このスレッドはパー速VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

女「ここが……異世界?」 - パー速VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 01:00:02.28 ID:PtxdD6AO
女「う……つぅっ!」

女「腕と脚を怪我したか……知り合いの医者も連れて来たら良かったかな」

女「くっ……ちょっとヤバイかもしれないけど、生きてるだけマシだよね」

女「ここが異世界じゃなかったら自[ピーーー]るよ、これ」
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このパー速VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 01:19:10.15 ID:PtxdD6AO
女「きょ、教授! 男教授!?」

……

女「教授!」

男「ぐ……げほ、げほっ!」

女「大丈夫ですか!?」

男「あ、ああ……何とか」

男「ぐぁっ!? ……腰を強く痛めてたみたいだ。女さんは怪我とかない?」

女「はい。少し切っただけで済んで──っ!」

男「はは……基本インドアな仕事の俺らにとっては満身創痍と言ったところか」

女「それは大袈裟ですよ。一先ず外の空気を吸いに行きましょう。動けます?」

男「……安全なのか?」

女「どうでしょ」

男「……何にしても、安全と仮定して行かなければ生きる希望を見出だせないかもな」

女「そ、ですよ」
3 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 01:28:17.29 ID:PtxdD6AO
男「で、どうなんだ?」

女「……わかりません」

男「そうか……」

男「俺は今、ワープが失敗して元の場所、少なくとも俺らの地球にいればと思ってるよ」

女「どうして、ですか?」

男「少なくとも、外には安全な空気が確実にあるだろ」

女「あー……成る程。そりゃ、良い、ですね」

男「……本当に大丈夫か?」

女「何が、ですか?」

男「出血が酷いし、ふらついてる」

女「些細な、事、です」

女「ほら、光が、見え……外は、晴れです、よ」

男「そうみたいだな」

女「へへっ……船から、出ると……そこは……」

男「女さん!」

女「次元の向こうは……異世界の、風景……」フラッ
4 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 01:37:38.81 ID:PtxdD6AO
男「女さん!? しっかりして下さい、女さん!」

女「……」

男「脈……あり。呼吸……あり。気を失っただけ、か?」

男「……空気も正常だ。良かった」

男「周囲に病院──どころか一件の家も見えないし……山岳地帯か?」

男「素人の応急処置で事足りるか……?」

男「いや、迷ってる暇など──」

「&■Å∇ΦΚ⊃〒◎!」

「♯♯ΠγдеС刀「◆!?」

男「! 誰かいるのか!?」

男「ここだ! 怪我人もいるんだ! 助けてくれー!!」
5 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 01:49:29.07 ID:PtxdD6AO
「★§″@&♀◎∴!」

「⊇※⊂√≫∀∝⊥⊥!!」

男「声が近くなってる……。こっちだ!」

「■△」

男「まさか……本当に来れたのか……?」

男「いや、とりあえず助けてくれ! この人をすぐ病院へ!!」

「! ☆@■↑!」

「〒⊂? ΖΠΡΡδ√∠!」

男「何してる! 早く病院に──」

「ΥΤΙΗψ!!」

男「早く──なんだ……?」

男「腰の痛みが……いや、女さんの傷まで治っていく……」

男「魔法、なのか?」

「ΧΜΦζ」ニコッ

「ЖЁУЭωνν」ニコッ

「Ы◇◇……」

「……」

男「良かった……良い人達みたいだ。ありがとうございます!」
6 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 01:59:04.24 ID:PtxdD6AO
女「……ん、んん?」

男「おう。目が覚めたか」

女「き、教授!? 周りが暗いですがまだ船の中……じゃないみたいですね」

「ЁУЭ」

男「その通り。彼らが助けてくれたんだ」

女「……あれ、傷がない? 結構深かったと思ったのに」

男「……魔法」

女「え?」

男「魔法を見たよ。喜べ。ここは念願の、魔法のある世界だ!」

女「本当……ですか……?」

男「ああ」

女「や……やったぁーっ!」

男「そうだ! 万歳!」

女「あの人の意志が、実りましたよ! 万歳! あははは!」

男「はははははっ! そうだ! そうだ!」

「Ы◆●∃?」

「……?」
7 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:06:33.52 ID:PtxdD6AO
女「体が楽に動くようになりましたし、持ってきた備品を見てきます」

男「船に戻るの?」

女「そうですよ」

男「まだ崩れるかもしれないぞ?」

女「……その時はその時です」

女「一番無事でいてほしいのも、あの中にありますし」

男「何?」

女「言語解読・翻訳装置」

男「あぁ、あの人が発明したやつか。確かにそれはないとな」

女「では、行ってきます」

男「俺も行くよ」

女「いえ、一人で十分ですよ」

男「でも」

女「十分ですから。では」

男「……嫌われてるのかなぁ」
8 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:14:48.04 ID:PtxdD6AO
「▼◎ヱヴδЗЖР?」

男「え、えぇっ?」

「▼◎ヱヴδЗЖР?」

男「え、えっと……向こうを指してるから……ああ、女さんの事か?」

男「この場合は……どう表現すれば……」

男「彼女は、あの場所にぃ」

男「俺らの荷物を、取りにぃ、行ったんですよ」

「……?」

男「だから、彼女は、あの場所にぃ……」

「?」

男「く……ボディーランゲージって難しいな……!」

男「彼女は、あの場所に、俺らの、荷物を、取りに行ったんです」

「ΘーΘー! ◯¶ΥΤΤ‡◆〒↓@<℃*%£♪ΠΠ」

男「ふぅ……納得してくれたようだ」
9 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:28:06.69 ID:PtxdD6AO
女「いやー。案外無事なもんですね」

男「お帰り。どうだった?」

女「とりあえず船は作動しません。動力部は無傷ですが、他
  の所がズタズタですね。それから食糧と水は半分になってました。床に落ち
  たのとか切れた配線からの火花で焦げたものとかも食べると言うなら話は別
  ですが」

女「それから、私のパソコンも言語解読・翻訳装置も無事です。ハンディダイナモも無事。暗視スコ
  ープも──」

男「待って待って。キリがなさそうだ。無事じゃなかったものは?」

女「車と削岩機と──」

男「待て待て! 車って……」

女「教授のです」

男「……まじか」
10 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:39:01.20 ID:PtxdD6AO
女「じゃあ早く彼らとも話せるようにしましょう」

男「そうだな。マイクは持ってきたよな?」

女「ここに」

男「よしよし。これをここに繋いで……」

女「装置の電源は待って下さいね。今パソコンを立ち上げてますから」

男「わかってるよ」

女「──よし。教授、そこのUSB端末を貸して下さい」

男「おーけー」

「?」

女「これを……これで……」カタタタタタタタッ

女「教授、電源を」

男「よし、入れたぞ」

女「……こっちも接続完了です。さて」

「?」

「□←∝∃√ξω?」

女「あー、えっと……このマイクに向かって、喋って下さい」

「? ……□↑∩∪⊥∠⊃→◇◎〒〒⊂⊂▼≫∽ΘΤΣΣΘヴ∪*★☆∨──」

女「教授、録音開始です」

男「もうしてる」
11 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:47:45.99 ID:PtxdD6AO
「ΙΘΣΤ……◆←→◇……」

「♯ΖΗΡΠヰ……△■↓□──」

男「なぁ」

女「はい」

男「まだなのか? もうかれこれ二時間も話してもらってるぞ」

女「もうすぐです。あの人達が何を話しているかはわかりませんが、情報に十分
  な量の言葉を喋り続けてるお陰で、まだ二時間で済んでるんですよ?」

男「そうだけどさ……。本当、真面目な人達だな」

女「ですね」

女「解読完了しました。止めさせて結構ですよ」

男「そうか。あの……」

「?」

男「もう、大丈夫ですよ」

「……?」

「ヰ△■Η■↑?」

「Θー」コクッ

男「……ありがとうございます」

女「ちょっと待ってて下さいよ、教授。今からデータを自動翻訳装置に移しますので」
12 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:56:53.34 ID:PtxdD6AO
女「……完了しました。教授、これを」

男「おお、ありがとう」

女「電源は入れて──」

男「取り扱いについては知ってるってば。俺もあの人の元で働いてたんだから」

女「おっと、これは失敬」

男「……あれ? このパネルは?」

女「ソーラーパネルですよ。そこは私が改造したんです」

男「へぇ……」

「?」

女「さ、早く命の恩人達と会話しましょうよ」

男「そうだな」

男「あーあー、マイクテスッ、マイクテスッ」

女「私達の言葉がわかるなら、返事をして下さい」

「!」

「わ、わかります! わかります!」
13 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 02:57:35.99 ID:PtxdD6AO
見てる人は……そもそもこんな時間にいないか
14 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/04(木) 02:59:19.75 ID:.KHdp/Io
構わん。続けろ
15 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 03:07:21.65 ID:PtxdD6AO
「この数時でどうやって……!」

「まさか俺達に話させたのはそのためか!? 信じられん!」

女「半分正解ですね。しかしその説明より前に自己紹介をしてもよろしいですか?」

「あ、あぁ……」

女「私は女。技術者をやっています」

男「俺の名前は男と言います。職業は教授」

「教授……?」

男「……こっちにはないのか」

男「大学と言う学び屋で専門の学問を教えています。宇宙工学……と言ってもわ
  からないかもしれませんが」

女「それで、この大きなものは船。異世界へ渡るためのものです」

「……異世界?」

女「はい。私達は少なくとも現在の私達の世界にはない、魔法の研究のために異
  世界から来ました」
16 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 03:20:07.40 ID:PtxdD6AO
「でも魔法は……」

「僕達には……まあ才能もありますが」

女「私達の世界にはないんですよ。あ、よければ次そちらの紹介お願いできます?」

勇者「あ、ああ。俺は勇者。白の国の王の命により、魔王討伐の旅をしています」

剣士「私は剣士。勇者様と共に魔王討伐の旅をしている。剣が二本あるのは二刀
   流だからだ」

魔法師「私の名前、魔法師です。あなた達の知りたい事を知ってるかわかりませ
    んが、魔法を使います。土と水の属性が得意です」

僧侶「僕は僧侶と申します。白羽教会に属しております」
17 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 03:28:38.79 ID:PtxdD6AO
女「……教授、聞きましたか?」

男「ああ」

女「魔王ですよ! 魔法ですよ!」

男「夢を見てるようだ……。まるでRPGの世界だよ」

女「ファンタジーですよ、ファンタジー!」

勇者「あーる?」

剣士「ぴー?」

魔法師「じぃ?」

僧侶「ふぁんたじい?」

男「あー、いえ。こちらの話ですので」

勇者「?」

女「あっ。あの……もしかして魔物とか出ます?」

剣士「当たり前だ。今の世、魔物対策なしに魔物の出ない所などない」

僧侶「この辺りも出ますよ。僕は戦力外なので毎晩よく寝れますが」

男「ははは、それは他の御三方は大変でしょう」

勇者「本当に」
18 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 03:38:03.19 ID:PtxdD6AO
女「困ったな……」

男「何がだ?」

女「魔物がいるんだったら私達危険ですよ?」

勇者「もしかして武器がないのですか?」

女「そうなんです……」

男「え? 確か電磁砲を二つ準備したじゃないか」

女「壊れました」

男「……」

勇者「なら、近くの街まで護衛しますよ。丁度そこへ向かう途中だったんです」

女「本当ですか!?」

勇者「この……船? を置いておいても良いのでしたら」

女「あ……」

男「ちなみにそこにはどれくらいで?」

勇者「あと一日も掛からないはずですよ。あなた達の船が落ちて、かつ俺達が様
   子を見に来なければ、日付が変わる頃に着く予定でしたから」

男「……なんか、すみません」

勇者「いえ、良いんですよ」
19 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 03:50:49.14 ID:PtxdD6AO
剣士「これも何かの縁。私も勇者様の意見に賛成だ」

魔法師「放っておいて死なれると、人としても辛いですからね」

僧侶「困っている人を救えるにも関わらず救わないのは教義に反します」

女「ありがとうございます!」

男「優しい方達だ!」

勇者「まぁ、俺が勇者になった時から、人を救う役目もついてますからね」

魔法師「それは勇者一行になった私達にも言える事ね」

勇者「そうだな」

剣士「今日は寝よう。まずは私が番をする」

勇者「そうだな。そうしようか。二人は明日の準備とかあれば、今のうちに支度
   して結構です。さっきのように船? から必要なものがあれば出してきても
   構いません」

女「では、そうさせて頂きますね」
20 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 03:55:01.36 ID:PtxdD6AO
そろそろ寝る。
ペースはかなり遅いと思いますので、御了承を。
21 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 18:29:09.04 ID:PtxdD6AO
男「ふわぁ〜……」

勇者「ん、起きましたか。あなた達の世界とやらの人達は、早起きなんですか?」

男「いえ。これは職業柄睡眠時間が短いだけでして。……今の時間わかります?」

勇者「どうでしょう。朝日がさっき出た所ですから、二半時くらいだと」

男「二半時? 一日何時ですか?」

勇者「六時です。そちらは違うのですか?」

男「俺らは二十四時間ですよ。だから……二半時は六時頃かな」

勇者「細かいですね……」

男「何、俺らには普通ですよ」

勇者「そういうものですか?」

男「俺には一日六時ってのに違和感を感じるんですよ。だからそういうものです」

勇者「そういう、ものですか」
22 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 18:44:22.91 ID:PtxdD6AO
勇者「彼女……女さんもそろそろ起きるんですかね」

男「いや、あと一時間は寝てるでしょう」

勇者「一時間?」

男「だからえっと……後半時の半分です」

勇者「あぁ……」

男「この人はですね、癖でその時間ぴったりに起きるんですよ。睡眠時間がどれ
  ほど短くてもね」

勇者「それは凄いですね」

男「まぁ、ここに時差があれば悲惨だけど」

勇者「時差?」

男「はい。知らないんですか?」

勇者「聞いたこともない」

男「……世界が違うと教養も違う、か」

勇者「?」
23 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 18:57:40.04 ID:PtxdD6AO
女「……」ムクッ

男「おお、起きたか」

女「おはようございます」

男「おはよう。勇者さん達はみんな起きて支度出来てるぞ」

女「えっ!?」

剣士「慌てる事はない。ゆっくりしても構わん」

魔法師「そうですよ。疲れているのでしょう?」

女「……確かに。教授」

男「何だ?」

女「気分がかなり悪いです。どうやら時差に酔ったみたいで……」

男「あー、やっぱりか」

勇者「良くなるまでじっとしていますか?」

女「いえっ、そこまで迷惑かけるわけには!」

女「それに街なら安全でしょうし……」

剣士「そうだな。じゃあこのパンを食え。朝飯だ。食ったら行こう」

勇者「……大丈夫?」

女「何とか歩けます……」
24 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 19:12:09.84 ID:PtxdD6AO
勇者「ここは石の国の山岳地帯。青石伯爵の領地内にあるんです」

男「魔王のいる場所へ向かっているのですね?」

勇者「……いや」

男「?」

魔法師「魔王の治める、通称魔の国には巨大で強力な結界が張ってあるのです」

勇者「そう。だから結界を破る方法を探るために大陸各国を回っているんです」

女「でもそんな方法があれば……」

僧侶「可能性の話なんですよ」

魔法師「それは違うよ! 魔法には必ずその解除魔法も存在するんだってば!」

僧侶「……だそうで」

男「まあ、有り得ない事ではないですね」

魔法師「そうです!」
25 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 19:26:11.26 ID:PtxdD6AO
男「しかし、大変ですね。魔王を倒す前に色々あるなんて」

勇者「全くです」

剣士「結界なんて張った魔王はきっと根暗性格な性格をしているに──っ!」

勇者「みんな! 男さんと女さんを護れ! 」

剣士「承知した」

魔法師「わかってるよ!」

男「え? え?」

女「……囲まれてますね」

僧侶「へえ、わかるんですか。では二人ともこちらに」

男「あ、は、はい……」

ザザザッ

魔物「グオォォ……」

魔物「グルルルル……」

男「これが魔物か!?」

女「成る程、まさに異形の動物ですね……鹿に似てます」
26 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 19:29:22.77 ID:PtxdD6AO
もしかして見てる人いないんじゃないかなと思えてきた。
27 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/04(木) 19:51:24.61 ID:.KHdp/Io
いやいや、俺が見ているぜ。
28 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/04(木) 20:12:53.81 ID:PtxdD6AO
もの凄く安心した
29 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 20:19:09.94 ID:PtxdD6AO
男「鹿って……あれがか?」

女「似てませんか?」

男「僅かだろ」

女「ほら、あの角の……」フラッ

男「お、おい!」

僧侶「すみません。病気などは対処出来ないので……」

女「いえ……」

僧侶「そうですね。あの魔物は元は鹿の一種だったのでしょう」

女「や、やっぱり……」

男「つまり、魔翌力か何かでああなってるという事か?」

僧侶「鋭いですね。そしてそれは魔の国の者の仕業です」

男「成る程、それで魔王を──」

魔物「グ……ォ……」

魔物「ォォオオオッ!」ザッ
30 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 20:41:33.63 ID:PtxdD6AO
勇者「魔法師!」

魔法師「火炎壁っ!」

魔物「ウォォオオッ!」

魔物「ノォォオオッ!」

女「凄い……殆どが……」

男「……えぐい」

僧侶「殺しの場は初めてですか?」

男「まあ……」

僧侶「無理はなさらないように……」

勇者「残りは任せろ! 剣士、行くぞ!」
剣士「おう!」

魔物「ウ……ウ……ウォォオオッ!」

女「!?」

男「なん──!」

魔法師「突水!」

僧侶「加護壁」

魔物「グ……ア゛ア゛ア゛ア゛ッ」

魔法師「無事ですか!?」

僧侶「……危なかったですね」

男「あ……あぁ……」
31 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/04(木) 20:54:40.03 ID:PtxdD6AO
勇者「俺達ってもっと隠れて行動した方が良いのかね」

剣士「隠れたって向こうには同じ事。勇者様を探して殺すのは必然かと」

勇者「やっぱりそうか」

勇者「女さんと男さんは無事か?」

僧侶「しっかり護り通したよ」

男「……」

勇者「どうしました?」

男「こんな……よくこんなに殺して何事もないように……」

勇者「……ふむ」

剣士「仕方ないだろう。やらなきゃやられていた」

男「……そうですね。すみません」

僧侶「こういう場所は初めてのようだから」

勇者「ああ、わかってる。にしても女さんは大人しいですね」

女「あはは……なんか意識が朦朧としてまして怖がる余裕が……」

勇者「それはいけない。急ぎましょう」
32 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 21:04:47.46 ID:PtxdD6AO
少し休憩
33 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 22:08:19.76 ID:sRuPH960
34 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/04(木) 22:13:42.60 ID:.KHdp/Io
>>1000なら俺の明日の晩飯は肉!
35 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 22:41:03.83 ID:PtxdD6AO
>>34
明日の晩飯は野菜になりました。
36 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 22:52:33.49 ID:PtxdD6AO
──石の国、鍛冶の街

勇者「早く医者に見せに行きましょう」

男「はい。えっと……文字が読めないのですが」

魔法師「勇者は着いて行ってあげなよ。宿は私達がとっておくから」

勇者「じゃあそうさせてもらおう。そうだな……決まったら誰か宿の前で待って
   てくれないか?」

僧侶「僕がそうするよ」

勇者「ありがとう。じゃあ、男さん女さん、行きましょうか」

男「はい。気分はどうだ?」

女「……歩けます」

男「無理はするなよ」

女「わかってますよ」
37 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 23:05:13.74 ID:PtxdD6AO
医者「ん……あまり酷い病ではなさそうですな。風邪でしょう」

勇者「ですが吐き気もあると……」

医者「熱が高いですからね。解熱剤は処方しておきます」

女「ありがとうございます」

医者「ところで……その頭につけておられるものは?」

女「これは……」

男「これは俺達の師が開発しました自動翻訳装置でして、これがなければ互いに
  言葉を理解できないのですよ」

医者「へえ、そんな便利なものが。成る程、学者のなりをしているのも合点がい   きました」

女「私は……一介の、技術者です……」

医者「しかしそこまで技術が進んでるなんて知りませんでしたよ」

勇者「それは彼らは──」

女「ではこれで、失礼します。ありがとうございました」

医者「はい。お大事に」
38 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 23:14:43.90 ID:PtxdD6AO
僧侶「勇者、ここだ!」

勇者「おー。待ったかな?」

僧侶「それほどじゃないね。さて、女さんを休ませましょう」

女「でも……」

僧侶「しっかり二人の部屋もとらせてもらいましたよ。どうせお金ないんでしょう?」

女「……すみません」

僧侶「部屋代をケチって同じ部屋にしてしまいましたが……」

勇者「そこは分けてあげろよ……」

女「いえ、構いません。教授とは何度も同じ部屋で寝たことがありますので……」

僧侶「おや? もしかしてそのような関係でしたか」

男「いやいや。研究中とかは自分の家に帰らず缶詰ですからね」

僧侶「……缶詰?」

男「部屋から出ずに研究するんですよ」

女「教授は……信頼できますから大丈夫です」
39 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 23:24:37.49 ID:PtxdD6AO
男「……ふー」

勇者「どうですか? 女さんの様子は」

男「どうと言われてもさっきと同じですよ」

勇者「あ……そっか」

男「気にかけて頂いてありがとうございます」

男「今ベッドに寝かせてきましたが、日がある間は寝る事はないでしょうね」

勇者「それも癖ですか?」

男「そのようで。こういう時は厄介なものですよ」

勇者「確かに。休んで早く良くなってもらいたいですね」

男「……他の方達は?」

勇者「魔法師と剣士は買い物に行ったらしいです。僧侶はここの教会に挨拶しに
   行きましたね」
40 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 23:34:01.17 ID:PtxdD6AO
男「勇者さんもこれからどこかへお出かけに?」

勇者「いや。とりあえずみんなが帰るまではここにいようかと思ってます」

男「では聞きたいのですが」

勇者「はい。わかる事なら答えますよ」

男「この周辺の地形や特産品、人の特徴などを」

勇者「あー……俺はこの辺りの出身じゃないので詳しい事はわからないんですが」

勇者「石の国の多くはなだらかな山岳地帯で、特産品は確か……石炭と鉄鉱石。
   特にこの鍛冶の街を中心とする地域は多種多様な鉱物が採れるらしいです」

男「へえ。十分な情報ですよ」

勇者「旅をしてると色々聞くんですよ。主に商人達から」

勇者「それから、人柄についてはわかりませんね」

男「いえいえ。ありがとうございます」
41 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 23:48:36.22 ID:PtxdD6AO
勇者「では俺は仲間が戻るまで部屋で休む事にします」

男「わかりました」

勇者「夕食の時にあなた達の世界の話でも聞きたいものですね」

男「ははは、どうしましょうか。こちらではどうもオーバーテクノロジーなようなので」

勇者「ではあなたの教えているものなどは?」

男「難しいですよ?」

勇者「聞いてみなきゃ、わかりませんよ。では」

男「はい、また」


男「……はぁ」

女「……」カタタタタタタタ……

男「寝てようよ……」

女「寝れないんですよ」カタ……

女「それより、この辺りが鉱物の宝庫らしいですが」

男「らしいな」

女「良いものがあると良いんですが」カタタタタタタタ
42 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 00:34:32.90 ID:NKDHGoAO
魔法師「ふー、やれやれ〜」

勇者「ん、帰ってきたか」

魔法師「勇者も戻ってたんだね。女さんはどうだった?」

勇者「解熱剤をもらっただけだよ。深刻な病気じゃないんだって」

魔法師「そう。大事じゃなくて良かったよ」

勇者「それで? 何を買ってきたの?」

剣士「食料と包帯、予備の傷薬、毒消草、新しい砥石」

魔法師「剣士がさ、鍛冶屋の前で立ち止まって大変だったよ」

剣士「あれは芸術だった」

勇者「そんなものがあったのか。俺も今度見に行ってみようかな」

魔法師「勇者まで……」
43 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 00:50:34.44 ID:NKDHGoAO
僧侶「勇者、聞いてくれ」

勇者「何だ? 帰ってきていきなり」

僧侶「教会の修道士に聞いたんだが、東の方の山にある金鉱が魔族に占拠されたらしい」

勇者「何だと?」

剣士「だが依頼されてないぞ? 余計な事をしたと言われるのは困る」

勇者「でも……魔族がいるのなら……」

僧侶「この街に地主の館があります。明日そこに許可をもらいに行きましょう」

魔法師「相手は魔族なんだから、そんなのいらないのに……」

勇者「以前鍾乳洞を破壊して賠償させられただろ」

魔法師「あ……そっか」

勇者「僧侶、その館の場所はわかってるか?」

僧侶「ああ、もちろんだ」
44 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 01:10:03.51 ID:NKDHGoAO
剣士「しかし……」

勇者「どうした?」

剣士「許可を取るなら今からの方が良くないか?」

勇者「今日はもう遅い。それに暫くはこの街にいると思うし、急ぐ必要もないだろう」

剣士「……彼女か」

勇者「ああ。心配だろ?」

僧侶「優しいね。いや、下心ありかな?」

魔法師「ああー、なるほど。女さんって可愛いよね」

剣士「いっそ旅に同行させるか?」

勇者「あのな……俺は純粋に心配してるだけだ。だから旅に連れて行くなんて選
   択は馬鹿のやる事だと思うね」
45 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 01:23:34.39 ID:NKDHGoAO
男「ん……やあ。そろそろ来る頃と思ってましたよ」

勇者「女さんの具合はどうですか?」

男「それが……なんだか気分がノッちゃってパソコンをいじっていて」

勇者「パソコン?」

男「ああ、こちらの世界の機械ですよ。情報が素早く正確に処理出来るんです」

勇者「ん……しっくりきませんね」

魔法師「それは魔法とは違うんですか? その翻訳装置もそうですけど」

男「魔法ではありません。俺らは科学と呼んでいます。別の説明をするなら、こ
  のスプーンが……」

男「このようにテーブルに落ちる原理と同じ。その別分野です」チャリーン

剣士「そんな単純なものなのか?」

男「ええ。最も、全体的には複雑なものになりますが」
46 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 01:30:51.39 ID:NKDHGoAO
男「それはそうと、食事代まで払って下さったんですね」

僧侶「利息は高いですけどね」

男「え?」

僧侶「そうですね……女さんをくれるなら見逃してあげますが」

勇者「こら。冗談きついんじゃないか?」

僧侶「ははは、これは失礼」

男「本当に僧ですか?」

僧侶「色欲を禁ずる教義は我が教会に存在しません」

男「はあ……」

僧侶「それより男さんは酒を飲める方ですかな?」

男「飲めますが、遠慮します。食後、女さんに粥を持って行きますので」

僧侶「そうですか。ちなみに我が教会には酒を禁ずる教義は存在しませんよ」
47 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/05(金) 01:48:01.60 ID:NKDHGoAO
勇者「成る程。つまり要約すると、あなた達はその人の意志を継ぎ、あなた達の
   世界にはない魔法の力の根源を探りに来たんですね?」

僧侶「Zzz....」

男「ええ。正確には俺らの世界にも魔力らしきものは存在するんですがね」

勇者「それが定かじゃない、と」

男「はい」

魔法師「それなら魔導連合に行ってみると良いですよ」

男「魔導連合とは?」

魔法師「魔法師のギルドですよ。大陸中に広がる最も大きい所です。本部は水の
    国の首都、沼の街にあります」

男「えっと……」

勇者「明日地図でも買ってきましょう」

男「申し訳ありません。ではそろそろ部屋に戻ります。女さんも腹を空かしてる
  でしょうし」

勇者「大事に、と伝えて置いて下さい」

男「はい。では」

僧侶「グー……」
48 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 01:55:31.02 ID:NKDHGoAO
剣士「勇者、良いのか?」

勇者「何がだ?」

剣士「そんなに貢いで大丈夫なのか?」

勇者「俺達には端金だろ」

剣士「そうかもしれないが……」

魔法師「まぁまぁ。何かの縁ですから」

魔法師「それに悪い人達には見えませんよ?」

剣士「そもそも違う世界から来ただの、魔法の力がどうだの、俄か信じ難い」

勇者「だが嘘をついているようには見えなかったぞ?」

剣士「そう簡単に信じるべきではないと言っているんだ」

勇者「……」

剣士「……」

僧侶「グォー……」

魔法師「まあ、それはいずれ分かる事じゃない? ね?」

剣士「……そうだな」
49 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 02:02:14.33 ID:NKDHGoAO
女「……」カタタタタタタタ

男「粥、持ってきたぞ」

女「ありがとうございます」カタタタタタタタ

男「安静にしてなくちゃ駄目だろ」

女「……」カタタ……

女「では夕食にしましょう。今何時ですか?」

男「日本時間で十二時四十三分」

女「……時計が役に立ちませんね」

男「だな」

女「……このお粥、薄味ですね」

男「濃い方が好きか?」

女「いえ、薄い方が好きです」

男「そっか」
50 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 02:10:07.93 ID:NKDHGoAO
男「それで?」

女「……?」

男「病人のくせに何をやってたのか」

女「……これです」

男「設計図?」

女「はい。これ以上勇者さん達の厄介になるのは気が引けます」

男「……成る程、武器の設計図か」

女「少なくとも鉄はよく採れるそうなので」

男「勇者さん達から世話されなくても生きていけると示そうとしているのは分かった」

女「……問題点は分かってます」

男「費用も勇者さんに出してもらうか?」

女「とりあえず……ここで体よく稼げる方法を見つけようと思います」

男「ほう。妥当だな。ならそれは俺に任せろ。そして明日はゆっくり休め」

女「でもっ」

男「『でも』じゃないだろ?」

女「……はい」
51 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 02:25:04.86 ID:NKDHGoAO
ペャー ペャー

男「ん……もう朝か……」

女「おはようございます、教授」

男「あれ、もう起きてるの?」

女「つまりこちらの時間で七時は過ぎました」

男「昨日慣れない運動したからな……疲れてたのかね」

女「かもしれませんね」

ペャー ペャー

女「ここの鳥って『ぺやー』って鳴くんですね」

男「どんな鳥だ?」

女「姿は見てませんが、雀や烏ではないと思います」

男「奇遇だな。俺もそう思うよ」
52 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 02:31:58.98 ID:NKDHGoAO
女「……先程」

男「ん?」

女「先程勇者さん達が出掛けて行くのを見ましたよ」

男「こんな朝早くから?」

女「はい」

男「まあ、彼らの勝手だろ」

女「見捨てられたと考えられませんか?」

男「ここまでしてくれてか? 有り得んな」

女「やっぱりそうですか……」

男「それはそうと、調子は良いみたいだな」

女「起きたら治ってました。まだ解熱剤飲んでなかったです……」

男「フランスに行った時は三日掛かったじゃないか」

女「頭を使ったから治りが早かったんですよ」

男「はぁ?」

女「さあ、私達も朝食を食べて情報を集めましょう」
53 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/05(金) 02:35:02.46 ID:8SAAlxQo
男と女が何考えているのかが気になるぜ
54 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 02:43:43.88 ID:NKDHGoAO
魔法師「こんな早くで良かったんでしょうか」

剣士「早いにこしたことはない」

勇者「その通り」

ガンガンッ

……

メイド「……はい。どちら様でしょう」

勇者「勇者と申します。今度は鍛冶の街に来た際に、地主様に挨拶にしに参りました」

メイド「勇者様……あの勇者様ですか!?」

勇者「恐らく」

メイド「ではそちらの方達はお仲間で?」

勇者「はい」

メイド「すぐに地主様に知らせて来ます。少々お待ち下さい」

剣士「今ので私達が滞在してる事が街中に広まったな」

僧侶「ああ、大声出さないで欲しいよ……頭に響く」
55 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 02:57:10.95 ID:NKDHGoAO
メイド「こちらで地主様がお待ちです」

勇者「ありがとうございます」

鍛冶地主「貴様らが勇者一行か?」

剣士「ムッ……」

勇者「はい。私が勇者でございます」

鍛冶地主「ほう。流石礼儀がなっておるな」ニタァ

勇者「ありがとうございます」

鍛冶地主「それで、用はなんだ。資金か?」

勇者「いえ、ただ挨拶をしに来るのが礼儀かと思いまして」

鍛冶地主「ほう」

勇者「贈り物一つもない事に関しては申し訳なく思っております」

鍛冶地主「ふん、良い」チッ

勇者「では──」

鍛冶地主「ああ。安楽な滞在を願っておる」

勇者「いえ、本題です」

鍛冶地主「……何?」
56 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 03:05:39.08 ID:NKDHGoAO
勇者「ここから東に位置する金鉱が魔族に乗っ取られたとか」

鍛冶地主「……知っておったか」

勇者「はい」

鍛冶地主「わしの面目が潰れたな……」

勇者「何か対策はされたのですか?」

鍛冶地主「自警団を送ったが、みんな逃げ帰ってきおった」

勇者「そうですか」

鍛冶地主「あの金鉱は一番生産量が多いのだ」

勇者「では私どもに任せて頂けませんか?」

鍛冶地主「いや、これは街の問題だ。他人に任せられる事ではない」

剣士「何だとっ?」

勇者「剣士、落ち着いてくれ」

勇者「占拠した魔族から何か聞き出せるかもしれないのです。お願いします」

鍛冶地主「……ふむ。そこまで頼むのならば……」
57 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 03:19:01.67 ID:NKDHGoAO
男「いや、中々ないね」

女「ですね」

男「俺らに出来そうな仕事は安い。専門職は専門外」

女「鍛冶屋はあっても機器製造がありませんしね……」

男「どうだ。いっそ春でも売るか」

女「……教授じゃ売れるはずないじゃないですか」

男「なんで俺なんだよ」

女「私が嫌ですから」

男「良い線行くと思うんだがな……」

街人「また鍛冶地主かぁ?」

街人「ああ。昨日ごっそり取られたよ」

街人「あんな安価で売らせるなっての」

街人「税金とか言いながら絶対自分で溜めてるよ」

街人「くそっ。商人に売る宝石がなくなりそうだ」

女「……宝石」

男「宝石がどうした?」

女「何でもないです」
58 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 03:24:45.86 ID:NKDHGoAO
そろそろ寝よう。

これ、面白いのかな?
いや、どのみち書くけど。
59 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 20:32:38.69 ID:NKDHGoAO
勇者「おや。女さん、もう大丈夫なんですか?」

女「はい。起きたら元気になってまして。迷惑かけてすみませんでした」

勇者「良いんですよ。こちらも男さんから面白い話を聞かせてもらったので」

女「……何を話したんですか?」

男「ちょっとこの世界に来た経緯を」

女「話して良かったのかな……」ブツブツ

男「勇者さんらはどこへ行かれてたのです?」

勇者「ん。ちょっと地主の館まで挨拶に」

男「あー……国から命令を受けてるとなると、そんな事までしなけりゃいけない
  んですか。大変ですね」

勇者「いや……普通地主まで挨拶しなくても良いんですが……」

男「?」
60 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/05(金) 20:41:43.21 ID:NKDHGoAO
僧侶「僕が聞いた話によると近くの金鉱山が魔族に占拠されまして」

男「えぇっ!?」

勇者「そこで討伐の許可をもらいに行ってたんです」

女「許可がなくても、普通討伐した方が鉱山のためであり、街のためでは?」

勇者「まぁ、たまにややこしい状況があって……」

剣士「以前、許可なく魔物を追い出す際に何度か問題があってな」

魔法師「観光地を壊したり、人質がいるのを知らずにやって人質が殺されたり……」

女「そんな事が……」

勇者「だから今じゃ一々許可をとってから行動してるんです。国の為、街の為、
   村の為。そんな事はその場所の住人にしか分かりませんからね」
61 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 20:53:30.44 ID:NKDHGoAO
勇者「まぁ、この先俺達の正義を優先する場面もあるかもしれませんが」

女「……」

男「それで……許可は?」

勇者「ええ。もらってきました。これからそこに向かうつもりです」

男「そうですか。では俺らはこの辺りでお別れですね」

僧侶「とは言っても、宿なしは辛いでしょう。十分な宿代は渡しますよ。はい」ジャラ

男「えっ……良いんですか?」

僧侶「今更宿代くらいで遠慮しないで下さいよ」

男「はあ。ありがとうございます」

勇者「長くて四日程で帰ってきますが、それまでに商人のキャラバンが来たら、
   彼らと同行する事を勧めます。俺達といるより余程安全ですよ」

魔法師「それに水の国に行きたいんでしょう? 商人達と一緒の方が近道です」

男「では来たら、そうさせて頂きます」
62 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:00:43.85 ID:NKDHGoAO
勇者「さて、俺達は一旦宿へ戻ってからすぐに出発しますが」

男「こちらは今この地域の情報を集めてましてね」

勇者「学者でしたね、そういえば。では、この辺りで“とりあえず”お別れですか」

男「ですね」

魔法師「では二人とも、お元気で」

剣士「それではもう会わないみたいではないか。では、またの機会に」

僧侶「またね」

女「またお会い出来れば良いですね」

男「色々とお世話になりました」

勇者「じゃあ、行こうか」

剣士「そうだな」
63 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:08:23.43 ID:NKDHGoAO
男「で、結局また世話をかけたら笑い話だよな」

女「そうならないようにするのが、今の私達の役目ですよ」

男「この辺りに学校でもあれば、数学程度は教えられるのにな」

女「エスペラントでも教えてみましょうか」

男「またそんな俺らの世界でもマイナーな言語を……」

女「まぁわかりませんが」

男「ま、言語系は無駄だな」

女「教授はこれからどうします?」

男「そうだな……。さっき教えてもらった商人のキャラバンとやらがいつ通るか
  も兼ねて情報収集だな」

女「では頑張って下さい」

男「何だ。一緒に来ないのか?」

女「私は少しやる事が出来たので」

男「何?」

女「今は言えません」

男「……わかった。だが危険な事はするなよ?」

女「はい」
64 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:18:44.64 ID:NKDHGoAO
鍛冶屋「……ん」

鍛冶屋「娘さんが何の用だい?」

女「ここは鍛冶屋ですよね?」

鍛冶屋「見てわからねえか?」

女「すみません。念の為確認しただけです」

鍛冶屋「そうだ。いかにもここは鍛冶屋だが……おい、触っても良いが手ぇ切る
    んじゃねえぞ」

女「……この鉄、中々鍛えられてますね」キーン

鍛冶屋「ほう。剣の良さがわかるんかい?」

女「わかるのは金属の良さですよ」

鍛冶屋「ほう」

女「まず一つ、質問良いですか?」

鍛冶屋「注文かい?」

女「そうなるかもしれません」

鍛冶屋「それで?」

女「私が今から言う金属はこの街で手に入るかどうかです」
65 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:28:46.74 ID:NKDHGoAO
鍛冶屋「……それで全部か?」

女「はい」

鍛冶屋「手に入るが、そんな多くの種類で何をするつもりだい?」

女「単体でも使いますが、多くは合金を作って欲しいと思いまして」

鍛冶屋「合金ってーと、青銅とかかい?」

女「それよりも丈夫なものですが。各割合は後で話します」

鍛冶屋「その合金を作ってほしい……か。それは製鉄の方だが」

女「鍛冶屋に来たのはそれだけじゃありません。その製鉄業の中で腕の良い方と
  強力してやってもらいたいのです。もちろん、私も手を貸しましょう」

鍛冶屋「監視と言うわけか。それで、鍛冶屋の俺の仕事は何だい」

女「部品を作ってもらおうと思いまして」
66 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:36:49.01 ID:NKDHGoAO
鍛冶屋「そうか。成る程……」

女「……」

鍛冶屋「それで、金は?」

女「今はありません」

鍛冶屋「はぁ!?」

女「なので、依頼したものを受け取るのは、私がお金を出してからでどうですか?」

鍛冶屋「お前さんが支払わなければ、お前さんは損も得が、俺らは損をする」

鍛冶屋「だが、払ってもらう値段が出来るまでわからねえ。この意味がわかるかい?」

女「前金ですね?」

鍛冶屋「そう。少なくとも最低限の材料費は払ってもらいてぇ」

女「依頼を受けて下されば、すぐにでも払いましょう」
67 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:45:55.75 ID:NKDHGoAO
鍛冶屋「さっき『金を持ってない』と言ったよな?」

女「はい」

鍛冶屋「なら前金は出るはずもねぇ。子供でもわかる事だ」

女「いえ。私が出す前金とは、情報です」

鍛冶屋「どういう事だ?」

女「私の依頼する品物は、この地には過ぎた技術のものです。その製造法を教え
  、その加工法を教え、私はそれで出来たもののみをもらいます」

鍛冶屋「……つまり、後はその知識を好きに使えと言うことか?」

女「はい」

鍛冶屋「それはさっき行った材料費に見合うものだろうな?」

女「それはあなた方次第ですね。少なくとも私なら、見る限りこの国では、それ以上の価値があります」

鍛冶屋「……ほう」

女「どうですか?」

鍛冶屋「よし、のった!」
68 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 21:50:07.38 ID:NKDHGoAO
やばい。
語彙力のなさにイライラする。
69 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 22:10:54.60 ID:NKDHGoAO
鍛冶屋「それで、具体的には何をすれば良いんだい?」

女「あなたには型を作ってもらおうと思います」

鍛冶屋「型? お前さんの合金を叩くんじゃないのか?」

女「作るものはどれも融点も強度も高くなりますから」

鍛冶屋「叩いても意味ないと?」

女「下手すれば金鎚が割れます」

鍛冶屋「そんなにかい!?」

女「なので、まずこの二日で製鉄業の方に材料を集めてもらい、こちらは型を作
  ります。必要な部品の図面は用意しています」

女「次の一日で合金を作り、型に流し込みます。この時、ネジや配線などの小さ
  な部品も作ります」

女「四日目に支払いを済ませる予定です」

鍛冶屋「最後だけ曖昧だったけどよ……そんな短期間で出来るとは思えねえよ。
    せめて一ヶ月は──」

女「出来るようにさせます。こちらも最終的に代金を支払う以上、徹夜を覚悟し
  てもらいますよ」

鍛冶屋「なんだってそんなに急いで……いや、下手に首を入れない方が良いかね」

女「賢明な判断です」ニコッ
70 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 22:34:38.39 ID:.v2Eip.o
DQの世界に行っちまったのか
71 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 22:49:29.55 ID:NKDHGoAO
一人ただ書いて、独り言ぼやいてるだけに思えてきて少し寂しかった。

元ネタはあまり入れられないと思う
個人の事情諸々で流行にはとんと疎くなってしまってるから
72 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 22:54:06.26 ID:.v2Eip.o
読んでて面白いから支援
73 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 22:57:05.30 ID:NKDHGoAO
女「ただいま」

男「おかえり」

女「もう戻ってたんですか?」

男「もう暗くなってきてるんだが」

女「そうですが……。何かめぼしい仕事見つかりました?」

男「全然。そっちは?」

女「全くです」

男「それで? 何をしてたんだ?」

女「鍛冶屋と製錬所を回ってました」

男「まだ諦めてなかったのか……」

女「武器は必要ですから」

男「だけど金がないんじゃ仕方ないだろ? 聞いた話ではキャラバンとまではいか
  ないが、小さな商団が街に来るそうだ。二週間後に」

女「勇者さんが帰ってきてからですか」

男「その通り。だからそれまで世話になるしかないよ」

女「……」
74 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 23:05:46.50 ID:NKDHGoAO
──金山坑道内

剣士「……長いな」

魔法師「私もう疲れたよ〜」

勇者「魔物もまだ一匹も出ないが……情報が間違ってるのか?」

僧侶「僕が嘘を吐いたと言いたいのか?」

勇者「そういう訳じゃ……」

剣士「いや、恐らく奥にいるのだろう。いないのならば、鍛冶地主の話での自警
   団の話が説明できん」

勇者「とにかく今の時間はわからないか?」

魔法師「外じゃないんだから……」

僧侶「おお、神よ! 我らに今の時を教えたまえ!」

勇者「わかるのか!?」

僧侶「わかる訳ないだろ」
75 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 23:16:26.40 ID:NKDHGoAO
勇者「しかし疲れたのならこの辺りで休もう」

魔法師「さんせーっ」

剣士「私はまだ歩けるのだがな……」

勇者「休むとは言っても」

剣士「わかってる。気を抜いてはならない、だろ?」

勇者「その通り。特に視界は狭い。松明では範囲が限られているからな」

魔法師「鉱夫も不便ですね」

僧侶「こんな場所でずっと土を掘ってると、性格まで暗くなりそうだ」

剣士「いや、採掘は大人数で行うはずだから、話ができる。性格も明るくなる」

勇者「そうだね、例えば……」

勇者「この人もそうだったんだろう」カラン……

剣士「犠牲者か……」

魔法師「……」

僧侶「……」
76 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 23:28:46.75 ID:NKDHGoAO
ズ……

剣士「む……」

勇者「スゥ……スゥ……」

魔法師「むにゃぁ〜……」

僧侶「グォー……」

「アレガ勇者カ?」

「勇者。ユウシャ?」

「勇者コロス」

「オレガコロス」

「オレガ──」

「オレ──」

「ハヤイモノガチィイイイ!」ズズズッ

剣士「起きろ!」キィンッ

「ナニ!?」

剣士「はぁっ!」

「ヌァア!!」

剣士「さて──覚悟しろ!」

「ギャアアアッ!」

「エヤァアアア!?」

「グォアアア!!」
77 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 23:35:54.42 ID:NKDHGoAO
……

ザッザッザッ

剣士「……」

勇者「……終わったか?」

剣士「あぁ。また寝てて良いぞ」

魔法師「一人で十分だったじゃん。じゃ、おやすみ」

僧侶「……グゥ」

勇者「折角だから見張り交代するよ」

剣士「まだいけるぞ?」

勇者「起こされて目が冴えたんだよ」

剣士「そうか。かたじけない」

勇者「しかしこれは……成る程、人型か」

剣士「低級なやつらだ。金でも掘らせていたのだろう」

勇者「一、二、三……十五か。奥にはあとどれくらいいるんだろうな」

剣士「その時は……全て斬る」

勇者「剣士ならそう言うと思ったよ」
78 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/05(金) 23:55:06.69 ID:NKDHGoAO
──鍛冶の街

男「……もう昼過ぎだぞ」

〜  〜

女「二、三日出掛けますので」

〜  〜

男「とは言ってたが、もう三日目だ」

男「心配だ」ソワソワ

男「何かあったんじゃ……」ウロウロ

男「はっ! まさか本気で売春を!?」

男「……」

男「……」ニヤァ

男「……って何考えてんだよ」

女「何考えてたんですか?」

男「うわわっ! いや、つまらん事だ!」

女「……そうですか」

男「まあ、おかえり」

女「はい。ただいまです」

男「……疲れてるようだが」

女「物凄く疲れていますよ。なので……寝ます。おやすみなさい」

男「ええっ!?」

女「夕食の時間になったら起こしてくだ……スゥ」
79 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 00:03:02.12 ID:A2neCkAO
鍛冶屋「なあ……」

製錬師「ん」

鍛冶屋「あの娘は、悪魔だ……」

製錬師「ぴったりだ……」

鍛冶屋「だが」

製錬師「ああ。悪魔に魂を売ってても、後悔はしそうにねぇ」

鍛冶屋「……完成したなぁ」

製錬師「……あぁ。辛かったが、貴重な経験だった……」

鍛冶屋「なあ」

製錬師「何だ?」

鍛冶屋「何だか意識が軽くなっていくぞ……」

製錬師「奇遇だな、俺もだ」

鍛冶屋「やっぱり魂が取られてるんかねえ……」

製錬師「かもしんねえ……なぁ……」

鍛冶屋「……グゥ」

製錬師「ズー……」
80 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 00:08:01.66 ID:A2neCkAO
今回はこの辺りで。

何か打ち間違い以外に誤字がありそうで怖い。製錬とか。
今更直せないけど辞書で調べておこう。
81 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 00:09:08.81 ID:/QPmof2o
乙乙
82 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 02:59:06.04 ID:A2neCkAO
男「おい、起きろ」

女「ん……んむぅ〜……」

男「夕食の時間だ。起きろ」

女「後五分だけぇ〜……」

男「お前、ほんと朝の七時以外は寝起き悪いな」

女「後ごふ……スゥ」

男「ほらほら、起きろ! お前が起こせと言ったんだろ!?」

女「ん……んぁああ〜……」

女「……」

男「おはよう。飯だぞ」

女「……おはようございます。おやすみなさい」

男「あっ、おい! こら!」

女「スゥ……」
83 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 03:06:24.00 ID:A2neCkAO
女「……」ボーッ

男「おーい。起きてるかー?」

女「……はい」ボーッ

男「早く食わないとスープが冷めるぞ」

女「……はい」ボーッ

男「はぁ……。で? この二日間何やってたのか聞かせてくれないのか?」

女「武器の部品をぉ、作ってたんです」ボヘーッ

男「金は? ないって言っただろ?」

女「払えばもらえますー。それまで向こうで保管してもらえるよう頼みました」ニヘー

男「そうか。だがあと二週間程でここを発つんだぞ? 引き取りは無理だ」

女「……」

男「どうした? 眠気は覚めたのか?」

女「考えてあります」
84 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 03:17:38.16 ID:A2neCkAO
──金山坑道内

勇者「ハァッ!」

魔物「ゲバァアアッ!」

魔法師「水牢!」

魔物「ン゛ー! ンン゛ー!?」ゴボゴボガボ……

剣士「はぁっ、はぁっ……終わりか?」

勇者「まさかこれ程の数がいたとは……」

僧侶「生きた心地がしなかったね」

剣士「さて、どうする?」

勇者「どうすると言われてもね……終わりだよ」

魔法師「最後の行き止まりだね」

勇者「魔物ばかりで魔族なんていなかったぞ」

僧侶「僕達が別の道を行ってる時に逃げた可能性も考えられるね」

剣士「そうか……。くそっ!」
85 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 03:31:53.46 ID:A2neCkAO
勇者「仕方ない。一旦街に戻ろう。それからまた見て回って何事もなければ、そ
   れでこの件は終わりだ」

魔法師「結果的には追い出した事だからね」

僧侶「それで手を打つしかないな」

剣士「くっ……勇者様がそう言うならば」

勇者「では戻ろう。女さん達の様子も気になる」

僧侶「女さん達、じゃなくて、女さん、じゃないのか?」

勇者「あのな……俺は──」

ザッザッザッザッ

?「ほう。勇者様は街に好みの娘でも見つけられたようだ」

剣士「誰だ! 魔族か!?」

鍛冶地主「魔族とは心外な。ただの人間だ」

勇者「鍛冶地主様!? どうしてここに……」

鍛冶地主「終わらせに来たのだ。貴様らの旅をな!」
86 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 03:44:02.15 ID:A2neCkAO
剣士「何?」

魔法師「……どういう事?」

鍛冶地主「そのままの意味だよ。わからんかね?」

勇者「どうして……このような真似をっ……」

鍛冶地主「言う義理などない。自警団!」

「はっ!」

鍛冶地主「相手は弱っている! やるなら今だ! 手加減などするな! 殺せっ!」

「はっ!」

魔法師「自警団と言うよりは……」

僧侶「私兵、だね」

勇者「やるしかないのか……?」

剣士「同盟国の民を斬る事になるとは……」

鍛冶地主「かかれぇ!」

「うおおぉっ!」
87 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 03:46:00.34 ID:A2neCkAO
二度目の睡眠に入る。
何だか目が覚めてしまったら目が冴えてたんだ。
88 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 09:45:07.47 ID:A2neCkAO
魔法師「火炎──」

勇者「止めろ! 空気がなくなるぞ!」ザシュッ

自警「ぐあぁああっ!」

魔法師「そ、そっか。土隆──」

剣士「それは崩れるっ! 一気に倒そうとするな!」

魔法師「っ〜! 水弾!」

自警「ぐあぁぁああ!」

鍛冶地主「何をやっとる! 数なら十倍以上。押し通せ!」

「おーっ!」

剣士「ふふっ、こいつらを生かして倒すのは無理かもしれないな」

勇者「偶然だな。だが仕方ない。これは──」ザシュッ

自警「ぐふっ……」

勇者「正当防衛ってやつだ」

剣士「成る程。上手く正当化したじゃないか」
89 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 10:00:36.67 ID:A2neCkAO
僧侶「殺しても良い、という結論ならば僕に任せてみてはどうかな?」

勇者「何か妙案が? くっ」キィンッ

僧侶「少し試してみたいものが。少し時間が必然だけどね」

勇者「……よし、やってみよう。みんな、僧侶を守るよう陣形をとれ!」

剣士「承知した!」

魔法師「わかった!」

鍛冶地主「何をしようと言うのだ? よもやこの程度で万策尽きたのではあるまい──ん?」

僧侶「神よ、忠実なる僕たる我らを守りたまえ。神よ、忠実なる僕たる我らを守りたまえ」

僧侶「我らの命を絶やさんとする彼の者達から救いたまえ。我らの命を奪わんと
   する彼の者達に究極の贖罪を与えたまえ──」

僧侶「彼の者達に速やかなる死を」
90 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 10:13:16.39 ID:A2neCkAO
自警「うっ……ぐふっ……」バタッ

自警「がが……げぁっ……!?」バタッ

「く……ぁ……」

「うぁ……」
「ふ……っ……」
「かはっ……!?」

……

勇者「!」

鍛冶地主「貴様……何をした!」

僧侶「祈祷だよ……。魔法だと黒魔法に分類されるのかな……っ」フラッ

魔法師「僧侶っ!?」

僧侶「大丈夫……少し反動を受けてるだけだ」

剣士「お前がこんなものを隠していたとは知らなかったな」

僧侶「初めて……使ったからね……」

勇者「ありがとう。お陰で楽になりそうだ」

僧侶「それは、やって良かったよ……僕は少し、休む……」

魔法師「僧侶っ……て寝てるだけか」

僧侶「グゥ……」
91 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 10:20:06.62 ID:A2neCkAO
勇者「さて、残るは地主様だけですが」

鍛冶地主「くっ……」

勇者「どういう事か説明してくれませんか?」

鍛冶地主「ふ……ふはははははっ! 貴様らに教える程のものではないわ!」

勇者「……何?」

鍛冶地主「さらばっ!」

剣士「遅い」

鍛冶地主「うっ……」

剣士「話すか、死ぬか。選ばせてやろう」

鍛冶地主「うっ……うぅ……」

勇者「説明してくれますか?」

鍛冶地主「……わかった」

勇者「助かります。これ以上無為な殺しはしたくありませんでしたから」
92 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 10:29:15.04 ID:A2neCkAO
──鍛冶の街

男「グー……グー……」

女「……」

女「寝ましたか?」

男「グー……」

女「……よし」

女「教授、少し出掛けてきますね」

男「グー……」

女「……いってきます」


女「鍛冶地主の館。街中で際立って大きいね」

女「……」キョロキョロ

女「誰も見てない……今っ」ササッ

女「自警団が警備してるって聞いたけど、人の気配がしない」ブツブツ

女「……罠? バレてたり?」

女「何にせよ慎重に行かなきゃ……」
93 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 10:45:40.83 ID:A2neCkAO
女「……」

女「……?」

女「どこに……」ブツブツ

女「!」

女「……あった」

女「これはこれは、大きな金庫だね」

女「銀行には劣るけど」ブツブツ

女「ふっふっふっ……アナログな鍵は一流の技術者にとって……」ブツブツ

カチッ

女「ドアノブにも等しいのだよ」

女「へぇ。これがこの近くで採れた宝石かぁ」

女「宝石だけじゃない……これは、純金?」

女「それにしても……地主って儲かるのね」ブツブツ

女「さて……」
94 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 11:01:51.57 ID:A2neCkAO
ガタッ……

女「!?」ビクッ

女「……」キョロキョロ

女「……風かな?」

ガチャ……バタンッ

ガチャ……バタンッ

女「っ! 風じゃな──」

「ギィヤァアアアッ!!」

女「!?」

「こそ泥が何しにきた! 失せろ!」

女「ごめんなさいごめんなさいごめんなさ──」

「ぐぁあああっ!!」

「に、逃げろぉ!」

「うわああああ!」

「ぎゃぁあああ!?」

「お頭だけでも逃げて下──がぁああっ!?」

「くそっ! こんなの聞いてねえぞ!」

ガチャッ

盗賊「何なんだよあいつはっ。自警団なら全員……ん?」

女「あ……」
95 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 12:12:02.30 ID:A2neCkAO
女「あ、あわわっ……」

盗賊「誰だてめぇっ! あいつの仲間か!?」

盗賊「……いや、俺らと同じ部類か?」

女「すみません! すみません!」

盗賊「そんな事より早く逃げろ! 死にたくないならな!」

女「は、はい?」

盗賊「ここは危険なん──」

?「もう遅い」

盗賊「くそっ!」

?「……もう一匹鼠がいたか」

女「っ」

?「私に見つからずここまで来たことは褒めてやる。だが、ここまでだ」

盗賊「この野郎!」シュッ

?「ふっ……こんなちんけな短剣で私を倒せると思うたか? 傷一つ付かんわ」

盗賊「ちっ」

影将軍「魔王様の臣下、この影将軍を甘く見るでないわ!」
96 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 12:43:49.32 ID:A2neCkAO
盗賊「魔王だと? 自警団じゃねーのか」

影将軍「あのような雑魚と一緒にしてもらうのは困る」

盗賊「それで? どうしてその魔族が鍛冶地主の野郎の館なんて守ってんだ?」

影将軍「これでも契約を守る主義でな」

盗賊「へぇ。どんな契約か気になるな」

影将軍「話す必要ななかろう」

盗賊「……」

影将軍「……まぁ良い。何も知らずに死ぬのも苦しかろう。せめてもの情けだ」

影将軍「鍛冶地主が勇者を仕留めれば、私は奴に金の分け前を増やす約束をした。
    その代わり、奴らが出掛けてる間この館を守れば、次は銀山を貰う契約
    をした。お主らの社会でもよく行われる取引と言うやつだ」

女「勇者さんを……!?」

影将軍「ほう。娘、顔見知りか」

盗賊「成る程。あの金山には勇者一行がね……。外道共め」
97 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 13:18:09.79 ID:A2neCkAO
影将軍「お喋りはここまでにしよう」

盗賊「同感だ」

影将軍「選ばせてやろう。自害するか……」

盗賊「……」

影将軍「私の手で殺されるか!」

盗賊「はっ、何を言ってやがる。死ぬのはてめぇだ!」

影将軍「……それが答えか。良かろう」

盗賊「そこの女……こいつは俺が食い止める。その内に逃げろ」

女「えっ?」

影将軍「ほう」

女「それだとあなたは……」

盗賊「あいつに俺の仲間みんな殺された。もう俺には何も残っちゃいねぇ……」

盗賊「だから心配すんな」
98 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 13:29:24.79 ID:A2neCkAO
盗賊「覚悟は良いか?」

影将軍「どこからでも来るが良い」

盗賊「そりゃどうも。──ハァーッ!」シュッ

影将軍「学習しないな。剣を投げたところで私には効か──」

盗賊「それはどうかな?」

影将軍「!? 速い!」

盗賊「投げるだけが能じゃねんだよ!」シュッ

影将軍「くっ……!」

盗賊「どうだ? 傷一つ付いたぜ?」

影将軍「私とした事が……油断した」

影将軍「が、二度目はない! 影溶け!」スゥ……

盗賊「何ぃ!? あの野郎魔法まで使えるのかっ」
99 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 13:38:09.79 ID:A2neCkAO
影将軍「これは闇に自らの姿を溶け込ませる魔法。お主に私の姿は見えまい」

盗賊「ちっ……」

影将軍「お主の技量、中々であった」

盗賊「そこかっ!」シュッ

カラン……

影将軍「ハズレだ」

盗賊「くそっ」

影将軍「お主、魔の国の者ならばもっと強くしてやれただらうに。無念だ」

盗賊「そんなの死んでも断ってやらぁ」

影将軍「そうか。実に惜しい」

盗賊「そこ!」シュッ

カラン……

影将軍「またハズレ……。ではそろそろ──死ね」

盗賊「くっ……これまでかっ」

女「右から来ます!」
100 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 13:49:01.44 ID:A2neCkAO
盗賊「!」

影将軍「何!?」

盗賊「そこだぁっ!」シュッ

影将軍「ぐっ……」

盗賊「うぉおおっ!」シュシュシュシュッ

影将軍「う……あがっ……!?」ドスドスドスドスッ

盗賊「はぁ……はぁ……」

影将軍「ぐ……うぉお……っ」

影将軍「娘ぇ、何故私の場所がわかったぁ……!?」

女「私には、あなたは一度も消えていませんでした」

影将軍「そうか……その眼鏡、魔法が掛けられておるな……? そうかそうかっ……」

影将軍「また油断……したか……っ」

盗賊「止めだ! ハァーッ!」

影将軍「  」ブツブツ

ヒュッ
101 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 13:55:34.43 ID:A2neCkAO
盗賊「……」

女「……」

盗賊「やった……か? 手応えはなかったが……」

女「ナイフが当たる寸前で消えました……ね」フラッ

盗賊「おいっ、大丈夫か! その眼鏡の副作用か!?」

女「いえ、ただ緊張が緩んだだけです。それにこれに副作用はありませんし」

盗賊「そうか。なら良い。……どうして逃げなかった?」

女「腰が抜けてしまいまして……あははっ」

盗賊「笑い事かよ」

盗賊「立てるか? 早い所ずらかるぞ」

女「いえ」

盗賊「は?」

女「“お宝”がまだでしょう?」ニコッ
102 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 14:11:20.72 ID:A2neCkAO
「(返事がない。ただの屍のようだ)」

「(返事がない。ただの屍のようだ)」

「(返事がない。ただの(ry)」

「(返事が(ry)」

「(へ(ry)」

盗賊「……すまねえ。今てめぇらを埋める時間がねぇ」

盗賊「下手すりゃ、てめぇらの墓を拝む事も出来ねぇかもしんねえ」

盗賊「こんな気の利かねえ頭だったが、今まで楽しかったぜ」

盗賊「……じゃあな」

女「……」

盗賊「何だ。もうどこかに行ってるかと思ってたが」

女「これ」ジャラ……

盗賊「分け前か……いらねぇ」

女「あなたがいなければ私はもう生きてはいないでしょう」

盗賊「俺がいなけりゃてめぇが見つかる事もなかったかもしんねえ」

女「とにかく受けとって下さい」

盗賊「……仕方ねえ。こんな侘しい報酬はそうはねえな」
103 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 14:26:31.18 ID:A2neCkAO
盗賊「それで? これからどうするつもり何だ?」

女「武器の部品を買います」

盗賊「おいおい、こんだけありゃあ部品どころか完成品がいくつも買えるぜ?」

女「私の設計したものは非売品です」

盗賊「へぇ。頭良いんだな」

女「今回は泥棒でしたが、本職は技術士ですから」

盗賊「じゃあその眼鏡も?」

女「いえ。これは暗視スコープと言って、どんな暗闇でも見通す事が出来ます。
  私の国のものですね」

盗賊「ちょっと貸してくんねえか?」

女「別に良いですが……盗らないで下さいよ?」

盗賊「盗らねえよ。どれどれ……おおうっ、これはすげぇ! どんな魔法が掛かっ
   てんだ?」

女「魔法じゃないんですよ」

盗賊「え?」

女「ほら、早く返して下さい」

盗賊「あ、あぁ……」

女「では、さようなら」

盗賊「待て。名前を教えてくれねぇか? 俺は盗賊だ」

女「女、です」
104 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 14:50:26.11 ID:A2neCkAO
女「起きて下さい。起きて下さい」

鍛冶屋「ん? ……あぁ、お前さんか。金は手に入れたのかい?」

女「お金は無理でしたが、宝石や金、銀などは」

鍛冶屋「……何だって? まさか盗んだんじゃないだろうな?」

女「あはは……そのまさかなんです」

鍛冶屋「おい……まじかよ……。どこからだ?」

女「地主様の館です」

鍛冶屋「なら良いか」

女「そう言ってくれると思ってました。街中が嫌っているようだったので」

鍛冶屋「まぁな」

女「このくらいの量で足りますか?」

鍛冶屋「十分過ぎる。お釣りが出るくれえだ」

女「私の分け前は確保してますので」

鍛冶屋「そうか。品物はそこにあるだろ?」

女「ありがとうございます」

鍛冶屋「こいつが起きたら知らせておくよ」

製錬師「グゥ……」

女「では、さようなら」

鍛冶屋「おう。こちらこそありがとうよ」
105 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 14:58:08.81 ID:A2neCkAO
ペャー ペャー
  ……ペャー ペャー

男「……ん?」

女「……」カタタタタタタタ

男「女さん? と言うことはもしかして」

女「おはようございます。いえ、まだ六時頃ですよ」カタタタタタタタ

男「どうして分かる?」

女「広場の小さな時計台」カタタタタタタタ

男「……成る程。こんな時間に起きてるなんて珍しいな」

女「徹夜です」カタタタタタタタ

男「さっきから何をしてるんだ?」

女「プログラムです。武器が手に入りましたので、夜の間に組んでおきました」カタタタタタタタ

男「武器? どうやって──」

女「……ふぅ。では早い所、街を出ましょう」カタ……
106 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 15:08:15.56 ID:A2neCkAO
男「どうしてそんなに急ぐんだ?」

女「資金集めに泥棒してきました。以上です」

男「はぁ?」

女「研究の為には手段を選ばない。これはあの人の教えです」

男「だがやって良い事と悪い事があるだろ、道徳的に!」

女「でもお陰で調査が少し進みそうですよ?」

男「武器か?」

女「いえ、宝石です。私達の地球には存在してないものを持ってきました」

男「……それで?」

女「とは?」

男「武器ってどんなのだ?」

女「レーザー銃です。形はフォースランスをイメージしました。ちなみに伸縮も
  自在で、レーザー銃モードと放電モードがあります」

男「これをたった三日で……?」

女「はい」

男「全く、大した女だよ」
107 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 15:24:27.41 ID:A2neCkAO
鍛冶地主「これは……どうなっている!?」

勇者「あなたの留守中に荒らされたようですね」

鍛冶地主「か、影将軍!」

剣士「これは惨い……。夜盗に入ったんだろうな」

魔法師「身から出た錆とは言え……」

鍛冶地主「これはどういう事だ!」

勇者「何かあったんですか? ……成る程」

僧侶「何があったんだ?」

勇者「恐らくその影将軍という魔族は倒されているね。俺らの出番はなかったわ
   けだ。その証拠に」

剣士「見事に空だな、その金庫」

鍛冶地主「くそっ! あの役立たずめーっ!!」
108 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 15:38:41.06 ID:A2neCkAO
勇者「女さん達は無事かな……」

魔法師「街そのものには被害はないみたいだから大丈夫でしょ」

僧侶「商人はまだ一人も来てなかったみたいだから、きっと部屋か街のどこかで
   ぼーっとしてるよ」

勇者「そっか」

コンコン

勇者「女さん、男さん、いますか?」

……

勇者「あれ?」

剣士「街の方にいるのでは?」

勇者「そうかな?」

コンコン

勇者「女さん? 男さん?」

宿屋「あぁ、そこの部屋の人なら今朝出ていきましたよ」

勇者「何だって?」

魔法師「どこに?」

宿屋「さぁ? 荷物をまとめてましたから、街の外でしょうね。そうそう。こんな
   もの忘れていってましてね。何なんでしょう……」
109 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 15:47:29.78 ID:A2neCkAO
剣士「……何だこれ?」

魔法師「科学とかを使ったものかな?」

僧侶「とするとどうい仕掛けだ?」

勇者「ここを見ろ。三角の所を矢印で刺してあるぞ」

魔法師「ここを押せということかな……?」

勇者「かもしれない。押してみるぞ」

女『……無事に帰ってこれましたか、勇者さん、剣士さん、魔法師さん、僧侶さん?』

勇者「!」

剣士「彼女の声が!」

魔法師「はいっ。無事に帰って来ましたよ! 女さんはどこにいるのですか?」

女『ちなみにこの機械はレコーダーと言って、音を記録するものです。あなた達
  がこれを聞いているのなら、私達は既に旅立っているでしょう』

勇者「……」
110 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 15:57:33.74 ID:A2neCkAO
女『私達は無事、武器を手に入れました。とても強力なものです』

女『その資金を集める際……白状しますが、盗みを働きました。地主の館です』

剣士「何?」

僧侶「じゃあ女さんが魔族を?」

女『勇者さん達は魔族を倒しに言ってたんですね?』

勇者「ああ。だけどもういない」

女『魔族、影将軍と名乗ってましたが、まだ生きているでしょう。ある人が退け
  てくれたので、私は生きてます』

剣士「……」

女『さて、そういった経緯で武器を得た私達は、自分で身を守れるはずです。次
  の目的地は、示して頂いた通り、水の国の沼の街という所に向かってみます』

魔法師「魔導連合本部へ行くんですね?」

女『では、また機会があれば。今までお世話になりました』
111 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 16:10:21.32 ID:A2neCkAO
勇者「そうか……旅立ったか」

僧侶「寂しいか?」

勇者「あのな……なんでそういう事言うかな」

魔法師「向こうも遠慮したのでしょう」

剣士「盗みもあの館なら私は許せる」

勇者「それで良いのかよ」

剣士「あやつは生理的に好かん」

魔法師「うわぁ、キツイね」

勇者「で、俺達はどうしようか」

僧侶「そうだね。結果的に自警団を皆殺ししたから、早く街を出よう」

勇者「成る程、逃げるのか。気が引けるな……」

魔法師「そうは言ってられないよ」

剣士「そうだ。勇者様は根から優し過ぎる」

勇者「……まぁ、みんなが言うならそうしようか。但しもう一度は金山に行くぞ。
   魔族が生きてるなら戻ってるかもしれない」
112 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 16:49:05.68 ID:A2neCkAO
男「やれやれ。俺もいるんだからあまり勝手に行動しないで欲しいな」

女「すみません」

男「まぁ、情熱はわかったが、これからはしっかり言ってくれよ?」

女「わかりましたよー」

男「……道はこれで会ってるのかな?」

女「地図がわからないんですか?」

男「いや。違う世界だからどうも懐疑的になってね」

女「それもそうですが……」

盗賊「どこに行くつもりだ?」

男「……誰だ?」

盗賊「てめえこそ誰だよ」

女「盗賊さん、こんな所で何をしてるんですか」
113 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 16:57:20.81 ID:A2neCkAO
男「へえ。それは女さんを助けて頂いてありがとうございます」

盗賊「この男が旅の道連れね。頼りねえな」

女「教授は信頼出来ますよ。そりゃ運動は苦手ですが」

男「ここでは役に立ちそうにもない」

盗賊「そう落ち込むな。で、これからどこへ?」

女「沼の街です」

盗賊「ってーと、水の国か。ああ、方向はあってるな。だがこの先なげぇぞ?」

男「承知の上だよ」

女「そこらに見逃しがあっても困りますしね」

盗賊「そうか。あと俺も言って良いか?」

女「どうしてです?」

盗賊「仲間の敵討ちだよ」

女「なら街の宿に勇者さんがいますから、その方が会えると思いますよ」

男「俺らは研究者。戦いは極力避けたいからな」
114 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 17:05:06.03 ID:A2neCkAO
盗賊「いや、勇者一行に加わるのは駄目だ」

男「どうしてだ? 彼らは魔王討伐が最終目的だぞ?」

盗賊「俺には正義は合わないって事だ。それよりは自分の為に盗みさえ厭わない
   奴との旅が楽しそうじゃねーか」

男「……悪い虫を付けてきたな?」

女「故意じゃありません」

盗賊「で、どうだ?」

男「盗賊ってのは、もっとこう……はぐれ者って感じなんだが」

盗賊「どういう先入観なんだよ……。むしろ群れるのが好きだ」

女「どうします?」

男「どちらでも」

女「……盗賊さん」

盗賊「何だ?」

女「研究の邪魔だけはしないで下さいよ」
115 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 17:06:38.66 ID:A2neCkAO
とりあえずこの辺りでストップ。
116 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/06(土) 19:22:34.53 ID:W.iGXIQo
大津
117 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 23:04:11.80 ID:A2neCkAO
思ったんだが……エロシーンって必要?
118 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 23:25:15.36 ID:A2neCkAO
影将軍「……魔王様、影将軍でございます」

魔王「よく来た。鍛冶の街周辺の件、出鼻を挫かれたようだが?」

影将軍「……」

魔王「まぁ良い。許そう」

影将軍「ありがとうございます」

魔王「それで、その姿はどうした?」

影将軍「先刻の戦闘で深手を負いまして……」

魔王「それ程の強敵に会ったか」

影将軍「いえっ、これは私めの油断が招いたもの! 慎重にしていたならば」

魔王「言い訳か?」

影将軍「っ」

魔王「……鍛冶の街を放棄したそうだな」

影将軍「そ、それは!」

魔王「その判断に関しては良い。地主が堕落し我々との関係が露呈した今、無闇
   に介入するのは危険だ」

影将軍「……」
119 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 23:34:30.09 ID:A2neCkAO
影将軍「魔王様は何故このような場所まで来られたのです?」

魔王「とは?」

影将軍「魔王様自らこの地に来なくとも、呼ばれれば転移魔法でこちらから参り
    ましたのに」

魔王「自分の目で見たかったのだ。これを、な」

影将軍「これ、とは……この大きな鉄屑の事でしょうか?」

魔王「鉄屑? ならばよく言う“鉄屑”の価値を引き上げねばならぬな」

影将軍「はあ……」

魔王「これは……よくわからん。だが、素晴らしいものだ」

影将軍「何がおっしゃりたいのか私には……」

魔王「あの潰れた部分、あの部分の元の形を想像してみるねだ」

魔王「これは……恐らくは“船”だよ。このような陸地にあると言う事は、空で
   も飛んだのだろうか」
120 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/06(土) 23:47:27.48 ID:A2neCkAO
魔王「国へ持ち帰りたいが、ちと大きすぎるな」

影将軍「分解してはいかがですか?」

魔王「無用心に運ばれるのは気に食わんな」

影将軍「……そうですか」

魔王「影将軍よ。今はどうしている?」

影将軍「は、はい?」

魔王「今はどうしているのか、と聞いておるのだ」

影将軍「女、男、盗賊と言う奴らの行動を見ています」

魔王「そやつらはどういう輩だ?」

影将軍「女という奴は、私の“姿を消す魔法”を見破りました。男という奴は、
    詳細は未だ不明。旅の学者のようです。盗賊という奴は、私に傷を負わ
    せた張本人です」

魔王「ふむ……良し。追跡を許可する。但し、我に反すると判断した場合、即刻
   殺せ。そちらから何もなければ、以上だ」

影将軍「はっ。転移!」スッ

魔王「……実に良い」
121 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/06(土) 23:59:07.92 ID:A2neCkAO
女「……」ムクリ

男「おはよう」

女「おはようございます」

盗賊「よぉ。見た所温室育ちみてえだったが、寝付きも寝起きも良んだな」

男「屋内の仕事も大変って事だ」

盗賊「どうせふかふかのベッドで寝てるくせに」

女「いえ、どちらかと言うと椅子に座ったまま寝る事が多いですね」

男「そもそも徹夜続きなんて日常だ」

盗賊「……逞しいな」

男「女さんは必要なら立ったまま寝られるんだよ?」

女「私の特技みたいに言わないで下さい」

盗賊「何と言うか……すげえな」

女「さて、朝食にしましょう」

男「俺らは食ったぞ」

女「私がまだなんです」
122 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 00:18:09.15 ID:1fSf/cAO
男「えっと……とりあえずここから一番近い所は……」

男「盗賊さん、これなんて書いてある?」

盗賊「てめえ文字も読めねえのか? 学者だろ」

男「異国のね。昨日もこの自動翻訳装置がなければ話も出来ないって言っただろ」

盗賊「そういえばそんな事言ってたっけ……どれどれ」

盗賊「ここは炭坑の町だな。だが沼の街への最短ルートはこっちだ」

女「少し長く歩きますね。ここは?」

盗賊「木炭村。この村がある峠を越えた方が早い」

男「炭坑の町から行くとどうなる?」

盗賊「ここに山があるだろ? とりわけ危険な場所だから迂回しなけりゃなんねえ」

女「詳しいですね」

盗賊「……仲間と色んな所を回ったからな」
123 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 00:27:16.08 ID:1fSf/cAO
今日はこの程度でいいか。

何か反応ないと寂しいぞ?
書いててローテンションだぞ?
124 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 01:18:29.40 ID:kbjIm4Yo
エロシーンは別にいらなくね?
125 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/07(日) 01:26:52.93 ID:bDhlndAo
お、更新されてる。
がんばれー
126 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 01:35:44.26 ID:1fSf/cAO
>>124
では無しの方向でいきますか。
127 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 19:15:59.97 ID:1fSf/cAO
──木炭村

男「中々辛い峠だったな。早く言えよ」

女「地図に等高線がないのは不便ですね。……ふぅ」

盗賊「そんなつれーなら、そのガラクタみたいな荷物を減らすこった」

女「無理です」

男「ああ。ありえんな」

盗賊「……まぁ良いけどよ」

盗賊「どうする? 一泊くらいするか?」

男「日も落ちてきてるし、俺はその方が良いと思うが」

女「宿屋はあるんでしょうか。一見なさそうですが……」

盗賊「宿屋くれぇあるぞ。よく商人が通る場所でもあるからな」

女「ここも知った所のようですね」

盗賊「宿屋の場所がわかるくれぇには、な」
128 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/07(日) 19:32:27.08 ID:1fSf/cAO
宿屋「いらっしゃいませ」

盗賊「部屋をくれ。二つだ」

男「いや、一部屋で良い」

盗賊「はぁ? 女がいるだろ」

女「二部屋だとお金が掛かるんですよね?」

宿屋「はあ、まぁ」

女「でしたら一つで」

盗賊「て、てめぇまで何考えていやがる!?」

女「野宿は一緒だったじゃないですか」

盗賊「それはそうだけどよ……」

女「だから大丈夫ですよ」

盗賊「こいつは勇気がなくても俺はてめぇを襲う事くらい──っ」

男「そんな事になったらお前の命はないと思うよ」ニコニコ

女「その時は正当防衛という事で撃っちゃって良いんですよね?」ニコッ

盗賊「その武器で俺を殺せるとでも?」

女「やってみます?」ニコニコッ

盗賊「……分かった。負けたよ。一部屋だ」

宿屋「か、畏まりましたっ」ガクブル
129 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 19:41:04.75 ID:1fSf/cAO
宿屋「な、何泊なされるご予定でしょうかっ?」

盗賊「どうする?」

男「一晩?」

女「です」

宿屋「え? 一晩だけですか?」

盗賊「何だ、もっと泊まれってか?」

宿屋「い、いえっ、そういう事では!」

盗賊「じゃあ何だよ」

宿屋「か、河の方まで行きましたか?」

盗賊「明日渡るつもりだが」

女「私達が河の方から来たのではないと知っているようですね」

宿屋「は、はい。今、あすこの橋は落ちてまして……」

盗賊「何だと?」

宿屋「どうも、知らなかったようですね……」
130 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 20:03:34.02 ID:1fSf/cAO
盗賊「しっかし……河が渡れないとなるて炭坑の町まで行くしかないか?」

男「結局は遠回りになるのか……」

女「明日、一度河の所まで下りて決めましょう。商人が来れないから宿は空いて
  るとも行ってましたし」

男「建て直しの進行状況によっては何泊かすると言う事か?」

女「はい」

盗賊「金はあるのか?」

女「勇者さん達からもらってたのがまだ少し」

男「結局は世話になってしまってるな」

女「あはは、そうですね」

盗賊「まぁ、てめぇらが持ってなくても俺が持ってるから安心しろ」
131 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 20:25:33.78 ID:1fSf/cAO
盗賊「じゃあ俺は先に寝るぞ? 明日も二半と半時か?」

女「はい」

男「おやすみ」

盗賊「……てめぇらはまだ寝ないのか?」

男「ちょっとやりたい事があるからね」

女「野宿の時はどうも安定してなくて……」

盗賊「そうか。じゃあ先に寝させて貰うぞ」


女「あっ……ダメですよ……。慎重に扱って……」ヒソヒソ

男「わ、分かってるよ」コソコソ

女「見てください。こんなに……」ヒソヒソ

男「これは……凄いな」コソコソ

女「あっ、あぁっ……!」

男「ちょっ、止めっ!」

盗賊「うるせぇ! 寝れねぇだろうが!」

女「すみません。この宝石を解析してたもので」

盗賊「……魔石か?」

女「やっぱりそうでしたか!」

男「いやぁ、でも危なかったな。内部振動が強くなったからてっきり爆発でもす
  ると思ったよ」

女「外殻が丈夫と言う線も──」

盗賊「……寝る」
132 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 20:33:21.99 ID:1fSf/cAO
(翌朝)

女「……」ムクッ

盗賊「おう、漸く起きたか」

女「おはようございます」

盗賊「という訳で、てめぇもそろそろ起きろ!」ゲシゲシ

男「!? 痛いだろ!」

盗賊「女が起きても起きてないてめぇが悪い」

男「……もうそんな時間か」

盗賊「昨日は何時まで起きてた?」

女「四時頃だと思います」

男「つまりは一時頃だ」

盗賊「あまり寝てないじゃないか」

女「解析が行き詰まったんですよ。後は研究所でやらないと……」

盗賊「いや、もっと早く寝ろと言ってんだ」
133 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 21:04:15.39 ID:1fSf/cAO
まずい詰まった。
先の展開考えておく……
134 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/07(日) 21:20:19.86 ID:kbjIm4Yo
展開考えてなかったのかww
135 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/07(日) 21:30:25.81 ID:bDhlndAo
がんばrwwwwwwwwww
136 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/07(日) 22:30:17.87 ID:NV1Qm2SO
がんばれ
137 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 01:56:04.50 ID:n78x66AO
文才とか色々なくて、すみません……。

いくつか展開考えて脳内のシュミレーターに掛けてた。(まさに能無なりの努力←寒い)
結果
A……エロシーン不可避
B……物語終了(BadEnd)
C……問題恐らくなし
D……エロシーン不可避
E……問題恐らく無し
138 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 02:08:07.24 ID:n78x66AO
男「さて、今から河の様子を見に行く訳だけど」

女「どうかしましたか?」

男「もし予定の道のりを変える事になると、どうなるのかと思ってね」

盗賊「ちょい地図出してみろ」

男「ん……」

盗賊「ここと炭坑の町への分かれ道、とりあえずそこまで戻る事になる」

男「それから北上して炭坑の町方面に行く」

盗賊「で、ここからさらに少し北に行くと山があるんだ。今から行く河もこの山
   から流れてきてる」

女「この山の中は危険と言ってましたよね?」

盗賊「あぁ。あの山に入って出て来たものは少ないと聞いている」

男「うわ……」

盗賊「だから迂回してこう東の方からぐるっと……」

女「うわ……」
139 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 02:22:48.70 ID:n78x66AO
──木炭河

男「──さて、大変な道のりになるが、仕方ないか」

盗賊「こりゃ完全に使えないな……」

女「筏か何かで渡れると思ったりしてましたが……谷に流れてるんじゃムリですか」

盗賊「崖の斜面がもう少しくらいなだらかなら行けたかもしれないな」

女「ですが……おかしいですね」

男「お前もそう思うか」

盗賊「何? どうした?」

女「吊橋の支柱しかありません。事故で落ちたのならロープの端くらい残ってい
  ても良いはずでは?」

盗賊「村の連中が片付けたんだろ?」

女「それは確かに一理あります」

男「ここは商人も通るんだったな?」

盗賊「ああ。鍛冶の街を行き来には、ここが近道になる所も多い」

男「宝石だな?」

盗賊「そうだ。俺らも何度か狙った事がある」
140 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 02:31:48.60 ID:n78x66AO
男「盗賊さん、この橋がなければ商人達はどうなる?」

盗賊「そりゃ困るだろうよ」

男「だろ?」

盗賊「当然だ」

女「ですが、木炭村の人達はそれを直そうともしていません」

盗賊「……成る程、確かに変だ。その場凌ぎのものくれぇは作れるはずだ」

女「どうしてでしょうね」

男「あるいは、ただ面倒なだけかもしれないな。はははっ」

盗賊「そんなんで済む問題じゃねぇぞ……」

女「しかし吊橋で良かったですよ。橋の中では簡単に作れます。村に戻って橋を
  渡してもらえるように頼みましょう」

男「賛成だ。俺もあの道のりは気が引けるしな」
141 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 02:52:07.40 ID:n78x66AO
──木炭村

木炭村人A「木炭河の吊橋? 架ける必要はないだろ。誰かがいつか架けるさ」

木炭村人B「そうだな……村長に相談してみないと」

木炭村人C「向こう岸に渡りたいのなら炭坑の町の方から──」

木炭村人D「吊橋ね……自分で架けたらどうだい?」

木炭村人E「すまんすまん! 今は仕事で忙しいんだよ!」

木炭村人F「橋? 今まであるのが不思議だったね。なくなって清々したよ」


盗賊「……どういう事だ?」

男「面倒なのか? 冗談のつもりだったんだけどな……」

女「嫌がってる人も何人かいましたよ」

盗賊「嫌がるとは言っても、あそこ橋は必然だぜ?」

女「……そうですね。村長さんに頼みに行ってみましょう」
142 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 02:57:13.71 ID:n78x66AO
訂正
盗賊「嫌がるとは言っても、あそこ橋は必然だぜ?」

盗賊「嫌がるとは言っても、あそこの橋は必要だぜ?」


酷い間違いをしたもんだ。
143 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 03:07:06.77 ID:n78x66AO
木炭村長「……ふむ。木炭河の吊橋をかけ直してほしいと?」

男「はい」

木炭村長「残念じゃが、それは無理じゃ」

男「何故ですか?」

木炭村長「村の者達がやる気ではなくての。わし一人では無理じゃろう?」

盗賊「それを何とかすんのが村長の役目だろーが! 村を統率出来ねぇで何が村長だ!」

木炭村長「……」

盗賊「おい! 何か答え──」

男「盗賊さん。冷静に」

盗賊「だけどよぉ!」

女「静かにして下さい」

盗賊「……ちっ」

男「ですが盗賊さんの言った事は正論です。そこを何とか」

木炭村長「無理じゃ」

男「……」

木炭村長「……分かってくれ」
144 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 03:17:16.00 ID:n78x66AO
男「どうしても、でしょうか」

木炭村長「……」

男「……そうですか」

木炭村長「どうしてもあすこを渡りたいと言うならば……あなた方自身で架けるが良い」

男「では材料くらいは提供して頂けないでしょうか?」

木炭村長「……すまないな。それも無理じゃ。必要なものは村で買ってくれ」

男「お金が足りない場合は」

木炭村長「諦めるしかないの……残念じゃが」

男「私達三人では不可能な場合は」

木炭村長「諦めるしかないの……残念じゃが」

男「……そうですか」

木炭村長「話はそれだけかの?」

男「はい。失礼しました」

木炭村長「わしもお力になれんで、すまなかったの……」
145 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 03:29:38.21 ID:n78x66AO
宿屋「お帰りなさいませ。どうでしたか?」

盗賊「『どうでしたか?』じゃねーよ! どういうこった!」

宿屋「そ、そうは言われましても……」

男「どうしてこの村の人は、あの橋を架け直さないんですか?」

宿屋「あぁ。それはですね……単に邪魔だからじゃないでしょうか」

男「邪魔?」

宿屋「はい。私もあまり好きではなかったんですよ。景観も損ねますし」

女「そんな良い景色あったかな……」ボソッ

宿屋「そ、それにあの橋は商人も通りますでしょ? だからこの際に新しく丈夫な
   ものを造ろうとしているのではないでしょうか」

女「新しい……丈夫な……」ブツブツ
146 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 03:38:58.38 ID:n78x66AO
宿屋「そ、それで、どうしますか?」

男「何がです?」

宿屋「今日もお泊りに? それともお急ぎのようでしたら、すぐに炭坑の町へ行か
   れる事をお勧めします。完全に暮れるまでには着くでしょうから」

盗賊「そうだな。じゃあ──」

女「もう一泊します」

男「そうだな。自分達でも架けてみようじゃないか」

盗賊「ああ、そうか」

男「すみません。この村の雑貨屋はどこでしょうか?」

女「それと木材屋ですね。……後、武器屋と」

宿屋「武器屋はないんですよ。武器はありませんが、金物は雑貨屋にありますよ」

女「そうなんですか?」

宿屋「はい。えっと、まず雑貨屋ですが──」
147 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 03:43:37.82 ID:n78x66AO
さて、そろそろ寝ます。
眠気で凄く眠い。
148 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 10:28:41.41 ID:8CEMQxQo
おつ
149 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/08(月) 11:13:30.42 ID:dwFsvsco
さっきスレを見つけた
続きが楽しみだから期待してるよ

>>137
このままエロ無し、打ち切り無しの方向でww
150 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:23:20.59 ID:n78x66AO
おはようございます。
さて、また寝るまでゆっくり書きますか。
151 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:26:36.81 ID:8CEMQxQo
今日は続きしないのかね
152 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:34:25.44 ID:n78x66AO
盗賊「さぁ、架けるっつっても、どうするんだ? 出来ても三人じゃ時間が掛かるぜ?」

男「吊橋は完成させなくても良いんだ」

女「その通りです。最悪、私達が渡れれば問題はありません」

盗賊「つまり他の連中はどうでも良いって事か?」

男「だな」

女「はい」

盗賊「……で、具体的には?」

女「この周辺に対岸までの距離程の高さを持つ木はありません。よって、伐採し
  て向こうに丸太を渡す方法は廃除です」

男「盗賊さんなら崖の登り降りは出来るかもしれないが、見た所河の流れは急だ。
  よって向こうまでロープを持って行ってもらう方法は廃除出来る」

盗賊「じゃあ何なら良いんだよ……」
153 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:43:41.97 ID:n78x66AO
盗賊「そういや女、武器屋がどうとか言ってたな?」

女「弓矢なら向こうまでロープを渡せると思ったんですよ」

男「成る程。しかし弓の性能にもよりそうだな」

女「そうなんですよ。でもその弓もないとなりますと……盗賊さん」

盗賊「何だ?」

女「向こう岸まで短剣を投げる事は出来ますか?」

盗賊「いくらなんでもロープを付けては無理だ」

女「いえ、付けるのはロープではなくて……えっと」ゴソゴソ

盗賊「?」

女「これです」

男「ワイヤーも持ってきてたのか」

女「あると便利かなと思いまして」

盗賊「……軽いな」

女「しかも丈夫ですよ?」

盗賊「……これなら、やってみねぇとわかんねぇな」
154 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 21:47:27.38 ID:8CEMQxQo
今さらだけど、レーザー銃作れるぐらい文明発達してたのかww
155 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 22:05:36.01 ID:n78x66AO
男「なら、行ってやってみるしかないか」

盗賊「ちょっと待て! 俺のナイフには糸を通す穴すらないぜ?」

男「作れるぞ、多分」

盗賊「……は?」

女「では後は私達が渡るにはどうすれば良いか、ですが」

男「それなら簡単にロープウェイ式で良いんじゃないか? 木材代も浮く」

女「それだとロープにそれなりの傾斜が必要ですね……近くの木に」

盗賊「ワイヤーはどうした!?」

男「ワイヤーは向こうまでの橋渡し。向こうの支柱一本とこっちの二本支柱に輪
  状に張れば、ロープと交換出来るだろ?」

女「そうなると……アクシデントも考えて、一番最初に対岸に行くのは盗賊さん
  ですね」

盗賊「俺が一番危険な役割!?」
156 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/08(月) 22:22:49.04 ID:n78x66AO
──木炭河

男「何にせよ、まずは対岸まで投げられるかどうかだな」

女「無理ならまた考え直さないといけませんね」

盗賊「それで? この短剣にどうやってそのワイヤーとやらを通す?」

男「貸してみろ」

盗賊「?」

男「女さん、大丈夫と思うか?」

女「測定はしてないので何とも言えませんね。殺傷力くらいはあるように作って
  ますから、失敗すれば……」

男「もしかしたら命懸け、か」

盗賊「てめぇらのその武器で穴が空くのか?」

男「どうだろうね。まぁ、やれば分かるさ。……えっと」

女「操作は合ってます。後は……それですね。そのボタンを押すだけです」

男「そうか」

盗賊「……あれ? 早くやれよ」

男「もうやった。上手く空いたみたいだぞ」
157 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 22:32:13.49 ID:n78x66AO
盗賊「それで、どこを目標に投げれば良い?」

女「ワイヤーが向こうの支柱のどちらかに掛かるようにしてくれれば」

盗賊「分かった。……こんなやりにくい投げ方は初めてだぜ。せめててめぇも右
   に立ってくれねぇか、男?」

男「それだとワイヤーが掛かりにくいのは分かるだろ?」

盗賊「へっ、そうかよ。ただでさえヒモがぶらぶらしてるってのに……」

女「文句を言う前に投げてみてくれませんか?」

盗賊「てめぇら、本当他人に冷てぇよな……」

盗賊「じゃあ行くぞ。フッ!」シュッ

……カーンッ

盗賊「……」

男「惜しいな」

女「もう一回やってみましょう」
158 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 22:42:47.85 ID:n78x66AO
盗賊「……」

男「……」

女「……」

盗賊「これならどうだぁ!」シュッ

……カラッ

盗賊「……ふぅ〜」

男「よし!」

女「十二回目にして成功ですね!」

盗賊「一応聞いとくが……出来ない場合は何回やらせてた?」

男「五十回」
女「百回です」

男「え?」
女「え?」

男「多過ぎないか?」
女「少な過ぎますよ」

男「え?」
女「え?」

盗賊「……てめぇらの発想が怖くなってきたよ」
159 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 22:53:55.93 ID:n78x66AO
女「では日も暮れてきましたし、今日はワイヤーと短剣を回収して帰りましょう」

男「そうだな」

盗賊「おい待て! 回収するのか!?」

女「そうですよ? 盗まれたらこの方法は使えなくなります」

男「ここにきてからワイヤーなんて見たことないから、きっと高値になると思うぞ?」

女「かもしれませんね」

盗賊「だけどこんな所に人なんて来ないだろ。村の連中も橋がない事は知ってる
   んだぜ?」

男「絶対来ないとは言い切れないだろ? それにもし、それが橋を嫌う人なら、必
  ず妨害するはずだ」

盗賊「だがよ、俺がせっかく向こうに投げたのに……」

女「十二回で成功したんです。明日も成功しますよ」ニコッ

盗賊「……」
160 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 23:14:04.43 ID:n78x66AO
──木炭村

男「良かった。日が落ちきる前に帰れたな」

女「ですね」

宿屋「お帰りなさいませ」

男「あの」

宿屋「はい?」

男「雑貨屋と木材屋ってまだ開いてますかね?」

宿屋「んー……多分開いてると思うんですが」

男「そうですか。ありがとうございます」

男「じゃあ今から買い物に行ってみようかと思うけど」

盗賊「明日で良いじゃねぇか」

男「材料は早いめに集めておくのが普通だよ」

女「その方が良いですね。ですが私は少しやりたい事がありますので」

男「ん、何だ?」

女「橋の設計です」

男「何に……そうか、分かった。じゃあ盗賊さん、行きますか」

盗賊「お、おう」
161 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 23:25:39.02 ID:n78x66AO
盗賊「良いのか、置いて来て?」

男「一緒に行動する事を強制してる訳じゃあるまいし」

盗賊「まぁ……そうか」

男「そうだ、盗賊さん。女さんを見ててどう思う?」

盗賊「は? あぁ、そうだな……可愛い女だと思うぞ」

男「え? はははっ、そうじゃなくてだな」

盗賊「?」

男「どんな性格に思えるか、だよ」

盗賊「あ、ああ……そういう意味か。それなら、冷静で、冷酷で……だが熱血な
   感じもするな」

男「それが研究者だからね。だけど、冷酷は違うな」

盗賊「俺に百回ナイフを投げさせようとした女だぞ?」

男「ま、あれはあれだ。女さんはああ見えて、人の為を考えてるんだよ」

盗賊「そうは思えねえんだが……」
162 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 23:37:19.63 ID:n78x66AO
女「……」ブツブツ

女「……」カタタタタタタタ

女「んー」

女「……んー?」

女「商人が通るから……馬車も通るという事で……」ブツブツ

女「耐振性も必要かな」カタタタタタタタ

女「……」カタタタタタタタ

コンコン

女「……」カタタタタタタタ

コンコン!

女「?」カタ……

女「はい?」

「あの、少しよろしいでしょうか?」

女「……えっと」

「入っても?」

女「え……ああ、はい」

女「……あなたでしたか。何でしょうか?」
163 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 23:50:55.31 ID:n78x66AO
男「いや、盗賊さんがいなかったら危うく買えなかったね」

盗賊「全くだ。だが、木材は本当にいらないのか?」

男「あったら便利かな、程度のものだったから」

盗賊「そうか。てっきり店が開いてなかったから意地を張ったのかと思ったぜ」

男「そんな必要はないだろ……」

盗賊「因み長さが足りないって事は」

男「ない」

盗賊「言い切りやがった……」

男「むしろ余分に買ってるはずだ」

盗賊「そうか」

男「ふーっ、ただいま。女さん、設計の調子は……あれ?」

盗賊「いねぇな」

男「パソコンをつけっぱなしにしてか?」
164 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/08(月) 23:58:54.12 ID:n78x66AO
宿屋「はい? お連れの方ですか?」

男「はい」

宿屋「女性の方ですよね?」

男「はい」

宿屋「その方でしたら先程出て行かれましたよ?」

男「どこへ!?」

宿屋「さ、さぁ、私には分かりませんが……そうそう伝言を頼まれています」

男「どんな?」

宿屋「少し用事が出来たから、先に寝ておいて欲しい。帰るのは遅くなるから。と」

男「本当に行き先は聞いてないんですね?」

宿屋「はい」

男「そうですか。失礼しました」

宿屋「帰って来たら、あなた方が心配していたとお伝えしておきます」

男「はは、そこまではいいですよ」
165 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 00:07:05.57 ID:pkclksAO
盗賊「どうだった?」

男「さっき出掛けたってさ」

盗賊「どこへ」

男「それは分からなかった。用事とは言ってたらしいけど」

盗賊「どういう事だ?」

男「俺に聞くな」

盗賊「だよな」

男「帰りは遅くなるから先に寝ておいても良い、だってさ」

盗賊「女がそう言ってたって?」

男「らしい」

盗賊「そうか」

男「全く……パソコンもつけっぱなしで何の用だか」

盗賊「まぁ良いんじゃないか? てめぇらの武器は持って行ってるみてぇだし」

男「そうだな。危険はないだろう」

男「……この設計データは保存……ここで良いか。電源は切っておかないとな」
166 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 00:15:15.95 ID:pkclksAO
ではこのくらいにして、寝ます。
おやすみー。

>>154
異世界に行く船が作れるんだから、レーザー銃くらい作れます! きっと!
167 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 10:57:52.72 ID:NHkFN6SO
読んでるから頑張ってくれ
168 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 21:38:43.36 ID:pkclksAO
おはよう。
眠気を覚ましたら書く。
169 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 22:01:34.98 ID:pkclksAO
女「……」

女「……?」

ヒソヒソ……
  ヒソヒソ……

女「……! 私一体……っ!?」ズキッ

「……起きた」

「……起きたよ」

「大丈夫……なの?」

女「あれ……ここは……?」

「大丈夫?」

女「え? あ……はい。少し頭痛はしますが大した事はないみたいです」

女「……あなたは? ここはどこですか?」

木炭村の娘「私は木炭村の娘よ。ここは……見ての通り洞窟で」

女「場所は分からないんですか?」

木炭村の娘「はい……すみません」

木炭村の娘「だけど河の流れが聞こえるから、木炭河の近くだと思うわ」

女「……そうですか」
170 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 22:15:40.18 ID:pkclksAO
女「私……いえ、私達がどうしてこうやって牢に入れられてるか、分かりますか?」

木炭村の娘「ええ」

女「教えてくれますか?」

木炭村の娘「そうね……。あなたは旅人かしら?」

女「そんな所です。水の国へ行く途中なんですよ。あっ、私は女って言います」

木炭村の娘「女さん、か……あなたは、運が悪かったのね」

女「どういう事です?」

木炭村の娘「ここに集められた女達は、あの魔物に食べられてしまう……運命に……」

女「そうですか……困りましたね」

木炭村の娘「あまり困ってない口ぶりですね。何か策があるんですか?」

女「本当に困ってますよ。だけどその魔物も頭が良いですね」

木炭村の娘「……はい?」

女「あそこに色々積まれてますね。私の武器もあります」

木炭村の娘「あの……鉄の棒きれがですか?」

女「そうですよ」
171 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 22:28:14.55 ID:pkclksAO
女「……よく見ると」

木炭村の娘「?」

女「女の人ばかりですね」

木炭村の娘「ええ。魔物は若い人の子宮を好んで食べるの」

女「子宮、ですか」

木炭村の娘「二十歳より小さい村の女性は、みんな連れて来られました。そして、
        もう九人もっ……!」

女「二十歳以下!? あなた、何歳ですか?」

木炭村の娘「十六だけど……」

女「あ……そうだったんですか」

女「これは喜んで良いんでしょうか……?」

木炭村の娘「?」

女「私、二十歳は過ぎてます」

木炭村の娘「あ……わ、私にも若く見えたし」

女「でもそのせいで捕まりましたし」

木炭村の娘「……複雑ね」

女「複雑です」
172 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 22:39:17.65 ID:pkclksAO
男「……おかしい」

盗賊「帰りが遅くなるにしても変だぜ。もう朝だぞ?」

男「そうだな……宿屋の人に聞いてみよう」


宿屋「お連れの方ですか?」

男「はい」

盗賊「帰ってきてねぇのか?」

宿屋「いえ。一度帰って来られましたよ」

男「いつですか?」

盗賊「なんで帰ってきたのにいねぇんだ?」

宿屋「深夜ですからね……時間は半時くらいでしょうか」

宿屋「それから炭坑の町へ向かわれました。あなた達には、後は一人で旅をする
   から、と伝えるようにと」

盗賊「……本当かよ」

宿屋「私にはそのように言われましたが」

男「そうですか……」
173 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 23:24:16.30 ID:pkclksAO
男「って、んな訳あるかぁっ!」

宿屋「!?」ビクッ

宿屋「で、ですがお客様、私はこの耳でしっかり」

男「嘘なのは分かってる」

宿屋「で、ですが」

男「女さんが自分の荷物、とりわけパソコンを置いたまま出ていく訳がない。あ
  れには大事なデータが山程入ってるんだ!」

宿屋「お客様、落ちついて──!」

男「死にたくなけりゃ教えろ。教えたら落ち着く。落ち着いたら死なずに済む」

宿屋「お客様、私は」

盗賊「本当の事を言った方が良い。こいつがてめぇに向けてるやつは、鉄も楽々
   と貫いちまう」

宿屋「ひぇ!?」
174 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 23:30:59.79 ID:qh5Ac8Eo
支援
175 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 23:34:46.70 ID:pkclksAO
男「それで? 女さんはどこに?」

宿屋「わ、私は仕方なくっ」

男「それは後で良い。どこだ!」

宿屋「も……木炭河の吊ばっ!? い、ぎっ……ぐぇぇ……!」

男「!?」

盗賊「どうした! 木炭河のどの辺りだ!」

宿屋「づり……ば……クェーッ!」

盗賊「男、危ねぇ!」

男「っ!」

宿屋「クルルルル……」

男「ど、どうしたんだ?」

盗賊「分からねぇ。だが、もう一度襲ってくるつもりだぜ?」

宿屋「クルェーッ!」

男「っ」

宿屋「……クル……ェェ……」

宿屋「……」

盗賊「……殺したのか?」

男「それが効率的だと思った」

盗賊「相手は素手だったぜ?」

男「……ずっと素手の確証はないよ」
176 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/09(火) 23:46:46.81 ID:pkclksAO
「あらら、殺しちゃったんだ」

盗賊「誰だ!」

「僕かい? それより君達こそ何者だい? その武器、凄いね」

男「お前か? 女さんを攫ったのは」

「攫うなんて人聞きの悪い。この村の人達にもらったんだよ」

男「女さんはどこだ?」

「君は誰だ?」

男「こっちが質問してるんだが」

「こっちも質問している」

盗賊「てめぇっ、ふざけやがって!」シュッ

「ナイフなんて僕には効かないよ」スゥ……

盗賊「通り抜けた!?」

「それで、君は誰だい? 何者だい?」

男「男。教授をしている」

亡霊魔法師「教授? 聞いたことない職業だなあ。僕は亡霊魔法師。魔法使いだよ」

男「女さんはどこだ」

亡霊魔法師「秘密、ひ・み・つ。僕に追いつけたら教えてあげる」
177 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/09(火) 23:54:55.29 ID:pkclksAO
男「俺はお前の質問に答えた。だから俺の質問に答えるのが常識だろ」

亡霊魔法師「だから追いつけたら教えると言ったじゃないか」

亡霊魔法師「もっとも──」パチンッ

「グルァアーッ!!」

盗賊「!!」

男「村からだ!」

亡霊魔法師「僕を見つけた所が、そこなんだけどね……」スゥ……

盗賊「逃がすか!」シュッ

カッ……

盗賊「くそ! 今度は完全に消えやがった!」

男「ヒントがないわけじゃない! 木炭河の吊橋の所までいこう!」

盗賊「分かっ──」

「クルェーッ!」ドンッドンッ

「クルァッー!!」ドンッドンッ

盗賊「な、何だぁ!?」
178 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 00:06:19.38 ID:l3YC.AAO
「クルァッー!」ドンッドンッ

「クェエーッ!」ドンッギシッ

「クルェッ!!」ギシッミシッ

バキッ

「クルルルル……」

「クルルルル……」

盗賊「こいつらは……」

男「村人……だな。今度は素手でやってくれそうにないぞ?」

「クルルルル……ル……ルァーッ!」

盗賊「ちっ」シュッ

「グァ!?」

盗賊「やるしかねぇ!」

男「人殺しは慣れてないんだが……さっきのでも気分が悪い」

盗賊「それでもやれ!」

男「……分かってるよ」
179 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 00:16:34.61 ID:l3YC.AAO
亡霊魔法師「……」スゥ

女「!」

木炭村の娘「あ、あいつよ……あいつが……」

女「……幽霊みたいに見えますが」

木炭村の娘「ええ、槍も剣も効かなかったんです」

女「試したんですね?」

木炭村の娘「はい。村に……あいつが初めて現れた時に……」

女「どうやら、本気で困ってきましたね」

亡霊魔法師「……」ゴソゴソ

亡霊魔法師「あったあった。あの人が使っていたのと同じだ!」

女「私のフォースランス……!」

亡霊魔法師「ん? あぁそうそう。昨晩君が来た時にもらったねえ」

女「あげてません」
180 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 00:26:23.89 ID:l3YC.AAO
亡霊魔法師「それで? これは何なんだい? フォースランスって?」

女「教える義理はありませんね」

亡霊魔法師「そっかぁ。じゃあ良い事教えてあげるから、教えてよ?」

女「……何ですか」

亡霊魔法師「今君の仲間が君を探してるよ」

女「男さんと盗賊さんですか!?」

亡霊魔法師「盗賊って名前は聞かなかったけど、そんな名前だったねえ」

亡霊魔法師「まぁ、僕が魔物化させた村人達に殺されるんだけどねえ!」

女「な……」

木炭村の娘「そんなっ……話が違っ……」

亡霊魔法師「ハハハッ、話なんて最初からなかったのさ」
181 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 00:32:35.93 ID:l3YC.AAO
木炭村の娘「そんな……お父ちゃん……お母ちゃん……」

女「あの二人は死なないです。そんな弱くありません」

亡霊魔法師「……そっかぁ。確かに生きて来られたら嫌だなあ。楽しくない」

亡霊魔法師「そうだ。来てしまった時の為に、君を早めに食べてしまおう」

女「なっ……!」

亡霊魔法師「ほら、こっちに来てよ。牢から出してあげるから」

女「い、嫌ですっ」

亡霊魔法師「そうか……ねぇ、みんな。この人自己中心的だと思わないかい?」

木炭村の娘「!?」

「え?」

「どういう……」
182 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 00:38:24.53 ID:zwbTq2Io
クルァーッ!
183 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 00:41:53.11 ID:l3YC.AAO
ザワ……
  ザワ……

亡霊魔法師「この人……ううん、この人達が村に来なかったら、君達の家族や友
        達が魔物になる事はなかったんだよ?」

女「それは、あなたがしたんでしょう!」

木炭村の娘「そ、そうよ!」

亡霊魔法師「僕はそんな事したくなかった。でも仕方なかったんだよ……僕の命
        も危険だったからさ」

亡霊魔法師「君達は家族や友達くらいは生きてて欲しいと思うよね?」

「そりゃあ……」

「当たり前よね……」

ザワ……
  ザワ……

亡霊魔法師「だからこの騒動を起こしたその女達が死んだら、君達の家族や友達
        も人間に戻してあげる。早くしないと、その女の仲間にみんな
        殺されちゃうよ?」ニタァ

「そ、そんな!」

「嫌っ、そんなの嫌ぁ!」
184 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 00:53:08.93 ID:l3YC.AAO
亡霊魔法師「僕はこう思うんだ。今も君達の家族や友達を殺してるやつが許せな
        い。僕はそこまでする気はなかったのに!」

「そ、そうよ! 許せない!」

亡霊魔法師「だからもしそいつらが来たら、絶望をもって償うべきと思うんだ」

ザワ……
  ザワ……

亡霊魔法師「その女を連れて来るんだ! そいつらが来た時、
        仲間のその女が死んでいると知れば、さぞ絶望するだろう!」

「そいつらみんな死ななきゃ無理なんでしょ?」

「だったら今助ける必要ないよね……ふふふふ……」

「あははっ、これでお父さんもお母さんも助かるんだぁ!」

女「ちょっみなさん! 目を覚まして下さい!」

木炭村の娘「ごめんなさい。でも、家族と……村の為……」

女「あ、あなたまで!」

「こいつ抵抗するよ?」

「私の村を壊しておいてっ!」

女「みなさん目を覚まし──きゃぁっ! だ、誰か!!」
185 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 01:01:49.05 ID:l3YC.AAO
「グェェッ!」

「ギャェーッ!?」

「グァー!?」

盗賊「ちっ。キリがねぇ」

男「河に着く所か村すら出れないじゃないか!」

盗賊「くそっ、邪魔だ!」

「グアァッー!?」

男「もっと範囲攻撃が出来る武器があれば……」

「ッ──!?」

盗賊「そっちは瞬殺だろ。まだマシだ!」

男「でもな──」

「ッ──!」

「グルェッ!?」

盗賊「はぁ……はぁ……」

男「まだ通してくれないか……」

「クルルルル……」

「クルルルル……」

男「オェエエーッ」

盗賊「おい! 吐くんじゃねぇ!」

男「すまん……死体を見るのに限界が来かけてる……」
186 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 01:04:07.76 ID:l3YC.AAO
今日はこの辺りで。

さて、寝ながら明日からの展開考えるか。
187 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 01:10:04.32 ID:zwbTq2Io
鬱展開まっしぐらだな
188 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 22:12:46.16 ID:l3YC.AAO
おはようございます。
しかし眠いです。
189 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 22:25:38.05 ID:l3YC.AAO
女「い、嫌っ! 放してっ!」

亡霊魔法師「やっぱり若い女は良い。美味しそうだなあ」

女「嫌っ……こんな所でなんて……」

ザワ……
  ザワ……

「やった……これで村が元に……」

「私達のせいじゃない……私達の……。あなた達のせいなんだからっ……」

木炭村の娘「……」

亡霊魔法師「じゃあゆっくり味わって食べてあげるからね。心配する事ないよ。
        君は僕と同化するんだ」

女「いやーっ!!」

タタタッ! ザシュッ!

亡霊魔法師「……な……んだ……?」

?「……」

亡霊魔法師「ぎ、ギャァーッ! 腕がっ、僕の腕がぁっ!!」
190 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 22:36:04.97 ID:l3YC.AAO
?「……」

女「あ……あぁ……?」

亡霊魔法師「き、君は誰だぁ……どうしてここにいるぅ……!」

?「……!」ブォン

ザシュッ

亡霊魔法師「うがぁーっ!? 足がっ、足がぁ!」

亡霊魔法師「どう……やったぁ……。何故僕を斬れるぅ……!」

?「……」

亡霊魔法師「う……うぅ……! 死ねぇ! 呪縛──」

?「ふんっ!」

亡霊魔法師「──っ!?」

亡霊魔法師「あ……が……」スゥ……

?「消えろ……」

亡霊魔法師「負ける……訳……」スゥ……

……

女「……消えた?」

?「……」
191 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 22:43:07.53 ID:l3YC.AAO
盗賊「こうなりゃ皆殺しを覚悟した方が良さそうだ」

男「かもしれないな。……ん? 待て」

盗賊「あ?」

「クル……」バタッ

「クルル……ル……」ドサッ

バタバタバタッ

盗賊「何だ? 急に動かなくなったぜ?」

男「どういう事なんだ?」

盗賊「どういう事かはしらねぇが、これはチャンスだ! 急ぐぞ!」

男「あ、ああ!」


──木炭河

男「この辺りと思うんだが……」

盗賊「おい! 草むらに梯子があった!」

男「となると……崖の下か!」
192 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 22:51:27.48 ID:l3YC.AAO
ザワ……
  ザワ……

「何が起こったの?」

「魔物が……消えた……」

「やった! 私達助かるのね!」

女「あ……の……」

?「……」

女「助けてくれたんですか?」

?「運が良かった……たまたま……だ」

「ちょっと待って! 魔物がいないんじゃ村の人が魔物のままっ……」

「そんな!」

「村を返せ!」
「村を返せ!」
「村を返せ!」

?「黙れ……!」

?「人を魔物にする魔法……知っている……」

「本当!?」

「じゃ、じゃあ大丈夫なんだ!」

?「だが……死ぬまで人に……戻らない……」

?「だが……術者が死んだ今……みんな死んだ……。みんな……人に戻った……」
193 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 23:00:31.37 ID:l3YC.AAO
木炭村の娘「そんな……っ」

?「村に戻れば……分かる……」

ザッ

?「!」シャキッ

男「!」

盗賊「! てめぇ、あの亡霊の仲間か!?」

?「……違う」

女「男さん、盗賊さん! 生きてたんですね!」

男「女さんは大丈夫だった?」

女「この人が助けてくれたんです」

男「そうだったのか……」

男「仲間を助けて下さり、ありがとうございました」

?「偶然だ……」

男「俺は男。こちらは仲間の女さんと盗賊さん。あなたは?」

戦士「……戦士」

男「戦士さんですか。ありがとうございました」

戦士「……ここを出よう」
194 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/10(水) 23:11:45.17 ID:l3YC.AAO
──木炭村

「な、なんて事……」

「こんなの……夢よ……」

「お父ちゃん、目を開けてよ! お父ちゃん!」

男「……」

女「何人……殺しましたか?」

男「覚えてないよ」

盗賊「ああ。こっちも必死だったからな」

盗賊「だがどうやって奴を倒した? 俺のナイフは効かなかったのに」

戦士「この剣……特別……。魔法が掛かってる……」

盗賊「魔剣ってやつか」

女「もらう事は出来ませんか?」

戦士「……無理だ……」

女「ですよね」

木炭村の娘「あなた達がやったんだ……」

男「……」

女「あ……」

盗賊「うるせぇ。俺達だって」

木炭村の娘「あなた達が来なけりゃ私の村が、家族が──」

戦士「黙れ……!」

木炭村の娘「っ!」ビクッ

戦士「死体を……集めろ……。村の広場に……集めろ……」
195 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 23:20:03.37 ID:l3YC.AAO
木炭村の娘「こ、これで全部よ」

戦士「……よし」

木炭村の娘「何をするつもりよ」

戦士「火葬……集めると手間が省ける……」

木炭村の娘「何だっ──!」

戦士「……冗談……」

木炭村の娘「っ」

戦士「三人……手伝え……。これ……広場の四方に置く……。北……やる……」

盗賊「何だこれ?」

戦士「儀式……必要……」

男「儀式?」

戦士「……」

女「じゃあ私は東に置きます」

男「俺は西」

盗賊「ちっ。俺は南にだな」

戦士「……助かる」
196 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 23:30:47.78 ID:l3YC.AAO
男「設置した!」

女「こっちも出来ました!」

盗賊「こっちも良いぜ!」

戦士「儀式……始める……」

戦士「冥府開門……!」

キーン……

男「何だ……?」

戦士「展開……!」

盗賊「広場に魔法陣!? あいつ……」

戦士「蘇生法……!」

……

ザワ……
  ザワ……

「あれ……どうして……」

「なんで俺広場にいるんだ?」

「……?」

男「生き返った!?」

女「そんな……信じられない……」

「お母ちゃん!」

「お前! どうしてここに……」

「あの人が……助けてくれたんだよ!」

戦士「……」

女「……奇跡ですね」

男「ああ。こんな事が本当に出来るなんて……」
197 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 23:38:34.75 ID:l3YC.AAO
盗賊「蘇生魔法なんて上級のもの、魔法使いでもないくせにどうして使える?」

戦士「俺は……旅の傭兵……。色々知ってる……色々使える……」

盗賊「とんだ化け物もいたもんだ」

女「さっきのどうやったんですか?」

男「俺も気になります」

戦士「身体を治して……魂を戻した……」

女「そうじゃなくてですね……!」

戦士「……?」

男「よそう。俺らとは考え方が違うのかもしれない」

女「……かもしれませんね」

戦士「……?」

盗賊「気にするな。こういう連中なんだよ」
198 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/10(水) 23:49:16.29 ID:l3YC.AAO
盗賊「ふー、やれやれ。大変な目にあったぜ。で、どうする?」

女「すぐに発ちます。いても歓迎はされそうにありませんし」

男「居心地も悪いしな。罪悪感だらけだ」

盗賊「そんなの、みんな生き返ったんだから良いじゃねぇか」

男「俺らはデリケートなんだよ」

女「そういえば戦士さんはどうなりました?」

盗賊「村長に礼を言われてたぜ。きっと今日は宴でもするつもりだ」

男「主役だからな。彼のお陰で村も救われた訳だし」

女「村を壊した上に自滅しかけた私達とは違いますね」

盗賊「……そうだな」

男「……」

女「……盗賊さん」

盗賊「?」

女「文字は書けますよね?」
199 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 00:00:23.88 ID:O6qOFIAO
宿屋「お客様、先日は脅されていたとは言え、すみま……あれ?」

宿屋「いない……」

宿屋「もう出て行ってしまったのかね」

宿屋「村の娘達も責めたと聞いて、謝罪しようと思ったのに……言いそびれたか」

宿屋「……ん? 何だ、この紙は?」

宿屋「図面か? 裏にも何か書いてあるみたいだが」

『これは橋の設計図です。商人の馬車による揺れにも強く、かなりの重さにも耐
えられる丈夫な構造にしてあります。良ければ、使って下さい。村の一件につい
ての、せめてものお詫びとしてこれを置いて行きます。ご迷
惑を掛けてすみませんでした』

宿屋「謝るのはこちらですよ……巻き込んだりして……」

宿屋「橋の……設計図か……」

宿屋「そうだな。もうあいつもいないし、架けられるな」
200 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 00:22:05.27 ID:O6qOFIAO
──木炭河

盗賊「お、おい……これで本当に大丈夫なんだろうな?」

男「さぁ」

女「やってみないと分かりません」

盗賊「何だと?」

男「ちなみにロープが弱かったら切れて河に落ちる」

女「向こうで支えてる支柱の差し込みが甘くても河に落ちます」

盗賊「くそ……脅すなよ……」

盗賊「じゃ、じゃあ先に渡るぜ?」

男「渡れたらな」

女「渡れるでしょうか」

盗賊「こいつら……」

シュルルルル……

男「……渡れたな」

女「安全みたいですね。では行きましょう」

戦士「待て……」
201 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 00:29:57.81 ID:O6qOFIAO
男「あなたは」

女「戦士さんじゃないですか。何か用ですか?」

戦士「これを……」

男「これは……金?」

戦士「お前達に……やる……。村からの……謝礼だ……」

男「謝礼って、戦士さんにでしょう?」

女「そうですよ。受け取れません! 私達は迷惑しか掛けてませんでしたし……」

戦士「俺……依頼でしか……金を受け取らない……」

戦士「……設計図。村の人……感謝する……」

女「あんなので私達のやった事は帳消しにすら出来ません」

戦士「……そうか……」

ガシャンッ

戦士「なら……ここに捨てておく……。旅に必要なら……拾え……」

戦士「……さらば」

男「……」

女「……」
202 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 00:50:44.44 ID:O6qOFIAO
男「よっ……と」

女「これでみんな無事に渡れましたね」

盗賊「あいつと何話してたんだ?」

男「あぁ……お金もらった」

女「結局もらってしまいましたが……良いんでしょうか」

男「本当に捨てるつもりだったみたいだからな……」

盗賊「それで? どのくらい入ってるんだ?」

男「自分で見ろ」

盗賊「どれどれ……。こりゃあ……すげぇ……。暫く遊んで暮らせるぜ」

女「そうなんですか? ですがそんな暇はありませんよ」

男「その通り。余ったら研究費に使うしな」

盗賊「あぁ……てめぇらはそういうやつらだったな」
203 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 00:51:57.87 ID:O6qOFIAO
では今回はこの辺りで。
おやすみー。
204 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 02:36:46.49 ID:v1fcYnco
205 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 04:06:40.87 ID:O6qOFIAO
と思わせてまだ少し書く!
つい目を覚ましてしまった訳じゃないんだからなぁ!!
206 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 04:16:05.24 ID:O6qOFIAO
──関所(石の国〜水の国)

盗賊「ここが関所だな」

女「漸く水の国ですか。長かったですね」

男「どこかで車を作った方が早かったんじゃないかと思うくらいだな」

女「教授、ここにはガソリンがありませんよ」

男「電気か水素燃料にすれば良い話だろ」

女「おお、そうでしたね」

男「本気で思い付かなかったのか?」

女「いえ。ただガソリンで述べた方がここの科学文明の低さが理解出来ると思いまして」

男「おお、そうか」

女「そうですよ」

盗賊「てめぇら」

男「ん?」

女「はい?」

盗賊「馬を買うって発想はねぇのか……」

女「食料なら足りてますよ?」

男「研究の足しにならないだろ?」

盗賊「……」
207 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 04:29:47.52 ID:O6qOFIAO
ポツ……ポツ……

女「あれ?」

男「……雨、とうとう降って来たな」

盗賊「関所の屋根で雨宿りするぞ!」

女「ですね」

男「暫く足止めかな」

女「仕方ないですよ」


ザーッ

男「ふぅっ、何とか間に合った」

盗賊「強く降ってきたな……」

関番「あの」

女「はい?」

関番「通るんですか? 通らないんですか?」

男「通ります。雨宿りはしても良いですか?」

関番「ああ、そのくらいなら良いですよ。他の人もしているでしょう?」

男「この中に雨に打たれて道行くのが好きな人はいないようですね」

関番「でもね、たまにいますよ。別に急いでる訳じゃなさそうなのに雨の中馬を
   進める人」

男「俺だと風邪を引きそうですね」

関番「ええ。止めておいた方が良いですよ」
208 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 04:40:21.77 ID:O6qOFIAO
関番「では荷物検査をしますので、全部見せて下さい」

女「……全部ですか?」

関番「はい。やましいものがなければ出せるはずですよ?」

盗賊「俺の持ち物はこれだな。ちなみに金は、財布を持つのは俺だが、紐を持つ
   のはこいつらだ。酷いと思わねぇか?」

関番「ははっ、大変ですね」

関番「短剣にパン、干し肉、水筒、毛布……」

関番「短剣がありますが、職業は何ですか?」

盗賊「盗賊だ」

関番「な……本当ですか!?」

盗賊「と言っても今は賊仲間もいねぇ。一時足洗って、専らこいつらの護衛だ」

男「勝手に付いてきてるんだろ」

女「護衛は特に必要じゃありませんが」

盗賊「てめぇら……」

関番「はは……では次」
209 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 04:54:05.26 ID:O6qOFIAO
関番「まず、あなた達のその頭に付けているものは何ですか?」

女「自動翻訳装置です」

関番「……はい?」

女「私達はあなた達の言葉が分からないので、この装置に頼っているんです。あ
  なたが発した言葉をこの耳の所のがキャッチし、私達の言葉に変換して鼓膜
  へ発します。私達の発した言葉をこの口の前のがキャッチし、あなた達の言
  葉に変換して周囲に発します」

関番「は、はあ……。ではその腰に帯びた短い棒は?」

男「これは武器です」

関番「武器? そうは見えませんが」

男「通称フォースランス。詳しくは高エネルギーレーザー・高電圧放出器」

男「伸縮も自在です」カシャンッカシャンッ

関番「お、おぉっ!」

関番「では鞄の中身を……何です、これは?」

女「これはパソコンです。そしてこれは暗視スコープ、ワイヤーに小型放射能計
  測器、ハンディダイナモ。それで──」

盗賊「長引きそうだな……」
210 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 05:05:47.29 ID:O6qOFIAO
関番「……ん。これは何ですか?」

女「あ、あっ、それはっ……!」

関番「……魔石、ですね。これらは一般には高価なもののはずですよ」

男「そうなんですか? 一般にはとはどういう事ですか?」

関番「魔石は本来、魔法使いの道具です。従って、魔法使い及びその才能を持つ
   者には安く売られるのですよ」

関番「そんなのも知らないと言う事は、買った訳ではなさそうですね。魔法を使
   えるようにも見えませんし」

女「それはですね」

関番「それは……何ですか?」

女「貰ったんです」

関番「誰にですか?」

女「プライバシーの侵害です」

関番「ぷ、プライバシー?」

女「極めて個人的な情報なので教える事が出来ません」

関番「まぁ……良いですよ。本当に貰ったんですね?」

女「はい」
211 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 05:14:32.05 ID:O6qOFIAO
関番「しかし魔法使いでもないのに魔石を持っているなんて変わってますね」

男「そうですか?」

関番「ええ。宝石として身に付けるなら、普通のものもあるはずですし、第一身
   に付けようともしていませんしね」

関番「宝石商にしては数が少ないですし、歩きと言うのも変です。職業は?」

男「教授──学者です」

女「技術者です」

関番「学者さんでしたか。魔法の研究ですか?」

男「はい」

関番「成る程、合点がいきました。では合計の関税は金貨二枚と銀貨三枚ですね」

盗賊「お、おい。多過ぎねぇか?」

関番「魔石と奇怪な物の分が大きかったですね」
212 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 05:51:54.51 ID:O6qOFIAO
ザザーッ

盗賊「やれやれ。とんだ散財だ」

女「まだあるんですから、良いじゃないですか」

盗賊「そうだけどよ……」

男「雨はいつ頃止むのかな」

盗賊「知るか。空に聞きやがれ」

女「早く止むと良いですね」

商人「今日一日は諦めた方が良いですよ」

盗賊「あ?」

商人「ああ。私は商人。拙い旅商人です」

男「男です。学者です」

女「技術者の女です」

盗賊「盗賊。盗賊だ」

商人「学者に技術者に盗賊。これは変わった組み合わせですね」

男「色々ありましてね。しかし今日は止みそうもありませんか……」

商人「今毛皮を運んでいるから、万一痛んでしまったら私も痛んでしまいますよ」
213 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 06:03:05.62 ID:O6qOFIAO
商人「あなた方はどちらへ行くご予定ですか?」

男「沼の街です」

商人「沼の街と言いますと、魔法の中心都市じゃないですか」

男「そうなんですか?」

商人「ご存知ないのですか? てっきり私は魔法学の先生か何かかと……」

男「魔法を学びに行くのは確かですが、俺らは魔導連合の本部があると聞いただけなので」

商人「勿体ない! あそこの国立図書館は大きいですよ!」

女「図書館ですか?」ピクッ

商人「ええ。それに名門の魔法学校が五つ、あの都市に集中しているんです」

男「それは興味深いですね」

女「あ……でも文字が読めない……」ポツリ
214 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 22:38:20.51 ID:O6qOFIAO
商人「へぇ。異世界から?」

男「はい」

商人「俄かに信じられませんな。という事は、その顔や腰に付いているのは異世
   界の道具ですか?」

男「そうです」

商人「へぇ」

盗賊「なかなか止まねぇな」

女「そうですね」ゴソゴソ

盗賊「何してんだ?」

女「パソコンの充電が終わったみたいなので、ダイナモにエネルギーを充電しよ
  うと思いまして」

盗賊「また回すのか?」

女「ハンディダイナモですからね」

男「ソーラーダイナモを持ってきた方が良かったかもしれないな」

女「いえ。こっちでも良かったですよ」
215 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/11(木) 23:20:02.93 ID:v1fcYnco
支援
216 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 02:14:00.33 ID:gR8evkAO
商人「そういえばあなた達、沼の街まで歩いていくつもりですか?」

盗賊「馬がなけりゃそうなるだろ」

商人「かなり距離がありますよ?」

女「覚悟はしてます」

商人「……そうですね。良ければ私の馬車に乗って行きませんか?」

男「良いんですか?」

商人「三人なら乗せられますし、異世界から来た人なんてそうそう会えるものじ
   ゃありませんからね」

女「簡単に信じるんですね」

商人「あなた達が嘘をついていたとしても、私をあなた達のいたという世界の話
   が聞ければ良いんですよ。それこそ、作り話でもね。孤独な旅商人ですか
   ら、そういう話題があるだけで楽しいんですよ。商会に寄った時の話のネ
   タにもなりますしね」

盗賊「金を取るんじゃねぇか?」

商人「だからその代金は、この自称異世界人の二人の話に掛かってますよ」

男「事実だから大丈夫だな」

女「ですね」
217 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 02:31:16.57 ID:gR8evkAO
商人「ちなみに水の街で数日過ごす予定ですから、お急ぎの場合はそこまでですが」

盗賊「いや、十分だ。そこまで行くともう近いしな」

男「水の街って?」

盗賊「水の国の首都だ。沼の街より三つ南の都市だな」

商人「水の街は政治都市。商会も集中しているんです。高級衣類の製造もそこで
   行われていますし」

男「それで水の街に行くんですね」

商人「質の良いミケアナイタチの毛皮が運よく手に入りましてね」

盗賊「白の方が高いんじゃないか?」

商人「今の水の国の貴族の若いのの流行りは三毛なんですよ。商人は流行りにも敏
  感ならなければいけません」

盗賊「流行りねぇ……」

商人「ですが、あなたは物の価値が分かる方のようですね」

盗賊「俺は盗賊だ。そのくれぇは基本だぜ」
218 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 02:51:59.43 ID:gR8evkAO
(翌朝)

男「よし、すっかり晴れたな」

商人「先程晴れた所ですよ」

男「そうなんですか?」

商人「ええ」

盗賊「俺も見てたから間違いねぇ」

男「二人とも早起きですね」

盗賊「こいつだけは相変わらずだがな」

女「スゥ……」

男「商売は時間が命でしょう。出発しましょう」

商人「待ちますよ?」

男「雨で一日失ってるんですから。さ、盗賊さん。女さんを積みますよ」

盗賊「よし。俺は上半身を持つ」

男「俺は脚だな」

商人「私はお尻を支えましょうか?」

男「……」
盗賊「……」

商人「じ、冗談ですよ」

男「女さんが寝てる時で良かった」

盗賊「ああ。あの視線は凍る程冷てぇ」
219 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 03:08:07.87 ID:gR8evkAO
(午前七時)

ゴトッ……
  ゴトッ……

女「……」ムクリ

商人「ああ、起きましたか」

女「……ここは?」

男「商人さんの荷馬車だよ」

女「そうでしたか。それで、私は乗った覚えがないんですが」

男「乗せたんだよ」

女「そうでしたか。今はどの辺りを走っているんですか?」

商人「関所から北に伸びてる道です。じきに霞村が見えますよ」

盗賊「そこには止まるのか?」

商人「いえ。水の街まで一気に行きます。途中の町や村で宿は取りますか?」

男「そちらの都合に合わせて下さって結構ですよ」

商人「では水の街までは野宿で行きますよ!」
220 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 03:51:39.80 ID:gR8evkAO
少し鬱気味……。

まさか起きてすぐに睡魔が襲ってくるとは思わなかった。
結局四度目の眠りに……orz

そろそろ勇者一行の描写も入れようかどうか……。
221 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 06:11:18.08 ID:gR8evkAO
(夜)
──潮の国、道中

女『では、また機会があれば。今までお世話になりました』

カチッ

勇者「……」

剣士「……飽きないな」

勇者「うわっ! 起きてたのか!?」

剣士「静かにしろ。二人が起きるだろう」

勇者「……すまん」

剣士「勇者様」

勇者「?」

剣士「そのレコーダーと言うもの、そんなに大切か?」

勇者「そうじゃないんだけどね……」

剣士「では、女と言うその声の主か?」

勇者「あのな……そういう事でもないんだ」

剣士「相変わらず、嘘が下手な人だ」

勇者「あ、あのなぁっ、俺がいつ嘘をついたって言うんだよ」

剣士「今しかないだろう」
222 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 06:26:06.04 ID:gR8evkAO
勇者「にしても、魔の国の結界を解く術、なかなか見つからないな」

剣士「話題を変えるのか。図星か」

勇者「あのなぁ、これは大切な事だろ」

剣士「でも、確かにこれだけ探しても見つからないのは、やはり魔の国の者しか
   知らないと言う事かもしれないな」

勇者「魔族……あいつらは口が堅い」

剣士「強度も堅い奴も稀ではないな」

勇者「南方国は、後はこの潮の国と土の国、黒の国だけだが……」

剣士「何か分かる確証はないな」

勇者「このまま何の情報もないまま片っ端から当たっていっても良いのだろうか」

剣士「私も目的地がないのは辛い。あまり言わないが、魔法師も僧侶も同じだろう」

勇者「目的はあっても目的地がない……か」
223 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 06:41:32.23 ID:gR8evkAO
剣士「提案がある」

勇者「何?」

剣士「水の国へ戻ろう」

勇者「……成る程、沼の街か」

剣士「そこまで言ってない。それ程会いたいのか?」

勇者「あのな、俺は沼の街の国立図書館なら何か分かると思ってだな」

剣士「図書館か……成る程、良い案だ。調べる量は膨大だろうがな」

勇者「それはみんなで必死になってやるんだよ」

剣士「それしかあるまい。だが私が言っているのは水の街だ」

勇者「沼の街じゃないのか?」

剣士「水の街には商館が多く建っている。水の国は大陸でニ、三を争う貿易先進
   国だからな」

勇者「そうか。各国の情報が集まる都市だな」

剣士「そうだ」

勇者「よし。明日から至急、水の国へ引き返そう」
224 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/12(金) 08:39:48.11 ID:i3PaFc6o
>>220
勇者サイドの出番が残ってるなら
ずっと気になってたしどんどん入れて欲しいww
225 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 11:17:18.34 ID:vrHpwooo
>>220
好きにやればいいと思うぜ!
226 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/12(金) 13:15:57.73 ID:OeQe.rQo
しえん
227 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/12(金) 14:02:56.55 ID:OeQe.rQo
しえん
228 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/12(金) 15:33:38.32 ID:WjPwzcDO
そろそろエロ描写も…





もしもしですみませんorz
229 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 22:34:37.29 ID:gR8evkAO
おはようございましょう。
勇者少々。
エロ描写はヘルシーではないので控えます。
230 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 22:43:26.73 ID:gR8evkAO
──水の国、水の街

商人「では私はこの辺りで」

女「はい」

男「ありがとうございました」

商人「いやいや、こちらこそ楽しかったですよ。特に株式の話が」

男「流石商売人ですね」

商人「また機会があれば詳しく聞かせて下さいよ」

男「専門じゃないんですけどね……」

商人「これから沼の街へ?」

男「はい」

盗賊「その前に食料を買っておかないといけねぇがな」

商人「そうですか。道中追いついたらまた乗せてあげますよ」

男「では専門外の話をしなくても良いように急ぎませんと」

商人「ははっ、沼の街までは徒歩で三日です。途中で長居しなければ追いつけま
   せんから安心してください。私は残念ですがね」

商人「では」

男「はい。また」

女「ありがとうございました」
231 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 22:58:56.49 ID:gR8evkAO
盗賊「よし。まず何を補充補充すれば良いか点検しよう」

男「食料だな。パンと干し肉。野菜の塩漬けもあると良い」

盗賊「そうだな。それと井戸を探して水も補給した方が良いな」

女「紙も欲しいです。B5サイズを五十枚程」

盗賊「紙だぁ? B5サイズなんて種類聞いた事ねぇぞ。高いのか?」

女「B5は大きさです。そういえばそういう単位はこちらにはありませんでしたね」

女「自分で合わせるしか……」ブツブツ

盗賊「で、どんな紙が必要なんだ?」

女「普通の植物が原料のものです。えっと……こんな感じの」

盗賊「……五十枚だと銀貨一枚くらいか」

男「高いのか?」

盗賊「高いだろ」

女「買えませんか?」

盗賊「……金ならある」
232 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 23:08:25.65 ID:gR8evkAO
男「じゃあ俺らが食料と紙を買いに行くから、水は頼んだ」

盗賊「重いものを任せやがって……」

男「肉やパンだって重いんだぞ」

盗賊「まぁ良いけどよ。後で広場に集合で良いな?」

男「おう」

女「はい」

盗賊「じゃあ──」

女「待って下さい」

男「そうだ。待て」

盗賊「……何だよ」

女「財布を渡してから水汲みに行ってくれませんか?」

男「俺らを永久に広場へ行かさない気か」

盗賊「ああ、うっかりしてたぜ」

男「やれやれ」
233 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 23:18:11.61 ID:gR8evkAO
男「このくらいで良いか?」

女「もう一つずつは買っておきましょう」

男「あー、そうだな。じゃあこれで」

「まいどー」

男「後は紙か? まだ見つからないけど」

女「羊皮紙ならあったんですけどね……」

男「もう少し探してみるか」

女「そのつもりです」

グ……

男「!」
女「!」

?「何のつもりか知らないが、来てもらおうか」

男「誰かは話してくれないのか……?」

?「同行するのならば話す」

女「この背中に押し付けてるものは何でしょうか?」

?「用心してるなら分かるはずだろう。想像通り、今二人に銃を向けている」
234 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 23:25:39.46 ID:gR8evkAO
女「どうします?」ヒソヒソ

男「本当に銃なら、抵抗すれば撃たれるぞ」ヒソヒソ

女「この世界で一度も銃を見た事がありませんが……」ヒソヒソ

女「第一、私達連行されるような事はしてないはずですよ?」ヒソヒソ

男「鍛冶の街で女さんがした事は何だったっけ?」ヒソヒソ

女「あー……」ボソッ

男「木炭村で俺らがやった事は何だったっけ?」ヒソヒソ

女「あれは私は被害者ですよ」ヒソヒソ

?「来てくれるな?」クグッ……

男「は、はい……」

女「仕方ありませんね……」
235 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 23:46:55.61 ID:gR8evkAO
女「……」

男「……どこまで行くのかな? 街から出てしまったけど」

?「……」

女「教授、あの小屋じゃないでしょうか」

男「これはまた不自然に建ってるな」

?「……」

女「……」

男「……」

?「着いたぞ。入れ」

男「合ってたな」

女「ですね。普通に入れば良いんでしょうか……」

?「早くしろ」

女「……分かりました」

ガチャッ

男「……何だこれは……」

女「凄い……どうなってるんでしょう……」

?「早く入れ」

男「あ、ああ……」

236 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/12(金) 23:57:51.25 ID:gR8evkAO
女「外見より内部の空間が大きいなんて……有り得るんですね」

男「この目が信じられん。夢でも見てるようだよ」

女「私もです」

男「扉がワープ装置になっていたのか?」

女「この世界の小屋にですか?」

男「だよな……」

?「小屋に見えたこの場所は、この世界で造られたものではありません」

男「え?」

女「どういう事ですか?」

?「あなた達とある部分で同じなのですよ」

女「……あなたは何者なんですか?」

?「そうですね。ここなら名乗っても大丈夫ですね」

管理局員「私は時空管理局の局員。銃を向けた非礼をどうか許して下さい」
237 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/13(土) 00:12:12.67 ID:xs8pkOEo
どんどん先が読めなくなってきたww
238 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 00:12:24.15 ID:DzFxDK6o
面白い



がんば
239 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 01:29:44.56 ID:h.UqQj.o
なんだこれwwww先が読めねぇww
240 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 02:09:57.09 ID:JEz0bgAO
女「時空管理局ですか?」

男「そんなSFみたいなものがあったなんて……」

管理局員「あなた達のした異空間移動はSFみたいなものではないのですか」

男「ああ、いや……ははは」

男「ところでその時空管理局の方が何の用ですか?」

管理局員「では──」

女「あの、あのっ」

管理局員「……はい?」

女「これはどのような構造なんですか? どうやって内側をここまで広くしている
  のですか? この小屋にはどのような機能が付いているのですか? どのように
  して──」ワクワク

管理局員「い、一気に質問しないで下さいっ」

管理局員「それに私には答えられる権利がありません」

女「そう……ですか……」

男「それで、用とは?」

管理局員「案内します」
241 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 02:19:22.38 ID:JEz0bgAO
男「へぇ……ここまで広いとは思わなかったな」

女「船みたいですね。ですが私達の船より大きそうです」

管理局員「その通り。これは船であり、私達の仕事場です」

女「どのような機能が──」

管理局員「お答え出来ません。さ、この部屋です」

管理局員「局長、連れてきました」

管理局長『よし、通せ』

ウィーン……

管理局長「良く来てくれました。どうぞ、中へ」

男「し、失礼します」

女「失礼します」

管理局長「その椅子にどうぞ掛けて下さい。話はそれからです」
242 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 02:37:27.77 ID:JEz0bgAO
管理局長「……では、あなた達を呼び出した訳ですが」

男「その前に一つ良いですか?」

女「私もたくさん良いですか?」

男「おい」

管理局長「一つなら許します」

女「うぅ……」

男「どうして私達の世界の言葉が喋れるのですか?」

管理局長「あなた達も分かるはずです。あなた達自身も使っているのですから」

男「自動翻訳ですか? しかしそれには私達の言語情報を入手しなければならないはずです」

管理局長「あなた達が放置している船にその言語情報がありましたよね」

男「……ああ、成る程」

管理局長「理解して頂いた所で、本題に移りましょう」
243 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 02:52:04.69 ID:JEz0bgAO
管理局長「今すぐ、自分の宇宙へ帰って頂きます」

男「え!?」

女「そんな!」

男「どうしてですか!?」

管理局長「このままではエネルギーの不均衡により、二つの宇宙が潰れてしまい
     ます。あなた達の宇宙とこの宇宙」

女「『神々自身』ですか……」

管理局長「はい?」

女「いえ、こちらの話です」

男「つまり、俺らがいる事で宇宙が崩壊するから帰れと?」

管理局長「はい。但し、こちらの物は持って帰れません」

管理局長「それに崩壊するのは二つだけではない可能性もあります。連鎖的に他
     の多くの宇宙も崩れると考えても良いでしょう」
244 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 03:01:32.30 ID:JEz0bgAO
女「……断ります」

管理局長「!」

女「まだ“調べ物”が残っているんです」

管理局長「その為に宇宙を犠牲にしろと言うのですか?」

女「私はその覚悟でここに来ています」

女「それに不均衡で崩れているのならば、すでに崩壊していても良いはずです」

管理局長「宇宙的に見ると僅かな不均衡。崩壊のプロセスも巨視的に見るとゆっ
      くりとしているのです」

女「まずは……私達に一番近い恒星の膨張ですか?」

管理局長「分かっておられるのなら何故──」

女「私達に言える事ならば、あなた方時空管理局にも言える事ではないでしょうか」

管理局長「私達は滞在時間を上限三時間と決めているのです」

女「そのような制約で不均衡を止められるとは考えられません」
245 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 03:13:21.32 ID:JEz0bgAO
女「それに私達がいる事で、エネルギーの不均衡の兆候は見られますか?」

管理局長「まだ現れてはいませんが、必ず現れるでしょう」

女「“まだ”ですよね。兆候が現れる絶対的確証はありますか?」

管理局長「物理学的に証明されています」

女「実験はしましたか?」

管理局長「証明の為に宇宙を危険に晒せと言うのですか?」

女「研究するとは本来そういう事と思っています」

管理局長「方程式によって証明はされています」

女「ですが、それはつまるところ机上の空論かもしれません」

管理局長「私達の世界の頭脳が出した結論です」

女「宇宙に内包されているその頭脳が、完全に宇宙を知る事はありません」

管理局長「私達が間違っているとでも?」

女「いいえ」

女「ただ、宇宙が繊細と言われても、そこまで軟弱な造りには思えないんですよ」
246 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 03:21:58.36 ID:JEz0bgAO
管理局長「……」

女「……」

男「熱く論議しておられる中すみませんが……」

管理局長「……何ですか?」

男「私達の船は壊れているので、そもそも帰る事が出来ません」

管理局長「……あ」

女「……あ」

男「船がなければ帰れませんよね」

管理局長「……それなら、私達が帰しましょう。船は分解すれば、この船に入る
     はずです」

女「帰るつもりはありませんけどね」

管理局長「っ」キッ

女「っ」キッ

管理局長「えっと……それで、座標は?」

男「(0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0)ですが」

管理局長「……基本座標が違いましたね」
247 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 03:51:44.43 ID:JEz0bgAO
管理局長「ですが、そちらの船のプログラムを複製すれば、帰還は可能ですよ」

男「そうですか。では安心して旅を続けられます」

管理局長「……はい?」

男「この世界での旅は良いものですが、唯一の心配が船の事だったんですよ」

管理局長「ちょ、ちょっと待って下さい。あなたも帰る事を拒否するのですか!?」

男「勿論です」

女「教授……!」

管理局長「それ程の理由を教えてくれませんか?」

男「研究の為です」

管理局長「研究? 何のですか?」

男「魔法です」

管理局長「宇宙を危険に晒してまでする事ですか?」

男「女さんも言いましたが、それが研究ですから」
248 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 04:03:12.03 ID:JEz0bgAO
管理局長「……どうしても、あなた達の世界に帰還して頂けないんですね?」

男「はい」

女「当たり前です」

管理局長「先程、座標プログラムを複製すれば、強制送還を行う事は可能です」

男「そのようですね」

管理局長「しかし、あなた達は頑固のようです。帰しても、また来るでしょう」

管理局長「即ち──」

女「!」バッ
男「動くな!」バッ

管理局長「!?」

管理局長「……何の真似ですか?」

男「武器を取らなかった事が災いしましたね。そのボタンに触れたら、撃ちます」

管理局長「……それも銃でしたか。てっきり水筒だと思ってましたよ」

男「それにしては細いとは思いませんでしたか?」

管理局長「その分長いと思ってました」
249 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 04:43:22.06 ID:JEz0bgAO
管理局長「それで? 私を撃ちますか?」

男「やむを得ない場合は」

女「……」

管理局長「……そうですか。どうしてそこまでするのですか?」

女「技師さんの夢だからです」

管理局長「技師さん?」

男「私達の恩師ですよ。魔法の存在しない私達の世界で、魔法を追っていました」

管理局長「つまり、その人の意志を継いでの研究と言う訳ですか?」

男「はい。特に女さんの場合、自分の意志の部分も強いようですが」

管理局長「成る程……だけど、その夢は全宇宙にとってリスクは大き過ぎますね」カチッ

男「なっ!?」

女「っ!」
250 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 04:45:02.26 ID:JEz0bgAO
そろそろ寝るー。

続きも考えないと
251 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/13(土) 06:51:03.24 ID:wH271ego
オツカレ
252 :パー速のローカルルールが変わりました [sage]:2010/02/13(土) 07:14:50.32 ID:xs8pkOEo
乙〜
続きと言うか収拾つくかが気になるぜww
253 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 12:22:38.83 ID:DzFxDK6o
あ〜もしかして

男「これは……」 女「いったい……!」

の人かな?続き?微妙に流用?
254 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 17:43:13.73 ID:JEz0bgAO
おはようございます。
濡らしたティッシュをぐちゃぐちゃにちぎったやつの固まりを見てると気分が悪くなってきました。

>>253
睡魔の絵は二枚とも保存している。
名前を技師じゃなくて恩師にした方が良かったかな……とか考えてたり。それとも師匠? 先生? ……何か違うな。
255 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 17:53:39.71 ID:JEz0bgAO
女「仕方ないありません! 撃ちま──」

男「待て!」

女「どうしてですか!?」

ウィーン……

女「……あれ?」

男「まさか……椅子の後ろから白旗が出てくるとは思いませんでしたよ……」

管理局長「ユーモアですよ。面白い機能でしょう」

女「かなり……紛らわしいです。どういうつもりですか?」

管理局長「見ての通りですよ。どういうつもりだと思いましたか?」

男「私達を始末する、と」

管理局長「普通はそういう結論に至りますね。しつこいあなた方は、強制送還し
      てもいずれはまたここへ来るから、そう出来ないように殺してしまおう」

管理局長「ですが私達にその権限はないんです。諦めるしかありません。お手上げです」

男「は、はあ?」
256 :パー速のローカルルールが変わりました [saga]:2010/02/13(土) 18:06:54.10 ID:JEz0bgAO
管理局長「どうしてその権限がないのか。私はそれが不満なんですがね。これで
      は管理局がなんの為にあるのか分かりませんよ」

男「確かに。でも何か理由があるんですよね?」

管理局長「まずは銃を仕舞ってくれますか?」

男「……はい」

女「危険はありませんね?」

管理局長「保証しましょう」

女「分かりました」

管理局長「時空管理局に人の殺生を許されていないのは、ある規定のせいでしてね」

管理局長「別時空では全ての環境と最小限の接触しかしてはならない」

男「殺しは最小限に含まれてないんですね」

管理局長「それで時空移動者を説得させろと言うのですから大変ですよ」

男「今まではどのようにしてきたのですか?」

管理局長「殆どが私達と同じ宇宙の者ですから、苦労は少ないんですよ。別の宇
      宙からワープする学者達も何度も見てきましたが、私達の言い分を
      受け入れてくれました。あなた達のような無理を通すような人は初
      めてなんですよ」
257 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 18:19:05.93 ID:JEz0bgAO
男「その矛盾で俺らは助かった訳か」

女「そのようですね。質問、良いですか?」

管理局長「どうぞ」

女「どのようにして私達がこの世界に来た事が分かったんですか?」

管理局長「ワープの際、小さなエネルギー放射が発生するのです」

女「それをどのように探知、計算すればこの場所だと分かるんですか?」

管理局長「それは言えません」

女「……」

男「それで、私達はこれからどうなるのでしょうか?」

管理局長「改心して頂けるまで待つしかないでしょう」

男「本当ですか? 調査を続けられるんですね?」

管理局長「仕方ないです」
258 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 18:28:56.52 ID:JEz0bgAO
管理局長「但し、条件があります」

男「何でしょうか?」

管理局長「私達はこれより先、あなた達を監視させて頂きます」

男「監視すればあなた達も不均衡を促進するのでは?」

管理局長「なので、監視と言うには甘すぎますが、一週間に一度この世界に来ま
      す。その時、エネルギー不均衡の兆候が見られたならば、即刻帰って頂きます」

男「ですが私達の船は……」

管理局長「来た時に修理をして置きましょう。使用されていない物質を使わなけ
      れば、帰還の際、不均衡は起こりません」

男「私達の居場所は分かるのですか?」

管理局長「今日は見つける事が出来ましたが、いつもそうとは限りませんね」

男「なら──」

管理局長「なので、これを持っていて下さい。あなた達の船にあった通信機です。
      これで私達はあなた達の船から通信を行えます」
259 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 18:38:53.62 ID:JEz0bgAO
男「……成る程。女さんはそれで良い?」

女「帰還した時は二度と調査させてはもらえないんですか?」

管理局長「やるなと言っても無駄でしょう」

女「当たり前です」

管理局長「そうでしょう。ですが再調査は不均衡による変動が収まってからにして下さい」

女「つまり、どのくらいの期間ですか?」

管理局長「滞在時間と同じです。つまりこちらに一日いれば」

女「一日待て、ですか……分かりました。条件を飲みましょう」

管理局長「感謝……は出来ませんが、よろしくお願いします」
260 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 20:17:29.62 ID:JEz0bgAO
女「……」

管理局長「……」

女「送信完了しました」

管理局長「船のデータはこれで全部ですか?」

女「はい」

男「船をよろしくお願いします」

管理局長「任せて下さい。そちらも必ず条件を守って頂きたい。さもないと──」

男「あなた達の“最低限の接触”レベルが上がりますね。気をつけます」

管理局長「では、この辺りで」

管理局長「二人が帰る。出口までご案内しろ」

管理局員『分かりました』

管理局長「機能について聞かれたら、簡単な説明なら許す」

管理局員『分かりました』

女「良いんですか!?」

管理局長「詳しくは教えられませんが、気になるでしょうから」

女「ありがとうございますっ!」

管理局長「局員がドアを出た所で待機しているでしょう」

男「ありがとうございます。では、失礼します」
261 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 20:33:20.49 ID:JEz0bgAO
管理局員「この船はカモフラージュシステムと言うのを導入しているんです」

女「どのようなシステムですか?」

管理局員「船の外見を変化させて周囲の状況に合わせる事が出来ます」

女「それで街の郊外に小屋ですか」

管理局員「最も、同体積の物にしかなれませんが」

女「では内部のこの広さはカモフラージュシステムではないんですね?」

管理局員「空間を歪曲させているんです。平坦にみえるこの床も、実際はくしゃ
      くしゃに折れ曲がった状態なんですよ」

女「紙を折り畳んで容器に入れる要領ですね」

管理局員「そうです」

女「技術的にそのようなものが可能だったんですねっ」キラキラ

管理局員「はは、仕組みは教えられませんよ」

女「存在が分かっただけでも大収穫です」ホクホク

男「楽しそうだな」

女「楽しくない方がおかしいですよっ」

男「確かにな」
262 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 20:54:42.89 ID:JEz0bgAO
管理局員「ここから外へ出られます」

男「ご親切にありがとうございました」

女「失礼します」

管理局員「お気を付けて」


男「何とかなったな」

女「ですね」

男「女さんは不均衡を否定してたけど……これは俺らの世界の物理学界でも言わ
  れてる事だよ?」

女「宇宙はそれ程軟弱ではないと思います」

男「なら良いんだけどね……」

女「……随分と時間が経ったような気がしますね」

男「だな。盗賊さん、待ってるだろうし戻るか」

女「ですね。その前に紙を買いに行きましょう」

男「俺は忘れてたのに」

女「私は覚えてるんですよ」
263 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 21:37:05.38 ID:JEz0bgAO
盗賊「……」

盗賊「……ん」

男「ごめん。遅くなった」

盗賊「遅すぎだろ。何かあったのか?」

男「特には」

女「この世界の紙は質が悪いですね」

男「破れにくそうだけどな」

盗賊「てめぇらが持ってる紙がツルツル過ぎんだよ」

女「私達にはあれが普通ですから」

盗賊「じゃあ、出発するか?」

男「だな」

女「はい」

男「って何でお前が仕切ってるんだよ」

盗賊「リーダーとかいないんだから良いだろーが」

女「リーダーは教授でしょう」

男「女さんじゃなかったのか?」

盗賊「な、決まってねぇ」

男「だからと言って賊に指図されるのは気に食わないな」

盗賊「つべこべ言わずに行くぞ」
264 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 21:41:20.40 ID:JEz0bgAO
眠い
寝る
お休み
繋ぎが下手過ぎる
265 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/13(土) 22:26:19.85 ID:/OoOgoU0
おやすみ
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/13(土) 23:11:42.50 ID:h.UqQj.o
お疲れ
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/14(日) 23:26:27.77 ID:B1bVL2AO
おはようございます。
この話の参考に量子論についての本を読もうとしたけど、すぐに挫折したぜ。
表紙にまんまと騙された!
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/14(日) 23:35:53.36 ID:weVwVTA0
量子論の世界へようこそマジおすすめ
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/14(日) 23:36:39.88 ID:B1bVL2AO
勇者「水の街はいつ来ても賑わってるなぁ」

魔法師「首都だからね。私も学院にいた時はよく買い物に来たよ」

剣士「……」

僧侶「……」

勇者「二人ともまだ慣れないのか?」

魔法師「情けないよ〜?」

剣士「う、うるさい! 私は魔法とは無縁の人間なんだっ!」

僧侶「転移魔法非習得者でも心地良く転移できる転移魔法を作って欲しいね……」

剣士「ああ……全くだ……。移動には便利なんだが……」

魔法師「仕方ないじゃないの。こういう魔法なんだから」

剣士「……」

僧侶「……」

勇者「そこまで克服したいなら習得すれば良いんじゃないか?」

剣士「才能のない私への嫌味か?」ブツブツ

僧侶「転移魔法は複雑な事くらい知っているだろ……」ブツブツ
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 00:01:28.47 ID:PC80YkAO
勇者「とりあえず宿は確保出来たな」

勇者「と言う訳で早速情報収集に行きたいんだけど……留守番しておく?」

剣士「いや……大丈夫だ」

僧侶「半時もすればすっかり治ってるだろうしね……」

魔法師「本当に大丈夫?」

剣士「この程度……!」

僧侶「修行よりは楽だよ……」

魔法師「本当かなぁ?」

勇者「じゃあ二手に分かれて情報を集めよう。俺と剣士、魔法師と僧侶だ」

剣士「分かった」

僧侶「……」コク

魔法師「じゃあ私達は水国立商会、農産商会、白羽商会を当たるわ」

勇者「なら俺達は残りの掛橋商会、礎商会、天界商会、野国子爵商会だな」

僧侶「各国の情報なら、領事館も行った方が良いんじゃないかな?」

勇者「そうだな。でも領事館は一々時間が掛かるから明日にしよう」
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 00:04:14.06 ID:PC80YkAO
やばい。地理的プロットと組織図を作らないと後々きつくなりそうだ。
記憶力悪いんだよ……
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 00:26:01.22 ID:PC80YkAO
──水国立商会

「魔の国の結界の解き方?」

「おいおい、それは魔法使いの仕事だろ? 俺らは専門外だね」


──農産商会

「魔族の噂も聞かねぇな」

「あいつらも賢い。極力噂が立たねえようにしてんだろ」

「魔物の被害ならあちこちの地主から聞いてるがねぇ」


──白羽商会

「魔の国の結界を破る方法ですか?」

「祈る事です」

「さすればあなた方の道は自ずと開かれるでしょう」

「魔族の居場所の噂ですか?」

「……」

「神に聞いておきましょう」ニコリ
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/15(月) 00:49:32.58 ID:PC80YkAO
──掛橋商会

「すまんが俺達にゃなんも手伝える事がねぇ」

「俺、白の国と葉の国との国境付近に魔族の軍勢が隠れてるって聞いたぜ!」

「おめぇ、聞いてないのか?」

「あそこは魔族じゃなくて賊が潜伏してたって確認されたんだ」

「ありゃ、そうなのか」


──天界商会

「結界については魔法学者に聞いた方が早いと思うけどな」

「魔族か……。聞いた噂じゃ、隠れてるだけでそこら中にいるらしいけどな」

「そんなはずねえよ! そうなら俺らはとっくに死んでらあ!」

「だよなあ……」

「まぁ、竜の国の裏に魔族がいるってのは信憑性があるがな。それとは無関係だろ?」


──野国子爵商会

「とびきり可笑しな魔物の話は聞いた事あるぞぉ」

「野の国のあれか?」

「そうそう。草原に佇む醜い巨人!」

「黒の国も大変らしいぞ。死人が死んだまま生き返って魔物化してるみたいだ」

「ああ。あの話を聞いたら黒の国へ行きたくなったよ。行かなきゃいけないんだけどさ」
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 00:56:44.77 ID:ESF3Aqko
色々な国が出てこんがらかってきたな
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 01:47:13.38 ID:PC80YkAO
舞台がオーストラリア大陸だったら国同士の位置関係が簡単で楽だったのにな
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 02:01:43.71 ID:PC80YkAO
──礎商会

勇者「ここで最後の商会だな」

剣士「大陸で最初の商会だ。情報網も広いはず」

勇者「まぁ当てが外れても、まだ酒場や領事館があるけど」

勇者「少しくらい情報が欲しいね」

剣士「だな」

勇者「失礼します!」

礎商会受付「はい。何のご用でしょうか」

勇者「少しここにいる人に協力をお願いしても良いかな?」

礎商会受付「内容によります」

勇者「俺達の知りたい事について、持ってる情報を聞くだけですよ」ス……

剣士「私達は連盟の命を受けている身だ」ス……

礎商会受付「それは勇者の証っ……!」

礎商会受付「分かりました。ご協力致します」

勇者「ありがとう」
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 02:14:41.42 ID:PC80YkAO
勇者「皆さんに少し質問があります!」

「何だ何だ?」

「誰だよあいつ……」

「おい、あれ! あいつが持ってるやつ、勇者の証じゃねえか!?」

「って事はあいつが勇者か?」

「少なくともその仲間だよな」

剣士「黙れ!」

……

勇者「俺達が魔の国周囲に張られている結界を解く方法を探している事は知って
   いますね?」

勇者「ですが力が及ばず、未だに一つの手掛かりすら得られていません」

勇者「そこで皆さんの頭を貸して欲しいのです。結界を解けるきっかけになり得
    る情報、または魔族の情報を譲って頂きたい」

「魔族の情報なんて何の意味があるんだ?」

「魔の国の連中だろうが。勇者様は連中を懲らしめて聞き出すつもりなんだろう」

「ああ、そうか」
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 02:28:30.88 ID:PC80YkAO
「……」

剣士「やけに静かだな」

勇者「思い出してるんじゃないかな」

剣士「誰も思い当たる節がないのか?」

「ああっ!」

勇者「何かありましたか?」

「いや、でも噂ですから……」

勇者「何でも話してみて下さい。関係がなくても怒りませんから」

「じゃ、じゃあ……」

「水の国の人なら知らないやつはいねぇと思いますが、翠水湖には大きな魔物が
いるんです。大きな刃物みたいなヒレのついた巨大魚です」

勇者「翠水湖……ここから西の方面だな」

「そいつは何もしない限り無害なやつだったんですが、最近酷く凶暴になりまして」

「その話なら知ってるぞ。それが魔族の仕業って思ってんだろ」

「そうとしか考えられないね」

「他に原因があるに決まってる!」

勇者「……行ってみる価値はありそうか?」

剣士「無駄足でも行くしかないだろう? 他に有力な情報はないんだ」
279 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 02:43:07.63 ID:PC80YkAO
剣士「他にはないか?」

ザワザワ
  ザワザワ

勇者「もうないか?」

剣士「かもしれないな……宿に帰るか?」

ガチャッ

商人「ふぅ……おや? みんな何をしてるんだ?」

商人「……あなたは?」

勇者「俺は勇者。皆さんに協力をしてもらおうと思い、ここに来ました」

商人「勇者……勇者……。もしやあの勇者様ですか!?」

「そうそう」

「俺らの情報を欲しいんだとさ」

商人「何を聞いていたのですか?」

勇者「それはですね──」
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 02:48:43.67 ID:PC80YkAO
商人「……成る程」

勇者「どうでしょうか」

商人「残念ですが、私は結界の解くヒントも魔族の行方も心当たりがありません」

勇者「そうですか……」

商人「ですが、結界を解く方法を思い付くかもしれない人は知っています」

勇者「本当ですか!?」
剣士「本当か!?」

商人「ええ。異世界人のあの方達なら何とかしてくれるでしょう」

「異世界人? なんだそりゃ」

「勇者様相手に冗談なんか言うもんじゃないぞー!」

勇者「異世界人……?」

剣士「まさか……」
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 02:58:10.21 ID:PC80YkAO
勇者「もしかして、その人達は男女の二人組じゃありませんでしたか!?」

商人「?」

商人「いいえ、男性が二人と女性一人ですよ」

勇者「……違う人か?」

剣士「しかしそれだと異世界から少なくとももう一団来てる事になるぞ?」

商人「あぁ、でも異世界人は二人ですよ。男女の二人」

勇者「本当ですか!? 名前は?」

商人「男と言う名前の学者と女と言う名前の技術者、と言ってましたね。異世界
   の人じゃないもう一人は盗賊と言う名前でした」

勇者「彼女達だ!」

剣士「ああ」

商人「知り合いですか?」

勇者「少し縁がありましてね」
282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 03:09:28.57 ID:PC80YkAO
勇者「それで、彼女達とはいつ会いました?」

商人「先程別れたばかりですよ。私の馬車に乗せてましてね」

勇者「と言う事はこの街に?」

商人「どうでしょう。沼の街へすぐに向かったかもしれません」

剣士「魔導連合本部へ向かっているのだな」

商人「確かにそのような事を言ってましたね」

商人「彼らは魔法を学びに来たと言ってました。もしかしたらまだ魔法について
   は無知かもしれません」

商人「なので彼らを訪ねるのは、日を置いてからの方が良いでしょう。彼らも沼
   の街に暫く滞在するつもりですから、私はそれが良いと思います」

勇者「……成る程、そうですね。確かに彼女達がこちらに来てまだ日も浅い」

勇者「貴重な情報ありがとうございます」
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 03:20:47.56 ID:ugMoKbYo
ストーカー…
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 03:28:44.56 ID:PC80YkAO
勇者「──以上だな」

魔法師「魔族自体の情報はほぼ皆無ね」

剣士「だが翠水湖の巨大魚、黒の国の動く死体は確かめてみる価値はありそうだ」

魔法師「そうね」

僧侶「だけどあの人達はどうする? 確かに彼らの科学と言うものなら魔法で不可
   能な事でも可能かもしれない」

勇者「だけど魔法について知る時間も必要だよ」

剣士「なら、どうする? まだ情報を集めておくか?」

勇者「とりあえず翠水湖に行こう。ここから場所も近い」

僧侶「良いのか? 我慢せず会いに行っても、僕は神に言わないでやるぞ?」

勇者「あのな、今日水の街を出たとしても、沼の街に着くのは三日後くらいだ」

勇者「それから魔法使いの話を聞く時間を考えれば──」

僧侶「会いに行くだけなら、そんなの関係ないだろ」

勇者「あのなぁ、邪魔しちゃ悪いと思うだろう?」
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 03:41:47.53 ID:PC80YkAO
女「へくちっ」

女「うー……」ズズ……

盗賊「どうした?」

女「……くしゃみをしただけです」

盗賊「風邪じゃねぇだろうな」

男「きっと噂をされてるんだよ」

女「そんな根も葉もない事は信じられません」

男「いや。擦れ違う男の意識の力が影響しているはずだ」

女「私は珍獣か何かですか」

女「きっと花粉か何か飛んでるんですよ」

男「花粉症だったっけ?」

女「いえ……へくちっ」

盗賊「風邪なら感染すんじゃねぇぞ?」

女「……風邪ではないはずです」
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 03:57:00.19 ID:PC80YkAO
勇者「では明日、翠水湖の南まで行くぞ」

魔法師「北にある翠水村に向かった方が良いんじゃない?」

勇者「いや。巨大魚がよく現れるのは南側だよ。それは」

剣士「水深が南側は浅いからだ。だが勇者様、奴は北側に寝床を作っているかも
   しれない」

僧侶「浅瀬は餌場か、ただ通るだけか、かもしれないって事だな?」

剣士「そうだ」

勇者「翠水湖は大きい。ここから真っ直ぐ翠水村に行くとすれば、徒歩で四日掛かる」

勇者「俺らはあの村に行った事がないからな」

勇者「だけど仮に、巨大魚が浅瀬に住んでいるのでなければ、北側と南側の往復
   をかなりの速さでしているはずだ。元々北側が住家なら、これを利用しな
   い手はない」
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 04:06:24.12 ID:PC80YkAO
剣士「ちょっと待て。つまり巨大魚が南側だけ泳いでいるのではなく、北側と南
   側を往復している場合、魚に北側まで乗せてもらうと言う事か?」

勇者「その通り」

魔法師「凶暴って話なんでしょ? 危険だよ!」

僧侶「死んだらどうする!」

勇者「大丈夫。俺達は大陸連盟の精鋭だ。そのくらい何とか出来ずにどうする」

剣士「……」

魔法師「……」

僧侶「……」

勇者「作戦はこうだ」

勇者「翠水湖南にある貸し舟屋で舟を借りる」

勇者「それに乗り、巨大魚が現れるのを待つ」

勇者「現れたらやつに丈夫で十分に長いロープを括りつける」

勇者「後は奴の様子を見るだけだ」

剣士「……上手くいくのか?」

勇者「さぁな。じゃあ明日の為にロープを探しに行くか」
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 04:15:45.59 ID:PC80YkAO
そろそろ寝ます。

女と男が使ったワープは量子ワープじゃなさそうだな。
やっぱりワープといえばワームホール。
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 04:48:26.23 ID:ugMoKbYo
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 12:53:58.18 ID:ESF3Aqko
ワームホールとかって時間移動するだけじゃね?
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 12:58:24.44 ID:ugMoKbYo
ワープがどの種類なのかは異世界をどう定義するかにもよるよね

1.どっかで分岐した可能性の世界なのか
2.遥か未来、または過去の世界なのか
3.次元が違う世界なのか
4.宇宙が違う世界なのか
5.わたしの頭じゃ思いつかない位置づけの世界なのか
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/15(月) 13:20:34.56 ID:PC80YkAO
>>290
あれ? 空間移動もできなかったっけ?

>>291
1は他の項目に取り込めるんじゃね?
とりあえず4の別宇宙でやってるけど、3の世界も混じる事で魔力の存在の有無が左右されてる場合も考えてる。
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 13:28:28.53 ID:ESF3Aqko
空間移動出来るけど、違う場所の過去に飛ぶ、とかだったような気がする
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 14:11:24.99 ID:PC80YkAO
俺の頭の中では時間移動は出来ないと思ってる(理解出来てない事は除外してるから)。
だって時間移動をすればパラドックスが発生するだろ? それを解決する方法が分からないじゃないか。
干渉性の消失によって解決すると仮定しても、時間毎に分岐する可能性世界が一瞬毎に無限大個作られてしまうじゃないか。これだといくらインフレーションでいくつも宇宙が作られてたとしても、存在できる可能性宇宙があまりにも膨大な数になると思うんだよ。それは理解出来ないから勝手に排除。
よって俺の頭の中では、時間毎に分岐する可能性世界の存在がパラドックスに満ちてるので、時間移動は不可能と考える。

これが馬鹿で無知なりに考えた結果。
物理とか難しすぎだろ……。
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 14:27:09.04 ID:ESF3Aqko
wikiでざっと見てきた程度の知識なんで気にしないでくれww
教授達の世界は科学発展しまくってるみたいだし、
細かいコト気にしないでいいんじゃない?
>>1にはシュタインズゲートっつーXbox360のゲームオススメする
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 17:45:34.27 ID:lsGkJwc0
wikiを見てるだけでも>>295の方が知識量は確実に多い。
まぁ、確かに細かい事を言ってたら俺の頭が持たねえwwww

さてさてPCからゆっくり書いていきますか。
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 18:00:07.11 ID:lsGkJwc0
――翠水湖南側

勇者「みんな、準備は良いか?」

剣士「ああ」

魔法師「大丈夫よ」

僧侶「もちろん」

勇者「じゃあ魔法師、始めてくれ」

魔法師「分かった。水流操作!」

僧侶「岸の方で待ってた方が良かったんじゃないか?」

勇者「向こうも動くものに釣られると思うんだ」

僧侶「つまり僕達自身が囮と言う訳か……」

勇者「そう言う事」

剣士「もう少し大きい舟はなかったのか?」

勇者「仕方ないよ。貸し舟屋は観光向けの店なんだ。これでも大きいものを借りたんだよ」

僧侶「まあ、魔法師がいてくれるだけでも大助かりだね。オールで漕ぐよりずっと速い」

魔法師「へへ、ありがとっ」
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 18:35:34.60 ID:lsGkJwc0
魔法師「勇者、進路はどうする?」

勇者「そうだな……。大きく蛇行しながら北へ向かおう」

魔法師「了解!」

剣士「私に何か手伝える事はないか?」

僧侶「僕にも何かないのか?」

勇者「今のところはない、な。いつ出てきても良いように態勢を整えよう」

剣士「よし」

僧侶「おう」

魔法師「……勇者?」

勇者「何だ? 来たか!?」

魔法師「かもしれない。水の流れが……少しおかしくなってる」

勇者「上か? 下か?」

魔法師「そこまでは分からないよ」

剣士「用心した方が良いな」

勇者「そうだな」
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 18:56:37.71 ID:lsGkJwc0
僧侶「……何だ、あれは?」

勇者「何か見えたのか!?」

僧侶「北の方向から凄い速さで何かが来るぞ!」

剣士「あれは背ビレか!」

勇者「魔法師、回避してくれ! 舟の姿勢も頼む!」

魔法師「分かった。こっちも加速するよ!」

ザザーッ!

魔法師「くぅっ」

剣士「あの影を見ろ!」

勇者「でかい……」

魔法師「本当に作戦大丈夫なの!?」

勇者「他に思いつかないんだよ!」

僧侶「気を付けろ! 戻ってくるぞ!」
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 19:05:07.91 ID:lsGkJwc0
ザザザーッ!!

魔法師「あー、もうっ! 何であんなに速いのよ!」

剣士「もっと速度を上げられないのか!?」

魔法師「無理! 水流操作は精神使うんだからぁ!」

勇者「さっき背ビレにロープを掛けられそうな所があった。次で決める」

勇者「魔法師、今度来たらスレスレの所で避けてくれ!」

魔法師「そんなの難しいよ−!」

勇者「頼む」

僧侶「奴が――三匹!?」

剣士「何だと!? 一匹じゃなかったのか!」

勇者「魔法師、やってくれるか?」

魔法師「もうっ。どうなっても知らないんだからね!」

ザザーッ

ザザザーッ!!
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 19:31:44.81 ID:lsGkJwc0
勇者「たぁーっ!」

魔法師「きゃーっ!」

ザザーッ

魔法師「はぁ……はぁ……何とか回避出来たよ!」

魔法師「あれ……勇者は!?」

僧侶「巨大魚に向かって飛んで行った!」

剣士「何をやってる! ロープを持て! 全部持って行かれては終いだ!」

僧侶「ああ!」

魔法師「勇者は大丈夫なの!?」

剣士「分からん。分からんが賭けるしかない」

僧侶「ああ。信じよう」

僧侶「また戻ってくるぞ!」

剣士「今度は三匹バラバラで来るようだ。避けきれるか?」

魔法師「避けてやる……!」
302 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 19:52:20.61 ID:lsGkJwc0
ザザザーッ!!

魔法師「くっ」

勇者「ロープを引――!」

ザザーッ

剣士「勇者様!」

僧侶「無事だったのか!」

魔法師「どうするの!? 次、どうするの!?」

剣士「僧侶、ロープをしっかり引け! 奴に持って行かれるな!」ググッ

僧侶「力仕事は、苦手なんだぁ!」ググッ

魔法師「ちょ、え――きゃあっ!?」

剣士「良いぞ。勇者様の作戦通りだ」ググッ

僧侶「凄い力だっ……」ググッ

魔法師「何これぇ!? 速すぎ!」

僧侶「よし……そのまま北へ向かえ!」ググッ
303 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 20:07:20.71 ID:lsGkJwc0
僧侶「今のところ順調だな」

魔法師「勇者……大丈夫かな?」

剣士「きっと無事だ」

剣士「それより……このままだと翠水村まで行く事になりそうだが」

魔法師「本当の生息地は北側だったんだね」

僧侶「となると……普段はかなり深い所にいるはずだ」

魔法師「えっ……って事は……」

剣士「……潜る!」

魔法師「そんな!」

僧侶「見てくれ! ロープの先が下の方に向いていっている!」

魔法師「どうするの!? ねえ!」

剣士「勇者様もいつまで息が続くか……」

僧侶「まずは僕達の事を考えた方が良い! 問題が増えたぞ!」

僧侶「一匹こっちに突っ込んできそうなんだ!」
304 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/15(月) 20:28:12.07 ID:lsGkJwc0
剣士「何――」

ザザザーッ!!
ドシャーン!

僧侶「痛っ……!」

剣士「舟が……!」

魔法師「っ」


ブクブクブク……

勇者「っ……!」

勇者「……かはっ」ガポガポ……


魔法師「仕方ないね……残りの魔力、多分全部使うけど」

魔法師「水域分離法!」

魔法師「開けぇーっ!!」
305 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/15(月) 20:44:30.33 ID:lsGkJwc0
ズァーッ!

剣士「湖が……分かれる!?」

僧侶「凄いっ……」

魔法師「もっと……もっと深くまでぇ! もっと広く!」

ザザザァーッ

魔法師「開けぇーっ!!」

剣士「まずい。このままだとみんな底に落ちる!」

剣士「この湖の深さだと死ぬぞ!」

魔法師「もっと開けぇーっ!!」

ザザザァーッ

剣士「見えた! 水底だ!」

僧侶「加護膜……!」
306 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 20:50:35.86 ID:lsGkJwc0
剣士「ぐ……ぁ……」

僧侶「間に合った……!」

魔法師「はぁ……はぁ……」

剣士「魔法師、そんな魔法が使えたのか」

魔法師「もう……こ、これを支えてるのが、せ、せ一杯よ……」

魔法師「そ、それよ、り……勇者、は?」

剣士「そうだ、勇者様は無事か!?」

魔法師「もしかし、て……まだ、水の中……」

僧侶「……いや」

僧侶「ほら、あそこにいるよ」

勇者「ゲホッ、カハッ……」

剣士「勇者様!」

勇者「ゲホゲホッ……みんな、大丈夫だったか……」

勇者「かなり水……げほっ……飲んだっ……」
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 21:43:29.74 ID:lsGkJwc0
勇者「どうなってるんだ? 湖が割れて……」

剣士「魔法師のお陰だよ!」

僧侶「見ろ! あの巨大魚も水の中からは出られない!」

剣士「あんな大きいのがこんなにいたとは……」

勇者「助かったのか……。ありがとう、魔法師」

魔法師「そんな事よりっ……早く凶暴、化の原因を!」

剣士「あそこに穴が見える」

勇者「水中洞窟か……? 歩いて半時くらいか」

僧侶「多分あそこは翠水村の下辺りだよ。あの巨大魚は歩いて三日掛かる距離を、半日もし
   ないで泳いだんだな」

勇者「必死にしがみついてたからよく分からなかったけど、そんなに速かったのか……」

勇者「とりあえずあの穴まで行こう。何か分かるかもしれない」
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 21:49:56.73 ID:lsGkJwc0
魔法師「待っ……て……」

剣士「魔法師、もしかして歩けないのか?」

僧侶「これだけの水を維持するのはかなり負担が大きそうだからなあ」

魔法師「違……私は歩、けるっ」

魔法師「それよ、り……そこ……」

剣士「どこだ?」

魔法師「地、面で……何か光っ、てる……」

僧侶「何が光ってるんだ?」

勇者「あった! あれか?」

魔法師「……」コク

勇者「……何だろう、これは」

剣士「魔石じゃないのか?」

勇者「いや……こんな石は見た事ない」

僧侶「僕もだ」

勇者「とにかく取っておこう。魔法師、大丈夫か?」

魔法師「う、うん」

勇者「じゃあ穴に向かうぞ」
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 21:57:59.40 ID:lsGkJwc0
あれ? SS系は移動なのか。
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 22:11:32.63 ID:lsGkJwc0
勇者「来てみると案外大きいんだな……」

僧侶「元々は地下水脈の一つだったのかな?」

剣士「どうでも良いが、どうする? 行き止まりだ」

魔法師「早くっ……もうきついっ……」

勇者「行き止まりじゃないよ」

剣士「だが……」

勇者「この上がどうなっているか、だな」

剣士「上も行き止まりかもしれないぞ? この洞窟はさっきの魚が削って作ったなら……」

僧侶「僕は地下水脈だったものだと思うね」

勇者「俺は僧侶の意見に賛成だ。この壁の削れ方は水の流れで出来たものだと思う」

勇者「どのみち、俺達はこの道しか進めないよ。魔法師がもう限界だ」

魔法師「大丈夫……だよっ……」

勇者「いや。暫く水を支える事ができても、湖の上まで上る事はできないと思う」
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/15(月) 22:17:07.00 ID:AYmG1/co
>>309
ここには来てないが他スレへ荒らし並みにレスしてるのを見ると次スレからで良いっぽい
というかどういう基準でレスして回ってるんだろ?


lain. ★

パー速のローカルルールが変更され、
SS、やる夫系スレはニュー速VIP避難所(クリエイター)【http://ex14.vip2ch.com/news4gep/】へ移行することになりました。
(次スレを立てられるようであれば)移動はこのスレが埋まってからで構いませんので、
上記の件を把握されましたらご返答お願いします。
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 22:17:52.88 ID:lsGkJwc0
剣士「じゃあどうする?」

勇者「この上が空洞である事を祈るしかないな」

僧侶「こんな滑りそうな所を上るのか!?」

勇者「上らない……上るけど、そうやっては上らない。それだと魔法師が取り残される」

勇者「だから――」

魔法師「――ごめん……もう、ダメ……」フラッ

剣士「!」

僧侶「魔法師!」

ザバァァーッ!!

剣士「水が戻ってきたぞ!」

僧侶「これまでなのか、勇者!?」

勇者「水の衝撃に備えて壁に付け! 魔法師は任せろ!」

勇者「良いか!? 水の流れに飲まれるな! 飲まれずに――」

ザザァーッ!!
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/15(月) 22:23:06.04 ID:lsGkJwc0
PCからはこの辺りで。後で携帯から書く(と思う)。

>>311
もしかしてこのスレ、ハブられてんじゃね?
314 :lain. [sage]:2010/02/15(月) 22:38:04.80 ID:???
"「”で板内検索して上から順にレスして回っています
投下途中かなーと思ったのでここは後回しにしました。
315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/15(月) 22:48:16.49 ID:PC80YkAO
>>314
そうでしたか。気遣いありがとうございます。
とりあえず移転の件、把握しました。
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 01:17:35.25 ID:Q0gzaCko
移転?
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 01:20:16.88 ID:4zv9oMA0
http://d47.decoo.jp/diary/nyankiss/

女の生きざま
318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 01:39:52.60 ID:cUnDnYAO
では俺は少しスレを埋める作業に入る。
319 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 01:54:04.70 ID:cUnDnYAO
勇者「う……ぐぅっ……」

剣士「けほっ、けほっ……」

僧侶「ああ……水に押し潰されるかと思った……」

勇者「大丈夫か?」

僧侶「何とかね」

剣士「水を飲んでしまっただけだ。傷もない」

僧侶「魔法師の方はどうなんだ?」

魔法師「……」

勇者「大丈夫。気を失っているだけだ」

僧侶「無理したんだな……」

剣士「ここはどこなんだ? 何とか足が着くみたいだが」

勇者「運よく横穴まで来れたみたいだね。僧侶、明かりは出せるか?」

僧侶「無理だね。勇者がやってくれ」

勇者「魔法はあまり得意じゃないんだけどな……」

勇者「火炎玉」ボゥッ
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 02:06:43.04 ID:cUnDnYAO
勇者「結構広いんだな」

剣士「とにかく水から上がろう。今の所危険はなさそうだ」

勇者「そうだな。一旦この辺りで休もう。魔法師も良い状態とは言えないし」

僧侶「腹も減った」

剣士「そうだな。飯にするか」

勇者「本当に?」

僧侶「勇者は腹減ってないのか?」

勇者「空いてるけど」

僧侶「じゃあ飯にしようよ」

僧侶「魔法師は起きてから食べてもらえば良いんだし。先に食べても文句は言わないって」

勇者「じゃあ飯にしよう」

勇者「献立は水、濡れたパン。以上」

剣士「お、おい……何だこのパンは……」

僧侶「ああっ、握ったら崩れた!」
321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 02:18:26.50 ID:cUnDnYAO
僧侶「こんなまずい食事は久々だったよ」

剣士「白の国南方の湿地以来だ」

僧侶「これが水じゃなくてスープなら大歓迎だった」

勇者「文句言うなよ。食いたいって言ったんだから」

カツーン……

剣士「!」

勇者「誰か来たか?」

僧侶「……」

カツーン……
  カツーン……

勇者「魔物かもしれない」

剣士「あるいは……」

僧侶「魔族」

勇者「何にせよ、戦える態勢になっておいた方が良い」

カツーン……
  カツーン……

カツーンカツーン
  カツーンカツーン
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 02:30:26.77 ID:cUnDnYAO
勇者「……」
剣士「……」
僧侶「……」

カツーン……

……

?「そこにいるのは誰だ?」

勇者「……」

?「何か答えてくれないか?」

勇者「……お前は誰だ?」

?「おりは……」

剣士「姿からして……魔族か」

魔族の男「そうだ。おまいらは人間みたいだな」

魔族の男「顔が良く見えない。もうすけしちこくに寄れ」

勇者「……」

魔族の男「!?」

魔族の男「お、おまいっ……人相ごきで見たけとあるぞ! 勇者!」

勇者「いかにも」

魔族の男「何しにけた! おまい、何しにけた!」

魔族の男「お、おりをけろしに来たんだな!?」
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 02:39:20.63 ID:Q0gzaCko
何語だよwwwwwwww
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/16(火) 02:39:32.35 ID:cUnDnYAO
勇者「いいや、出来れば話し合いでかたをつけたい」

魔族の男「嘘だ! 魔物をわりってけろすやつが、話し合いなんつやるわくがない!」

勇者「え、それ誰から聞いたの?」

魔物の男「ま、魔の国中が噂してる! おりはもう駄目だぁ! けけで終われだぁっ」

剣士「私が笑って魔物を殺した事あったか?」

僧侶「ないね」

魔族の男「う、嘘だ!」

勇者「まぁたくさん殺して来たのは認める。だけど殆どは向こうから仕掛けて来てるんだ」

魔族の男「そんなの……」

勇者「信じる信じないはどっちでも良い。そっちが俺達を殺すって言うのなら、俺はお前を殺す」

魔族の男「ひっ……」

剣士「今まで会ったの魔族と比べてかなり臆病だな」

僧侶「そうだね」
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/16(火) 02:48:09.93 ID:cUnDnYAO
勇者「……まぁ、魔族であるお前にいくつか聞きたい事がある」

魔族の男「な、何……?」

勇者「魔の国の結界、勿論知ってるよな?」

魔族の男「当たれ前だ」

勇者「解除方法知ってる?」

魔族の男「し、知るない……。知ってても教えないっ……」

勇者「教えなきゃ殺す」

魔族の男「ひっ!?」

勇者「って言ったら?」

魔族の男「知るない! こるさりても知るない!」

勇者「そっか。なら」

魔族の男「ひぃっ……!」

勇者「次の質問をするよ」

魔族の男「……ほっ」
326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/16(火) 03:00:02.68 ID:cUnDnYAO
勇者「この湖に住む巨大魚の事は知ってるか?」

魔族の男「……」コクコク

勇者「それが近頃凶暴化してる。何か知ってるか?」

魔族の男「し、知るない」

勇者「本当か? お前のせいじゃないのか?」

魔族の男「違う。おり、知るない」

勇者「そうか」

魔族「……」コクコク

勇者「いや、知ってるな?」

魔族の男「!」

魔族の男「知るない! 本当に知るない!」

勇者「じゃあ何故ここにいる!」

勇者「……正直に話さなければ、今度は本当に殺す」シャキ……
魔族の男「ひ……あわぁぁああ!」

剣士「逃がさん。全て吐いてもらうぞ」

魔族の男「う……あ、あ……」
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 03:06:45.54 ID:cUnDnYAO
勇者「で? 何故ここに魔族がいる?」

魔族の男「おりは……おりは……」

勇者「……」

魔族の男「勇者は……なにしにけた……?」

勇者「巨大魚の凶暴化の原因を探りに」

勇者「それと魔族探しだな」

魔族の男「やっぱれおりをけろしに……!」

勇者「結界の解除方法が知りたいだけだよ」

勇者「それで? お前が凶暴化させてるのか?」

勇者「お前を倒したら魚は元に戻るのかな?」

魔族の男「おりは知るない……。おりは……おりは……」

魔族の男「おりも……しるべにけたんだ……。大けなさこなを……」
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/16(火) 03:25:50.36 ID:cUnDnYAO
勇者「何の為にだ?」

魔族の男「お、おりも凶暴になったれゆうをしるべにけた」

勇者「誰に言われて来た? 魔王か?」

魔族の男「違う。魔国少尉に……」

勇者「魔国少尉? そいつはどこにいる?」

魔族の男「……」

勇者「言え。でなければ」

魔族の男「言ってもけろされる……」

勇者「殺さないから」

魔族の男「違う。魔国少尉は死を操る。おりは何も言いない」

勇者「言わないなら今死ぬぞ。言えば、逃げたら生き延びられる」

魔族の男「……けろされない?」

勇者「そうだ」

魔族の男「……」

勇者「教えてくれないか?」

剣士「待て。様子がおかしい」

魔族の男「……」

勇者「嘘だろ……死んでる……」
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/16(火) 03:28:34.48 ID:cUnDnYAO
ではこの辺りで。
おやすみ。

明日には異世界人PTのシーンへ移りたい。
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 12:55:04.46 ID:sHCsf8Ao
これって誰が主人公?
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 13:36:24.23 ID:y421OcAO
昨日は書けなかったから起きてて暇な時間に簡易マップ作ってたら大変な事になってた。
大陸の国(魔の国、島国も入れて)が全部で三十一国……。

>>330
主人公固定するとネタが早くなくなりそうなので、主人公なし又はみんな主人公の方向で。
書くものがなくなる=俺の余暇が潰せなくなる、から。
今の所、殆どが女・男・盗賊PTと勇者一行の場面を中心にするつもりだけど。
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 16:02:32.62 ID:5c9ZUkU0
僧侶「おい、死んだってどういうことだ!?」

勇者「俺にもよく分からないんだけど……」

剣士「こいつの言ってた魔国少尉とやらは死を操ると言ってたな。関係あるかもしれん」

勇者「まさか! 死を操ると言っても魔法だろ?」

勇者「魔国少尉はおろか、俺達以外に誰もいないぞ?」

剣士「もし……そいつは離れた場所からでも何らかの方法で人を殺せるのだとしたら……」

僧侶「と言う事は僕達も、今狙われてるって事なのか!?」

勇者「……」

剣士「……」

勇者「……まだ死んでないと言う事は、もしかしたら俺達は殺せないのかもしれない」

僧侶「それとも生かしておく理由があるのか」

剣士「とにかく外に出よう。こいつが私達と同じ道で入っていないのは分かった」

剣士「別の道があるはずだ」

勇者「そうだな。気弱な奴だったとは言え魔族がいたんだ。危険がないとは言い切れない」
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 16:29:39.08 ID:5c9ZUkU0
剣士「勇者様、疲れたら言ってくれ。私が背負おう」

勇者「大丈夫だ。魔法師は小柄だからな。鞄が一つ増えたようなものだよ」

魔法師「……」

僧侶「今の所一本道だ。この様子なら楽に出られるんじゃないか?」

勇者「そうだと良いけど……」

勇者「! 静かにっ」

「あえつ遅えんじゃらいか?」

「あえつの事だ。もたもたしれんのはえつもの事だ」

「……おり、様子見れこよう」

「ほっろけほっろけ。その内こえってける」

剣士「一、二……魔族が四人か。厄介だな。巨人も一匹いるぞ」

僧侶「だけどあそこを通らないと、あの横穴に入れないんじゃないかな? 多分あそこが出
    口に繋がってると思う」

勇者「あの魔族達も何も知らないんだろうな……。どうする?」

僧侶「どうするたって」

剣士「強行突破しかないだろう。勇者様は魔法師を守れ。後は私達で何とかしよう」
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 16:55:49.50 ID:5c9ZUkU0
剣士「では行くぞ」

剣士「一、二……三!」

タタタタッ!

「ぬっ!? 誰たおまいら!」

剣士「早く横穴に入るんだ!」

勇者「分かってる!」

僧侶「安心して走って良いぞ。加護壁を張っている」

「勇者! あぬ顔、勇者!」

巨人「ユウ……シャ……?」

「巨人、勇者だ! けろせ!!」

巨人「ユウシャ……コロス……?」

剣士「お前の相手は私だ! はぁっ!!」ヒュンッ

巨人「ユウシャ……コロォォォォオオスッ!!」キンッ!

剣士「な――ぐふっ!?」
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 17:12:54.62 ID:F7l0rJY0
勇者自己中すぎだろ
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 17:32:20.05 ID:5c9ZUkU0
勇者「剣士!」

僧侶「止まるな! とにかく横穴まで走るんだ!」

勇者「くっ」

剣士「げほっ……思った以上に速いな……」

巨人「マテェ……ユウシャァ……」

剣士「お前の相手は私だと……」

剣士「言っているだろう!」ヒュンヒュン

巨人「ジャマダァ……!」ブォンッ

ドフーン!

剣士「……その鈍器、邪魔だな」

巨人「……」

剣士「だが、速いのも事実」

剣士「先程はその図体と武器で見誤ったが、二度と当たるまい」

巨人「……ォォオッ!」

剣士「遅い」スッ

ドフーン!

剣士「速さでは私が上だ」ニヤ
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 17:40:01.33 ID:5c9ZUkU0
勇者「はぁ……はぁ……」

僧侶「……ふう」

キンキンッ!
  ……ドフーン!
カカカカカッ!
  ……ドフーン!

勇者「僧侶、後は任せて良いか?」

僧侶「ああ。このくらいの幅なら一人くらい大丈夫だろう」

勇者「よし、頼んだ。俺は剣士を助けに行く」

「そうはさせねい」

「勇者、おりらがけろす」

「けぐごしろ!」

勇者「……通してくれないかな?」

「勇者、けろす」

「おとなすくけろされたら、通せても良い」

勇者「はぁ……それだと俺死んでるじゃないか」
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 17:52:59.47 ID:5c9ZUkU0
勇者「剣士! 逃げる事は出来ないか!?」

剣士「私の後ろに魔族がいるんだろう? 下手には逃げられん!」

剣士「それに、こいつは倒しておいた方が良い」

勇者「分かった! すぐに加勢する!」

巨人「フー……フー……」

剣士「……にしても、鎧が固いな」

剣士「隙間も小さい……どうするか」

巨人「ォォオオッ!」ブォンッ

剣士「!」

ドフーン!

剣士「ハァッ!」ヒュヒュヒュヒュ――

カカカカ――

「ぐあぁぁあ!」

「くそっ、おりらは四人も――ぎゃぁぁあ!?」

カカカカカ――キンッ

剣士「!?」
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 18:02:21.62 ID:5c9ZUkU0
「ぐふぁっ!」

勇者「今行くぞ、剣――」

シュッ

カッカランカラン……

勇者「何……?」

巨人「ォォオオッ!」ブォンッ

ドスッ

剣士「ぐ――」

ドスーン!

剣士「――はぁっ!」

巨人「フォォオオオッ!」

勇者「剣士っ!」

剣士「勇……者……、逃げろ……。固すぎる……」

剣士「私の剣が折れたっ……!」
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 18:10:10.69 ID:5c9ZUkU0
勇者「そんな馬鹿な……剣士の剣は簡単には折れないはずだ……」

巨人「ユウシャ……コロスゥ……!」

巨人「……ォォオオッ!」ブォンッ

勇者「っ!?」

ドフーン!

勇者「ハァッ!」ヒュンッ

カンッ

勇者「!」

巨人「フォォオオオッ!」ブォンッ

勇者「確かに固い……!」スッ

勇者「この剣では……」

勇者「この剣も折れる」

巨人「ォォオオッ!」

勇者「大火炎玉!」ボゥッ

シュウ……

勇者「ダメージがない!? そうか、魔法鎧か!」
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 18:28:12.35 ID:5c9ZUkU0
勇者「剣士、走れるか!? 逃げるぞ!」

剣士「くっ……きついな……」

勇者「そうか。……困ったな」

巨人「ォォオオッ!」ブォン

ドフーン!

剣士「倒せ……ないのか?」

勇者「無理だ。並の魔法じゃあの鎧は崩せない。ただの剣なんてもっての他だ」

剣士「そうか……ん?」

巨人「ォォオッ!」

ザザザ……

ザザザーッ

ザザザザーッ!

勇者「水だ。まさか!?」

魔法師「……くっ、ふぅっ」
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 19:11:33.63 ID:5c9ZUkU0
巨人「――ッ! ――ッ!?」ブクブク

僧侶「魔法師、無理するなよ! まだ魔力が全然回復してないのに!」

魔法師「でも……私だけ仲間はずれはないんじゃないかなぁ……へへ」

魔法師「それに、あの魔物を倒せるのは私だけみたいだし」

剣士「魔法師……」

巨人「――ッ……――ッ……」ブク……ブク……

魔法師「でも……やっぱりムリしてしまったかも」フラッ

バシャッ バシャシャッ

ザザー……

巨人「  」

魔法師「……間に合っ……た」

僧侶「魔法師……回復するまでゆっくり休んでいて下さい」

勇者「ああ。お手柄だ」
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 19:19:03.47 ID:5c9ZUkU0
勇者「僧侶、剣士の治療を頼む」

勇者「俺は、折角だからやつらの荷物でも見ておく」

僧侶「分かった。治療出来次第僕達も物色しよう」

勇者「何かその響き、背徳感があるな」

僧侶「漁ってる感じだな」

剣士「早くしろ……」

僧侶「あーあー、分かってるよ。治癒――」

剣士「そうじゃない。漁るなら早くしろ。荷物が灰になっていってる」

勇者「何!?」

僧侶「……どうなってるんだ」

勇者「くそ! 消えるな!」ガシッ

サラサラサラサラ……

勇者「……」
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 19:25:38.06 ID:5c9ZUkU0
勇者「……」

僧侶「……治癒法」

剣士「……ありがとう」

僧侶「勇者、僕が思うに――」

勇者「魔国少尉の仕業か?」

僧侶「ああ」

勇者「ここにいるやつらがみんな死んだら、荷物も消えるって?」

僧侶「ああ」

勇者「聞いた事ないな、そんな魔法」

僧侶「魔の国にはあるのかもしれない」

勇者「……」

剣士「……?」

剣士「何だ、あれは?」

勇者「何って、何が?」

剣士「これだ。何か光っている」
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 19:35:25.16 ID:5c9ZUkU0
剣士「……金貨だな。三枚しかないが……いや、銀貨と銅貨も何枚かあるぞ」

勇者「あっちにも何か残っている」

勇者「……地図? 水の国の地図だ」

僧侶「本当か!?」

勇者「ああ。いくつか印も付いてるな」

剣士「灰を分けて探してみよう。他にも何か残ってるかもしれない」


勇者「……結局、残ったのは金と地図だけか」

僧侶「どうしてその二つだけなんだろう?」

剣士「分からない事は考えるな。勇者様、地図を見せてくれないか?」

勇者「ああ」

剣士「……この印の意味は何だろうか」

勇者「街にもいくつかあるな」

僧侶「魔族の分布じゃないかな? そう考えると、一番大きい印が魔国少尉かもしれない」

剣士「それより上のやつがこの国にいなければな」

勇者「じゃあその大きい印の場所に行ってみよう。少なくとも何を示してるかが分かるだろう」

勇者「……沼の街か」
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/17(水) 20:05:12.73 ID:5c9ZUkU0
剣士「……外はもう夜だったか」

勇者「何とか抜けられたみたいだな」

魔法師「……」

僧侶「あの麓に見えるのが多分、翠水村だよ」

勇者「じゃあもう一頑張りしてあそこまで行くか」

剣士「そうだな。私も疲れた」

僧侶「美味いご飯が食べたい」

勇者「村に暫く滞在しようと思うけど、良いか?」

僧侶「魔法師の魔力が完全に戻るまでだろ? 良いに決まってる」

剣士「今の所、急ぐ必要もないし、急いでしぐじったら困る」

勇者「なら、翠水村で魔法師の回復を待って、それから沼の街へ向かう」
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 20:10:45.83 ID:5c9ZUkU0
この辺りで一旦寝る。
アクションシーン難しすぎるだろ。
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/17(水) 20:58:03.49 ID:sHCsf8Ao
もちっと説明入れてほしいわ
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 00:19:48.00 ID:F3Aeg6AO
>>348
キャラに説明させるのも不自然だし、地文いれるのも今更だし……。
何か、ド素人にも出来るような良い改善案ないかな?

後、ストーリー上分かりづらい所とかあったら予想出来てる先の展開に触れない範囲で答えるよ。
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 00:36:16.99 ID:F3Aeg6AO
──沼の街

女「ここが沼の街ですかぁ」

男「若者が多いな」

女「教授から“若者”なんて単語が出るなんて。もう年ですか?」

男「お前よりはな」

女「ですが、本当に若い人ばかりですね」

女「あっ、でも年寄りの人達もいますよ」

盗賊「沼の街は魔法都市とも呼ばれてんだ。魔導連合本部の設置が始まりらしいな」

盗賊「学校も多い。だからこの街には魔法を習うガキと教えるジジィが多いんだ」

男「そうなのか。一種の学園都市と言った所だな」

女「魔導連合はどこにあるか分かります?」

盗賊「そこまでは詳しくねぇな」

男「なら人に聞いて行こうか」

女「ですね」
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 00:52:22.44 ID:F3Aeg6AO
──魔導連合本部

女「大きな建物ですね……お城みたいです」

男「水の街にあった城より気品に満ちてるような気がするんだが」

盗賊「まぁ、大きさで言うと王族の城の方がでかいな」

盗賊「それで、これから中に入るつもりか?」

女「そうですね」

盗賊「約束がないから無視されるかもしれないぜ?」

女「そういう時は粘りますよ」

盗賊「何にしても下手な事をするなよ? 魔法使い敵に回しちゃ怖ぇぞ」

男「脅迫は避けますよ」

盗賊「じゃあ俺は宿でも取って待っておくか。難しい話を聞かされるのは苦手でな」

盗賊「じゃあ、後でこの辺りで落ち合おう」

男「時間設定なしか」

盗賊「てめぇらが出てきたら、ここで俺が待ってはずだ」
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/18(木) 01:08:19.76 ID:F3Aeg6AO
男「……さて」

女「はい」


女「あの」

受付「はい。何のご用でしょうか」

女「魔法を教えてもらえますか?」

受付「……はい?」

男「あー、いや……魔法を教わるにはどうすれば良いでしょうか?」

受付「それならば学院に入学の申請をして頂ければ。ですが、魔法の才能はお持ちですか?」

男「どうなんでしょう。才能なんて見分けられなくて……」

受付「才能がなければ入学は出来ません。……少々お待ち下さい」

受付「あなた方の才能をこれで測って差し上げますが、いかがなさいますか?」

男「じゃあ折角ですから」

女「お願いしましょうか。それは魔石ですか?」

受付「いえ。これは水晶に魔法を掛けたマジックアイテムです。魔力に応じて色が変わります」

受付「ではこの水晶に手を乗せて下さい」
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/18(木) 01:19:00.60 ID:F3Aeg6AO
男「まずは俺からで良いか?」

女「どうぞ」

男「こんな感じで良いですか?」スッ

受付「はい。では測定を始めます」

男「……あれ?」

受付「色が変わらないのは、才能が基準値に達していないと言う意味です」

男「そうですか……」

女「次は私ですね」スッ

受付「では測定を始めま──!?」

女「教授、見てください! 色が変わりましたよ!」

男「ああ……良かったな……」

女「あの、紫ってどのくらいの才能何ですか?」

受付「……え? あ、え、えっとですね」

受付「魔力、魔石との相性度の両方とも次席レベルですよ」

受付「そちらの男性は入学出来ませんが、あなたなら難なく入学出来ますよ」

女「本当ですか!? 聞きましたか教授、聞きましたか?」

男「ああ……良かったな……」
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 01:27:14.71 ID:F3Aeg6AO
受付「では入学手続きについては僅かながらサポート致しますが──」

男「ああ、いや。つい興味で脱線してしまいましたが、入学はしません」

女「あっ……そうですね」

受付「ですがこの方の才能は入学させた方が大陸の為にもなりますよ?」

男「すみません。俺らはあまりこの大陸に関しては分からないので」

男「さっきも言いましたが、俺らは魔法を学びに来たんです。学者として」

受付「魔法学者ですか? それにしては学があまりにもないようですが」

男「物理学者ですからね」

女「私は技術者です」

男「異世界からやって来ました」
女「異世界からやって来ました」

受付「……はいぃ?」
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 01:40:52.74 ID:F3Aeg6AO
男「まぁ、知りたいのは魔法の知識だけなんですよ」

男「勿論やり方も知ってたら嬉しいんですけどね」

受付「ならそちらの方に──」

男「俺と同じ人間が魔法使いの素質があるなんて何かの間違いに決まってます」

受付「しかし現に……」

女「そうですよ。私が魔法を使えれば研究にも役に──」

男「とりあえず魔法に詳しい人を紹介してもらえませんか?」

受付「……すみませんが」

受付「魔法とは感覚が殆どの部分を占めていますので、魔法理論においてはどの
   魔法使いも同じくらいの知識は持っています」

受付「学院に通わずに知識を付けるのであれば、国立図書館に行ってみてはどうでしょうか」

受付「そうすれば、あなたも魔法を学べますよ」

男「文字が読めません」

受付「……もしかしてあなたもですか?」

女「そうですが……」

受付「残念ですが、文字を読めなければ入学出来ませんよ。諦めて下さい」

女「そんな……」
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 01:52:29.81 ID:F3Aeg6AO
受付「困りましたね……」

男「だから詳しい人を紹介して頂ければ」

受付「魔法使いの需要は高いのは分かってますか? 教師、研究者、傭兵。需要に
   対して人数がギリギリと言うのが現状なんです」

女「ですが各地に多くの学院があるんじゃないですか?」

受付「卒業出来るのは各学院毎に毎年数人何ですよ。退学者も少なくありません」

受付「ですから魔法使いと言う職業は希少なんです。それゆえに全ての魔法使い
   が多忙なんですよ」

受付「あなた方に教えられる暇がある人はいないと思います」

男「そこを何とかお願い出来ませんか?」

女「お願いします!」

受付「……困ったなぁ」
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 01:57:27.12 ID:I1E.4Tko
なんという迷惑な客wwwwww
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/18(木) 02:05:22.76 ID:F3Aeg6AO
魔導長「何だ、騒がしいぞ?」

受付「魔導長! それが……変わった人達が来まして」

魔導長「あいつらか? 何の用だ?」

受付「魔法について教えてほしい、と。何でも学者の方とか」

受付「ですが魔法についてはからっきしですし、文字も読めないんですよ?」

魔導長「それはまた妙な連中だな。魔力は?」

受付「男性の方は基準値にも満たなかったのですが……」

受付「女性の方は私が水晶に魔力を込める前に紫を示しまして」

魔導長「……そうか。安心しろ。ただの誤作動だよ」

受付「そうでしょうか……」

魔導長「それで、あいつらを中々追っ払う事が出来ないんだな?」

受付「魔法使いの人員を裂けないと説明しましたが、しつこくて」

魔導長「そうか。なら、私に任せなさい」
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 02:15:08.48 ID:F3Aeg6AO
魔導長「こんにちは。私は魔導連合の長をしております魔導長です」

男「男です。魔法を学びに来た学者です」

女「女です。魔法を学びに来た技術者です」

魔導長「そうですか。それは感謝な事ですね」

魔導長「ですが受付も話した通り、無理に人員はさけないんですよ」

男「お願いします!」

女「そこを何とか!」

魔導長「はぁ……すみませんが──念動」

男「うわっ、あれっ!?」フワフワ

女「お、下ろして下さい!」フワフワ

魔導長「諦めると言う言葉をまず学んで下さい」

男「うわぁ!?」ヒュー

女「ちょ、待っ」ヒュー

魔導長「では、さようなら」

バタンッ

魔導長「ああ、明日の五時くらいに客が来るから、私の部屋に通すように」

受付「畏まりました」
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 02:18:04.96 ID:F3Aeg6AO
ああっ、何だよこのミス! 何て書こうとしたんだよ、俺!
多分こうだと思う。

魔導長「そうですか。それは感謝な事ですね」

魔導長「そうですか。それは立派な事ですね」
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 02:25:52.55 ID:F3Aeg6AO
盗賊「やぁお帰り。何をやった?」

男「いたた……いや、必死に頼んでただけだよ」

女「別に締め出さなくても良いじゃないですか!」

盗賊「いや、てめぇら迷惑掛けてる自覚はあるのか?」

男「迷惑を承知で頼んでるんだよ」

女「そのくらいの覚悟は出来てます」

盗賊「てめぇらは覚悟出来てても向こうにはねぇんだよ……」

盗賊「それで、どうする? 宿は取れてるが」

男「もう一度頼んでみよう」

盗賊「止めとけ。もう一度締め出されるのがオチだ」

男「ならもう一度」

盗賊「……宿に行くぞ」
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 02:46:36.67 ID:F3Aeg6AO
そろそろ寝ます。また明日〜。

絵って難しいんだな。イメージ固めようと女を描いてたらそう思った。上手く描けない。
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/18(木) 11:41:00.36 ID:J1gMDb2o
誰かが絵を描く→絵で盛り上がる→肝心のストーリーそっちのけ→スレが寂れて終了

懐かしい流れだww
絵とかイメージとかは読んでる人任せで良いと言ってみる
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 13:31:44.53 ID:F3Aeg6AO
絵を描いたのは、自身のイメージをしっかりすれば書きやすくなるかなと思っただけ。
結果は失敗だったけど。
そもそも俺は下手すぎるからあげられないよー。

まぁイメージは各々に大体任せるのは同意見。
髪一つとっても、ショートでもセミロングでもロングでも良いわけだし、ポニーテールでもツインテールでもモヒカンでも良いわけだし、黒でもブロンドでも蛍光ピンクでも良いわけだからな。
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/18(木) 13:49:19.64 ID:iiR3eGoo
俺も作者が「こんな感じ」と提示しない限り外観は気にしないな
それぞれのキャラの個性と言動が安定してれば十分だと思ってるよ
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 17:10:57.63 ID:3lqUANM0
もっと厨展開があってもいい
SSはあってなんぼだろ
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 19:17:17.48 ID:F3Aeg6AO
飯食ってるとさ、不思議に思うんだよね。
ビシュアル的にキモくね? とか
俺、今異物飲んでるよな? とか

>>365
安定……してるのかな?

>>366
どの次元においても半端なやつしか書けないんだ。
もっと精進出来るよう善処はしたい。
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 19:26:00.55 ID:F3Aeg6AO
──宿屋

盗賊「それで、どうするつもりだ? てめぇらの研究とやらは息詰まりだぜ?」

男「もう一度頼み込むしかないだろ」

盗賊「それは無駄な輪に入るだけだ」

女「無限ループは避けましょう、教授。時間の無駄です」

男「いや、熱意があれば伝わる。これは無限ループではなく、亜無限ループだ」

女「何にしても、もっと良い方法があります」

男「他にあるのか?」

盗賊「ほう」

女「一つは勇者さんの旅に同行する事ですが……」

男「魔法師さんか」

女「勿論問題があります」

盗賊「やつらの居場所が分からねぇ、って事か。そこらを行き回ってるからな」

女「そこで現在の最も有用なルートは……」

女「私が魔法学校に入ります」
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/18(木) 19:36:57.70 ID:F3Aeg6AO
盗賊「……はぁ?」

女「問題があると思いますか?」

盗賊「大ありだろ。学院は魔法の才能がねぇと入れねえ」

盗賊「聞いた話によると、魔石と身体との相性の度合いで決まるらしい。魔力も
    連合で決められた基準値以上じゃなけりゃ無理だ」

男「いや、良いんじゃないか? 俺も欲しかったな、魔法の力」

盗賊「良いだと? 俺の話を聞いてなかったのか?」

男「連合の受付で測定してもらった。俺は才能なしだが、女さんは天才レベルらしい」

盗賊「おいおい、マジかよ……」

女「なので、私が入学します。そうすれば私自身が魔法使いとしての験体にもな
  れますし、その他多くの魔法使いとのパイプにもなるでしょう」

女「百利あって一害なし、です」
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 19:50:57.95 ID:F3Aeg6AO
女「問題は、入学する為に必要な才能以外の条件をクリア出来るか、です」

男「一つは識字だな」

盗賊「それは俺も聞いた事があるな。字の読めねぇやつは門前払いってな」

女「盗賊さんは文字をどこで習ったんですか?」

盗賊「俺は母ちゃんに教えてもらったね。殆どの奴らがそうだ」

盗賊「母ちゃん、父ちゃん、祖母ちゃん、祖父ちゃん、兄ちゃん、姉ちゃん……近所のおばさんだっていい」

男「学校には行かないのか?」

盗賊「あ? 学校なんざ魔法使いでなけりゃ貴族くらいしか行けねぇよ」

男「つまり、高いんだな」

女「ですが国民全員がそんな事しているのであれば、識字率が高く思えるのも納得です」

女「では、本題に移りますが、盗賊さん」

盗賊「?」

女「この大陸の文字を教えて下さい。それで文字においての問題は解決です」
371 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 20:00:12.05 ID:F3Aeg6AO
盗賊「まぁ、教えるのが下手で良いなら、俺は良いけど……」

盗賊「まず言葉ってのは喋れなければ分からないもんだ」

盗賊「てめぇらはその自動翻訳何とかってやつで俺らの言葉を理解してんだろ?
   それなしで俺の言葉を理解出来なけりゃ話になんねぇぞ」

女「それこそ、赤ちゃんに一から教える作業ですからね」

盗賊「ああ。俺もそこまで付き合ってらんねぇ」

男「安心しろ。女さんは天才だ」

盗賊「魔法じゃそうかもしれないがな」

男「いや、そのままの意味で、天才なんだよ」

盗賊「……仮にそうだとしても、赤ん坊が言葉を喋ろうとするには数年は掛かる」

女「私が天才かどうかは置いておきましょう。ですが赤ちゃんとは違い、私には
  強みがあるのは事実です」

盗賊「その強みってのは何だ?」

女「私が赤ちゃんではない事ですよ」
372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 20:39:44.07 ID:F3Aeg6AO
男「そう。俺らは赤ちゃんじゃない。意味を持つ言葉を、少なくとも一つ知ってる」

盗賊「いや、赤ん坊と何の変わりもねぇ。まずその翻訳何とかを取って、理解出
   来てない言葉で『これが“イーア”だ』って説明しなきゃなんねぇ」

女「それが取らなくても“イーア”だと分かるんですよ」

盗賊「……てめぇ、それで翻訳されたんじゃねえのか?」

女「流石に文字単体は翻訳出来ませんよ。“あ”は“あ”であり、“A”ではないんです」

盗賊「何だよ、その“あ”とか“A”ってのは」

女「それが私達の国の言葉で一音です。これは翻訳のしようがありません」

女「つまりあなたが何かの文字を指して『これが“イーア”だ』と言えば、私は
  その言葉通りに理解出来ます」

盗賊「成る程……」

男「赤ちゃんじゃないと言う強みの一つだな」
373 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 20:49:29.00 ID:F3Aeg6AO
女「それともう一つ。私達はもはやあなた達の言語を全く理解していないと言う
  訳ではありません」

盗賊「そうなのか?」

男「俺はまだまだ理解に乏しいけどな」

女「盗賊さん、私の耳に何がついていますか?」

盗賊「自動翻訳何とかってやつだろ? 確かそこでてめぇらの言葉に換えて聞いて
   るんだったな」

女「そうです。では反対側の耳には何がついてますか?」

盗賊「何がって……何も」

女「つまり私達は二種類の言語を同時に聞いているのです」

男「現地の言葉を最初から理解して、かつ後々実際に身につけられるようにして
  いるんだ。両耳ならいつまで経っても、母国語離れが出来ないからな」

女「つまりこの装置を外しても、多少は何を話しているか理解出来るんですよ」

盗賊「そんなやり方があったのか……」

男「まぁ、こんな短期間で理解する人も凄いんだがな」
374 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 21:02:17.12 ID:F3Aeg6AO
盗賊「つまり赤ん坊に教えるよりは格段に楽って訳か」

女「そういう事です」

盗賊「それで、何を教えれば良いんだ?」

女「音になる基本的な文字と、良く使う単語、熟語。文法も少しあれば大丈夫と
  思います」

盗賊「それでも中々大変そうだな……」

女「頼まれてくれますか?」

盗賊「教えるのは下手と思うがな」

女「これで文字に関しての問題もクリア出来ますね」

男「他に必要なものがないか、俺が明日から調べておこう」

女「それなら盗賊さんも一緒にした方が早いと思いますが」

男「言葉を教わる立場なのに人使い荒いな」

女「この世界での情報収集はアナログですから、人は多い方が良いですよ」

盗賊「俺は別に良いが、女の勉強時間が減るぜ?」

女「減りませんよ。明日の朝までに叩き込んでもらいますから」

盗賊「……は?」

女「今夜は寝かしませんよ」ニコッ
375 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 21:09:51.64 ID:F3Aeg6AO
眠くなってきた。
ちょいとお休み。
376 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/18(木) 21:24:20.66 ID:I1E.4Tko
女凄いな
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/18(木) 21:41:35.81 ID:iiR3eGoo
女「作者も寝かしませんよ」ニコッ

378 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 01:24:57.17 ID:AJHo1wAO
あぁ……おはよう……。
低血圧で心臓が痛い……。
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 01:37:51.98 ID:AJHo1wAO
(翌朝)

男「……ろ」

男「おーい、そろそろ起きろ。もう三時だ」

盗賊「くそ……もっと寝かしてくれ……」

男「もう昼だぞ? そろそろ飯食って情報を集め始めないと日が暮れる」

盗賊「うるせぇ。てめぇはぐっすり寝てるからそんな事が言えんだよ」

盗賊「女だって今日ばかりは寝てるだろ……」

男「女さんなら二時くらいに出て行ったけど? 丁度俺が起きた時だ」

盗賊「……何ぃ!? あいつに教え終わって半時の半しか経ってないじゃねぇか!」

盗賊「あいつはそれだけの睡眠時間で良いのか!?」

男「少し勘違いしてるようだな。女さんは寝てない」

男「復習をしてたらしい。これはスイッチ入ったな、はははっ」

盗賊「……」

男「ちなみにこうなった女さんは、九十六時間は動き続ける」

盗賊「……こっちの時間に換えるとどのくらいだ?」

男「二十四時」

盗賊「……」
380 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 01:45:53.23 ID:AJHo1wAO
盗賊「何なんだ、あいつは? 化け物か何かか?」

男「隠れた天才、って所だな」

盗賊「天才なら隠れねぇだろ」

男「それが隠れるんだな」

男「俺らの世界でも、女さんを知ってる人は、それなりの接点を持ってる人だけなんだよ」

盗賊「ほう」

盗賊「それで、その天才娘はどこに行ったんだ?」

男「国立図書館って言ってたな」

男「とりあえず識字力をしっかりさせたいって言ってたな」

盗賊「って事は、辞書でも読んでるのか?」

男「はは、かもしれないな」

盗賊「いや、俺は冗談で言ったつもりなんだが……」
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 02:36:10.00 ID:AJHo1wAO
盗賊「じゃあ俺達も働くとするか」

男「やっとその気になってくれたか」

男「まだ寝たいなら良いんだぞ。俺一人でやるから」

盗賊「一人だけ休めるかよ。てめぇとは違うんだよ」

男「俺は休める時に休んだだけだ」

盗賊「てめぇも一緒に勉強すりゃ良かったじゃねぇか」

男「俺が混じると女さんの邪魔になるんだよ」

男「さて、やっぱり入学の事は学校に行けば良いのかな?」

盗賊「いや。学院については魔導連合だ。学院は関係者以外入れないよう結界が
   張ってある」

男「破れないのか?」

盗賊「簡単なものだから、魔法使いなら破る事が出来る」

男「厄介だな……」

盗賊「俺はこれから連合に行くってのが心配だ」

男「どうしてだ?」

盗賊「てめぇがいるからだよ」
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 02:45:48.30 ID:AJHo1wAO
──魔導連合本部

男「こんにちは」

受付「……また来たのですか?」

男「用がありまして」

受付「それでしたらお断りしますと何度も」

盗賊「それとは違う用だ」

受付「……あなたは?」

盗賊「盗賊。昨日は連れが迷惑かけたみたいだな」

男「誰が連れだよ……」

受付「はあ……それで、“今回の”用件は何でしょうか」

男「昨日来たもう一人の女性の方を学院に入れようと思いましてね」

受付「決断なされましたか。ですがまずは文字を読めるようになって下さらないと」

盗賊「それについては大丈夫だ。俺が一晩掛けて教えてやったからな」

受付「一晩では身につくものじゃないでしょう」

盗賊「それがついちまったんだよ。俺もびっくりだぜ」

男「今も図書館で勉強しているでしょう」

受付「は、はあ……」
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 02:55:23.51 ID:AJHo1wAO
受付「それで用件と言うのは……」

男「学院に入る為の必要事項です。それを教えてもらいたいと」

受付「どの学院を志願しておられるのですか?」

男「え、えっと……」

盗賊「とりあえず国立魔法学校だな。他の学院の情報も教えてくれると助かる」

受付「分かりました。入学形式は一般入学と編入学の二種がありますが」

盗賊「どっちが良いんだ?」

受付「彼女はどちらも選べる立場ですから、早く入りたいのであれば編入学ですね」

受付「ですが時期的に見て、一般入学でも良いと思います」

盗賊「じゃあ両方の場合を教えてくれ」

受付「分かりました。資料を探すのに時間が掛かりますので、明日またお越しください」
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 03:07:21.52 ID:AJHo1wAO
男「あれ? 案外早く終わったな」

盗賊「それが普通なをだよ」

男「じゃあ何で俺達の時は早く対処してくれなかったんだよ」

盗賊「対処されてただろ?」

男「そうか。この世界は違う世界の人に優しくないんだな」

盗賊「てめぇらの世界の常識がずれてんじゃねぇかな」

男「そんな訳ない」

盗賊「その自信はどこからくるんだよ……。で、これからどうする?」

男「学院を回ってみようかと思う」

盗賊「結界が張ってあると言ったはずだろ」

男「外からは見れるはずだろ?」

盗賊「まぁ外見だけは見れるな」

男「では行ってみよう。そういう情報もないよりは良いだろう」
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/19(金) 03:29:44.09 ID:Twv33kUo
支援
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 03:56:10.17 ID:AJHo1wAO
──水国立図書館

女「……」ペラ…ペラ…

女「……?」

女「この単語……」パラパラパラ…

女「……」ペラ…ペラ…

学院生「なぁなぁ、学生」

学生「何?」

学院生「あれ、見てみろ。凄えぞ」

女「……」ペラ…ペラ…

学生「へぇ。可愛いね。あの娘もどこかの学院に入ってるのかな?」

学院生「かもな。横に積んである本のタイトル見てみろ」

学生「ん……良く見えないな……」

学院生「魔法使えよ。拡大鏡膜だよ」

学生「そうか」

学生「  」ブツブツ

学生「『すぐにでも書ける大陸標準語』『使える大陸標準語』……文字みたいだな」

学院生「って事は学生じゃないかな」

学生「少なくとも学院生じゃないね」
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 04:07:00.01 ID:AJHo1wAO
女「……」ペラ…ペラ…

学院生「でも本当に言葉の勉強中か?」

学生「そうなんじゃないの? 辞書も横に置いてるし」

学院生「不思議に思わないのか?」

学生「何を」

学院生「ページをめくるのが早過ぎる。あれじゃただでさえ読めるはずがない」

女「……」ペラ…ペラ…

学生「言われてみれば」

学生「勉強してるフリじゃね?」

学院生「かもな」ガタッ

学生「どこ行くんだよ」

学院生「何、彼女の勉強を手伝ってあげようと思ってね」

学生「下心まる見え」

学院生「ばれてるか」

学院生「まぁ国立学院第三学年首席の俺が直々に手伝ってあげれば、あまりの頭
    の良さに惚れる事もあるのさ」

学生「そう上手く行くかな?」

学院生「ま、今のは誇張表現と言うやつかもな」
388 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 04:15:07.36 ID:AJHo1wAO
学院生「前の席良いかな?」

女「……」ペラ…ペラ…

学院生「無視かよ……」ガタッ

女「……」ペラ…ペラ…

学院生「ねね、何の勉強してるの? 良かったら俺、教えてあげるけど」

女「……」ペラ…ペラ…

学院生「ねぇ」ポン

女「?」ピクッ

女「……誰ですか?」ペラ…

学院生「そ、そんなに睨まないでよ。俺はただの学院生。国立魔法学校の」

女「学院は行かないんですか?」ペラ…ペラ…

学院生「今日は休日だよ」

女「そうですか」ペラ…ペラ…

学院生「うん。それで──」

女「……魔法学校?」
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 04:22:18.09 ID:AJHo1wAO
女「魔法学校って……魔法を習う所ですか?」

学院生「そうだけど。ちなみに俺は学院生。国立魔法学校の第三学年首席」

女「第何学年まであるんですか?」

学院生「五だね」

女「それで第三学年首席って、頭良いんですね」

学院生「はは、それ程でもないよ」

女「私、魔法に興味があるんですよ。だから学院に入る為に今文字を理解出来る
  ようにしているんですが」

学院生「どこの出身?」

女「日本です」

学院生「……えっと、どこかな?」

女「小さい島国ですよ。気にしなくても支障はありません」

学院生「そっか」
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 04:29:39.29 ID:AJHo1wAO
学院生「それで、その日本では文字がないの?」

女「いえ。あるんですが、この大陸標準語ではなく日本語なので」

学院生「だから文字の勉強か」

学院生「それで、どの学院志望?」

女「どこが良いかは分からないので、まだ決めてませんね」

学院生「国立にしなよ。俺もいるからさ。分からない所とか聞きにきてよ」

女「そうですね……考えておきます」

学院生「魔法に興味があるって言ってたね。今、聞きたい事とかあるかな?」

女「良いんですか?」

学院生「ああ。魔法の事なら、もう殆どは分かるよ」

女「ではお言葉に甘えさせてもらいましょう」
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/19(金) 04:38:34.05 ID:AJHo1wAO
女「まず、魔法はどのようにして使えるようになるんですか?」

学院生「何だ、そんな事で良いの?」

女「教えて下さい」

学院生「そうだね。まず魔力が必要なんだ。魔力がないと魔法が使えない」

学院生「自分の持つ魔力が高ければ高い程高度な魔法が使えるようになれるし、
    連発回数も多くなるんだ」

学院生「でもそれだけじゃ魔法は使えないよ。魔法を使うには必ず魔石が必要になる」

学院生「自分の魔力と魔石の相性が合って、初めて魔法が使えるんだ」

女「魔石の大きさに変わりはありますか?」

学院生「大きさに変わりはないね。変わるのは種類」

学院生「どの魔石との相性が一番良いかによって、得意な属性が変わるんだよ」
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [支援]:2010/02/19(金) 04:38:39.95 ID:Twv33kUo
学院生小一時間問い詰めタイム発動ですね。わかります。
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/19(金) 04:45:00.07 ID:AJHo1wAO
女「成る程。ですから魔法が使える人は魔石を身につけてたんですね」

学院生「そういう事。他には?」

女「魔石との相性とはどのような事象によるもの何ですか?」

学院生「実際に手に取れば分かるよ。これが一番しっくりくる、ってね」

女「いえ、そういう事じゃありません」

学院生「え?」

女「私が聞きたいのは、魔力がどうして魔石と相性が合うかです」

学院生「だからそれは──」

女「共鳴ですか? 干渉ですか? 反応ですか?」

学院生「え、えっと……言ってる意味が分からないんだけど」

女「……そうですか。ならもう良いです」ペラ…
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 04:55:21.02 ID:AJHo1wAO
学院生「あれ? もう良いの?」

女「はい。そのくらいの知識なら図書館にあると考えました」

学院生「でも今文字を勉強してるんでしょ?」

女「はい」

学院生「それならそういう本を読めるようになるのはずっと先だよね」

学院生「俺が説明してあげた方が早いよ?」

女「そうかもしれませんね。ですが、“ずっと先”なんて大袈裟ですよ?」

学院生「そうかな?」

女「ええ。明日には言語学習以外の本にも手をつけられます」

女「文字の本は、後ここに積んであるので最後ですよ。今日中に終わります」

学院生「その量は一週間掛かるよ? ましてや勉強でしょ?」

女「この量が最低限持ち運べる量だったんですよ。他の言語学習に関しての本は
  読み終わってます」

学院生「そうなんだ」

女「あまりの多さに一日中立ち読みしなきゃならないかもと思いましたよ」
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 05:04:38.54 ID:AJHo1wAO
学院生「……え? 一日中って」

女「はい」

学院生「言語だけでも何冊もあるよね?」

女「ありましたね」

学院生「もしかして今日、全部読んだの?」

女「ここに積んであるの以外はそうですね」

女「辞書片手に立ち読みはなかなか疲れました」

学院生「あのさ」

女「はい?」

学院生「さっきから本をめくる速さが尋常じゃないんだけど、まさか……本当に読めてるの?」

女「読めてますよ。確かめますか?」ペラ…ペラ…

学院生「まじかよ……ありえねぇ……」

女「速読法、教えましょうか?」

学院生「あ、ああ」

女「右ページと左ページを同時に読むんです。後の速さは慣れですね」
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 05:10:08.86 ID:AJHo1wAO
学院生「……自分で何言ってるか分かってる?」

女「今私がやってる事ですが」ペラ…ペラ…

学院生「!」ガタッ

女「どうしました?」

学院生「帰るよ……。勉強頑張ってね」

女「ありがとうございます。では、また」

学院生「ああ」

学院生「学生、帰ろう」

学生「え、え? どうしたの?」

学院生「自信なくした……」

学生「フラれたのか? そんな事でくよくよすんなよ」

学院生「そんな単純な事じゃないよ……」

学生「?」

学院生「彼女は……どうかしてる」

学院生「完全にやられたよ……」
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 05:15:33.94 ID:AJHo1wAO
女「……なんだったんだろ」

女「……」ペラ…ペラ…

女「……」ペラ…ペラ…

女「……ふぅ」パタン

司書「調子はどうですか?」

女「あ、はい。お蔭様で」

司書「そうですか。それは良かったです」

司書「読み終わった本かあれば戻しておきますよ?」

女「ありがとうございます。では、これとこれとこれ、お願いします」

司書「はい。勉強頑張って下さいね」

女「はい」

女「さて、と」

女「……」ペラ…ペラ…

女「……」ペラ…ペラ…
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 05:52:28.11 ID:AJHo1wAO
──魔導連合本部、魔導長室

魔導長「……」

魔導長「……ふむ」

魔導長「よく来てくれたな、魔国少尉」

魔国少尉「ご招待頂きありがとうございます」

魔導長「まぁそこに掛けてくれ」

魔国少尉「約束通り、他に誰もいないでしょうね?」

魔導長「ああ」

魔導長「お主なんざ私一人でも十分倒せよう」

魔国少尉「はははっ、愉快な事をおっしゃる」

魔導長「……それで?」

魔国少尉「はい」

魔導長「何の企みがあって私と接触してきた?」
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/19(金) 06:03:10.87 ID:AJHo1wAO
魔導長「もしや私を暗殺するつもりか?」

魔国少尉「それならばとっくに殺ってましょう」

魔導長「お主は魔族。その魔族が私に何の用だ?」

魔導長「魔導連合発祥のこの地に来るとは、命知らずなやつだ」

魔国少尉「私達魔族には、高等魔法を使う者も多い。私のように」

魔国少尉「魔法を使う魔族相手に何人人間の魔法使いを仕向けようと、無駄な事」

魔国少尉「私のように」

魔導長「余裕、と言う訳か」

魔国少尉「あなたも下手に手を出すより、こうして面談の場を用意しています」

魔導長「……」

魔国少尉「私を殺すくらいた易いのでしょう?」

魔導長「私は、何故このような接触を望んだのかが知りたいのだ」

魔導長「お主ら魔の国は……何を企んでいる?」

魔国少尉「これと言って何も企んではいません。では、本題に入って入りましょうか……」
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 06:15:35.01 ID:AJHo1wAO
──宿屋

盗賊「結構歩いたな。どうだった?」

男「やっぱり国立魔法学校だな。外見で決めるなら」

盗賊「聖月魔法学校とか綺麗な建物だったじゃねえか」

男「ああ。あそこは駄目だ。外見から見たら」

盗賊「外見で分かるのかよ」

男「見える程度で評価しただけだ」

男「ただ、国立は設備が整っているように見えた。多少汚いがな」

盗賊「そうか」

男「まぁ、最終的に決めるのは女さんだ。明日貰う情報も含めてな」

盗賊「……なあ」

男「ん?」

盗賊「女ってどんなやつ何だ? いまいち分からねぇ」

男「そうだな。俺も付き合いはそれなりにあるが、良く分かってないんだ」

男「とりあえず、天才ってのは分かるんだけどな」
401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 06:16:43.80 ID:AJHo1wAO
よし。続きはまた別の時間に。
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 12:24:22.18 ID:AJHo1wAO
やべぇ。今まで気がつかなかった!
設定の修正をします。
女が必ず起床する時間。
午前七時→午前七時半
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 12:56:46.51 ID:aQ6WBjw0
すんげー期待してる
404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 19:01:26.31 ID:AJHo1wAO
>>403
すんげープレッシャーwwww
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 19:13:13.21 ID:AJHo1wAO
盗賊「俺も今日、あいつが本当にすげぇやつだと分かった」

男「きっと何か、感性が違うんだろうな」

盗賊「病気じゃねぇかな。見聞きした事は絶対忘れないってやつ、聞いた事がある」

盗賊「……いいや、違うな。あいつは忘れてた」

男「そうだな。極端に記憶力が高いと言うなら当て嵌まるかもしれないけど」

盗賊「てめぇと会った時からそうだったのか?」

男「ん……俺に昔語りさせるつもりか」

盗賊「人の昔話は面白い。シジイの話以外はな」

男「違いがあるのか?」

盗賊「シジイの昔話は自慢ばかりだ。しかも何回も聞かされんだ。うんざりだろ?」

男「ははは、成る程」

男「まぁ、昔話くらいは良いかな。機密扱いじゃないし」
406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 19:36:11.90 ID:AJHo1wAO
男「そうそう。俺らの間柄についてどう思う?」

盗賊「は? そうだな……仲の良い連中とは思ってるが」

男「おお。言って欲しい事を言ってくれたな」

盗賊「何なんだよ……」

男「実はな、俺らがこうやって肩を並べて研究するのは初めての事なんだ」

男「最初会った時は、女さんを毛嫌いしてたからな」

盗賊「そうは思えないが?」

男「そうなんだよ」

男「あいつは高校中退したかと思う年齢で、当時俺も勤めてた開発研究所に来たんだ」

盗賊「分からねぇとこは聞いて良いか?」

男「ああ。高校だな?」

盗賊「そうだな」
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 19:53:10.01 ID:AJHo1wAO
男「俺らの国ではある学校制度があるんだ」

男「六歳になったら小学校で六年間、十二歳からは中学校で三年間、教養を学ぶ」

男「これを義務教育と言って、基本的に国民全員がしなければならない」

盗賊「その小学校、中学校ってのは学校の種類か?」

男「そうだ」

男「そして通常、中学校を卒業すれば受験をして高等学校にさらに三年間」

男「中卒と高卒だけでも世間の目に差があるんだ」

盗賊「つまり……どういう事だ?」

男「上の学校を卒業する程、職にも就きやすいし世間からも優遇されるって事だ」

男「高校を卒業すれば、また受験をして大学に四年間、今度は専門知識を学ぶ」

男「この過程が終わって漸く、大半の人は仕事に就く。浪人、留年がなくとも、
  職に就くのは二十二歳が一般的なんだ」

男「さらに大学院って所でさらに二年勉強するやつも多いけどな」

盗賊「事情がこっちと違うんだな」

男「だが、どういう訳かその過程を飛ばして女さんは開発研究所に来た」

男「五年前……彼女が十七歳の時だな」
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 20:12:37.52 ID:AJHo1wAO
〜五年前〜
──開発研究所

技師「少し作業を止めて聞いてくれ!」

「?」

「なな、あのコ誰かな?」

「娘さんじゃないか?」

「所長に娘なんていたっけ?」

男「……」

技師「紹介しよう。女さんだ。今日からみんなと共に働いてもらう」

「え? 新しい研究者の募集なんてしてたか?」

「いやいや、その前にあのコ見ろよ。絶対高校生くらいだ」

女「女です。これから、よろしくお願いします」

技師「よし。では早速仕事に移ってもらうが、内容は把握しているな?」

女「はい」

「女さん、一つ質問良いかな?」

女「何でしょう」

「少し失礼かもしれないけど、何歳?」

女「十七です」

「おい……マジかよ……」

「なんで技師さんはあんな若いの入れたんだ?」

「よく、考えてる事が分からなくなるな。なぁ、男」

男「今に始まった事じゃないけどな」
409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 20:29:56.69 ID:AJHo1wAO
「いやぁ、疲れた疲れた」

「また所長のアイデアには驚かされるね。時代を先取りしてるって言うか」

「そうそう。流石は“今世紀の逸脱者”って記事に書かれただけの事はあるよな」

男「またそんな昔のを持ち出して……」

女「お先に失礼します」

「え、ああ。お疲れ」

技師「ああ、ちょっと待ってくれないか。帰る前に俺の部屋に来てくれ」

女「?」

女「はい。分かりました」

「女さんって優遇され過ぎじゃないか?」

「確かにな。何か怪しい」

「実は就職する為に身体で所長を釣ったらしいよ」

「あの技師さんがか? まさか。女さんも今のところミスはないし」

男「技師さんがフォローしてるからだよ。そのくらい分かるだろ」

「ああ。確かに」

「じゃあ何か? さっきの呼び出しって……」

男「ありえない話じゃないだろ」

「うひゃー。羨ましい! 俺も誘惑されてえ!」

「やめとけ。きっと金を取られるだけだ」
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 20:43:16.07 ID:AJHo1wAO
女「それでは、失礼します」

技師「ああ。明日も頑張ってくれ」

女「はい」

技師「……」

男「技師さん」

技師「君か。まだ帰ってなかったのか?」

男「少し聞きたい事がありまして」

技師「何だ?」

男「なぜ女さんを入れたんですか? 研究チームには若すぎます」

技師「そう思うか?」

男「みんなそう思ってます」

技師「確かにあまり馴染めていないようではあるな」

男「どうして何も分からないような人を入れたのか、答えて下さい」

技師「あの娘は優秀だ。それが分からなければ、人を見る目がないんだよ」

男「あなたが騙されているんです」

技師「いいや。俺の見る目は確かだ」

技師「その内分かる」

〜  〜
411 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 20:56:15.91 ID:AJHo1wAO
男「それからも女さんは、陰で中傷されながらも仕事をしてたよ」

男「俺は彼女の優秀さを理解しないままに研究所を辞めて教授になった」

男「技師さんと俺は当時ある部分で意見が合わなかったんだよ」

盗賊「何だ?」

男「魔法の存在」

盗賊「じゃあてめぇの負けって事か」

男「その通り。そして女さんの勝ちでもあるんだよ」

男「女さんが魔法の存在に肯定的と知ったのは俺が教授になって半年後の事でな」

男「その時の記事から、彼女の別称が“技師二世”。世界最高の技術者の後継者
  だが、同時に世界最高のマッドサイエンティストの後継者でもあると言うレ
  ッテルが貼られた瞬間だった」

盗賊「女はその技師の唯一の理解者だった訳か」

男「そうなるな。技師さんの奥さんでさえ、魔法は馬鹿げてると言ってたんだ」
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 21:04:58.06 ID:AJHo1wAO
男「で、その時の記事のお陰で彼女の経歴に興味が沸いてな」

男「仮にも、世界最高の技術者の後継者だ。たった一年半で貰えるものじゃない」

盗賊「で、調べたって訳か」

男「さっき学校の経緯は言っただろ?」

盗賊「ああ」

男「調べたら、十七歳で大学を卒業してる事が分かったんだ」

盗賊「おい。さっきは二十二で卒業って言ってなかったか?」

男「普通はね」

男「女さんは中学を卒業すると高校には行かず、外国の大学に入ってた。その大
  学も二年で卒業」

男「その時漸く、技師さんが女さんを連れて来た理由が分かったね」

男「本物の天才だったんだよ」

盗賊「成る程な。それでてめぇも女に対する考えが変わったってわけか」

男「それだけじゃないけど、そのきっかけだな」
413 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 21:13:34.71 ID:AJHo1wAO
ガンガンッ

女「ただいま戻りました。ドアを開けてくれませんか?」

盗賊「お、帰ってきたな」

男「噂をすれば、ってやつか」

女「いるなら早く開けて下さい」

男「あー、分かった」

ガチャ

男「おかえ……って何だそれは」

女「見ての通り、本ですが」

盗賊「図書館から借りてきたのか?」

女「はい」

盗賊「限度ってものがあるだろ……」

女「司書さんにも言われましたが、明日返すと言ったら許可してくれたんです」

男「今夜読む本か」

女「はい。早く図書館の本を読破したいので」
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 21:31:40.97 ID:AJHo1wAO
盗賊「あれ? 借りてきた本に言葉の本がないんだが」

女「その辺りは一通り読破して来ましたから」

男「流石だな」

女「コツが分かれば簡単ですよ」ニコッ

盗賊「て事は、もうてめぇに翻訳はいらないんじゃねぇのか?」

女「まだまだ聞き取り辛い所もありますし、やっぱり日本語が一番理解しやすい
  んですよ」

盗賊「なんだそりゃ」

女「そうそう。図書館で国立の学院に通ってる人と会いましたよ」

男「本当か? どんな感じだった?」

女「何と言うか……」

女「魔法学って結構いい加減なのかもしれませんね」
415 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 21:33:28.61 ID:AJHo1wAO
はい、ここで詰〜まり!
言い訳すると眠い。
416 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/19(金) 21:35:44.51 ID:aQ6WBjw0
>>415
乙!
417 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 00:41:51.19 ID:bDYKxA60
終わりじゃないよね?
418 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 01:08:43.38 ID:zHwl.nQo
死ぬ気でやれば何でも出来る!
419 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 03:21:58.37 ID:jIGRNHoo
楽しみにしてるぜ!
420 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 13:14:09.99 ID:MWBGmgAO
>>417
まだまだ続きますよ。
展開とか決めてないけど

>>418
どう足掻いたって、結局は睡魔には勝てないのさ……
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 19:47:32.49 ID:MWBGmgAO
──沼の街、酒場
(五日後、午後八時頃)

勇者「やっと沼の街だな。宿も決まったし、ご飯にしよう」

魔法師「ごめん……私の力が足りないばかりに……」

剣士「魔法師のお陰で生きているんだ。力不足な訳がなかろう」

僧侶「そうそう。元はと言えば勇者の無謀な作戦がいけなかったんだ」

勇者「その通り。魔法師が無茶してしまったのも俺の責任だ」

魔法師「いえ……私がもっと力があれば足止めする事もなかったんだし……」

勇者「まぁ、その辺りはゆっくり付けていけば良いよ」

勇者「俺達もまだまだだからさ」

僧侶「店員さん! 注文良いかな?」

盗賊「おう!」
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 20:00:07.93 ID:MWBGmgAO
盗賊「──以上か?」

僧侶「はい」

盗賊「出来次第持ってくる」

勇者「さて」

剣士「うむ」

勇者「明日から情報を集めようと思ってるけど、別の用事があれば先に済ませたいな」

勇者「何かあるか?」

魔法師「私は連合に顔を出しておきたいな。折角来たから」

僧侶「僕はいつも通りこの街の白羽教会に挨拶に行こうかな」

僧侶「教会なら何か分かるかもしれないしね」

剣士「私は新しい剣を買っておきたい。丁度良いのが売っていれば良いが……」

勇者「みんなしたい事があるのか。なら明日は自由行動にしようかな」

勇者「但し街中に魔族がいる可能性を忘れちゃ駄目だ。慎重に行動するように」

剣士「ああ」
魔法師「分かってる」
僧侶「うん」

盗賊「ご注文の品、お待ちぃ!」
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 20:19:49.23 ID:MWBGmgAO
勇者「ああ、ちょっと店員さん」

盗賊「あ?」

剣士「この酒場の店員、柄悪いな」ヒソヒソ

魔法師「ねー」ヒソヒソ

勇者「街の噂とか聞きたいんだけど」

盗賊「街の噂だ?」

勇者「そうそう。近くに魔物が出て被害が出た、とか。最近どこどこの誰々が怪しい、とか」

盗賊「ああ、そういう事か」

盗賊「すまねぇな。俺は役に立てそうもねぇや」

勇者「些細な事でも良い」

盗賊「そうじゃなくてだな。俺がこの街に来たのは数日前なんだ」

盗賊「だからそういうのは全く知らねんだ」

勇者「……そうか」

盗賊「だからそういう事は他の連中に聞いてくれ」
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 20:42:08.75 ID:zHwl.nQo
盗賊なにしてんだwwwwww
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 22:27:19.87 ID:MWBGmgAO
気を抜いたら寝ていた。
うっかり、うっかり。
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 22:38:17.82 ID:MWBGmgAO
勇者「いきなりハズレだった」

剣士「気にするな。まだ他に人はいる」

勇者「幸先悪いな、と思ってな」

魔法師「怖い人だったね」

剣士「血の臭いはしてたな」

僧侶「罪を重ねた顔だったね」

勇者「そうかな? 悪い人には見えなかったけど」

剣士「人は見た目ではない」

勇者「そうだ。人は見た目ではない」

勇者「あの店員さんだって実際は慈善家だったりするんだ」

僧侶「それは極端だよ」

魔法師「想像しても、例えに当て嵌まらない」

勇者「まぁ良いじゃないか。それよりご飯を食おう」

僧侶「そういえば、男さんと女さんはどうする?」

勇者「先に会って巻き込んじゃ悪いだろ? 地図の印が先だ」
剣士「偶然会った場合はどうする」

勇者「その時は……」

僧侶「運命の責任。ついでに結界について分かってる事を聞けば良いさ」
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 22:50:18.07 ID:MWBGmgAO
──宿屋

男「ただいま。調子はどう?」

女「……いまいちです」

男「おかしいな。図書館でも調べてみたんだよね?」

女「何冊か何度も読み直しましたが、原因が全く掴めないんですよ」

女「最近では他のジャンルにも手を伸ばしてもいるんですが」

男「考えられる原因は一つ、か」

女「はい。ですが、私にはしっかり魔石に対して相性があるという連合の保証が
  偽りになるわけです」

男「どうかな……。確かに聞いてる限りでは、女さんが魔法学はいい加減って言
  ったのも頷けるからな」

女「つまりまだコツが掴めていないと?」

男「かもしれない」
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 23:13:42.74 ID:MWBGmgAO
男「よし。諦めず確かめてみよう」

女「はい」

男「まず、魔石は本当にそれで全種類か?」

女「ないとすれば、未知の魔石を考えた場合です」

男「よし」

男「……本当に九種類なんだろうな?」

女「疑うんですか?」

男「いいや。ただまだ石の名前が分からない訳だし……」

女「教授としては重複がありそうで不安ですか?」

男「そういう事」

男「えっと……これが火の石で……?」

女「違います」

女「もう一度説明しましょうか?」

男「してくれるとありがたいな」

女「ついでに同調の練習もしますから」

女「確か、精神を集中して、自分の意識を石に向けるように──」

男「何度聞いても抽象的だよな……」
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/20(土) 23:27:34.43 ID:MWBGmgAO
女「教授が指した石は、土の魔石“エールス”です。土属性の魔石ですね」

男「どうだ?」

女「……何も感じません。そもそも『繋がりを感じる』という記述が曖昧すぎますよ」

男「セックス的な感じじゃないか?」

女「……本気で言ってます?」ジト…

男「つ、次に移ってくれ」

女「これが火の魔石“フィーレ”。火属性ですね。これを扱えればメラゾーマと
  かイオナズンとか使えるんでしょうね」

女「……扱えれば」

男「駄目だったか……」

女「次、水の魔石“ウォルター”。液体を自在に扱えるようになるそうです」

女「……次」

男「また駄目だったか」
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/20(土) 23:49:34.75 ID:MWBGmgAO
女「風の魔石“ウィンデ”。本には『風を操る』と書いてありましたが」

女「魔法の種類を見る限り、正確には気体の流れを操るようです」

男「と言うと、さっきの土の魔石が固体の“流れ”で良いのかな」

女「その辺りはまだ厳密に確定出来ませんが、私もそう考えています」

女「次は雷の魔石“エレックス”。電気を操るようですね」

男「成る程。つまり磁力も操れる」

女「電磁力は汎用性が高いですからね」

男「魔法使いが入れば強力な電磁石がいらないと言う訳か」

女「それは場合によりますよ」

男「流石にそうなるか」

女「次は光の魔石“リーツ”。光、とは言いますが、決して光を操っている訳で
  はなさそうです」

男「と言うと?」

女「生物に有益な力。一般的に神聖な力を持っているようです」

女「治癒、蘇生など、僧侶職が使いそうな魔法ですね」

男「成る程な」
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 00:01:51.01 ID:SGBGkUAO
女「闇の魔石“ダーレク”。決して円柱形のマシンに乗る宇宙人ではありません」

男「BBC放送のあれか。話の流れもあって、勘違いはしないよ」

女「闇属性は光属性の逆、即ち、生物に有害な作用の魔法を発します」

女「毒、腐食、死、などのようですね」

男「恐ろしい魔法もあるもんだ」

女「利益だけじゃないって事ですね」

女「次は無の魔石“イノーグ”。所謂無属性ですね」

男「どのような魔法がある?」

女「転移、付加、念動力……これを一言にまとめるのは難しそうです」

女「最後に有の魔石“オーガン”。これもまた無属性みたいです」

男「無属性が二つか」

女「こちらは主に召喚魔法が多く紹介されてましたね」

男「成る程な」
432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 00:13:50.88 ID:SGBGkUAO
男「それで?」

女「やっぱり『繋がる感じ』が全くしませんでした」

男「ふむ……」

女「私のやり方に不備があるんでしょうか……」

男「そう詰めてやらなくても良いよ。リラックスして」

女「そうですね。深呼吸です」

女「すぅ……はぁー……すぅ……はぁー……」

男「そう言えば一つ気になるんだが」

女「何でしょう」

男「魔石と合わない属性は使えないのか?」

女「いえ。どうやら魔石と同じ属性魔法が使いやすくなるだけで、例えばウォル
  ターを魔法媒介にしても、火属性魔法も雷属性魔法も使えるようです」

男「聞けば聞くほど原理なんてないように思えてきてならない」

女「物理的にそれは有り得ないんですが……私もそう思ってしまいます」
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/21(日) 00:42:17.16 ID:SGBGkUAO
女「ですが、いくつか気になる事もありまして」

男「何だ?」

女「魔法が強力になるにつれて、連発数が少なくなるんですよ」

女「勿論、持続時間に対しても、長く持続した場合と短く持続した場合で回数が減ります」

男「魔力がなくなる訳か。ゲームのMPみたいに」

女「そうですね。そこで一つの仮定が生まれます」

男「魔法で発現したエネルギーと消費した魔力の関係か」

女「仮に、その現象を等エネルギー交換の法則としましょう」

男「長いな。等価交換の法則で良いんじゃないか?」

女「ではそれにします」

男「問題は証明だな。実験で出来るか?」

女「そうですね……魔法使いがいなければ何とも言えませんが」

女「フィーレまたはエレックス以外を用いて、火属性魔法と雷属性魔法の比較が
  有力ですね」

男「そうだな。八属性の中でエネルギーの測定をし易いのはその二つか」
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/21(日) 00:51:31.71 ID:SGBGkUAO
男「但し、魔力消費が等しい魔法を選ばなければならないな」

女「そうですね。明日にでも探しておきましょう」

ガチャッ

盗賊「ふぅ、疲れたぜ」

男「お疲れ」

女「お疲れ様です」

盗賊「魔法の方はどうだ? 感覚掴めたか?」

女「それが全く掴めないんです」

盗賊「おいおい、それじゃ入学の必須条件が満たされねぇぞ」

盗賊「てめぇに足りないのは、後は魔石との同調だけなんだぜ?」

盗賊「その為に足りねぇ魔石まで買ったってのによ」

女「私にも原因が分からないんですよ」

盗賊「まぁ俺も分からねぇから、じっくりやりゃ良い」

男「そうだな。当分の生活費は俺らが稼ぐから、焦らずやってくれ」

女「ありがとうございます」
435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 00:53:56.97 ID:SGBGkUAO
うあーなんか疲れた。休憩する。
そのまま寝るかもしれないけど。
436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/21(日) 01:12:40.68 ID:4hlOrUgo
乙です
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 02:18:14.44 ID:GgnOUg.o
おつおつ
438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/21(日) 03:46:06.43 ID:rFD/e2DO
おっ、やっと追い付いたか
乙カレ
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 19:17:30.14 ID:xbGYguM0
案の定寝てしまっていたようだ。

それにしても今日は不思議な日だな。
七時になっても太陽が昇ってこないぞ?
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 19:26:37.45 ID:xbGYguM0
(翌日)
――旅の宿

勇者「じゃあ、夜には戻るようにしよう」

勇者「それまではみんな注意して行動するように」

剣士「うむ。魔族がどこに潜んでいるかしれないからな」

魔法師「上階層の魔族になると、大方が上級魔法を使ってると思うわ」

魔法師「もしかしたら人に化けていると考えられるから、注意して」

僧侶「それで? 勇者は今日どうするの? 予定なさそうだけど」

勇者「ん……地図の印近辺を見ておこうかなと思ってるよ」

魔法師「一人で無茶はしないでね」

勇者「分かってる」
441 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 19:45:23.79 ID:xbGYguM0
勇者「とは言ったものの……」

勇者「はぁ……どうやって探そうか」

勇者「大体地図の印が大きすぎるんだよな」

勇者「沼の街半分は印で消えてるんじゃないかな……」

勇者「んー……」ブツブツ…

商人「おや、勇者様じゃないですか」

勇者「ん? えっと……」

商人「忘れましたか? 商人ですよ。礎商会の」

商人「……いえ、そう言えば名前言ってませんでしたね」

勇者「確か女さん達の情報をくれた人ですよね?」

商人「大した情報じゃありませんでしたけどね。いやはや覚えていて下さって光栄です」

勇者「えっと、商人さんですね? お久しぶりです」

商人「こちらこそお久しぶりです。またお会い出来るとは、思ってもいませんでした」
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 19:52:03.13 ID:xbGYguM0
商人「前回会ってからどれくらいでしょうか……一週間?」

勇者「そのくらいですね」

商人「翠水湖まで行かれてたのでしょう?」

勇者「まあ。ですが――」

商人「いやはや、短期間で解決なさるとは、流石ですね」

商人「噂に違わない方達です」

勇者「……え?」

商人「おや? 翠水湖の巨大魚を鎮めたのでしょう?」

勇者「確かに翠水湖まで行きましたが、原因は掴めないままこちらへ来たんですよ」

勇者「近くの洞窟で魔族を倒しはしましたが……」

商人「ならその魔族達が原因だったのでしょう」

勇者「そう……なんでしょうか?」

商人「どのみち解決したのですから、深い事は考えない事です」

商人「結果さえ良ければ、過程は無視できます。商界ではそうですよ」

勇者「はあ」
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 20:01:04.38 ID:xbGYguM0
商人「それで、彼らは見つかりましたか?」

勇者「いえ、今は後にしているんです。もしかしたら危険に巻き込んでしまうかもしれないから」

商人「危険、ですか……」

商人「ここで会ったのも何かの縁。良ければお手伝いしましょう」

勇者「ですが、それではあなたまで巻き込んでしまう恐れがあります」

商人「良いんですよ。勇者様達への協力は連盟加盟国民の義務です」

商人「それに助力を出す事で、礎商会の名が上がりますからね」

勇者「本当に良いんですか?」

商人「勿論です」

勇者「では、お言葉に甘えさせてもらいます」

勇者「実は翠水湖の一件で、魔族の荷物から地図が出てきまして」

商人「ほう」
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 20:08:45.97 ID:xbGYguM0
商人「つまり、あなた方の見解では、この地図の印が魔族の居場所と言う事ですか」

勇者「違っている確率の方が高いかもしれませんが」

商人「ですね。私も出来ればそうであって欲しくないと思っています」

商人「街の中に魔族が紛れ込んでいるなんて、考えただけでもぞっとしますよ」

勇者「でも実際、この沼の街にも印が付いています」

勇者「魔族が潜伏してないとしても、一度は入ったと考えられます」

商人「何かここで荷を降ろした、ということですか?」

勇者「それも考えられます」

商人「その場合何を降ろしたか、ですね。兵器、魔物の卵、何かの備品……」

商人「何にしても、人に見つかりにくい場所に隠しますね。私ならば」

勇者「となると……路地裏でしょうか」

商人「地下水路という可能性もあります」
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 20:20:42.11 ID:xbGYguM0
商人「私なら、それも踏まえてこの……印の中心部分ですね」

勇者「なかなか難しいですね……」

商人「何にだって地道な作業はつきものですよ」

勇者「だけど、路地裏か地下水路という事だけでも場所が絞れますね」

商人「ははは、合ってるか分かりませんよ?」

勇者「間違ってても咎めはしませんよ。むしろ協力に感謝します」

商人「いえいえ。では、これからも礎商会をご贔屓下さい」

勇者「困りましたね……立場的に贔屓出来るかどうか」

商人「では魔王を倒した暁には、私達の商会の名前を高くしていただければ」

勇者「ははは、考えておきましょう。では」

商人「ええ。ご武運を」
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 21:15:43.59 ID:xbGYguM0
――魔導連合本部

魔法師「こんにちは。お久しぶりです」

受付「あれ、魔法師さん。この街に来られていたのですか」

魔法師「はい」

受付「というのは冗談でして」

魔法師「はい?」

受付「実は既に、あなた達が街に入っているというのは昨日のうちに知っているのです」

魔法師「情報が早いね」

受付「その辺りは私も知る所ではありませんので」

受付「ですが、律儀なあなたですから、きっとすぐにでもこちらに来るだろうと思いまして」

魔法師「実際来たけどね。何か私に用事でもあるの?」

受付「魔導長がお呼びです。今部屋にいますので。場所は分かっていますね?」

魔法師「何の用?」

受付「私の知る所ではありません」
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 21:34:18.32 ID:xbGYguM0
――魔導長室

コンコン

魔法師「魔法師です」

魔導長「入れ」

魔法師「……お久しぶりです」

魔導長「ああ。久しぶりだな。勇者達との旅はどうだ?」

魔法師「はい。楽しくやっています」

魔導長「そうか。間柄良くやっているようだな」

魔法師「ですが私の力不足で、勇者達の足を引っ張る事もしばしばで……」

魔導長「そう卑下するな。お主を大陸連盟に推薦したのは他でもない。お主が優秀だからだ」

魔法師「ありがとうございます」

魔法師「それで、私に用とは、何でしょうか?」

魔導長「その事なんだがな……率直に言わせてもらう」

魔導長「今よりお主……魔法師を、魔の国の結界解除及び魔王討伐部隊から解任する」
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 21:47:22.63 ID:xbGYguM0
魔法師「……え?」

魔導長「返事はどうした」

魔法師「どういう……事ですか……?」

魔導長「説明が欲しいか?」

魔法師「当たり前です」

魔導長「お主は以降、勇者と行動を共にしてはならない」

魔法師「どうしてですか!? 何か大きな失敗でもしましたか!?」

魔法師「さっきは優秀と……言ってくれたじゃないですか……! あれは嘘ですか……?」

魔導長「嘘ではない。お主が優秀なのは事実だ」

魔法師「なら何故!」

魔導長「しかしお主の力が足りないのも確かな事実」

魔導長「“優秀な魔法使い”として推薦した連合の立場も考えろ。その“優秀な魔法使い”
     がいながら、未だに結界の解除法さえ掴めていないではないか」

魔法師「それは……」

魔導長「これまでお主に任せてきたが、そろそろ見切りをつける時だと思ってな」
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:05:42.27 ID:SGBGkUAO
魔法師「そんな……」

魔法師「確かに力不足だったかもしれません……ですが私は精一杯……」

魔導長「精一杯、か。成る程、精一杯でこね程度の魔法使いだったのだな」

魔法師「!」

魔導長「私も迷ったのだよ。成果は出ないが、お主はあくまで私達連合が出した
  魔法使いだ。このまま任せても良いのではないか、とな」

魔法師「では──」

魔導長「だが大陸の未来を考えるならば、人員を換えた方が良いのかもしれん」

魔導長「そして、そうするべきだと決断を下したのだ」

魔法師「……」

魔導長「魔法の才能は多少お主に劣るかもしれんが、仕方あるまい」

魔法師「そう……ですか……」
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:14:21.53 ID:SGBGkUAO
魔導長「おお。理解してくれたか」

魔法師「……」

魔導長「では、下がって良いぞ。勇者達と別れの言──」

魔法師「理解出来ません」

魔導長「……何?」

魔法師「私が力不足ならば、私を外す必要はないじゃないですか」

魔法師「新しく人員を増やせば終わる事です」

魔導長「これは決定だ。お主を解任し、別の魔法使いを入れる」

魔法師「では、解任後も私は勇者達と旅を続けさせてもらいます」

魔導長「それは許さん」

魔法師「何故ですか!」

魔導長「解任された身の者がいては邪魔なだけだ」

魔法師「それでも私は一緒に旅を続けたいんですよ!」

魔導長「そうか……ならば好きにするが良い」

魔法師「ありが──」

魔導長「但し、その場合はお主を連合から追放する。所持している魔石も全て取り上げる」

魔導長「お主は魔法使いではなくなるのだ」
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:24:41.32 ID:SGBGkUAO
魔法師「そ、そんな……」

魔導長「魔法使いでないお主は本当の足手まといだ」

魔導長「それでも共に旅を続けようと思うか? 勇者達は快く迎えると思うか?」

魔法師「お……横暴です」

魔導長「これは決定だと言ったはずだ。それに逆らうようなやつは、信用できん」

魔導長「魔法を使う悪党をこの連合から出す訳にはいかんのだ」

魔法師「悪党だなんて……!」

魔導長「規則に従わない魔法使いはしばしば道を外す。魔法を使う悪党ほど手に
    おえないものはない」

魔導長「それがお主のような優秀な者なら尚更だ」

魔法師「そんな……そんな事……」

魔導長「分かったなら、おとなしく勇者から離れろ」

魔導長「私とてお主を連合から抜けさせたくはないのだ」
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:33:15.67 ID:SGBGkUAO
魔導長「理解してくれるな?」

魔法師「……っ」

魔導長「まだ反論する気か?」

魔法師「い、いえ……分かり、ました……」

魔導長「すまないな、辛い選択をさせてしまって。感謝する」

魔法師「……」

魔導長「勇者に別れの言葉くらいは言っても構わない。どのみち、伝えて欲しい
    事もあるのだ」

魔法師「何ですか……」

魔導長「新しい魔法使いをすぐにでも宿へ送るから、それまでは街を出ないで欲しい、と」

魔法師「分かり、ました……伝えておきます……」

魔導長「感謝する」

魔法師「……失礼、しました」
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:46:07.03 ID:SGBGkUAO
魔法師「……」

受付「あっ、魔法師さん。何を言われたんですか?」

魔法師「……」

受付「?」

受付「魔法師さん!」

魔法師「!?」ビクッ

受付「どうしたんですか?」

魔法師「あー……えっと……」

受付「どうせ『まだまだ力が足りない』とか言われたんでしょう?」

魔法師「あー……はは、実はそうなのよ」

受付「魔導長も立場上きつい事言わなければなりませんからね」

受付「大丈夫ですよ。魔法師さんなら十分頑張れますから」

魔法師「それなんだけど……」

受付「これからも頑張って下さいね。期待してますよ」

魔法師「……」

魔法師「そだね。頑張るよ」
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:51:37.07 ID:SGBGkUAO
魔導長「……」

魔導長「……これで良いのか?」

魔国少尉「ええ」

魔導長「魔法師に悪い事をしたな」

魔国少尉「それならば止めても良かったのですよ?」

魔導長「お主らが満足しないだろう」

魔国少尉「そうですね。あの魔法使いは優秀過ぎて脅威です」

魔国少尉「しかし……このような事をして心は痛みませんか?」

魔導長「何を言う。これも大陸の為を思ってだ」

魔導長「その為ならば、心でも体でも、いくらでも痛めよう」

魔国少尉「立派な方です」

魔導長「……もう一度聞く。本当なんだろうな?」

魔国少尉「ええ。本当ですとも」
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/21(日) 22:54:49.67 ID:SGBGkUAO
やばい。魔法師が制御出来なくなってきたかもしんね。

一旦休憩する。
456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/22(月) 00:06:10.43 ID:8ot/SMDO


ところで、魔法師は女なんだよな?
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 00:14:34.98 ID:uKTr7.AO
>>456
そのつもり。
今のところの主要人物の性別を一応書いておくと……

女(女)、男(男)、盗賊(男)
勇者(男)、剣士(女)、魔法師(女)、僧侶(男)
商人(男)
魔王(男)、影将軍(男)、魔国少尉(男)

うわっ、女性率低い!
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/22(月) 00:50:01.44 ID:8ot/SMDO
サンクス

剣士は男だと思ってた俺って・・・
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/22(月) 00:50:59.23 ID:LG8K7/20
>>458
みーとぅですわ
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 01:06:16.52 ID:uKTr7.AO
戦士のポジションは口調が堅いかなと思って。

カップ蕎麦食い終わったら、借りてきたDVDを見ながら続き書く。
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 01:28:19.37 ID:QjERtMwo
支援
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 01:34:07.00 ID:uKTr7.AO
──旅の宿

魔法師「……」

魔法師「まだみんな帰ってない、か」

魔法師「一番のり〜っ」

魔法師「……」

魔法師「何やってるんだろ、私……」

魔法師「勇者……私……」

魔法師「本当、ごめん……頼りなくって」

魔法師「……」

魔法師「あ、この部屋、ペンもインクも紙もある」

魔法師「……」

魔法師「……」サラサラ

魔法師「……こんなもんかな」

魔法師「みんなどう思うかな」

魔法師「安心したりして……なんてね」

魔法師「じゃあみんな、今まで楽しかったよ」

魔法師「また、どこかで会えたら良いね」
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/22(月) 01:34:14.26 ID:XZeKXhIo
>>459
みーとぅとぅですわ
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 01:55:29.21 ID:uKTr7.AO
剣士「やれやれ。まさか二本も買う羽目になるとは」

僧侶「前の剣と合うものがなかったんだろ? 仕方ないじゃないか」

剣士「一本では戦いにくい……勇者様も魔法師もまだか」

僧侶「みたいだね」

剣士「……!」

僧侶「どうしたの?」

剣士「魔法師が……出ていった!?」

僧侶「まさか!」

剣士「これを見ろ」

『急な事だけど、一緒に旅を続けられなくなった。新しい魔法使いを連合が補充
してくれるらしいから、安心して。すぐにでもこの宿に送って来る、だって。
今まで楽しかったよ。ありがとう。そして、さようなら。
    魔法師』

僧侶「そう言われれば、魔法師の荷物がなくなってるな」

剣士「魔法師……理由が書かれてないぞ。こんなので納得するか!」

僧侶「僕は魔法師を探しに行く。剣士は勇者を探して知らせてくれ」

剣士「ああ」
465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 02:11:39.72 ID:uKTr7.AO
──水国立図書館前

魔法師「あー……これからどうしよ……」

魔法師「連合にも当分戻りたくないなぁ」

魔法師「……うぅ」

魔法師「うっ、うぅっ……ぐすっ……」

女「……?」

魔法師「うぇ……うっ……」

女「……どうしました?」

魔法師「ふぇ……?」

女「あれ、あなたどこかで……」

魔法師「お、女さん?」

女「ああ、思い出しました。魔法師さんじゃないですか」

女「一体どうしたんですか?」

魔法師「そ……そっちこそ、そんな腕一杯に本を持って……」

女「勉強中です」
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 02:29:18.24 ID:uKTr7.AO
女「……成る程」

魔法師「……」

女「上司がいると言うのは大変ですね」

魔法師「魔法使いは個人でいる事は出来ないんです」

魔法師「ギルドに所属しないと、様々な権限がなくなりますから」

女「その一つが魔石の低価格取引ですね?」

魔法師「そうですね。ですが最も重大なのは、魔法使いでいられなくなる事です」

女「多くの魔法使いは魔法を使う事しか能がない、ですか」

魔法師「結構勉強したようですね」

魔法師「魔法を学べば他が劣る。他を学べば魔法が劣る」

魔法師「それが普通ですから」
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 02:47:16.09 ID:Z.OvpDQo
魔法師が教授パーティに合流か
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 03:00:44.92 ID:uKTr7.AO
女「あなたの上司、あまり良い人じゃないようですね」

魔法師「仕方ないですよ。大陸最大の魔法使いギルドの頂点なんですから」

女「……魔法師さん、確か行く所がないんでしたよね」

魔法師「何日か分の食事代ならあります」

女「当分は野宿のつもりですか?」

魔法師「仕事は暫くしたくありませんから……」

魔法師「あっ、勿論個人としての仕事ならしますよ? 連合に行きたくないだけで──」

女「なら私達の部屋に来ませんか?」

魔法師「──え?」

女「なんだか横取りみたいな感じがしますが、私達の研究の手伝いをしてもらえ
  たらなと思いまして」

女「給料は出ませんが、宿代は浮きますし、食費はこちらで負担します」

女「どうですか?」
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 03:13:58.52 ID:uKTr7.AO
──宿屋

男「で、連れてきたって訳か」

女「はい」

魔法師「お、お世話になりますっ」

男「あっ、こちらこそよろしくお願いします」

魔法師「それで、私は何を手伝えば良いのでしょうか」

女「えっと……魔法の使い方でしょうか」

女「今、魔法学校に入ろうとしているんですが、魔石との同調が上手く出来ないんですよ」

魔法師「魔法は才能がいりますからね。相性が……あれ?」

男「どうかしましたか?」

魔法師「いえ。今気付いたんですが、女さんから魔翌力を感じます」

女「連合の受付の人からは魔法の才能が十分あると言われましたよ?」

魔法師「いえ、そうではないんですが……」
470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/22(月) 03:25:05.49 ID:uKTr7.AO
女「?」

男「何か気になる事でも?」

魔法師「ええ。普通、魔力がこのように増大するはずがないんですよ」

男「増大?」

女「どういう事ですか?」

魔法師「以前会った時、私は女さんから微塵も魔力を感じませんでした」

魔法師「男さんからは今も感じません。ですが、それが正常な事なんです」

女「つまり、私は異常と言う事ですか?」

魔法師「そういう事になりますね。何が原因かは分かりませんが……」

女「つまり、私が魔石と同調出来ないのはそれが原因ですか?」

魔法師「決め付けられないけど、有り得ると思います」

女「私はこれからも魔石と同調する事は出来ませんか?」

魔法師「同調率は個体で決まりますからね……また異常がない限り無理でしょう」

女「……そうですか」
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/22(月) 03:33:49.01 ID:uKTr7.AO
男「でも連合では魔石との相性も良いって」

魔法師「実はそこまで測る事は出来ないんですよ」

男「……はい?」

女「私も魔法学の本で薄々気付いてましたが……」

魔法師「魔石の相性は、やってみなければ分かりません。勿論、他人に分かるは
    ずがないんです」

魔法師「ですがそれを知る術はあります。これが当て嵌まらないのも、女さんの
    異常な所ですね」

男「どういう事だ?」

女「魔石との同調率は、普通、魔力の大きさに比例しているという事です」

女「多少の誤差はあるでしょうが」

魔法師「魔力が高ければ、その分同調もしやすいのが常識なんです」
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 03:53:21.03 ID:uKTr7.AO
女「えー……つまり……」

魔法師「学院への入学は諦めて下さい」

女「やっぱりそうですか……」ガックリ

男「そう気を落とすなって」

女「教授……」

男「俺らの目的は魔法の研究であって魔法使いになる事じゃない」

女「内心笑っていますね?」

男「な、何だと!?」

女「続きを言ってあげます。『何故分かった!?』」

男「そ、そんな訳ないだろ」

魔法師「ふふっ、仲が良いですね」

女「そうでもありません」

男「ああ。話してみるとなかなかきつい性格してる」

女「お互い様ですね」

女「まぁ、でも、学院に入らなくても、研究は続けられそうです」

男「そうだな。魔法師さんがいてくれればかなり捗るはずだ」

魔法師「そうですか……」

魔法師「では精一杯お手伝いさせて頂きますね」
473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 04:03:24.15 ID:uKTr7.AO
盗賊「で、ここにいる訳か」

女「はい」

男「ああ」

魔法師「あれ、あなたは酒場の……」

盗賊「ん、酒場で会ったか?」

魔法師「昨日客の一人として行ったんですが」

盗賊「……?」

盗賊「すまん。覚えてねぇ」

魔法師「普通そうですよね」

盗賊「とにかく、よろしくな。俺は盗賊だ」

魔法師「魔法師です」

盗賊「あとこれは言っておくべきなんだろうかな……」

魔法師「なんですか?」

盗賊「いや、未練を掻き立てるようなもんだが……」

女「言った方が良いんじゃないですか? 大体内容の予想がつきました」

盗賊「そうか。なら言っておくぜ?」

盗賊「勇者共がてめぇを探してた。必死でな」
474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 04:13:08.76 ID:uKTr7.AO
魔法師「!!」

盗賊「ほらこの顔だ」

魔法師「そんな……どうして勇者が私なんかを……」

盗賊「そりゃあ置き手紙一つでさようならじゃ納得いかねぇんだろ?」

女「……はぁ」

女「私としては験体がいなくなるのは残念ですが、勇者さんの所へ戻っても良いんですよ?」

男「俺も無理に出て行かなくても良いと思いますよ。上司も時には間違った選択
  をする。自分が正しいと思った事をすれば良いんです」

女「教授が言うと真実味を帯びますね」

男「それはどうも」

魔法師「……いえ。勇者が私を探しているのは、ただいなくなった事に対して納
    得していないだけなんですよ、きっと」

魔法師「私を必要としているからじゃないんですよ、きっと」

魔法師「……私は……戻りません」

盗賊「そうか。なら好きにしろ」

女「ちなみに盗賊さんは今日からベッドを下りて床で寝てもらいます」

盗賊「何ぃ!?」
475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 04:22:21.81 ID:uKTr7.AO
──旅の宿

僧侶「……」

剣士「なんだ。もう戻ってたのか」

僧侶「ああ」

剣士「その様子では見付からなかったようだな……」

僧侶「……ああ。そっちもか」

剣士「……」

勇者「……あぁ、みんな戻ってたのか」

勇者「魔法師以外……」

剣士「……」

僧侶「……」

勇者「もしかしたら転移魔法を使って、もうこの街にはいないのか?」

剣士「有り得ない話ではないな」

勇者「……なんでだよ」

僧侶「……」

勇者「何で急にいなくなるんだよ……!」

勇者「俺らには魔法師が必要なんだっ……帰って来いよ……!」

僧侶「勇者……今日はもう遅い。寝よう」

剣士「明日また、探してみよう」

勇者「……ああ、そうだな」
476 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 04:41:19.49 ID:uKTr7.AO
(翌朝)

勇者「よし。昨日の今日だ。まだ街のどこかにいる可能性もある」

勇者「今日こそ魔法師を探し出して連れ戻す。良いな?」

剣士「ああ」

僧侶「街から出てなければ良いけど……」ボソッ

剣士「ネガティブな事を言うな」

僧侶「そうだね」

勇者「まだこの街にいる。そう信じる。良いな?」

コンコン

勇者「……誰だろ、こんな時に」

剣士「タイミングが悪いな……」

コンコン

「すみません。新しく来ました魔法使いです」

僧侶「連合が送ってくるって魔法師の置き手紙にも確か……」

勇者「準備が早いな……仕方ない。事情を話して少し待って貰おう」

ガチャ…

勇者「連合から来た魔法使い? すまないけど──」

「はい。名前を──」

魔国少尉「魔国少尉と言います」

勇者「な──っ!?」
477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 04:42:27.09 ID:uKTr7.AO
う……眠い……。
今回はこの辺りで寝させてもらうー……
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 05:12:17.24 ID:QjERtMwo
盛り上がってきたぜ!
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 11:03:42.06 ID:Z.OvpDQo
魔石の名前とか自分で考えたん?
面白くなってきた
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 17:16:34.31 ID:uKTr7.AO
おはよう、諸君。
少しアニメを見たら書き始める。

>>479
魔石は英語をもじっただけ。
普通の宝石がダイヤモンドとかサファイアなのに、魔石だけ○○の魔石って表記するのが嫌だったという理由。
481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 21:43:51.11 ID:uKTr7.AO
ドーンッ!!

盗賊「一体なんだってんだ!?」

男「爆発か!? どこからだ!?」

女「……?」

盗賊「外から聞こえたぜ。街で何かあったのか!?」

魔法師「外……?」

男「建物が燃えてるな。ガス爆発か?」

魔法師「本当ですね」

女「この世界に来て、一度もガスを見た事がありませんよ?」

盗賊「火薬にでも引火したんじゃないか?」

魔法師「あの辺りは……」

魔法師「!!」

男「どうしましたか?」

魔法師「あの辺りに宿が……勇者達がいる宿が……!」

男「なんだって!?」

魔法師「わ、私、行ってきます!」

盗賊「お、おい!」
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 21:54:23.07 ID:uKTr7.AO
ガンガンッ

「失礼します」

魔導長「入れ」

魔導長「先程の爆発、街で何が起こっている? 報告しろ」

「はっ。現場付近から逃げてきた者の話によりますと、魔法使いが暴れているとか」

魔導長「何だと?」

「しかも、そこは勇者達が泊まっている宿と言う話です」

「今、街の兵士が鎮圧に向かっていますが」

魔導長「ただの兵士で抑えられる相手かどうか……」

魔導長「至急、学院教員による魔導部隊を編成し、鎮圧に向かわせろ! すぐに私も行く!」

「承知しました!」

魔導長「……どういう事だ、魔国少尉」

魔導長「この街で攻撃を仕掛けるなどとは聞いてないぞ……!」
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 22:05:47.07 ID:uKTr7.AO
勇者「く……うぁあっ……」

魔国少尉「ほう。流石にしぶといですね」

魔国少尉「噂に違わぬしぶとさです」

勇者「……っ」

魔国少尉「さて、あなた一人でどこまで頑張れるでしょうかね」

剣士「……」

僧侶「……」

勇者「何……、二人とも寝てるだけだ」

魔国少尉「正しくは、気絶ですね」

勇者「二人が起きるまでに、お前を……倒す!」

勇者「うぉおおっ!」

カンッ…

勇者「っ!」

魔国少尉「残念ですが、あなたには二人を守るだけで精一杯です」

魔国少尉「いいえ。自分を守る事すら出来ない、でしょうか?」

勇者「守ってやるよ……」

勇者「だから、お前は絶対倒す!」
484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 22:16:33.06 ID:uKTr7.AO
魔国少尉「あなたに私は倒せません。もう分かっているでしょうかね」

勇者「っ」

魔国少尉「何故、私の服があなた達の剣を通さないのか、分かってるでしょう」

魔国少尉「翠水湖で巨人と対峙したあなたならば」

勇者「やっぱり、そうか……」

勇者「それにも魔法、掛かってるんだな?」

魔国少尉「今のあなた達にこれを破る術はありません」

勇者「狙って来たか……やはり……」

魔国少尉「魔法師のいない今、あなた達は私の敵ではありません」

勇者「そうか……お前の仕業か……」

魔国少尉「どうでしょうねぇ」

魔国少尉「ではお喋りもここまでにして、終わらせてもらいます」

勇者「させてたまるか……! 火炎──」
485 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 22:25:57.56 ID:uKTr7.AO
勇者「……」

魔国少尉「……本当にしぶといですね。まだ息があるとは」

魔国少尉「まぁ、気絶した所でないも同然──」

「おとなしくしろ!」

「貴様、こんな事をして良いと思っているのか!」

魔国少尉「……この街駐在の兵士ですか」

「今すぐその杖を置き、後ろで手を組め!」

「さもなければ、我々は貴様を攻撃対象と見なす!」

魔国少尉「この程度の連中、なんて事ないんですがね」

魔国少尉「良い事考えましたよ」ニヤァ

魔国少尉「  」ブツブツ

「おい、何をしている!」

「詠唱しているぞ! 掛かれ!」

「うぉおおーっ!」
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/22(月) 23:35:25.20 ID:uKTr7.AO
「ぐぁあっ」

「げぼぁっ!」

魔国少尉「あはははっ、弱い弱い!」

「き、貴様、知っているぞ……」

魔国少尉「へぇ、私を知っているの?」

魔国少尉「でもどえでもいいや。爆発炎」

「うぁぁああっ!」ドーンッ!

魔国少尉「……もういないの?」

魔国少尉「生きてるのは……少し残し過ぎたかな」

魔国少尉「後二人、死んでもらおっか──な!?」

魔法師「はぁ……はぁ……」

魔法師「勇者……良かった、息をしてる」

魔国少尉「な、何故ここにあなたが……っ」

魔法師「生きたいなら喋らない方が良いよ。あなたを中心に風ね流れを外に向けてますから」

魔国少尉「くっ……うっ……」

魔法師「あなたが誰だか知らないけど……って、あれ?」

魔法師「あなた、何で……私なのよ……」
487 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/22(月) 23:46:03.78 ID:uKTr7.AO
魔国少尉「まさかあなた……本人が来るとはっ……」

魔法師「……変身魔法」

魔国少尉「その、通り……。生憎、勇者を殺しそびれ、たけど」

魔法師「もしかして、魔族?」

魔国少尉「ご明、答……」

魔法師「そう。なら、手を抜く必要もなさそうね」

魔国少尉「ははっ……詰めが甘かったようです」

魔国少尉「私の負け、でしょうかね……」

魔法師「どうして勇者達が歯が立たなかったのか知らないけど」

魔法師「まだ私がいる。私も勇者の仲間よ!」

魔国少尉「く……ぅっ……」

魔法師「そのまま窒息して逝きな──」

魔導長「そこまでだ!」

魔法師「えっ、何?」

魔国少尉「!」
488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/22(月) 23:56:38.43 ID:uKTr7.AO
魔法師「しまっ……集中が途切れた!」

魔国少尉「転移!」

魔法師「大火炎玉!」

ドーンッ!!

魔法師「……」

魔法師「逃げ……られた……」

魔導長「犯人を囲め! 詠唱に入ったら殺しても構わん!」

魔導長「行くぞ!」

ザザッ

魔法師「……」

魔導長「降伏するならば生かしてやる。杖を置いて──」

魔法師「……」

魔導長「まさか……魔法師……」

魔導長「これはお主の仕業か!?」

魔法師「そ、そんなっ! これは魔族が!」

魔導長「ま、魔族だと? そんな馬鹿なっ」

魔導長「この街に魔族がいるわけがない!」
489 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/23(火) 00:07:04.27 ID:iHoEy6AO
魔法師「本当です!」

魔導長「証人はいるのか?」

魔法師「……え?」

魔導長「証人になる兵士も全て死んでいるのは、どうしてだ?」

魔法師「それは……。あっ、証人なら」

魔導長「そもそもなぜお主がここにいる!」

魔導長「それは勇者の命を狙いに来たからではないのか!」

魔法師「違います!」

「魔導長様! 勇者、剣士、僧侶、共に息があります!」

魔導長「それは良かった!」

魔導長「どうやら殺し損ねたようだな。勇者達が起きれば、お前がやったかどう
    かなどすぐに分かる」

魔法師「それなら……あっ!」

魔導長「どうした? やはりまずい事でもあるのか?」

魔法師「魔族が私に紛していました。変身魔法です」

魔法師「もしかしたら、私の姿で勇者達を襲ったのかもしれません」
490 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 00:11:02.38 ID:ee2NV3Ao
魔導長グルか
491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 00:14:40.66 ID:iHoEy6AO
魔導長「成る程、変身魔法か」

魔法師「はい」

魔導長「それならば、お主が無罪という説明も出来る。だが」

魔法師「!」

魔導長「変身魔法を取り上げれば、誰であっても無罪になる」

魔導長「例えば、お主が勇者達を襲った時、魔族に変身したとしよう」

魔導長「勇者達が助かっても、お主は無罪だ」

魔導長「尚且つ、お主が勇者と共にいない事で、勇者達に危険が及ぶと……ほう
    、動機も作れてしまったな」

魔法師「そんな……!」

魔導長「魔法師を捕らえろ!」

「はっ!」

魔法師「私じゃないんですよ……?」

魔法師「私じゃないんですよ!?」
492 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/23(火) 00:20:55.32 ID:NPR/DADO
wktk
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 00:28:44.09 ID:iHoEy6AO
魔法師「──え?」

「う……うぁあっ……」

「痛つ……ぐぁ!?」

魔導長「げほっ、げほっ……今、一体何が起きた……」

魔法師「あれ? ……あれ?」

「あ、あいつ……そうだ! あいつが魔法を使ったんだ!」

「だが詠唱してたようには見えなかったけど……」

「見えなかっただけでしてたんだよ!」

「……て事は……」

「抵抗してきやがった!」

魔法師「え? ……えぇ!?」

魔導長「魔法師、見損なったぞ! お主はもう連合の仲間ではない! 追放だ!」

魔導長「魔法部隊、闇に落ちた魔法使いを殺せ! 罪人は消せ!」

魔法師「そんな……私っ……!」

「雷撃!」
「氷槍っ!」
「大火炎玉!!」
「風鎌!」

魔法師「〜っ! て、転移っ!」

ドドドドドッ!

……

魔導長「……逃がしたか」
494 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 03:24:45.63 ID:iHoEy6AO
「これより先は危険です!」

「そこ、押さないで下さーい」

女「魔法師さん、大丈夫でしょうか……」

男「多分大丈夫だよ。勇者さんらは魔王を倒そうとしてるんだ」

男「セーブも自動復活もない。ここで負ければゲーム終了だからな」

盗賊「その例えはてめぇらの世界しか分からないみたいだな」

女「私もいまいち不安な例えですね」

盗賊「まあ、警備兵も連合の魔法使いも駆け付けてんだぜ? 大丈夫だろ」

男「何にせよ、結果はすぐ分かると思うよ。さっきから音が止んでる」

「ちょっと君、入っちゃだめだろ」

「何だよ、ケチ!」

「はいはい。でも危ないからな?」
495 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 03:34:56.06 ID:iHoEy6AO
「どいてくれ、負傷者が通るぞ!」

ザワザワ……

女「負傷者と言っても怪我らしい怪我は見当たらないんですが」

盗賊「連合がもう治してるんだろ。だから負傷者っつっても気絶してるだけ」

女「成る程」

男「おい、あれ。勇者さんじゃないか?」

女「剣士さんと僧侶さんも後ろから運ばれてきますよ」

盗賊「にしても……酷くやられたみてぇだな。服がズタズタじゃねぇか」

女「……魔法師さんがいませんね」

盗賊「生きてるんじゃねぇか? 連合の連中と話でもしてんだろ」

女「そうでしょうか……」
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 03:42:55.44 ID:iHoEy6AO
男「あの」

「なんだ?」

男「この人、勇者さんですよね? どこに運ぶんですか?」

「何故言わなければならない」

男「ちょっとした知り合いでして。目が覚めたらお見舞いなんかどうかな、と」

「これから連合に運ぶ事になっている。残念だが、面会は断る事になっている」

「間違っても、おかしな考えを起こすなよ。連合は勇者様達の状態が完璧になる
まで、完全警備をするからな。今回のような事にならないように」

男「そんな考えなんて起こしませんよ」

「……ふん」

女「どこに運ぶと言ってました?」

男「連合だそうだ。でも会いに行けそうもないな」

女「そうですか……残念です」
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 03:55:54.26 ID:iHoEy6AO
女「兵士の人もいなくなったのに、魔法師さんだけ戻ってきませんね」

男「ああ」

盗賊「現場を見てきたぜ」

男「どうだった?」

盗賊「やっぱりもう撤収した後だ」

盗賊「魔法師のやつもいねぇ」

女「そうですか。どこに行ったんでしょうね」

男「一度宿屋に戻ろう。それで勇者さん達が起きるの待てば良い」

男「話ならそれからでも遅くはないはずだ」

盗賊「魔法使いを探すってのもほぼ不可能な話だからな。その方が良い」


──宿屋

男「あ」
女「あ」
盗賊「あ」

魔法師「みなさん遅かったですね。何をしていたんですか?」
498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 04:10:13.30 ID:iHoEy6AO
今回はこの辺りで。
つーか時間が不規則すぎだろ。
499 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 04:52:13.32 ID:whkdoago
>>498

乙!
そして、支援
500 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 05:00:53.30 ID:nUdCfkAO
良いですね
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/23(火) 07:22:29.87 ID:GiaC1Hwo
乙です
時間が不定期でも出勤前に読んでるので無問題だww
502 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 22:13:38.30 ID:w7sK8/k0
おはよう。
九時に起きるつもりがいつの間にか十時だった!
最近雲が厚い日が多いな。外が真っ暗だ。
503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 22:25:00.40 ID:w7sK8/k0
男「……帰っていたのですか」

魔法師「はい」

盗賊「ったく、俺達を放って行きやがって。確かに関係ねぇ事だけどよ」

女「勇者さん達の所へ行ったんですよね? 何があったんですか?」

魔法師「……さあ」

盗賊「はぁ? もしかして道に迷ったとか言うんじゃねぇだろうな?」

魔法師「行ったのは行ったんです。だけど、そこで何があったのかいまいち整理しきれなく
って……」

男「俺らも状況が知りたいです。とりあえず見たもの聞いたものを教えてもらえませんか?」

男「……話してくれても、支障がなければ」

魔法師「支障は……ないと思います。ただ、上手く話せるかどうか」

女「気にしないで下さい。情報整理の作業は慣れてます」

魔法師「……では」

魔法師「爆発を見た後、私が飛び出していったのはみなさんも知っていますよね」

魔法師「私達が泊まっていた宿に着いたとき、爆発魔法を使ったはずなのに、粗方の形は
残っていました。多分、魔法使いもよく泊まる宿と聞いていましたので、その辺
りの対策をしていたのだと思います」
504 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 22:37:00.03 ID:w7sK8/k0
魔法師「周囲にはもう、殆どが避難したのだと思いますが、人はいませんでした」

魔法師「宿に近づくにつれて、悲鳴が聞こえてきました」

魔法師「急がなければ……なんて考える暇があったかどうか分かりませんが、私は足を速め
    て、勇者達の部屋の窓から中の状況を確認しました」

男「部屋は一階に?」

魔法師「はい」

魔法師「中の様子は、かなり荒れてましたね。勇者も剣士も僧侶も、街の兵士達もみんな、
     魔法使いにやられてました。私も真っ向から挑めば、やられてたかもしれません


魔法師「そこで不意を突いてその魔法使いを捕らえたわけですが……」

魔法師「その魔法使い、私だったんですよ」

盗賊「はぁ? どういう事だ?」

女「……変身魔法ですね?」

魔法師「女さん、よく分かりましたね。その魔法使いは、私に化けた魔族だったんです」

女「確か上級魔法だったはずですが」

魔法師「相手はそのくらい強かったという事でしょう」
505 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 22:47:34.18 ID:w7sK8/k0
魔法師「で、後一歩で、少なくとも気絶にまでは追い込めると思ったんですが……」

魔法師「連合から鎮圧部隊が来て、その呼びかけで少し集中力が切れてしまったんですよ」

魔法師「その所為で魔族を捕らえてた魔法に隙が出来て逃げられてしまいました」

男「残念でしたね……」

盗賊「なんてタイミングの悪ぃ連中だ」

魔法師「それから……何なんでしょうね……」

女「?」

魔法師「魔法使いが暴れている現場に来てみたら私がいた。しかも、その場に立っているの
     も私だけです。その所為か、私が疑われてしまいまして」

女「あー……」

男「これはきついな」

盗賊「てめぇはやってねぇんだろ? それを分からせてやりゃ良いんだ」

魔法師「やろうとしましたけどね。部隊を指揮していた魔導長に、立派な動機まででっちあ
    げられまして。後は……どうしようもないですね」
506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 22:55:24.22 ID:w7sK8/k0
盗賊「別に捕まってもいいんじゃねぇか? 疑いが証明されるまですぐに殺しはしねぇだ
   ろ。実際してねえんだから殺されるわけもねぇ」

魔法師「そう言うわけにもいかないんですよね……」

男「盗賊家業の頭はその程度か」

盗賊「なんだと!?」

女「犯人は変身魔法を使って魔法師さんに化けていたんですよ? それに駆けつけた兵士さ
  んの数人は生きてますし、勇者さん達も生きてます」

女「彼らの目が覚めたら、明らかに魔法師さんが不利でしょう」

盗賊「……あ、あぁ。犯人はそんな所まで考えてたのか」

魔法師「本来は罪を被せて、自分はのうのうと暮らす事ができる為だと思いますが」

魔法師「それにですね、どうやら私は抵抗もしてしまったみたいなので、どのみち言い逃れ
     が出来そうもないんですよ」

男「自分の事なのに曖昧な表現ですね。感情的なものですか?」

魔法師「いえ……。……いえ、その辺りは分かりません」
507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/23(火) 23:12:30.14 ID:w7sK8/k0
魔法師「まぁ、そう言うわけで今は逃げてる身なんですね。それはよく分かります」

魔法師「あっ、あっ、迷惑ならすぐにでも出て行きますよ!」

男「ああ。そんな事なら別に良いですよ。無罪の人を匿うのなら構わないですし」

女「研究も捗りますし」

盗賊「二人が良いなら、俺も構わないぜ。元から反対はしてないがな」

魔法師「……疑わないんですか?」

女「私達は魔法師さんの無罪を証明できる証人ですよ?」

男「まぁ、それを名乗り上げて証人として扱ってもらえるかは分かりませんが」

魔法師「あ、ありがとうございます」

女「験体ゲットですね」

男「その言い方だと、何だか俺らが嵌めた感じがするのは何故だろう」

盗賊「てめぇの話が本当なら、兵士が目覚めて証言が取れ次第指名手配されるだろうな。勇
   者どもがてめぇを擁護しようがしまいが多分関係ねぇ。今のうちに買い出しを済ませ
   た方が良いだろうな。顔まで隠せるローブとか」

女「変身魔法は使えないんですか?」

魔法師「やってみた事もありません。とても神経を使う魔法らしいので私には出来そうもあ
     りませんし」
508 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 00:01:03.18 ID:UcnA9EAO
男「だけど……気になるな」

魔法師「何がですか?」

男「魔導長の事ですよ。魔法師さんの話だと、どうしても魔法師さんを犯人にし
  ようとしているように思えませんか?」

女「それ、私も思ってました。変身魔法の例を挙げているにも関わらず、魔族は
  無関係と言いたげですね」

魔法師「それは連合としては魔族が街に入ってるとなると……」

男「だけど事実なら野放しにするのと同然です。これは連合の不名誉に繋がりますね」

魔法師「そう言われてみると……」

盗賊「そうか! 主犯は魔導長だな?」

男「結論はまだ早いよ。だけど、繋がりはあるという考えは濃いんじゃないかな」

魔法師「そんな、魔導長が大陸を裏切るはずがありません!」

女「人の心を釣るのは簡単なんですよ。私達だって欲しい餌には食いつきます」

魔法師「そんな……」
509 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 00:13:17.63 ID:UcnA9EAO
男「魔族との直接的な接触の可能性を廃除したとしても……」

男「恐らく、街に魔族がいるのは事実でしょう。それを魔導長さんが知っている
  可能性は高い」

魔法師「連合の名誉を傷つけないように隠していると?」

男「あくまで可能性だけど」

盗賊「それならどうしてちゃっちゃと倒しにいかねぇんだよ。残してたら、それ
   こそ不名誉だぜ」

男「その説明に答えられる便利な言葉がある」

盗賊「あ?」

男「何かの事情があるのだろう」

盗賊「……冗談言ってる場合か?」

男「冗談じゃないよ」

女「それにわざわざ罪をなすりつける行為をした犯人」

女「この街に潜伏する魔族なら、まだまだ長居するつもりではないでしょうか」

魔法師「成る程……でもどうしてそんな事を──まさか!?」

男「仲間をやられた上に逃げられたのでは、気分が悪いでしょう?」
510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 00:35:07.46 ID:UcnA9EAO
(翌日)
──魔導連合本部

勇者「……なんとか生きてたみたいだな」

勇者「あれからどうなったんだろうか……」

魔導長「おはようございます、勇者様。調子はいかがですか?」

勇者「お陰でだいぶ良くなりました」

魔導長「それは何よりです」

勇者「剣士と僧侶はどうですか?」

魔導長「まだゆっくり眠っているようです」

勇者「生きているのか。良かった」ホッ

勇者「俺、気を失ってしまったみたいですが、どうなったんですか?」

魔導長「私達連合が駆け付けたら、逃げましたよ」

魔導長「ええ、残念ながら」

勇者「そうですか……」

勇者「それと聞きたい事があるのですが」

魔導長「何ですか?」

勇者「何故魔法師を外させたのですか?」
511 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 00:44:49.52 ID:UcnA9EAO
魔導長「一旦交代してみると言う判断が最善と考えたからです」

魔導長「それに、今回の件で私はその判断が正しかったと確信出来ました」

勇者「今回の件……? むしろ間違いと思うはずではありませんか?」

勇者「敵の服には強力な魔法が掛けられていて、俺達の剣撃はおろか、並の魔法
   すら通しませんでした」

勇者「魔法師がいてくれれば──」

魔導長「それこそが魔法師の思うツボです」

勇者「何?」

魔導長「私達が駆け付けた時、一人立っていて、私達に抵抗し、逃げた」

魔導長「それらの行動を取ったのは、他でもない魔法師なんですよ」

勇者「……何だと?」
512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 00:54:31.36 ID:UcnA9EAO
勇者「あなた達は魔法師がやったと思ってるのですか?」

魔導長「そうです。既に指名手配しています」

勇者「取り消してくれませんか? あなた達は思い違いをしている」

勇者「俺らを襲ったのは魔族です」

魔導長「!」

勇者「名前も聞いています。魔国少尉と言う名です。本名かは分かりませんが」

魔導長「……この連合の建つ街に魔族が徘徊出来る訳がなかろう!」

勇者「実際いるのですよ。やつは変身魔法を使います。人間の姿で現れて、不意
    打ちをされましたからね」

魔法師「……だが犯人は魔法師です。それは魔法師の策略に違いないでしょう」
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 01:07:18.66 ID:UcnA9EAO
魔導長「私達は現場に魔法師がいるのを見ました」

勇者「それはきっと、俺達を助けに来てくれたんでしょう」

魔導長「それならどれ程良い事か」

魔導長「あの時駆け付けた警備兵達が今朝目を覚ましましてね。彼らに魔法師の
    似顔絵を見せた所、『こいつだ! 楽しそうに仲間を殺しやがったやつだ
    !』と言うのですよ」

勇者「嘘だ! 魔法師がそんな事……するわけ……」

勇者「そ、そうだ。変身魔法ですよ! 魔族が魔法師の姿でやったのではないでしょうか」

魔導長「その必要性はありますか?」

勇者「……」

魔導長「あなたの話では、あなた達の前に現れた時、魔法師の姿ではなかったのですね?」

勇者「……ですね」

魔導長「何故、魔族がわざわざ二度も変身魔法を使う必要があったのか」

勇者「それは……魔法師に罪を被せようと……」

魔導長「魔族が、ですか?」

勇者「……」

魔導長「それに、あの場にいたのは、確かに魔法師でした。あの子の魔力は独特ですから」
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 01:16:15.74 ID:UcnA9EAO
魔導長「私はあなたの話を聞いて、最も筋の通る説明を考えてみましたが、聞きますか?」

勇者「……どうぞ」

魔導長「理由は分かりませんが、魔法師はあなた達を殺しに来た」

魔導長「変身魔法を使い、自分だとばれないようにして」

勇者「魔法師が変身魔法を使う所を見たことがありません。防御付加魔法も」

魔導長「習得していないとも言えないでしょう?」

勇者「……」

魔導長「あなた達は魔法師と戦闘になり、気を失った」

魔導長「それを見た魔法師は、あなた達が死んだと思い、気を緩めて変身魔法を解く」

魔導長「その時に警備兵が来て、戦闘になる」

魔導長「警備兵が粗方片付いた時、私達が到着する」

魔導長「大勢の魔法使い相手に不利と悟り、逃げる」

勇者「筋は通ってますね」

魔導長「でしょう?」
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 01:23:09.12 ID:UcnA9EAO
勇者「だけど、魔法師じゃない」

勇者「魔法師な訳がない」

魔導長「……かつての仲間を信じたい気持ちは分かりますが」

勇者「魔法師はそんなやつじゃない。俺は知っているんだ」

魔導長「……」

勇者「あいつは……そんな事をするやつじゃない……」

魔導長「……手配書を引っ込める気はありませんよ」

魔導長「それが事実ですから」

勇者「……」

魔導長「……では、私はこれで失礼します。勇者様も現実を受け止めて下さい」

魔導長「辛いでしょうが」

勇者「……」

勇者「……おい、魔法師……」

勇者「本当にお前なのか? 答えてくれよ……」
516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 01:47:27.56 ID:UcnA9EAO
──魔導長室

魔導長「どういう事だ……何故やつの名前が……」ブツブツ

魔国少尉「誰の名前でしょうか?」

魔導長「!」

魔国少尉「『この者を見掛けたら近くの魔法使ギルドへ。但し、力に自信のある
      者は挑んでよし。生死を問わず金貨千枚』」

魔国少尉「魔法師さんが可哀相ですねぇ」

魔導長「どうやって入った!」

魔国少尉「そこのドアからですよ」

魔導長「……まぁ、丁度良い。お主には聞きたい事が──」

魔国少尉「ええ。勇者達を襲撃したのは私です」

魔導長「何だと……!? この街では襲撃しないと約束したはずだ!」

魔国少尉「約束? あなたからそのような言葉は聞きましたが、同意してませんよ」

魔導長「何をっ……!」
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 01:58:10.81 ID:UcnA9EAO
魔国少尉「おお、可哀相な魔法師! 無実の罪で金貨千枚になってしまうとは!」

魔導長「お主……嵌めたな?」

魔国少尉「嵌めるだなんてとんでもない。私はあなたには感謝しているのです」

魔導長「何だと?」

魔国少尉「あなた達が来なければ、あなたが叫ばなければ、私は“本物の”魔法
      師さんに殺されていたでしょう」

魔導長「では魔法師は……」

魔国少尉「勇者達を助けに来ただけですね」

魔導長「今すぐ手配書を取り消す!」

魔国少尉「それはなしですよ」

魔導長「どうしてだ」

魔国少尉「あなたと私の繋がりが露呈する危険があるからです」

魔国少尉「急にあなたが意見を変えた訳を筆頭に、様々な疑問が沸きますからね」

魔導長「っ!」
518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 02:07:19.65 ID:9MYrVEDO
魔導長の説明が既におかしい件について
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 02:08:53.22 ID:UcnA9EAO
魔導長「……お主の要求は何だ」

魔国少尉「そうですね……連合の協力」

魔導長「それは無理だ!」

魔国少尉「そうでしょうとも。連合が魔の国に協力するような事があってはいけません」

魔国少尉「大陸への裏切り行為ですからね」

魔導長「……」

魔国少尉「何、要求と言ってもそんなに重いものではありません」

魔国少尉「あなたと私が、これからも良い友であって欲しい。それだけです」

魔導長「……良いだろう」

魔国少尉「友達ですから、事が済めば亜法の事でも教えましょう」

魔導長「そうか」

魔国少尉「ではこれで失礼しますね。大陸の魔法の発展の為に、これからもよろ
  しくお願いしますよ」

魔導長「ああ……魔法の発展の為に」
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 02:10:57.06 ID:UcnA9EAO
>>518
気にしちゃだめぇぇえっ!
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 02:19:29.43 ID:9MYrVEDO
別にそれほど気にしてないよwwわざわざ書き込むようなことじゃなかったけど。
楽しんで読ませてもらってるんで気にせず書いてくれ。
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 02:26:43.21 ID:rWgmNpwo
魔導長と魔国少尉は何をしたかったんだ
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 02:31:43.66 ID:UcnA9EAO
──沼の街、川沿い

魔法師「本当にあの人なんですか?」

女「魔導長さんに付けた小型盗聴器で確認済みです」

男「盗賊ってこういう時にはかなり役に立つな」

盗賊「うるせぇ」

魔法師「でも……それって声だけ何でしょう?」

女「ですが、訪ねてきたタイミングと出てきたタイミングを考えれば間違いない
  と思いますよ」

男「だけど……確かに確信は持てないな」

魔法師「ですが、魔力はかなりのものですね……あれ?」

女「どうしました?」

魔法師「あの服、昨日の魔族が着ていたものですね」

女「確率は上がりました」

男「同じ服か……」

魔法師「もしかしたら魔法が掛かっているのかもしれません。そう考えれば勇者
    達が負けたのも納得出来ます」

女「どんな魔法と思いますか?」
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 02:53:10.37 ID:UcnA9EAO
魔国少尉「……」

タタタッ

盗賊「はぁっ!」シュッ

魔国少尉「!?」

カン…

魔国少尉「何をする! 危ないだろう!」

盗賊「ナイフが効かない……こいつだ!」

魔国少尉「一体何なんだ君は!」

男「……」ザッ

女「……」ザッ

魔国少尉「“君達”、か……ん、あなたは──!?」グサッ

魔国少尉「何……氷の槍……?」

魔法師「油断したね」

魔国少尉「魔法師さんですか……まさか見つかるとは、思ってもいません……でした」バタッ

魔法師「私もここまで上手く行くとは思ってなかったよ」

男「あれ、俺らって不要だったんじゃないか?」

女「私達が出てきて目を魔法師さんから反らしたんじゃないですか。それより、
  これを見てください」

魔国少尉「……」グニャァ

男「うわ……」

魔法師「変身魔法が解けてるんですよ」
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 02:55:26.17 ID:UcnA9EAO
>>522
気にしちゃ(ry


なんだか展開がやっつけになり始めたから、寝て頭を冷やす。
よく自分でも何書いてるのか分からなくなる事ってあるよね(ねーよ
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 03:00:33.70 ID:9MYrVEDO
>>522
現時点でわかることは

魔導長は魔国少尉に何らかの弱みを握られている可能性がある
とりあえず魔国少尉は勇者一行を排除したい
しかし魔法師が厄介なので勇者一行から魔法師を離脱させるよう依頼した
魔法師の離脱後勇者一行を襲撃するも兵士がかけつけたので咄嗟に魔法師に変身して兵士を攻撃
現場に本物の魔法師が到着後更に遅れて魔導長が到着し同時に魔国少尉は撤退
魔法師が必死に弁解するも色々と勘違いした魔導長が魔法師を使命手配
その後目が覚めた勇者の口から魔国少尉の名前が出てきたので慌てて説明をする
事後、魔導長は魔国少尉との密会で自身の勘違いを自覚し使命手配を取り消そうとするも魔国少尉に言いくるめられる
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 03:07:24.50 ID:9MYrVEDO
レスしてる間に魔国少尉が死ぬとは思わなかった
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 06:38:10.21 ID:RkE5PqQo
楽しんでると言いつつ粗探しをしながら解説者気取りですか
>>518みたいなのを書く段階でアレなのに気づけよww
と更に突付いてみる
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 09:31:50.08 ID:XoPG5sDO
男は黙って C だな
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/24(水) 10:30:35.93 ID:9MYrVEDO
別に粗探ししてるつもりはないんだけどな
普通に読んでればわかることしか書いてないしその説明はさすがに無理があり過ぎないかって思っただけだよ
まぁ喧嘩する気もないし気分が悪くなったのなら謝るが楽しんで読んでるのは事実だ
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 10:43:12.93 ID:rWgmNpwo
お前ら喧嘩すんな
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 12:16:16.96 ID:UcnA9EAO
まぁ矛盾もしてるだろうし、シーン説明も大体合ってるから良いんじゃね?

俺が馬鹿だから、読んでて疑問も浮上する。それだけだろ。
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 15:00:28.49 ID:UcnA9EAO
「あ、あんたら何してんだ!」

「人殺しだ! ひ、人殺しだ!」

「いや、死んだのは魔族じゃねえか!?」

「そ、それよりあいつ、今朝から手配されてる魔法使いじゃねぇか!?」

ザワ…ザワ…

女「騒がしくなってきましたね」

魔法師「みなさん、忘れ物はないですね?」

男「俺らは大丈夫ですが」

魔法師「……私も大丈夫です」

男「先程も言いましたが、この一件であなたの罪がなくなるかもしれないんですよ?」

魔法師「それはないと思ってます」

魔法師「例えこの魔族に魔導長が脅迫されていたとしても、また他の魔族が接触
    してくるでしょう。魔導長なら一人の魔族くらいなら敵ではないと思い    ますから」

女「そうですね。それに盗聴した内容からすると、脅迫と言うより取引と言った
  感じでした」
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 15:11:38.32 ID:UcnA9EAO
「警備兵だ! こ、この魔族を倒したのはお前達か!」

魔法師「はい」

女「タイムリミットですね」

男「そうじゃなければ良いんだけど」

「そうか。普段なら、感謝する、と言いたいが」

「お前、指名手配されている魔法師で間違いないな?」

魔法師「はい」

「ならば連行する!」

魔法師「一つ聞きます。私は無罪ですか?」

「そんな訳なかろう!」

魔法師「なら断ります」

魔法師「みなさん荷物の持ち忘れはないですか?」

女「ちょっ……と待ってください。バックパックがまだ背負えてません」

「逃げる気か? そうはさせん!」

女「良いですよ!」

魔法師「転移!」

「待っ……くそ!」

…ハラリ

「……何だこれは?」
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 15:23:52.24 ID:UcnA9EAO
──白の国、白の街

魔法師「……本当に良かったのですか?」

女「あの街の図書館の本は粗方読み終えましたから。こっちの方が大きい図書館があるんですよね?」

魔法師「図書館と言うよりは蔵書庫ですね。古い本も多く残っています」

女「それは楽しみです」

魔法師「魔法学校、本当に諦めても良いんですか?」

女「魔石と同調出来ないのなら、諦めるしかないでしょう」

魔法師「出来ない確率が高いと言うだけですよ。あなたは異常ですから」

女「計算出来ない低い確率には賭けないようにしているんですよ」

盗賊「てめぇこそ勇者達の所に戻らなくて良いのか?」

魔法師「はい。私が罪人という事もありますが、私自身気になる事がありまして」

男「気になる事、ですか。それはどのような?」

魔法師「……色々ですよ」
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 15:34:48.82 ID:UcnA9EAO
男「魔法師さんはこの後どうするんですか?」

魔法師「少し一人で旅をしてみようと思ってます」

男「連合には戻らないんですか」

魔法師「私は低い確率にあまり賭けないようにしているんです」

盗賊「確率が高いか低いかも分かってねぇだろ」ボソッ

女「魔法師さんは分かっているんでしょう。直感は魔法使いが得意とする所ですから」

魔法師「それに、私は確かに勇者達と旅をするには力不足かもしれませんし」

魔法師「勇者達に頼らなくても大丈夫なようにもなりたいんですよ」

男「そうですか」

女「験体が手に入ったと思ったんですが……残念です」

男「お前はまたそんな事を……分かるけど」
537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 17:31:03.14 ID:UugVPBQ0
魔法師「験体って……そう言えば私、何もお手伝いしてませんね」

魔法師「別れた後は、今度いつ会えるか分かりませんので、今できる事はありますか?」

女「本当ですか! ありがとうございます」

魔法師「それで、何をすれば良いんですか? もしかして時間が掛かりますか?」

女「いえ。簡単な二種類の魔法を……そうですね、二十回ずつして頂ければ」

魔法師「良いですよ」

盗賊「全部で四十回だぜ? 本当に良いのか?」

魔法師「実験なんですよね? 薬を作る時みたいな」

男「薬とは魔法薬ですか?」

魔法師「普通に薬草を組み合わせたりもしますよ」

女「教授、ボーッとしてないでそっちの鞄からも器具を出して下さい」

男「はいはい、分かってるよ」

女「そうそう、魔法師さん。あなたのその杖に付いてる魔石は何ですか?」

魔法師「えっ? ウォルターですが」

女「それは良かったです」
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 17:49:06.40 ID:UugVPBQ0
男「実験内容の説明をします」

魔法師「はい」

男「使ってもらう魔法は二種類、火属性と雷属性の魔法」

女「種類は簡単かつ魔翌力放出量が微調整出来る魔法です」

魔法師「と言う事は、初級魔法ですね?」

女「はい。火属性からは単純な火炎生成、雷属性からは電気を起こすだけのもので結構です」

男「ちなみにこの実験では、魔翌力消費を双方とも等しくしなくてはいけません。出来ますか?」

魔法師「やってみます」

女「出来れば消費量をぴったりにして欲しいのですが、人の感覚には限界がありますからね」

男「火属性魔法はこっちの器具で、雷属性魔法は今女さんが組んでいる器具で測定します」

魔法師「分かりました」
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 18:25:18.56 ID:UugVPBQ0
(三時間後)

盗賊「おい。まだ終わらねぇのか?」

男「後二回ずつだよ。ではお願いします」

魔法師「はい。炎撃!」ボウッ

女「数値、問題なく記録できました」

男「よし。じゃあ次、雷属性魔法ですね」

魔法師「分かりました。……電撃!」バチバチッ

女「数値の記録に問題はありませんが……」

魔法師「はい。もう一度ですね。また強くしてしまいました」

女「ですね。……準備完了しました」

男「ではお願いします」

魔法師「はい。電撃!」バチッ

ザワザワ……

盗賊「街中じゃねぇとは言え、野次馬が増えてきてんだよ……」
540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 18:40:19.41 ID:UugVPBQ0
男「……」

魔法師「……」

女「……実験終了ですね」

男「だな」

盗賊「やっと終わったか……」

魔法師「魔力消費はあまりしてませんが、疲れますね」

男「微調整は集中力がいるでしょうしね」

魔法師「ところで何を調べてるんですか?」

男「ああ、言い忘れてましたね。これは俺らが立てた仮説、等価交換の法則を調べてるんですよ」

女「私達にとって魔力は未知の力ですからね。私達が言う所の“統一原理”に当てはまる力かどうかも分からないので、とりあえずそう呼んでるだけですよ」

女「ちなみに“統一原理”に当てはまる力というのは――」

盗賊「以下省略」

女「……」

男「それで魔力消費量と魔法で生まれたものの現象に使われるエネルギー。その二つを比較してエネルギーが保存されているかを調べているのです」

男「俺らの世界では通常、これをエネルギー保存の法則と言います」
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 18:54:57.37 ID:UugVPBQ0
女「ですが、魔力が持つエネルギーを測定する方法を私達は知りません」

女「ですからこうやって、魔法によって得た数値によって」カタタタタ…

女「間接的に等量の魔力消費によって等価のエネルギーが生まれる事を証明するわけです」カタンッ

魔法師「何だか……難しいですね」

盗賊「真面目に聞いてると頭がおかしくなるぜ? こいつらみてぇに」

男「結果はどうだ?」

女「やっぱりコンピュータは良いですね。エネルギー値がどんどん出てきます」

魔法師「凄いですね……。これも科学なんですか? 魔法ではなくて?」

男「はい。魔法は科学と違って誰でも使えるものなんですよ」

魔法師「魔法はあなた達にとってはちっぽけなものなんですね……才能がないと使えないなんて」

男「魔法の良い所は自由性にありますから。俺らにとってはそっちの方が羨ましいんですよ」

女「あとは……これを……」カタタタタ…

女「平均値出ました」

男「どれどれ……」
542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 19:05:57.19 ID:UugVPBQ0
魔法師「どうだったのですか?」

男「やっぱりエネルギー値にずれがあるな」

女「でも手作業の微調整だけですよ?」

魔法師「……?」

女「数値のずれは小数点以下八桁からです。魔法師さんの技量の凄さが伺えますよ」

男「だがこのずれはどう思う?」

女「私は無視できる誤差だと考えます」

男「そうだな。少なくともマクロな視点からは」

女「物理学の基盤もミクロでは誤りを持つニュートン力学ですよ」

女「このくらいなら、魔法物理学の出発点としてはかなり良い方じゃないでしょうか」

男「……そうだな。魔法師さん?」

魔法師「はい!?」

男「ご協力ありがとうございます。俺らの仮説はお陰で立証されました」

魔法師「お、おめでとうございます!」

女「まぁ、魔法の存在を直接見せない限り、学界では認められないでしょうが」

男「それを言うな……」
543 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 19:17:23.92 ID:UugVPBQ0
女「……本当に行ってしまうんですね?」

魔法師「自分で決めた事ですし」

女「残念ですね……」

男「プランは?」

魔法師「決めてません。どうせなら人のいない辺境に行ってみたいですね」

男「それは面白そうですね。出てきたときには女仙人ですか」

魔法師「ふふ、私にそれはムリですよ」

盗賊「じゃあ、達者でな」

魔法師「はい。そちらも魔法の研究、頑張って下さいね」

女「言われなくても」

男「まだまだ頑張りますよ」

魔法師「では……転移!」

男「なんで転移魔法を使ったんだろ」

盗賊「ここが都会だからだろ? どこかの田舎村に行ったんだろうよ」

盗賊「さて、俺達は今日からの宿を探すぞ」
544 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 21:58:44.38 ID:UcnA9EAO
(夜中)
──魔導連合本部

剣士「勇者達、無事だったのか!」

僧侶「相変わらずタフなやつだな」

勇者「そっちも無事みたいで安心したよ」

剣士「それより、私達を襲った“魔国少尉”が魔法師だったと言うのは本当か?」

勇者「まさか剣士はそれが本当だと思うのか?」

剣士「いや……。魔法師に限ってそんな事はないと思っているが」

勇者「当たり前だ。魔法師のはずがない」

勇者「今日、連合の魔法使いの話が聞こえたんだけど、この街に魔族が入ってたらしい」

僧侶「魔国少尉の居場所が連合に知れたのか?」

勇者「その魔族が魔国少尉なのかは分からないけど、川沿いで殺されたんだそうだ。殺したのは魔法師を含む四人組だったと聞いてるよ」

僧侶「四人組か……疑いたくはないけど、怪しくなってきたな」

剣士「いや、魔法師はこの街に馴染み深い。知人に助けを借りただけかもしれない」
545 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 22:09:07.47 ID:UcnA9EAO
剣士「だがどうして魔法師が魔族を?」

勇者「俺達が襲われた所に連合が駆け付けた時、魔法師がいたそうなんだ」

僧侶「ああ、それで指名手配を受けてる訳か」

剣士「では魔法師は魔国少尉を追って、倒したのだと考えられるな」

勇者「そうだな」

剣士「だが、それならどうして指名手配を取下げないんだ? 魔法師は功績を挙げて、倒した魔族が魔国少尉なら合点はいくはずだ」

勇者「その辺りがよく分からないんだよな……魔法師が逃げたと言うのも、どうしてか分からないんだ」

剣士「逃げただと?」

勇者「そう。まぁ、仮にも指名手配犯だから怖かったのかもしれないけど」

勇者「それさえなければ戻って来てくれてるはずなんだけどな……」

魔導長「それについては私から説明しましょう」

勇者「……こんな遅くにどうしたんですか?」

魔導長「いや、明日発たれると聞きましたので」
546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 22:20:16.59 ID:UcnA9EAO
剣士「で、どうして罪状を取り消さないのだ?」

魔導長「それとこれとは別だと言う事ですよ」

勇者「どういう事ですか」

魔導長「確かに魔族が街にいたかもしれない。だけど魔法師はそう錯覚させようとしただけかもしれない」

魔導長「そう発言する人も少なくないんですよ」

勇者「錯覚とはおかしい話ですね。現場は周囲見られていたはずです」

魔導長「魔法師が魔族と繋がっているとすれば……」

勇者「何?」

魔導長「あれ程の魔法使い、失っては魔の国にとっては痛い」

剣士「何故魔の国が損をするんだ」

魔導長「仮にですよ、仮に」

魔導長「魔の国は損失を抑える為に、魔族を一人贄にした」

魔導長「魔法師は優秀な魔法使いで、しかも人間ですから、それだけの価値はある」

勇者「それは立証出来る話ではありません」

魔導長「否定も出来ませんからね。だからまだ取下げにはならないんです」

勇者「くっ……」
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 22:29:41.00 ID:UcnA9EAO
魔導長「それはそうと、本当に明日に発たれるのですか?」

勇者「ええ」

魔導長「まだ魔法使いの補充が……」

勇者「いりません」

僧侶「そうは言っても、魔法使いがいないと辛くなるよ?」

勇者「良いんだ。魔法師でなければ駄目だ」

剣士「だから明日にでも街を出ようとしているのだろう?」

剣士「魔法師を探す為に」

勇者「本当はすぐにでも出発したいんだけどな」

魔導長「……そうですか。あくまで魔法師にこだわりますか」

勇者「はい」

魔導長「あなたを襲った犯人なのかもしれないのですよ?」

勇者「信じてますから」

魔導長「……」

魔導長「分かりました」
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 22:36:12.70 ID:UcnA9EAO
魔導長「ですが、あなた達の装備ではこれから先、とても辛くなるでしょう」

勇者「覚悟してます」

魔導長「そこで、提案なんですが、魔法師より先に砂の国へ向かわれてはどうでしょう」

勇者「砂の国ですか?」

魔導長「砂の国北部に広がる砂漠にある遺跡、知っていますか?」

勇者「いえ……」

剣士「私も知らないな」

僧侶「僕は知ってるな」

魔導長「ほう。どこまでご存知ですかな?」

僧侶「何度か調査には行ったものの、マジックトラップの多さと複雑さに中止になったとか」

僧侶「魔物も住み着く事が出来ないとか」

魔導長「その通りです」

魔導長「ですが、まだ話があります」
549 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 22:44:00.83 ID:UcnA9EAO
魔導長「調査団は途中までマジックトラップを解除し、そこまでの壁画を解読しています」

魔導長「その結果、最深部に祭壇があり、そこには魔剣が納められているそうです」

勇者「魔剣……?」

魔導長「古代に作られた、竜をも斬ったと言われているものです」

魔導長「竜の鱗は人間が出来る限界の防御魔法よりも強力な魔法が掛かっています」

魔導長「つまりその剣を持てば、斬れないものなど殆どないのです」

勇者「それは俺達に対する助言ですか?」

魔導長「私に出来る事はこのくらいしかないですし」

剣士「だが確かにそのような剣があれば、今回のような事にはならないな」

僧侶「行ってみる価値はあるんじゃないかな?」

勇者「……そうだな。弱いままだと魔法師に合わせる顔もない」
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 22:50:56.23 ID:UcnA9EAO
魔導長「では私はこの辺りで失礼させてもらいましょう」

勇者「はい」

魔導長「魔法使いは本当に付けなくても良いんですね?」

勇者「俺達には魔法師がいます」

魔導長「そうですか。……あぁ、そうだ。魔法師から手紙がありますよ」

勇者「!」

魔導長「魔族を殺した後、逃げる時に落として行ったらしいです」

勇者「わざわざ、ありがとうございます」

魔導長「いえいえ。では。これからも期待しておりますよ」

勇者「そう期待しないで下さい」

勇者「……魔法師からの手紙か」

剣士「開けてみてくれ」

勇者「ああ。分かってる」
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/24(水) 23:04:57.49 ID:UcnA9EAO
勇者「……これは」

僧侶「勇者の証だね」

勇者「なんでこんな物を……魔法師はまだ仲間だろ」

剣士「手紙にはなんて書いてあるんだ?」

勇者「あ、あぁ」

『勇者、剣士、僧侶、みんな元気? 私は魔力が漏れる程元気だよ!
私がいなくなって寂しい? 案外何事もなかったりして。どのみち当分は戻れそうにないからね。新しい魔法使いが来たら仲良くするんだよ?
私はこれから修行の旅に出ます。解任されたついでにびっくりするくらい強くなっておくから、そっちも負けないように精進しなさいな。
追伸。男さんと女さんは白の街にしばらくいると思うから、白の街に行ったら探してみて。盗賊さんって言う人も一緒だよ。盗賊さんって言うのは、沼の街に来たとき行った酒場の柄の悪い店員さん、て言えば分かるかな?

じゃあ、またいつか。
    ──魔法師』

勇者「……魔法師。やっぱりお前じゃなかったんだな」

剣士「四人組の後三人は男さん達の事だったのか? それなら合点が行くかもしれない」

僧侶「どうする? 魔法師はしばらく戻るつもりがないって書いてあるけど」

勇者「じゃあ、魔法師に負けないように頑張らなくちゃな」
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 23:25:08.01 ID:UcnA9EAO
──魔導長室

…バタン

魔導長「魔国少尉が死んだ……。魔法発展への道は閉ざされたのか?」

「安心しろ。魔族は様々な所に潜んでいる」

魔導長「!?」

「お主と魔の国の関係が切れた訳ではない」

魔導長「だ、誰だ! どこにいる!?」

「お主の後ろだ」

魔導長「!!」

魔導長「何……お主……!」

「この顔を覚えておるか?」

魔導長「お主らは印象が深かったからな。もう一人はどうした?」

「ぐっすり寝ておるよ」

魔導長「そうか。魔国少尉がお主について触れておったが……どういう事だ?」

魔導長「お主は魔族なのか? 名前は確か……女、だったか?」

女「ほう。よく覚えていたな」ニタァ
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/24(水) 23:26:25.74 ID:UcnA9EAO
では今回はこの辺りで眠いので。
おやすみ。
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/25(木) 00:34:54.16 ID:vJAug4.o
変身魔法便利すぎだろww
一度見たら変身出来るでOK?
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/25(木) 05:55:27.45 ID:6VhQn6AO
早朝に起きなきゃならんとが拷問だろ……。

>>554
話の中で説明出来るか分からんからここに書いておく。
まぁ、他人になるにはまず見ないと分からない。見たことがないものは知らないのが当然だから。
おおざっぱに変身すると、“本物”の家族や恋人にバレる恐れがあったり(ホクロの位置や数の間違いなどで)。
何でも良いのなら想像でいける。
但し上級魔法の区分に入り、変身魔法の才能も必要なので、誰でも出来る訳ではない。
例えて言うなら『画家が皆、彫刻も出来る訳でない』。変身魔法を使える魔法使いは、絵画も彫刻もできたミケランジェロみたいなやつ。
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 19:16:12.83 ID:M4RX3v.0
魔導長「お主は人間ではなかったのか……?」

女「人間ではまずいか?」

魔導長「人間が魔族に荷担するなど――」

女「お主はそうではないのか?」

魔導長「私はっ……!」

魔導長「私は……お主達に従っている訳ではない」

女「おお、そうであったな。これはあくまで取引。お主に大陸攻略を強いる事は、我々には出来んな」

魔導長「当たり前だ……!」

女「だが、知っておいても良かろう。大陸の人間とて魔族に荷担する輩は大勢いる」

女「それこそ、そこら中にな」

魔導長「つまり、お主もその一人か?」

女「どうだろうな。もしやすると、魔の国に潜入した連盟の視角かもしれぬな」
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 20:18:20.35 ID:M4RX3v.0
魔導長「もしかすると、魔族が変身魔法を使っているのかもしれん」

魔導長「魔国少尉も使っておっただろう」

女「あれが難しい事くらいお主も知っておろう。私には使えん」

魔導長「本当か?」

女「嘘を言ってどうする」

魔導長「……それで、何しに来た?」

女「忠告をしておこうと思ってな」

魔導長「何の事だ?」

女「今回は我々も言ってなかったから、見逃してやる。だが、次はない」

女「お主、勇者に入れ知恵をしたな?」

魔導長「何の……事だ?」

女「とぼけるな。私はこの耳で聞いておるのだ」

女「砂の国。砂漠の遺跡。竜をも斬る魔剣……」

魔導長「!?」

女「勇者にそう易々と強くなられては困る。奴の有利になるような入れ知恵はするな」
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 20:31:21.06 ID:M4RX3v.0
魔導長「わ、私は勇者に有利にさせようとしたわけではない!」

女「ほう。では何だ?」

魔導長「その機会を……与えたのだ」

女「遺跡に行く事か? 砂漠など奴には何の苦痛にもなるまい」

魔導長「そうではない。遺跡の中身は、迷宮になっていると聞く」

魔導長「私とて容易に抜ける事の出来ない罠も多いのだ」

女「ほう。まぁ、先程も言ったように、今回は許してやるがな」

魔導長「……しかし、どうしてだ?」

女「何がだ?」

魔導長「お主達魔族……魔の国の者はどうしてさっさと勇者を仕留めない?」

魔導長「お主達にとってその方が良いようにも思える。お主達が出来ないわけでもないだろう?」

女「……そう言う事か。私とて分からん。魔王様のご意向なのだ」

魔導長「不思議には思わないのか?」

女「魔王様の意志は我々の意志でもある」

魔導長「成る程な……それが魔の国か」
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 20:49:57.73 ID:M4RX3v.0
女「それで、私の言った事は理解できたかな?」

魔導長「あ……ああ」

女「奴の妨害なら進んでしてくれても構わんぞ?」

魔導長「誰がそんな事を進んでするものか!」

女「魔の国の友として協力的であって欲しいものだな」

女「進んで協力すれば……良い事があるやもしれんぞ?」ス…

魔導長「お……おいっ、何をするだ!」

女「まぁ……ムリに頼みはしないが」サワ…サワ…

魔導長「き、汚らしい手で触れるな……売国奴め!//」

女「何を顔を赤くしておる? ……成る程。ふっ、まだまだ若いという事か」ニヤ

魔導長「色仕掛けなんぞで私を操れると……おいっ、そこはっ!//」

女「ん! あったあった」ス…

魔導長「……?」

女「全く、あやつはなんて所に仕込んでおくのだ……」
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 21:00:41.86 ID:M4RX3v.0
魔導長「……それは、なんだ?」

女「盗聴器と言うものだ。離れた所から音を拾って盗み聞く事が出来る」

女「お主と勇者の話もこれで聞いておったのだ」

魔導長「それも……魔の国のものか?」

女「これはまた別物だな。だがお主も何故気付かなかったのか不思議だな」

女「お主の息子の側にあったというのに! あやつもよくそんな所に仕掛けられたものだな」

魔導長「なっ……! だ、誰だそんなものを仕込んだ奴は!」

女「お主は知らなくても良い事だ。まだまだ青いお主にはな」

魔導長「青いだと!?」

女「そうであろう? 体をまさぐられただけで赤面し、色仕掛けなどと勘違いするなど!」

女「ふくくっ……年の割には可愛い顔だったぞ?」

魔導長「な、なんだとっ……!?//」

女「おお、その顔だ。もしや慣れておらぬのか? その歳で?」

魔導長「用は済んだか? ならばとっとと帰れ!//」
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 21:10:29.61 ID:M4RX3v.0
女「からかうのはこの辺りで止めておいてやろう。後一つ、言っておく事がある」

魔導長「な、何だ?」

女「私は二度とお主の前に現れないかも知れぬが、我々を裏切れば報いを受けよう」

女「明日にでも新しい魔族がこの街に居座るだろう。魔国少尉に変わってな」

魔導長「……そうか」

女「後、我が儘を言えばだな」

魔導長「?」

女「我が同胞に不自由はさせないようにな。次も変身魔法が使える奴とは限らん故」

魔導長「……」

女「返事はなし、か」

コンコン

魔導長「!」

女「……入れても良かろう」

魔導長「お主はどうするのだ?」

女「私も用事が終わったのでな。ドアから出て行こう」

魔導長「……入れ!」

受付「失礼します……あれ、来客中でしたか?」
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 21:17:17.95 ID:M4RX3v.0
女「ああ、いえ。私はそろそろ出て行きますので」

魔導長「!?」

受付「そうでしたか。ですがいつの間に入って……あれ、確かあなたは学院への入学希望をなされていた……」

女「あれは諦めました。どうも才能がなかったみたいなんですよ」

受付「そうですか? 私は止めはしませんが……凄い魔力だったのに、勿体ない」

女「何かの間違いだったんのでしょう。では、私はこれで」

受付「はい。では」

女「魔導長さん」

魔導長「何だ?」

女「よろしく頼みましたよ」ニヤッ

魔導長「あ……ああ、分かった……」

女「では」

バタン

受付「何を話していたのですか?」

魔導長「大したことではない。それより何の用だ?」

受付「国立学院の教員が面会をお願いしたいと。夜中なので何度も断っているのですが――」
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 21:26:09.95 ID:M4RX3v.0
(翌朝)
――白の国、白の街、宿屋

ペャーペャー
  ペャーペャー

女「……」ムクリ

男「おはよう、女さん」

盗賊「いつもながら寝起きが良いな」

女「おはようございます」

男「そうそう、女さんって昨日の夜中に新しい盗聴器でも作った?」

女「いえ」

男「おかしいな……」

女「どうしたんですか?」

男「朝起きたら部屋の机に盗聴器が置いてあったんだよ。魔導長に付けたのと同じ奴」

女「おかしいですね。回収した覚えはありませんし」

男「魔導長が気付いて届けてくれたのかな……なんてな」

盗賊「おい、それが本当なら、俺はそれ触りたくねぇな」

男「だから冗談だって。でも何で触りたくないんだ?」

盗賊「俺はそれをあいつの股間に入れてきたからだよ」

男「……はぁ!?」

女「その技術をもっと他の事に役立てて欲しいものですね……」
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/25(木) 21:39:55.20 ID:M4RX3v.0
男「だが、不気味な事もあるもんだな」

男「この世界では無生物が自分で動くように出来てるのか?」

盗賊「少なくとも俺はそんなの見た事ねぇな」

男「良かった。少なくともこの世界は俺らにとってまだ正常なようだ」

盗賊「だが……何でだろうな」

女「まぁ気になりますね。ですが、その事は置いておきましょう」

女「折角この街に移動してきたんです。やる事があるでしょう?」

盗賊「また何日も居座るつもりか?」

女「当たり前です」

盗賊「なら、また俺は職を探しててめぇらを養わねぇといけねぇわけか」

男「俺も言葉に慣れるまでは稼ぎ役だな」

女「私は安心して本を読んできましょう」

盗賊「なんか納得いかねぇ……」

女「納得しなくても良いんですよ。では、朝ご飯を食べたら私は早速行く事にしましょう」

男「何て所だったっけ?」

女「白国営蔵書館ですよ」
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/25(木) 21:42:48.04 ID:M4RX3v.0
展開が一段落して、眠気もピークを迎えた所で、今日は寝る。
おやすみなさい。
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/26(金) 01:06:07.62 ID:ZXS0tfYo
おつおつ
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 03:01:18.17 ID:gpj5feUo
支援
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 04:12:52.04 ID:9uBxR2AO
──砂の国、砂漠の遺跡

勇者「ここが砂漠の遺跡か……」

僧侶「思ってたより小さいね。大きいけど」

剣士「ふむ。確かに見たところ小さく感じるかもしれないな。見た目、古代遺跡にしては小さい類に入る」

勇者「古代遺跡云々は分からないけど、かなりこれだけじゃないのは分かるね」

僧侶「これだけじゃないって?」

勇者「下の方を見たら分かるよ」

剣士「階段がまだ下に続いているな。つまりまだ下があると言う事だ」

僧侶「そうなのか。このままでも高級宿の部屋五つ分くらいの高さだし、幅も一番下は六つ分くらいはあるから十分広いと思ったけどなぁ」

勇者「そろそろ入ろう。多分、階段の上にあるのが入口だよ」

剣士「このラクダはどうする?」

勇者「連れていくわけにはいかないだろ。荷物は下ろして、放す」

剣士「そんなのでこいつらは大丈夫なのか?」

勇者「心配なら転移魔法でオアシスか街まで送り返そうか?」

剣士「そうしてやってくれ」

勇者「じゃあ少し待ってて。すぐ戻る」
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 04:33:23.00 ID:9uBxR2AO
勇者「さぁ、ここから遺跡の中に入るけど、どんな罠が仕掛けられてるか分からない」

勇者「十分に気を配って進もう」

剣士「ああ」

僧侶「勇者、ここに何か書いてあるみたいだよ?」

勇者「本当だな。ここが本当の入口とすれば、『ようこそいらっしゃいました』とか書いてあるんじゃないか?」

僧侶「罠が張られてる所がそんな友好的な場所のはずがないだろ」

勇者「だよな」

剣士「『英雄王ここに眠る』」

勇者「え?」

剣士「古代の王の墓なのだろうな。私達は墓荒らしと言うわけだ」

僧侶「剣士、読めるの?」

剣士「ああ。昔興味があってな。少しなら読むことが出来る」

勇者「そんな事が出来たなんてな。今まで知らなかったぞ」

剣士「言ってなかったからな」

勇者「じゃあ、折角来たんだから、英雄王様に会いに行こうか」

剣士「ああ、そうだな。面白そうだ」
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/27(土) 04:50:38.98 ID:gpj5feUo
au王「だが、断る!」
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/27(土) 23:50:09.29 ID:9uBxR2AO
近頃妙に眠いな。

加減なく 寝ても覚めても 憑く睡魔

心の一句。
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 00:08:25.10 ID:8Efr12AO
僧侶「入口を入ったらどのような感じかなと思ったら……階段か」

勇者「昔の技術でも螺旋階段は作れたんだな」

剣士「古代だからこそ作れたんだ」

勇者「どういう事だ?」

剣士「一説では、古代の技術は現代よりも遥かに高い水準をいっていたらしい」

剣士「この遺跡だってそうだ。見ていたか? 外から見える部分だけでも、あれは一つの岩から作られたもののようだ」

剣士「もしかしたら、この遺跡全体がその可能性もある」

僧侶「それが本当ならとんでもない大きさの岩が必要になるな」

勇者「内部を細かく掘っていくのも時間が掛かりそうだ」

剣士「私が見た本では、魔法使いが奴隷のように働かされた事もあったそうだ」

僧侶「まさか。魔法使いをそんな扱いにしたら権利損害で牢獄送りだぞ!?」

剣士「今はな。古代では普通だったかもしれない」

勇者「この階段には罠がないのか?」

僧侶「途中までは進めてるはずだから、大丈夫だろう」

剣士「早く行こう、勇者様」

勇者「僧侶、あんなに目を輝かせた剣士をかつて見たことがあるか?」

僧侶「僕もびっくりだよ……」
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 00:25:08.32 ID:8Efr12AO
勇者「はぁ……ふぅ……やっと階段が終わったな」

僧侶「ここって砂の中だよね、絶対」

勇者「多分な」

剣士「……凄い」

勇者「どうした?」

剣士「凄いぞ、勇者様! 今、私達の目の前に本物の遺跡があるんだぞ!」

剣士「壁画、古代大陸文字! 目の前にあるんだ!」

勇者「楽しそうだな」

剣士「ああ、とても興奮している!」

僧侶「この様子を魔法師に見せたらどう思うだろうな」

勇者「いない事が残念でならないな……」

剣士「『英雄王の元へ近付く事を許されたのは、踊り手の乙女達のみ』」ブツブツ

剣士「『王の好まざる者は、決して辿り着けない』」ブツブツ

剣士「『迷宮は王の元へ踊り子を誘い、他の者を阻む』」ブツブツ

剣士「“踊り子”なら、この墓を知り尽くしてるという事か?」ブツブツ

勇者「……自分の世界に入ってる?」
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 00:37:17.99 ID:8Efr12AO
勇者「だけど、本当に凄いな……ある意味」

僧侶「そうだね。魔物が侵入した形跡ってやつかな?」

勇者「そうだろうな。魔物は基本的に知能が低いから」

僧侶「神よ。骨と化した魔物達に祈りの言葉を与える事をお許し下さい」

勇者「僧侶……こんな奴らにまで……」

僧侶「ざまぁっ!」

勇者「前言撤回」

僧侶「床の色が少し違う所には骨が比較的少ないね」

勇者「そうだな。調査団が残した安全ルートかもしれない」

勇者「マジックトラップは大体解かれてるかもしれないけど、他にも罠はあるはずだよ」

僧侶「罠を踏めば、僕達も骨か」

勇者「剣士、そろそろ進もう」

剣士「え……あぁ、分かった」

勇者「そうだな。壁に書いてある事でも聞かせてくれ。進みながら」

剣士「任せろ!」
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 00:53:11.61 ID:8Efr12AO
『英雄王な死後、二百有余の時を経て、二代目統一王、三代目統一王、四代目統一王の手により、英雄王の墓は作られた。

英雄王、墓の最深部に眠る。永い年月を経て、漸く得た安らぎである。

四代目統一王、英雄王の骸に鎧を着せ、剣を握らせる。

いずれ来たる、復活の時を想って』

『英雄王死後、その骸は王宮の地下に安置された。

二代目統一王、その骸を特別に扱う。

ある日、墓を作る命を発する。

この都に、何百もの建築士、何千もの魔法使いを呼び寄せる。

こうして英雄王に相応しい墓を作り始めた』

『神の子と呼ばれる身であっても、死は訪れる。

英雄王床に臥し、短い命を閉ざさんとする。

二十五年に渡る歳月を想いながら、踊り子達によって盛大に送られる。

英雄王。全ての人に愛された若き王だった』
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/02/28(日) 01:23:03.56 ID:8Efr12AO
勇者「随分若くに死んだんだな」

剣士「そのようだな」

僧侶「死因とかは書いてないのか?」

剣士「書いてない」

僧侶「もしかしたら暗殺とかもあったんじゃないかな?」

勇者「愛された王なのにか?」

僧侶「でも万人に愛される王はいないよ」

勇者「この英雄王はそうだったかもしれないじゃないか」

剣士「遺体が見つかってない以上何とも言えないだろう」

剣士「想像は自由だがな」

勇者「剣士、そこの印離れてるから気をつけろ」

剣士「ああ」

勇者「じゃあ先を急ぐぞ。歴史もなかなか面白いな」
577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 17:53:06.50 ID:w2pvpXI0
『英雄王、北の地より帰還する。その姿、神々しき事限りなし。

一筋の涙、溢れ出でる。その流れ、途切れる事を知らず。

王の友は北の地にて死に絶える。

その骸、今亡き竜の腹にあり。その骸、火の海にて葬られたと聞く』

『北の地より、英雄王、竜を発見する。

竜の谷より追放されしその竜は、高き山の頂に居た。

冷気を放つ吐息と素早い動き、放たれる魔法に翻弄されるも、

英雄王、竜の喉元に剣を突き立て、引き裂き、

とうとう竜を火の海まで追放する』

『北の地にて、竜が暴れている。

その報せを受け、英雄王彼の地へ向かう。

信ずる友と家臣を引き連れて――』
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 18:03:03.54 ID:w2pvpXI0
剣士「――ん? どうした、急に止まって?」

勇者「調査団はこの辺りで挫折したみたいなんだ」

剣士「つまりここからは用心していかなくてはいけないのだな?」

勇者「そのようだ」

僧侶「さっきの分かれ道はもっと印が続いてるかもしれないよ? そっちも行ってみようよ」

剣士「いや。向こうは行き止まりだろう」

僧侶「なんで分かるんだよ。それに行き止まりでも英雄王の墓に行くかもしれないじゃないか」

剣士「それはないな。墓があるとしても、英雄王の友のだ。しかも竜と共に逝った奴だから、棺桶があっても中身は空だろう」

勇者「そんな事まで分かるのか?」

剣士「この型の墓は本でも読んだ事がある。二代目から五代目の統一王の石棺が納められていた白の国の遺跡と同じ形だ」

剣士「この墓も二代目から四代目統一王によって作られたものだから、違いなんてそうないとは思う」
579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 18:14:17.36 ID:w2pvpXI0
剣士「白の国にある遺跡も、ここと同じように迷宮のような構造をしていたみたいなんだ」

剣士「それでも学者達は迷わずに進む事が出来る。なぜだか分かるか?」

僧侶「道順を覚えていたんじゃないのか?」

勇者「壁画が目印になりそうだな」

剣士「二人ともある意味正しい。この壁画は良い目印になっているんだ」

剣士「墓の主人の人生を記した、伝記となっているんだ」

勇者「成る程な。英雄王の一生か」

僧侶「でも変わってるな。後ろから話を読んでいるみたいだ」

剣士「墓主にも仲間がいた。だけどそれは生まれたときからではないんだ」

剣士「墓の入口が墓主の死の場面。よって棺桶のある部屋は誕生の場面だ」

剣士「そして分岐する道は、家来や友達の墓主に逢う前の人生」

剣士「それぞれの“誕生”を明確にした上で、共に葬られている事も多いんだ」

勇者「つまり、英雄王の話を辿っていけば、英雄王の墓に辿り着けると言う訳か」

剣士「そう言う事だ。後は罠を気を付ければ良いだけだな。統一王達の遺跡と違うのはその点だけだと思う」
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/28(日) 18:43:52.40 ID:w2pvpXI0
僧侶「その罠をどうすれば良いんだ? どこにあるかもどんなものかも分からないんだよ?」

勇者「そうだね……吊り橋を渡るように行くしかないな」

剣士「具体的にはどうするつもりだ?」

勇者「考えてないな」

勇者「ただ、本当に“古い吊り橋を渡る”感じで行けば良いんじゃないか? なんて」

僧侶「足下を先に確認してからか」

剣士「壁もだな」

勇者「俺達が持っているものの中で、俺の剣が一番長い。確認は俺がしよう」

剣士「では私達が支援だな」

僧侶「死なない程度なら治癒魔法で回復出来るから安心しなよ」

勇者「はは……あまり痛い目には遭いたくないな」

僧侶「それはもっともだな」

勇者「じゃあ、これから少し時間が掛かるだろうけど、進むか」

剣士「ああ」
581 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/28(日) 23:06:05.36 ID:8Efr12AO
あー……なんだろこれ。
軽鬱? 倦怠期? 五月病? それともただの睡眠不足?
目を閉じててかつ寝てないと気力が沸かない。
582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/01(月) 02:52:28.59 ID:jUc9VoQo
無理すんな
583 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 01:45:44.72 ID:d4PrPQAO
ではでは少々鬱々と書き書きしていきますかぁ……
584 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 01:59:58.94 ID:d4PrPQAO
カンカン

ガリガリ

カラカラカラ…

勇者「この辺りは踏めそうだな」

剣士「うむ。気をつけてくれ」

勇者「分かってるよ」

カラカラ…

…キンッ

勇者「あー……もしかして」

プシュー

剣士「毒ガスか!? 僧侶、膜を頼む!」

僧侶「加護膜! って勇者!?」

勇者「げほげほっ! ぐぇっ、がふぉげほっ!」ゲバァ

僧侶「治療法!」

勇者「げほっ……げほっ……うー……」

勇者「……まだ苦しいな。ありがとう、僧侶」

剣士「勇者様大丈夫か? ガスが直撃していたが」

勇者「僧侶がいなかったら危なかったよ」

僧侶「これからはこの調子か……。治すことは出来ても蘇生は出来ないよ?」

勇者「即死はしないようにするよ」

剣士「中々辛い探索になりそうだな」

勇者「ははは……」
585 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 02:21:19.83 ID:d4PrPQAO
『遂に大陸全土を統一し、一国と成す。

大陸の人々、この国の王、英雄王に従う。

英雄王の神々しき姿、民達の希望となり、

英雄王の逸脱した才、国土に安息をもたらす。

英雄王、王の中の王なり』

『英雄王勢力、東端に向かう。

東北の地では、力強き独裁王が自国を蝕む。

英雄王、独裁王の国の民を味方につけ、侵攻す。

三四三日の戦いの末、独裁王自害の報せを受ける』

『南東の国々を抑えた英雄王、野望に片足をかける。

残るは北東の国々のみ。

英雄王、戦だけを行わずして、自国となった土地を治める。

東北の国々へ向かう前に、自国を安定に向かわせる』
586 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 02:43:47.85 ID:d4PrPQAO
『英雄王を筆頭とし、西の国にて革命を起こす。

彼の後ろには神と悪魔が付く。

神は彼の美しき姿、類稀なる剣技。

悪魔は彼の持つ魔剣、類稀なる魔法の才能。

その英雄王の反乱に敵うはずもなく、国は一月で墜ちた』

『民の声が聞こえた。

戦ばかりの国。貴族のみが潤う。

民の声は不満ばかり。

英雄王、その声に立ち上がる。

大陸を統一すれば、戦はなくなるはずだ、と。

手始めとして、この西の国を民のものとすると決断す』

『王命より、英雄王、亡者の砂漠へ向かう。

共に向かうは、同期と部下の兵士数人。

亡者の砂漠には、水すらなく、次々と仲間は倒れていった。

英雄王も死を覚悟した時、遺跡を見つける。

遺跡の番人は彼を案内し、一振りの剣を授ける。

その剣を手にとるや否や、光が包み込み、気付けば、英雄王自室にて目を覚ます。

遺跡にて授けられた剣を抱えて』
587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 02:46:16.28 ID:asSH85Qo
書くの嫌なら無理して書かなくてもいいんじゃね?
お前はよく頑張った
588 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 02:52:52.89 ID:d4PrPQAO
勇者「もう嫌だ……嫌だ……」ブツブツ

勇者「死にたい……殺せ……」ブツブツ

剣士「ゆ、勇者様、ここは私が交代しようか?」

僧侶「そ、そうだよ。勇者はよくやったよ」

勇者「いや、剣士をこんな目に遭わす訳にはいかない」

剣士「だが……」

勇者「これは俺の役目だ」

ヒュヒュヒュッ
  ドスドスドスッ

勇者「いぎゃぁぁぁああっ!!」

僧侶「治癒法!」

勇者「はぁ……はぁ……」

勇者「僧侶」ギロッ

僧侶「な、何?」

勇者「なんで回復させた! 折角死ねたのに!」

僧侶「え、えぇー……」
589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 02:56:25.63 ID:d4PrPQAO
>>587
書くのは嫌じゃないんだ。起きてるのが辛いだけ。
書く事自体は好きなんだよね。
駄文でも書いてなきゃ生きてる実感がしない。
590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 03:04:38.56 ID:d4PrPQAO
剣士「勇者様……」

勇者「なんだっ」

剣士「辛いなら変わろう。それでも変わらないと言うのなら頑張ってくれ」

剣士「壁画の話からすれば、多分もうすぐだ」

勇者「……分かった」

剣士「何もできなくてすまないな」

勇者「いや、仲間までこんな目に合わせては“勇者”の名折れだ」

剣士「そうか」

僧侶「じゃあ治療は今まで通りやって良いんだな?」

勇者「ああ、頼む」

勇者「死にたい……死にたい……」ブツブツフラフラ

僧侶「本当に大丈夫か?」

剣士「さぁ……?」

ヒュルルルル-…ドーンッ!

勇者「ぎゃぁぁあああっ!」

僧侶「ち、治癒法!」
591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 03:21:18.01 ID:d4PrPQAO
──石棺の間

勇者「この数日で肉体的苦痛に対する耐性が付いたと思うな」

僧侶「ご苦労様……」

剣士「ふむ。この部屋には仕掛けはない見たいだな」

勇者「やっと解放されたのか……」

僧侶「休暇するか?」

勇者「いや、さっさと終わらせよう」

勇者「剣士、この石棺を開ける前に、この部屋の壁画に書いてある事は分かるか?」

剣士「どうしてだ?」

勇者「これから会う英雄王様について知っておきたいだろう」

剣士「ああ、そうだな。では……」

『英雄王が生まれたのは西の国にある小さな村。

父の名は英雄王父、母の名は英雄王母。

平凡な農家に生まれた彼だが、その容姿、才能は共に生まれた時から非凡であった。

その姿美しく、神か天使の如し。

その足風のように速く、その身のこなし水の流れように優雅なり。

英雄王、その内に秘めたる正義により、幼くして兵役する』
592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 03:30:01.41 ID:d4PrPQAO
僧侶「農家から大陸を統一した王か。とんだ成り上がり者だね」

剣士「どのような人だったのだろうな」

勇者「今、この英雄王がいれば、もう魔の国との決着もついていたかもしれないな」

剣士「いないのだから仕方ないだろう」

僧侶「そうそう。それに英雄王のやり方だと、結局は戦闘して統一してるんだからさ。連盟で統一しようとしてる今の大陸の方が平和的だよ」

勇者「うん。そうかもしれないな」

剣士「だが会ってみたいのも事実だ」

僧侶「そうだね」

勇者「じゃあこれから会おうじゃないか」

僧侶「骨だろうけどね。それともミイラ?」

勇者「そこは妥協するしかないな。じゃあ、石棺を開けるよ」

剣士「ああ」

僧侶「うん」

勇者「では失礼して……」

ゴゴゴゴゴ…
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 03:44:25.86 ID:d4PrPQAO
ゴゴ…ゴ…

勇者「……骨だ」

僧侶「骨だ」

剣士「ああ、骨だな」

勇者「王の割には結構普通の鎧を着てるんだな」

剣士「そうだな。他の統一王の鎧は金で出来てるものもあったらしい」

剣士「少なくとも、金は必ず使われていたな」

勇者「そりゃ凄いな……」

僧侶「勇者、この握ってるのが魔剣じゃないかな?」

剣士「その可能性は高い。最も、他の統一王が魔剣を取っていなければだが」

勇者「という事はこれが普通の剣の可能性もあるんだな?」

剣士「ああ」

勇者「そうか。じゃあ、手に取ってみるぞ?」

僧侶「その為に来たんだ。さっさと盗れ」

勇者「意味は間違ってないけど……嫌だな」

勇者「では気を取り直して……」カチャ

〔盗むつもりか?〕

勇者「!?」
594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 03:59:56.59 ID:d4PrPQAO
勇者「だ、誰だ!」

僧侶「え?」

剣士「ど、どうした、勇者様?」

勇者「声が聞こえないのか?」

剣士「声だと?」

〔我が声はキミにしか聞こえん〕

剣士「聞こえないぞ?」

僧侶「僕も聞こえないな」

〔我はこの剣を通じて話している〕

勇者「剣から……だと……?」

〔そうだ〕

剣士「その剣と話しているのか?」

僧侶「という事は、それが魔剣か?」

勇者「それは分からないな……どうなんだ? お前は竜を斬る事が出来る魔剣なのか?」

〔我は剣ではない。だがこの剣はいかにもその剣だ〕

勇者「お前は剣じゃない? なら誰なんだ?」

〔我が名は英雄王。初代統一王である〕
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 04:01:36.78 ID:d4PrPQAO
この辺りでそろそろ寝まするー
おやすみでするー
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/02(火) 15:56:26.16 ID:h6M64kUo
今追いついた
面白いから完走してくれると嬉しい
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 20:25:51.71 ID:Eumbork0
久々に外に出た。
光が眩しかった。風が激しかった。

疲れて寝る前に少し書いて寝よう。
598 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 20:33:52.17 ID:Eumbork0
勇者「英雄……王……?」

剣士「何だと? 英雄王と話しているのか!?」

僧侶「その剣に取り憑いてでもいるのか?」

勇者「……そうみたいだな」

〔キミ、名前は何だ?〕

勇者「勇者だ」

〔では勇者よ。いかにもこの剣は竜を斬った剣だ。これを欲するか?〕

勇者「ああ」

〔何故、これを欲する?〕

勇者「話せば長くなる……かもしれない」

〔簡略して答えよ〕

勇者「……強くなりたいからだ」

〔その言葉に偽りないと言えるか?〕

勇者「ああ」

〔その言葉に邪気はないと言えるか?〕

勇者「ああ」
599 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 20:44:18.01 ID:Eumbork0
〔その言葉、確かに真であり純粋なる心であるようだな〕

勇者「ああ。……って分かるのか?」

〔キミの答えなど疾うに知っておった〕

〔今剣を持っておるのはキミだ。キミの思念は我に全て流れてきておる〕

勇者「お、おいっ、本当か!?」

〔嘘だと思うか? ならばキミの想い人を当ててやろう〕

〔……ふむ。近頃レコーダーとやらが動かなくなって声も聞けていないようだな。異世界から来たと言う――〕

勇者「分かった分かった! 少しその事は信じるから!」

〔良かろう〕

剣士「何を話しているのだろうか」

僧侶「あの慌てっぷりだとあれかな……」

剣士「?」

〔良し。キミの心はよく分かった。この剣を授けても良かろう〕

勇者「本当か!?」

〔但し、条件がある〕
600 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 20:51:01.37 ID:Eumbork0
勇者「条件?」

僧侶「とうとう本題みたいだな」

剣士「ああ」

〔そう、条件だ。この剣は仮にも魔剣。そして呪われた剣だ。これを取るにはそれなりの覚悟と対価が必要となるのだ〕

勇者「覚悟は出来てる。とすると、対価か」

〔覚悟が出来ている、と言ったな? それは本当か? 我の言う覚悟とは、対価が何であろうと支払う覚悟だ〕

〔その対価を支払ってまで、この剣を手にする覚悟はあるか?〕

勇者「……」

僧侶「何だって?」

勇者「対価を支払う覚悟はあるか? と言ってる」

僧侶「その対価は何だって言ってる?」

勇者「何なんだ?」

〔……〕

勇者「教えてくれる気はないみたいだね」
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 21:04:43.40 ID:Eumbork0
勇者「『対価が何であろうと、剣を手にする覚悟はあるか?』か……」

勇者「対価が分からなければ決められない質問だな」

剣士「本当にそう思うか?」

勇者「え?」

剣士「勇者様はその剣を必要としているのではないか?」

勇者「……俺には分からない。確かにあれば便利なんだろうけど」

剣士「なければ不便なのだろう? ならば必要としているのだ」

勇者「……そうなのか?」

剣士「私はそう思う」

剣士「必要ならば、どのような事だってやれば良い。そう思う」

勇者「……」

僧侶「その通り。女さんだって必要と思ったから盗みもしたんだろ?」

勇者「!」
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 21:09:30.60 ID:asSH85Qo
喋る魔剣…テイ〇ズですね、分かります
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/02(火) 21:13:52.87 ID:Eumbork0
〔……覚悟は決まったか?〕

勇者「まだ少し迷ってる」

剣士「迷う必要こそないはずだろう?」

勇者「だけど……」

剣士「先が分からないからと言って、この先の旅も迷うつもりか?」

〔勇者、今までのキミの旅には迷いが溢れているぞ?〕

勇者「っ!」

〔どうする? 覚悟し、剣を取るか。迷い、剣を捨てるか〕

勇者「俺は……覚悟する。この剣が必要と思うから、取る方を選ぶ」

剣士「ああ、そうだ!」

〔良かろう。では剣を取る条件を与える〕

勇者「ああ」

〔条件は二つ〕
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 21:26:13.77 ID:Eumbork0
勇者「二つ?」

〔そうだ。そのどちらを先に遂行しても良い〕

勇者「それで、その条件はなんだ?」

〔一つはキミの仲間を殺す事。そこの仏頂面の剣士と、軽そうな僧侶をな。要は生け贄だな〕

勇者「何だと!? そんな事出来るはずがないだろ!」

剣士「何を言ってきたんだ?」

勇者「お前らを殺せ、って……」

剣士「何!? いや、薄々分かってはいたがな……」

〔一つはキミの体を我に譲る事。以降キミの生を我が全うする〕

勇者「何を言って――!」

〔我はこちらを先に終わらせる事を勧める。自ら仲間を殺す苦痛がない故〕

勇者「大体、お前が俺の体を乗っ取れば、俺がこの剣を持つ事にはならないんじゃないか!?」

〔キミの体が所有する事になる。何も間違ってはいまい〕
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 21:33:25.79 ID:Eumbork0
剣士「乗っ取るだと? どういう事だ?」

勇者「俺がこの剣を取る為には、こいつに俺の体を渡さなければならないらしい」

僧侶「それだと勇者が剣を取る事にはならないんじゃないか?」

勇者「俺の体自身が所有するから間違いじゃないんだとさ」

剣士「何という屁理屈だ……」

勇者「とにかくその条件は飲めない! それを行うくらいなら、剣はいらない!」

勇者「――!?」

僧侶「どうした? 早く剣を置け!」

勇者「は、離れないっ!」

僧侶「何?」

〔キミが条件を飲む事は、もはや義務なのだ。“覚悟する”と選んだ瞬間からな〕

勇者「!?」

〔キミが自主的にするつもりがないのなら、仕方あるまい〕

〔先にキミの体を貰う事にしよう〕
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 21:42:45.69 ID:Eumbork0
勇者「あ……あ、あ……?」

剣士「……勇者様?」

勇者「あ……あ、あ、あぁぁぁぁあああーっ!!」

僧侶「どうしたんだ勇者!」

勇者「や……めろ……! やめ……うあ゛ぁぁぁあっ!!」

剣士「まさか、もう乗っ取られようとしてるのか!?」

僧侶「かもしれない……。何とか止められないかな?」

剣士「何か手はないか……」

勇者「俺の……中に……!」

僧侶「あの剣だ! あれを手から離す事が出来れば――」

勇者「俺の中に入ってくるなぁああああ……あははははははっ!」

剣士「!?」

僧侶「ゆ、勇者……?」
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 21:49:19.56 ID:Eumbork0
勇者「ははははっ、勇者よ、なかなか手強かったぞ!」

剣士「……英雄王か」

勇者「いかにも。初めまして、二人とも」

剣士「挨拶をしている場合では」

僧侶「ないんだけどね……」

勇者「おっと、何を身構えている? 今我に傷を与えれば、勇者の体にも傷がいくぞ?」

勇者「我を殺せば、勇者も死ぬぞ?」

勇者「最も、我はまた剣に戻るだけだがな」

剣士「くぅっ!」

僧侶「卑怯な……」

勇者「久しぶりの肉体なのだから、もう少し満喫させてくれ」

剣士「それから私達を殺しにかかるのか?」

勇者「その通り」
608 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 22:27:56.10 ID:Eumbork0
勇者「……さて、そろそろキミらの血をこの剣に与えようではないか」

剣士「聞いて良いか?」

勇者「何でも聞いてくれ。もやもやしたまま逝くのも嫌だろう」

剣士「どうして私達が死なねばならない?」

勇者「この剣が呪われた剣で、キミらは生け贄だ。それ以上の説明はいるまい」

剣士「ならばどうしてあなたは勇者の体を乗っ取る?」

勇者「それは我の勝手だ。何せ、ずっと剣の中にいたのだからな」

剣士「そうか……ならば、勇者の体を盗ったのは正確な条件ではないのだな?」

勇者「まぁ、そうなるな」

剣士「ならば、私達も殺されるにあたって条件を言う」

勇者「……」

剣士「私達を生け贄にする代わりに、勇者を元に戻せ。これを飲んでくれるか?」

勇者「そっちの僧侶はこれに同意するか?」

僧侶「……ああ」
609 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 22:35:28.91 ID:Eumbork0
勇者「良かろう。その条件を飲んでやる」

剣士「嘘偽りないな? 先程のように屁理屈で蔑ろにもしないな?」

勇者「これでもかつて王だった身。命を掛けた制約を我の我が儘で壊す事はしまい」

剣士「そうか。ならば良い」

僧侶「……」

勇者「話はそれだけで良いか?」

剣士「ああ」

勇者「そっちはどうだ?」

僧侶「僕は元々ないよ」

勇者「そうか。ならば、これよりキミらを我が剣の贄とする」

勇者「まずは……キミからだ、仏頂面の剣士」

剣士「……」

勇者「そう固くなるな。痛みを与えないように殺してやる」ス…

ブォンッ

剣士「――っ」
610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/02(火) 22:37:01.86 ID:Eumbork0
では一旦睡眠に入りますぜ。
仮眠になるか熟睡になるか。
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/02(火) 22:49:52.43 ID:SBhoa2DO
小説化はいつ頃?
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 11:26:55.40 ID:mGfr18Y0
>>611
出版社関係の人から「是非お願いします」とか言われる。
そんな妄想が現実になった時だな。
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 17:33:37.68 ID:mGfr18Y0
勇者「……」

剣士「……」

剣士「……?」

僧侶「……あ、あれ?」

剣士「どうした? 殺さないのか……?」

勇者「ん……殺す必要もなかろう」

剣士「……は?」

僧侶「どういう事だ?」

勇者「ああ、後すまんな、キミ。寸止めのつもりが首が少し切れてしまったみたいだ」

剣士「あ、ああ……このくらいならどうって事ないが……。どういう事か説明してくれるか?」

勇者「キミ達を殺す。この条件は我の嘘だ」

剣士「何? では勇者様は……」

勇者「安心しろ。それも実の所、嘘だ。すぐにこの体は返す」

僧侶「そ、そうだったんだ……」
614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 17:57:24.80 ID:mGfr18Y0
勇者「我は英雄王。悪霊ではないのだ。ただの墓荒らしなら殺していただろうが、この勇者という奴には純粋な志がある」

勇者「大陸を守り、全ての人が平和であるように、とな」

勇者「あまりにも漠然で非現実な志だが、我も昔はそうだったのでな」

剣士「では、勇者様も私達も無事でいられるのだな?」

勇者「まぁな。我が今やった事は“対価”でなく“試練”なのだ」

僧侶「試練?」

勇者「そうだ。我のこの剣は亡者の砂漠で授かった、とても強大な力を秘めたものなのだ」

勇者「この試練は、こやつの仲間の信頼度を測るものだ。信じるに足りない者が近くにいれば、いずれはこの剣を盗み、悪事をも働きかねん」

剣士「そのような事があるはずがない!」

勇者「これは試練と言っただろう? ちなみに抵抗してくれても測る術はあったのだよ?」

剣士「試練を受かる基準はなんだ? お前の主観か?」

勇者「その通り。我がこの剣の持ち主だからな」

僧侶「それで、どうなんだ? 僕達はお前の試練に受かったのか?」

剣士「私達を生かしていると言う事は合格なんだな?」

勇者「ふむ。そう言う事になるな」
615 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 18:08:09.41 ID:mGfr18Y0
勇者「と言いたい所だが」ブォン

剣士「え?」

僧侶「な――」

……ゴロン

剣士「僧侶!!」

勇者「そやつは不合格だ」

剣士「何故だ!」

勇者「先程……我がキミの首を斬ろうと、剣を振り上げたときだな」

勇者「こやつは詠唱準備をしていた。恐らくは守護結界の類だな」

剣士「それがどうした! お前は抵抗しても測る術はあると言っただろう! それなのに護る事はダメなのか!?」

勇者「そういう事ではない」

剣士「ではどういう事だ?」

勇者「こやつが詠唱準備に入ったとき、まだ十分に時間があった。それこそ、キミに結界を張る程度の時間はな」

勇者「だがそれはしなかった。こやつはキミを見捨てたのだ」

勇者「張っていた所でこの剣の前には無意味だったがな」
616 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 18:17:57.60 ID:mGfr18Y0
剣士「こうは考えられないか?」

勇者「何だ?」

剣士「僧侶は私を見捨てたのではない。勇者様を優先したのだ」

剣士「勇者様をお前から解放するには、私達が死ななければならなかったのだと思っていたのだからな」

勇者「そう。キミ達“二人とも”死ななければならなかった」

勇者「こやつだけが助かれば、勇者は元に戻らず、キミの命は無駄になる。我の出した条件が嘘でなければ、そうなっていたのだ」

勇者「おおっと、それとこの剣がただの剣だったならば、というのもあったな」

剣士「お前は僧侶が本当に自分だけ助かろうとしていたと、思っているのか……?」

勇者「当たり前だ。こやつは信用出来ん」

剣士「お前の主観だな?」

勇者「我の主観だ」

剣士「恐らく偏見ばかりで出来た頭なんだろうな」

勇者「そう睨むな。それに、我に実体などない」
617 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 18:54:54.89 ID:mGfr18Y0
剣士「……それで、どうするつもりだ?」

勇者「“試練”は終わりだ。この剣は勇者に与える」

勇者「体を返す前に、もう一仕事やらせてもらうがな」

剣士「まさか私も殺すんじゃないだろうな!?」

勇者「キミは合格だ。我は殺さん」

剣士「では何をするのだ?」

勇者「こやつの骸を外へ出す。我は自らの墓に放置しておくつもりなどない」

剣士「勇者様はどうするつもりだ」

勇者「外に出た後、すぐに返そう。では、転移の儀に入る」

勇者「  」ブツブツ


――砂漠の遺跡前

勇者「ここへ来てまさか僧侶を失うとはな……」

剣士「結局、剣を受け取った対価を払った事になったわけだ」

勇者「……」

剣士「僧侶の遺体、どうするつもりだ?」

勇者「近くの街の白羽教会で葬ってもらおう。僧侶もその方が良いはずだ」

剣士「そうかもしれないな」

勇者「なあ、僧侶。遺跡の中は涼しかったけど、やっぱり外に出ると砂漠だって実感するな」

僧侶「(返事がないただの屍のようだ)」

勇者「じゃあ、白羽教会のある街に戻るか。ここは熱い」
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/03(水) 19:49:23.01 ID:mGfr18Y0
――白の国、白の街、下宿屋

女「なんだか寒くなってきましたね」

盗賊「そろそろ冬になるって事なんだろう? まさかてめぇらの世界には冬がなかったのか?」

女「いえ。春も夏も秋も冬もありました」

盗賊「そうか。だがこのままじゃ寒いな。火鉢でも買うか?」

男「その心配はないみたいだな」

女「あー、やっぱりそっちに入ってましたか」

盗賊「……なんだそれは」

男「簡易ストーブだよ。電熱線を詰め込んだだけのやつだけどね」

盗賊「電熱線……?」

女「ただそれを使うと一日二時間はダイナモを回さないといけないんですよね、おおよその計算上……」

男「そうなのか? それは大変だな……。もっと楽な発電システムでも作るか」

女「その方が良いですね。じきにガラス細工屋さんに頼んでおいた電球のカバーも届くでしょうし」

男「そんなもの頼んでたのか?」

女「はい。いい加減、ランプだと不便なので」

盗賊「俺にも分かるように話してくんねぇかな……」
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/03(水) 19:50:46.63 ID:mGfr18Y0
ではではそろそろ寝る事にしよう。
おやすみなさい。
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/03(水) 19:57:10.65 ID:7Gh8U0Io
僧侶あっさり死んだなww
つか、寝るの早wwww
乙、おやすみ
621 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/03(水) 20:53:10.34 ID:1RASqhIo
僧侶はメインキャラじゃなかったのかぁぁぁ
622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/04(木) 11:58:15.87 ID:OPjAaUwo
勇者と剣士もずいぶんあっさりしてるなwwww
623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 17:13:04.16 ID:Xsw94Ns0
当初の予定だと、勇者一行はだらだらと一緒に旅を続けるはずだったんだけど……。
おかしな話もあったものだよねー。

>>622
幸せな事に、俺は周囲の人を失った事がないんだ。
だから不幸な事に、大切な人が死んだときの描写が分からない。
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 17:29:24.08 ID:Xsw94Ns0
男「それで、飯はまだなのか?」

女「あ……今日、私でしたっけ? 盗賊さんじゃありませんでした?」

盗賊「俺は明日」

女「本当ですか!? 今作ります!」

男「そんなに急ぐ必要ないよ。盗賊の仕事もまだ先だし」

女「そう言えば盗賊さんって、元々職業……というかやってた事は盗賊なんですよね?」

男「そう言えば俺は、お前の盗賊らしい所見た事ないんだけど」

盗賊「何言ってんだ。俺の華麗なナイフ裁きを忘れたか?」

男「それだけだとただの器用な人になるんじゃないか?」

盗賊「……盗賊仲間もいねぇから休業中なんだよ。敵討ちも忘れちゃいねぇ」

女「影将軍でしたよね。情報集めてるんですか?」

盗賊「街の情報屋、何人も頼んであるんだがな。全く入ってこねぇ」

盗賊「ま、入ってくるまでの間、俺は胡散臭い学者共のお守り役だぜ!」

男「誰が“胡散臭い学者”だ」

女「盗賊さんって普通の生活の方が似合ってる気がするんですよね。顔以外は」

盗賊「うるせぇ」
625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 17:49:17.76 ID:Xsw94Ns0
女「お待たせしました」

男「最近、米が恋しくなってきたな……」

女「そうですね。炊きたてのご飯が食べたいです」

盗賊「米って言ったら風の国と芽の国で穫れるあれか?」

男「穫れるのか!?」

盗賊「ああ。長くてパサパサしたあれだろ? スープに浸して食うと美味いやつ」

女「インディカ種みたいですね」

男「期待して損した」

盗賊「ああ!? 折角教えてやったのによ!」

女「私達の話していたお米は種類が違うんですよ」

盗賊「ほう。で、この汚れた魚は何だ?」

女「ニジマスの照り焼きです」

男「照り焼き……醤油か!?」パク

男「……なんだこれ」

女「醤油を作ろうとして出来てしまった、醤油に似た何かです」
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 18:01:18.22 ID:Xsw94Ns0
男「ご馳走様」

女「ご馳走様でした」

盗賊「この魚、なかなか美味かったじゃねぇか」

女「ありがとうございます」

盗賊「これもてめぇらの世界の料理なのか?」

女「少し違いますね。材料が違いましたので」

男「まぁでも、久々の日本っぽい食事だったな。パンがなければ」

女「確かにそれはミスマッチでしたね」

盗賊「そうか? なかなかいけたと思うぞ?」

女「そうですか? でもやっぱりご飯の方が……」

男「女さん、今度は味噌に挑戦してみないか?」

女「あれはもの凄く手間が掛かりそうですから止めておきます」

女「でも大豆はあったので、納豆なら」

男「おー、期待してるぞ」

盗賊「それはどんなのなんだ?」

女「腐った豆ですよ」

盗賊「……」
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/04(木) 18:05:00.87 ID:OPjAaUwo
>>623
物書きとしてはあれなんだろうが、人としては幸せだな
てことはほんとに死んだのか・・・

てか腐った豆ってww
たしかに簡単に説明するとそうだけどww
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 18:17:10.23 ID:Xsw94Ns0
女「では私達は蔵書館に行ってきますね」

盗賊「おう。そうだ、男」

男「なんだ?」

盗賊「五時からだからな。頼むぞ」

男「ん? ああ。分かった」

女「どうしたんですか?」

男「ああ。闘技場の試合の話だよ」

女「またですか……。毎回勝てる確証はないんですから、程々にして下さいよ?」

盗賊「何を言う。俺は今の所負けなしだぜ!」

女「調子に乗って負けないで下さいよ? 治療費も高いんですから」

女「それに教授も研究費を無駄にしないで下さいよ?」

男「分かってるって」

盗賊「俺も男だ。稼いで帰ってくる」

女「資金が増えるのなら止めませんが……」
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 18:46:38.44 ID:Xsw94Ns0
――白国営蔵書館

女「教授、もうこちらの文字には慣れたでしょう」

男「いいや。まだまだ辞書すら上手く繰る事が出来ないよ」

女「そろそろ慣れて下さいよ……」

男「お前と一緒にするな。これが普通なんだよ」

女「そうらしいですが……」

男「何で『周りはそう言ってるけど……』みたいな言い方なんだよ」

女「それで、どのくらい読めました?」

男「一階の半分くらいかな」

女「まだそのくらいですか……」

男「これでも頑張ってる方だ」

女「では私は地下二階にいますので、用があれば来て下さい」

女「そこにいなければ地下三階にいると思います」

男「おい。ここどこまであるんだ?」

女「分かりませんよ。私も三日前に地下三階があるのを知ったんですから」

男「まぁ、分かった。俺も一階にいなければ二階で息抜きしてるかもしれん」

女「二階の童話書ですか?」

男「あの辺りは俺でも読める」
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 19:20:09.28 ID:Xsw94Ns0
休憩ー。今日はも少し続けられますよー。

>>627
豆は上手く腐らせる事が出来るのに、人は上手く腐らないよね。不思議!
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 20:24:29.61 ID:Xsw94Ns0
女「……」モクモク

女「……」パラ…パラ…

女「……ふー」パタン

女「これで地下二階の本は全部かな?」

女「えっと、下へは……あったあった」

司書補「あの、すみません」

女「はい?」

司書補「もしかして下へ降りようとしていましたか?」

女「そうですが……」

司書補「失礼ですが、お名前と所属を」

女「女です。……所属とは何でしょうか?」

司書補「もしかして一般の人ですか?」

女「多分そうなると思いますね」

司書補「すみませんが、ここから先は一般の方には公開出来ないんですよ」
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 20:45:40.45 ID:Xsw94Ns0
女「そうなんですか?」

司書補「はい。許されているのは最低でも貴族程度の階級か、その方達に許された学者の方達のみなのです」

司書補「その許可の出所を、こちらでは所属と言っています」

女「そうですか。困りましたね……私にはそう言った方々との面識すらありませんし」

司書補「それは驚きです! てっきり学者の方だと……」

女「どうしてですか?」

司書補「あなたが現れてから皆さんが噂しているんですよ。蔵書館の精霊が来た、と」

司書補「というのもお若く美しい女人でもありますし、本を繰る速さも尋常ではありませんでした。それを言葉にしたわけですね」

女「悪い気分はしませんね。美しいだなんて嬉しいです」

司書補「感謝は蔵書館に来て下さる皆さんに伝えておきましょう」

司書補「まぁ、あなたの読む速さには目を見張るのは確かです。それ程の方なら、学者でないはずもなく、どこかに仕えていないはずもない。そう思えたのですよ」

女「私はそれほど特別に思った事はないんですけどね……」

司書補「あなた程の人が今まで無名の学者だったとは……」

女「ああ、確かに研究者ではありますが、学者ではないんですよ」

司書補「そうなんですか!?」

女「私は一介の技術者です。物を作るのが本職なんですよ」
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 21:11:59.06 ID:Xsw94Ns0
司書補「技術者ですか?」

女「はい」

司書補「学者になるべきですよ。その方が給金も高いですよ?」

女「考えるのも良いんですけど、物を作る方が好きなんですよ」

女「自在に物を作れるって楽しいと思いませんか?」

司書補「確かにそうですが……。では近頃一緒に来られている男性も技術者の方ですか?」

女「あの人は学者です。元技術者ですが」

司書補「そうなんですか。あなたのような方も学者ならば、もっと様々な事が明らかになるでしょうに」

女「それで、どうしても通してくれないんですか?」

司書補「それは規則ですので。どうして下に行きたいのですか?」

女「教えれば通してもらえますか!?」

司書補「それは出来ません。私の好奇心で聞いただけなので」

女「それは残念です」
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 21:18:36.09 ID:Xsw94Ns0
女「まぁ、そのくらい秘密にする事もありませんし」

司書補「ありがとうございます」

女「私は技術者ですが、ここへは研究者として来たんです」

司書補「と言う事は何かの研究資料を探しに? と言うには片っ端から本を読んでいましたし……」

女「どんな些細な情報も逃さないためですよ。フィクションを読んでも、自分では考えられない発想が見つかったりしますからね」

司書補「成る程……」

女「私は魔法を研究しに来ているんです」

司書補「それなら魔法使い達が日々行っているのでは……」

女「沼の街の図書館でも読みました。ですがその研究内容と言えば、新しい魔法の開発と従来の魔法の改善」

司書補「知っておられるのならどうしてこんな所にいるのですか?」

女「私達が知りたいのは魔法は魔法でも、その原理にあるからです」

司書補「原理、ですか?」
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 22:01:00.13 ID:Xsw94Ns0
女「はい。あなたはどうして魔法が使えるのか考えた事はありませんか?」

司書補「それは魔力がある人は魔石に秘められた力を操る事が出来るからでしょう?」

女「どうして魔力を持つと魔石の力を操る事が出来るか考えた事は?」

司書補「え、えっと……」

女「どうして魔力によって炎や電気が生まれたり、遠くへ移動できたりするのか考えた事は?」

司書補「それは……魔法だからでしょう?」

女「私達はその漠然とした答えを明確にしたいんですよ」

司書補「魔法だから、というのは漠然ですか?」

女「はい」

司書補「なんだか……難しいですね」

女「その為にもっと知識が欲しいんですよ。下の階に行かせてもらえませんか?」

司書補「それは駄目ですね」

女「そこを何とか、お願いしますよ」

司書補「どれほど立派な研究内容でも、駄目なものは駄目なんです」

?「良いんじゃないですか?」
636 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 22:25:12.73 ID:Xsw94Ns0
女「そうですよ! 別に良いじゃないですか!」

女「……ってあれ?」

司書補「あなたは……もしや白公爵閣下ではありませんか?」

白公「そうですよ。その方を通しても良いんじゃないですかな?」

司書補「しかしこれは決まりでして……」

白公「でしたら私が許可します」

司書補「それでしたら……構いませんが」

女「良いんですか?」

白公「盗み聞くつもりではなかったのですが、君の話に興味をそそられましてな」

白公「余計でなければ、資金援助もしましょう」

女「……何が目的ですか?」

白公「まさか裏があると思っているのですか? 私はただあなたの研究に興味を持っただけですよ」

女「私“達”の研究ですよ。一階に学者の仲間もいる事をお忘れなく」

白公「おっと、それはうっかりしてましたかな。もしその事で不快にさせてしまったのなら謝罪します」

女「いえ、良いんですよ」
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/04(木) 22:48:51.01 ID:Xsw94Ns0
白公「私も階下に降りてよろしいかな?」

司書補「はい。どうぞ」

女「し、失礼します」

司書補「研究、頑張って下さいね」

女「はい。ありがとうございます」


女「あなた――白公爵閣下はこれから私達の出資者になってくれるんですよね?」

白公「私で良ければそのつもりですよ」

女「お金に少しばかり困っていたもので、とてもありがたいです。ですが一つ聞きたい事があります」

白公「何かな?」

女「私達に出資するに当たって、何か条件を付けたりするでしょうか?」

白公「いいや。君達の好きにするが良いですよ。私はその未来に投資するのですから」

女「それは嬉しい限りです。では、これからよろしくお願いします」

白公「受けて頂けますか。こちらこそよろしくお願いします。えっと……」

女「女です。今一階にいる仲間は男と言う学者です。彼については後ほど詳しく紹介させて頂きます」

白公「そうですか。よろしくお願いします、女さん」
638 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/04(木) 23:58:45.44 ID:sZw9/xso
白いハムを連想して画像検索したらなんだか切なくなった
639 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 01:56:30.87 ID:EVl5WAAO
女「白公爵閣下」

白公「何ですかな?」

女「あなたはもう私達の出資者ですし、それ以前に公爵家の方なんですから、そう固い口調をしなくても良いと思いますが」

白公「それを言うなら君も私が投資を頼んだ方ですし、それ以前に素晴らしい研究者であるようですから、君こそもっと口調を崩しても良いのではないですかな?」

女「私は元々この口調に慣れてますので。タメ口で話せるのは肉親と昔馴染みだけなんです」

白公「ならば私も同じ理由ですな。この固ーい口調も身についたものですのでな」

白公「お陰で私は家族にまでこれで接する始末です」

女「ふふ、それは厄介な癖ですね」

白公「おお、そうだ」

女「何ですか?」

白公「人の多くは私を白公爵閣下と呼ぶが、その呼び方は避けてはくれないかな?」

女「どうしてですか?」

白公「“閣下”などと呼ばれる程出来た人間ではないからだよ」

女「私達のような得体のしれない研究者にお金を出す程徳の高いあなたには相応しい敬称だと思いますが」

白公「くく……世辞はよしてくださいな。どうか私の事は白公と呼んで下さい」

女「分かりました、白公さん」

白公「ふむ、切替の速い者は好きですよ」
640 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 02:15:31.26 ID:EVl5WAAO
女「それにしてもこの蔵書館は広いですね。地下何階まであるんですか?」

白公「地下五階までです」

女「この下にまだ二階あるんですか……」

白公「そうですな」

女「地下三階より下はどうして非公開なんです?」

白公「特別古い書物が蔵書されているからですかな」

白公「地下三、四階には大陸連盟発足以前に作られた重要資料が保存されているのです」

女「連盟発足以前……と言う事は約三百四十年前ですか」

白公「この蔵書館の歴史もそこからでしてな。当時の連盟三国、白の国、水の国、葉の国は苦労して書物をこの場所に集めたのです」

白公「勿論、それ以降に納められた書物もありますが」

女「そうなんですか? その話は知りませんでした」

白公「記録に載ってるとすれば、司書の記録くらいですからな」

女「それで、地下五階には何があるんですか?」

白公「様々な遺跡で発見された文書や石碑ですよ。地下五階に行くのは歴史学者くらいのものですな」

女「遺跡から……と言う事は言葉が違うのですか?」

白公「みたいですね。大陸標準語でも白国語でも渦国語でもない、古代語ですかな」
641 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 02:27:28.29 ID:EVl5WAAO
女「古代と言う事は、大陸統一期のものですか?」

白公「そこまではよく分かりません……ああ、私の所の歴史学者がそれ以前のものもあると零してましたな」

女「統一期……それ以前、戦乱期……混沌期……」ブツブツ

白公「どうかしましたかな?」

女「説話の舞台は殆どが古代ですよね?」

白公「ああ、そうですな」

女「昔の方が今より発展している可能性だってあるんです」

女「少なくとも、古代を舞台とした説話が今でも無数に残っています。これはただの偶然ではありません」

白公「では何だとお思いですかな?」

女「このような説話には必ず意味があるはずです。それは恐らく、教訓、当時の宗教観念、または……」

女「真理……!」
642 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 02:45:09.78 ID:EVl5WAAO
白公「真理ですか。これはまた大きく出ましたな」

白公「その君の意味する“真理”はどのようなものか理解出来そうにありませんが、それが古代にあるとおっしゃりたいのですね?」

女「可能性ですよ。夢があると思いませんか?」

白公「楽しそうではありますね。ですが、古代の文字を読むのは困難ですよ?」

女「そうですね。読み方の本も今までありませんでしたし……」

白公「必要な時が来れば私の所の歴史学者を貸しましょうかな?」

女「あまりお手を煩わせないよう努力はしたいと思いますけど、必要な時はお願いします」

女「でも、そこまでしてくださって良いんですか?」

白公「これも一つの“出資”ですから」

女「成る程」

白公「おっと、そろそろ腹が空いてきましたな。という事はそろそろ失礼しませんと」

女「もしかして引き止めてしまってましたか?」

白公「いえいえ、用事はありますがつまらん男爵との会食ですよ」

白公「私はもっと君と話していたかったのですがね」

女「ですが遅れてはいけませんよ」

白公「そうですな。男さんへの挨拶はまた今度時間がある時にしましょう」

女「はい。ではこれからよろしくお願いしますね」

白公「ええ。ではこれで」
643 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 03:04:24.97 ID:EVl5WAAO
──食堂

盗賊「いらっしゃーやせー!」

盗賊「……って、てめぇかよ」

男「よお」

盗賊「女はどうした?」

男「今日も篭りだ。あ、注文はランチセットね」

盗賊「あいつ、今日で何回目だ?」

男「数えてないな。だが両手では数えられないと思う」

盗賊「折角昼に飯を食える環境にあるってのによ」

男「女さんにとってはこれも日常だよ」

盗賊「食えねぇ時に腹が減っても知らねぇぞ」

男「女さんには関係ないよ、多分」

盗賊「どうだか」

盗賊「でも確かにあいつなら一週間は断食出来そうだよな」

男「それは流石にきついだろ」

盗賊「分かんねぇぞ?」

男「それより早くランチセット持って来いよ。俺は腹減ってるから」

盗賊「分かってるって。少し待ってろ」
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/05(金) 03:06:24.14 ID:EVl5WAAO
この辺りで爆睡モードに入ります。
645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/05(金) 03:27:43.29 ID:HH5Zt0Uo
おつ
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 19:37:08.29 ID:bIhQDWI0
おはようございます。
眠気を覚ましてくる……
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/06(土) 20:35:07.08 ID:kfIa.h2o
寝すぎじゃねwwwwww
648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 21:58:57.60 ID:bIhQDWI0
――高級な料理店

白公「……」

カタ…

白公「おお、私も十分早く来たつもりでしたが、君も早かったですな、男爵……おや?」

白公「久しぶりですな。いつこの街に来ていたのですか、魔王さん?」

魔王「つい先程な。男爵は少し遅れてくるそうだ」

白公「どうしてあなたがその事を?」

魔王「男爵家を取り込んだ」

白公「なんと!」

魔王「と言うのは、冗談だ。我が友とこうして話をしたくてな。少しばかり妨害させて貰ったのだ」

白公「かの魔の国の王がどのような事をしたのか気になりますな」

魔王「大した事はしてない。朝食に便秘の薬を混ぜたとか、今日着てくる服を隠したとか、その程度のものだ」

白公「それはまた陰湿な嫌がらせですな」

魔王「実際どうなっておるのか、我にも分からん。部下に任せているのでな」

白公「では男爵に会ったときに、今日困った事でも聞いておきますかな」

魔王「男爵の話に、心中ほくそ笑むのだな? 食えん奴だ」

白公「そのような事ではありません。単なる興味というものですよ」
649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 22:15:04.55 ID:bIhQDWI0
白公「それで、わざわざ話に来るなんて、どういったご用件ですかな?」

魔王「そろそろ動いてもらおうと思ってま」

白公「ゲームの話ですか?」

魔王「そうだ」

白公「そうですか。それで、何をすればいいのですかな?」

魔王「ある者に接触をして欲しいのだ。恐らく、こちら側に引き込める人間」

魔王「そやつらは今、この街にいる」

白公「かの魔の国の王が興味を持たれる程の人間ですか。誰ですかな?」

魔王「男と女という二人組だ。いや、用心棒の盗賊を含めて三人か」

白公「えー……誰ですって?」

魔王「男と女、盗賊。名前は合っているはずだ」

白公「そうですか。はははっ、これは面白いですな。運命ですな!」

魔王「どうしたのだ?」

白公「実は私、先程まで蔵書館にいましてね。そこにいた女さんに私も興味を持ちましてな。彼らの研究の出資を約束した所なのです」
650 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 22:22:02.80 ID:bIhQDWI0
魔王「ではもう既に接触は住んでいる訳だな?」

白公「はい」

魔王「そうか。ならば良いのだ」

白公「私はこれから何をすれば良いんですかな?」

魔王「まだゲームは中盤にも入っていない。彼らを離さなければ良い」

白公「と言うと、私は彼らを支援しているだけで良いのですかな?」

魔王「そうなる」

白公「楽な仕事で安心しました。ところで魔王さん」

魔王「何だ?」

白公「あなたのゲームを止めるつもりはなさそうですが、勝てる自信があるのですかな?」

魔王「そのようなものはない」

白公「本当に賭けなんですね?」

魔王「その通りだ」

白公「ふむ……」
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/06(土) 22:43:05.03 ID:bIhQDWI0
白公「私にはどう考えてもそのゲームの意義が分からないのです」

魔王「ほう。どうしてだ?」

白公「このゲームはあまりにも規模が大きすぎますな。確かに勝てばあなたは全てを手に入れます」

白公「ですが負ければ全てを失いますな」

魔王「いかにも。我が国も大陸に支配されるだろう」

白公「そこまでして、このゲームをする意味は何ですかな?」

魔王「楽しいから、では駄目かな?」

白公「本当にそれだけですか?」

魔王「さあな。だが今はそれだけだ。ではそろそろ男爵も来る頃合いだろう。失礼するぞ」

白公「分かりました。次来る時は前もって連絡をして欲しいですな」

魔王「考えておこう」

白公「……やれやれ」

白男爵「遅れてしまったかな? すまないな」

白公「これは白男爵。こんにちは。私は気にしてませんよ」

白男爵「では先程の溜息も自分の所為ではないのだな?」

白公「勿論です。それで、どうして遅れてきたんですかな? 何か急ぎの用事でもありましたかな?」

白男爵「それがな、使用人の悪ふざけか、ドアの上方に小麦粉の袋が仕掛けられててな……頭から粉に塗れてしまったのだ。主人を罠に掛けるとは、裏切られたものだ」
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/07(日) 02:45:02.54 ID:rdpd9YDO
久しぶりに来てみると、結構進んでるなww
とりあえず、C
653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/08(月) 01:19:36.50 ID:GXhiKUAO
おはよう。
とは言うけど、実はもう起きてた。
今日は結構疲れたので、書かずに寝る事にする。
決して続きの展開が思い付かないからじゃない。



決して続きの展開が思い付かないからじゃない。
おやすみ。
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/08(月) 01:51:11.83 ID:y57Nvx2o
大事なことなので2(ry

疲れたんじゃしょうがないwwお休みwwww
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/09(火) 20:56:13.93 ID:sosMN.Mo
続きはまだですか(´д`)
656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 01:10:43.48 ID:..taC.AO
最近どうも忙しくって……。
はい、まだです。


とは言えないので書きます。
657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 01:20:20.13 ID:..taC.AO
(午後九時頃)

女「……」ペラ…ペラ…

女「……」パラ…パラ…

司書補「あのー……」

女「はい?」ペラ…

司書補「閉館時間が過ぎているのですが」

女「少し待って下さい。これ読み終わったら出ていきますから」パラ…

司書補「しかし」

女「すぐです」パラ…

司書補「……分かりました」

司書補「しかし速いですね。一秒くらいでページをめくってるじゃないですか」

女「……」ペラ…ペラ…

司書補「本当にそんなので読めてるのですか?」

女「……」パラパラパラ…

司書補「……? 聞いてますか?」

女「……」パラ…パラパラ…

司書補「聞こえてないのかな……」
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 01:34:09.54 ID:..taC.AO
女「……ところで」パタン

司書補「はい」

女「閉館時間が過ぎているのに、私の記憶では注意を受けたのは一度目ですが」

司書補「うっかりこの階におられる事を忘れてまして」

司書補「実は一度家に帰ってしまってるのですよ」

女「と言う事は、今何時くらいですか?」

司書補「およそ五半時半でしょうね」

女「いい加減時間の翻訳は自動変換出来るようにした方が良いな」ボソッ

司書補「何か?」

女「いえ、こっちの話です」

司書補「?」

女「わざわざ知らせに戻って下さってありがとうございました」

司書補「いえいえ。こちらこそ遅れてしまってすみません」

司書補「もしかしてまだ読んでいたかったですか?」

女「いえ。今日は約束があったので助かりました」

女「では、また明日読みに来ますね」

司書補「明日は休館日ですよ」

女「あれ……そうでしたか。私もうっかりしてましたね」
659 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 01:50:14.37 ID:..taC.AO
──ガラス細工屋

女「……えっと」

女「閉まってるよね、これ」

女「……」コンコン

……

女「……」ガンガン

女「……」ドンドンッ

硝子屋「あーもうっ、誰よ! 店はもう閉めたんだってば!」

女「こんばんわ」

硝子屋「……あんたか」

女「注文のものを取りに来ました」

硝子屋「あのねぇ、あんた。確かに今日来てみてくれとは言ったけどさ」

女「はい」

硝子屋「それって普通、営業時間に来てくれって事よね?」

女「そのつもりでしたが、読書に夢中になってまして。蔵書館の地下からだと、外の様子が分からないんですよ」

硝子屋「……まぁ、あたしもまだ寝てないし、こうやって話してしまったんだからいいや」

硝子屋「中に入っておいて。あたしは約束のブツを持ってくるから」
660 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 02:00:21.37 ID:..taC.AO
硝子屋「ほらよ。これで望み通りか?」カチャン…

女「そうですね……」

女「はい。全てばっちりです」

硝子屋「当たり前よ。これでも小さい頃から細工をしてたのよ!」

女「流石ですね。職人技ですよ」

硝子屋「へへへ。でも、そんなもの何に使うの?」

女「電球──電気のランプです」

硝子屋「へえ。あんた魔法使いなの?」

女「魔法を使わなくても電気くらい起こせるんですよ」

硝子屋「よく分からないけど、置物じゃないって事は当たってたね」

女「こんな置物を置く人はそうそういませんよ」

硝子屋「だよねーっ。じゃあ、これ包装するから少し待っててね」

女「はい。ありがとうございましす」
661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/10(水) 02:26:52.18 ID:uXwF/pQo
うおっ!まぶしっ!
662 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/10(水) 02:36:09.53 ID:..taC.AO
女「そういえばこの時間は闘技場がやってたっけ」

女「二人の様子でも見に行こうかな」


──闘技場

ワー! ワー!

実況「おおっと!? またミスター・シーフの圧勝だ!」

盗賊「うおおおお!!」

ワー! ワー!

「ミスター・シーフ ! 勝ちすぎだー!」

「よっしゃ! 次負けたら俺が殺すからな!」

男「その調子だ!」

「彼の動きに追いつける者は果たしているのだろうかぁっ!?」

女「本当に連勝してるみたい……」

男「気を抜くなよーっ!」

女「教授もあまりはしゃがない方が良いですよー」ボソリ
663 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/10(水) 02:58:19.14 ID:..taC.AO
実況「さて! ミスター・シーフも連戦で疲れているようなので、僅かながら休暇を取ります……が!」

実況「その間に次の挑戦者の紹介を済ませたいと思います!」

ガヤガヤ…
  ザワザワ…

実況「ハリネズミぃっ!」

針鼠「……」

「なんだあいつ……ちっせぇな」

「あんなのでミスター・シーフに敵うのか?」

実況「外套を目深に被り顔は見せない、謎に包まれた戦士だぁ!」

実況「日頃は槍使いなのか、その手に持つのは長い棒! その小さな体とは不釣り合いだが、大丈夫なのか!?」

実況「なお当闘技場では安全の為、刃物や魔法の使用は禁じております」

実況「では、試合が始まる前に賭けた賭けたぁ!」

女「……私も一度やってみようかな」

女「盗賊さんも思ったより強いみたいだし」
664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 01:42:48.30 ID:JCrb9IAO
実況「では、ミスター・シーフの準備も整った所で、試合を開始したいと思います!」

盗賊「てめぇ、餓鬼みてぇなナリだな」

針鼠「……」

盗賊「本当に餓鬼だったりして。まぁ手は抜かねぇぜ」

針鼠「……」

盗賊「無視かよ……。まぁ、宜しくな」

針鼠「……」コク

実況「試合、開始いいぃっ!」

女「教授」

男「ん? あれ、女さんも来てたんだ」

女「はい」

男「その荷物は?」

女「電球のカバーですよ。それより、盗賊さん随分善戦してるみたいですね」

男「流石、元盗賊の頭って所だな。戦い方はアマの中では最高クラスらしい」

女「どこの情報ですか?」

男「盗賊がそう言われたって言ってた」
665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 01:56:00.14 ID:JCrb9IAO
盗賊「……」ザッ…ザッ…

針鼠「……」

実況「ミスター・シーフ、いつも以上に慎重な動き! 一方ハリネズミは動かない!?」

「早くしかけろぉ!」

「さっさと打ち合いやがれ!」

女「教授、ここのルールってどんなのですか?」

男「相手を気絶させるかギブアップさせれば勝ち」

男「武器として棒が渡されるが、その長さは選べるみたいだな」

男「盗賊はいつものナイフ程度の棒きれ、あのハリネズミって人は干し竿みたいな棒、という感じにだな」

女「長さ的に盗賊さんが不利ですよね」

男「それが、そうでもないみたいなんだよ。俺にはよく分からないけど」

女「つまり一番使いやすい長さで上手く戦ってると言う事ですか」

男「多分な」

実況「おおっと! ミスター・シーフが攻めに行ったぁ!」

盗賊「うるぁっ!」

針鼠「……」

カンッ

実況「防がれたーっ!!」
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 02:11:11.86 ID:JCrb9IAO
盗賊「甘ぇな」ニヤリ

針鼠「!」

ドスッ ズザザザザ…

実況「ミスター・シーフの膝蹴りが入ったぁ! 初撃は目眩ましだったようだ!」

針鼠「げほっ……けほっ……」

実況「かなり効いたようだ! が! まだ戦意はあるようだ!」

女「容赦ないですね……」

男「俺としては勝手もらわなきゃ困る。容赦ないくらいが客受けも良いからな」

女「……闘技場ですからね」

針鼠「……」グッ

盗賊「まだやるつもりか?」

針鼠「……」コク

盗賊「そうこなくっちゃな!」

実況「今の所、ミスター・シーフが優勢! 連勝記録をまた伸ばすのか!?」

実況「それともここからハリネズミの逆転劇が始まるのか!?」
667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 02:50:02.61 ID:JCrb9IAO
ワー! ワー!
  ザワザワ ザワザワ

針鼠「……」ス…

実況「ハリネズミが棒先をミスター・シーフに向けたが……」

針鼠「……」トトトッ

実況「そのまま突っ込んだぁ! そんな戦法ではミスター・シーフは避けてしまうぞ!?」

盗賊「当たり前だ」サッ

針鼠「……」ニヤリ

盗賊「!」

針鼠「……」クルッ フォンッ

盗賊「てめ……っ!」サッ

コン!

実況「突然ハリネズミの翻した一撃を、ミスター・シーフ、見事に受け止めた!」

実況「今のは若干、ミスター・シーフが押されているようにも見えます!」

針鼠「……」フォンッフォンッフォンッフォンッ

盗賊「っ!」カンッコンッカンッカンッ!

実況「あのミスター・シーフが押されている!? 防戦一方だー!」

実況「ハリネズミがこれ程の素早い棒捌きを見せるとは、誰が考えただろうか!」
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 03:39:01.42 ID:JCrb9IAO
カンカンッ フォンッ

ザザザッ

ヒュッ コンカンカン

女「教授、私はアクション映画でも見ているんでしょうか」

男「俺もここまでの試合を見るのは初めてだ」

女「何と言いますか……競技の枠から越えてますね。互いに真剣を持った感じと言いますか」

男「闘技の試合なんてそんなものだよ」

実況「このようなスピードのある試合は初めてみます! 両者共、力は今まででは弱い方でしょう」

実況「しかし、これ程の接戦はかつて見た事がありません!」

カンカンッ カンッ

フォンッ ザザザッ コンッ

カンッ フォンッ コンカンッ

実況「果たして勝負の行方はどうなるのか!?」
669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 03:54:16.93 ID:JCrb9IAO
実況「ハリネズミの無造作に放たれる薙ぎ打ちをミスター・シーフが棒で受け止め」

実況「隙を狙い放たれるミスター・シーフのパンチやキックをハリネズミは華麗に避け」

実況「ハリネズミの素早い突きをミスター・シーフは見事に全て避け」

実況「その繰り返しの攻防が目の前で繰り広げられています!」

ワー! ワー!
   ガヤガヤ…

「シーフ、何してる! 早くやっちまえ!」

「そこだ! あぁ〜、そこじゃねぇよ!」

盗賊「うらぁっ!」ヒュッ

針鼠「……」フワッ

盗賊「!?」

針鼠「!」ヒュッ フォンッ

盗賊「しまっ……!」

ドスッ ドカッ

女「あ……」

男「あ……」

「……」

実況「……なんと、今まで無敗だったマスター・シーフが負けてしまったあああ!」

実況「勝者は今回初参加のハリネズミぃぃぃっ!」
670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 04:02:43.70 ID:JCrb9IAO
女「盗賊さん、あれ気絶してるんですか?」

男「動かないからそうなんだろうな。首が折れてなきゃ良いが」

女「負けてしまいましたね」

男「だな」

女「どのくらい賭けてたのですか?」

男「金貨二十枚程……」

女「そんなにですか!?」

男「盗賊は今まで勝ち続けだったから、このくらいしないと儲けがないんだよ」

女「はぁ……まあ、全財産を失った訳じゃありませんから良いですが」

男「まさか負けるとは思わなかった……。まぁ、盗賊の参加料分の儲けはあるけどな」

女「合計、プラスですか? マイナスですか?」

男「……マイナス」
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 04:12:57.68 ID:JCrb9IAO
女「お金と言えば」

男「何だ?」

女「私達の研究にスポンサーが付きましたよ」

男「まさか。どこかの怪しいやつじゃないだろうな?」

女「それなら私の独断で決める事はしなかったんですが、なんとこの国の公爵です」

男「本当か? なんでそんな人が……」

女「蔵書館で司書の人と話してるのを聞いて興味が出た、と聞いてますが」

女「条件もなく、研究についての口も挟まないと言う契約でした」

男「ほう。そんな美味い話があるのか? もしかしたら体目当てかもしれないぞ?」

女「それはないと思います。……あー、盗賊さん、運ばれて行きましたね」

男「ではあいつの所に行ってから一緒に部屋に戻るよ」

女「そうですか? なら先に帰ってますね」
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 04:53:53.66 ID:JCrb9IAO
盗賊「……ん……あ?」

男「漸く起きたか。お疲れ」

盗賊「おう。くっそ、油断したぜ」

男「お陰で俺は大損だ」

盗賊「知るかよ」

男「お前が勝つ約束だっただろ。お前にも責任がある」

盗賊「……ハリネズミはどうなった?」

男「お前との一戦だけやって帰ったみたいだが」

盗賊「そうか」

男「どうした?」

盗賊「いや、凄ぇやつと当たったかもしれねぇと思ってよ」

男「お前も十分凄いだろ?」

盗賊「外套のせいで上手く顔が見えなかったんだが」

男「?」

盗賊「一瞬、見えたんだ。まだ年端もいかねぇ小娘だったぜ」

男「じゃあ何か? お前は小さい女の子に負けたってのか?」

盗賊「童子体型で限りなく女顔の男じゃなけりゃそういう事になるな」
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 04:55:45.54 ID:JCrb9IAO
あーくそねむい!
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/11(木) 05:25:02.68 ID:pZFKmvYo
無理すんなお
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 20:21:46.71 ID:K8YZcfI0
何かもう夢のせいで頭の中でも話がごちゃごちゃしてきた……。

じゃあぽつぽつと書くよー。
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 20:37:06.52 ID:K8YZcfI0
男「だけどそんな女の子がどうして闘技場に?」

盗賊「どこかの武術家の娘か何かだと思うぜ? ここなら流儀に縛られない良い訓練場だ」

男「成る程な。大方槍術家の娘という所か?」

盗賊「かもな。もう一度やってみてぇもんだな」

男「お前の言う“小娘”相手にライバル意識丸出しじゃないか」

盗賊「そうじゃねぇよ。本当に小娘なら、次会った時にはさらに強くなってるはずだ」

盗賊「人の成長を見るってぇのは、結構おもしれぇもんだぜ?」

男「俺の生徒も目に見えて成長してくれればどれほど良い事か……」

盗賊「他の奴はどうかしらねぇが、女がいるじゃねぇか」

男「女さんは成長が早すぎて楽しむ暇もないよ」

盗賊「そりゃ言えてるな」

男「さて、そろそろ帰るか。立てるか?」

盗賊「ああ。何て事ねぇ」
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 20:48:00.69 ID:K8YZcfI0
――下宿屋

男「ただいま」

女「お帰りなさい」

盗賊「……何してるんだ?」

男「それは望遠鏡だな」

女「はい。良く晴れてましたので、月を見てるんです」

男「月か。兎の柄は見えるか?」

女「残念ながら月に兎はいないようです」

盗賊「で、何で急に月を見てんだ?」

女「神話の検証です」

盗賊「はぁ?」

男「月……というと、『月の神様』か」

盗賊「『月の神様』って、童話のあれか?」

女「はい。二人はどこまで知ってますか?」

男「蔵書館にあった童話を読んだ程度には」

盗賊「多分同じだな。俺は母ちゃんから聞いたくれぇだがな」

女「そうですか」
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 21:05:26.99 ID:K8YZcfI0
男「だけど何でそんな童話を調べる気になったんだ?」

女「そうですね……『昔々のある日――』」

男「え?」

盗賊「は?」

女「『月から三つの光が舞い降りてきました』」

女「『一つは海の彼方へ、残りの二つは大陸に落ち立ちました』」

盗賊「『月の神様』だな」

女「童話ではこの三つの光、神様達と大陸の人達の交友が描かれてましたね?」

男「ああ。大陸の南に落ちた神様から魔法を貰い、大陸の北に落ちた神様から武器を貰い、海の彼方に落ちた神様から知恵を貰った。だったよな?」

女「はい。神話ではもっと壮大に書かれてましたね。魔法や武器や知恵は神様から貰ったのではなく、神様の試練によって自ら身につけたものだ、と」

女「ちなみにそれぞれ名前も付いています。海の彼方に落ちた神様はルナン。大陸の北に落ちた神様はモーネ。大陸の南に落ちた神様はサナン」

盗賊「ルナンってぇと、白羽教会の神様じゃねぇか」

男「サナンは陽翔教会で、モーネは光夜教会。三つとも大陸の三大教会だな」

女「はい。大陸の宗教の原点は『月の神様』と言うわけですね」
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 21:17:25.42 ID:K8YZcfI0
女「ちなみに彼らの名前は大きな天体から来てます」

男「太陽(サーヌ)と月(モーヌ又はルーヌ)か」

盗賊「俺は神様が先だと思ってたが」

女「いえ、天体が先なんです。今日読んだ本が確かならの話ですが」

女「それに月の呼び方はかつては一つずつだったんですよ」

男「ずつ?」

盗賊「何が言いてぇんだ?」

女「まぁ、望遠鏡で月を見てみて下さい。天体望遠鏡ではないので、注意深く見なくてはいけませんが」

男「どれどれ……」

盗賊「勿体ぶらずに早く言えよ」

女「先に見た方が楽しみがあると思うんですよ」

男「綺麗な半月だな」

女「……もっと月の縁を見て下さい」

男「縁? ……何だこれ。ここの月は球体じゃない……いや……」

盗賊「何が見えんだよ」

男「まぁ、見てみろ。ほれ」

盗賊「てめぇもか」
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 21:37:07.22 ID:K8YZcfI0
女「見えましたか?」

盗賊「……ああ」

男「あれは何なんだ? まるで月の裏……向こう側に……」

女「はい。もう一つの月があるんです。今では人々に忘れ去られ、かつてはルーヌと言われていた月です」

女「今この月の存在を知る人は、学者くらいのものでしょうね」

盗賊「俺も知らなかった」

男「それで? 先に『月の神様』を話したのは理由があるんだろ?」

女「はい。本によると、神様達を“発射”した月は、モーヌではなくルーヌだと言います」

男「それだけか?」

女「だったら私もわざわざここまで説明しなかったんですけどね」

男「まだ何かあるって事か」

女「今日比較的古い本――古代文書の解読について書かれた本を読み比べていたんです」

女「そこで『月の神様』を示しているらしい事柄によって混沌期が始まったという記述がありました」

女「その前の時代を安定期と言いますが、この“安定”と“混沌”を分かつ要素の一つに魔法があります」

盗賊「魔法も神様に貰ったんだったよな?」

女「はい。しかも安定期には魔法について記された文書が今の所全くないんですよ」
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/11(木) 21:57:03.83 ID:K8YZcfI0
男「つまり『月の神様』について調べれば魔法の起源が分かるという事だな?」

女「と私は思ってます。魔法がどのように発見されたのかが分かれば、私達の研究も進むかもしれません」

男「魔石を持った詩人が偶々……なんて事だったらどうするんだ?」

女「それが一番恐いんですよね……。でもここは神様を信じてみようと思います」

男「まぁ、課題の一つとして頭には入れておくか」

女「ではもう一つの月が実在する事を確認した所で、私は寝ますね」

女「……そうそう、盗賊さん。今日は残念でしたね」

盗賊「ん? ああ。俺の油断もあったが、相手も結構強かった」

女「でもお陰で儲けさせて頂きました」

盗賊「……は?」

女「盗賊さんには教授が賭けているので、私も遊びでハリネズミさんに金貨五枚賭けてたんですよ」

女「するとなんと、大穴だったみたいで。では、二人とも、お休みなさい」

男「お休み。……あ、これだな」

盗賊「十、二十……金貨二百三十枚の勝ちだと!?」

男「てっきり赤字だと思ってたけど、大黒字だな」
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/11(木) 23:20:38.76 ID:DEQ.iREo
結構世界観凝ってるね
683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 01:42:18.10 ID:dcMzfcAO
>>682
実は適当に思いついた事柄を極力矛盾のないように入れてるだけなんて口が裂けても言えない。
実は今後この設定を使うかどうか分からないなんて頭が爆発しても言えない。

以上心の声。
684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 02:09:08.95 ID:dcMzfcAO
(翌日)

女「……」カチャカチャ

男「……」パラ…

女「……よし」コト…

男「ん、完成したか」

女「はい。でも使うのはまだ先になりそうですね」

男「折角電球の明かりが見れると思ったのに」

女「見る事くらいは出来ますよ。実用性がないだけです」

男「火力の自家発電機でも作るか?」

女「それはそれで手間が掛かりそうですね。燃料は石炭か木炭でしょう」

男「だな」

女「熱効率が悪いんですよね」

男「じゃあどうする? 風車を置くにもスペースがないぞ。水車を置くにもそれなりの滝もないぞ」

女「せめてウランとかプルトニウムとかが発見されてれば良かったんですが……」

男「あったとしても、原子力発電は持ってる方も危ないだろう。管理するのはたったの二人だ」

女「ですよね……。魔法は中断してハンディダイナモのエネルギー効率を上げる研究でもしましょうか」

男「本気か?」

女「半分冗談に決まってるじゃないですか」

男「半分は本気なんだな」
685 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 02:25:45.13 ID:dcMzfcAO
女「それより何を読んでたんですか?」

男「『魔法の詠唱法』ってやつだ。昨日蔵書館から借りてきた」

女「ああ、それですか。どうですか、教授から見て?」

男「論文として見れば最悪の出来だな、俺らの世界なら。内容が抽象的過ぎる」

女「厳しいですね」

男「だけど、本としてなら面白いな。論点はしっかりしてる」

女「その本は三つの詠唱法を詳しく書いてありましたね」

男「ああ。基本の詩篇詠唱と応用の短縮詠唱、それと陣詠唱だな」

女「私はそれを読むまで詠唱方法なんて知りませんでしたね」

男「そういえば勇者さんも魔法師さんも短縮詠唱ばかりだったよな」

男「うっかり『メラ』とか『ヒャダルコ』とか言うだけで魔法が使えると錯覚してしまうのも無理はない」

女「まぁ、短縮詠唱の際はキーワードを自分で決められるみたいですし」

男「結局は同じか。但し優秀な人に限る」
686 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 02:41:17.25 ID:dcMzfcAO
男「でも厳密には詠唱法は四種なんだろ?」

女「それはまだ不確かみたいですよ」

男「竜は無詠唱で魔法を使えるんじゃないのか?」

女「その本の作者の主張がそうなだけです。他の本も読んで行くと、体質説との論争が見られますよ」

男「体質説?」

女「魔法ではなく体の器官によるものと言う説らしいです」

男「竜の谷が見つかってないから研究も進まないと言うことか。結果、無意味に派閥が生まれる」

女「現れた記録かなければ、伝説の動物で片付けられたんでしょうね」

男「そもそも竜の谷なんて場所があるのか?」

女「竜の谷の存在は、なければ竜はどこに巣を作るのか、という疑問を解消するための方便かもしれませんね」

女「でも竜がこの世界に実在するのは確かみたいです」

男「……なあ」

女「はい?」

男「たまに竜やら魔法やらを真剣に話してる俺らが客観的に見ておかしく思えるんだが」

女「その考えは私達の世界にとってはまともなものですね、一般的に」

男「現実に起こってる事だからなぁ」

女「そうですね。夢でも幻でもありませんよ」
687 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 02:57:58.10 ID:dcMzfcAO
女「そういえば管理局長さんから連絡ありませんね」

男「ない方が良いだろ。不均衡が起こってない証拠だ」

女「でも船も直ってない証拠でもありますよね」

男「あの人らがこの世界に来るのは一週間に一度って言ってただろ」

男「今までの時間からして修理を終わらせるには時間が少なすぎる」

女「ですよね……」

男「船がどうしたんだ?」

女「あれがあれば月まで移動出来そうかなと思ったんです」

男「月? ああ、昨日の話だな」

女「はい。ルーヌから神様達が来たのなら、そこに何かあるはずですよね」

男「ルーヌより向こう側の宇宙の果てから来たのかもしれないぞ」

女「む……意地悪な事を言いますね」

男「あくまで可能性の話──」

コンコン

男「ん、誰だ?」

女「私達に来客なんて今すぐにでも雨が降りそうですね」

男「今日も凄く晴れてたのに残念だな」

コンコン

女「私が出ますね」
688 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 03:07:41.35 ID:dcMzfcAO
ガチャ

女「はい」

執事「私、公爵家に仕えております執事と申します。あなたが女様ですか?」

女「はい。公爵家と言うと、白公さんですね?」

執事「そうです」

女「私、住所を教えた覚えはないんですが……」

執事「そのくらいの事は調べればすぐに分かります。男様もおられるでしょうか?」

女「はい。呼びましょうか?」

執事「お願いします」

女「教授! 呼ばれてますよ!」

男「分かった!」

男「……はい、何用でしょうか?」

執事「私は公爵家に仕えております執事と申します」

女「昨日話したスポンサーの白公爵からの使いらしいです」

男「住所も教えてあったのか?」

執事「そのくらいの事は調べればすぐに分かります」

男「はあ」
689 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 03:27:05.67 ID:dcMzfcAO
女「それで、私達に何の用で訪ねられたんです?」

執事「白国王陛下の命により黒の国へ調査団を送る事になりまして」

執事「各貴族から学者を数人出すようにと。そこでご主人様はあなた達が適任かもしれないとおっしゃいまして」

男「調査団の一員として黒の国まで行けと言う事ですか?」

執事「はい。他の学者達との交流によってもあなた方の研究の促進になれば、と」

女「調査の内容について詳細は聞いてますか?」

執事「勿論です」

女「では立ち話もなんですから、中で聞かせて下さい。散らかってますが」

執事「分かりました。失礼します」

男「まさか受けるつもりか?」

女「それは詳しく聞いてみないと分かりませんね。内容によりけりです」

男「まぁ、国が行う事だからそこまで下らない事じゃないとは思うけど……」

女「何か進展が期待出来る事かもしれませんよ」
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 03:48:50.29 ID:dcMzfcAO
女「すみません。安いお茶しか出せませんが」

執事「いえ、ありがとうございます」

執事「しかし……変わったものがありますね」

女「ここでは普通そう見えるみたいですね」

執事「これは何ですか?」

女「それはパソコンです。書類を作ったり計算をしたりプログラムを作ったりシュミレートしたり──」

男「とにかく便利なもので、紙とペンの代わりをしてくれるものです」

執事「?」

女「やっぱり分かりづらいですか……ならこれはどうでしょう。電球です」

執事「それはどのようなものですか?」

女「ランプの代わりになります。この導線をここに繋ぐと……」

ピカーッ

執事「これは素晴らしい。どのような魔法をお使いになられたのですか?」

男「これは魔法じゃないんです。ダイナモによって蓄えた電気エネルギーを光として放出しただけ何ですよ」

男「しかも、誰にでも出来る簡単な仕組みです」

執事「……成る程です。ご主人様が推すのも分かります」
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 03:58:29.48 ID:dcMzfcAO
女「と言いますと?」

執事「今回の調査ではそれぞれの貴族が学者を出し合います」

執事「公爵家として、役に立たない学者を出す訳には行かないのです」

男「と同時に、今回の調査の成果は貴族間競争のネタとなるわけですね」

執事「……分かっておられましたか」

男「それが権力者の世界ってものです。特にファンタジーでは」

執事「ファンタジーですか?」

女「教授、それを言っても分かるのは私くらいですよ」

男「ああ、そうか。すみません。こっちの話です」

執事「そうですか」

女「でもそのような裏事情があると、私は気が引けてしまいますね」

男「俺もですね。ここでは無名中の無名の学者ですし」

執事「とりあえず、今回の調査についてお話しましょう。それから決めていただいても結構ですので」
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 04:02:56.30 ID:dcMzfcAO
そろそろ寝ますか。

最近は夢の中で話の続きを書いてる。
起きた時の脱力感は凄まじいぜ。
しかも書いてるのが度々エロ展開に向かってるから羞恥感も凄まじいぜ。
693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/12(金) 10:55:34.36 ID:RMWhXdAo
エロ・・・いいじゃないか
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 11:52:13.17 ID:fOFNreUo
エロは勘弁
695 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/12(金) 12:02:57.60 ID:gWICLGwo
今、一気に読んだ。

おもしれーじゃねーかチクショー。
お疲れさん+続きが待ちどおしいわ
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/12(金) 18:23:38.38 ID:ZFRcwKI0
>>693-694
※エロシーンは俺の夢の中だけに存在します。

>>695
面白いとか言われると調子に乗ってしまうぜ!
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/12(金) 19:08:20.56 ID:ZFRcwKI0
執事「黒の国では現在、柊の町という田舎町を中心に異変が起きております」

執事「異変に気付いたのは三ヶ月前の事です。その頃はまだ被害は柊の町だけでした」

男「その異変というのは?」

執事「死者が魔物として蘇っているのですよ。再び出歩くようになった彼らは、生きている人々を襲い始めました」

執事「そしていつの間にか襲われた人達も、彼らのようになってしまうのです」

執事「今まで黒の国で対処をしようとしてきたようですが、解決する事は出来なかったようです」

執事「兵士や騎士達が何人も死に、魔物となったそうです」

執事「そしてついに自分達では解決出来ないと判断した黒の国は、連盟に助けを求め」

執事「それを白の国が買って出た訳です」

女「白の国の救援を聞いて、黒の国は喜んだでしょうね」

執事「そう聞いております。ですから、国としても失態を見せるわけにはいかないのです」

男「なかなか重い依頼ですね……」

女「一つ聞きますが、本当に蘇ったのは死者なんですか?」

執事「それは確かです」
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/12(金) 19:41:27.31 ID:ZFRcwKI0
男「現在の被害状況はどこまで広がっているのですか?」

執事「近隣の町や村である茶の町、雲母村、真珠の街にまで広がっています」

執事「現状、その周囲にある崖の街、扇状村、氾濫村、そして潮の国との国境付近にある塩の街を繋ぐ線上で異変の進行を抑えているそうです」

執事「距離にして柊の町を中心に約十八ヘールになります」

男「潮の国との国境付近と言えば……黒の国の南側ですね?」

執事「そうです」

男「近くまで驚異が迫ってきているのに、潮の国は何をしているのですか?」

執事「この十八ヘールの防衛線に兵士を多く送っているそうです」

執事「但しこの防衛線は週に一ヘール増えると考えても良いでしょう」

女「なら、出発は急いだ方が良いですね」

執事「出発は三日後です。集合時刻に集まって貰い、一先ず来ている者で出発します」

執事「遅れれば後を追うか、そのまま帰るかになるでしょう」

女「……危険な所なんですよね?」

執事「勿論です。生死が掛かっています。なので無理強いは致しませんが」

男「行くのは学者だけですか?」

執事「いえ。護衛として白の国から騎士団も送られます。勿論貴族から護衛の兵士を付けても良いとの事です」

男「ふむ……」
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/12(金) 20:00:23.02 ID:ZFRcwKI0
女「ちなみに今分かっている事は?」

執事「実の所、何一つ分かっている事はありません」

執事「どうして死者が蘇ったのか。どうして人を襲うのか。何も分からないのです」

女「……どうしますか、教授?」

男「ん……そうだな……」

女「本物の死人らしいですし、ゾンビパウダーが原因ではなさそうですね」

男「となると、柊の町で発生したウイルスか? 空気感染でない所をみると傷口感染……」

男「でも人間を襲うというのはどういう事だ? ……あの」

執事「はい」

男「襲われたのは人間だけですか? 犬や猫、馬や鶏などは……」

執事「生き物は何であろうと殺されているようです」

男「では魔物化した馬なども」

執事「いえ、襲ってくるのは必ず人間だそうですよ」

男「……どういう事だ? 人体にしか影響しないものなのか……?」

女「教授、他の可能性を忘れてますよ」

男「他の……そうか、魔法か!」
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/12(金) 20:16:23.55 ID:ZFRcwKI0
執事「他の貴族達もそう睨んで、恐らく魔法学者を送り込んでくるでしょう」

男「成る程……。行ってみる価値はあるんじゃないか?」

女「相手は死人で、こっちも仲間入りするかもしれませんよ?」

男「俺らには優秀な護衛がいる事をお忘れかな?」

女「頼りになります?」

男「昨日の試合を見ただろ?」

女「ですが、相手は死人ですよ?」

男「……もしかして、怖いのか?」

女「ま、まさかっ! 良いでしょう、受けましょう!」

男「という訳で、俺らも参加させて頂きます」

執事「ありがとうございます!」

男「それで、いつ頃、どこに集合ですか?」

執事「三日後の昼、三時までに王宮に集まって下さい。王宮に入る際、この文書を見せれば案内してくれるでしょう」

男「紹介状みたいなものですか?」

執事「紹介状ですね。では、私はこれで失礼させて頂きますね」
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 03:02:55.37 ID:WxHmiAAO
男「さて、調査に行く前に俺らで仮説をいくつか立てておこう」

女「そうですね」

男「ちなみに、死者を操る魔法とか、ゾンビ化の魔法とかあるか?」

女「私は知りませんね」

男「じゃあなんで魔法の可能性を上げたんだ?」

女「私のまだ知らない種類の魔法もあるでしょうし」

男「ではまず仮に原因が魔法だとしよう。大きく分けて二つのタイプに分かれる」

男「発動者の意思かそうでないかだ」

女「直接作用か間接作用かでも分かれますよ」

男「魔法薬だな。つまり大きく分けて、厳密には四タイプに分かれる訳だ」

女「発動者の意思か否かは行けば分かる事です。仮説で立てるべきなのは直接的な魔法かどうかです」

男「では直接作用の場合はどうなる?」

男「この場合、発動者の意思なら、死人が動くのは死人の意思でなく、発動者の意思に沿って動いていると考えられる」

女「操り人形の要領ですね?」

男「そうだ。但し発動者の意思でない場合、例えば自身の魔法に巻き込まれていたなどなら……」

男「しっくりくる考えが浮かばないな」

女「なかなかの難問ですよね」
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 03:18:57.54 ID:WxHmiAAO
女「んー……やっぱり疑問点から攻めた方が良いんじゃないですか?」

男「俺にも分かる疑問と言えば一つだな」

女「そこからです」

男「どうして対象が人間だけなのか……」

女「これならタイプは大きく分けて二つです」

女「人為的なものか否か」

男「後者はやはりウイルスか?」

女「ウイルスもありますが、宿主を選ぶ寄生虫によるものだと言う方が確率としては高いと思います」

男「寄生虫か……そういう本は読んだ事あるか?」

女「ありません」

男「まぁ寄生虫にしろウイルスにしろ菌にしろ、明確な問題が提示出来るな」

女「それらはどこからやって来たのかですね」

男「一方人為的な場合の問題は動機だ。なぜそのような事をする必要があるのか」

女「そしてどのようにしてるのかですね」

男「よし。次はそこを細かく分けて考えようか」
703 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 15:38:59.30 ID:R5rkWK2o
お、続ききてたか
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 01:55:24.34 ID:a2EFY2AO
気付くと寝ていた事に気付く自分がいる。
705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 02:12:01.42 ID:a2EFY2AO
盗賊「──で、黒の国に行く訳か」

男「お前にも護衛役としてついて来てもらうぞ」

盗賊「しかし……死人相手か。木炭村での事みてぇなもんか?」

男「その辺り何とも……」

男「ただ今回の仕事は調査だから、もしかしたら倒さなくて済むかもしれない」

盗賊「あん時みてぇに透けるやつ相手じゃ俺もどうにもできねぇぞ」

男「黒幕──もしいればだけど──以外はしっかり実体のあるやつだよ」

盗賊「なら良い」

男「まぁ国の方でも護衛を用意してくれるみたいだから、気が乗らなければ留守番でも良いけど」

盗賊「誰が気が乗らないって言った?」

男「嫌々されるのも嫌だからな」

盗賊「俺もてめぇらの研究に興味ってのがあるんだ。俺に出来る事はしてやる」

盗賊「金じゃねぇが、一種の投資だな」

男「お前に俺らの研究の崇高さが分かるとでも?」

盗賊「周辺の手伝いをするやつにそんな理解は必要ねぇよ」
706 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 02:23:16.39 ID:a2EFY2AO
盗賊「にしても女、てめぇがはしゃがねぇってのは不思議だぜ」

男「やっぱりそう思うか?」

盗賊「ああ」

女「どうしてそう思うんですか?」

盗賊「いつもなら目を子供みてぇに輝かせてるはずじゃねぇか」

女「そうですか?」

男「俺もてっきり『不思議です! 早く行きたいですね!』とか言うものかと思ったけど」

女「真似しようとするのは止めてください。気持ち悪いです」

女「それに私はそんな事言いません」

男「言うと思うな。盗賊もそう思うだろ?」

盗賊「普段ならそう言うはずだ」

女「私の事をどう思ってるんですか……」

女「大体私はわざわざ調査に学者を行かせなくても、兵士達の報告で解決策を考えた方が良いと思ってるんですよ」

男「どうしてだ?」

女「わざわざ危険な所へ行く必要はありませんから」
707 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 02:38:18.41 ID:a2EFY2AO
男「本気でそう思ってるのか?」

女「もちろんです」

男「研究者は危険があっても研究を続ける。これが信条なんじゃないのか?」

女「私達の研究に繋がる保証はありませんし」

盗賊「鍛冶の街の事覚えるか?」

女「それがどうしたんですか?」

盗賊「女はどうして盗みをやったんだ?」

女「それは……勇者さんにいつまでもお世話になるのはいけないと思ったからです」

盗賊「じゃあ研究以外の事でも危険を冒した訳だ。失敗していれば勇者達にさらに迷惑を掛けてたからな」

女「……」

男「成る程。今の女さんは昔の行動と矛盾してるな」

男「今回は研究の成果があがる可能性を、危険性があるからと行って回避しようとしている」

女「……今日は寝る事にします」

男「……」

盗賊「どのみち受けちまった事なんだろ? 行くか逃げるかしかねぇぜ」

女「逃げませんよ。……おやすみなさい」

男「お休み、女さん」

盗賊「やれやれ……」
708 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 02:57:06.80 ID:a2EFY2AO
(三日後、昼)
──王宮

女「近くで見ると大きいですね」

男「白の街全体で城みたいになってると思ってたけど、ここは格別だな」

女「街のどのくらいの敷地を占めてるんでしょうか。十分の一? ……それは多すぎますね」

盗賊「見とれてねぇで行くぞ。遅れたら置いて行かれるんだろ?」

男「ああ、そうだったな。今は十一時過ぎか……こりゃ早く来て正解だったかもな」

女「門から遠い場所に案内されるだけで三十分は掛かりそうですしね」

盗賊「それは大袈裟じゃねぇか?」

男「そうは言いきれないかもしれないぞ」

女「あの門から入れば良いんでしょうか」

男「と思うけど。じゃあ行くか」

門番「待て! 貴様ら何の用だ!」

男「黒の国へ行く調査団の一員として呼ばれた学者です。これ、紹介状です」

門番「どれ……公爵家の所属の者か。よし、入れ」

男「どこへ向かえば良いのでしょうか?」

門番「それなら──」
709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 03:11:51.90 ID:a2EFY2AO
盗賊「くそ……これなら東側から入った方が近くにあったんじゃねぇか?」

女「距離は同じですよ」

男「確かこの辺りで……合ってるみたいだな」

ガヤガヤ ガヤガヤ

男「集まってるのはみんな学者か?」

盗賊「貴族共が推薦する秀才共か。ざっと二十数人って所か」

女「私達を含めて二十六人です。恐らく学者だけではなく盗賊さんのような護衛もいると思いますが」

盗賊「貴族共は普通そんなの付けねぇよ。国王を疑うような行為に見えっからな」

男「とすると個人の護衛役は盗賊さんだけか……ん?」

男「女性も女さんだけだな」

女「みたいですね」

男「女性の学者はいないのか?」

女「いますが少ないですし、名声も低いようですね」

男「こういう場には出てきにくい人って事か」
710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 11:13:04.24 ID:a2EFY2AO
女「少なくとも、私達が場違いな存在と言うのは確かですね」

女「見てください。好奇の目で見られてますよ」

男「だからそれは女さんがいるからだろ?」

女「私だけじゃありませんよ。例えば盗賊さん」

盗賊「あ?」

女「罪人のような悪人面です。というか盗賊だと罪人そのものですか」

盗賊「罪人は余計だ」

男「と言う事は俺らの中でまともに見られてるのは俺だけか」

女「いえ。私達みんなまともには見られてません。私達は荷物が多いんですよ」

盗賊「確かに他の連中は鞄一つだな」

男「調査に使う器具がはっきりしてないから仕方ないだろう」

男「だが、俺が一番普通に見られている」

女「……否定はしません」
711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 11:32:56.78 ID:a2EFY2AO
盗賊「……連中、こっちに来るぜ」

女「仲良くなれると良いですね」

男「相手次第だな」

学者「あなた達も黒の国へ行く学者か?」

男「ああ、はい」

学者「そうか。そんな荷物だから観光客が紛れ込んだのかと思ったよ」

学士「こら、失礼じゃないか、学者さん。あぁ、私は学士。こちらは学者さんと薬師さん」

薬師「どうも」

男「俺は男です。こちらは女と、護衛の盗賊です」

女「よろしくお願いします」

学者「悪党を護衛にするとは変わった奴らだ」

盗賊「んだと!?」

学士「止めなさいな。ところで、所属はどこでしょうか?」

男「所属?」

女「紹介元の事ですよ。公爵家です」

薬師「女の学者を送ってくるとは公爵閣下も思い切った事をするもんだの」

女「先に訂正しておきますが、私は研究者ではありますが学者ではありません」

薬師「そうかい。わしも学者でなく薬師での。お嬢さんは?」

女「技術者です」
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 11:57:45.77 ID:a2EFY2AO
学士「私と薬師さんは子爵家所属で、こちらの悪口しか言えない人は白鷺卿の所属です」

学者「僕は本音を言っただけだ」

学士「言い方が悪いのですよ」

男「学士さんと学者さんの専門は何ですか?」

学者「実践魔法学」

学士「私は考古学ですね。魔法や宗教にも範囲が広がってますから。あなたは学者ですよね?」

男「俺は物理学、主に宇宙工学を専門としてまして」

学者「何を訳の分からない事を……」

学士「初めて聞きますね」

男「まぁ、今回あまる役に立ちそうもない学問ですよ」

学者「公爵も落ちぶれたな」

学士「公爵程の人です。何か考えがあっての事でしょう」

学者「どうだか」

薬師「それよりあんたらの荷物を見せてくれんか? 余計なもん持ってきとらんかチェックしてやろう」

女「余計なものなんてありませんよ」
713 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/14(日) 12:04:32.92 ID:QTBC752o
技術者に得体の知れない専門、盗賊と怪しすぎる集団だなww
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 17:04:13.05 ID:a2EFY2AO
騎士「学者の皆々方、静かに!」

ザワ…

騎士「私は白蛇隊隊長の騎士だ! 今回私を始めとする白蛇隊の精鋭が君達を護衛する!」

学者「随分な人らがついてきてくれんだな」

男「そんな凄いのか?」

学者「知らないのか? このくらい農夫でも知ってるぞ」

学士「白蛇隊は白の国最強の部隊です。その隊長の騎士さんは凄腕と聞いています」

男「若いのに隊長と言うだけでも凄いのに」

盗賊「噂通りの大剣だな。あんな華奢な体でよく身の丈程のを振れるぜ」

女「無駄な筋肉がないんでしょうね」

薬師「勇者様が連盟の命を受けなければどっちが隊長だったろうな……」

学士「二人は幼馴染みでしたね。彼と互いに磨き合ったお陰かもしれませんね」

騎士「出発の前にいくつか説明をしておく! 既に聞いた事もあるだろうが、しっかり聞いてくれ!」
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 17:20:45.92 ID:a2EFY2AO
うわっ、外出先なのに電池が後一個だ。
予備の電池忘れたんだよな……。

家に帰るまで書き止め。
716 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 21:57:58.83 ID:BT6afJUo
ケータイから書き込んでたのか、乙
717 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 23:10:12.59 ID:a2EFY2AO
やぁ、ただいま。
だが今日はもう眠いんだぜ!
寝付くまで暇だからそれまで書くけど。
718 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/14(日) 23:51:09.79 ID:a2EFY2AO
騎士「現在黒の国では死者が暴走している! 君達にはそれを解決する手助けをして欲しい!」

騎士「異変の始まりである柊の町、そこが今回の根源だと我々は考えている!」

盗賊「手助けって事は、自分らで解決出来るとも思ってんだろうな」

男「案外いけるかもしれないぞ。力押しで解決、俺らは不要だった」

男「俺らは杖って事だな」

盗賊「杖?」

騎士「そこで我々の向かう場所は、柊の町だ! 行き方を簡単に説明する!」

騎士「まずは転移法陣を使い黒の街へ移動し、そこから岸の街付近まで荷馬車で移動する!」

騎士「岸の街ももはや安全ではない! その郊外に我々は陣営を張る!」

男「転移法陣って何だ?」

女「連盟同士の首都を結ぶ一般向けの転移魔法陣です。古式の魔法での転移ですが、一般人でも転移酔いはしないそうです」

盗賊「“一般向け”だぁ? あんなの高くて使える奴は限られてるぜ」

女「古式の転移魔法は使える人も少ないらしいですからね」

学者「あなたは女のくせに教養があるな。一転この男は全くないと見える」

男「そりゃすみませんね。魔法の知識は空っきしなんですよ」

学者「古式の転移魔法は五つ組み合わせた陣詠唱と短縮不能な詩篇詠唱、そして膨大な魔力が必要となる。覚えておけ」
719 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 00:06:32.63 ID:CRdE9wAO
学士「その型の転移魔法が廃れていったのは統一期の事です」

男「それはまたどうして?」

学士「現在の転移魔法となるきっかけとなった魔法開発が始まったとされています」

学士「未だ発掘出来ていない初代統一王の墓にその証拠があると我々考古学者は予測しています」

学士「ただ、その魔法開発によって楽になったのは魔法使いだけでした」

男「開発によって専門家と一般人の間に隔たりが出来た訳か」

学士「その通りです」

男「成る程。為になりました」

学者「授業料を欲しいくらいだ」

学士「何言ってるのですか。これは学者間の他愛のないただの会話ですよ?」

騎士「そこ、しっかり話は聞いていたのか!?」

薬師「ええ、聞いていましたとも」

騎士「君は良い。私が言っているのはそこの四人だ!」

学者「やっべ……」

学士「うっかりしてましたね……つい得意になってしまいました」

学者「貴様のせいだぞ!」

男「そりゃすみませんね」

女「四人と言う事は私も入ってるんでしょうか……」
720 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 00:13:41.28 ID:CRdE9wAO
騎士「聞いていたのか? 聞いてなかったのか? 答えろ!」

騎士「最も、聞いてなくても二度目は話さないが」

学者「おい……」コソッ

薬師「仕方ないの……どこから聞いてなかった?」コソソッ

騎士「内容を聞いていたやつから聞くのは禁止だ!」

学者「う……」

学士「どうします? もう説明も終わってるみたいですし……」

男「どうすると言われましても……聞いてたから問題ないよな、女さん?」

女「はい」

学者「馬鹿な! その女はともかく貴様が聞いてるとは思えない!」

騎士「ほう……ならば私が何を話したか一部始終話してみろ」

騎士「内容が合っていれば聞いていたと認めよう」

男「分かりました」
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 00:32:38.49 ID:CRdE9wAO
男「俺らはこれから黒の国の死者が暴走する異変の調査、解決へ向かいます」

男「まず転移法陣で黒の街へ行き、そこから馬車で崖の街近郊へ行き、陣営を張ります」

学者「そこまでは僕も聞いていた」

学士「私もですね」

男「翌日、雲母村まで進み、第二陣営を張ります。その時第一陣営には本国の兵士が残ります」

男「さらに翌日、道中に陣営を張ります。この時第二陣営に騎士が五人残ります」

男「またさらに翌日、柊の町付近に本陣営を置きます。この時第三陣営に十人騎士が残ります」

男「この時本陣営にいるのは俺ら調査班と騎士団の精鋭二十人。そこから調査開始です」

男「調査中の必要物資は本国から支給される事になっています」

男「以上……で合ってる?」

女「満点ですよ」

騎士「ふむ……確かに聞き逃しはないようだな。ではこれより転移法陣へ向かう!」

学者「……」ポカーン

学士「あなた達……凄いですね……」ポカーン

男「何、流石に十人同時とまでは行きませんが、慣れれば四人の話を同時に聞けますよ」

女「私は三人が限界ですけどね」

盗賊「男が女より優れてる……だと……?」

薬師「最強の若いもんは凄い事をさらりとやってのけるのぉ」
722 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 00:34:27.20 ID:CRdE9wAO
はい、ここで訂正タイム〜!

薬師「最強の若いもんは凄い事をさらりとやってのけるのぉ」

薬師「最近の若いもんは凄い事をさらりとやってのけるのぉ」
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 00:52:43.99 ID:CRdE9wAO
女「ここが転移法陣ですか。初めて来ました。わくわくしますね」キラキラ

盗賊「その目だ」

女「はい?」

盗賊「今から死人を相手に調査するってのに、どうしてその目が出来ない」

女「……どんな目ですか?」

盗賊「途端に腐りやがった……」

女「とても楽しみですよ。亡くなってるはずなのにどうして動くんでしょうね」

盗賊「楽しみには見えねぇ……」

男「本当にどうしたんだ? 女さんらしくないぞ?」

女「私は私です」

男「……あまり無理はするなよ」

女「楽しい事なら無理してしまうのが普通ですよ」

男「……」

盗賊「……」

騎士「皆揃ったな! 一気に送れる大きさはないから、先に君達を送る!」

騎士「では始めてくれ」

転移師「承知しました」

転移師「  」ブツブツ
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 02:43:45.93 ID:TdNeWlUo
>>722
一瞬何が違うのかわからなかった
・・・最強てww
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/15(月) 10:25:51.30 ID:E/BPRp2o
確かに最強ではある
726 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 01:21:33.68 ID:5izwxwAO
──黒の国、黒の街

黒国大臣「よくぞ来て下さいました!」

騎士「連盟国は助け合わねばいけませんから」

黒国大臣「しかしなんと礼を言って良いのか」

騎士「物資の援助をして下さるだけで十分です」

黒国大臣「そのくらいは助けを借りている身としての義務でございますよ」

黒国大臣「ささ、馬車はこちらです」

騎士「ありがとうございます」

黒国大臣「ちなみに人数の方は……」

騎士「馬車はいくつ用意していますか?」

黒国大臣「五つです。それぞれの荷台には二十人ずつは乗れるでしょう」

騎士「でしたら、すみませんが四台で十分です」

黒国大臣「そうですか?」

騎士「合計で六十六人ですから」

騎士「それでは馬車の割り当てを言う! その人数通りに分かれるように!」
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 01:39:58.47 ID:5izwxwAO
男「この馬車には俺らだけか」

女「調査チームだけではそうですね。ですが騎士隊の人も乗って来るはずです」

盗賊「当たりめぇだ。あいつらは護衛をしに来てんだからな」

男「だけど何で俺らだけ離されたんだ?」

盗賊「知るかよ」

騎士「不満だったか?」

男「あっ、えっと……そういう訳ではなく……」

騎士「これは私なりの配慮だ」

男「配慮ですか?」

騎士「うむ。その大荷物ならば場所に余裕があった方が良いだろう」

騎士「それに他の馬車の中でそれを持たれると私達はともかく他の学者方々に迷惑だろう?」

男「あぁ、そうですね」

騎士「この馬車には私他二人の騎士隊員が同席する。よろしく頼むぞ」

盗賊「隊長は大勢の学者共と乗った方が良いんじゃねぇか?」

騎士「私は君達と話がしてみたくてな」

男「俺らとですか?」

騎士「今回の調査に集まった学者方は王宮内でも顔が良く知れた人達だ」

騎士「しかし君達は初めて見る。それなのに公爵家の所属と言うではないか」

騎士「そんな君達に興味を持たない人などいないと思うが?」
728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 01:50:47.81 ID:8Yy9d.Uo
騎士「…性的な意味で」ボソッ
729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 02:16:37.06 ID:5izwxwAO
ガタン… ガタン…

女「……」カタ…カタタ…
男「……」ウィーン ウィーン

盗賊「……」スヤスヤ

女「……」カタタ…

男「……」ウィーン ウィーン

騎士「……ちょっと良いか?」

男「はい?」ウィーン

騎士「君達は、その……何をしているんだ?」

女「……」カタタタッ…

男「俺はダイナモを回しているのです」ウィーン

騎士「それを回していて……楽しいのか?」

男「楽しいとかではなく、必要だからです」

騎士「何に必要なのだ?」

男「隣で女さんがカタカタと熱心に“何か”してますよね?」

騎士「ああ」

男「この機械を動かすのに電気が必要なんですよ」

男「その電気を生み出すために、これを回す必要があるのです」

男「最も、今は充電量より消費量の方が多いんですが」

騎士「成る程、魔法の一種か」

男「……違います」
730 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 02:35:23.89 ID:5izwxwAO
騎士「それで、そちらは何をしているのだ?」

女「予測可能な魔法においてのシュミレートプログラムの作成です」カタタタ

騎士「……?」

女「それより、私達なんかの護衛をしてて良いんですか?」カタ…

騎士「何がだ?」

女「竜の国との戦争です。あなたは最前線で活躍なさる人のようですが」

騎士「竜の国は頑なに戦を続けているがな、我々連盟が勝ったと言っても良いくらいだ」

女「白の国は参加しないんですか?」

騎士「土の国、煙の国、針の国だけでも十分過ぎると言う事だ」

女「総攻撃で早く戦争を終わらせた方が良いのでは?」

騎士「それでは連盟の名に傷が付く、と言うのが上の意見だ」

女「そうですか。暇なんですね」

騎士「そうとも言えるな」

騎士「だかそれだけ連盟国が平和と言うことだ。そうは思わないか?」

女「竜の国との戦争。魔の国とは結界で冷戦状態とは言え、戦争は戦争」

女「そして今回の……。平和とは思えませんね」

騎士「悲観的だな」

女「いくらポジティブに考えた所で現実は変わりませんよ」
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/16(火) 02:58:34.19 ID:5izwxwAO
男「それで、崖の街へはどのくらいで着くんでしょうか」

騎士「大体二日と言った所だろう」

男「では一度どこかで野営ですか」

騎士「そのつもりだ」

盗賊「俺も聞きたいんだが」

男「起きてたのか」

盗賊「さっきな。それで、相手にする死人は殺せるのか?」

騎士「報告によると腕や足を切ったくらいでは這って襲ってくると言う」

騎士「首の皮一枚の状態でも動いていたとも聞いたな」

盗賊「渋とそうだな……」

男「まさにホラーだ……」

女「……」

騎士「安心しろ。私達が君達を守り通す」

盗賊「俺も守ってくれねぇか?」

騎士「任務は調査班を守れ、なんだ」

盗賊「つまり俺は入ってねぇわけか」

騎士「安心しろ。一般人を守るのは騎士の義務だ」
732 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 03:01:29.59 ID:5izwxwAO
念のため。
騎士の性別は女だからな。華奢な体型の男騎士じゃないぞ!

今日も眠いからこれだけー。おやすみ。
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 03:25:23.16 ID:8Yy9d.Uo
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 03:58:50.16 ID:/QzUcY.o
女…だと…
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 08:40:51.39 ID:RL07Fb20
応援するぜ!
736 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/19(金) 22:03:48.97 ID:ZvWt0kAO
続きおねがいします
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/20(土) 13:40:02.82 ID:YWoysgwo
復旧してたのか
738 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/20(土) 20:03:16.04 ID:Z3b6v6AO
やぁ諸君。
残念だが、昨日まで旅行に行ってたから書き溜めはしてないんだ。
昨日は眠かったから寝た。
今日は……どうするか。夜になったら考える。
739 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/20(土) 20:25:35.29 ID:BhvC.Koo
せっかくだから待ってみるか
740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/20(土) 22:12:07.23 ID:zdUHnJUo
そうか、一人旅か
741 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/20(土) 22:12:44.10 ID:Z3b6v6AO
──白の国、白の街

勇者「……」

剣士「……」

魔剣〔ここが現在の大陸の中心、白の街なのだな? 成る程活気溢れる街だ〕

勇者「……少し黙ってくれないかな?」

魔剣〔しかし悲しいものだ。折角我が一度統一を──〕

勇者「黙れ!!」

剣士「勇者様……っ!」

ヒソヒソ… ヒソヒソ…

勇者「あ……ごめん……」

剣士「……」

魔剣〔まだあの坊主を殺した事を根に持っておるのか?〕

勇者「当たりま──!」

剣士「勇者様、声!」

勇者「っ……。まだ慣れないな……」

剣士「そうか……」

勇者「いい加減慣れないと、独り言が癖になりそうだよ」

勇者〔当たり前だ。僧侶は俺達にとって大切な仲間だったんだ!〕

魔剣〔信用の出来ぬ者でもか?〕

勇者〔俺達は互いに信頼していた。それなのに英雄王、お前は……!〕

魔剣〔我は選択を誤ったとは思っておらん〕

勇者〔……もう黙っててくれ。お前の声を聞いてるとイライラしてくる〕

魔剣〔キミは我が嫌いか? 我はキミが好きだぞ?〕

勇者〔……本当に頼むから黙っててくれ〕
742 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/20(土) 22:26:51.08 ID:Z3b6v6AO
剣士「話は終わったか?」

勇者「……ああ」

剣士「……白国王様は何とおっしゃられるだろうか」

勇者「そうだな……。話せば分かってくれるだろう」

勇者「魔法師を捜すにしても、魔国結界を解除するにしても、俺ら二人では荷が重いと言う事を分かって下さるだろう」

剣士「僧侶が抜けた穴が大きすぎるな……」

勇者「僧侶だけじゃない。魔法師が抜けた穴も大きかった。……いや、剣士だって俺を十五分に支えてくれてる」

勇者「今剣士までいなくなったら、俺は何も出来なくなりそうなくらいだ」

剣士「それは大袈裟じゃないのか……?」

勇者「……」

剣士「……そろそろ王宮に行こう、勇者様」

勇者「そうだな」
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/20(土) 22:47:12.97 ID:Z3b6v6AO
──王宮

白国王「よくぞ戻って来てくれた、勇者、剣士!」

白国王「……僧侶はどうした? 魔法師は逃亡中と聞いておるが」

勇者「実は……その事で報告に参りました」

白国王「話してみよ」

勇者「まず話しておかねばなりませんのは、この剣の事です」

白国王「うむ。立派な剣だな。単純な造りだが、気品が溢れ出ているようだ」

勇者〔気品、ね。悪臭しかしないな〕

魔剣〔聞こえておるぞ〕

勇者〔聞かせてるんだよ〕

勇者「これは竜を斬る事が出来ると言う魔剣です。砂の国の砂漠に建つ、砂漠の遺跡で手に入れました」

白国王「なんと、あの遺跡に行ったのか!?」

勇者「はい。僧侶のお陰で命を繋ぎながら」

剣士「壁画が正しければ、この剣は確かに竜を斬っていました。竜の鱗は高位の魔法使いによる防御力付加魔法よりも強力な魔法で守られていると聞きます」

剣士「魔法を得意とする魔族を相手にするならば、これから先必要となるでしょう」

白国王「……ふむ」
744 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/20(土) 22:59:35.23 ID:Z3b6v6AO
勇者「しかし問題が発生してしまいました」

白国王「何だ?」

勇者「この剣には悪霊が憑いていたのです」

魔剣〔悪霊ではない。我が魂は守護霊だ〕

勇者「本人は守護霊気取りですが」

白国王「それは真か?」

勇者「はい。名を英雄王と言い、砂漠の遺跡の主です」

勇者「そしてその英雄王が、僧侶が気に入らないと言って首をはねました」

白国王「つまり……僧侶は死んだのだな?」

勇者「はい……。塵の街の白羽教会で葬儀もしました」

白国王「それはいつの話だ?」

勇者「大体、七日前になります」

白国王「……ふむ。所で勇者」

勇者「はい」

白国王「本当に僧侶は死んだのか?」

勇者「はい」

白国王「だがわしは何も聞いていない。僧侶が死に、教会で葬儀をしたならば、わしにも報せが来るはずだが、それがない」

勇者「……はい?」

白国王「勇者よ、どうしてだと思う?」
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/20(土) 23:10:26.15 ID:Z3b6v6AO
明日は早いのでこの辺りで寝る。
と言うか眠い。

>>740
三人で神社巡りの旅でした。疲れましたが、楽しかったです。(小学生の作文風に)
746 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/21(日) 19:08:52.65 ID:Js7xcEAO
勇者「それは、ただ報告を受けていないだけでは?」

白国王「それはない。連盟の命を受けた者の死くらい知らされるはずだ」

勇者「では遅れているのかと」

白国王「それとも、お主らが嘘をついておるのか」

勇者「そんな──!」

白国王「わしはお主らを信じておる。安心せい」

白国王「第一嘘をついていたとして、『教会で葬った』などと言うのは間抜けでしかない。だろう?」

勇者「……」

白国王「僧侶の件はこちらで確認をとってみよう。それで、わしを訪れた用はそれだけではなかろう」

勇者「はい。魔法師に続き僧侶まで抜けてしまっては穴が大き過ぎます」

白国王「代わりの人員を補充しろと言いたいのだな?」

勇者「はい。せめて魔法師が見つかるまでの間くらいは」

白国王「……ふむ。希望は魔法使いだな? 治療魔法が使えればなお良いと?」

勇者「はい」

白国王「分かった。探して見よう。だが……見つからないかもしれんぞ?」
747 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/21(日) 19:22:57.93 ID:Js7xcEAO
白国王「騎士や兵士ならば幾らか同行させられる者もいるだろうが……」

白国王「魔法使いとなると、人数が限られるのだ」

白国王「特に最近は強力な魔物も増えてきている。一人でも人員を割くと防衛に亀裂が出来る危険性もあるのだ」

勇者「……そうですか」

白国王「すまないな、勇者よ。だがわしも最善を尽くすつもりだ」

勇者「ありがとうございます」

白国王「では勇者よ。九日後に再び訪れてくれ」

勇者「九日後ですか?」

白国王「そうだ。その頃には僧侶の死も確認出来ているだろう」

勇者「分かりました。では俺達はこれで」

白国王「おお、そうだ。勇者よ」

勇者「はい?」

白国王「今は黒の国へ調査団の護衛に行っておるゆえ、騎士に会うつもりならば九日以上待つ事になるかもしれんぞ」

勇者「いえ。良いですよ。ただの昔馴染みなだけですから」
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/22(月) 03:14:16.01 ID:Fi8darQ0
魔剣かわいいww
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/22(月) 22:06:54.87 ID:Hmizo2AO
おはよう。
けどまだ眠い。
もう一日寝ようかな……。
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/22(月) 23:34:34.01 ID:Hmizo2AO
剣士「魔物がさらに増えると戦争所ではなくなるかもしれないな」

勇者「魔の国の思い通りって訳か……」

勇者「戦力を分散し、結界の解除も遅れる」

剣士「もしかしたら白国王様の言うように、以降は私達二人で旅をしなければならないかもしれないな」

勇者「覚悟はしておくか……」

勇者「そういえば剣士、お前は騎士に会いたいか?」

剣士「会っておきたいな」

勇者「だよな。だけど毎度不思議なんだけど」

剣士「何がだ?」

勇者「あの騎士が師匠の癖に、どうして剣術の型が違うんだ?」

剣士「それは騎士様が師匠だからだ」

勇者「?」

剣士「弟子は師匠を越えたいと思う。だが騎士様の力にはそう勝つ事が出来ない」

剣士「私には騎士様のような力も勇者様のような魔法もない。後は速さで勝つしかないと思ったんだ」

勇者「成る程な。お前には剣の才能は確かにあった。今や“白の竜巻”と言われるくらいじゃないか」

剣士「私は騎士様に比べるとまだまだだ」

勇者「俺には勝てるとでも?」

剣士「剣だけなら負けないつもりだ」
751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/22(月) 23:42:34.60 ID:Hmizo2AO
剣士「そういえば勇者様、あなたも会いたい人がいるだろう?」

勇者「誰かいたっけ……」

剣士「父上や母上」

勇者「会う気分じゃないな」

剣士「後、女さんだ。魔法師が言ってただろう。ここにいる、と」

勇者「確かに魔法師の手紙に書いてあったな。だけど何で女さんが出てくるんだよ」

剣士「勇者様も彼女と会えば安らぐと思ったのだ。最近は声も聞けてないだろう」

勇者「あのな……いや、そうだな……」

剣士「……やけに素直だな」

勇者「あの人の顔を見れば気分が楽になるかな……」

剣士「私には分からないな」

勇者「きっと楽になるよ。確かに女さんには会いたい」

勇者「九日は暇なんだ。そのくらいは良いだろう?」
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/22(月) 23:59:09.82 ID:Hmizo2AO
──白国営蔵書館

剣士「やはりまずここからだな」

勇者「知識を得るならここに来るはずだ」

剣士「その見当が間違ってなければすぐに見つかるな」

勇者「俺は地下を探してみる。剣士は──」

司書補「あの……」

勇者「?」

司書補「館内は武具の持ち込みは禁止です」

勇者「え? あ、ああ、すみません」

剣士「だがこれは私達の基本装備、言うなれば私服なのだが……」

司書補「では剣のみ預からせて頂きましょう」

勇者「あっ、そうだ。あなた、女と言う人を知ってませんか?」

司書補「女さんですか?」

勇者「はい。髪はこのくらいの長さで、耳から口にかけての装飾品を付けた──」
司書補「知っていますよ」

勇者「後、顔立ちが……え、本当ですか?」

司書補「はい。知ってます」
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 00:13:51.78 ID:l4jmdSUo
続ききてたから読んだら寝るか
754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 13:55:37.94 ID:U48YNvw0
うっかりすると寝てしまうんだな……。
どうしてだろ。
755 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/23(火) 14:26:30.25 ID:zcTILJso
つ ナルコレプシー
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 15:44:09.53 ID:U48YNvw0
俺が睡眠障害のはずがない!
人より多少眠くなりやすいだけだ!
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 15:53:41.61 ID:U48YNvw0
司書補「あなた達は女さんとお知り合いですか?」

勇者「以前少し会った事がある程度ですが」

司書補「えっと、お名前は?」

勇者「勇者です」

剣士「剣士だ」

司書補「勇者!? あの勇者様ですか!?」

勇者「そんな立派な者じゃないですよ……。実際今は特に」

司書補「しかし女さんは凄い方と知り合いなんですね……」

司書補「先日だって公爵様に認められて彼らの研究の援助を受ける事になったそうでして」

剣士「白公爵閣下と言えば、軍事よりも学事に力を入れている事で有名だ」

勇者「そんな方に援助をもらえるなんて……やはり凄い人達だったんだな」

司書補「女さんの速読力には蔵書館に来る人が皆驚いてましたよ。公爵様もその一人かもしれませんね」

司書補「研究云々と言われてもいましたが、私には理解できませんでした」
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 16:05:40.60 ID:U48YNvw0
司書補「それで、勇者様達は女さん達を訪ねに?」

勇者「暫くこの街で待たなければならなくなったので、どうしているのかな、と」

剣士「それに結界について、何か知恵も借りれたらと思ってな」

司書補「そうですか。しかし、いつ帰ってくるか分かりませんよ?」

勇者「どういう事です?」

司書補「女さんも、お連れの男さんも、黒の国の調査団の一員として行かれたんですよ」

勇者「そうでしたか……」

司書補「護衛にあの白蛇隊が付いて行かれたので、必ず生きて帰ってくるとは思いますが」

司書補「調査団が帰還した後、ここへまた来ると良いでしょう。彼女はまだここの本や資料を読み終えていませんから」

剣士「全部読む気なのか?」

司書補「らしいですよ。と言っても、既に公開されている棚は読み終わられていますが」

剣士「私なら一、二階だけでも一年は掛かる……」

司書補「あの人は特別なんですよ。ページを繰るまでの間隔は大体一秒程しかありませんでしたから」

勇者「……ありがとうございます。では、調査団が戻った後にまた来させて頂きます」

司書補「本を読みに来られるのならいつでも来て下さい。その時は武器を預からせて頂きますが」
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 16:16:52.67 ID:U48YNvw0
剣士「あれから一年も経ってないというのに、かなり有名になっているみたいだったな」

勇者「俺達が会った頃は言葉も全く分からなかったのに……今では文字まで読めるみたいだな」

剣士「科学の力、かな?」

勇者「いや、努力の結晶だよ。多分。鍛冶の街では文字が読めなかったのは確かだ」

剣士「成る程」

勇者「結局、待つ事になったな」

剣士「ああ。折角だ。私は装備を調えておこうと思う」

勇者「仕方ない。俺は父さんと母さんに会っておこうか……」

剣士「その気になったか」

勇者「暇なんだよ。泊まるのは宿屋だ」

魔剣〔女二人に囲まれているなら、キミもその方が気が楽だろうな〕

勇者「じゃあ宿屋を探しに行こうか。安い所が良い」

剣士「そうだな。まずは宿だ」

魔剣〔……無視は酷いぞ〕
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 16:37:02.28 ID:U48YNvw0
――崖の街近郊、第一陣営

黒国兵士「ご苦労様であります!」

騎士「良し! 引き続き防護を頼むぞ!」

黒国兵士「はっ!」

学士「防衛線と聞いていましたが、のどかな場所ですね」

薬師「動く死体どころか人っ子一人いないのぅ」

学士「この国は比較的温暖な地域にありますからね。冬なのに鳥が歌ってますよ」

男「南下する程暖かくなる。どうやらこの大陸は北半球に位置するようですね」

薬師「北じゃと? 北は寒いがここは暖かい」

男「南に行くと暖かくなる。それはこの大陸では常識でしょうが……」

男「南に行きすぎると寒くなるんですよ。造船技術が発達すれば分かるでしょう。赤の国より南へ進めば進む程、寒くなるはずです」

学士「そんな事が本当にあるのですか? では南へ進めば寒くなる地では、北に進めば暖かくなるのでしょうか?」

男「そうですね」

薬師「行きもしない場所の事をどうして分かる?」

男「俺らの国では大陸だけでなく、自分の住む星についても学問が進んでいるんです」

男「そしてこの星も、同じようなサイクルで回っていると思うからですね」

学士「あなたの国って凄い所ですね」

男「そうでもありません。一握りの人だけ勝手気ままに突き進む世界ですから」
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 18:34:13.86 ID:U48YNvw0
女「……」

騎士「おや? 君は外に出なくても良いのか?」

女「もう防衛線付近まで来ているんですよね? 外は危ないと考えた方が良いです」

騎士「君も見ただろう? この辺りは見通しが良い」

騎士「遠い所でなければ、私達がすぐに駆けつける事が出来る」

女「あなた達よりも相手が強い場合はどうするのですか?」

騎士「そんな事まで危惧しているのか? 慎重だな」

女「あらゆる可能性を考えた上で行動した方が良いですから」

騎士「私達は君達を護衛する騎士だ。万一相手の力量が上回る事があれば……」

女「どうしますか?」

騎士「ふむ……どうするか……。君達が逃げるくらいの時間はあるだろう」

女「任務のために死を選ぶ気ですか?」

騎士「騎士として死ねるのならば、名誉な事だと思う。勿論、死にたいわけではない」

騎士「君は君の仕事に誇りを持って死ねるか?」

女「はい」

騎士「ならば臆する事はない。信じる道を行っているのだろう?」

女「……」
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/23(火) 18:45:53.24 ID:U48YNvw0
騎士「そう言えば、君達の護衛はどこに行った?」

女「盗賊さんですか? 分かりません。教授の所ではないでしょうか」

騎士「いや、彼の近くにはいなかった」

女「教授は何をしてましたか?」

騎士「すぐそこで他の学者相手に何か教え込んでいたよ」

女「そうですか」

騎士「……いくら腕に自信があると言っても、勝手に行動されては困るな」

女「盗賊さんなら身を隠すのが得意なはずですから大丈夫でしょう」

騎士「どうしてそう言い切れる?」

女「盗賊は捕まるわけにはいきませんから」

騎士「む……あいつ盗賊だったのか? よくそんな危ない奴を……」

女「実際は優しい方ですよ。顔とは違って」

女「それに今は盗賊業は休止中です」

騎士「そうか……。まぁ罪人が死のうが私には関係ないがな」

女「でも私は知り合いが死ぬのは辛いですね」
763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 23:15:10.27 ID:DxTzpAAO
(夕刻)

男「──と言う数式が導き出せるんです」

男「よって太陽の周期を計る事でこの星の自転周期を割り出し」

男「それを月の公転周期と合成し、実際の月の公転周期を割り出すと……」

男「多少計算は面倒ですが月までの距離が導き出せるんです」

薬師「……?」

学士「へぇ、数学がこんな所に役に立つなんて……。ただの数遊びや商人達の損得勘定だけかと思ってましたよ」

男「俺らの世界では、『数学は自然の言語』とまで言われる程重要な位置付けですよ」

学士「ですがこれで解が出るのですか?」

男「下手をすれば平方根の中が大きくなりますからね。その場合は女さんが使ってるようなパソコンが不可欠になります」

男「他にドップラー効果と言うものによって距離も求められますが……」

学士「もう暗くなって来ましたね」

男「ですね」

薬師「少し眠いな」

男「つまらなかったですか?」

薬師「わしには少しばかり難しい話での。もっと若い頃なら頭に入ったろうに」
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 23:33:21.79 ID:DxTzpAAO
女「……」カタ…カタタ…

女「……はぁ」

男「どうした、溜息なんか吐いて」

女「あ、お帰りなさい、教授……と学士さん、薬師さん」

学士「男さんには面白い話を聞かせてもらいましたよ。夕食時には何かお返しの話をしないと」

薬師「本でゆっくり読めればこの古びた頭にも入るやもしれんの」

男「気に入ってもらえて何よりです」

女「やっぱり教授は講師が本職ですね。表情に活気が溢れてます」

男「女さんは元気ないけど?」

女「あー、いえ……もうゾンビの出てくる所なんだと思うと不安でですね……」

男「不安で溜息か……らしくないな」ボソ

男「そういえば盗賊は?」

女「それがさっきから全く見かけないんですよ。教授も見てませんか?」

男「俺は話に夢中だったからな……」

学者「あなた達の護衛なら単独で歩いて行ったのを見たぞ」
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 23:49:22.30 ID:DxTzpAAO
男「どっちへ?」
女「いつですか?」

学者「僕はあなた達じゃないから、一気に答えられないな」

学者「見たのは騎士達が陣営を張ってる最中」

学者「向かったのは森の方向だ」

男「西の方の森か」

学者「ああ、西だ。北じゃない」

男「何でそんな所に……」

女「もう日が暮れようとしてるのに、まだ帰ってきてませんよ」

男「森に行く時、盗賊が何か言ってませんでしたか?」

学者「何かって……例えば何だよ」

男「『俺、無事に帰ってこれたら結婚するんだ』とか」

女「止めてくださいよ。縁起が悪いです」

学者「……は?」

男「じゃあ『ここは俺に任せろ』とかは?」

女「今はそんな切羽詰まった状況でもありませんよ」

男「じゃあ『俺は先に行って──」

女「冗談は止めてください。もっと慎重に事を運び、周囲に気を配るべきです」

学者「何かカリカリしてるが、どうしたんだ?」

男「……さぁ?」
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 00:11:07.22 ID:0Y0rAYAO
現在新しいPCに慣れようとしています。
だから書く前に眠くなるんだ。続きは少し待っててね。
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 02:56:09.75 ID:ncCvCY6o
待ってるぜー
768 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 13:38:59.81 ID:LC1ZCTAo
こういったss数少ないからな・・・
いくらでもまってるよww
769 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 17:47:30.27 ID:PVokCeAo
 
770 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 22:04:13.54 ID:hLOL.ME0
ATOKのインストールを完了!
さぁ、書くぜ!



でも眠いぜ。
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:10:15.89 ID:hLOL.ME0
盗賊「陽が……」

盗賊「……沈んだな」

盗賊「そろそろ帰るか。晩飯の時間だ」

盗賊「……ん?」ピクッ

「……ォ……」

「……ぉぉ……」

「うぉ……ォ……」

「あ……あぅ……」

盗賊「何だ? ……まさか」

「……うぉ……」

「……ヴォアア……」

「ウウォウォ……」

ガサガサ ガサガサ

「ウウォウォ……」

「あぇー」

「うあうぁ……」

盗賊「!」

盗賊「マジで来やがった!?」
772 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 22:20:40.79 ID:1vZrm2.o
わっふるわっふる
773 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:22:01.18 ID:hLOL.ME0
盗賊「おい!」

男「おお、盗賊か。遅かったな」

女「どこへ行ってたんですか?」

騎士「単独行動を取られては調査団メンバーですら命の保証は出来ないぞ。以降気をつけるように」

盗賊「てめぇらゆっくり飯なんて食ってる場合じゃねぇぞ?」

学士「……どういう事ですか?」

盗賊「奴らがこっちに向かってんだ」

女「!」

男「本当か!?」

騎士「どっちからだ? 後どのくらいで着く!?」

盗賊「西の森だ。数は見た限り十二。奴らの足は頗る遅かったから、後四十分で来るだろうな」

騎士「分かった」

騎士「聞いたか!? 西にある森を警戒しろ! 君は陣営内、君は防衛戦にいる騎士に連絡せよ!」
774 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:35:06.98 ID:hLOL.ME0
学士「さて、私達も行きましょう」

騎士「いや、君達は待っていてもらう」

学士「どうしてですか!? それでは調査出来ませんよ!」

騎士「私達は君達の護衛だ。君達に死なれては困る」

騎士「それにまだ現地ではない。調査は柊の町に着いてからだ」

学者「はっ。敵はたったの十二匹。こっちは騎士が三十五人に魔法使いが僕を含めて四人いる」

学者「楽勝だ」

騎士「相手は今までにない敵だ。甘く見てはいけない」

薬師「そうじゃの。わしは騎士の嬢ちゃんの賛成だの」

学士「うーん……薬師さんまでそういうなら、仕方ないですね」

学者「そう言っておいて、結局は呆気なかったりするんだ」

騎士「そうだとしても、相手は未知の敵なんだ。君達はここに残れ」

男「あー、その事なんですが……」
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:43:27.78 ID:hLOL.ME0
騎士「何だ?」

男「出来れば俺と他二、三人の同行を許していただけませんか?」

騎士「出来ない」

男「訳くらい聞いて下さい。でなければ、許可なく行くことになってしまいます」

騎士「……つまり、端から行く気しかなんだな?」

男「話が早くて助かります」

騎士「はぁ……訳を聞こう」

男「今後の調査の為に“動く死者”を捕獲しようと思います」

男「上手くいけば、柊の町に着いたと同時に異変が解決するでしょう」

学者「そんな上手い話があるはずがないがな」

学士「何か策があるのですか?」

騎士「捕らえて何をするつもりだ?」

男「捕獲し、解剖してみたいと思います」

男「それで何が見つかるかは、やってみないと分からないでしょうが」

騎士「では、どうやって捕らえる気だ? 武術か魔法の心得でもあるのか?」

男「あるように見えますか? そんなもの全くありません」
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 22:57:15.82 ID:hLOL.ME0
男「ただ、捕獲の際にこれを使うだけです」ゴソゴソ

騎士「……何だそれは?」

薬師「筒のように見えるが……」

学者「何かの魔法道具か?」

学士「もしかしてその中に吸い込むとかですか?」

男「……魔法から離れて下さい」

男「これはランチャーです」

学者「発射装置だと? 何が発射されるんだ? 氷か?」

男「……だから魔法から離れて下さい」

男「発射されるのは網です。発射された網は標的に絡みつきます」

騎士「それだけか? しかしよくそんな筒の中に人一人分を捕獲できる網を入れられたな」

学士「強度は大丈夫ですか?」

薬師「網を張っておる間に襲われたらどうする」

男「射程距離は十分にありますから、襲われる前に撃つことが出来ます」

男「それに中の網は俺の国から持ってきたもので、カーボンナノチューブで出来ています。絶対に切れません」

騎士「カーボンナノチューブだと?」

男「鋼鉄の二十倍は強度がありますから、安心して下さい」
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 23:02:47.98 ID:hLOL.ME0
盗賊「説明を止めはしなかったがな……」

男「何か言いたげだな」

盗賊「あいつらの目を見ろ。まるで理解しちゃいねぇ」

騎士「……?」

薬師「??」

学士「……」ポカーン

男「でも説明しないと、俺が何をするのか分からないままだぞ?」

盗賊「どのみち分からねぇんだから関係ねぇよ」

学者「つまり、強い網で捕まえるって事だな? 分かった」

男「……まぁ、そういう事にしておきましょう。間違ってませんし」

盗賊「やれやれ……。ところで、男」

男「?」

盗賊「女はどこへ行った?」

男「女さんならそこに……さっきまで。どこ行ったんだろうか」
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/28(日) 23:08:14.63 ID:hLOL.ME0
だめだきょうはもうねむいきょうはこれでおわりにするおまえらもはやくねようぜおやすみ。
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 23:44:50.02 ID:ZynQWQSO
>>1激しく乙!
続きを楽しみにしてるぜ!
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 00:32:13.40 ID:ZRQJM.ko
もう少し一緒に起きていようじゃないか
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 22:38:06.02 ID:eDsb1EI0
こんなのを楽しみにしてくれるお前ら優しすぎだろ。
もうお前らと結婚しても良い!

……あくまで比喩だからな!
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 22:44:22.84 ID:eDsb1EI0
男「……女さん、テントの中にいたのか」

女「……」

男「どうしたんだ? 前にも言ってるが、女さんらしくないぞ?」

女「気にしないで下さい」

男「そうか……。さて、今からゾンビの捕獲に行ってくるけど」

女「行ってらっしゃい。私は待ってます」

男「普段なら率先してついてくるはずだが?」

女「気分じゃないんです」

男「じゃあ解剖は一緒にやるよな?」

女「いえ、そちらでやって下さい」

女「それと解剖する時は外か他のテントでやって下さい。私はここにいますので」

男「……どういう事だ?」

女「気分じゃないだけです。そう言いましたよね?」

男「ゾンビだぞ? 見たくないのか?」

女「……気分じゃないんです。放っておいて下さい」
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 23:03:41.35 ID:eDsb1EI0
騎士「死者が来たぞー!」

男「!」
女「!」ピクッ

男「じゃあ、俺は行くけどさ……気が向いたら来てくれ」サッ

女「分かりました」

女「……向くはずないけど」


盗賊「女は?」

男「来ないだって」

盗賊「本当か?」

男「ああ。しかも解剖も目につかない所でして欲しいらしい」

盗賊「どうしちまったんだ……?」

男「まぁそれはともかく……狩りの時間だ」カチャ

盗賊「そうだ。馬鹿げた考えかもしれねぇが……」

男「?」

盗賊「奴らは西の森から来た。崖の街からじゃなく」

男「何が言いたい?」

盗賊「奴ら、僅かでも知能があるんじゃねぇかな?」

男「……成る程。わざわざ迂回して仕掛けてきたと思ってるんだな?」

盗賊「よく俺の考えが分かったな」

男「面白い考えだ。死者が知能を持っている、か」

男「だが西側が制圧されて、奴らがこっちに漏れてきただけかもしれない」

盗賊「それはそれで良くない事だな」
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 23:14:44.95 ID:ZRQJM.ko
久しぶりに更新中に気づけたな
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 23:16:55.54 ID:eDsb1EI0
学士「何のんびりしてるんですか?」

学者「騎士らは皆言ってしまったぞ。早くしなければ獲物が狩られる」

男「西の森まで距離は結構ある。多少の遅れは大丈夫だ」

盗賊「つってもそれほどの距離じゃねぇ。もっと速く走らねぇと本当に先越されちまうぞ!」

男「……そうだな」

男「念の為に確認しておくぞ」

男「学士さんも学者さんも盗賊も、網を引っ張るだけで良いからな」

学士「分かってます」

盗賊「しっかり絡まったのを確認したら引く、だな」

学者「補助魔法くらい使わせろ……」

男「俺がまだ魔法を完全に信頼してませんから駄目です。ほぼ完全な状態で捕獲しないと」

学者「……ふん」

盗賊「おい! 騎士団と死者が衝突したぜ!?」

男「じゃあそろそろ……俺らはこの辺りから狙おうか」
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 23:26:40.08 ID:eDsb1EI0
騎士「かかれー!」

全騎士兵「うおぉぉぉおっ!!」

「ウォウォ」

「うあうー……」

騎士兵A「ハァッ!」ザシュッ

「グウォウォォ……」

騎士兵B「やぁっ!」ザシュッ

「うあうー……」

騎士兵C「トゥアッ!」ザシュッ

「ぐあー……?」

「ウウォウォ」

「アァ……」

「う……アァ……」

騎士兵D「た、隊長! 攻撃が効きません!」

騎士兵E「おかしい……斬っているのに……! 斬っているのにダメージがない……っ!」

騎士「死人に痛みがあるはずなかろう! 斬り落とせ!!」
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/29(月) 23:30:19.02 ID:eQvtLzko
やめたいんならやめちまえよ
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 23:33:37.85 ID:eDsb1EI0
騎士兵G「もう一度土に還りやがれぇ!」ザスッ

「う……あ……」

「……」

騎士兵G「やった……やったぞぉ!!」

騎士兵G「隊長! 首を落としたら動かなくなりました!」

騎士「よし! みんな、首を狙え! 頭を体から斬り離すんだ!」

騎士兵G「よし、もう一匹俺が――」

「……」グラァ

騎士兵G「!?」
騎士「!!」

「……」ズ…ズ…

騎士兵G「馬鹿な……首を落としたというのに……」

騎士兵G「どうして体だけで動け――」

「……」シュッ ガリッ

騎士兵G「ぐあぁぁぁぁああっ!!」

騎士「騎士兵G! ……くそっ」
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 23:43:40.86 ID:eDsb1EI0
騎士兵D「斬っても駄目、首を落としても駄目……」

騎士A兵「心臓を刺しても駄目だった……どうすりゃ良いんだ……」

騎士兵H「て、撤退すべきです隊長!」

騎士「何を弱気な事を言っている」

騎士「首を落としても心臓を刺しても駄目ならばっ」ブォンッ

「ウウォ……」

騎士「ハァーッ!」ブォンッ ブォンッ ブォンッ

「ウッ……ウォウッ……ォッ……」

「……」ピクッピクッ

騎士「切り刻めば良い!」

騎士兵F「そんな無茶な……」ボソッ

騎士「さぁ、みんな頑張れ! 奴らを私達の陣営には一歩もいれさせは――」

「きゃあああああぁぁぁっ!!」

騎士「!?」
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/29(月) 23:54:30.37 ID:eDsb1EI0
学者「この悲鳴は!?」

盗賊「これは……」

男「女さんの声だ! 急いで戻るぞ!」

盗賊「おう!」

学者「捕獲するんじゃなかったのか?」

学士「それなら後でも出来ますから、仲間の方が大切なんです……よね?」

男「ああ。所詮、早く済ませれば良いと思ってただけですから」

学者「そうか。では僅かながら補助魔法をかけてやろう」

学者「加速法。……ほんの僅かだけ足が速くなる」

盗賊「なぜそれをさっき使わなかった……」

男「というか本当に微妙だな……って、何だと!?」

盗賊「死人が陣営にいやがる……二十強くらいか?」

学士「魔法使いの学者達が被害を止めているようですね」

男「女さんがいたテントに誰もいないじゃないか!」
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/30(火) 01:35:51.57 ID:NapB8SM0
「ウォォ……」

女「やだ……来ないで……っ」

「ウォウォ……」

女「あ……あ……」

女「こ、こっちに来たらこれで撃ちますよ! それとも電撃が――あっ!」

カランカラン…

女「フォースランスが……っ」

「あうあー」

女「ひっ……! 嫌……嫌……っ!」

「ウウォ……うべっ!」バスッ

女「あ……ああ……?」

「ウォ……ウウォォ……」ジタバタ

女「助かっ……た……?」

女「……ふー」

男「無事か!?」

女「き、教授!? あ……いや、これは……えっと……」

女「ほ、捕獲成功ですね」
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/30(火) 01:47:22.65 ID:NapB8SM0
男「そんな事より怪我はないか?」

男「引っ掻かれてないか? 咬まれては?」

女「大丈夫……です」

男「そうか、良かった。でも何で反撃を……ん?」

女「あ……」

男「この光線銃……女さんのだな。落とす程動揺してたのか?」

女「い、いえそれは……っ」

男「……怖かったのか?」

女「……」

男「良いんじゃないか、怖くても。そういうの一つや二つはないと化け物だと思う」

男「あっ、別に怖かったんじゃなかったのなら――」

女「……すみません、黙ってて。ど、どうせ言うのなら、もっと早く、言うべきでした」

女「とり、あえずそこのゾンビ、片付けてくれ、ませんか? 見てるだけでも寒気がするんですっ」

「ウォォ……ううー……」ジタバタ

男「……分かった」

盗賊「こいつどこに運べば良いんだ?」

男「そうだな……隣の――」

女「もっと離れてして下さい!」

男「森との間の草原にしよう。先に運んでおいてくれ。俺は道具を持って行く」

盗賊「分かった。おら、行くぞ」

学士「分かりましたよ」

学者「何で僕が指図されなくてはならないんだ……」
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/30(火) 01:53:07.34 ID:NapB8SM0
女「……」

男「……落ち着いたか?」

女「まだあまり……。行かないんですか、教授?」

男「いや、ついでに聞いておこうと思ってね」

女「何をですか?」

男「ゾンビのようなモンスターが怖かったんだな、ってのを確認しておこうと」

女「実は今の所怖いのはゾンビだけなんです」

男「それ限定なのか?」

女「はい」

女「幽霊や妖怪なら許容できます」

男「どうしてだ?」

女「それは……後で教授に時間が出来たらゆっくり話しましょう」

女「みんな待たせてるでしょう? 早く解剖に行ってきて下さい」

男「……後でしっかり聞くからな」

男「後、外はまだゾンビがいるから、ここでじっとしてるように」

女「言われなくてもしてますよ」
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/30(火) 02:03:04.74 ID:NapB8SM0
盗賊「おい、遅ぇぞ」

男「すまん。色々と物色してたら遅くなった」

学士「この先どうするんです?」

「うー……あー……」ジタバタ

男「この杭で四肢と首を地面に固定します」

盗賊「その杭はどこから持ってきたんだ? てめぇらの荷物じゃなさそうだが」

男「後に陣営のテントで使う杭だよ。ちょっとの間借りる事にした」

学者「その杭で手と足と首を刺せば良いんだな?」

男「いや、それでは傷が付いてしまいます」

学士「ではどうするんです? 手枷足枷はなさそうですし」

男「その絡まっている網を枷の代わりにします」

男「慎重に行わなければこちらが傷つきますし、最悪逃げられます」

男「そこで、学者さんに少し魔法の力を借りたいのですが」

学者「ん、出来る事ならやってやるぞ」
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/30(火) 02:05:41.08 ID:NapB8SM0
>>787
俺は楽しく書いてるし、これを少なくとも一人は読んでくれているみたいだから、やめる理由はどこにもないと思いますが。


さて、今日はこの辺りにして寝る事にします。
珍しく遅くまで起きてた。
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 02:07:42.91 ID:VtuVy/6o
>>795
またのー
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 02:23:47.34 ID:3Kwwzm.o
>>795
更新キテタ!乙。
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 02:45:33.84 ID:FyWso5Ao
1人よりは多いみたいだぞ
乙、俺も寝るか
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 02:51:21.06 ID:n/l4oV2P
乙ー
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 04:23:16.40 ID:B/iwv6SO
イメージできないから
参考画像ください
できれば三次でおねがいします
ゾンビの
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 11:33:40.20 ID:o8RFbMUo
楽しく読ませてもらってますよ
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 00:22:15.08 ID:mIXaFik0
なんだこんなにいたのか。どこに隠れてたんだ。

>>800
イメージか……深く決めてないな。
画像探してもしっくりくるものがなかったけど……。
とりあえず典型的なゾンビ。
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 00:31:44.87 ID:mIXaFik0
「あうー……ウォウォ……」ジタバタ

男「……よし、固定完了だな。学者さん、ありがとうございました」

学者「この程度の氷結魔法なら飯抜きだ」

男「飯抜き?」

学者「妙な所で知識がある癖に教養がないんだな」

学士「飯抜きでも出来るくらい簡単、と言う事ですよ」

男「成る程。俺の国では『朝飯前』と言ってますね」

盗賊「なんで朝飯なんだ? 昼でも夜でもなく」

男「朝ご飯を抜けば一日の力が入らないからだよ」

男「これは科学的にも証明されてて――」

盗賊「ストップ! 今は他にやる事があるだろうが」

男「……そうだった」

学士「解剖の心得は?」

男「多少あります。盗賊、ナイフを貸してくれ」

盗賊「てめぇの事だから何か奇抜なものを取り出すのかと思ったぜ」

男「俺らの世界でも切開は刃物が主流だ」
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 00:49:08.92 ID:mIXaFik0
男「でも切開の前にやる事が一つある」

学士「何ですか?」

男「こいつの服を脱がすことです」

「ううう……アァ……」

盗賊「あんまり触りたくねぇんだが」

学者「同感だ」

学士「ボロ布みたいになってますし、別に良いんじゃないですか?」

男「……仕方ない。俺だけでやります」

ビリッ ビリリリッ

男「やっぱりナイフがあると裂きやすいな」

盗賊「よくそんなもの触れるぜ……」

男「解剖するならどのみち触らなくちゃならないからな……ん?」

男「あー……この中にネクロフィリアはいますか?」

学者「なんだそれは?」

男「死体性愛者」

学士「いるわけないじゃないですか。何でそんなのを聞くんですか?」

男「このゾンビ、元は女性です」

盗賊「ほう。そんな貧相な胸して女だったのか」
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 00:56:26.48 ID:mIXaFik0
男「とにかく変わった嗜好を持った人がここにいなくて安心しました」

男「解剖中に欲情して“彼女”を犯されては邪魔で仕方ありませんから」

学者「……彼女、ね」

「うあうー……ア゛ァ……」

学士「私なら今の“彼女”と付き合うことはしませんね」

学者「同感だ。生前ならどうだか知らないが」

男「では解剖を始めますが、良いですか?」

盗賊「許可なんて取らずにさっさと進めやがれ」

男「いや、こいつの全裸を見て何か思う所があるかもしれないだろ?」

盗賊「冗談を言ってる場合じゃねぇよ」

学者「……いや」

男「何かありました?」

学者「僕は触れたくないんだが……」

男「俺が代わりに動かしましょう」

学者「背中を見えるようにしてくれ」
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 01:10:14.94 ID:mIXaFik0
男「背中ですか……ああ、成る程。分かりました」

学士「何が分かったんですか?」

男「これでしょう? ……っと」グイッ

学者「……思った通りだ」

学士「背中一面の魔法陣……!」

学者「少しそのままにしてみてくれないか。地面に複写する」

男「早くして下さいよ」

学者「……」ガリガリ…

盗賊「もしかして、解剖する前に解決じゃねぇのか?」

男「そうは言い切れないと思うぞ」

盗賊「どうしてだ?」

男「騎士団が戦ってる所を見ただろ。背中を切ってもやつらは動いてた」

学士「陣詠唱はそう簡単に途切れるものじゃありませんよ」

学士「例え傷がいったところで、離さなければ意味がありません」

男「あれ……そうなんですか?」
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 01:18:55.45 ID:mIXaFik0
学者「……これで良し」ガリ…

学者「下ろして良いぞ」

男「重かったです」

学者「僕はこの魔法陣を解読する。学士を借りるぞ」

学士「私ですか?」

学者「ああ。これは見たことがない陣詠唱だ。古代の陣詠唱が混入されているかもしれん」

学者「古代魔法ならば僕よりあなたの方が詳しいだろう?」

学士「それは光栄ですね」

男「では俺は解剖に専念しましょう」

盗賊「俺は?」

男「触りたくないんだろ? 今は何もしなくても良い」

盗賊「……待機しておくぜ」

男「必要になったら無理にでも何かさせるけどな」
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 01:28:32.87 ID:mIXaFik0
(約一時間後)

ワー ワー!

「死者を殺してやったぞ!」

「二度と蘇るなー!」

ワー! ワー!

女「……」

男「……女さん?」

女「何ですか? 解剖は終わったんですか?」

男「さっき終わったところだ。時が経った死体は血が殆ど出ないから解剖しやすかったよ」

女「そうですか。収穫はありましたか?」

男「まぁ、あったな」

女「良かったですね」

男「今学者さんと学士さんが手がかりの一つに苦労してるよ」

女「魔法関係ですか?」

男「魔法陣だった。つまり俺らの専門外だ」

女「そうですか」

男「魔法陣、見に行かないのか? もうゾンビはみんな倒されたぞ?」

女「……まだ外は怖いです」
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 01:55:23.81 ID:mIXaFik0
男「そろそろ聞いて良いかな? 今は俺も時間の余裕があるから」

女「何をですか?」

男「どうして女さんはゾンビだけ怖いのか」

女「……分かりました」

女「六年程前の事です。知ってますか? 私の大学でその頃、ある事件があったんですよ」

男「六年前……?」

男「ああ、確かガス爆発の事故で百五十四人の死者が出たんだっけ。覚えてるよ」

女「あんな昔の事をよく覚えてましたね」

男「女さんの過去を軽くさらった時にも見てるからな」

女「まるでストーカーですね。……まぁ良いです」

女「あの事故が起こった時、私は在学中でした」

男「知ってる」

女「あの事故で友達も亡くしました」

男「……」

女「でもこれは知らないでしょう。あの“事故”以前に百五十人程が死んでいたんです」

女「あの爆発は、死者を増やさないための処置だったんですよ」
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 02:06:47.48 ID:mIXaFik0
男「どういう事だ?」

女「……当時」

女「生命医療工学科の研究室ではある研究がされていたんです」

男「それは女さんの学科……じゃないな」

女「はい。ですが同じ大学です。全学科が一区域に纏められてましたから」

男「それで、その研究とは?」

女「人体の延命です。死を遅らせて手術などを成功させる確率を上げる為でした」

男「……」

女「研究チームが開発していたのは、寄生虫でした」

女「人体に寄生させ、寄生虫に人体を保持させようとしたんです」

男「寄生虫……もしかして……」

女「そうです。その処置は、実際保持だけでは済みませんでした」

女「寄生虫は暴走し、始めはモルモットの身体を使い、そして人体をも乗っ取りました」

男「それでその被害を防ぐ為に虫諸共、寄生された人らも爆破したと」

女「寄生された人の様子はゾンビそのものでした。あれはトラウマですよ」
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 02:18:10.31 ID:mIXaFik0
女「……つまらない理由ですよね」

男「いや」

女「昔は本物のゾンビじゃなかったのに」

男「ゾンビパウダーを服用してもゾンビにはなるが本物のゾンビじゃない」

女「……」

男「さっきも言ったが、苦手なものくらいあっても良いと思う」

男「トラウマはそれがちょっと酷くなっただけだ」

女「……でも、情けないですよね」

男「?」

女「ゾンビの調査に来たのにゾンビが怖くて何も出来ないんですよ?」

男「調査に呼ばれたのは学者だ。技術者じゃない」

女「でも白公さんに呼ばれたのには私も入ってますし」

男「それならこれを調べてくれないか?」スッ

女「……何ですか、それ。見たところ……カプセルですね」
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 02:27:19.08 ID:mIXaFik0
男「そうだ。カプセルだ」

男「直径約二センチメートル、幅約五センチメートルの至極小さなカプセルだ」

女「咳止めや解熱剤ではないようですね。飲む込むには大きすぎます。何なんですか?」

男「解剖の結果発見した手掛かりだ」

男「これがゾンビの腹の中に入っていた」

女「お腹ですか?」

男「正確には臍から股間へ引いた線分の中点辺りだ」

女「言い方が回りくどいです」

男「とにかく、こういうのは技術者の方が上手だろ?」

女「……分かりました。解体してみましょう」

男「道具は揃ってるか?」

女「そうですね。盗賊さんを呼んできてもらえますか? カプセルの中に寄生虫が入っていた場合に備えて」

男「分かった。それから注意して扱えよ」

女「そのくらい基本です。ですが、念の為になぜか聞いておきましょう」

男「そのカプセルの外殻は、多分鉄より柔らかいかもしれない」

女「了解です」
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 02:29:13.07 ID:mIXaFik0
そろそろ寝ることにしよう。おやすみ。
起きてちゃ駄目だ……起きてちゃ駄目だ……起きてちゃ駄目だ……
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 02:39:44.05 ID:FC1OOTMo
寝ちゃ駄目だ……寝ちゃ駄目だ……寝ちゃ駄目だ……

乙ww
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 10:22:16.81 ID:TeqnpHUo
臍←これなんて読むんだ?
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 10:25:37.80 ID:9Y5UhgQP
へそ
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 10:33:25.79 ID:TeqnpHUo
なるほど、ありがとう
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/03/31(水) 22:47:30.06 ID:mIXaFik0
おはよう、諸君。
でも今日は更新しないんだ。まだ眠いから。
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 23:07:24.99 ID:avONW3go
後1時間で日付かわるから、そしたら更新してくれるということか
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/01(木) 00:54:20.38 ID:wXEn8A.o
子宮の中って事かな
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/01(木) 02:25:08.23 ID:eyDR0tAo
そして今日はエイプリルフール。
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/01(木) 22:41:43.79 ID:ZlW/7r20
今日は更新する。
俺に暦は関係ない。エイプリルフール? なにそれ。
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/01(木) 23:14:19.35 ID:ZlW/7r20
あー……なんか用事入った。
日付が変わってからになりそうだから先に寝ててくれ。
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/02(金) 02:17:07.45 ID:U6xBNsIo
なんという不定期更新
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 04:22:10.28 ID:.A3vXU.0
(翌日)
――雲母村、第二陣営

学士「着きましたね、雲母村に」

学者「もう暗いな。ここでは寝るだけになりそうだ」

学士「良いじゃないですか。寝るよりここを離れたいですからね」

男「いやー、馬車でずっと座ってるのも楽じゃないですね」

学士「ああ、男さん。お疲れ様です」

学者「それで、そっちは何か分かったか?」

男「はい。女さんが首尾良く解体してくれたお陰です。そちらは?」

学者「粗方の検討はついている」

学士「確信は出来ませんがね」

学者「あの魔法陣は恐らく――」

男「出来ればこちらの馬車で話しませんか? 女さんは外に顔を見せようともしなんですよ」

学士「どうしてです?」

男「動く死人が怖いんですよ。この辺りはもうやつらの領域ですから」

学者「これだから女は……」

学士「そう言えば道中現れた死者は簡単に片付けられましたね」

男「俺が騎士さんに言ったんですよ。『胴を臍の辺りから切り落とせ』って。背中を切り落とすのは大変でしょうから」

学士「あの騎士隊長さんの剣なら胴なんて簡単に斬る事が出来るでしょうね……。では意見交換と行きましょうか」

男「そうですね」
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 04:35:26.63 ID:.A3vXU.0
学士「あれ? この馬車には騎士の人がいないのですね」

盗賊「騎士隊の連中なら見張りかテントで寝てるかだ」

学士「そうですか。学者全員の護衛ですからね」

学者「で、そっちは何をしてるんだ?」

女「私ですか?」カタカタ…

学者「あなたしかいないだろ」

女「私はですね、カプセルの中身を解析しているんですよ」カタカタカタ

学者「ほう」

男「ではどちらから言いますか?」

女「私達は後の方が良いです」

男「どうしてだ?」

女「魔法陣も何かの鍵になるかもしれないからですよ」

男「そうだな。では頼めますか?」

学士「勿論です」

学者「良いだろう」
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 04:45:27.21 ID:.A3vXU.0
学者「動く死者の背に刻まれた魔法陣」

学者「これはやはり、陣詠唱の一つだと考えられる」

学者「だがその魔法陣の種類を僕は一度も見たことがなかった」

学士「私もあのような魔法陣は一度も目にした事がありません」

盗賊「何だそりゃ。結局分からなかったんじゃねぇか」

学者「話を最後まで聞け」

学士「ですが、所々で似通った魔法陣を私は目にした事があります」

学者「僕が知らないはずだよ。古代の魔法陣だ」

学士「その魔法陣は、記録では混沌期初期から戦乱期前期に掛けて使われていたものです」

学士「その古代の魔法では最低二つの陣詠唱と一つの詩編詠唱が必要でした」

男「その魔法を使うと何が出来るんですか?」

学士「大したことは出来ません」

盗賊「どういう事だ?」

学者「今は転移魔法があるから、それに比べれば大した事はないという事だ」

学士「遠距離通信です」
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 04:58:31.69 ID:.A3vXU.0
男「遠距離通信?」

学士「そうです」

学士「一つの魔法陣を用意し、それとは別の所にもう一つ魔法陣を用意します」

学士「そうすると無限詩編を唱えながら魔法陣に手を当てて念ずると、もう片方の魔法陣で無限詩編を唱え手を当てている人に、遠くにいながら言葉を伝える事が出来たそうです」

女「電話ですね」

男「にしてはえらく面倒な電話だな」

学者「その魔法が廃れたのはひとえに不便な事」

学者「そして魔法使いしか使えない事だ」

男「それと今回のが似ていると言うんですね?」

学士「はい。あなた達にも分かるように、紙に書いてきてみました」パサッ

学士「例えば大きく描かれたこの月の文様、そして直線を一切使っていないところ。そして、こことここ。こことここなんかもそうですね」

男「んー……素人が見ても違ってしか見えませんね……。とにかく似ているんですね?」

女「私には似ているという意見が分かる気がします。その程度ですが」

学士「まぁ……結論から言えば、これも恐らく何らかの通信手段なのではないかと思っています」
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 05:09:05.24 ID:.A3vXU.0
男「成る程……確かに有り得る話ですね」

学者「何か確信があるのか?」

男「それ程じゃないんですけどね」

男「道中の戦闘の時、俺と盗賊はその様子を見ていたんですよ」

男「騎士隊の人らは、俺らの言った通り、胴を斬るように戦っていました」

学士「ふむ」

盗賊「ああ。胴の所で斬られた死者は、全く動かなくなったぜ」

男「もしかしたら魔法陣の端が斬れたのかもしれませんが……」

男「俺らの調べているカプセルが無意味なものとは考えにくいと思いませんか?」

学士「そうですね」

学者「わざわざ入れておく必要があるはずだ」

男「もしカプセルが死者を動かしているのなら、斬られた時点で下半身だけ動いているはず」

男「もし魔法陣が死者を動かしているのなら、斬られた時点で上半身だけ動いているはず」

男「だけど実際はそうでなく、両方停止しました。ですが魔法陣が通信を担うものだと考えれば合点のいく単純な解答を出せます」

男「では、俺らの話に移って良いですか?」

学士「はい」
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/02(金) 05:31:26.07 ID:l0sBv6oo
おぉ、更新来てたのか
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 20:34:17.95 ID:.A3vXU.0
女「魔法陣が通信装置だとすると、下腹部に埋め込まれたカプセルは一種のコンピュータだと考えられます」

学士「コンピュータですか?」

女「私の持っているこれ。これもコンピュータです。プログラムに沿ってありとあらゆる計算が出来ます」

学者「計算が出来ると動くのか? そんな訳あるか」

男「計算と言っても、数字を足したり引いたりするだけじゃないんです」

女「例えばこの画面に……こうやって線を一つ引いてみます」

女「一見ただの線ですが、コンピュータの中では0と1の二進法による数列で処理されているんですよ」

学者「えっと……つまり何が言いたい?」

男「このカプセルには――仮に黒幕を“送信者”として――」

男「送信者の命令を死者の体に実行させるプログラムが入ってるかもしれません」

女「簡単に言えば、死者を操作する装置です」

学者「つまり、死者達は操られていると?」

学士「まさか! そんな魔法が存在するはずありません!」

女「確かに魔法だけでは存在することはないかもしれません。その辺りは私もよく分からないのですが」

女「ですが、私達の考えが正しければ、これは魔法だけの問題ではありません」

男「コンピュータは俺らの分野、科学の産物ですからね」
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 20:51:31.50 ID:.A3vXU.0
学士「では、私達の知らないはずの数字で成り立つ世界観で出来てると言う事ですか?」

男「そういう事ですね」

学者「証拠はあるのか?」

男「不十分ではありますが。俺は第一陣営出発前に、騎士さんに一つお願いしていたんですよ」

男「下腹部に埋め込まれているはずのカプセルを収集してきて欲しい、と」

女「集まったサンプルは全部で二十八個。全て解体しました」

女「そしてその全てに、これが入っていたんです」

学者「……小さいな」

学士「何ですか?」

女「恐らく、私達がマイクロチップと呼ぶものです」

学者「マイクロ――」

男「マイクロチップとは、中に情報を書く事が出来るものです」

男「大きさから想像つかないほどの情報を中に入れられることが出来ます」

学士「想像つかない程とは?」

男「このくらいの大きさだと……白国営蔵書館の一、二階部分は入ると思います」

女「残念ながら中のプログラムは私のコンピュータでは見ることが出来ませんでしたが、信号は読み取ることが出来ました」

女「断言は出来ません。しかし八十七パーセントの確率でこれはマイクロチップです」
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 21:14:35.18 ID:.A3vXU.0
女「それと驚いたのはこれです」

女「これは何か分かりますよね? これも小さいですが」

学者「魔石だな」

女「種類は?」

学者「オーガンだな?」

女「ちなみに二十八個ともオーガンが入っていました。他の魔石はありませんでした」

学士「どうしてオーガンだけなんですか?」

女「それはまだ分かりません。が、見当はついています」

女「恐らく、オーガンが最もエネルギー効率が良いのです」

男「つまりカプセルの動力に最適だったという事です」

学者「成る程。……動力だと?」

男「はい。ものを動かすには必ずエネルギーが必要になります」

女「例えば私のコンピュータ。これを六時間動かすには三時間継続的にダイナモを回す必要があります」

男「コンピュータを動かすには電気エネルギーが必要となります」

男「ダイナモを使う場合、運動エネルギーから熱エネルギーへ、そして電気エネルギーに変換されます」

男「その時、加えた運動エネルギーと発生した電気エネルギーは等価ではありません」」
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/02(金) 21:30:19.05 ID:.A3vXU.0
男「魔石を使う場合、魔力エネルギーから直接電気エネルギーに変換されます」

男「この時、両者の値は等価になります」

女「エネルギー効率ほぼ百パーセント。危険でも困難でもない上にエコロジーですね」

男「これでカプセルが動作する環境が整っていると証明された訳です」

女「そしてカプセル内部にあるこの細い線ですね」

学士「それは?」

女「これは人体に電気信号を送るプラグですよ」

女「送信されてきた命令をこれで神経に流し、死者を動かしているのです」

男「恐らく、送信者がカプセルを作動させると線が神経まで延びるようになっているのだと思います」

学者「ふむ……理解は上手く出来なかったが、それで死者を操っているというわけだな?」

女「そうなります」

学士「では騎士隊にこの考えを報告しますか?」

男「その必要はないでしょう。騎士隊には『黒幕がいて、そいつが死者を操っている』とだえ伝えれば済みます」

学者「そう言えばさっきから黙っているが、そこの護衛は理解できているのか?」

盗賊「端から話からねぇと理解してっから黙ってんだよ」
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/03(土) 02:30:17.35 ID:/IDEtlMo
追いついた
これは近年まれに見る面白いファンタジー

だがなんか引っかかるんだよなぁ
俺に学がないだけかもしれんが
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/03(土) 17:42:00.42 ID:Hzm0.b60
>>835
面白いと言ってくれるとやる気がでるぜ!(眠気は減らない)

俺は行き当たりばったりで書いてるだけだからな。
その引っかかってる所を言ってくれたら、二度とそうならないよう勉強するよ。
物理法則とか間違ってるかもしれんしな。
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/03(土) 17:48:56.36 ID:/IDEtlMo
物理法則とかじゃないんだよ、その辺俺よくわからんし

これって何かの続きもの?
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/03(土) 18:26:12.64 ID:Hzm0.b60
続きものでもあるけど、それはあまり関係ないんだ。
これはこれで一つの話。完全独立してるやつ。
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/03(土) 18:34:57.04 ID:/IDEtlMo
なんていうのかな、男と女が元々いた世界の全容が掴めないんだ
ベースは現実世界っぽいけど、ワープ船やレーザー銃?を作れる程度には進んでいるようだし
舞台がファンタジー世界である以上さほど重要ではないんだろうけどどうしても気になってな

まあそれはそれとしても前作らしきものを見たくなってきたぞ俺
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/03(土) 22:03:43.66 ID:Hzm0.b60
前作らしきものではワープもレーザー銃もない。
もっと現代の現実世界に似た世界観だったな。設定的にこの話の十数年前。
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/03(土) 22:38:10.37 ID:/IDEtlMo
ここまで来ると引っかかってたものとかもうどうでもよくなってきた
ただただ前作が読みたい、タイトル教えてくれ
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/04(日) 02:43:09.89 ID:cpgMZGc0
雲母村の談合から次へ進む為の繋ぎのシーンが思い浮かばない……。
これは今日は寝て、夢のお告げを貰うしかない!
というわけで、今はとりあえず寝ることにする。

>>841
教えるのは自慢してるみたいで少しばかり気が引けるんだが……
読みたいと言ってくれてるんだから恥は捨てないとな。
まぁ、とろとろとやってもう二ヶ月程経つから良いか。
>>253でも感付かれてるように、
男「これは……」 女「いったい……!」
ってのをのろのろとやってた。
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/04(日) 03:03:39.68 ID:0xR4rdEo
>>842
マジか
マジだ

いつか読もうと思ってお気に入りに突っ込んだやつじゃねーかwwwwwwwwwwwwww
次の投下までに読んでおこう
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/06(火) 14:58:34.58 ID:P14rc.SO
追い付いた続き楽しみにしてる頑張れ!
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 01:57:37.88 ID:/4d14Cw0
五回寝てもお告げが来ない……。
仕方ない。適当に繋げるか。
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/07(水) 02:02:36.08 ID:anHxiVIo
むしろよく五回も寝られるな
847 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 02:09:27.56 ID:/4d14Cw0
騎士「おや、何だ。こんな所で何をしている?」

学士「これは騎士隊長殿ではありませんか。陣営の見張りをなさっていたのでは?」

騎士「交代の時間なんだ。それよりも……」

男「俺らは意見交換をしていたんです」

騎士「意見交換?」

男「崖の街での発見についてですよ。あなたにもカプセルを集めて貰っていたでしょう?」

騎士「ああ、あれか。それで、何か分かったのか?」

学者「裏で操っている奴がいる、と言う事だ」

男「背中に描かれた魔法陣と下腹部に埋められたカプセルが死人を操るのに重要な役割をしていたと考えています」

騎士「……ふむ。と言う事は、その黒幕を倒せばこの件は解決するんだな?」

学者「簡単に言うが、そう簡単ではないかもしれない」

学者「死人とは言え人間を操っている奴だ。相当な魔法使いに違いない」

学士「そうですね……。もしかしたら“大魔法使い”レベルかもしれませんね」

騎士「そんな事は後で考えろ。対峙した時に分かる」
848 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 02:18:17.47 ID:/4d14Cw0
男「……“大魔法使い”って?」

女「超越した魔力と魔法技術を持つ魔法使いの称号ですよ」

女「例えば蘇生魔法などは大魔法使いレベルの魔法使いしか使えない……と本に……」

男「……あれ、俺ら蘇生魔法見た事あるよな?」

女「木炭村で、ですね。戦士さんが使ってました」

男「と言う事は」

女「いえ、現在いる大魔法使いは錬金術師と言う名前でした」

男「……?」

盗賊「一つ気になる事があるんだが」

学士「何でしょう?」

盗賊「黒幕がいたとして、どうやって見つけるんだ?」

騎士「それは柊の町に行けばだな」

学者「遠隔操作ならずっと中心にいるとは考えにくい」

盗賊「同意見だ」
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 02:25:56.75 ID:/4d14Cw0
騎士「……ふむ」

学士「そうですね。どうしましょうか……」

騎士「……報告を受けている」

盗賊「?」

騎士「死者に殺された兵士の遺体を回収しようとしたらなくなっていた、と」

騎士「もしかしたら一度、どこかに運んでいるのではないだろうか」

学士「その現場を押さえて、追跡すれば黒幕の場所に戻る。そう言う事ですね?」

騎士「ああ。背の魔法陣と腹のカプセルを付けるには一度触れなければならないはずだ」

盗賊「良い案だ。だが問題がある」

騎士「分かっている。死人を出すわけにはいかない」

学者「新しい死体は見つからないのか?」

騎士「この辺りはもう壊滅している。いるのは動物か、動物の死骸か、動く死体かだ」

学者「そうか」

女「……あの」
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 02:31:44.64 ID:/4d14Cw0
騎士「何だ?」

女「良い案があります」

学士「本当ですか?」

騎士「言ってみろ」

女「魔力の流れを読むんです」

騎士「魔力の流れ?」

女「学者さん、出来ますか?」

学者「いいや」

学者「そもそも魔力の流れというのは、魔法で視覚化された時か、大魔法使いが無駄に魔力放出をした時くらいにしか感じられない」

女「そうですか。ではこちらでやってみます」

学士「出来るんですか!?」

盗賊「そんな事まで出来るのか!?」

学者「まさか。魔法使いに出来ない事を一般人が出来るわけが……」

男「……あれか?」

女「はい、これです」
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 02:47:45.55 ID:/4d14Cw0
騎士「……?」
学士「……?」
学者「……?」
盗賊「……はぁ。で、その四角いのは何だ?」

女「魔力の流れを測定する装置です」

学士「それで魔力を?」

女「随分改良されてコンパクト化したものですが、十分に使えるでしょう」

女「理論は簡単なんです。どのような力もベクトルは存在する、と言う事です」

女「方位磁石などは磁力のベクトルを利用したものですね。それの魔力版と考えてもらえれば――」

盗賊「とにかくそれで魔力の流れってのを測れるんだな?」

女「――はい。適当な場所で測っても方向はブレるだけでしたが」

女「ですが今回は大丈夫でしょう。魔法陣付近で測れば、どの方向から魔力が来ているかが分かります」

女「広範囲のものを操作しているうちで、一つ効果がなくなればそこだけ魔力を送らないようにする、なんて事は本を読む限り、限りなく難しい事です。そうですよね?」

学者「ああ。そればかりは大魔法使いでも無理だろう」

女「ですから、例え写しの魔法陣でも魔力は流れてくるはずなんです」

男「そうは限らないんじゃないかな? それが無理だったら?」

女「背の皮を剥いできて下さい。そのくらいなら我慢できます」

騎士「剥ぐ方の身にもなってくれ……」
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 02:58:22.60 ID:/4d14Cw0
女「学士さん、魔法陣の写しを貸してくれますか?」

学士「良いですよ。これですね?」

女「はい。ありがとうございます」

女「この紙を魔法陣を上にして敷き……」

女「電源を付けた装置をその上に置きます」

学者「どうだ? 分かったか?」

女「五分間待って下さい。ベクトルに揺らぎがありますから、平均を取る必要があるんです」

盗賊「これもてめぇらが作ったのか?」

男「いや、これは前に話した俺らの恩師、技師さんが作ったものだ」

男「元の装置は十年以上前に完成させたらしい」

盗賊「確かてめぇらの世界は魔法がねぇんじゃなかったか?」

男「それでもこの装置は存在する。技師さんは、俺らの世界にも魔力はあるが魔法を使うにまでは至らないと結論づけたよ」

男「それで俺らはこの世界に来た」

女「……出ました」
853 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 03:04:32.52 ID:/4d14Cw0
(五分後)

女「……二回目も同じ方向を向きましたね」

学士「つまり魔力はあっちから流れているという事ですか」

学者「本当に分かるんだな……。これは本当に魔力の流れか?」

女「そのはずです」

騎士「ふむ。この矢印の方向はまさに柊の町がある方向じゃないか」

女「つまりこのまま進んでも問題はないと言う事ですね」

女「一つあるとすればゾンビの声がよく聞こえるようになってきている事です」

男「それは仕方ないだろ」

騎士「では予定通り進んで良いんだな?」

女「はい」

騎士「そうか。さて――」

騎士「そろそろ食事にするが、それが終わったらすぐに寝るんだぞ? 予定通りなら明日は日が出る前にここを発つ」
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/07(水) 03:12:32.56 ID:/4d14Cw0
さて、六回目の睡眠で夢のお告げが来るかな?
おやすみー。
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/07(水) 07:21:55.98 ID:pdmyUwQo
おっつー
856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/07(水) 21:39:28.21 ID:6RxDt3go
更新されてるのを見ると嬉しいもんだな
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/10(土) 02:25:49.43 ID:VBLevAk0
あー、最近少し忙しい。
寝る時間を減らさないと更新出来ないじゃないか!
ちなみにこの土、日は絶対更新出来ないからな。お出かけするんだ。

さてさて、このスレも残り150過ぎたね。
858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/10(土) 04:25:05.47 ID:VBLevAk0
(二日後)
――柊の町近郊

女「……」

男「ああ、まだこんな所にいたのか。ゾンビが見えない時くらいは馬車から出たらどうだ?」

女「何を言ってるんですか、教授。もし現れたら私達襲われてしまいますよ?」

男「その時は騎士隊の人らが何とかしてくれるさ」

男「それに俺らには盗賊がいるだろ?」

女「そうですが……」

男「せめて陣営内のテントに移動しよう。でないと俺も動きにくい」

男「チームだからな」

女「……」

男「安心しろ。テントはもうしっかり張られている」

女「分かりました。移動しましょう」
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/10(土) 04:40:02.18 ID:VBLevAk0
学士「漸く来ましたか」

盗賊「てめぇがいねぇからなかなか始まらなかったんだ」

女「……何がですか?」

男「送信者の探索だよ。魔力の流れに変わりはないか?」

女「はい。さっきも見ていましたが、町の方向を向いていました」

学士「正確な位置は分かりますか?」

女「正確には分かりませんが……」

女「町の地図と見比べたところ、中央広場から少し南にある白羽の教会が怪しいかと思います」

学者「成る程。教会ならどこも地下がある。隠れるにはぴったりの場所だ」

女「それで、これは何の集まりですか?」

男「明日からの調査の相談だよ。後は騎士さんが来る事になっている」

男「護衛には後二、三人の騎士の人を付けて貰うつもりだ」
860 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/10(土) 04:50:57.00 ID:s11Sa5Io
>>857
無理はするなよー
861 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 04:39:09.50 ID:wPXVK2.0
ひとまずage
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/18(日) 20:13:02.46 ID:zApHBqU0
まだ…なのか…
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/18(日) 21:46:59.54 ID:akTuR760
まだ……なんだ……
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/19(月) 23:06:57.46 ID:VezVbESO
まだなのか?
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/19(月) 23:09:55.15 ID:l5MhDL6o
テスト
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:01:10.57 ID:qpfmPUU0
すまん。まだなんだ。




まだ、続くんだ。
867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:08:08.35 ID:qpfmPUU0
騎士「遅れてすまない。隊員の一人が風邪を引いてな」

男「大丈夫なんですか?」

騎士「問題ない。彼の見張りを私で人員を埋めただけだ」

学士「お忙しいのでしたら、私達が後で決定をお伝えしますが」

騎士「それは困るな。私達は護衛を任されている身だ」

騎士「出来る限りこちらが有利に動ける状態にしたい」

盗賊「それは本当に“護衛”としての意見か?」

騎士「当たり前だ。効率良く君達を守るようにするのが我々の役目だ」

学者「そのくらいで良いだろ? 早く作戦を練るべきだ」

男「そうですね」

男「では今俺達が知っている事を再度、若しくは今騎士さんに話しましょう」

騎士「うむ。ありがたい」
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:16:30.53 ID:qpfmPUU0
騎士「……成る程。概要は分かった」

騎士「つまり君達は、この異変の裏には死人を操る者がいて」

騎士「そいつはこの柊の町にある白羽の教会に潜伏していると睨んでいる訳か」

男「はい」

騎士「……ふむ。それで、現在はどのようにしようとしている?」

学士「とは?」

騎士「教会へ行くまでの道は私達の護衛で十分に事足りるだろう」

騎士「だが君達の推測が正しければ、その教会はまさに敵陣と言う訳だ」

騎士「そこでどのように調査するのか、と言う事を聞きたいのだ」

学者「調査の事なら、隅から隅まで調べあげるつもりだ」

騎士「そのくらいは分かっている」

学士「……ああ。もしかして私達が個々で好き勝手に調査を始めるのではないかと懸念しているのではないですか?」

騎士「うむ」

学士「それなら心配はありません。私達はちゃんと一つにまとまって行動するつもりです」

学士「その方があなた方も私達を守り易いだろうと思いましたから」

騎士「ふむ。気配り、感謝する」
869 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:23:04.71 ID:qpfmPUU0
学士「……」
男「……」
学者「……」

騎士「……以上か?」

男「なんか、こう。あっさりと決まってしまいましたね」

学者「こういうのはどうだ? “送信者”に会ったらどうするか」

学士「その場で決めるしかないでしょう。相手の人格が分かりませんし」

男「俺もその方が良いと思います。ここに集まっている人達は優秀ですから」

男「恐らく黒幕に会っても、個々で判断出来るでしょうし、上手くいけば今回の異変がどのように行われているかが分かるかもしれません」

騎士「私達はそいつを討伐すれば良いんだな?」

学士「まだ定かではありませんし……。ですが本当に黒幕がいて、教会にいる人こそが本当にそれならば、そうするのも良いと思いますよ」

騎士「まずは是非を確かめろと言う事か」

学士「そうですね」

騎士「それが一番面倒なんだ……」

盗賊「気になってたんだが」

男「何だ?」

盗賊「女はこの調査について行くのか?」

女「……」
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/20(火) 23:51:04.03 ID:qpfmPUU0
学士「あー……」

学者「……」

騎士「……どうする?」

男「女さんがいてくれた方が嬉しいんだけど……」

女「行きません」

男「だよな……」

騎士「明日は他の学者も調査に出掛けるはずだ」

騎士「彼らはまだ君達と違い目的は持ってないようだがな」

騎士「だが、彼らにも護衛はつく。陣営に隊員を残しては行くが、一人二人くらいだろう」

女「だ、大丈夫です。私、武器くらい持ってますから」

盗賊「……はぁ。仕方ねぇ。俺が残る」

男「ん……それは助かるな。女さんだけじゃ心許ない」

女「どういう意味ですか」

男「ゾンビ相手じゃまともに動けさえ出来ないだろう?」

女「そ……んな事はありません」

男「俺はしっかり分かってるんだから強がる必要ないだろ」
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/21(水) 01:01:53.44 ID:f4fFlVQ0
騎士「では調査に行く者は今日早く寝るように」

学士「一つ聞いても良いですか?」

騎士「何だ」

学士「結局は三人で行く事になりましたが、たったそれだけの人数に騎士を三人も裂いてもよろしいのですか?」

騎士「君達が、君達の思う核心へ行こうとしているのだ。三人でも足りないくらいだ」

学士「……ありがとうございます」

騎士「仕事だからな。では、また明日の朝」

学者「では僕達は明日に備え、言われた通り寝る事にしよう」

学士「そうですね。では、また明日」

男「分かりました。上手くいくと良いですね」

学士「全くです」

男「……」

男「……さて」

盗賊「ん?」

男「俺達はどうする?」

女「寝ましょう。少しでも眠気がある内は寝ていたいです」
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/21(水) 01:13:05.28 ID:f4fFlVQ0
(深夜)

女「……」ムクリ

女「……」

男「くー……くぅ……」スヤスヤ

女「……」

盗賊「すぅ……すぅ……」スヤスヤ

女「……」スクッ

女「……」ガサゴソ…

女「……?」

女「……」ガサゴソ…

ガサッ

女「!?」

男「……シュバルツ……ルト半け……での均衡じょ……」スヤスヤ

女「……」

女「……」ガサゴソ

女「……」
873 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/21(水) 01:15:00.82 ID:f4fFlVQ0
鼻水が止まらないし喉も痛い。風邪気味かな……。
おっと、今回はここまで。いつもながら少ないな。
ちなみに空いてた日に書き溜めをしていた! ……とかはないからな。ごめん。

では、おやすみ。
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/21(水) 11:10:44.79 ID:01j.Am6o
作品放置作者蒸発じゃないみたいで安心した
続くんならいいんだ、楽しみにしてる
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/23(金) 07:29:16.12 ID:uzQ9lcDO
前作一気に読んできた。

部長娘=女でいいのよね?
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 17:38:22.08 ID:tlrXKLg0
ここ最近忙しい。
遅い更新がさらに遅くなるな。書けない日もかなり多そうだ。

>>874
一応完結まではやろうと思ってる。
かなりの日数が必要ですね、この調子だと。

>>875
前作と今作においての詳細な設定関係についてはノーコメント。
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 17:56:32.05 ID:tlrXKLg0
――柊の町、白羽の教会

女「……」

女「……ふむ」

女「いるのは分かっている。出てきてはどうだ?」

シーン…

女「それとも寝ているのか?」

女「黒騎士よ」

黒騎士「……何者だ」

女「起きているのなら早く出てきたらどうだ。私が分からないのか?」

黒騎士「……?」

黒騎士「……ああ、この魔力……お前か」

女「ようやく分かってくれたか」

黒騎士「お前はどうしてがここにいると分かった?」

女「配置は全て把握しておる。お主はこの黒の国だ」

女「それにこれは、お主にしか使えんものだろう?」
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 18:07:07.54 ID:tlrXKLg0
女「……“生体操法”」

黒騎士「その装置、どこで拾った」

女「自身の人形の死を感知出来ない。不便だな」

黒騎士「どういう意味だ」

女「……今、すぐそこまで白の国の調査団が来ている」

女「その護衛として、白蛇騎士団もいる」

黒騎士「何だと?」

女「お主は大きく動きすぎたのだ」

黒騎士「……だが、目的は達成しているではないか。お前と違ってな」

女「っ」

黒騎士「図星だな? 魔王様から聞いているぞ?」

女「……」

黒騎士「まぁ良い。今は別の任務にあたっているようだしな」
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 18:13:26.83 ID:tlrXKLg0
黒騎士「それで、話はそれだけか?」

女「ああ。注意しておけ」

女「明日は騎士が三人。内に団長がいる」

女「そして学者が三人来る。内魔法使いが一人と、この世界にはない武器を持つ男が一人いる」

黒騎士「何であろうと敵ではない。その程度の人数ならな」

女「腕に自信はあるようだが、甘く見ない方が良い」

黒騎士「大陸の人間の力なんて知れている」

女「……」

黒騎士「話は以上だな?」

女「ああ」

黒騎士「変えるか? それとも酒でも飲んでいくか?」

黒騎士「この国は、人は不味いが酒は美味いぞ」

女「遠慮しておく」

黒騎士「そうか」
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/24(土) 18:21:26.62 ID:tlrXKLg0
黒騎士「……ああ、そうだ」

女「?」

黒騎士「先日、魔王様が訪れてな」

黒騎士「勇者が砂の国で魔剣を得たと聞いた」

女「ほう。そのような所で」

黒騎士「魔王様も流石に焦っておられたよ」

女「しかし私達の目的は――」

黒騎士「ああ。だが、少し変わった。お前は聞いてないのか?」

女「何をだ?」

黒騎士「やはり聞いてなかったか」

女「?」

黒騎士「魔剣を手に入れた勇者はもはや危険分子だ。会ったら殺せ」

黒騎士「これが新たな命令だ」

女「……以前までは勇者は殺すなと言ってたはずでは」

黒騎士「魔王様も焦っておられるのだ」

女「……分かった。ではこれで失礼する」

黒騎士「また来た時には良い酒を先に用意しておこう」

女「期待しておこうか」
881 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [saga]:2010/04/25(日) 04:00:19.35 ID:KAdqmdI0
――柊の町近郊、本陣営付近

女「……」ザッ…ザッ…

騎士K「……ん?」

騎士K「何者だ!」

女「!?」ビクッ

騎士K「って、人間か。死人じゃ……なさそうだな」

女「……」

騎士K「よく見ると、見た顔だな。調査員の一人か?」

女「はい」

騎士K「こんな時間に何をしていたんだ?」

女「目が覚めてしまいまして。散歩に行ってたんですよ」

騎士K「困るな、単独で動かれると。特に暗いと敵の察知も遅れるからな」

騎士K「それに俺も職務怠慢として隊長に怒られてしまう」

女「はは……」

騎士K「とりにかく、少々邪魔だろうが、我々の護衛なしに出歩かないで欲しかったな」

女「……あー」
882 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [saga]:2010/04/25(日) 04:09:48.03 ID:KAdqmdI0
女「騎士さん、今起きてないでしょう?」

騎士K「確かに就寝中だが。それがどうした?」

女「女性同士じゃないと困るんですよね……」

騎士K「どういう事だ?」

女「まさか……人が用を足しているのに横に立っているつもりですか?」

騎士K「な、な……っ!」

女「ふふ、冗談ですよ」

騎士K「……だがその時は隊長に起きてもらうしかないだろう」

女「そうなりますか。騎士さんも大変ですね」

女「ちなみに漏れそうな場合はわざわざ起きるまで待たなくてはいけませんか?」

騎士K「……あまり困らせないでくれ」

女「ふふ、すみません」クスクス

女「では、お休みなさい。見張り番、頑張ってくださいね」

騎士K「もう勝手に出歩かないように」
883 :管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch [saga]:2010/04/25(日) 04:34:46.12 ID:KAdqmdI0
今回は眠くなったので寝る。
睡眠時間はどうしても削れないな。
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/28(水) 23:48:54.90 ID:A/LsdX60
ああ、今更なんだけど

騎士K→騎士兵K

と脳内修正しておいて下さい。
885 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/28(水) 23:55:25.42 ID:A/LsdX60
(翌朝)

騎士「良し! みんな体調は万全か?」

学者「無論だ」

学士「念の為に薬師さんから薬もいくつか貰っていますけどね。とても調子が良いです」

男「調査は学者にとって楽しみですから、不調でも絶好調と言いますよ」

騎士「ふむ。良し」

騎士「では、これから君達を護衛する者を簡潔に紹介しておく。まずは私だ」

騎士「そして右にいるのが騎士兵A」

騎士兵A「……」

騎士「左にいるのが騎士兵Bだ」

騎士兵B「……」

騎士「……発言を認める」

騎士兵A「よろしくお願いします!」
騎士兵B「よろしくお願いします!」

騎士「とまぁ、二人とも融通の利かない奴だが、腕は確かだ。私が保証する」
886 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/29(木) 01:24:54.28 ID:5qUqpps0
騎士「所で、本当についてこなくても良いのか?」

女「はい。出来ればここでゆっくりとしていたいので」

騎士「……」

女「大丈夫ですよ」

女「あー、いや……むしろそちらが大丈夫じゃないんですよね。気をつけて下さい」

騎士「死人の鎮め方を知った今となっては大丈夫だ」

女「私は同行しませんが、サポートにまわります」

騎士「どういう事だ?」

女「教授、周波数は分かってますね?」

男「ああ」

女「現在、私と教授は半径五キロメートル圏内なら会話が出来るようにしてあります」

女「ちなみにお急ぎでしょうから、詳細は残念ながら省きます」

男「フィールドワーク中はデータ解析を同時進行でしづらいですからね。俺が情報を女さんに伝えて、こちらで解析して貰う事にしました」

男「それ程のものがあれば、の話ですが」

女「つまり、私は不要になる可能性も大きいんですがね」
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/04/29(木) 01:33:08.11 ID:5qUqpps0
学士「つまり、離れてはいても共に調査を進めるという事ですね?」

女「はい」

騎士「それで君は……」

盗賊「見ての通り、女の護衛だ」

騎士「そうか」

盗賊「俺は一人しかいねぇ。男の命はてめぇに預けたぜ」

騎士「君こそ国の大事な客人を死なすんじゃないぞ」

男「では、そろそろ行きましょうか」

学士「ですね」

学者「ああ」

騎士「では出発しよう」

盗賊「男」

男「ん?」

盗賊「危なくなったら逃げるんだぞ」

男「言われなくてもそうするつもりだ。お前は、弱ってる女さんに手を出すんじゃないぞ?」

盗賊「ああ、その手があったか」

男「おい」

盗賊「冗談だ。じゃあ、行ってこい」

男「ああ、行ってくるよ」
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/02(日) 04:02:52.29 ID:2XcbMdYo
>>1000行く前に容量がオーバーしそう…
889 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/02(日) 11:01:42.95 ID:pChv2wE0
容量に制限なんてあったのか!?
慌てて次スレ作ったよ……。

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1272765618/

GWは少々加速! ……の予定。
890 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/02(日) 11:09:05.33 ID:2XcbMdYo
乙!
500KBは2ちゃんだけだっけ?
891 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/02(日) 13:31:38.69 ID:pWTviGso
パー速は2chと違って容量落ちはなかったはず…
ちなみに2chは512kbだったか514kbね

まあ、数日で埋まりそうにないなら移転した都度を下記のスレに報告して向こうでやればよろし

過去ログ化依頼スレッド【旧HTML化】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1264679279/
892 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/02(日) 13:33:47.23 ID:pWTviGso
>>891訂正
2ch全般が容量同じかわからないので…

○ちなみにVIPは〜
×ちなみに2chは〜
893 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:19:56.60 ID:fmOUsCs0
んー、どうも忙しいな。
あれ? 今って連休だよね?


連休なんだよね?

ksk
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:29:00.03 ID:fmOUsCs0
――柊の町、白羽の教会

男「実は教会に来るのは初めてなんですよね」

学士「そうなのですか? 珍しい人もいたものですね」

男「いやー、周りの建物が石造りなのに、教会だけ木造りなんですね」

学者「白の街のにある教会もそうだろ?」

男「いや、だから行った事がないんですって」

学士「他二教の教会では石造りが主流なんですが」

学士「白羽教会の教会だけは木造りなんです」

学士「というのも、昔から『教会は聖木であるケヤキでしか建ててはいけない』という決まりがあるんですよ」

男「と言う事は、これ全部ケヤキですか」

学士「そうですね」

騎士「話は済んだか? 内部では出来るだけ静かにしてもらいたいのだが」

学士「分かりました」

男「あー、それなら少し待って下さい」
895 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:40:52.49 ID:fmOUsCs0
騎士「どうした?」

男「念の為、予め女さん達と繋いでおきます」

騎士「……?」

騎士「まぁ……早く終わらせろ」

男「すみません」

男「あーあー、マイクテスト、マイクテスト。女さん聞こえるか? どうぞ」

女『少しノイ……ザッ……ズが入りますが、問題はあ……ザザッ……ません。どうぞ』

男「これから教会内部に入るが、トランシーバーからは常にこっちの音が取れるようにしておく。どうぞ」

女『了解です……ザザッ……ザッ」

男「出来るだけ静かに行動したい。そっちが喋って良い時は、こっちが合図をした時のみにしてもらいたい。どうぞ」

女『合図は何……ザッ……ですか? ザザッ……うぞ』

男「そうだな……。普通に『喋って良し』とか『女さん、意見はあるか?』とか言うから。どうぞー」

女『了解です。どうぞ……ザザザッ』

男「では、これから中に入る。以降はそっちの通話スイッチを必要以上に押さないように。以上」
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 01:53:44.18 ID:fmOUsCs0
男「準備完了です。入っても良いですよ」

騎士「では――」

学士「ちょっと待って下さい。少し男さんに質問があるんですが」

騎士「……許そう」

学士「先程、それから女さんの声が聞こえてきましたが……」

男「会話が出来る状態にあると言っておいたでしょう?」

学士「成る程。ですが、さっきの話を聞いてる限りではこちらの話は向こうに筒抜けですよね。戻ってから報告出来るのに、そうする必要はあるのですか?」

男「理由は二つありますね」

男「一つは手間を省く事。向こうが同じ内容を同時進行で聞いていれば、帰ってすぐにでも結果の論議を始める事が出来ます」

男「もう一つは調査の為。もしかしたら聞き取れない音があるかもしれません。ですがその音は一度電子機器を通すだけで僅かに聞こえるようになったりもします」

男「そうでなくとも、向こうでは女さんがコンピュータを準備しているので、聞き取れない音なども完全解析する事が可能です」

学士「……いまいち理解できない言葉もありましたが、大体理解出来ました」

騎士「もう良いか?」

学士「はい」

騎士「では、これから先は気を付けて行動するように。それこそ一歩一歩慎重にだ」

騎士「行くぞ」

ギ……ギギギギィー……
897 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 02:06:32.13 ID:fmOUsCs0
学者「……外見はさることながら、内部も酷いな」

学士「この荒れよう唐すると、異変後に誰か来ているのは明確ですね」

男「これが三ヶ月分の埃か。大した量じゃないんだな」

学者「は?」
学士「え?」

男「……え?」

騎士「しかし埃というのはいい着眼点だな。もしかしたら三ヶ月分の埃ではないかもしれない」

騎士「これを見てみるんだ」

学者「……足跡だな」

騎士「そうだ。しかも新しいと見える。ほんのつい最近だろう」

男「と言う事は、何者かが潜伏している可能性も高くなりましたね」

騎士「そうだな」

学士「しかし……珍しい靴跡ですね」

学士「いえ、よく見ると二種類ありますね。片方は鎧用のブーツ。こちらはあちこちにありますが」

学士「これは……なんでしょう。見た事がありません。新しい型でしょうか」

男「どれですか? ……あれ、これはスニーカーですね」
898 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/04(火) 02:12:05.79 ID:fmOUsCs0
学者「何だ、スニーカーとは?」

男「靴の種類ですよ。動きやすいような設計が施されています」

男「俺の履いているのもスニーカーですよ。でもこれとは靴跡が違うみたいですね」

学士「それはやはり新しい型とかなんですか?」

男「あー……これは俺達の世界、もとい国で普及されてるものです」

男「女さんもこっちに来る際にスニーカーで来ていたはずですよ」

騎士「では彼女がここに来たと考えるべきだな」

学者「いや、それはないな」

騎士「どうしてだ?」

学者「ここまで来れるのならば、わざわざ残っている必要はない」

男「そうですね。女さんの可能性は消えます」

騎士「……ああ、そうか」

学士「とにかく、この場所に異変後、少なくとも二人の者が来ていると仮定出来ましたね」
899 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/04(火) 11:35:10.85 ID:0HWyAcwo
おぉ更新きてる
900 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/05(水) 00:42:16.96 ID:TjV5fPE0
ksk

おかしい。あまり加速更新出来てない。
901 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/05(水) 00:52:31.53 ID:TjV5fPE0
学者「おい、こっちを見ろ」

騎士「何か見つけたのか?」

男「……祭壇下の地下か。いかにも怪しいですね」

学士「古くからある教会では地下は設置されていますね。これもその部類のようです」

学士「昔は大陸の国同士で戦争をしていましたから」

男「でも統一期で大陸は統一されたのではないんですか?」

学士「今は統一期でもなく、一つの連合国家でもありません」

学士「つまり、統一期を過ぎると大陸はまた分裂していたのです」

男「ああ、成る程」

学者「ここから先は気を付けた方が良い。死人の臭いが下から漂ってきてるようだ」

騎士「良かったな。調査が早く終わりそうだぞ」

学士「早く終わるのは良いのですが、私達はもう少し楽しみたかったですね」

男「学士さん、それは不謹慎じゃないですか?」
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/05(水) 02:08:41.85 ID:xE2F4oSO
そーとー面白いなww
903 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/05(水) 02:36:43.56 ID:TjV5fPE0
「ウウォウォ……」

「うぼぁぁ……」

騎士兵A「ふんっ!」ズバッ

騎士兵B「はぁっ」ザシュッ

「ぐぁぁ……」

「あうぅー……」

騎士「くそっ! キリがないな」ズシャァッ

学士「頑張って下さい。地下室の入り口は見えていますよ」

学者「他人事だな。火炎壁!」ゴオゥッ

「うあぁぁぁ……」

男「この長い通路も戦争の為ですか」

学士「多少の時間稼ぎにはなりますからね。……何やってるんですか?」

男「死人を操っているのが電波なら……」カチッ カチャカチャ…

男「これで処理出来るはずです。皆さん、五秒以内に退避して下さい」ポイッ

学者「は?」
騎士「何?」

ビリリリリリッ バババババッ!
   バリバリバリバリッ! ゴゴゴゴゴゴッ!
904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/05(水) 02:51:11.24 ID:CpEHOUAO
支援

失礼だが>>1はツンドラ狼のひと?
905 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/05(水) 02:51:16.64 ID:TjV5fPE0
騎士「な、何だ今のは……」

学者「雷の魔法……でも使ったのか……?」

騎士兵A「危なかった……」

騎士兵B「痛かった……」

学士「凄いですね……。一掃しましたよ」

男「最大出力でやると充電がほぼ切れるからやりたくはなかったんですけどね……」

学者「何をしたんだ? さっき投げた棒きれは魔法道具か?」

男「フォースランスの放電モードです。科学の力ですよ」

騎士「と、とにかく先に行くぞ! また沸くかもしれん」

学士「その時はまた男さんが一掃してくれるんじゃないですか?」

男「あぁ、あれは一度きりです」

学者「魔力切れか……」

男「電力切れです」
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/05(水) 02:55:38.29 ID:TjV5fPE0
>>904
残念だが違うんだぜ。
というかそんな有名所なはずがない。

では、かなり休憩をとります。
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/05(水) 03:19:25.18 ID:89U359Ao
続きのんびり待ってる
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/11(火) 09:14:09.78 ID:EQK0AmM0
5日も休憩とったね、>>1
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/11(火) 21:30:56.58 ID:woTPiyo0
>>908
五日? 何かの間違いだろ。まだ九十時間寝てないぜ?
つーか体感的に一日も休憩してないんだが。

でも日付が五日経ってるってうるさいから少し書くか。
gnsk
910 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/11(火) 22:04:40.97 ID:woTPiyo0
「ほう。一撃であの数を黙らせるとは。大陸の人間も案外やるな」

「だがあれ程派手な技だ。魔力も切れただろう」

男「電力だって……」ボソッ

騎士「何者だ!」

黒騎士「俺の名は黒騎士。魔の国の騎士だ」

黒騎士「お前達が調査団か? そしてそこの甲冑を着た物騒なのが護衛の白蛇だな」

騎士「その通りだが……」

男「そっちも物騒で真っ黒な甲冑を着てるのに」ボソッ

黒騎士「そうか……」

学士「どうやらあなたが黒幕のようですが」

学者「このカプセルに見覚えはあるだろう」

黒騎士「何の事を言っているんだ?」

騎士「貴様! そんな事を言える立場ではないだろう!」

黒騎士「……そうだな」

黒騎士「大陸の者は馬鹿だ。身を引けば生き長らえていたものをっ!」チャキッ

騎士「っ!」カチャッ
911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/11(火) 22:18:32.37 ID:woTPiyo0
黒騎士「……そうだ。殺り合う前に聞いておこう」

騎士「?」

黒騎士「お前達の調査ではどこまで分かっている?」

学士「このカプセルはあなたの物、という事ですね」

黒騎士「それだけか?」

学者「これで死者を操っていた事だ」

黒騎士「それだけか?」

男「カプセルは言わば受信機。恐らく、今もあなたは死者に命令を下しているでしょうね」

男「指揮出来る範囲は限られているはずです。何の特徴のないこの街を選んだ理由……」

男「この黒の国を徐々に進行して行く為と考えるのが妥当ですね」

黒騎士「……」

男「つまり最終目標は黒の街を落とす事。そうである事を気取られない為には最も遠い所が良いでしょう」

男「よって、この“死者を操るカプセル”を使える範囲は、ここから黒の街まで」

男「即ち、半径約五十五へールと行った所でしょう」

学士「そんな話私達は聞いていませんよ?」

男「今考えました」
912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/11(火) 22:42:08.55 ID:woTPiyo0
黒騎士「……ふははは」

黒騎士「はははははっ!」

学士「!?」
騎士「……」グッ
男「……」

黒騎士「大陸を見くびっていたようだ!」

黒騎士「まさか我らが亜法を見破られるとは! はははっ!」

学士「……亜法?」

学者「亜法とは何だ?」

黒騎士「知りたいか? 流石は学者と言ったところか」

黒騎士「だが教える義理などないな」

男「……大体想像はつきました」

黒騎士「!?」

学士「本当ですか!?」

学者「良し、ならば後は証明するだけだ」

黒騎士「ハッタリだ……! お前達の知っている事から分かるはずなど……っ!」

男「確かに理解するには不十分ですが、推測するのには十分でしたね」

黒騎士「くっ……まぁ良い。その情報はすぐに消える」

黒騎士「お前達はここで死者となるのだからな!」ザッ
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/12(水) 00:55:11.54 ID:eCQXYUSO
句読点ってやっぱつけるもんなのか?
ウザったいんだよね。
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/12(水) 04:26:11.54 ID:1600hxYo
待ってた!
無理せず続けてくれ!
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/14(金) 18:00:01.42 ID:oHfxQHYo
>>913
ゆとり
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/17(月) 10:52:34.02 ID:AnNY6ADO
がんばれ
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/17(月) 15:18:44.93 ID:MLarHYAO
連休明けてからかなりつらい。
実家に置いてきたはずの睡魔が、帰省時に憑いてきたみたいだ。
現在専らコアラ並の生活を送っていて書く暇がないorz
俺はこれから書かずにまた寝る。おやすみ!

>>913
お前も句点使ってるよな。
918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/20(木) 10:57:04.59 ID:UHilVIs0
今日は何日フッフゥ〜♪
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/20(木) 10:58:17.44 ID:ALJr/j6o
VIP落ちてて暇な日〜♪



(T_T)シクシク
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/20(木) 13:32:03.23 ID:eLnA.8Y0
今日はVIP落ちてるのか。
じゃあ少し書くから、僅かな暇潰し程度に読んでくれ。
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/20(木) 13:41:38.16 ID:eLnA.8Y0
ガキィンッ!

騎士「……貴様の相手は私達だ!」

黒騎士「お前らに俺を止められるか?」

騎士「何?」

黒騎士「雷撃!」

騎士「!?」

ドゴゴゴゴゴッ

黒騎士「……良く避けたな。剣だけの奴にしてはやるようだな」

騎士「……」

学者「あいつ、魔法も使えるのか。しかもかなりのレベルだ」

男「凄いんですか?」

学者「大陸では、剣と魔法の両方に長けた者は勇者しかいない」

学士「騎士さんもこれは驚いているでしょうね……」
922 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/20(木) 13:59:30.51 ID:eLnA.8Y0
騎士兵A「大丈夫ですか、隊長!」

騎士「あ……ああ……」

騎士「……」

黒騎士「どうした? 怖じ気づいたのか?」

騎士「……いいや、少し驚いただけだ。貴様、魔法も使えるのだな」

黒騎士「魔法が使えない連中がいるのは大陸だけだ」

騎士「何?」

黒騎士「気を散らせている場合ではないぞ。火炎壁!」ゴゥッ

学士「……まずいですね。ここまで範囲が広いと、私達も巻き添いですよ?」

男「にしては冷静ですね」

学士「あなたもですけどね」

学者「大丈夫だ。範囲は広いがスピードは遅い」

学者「今の狙いは隊長だ。そこで火力が最大になるようにしてある」

騎士「……」

黒騎士「避けなくて良いのか? それとも諦め――」

騎士「……ふっ」ブォン!
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/20(木) 14:34:14.21 ID:0C6nStUo
続きキテター!
応援してます!
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/21(金) 00:33:23.65 ID:0rEZFEY0
黒騎士「……なん……だと……!?」

シュゥゥゥ…

騎士「その魔法は私には効かない」チャキッ

男「魔法で起こした炎を剣撃で消せるんですね……」

学士「いえ……普通は出来ません」

学者「風の魔法、水の魔法なら可能だが……」

学者「さっきは魔力放出を感じなかった。しかし剣圧で魔法を緩衝させるなど聞いた事もない」

男「……ふむ。それだけ騎士さんの力が強いという事ですか」

騎士「先程の魔法は勇者もよく使っていたからな。対処法も知っている」

騎士「剣だけが能だろうと、侮ってはいけないな」

黒騎士「くっ……だが、俺の魔法を防いだだけで良い気にならない方が良い」

黒騎士「勝機がこっちにある事には変わりないからな!」ザッ

騎士「っ」ザッ

ガキィィィィィィンッ!
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/21(金) 01:34:47.91 ID:0rEZFEY0
カンッ カンッ
 キュィィィィッ

ドーンッ ドドドドドドッ

ガキィィンッ!

黒騎士「っくぅ」ググッ

騎士「今だ!」ググッ

騎士兵A「ハァッ!」シュバッ
騎士兵B「ふんっ!」シュッ

キンッ キンッ

騎士「くそっ」ザッ

騎士兵A「はぁ……はぁ……」

騎士兵B「ぜぇ……ぜぇ……」

騎士兵A「どういう事だ! 全く食らってる様子がないぞ!」

騎士「やはり……防御付加の魔法か」

黒騎士「今更分かったのか?」

騎士「一撃目からもしやとは思っていたが……」

騎士兵B「では我々は勝つ事が出来ないのでは……!?」

黒騎士「はははっ、漸く理解したようだな!」

騎士「……いや、方法は二つある」

騎士「魔法に打ち勝つ事が出来るのは魔法だ」

学者「つまり――溶岩放流!」スッ

グゴゴゴゴゴゴ……ッ

黒騎士「!?」

  ズゴオォォォォォッ!!!

学者「――攻撃魔法を加えれば奴の鎧に勝てると言うわけだ」

騎士「援護感謝する」
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/21(金) 03:20:34.38 ID:LwQ8tbso
待ってた!
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/21(金) 22:21:49.69 ID:GUNrvYDO
更新、乙です。
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 01:59:29.21 ID:NTb21DA0
しかしこのスレ、今一つ賑わいに欠けるな。
まぁ、俺がカメだからか。

そう言えば友人が、亀がもの凄い勢いでブラックバスを追いかけてたのを見た事があるそうだ。
亀も頑張れば速いらしい。
俺も頑張れば……無理だな←
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 02:14:57.33 ID:NTb21DA0
学者「……」
騎士「……」

シュゥゥゥゥ…

騎士兵A「ど、どうだ……?」

騎士兵B「やった、のか……?」

学者「普通の鎧ならば、鎧ごと溶けているはずの威力だ」

騎士兵A「と言う事は――」

学者「だが、相手は付加魔法だ。魔法の強力さによっては、鎧の一部を溶かす程度にしかなっていないだろう」

騎士「何にせよ、奴が固まった岩の中から出てこなければ分からない」

騎士「出てこないに越した事はないが……」

学者「出てくるにしても、そう簡単には出てこられないだろう」

男「そうですね。密着状態から力を掛けるのは困難な事でしょう」

学士「それにしても学者さん、複合魔法なんて使えたのですね」

学者「僕は実践魔法学者の中でもエリートだからな。そのくらい当然の事だ」

男「複合魔法って何ですか?」

学者「言葉通りですよ。違う属性が合わさった魔法」

学士「さっき学者さんがやったのは、火と土の複合魔法ですね」

男「へぇ、そんな事まで出来るんですね」
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 02:29:11.80 ID:NTb21DA0
学者「当たり前だ。魔法というものは万物を操る事、つまり万能を目指して日々研究されている」

学者「複合が出来なければ、そこで万能の追求は止ま――」

ドゴォォォォッ!!

黒騎士「複合魔法が使えるなんて聞いてねぇぞおぉぉっ!」

騎士「くそっ、生きていたか」

学者「付加が強力だったという……!?」

黒騎士「おかしい。大陸の奴らは単属魔法しか使えないはず……そう習ったんだ……」ブツブツ

学士「どうしました?」

学者「ダメージがない……!?」

騎士「……どうやら、そのようなだな」

黒騎士「ん……? いや、お前らの作戦は良かったと思う」

黒騎士「ただ、計算を間違えたな。先程の火力、確かに普通の付加ならば溶けていただろう」

黒騎士「だが、この鎧は俺の家の家宝だ。斬撃も矢も、魔法すら通さない! ついでに言えば外からの熱も通さない」

黒騎士「つまり、これを着ている限り、俺は無敵だ! お前らに勝ち目はない!」

学士「そんな……」

学者「……っ」

男「……ふむ」
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 02:38:18.29 ID:NTb21DA0
黒騎士「さぁ、どうする、大陸の騎士よ!」

騎士兵A「くっ」

騎士兵B「どうすれば……っ」

騎士「……」

黒騎士「はははっ、打つ手はなしだ! お前らはここで虚しく滅びるしかないのだ!」

男「騎士さん」

騎士「……何だ?」

男「さっき、付加魔法に打ち勝つ方法は二つあると言ってましたよね」

男「一つは失敗しましたが、もう一つはどうなんですか?」

黒騎士「っ!」

騎士「その方法はあまり気乗りしないのだが……」

男「やらなければやられます」

騎士「……」

騎士「……仕方ないな。騎士兵A、騎士兵B、下がってろ」

騎士兵A「しかし」

騎士「下がってろ」

騎士兵A「……はっ」
騎士兵B「……分かりました」

黒騎士「何をするつもりだ?」

騎士「君は分かっているのだろう?」

男「さっきの発言で七十……いえ、八十パーセントくらいは推測出来ています」

男「これは騎士さんくらいにしか出来ない事、でしょう?」

騎士「……多分合っているな」
932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 02:54:47.92 ID:NTb21DA0
騎士「では……行くぞ!」スッ ザッ

黒騎士「ふっ、大陸人ごとき何をしようと……っ」

騎士「やってみなければ……分からないぞ!」ググッ

騎士「ハァッ!!」ブォンッ

黒騎士「何て事はない。ただの斬撃では――」

グワァーーンッ!!
 ガチャッ ガチャン!

黒騎士「――ぐふぁっ!?」

騎士兵B「凄い……。鎧ごと剣撃で吹っ飛ばした……」

騎士兵A「流石、騎士隊長だ……」

騎士「っ次!」ググッ

騎士「ヤアァァァッ!」ブォォンッ!

グヤァーーンッ!!

騎士「次っ!」ブオオオオォォォォンッ!!

騎士「次!」グワワワァァァァンッ!!

騎士「次ぃっ!」ギャイィィィィィィンッ!!

黒騎士「……っ……っ!?」

学士「女性だというのに……なんて力……」

男「力だけじゃありません。速さも重要です」

男「一打毎に体を回転させているでしょう? あれで剣撃の速さを高めているんですよ」

男「加えた力の何パーセントかは反発して返ってきます。その力を無駄にすることなくするには、その力の向きを利用するのが一番ですからね」

男「それにあの騎士さん特有の大剣では、半回転中の遠心力による剣先の力の増加は著しいものがあるでしょう」

騎士「次っ!」グワァァァァァァンッ!!
933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 03:08:01.70 ID:NTb21DA0
学者「だが、どういう事だ?」

男「何がですか?」

学者「奴の鎧は何も通さないはずだ。なのに剣でダメージが与えられるとは……」

男「厳密には剣撃を当てているのではないんですよ」

男「剣を鎧に当てた時に起こる振動。それが騎士さんの攻撃です」

学者「振動、だと?」

男「振動を侮ってはいけませんよ。俺らを構成するものですから」

男「……あの人、そろそろ脳震盪は起こしてるんじゃないでしょうか」

騎士「ハアァァッ!」グワワァァァァンッ!!

黒騎士「……」シーン

男「敵ながら不憫に思えてくる光景ですね」

学士「相手は魔族です。容赦してはいけません」

男「まぁ――」

ザッ……ザザッ……

男「――ん?」

女『ザザッ……ん……て……ザザザ』

男「? 喋って良いなんて言ってないんだけどな……。どうした? どうぞ」

女『男さ……ザザッ……ん、助け……ザッ……下さい……ザザッ』

男「!?」

男「ど、どうした!? 何があった!?」

騎士「!?」

黒騎士「!」

女『何者かが急に……ザザッ……本陣……ザザッ」

女『きゃぁぁぁああああっ! ……ザーーーーーー……』

男「女さん! 女さん!?」
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/05/23(日) 03:12:06.27 ID:NTb21DA0
今回は眠いからこの辺りでー、おやすみ。

最近、このような2ch系列で書いたものを練習も兼ねて文章化してみようかなと思ってる。
まぁ、寝るのに忙しいから出来ないと思うが。
935 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/23(日) 23:54:14.27 ID:h45pMUDO
乙でした。
936 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/24(月) 02:59:06.51 ID:e/FxMdAo
乙。
またーり待ってる
937 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/01(火) 01:43:16.21 ID:6e2alEAO
よし。今週の木曜に次スレに移れるようにする。
……多分。
恐らく!
きっと!!
億分の一くらいの確率では!!!
うあぁぁぁぁあああっ!!!!
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/01(火) 01:44:40.10 ID:4o60PC6o
せめて万が一くらいで…

がんばってwwwwwwww期待してる!
939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/01(火) 09:46:13.45 ID:kN644Qoo
その確率にオレは賭ける!
キタイしてるぜ!
940 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 08:38:55.23 ID:2oSwrm.o
もっくようびーorz
941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 11:43:55.25 ID:tfwL9NM0
これ、2月からやってんだな…
942 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/03(木) 18:00:49.59 ID:LzTLNfUo
まだ?
943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/03(木) 19:22:36.04 ID:PcwO76w0
今日も眠い。飯の味もわからねぇ。

>>941
俺の遅筆さが分かるな……。

>>942
多分まだです。
944 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/03(木) 19:40:43.21 ID:PcwO76w0
男「女さん!?」

『ザザー……ッ』

男「どうしたんだ、女さん!」

『ザーッ……』

男「おん――!」

騎士「落ち着け!」

男「俺は落ち着いてます」

騎士「……そうか。そのようだな」

学士「それよりも黒騎士はどうしたのですか?」

騎士「一瞬の隙をつかれて逃げられた。奴自身も頑丈に出来ていたようだ」

学士「……そうですか」

学者「逃げ足が速いな」

騎士「逃げられたのは悔しい。が、これは私達にとっても運が良い」

騎士「急いで本陣に戻る! 何があったのかは知らないが、危機なのは確かだ」

男「調査はもう良いんですか?」

騎士「君の仲間が危ない時に悠長な事を言うな。確認は取れているだろう?」

男「……ありがとうございます」

騎士「さぁ、急ごう!」

学士「……学者さん、何をしているのですか?」

学者「いや……」

学者「タイミングが良すぎると思ってだな。運良く消えていないのがあった」

学士「? とにかく急ぎますよ」

学者「ああ」
945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/03(木) 21:00:50.82 ID:PcwO76w0
――本陣営

騎士兵A「これは……」

騎士兵B「いったい……!」

騎士「……何があったんだ……一体誰が……」

学士「見事に陣営が壊されてますね……」

男「……っ」

男「……」ダッ

騎士「待――」

学士「止めても行きますよ、彼は」

騎士「……そのくらい分かっているさ」

学士「さて、私達はどうしましょう?」

騎士「被害状況を確認する。調査に出掛けた学者達は無事だと良いが……」

学士「私は薬師さんの安否を確かめたいと思います。彼も残っていましたから」

騎士「いや、まだここが安全と決まったわけではないんだ。一人での行動は――」

学者「僕が着いていこう。僕なら魔法も使える」

学者「それに男さんは一人で行動しているだろう? 心配ならそっちをするんだな」

騎士「それもそうだな。しかし護衛を一人付けさせて貰う。良いな、騎士兵B」

騎士兵B「はっ」

騎士「私と騎士兵Aは男さんと合流し次第、順番に被害状況を確認する」

学士「分かりました。では、お気をつけて」

騎士「そちらもな」
946 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/04(金) 08:43:19.42 ID:k7sWlRA0
更新来てた…感動です。
947 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/04(金) 09:01:18.17 ID:TSoMljU0
寝落ちしてしまった……orz
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/04(金) 09:17:11.61 ID:TSoMljU0
「ぐすっ……うぅっ……」

男「!」

男「この声……女さんか!?」

女「あ……っ! 男……さん?」

男「俺じゃなければ誰に見える?」ニコ

女「う、うぇ……怖かったですよ……! ぐずっ……」

男「……そうか。まぁ、無事で良かった」

男「でもなんで外にいるんだ? 盗賊は?」

女「それが……あまりにも、突然でして……」

女「盗賊さんが突然、倒れて……グスッ……それで、それで……っ」

女「とにか、く、必死で逃げたんです……」

男「何があったんだ?」

女「それが……私にも何があったのか……、理解出来なく……て……」

男「そうか」

騎士「おい、危険だから単独行動は避けて……おや?」

男「すみません。でも、無事女さんは見つけましたよ」

女「ぐすっ……」

男「残念ながら逃げるのに必死で何が起こったのか分かっていませんが」

男「聞いた話からすると、盗賊――俺らの護衛が心配です。先にそっちの安否を確認しても?」

騎士「うむ、良いだろう。……それよりも、大丈夫だったか?」

女「は、はい……運良く怪我一つ、ありません」

騎士「それは良かった」
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/04(金) 09:37:58.77 ID:TSoMljU0
盗賊「(返事がない。が、気絶しているだけのようだ)」

騎士「……息はあるな。目立った外傷もない」

男「殆ど無事じゃないか」

女「よ、良かった……」

男「おい、起きろ!」ペシペシ

盗賊「う……っ」

盗賊「くそ……誰だよ、痛ぇな……」

男「目を覚ましたか」

盗賊「……あー、男じゃねぇか。帰ってたのか」

男「さっきな。ここが襲われてるのを女さんに教えて貰って」

盗賊「襲われてる? ……あぁ、そういう事だったのか」

騎士「まるで気付いてないみたいだが」

盗賊「気付くも何も、突然気が遠退いていったんだ」

盗賊「だが言われてみると、確かに後ろから何かやられた気がするな……」

男「思ってたより静かな攻撃だな」

騎士「うむ。本陣営自体の外見被害からするとおとなしいな」

盗賊「外はどうなってんだ?」

男「いくつかテントが潰されてたよ。後、地面も何カ所かへこんでるぞ」

盗賊「それは凄まじいな」

盗賊「そういや、女は無事だったのか? あの時よそ見してたから分かんねぇ」

男「女さんは見た通り無事だ。逃げ切ったからお前と違って気絶もしてなかったぞ」

女「……」

盗賊「ほう。じゃあ今の所、内的被害はなしか」
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/05(土) 01:48:23.88 ID:XniSvADO
乙でした。
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/06(日) 11:00:57.74 ID:bkltWfY0
次スレ移るとか言って何日経ったんでしょうか。
まだ移れてない現状……
952 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/06(日) 11:31:10.54 ID:bkltWfY0
薬師「やれやれ、一体何が……」

学士「薬師さんは無事でした。そちらは?」

男「こっちも無事です」

男「後は騎士さん達が陣営の状況を把握してくるだけですね」

学士「無事って……本当ですか?」

男「え? ……ああ、女さんですか? 逃げ回っていたようでしたから、疲れただけでしょう」

女「くぅ……くぅ……」スヤスヤ

学士「そうでしたか」

男「ええ。傷一つありませんよ。それより薬師さんは大丈夫だったんですか?」

薬師「わしも傷一つありはせん。誰がやったかは知らんが、気絶させただけみたいでな」

盗賊「また気絶だけか……」

学者「また、って事は他のもか?」

男「女さん以外は気絶させられていたみたいですね。残っていた護衛の騎士二人もそのようでした」

学者「どうして女だけ大丈夫だったんだ?」

男「それは……運が良かった、としか言いようがありませんね。盗賊さんが倒れたのを見て、咄嗟に逃げたと聞いています」

学者「……そうか」

学士「しかし、何が目的だったんでしょうか……。陣営内の人を気絶させるだけだなんて」

盗賊「食糧を盗っていった、という線はないか?」

騎士「それはないな」
953 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/06(日) 11:46:09.66 ID:bkltWfY0
男「戻りましたか。どうでした?」

騎士「どうも何も不可解だ。盗られたものなど一つもない。目立った仕掛けも一つもない」

騎士「ただ人を気絶させ、陣営内を適当に荒らし回っただけのようだ」

盗賊「食糧もそのままか?」

騎士「そうだ。芋の一つも盗られてはいない」

騎士「だがこの土地の状況から考えて、盗みはあり得ないと考えられるな」

学士「そうですね。生きている人はもういないでしょうし、敵は黒騎士だけのようですから」

学者「……本当に奴だけと思うか?」

騎士「……どういう事だ?」

学者「この陣営への攻撃がタイミングが良すぎる」

男「確かに」

薬師「だが、わしはともかく、護衛の騎士まで気絶させるくらい飯抜きのやつなのだから、ここを壊滅させる事くらい出来たのではないかの?」

学者「そう出来ない理由があったと考えるべきだ」

学士「そう出来ない理由?」

学者「こう考えればどうだ?」

学者「ここを襲った奴は密偵であり、僕達の中の誰かだ。そして、偵察としてまだ情報が不足している。つまりまだ僕達と僕達の信用が必要だ」

騎士「という事は、この襲撃は仲間を逃がす為のものだったと?」

学者「そうだ。でなければ、このタイミングは偶然でしかない」

盗賊「そっちの話を聞いていたが、敵は魔族なんだろ? 俺は違うぜ」

学士「そもそも仲間を疑うのはあまり気乗りしませんね」

学者「だが、僕はそう結論づけたんだ」
954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/06(日) 12:00:42.98 ID:bkltWfY0
男「結論付けた。つまりあなたはもう犯人の目星は付いているわけですね?」

学者「そうだ」

騎士「一応聞いておこう。回りくどいのはなしだ」

学者「僕は……あなた達を疑っているんですよ」

男「……俺?」

学者「と、女だ」

男「その根拠は?」

学者「まずあなた達の知識は僕達のそれとは違う。ここから、あなた達は魔の国の人かもしれないと推測できる」

男「……」

学者「そしてその武器、魔法ではない。もしかして“亜法”というものではないか? それならばあなたが亜法とは何か理解したのもうなずける」

男「……」

学者「そして女だ。襲撃時に気絶していなかったのは彼女だけだと言う。それはみんなを気絶させて、彼女は逃げた、という演技をしたのではないか?」

学者「そして靴跡だ。教会にあった靴跡は、彼女のと一致するように見える」

学者「以上が理由だ」

男「成る程……、成る程」

盗賊「てめぇ! こいつらは俺と一緒に旅してきたんだ。そんなはず――」

男「……くく」

騎士「!!」
学士「!?」

男「くっははははははははっ!」
955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/06(日) 13:21:42.75 ID:SgvJtRAo
支援
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/06(日) 13:35:41.14 ID:bkltWfY0
学者「本性を現したか……」

学士「ま、まさか……」

男「はははははっ!」

騎士「くっ」チャキッ

男「おっと、そんな身構えないで下さい。俺は決して魔族の手の者ではありません」

騎士「ではなぜ笑う?」

男「いえ、俺らがどれほど怪しいかを正確に指摘されると、笑いたくもなります。はははっ」

男「まぁ確かに、女さんの足跡については難しい所ですね。女さんのもののようにも見えますし、違うかもしれない。靴底がかなり磨り減ってますから、その辺りの判断は微妙でしょう」

学者「そうだがな」

男「それに、一番忘れてはならない事があるでしょう?」

騎士「……そうだな。そう言えば君達が黒騎士の場所へと導いたのだったな」

男「特にこれは女さんの手柄です。仮に俺、もしくは女さん、または両方が偵察者だとすると、仲間である黒騎士を窮地に追い込む事をするでしょうか」

学者「……すまなかった。全言撤回する。そして謝罪しよう」

男「いや、俺も偵察者という考えはなくはなかったですから」

学者「しかしそうでなければ一体誰が……」ブツブツ

学士「この件を考えるのは騎士さん達に任せませんか?」

騎士「うむ。このような事態になったのは私達の責任でもあるからな」

学者「……」ブツブツ
957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/09(水) 08:27:54.88 ID:QaZeDcY0
更新きてた
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 18:43:38.20 ID:B3mu9R.0
次スレ移行宣言から一週間過ぎてしまった。
死んだ方が良いな、俺。

まぁ、今まで通りのスピードで書いていきます←
959 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 19:00:16.86 ID:B3mu9R.0
男「それで、これからどうしますか?」

学士「ですね」

騎士「と言うと?」

男「調査は一応終わってますから」

学士「騎士団方の意見としては、やはり黒騎士を捜しますか?」

騎士「いや、一度は黒の街へ戻り、報告に行こうと考えている」

学者「漸く不気味な所から離れられるわけか」

男「しかし、実は黒幕が黒騎士ではない、もしくは奴だけではない、という考えはないでしょうか」

騎士「……」
学士「……」
学者「……」

男「……すみません。冗談です」

騎士「いや、その線も考えてみた方が良いかもしれない」

男「いえ、必要ないと思いますよ」

学士「……そうですよね。仮に黒騎士の後ろに誰かがいるとすれば、魔王と考えるのが妥当でしょう」

学者「結界の中にはどのみち行けない、という事だな」

騎士「なら良いが……」

騎士「では君達には先に伝えておくが、明日には黒の街へ向かおうと思う」

騎士「それから、今から陣営の整理と片付けを始めておきたいのだが、手伝ってくれる者はいないか?」

学士「私で良ければ」

学者「やることないからな」

薬師「わしも手伝うぞ」

男「すみません。俺は女さんを見ておきたいので」

盗賊「男に同じだ」

騎士「いや、三人もいれば助かる。宜しく頼むぞ」
960 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/13(日) 19:06:21.37 ID:qipL5rgP
               /,‐|:::::::::|::::/゙、::::::|゙、:| ゙、:::ヽ::::::::::::|::::::::::::::゙、::::::::ヽ::::\‐-
             /:::/::::|::::|:::|::::| ゙、:::::| ゙、| \::\::::::::|::::::::::::::::|::::::::::\::::\
             |::::::|:::::::|:::|::|゙、:|  \:l ヽ''‐-ヽ,,,_゙'ヽ|:::::::::::::::::|::::::::::::|ヽ:::::::|
             |::::/ヽ:::|\:|''"ヽ     ,,,,,,,,,,__  ゙"' ゙、:ノ::::::::::ヽ::::l::::::|\::::|
  ┏┓  ┏━━┓ \|ヽ\ヽ _      ''"""'''‐ヽ、   レ‐ヽ:::::::\::|:::::| |::/    ┏┓┏┓┏┓
┏┛┗┓┃┏┓┃     ヾ、,‐''"'' ,       、、、、  /ヽ/::::::::::ヽ|::::|  レ.     ┃┃┃┃┃┃
┗┓┏┛┃┗┛┃┏━━.∧〃    ,,--、         '" /:::::::|:::|ヽ/━━━┓┃┃┃┃┃┃
┏┛┗┓┃┏┓┃┃  ./:/゙、    ゙、:::::::::゙、      /'''''":::::::::::::|:::|ヽ.       ┃┃┃┃┃┃┃
┗┓┏┛┗┛┃┃┗━ //:::::゙..、   ヽ::::::::ノ     ./::/:::::::::::::::::::|:::|ヽ||.━━━┛┗┛┗┛┗┛
  ┃┃      ┃┃   /://:::|:::::::゙''ヽ.、 ゙''''"  ,,,-‐" ゙、/_::/::/,,,,」‐'.         ┏┓┏┓┏┓
  ┗┛      ┗┛   |/ |:::::|::::::::::l:::::::l::゙:::''''",      ゙''ヽ 、'"            ┗┛┗┛┗┛
              | \:::|、::::::ヽ::::::,,-'''"ヽ     ,,-    ゙'''‐- 、
961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 19:14:37.65 ID:B3mu9R.0
男「……」

盗賊「……」

男「……」

盗賊「……何か喋れよ」

男「疲れてるし、特に話題がなければ口を開くのさえ面倒なんだ」

盗賊「ほう」

男「……」

盗賊「……」

女「……ん」ムクリ

女「……おはようございます」

男「おはよう」

盗賊「よう」

女「って、いつの間に寝てたんでしょうか」

男「二時間くらい前だ」

女「というか、いつ帰ってきたんですか、教授?」

男「え?」
盗賊「は?」

男「憶えてないのか? 陣営が襲われてからすぐに戻ってきただろう?」

女「いえ、私は――」

女「……」

女「ああ、そうでした。まだ寝ぼけていたようです」

男「珍しいな。いつも寝起きが良いのに」

女「私だってそういう時くらいあります」

男「……そうだな」

女「はい」

男「……」
女「……」
962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 19:31:21.63 ID:B3mu9R.0
男「そうだ。調査中、俺らの話をしっかり聞いてた?」

女「はい」

男「一つ聞きたいことがあるんだけど」

女「何ですか?」

男「教会に残っていた足跡。鎧と――」

女「――スニーカー、ですか。もしかして私を疑っているんですか?」

男「……いや、女さんの意見を聞きたかっただけだよ」

女「……それなら良いです。安心しました」

女「ですが、教授が私を疑うのは正しいと思います。スニーカーを今現在、この世界で履いている人は、分かっている中で私と教授だけですから」

男「そうだ」

女「ですが、他に一つ考えられる事があります」

女「私達のように異世界から来た存在、と言うことです」

男「ふむ。俺も“女さんを除外する”という条件を付けて考えれば、その結論に至った」

女「まるでまだ私を疑っているような言い方ですね」

男「除外していると言うことは、もう疑っていないという事だ」

女「そうでしょうか」

男「とにかく、その結論から行くと、まず思い当たる人達が出てくる」

女「時空管理局、ですね」

男「うん。でも彼らは除外すべき対象となってしまう。このような行為は、彼らの理念に反するからな」

女「結局は正体不明の異世界人、という事になってしまうんですね」

男「残念ながら。情報が少なすぎるんだ」
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 20:30:59.03 ID:B3mu9R.0
盗賊「そういや、“亜法”とか聞こえたが、それは何なんだ?」

女「言ってましたね。教授は何か分かっているようでしたが」

男「女さんも見当は付いてるんじゃないか?」

女「一応は」

盗賊「俺は全く見当ついてねぇ」

女「教授、教えてあげてはどうですか?」

男「女さんが教えたら?」

盗賊「いや、どっちでも良いから」

男「でもまだ仮定の段階だからな」

女「私もです。ではこうしましょう。二人で同時に言うのは」

盗賊「……」

男「ああ、小学生の頃良くやったな。『いっせーのーでっ』ってやつ」

盗賊「……」

女「では行きましょう。“亜法”とは――」

男「魔法と科学が融合した技術である」
女「魔法技術と科学技術を統合させたもの」

盗賊「要は、魔法とお前らの使うものを使った方法だな?」

男「その通り」
女「その通りです」

盗賊「いや、もう声をそろえなくて良いから」
964 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/13(日) 23:27:07.99 ID:B3mu9R.0
男「とにかく、この調査に加わって、俺らにとっても得があったわけだ」

女「亜法を調べる価値はありますね」

盗賊「何だ? 興味持ったのか?」

女「当たり前です。そもそも私達がここにいる理由は『魔法の研究』ですから」

男「そうだ」

盗賊「じゃあ……魔法でいいんじゃねぇか?」

男「さっき言っただろう。亜法は、魔法と科学を合わせた技術かもしれないって」

女「そのような技術を使うには、両者の相互性――双方向性を理解していなければなりませんから」

女「つまりその技術を使える魔の国はとても発展した国と言えるでしょう」

盗賊「って事は……魔の国は大陸よりも凄ぇものを持ってるって事か」

女「そうなりますね」

男「そのはずなんだが……この仮説だとしっくり来ない所が一つあるんだ」

男「女さんの作ったフォースランスでの電撃。これを黒騎士は魔法の一種だと考えた」

男「もし亜法が魔法と科学の統合技術ならば、なぜ亜法とも科学とも考えずに魔法と考えたのか」

女「……確かにその考えは大陸の人達と同じものですね」

盗賊「つまり、何だ?」

男「正確には分からないって事だ」
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/14(月) 00:58:41.49 ID:7BXupBk0
盗賊「結局そうなるのかよ。収穫なしじゃねぇか」

男「いや、亜法という存在の確認という事自体が大きな収穫だよ」

女「ですね。夢が広がります」

男「夢が広がるついでに女さんには良い知らせがあるぞ」

盗賊「俺達にも良い知らせなんだがな」

女「え、何ですか?」

男「明日から帰路につく事になった」

女「……本当ですか?」

男「ああ」

女「……もうゾンビを見なくても良いんですか?」

男「絶対に、とは言い切れないけど……」

女「そうですか。それは良かったです」

盗賊「……あれ、反応が淡泊だな」ヒソヒソ

男「どこを見てる。かなり安心してるぞ」ボソボソ

女「……良かったぁ」ホッ

男「な?」

盗賊「確かに」
966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/15(火) 13:36:11.96 ID:jZ38uMc0
(翌朝)

騎士「それでは今からここを発つ! 準備は良いか?」

「何だよ……。来たと思ったらすぐ帰りか」

「仕方ない。調査は終わったと言うのだから」

「やれやれ。もう用済みって訳か」

「というか昨日無駄に彷徨いただけで調査が終わりか?」

「何でも子爵家と白鷺卿の学者が……」

「いや、あいつらは公爵家の学者について行っただけらしいぞ」

「じゃあ、美味いところを分けてもらったってわけか」

「ちょっと待て。公爵家のって言うと、あのわけの変わらない三人組か?」

「それでも公爵家、って事だ」

「だが解決が早すぎないか? いくら何でも……」

「ここに着く前から推測出来ていたらしいぞ。しかもそれが当たっていたとか」

「っち。偶然か」

学士「さて、それはどうでしょうね」

「げっ、子爵家の学士!?」

「聞いてたのか……?」

学士「聞こえていたんですよ。私達が美味しい蜜を貰っていたのは否定しません」

「だ、だよな」

学士「しかし男さん達をただの運が良い人達と見なすのは、過小評価しすぎですよ」
967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/15(火) 13:50:04.39 ID:jZ38uMc0
学者「……何を話してたんだ?」

学士「いえ。少しばかり談笑をしていただけですよ」

学者「節介な」

薬師「しかし早く調査が終わって良かったな。これでわし自信の研究に没頭出来る」

学士「そうですね。子爵様の知名度も上がります。白鷺卿もですね」

学者「強欲貴族の知名度が少し上がったところで悪名は消せない」

学士「駄目ですよ。自分の主人を貶すのは」

薬師「まぁ、一番名を上げたのは公爵家かの」

学者「そうだな。騎士団から報告がされれば、一種の英雄扱いだ」

学士「その辺りの気持ち、どうですか?」

男「……え?」

学士「『え?』じゃないですよ。主人の名誉を上げたのですよ?」

男「あー、いや。俺らが属したのは調査が始まる少し前ですし……」

男「それに俺らは自分の研究が出来ればそれで良いかな、と。所属と言っても、公爵家から研究の資金援助を貰う契約をしただけですし」

学者「そう言えばあなた達の研究内容は何だ?」

男「魔法についてですが」

学者「……は?」

学士「それにしては魔法の知識が薄いようですが」

男「まだ勉強し始めですからね。そして恐らく、研究の方向性があなた達と根本的なところで違うと思います」

男「俺らの研究は、恐らく今回の調査で出てきた“亜法”に近いはずですね」
968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/15(火) 14:02:59.03 ID:jZ38uMc0
学者「そう言えばその“亜法”ってのは何なんだ? 想像はついていると先日言っていたが」

男「俺らの考えでは、俺らの扱う“科学”とあなた達の扱う“魔法”の技術を融合させたものだと考えています」

男「例えば、今回の異変に使われたカプセル。俺らの考えでは、あれは魔石を動力源にしている事を除けば、俺らの使う技術に似通ったもののはずです」

男「しかしその操作には魔法を要する。つまりこれが亜法の正体、ではないかと」

学士「成る程。それでそのカプセルですが、それを持って女さんは何をしているのです?」

女「……」マジマジ

女「……」カタタタタタ

学士「あの……女さん?」

男「かなり集中してますね……。何かを調べているのは確かですが」

学者「それが何か聞いてないのか?」

男「黙ってやり始めたので」

学者「そうか。……それはそうと」

男「?」

学者「馬鹿な事を言っているかもしれないが、女には気をつけた方が良い」

男「……まだ疑っているんですか」

学者「騎士の一人が一昨日の晩、女が一人出歩いているのを見ている」

学者「その時は用を足しに行っただけと言ったそうだが……実際はどうなのか」

男「まぁ、俺も実は疑ってたりするんですが……いや、極力その表現は避けたい」

男「昨日、女さんが起きてから様子が少しおかしかったので」

学者「ほう。何にしても用心に超した事はない。仲間を疑えと言うのは酷だがな」

女「……」カタタタ…
969 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/22(火) 09:29:08.66 ID:YVinNEY0
もういっそのこと書かなくてもいいんじゃね?もう書く気無いんだろうし
970 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/22(火) 14:12:18.03 ID:5fitlpQo
前作が面白かったし期待している
971 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 00:14:14.20 ID:vRnYnvA0
>>969
書く気はあるんだよ。
あるんだけどね……orz

>>970
期待に応えられてないですよね。
ほんっとうにすみません!
972 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 00:29:21.44 ID:vRnYnvA0
(数日後)
――白の国、白の街

勇者「……」

剣士「勇者様」

勇者「何だ?」

剣士「そろそろ王宮へ行った方が良いのでは?」

勇者「……そうだな。そう言えば呼ばれていたっけ」

剣士「……何か考え事か?」

勇者「ああ」

剣士「もしや……まだあの事を?」

勇者「ああ」

剣士「……」

勇者「もう一度……砂の国へ行って、この目で確かめるべきか……?」

剣士「それを決めるのは勇者様だ」

剣士「私はそれに付いていくだけだ」

勇者「……」

剣士「……」

勇者「しかし、この状態では危ういのも確かだ」

勇者「ここ数日の間で魔物が増えているらしいからな」

剣士「うむ……」

勇者「……」

剣士「とにかく、今は王宮へ向かおう。白国王様は暇ではない」

勇者「……そうだな。そうするか」
973 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 00:39:09.81 ID:vRnYnvA0
〜 (先日) 〜

白国王「良く来てくれた。勇者、剣士」

勇者「それで、お話とは?」

白国王「うむ。二つある」

白国王「悪い報せと少し悪い報せだ。どちらから聞きたい?」

勇者「……どちらにしろ悪いのならば、どちらでも良いです」

白国王「つれないな……。ではまず報せておくのは、僧侶の事だ」

白国王「昨日、砂の国から帰ってきた者から報告を受けた」

勇者「確認は取れましたか?」

白国王「それが……取れていないのだよ」

剣士「!?」

勇者「どうしてですか!?」

白国王「勇者、お主が黒くなったという事ではない。ただ確認が取れなかったのだ」

勇者「それはどういう……」

白国王「わしにも分からんのだ……」

白国王「報告内容をお主にそのまま伝えよう」

白国王「『僧侶が葬儀されたと言われた街は、着いた時には壊滅していた』」
974 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 00:49:20.86 ID:vRnYnvA0
勇者「そ、それはどうして……!」

白国王「理由は分からん。だが――」

白国王「だが、お主がそこを発って調査人がそこに着くまでの間に、何者かによる攻撃を受けたらしい。そのような痕跡ばかりだったそうだ」

白国王「そして恐らく、それは魔物の仕業だ」

勇者「そんな……」

白国王「墓場は荒らされ、どこに誰の遺体があるのかも知れない様子だったと聞いている」

剣士「……っ」

白国王「そしてお主の言ったことが正しいのならば――正しいと信じておるが――」

白国王「こちらに報告する暇も与えなかった。即ち、お主達が発ったすぐ後に襲われたと考えるのが妥当だろう」

白国王「それならばわしが僧侶の死を知らずにいた事が納得できる」

勇者「……」

剣士「……暫く私達があの街にいていれば……」

白国王「過ぎた事は仕方あるまい」

勇者「……」

剣士「……」

白国王「……少し空気が重いな」

白大臣「お二人とも正義感が強いですからね」

白国王「ふむ。そうだな」

白国王「勇者! 剣士!」

勇者「はい」
剣士「はっ!」

白国王「そう悔やんでいる場合ではないぞ。悪い報せはもう一つあるのだ」
975 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/23(水) 01:03:48.46 ID:vRnYnvA0
白国王「とは言っても、先程のよりは悪い報せではないかもしれんがな」

勇者「何でしょう」

白国王「お主ら、新しく魔法使いの仲間が欲しいと言っておったな?」

勇者「はい」

白国王「はっはっは、見つからなかった」

勇者「そんな軽快に言われましても……そうですか」

白国王「ここの所魔物がより多く見られるようになってきおってな」

白国王「その魔物の中には通常状態で防御付加魔法が掛けられたものもいるという」

白国王「魔法使い達はその掃討に向かっておって、良い人員がなかなか見つからないのだ」

勇者「魔物が増えているんですか?」

白国王「そうだ。白蛇隊も帰還し次第討伐に向かわせるつもりだ」

勇者「それとこれとどう関係があるんですか」

白国王「お主との鍛錬で騎士は魔法の対処方法を知っておるからな。彼女をお主に付かせるという手もあったのだが」

白国王「如何せん、彼女は白蛇騎士隊長だ。この国には欠かせない存在なのだよ」

勇者「それは仕方ありませんよ」

白国王「まぁ、お主に言っておくべき事は以上だ」

白国王「一応このまま空きの魔法使いを捜しておこう」

勇者「ありがとうございます」

白国王「お主から何か言いたい事はあるか?」

勇者「一つ、お願いがあります」

白国王「何だ? 言ってみろ」

勇者「黒の国へ向かった調査団が戻ってきた時、教えて欲しいです」

〜  〜
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 03:45:38.20 ID:RvkYheU0
勇者「それで、今日はどのような用でしょうか」

白国王「うむ。魔法使いに関してはずっと探しておったのだが、なかなか見つからなかったのだ」

剣士「彼らも忙しいのならば、仕方ないでしょう」

白国王「そこで、だ。魔法使いとまではいかないが、お主らに学者をつけてみようかと思う」

勇者「学者……ですか?」

剣士「魔法使い以外の学者となりますと、戦力にはならないのではないでしょうか?」

勇者「その通りです。私達の旅の第一の目的は結界の解除。確かに知識と洞察力が必要です」

勇者「しかしその為に危険が付きまとうのもまた事実。そのような状況下に貴重な学者を――」

白国王「その点は心配ないと思っている」

勇者「どうしてですか? 武術が特別に長けている人がいるのですか?」

白国王「そういう訳ではないのだが……その点に関しては、実際に彼らの力を見てきた者から聞くと良い」

勇者「一体どういう――」

「うむ。あれは武術ではない。かといって、魔法という術を彼らは否定した」

「だが彼らの持つ武具は、確かに一瞬にして数十の魔物を丸焦げにした」

白国王「……だそうだ」

勇者「騎士!?」

剣士「騎士様! いつの間に……!」

騎士「久しいな。勇者、剣士」
977 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 03:58:43.86 ID:RvkYheU0
剣士「いつ戻ってこられたのですか?」

騎士「つい先日だ」

勇者「異変の調査と聞いていたが、思ったより早かったんだな」

騎士「ああ。それには私もびっくりでな。ある学者達が刹那の内に解決してしまったのだ」

勇者「そんなに簡単な事だったのか……?」

剣士「いや、むしろその学者達の知見が並外れていたと考えるべきだ」

騎士「その通り。彼らは私達とは違う視野で物事を見ていた」

騎士「そして彼らこそが、君達と共に旅をさせる仲間の候補だ」

白国王「お主達の言い方では、“少なくとも当座の”旅の仲間、だな」

白国王「ちなみに所属下の公爵にも公的な了解を得た上での提案だ」

勇者「それで、その人達は今どこに?」

白国王「今、ここにはおらんな」

騎士「調査の件で疲れているのかもしれないな。恐らく家にいるだろう」

勇者「ふむ……それで私は彼らに会いに行けば良いんですね?」

白国王「話が早くて結構」

勇者「住所と……名前は何でしょうか?」

白国王「白の街ホワイトリバー通り十二番地六丁目の下宿屋――」

騎士「――男と女だ」
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 04:10:43.28 ID:y1LSL8wo
盗賊涙目wwwwwwww
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 05:40:42.02 ID:RvkYheU0
――下宿屋前

勇者「……ここか」

剣士「魔法師が二人は白の街にいると言っていたが……まさか国命に貢献するとはな」

勇者「ついこの前まで迷子だったように思えるのにな。今ではちょっとした小英雄だ」

剣士「それも過言ではないかも知れないな」

魔剣〔いよいよキミの思い人と対面出来るわけだな〕

勇者「うるさい」

剣士「……また英雄王か?」

魔剣〔少しくらい相手をしてくれても……〕ブツブツ

勇者「ん……声に出てたか?」

剣士「ああ」

勇者「それは……ごめん」

剣士「いや。しかし勇者様、そう英雄王を邪険に扱うのもどうかと」

魔剣〔……〕

勇者「今までの時間くらいで僧侶を殺した罪がなくなるわけじゃない」

剣士「そうだ。だが今や勇者様の剣として生きていく身だ。互いを知るというのが大切になってくるのではないか?」

剣士「例え、相手を許せなくても、だ」

魔剣〔その通りだぞ、勇者〕

勇者「断る。少なくとも今はそんな気分じゃない」

剣士「……そうか」

勇者「さて、どうでも良い話はここまでにして、女さん達に会いに行こうか」
980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 05:55:23.51 ID:RvkYheU0
大家「――男さんと女さん、それと盗賊さんの部屋は二階の奥から二つ目ですね」

勇者「ありがとうございます」

大家「しかし珍しいですね。あの人達に用があるなんて。公爵様の使い以来ですよ」

大家「しかも今度は勇者様と来た。一体あの人達は何者なんですか?」

勇者「私達にも正確なことは分からないんですけどね。ここではどういう人達ですか、彼女たちは?」

大家「どういうも何も、奇妙な人達ですよ」

大家「殆どの場合、男さんも女さんも蔵書館で朝から晩まで籠もりっきりでして」

大家「その他は二人で部屋に籠もって、時には言い争ったりもしていますね」

大家「かと思えば男さんはふらりとどこかへ出掛けたり」

大家「女さんは色んなものを次から次へと部屋に持ち込んで来ますし……」

大家「公爵様の使いの人の話で漸く知りましたが、あの人達は学者だそうですね」

大家「学者という人達はみんなあのような人なんでしょうか……」

勇者「はは……、きっとそうとは限らないと思いますよ」

剣士「自分のやりたい事を好き勝手にしているようで何よりだな」

勇者「まぁ、そうだね。大家さんは気の毒だけど」
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 06:07:36.14 ID:RvkYheU0
大家「まぁ、あの人達だけで部屋を貸し続けるのは私も不安なんですけどね」

大家「付き人、という事で一緒に住んでいる盗賊さん。あの人だけは常識人だと思いますね」

勇者「盗賊……」

剣士「私達とは無意識に一度会っただけの男だな」

勇者「そうだな。正当な面識はない。気になる人ではあるな」

勇者「その盗賊という人はどのような人でしょうか?」

大家「あの人は良い婿さんになるよ。顔だけは強面で近付きがたいんですけどね」

大家「昼はホワイトウォール通りの食堂で、夜は闘技場で働いているって聞いてますよ」

大家「とにかくしっかりしてまして、あの二人の使う金を伯爵家の下に入るまで全部盗賊さんが稼いでいたはずです」

勇者「その人と話をしたことは?」

大家「ありますよ。言葉はがさつで、良く“盗賊の頭だった時の話”を聞かされますが……」

大家「あの人が盗賊だったなんて信じられませんよ。確かに言葉は乱暴ですが」

勇者「……結局どんな人なのか想像できない」

剣士「私も怖そうな顔の男が少し記憶に引っ掛かっているくらいで……」

大家「まぁ、二人の事なら盗賊さんに聞いてみるのも良いでしょう」

大家「丁度、買い物から帰ってきたみたいですし」
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 06:14:38.69 ID:RvkYheU0
大家「おかえりー、盗賊さん!」

盗賊「ん、おう。……そいつらは?」

大家「勇者様とその仲間の剣士様。男さんと女さんに用があるんだって」

勇者「どうも」

剣士「……」

盗賊「そういやあいつら、勇者と知り合いって言ってたな……」

盗賊「だが今は面会謝絶だ。すまねぇな」

勇者「おい、それはどういう事だ?」

剣士「二人に何かあったのか?」

盗賊「あいつら、今は熱を出してんだよ。だから面会謝絶だ」

大家「この前帰ってから籠もってると思ったけど、そんな理由だったんだ」

勇者「お、女さんは無事なのか!?」

剣士「病院へは連れて行ったのか?」

盗賊「病院? 連れて行ってねぇよ」

勇者「なら早く連れて行くべきだ!」

盗賊「熱は熱でも研究熱」

盗賊「今のあいつらは食事もまともに摂ろうとしねぇんだ」

盗賊「それほど熱中してるってわけだ」
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/24(木) 06:56:01.66 ID:RvkYheU0
勇者「……」

剣士「……」

大家「じゃあ二人とも元気なのね。良かった」

盗賊「今の緊張が緩んだら一気に病気になりそうで、心配なんだがな」

盗賊「それで? てめぇらはあいつらに何の用だ? 落ち着いたら俺が伝えておいてやる」

剣士「いや、私達自身で伝える」

盗賊「……俺を信用してねぇな?」

勇者「まぁ、一応初対面でもあるしな」

盗賊「まぁ良いが……。じゃあ何か? ずっとここにいるつもりか?」

盗賊「あいつらの研究が終わるのはいつになるか分からねぇぞ?」

勇者「それもそうか……。邪魔するのも悪いし、確かに常に近くにいるのはこの人だけだしな」

盗賊「少しは信用してくれても良いんじゃねぇのか?」

大家「そうですよ。盗賊さんは良い人ですし、二人とずっと一緒に暮らしているんですから」

勇者「ふむ……じゃあいくつか聞きたいことがある」

盗賊「何だ?」

勇者「少し別の所で話をしよう」
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/24(木) 07:23:41.28 ID:CsEagKso
更新キテta!
サッカーよりこっちの方が楽しみだよ!
985 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 01:42:01.76 ID:9x63GEw0
盗賊「……で?」

勇者「まず何から聞こうか……」

盗賊「何から聞いて貰っても構わねぇぜ」

勇者「じゃあ……あなたは女さん達の何なんだ?」

魔剣〔まるで嫉妬するような――〕

勇者「うるさい」

盗賊「は?」

勇者「……すまん。こっちの話だ。それで?」

盗賊「ああ。大家と話してたなら聞いてねぇか?」

盗賊「ただの付き人、所々で護衛をさせてもらっててな。つっても日頃は雑用だ」

剣士「大家さんにはお前が元々盗賊の頭と言っていたそうだが」

盗賊「その通りだが? 嘘は言ってない」

勇者「その盗賊が何の目的で女さん達と行動している?」

盗賊「理由が必要か?」

勇者「何か企んではいないだろうな?」

盗賊「まさか。俺は正義の盗賊だぜ? 特に何も考えちゃいねぇよ」

盗賊「強いて言うなら、あいつらといると楽しいと思ったからだ。実際、結構楽しいぜ」

勇者「本当にそれだけか?」

盗賊「そりゃあ、一緒に行動して混乱もするけどよ。それ以外に一緒にいる理由はねぇからな」

魔剣〔勇者、その男の言っていることは嘘偽りないぞ〕

勇者「……そうか」

盗賊「満足はいったか?」

剣士「いや」
986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 01:49:57.63 ID:9x63GEw0
盗賊「ったく、まだなのかよ……。それで、次は何だ?」

剣士「理由があまりにも不明確過ぎる」

盗賊「そうか? 楽しいだけじゃ駄目か?」

剣士「お前は二人に対してあまりにも恩を売っている」

盗賊「……どういう事だ?」

剣士「自分だけでなく二人の分の金まで調達していると聞いた」

盗賊「今じゃ食費と家賃程度で楽だぜ」

剣士「二人になぜそれ程までする必要がある?」

盗賊「……成る程、そういう意味か」

剣士「お前にその答えは言えるか?」

盗賊「思うんだけどよ、その理由をしっかりと言ってしまったら嘘に聞こえねぇか?」

盗賊「前もって用意した理由なんてねぇんだから、すぐには答えられねぇよ」

剣士「む……それもそうか……」

盗賊「おお、こんな屁理屈を言えるようになったのもあいつらのお陰だろうな。ははは」

盗賊「まぁ、そうだな……強いて言うなら……」

盗賊「公爵と同じだ。俺は俺の体をもってあいつらに投資してんだ」
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 02:18:43.11 ID:nZG4tSko
盗賊がかっこいい…wwwwwwww
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 02:20:19.90 ID:9x63GEw0
剣士「成る程……」

盗賊「納得してくれたか?」

剣士「今は信じておこう」

盗賊「完全に信じちゃもらえねぇって事か」

剣士「賊を信用など出来るはずもない」

勇者「その通りだ」

盗賊「盗賊も悪い奴ばかりじゃねぇんだがな……」

勇者「まぁ、今はあなたを信用した。所で本当に会わせてくれないのか?」

盗賊「あいつらの邪魔は極力避けてぇからな」

勇者「邪魔はしない、と言ったら?」

盗賊「部屋にいるだけで邪魔になる」

勇者「……女さん達なら納得出来る気がするな」

勇者「では仕方ないな。伝言を頼まれてくれるか?」

盗賊「ったく、最初からそうしておけば良かったんだ」

剣士「お前は邪魔にはならないのか?」

盗賊「俺は邪魔してまでもやらなきゃならねぇ事がある」

剣士「?」

盗賊「あいつらは俺が無理にでもしなければ、飯さえ食うのを忘れるんだ」

盗賊「流石に飯抜きにさせるのは体に悪ぃからな」

盗賊「それで、伝言ってのは?」

勇者「少し経緯から話させて貰うんだけど――」
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 02:35:10.63 ID:9x63GEw0
――下宿屋

盗賊「おう、今帰ったぞ」

男「おう――それで仮にそうだったとしても……」

女「お帰りなさい――だからその計算だとエネルギー保存則を無視していますから……」

盗賊「……」

男「しかし女さんの言うこの計算式だと美しくないだろ?」

女「いえ、これはまだ“過程”なんです。最終的に美しくまとまるものに――」

男「仮にそうだとしても、この法則が魔法エネルギーに当てはまるとは考えられないんだが――」

女「どこを見ているんですか。この魔石が吸収したエネルギーはこの文字においているわけですから――」

男「そこは分かる。分かるんだが……」

盗賊「あー……少し良いか?」

男「後で」
女「後で」

盗賊「いや、今聞いてもらった方が良いと思うんだが」

盗賊「それに……」チラ

盗賊「てめぇら朝飯まだ食ってなかったみてぇだし、そろそろ腹にものを入れた方が良いと思うぜ?」

男「後で食べ――」
女「後で食べ――」

グイッ ズルズル…

男「何するんだ!」

女「今は研究中ですよ!?」

盗賊「今食え。すぐ食え。たまには休憩しやがれ」
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 13:39:32.20 ID:RkxZGAk0
女「それで、邪魔をしてまで何のようですか?」

男「折角集中してたんだが……」

盗賊「いい加減飯も食わねぇと身が持たねぇと思ったからな。ちょっとした節介だ」

男「飯って……別に食わなくてもまだいけるが」

女「このくらい日常茶飯事ですよ?」

盗賊「一体どんな生活してたんだよ……」

盗賊「あのな、てめぇら今朝だけじゃなく昨日三食抜いてんだぞ?」

男「そう言えばそう……なのか?」

女「さぁ?」

盗賊「それに二日分の徹夜……」

男「そんなに時間経ったっけ?」

女「気にしてませんでした」

盗賊「……まぁ良い。とりあえず一緒にいる身としては、勝手にするのは良いが、勝手に体を壊されると面倒になるんだよ」

男「つまり看病までしてくれるつもりだったのか」

女「優しいですね」

盗賊「てめぇらには看病してやる気が失せた」
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 13:49:07.72 ID:RkxZGAk0
男「まぁ、お前の言い分は分かった。研究の邪魔をした事は許してやろうじゃないか」

盗賊「そうであって然るべき事だがな」

女「確かに実際に食べてみると久しぶりの気がしますね」モグモグ

男「パンとスープ……質素ながら良いメニューだ」ズズ…

盗賊「久しぶりの飯で重いものはきついと思ってな」

盗賊「それとついでなんだが、伝言がある」

男「誰からだ?」

女「……」モグモグ

盗賊「勇者からだ。ちなみに白国王からの命令でもあるらしい」

男「……とことん研究の邪魔をしてくれるね」

女「良いんじゃないですか? そろそろ終わる目処がつき始めてますし」

男「それで?」

盗賊「今は勇者の仲間が剣士という奴しかいねぇ。魔法師は俺達も知っての通りだ」

女「あれ、僧侶さんは?」

盗賊「死んだらしい。で――」

男「……」
女「……そうですか。続けてください」

盗賊「で、新しく仲間を募る事になったが、それに抜擢されたのがお前達だ」

男「……は?」

女「……教授、私ちょっと耳が悪くなったかもしれません」

男「安心しろ。俺もだ」
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 13:58:00.57 ID:RkxZGAk0
盗賊「お前達が勇者と旅をして、魔の国の結界を解け。そういう事だ」

男「聞き間違いじゃなかったんだな」

盗賊「みてぇだな」

男「俺らにとってはむしろ願ってもない事だが……」

女「ですね。勇者さん達と魔の国へ行く事が出来れば、亜法の研究も進みますから」

男「そう。だけどな……」

女「ですね……」

盗賊「どうした? 何か問題があるのか?」

女「私達では勇者さん達の足手まといにしかならないと思うんですよ」

男「俺らは魔法を使えるわけでもなく、武術に優れてもいない」

男「机にへばりついて頭だけを使う事が、特に俺の役割なんだ」

盗賊「白国王は調査団の時の報告を受けて戦力にもなると言ってたらしいが」

女「確かに私達が運良く解決出来た形になりましたが、戦力なんて――」

男「……あれか」

女「え? 何かやらかしたのですか?」

男「フォースランスの最大出力で放電させた」

女「……あぁー、納得しました」

盗賊「何をしたんだよ……」

男「一帯のゾンビを感電させて倒したんだよ」

盗賊「こりゃあ、てめぇ自身の責任だな」
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 14:09:25.37 ID:RkxZGAk0
女「まぁ、これで私達には断る理由がなくなってしまいましたね」

男「そう言えば勇者さん達自身はそれで良いと思っていたのか?」

盗賊「んー……そりゃあ一番は昔馴染みの仲間で行きてぇはずだろうが」

盗賊「どのみちてめぇらとも行きたそうな目をしてたぜ?」

女「あの人は嫌がるという事を知らないんでしょうか」

盗賊「というより、前の調査で成果上げたてめぇらとならすぐに結界の謎も解けるだろうしな。それに面識もある」

盗賊「嫌がる理由はねぇだろ」

女「……確かに」

男「返事はいつまでに出せば良いんだ?」

盗賊「出来るだけ早くとしか聞いてねぇ」

男「じゃあ、二日後に了承の返事を出そう。連絡先は分かるか?」

盗賊「ああ、聞いてるぜ」

盗賊「ホワイトウッド通り二十五番地七丁目の宿屋。直接来いって事だろうな」

男「よし。分かった。じゃあ早めに終わらせようか、女さん」

女「はい」

盗賊「ちなみに進行状況は?」

男「結論がしっかりしないだけで殆ど出来てるよ」

女「大体、八十パーセントくらいでしょうか」

盗賊「つまりもうすぐで俺の精神も休めるって事か……」
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 16:50:42.28 ID:RkxZGAk0
(翌晩)
――宿屋

勇者「返事が遅い……」

勇者「研究ってそんなに忙しいのかな」

魔剣〔学者という人種は昔からいたからな。あやつらはいつも忙しそうにしているものだ〕

勇者「もしやあいつが伝えずに……!」

魔剣〔それはないだろう〕

勇者「どうしてそんな事が言える?」

魔剣〔経験から導いた勘だ〕

勇者「そんな当てにならないものを……」

コンコンッ

勇者「剣士か? 別にノックなんてしなくても――」

女「お久しぶりです、勇者さん」

魔剣〔……!〕

勇者「お、女さん? あ、うん。久しぶり」

女「盗賊さんから話は聞きました」

勇者「しっかり伝えてくれたみたいだね。良かった。それで、返事は決まった?」

女「えっと……」

勇者「あー……まぁ落ち着いて言ってくれても良いよ。そこの椅子にでも掛けて」

女「は、はい」
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2010/06/25(金) 16:56:41.30 ID:RkxZGAk0
女「……」

勇者「……えっと」

魔剣〔……勇者〕

勇者「何だ?」

女「え?」

勇者「あ……いや、ちょっと耳鳴りがしただけみたい」

女「そうですか。大丈夫ですか?」

勇者「ああ、うん」

勇者〔……なんだよ〕

魔剣〔この女には気をつけた方が良いぞ〕

勇者〔何を言って――〕

魔剣〔不純な魔力が充満しているように感じる〕

勇者〔またお前の勘か。言っておくがこれは試練じゃないぞ。絶対に勝手な行動を起こすな!〕

魔剣〔……〕

女「話を聞いて、男さんと色々話し合いました」

勇者「あ、うん。それで?」

女「最初は本当、私達が勇者さんとパーティーを組む事になるなんて思ってもいませんでしたから困惑してましたが」

女「漸く、結論を出す事が出来ました」
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 16:59:14.32 ID:3KPe0MDO
爆発発生
全員「痛い」
全員 死亡
終わりだ
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 16:59:37.47 ID:3KPe0MDO
埋め
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 17:00:11.68 ID:3KPe0MDO
埋め
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 17:00:42.82 ID:3KPe0MDO
埋め
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/25(金) 17:00:59.19 ID:3KPe0MDO
終わり
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/

ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
眼鏡うp どなたか…お客様の中で靴下の達人はいらっしゃいませんか!? @ 2010/06/25(金) 16:30:24.98 ID:UjqFi9Qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1277451024/

糞ゲー開発部 @ 2010/06/25(金) 16:03:39.20 ID:0C2/vIAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1277449419/

アニメ版みつどもえの放映期間中はせめて死なないようにしよう〜鴨橋小学校6年3組丸井ひとははロリかわいい〜 @ 2010/06/25(金) 15:07:32.31 ID:w4cqqvA0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1277446048/

セフレ欲しいよな? よし、雑談しよう @ 2010/06/25(金) 14:27:53.04 ID:0yyIZHM0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1277443673/

唯「製速カルーアミルクだよっ」 @ 2010/06/25(金) 12:08:42.95 ID:y2lH9oso
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1277435322/


Powered By VIPService http://vip2ch.com/

568.54 KB   

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)