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【僕と私と】ここだけ組換ロボット世界【HMP】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/01/26(土) 22:43:29.75 ID:rm0P9XuDO
 20XX年、世界有数の技術立国・日本。
 高機動プラモデル――《HMP》は、老若男女のホビーとして空前絶後の存在となっていた。
 HMPとは全高約30cmの小型ロボット。
 頭・胴体・右腕・左腕・脚部の5パーツや手持ち装備を自在に組み合わせ、無限の可能性を発揮する。
 超AIで共に語らい、多種多様な武器で共に戦う、君の仲間だ!

 いよいよ始まる全国大会。蠢く闇。犯罪組織ブルーローズとは。それに立ち向かうEDENとは?
 「ここだけ組換ロボット世界」で、新時代のバトルにダイヴせよ。
 詳しくはウェブで、このURLをチェック!

【雑談】
http://jbbs.livedoor.jp/game/54824/

【wiki】
http://www59.atwiki.jp/kumirobo/pages/1.html
【前スレ】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1343393922/

【前スレ?】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1353168751/
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/26(土) 22:51:04.52 ID:lbca87NAo
というわけで来たぞー!!

きて早々ロールしようぜ!
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/26(土) 23:14:16.09 ID:rm0P9XuDO
ちょっと洗い物とかしてたわー!
やるですか!
4 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/26(土) 23:18:16.93 ID:lbca87NAo
やっちまおうぜ!
舞台とかここがいいとかあったら是非
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/26(土) 23:20:42.84 ID:rm0P9XuDO
どこでもたぶんオッケーよ!
タクミくんとは一応同じチームですし面識はちょっとくらいはあるかも
6 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/26(土) 23:29:40.13 ID:lbca87NAo
おk、じゃあ適当にショップってことで始めちゃおうと思う
しばしお待ちくださいな
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/26(土) 23:31:30.97 ID:rm0P9XuDO
了解ですー
8 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/26(土) 23:42:58.41 ID:lbca87NAo
【どこかのHMPショップ】
街にある中規模なHMP専門店。
今日はやけに駐車場はもちろんのこと駐輪場に置かれている自転車も目に見えて多い
もちろんいつも賑わっていたショップだったがいつにもまして小さな子供とその保護者が多かった。
それもその筈、この時期は子供に祝いの品として初めてのHMPをプレゼントすることが少なくない

「3連ショットガンなんてこっちじゃ売ってるのか、珍しいな」

そんな彼らに混じって少年はパーツの物色していた。
だが子供や大人たちの中だと、ちょうどその中間に位置する黒い学生服を着た少年の姿は微妙に目立つ
成長したからか多少雰囲気が変わっているがその面影は消えていない
彼を知っているものだったらすぐに気づきそうなものだ。
9 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 00:03:11.83 ID:IoTITEuDO
「えぇっと、拓海くん……だよね?ちょっと背ぇ伸びた?」

『たまにしか会わない親戚のおやじか、お前は。
 実際久方振りだが、もっと言うことがあるだろうに』

=横から自信なさげに少年へ声をかけるのは、地区大会で同士として戦った青年だった。
 こちらはこちらで、現在の店内にはあまりいない年代だ。
 多少の気まずさを感じていたところで知った顔を見つけ、これ幸いと話しかけてみた、といったところだ。=

「いやぁ、いきなり 最近HMPファイトどう? とかいうのもなんじゃないか」

『接点がHMPで会ったのもHMPショップ、HMPの話をしてなにが悪い』

……まぁ、確かに。

「……今はパーツの物色中?もしかしてアセン変えるのかな?」
10 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 00:10:39.24 ID:tzFLGscpo
>>9
後ろから自らの名前を投げかけられ拓海はその場で振り返った。
その顔には見覚えがあった、彼の名前を記憶の中から探り出す、そうだ・・・

「麻木・・・さん?久しぶりです」

『麻木ナオヒロ』忘れる訳がなかった
彼は拓海がかつて所属し大会に出場したチームのメンバーだからだ。

「ううん、ただ面白いパーツがあるかどうか見てただけなんだ」
「"向こう"にはないパーツも多いから、日本はHMP先進国だけはあるよ」

そういえば拓海は海外に留学に行っていたのだった。
ここ数ヶ月見なかったのと、雰囲気が少し変わったのはそれが原因であろう

いや、変わっていたのはそこだけではない。
彼が腰から下げているHMP、前ならばそこに居たのは『スチールセイリオス』だった
だが今は違う、光を照り返す黒いHMPがそこに座っていた
少なくとも拓海が留学する前には見なかったはず・・・だ
11 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 00:30:04.88 ID:IoTITEuDO
>>10
『成る程、冷やかしか。ナオヒロもよくやっているな』

「リサーチと言え、リサーチと。
だってパーツ見てるの楽しいからね。ちょっと時間潰すのにいいし」

【リサーチでも冷やかしでもやってることは変わらないだろうよ。
 確かに冷やかしだと聞こえは悪いがな】

『で、向こうにはない、日本は、と言うのはどういうことだ』

「あー、確か、聞いた気がする……。えーと、確か留学してたんだっけ?」

『ほう、ナオヒロは日本から出たことないというのに。
 タクミの方が羽ばたいてるな。
 ……で、その腰の奴は新しいHMPか?《スチールセイリオス》とは系統が違うな。
 留学先のモデルか?』

=ひょこっとナオヒロのカバンから顔を出したルリがタクミの全身を一通り見て質問を投げる。
 そういうルリも、《マスカドンナ》のものとは違うものになっているが。=
12 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 00:40:09.64 ID:tzFLGscpo
>>11
「コイツ?まぁそんなとこかな」

腰に下げたHMPに手をかけて軽く持ち上げてみせる。
ホルスターの隙間から見えるレッグにはセイリオス同様にホイールが
そして両腕が前腕が巨大であることが見て取れたがこれといって見える場所に銃口や刃物はない。
まるでデータにないHMPのはずだ

「麻木さんのHMPもカスタマイズされてるみたいじゃん、お互い様お互い様」

ヘッドを出したルリの姿を見た拓海はそう返した、確か前までは女性執事型のHMPをベースにしていたはずだ
自分が居ない間にもそれぞれ自機を強化していたということだろう……

「そうだ、せっかくだからバトルしようぜ」
「パーツはただ物色してただけで買おうって訳じゃないんだ」

ルリがどんな姿になったのか気になったのか、拓海のほうからバトルの提案を申し込んできた
そもそもコイツの実践データを送る必要があるし、彼ならば対戦相手としても申し分ないはずだ。
そして何よりも昔の知り合いと戦ってみたいという感情が拓海の中にあった
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/27(日) 00:40:53.09 ID:IoTITEuDO
//ルリの改変設定はまだ投げていないのでした。
//取り敢えず頭部パーツ分を

//【HEAD】フェーダ
羽根をあしらった流麗なヘッドパーツ。
《ヴァルキューレ》はトイタイプのHMPだが、リアルタイプに近い女性的な顔を持っている。
しかし鼻から上はバイザーの下にあり、外からは視認することが出来ないようになっている。
ただし、起動時や特定のタイミングでカメラアイが発光する“分かってる”ギミックが搭載されている。
14 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 01:02:40.03 ID:IoTITEuDO
>>12
「格闘型……なのかな?」

見たことないモデルだ。
あの巨大そうな腕はどのような運用をするのだろうか。
レッグのホイールによるスピードと巨大な腕による殴打の一撃翌離脱戦法を取るタイプ……外れてそうだなー。

「俺のもカスタマイズっていうか、乗り換えかな」

『……このように、今は空を主戦場にさせてもらっている』

=ナオヒロがカバンを開くと、充電コードを延ばしながら飛び上がる白と白銀のHMP。
 小型フライメック、《ヴァルキューレ》だ。

 《ショックラッシュ・レフト》や《マスカドンナ・ヘッド》のような癖のある武装はないが、フライメックに似つかない頑強差を持っている。=

「いいよ。俺も乗り換えたばっかりで、経験積みたいと思ったんだ」

『そちらのHMPも気になるところだしな。受けて立とう』

=こちらとしても願ったり叶ったりな申請だったようだ。
 カバンからタブレットなどを取り出しながら、足をフィールグラムへ向けて歩き出す。=
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/27(日) 01:05:40.74 ID:IoTITEuDO
//ETCがまだ書いてなかったのですがご勘弁を

【TYPE NAME】ヴァルキューレ
【HMP SIZE】27cm
【HMP TYPE】フライメック
【HEAD】フェーダ
羽根をあしらった流麗なヘッドパーツ。
放熱用の髪状パーツは飛行時に邪魔にならないよう、肩上で切りそろえられている。
ヴァルキューレはトイタイプのHMPだが、リアルタイプに近い女性的な顔を持っている。
しかし鼻から上はバイザーの下にあり、外からは視認することが出来ないようになっている。
ただし、起動時や特定のタイミングでカメラアイが発光する“分かってる”ギミックが搭載されている。

カメラアイは動体視力と立体視に特化した猛禽の目を参考にしたものを搭載している。

【BODY】フリューゲルス
形状をシンプルにすることで強度の維持と軽量化を図ったボディパーツ。
一部の関節や、分割装甲の採用を見送ったために動きはしなやかとはいえないが、同重量のフライメックパーツと比べてかなり高い防御力を手に入れた。

飛行の為の笹葉型ウィングバインダーは腰から生える形で配置されており、腕の動作を阻害しないようになっている。
ウィングバインダーには小型のスラスターが各1つずつ配置されていて、動作制御に用いられている。
メインスラスターは背面の腰中央に1つで、上下へ稼動する。


【L.ARM】ウムアルムング
フリューゲルスと同じ発想で作られた堅く軽いアームパーツ。
前腕部を覆うように卵型のシールドを装備している。

シールドは大きさの割にはやや重量があるものの、硬い上に柔軟性もある為破損し難い。
実弾、エネルギー防御どちらにも対応しているマルチ盾。
サイズが小さいのが玉にきず。

5指型マニピュレーターもそれなりに器用。

【R.ARM】ズィーク
腕の形状はウムアルムングと同型。
盾を装備しない代わりに近接戦闘を重視した刃渡りがやや長く、代わりに束がやや短い槍を装備している。
石突きをワイヤーで射出することでき、奇襲や射程外の敵への牽制を可能にしている。
敵を捕縛することも不可能ではないが、槍という形状なのであまり利点はない。

【LEG】シュリット
太股から足先までが殆ど大差ない太さの軽量レッグパーツ。
膝には飛行時に生じた風を取り入れる為の口があり、それを足裏、若しくは脹ら脛から排出することで姿勢制御補助にすることができる。
潰した六角形のような板状の脚部は筒状になってはいるが構造がシンプル故に頑丈で、ゆっくりとした歩行程度ならば可能。
16 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 01:20:44.44 ID:tzFLGscpo
>>14
「ヴァルキューレ、格闘寄りの人型フライメックか」
パーツの配置と名前からルリがどんなマシンなのかを判断したのだろう
初心者同然だったパーツの知識も留学を経て大きく成長したらしい。

「OK、じゃあ行こうぜ!」
二つ返事で返してくれた麻木達に、こちらも嘗てと変わらぬ元気が伝わってきそうなハリで返す
フィールグラムへと向かうと、麻木と向かい合うようにして立つ


「クロムケルベロス"ザヘッド"、スタンバイ」

彼が引き抜いきフィールドに配置した黒いHMP……やはりカタログ等では見たことがないだろう
なぜならば拓海が独自に改造を繰り返し原型がほぼ消え去ってしまった、実質ワンオフなのだから

立っているその姿を見ても、HMPに目に見える武装らしい武装はない。
この巨大な前腕に格納しているか、そのものが武器だということか

『……リョウカイ』

拓海のその呼びかけに対し、ザヘッドと呼ばれたHMPは初めて声を出した。
今まで麻木やルリに声をかけられても、拓海がホルスターを触っても一切喋ろうとしなかったのにだ

『戦闘ジュンビ完了、オペレーションモード』

淡々とした口調で事務的に言の葉を並べる、拓海が前に使っていたガブルとは正反対のAI
その返答を聞き頷く拓海が操作するタブレットも、普通のタブレットとは明らかに違った。
グリップが追加されているのはよくあることだが、ディスプレイが上と横に追加されて3画面になっているのだ
あれではHMP操作用ではなくモニター用としての毛色のほうが強い

『スタンバイ』

「フィールドはランダム?俺はどっちでもかまわないよ」
17 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 01:50:30.74 ID:IoTITEuDO
>>16
「こういう系統に移行しようと思っててね。
フライメックは初めてだから、まずは多少被弾しても大丈夫なこいつで、ってな感じかな」

拓海くんに返しながらファイトの為の準備を進める。
ヘッドセットを装着し、タブレットの各アプリをオープン。
そして充電コードを引き抜きルリをフィールドへ解き放つ。

「拓海くんのHMP、成る程ケルベロスね。
ロマンとしては、腕の顔には隠し武器とかありそうかな」

格闘型なら、パイルバンカーやハンマーのような一撃の大きいものだろうか。
特にパイルバンカーなら噛みつきとの親和性も高いだろう。
……噛みつきが出来るかわからないけど。

『ふぅん、なかなか無骨なHMPだな、AIもだが。
 語らないのは必要がないからか、――言葉がないからか』

=言外に、獣染みた姿を挑発する。=

「こら。
……そうだね。ランダムでいこうか」

拓海くん、面白い端末を使っているな。
あの3枚のディスプレイも、ケルベロスということなんだろうか

=未知のHMPへの期待と緊張をない交ぜに、ナオヒロはフィールグラムを起動させた。=

//コンマ
0、9 雪原
1、8 草原
2、7 廃工場
3、6 遊園地
4、5 森林
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/27(日) 02:01:52.35 ID:IoTITEuDO
//森林
//足下には落ち葉、木の根、草花。
 頭上は枝葉が覆う障害物の多いフィールド。
 木々は程々に太く、背も高い。
 所々獣道のように草の少ない箇所はあるものの、木々に阻まれ曲がりくねっているため通るのは骨が折れるかもしれない。
 見通しが悪いため、視覚以外のセンサーを生かすことが必要。
 木々をいかに利用するかが勝利への別れ道になる……かも。
天候は曇り、アクティブオブジェクトの動物などは無し。
19 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 16:11:31.09 ID:tzFLGscpo
>>17
『……』
「いーやコイツはただ無口なだけさ」
ルナの挑発に対し、ジヘッドは一切の反応を見せない。
かわりに彼のパートナーである拓海が答える、どうやらAI自体の性格の問題らしい

突如としてフィールグラムのただ平面だった風景が揺れた
下から何かが伸び始め、大地が補整されていないデコボコしたものへと変わりはじめた。
完成したのは木が生い茂る【森林フィールド】
葉が光を遮断するため暗く、密集した木々が動ける範囲を狭めている

「おっ、どうやらフィールドはこっちが有利みたいだ」
ケルベロス型ということは拓海のHMPは犬がモチーフ、森林はお手の物ということだろう
地面が悪路であったとしても、歩行ではなくホイールで走る彼のマシンはその障害を難なく乗り越えるはずだ。
しかしルリと向かい合うクロムケルベロスは未だ両腕をだらんと下げたまま動こうとしない。

いや、ピクリとその両腕が動きはじめる
ゆっくりと持ち上がっていくその前腕は、やはり予想通りと言うべきか犬の頭であった。
肩まで左右の頭が上ったとき、それぞれの両目が突然赤く発光する
そして中心に位置する本当のヘッドもバイザー越しのツインアイが輝いた。

『グオオオオォォォ!!』
両腕の頭が大きく口を開き、同時に雄たけびがフィールグラムに響き渡る
臨戦態勢に入ったケルベロスは中腰よりも更に下まで体を倒し、まるで今にも飛び掛ろうと地に伏せた獣のような姿。

「行くぞジヘッド!」
その掛け声を皮切りに、ケルベロスの両肩のスラスターが後方を向いた
背に付けられた3つの推力装置と合わせ5つの光が噴出し、地に付けられたホイールによって後方へと土が大きく吹き飛ぶ。
目の前のヴァルキューレへ向かって、邪魔なものをなぎ払いながら一直線に接近を仕掛けてきたのだ
見た目どおりならばそれなりの重量があるであろうに、地上での機動力でそれを帳消しにしているらしい

『モクヒョウ駆逐!!』
突き出した両腕の頭に並んでいる鋭い無数の牙、実際の獣同様これもケルベロスの武器なのだろう
大口を開き力強く唸る顎門を振りかざし、ヴァルキューレを噛み砕こうと襲い掛かる
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/27(日) 17:25:00.78 ID:IoTITEuDO
>>19
「番犬と言うより、猟犬か闘犬みたいだ」

【猛る相手HMP、ジヘッドを見て、ナオヒロが零す。
 言わんとするところはわからないでもない。
 と、次の瞬間には奴の背面の景色が揺らぐ。
 火蓋は切って落とされたというわけだ】

『ここの空は狭いが……生憎私の体も小さいからな、動きが完全に阻害されるということはない』

言って、ルリは飛ぶ。
突撃が始まると同時にその体は宙へと浮き上がっていく。
羽を窄めた姿は窮屈そうだが、飛び上がるの基本姿勢だ。
ジヘッドを見下ろしながら、カウンターのタイミングを見計らう。
この機体に一発逆転はない。
勝機は一度も逃せない。

「こっちがフライメックだと分かってて、単純な突撃を繰り出すようなことは無いよね。
距離は離しすぎないで、でも」

『分かっている。近付きすぎるな、だろう?』

【どのみち枝が邪魔でそこまで高くは飛べん。
 ……しかし、1つくらい遠距離武器があっていいな。
 未知の相手に牽制の打ちようもないのはなかなか苦しいものがある。】
21 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 17:47:36.54 ID:tzFLGscpo
>>20
「クソッ、飛ばれた!」

電光石火の初撃はかわされてしまった
飛行機能を持つフライメックを相手するとなると、やはり敵が飛ぶ前に落としてしまいたいところだったのだが
さすがにそうはやらせて貰えない様だ。

「だけど上は枝と葉が覆ってる、高度は高くないはずだ……!」

ここは森林フィールドなのだ、木々を突き抜けて上空まで上がってしまうと逆に葉が地面を覆ってしまう
となれば無闇に高高度まで上がるなんてことはないだろう。
森に生えた木自体の背が高いので飛ばれるのは致し方ないが、手が届かないなんてことはないと思いたい
そして相手の武器は見た限りランス、攻撃してくる際は接近する必要があると見た

「ヒバコニーチ展開!」

ならばこちらの取る攻撃手段は決まったも同然、拓海の声に続くように右の頭が口を開く
先ほど噛み付いてきたときよりも大きい、開いた口がそのままルナの方向へと向けられ……

そこから何かが競り出てくる、円筒状の物体に銃口5つが取り付けられたガトリングガンと呼ばれる代物
なんとそれを更に3つひとまとめにした、化け物じみた重火器が姿を現したではないか!!
考えればスチールセイリオスも槍とライフルを合わせた武装を持っていた。
拓海が使用しているとなれば"その流れ"を汲んでいてもおかしくはなかったのだ

『掃射カイシ』

3つのガトリングがそれぞれ回転を始めてそれぞれの銃口が火を吐き出す
連射力が売りであるそれを3つも使っているのだ、1つで雨ならば嵐を超えて吹雪だろうか。
掃射というジヘッドの言葉通り圧倒する質量の銃弾と、木々を揺らすような銃声が駆け抜ける!
22 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 19:03:31.16 ID:IoTITEuDO
>>21
「……え、ぇええ!?」

『圧倒的な暴力、という奴だな……』

1発ではそこまでの威力が無くとも、連射されれば手痛い。
それが15ともなれば、例え《ヴァルキューレ》でなくとも10秒と形を保っていないだろう。
射線上には、いてはダメだ。

【左腕を前に出し、ボディとヘッドを狙う弾丸を遮らんとする。
 この小盾ではボディ、ヘッド両方を守りきることは出来ないが、こんな規模の射撃は想定外だ。言っても仕方ない。
 上空へ飛び、枝を盾にすることも考えたがそれでは負けないだけだ。
 勝てもしない。
 どの手を打てば、勝てるのか】

今ルリは距離を保ちながら左右上下に飛び、なんとか射線から逃げようとしている。
しかし相手の銃口は腕そのもの、通常の銃器以上に稼動域は広い。
逃げるのは無理に近い。今もダメージを伝えるウィンドウが止まらない。
捨て身の突撃、しかし相手の腕はもう1本。《ヴァルキューレ》は脆い。
ルリには悪いが、一旦逃げを打ってもらうしかない。
あれだけの連射なら、冷却も必要になるはずだ。

【……ナオヒロから指示がきた。
 ここは従わざるを得ない、な】

=ルリは高度を上げ、太めの枝の陰に回り、銃撃が止むタイミングを待つ=
23 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 19:26:09.81 ID:tzFLGscpo
>>22
防御しつつ逃げ込もうとするルリに照準を合わせ、追従するように銃身が動く
だがその姿はすぐに木々の裏へと消えてしまった

「隠れたか……」
陰に隠れたルリを炙り出すかのように、その木へと連射を続行する。
押し寄せる弾丸は木の表面を削り抉り、穴だらけにする勢いだ
ある程度続けたところで、それでも顔を見せてこないからか放火が一旦停止した。

『冷却カイシ』
口から銃身を突き出した右の頭、その左右の頬にある毛をイメージした山形の部位
6つのそれスライドして伸び、排熱口を露出させると一気に白煙を排出する。
どうやら形だけは頭だが、その中身は武器として複雑にかみ合っているらしい

『冷却完了マデ6…5…』
拓海の持つタブレットのサイド画面にはその状況がありありと示されていた。
麻木の読み通り冷却するにはそれなりの時間を要するらしい、一応展開した銃身を木へと向けたままカウントを開始した
とはいえ今の所のジヘッドの性格を考えれば、冷却途中でも発砲してきてもおかしくはないだろう
24 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 20:27:55.80 ID:IoTITEuDO
>>23
【なにも打つ手のない、狩られる側の心境というのは気がめっきり滅入る。
 絶えることのない銃声に、人間ならばこの時が悠久に感じられ、言いようのない恐怖に心が沈んでいくのだろう。
 機械の身で良かった、と言ったところか】

ルリは焦りを見せるかと思ったが、意外にも落ち着いた様子だ。
自分が焦れば俺のプレッシャーになることを分かっているのだろう。

【と、鳴り止む銃声。】

冷却時間なのか、こちらが顔を出さない為に無駄撃ちだと判断したのか。
兎も角、いまやるしかない。
相手の左腕にも同様の武装があるだろうが、やらねばなるまい。

【ナオヒロから指示がくる。
 始まって早々だが、ここで決めるつもりのようだ。
 実際、弾丸の嵐によってウムアルムングは面を破壊され、激しく変形している。
 この様では到底第2射は耐えられない】

『さぁ、幕を下ろそうか!』

【枝を蹴り、スラスター推力に重力を合わせ一気に落ちる。
 ジヘッドへと向かうようにウィングバインダーを調整し、槍を――――投擲する。
 これを決め手にする訳ではない。
 無論、決め手になればそれに越したことはないが。
 本命はいつも通りの、特攻だ】
25 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 20:36:24.36 ID:tzFLGscpo
>>24
『ドウタイ感知』

視界の中に動く物体を確認したからかすぐさまそちらに銃口が向けられた。
冷却途中などお構いなしに右腕のガトリングが吼える

「!! コイツはおとりだ!」

銃弾の吹雪を浴びせた相手の異変を、拓海はすぐさま理解した
迎撃して打ち落とそうとしていたのはルリ本体ではなく、手に持っていた槍―――

向けられていた銃口をそらす、シンプルながらも有効な手段。
特に獣をモチーフにしたザヘッドのAIはそういったものに敏感だ、そこを突かれた

その言葉で気づいたザヘッドはホイールを地面に押し付け後退を開始する
26 :麻木 [sage]:2013/01/27(日) 21:04:53.45 ID:IoTITEuDO
>>25
【槍は落とされた。
 ならば次だ】

=ルリの左腕のジョイントが解除され、盾がフリーになる。
 それを右手で掴みとるとフリスビーのように投擲。
 こちらは攻撃のため、というよりは弾丸を逸らすためのデコイにするようだ=

【激突時の体勢は蹴り落ちる状態を想定しているが、相手が下がり始めた。
 それによって当初の想定より威力は下がってしまっただろうが、まだ調整でどうにかなる位置だ。
 相手のガトリングも3秒程度ならば耐えられる。
 激突まではもう5秒、いや、6秒か?
 行けたところでやれるとは限らないが、行けなければ可能性さえ潰える。
 届くか?】

『――――届けぇ!』
27 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 21:22:03.76 ID:tzFLGscpo
>>26
再び視界に見えた動体、だが今度は発砲しなかった。
それが投げられたシールドだと気づいたからだ、さすがに同じ轍は踏まないということか
すぐさま次の動体へとカメラを移す、今度はルリ本体で間違いない
銃口が唸り弾幕が再び展開される……が

『オーバーヒート……!』
冷却途中で打ち始めたのが裏目に出たか、排熱処理が追いついていない。
このままではガトリングが止まってしまうのも目に見えている

「……だったらこれしかない!」
諦めたのかオーバーヒートする前に発砲を止め、銃身を格納し右腕を構えて迎え撃つ体勢を取った
28 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 21:40:21.82 ID:IoTITEuDO
>>27
=激突。
 ナオヒロの手元、タブレットのDVNOには損傷度を示す表示が流れており、どうやら脚部は4割破損。
 左脚の膝から下は幾本もの大きな亀裂が入り、細かな欠けもある。
 右足も罅や間接の異常が見られる。
 重量の差が、激突の際の威力の差だ。
 子供が全力を持って大人にぶつかろうと跳ね返されてしまうように。
 ジヘッドの腕に阻まれて、ルリの特攻は失敗に終わった。
 今、ルリはジヘッドの前で横たわった形で墜ちたままだ。
 武器もなにもなくなった。
 しかし、システムが終了を告げない以上、試合は終わらない。=
29 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 21:56:35.29 ID:tzFLGscpo
後方に下がっていたのもあり、激突の衝撃がザヘッドを後方へと引き摺られる
大地に踏ん張った痕がガリガリと刻み込まれた。

《R.ARM:DAMAGE―――100%》

右腕を盾にすることでその攻撃を受け止めること自体はできた。
代償として丸々くれてやることになってしまったが、これは仕方がない出費だ
確実に反撃するための防御、それが拓海の取った行動だった。

敵攻撃による被害がどれほど受けるか分からない以上リスクはあったが
耐える事さえできればそれを上回るメリットを得ることができると判断したからだ。

『……』
地に落ちたヴァルキュリアへと右腕を垂れ下げながら地獄の番犬が近づいてゆく。
そして今まで一切の動きを見せなかった左の首が動きを見せた。
右腕の中にガトリングが入っていたのだ、となると左腕の中には……

「ザヘッド、テールバトンだ」

その行動を見ていた拓海が指示を挟む。
左腕が下ろされると変わりにケルベロスの動体についていた尻尾が第三の腕のように動き

尾の先端にある3つ爪の中央から銀色の突起が飛び出してくる、プラグか何かに見えたそれは突如としてバチバチと帯電を始めた。
中央にスタンバトンが内臓されていたのだ、尻尾はそのままルリへとスタンバトンが押し付けた
30 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 22:24:33.00 ID:IoTITEuDO
>>29
『――――――――――!!!!!』

=ルリの損傷度がじわりじわりと上昇していく。
 麻痺と共に全身を焼くようなダメージがルリに生じる。
 なぶり殺し。
 行くことも、引くことも出来ない。=

ルリが逃げることを想定して麻痺させよう、ということなのか 、これは。
勝ちを確実にするのはなにも間違ってはいない。
拓海くんが留学した先で学んだことなのかもしれない。
だから、きっとすぐにルリにとどめを刺すのだろう。
それか、気を使ってかルリのパーツ破損を減らすのが目的なのかもしれない。
だとすれば別の方法を提案しないといけないな。
長時間の電流攻撃はAIはHMPの負担になることを教えなきゃいけないかもな。

=ナオヒロはどこか逃避していた。
 ある1つの可能性から。
 まさか、星野谷拓海はそんなことをするファイターでは無かったはずだ、と。=
31 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 22:38:22.91 ID:tzFLGscpo
>>30
「バトルは終わりだ、麻木さん」
ジヘッドはスタンバトンによる攻撃を停止する

『……』
ジヘッドは何も口にしない、むしろ口にする言葉はないという事だろう。
それはこの状況に対して口が重くなったという事ではない、ただ純粋に口にする言葉が無いのだ
32 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/27(日) 23:05:07.88 ID:IoTITEuDO
>>31
「プレイヤーキャラが全員石化、みたいな状態だもんね。
フィールグラム側はまだ続行可能と見てるようだけど、棄権させて貰おうかな」

=ナオヒロは自身の、悪い方へと考えすぎる点を少し忌々しく思いつつも、フィールグラムに棄権を伝える。
 システムメッセージがルリの敗北を伝えて数秒後、フィールドが宙へ溶けていきフィールグラムはただの平台に戻った。=

ルリは言葉を発さない。
システムの復旧中なのだろう。
取り敢えずはルリと拾い上げた槍と盾をメディカルポッドへ放り込む。
損傷の度合いから言って少しかかりそうだ。

「クロムケルベロス、だっけ。
強いね、手も足も出なかったよ」

=少し眉を下げた笑みの顔でナオヒロは拓海に言う。
 《ヴァルキューレ》に乗り換えてからの戦闘経験が少ないとはいえ、酷い負け様だった。
 そんな感じに思っているのだ。=
33 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/27(日) 23:27:45.74 ID:tzFLGscpo
>>32
「バトル終了……」
木々生い茂る大地がフィールグラムの解除によって何も無い平面へと切り替わってゆく。
戦闘が終了したからかジヘッドはバトル前同様の沈黙に戻ってしまった
言葉を発さない理由はルリとは違う、こちらはただ会話する必要が無いから喋ろうとしないのだ。

「いいえ、バトルありがとうございました」

何の変哲も無いバトル後の会話だが、ほんの少しだけ唇を噛み締めていた。
あの時テールバトン以外に適切な武装が備わっていなかった。
それに確かにデータは取れた、だがデータを得た代わりに拓海自身何か大切なものを失ったように感じていた
居た堪れないという気持ちが彼の中でズキリと痛む

「またバトルしよう」
麻木と同じく拓海もまた無理に作った笑顔を向けていた
34 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/28(月) 00:10:12.75 ID:G+9INYUDO
>>33
「分かってたところもあるけど、色々と見直すべき点が出てきたからね。
今回のバトルはいい経験だったよ。
ありがとうね」

修復の終わったルリをメディカルポッドから回収し、DVNOでチェックの結果を見る。
特に問題はなかったようで、数秒後にはルリのカメラアイに光が灯る。

『――ふぅ、自分がやられてみるとなかなかキツいな、スタンというものは』

首を回して見せながらナオヒロの肩に飛び乗る。

『タクミよ、今回は負けたがこれが私達の実力だと思うなよ。
 今回はナオヒロが私の構成を生かしきれなかったのが悪いだけで、本来ならこんなものではない』

「言うなあ……」

=先程とは違った理由で笑みになりきらないナオヒロであった=
35 : ◆yDPreyZ7h6 [sage]:2013/01/28(月) 00:24:49.39 ID:vFcUtiAzo
>>34
「うん、こんなもんじゃないって肝に銘じとくぜ」

ルリの言葉に対し、笑いかけながら返事をしてみせる
麻木とルリのコンビを見ていると、パートナー同士の信頼というものを身に染みて感じていた。
今の自分には無くしてしまったものだからだろうか

「それじゃあ麻木さん俺はもう帰るよ、またね!」

何も語らない自らのパートナーをホルスターにしまい、タブレットを折りたたみ鞄の中に落とす
手を振りながら去っていく背中はどこと無く寂しかった
36 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/01/28(月) 00:56:10.30 ID:G+9INYUDO
>>35
「うん、それじゃあまた」

『さらばだ、タクミ』

=去っていく拓海の背中を見送った2人。
 と、拓海の姿が見えなくなるとなんとなーく雰囲気が変わる=

「拓海くん、留学先で何かあったのかな?」

『さぁな、HMPが変わっていたのが気まぐれでないとはいえん』

「でも、最後に止めささなかったの……なにかあったとしか」

『……ま、子供とはいえあまり踏み込んでやるべきではないだろう。
 少なくとも向こうがシグナルを出すまではな』

「……そうだね。取り敢えず今は武装のことかな」
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/01/30(水) 20:45:11.79 ID:v5NfEwJDO
まだ止まってはいかんだろう
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/01(金) 16:44:58.26 ID:IuVBU+hDO
復興するんじゃなかったのか
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/12(火) 16:34:50.27 ID:3VKUrsaDO
こっちで言った方がいいかな?

とりあえず停止状態を脱却したいよ
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/12(火) 17:50:58.49 ID:Y/e5LtnDo
なかなか時間が取れなくてなぁ
動きたくはあるんだけどね
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/12(火) 18:57:09.43 ID:GhgWf9gEo
上に同じく、時期が時期だからねぇ
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/12(火) 19:36:36.90 ID:3VKUrsaDO
やっぱり忙しい人多いのよね…
活発に動ける人が欲しいけどロールがないと人数増やすに増やせないよなぁ
43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/13(水) 19:57:45.37 ID:0Vlm635DO
平日ど真ん中でもロールできるという猛者がいる可能性は
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/14(木) 10:23:09.51 ID:j8dca83go
置きレスにしよう
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/15(金) 15:26:00.39 ID:QxoF281DO
今は忙しい人が多いようだし、それもやむ無しかなぁ
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/18(月) 10:09:44.08 ID:BNFEwAYco
誰ぞある?
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/18(月) 11:24:25.21 ID:4W6JDWmDO
明日なら…
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/18(月) 22:34:23.69 ID:4W6JDWmDO
明日もぶち込まれた…
出来ても置きレスになると思います
49 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/18(月) 22:58:03.98 ID:BNFEwAYco
それでも動かないよりいいでしょう!
明日辺り投下するっす
50 :羽麻リリカ :2013/02/19(火) 22:48:45.04 ID:etf/AJjao
受験シーズンもほぼ終わり、人でごった返すホビーショップには、少し場違いにも思える少女がいた
藍鼠色の着物に、薄茶の帯を締めた彼女は、この時代着物が珍しいということを含め、その立居振舞で少し浮いていた
現在いる場所がホームのショップではないということもあり、周囲の目を惹いている

「撒けました?」
「たぶんな。パターンに掛かる足音はない」

そんな彼女はいたってマイペースに、肩に乗った相棒に話しかけた
紫の着物を纏ったそれは、絡新婦である
その臀部にサブレッグを装着しているため、少々不恰好だが

「まったく、おじさまにも困ったものです……さて、今日は遊びますよ! 紅愛」
「おうとも」

と、意気込んだのはいいのだが、生憎とホームではないためにローカルルールなどがわからない
ど、どうしよう?と少女は右往左往していた
51 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/02/20(水) 00:23:20.72 ID:c6BK8u7DO
>>50
「目立ってるね、ぇー……羽麻さん、?」

右往左往する様に今時物珍しい着物姿、更に年不相応な感のあるHMP(しかもこれまた着物姿)。
これだけの要素があれば目立たない方がおかしい。
あれだけキョロキョロしているということは、ここは彼女の学校の友達などがいない、言わば縄張り外のショップなのだろう。
そこで、このままではワルい人の目に付くのも時間の問題かと、つい声をかけてしまったが彼女は俺のことを覚えているだろうか?
覚えていなかったら、俺こそがそのワルい人になってしまうのでどうにか覚えていて欲しいところ。
そう言えば以前は敬語で話していた気もするが、そういうことに気付くのはなぜかいつも声を出した後だ。

「えーと、俺のこと覚えてるかな?
あ、いやいや、一回ちょっと話しただけだから覚えてなくても全然大丈夫。
覚えてなかったらごめんね、声掛けて。
このまま退散するから通報はしないでほしいかな……!」

『…………』

【スリープから復帰したらナオヒロがなにやら不穏なことをまくし立てている。
 状況が把握できていないが、これはもしかしてナオヒロ……。
 いや、自分の主を信じなくてどうする。
 ……いや、主の間違いを正すことこそが正しい姿勢か?
 いやいやその前に状況の把握か、先走るのはまずい】

=ルリがひょっこりと鞄から顔を出す。
 その頭部はガッカリHMPこと《ヴァルキューレ》のものだ。
 以前ナオヒロがリリカとあったときにはルリの頭部は《マスカドンナ》のものだった。
 そのため、HMPで人を覚えるタイプの人間に対しては混乱を与えるどころでなく、赤の他人認定を押させてしまうだろう。
 果たしてリリカはそんなHMP狂いの人間なのか、それはナオヒロもルリも分からなかった。
 そもそも、ナオヒロはルリが顔を出したことに気付いていないし、ルリは状況そのものが分かっていないのだが。=
52 :羽麻リリカ :2013/02/20(水) 14:24:06.92 ID:J94wrgcLo
>>51
「!」

突然声を掛けられたリリカの反応は、イタズラをしようとしていた小動物のそれに似ていた
ざ、とその場で反転した彼女は、ナオヒロの顔を見てほ、と安心の吐息をした

「麻木さん、ですよね? こんにちは」
「うっーす。なんかビビってんのは追跡者がいるからだ、気にしないでくれよなー」

少しぎこちなさのあるマスターとは対照的に紅恋の対応はラフなものである
おそらくは、足音なりでアタリをつけていたのだろう

「足を伸ばしてきたのはいいものの、どうしたものかと思っていたところなんです……
麻木さんは、こちらにはよく?」
53 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/02/20(水) 17:44:25.43 ID:c6BK8u7DO
>>52
【この反応、クロだったのか……!?】

あぁ、終わったかもしれない……。

=リリカの反応に1人と1機が絶望しかける。
 が、その後に続いた安堵の吐息でどうにか持ち直したようだ。
 そのときになってやっと、ルリもリリカの顔と記憶素子の中のデータが結び付く。=

『ああ、なる程』


「そうそう、覚えててくれてありがとうね」

助かったよ、と続けるのは格好悪い気がするので止めておく。
それより気になるのは、紅恋が口にした、

「追跡者……?」

鬼ごっこというわけではないだろう、多分。
まさか本当にワルい人がいたのだろうか。
この格好だもんなぁ……親御さんもいないのなら、ワルい人からすれば格好の的なのかもしれない。

「……警察に通報はしたのかな?」

取り敢えず無難なことしか言えないのは格好悪いな。
ランカさんあたりならウィットでバイオレンスなジョークを飛ばしてみせるのだろうけど。


『私達もこの辺にくるのは時々、だな。
 色々と店舗を回るのが趣味みたいなところもあるからな、こいつは』
54 :羽麻リリカ :2013/02/21(木) 01:36:35.27 ID:+lIQf6hP0
>>53
『あはは、通報なんてしたらあいつらの営業妨害だわなぁ』
「追跡者、という言い方は語弊がありますね……
 正確には……その、なんというか、いわゆる、SP、というか、お付きの人といえばいいのでしょうか」

 ホビーショップの中で浮いていることからも察せられると思うが、リリカはそこそこのお嬢様である
 SPの一人や二人、いても当然というか、防衛のためには必要なのである

『まー、前は付いてなかったんだけどな。いろいろあってねぇ
 つっても、主因は成績の低下だけどねぇん』
「ちょ、紅恋!」

 遊びにのめりこみすぎて学業が疎かになる、というのは誰しも一度は経験することだと思われるが、
 ちょうど目の前のお嬢様はそれを今経験しているところなのである
 そして、そんな子に待っている罰といえば、お遊びの時間没収と、数千年前から相場が決まっているのだ

「あ、あれは、ただ、山が外れただけで……」
『ま、順位が二桁に落ちたってだけで没収する親も親だけどねぇ』

 子供の本分は学業である
 遊びを通じて得るものも多いが、やはり、学業が第一、という観念は捨てきれないだろう
 特に、彼女はお嬢様学校に通っているのであるからして、色々と学ばなければならないことも多いのだ

『んまぁ、そういうわけでだ。子供なりに考えた嘘でどーにかこーにか相手を撒いてきた、ってわけ』
「悪いことをしたとは思いますが、反省はしていません」

 はぁ、と吐息すると、話を元に戻して

「では、このお店のローカルルール、とかも把握していますか?」
『バトルロイヤル台、とかあったりするらしいからねぇー。一応、初心者としてはサシで腕を磨きたいところなんさ』

 大人数の中での立ち回り、というのもいずれは磨かなければならない技術だが、今、そこまでのものを積む必要はない
 と、そこでリリカがあることを思い出した

「……そういえば、以前お会いしたときに、手合わせの約束をしていました……よね?」

 ご指導、願えますか?と小学生から下から覗かれてみた日にゃ、なかなか断り辛い空気があるというものだが
55 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/02/21(木) 15:42:55.18 ID:QI5OZQgDO
>>54
おお、お嬢様だ。
着物の生地のことなんて分かりはしないが、高そうだなぁ程度のことは感じられる。
更に会話を交わせば、ある程度この子が良いところの娘さんなことも想像できなくはなかったか。
じいやみたいな人がいてもこれまた不思議じゃない。
しかし追跡者改めSPは「あいつら」ということで複数人いるわけで。
もしかして想像より更に良いところの娘さんかもしれない。
SPの人達に今見つかったらちょっと怖いなー、と思ってしまうのはしょうがない筈だ、うん。

「成績落ちちゃったかぁ……。
君くらいの年なら勉強以外に興味を持つのも大事なことだと思うけど、ま、それはそれか。
聞いた感じだとSPというよりお目付役、なのかな」

逃げて来ちゃってよかったのだろうか。
これは後が怖いパターンなのではないだろうか。
羽麻さんは勿論、SPの人達も。


『2桁……つまり1桁常連だったのか……』

【小学生程度の勉強であっても、少し成績が落ちた程度でSPを付けるような親の元だ、学校も力の入ったところに通っているはず。
 その中で1桁をープしてきていたのなら、急に2桁に落ちたのは親としてはショックもあったのだろうな。
 対応はやり過ぎなのかもしれないが、紅恋が没収されていないあたり、ただの堅物と言うわけでもなさそうだ】

反抗期……なのだろうか。
成績が落ちてしまったは羽麻さんの落ち度なのだ。
しかしそれに対する親の対応が意に反していたからこちらから折れたくない、と。
うーん、反抗期なら外から口出ししないほうがいいのだろうか。

『ほほう、リリカは悪いことをして何とも思わない子供ではないと勝手に思ってが、やるものだな』

おいちょっと。
そんな挑発のような嫌味のようなことを……。

「あーと、ね、この店だとポイントゲットマッチ台があったかな。
相手の頭部、胴を破壊すると2ポイント、それ以外を破壊すると1ポイントがゲットできて、試合終了時点での持ち点が多い方の勝利っていう。
防御の低い軽量機だとポイントとられやすくて厳しいから、防御力高めの重量機が頑張れるルールだね。
でもやっぱり試合が長引くほど泥仕合になるから、今は大火力ロングレンジ武器で頭部を速攻でぶち抜くアセンが多いかな。
そういう機体が流行ると結局普通の試合と展開が変わらないからどうかと思うけどね」

ルリの発言を押し流す為に畳みかけてまくし立てる。
因みに俺はポイントゲットマッチは苦手だ。
普段から肉を切らして、ということをよくやるのでついそれが出て結局試合に負けることが多々。


【そういう気のない人間も「はい」と言ってしまうであろう天然の媚び。
 いや、元々この場合断る理由もないのだが】

「そう言えば約束したっけ。
じゃあルールはどうしよう?
ポイントか普通のか、どっちでもいいよ」
56 :羽麻リリカ :2013/02/22(金) 00:35:11.72 ID:4+kqC6O1o
>>55
ちょっと怖いなぁと思っているナオヒロの内心を察したか、リリカがフォローを入れた

「あ、だ、大丈夫ですよ? 年上のお友達ですと紹介すれば、大丈夫なはずです」
『あんた、それフォローになってないよ……』
「?」
『まぁ……そういうことになったら、ごめんねぇ』

一時期のように大っぴらに子供を狙う大人が現れなくはなったが、
やはり、子供を狙おうとホビーショップなどに親しげなお兄さんを装って現れる、という手法はなくなってはいない
統計上、幼児虐待の犯人は「知り合いのお兄さん」などが多いのであるからして……

そうでなくとも、リリカはかごの中の鳥なのである
時代錯誤といわれるかもしれないが、"良家のお嬢様"というブランドに、羽虫をつけるわけにはいかないのだ
流石に暴力的手段には訴えてこないだろうが、それこそお金を握らせる、など足元を見た行動をとってくる可能性はある

「大丈夫ですよ。そういう時の誤魔化しかたはあちらも知っているでしょうし、なんだかんだ長い付き合いなので」
『ま、じゃなきゃ逃げ出す穴も見つけられないしな』

所詮子供の体力である
大人が全力で追いかければ捕まえることはそう難しい話ではないし、なにより、脱走を懸念するならGPSなりでも埋め込んでしまえばいいのだから
それをしない、ということはある程度そういう「お痛」は見逃すつもりなのだろう
だいたい、自分だってそういうことをした時代もあるのだろうし
……まぁ、平然とこんなことを小6の少女が言う、というのもどうかと思うが

『まー、別に進学校ってわけじゃないしね。授業の進度やらはその辺の学校と変わらないんじゃねぇかな。やることやってりゃ、上位にゃ食い込めるよ』
「なんで紅恋が偉そうなんでしょう……?」
『でも、あの学校の本番は数字に出ない学科、ってのはあんたも同意だろうさね』
「まぁ、そうですけど……」

と、そこで事情がわからないであろうナオヒロにちゃっと説明が入る
所謂文科省というやつが定める学科に加えて、学校独自に「淑女を育てるために」日舞や活花、茶道などの授業があるのだという
それらは明確に数字がつけられるものではないが、学内コンクールなどで上位に入れば当然それは内申評価や対外的な評価に響くのである
――お嬢様学校は決して華やかな場所ではないのであった

『ところがどっこい、その当然取れるであろう順位がとれなかったから、今回の措置ってわけさ。
 ま、今言ったみたいな方でそこそこの成績だからあたしはボッシュートされなかったわけだけどね』
「それにしたって、遊びたければファイターを用意するから家でやりなさいはやりすぎです」

決して大人を侮るわけではないが、お金で用意されたファイター相手というのはどうしたって色眼鏡で見てしまうだろう
たとえば、勝利したとき、相手がクライアントに気に入られるために手を抜いたんじゃないか、とか……
それがいやだから、リリカは脱走してきたのである

「悪いことは悪いことです。でも、それを知ってやるかどうかは自己責任でしょう?」

あとで罰が待っていようとも、やると決めたらやる
反省をしないというのはそういうことだ

---

「なるほど……それは、確かに変則的ですね」

機体相性でいえば、ルリの方が有利であろう
マキノイドはその性質上、装甲が脆弱である
絡新婦もその例に漏れず、それほど耐久値が高く設定されているわけではない
また変形機構のために一定以上のHPを維持し、かつ、特定部位の破壊を免れる必要がある以上より慎重に、
それでいてトリッキーな動きが求められるだろう
マップ次第、というのが正直なところだが……

「何事も挑戦が大事です! ポイントマッチでやりましょう!」
『まーた、この子は敢えて難しい道を行くんだから……』

やれやれ、とあきれた様子を見せる紅恋とは対照的にリリカはノりノリであった
57 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/02/22(金) 03:21:07.13 ID:dClxuENDO
>>56
「……もしものときは紅恋さん、宜しくお願いしますね」

年上のお友達という紹介は少々怪しい雰囲気に溢れている。
有事の際は紅恋さんが羽麻家での信頼を十全に得ているかどうかが俺の分水嶺になりそうだ。
いや、まだ2回目の遭遇だし、俺が紅恋さんから信頼を得ないことにはどうにもならないが。

『普通の子供相手でも十分問題ありげだが、リリカの場合はお友達すらアウトな気がするしな。』

確かに。
いい大学に行っていたりすれば兎も角、所詮3流大学生だし。


『……達観しているな』

【かわいげがない、と言ってしまっても良いかもしれない。
 いや、そういうことが分からないといけない環境なのか】


「なるほど、所謂お稽古事がカリキュラムに組み込まれてるのか。
そしてそれが売りでもあると」

自分には縁がない世界だ。
なんせ男だし……いやいやそういうことでなく。

『ほう、専属ファイターといえばと聞こえは良いが。
 実際は媚びた真似をする輩もいるだろうな。

「HMPファイトが好きならそんな不誠実な真似は出来ないと思いたいけどね」

まあ、職業ファイターとなるとこんな夢見がちなことばかりも言っていられないのだろうけど。


『そういうことを言うにはまだ早いだろう?
 そういうことは自分のやったことに責任を取れるようになってから言うものだ。
 自己責任なら、ごめんなさいと言える口くらいは持たないとな』

ああもう、こいつは。

ーーーーーー

「了解、それじゃフィールグラムに行こうか」

うーん、この試合形式が吉か凶か。
HMPタイプを変更してからは初めてだ、フライメックということがどう影響してくるか……。

『つまらない顔をしているなよ?ナオヒロ。
 リリカにはルール違反してまでやりたかったHMPファイトだ、不甲斐ない真似は許さないぞ』

言って、ルリはコードを引き抜き鞄から飛び上がる。
今日は羽麻さんに対して当たりが強いと思ったが、今の発言はどういうつもりなのやら。
ルリはたまに、よく分からない。


因みに現在のルリのアセンはというと、
頭部、胴体は《ヴァルキューレ》、両腕部は《ジャバウォッキー》より《バンカー&バンダースナッチ》を、脚部は《ナインテイル》より《QBF》を。
格闘特化フライメックとなった訳だが、《QBF》と《バンダースナッチ》によって飛行を用いない3次元機動も可能なトリッキーさを持ち合わせている。
《ウムアルムング》を捨てたことで防御力は下がったので、少々今回のファイトは不安もあるが……。

因みに因みに、カラーリングは本人?たっての希望で《マスカドンナ》と同じようにモノトーンベースに差し色にボルドーとなっている。


「フィールドはどうしようか、羽麻さんが決めていいよ」

ルリが先に降り立っていたフィールグラムに遅れて到着。
見た目はノーマルのものと殆ど変わらないが、ポイントマッチ制を知らせるポップがびよんびよんと四方で揺れていた。
それを横目にいつも通りの機器を取り出し、ファイトに備える。
58 :羽麻リリカ :2013/02/22(金) 09:48:57.46 ID:4+kqC6O1o
>>57
『まー、その辺は大丈夫じゃねぇの? あの人は、そういうとこちゃんとしてるよ』

 何かしら特技があるかとか、どうしてその大学に入ったのか、とか色々聞かれるだろうが
 人の行動には理由がある
 なぜ、どうして……その理由が確かなものであれば、リリカの父はナオヒロを否定はしない

『あ、あんたがロリコンって場合を除くけど』

 流石にそれはいくらなんでもフォローができないのである
 そんなことを言う紅恋をよそに、リリカが楽しそうに微笑を浮かべているのがなんだか不気味ではあった

 そして専属ファイターのことに話が及ぶと、彼女は微笑を深めた
 それは酷く蠱惑的なもので……目の前の少女が浮かべるには、あまりにも似つかわしくなくて

「たとえば――」

 桃色の唇が、色っぽく動いて
 なにか、酷い言葉が出てくるような気配がした

 けれど

『だめだよリリカ。悪乗りするんじゃない』

 ぴしゃり、と紅恋がその唇を閉じさせた
 文字通り、ぴしゃりと、煙管を叩きつけられて

「……そうですね。ごめんなさい、麻木さん。
 酷いことを言いそうになりました」

 ――外見に騙されてはいけない。この子は性格が悪いぞ

「そうですね。所詮は親の庇護を受けているガキの言うことです
 社会的責任を親に負わせている、いまだ社会に認められていないものです
 この服も、紅恋も、私のお金で手に入れたものではありません
 私の持つものは何一つ、本当の意味では私のものではありません」

「でも、今、こう思う私の心だけは、私のものです
 それが、こうしたいと望んだ。だから、私はそうします。
 その結果負った傷は私のものです。負わせた傷は私のものです」

 少女の瞳が、嗜虐的な色に染まる

「ごめんなさいと謝る言葉と、叩き潰すために浴びせる罵声も、私の心が産んだものです
 願うこと、望むこと、思ったこと、そのために歩むこと。それが、何物でもない私のできること
 私ができる責任の取り方は、その歩みに、その人への想いを、謝罪を、呪いを加えることだけです」

 少なくとも、今は。ですけどね。
 少女は、うっすらと笑った

---

 紅恋のアセンは以前のままだ
 武器を変えよう、とは思っているようだが、まだ手が出ていない

「では、お言葉に甘えまして……摩天楼を選びます」

 摩天楼といったものの、リリカが選んだのは、超高層建築が立ち並ぶというよりは、大小のビルが凸凹と並ぶ郊外のビル街が近いだろう
 分類としては都市ステージに含まれるが、摩天楼エリアに比べると、高低差が大きく、障害物が少ないという点は通常の摩天楼ステージと同じだが、
ビル間の広さなどを含めより一層複雑な機動が求められる
 そういう意味ではフライメックが有利そうにも見えるが、とてつもなくトリッキーな動きが求められる絡新婦にも、そう不利とは言い切れない
 どちらも格闘特化であり、機動特化……明暗を分けるのは、ファイターの腕だろう

「よろしくお願いしますね」

 そしてフィールグラムが起動して、ビルの上に絡新婦が降り立った
59 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/02/22(金) 21:59:06.04 ID:dClxuENDO
>>58
「じゃあ大丈夫……かなぁ、ロリコンじゃないし」

うん、流石に小中学生を性的な目で見るのは無理だな。
そこをクリアしているのなら通報はないと考えてよさそうなので、最悪は回避された。
後はまあその時だ。


「いやいや、言わなかったんだから謝らなくていいよ」

なにを言おうとしたのか、彼女のことを思えば考えないでおくべきか。
……しかし、先程の表情は悪女っぽかったな。
まだ小学生の彼女がつくった表情とは思えない程に。
これはファイトでも気を抜けないな、いやはや子供ファイターのレベルも高い。

=年齢に騙されてはいけない。ナオヒロは頭が悪かった。=

『……本当に、かわいげのない。
 わがままならもう少し可愛くアピールして見せた方がいいぞ』



「摩天楼か、森林かと思ってたけど」

上に障害物がない分こちらとしてはやりやすい。
《新絡婦》の巣を枝に張られればルリの移動能力は大きく縛りを受けることにもなるし。
ただ、ビル群と言うことで低く飛べば見通しは一気に悪くなる。
上空からの一撃翌離脱戦法を繰り返すのがまあベターか。

「よろしく、それじゃあ始めようか」

【平台が姿を変えたビル群の中。
 私のいるビルは周囲のビルに比べ背が低いようだ。
 ここで一気に飛び上がり上空から索敵するのもいいが、それは同時に敵に姿を晒すことになる。
 しかし、】

『1対1で殴り合いをするのにコソコソする必要もあるまい』

=言葉通りに、ルリは跳び、飛ぶ。
 《QBF》による跳躍から《フリューゲルス》による飛行へ。
 高度を上げながら索敵をしていく。=

「取り敢えずは、相手の攻撃を誘ってカウンターを狙ってみよう。
 今回はどこ破壊されても負けに繋がるからね、いつもみたいな無理は出来ないし」
60 :羽麻リリカ :2013/02/24(日) 04:23:57.03 ID:sU/dkrBSo
>>59
「はい、摩天楼です」

 一見すると確かに森林エリアの方が有利だと思えるかもしれないが、ビル街はコンクリートジャングルとも呼ばれるのである
 ビル間に巣を張ることは幾らでも出来るし、特にそれを影に隠れるようにしたり、縦向きに張ればかなり視認し辛くなるのだ
 それに、某アメコミ映画のように、ビル間を移動するというのは、かなりトリッキーな動きになるのである
 どちらも格闘機、というのが、今回のバトルのミソであろう

「では、よろしくお願いします」

 ――リリカは、性格が悪いのである

---

『んじゃ、まー、やりますかね』

 レーダーの搭載されていない紅恋には、初期配置で相手が何処に出現したかを調べる手立てはない
 だが、その代わりともいえる糸が彼女にはあった

 彼女の出現位置は、ルリとは対照的なかなり高いビルの上だった
 近くにはヘリポートのようなものまである、かなりのものである

(ま、ここじゃばればれだかんねぇ)

 高度を上げ始めるルリとは何処までも逆に、紅恋はビルから飛び降り、自由落下を開始
 他のビルの屋上よりも下になった時点で、臀部から糸を射出、
 振り子のように落下を移動へと変更し、ビルの壁面に着地

【着地の際に、極小の音が周囲に撒き散らされる。高感度の音響センサーがあれば捉えられるだろう】
【もしかすると、落下中にニアミスしているかもしれない】

『さぁて、蜘蛛なりの戦い方ってのをやろうじゃないの』

 ビル間に糸を撒き散らしながら、その糸をレーダーとしても使いつつ、罠を作り始める
 もちろん、上空からは見えにくいように、だが
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/02/25(月) 10:35:45.49 ID:qb1sGl5DO
>>60
【索敵を初めて数十秒、上空で旋回するうちに、カメラアイに動く影が映る。
 情報収集を視力に大きく依存しているヘッドパーツだ、
 音響センサーやレーダーのように全周囲を探ることは出来ないが、視界に入った動体ならば確実に捉えることが出来る自負がある】

『さて、どうする?ナオヒロ』

「そうだなー思いっ切り罠だよねー、あれ」

相手はステージ選択の段階から高さの利を捨てているのだから、今の状況は別に有利もない。
こちらが一方的に発見しているのだとしても、上空からの索敵など相手は折り込み済みのはずだ。
《新絡婦》は相手を誘い、食らう蜘蛛のHMP。
能動的に攻めるより、じっくりと罠を張り敵を自滅させる受動的な攻めが得意だろう。
後の先、とでもいうんだったか。

「トラップ型……厄介だなー」

『妙な策をウダウダと考えて相手に合わせるとそれこそ思うつぼだぞ。
 どうせ考えるのなら、こちらのペースに巻き込む方法にするんだな』

「言うのは簡単だけどさぁ……」

……さてどうしたものやら。
しかしこうやって悩む時間も相手に罠を張る時間を与えてしまっているのだ。
ルリの言うようにするには……。

「あの場所から移って欲しいけど……」

銃器がないのは痛いが、やれないことはない。多分。
ビルとビルの間には恐らく糸が張り巡らされているから、それを回避……か。

「一旦こんな感じで?」

真上から急降下で襲いかかる……振りをしてある程度近付いたら逆噴射して停止、右手の《バンダースナッチ》を射出して攻撃。
攻撃が当たるに越したことはないが、まずは巣がどの程度の密度で張られているのかをチェックしてみたい。
爪にひっかけることで糸を切ることが出来るかも気になる。

【随分と控えめな行動だ。
 巣に絡まってどうしようもなくなって敗北、なんてのは避けたい気持ちは分かる。
 しかしこれでは既に相手のペースに呑まれているのではないか……?】

//1日以上空いてしまうとは……
すみませんです
62 :羽麻リリカ :2013/02/26(火) 02:01:15.99 ID:FIAX6Xjgo
ナオヒロが逡巡している間にも、ビル間には着々と巣が形成されていく
そのすべてが罠、というわけではない
蜘蛛の糸は何も捕獲に限って使われるものではないからだ

『ま、おおよその準備は完了ってところかねぇ』
「では、いつもどおり」
『了解』

射撃機相手ならばまた事情も違ったのだろうが、同じく格闘特化となれば、完全な根気比べとなるだろう

(きたね)
(きましたね)

急降下からの急停止
ビル間に仕掛けられた糸が、停止の際に吹かしたブースターの風を探知した
絡新婦はレーダー機能を持たないが、張る糸すべてがそのレーダー未搭載を補う
髪の毛が長いのは、その振動分析等にCPUパワーが必要だからである

(間に合いますか?)
(難しいね)

ちょうど紅恋がいたのは正反対の方角だ
いかにビル間での機動性が高いといっても、流石に限界がある
まともに襲い掛かるのは難しいだろう
となれば――

(癪だけど、情報収集だけさせるかねぇ。まぁ、一応向かってはみるけど)
(そうなりますね……穴を覗いて、見えた範囲だけでわかったような気になってくれるといいんですけど)

バンダースナッチほどに鋭利であれば、糸を切断するのはそう難しくはない
ぷち、ぷち、と糸の切れる感触がワイヤーを伝ってくるだろう
とりあえず、これで糸を切断することが可能なのはわかった
また、糸の密度がそれほどでもない、ということも理解できただろう
――少なくとも、バンダースナッチを打ち込んだ範囲は、だが
しかし、糸には粘性というものも付与されている
奥へ奥へ、射出をどの程度で止めるかによっては、糸が絡み付いてバンダースナッチの動きがかなり遅くなる可能性がある
最悪、その場から戻ってこれない可能性も……
もしもそのような事態になれば、紅恋が戻ってくる可能性もある
すばやい動きと判断が求められるだろう
63 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/02/27(水) 05:20:07.55 ID:/LLPFiRDO
>>62
【成る程、こんなものか。
 目視が難しいほどの細さの糸だ、やもすればワイヤーカッターのようになっているかもしれないと思ったが、そこまでの強度はないらしい。
 それさえ分かればやりようもある。
 《バンダースナッチ》のワイヤーを巻き取り、回収する。
 と、爪に糸がまとわりついているではないか。
 これは静電気……ではないな。
 蜘蛛の糸なのだからと、粘着性の再現なのだろう】

「これじゃ、突っ込んだら捕まるね」

ただの糸でも、幾重に張り巡らされていれば突っ切っていくにはそれなりのスピードや質量が必要になる。
しかしこの糸相手では絡め取られて、突っ切る前に止められてしまうだろう。
進めなくなるだけならまだいい、恐らく引くことも出来なくなってしまうはずだ。

「……蜘蛛ってさ、巣を揺らされると反応するけど紅恋さんはどうだろう?」

【そう言うナオヒロからの指示がきた。
 なんだ、結局はいつもと殆ど変わらないではないか】

『成功するのか?こんなもの』

しかしルリは実行する。
右手の手甲を射出しながら、右腕を上下左右に振り、更に左手をワイヤーに添え無理矢理に軌道を変化させる。
手甲は糸を絡み取りながら進んで行くが、このままでは直に止まるだろう。
そこでわざともたつき、紅恋を誘い、おびき寄せる。
そうなればワイヤーを巻き取り、一気に紅恋への距離を詰める手筈だ。 まあ紅恋が接近してこなければただの自爆になってしまうが。

ある程度の距離ならば左手の《バンダースナッチ》をぶち込めるが、距離を見誤ると両手を失う羽目になる、慎重にいきたい。
成功しても失敗しても1人チェーンデスマッチのようになるが、最悪パージと言う手もあるし。
片腕の武装を捨てるにはあまりにリスキーな指示を出したが、今のルリのアセンはフライメックとしては不安定でバッテリーに不安が残る。
人型にかこつけてヒュームボットのパーツを装備したはいいものの、やはりバランスの面で崩れてしまったのだ。
そんなわけで無理にでも勝負に持ち込む必要があった。
64 :羽麻リリカ :2013/02/28(木) 21:28:03.87 ID:jc+PGQ9Eo
一度の切断から、寸暇を置かずしての再進入
ちょうど向かっていた紅恋はその動きを止めた
折り返してからちょうど半分戻ってきた、というところだ

(どう見ても罠だねぇ)
(誘っている、にしては些か以上に杜撰です)

どこからどう見ても罠だ
この誘いにのる必要性はどこにもないが……

(せっかくポイントマッチにしたんですし、電力切れと待つというのはちょっと詰まらないですよね)
(まー、そうだけどねぇ。博打する?)
(じゃないと行脚する意味ないじゃないですか)

それに向こうは焦っている
膠着状態に持ち込めば有利なのはこちらだからだ

(それに……誘い込めたら素敵でしょう?)
(まぁ、確かにそうだけどさぁ)

出来れば深追いさせたいところ
さて……となれば

(んじゃま、行きますかねぇ)

再び紅恋はビル間を疾走する
その姿は正しく蜘蛛である

――

じりじりとした緊迫の中、おそらくルリの視覚に紅恋の赤い眼光がちらりと見えたはずだ
彼女は巣に絡んだバンダースナッチに高速で接近している
飛び込む瞬間、蜘蛛から人型へと変形
手にした喧嘩煙管を振りかぶり、バンダースナッチに振り下ろす

――同時、BODYから伸びる四本の腕を器用に組み合わせて、
頭の飾りである松葉簪を引き抜き、ワイヤーの根元であるルリめがけて投擲する
それは、まるで設置型のトラップのようであった

//うおおお、レス遅れて申し訳ない
65 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/03/01(金) 18:49:32.73 ID:9UcPo96DO
>>64
=ルリのカメラアイが紅恋を捉える。
 それを認めると同時に右の《バンダースナッチ》がワイヤーの巻き取りを始めた。=

彼女がファイターで良かったと、ナオヒロは胸を撫で下ろす。
勝負に拘り、勝負を楽しむ。
勝ち方に形を求める者でなければ、俺達の無様と言える行動にわざわざ乗るような真似はしないだろう。

『彼女に失望を与えぬよう、せめて応えなければなるまい』

俺の心中に合わせたようなルリの台詞に褌を締め直す。

【ナオヒロから来る単語のみの指示を補完し、同時に行動を起こす。
 紅恋はこちらへ向かってきている、私も行かせて貰おう。
 当初の予定通りワイヤーを急速に巻き取り《バンダースナッチ》が糸を断った後を真っ直ぐに進む。
 と、紅恋の方が《バンダースナッチ》に近い。
 瞬間的に姿を変えた紅恋が、手甲へハンマーのような煙管を振り下す。
 《新絡婦》はパワータイプのHMPではないのだから一撃で破壊されるということはない。
 だがそれでも、耐えて2、3発】

『知ったことか!』

【既に右の《バンダースナッチ》は捨てたも同じだ、破壊されようと関係はない。
 ここまで接近してしまえばガイドとしても十分に機能を果たした。
 私はワイヤーを伝う衝撃に備えウィングバインダーを調整しながら、カウンターとして左の《バンダースナッチ》を胴体を狙い射出する。
 と、眼前に迫る簪。
 こちらがもっとも動かしにくい右腕に向けた投擲だ。
 これを避けることは出来ないだろう、左右には糸があり、前進して潜り抜けることも難しい。
 後退など以ての外だ、わざわざ敵から離れてどうする】

『全くこれではいつも通り過ぎるな……!』

ルリは右腕を引くようにして体を前に出し、簪を横から額で弾くようにする。
優れた視力を生かした回避……といっていいのか?
タイミングを誤り簪で頭を串刺しにされて敗北なんてことになったら洒落にならなかったが、その辺りは流石HMPだ。

《頭部損傷:損傷率16%》
《ex右腕損傷:損傷率52%》

頭部は額の欠けと衝撃による一瞬のシステム不調、右腕は……紅恋さんの加速もあって予想以上のダメージを貰ってしまった。
66 :羽麻リリカ :2013/03/02(土) 01:16:52.29 ID:BR11R2Nuo
>>65
帰ってきた手応えは鈍い
加速で威力を上乗せしたが、流石に一撃とはいかなかったか

(もとより織り込み済みさね!)

叩いてそのまま通り抜ける、といければ百点だったが、蜘蛛の巣に絡まってしまっているバンダースナッチではそうもいかない
一瞬の減速、その隙を当然ながらルリは逃さなかった
しかも、奇しくもそのタイミングはこちらが簪を投擲したのと同時
いくらアームのパワーがそれなりと言っても、伸び切った状態から戻すのには時間が掛かる

『ぐっ!』

ヒット。胴体に左のバンダースナッチが決まる!
【胴体:残存HP63%】

(紅恋!)
(問題ない!)

ここでリリカの奇妙なこだわりが功を奏したというべきか
着物の帯を突破せねばならなかったバンダースナッチの刺さりは、甘く
また、大容量バッテリーを積むための装甲によって、損傷もそれほど深刻というほどではない
だが、十二分に掌に仕込まれたウィルスプログラムの射程圏内だ

(間に合ってくれよ!)

バンダースナッチが刺さっている為に全身変形は出来ないが、一部変形は可能だ
脚部を蜘蛛のそれへと転じせた紅恋は、右のバンダースナッチの周囲でまだ生存している糸を足場に跳躍する
無論、ビルの奥へ誘い込むような形で、だ
果たして、ウィルスプログラムの発動はどのタイミングで為されたか
恐らくは、それが明暗をわけるだろう
67 :麻木ナオヒロ [sage]:2013/03/02(土) 13:59:20.02 ID:uBBkJSwDO
>>66
『……っ』

=致命傷に至らなかったことに内心で舌打ちしながらルリは左手のワイヤーを巻き取る。
 リリカと紅恋が危惧するウィルスだが、ナオヒロとルリに使用するつもりは無かった。
 けして彼女たちを侮っているなどでは無い。
 相手を錯乱させるウィルスプログラムは、今は自らの首を絞めることになる可能性があるからだ。
 ウィルスの発動が遅れ、相手が逃走中に錯乱するようなことになれば、どちらも巣にかかるという間抜けなことになるかもしれない。
 誘われているとしても、今は紅恋を案内役にしなければルリは移動もままならないのだ。=

《ex右腕損傷:損傷率100%...機能停止》
《→右腕武装の機能を制限します...》

ルリは巻き戻した左手で即座に半壊した右の手甲ワイヤー接続部を握り潰して破壊する。
《バンダースナッチ》はカタログ上で腕部としてカウントされるパーツだが、右腕の破壊としてはカウントされない。
自傷だからではない。本来の腕部である《バンカースナッチ》は生きているためだ。
しかし仕様により、《バンカースナッチ》はシステムから出力を制限されることになる。
パワーが取り柄の腕はただの細腕に。
手甲を失ったことで防御力もほぼ無いに等しい。
相手が射撃型なんかでなくてよかった、掠りの蓄積で右腕破壊なんてことはない。
破壊されるとすれば恐らく一撃、なら逆に気にもならない。

「ルリ、ルートはトレースで。
ルリの方が小さいけど、ウィングバインダーもある。
急ぎつつ気をつけて」

紅恋さんの後を追うように指示を出す。
体を更に縮めてハチドリのようにルリは飛ぶ。
残りのバッテリーは40%程……。
無理は出来ないがまだいける。
時折左腕を振るい糸を払うようにしながら紅恋を追うルリ。
いずれ紅恋さんが足を止めるのを待つ。
そここそがウィルスの発動に適した場所であるはずだ。
68 :羽麻リリカ :2013/03/03(日) 18:04:04.25 ID:bi9xJf5Bo
>>67
――掛かった
その行動は決して意図してのものではないが、結果として相手を巣穴に引きずりこんだことには変わりない

(いけますか?)
(どうだろね。トレースしてくるだろうし)

体格は両者にそれほどの違いはない
胴体部の大きさ、という点で言えば紅恋の方がヒュームボット時には少し大きいくらいだろう
だが、だからといって細い隙間を縫うように飛べば露骨なまでの誘いであることが解されてしまう

(火力不足は否めませんか)
(だね。何かしらもう一個ありゃ別だけど)

やはりアセンの変更が求められるか……そんな風にリリカが考える間にも、紅恋は機動する
人型から蜘蛛へ。細かな隙間を潜り抜けられる形態へと形を

――――

ビル間は、それほど多量に蜘蛛の糸が張られた空間ではなかった
わかりやすいたとえをあげるならば、海外映画などで見られる路地裏の洗濯物が干された風景だろうか?
要所要所、確かに邪魔ではあるが気をつけて進めば引っかかる、というほどでもない
だが、その気をつける、というのが曲者であり、トレースという選択を取ったのは正解に近いだろう
そんな中を紅恋は糸などないとでも言うようにすさまじい速度で飛び回る
自分の巣に引っかかる蜘蛛はいないという証明でもあるかのように、彼女の跳躍に迷いはなく
時折、糸と糸ギリギリの隙間を通り抜けつつも、決して自分の体格上無理のないところを進んでいる
トレースを少し続けると、奥への移動からただの三次元機動に変わっていることに気づくだろう
徐々に間を詰めてくるその動きは、明らかに一箇所に留まらず、バンダースナッチの攻撃をよけることが目的であることが透けて見えた
勝負は、最終的に相手の動きを読みきった方の勝ちとなるかもしれない
69 :麻木ナオヒロ :2013/03/04(月) 03:10:06.21 ID:YDX/1/wH0
>68
目の良いヘッドパーツでよかった、この状況では下手にレーダーなどに依存したものは即、事故だろう。
しかし、このままトレースで追い掛けても状況はよくて現状維持維持だ。
相手の真似をして追いかけているだけなのだから当然だ、先へは行けない。
どこかで無理をしなければ流れを持って行かれっぱなしだがて……。

「クソっ……!」

また先にやられた。
蜘蛛への変形はここから先、複雑な挙動になることの予告に他ならない。
人型から外れたフォルムはトレースをしにくくもしてくれる。
更に言うなら《バンダースナッチ》は基本的に直線の攻撃だ。予測しやすいのはあちらの動きよりこちらの攻撃。

「やっぱりポイントマッチは向いてないな」

器用なことは出来やしない。

『通常のファイトならば向いているのか?』

【軽口を叩いていたら指示がきた。
 ……狙いは間違ってはないが……どうなんだ?】

動きが読めないのなら、読みやすくする。
もう一本腕武装を捨てることになるかもしれないが、だからといって腕部破壊までいくかは分からない。
やるだけやらなければ負けても負けきれない。

=軌跡のトレースを止めて、糸を体の端々にひっかけながらルリはビルの壁際まで飛ぶ。
 そこに辿り着けば左の《バンダースナッチ》を壁に這わせるせるように射出して糸を根本から断つつもりだ。
 幾らかでも糸を断てば相手の挙動を制限でき、逆にこちらは自由度が増す。
 そうなれば攻撃手段は《バンダースナッチ》に限らない、畳み掛けることができるはずだ=

70 :羽麻リリカ :2013/03/04(月) 10:06:02.58 ID:hbDtc9Pno
>>69
『待ってたよ』

 この状況下で追い詰められればすることと言えば二種類
 離脱か、環境構築だ
 射撃機ならば、あるいは間隙を縫っての狙撃というのもあったのだろうが、格闘特化ではそれしか道はない

 紅恋は敢えてルリが壁際に到達するのを待った
 そして、バンダースナッチが発射されるや、飛び掛った――!

 狙うは頭突きからの全身への絡みつきだ
 幾らバンダースナッチが巻き取り式の武器と言っても、一瞬で手元に戻ってくるわけではない
 戻ってくるまでの僅かな時間――そこに勝負をかけるつもりだった

 薄暗がりの中を突っ込んでくる紅恋の眼光は、テールランプのように尾を引き
 まるで、怪物映画に出てくるモンスターのようにルリへと接近してくる!

 これが通るか通らないか――それが勝負の分かれ目だった
71 :麻木ナオヒロ :2013/03/05(火) 00:43:26.30 ID:yy7zS2+Z0
>>70
『待っていたのは私もだよ』

【予定とは違うがこちらに向かってくるなら好都合だ。
 《バンダースナッチ》は射出している以上ウィルスも含めて攻撃は出来ない。
 しかし、《バンダースナッチ》は私の本命ではない】

QBF、高い跳躍力を誇るこのレッグは素早い足裁き
も得意としており、連続蹴りを繰り出すことすら出来る。
ルリのアセンに採用したのはそれが大きい。
もちろん、高い跳躍力によって滑らかに飛行と歩行とを移行出来るのも魅力だが、それ以上にキックだった。
人型フライメックである《ヴァルキューレ》ならば蹴りを放った後の着地を考える必要はない。
どころか、連続蹴りの反発すらもスラスターで相殺出来るのだから、やろうとすればバッテリーの続く限り蹴り続けることが出来る。
一発は軽いが、それだけに速く、隙が出来にくい。
決め技にはならないかもしれないがロマンはある。

「一発当てれば次もいけるはずだから、頼んだ」

蜘蛛の姿で飛びかかろうとする紅恋を見据え、ルリはスラスターを調整する。
左の手甲は糸に捕らわれてもう戻らない。
ここが最後の攻め時だ、そう何度も乗ってはくれないだろう。
72 :羽麻リリカ :2013/03/05(火) 22:41:11.91 ID:NpnIa19bo
>>71
『へぇ、いいじゃん』

スラスターを調整し、軸あわせをしてくるルリを見据え紅恋はつぶやいた
あちらの蹴りは、軽い分手数が多い
一度ハマれば、抜け出すことは困難だろう

(バンジーもどきみたいなことしとけばよかったねぇ)
(悔いるのは後ですよ)

当座、それを乗り越える策だろう

『んじゃ、こんなのはどうかな』

絡み付いてからのつもりだったが、蹴りでエリアルコンボを決められる可能性がある以上、
攻撃の前倒しも必要だろう

くん、と下肢を曲げた紅恋はその臀部の先から糸を射出する
細い巣を編むためのそれではなく、白い、痰にも似たほぼ固形の物体だ
だが粘性の糸であることに違いはなく、喰らえば拘束は必死
某アメリカンコミックのヒーローが悪人を拘束するときによく使った糸の塊、というのがわかりやすいだろう

この糸の塊を凌がれてしまえば、紅恋に出来ることはない
蹴りのオンパレードを喰らって負け、であろう

最後のあがきだ
お世辞にも今までの動きと比べればあまりにも稚拙
さて、通るか、通らないか
73 :麻木ナオヒロ :2013/03/07(木) 00:46:26.38 ID:/5iLV29/0
>>72
恐れていたのは紅恋さんの尾部に糸が繋がっていること。
いつでも離脱が出来る状態……つまり、この突撃自体がブラフだという可能性だ。
今のところだが、ルリが攻撃姿勢に入っても突撃の勢いは削がれる様子はない。
ギリギリまで寄るつもりかもしれないが、そのリスクに見合ったリターンがあるとも思えない。
相手にしてもここを勝負だと思ったのか。
ルリは既に補正を終え、すぐにでも、という感じだが、

>>63 KP発動《 

『こんな……!』

予想だにしなかった飛び道具に、しかしルリは反応する。
たたんでいた右足を前に蹴り出す形で糸塊を蹴りつけ、体からそれを離すように右へ足を払う。

【全身への飛散は防ぐことが出来たが、右手足、それにスラスターもか。
 糸にとらわれた箇所は殆ど動かないな、万事休すと言っていい。
 だが左脚は動く。右のウィングバインダーも噴出口は生きている。
 第一、パートナーより先に諦めるわけにはいかないだろう?】

=ルリにナオヒロからの単語の群れの形で指示がくる。
 ポイントマッチの特性云々と言っていた奴の指示とは思えないものだが。
 ウィングバインダーが固定され、移動すら困難になりつつあり、
 バッテリーもレッドゾーンに突入した今なりふりなど構っていられないのだ。
 
 ルリに与えられた指示とは詳しく言うと、横に突き出した形で固定された右脚での回し蹴り。
 更に、その右脚にまとわり付いた糸の粘着性で紅恋を捕らえ、回転のままビル壁に叩き付ける。
 非力な小型フライメックだ、蹴りは勿論叩き付けもそこまでのダメージにならないはずだ。
                                          ・・・         
 そこで、紅恋をビル壁に抑えつけながら一気にメインスラスターを上に向けて噴射し紅恋をおろしながら落下する。
 蹴りで右脚が、その後の展開で腕部辺りは確実に破損するし、第一当たるか分からないが、正真正銘ラストアタックだ。
 練られた相手側の作戦に対して常に行き当たりばったりの行動で対抗してきた。
 最後まで行き当たりばったりで押し切るか、それとも策に墜ちるのか=
74 :羽麻リリカ :2013/03/07(木) 23:15:52.71 ID:AggBwL+No
>>73
糸は確かに決まった
だが、完全ではなかった

(――あー、こりゃだめだわな)

せめて、もう少しだけ飛散していれば
完全な拘束さえなせていれば――
悔いても時間は戻らない

『ちぃっ!』

ギリギリのところでまわし蹴りを喰らった紅恋は壁に叩きつけられる
がしゃん、と音を立てて片側の副腕、並びに左腕が損壊
HPの減少によって、強制的に人間形態への移行を余儀なくされる

【BODYHP50%まで減少。副腕損壊によって変形機構使用不能】
【L.ARMHP30% 機能に制限が発生します】

『だけど、ここで諦めるわけにゃ、いかないでしょぉがあああああ!』

もはや変形は叶わない
けれど、それでも少しでも摩擦係数を上げる
生き残った副腕を壁に突き立て、両足、尻、全身を押し付ける
それはHP減少を加速させもするが、バッテリーが切れるまでの勝負だ
【目まぐるしく総HPが減少】

『あたしは勝つんだよ! 泥臭くてもねぇ!』

必死で、必死で、紅恋はビル壁に全身を押し付けていた
摩擦によって着物がほころび、焼け焦げていく
それでも、なお、彼女は諦めない――!

>>62KP使用】
75 :麻木ナオヒロ :2013/03/10(日) 04:46:30.97 ID:/qif7FRd0
>>74
《脚部損傷:損傷率47%》
跳躍力を生かすのではない、本来想定されていないであろう回し蹴りに、華奢な脚部は悲鳴を上げる。
ビル壁に叩きつけた上、更に押し付け続けている為に負荷もかかり続け、損傷率の上昇は止まらない。
紅恋が抵抗を続けるためにエネルギーの消費量もパーツの損傷率も想定より速く、これも向かい風だ。


《ex左腕武装解除...》
《→左腕武装の機能を制限します...》

【ワイヤーが限界近くまで伸びかけた左の《バンダースナッチ》を放棄する。
 これで両腕は完全に戦闘力を失い、この試合においてはただのお荷物と化した。
 しかし耐久性もパワーもない細腕でも動くのなら使う。
 左腕で紅恋を抱くようにし、エネルギーのロスを減らす。
 ビル壁に擦れているだけでダメージが蓄積するが、ここで逃がすわけにはいかないのだ。
と、右脚の感覚が欠落する。】

《脚部損傷:損傷率69%》
《右脚部喪失...》

糸で股関節近くまで固められているため見た目の上では変化がないが、とうとう関節が限界を越えたらしい。
バッテリーも一桁に入り、いよいよ敗北の2文字が鮮やかに見え始めた。
だが、負けそうだからといって勝てないとは限らない……!
ここまで互いに ポイントは0 、頭部破壊で試合を終わらせれば勝ちだ。

=ナオヒロはタブレットを叩き、ルリは左脚を振り上げようと溜めを作る。
 しかし、それらは実を結ばない。=


《バッテリー:0%...すべての機能を停止します》
76 :麻木ナオヒロ :2013/03/10(日) 12:18:18.39 ID:GP6jK1uj0
>>74
《脚部損傷:損傷率47%》
跳躍力を生かすのではない、本来想定されていないであろう回し蹴りに、華奢な脚部は悲鳴を上げる。
ビル壁に叩きつけた上、更に押し付け続けている為に負荷もかかり続け、損傷率の上昇は止まらない。
紅恋が抵抗を続けるためにエネルギーの消費量もパーツの損傷率も想定より速く、これも向かい風だ。


《ex左腕武装解除...》
《→左腕武装の機能を制限します...》

【ワイヤーが限界近くまで伸びかけた左の《バンダースナッチ》を放棄する。
 これで両腕は完全に戦闘力を失い、この試合においてはただのお荷物と化した。
 しかし耐久性もパワーもない細腕でも動くのなら使う。
 左腕で紅恋を抱くようにし、エネルギーのロスを減らす。
 ビル壁に擦れているだけでダメージが蓄積するが、ここで逃がすわけにはいかないのだ。
と、右脚の感覚が欠落する。】

《脚部損傷:損傷率69%》
《右脚部喪失...》

糸で股関節近くまで固められているため見た目の上では変化がないが、とうとう関節が限界を越えたらしい。
バッテリーも一桁に入り、いよいよ敗北の2文字が鮮やかに見え始めた。
だが、負けそうだからといって勝てないとは限らない……!
ここまで互いに ポイントは0 、頭部破壊で試合を終わらせれば勝ちだ。

=ナオヒロはタブレットを叩き、ルリは左脚を振り上げようと溜めを作る。
 しかし、それらは実を結ばない。=


《バッテリー:0%...すべての機能を停止します》
77 :羽麻リリカ :2013/03/16(土) 15:38:41.77 ID:A+9imoBgo
>>76
 死へのカウントダウン
 視界の端のステータスが、徐々に死の状態へと近づいていく
 だが、だが――まだ、まだ生きている!

『ぬ、ぉおおおおお!』

 耐える、耐える――ただひたすら、その時が来るまで耐える

(もってくれよぉ!)

 祈り、一心の祈り。それは奇跡を呼び込んだか
 やがて、体の落下が止まった
 ふわり、と目の前でルリの体が浮翌力を失い落下をはじめる

『っと、そぉはいかないぜ』

 それを、既にぼろぼろの腕で、紅恋は抱きとめた
 その重みに、かろうじて腕は耐えてくれる

『ナイスファイトだったぜ』

 そして、紅恋はなんと唇をルリの頬へと落とそうと――

――

 そんな珍妙な行動に出始めた紅恋を他所に
 それを見守っていたマスターであるリリカは、緩く瞼を伏せると、ほ、と吐息した

「……ありがとうございました。ぎりぎり、でしたが、こちらの勝ちですね」

 ルール上、バッテリー切れは敗北を意味する
 けれど、実際勝負の行方としてはどうだったろうか?
 もしも、もう一瞬バッテリー切れが遅れていれば……

「ですが、パーツの破損を考えると、こちらが負けたようなものです」

 そういって、リリカが示したタブレットの画面に表示されたステータスは、ヘッドパーツ以外、破損ギリギリのものだった
 ポイントマッチでの扱いがどうなるかはわからないが、副腕を破壊されていることを考えれば、実質負けと言っても良いかもしれない
 
「よい、勝負でした。多くを学べました。
 ありがとうございます」

 そういってリリカは頭を下げる
78 :麻木ナオヒロ :2013/03/18(月) 01:20:01.36 ID:m12l91jE0
=そこに意識のないルリは抵抗もなにもしない。
 まあ、DVNOの中では渋い顔をしているかもしれないが。=

「ありがとうございました。……いやぁ負けた負けた」

フィールグラムの投影が解除されるなか、紅恋さんの行動にツッコむべきか少し悩む。
……まあいいか。うん。

「どの形式のバトルでも俺たちの負けだよ。
 バッテリー切れに追い込んだのは羽麻さんの手腕に因るものだし」

バッテリー切れは絶対の敗北、幾つパーツを破壊していても関係ない。
特に今回はこちらが後手後手の行動になったことがバッテリー切れを呼び込んだのだ、それが狙ったものでなくとも、羽麻さん達の勝利は誰の目にも明らかだろう。
取りあえず紅恋からルリを返してもらい、メディカルポッドへ入れようとする……が、この糸はメディカルポッドで除去出来るのだろうか……?

79 :羽麻リリカ :2013/03/18(月) 19:08:35.77 ID:m85EkiEVo
 ――かくして紅恋のファーストキスは、ルリのほっぺになされることになったのである

『次は意識があるときにしようぜ』

 何を言っているんだお前は



「そういっていただけると、嬉しいですけど……」

 バッテリー切れを狙っていたのは確かだが、
 実際、後半は逃げ回っていただけのような気がして、なんだか釈然としない
 だが、その逡巡は勝者として相応しい振る舞いではないだろう
 勝ちは勝ち。それを誇らないのは敗者に対する無礼でしかない

「――いえ、ありがとうございました。
 あ、糸のことなら気にしないで大丈夫ですよ?」

 と、ちょっと説明
 紅恋の糸はメディカルポット理論を応用して作られた擬似糸であり、
 それを構成するのは、実はHMPたちの表面をカバーしているのと同じ素材なのである
 また、この糸はその素材に容易に元に戻すことが出来るため
 糸がついたままメディカルポットに放り込むと、実は修理のためのパウダーの節約になったりもする

 ――というようなことをリリカは滔々と語った

「と、いうわけなので、大丈夫です。
 まぁ、ちょっと見た目は悪いですけどね」

 あはは、と頬を掻きつつ、こちらも紅恋をメディカルポットに放り込んだ
80 :麻木ナオヒロ :2013/03/22(金) 21:06:32.86 ID:u4NH4yjt0
>>79
『────次も私達に勝てれば、させてやる』

=AIの復帰したルリの声が、DVNOを通して紅恋に返した。
 ぶっきらぼうな口振りだが、それはキス自体が問題な訳ではなく、不意打ちだったことが気に食わないらしい。
 しかし負けた以上文句も言えないので、条件を提示するというところに収まったようだ。
 ナオヒロはそんなルリに苦笑しながら、HMPをメディカルポッドへ放り込む。=

「解説ありがとう、フジムラ理論様々か」

プラスチックのリサイクルがこれだけ手軽に行えてしまうなんて祖父母なんかの世代では思ってもなかったらしいし。
いや、HMP自体が驚きの対象みたいだけど。

『糸の作成が出来るなら、戦闘中に装甲の補修回復もやれないことはなさそうだな……』

【私はそういう装備は好みではないが。
 せせこましいではないか、そういうの】
「大容量バッテリーと装甲補修装置の完全逃げ切り型とか、このポイントマッチやバトルロイヤルだといきそうだねー」

内部破壊すればいいとはいえ、相手にはしたくない。
半端な火力の機体だと本当に詰みになりそうだ。


//申し訳ないいいい
81 :羽麻リリカ :2013/03/23(土) 12:23:34.67 ID:wa343Yxeo
>>80
『……いや、その、なんだ
 そこまで本気で言われると、なんか、困る』

 キスをしたのは確かだが、ちょっとした冗談のつもりだったのだ
 まさか、それをここまでまじめに返されると、紅恋としてもちょっと言葉に詰まった

「冗談も過ぎると自分を刺すだけですよ……
 まぁ、その辺りはやっぱり元になった蜘蛛を参考にしているみたいです」

 蜘蛛は、不要になった糸を食べて材料として再利用すると言われている
 流石に食べる、というところまでは再現できなかったようだが、ある程度の可逆性を持たせたのは涙ぐましい努力があったのだろう

「流石にそれは……現行ルールが見直されるくらいの衝撃、じゃないんでしょうか?」

 噂ではあるが、EDENにはそういったHMPを与えられているファイターもいるというが、眉唾物だろう
 
「それに、サイズから考えると、せいせい、応急処置が限界のような……」

 その辺りはアーキテクトたちが考えることだが……さて

//気にしなーい!
 
82 :麻木ナオヒロ :2013/03/24(日) 21:53:36.55 ID:IQX+nDda0
>>81
『ふん、軽い気持ちでキスなんかに及んだことを精々悔やむのだな』

=本来トイタイプHMPのAIであるルリにとって、キスという行為はなんだかとってもこそばゆいものに感じるのだ。
 《マスカドンナ》のAI特性がややお堅めなことも関係してくる。
 言ってしまえば、初心。=

「はいはい、ほどほどにね。
 ……《新絡婦》の開発スタッフはがんばるなぁ」

ビジュアルとか機能とか、うん。
まあHMP業界で生き残るにはそういう尖り方も必要なんだろう。


「まあ確かに色々と引っかかりそうだけどね。
 でもサイズなら、なんだっけ……あの……そうだ、《大和》だっけ。
 あれなんか1mくらいの長さだけど、高さの基準には収まってるからってことで公式戦でも使えるし」

あれはネタ過ぎて承認されている感もあるけど。
しかし、前例としては十分。
蛇型や蛇竜型なら言い訳も立つのでは無いだろうか……?
俺でも思いつくようなことだ、どこかの企業では既に試作機なんかが出来ていても不思議じゃない、と思う。
83 :羽麻リリカ :2013/03/25(月) 22:26:07.84 ID:rxILkXc4o
>>82
『いや、別に乗り気なら乗り気であたしゃ構わないんだけどさ
 本当に、いいんだね?』

 何をする気なんだろうか、こいつは

「紅恋。はしゃぐのもその辺りに。
 まぁ、どの業界も、生き残りに必死、ということなのではないでしょうか?」

 スタンダードは確かに万人の手に受け取られるだろう
 だが、それは競争相手があまりにも数多いということでもある
 王道は王道ゆえに生き残ることが難しいのだ
 無論、邪道が生き残りやすい、というわけではないが、ニッチな需要を狙うのも時には必要ということだろう
 ――まぁ、どこぞの花園会社みたいに全力投球するラインを設置するのもどうかと思うが

「でも、やっぱりそういうのが市場に出てくると、色々と問題も出てくると思いますし……
 幾ら幅が広い、と言っても限界はあるんじゃないでしょうか」

 そういってリリカは苦笑した

「やっぱり現行ルールに抵触するようなものは、企業側も出しにくいんだと思います
 出したはいいけど、回収。なんてことになれば損失も計り知れませんし」

 その辺りはなかなか難しい話だ 
84 :麻木ナオヒロ :2013/04/03(水) 01:25:12.44 ID:ajBpCJxf0
>>83

『勝てれば、と言っただろう?』

つまり、してやる気はないと。
自分を負かした相手に対してなのに、上から目線でよくいうものだ。
勿論俺も次も負けるつもりはないが、敗戦直後にここまでは言えないな。

「ファイターの人口を考えたら、ブームやニーズは逃せないし見誤れないよね。
 敢えて外していくのもあるかもしれないけど、それなりに力のあるところじゃないと苦しそうだし」

フジムラ理論があるとはいえ、HMPの開発にはそれなりの期間が必要だ。
そのため、企業は他社の新型を予想し、現行機の流行りから次を読む力が必要になる。
メタゲームやニーズを外せば、よほど革新的な技術の搭載などがなければ大きな知名度を得ることも難しい。
……ま、大手や中小だけでなく、新興ブランドや同人上がりの個人ディーラーも日々現れ、HMPを発売し続けているので、全HMPなんて専門誌でも把握仕切れていないだろうけど。

「《ジャバウォッキー》の電子ウィルスなんかもグレーといえばグレーだけど、流石に装甲の補修はちょっと行き過ぎか」

お上に逆らう真似は企業ではできないか。
新技術の試験なんかで内々で作る位が精々なのかな。
……あ、じゃあEDENとかなら配備されたりするのかも。
でも、ま、

「ロマンはロマン、かなー」


//何か書き込んでおくべきでした…
//申し訳ない…
 更に言うと今週一杯も無理そうで…すみません
85 :羽麻リリカ :2013/04/07(日) 09:32:51.94 ID:beAPQh9oo
>>84
『次も同じだと思わないことだね。へへへ』
「紅恋!」
『へいへーい』

 ぴしゃり、と軽口を叩く紅恋を黙らせると、苦笑を浮かべてすいませんと謝罪を述べて

「最終的には、その一言に集約されてしまうんでしょうね」

 ロマン、そう、ロマンだ
 ネタHMPなどといわれるものでも、購入者がいるのは結局のところそれがあるが故なのである
 スタンダードは確かにいい
 けれど、ロマンを追い求めたくなるのも、やはり趣味だからこそだろう

「では、そろそろ私は失礼しますね。流石にこれ以上誤魔化すのは苦労を掛けますから」

 苦労、というのは抜け出してきた護衛相手のことだろう
 何だかんだ言って、その辺りのこともちゃんと気にはしていたらしい

「それでは、次会えましたら、またファイトしましょう」
『そんときゃ新アセンをお披露目だよん!』

 かっかっか、と手の内を明かそうとする紅恋の入ったポットをぴしゃりと叩きながら、苦笑を浮かべてリリカは店を出て行った

//お気になさらずー 今の時期忙しいですからねー
86.40 KB   

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