんは苦境に見舞われてもそれを跳ね除ける力がある。もう迷いは消えた。私の全てをつかささんに託す。そして呪縛を解く。

 次の日の放課後、つかささんを自習室に呼んだ。つかさんは泉さんのお見舞いに行きたがっていたが無理に呼んだ。自習室は滅多に人が来ない。
これから行う事を誰にも邪魔されたくなかった。念のために私はお昼に自習室を貸し切るように先生に頼んだ。チャンスは一回しかない。
出来るだけ万全を期したい。
 
 私が自習室にはいると既につかささんが席に座ってまっていた。
みゆき「おまたせしました」
608 :呪縛(みゆき編) 11 [saga]:2010/04/24(土) 17:47:09.62 ID:Sy24YXA0
つかささんは私の声に反応した振り返ろうとした。
みゆき「振り向かないで、そのまま後ろ向きの姿勢でいて下さい」
つかさ「これじゃ話し難いよ、なんでこのままなの?」
みゆき「すみません許してください……、これからつかささんにいくつか質問をします、ですが、つかささんは一言も答えなくていいです、
     そのまま私の話を聞いているだけでいいですから、いいですね?」
私はあえてつかささんを後ろ向きにさせた。つかささんに何も答えさせたくなかった、うっかり事故を防ぐため、それに正面だとつかささんの顔を見ながら
話すとお互いに感情が湧き、話が続けられなくなる、そう思った。沈黙が続いた。つかささんは私の質問を理解してくれた。
みゆき「ご理解いただき、ありがとうございます……、つかささん、私は泉さんを助けたいと思っています、それにはつかささんの協力が不可欠なのです、
     でも……これにはかなりの危険が伴います、失敗すれば命の保障ができません、それでも、私の話を聞く覚悟はありますか、もし、
     少しでも疑問に思うのでしたら、私に話しかけて下さい……」
つかさ「……」
これでつかささんが拒否したら私はこの計画を中止する。かがみさんもこれから発病をするかもしれない。そしてわずかな時間かもしれないけど泉さん、
かがみさんと一緒に生きる時間を大切に過ごしたい……。つかささんは沈黙を守ったままだった。

みゆき「これからは後戻りできません、続けます……つかささん、図書室で『おまじない集』と言う本を探しませんでしたか」
つかさ「……」
つかささんのからだがピクリと震えた。これは最後の確認。つかささんはこれで驚いているはず。
みゆき「つかささんはもっと以前にその本を見て、おまじないを試しましたか」
つかさ「……」
これで私があの本を知っていることが分かったはず。
みゆき「その試したおまじないは『一緒のクラスメイトになるおまじない』ではなかったですか」
つかさ「……」
呪いの内容まで当てたようにつかささんに印象付けたかった。これで私の話に集中するはず。
みゆき「最後の質問です、そのおまじないの解き方を知りませんね」
つかさ「……」
なんの反応もない。やっぱりつかささんは最小限度の情報しか知っていない。
私の計画。まず私がつかささんに自分の呪いを解いてもらう、そして本を燃やしてもうらう。それだけではつかささんは本を燃やすことはできない。
呪いを解いたつかささんには別の本に見えてしまう。それをつかささんに教える。。つかささんが呪いを解けば今の私は消えても呪いを解いた私が
復活しているはず。その時つかささんは私が何故泣いたか本当の意味を知るに違いない。後は全てつかささんに任せる。
つかささんが本を置いてある場所を忘れていたら……そんな事はどうでもいい。 例えつかささんが失敗しても私は後悔しない。

 私はつかささんに説明した。途中、私が体験した呪いの出来事を話した。感極まって声が詰まりそうになった。
つかささんと正面で話していたら、顔を見ながら話していたら。私は話を続けられなくなっていた。

そして呪いの解き方を教えた。もう消えてもいい時間、最後につかささんが私には出来なかった素晴らしい事をした事を教えたかった。
みゆき「かがみさんから聞きました、かがみさんの自殺を止めたと、つかささんならきっと本を燃やすことが出来ると確信しています」

 突然目の前が真っ白になった。

 気付くと泉さんとかがみさんが立っていた。二人は人形のように静止していた。
周りを見ると駅前に居る。ここは……柊家最寄の駅……。駅に居る人々も同じく人形のように動いていない。いや人だけじゃない、電車も、車も、全てが
止まっている。
???「今、貴女は高校二年の二月に居ます、そして柊かがみと泉こなたと共に柊家に向かっています」
わたしは声のする方を向いた。ギリシャの神話に出てきそうな服を着た女性が立っていた。
みゆき「どちら様でしょうか?」
???「私は悪い魔法使いに封印された妖精、私は六千年もの間呪いの本に封印されていました、今、本は燃やされ封印は解けた」
みゆき「本が燃えた、それでは、つかささんは本を燃やしたのですね」
妖精「そうです、見事でした、貴女に多くの説明は無用なようですね、ペナルティを逆に利用するとは、今まで誰も思いつかなかった方法です、
    例え思いついても自分を犠牲にしてまで実行する人は稀でしょう」
私は泉さんとかがみさんの事が気がかりだった。
609 :呪縛(みゆき編) 12 [saga]:2010/04/24(土) 17:48:17.80 ID:Sy24YXA0
みゆき「妖精さん、教えてください、泉さんとかがみさんは今後どうなるのでしょうか」
妖精「……、二人の病気は本の呪いとは一切関係ありません、今後、二人は確実に発病するでしょう、しかし、呪いの影響で病気の進行が早くなったのは
    否定しません……今、柊つかさが私に同じような質問をしました、どうでしょう、貴女と柊つかさの勇気を称え、二人の病気を治してあげましょう」
みゆき「ありがとうございます、しかし、何故、今回、かがみさんは病気にならなかったのですか?」
妖精「柊かがみの発病の時期が遅れただけです、この世は同じ条件でも必ず同じになるわけではありません、貴女なら理解できるはずです、それより、一つだけ
    頼みたいことがあります、簡単な事です、それにこれは貴女しか出来ない事です」
みゆき「私に出来ることなら……」
妖精「燃やされた本は完全に灰にはなりませんでした、柊つかさが早く焚火を消してしまったのです、そして私は三日後にまたあの本に封印されてしまいます、
    もう私は封印されたくありません、自由でいたい、しかし私達妖精は私利私欲の為に力を使うことを禁じています、だから貴女に頼むのです」
この妖精さんは未来の事まで分かってしまう力を持もっている。そんな妖精さんを封印した魔法使いってどんな人なのだろうか。
妖精「私は日食の日は普通の人間になってしますのです、その時に封印されてしまいました」
私の心までも読んでいる。妖精さんと言うよりは女神様のような気がした。
妖精「貴女は焚火から離れる時、一言、柊つかさに言うのです、『まだ焚火が燻っていますね、消さなくていいのですか?』 と、柊つかさは全てが灰に
    なった事を確認するはず」
みゆき「それだけでいいのですか?」
妖精さんは頷いた。
妖精「忘れなさい、この本の関わることの全てを、そして、封印を解いたことにより開かれた新しい道を歩みなさい、貴女達にはその資格がある」


こなた「みゆきさん、みゆきさん」
みゆき「えっ?、何ですか?」
こなた「さっきから空見上げて、何か見えるの?」
空は青く透き通っていた。まるで今の私の心を映しているようだった。
みゆき「楽しい時も、悲しい時も、皆で分かち合う事ができたら、素晴らしいとは思いませんか」
かがみ「みゆき、いったい何を言ってるの?、やぶから棒に」
みゆき「えっ?、私、何故言ったのでしょうか?」
かがみ「みゆき、大丈夫か?、こなたの近くにいるからボケが移ったか」
こなた「かがみー、酷いよ……でも、さっきのみゆきさんの言った言葉、何故か心に響いたよ」
かがみ「……楽しい事だけの友達じゃ寂しいじゃない、さっ、行こうか、つかさが何か用意して待ってるらしい、メールがきたわ」
こなた「つかさの作ったデザートは美味しいからね、楽しみだ、って?、つかさが何で私たちより先に家に帰ってるの?」
かがみ「何故って……私達ゲームセンターで遊んで……つまらないから家にでもって……みゆき、つかさから何か聞いてない?」
みゆき「用事があるから……と言っていた気がしますが」
こなた「つかさが用事?、こんなに早い用事は、さては告白してふられたな……まっ、いいか、行こう!」

 先ほど何故あんな事を言ったのかは思い出せない。でも、泉さんとかがみさんの反応を見て分かった、掛け替えのない物を私達は手に入れたと。

610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 17:49:32.24 ID:Sy24YXA0
以上です。つかさ視点、みゆき視点ではあるけど、同じストーリなので読み手が飽きてしまうと思い
なるべくお互いが重ならないようにしたつもりです。ラストも同じにはせず、つかさ編へ続く形をとりました。
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/27(火) 00:23:12.88 ID:APkrLcDO
>>610
乙です
元ネタみたいなのは有るんですか?
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/27(火) 06:29:03.84 ID:chTvlFk0
>>611
元ネタはスペースコブラで、詳しくは忘れたましたが、コブラはオンボロロボットをスクラップ場から拾ったのだが、そのロボットは実は最終兵器を封印した
ロボットだった。コブラはその最終兵器を復活させてしまい惑星壊滅の危機に陥ってしまう。
最終的にそのロボットはコブラがロボットを助ける直前まで時間逆転させる。
そしてロボットはコブラに言う。私を助けないでと。そしてコブラはそのロボットを助けずに世界は救われた。

そこから発展させて呪縛を思いつきました。っと言っても時間を戻すシチュエーション以外はオリジナルで考えました。
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/01(土) 10:16:49.19 ID:ruHNmKc0
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ここまでまとめた

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こんにゃくネタはまとめませんでした。まとめても良いと思われる人がいたらまとめてください。
その他まとめ漏れがあれば追加お願いします。

614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/01(土) 14:41:11.41 ID:VId8UISO
>>613
乙です
615 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/02(日) 23:01:36.10 ID:0Bcz44o0
乙!
616 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 03:54:41.99 ID:ueOS0c.0
投下いきます。

忘れたころに第二話です。
617 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 03:55:08.97 ID:ueOS0c.0
 銃声と共に一匹の狼が床に落ち、その姿が砂へと戻る。
 銃を撃った本人…こなたは肩で息をしながら、共に戦っているはずのロディのほうを見た。
「…まあ、わかっちゃいたけど、実力差ありすぎでしょ」
 そう呟くこなたの視線の先では、すでに三体の狼を仕留めたロディが、ARMに弾丸を装填してるところだった。
『こっちは一匹倒すのにヒーヒー言ってるのにねえ』
 手に持ったアガートラームから聞こえるのん気な声にこなたはむっとしたが、事実なので言い返せずに黙り込んだ。
「この辺りにはもういないようだね」
 そのこなたの背中から、ロディが声をかける。こなたがそっちを向くと、ロディは狼になっていた砂の山から赤い宝石のようなものを回収していた。
「それ…えーっと…ライブジェムだっけ?持って帰るんだ」
「うん、これは色んなARMの燃料になるからね。売ればお金になるんだ」
「へー」
 こなたはその話にうなずきながらも、この人懐っこい笑顔の少年に、金儲けの話は似合わないなと思っていた。
「この世には、お金で買えないものも確かにあるけど…お金で買えるものの方が遥かに多いんだよね」
 こなたの思ってることを察したのか、ロディが少し照れ笑いを浮かべながらそう言った。
『顔に似合わず達観してるね』
「おい、こらポンコツ」
 こなたは、自分が言いづらかったことをさらっと言うアガートラームに、思わず突っ込んでいた。
「はは、よく言われるよ…まあ、今のはパートナーの受け売りなんだけどね」
 パートナーという言葉にこなたは驚いた。さっきからの戦闘で息切れ一つしてない彼が、パートナーを必要とするほど、この世界は過酷なのかと。
「その、パートナーさんはどこに?」
「僕のミスではぐれちゃってね…怒ってるだろうなあ」
 さほど困った顔も見せずにそう言うロディを見て、かなり信頼関係のある間柄なんだろうなと、こなたは思った。
『意外とドジだ』
「おい、こらポンコツ」
 そして、言いづらいことをはっきり言うアガートラームに突っ込んでいた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第二話『荒野の星』



618 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 03:56:26.27 ID:ueOS0c.0
「でも…おかしいな」
 こなたの前を歩いていたロディが不意にそう呟いた。
「なにが?」
 こなたがそう聞くと、ロディは少し歩く速度を落としてこなたの横に並んだ。
「砂獣の形態なんだけど…こんな所で狼形ってのはおかしいんだよね」
「あ、やっぱりそうなんだ」
 こなたは、ロディが特に何も反応してなかったので、この世界では当たり前のことかと思っていた。
「砂獣は、元々そこにいる生物の真似をする傾向があるからね。僕が前に来たときは、虫型の砂獣ばかりだったんだけど…」
「虫よか狼の方がましかなあ…」
『狼の方が危険なきがするけど』
「虫は生理的にやばいでしょ」
「いや、そういう問題なのかなあ…」
 ロディは話が脱線しそうなこなた達に突っ込んだ後、遺跡の廊下を見回した。
「砂獣には真似損ないってのはあるんだけど、まったく真似してないってのは今まで無かったからね。ここに狼の姿を真似れる何かがあるんだと思う」
「絵…とか?遺跡だしそういうのがあってもおかしくないでしょ」
 こなたの意見に、ロディが顎に手を当てて考え込む。
「前に来たときはそう言うのは無かったなあ…いや、全部回ったわけじゃないけど…っていうか絵とかから真似たなんて事例も無いんだよね…」
 こなたは、渡り鳥ってのは学者の真似事もするのだろうかと考えながら、ロディの邪魔をしないように少し前を歩いた。
「…あ」
 そして、廊下の先に開けた場所があるのを見つけ、少し歩く速度を上げた。


「ほあー…」
 こなたはその部屋の天井を見上げながら、思わずため息をついていた。学校の体育館くらいの広さの大きな部屋。壁や天井には良くわからない細かな文様がびっしりと刻まれている。
「これは…凄いね」
 後から入ってきたロディも感嘆の声を上げる。そのままロディは部屋の中央に向かうと、そこにあった瓦礫の山を探り始めた。
「何かの祭壇が崩れたみたいだね…」
「ふーん…」
 ロディの後ろから覗き込みながら、こなたはなんとなく嫌な予感がしていた。RPGならこういうところには大抵ボス敵が配置されてるはずだ、と。
「しかし、おかしいな…僕もだけど、この遺跡には何人も渡り鳥が来てるんだ。こんな大きな部屋が見つかってないなんて…」
 と、そこでロディは言葉を止めた。
「ど、どしたの…?ふゃっ!?」
 こなたが不安に駆られてそう聞いたのとほぼ同時に、ロディはこなたを抱きかかえて横に飛んだ。一瞬後に、こなた達のいた場所で爆発のようなものがおき、瓦礫が周囲に飛び散った。
「な、なに…?」
「構えて!」
 慌てるこなたに、ロディが一喝する。こなたから離れたロディは、すでにARMを構えて臨戦態勢をとっていた。
 こなたとロディが見る先…瓦礫の粉塵が晴れてくると、そこにいたのは今までのとは明らかに異形の狼だった。ふた周りほど大きい体躯に漆黒の毛並み。頭頂部から尻尾の方にかけて、紅い毛が背びれのようになびいている。
「…やな予感、的中しちゃったよ…強いよね?あれ」
「多分ね」
 こなたの呟きにロディが答える、その真剣な横顔が敵の強さを物語っているようだった。
619 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 03:57:55.77 ID:ueOS0c.0
「…来るよ!」
「…え?」
 狼が少し身をかがめたかと思うと、その姿が消え去った…いや、少なくともこなたにはそう見えた。一瞬後に金属音。そして、何かが横を通り過ぎたかのような風をこなたは感じた。
 後ろを向くと、壁際でロディがARMを使って狼の噛みつきをガードしていた。
「なに…今の…」
 まったく見えなかった。正直、レベルが違いすぎる。こなたは、レベル上げを怠ったRPGの主人公の気分を味わっていた。
「こいつ…やぁぁぁぁぁっ!」
 ロディは狼にARMを噛ませたまま、その巨大な体躯を持ち上げた。線の細い少年に見えるロディのどこにそんな力があるのかと、こなたは目を見張った。そしてロディはそのまま狼の体を蹴り飛ばす。狼はこなたの上を飛び、最初の位置へと軽やかに着地した。
 間髪いれずロディが銃撃を入れるが、狼は予測していたのか横に飛び弾丸をかわす。そして、狼はこなたの方を見た。こなたの背筋に寒気が走る。ロディが手ごわいと感じ、標的をこっちに変えたのだと、こなたは感じた。
「お前の相手は僕だ!こっちにこい!」
 ロディが挑発をかけるが、狼はそちらを一瞥した後、口の端をゆがめた。
「え…笑った?」
 こなたがそう呟くのと、狼の姿が消えるのはほぼ同時だった。こなたはとっさに横に飛んだ。狼の攻撃は直線的だ。かわせた…こなたはそう思ったが、すぐに違和感を感じる。さっき狼が攻撃してきたときのような、通り過ぎる風を感じなかったのだ。
「こなたちゃん!上だ!」
 ロディの声にこなたは弾かれたように上を見た。そこにいたのは天井に張り付いた狼。その姿がまた消える。こなたはとっさにどうすべきなのか判断を迷ってしまった。
「ごめん!」
 ロディの声が消えると同時に、こなたは腹の辺りに衝撃を感じた。そのままこなたは後ろに吹っ飛び、二度ほどバウンドして床に転がった。
「…いったー…」
 呻きながらこなたが体をおこす。そして、さっきの場所を見ると、ロディが狼に左腕を咥えられていた。
 わたしのせいだ。こなたは自分の鈍さを呪った。こなたがかわせないと判断したロディが、こなたを蹴り飛ばして狼の攻撃を受けたんだ。こなたはそう理解した。
 狼が首を大きく振ると、ブチッと嫌な音がしてロディの体がこなたのほうに飛んできた。
「ロ、ロディ…くん…?」
 こなたのそばに落ちたロディは顔色が青ざめていた。よく見ると左腕の肘から先が無くなっている。
「だ、大丈夫…?」
 聞いてからこなたは、間抜けな質問をしたと思った。腕が無くなって大丈夫なわけがない。
「怪我は大したことないけど…あの狼、強力な毒をもってたみたいだ…体がうまく動かない…」
 苦しそうにそう言いながら、ロディは立ち上がりARMを構えてこなたの前に立とうとした。こなたは深呼吸を一つすると、ロディの足を軽く蹴った。それだけでロディはバランスを崩して床に倒れこんだ。
「…な、なにを…」
「わたしがやるよ」
 こなたはアガートラームを構えながら、ロディからできるだけ離れるように動いた。狼はすでにロディは脅威でないと感じているのか、こなたから視線を逸らさない。
『なにか考えが?』
「無いよ…やるだけやる。それだけ」
 多分、わたしは死ぬんだろうな。こなたはそう思っていた。ロディの後ろに隠れていても、それは変わらないだろう。ならば、万が一にかけてやるだけだと…そう決意すると、少しだけ気分が落ち着くのをこなたは感じていた。
『…力が欲しいって思ってるね。伝わってくるよ』
「そりゃそうでしょ。この状況だもの。誰だって欲しくなるよ…なんか当てあるの?」
 アガートラームの言葉に、こなたが軽い口調で返す。狼は余裕を見せているのか未だに襲っては来ない。
『当てがあるっていうか…今出来た』
「へ?どういうこと?」
 こなたの問いにアガートラームは答えずに、そのまま黙り込んだ。
「ちょ、ちょっと…」
 こなたは黙ったアガートラームに文句を言おうとしたが、目の端に捕らえていた狼が攻撃態勢を取ったため、そちらに集中せざるを得なくなってしまった。
620 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 03:59:22.19 ID:ueOS0c.0
「…やるしかない…やるしかない…」
 こなたは自分を鼓舞するように呟きながら、狼の動きに集中する。真正面から撃っても、弾丸くらい軽く避けるのはさっき分かった。ならば隙を突くしかない。一番の隙は攻撃の直後。スピードを殺すためにブレーキをかけるその瞬間しかない。こなたはそう考え、攻撃をさけるために意識を集中した。
 さっきのようにフェイントをかけられるかもしれない。どっちに飛ぶかくらいは見切るんだ。集中するにつれ、こなたは意識がなにか奥底に沈んでいくような感覚を覚えた。そして、アガートラームにアクセスした時と同じように、カチリと頭の奥で音がした。その瞬間、こなたの周りの景色が灰色となった。
 狼が駆けてくる。こなたにはそれがはっきりと見えた。さっきまでのまったく見えない攻撃じゃない。普通に人が走るくらいの速度だ。こなたはそれを難なく避けることが出来た。
 景色に色が戻る。狼の方を見ると、こなたを警戒するように唸り声を上げていた。
「…今の動きは一体…?」
 ロディが信じられないと言う様にそう呟いた。
『アクセラレイター』
 その問いに答えるかのように、アガートラームがそう言った。
「なに、それ?…ってーか今のなに?」
 こなたは少し混乱しながらそう聞いた。こなた自身も自分が何をやったのか良くわかっていなかったのだ。
『アクセスの更に上。オーバーアクセスで引き出せる僕の機能だよ。短時間だけどこなたの体内時計を加速させると同時に、身体機能を大幅に上げることが出来るんだ』
「それをすると、さっきみたいなことが出来るってこと?」
『そう。こなたからは回りが遅く、周りからはこなたがとんでもない速度で動いてるように見えるはずだよ』
「…ふーん」
 こなたは驚くより先に納得していた。いやに落ち着いている自分に戸惑いながらも、こなたはアクセラレイターをどう使おうか考えていた。
「こういうときは…攻めるべきだよね」
 こなたはアガートラームを持った右手を背中に隠し、左手を前に伸ばして体を大きく沈めた。意味のないただのハッタリだ。しかし、さっきのこなたの動きを見た狼は、かなり警戒している。本能で動かず、多少の知恵を持ってるがために、こういうハッタリは良く効く。
「…アクセラレイター!」
 叫ぶと同時に、こなたは狼に向かって迷いなく走った。周囲の景色が灰色になる。狼は動いていない。さっきフェイントを受けたこなたと同じように、どう動いていいか迷っているのだ。こなたは難なく、狼に接近することが出来た。
 そして狼の腹の下へ、こなたはスライディングで滑り込むと、両足でその腹を思い切り蹴り上げた。狼がゆっくりと宙に浮く。こなたは蹴りの勢いを使って立ち上がると、狼に狙いをしっかり定めてアガートラームの引き金を連続で引いた。
 景色が戻ると同時に狼の体が天井に激突し、その体に弾丸がいくつも突き刺さる。
「…シュート…」
 聞こえてた声にこなたが振り向くと、いつの間にか立ち上がっていたロディが完全に天井に埋もれた狼に向かってARMを構えていた。銃口に光のようなものが集まっているのが見えた。
「エンドーッ!!」
 耳を劈く轟音と共に弾丸が放たれる。光を纏った弾丸を受けた狼は真っ二つになり、地面に落ちて砂へと戻った。
「…やった…」
 こなたは安堵してその場に座り込みそうになったが、崩れ落ちるロディを見て慌ててその側に駆け寄った。
「ロディ君!大丈夫!?」
 こなたは倒れているロディの頭の側に座り込んだ。そのこなたに、ロディが弱々しく微笑んでみせる。
「…なんとか…一発だけ撃てたね…」
「さっきの?あれはなに?」
「…ARMは感応兵器だからね…心を深く繋げるとその威力を増すんだ…少し、疲れるけどね…」
 ロディはそう言った後、目を瞑った。呼吸は荒く、明らかに危険な状態だ。
621 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 04:01:10.26 ID:ueOS0c.0
「ど、どうしよう…なんとかならないの、ポンコツ?」
『ここまできてポンコツ扱いとか…でもなんとかなりそうだよ。誰か来た』
「…え?」
 こなたが顔を上げると、こなた達が入って来たのとは逆の方にある廊下から、一人の少女が入ってくるのが見えた。
 オレンジのワンピースを着て、頭には大きなリボンをつけている、なんともこんな場所には不釣合いな格好だ。ロディとそう変わらない歳なのだろうが、顔に残るそばかすのおかげか、だいぶ幼い印象を受ける。
 その少女はこなたたちに気がつくと、もの凄い勢いで走ってきた。
「ちょっと、ロディ!なにやってんの!?」
 そして、そのままこなたを突き飛ばしてロディの横に座り込んだ。
「…ジェーン…アンチドーテを…」
「わ、わかったわ…」
 ジェーンと呼ばれた少女は、格好に不釣合いな無骨なバックをあさると、鮮やかな黄緑色の葉っぱを取り出した。ジェーンはロディの口を無理矢理開かせ、それをねじ込んだ。そして、手で顎を動かし強引に咀嚼させる。葉っぱに強力な解毒作用があったのか、ロディの顔色はみるみる良くなっていった。
「なんか治ったみたいだね…よかった」
 その様子を床に転がったまま見ていたこなたがそう呟いた。
『毒はともかく、手はどうするんだろうね』
「…思い出させないでよポンコツ」



「…こっちよ」
 回復したロディとこなたは、ジェーンに案内されて遺跡の出口へと向かっていた。
「ところで…あんたなに?」
 そのジェーンが、唐突に立ち止まりこなたのほうを振り向いてそう聞いた。
「なにって言われても…」
「彼女は泉こなた…異世界から来たらしいんだ」
 言いよどむこなたに代わって、ロディがそう答えた。
「異世界?…ふーん、まあどうでもいいけど。あたしはジェーン・マックスウェル。ま、この遺跡出るまでだろうけどよろしく」
『歯牙にもかけないって感じだねえ』
 ジェーンのあっさりとした態度にアガートラームがそう言うと、ジェーンは鼻を鳴らしてお手上げのポーズをした。
「ロディはそんな変な嘘つくやつじゃないし。それに、お金になりそうにないじゃない」
 ジェーンはそう言って、また一行を先導して歩き出した。そして、数歩歩いたところで立ち止まり、凄い勢いでこなたの方に再び振り向いた。
「ARMが喋ったー!?」
『あ、僕の方には食いつくんだ』
「いや、だって普通喋んないでしょ…」
 そして今度は、ジェーンの驚き振りを見たロディが嬉しそうにこなたの側に駆け寄った。
「でしょ!?凄いよね、喋るARMなんて!ジェーン、僕の鞄に工具が入ってるからちょっと分解して…」
 ロディはそう言いながらジェーンの持っている無骨な鞄に手を入れた。ジェーンの格好に不釣合いだったのは、はぐれた時に置いてきてしまったロディの鞄だったからのようだ。
「…いや、あんた片手だから無理でしょ。ってーかいいARM見たら分解しようとするのやめなさい」
 ジェーンがロディの手を叩いてそう言うと、ロディは渋々と言った感じに鞄から手を抜いた。
「あの…手、大丈夫なの?ロデイ君の…」
 二人と一丁のやり取りを見ていたこなたが恐る恐るそう聞くと、ロディは食いちぎられた手をこなたの方に向けた。
「大丈夫だよ。これ、義手だから」
 こなたが良く見てみると、断面から何かの配線が垂れ下がってるのが分かった。
「ああ。それで怪我は大丈夫だって…」
「そういうこと」
 本当に大丈夫そうだとこなたは安堵したが、前を歩いているジェーンは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「修理するのにお金かかるじゃない」
『…シビアな子だなあ』
 アガートラームが呆れたようにそう言うと、ジェーンはもう一度鼻を鳴らして歩く速度を早めた。


622 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 04:02:42.41 ID:ueOS0c.0

「…ふわー…」
 日の光の眩しさに目を細めながら周りを見渡したこなたは、思わず間の抜けたため息をついた。
 遺跡から出たこなたが見たものは、見渡す限りの荒野。吹く風が砂塵を巻き上げている。テレビでしか見たことのない光景に、こなたは唖然としていた。
「この星の大地は、もう八割が荒野に覆われてるんだ」
 そのこなたの後ろから、ロディがそう言った。
「ここから西に行くと小さな村があるから、まずはそこに行くといいよ…ホントはそこまで送ってあげたいけど、僕たちも仕事があるから…」
 そして、西であろう方角を指差しながらそう言うロディに、こなたは不安な表情を見せた。
「それは…ちょっと心細いかな…」
 そのこなたに、ジェーンがなにかを包んだ赤い布を差し出してきた。
「…これは?」
 それを受け取って首を傾げるこなたに、ロディが苦笑して見せた。
「地図とコンパス、食料と水…あとライブジェムを何個か入れといたから、村に着いたら売ってお金にすればいいよ」
 布を指差しながら、ロディが中身を説明する。
「…それと、その布はロディの使ってたスカーフだから。砂避けに使うといいわ。口に入ったら泣けるわよ」
 そして、ロディの言葉を補足するかのようにジェーンが続けた。こなたはその二人を交互に見て、照れたように笑った。
「ありがとう」
 こなたの感謝の言葉にジェーンは鼻を鳴らすと、こなたに背を向けて歩き出した。
「せいぜい、行き倒れないようにね」
 そして、そう言いながら肩越しに手を振った。それを見たロディも苦笑しながら歩き出す。
「元の世界に戻れることを願ってるよ」
 こなたの方に体を向けてそう言うロディに、こなたは手を振って別れを告げた。
「…行っちゃったね」
『そうだね…僕らも行こうか』
「うん…と、荷物確認しとかないと」
 こなたはしゃがみこみ、渡されたスカーフを解いて中身を確認しはじめた。
「あれ、これは…?」
 そして、説明された中にはなかった物を見つけた。手のひらに収まるくらいの小さな狼の彫像で、遺跡の中で倒した狼のボスによく似ていた。
「…まあ、もらっとこうか」
 こなたは荷物を鞄につめ、口が隠れるようにスカーフを巻いて立ち上がった。
「まずは西…」
 確認するようにそう呟いて、こなたは荒野の中へ足を踏み出した。



623 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 04:03:43.79 ID:ueOS0c.0
「…なにも言わなかったね」
 隣を歩くロディがそう聞くと、ジェーンは首をかしげた。
「なにが?」
「こなたちゃんに…文句を言うかと思ったんだけどね」
「『あんたのせいでロディが怪我したのよ』って?…言ってもしょうがないでしょ。好きであそこに居たわけじゃないみたいだし、アンタのかばい癖は治しようがないし」
「…苦労かけるね」
「…まったくよ」
 そして、しばらくお互い無言で歩いた後、ふとジェーンが何か思い出したようにロディのほうを見た。
「そういや、探してたものは見つかったの?遺跡出てきちゃったけど」
「ああ、これだよ」
 ロディが懐から拳くらいの大きさの石を取り出した。ライブジェムに似ているが、澄んだ輝きをしており脈打つ鼓動のようなものが感じられた。
「ライブクリスタル…砂獣になる前のライブジェムだよ」
「マリエルだっけ…あのエルゥの子、こんなの何に使うつもりなのかしら」
「さあ…でも悪いことには使わないと思うよ」
「…でしょうね。アンタと同じ人畜無害な顔してたから」
 ジェーンは呆れたように言いながら、頭の後ろで手を組んだ。
「ま、あたしは報酬がちゃんと貰えたら、それでいいけどね」
 そう言いながら少し歩を早めるジェーンに、ロディは苦笑しながら付いて行った。



― 続く ―



次回予告

かがみです。
こなたが辿り着いたのは、小さいながらも豊かな村。
そこでこなたに再会と新たな出会いが訪れます。

次回わいるど☆あーむずLS第三話『真面目兎とパン屋さん』

…え、つまらない?いや、予告って普通こんな感じでしょ…。
624 :WALS-2 [saga]:2010/05/03(月) 04:05:27.29 ID:ueOS0c.0
以上です。

らきすた成分が薄いのは、こなたに掛け合いの相手がいないからでしょうね。
625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/04(火) 00:48:20.35 ID:j7XdGZk0
>>624
乙すごい久しぶりだな!
次はかがみん出るのか…ww
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 13:07:59.78 ID:AdJc67M0
>>624
プロローグ編はみつけたが第一話はまとめサイトのどこにあるのだろうか?
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/04(火) 13:16:43.61 ID:gstK8EIo
ちょっとわかりにくい編集になってるが、プロローグのページの一番下にあったぜ

>>624

WAはやったことないが楽しんでるぜww
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 13:56:41.81 ID:AdJc67M0
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ここまでまとめた

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わいるど☆あーむずLSシリーズを未完成の中にまとめました。見やすくしたつもりです
629 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 00:51:58.87 ID:hDfPlLI0
>>628
乙です。なんか早くまとめられて驚きました。

で、投下行きます。

GWのおかげで早く書けた三話目です。
630 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 00:52:54.52 ID:hDfPlLI0
 村外れにある食糧倉庫。月明かりのみが照らす夜の闇の中、二つの影がそこに近づいていた。背丈は人間の大人の半分ほどだが、横幅は大人の倍くらいあり、かなりずんぐりとした体型をしている。地元の人間がゴブと名づけた、亜人型の砂獣だ。
 二体のゴブは倉庫の扉に近づき錠前があることを確認すると、二体同時に手に持った斧を振り上げた。
「はーい、そこまでー」
 しかし、斧が振り下ろされる前に後ろから声をかけられ、ゴブ達は斧を振り上げた格好のまま後ろを振り向いた。
「あんたらも懲りないっつーか、単純ね。盗みに入るパターンが決まってるから張り込みやすいわ」
 ゴブを小馬鹿にしながら姿を現した声の主は、長い髪を頭の左右でくくった少女だった。
 ゴブたちが警戒する中、少女は羽織っている黒いロングコートの中から、短めの剣を取り出した。刀のように反身であり、鞘には何故か銃のように引き金が付いていた。
 少女は鞘から剣を抜き、そのまま鞘を持った右手を前に、剣を持った左手を後ろにして半身に構えた。
 ゴブの一匹がその体型に似合わぬ跳躍力で、少女に飛びかかる。少女は上から振り下ろされる斧の一撃を冷静に鞘で受け流し、剣でゴブの胴を切りつけた。
 ゴブが地面に落ち砂に戻っている間に、もう一匹のゴブはすでに逃走を始めていた。それを見た少女は、ため息を一つつくと剣を鞘に戻した。
「…逃がさないわよ」
 そして、剣を腰溜めに…漫画やアニメでよく見るような居合い抜きの構えを取ると、左手で剣の持ち手をしっかりと握り、鞘を持つ右手の指を引き金にかける。少女はそのまま睨むように、逃げていくゴブに狙いを定めた。
「…飛燕!」
 少女が引き金を引くと発砲音が鳴り、剣が抜き放たれる。その切っ先から衝撃波がまるで銃撃のように撃ち出され、逃げるゴブの背中を袈裟切りに斬り裂いた。
 少女はしばらく剣を抜き放ったままのポーズで止まっていたが、ゴブが砂に戻るのを見た後、安堵のため息をついて剣を鞘に戻した。
「…お仕事終了っと」
 そして、少し乱れた髪を整えると、ゴブだった砂の山からライブジェムを回収し始めた。
「最近、多くなったわね…向こうも追い詰められてるのかしら」
 そう独り言を呟き、少女…柊かがみは大きく伸びをし、お守り代わりに左の二の腕に巻いてあるピンク色のスカーフを撫でた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第三話『真面目兎とパン屋さん』



 夜が明けた後、昼ごろまで睡眠をとったかがみは、仕事の報酬を受け取りに村に一つだけある酒場に訪れていた。
「ほい、これが今回の報酬ね。ライブジェムの分も入ってるから」
 そう言いながら、中年の男性がカウンターの上に貨幣の入った袋をおいた。
「ありがとう」
 礼を言いながらかがみはその袋を手に取り、その重さに驚いた。
「あれ、これ多くないですか?」
 かがみが男性を見ながらそう言うと、男性はニッコリと笑い返した。
「ボーナスだよ。かがみちゃんのおかげで、今年も無事に過ごせそうだからね。村の近くにゴブのアジトが出来たときは、ホントどうなるかと思ったけどねえ」
「いや、そんなわたしは大したこと…」
 照れてうつむくかがみに、男性は大きく笑った。
「いや、実際こんなに長く滞在する渡り鳥なんていないからね…村人全員君には感謝してるよ」
「…それも特に行く当てが無いからだし…」
 かがみは仕事の窓口になってるとは言え、何かにつけて褒めてくるこの男性が少し苦手だった。
「そ、それじゃ、わたしはこれで…」
 だから早々に話を切り上げて、酒場を出ようとした。
「パン屋に行くんだろ?だったらアシュレーによろしくな!元渡り鳥なんだから、たまにはこっちの仕事もしろってな!」
 そのかがみの背後から、男性が大きな声でそう言った。
「余計なこと言わないでよ…」
 かがみは真っ赤になりながら、酒場を早足で出て行った。


631 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 00:54:50.28 ID:hDfPlLI0
 村の中央辺りまで来たところで、かがみは一人の少年がこちらに向かって走ってくるのを見つけた。
「…トニーじゃない。またなにかやらかしたのかしら」
 村でも屈指のいたずら小僧であるトニーには、かがみも少し手を焼いていた。
「あ、いた!兎のねーちゃん!大変だよ!」
 トニーはかがみを見つけると、大声でそう言いながら駆け寄ってきた。
「…兎は止めてって言ってるのに…ってかわたしに用だったのか」
 かがみはため息をつきながら足を止めた。
「探してたんだよねーちゃん!ついさっき、村の前で行き倒れを見つけたんだよ!」
 自分の前に立ちそうまくし立てるトニーに、かがみが首をかしげた。
「行き倒れ?それは確かに大変だけど…なんでそれでわたしを探すの?」
「そいつの格好がさ、ねーちゃんが麦畑で倒れてた時と同じやつなんだよ!あのピンクの変な服!」
 トニーがそういい終わるや否や、かがみはトニーの両肩をがっしりと掴んだ。
「どこ!?その行き倒れはどこにいるの!?」
「…ア、アシュレーにーちゃんの家…だけど…ねーちゃん痛い…ってか怖い…」
 肩に指を食い込ませ、額がつきそうなくらいに間近にせまったかがみに、トニーは冷や汗を垂らしていた。



 こなたは皿に残ったパンの最後の一切れを口に放り込むと、コップに入った水を一気に飲み干し、空になったそれをテーブルの上において大きく息をついた。
「…ふー…助かったー…」
「いや…よく食べたね…」
 テーブルの向こう側にいた青年が、こなたを見ながら苦笑いを浮かべた。
「はあ…なんせ、遺跡を出てからすぐに砂獣に襲われて、食料も水も台無しにして、飲まず食わずで夜通し歩いてここまで来たものですから…いや、ほんと助かりました」
「あの荒野を飲まず食わずって凄いな…」
 青年はこなたが食い散らかした皿を片付けながらそう呟いた。
「あ、そうだ。ちょっと聞いていいかな?」
 そして、何か思い出したようにそう聞いた。
「はい、なんでしょ?」
「柊かがみって、もしかして君の知り合い?」
 まさか急にその名前が出てくるとは思わず、こなたは驚きで固まってしまった。
「…え…かがみ?」
 かろうじてそう呟くと、青年は満足そうに頷いた。
「やっぱり知り合いだったか。君の着てるそのセーラー服、かがみちゃんも着てたんだよね。まったく同じものだから、もしかしたらって思ったんだけど」
「かがみ…かがみがこっちの世界に…」
 こなたがそう言いながらうつむくのと、部屋のドアが勢いよく開かれたのはほぼ同時だった。こなたがそちらを見ると、そこにはほぼ一日ぶりに会うかがみの姿があった。
「…あ…あぁ…ホント…ホントに…」
 かがみは体を震わせて、目には涙を溜めていた。
「え、えっと…かがみ?」
 様子のおかしいかがみにこなたは少し戸惑っていたが、とりあえず近況を聞こうと近づこうとした。
「こなたぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 しかし、それより早く遺跡で戦ったボス狼もかくやといった速度で、かがみがこなたに抱きついた。
632 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 00:56:52.85 ID:hDfPlLI0
「あははははっ!こなただ、こなただっ!ホントにこなただぁっ!!」
 そしてそのままもつれ合って床に倒れ、かがみはこなたを抱きしめたままゴロゴロと床を転がった。
「ちょ、ま、かが、み、おち、つ…頬ずりすなーっ!」
 そんな二人の様子を見ていた青年は、一つ頷くと部屋のドアに手をかけた。
「じゃ、俺は邪魔みたいだから…」
「待ってーっ!助けて!かがみんなんとかしてーっ!」
 その青年の背中に、こなたは必死で助けを求める。
「いや、なんとかしてって言われても…」
「ちょっと、アシュレー!埃が落ちるから暴れないでよ!」
 青年がどうすべきか迷っていると、階下から女性の怒鳴り声が聞こえてきた。
「…俺じゃないんだけど…ああ、もう…くそっ」
 青年は悪態をつくと、とりあえず床を転げ回っている二人を取り押さえにかかった。



 数分後。なんとか落ち着きを取り戻したかがみとふらふらしているこなた、憮然とした表情の青年がテーブルについていた。
「…すいませんでした…嬉しくてつい…」
 しばらくの沈黙の後、顔も真っ赤にして身を縮ませているかがみがそう言った。
「うん、まあ落ち着いたのならいいけど…この子はかがみちゃんの知り合いでいいんだよね?」
 青年がこなたの方を見てそう言うと、かがみは顔を上げて頷いた。
「はい。泉こなたっていって、わたしの友達です」
「君が元居た世界の?」
「はい」
 別世界の住人だと理解されてるなら話は早いな…と、こなたは二人のやり取りを見ながら思った。
「で、こなた。この人はアシュレー・ウィンチェスターさん。この家の一階のパン屋を奥さんと二人で切り盛りしてるの」
 かがみがそう言うと、こなたはアシュレーのほうを向いて軽く頭を下げた。
「改めてよろしく…で、アシュレーさん。早速悪いんですけど、席を外してもらえます?かがみとちょっと話がしたいんで…」
 こなたがそう言うと、アシュレーは首をかしげた。
「それは、俺には聞かせられないことなのかい?」
「ええ、まあ…ちょっとプライベートなことなんで」
「そうか…じゃあ、俺は店の方に降りてるよ」
 アシュレーはそう言いながら席を立ち、そのまま部屋を出て行った。こなたはアシュレーが階段を下りていく音を確認すると、かがみに向き直った。
「えーっと、色々聞きたいんだけど…とりあえず、さっきのはなに?」
 こなたがジト目でそう聞くと、かがみは思わず視線を逸らしてしまった。
「い、いやだから嬉しくてつい…知ってる人に会うの二ヶ月ぶりだったし…」
 かがみのその言葉に、こなたは目を丸くした。
「二ヶ月?ちょ、ちょっとまってかがみ。二ヶ月って何?」
「に、二ヶ月は二ヶ月よ。わたしがこの村の麦畑で目を覚ましてから、大体そのくらい経ってるのよ…」
 こなたの狼狽振りに、かがみが戸惑いながらそう答えた。こなたはしばらく唖然とした後、顎に手を当ててうつむいた。
「…わたしがこの世界で目を覚ましたの、昨日なんだよ」
「…え」
 ポツリと言ったこなたの言葉に、今度はかがみが唖然とした。
「かがみ。元の世界に居た最後の日が何日か覚えてる?」
 顔を上げたこなたがそう聞くと、かがみはコートのポケットからボロボロになった生徒手帳を取り出した。
「…この日よ」
 その中のカレンダー。そこに付けられた丸印を指す。それを見たこなたの眉間にしわがよった。
「わたしもその日が最後だよ…ってことは、全然別の時間に飛ばされたってことなのかな…」
 二人してしばらく考え込んでいたが、こなたが急に何か思いついたように手を叩いた。
「そうだ、コレ聞いとかなきゃ…かがみ。元の世界でさ、授業中に居眠りしなかった?で、おきたらこっちの世界に居たって感じだと思うんだけど」
「…うん、その通りよ。前の晩はしっかり寝たはずなんだけど、なんでか急に眠くなって…そのときの事は、はっきり覚えてるわ…っていうか、元の世界のこと忘れないようにしてたから…」
 そう言いながら項垂れるかがみに、こなたは困った顔をした。
633 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 00:59:17.09 ID:hDfPlLI0
「よく考えたら、浮かれてる場合じゃないのよね…こなたまでこっちに来ちゃったんだし」
「うん、まあそうなんだけど…最悪、つかさとみゆきさんもこっちに来てる可能性もあるし」
「え、それどういうこと?」
「わたしが寝る前にね、つかさとみゆきさんも眠そうにしてるの見えたから。つかさはともかく、みゆきさんが居眠りなんて普通じゃないし」
「そう…ね」
 またしても二人して沈黙してしまう。問題やはっきりしないことが増えていくだけで、喜べそうな要素が何一つ見当たらないからだ。
『そろそろ喋っていいかな?』
 そんな中で、アガートラームが我慢し切れないといった感じでそう言った。
「…あ、忘れてた」
『…ひどいなあ…人前では迂闊に喋るなって言うから、我慢してたのに』
「…え…ARMが喋った?」
 ホルスターから抜いたアガートラームと会話し始めたこなたを見て、かがみは唖然とした。
「ああ、やっぱかがみも驚くんだ…ってか、かがみはこの世界で目を覚ましたときに、近くにこういうのなかったの?」
「あったけど…喋りはしないわよ」
 そう言いながら、かがみはコートの内側から剣型のARMを取り出した。
「これだけど…」
『形式番号A−ARMS02。名称はナイトブレイザーだよ』
 かがみのARMを見たこなたが何かを言う前に、アガートラームがそう言っていた。
「相変わらず、名前だけはわかるんだね」
『わかるというか、思い出した…あと機能が一つ回復したよ』
「なに?アクセラレイターみたいなの?」
『いや、他のA−ARMSを感知できるようになったみたいだ』
 アガートラームの言葉に、こなたは嬉しそうに手を叩いた。
「そりゃラッキーだよ。わたしもかがみも持ってたって事は、つかさやみゆきさんも同じの持ってる可能性があるんだし、こっちの世界に来てるなら探しやすくなるよ…ね、かがみ」
 こなたはそう言いながらかがみのほうを見たが、かがみは自分のARMをじっと眺めたままだった。
「…かがみ?」
「え?あ、そ、そうね…それは助かるわよね」
「…なにしてたの?」
「え…いや…わたしのも喋らないかなって…」
 照れくさそうに頬をかくかがみに、こなたはため息をついた。
「で、近くに反応はあるの?」
 そして、アガートラームにそう聞いた。
『あるね。ここよりもうちょい西かな』
 それを聞いたこなたが、ロディにもらった地図をテーブルの上に広げた。
「えっと、今いるのは…」
「ここね」
 その地図に描かれている一つの大陸。その南東の方に、かがみが持っていたペンで丸を付けた。
「で、ここから西ってことは…可能性の高いのはここ」
 そして、そこから少し西にある、何かのマークに丸を付ける。
「ここには、アーデルハイド公国って結構大きな城下町があるらしいわ」
「へー…かがみは行ったことあるの?」
「ないわ。この村から出たこと無いから…なんかゴタゴタがあって、治安が悪いようなこと聞いてるしね」
「そっか…でも行かないとダメかな…かがみはどうするの?」
 こなたの質問にかがみは不満気な顔をした。
「どうするって、なによ?」
「ここに二ヶ月いたんでしょ?離れがたいんじゃないかなって…」
「怒るわよ。ここに居ついてるのは他に行く当てが無かったからよ。つかさやみゆきがどっかにいるかも知れないってわかったんだから、行くわよ」
「…うん、わかったよ」
 かがみの答えに、こなたはホッとした表情を浮かべた。
634 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 01:01:13.15 ID:hDfPlLI0
「でも…ちょっと問題があるわね」
「問題?」
「ゴブって砂獣よ。わたしがここに来た時くらいに、村の近くにアジトを構えたのよ。村をしょっちゅう襲ってくるから、わたしが用心棒みたいなことしてるのよ。今この村にいてる渡り鳥はわたししかいないから、どうにかしないとね…」
「そっか…ってか、かがみ渡り鳥やってるんだ」
 こなたは遺跡で会った二人組みのことを思い出していた。
「やってるっていうかそうなってるっていうか…渡り鳥ってのは砂獣と渡り合えるような戦闘能力持ってる何でも屋の総称みたいね」
「ああ、そうなんだ」
「こなたはこっちの世界のこと、あんまり知らないみたいね。その銃が教えてくれなかったの?」
「残念ながら銃の癖に記憶喪失のポンコツなもんで」
『ポンコツいうな』
 かがみはこなたとアガートラームのやりとりに苦笑すると、椅子から立ち上がった。
「あんまり長くいるとアシュレーさんに悪いから、あとはわたしの部屋で話しましょ」
「あ、そうだね…ってかそういうとこあるなら、最初からそっちの方がよかったのに」
 こなたもアガートラームをホルスターに収めて、椅子から立ち上がった。
「言い出す暇なかったのよ…ああ、そうだ。先に仕立て屋さんに行こっか。アンタの服どうにかしないとね」
 かがみにそう言われ、こなたは自分の着てる服を見下ろした。着ているセーラー服はあっちこっち砂と埃にまみれ、ところどころに穴が開いている。スカートにいたってはスリットのように縦に裂けている部分があった。
「…確かに、冷静に見てみるとわたしやばい格好してるね」
 こなたの呟きに、かがみは思わず吹き出していた。



 こなたとかがみが階段を下りると、店のカウンターに座っていたアシュレーが立ち上がって二人の方に近づいてきた。
「話は終わったのかい?」
「ええ、大体は…」
 かがみがそう答えると、アシュレーはパンの入った紙袋をかがみに差し出した。
「これ、いつもの。今日はまだ何も食べてないんだろ?」
 紙袋を受け取りながら、かがみはお腹が減ってることを思い出し、照れくさそうに頬をかいた。
「いつもすいません…じゃあ、わたし達はこれで…こなた、行くわよ」
 アシュレーに代金を渡した後、かがみはこなたの方を見た。
「…なにしてるの?」
「え、いやちょっとね…」
 こなたは店の奥の壁を眺めていたが、かがみに呼ばれて店の出入り口のほうに小走りに向かった。


635 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 01:02:50.24 ID:hDfPlLI0
「こっちの世界にもヤキソバパンってあるんだね…」
「あのパン屋さんの名物なのよ。美味しいからいつも注文してたら、もう店に行く前からアシュレーさんが用意してくれるようになっちゃって…」
 こなたとかがみは、仕立て屋に向かう道をパンを食べながら歩いていた。
「荒野歩いてるときは、大変な世界来ちゃったって思ったけど、この村見てるとそうでもないのかな」
 こなたが道端で談笑している村人を見ながらそう言うと、かがみは少し難しい顔をした。
「うーん、この村は立地がいいからね…森の近くだし、水源もあるし…小麦の名産地だから、他の町から行商人も結構来るのよね」
「…なるほど、それでパンが美味しいんだ」
 こなたはヤキソバパンにかぶりつきながら、納得したように頷いた。
「そういや、こなた。お店でなに見てたの?」
「え…ああ、なんか壁に変わった銃が飾ってたからさ、気になって」
 よく映画で見るようなボルトアクションのライフルに銃剣が付いている…というより、両手剣にライフルが取り付けられてると言った方が正しいくらいに巨大な刃の付いた銃をこなたは思い出していた。
「アレね…アシュレーさんが渡し鳥やってた時に使ってたARMらしいわ」
 そう答えながら、かがみは眉間にしわを寄せた。
「アシュレーさん、もう戦えないって言ってたから、アレもただの飾りになってるのよね…」
「そうなんだ。渡り鳥やめたのって怪我とかなのかな」
「さあね…そう言う話になると、あの人黙っちゃうから」
 かがみは食べ終わった紙袋を丸め、コートのポケットに突っ込んだ。
「…トニー」
 そして、前方で一軒の民家のドアにへばりついているトニーを見つけて、ため息をついた。
「こらトニー、わたしの家の前でなにやってるの」
「うえっ!?」
 背後からかがみに声をかけられて、トニーは飛び上がった。
「あ、兎のねーちゃん…はは、な、なんでもないよ…」
「無茶苦茶態度あやしいわよ…っていうか兎はやめなさい」
「あ、そっちのちびねーちゃん。やっぱ知り合いだったのか?」
 かがみに詰め寄られたトニーは、かがみの後ろにいるこなたを見つけ、話をそらそうとそう言った。
「そうよ、わたしの友達よ」
「よかったじゃん、兎のねーちゃん」
「…兎はやめろって…ってかアンタわざとでしょ?」
「渡り鳥に二つ名はつきもんだって…それじゃーね!」
 そう言いながら、トニーはかがみの隙を付いて逃げ出した。
「あ、こらトニー!…まったく、あいつは…」
 逃げて行くトニーの背中を見ながら、かがみはため息をついた。
「ねえ、かがみ」
 そのかがみの背中から、こなたが声をかける。
「ん、なにこなた?」
「わたしのちびねーちゃんは分かるんだけど、かがみの兎のねーちゃんってなに?」
「え…あーそれは…」
 かがみは少しうつむいて顔を赤らめた。
「…この世界来てから、渡り鳥の仕事頑張ってたら、いつの間にかクニークルスって二つ名が付いちゃって…」
「クニークルス?なにそれ?」
「…真面目兎…って意味らしいの…」
 かがみの答えに、こなたは腹のそこから爆笑した。
「ちょ、ちょっと笑わないでよ!」
「ぴったりじゃん、かがみ。今度からわたしもそう呼ぶよ」
「や、やめてよー。アンタに言われると余計恥ずかしいわよー」
 かがみは笑い続けるこなたに文句をいいながらも、久しくなかった感覚に少しばかり喜びを感じていた。



― 続く ―
636 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 01:06:53.23 ID:hDfPlLI0



次回予告

またかがみです。
つかさとみゆき。
この世界に来てるかもしれない二人を探しに出るために、わたしとこなたは村に残された問題を無くすために、ゴブのアジトへと向かいます。

次回わいるど☆あーむず第四話『誰のために』

渡り鳥だけに、立つ鳥跡を濁さずってことね。
637 :WALS-3 [saga]:2010/05/06(木) 01:07:57.09 ID:hDfPlLI0
以上です。

他の連載ものと比べて、一話一話が短い気がします。
638 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/06(木) 03:03:25.08 ID:XbiatZ20
おつ!続ききたあああ
ついにかがみんと合流かwktk
639 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/06(木) 06:10:19.87 ID:bqHmpjUP
>>637
面白かった、乙!
続き気になるなー、のんびり待ってるぜ
640 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/06(木) 22:00:03.94 ID:A4RpBdgo
乙!
しばらく見てないうちに2話も来てるとは。
続きも楽しみにしてますよ〜
641 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/08(土) 08:18:54.51 ID:pwji7lQ0
投下します 2スレ程度です。
642 :偶然 [saga]:2010/05/08(土) 08:19:54.98 ID:pwji7lQ0
 ある日の休日、天気は快晴、風も無く、気温も心地よい。太陽の光がさんさんと降り注ぐ。私はふらりと外に出かけた。
散歩には打ってつけの日和だ。私は何の目的もなくただ町を歩いた。待ち行く人々は私の存在なんか知らなように通り過ぎていく。
私も同じように通り過ぎていく。行き交う人、自転車、車、電車、飛行機、何をしに行くのか。それすらも忘れているように忙しい。
そんな私もいつの間にか駅の前に居た。切符を買って遠くに行くのもいいかな。片道切符になりそうだ。

「こなちゃん?、こなちゃんじゃないの」
突然後ろから声をかけられた。私をそんな呼び方をする人は一人しかしらない。返事をせず声をする方に振り向いた。
つかさ「やっぱりこなちゃんだ、久しぶりだね、こんな所であうなんて奇遇だね」
笑顔で私に語りかける。彼女の笑顔もそういえば随分見ていない。
つかさ「どこかに行くの?」
こなた「いや、別に用事があるわけじゃないんだけどね」
つかさ「それじゃ、お茶でもしない?」
断ることもできた。だけど断る理由もないので私は頷いた。私達はそのまま近くの喫茶店に入った。久しぶりにつかさと話した。
話す事なんか無いと思っていたけど自然に言葉が出た。おかしくもないのに自然と笑った。
つかさ「こなちゃん、変わらないね」
こなた「そうかな」
私はそう一言言った。

つかさ「そういえばお姉ちゃんがね……」
つかさは嬉しそうにかがみの話をしはじめた。つかさのいう事に相づちで答えた。
つかさ「今日は天気がいいから公園にでも行かない?」
頼んだコーヒーがもう空だ。結構時間をつぶしたようだ、私達は店を出て公園に向かった。公園に着くと私達は適当な場所を見つけて腰を下ろした。

 さすがのつかさも気付いてきたのか言葉数が少なくなってきた。そして、沈黙が続いた。
つかさ「どうしたの?」
心配そうに私を見るつかさ。
こなた「つかさ、死にたいと思ったことある?」
これで折角の休日は台無しだ。久しぶりに会って始めて言った質問がこれじゃね、きっとつかさは怒って帰る。
つかさ「何度もあるよ、誰でも一度はそう思ったことあるんじゃないの?」
以外にまともな答えが返って来た。怒った様子もない。
つかさ「もしかして、自殺しようとしてた?」
こなた「……としたらどうする?」
つかさ「こなちゃん、それ本気なの?」
つかさはただ私を見てた。
643 :偶然 [saga]:2010/05/08(土) 08:20:41.03 ID:pwji7lQ0
つかさ「今日、家に泊まっていく?、お姉ちゃんも居るし楽しくなるよ、そうだ、ゆきちゃんも呼ぼうか」
にぎやかになりそうだ、でも私はそんな事はしたくなかった。
こなた「私、もう行くよ」
私は立ち上がりつかさに背を向けて歩き出した。
つかさ「会えてよかったよ、今日は楽しかった」
こなた「嘘だ、楽しいはずなんかない、つかさに楽しい話なんか一回もしてない」
思わず振り返り叫んだ。
つかさ「本当だよ、楽しかったよ、これで最後になっちゃうのは寂しいけど」
こなた「つかさ、止めないんだね」
つかさ「生きれるのに死にたい人がいる、でも生きたいのに生きられない人もいる……私みたいに」
こなた「生きられないって……つかさ、病気なの?」
つかさ「……もう会えないと思ってた、でも偶然に会えた、きっと最後に神様が奇跡を起こしてくれたんだね」
こなた「あど、どの位なの?、生きられるの」
つかさ「……生きられるまでだよ、そう、生きられるまで、私、こなちゃんより長生きできそうだよ」
そんな、つかさが死ぬなんて
こなた「なんだよ、駅であった時の笑顔、喫茶店での笑顔……何でそんなに楽しいなんて言えるんだよ……なんで笑っていられるんだよ、バカよつかさ」
涙が出てきた。思わずつかさを抱きしめた。
つかさ「泣いてくれるんだね、ありがとう、でも私はこなちゃんに何もしてあげられない」
こなた「分った、つかさのお骨を拾うまで、私は……死なない」


 つかさの葬式はしめやかに行われた、つかさの入った棺が火葬炉に入れられた。
こなた「つかさ、楽しい日々、ありがとう、最後まで笑ってたね……」
かがみ「こなた、この後本当に死ぬ気なのか」
こなた「つかさとの約束は果たした、もう何も思い残す事はない」
かがみ「そうだよな、百年も生きれば思い残す事もないだろ」
こなた「え?」
かがみ「気付けよ、ばか」
私は笑った。
こなた「……もうとっくに気付いていたよ、でもつかさは気付いていなかった。ばかだよつかさ、そしてありがとう」

まだ私は生きていたい。つかさはそれを教えてくれた。

終。
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/08(土) 08:21:13.14 ID:pwji7lQ0
以上です。
645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/08(土) 08:22:04.46 ID:.XZNAF.o
2スレっていうから大長編だと思ったぜ乙
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/08(土) 08:44:24.30 ID:pwji7lQ0
>>645
スレとレスを間違えました。失礼
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/08(土) 14:23:06.16 ID:pwji7lQ0
-----------------------------------------------------------------------------------
ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------------
648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/08(土) 20:20:53.20 ID:OStF1FU0
乙〜
649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/08(土) 21:13:28.32 ID:LfyzfNMo
乙〜

>>644
実は最初っから皆100歳くらいの老人という引っ掛けかとも思ったけど、
こなたとつかさの会話からつかさの葬式までの間が何十年も経ってるというのが正しいのかな?
650 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/08(土) 21:51:13.25 ID:pwji7lQ0
>>644
やっぱり説明不足だった。つかさはこなたに自分が病気だとは言っていない。
つまりつかさはこなたを自殺させないために嘘をついた。
そして100歳になりつかさが死んで。かがみとこなたの会話になる。
こなたにかがみが言う、つかさの嘘今まで気が付かなかったのかと。だから『気付けよ ばか』と言ったんだけど。
もう少し追加すべきかな。

分らないようならまとめの方を修正したいと思います。
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/08(土) 22:52:36.16 ID:vUGMh9Qo
>>650
修正するなら、こなたとつかさの会話で老人でないという描写を入れるか、
最後のところでこなたとつかさの会話が何十年も前であるということがわかる文を
入れるかすれば、状況ははっきりするかと。
あんまり説明文を入れちゃうと、雰囲気が台無しになる気もするし。
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/08(土) 22:57:45.86 ID:pwji7lQ0
>>651
修正しました。助言ありがとうございます。
説明文は極力少なくして会話の中で分るようにしました。
653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/09(日) 01:53:33.24 ID:wGWjDoDO
2レスで笑わしてもらえたよww


でもつかさの百歳なんて見たくない
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/09(日) 07:12:48.98 ID:AiXZdIM0
>>653
若くして死ねば悲劇になる。長生きれば大往生、笑っておくってあげられる、だから百歳にしたんだけど。
自分には前者は選べなかっただけです。つかさが本当に病気で5年で死んだ最後はね。悲劇と喜劇は紙一重とは良く言うけど。難しいね。
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/10(月) 12:32:25.54 ID:JTuUpsSO
−カーネーションは二つ−

かがみ(この歳になるとカーネーションを買うってだけでも恥ずかしいわね…)
こなた「あれ、かがみじゃん」
かがみ「こなた…花屋なんかで何してるの?」
こなた「なにって母の日のカーネーション買いにきたんだよ」
かがみ「また珍しい事してるわね」
こなた「うん、まあ自分でもそう思うけど…気まぐれってやつかな」
かがみ「っていうかなんで赤と白の二本なの…」
こなた「産んでくれてありがとうと、育ててくれてありがとうかな…お父さんがお母さんの分も育ててくれた訳だし」
かがみ「…ホント急にどうしたの?何かあったの?」
こなた「何にも。気まぐれだって」



かがみ「って事が花屋であってね」
つかさ「ふーん…お姉ちゃんはカーネーションの花言葉しってる?」
かがみ「え…いや、知らないけど」
つかさ「赤いのが『愛を信じる』で、白いのが『私の愛は生きている』だって」
かがみ「へー」
つかさ「ゆきちゃんが教えてくれたんだけど、その時こなちゃんもいたんだ」
かがみ「…それ聞いたから?」
つかさ「かも…ところでお姉ちゃん」
かがみ「ん、なに?」
つかさ「カーネーションは?」
かがみ「………あ」

656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/11(火) 23:10:54.15 ID:AT3BGcSO
ピュ.ー (  =ω=) <これからも私を応援してよね(=ω=.)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      泉こなた
657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/13(木) 18:06:39.49 ID:HKKQi2E0
>>656
モチのロンです!<(`・ ω・´)
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/13(木) 20:13:45.72 ID:HJU3Jdw0
泉家にて写真閲覧中 みなみも一緒に

パティ「これがコドモのコロのコナタデスか〜」
そうじろう「道場に通ってた頃だなー 幼稚園の年長時代だな」
こなた「隣に映ってるのはゆーちゃんだよ 昔からよく会ってたよね〜」
ゆたか「うん、そうだったよねお姉ちゃん」
みなみ「…お二人とも可愛いですね…(特にゆたか)」
パティ「コナタはナンだかオトコのコみたいデスね〜」
こなた「恰好もそうだし髪も短かったからね〜」
そうじろう「そういえばこの頃のゆーちゃんはこなたのこと男の子だと思ってて
      『こなたお兄ちゃん』って呼んでたな―」
こなた「ムフフー何度思い出しても萌えるね〜」
パティ「ユタカ、GJネ」
ゆたか「え、えー/////そうだっけー/////」
そうじろう「いや〜たまらんかったな〜」
みなみ「!?」
    
    妄想発動

    『みなみお兄ちゃん遊んで〜』
    『みなみお兄ちゃんと一緒にお風呂入る〜』
    『みなみお兄ちゃん一緒に寝よ〜』

みなみ「ウッキョォォォォォォォォ!!!」
一同「!?」 

659 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:22:49.69 ID:4Y.2N3.0
投下いきます。

第四話です。
660 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:23:48.86 ID:4Y.2N3.0
「うーむ…」
 こなたは、自分の格好を見ながらそう唸った。
 白色で厚手のウェスタンシャツに袖なしのレザージャケット。下は革であちこちを補強してあるジーンズに、これまた革製のブーツ。頭にはティンガロンハットをかぶり、ロディにもらった赤いスカーフを首に巻いている。
 仕立て屋で採寸してもらい、一日かかるからとかがみが寝泊りに使っている空き家で一泊し、服を受け取りに行ったのだが、こなたは服を受け取って着替えてからずっと不満気な表情を隠そうともしていなかった。
「よくわからないからって、かがみ任せにしたのが間違いだった…」
「…なんか不満そうね」
「カウガールとかなんの嫌味ですか、かがみさん…」
「嫌味?何が?…カウ…ああ…いや、そんな気は全然無かったんだけど。単にこなたにこの服着せたいなーって感じで選んだから」
「その理由もどうなのかと…」
 これ以上文句を言ってもしょうがないし、なによりお金を払ってもらっているのだし…と、こなたはとりあえず言いたいことを置いといて、服の着心地を確かめた。
「革ってもっと重くてゴワゴワしてると思ってたんだけど、けっこう軽くて柔らかいね」
 手を開いたり閉じたりして、引き金が引きやすいように人差し指と中指だけ露出させた皮製のグローブの感触を確かめながら、こなたは感心したようにそう言った、
「その革、特別らしいからね。バスカーってとこの特産品だって」
「…なんか高そう」
「ふふ、高かったわよー」
 そう言いながらニヤニヤしているかがみから、こなたは目をそらした。
「…かんしゃしてますかがみさま」
 そしてそう棒読みで言うこなたに、かがみはクスクスと笑った。
「こんなことで恩着せようなんて、思ってないわよ」
 笑いながらかがみは、こなたの左の二の腕に何かを結びつけた。
「え、なに?」
 こなたがそれに気づき自分の腕を見ると、そこにはピンク色のスカーフか結ばれていた。
「これって…制服の?」
「うん…まあ、お守りみたいなものよ」
 自分の腕にも結んであるスカーフを指差しながら、かがみがそう言った。こなたは少しの間スカーフを眺めた後、かがみに向かって微笑みかけた。
「じゃ、いこっか」
「ええ」
 そして、二人は村の酒場に向かって歩き始めた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第四話『誰のために』



661 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:25:41.09 ID:4Y.2N3.0
 扉を開けて入ってきたかがみとこなたを見て、カウンターでグラスを磨いていた男性は驚いた顔をした。
「…村を出るのかい?」
 そして、二人が近づいてくると、男性が先にそう切り出した。
「…え?どうしてそれを?」
 言いたいことを先に言われたかがみが、驚いてそう聞いた。
「小さい村だからね、色々聞こえてくるさ…まあ、仕事の直後だったし、今日一日くらいは友達とのんびり過ごすと思ってたけどな」
 そう言いながら笑う男性に、かがみは苦笑を返した。
「出ると決めたら、早いほうがいいと思って…それに、出て行くついでにゴブのアジトを潰していこうと思ってますから」
「ホンキかい?」
「はい。問題を残したまま出て行くわけには行かないから…」
 かがみの言葉に、男性がまた笑った。
「真面目兎らしい旅立ちだな」
「…それ、止めて下さいって」
 男性はひとしきり笑うと、カウンターの奥から一冊の本を取り出してきて、カウンターの上に置いた。
「これは…絵本ですか?」
「そうだ。かがみちゃんの二つなの元ネタだよ」
 そう言いながら男性は絵本を開き、とあるページを指差した。
「…こうして真面目兎のクニークルスは翼を手に入れ、鳥となって空を飛んでいきました…それから人々は兎を数える時に一羽、二羽というようになったのです…」
 かがみがそこに書かれていることを読み上げると、男性は微笑みながらこなたの方を見た。
「かがみちゃんにとっての翼は君だったんだろうね」
「え、あ…はあ…」
 急に振られたこなたは、曖昧な返事を返すだけだった。
「やはり、渡り鳥は空を飛んでこそだよ…行っておいで」
「…はい。行ってきます」
 かがみは男性に一礼すると、こなたに目配せをしてから酒場の出入り口へと向かった。


 かがみとこなたの二人が出て行った後、男性は店の奥の方を向いた。
「店の常連さんに、なにも言わなくて良かったのかい、アシュレー?」
 少し間を置いてから、かがみ達からは死角になっていた場所から、アシュレーが出てきた。
「俺から言えることなんて何もないよ…」
「そうかい…まあ、お前がそう言うなら俺は何も言えんが…」
 男性はそう言いながら、酒場の出入り口の方を見た。アシュレーがつられてそっちを見ると、一人の女性…アシュレーの妻であるマリナがそこに立っていた。
「マリナ…」
 アシュレーの呟きに答えるようにマリナは微笑み、店の中へと歩いてきた。
「行きたいって、顔してる」
 そう言いながらマリナは、右手を開いて握っていたものをアシュレーに見せた。
「頑張ってるかがみちゃんを見て、思い出したんでしょ?この村を出て行ったときのこと…」
「…行けないよ、俺は」
 首輪を付けた犬のデザインのバッジ。マリナの手の中にあるそれから、アシュレーは目をそらした。
「私のため…なんて理由はやめて、アシュレー。私はあなたを縛り付けるためにここにいるんじゃないから。今、誰のために戦うのか…それだけ考えて」
 アシュレーは視線をバッジに戻し、マリナの手の中のそれを掴んだ。
「…ごめん、マリナ」
「うん…でも、一つだけわがままを言わせて…もう、あんな辛い顔で帰ってこないで。ちゃんと笑顔で帰ってきて…」
「ああ、約束する」
 そう言いながらアシュレーは力強く頷き、酒場の出入り口へと向かった。



662 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:26:26.51 ID:4Y.2N3.0
「…今からなら、昼過ぎにはアジトにつけるわね」
 村の出口で地図を見ながら、かがみが隣に立っているこなたにそう言った。
「なんでまた真っ昼間に?」
「あいつらが夜行性だからよ。昼は大半のゴブが動いてないはずよ」
「なるほどね」
 こなたは頷きながら、村の方を見た。その視線が一人の少年を捉える。
「あれ、トニー君じゃない?」
 こなた指差した方をかがみが見ると、木の陰に隠れるようにトニーがこっちを見ていた。
「トニー!そんなとこ隠れてないでこっち来なさいよ!」
 かがみが声をかけると、トニーは少し迷ってから木の影から出てかがみ達のほうに歩いてきた。
「…ねーちゃん、行くんだな?」
 かがみ達の前に立ったトニーは、うつむきながら力のない声でそう言った。
「…うん」
「…もう、この村に戻ってこないのか?」
「…たぶん…ね」
 かがみはトニーの頭の上に手を置いた。
「そんな泣きそうな顔しないの。男の子でしょ?」
 少し強めにトニーの頭を撫でるかがみ。トニーはより深くうつむいた後、勢いよく顔を上げた。
「ねーちゃん!俺、強くなるよ!ねーちゃんに負けないくらい強くなって、この村俺が守るんだ!…だから、ねーちゃんは何にも気にしないでいけよ…」
 最後の方は涙声になりながらも、そう力強く言い切ったトニーに、かがみはゆっくりとうなずいて見せた。
「ありがとう、トニー…でも、目標がわたしなんて志が低いわよ。どうせなら、銀の腕くらい目指しなさい」
 そしてかがみは、トニーの頭から手を離して背を向けた。
「おまたせ、こなた。行こっか」
「…うん」
 二人が話してる間少し離れたところに居たこなたは、かがみに声をかけられ、その後を追うように歩き出した。
 村の門を潜ったあたりでこなたが後ろを見ると、トニーはまだこちらを見ていた。
「ねえ、かがみ…トニー君ってもしかしてかがみのこと好きだったんじゃない?」
 そのトニーの姿が見えなくなったあたりで、こなたはかがみにそう言った。
「そうかもね…」
 かがみが少し寂しげにそう言うのを見て、こなたは少し迂闊なことを言ったと後悔した。
「そういや、さっきの会話で言ってた銀の腕ってなに?」
 こなたは話題をそらそうと、今度はそう聞いた。
「銀の腕のロディ。あんたが遺跡で世話になったって人よ。ARMの扱いでは右に出るものはいない、トップクラスの渡り鳥って話よ」
「…そ、そんな凄い人だったんだ…」
 こなたの呟きに、かがみが首をかしげた。
「一緒にいて気づかなかったの?…って、まあ知らなかったんだし、しょうがないか」
 自分の問いに自分で結論を出すかがみの横で、こなたは複雑な表情を見せていた。
「…わたし、ホンキで足手まといだったんだなー…」
 そして、かがみに聞こえないようにそう呟いていた。



663 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:27:13.82 ID:4Y.2N3.0
 斧と剣が打ち合わされる金属音が森の中に響く。かがみは力任せにナイトブレイザーを押し込み、ゴブの体制を崩してそのまま切り伏せた。そして、逆の手に持っていた鞘で自分の真後ろから来ていたゴブを突きひるませる。数歩後ろに下がったゴブは何かに撃ち貫かれて吹っ飛び、その場所に消えていたこなたが姿を現した。
「ナイスこなた」
 かがみがそう褒めた直後、足元に二本の矢が突き立った。かがみは動きを止めないようにしながら、矢が飛んできた方を向いた。ちょっとした大木の枝に立って、ボウガンの装填をしている二匹のゴブが見えた。
「こなた、気をつけて!木の上にボウガンもった奴がいる!」
「わかった!…アクセラレイター!」
 返事と共にこなたの姿が掻き消える。その直後に一匹のゴブが銃撃を受け、枝から砂に戻りながら落下してきた。そして、アクセラレイターの解けたこなたが空中に姿を現し、慌てて近くの枝にぶら下がった。
「ちょ、ちょっと!なんでもう解けるの!?」
 どうやらトラブルらしいと判断したかがみは、ナイトブレイザーを鞘に戻してもう一匹のゴブに狙いを定める。
「飛燕!」
 そして、鞘の引き金を引きゴブを衝撃波で切り落とした。
「…これで全部かしらね」
 周りを見渡し安全を確認した後、かがみは構えを解いた。その横に木の幹を伝ってこなたが下りてきた。
「かがみー…こいつらホントに夜行性?なんか襲撃多くない?」
 森に入ってから幾度と無く続くゴブとの戦闘に、こなたがそう愚痴をこぼした。
「うーん…おかしいわね。昼にこんなに出てくるはずないんだけど…」
 かがみが心底わからないといった風に首をかしげるのを見て、こなたはため息をついた。
「それとポンコツ。なんでさっき途中でアクセラレイター解いたの?落ちそうになったじゃん」
 そしてこなたは今度は手に持ったアガートラームに文句を言った。
『解いたんじゃない。解けたんだよ。アラクセラレイターは、無制限に使えるわけじゃないんだ。こなたが疲れてきたら制限時間も短くなってくるよ。ってか使いすぎだよ』
「…しょうがないじゃん。近づかないと当たらないんだから」
「じゃ、休憩しよっか?そろそろお昼だしね」
 こなたとアガートラームのやり取りを苦笑しながら見ていたかがみが、そう提案しながら手近な木の根っこに腰掛けた。その隣にこなたも座り込む。
「はい、これ」
「ありがと」
 こなたはかがみの差し出してきた干し肉を受け取って口に運んだ。
「…まず」
 そして、味の無いビーフジャーキーといった感じのそれに、思わず眉間にしわがよる。
「保存食なんだからしょうがないでしょ。我慢しなさい」
 そうこなたを諭すものの、かがみ自身も不味そうに眉間にしわをよせていた。
「そういや、かがみ。聞きたかったんだけど」
「ん、なに?」
「戦闘のとき使ってるあの技なに?」
「あーあれね…」
 かがみは、食べ終わった携帯食料の包みを丸めて鞄にしまうと、コートの中からナイトブレザーを取り出した。
「早撃ちっていう剣技よ。村に立ち寄った渡り鳥の剣士さんから教えてもらったの…まあ、この剣の機能使ってアレンジしてるけどね」
「ふーん…技名言うのも?」
「…あれはわたしが勝手に…いや、なんかこう盛り上がるからさ…わたしの中で色々…ってかあんただってアクセラレイター使うとき叫んでるじゃない」
「そういやそうだった」
 こなたは頬をかきながらそう言うと、自分も何か必殺技みたいなのを編み出そうなどと考え始めた。



664 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:28:37.01 ID:4Y.2N3.0
「…あそこなんだけど」
 木の影から顔だけ出しながら、かがみがそう言った。
「…大きな家だね」
 逆側から顔を出しているこなたがそう返す。
「アーデルハイドのお金持ちの別荘だったらしいわ。破産したとかでほっとかれてたところに、ゴブが住み着いたみたい」
「ふーん…と、まあそれはともかく」
 こなたは木の影引っ込むと、幹にもたれてため息をついた。
「なに?あの数…」
 こなたの呟きに、かがみは冷や汗を一つ垂らした。ゴブアジトの門前には、十匹以上のゴブがうろうろしている。
「なんか滅茶苦茶警備が厳重なんだけど、どうするの?」
「どうするって…どうしよう?」
 かがみは予想外のゴブの動きに、何か作戦が無いものかと考えたが良いもの少しも思いつかなかった。
「一旦退くしかないかな…」
 もう一度木の影から顔を出しながら、こなたがそう呟いた。
「いや、あの数なら突破できると思うよ」
「そう?いっぺんにかかってこられたらまずいと思うんだけど…あれ?」
 こなたは違和感を覚えて、かがみの方を見た。帰ってきた返事が男性の声に聞こえたからだ。かがみは、後ろを向いて唖然としていた。こなたもその方を向く。
「…え…アシュレーさん?」
「やあ」
 かがみと同じく唖然とした表情になったまま呟くこなたに、アシュレーは片手を挙げて答えた。パン屋の制服であるエプロン姿ではなく、こなたの着ているのと似た感じのウェスタンシャツに赤いスカーフ。そして下はシンプルなジーンズ。背にはパン屋の壁に飾ってあった巨大な銃剣の付いたライフル…バイアネットを背負っていた。
「アシュレーさん…どうして…」
 かがみがそう聞くと、アシュレーは照れた表情で頬をかいた。
「君たちを手伝いに来たんだ」
「いや、戦えないって…」
「その話は後でいいかな?とりあえず、ここを潰そう」
 かがみの言葉を遮って、アシュレーは木の影からアジトに向かって歩き出した。
「え、ちょっと…」
「全部はしとめられないと思うから、残りを頼むよ」
 止めようとするかがみに構わず、アシュレーはバイアネットを両手で構えた。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
 そして、雄たけびを上げながらゴブの群れに突進する。アシュレーに気がついたゴブたちが身構えるが、構わずアシュレーは群れの中に突っ込んだ。そのまま一匹のゴブを銃剣で串刺しにし、勢いを止めずに群れの中を突っ切る。
 刺さっているゴブが砂と化する頃には、アシュレーは群れを抜けてアジトの門まで到達していた。アシュレーは門を背に群れの方に向き直ると、今度はバイアネットの銃口を斜め上に向けた。
「マルチブラスト!」
 放たれた弾丸がゴブの群れの真上辺りで破裂し、無数の弾丸の雨となってゴブの群れに降り注いだ。鉄の雨に撃たれたゴブたちが次々と倒れ、残ったのは三匹だけとなった。
「こなた!行くわよ!」
 かがみはこなたにそう言いながら、残りのゴブの一匹に向かって飛燕を放ち、その衝撃波を追うように走り出した。
 衝撃波が一匹のゴブを吹き飛ばし、混乱しきっているもう一匹のゴブの前まで来たかがみは、身を大きく沈めて早撃ちの体制をとった。
「鷲爪!」
 撃ち出された刃がゴブを縦に切り裂き、そのまま勢いを殺さずにもう一方の手に持った鞘でゴブの顎を打ち上げる。かがみはさらにもう半回転し、逆手に持ち替えた剣でゴブの腹部を刺し貫いた。
「もう一匹は…」
 かがみが残りのゴブに目をやると、すでに倒れ伏し砂と化し始めていた。構えを解いたかがみの横に、アクセラレイターを解いたこなたが現れる。
665 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:29:26.68 ID:4Y.2N3.0
「どう、かがみ?今の技は」
 得意げにそう言うこなたに、かがみは申し訳なさそうに頬をかいた。
「いや、ごめん…見て無かったわ…」
「えー…アシュレーさんは?」
 こなたが今度はアシュレーに振ると、アシュレーもまたかがみと同じように頬をかいた。
「いや、何かやってたのはわかったけど、全然見えなかった…」
「えー…ポンコツー。みんなに見えるようにもうちょい速度落とそうよ」
『いや、見えたらアクセラレイターの意味無いんじゃないかな…』
「とりあえず、中入りましょうか」
 落ち込んでるこなたの肩を叩きながら、かがみがそう言った。
「…今、そのARMと会話してなかったか?」
 そのかがみの後ろから、アシュレーがアガートラームを指差しながらそう聞いた。
「気のせいです」
 ややこしくなることを回避するために、かがみはそう言い切って、こなたを引っ張りながらアジトの入り口へと歩いていった。



 木の床を踏むギシギシという音だけが屋敷の中に響く。アジトの中に入った三人はしばらく中を探索したが、未だにゴブは一匹たりとも姿を見せてはいなかった。かがみとアシュレーはまだ警戒を解いてはいないが、こなたはもう完全に緩みきって、両手を頭の後ろで組んでブラブラ歩きながら辺りを眺めていた。
「外にいたので全部だったのかしら…」
 まったく敵の見えない状況に、かがみも少し警戒を解いた。
「…こなた?」
 そして、見える範囲にこなたがいない事に気がついた。
「アシュレーさん、こなたは?」
 かがみがそう聞くと、アシュレーは近くにあった部屋の扉を指差した。
「そこに入っていったよ」
「え…もう、勝手に行動して」
「あの子も渡り鳥なんだろ?大丈夫じゃないか?」
「こなたはこっちの世界に来てまだ三日目なんですよ。戦闘経験とかあんまりないんです」
「そうだったのか…わかった、俺が見てくる」
 アシュレーはかがみにそう言って部屋の中に入っていった。かがみは扉に背をつけて、辺りを警戒し始めた。
「…遅いわね」
 しばらくそのままの姿勢でいたが、なかなか出てこない二人に不安になったかがみは、扉を開けて中を覗きこんだ。
「ほら、アシュレーさんこれなんか…」
「…凄いな」
 部屋の中では、こなたとアシュレーが床に座り込んで一冊の本を二人で見ていた。かがみは二人に気づかれないよう足音を忍ばせて近づき、二人の後ろからそっと本を覗き込んだ。
「…っ!?」
 そして慌てて目をそらす。一瞬見えた本の内容は、ほとんど裸に近い格好をした女性の写真だった。かがみは小さくため息をついて気持ちを落ち着かせると、ドンッと力強く床を踏み鳴らした。
 本を見ていた二人はビクッと体を震わせると、恐る恐る後ろを振り向いた。そして冷ややかな目で見下ろすかがみの姿を確認すると、同時にお互いを指差し合った。
「アシュレーさんが…」
「こなたちゃんが…」
「………」
 かがみは無言のまま、ナイトブレイザーの鞘で二人の頭を殴りつけた。



666 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:30:27.95 ID:4Y.2N3.0
「まったく緊張感が無いったら…」
 ブツブツと文句を言いながら肩をいからせて歩くかがみの後ろを、たんこぶの出来た頭を擦りながらこなたとアシュレーが付いていく。
「いやまあ、本を読みふけってたのは悪かったけど、収穫もあったからさ…」
 こなたがそう言うと、かがみは足を止めてこなた達の方に振り返った。
「へー、なにがあったのかしら?」
 まだ冷たいかがみの視線に気圧されながら、こなたはアシュレーのほうを見た。
「ほら、アシュレーさん、アレ」
「あ、ああ…これなんだけど…」
 アシュレーがかがみに差し出したのは、一つのライブジェムだった。
「…これが、あの部屋に?」
 かがみがそう聞くと、こなたとアシュレーは同時に頷いた。
「それで、部屋を良く見ると砂も落ちてたんだ。廊下も良く見るとあちこちに砂が落ちてるよ」
 こなたに言われかがみが廊下をじっと見ると、確かに砂がうっすらと残ってるのが見えた。
「…なんか、砂獣を倒した後に掃除したって感じね。他の渡り鳥が先にここに乗り込んでた?」
 かがみがそう呟くと、アシュレーが顎に手を当てて考える仕草をした。
「俺も最初はそう思ったけど、ライブジェムを持って行くのはともかく、砂を掃除していく理由が無いんだよな…」
「…で、もうちょっとなんかないかなって部屋探してたらあの本が見つかって、ちょっと見ようってアシュレーさんが…」
「…いや、それはこなたちゃんが先に…」
「擦り付け合いやめい」
 かがみは、もう一度ナイトブレイザーの鞘で二人を殴ろうかと構えた…と、その時、床が震えるほどの咆哮がアジトの奥から響いてきた。
「…なに、今の?」
 ナイトブレイザーを構えたままの格好で固まるかがみ。
「何かいるみたいだな…少なくともゴブや人間じゃない」
 バイアネットを構えたアシュレーが咆哮の聞こえた方へと歩き出す。かがみとこなたも周囲を警戒しながら後に続いた。



「…あれか」
「砂獣…なのかしら?」
「さあ…」
 廊下から部屋の中を上からアシュレー、かがみ、こなたの順で覗きこみながら口々にそう言う。かなりの広さを持つその部屋の中に居たのは、3m近い巨大な体躯を持つ赤い鎧だった。
 鎧は部屋の中央にしゃがみ込み、床に顔をつけて何かを喰らっているように見えた。
「なに?…砂を食べてるの?」
 それを見ていたかがみがそう呟いた。鎧の足元に大量の砂が落ちているのが見えたからだ。
「いや、たぶんライブジェムを食べているんだ」
 かがみの頭の上でアシュレーがそう言う。
「…美味しいのかな」
 今度はかがみの下でこなたがそう言った。
「…いや、食べれないから…ってーか外にいたゴブはあいつに追い出されたのね」
「中のは喰われたってことか…」
 かがみの言葉に頷きながら、アシュレーは廊下に戻りバイアネットの点検を始めた。
「あんなのが村に行ったら大変だ。ここでしとめよう」
 こなたとかがみのほうを見ながらそう言うアシュレーに、二人は迷わず頷いた。
「じゃ、わたしが突っ込んでアクセラレイターで牽制するから、二人で倒してよ」
「…大丈夫なの?」
 心配そうに聞くかがみにこなたは微笑み返すと、アガートラームを構えて部屋の中に飛び込んだ。


667 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:33:49.86 ID:4Y.2N3.0
「こいつっ!」
 部屋に入ったこなたは走りながら鎧に向かって発砲するが、弾丸はすべてその強固な装甲に弾かれてしまった。
「…予想通り硬いね…アクセラレイター!」
 鎧がこちらに気がついたのを確認して、こなたはアクセラレーターを発動させた。灰色の景色の中をこなたは、大きく弧を描いて鎧の後ろに回りこむ。そして、その足に向かって蹴りをはなった…が、鎧はまるで効いてないかのように足を上げた。
「うそっ!?」
 そのまま鎧が足を自分に向かって下ろしてくるのが見えたこなたは、転がって鎧から距離をとった。アクセラレイターが解け、鎧の足が床を踏み鳴らした。
「…あいつ、アクセラレイターに反応したよね?」
『したね。驚いたよ…でも反応しただけだ、速度は付いてきてない』
 こなたはアガートラームに頷き、もう一度アクセラレイターを使おうとアガートラームを構えた。
「てえいっ!」
 しかし、こなたがアクセラレイターを使うより早く、鎧の背中からかがみの声と金属同士がぶつかったような音が聞こえた。
「こいつで、どうだ!」
 さらに鎧の横に回りこんだアシュレーが銃撃をくわえる。しかし、鎧は二人の攻撃を意にも介さず背後のかがみに向かって腕を振るった。かがみはナイトブレイザーの剣と鞘を交差させて攻撃を受け止めたが、受けきれずに吹き飛ばされて背後の壁に叩きつけられた。
「…いったー…」
「かがみ、大丈夫?」
 こなたがかがみの側に駆け寄ると、かがみは顔をしかめながらもこなたに向かって親指を立てて見せた。
「コレくらい平気よ…にしても、硬すぎでしょアイツ」
 かがみの愚痴にこなたが頷く。
「でもま、何とかしないとね」
 かがみが立ち上がり、ナイトブレイザーを鞘に収めて引き金を確かめた。
「何とかできるの?」
「多分ね。切り札ってのはこういう時に使うものよ…こなた、アシュレーさんと代わって」
 こなたはかがみの言葉に頷き、鎧の牽制をしているアシュレーに向かって走った。そして、こなたと代わったアシュレーが肩で息をしながらかがみの方に歩いてきた。
「…ブランクがあるせいか、体力が落ちてる…」
 汗を拭うアシュレーに、かがみは鞄の中から青色の小さな果実を出して渡した。
「これを」
「ヒールベリーか、助かる」
 アシュレーはその果実を一口で食べると、バイアネットに弾丸を装填した。
「アシュレーさん。あいつの動きを止めれます?少しの間でいいんですが」
「…やってみよう」
 かがみの言葉にアシュレーは頷くと、バイアネットを床に突き立てた。
「タイミングは?」
「そっちにあわせます」
 そう言いながら、かがみが早撃ちの構えをとると、アシュレーは鎧の方を向いた。
「こなたちゃん、飛んでくれ!」
 そしてこなたに向かってそう叫ぶ。その声に反応し、こなたが鎧の体を蹴って宙に舞ったのを見て、アシュレーはバイアネットの引き金を引いた。
「ショックスライダー!」
 バイアネットの剣先から、振動波が床を伝って鎧の足元を襲う。足元を揺らされた鎧が膝をつくと、その真正面にかがみが飛び込んだ。
「…重ね撃ち…」
 かがみはナイトブレイザーの引き金を引き、飛び出そうになる剣を力ずくで押さえ込んだ。そして、もう一回引き金を引き、さらに力を溜めこむ。
「鷹咬!」
 三度目の引き金で力を解放し、鎧の胸部目がけて剣を叩き付けた。耳をつんざく金属音と共に鎧が仰向けに倒れ、かがみも反動で後ろに転がった。
「アクセラレイター!」
 それを見たこなたが加速し、鎧に向かって飛び上がった。そして、かがみの渾身の斬撃でひびの入った鎧の胸部目がけて両足で蹴りこむ。さらに反動を使って飛び上がり、空中から銃撃を追加した。
「とどめだ!」
 さらに、こなたの攻撃で完全に装甲が砕け、露出した鎧の中身にアシュレーがバイアネットをつきたてる。
「フルフラット!」
 そして、そのまま銃に残ったありったけの弾丸を鎧に撃ち込んだ。アシュレーがバイアネットを引き抜き後ろに下がると、鎧はゆっくりと砂に戻っていった。
668 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:34:40.15 ID:4Y.2N3.0
「一応、こいつも砂獣だったんだ…あれ?これって」
 鎧だった砂の中から、かがみは手のひらに収まる小さな彫像を拾い上げた。今まで戦っていた鎧と同じような形をしている。
「なんだろう…ねえ、こなた」
 かがみは、拾った彫像の事を聞こうとこなたの方に向いた。こなたは部屋の真ん中で腕を組んで考え込んでいた。
「…どうしたの?」
 かがみがそう聞くと、こなたはなんとも情けない顔をした。
「いや、わたしだけ技名が無いの寂しいなって…かがみなんて超必みたいなのまであるのに」
 返ってきた答えに、かがみはため息をついた。
「くだらないことで悩んでんじゃないわよ…」
「くだらなくないよー」
「俺の銃剣技や、かがみちゃんの早撃ちみたいな名前が欲しいって事か?」
 口を尖らせるこなたの後ろからアシュレーがそう言うと、こなたは振り向いて頷いた。
「よく見えなかったけど、こなたちゃんのは体術だよな?」
「そうですね。アクセラレーター中に蹴ってます」
「そうだな…まあ、個々の技名は自分で考えた方がいいけど…総称はファイネストアーツってのはどうだ?」
「お、それいいね。いただきます」
 こなたは手を叩いて感心したが、すぐに疑問を感じて首を捻った。
「そういや、技名ノリノリで叫んでたことといい、アシュレーさんってもしかしてこういうの好き?」
「え…あ、まあ…それなりには…」
 頬をかきながら視線をそらすアシュレーと、ニヤニヤしているこなたを見ながら、かがみはため息をついた。



「それじゃ、気をつけて。旅の無事を祈ってるよ」
「はい、色々ありがとうございました…酒場のおじさんにもよろしく言っておいてください」
 手を振りながら遠ざかっていくアシュレーを見送ると、かがみは隣で手を振っているこなたの方を向いた。
「じゃ、アーデルハイドに向かいましょうか」
「…疲れたし、ちょっと休まない?」
 文句を言うこなたに、かがみはヒールベリーを手渡した。
「なにこれ?」
「食べると疲れが取れる果物よ。ちょっとした怪我も治るから、それ食べて頑張りなさい」
「…マジで…さすが異世界…」
 こなたはヒールベリーを頬張ると、先に歩き出したかがみを追いかけた。
『そういや、あのアシュレーって人はなんで戦えなかったんだろうね』
 アシュレーの手前、ほとんど喋らなかったアガートラームがポツリと呟いた。
「あー、それ聞いてなかったね。かがみも忘れてるっぽいし…ま、気にする事じゃなかったのかな。さっきの見てる限りじゃアシュレーさん強いみたいだし」
『まあ、そうだね』
「こなたー!遅れてるわよー!」
 前から聞こえてきたかがみの声に、こなたは自分の歩く速度が落ちてることに気がつき、慌てて足を速めた。




669 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:35:34.34 ID:4Y.2N3.0
 森の中をアシュレーは、村に向かって走っていた。湧き上がってくる高揚感が、自然と走る速度を速める。
「…戦える…俺はまだ、戦えるんだ…」
 少しでも早く村に帰り、マリナに今の気持ちを伝えた。アシュレーはその一心で走っていた。だが、どこからか聞こえてきた拍手の音に、その足がピタリと止まる。
「だ、誰だ…?」
 アシュレーがそう聞くと、木の影から一人の女性が姿を現した。
「少し動きが鈍くなってたけど、まだまだ戦えそうね。安心したわ、アシュレー君」
 優しい微笑を浮かべたその女性の顔を見たアシュレーは、驚きに目を見開いた。
「アナスタシア隊長…どうしてここに…」
「君を迎えに来たのよ、アシュレー君。騎兵隊を復活させたいの。ユグドラシルをもう一度作り上げるために」
 アシュレーは、アナスタシアから距離をとるように後ずさった。
「正気ですか?…あれのために、俺は…俺たちは…」
 アナスタシアから放たれる得体の知れない空気に、アシュレーは冷や汗を流していた。
「そうね、いい思い出じゃないわ。でも、今は必要なの」
 アナスタシアは後ろ手に隠していた、柄と同じ長さの刃を持つ槍を振りかざした。その先端から放たれる禍々しい虹色の光が、アシュレーを打ち抜いた。
「がっ!?…な…どうして…」
 アシュレーはその場に崩れ落ち、そのまま意識を失った。
「あなたが必要なのよアシュレー君。無理矢理にでも、ね」
 アナスタシアはアシュレーの体を軽々と担ぎ上げると、森の奥へと消えていった。


― 続く ―




次回予告

つかさです。
アーデルハイドに辿り着いたこなちゃんとお姉ちゃんは、町の闇とそこに巣食う特異な渡り鳥…賞金稼ぎの事を知ります。

次回わいるど☆あーむずLS第五話『魔女と悪漢娘』

ふー、やっとわたしの出番だよー…え、なに、お姉ちゃん?…一応そういうことは言うな?…ご、ごめんなさい。
670 :WALS-4 [saga]:2010/05/14(金) 01:36:40.31 ID:4Y.2N3.0
以上です。

村を出るところまでは三話に入れたほうが良かったかなあと、今更思ったり。
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/14(金) 06:29:34.54 ID:F2KkcQEo
乙〜
更新はやくてうれしい限り
WAの登場人物は結構元ネタと変わってるんですね
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/14(金) 20:53:05.83 ID:zl25WmI0
-----------------------------------------------------------------------------------
ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------------
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/15(土) 09:29:55.63 ID:3k1ALOAo
>>670
たしかに、それもよかったかも知れない
感想苦手だから、面白かったぐらいしか言えなくてすまんが面白かったぜ、乙!
WAのゲームやってみたくなった

>>672
まとめ乙!
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/15(土) 12:29:09.67 ID:L5IATOQ0
まとめ乙ー
675 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:15:28.65 ID:eqF4.gAO
投下行きます。思いつきのやつを
676 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:16:18.13 ID:eqF4.gAO
こなたの場合…

「んじゃ行ってくるねぇ〜」
私はいつもの時間に家を出た。
いつもと変わらない朝で、いつもと変わらない空気。いつもと変わらない駅。
「…いつもなら、ここでかがみ達と会うんだよね。そんでつかさと馬鹿話で盛り上がって、かがみが突っ込んで…」
それがいつもの光景だった。けれど
「そんで降りたらみゆきさんと合流して…学校まで歩くんだったね。笑ったり和んだりした声があって…でも今日はない」
いつもと変わらないのに、それだけがない。それだけなのに
「一つだけないだけで、いつもと一緒なのに…なんでこんな…」


677 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:17:16.73 ID:eqF4.gAO
つかさの場合…


「じゃあお姉ちゃん、私先に行くからね」
私はいつもの時間に家を出た。
いつもと変わらない朝で、いつもと変わらない空気。いつもと変わらない駅。
「…いつもなら、ここでこなちゃんと会うんだよね。それでこなちゃんと色んなで盛り上がって、お姉ちゃんが合いの手入れて…」
それがいつもの光景だった。けれど
「それで、バス停でゆきちゃんと合流して…学校まで歩くんだったね。笑ったり和んだりした声があって…でも今日はない」
いつもと変わらないのに、それだけがない。それだけなのに
「一つだけないだけで、いつもと一緒なのに…なんでこんな…」

678 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:18:02.21 ID:eqF4.gAO
みゆきの場合…

「では、行って参ります」
私はいつもの時間に家を出た。
いつもと変わらない朝で、いつもと変わらない空気。いつもと変わらない駅。
「でも今日から別方向なんですよね」
いつもと違う道。いつもと違う方向。
「以前なら、駅を降りたら泉さんたちがバス停にいて、合流するんでしたね。そして学校までの道を笑ったり和んだりした声で楽しんで…でも今日はない」
いつもと変わらないのに、それだけがない。それだけなのに
「方向が変わっただけですのに…他は変わらないのになんでこんな…」

679 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:18:50.01 ID:eqF4.gAO
かがみの場合…

「私入学式午後からだから。行ってらっしゃい。」
私はいつもの時間に…家にいた。
いつもと変わらない朝で、いつもと変わらない空気。だけど今日は外出しない。
「…いつもなら、この時間でこなたと会うのよね。そんでつかさがこなたと馬鹿話で盛り上がって、私が止めて…」
それがいつもの光景だった。けれど
「それでバス停にはみゆきがいて…学校まで歩くのよね。笑ったりこなたが分かりにくいネタふってきたり…でも今日はない」
いつもと変わってしまって、それすらない。だからだろうか
「卒業したってだけで、一つ変わっただけで、なんでこうも」
680 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:20:11.50 ID:eqF4.gAO




『………今日から』




『……………一人なんだ…………』






END
681 :入学式の日…… [saga]:2010/05/19(水) 21:25:26.79 ID:eqF4.gAO
終了。オチ?なにそれおいしいの?
投げっぱなし投げっぱなし。

当然ながらつかさは専門学校の入学式です。

かがみの入学式が午後というのは実際法学部が午後に行われた学校があるからであって、ここでもハブるためではありません。あしからず
682 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:16:35.23 ID:hrSd/ow0
>>681
こなたはこの後みさおと合流ですな。


投下行きます。
第五話です。
683 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:17:13.16 ID:hrSd/ow0
 アーデルハイド公国。荒廃するファルガイアの中で、唯一国らしく機能している国。その城下町に入るための巨大な門の前では、人々が長蛇の列を作っていた。
「…あーもー。何時になったら町に入れるんだよー」
 列の中ほどでかがみと共に並んでいるこなたは、うんざりとした表情でそう言った。
「なんなのかしらね、この列…」
 普段ならこなたの態度をたしなめるかがみも、数時間にわたる渋滞にすっかり音をあげていた。
「わたしも帽子買っときゃ良かったなー…」
 こなたに貸してもらったスカーフで日差しを防ぎながらそう言うかがみに、こなたは胡散臭げな視線を向けた。
「いや、帽子云々よりその黒コートが暑そうなんだけど…」
「これ?そうでもないわよ。熱を通さないで風を通すように作ってあるから、見た目ほど暑くないのよね。荒野を旅する渡り鳥用に作ったコートだそうよ」
「…そうなんだ…ずるいなー…」
「いや、ずるいって言われても…」
 二人がそんなとりとめの無い話をしている間も、列はゆっくりと前に進んでいた。


 ようやく門の全容が見えてきた辺りで、こなたは何人かの兵士らしき人達が町に入ろうとしている人々を取り調べているのを見た。
「かがみ、なんか検問やってるみたいだよ」
 こなたが隣のかがみにそう言うと、かがみはうんざりとした顔を見せた。
「検問?めんどうねー…」
「通れるのかな」
「指名手配されてるような悪人じゃないんだし、いけるんじゃない?渡り鳥ってのがどれほど信用されてるか知らないけど」
 話している間にも列は進み、こなた達の前にいかにもと言った感じの兵士が立ちはだかった。
「…君たちは?ここになにしに?」
 兵士も疲れているのか、かなりぶっきらぼうな質問をこなた達にしてきた。
「えーっと、わたし達は渡り鳥で、この町に人探しを…」
 かがみの答えに、兵士はいかにも胡散臭げなものを見るような顔をした。
「渡り鳥?君たちが?…怪しいな」
 少し怪しくなってきた雲行きに、こなたは困ったようにかがみのコートの袖を引いた。
「まさか、ここまできて入れないってオチは無いよね?」
「…それはわたしもホンキで避けたいわよ」
 こなた達がひそひそと話してる間に、別の兵士がやってきてこなた達の前に居る兵士の肩を叩いた。
「おい、この子アレじゃないか?メリア村のクニークルス」
「え?…ああ、そう言えば兎耳に黒いコート…」
 兵士達の話を聞きながら、かがみは自分のツインテールの髪をさわった。
「兎耳って…これ?」
「多分ねー」
 兵士は持っていたボードに何か書き込んだ後、後ろにある門を指差した。
「ま、あんたなら大丈夫だろ。通ってもいいぞ」
「…どうも」
 二人は兵士に軽く頭を下げて門へと向かった。
「…二つ名通りの真面目さだと、この町で仕事が出来るとは思えんがな…」
 そして、背後から聞こえてきた兵士の呟きに、お互い顔を見合わせて首をかしげた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第五話『魔女と悪漢娘』



684 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:19:49.73 ID:hrSd/ow0
「しっかし、かがみ有名だねー。こんな町にまで名前売れてるとか」
 城壁を隔てた向こうの荒野とはうって変わった、中世ヨーロッパを思わせる静かな町並み。その中を歩きながら、こなたはにやけた表情でそう言った。
「…恥ずかしいから嫌なんだけど…」
 かがみは大きくため息をつくと、気分を変えるかのように町並みを見渡した。
「なんか平和な町ね。行商人が治安悪くなってるって言ってたけど、別の町だったのかしら」
「そういや、そんなこと言ってたね…」
 こなたはかがみにそう答えながら、アガートラームをホルスターから引き抜いた。
「ねえ、お仲間の反応って具体的な位置わかんないの?この町けっこう広そうなんだけど」
『わからないね。この町のどこかってのはわかるけど』
 こなたの質問に、アガートラームはそう即答した。
「…こなたがそいつのこと、ポンコツって呼ぶ気持ちがわかるわ」
 そのやり取りを見ていたかがみが、ため息混じりにそう言った。
『うわあ。キミまで僕をポンコツ認定か』
 喚くアガートラームを無視して、かがみは辺りを見渡した。
「どこかで情報集めないとね。制服やらなんやらでわたしたち目立つんだから、誰か知ってる可能性は高いはずよ」
「んじゃー…あそこでどうかな」
 こなたが指差したのは、INNと書かれたコウモリの形をした看板が飾られた建物だった。
「…宿屋?」
 かがみが良くわからないといった風に首をかしげた。
「そ、宿屋の一階は酒場になってるのが、こういう世界のお約束だよ」
「なるほどね」


 宿屋に入ったかがみが中を見渡すと、確かにこなたの言ったとおり酒場のような内装になっていた。
「へー、ホントに酒場だ」
「かがみの村にはこういうのなかったの?」
 感心するかがみにこなたがそう聞くと、かがみが首を横に振った。
「あの村、宿屋が無いのよ。旅人は適当な空家に寝泊りしてたから」
 こなたにそう答えながら、従業員がいないかかがみが探すと、カウンターで本を読んでいる少女がいることに気がついた。
「あの、すいません…」
 かがみはその少女に近づき声をかけた。こなたと同じくらいの背丈。透き通るような白い肌に金髪、紅い眼と、どこか現実離れした風貌だ。少女はかがみの声が聞こえていないのか、まったく反応しなかった。
「すいません」
 かがみが今度は少し強めの声で言うと、少女はようやく顔をかがみの方に向けた。
「なんじゃ、客か?今いいところだから、後にせい」
 そして妙に年寄りくさい口調でそう言った。
「えー…」
 店としてまったくやる気の無い少女の言葉にかがみが唖然としてると、こなたが横から顔を出してきた。
「お腹空いたからさ、何か食べさせてよ」
「ちょっとこなた。わたし達は情報集めに…」
 かがみは勝手に話を進めるこなたを止めようとしたが、こなたは人差し指を顔の前で振りかがみの言葉を遮った。
「こういうところじゃね、まず注文をするのが筋だよ。話を聞くのはそれからだよ」
「たしかにそうだけど…ってかこの人商売する気ないじゃない…」
 二人がそう話していると、少女は本をカウンターの上に置き、こなた達の方を向いた。
「まったく、うるさい小童共じゃの。おちおち本も読んでられんわ…で、注文はなんじゃ?」
 少女がめんどくさそうにそう言うと、こなたは店の中を見渡した。
「えーっと、メニューとかは…」
「そんなもんないぞ。とりあえず大盛りヤキソバセシリアスペシャルがお勧めじゃ。今なら半額じゃぞ?」
「う、うん、じゃあそれで…」
「…適当すぎるわ…」
 少女のあんまりな応対に流石のこなたも困った顔をし、かがみは額に手を置いてため息をついた。
685 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:22:24.40 ID:hrSd/ow0

「ほれ、食うがよい」
 少女がテーブルの上に置いた皿を見て、こなたとかがみは言葉を失った。宴会にでも使われてそうな大皿に、これでもかというくらいに山と盛られたヤキソバ。少なく見積もっても十人前くらいはありそうだ。
「あの…これ、お幾らでしょうか?」
「10ギャラじゃ」
 あまりの多さに不安になったかがみがそう聞くと、少女はカウンターに戻りながら答えた。
「…高いの?」
 貨幣価値が分からないこなたが、かがみにそう耳打ちすると、かがみはため息をついた。
「アシュレーさんのとこのヤキソバパンが一個2ギャラよ…」
「…原材料を疑いたくなる値段設定だね…」
 二人がボソボソと話し合ってると、カウンターで読書を再開していた少女が何かを思い出したように顔を上げた。
「そうそう、残すと罰金じゃからな」
「横暴な!」
「詐欺じゃないの、それ!?」
 少女の言葉にこなたとかがみは思わず席を立って抗議したが、少女は涼しい顔で受け流して再び読書に没頭し始めた。こなたとかがみは同時にため息をつくと、目の前のヤキソバという名の難題を見上げた。
「…食べるしかないね」
「…そうね」
 二人は備え付けてあった箸を手に取ると、不退転の決意を持ってヤキソバに取り掛かった。


「…驚いたの。まさか完食するとはの。お主らを少し見直したぞ」
 少女は空になった皿を片付けながら、テーブルの上で突っ伏すこなたとかがみにそう言った。
「…流石だねかがみ…あそこから一気にいくなんて…」
「…あんたの援護があったからよ…グッジョブだわ。こなた…」
 当の二人はお互いの健闘を称えあい、突っ伏したまま拳をあわせた。
『かっこよくきめてるつもりだろうけど、傍から見てるとすごくかっこわるいよ』
 そして、アガートラームがそう呟いた。こなたは唇についているヤキソバのソースを指で拭うと、無言でアガートラームの銃身に塗りつけた。
『うわっ!汚いなっ!』
 文句を言ってきたアガートラームを無視して、こなたは顔を上げた。
「…意外と美味しかったのがまた複雑…」
「…そうね…」
 かがみもこなたの言葉に同意しながら体を起こした。
「そういや、食べてるときに目に入って気になったんだけど…」
 こなたはそう言いながら店の壁の一角を指差した。
「あの顔写真、なんなんだろ?」
 かがみがそちらを見ると、こなたの言うとおりいくつかの顔写真が適当に張り出されていた。
「…金額が書いてるわね。西部劇とかである手配書ってやつじゃない?」
 そう呟いたかがみの言葉に反応して、本を読んでいた少女が顔を上げた。
「ここはそういう賞金首の情報の斡旋をしとるからの。かっこよく言えばバウンティハンターギルドじゃ」
「へえ…そう言うのがあるって事は、やっぱりこの町危ないのかしら…ちょっとこの町のこと教えてもらえますか?」
 かがみが少女にそう言うと、少女はカウンターを出て二人と同じテーブルについた。
686 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:23:18.17 ID:hrSd/ow0
「ここより北にあるアークティカという国は知っとるかの?」
 少女の言葉に、こなたとかがみは顔を見合わせ、同時に首を横に振った。
「三年ほど前にの、その国が一晩で滅ぶという事件があったんじゃ。ファルガイアでちゃんとした国家というのは、こことそのアークティカしかなかったでの。難を逃れた住民のほとんどがこの国に流れてきおった」
 少女はそこで言葉を区切り、コップを手に取り水を飲んだ。
「…わたしの水」
「での…」
 こなたが非難がましい目で見たが、少女は気にも留めずに話を続けた。
「…タイミングの悪いことに大公が亡くなっての。その娘があとを継いだんじゃが…統治者として能力が無いというわけではないのじゃが、如何せん若くての。移民をうまくまとめる事が出来ずに、賞金稼ぎのような制度が出来るような事態になってしまったというわけじゃ」
 少女は不満気なため息をつき、腕を組んで目を瞑った。
「…見た感じ、そこまで物騒な町には見えなかったんですけど」
 かがみがそう言うと、少女は片目を開けてかがみを見た。
「お主ら、町に入って真っ直ぐここに来たのではないか?この辺りは表町じゃからの。さほど治安は悪くない。裏町の方は大変じゃぞ。女を散らしたくなければ近づかん方が賢明じゃ」
 少女の言葉に、かがみとこなたが顔を見合わせる。
「…なんかやりにくそうね」
「だね…やることやってとっととここ出た方がよさそうだね」
 そしてかがみは、なんとなく手配書が張ってある壁の方を見た。さっきは気がつかなかったが、一番下の方に自分たちとさほど変わらない歳の女の子の顔写真があるのを見つけた。
「こんな女の子まで賞金首なんだ…ヴァージニア・マックスウェル…賞金額10ギャラ?」
 かがみが思わず少女の方を見ると、少女はなんとも言えない表情でため息をついた。
「そいつは少し特殊での。悪人ではない…というかむしろ正義感のある渡り鳥なんじゃが、やり方がいきすぎたり金が無いとかでつまらん犯罪を犯したりするもんでな。プラスマイナスで、そんな賞金がかかってはとっ捕まる、というのを繰り返してるのじゃ」
「はあ、なるほど…」
「町の人間は冗談交じりに悪漢娘などと呼んどるの」
「…ちなみに、今回のこれはどういうわけで?」
「食い逃げじゃ。さっき主らが平らげたヤキソバのな」
「一人で、ですか…?」
「いや、腹空かせたガキどもを何人か連れてじゃ。裏町にいる親無しの連中じゃろうて」
 迷惑だけど憎めない。かがみはヴァージニアをそんな感じの人物だと想像した。ある意味こなたに通じるものがあるなと、こなたの方を見てみるが、そこにこなたの姿は無かった。
「こなた?また勝手に動いて…」
 かがみが店の中を見回すと、こなたは壁の一角で凍りついたように固まっていた。かがみは首をかしげながらこなたの側に向かった。
「どうしたの、こなた?なんか変なものでも見つけた?」
「か、かがみ…これ…これ…」
 こなたが恐る恐るといった感じに、壁を指差す。そして、そちらを見たかがみも、こなたと同じように固まってしまった。
「それは賞金稼ぎ達のランキング表なんじゃが…どうかしたのか?」
 こなたとかがみの様子のおかしさに少女がそう聞くと、こなたが壁に貼られた紙を指差しながら顔だけを少女の方に向けた。
「こ、これってなんのランキング…?」
「なんのと言われてものう…見ての通り獲得賞金額のランキングじゃ」
 少女がそう答えると、こなたとかがみは顔を見合わせ、もう一度張り紙を見た。
「…なんで…」
「…つかさがトップに…」
 賞金稼ぎのランキング。その第一位には、確かに柊つかさの名が書いてあった。
「お主ら、あのノーブルレッドと知り合いなのか?」
 二人の呟きに首をかしげながら、少女がそう聞いてきた。
「ノーブルレッド?」
 かがみが少女の方を見ながらそう聞き返した。
「うむ…血の貴婦人、暁の魔女と評される伝説の種族じゃ。高い魔力とそれを自在に操る技を例えられて、その種族の名が二つ名に付けられたのじゃ」
「高い魔力…?」
「つかさが…?」
 にわかには信じがたく、こなたとかがみはただ顔を見合わせるだけだった。
687 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:24:58.67 ID:hrSd/ow0
「マリアベルさん!ヴァージニアさんは来てる!?」
 突然、店の入り口が開け放たれ、一人の少女が早足で入ってきた。こなたとかがみがそちらを向き、そして張り紙を見たときのように固まった。
 上半身を覆う飾り気の無いポンチョに、シンプルな柄のキュロットスカート。頭にはトレードマークとも言える大きな黄色いリボン。その少女は間違いなく、柊つかさその人だった。
「つ、つかさ…」
  かがみがつかさの方に一歩足を踏み出し、そして一気に加速してつかさに向かって走り出した。
「つかさーっ!!」
 つかさの名を呼びながら抱きつこうとした瞬間、つかさはかがみの方を見ずに、身体をずらしてその突進をかわした。さらにすれ違いざまに足を引っ掛ける。
「え…わぷっ!?」
 かがみは走ってきた勢いそのままに転び、床に顔を打ち付けた。そのかがみの背につかさが膝立ちで乗り、かがみ両手を背中側にまわして右手で押さえつけた。さらに左手でポンチョの中から銃身の短いショットガンらしきARMを引き抜き、かがみの高等部に突きつけた。
「…ふー…びっくりしたー」
 のん気にそう言いながらつかさは店の中を見渡し、唖然としているこなたと目が合った。
「…え…あ、あれ?…もしかして…こなちゃん?」
 混乱したようにそう言いながらも、かがみを押さえつける手は緩めないつかさ。こなたは冷や汗を垂らしながら、無言で下を指差した。
「え、えーっと…」
 つかさはゆっくりと顔を動かし、自分が押さえつけている人物を見て、もう一度こなたの方を見た。
「も、もしかして…お姉ちゃん…?」
 恐る恐るそう言うつかさに、こなたは無言で頷いた。
「ご…ごめんなさーいっ!!」
 つかさは謝りながら、かがみの背中から飛び降りた。



「うう…ごめんなさいお姉ちゃん…」
 壁際に膝を抱えて座り込んでいるかがみに、つかさが懸命に謝っている。こなたはそのすぐ側のテーブルで、名前がマリアベルだとわかった少女に淹れてもらったお茶をすすっていた。
「それにしてもつかさ、かがみ組み伏せるなんてすごいね」
 こなたがそう言うと、つかさは顔だけをこなたの方に向けた。
「う、うん…色々頑張ってたら、ああ言う事できるようになってて…」
「色々ってなにを頑張ったらあんなことできるように…」
「一年くらい、賞金首の人と争うようなことばかりしてたから…」
 つかさが口にした言葉に、こなたは冷や汗をたらした。
「い、いち…ねん…?」
「うん。それくらいだよね、マリアベルさん」
 つかさがカウンターでの読書に戻ったマリアベルの方を向きそう言うと、マリアベルは本から目を離さずに頷いた。
「うむ。お主がヴァー子に連れられてここに来て、それくらい経つかの」
 それを聞いて、つかさが再びこなたの方を向こうとした時、後ろに引っ張られる感じがした。つかさがそちらを見ると、うつむいたかがみがつかさのポンチョの先を掴んでいた。
「つかさ…一年間…つらくなかった?寂しくなかった?」
 かがみがうつむいたままそう聞くと、つかさも同じようにうつむいた。
「…寂しかったよ…だて、もう誰にも会えないと思ってたもん…お姉ちゃんにも…」
 つかさは、そのままかがみの胸にもたれかかった。
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…うぁぁぁぁぁん!お姉ちゃぁぁぁぁん!」
 そして、大声で泣き出したつかさの頭をかがみは優しくなでつけた。
「つかさ…よく、頑張ったわね…」
 そのかがみもまた、つかさの頭撫でながら泣いていた。


688 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:25:33.87 ID:hrSd/ow0
 こなたは店のドアを後ろ手に閉めると、手近な壁にもたれかかった。
『君はあの場にいなくてよかったのかい?』
 アガートラームがそう聞くと、こなたは呆れたようにため息をついた。
「空気読みなよ、ポンコツ。いくらわたしでもあの二人を邪魔するほど野暮じゃないよ。マリアベルさんだって奥に引っ込んでたでしょ?」
『そんなものかねえ…』
「そんなもんだよ…ってあれ?」
 ふと、こなたは店の窓に張り付いて中を覗いている一人の少女を見つけた。
「…んー…なんか入りづらいことになってるわねー…」
 眉間にしわをよせてそう呟く少女の顔を、こなたは覚えていた。
『捕まえたら10ギャラになるんじゃないか?』
「だねえ…」
 先ほど見た手配書の中でもっとも金額の低い賞金首、ヴァージニア・マックスウェル。悪漢娘と呼ばれる渡り鳥の少女だ。



― つづく ―



次回予告

つかさです。
アークティカを滅ぼした災厄。それがアーデルハイドに根付いていることを聞いたわたしたちは、それが潜むお城の地下を目指します。

次回わいるど☆あーむずLS第六話『緑の災厄』

んー…こういうのって、わたしたちだけでどうにか出来るのかなあ?
689 :WALS-5 [saga]:2010/05/22(土) 04:26:14.75 ID:hrSd/ow0
以上です。
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/22(土) 09:18:07.23 ID:Ynd8ofc0
-----------------------------------------------------------------------------------
ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------------

691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/22(土) 09:45:01.51 ID:YnNuthko
>>689
乙〜
つかさはクレストソーサレス系かなと思ってたら違ったか。
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/22(土) 09:56:42.47 ID:ZN3sX4go
>>681

電話も出来るし会う事もできる。とはいってもやっぱり学校別々は寂しいよなぁ

>>689
乙。毎度ながら楽しませてもらったぜ
つかさかっけぇww構図思い浮かべてワロタ

>>690
まとめ乙
693 :あずにゃん :2010/05/23(日) 22:13:17.26 ID:QwrvfYg0
ブログで小説書いているものです。絵を描いていたらとっさに考えたものを投下します。
ちなみにゆたか×かがみでゆたかがみです。

「はあぁぁ……。結局あいつ学校来なかったじゃない」
「こなちゃん?だから5月病だって」
今日は5月28日。いわばこなたの誕生日。しかしこなたは学校に来なかった。
せっかく大金はたいて買ったプレゼント渡そうと思ったのに……。
現在はその帰り道。いつもの通り東武伊勢崎線に乗って座席に座り、久喜駅で太田行に乗り換え。1駅向こうの鷲宮駅で降りてからは5分強の道を歩く。
柊姉妹の通学はそんなものだ。
私は柊かがみ。そして隣にいるのは私の双子の妹、柊つかさ。
「ほんとに5月病?」
「うん。信じないの?」
「信じるも何も、今日何の日か知ってるの?」
「うん。こなちゃんの誕生日だよ。大丈夫だよ。私はメールでお祝いの言葉送ったから」
つかさはそう言うと、膝元に置いていたかばんの中から携帯電話を取り出し、そのメールを私に見せてきた。
「こなちゃんへ、お誕生日おめでとう!今日はしっかり休んで、明日また元気な姿を私たちに見せてね☆」
そんな感じの本文。実際は見ただけだから本当の本文は違うかもしれない。
「明日きっと元気に学校来るよ。お姉ちゃんは何だと思ってるの?」
つかさはそう言うと携帯電話をかばんにしまった。
「あいつは、5月病だ〜と言いながらもずっと学校来てたじゃない!だから…」
「だから?」
つかさはさっきまでの明るい顔から一変して、不思議そうな顔を私に向けた。
私は何が言いたかったのだろう。こなたとは、一緒にいても飽きない、それくらいにしか思っていなかった。当時は。
「な、何でもないわよ…」
私は結局つかさに何も言わなかった。ちなみにプレゼントのことはつかさは知らない。
「間もなく、久喜、久喜に着きます」
東武線は久喜にどうやら着くみたいだった。
「さ、つかさ、降りるわよ」
「う、うん…」
私たちは車掌のアナウンスと同時に立ち上がり、ドアの前へと足を運んだ。
「ほんとに何でもないの…?」
つかさの顔は「だから?」のときからずっと変わっていなかった。
「うん」
というかまず5月病で休む人間はそうそういない。5月病というのは、新しい環境に対する不適応で発生した病気のこと、つまりただだるくて何もしたくない、ということである。
こなたが学校を休むことなんてあまりなかったから、これは少し心配になってきた。

結局私は家に帰らず、そのままこなたの家に行った。こなたの家は幸手にある。幸手駅からは少し歩くことになるが。
理由はこなたが心配だから。それだけ。
プレゼントなら明日にでも渡せるし、今日はとにかく彼女の状態が知りたい。
それなら携帯電話か家に電話するかメールすればいいのにって思うかもしれないが、電話は留守だし、こなたの携帯電話に電話、メールしても返事がなかった。
夏前だから暑かった。6月にならないと衣替えが出来ないのだが、今からでもこのセーラー服を脱ぎたい気分。
だから駅前のコンビニで買った冷たい水、ボルビックを飲みながら泉宅へ向かっていった。
現在の時刻、17:00を過ぎたところ。まだ青空が広がっていた。
「あっつ〜…」
しかし、歩くだけで汗が出てしまう。そしてこの独り言も出てしまう。
「暑いですよね〜」
通行人も私の長袖を見てそう言った。私だって脱ぎたいわよ。しかしここで脱いでしまうと御用だ。我慢しよう。
そう思った私は、また冷たいボルビックを1口。若干この暑さで温くなっていた。
本当に遠い。鷲宮駅―神社ルートよりも距離が長い。
あいつ、この道のりを歩いているのか。結構体力あるな。
694 :あずにゃん :2010/05/23(日) 22:25:42.48 ID:QwrvfYg0
それから15分が経ち、私はようやく泉宅に着いた。
足がもう動かなくなっていた。どうやら私は体力がないみたいだ。
ただ平坦な道を歩いただけなのに、疲れてしまった私。帰ったらダイエットも兼ねてランニングするか。
ボルビックはすでに空。空きペットボトルはかばんの中へ。
汗も結構噴き出していた。タオルで拭いてもまだ出てくる。そんな季節なのかな。
私はとりあえず留守かもしれない泉宅のインターホンを押すことにした。
ぴんぽーん。
……………。
10秒経過。
あれ?誰も出ない。もう一度…。
ぴんぽーん。
……………。
こなた、もしかして寝ているの?
そう思ったときだった。
かちゃ。
「あ、かがみ先輩?」
玄関のドアを開けたのは小さい背で制服姿の幼女だった。
そう、彼女は小早川ゆたかちゃん。私たちと同じ陵桜学園に通っており、自宅からそこまで遠いため、4月からこの家に居候をしているという。
「何か用ですか?」
「あ、うん。こなたに用があって」
「こなたお姉ちゃんはいませんよ」
しかし、どうやらこなたはこの家にはいないようだった。
「じゃあそうじろうおじさんは?」
「いませんよ」
つまり今この家には彼女しかいない、ということがここでわかった。
そして多分、今帰ってきたのだろうってこともわかった。
「かがみ先輩、結構お疲れのようですね。上がっていきます?」
私はその言葉に甘え、ふらふらと泉宅の中へと入っていった。

連れられた場所はゆたかちゃんの部屋だった。
当然といえば当然か。現在こなたはここにはいないのだから。
てことは、本当に5月病か?あいつ、帰ってきたらぶん殴ってやる。
「お待たせしました」
そのとき、ゆたかちゃんがこの部屋に入ってきた。ポカリスエットとクッキーをお盆に置いて持ってきて。
その間にどうやら部屋着に着替えたみたいだった。フリルのワンピース。もう見るからに夏のスタイル。本当にここを自分の家のように使っていた。
「あ、いや、そんな、おやつはいいわよ。もう17:30だし」
でもここでこんなものを食べてしまっては太ってしまう。だから私はこのおもてなしを申し訳なく拒否した。
「え、いいんですか?疲れたときは甘いものがいいって聞きますし」
しかし、ゆたかちゃんはこのクッキーを食べたそうにしていた。そんなにお腹が空いているのかな。
「じゃ、じゃあ食べるわよ」
ここで私が食べないわけにはいかないし、仕方なく承諾した。
「はい、じゃあいただきます」
そう言うと、ゆたかちゃんはそのお盆を私の目の前に置いて、私の前に座り込んだ。
「遠慮しないでどうぞ」
「う、うん…」
そう言うと、ゆたかちゃんはクッキーを1つ手に持ち、そのまま1口かじり、もう1口かじった。
彼女は本当にお腹が空いていた。それを物語るかのように。
695 :あずにゃん :2010/05/24(月) 08:59:34.47 ID:IThZuQY0
「こなたはどこに行ったの?」
「コンビニです。何かプリンが食べたくなったみたいですよ」
「今日こなたの誕生日でしょ?何かしてあげたの?」
「看病しました。あとお姉ちゃんが私にしてほしいということを全部してあげました」
「してほしいことってどんな?」
「単純に言えば、着せ替え…?」
こなため…、ゆたかちゃんはリカちゃん人形ではないんだから……。
その会話の中、私とゆたかちゃんはクッキーをぱくぱく食べた。そのスピードは驚異的。
ものの3分で器のクッキーはなくなった。
「あっという間になくなりましたね」
「そだね」
ポカリスエットはまだ口をつけていない。口がぱさぱさなのに。
ゆたかちゃんはコップのポカリスエットを1口飲んでまた話し始めた。
「かがみ先輩はお姉ちゃんの看病しに来たんですか?」
「うん、まあ…」
とにかくこなたが心配、その思いでここに来た。そのことはゆたかちゃんにはお見通しのようだった。
「そうでないと17:00過ぎにここに来ませんもんね。心配なんでしょ?」
「うん、まあ…」
私もここでポカリスエットに口をつけた。
「お姉ちゃん、早く元気になってほしいですね」
この娘の声はよく通る。病弱といいながら、実は結構声は高い方。
「あいつ本当に5月病なの?」
「ただの風邪ですよ。5月病って言うと休めないって言ってたし」
こなたの休んだ原因が5月病でないことがわかった。それなら何で私たちには5月病って言ったのだろう。
「5月病って私は聞いたわよ」
「ふぇ?そうなんですか?」
「まあつかさから聞いたんだけどね」
風邪と5月病は違う。その理由はやる気の違い。前者はやる気があるのに体調を崩し、後者はやる気がないからだるくなる。
あいつは多分本当は学校に行きたかったのだと思う。しかし心配されたくないからわざと私たちには5月病って言ってきた。
しかし私は心配。それは何でだろう…。
「かがみ先輩」
「ん?」
ゆたかちゃんは私を呼ぶとにっと笑ってこう言った。
「ありがとうございます」
感謝の言葉だった。別に私は彼女に何もしていないのだが。
「何で私に感謝の言葉?」
「お姉ちゃんの看病しに来たから」
ゆたかちゃんはこなたのことはとっても大好きなんだと思う。他の誰よりも。
そのことは私から見ても一目瞭然だ。
「別に私、感謝されるようなことしてないわよ」
「でも私にとっては感謝に値しますよ。大好きなお姉ちゃんを、いつも支えてくれて、ありがとうございます」
「ば、ばか……」
私は照れるしかなかった。このときは。
696 :あずにゃん :2010/05/24(月) 11:17:40.91 ID:IThZuQY0
この2人の組み合わせは珍しかった。
接点は何1つない。
そして彼女のことは全然知らない。
しかし、
「私、いっつもお姉ちゃんとかがみ先輩のこと話してますよ」
彼女は私のある程度を知っているみたいだった。
「あなた、本当にお姉ちゃんのことが好きなんですね」
「……………」
私はさらに照れた。彼女は話し出すと止まらないみたい。
「お姉ちゃんが言ってましたよ。「かがみは私の嫁だからね」って」
「……………」
「かわいいですね」
「……………」
「わざわざお見舞いに来るなんて」
「……………」
私は何も言えなかった。
当然といえば当然。彼女の口車を止める技術は私にはない。
「あいつだって、私が風邪で休んだとき、お、お見舞いに来たわよ!!」
「でももう18:00になりますよ。家の人、心配しませんか?」
あのとき、何時だったっけ。16:00頃かな。覚えていないや。
「大丈夫よ」
それよりまだこなたは帰ってこないの?インターホンの音も私が鳴らしてからしないし。
早くこなたの顔が見たいというのに……。
「それよりこなたはまだなの?」
「わからないですね。もう少し待ちます?」
「うん」
こなたの顔を見ないと帰らない。私は現在そういう気持ちだった。
だからこなたが帰ってくるまでずっと待ち続ける。
「じ〜〜〜〜」
そしてゆたかちゃんはずっと私を見続ける。
「な、何よ……」
「い、いや……、何も……」
私がそう言うと、ゆたかちゃんは私から目を逸らした。
「こなたお姉ちゃん、幸せなんだろうな……」
この娘には薄幸という言葉がお似合いなのだろうか。そんな感じもする。
「何でよ」
「だって、あなたといつも一緒にいるんですよ?絶対幸せですよ」
「本当に?」
「本当に」
「あんたは私の何を知ってるの?」
「ある程度は」
やはり彼女は私のことをある程度は知っているみたいだった。
しかし、その程度はわからない。

「私も……、幸せになりたいな……」

ゆたかちゃんは自信なさげにそう言った。
この時点で彼女が薄幸の美少女ということがわかった。
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/25(火) 12:24:37.06 ID:pRoA4wSO
⊂(^ω^)⊃
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/28(金) 08:16:47.23 ID:.XFYi2SO
かがみ「今日はこなたんじょうびよ」
こなた「わーい」
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/28(金) 16:21:39.38 ID:vT1oR/k0
こなた「かがみんが“こなたん”とか可愛い系は無理(ウププ」
かがみ「うっさいわねぇ、ちょっと言い間違えただけでしょ!もう祝ってやんないわよ」
こなた「そりゃないよかがみん〜」
つかさ「可愛い系が許されるのはあたしだけかな」
こなた・かがみ「…」
かがみ「珍しく言うわねつかさ。まぁ、このスレを見てあんたが愛されてるのはよく判ったけど」
みゆき「皆さん楽しそうでなによりです」
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/28(金) 16:52:39.49 ID:pWGvLUEo
おお、そういや今日か
こなた誕生日おめでとう!
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/28(金) 20:25:37.16 ID:WaJJjV.0
かがみ「こなた、誕生日おめでとう」
こなた「おおー、かがみありがとう… って何その格好!?」
かがみ「プレゼントは…、わ・た・しっ///」
こなた「!?」
かがみ「こなたー!!!」 即効ルパンダイブ 回避不能
こなた「のわぁ−−−−−!!! 食われる―――!!!!!」

702 :こなたんファンタジー 〜宙を見つめるもの〜 1 [saga]:2010/05/28(金) 22:55:25.12 ID:uoqg6Yc0
>>581

5月28日。
今日って何の日かわかる?
なんてありきたりなセリフだろうね。
今日は私の誕生日。
18歳になって堂々とエロゲ買えるじゃん!と、少し前の私だったなら、誕生日の価値をその程度のものとしか思わなかっただろうね。
自分の誕生日の事なんてどうでも良い、と思っていたのは中学生までの事で、最近になって誕生日の感じ方が変わった。
自分の年齢が一つ増える事、それ自体にはあんまり興味は無くて、それよりも私の特別な日が年に一度だけ訪れて、私のために友達が私を持てはやしてくれる事。
いや違うかな。根本的には「私」っていう存在が、身の回りを変化させられる事が重要なんだと思う。「私」がいるから、この日は誕生日なのだから。
とにかく、高校生になって、誕生日を祝ってくれる友達が出来た。
祝ってくれる友達がいるからこそ、私は特別な存在になれて、それでようやく誕生日に価値が生まれたんだと思う。
中学までの私には誕生日を心から祝ってくれる友達がいなかった。
そう例えば、中学二年の頃、私の隣の席にバスケ部の女子が座っていた。その子は見た目が悪くないし性格も良いもんだから男女共に人気者だ。そんな訳で、その子が誕生日を迎えると、クラスメートが登校してきてその子の顔を見るなり「happy birthday!」だの、欧米か!と突っ込みたくなるように次々にお祝いの言葉を浴びせるんだよね。その日一日、その子はVIPだ。
その子、笑っていた。
それに対して私ってどうだろう。
中学二年の誕生日、興味が無かったからあんまし覚えてないけど、私の顔を見て「誕生日おめでとう!」と言った人は誰もいなかった。
その頃の私にはオタク友達が一人いて、そいつに
「今日がなんの日かわかる?」
と聞いてみたら
「ゲームの発売日でしょ?」
と答えやがった。
そもそも、私の誕生日を知っているクラスメートなんて誰もいないと思う。
ま、私だってそのオタク友達の誕生日を知らないんで、人のことは言ってられなかったりして。
私は、私の誕生日に興味がなかった。

703 :こなたんファンタジー 〜宙を見つめるもの〜 1 [saga]:2010/05/28(金) 22:56:40.29 ID:uoqg6Yc0
>>702

自分の席から見える窓越しの青い空が、今日は尚更青く見える気がする。
突然、私が堪能していたブルースカイが白いセーラー服で覆い隠された。
そいつは私と目が合うと、丸い顔が百点満点の笑顔に変わった。
「エヘヘ、こなちゃん、お誕生日おめでとう。今日で18歳になるんだよね?」
「むふふぅ、ありがとーつかさ。これで18禁のエロゲが買えるのさぁ」
誤解はしないでね。決して、誕生日の価値がそれだけしか無いと思っているわけでは無い事を、もう一度言っておくからね!
「泉さん、お誕生日おめでとうございます」
つかさの隣からぬっと、胸に二つのメロンをぶら下げた……、もとい、豊満な胸と高い身長、ズルいくらい私と正反対のプロポーションの少女、いや女性?う〜ん、そんな事言ったらみゆきさん怒るかなぁ、まあとにかく友人のみゆきさんが顔を出した。
「どうぞ、誕生日プレゼントです。大した代物では無いのですが、気に入って頂ければ幸いです」
「こなちゃん、私からもあるよ。はい、どうぞ」
みゆきさんからは黒と白が基調の大人っぽいお洒落な紙袋を。
つかさからはデフォルメされた犬のキャラクターが描かれている包装紙を、それぞれから手渡された。
中身はわからない。
帰ったらゆっくり脱がせてやろう。
「ありがと〜。いやあ、年齢は着実に順調に増えていってるんだけどさあ」
「どうしたの?こなちゃん」
「私の身長は全然これっぽっちも増えないんだよね〜。じ――――」
「え、どうかしましたか?私の顔に何か付いていますか?」
「ううん、なんでもないよみゆきさん。ハァ、世の中なんでこんなに不公平なのかね」
私はあくまでもいつもの私を演じているけれど、内心じゃあ、大声で何事か叫びながらさっきまで眺めていた窓からバンジージャンプしてキレイに着地をキメたあとグラウンドを何周か駆け回ってまたここに戻って来て「誕生日おめでとう」と言ってくれたこの二人を力いっぱいギュッと抱きしめたい、と言う気持ちでいっぱいだった。
そう、今日は私の誕生日であり、一年に一度だけ私が主人公になれて、私と言う存在を再確認できる日なのだ。
私はその日、授業の内容をほとんど聞き流し、今週の土曜日に行うつもりの誕生日パーティーの企画を練っていた。
つかさ、かがみ、みゆきさん、ゆうちゃん、ゆい姉さん、あとお父さん。
このメンバーでパーティーをする。
そうだ、まだかがみからおめでとう、と言ってもらってない。じゃあ昼休みかな。

704 :こなたんファンタジー 〜宙を見つめるもの〜 1 [saga]:2010/05/28(金) 22:57:57.49 ID:uoqg6Yc0
>>703

ところがかがみは昼休みになってもやって来なかった。
いつものかがみは、つかさとみゆきさんと私を合わせて4人で弁当を食べているのに、どうして今日に限って来てくれないんだろう。
「う〜ん。私は昨日の帰りに、こなちゃんと別れてからプレゼントを買ったんだけどね、お姉ちゃんって昨日は峰岸さん達と帰ってたでしょ?だからお姉ちゃんがプレゼントを買ったのかって、わかんないんだよね。で、でも、お姉ちゃんだからきっと大丈夫だよ」
つかさに言われてなんとなく思う。私って、図々しいなあって。それと一緒に、私って、やっぱり女なんだなとも思った。
ほら、新婚の夫婦で、夫が結婚記念日を忘れて、妻が怒り出すっていう奴。
「つかさもみゆきさんも、今日が私の誕生日だって事は、かがみに黙っててね」
午後の授業が始まる直前、私はかがみがいるはずの3―Aを覗き込んでみた。
かがみがいた。
かがみの周りにはみさきちや峰岸さんもいて、楽しそうに談笑しているところだった。
ねえ、かがみ。どうして私の所に来てくれないの?
今日って、何の日かわかる?このたった一言すら言えない私。なぜって、怖いから。
なによ藪から棒に、はいプレゼント、誕生日おめでとうこなた。
もし、かがみがこう言ってくれなかったらどうしよう。
私の心の奥底で、ひんやりとした冷たい風が吹きすさんだ。
かつて、私が私以外の全ての事を他人事に思い、また私以外の全てが私の事を他人事だと思っていた時期の、あの感覚だ。
強い喪失感のような物を感じながら、私は静かに自分のクラスへと戻った。

その日、私は一人で家に帰った。
かがみがみさきち達と一緒に教室を出るところを目撃した。
一瞬目が合ったけれど、多分かがみは、私の期待している言葉を言ってくれないだろうと思う。

家に着くとすぐにパソコンの電源を入れる。背景は好きなギャルゲーのヒロイン。
かがみの事を思い出してみる。かがみは絶対に私の誕生日を忘れてると思う。
はあ、何ヶ月も前から楽しみにしていた私の誕生日は、結局、かがみにとってはどうでも良い一日だったんだね。
デスクトップの隅っこにある、魔法の杖をデフォルメしたイラストのアイコンをダブルクリック。
数秒待つと画面中央にドラゴンのイラストがどーん。
最近ハマってるファンタジー物のオンラインゲームだ。
私のジョブは盗賊。攻撃力はショボいけど、なかなかトリッキーで面白いと思う。
お、早速誕生日プレゼントが届いてるね。
机の上に私のお母さんの写真がちょこんと置かれていたので、グチってみた。
「顔のわからない相手がちゃんと私の誕生日を覚えていてくれてたって言うのに、かがみは今日が何の日か覚えてないんだよ。どうせかがみなんてその程度の仲ですよ〜」
お母さんが何かを答えてくれる訳もなく、急にいろんな事がどうでもよくなって、私はふて寝する事にした。おやすみ。

705 :こなたんファンタジー 〜宙を見つめるもの〜 1 [saga]:2010/05/28(金) 23:00:45.20 ID:uoqg6Yc0
>>704
目覚ましの音で目が覚めると、もう太陽が登っていた。
今日は5月29日であり、私の誕生日から既に地球が一回転してしまった。
枕元にはつかさと、みゆきさんがくれた誕生日プレゼントが置かれているけれど、これももう誕生日にもらった事があるプレゼントであり、過去の思い出の品へと変わってしまっていた。
今日で18才二日目に突入してしまい、何の変哲も無い日に変わった。
そう、誕生日は終わってしまったのだ。
もうこんな時間。学校へ行かなきゃ。はあ、すごく足が重い。
いつもの私は、バス停でバスを待っているつかさとかがみ達と一緒に登校していた。
実は待ち合わせをしてる訳でもなく、その時にちょうど二人に会えたら、じゃあ一緒に行こうかって言うノリだったりする。
私は今、遅刻寸前のギリギリ間に合うバスに乗るために、駆け足をしているところ。
基本的に早起きな二人が、こんな時間にバス停にいる事なんてまずない、そう思っていた。
ところが意外にも、バス停には見慣れた二人の後ろ姿があった。
「こなた!」
かがみだ。私を待っていたんだ。私は、昨日、ずっとかがみを待っていたのに、来なかったくせに。
「ごめん、こなた。昨日があんたの誕生日だって事、忘れてて……」
かつて見たことも無いほど弱気なかがみは、少しうつむいたまま上目遣いで私の顔を覗いていた。
やっぱりだった。かがみは私の誕生日を忘れていた。
「なに?いまさら」
冷たい言葉を言い放ってやった。
「いや、その、誕生日おめでとうってね」
「私の誕生日は昨日だったの。もう終わっちゃったの」
自分の言葉が自分を刺激して、胸の中の熱い物がドンドン膨れ上がっていく。
つかさが不安そうに、私達のぎこちないやりとりを観察しているのが見えた。
「あ、あのさ。誕生日プレゼント持って来たんだけど」
しましま模様の小さな紙袋を、申し訳なさそうに差し出すかがみ。
今の私は、かがみがする動作一つ一つが一々鬱陶しく思えて、イライラして、そして胸の中の熱い物がとうとう爆発した気がした。
「そんなものいらないよ!もうかがみは私の友達なんかじゃないんだ!」
かがみが渡そうとしていた物を、強く叩き落としてやった。やってやった。
それは大きな音を立てて地面に当たると、中身が辺りに散らばっていく。
トランプだ。絵柄には見覚えがある。数ヶ月前、私がかがみに勧めたアニメ。そのキャラクター達の顔だ。
私とかがみを繋げる思い出が今、無残に地面に散らばっているんだ。
カードが入っていたのであろうケースが割れているのが見えた。ザマー見ろだ。
「あ……」
かがみのかすれた声を聞いて、顔をうかがって見ると、苦虫を噛み潰したような顔をして小さく震えていた。
悲しいんだろうか、悔しいんだろうか?
そしてとうとう、目から涙が溢れ出た。
私はそれを見て、初めて罪悪感がこみ上げて来た。
違う!私は悪くない!楽しみにしてた誕生日を忘れて、台無しにしたのがかがみだ!
「私が悪いんじゃないんだ!」
走った。
悔しかった。
悲しかった。
どうして私がそう思わなきゃならないのかわからない。
訳がわからないくらいに走った。そして、次第に目が回った。
私は空を飛んでいるような気がした。

続く
706 :こなたんファンタジー 〜宙を見つめるもの〜 1 [saga]:2010/05/28(金) 23:06:40.41 ID:uoqg6Yc0
>>705

通勤時間が異様に長いんで、携帯で書きました。
これからも携帯で書きます。
で、投稿だけPCを使うと。

しかし、携帯で見るとすごく長く感じた文章が、実際に投稿してみたらたった4レスで収まってしまった!

はぁ、先が思いやられる……。

あ、こなたん生日おもでとう!!!
707 :この日このとき [saga]:2010/05/29(土) 02:53:41.11 ID:rBEQpJA0
>>706
乙です。

こなたの誕生日をすっかり忘れてて、慌てて書き上げた誕生日SSの投下行きます。
慌てて書いたので短いです。
あと、設定等も新たに考える時間が無かったので、以前に書いた「あの日あのとき」の設定をそのまま使ってます。
と、いうわけで百合注意であることをご了承ください。
708 :この日このとき [saga]:2010/05/29(土) 02:54:29.94 ID:rBEQpJA0
「こなたー、きたわよー」
「ほーい、いらさーい」
 今日はこなたの誕生日。というわけで、いつもの四人でこなたの誕生日会を開くことになった。
「…すごいわね、これ」
 リビングに通されたかがみが見たのは、テーブルの上にコレでもかと並べられた豪華な料理の数々だった。
「ちなみに乗り切らない料理はキッチンのほうに…」
「どんだけ作ってるのよ、あの子は…て、つかさは?」
 かがみは部屋の中を見渡したが、この料理を作った張本人…こなたの彼女候補であるつかさは見えなかった。
「なんか足りないものがあったって、買出しに行ったよ」
「まだ作るのか…にしても、この量を学校から帰ってすぐ作ったの?前の日に下ごしらえでもしてたのかしら」
「うんにゃ。お昼に早退してったから、その時から作ってたと…」
 こなたの言葉にかがみは唖然とした後、ソファーに座り込んだ。
「…こなた、頭抱えていい?」
「…どうぞ」
「突っ走りすぎだろ、妹ーっ!」
 かがみは宣言通り頭を抱えて、そう叫んだ。



― この日このとき ―



「そういや、おじさんやゆたかちゃんは?」
 なんとか落ち着いたかがみがこなたにそう聞くと、こなたは眉をひそめた。
「今日はゆーちゃんの実家の方に泊まるって…たぶん気を利かせてくれてるんだと思う」
「気をって…え、もしかしてつかさとのこと、ばれたの?」
「うん…ほら、つかさ今日昼からうちに来てるから、その時お父さんに聞かれて、素直に全部答えちゃったみたい…つかさのことだから、多分必要以上に力強く…」
「…で、おじさんの反応は?」
「男に取られるくらいなら、女の子の方がましかなあって、なんか遠い目をしてた…」
「………」
「あと、お母さんの仏前になんか報告してた…」
「………」
「………」
「…親孝行…しなさいね」
「…うん」
 二人揃ってため息をついたところで、玄関の方からチャイムの鳴る音が聞こえた。


709 :この日このとき [saga]:2010/05/29(土) 02:55:24.35 ID:rBEQpJA0
「こんにちは、かがみさん。お早いですね」
「まーね…」
 こなたに連れられてリビングに入ってきたみゆきに、かがみは軽く手を上げて挨拶をした。
「…でも、もっと早いのがいたけどね」
 かがみの視線の先にある料理の山を見て、さすがのみゆきも少し困った顔をした。
「つかささん、ですか…このために早退を…泉さん、愛されてますね」
「愛してくれるのはいいんだけど、私生活も大事にして欲しいと思うんだよね…」
 頬をかきながらそう言うこなたに、みゆきはニッコリと笑いかけた。
「泉さんは優しいですね…つかささんが好きになる気持ちも、わかる気がします」
「何言ってんだよ、みゆきさん…」
「…ちょっと、みゆき」
 照れるこなたの声を遮るように、かがみが不機嫌そうな声を出した。みゆきは今度はかがみのほうを見て微笑んだ。
「なんでしょうか、かがみさん?」
「なんでこなたにそんな…いや…えと…なんでもないわよ…もう…」
 かがみはみゆきに何か文句を言おうとしていたが、途中から声が小さくなり、顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。それを見ていたみゆきがクスクスと笑い出す。
「二人で何やってんだよ…」
 こなたは呆れたようにため息をついた。と、その時、階下から玄関の開く音が聞こえ、続いて階段を上る音が聞こえた。
「こなちゃん、ごめんね。すぐ仕上げるから…あ、お姉ちゃん、ゆきちゃんいらっしゃい。ちょっと待っててね」
 そう言いながら慌てた様子でリビングに入ってきたつかさは、そのまま鼻歌を歌いながらキッチンへと向かっていった。
「…いらっしゃいって」
「…恋人の段階通り越して、同棲してるみたいですね」
 唖然としてるかがみとみゆきを交互に見ながら、こなたは困った顔で頬をかいていた。



710 :この日このとき [saga]:2010/05/29(土) 02:56:41.33 ID:rBEQpJA0
「こなちゃん、お誕生日おめでとう!」
 つかさの宣言と同時に、かがみとみゆきが大きな拍手をこなたに送った。
「ど、ども…ありがとう」
「なによ、あんたにしてはテンション低いわねー」
 少しうつむき加減なこなたにかがみがそう言うと、こなたは眉をひそめた。
「…友達だけの誕生会って初めてだから、慣れてないんだよ」
「やっぱいつもはおじさんが?」
「うん。あとはお酒目当てにゆい姉さんとか」
 そこまで聞いてから、かがみは不意につかさの方を見た。
「ってーか、つかさは二人きりでやりたがると思ってたんだけど…わたしとみゆきが誘われてのは、かなり意外だったわ」
 そのかがみの言葉を聞いたつかさは、赤くなって首をすくめた。
「わ、わたしもホントは二人きりが良かったんだけど…そうなったら何していいかわからなくなりそうで…だから、お姉ちゃんとゆきちゃんがいてくれた方がいいかなって…」
「…わたしも、二人きりだとどうしようもなくなりそうだからね。お互い押し黙ったままの誕生日会になりそうだったよ」
 つかさをフォローするかのように、こなたが頬をかきながらそう言った。
「あんたたちは妙なところで似てるわね…ま、とりあえずプレゼント渡しときましょうか。みゆき、出して」
「はい、どうぞ泉さん。わたしとかがみさん、二人からのプレゼントです」
 かがみに言われ、みゆきがやけに大きな箱をこなたの方へと持ってきた。
「ありがとう…って、大きいね…」
「はい、一式ですから」
「い、一式ってなんの…」
 冷や汗を垂らしながらこなたが封を開けると、中には可愛らしい服やアクセサリーなどが入っていった。
「なるほど、一式だ…プレゼントにこういうのはアレだけど、いかにもな可愛い系の服はわたしにはちょっと…」
「そうよねー。わたしは男の子っぽいのがいいって言ったんだけど、みゆきが譲らなくてねー」
「どういう経緯でそんな風に!?」
 こなたがかがみとみゆきを交互に見ながらそう聞くと、二人は顔を見合わせた。
「どういうって…つかさと並んだときに、絵になる格好ってのはどういうのなのかなって」
「ですね」
 二人の答えにこなたは少し頭を抱えたくなったが、なんとか持ちなおしてつかさの方を見た。
「…色々言いたいんだけど、まあいいや…えーと、つかさは別にくれるの?」
「うん、わたしは同人誌を…」
「はい?」
 こなたは、つかさの口からは到底出てこなさそうな単語が出たことに驚き、目を丸くした。
「…ひよりちゃんに作ってもら」
「いや、待って。オチ読めた…ってかなんでひよりん…いや、それ以前になんでそんなことしようと…」
「え、だってこなちゃんこういうのが好きそうだったから…それに知ってる人で作れそうなのひよりちゃんくらいしか…」
「あ、いや、つかさは悪くないから!…わ、わかったよ…わたしがわがままだったよ…」
 涙目になるつかさと、冷ややかな目で見てくるかがみと、心底困ったような顔をしているみゆきに囲まれて、こなたは慌ててつかさに謝った。
「と、とりあえず見させてもらうね…」
 こなたはつかさから受け取った同人誌をパラパラと流し読みし、中身が予想通りの代物だったことにむしろ安堵していた。
「つかさ…これ読んだ?」
「ううん。ひよりちゃんがプレゼントなんだから、こなちゃんより先に読むのは良くないって言うから…」
「…いや、プレゼントだからこそ先に確認しとかなきゃダメだろ」
「ダメですよかがみさん、水を差しては」
 思わず突っ込でしまったかがみをみゆきがたしなめる。その二人を横目に見ながら、こなたはつかさに同人誌を渡した。
「まあ、読んでみてよ」
「う、うん…え…わ…わー…」
 同人誌を読み始めたつかさの顔が、見る見る真っ赤になっていく。
「こ、こなちゃんと…わ、わたしが…うわー…うわー…こ、こんなのダメだよー…」
 口では色々言いながらも同人誌を凝視したままのつかさを見ながら、こなたは自分の携帯を取り出した。
「…もしもし、ひよりん?わたしだけど…うん、分かってるならいいよ…後で覚えときなよ…」
 こなたは携帯を切ると、未だに同人誌に釘付けになっているつかさを見てため息をついた。
711 :この日このとき [saga]:2010/05/29(土) 02:57:29.33 ID:rBEQpJA0




「…あー…お腹いっぱい…もう動けないよ…」
 ソファーに仰向けになりながら、こなたは自分のお腹を擦った。
「ごめんね、こなちゃん…嬉しくなって、ちょっと作りすぎちゃった…」
 そのこなたに、皿を片付けているつかさが謝った。
「いいよ、美味しかったから…これで不味かったらいくらでも文句が言えるんだけどね…」
 こなたは天井を見上げながら、大きく息を吐いた。
「…つかさはホントに一生懸命だね」
 こなたの呟きを聞いたつかさは、片付けの手を止めてこなたの頭の側に座った。
「こなちゃんのこと好きだもん…なんだって一生懸命になれるよ」
「…そっか」
 きっぱりと言い切るつかさに、こなたは少し頬を赤らめた。
「か、かがみ達は?」
 そして、それを誤魔化すかのようにつかさにそう聞いた。
「さっき帰っちゃったよ」
「あれだけ食べて動けるんだ…つかさは帰らないの?」
 こなたの言葉につかさが頬を膨らませる。
「意地悪言わないでよ。わたしは泊まるつもりで来たんだよ?」
「…だろうねー」
 つかさの様子が可笑しくて、こなたはつい笑い出してしまった。
「もー、何で笑うんだよこなちゃん…あ…えっと…それでね…」
「ん、なに?」
 頬を膨らませてたつかさが、急に赤くなって恥ずかしそうにモジモジしだしはじめた。
「さ、さっきの同人誌みたいなこと…その…今夜…」
「いや、やらないから。それは流石に早すぎるから」
 これ以上つかさが突っ走らないよう、気をつけなければならない。
 こなたは今夜一晩気が休まりそうも無い予感を、ひしひしと感じていた。



― おしまい ―
712 :この日このとき [saga]:2010/05/29(土) 02:58:27.92 ID:rBEQpJA0
以上です。

日付変わってますが、こなたん誕生日おめでとう。
713 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/29(土) 13:10:54.98 ID:ly1Xbwo0
こなたの誕生日だったのか。まったく忘れてた。皆さん乙です

こなたは自分にとってとっても難しいキャラですね。いくつもSSは書いているけどこなた主人公は>>642だけだったりする。
しかもシリアスにするつもりが中途半端になってしまった。

一年以上前の作品。あまり特徴がないので忘れていると思いますが、
『道草』の続編を書きました。興味ない方はスルーで。7レスほど使用します。
714 :道草 つかさの忘れ物 1 [saga]:2010/05/29(土) 13:12:43.18 ID:ly1Xbwo0
 この物語は ID:bz0WGlY0氏:道草 の続編です

 今日はイライラする、最終バスに乗り遅れた。歩いて駅に行かなければならない。一時間くらいか。たまには歩いて帰るか。
私はゆっくり駅に向かって歩き始めた。バスに乗っている時は風のように流れて過ぎていく風景。こんなにゆっくりと動く景色。まるで時間が止まっているようだ。
日はすっかり沈み、空は赤く染まっている。半ばくらい歩いただろうか。……あの頃は良かった……いや、そんな事はない。私は決めたんだ。
あの時の私はもう捨てたんだ。弱虫だった頃の私は。 忙しい毎日、だけど充実していた。峰岸さん、泉さんと
共同出資をしてレストランを経営をした。最初は順調だったけど……。

 数時間前
みさお「美味しかったよ、すごく」
あやの「ありがとう」
みさお「でもよ、この店の最初の頃の方がもっと美味しかったような気がする……」
あやの「……ひいちゃ……違った、店長の方針だからね」
そこにウェイトレス姿のこなたがデザートを持ってきた。
こなた「はい、お嬢様、デザートをお持ちしました」
みさお「……おい、ここはいつからメイド喫茶になったんだよ」
こなた「勝手知ったる仲じゃないか、このくらいの冗談はないとね、みさきち達の時だけだよ、こんなことするのは」
みさお「それを聞いて安心したよ、でもよ、店の雰囲気、最初はもっと明るかったような気がしたんだけど」
こなた「……つかさ……違った、店長の方針だからね」
みさお「店長ってつかさの事か……どうしたんだよ、らしくないぞ、やっぱりあの時の事がよほど堪えていたんだな、まあ、気持ちは分らないわけじゃないけどな」
こなた「しー、声が大きいよ、つかさに聞こえちゃう」
つかさ「峰岸さん、泉さん、最終オーダー聞いてきてちょうだい、もう閉店の準備だよ」
私は聞こえていたけど、聞こえない振りをした。
みさお「つかさ、ラストオーダーっても今日は試食会で私が呼ばれたんだかから、客は私だけじゃないか」
つかさ「……そうだった、だけどもう充分試食したでしょ、今日はもう帰って、感想は後日聞くから」
みさお「ちょ、まだデザート全部食べてないって……」
つかさ「ありがとうございました」
私は追い出すように日下部さんを外に出した。

 店内に客はいない。BGMが微かに流れていた。私は二人を目の前にして叱りつけた。
つかさ「泉さん、少なくとも勤務中は学生時代の名前の呼び方は止めようって約束したよね、ちゃんと守ってもらわないと」
こなた「……今日は試食会、みんな高校時代の同級生じゃないか、いいじゃん、そのくらいさ……」
つかさ「だからダメなの、それだからケジメがつかない、そう言ってるじゃない」
こなた「別にいいじゃん、客が減ったわけじゃないし……むしろ増えてるくらい、何もそこまでしなくても、つかさ、何が気に食わないのさ」
今日はいやに反抗的。私も怒った。
つかさ「……泉さん、今日はもういいよ、後は私と峰岸さんで片付けるから、お疲れ様」
こなた「……分ったよ店長、食器だけ片付けるよ」
泉さんは日下部さんに出していた食器を手際よく重ねると厨房に持っていった。私は一回おおきくため息をついた。

あやの「どうしたの?、確かにそういう約束をしたけど、こんな時くらいは和気藹々と……ひいちゃん、もしかしてまだあの時の事を?」
つかさ「峰岸さんまで……」
あやの「もう勤務時間じゃないよ、だからもういいでしょ、質問に答えてひいちゃん」
あの時の事。そうあの時から私は自分は甘かった事に気付いたんだ。
つかさ「そう、一年前の食中毒事件、あれで私は気付いたんだ、今までのやり方じゃダメだってことが」
あやの「そうだったね、あの時は大変だった……でも結局私達の店からは菌は見つからなかった、そうでしょ、濡れ衣だった、そしてより衛生面に
     気をつけて、材料管理だってより厳しくしてきたじゃないの、それにもうあの事件の事なんかお客様はだれも気にしていないと思う」
つかさ「そうでもないよ、これを見て」
私は事務室から何通かの手紙を峰岸さんに見せた。
あやの「……これは、『店をやめろ』『この町から出て行け』『いつまで腐った料理出しているんだ』……なに?この手紙」
715 :道草 つかさの忘れ物 2 [saga]:2010/05/29(土) 13:15:11.08 ID:ly1Xbwo0
つかさ「見て分るでしょ、苦情の手紙……だよ」
あやの「……これは苦情じゃない、営業妨害じゃない、こんな手紙気にしなくていいよ……そうだ、この手紙柊ちゃんに見せよう、法律の事なら
     きっと力になってくれる」
私は手紙を峰岸からひったくるように奪い取った。
つかさ「そんな余計な事しなくていいよ、これは私達の問題だよ、姉さん、かがみ姉さんの世話になんかならないよ」
あやの「どうしたの?、姉妹じゃない、何時からそんな他人みたいに、柊ちゃんだってそう言う相談にのるって言ってったじゃない、その時一緒に居たでしょ?」
つかさ「姉さんは助けてくれなかった、だから……もう、身内には頼らない、そう決めたんだ」
あやの「ひいちゃん、手紙だってなんでもっと早く言ってくれなかったの?、私達は共同経営者じゃないの?」
こなた「つかさ、変わったね」
私服に着替えた泉さんが立っていた。私達の会話を聞いていたようだった。
こなた「レストランをやろうって言ったのはつかさだった、峰岸さんも話しにのった、あの頃は本当に楽しかった……まだぜんぜんお客さんはこなかったけど、
     メニューを決めたり、新しい創作料理を試したり、借金があるなんて忘れるくらい楽しかった、それなのにあの事件以降のつかさは、なんだよ、
     レシピは教科書どおり、何から何まで管理してさ、どこかの工場の大量生産と同じだよ、笑いも、余裕も無くなった、ただ料理を出すだけのお店、
     これじゃ、つかさの思ってた店と違うじゃないか……あの高校時代のつかさはどこにいったのさ、私は今のつかさと仕事なんかしたくないよ」
つかさ「泉さん、もうあの頃の私じゃない、店長としての責任、経営者としての立場だってあるよ、昔みたいに甘えてちゃだめなんだよ」
こなた「私はそうは思わない……実はかがみから誘いがきてるんだ、知ってるでしょ、かがみは司法試験合格したって話、それで独立するって、
     それで、スタッフにならないかって言われてるんだ」
つかさ「それで?、返事はしたの?」
こなた「かがみは変わらない、昔のままのかがみだよ、髪型だってそのまま、もう成人したからやめたらって言っても変えようとない、つかさはリボン外しちゃったね
     、そんなつかさは……このままだと私……」
つかさ「姉さんの方がいいんだ、昔の馴れ合いなんかで生きていけるほど世の中甘くないよ」
まさかそんな事を言い出すとは思わなかった。忠告を混ぜて泉さんを止めようとした。あの時の姉さんと同じように……。
こなた「返事は一週間後なんだ、まだ言ってない、それだけ……お疲れ様」
泉さんはそのまま店を出て行った。店のBGMも止まり、店の明かりも半分消えた。峰岸さんが後片付けをしていた。私は呆然と泉さんが出て行ったドアを
眺めていた。そんな私を見て峰岸さんが私に言った。
あやの「ひいちゃん変わったね、昔のひいちゃんだったら泣いて泉ちゃんを止めてたでしょうに……それを泉ちゃんも期待してたと思うけど」
また言った。変わった。そう、変えなきゃだめなんだ。
つかさ「なんで泣いて止めなきゃいけないの?、泉さんだっていい大人、どっちに行くかくらい自分で決めなきゃ」
あやの「そうね、でも昔のひいちゃんだったら……」
私の怒りが頂点に達した。
つかさ「なんで?、昔、昔、ってみんな言って、昔の私だったからあんな事件が起きた、昔の私だったからお客さんも来なかった、今を見てよ……
     収入だって倍増、借金だって今年中には全額返却……昔のままだったらもうお店潰れてるよ、それでも良かったの?」
あやの「良くはないけど、それでも良かったかもしれない」
つかさ「もう今日はいいよ、私の片付けしか残ってないよね、私が戸締りするからもう帰っていいよ……お疲れ様」
峰岸さんはまだ私に話したいことがあったようだったが、諦めるように店を出て行った。暗く静かな店に私一人残った。
716 :道草 つかさの忘れ物 2 [saga]:2010/05/29(土) 13:16:25.09 ID:ly1Xbwo0

 店の戸締りをした。少し歩いて振り返った。お店全体が私の目に入ってきた。確かにこんなに早く自分のお店を持てるとは思わなかった。
泉さん達が強力してくれたのは確かだけど、資金だけはどうにもならなかった。そんな時、お父さんとお母さんが資金を出してくれた。やっぱりこの店をつぶす
なんてできないよ。また私は心に硬く誓う。何気に腕時計を見た。しまった。バスに乗り遅れちゃう。私は慌ててバス停に急いだ。バス停に最終バスが
通り過ぎた。 いらだちが積もった。歩いて帰るかな。一時間くらいか。しばらく歩いているとそこに私を後ろからアップライトを当ててきた車があった。
その車は私の前に止まった。ウィンドーが開くと泉さんが乗っていた。
こなた「乗りなよ、アパートまで送ってあげる」
私は無言でドアを開けて車に乗り込んだ。車はすぐさま発進した。車は静かに進んでいく。私は少し驚いた。
こなた「あれ?、つかさ、私の運転で乗るの初めてだっけ?」
つかさ「うん……成実さんの運転をイメージしてた……」
こなた「うははは、ゆい姉さん、確かに凄い運転だよ、でもいくら身内でも同じって訳じゃないよ」
泉さんは笑った。私も釣られて笑った。
こなた「……やっと笑ってくれた、つかさはやっぱりそうでないと……そういえば昔海行ったよね、ゆい姉さんと黒井先生が引率で、私は黒井先生の車だったね、
    黒井先生の方向音痴ときたら凄かったんだよ……」
つかさ「……こなちゃん、それ何度も話してたよね、確か、その日は移動だけで終わっちゃったんだよね」
笑いながら私は答えた。
こなた「やっと私をそう呼んでくれた……思い出した?、昔の自分を」
私は我に返った。こんなはずじゃなかった。
つかさ「車を止めて、もうここから歩いて帰るよ」
こなた「ちょと、もう後数分で着くよ」
つかさ「いいから止めて!!!」
叫ぶような私の声に泉さんはブレーキをかけた。車は静かに止まった。泉さんはハザードランプを点灯させた。私はシートベルトを外した。
こなた「つかさ、どうしたんだよ……そうだ、明日店は休みだし、久しぶりに買い物にでもって思ったんだけど」
つかさ「どうせ買い物って秋葉原でしょ……」
こなた「秋葉のお店も結構いろいろ参考になるんだよ、この前提案したメニューだって……」
つかさ「公私混同しちゃダメだよ……休日はちゃんと休まないと」
こなた「公私混同してるのはつかさの方だよ、仕事が終わっているのにその店長みたいな態度、口調、もっとリラックスしないとね」
つかさ「私は泉さんみたいに器用じゃない……それに明日は実家に帰るから買い物一緒に行けない」
こなた「へー実家に帰るんだ……でも実家から店まで通える距離なのにどうして一人暮らしなんか?」
つかさ「いいでしょ、もうそんな事どうでも」
こなた「分ってるよ、あの事件で家族に迷惑かけたくなかったからでしょ」
図星だった。私は黙って車を降りようとした。しかし車はまた走り始めた。
つかさ「泉さん降ろしてって言ったでしょ」
こなた「強情だなつかさは、もうすぐそこだから同じだよ……実家に帰るならかがみにも会えるね、よろしく言っておいて」
つかさ「たぶん、姉さん達には会わないよ……」
しばらく沈黙が続いた。
こなた「そう……でもかがみはすごく会いたがっていたよ、忙しくて試食会にも出られないって、だからさ……」
何か急に怒りがこみ上げてきた。
つかさ「今更何言ってるの、かがみ姉さんは何もしなかった、店を立ち上げた時も、食中毒事件の時も、私は泣いていただけだった、でも姉さんは何もしなかった、
     だから、私は強くならなきゃいけない、そうでしょ」
こなた「……それは、かがみに直接言ってくれよ……もう、アパートに着いているよ……」
車は停車していた。窓の外を見るとアパートの目の前だった。私は車を降りようとした。
こなた「つかさ、かがみからの誘いの事なんだけどさ……OKしようかなって思ってるんだ」
つかさ「姉さんの仕事の方がきっと収入多いよ、それに何でそんな事私に言うの?、決めるのは泉さんでしょ」
泉さんは私に何か言いたかったようだったけど車を降りた。しばらく車は止まったままだった。諦めたよう、アップライトで私を照らし、軽くクラクションを鳴らすと
車は走り去った。私は車が見えなくなるまで見送った。

 アパートに入り、自分の部屋のドアを開けた。この店を立ち上げる時に借りたアパートだった。もう少し高いマンションでも住めるくらいのお金はあったけど
何故かこのアパートに住んでいる。ポットでお湯を沸かしてお茶を入れた。ほっと一息。テレビを見るがあまり興味を引く番組はやっていなかった。
テレビの電源を切った。
717 :道草 つかさの忘れ物 3 [saga]:2010/05/29(土) 13:18:59.99 ID:ly1Xbwo0

 『こなちゃん』か……しばらく言ってなかった。車で思わず昔話をしてしまった。海に行ったっけな。あれは高校二年だったかな……だめだ、また昔の自分に
戻っちゃう。こんなんじゃこれからお店を維持することなんかできない。

 確かに食中毒疑惑が起きる前までは私達は学生気分で働くことができた。今より全然収入は少なかったけど楽しかった。でもかがみ姉さんは私が
店を経営するっていったら笑ってバカにしたんだ。出来るはずなんか無いって。それでも私は頑張った……つもりだった。事件が起きたらお客さんも
一人も来なくなった。苦情の手紙もいっぱい来た。かがみ姉さんは言った。『学生気分でやるからだよ』……悔しかった。
いまでもはっきりと覚えている。かがみ姉さんとあれから一度も会っていない。
手紙の件もあったから私はこのアパートに引っ越した。さすがに私達はもうだめだと思った。資金が底をついた……峰岸さんも結婚する予定を延期したんだった。
そこにゆきちゃんから支援金が振り込まれた。嬉しかった。私達三人はそこでやり直すことを決意した。私は今までの方針を変えて厳しい規則を
決めてやり直した。成功したんだ。今では固定客も来てくれている。アルバイトだって雇えるようになった。泉さん達にボーナスだって支給できるようになったんだ。
やっとかがみ姉さんを見返せると思ったのに。最近になったら泉さんも峰岸さんも昔の方が良かったなんていい出した。うんん私は間違っていない。
このままで良いんだ。かがみ姉さんは私達が成功したからくやしくて泉さんを引き抜こうとしている。許せない……でも、泉さん、姉さんの所に行くって
言うなんて……。

心が揺れる。不安定だ。こんな事今までなかった。泉さんがは学生時代のアルバイトでコスプレ喫茶で働いていた。その時の経験が少なからず役立った。
メニューを決める時も奇抜なアイデアを出してくるから面白かった。峰岸さんもおばさんが料理の先生をやっているだけあってレシピのレパートリーは
彼女の方が多かった。皆それぞれが上手くやってきたのに……私に何が足りないのかな。
それは強さ。そう。強い意志で引っ張っていかないとダメなんだ。そのために明日は実家に帰る。まず開店資金を出してくれたお父さん、お母さんにお金を
返す。そして。ゆきちゃんもお金を返す。過去を清算して新たな自分、強くなるために。


 珍しく目覚まし時計が鳴る前に目覚めた。時間に余裕があるのでゆっくりと身支度をしてから出かけた。駅を降りた。久しぶりに住み慣れた町並みが。
目に飛び込んできた。今日は平日のお昼近いせいか人はまばらだった。まったく変わってない風景だった。といっても何十年も居なかったわけじゃない。
当たり前か。一人で妙に納得して笑った。やっぱり住み慣れた町はいいもの。
『チチチ』

突然鳥の鳴き声、音のする方を向いた。ツバメの巣だった。巣には雛が数羽、親の帰りを待っていた。頭だけを出している。親鳥が来た。雛に餌を与えている。

 何だろう、以前これと同じ光景を見たことある。立ち止まり考えた。
……かがみ姉さん。ここでかがみ姉さんがツバメの糞を浴びて立っていたんだっけな。……そういえばその前、私はツバメの雛が
巣から落ちて死んでいるのを見つけたんだっけ。私はお墓を作ってあげようって公園に行ったけど……かがみ姉さんは来てくれなかった。
同じだ。今と同じだ。姉さんは私の心なんて何も分ってない。やな事を思い出してしまった。

 あれ、じゃなんで姉さんは糞を浴びて立ってたんだろ。私を見るなりいきなり泣き出したんだった。
それでこのハンカチでお姉ちゃんの付いていた糞を取ってあげたんだった。何で泣いてたんだろう。その後、死んだツバメの雛を祈りたいって言ったんだった。
ツバメの雛か……あの墓どうなってるかな。埋めて石を置いただけの簡単な墓。きっともう跡も残ってないな。巣から時折聞こえてくる雛達の鳴き声が
あの時の私の気持ちを思い出させた。可哀想だったから埋めてあげただけだった。腕時計を見た。まだちょっと家に行くのは早いかな……見に行ってみるかな。
私は来た道を戻り、公園の方に向かった。
718 :道草 つかさの忘れ物 4 [saga]:2010/05/29(土) 13:20:42.19 ID:ly1Xbwo0
 公園の一番高い丘にある花壇。迷うことなくたどり着いた。鳥だから空が恋しいと思って一番高い所に埋めたんだった。花壇を見回した。やっぱり墓なんて
……あった。私の置いた石がそのまま花壇に置いてあった。もう誰かに掘り返されて、新しい草木が植えられていると思った。こんな事もあるんだなと思った。
折角きたから祈ってから……。あれ?、良く見ると石の前に花が一輪置いてあった。その辺にある雑草の花じゃない。ちゃんと花屋さんで買ったもの。
更に石の周りをを見ると同じ花が置いてある。枯れて半分腐っているものもある。一回、二回程度じゃない。何回もこの石に花を供えている。しかも長い間。
このツバメの雛の墓の場所は誰にも話していない。こなちゃんや、ゆきちゃん、家族にだって話していない。お姉ちゃんとの約束だった。誰にも話さないって。
それじゃこの花はお姉ちゃんが供えたもの?。なんで?。私はその後、一回もこの墓に行ってない。お姉ちゃんはその後も、私の代わりに祈って……、まさか。
私はその時、初めてお姉ちゃんが何故泣いたのか分った。そして雛を祈ってやりたいって言った意味が。自然と涙が出てきた。

「どうしたのですか、つかささん……」
慌てて涙を拭い声のする方を向いた。ゆきちゃんだった。そう、私はゆきちゃんを呼んでいたんだった。
つかさ「ゆきちゃん、何でこんな所に?」
みゆき「すみません、通りかかったらつかささんが居たのですが公園の方に向かわれたので追いかけてきました」
つかさ「久しぶりだねゆきちゃん、全然変わってないね、来てくれてありがとう」
みゆき「いいえ、こちらこそ、おかまいもなく……」
久しぶり会ってその場で立ち話、会話が弾んだ。しばらく私達は高校時代の思い出話に花が咲いた。おかしい。こなちゃんや峰岸さんとは少しも話したいとは
思わなかったのに。ゆきちゃんとは全くそんな事はなかった。

みゆき「ところでつかささん、何故こんな所に寄られたのですか?」
突然の質問だった。ツバメの雛の話が頭に浮かんだ。でもゆきちゃんにこの話をするのを躊躇った。お姉ちゃんとの約束があったから。でもお姉ちゃんとは
もうそんな昔みたいな仲じゃない。ゆきちゃんは私の見ていた花壇に気が付いた。
みゆき「この花壇を見られていましたね……小さな石……お花……お墓ですか?……」
私は小さく頷いた。
みゆき「……大学を卒業してからかがみさんから聞きました、つかささんとツバメの雛のお話を、もしかしたらこの墓はその雛の墓ですか?」
お姉ちゃんはゆきちゃんに話した。自分で約束をしておきながら、自分でその約束を破った。
つかさ「お姉ちゃんは墓の事は内緒にしようって言った、特にこなちゃんにはって……念を押されたんだよ」
みゆき「かがみさんらしいですね、泉さんに茶化されるのが嫌だったのですね……」
ゆきちゃんはクスリと笑った。
つかさ「お姉ちゃんは変わった、もう、あの優しいお姉ちゃんじゃなくなった、私が店を出すって言った時だって……」
みゆき「私はかがみさんは少しも変わっていないような気がしますが、それはつかささんに激励をされたと思いますが」
こなちゃんと同じ様な事を言っている。やっぱり私はお店を出したの失敗だったのかな。急に自信がなくなった。自信をつけるためにゆきちゃんを呼んだのに。
もうこの話は止めよう。今、ゆきちゃんが居るなら話を進めちゃおう。
つかさ「ゆきちゃん、平日に呼び出しちゃってごめんね、休日はお店が忙しくって会えないから、それにこれは直接渡さないと」
みゆき「何ですか?、急に改まって?、私に渡すものって何ですか?」
ゆきちゃんはポカンと口を開けていた。ゆきちゃんは惚けて受け取らない気かもしれない。でもこれはけじめだ。絶対に受け取ってもらう。
つかさ「私の店が食中毒事件の疑いをかけられた時、助けてくれた資金、あれが無かったら店はつぶれてた、利子もつけて返すよ」
みゆき「返しても大丈夫なのですか?」
つかさ「もう大丈夫だよ、店も順調に回復したから、ありがとうゆきちゃん」
ゆきちゃんはまたクスリと笑った。
みゆき「その資金を返すのであれば私ではありません、かがみさんに返して下さい」
私は耳を疑った。お姉ちゃんは私に何もしてくれなかった。そうだったはず。唖然としている私に更に話しだした。
719 :道草 つかさの忘れ物 5 [saga]:2010/05/29(土) 13:22:27.44 ID:ly1Xbwo0

みゆき「かがみさんは黙っていたのですね……それではこの話も黙っていたのかも……つかささんのお店を立ち上げる資金もかがみさんが出したのですよ」
つかさ「嘘、あれはお父さんとお母さんが出した、今日、それも返すんだよ……、それにそんな資金、
     お姉ちゃんが出せるはずないよ、大学卒業したばかりだったし」
ゆきちゃんは静かに話し出した。
みゆき「かがみさんは大変優秀な成績で卒業されました、その為、入学金、学費、その他、大学での費用すべてがかがみさんに返還されたそうです、
     そのお金を全てつかささんのお店の資金にとの事ですよ、考えてみればご両親のお金だったのでご両親に返されてもいいとは思いますが」
つかさ「なんで、何で黙ってたの、お姉ちゃん、何で会ってくれなかったの、私はお姉ちゃんを嫌いになっていた」
みゆき「最近、脅迫じみた手紙が来たそうですね、泉さんが店のオフィスから見つけたそうです、それをかがみさんに見せたら犯人を見つけると言い出しまして
     探偵を雇って調べると言っていましたよ、その時、泉さんを自分の事務所のスタッフに誘った……かがみさんも迷った結果の決断だそうです」
つかさ「ゆきちゃん、なんでそんなに詳しく知ってるの?」
みゆき「私もそのスタッフに誘われまして、私は承諾いたしました、それで私はつかささんに対してどう思っているのか包み隠さず話すように言ったのです」
つかさ「……、バカだよ、そんなの黙ってたら分らないよ……」
みゆき「かがみさんはつかささんが高校時代にした死んだツバメの雛を丁重に供養してあげた事、それに心を打たれた、それが無ければ今の自分はなかったと
     言っていました」
つかさ「私がしたのはそれだけだよ、その後はもうすっかり忘れた、それにただ可哀想だから、誰でも思う事だったんだよ」
みゆき「それでもあの時のかがみさんはその誰でも思うことを思わなかった、つかささんはあの時、かがみさんの一生を変えてしまうような事をしたのです、
     ……だから今度は……かがみさんががつかささんの一生を変えることしたい、でもそれはつかささんに知られては意味がないと」
つかさ「私は、今までの自分を捨てたんだよ、ツバメの事もついさっきまで忘れてた、そんな私をお姉ちゃんは……どう思ってるのかな」
みゆき「さぁ、私は分りません、本人に聞きに行きますか?、それが一番の近道かと思いますが」
つかさ「お姉ちゃんは何処なの?」
みゆき「行きますか?、案内できますが」
言いたいことが山ほどあった。怒り、悲しみ、不満、こなちゃんの事、全部言ってやる、そして最後に……ありがとうって。


 三ヵ月後。
 今日は月に一度の試食会、いつもより多くの参加者が来てくれた。
つかさ「日下部さん……次の料理なんだけど……」
みさお・あやの「なんですか?」
こなた「つかさー、苗字で言ったらダメでしょう、二人は同じなんだから……あやのさん、旦那さん連れてくればよかったのに」
そうだった、結婚したのを忘れていた。
あやの「今日は、来れないって」
みさお「兄貴はそういうやつさ……さあ、今日はどんな料理なんだよ」
こなた「ふふふ、効いて驚くな、今日は私が考えたスペシャルメニューなんだ」
かがみ「……それ、先月もやってなかったか?、たまにはま・と・もな料理をだして欲しいわね」
こなた「それは食べてから言ってくれ」

 料理が並べられ、それぞれか、忌憚ない意見が飛び交った。
720 :道草 つかさの忘れ物 6 [saga]:2010/05/29(土) 13:23:52.75 ID:ly1Xbwo0

ひより「やっぱりデザートがいいっス、つかさ先輩が作ったのですよね?、デザートは全て採用っスよ」
ゆたか「あやの先輩の肉料理が私、気に入りました」
みなみ「……泉先輩のメニュー……美味しかった」
あやの「今日は意見がバラバラね……どの料理を採用しようか」
そこに携帯電話の着信音が響いた。
かがみ「誰よ、マナーにしとけって言ってるでしょ」
ひりちゃんが携帯を取り出し話し始めた。
ひより「……はい……そうですか……わかりました……直ぐにそちらに向かいます」
ひよりちゃんは携帯を切った。
ひより「かがみ先輩!、事件です、至急かがみ先輩の意見が聞きたいと高良先輩からありました」
かがみ「みゆき……だから、携帯電話の電源切っておけって言ったのに……しょうがないわね、つかさ、こなた、あやの、悪いけど料理の感想は後日で」
私達は頷いた。
かがみ「ひより、みなみ、ゆたか、行くわよ!」
四人は慌しく店を出て行った。
みさお「……慌しいな……ゆっくりして行けばいいのに……しかし分らないもんだな、あの五人が連むなんてさ」
こなた「ひよりんが何の因果か探偵事務所なんか開いちゃってさ、かがみの法律事務所と連携してるらしいよ……ゆーちゃんもすっかり板についたよ」
あやの「田村さん……分らないものね、私はてっきり漫画家になるものだと思った」
こなた「それもまだ捨ててないみたいだよ、コミケもまだ参加しているみたいだしね、かがみが監視してるから危ないネタは描けないけどね……」
あやの「それより、泉ちゃん、なんで柊ちゃんの誘いを断ったの?、さっきも柊ちゃんと楽しそうに話してたし」
みさお「そんな事があったのか?、それは私も聞きたいな」
こなた「さあ、何でかな……さて、かがみ達の食器でも片付けるか」
そのままこなちゃんは片付け始めた。言いたくないみたい。内緒なのかな……内緒で思い出した。
つかさ「そういえば、こなちゃん、私に黙って事務室から苦情の手紙をお姉ちゃんに見せたでしょ」
こなた「……片付け、片付けっと」
はぐらかすつもりみたい、三ヶ月前の私なら怒っていたけど手紙を見せたこなちゃんの気持ちも理解できるので怒るつもりはなかった。
つかさ「手紙を出した人は、店を食中毒で潰そうしてた人だって、お姉ちゃん達が見つけてくれた、訴えることもできたけど、私はそんなことをするつもりは
     ないから、もうこの事件は解決したよ……ありがとう、こなちゃん」
こなちゃんは黙って作業を続けていた。
あやの「そうそう、柊ちゃんが手紙の事を知ってるからおかしいと思ったんだ、三ヶ月前のひいちゃんと柊ちゃんうまくいってなかったかしね、泉ちゃん、
     が教えたのか、解決してよかったけど、黙って持ち出すのは良くないと思うよ」
こなちゃんは完全に口を閉ざしてしまった。そして厨房の方に行ってしまった。
みさお「……なんだ結局内緒かよ……まあいいや、ところで昨日うちの兄貴がさ……」

 こうして試食会は無事に終わった。お姉ちゃん達が途中で出てしまったのが心残りだった。
721 :道草 つかさの忘れ物 7 [saga]:2010/05/29(土) 13:25:00.01 ID:ly1Xbwo0


つかさ「お疲れ様、今日はありがとう」
試食会が終わりいつもの会議をした。
あやの「メニューもほぼ出揃ったし、そろそろ試食会はやらなくてもいいような気がするんだけど」
つかさ「……そうだよね、今日なんか殆どメニュー決まらなかったし、こなちゃんはどう思う?」
こなた「……やらなくてももう充分かもしれないでも、それだと皆に会う機会が減っちゃうよ……」
さっきからこなちゃんの様子がおかしい。
あやの「どうしたの?、さっきから、柊ちゃんが居なくなったあたりから……そういえば答え聞いてなかった、何故柊ちゃんの誘いを断ったのか」
私達しか居ないせいなのか、今度はすんなりと答え始めた。
こなた「かがみが法律事務所を開くのは高校時代から想像ついた、ひよりんもなんとなく分るような気がする、あやのさんがみさきちのお兄さんと結婚するのも
     そうだよ、でも、つかさが店を出して経営して、しかも利益を出す、まして食中毒の疑いをかけられてどん底から這い上がるなんて思いもつかなかった、
     それがとても楽しかった、かがみとじゃこうゆう体験はできないだろうから」
つかさ「こなちゃん、それって、褒めてるの?、貶してるの?」
こなちゃんは笑った。
こなた「つかさは変わったよ、私達の中で一番変わった、私の知ってるつかさならそんな質問は絶対にしてこない……私は認めるよ、店長」
あやの「確かにひいちゃんと一緒にいて、いろいろ勉強になった、柊ちゃん、田村さんに負けないようにがんばりましょ……店長」
つかさ「二人とも、もうその呼び方は止めてっていったのに……」
私達は笑った。私達の笑いが戻ったのも最近になってからだ。
こなた「ところで本当にいいの?、かがみとひよりんの事務所の資金出したの黙っててさ」
つかさ「いいよ、今まで私を騙していたお返しなんだから」
こなた「お返しね……かがみならもう分っちゃってるんじゃないの?」
つかさ「ゆきちゃんに資金の提供者の名義を変更してもらってるから銀行から借りたことになってる、
     ゆきちゃんが言わない限りばれないよ……だから……二人とも、分ってるよね?」
私は二人に真剣な眼差しをしてみせた。
こなた「こわー、今度からつかさを敵にしないようにしよーっと」
あやの「そうね、柊ちゃん達が知った時が楽しみね……それに、私達の仕事の励みにもなるし」
つかさ「……もうこんな時間、今日はもうお開きにしましょ」
こなた・あやの「お疲れ様ー」
722 :道草 つかさの忘れ物 8 [saga]:2010/05/29(土) 13:25:56.22 ID:ly1Xbwo0

 今日は私が最終退出者か、全ての電気をオフにして戸締りをした。外に出るとこなちゃんが居た。私を待っていたのかな?。しかしこなちゃんは
私ではなく上の方を見ていた。
つかさ「どうしたの?こなちゃん」
こなちゃんが黙って指を上の方に指した。私はその指先を見上げた。店の屋根にツバメが巣を作っていた。いつ作ったのだろうか?。
こなた「知ってる?、ツバメの巣があるとその店は繁盛するんだって、みゆきさんが言ってた」
つかさ「聞いたことあるよ」
こなた「つかさはやっぱりあの時、ツバメが助けてくれたんだよ、高校時代、体育の時間だったよね、覚えてる?」
つかさ「だから言ったでしょ、最初からそう思ってた」
こなちゃんは鞄からリボンをとって私に差し出した。
つかさ「何?」
こなた「何?はないでしょ、つかさのトレードマークのリボンだよ」
つかさ「もう付けないって決めたから……」
こなた「高校時代のつかさに戻ったからつけてもいいかなって、普通は一度変わっちゃうと元に戻れないよね、でもつかさは戻った……
     かがみの誘いを断った本当の理由だよ」
こなちゃんは強引にリボンを手渡した。
こなた「今日は車が車検で送れないんだ、それじゃまた明日」
こなちゃんは走って去って行った。質問する間がなかった。 私は変わった?。変わっていない?。どっちなんだろうか。
ふとツバメの巣をみた。
親鳥が巣の中でじっとしている。もう雛は巣立ちしたのかな。それとも卵を温めているのかな、どっちなんだろうか……今の私みたい。
ツバメはじっと私を見ているような気がした。私は一回大きく深呼吸をした。
つかさ「分ってる、みんなツバメさんのおかげ、あの時のお姉ちゃんもそう思ったんだね……ありがとう」
私はリボンを頭に付けた。

帰りに一輪の小さな花を買おう。そしてもう一度あの公園に行こう。ツバメの雛が眠る公園に。 
答えはきっとそこにある。

723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/29(土) 13:27:47.49 ID:ly1Xbwo0
以上です。一番最初に作った作品なので今とどう変わったか試してみた。あまり変わってないかな。
続編はあまり作る気はしなかったのですが、ふと浮かんでしまったので書きました。
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/29(土) 15:07:20.73 ID:p22aP4k0
乙、えがったよぉ
つかさはやっぱりつかさだよ、うん
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/29(土) 22:34:11.59 ID:ly1Xbwo0
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ここまでまとめた

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726 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/29(土) 23:54:35.30 ID:CJHAz5g0
まとめ乙です
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/01(火) 15:12:48.77 ID:EyrQzMSO
−今日は何の日?−

こなた「朝にカレンダー見て知ったんだけど、今日は写真の日なんだって」
つかさ「へー」
こなた「それで、みんなの写真を撮ってみたよ」
かがみ「いつの間に…」
つかさ「どんなの?」
こなた「えーっと、かがみがのびした時におへそが見えたのとか、つかさがこけた時にパンツ見えたのとか、みゆきさんがしゃがんだ時のブラチラとか…」
つかさ「…えー」
かがみ「…それ、どうするつもりなの?」
こなた「PCの壁紙にでもしようかと」
かがみ「みゆき。このデジカメのデータ全部消去して」
みゆき「了解しました」
こなた「せっかく撮ったのに!?…わ、わたしが下着で昼寝してる写真あげるから勘弁してくれない?」
かがみ「よし、許す」
つかさ「…ゆるしちゃうんだ…」
みゆき(というか、その昼寝の写真はどなたが撮られたのでしょうか…)
728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/01(火) 21:17:06.19 ID:JwuyS3.0
−それはそれ これはこれ−

みさお「おーい柊ぃー、それ一個くれ」
かがみ「えっ、これ蒟蒻ゼリーよ? あんた蒟蒻嫌いでしょーが」
みさお「蒟蒻セリ―は平気なんだよ」
かがみ「…なんか納得いかないけど… まあ、いいわ」
みさお「あーん ムグムグ ごっくん」
かがみ「…蒟蒻は嫌いのはずよねぇ…」
みさお「ほら、あれだよ トマト嫌いでもトマトケチャップ使う奴っているだろ?」
かがみ「あー、なるほど まあ確かにいるわよね」 
729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/02(水) 00:07:10.14 ID:PtcMp.AO
☆(=ω=.)
730 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/02(水) 20:22:25.28 ID:4NWpTMI0
こなた「ねぇ、お父さん」
そうじろう「なんだ?こなた」
こなた「この掲示板見てよ、あたしやかがみにそっくりな人達が出て来てるよ」
そうじろう「ほんとだなぁ、口調とかそっくりだww」
こなた「あたし思ったんだけどー」
そうじろう「うん?」
こなた「つかさそっくりな人は頻繁に出て来るのに、どうしてみゆきさんそっくりな人は余り出て来ないんだろう?同じ天然系なのに」
そうじろう「そりゃああれじゃないか?博学な人物を画くには、それ相応の知識が無いとダメだからじゃないか?」
こなた「ということは、ここに書いてる人達は余り調べて無いってこと?」
そうじろう「いゃぁ、そうとも限らないかな。もう一人の天然系キャラが色々と吸収し易いからかもしれんぞ」
こなた「ふぅ〜ん、お父さんならどっちを書く?」
そうじろう「そうだなぁ、両方書いてみて気に入った方かな」
こなた「あたしのことは書いてくれないんだ…」
そうじろう「いや!紙に書いたりしてないだけで書いてるぞ!」
こなた「書いてるんだ…」
そうじろう「いや、え〜と…」
こなた「冗談だよ(笑)ちょっとからかっただけ♪」
そうじろう「親をからかうんじゃありませんっ!」
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/02(水) 20:51:00.05 ID:JcleaGo0
>>730
自分はつかさとみゆきが一番書いているかな。みゆきは結構書きやすいと思うけどね。
732 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/02(水) 21:13:50.74 ID:z6/S85oo
再現しなければいけないのは「性格(キャラクター)」であって、
みゆきを再現するには
みゆきのカギカッコになにかの事柄のウンチク文章をコピペさせることが必須条件、だなんてことはない。
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/02(水) 22:58:38.14 ID:18NOH6s0
>>727
そうじろうしかいないだろうな…wwww
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/03(木) 19:45:54.50 ID:PHlyVmc0
>>733
しかしそれをなぜこなたが持ってる?ww
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/03(木) 20:03:37.53 ID:YIhDkgSO
>>734
親子で共有
736 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 20:12:40.76 ID:5ECV5uk0
>>733
いや、そうじろうからカメラ一式を借りて自撮りという可能性もなくはないかも
「こんなこともあろうかと」
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/03(木) 20:51:01.97 ID:PHlyVmc0
>>733
「こんなこともあろうかと」
どこかのアニメの工場長のセリフが出てくるとは思わなかったw
738 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/04(金) 12:32:24.27 ID:4Roc8USO
こなた「地震に備えて、念のためにカロリーメイトと水買ってきた。意外と美味しいねコレ。パサパサしてるから水も買ってきて正解だったよ」モグモグ

739 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/04(金) 22:39:19.33 ID:wKnc9sAO
>>738
かがみ「今食べちゃ意味ないだろ!」
740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/04(金) 22:48:59.61 ID:wD/JH/s0
つかさ「ほんとだね、こなちゃん美味しいね♪」
741 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/04(金) 23:47:39.48 ID:Oqg7DcAO
>>740
みゆき「なかなか美味しいですね」モグモグ
かがみ「みゆきもか!?」
みゆき「…詰め物が取れてしまいました(泣)」シクシク
かがみ「ご愁傷様」
742 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/05(土) 16:10:45.12 ID:GKZRaQc0
まとめようとしたけど、長編物がないからやめておくかな。
ファンタジー物が二作ほど連載中だったよね。連載物もいいが投下時期が不安定だから
待ち焦がれてしまうよね。まあ作者はこんなことは気にせず慌てずにどうぞ。

え? それが急かせてるって?w。しょうがないよ、連載物を投下した者の宿命さw
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/05(土) 16:23:40.84 ID:xFxiSTg0
流れにワロタww
744 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/05(土) 17:43:03.28 ID:GKZRaQc0
流れいいね、リレーssっぽかった。
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/05(土) 17:46:53.36 ID:DFL3BUSO
また懐かしいコピペだな
746 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/05(土) 21:41:10.38 ID:GKZRaQc0
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ここまでまとめた

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暇なのでまとめました。
747 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:17:56.31 ID:WXGehJU0
投下行きます。

第六話です。
748 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:19:19.35 ID:WXGehJU0
「不覚だったわ…まさかすでに新たな賞金稼ぎを配置してたなんて」
 バウンティハンターギルドでもあるマリアベルの宿。その一階の酒場の床に、後ろ手に縛られたヴァージニアが座らされていた。
 薄い紫色を基調とした、厚手のドレスに身を包んだその姿は、ちょっとした中流家庭のお嬢さんのようで、とても渡り鳥には見えない。
「…なんでこの人こんなに余裕あるのよ。捕まってるのに」
「…ってか、微妙に嬉しそうでもあるよね」
 そのヴァージニアを、かがみとこなたが冷や汗を垂らしながら見下ろしていた。
「そもそもここで落ち合おうって言ったの、ヴァージニアさんなのに…」
「大方、悪漢役の自分に酔っとるんだろうの…」
 つかさとマリアベルは、手近なテーブルに座って三人を眺めている。
「わたしを捕まえたことに免じて、一つだけ良い事を教えてあげるわ」
「…なんでそんな偉そうなの」
 かがみの白い目を気にせず、ヴァージニアは言葉を続けた。
「緑の災厄…あれに似たのがこの町にいるわ」
 ヴァージニアの言葉に、マリアベルが片方の眉をピクリと動かした。
「…ヴァー子。その冗談はシャレにならんぞ」
「冗談じゃないわよ…わたしがアレのことをジョークに使うわけ無いじゃない」
 ヴァージニアが不敵な笑みを浮かべる。それを見たマリアベルは気に食わないかのように鼻を鳴らした。
「ま、言いたいことはそれだけ。後はアーデルハイド一の賞金稼ぎさんに任せるわ」
 パサッと音がして、ヴァージニアの手を縛っていた縄が床に落ちた。
「え…縄抜け…?」
「それじゃーね」
 驚くかがみにウィンクをし、ヴァージニアは懐からトランプに似たカードを取り出して、頭上に掲げた。
「スペクトル!」
 ヴァージニアの叫びに応じ、カードが凄まじい閃光を発した。
「うわっ!?」
「まぶしっ!」
 こなたとかがみは目を瞑り、両手で顔を覆ってしまった。
「…な、なんなのよ…」
 閃光が収まりかがみが目を開いてみると、すでにヴァージニアの姿は無く、床に一枚の紙切れが落ちているだけだった。
「派手な逃げ方するねえ…」
 こなたは呆れた風にそう言いながら、ヴァージニアが落としていった紙切れを拾い上げた。



わいるど☆あーむずLS

第六話『緑の災厄』




749 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:20:12.06 ID:WXGehJU0
「アーデルハイド城の地下水道。つかさちゃんよろしくね。かっこはーとかっことじる…」
 こなたはテーブルの上に置いた紙に書かれた文字を読み、同じく紙を覗き込んでいる他の三人の顔を見回した。
「…よりにもよって…のう…」
 不機嫌そのものと言った表情でマリアベルが呟く。
「あの、緑の災厄って…」
 つかさがそう聞くと、マリアベルは忌々しげに眉根を寄せた。
「アークティカを滅ぼした災厄じゃよ」
「え、それがこの町に…?」
「ヴァー子の言う事を、信じるなら…じゃが…うーむ」
 難しい顔をしてうつむくマリアベルを見て、こなた達三人は顔を見合わせた。
「マリアベルさんは、緑の災厄ってのに詳しいんですか?」
 こなたの質問にマリアベルは眉をしかめたが、すぐに頭をかきながら表情を戻した。
「…わしはアークティカに住んでおったからの。アレのことは嫌というほど知っておる」
「…こなた」
 かがみが非難がましい目でこなたを見ると、こなたはばつが悪そうに首をすくめた。
「いや、かまわん。隠すほどのことでは無いしの…アークティカは軍事に力を入れた国での。国土の大半が荒野化してしもうて、他の土地を侵略しようとしておったのじゃ」
 そこまで話したところで、マリアベルはコップの水を飲み息をついた。
「そこに一人の男が、ファルガイア再生計画なるものを携えて現れたんじゃ…名はウェルナー・マックスウェル。ヴァー子の父親じゃよ」
「ヴァージニアさんの…」
 つかさがそう呟くのが聞こえ、かがみはつかさを見た。心配そうなつかさの表情に、かがみは自分がアシュレーに世話になったように、つかさはヴァージニアの世話になったんじゃないだろうかと感じていた。
「再生計画については詳しいことは長い上にややこしいでの、簡略して説明させてもらうが…ようはレイポイントと呼ばれる場所に生命エネルギーを直接流し込み、弱っているファルガイアに活をいれようという感じじゃ」
「大雑把って言うかなんていうか…」
「…簡略しとると言うとろうが」
 思わず突っ込みを入れてしまったかがみを睨むと、マリアベルは目をつぶりため息をついた。
「その再生計画のために、ユグドラシルと呼ばれるARMが作られたのじゃがな…あのアホ国王はそいつを軍事に転用しようとしたのじゃ。それを阻止しようとした銃士隊と一悶着あっての…ユグドラシルの暴走を招いて、アークティカは滅んだというわけじゃ」
「それが緑の災厄?」
 そう聞いてきたつかさに、マリアベルはうなずいて見せた。
「うむ。まあ正確にはユグドラシルの暴走で生まれた化け物のことじゃがな。まあ、どの道ヴァー子にとっては父親が残した負の遺産じゃ。捨て置くことはできまいて…たとえ賞金稼ぎの手を借りようとも、な」
 そう言いながら自分を見てニヤリと笑うマリアベルに、つかさははっきりとうなずいて見せた。



750 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:23:11.63 ID:WXGehJU0
「ホントにいくの?お城の地下なんて、そう簡単に入れる場所じゃないと思うんだけど…」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。お城には何回か忍び込んだことあるから」
 心配そうに聞くかがみに、つかさはにこやかに答えて見せた。
 表向きは宿屋となっている、マリアベルのギルドの二階。そこにある寝室で、三人は夜まで仮眠を取ることになった。
「それに、ヴァージニアさんが助けを必要としてるんだもん。放っておけないよ」
「あれが助けて欲しいって態度なのかしらね…」
 呆れたようにそう言いながら、かがみはこなたの方を見た。こなたはベッドに寝転がり、自分のARMを眺めていた。
「どうしたの、こなた?」
「ん…いやね。マリアベルさんが言ってたじゃない。再生計画にユグドラシルってARM使うって。銃でどうやってそんなことするのかなって思ってさ」
 こなたの言葉を聞いて、かがみは頬をかいた。
「あ、そうか。こなたは知らないのね」
「なにが?」
「ARMってのはAncient Relics Machineの略なのよ。えーっと、古代の遺跡より発掘された機械って感じの意味ね」
「それじゃ、この世界の機械ってのは全部ARMってこと?」
「一応、ARMじゃない機械もあるみたいだけど、面倒なのかみんなまとめてARMって呼んでるみたいね」
「そっか」
 こなたはアガートラームをホルスターに収めると、身体を起こしてつかさの方を見た。
「そういや、つかさのARMってどんなの?なんかショットガンみたいだったけど」
「うん、こんなのだけど…」
 つかさは羽織っていたポンチョを脱いで、たすきがけにしているガンベルトから自分のARMを外してこなたの方に差し出した。
「ポンコツ、これの名前もわかるの?」
 少し銃身の短いポンプアクション式のショットガン。それを手に取り眺めながら、こなたはアガートラームにそう聞いた。
『うん。A−ARMS03アークセプターだね。使用者の魔力を高める能力のある、特殊戦闘型だよ』
「おや、今回はやけにくわしいね」
『みたいだね。どうやらA−ARMSに近づくとメモリーが戻ってくるみたいだ』
「ふーん…魔力を高めるって事は、つかさは魔法みたいなの使えるの?」
 つかさにARMを返しながらこなたがそう聞くと、つかさは控えめにうなずいた。
「うん…ほら、ヴァージニアさんが逃げるときに使ってたでしょ?あれはクレストソーサーって言ってね、特殊なカードに紋章を書き込んで、そこに魔力を加えて色んな魔法を発動させるんだけど…」
 つかさは説明しながらガンベルトからショットガンに使用する弾薬…ショットシェルを取り出して、その底部を指差した。
「ほら、ここに紋章が書いてあるでしょ?これをこのARMで撃ったら、魔法みたいなことができるんだよ。クレストショットってヴァージニアさんが名前つけてくれたんだ」
「へー、そりゃおもしろいね」
 こなたは感心しながら、自分のARMに目を向けた。
「ポンコツもこれくらい面白いことできたらいいのにねえ」
『アクセラレイターだけじゃ不満なのか…』
「っていうかお話できるって方が凄いと思う…わたしのもポンコツ君みたいに喋れないかな」
「かがみと同じようなこと言ってる…こういうところは双子だねえ」
『…ポンコツ君て…』
751 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:24:20.04 ID:WXGehJU0
「そういや、気になってたんだけど」
 つかさ達が話してる後でARMの手入れをしていたかがみが、ARMを床に置いてそう言った。
「わたし達のARMって特別なのかしらね」
「特別?」
 こなたが首をかしげながら、ホルスターに収まっているアガートラームを手で軽く叩いた。
「ほら、こなたのは喋るし、それに形式番号なんて普通無いのよ。大半のARMは遺跡から発掘されたのを、個人個人で使えそうなパーツ取って組み合わせて作るから」
「そういや、ロディ君がレアだとかなんとか言ってたっけ…」
「で、そこんとこどうなの?」
 かがみがこなたのホルスターに顔を近づけて、アガートラームにそう聞いた。
『そりゃ特別だよ。僕達は世界に二つと無いARMさ』
「ふーん…具体的には?わたしたちが目を覚ましたときに側にあったっての、なんか意味があると思うんだけど」
『え?…んー』
「あと形式番号のA−ARMSって何の意味?」
『…えーっと…わからないな』
 トーンダウンするアガートラームに、かがみは大きくため息をついた。
「肝心なところがソレだから、あんたはポンコツなのよ」
『…記憶喪失は僕の責任じゃないと思うんだけど…』
 辛らつなかがみの言葉にふてくされるアガートラーム。その様子を、こなたとつかさは苦笑しながら眺めていた。



 夜になり、三人は町の外に出ると城壁沿いに城の裏辺りまでやってきた。
「ここ?何にもなさそうだけど…」
 かがみが辺りを見回しながら、疑わしげにそう呟いた。
「うん…えっと、ここに…っと」
 つかさは城壁に手を触れると、レンガの一つを押し込み中にある鎖を引っ張った。すると近くの地面が開き、下へ降りる階段が出現した。
「こういう仕掛けってRPGじゃ良くあるけど、実際に見るとなんか不思議な感じだね…」
「そうね…」
 こなたとかがみがそう話してる間にもつかさはさっさと階段を降り始め、二人は慌てて後を追った。


752 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:25:04.16 ID:WXGehJU0
「ここを降りきったところが地下水路だよ。お城の偉い人の避難通路なんだって」
 螺旋状の階段を下りながら、先頭のつかさがそう言った。
「え、避難通路?そう言うのって、普通外から入れるようになってないんじゃない?」
 こなたがそう聞くと、つかさは少し困った顔をした。
「ヴァージニアさんが入れるようにしちゃったんだよ。わたしはお城の人のだし、勝手にいじるのよくないって言ったんだけど…」
「いや、そう言う問題じゃないでしょ…」
 かがみの呟きに、つかさは首をかしげながら振り返った。
「え?どういうこと?」
「お偉いさんの避難通路なんて機密事項なんだから、それ知ってるってだけでもヤバいのに、外から入れるように改造しただなんて普通極刑でしょ」
「だよね…」
 かがみの説明に、こなたがうなずく。つかさは少し考えるような仕草をして、にこりと笑った。
「ばれたらどこか遠くに逃げるから、大丈夫だよ」
 朗らかにそう言うつかさに、こなたとかがみは顔を見合わせた。
「つかさがなんか逞しいよ、かがみさんや…」
「なんか微妙な感じだわ…」
 話しているうちに階段が終わり、奥へと続く通路が現れた。三人はそこへ入り先へと進んだが、しばらく歩いたところでつかさが立ち止まった。
「どうしたの、つかさ?」
 かがみがそう聞きながらつかさの背中越しに前を見ると、そこには鎧を来た城の兵士が立っていた。兵士は三人に気がつくと、小走りで近づいてきた。
「おい、君達はどこから入ってきたんだ?」
 そう詰め寄ってくる兵士に、こなたとかがみは思わず顔を見合わせた。
「極刑…?」
「かもね…」
「もしかして上からか?ああ、だったら…」
 兵士の言葉は銃声で遮られた。こなた達が音のしたほうを見ると、つかさがいつの間にかアークセプターを構えていた。その銃口からは硝煙が立ち上っている。
「ごめんね、話してる時間ないから…さ、行こ。こなちゃん、お姉ちゃん」
 つかさはそう言いながら銃を振って煙を払い、ホルスターに収めた。
「ちょ、ちょっとつかさ…な、なにしたのよ…」
 かがみは唖然としながらも、つかさにそう聞いた。
「今…人を撃ち殺し…」
 こなたがそう言ったところで、つかさは首を横に激しく振った。
「ち、違うよ!わたし殺してなんか無いって!寝てもらっただけだよ!」
「え?寝て…?」
 かがみが倒れている兵士に顔を近づけると、たしかに寝息が聞こえてきた。
「ほら、わたしARM使ってクレストショットが使えるって言ったじゃない。相手を眠らせるスリープってのを使ったんだよ」
 わたわたと手を動かしながらまくし立てるつかさを見て、かがみとこなたは顔を見合わせた。
「わ、わたし賞金稼ぎなんてやってるけど、人を殺したことなんてないよ…ほ、ほんとだよ…」
 ほとんど涙目になりながら訴えるつかさに、二人は今度はクスクスと笑い出した。
「え?な、なんで笑うの…?」
「いや、なんてーか…」
「つかさは、どこ行ってもつかさだなって思ったらつい…」
「ええー…なにそれ…」
 不満そうに頬を膨らませるつかさ。そのつかさの肩を、かがみが軽く叩いた。
「褒めてるのよ。さ、いきましょ」
「そうそう、頼りにしてるからね。つかさ」
 今度はこなたが逆の肩を叩きながらそう言った。つかさは不満そうな表情をしたままうなずいた。
「う、うん…この先は砂獣が出るから、気をつけてね」
 そして、思い出したようにそう言うつかさに、かがみとこなたは大きくうなずいて見せた。



753 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:26:01.11 ID:WXGehJU0
「…えーっと」
「…いや、確かに頼りにしてるとは言ったけど」
 ひんやりとした冷気の漂う、なかなかに広い地下水道。その中で繰り広げられる光景に、こなたもかがみもただ唖然としていた。
 地下水道を少し進んだ辺りで、球根のような砂獣が多数現れたのだが、こなたとかがみが何をするまでも無く、つかさが一人で蹴散らしているのだ。
 炎、氷、雷、風、岩塊。多彩な魔法が砂獣たちを次々と打ち倒していく。
「…ま、まあ楽できていいよね」
「…そう言う見方もあるわね」
 二人が何とも言えない表情で見守る中、つかさは最後の一体を消し炭に変え、二人のところまで戻ってきた。
「えへへ、やったよ。お姉ちゃん、こなちゃん」
「う、うん…すごいわね、つかさ」
 嬉しそうに報告するつかさを、かがみが冷や汗を垂らしながら褒める。
「でも、なんか納得できないんだけど…」
「なにが?」
 不満そうに呟くこなたに、かがみがそう聞いた。
「つかさほどの運動音痴が、一年でここまで動けるようにななるなんておかしいなって」
「…こなちゃんひどいよ…」
「まあ、確かにそうね」
「お姉ちゃんまでっ!?」
『それは多分アクセスのせいだと思う』
 三人の会話に急に口を挟んできたアガートラームを、こなたはホルスターから引き抜いた。
「アクセスの?どういうこと?」
『僕達にアクセスすると、少しだけ身体能力が上がるんだ。何度もこなすと身体がアクセスに慣れてきて、能力の上がり幅が大きくなっていくんだよ』
「なるほど。経験値を積んでレベルアップするみたいなもんなのかな…そりゃ、一年もやってるつかさが強くて当たり前か」
 こなたの言葉に、かがみもうなずきながら自分のARMを見た。
「こいつ使ってるときに、身体が軽く感じるのはそう言うことだったのね」
「かがみもそうなんだ…わたしはアクセラレイター使ってるときくらいしか感じないけど、やっぱレベル不足ってやつなんだろうなー」
 そう言いながらため息をつくこなたの肩に、つかさが手を置いた。
「大丈夫だよ。こなちゃんはわたしが守るから」
 そしてキラキラした目でそう言った。
「…うわー…なにこの敗北感…つかさの癖に…」
 こなたが打ちひしがれてる側で苦笑していたかがみは、ふと先ほどまでつかさが戦っていた場所に目が行った。そして、そこにあるおかしな光景に首をかしげた。
「…砂になってない」
「え、なにが?」
 かがみの呟きを聞いたこなたも、かがみの見ている方に目をやった。
「ほら、さっきの球根。倒してから結構経ってるのに砂にならないのよ」
 かがみが指差す方には、焦げていたり凍っていたり引き裂かれたりはしているものの、どれ一つとして砂になっていない球根達が転がっていた。
「ほんとだ、おかしいね…砂獣じゃなかったの?」
 二人と同じようにそれを見たつかさが呟く。
「…かもね」
 かがみはつかさの呟きにそう答えながら、一番手近にあった球根の中心部にナイトブレイザーで切り口を入れた。そしてその中を探って、眉をひそめた。
「コアが…ライブジェムが無いわ。こいつらはホントに砂獣とは違うみたい。もしかしてこれが緑の災厄?」
 かがみがそう言った直後、三人の背後でドスンッと地響きがした。
754 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:27:56.88 ID:WXGehJU0
「…クリメイトッ!」
 つかさが振り向きざまにクレストショットを放つ。
「な、なに?」
 遅れて振り向いたこなたの目の前で、一本の触手が炎に包まれた。その触手の主は、先ほどまで戦っていたものとは段違いに巨大な球根。そして無数に生えている触手の一本に一人の少女が捕らえられていた。
「…ってヴァージニアさん…なにやってんですか」
「あはは…捕まっちゃった。助けてくれるとありがたいんだけど…」
 かがみの言葉にヴァージニアが照れ笑いで答える。かがみはため息を一つつくと、こなたに目配せをした。
「こなた、お願いね」
「オーケー」
 かがみが早撃ちの構えを取ると、こなたはその横で軽く飛び跳ね走る準備をした。
「飛燕!」
「アクセラレイター!」
 かがみが放った衝撃波を、加速したこなたが追いかける。衝撃波はヴァージニアを捉えていた触手をぶった斬る、空中に放り出されたヴァージニアをこなたがキャッチした。
「…いやー、助かったわ。ありがとね」
 地面に下ろされたヴァージニアはこなたの頭を撫でながらそう言うと、巨大な球根に向き直った。
「みんなが雑魚を相手にしている間にこいつをって思ってたんだけど、ちょっと油断しちゃってね」
 ヴァージニアはそう言いながら、ふところからクレストカードを取り出した。
「ARMも落としちゃうし、どうもうまくいかないわね…」
「つよいんですか?この大きいの」
 つかさがそう聞くと、ヴァージニアはうなずいた。
「ほら、あれ見て」
ヴァージニアが球根を指差す。つかさが焼き払った触手と、かがみが斬った触手がすさまじい速度で再生していくのが見えた。
「ああやってダメージを与えてもすぐ回復しちゃうのよ。正直、わたしの火力じゃしとめきれないのよね」
 そう言って、ヴァージニアはため息をついた。
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
 つかさが不安そうにそう聞くと、ヴァージニアはニヤリと不適に笑った。
「あれが緑の災厄の本体なら、中心に再生のためのコアがあるはずよ。それを潰せば仕留められるわ。動きとめるから、あとお願いね」
「…しょうがないわね」
 ヴァージニアに答えながら、かがみはもう一度早撃ちの体勢をとった。
「つかさ、コアは任せたわよ」
「うん、ちゃんときめるよ」
 つかさがうなずきながらARMにショットシェルを装填する。二人の様子を見たヴァージニアは、クレストカードを投げる構えをとってその中に魔力を込めた。
「いくわよ…ディセラレイト!」
 投げつけられたカードが球根に突き刺さると、なにかが軋むような音がして、球根の動きが目に見えて鈍っていった。
 かがみがその隙に球根に走りより、その巨体を駆け上がって宙へと飛び上がった。
「重ね撃ち…」
 空中で鞘の引き金を二回引き、剣に力を蓄える。そして落下しながら三回目の引き金を引き、力を解放した。
「落鳳!」
 地面ごと叩き斬らんとするかがみの残撃は、見事に球根を縦に切り裂き、その中心にある鈍く光るコアをあらわにした。それをみたつかさがアークセプターを両手で構える。
「エクステンション!」
 周りの空間が歪んで見えるほどに、つかさの魔力が高まる。つかさはしっかりとコアに向かって狙いを定めた。
「ハイ・デヴァステイトッ!」
 つかさが引き金を引くと、アークセプターの銃口からエネルギーの塊が放たれた。弾丸状のそれは一直線にコアに吸い込まれ、そして一瞬後にすさまじい爆発を起こした。球根の近くに居たかがみが、爆風に飛ばされてこなたの足元まで転がってきた。
「かがみ…大丈夫?」
「…頭打った」
 後頭部の辺りをさすりながら、かがみが立ち上がった。
755 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:30:08.36 ID:WXGehJU0
「ってか、今のつかさの何よ…」
『たぶん、アークセプターのオーバーアクセスだろうね。一時的に魔力をブーストするみたいだ』
 アガートラームが説明していると、つかさが心配そうな顔でかがみに駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「あー、うん…特に怪我は無いわよ」
「ご、ごめんなさい…ちょっと力入れすぎだったよ…」
 かがみに向かって謝るつかさの横で、こなたは何とも複雑な表情をしていた。
「…わたし、なんにもしてないじゃん」
 そのこなたの呟きに気がついたつかさは、先ほどと同じようにキラキラした目でこなたの肩に手を置いた。
「大丈夫だよ、こなちゃんはわたしが守るから!」
「…うおお…なんか屈辱だー…って、あれ?」
 自分の立ち位置に悶絶するこなた。その視界に巨大球根の残骸と、そこでウロウロしている少女の姿が見えた。
「どうしたの、こなちゃん?」
「いやほら、あそこに女の子が…」
 こなたの言葉に全員が球根のほうを見た。
「あ、あの子…」
「知ってるの?ヴァージニアさん」
 つかさがそう聞くと、ヴァージニアは忌々しそうに顔をしかめた。
「あの子が側をうろついてたから、気になって捕まっちゃったのよね。ちょっと文句言ってやらないと…」
 不機嫌な口調でそう言いながら、ヴァージニアはその少女に近づいていった。こなた達もその後に続く。
「ちょっと、アナタそこで何やってるの?」
「…えーっと…ここかな…あ、あった…んー、ミーディアムじゃダメなのかな。全然制御がきかないや」
 ヴァージニアが少女に声をかけたが、聞こえていないのか、少女は地面から何かを拾い上げてそれを眺めていた。
「聞きなさーいっ!」
 その耳元に顔を近づけたヴァージニアが大声を出すと、少女は飛び上がって驚き、ヴァージニアたちと距離をとった。
「え?え?わ、わたしですか?なな、なんですか?びっくりさせないで下さい…」
 口元を手で隠しながら、消え入りそうな口調で抗議する少女。小柄な身体を、被っている帽子から着ている服まで、やたらとモフモフしたもので包んでいる、可愛らしいという表現がぴったりの姿だった。
「ここで何してるのって聞いてるのよ」
 ヴァージニアがそう聞くと、少女は持っていたものを差し出してきた。ヴァージニアが受け取って見てみると、それは手のひらに収まるほどの大きさの、女神をかたどった彫像だった。
「えっと…実験です。このミーディアムをコアにユグドラシルを起動してみたのですが、うまく制御できなくて…」
「ふーん…って、ユグドラシル!?アンタがあれを!?」
「なかなかうまくいかないものですよね。あ、それは差し上げます。わたし達には必要ないもののようですから」
「どこにあるの!?アークティカと一緒に埋もれたはずでしょ!?」
「あ、わたしマリエルと言います」
「んなこと聞いてなーいッ!」
「では、わたしはこれで。またどこかで会えるといいですね」
「話聞けーッ!」
 ヴァージニアの言う事をまったく無視して、少女の姿はその場から掻き消えてしまった。
「…ぜえ、ぜえ…テレポートオーブなんて持ってたのね…」
「ヴァージニアさん。さっきの子は…」
 肩で息をするヴァージニアの後ろから、つかさが心配そうな顔で声をかけた。
「マリエルっていったかしら…どうやら、気に喰わない何かが動いてるみたいね…あ、つかさ。コレあげるわ」
 そう言いながらヴァージニアは、マリエルにもらった彫像をつかさに手渡した。
「あ、ありがとう…えっと…これからどうするの?」
「あの子を追うわよ…まあ、わたしの問題だから、つかさは気にしないで。とりあえず、ここをでましょうか」
 ヴァージニアがそう言うと、少し後ろに居たかがみが天井を見上げた。
「そうね。結構派手な音立てたし、あんまり長居してると厄介なことになりそうよ」
 そのかがみの言葉に、ヴァージニアが首をかしげた。
756 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:31:40.61 ID:WXGehJU0
「え、なんで?」
「だって、ここってお城のお偉いさんの避難通路なんでしょ?みつかったらやばいじゃない」
「ああ、そのこと…大丈夫よ、こっちはダミーの通路だから。本物はわたしも知らないわ。それに、今日のことはお城の許可もとってあるしね」
「え、許可?」
 思わず聞いたこなたに、ヴァージニアはウィンクをして見せた。
「そ、許可。つかさのことも話しておいたから、入り口に居た兵士もすんなり通してくれたでしょ?」
 ヴァージニアがそう言うと、こなた達三人は顔を引きつらせて、お互い顔を見合わせた。
「え、なに…その微妙な顔は…」
「えっと…その…」
 つかさがおずおずと手を上げる。
「わたし、その兵士さん撃っちゃった…止められると思って…」
「いちぬけた」
 つかさの言葉を聞くや否や、ヴァージニアは砂煙を上げて走っていった。
「逃げ足早っ!?」
「わ、わたし達も逃げないと…あーもー、つかさのせいだーっ!」
「ご、ごめんなさーいっ!」
 三人も慌ててヴァージニアを追って駆け出した。




「…稼ぎ頭がおらんようになるのは痛いが、まあやむを得ないかの」
 翌日、つかさはこの町を出て行くことをマリアベルに告げた。アガートラームが次のA−ARMSの場所を感知したからだ。
「ごめんなさい…」
「謝る必要はないじゃろ。曲がりなりにもおぬしは渡り鳥なんじゃからの」
 そういいながら、マリアベルは手にした雑誌に視線を落とした。
「あまり名残を惜しむでないぞ。こういうのは思い切りじゃ」
「…はい…ありがとうございました」
 つかさはマリアベルに深く頭を下げ、宿屋を出て行った。
「…追い風が、ぬしと共にある事を祈っておるぞ」
 つかさの姿が完全に見えなくなってから、マリアベルはそう呟いた。


757 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:32:28.25 ID:WXGehJU0
「それで、次はどこに?」
 宿屋から出てきたつかさと合流し、三人は次の目的地を確認しながら城門へと向かった。
「んー、ここなんだけど」
 こなたが地図を広げ、アーデルハイドの北の方を指差した。
「町の人に聞いたら、ここがアークティカらしいんだよね」
 こなたの言葉にかがみが眉をひそめる。
「滅んだ国に?…なんでそんなところに」
「そこに、ゆきちゃんが?」
「これまでのパターンからすると、その可能性は高いね…あとなんか忠告っぽいのも聞いたよ」
「忠告?」
「マルドゥークに気をつけろ…だってさ。遺物狙いの渡り鳥が襲われてるらしいよ」
 こなたは地図を丸めて鞄にしまうと、辺りを見回した。
「そういや、ヴァージニアさんは?」
「昨日の夜のうちには、もう出て行ったんだって」
 寂しそうに答えるつかさに、こなたは頬をかいた。
「そっか。まあ、なんかあの人は、どっかでまたひょっこり出てきそうだけどね」
「…うん、そうだね」
 こなたの言葉に、つかさわ少し嬉しそうにうなずいた。




― つづく ―




次回予告

みゆきです。
滅びの国アークティカへと足を踏み入れたこなたさん達。
そこで何を見て何を知るのでしょうか?

次回わいるど☆あーむずLS第七話『滅びの国と天の魔星』

知ることで始り、理解することで進み、生きている限りその道は続く…です。
758 :WALS-6 [saga]:2010/06/06(日) 13:34:53.32 ID:WXGehJU0
前書きに書き忘れてました。
>>746
まとめ乙です。

で、以上です。

つかさとヴァー子が自分でも予想外なキャラになってるような気が。
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/06(日) 13:55:36.76 ID:3F26TOA0
乙です!
マリアベルさんは密かに自分のことをわっちと呼称してるに違いない
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/06(日) 20:47:37.54 ID:qDz.H/U0
乙!
つかさがこなたより強いなんてなかなか珍しいシチュなんで新鮮だww
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/07(月) 00:25:43.27 ID:z5Gdwsk0
-----------------------------------------------------------------------------------
ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------------
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/07(月) 20:17:33.38 ID:kI6ClGYo
乙〜
目をキラキラさせたつかさが想像できるなあw
763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/11(金) 19:59:46.31 ID:2mCP41A0
こなた「今度桜藤祭がPSPででるよー」
こなた(CV広橋)「GK乙」
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/11(金) 20:51:46.08 ID:vTkfH860
みゆき「私はプレイしたことはありませんが、皆さんプレイされたそうですね」
コッポラ「そうなんですのよ、ここで買うのが英国紳士だと思いますの」
あきら「つまりそれって単なる移植でしょ?ほんと分かりやすくて薄っぺらいよねえ」
かがみ「ユーザーも夢見過ぎ」
こなた「どうしてこんなに夢がないかなぁ…」
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/11(金) 23:03:38.27 ID:2gfk3gSO
正直、今更感がすごい
しかも10月だぜ?ww
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/11(金) 23:15:58.69 ID:ddHIprgo
ところがどっこい新シナリオが

>>765
一年半以上たってるからなぁ


やっぱり限定版もあるのか……
767 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:45:48.17 ID:O4RUfT.0
投下行きます。

第七話です。
768 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:46:45.72 ID:O4RUfT.0
「お姉ちゃん、こなちゃん、おまたせー。できたよー」
「おお…」
「へー…」
 目の前に差し出された皿の中身を見て、こなたとかがみはただ感嘆のため息をつくだけだった。
「これ…ほんとにあの携帯食料?」
「…普通にシチューにしか見えないわ」
「うん。町を出るときにね、調理器具とか調味料とか持ってきたから、それで少し料理してみたんだよ。味気の無いもの食べてたら、いざって時に元気が出ないから」
 そう言いながらつかさは自分の鞄を軽く叩いた。
「やけに鞄がでかいと思ったら…」
「ホント、どんな世界でもつかさはつかさね…」
 かがみは苦笑しながらスプーンを口に運んだ。そして、一口食べたところでスプーンを皿に置いた。
「ん?どうしたの、かがみ?」
「も、もしかして、美味しくなかった…?」
 こなたとつかさが心配そうに聞くと、かがみは首を振った。
「ううん、美味しいわよ。前より美味しくなってるわよ…ただ、つかさの味だなって思って。すごく懐かしい感じがする」
 目をつぶって息をつくかがみ。それを見ながら、つかさは少し顔を赤らめながら頬をかいた。
「えへへ…あ、そうだ。デザートもあるよ」
 つかさはそう言いながら、自分の鞄から布の袋を取り出した。
「町を出る前にね、クッキー焼いておいたんだ。ヒールベリーをドライフルーツにして中に練りこんであるんだよ」
 つかさの説明に、こなたは感心したようにうなづき、かがみは唖然とした表情を浮かべた。
「そりゃまた…えらく贅沢なクッキーね」
「え、そうなの?」
 こなたが聞くと、かがみは軽くうなづいた。
「こんな荒野だらけの世界だから、果物って貴重なのよ。おまけにヒールベリーには回復効果もあるからね…高いのよ、アレ」
「へー、そうだったんだ」
 こなたがそう言う横で、つかさは今度は鞄の中からガラス瓶を取り出した。
「…ジャムも作ってみたんだけど…」
「い、いくらかかったのよ、そのジャム…」
「そういや、つかさは獲得賞金トップの賞金稼ぎだったっけ…お金持ってるんだなあ…」
 こなたの言葉に、かがみは少し考えるような仕草をした。
「いや、いくらなんでもコレだけのヒールベリーは…つかさ。もしかして稼いだお金ほとんど料理関係に使ったんじゃ…」
「え?…えっと…えへへへ…」
 照れ笑いで誤魔化すつかさに、かがみはため息をついて見せた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第七話『滅びの国と天の魔星』



769 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:47:59.25 ID:O4RUfT.0
「それにしても、凄いところだね…」
 街路を歩きながら、こなたはそう呟いた。
 アークティカの城下町の入り口で食事をすませた三人は、朽ち果てた城門をくぐり、町の中を歩いていた。
「ほんとに、緑だらけね…ほんと、こんなところにみゆきがいるのかしら」
『A−ARMSがあることは間違いないよ』
「…ソレだけが落ちてるってことは無いでしょうね」
 アガートラームと話しながら、遠くの方を見るかがみ。見渡す限り、あらゆる場所が植物に覆われた町。むせ返るような草いきれに、かがみは顔をしかめた。
「あれはお城かな?その隣にあるの…木?凄く大きいね」
 つかさがかがみと同じ方を見ながらそう言った。町と同じく緑に覆われた城らしき巨大な建物。その隣にはソレをも凌駕する高さでそびえる大木があった。
「とりあえず、お城に行ってみる?なにかあるとすれば、あそこが一番あやし…」
 こなたがそこまで言ったところで、足元でビシッという音がした。
「…え?」
 こなたが下を向くその間に、かがみとつかさの足元でも同じ音がする。
「走って!」
 つかさが大声でそう言いながら走り出した。こなたとかがみもその後を慌てて追う。
「な、なに?」
「多分、狙撃だよ」
 こなたの問いに答えながら、つかさは上を見上げた。
「それも、真上からみたい」
 つかさにならってかがみも上を見るが、そこには青空が広がっているだけだった。
「真上って…空しかないわよ。どうやって…」
「わかんないけど…あの木の下に!」
 つかさが、民家の側にある枝振りのいい木を指差し、三人は転がるようにその下へと入った。
「も、もしかしてこれがマルドゥークってやつ…?」
 こなたがそう呟くと同時に、今度は頭の真上辺りで音がして、木の幹が穿たれた。
「え…ちょ…」
 恐る恐る前を見るが、そこにあるのは蔦に覆われた民家の壁だけだった。
「こなちゃん!」
 唖然とするこなたの手をつかさが引っ張り、木の下から連れ出した。その後ろでさらに数発の弾丸が木の幹を抉っていた。
「二人とも、こっちに!」
 かがみが近くにあった民家の扉を剣で切り開き、中に飛び込む。つかさと引っ張られてるこなたもそれに続いた。


770 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:48:44.82 ID:O4RUfT.0
「いくらなんでも、建物の中なら大丈夫でしょ…」
 かがみが息を整えながら、部屋の中を見渡す。
「どこから…っていうかどうやってあんな狙撃してるんだろ?」
 部屋の一つだけある窓から外を警戒しながら、つかさがそう呟いた。
『ああ、それは…』
「もらったーツ!」
 アガートラームがなにか答えようとした声を遮って、少年の叫び声が部屋に響いた。その声の主とつかさの間に、かがみが身体を割り込ませる。そして、納刀したままのナイトブレイザーで攻撃を受け止めた。
「…ショベル?」
 かがみは自分の受け止めたものを見て、思わず首を傾げてしまった。少しサイズが大きめのハーフコートを着て、赤いマフラーをなびかせる、自分より少し年下っぽい感じの少年。彼が振り下ろしてきたのは、間違いなく両手持ちのショベルだった。
「ディーン!下がって!」
 さらに別の方向から目の前の少年とは違う声がし、ショベルを持った少年は後ろへと跳んだ。
「ファントムライン!」
 その直後に、かがみの側を光の帯がかすめるように通り過ぎる。
「な…ビーム!?」
 ショベルの次はビーム。あまりに落差のある攻撃に、かがみは戸惑いながらも少し離れた位置にいたこなたと合流した。
「だめじゃないか、ディーン。不意打ちなんだから叫んじゃばれちゃうよ」
「だって、気合入れないとはずしちまうだろ?」
 そして、向こうではディーンと呼ばれたショベルの少年と、ビームを放ったであろうARMを持った少年がもめていた。明らかにサイズが合ってないだぶだぶのジャンバーを着たARMの少年はさらに年下らしく、どう見ても中学生くらいにしか見えなかった。
「…ねえ、こなちゃん」
 二人の少年から目を離さないようにしながら、つかさが肘でこなたをつついた。
「ん、なに?」
「さっきわたしが外見てた窓から真っ直ぐ前の家の屋根にね、スナイパーさんらしいのが見えたんだよ」
「え、マジで?」
「うん。だから、わたしとお姉ちゃんでこの子達抑えとくから、こなちゃん捕まえてきてくれないかな?相手の位置さえわかってたら、アクセラレイターで一気に近づけると思うから」
 向こうに聞こえないように小声でそういうつかさに、こなたはうなずいて見せた。
「ま、まったジュード。今こうしてる場合じゃないと思うんだ」
「そうだけど…ああ、もう。後でちゃんと話するからね…って、ああっ!?」
 ようやくこちらに向き直った、ジュードと呼ばれたARMの少年が、窓から出て行こうとするこなたを見て声を上げた。
「行かせない!ファントム…」
「グラッヴ!」
 ジュードがARMを撃つより先に、つかさがクレストショットをジュードの真上に放った。つかさの魔力により泡のような球体が生まれ、ジュードを床に押さえつけた。
「うわあッ!?…な、なに、これ…」
「ごめんね。こなちゃんの邪魔しないで欲しいんだ」
「くそ、クレストソーサレスかッ!」
 つかさに危険を感じたディーンが、ジュードの脇を抜けてつかさに接近しようとする。だが、その前にナイトブレイザーを抜き放ったかがみが立ちふさがった。
「おっと、あんたの相手はわたしよ」
「う…ちくしょー…」
 かがみに向かってショベルを構えたディーンが歯噛みする。それを見たかがみはため息をついた。
「なんか…わたし達が悪役っぽいわね」
「あはは…」
 そして、かがみの呟きを聞いたつかさが苦笑していた。



771 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:50:02.24 ID:O4RUfT.0
 窓から外に出たこなたは、アクセラレイターを使い目的の家の後ろに回りこもうとしていた。
 あの家に不意打ち要員が居たということは、スナイパーは最初からあの家に追い込むように撃っていたということ。その家の側に待機しているということは、出てきたところを狙い打つ気でいる。こなたはそう判断し、正面から登らず後ろに回りこむようにしたのだ。
 家の後ろについたこなたは、壁を一気に駆け上がった。そして、屋根に着地したところでアクセラレイターが効果を失った。
 屋根の上に居たスナイパーは、狙撃用のライフルを構え濃い緑色のローブを身にまとっていた。フードを目深に被っているため、顔は見えない。
 スナイパーはこなたに気がつき、振り返って銃口を向けてきた。こなたは再びアクセラレイターを使い、一気に間合いをつめた。
「ファイネストアーツ…ラウンドアタック!」
 こなたは相手の目前でしゃがみ、円を描くように足払いをかける。足をとられ転んだ相手に馬乗りになり、その顔に銃を突きつけた。
「ここまでだよ…」
『あまり、乱暴にしないほうがいいんじゃないかな』
 アガートラームの言葉に、こなたは首をかしげた。
「え、なんで?」
『この銃、A−ARMS04ロンバルディアだよ』
「え…それって…」
 こなたは驚いて自分の下敷きになってるスナイパーを見つめた。
「あ、あの…この声、もしかして泉さんですか…?」
 はだけたフードから覗いたスナイパーの顔は、眼鏡こそつけていなかったものの、間違いなく高良みゆきだった。



「…ほんっとーに、申し訳ありませんでした…」
 みゆき達に案内されて入った城の中の一室。無数の蔵書が収められた、図書室らしきその場所はみゆき達が拠点として使用している場所だった。
「言い訳になりますが、今朝眼鏡のフレームを曲げてしまいまして、あまり良く見えなかったんです…」
 そう言いながらディーンと共に頭を下げるみゆきに、こなたは手を振って見せた。
「いや、いいよ。だれも怪我なかったし」
 そのみゆきたちの後ろで何かをいじっていたジュードが顔を上げた。
「はい、直ったよみゆきさん。壊れたなら言ってくれればよかったのに」
 そう言いながら差し出された眼鏡をみゆきが受け取る。
「ジュードさんたちには色々お世話になってますから、これくらいは自分でと思ったのですが…」
 眼鏡をかけながらため息をつくみゆきに、かがみが苦笑して見せた。
「まあ、なんにせよ合流できてよかったわよ。こんな町にいるってわかったときは、どうなるかと思ったけどね」
「ところで、みゆきさんはこの世界に来てどれくらい経つの?」
 かがみの横から顔を出したこなたがそう聞くと、みゆきは顎に人差し指を当てて少し考える仕草をした、
「そうですね…三週間くらいでしょうか」
「みんなばらばらだねえ」
 みゆきの答えにこなたは腕を組んで難しい顔をした。
「とりあえず、今のわたしたちの状況を話しとくわね…」
 そして、かがみが今までの経緯をみゆきに話し始めた。

772 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:51:09.16 ID:O4RUfT.0
 かがみの話を聞き終わったみゆきは、しばらくうつむいて考え込む仕草をしていた。
「何故…という部分がまったくわかりませんね」
 そして、顔を上げてそう言った。
「何故、みなさんばらばらの時間、場所に飛ばされたのか、何故、A−ARMSなるものが側にあるのか…そして、そもそも何故このような世界にわたしたちが来たのか」
 そう言いながら、みゆきはこなた、かがみ、つかさの顔を順番に見た。
「その辺のことを知ってそうなのはいるんだけど…」
 こなたはそう言いながら、自分のホルスターを見た。
「…ポンコツだもんね」
「記憶喪失は仕方の無いことですよ、泉さん」
 みゆきはこなたをなだめながら、全員の座っている机の上にいくつかの本を並べた。
「わたしたちに今必要なのは、知ることですね。この世界のこと、わたしたちの立場…たとえば、世界地図はお持ちでしょうか?」
「ううん、この大陸のしかないよ」
 こなたが差し出した地図を見て、みゆきはうなずいた。
「泉さん。これが世界地図ですよ」
「…え?」
「ファルガイアには、他にもいくつか大陸はあるのですが、そのどれもがとても人が住める場所ではないということです。だから、これが世界地図として使用されているのです」
「世界の八割が荒野に…」
 こなたは唖然としながら、ロディの言っていたことを思い出していた。
「世界がここまで荒廃した原因は、魔族との戦争にあるようなのですが…魔族戦争のことはご存知ですか?」
 みゆきが一冊の本を広げながらそう聞くと、こなた達三人はばらばらにうなずいた。
「かなり有名な伝承らしいわね。何度も聞いたわ」
「はい…では、その魔族戦争でARMが生み出されたということはどうでしょう?」
「それは…初耳だわ」
 かがみの答えにうなずきながら、みゆきは本のページをめくった。
「この本はその辺りについて詳しく書かれています。各地の伝承を集め考察を行なったものなのですが…ここです」
 みゆきはページをめくる手を止めて、そこを指差した。
「魔族戦争の当初は、人が使う武器が魔族にまったく通用せず、魔族側が圧倒していたようなのです。そこで、当時人間より遥かに高度な文明を持っていたエルゥ族と呼ばれる亜人が協力し、魔族の力そのものを人が行使できる兵器…ARMを生み出したのです」
「なるほどね…ARMに銃器が多いのは、そのせいってわけね」
「はい。しかし、このARMを短期間で生み出すという行為は非常な危険を伴うものだったらしく、魔族戦争には勝利したものの、エルゥ族は衰退しファルガイアから隔離された亜空間へと居を移したと、この本には書かれてますね」
「…ふーん」
 こなたは感心したようにそう言うと、ホルスターに収まっているアガートラームを見た。ARMのようでどことなくそうではない。こなたはそんな感じがしていた。
「さて、ここからが本題です」
 みゆきはそう言いながら、別の本を出してきた。
「ARMは魔族の力を具現化する機械…そして、魔族は次元を超えてファルガイアに侵略してきた…と、いうことは…」
「まさか…」
 驚きに目を見開くかがみに、みゆきはうなずいて見せた。
「はい、次元を…異世界へといけるARMがあっても不思議ではありません。これを見てください」
 みゆきが出してきた本…なにかの研究書らしくものを開き、あるページを指差した。
「ここにはユグドラシル計画の経緯が書かれていますが、起動実験の際に空間が歪み別の景色が見えたと証言している研究者がいます」
「え、じゃあユグドラシルが…」
「はい、副産物とは言え、次元を超えるARMでもあったということです」
「だ、だめだよゆきちゃん」
 それまでとくに口を挟んでこなかったつかさが、慌てたようにそう言った。
「あれは危ないよ。緑の災厄ってのが増えちゃうよ」
「…わかってますよ、つかささん」
 詰め寄ってくるつかさを落ち着かせるように、みゆきは微笑んで見せた。
「確かにユグドラシルを直接使うのは危険ですし、そもそもユグドラシル計画は国家単位で行なうもの。わたし達だけではどうしようもありません…ですから、ユグドラシルをヒントに、わたしたちでもなんとかできる規模のものを見つけようと思ってます」
 そう言うみゆきに、つかさは安堵のため息をついた。
773 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:52:00.92 ID:O4RUfT.0
「そっか…やっぱりゆきちゃんはちゃんと考えてて凄いね」
「あ、いえ…凄いのはわたしではなく、ここにある資料ですから。放り出されたのが、このような場所だったことは幸運でした」
「でも、こんなたくさんの本普通読もうとしないよね…」
 こなたが部屋を見渡しながらそう呟いた。かがみでさえ、それに同意するようにうなずいている。
「え、えっとそんなことは…と、とにかく元の世界に帰れる可能性がありますので、とりあえずこの国のユグドラシルを調べて見ようの思うのです」
 誤魔化すようにそう言うみゆきに、他の三人は顔を見合わせて苦笑した。
「ま、うまくいけば思ったより早く帰れそうね」
「うん、そうだね…」
 こなたはかがみに同意しながらも、なにか心にひっかかるものを感じていた。
「…なんかこう…ううん、まあいいや」
 そして、それを振り払うように首を振った。



― つづく ―



次回予告

みゆきです。
わたしたち四人と、ジュードさんディーンさんは、それぞれの目的のために滅びの元凶であるユグドラシルへと向かいます。
そこでわたしたちは何かを知ることは出来るのでしょうか?

次回わいるど☆あーむずLS第八話『破戒樹ユグドラシル』

人の未来を開くための大樹。それは、ほんとうはそう呼ばれていたはずのものでした。
774 :WALS-7 [saga]:2010/06/13(日) 13:52:29.24 ID:O4RUfT.0
以上です。

みゆきさんは説明係。
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 17:01:11.30 ID:cgITylw0
-----------------------------------------------------------------------------------
ここまでまとめた

-----------------------------------------------------------------------------------
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/13(日) 20:38:13.39 ID:nkCaR1Ao
乙〜
眼鏡なしで相手が誰だかわからないのに狙撃は正確なんて、みゆきさんパネェ
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/13(日) 23:00:19.42 ID:TrB9SPk0
お、何か急に狙撃したくなってきたなぁ・・・。
俺の特製次世代電動ガンM4A1スナイパーカスタムで
ツンデレ妹でも狙撃するか・・・。
778 : ◆99/tzfnSzY [sage]:2010/06/14(月) 00:57:49.77 ID:bQYFvqAo
おい、やめろ
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/14(月) 12:35:44.57 ID:2SQR1V.0
>>777
777命中おめ
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/14(月) 20:35:48.86 ID:yc/Bz5.0
こなた「やっぱりみゆきさんは博学キャラなんだよ」
かがみ「そうね、わたし達の中で説明するとしたらみゆきかしらね」
つかさ「バルサミコ酢ぅ〜♪」
みゆき「いえ、そんな…」
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/17(木) 19:06:36.52 ID:FnFM.Uo0
らき☆すたってキャラの活躍率が乳の大きさに反比例してるような気がする
考えすぎかな
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/17(木) 19:21:14.55 ID:GXZL84ko
(泉さん>かがみさん=つかささん>私
 みゆきさん>かがみ≠つかさ>泉さん)

みゆき「……。泉さん! あげますから下さい!」
こなた「(^ω^#)」
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/17(木) 19:21:54.28 ID:GXZL84ko
色々ミスっちゃったZE
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/17(木) 21:33:12.47 ID:/GCwAQAO
だったらみなみは大活躍のハズだが
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/17(木) 22:03:31.34 ID:GXZL84ko
学年で分けて考えると……
786 :781 [saga]:2010/06/17(木) 22:44:52.47 ID:FnFM.Uo0
みなさん、さきほどはしつれいいたしました
ゆるしてください
きをつけます
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/18(金) 00:01:00.29 ID:VSAFs3E0
>>781
ぱいなんて飾り
ていうか
いちいち気にすることないよ
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/18(金) 02:02:45.97 ID:kt8uvQw0
>>786
みゆき?
>>787
パティ?
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/19(土) 04:27:57.60 ID:wgPNmcSO
−スラッグな季節−

かがみ「はあ…」
つかさ「ふう…」
こなた「どったの、二人とも。ため息ついて」
かがみ「ほら、いま梅雨でしょ?でるのよ」
こなた「なにが?」
つかさ「ナメクジだよー。お父さん、趣味が園芸だから、庭にたくさんいるの…」
こなた「あー、なるほど」
かがみ「塩まいて回るには数が多くて…みゆきーなんかいい方法ないのー?」
みゆき「そうですね…ビールを小皿に入れて、ナメクジの沢山いる場所に置いておくのはどうでしょう」
つかさ「え?それなんの意味があるの?」
みゆき「ナメクジはビールが大好物なんです。ですから、そうやって小皿に集まったところを一網打尽に出来ますよ」
こなた「へー」
みゆき「ただ、長く放置しておくとナメクジに餌を与えるだけになってしまいますので、タイミングに注意ですね」
かがみ「なるほどね。帰ったらさっそくやってみましょうか」
こなた「みゆきさんはやったことあるの?ソレ」
みゆき「はい、ありますよ…ありますけど…」
こなた「けど?」
みゆき「…思ってたよりたくさん集まってしまいまして…ナメクジがウネウネしている小皿に近づけなくなりまして…」
こなた「…わーお」
つかさ「…お姉ちゃん…お父さんにやってもらおうよ…」
かがみ「…そ、そうね」
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/19(土) 06:30:41.56 ID:2laNyeM0
>>789
アニメみたいだ!面白かった!
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/19(土) 11:28:21.69 ID:fe65Lew0

こなた 「 ( しまったぁ・・・アル中になっちゃった・・・ ) 」

こなた 「 ( どうしよう・・・一日中飲んでいないと気がおかしくなっちゃい
      そうだよう・・・ ! でも学校に持ってくるってのは気が引けるし・・・
      でも飲みたいし・・・本当にどうしよ ) 」

こなた 「 うん、やっぱり我慢は良くないよね ! バレなきゃ良いのさ !
     水筒に入れていこっと ! さぁ〜てぇ、今日は何にしよおっかな☆
     ん〜、じゃあ今日は CINZANO [ ベルモット ] にしよーっと !
     うっはぁぁー私ってあったまいいぃぃぃ勝ち組いいいぃぃぃっっっ !? 」

こなた 「 さて、支度は整ったからお待ちかねの朝食です ! カマンベールチーズに
     ベーコンエッグ、イタリアンパセリの入ったサラダに超高級酒
     アルマンド・ブリニャック !! フッヒイイイィィ超しあわせぇぇぇっ !!
     いっただっきまあああぁぁぁぁすぅうううぅっっっ !!! 」 ガバババババ

そうじろう 「 ( ・・・・・・かなた、俺はどうしたら良いんだろう・・・。 ) 」

ゆたか 「 かくて大暴落・・・終日低調なまま世界経済はずんどこの暗闇のプー 」 (^q^)

792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/19(土) 23:11:39.87 ID:sSqYstI0
投下します。かがみメインです。オリキャラを登場させますので
興味ない方はスルーで。15レスほど使用します。
793 :約束 1 [saga]:2010/06/19(土) 23:14:23.21 ID:sSqYstI0
 今日は学級委員会の会議があった。今日の会議は事の他時間がかかった。最近学校内の規律が乱れていると言うので先生から特に注意があった。
かがみ「みゆき、帰ろう」
みゆき「すみません、書類を纏めるのでもう少し時間がかかりますので、お先にどうぞ」
かがみ「大変そうね、手伝うわよ」
みゆき「ありがとうございます」
私はみゆきの隣の席に座り書類を纏めるのを手伝った。どのくらい時間が経っただろうか。珍しくみゆきの方から話し出してきた。
みゆき「……今日の議題の事なんですけど……」
かがみ「議題って?、ああ、規律が乱れてどうのこうのってやつね、私達のクラスは関係ないでしょ」
みゆき「……そうですね……」
歯切れの悪い返事だった。
かがみ「どうしたのよ、何かあるなら話なさいよ」
みゆき「最近、隣町の高校の不良グループと組んで恐喝等をしている生徒がいるらしいです」
かがみ「何よそれ、それはもう規律以前の問題ね、犯罪よ、退学は免れないわね」
みゆき「何かの間違えならいいのですが……」
かがみ「それにこしたことはないわね」
みゆき「生類整理終わりました、かがみさんのおかげで半分の時間でおわりました、ありがとうございました、しばらくしても来ないようでしたら
     先に帰ってもいいですから……」
みゆきは纏めた書類をかき集めると急ぐように職員室の方向に向かっていった。私は挨拶の声をかける事も、質問の答えも聞く間もなかった。
私は会議室を出て校門でみゆきを待った。しばらく……三十分くらいは待っただろうか来る気配がなかった。先生につかまって別の用事でも頼まれたのか。
みゆきの様子が少しおかしいから相談にのるつもりだったけど、明日でもいいかな。

 帰りの途中だった。駅を降りてしばらくするとつかさの後ろ姿を見かけた。買い物にでも来たのかと声をかけようとした。しかしその場で私は止まった。
そして建物の陰に隠れた。つかさの回りに数人の男が付いてきている。誰だろう。制服から判断するに隣町の高校生?。つかさ達は私の隠れた
建物を通り過ぎて行った。男子生徒はどうみても品が良いとは言えない。私はそのままつかさ達を追った。

 郊外の公園でつかさ達は止まった。公園の中央でなにやら楽しそうに話している。すると一人の生徒がつかさに煙草を渡した。つかさが煙草を銜えると
もう一人の生徒が透かさずライターで火を点けた。煙草を吹かし、つかさの口から煙が出る。その風格は女番長といったところか。
何で?。私は何を見ているのか。あれはつかさなのか?。いや、どうみてもつかさ。髪型。リボン。顔。何をとってもつかさそのもだった。このままつかさの
所に行って『何をやってるんだ』と問い質したいところだがそんな雰囲気じゃない。つかさは男子生徒達に言い聞かせるようになにかを話している。
煙草を吸い終えるとつかさは公園を離れてまた駅の方向に歩き出した。それに従うように男子生徒達が後を追いかけた。
私はそれ以上つかさ達を追わなかった。何か悪夢を見たような光景だった。ふとみゆきの言った事を思い出した。
まさか……つかさが。つかさはそんな事をするような子じゃない事は私が一番知っている。他人の空似。そうだ。きっとそれだ。

かがみ「ただいま」
家に着いて辺りを見回すとつかさの姿が見えない。
かがみ「お母さん、つかさは帰ってきたの?」
みき「一緒じゃなかったの?、つかさはまだ帰ってきてないわよ」
おかしい。今日、こなたはバイトと言っていた。つかさが寄り道をしたとしても私より早く帰ってきてるはず。
みき「かがみ、どうしたの?、つかさがどうかした?」
かがみ「いや、何でもない」
そのまま私は自分の部屋に向かって着替えた。
794 :約束 2 [saga]:2010/06/19(土) 23:15:53.73 ID:sSqYstI0

 机に向かって勉強をしていたがどうも集中できない。公園のつかさの姿が頭から離れない。他人の空似にしても似過ぎている。私が間違えるくらいだから
他人が見たら区別できるはずもない。誤解が生じてつかさに疑いをかけられたら……。
つかさ「ただいま」
つかさが帰ってきた。私は急いで玄関に向かった。そしてつかさの姿を見た。つかさは制服の姿だった。そういえば公園で見たつかさの着ていた服は
私はみたことなかった。とりあえず私はほっと胸をなでおろした。
かがみ「おかえりつかさ、遅かったじゃないの、何していたのよ」
つかさ「……何でもない…よ」
つかさそのまま自分の部屋に入ってしまった。いつもなら自分の身に起きたことを恥じらいもなく私に話してくるに。
つかさは夕食の時まで部屋を出ることはなかった。

 夕食を終え、私は自分の部屋で読書をしていた。ドアをノックする音がした。
つかさ「……遊びに来たよ」
つかさは漫画の本を持って私の部屋に入ってきた。そしていつものようにベットを背もたれにしてその漫画を見出した。

 何気なくつかさを見た。公園で見たつかさと同じだった。それだけに公園での行動が頭から離れない。私はつかさの前に立ち、漫画を取り上げた。
あの公園のつかさが本当につかさだったら姉として放ってはいられない。
つかさ「お姉ちゃん?、どうしたの?」
不思議そうに私を見つめていた。まるでおやつを取り上げた子供のようだった。公園のつかさの表情とのギャップに戸惑った。
かがみ「つかさ、学校から家に帰るまで何をしていたの?」
私は単刀直入につかさに言った。
つかさ「何をって、何もしてないよ」
かがみ「何もしてないって事はないでしょ、会議をしてきた私よりも遅く帰ってきて」
つかさ「えっと、だから……何でもない……よ」
俯いてしまった。何かを隠しているようだった。私はつかさに公園の出来事を話した。つかさは驚いて私を見た。
つかさ「……そんなに似てるんだ、凄いね」
かがみ「似てるなんてレベルじゃなかったわよ、つかさそのものだった、あれじゃこなたやみゆきどころか家族だって区別つかないわよ」
つかさ「……まさかお姉ちゃん、その公園の子が私だって言いたいの?、私が煙草なんか吸うわけないよ、それに男の子を従えるなんて……」
かがみ「だから私は聞いたの、帰るまで何をしてきたのか」
つかさ「それは……」
つかさは口をつぐんでしまった。これじゃ公園の子は自分だと言っているようなものだった。
かがみ「私には話せないことなの?、これじゃ私はつかさを信じてあげることはできないわよ……今日、議題になったんだけど、うちの生徒が
     他校とつるんで恐喝している事件が多発しているそうよ、このままだとつかさ、疑われるわよ、それでもいいの」
つかさ「お姉ちゃんは私を疑ってるの?」
かがみ「今のつかさがそんな態度ならね」
私はつかさに近づきつかさと目を合わせた。つかさは目を逸らそうとはしなかった。
つかさ「それじゃ信じて、私はそんなことなんかしてない、出来るわけないよ」
かがみ「それなら何故何をしてきたか言えないの、何をしてたのよ、簡単なことじゃないの、私の疑いを晴らさせてよ!」
声をすこし荒げた。
つかさ「信じて……」
つかさは私が取り上げた漫画の本を受け取るとそのまま自分の部屋に戻ってしまった。すこしきつ過ぎたかな。
795 :約束 3 [saga]:2010/06/19(土) 23:17:06.74 ID:sSqYstI0
 『信じて』とつかさは言った。その時の目は嘘を言っているような目じゃなかった。私の目をしっかりと見て言っていた。それにあれほどつかさの近くにいたのに
煙草の匂いがまったくしなかった、すくなくとも公園の女子生徒はつかさではないことは信じてあげたい。でもこれが私でなく先生や警察だったらどうだろうか。
あれほど似ているなら真っ先に疑われる。それで私取った態度と同じことをすればつかさが犯人にされてしまう。
つかさは何を隠しているのか。そういえばつかさに近づいた時別の匂いがした。アルコールのような、消毒薬のような匂いだった。

 次の日の昼休み、私はこなたとみゆきを体育館に呼んだ。そして昨日の事を話した。
こなた「つかさに瓜二つの不良だって!?」
かがみ「そう、まあそっちの方は置いておいて、問題は昨日のつかさの行動よ、何か心当たりはないかしら?」
こなた「……ないね、いくら私だって四六時中つかさと一緒じゃないよ、それに昨日はバイトだった」
私はみゆきの方を向いた。
みゆき「同じくです、まったく心当たりありません、それでつかささんの昨日の行動を知ってどうなさるのですか?」
質問を返された。確かにそうだった。私は昨日のつかさの行動を知ってどうするつもりだったのだろうか。私は返答できずにいた。
こなた「かがみ、昨日つかさは煙草吸ったりしてないって言ったんでしょ?、それでいいじゃん、それ以上詮索してどうするんだよ、
     皆、一つくらい黙っていたい行動くらいあるもんだよ」
かがみ「だけど、私は姉として……」
こなた「かがみ、今月何回一人エッチした?」
かがみ「……ちょ、いきなり何を言い出すんだ?、そんな事答える必要なんか……」
はっと気が付いた。
こなた「でしょ?、別に悪いことじゃない、だけど言う必要なんかないし、答え難い、いや、むしろ恥ずかしい、そんな所じゃないの?、
     私達はもう高校生だよ、姉妹同士だって秘密の一つや二つあるよね」
かがみ「こなたにしては説得力あること言ったわね」
こなた「私は教室に戻るよ、つかさが待ってるからね」
こなたは体育館を出て行った。私はため息を一回ついた。
かがみ「こなたに、話をすり返られたような気がしたわ、まったくこなたのやつ」
みゆき「泉さんらしい切り替えしでしたね、しかし、間違ってはいないと思いますよ……私は最初の話の方が気になりますが」
みゆきが急に真剣な顔になった。
かがみ「つかさに似た不良のこと?」
みゆき「そうです、かがみさんが間違えるほど似ているのであればなお更です、もし、彼女が何か大きな問題を起こせば、つかささんも疑われます、
     ただでさえ、不祥事続きで職員室は緊張していますから」
私と同じ心配をしている。確かにそっちの方が心配になってきた。
かがみ「っと言ってもね、こればっかりはどうにもならないわ」
みゆき「……同じにしなければいいのです、例えば髪型を変えるとか……つかささんのリボンを取ってみてはどうでしょうか?、かなり印象が変わります」
かがみ「……そうね、何もしないよりはいいかもしれない……しかしあれほど似ているなんて、双子の私が言うのも変だけど」
みゆき「ドッペルゲンガー……ご存知ですか?」
かがみ「同じ自分が現れる怪奇現象ね、知っているわよ、本人と出会うと死期が近いって言うわね、SFじゃ結構つかうネタ……まさか」
みゆき「……冗談です、世の中には三人は自分と同じ顔の人がいると言われています、きっとそれでしょうね」
かがみ「み・ゆ・き、こなたの真似なんかしなくていいわよ」
みゆきは笑った、みゆきがこんな冗談を言うとは思わなかった。それとも私が気にしすぎだって言いたかったのだろうか。そうかもしれない。
こうして昼休みは終わった。
つかさには暫くリボンを外すように言った。つかさは何も言わずリボンを取ってくれた。とりあえず私にできる事はこのくらいだろう。
796 :約束 4 [saga]:2010/06/19(土) 23:17:59.25 ID:sSqYstI0
 放課後、今日の会議は昨日の半分の時間で終わった。みゆきと一緒に帰ることができた。久しぶりに雑談をしながらの帰り道だった。
こなたとの雑談と違って茶化されることもなければ突っ込まなくてもいい、時よりみせる知的な会話が染み渡っていく。駅の改札に近づいた時だった。
みゆき「あれは泉さんとつかささんではないでしょうか」
みゆきは突然立ち止まった。みゆきの目線を追うとその先に二人の姿があった。
みゆき「丁度いいですね、ご一緒にお茶でも……」
かがみ「ちょっとまった」
私はみゆきを止めた。みゆきは不思議そうに私を見る。
みゆき「どうしたのですか?」
かがみ「こなたは今日もバイトだって言ってたから」
みゆき「それなら、以前私達が遊びに行ったようにつかささんも同行されているのでは?」
かがみ「そうじゃない、こなたのバイト先は秋葉原、それなのに下りのホームに向かってる、おかいしいと思わないか」
みゆき「……そうですね、どうしたのでしょうか」
かがみ「あの二人、私達に何か隠している、気が付かれないように付いていって秘密を暴いてやる」
みゆき「……尾行をすると言うのですか、あまり私は賛成できかねますが」
かがみ「強制はしないわ、否ならここで別れましょ」
私はそのまま二人に気が付かれないように下りホームに向かった。すこし遅れてみゆきが付いてきた。やっぱりみゆきも気になるようだ。

 二人は私達に気付いてない。楽しそうに話している。つかさも私と話すよりこなたの方が気が合うのかもしれない。そういえば最近楽しく
会話をしていなかったな。昨日もつかさに言い過ぎた。最近のつかさが分からなくなった。……こうやって姉妹はお互いに自立していくのか。
みゆき「かがみさん、この駅で降りるようですね」
私は我に返った。二人は三つ目の駅で降りた。私達もドアが閉まる寸前に降りた。しばらく私達は二人の後を追った。二十分くらい歩いただろうか。
二人は郊外の建物の中に迷うことなく入っていった。そこで私達は追うのを止めた。
かがみ「ここは……病院?、何故病院なんか……」
みゆき「この病院は……」
かがみ「この病院を知ってる?」
みゆき「ええ、一ヶ月前、私達のクラスの社会貢献授業で二日ほどこの病院でボランティアをした事があります」
かがみ「へぇー、私達は工場だったわ……クラスでこうも違うのね、で、その病院につかさとこなたが何の用があるのよ」
みゆき「さあ、私にも分りません、知り合いが入院しているとも思えないのですが」

 私達はああでもない、こうでもないと二人が病院に入った理由を語り合った。そうして一時間くらい経っただろうか。二人は病院から出てきた。
木の陰から二人の様子を見る。病院に入る前とは違って二人に笑顔が無い。特につかさは肩に力が入っていない様子だった。時々つかさは
立ち止まり病院を振り返りながら駅の方に歩いていった。私達は二人が見えなくなるのを確認した。
かがみ「さて、病院に入って二人が何をしたのか調べましょう」
みゆきは驚いていた。
みゆき「そこまで調べるのですか?、やりすぎです、見るに、誰かのお見舞いに行ったと思われます、そして病状が思わしくなかったと、それだけ分れば……」
かがみ「それじゃその誰かが誰かみゆきは知ってるの?、そしてどうしてそれを私達に黙っているのか、知りたいと思わない?」
みゆき「……お見舞いに行った人は分るかも知れませんが、何故それを私達に黙っているのかまでは分らないと思います、本人に聞かない限り……」
私は黙って病院の入り口に向かった。みゆきもかなり遅れて私に付いてきた。そう、ここまで知ったら最後まで知りたいもの。
797 :約束 5 [saga]:2010/06/19(土) 23:19:15.13 ID:sSqYstI0
 病院の自動扉が開いた。そこからパジャマ姿の少女が飛び出してきた。彼女の目にはいっぱいの涙が流れていた。すると扉から大人の女性が同じく
飛び出してきた。私達に向かって叫んでいる。
「その子を捕まえて!!」
この少女は今、丁度私の横を過ぎようとしていた。私はその叫びに反応するようにその少女を捕まえた。少女はそれでも病院の外で出ようともがいていた。
「柊ねえちゃん、行かないで……」
少女は何度もそう言っていた。私は病院に入らずにつかさ達が誰を訪ねたのか分ってしまった。病院から看護士さん達が駆けつけ少女をなだめながら
病院の中に連れ戻された。そしてさっき叫んだ女性が私に近づいてきた。
「ありがとうございます、娘を捕まえてくれまして……その制服は柊さん達と同じですね、もしかして」
かがみ「あ、私は柊かがみ、つかさの姉です、こちらは……」
みゆき「私は高良みゆき、柊つかささんのクラスメイトです」
「そうですか、丁度一ヶ月前ですかね、柊さんが来られて、さつきがすっかりなついちゃいまして、柊さん達にはよくしてもらってます」
女性は何度も私に頭を下げていた。
かがみ「随分元気なお子様でしたね、つかさを追いかけるなんて、いったい何故病院に……」
「そうね、元気なんですよ……あと三ヶ月くらいかしら……もう、何もしてあげられない」
私達は何も言葉が出なかった。女性は気が付いたように私に言い出した。
「良かったら、娘に会ってくださいな、柊さんの知り合いなら喜んでくれるかもしれない」
その少女、さつきに会って何を言って上げればいい。どう接してあげればいい。分らない。
かがみ「すみません、私達はただつかさを迎えにきただけなので」
「そうですか、残念です、柊さん……つかささんと言うのですか、もう来れないなんて言うので娘があんな事になってしまいまして、いつでも待っていると
お伝え下さい」
女性は一回深々とお礼をすると、病院に戻って行った。

 私は呆然とその場に立ち尽くしてた。
みゆき「かがみさん、どうしますか、もう一度さつきさんに会って聞きますか?、お母様に会って話を聞きますか?」
みゆきの質問が皮肉に聞こえた。それに対して冗談で返せるほど私は強くはない。
かがみ「中途半端な好奇心は大怪我の元ね、私達は探偵気取りでここまで来たけど……来るんじゃなかったわね」
みゆき「私はこの事を、泉さん、つかささんにはしないつもりです……それでは、帰りましょう」

かがみ「ただいま」
つかさ「おかえり、お姉ちゃん」
夕食の準備をしていたのか、台所から声がした。私は台所に向かった。台所には普段見たことない料理が並べられていた。
かがみ「ちょっと、なによこの料理、誰かの誕生日かなにかだったっけ?」
つかさ「うんん、なんか今日は無性に料理が作りたくなっちゃって、だから、作ってみた」
つかさはあの少女をどう思って接していたのだろうか、分らない、私には到底できそうにないことだ。でもどうしてもう会えないなんて言ったのか。
最後まで居てあげてもいいような気がする。途中で投げ出すなんて。
つかさ「どうしたの?、お姉ちゃん」
かがみ「いや、凄い料理ね、楽しみだわ」
みゆきが病院を離れる時に言った事を思い出した。私達に秘密にしている。何か理由があるのだろう。つかさ自ら話すようになったら聞いてみるか。
つかさ「ふふ、楽しみにしててね」
798 :約束 6 [saga]:2010/06/19(土) 23:20:32.14 ID:sSqYstI0
『ピンポーン』
呼び鈴が鳴った。お母さんが玄関に向かう。
みき「つかさ、警察の方がお見えよ」
つかさは無言で玄関に向かう。
「柊つかさだな、強盗の疑いで逮捕する」
警察は逮捕状を見せた。私は確信した。これはつかさじゃない。しかしつかさは抗うことなく警察に従った。そのまま警察と一緒に車に乗り。走り去った。
お母さんは何がなんだか分らない様子だった。私には分る。つかさは何もしていない。強盗をしたのはもう一人のつかさ。
家族が全て帰ってきてつかさの事を知ると途方にくれるだけだった。台所に作りかけの料理がいくつかあった。私達では続きは作れそうにない難しい料理
ばかりだった。この料理の続きを作れるのはつかさだけ。料理はつかさを待っているようだった。

 噂とは恐ろしい。つかさが逮捕されたと言う話は瞬く間に学校中に知れ渡った。
『今朝のニュースです、○○市、○○町において強盗事件が発生、警察は近くに住む未成年の女子学生を逮捕しました……』
テレビを消した。連日こんなニュースばかりが流れた。

まつり「まったく、何も知らないんだから、つかさがそんな事するわけないじゃない」
いのり「そうね、一体何がどうなってるのか、かがみも学校に学校でどんな非難を受けるか、分るわよ」
かがみ「私はそうゆうの気にしないわ、それよりもつかさの無実を晴らしたい、それだけよ……行ってきます」

 お昼休み、私はいつものようにつかさのクラスにお昼を食べに行った。周りの軽蔑の眼差しが注がれる。しかしそんなのは気にしない。
こなた「なんか最近、私達の席の周りが空いたよね」
かがみ「それならそれでいいじゃない、こなたのエロ話だって聞かれることもないわよ」
みゆきはあまり気にしていないようだ。こなたには話してもよさそうだ。私はつかさ達が病院に行ったのを尾行していたことを話した。
こなた「……そうなんだ、つかさがあの女の子事を知ってから協力するようなった、さつきちゃん、学校の授業で知り合った、
     絵本を読むようになってつかさに心を開くようになったらしいよ」
かがみ「そのつかさが何故、さつきちゃんと別れるような事を言ったのよ、解せない」
こなたは暫く黙っていた。言うかどうか迷っていたようだ。
こなた「つかさはさつきちゃんを助けたかった、それならおまじないでもしたらってね、私が子供の頃から家にあった本なんだけどね」
かがみ「どんなおまじないなのよ」
こなた「簡単だよ、助けたい人の名前を唱えて、願うんだよ」
かがみ「それならどのまじないでもあるじゃないか」
こなた「そうだね、でもね、願い主と瓜二つの人が現れるってね、その人が願い主に試練を与える、その試練に耐えたら願いが叶うって、そう書いてあった」
かがみ「私がつかさ似ている人を見かけたってこなたに言ったのを、こなた、あんたつかさに話したのね」
こなた「うん……、つかさは喜んだよ、これでさつきちゃんを救うことが出来るってね、でも試練に耐えなきゃいけないから、暫くお別れだって」
みゆき「それでお別れに病院に向かった……」
こなた「うん……」
つかさの気持ちは分からないわけじゃないけど、安易に考えすぎている。まるで子供だ。
かがみ「こなた、余計なまじないを教えたわね、偶然につかさに似た人が現れたに過ぎない、そしてその人がたまたま不良だった、それでその人が強盗をした
     ただそれだけの事よ、このままだとつかさは自分が潔白だってことを一生誰にも言わないわよ、そして無実の罪で罰を受ける……それでも
     さつきちゃんの病気なんかは治らないわよ……強盗は重い罪よ、いくら未成年でも三ヶ月じゃ出られないわよ、その間にさつきちゃんは……」
こなた「分ってる、そんなのは分ってる、でもつかさはそれに賭けるって、それしかないって言ったから、どんな試練でも耐えるって言ったから……
     もう私はつかさに強力するしかないじゃないか……かがみの話を聞いた時、内心私も驚いたんだよ、もしかしたらこのおまじないは本物かもしれないって」
こなたがこんなに切々と訴えるとは思わなかった。私もみゆきも迫力に圧倒された。
かがみ「そうよね、タイミングが良すぎたのは確かだわ」
みゆき「そのおまじないが偽物ならもう一人のつかささんは実在する人物になります、もし、彼女が真犯人であれば探して説得するか証拠をさがしてつかささんの
     無実を証明するしかないですね」
こなた「高校生風情の私達にそんなことができるとは思えない、漫画のようにうまくいくはずもない」
799 :約束 7 [saga]:2010/06/19(土) 23:21:43.07 ID:sSqYstI0


 こなたはああ言ったけど、私はどうしても諦めきれない。このままだとつかさは実刑、退学処分は免れない。つかさはそんな事よりさつきちゃんの死に目に
会えない方が辛いだろう。もう一度つかさに似た子と会って真相を聞きたい。私は時間があると彼女を見つけた駅周辺を探し回った。

 一週間が過ぎた。今日は一人で帰る事になったのでまた駅周辺を探し回った。人を探すというのがこんなに難しいとは思わなかった。
確かにつかさに似ている以外、住んでいる場所も名前も知らない。そんな人を探すなんて。一本道が違うだけで会うことはできない。
諦めかけた時だった。公園を通りかかると、公園の中央に一人の女性を見つけた。化粧をしている。髪型も違う。でも私には分る。つかさ……。
この公園は煙草を吸っていた時の公園だ。最初からこの公園をマークするべきだった。彼女は以前と違い一人で公園のベンチに座っていた。
何をする訳でもなく空を見上げていた。私が公園に入っても気が付いていない。彼女はおもむろに煙草を取り出し火を点けようとした。
私はその煙草を取り上げた。その時初めて彼女は私の方を向いた。その時の彼女の顔は漫画を取り上げた時のつかさそのものだった。
かがみ「あんた、未成年じゃないの?、煙草なんか吸うもんじゃないわよ」
なんの抵抗もなく言えた。初対面の人で何の係わり合いも無い人にこんな事が言えるとは思えなかった。彼女は私を無視し、煙草のケースを取り出し
煙草を取り出そうとした。私はケースごと取り上げた。
かがみ「話、聞こえなかったかしら、返事くらいしたらどうなの?」
彼女は私を睨みつけてきた。しかしつかさの顔でそんな事をされても怖くは無い。私もつかさを叱るつもりで睨み返した。そういえば高校になってから
つかさに怒ったことも、叱ったこともなくなった。それだけつかさが成長したからなのだろうか。
「未成年で吸っちゃ悪いのかよ……」
驚いてしまった。声までつかさと同じだった。彼女は目を逸らしてそう言った。
かがみ「当たり前でしょ、いままで注意されたこと無かったの?」
「そんな事する奴はあんたが始めてだよ……なんだよ、さっきから私のことジロジロと」
化粧で分らないがきっと顔を赤らめている。こんな所もつかさに似ている。
かがみ「先週あんたに付いてきた取り巻きの高校生は?、一緒じゃないみたいね、リーダでもしてたのかしら」
「なんでそんな事知ってんだよ!、誰だよあんた……私に何の用があるんだよ!」
すごい権幕だ。でも私は動じない。
かがみ「なんか他人の気がしなくてね、私は柊かがみ、陸桜の二年生、あんたは?」
「同じ歳かよ……上級生ぶりやっがって」
歳まで同じとは思わなかった。私を上級生と思っていたのか。それならもうつかさと同じように接してやる。
かがみ「名前は?」
私はもう一度問い質した。
「辻……さつき」
さつき……これも偶然というのか、まさかつかさが見舞いに行っていた女の子と同じ名前なんて。
かがみ「隣り、座っていいかしら?」
さつき「勝手にすれば……」
私は辻さんの隣に座った。
かがみ「どこに住んでるの?」
さつき「近く」
かがみ「いつから?」
さつき「忘れた……」
かがみ「高校は?」
さつき「○○学園高校……なんだよさっきから、尋問かよ」
800 :約束 8 [saga]:2010/06/19(土) 23:22:56.97 ID:sSqYstI0

その高校は知っている。かなりのエリート校だ、私も受けようとしたけど止めたくらい。みゆきクラスの生徒が沢山いる高校だ。
かがみ「ごめん、それじゃ私の事も話すわよ」
さつき「興味ない……」
かがみ「可愛くないわね」
さつき「同じ年齢の人に言われたくない」
こんな会話がしばらく続いた。つかみ所のない子だったけど基本的には悪い子じゃなさそうだ。仕草や表情に時折つかさを思わせるような癖も伺える。
似ているのは姿、顔、声だけじゃなかった。つかさと話しているのではと思ってしまうほどだった。

さつき「さっきから赤の他人にそんなに話しかけて来るんだよ、気持ち悪いな」
かがみ「……妹と似てるからかな」
さつき「それだけで?」

 それだけだったかもしれない。彼女の姿が少しでもつかさと違っていたら話さなかったかもしれない。
かがみ「そう言う辻さんだって私と会話を付き合ってくれて、なぜ?」
さつき「うざいんだよ、早くここから立ち去りたい」
かがみ「そう?、別に鎖でつないでいるわけじゃないわ、いつでも立ち去れるわよ、でも立ち去らなかったわね」
辻さんは立ち上がった。
さつき「こんな奴初めてだ、もう帰るよ」
かがみ「……付き合ってくれてありがとう」
辻さんはそのまま立ち去ろうとした。
かがみ「忘れ物よ」
取り上げた煙草を差し出した。
さつき「未成年は吸っちゃだめなんでしょ、適当に処分しておいて」
かがみ「もし良かったら明日も会わない?、同じ時間、同じ場所で、待ってるわよ、約束よ」
さつき「私、明日来ると思う?」
私は頷いた。
かがみ「一つ言わせて、化粧は二十歳からするものよ、それと髪型も整えたほうが良いわね、そう、一週間前のようにね」
さつき「明日は来ないよ、待ってても無駄だだから」
そのまま彼女は走り去った。

 辻さんが真犯人なのだろうか。疑問に思った。第一印象とこれほど違うとは。つかさに近い性格だった。家庭か学校に何か問題を抱えているのだろうか。
何か無理をして反発しているような気がした。たった一回会っただけで人は理解できなか。西日が急に差し込んできた。もうそんな時間か。私は帰路についた。

かがみ「ただいま」
いのり「おかえり……随分ご機嫌ね、何か良いことでもあったの?」
かがみ「……つかさに会ってきた」
いのり「嘘、まだ面会は認められていないわよ……つかさはいったいどうしたって言うのよ、あれからずっと黙秘らしい」
つかさはあれが試練だと思っているのか。ばかだよ。否認をすればいいだけの事なのに。
かがみ「取調べ、長引きそうね……でもつかさは無実だわ、それだけは言える」
いのり「そうね……それだけは私だって分る」
帰ってから家での会話でこれで終わってしまった。
801 :約束 9 [saga]:2010/06/19(土) 23:24:13.01 ID:sSqYstI0


 次の日、私は約束の時間通り公園に着いた。辺りを見ましても辻さんが来た様子はない。約束か、私が一方的にそう言っただけだった。
せっかく来た事だし待つだけ待つか。昨日と同じベンチに腰を下ろして待った。
さつき「遅れたけど来たよ」
10分くらい待っただろうか。来た。私は後ろを振り向いた。化粧を落として髪を整えていた。そしてリボンを頭につけている。
かがみ「つかさ……つかさ」
私は思わず彼女を抱きしめて泣いてしまった。
さつき「うわ、いきなり何するんだよ」
そうだった。つかさが来るはずはなかった。我に返った。
かがみ「……ごめん、あまりにつかさに似ていたから」
さつき「つかさって妹の名前?、そんなに似ているんだ、私」
かがみ「似てるってレベルじゃない、つかさそのものよ……よく来てくれたわね、ありがとう」
辻さんはそのまま黙って顔を赤らめた。さて、来たらやってもらいたことがあった。
かがみ「辻さん、悪いわね、これに着替えてくれない、そこにトイレがあるから」
私はつかさの着ていた制服を辻さんに渡した。
さつき「……妹って柊さんと同じ高校だったの?、今何年生?」
かがみ「私と同じ学年、双子だから」
辻さんは私をじっと見た。
さつき「双子ね、私と似ていないけど……」
かがみ「二卵性だからね、さ、着替えなさい」
さつき「ちっ、私はお前の妹の代わりかよ、そんなコスプレみたいのはしたくない」
かがみ「確かにつかさの代わりだけど私の為じゃない」
さつき「だったら何の為なのさ」
かがみ「説明するより来てもらった方が早い」
さつき「そんな説明があるか」
と、言いながら渋々とトイレへと向かった。

さつき「この制服まるで測ったようにピッタリだ」
そこに立っているのは柊つかさそのものだった。
かがみ「それじゃ行くわよ、つかさ」
さつき「つかさって、私はさつき……何処に?」
かがみ「○○病院よ」
さつき「病院……柊さん、病気なんですか?」
私はそのまま駅の方に向かった。少し遅れて辻さんが付いて来る。
802 :約束 10 [saga]:2010/06/19(土) 23:25:27.82 ID:sSqYstI0

 病院に着いた。受付に向かったが少女のフルネームを聞いていなかった。
かがみ「すみません、お見舞いに来たのですが、さつきちゃん……分りますか?」
受付「ちょっと待ってください」
受付係りが名簿を調べ始めた。
さつき「さつきちゃん……同じ名前」
かがみ「そうね、同じ名前……つかさがよく見舞いに行って元気つけてあげてたらしいわよ」
さつき「そのつかさって妹さん、どうして来れないの?、何故私が代わりにならなきゃならないの?」
私はあえて答えなかった。理屈より感じて欲しかった。
受付「小児病棟の辻さつきさんの部屋ですね、303号室になります、すみませんがこちらにお名前を記入お願いします」
私達は顔を見合わせた。まさか苗字まで同じとは思わなかった。
さつき「同姓同名……」
かがみ「不思議なこともあるものね、とりあえず行くわよ、辻さんは柊つかさとして接してあげて」
さつき「そんなこと言ったってそのつかさって人一回も会ってないし、子供って言ったって初対面じゃ分らない」
かがみ「辻さつき、そのままでいいのよ、思うように、思ったことを、思うがまま、その子に語ってあげればいいの、簡単でしょ」
辻さんは黙ってしまった。途中で買った花束を辻さんに渡した。


303号室。個室の部屋だった。名前、辻さつきと書かれている。私はドアをノックし扉を開けた。そして辻さんの背中を押して先に部屋に入れた。
「あっ!、柊お姉ちゃんが来たー」
辻さんは黙っていた。
「お花、きれいだね」
辻さんは黙って少女に花束を渡した。
「ありがとう」
受け取ると喜び病室中を駆け回った。とても死期が近い子供とは思えない。少女は花瓶に水を入れて花を飾った。
「ねぇ、泉のお姉ちゃんは?」
「……今日は私だけだよ……」
少女は少し悲しい顔をした。
「ねぇ、絵本の続き、読んで……やくそく」
少女は絵本を辻さんに渡した。
「……何処からだっけ?、お姉ちゃん忘れちゃった」
少女は絵本を開き辻さんにここだと示す。辻さんは開いた絵本を受け取ると椅子に座った。少女はベットに座り絵本を覗き込むように見る。そして辻さんは
絵本を読み始めた。少女は彼女をつかさだと思い込んでいる。優しく絵本を読む辻さんも完全につかさを演じている。一度も会ったこともないはずなのに。
私はそのまま病室を離れ病院の出口まで出てしまった。やはり私はこうゆう場面は直視できない。改めてつかさとこなたの優しさと勇気が分った。
私はこんな死を目前にした少女と一緒には居られない。私は卑怯だった。本来私がやるべき事を辻さんに押し付けてしまった。

 私は辻さんが真犯人だと思っている。そして辻さんの代わりにつかさが無実の罪で裁かれようとしている。つかさが何を思い無実の罪を受けようとしているのか
辻さんに分ってもらおうと思いついた計画だった。辻さんの良心に訴えようと。その為に私は少女、さつきちゃんを利用してしまった。さつきちゃんが大きくなって
この事を知ったらきっと私を恨むだろう。しかし少女は大きくなる事もない……最低だな……私。
803 :約束 11 [saga]:2010/06/19(土) 23:26:37.80 ID:sSqYstI0


 一時間を超えた位で辻さんは病院を出てきた。もう私服に着替えていた。つかさの制服を私に渡した。
かがみ「さつきちゃんが来ちゃったらばれちゃうじゃない、着替えるの早すぎだわ」
さつき「もうすっかり寝ちゃってるから大丈夫」
さてこれからが本番だ。彼女に話す。少女の運命と私の本当の目的を。もう後戻りは出来ない。

かがみ「本当はつかさが花束を渡すはずだった、絵本を読んであげるはずだった、でもそれは今できない、つかさは強盗の罪で取調べを受けているわ」
辻さんは黙って私を見ている。
かがみ「つかさは自分が無実だとは言わない、それは、あの少女、さつきちゃんのためよ……つかさはねさつきちゃんの為に祈っているのよ、
     その為なら自分がどうなってもいいと思っている、あの子はも数ヶ月の命……辻さん、もう分るでしょ、私の言おうとしている事が」
さつき「私はつかささんと同じ容姿……なるほどね……」
私は辻さんの答えを待った。

さつき「私は……ごめんな…い」
辻さんは泣き出した。この涙は私から逃れるためのものか。それともつかさとさつきちゃんの話を聞いたから泣いたのか。まだ分らない。
かがみ「私に謝ってもしょうがないわよ、これからどうするかは……分るわよね?」
辻さんは俯きながら話し出した。
さつき「私は今まで何をしていいのか分からなかった、忘れていた、だから……だから、反発した、捻くれた、答えはでなかった、でも、思い出した」
かがみ「それで人を傷つけて良い訳けないわ、被害者は幸い軽傷で済んだみたいよ、今ならまだ罪は償えるわよ」
さつき「私の試練だったみたい……間に合うかな?」
私は頷いた。すっかり力を落として動こうとしなかった。
かがみ「一人で行けないのなら、私も一緒に行くわよ」
さつき「私が逃げると思ってるの?」
そうは思わなかった。しかしもう少し様子をみたかった。私は黙って彼女を見ていた。すると辻さんは頭につけていたリボンを外し私に差し出した。
かがみ「これは?」
さつき「これを……さつきちゃんに渡して下さい」
私はさつきちゃんに会うことはできない。辻さんを改心させる為とはいえ利用してしまった。合わせる顔がない。
かがみ「まだ時間は在るわよ、直接渡しなさい、たぶん会えるのはそれで最後よ」
さつき「いいえ、かがみさんから渡して欲しい、私はあの子をもう見られない」
辻さんも私と同じ心境なのか。思わずリボンを受け取ってしまった。
さつき「かがみさん、十年後、また会いましょう、約束しませんか」
かがみ「……辻さん、いくら強盗が重罪でも十年は長いわよ、そこまでは……それに面会もできるわよ」
さつき「うんん、もう会えない、その時まで、だから……」
辻さんの覚悟は分った。私は彼女を信じる。
かがみ「分ったわ、約束しましょう」
さつき「ありがとう」
辻さんは二、三歩私から離れると深々とお辞儀をした。そして駅の方に走っていった。これで良かったのだろうか。
自問自答しながら私も駅の方に向かった。
804 :約束 12 [saga]:2010/06/19(土) 23:27:40.42 ID:sSqYstI0

 帰り道、駅を降り、しばらく歩くとこなたとみゆきを見かけた。二人は私に気が付かず素通りし、繁華街に向かっていった。二人は鳩のように首を振り
何かを探しているようだった。私はゆっくり後ろから二人に近づき声をかけた。
かがみ「こなた、みゆき、何やってるのよ」
二人は飛び上がって驚いた。
こなた「か、かがみ、いや、つかさに似た人をさがし……もごもご」
慌ててみゆきはこなたの口を手で塞いだ。
みゆき「いえ、宿題で繁華街における客の動員数の動向と趣向を……」
何を言ってるのか分らない。でも何をしていたのかは分かる。私に内緒で。泣けるじゃない。私はこらえた。
かがみ「……さっき私の前を通り過ぎたわよ、気が付かなかったのか、そんな節穴の目で何を調べるんだよ……別にごまかす事なんかないわよ、
     つかさの為に……ありがとう、でも、もういいわ、もう終わったから」
二人は顔を見合わせた。
こなた「終わったって?、何が終わったの?」
みゆき「どうしたのですか?、何があったのですか?」
かがみ「いろいろよ……そう、いろいろとね、もう遅いわよ、帰りましょ」
こなた「でも、つかさ……」
かがみ「つかさは帰ってくる、もうすぐ……私は信じる」


かがみ「オース、お昼食べに来たわよ……みゆきは?」
こなた「いらっしゃい、待ってたよ、みゆきさんは職員室に届け物だよ」
つかさ「お姉ちゃん、最近こっちばかり来てるけど平気なの?」
かがみ「平気よ、お昼くらいこっち来たくらいで、気にすることないわ」
みゆき「お待たせしました」
教室にみゆきが入ってきた。

 四人でいつものように楽しい昼食。辻さんと別れて三日も経たないうちにつかさは釈放された。真犯人は自首をした。しかしそれは辻さんではなかった。
未成年なので名前は公表されていない。みゆきの話ではつかさ達のクラスの男子生徒らしい。席が空いている所に居た生徒。思い出した。わざわざ違う高校
の制服を着るなんて。最初辻さんを見つけたときに付いてきてた男子。煙草を差し出した人だ。つかさに罪をなすり付けようとしたようだが、罪に耐えられなくなり
自首したとの事。
辻さんは彼を説得したのだろうか。あの時の会話は自分が犯人と言っているように受け取った。何故あの時、自分は犯人ではないと言ってくれなかったのか。
私は真意を確かめようと彼女を探した。公園にも居なかった。街中を探したがいなかった。辻さんの通っていた高校も調べた。しかし辻さつきと言う生徒は
在学していないことが分った。さすが名門高校、スペインにも分校があったがそこにも彼女の名前はなかった。そして辻の名で街中を探したが
『さつき』と言う名前はあの少女しか居なかった。彼女は消えた。痕跡を残さずに。それとも彼女は私に嘘を言ったのか。

こなた「しかし真犯人が自首してきてよかったね、つかさ、本当に最後まで罪を被るつもりだったの?」
つかさ「分らない……でもさつきちゃんが元気になって良かった」
みゆき「まさか新薬の臨床試験に辻さんが選ばれるとは、それで、その薬が効いた、奇跡としかいいようがありません」
つかさ「こなちゃんの教えてくれたおまじないのおかげだよ、すごいよね」
805 :約束 13 [saga]:2010/06/19(土) 23:28:53.79 ID:sSqYstI0


 自分が捕まって酷い目にあったというのに、さつきちゃんが助かったことを喜んでいる。おまじないの効果で片付けてしまっている。私はそんなつかさが好きだ。
私には到底出来ない事。こなたやみゆきも最近はつかさと出歩くことが多くなった。私はもしかしたら姉失格かもしれない。
つかさが釈放されて二ヶ月後、みゆきが言うように突然新薬の臨床試験を行うことになった。さつきちゃんで試す事に。
もちろん効く可能性はゼロに近かったらしい。でもその薬は効いた。さつきちゃんの病気は完治した。

こなた「一週間後、退院することになったね……かがみも退院するまでに一回はお見舞いに行こうよ、みゆきさんも来てくれているんだしさ」
みゆき「どうして来れないのですか、以前、私達がつかささん達を尾行した事をまだ気になされているのですか?」
私は沈黙をした。みゆきの言った事も少しはあるがそれが理由ではない。私はさつきちゃんを利用してしまった罪悪感がどうしても取れなかった。
つかさ「そんなの理由にならないよ、今日行こうよ、お姉ちゃん、委員会の会議無いんでしょ?」
かがみ「ごめん、今日も用事があって……」
つかさは悲しい顔をした。

 放課後私は公園に居た。つかさが釈放されてから二ヶ月。暇を見つけてはこの公園のベンチに座っている。彼女と話したベンチ。しかし彼女は来ない。
もう一度会って話したかった。嘘を付いたことなんかもうどうでも良かった。もう聞くつもりもなかった。ただ会いたいだけだった。彼女と会えば一緒に
さつきちゃんの所に行けるような気がしたから。

 西日がベンチに射しこむ。彼女は来なかった。今日、来なければもうこの公園に来るのを止めようと思っていた……来なかった。帰ろう。

 家に帰るとすでにつかさは帰っていた。夕食の手伝いをしていた。私はそのまま自分の部屋に入り宿題を片付けた。

 夕食が終わりしばらくすると久しぶりにつかさが私の部屋に入ってきた。
つかさ「お姉ちゃん、遊びに来たよ」
つかさを見ると漫画の本を持っていた。
かがみ「また漫画かよ、たまには小説とか読んだからどうなんだ」
つかさ「えへへ、これ、こなちゃんから借りたんた、明日、返さなきゃいけないから」
つかさが私のベットに腰掛けようと時だった。
つかさ「あ、リボン、お姉ちゃん、リボン変えたんだ?」
かがみ「いや、変えてないけど、どうして?」
つかさは私の机に置いてあったリボンを取った。
つかさ「このリボンだよ、お姉ちゃんが使うには長いかなって思って……あれ?、このリボン、さつきちゃんにあげたリボンだ、どうしてお姉ちゃんが持ってるの?」
このリボンは辻さんと別れる時に付け取ったリボン。どう言うことなんだ?。私が聞きたい。
かがみ「リボンなんか何処でも同じもの売ってるわよ、私がそんなの持ってるわけないでしょ」
つかさ「さつきちゃんにあげる時、刺繍したんだよ……ほら、ここに私の字で『さつき』って書いてあるでしょ……あれ、これ凄く古くなっちゃってるよ、
     十年くらい経ってるみたいに色が褪せちゃってるよ……お姉ちゃん洗っていないよね?」
かがみ「リボンなんか洗わないわよ……」
おかしい。病室にいたさつきちゃんはリボンをしていなかった。さつきちゃんが辻さんに渡したのか?。いや。それなら辻さんが付けていたリボンはどうしたんだ。
つかさ「、なんでお姉ちゃんが持ってるんだろ?、不思議だね……」
806 :約束 14 [saga]:2010/06/19(土) 23:29:56.12 ID:sSqYstI0
古くなって色褪せたリボン。確かに随分時間が経ってるようにも見える。
つかさ「不思議と言えばね、さつきちゃん変なこと言うんだよ、絵本の続きを読んであげようとしたらもう私が読んだって……何時って聞いたら私が
     捕まっていた時なんだよね……それに楽しい絵本なのに急に私が泣き出したんだって……それで『思い出した』って言ったって?、
     病気で幻覚でも見てたのかな?……そういえばお姉ちゃんも私に似た人見かけたんだよね、関係あのかな?」
 『思い出した』確かに辻さんはそう言った。『試練』とも言っていた。そして十年も経っていそうな古いリボン。まさか……
かがみ「つかさ、こなたから教えてもらったおまじない、さつきちゃんに教えた?」
つかさ「うん、教えたよ、でもこのおまじないは辛いことが起こるから大きくなるまで使っちゃダメだよって言ったよ」

 辻さんがさつきちゃんの病室に入ってから急に態度が変わった。会ったこともないつかさを演じていた。それは行き当たりばったりの適当な演技じゃない。
つかさを知っていないとできない演技だった。現にさつきちゃんは彼女をつかさだと思っていた。彼女は以前につかさに会っている。

 私は仮定をした。さつきちゃんが十七歳になった時、つかさが以前にさつきちゃんを救うためにおまじないをした事を知った。
そこで彼女はつかさと同じおまじないをして祈った。つかさを助けたいと……彼女はこの時代に飛ばされた。その時、おまじないの試練によって彼女の
記憶が奪われた。そして目的を失い、彼女は苦しみ、反抗的になった。私は彼女にさつきちゃんを見せた。つまり昔の自分を見せたことにより記憶が蘇った……
未来のさつきちゃんなら真犯人が誰か知っていても不思議はない。つかさとさつきちゃんの祈りが時を超えて、お互いを助けた……

かがみ「ふ、ふふ、はは、傑作だ、そんなばかな話があるわけないわ、はははは」
つかさ「お姉ちゃん?」
私は笑った。都合のいい想像に、バカさ加減に。笑うしかなかった。
つかさ「そんなに面白い?、お姉ちゃんはまだあのおまじない信じていなんだね……」
かがみ「信じるもなにも、たかがおまじないよ……」
つかさ「そうだね、たかがおまじない……さつきちゃんね、退院したらお父さんの仕事でスペインに行っちゃうんだって……十年くらい会えなくなるみたいだよ……
     もう一度あのおまじないしようかな……でも、もうあんな辛い目に遭うのも嫌だな……」

 笑いが止まった。仮定じゃなかった……辻さんの言った十年後って、会うのは辻さんじゃない、十年後のさつきちゃん……辻さつき……。


つかさ「このリボン、返してね、さつきちゃんに渡さなきゃ……」
つかさはリボンを持って自分の部屋に向かおうとした。
かがみ「待って、そのリボン、私がさつきちゃんに渡すわ」
つかさは立ち止まり満面の笑みを私に見せた。
つかさ「お姉ちゃん、やっと、やっと会う気になってくれたんだね」
かがみ「そうよ、約束だから……つかさ、スペインから帰ってきたさつきちゃんを見たら驚くわよ」
つかさ「約束?、驚く?、どうゆうことなの?」
かがみ「その時が来れば分るわよ」
つかさからリボンを受け取った。
……はっとした。私のした事、さつきちゃんは許してくれたのか。
だからリボンを私に渡した……そして十年後会う約束をした。急に涙が出てきた。涙は止められそうにない。
つかさ「お姉ちゃん、笑ったり、泣いたり……どうしたの?」
かがみ「何でもない……何でもない、つかさ、あのおまじないは本物だよ……それが分った」
つかさ「そうでしょ、でもよかった、さつきちゃんが亡くなる前におまじないをして、亡くなった後だと効果ないんだって、こなちゃんが言ってたよ」
こなたはお母さんに試したんだな。つかさ、そのくらい気付けよ。と言いたかったが止めた。そんな詮索をしないからつかさの願いが叶った。そんな気がした。
私はあのおまじないで願いを叶えることは出来なさそうだ。私が出来ることは……。涙を拭った。
807 :約束 15 [saga]:2010/06/19(土) 23:30:57.57 ID:sSqYstI0


Nかがみ「つかさ、漫画読んでるけど数学の宿題はもう終わったの?、確か先生同じでしょ?、宿題出ているはずよね」
つかさの動きが止まった。
つかさ「まだだったりして……」
私は漫画を取り上げた。
かがみ「それじゃここに宿題持ってきなさい、分らないところは教えてあげるから」
つかさ「でも、こなちゃんに明日返すって約束が……」
私はため息をついた。
かがみ「どうせこなたも宿題やってないでしょ、私が電話で言ってあげるから、宿題終わるまでこの漫画預かっておくわよ」
つかさ「お姉ちゃん、黒井先生みたいだよ……」
渋々と自分の部屋に教材を取りに行った。その時間を利用し、こなたに電話をかける。案の定、こなたも宿題をしていなかった。
今度みゆきも誘って勉強会をするか。
私は私。それ以上でもそれ以下でもない。
思うように、思ったまま、思った事をそのままに。
さつきちゃんに教えたつもりが教えられた。


808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/19(土) 23:35:33.52 ID:sSqYstI0
以上です。かがみメインは久しぶりなのであまり自信がありません。
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/20(日) 11:47:07.86 ID:qqu9xes0
えがったよ〜、いつも楽しく読ませて貰ってるよ〜
?。が目印になってて僕には判るよ〜
かがみの口調って難しいのな〜
810 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:35:50.45 ID:ugiLDNI0
かがみは結構体裁を気にするみたいで、普段は普通の女性口調ですな。
で、体裁を気にしなくていい相手には、くだけたというか少々口が悪くなるようです。

それはそうと投下行きます。
父の日SSです。
811 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:36:25.63 ID:ugiLDNI0
「…お父さん。ほら、起きて起きて。もうお昼だよ」
「…ん…んう…?」
 グラグラと揺れるような感覚に、泉そうじろうは目を覚ました。薄目を開けてみてみると、娘の泉こなたが自分の身体を揺すっている。
「…すまん…もうちょい寝かせてくれ…」
 そう言ってそうじろうはまた目をつぶった。その身体をこなたがさらに激しく揺さぶる。
「ちょっと、二度寝しないでよー。せっかく起きたんだから、そのまま起きてよー。日曜だからって、いつまでも寝てちゃダメだよ」
「…昨日寝るの遅かったんだから…頼む…ってかそれをお前には言われたくないな」
「もー…」
 こなたはそうじろうを揺さぶるのをやめて、腰に手を当てて頬を膨らませた。そして、しばらく考えてから、そうじろうの耳元に顔を近づけた。
「…起きてくれないと、チューしちゃうよ」
「はあっ!?」
 思わず大声を出しながら、そうじろうはガバッと音を立てるほどの勢いで上半身を起こした。顔を巡らせてみると、慌てて飛びのいたこなたが呆れた顔をしていた。
「なんで、これで起きるかなあ」
「い、いや起きるだろ普通…」
「お父さん、普通じゃないでしょ…ま、いいや。ご飯もうすぐ出来るから早く着替えてきてよ…なんだったら着替えさせてあげようか?」
「…なにを言い出すんだお前は…」
 そうじろうの反応に、こなたはクスクスと笑って寝室の入り口に向かった。
「…こなた」
 そのこなたをそうじろうが呼び止める。こなたはドアに手をかけたまま振り返った。
「なに、お父さん?」
「あのまま俺がホントに起きなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「…さあ、ね」
 こなたは悪戯っぽく笑うと、そのまま部屋から出て行った。
「なんなんだ、一体…」
 残されたそうじろうは、頬をかきながらこなたが出て行ったドアを見つめていた。そして、部屋が薄暗いことに気がつき、窓の方を見た。
「雨、か」
 そうじろうじはしばらく降りしきる雨を眺めた後、着替えをするために立ち上がった。



― その日娘は ―



812 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:37:29.16 ID:ugiLDNI0
「おはようございます、おじさん」
「オハヨウさまでス、パパさん」
「…ああ、おはよう」
 キッチンに入ったそうじろうは、先にテーブルについていた居候の小早川ゆたかとパトリシ・マーティンと挨拶を交わした。
「おじさん、どうかしました?なんか元気ないですけど」
 そうじろうの声が、少し沈んだ感じだったのを気にしてゆたかがそう聞くと、そうじろうは少し頭を振った。
「少し眠いだけだよ。昨日は寝るのが遅かったからね」
「パパさんもミましたカ。やはりあのテンカイはモえますヨネ!」
「いや、俺はもうちょい捻って欲しかったけどな」
 ああ、深夜アニメか…と、ゆたかは納得して、テーブルにおいてあったお茶をすすった。そして、そうじろうが少し考え込むような仕草をしてることに気がついた。
「おじさん、どうかしました?」
「いや、なんていうか…こなたがなんかおかしくないか?」
 そう聞いてきたそうじろうに、ゆたかは首をかしげた。
「そうですか?朝ご飯一緒に食べたときには、特に何も感じませんでしたけど」
「朝?こなたはそんなに早く起きてたのかい?」
「はい。何か大事な用事があるとかで…」
「大事な用、ねえ…」
 そうじろうが次にパティのほうを見ると、パティはぶんぶんとオーバーアクションで首を横に振った。
「ワタシはパパさんのスコしマエにオこされたので、わかりませんデス。ただ…いきなり『パティちゃん』とヨばれたのはオドロきましたとサ」
「ほーい、おまたせー」
 そこまでパティが話したところで、こなたが料理の乗った皿を持ってやってきた。
「ちょっとお皿探すのに手間取っちゃったよ」
 そう言いながらテーブルに料理を並べるこなたに、ゆたかは首をかしげた。
「あれ、今のお皿の配置にしたの、こなたお姉ちゃんじゃなかったっけ?」
「え?そうだっけ」
「そうだよ。よく使うお皿を高いところに置いたら、わたし達が使えないからって」
「…う、うーん…忘れてた。わたしも歳かな」
「そんな歳じゃないのに…」
 こなたとゆたかがそう話してる間、そうじろうは自分の皿と他の三人の皿を複雑な顔で見比べていた。
「どかしたでスカ、パパさん?」
「えーっと…こなた。なんか俺のだけ豪華じゃないか?」
 ゆたかとパティがテーブルを見てみると、確かにそうじろうの分のおかずは量が多く内容も豪華だった。
「お父さん、今日は何の日?」
 こなたがそう言ってニコッと笑うと、ゆたかとパティは納得した顔をし、そうじろうは首をかしげた。
「え、今日?何かあったっけか…」
「おじさん、父の日ですよ」
 本気でわかってなさそうなそうじろうに、ゆたかが助け舟を出す。そうじろうはそれを聞いて手を叩いた。
「ああ、そうか。そうだったな…って、またなんで急に。去年まで特になにもしてなかったのに」
「んー…まあ、わたしも大学生になったわけだし、今までと違うことしようかと思ってね」
「こういうのって、普通大人になるにつれてやらなくなっていくものだと思ってたけどな…」
 そうじろうの言葉に、こなたは眉をひそめた。
「もー、いいから食べてよ」
「わ、わかった…いただきます」
 そうじろうが手を合わせてそういうと、ゆたかとパティもそれに習い、三人は料理に箸をつけた。
813 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:38:44.96 ID:ugiLDNI0
「…こなた、味付け変えたのか?」
 少し食べたところで、そうじろうが顔を上げてそう聞いた。ゆたかも同じ事を思ったらしくうなずいている。
「え?…あ、うん、ちょっと思うところあって…」
 歯切れの悪いこなたの答えにそうじろうは首を傾げたが、とくに何も聞かずに料理の続きにとりかかった。
「にしても、どこかで食べたことある味だな…」
 そう呟きながら料理を食べるそうじろうを、こなたは微笑んで見つめていた。
「コナタ、ああいうヒョウジョウもデキるとですネ」
「うん…わたしも初めて見た気がする」
 ゆたかとパティは料理に口をつけながら、そうじろうとこなたを交互に見ていた。



 朝食を食べ終え自室に戻ったそうじろうは、もう一度寝ようかとも思ったが、せっかく起きたからと仕事をすることにした。
 座卓に乗せた愛用のノートパソコンを開きしばらくキーボードを叩いていると、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
 そうじろうがそう言うと、ドアが開いてパティが部屋の中に入ってきた。
「パパさん、ちょっとジカンよろしいでスカ?」
「ああ、いいよ」
 そうじろうはノートパソコンを閉じると、パティのほうに身体を向けた。そのそうじろうの前に、パティがちょこんと正座で座った。
「さっきユイがユタカをムカえにきましたヨ。どこかおデかけですカ?」
 パティの言葉に、そうじろうは窓の方をチラッと見た。
「実家だよ。父の日って言われて思い出したけど、ゆーちゃん父の日は実家で過ごすって言ってたからな。学校もあるし、夜には帰ってくると思うけど」
「そでしタカ」
 パティは納得したようにうなずくと、後ろ手に隠していた、バラの飾りが付いた小さな箱をそうじろうに差し出した。
「これは?」
 そうじろうがそう聞くと、パティはニコッと微笑んだ。
「パパさんにプレゼントですヨ。チチのヒですカラ」
「え、いや…それがなんで俺に?」
「このホームにいるアイダは、パパさんがワタシのパパさんですカラ。サイショにパパさんイってまシタ。『自分の家だと思ってくれていい』って」
「そ、そんなこと言ったかな…」
「イエス。ファミリーとしてムカえられたのですカラ、ワタシもセイイッパイファミリーでいるコトにいたしますヨ」
 そう言いながらパティは、小箱をよりそうじろうに近づけた。
「まあ、そう言うことなら…もらっておくよ」
 そして、そうじろうはその箱を受け取った。
「サンクス。やっぱりパパさんヤサしいでス」
「俺が?そうかな…」
 そうじろうが頬をかきながらそう言うと、パティはまたニコリと微笑んだ。
「ハイナ。ここにホームステイできて、ワタシはラッキーですヨ」
「それは、俺とこなたがオタクだったからじゃなくて?」
「もちろんソレもダイジですナ」
 まったくと言っていいほど自分を偽らないパティの言葉に、そうじろうは思わず苦笑していた。
「というワケでイッパイのカンシャこめましテ、これはサービスですヨ」
 そう言いながらパティは、そうじろうに勢いよく抱きついた。胸に感じるふくよかな感触に、そうじろうの頬が少し赤くなった。
「な…いや、ちょ…パティちゃん、な、なにを…」
「ウレしくありませんカ?パパさん、いつもコナタにダきついてますからハグスきだと…やっぱりロリっぽいホウがよろしデス?」
「い、いや、そういう問題じゃ…」
 そうじろうがパティを何とかしようと言葉を捜していると、部屋のドアがいきなり開いた。
「お父さん、ちょっと…」
 そして、顔を出したこなたが、そうじろうに抱きついているパティを見て固まった。
814 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:40:40.17 ID:ugiLDNI0
「ご、誤解だぞ、こなた…」
 慌ててパティの身体を自分から引き剥がしながら、そうじろうはこなたにそう言った。
「…まだ何も言ってないよ」
 少し冷たい声でそう言うこなたと、そうじろうを見比べていたパティが首をかしげた。
「コナタ。もしかしてヤキモチですカ?」
「違います」
 一瞬の間も置かずにパティにそう言って、こなたは顔を引っ込めてドアを勢いよく閉めた。
「コナタはツンデレさんですネ」
 状況がわかってないのか、なぜか嬉しそうにしているパティに、そうじろうはただため息をつくだけだった。



 こなたの部屋の前に立ったそうじろうは、深呼吸を一つした。雨の勢いが増しているのか、廊下にまでその音が聞こえていた。そうじろうはもう一度深呼吸をすると、こなたの部屋のドアをノックした。
「こなた、入っていいか?」
「…いいよ」
 中から聞こえてきたこなたの返事に、そうじろうは安堵のため息をついてドアを開けた。
「あーこなた、さっきのはその…ってなにしてるんだ?」
 先ほどのことを話そうとしながら部屋に入ったそうじろうは、こなたが沢山の衣服に囲まれて部屋の中央に座っているのを見て、思わずそう聞いてしまった。
「なにって、お裁縫。ほころびてるのとか、ボタン取れかけてるのとか結構あったよ」
 こなたはそう言いながら、自分の側にある裁縫道具を指差した。
「パティちゃんのことでしょ?わかってるわよ。抱きついてきたのはむこうからでしょ」
「うん、まあそうなんだが…パティちゃんだって悪気があったわけじゃないんだから、後で文句言うとかそういうのは…」
 そうじろうがそこまで言ったところで、こなたがクスッと笑った。
「おかしな人。立場悪いの自分なのに、相手かばうんだ…大丈夫よ。もうそのことは何も言わないから」
「そうか…まあ、かなたそう言うなら…あ」
 そうじろうは思わず自分の口から出てしまった名前に驚き、慌てて自分の口を塞いだ。
「す、すまん、こなた…なんかかなたと話してるような気になって…」
 言い訳をしながらそうじろうがこなたのほうを見ると、こなたは裁縫の手を止め静かに微笑んでいた。
「かなたでいいわよ…そう君」
 そうじろうはあんぐりと口を開け、目の前のこなたを眺めた。
「え…それって…」
「最後までこなたを演じようかと思ってたけど、ダメね…そう君の前だと地が出ちゃう」
 そう言いながら、かなたを名乗ったこなたは立ち上がってそうじろうの後ろに回って両手を肩に置いた。
「ちょっとこってる…お仕事してた?」
「あ、ああ、少しな…」
「叩いてあげよっか?」
 そう聞きながら、かなたはそうじろうの返事を待たずに肩を叩き始めた。
「こなたは、こういうことはしてくれるの?」
「…小さい頃はしてくれてたかな」
「そっか…」
 かなたは手を止め、そのままそうじろうに覆いかぶさるように抱きついた。
815 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:41:35.56 ID:ugiLDNI0
「こなたは悩んでたわ」
「え、なにを?」
「父の日のプレゼント…買ったのはいけど、どう渡そうか悩んでた」
「…そうか」
「それで、こなたの身体を借りてちょっと手助けしてあげようと思ったんだけど…なんだか私のやりたいことだけやっちゃったみたいで、こなたに悪いことしたかな…」
 耳元で囁くかなたの手を、そうじろうは優しく握った。
「そうかもな…まあ、俺は得をした気分だけどな」
「もう、しょうがない人ね…」
 かなたはため息を一つついて、自分の腕に力を込めた。
「こなたのプレゼント、ちゃんと受けとってあげてね」
「そりゃもちろん。俺がこなたから貰うものを拒むわけ無いだろ?」
「そうね、そう君なにあげても喜ぶよね…」
 かなたはそうじろうに抱きついたまま、窓の方を見た。
「…雨が止むわ。そろそろ終わりかな」
「え?」
 そうじろうは首をかなたの方に向けようとしたが、かなたにそれを遮られた。
「このままで…顔見たら辛くなっちゃいそうだから」
「…わかった」
「それじゃね…そう君」
 そうじろうは自分を抱きしめている手から力が抜けるのを感じた。
「…う…ん…?」
 しばらくそのままでいると、背中かからうめき声が聞こえた。
「え…ちょ…お父さん?…え、なに?なんでこんな姿勢?」
「こなたか?」
 そうじろうがそう聞くと、こなたがうなずいたらしく後頭部に固いものがぶつかった。
「い、いたた…ってわたしがこなた以外のなんなの…いや、それよりなんでこんな…ゆーちゃんと朝御飯食べて部屋戻って…えーっと…それからどうしたんだっけ…てか、手離してよ」
「いやあ、せっかくだからもうちょっとこのままで」
 そうじろうの言葉に、こなたはブツブツと何かを言いながらも身体をそうじろうの背中に預けてきた。
「父の日のプレゼント。楽しみにしてるぞ」
 そうじろうがそう言うと、こなたの身体がビクッと震えた。
「…な、なんで…知ってるの…」
 消え入りそうな声でそう言うこなたに、そうじろうは笑いたくなるのをこらえていた。
 ふと目がいった窓の外。雨はすっかり止んでいた。



― 終 ―
816 :その日娘は [saga]:2010/06/20(日) 15:43:08.50 ID:ugiLDNI0
以上です。

パティは相変わらず難しい。七巻でみせた変な日本語をやろうとして失敗した気が…。
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/20(日) 16:04:42.87 ID:qqu9xes0
えがったよ〜、かなた大好きにはたまらんです!
パティの日本語むつかしいネ
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/20(日) 16:56:57.96 ID:IsnPOI.0
投下します。
819 :大人になる 1/6 [saga]:2010/06/20(日) 16:58:04.09 ID:IsnPOI.0
「お姉ちゃんがウザい」
隣の部屋から、そんな言葉が聞こえてきた気がした。
つかさの声。潜めるようなトーン。さっきから誰かと電話でしゃべっている、その会話の一欠片。
私はベッドでうつぶせに寝転びながらラノベを読んでいた。そんなところに不意打ち。文章に集中していたかったし、あまり気に留めたくはなかったのだが、このような言葉が気にならないはずもなく。
(……今のは、何?)
私は寝転んだまま顔を上げ、つかさの部屋の方を向いた。そこには閉じられたドア。互いのプライバシーもあるので、特に用事がない時には閉じるようにしている、ごく日常的な光景である。
本を置き、そのドアの向こう側へと耳を傾ける。つかさの話し声は随分と小さい。……よく、聞き取れない。
(ねえ、何?)
もどかしさに心が浮つく。ところどころ、うーんというやたら長い相槌が聞こえてくる。そんなの聞こえたって仕方がない。
さっきの言葉は本当だったの? 本当ならもう一回くらい聞かせて、確かめさせてほしい。けど、その反面、やっぱり聞きたくはない気もする。
……ああ、中途半端な気分だ。嫌な気分。ぐずぐずした心に弄ばれている。
それとも、勘違いだったのだろうか? ……それならそれが一番、いいけれど。
(……やっぱり、よく聞こえない)
耳のアンテナを精一杯立てて奮闘している自分。
……こんなに妹の会話が気になるのは初めてだ。

しばらくして通話が終わる。ぼそぼそとした声の響いていた部屋からは、本当に瞬間的に、一切の音が途絶えた。辺りがしんと静まり返る。
私は手元のラノベに視線を落とした。
読もうか? ページを開こうとしてみる。……ダメだ。心が落ち着いていない。
ああ、やっぱり気になって仕方がない。あれは本音だったのか? それならなぜ……。いやそもそも、あれの発言自体本当にあったかもわからない。そう、空耳かもしれない。
それが空耳だったらいいんだけど……いや、空耳であってほしい。あってほしいんだ。
でも、残念なことに、あれは本当だったんだ。そうだろう。私は信じたくないだけ、多分。
そしたら、やっぱり信じなければいけないかもしれない。やっぱり信じなければ……
ああ、どうしよう。澱みきった混乱が頭をこねくり回す。
本当につかさが私のことをウザいと思っていたとして、一体何をすればいいんだ。そもそもなんでつかさは、私をウザいと言った? 原因がわからない。やっぱりあれは気のせいだった可能性も……
頭の整理がつかなくなった。もう夜も遅い。布団をかぶることにした。
820 :大人になる 2/6 [saga]:2010/06/20(日) 16:59:05.94 ID:IsnPOI.0
いつも通りの朝を迎えた。
いつも通りといっても、時刻がいつもと変わらないだけだ。昨夜の不安は、まだ私の心を重く抑えつけている。
ただ、あの混乱した状態よりかは、いくらか頭の整理がついていた。つかさはきっと私をウザく思っている。疑うことはしない。
……ああ、顔を合わせたくない。どうしようか? 部屋に立ち尽くしたまま、動きもせず、私は考えていた。
朝食はバラバラに食べることもある。昼食も大学にでも行けばつかさがついてくることはない。夕食は? ……ああ、こればかりはどうしようもない。家族が揃って食べるという子どもの頃からの習慣を破るわけにはいかない。
そもそも、私が不自然につかさを避けるような行為があれば、他の家族が目を光らせないはずもない。母さんにでも呼び出されて、「どうしたの?」とでも聞かれるだろう。それを聞かれたら、正直返す言葉がない。
厄介だ。ああもう、いっそ私を監視する存在が一切なくなれば!
「……ふう」
静かにため息をつく。
昨晩の食卓までは、何の隔たりもなく接していたのに。急に話しづらくなるとは……つかさがあんなことを言ったせいだ。
いや、つかさのせいばかりにするわけにもいかない。つかさが私を嫌うのなら、私の態度にも問題点があったのだろう。そうすると結局、原因は私ではないか? 私のしでかしたことに対する結果私が苦しんでいるだけじゃないか。自業自得だ。そう言わずして何と言う。
しかし、私が原因だと認めるにしても、これからつかさにどういう態度を取ればいいんだろう? 謝る、といっても……何に対して謝ればいいのか? そもそもどうして、つかさが私をウザいと思ったのか、やはりその原因がわからない。
「……はあ」
二度目のため息。まったく、朝から悩ましすぎる。
と、ガチャと扉の開く音。隣の部屋からつかさが出てきたらしい。私は固唾を呑み込んだ。
短い廊下を歩いている。階段の手摺に掴まった。階段を下りていく足音。……すぐ聞こえなくなった。
私はほっとした息を漏らす。
……つかさは、驚くだろうか? いつもなら朝早くから、一階のテーブルに新聞を広げて居座っている私が、今日はいないことに。
普段はそこから二人で会話が始まる。昨日もそうだった。そして二人一緒に家を出てそれぞれの学校へと向かうわけで。
今日のような休日だったら、そこから一緒に和室に移って宿題なり何なりを片付けたり、遊びに出かけもする。
……ああ、今日はどうなるだろう。

部屋を出るタイミングが計れず、床の下の出来事を案じている。
なんだか、惨めにも程がある。いや、惨めというよりは情けない。たかがあの一言が刺さったくらいで、どうして私は一歩も歩けなくなってるんだ。
ため息をつくのももう飽きてしまった。

ところで、私をウザいと言うなら、つかさはいつ頃から私をそう思い始めたんだろう?
昨日は、あの会話を聞くまでは何の違和感もなく接していた。高校のときと全く変わった気はしない。
高校を卒業してからのこともいくつか思い返してみたが、全く思い当たる節もない。特別なことは何もなかった。
……となると、やはり普段の態度か。おそらく、私の普段の態度が鼻についていたに違いない。つまりつかさは毎日我慢していたことになる。私がつかさに対して取る態度の中の何かを。
そうすると、おそらくはっきりとした境目はない。徐々に嫌う感情が募った、いつの間にか嫌いになっていた、そんな感じだろう。
嫌い……か。今までのあの子の態度からはそんなの微塵も感じ取れなかったけど。……まったく、つかさはいい子だ。だからこそ余計悩むはめになっているような気もするが。

ガチャンと家の扉が閉まる音が聞こえた。音というか、ドアが閉まる時独特の衝撃が部屋をがらんと揺らした。
もしかして、と思った。
(つかさが外に出た?)
カーテンを開けて確認する。そういえば、起きたときにカーテンを開けるのを忘れていたのか。
玄関先を覗く。……ああ、やっぱり。ドアの締め方がやたら丁寧だったから予想はついたが、つかさだ。どこかへ出かけるらしい。
それを確かめると、私はすぐに窓から離れた。つかさがこちらを覗き返してくるとまずいと思ったからだ。
(……今しかないか)
つかさの居ない隙を窺い、私は一階に降りて朝食をとった。中くらいの茶碗にお米を1杯、納豆1パック、作りおきの味噌汁1杯。いつあの子が戻ってくるかわからないので、気持ち焦りつつ。
……鬼の居ぬ間に洗濯、というものを幼稚園の頃以来久しぶりにやった気がする。
821 :大人になる 3/6 [saga]:2010/06/20(日) 17:00:14.43 ID:IsnPOI.0
夜。夕食は終わった。
両親や二人の姉はとっくに自分の部屋だ。私も既に風呂を済ませて、部屋で寝転んでいる。
ところで食卓では上手く乗り切れたのかといえば、まあ、その通りどうにかなった。でもそれはつかさがいないおかげだった。
母いわく、あの子は友達と食べてくるとのこと。友達というのは大学のサークルでできた同級生の友人らしい。料理研究会というだけに女子が多いようだが、男子部員もそれなりにはいるのだとか。
そういえばここ最近はそうして外に食べに行くことが多かった気がする。……私を嫌ってのこと、と考えるのは自虐的すぎるだろうか。
しかし、今までは友達と食べに行く時は私にもそう教えてくれていたのだが。今日はそんなことは一切私に断らなかったし、電話で連絡もして来なかった。
……ん? そもそも、今日私とつかさは、一言も会話を交わしていないのでは? そういえばそうだ。
もしかして、向こうにも悟られたのか? 私がつかさに対して及び腰になっていることを。
そうだ。まず私に挨拶をしに来なかったのがおかしい。私の部屋に寄りもせず、そのまま一階へ降りて行ったじゃないか。いつもなら朝起きたら真っ先に来るはずなのに。私の方が話しかけるのをためらっていたから気に留めていなかった。
何かあった。……やっぱり、向こうにも勘づかれたのか? きっとそうだ。それしか考えられる可能性はない。
そしたら、どうして私を避けるのだろうか? まあ、それも決まってるようなものかもしれない。……単純に、私が嫌いなので避けていると考えるのが、もっともらしいだろう。
青菜に塩とはこういうことか。もともと私は青菜のような存在ではないが。
きっかけは全然大きなことではないが、それでも私の精神的なショックはけっこう大きいかもしれない。
これからどれだけ心狭い生活が始まるんだろう、とか考えると……なんだかもうやりきれない。
嫌な未来の想像が頭で暴れる前に私は布団をまとわりつけた。



今日は私が真っ先に朝食をとって出かけた。
もちろんつかさの部屋に挨拶には行かないし、一緒に出かけようなんて声を掛けるわけでもない。
……仲直りを目論むならそうすべきなのかもしれないが、私はそんな勇ましい心を持ち合わせてはいなかった。
休日だが、今日は大学に行くつもりだ。図書館にでもこもって勉強をしていよう。それくらいしかやることが思いつかない。まあ、中間試験の近い科目もあるし。
駅前の人だかり。私はそれを横目に通り過ぎる。すると突然胸元で音楽が流れだした……携帯電話の着信音だ。
(誰?)
一瞬、もしやつかさでは、という期待と同時に、だったらどうしようという不安が起きかけたが、発信者の名前を見てすぐにそれは消し去られた。通話ボタンを押す。
「ああ、もしもし。どうした?」
「あーかがみん。おひさ。いやあ今日さー、久しぶりに遊ばないかなーと思ったんだけどさ」
こなたか。随分久しぶりに声を聞く気がする……確か一ヶ月ぶりだろうか。
遊ぶというのは、おそらく今日のことだろう。現在午前十時。こんな時刻から予定を取り付けるあたり、変わっていない。
「あーなるほどね。遊ぶってどこでよ?」
「んーどこでもいいんだけどさ、久々に四人で集まりたくなったっていうか」
「あー……」
四人、か。こなたに私にみゆきに……つかさ。
こなたやみゆきには、少し会ってみたい気もするけど……うん、今のような状況でそれはまず無理だ。つかさ抜きで三人で、なんて提案できるわけもない。
「えっと……なんていうか、今日は予定あんのよね。つかさも忙しそうだし、サークルとかで……」
「んーそっかあ」
残念そうなこなたの声。まあ当たり前といえば当たり前だが……こんな私情で予定を断るのも、少々申し訳ない気がする。
こなたはうーんと悩むような声。間が空く。
「まあ仕方ないか」
「うん、悪いけど」
「そうだねーじゃあ次は早めに電話するよ」
「そうねえ」
「ほんじゃ」
通話が切れる。なんだか随分あっさりした会話だった。
携帯電話をポケットに戻し、カードを使って電車に乗る。予定通り大学へ向かうのだ。……別に、他の何よりも優先順位が高いような予定でもないけれど。
822 :大人になる 4/6 [saga]:2010/06/20(日) 17:01:17.33 ID:IsnPOI.0
夜の食卓。今日もつかさはいない。
「なんか今日随分遅くなったんじゃない? 夕飯」
まつり姉さんがエビフライを咀嚼しながら言う。真っ先にそれに手を出すところも物を食べながら話すところも、まったく。
「あの子がいなかったからちょっと時間がかかっちゃってね」
母さんは苦笑い。
それにしても、二日連続で外食か。今までこんなことなかったけど……ある程度原因ははっきりしているし、今更驚くわけではない。
しかしそうすると、つかさはこれから毎日外食してくるつもりなのか? いくらなんでもそれは……
もしそんなことになったら、それはやっぱり私のせいなんだろうか。
「つかさもお年頃ねーとか言ってみたり」
「あーそれあるかも」
いのり姉さんやまつり姉さんは、どうしても話がそっちにつながるらしい。まあその可能性もなくはないが……
「ていうかつかさが彼氏なんかできたりしたら一番乗りなわけじゃん? 私らの中で」
「それはちょっと悔しい気がするわねー」
「あなたたちもそろそろそういうの落ち着いてほしいものだけど」
「もうお母さんー」
食卓の盛り上がりはいつもと変わらない。つかさはいないが、いたとしてもあの子はあまり喋らないし。私もくだらない会話は聞き手に回っていることが多い。
しかしこの状況、いつまで持つかわからない。つかさがいないのがまだ二日目だから、食卓はこうやって平常運転しているが……三日目、四日目となると、さすがにどうだ?
食卓がしんと静まりかえるなんてことはないだろうけど、大なり小なり皆つかさのことを案じ始めるだろう。そうすると私も何か問い詰められるのではなかろうか?
……ああ、最初の最初に恐れていたことだ。それが実現しかねない。
「ごちそうさま、風呂入ってくる」
「はーい行ってらっしゃい」
真っ先に席を立つ。別に、見かけは普段どおり。だが、もしここにつかさが入ってきたら──と考えると、早く去ってしまいたい気持ちが強い。
──やっぱり早くどうにかした方が、いいか?



風呂を上がってまっすぐ部屋に戻ると、私は電話をかけた。
「……あ、もしもし」
「お久しぶりです、かがみさん」
みゆき。私一人では解決出来そうにもない問題。今までこんな相談をしたことはなかったが、この際頼った方が楽だと考えた。
「……えっと、なんていうか、ちょっと相談があるっていうか」
「はい」
今朝のこなたの誘いを断ったこともある。家の中でのことに不安もある。できるだけ早く解決したい。
まとまりのつかない言葉で、私はみゆきに用件を説明した。こういうのが、けっこう難しいことを知る。頭の中で整理しきれていない事柄が山ほどあるようだ。
「…………」
無言になるみゆき。考えているのだろうか。
「……えっと、ですね」
「うん」
「少しお話したいことがあるのですが」
「……うん」
何となく身構える。とても重要なことを伝えますよ、と言わんばかりだ。一体何だろう?
823 :大人になる 5/6 [saga]:2010/06/20(日) 17:02:30.85 ID:IsnPOI.0
「先日、つかささんから電話をいただいたんです」
「……」
つかさから。それはもしや……
「……おそらく、二日前ですね。今と同じくらいの時間でした」
「……ああ」
なるほど。つかさはみゆきに相談していたんだ。となると、すごく気になることがある。
「……あのさ、何か言ってた? あの子」
わかりきっていることだが、やはり聞いてみないと気が済まない。
「……ええと、とても言いづらいのですが」
「もしかしてさ、その……『ウザい』とか」
「……言っていました」
やっぱりか。確信が持てた。なるほどそうだったか。あれだけあの言葉に振り回されておいて、いまさら納得するのもおかしいが……
「それさ、具体的にどんな相談だったの?」
「えっとですね……」
みゆきが話をまとめてくれた。
以前から、つかさは私の態度が鼻についていた。
今、少し嫌いになりかけている。
しかし、過去に頼り切りだったことを考えれば、嫌いになってしまうわけにもいかない……
「……随分義理深いのねあの子も」
「つかささんはいい人だと思います」
「……同感ね」
ほとんどのことが予想通りだった。ああ、やっぱりか……という安堵。
とともに、何か違和感を覚えた。私の後ろ……
「……あの、ちょっとごめん。一旦切る」
「え? あ、はい、ではまた」
通話を切断する。後ろを振り返ると、ほんの少しだが、やはりドアが開いている。そして、やっぱり。その隙間からつかさの視線。
夕飯をとっていたときはまだ家の外だったみたいだが……私が入浴している間に帰宅していたらしい。
ドアの隙間から見つめ合う。無言。お互い磔になったような空気。
やがてつかさがのこのこと私の部屋へ入ってきた。
「えっと……」
「……」
話しかけづらそうなつかさ。まあ当たり前だ。私も正直どう応対すればいいかわからない。
「とりあえず、あの、なんていうか」
「……」
「最初から、話した方がいいのかな?」
「……大雑把なことは、もう聞いてるけど」
「えっとね……」

はっきりといつからかはわからないが、おそらく高校を卒業してからだった。
学校も別々になって、私に依存することも減った。いよいよ自立してきたのだと思う。
そのために、私がまだつかさを子ども扱いして、事あるごとに注意を投げてくるのは、心底不快だった。
そして二日前、ついにそれをみゆきに相談してみたが、その最中、明らかに私の部屋から活動の気配が死んでいて、相談していることに気づかれたと思った。
相談した内容が内容だったため、私と顔を合わせるのが何となく気まずく、つい避けて行動してしまった。
サークル仲間と外食する機会が多かったのは、別に私が嫌いだからというわけではなくて、単に誘われることが多かったから。
しかし、今日外食してきたのは、私となるべく会わないようにするためだった──
824 :大人になる 6/6 [saga]:2010/06/20(日) 17:03:36.41 ID:IsnPOI.0
なるほどね。案外つかさも私と同じようなことを考えていたらしい。
しかしその原因はどうやら私にある。正直、まだつかさを未熟者の甘えん坊と思って見くびっていた。よく考えたら大学生にもなって自立心がないわけがない。
「やっぱりそうか……あの、なんていうか、ごめん」
素直に謝りたいという気持ちになる。今度からはもう少し対等に話すようにしよう。私の方が正しいとか、そんなことを考えるのではなく。
「いや、その……私もわがままだったから」
「そんなそんな。つかさも大人になったっていうか、そういうことだし。偉そうにする方がどうかしてた」
つかさは何も言葉を返さない。その代わり、少しだけ笑っていた気がした。
大人って言われたのが嬉しかったのかもしれない。



それから一週間後の土曜日。私たち四人は、繁華街を肩を並べて闊歩していた。
皆が均等に楽しめる場所といえば、カラオケにボウリングにファミレス。大きな本屋などには、皆で行ったりすることはなく。
意外と思われるかもしれないが、このコースを提案したのはこなただった。以前なら例によって、マンガのまとめ買いなんかに付き添わされたりもしたのだが。いわく、「さすがに自重しようかなー」とのこと。何に対する自重かははっきりしないが。
しかし、思えばあの時の電話で、私が四人で集まるのを断ったのを、こなたは強引に誘ったりもできたはずだ。それをせず、こちらの事情を察して素直に諦めたのは、もしかしたらこなたも大人びてきたのかもしれない。
「寒いねー」
「梅雨だからねえ」
四人が四人の傘を手に、歩く。
つかさが大人になり、こなたが大人になり。私も、なんとなく遠慮がちになった気がする。みゆきは、相変わらず、と言ったところだろうか。慎ましく麗しいのは、以前と全く代わり映えがない。
私たち四人の仲はこれからも続いていく。もう、何のいざこざも、言い争いもなく。十年後も二十年後も、こうやって歩くことができるだろう。

しかし、何の遠慮もなしになじみ合えていた、高校時代の四人へはもう戻れないかもしれない、そんな一抹の寂寥感が、風となって私の肩を吹き抜けていった。


825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/20(日) 17:04:56.15 ID:IsnPOI.0
投下終了。実はここに書きこむのは一年ぶりだったりもする。
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/20(日) 17:29:11.64 ID:qqu9xes0
えがったよ〜、かがみって結構繊細なんだよね〜意外なことに
かがみは動物で例えるとウサちゃんだし
つかさは自立してもつかさなんだろうなあ
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/20(日) 20:00:49.98 ID:UeO8urYo
乙〜
人は変わっていくものですよね、悪い意味ではなくても
多少関係は変わっても、4人の友情がずっと続くといいなと思います
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/20(日) 22:54:57.38 ID:PvXOkUSO

久しぶりに良い作品に出会えた
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/21(月) 01:42:07.82 ID:A/zbV8U0
>>808です
みんな凄いな。脱帽です。
連続して投下されたのを比べると自分の未熟さが目立ってしまう。
投下すべきじゃなかった。
オリキャラ出す前にらきすたのキャラを理解しないとだめだな。
もう一年以上書いているが口調の指摘が止まらなし、癖まで指摘されてしまった。
これが私の限界か。そんな気がした。
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 01:54:27.88 ID:uBWtPy.o
癖ってクエスチョンやエクスクラメーションのあとに句読点使ってること?
ぶっちゃけそれはヘンなことだから、自己顕示してるのでもない限り、なんでそんなことしてんだろって思われて当たり前だよww
文章規則のことなんて、文章作法の本一冊読むなりググるなりすればそれでおしまいだから気にすることじゃない。
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/21(月) 02:11:25.21 ID:QGoVQ/Io
>>829
最初の頃よりキャラに近くなってていいと思うぜ
内容は相変わらずいいしな。おつおつ
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/21(月) 03:48:10.27 ID:viVDxnw0
>>829
癖は別に悪い意味で指摘した訳じゃないなりよ
単にあ〜、いつものあの人のだなって感じなだけで
誰しも癖がある訳で、気にすることじゃないと思う
プロの作家さんだって癖があって、それが個性としてみられるんだしさ
キャラの口調はほんと難しいと思うよ、だって既に居るキャラに、今まで想定されてない台詞を言って貰うんだもの
しかも、TPOや感情に依って変えるとなると尚更かと
読んでて面白いから、そんなに気に病む事はないんじゃないかな
って、みかさはみかさは進言してみたり
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/21(月) 08:03:01.28 ID:nE..q.SO
キャラの口調等は慣れるのが一番だと思うんで、長編にこだわらずに二〜三キャラしかでないような短いのを書いて煮詰めてみるのも良いかもしれません。
文章に関しては、俺は文法とかまったく気にせず書いてるのでなんとも言えません。
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/21(月) 21:26:07.10 ID:A/zbV8U0
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ここまでまとめた

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>>830-833
すみません。やな事があり、自己嫌悪になってただけした。気にせずスルーをお願いします。お騒がせしました。
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/21(月) 22:58:21.07 ID:B.mNtnI0
まとめ乙
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/21(月) 22:58:53.14 ID:hH4jRcAO
まとめ乙

7/5より第19回コンクールを開催予定です6/24までお題を募集しますので、避難所コンクールお題スレまで!
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/22(火) 14:50:55.60 ID:GzeAFkc0
こなた「きっとさ、私たちの中には『もう一人の自分』がいてさ、
     例えば勉強してるときに『勉強したくないー』って言ってる自分がいたり、
     マンガ今日は買うのはやめとこうって決めたのに『やっぱ買いたいー』とか言ってる自分がいたり、
     外出てるときふと気づいたら目の前に自分がいたり」

かがみ「最後のはドッペルゲンガーか何かじゃないのか」
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2010/06/22(火) 20:43:37.96 ID:D4A1oZY0
>>837
かがみ「いやいや、ドッペルゲンガーなんている訳ないでしょ」
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/22(火) 21:50:10.93 ID:a147s7E0
直接会ったら殺されるから寧ろ存在して貰っては困る
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 18:58:18.33 ID:D4TJRoSO
−梅雨の定番−

つかさ「昨日、後で食べようって置いてたお饅頭にカビがはえてたの…」
こなた「うへ…」
みゆき「この時期は大変ですね…」
かがみ「美味しかったらいいんだけど、食べてもまずいだけだしね…」
つかさ「え」
こなた「え」
みゆき「え」
かがみ「え?なに?」
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/23(水) 19:13:43.64 ID:PFBlvK6o
>>840
かがみ、お前……


現在第19回コンクールお題募集中! 締め切りは明日、24日の24時となっております
避難所コンクールお題雑スレまで↓
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/auto/5330/1187012201/
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 19:40:37.69 ID:LEt2qKk0
>>840
悪食かがみ
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 20:37:28.87 ID:MamYZXg0
こなた「そういえばみゆきさんって家はネットにつながってないの?」
みゆき「あ、はい、つなげていませんが……
     この時世にはつなげていない家庭の方が珍しいと聞きますね」

こなた「つなぐ予定とかはないんだ?」
みゆき「今のところありませんが……つなげた方が良いのでしょうか?」

こなた「ああいやいや、つなげてほしいわけじゃないんだけどね」
みゆき「?」

こなた(みゆきさんが万が一にもニコ動なんかにはまっちゃったら……
     ものすごい勢いでスラング覚えそうで怖いし)
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 21:46:08.79 ID:gdJbQjU0
−ぶっとばせ ゆい姉さん−

 たいへん 町の銀行が強盗に襲われたよ いったいどうなるの?

強盗「おらー さっさと袋にカネ詰めろ―!!」
行員「は、はいぃぃぃぃぃー」
ゆい「やめなさい!!」
強盗「な、なんだてめー!? 動くんじゃねー!!」
ゆい「おとなしく銃を置いて両手を挙げなさい!!
   さもなくば、この爆弾を爆発させる!!」
強盗「!?」

 ゆいの体には驚くほど大量のプラスチック爆弾が巻かれていた

強盗「お、おい!! そんな事したらどうなるか判ってるのか!?」
ゆい「んー、ここにいる人たちはおろか建物ごと木端微塵になるかな?」
強盗「て、てめーそれでも警察か−−−−−−!?」

 何度かノリと勢いでスイッチを押しそうになるゆいを強盗は必死に説得した
 その間に警官隊が突入し強盗を取り押さえた 
 強盗は抵抗しなかった…

ゆい「ってな感じでこの前は大活躍だったんだよ」
こなた「それって脅迫じゃないの? そもそも姉さん交通課でしょ?」
 
845 :じゃのめ [saga]:2010/06/25(金) 00:12:06.03 ID:dPmiOYE0
ふと思いつきで書いたSSの投下行きます。

思いつきなんで短いです。
846 :じゃのめ [saga]:2010/06/25(金) 00:12:37.99 ID:dPmiOYE0
「あーめあーめふーれふーれ、かーさんがー♪じゃのめーでおむかーえ、うれしーいなー♪」
 降りしきる雨の中。一つの傘で一緒に歩く幼いこなたの歌声に、そうじろうは目を細めた。
「こなた。その歌は?」
「きょうのおうたのじかんにうたったの。ねえおとうさん」
「ん、なんだ?」
「じゃのめってなに?」
 こなたの質問に、そうじろうは難しい顔をした。
「んー…こなたにわかるかなあ…じゃのめってのはへびの目のことで、歌のは蛇の目傘のことをさしてるんだよ。蛇の目傘ってのは和傘で蛇の目模様がついたのをそう言うんだ」
「う、うーん?」
「はは、やっぱ分からなかったか」
 頭の上にクエスチョンマークを浮かべるこなたに、そうじろうは可笑しくなって笑ってしまった。そのそうじろうのズボンをこなたが引っ張った。
「ん、なんだこなた?」
「へびなんだよね?」
「そうだよ」
「へびこわいよね?なんでそんなのかさにつけるの?」
「え、あー…は、ははははははは」
「えー。なんでおとうさんわらうのー?」
 こなたの勘違いに、そうじろうは大きな声で笑い続けた。



― じゃのめ ―



847 :じゃのめ [saga]:2010/06/25(金) 00:13:51.18 ID:dPmiOYE0
「よく振るねー」
 そう呟きながら、肩を引っ付けて歩くつかさにこなたはうなずいた。
「う、うん。だからもうちょっと寄ってよつかさ」
 梅雨のある日。こなたは傘を忘れたつかさと一緒に帰ることになったのだが、こなたの体格にあわせた傘に二人はいるのは難しく、お互い肩を濡らしながら歩くことになってしまっていた。
「そういえばこなちゃん、じゃのめって知ってる?あーめあーめふーれふーれって歌に出てくるの」
 急につかさにそう聞かれて、こなたは首をかしげた。
「じゃのめ…えっと、なんだっけ。たしか、傘のことだったような…」
「うん、そうそう。蛇の目傘っていって、目玉みたいな丸い模様の付いた傘のことなんだって。わたし、ずっとなんだか知らなかったんだけど、昨日ゆきちゃんが教えてくれたんだ」
「あー、思い出した。幼稚園くらいにお父さんに聞いた気がするよ」
「へー、おじさん物知りなんだね」
「意外とね…まあ、噛み砕かないで説明されたから、ちゃんと意味理解したのずっと後だったよ」
「そうなんだ」
 その後、二人はしばらく無言で歩いていたが、こなたが急に口を押さえて笑い出した。
「え?え?なに?こなちゃんどうしたの?」
「い、いや、ちょっと思い出して…わたし、じゃのめの事教えてもらったとき、蛇がそのまま傘についてるって勘違いしたんだよ。なんでそんな怖い傘で迎えにくるんだって」
「ぷっ…あははははっ」
 こなたの話を聞いたつかさも笑い出した。
「いやー、子供ってなんかとんでもない勘違いするよねー。自分の事ながら呆れるよ」
 しばらく二人で笑った後、こなたがそう言うとつかさがうなずいた。
「そうだねー」
 つかさが少し間延びした声で答えると、こなたは急に立ち止まった。
「わっ…こ、こなちゃん?どうしたの?」
 歩く勢いを止められず、傘を持ったままこなたを置いて前に出てしまったつかさは、慌てて傘をこなたの頭上に戻した。
「ん…あ、ごめん。ちょっと何か思い出しそうでさ」
 こなたはそう言いながら、自分の頭上の傘を見上げた。

『ねえ、おとうさん。そんなこわいかさでおむかえきても、おかあさんだったらうれしいのかな』

848 :じゃのめ [saga]:2010/06/25(金) 00:14:49.25 ID:dPmiOYE0
 思い出した言葉に、こなたは思わずうつむいてしまった。
「…こなちゃん?」
 つかさが心配そうにこなたの顔を覗き込む。
「ん…あ、いや、なんでもないよ、つかさ」
 こなたは顔を上げてパタパタと手を振った。
「そう?だったらいいけど…」
 そう言いながらも心配そうな顔を崩さないつかさに、こなたは軽いため息をついた。
「…ねえ、つかさ。あの歌みたいに、雨の日にお母さんが迎えに来てくれたら、やっぱり嬉しかった?」
「え?うん、それは…嬉しかった…よ」
 つかさは、こなたの問いに答えようとしてこなたの家庭事情を思い出し、途中から声を詰まらせた。
「そうだよね…うん、まあへんなこと聞いてごめん」
 こなたはそう謝り、つかさが持っている傘の柄を掴んで歩き出した。
「…ねえ、こなちゃん…わたしはお父さんでも嬉しかったよ」
 それに引きずられて歩き出したつかさが、こなたにそう言った。
「かがみお姉ちゃんでも、まつりお姉ちゃんでも、いのりお姉ちゃんでも…迎えに来てくれたら、嬉しかったよ」
 こなたはつかさの言葉を聞きながら、また一つ思い出していた。

『…なあ、こなた。やっぱり、俺よりお母さんに迎えに来て欲しいか?』
『んーと…どっちでもいい。おとうさん、ちゃんとむかえにきてくれるもん』
『…そうか』

「…うん、そうだよ」
 あの日の父親にそう答えながら、こなたは思い出させてくれたつかさの手を軽く握った。
「え?なに?こなちゃん、今度は何?」
「なんでもないよ」
 今度は笑顔でそう言いながら、こなたは少し足を速めた。


― おわり ―
849 :じゃのめ [saga]:2010/06/25(金) 00:15:47.53 ID:dPmiOYE0
以上です。

俺がじゃのめの意味を知ったのは中学くらいの頃でした。
それまではミシンの事だと思ってました。
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/25(金) 01:50:37.60 ID:dPmIDg6o
★らき☆すた★

25日になりましたので、第19回らき☆すたSSコンクールのお題投票を開始します

書いてみたい、読んでみたいものに一票入れてください
締め切りは27日24時となっております
http://vote3.ziyu.net/html/odiex9.html
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 08:35:12.16 ID:sDFKqyU0
>>849
えがったよ〜、こなたとつかさのやりとりはほのぼのするよ〜
じゃのめの意味を読んで知ったよ

>>850
乙であります
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 16:44:28.42 ID:1lAFXrM0
かがみ「あっクソッ」
こなた「あ〜操作ミスってムカつくよね〜」あるある

こなた「私も小学生のときとかずいぶん操作ミスとかしててさ〜」
かがみ「なんだコトローラでも投げたのか?」

こなた「いやいやまあそうじゃないんだけどさ、
     自分で操作しても絶対ミスるからなんか自動的に操作してくれる機械があったらな〜とか思ってて」

こなた「そしたらすごいラクそうじゃん!? ってね」
かがみ「ゲームの意味が無いだろ」自分でやるから楽しいんだろうに
853 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 17:48:28.55 ID:tmPLAWI0
>>852
 みゆき「それなら『コマンドスティックPSカスタム』というのはどうでしょうか。
     Amazonでは今でも販売されていますし
     コントローラ変換アダプタを使えば最近のゲームにも使用可能ですよ。」

 つかさ(なんで知ってるんだろうゆきちゃん・・・)
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/25(金) 19:52:19.30 ID:f8ClWEM0
Wikipediaゲーマーみゆき
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/26(土) 20:03:24.83 ID:DPZdz620
ひより「この前4コママンガに挑戦してみたんだけど意外と難しくてね〜」
ゆたか「そっかー大変だったねー」

ひより「この前4コマ描いてみたんだけどね〜」
みなみ「そう……」

ひより「そんでこの前4コマとかやってみたんスけど……」
こう「あー、あれ難しいよねネタとか詰まるし」

ひより「うおおおやっぱりわかってくれるのはこーちゃんだけッス!!」
こう「なんだなんだ、なんか鬱なことでもあったのかー」
856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/27(日) 08:17:05.08 ID:Sk9cJtA0
>>855
このスレに投下するようになって書いている人の気持ちが分かるようになってきた。
同じ境遇にならないとなかなか共感は得られないよね。
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/27(日) 08:40:03.06 ID:Sk9cJtA0
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/27(日) 11:48:33.27 ID:cQ9JX/I0
>>857
まとめお疲れ様です。
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/27(日) 17:31:14.87 ID:Sk9cJtA0
短編投下します。即興的に書いたので期待はしないで下さい。
860 :蒲公英 1 [saga]:2010/06/27(日) 17:32:58.75 ID:Sk9cJtA0
 こなた「みんな、私達って何の為に生きてるのかな?」
 
 お昼休み、突然言い出した。かがみさんは飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。つかささん食べる動作を止めてこなたを見た。私も何も準備が出来て
居なかったので戸惑った。
かがみ「バカ!、唐突に何をいいだすんだ、お茶噴出しそうになったじゃないか」
つかさ「どうしたの?何かあったの?」
泉さんは普段そんな話はしないせいかかがみさんは半分冗談と思ったのだろうか。つかささんも心配そうに泉さんを見ている。
こなた「私がそんな質問するのおかしいかな」
かがみ「……そうね、普段のこなたからは思いもよらない質問だ、昼休みにいきなりそんな哲学的な質問をするなんて」
少し間が空いた。
こなた「で、答えられるかな?」
真剣な顔で話す泉さんに私達は気付いた。冗談で質問をしていることではないことは分った。
かがみ「目的の為に生きているのよ、日々努力してその目的、目標に向かってね、こなただってこの高校入るのにそうしてきたんじゃないの」
泉さんはかがみさんの話を聞き終わると今度はつかささんの方を向いた。
つかさ「……私?そんな難しいこと分らないけど、幸せになる為、じゃないかな……」
こなた「つかさは今、幸せなの?」
つかさ「うん」
満面の笑みでそう答えた。泉さんは今度は私の方に向いた。しかし私は答えなかった。二人の答えとは違っていたから。
こなた「みゆきさんらしくないね……さて、食べ終わったし、少し風を浴びてくるよ」
泉さんは立ち上がり教室を後にした。かがみさんは驚いて私に話した。
かがみ「さっきのこなたは驚いたけど、みゆきも驚いたわね、いつもの薀蓄はどうしたのさ」
みゆき「私はお二人とは違った答えでしたので、泉さんが混乱されといけないと思いまして」
かがみ「こなたはその答えを期待してたんじゃない?私達の答えは在り来たりだったからね」
つかさ「でも、そのくらいしか答えようないよね?」
かがみ「そうね、でも今のこなたには私達の答えは酷だったかもね……柄にもなく黄昏ちゃって、何があったのかしらないけど、みゆき、行ってあげなさいよ、
     こなたの所に……待ってるわよ」
みゆき「と、言われましても、どちらへ行かれたのでしょうか?」
かがみ「風を浴びると言えば屋上しかないでしょ」

 かがみさんの言われるままに私は屋上に向かった。本当に泉さんは屋上に居た。かがみさんの洞察力に感心してしまった。
泉さんは屋上から校庭を見下ろしていた。
みゆき「泉さん」
こなた「あれ、みゆきさん、どうしてこんな所に?」
自分の意思ではなくかがみさんに言われてここに来た。なんて言っていいか分らなかった。
こなた「ふふ、どうせかがみに言われてここに来たんでしょ、私が変な質問するから」
微笑んでいる。
みゆき「その質問のことなんですが……」
こなた「ああ、あの質問ね……あれは、何でもないよ、ちょっと皆の考えを聞きたかっただけだから、気にしなくてもいいよ」
泉さんはまた校庭を見下ろした。
861 :蒲公英 2 [saga]:2010/06/27(日) 17:34:13.73 ID:Sk9cJtA0
みゆき「そうですか、かがみさんも気になされていましたので、でも、その様子でしたら問題なさそうですね」
私は教室に戻ろうとした。
こなた「みゆきさん、帰っちゃうんだ」
みゆき「え?」
こなた「まだ、みゆきさんの答え聞いてないよ」
かがみさんに言っていたことは本当だった。泉さんは私の答えを聞きたがっていた。
みゆき「私の答えはたいした事はありません、聞いても参考にならないと思いますが、それに泉さんの質問の真意が分りませんので……」
泉さんは黙ってしまった。
みゆき「恋愛、失恋、将来の期待と不安、いじめ……もっと漠然とした不安なのかもしれません、そのような事でしたら誰にでも起きうる事です、大人になっても
     消えることはないと思いますが」
こなた「そんなんじゃないよ、ただ、何で私が居るのかなって、居ても居なくても何も変わらないような気がして、私の居る意味が無いような気がして」
みゆき「自分の存在意義を疑っているのですか」
また泉さんは黙ってしまった。なんて言ったらいいのだろうか。いい加減な事を言えば余計に泉さんを傷つけしまう。
みゆき「居ても居なくてもと言うのであれば、泉さんはもう既に多大な影響をこの世界に与えていると思いますが」
こなた「なぜ」
みゆき「昨日泉さんが買った漫画は人気で売り切れらしいですね、泉さんが居なければ、泉さんの買った漫画は誰かの手に入っていたはずです」
こなた「それはそうだよ、当たり前じゃん」
みゆき「泉さんが居なかったら、この高校に入学できた人が一人居たことになります、その人は今頃どうしているでしょうか、別の高校に入学したのか、
     それとも就職したのでしょうか……」
こなた「……それはみゆきさんも同じじゃないの?」
みゆき「そうですね、だから私達は知らないうちに、誰かに影響を与えているのです、それが泉さんが居ると言うことなのではないでしょうか」
こなた「なんか私が居ると悪いような例だね……」
みゆき「それはどうでしょうか?、漫画の事はそうかもしれませんが、この高校、陸桜に入学しない事が悪いことだとは思いませんが、入学できなかった人、
     もしかしら、この学校では出会えなかった人に会ったり、もっと素敵な出来事が起きているかもしれません」
こなた「私はこの学校に居て良かったのかな」
みゆき「泉さんが居なかったら、楽しいお昼や、今、こうして私と話すことはありませんね」
こなた「それだけ、私って、それだけなんだ……」
みゆき「本当にそう思っているのですか、それが私にどれだけの影響を与えているのか」
また泉さんは黙ってしまった。いったいどうしたというのか。
みゆき「いったい何があったのですか、泉さんらしくありません」
それでも泉さんは答えようとはしなかった。何が泉さんにそうさせているのは分らないけど、何をしようとしているのかは分った。あの時と同じ。思い出した。

みゆき「泉さん、もしかして死のうとしていませんか?」
泉さんは驚いた顔で私を見た。
こなた「まさか、そんな……ことないよ」
元気ない答えだった。
みゆき「今、死ぬのは楽です、いえ、本当に楽かどうかは分りません、死んだ後、どうなるか語れる人はいません」
こなた「みんなそう言うよね……」
みゆき「いずれ、何もしなくても皆死んでしまいます、二百年後、今、ここに居る全ての人は居ないでしょう」
こなた「それなら、今死んでも、寿命で死んでも同じだよね」
みゆき「本当にそう思います?」
返事はなかった。
862 :蒲公英 3 [saga]:2010/06/27(日) 17:35:39.33 ID:Sk9cJtA0
みゆき「それを見てください」
私は屋上の足元を指差した。
こなた「何?、何もないよ」
不思議そうに泉さんは足元を見た。
みゆき「そこにあるものです、わかりませんか」
コンクリートとコンクリートの隙間に僅かにある土、そこにタンポポが生えていた。綿毛を蓄えた茎が一本。
こなた「タンポポ?」
みゆき「そうです、不運にもこんな所に種が落ちたのですね、コンクリートの隙間……根も満足に張れず、水も足りずにいたでしょう」
こなた「よくここまで育ったね、凄いね」
みゆき「これが、目的です」
こなた「目的?何の?」
みゆき「私達の目的です、生きること」
こなた「今、生きているじゃん」
みゆき「私達は生き物ですから、生きるのが目的です、努力とか、幸せとかはその手段にすぎません」
また泉さんは黙ってしまった。

こなた「生きていても良いこと無いよ」
みゆき「そうですね、でも、生きていないと良い事も起きませんよ」
泉さんはタンポポを見ている。
こなた「このタンポポは良い事なんて一度もないんだね、可哀想だ」

みゆき「そう思いますか、このタンポポは綿毛を付けてますね、この綿毛が風に飛んでどこか広場の土に降りれば今度はしっかりとした根をおろすことができます」
こなた「でも、またどこかのコンクリートに降りちゃうかも」
みゆき「それも生きていないと確かめられませんね、どうせ死ぬならそれを確かめてからでも遅くはないかと」
こなた「確かめるって何時まで?」
みゆき「死ぬ時まででです」

 泉さんはずっとタンポポを見ていた。
出入り口の方から足音が聞こえてきた。
みゆき「迎えにきましたよ、戻りましょ」
こなた「迎えに?」
出入り口につかささんが立っていた。
つかさ「こなちゃん、何してるの、来ないから心配になっちゃったよ」
こなた「つかさ……」
少し遅れてかがみさんがやってきた。かがみさんは黙って泉さんを見ていた。

こなた「いや、何でもないよ、ちょっと屋上の景色が良かったから眺めていたんだよ」
つかささんは泉さんの手を取り、教室の方に連れて行った。かがみさんと目が合った。かがみさんは私にウインクで合図をすると泉さんと一緒に教室にもどった。

 ほっと一息。何気なく私もタンポポを見た。
みゆき「まさかあなたに二人も救われるなんて……かがみさんの時は黄色い綺麗な花を見せてくれたましたね……いいえ、三人かも、私も加えると……
     私の時は青々とした葉を見せてくれました」
私は何も出来ませんけど、せめてものお礼です。私はタンポポの綿毛の茎をもぎ取り、口から思いっきり息を吹きかけた。
タンポポの綿毛は行きよいよく飛び散った。綿毛は風に乗り屋上から飛んで行った。丁度そこに昼休みが終わるチャイムが鳴った。

どうか全ての種が土に降りますように。


863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/27(日) 17:36:48.11 ID:Sk9cJtA0
以上です。
この前の『偶然』では最後、ふざけてしまったので今度は少しまじめに書いてみました。
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/27(日) 17:48:44.65 ID:xnz26g.0
ニコニコ動画
こなた「おっ追ってるシリーズの新作が来てる」

こなた「早速チェック……」カチカチッ
『動画に接続できませんでした』

こなた「えーウソ? ちぇっリロードして……」ポン
『動画に接続できませんでした』

こなた(チクショー!! これは運営(ニ◯ンゴ)の罠かっ!?)
     おめえに見せる動画はねえという罠かーーーっ!?)
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/27(日) 22:10:22.60 ID:EHEq/K20
>>857
まとめ乙

>>863
同じタンポポに三人とも救われたのですね


866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/28(月) 00:19:22.64 ID:psz4yd.o
★★★らき☆すた★★★

27日になりましたので、お題投票を終了します。
今回のお題は『月』に決定いたしました。
皆さまの投稿をお待ちしております!

投稿期間は7月5日(月)〜7月18日(日)24時までとなっていますのでご注意ください。
投票結果↓
http://vote3.ziyu.net/html/odiex9.html

★★★らき☆すた★★★
867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/28(月) 00:21:38.11 ID:8Mbf/3U0
月か 予想もしてなかった。 
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/28(月) 01:18:24.93 ID:dUoXQ.SO
こなた「つーきやこんこん♪あーられやこんこん♪」
かがみ「…突っ込まないわよ」
869 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/28(月) 07:16:10.96 ID:gGDyecSO
月「計画通り」
こなた「!?」
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/28(月) 07:44:13.87 ID:EzP4InI0
かがみ「ライト、よく気付いたわね」
月「…」
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/28(月) 21:20:30.52 ID:7Nc3W6AO
みさお「拙者の顔に照り映える、月の光が、お主のこの世の見納めでござる!…なんて昔やってたなぁ」
かがみ「チャンバラしてた上に渋いことしてたんだな」
こなた「お、円月殺法?いいねぇ。乱舞の太刀よかそれだよね」
かがみ「…まて、お前元ネタの方だって理解してるか?」
あやの「柊ちゃん、ヲタクをよく理解してるのね。私さっぱりわかんないんだけど」
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/28(月) 22:03:25.07 ID:Kz.KZwQ0
次回の題材は「あやの」に個人的に決定
あのおっとり感がなんともたまらん
かなたも好きだし、こなたも好きなし、つかさも好きだけど
「あやの」が主人公なSSを読みたい是非読みたい
つうことで、誰か書いて
873 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/28(月) 23:06:50.90 ID:gGDyecSO
まとめにあるやつは読んだのかい?
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/28(月) 23:53:47.65 ID:N1aukoAO
test
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/01(木) 00:48:54.24 ID:bp60nao0
静かだ。コンクール期間中は書き込みが少なくなるね
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/01(木) 04:45:56.22 ID:Ux2K6qk0
小ネタのアイディア思いついてるのに形にならないから書けないの
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/01(木) 21:25:03.63 ID:EdxewTk0
みゆき「ふう 暑いですね」 フキフキ
黒井 「高良!それハンカチやない!万札や!!」
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2010/07/02(金) 00:45:15.03 ID:dUy7GUM0
>>877
ふゆき「あら、高良さん。そんなもので拭いて・・・」 フキフキ
黒井 「そうや・・・って、天原センセ、それ高良グループの株券ですよ。」
みゆき「・・・・・・・・・」





次回「開戦」
ご期待しないで下さい
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/02(金) 09:40:45.61 ID:m2wQ8Tk0
株券は電s…

みゆきさんは困った時の反応が良いよね
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/02(金) 22:34:07.63 ID:OVESanw0
>>877
これだからボンボンはwwwwww
きっと次は明かり変わりに燃やすぞwwwwww
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/03(土) 05:15:56.52 ID:p/kgQwAO
>>878
あやの「要するにお二人共、ハンカチを用意してくるの忘れただけじゃ…」
みさお「え?ならアタシと同じなんだ」
あやの「みさちゃんのは制服の左ポケットの中よ。ほら、服で手を拭かないの」
882 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/03(土) 19:08:23.20 ID:gpgCVck0
黒井「高良、まさか燃やして明りにしてへんやろな?」
みゆき「いえ、それは祖先がすでにやってやっておりまして」
つかさ「あの絵の人ゆきちゃんのご先祖様だったの!?」
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/03(土) 20:05:25.55 ID:QFP5HsY0
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/03(土) 20:23:22.01 ID:GZ7uwQE0
まとめご苦労様で御座いました
885 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/04(日) 12:11:32.50 ID:6rW0eYc0
そういえば今回のコンクールの景品もツンデレ?
886 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/04(日) 12:28:14.66 ID:PertLAAO
あの景品は言い出しっぺがいたからな。ないでしょ。
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/05(月) 00:22:14.16 ID:cesLFeYo
それでは、これより第19回らき☆すたSSコンクールを開催いたします。
投稿期間は本日、7月5日から7月18日まで、投票期間は7月20日から7月26日までとなっております。
皆さんの作品を楽しみにしています!

コンクール参加に関しての詳細はこちらへ。
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/72.html
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/05(月) 00:29:40.72 ID:qHe/g6U0
開催宣言乙です。
さっそくコンクール作品投下行きます。
889 :月下の狂走曲 [saga]:2010/07/05(月) 00:30:41.11 ID:qHe/g6U0
 狼男の伝説のように満月が人を狂わすという話はよくあるが、満月ははたしてスピード狂の血をも目覚めさせるものなのだろうか?



 助手席からスピードメーターを見ると、時速200kmを超えたところだった。
「後続、脱落します」
 運転席の上司、成実ゆいにそう告げる。
「了解。無理せずついてきてって言っといて」
「了解です」
 警察無線でその旨を後続車に伝える。
 後続のパトカー2台は国産車ベースであり、スピードリミッターの解除はしてない。設定をいじって200kmまでは出せるようにしてあるが、それが上限だった。
 それゆえ、200kmに近づいた段階で無理な追跡はしない運用になっている。これは無理な追跡で一般車を巻き込むような事故を誘発しないためでもある。
 しかし、埼玉県警高速道路交通警察隊の中では数少ない外車ベースであるこのパトカーだけは、スピードリミッターがついていない。制限速度超過車追跡仕様車──隊の中では「成実専用車」と通称されていた。
「久々に骨のある族だねぇ」
 彼女はまるで世間話でもするかのような軽い口調でそう言った。


 成実専用車は、現在、サイレンをけたたましく鳴らしながら、暴走族の集団を追跡中であった。
 既に、減速して最寄のパーキングエリアに入るように三度通告していたが、応じる気配はまったくない。

890 :月下の狂走曲 [saga]:2010/07/05(月) 00:31:47.88 ID:qHe/g6U0
 族の車の加速はとどまるところを知らない。
 彼女はさらにアクセルを踏み込んだ。メーターが指し示す速度は、250kmに迫っていた。
「ところで、ナンバープレートは撮れたかい?」
「後ろの3両は撮れたはずです。スピードも継続的に計測中です」
 車載のビデオカメラと速度測定器は正常に動作している。デジカメでも何枚か写真は撮っている。証拠は充分なはずだ。
「了解。じゃあ、もっと近寄って前の車も捕捉しようかね?」
「危険なのでやめた方がいいと思います」
 真夜中の高速道路。一般車両の通行はほとんどないとはいえ、トラックはちらほら見受けられる。
 暴走する族の集団の中に無理に突入すれば、事故を誘発することにもなりかねない。
「そうかい? まあ、愛すべきお偉いさんたちに冷や汗かかせるのもなんだし、自重しようかな」
 既に部下は冷や汗をかいているのだが……。
 自分でハンドルを握っているなら、また違っていたかもしれない。時速何百kmでコースを駆け回るレーサーも、他のレーサーが運転する車の助手席に乗って同じコースを回ると、恐怖のあまり嘔吐することがあると聞く。今の状態はそれに近い。
 どれだけの速度になろうとも、族の最後尾車両との車間距離はぴたりと維持されていた。この辺のテクニックは、やはりさすがだとしかいいようがない。
 彼女はトラックをすいすいとかわしつつ、追跡を続けていた。軽く鼻歌を歌いながら、実に楽しそうだ。
 メーターは295kmを超え、まだ上がり続けている。
「300行っちゃうよ♪」
 これで人妻なのだから恐ろしい。この暴走女を妻に選んだ男の顔を一度見てみたい。


 それでも、彼女の若いころを知る者たちはみな口をそろえてこう言う。
「若いころに比べればマシになった」
 若いころは、速度違反車や追い越し車を見つけると、二重人格かと疑うぐらいに性格まで豹変していたそうだ。

891 :月下の狂走曲 [saga]:2010/07/05(月) 00:32:13.63 ID:qHe/g6U0
 時速300km超えで突っ走った時間は1分にも満たなかったが、感覚としては長く感じられた。
 ふと気づくと、徐々に減速している。族たちが速度を落とし始めたのだ。
「次の次のインターチェンジあたりで降りる気だね」
 警察無線を手に取った。
 各警察署の応援も受けて、阻止線を張れるように各インターチェンジにパトカーを集結させている。そこに連絡をつける。さらに後続車にも連絡をとらねばならない。

 インターチェンジの料金所に続く道を減速しながら突き進む。
 料金所をパトカーでふさがれた族はUターンして逃げようとしたが、彼女は巧みなドライビングテクニックで牽制して逃がさない。
 やがて、後続のパトカーもやってきて、族の車両を完全に封じ込めた。
 車から降りてなお逃走しようとする族たちをほぼ総出で捕縛する。

「うーん。今日はお月さんがきれいだねぇ」
 彼女はパトカーの横で、脳天気にそんなことをいいながら、腕を伸ばして体をほぐしていた。
 今日は快晴。きれいな満月が空に浮かんでいる。
 とはいっても、公務遂行中とあっては、それを愛でてる暇はない。
 手錠をかけた族をパトカーに押し込む。
 と、その族が彼女を見て、
「あっ、てめー、ナル公じゃねぇか!」
 そう叫んだ。
「おや、いっちゃんじゃないか。君、まだ族なんてやってたのかい? いい歳なんだからいい加減就職しなよ」
 交通畑の経歴が長いと、顔見知りの族というのも珍しいものではない。
「うるせぇー! 余計なお世話だ!」



 族を乗せての復路は、追跡時の暴走ぶりが嘘のように法定速度運行だった。
892 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/05(月) 00:32:48.51 ID:qHe/g6U0
以上です。
893 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/05(月) 07:38:31.04 ID:A2JQk8E0
乙であります!
ゆい姐さん良いよな〜
ゆい「思い出もブッちぎってきちゃった♪」
がツボ
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:14:14.71 ID:Hqfkhxco
ゆいねえかっけー
300kとか新幹線くらすじゃないか
895 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/07(水) 00:45:13.35 ID:lc813Qk0
お誕生日おめでとう!つかさ他一名
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/07(水) 12:29:22.97 ID:BRz39MSO
−誕生日−

こなた「今日は七夕だねー」
みゆき「そうですね」
こなた「…んー」
みゆき「どうかなさいましたか?」
こなた「いやね、なにか七夕の他に何か大事なことがあったような…」
みゆき「言われてみれば…なんでしょうか…」
かがみ「ういーす」
つかさ「おはよー」
こなた「お、おはよ(二人の誕生日だった!)」
みゆき「お、おはようございます(お二人の誕生日でした!)」
かがみ「今日は七夕よね」
こなた「そ、そうだね」ドキドキ
みゆき「そ、そうですね」ドキドキ
かがみ「でも、他になんかあったような気がするのよねー」
つかさ「うん。わたしもそんな気するよー…なんだったっけ」
こなゆき「「当人達も忘れてるー!?」」





かがみ「…で、その夢で思い出して今頃やってきたと」
こなた「…はい」
かがみ「まったく…まあ、いいわ。みんな待ってるから上がって」
こなた「あ、あれ?怒んないの?」
かがみ「誕生日くらい寛大になるわよ………ま、絶対来るとは思ってたけどね」
こなた「え?なに?」
かがみ「なんでもないわよ」
897 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/07(水) 14:42:28.14 ID:R6xsCDs0
早速、コンクールエントリー作品を投下したいと思います。

タイトル:優しき月光
主演:パティ、ゆたか、みなみ、ひより

では、ご覧ください。
898 :優しき月光 [sage]:2010/07/07(水) 14:44:23.94 ID:R6xsCDs0
月には古今東西様々な逸話も存在する。西洋なら狼男等があり、日本なら竹取物語等が存在する。
そんな月に人類がたどり着いたのは、今から40年以上も遡る昔の話だ。

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優しき月光
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五月上旬。ゆたか達が三年に進級して、約一ヶ月が過ぎた。
見た目は年齢にクエスチョンマークが付きそうな程の小柄なのだが、これでも陵桜高校の生徒会長を勤めているのだ。
「ふぅ…」
ゆたかは、目の前に有るプリントを見て大きな溜め息を吐いた。
「…ゆたか、どうかしたの?」
今一つ覇気の無い表情を見て、みなみは声をかけた。
「あ、みなみちゃん…」
ゆたかはみなみに視線を移した。
「…悩んでるの?」
ゆたかを見て、みなみは心配そうにそう言った。
「…うん。これなんだけどね」
ゆたかはそう言って、机に開いている希望進路のプリントを見た。紙には、まだ名前しか書いていない。
「進路、どうしようかなぁ…」
ゆたかはそう言って、机に頬杖を付いた。
「…ゆたかは、何かやりたい事はあるの?」
「うん。有るには、有るんだけど…。
所で、みなみちゃんは決まってるの?」
みなみはコクリと頷いた。
「私は進学に決めてる」
「…そっか。私も早く決めないといけないなぁ」
ゆたかはそう言って、再び深い溜め息を吐いた。
「ゆたかちゃん、どうしたんスか?」
「今日のユタカ、元気ないデスネー。解りまシタ、恋の悩みデスネ!!」
後ろから声をかけてきたのは、アニ研部長のひよりと留学生のパティ。アニ研名物コンビだ。
「パティちゃん、そう言うのじゃないよー」
ゆたかは、やれやれと言いたげにそう返事をした。
「…ひよりもパティも、進路は決まったの?」
みなみは、二人に聞いた。「私は芸術系の短大に志望したっス」
ひよりは得意気に、小振りな胸を張る。
「ワタシはバイト先のメイドカフェに、就職しようと思ってマース」
パティは流暢な日本語で、そう答えた。
「ゆたかちゃんは、まだ決めてなかったんスか?」
ひよりの問い掛けに、ゆたかはバツが悪そうな顔をした。
「…うん。やりたいことは有るけど、どうしても絞れなくって」
「…まだ、時間はある。だから、焦らず決めるといい」
「そうッスよ。みなみちゃんの言うとおりッス」
「ユタカのやりたい事を、やるべきデース」
三人の意見を聞いて内心はほっとするが、ゆたかはまた盛大に溜め息を吐くのだった。
899 :優しき月光2 [sage]:2010/07/07(水) 14:47:05.78 ID:R6xsCDs0
金曜日。学校の授業終了後、パティの提案により四人で遊びに行く事になった。
「三人とも、注目するのデース!!」
パティが自慢気に、鞄から四枚のチケットを取り出した。
「パティちゃん、それなんのチケット?」
ゆたかは、首を傾げながら聞いた。
「フフン、コレは駅前に有るカラオケの割引券なのデース!!
バイト先のマネージャーから貰いまシタ」
パティは手に持ったチケットを、ヒラヒラと揺らした。
「見せて見せて。
…これ、半額でフリードリンク付きだよ」
ひよりはチケットを見て、かなりオイシイ内容だと確認した。
「カラオケかぁ。暫く行ってなかったから、行きたいなぁ」
ゆたかは目を輝かせながら、行きたいと言う意思を見せた。
「私も全然行ってなかったからね」
ひよりも、ゆたかの意見に同意した。
「…私も、行きたい」
みなみも、二人と同じ意見だった。
「デワ、決まりデスネ」
パティは、三人に向けてパチッとウインクしてみせた。

一同これと言った用事もなく、店には比較的早めに到着した。
久しぶりのカラオケで、四人ともテンションは上昇気味だった。時間も忘れて、二つのマイクはクルクルとローテーションされる。
特にゆたかは、積極的に歌いまくっていた。生徒会長を勤める忙しさや、進路の悩みでストレスが合ったのは容易に想像出来た。
そこそこ時間がたった頃にみなみが歌ったある一曲が、パティの中で強い印象が残った。

―僕らが生まれてくるずっとずっと前にはもう、アポロ11号は月に行ったって言うのに―

(アポロ…か)
何処か、感傷に浸っているような表情のパティ。その瞬間をみなみは見逃していなかった。
「…パティ。どうかしたの?」
みなみにかけられた一言に、パティは短くこう言った。
「…少しgrandfatherの事を思い出しただけデース」
「…そうなんだ」
みなみは、それ以上は問い詰めなかった。普段の様子からは見えない、少し寂しげなパティの表情は気になったのだが。
900 :優しき月光3 [sage]:2010/07/07(水) 14:48:15.89 ID:R6xsCDs0
カラオケ店を出た後は、ファーストフード店で談笑しつつ食事を取る。時刻は八時を過ぎていた。
楽しい時間はすぐに過ぎてしまうもの。日は沈み、空は暗くなっていた。雲一つない闇色の空に、一際輝く満月が見えた。
このまま解散する予定だったのだが。
「少し歩きまセンか?」
パティはそう言い出した。
その意見には、特に反対は無かった。特に会話もなく、四人は近くの公園に着いた。
「アレ、見えマスか?」
パティは空を見上げる。
「今日は、見事な満月ッスね」
ひよりも釣られて、空を見上げた。
「お月様には、色んなお話があるよね。かぐや姫とかさ」
ゆたかも空を見ていた。
「…でも、どうして月を見たの。パティ?」
みなみは見ていた月から、パティに視線を移した。
「…人が月に行ったのは、40年前の話になりマス。
ワタシのgrandfatherが、その時の事を話てくれた事がありマス」
パティは、ゆっくりと語りだした。

「ワタシのgrandfatherは、昔NASAに勤めていたと聞きマシタ。
その事を聞くと、アポロ計画の話をしてくれまシタ」
パティの言葉を、三人は無言で聞く。

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人類が宇宙に行く。それは壮大な夢であるが、無茶な挑戦でもあった。
コストや技術の問題は、山のようにあった。一つの問題を解決すれば、また一つ問題が出る。
数えきれないほど失敗もしたし、命を犠牲にする事も珍しくない。内部でのいざこざも沢山出た。
だけど、最後まで決して挑戦する事を諦めなかった。
だからこそ、アポロは宇宙に飛び立つ事が出来た。やがて、月に降り立つと言う偉業も達成できたのだ。
『この一歩は小さな一歩だが、人類には大きな一歩だ』
アームストロング船長の残した言葉だ。
それが達成できたのは、間違いなく最後まで挑戦する気持ちと諦めない気持ちを持ち続けたからだと。
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901 :優しき月光4 [sage]:2010/07/07(水) 14:48:58.84 ID:R6xsCDs0

―challenge and don'tgiveup―

「grandfatherの言葉が無ければ、ワタシは日本に来ることは無かったでショウ。
最初は、不安や寂しさもありました。デスが…今なら素直に言えマスよ。
日本に来て良かった…と。だって、ヒヨリ、ミナミ、ユタカと言う、最高の“トモダチ”と出会うことが出来たのですから」
パティは表情は、穏やかな微笑みを見せていた。
「パティちゃんは、凄いね…」
ゆたかは、パティの手をギュっと握った。パティの話を聞いて、自分の悩みが少しだけ楽になったような気がした。
「…一人で海外に来るなんて、私には出来ない」
みなみも、柔らかに微笑んでパティを見ていた。
「パティとは、ずっと生涯最高の友人ッスよ」
ひよりは、親指を立てた手を出してニッコリと笑って見せた。
そして、パティは再び空を見上げた。その空からは、五年前に他界した祖父が微笑んでいる気がした。

(…grandfather。ワタシは、異国の地にいマス。
デスが、何時も貴方が見てくれていると信じていマスよ)

それは、満月の光と共に…。
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/07(水) 14:50:20.44 ID:R6xsCDs0
以上で投下、終わります。

903 :コナタンより愛をこめて 1/2 [sage]:2010/07/08(木) 23:49:24.05 ID:/eMhu5oo
桜藤祭。「時をかける男女」シナリオ、そうじろうのプロポーズ失敗の場面。
コナタンがそうじろうではなくかなたのほうへ声をかけに言ったら、というIFネタです


 外の空気を深呼吸。落胆の胸のうちをごまかすように。涙が出そうな気持ちをごまかすように。
 けっきょく、彼は私にプロポーズの言葉を言い出せなかった。
 そう君のことはわかってる。こんなことを言い出せない彼の性格を誰よりも知っている。
 だから、言い出せずじまいに終わる結末だって想像の範囲内のはずで。この結末を予想できないはずがなくて。
「だから、落ち込むことなんてないのにね……」
 どうしようかな。いますぐ結婚しなくたって、このままいっしょに居続けることにはかわりはない。もうすこしだけ、待っていたっていい。
 どうしようかな。いっそ、私のほうからプロポーズの声をかけようか。だとしたら、どんな言葉がいいのだろう。
 
 思考をめぐらせているうちに、自然と私の姿勢はうつむいてゆく。
 そんなふうにとぼとぼと路を歩いていると。
「奥さま。お困りのようですね」
 そんな茶化すような声が、私の背に投げかけられた。

 振り返ったそこには制服姿の女の子。
 どこかで出会ったことがあるような、だけれど、以前に出会った心当たりもぜったいにないとも言い切れる、ふしぎな感覚。
 戸惑いながら、視線をその子に合わせる。

 正面から見つめ合う。そのままのかっこうで、お互い目をそらさない。
 にらみ合うわけでもなく、きまずくて動けないわけでもなく、私はただ、微笑む女の子をみつめる。

 だれかに似ている。見覚えがある。でも、初対面。
 目もと、口もと、鼻のカタチ。たしかに私は、彼女と何度も会っているはずなのに。

 どうしても思い出せずに困っていると、彼女は口を開いた。
「プロポーズのじゃまをしたの、私たちです。ごめんなさい」
 さっきそう君がプロポーズを口にしかけたそのとき、物音に水を差されたことに思い当たる。あれがなければ、そう君はその言葉を口にしてくれていただろうか。
「じゃまって……、さっきの物音?」
 首をかしげる。と、いうことは。
「覗いてました」
 女の子は苦笑い。
「……だめよ。他所様の家に勝手に入っちゃ」
 私も苦笑いを返す。どうしてか、彼女を怒る気にならなかった。どうしてか、そんな言葉しか思い浮かばなかった。

「そのお詫びとして、奥さまへひとつ助言をと思いまして」
 彼女のほうも、強く咎めようとしない私をすんなりと受け入れる。
 ……だから私も、彼女のことをすんなりと受け入れる。「私はまだ独身ですけれど」と前置きして。 
「聞かせていただけますか? 見知らぬ御方」
904 :コナタンより愛をこめて 2/2 [sage]:2010/07/08(木) 23:50:18.63 ID:/eMhu5oo

 おとうさ――じゃなくって、旦那さ――でもないのか。最初に彼女はそう、言葉を探した。
「さっきの一件だけで、彼氏を判断するのは早計だと思います」
「ええ、それはそうでしょうけれど……?」
「たしかにあの人はヘタレで変態で、ちょっとヤバイですが」
「……ええ、それもまあ、否定はできませんが」
 彼を悪く言う女の子。でもその声に、悪意のいろは混ざっていない。むしろ逆に、彼を良く理解している、親しみの情がそこにはあった。
「そんなオジサンのことを、あなたはどうして好きになったのか、それを忘れないように、いてくれませんか」
 女の子は、微笑んでわたしを見る。
「世界中で、いちばん、かなたのことをあいしてる。あのオジサンの一番自信を持ってるトコロ、あなたはそれを理解しているはずです」
 だから、落ち込まないでくださいと彼女は続ける。
「おとうさんはまた、すぐにプロポーズを再挑戦するはずですから。その点は安心して、もうちょっと待ってあげてくれませんか」

 私は目をつむって胸の内をたしかめる。
 そう君と居ると、安心する。そう君のそばが、私の居場所。それを私が疑わないのは―――
「……はい、仰るとおりだと思います。なにも不安になることは、ないんですね」
 知らず、私の頬には笑みが浮かんでいた。


「自信を持って、帰ってみることにします」
「よろしくお願いします。ホントに」
 そう言って彼女はぺこりと頭を下げた。その動作はおどけているようで、でもずいぶんと切実な気持ちが込められているようでもあって。

 別れ際、私は彼女に問いかけた。お名前を伺ってもよろしいでしょうか。
 彼女はいいづらそうに、間を置いて。
「私の名前はコナタン。人類補完委員会直属、マルドゥック機関に所属している者です」
 そう、言った。そんなことしか、言ってくれなかった。だけれど、それ以上問い詰めようとも思わなかった。
「最後にもう一つ、忠告です。子供が生まれたら好きなおもちゃを惜しみなく与えるよーに」
 最後に、そんないたずらっぽい微笑を残して。彼女は去ってゆく。


 そうして、部屋の玄関をくぐる。そう君の表情には決意のいろ。
 女の子の言うとおりの再挑戦。私が思うとおりの彼の愛情。
 うれしくて、笑顔になる。うれしくて、涙があふれる。

 どこかで彼女が、私たちをみつめて微笑んでいるような気がする。

 彼女を思い返したところで、気づいた。そう君の瞳に映る、泣き顔の私を見て、気づいた。―――ああ、そうか。
 さっき、そう君のことをおとうさんと呼んだ女の子。将来、きっとそう君のことをおとうさんと呼ぶ女の子。

 彼女は、私にそっくりだったんだ。毎日鏡の前で出会う私の顔に、似ていたんだ―――  
905 :月夜のたわいない会話 [saga]:2010/07/10(土) 17:05:13.45 ID:yRHT0sAO
コンクール作品投下します。

タイトル『月夜のたわいない会話』




「友情は静かな月のように、太陽の現れない前の大空に輝く。だが、恋の光を受けるとすぐに色褪せてしまう…らしいね」

学校からの帰り道。唐突に、山辺たまきは呟いた。
「それ、名言だっけ?」
「ひよりんがネタ探しで読んでた本に載ってたんだ」
「…ひよりんの邪魔して取り上げたあの本か」

部活の時、ひよりんが『今度の本に名言を使いたいから』と何冊か持ってきていた。
やさこは『あ〜、このキャラならそういうの必要だね』と納得していたし、私を含めたアニ研部員は気にしなかった。
…この気まぐれな姫を除いて。
906 :月夜のたわいない会話 [saga]:2010/07/10(土) 17:08:19.07 ID:yRHT0sAO


『ひよりん、良い台詞あったよ』
『…「汝自らを愛するが如く、汝の隣人を愛せよ」…って聖書はダメっス!』
『じゃあ「豚もおだてりゃ木にのぼる」とか』
『それはタイムボカンです!』
『違うよ、ヤッターマンだよ』

だの

『ふむ、つまりこの名言で言うならひよりんは「まロい」わけか』
『それ迷言です!ってゆうか、載ってる訳ないっスよそれが!』
『ほら、この「かわいそうまさんです」と「お宝はけして失われてはならない」の間に。「…理由などいるか」の上』
『あ、なるほど「アニメ漫画名言集」なら…って今の漫画ひとつだけでしたよね?!』


とか、茶々を入れまくっていた。たぶん、ひよりんは次の〆切に間に合わないだろう。またやさこに怒られるな。

「何ていうか、あの三日月見てたら思い出しちゃった」
「あれ、三日月じゃなくて二十八日目の月だけど」
「まぁまぁ毒さん、細かいことだよ」

確かに細かいことだけど。

907 :月夜のたわいない会話 [saga]:2010/07/10(土) 17:09:27.26 ID:yRHT0sAO
「月光って、所詮は太陽の光の反射なんだよね」
「かなり大雑把だけど」
「友情は愛情に敵わない、か」
「…どしたの、急に」
「ん〜、いや、格言があくまで『男女の間』を指してるのはわかってるんだけど。恋愛が友情をかきけしちゃうのは性別関係ないなぁって、思い出しちゃったから」

ああ、あの事か。
中学の時、仲の良かったあの子。一応クラスメイト以上の付き合いはあった子の事。
あの子が『変わった』のは正に恋愛事情。
彼氏がアニメとか大嫌いらしくて、彼女は感化された。
元々彼女はアニメが好きでないのは知っていたが、あそこまで嫌うようになるのは確実に感化されたからだろう。

山さんにとってはあまり思い出したい事じゃない。なにしろ、『そんなことしてるからたまきちゃんは不細工顔になっちゃうの!』なんて言われたから。

それ以来、彼女は顔を髪で隠すようになっている。おかげでアニ研で素顔を知っているのは私だけだ。

908 :月夜のたわいない会話 [saga]:2010/07/10(土) 17:10:54.80 ID:yRHT0sAO

「…あの時も言ったじゃん。あんなの気にする必要ないって」
「うん。あの彼氏さん、未だにジャンプは読んでるらしいし」
それは関係ない。

「名セリフにもあるじゃん。『月はいつもそこにある』って。友情だって常に近くにあるよ」
「毒さん……クサいよ」
「うっさいなら言わすな」


明日になればこんな会話も忘れたように振る舞うであろう幼なじみ。
この気まぐれもいつものことだ。
満ちたり欠けたり月の変化のような性格。
何やら月のことばかり連想する日だ。
「毒さん、月見うどん食べにいかない?なんか『月』がつくもの食べたくなっちゃった」
「弟達にご飯作るから駄目。月餅で我慢しな」
「なんだ、毒さんも『月』がつくもの食べたくなったんじゃん」

たまにはそんな日もいいか。


909 :月夜のたわいない会話 [saga]:2010/07/10(土) 17:13:24.31 ID:yRHT0sAO

以上で投下終了。

毒さんと山さんのキャラがおかしいのは許して下さい。

なんで最中の月でネタ考えてたらこうなったんだ……うん、月餅でも食べよう。
910 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/10(土) 20:26:20.21 ID:SnWdMlo0
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ここまでまとめた

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もう三作品か、おいらも頑張るか。
911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/11(日) 07:55:50.67 ID:7bhOk2SO
まとめ乙乙
912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/12(月) 00:23:16.29 ID:tlSHSJ20
こなた「コンクールも半分を過ぎましたー」
つかさ「過ぎましたー」
こなた「まだ半分もできてませーん」
つかさ「できてませーん」
こなた「かがみどうしよう?」
つかさ「お姉ちゃんどうしよう?」
かがみ「…しるか」
みゆき「…えーっと…みなさん頑張ってくださいね」
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/12(月) 20:43:10.56 ID:5wfmOAAO
そういえば三作品にこなた達いないな
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/13(火) 01:35:43.21 ID:h3fqyXs0
お初です

今からコンクール作品を投稿させていただきます。

題名:月の下巡り合った意外な二人

それではお楽しみください
915 :月の下巡り合った意外な二人 [sage]:2010/07/13(火) 01:38:52.01 ID:h3fqyXs0
「お!?」
「あら」

 階段を下りた先にいたのは見たことのある方でした。茶色いショートカットの彼女は確かかがみさんと同じクラスの…
「日下部さん…ですよね?」
「おお、そうだけど…堅っ苦しいからみさおでいいぜ!」
 やっぱり日下部さん…いや、みさおさんでした。土埃ですっかり汚れてしまっている体操着姿。どうやら部活動の後みたいですね。
「みさおさんは部活中なのですか?」
「いや、もう終わって、これから着替えるところだ。…あ!どうせなら駅まで一緒にいかねえか?柊もあやのも帰っちまってさびしいからよぉ」
 首に掛けてあったスポーツタオルで汗をぬぐいながらみさおさんはそう言いました。断る理由なんてないですし、むしろ私もこの暗い中一人で歩くのは少し心細いな、と思っていたところでした。返事はもちろん…
「ええ、お願いします。みさおさん」
 私がそう言ってぺこりと頭を下げるとみさおさんはにっこり笑ってわかった、と頷いてくれました。そうして部室に向かって走ろうかという体勢になりましたが、その場でもう一度振り返りました。今度は恥ずかしそうに顔を赤く染めてしまっています。どうしたのでしょうか?
「あの、どうかしましたか?」
「い、いや…いつも柊と話してるのは知ってるんだけどな…その…名前をすっかり忘れちまっていて…」
 あらあら、そういうことでしたか。と言っても私の方も下の名前まで思い出すことができなかったので、人のことを言える立場ではないのですが。とりあえず私は彼女にくすりと笑い掛けました。
「それはそれは…確かにきちんと自己紹介していませんでしたね」
「うぅ…申し訳ねぇ…」
「そんなことないですよ。では…私の名前は高翌良みゆきです。よろしくお願いしますね」
「おう、下日部みさおだ!よろしくな!」
 私が自己紹介をすると、みさおさんは赤く染まった頬を掻きながらそう言ってくれました。

916 :月の下巡り合った意外な二人2 [sage]:2010/07/13(火) 01:40:21.46 ID:h3fqyXs0
 夏とはいえ、この時間にもなるともう真っ暗でした。暑さも何となく和らいでいて、夜風が気持ちよく通り抜けるので夏のムシムシとした感じもありません。黒く透き通った夜空の中心には白い月が一つ、静かに浮かんでいます。こんな中を帰るのはとても久しぶりです。
「しかし高翌良はどうして今日はこんなに帰りが遅いんだ?いつもはちびっことか柊とかと一緒に帰ってるんだろ?」
 隣でペットボトルのスポーツドリンクを飲み干しながら、ふと思ったのかそう聞いてきました。実はそこについてはあまり触れて欲しくなかったのですが……。私は自分の顔が熱を帯びているのを感じて、思わず手で覆い隠してしまいました。
「実は今日図書室で調べ物をしていたのですが…その……つい居眠りしてしまって…」
「あっはははは!それががっつり本睡眠になっちゃったっていうわけか!」
 そうなんです。完全に下校するタイミングを寝過してしまっていたのです。昼間はとっても暑いんですが、高校でも図書室だけはクーラーが完備されており、とっても涼しいんです。その心地よさについうとうとしていたら…あっという間に…。こういう経験って誰もが皆絶対しますよね?
「昨日も調べ物に没頭してまして…気付いたら12時に」
「12時って…私はいつもその時間に寝てるぞ?」
 お恥ずかしい話だったのですが、みさおさんは笑って聞いてくれました。そんな他愛のない会話を続けながら私達は駅までの道のりをゆっくりと歩いて行きます。真夏の月もなんだか妙に明るくて、その下で私達は何度も何度も笑いあいました。
「いやーしかし、高翌良とこうやって二人で話すのは初めてかもな!いつもはあやのと話してるし」
「確かにそうですね。みさおさんもかがみさんやこなたさんとお話しされてますし」
「まさか高翌良がこんなに天然が入ってるとは思わなかったぜ」
「よく言われます」
 みさおさんとの会話はとてもユニークで、なんだかこなたさんと話している時と同じような気分でした。……そういえば今日の月、なんだかみさおさんや、こなたさんのように見えます。明るいところ、みんなも元気にしてくれるところなんか…ふふ、似た者同士なのでしょうか?
「ホント、もっと早く知り合っておけばなぁー」
917 :月の下巡り合った意外な二人3 [sage]:2010/07/13(火) 01:41:28.87 ID:h3fqyXs0
「え?」
 みさおさんがその月を見上げながら、みさおさんが急につぶやきました。それがなんだか妙に耳についたので私は聞き返します。
「だって私達、すぐに卒業だろ?せっかくこうやって仲良くなったのに、一緒にいられるのは後半年なんだぜ?」
 言われてみればそうです。今は7月。私達は来年には高校を卒業してしまうわけですから、半年後には卒業なんですね。文化祭があってそれが終わってしまったらおそらく学校行事も全て終わります。その後はみんな受験勉強で忙しくなり、きっと一緒に遊んだり話したりする時間なんてほとんどなくなってしまうでしょう。なんだか…寂しくなってしまいますね。
「卒業したら…みんなバラバラ…ですか」
「あ、いや、今から気にすることでもないような気がするけどな」
 気を遣ってくれたのか、みさおさんはまたいつも通りの口調に戻って言いました。けれども私はどうにもそれが心残りになってしまい、返事をすることができませんでした。
 私はなんとなく、夜空を見上げました。私の瞳の中心には白い満月が移ります。どうしてでしょう?さっきはあんなに元気そうに見えた月でしたが今はなんだかとても寂しそうです。周りには誰もいなくて、一人ぼっちで光り続けて。私はみんなと一緒に文系を選びましたが、行くのは理系の大学です。だとしたら私は高校を卒業したらきっと私も一人ぼっち。なんだかあのお月さまは…
「私みたい…」
「え?」
 あ、あんまり寂しかったものだから、どうやら声に出てしまった見たいです。恥ずかしい…。自分を月みたいだなんて言ってるなんて私はなんて人なんでしょう…。
「……確かに高翌良はお月さんみたいだな」
「え?」
918 :月の下巡り合った意外な二人4 [sage]:2010/07/13(火) 01:42:37.99 ID:h3fqyXs0
 驚いてみさおさんの方を見ましたが、相変わらずの満面な笑みで自信に満ちた表情でした。月明かりに照らされたみさおさんはどういうわけかものすごくかっこよく見えてしまい、私は思わず見とれてしまいます。
「なんだかすげー肌が白くって、ほら、胸も丸っこいし」
「み、みさおさん!」
「もちろんそれだけの意味じゃないぜ?勉強もできてスポーツもできて、なんでも知ってるみたいだし、妙に頼りがいがあるし、だけど優しいし…バカな私とは大違いだぜ」
「そ、そんな…」
「憧れちゃうんだよな、高翌良に。多分、私だけじゃなくみんなもそう思ってる。私達から見りゃあ高翌良は月みたいにずーっと高いところにいるんだけど優しくて、そんでもってみんなの事を見守ってくれてる。私はそう思う」
 ま、ちょっと天然なところがキズだけどな。と最後に冗談っぽくつけ足して、みさおさんはまた笑いました。ですが私はとても恥ずかしくて、顔を上げることができませんでした。私が、お月さまみたい?誰かにそんな風に言われるのは初めてでした。それをさらっと言ってくれたみさおさんにうまく顔向けをすることができず…おそらく今の私の顔はとても真っ赤だと思います。
 でも、それなら…。私はみさおさんの顔をあげ、みさおさんを見つめます。彼女の瞳に白い月が浮かびました。
「で、でもそれなら、私はみさおさんの方がお月さまに見えますよ?」
「はい!?」
 そう、私はみさおさんこそ、お月さまのように見えます。なぜなら…
「だってみさおさん、そうやって私を元気づけてくれて、とっても明るくて…。ですが常にみんなに気を配ってらっしゃって…。みさおさんこそ周りがどんなに暗くても優しく、明るく照らしてくれる月のようなお方だと思います」
「よ、よせやい!」
 みさおさんは顔を真っ赤にしてしまいました。そうして暑いなぁーと高い声で言いながらペットボトルにほとんど残っていないスポーツドリンクを飲み干します。でも私は本当にそう思うんですよ?そしてそんなみさおさんがちょっぴり羨ましいなぁーとも…。
「あ、あんだよ!もうないのかよ!」
「うふふふ…」
 そして思います。みさおさんのような明るい方がいれば、私達はきっとずっと一緒にいることができるでしょう。例えどんなに暗い道のりの中で皆がはぐれてしまっても、その月の光の明るさで照らしだしてくれるでしょう。みさおさん…そして同じようなこなたさんも、きっとその役割を果たしてくれる……
919 :月の下巡り合った意外な二人5(final) [sage]:2010/07/13(火) 01:43:57.46 ID:h3fqyXs0

「お、もう駅か。高翌良は登りだろ?んじゃあな!」
「あ、待って下さい!」
 夢うつつのような気分だったからでしょうか、もう駅に着いていたなんて思いませんでした。ですが照れくさそうに走り出したみさおさんを見たら、私はみさおさんを呼びとめずにはいられませんでした。振り返るみさおさんに対してなんと声をかけるかも考えていなかったのに…。
「あ、あの…これからも宜しくお願いしますね?」
「お、おお!よろしくな!」
 結局その一言しか言えませんでした。ですが、それが一番言いたかったことだと言った後で気づきました。みさおさんはまた満面の笑みで頷くとすぐに下りのホームに駆けて行きました。

 私はもう一度、夜空を見上げました。とっても明るい月がそこにはありました。
920 :月の下巡り合った意外な二人 [sage]:2010/07/13(火) 01:45:40.43 ID:h3fqyXs0
投下終了です
お初なので多々心配な面がございますが…

閲覧して下さった皆さん、ありがとうございました。
921 :月の下巡り合った意外な二人5(final) [saga]:2010/07/13(火) 01:51:06.56 ID:h3fqyXs0
sagaし忘れちゃいました……

ごめんなさい…orz
922 :月の下巡り合った意外な二人5(final) [saga]:2010/07/13(火) 01:55:53.39 ID:h3fqyXs0
sagaし忘れちゃいました……

ごめんなさい…orz
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/13(火) 04:15:13.93 ID:gG/CLI.0
おお、これは上手い、良いね。
みゆきがみwikiさんにならずみゆきだし、みさおだなぁって感じの台詞回しと間だし
組み合わせが意外なのにしっくりきたし、読んでてもすんなり読めたし
一部の誤字はご愛嬌ってやつでおkっしょ
みゆきの台詞も中々に上手いね、原作かアニメを観て特徴掴んでるよ
文章も綺麗に纏まってるし、読み易かった
乙でありました、また書いてくれると嬉しいんだぜ
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/14(水) 21:27:56.98 ID:rPbTL560
>>920
初めてでいきなりコンクールとは凄いね。

誤字脱字の修正もコンクール終了しないとだめだっけ?
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/14(水) 22:17:22.05 ID:N/OcQ0Io
コンクール作品、投下します。
926 :【光の速さで1.2秒】 [sage]:2010/07/14(水) 22:21:57.22 ID:N/OcQ0Io
 望まれもしないのに長長と居座る西高東低の気圧配置の只中、
細雪が街を彩ることもなくロマンのかけらもないそんな季節、2月のおわり。
私は、今現在この身を襲っている足先の冷えとどう戦うべきかと
思案しながら、課題のレポートを消化していた。

 卓上の時計が21:55を指すころ、にわかに階下から隣の部屋へ
どたばたと慌ただしい足音が駆け込んでくる。
そのままこちらの部屋に雪崩れ込まないということは、
今日は一人で「する」つもりらしい。
私と一緒にでなく、一人で彼女に話したいことがあるのだろうか。
妹の変化は姉としてたいへん喜ばしいことのはずだが、
その反面でもやもやとした切なさが私の胸をつついた。

 そのうちに時計の針は進み、約束の時間が訪れる。
長針が音を立てて12を指すと同時に私は、窓を開いて夜空を見上げた。
まさに冬の夜というような、きらめく星空が広がっている。
その星星の中でひときわ輝くその天体を私は見つめる。


 月。
たった一つの地球の衛星。
大きさは地球の10分の1。
地球からの距離380000Km。

 十分に満ちたその星に向けて、私は大きく手を振る。
380000Kmの彼方からでも、私の姿が見えるように。


 同じように手を振る、彼女に向けて。
927 :【光の速さで1.2秒】 [sage]:2010/07/14(水) 22:23:05.12 ID:N/OcQ0Io








   【 光の_       】






   【 光の速さで_    】






   【 光の速さで1.2秒 】







928 :【光の速さで1.2秒】 [sage]:2010/07/14(水) 22:25:16.76 ID:N/OcQ0Io

 『私、この4月から月に行くことにしました』

 暗く澱んだ空も徐々に明るさを取り戻し、一陣の風に季節が移り行くことを感じさせられるような3月のはじめ。
みゆきは、そう私に告げた。

 月への移住実験が始まるということ。
 父親の仕事の関係でそのプロジェクトに参加することができるということ。
 4月から最短で1年、場合によっては数年間、月で暮らすということ。
 つまりしばらくは会えないということ。

 そして、みゆきがその実験に参加する意志があるということ。

 一切言いよどむことなく、テーブル一面に広げた書類を使って私に説明してみせる。
書類を掴むその左手は、かすかに震えていた。


 4月が来ると、みゆきは私たち、同じ日に話を聞かされた私とつかさとこなた、
を含めた大勢の友人に見送られ、月へ旅立っていった。
笑顔で見送ろうという決心を、私はついに守ることができなかった。
みゆきは、どんな顔をして地球を後にしたのだろうか。

 みゆきを乗せた船が月に無事たどり着いたというニュースが地球上を駆け巡り、人知れず私は安堵のため息をもらした。
一団の居住空間の形成状況を日々テレビが報じれば、私は昼夜を問わず空虚な月面を見つめた。
やがて実験は軌道に乗り、人々は稀に夜空を見上げたときにだけ彼女達のことを思い出すようになった。
私たちもそれぞれの日常へ還ってゆき、全てが正しく収まったように日常の内へ没入していった。

 そして、一つの『約束』だけが残った。

929 :【光の速さで1.2秒】 [sage]:2010/07/14(水) 22:26:35.76 ID:N/OcQ0Io

 それは私たち4人の間で交わした、とても簡単な約束。
地球の時間で22:00になったら、私達は月に手を振り、みゆきは地球に手を振る。
そして、互いにその日一日のことを報告する。
つまり、おしゃべりをする。

 声に出しても出さなくてもいい、どうせ届きはしないから。
言葉で伝えられないから、私たちは大きく手を振る。
顔も肌も声も決して触れ合うことのできない私たちは、こうして確かにつながっていた。

 そして現在、2月の寒空に手足の指先を凍えさせながら今日も私はみゆきと語り合っている。
この季節に巫女の仕事は辛いこと、こなたが冷やかしに来たこと、つかさが一人でみゆきと喋りたがっていること。
みゆきの旅立ちからもうすぐ1年が経とうとしているが、日々柔らかに変化していく日常に話題が尽きることはない。


930 :【光の速さで1.2秒】 [sage]:2010/07/14(水) 22:28:37.66 ID:N/OcQ0Io

 みゆきは今、どうしているだろうか。
今日一日で何を経験して、どんなことを私たちに話しているのだろうか。

「ねえ、元気でやってる?」
放たれた言葉が届くまで、音の速さで……たぶん1000000秒くらい。

 手を振る私の姿が届くまで、光の速さで1.2秒。
じゃあ、やっぱりこっちのほうがいい。

 私の姿がみゆきに届くまでの1.2秒。
私は想像する。
荒涼とした月面世界から手を振り返すみゆきの姿を。

 みゆきは一人、月の砂漠に立っていた。
少しだけ大人びた様子で湖のような微笑みをたたえているかもしれない、
高校生のときのような無垢な笑顔を浮かべているかもしれない。
いかにも月といったような無機的な衣装をまとっているかもしれない、
夏の太陽によく映える純白のワンピースを着ているかもしれない。

 結局どんな様子でいてくれても構わないのだけれど。
願うなら、あの頃と同じみゆきでいてほしい。
それは私のわがままだろうか。

 それともう一つ、もう一つだけ願うなら。

 やっぱり、手を振り返すみゆきが、笑顔でいてくれたらいい。
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/14(水) 22:33:12.38 ID:N/OcQ0Io

以上、終了です。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。
932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/15(木) 08:04:07.59 ID:0zpmkbYo
>>924
うん、修正は終了後だね
ただsagaのことなら、あくまで板の仕様だから別に修正してよかったとオモ

>>931
まだ読めてないが乙
933 :月の下巡り合った意外な二人 [sage]:2010/07/15(木) 10:45:53.61 ID:v5j5toDO
名前欄のSSを書いたものです

修正がおkということなのですが、sagaをしてもう一度投下してもいいということですか?
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/15(木) 19:31:19.09 ID:0zpmkbYo
修正する場合はwikiにまとめる時、まとめられた後に直接になる
再投下の必要はなし
935 :月の下巡り合った意外な二人 [sage]:2010/07/15(木) 20:16:55.82 ID:v5j5toDO
わかりました
ありがとうございます
936 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/15(木) 21:50:43.95 ID:.siPDQs0
1月にこのスレが始まってもう7月。ようやく900を超えたかww
937 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/16(金) 08:48:25.19 ID:v5smuoSO
−麺−

こなた「………」ズルズル
つかさ「………」ズルズル
みゆき「………」ズルズル
かがみ「…ねえ」
こなた「………」ズルズル
つかさ「………」ズルズル
みゆき「………」ズルズル
かがみ「坦々麺だからって、淡々と食べなくてもいいと…思うん…だけど…」
こなた「………」ズルズル
つかさ「………」ズルズル
みゆき「………」ズルズル
かがみ「………」ズルズル
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/16(金) 09:08:47.80 ID:OR4X2fE0
みゆきが担々麺…萌えるぜ!
939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/16(金) 21:30:02.27 ID:5UE4CHc0
それではコンクール作品を投下します。22レスくらい使います。

940 :肝試し  1 [saga]:2010/07/16(金) 21:32:26.93 ID:5UE4CHc0
 今日のお昼はかがみが居ない。この時を待っていた。しかし遅れて来る事もある。ここは確かめる必要がある。念には念を入れないと。
こなた「つかさ、今日かがみは?」
つかさ「今日は自分のクラスで食べるって言ってたよ」
チャンス、最近は毎日のようにお昼を食べに来る。帰りも一緒。つかさとみゆきさんとまともに話す事ができない。
こなた「つかさ、みゆきさん、旧校舎に現れる幽霊の噂聞いたことある?」
つかさ「……あるけど……」
みゆき「ありますね、昼夜問わず旧校舎の音楽室に出てくると言われてます、それがどうかしましたか」
こなた「今度そこに肝試しをしようと思うんだけど、いいかな」
つかさは急に震え始めた。
つかさ「……止めようよ、私は行かない、行けない」
こなた「ふ・ふ・ふ別につかさを誘っているわけじゃないよ、行くのはかがみだけさ」
つかさとみゆきさんは顔を見合わせた。
みゆき「どうゆうことですか」
こなた「先週、かがみと話しててこの話になったんだけど、かがみのやつそんなの怖くないって言うんだよ、だからそれを確かめたくてね」
つかさ「……お姉ちゃんそゆう話したことない……」
こなた「でしょ、意外と怖がりだったり……かがみが叫んで泣いている姿……見たいとおもわないかい?」
つかさ「あまり見たくない……でも、何でお姉ちゃんだけの話に私達にも?」
こなた「かがみは私だけの誘いじゃ多分乗ってこない、だからつかさとみゆきさんにも協力してもらって誘って欲しいんだよ」
二人は暫く考えていた。
みゆき「かがみさんが怖がりかどうかは興味ありませんが、音楽室に出る幽霊には興味あります」
こなた「お、みゆきさん、流石だね、話が早い……つかさは……つかさが誘えばかがみは必ず来ると思うんだけど……」
つかさ「お姉ちゃんの事だから多分こなちゃんも肝試ししないとダメなような気がするけど……こなちゃん、大丈夫なの?」
こなた「それこそ望むところだよ、『肝試し』だからね」
つかさ「……話すだけなら……」
こなた「決まったね、それじゃ放課後早速かがみに話そう」


 三日後の午後九時……陸桜高校校門前。辺りは静まりかえっている。校庭は街灯が灯って明るいが旧校舎は明かりは無く暗かった。
かがみ「約束通り来たわよ、こなた、止めるなら今のうちよ」
かがみを見て驚いた。いつもはツインテールのはずなのにポニーテールで来た。体育の授業でも髪型は変えないのに。顔もなんとなく強張っているような感じだ。
かがみはここに来るのにかなりの覚悟を決めてきている。
こなた「なにそんなに意気込んでるの?」
かがみ「よ、よ、余裕よ、全然大丈夫なんだから、それより約束通りこなたが先に行くんでしょ、大丈夫なのか」
三日前、肝試しを誘った時、私が先に行くのがかがみの条件だった。もうその時点でかがみはそうゆうのが苦手だと分ってしまった。
かがみ「ところでこんな夜遅く校舎に入れるのか」
こなた「それは大丈夫、旧校舎は解体されるから鍵はかかってないよ……それじゃルールを説明するよ……スタートでつかさがストップウオッチをスタート、
     灯りは懐中電灯だけ、旧校舎入り口から入って一番奥の音楽室のピアノの足にリボンを結んで戻ってくる、タイムが短い方が勝ち、明日、
     リボンがちゃんと結んであるかどうかみゆきさんに確認してもらう、以上!」
かがみ「……そうゆう所は抜かりないな……」
こなた「物足りないなら二階の実験室の……」
かがみ「いいわよ、さっさとやって帰ろう」
つかさ「こなちゃん、リボン渡すよ……よーい……はい」
つかさがストップウオッチのスイッチを押した。つかさからリボンを受け取り旧校舎に向かった。
941 :肝試し  2 [saga]:2010/07/16(金) 21:33:44.36 ID:5UE4CHc0
この程度の肝試しなんかたいした事はない。平静を装ってるかがみ。笑いをこらえるのが大変だった。五分も経たないうちに音楽室にたどり着いた。
早速ピアノの足にリボンを結んだ。私が先に来たのはもう一つ理由があった。ひよりんから渡されたビデオムービー。かがみが恐怖でパニックになる
様子を撮ってほしいと頼まれた。何でも漫画の作画の参考にすると言う。懐中電灯でカメラを隠す場所を探す。音楽室全体が入る位置にカメラを置くと
スタート地点に戻った。

つかさ「十五分三十秒……」
思いのほか時間がかかってしまった。
かがみ「本当に音楽室に行ったのか?」
こなた「ピアノの足にリボン付いてるよ、行くと分るよ」
かがみ「……そんなのは分ってるわよ」
つかさがかがみの分のリボンを渡した。かがみはリボンを握り締めなにならぶつぶつと唱えている。ひよりんのカメラに映るかがみの姿が楽しみだ。
つかさ「お姉ちゃん頑張って……よーい……はい」
かがみは暗い旧校舎へと消えていった。

かがみを待っている間、つかさと雑談をして時間を潰した。
こなた「つかさ、私が旧校舎に言っている間、かがみと何を話してた?」
つかさ「うんん、何も話してない」
こなた「何も話してないって、何してたのさ」
つかさ「私が話しかけても俯いちゃって……行きたくないなら止めればいいのに……」
我慢できない。私は笑ってしまった。かがみは私が思っていた以上に怖がりだった。
つかさ「こなちゃん、こうなるの分っててこんな事したの?」
笑うのを止めるのが大変だ。
こなた「うははは……いや、ここまでとは思わなかったよ、でも、先週の旧校舎の幽霊の話をしたらやけに怖くない、怖くないって言い張るから
    肝試しをしようってなったんだけど、かがみも引っ込みがつかなかったんだね」
つかさ「……私もそこまでとは思わなかった、でも、旧校舎に行けるだけ私より凄いと思うよ」

つかさ「四十分三十秒……ねえ、こなちゃん、ちょっと遅すぎない……」
確かに三十分過ぎてもかがみは戻ってこない。つかさの言うようにちょっと遅すぎる。
こなた「腰でも抜かして動けなくなったのかな……まったく、しょうがないな、私、ちょっと行ってくる……」
私が旧校舎に向かおうとすると、懐中電灯の明かりが私達を照らす。かがみだった。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの、心配したよ」
つかさがかがみの元に駆け寄る。
かがみ「なんでもないわよ……どうやら私の負けみたいね」
スタートした時の表情とは違い、何か吹っ切れたような清清しい表情だった。
こなた「へー、負けを認めるんだ、リボンは?」
かがみ「一応結んだわよ、でも、明日のみゆきの確認は要らないわね、後で私が連絡するから……帰ろう、終電に乗り遅れるわよ」
こうしてかがみと肝試しは終わった。こうもあっさり負けを認めてしまっては拍子抜けだった。かがみことだから食い下がってくると思った。むしろそれを期待した。

 次の日の早朝、私は一番に学校に入った。そして旧校舎の音楽室に向かう。ビデオカメラを回収する為だ。暗い所でうまく撮れたか心配だった。
カメラを確認するとメモリーいっぱいになっているのを確認した。動作はしていたみたいだ。ふとピアノを見るとかがみのリボンが足に結ばれていた。
かがみは一応この部屋までたどり着いて目的を果たしている。さて、四十分も何をしていたのかな。ビデオカメラの再生をした。
942 :肝試し  3 [saga]:2010/07/16(金) 21:35:17.50 ID:5UE4CHc0
B画像は暗いが何とか確認できそうだった。懐中電灯をもったかがみが音楽室に入ってくる。辺りをきょろきょろと見回して及び腰だ。かがみはゆっくりとした
動作でリボンを結んだ。画面の端からなにやら白い煙のような物が写った。するとその煙のような物がかがみの口の中に吸い込まれるように入って行くように
見えた。かがみはそれから人形のように止まって動かない。私は慌てて早送り再生する。かがみは動かなかった。三十分間。その後はスイッチが入ったように
動き出し、何事も無かったように音楽室を出て行った。もう一度私は再生する。何度見ても煙がかがみの口の中に入って行くように見えた。
あの煙のようなものは何だったのだろうか。背筋がぞっとした。まさか幽霊。私は思わずメモリーを消去した。

ひより「昨夜の肝試しどうだったスか、かがみ先輩、音楽室にたどりつけたっスか」
こなた「ごめん、録画ボタン押すのわれちゃってさ……カメラ返すよ」
ひより「残念っス、普段見られないかがみ先輩が見られたような……」
あんなの見ても面白くない。

 教室に着くと、かがみ、つかさ、みゆきさんが既に居た。
かがみ「オースこなた、今朝はやけに早いわね……何よ、私の顔に何か付いてる」
私はじっとかがみを観察するように見てしまった。
こなた「いや、えーと、昨夜、四十分も何してたの」
かがみ「四十分?、ああ、肝試しの事ね、四十分もあんな所にいたなんて、つかさに聞いて初めて知ったわよ、リボンを結ぶ所までは覚えてるんだけど」
目を上に向けて考え込んでいるかがみ。
こなた「えっと、何か口に中に入ったような感じはしなかった、煙みたいの見なかったかな」
かがみ「……朝から何訳の分らない事言ってるのよ、さては、私をまだ脅かそうとしているのか」
みゆき「旧校舎の幽霊は私なりにいろいろ調べました。お昼休みにでも話しましょう」
つかさ「私はあまり聞きたくないな……」
かがみ「さて、私は戻るわよ」
かがみは自分のクラスに戻っていった。見たところどこも変わっていない。じゃあのビデオは何だったのだろうか。夜で暗かったからビデオの誤動作でもしたか。
でもそれならかがみの動きが止まった三十分はどうやって説明する。ビデオの映像が頭から離れない。そんな午前中だった。

 お昼休み、みゆきさんは先生に呼ばれて行ってしまった。先にお弁当を食べていいと言われたので三人で食べることになった。
つかさ「そういえばこなちゃん、午前中ずーと元気なかったけどどうしたの」
こなた「うーん、昨夜帰ってからゲームやったからそのせいかな……」
つかさ「えっ、あれからすぐ寝なかったの」
かがみ「それは大変ね……」
ぽつりと呟くように話し、黙々とお弁当をたべてる。突っ込まない。いつもなら『またネットゲーか』とか言ってくるのに。そういえばお昼から何か様子がおかしい。
何か違和感がある。かがみを見ていてその違和感に気が付いた。
こなた「かがみ、いつから右利きになったの」
かがみは箸を右手に持ってお弁当を食べていた。あまりにも自然に使っていたので気が付かなかった。つかさもそれに気が付いた。
つかさ「あれ、ほんとだ、右手でお箸持つ練習何時したの?」
かがみは直ぐに左手に箸を持ち替えたが子供が箸を使うように掴んだおかずをぽろぽろと落としてしまった。
かがみ「やっぱりこっちがいいわね」
右手に箸を持ち換えて、また黙々を食べだした。
かがみ「何よ、あ、このから揚げ欲しいのか、欲しいなら言いなさいよ」
かがみはから揚げを私のお弁当箱に入れた。こんな事したこと一度もなかった。私とつかさはかがみの動作にただ注目した。
943 :肝試し  4 [saga]:2010/07/16(金) 21:36:59.44 ID:5UE4CHc0
 食事が終わり、暫くした時だった。
かがみ「まだ時間はあるわね、こなた、つかさ、外に出て風でも浴びましょ」
普段なら雑談に花が咲く。会話を切るように言った。かがみはそのまま席を立つと教室を出て行った。私とつかさはかがみの後を付いていく。
かがみは校舎を出て学校の外に出て行った。少し後からつかさと話す。
こなた「やっぱりかがみ、なんかおかしいよ」
つかさ「私もそう思う、お姉ちゃん何かあったのかな」
学校から少し離れた広場。そこにかがみは腰を下ろした。
かがみ「ここで話しましょ」
私達も腰を下ろした。かがみはおもいっきりの両手を上に上げて背伸びをした。
かがみ「この広場の向こう、小川がながれてるでしょ、昔ね、もっと大きな川だったのよ」
つかさ「郷土の授業でそんなの教えてもらったかな?」
かがみ「昔はよく氾濫してね……」
かがみは小川を見ながら語っている。
こなた「それで、そんな話をするためにここに私達を呼んだのかい」
かがみ「ちょっとこの川に落し物をしたのよ」
こなた「落し物?」
かがみ「そう、もう見つからないかもね」
つかさ「何を落としたの」
かがみ「木箱に入ったお守り」
つかさ「御守りって、うちの神社の?」
かがみは頷いた。
こなた「かがみが御守りなんて何に使うのさ」
かがみは黙り込んだ。
かがみ「……さあ、もうお昼休みは終わりよ、戻るわよ」
かがみは立ち上がると学校に戻ってった。
つかさ「お姉ちゃん、何がしたかったのかな」
こなた「さあ」
944 :肝試し  5 [saga]:2010/07/16(金) 21:38:35.02 ID:5UE4CHc0

 かがみの不可思議な行動。昨夜の肝試しが原因なのだろうか。ビデオに映ったかがみ。止まっている間、かがみはどうなったのだろう。
気になって何もできない。たまには居間でテレビでもみるか。居間に行くとすでにゆーちゃんがテレビを見ていた。
ゆたか「お姉ちゃん、知ってるかな、近くの広場に新校舎を建てるって」
こなた「それはまた急だね……広場って、小川がある広場の事?」
ゆたか「そうだよ、でもね変な噂が一年生の間で広がってるんだよ」
こなた「噂?」
ゆたか「うん、旧校舎を壊すと祟りがあるって……」
こなた「またなんでそんな噂が」
ゆたか「分らないけど、旧校舎にお化けが出るって噂が……」
こなた「それはうちのクラスでも話題になってる」
ゆたか「それよりお姉ちゃん昨夜遅かったけど何してたの?」
こなた「ちょっと、旧校舎で肝試し……」
ゆーちゃんは飛び上がり驚いた。
ゆたか「お姉ちゃん、うちのクラスの子も先週肝試しやって交通事故に遭って入院しちゃったんだよ」
こなた「……そ、そうなの、だ、大丈夫だよ、私のクラスには神社の娘がいるから」
ゆたか「つかさ先輩だね、今度御守りでも貰ったらいいよ」
ひよりんは今朝そんな事言ってなかった。しかし祟りがあるとしたらもう一人の神社の娘、かがみ。もうその片鱗を見せている。かがみは幽霊に憑依されたのか。
ゆたか「お姉ちゃん、顔色悪いよ、こうゆう話は大丈夫だったよね」
こなた「大丈夫だよ、今日は疲れた……早く休むよ」
ゆたか「おやすみなさい……」

 次の日、眠ろうとしたが結局眠れなかった。眠い目を擦りながら登校した。駅でかがみ達を待つ。
かがみ「オース、こなた……なんだその目はクマができてるぞ、さてはゲームで徹夜したな、まったく、その意気込みを少しは宿題にむけなさいよ……行くわよ」
普段のかがみだった。私はバス停に向かうかがみを見送っていた。
つかさ「おはよう、こなちゃん……お姉ちゃんね、昨日のお昼の事覚えていないんだよ、それで、今朝朝食を食べている所見たんだけど左利きに戻ってた、
     お姉ちゃんどうしたんだろ……一応こなちゃんに渡しておくよ、気休めかもしれないけど受け取って」
つかさは御守りを私に差し出した。私は御守りを受け取った。
こなた「ありがとう……ゆーちゃんのクラスでも肝試しした人がいたみたい、そうしたらその人交通事故に遭ったって」
つかさの顔が急に青ざめた。
かがみ「おーい、つかさ、こなた、バスが来るわよ」
こなた「とにかく行こう……それしかないよ、これはかがみには内緒で」
つかさ「うん、でも、もうお姉ちゃんに言っちゃたから内緒じゃないかも……」
元気のないつかさの返事が余計に不安になってしまった。
945 :肝試し  6 [saga]:2010/07/16(金) 21:40:13.10 ID:5UE4CHc0

 お昼休み、今日はみゆきさんも一緒だ。かがみも今日はいつものノリで突っ込みいれてきた。いつものかがみだ。
みゆき「そういえば昨日、幽霊の件で調べたことを話していませんでしたね」
私はあまり聞きたいとは思わなかった、つかさもきっと同じだろう。
みゆき「……聞きたくないようですね」
みゆきさんは私とつかさの表情で察したようだった。
かがみ「聞きたいわね、折角調べてくれたんだし、話なさいよ」
まさかかがみが知りたいと思っているとは思わなかった。みゆきさんは少し嬉しそうに話し出した。
みゆき「ここは昔、江戸時代、もっと大きな川が流れていたそうです、しかし何度治水工事をしても川は氾濫したそうです、そこで人柱を捧げることになりました」
つかさ「人柱?」
かがみ「人を生贄として建物の土台として生き埋めにするのよ、それで災害を鎮めようとしたのね、昔はよくやったそうよ」
みゆき「人柱は村の娘が選ばれたそうです、満月の夜、娘は生き埋めにされて、そこを基礎にして治水工事が行われ、
     それ以降川が氾濫する事がなくなったそうです」
こなた「それで、その話と今回の幽霊噂と何の関係が?」
みゆき「その娘が埋められた場所が旧校舎の辺り……と言うことです、確証はありません、旧校舎が出来てから何度か生徒が事故で亡くなったそうです、
     私の母はその旧校舎で学んだそうですが、すぐに使われなくなったそうです」
こなた「人柱にされた娘の怨念……か」
つかさ「人柱になった子って年齢はどのくらいだったの?」
みゆき「さあ、そこまでは分りませんが」
つかさ「きっといろいろしたい事もあったんだろうね……」
つかさは悲しげだった。
かがみ「年齢は私達と同じくらい、彼女には心に決めた男性がいた、満月の夜、彼女達は駆け落ちをした、どこか遠くに行って静かに暮らそうと誓った」
みゆき「その話はどこで……」
かがみは目を閉じ話を続けた。
かがみ「月明かりを利用して彼女達は走った、逃げた、途中に寄った神社で御守りを買いお互いに交換した……でもね、結局捕まってしまった、
     彼女は村に連れ戻された、男性は人柱を逃がした罪で村を追放……そして次の満月の夜、彼女は人柱となった、本人が望まない人柱だったのよ」
時代劇のような話。でたらめを言ってるとも思えない。
かがみ「肝試しの時、音楽室で突然頭に浮かんだイメージみたいなものが浮かんだのよ、彼女の無念と怒りは私達では計り知れないわね、
     彼女は言った、私も人柱になれって……次の満月の夜……私は……死ぬ」
なぜ、なぜ、かがみだけが。同じ事をした私がそうなってもいいはず。
こなた「はは、冗談にしては出来すぎてるね、肝試しの恐怖で幻覚をみたんだよ、うん、うん、きっとそうだ」
かがみは左腕を私に見せた。腕に星型の痣があった。
かがみ「これがその証だと言ったわ、この前の警告を無視して来た報い……と言っていた」
ゆーちゃんのクラスの生徒が肝試しをしたって言ってた。トバッチリだ。私達はすっかりかがみの話を聞き入っていた。
946 :肝試し  7 [saga]:2010/07/16(金) 21:41:47.30 ID:5UE4CHc0

かがみ「ふふ、あはははは、何、マジになってるのよ、そんな話に、バカじゃないの……ははは、おなか痛い」
かがみは腹をかかえて笑い出した。
かがみ「さっき咄嗟に思いついた話だけど、本当だと思った?」
こなた「……全然思わないよ、そんな作り話」
心配して損した。もうかがみの心配なんかしない。
かがみ「さてと、少し早いけど戻るわ、それじゃね」
かがみは教室を出て行った。
こなた「まったく、あんな話なんか……どうしたの、つかさ、みゆきさん」
二人は何か真剣は表情をしていた。
みゆき「駆け落ちした男性が追放された点があまりにも……」
こなた「どうゆうこと?」
みゆき「普通なら死罪になるでしょう、しかし男性と一緒に死んでしまっては『心中』になってしまいます、あくまで女性は『人柱』で神々に捧げなければなりません」
こなた「……みゆきさん、それは考えすぎだよ」
つかさ「お姉ちゃんの腕の痣、あんなの私は知らないよ、あんなに目立つ痣なんか無かったよ」
こなた「痣なんか言われないと気が付かないものだよ、それともまだ一緒にお風呂はいってるのかい、つかさ」
つかさ「……そんなの中学生までだよ」
顔を赤くして本当の事を言うなんて。冗談を真に受けちゃってるところはつかさらしい。
みゆき「もう少し調べてもいいかもしれませんね、放課後、私は図書室に行きます」
みゆきさんもつかさも何なら考え込んでしまった。

 午後の退屈な授業が始まった。このままだと睡魔に負けてしまいそうだ。何か別の事を考えて気を紛らわす。
ふと昨日のお昼のかがみを思い出した。広場に連れ出して、昔話なんか始めちゃって……。まてよ。ビデオに映っていた煙が人柱になった女性の幽霊だったら、
今日のかがみの話と一致する。駆け落ちしてたどり着いた神社はかがみの神社だったんだ。御守りは捕まった時に落としたのかな。
それとも駆け落ちした男性に渡そうとしたのか。川に落としたと言っていた。好きな人と引き離されたあげくに人柱で死んじゃうなんて。好きなひとに御守りすらも
渡すことが出来ない時代……。これはかがみが考えた話だった。何真剣になって考えてるんだ。でも本当の話だったら……。
落とした御守り。それを見つけてあげれば幽霊は成仏できてかがみは助かる。元は私が企画した肝試しが原因。もしかしたら私がかがみのようになっていたかも。
あの広場を探してみるかな。
947 :肝試し  8 [saga]:2010/07/16(金) 21:43:51.03 ID:5UE4CHc0

 放課後、私は学校に残って御守りを探すことにした。ジャージに着替え、広場に向かった。広場に着くと小川の近くで立っている人を見つけた。
よく見るとつかさだった。しきりに下を見ている。
こなた「つかさ」
つかさ「こなちゃん、なんでここに……」
こなた「多分、つかさと同じ理由だよ」
つかさは少し間を空けて話した。
つかさ「こなちゃんもそう思ったんだ、お昼のお姉ちゃんは人柱になった女の子……落とした御守りを見つければお姉ちゃんを許してくれるかも」
こなた「その話、かがみの作り話だったらどうするの」
つかさはまた間を空けて話した。
つかさ「話が嘘ならお姉ちゃんは助かる、本当でも御守りを見つければ助かる、そうだよね、こなちゃん」
御守りはまず見つからないと思った。人柱になった時代から数百年。普通にしまっていたってボロボロだ。御守りはもう土になっている。
こなた「そうだね……」
気休めの返事をした。
つかさ「昨日は新月だったよね、満月まで約半月……十五日、十四日、それまで探すよ、もしかしたらゆきちゃんが何か見つけてくれるかもしれないし」
こなた「それより着替えたらどうなの?、制服じゃ探し難いよ」
つかさ「……こなちゃん、だから着替えてきたんだね、着替えてくるよ」
つかさは走って学校に戻った。
さて、私も探すかかな。しかし見つかる事はなかった。

 六日後、私はかがみに呼ばれて学校の裏庭に向かった。かがみは腕を組んで私を待っていた。どうやらご機嫌はあまりよくないようだ。
こなた「なんだよ、こんな所に呼び出して、それに私だけ?」
かがみ「どうゆうつもりなの、私はそんな事をしてもらうためにあんな事を話したわけじゃない」
こなた「なんのことやら」
かがみ「あんた、つかさと広場で御守りさがして、つかさは私が満月の日死ぬと思ってるわよ、悪ふざけもいい加減にしなさいよ」
すごい権幕だ。私がふざけてつかさと御守り探しをしていると思っている。確かにかがみが死ぬとは思ってはいないけど、ふざけているわけじゃない。
こなた「つかさは真剣にかがみを助けたいと思ってる、少なくともそれは確かなことだよ」
かがみ「だったら何故つかさに付き合うのよ、無駄なことをさせて」
こなた「だったら何故あんな話をしたのさ、みゆきさんが納得するほどリアルな話を……みゆきさん、今日も図書室に行ってるよ、あの話は作り話だったの?」
急に勢いがなくなった。かがみはそのまま俯いてしまった。
かがみ「作り話じゃない……あの話は肝試しの時に見た夢のようなもの、それを言葉にしただけだけ」
こなた「祟りの話は?」
かがみ「……それも、同じよ」
私はため息をついた。
こなた「それじゃつかさは探すのを止めないね、少なくとも満月の時までは、もちろん私もだけどね」
かがみ「あれは私の見た夢、そんなの真にうけるなんて、ゲームばかりやってるから現実と混同するんだ」
こなた「ゲームならやり直しが効くけどね、現実はそうもいかないじゃん、それに肝試しも私が言い出したことだし……かがみが夢だと思うならそう思えばいいよ、
     そう思っててくれた方が私達も気が楽だ」
かがみ「……話すんじゃなかった、夢だと思ってバカにしてたらみゆきが食いついてくるなんて、痣もつかさがあんな反応をするなんて……」
かがみは本当の事を言った。それなら私も言わなければならないことがある。肝試しの時、音楽室に置いたビデオ。悪く言えば盗撮だ。
私はかがみに怒られるのを覚悟で話した。そしてそのビデオに映っていたことを。
948 :肝試し  9 [saga]:2010/07/16(金) 21:44:59.39 ID:5UE4CHc0

かがみ「私は三十分も動いていなかった、どうりで時間が合わなかったと思った」
こなた「怒らないの?」
かがみ「何が?」
こなた「盗撮したこと」
かがみ「動機はどうであれ許せない……けど、つかさと一緒にしてくれていることでチャラね、呼びつけて悪かった……みゆきの所、図書室に行くわ」
かがみはそのまま図書室へ向かった。満月まであと七日か。かがみはビデオの事を怒らなかった。怒ってくれた方が私の気が晴れたかもしれない。

 私はジャージに着替えて広場に向かった。しかし先に行っているはずのつかさが広場に入らず立ち尽くしていた。
広場の入り口にはフェンスがひかれていた。立ち入り禁止の立て札が掲げられていた。広場の中には車が数台止められている。新校舎建設の準備のようだった。
つかさ「こなちゃん、これじゃ入れないよ」
こなた「もう新校舎の準備してるなんて、まだ旧校舎が取り壊されていないのに……」
つかさ「どうしよう……」
こなた「どうしようって言われてもね……」
かがみ「何よ、これは」
後ろからかがみの声がした。私達が後ろを振り向くとジャージ姿のかがみとみゆきさんが居た。
みゆき「これでは入ることが出来ませんね……」
つかさ「お姉ちゃん、ゆきちゃん、来てくれてありがとう」
かがみ「ありがとう、は私が言わなきゃいけない、自分の事だから私も御守り探ししようとして来てみたけど、とことん私は呪われているわね……」
さすがのかがみもショックは隠せないようだった。
こなた「諦めるのはまだ早いよ、まだ工事が始まったわけじゃない、夕方になれば作業員の人も帰るよ、夜になったら探そう、これしかない」
つかさ「私も行くよ」
みゆき「私は皆さんより短い時間になりますが探します」
かがみ「ありがとう、でもそこまでしなくてもいいわよ……と言ってもつかさは一人でも行きそうな勢いね……一度帰って準備しましょ、懐中電灯とかね」

 夜七時、私達は広場前に集まった。あまり遅くまでやってもしょうがないので二時間だけ探して帰ることになった。各々懐中電灯を持ち足元を照らしながら
探した。みゆきさんはスコップも持ってきていた。柔らかい所を掘り返していた。しかし探しても見つからなかった。
空を見上げると真上に半月が見えた。もう半分も時間が経ってしまった。これ以上月が大きくならないように願ったけど空しいだけだった。

 家に帰るとゆーちゃんが出迎えてくれた。
ゆたか「お帰りお姉ちゃん、今日アルバイトだったの?」
こなた「まぁ、そんなところかな、ところで肝試しで交通事故に遭った子ってどうなったの」
ゆたか「今日、みなみちゃんとお見舞いに行ったけど思ったより元気だったよ」
こなた「それは良かったね」
ゆたか「うん、でもね、幽霊の言うとおりいつも通学している道を行けば事故に遭わなかったって言ってた」
こなた「幽霊の言うとおり?」
ゆたか「うん、音楽室に入ったら金縛りになって声が聞こえたんだって、いつもの道で帰れって……あの子霊感強いみたいだから何かを感じたんだね」
かがみの時とは随分違う扱いだ。肝試しにきた子を助けようとしてたなんて。おかしい。かがみは警告でその子を交通事故を起こしたって言ってた。
話が合わない。そういえば満月にかがみを死なすと言っておいて、右利きになったかがみが広場で語っている姿はとても悲しげで優しい感じを受けた。
同じ幽霊とは思えない程のギャップだな。幽霊はいったい何がしたいのか分らなくなった。
949 :肝試し  10 [saga]:2010/07/16(金) 21:46:43.97 ID:5UE4CHc0

 家庭科の授業。準備のたの移動中だった。すると廊下の先でかがみが男子生徒と話しているのを見つけた。私は暫く立ち止まり二人の様子を
見ていた。楽しそうに話しているように見えた。かがみは私に気付くと慌てるように男子生徒と別れて私に近づいた。
かがみ「ごめん、ごめん、待ったかな、次は家庭科の授業よね、家庭科室に行きましょ」
暫く私は黙ってかがみを見ながら歩いた。
かがみ「……えっと、さっきの人はD組の学級委員で、明日の議題について話していたのよ」
こなた「ふーん」
興味なさげな態度でそう言った。
かがみ「こなた、言っておくけどそんなじゃ無いからね」
こなた「私はまだ何も聞いてないよ、それにそんなんじゃ無いってどうゆうことなの」
かがみ「何よ、その態度がそう聞いているように見えたから……何よ黙って、何か言いなさいよ」
私は何もしていないのにかがみの方からいい訳じみたことをいいだして。顔を真っ赤にして。普段の私ならそんなかがみをいじって反応を楽しむのだが。
こなた「はは、余裕だね、あともう四日しかないって時に、好きな男の子の前ではなんでもないんだ」
かがみ「……男子とちょっと話してただけじゃないの、それとは関係ないでしょ」
こなた「ちょっとね、私が居るのに気が付かないで楽しそうに話して……この十日間私やつかさが何をしてきたのか知ってるの、みゆきさんだって」
かがみ「……何、どうしたのよ、こなたらしくない、焼き餅なんか焼いちゃって」
焼き餅、これが焼き餅って言うのか。確かに今まで味わったことの無い感じがする。でも今更元には戻せない。
こなた「やっぱりそうだったんだ、悪いけど今日からバイトがあるから、御守り探しはつかさ達とやって」
かがみ「いい加減にしなさいよ……それに私は頼んでいるわけじゃないから……」
何やってるんだろ。こんな時にかがみと喧嘩かよ。確かに会議の話をしていただけかもしれない。でもなぜか止めることが出来なかった。
いつの間にか私達は立ち止まって言い合いの喧嘩をしていた。

つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん何してるの、もうチャイムが鳴っちゃうよ……」
つかさが私達の間に割って入った。さすがにこれ以上喧嘩は出来そうに無い。かがみは無言で私から離れて家庭科室に向かった。
みゆき「どうしたのですか、何か意見の相違でもありましたか」
こなた「何でもないよ」
つかさ「何でもないって、さっきお姉ちゃん怒鳴ってたよ、遠くからでも分るくらいに」
私もそれ以上は何も言わず家庭科室に向かった。それから私とかがみは一言も話すことは無かった。放課後もかがみが来る前に学校を出ていた。
今日のバイトはもう休むと言ってあった。そのまま家に帰宅した。家に帰って私ははそのままベットに横になった。今頃みんなは広場で探しているかな。
かがみと男子がただ話していただけだった。ただそれだけなに私はかがみが死ぬかもしらない危機に家に帰ってしまった。
焼き餅、嫉妬。まさか私が嫉妬だなんて。かがみに彼氏……普通に考えて居てもおかしくない。友達なら喜んであげるよ。なにやってるんだろ……私。

 満月の夜、月の明かりでぼんやりと景色が見える。見たことがある神社。そうかがみの神社だ。月の光に照らされた二人。女性は箱を持っていた。
箱から御守りを取り出すとそれを男性に渡した。二人は見つめ合っている。恋人だ、誰が見ても分る。急に辺りが騒がしくなる。男女も気付いた。
慌てて神社を出ようとする。しかし出入り口は一つ。提灯を持った大勢が神社に入ってきた。逃げる二人。しかし月夜の晩、容赦なく明かりは二人を照らし出す。
やがて二人は捕まり引き離された。
突然場所が変わった。同じく満月の夜だった。女性が柱に縛られている。柱は地面に埋められる。そう、女性と一緒に。彼女は叫んだ。その叫びは隣町まで
届きそうな大きさだった。しかし作業は続く。埋め終わっても彼女の叫びは止まらなかった。何度も男性の名前を呼びながら……
950 :肝試し  11 [saga]:2010/07/16(金) 21:48:17.35 ID:5UE4CHc0


 目が覚めた。全身汗で濡れていた。嫌な夢だった。昨日、かがみと喧嘩したから変な夢をみたのかな。かがみと同じような夢だな。汗を掻いてしまった。
時計を見ると普段起きる時間よりも一時間も早い。シャワーでも浴びるかな。
シャワーを浴び終え、歯を磨いている時だった。
ゆたか「お姉ちゃんおはよう、今日は早いね」
渡しはうがいをした。
こなた「おはよう、たまには私だって早起きするよ」
ゆたか「そうだね……あれ、お姉ちゃん、その腕の痣どうしたの」
ゆーちゃんは私の左腕を指差した。そこを見ると。星型の痣がくっきりと付いていた。かがみと同じ痣だ。頭の中が真っ白になった。
ゆたか「お姉ちゃん、洗面台、私も使いたいんだけど……」
こなた「あ……ごめんごめん、今退くからね」
ゆたか「どうしたの、急に……顔色悪いよ」
こなた「……なんか急に気分が悪くなってきちゃった……部屋で寝るよ」
ゆたか「大丈夫?」
こなた「……大丈夫……じゃないみたい、今日は学校休む」
ゆたか「それじゃ、学校に私が話しておくよ、黒井先生だっけ、お姉ちゃんの担任の先生」
こなた「うん、お願い……」

 自分の部屋に入ってもう一度腕を見た。かがみと同じ痣が付いている。手で擦ったけど取れない。急に怖くなった。私は満月の日死んじゃう。
ベットに潜り込んだ。
そうじろう「こなた、具合がわるいのか、なんなら今日出かけるの止めるが……」
居間からお父さんの声がした。
こなた「いいよ、そこまでじゃないから」
そうじろう「そうか、お昼は適当に頼むぞ」

 死がこんなに恐ろしいとは思わなかった。かがみはこれほど怖いのに平気で登校して、しかも冗談も言っていた。私にはそんな事できない。
震えが止まらない。私はただ子犬のように震えていただけだった。
951 :肝試し  12 [saga]:2010/07/16(金) 21:49:45.72 ID:5UE4CHc0

 午後になってつかさが訪れてきた。お父さんが私の部屋につかさを案内した。布団から出られない。震えているところを見られたくなかった。
つかさ「こなちゃん、大丈夫、ゆたかちゃんから聞いたよ、急に気分が悪くなるなんて」
こなた「ちょっと気分が悪いだけだから」
つかさ「良かった、そうそう、もう広場で御守りを探さなくても良くなったよ、お姉ちゃんの痣が消えたんだよ」
かがみの代わりに私が死ぬってことか。かがみと喧嘩したから祟りが移ったのか。
こなた「……そのかがみは来てないみたいだけど、昨日のこと怒ってるんだね」
つかさ「うんん、今日は会議だって、ゆきちゃんもだよ、今も怒っているけどお見舞いには行きたがってたよ」
こなた「そう……なんだ」
なんか涙が出てきた。かがみと同じ状態になって初めてかがみの気持ちが分るなんて。かがみは恐怖と闘っていた。
でもそんな事を私達には全然感じさせていなかった。
つかさ「思ってたより元気そうでよかった、明日は学校に来れそうだね、私、もう帰るね」
こなた「うん、かがみによろしく言っておいて」
つかさ「うん」
つかさが私の部屋を出ようとした時だった。
こなた「待って、つかさ」
立ち止まり振り返って私を見た。私はベットから起き上がりつかさに腕を見せた。
つかさ「こなちゃん……その痣、どうして、どうしてなの」
こなた「分らない……だけど私がどうなっているのかは分るよ……助けてつかさ、助けて、死にたくないよ」
私はつかさの手を両手で握り命乞いをした。分ってた。自分勝手なのは分ってた。笑ってこのまま黙っていようと思った。でもつかさが後ろ向いて
部屋を出ようとした時、急に寂しくなって思わずつかさに声をかけてしまった。あとはもう感情の赴くままだった。
つかさ「助けてあげたいけど、広場ね、もう工事が始まっちゃったんだよ、ブルドーザとかショベルカーとかが入ってきて……もう探せないかも」
こなた「そんな……」
つかさ「今夜七時、広場に集まろう、ゆきちゃんとお姉ちゃんにも誘うから、ね、きっと見つかるよ」
こなた「ありがとう」

 午後七時、月は明るくなっている。着実に満月に向かっていく。私はかがみに近づき謝ろうとした。
こなた「かがみ、私は……」
かがみ「もういいわよ、何も言わなくていい、満月になってから聞いてあげる、今は探すわよ」
そうゆうと広場の中に入っていった。
とにかく探した。機械で掘り返された所も。小川の中も。でも御守りは出てこない。やはりもう土になってしまったんだ。そんな絶望感が漂ってきた。
952 :肝試し  13 [saga]:2010/07/16(金) 21:51:00.37 ID:5UE4CHc0

つかさ「これなーんだ」
満月まで一日前の朝、突然つかさは私に御守りを見せてきた。つかさは満面の笑みだった。つかさの神社の御守りであることは分かったが
随分デザインが違う。色もあせていて所々に穴があいている。虫食い跡かな。
こなた「ボロボロの御守りだね……ってもしかしてその御守り」
つかさ「そう、探していた御守り……」
こなた「どこにあったの?」
つかさ「神社の奉納庫……」
こなた「そんなの持ってきちゃって平気なの?」
つかさ「家族には内緒、黙って持ってきた、でもちゃんと元に戻すから……」
こなた「その御守りがどうかしたの……もしかして」
つかさ「ゆきちゃんが調べてくれたんだ、神社の言い伝えや伝説をね……昔ね、若い男女が訪れてしばらく神社に住んで居たんだけど男女が住んでいた
     村からその男女を引き取りにきたんだって、なんでも村の掟を破ったからだって、神社側の村もどうしようもなく引き渡した、
     しばらくすると男性だけ神社に戻ってきた、そして一生、女性の供養をしたんだって、女の人が何で死んだのかは書いてなかった」
みゆきさんがつかさの言った事に付け加えた。
みゆき「この伝説を見てかがみさんの言ってたことと、学校の地域に伝わる人柱伝説と一致するのではないかと思いまして、つかささんに神社を知れべて
     もらったのです、この御守りはその時の御守りと考えていいでしょう、当時、心中が美徳とされていましたから、このような話はあまり語り継がれなかった
     のかもしれません、この伝説を探すのに手間取りました、私的にはこちらの伝説の方が心惹かれますけどね、心中は良くありません」
こなた「でも、わたしの痣は消えてないよ」
二人に腕を見せた。くっきりと痣はついている。
つかさ「なんで、見つけたのに、何か足りないのかな、御守りをどこかに持っていかなきゃいけないとか?」
その時私の見た夢を思い出した。
こなた「その御守りは小さな箱に入っていた、箱は人柱になった女性が持っていた、多分箱を探してその御守りと一緒にしないとだめなのかもしれない、
    痣がつく時に夢で見たんだよ、男女が御守りと箱を渡していた夢をね」
つかさ「そんな……」
こなた「御守りを探すだけでこれだけ時間がかかってしまった、今夜までに箱を探さないといけない、ありがとう、つかさ、みゆきさん、もういいよ」
つかさ「もういいよって……諦めちゃうの」
こなた「あと一日でどうするんだよ」
みゆき「御守りの在る場所は幽霊さんがヒントをくれていました、箱のある場所もヒントをくれていると思うのです、それさえ分れば……」
こなた「もうみゆきさんが調べつくしているよ、みゆきさんが知らないのはかがみが右利きになった時の話くらいだよ」
みゆき「何ですか、その話は聞いてませんね」
つかさ「その時ゆきちゃんは先生に呼ばれて居なかったから……」
みゆき「詳しく話して下さい」
953 :肝試し  14 [saga]:2010/07/16(金) 21:52:10.60 ID:5UE4CHc0

 お昼休み、みゆきさんは広場入り口に私達を呼んだ。
かがみ「どうしたのいきなり呼び出して、御守りはもう探したはずよ、もうここには用はないはず」
みゆきさんはかがみのいう事を聞き流した。急いでいるようにも見えた。
つかさ「……こなちゃんの痣が消えないから、まだ何か足りない……御守りが入ってた箱も探さないとだめみたい」
みゆき「泉さん、つかささん、かがみさんがここに来た時、どうしまたか」
つかさ「えっと、確かこの辺りに座って御守りの事を話し出したんだよ」
こなた「そうだった、かがみはここに座った」
かがみ「何の話よ、私はここに座ったことなんかない」
つかさ「お姉ちゃんは覚えてない、以前言ったでしょ、お姉ちゃんがお昼休みの時右利きなっちゃったんだよ」
かがみは腕を組んで考えて思い出そうとしていた。
みゆき「かがみさんここに座って下さい」
かがみ「いいけど、意味が分からない」
かがみはつかさと私が示した場所に座った。
みゆき「かがみさんはその時の記憶がないので……済みませんが座っていて下さい、泉さん、つかささんこの位置で間違いありませんね」
こなた・つかさ「うん」
みゆき「かがみさんの座っている下におそらく探している箱があると思います、確証はありませんが……」
そこは工事のフェンスの外だった。私達はフェンスの中を探していた。
つかさ「え、お姉ちゃんは適当に座ったわけじゃないの?」
みゆき「かがみさん、いいえ、幽霊さんが乗り移ったかがみさんはおそらく箱の在り処を知っていた、それを知らせたかったのかもしれません」
かがみ「詮索は後、早速そこを掘るわよ」
みゆき「それは出来ません、そこは工事の入り口のすぐ近くです、恐らく許可してくれないでしょう、今までと同じように夜にするしかないと思います」
つかさ「でも、もし……もしも、ゆきちゃんの推理が外れてたら……」
こなた「今掘って外れが分かったとして、半日で新たな場所を探すことはできないよね、これが最後のチャンス、私はいいよ、みゆきさんに賭けるよ」
みゆき「有り難うございます」
みゆきさんは石を幾つか持ってきて積み重ねて印を付けた。
みゆき「夜になると雰囲気が変わって場所が分らなくなるかもしれません……これでいいでしょう、では戻りましょう」
みゆきさんとつかさは学校に戻って行った。私は暫くみゆきさんの石の印を見ていた。

 かがみも戻らず私と同じように石の印をみていた。
かがみ「こなた、盗撮の事は話して、私が右利きになった事話さなかったわね」
怒っているようにも感じた。そうでないようにも感じた。
こなた「つかさが話したと思ったけど、違った?」
かがみ「つかさは確かに話した、だけど半分聞き流していたわ……身内の話って意外と聞かないもの、こなたが言ってくれれば」
こなた「……私が言ったら、信じた、そしてもっと早く解決した、それはどうかな、普段の私はかがみにいつも悪戯してるし、いじってるし、ばかにしてるし」
かがみ「……そこまで自覚してるなら少しは自重しろ!」
身を乗り出し、私に怒鳴りつけた。
こなた「右利きだったかがみは別人だったよ、幽霊がかがみを操ってたんだよ、今のような反応はなかったからね」
かがみ「そんな反応で悪かったわね……でもさっきみゆきに言った言葉、見直したわよ……なかなか当事者が言えることじゃない、凄いわよ」
こなた「……かがみほどじゃないよ」
かがみ「謙遜するなって、……わたしほどじゃない、どうゆうことよ」
こなた「満月になっても生きてれば教えてあげるよ……喧嘩のケジメもついてないからね」
私はそのまま学校に向かった。かがみもそれ以上は聞いてこなかった。
954 :肝試し  15 [saga]:2010/07/16(金) 21:53:20.46 ID:5UE4CHc0

 最後の夜が来た。月はまだ空に出ていない。みゆきさんの話ではもう暫く月は出ないようだ。空に出る時は満月のはずだ。
みゆきさんは広場に穴を掘る許可を取っておいてくれた。
みゆき「さて、始めましょう、シャベル、つるはし、スコップは元に戻せば使っていいと許可を取っています」
かがみ「……みゆき、あんたいつからそんな行動派になったのよ」
みゆきさんはわき目も振らずスコップを石の目印目掛けて振り下ろした。それに釣られてかがみもシャベルで掘り出した。
つかさ「ゆきちゃん、こなちゃんを助けたいんだよ……私もだけどね」
つかさスコップでこそこそと掘り始めた。私も掘り始めた。自分の為に。

みゆき「おかしい……出ない…もうすぐ月が出てしまいます」
焦りだすみゆきさん。スコップを振るスピードが速まった。そんな姿を見たのは初めてだ。
かがみ「私はもう少し違うところを掘るわよ」
かがみは少し場所を移動した。つかさは黙々と掘っている。
こなた「皆少し大げさだよ、やっぱり死ぬなんて嘘っぱちだよ、私はこうして元気……」
なんだろう手が痺れてきた。私はスコップを落としてしまった。拾っても力が入らないまた落とした。
かがみ「何ふざけてるのよ」
こなた「いやね、急に力が入らなくなって、運動不足……かな」
今度は寒気が襲ってきた。体が無意識に震えだす。腕を組んでしゃがみ込んだ。
かがみ「ちょっと、こなた、しっかりしなさいよ」
こなた「なんか寒いよ……」
かがみ「寒いって、こなた」
そのまま倒れ込もうとする私をかがみが駆け寄り支えた。
こなた「力が……入らない」
東の方を見ると月の頭が見え始めていた。
こなた「なんか……本当みたいだ……ね、死んじゃう……みたい」
かがみ「まだ、月は完全に昇ってない、もう少しで探すから、待って」
こなた「はは、月は待ってくれないよ、なんか目が霞んできた」
かがみ「ばか、満月の日に私に話すことあるんじゃないの、満月よ、早く……言いなさいよ」
こなた「なんかダメ……みたい」
私の頬に熱いものが当たった。涙。かがみの涙か。もう目は殆ど見えない。かがみは私に何か言っているが聞こえなくなってきた。
かがみが私の為に泣いてくれたのか。つかさとみゆきさんはどうしたのだろうか。もうそれも分らない。気が遠くなってきた。これが死ぬってことなのかな。
急に寒気が取れた。そしてすごく眠くなった……意識が遠くなる。真っ暗だ……真っ暗。


 
955 :肝試し  16 [saga]:2010/07/16(金) 21:54:45.27 ID:5UE4CHc0

 淡い光がまぶた越しに感じた。私は目覚めた。満月が私の目に映った。私は木の根元に寝ていた。月が真上にあるのか。私はどのくらい
寝ていたのかな。上半身だけ身を起こした。
つかさ「こなちゃん、大丈夫?」
声のする方を向いた。つかさが座って心配そうに私を見ていた。つかさが居てくれたのか。
こなた「私……助かったの」
つかさ「これなーんだ」
満面の笑みでつかさは私に小さな木箱を見せた。夢で見た女性が持っていた木箱に似ている。
こなた「見つかったんだね……」
つかさ「私が見つけたんだよ、漆塗りの箱の中に入ってた、だから箱が腐らなかったってゆきちゃんが言ってた」
こなた「そうなんだ……」
急につかさは私に抱きついた。
つかさ「……この箱の中に御守りを入れて祈った、皆で祈った……こなちゃんが倒れて、お姉ちゃんはこなちゃんに行って、ゆきちゃんは呆然として
     動かなかった、でも私は探した……探したんだよ……私だけで探したんだよ」
こなた「ありがとう……つかさの気持ちは分ったから放して、ちょっと苦しいよ」
つかさは離れた。私の胸元が少し濡れていた。つかさも泣いてくれたのか。私は立ち上がった。
つかさ「もう立って大丈夫なの?」
こなた「なんかすっきりしちゃったよ」
背伸びをした。そして何気に腕を見てみた。痣は消えていた。
こなた「痣が消えてる、祟りか呪いか分らないけど」
つかさ「祟りでも、呪いでもないよ、二人はただ会いたかっただけ、何百年も逢えなかった恋人がやっと逢えたんだよ、それを私達が手伝った
     ……最後に会ったのもこんな満月の夜だったんだね」
つかさは箱を胸元に当てて目を閉じながらそう言った。
つかさ「この箱と御守り、奉納庫に戻しておくね」
こなた「それがいいかもね、ところでかがみとみゆきさんは何処へ?」
つかさ「使った道具を戻しに行ったよ、もうすぐ戻ってくるかも」
956 :肝試し  17 [saga]:2010/07/16(金) 21:55:35.16 ID:5UE4CHc0

 程なくして二人は戻ってきた。二人は立っている私にすぐ気が付いた。かがみは立ち止まったがすぐにみゆきさんが後ろから押して私の前に立たせた。
かがみは私と目を合わせようとはしなかった。
かがみ「さあ、満月は頭上にあるわよ、私に何が言いたかった事、言ってみなさい」
予想していた通りの言い方だ。だけどそんな言い方をするとこっちも素直にはなれない。
こなた「かがみ、そんな態度だと、彼氏に嫌われちゃうよ」
かがみ「初恋は実らない……もう終わったわよ……」
つかさ「お姉ちゃん、恋してたんだ……知らなかった、教えて欲しいな、どうなったの?」
乙女モードになったつかさがかがみ言い寄った。かがみも我に返ったようだ。
かがみ「わー、今のは関係ない、こなた、なんでそんな事言うんだ!!……つかさも余計な詮索はしない!!」
かがみは広場の方に逃げるように歩き出した。つかさはそれを追った。みゆきさんはそれを見て笑った。
みゆき「かがみさんは月夜の独特の雰囲気に流されてしまいましたね」
私もかがみとつかさを見ながら笑った。ふとみゆきさんと話したくなった。
こなた「かがみと肝試し……負けたの私の方だったね」
みゆき「どうしてですか?」
こなた「つかさから聞いたでしょ、私が学校を休んだ理由……死ぬのが怖かった、だけどかがみはそんな事しなかったし、冗談だって言って笑ってたよ、
     一方私は、怖くてただ震えてただけだったし、つかさに命乞いまでしたんだよ、どうみても私の方が弱虫だよ」
みゆきさんは少し間を空けてからから答えた。
みゆき「……死そのものより死の予感の方が恐怖すると聞いたことがあります、人柱に選ばれた女性、満月になるまで間の心情は私では計り知れません、
     人は必ず死にます、しかし何時死ぬかは分らない……だから生きていけるのかもしれません」
こなた「それ、今の私なら分るよ」
みゆき「かがみさんも同じですよ、かがみさんも私達に助けを求めていた……肝試しで見た夢を話しましたね、それは助けて欲しいと言っているのと同じです」
こなた「そうかな……」
そんなものだったのかな。かがみも助けて欲しかったのか。
みゆき「……そういえば私はまだ肝試しの判定をしていませんでしたね」
みゆきさんは少し間を空けた。
みゆき「肝試しの判定は引き分けと言いたい所ですが……主催者も同じく怖がってしまってはどうしようもありません、泉さんの負けですね」
にっこりと私に微笑みかけた。
こなた「なんだ、やっぱり負けか……」
私は苦笑いをした。

 かがみとつかさは相変わらず鬼ごっこをしている。みゆきさんはかがみを見ながら言った。
みゆき「かがみさんに何を言おうとしてたのですか」
こなた「喧嘩の事を謝ろうとしてね、それに私の事を見直したなんて言うから、私は命乞いをしたからそんなことないよって言おうとしたんだけどね」
みゆき「……もう肝試しは終わりました、喧嘩も終わっていますね、ここにかがみさんが居るのがなによりの証拠」
こなた「みゆきさんが居なかったら御守りも、箱も見つからなかった、ありがとう……」
みゆき「いいえ、どういたしまして」
957 :肝試し  18 [saga]:2010/07/16(金) 21:56:51.59 ID:5UE4CHc0

 かがみが私達の所に戻ってきた。
かがみ「こなた、何てこと言ってくれるのよ、つかさがしつこくてしょうがない」
みゆき「私も是非聞きたいですね、かがみさんの恋の話……」
かがみ「ちょ……なんでそうなるのよ」
つかさ「ゆきちゃんもそう言ってるよ、もう話してよ、お姉ちゃん」
三人で話す、話さないで会話が弾んでいる。なんだかんだ言ってかがみも満更でもなさそうだ。私は会話から外れて足元に生えている野花を摘んだ。
かがみがそれに気付いた。
かがみ「何してるのよ、らしくないことして」
こなた「見ての通り花摘みだよ、あの二人の霊に供えようと思ってね」
それを聞いたみゆきさんとつかさは私と同じように花摘みを始めた。かがみは一人立ったままだった。
かがみ「あの霊はこなたを殺そうとしたのよ、私だって……よくそんな気になれるわね」
こなた「あの霊は私を殺そうとはしなかったような気がして」
かがみ「そんな事はない、現にこなたは倒れたじゃないの」
こなた「つかさが箱を見つける前にすでに月は見えていたよ、もうとっくにタイムオーバーだった、私を殺すつもりならもう死んでるよ、それに、ゆーちゃんの
    クラスの子も肝試しをしたけど、その子は交通事故に遭った、でもそれは防げた事故だった」
かがみ「ゆたかちゃんのクラス?、初めて聞いたわねそんな話」
こなた「そんな話したら、もっと怖くなるでしょ」
かがみ「……それは否定しない、だけど何故幽霊はそこまでして私達を怖がらせた」
何故と聞かれて直ぐには答えられなかった。花を摘みながらつかさが答えた。
つかさ「二人は逢いたかった、それだけの理由があれば充分だよ、私が幽霊だったらそうするかも……それに私が箱を見つけたときはもう月は完全に出てたよ」
みゆき「幽霊の目的は泉さんやかがみさんの死ではなかったのは確かですね、御守りと箱を一緒にして欲しかった、そして二人の境遇を理解して欲しかった」
突っ立っていたかがみは自然に腰を落とし、花を摘んでいた。

かがみ「月下では白い花が映えるわね」
かがみは白い野菊を中心に摘んでいたようだ。確かに白い花は月の明かりを反射してより白さを際立たせていた。
つかさ「このくらいあれば大丈夫かな、皆、お花をかして」
私達はつかさに花を渡した。つかさは自分のリボンを外すと花を纏めて結んで花束を作った。即席にしては上出来だ。色々な花が混ざっている。
皆それぞれのセンスの違いか。
つかさ「どこに供えようかな?」
かがみ「この辺り、昼間は人通りがあるわね」
みゆき「あそこはどうでしょうか」
みゆきさんが指差す所を見ると、ここから少し離れたところに小高い丘があった。
かがみ「あの丘ならこの辺りも見下ろせていいかもね、行きましょ」

 丘に着いて私達は辺りを見回した。学校、校庭、広場。全てが見えた。公園のようだが滑り台やブランコはなくベンチが数個置いてあるだけだった。
かがみ「こんな所があったなんて今まで気が付かなかったわ」
みゆき「運動部はこの辺りまで走っているようですが、私もここに来たのは初めてですね」
こなた「運動系の部活やってなければこんな所まで来ないよね……つかさ、花を」
つかさは花束を私に渡した。私は一番広場が見える場所に花束を置いた。暫く私達は目を閉じて黙祷をした。
958 :肝試し  19 [saga]:2010/07/16(金) 21:57:54.54 ID:5UE4CHc0

 突然私のポケットから携帯の着信音が聞こえた。
かがみ「こなた、こうゆう時はマナーモードにしておきなさいよ」
と言っていたかがみからも着信音がする。かがみは慌てて音を切った。
つかさ「もうこんな時間だよ、多分お父さんだと思うよ」
私は腕時計を見た。もう0時を過ぎていた。もうこんな時間か。
こなた「か弱き乙女が四人もこんな時間まで外にいれば心配もするね」
つかさ「お父さんにメール入れておくよ」
かがみ「みゆきはいいの?」
みゆき「私はもうこうなると思っていましたので予め話してあります」
こなた「流石だね」
かがみ「もう電車もないから帰れないわよ、朝までここで過ごすしかない、そこにベンチがあるから休みましょ、丁度人数分あるから」

 みゆきさんとつかさはベンチに座ると直ぐに眠った。地面を掘って疲れたのだろう。かがみも転寝状態だ。しかし私は眠ることができなかった。
倒れてたせいかもしれない。それとも満月の光のせいか。月の光がこれほど明るく感じたことは無かった。夢に見た月夜と同じだ。月は西に傾いている。
みゆきさんが言っていた。死の予感は怖いって。確かに怖かった。この日に死ぬなんて言われたら……人柱になった女の子もそうだった。
昔、あの広場で夢で見た出来事が起きた。ゲームでも漫画でもない。昔の事とはいっても人を生き埋めにして祈るなんて馬鹿げてる。
人柱伝説はここだけじゃない、日本全国にあるってみゆきさんが言ってた。興味本位でやった肝試しだったけど。こんな伝説を知っていればやらなかったかも。
かがみ「眠れないのか」
後ろから私に声をかけてきた。
こなた「そう言うかがみだって、いきなり起きてきてどうしたの」
かがみは私の横に並んだ。そして私と同じように広場を見た。
かがみ「意外と月の光は眩しいのね、どうも寝付かれなくてね」
こなた「ふふ、私と同じだ」
しばらくの間、私達はぼんやりと夜景を見ていた。遠くでは街の明かりが月の光に負けじと灯っている。今更ながら陸桜学園もけっこう街から外れているなと思った。
かがみ「今度から満月を見る度に、こなたとの肝試しを思い出すことになりそうね、可笑しいわね、肝試しは新月にやったのにね」
こなた「夢の事を言っているの?」
かがみ「そうよ、多分こなたが見た夢と同じ、ただ違うのは私が満月の日に死ぬと言われた事ね、正直怖かったわよ、学校を休もうとしたぐらいにね、
     月がどんどん満月に近づいていくのを見ると涙が出てきた」
こなた「それで私達に夢の事を話したんだね、みゆきさんの言う通りだ」
かがみ「そうね、みゆきには敵わない、まさか御守りがうちの神社にあったなんて……そして箱の在り処もみゆきが当てたわね」
俯いて肩を落としている。気弱なかがみを見るのも初めてかもしれない。
こなた「そういえばまだ言ってなかったね、満月になったら言うって」
かがみ「……もういいわよ、どうせ喧嘩の事でしょ、つかさやみゆきにバレちゃったし、思い出したくもないから」
失恋か、私も聞きたいけど、それはもう少し経ってからからでいいかな。
こなた「私が倒れた時、泣いてくれたよね、私の頬に数滴涙がかかったのを感じたよ」
かがみ「私が、こなたの為に、まさか、気が動転して勘違いしてたんじゃないの、喧嘩してふて腐れて御守り探しをしなかった人に涙なんか流さないわよ」
月明かりでも分かるほど顔を赤くして否定してる。相変わらず素直じゃないな。今回はそのまま受け入れるか。そういえば、つかさやみゆきさんに言った言葉、
まだかがみには言ってなかった。
こなた「……でも、私の時は探してくれた、ありがとう」
かがみ「ばか」
かがみらしい返事だ。でもかがみの気持ちは分かった。死の予感をお互いに体験したから。
959 :肝試し  20 [saga]:2010/07/16(金) 21:59:11.35 ID:5UE4CHc0

 空が薄く明るくなってきた。日の出が近い。満月はもう目立たなくなってしまった。その満月も西に沈もうとしていた。
こなた「もうすぐ日の出だね、もう月が霞んじゃってるよ」
かがみ「月は夜でないとその美しさは出ないわね……まさかまた日の光を見る事ができるなんて、良かったわね」
こなた「うん」
かがみがあくびをした。
かがみ「今頃眠くなってきた」
こなた「授業中居眠りしないようにね」
かがみ「こなたじゃあるまいし、今の言葉そのまま返すわよ」
こなた「相変わらず手厳しいね」
かがみ「さてと、つかさとみゆきを起こして学校に戻りましょ、学校の方が休めるわよ、裏門に行けば入れてくれるはず」

 月夜では綺麗に見えた花束。まだ日が完全に出ていないのにくっきりと見える。野性の花だけあってやっぱりお花屋さんで売っているものより色褪せている。
少し残念な気持ちになった。

 あれから三日後だった。広場の工事中に白骨死体が発見された。柱に括り付けられた状態だったと言う。それは江戸時代、人柱で生き埋めにされた
女性であることが分かった。工事は一時中止となった。その代わりに旧校舎の解体工事が繰り上げて行われることになった。
旧校舎が解体された後、そこは公園になる計画らしい。そんな中、つかさが急に旧校舎の音楽室を見てみたいと言い出した。一人では行けないから皆呼ばれた。
こなた「なんでいきなり行きたくなったのさ」
つかさ「明日から解体工事始まっちゃうから……」
こなた「まさかつかさも肝試しモドキをって?」
つかさ「……ちがうよ、ただ、ただね、人柱にされた女の子が見つかったから……もう一度祈ってあげようかなって」
こなた「それなら一人で行けるじゃん、無人の建物とは言え昼間だし、明るいし……」
っと言ってもつかさはかがみの側から少しも離れようとはしなかった。しかし音楽室に近づくと日が差し込まないのでうっすらと暗くなった。つかさの顔色が
青ざめていくのが分る。体もすこし震えている。すると奥から音が聞こえた。小さい音。音楽室から聞こえる。ピアノの音だ。つかさはその場で止まってしまった。
かがみ「どうしたのよ、行くって言い出した人が立ち止まっちゃったら先にすすまないじゃない」
つかさ「だって……ピアノ……なってる……よ」
こなた「幽霊は江戸時代の人だよ、ピアノなんか弾ける訳無いじゃん」
みゆき「……この曲は……」
みゆきさんまで立ち止まった。私とかがみはため息をついた。
こなた「それじゃ私とかがみで音楽室見てくるからそこに居てて……」
960 :肝試し  21 [saga]:2010/07/16(金) 22:00:11.24 ID:5UE4CHc0

 私とかがみで音楽室の入り口の前に立った。はっきりとピアノの音が聞こえる。静かな曲だ。私は扉に手をかけた。かがみも扉に手をかける。お互いに頷いた。
こなた・かがみ「せーの」
二人で思いっきりドアを開けた……。ピアノの演奏は止まった。私達はピアノの前に駆け込んだ……。
こなた「みなみ……ちゃん」
ピアノの前に座っていたのはみなみちゃんだった。私達を見て驚いていた。
かがみ「ご、ごめん、驚かすつもりはなかったんだ、こなたのやつがいきなり慎重になるもんだからね……」
こなた「いや、かがみが急にへっぴり腰になったもんだから……」
慌てて言い訳をした。そんな私達を見てみなみちゃんは笑い出した。音楽室の雰囲気に気が付いたのかつかさとみゆきさんも音楽室にやってきた。
つかさ「みなみちゃん、どうしてこんな所に……怖くないの?」
みゆき「みなみさんでしたか……」
かがみ「何故こんな所でピアノなんか……正式な音楽室があるじゃないの」
するとみなみちゃんはすこし寂しい顔をした。
みなみ「明日から、もうここでピアノが弾けなくなるから……」
みゆき「みなみさん、今日が初めてではないのですね、ここでピアノを弾くのは」
みなみ「はい……入学してからすぐにここで……誰もいないからいい練習場……でした、幽霊騒ぎが起きてからは誰も来なくなりました」
かがみ「放課後、夕方、早朝、音楽室で幽霊を見たとう噂……旧校舎の幽霊騒ぎは三年生なってから……」
私達四人は顔を見合わせた。
こなた「幽霊騒動の犯人は……」
つかさ「みなみちゃんだった?」
みなみちゃんはキョトンとした顔でこちらを見ていた。幽霊とかオカルトとかは平気、と言うよりは感心すらないみたい。
いくら私でも四六時中は居られない。状況が分っていない様だ。私は今までの経緯を話してあげた。

みなみ「そんな事が……私のクラスでも、クラスメイトが……」
こなた「ゆーちゃんから聞いたよ、大変だったね」
みなみ「もう明日退院するから……」
つかさ「それは良かったね……あれ?、この花、どうしたの?」
つかさはピアノの楽譜を置く所に一輪の花を見つけた。その花はその辺に生えている野菊だ。もうしおれかかっていた。水の入った小瓶に入っていた。
きっとみなみちゃんが入れてくれたのだろう。
みなみ「ピアノの上に置いてありました、これと一緒に」
みなみちゃんはリボンを持っていた。
つかさ「これ、満月の時花束にした私のリボンだよ、なんでこんな所に……」
みゆき「やはりそうでしたか……」
かがみ「やはりって、何か分ったの?」
961 :肝試し  22 [saga]:2010/07/16(金) 22:01:21.58 ID:5UE4CHc0

 みゆきさんは何かもやもやが晴れたようにすっきりしていた。
みゆき「みなみさんの弾いていた曲は『月光』でした」
かがみ「月光って、ベートーベンの?、曲は知ってるけど、さっきの曲は聴いていなかったから分らなかったわ」
みゆき「そうです、みなみさんはここで何度も月光を弾いていました、確かに幽霊騒動の正体はみなみさんだったかもしれません、しかし、人柱になった女性の
     幽霊を呼んだのもみなみさんかもしれません」
かがみ「……確かにあの曲は月夜を連想させるわね……」
みゆき「そして、幽霊は思い出した、月夜で誓った愛を……そこに肝試しに来たかがみさん、かがみさんはその時恋をしていました、そんなかがみさんに
     想いを伝えたかったのかもしれません、しかし思うように伝わらないので……今度は泉さんに」
つかさ「……この花は幽霊さんの答えだね、喜んでいるんだね、そうだよね」
みゆき「おそらく……」

 私は音楽室の中央にある椅子に座った。
こなた「聴いてみたいな、その幽霊を呼んだみなみちゃんの月光」
みなみちゃんは顔を赤くした。
みなみ「……まだ一楽章しか弾けない……それに人前で弾いたことも……」
かがみ「私も聴いてみたい」
かがみも私の隣に座った。みゆきさんも座った。
つかさ「私も聴いてみたいな、どんな曲なのかな」
つかさはみなみちゃんのすぐ近くに座った。四人の目がみなみちゃんに集中した。
躊躇っていたけど覚悟をきめたのか目を閉じしばらく瞑想をしてから弾きはじめた。

 静かに曲は始まった。聴いたことがある曲だ。同じようなリズムの繰り返しのように聞こえる。月夜……そう月夜だ。この静けさは満月の夜。
草原にそよ風が吹いている。草花がゆっくりとなびいている。月の光が淡く照らし出す。そんな感じの曲だ。そうか……それで幽霊は恋人との再会を選んだ……。
人柱として生き埋めにされた怨みだけだったら、私も、かがみも、ゆーちゃんのクラスメイトも、死んでいたかもしれない。
みなみちゃんの演奏が幽霊の心を癒したんだ。私は演奏をもっと聴きたくなった。

 彼女の想いは通じた。人柱の彼女自身も発見された。きっと記念碑が建つ。そしてこの旧校舎は取り壊される。 この曲が終わった時、この物語も終わる。
永い夜が終わる。私達は祈るようにその曲を聴いた。

終。
962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/16(金) 22:02:14.98 ID:5UE4CHc0
以上です。長編でこなたメインは初めてです。こなたは難しいので自信がありません。
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/16(金) 22:46:42.69 ID:5UE4CHc0
ここまでのコンクール作品をまとめました。修正をするならいまのうちにどうぞ
964 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/16(金) 22:55:48.95 ID:Qyk2m920
えがったよ〜、超大作だね!!
一部誤字脱字があるのはご愛嬌つうことでおkっしょ
それぞれのキャラが立っててえがった!
人柱という古い風習と恋する二人の切ない物語が奥深くてえがた!
クールなみなみちゃんの演奏もポイント高いっすよ!
乙華麗!
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/17(土) 04:58:30.97 ID:FOvjygso
>>963
投下&まとめ乙
あとで読ませてもらいます
966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/17(土) 05:09:13.44 ID:FOvjygso
★★★らき☆すた★★★

第19回コンクールも残すところ二日となりました!
まだ作品を投下されていない方は締め切りにご注意ください。

締め切りは7月18日(日)24時となっております。

※修正について
 自前の誤字などの修正はコンクール終了後まで禁止です。
 saga修正は可

★★★らき☆すた★★★
967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/17(土) 16:20:30.06 ID:BHR67OI0
>>964 >>966
一人で書いて修正だとなかなか誤字脱字は気が付かないもの。第三者に読んでもらうのが
ベストだが知人に読まれるほど恥ずかしいものはない……難しいね
968 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:24:52.40 ID:tJF7v3Q0
コンクール作品の投下いきます。

今回はやけに時間かかった…。
969 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:27:15.39 ID:tJF7v3Q0
 きょうはまんげつ。
 おそらにはまんまるなおつきさまがでています。
 わたしはしってる。
 おつきさまにはうさぎさんがいて、おもちをついているんです。
 しんせきのおにいちゃんからおおきなぼうえんきょうをかりてきました。
 きょうはこれでおつきさまをみるんです。
 うさぎさん。
 もしわたしがいていることにきがついたら、てをふってくださいね。



― 玉兎 ―


970 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:28:03.55 ID:tJF7v3Q0

 満月まで、後三日。


 とある日の、とある喫茶店。
 泉こなた、柊かがみ、柊つかさ、そしてみゆきの四人が冷たい飲み物を飲みながら談笑していた。
 高校を卒業し、それぞれ別の大学や専門学校へと進学した今は、四人集まるにもお互いのスケジュールを合わせなくてはならず、こうした時間は四人にとって貴重な時間になっていた。
「こなちゃんって、お月様に兎さんが居るってのいつまで信じてた?」
 そんな中、ストローから口を離したつかさがこなたに向かってそう聞いた。
「…急にどうしたの?」
 こなたは眉間にしわを寄せてつかさに聞き返す。
「ほら、もうすぐ満月だなーって思って…」
 少し言いづらそうに答えるつかさ。こなたは少し困った顔をしてかがみの方を見た。すると、彼女は小さくため息をついてお手上げのジェスチャーをした。
「わたしも昨日聞かれたわ…つかさは中学くらいまで信じてたから、お仲間が欲しいんでしょ」
「あーなるほど…悪いけど、わたしは幼稚園卒業くらいまでだよ」
 こなたがそう言うと、つかさは心底残念そうな顔をした。
「そっかー。あれだけサンタさん長く信じてたから、もしかしてって思ったんだけどなー」
「そんななんでもかんでも信じてないよ…」
 こなたは呆れたようにそう言って、ストローに口をつけた。
「ゆきちゃんはどう?」
 と、つかさは今度はみゆきに聞いた。話を振られたみゆきは、きょとんとした表情で首をかしげていた。
「…ゆきちゃん、どうしたの?」
「へ?…あ、あの…す、すいません」
 つかさに話しかけられてることに気がついたみゆきは、慌ててつかさに向かって頭を下げた。そして恐る恐る顔を上げながら、三人の顔を見回した。
「みなさんの言ってることが良く分からなくて…どうして、月に兎はいないという前提でお話をされてるのですか?」
 みゆきの言葉に、今度は三人が首をかしげた。
「いや、前提も何も居ないでしょ。月に兎なんて…」
「います。お月様に兎さんは居るんです」
 かがみの言葉を遮るようにきっぱりと言うみゆきに、かがみは目を白黒させた。
「…みゆきさん、流石に冗談だよね?」
 こなたがぽつりとそう言うと、みゆきは眉間にしわを寄せてこなたを見た。
「なんでそんなこと言うんですか?わたし、冗談でこんなこと言いません」
「え、いや、その…ごめん」
 怒るようなみゆきの強い口調に、こなたが思わず首をすくめて謝った。
「ゆ、ゆきちゃん…」
 ただ事じゃない気配を察したつかさが、こなたとみゆきの間に身体を割り込ませた。みゆきは少し顔をしかめると、テーブルの上のレシートを掴み立ち上がった。
「え、ちょ…みゆき!」
「兎さんはいるんです!いなくちゃダメなんです!」
 止めようとしたかがみにそう言い放ち、みゆきはレジに行き四人分の会計を済ませそのまま店を出て行ってしまった。
 残された三人はどうすることも出来ずに、ただ顔を見合わせるだけだった。



971 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:28:57.14 ID:tJF7v3Q0
「…ってなことがあってね」
 その日の夕方の泉家。こなたは昼にあった出来事を、一緒に食事を取っている家族や居候たちに話していた。
「高良先輩が…珍しいって言うか、信じられないって言うか…」
 そのうちの一人、小早川ゆたかがそう呟くと、隣に座っていたパトリシア・マーティンも同意するようにうなずいた。
「ミユキはエレガントにキめるべきですヨネ」
「いや、それなんか違うと思う…」
 パティのずれた発言に呆れながら突っ込むこなた。そして、小さくため息をつきながら箸でおかずをつまもうとして、箸を置いて自分を見ている父のそうじろうに気がついた。
「ん、どしたのお父さん?」
 こなたがそうじろうの方を向いてそう聞くと、そうじろうは少し眉間にしわを寄せて頬をかいた。
「こなた…喧嘩した。とかじゃないよな?」
 心持ち心配そうにそう聞くそうじろうに、こなたは軽く手を振った。
「ないよ…少なくともわたしはそう思ってないって」
「そうか…ならいいけど」
 こなたの言葉に、そうじろうは安心した表情を浮かべて箸を取った。それを見たこなたがニマッと笑みを浮かべた。
「あれー、もしかして心配してくれたー?」
 からかうように言うこなたから、そうじろうは顔を背けた。
「そりゃ…するだろ、普通は」
「ほほー…んー、まあいいや」
 こなたはそう言いながらおかずを一口食べ、そして少し考える仕草をしてからゆたかとパティのほうを向いた。
「二人はさ、兎が月にいてるっての信じてる?」
 ゆたかとパティは顔を見合わせ、そして同時に左右に首を振った。
「小さな頃は信じてたけど、今は流石に…いれば素敵だなって思うけど」
「ワタシはニホンにきてからそういうハナシしりまシタ」
「…ふーん、そっか」
 こなたは二人の答えを聞きながら、じっと何かを考えていた。
「こなた…なに企んでる?」
 それを見ていたそうじろうがそう聞くと、こなたは苦笑いを浮かべた。
「あ、ばれた?…いやー、明日どうやって大学サボろうかってねー」
「…まあ、いいけどな。下手してこじらせるなよ」
 呆れたようにそう言いながらも、そうじろうはそれ以上何も言わずに食事の続きを始めた。
「…ばればれだし…お父さんのこういうとこやり難いんだよね…」
 誰にも聞こえないように呟きながら、こなたも食事を再開した。




972 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:29:47.13 ID:tJF7v3Q0
 一方の柊家。
「お姉ちゃん、入るよ」
 夕食を終えた後、つかさは今日のことを話そうとかがみの部屋を訪れた。
「調べもの?」
 そして、かがみが見ているパソコンのモニターを覗き込みながらそう聞いた。
「うん…ほら、月に兎がいてるって話。あれの元ネタみたいなのあるのかなって」
「アレって月の模様が兎に見えるからだよね?」
「そうよ。でも、こういう話もあるわ」
 かがみはつかさがモニターを見やすいように、座っている椅子をずらしてモニターを指差した。つかさはモニターの正面に動いてそこに写っている文を読んだ。
「あ、このお話知ってる…」


 猿、狐、兎の3匹が、力尽きて倒れている老人に出逢った。3匹は老人を助けようと考えた。
 猿は木の実を集め、狐は川から魚を捕り、それぞれ老人に食料として与えた。しかし兎だけは、どんなに苦労しても何も採ってくることができなかった。
 自分の非力さを嘆いた兎は、何とか老人を助けたいと考えた挙句、猿と狐に頼んで火を焚いてもらい、自らの身を食料として捧げるべく、火の中へ飛び込んだ。
 その姿を見た老人は、帝釈天としての正体を現し、兎の捨て身の慈悲行を後世まで伝えるため、兎を月へと昇らせた。月に見える兎の姿の周囲に煙状の影が見えるのは、兎が自らの身を焼いた際の煙だという。


「これが元だったんだ」
「みたいね」
 かがみは椅子の背もたれに体重を預け、天井を向いた。
「まあ、それがわかったからって、今日のみゆきのことわかるわけじゃないけどね」
 その姿勢のまま、机においてあったポッキーの箱から一本取り出し口にくわえた。
「ゆきちゃんもこのお話知ってるのかな」
「みゆきがなんでもかんでも知ってるとは思わないけど、わたしがちょっと調べてわかるような事くらいは知ってると思うわね」
 かがみは姿勢を元に戻すと、次のポッキーをかじり始めた。
「…ねえ、お姉ちゃん。今日のゆきちゃん、怒ってるように見えた?」
 急にそう聞いてきたつかさに、かがみは首をかしげた。
「…変なこと聞くわね。怒っているようにしか見えなかったわよ」
 そして、そう答えた。そのかがみに、つかさは頷いてみせる。
「うん、わたしも最初はそう見えたけど…でも、後から考えたら、その、なんていうか…駄々をこねてるって思ったんだ」
 つかさの言葉に、かがみは唖然とした。
「駄々?みゆきが?」
「うん。月に兎が本当に居るか居ないかは関係なくて、ゆきちゃんにとっては絶対に居なくちゃいけないんじゃないかって…居なくちゃイヤだって駄々こねてるって思ったの…」
「なるほどね…ま、これ以上はここで考えててもわからないわね。明日みゆきの家に行ってみるわ…携帯じゃ反応してくれなかったし」
 かがみが机に置いた携帯を見ながらそう言うと、つかさは驚いた表情を見せた。
「え、お姉ちゃん大学は?」
「サボるわよ。一日くらいどうとでもなるわ」
「じゃ、じゃあわたしも行く」
 両手の拳を握りながらそう言うつかさにかがみは眉をひそめたが、すぐに表情を崩して頭をかいた。
「ダメって言いたいけど、サボるって言ってるわたしが止める権利は無いわね」
「うん、わたし頑張る」
「…なにを頑張るのよ」
 かがみは呆れたように言いながら、パソコンの電源を落とした。



973 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:31:13.59 ID:tJF7v3Q0
 満月まで、後二日。


 もうすぐ正午になろうかという時間。かがみとつかさは、みゆきの家に向かって歩いていた。
「あ、お姉ちゃん。あれ」
 みゆきの家まであと少しというところで、つかさが前方を指差した。かがみもそちらを見てみると、見覚えのある触覚めいたクセ毛が揺れているのが見えた。
「…こなた?」
「みたいだね…おーい、こなちゃーん!」
 つかさが手を振りながら大声で呼びかけると、こなたは少しビクッと肩を震わせてから振り向いた。
「あ、あれ…つかさにかがみじゃん。どうしたの?」
 そしてかがみ達の姿を確認すると、安心したような顔をして二人に近づいた。
「どうしたのって、それはこっちの台詞よ。大学はどうしたの」
 かがみがそう聞くと、こなたは照れくさそうに頭をかいた。
「いや、なんていうかサボり?みさきちに代弁頼んだんだけど『んなことできるか!』って断られちって…」
 頭をかきながらそう言うこなたに、かがみはため息をついて見せた。
「なにやってんよ…って言いたいんだけど、わたし達も同じだから今回は何にも言えないわね」
 少し苦笑しながらそう言うかがみに、こなたは唖然とした。
「え、じゃあかがみ達もサボってここに?」
「そういうこと。気になるんでしょ?みゆきが」
「うん、まあそうなんだけどね…こんなことするのわたしだけかと思ってたよ」
 頭をかきながらそう言うこなたに、かがみとつかさが微笑みかける。そして、うなずきあうと三人連れ立ってみゆきの家に向かって歩き始めた。


「…あれ、ゆかりさんじゃない?」
 みゆきの家の門が見えてきたところで、かがみが前を指差してそう言った。こなたがかがみの指差した方を見て頷く。
「そうみたいだね。そばにいてるのチェリーかな?」
 高良家の門前にはみゆきの母であるゆかりと、お向かいの岩崎家の飼い犬であるチェリーが立っていた。
「みなみちゃんにでも頼まれて散歩してたのかな…」
 そこまで言ったところで、こなたはチェリーが自分を見ていることに気がついた。そして、間髪入れずにこちらに駆けてくるのが目に入った。
「え?…あ、ちょ…うにゃーっ!?」
 そのままチェリーに飛びかかられ、こなたは地面を転がった。
「…こなた?」
「…え…なに…?」
 かがみとつかさはあまりに唐突な出来事に反応できず、チェリーに押さえつけられているこなたをただ唖然と見つめているだけだった。
「や、やめてーっ!髪の毛噛まないで!た、たすけてーっ!」
「あらあら、だめよチェリーちゃん。それは食べ物じゃないのよ」
 こなたのアホ毛に噛み付いてるチェリーを、いつの間にか近づいてきていたゆかりが背中を撫でながらたしなめた。チェリーは不満気なうめき声を上げたが、素直にゆかりの言う事を聞いてこなたから離れた。
「うぅ…なんなんだよー…」
 半泣きになりながら地面に座り込むこなた。
「こ、こなちゃん、大丈夫?」
 つかさがそのこなたの服に付いた汚れを払う。
「あんたのアホ毛、無駄によく揺れるからおもちゃだと思ったんじゃない?」
 かがみはそう言いながら、こなたのアホ毛についているチェリーのよだれをハンカチで拭った。
「ねこじゃらしじゃあるまいし…ありがと、もういいよ」
 こなたはかがみ達にそう言って、立ち上がってお尻を払った。
「ごめんなさいね、こなたちゃん」
「あ、いえ…犬のすることですし…」
 少し困った顔をして謝るゆかりに、こなたは手を振って答えた。
974 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:32:31.78 ID:tJF7v3Q0
「それにしても、みんなお揃いでどうしたの?みゆきになにかご用かしら?」
 ゆかりが首をかしげながらそう聞くと、こなた達三人は思い思いにうなずいて見せた。
「そう…でも、みゆき学校に行っちゃったわよ?」
 ゆかりの言葉に、三人が同時に肩をこけさせる。
「…そ、そうだよね…普通学校行くよね…」
「…学校サボってまでこんなオチ…」
「…一気に力抜けたわ…」
 つかさ、こなた、かがみと順にそう言った後、揃って大きなため息をついた。それを見ていたゆかりは顎に人差し指を当てて考える仕草をした。
「みんな、お昼は食べたのかしら?」
 そして、そのままこなた達に向かってそう聞いた。
「いえ、まだですけど…」
 かがみがそう答えると、こなたとつかさもうなずいた。
「そう、だったら丁度いいわね。お昼、少し作りすぎて困ってたのよー」
 ゆかりは嬉しそうにそう言いながら手を合わせると、軽やかな足取りで自分の家の門へと向かった。
「…えーっと…食べてけって事かしら?」
「たぶんね…」
「…マイペースな人だね」
 こなた達三人は呆れたように顔を見合わせ、ゆかりの後を追った。



「そう言えば、みゆきに会いに来たんだっけ?やっぱり昨日なにかあったのかしら?」
 食べ終わった四人分のお昼ご飯の皿を片付けながら、ゆかりがそう聞いてきた。
「…はい」
 かがみがそれに少し言いづらそうに答える。
「そう…なんだかみゆきが落ち込んでたから、何かあったのかなーって思ってたけど。よかったら話してもらえないかしら?」
 かがみは少し考えて、こなたとつかさのほうを見た。そして、二人がうなずくのを見て、ゆかりに昨日の出来事を話し始めた。


「お月様に兎さん…ねえ」
 かがみの話を聞き終えたゆかりは、空中に指で円を描きながらそう呟いた。
「アレかしらねー…ちょっと待っててね」
 ゆかりはそういい残し、キッチンから出て行った。
「やっぱりゆきちゃん、なにかあるのかな…」
 自分の目の前にあるお茶の入ったコップをいじりながら、つかさがそう呟いた。それを聞いたかがみが首を傾げる。
「なにかって、なにが?」
「うまく言えないんだけど、お月様に兎さんがいないってことがね、絶対に認められないって思うようになったこと…んー…やっぱりうまく言えないや」
「…まあ、なにかあったから昨日のあの態度なんだろうけどね」
 かがみは椅子の背もたれに体重をかけ、軽く伸びをしながらながらそう言った。
「その昨日のみゆきさんなんだけどさ…なんか駄々こねてるように見えなかった?」
 だらけるようにテーブルに突っ伏していたこなたが、急にそう呟いた。それを聞いたかがみとつかさは思わず顔を見合わせた。
「それ、つかさも言ってたわ。あんたもそう思ったの?」
 こなたは身体を起こすと、かがみに向かってうなずいて見せた。
「まあね。後から考えたらって感じだけど…あんな子供っぽいみゆきさんって初めて見た気がするよ」
 こなたがそう言ったところで、パタパタとスリッパの足音が聞こえてきた。三人がそちらを見ると、何かの本を両手で胸に抱えたゆかりがキッチンに入ってきた。
975 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:35:39.23 ID:tJF7v3Q0
「これこれ、たぶんコレだと思うのよ」
 そう言いながらゆかりはテーブルにその本を置いた。
「絵本?」
 かがみがそう言いながらページをめくる。
「このお話…昨日お姉ちゃんが見てたのだよ」
 横から覗き込んでいたつがさがそう言った。
 そこに描かれていたのは、飢えた老人に三匹の動物がそれぞれのやり方で食べ物を与える話。最後にわが身を犠牲にした兎が月へと昇る話。
「この話どっかで聞いたことあるや…ふーん…これが月の兎の元ネタなんだね」
 こなたが感心したようにそう呟く。
「家にあった絵本は、全部捨てるか近所の子供たちにあげたんだけど…その本だけはみゆきが手放さなかったのよね」
 三人の後ろから本を覗き込んでいたゆかりがそう言った。
「自分の部屋に隠してるんだけど、あの子こういうの隠すの下手なのよねー」
 そして、のん気な口調でそう付け足した。それを聞いたつかさとこなたが顔を見合わせる。
「…そんな隠してるものを、こうやって持ってきちゃっていいのかな…」
「…みゆきさんも色々大変だね」
 つかさとこなたがそう喋っている間も、かがみは絵本を見続けていた。そして、最後まで見終わってから首をかしげた。
「ちゃんと最後は兎が火に飛び込むのね」
 かがみの呟きを聞いて、今度はつかさが首を傾げる。
「え?そうしないとお話が終わらないんじゃ…」
「いやね、子供向けの絵本だから、最後は兎の行動を止めるとかするんじゃないかなって思ったんだけど」
「…ちょっと見せて」
 こなたが横から絵本を取り上げ、巻末の発行年月日を確認した。
「やっぱり…これ古い本みたいだね。だから表現も結構過激なんだよ」
「そういうものなの?」
 かがみがそう聞くと、こなたは絵本をテーブルにおいてうなずいた。
「昔は過激な表現に関してゆるゆるだったからね。子供向けの日本神話の本で、イザナギとイザナミの子作りシーンとかあったよ。ちゃんとエッチなことしてた」
「…そ、そうなんだ…」
「…あんたホントに変な知識だけは豊富ね…」
 こなたの説明に、つかさとかがみは赤くなってうつむいた。
「ホントに面白い子ね、こなたちゃんって」
 そして、ゆかりは頬に手を当てて微笑んでいた。
「お褒めいただき光栄です、奥さん」
 そのゆかりに向かって大仰に礼をするこなた。
「…褒めてるのかなあ」
「…褒めてるんでしょうね。ゆかりさんだし」
 そして、こなたを見ながらつかさとかがみが呆れたように呟いた。
「でも、なんでみゆきさんはこの本を大事にとってるんだろ?」
 こなたが顎に手を当てて首を傾げながらそう言った。
「そうね…それが分かれば、昨日のみゆきの事も分かりそうよね」
 かがみもこなたと同じように顎に手を当てて考え始めた。
「ゆかりさんはこの本のこと、何か知らないんですか?」
 つかさがゆかりの方を向いてそう聞くと、ゆかりは顎に人差し指を当てて少し上を向いた。
「んー…この本は確か、わたしが実家から持ってきたものなのよね。嫁いできたときに荷物に紛れちゃってて」
 ゆかりはどこか懐かしいそうにそう言った後、なにか思い出したのか、嬉しそうに手を合わせた。
「そうそう、この本みゆきに読んであげたことあるのよね。家にある絵本全部読んじゃったから、この本引っ張り出してきて読んであげたの。そしたら、みゆきがこの本を気に入ったみたいで、自分の部屋にもってっちゃったのよね」
「じゃあ、その時からみゆきさんは、ずっとこの本大事に持ってたって事ですか?」
 こなたがそう聞くと、ゆかりはゆっくりとうなずいて見せた。
「そうなるわねー…でも、みゆきはどうしてこの本を気に入ったの…あ」
 頬に手を当てて話していたゆかりは、その途中で何か思い出したのか黙り込んでしまった。
976 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:37:36.36 ID:tJF7v3Q0
「…ゆかりさん?どうかしました?」
 かがみがそう聞いても、ゆかりは返事をせず何か納得したように何度かうなずくだけだった。
「みゆきの事、わたしにまかせてもらえないかしら?」
 そして、唐突にそう言った。
「え、いやでも…」
 突然のゆかりの提案に、かがみが難色を示す。
「大丈夫よ。ちゃんと仲直りさせてあげるから…ね?」
 甘えるようにそう言うゆかりに、かがみは何ともいえない表情を浮かべた。
「いや、別に喧嘩したわけじゃないんですが…ってかわたしもみゆきと話ししたいですし…」
 なおも渋るかがみにゆかりは困った表情を浮かべたが、すぐになにか思いつきかがみの肩に手を置いた。
「ケーキあるんだけど、食べる?」
「いただきます」
「いやいやいや、それはないっしょ弁護士志望」
 あっさりと買収されたかがみに、こなたは思わず突っ込みつかさは椅子から転げ落ちていた。

 結局、ゆかりにすべて任せるということになり、こなた達はみゆきの家を後にした。



 満月まで、あと一日。


 目を覚ましたみゆきは、ゆっくりと身体を起こしベッドの側にある時計を見た。正午を少し過ぎた時間。みゆきにしては珍しく遅い目覚めだった。
 ベッドの上から部屋の中を見渡し、みゆきはため息をついた。開いたままのクローゼットや机の引き出し。床には衣服や本棚から引きずり出された本が散乱している。
「…探しませんと」
 みゆきはそう独り言を呟き、寝間着のまま部屋のあちこちを漁り始めた。
 昨日、みゆきは大学へは行かず一日中図書館にいた。そこで月に関するあらゆる本、あらゆる資料を読み漁っていたが、みゆきが望む答え…月に兎が居るという答えは得られなかった。むしろ逆に望まない答えを、月に兎などいないという事実を突きつけられる形となってしまった。
 そして、家に戻ったみゆきは自分の部屋から絵本が無くなっている事に気がつき、明け方ごろまで部屋の中を探し、探し疲れてそのまま寝てしまっていたのだ。
「…どうしてこんなことに」
 みゆきはそう呟いて、探す手を止め床に座り込んだ。
 友人たちに醜態をさらし、大学をサボり、大切にしていた絵本が無くなり…みゆきは泣きそうな気分で頭を抱えた。
「みゆき、入っていい?」
 そこに、ノックの音とゆかりの声が聞こえた。
「は、はい。どうぞ」
 みゆきは慌てて立ち上がり、ゆかりにそう答えた。
「あら、随分散らかしたのねー」
 部屋の惨状を見て、ゆかりが口元に手を当ててそう言った。
「…すいません」
 みゆきが謝ると、ゆかりは微笑みながら手を振った。
「別に怒ってないわよ…探してたのは、これかしら?」
 ゆかりが後ろ手に隠していた例の絵本を前に出すと、みゆきは目を見開いた。
「お、お母さん…これ、どこで…」
 少しどもりながらみゆきがそう聞くと、ゆかりは悪戯っぽく微笑み舌を出した。
「わたしが持ち出しちゃってたの」
 ゆかりがそう言いながら、絵本をみゆきに向かって差し出した。
「どうしてそんなことを…」
 絵本を受け取りながら、みゆきはゆかりを困惑した表情で見上げる。
「こなたちゃん達にね、この本見せてあげてたのよ…昨日、こなたちゃんたちが来てたわ。みゆきのこと心配してたわよ」
「みなさんが…」
「一昨日の事も全部聞いたわ」
 ゆかりの言葉に、みゆきはうつむきそっぽを向いた。ゆかりは少し困った顔をするとみゆきの隣に座った。
977 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:38:34.05 ID:tJF7v3Q0
「この絵本。わたしがみゆきにちゃんと読んであげられた本よね?」
 自分の問いにみゆきがうなずくのを見て、ゆかりは微笑んだ。
 幼いみゆきに、ゆかりは夜寝る前に色々な絵本を読んであげていた。しかし、いつもゆかりが途中で寝てしまい、みゆきは一人で続きを読んでいた。そして、話が短くてゆかり自身もよく読んでいて慣れていたこの本は、ちゃんと最後までゆかりが読んであげられた唯一の本だった。
「その時、みゆきが聞いてきたわね。今でもこの兎は月に居るのか?って」
「…はい」
 みゆきは今度はうなずくだけでなく、はっきりと声に出して答えた。
「わたしは、今でも居るって答えたのよね」
「はい…そして、自分を見つけてくれた人には手を振ってくれるって…」
「…信じてたのね。そのこと、今でもずっと」
「はい…信じてました。信じなきゃいけなかったんです…だって…だって…」
 言葉に力がこめながら、みゆきは絵本を床に置きゆかりの方を向いた。
「お母さんが教えてくれたことだから…わたしが調べたことじゃなくて、お母さんが教えてくれたことだから…」
 自分を見つめるみゆきを、ゆかりはまるで小さな子供のように感じていた。
「だから、嫌だったんです…お月様に兎さんなんかいないって言われるのが…泉さん達にお母さんは嘘つきだって言われてるようで…嫌だったんです…」
 ゆかりはみゆきの頭に手を置き、軽く撫でてあげた。
「ホント、おかしなところで不器用な子ね…なんでも器用にこなすくせに、こういうところは頑固なんだから」
「だって…だって…」
 ぐずり始めたみゆきの頭を撫で続けながら、ゆかりは絵本を手に取った。
「兎さんは、正しいことをしたと思う?」
「…え?」
 ゆかりの唐突な問いに、みゆきは呆けたような表情をした。
「老人のために火に飛び込んだことは、正しかったのかしらね」
「…それは…そうするしかなかったから…」
「そうかしら?お猿さんや狐さんが食べ物を持ってきてくれてたのだから、ここまでする必要は無かったんじゃないかな」
「でも、それだと兎さんは何も出来なかったことに…」
「それでいいのよ」
 微笑むゆかりに、みゆきは困惑した表情を浮かべた。
「何も出来なくてよかったの。自分の身を犠牲にすることは確かに美談だけど、悲しいことでもあるのよ。自分のために兎が死んだことを、お爺さんは悲しんだでしょうし、火を焚いたお猿さんと狐さんも悲しかったと思うわ…みゆきはこの兎さんと同じなのよ」
「わたしが…兎さん?」
「そう。わたしの言葉にこだわってお友達を心配させて…そのせいで喧嘩になったら、わたしだって悲しいわよ」
 みゆきの頭から手を離し、絵本を床に置いてゆかりはみゆきの両肩に手を置いた。
「だからね、なにもしなくていいの。わたしの事なんか放っておいてよかったのよ。わたしはそんなことくらい気にしないから…ね?」
「…お母さん」
 みゆきは一度うつむき、すぐに顔を上げた。
「それだと、兎さんはお月様にはいけませんね…」
「いいのよ、いかなくても。そのほうがたくさん遊べるんだし」
 そう言いながら微笑むゆかりに、みゆきはぎこちなく微笑んだ。
「でも、これでお母さん嘘つきになっちゃったわねー…お詫びってのもおかしいけど、なにかして欲しいことあるかしら?」
 ゆかりにそう聞かれ、みゆきは床に置いてある絵本に視線を落とした。
「えっと…それじゃ…その…ご、ご本を…読んで欲しいです…」
 みゆきの答えに、ゆかりは思わず吹き出してしまった。
「みゆき、なんだか子供みたいよ」
「はい、子供です。子供でいいんです…わたしはずっとお母さんの子供ですから」
 そう言いながら、みゆきはやっといつものように微笑むことが出来ていた。



978 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:39:59.99 ID:tJF7v3Q0
 そして、満月の日。


「おー、こりゃいいや。絶景だねー」
 石畳にひかれたレジャーシートに寝転び、夜空を見上げながらこなたが感嘆の声を上げる。
「そうですね。やはり夜空は、こういう場所で見るものですよね」
 その隣に寝転んでいるみゆきも、こなたの言葉に同意した。
 鮮やかな満月とそれを取り囲む無数の星。灯を落とした鷹宮神社の境内から眺めるそれは、今までみゆきが望遠鏡から見ていたものとは明らかに違う光を放っていた
「そういえば泉さん。月には玉兎(ぎょくと)という別名があるのをご存知ですか?」
「え?…いや、それは知らないや」
「あの絵本のお話が、その名の元になっているそうですよ」
 みゆきからその話を出してきたことに、こなたはなにかしら解決したことを感じて安堵のため息をついた。
「…そっか」
 そして、そう呟いた。
「ちなみに、対となる太陽には金烏(きんう)という別名があるそうです。こちらは、太陽には三本足の烏がいるという伝説が元になっているようですね」
「それも知らないや…でもその烏って八咫烏のことだよね?」
「はい、普通はそう言われます。良くご存知ですね」
「八咫烏は、色んな漫画やゲームに出てくるからねー」
 そんなことを話していると、石畳を歩く足音が聞こえてきて、こなたとみゆきは身体を起こした。
「こなちゃん、ゆきちゃん。おまたせー」
 歩いてきたのは、丼の乗ったお盆を持ったつかさとかがみだった。
「待ってました!…いやー、今日お昼からなんにも食べて無くてねー。お腹ペコペコだよ」
 嬉しそうにそう言いながら、こなたはつかさから丼を受け取る。その隣ではみゆきがかがみから同じように丼を受け取っていた。
「…っていうかわけがわかんないんだけど」
 みゆきに丼を渡しながら、かがみが呟いた。
「いきなりみゆきが月見やるとか言い出すし、こなたは月見うどん食べたいとか言い出すし…なんでかわたし達こんな格好だし」
 かがみは自分の分の丼をレジャーシートの上に置きながら、自分の着ている巫女服を眺めた。
「いいじゃない、お姉ちゃん。わたしこういうの楽しいと思うよ」
 同じく巫女服を着ているつかさが嬉しそうにそう言った。
「そうそう、後足りないのはやっぱ兎だよね…というわけで、はい、みゆきさんこれつけて」
 こなたは自分の鞄から何かを取り出し、みゆきに手渡した。
「…兎さんの耳、ですか?」
 受け取ったものを見て、みゆきが首をかしげた。
「そ、ウサ耳。装着っと」
 こなたは鞄からもう一つウサ耳を取り出し、自分の頭につけた。
「なんだか恥ずかしいですね…」
 こなたと同じようにウサ耳をつけながら、みゆきは頬を少し赤らめた。
「すぐ慣れるって。さ、食べよっか」
 みゆきの肩を叩きながらそう言い、こなたは丼に添えられていた割り箸を割った。
979 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:40:57.13 ID:tJF7v3Q0
「なんていうか…傍から見たら異様な集団ね」
 ため息混じりにそう言うかがみに、こなたは笑顔を見せた。
「いいじゃん。こういう変なことも出来るほど仲がいいってこで」
「…変っていう自覚はあるのね」
 かがみはもう一度ため息をついてうどんをすすった。
「…ま、いいけどね」
 そして、そうポツリと呟いた。

 みゆきは、時折話を交えながらうどんを食べている友人たちを、微笑みながら眺めていた。
 そして、ふと思うことがあり月を見上げた。月には鮮やかに兎の模様が浮かんでいた。
 今まで何度も望遠鏡を使って見ていたが、手を振ってくれる兎は一度も見なかった。
「…今は、それでいいんです」
 みゆきは月に向かって小さく手を振った。月に兎が居ることを頑なに信じようとし始めた、あの日の自分に見せるように。

 兎はここに居る。そう、想いをこめて。



― 終 ―
980 :玉兎 [saga]:2010/07/17(土) 17:43:09.77 ID:tJF7v3Q0
以上です。

高校を陵桜にきめた理由がお母さんが通っていたからだったり、調べ物好きになった理由がお母さんが褒めてくれるからだったり。
みゆきさんって実はマザコンなんじゃないかって思ってます。
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/17(土) 19:28:18.35 ID:7.bMB6Q0
えがったよ〜、みゆきさんの意外な一面を見たって感じだね〜、萌えの新境地だよ〜
台詞回しもナチュラルだし、台詞の間の描写が上手いしえがったよ〜
個人的に見どころだったのは、ケーキにあっさり買収されちゃう弁護士志望とコケる妹
なんていうの?アニメを観ているみたいな臨場感みたいな?
乙華麗、またよろ〜
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/17(土) 20:05:42.29 ID:rN7qOX.0
そろそろ次スレだね。
センスの良いスレタイを期待してるぞwwwwww
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 07:18:12.35 ID:WZzC2Dw0
今夜はお出かけになったのでコンクール作品がまとめられません。
いつもだと作品投下のラッシュがくるのでまとめお願い致します。
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/18(日) 10:59:34.75 ID:./6f0T60
コンクール投下します。
過疎だなんだと言われてもなんだかんだで作品が集まってるのが嬉しいです。
まだ夜のラッシュを控えてるのにもう7作品ってすごい!
自分にとっては久しぶりの復帰作です。
985 :蒼い月の夜〜Lady in blue〜 :2010/07/18(日) 11:00:38.28 ID:./6f0T60
蒼い月の夜〜Lady in blue〜


 雲がどんよりと空を覆った、6月末の蒸し暑い夜9時半。私は部屋の窓を開けて机に向かっていた。期末試験まではまだ少し間があるけど、私は今週末中にこの『人間と社会T』のレポートを書き上げてしまわないといけなかった。期日そのものまではもう少し期間があるのだが、スケジュールの都合上、今のうちにやってしまわないと時間が取れそうにない。かと言ってもう少し早く書けばよかったのかというとそうでもない。
 しかし、今になってみると、あと1日でも早く書いておけばこんなことにはならなかったのに、と思う。うっかりにもほどがある。レポートを書き終えて印刷したはよかったが、まさか最後にホッチキスの針がなくなっているなんて。普段そんなところチェックしてるわけないじゃない、と自分自身を擁護してみたり、まあホッチキスくらい明日でもいいんじゃないの、と言い訳をしてみたりもした。
 しかし、今を逃すと買いに行けるのは明日の夕方だ。というのも、専門学校は”空きのコマ”というものがなく、90分の授業を1日4つ、毎日コンスタントにこなしていかなくてはいけないからだ。そのうち半分以上は調理実技なこともあって、これは意外に疲れる。お姉ちゃんの大学のように空いている時間があれば、そこでしっかり休むこともできるのだが。
 それでも、お姉ちゃんは名門大学の法学部に通う大学生だから、あまり知られていない専門学校に行く私のような双子の妹がいるとは、誰にも思えないだろう。高校生の頃までは成績の差はあれど、なんとか同じ高校にとどまれていたが、こうして人がそれぞれの然るべきところへと収まると、またお姉ちゃんとの差を感じてしまう。お姉ちゃんは、私と違って、賢いから。
 このレポートを明日以降に回せば、私のことだからどうせ忘れるのだろう。そんな間抜けな自分自身をよくわかっているからこそ、思ったときにすぐ行動できるようになったとも思う。ゆきちゃんやこなちゃんが私にアドバイスしてくれたことが、未だにこうして生きている。ちょっとコンビニ行ってくる、とお母さんに告げると、私はこの春に大学に入るときに買った真っ白いノースリーブのワンピースだけで、財布と携帯電話を持って家を出た。外は真っ暗で、街灯だけが私の進む道を照らしている。


 コンビニまでは歩いて15分ほど。こんな格好だからこそ、わずかに夜風が吹いているのがわかった。でも出来れば知ってる人には会いたくないかな。コンビニに行けば中学校の時の同級生がアルバイトなんかしてるかもしれないけど。
 私はもともとコンビニの深夜営業には疑問を持っていたのだが、いざこうして自分がその必要性に迫られてみると、その便利さがわかるような気がした。高校生の頃までは夜9時に寝ていたのだから、その便利さなど実感するはずがなかったのだ。もっとも、今でも10時半に寝ているのは、まつりお姉ちゃん曰わく世間一般では「だいぶ早い方」らしい。私が何時に寝ようが起きようが、コンビニはこうして24時間営業している。深夜でもフリーターや大学生は働こうとするからこそ、そんな無茶が出来るんだ。そういえば同級生にもコンビニで働いてる人がいたような。
 ああ、あったあった。ホッチキスの針。あと、久しぶりにVAN HOUTENの冷たいココアでも買おうかな。ちょっと粉っぽいところが大好きだ。あとは、夜食でも買って帰ろうか? いやいや。365日年中無休でダイエット営業中のお姉ちゃんの前でこんな時間に夜食なんか食べるべきではない。今は我慢しておこう。
 ふと店内のバック・グラウンド・ミュージックに耳を傾ける。普段はラジオなんか流しているような気がするのだが、今流れている曲はほんわかしていて、歌っている声が可愛らしく、聴いていてとても心地が良い。“いらっしゃいませ 私のこころに探しているのはなんですか? ”
 私はただホッチキスの針を買いに来ただけなのだけれど……もっと違ったもの、ここにしかないようなものを求めて、このコンビニにやってくる人もいるのだろうか。
986 :蒼い月の夜〜Lady in blue〜 :2010/07/18(日) 11:01:36.16 ID:./6f0T60
 ありがとうございましたー、という抑揚のない夜勤の店員の声を聞きながら、私がコンビニを出ようとしたその時、すれ違いざまに入ってきた長い髪の女性。
「あやちゃん?」
「……ひーちゃん?」
 それは、私の、そしてお姉ちゃんの長年の友人である、峰岸あやのちゃんだった。
「どうしたの? こんな時間に」
「うん、ちょっと、レポート書いてる途中に、要るものがあってね。あやちゃんは?」
「私もおんなじような感じ。履歴書と雑誌買おうと思って」
「履歴書? アルバイトするの?」
「うん、前期の間は全然働いてなかったから、正直お金なかったしね。自分のお金くらい自分で稼がなきゃ、と思って」
「へぇー、すごいなぁ」
 あやちゃんが店内に入っていこうとするので、私もそれに付き添って店内に戻る。あやちゃんはnon-noの最新号と(毎号買っているわけではないらしい)、アルバイト・パート向けの履歴書セットをすぐにレジに持って行った。私はnon-noもan anも嫌いじゃないけれど、どちらかと言えばオレンジページとか、NHKきょうの料理とか、そっちの方が読んでいて楽しいような気もする。私の本棚の比率で言えば2対8くらいかな。あやちゃんは着飾る相手がいるもんね。みさちゃんのお兄さんらしいけど。


「待たせちゃってゴメンね、行こっか」
 あやちゃんがレジから戻ってきた。雑誌と履歴書のせいで、ビニール袋が若干伸びている。乗ってきたのであろう自転車の前かごにそれを放り込んで、あやちゃんは自転車を押して歩き出した。
「最近どう? メールしてても全然会わなかったけど」
「うん、楽しいよ。朝から晩まで食べ物ばっかり扱ってる。たまに一般教養の授業とかがあるけど……今一番大変なのは、フランス語かな」
 その言葉自体に偽りはなかった。友達もできたし、毎日学ぶことはたくさんある。それに自分の進学、選択には後悔もしていない。なのに、私はそんな自分自身が、ひどく……空元気を出そうとしているのではないかと思うことがたまにある。自分自身を慰めようとしているのか、正当化しようとしているのか。
 私がそれをどんな時に感じるのかといえば、大抵の場合、自分の姉(特に双子の姉・かがみお姉ちゃんだ)や、陵桜学園の同級生の話を聞いた時だ。
「そっか。ひーちゃんも楽しんでるみたいで、よかった」
「あやちゃんは楽しくないの?」
「楽しいよ。陵桜もマンモス校だったけど、大学はそれよりももっともっと人が多くって大変。学部もたくさんあるしね」
「そうなんだ……すごいんだね、大学って」
「どうしたの? ひーちゃんだって自分のやりたいこと見つけたじゃない」
「そうなんだけどね。なんか最近、みんながうらやましくなってきちゃって」
987 :蒼い月の夜〜Lady in blue〜 :2010/07/18(日) 11:02:50.69 ID:./6f0T60
 そこまで言った頃、ちょうど私の家のすぐ近くまで来ていたので、私は境内にあやちゃんを案内した。私が小走りで石段に駆け寄って座り込むと、あやちゃんはゆっくりと自転車のスタンドを立てて、私の隣に座った。
 私たちにとって、この境内は何年も前からずっと慣れ親しんできた場所だ。どのあたりに木の根が出ていて、どのあたりに大きな石が露出しているのか。そんなことも、私たちはよく知っている。そして、お姉ちゃんもそうだ。私たち4人の姉妹だけでなく、あやちゃんたちも、この境内で一緒に育ってきたのだ。今でこそ4人はバラバラの進路になってしまったが、私たちはついこの間までの6年間、一日も欠かすことなく毎日同じ学校に通ってきたのだ。
「あやちゃんは、みさちゃんがうらやましくないの?」
「なんで?」
「うーん、わかんない。でも何となく。みさちゃんとか、お姉ちゃんとか」
「そんなものかなぁ。みさちゃんは確かに素敵だけれど、みさちゃんはみさちゃん、私は私だもん」
 私はあやちゃんから視線を外して、空を見上げてみた。まだ雲が空にかかっているけれど、その雲の裏側が青白い光を放っている。
「ねぇひーちゃん」
「なに?」
「私はね、まだまだ自分のことを月だと思ってるの」
「月?」
「うん。みさちゃんっていう太陽がいてくれたおかげで、今まで輝いてこられた月。いつも元気で私を引っ張ってくれたみさちゃんがいなきゃ、私は一人じゃ何も出来なかったと思う。私が落ち込んでる時も、みさちゃんは空気も読まずに私の肩を叩いて元気づけてくれたしね。みんなが腫れ物に触るように私を扱っている時でも、みさちゃんだけは私の心の奥深くまでやってきて、光をくれた……だから、私は何となくひーちゃんが悩んでいる理由も分かる気がする」
「そう、なんだ……」
「うん。でも、今になってやっとわかったのね。私とみさちゃんはずっと親友だけれど、目指してるものが違う。だから進学先も違うし、得意なことも勉強してることも全然違う。大学生にもなったらそれが普通だし、それが自分たちのあるべき姿だって、もう分かるけど」
「私とお姉ちゃんも、目指してるものは全然違うよ?」
「そう。だからそれぞれを測る物差しを換えなきゃいけないところまで、私たちはもう来てるのよ。もうみんなが同じように数学とか日本史とかやってるわけじゃないしね。私たちがどんなに頑張ったって、法学部の彼女に、例えば法律のことでかなうわけないわ。でもひーちゃんはお料理のことをもっとたくさん勉強してるでしょ? ならそれで充分よ。」
「そんなものかなぁ」
「少なくとも私は、そう思うよ」
988 :蒼い月の夜〜Lady in blue〜 :2010/07/18(日) 11:03:25.79 ID:./6f0T60


 境内は静かだが、時々通る東武鉄道の音がここまで聞こえてくる。ここは薄暗いけれど、東武の鷲宮駅の方向はそれなりに明るい。
 よく山奥に行ったりして、びっくりするくらい人気がなかったり、物音がなかったり、まったく人間の生活感がないという体験をすることがある。でも、そんな人里離れたところに行かなくたって、街のど真ん中から少し外れただけで、こんなに静かな場所があるのだ。私たち人間はつい目立つものや人の集まるものに気を取られてしまうことが多々あるけれど、実はそんなもののすぐ近くの、私たちが普段気にもとめないような物陰に、また違った幸せや人生の形が転がっているんじゃないか。そんなことを思った。
 有名大学の法学部というひとつの幸せがお姉ちゃんだとするならば、自分が本当にやりたいことをやるために陵桜では珍しく専門学校に進学したのが私だ。そんな私の感じる幸福は、ひょっとしたら日陰の幸せだと、周りの人たちは言うかもしれない。お姉ちゃんが持っている幸せほど、みんなが無条件で共感してくれることでもなければ、分かりやすくもないかもしれない。それでも、私は今の自分が幸せだと、自信を持って言えるような気がしてきた。


幸せの物差しは、一つじゃない。


 当たり前だと言葉では知っていたことを、やっと本当に分かったように思えた。


「つかさ、もう帰ってるの?」
 家の方からお姉ちゃんの声がした。私の帰りが遅く、境内から物音がするから出て来たんだろう。
「今帰ってきたとこだよ。心配かけたかな?」
「心配するわよ、1時間半も帰ってこなかったら。あれ、峰岸?」
「ごめん、お邪魔してるね。もう帰るよ」
「わざわざ送ってきてくれたのね、ありがとう」
「ううん、たまたまコンビニで会ったから着いてきただけ」
「そう。じゃあ、そういうことにしとくわ」
「そうしといて。じゃあ、おやすみ」


 あやちゃんは自転車に乗って、夜の鷲宮の住宅街へと消えていった。長い付き合いでも、彼女から学ぶことはまだまだたくさん残っているようだ。
 今度一緒にケーキでも焼こうかな。私ひとりじゃ出来ないようなものでも、あやちゃんとなら作れそうな気がした。


 お姉ちゃんの誕生日に、誰よりも素敵なプレゼントをあげる。それもまた、私が学んでいることを活かすひとつの形なのかもしれない。


(おしまい)
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/18(日) 11:08:57.88 ID:./6f0T60
以上です。
半年くらいこのスレから離れてた上に、今回から携帯⇒PCに媒体が変わったのでかなり感覚が変わりました。ブランクも長かったから昔の自分の作風を取り戻すのに必死でしたけど、久々のらき☆すたノベル、楽しかったです。最後のラッシュを楽しみにしてますwwww

P.S.
つかさとみさお・あやのの卒業後の絡み方がわからん!
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 13:30:15.29 ID:WZzC2Dw0
新スレ立ててみました。 もり1000レス超えたらそちらへ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1279427140/
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 13:33:30.77 ID:79HE7ISO

ラッシュあるかもしれないから、こっち埋めちまうか
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 13:41:04.67 ID:79HE7ISO
ってまとめのトップ変わってからのほうがいい?
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 13:53:57.90 ID:WZzC2Dw0
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ここまでまとめた

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- あと10レスちょっとしかないからうめちゃってもいいかもね
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:06:49.27 ID:WZzC2Dw0
トップに新スレ張り付けておきました。
埋めちゃって下さい。
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:08:47.30 ID:79HE7ISO
それじゃ埋め
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:10:08.79 ID:79HE7ISO
埋め
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:10:53.01 ID:79HE7ISO
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:11:55.58 ID:79HE7ISO
産め
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:12:49.50 ID:79HE7ISO
生め
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/07/18(日) 14:13:38.32 ID:79HE7ISO
1000
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/

ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
スカパー!e2が19日まで無料なので @ 2010/07/18(日) 13:36:59.81 ID://7suoEo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1279427819/

らき☆すたSSスレ 〜ひと夏の夢物語〜 @ 2010/07/18(日) 13:25:40.50 ID:WZzC2Dw0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1279427140/

たちあがれ日本ってとんでもないファシズム政党だな @ 2010/07/18(日) 13:05:01.25
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1279425901/

クラシック初心者を優しく導いてあげるスレ @ 2010/07/18(日) 12:45:20.74
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/vip4classic/1279424720/

な す 板 終 わ っ た な @ 2010/07/18(日) 12:23:38.82
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1279423418/


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