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ここだけ不思議の新世界★15 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2013/03/02(土) 22:00:14.05 ID:LhAyTw8Zo
ようこそ、異能使いが存在するもう一つの世界へ


ここは超能力者や魔術師などが存在するもう一つの世界。
今は、度重なるテロや紛争、そして大国同士の戦争で世界は荒れ、いたるところに戦乱の傷痕が残されている、混沌とした時代である。
しかしそんな世界でも、人々は逞しく生きていくものだ。
あるものは学生として、あるものは賞金稼ぎとして、警官、会社員、傭兵、公務員。皆が皆、生きるために足掻き、時に笑い、時に泣き、怒り喜んだりしながら今を精一杯生きている。
このスレはそんな彼らの足跡を記した、一つの物語。


そしてあなたたちは、その目撃者にして当事者でもあるのだ。


ここだけ不思議の新世界Wiki
http://www50.atwiki.jp/tf141/

ここだけ不思議の新世界@掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/internet/16555/

※前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1359825705/
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 :大坂澪 :2013/03/02(土) 22:31:35.16 ID:ubJYYU2r0
>>1000
「ふー、これで一安心やなぁ…
…よっぽど疲れとったんやなぁ、ホンマに何があったんやろか…」

布団に彼女を寝かせて、一息つく。
澪は彼女の素性などはあまり知らない。
もちろん普段どんなことをしているかも分からない。…それがちょっともどかしい気もする。
彼女の寝顔を見て、そんなことを考えていると…

「…ん?」
(…どうしたんや、うなされとるんか…?)

彼女の顔は、およそ安らかに眠っているそれではなくて。
まるで何かに追われているような、それでいて寂しさも交じったような…そんな印象。

「…」
一人にしないで…そんな悲痛な寝言があってたまるか。
寝ている時までそんなに寂しい思いをしているのか。
澪は居ても立ってもいられなかった。そんな寂しい思いをしているなんて、思いもしなかった…。
違うんだよ。私が傍にいるよ。だから、安心して…そう言うかのように、彼女の手を握る。
彼女の素性なんてどうでもいい。寂しい思いをしている彼女を放っておけるものか…!
3 :クリオネ [saga]:2013/03/02(土) 22:43:12.09 ID:LhAyTw8Zo
>>2
「……っ! ……もう、いや……」

寝ている時というのは人の深層心理が表に出る場合がある。
夢がその一つの例だろう。

何に怯える? 何に悲しむ?
普段、理性が押さえつけているその感情が漏れかかっている。
一人の時であれば良いかもしれないが、ここは澪の家。
クリオネの無意識中に残された理性の一欠片が、これ以上感情が暴走する前に脳を覚醒させていく……

「……だめ……だめっ!!」

突然飛び上がるクリオネ。
上半身を上げたその体は汗でびっしょり濡れており、寝ていたにもかかわらず息を切らしている。

「はぁ……はぁ……はっ……はっ……」

見開く目。
その視界の端に、自分以外の手が見える。
澪だ。澪が自分の手を握っている……

「あ……み、お……?」

状況を理解していく。
今、自分は見知らぬ部屋で布団に半身入っている状態。
傍らには澪……思い出してきた。
確か、ほとんど気を失うようにして眠って、それで……

「澪が……側に居てくれたの……?」

最後の理性の一欠片。
それは、澪の手によるものだったのだろうか。

4 :大坂澪 :2013/03/02(土) 22:56:08.44 ID:ubJYYU2r0
>>3
「…!」
(アカン、どうしたんや!)

分からない。分からない。彼女が何に怯えているのか分からない…!
こんなに苦しそうなのに、私に出来ることはこんな…そばにいてあげることぐらいなんだ…!

「…ゴメンな…!こんな時、何も出来んのや…」

顔を歪ませる彼女に、こんなことしか言ってやれない…何とも無力だ。

とうとう彼女は起きた。きっともうこれ以下は無いといったくらいに最悪の目覚めだろう。

「…うん。…傍にいた、ただそれだけや……それだけなんや…」

何とかして心の支えになりたい思いと、それが出来ない無力感。
2つの感情にはさまれた彼女は、うつむいている。
5 :クリオネ [saga]:2013/03/02(土) 23:02:49.34 ID:LhAyTw8Zo
>>4
「い、いや……」

やっと落ち着いてきた。
さすがに寝ている時に何を口走ったのかは分からないが、きっと澪を困らせることを言ったのだろう。
うつむく澪を見ればわかる。

「別に……平気だから……」

きっと側に居たという事実が大切なのだろう。
この醜態を晒してしまったのは痛いが、起きた時に一人だったらもっと痛かっただろう。

「ん……ねぇ、お腹……空いたんだけど」

ちょっと照れくさくしながら、髪の毛を弄る。
お腹がすいたのは本当だし、自分のせいでこんな俯く澪を見たくないというのも事実。
6 :大坂澪 :2013/03/02(土) 23:21:36.78 ID:ubJYYU2r0
>>5
「…そうか。無理せんでええんやで…?」

彼女が大丈夫と言うのに、まだ不安げな顔をする。
…でもきっと、もっと不安なのは彼女だろう。それを思えばこんな顔をしてはいけない。

「…よっしゃ!ほな、すぐに元気のつくモン作ってくるわ!」

澪は、普段の笑顔に戻って厨房へ向かおうとする。
…と、おもむろに振り返って声を掛ける。

「大丈夫、寂しいことなんかあらへん、こんな私で心の隙間が埋まるんやったら、傍にいるから…」

ありのままの本心だ。寂しい思いをしてほしくない。あんなに苦しむ彼女を見たくない。
きっと寝ていた時の言葉は覚えていないだろう。だからこんな言葉を掛けても、何のことだか分からないかもしれない。
でも、言わずにはいられなかった。一人で無理しないで。前を向き続けるのに疲れた時、横を見れば私がいるから…

そんな言葉を残してもう一度厨房へ向かった。
7 :クリオネ [saga]:2013/03/02(土) 23:35:19.63 ID:LhAyTw8Zo
>>6
「ん……」

とりあえず顔を上げてくれたようだ。
見に覚えはないが、いつまでも澪に俯いてもらってはこちらとしてもバツが悪い。

「頼むよ、期待してるからね」

そう言って笑いかけようとするが、澪が部屋を出る直前に言った言葉に思わず笑顔が止まる。

「さび……しい……?」

自分がいつそんなことを言った?
記憶に無い……と言うことは、寝ている時か。
だとすれば、さっきの澪の落ち込みようと繋がる……とんだ醜態だ。

(寂しい……? ふふっ、ありえないよ。私は私のために生きればいい。目的だって私のため……寂しいなんて思ったことは今まで一度もない)

澪が部屋を出て行ってから、目を瞑って考える。
何を言ったのかしらないが、寂しいはずなんてない。
現に今、私は寂しいなんて感じていないではないか……ありえない、ありえないことだ。

ゆっくりと立ち上がり、澪を追って下へ降りる。
まだ足取りはしっかりとしていないが、それでも街で歩いていた時よりは遥かにマシだ。

厨房の方へ向かうと澪の姿が見える。
なんだろう、本当にここの商店街に住む人はみんな不思議な雰囲気を持っている気がする。

「……澪、何か手伝おうか?」

本調子ではないし、汗で濡れた全身が若干気持ち悪いが今はなんとなく一人で待っていたくなかった。
決して寂しいなどと思っているわけではない。
8 :大坂澪 :2013/03/02(土) 23:52:35.17 ID:ubJYYU2r0
>>7
さて、調理だ。
元気の付くもの…手っ取り早く肉にしよう。
でも彼女は本調子ではない。しつこくなくて、食べやすいものにしよう。
以上の考えから作ることにしたのは、鶏の笹身を使ったサラダ風のもの。
笹身は、茹でても油が浮かないほど油脂が少ない。これならきっと食べやすいだろう。


メニューを決めたところで、足音が聞こえる。降りてきたらしい。

「大丈夫か?寝てなくてええんか?」

あんなに疲れていたのに起きてきて大丈夫なのか、それだけが心配だった。が…。
彼女の口から出た言葉を聞いて、そんな不安は消した。

「…うん!一緒に作ろう!今度は教えるんやのうて、一緒に料理するんや!」
今度こそ、彼女は笑っていた。無理にではなく、自然に。

「よし、そんじゃまず笹身を茹でようか!
笹身は切ったから、鍋に放りこんでサッとお湯から揚げて!」
9 :クリオネ [saga]:2013/03/03(日) 00:00:06.17 ID:n6xy0i1ro
>>8
「わかったわ」

一緒に作る許可を得たクリオネは調理場へ入る。
ここへ入るのは二度目になるか。
前回は何から何まで教わったが、今回は違う。

「私だってあれから少しは勉強したんだから」

とりあえず、切ってある笹身の前に立ちそれを手に取る。
鍋というのは横にあるこれだろう。

(放り込んでサッと上げる……サッと? サッと……サッと……サッとって何?)

そんな事は本に書いてなかった。
サッと……
とりあえず、入れてみよう。

クリオネは全ての笹身を鍋に入れ、それをじっと見つめている。
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/03/03(日) 00:15:17.09 ID:vScnO9uY0
>>9
「よーし、ほな勉強の成果を見せてもらおか!」

おどけたように笑うと、笹身を切ってよこした。
多分大丈夫だろう、茹でるくらいなら難しいことでもあるまい。
そう信じて澪はゴマだれを作り始める。
適度に炒ったゴマをすりつぶし、白味噌をベースに仕上げる。

合間にチラッと横を見る。…あ。茹で過ぎ。
笹身は油が少ない分、茹で過ぎると固くなってしまう。だから「サッと」なのだ。

「あちゃー…へへ、まあええわ!ほぐしたろ!」

少し固くなってしまった笹身に包丁で筋をいれるように切る。
応急措置だが、これで食べられるだろう。
…それにしても、こうして失敗しながら一緒に作るのは、楽しいものだ。
やっぱり人間は、一人でいるより誰かが傍にいる方が楽しく感じるのかもしれない…
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/03/03(日) 00:15:18.17 ID:vScnO9uY0
>>9
「よーし、ほな勉強の成果を見せてもらおか!」

おどけたように笑うと、笹身を切ってよこした。
多分大丈夫だろう、茹でるくらいなら難しいことでもあるまい。
そう信じて澪はゴマだれを作り始める。
適度に炒ったゴマをすりつぶし、白味噌をベースに仕上げる。

合間にチラッと横を見る。…あ。茹で過ぎ。
笹身は油が少ない分、茹で過ぎると固くなってしまう。だから「サッと」なのだ。

「あちゃー…へへ、まあええわ!ほぐしたろ!」

少し固くなってしまった笹身に包丁で筋をいれるように切る。
応急措置だが、これで食べられるだろう。
…それにしても、こうして失敗しながら一緒に作るのは、楽しいものだ。
やっぱり人間は、一人でいるより誰かが傍にいる方が楽しく感じるのかもしれない…
12 :クリオネ [saga]:2013/03/03(日) 00:20:41.68 ID:n6xy0i1ro
>>11
「え……? 何か違ったの?」

澪の反応を見て自分が何かミスをしたのだろうと悟る。
何がまずかったのだろうか。
やっぱり”サッと”がわからなかったからだろうか……

「もうちょっと教えてくれたって良いじゃない……サッとって……」

口を尖らせてイジケたように言う。
前回と同じく、またうまく出来ずに澪任せだ。
まるで成長していない……

「ぬー……貰いっ!」

切った笹身を一つ奪い取り口の中へ。
笹身とやらは食べたことがないが、どのような味だろうか……

「……味がしない」

それはそうだろう。
13 :大坂澪 :2013/03/03(日) 00:37:02.72 ID:vScnO9uY0
>>12
「…えへへ、何でもあらへんよ!大丈夫!」

意味深な間を置いて、大丈夫と笑う。
…まあ実際、何とかなっているから大丈夫なことは大丈夫だが。

「…あっ」

つまみ食い。これも手作りの醍醐味なのでとやかく言うつもりは無い(実際澪もゴマだれを味見と称してつまみ食いしていたり)が、澪があっと言ったのは別の理由。
…そのまま食べても淡白なだけ。タンパク質なだけに。
果たして彼女の反応は予想通りだった。

「ハッハッハ、そらそうやろ!茹でただけの笹身やもん!」

半ば呆気にとられている彼女を見て、思うつぼといった風に笑う。
なにせメインは自分の作ったゴマだれなのだから、笹身だけ食べてもどうしようもない。
そのままでは淡白な笹身に、コクのある濃厚な味のタレを付けて、やっと美味しくなるのだ。

「ハハハ…ふぅ、ちょっと待ったら美味しく食べられたのに…
よし、ほなその笹身をテーブルまで持って行って!」

笹身をテーブルまで持って行けば、澪は白米とゴマだれを持って行くだろう。
食べるのはそれからのお楽しみ…
14 :クリオネ [saga]:2013/03/03(日) 00:42:27.86 ID:n6xy0i1ro
>>13
「なんでもなくないでしょ……どうみても」

ジト目になって澪を見る。
こっちが初心者だと思って気を使っているな……?

「くっ……だって他に何かあるなんて知らなかったし」

笹身なんて食べたことないし、そもそも店に行くと完成品が出てくるのだ。
作ったことのないクリオネがどのタイミングで完成かなどとわかるはずもない。

「……わかったわよ」

クリオネは拗ねながら笹身の乗った皿を持ってテーブルへと移動する。
先に着席して、澪が来るのを今か今かと待ちわびている。
15 :大坂澪 :2013/03/03(日) 00:53:50.39 ID:vScnO9uY0
>>14
「ははは…まあまあ」

うやむやにして、受け流す。
別に気を使っているのでは…ないとは言えない。

「まあ…急がば回れっちゅうやっちゃな。
何事も急がず焦らず。人生のモットーや。」

自分の言葉に自分でうんうんと頷く。
しっかり者に見えて案外のんびり屋だったりする。

「…さ、お待たせ!ほな頂こうか!」

間もなく澪は特製出来立てゴマだれと炊き立てのご飯、お茶を持って出てくる。
16 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 00:57:55.90 ID:mgrOpf9wo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1359825705/998
【スラムに隣接する色街 通称は親不幸通り】
人の社会の中で人食いの怪物が生きていくのは難しい。
それが悪魔であっても、吸血鬼であっても、食屍鬼であっても。

個体だけならば狩られる側の人間よりずっと強い怪物たち。
しかし彼らは伝説の中でも、そして現実世界でも人間達に滅ぼされた。

人類の天敵が生き残る方法はただ一つ。
人間として生活して、人間から隠れて狩りを続ける。
便利な化物として人間に飼われる方法もあるが…。
人類は個体では弱くとも神仏の類より遥かに強力で強大な存在だ。

一人の怪物の少女がいる。
人攫いを誘い出して食らうためにさっきまでは色街を、
今は治安の悪い地域の中から人通りの少ない通りを歩いている。
本通りから路地を抜けるとシャッター街へ向かった。
餌は自分自身。誘拐魔でなくても釣れれば喰ってしまおう。
彼女は今、文字通り血肉に飢えている。
17 :クリオネ [saga]:2013/03/03(日) 01:01:13.15 ID:n6xy0i1ro
>>15
「やっと来たー」

手伝うと言っておきながら全くといっていいほど何もしていないクリオネ。
やったことは鍋に笹身を入れて茹で過ぎた事と、つまみ食いとこの場で待っていたくらいだ。

「じゃあ、いただくよ」

やはり最初に食べるのは笹身だ。
手作りのゴマだれをつけて食べれば、そのさっぱりとした味が更に次の笹身を食べたいと訴えかける。
疲れた体を気遣って、体力が着き、なおかつ食べやすいさっぱりとしたこの笹身のチョイスはさすが澪と言ったところか。

「うん、相変わらず澪の料理は美味しいね。さっきまで味がしなかったのに、これをつけるだけで全然違うよ」

炊きたてのご飯もあり、空腹が満たされていく。
あの状況で澪に拾われてよかった。
18 :大坂澪 :2013/03/03(日) 01:15:15.56 ID:vScnO9uY0
>>17
「はいはい、ではいただきます!」

自分で作った料理を自分で食べる。
もう何千回と繰り返したことだが、やっぱり飽きない。
では食べよう。こう見えて自分も疲れている。空腹を満たそうではないか。

「んー、なかなか。箸が進むわ!」

今回は笹身を湯通ししてゴマだれを作るだけの簡単な料理。
サッと作ってすぐ食べられるので、待たせないだろうと思ってのことだった。
「へへへ…まあ簡単な料理やし、大した物やないけどな!」

簡単な料理とはいえ、美味しいと言ってもらえるに越したことはない。

…なんだ、そういうことか。今気づいた。
彼女が何で悩んでいるのか分からないけど、自分の料理で少なくとも束の間でも満たされるんじゃないか。
自分に出来ることは、やっぱりこれしかない。
19 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 01:19:51.82 ID:OsQfEs1co
>>16
好奇心旺盛な子供のように、アン・スコット・マクミランの行動はほとんどが思い付きで為される。

「……こんな所で何してるの?」

少女に声を掛けたのも、きっとただの気紛れ。それに大した意味などないだろう。
単純に気になっただけ。なぜ治安の悪いこの地域に、こんな無防備な少女が―――と。

「ボクは地元の人間じゃないけど、でも分かる。ここに居るのは良くない」

彼女には目の前の少女の思惑など知る由もない。故に気付かない。真に無防備であるのは己自身であるなどと。

「……帰ろう?」

二人の間を風が吹き抜ける。閉じられたままの錆びたシャッターが、耳障りな音を立てた。
20 :クリオネ [saga]:2013/03/03(日) 01:28:19.82 ID:n6xy0i1ro
>>18
スラム街で生きていたときは、人と食事をすることなんて殆ど無かった。
あのひと時を除いては常に一人。
しかし、最近になってこういう機会が増えてきたように思う。

自分は変わったのだろうか……
周りの影響? それもあるだろう。
この街には今まで出会わなかったタイプが多くいる。

「……ん、ありがと……」

拾ってくれたことに対するお礼と、今の食事の礼。
それ以外でも澪にはなんだかんだで色々助けられている気がする。
負けた気がするからそこまでは口にしないが。


「……そろそろ帰るね」

笹身と、茶碗一杯の白飯を食べ終わったクリオネは席を立つ。
感謝はしている……しているからこそ、必要以上に関われない。
私に関わってどんな危険があるかも分からないし、そもそも今更私がこんな時間を過ごしていいのか……と言う疑問すら最近になって感じることがある。
全くらしくない……自分さえ良ければ何でもいいはずなのに……

「澪……、私が寝てる最中に何を言ったか知らないけどさ……忘れていいから。
 うん、澪は何聞かなかった……だから余計な気を使う必要なんてない」

そして、今日は助かった……と最後に一言付け加えて店から出て行くだろう。
その足取りは、もう完全に回復していた。


//ちとこれ以上続けると眠気で文章が雑になりそうなのでここで〆させてください。
//とても楽しかったです。ありがとうございました。
21 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 01:38:18.87 ID:mgrOpf9wo
>>19
アンに声をかけられてゆっくり振り返る。
しばらくその目を見て「食事の支度よ」と答える。

「あなたは良い人間?悪い人間?
 用事が済んだら帰るわ。」
22 :大坂澪 :2013/03/03(日) 01:45:33.25 ID:vScnO9uY0
>>20
「へへへ、お礼なんてええよ!美味しかったならそれでええ!」

相変わらず澪は笑顔だ。裏表など全く無い、そんな屈託のない笑み。
だいたい言われなくても感謝してくれているのは分かっている。
分かっているからこうして素っ気ない返事にも笑っているのだ。

席を立つ彼女を見て、声を掛ける。もう大丈夫そうではあるが…
「あ、もう帰るん?大丈夫なんか?」
それでも大丈夫かと声を掛けてしまうのは澪の性格だろう。
ただ、今回はそれだけではなく何だかやっぱり言葉の端に一抹の淋しさを感じたから。…遠慮しなくてもいいのに…

「…」

いいや。あんな悲しい心の叫びは、きっと忘れないだろう。
直接は言えないが、彼女の心に平穏が訪れるまで絶対に忘れないと決めていた。

//お疲れ様でしたー!少し長丁場になりましたが、楽しかったです!
//また機会があれば!
23 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 01:47:41.03 ID:OsQfEs1co
>>21
「ふぅん……お腹減ってるんだ」

少女の言葉で思い出したかのように自身の腹部を両手で覆う。
きゅう……と小さな音を立てて、アンの肉体は空腹を訴える。
思い返せば彼女は昨夜から何も口にしていなかった。

「ボクは……良い人間ではないと思うよ」

少しの間を置いて、しかし少女は確信を持ってそう答えた。
確かに彼女はまともな人間ではない。これまでも多くの罪を犯してきた。
故に自身を善人とは絶対に言えない。けれど、今ではそうなりたいと思っていることも確かだった。
でなければこんな寂れた通りで、見知らぬ少女に声をかけることなどしないだろう。
24 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 01:54:55.78 ID:mgrOpf9wo
>>23
「悪い人なのね。見つかってよかったわ。
 ところであなたもお腹が空いているの?
 でもわたしには得物が満腹か空腹かなんてどうでもいい事なの。」
 ニコリと微笑む。
「でも…」でもである、自分を心配して気をかけてくれた人物だ。
 彼(?)を襲うのは何か、自分に課した約束に違えるように思える。

「あのね、わたしはさらわれたいの。
 人をさらって売るような人を探しているの。
 だから今居るここでいいのよ。」
25 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 02:06:57.13 ID:OsQfEs1co
>>24
「えっと……うん、あの……??」

どこか清廉とした雰囲気を醸す少女の口から飛び出した、物騒な言葉の数々。
悪い人、獲物、攫う、売る。しかし目の前に居るのはそんな言葉とは縁の無さそうな、綺麗な子。
何か誤解があるのかもしれないと、アンは思う。それはどちらかと言えば願望に近い、希望的観測だったかもしれない。

「……何処か遠くへ行きたいの?だったら、手伝ってあげるけど」

疑うことを知らないわけではない。ただ、今は正しく生きたいだけ。
けれど少女はその方法を知らない。だから今は信じるだけ。見ず知らずの他人も、悪人であっても。
疑わないことが正しいことなのだと、今はただ無垢に信じる。それが目を逸らしているだけだとは気付かぬままに。
26 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 02:12:30.40 ID:mgrOpf9wo
>>25
「えっとね、わたしはお肉が欲しいの。
 お米も麦も試したけれど食べた気にならないの。」

 あどけない表情で答えた。知恵は回るがそう造られただけ。
 人でなくとも根はただの子供だ。器用な嘘をつく事などできはしない。

「だからお肉が欲しくて人攫いを探しているの。
 人間にとっても誘拐魔は人間の敵でしょう?
 誰が狩ってもいいし、狩った後どう扱ってもいいと思ったの。
 この考え方は間違っているかしら?」
27 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 02:25:53.59 ID:OsQfEs1co
>>26
「……キミは」

悪寒が背筋を駆け昇る。何度も経験した、しかし未だに慣れない体が引き締まるような感覚。
気付くのが遅すぎた。目の前の少女は、きっと。

「ボクと同じ、だね」

自分と同じ、化け物。どうしようもなく異質で異形な、とても受け入れがたい何か。
そして自分より、もっと冷たい無機質な意思の集合体。彼女を動かすのは憤怒でも悲哀でもなく純粋な食欲、空腹感。
その存在そのものが人類と相反する、いわば天敵。行動理由は違うけれど、自分と同じ。同じだからこそ。

「でも、間違ってる」

見て見ぬふりは、出来ない。

「間違ってるんだ」

どうすれば良いのか、アンには分からない。けれど思う。目の前の少女がやろうとしていることは、間違いであると。
28 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 02:38:19.66 ID:mgrOpf9wo
>>27
 変な所が賢いが常識はない。そういう存在が首をかしげる。
「人間は社会的な動物よ。
 だから自分以外の人間を食い物にするのは人間じゃない存在。
 だから人間を食い物にする人間は、人間じゃないのよ。
 人間の身体を持った別の何かよ?
 それならその血肉だけ貰っても人間社会に影響はないでしょう?」

 たしかに悪魔だの人でなしだのと揶揄される人間はいるが、
 クララの理屈はそれを比喩や揶揄でなく現実とする考え方だ。
 彼らは人間じゃないのだから人間社会から拝借して良いのでは?

「わたしと同じ…?じゃあ、あなたはどうして怯えているの?」
 不思議な物を見るようにアンを見返す。
 アンの考え方に興味を示しはじめた。
29 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 02:57:30.41 ID:OsQfEs1co
>>28
「それでも、それが人であることは変わらないよ。人を裁いて良いのは人だけで、ボクらじゃない」

少女の言い分全てが間違いだとは思わない。確かに人間の中には死に値する者も居る。
そういう人間も、そうでない人間も。アンはたくさん見てきたし、そして時には手にかけたことさえあった。
だから少女を否定することは、自身の過去を否定することでもある。

「ワタシは化け物のままで居たくない!人間になりたいっ!」

吸い込まれそうな程に澄んだ少女の瞳。そこにあるのは穢れない、純粋な悪意。それは嘗ての自分を見るようで。

「キミを見ていると、自分の中の化け物が暴れるんだ。どうしようもないくらい、抑えられないほど……」

心、或いは抑えきれない本能か。少女の中を駆け巡る衝動は止まらない。
少女の視線になぞられた部分から、ヒリヒリと焼け付くように身を焦がす。
隠し押さえ込んできた怒りや欲望。それを自覚させられることは、恐怖と呼ばれるに相応しいことだろう。
30 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 03:15:27.30 ID:mgrOpf9wo
>>29
 クララはアンの言い分を聞いてクスリと笑った。
「人間達だって人間社会の裁きに皆が納得なんてしてないのでないかしら?
 裁かれるに値する人間達は人間の群れの中ではイレギュラーな存在なのよ。
 横からわたし達がそいつらを拝借してもきっと大きな問題にならないわ。

 だって、司法機関からして司法制度の実験場でしかないでしょ?
 モルモットを数匹くすねるのは大きな間違いなのかしら。」

 ミミック、宝物を守るために設計された人工生命。
 仕様は人肉を食らう捕食型の怪物。クララは人の気配を察知した。
「来たわ。次こそ得物かしら。もうわたしお腹が空いたまま数日過ごしているの。」

 人通りがなくなれば、そしてそこに器量の良い女性がいれば現れる。
 そこにそんなろくでなしが二人いた。両性具有のアンも女性と認識したようだ。
『こんな所で何やってんだか。だが二人か、片方に逃げられると人を呼ばれそうだな。』
『逃げる奴なら殺しても問題はない。一匹仕留めればもう一匹はおとなしくなるさ。
 二匹とも上玉じゃないか。理想は両方をかっさらう事だが、
 片方を吹き飛ばしてもう片方を拉致ってもいい。』
 肩に突撃銃をかけ、ショットガンを構えた二人組がその場に現れる。
31 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 03:28:29.99 ID:OsQfEs1co
>>30
「確かに問題にはならないかも。キミだったら簡単に人の目を欺くこともできる。でも」

言葉に詰まった、わけではない。ただ、理解してもらえるか不安だった。目の前の少女は言葉や心を持っていて。
けれど、それを支配しているのは本能。自分とは違う価値観を持ち、それに基づいて生きる化け物。

「でも、自分の心は欺けない……でしょ?」

自分と同じ、だけど違う考えで生きる化け物。もしかすると言葉は届かないかもしれない。


「だめ。食べ物が欲しいなら、ボクがあげるから。だからキミは殺さないで」

歩み寄る男たちに悟られぬよう、アンは小声で少女に告げる。
如何なる武装を用いようとも、恐怖は無い。あるとすれば、それは自制心を失うことに対する不安のみ。
毅然とした態度で、アンは男たちの前に立ち塞がる。やや挑戦的な視線が男たちのそれと交錯した。
32 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 03:44:09.27 ID:mgrOpf9wo
>>31
「こ…こ…ろ…?」
 クララがアンの言葉の意味を考えている間に隙ができたか?

 男の一人はアンに近づきショットガンの銃口を頬に押し付けた。
 速い。いや、速いのではない。一瞬よりも速く距離をつめた。
『その綺麗な顔を吹き飛ばされたくなければ、
 腕を頭の後に組んでうつ伏せになれ。
 安心しな。俺達は非合法と言っても置屋のスカウトだ。
 反抗しない女は攻撃しない。…そこの娘もだ!』
 恐らく異能だろう。テレポーターか。

 しかしクララは堂々と答える。
「食べ物も欲しいし、なによりその人達の嘘が嫌い。
 誘拐された遊女は四肢を切り取られて逃げられなくなるの。
 考えてみて。非合法の慰安所が遊女を自由にしてくれると思う?」
33 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 03:56:33.92 ID:OsQfEs1co
>>32
男の言葉に、アンは抵抗せず、だが服従もしない。

「……帰って。でないとボク、貴方たちを殺すよ」

それはただの脅し。本当は誰も殺すつもりなどない。でないと自分は、人間になることが出来ないから。
いつまでも化け物のままは嫌だから。だからアンは例え男に銃で頭を吹き飛ばされたとしても、抵抗はしないだろう。

「人しか食べられないなら、ワタシの体を少しだけあげる」

少女の方を見ずに、しかしアンはあっさりそう言ってのけた。

「ワタシの体は特別。金属を取り込めば損傷だって再生するし、何も問題ない。だから今は言うことを聞いて」
34 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 04:15:03.11 ID:mgrOpf9wo
>>33
 アンに銃口を突きつけている誘拐魔が確認する。
『顔面に銃口を突きつけられて"[ピーーー]"か。ははは。
 例えばあんたはテレパスでテレポーター…てわけかい?
 ないね。でなきゃこの今の状況はないだろう。
 銃口を顔面に突きつけられているお前は、
 今、この場所で、こんな場面に使える能力を持っていない。
 さあ、さっさと伏せろ。人が来ると厄介だ…。』

「要らない。でも、貴方の前で食事をするのははばかれるわね。
 それで、あなたは顔に銃口を突きつけられてどうするつもりなの?」
 クララはもう一人に羽交い締めにされている。
『可愛げのない餓鬼だな。怖くないのかよ。』
「いいから黙っていて欲しいんだけれど。[ピーーー]わよ?」
 クララにしてみればアンの言論は興味を引くものだが生き方を変える程のものではない。
 もう一人の誘拐魔はクララと密着しているがために、相棒の人質になっていた。
 もう一人の誘拐魔は気づいていなかった。自分が人質にされている事に。
35 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 04:30:05.56 ID:OsQfEs1co
>>34
どろり……と、粘度の高い液体が零れるような音。
その音を皮切りにアンの身体の至る部分から飛び出したのは、鋭く磨かれた金属の刃。

「ボクの方が格上だってこと、死んでみなくちゃ分からない……?」

アンとクララを取り囲む二人の男性。一瞬で彼らの喉元に突きつけられた刃は、視覚的にも精神的にも効果は覿面だろう。
少なくとも、クララが発する異様な雰囲気と比べれば、その危険性は親切だと言っても良いほど分かりやすい。

「でも、お腹空いてるんでしょ?それにボク、悪い人だから平気なはずだよ」

アンはこの日初めて、目の前の少女に笑顔を向けた。それは冷たく、そしてどこか寂しい笑顔だった。
36 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 04:50:00.84 ID:mgrOpf9wo
>>35
『なるほど。
 お前達は、おれはともかく谷崎には荷が重いか。』
 アンの能力を見てショットガンの銃口を向ける男がニタリと笑う。
 そしてその場から瞬時に消え少し離れた所に現れる。
『谷崎。このアバズレどもを狩るのは辞めだ。
 割にあわない。その嬢ちゃんも離してやんな。』
 ショットガンの男はこの狩りを諦めたようだ。
 女をさらい、女を売る店に持っていくのが彼らの稼業。

 しかし時はすでに遅く、谷崎と呼ばれた男はクララの狩りは終わっていた。
「お姉さん?お兄さん?どちらかわからないけれどありがとう。」
 谷崎の背中から突き出たクララの肋骨。
 そして吸い込まれるように捕食される谷崎の遺体。
「わたしを庇おうとしてくれたわね。わたしはクララよ。よろしくね。」

 ショットガンの男は異能だ。だが本物の怪物との対面ははじめてだ。
『お…お前らは、なんだ!お前らはなんなんだ!』
 アンの体質や生態ならば異能として説明はつく。
 いや、説明はともかく納得はいく。しかしクララの行動はどこかおかしい。
 だが、それ以上に行動より言動だ。二人の会話は人が人と交わすものではない。
37 : :2013/03/03(日) 09:36:19.93 ID:t21lTyl20
さて

とりあえず

酒でも飲むか・・・
38 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/03(日) 15:57:11.64 ID:NCG4fX8do
>>36
振り返った先にあるのは、目を覆いたくなるような現実。

「どうして……」

吹き出した血しぶきが、アンの視界を紅に染め上げた。
暫し呆然として、クララを見つめたまま少女は動きを止める。

「殺す必要なんて、なかったのに!」

男の言葉もクララの言葉も、今は耳に届かない。
止めることが出来なかった。その自責の念だけが、少女の胸の中で渦巻く。

/遅くなって申し訳ありません……
39 :早乙女由良 [saga]:2013/03/03(日) 17:08:40.80 ID:n6xy0i1ro
スーパーのレジ袋を両手に持ち、トコトコ歩いているメイド服姿の人間。
薄いブロンドの長髪をなびかせて歩けば、ちょっと守ってあげたいタイプの女の子に見える。

「はぁ……リリー様が魔術を教えてくれるって言ってくれたけど、やっぱり自分の力でも強くなりたい……」

自分が強くなって色んな事が出来るようになれば、その分リリー様の負担も減るはず。
そう考えた由良は、自身の使う精霊術でもっといろいろなことが出来るようになりたいと考える。

だが、そう簡単に強くなれるものでもない。
精霊術は一般的な異能に比べて応用力が乏しい。

「もっとぼくの体が強ければいいのに……」

公園に入っていく由良。
帰る前に少し特訓をしようと考えたのだ。

精霊術は精霊が使う術を自分の体を介して発動するもの。
そのため、自分の体が強くなければ強力な術は発動できない。
一応、使い方や慣れもあるかもしれないので、なんとか効率よく術を発動したり出来ないか模索する。

「我が契約に従え、”サラマンダー”……」

レジ袋をベンチに置き、目を瞑る。
集中してまずはウォーミングアップとして、今できる術を発動する。
ボッ……ボッ……
と由良の周りに火の玉が1つ、また1つと増えていく。
現在由良の周りには、5つの火球が浮かんでいる。
40 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/03(日) 21:12:22.51 ID:mgrOpf9wo
>>38
 その小さな身体のどこに成人男性の肉がおさまるのだろう。
 飲み下すというより背中から吸い込むように遺体が消えていく。

「そうね。
 どんな人でも死ぬのは可哀想だとは思うわ。
 いいえ、どんな生き物でもそうね。可哀想よ。
 でも、わたしは食べないと生きていけないから。
 身体の一部じゃ足りないから。」

 クララはアンをまっすぐに見つめてまっすぐに答えた。
 彼女ももう一人の男の事は盲点になっている。

 誘拐魔が動きだす。
『幼い変質者か、本物の怪物か…。
 何にせよ余所見とは調子に乗ったな化物!』
 狙撃銃をクララに向けて構え発泡しようとする。
41 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/03(日) 21:48:37.94 ID:kqLObQ7Co
>>39
「鬼火の類かと思い、念のため確認に来たが……」
闇夜であってもよく効く目が炎の明かりをみつけ、人の何番も鋭い嗅覚が炎の臭いを見つける。
「どうやら……違うようだな」
位置を探っているうちに、それが何か特殊な炎であることに気がつき、ここまでその正体を探りにきたのである。

鋭く輝く目を夜の闇に光らせながら、ベンチに座る由良の方へと歩いてゆく。
「これは、そこのお前の炎か」

「こんな所で、何のつもりだ?」
大神は由良の事情を知らない。公園で一人、浮かぶ炎と一緒の人物となれば、怪しく感じるところもある。
42 :早乙女由良 [saga]:2013/03/03(日) 21:56:19.74 ID:n6xy0i1ro
>>41
「5個……6個目……」

出せる最大個数を増やそうと、額に汗を流しながら集中力を増していく。
現状出せるのはここまで。
記録を更新しようと力を込めるが……。

「へっ……? うわぁっ!」

前神経を集中していたがために、突然話しかけられた事で驚き飛び上がる。
出ていた火球は全て消え去り、大神の方を振り向いたかと思えば尻餅を着いて倒れこんでしまう。

「痛い……あっ、ごめんなさい……怪しいものでは……」

そのまま大神の方を見上げる由良。
その表情は大神を怖がっているようだ。

//ちなみに由良は立っていました。
//後すいませんが、飯のため次少し送れるかもしれません
43 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/03(日) 22:10:14.73 ID:kqLObQ7Co
>>42
「まて、俺は……」
声をかけただけ。だというのに、相手の反応は大きなものだった。思わず、大神も戸惑ってしまう。
しかも、そうしている間に目の前の人物は倒れてしまった。

「おい……大丈夫か?」
近くまで歩いて、手を差し出してみる。倒れた人物はいかにも痛そうであった。

「そうだな……」
声をかけただけで転倒してしまうような身のこなし。側に置かれたレジ袋。
それらが自然と存在していて、相手が極めて特殊な人物はだとは思えない。

「だが、その格好は何なのだ? ……そういう、仕事の人なのか」
いわゆるメイド服。それは、別の意味で怪しい人であった。

//はい、了解です
44 :早乙女由良 [saga]:2013/03/03(日) 22:26:28.62 ID:n6xy0i1ro
>>43
「うぅ……ありがとうございます……」

差し出された手を取って立ち上がる。
結構力持ちなんだな……なんて思いつつ。
こちらが男なのに、突然倒れこんで女性の人に起こしてもらうのはなんとも情けない。

「すみません……大丈夫です。
 私はその……」

確かに今着ている服は、使用人の時に着ていた服。
しかし、今はリリー様のお手伝いというか、ただくっついているだけのよくわからない立場。
どう説明したものか……

「元……使用人です。今は訳あって使用人ではない状態で個人にお仕えしています」

と、結局よくわからない解答になってしまった。
自分でも理解していないのだから仕方のない事だろう。

「あの、警察の方……ですか? えっと……ぼく、きっと誰にも迷惑かけていないと思うんです。
 だからその……捕まえるのは勘弁してほしいというか……」

自分を捕まえに来た怖い警察の人だと勘違いをした由良は、酷く恐縮した様子で縮こまる。
45 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/03(日) 22:45:23.62 ID:kqLObQ7Co
>>44
「驚かせてしまったか」
手を握り、引き上げれば続けて言葉をかける。
「すまない、そんなつもりはなかったのだが」


「今時、珍しいな」
何か深い事情があってもいやだと考え、深くは追求しないこととする。
「俺は、はじめて見た」
もしかしたら、珍しいことではないのかもしれないが……大神はメイド服を着る仕事に関わった事がなかった。

「警察官ではない。それに、お前を捕まえるつもりもない」
全然違うと示すために、左右に首を振る。
「やましいことをしていないのなら、堂々としていれば良いのだ。
あまりに下手にでると、そこまで怯える理由があるのか? などという疑いが起こるからな」
46 :早乙女由良 [saga]:2013/03/03(日) 22:54:43.53 ID:n6xy0i1ro
>>45
「い、いえ……勝手に倒れたのはぼくですから」

パンパンとスカートを払って汚れを落とす。
室内であればメイド服を着ていてもさほど汚れないのだが、屋外だとこれはかなり汚れやすい。
使用人時代はほとんど外に出なかったので、これは最近気がついたことだ。

「珍しい……でしょうか? 少なくとも、ぼくの周りには似たような人がもっと居ました」

しかし、似た境遇の人は集まるのかもしれない。
由良のような奴隷を目にする人は大量に目にするし、一生縁のない人も居るのだ。

「そうでしたか……堂々と……堂々と……」

両手を握って胸の前に置き、唱えるように復唱している。
そして、徐々にペッタンコの胸を張り、前を見据える。
いや、男なのだからペッタンコなのは当たり前だ。

「で、では……堂々とします。……堂々と……」

何とか胸を張ってみせるが、その姿はどこか自信無さ気だ。

「やっぱり、こんなところで練習するとひと目に着いて危ないですよね……」

堂々としていたのもほんの一瞬。
徐々に目線が下がってきてしまう。
47 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/03(日) 23:12:45.35 ID:kqLObQ7Co
>>46
「少しだけ驚いたぞ」
手を離せば由良から少し離れた場所に立って、服装を整える姿を眺める。
「まさか、倒れられるとはな」

「分からない。偶然、俺に見る機会が無かっただけなのかもしれない」
実物は本当に始めて見るので、無意識のうちにジロジロとその服装を眺めてしまう。
「似たような人というのは、その服装と似たような格好の人達。ということか?」

「それだとお前、徐々に怪しい人に近づいている気がするぞ」
由良なりに堂々としているのだろうが、相変わらず自信が無いようだ。
そうしたぎこちない動作は、かえって怪しい人に感じられてしまう。

「そうだな……現に俺もこうして気になった訳だ」
時間にもよるが、公園という解放的な場所では誰かと出会ってしまう可能性が高いだろう。

「練習……といったな。 そうか、炎を扱う訓練を?」
48 :早乙女由良 [saga]:2013/03/03(日) 23:22:50.37 ID:n6xy0i1ro
>>47
「うぅ……そうですよね、ごめんなさい」

ちょっとしょんぼりする由良。
何かにつけて謝るのはもう癖だろう。
人によっては不快になるかもしれないが、これまでの環境ではまず謝罪だった。

「そうかもしれませんね。
 ぼくが見たことがあるのは服装も確かにそうなんですが、ぼくと似た境遇の人……ですかね」

由良は相手の視線に気づきながらも、それを全く気にしない様に振舞っている。
自分の居た世界では、一般階級の人が使用人をしているのは少数派だった。
そういった人たちはメイド長とかそういったポジションになり、奴隷階級の使用人を使っていた。

「む、難しいです……。男らしくなるって決めたのに……」

眉をハの字にして俯いてしまう。
男らしい一人前の男になるのはまだまだ先のようだ。

「炎を扱う……と言うより、精霊術そのものの練習です。
 あ、精霊術っていうのは精霊が持っている術を貸してもらって自分の体を介して発動するっていうものなんです。
 ですから、ぼくには直接炎を操る能力は無いんです」

あまり馴染みのないであろう精霊術について説明をする。
人に説明した経験があまり無いため、わかりづらかっただろうか。
49 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/03(日) 23:44:48.24 ID:kqLObQ7Co
>>48
「なにも、謝ることではない。
それから……そう何度も何度も謝られしまっては、こちらも困る」
表情にはほとんど変化を見せないため、大神の顔から感情の変化を読み取るのは難しいだろう。
「それとも……俺はそこまで恐ろしいか?」
言葉の調子には威圧するようなものはない。

「境遇、か……人の過去は詮索したくない」
自分の昔話をするのが好きな人というのは、どの程度いるのだろう。 ――大神は、絶対にしたくない。

それに、今であったばかりの自分が尋ねるのも妙な話である。
詮索はしない。話さなくて良いという気持ち伝えた。

「男らしくとは……なろうと思って、なるものでもないだろう」
「分からないな。俺はそんなこと、考えたこともない」
本当に考えた記憶のない大神には、相手の気持ちは全く分からなかった、
「それに……とても、難しそうだ」
目の前の人物は、その本質が男らしさと遠いところにある。そんな気がする。

「だいたい分かった。 先ほど扱っていたのが、炎だったということか」
「俺は、鍛錬するのは良いことだと思う。 それにこの時勢だ、公園で訓練ぐらい構わないと思うぞ」

「それから……練習の邪魔をしたのは、すまなかった」
「ずいぶんと、集中をしている様子であったな」
50 :早乙女由良 [saga]:2013/03/04(月) 00:02:08.72 ID:4bAiRewdo
>>49
「こ、怖くないですっ、大丈夫ですっ、ごめんなさ……」

といった所でとっさに手を口に持っていく。
たった今困ると言われたばかりではないか……

「そう……ですね。あまりおもしろい話ではないですし」

人によっては面白いと感じるのだろうか。
奴隷生活の話を聞いて笑う人がいたら、それはそれでおかしな人だ。
辛いといえば辛かったが、今こうして生きている以上死にたくなるほど辛いとは感じていなかったのだろう。

「やっぱり意識している時点で男らしくないですよね……
 ぼくはいつも女みたいって言われていたので、見返したかったんですが。
 でも、まだ男らしくなれないと決まった訳じゃありません。……頑張ります」

握った拳を胸へ持っていくポーズは、力強いといえば力強いが、女の子が頑張るというポーズに見えなくもない。

「そうですかーよかったです。なかなか練習できそうな場所が見つからなくて……
 ある人の為に力を付けたいんです。きっと、今より強くなればもっとお役に立てるはずですから」

そう、自分を引き上げてくれたあの人のために。

「こうして集中して、自分の限界値を引き上げようとしていたんです。
 まずはある程度体に負担の少ない術で試していたんですが……」

誰もいない方向を指さすと、指先から先ほどと同じ、拳より一回り小さい火球が出現する。
それは人が走るスピードと同程度で直進すると、八の字を描いて元の場所へと帰ってきた。

「より多くの火球を同時に扱おうとしていたんです。今はまだ4〜5個なんですけど、本を読むと10個くらい操るのが一般的らしくて……」
51 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/04(月) 00:32:41.30 ID:ISnvr4ibo
>>50
「大丈夫ならば……良いのだが」
無理やり言葉を引っ込めた相手。 無理やり引っ込めさせる原因を作った自らの言葉。
お互い、話していて大変なのかもしれない……。
「……ふむ」
そうして突然だが、一人で何かに納得して頷く。

「すまない……突然に現れて、嫌なことまで思い出させたようだ」
よく考えれば、大神は大神で謝ってばかりであった。 ――それに気がついて、わずかに眉間に皺を寄せる。

「女みたいって……女が女みたいで何が……」
何か、言葉が引っかかる。 その台詞を流してしまうほどに鈍感では無いのだ。
「間違っていたらすまないが、まさかお前……男か?」
考えられた事は一つ。いままで考えなかったことだが、目の前の人物の言葉をそのまま解釈するのならばそういうことになるのではないか。

「他者に大きな迷惑をかけない限り、問題はないだろう」
他人に全く干渉しないことなどできない。小さな迷惑はいつも誰にでもかけているものだ。
「より強くなろうという心構えは、挑戦する気力があるのは良いことだ」
「根拠があるわけではないが……悪いことにはならないさ」

「俺はその技術に知識があるわけではないからな、なんの手助けはできない。
だが、焦る事はないと思う……目標は目標だ。それを達成することにも、達成できない事にも大きな意味がある」
「平均以下だから、落ち込む必要はない」
走る火の玉を見ながら、励ますつもりで呟く。
52 :早乙女由良 [saga]:2013/03/04(月) 00:45:46.09 ID:4bAiRewdo
>>51
「はい、むしろカッコよくて素敵だと思います。少し憧れちゃいます」

女性であるこの人でも、こんなに凛々しく振る舞えるというのに男である自分は凛々しくないというのは考えものである。
こういった人の言動を真似てみれば、自分も近くなれるのかな……なんて考える。

「いえ、別に嫌なことでもないですから、気にしないでください」

片手を振って、特に気にしていない事をアピールする。
特に思い出すだけで辛いトラウマの様にはなっていない。

「……へ?」

間の抜けた声。
女が女みたいで……と言うことは、この人は今まで自分のことを女だと思っていたのか……
これは凹む。いや、メイド服を着ている時点で男という選択肢は普通でないのだが、一人称は”ぼく”だったし

「お……男……です」

バツの悪そうな顔をして大神を見つめる。
変態だと思われるのだろうか……

「そうですよね、これからですよね。
 なんとかしてみます。……えっと……」

炎を消し、お礼を言おうとするが、まだ相手の名前を聞いていなかったことを思い出す。
53 :大神 恭子 /異端審問官 :2013/03/04(月) 01:02:41.65 ID:ISnvr4ibo
>>52
「そう言われてもな……その気持ちは分からない」
ふと耳の上あたりに手をあてて、髪を掻き上げる。
「憧れるというのは……何か、違うと思うぞ」

「そうか……そうだな、ありがとう」
嘘であれ、本当のことであれ、気にしていないといえば気持ちも重くならずにすむ。
話を打ち切るためにも、それ以上はなにも話さなかった。



「へ……へっ? ではないだろう」
変わらずに鋭く光る目だけを闇に浮かべているが、その言葉は上ずった調子になっている。
「………………………」
性別を間違えていたという事実には多かれ少なかれダメージがあり、難しい顔をして少しの間、黙り込んだ。

由良が男だと認めれば、目だけを動かして横目でその表情を確認し――
「言い訳をするつもりはない……悪かった」
というふうな謝罪の言葉だけを述べれば、気持ちも落ち着いて普段の表情に戻る。
否定も、肯定も無い。

「大神だ、大神 恭子。
夜道に気をつけろ、それから……お前が悪夢を見ないように、祈っているよ」

「邪魔をしたな。練習、頑張れよ」
言いたいことを言い終えれば、踵を返してその場を後にした。
54 :早乙女由良 [saga]:2013/03/04(月) 01:11:09.43 ID:4bAiRewdo
>>53
「そうでしょうか……確かに、ぼくからの一方的な感情ですのでお気になさらないでください」

そう言って微笑む由良。
まぁ由良のようなタイプはかなり特殊なため、あまり理解されないかもしれない。

「い、いえ……慣れて、ますから……」

うぅ……と、これが一昔前の漫画だったら、目から滝のように涙を流している絵になるだろう。
初対面ですぐさま由良を男と見抜けたの人物は今までほとんど居ない。
着ている服も問題があるのだが。

「大神さん……私は早乙女由良と申します。
 その、ありがとうございました」

大神の姿が見えなくなるまで、その背中を見続ける。
そうしてようやく気づく……リリー様が空腹で倒れているのではないかと……

「今日の当番……ぼくだった……っ!!」

練習などしている場合ではない。
すぐさまベンチにおいてあった袋を取って、帰っていくのであった。

//ありがとうございました。またお願いします。
55 :トマス [sage]:2013/03/04(月) 21:52:24.47 ID:4sLRoTFGo
春であるというのに少し冷たい風が吹きすさぶ街中は、夜であるというのに賑わいを得ていた
灰色のアスファルトは完全に冷え切って、顔でもつければ引っ付いて取れなくなるかもしれない
空を仰ぐとあまり綺麗とは言えない夜空が月を抱いている
同じように風が通るも、何処か閑散とした、寂しげな雰囲気が地上とは相反して存在する
それをふと仰ぎ見た銀短髪伏し目の女性は、そのようなことに些かの気もおかず、直ぐに手もとにある幽霊という本に目を落とした
トマスは避けられるようにして街中を歩いている――当たり前だ、本を読みながら歩く者の周りを歩くなど危ない
だが、それ以上にトマスが纏う雰囲気が特有であるということがこの現象のもとであるといえるだろう
歩くたびに鼻に乗せただけの眼鏡が揺れる
煩わしそうに眼鏡を定位置に戻すと、もう一度本の世界から出て、鼻からおもいっきりに息を吸う

「……はぁ、気持ちの悪いにおいだわ。今日はいつも以上に騒がしいというか
何だか空も汚いし、私が悪いことをしたのかしら、世界に歓迎されていない気がしてならないわ」

独り言にしては大きすぎるが、トマス自身が結構な有名人であることから周りは気にしていない様子だ
異端審問を務める彼女にかかわること自体があまり良いものとは言えないのだ、からもうとする変人は限られるだろう
56 :メイザース :2013/03/04(月) 22:05:58.15 ID:fA1tGWcOo
>>55
「――それは、君が異端審問官だからだろうね、トマス・デ・トルケマダ」

トマスの独り言の直後に、背後から少年の声が響いた。
街往く人々はその声も何も聞こえていないかの様にその声には反応を返さない。
後ろを振り返ってみれば、如何にも華奢な少年がそこにいる。
ボロボロだというのにシミひとつない大きなローブを着た、裸足の少年である。
電灯には素足を付けて、大きく開いた胸元からは焼印として刻まれた魔法陣の姿が目立つ。
口元には穏やかなほほ笑み、目線は柔らかく弧を描いていた。

「幽霊。成る程――僕なんてもう幽霊そのままな外見に見えるかもしれない。
一体何を持って霊と断ずるのか、魂の往き先は何処にあるのか。
君たち異端審問官は、いまだ誰も分からぬ答えの出ない存在を断罪するのだから、大変だろうね」

電灯からひょい、と飛び降りると折れそうな足で地面に着地して。
相手を見上げながら、少年は朗らかに世間話を始めるのだった。
57 :トマス [sage]:2013/03/04(月) 22:22:50.28 ID:4sLRoTFGo
>>56
面倒なことになってしまった、とトマスは内心で溜息をつきながらも、敢えて気怠そうに本に栞を挟む
手の震えを感じながらも、ここで怯えを見せては上司の名が廃ると、会ったこともない部下のことを気にする
声のほうへと振り返り、伏し目を開かせると、震える手を隠すために背のほうで手を組み、青年に目を向けた
大きく向かい風が吹き、目が痛くなる。本当にどうしたものか、久しぶりに困った
堂々たる態度で、しかし緊張を隠しきれず右目の筋肉が微量に動いた
青年の姿を見るに、その様子からは自分とはまた違った雰囲気、凄味が感じられる
ここで攻撃してしまうのもありか、否、L.M.G.は中道を保つ身であり、相手は絶対的な敵というわけではない
審問空間を展開さえすれば強制的に敵だが、まだここで相対するのは組織の未熟さ故にできない
葛藤を頭に宿し、数秒間押し黙ったままのトマスがようやく口を開いた

「これは、また貴方は急に出てくるものね……円環のボス猿じゃない、なに?貧乏なの?一緒に服でも買ってあげましょうか?――メイド服限定だけど
どれだけ昔か忘れたけれど、ロンドンでは楽しませてもらったわ……別にあなたたちを咎めるわけではないけど、私より上がいるのは不快だわ
本当なら今ここでぶちのめして全裸にして蛸部屋に送り付けるつもりだったけれども、何か用かしら?意見だけ聞き入れてあげるわ」

自分の矮小さを隠すための態度は、客観的に見れば深く矮小さを掘り下げているようにも見える
だが、最初こそは緊張はしていたが、このようなことよく考えれば何度もあった
トマスという長すぎる記憶の帰納法はその恐怖を克服するには容易い、自信を持っていこう
どうやって接するかなど、とうに決まっている
円環ははっきりいって邪魔だ、自分たちの目標の疎外となることは目に見えている
できるだけ自分の利益になるように話を持っていこうと、トマスは普段通り気持ちを取り戻した
58 :メイザース :2013/03/04(月) 22:32:12.47 ID:fA1tGWcOo
>>57
緊張を感じているだろうトマスに対して、メイザースはいつも通りの態度を崩しはしない。
寒空の下で、凍りつくように冷たいコンクリートに素足を付けてなお、体を震わせることすら無くそこに只立っている。
威圧感はない、あふれるような膨大な魔翌力すら感じられない、隙が存在する、敵意を向けてくるわけではない。
先程まで居なかったはずの少年が、さも当然のようにそこにいて、そしてそこに居る事を誰も気にしていない。
敵対の意志すら見せぬ少年は、相手の畳み掛けるような言葉を前に、口元を僅かにほころばせて。

「Omnia vertuntur.(万物は流転する)
――僕がここに居るのは、偶々と言う他ないだろうね。あと、僕は着たきり雀だけれど、メイド服はお断りしておこう、異性装の趣味は無いんだ。
意見も特に無いよ。ただ僕は運命の元に彷徨し、今日は偶々君に出会っただけだ。
まあ、まさか他の組織の、それも異端審問官と出会うとは――さすがに予想外だったけれど」

此方に脅しをかけるような言葉を前にしても、メイザースは決して揺らがない。
それどころか、散歩をしていてここに辿り着いたとばかりの態度すら取ってみせる。
そして、穏やかさに隠された本質が見えないため、それが真実かどうかすらわからなくなる。
どこからが本当で、何が嘘なのか。悪なのか、悪ならばなぜそのように振舞わないのか。
何一つ、少年は本質というものを見せることは無くて。それ故に、底知れない。
力も見せぬのに、威圧もせのに、魔翌力も無いのに。なのに、この少年は、アンノウンな存在なのである。

「――そうだ、トマス。
折角だし、親睦を深めても良いかもしれないね。
僕が奢るから、近くの店でお茶でもしないか? 外で世間話をするのも寒いだろう?」

朗らかに笑顔を浮かべつつ、メイザースは相手にお茶のお誘いをする。
相手が寒いだろうと心配しているが、本当に寒そうなメイザースは鳥肌一つ立たせていなかった。
59 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/04(月) 22:48:51.15 ID:4sLRoTFGo
>>58
くく、と口から笑が零れでると、言いようの知れない好奇心のような物が胸の奥底にることに気がついた
相手が余裕の態度を取るのに安堵したのか、それとも相手が敵意を示さないことに安心したのか
だがそれは相手にもならないという挑発とも受け取れる、元からだが気に入らない
トマスは幽霊の本を宙に浮かすと、青年の目の前でそれに座って見せた
自分も危害を加える気は無いという誇示であり、青年と同じ様に余裕を示している
メイド服は着ないのか、と残念そうに顔を横に振り、足を組む
ぱっと見であるが案外清潔な服を着れば映えると思ったのだが、と今度ベアトリスや大神にやらせようと余裕のできた思考をする

「まぁ、冗談は良いのだけれども──喫茶店ですって?あんなヤニくさい所行きたくはないわよ
私が行くのは清潔な場所って決まってんの……教会とかね
そうねぇ、親睦を深めるのなら大層いい場所があるけれども、そうだわそこにしましょう」

相手の同意も待たず、右手を空に持ち上げるトマスを中心に、地面に黒い魔方陣が駆け巡った
特殊仕様の審問空間である氾濫図書の展開、それも何時もとはモーションが違う
青年がもし、トマスとウィズとの戦闘を見ているのならば違いが分かるだろう
トマスはこの審問空間にある施しをしており、万が一戦闘になっても死力を尽くせる様に設定されている
それは多対一専用の物なのだが、抜かりは無いようにする為だ
青年が拒否さえしなければ審問空間は何の不備もなく施行され、いつの間にか大きな図書館が身の回りに現れている事となる
それも二階建ての、常時とは規模が違う物で
それの一階の中心部に可愛らしいお茶会様のセット、椅子二つにパラソル、ティーセットの中には紅茶が揃えられている
空調は暖かく、丁度良い。話すには持って来いの場所だ
60 :メイザース :2013/03/04(月) 22:59:26.81 ID:fA1tGWcOo
>>59
少年には特段挑発の意志も無いのだが、そう取られても仕方ないのだろう。
なにせ、この世の敵を標榜するというのに、警戒一つせず自然体でそこに立っているそれ自体が不自然なのだから。
相手も此方と同じく敵意の無さを示す動作を見て、微笑ましげに目元を細めてみせた。

「いや、済まないね。穢れも又味というものだから、僕はああいう場所が好きなんだ。
君もあまり清潔ばかりを信条としていると、何時か毒を喰うと死んでしまうかもわからない。
だから、何事も程々にが良いと思うんだけれど――君の良い場所というのが気になるからね、招待されようか」

トマスを中心に黒い魔法陣が駆け巡ったのならば、理解できる。
この少年が、ありとあらゆる魔法障壁を張りもしていないことに。
何の妨害も障害も無く、帰ってそれを望んでいたかのように異様にスムーズに空間は展開されて。
審問空間に白い少年は飲み込まれ、当然のようにその空間に溶け込んで立っていた。

「――なかなか美しい空間だね。
では、お茶会とでもしようか、ホストさん」

乱れた長髪を静かに後ろに流しつつ、メイザースは警戒一つ見せずに椅子に掛ける。
落ち着いた暗さを持つ空間に置いて、それらの闇すらを拒むような純白はひときわ目立つ。
白に限りなく近い白銀の瞳を笑みの形にして、僅かに首を傾げた。

「さて、話題はどうしようか。
ただの散歩だったものでね、君のようなお年ごろのお嬢さん≠相手にするには僕には話題が無いんだ。
良く部下にももう少し色気を持て、と云われるんだけれど――、こんな枯れた者が色気を持った所で、ねえ?」

骨の浮く腕で、頭をぽりぽりと掻きながら。
外見上の年齢相応に笑いを浮かべる少年は、とてもあのテロを敢行したものと同じ存在とは思えないかもしれない。
61 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/04(月) 23:17:45.68 ID:4sLRoTFGo
>>60
何の支障を来す事も無く、審問空間に取り入れる事が出来たあたり、本当に敵意はないようだ
これは本当に自分達が出会ったのは偶然であり、運命という面倒な神の施しという訳だ
だが相手が大物であるから、警戒する事は仕方のないことなのだと自分に言い聞かせる
緩慢に幽霊の本を自分ごと移動させてパラソルの下の椅子に腰掛けて紅茶を入れる
砂糖を何時もより多めに入れるあたり、先程の緊張のせいで脳が疲れたのだろう
トマスは青年の姿を見て、気楽に接しろという態度を受け止めて、自分も気をやっと緩めた
相手の動向をどれだけ探ろうとも変わりはないと判断したのだ

「綺麗好きには綺麗好きの思うことがあるのよ……この空間だっていつも掃除してるんだから
それに、埃は排さないと溜まってしまえば大きくなって邪魔になるでしょ?」

一口紅茶をすすると全身に温かみを感じられた
生ぬるい空調を整備するための風がトマスの銀短髪を揺らす
青年の目を真っ直ぐ見て、話に集中すると面白い話が聞けた

「あのねぇ、貴方何年生きてきたかは知らないけれども恋愛って結構重要なのよ
デメリットも多いけどメリットも多いの、何より楽しいわ
ていうかホストって何よ、貴方をもてなす気なんて更々無いんだからそこの茶菓子は適当に食ってもいいわよ」

指差す先にはこの前買った少し高いバームクーヘンがある
トマスは鼻の上の眼鏡を外して、机の上に奥と目を瞑りながら話を続ける

「……因みに私は心に決めた子が居るから、残念だけど口説くのは無理よ?超絶可愛いのは知ってるけど
まぁウチに可愛らしい盲目美少女とツンツン美少女も居るわ、戦争になったら会うかもしれないわね
……まぁ、そんなことはどうでもいいのよ
恋話も楽しいけれども、貴方達──円環は今後何をしでかすか、訊きたい物ね」
62 :メイザース :2013/03/04(月) 23:30:40.72 ID:fA1tGWcOo
>>61
「恋、か。久しぶりにその言葉を聞いたね。
只、僕の恋は大分前に破れているし、僕は今目的を持っているしね。
だから、そういう事をしている暇は余り無い。精々日々瞑想をするだけだ」

余裕が無い、と他の組織の人間の前で、事も無げに言ってのける少年。
それは、そう言っても問題がない自信が有るのか、それともそういった事まで気がまわらないのか。
恐らくだが、この少年の場合は前者だろう。だからこそ、覆い隠さずに発言した。
バウムクーヘンを、いつの間にかテーブルの上に有った皿に出すと、少年は頂きます、と頭を下げてバウムクーヘンを食べる。
毒が入っているなどと思考を巡らせる事は無い、いや疑っていないのだろう。

「恋愛話は少々僕には敷居が高いようだ。そういう方向に話を振ってくれて、有難いね?
――さて、円環がどういう方向に進むか、何をしでかすか。
それは、秘密だ。ただ、僕らは世界の敵≠ナね。まだ、君たちは僕らを脅威と認識していないようだ。
だから、君たちの総力が僕らに向くように、僕らは再度の宣戦布告をする心づもりはある。
電波でもジャックするのもいいかもしれないが――さて、どうしたものかな」

穏やかな笑みを浮かべたままに、電波ジャックをする事を仄めかすメイザース。
全世界を敵に回す。文字通りの世界の敵になって見せようというのが、メイザースの目的。
ただ、その悪としての行動の裏側をメイザースが進んで口にだすことは、少ない。
63 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/04(月) 23:55:44.64 ID:4sLRoTFGo
>>62
青年の口ぶりからして、恐らく彼は自分とは違う形で長い年月を生きているのであろう
だが確か封印されていたのだったか、記憶は曖昧だがそれを省いてもこの態度から分かるように異常に自分を信用している
自分が起こす行動がさも全てが正しいかのように、純白の青年は行動を為す、か
トマスは紅茶の匂いが掛かった甘い吐息を吐くと、目を開いて青年の容姿と内の色を想像した
円環の行動は少々目に余る物が多い、ロンドンの時もそうだが、もし教会に傷が付けばL.M.G.の支援金が減る可能性だってある
自己利益を第一と考える組織にとって損害を与えてくる組織など、邪魔にしかならない
その組織の大将が、今後の動向について演説を行うのだ。トマスの興味は限界に達し、飽和してしまった
若干だが椅子の背もたれから数センチ先に前のめりになり、伏し目はもう先程から開き続けている
青年が組織を運営する事が出来る理由、そして人が集まる理由がようやく理解できた
圧倒的な面白さ、子供染みた言い方で言えばワクワク感が他の比ではない
例えば幼い頃から音楽が好きな人間は大人になり自分の好きな音楽で飯が食っていけるとすれば、それは幸せでとても楽しい人生となる
能力者というのは自分が特別な存在であるが故に誰かに力を見せつけたがる傾向にある
それを嫌う者も居るが、もし円環に入れば自分のしたいことで世界が動くのだ
これ程の快感は何かあろうか、という事だろう
トマス自身も組織を運営する身である、青年には学ぶ事が出来た気もする
そして円環の今後、それは

「貴方、それで終焉が近づけば『俺たちが悪を引き受けているから世界が回ってるんだー』なんて言ってみなさい
いつまでも、地獄でも笑続けてやるわ」

世界の敵になるということはつまり、全世界の力を相手にするという事
この広い世界に何人能力者が居る?そのすべてを敵に回すのだ──面白い事ではないか
前のめりになるあまり机の上に肘をついてしまっていた事に気づき、はしたないと膝に手を置き直す

「……電波ジャックねぇ……街全体の電力奪ってオタクみたいな曲流すとかやめて頂戴ね
貴方達──本当に何が目的なのか、分からなくなってきたわ……」

電波ジャック、そして宣戦布告
まるで一つの大国のような事をするらしいが、部下にも自信があるようだ
だが全てがはっきりと分かったわけではない、秘密ということは自分達で考えろ、ということか
64 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/05(火) 20:27:51.95 ID:wV04EBk7o
>>40
「どうして」

一閃の刃が無意識のうちに男の脳天に向けて放たれる。
それは一切の予備動作もなくアンの肩口から伸びた変幻自在の刃。
回避することが出来なければ、刃は間違いなく男の頭部を貫通・粉砕しその中身をぶちまけることになるだろう。

「どうして私たちは……」

化け物なのだろう。人を殺さずには居られないのだろう。生きるため?それだけではないかもしれない。
呆然として無意識のうちに放った凶刃。それは男を貫いただろうか。分からない。どうでも良い。

どうでも良い。そう思った自分の気持ちが答えだった。
死んでいなければ死ぬまで追い詰めれば良いし、死んでいたらそこで終わり。
それは単なる娯楽に過ぎない。化け物が興じる遊戯。

「化け物でなんて、いたくないのに」

クララを止めようなど無理なことだった。化け物はまだ自分の中で生きていて。
そしてそれは隙を見て誰かを血祭りにあげようと鎌首をもたげている。
そんな状態でクララを止めることは出来ない。そんな権利、自分にはない。

「……ごめんなさい」

それは誰に対しての謝罪だろう。分からない……。
それだけ呟くと、アンは呆然として膝を付きその場に座り込む。
少女の中に居座るどす黒い影。それはようやく自覚された怪物の本能。
アンの体中の至る所で、一際大きく胎動した悪意の幼体。
まだ未熟なそれは自身の誕生を予見して、悟られぬようひっそりとほくそ笑んだ。

/またしても大変遅くなりました……
65 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/05(火) 23:06:36.37 ID:RVuXFqvoo
>>64
誘拐魔の男はテレポーターだった。
気付けばどんな攻撃であっても避けられただろう。

人間にして最強の化物の一つに数えられる能力者は、
クララに発砲する前にアンに、ただの怪物に頭部を貫かれた。
だらりと脱力して両膝を地面につき前のめりに倒れた。

クララはその様子を見て満面の笑みでアンに答えた。
「助けてくれたのね。ありがとう。
 どうして彼はわたしを食べるわけでもないのに撃とうとしたのかしら。」

クララには誘拐魔の行動もアンの葛藤も理解できない。
肉喰いは他者を捕食するものだ。
相手がどんな生き物かを考える事もない。

それぞれの人物の人格の好き嫌いで贔屓はするが、
全てが自分と違う生き物なのだから食べない理由がない。
// いえいえ〜
66 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/05(火) 23:26:01.47 ID:wV04EBk7o
>>65
「それは、きっと怖かったから……」

ボクも同じさと。俯きがちになったアンは静かにそう答える。クララにとって、殺戮とは生存。
しかしアンや大勢の人間にとって、それは恐怖であり、そして快楽でもある。

「あなたやボクのことが、怖かった。だから殺す。人間って、そういう生き物さ」

恐怖から逃れるために。人は追い詰められて、罪を犯す。初めは誰だってそうだ。
けれど次第に、奪うことに何とも思わなくなる。そうなると人は恐怖で殺すのではなく、快感を得るために殺すようになる。
そうなればもう、それは化け物と変わらない。さながら、今のアンのように常習化した殺戮者となる。

「キミはもっと、人間のことを学んだ方が良いかもしれないね」

自分とは違う人間を知って、アンは変わった。少なくとも、変わろうとした。
ほんの一握り、ごく僅かではあるけれど、それでも怪物である自分を受け入れてくれる人に出会えたから。

「そうすれば、もしかするとキミも」

変われるかもしれない。そう思わせるだけの何かがこの世界の何処かにある。
アンはそれを知っている。まだ一度だけれども、出会ったことがあったから。
67 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/05(火) 23:36:05.27 ID:RVuXFqvoo
>>66
「クスクス…。怖くない狩りなんてないわ。」
 明るい笑顔だ。しかし両目の瞳孔が開いている。
「人間がそうだからどうしたというの?
 手頃なサイズで、お味も良いのよ?」
 
「そうね、人間の生態についてもっと学ばなきゃ…フフフ。
 そうすればもっと安全に狩りができるわ。」
 アンの意図とは違うであろう形で納得する。
 人だけが地球上の生命ではない。
 だから人を特別扱いするつもりもない。
 略取の罪悪感なら犬相手にも同程度に感じる。

「つまり、あなたは人間が好きなのね。」
68 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/06(水) 00:00:14.49 ID:hvK8ThDpo
>>67
「すき……そうかもね。でも」

クララの考えが理解出来ないと言えば嘘になる。自分だって、嘗てはそんな風に思っていたこともある。
けれどコミュニケーションが可能な相手を食料としてしか見れないクララはやはり特別だとも思う。

「ボクの想いは言葉では伝わらないよ、きっと」

きっと彼女は、可哀想なのだとアンは思う。クララはまだ、自分でそのことに気が付いていないだけで。
でもそれをアンが気付かせてあげることは出来ない。そんな方法は知らないし、何よりクララが自分で気付かなければ意味がない。

「キミにもいつか、分かるといいなぁ……」

血塗れた体で、そう思う。本当のことを言えば、まだ自覚のないクララが羨ましい。気付いてしまえばきっと苦しい気持ちになる。
気付いてしまえば、きっとクララは変わろうとする。自分だってそうだ。変わろうとして。
だけど今、それは無理かもしれないと考えてしまう。自分は恐らく、殺すことを止められない。あの人との約束は、守れない。

クララを見つめる表情は紅に染まって。けれどもそれは、笑顔だった。
69 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/06(水) 00:04:36.84 ID:R8pj+MTOo
>>68
「わたしには難しい話だわ。
 そのお話に価値が有るのか無いのかさえわからない。」
 だから、今日はここまでだ。
「さようなら、わたしはクララよ。」

「ごきげんよう。また機会があればお茶でもしましょう?」
70 :アン・スコット・マクミラン [saga]:2013/03/06(水) 00:32:09.91 ID:hvK8ThDpo
>>69
「そう……だね。本当のことを言うとボクにだって、それにどれだけの価値があるかは分からないんだ」

いつかクララは変わるだろうか。未来のことは誰にも分からない。

「けれど、もしまた会うことが出来れば、きっと上手に伝えられると思うよ」

分からないから、信じるだけ。

「さよなら、クララ。ボクはアン」

今度会う時は、お互いに化け物としてではなく。
ひとりの、人間として。

「アン・スコット・マクミランさ」

少なくとも彼女には、そうあって欲しいとアンは願う。
それは静まり返った商店街での出来事。よく晴れた夜の空、爛々と輝く月の下の邂逅。
血に濡れた化け物は、闇夜の中で今日も泣く……。

/以上ですね。お疲れ様でしたー
/今回は寝落ち等で長い期間お手を煩わせてしまい申し訳ありません
/今後は注意しますので、また是非よろしくお願いします。今回もロールありがとうございました!
71 :クララ(ブロンド美少女)ミミック :2013/03/06(水) 00:37:40.61 ID:R8pj+MTOo
>>70
「あなたが人間でいたい理由、
 人間に加担する理由…わからないわ。
 人間でない他の皆も生きているのよ。」
 人の傲慢さに付き合う義理は人間でない自分にはない。
 今、現時点ではクララの考え方はそうだった。
「またね、アン。それでもあなたのお話は面白いわ。」
 そう言うと踵を返し、シャッター街の奥へと消えていった。
// お付き合いありがとうございます。
// おやすみなさい〜
72 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 20:39:16.42 ID:TGEda+9jo
スラム街の中にある寂れた公園。
その中にあるベンチに赤毛の少女が座っていた。
ロングコートのポケットに手を入れ、公園中央に設置された時計を眺めている。
そして、その足元にはトランクケースがあり、両足で挟み込んで固定している。

「……もうすぐ時間ね」

何かを待っているかと言えばそうだが、それが確実に来るかは分からない。
というのも、今回依頼された内容はスラム街の奥に居るある人物に物品を届ける事なのだが、協力者が居るかもしれないということなのだ。
かも……というのは、依頼主が協力者を用意する手はずなのだがそれが用意できないかもしれないという事を言われたのだ。
故に、来るかもしれない人物を待つ。
協力者はどんな人物か全く聞かされていないし、どんなルートで用意したのかも聞かされていない。
とりあえず、時間になっても協力者とおもわれる人物が来なければ一人で行こう。
そう考えながら、一人夜の公園で例の物品を持ちながらじっと待つ。

//誰も来なければ一人芝居になります
73 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 21:17:08.14 ID:TGEda+9jo
>>72
一つ、時計の針が進む。
瞑っていた目を開き、立ち上がって左手でトランクケースを持つ。
どうやら増援は無し。一人で行くことになりそうだ。

「まぁ、期待はしてなかったけど追加料金は取らないとね」

右手はまだコートのポケットに入れたまま、クリオネは静かに公園を後にする。
物品を渡す場所へは少し歩く。
道の両端は廃ビルなど背が高い建物が連なっていて、見通しは悪くない。
まだここはスラム街の入り口に程近い為、危険も少ない。
一人、スラム街の奥へ向かって歩いて行く。
74 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 21:26:33.24 ID:TGEda+9jo
>>73
先へ進んでいた足が止まる。
横へ伸びる細い道に入り、先程までの大通りとはうって変わる道並。
一気に光が入らなくなり、一般的な裏の世界のイメージに沿う道となる。

「なぁ、こんなところでなにしてるんだよ?」

当然、こんな場所になれば声をかけてくる奴も出てくる。
慣れていることだが、仕事中の今話しかけられると単純にウザいだけだ。

「うっさい……」

すれ違いざまに足をかけ、崩れたところで頭を掴んで地面に叩きつける。
気を失ったか死んだか……それを確認することもなく先へと進む。

少し進んだところに古びだ扉が見える。
クリオネは一直線にそこへと向かっているようで、扉の先に何かがあるのだろう。
75 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 21:38:21.23 ID:TGEda+9jo
>>74
扉を開けるとすぐに地下へと続く階段があった。
不思議な作りだが、階段の存在をパッと見で悟られないように扉で隠していたのだ。
扉を後ろ手で閉めて下へと降りていく。
明かりといえば吊るされた電球一つで、まるで奈落へと通じているかのように階段がどこへと通じているのか分からない。

が、クリオネはここへ来たことがあるようで迷いなく進んでいく。
まぁ、仮に来たことがない場所であっても同じように進むのであろうが……

長い階段を降り、再び正面に見える扉。
躊躇いもなく扉を開けると、一気に人の気配が増える。
かなり広いスペースがそこにはあり、様々な露店が軒を連ねていた。
そう、ここは表で売ることができない物を売る……所謂ブラックマーケットの一種だ。

ポツポツ人が歩いているが、クリオネに声をかける者は居ない。
ここにいる人たちはところ構わず女に絡む阿呆ではない。

店には普通買えないような物が当たり前のように並べてあるが、それに見向きもしないで歩いて行く。
一つ、扉を開ければ同じような空間がもう一つ。
ただし、こちらの部屋で扱っているものは物品ではない。
生物を扱っているスペースだ。

生物とは、保護されているような動物など。
……だけではなく、見れば檻に入れられた少年少女。
そう、当然人間も生物のカテゴリに入るので人間も売られている。
どちらかと言えば、保護動物より奴隷市場の色が強い。

先ほどよりは商品に目を惹かれるようで、歩きながら左右にある檻などを見ている。
76 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 21:45:36.90 ID:TGEda+9jo
>>75
奴隷市場の再奥にある一つの店。
その店主の目の前で立ち止まる。

「……いらっしゃい。どんな子がお好みで?」

「奴隷を買いに来たわけじゃないよ。……マスターに用がある」

それを聞いた店主は目を見開いて少し驚いた様子になるが、すぐに元の仏頂面に戻る」

「あんたは……?」

「クリオネだよ、欲しがってるものを持ってきてあげたから早く案内して」

コートの内ポケットから一枚の紙を見せる。
どうやら、身の証明をするものだったようで、店主は立ち上がって歩き出す。

それに付いて行き、部屋の端にある一つの扉の前に立ち止まる。
店主は鍵を出してその扉の鍵を開けた。

「…………」

黙る店主。
どうやらここからは一人でいけと言うことだろう。
クリオネはその扉を開けて先へと進んだ。
77 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 21:57:43.45 ID:TGEda+9jo
>>76
扉の先は、無機質なコンクリートで出来た床と壁。
無駄に入り組んだ迷路のような造りになっていて、初めて来た人であれば迷ってヘタすれば先へ進むことも帰ることも出来なさそうだ。

「何時来ても目眩がしそうな場所……」

その正規ルートを知っているようで、迷うこと無く先へと進んでいく。
右へ、左へ、左へ、正面へ……
幾つもの曲がり道を進んでいくと、これまでの扉とは明らかに違う高級感のある扉を見つける。

迷うこと無くその扉のドアノブに手をかけ、一気に開けて中へ踏み入れる。
その瞬間、右側からスーツの男が警棒を持って殴りかかって来た。

「……最低」

最小限の動きで警棒を躱すと、右手で警棒を押さえて右膝を腹に打ち込む。
相手の動きを利用しての膝蹴りを受けた男は倒れこんでピクピクと痙攣しているようになっている。

「護衛ならもう少しマシなの雇ったほうがいいと思うんだけど……」

部屋の奥でやたらと高そうな椅子に座っている小太りの男。
歳は3〜40台だろうか……高そうな服を着て見るからに良い物食べてますと言った感じだ。
改めて部屋を見ると、赤いカーペットにいくつかの絵画が飾られて、家具棚や本棚もあってこの街に似つかわしくない悪趣味な貴族部屋のようだ。

「いやいや、そいつは新人でね……一応置いていたのだが……ダメだったようだな。
 そいつは後で捨てておこう」

席を立った小太りの男は席を立ち、こちらへと歩いてくる。
この人物が、このトランクケースを渡す相手だ。
78 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 22:09:54.68 ID:TGEda+9jo
>>77
「これが欲しいんでしょ? ……北見」

近づいてくる男に対し、トランクケースを前に出して名前を呼ぶ。
どうやら、この小太りの男は北見という名前らしい。

「おおっ……これだよこれ。やっぱり君に任せて正解だったねぇ」

北見は受け取ったトランクケースの中身を開いて確認する。
中身は何か薬品のようだが、見た目で何の薬か判断することは出来ない。

「……確かに渡したからね、じゃあ」

依頼はこれで終わり。
踵を返してこの部屋から出ようとしたところを、北見に呼び止められる。

「待ってくれ。……なぁ、やっぱり俺のモノにならないか?」

クリオネに近づいていき、肩をつかむ。
正面を向かせ、腰に手を回して密着する。

「損はさせないぜ。給料は弾むし、他の女と違って奴隷の身分より一つ上の立場をやる。
 俺のモノとしては破格の待遇じゃないか」

「言ったでしょ? 個人に付く気はないって。
 ブラックマーケットを仕切ってこのスラム街の中で欲しいものは何でも手に入れようとするキミといえども、キミの下に付く気はないよ」

振り払いもせずに、真っ直ぐ北見を見据える。
頬や髪を触ってくるが、まぁいつものことだ。いいクライアントの一人だし、いちいちきにしても居られない。
79 :クリオネ [saga]:2013/03/08(金) 22:18:48.89 ID:TGEda+9jo
>>78
「おいおい、良いのか? 俺を敵に回すと……」

「どうなるの?」

北見がセリフを言い終わる前に、こちらのセリフを被せる。
敵に回すとどうなるというのか、たかだかスラム街の成金貴族に何が出来るというのだ。

「う……わかった、今日は諦めるよ……
 それとは別に、今からどうだ……? 金は弾むぞ?」

「やめとく、そういう気分でもないし。
 大体、もう私は売りをする必要ないっていってるでしょ……」

そこでようやく北見の手を振りほどいて入りぐりの方を向く。
そうして迷いなくその部屋を出て行こうとするが、出る直前に一言。

「報酬はちゃんと振り込んでよね」

それに対する返事を聞く事無く、部屋を出て扉を閉める。
帰りもまた、迷路のような道を通ってブラックマーケットへと出る。

(……はぁ、まぁ楽な仕事といえばそうなんだけど)

そこまで気乗りする仕事ではなかったのか、一度ため息をついて再び歩き出す。
帰りの道も、また数人に絡まれて一悶着あるのだが、それはまた別の話。

//終了です。
80 :千早 [saga]:2013/03/09(土) 21:39:02.02 ID:KOQvyf8Vo
「ん……困ったわ」

緩いウェーブのかかった銀髪の女性が街で途方に暮れている。
左右をキョロキョロと見渡し、時折別方向から来る人にぶつかりそうになってしまう。

「申し訳ありません……っ」

唐突に背中にぶつかる人。
完全に周囲に気を配れていない証拠だ。
街を行く人々は千早をチラチラと見るも、未だ声をかける者は居ない。
面倒事に巻き込まれたくないのか、単純に声をかける必要はないと思っているのか。

この状況で声をかけるとしたら、千早の容姿に惹かれたナンパ男か、困った様子に気づいたお人好しか……
81 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/09(土) 21:56:44.30 ID:Eq1uPBpxo
>>80
「ジュースおいしかったなー、うんおいしかった」
幼い顔立ちの金髪蒼顔の少女は、空になった缶ジュースを片手に街を歩く
肩からはポーチをぶら下げている
軽快な身のこなしで器用に行きかう人を避けながら歩いていると、
なにやら困り果てた様子の女性を見つける

――以前人を傷つけてはならないと言われた
だが人を騙し傷つけることで生き抜いてきた少女には理解に苦しむ話でもあった
しかしその逆のおこないを始めて、物をもらい、少しだけそんな考えも少しだけ変わりつつあった

要は人助けすれば悪行に手を染めなくとも物を得られるのかと考えて、
少女は女性に声をかけることにする

「おねえさん、どうしたの?」
小さく首を傾げて、きょとんとした様子を作り上げてそう尋ねる
82 :千早 [saga]:2013/03/09(土) 22:08:03.66 ID:KOQvyf8Vo
>>81
「へ……?」

声をかけられるとは思っていなかった為に、普段の凛とした声ではなく少々間の抜けた声になって返答してしまう。
声をかけられた方向を見れば、自分よりも小さな女の子。
かわいい……
ではなく、どうやら困っていた自分に対して気にかけてくれたようだ。

「あの、この辺りに大型のショッピングモールがあると聞いたのですがどうにも見つからなくて……」

要は買い物に出たはずが、目的の場所を見つけられずに迷っていたということだ。
最近バイトで稼いだお金が溜まってきたので、下着や服を少し買おうと思っていたのだ。

そこで、全てが揃うであろう大型のショッピングモールへ行こうとしたのだが、このザマだ。
しかしながら、目指しているショッピングモールは比較的近くにあり、更に文字通り大型なので見つけられないというのはある種奇跡的なのだが……
83 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/09(土) 22:27:54.71 ID:Eq1uPBpxo
>>82
頼りなさそうな人、それが初めて千早を見た少女の受けた印象であった
しかし顔には出さない、あくまでも自分は子どもと言い聞かせて少女は言葉を発する

「大型ショッピングモール?」
どれのことを指しているのかを迷う必要すらなかった
軽くあたりを見渡してみると、目立つ建物を一つ見つける、
そしてそれが彼女の指すショッピングモールであることに気づくのに、そう時間はかからなかった

一人で行かせても大丈夫なものか、と一瞬考えて心の中で首を横に振る
なぜ自分が人を心配しなければならないのか

――これは物を貰うため
人を助けたら多分物が貰えるから助けるのだ、断じて純粋な善意ではない、
と自分に言い聞かせて

「あれのこと?」
そのショッピングモールを指差して、彼女は尋ねてみる
84 :千早 [saga]:2013/03/09(土) 22:39:07.13 ID:KOQvyf8Vo
>>83
場所を探していると口にした後も、千早はキョロキョロと周りを見て一体どこにあるのだろうかと探すのをやめなかった。
家を出たのはかなり前の時間で、まさかこんな時間になるまで辿りつけないとは思っていなかった。

すると、目の前の少女からの返答。
自分の斜め後ろ辺りを指さしている。

「え……?」

振り返り、指が指している場所を目で追ってみればそこにはある……
どこからどう見てもショッピングモールであろう建物。

「……申し訳ありません……」

思わず謝ってしまう。
それほどまでにマヌケな失態だったのだ。ここまで近い場所にあるのにその存在に気が付かなかったのだから。

(い、いえ……今までずっと研究所暮らしで、街に出たことが無かったのです。……だからです)

脳内で言い訳をしてみるも、そもそも誰に言っているのか分からないその言い訳は虚無へと消えた。

「コホン……ありがとうございます。私(わたくし)の名前は千早と申します。
 もし、この後お時間があるようでしたらなにかお礼をさせていただけませんか?
 ちょうど行き先がショッピングモールで何かお店でお礼も出来ましょうし……」

この子が声をかけてくれなかったらおそらく今日はたどり着けなかったのだ。
出来ればお礼をしたいところ……
いや、あそこまで付いてきてもらわないとまた迷いそうだからとかそんな理由では決して無い。
85 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/09(土) 22:50:49.90 ID:Eq1uPBpxo
>>84
(きっと純粋無垢な人なんだろうな
ちょっと珍しいタイプの人かも)
彼女を見ていて、ふと少女は自分の交友関係を思い出してみる
そして少女は考えるのをやめた

そんなことを考えていると、次第に彼女に興味が沸き始める
ただ一つ楽しそう、と考えるだけで少女の邪念がどこへともなく飛んでいく

「そうなの? じゃあジュースとお菓子買ってくれるのだったら……
そうそう、私エリア よろしくね? 千早お姉さん」
そして物で買収される少女であった
嬉しさと期待に満ち溢れた笑みを浮かべて、そう自己紹介
86 :千早 [saga]:2013/03/09(土) 23:03:35.33 ID:KOQvyf8Vo
>>85
「ジュースとお菓子……」

目をぱちくりとさせて本当にそんな物でいいのだろうかと内心思う。
ちょっと子供みたい……と考えて微笑んでから

「ふふっ……ええ、よろしくお願いしますエリアさん。
 では行きましょうか、ジュースとお菓子を買いに」

そうしてショッピングモールの建物へと歩いて行く。
迷うくせに先頭で歩くというのは如何なものかと思わなくもないが……


歩いてみれば本当に近い。
10分とかからずにショッピングモールの入り口へと着いてしまった。今までどこを探していたのやら。

「無事に着きましたね……
 では、最初に何を買いましょうか。ジュースが良いですか? それともお菓子?
 好きなものを食べてください。」

入り口から中へと入りながらエリアへと尋ねる。
中に入れば、まずはエントランスホールがある。
そこから上へ吹き抜けになっていて、ショッピングモールは巨大な四角形の真ん中をくり抜いたような形をしていた。
エントランスホールには様々なジュースやお菓子の露店があったり、コーヒーショップや軽食屋などの店舗が入っていた。
本格的に物を売っていたりするのは2階からのようだ。

今まで無駄遣いをしていなかったので、お金の余裕は結構ある。
87 :エリア 猫かぶり少女 :2013/03/09(土) 23:23:16.73 ID:Eq1uPBpxo
>>86
お菓子は昔から好物であった
手軽に食べられておいしいから

「うん!」
女性を見上げるようにして頷くと、
後ろから彼女を追って歩いていく
身長は実は千早よりも低かったりする
一見すると小学生に見間違われそうな姿であったりもする

そうして歩いていればあっという間に到着する

「人に襲われたらどうしようかと思ったよ
うーん、お菓子から!」
物珍しげに店内を見回す少女
その様子はまるで初めてきたかのようなそれである
少しばかり興奮気味の口調である
88 :千早 [saga]:2013/03/09(土) 23:31:50.39 ID:KOQvyf8Vo
>>87
(か……かわいいっ!)

その見上げて付いてくる仕草。
お菓子を欲しがって目を輝かせながら店を見る姿。
その全てが千早の心に突き刺さっていた。

このドキドキは何なのだろうか……
いや、今はそんな事はいい。お菓子を買わなくては……

「お菓子ですね。ではどれにしましょうか……」

その場から辺りを見回して良さそうな店を見繕う。
お菓子が好きというからには、やはり甘いお菓子がいいのだろう。

「あれはどうでしょうか……?」

指差す方には、一つの屋台。
そこでは、小麦粉を星形に固めて揚げた後、砂糖と蜂蜜、シナモンをまぶしてあるスティック状のお菓子を売っていた。
つまりは行楽地での定番、チュロスの屋台だ。

「2つお願い致します」

そうしてチュロスを2本買い、エリアに1本差し出す。

「はい、どうぞ。美味しいといいのですが……」
89 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/09(土) 23:48:45.65 ID:Eq1uPBpxo
>>88
時折少女は納谷亜夢、自分は本質的には子どもなのでは、と
目新しい場所に訪れたり興味本位で動く自分を子どもっぽいと考えつつも、
この姿ではなんら問題ないと思えば、そんな悩みもすぐ吹き飛んだ

そんなこんなで千早に小走り気味でついていき、
どうやら選んでくれるらしい彼女に任せてみることに

「?」
目を丸くしている様子の少女
駄菓子類を食する機会のほうが圧倒的に多い少女にとって、それは未知の味

息を飲んで、意を決し差し出されたそれをかじってみる

一口噛むごとに甘さは口の中に広がって行き、たちまち少女の顔がゆるんでいくのがわかる
90 :千早 [saga]:2013/03/09(土) 23:57:23.52 ID:KOQvyf8Vo
>>89
「エリアさんはこれを食べたことがありませんか?
 ……実は私もです。一緒に挑戦しましょう」

手に持つチュロスをエリアと同じタイミングで口に運ぶ。
とても甘い……
お世辞にも控えめではないその甘さは、上品な甘さとは言えないが、このような場所、このような相手と一緒に食べるにはちょうどいいのかと思った。

「ふふっ……気に入っていただけたようで何よりです。
 初めて食べましたが、おいしいお菓子ですね」

緩んでふやけているエリアに笑いかけながらもう一口食べる。

「ジュースは……どのようなものが良いですか?」

見れば、このチュロス屋のような屋台形式でいくつかジュース屋があった。
普通のジュースを紙コップに入れて売っているような店もあれば、フルーツをミキサーにかけて作った100%フレッシュジュースを売っている店もある。
コーヒーや紅茶が飲みたければ、店に入ることも出来るだろう。
91 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 00:11:55.95 ID:EL/6sxjbo
>>90
「あう」
笑いかけられて我に戻ると、少し恥ずかし思えて顔をうっすら赤くする

「へっ、そうだったの?
私てっきり……」
一口食べ終えて、千早の声が聞こえてきた少女は彼女のほうに振り向いて
驚いたかのようなそぶりを見せる

よくこういったものを食べているのかと思ったが、違うとなると……
もっと高価なお菓子を食べている可能性も思いついたものの

「ジュースは……フレッシュジュースが飲みたいな、なんて」
また一口かじりつきながらあたりを見渡す
そして口にくわえたまま言葉を発している
そのため少し聞き取りにくいかもしれない
92 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 00:22:11.38 ID:DOxr7awno
>>91
「ふふっ……
 私はいままで、こういったものを食べる機会が持てなかったものですから」

研究所を出て食べたお菓子と言えば……山のようなチョコレートだろうか。
以前のバレンタインで大量にチョコレートを押し付けられて泣く泣く食べていた。

「もう……お行儀が悪いですよ。
 フレッシュジュースですね。……種類があるようですが」

エリアと共に店の前へ行くと、幾つものミキサーが客に見えるように置かれておりジュースもその中にあった。
おそらく注文すると、ミキサーの中のジュースをそのまま注いでくれるのだろう。

「すみません、オレンジジュースを一つと……エリアさんはどれにしますか?」

微笑みながら側にいるエリアに尋ねる。
果汁100%のジュースがメイン商品ではあるものの、中にはバナナミルクやイチゴミルクのようにミックスしたジュースもあるようだった。
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2013/03/10(日) 00:33:04.18 ID:EL/6sxjbo
>>92
「ふーん、お姉さんも苦労してるんだね……」

ただの箱入り娘なのかと思えば、そういうわけでもなさそうだ、
どうやら込み入った事情がありそうなことを察する少女
そう一言、悲哀に満ちた口調でぽつりと呟く

「あははは……」

乾いた笑みと泳ぐ視線によって誤魔化そうと試みたりしながらも

「私もオレンジジュースにする、お姉さんと一緒だしね」

最初に手に持っていた、今はポーチの中の缶はオレンジジュースであった
完全な偶然であったものの、少女は屈託のない笑顔でそういう
94 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 00:41:47.92 ID:DOxr7awno
>>93
「苦労……いえ、私など」

自分がどれほどの苦労をしたというのか。
恐怖で大切な友人を失い、何の真実も知らずのうのうと生きてきた私が……
よそう。今考えることではない。
一瞬考えこむ顔をするも、すぐざま振り払って元の調子へと戻る。

「もう……女の子なんですから、もう少し気を使ってもいいんじゃないですか?」

注意はするが、その口調は優しく穏やか。
本気でどうこう言っているわけではないようで、その口調は千早の性格の一部を表していた。

「わかりました、同じ物を飲みましょう。
 ……では、オレンジジュースは2つでお願いします」

注文すると、ミキサーの中に入っていたオレンジジュースを紙コップに入れて渡してきた。
千早は持っているチュロスを器用に指ではさみ、オレンジジュース2つを受け取った。
千早の右手にはオレンジジュースのカップと、指で挟んだチュロスがある。

「はい。両手が塞がってしまいますが、平気ですか?」

平気じゃないと言われても若干困ってしまうが、一応聞く。
どちらかと言えば、千早の右手が平気ではない。
95 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 01:00:02.48 ID:EL/6sxjbo
>>94
「人に比べたらこの程度の苦労は苦労でもないってこと?」

千早の言い方にひっかかりを感じて、どことなく不思議そうな顔をする少女
少女なりに思うところがあるのかないのか

「気を使う……お淑やかに振る舞うってこと?
むむ……、でもあれ結構疲れるもん……」

頬を少しだけ膨らませて、少女は複雑そうな顔をしてそう返す
優しく穏やか……その口調をどうとるべきか、自分の中の成長した部分で考えながら

「すごい器用……はっ!
大丈夫大丈夫、大丈夫だよ!」
見とれている暇はない、今自分がすべきことは一刻も早く彼女の手を開放すること
チュロスを口にくわえて両手を開けて、それを受け取ろうとする
96 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 01:11:39.61 ID:DOxr7awno
>>95
「そうですね……私は、本当の意味ではまだ苦労を知らないのかもしれません」

これまでの私は、身を置く環境に流されて生きてきたに過ぎない。
自らの力で何かに抗ったり、事を成そうとしたりしていない。
これから……これからそういったことを知っていくのだろうか。

「エリアさんは可愛いのですから、立ち居振る舞いに気を使えば男性にモテるのではないですか?
 でも確かに、常に意識しながら行動するのは気疲れするかもしれませんね」

エリアの容姿でお淑やかに振る舞えば世の男性はすぐさま落ちるだろう。
いや……しかし、子供っぽい方を好む人もいると……本で見たことがあった。

「それはよかったです。危うく私の手が大変なことになるところでした……」

カップを渡して、何とか右手で持つカップを左手に持ち替える。
指が釣るかと思ったが、案外なんとかなるものだ。

「……でも、やっぱりそれは女の子としていただけませんね」

クスっと笑いながら、口に長いチュロスを咥えている姿を見る。
その姿はとても可愛らしいのだが、女の子らしいとは言えなかった。
97 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 01:26:04.36 ID:EL/6sxjbo
>>96
「……本当の意味での苦労って、なんだろう」

人より少しだけ不幸の連続であった人生、一人でいる時間のほうが長かった人生
いつの間にか苦労の違いさえわからなくなっていた

そんなことを思ううちにぽつりとそう呟く

「なるほど……、じゃあ、千早お姉さんみたいに振る舞ってみたらモテるかも!
お姉さんのほうがお淑やかで美人さんだしね、……待って、じゃあお姉さん絶対モテてるよね?」
はっとした様子で千早のほうを見る少女

その理屈でいけば、きっと彼女はさぞ多くの人を落としてきたのだろう、とふと思う
落ちる男性はそれで落ちるが、しかし息を抜きたいこともある

「うん、私も見てて冷や冷やしたよ」
ほっと一息つきつつも、それを受け取ってチュロスを左手に

「……そうなの?」

なぜ彼女はそういうのか、どうにも理解できなかった
思わず口に出して尋ねてしまうほどに
98 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 01:39:03.06 ID:DOxr7awno
>>97
「わかりません……人によってその線引は違います。先ほどの言葉は、あくまでも私の視点から見て……ということです」

とはいえ、その違いを語れるほど千早は様々なことを経験しているわけではない。
そういう意味では、目の前の少女のほうがよっぽど色々なことを知っていそうだ。
時折出すその雰囲気から、ただの天真爛漫なだけの少女ではないと感じる。

「私……ですか? いえ、私はどうでしょう……確かに男性から声をかけられることはありますが、これは自然に振舞っているだけですし」

そう振ってくるとは思っていなかった千早はちょっと困ったような表情になる。
正直男性に声をかけられることは多く、客観的に見ればモテるのだろう。
それは理解しているのだが、ここで自分はモテますと堂々と宣言するのも少々気が引ける。

「ええ、口に物を咥えたままというのは出来るだけ控えたほうが良いかもしれません」

しかし、こういった可愛らしいタイプの女の子であればむしろそういった行動をした方が得点が高いのかもしれない。

そうしているうちにいつの間にか右手のチュロスを食べ終わっていた。
食べてしまえば案外早いもので、初め甘さがしつこいかなと思っていたのにいつの間にか癖になっていたようだ。

「この後、少々服を買おうと思うのですが……もしよろしければ一緒に如何ですか?」

目的地に到着はしたが、本来の目的をまだ果たせていない。
ここであったのも何かの縁。一緒に買い物でもどうだろうか。
99 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 02:02:31.49 ID:EL/6sxjbo
>>98
「なるほど、そういう意味なんだね」
納得したそぶりを見せる少女

人それぞれの価値観という意味であるなら、これ以上は不毛か
別になにか言うつもりもなかったわけであるが

「ところで、お姉さんはどんな風に考えてるの? 本当の苦労
それと、本当の苦労を経験する必要ってあるのかな?」

探究心と自分探しは、今の少女の生きる目的の一部
知らないことのほうが多いからこそ、少女は知ろうとする

「それってモテてるよね、絶対モテてるよね?
いいな、自然に振る舞うだけでモテちゃうなんて」
羨むような熱視線を千早に見つめるようにして送る少女

それはもはや一種の才能であるのかもしれない、などと考える少女
天然なのか謙虚過ぎるだけなのか、それは少女には想像がつかなかった
少なくとも振る舞い始めに神経を張り詰める少女には真似できない

「へえ、そうなんだ、覚えとく
物知りなんだね、お姉さん」
なるほど、といったそぶりを見せて

……男を落とす術に関しては彼女のほうが上を行くのでは、とすら思えてくる

口にくわえたそれは、そのままかじっていくことでなくなっていた
そうしてジュースを飲んでいると誘われる

「そういえば……
うん、お姉さんと一緒にいると楽しいし」
にっこりとして承諾する少女

100 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 02:23:35.68 ID:DOxr7awno
>>99
「それは…………周囲に流されず己の信念を持ち、自らの道を切り開くための苦労。
 そう考えています。であれば、私の目的である、私の生きる道を探すことを成就させるために必須の苦労ではないかと考えています」

そしてその経験は、更に先の未来に繋がるはず。
とりあえず今はそう信じている。

「……っと少し固すぎましたね」

初めて会った人に対する返答としてはいささか真面目すぎたか。
そう考えるも、他にいい回答が思いつかなかったのも事実。

「う……モテているかそうでないかと言えば……モテ居るのかもしれません。
 で、ですが、エリアさんもとても可愛らしくて男性に声をかけられることもあるのではないですか?」

そう、自分にはこの子の様に可愛らしく振る舞うことは出来ない。
世の男性はこういったタイプも好きなはずだ。
エリアの熱い視線を受け止めきれずに、思わず視線を外してしまう。

「物知り……とは少し違うかもしれませんが……まぁ私は女性ですから、男性から見たらまた少し違う意見なのかもしれません」

千早は物知り……
確かに知識で言ったら千早は結構な知識量がある。
だが、それは生まれた時点ですでに頭に埋め込まれていたため自分で得た知識ではない。
そのため、あまり知識について褒められてもあまり嬉しくはない。

「そうですか、それはよかった。
 他の人も居れば服の意見も聞けますし、助かります。
 では行きましょうか」

そう言って歩き出す千早。
近くのエスカレーターに乗り、2階へ上がると幾つもの店がずらっと並んでいる。
大抵服関係の店で、中には小物を売っていたりする店もある。

千早はその中の一つに入ると、入口近くから服を見始めた。
その服屋はショッピングモール無いで一番大きい服屋で、メジャーなジャンルからマイナーなジャンルまで幅広く扱っていた。

「んーどのようなものがいいでしょうか。
 エリアさんは服を選ぶときにはどうして居ますか?」

今、千早が手にとっているのはクリーム色のワイシャツ。
裾が少しひらひらしていて、落ち着いた雰囲気の中にも多少の主張のある服だった。
101 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 02:53:16.26 ID:EL/6sxjbo
>>100
「なるほど、自らの道を切り開くための苦労、ね……」
虚しげな声をあげる少女

それなら、自分も似た苦労を重ねた覚えがある
確かに必須といえば必須であると言えるのかもしれない
……もっとも、それは裏の世界に関わらなければの話だが

「こんなこと、言うべきじゃないのかもしれない
お節介なんて思われるかもしれないけど、でも言わせて欲しいの
一人で抱え込み過ぎるのはのはよくないって、たまには立ち止まって誰かと一緒に考えてみるのもいいって」

追いつめられたようにも感じ取られたその考え
ひとたび決めれば、人を頼ることなく突っ走って行きそうなそれは、
少女がかつてある人から聞いた話と重なった

それが少女をひどく不安にさせた

「……なんてね
聞かせてくれてありがと」
ぎこちない笑顔を作り、何事もなかったかのように微笑む
一つまた知ることができたという事実は変わらないから

「……私?」
自分に話題を振られて、うーんと唸っている

「うーん、ちゃんと着飾ってなりきるように振る舞ったらね」
しばらく思案して、そういう少女
この振る舞いが一番少女にとって楽な振る舞いであった
ちなみに今の服装は動きやすさを重視した軽装である
飾りっ気がまったく見られない

「そっか、そういうことか
てっきり男の人に貢がせようと日夜研究を重ねてるのかと思っちゃった」
幼いその顔からある意味爆弾発言である

「はーい」
などと返事をして、また小走り気味で千早について回る少女
普段からあまり服は買わないのだけども

そうして服を見始めて、自分に話題を振られる

「私? うーん、なんのためにそれを着るか、が基準かな
人と会うための服だったら多少お金がかかってもいいから、
流行に合わせてみたりするな」

おおざっぱに基準を話つつも、千早が手に持ったワイシャツを見ている
102 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 03:09:58.88 ID:DOxr7awno
>>101
「…………」

エリアの言葉に対して少々考える。
立ち止まって誰かと考える……
その理屈は分かるが、生憎と共に考えたりするような人が居ない。

「……ありがとうございます。
 エリアさんは優しいのですね」

さっきの自分の言葉から色々と汲み取って心配してくれたのだろう。
今すぐに”じゃあ誰かに相談してみます”とは言えないが、その気持は嬉しかった。
街で声をかけてくれた件も含めて、この子の心根は優しいのだろうと思った。

「み、貢がせ……い、いえ私はそんな事は致しません。
 エリアさんは男性に貢がせたりしているのですか……?」

そういった言葉がさらりと出てくるということは、自分が常日頃から考えているからなのではないか……とそう思うのである。
こんな小さな子がそういったことをしているとは考えたくはないが、世の中何があるかわからない。

「流行りですか……私はあまりそういうことには疎くて。
 どういったものが流行っているのでしょうか……?」

とりあえず手に持っていた服をかごに入れる。気に入ったようだ。
奥へと進んでいき、スカートを見る。
先ほどのワイシャツと雰囲気を合わせて、白っぽいロングスカートを手に取る。
このワイシャツとこれを合わせたらいい感じだろうか……いや、ちょっと落ち着き過ぎだろうか。
103 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 03:34:08.27 ID:EL/6sxjbo
>>102
「あはは、優しい、か……
言うことはあっても言われることはなかったっけ」

かつては人を蹴落とすことばかり考えていた
衣食住が整ったせいなのだろうか、これは

「うーん、私で良ければ相談に乗ったりもするよ?
私と違う、なんでも話せる友達欲しいな、なんて思ったりしてたし
って、何言ってるんだろ私」

いないわけではない、しかし類は友を呼ぶのか、なぜか知り合いは裏の世界に深く通じる人や、
自分では足元も及ばない人たちばかり
ある意味等身大に付き合える、裏の世界に通じていなさそうな友達が欲しかったのは事実

故に彼女と友達になってみたかった
今日が初対面の相手にこんなことを口にするなど、以前の自分ではきっとありえなかったか
ある意味平和ボケしているのかもしれない、そんなことを思う

「うん、そうだよ お金の節約にもなるしね
でもこんなのまだ序の口だよ? 裏の世界っていうのは」
あっけらかんと言い放つ少女
嘘をついているようには見えない

「今年の春の流行りは実はまだ知らないの」
苦笑いを浮かべつつも

「白色は涼しそうに見えるよね、なんとなく
あと清純そうな印象だね」
などと口を開きつつも

104 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 03:55:24.65 ID:DOxr7awno
>>103
「そうなんですか? では、きっと今までの人は気が付かなかったのでしょうか。
 それとも、言わぬが花とあえて口にしなかったのか……」

少なくとも、あってからまだ時間も立っていないというのに少なくとも2回以上はエリアの優しさに触れたと思う。
自分はいつもそうだ。人にやさしくされるが、自分は返せない。

「友達……ですか。そうですね、私も……私も、友達が欲しいと思っていました。
 私とお友達になってください。
 それで……話はまた今度にしましょう。また、どこかゆっくりとした場所で」

それは話してほしいという言葉に対する拒否ではない。
むしろ、誰かに話すことで解決の糸口を見つけたいと思っていることも事実。
けれども今は買い物の時だ。重い話は次の機会でいい。

これで街に出てから仲良くなれそうな人に会えたのは2回目だろうか。
タイプは違うが、どちらもいい人だ。

「なるほど……裏の世界というのは恐ろしいですね。
 しかし、お金の節約になるというのは非常に良いことです。
 私、決まった職が無いものですから大抵お金に困っていまして……」

職探しもしているのだが、戸籍のない千早を雇うところなど無く、結局はそういったことが緩いバイトで生活をしているのだ。

「そうでしたか……では、わかったら教えて下さい。そうしたらまた買いに来ましょう」

と微笑みかけてさり気なく次の買い物の話。
手に持つスカートをかごに入れる。

「では、会計を済ませて来ますので少し待っていてください」

そう言って会計へと進んでいく。今日のところはこんなものでいい。
……あまりお金もないし。


「おまたせしました。
 あの……もし良ければこれを」

会計から戻ってきた千早は、手のひらサイズの小さな紙袋を差し出した。
中には、小さめの黒い髪留めが2つ入っている。
買い物に付き合ってくれたお礼として、レジ横に置いてあったものを買ったのだ。
105 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 04:17:58.33 ID:EL/6sxjbo
>>104
「環境の変化って、意外と大きいみたいでね
私も昔は、もっと黒かった気がするよ」

しかしこれが純粋な優しさなのかは、少女にもわからなかった
もしかすると、無意識下で悪意が潜んでいるかもしれない、などと思うとため息をつきたくなる

「受けてくれるんだ、ありがとう
うん、いつでもいいよ 私だって今日は笑ってたいからね」

買い物でハメを外したいという気持ちもまた事実であった
いい人が自分にもうつったのか、はたまた生活に余裕が出てきたせいなのか

「それはわかる気がするな、私も普通に生きてたらよくお金に困ってるもの」

真っ当な道に生きることを決めて、衣食住以外で必要なものが出てきたときなどに、
アルバイトをしていたりする少女

男の人を陥れるような真似をしないせいで、金欠気味であったが、
一応環境のおかげでそこまで頭を悩ませる必要がないのが救いであった

「うん、わかったら」
などといい適当に暇を潰していると

「わ、髪留めだ!
……今日は本当にありがとう、千早お姉さん」
受け取り、嬉しそうな顔をする少女
そうして、お礼を言う

金欠なのにもかかわらず、様々なものを貰い少し申し訳ない気持ちになりつつ
そして今度なにかでお返ししたいな、と考える

106 :千早 [saga]:2013/03/10(日) 04:31:42.56 ID:DOxr7awno
>>105
「確かに、環境というのは人を大きく変える要員になりえます。
 ですが……それはあくまでも表層の部分であって、深層の部分は環境では変わらないと、そう思っています」

きっとこの子は以前、世間から見れば悪の行いをしていたのだろう。
だが、それは環境によっては致し方ない場合もある。
本来の性格とは裏腹に非情にならなければならないという時もあるだろう。

「このように友人とお話をする時が来るとは、思っていませんでした。
 今日はエリアさんに会えたということが一番の収穫ですね」

人間関係が希薄だった千早にとって、これはきっと良い事なのだろう。
現に、今千早は心から嬉しいと思っている。

「やはり、どうにかして定職を見つけたいところです……」

このセリフだけ聞くと、ダメダメなフリーターやニートを連想するだろう。
実情はそうなのだが、千早にはあまり似つかわしくないかもしれない。

「いえ、喜んでいただけて何よりです。道案内をして頂けましたし、何よりお友達になって頂きました。
 お近づきの印ということで」

そう言って笑いながら店を出て行く。
そろそろこのショッピングモールも閉店だ。
二人でゆっくり歩きながら建物から出る。

「今日は色々とありがとうございました。
 また、必ず会ってお話をしましょう。話を聞いていただくという約束もありますし……
 それでは、また」

綺麗にお辞儀を一度して、家の方角へと歩き出す。
予想外の出来事だったが、この出会いが今後にどのように影響していくのだろう。

//こんな時間までお付き合いくださりありがとうございました
//とても楽しかったです。お疲れ様でした。
107 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/10(日) 04:53:20.37 ID:EL/6sxjbo
>>106
「そうかな? そういってもらえて嬉しいな」

身を落とすところまで落とすことも考えたこともある少女
しかし一線を越えずに済んでいるのは、関わりあった人たちのおかげか

「友達って認めてくれるだけで嬉しいな
断られるかな、なんて思ったりもしたから」

意識下では損得を意識せずになることができた、初めての友達
人助けから人と友達という間柄になれたというのは、嬉しいことであった

「私も店を持ってたら、雇えるんだけどね……
うーん……」
そればかりは、こちらは殆どなにもできない
ただ就職難のせいであると思っている少女は、真剣に思案しつつ

「まあ道案内したときは、ここまで考えてなかったんだけどね
大きすぎる物を貰ったよ」

のんびりと建物に出た後に、

「うん、またね、バイバイ!」
手を振って見送る
そうして、少女もまた家へと帰って行った

自身とは違ったタイプの友達ができた
それを嬉しく思いながら

//こちらこそお疲れ様でした、楽しかったです!
108 :ジャン・ジャック・ダニエル :2013/03/10(日) 19:22:15.69 ID:NGW7yq0Bo
「はてさて、今日の宿はどこにするか」

仕立てのいい上物のスーツに不釣り合いな迷彩柄のブーニーハットとアリスパック。
そんな奇妙な背格好の男が一人、地図を片手に繁華街を歩んでいく。

はたからみても奇妙な男である。
黒一色のジャケットに迷彩柄というのはいかにも悪目立ちする組み合わせ。

周囲から投げかけられる怪訝な視線はしかし、男にとっては意に介するものではない様子。
帽子の下で葉巻を燻らせ、青い瞳を周囲に忙しなく転じながら男は道の真ん中を進む。

果たしてこんな奇異な男に声をかける者はいるのだろうか。
109 :クリオネ [saga]:2013/03/10(日) 19:55:52.70 ID:DOxr7awno
>>108
とある飲食店。
広いスペースにいくつかの丸いテーブル席とカウンター席が設置され、一切のしきりがないその店は高級感はないが開放感がある。
そんな店で食事をしている赤毛の少女。
髪の色と同じ真紅のロングコートに白いワイシャツ、黒いミニスカートを履いて足を組んで座っている。

「何なんだてめえは!!」

静かに食事をしているというのに、近くの席で大柄な男同士が喧嘩を始めてしまう。
非情に厄介だ……大声がウザいというのもあるし、こちらの席までとばっちりを食う可能性もある。

「おやめくださいお客様……」

店員のウェイターが仲裁をするも、うるせえの一言と共に投げ飛ばされてしまう。
大柄とはいえ、人一人を投げ飛ばすとは相当な怪力か……
喧嘩の原因は聞いていなかったので分からないが、2人の男はだんだんとヒートアップし殴りあい寸前。

(……うざ……)

テーブルの上に置いてあるクラブハウスサンドとコーヒー。今日の食事だ。
クラブハウスサンドを一つとり、口へと運ぶ。
客の半分は店外へ逃げ、もう半分は恐ろしくて仲裁も出来ずに見守っている。
クリオネはと言うと、唯一隣の騒動を気にせずに食事をとっている。

……だが、運命というのはままならないもので、とうとう殴り合いに発展した喧嘩の最中で殴られた勢いでクリオネのテーブルの上へ仰向けで倒れこんできたのだ。
当然、テーブルの上に乗っていたクラブハウスサンドはどこかへと消え去った。
今、クリオネのテーブルに乗っている男は凄まじく運が無い。
数あるテーブルの中で、よりにもよってクリオネのテーブルへと来てしまったのだから……
そして、男によって倒されたコーヒーカップの中身が飛び散り、クリオネのワイシャツを少しだけ汚した。
汚れ自体は僅かなものだ……だが、相手がクリオネというのが問題だった。

「このやろう……」

男はクリオネに目もくれずに立ち上がって再び喧嘩相手へと歩き出そうとするが……

「ちょっと待って……これどうしてくれるの……?」

少女には似合わないドスの利いた声で、男を呼び止める。
当然、男の反応はというと

「はぁ? ガキはすっ込んでろ!!」

こうなるわけだ。やはりこの男は運が無い。
再び歩き出す男の背後に、鉄製の人形が1体出現する。
即座に男に掴みかかると、大柄な男が軽々と中へ浮く。
そのまま入口の方へと向かって勢い良く投げ飛ばす。まるでボールを投げるがごとく放たれた男は、店の入口にぶつかっても止まらずに、扉を壊して外へと飛び出るだろう。

そして、きっと店の近くを通る奇妙な男も運が無い。
投げ飛ばされた男が入り口を突き破って外へと飛び出すタイミングと、奇妙な男が店の前を通過するタイミングはほぼ同じだったのだ。
不幸中の幸いが起これば、店の入口正面に差し掛かる直前で男が飛び出してくる。
本当に運がなければ、飛び出てきた男と壊れた扉やら少量のガラスやらが直撃するかもしれない。
110 :ダニエル :2013/03/11(月) 19:09:55.04 ID:8NsHG2Iqo
>>108
これで募集しますん
111 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/11(月) 22:08:23.21 ID:QDUP3DDNo
>>108
上物スーツ……お金持ちなのだろうか
奇妙な恰好を見て好奇心が揺れ動く

「ねえねえおじさん」
幼い子供であるが故の背の低さを利用して、
低い身長を利用し雑踏に紛れて、そのなかでひときわ異彩を放つ男に近づき声をかける、
金髪青目の小学生に見えるほど幼い少女

「おじさんはどうして、そんな格好をしているの?」
ある程度距離を保ち、しかし無邪気そうな表情を作り上げて、
小さく首を傾げて恰好の意味を問うことにした

相手はこの体から考えて年上の男性、油断は大敵である
112 :ダニエル :2013/03/11(月) 22:31:23.85 ID:430qY97Eo
>>111
「早く宿を見つけないと、野宿は遠慮だ」

地図を睨みつけ、男は足早に通りを抜けようとする。
目指すはホテル街、今晩の寝床のために焦らず急いで正確に。
と、これまたスーツ同様に上物の革靴を履いた足がピタリと止まった。

「ん?」

声をかけられた気がした。
はて、と周囲を見回し、こちらを遠巻きに見つめる好奇の視線の一つ一つに目を留める。
その誰もがダニエルと視線を合わせるのをこばむように顔を伏せた。

時間が時間だが、当たりは未だ喧騒の中。
聞き間違いだろうかと首を傾げ、また地図に視線を落とす……途中で、ダニエルはこちらを見つめる幼女と目が合った。

歳の頃は10代前半だろうか、と半ば反射的に当たりをつけ、こちらを見上げる幼女を見つめ返す。
一瞬の沈黙。
どうやらやはり、彼女は自分が目当てらしい。
ぴたりと合わさった視線の気まずさを打開するために、ダニエルは務めて朗らかかつ作為のない笑顔を浮かべた。

「…………なにか私に用かな、お嬢さん」

そういって迷彩柄の帽子を外すと、短く刈りそろえた金髪と、帽子で隠されていた精悍な面貌が街灯に照らされる。
やや手入れ不足の無精髭が、どう言った訳かよく似合う。
街を歩けば誰かしらの目を引きそうな、そんな男だけに、衣服のちぐはぐさが一層目立った。
113 :エリア 猫かぶり少女 [sage]:2013/03/11(月) 22:48:23.45 ID:QDUP3DDNo
>>112
「一人で散歩してたらなんだか目立つおじさんがいたから気になったの」

会話の内容からして今は日が沈んだあたりであろうか
そんな時間帯に一人で街を散歩しているという小さな女の子

……純粋な興味とほんの少しの期待を胸に言葉を続けることにした
その興味は熱い視線という形で現れる

「おじさんはどこにいくの?
それとおじさんについていっていい?」
まばたきを一つして、そう言葉を続ける

恰好の異質さからして、恐らく並みの人間ではないだろう
そういった人間と知り合いになっておきたい、そんな思いを、
どことなくぼんやりとした表情の裏で抱いていたのかもしれない
114 :ダニエル :2013/03/11(月) 23:04:34.36 ID:430qY97E0
>>113
「目立つ……か」

 そういわれてみればとあたりを見回せば、たしかに自分は様々な人物に注視されている。
 気づいていないわけではなかったが、無視していた事柄。衣服が衣服だけにやむなしと割り切っていたのだ。
 
 やはり目を合わせようとしない周囲を無視して、ダニエルは少女へと向き直る。
 こんな時間に出歩くにはあまりに幼すぎ、そして華奢に過ぎるその容貌。何か事情があるのだろうなと内心に納得しながら、ダニエルは帽子を脇に抱える。
 向けられる熱い視線を正面から受け止め、ダニエルはおそらく親もいないのであろう少女に小さく微笑んだ。
 
「これから宿を探して夕食を取ろうと思っていてね。寝床さがしさ
 ついてくるのはかまわないんだが、それは夕飯と寝床おごってくれということかい?」

 べつにたかられるのは慣れているし、相手が女――それも子供であるというなら、一晩の寝床と食事の提供を惜しむつもりもない。
 このご時世、世の中は孤児であふれている。
 きりがないと思いながらもその一人一人にできる限りのことをしてあげよう、というのがダニエルの信条であった。
 
115 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/11(月) 23:21:18.91 ID:QDUP3DDNo
>>114
「うん目立つ、すっごく目立つよ」
ついでに腕っぷしも立ちそうだ
こういった人にならば、あの相談を持ちかけてみるのもありかもしれない

「……ばれちゃった?」

寝床はともかく、夕食は奢ってもらえればなと
心のどこかで考えていたことは事実
頬をほんのり桜色にして、図星だったせいなのか、どことなく恥ずかしそうにしている少女
この表情や行動に妙な違和感を自分で抱いていることに気づきながらも、それは頭から払い除ける

「奢ってもらえるの……?
すっごく嬉しいや」
表情が晴れ渡る、わかりやすい少女だ
安心したせいなのか腹の虫が鳴り、
顔を真っ赤にするのだった

いかに態度や表情を偽ろうとしてみても、身体は正直であったらしい
116 :ダニエル :2013/03/11(月) 23:31:18.92 ID:430qY97E0
>>115
「バッグがこれしかないのと、軍用は頑丈なんだ」

 言い訳じみた台詞だという自覚はあったが、それが偽らざる事情だった。
 使い慣れた軍用物品を捨てる気にはなれず、なおかつ使い勝手がいいのだから替える理由もない。
 それに迷彩帽子は長年の友である。ないと落ち着かないのも事実だ。

「そうだな、バレバレだ」

 頬を染める少女の動作に、ダニエルも相好を崩して暖かな笑みを浮かべる。
 もとより子供は好きな性質だ。ロリコンというわけではないが、愛らしい女児を見れば心も温まる。
 軍人になる前は教師になるのも悪くないと、そう思っていた程度には子供と触れ合うのは好きだった。

「私はかまわないよ、別に。いつものことだからな、おごるのは」

 さて、では行くとするか? と。
 地図で目星をつけたホテルの方角を示して少女に問う。

「ところで、夕食はホテルのルームサービスで済ますか、レストランを探してさまようか。君はどちらがいい?」
117 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/11(月) 23:47:04.10 ID:QDUP3DDNo
>>116
「ふーん、おじさんは軍の人なんだ
……見たままなのかもしれないけど」

目印になるのかもしれない迷彩帽子を凝視する少女
もしかすると、それが彼の避けられる理由なのだろうか、などと考えたりしつつ

「あははは……
……はあ、恥ずかしい」
つい昼食を取ることを忘れていたせいであろうことを思い、ため息をつきつつ
別にそこまで恥ずかしがる必要もないのかもしれないとも考えたものの
ダニエルが暖かな笑みを浮かべてくれていることに少しほっとして、
乾き気味の笑みを浮かべる少女であった

「いつも……よくおじさんは、食べ物を人におごっているの?」
などと問いながらも、行くか問われてこくりと頷く

「レストランなんてお金かかるでしょ?
もしそれも奢ってもらえるとしても、そんなの悪いから、ルームサービスでいいよ」
自分から求めるというのも厚かましく思えた
少なくとも、今この時はそう思えた
118 :ダニエル :2013/03/11(月) 23:59:51.48 ID:430qY97E0
>>117
「教師か軍人かで軍人を選んだのさ」

 まあ軍人のほうが似合っていたようだがね、と肩をすくめる。
 そして帽子をかぶりなおすと、目当てのホテルの方向へと歩みを進めた。

「べつに恥ずかしがることはない。だれでも空腹にはなる」
 
 かくいう自分も昼をぬかしていたりする
 すでに腹が鳴る段階を越え、空腹が苦痛へと変わり始めていたが、それは顔には出さない
 ダニエルはポケットをまさぐるとそこからクッキーを取り出し、少女に差し出す

「わたしは金がかかるのはかまわんのだが」

 今回は少女のいうとおりルームサービスにするつもりだった
 何はともあれ、今は疲れている
119 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 00:13:51.65 ID:Bk70Ul3go
>>118
「そうなの? でも意外とそっちも似合ってそう」

顎に人差し指を当てて少しだけ考えるようなそぶりを見せたかと思うと、
人差し指を離してそう切り返す

「だって、子ども好きそうだもの
普通の教師より向いてそう」
自分への彼の態度を見ていての感想でもあった

「ありがと、おじさん
むむ……、だれでも……」
お礼をいい、難題にでもぶつかったような、難しそうな顔をしたかと思えば、
また表情が明るくなり、そうして差し出されたクッキーを半分割り

「誰でもお腹が空くのなら、半分返すよ
おじさんがお腹を空かしていないとも限らないし、そもそもこれはおじさんものだから」
屈託のない笑顔を浮かべてそういうと、半分のそれを差し出す

「そうなの? それって……お金持ちだから?」
なんとなく彼がそういった風に映っていた少女
そういった風に尋ねてみたりする
120 :ダニエル :2013/03/12(火) 00:24:15.71 ID:vW8TLhZKo
>>119
「頭が良くないからな。教えるのは下手なんだ」

残念ながらダニエルは農家の出身。
そもそも金がない家だったのだ。それが軍を選んだ理由でもある。

「子供は好きだよ。ただまあなんと言うか、機会に恵まれなかった」

そう恥ずかしげに答えながらも、どこか嬉しそうにはにかんで頬を掻く。
照れ隠しにしてもあまりに下手に過ぎる。
慣れていないのかもともと素直なたちなのか。
おそらくは両者であり、それがダニエルの人柄なのだろう。

「私だって食べなければ減るさ。君もそうだろう?」

どうやら喜ばれたらしいクッキー。
残っていて良かった、と内心にほんの少し前の自分を褒める。
慰めにもならないクッキーを齧るなら、レストランで豪快に、という理由で残して一枚。
その半分を少女が差し出せば、やや驚いたように目を丸くする。

「別に気は使わなくていいんだが……ありがとう」

半分のクッキーを受け取って齧り、もうすぐそばまできたホテルのエントランスをみやる。
高くもないし安くもない。
ありがちな中堅のホテル。
何事もなければロビーへと踏み入り、カウンターで"隣り合わせの2部屋"を予約するだろう。
少女が係員との会話からそのことに気づくかはさておき、さすがに同じ部屋を取るのは気が引けた。

「金の使い道がない。孤児院に寄付するくらいしか、ね」
121 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 00:51:23.31 ID:Bk70Ul3go
>>120
「……そっか」

軍は収入が良いのであろうか
しかし、ただそれだけが理由であるのなら

「……でもそれなら、いつか勉強に専念できる日が来たら、
その時は先生にだってなれるね、うん」
あまりにも単純明快で子供らしい、きっと慰めにすらならないような言葉
しかし少女にとっては、精一杯のかけられる言葉でもあった

「なるほど……
じゃあ今日はついているのかもしれないね」
彼の顔を覗き込むようにして、意地悪そうに笑ってみせる少女
機会に恵まれなかったというのは、
彼が戦場に携わる仕事をしているせいだろうか、などと考えてみたりする

「うん、さっきみたいに
……すごくおいしいや」
思い出して照れ笑いしつつも、半分に割ったクッキーを口にする
半分であっても、空腹の少女には十分であった

「……じゃあ寄付するお金を節約しないと、
私よりも悲しい運命をたどってきた子供なんて沢山いるから」
人の不幸と自分の不幸を秤にかけるべきではないのかもしれないと意識していても
無意識のうち秤にかけてしまうらしい

そんな自分に少しだけ苛立ちを覚えつつも、少女は駆け寄ってきて

「だから1部屋にしようよ
節約兼ねて、ね」
会話が聞こえてきたのか、ダニエルの顔を覗き込むようにして少女は進言した
相部屋になったとしても、
起伏のないこの体型で、まさか襲われることはないだろうと高をくくっていた

122 :ダニエル :2013/03/12(火) 01:07:16.64 ID:vW8TLhZKo
>>121
「もう軍を辞めて10年近いが、それでもやはり教師にはなれなかったんだ」

そう言ってダニエルは目を細める。
まるで遠くを見つめるように。そこに望みながらも得られなかった情景があるとでもいいたげに。
青い瞳に一抹の感情が過ったのを最後に、ダニエルは帽子を目深に被って口元を歪める。

「そうだね、子供に出会えて運が良かった。なんだか危ない言い方だが」

自分は兵士だった。
その職を辞してなお、戦場に身をおく戦士であり続けている。
そんな自分でも、実のところ子供には割と縁があったりする。
貧乏所帯の麻薬中毒の幼年兵と、それを[ピーーー]傭兵。
そういう間柄。望んで得られなかった道とは真逆の、血みどろの関係。
だからこそ、せめて敵味方で別れないでいい環境では、子供には優しくしたい。
独善であると断じ、欺瞞の上に成り立たせたものであっても。

「君は優しい子だな」

他の子供を思いやるなんて、と。
ダニエルは自分の財布に押し込まれた紙幣を勘定し、思案する。
少女の申し出がありがたくない訳ではない。
しかし道徳的によろしくないのもまた事実。
別段襲うつもりだとか、幼女趣味なわけではない。
恋愛に年齢など無関係という心情だが、自分らは出会ったばかりだからそれもまた別問題。

現に係員は、ダニエルと少女を怪しげな視線でそれとなく注視している。

「私としてはべつにいいのだが……君、40になった"おっさん"と相部屋でいいのか?」
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2013/03/12(火) 01:30:15.17 ID:Bk70Ul3go
>>122
「……そう、なんだ」

声をすぼめて、短くも暗い声色で呟く
初対面ながらに、彼の素直さを垣間見た少女
それ故に、彼がなにかしら苦悩していても、なんらおかしくないのではないだろうか
などと感じるのだ

「……あはは、確かにちょっと危ないよ、それ
でも……私はただの、子どもだからね」
彼と初めて会うだけでなく、自身は慕う人や友人はいても、
組織に所属しているわけではないため、基本的にだれかと敵対する必要はなかった

乾いた笑みでごまかしつつも、彼の言葉に言葉以上の重たさを感じ取った少女であった
なにが彼をそこまで追い込むのか、それは今聞くべきことではないだろう
しかし、ただの子ども故にできることもあるのかもしれない
……らしくないか

「また言われちゃったよ」

本当にどうしてしまったのやら、などと考えつつも、
道徳的によろしくないという事実は、
やはりその姿には似合わないような知識も多数持つために、なんとなく感づいたりもした

「私は別に構わないよ?」
あっけらかんとした様子の少女
無邪気な笑みを作り上げるのはもう慣れた



124 :ダニエル :2013/03/12(火) 01:39:44.65 ID:vW8TLhZKo
>>123
「向かなかったのか運がなかったのか」

多分、両方。
自覚はしている。だからこそ後悔はない。
きっと、どれほど辛かろうと今が一番自分に向いているはずだから。
それでも夢見た眺めを幻視するのは、自分が女々しい男だから。

「だな、危ない言動には気をつけないと。……ただの子供ではない子供というのもまたみてみたいが」

緩みかけた感情の栓を締め直し、ダニエルは係員が差し出した書類に必要事項を記入していく。
そして最後に、部屋数の欄でペン先を止めた。

「まあ、君がいいなら……私はソファで寝るとするよ」

借りるのは1部屋。
残念ながら二人部屋はすでに満室。時間が時間だけに止むないと割り切る。

「さて、いこうか」

ダニエルは代金を支払い、部屋のキーを手にしてエレベーターへと向かう。
125 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 01:56:20.77 ID:Bk70Ul3go

>>124
「……私にはわからないや
いろんなタイプの子どもと真っ向から真剣に向き合うぐらいの心意気があるんだったら
向いてるって思うけどな、私」

教師にまつわる話は、少女も小耳にはさむことがある
冷めた教師の話ならよく聞くというのが感想だ

「……言われてみれば、ただの子どもってなんだろうね
私も吸血鬼にストーカーされたりしても、
まだ人間をやめたわけじゃないからただの子どもっていってるけどさ」
言われてみれば……
そして自分も本来はただの子どもなどではないことを思うと、ため息をつきそうになる
ただの子どもでありたいと願う心が、そう言わせているというのが真実だ

「ソファー……疲れ取れるの?」
尋ねながらも、ダニエルにつれられるのであった
126 :ダニエル :2013/03/12(火) 02:05:11.59 ID:vW8TLhZKo
>>125
「なるほど……真摯に当たれば自ずと結果は出る。それが向き不向きを決める、と?」

エレベーターのボタンを押して、緩やかに変化する階数表示を見つめる。

「吸血鬼にストーカーって…………警察に連絡は? 大丈夫なのか?」

先ほどまで穏やかだったダニエルは眉根を寄せ、少女を心配げに見下ろす。
吸血鬼といえば、ダニエルにとっていえば人外の存在。
大方において人を襲うため、何度か相対したことのある"敵"である。
そんなものが少女をストーカーするとあっては聞き逃せるわけがない。

「軍人は岩の上でも寝ないといけないことがある。ソファーは天国だ」

だから大丈夫だとつけたして、エレベーターのドアが開くと足を踏み入れてボタンを押す。
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2013/03/12(火) 02:22:29.42 ID:Bk70Ul3go
>>126
「聞いててそうかなって思っただけだよ? 目標にもなると思うし
……深い事情なんてわからないから、なんともいえないけどね……」

ほかにも事情があるのでは、などと感じているものの、
とりあえず初対面の相手がそれを語ることもないだろうと踏んでいたために、
ある程度想像して話すしかない、とは感じていた

「大丈夫じゃないから困ってるよ、私の友達まで狙ってくる気みたいだしね
普通の警察なんてあてにならないよ、きっと……」
大きなため息を一つつく少女、疲れた表情を一瞬見せたかと思うとすぐ元に戻して

「岩の上……
そう言われたら、疲れが取れるように一緒に寝る? なんて言いづらいね」
表情に明るさが戻ると、そんなことを言いながらも、
ダニエルを追って歩く



128 :ダニエル :2013/03/12(火) 02:29:39.56 ID:vW8TLhZKo
>>127
「ふむ……まあ、機会があれば目指してみるさ」

その機会が訪れることがあるとは思えなかったが、少女の前で口にすべき事柄ではなかった。
どだい初対面の相手にそこまで踏み入った話しをする理由もない。

「なら傭兵。あるいは怪異狩りの専門家、軍人。知人に心当たりは?」

口にしておきながら難だが、少女がその手の人物と関わりを持っているとは思えないとも感じていた。
そもそも吸血鬼などという相手に対抗できるのはほんの一握りの人材のみ。
そして自分はそのなかの一人でもある。
少女の疲れた様子に、ダニエルは暗澹たる気分で、やれやれとため息をつく。

「たとえ言われたとしても、一緒は遠慮しておくさ」
129 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 02:44:16.09 ID:Bk70Ul3go
>>128
「うん、機会があればね」

初対面の相手にあまり踏み入った話を聞いたりするのも失礼か
そんな単純な話ではないのだろう、とは思いつつ

「知り合いにその手の専門家はいないよ、悲しいことにね
なんとかして私が強くなるのが早いって思うけど、どうなんだろ……
なんの罪もない友達に危害が加えられる前に手を打ちたいよ」

表情の明るさに対して、目は笑っていなかった
彼の想像通り、そういった知り合いはいないようで
いないからこそ、少女は苦心する

「うーん、確かに抱き枕にされたくはないかも」

と冗談を交えてそう返しつつも
130 :ダニエル :2013/03/12(火) 02:53:35.31 ID:OAO5FG0So
>>129
「…………世の中どこでどんな危険に出会うかわからんな……」

やれやれと肩を竦めたダニエルは、おもむろに一枚の紙切れを少女へと差し出す。
そこにあるのはダニエルのフルネームと携帯のナンバーにアドレス。
そしてその紙面には小さく、ダニエルが傭兵であることを証明する傭兵斡旋協会の印が刻まれている。

つまりは、何かあったら自分をよべということらしい。
少女がまともな財産を持たないことは、いまの状況をみれば大体理解できている。
それでなお差し出すということは無償でやると言ったも同然だった。

エレベーターのドアが開くと、ダニエルは部屋ナンバーを確認しながら廊下へと踏み出す。

「わたしも犯罪者の仲間にはなりたくはないさ」

苦笑してそう返しながら、ダニエルは目当てのドアへと鍵を差し込む
131 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 03:06:33.83 ID:Bk70Ul3go
>>130
「これって……」

軍から離れても兵はやめていない、その意味がぼんやりとだが理解できた気がした
そして傭兵のイメージから、彼の苦心というのがなんとなく想像できた
しかし、そんなことは問題ではない

「……いいの? 受け取って……
大金、持ち合わせてないよ……?」

確かにまともな財産を持ち合わせていれば、
こんな風に奢ってもらったりしないだろう
紙とダニエルを交互に見やると、恐る恐る尋ねてみる少女

「絵的には立派な犯罪者になるんだね
子供を抱き枕にするだけでも」

そうして、この扉の向こうに広がる光景を想像して、胸を躍らせている少女
ホテルなど泊まったことがあったかどうか……
132 :ダニエル :2013/03/12(火) 03:18:39.39 ID:OAO5FG0So
>>131
「わたしの名刺だ。これがあれば大抵連絡がつくはずだ」

傭兵稼業を始めて10年と少し。
名のしれた傭兵として世界中でダニエルは戦っている。
元英国特殊部隊のエリート。
犯罪者を狙う暗殺者。

「もとより理解している。いいさ、金には困っていないんだ」

だから気にするな、と。
大きく、岩のように硬化した手のひらで、少女の頭をぽんぽんと撫でる。
反射的というか、ついついでてしまった動作への動揺をおくびにも出さず、ダニエルはドアを開ける。

「たとえ間がどうあれ、な。べつにそういう趣味の人間を軽蔑はせんが」

扉の向こうは小綺麗で温かみのあるホテルの一室。
大きな窓の向こうには夜景。
少女にはやや大きめなベッドは丁寧に整えられ、テレビとソファ、そしてテーブルがおかれている。

「さて、ルームサービスを頼むか、さきにシャワーでも浴びるかい?」
133 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2013/03/12(火) 03:37:34.40 ID:Bk70Ul3go
>>132
「……ありがと……」
ただ一言、そうお礼をいうしか、今の少女にはできなかった
自分一人の力だけではどうにもならないことがあるとはいえ、
いくらなんでも自分は無力過ぎやしないか

そうして自己険悪に陥りかけた寸で、なぜだか身体中が暖かなものに包まれたように思えた
それが彼の手の温もりによるものに気づくまでに、そう時間は掛からなかった

「……ッ」
みるみるうちに顔が沸騰していくのが感じられた、そして彼から視線を逸らす
なぜだか不愉快に感じなかった、あの手の温もり
全身が暖かな光に包まれていくような、あの感覚はなんだったのか……

「……シャワー浴びてくる」
ひとまず気持ちの整理をつけたかった少女はダニエルと顔を合わせないようにして、
シャワー室へと駆けこんでいった
134 :ダニエル :2013/03/12(火) 03:45:54.03 ID:huhbkvuVo
>>133
「いいよ、自己満足の慈善みたいなものだから」

自分はこれくらいしかできないから。
せめてやれることはやろう。そう決めている。
金にならずとも。感謝されずとも。その道が正しいと信じたならば。
青臭さに自分でも閉口しそうだったが、それが他ならぬ自身の選択だった。

「ああ、いってらっしゃい」

逃げるようにバスルームへとかけこむ少女。
やらかした、と自分の手を見下ろし、一通りの気まずさとなんともいえない緊張感を咀嚼する。
そしてなぜだか温かみの宿った手を握りしめ、ダニエルはルームサービスを電話で注文する。

それが終われば荷物を置いてジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めてテレビをみながら少女を待つだろう。
135 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 04:01:37.16 ID:Bk70Ul3go
気恥ずかしさで思わず逃げるようにして駆け込んでいった少女
整理をつけるために、服を乱雑に脱ぎ捨てて、蛇口を捻る
水を浴びてほてる体を冷やしながら、深呼吸を一つする

「なんだったのかな、あれは……
……冷っ」
一息ついて、冷静な思考を取り戻していく少女
しかし、あの暖かな感覚についてはわからないまま
釈然としなかったもののお湯にきりかえて、諸々終えて風呂を後にする少女

駆けこんだせいで着替えを用意していなかったことに気づいて、
仕方なく脱ぎ捨てた服をもう一度着ることにした

「……あがったよ、おじさん
さっきはちょっとびっくりしたけどね」
手入れされた髪からシャンプーの香りを漂わせて、再び部屋へと戻ってくる少女
いくらか落ち着きを取り戻したようだ

136 :ダニエル :2013/03/12(火) 04:12:56.42 ID:huhbkvuVo
>>135
無味乾燥なニュースが紛争を報道する。
やけに力のこもった解説者が野球を中継している。
使い古されたネタで芸人が失笑を買う。

ありきたりな番組。
ありきたりな光景。
それらを一巡して、ダニエルは電源を落とす。
いい番組はなにひとつない。
仕方なしに音楽チャンネルに切り替えると、物静かでどことなく哀し気なジャズの音色が意識を惹きつけた。

起伏を削り、ただただ安らぎのみを届ける音程。
なぜかそも音が懐かしく感じられて、ダニエルはソファに身を沈めて目を閉じる。

沈みかけた意識を、少女の声が引き戻す。
眠りかけていたらしいと気づく前に、先ほどと同じ衣服の少女に目を留めた。
先ほど撫でてしまったことから話題を剃らせそうで、ダニエルは安堵する。

「私の名はジャンだ。ジャン・ジャック・ダニエル……ところで、着替えはないのか?」

腕時計をみると、ルームサービスがそろそろきてもおかしくない時間。
さすがに係員にみせるわけにはいかないと、身につけたままのショルダーホルスターを外してテーブルへ置く。無論、ホルスターには黒い拳銃が収まっている。

ドアチャイムが鳴ったのはその時だった。
137 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 04:29:15.79 ID:Bk70Ul3go
>>136
戻ってきて自然と耳に入ってきた哀し気な音色は、
少女をちょっぴり憂鬱な気分にさせる
いろいろと考え込んでしまいそうになるから

「ジャンおじさん……覚えたよ」
名刺にも名前が書いてあった気がした
あとでもう一度目を通そう、と心に決めて

「うん、荷物はあんまり増やしたくないからね
でもバスタオル一枚っていうのもまずいでしょ、いろいろと」
薄ら笑みを浮かべて、少女はダニエルにそう切り返す
いくらか落ち着いたのか、ダニエルの顔を見て、
特になにごともなかったかのように振る舞えるようになったらしい

そうして、チャイムの音が聞こえてくる

「……私が行くべきかな?」
扉のほうへとゆっくり歩いていく少女
特に何事もなければ、扉をあけようとするだろう
138 :ダニエル :2013/03/12(火) 04:37:26.90 ID:huhbkvuVo
>>137
「君の名前も、よければ教えてくれないか?」

さすがに名前も知らないままというのは気持ちが良くない。
さりとて、相手の立場からすれば教えにくいものかもしれない。
教えれもらえれば幸い程度の気分である。

「さすがに予備の服くらいは買うべきだよ
身だしなみで相手の生活を判断して襲う輩もいる」

服すら持たない生活。辛くないだろうかなどと心配してしまう程度には情が湧いている。
というより、もとよりこういう性格なのだが。
その上この男、なんなら代金ぐらいはだしてもいいか、などと考えている。

「ん、頼めるか?」

少女がドアを開ければ、ルームサービスを運んできた係員がその受け渡しをするだろう。
139 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/12(火) 04:49:10.39 ID:Bk70Ul3go
>>138
「……エリアだよ
エリア・レミリア 改めてよろしく、ジャンおじさん」

別に教えてなにか損するわけでもなかった
故に、特に躊躇することなく名乗る少女

「うーん、それはまずいや……」
確かに服装で襲われては洒落にならない
しかし、今手に持っていないだけで、一応服を持っていることを思い出す

「一応予備の服もあるにはあるのだけどね、
自分の家はないから別の場所に保管しているけど」

服を買うぐらいの手持ちはあるらしく
人差し指を顎に当てて思案しつつも

「はーい、どうも」
ダニエルの返答に小さく頷いた後に、
ルームサービスのそれを受け取り、テーブルにでもそれを置くことにする

140 :ダニエル :2013/03/12(火) 05:12:00.81 ID:huhbkvuVo
>>139
「エリア、よし、覚えた」

うんうんと頷き、ダニエルはエリアの名を反芻する。

「だろう? 服があるなら持ち歩くようにしなさい」

どこか教師じみた言い方。
エリアを見つめるダニエルの目は、真剣に心配しているようすだった

「つぎからしっかり持ち歩くんだぞ?」

ルームサービスを受け取ったエリアをよそに、ダニエルはテーブルを整える
141 :クリオネ [saga]:2013/03/12(火) 19:10:17.32 ID:kkGiUYoYo
とある飲食店。
広いスペースにいくつかの丸いテーブル席とカウンター席が設置され、一切のしきりがないその店は高級感はないが開放感がある。
そんな店で食事をしている赤毛の少女。
髪の色と同じ真紅のロングコートに白いワイシャツ、黒いミニスカートを履いて足を組んで座っている。

「何なんだてめえは!!」

静かに食事をしているというのに、近くの席で大柄な男同士が喧嘩を始めてしまう。
非情に厄介だ……大声がウザいというのもあるし、こちらの席までとばっちりを食う可能性もある。

「おやめくださいお客様……」

店員のウェイターが仲裁をするも、うるせえの一言と共に投げ飛ばされてしまう。
大柄とはいえ、人一人を投げ飛ばすとは相当な怪力か……
喧嘩の原因は聞いていなかったので分からないが、2人の男はだんだんとヒートアップし殴りあい寸前。

(……うざ……)

テーブルの上に置いてあるクラブハウスサンドとコーヒー。今日の食事だ。
クラブハウスサンドを一つとり、口へと運ぶ。
客の半分は店外へ逃げ、もう半分は恐ろしくて仲裁も出来ずに見守っている。
クリオネはと言うと、唯一隣の騒動を気にせずに食事をとっている。

……だが、運命というのはままならないもので、とうとう殴り合いに発展した喧嘩の最中で殴られた勢いでクリオネのテーブルの上へ仰向けで倒れこんできたのだ。
当然、テーブルの上に乗っていたクラブハウスサンドはどこかへと消え去った。
今、クリオネのテーブルに乗っている男は凄まじく運が無い。
数あるテーブルの中で、よりにもよってクリオネのテーブルへと来てしまったのだから……
そして、男によって倒されたコーヒーカップの中身が飛び散り、クリオネのワイシャツを少しだけ汚した。
汚れ自体は僅かなものだ……だが、相手がクリオネというのが問題だった。

「このやろう……」

男はクリオネに目もくれずに立ち上がって再び喧嘩相手へと歩き出そうとするが……

「ちょっと待って……これどうしてくれるの……?」

少女には似合わないドスの利いた声で、男を呼び止める。
当然、男の反応はというと

「はぁ? ガキはすっ込んでろ!!」

こうなるわけだ。やはりこの男は運が無い。
再び歩き出す男の背後に、鉄製の人形が1体出現する。
即座に男に掴みかかると、大柄な男が軽々と中へ浮く。
そのまま入口の方へと向かって勢い良く投げ飛ばす。まるでボールを投げるがごとく放たれた男は、店の入口にぶつかっても止まらずに、扉を壊して外へと飛び出るだろう。

そして、店の近くを通る人が居るならその人も運が無いかもしれない。
不幸中の幸いが起これば、店の入口正面に差し掛かる直前で男が飛び出してくる。
本当に運がなければ、飛び出てきた男と壊れた扉やら少量のガラスやらが直撃するかもしれない。

はたまた、店の外の人物ではなく、店内にいる人の中にこの騒動を止めようとする酔狂な人が居る可能性もある。

//前に出した奴の改変ですが
142 :ボルテクス( 異界の魔王 )商店街の金属工房店主 :2013/03/13(水) 21:01:15.45 ID:PfZ/3uaKo
【国有鉄道都市部環状線内回り、車輌内】
その者、槌をふれば大陸を砕き…
「こんな時間なのに客が多いな…。」

その者、腕(カイナ)を振るえば街を砕き…
「それにしても狭すぎる…押しのけるのはマナー違反か。」

その者、歩むだけでその跡が道となり…
「しかたない、復旧も進んだ都市なら電車も込むか…。」

その者、触れたものを抉り砕く強者…
「…?お尻に何かあたってる?違う、これは…あてている。」

その者、声を発すれば全てを服従させ…
「あの…やめ…(声が出ない)」

その者、睨めば相手の精神を砕く。
「…こ、恐くて、顔も目も見れない…。」

この世界に来てはじめての体験だった。
覇王に気安く触れる者など彼女がいた世界にはいなかった。
だがこちらに来て色々と事情が変わった。
王では無くなった。ならば覇王でもなくなった。誰からも恐れられなくなった。
同時に誰からも畏れられなくなった。着衣もこの世界の物にあわせた。
異界の魔王は商店街で仕事をしながら生計を建てる普通の女性になった。

普通…普通より初心な女性の尻は無遠慮な変質者の掌に弄ばれていた。
「やめ…て…くだ…」恐くて声が喉から先に出ていかない。
つり革の輪を握りつぶしてしまいそうなプレッシャー。
「や…め…」彼女が本気で変質者の腕を掴めば痴漢の腕は千切れるだろう。
しかし彼女は男性恐怖症だった。尻を撫でられ、震えながら涙が滲み出てくる。
143 :エリア 猫かぶり少女 [sage]:2013/03/13(水) 21:47:02.75 ID:6hDi3rI4o
>>140
「う……ん、でも荷物が増えるのは……」
うーんと唸りながら、その言い方や彼の態度から
教師や父親といったものを連想させられる

「なんだかジャンおじさんって先生とかいいお父さんって感じ」
会ったばかりの自分を、報酬が出るわけでもないにも関わらず、
でここまで心配してくれるダニエルを今さらながらに不思議に思いながらも

「次から……はーい」
少し考え込むようなそぶりを見せてから返事を返す少女
144 :ダニエル :2013/03/13(水) 21:53:19.20 ID:SaGLXanPo
>>143
「身の安全のほうが大事」

ピシャリと切って捨てると続けて、いいね、と念を押す。

「そうであれたなら、それは本望だよ」

子供は好きだし、とはにかんでダニエルはルームサービスをテーブルへとならべる。
パンと鳥肉のソテー、スープといった洋食だ。
食器を用意する手並みもどこか慣れた様子が滲んでいる。

「なにかあってからじゃ遅いんだから」
145 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/13(水) 22:01:16.85 ID:6hDi3rI4o
「むむ……
動きにくくなるのもある意味危険だと思うけど……」
反発しがるのは子供であるからか

「結婚したら将来いいお父さんになれるよ」
先生、ではなくお父さんとしたのは
少女なりに彼のことを汲んでのことなのか

「……おいしそう」
そういえばクッキーを半分しか食べていなかったのか
それらを見て思い出すと、急に空腹感で満たされる
立てなくなる前に椅子に座ることに

「そうだね……
長旅になるようなことがあったら考えとく」
146 :ダニエル :2013/03/13(水) 22:09:51.84 ID:SaGLXanP0
>>145
「むぅ……しかし襲われてから、よりも襲われる危険性を減らすほうがだな……
 遭遇する可能性を減らしておけばそもそもそんな心配をしなくて済むわけであって――」

 やや考え込んだ後、なぜかリスクコントロールの重要性を説きはじめる。
 どこか楽しそうにゆったりとした口調で一通り語り終えれば、なぜか満足気に鼻を鳴らして席に着くだろう。

「その前に結婚相手がいないしもう40を超えているからな。完全に婚期を逃した」

 期待せずに待つ、と肩をすくめたダニエルだが、その外見は40代にしては若々しい。
 高く見積もってもせいぜい30半ばといった顔立ちだった。

「さ、食べようか。
 おなかすいたろう?」

147 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/13(水) 22:16:41.54 ID:6hDi3rI4o
>>146
「あ、そういう考え方もありだね
そもそも洞窟に入らないとか草むらに入らないみたいな感じ……」

それに対して真剣に耳を傾ける少女
自分の知らない有益な情報は取り込んでいきたいと考えるために

「大人になったら私がお嫁さんになってあげようか?」
心にもないことを言いつつも、

「やった! ありがとうおじさん!」
いただきますと言ってからパンをかじる少女
148 :ダニエル :2013/03/13(水) 22:24:33.52 ID:SaGLXanP0
>>147
「そして可能な限り人気の多い清潔なところにいることだ
 そうしておけばたいていのトラブルは回避できるし、暖も得やすい」

 紙ナプキンを膝の上に広げスプーンでスープを救ってまず一口。
 ホテルの値段を考えるとなかなかのクオリティ。ダニエルは満足げにうなずいて、パンに手を伸ばす。

「大人になって同じことを言ってくれるなら、な」

 ちぎったパンにバターを塗りながらダニエルは苦笑した。
 エリアが大人になるころには、自分は50歳を超えているはず。爺も爺だ。

149 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/13(水) 22:35:16.72 ID:6hDi3rI4o
>>148
「清潔なところっていうのがきっと重要なんだね」
痴漢やその他諸々の犯罪に巻き込まれるリスクを思い

「心に余裕のある人も集まりやすい分、暖も得やすいって感じなのかな……」
自分なりに解釈したりしつつも

「うん、外れないや」
みるみるうちに少女の夕食がなくなっていく
終始笑顔で食するその様子を見れば、
少女の抱く夕食に対しての思いが垣間見えるかもしれない

「うん、きっと忘れてるだろうね、お嫁さん発言
それ以前におじさんも歳の割に若く見えるから、
案外女の人の一人や二人ぐらい、捕まえられるかもしれないよ?」
少なくとも40代のどこにでもいるおじさんには見えない
少し手を加えれば、いともたやすく女を捕まえてしまいそうな大人の魅力を感じた少女
150 :ダニエル :2013/03/13(水) 22:50:06.57 ID:SaGLXanP0
>>149
「だれだって人気が多くて手入れの届いたところでの犯罪は敬遠するからね」

 例外といえば計画的な凶悪犯罪くらいだろう。
 あとはスリルを重視する快楽犯か。

「運が良ければおこぼれにあずかれたりするかもしれない、ってのもないわけではない」

 よほど腹が減っていたのだな、と。食いっぷりに感嘆しながらダニエルはその様子を見つめる。
 笑顔の食卓など何年振りだろうか。じんわりとした温かみを感じながら、ダニエルも食事を続ける。

「それいぜんにそのとき私たちの間に交流があるとも限らない
 女性関係は得意ではないし、仕事が仕事だけに愛想を尽かされやすいんだ、これが」

 なはは、と苦笑いを浮かべるその表情は、その方面での苦労を思い出しているのかほんの少しさびしそう。
151 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/13(水) 23:03:47.80 ID:6hDi3rI4o
>>150
「うんうん、無計画だとすぐ捕まっちゃいそうだしね
力を持ってる人は別なのかもしれないけど、死神とか今話題になってる悪の組織とかね」

綺麗な街が一瞬で血塗られていった出来事を思い出す少女
だれにも止められない力があれば、
どんなことをしてもそう簡単には捕まらないということをあれで学んだ
しかし心が全く痛まなかったのは、それがあまりに現実味に欠ける光景に思えたからか

「あー、なるほどね、お腹空いてたせいかな、これおいしいや」
パンを頬張りながらも、頷きつつ

「私は奢ってくれた人のことは忘れないよ?
私にいろんなことを教えてくれた人のことはもっと忘れない」
嫌いになることはないだろう、少なくとも現時点では
などと考えつつも

「……どうしたの? おじさん
もしかして、苦い話でも思い出してたの?」
さみしそうな顔をしたダニエルに、不思議そうに問いかけつつ
152 :ダニエル :2013/03/13(水) 23:15:28.58 ID:SaGLXanP0
>>151
「ああいう凶悪な連中にであったら、それは交通事故と同じだ
 自分にはどうしようもない」

 テロ、強盗などといったたぐいはダニエルにとってなじみ深い。
 時に殺し、時にとらえて警察に引き渡す。おおむねにおいて敵になる存在である。
 自分のように戦いを生業とするならばともかく、治安の悪化が問題視される昨今でも居合わせる確率はかなり低い。

「値段の割になかなかいい味だな、確かに」

 切り分けた鶏肉を飲み込み、水に口をつける。

「その時私たちは会えない状況になっているかもしれないだろう?
 行方不明になっていたり」

 あるいは死んでいたり、などとはさすがに口に出さない。
 しかしありえないことではないのだ。

「いや、昔恋人に、甲斐性がないと振られた思い出が」
153 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/13(水) 23:32:15.72 ID:6hDi3rI4o
>>152
「嫌な事故だよね……」

同じ世界に生きる以上は出くわす可能性がないとは言えない
たとえ傭兵や戦いを生業とする人たちのおかげでその確率が引き下げられたとしても

「もぐもぐ……私からしたら十分高いし贅沢品だとおもうけどね」

鶏肉を粉々になるまで噛み砕きにじみ出てくる旨みに、心がとろけそうになる

「行方不明……確かにお互いに生活が安定しないからね……」

自身の生活を振り返り死の可能性というものも頭に浮かべたものの、
自分以上に死と隣り合わせであろうダニエルがそれに触れないところを見ると、
自分もそれには触れないでおいた

「……クス、現実的な振られ方だね」
思わず笑みがこぼれてしまう少女
恋というものを経験したことはなかったが、知識としてはいくらか記憶していた

「でも初恋は実らないっていうし、仕方ないよ」
初恋かどうかは知らないものの、フォローは入れておく

154 :ダニエル :2013/03/13(水) 23:42:50.30 ID:SaGLXanP0
>>153
「私なら遭遇だけは何があったとしても遠慮願う」

 その渦中に自ら飛び込んでいくのがほかならぬ自分なのだが。
 因果な商売だなと内心に苦笑して、からのグラスに水を注ぎなおす。

「たしかに普段からこの値段だとすると贅沢ではある」

 ダニエルの食事は基本的に安物を重点的に選択している。
 ホテルのルームサービスなど久しぶりだ。

「いつもおなじ地域にいるわけでもないしな」

 傭兵は世界中を飛び回る。
 そして受け負った仕事次第では、数か月、長いと数年連絡がつかないこともあり得るのだ。

「3人目の恋人に、だ。まあ、みなに同じようなことを言われたのだが」

 さすがにへこむらしく、肩を丸めて所在無げにしている
155 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/14(木) 00:00:50.90 ID:jbqQQ9bjo
>>154
「それって……日常で?」

しかし傭兵はそれらを生きるための種としているはず
などと思うと、素直に頷けなかった
と同時に、命を張る仕事であることを再認識する

「やっぱりそうなんだ……ご馳走様」

ルームサービスのあるホテルに泊まったことなどあったであろうか
などと考えていると、夕食を食べ終えていた

「うーん、でもおじさんは強そうだから、
またいつか同じ場所で会えると思う」

いままで生きてこられたのなら、これからもきっと大丈夫
と少女は前向きに捉えることにした

「……おじさんモテるんだね」
突っ込むところがずれている気がする
156 :ダニエル :2013/03/14(木) 00:09:41.42 ID:paF/mVeE0
>>155
「仕事でなら仕方がないが、それ以外ではいやだよ」

それでも目の前にそれが存在すれば首を突っ込んでしまうのも事実。
我ながら救い難いと今更の感慨が胸をよぎる。

「無駄に使う理由もないし、安くてもうまいものはうまい…………、ん、ごちそう様」

エリアに続いてダニエルも食事を平らげ、丁寧にフォークとナイフを食後の位置へ。
そして口周りを紙ナプキンで拭うと、時計へと視線を落とした。
時刻はそろそろ眠りについてもいい頃だ。

「そうだな、縁があれば」

死んでやるつもりもない。
であるならば、また出会えると信じていたほうが建設的だろう。

「そうかな? どこからがモテるということになるの課がわからないが
 さて、私はシャワーの後は寝るだけだが、君はどうする?」
157 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/14(木) 00:23:22.93 ID:jbqQQ9bjo
>>156
「うん、私もそうせざる得ない状況じゃなきゃいやだよ
でもなぜか首をつっこみそうになったりしない?」

好奇心は猫をも殺すらしい
少女の力の伴わない好奇心は身の破滅を招きかねなかった

自覚しているからこそ、最近は少しだけ自重するようになった
自分だけが死ぬわけにはいかないから

「そうそう、お腹が空いてたらどんな食べ物もおいしく感じるよ
……ふあぁぁぁぁ」

そう返しつつも、大きなあくびを一つする
そして眠たそうに目をこする

「恋人すら作れない人だっているからね
私は恋とは無縁だけどね」

恋に関しては、精神的に幼い部分を残す少女には理解できないことがらの一つであった
元々そういった感情とは無縁の世界で生きてきたせいもあるのだろうが

「うーん、迷惑じゃなきゃおじさんに昔話でも聞かせてもらいながら眠りたいな、なんて思うよ」
一般的な家庭は子供昔話の読み聞かせをするという
どんなものであれ、そういったことをしてみたいと思い立つのだった
158 :ダニエル :2013/03/14(木) 00:29:35.80 ID:paF/mVeEo
>>157
「する……よく飛び込んでいる」

というか毎回である。
見かけたら首を突っ込むのが基本。
おかげで利益にもならない戦いや面倒を引き受ける人生だ
しかし後悔はしていないのも事実だった

「いつか誰かに恋をするときがくるさ」

自分だって昔は理解できなかった
だからこそ少女も、いつか理解する時がくるだろう

「べつにいいが、どんな話がいいかな」


/どのあたりでしめます?
159 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/14(木) 00:44:05.28 ID:jbqQQ9bjo
>>158
「でもそのおかげで、救われる人もいるからね」

かくいう少女もまた、
手を差し伸べられていたりするから他人事とは言えない

「そうかな?」

少女にとっては良いと思える環境
そんな環境にもうしばらくふつうの女の子として浸っていれば、
いつか理解できる日が来るのだろうかなどと考えてみる

「うーん……、迷惑じゃなきゃおじさんのお話を聞いてみたいな」

/話を聞き終えたころに眠っていて終わり、みたいな感じでどうでしょう

160 :ダニエル :2013/03/15(金) 19:28:30.90 ID:bSnf4zX+0
>>159
「そうであればいいんだがな……せめてもの救いだ」

だれにでもできる限りの救いを、と誰彼かまわず手を差し伸べる。
その結果が全治数か月の負傷や財産喪失、時には拘留につながったりするのだから、それでも懲りないこの男はよほどのバカかお人よしか。

「たぶん。私の知り合いにはいまだに独身も多いが」

独り身は後でさびしい思いをする、などと遠い目でぼそりとつぶやく。
かくいうダニエルも独り身の寂しさをこれ以上ないほどに味わっている一人である。

「私の話、か」

ふむ、と思案するように顎に手をやり、話せそうなネタを探す。
が、あるはずもない。ぜんぶ血みどろの阿鼻叫喚である。

「…………いいのが、ない」
161 :クリオネ [saga]:2013/03/15(金) 21:22:20.76 ID:AmjBjNClo
>>141で再度募集してみたり
162 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/15(金) 21:24:39.39 ID:WBqYvXuMo
>>160
「こんな世の中だからね……、絶対いるよ
少なくとも私は救われた」
食事を奢ってもらったことと、
ほぼ無報酬であるにも関わらず傭兵として自分を助けてくれると言ってくれたこと
しかし自分はそこまで優しくないと自覚もしていた

「たぶんなんだ、じゃあ愛は愛でも同性愛に目覚めたりして」
自覚症状のない少女は、冗談のつもりでそう返す
信頼している同性の相手こそはいるものの、それが恋であるかと言われれば言葉を濁す

「別になんだっていいよ?
おじさんの負担にならなきゃ」
どんな話であれ、自分の知識が増えるまたとないこの機会を見逃すつもりはなかった
毛布に包まって、ダニエルを懇願するかのような瞳で見つめる
163 :ダニエル :2013/03/15(金) 21:51:26.28 ID:bSnf4zX+0
>>162
「そうか……そういってもらえるなら、これからも続けるさ」

誰かのためになることがしたい。
むかしそう思っていたように。きっとこれからもできるだけのことをしていくだろう。
だれかが救われるのならば。

「同性愛、か……全肯定はしかねるが否定もしないよ」
くくっ、と苦笑しておきながら返事そのものは大真面目。
かくいう自分の友人にもゲイやレズはそれなりにいるわけで、ダニエルにとってはなれたもの。

「ふむ…………戦争の話しかないんだがな。ああ、そういえば友人になんというかまあ、奇妙な奴がいてな」
しばらく考え込んだ後、ダニエルはぽんと手を打ってある人物のことをとつとつと語りだした。
164 :エリア 猫かぶり少女 :2013/03/15(金) 22:24:13.30 ID:WBqYvXuMo
>>163
「それがいいよ、私も見習おうっと
できる範囲でね」

そうすれば見えてくるものがあるかもしれない
感謝されて悪い気はしないし、なにか物を貰えると嬉しい
純粋な善意には程遠いものの、様々な経験や彼との交流を得て、悪意は少しずつ薄れていく

「あれ、否定しないんだ」
もっと強く否定されるのでは、と考えていた少女

「戦争でもいいよ、重要なのはどんな話が聞けるかだ
友人……?」
期待に満ちた瞳で語り始めるダニエルを見つめる
毛布に包まったまま、少女は耳をかたむける
165 :リリアーナ/魔法剣職人/何でも屋 :2013/03/15(金) 22:32:18.36 ID:6+soMOyWo
>>141
治安の悪い新世界。犯罪や喧嘩なんてものは日常茶飯事。
毎日のように凶悪犯罪の続くこの世界。警察の人手はいつも足りない。
そのせいで、時には喧嘩といった比較的軽度な事件は後回しにされる傾向がある。

だからこそ、リリアーナの仕事が成り立つのである。
何でも屋といえば夢のある仕事だが、実際に行っているのはヤクザのような稼業。――今日もトラブル仲介の電話を貰い、偶然近くにいたので急いで駆けつけて来たのだが……。

「あら……ら?」
現場に来てみれば、それらしい男がひとり吹き飛ばされている所であった。
多くの店の客が店内から逃げ出し、店の入口は騒然としていた。

「遅かったかな……もう」
仕事は歩合である。喧嘩が終わってしまえば、報酬は貰えない。
それにしても――あの大男があの勢いで飛び出すだなんて、一体どんな人物が何をしたのだろうか?

それから店内の様子を確認しようと、店の中へと足を運ぶ。
「……ええと?」
店に入って、それから困惑する。
男が二人喧嘩していたらしいが、何故か騒ぎの中心にいるのは一人の少女。

その少女へと視線を向ける。状況が状況なので、観察するような視線になってしまうだろう。
また、片腕には黒い剣が握られていた。
166 :ダニエル :2013/03/15(金) 22:36:25.74 ID:bSnf4zX+0
>>164
「ほどほどにな。やりすぎると苦労する」

物事限度をわきまえないと手痛いしっぺ返しが待っている。
そのことをよく知る男は、エリアが無理をしなければいいのだが、と内心にため息をついた。

「人の趣味にまで口は出さないさ」

そもそもそれが悪いとすら思っていないのだから。

「戦争の話は子供には聞かせたくないし、私の人生にためになるものはない
 そう、友人だ。米軍にいた友人なんだが、きみはアメリカ軍海兵隊の精鋭ときいたらどんな男を想像する?」

毛布にくるまった少女の隣に腰かけ、ダニエルはちびちびと水に口をつける。
167 :クリオネ [saga]:2013/03/15(金) 22:45:40.34 ID:AmjBjNClo
>>165
外へと飛ばされた男はうめき声を上げて倒れている。
扉を壊すほどの勢いで投げられて地面へと落ちたのだ、そうそう動けない。

「私を無視して行こうとするなんて最悪だよね」

席を立ち、投げ飛ばした男の方へと向かおうとするとひとつの視線を感じる。
単純な野次馬や、恐れながら見ているような一般人ではない。
明らかにこちらを観察している。

(警察……? それなら厄介だけど)

もう投げ飛ばされていないもう片方の男のことなど忘れてしまったかのように、こちらに視線を向ける少女に意識を向ける。
剣を持っているところを見ると、この騒動に大して武力介入も考えているということ。
危険度は男なんかよりよほど高かった。

クリオネは自分の身長よりも高い鉄製の人形を、自分と少女の間に入れて自分を守らせるように配置する。

「で? キミはこの喧嘩に混ざりに来たの?」

右手の平を逆手で軽く相手に向け、どういう要件で来たのかを聞く。
武装して来たのだからただの一般人ではないだろう。
168 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/15(金) 22:48:57.59 ID:WBqYvXuMo
>>166
「はーい、なんにでも首をつっこまないよう気をつけるよ」

無理をするつもりはない、と思っても
実際そういった状況に出くわせばどうするのだろうか
知人友人が関わっていないのであれば切り捨てよう

「ふーん、私べつにレズじゃないけどね」
偏見に囚われない考え方というのもまた珍しく思えた

「うーん、確かに徳はないよね」
毛布から顔だけ出している少女
そう返しつつも問われれば

「そうだね……強い男の人」
純粋に戦闘力に長けた男を想像する少女
毛布の暖かさに意識を持っていかれそうになったりしつつも
169 :リリアーナ/魔法剣職人/何でも屋 :2013/03/15(金) 22:53:21.90 ID:6+soMOyWo
>>167
「……………」
今のいままで喧嘩をしていたのだとすれば、少し冷静すぎる。
――男を投げ飛ばしスッキリしたと考えられなくもないが、こじつけだろう。

「場合によってはまざるかもしれませんけど……」
少女の声が冷静すぎるので、こちらのほうが戸惑ってしまう。
「何がなんだか分からなくて……なんとも言えません」
目の前の少女に目的を尋ねられたが、分からないとしか答えられない。
反対に、少女に状況を説明して欲しいくらいだ。

「つまり……二人の喧嘩に、あなたが乱入したということでしょうか?」
周りの状況と、よくあることから考えられるのはそれくらいだ。
正義感だったり、巻き込まれたりという理由で喧嘩が大きくなるのはよくある。
170 :ダニエル :2013/03/15(金) 22:54:06.15 ID:bSnf4zX+0
>>168
「ん、よろしい」

鷹揚にうなずいて、ダニエルはまたぽんぽんと今度は自分の意志でエリアの頭をなでる
親が子にするような、そんな動作だ。

「私もそうは思っていないさ」

だから大丈夫だと苦笑して、また水を一口。

「わたしも、海兵隊といえば首が太くて筋骨隆々の男というイメージを持っていた。
 だがそいつは真逆だったんだ。確かに筋肉がついていて身長も高いんだが、雰囲気が他と違った」

眠たそうだな、と毛布にくるまったエリアを見守りながら、静かに語る。
171 :クリオネ [saga]:2013/03/15(金) 23:02:08.73 ID:AmjBjNClo
>>169
「ふーん……平和主義の私的には混ざらないで欲しいけどね」

どうやら相手はこの状況に対する対応を決めかねている様子。
それなら面倒事にならずに済むかもしれない。
相手の能力も分からずに戦闘を行うのは危険だ。

「乱入って言うか……その阿呆が私のテーブルに突っ込んできて私の服にコーヒーを付けたんだよね。
 んで、それを無視して行こうとするから投げ飛ばしたってこと」

外で倒れている男を指さしながら簡単に説明をする。
やり過ぎかどうかはともかく、少なくとも自分から喧嘩に突っ込んでいったわけではない。
ただ食事をしていただけなのだ。

「その男から服代を取るくらいはしてもいいんじゃない?」

目の前の少女が現れなければ、倒れている男に近づいて財布を取ろうとしていたのだ。
172 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/15(金) 23:05:07.18 ID:WBqYvXuMo
>>170
「へへ……
おじさんって、いいお父さんみたい」

顔をほんのり赤らめて、気恥ずかしそうにしている
いい親というものはああいった人を指すのか

「……そーなの?」
雰囲気が違うとはいったいどういうことなのかと考えを巡らせてみる

眠る前に親にお話を聞かせてもらうという話をどこかで聞いた覚えがあり、
目の前の彼は別に親ではないが、ふとした思い付きでそれを試している少女

いい具合に眠気がやってくる
173 :ダニエル :2013/03/15(金) 23:14:18.75 ID:bSnf4zX+0
>>172
「いいお父さんになれたなら、ほんの一時でも光栄だ」

眠ってしまってもいいのだぞ、と小さく微笑んで、エリアの頭を規則正しく撫で続ける。

「そうなんだ。強面で下品な連中の中で一人だけ、小難しい学術の本を読んでいる東洋系の男
 野郎連中が酒盛りで盛り上がる中、一人で読書だ。奇妙にめだつやつだった」

そういえば自分が幼い頃、母にこうしてもらっていたように思う。
懐かしい記憶だ。子供のころの自分はきっと、こうやって眠りについたのだろう。

「眠いなら、寝てもいい。話はまた次回だ」
174 :リリアーナ/魔法剣職人/何でも屋 :2013/03/15(金) 23:18:53.46 ID:6+soMOyWo
>>171
「えーと、それじゃあ……あなたは喧嘩を止めた人になりますね」
暴力がとうだとか、報復はどうだなんて話は一切しない。
そもそも、自分自身が暴力行為でお金を稼いでいるのだ。何も言えはしないだろう。
「まあ……戦う理由はないですよ」
稼ぎの機会を奪われているが、それは個人的な恨みでしかない。






「あ、それは貰っておくべきだと思いますよ」
もしも自分が同じ立場にあったなら、クリーニング代の要求は当然だと思う。
それで話して分からないのならば、実力行使と……目の前の人物と同じ行為をしていたはずだ。
「しかし、酷い荒れ方ですね……」

「男の住所と連作先を見ておくとか、あるいは……」
あるいはどうするかはハッキリとさせずに言葉を止める。
小さな笑顔を作っているだけで、表情から本気か冗談かを判断するのは難しいだろう。
175 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/15(金) 23:20:24.99 ID:WBqYvXuMo
>>173
「うーん……」
こくり、こくりと意識が時折飛びそうになっている

「なんだか、寂しそうな人だねー……」

こんなことをしてもらった覚えなどなかった
なら今してもらえばいいだけの話

「……ううん、大丈夫
もうちょっと続けて? お願い」
目をしっかりと開けようとしている少女
176 :ダニエル :2013/03/15(金) 23:27:05.05 ID:bSnf4zX+0
>>175
「無理しないで寝たほうがいいぞ?」

大丈夫か?と怪訝そうにしながらも撫でる手はとめない
どういうわけか父親のようにふるまうのがひどく楽しかった
こういう人生を送れたらあるいは、などとすら思う

「そういう見方もある。一匹狼のインテリ気取りだと毛嫌いする奴もいた
 だから私はやつに話しかけた。なぜ一人で本を読むのか、と
 奴は答えたんだ。『ぼくは軍隊に入って得た金で言語学の博士になりたかった。だから勉強するんだ』と
 変な奴だよ、学問のために軍隊に入るなんてな」

言われた通りに続けながら、枕元のライトを消して寝やすくする
177 :クリオネ [saga]:2013/03/15(金) 23:31:00.08 ID:AmjBjNClo
>>174
「別にそんな立派なものじゃないよ。気に入らないからやっただけ……」

どうやら敵対はしないでくれるようだ。
まぁそれはそうだろう。この状況において自分と敵対する理由がない。
仮に敵対してくる奴が居るとすれば、元々クリオネのことを知っていて戦おうとしていた人物だろう。

「相当暴れてたから仕方ないんじゃない? このご時世珍しいものでもないでしょ」

とはいえ、店内を荒らした要因の半分以上はクリオネのような気がする。
少なくとも、男二人の喧嘩ではドアは壊れなかっただろう。

「キミも案外強かだね」

とりあえず敵対はしないようなので、クリオネは外で倒れている男に近づいていく。
その後を追うように全身金属の鎧に身を包んだ人形が、ガシャリガシャリと音を立てながらついていく。
さながらお嬢を守る騎士のよう。
いや、お嬢というにはクリオネは些か蓮っ葉か……

入口付近の少女が邪魔をしなければ、クリオネは倒れている男の側まで歩き片膝を付いてしゃがむだろう。
そして、男の服を弄り財布を見つけると中身を確認。
クリーニング代を抜くどころか入っている札を全て抜くだろう。
一緒に来た人形は、一応常に自分と少女の間に立たせるようにしてある。
178 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/15(金) 23:36:27.96 ID:WBqYvXuMo
>>176
「大丈夫大丈夫……
眠ることはいつでもできるけど、お話は今を逃したら次にいつ聞けるかわからないから」

小さく頷いて、少女は眠気のせいなのかやや弱々しい口調でそう返す
彼を父親とするなら自分は娘ということになるのか
父親の真似事をする彼に撫でられて、心が安らいでいく

「うん、変だねー……
その人はお金には無茶苦茶困ってないのかもしれないけど、なんとなくおじさんみたい……」
電気が消えたのを見計らってなのか、隣に座っているダニエルにもたれ掛る
なんとなく落ち着きそうだから
179 :ダニエル :2013/03/15(金) 23:43:46.14 ID:bSnf4zX+0
>>178
「そうだな……確かにそうかもしれない」

次にいつ会えるかもわからない。
そもそも自分が死んでしまうかすらもわからないのだから。
今この時間を大切にしたい気持ちはよくわかる。

「わたしはあいつほど奇人変人ではない」

むすっと拗ねたように言い返す

「で、結局そいつは軍隊をやめられなくなった。軍隊の俸給はそれほどよくない
 それに高校卒業してすぐに入隊したそいつにはもう、軍隊で働く以外の技能がなかったんだ
 それでもそいつは勉強するといった。また私がなぜかと問うとな、こう答えたんだ
 『学者にはなれなかったけど、知識さえあれば後進国の子に教えられる。ぼくら米軍はそういうところにもいくんだから、なら誰かのためになることしたい』って」

もたれかかってきたエリアにしっかり羽毛をかぶせて、風邪をひかないように気をかける
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2013/03/15(金) 23:54:24.71 ID:WBqYvXuMo
>>179
「でしょ?」

自分が尊敬できる人間や信頼できる人間は大切にしたかった
そしてその人の話も同じように大切にしたかった

「そうなのかな? 度を過ぎた人助けも十分変人の素質があると思うな
別に悪くないと思うけど」
くすくすと笑う少女

「先生みたいなことをしようとしたんだね……」
暖かさにやはり意識を持っていかれそうになる
目が半分閉じかけている
181 :リリアーナ/魔法剣職人/何でも屋 :2013/03/15(金) 23:56:20.92 ID:6+soMOyWo
>>177
「まあ、なんというか……いいと思いますけど……」
ある意味では、被害を抑えたと言えるのかもしれない。

「ついていない男です、行いがよくないからなのでしょうけれど……」
これだけ暴れた男を庇おうとは思わない。
普通の人はどうなのだろうか。どんな人物が相手でもよくないことはよくないと考えるのだろうか。

「ふふふ……そんなに高いクリーニング屋があるのでしょうか」
ため息を吐き出しながらも、その様子を引き寄せた椅子に座って見ている。

時々、自分と相手の間にいる人形に視線を向ける。
その動きをみればどうやら、警戒されているようだ。

「でも、この壊れたお店はどうするのでしょうか?」
店の損壊の責任も、喧嘩の原因を作った二人に全てあるのだろうか。
一見するとないようだが、よくよく考えればあるような気もする。

「その男、その後はどうするんです?」
おいて行かれれば、店側はかなり嫌だろう。
182 :ダニエル :2013/03/16(土) 00:05:46.89 ID:XF31wHfW0
>>180
「ただ、また次回必ずや、という約束手形にもなる」

だからそう急がなくていいのだ。
まだこの子には時間がたっぷりあり、じぶんだってあと2、30年は死んでやるつもりはない。

「これはもうライフスタイルなんだ、だからどうしようもないさ」

肩をすくめておどけて見せる

「そう。うらやましいなと思ったよ。自分の境遇の中で許されるものに夢を見出すなんて」

安らかに眠れ。せめて今晩くらいは。
眠りへといざなうように穏やかに語り、そしてエリアのことをなで続ける。
183 :クリオネ [saga]:2013/03/16(土) 00:06:42.05 ID:P7yNrgE8o
>>181
「この男が突っ込んだ先が私のテーブルじゃなければ、まだ喧嘩は続いてたかもしれないね」

札を抜き取れば財布本体は不要と、男の腹の上に投げ捨てる。
一枚、二枚……
とった札を数えながら、少女に受け答えをする。
ふむ、5万円……まぁまぁか。
自分の財布は表に出さず、札をそのままコートの内ポケットに突っ込んだ。


「これは私をコケにした罰もあるからね。これじゃ足りないくらいだよ」

そこでようやく座る少女の方へ向き店内まで歩くと、入口付近の壁に寄りかかった。

「店のことなんて知らないよ。本来なら店員が止めなきゃいけないのに止められなかったんだから」

ちらりとこの喧嘩を止められなかった情けない店員を見る。
睨まれたと思ったのか、店員はビクッと肩を動かした。

「その男についても同じ……私の知ったことじゃないね。
 なんならあげようか? キミが処分してくれるなら店も助かるんじゃない」

軽い口調で言い放つ。
相手の少女がこの男をどうしようがクリオネは放って帰るだろうが。
184 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/16(土) 00:15:30.31 ID:v777B8LBo
>>182
「そっか、そうだね……」

ほそぼそと暮らせば死ぬことはまずない
少女にもまだ時間は残されていた

「うらやましいか、じゃあ自分には持ってない物をその人は持ってたんだ……
だから、おじ……さんは……」
言い終わる前に、静かに寝息を立てはじめる少女
この暖かさにもう少しだけ浸っていたかった気持ちもあったが、眠気には敵わなかった
安らかな表情を浮かべて、眠りについた

//このあたりで終えておきます?
185 :ダニエル :2013/03/16(土) 00:19:21.73 ID:d4ePemkYo
>>184
「だからゆっくり寝るといい」

さわさわと、きめ細やかな髪を指先で梳く

「そう……羨ましくて羨ましくて
だからいまも追いかけている」

眠りに落ちた少女。ダニエルはその横でほんの少しの間もの思いにふけったあと、シャワーを浴びて眠りに着くだろう

/そうしましょうか
/楽しかったです!おつおつ!
186 :リリアーナ/魔法剣職人/何でも屋 :2013/03/16(土) 00:25:52.75 ID:F5DIHG+6o
>>183
「食事の邪魔を? ……それは、不幸でしたね」
男の方が。と、小声で呟く。

大きなお金が五枚。
――自分が喧嘩を止めても、そんな金額は貰えなかっただろう。
「やれやれ、ですね」
飛ばされて、お金を奪われて……本当、彼にとっては厄日だろう。

「あるいは、もっとセキュリティにお金を使ってくれたらいいんですけれど……」
そのあたりはケチくさい。こっちとしても最低限のサービスしかできないのだ。
と、いうわけで……睨まれても仕方が無いのだ。

「……なんだか、一番面倒なところだけ押し付けられた気がしますね」
この男では簡単には黙らないだろう。もう一度ぐらい痛い目にあってもらうことになるかもしれない。
「まあ、私がやるしかないですけれど」
残念ながら雇われる身。信頼のためにも、できる仕事は断れない。

「じゃあ、ありがたくいただくとしましょう。
恨まれてなにかされないように、気をつけて下さいね」
振り返ると、店員と言葉をかわしはじめた。
そうして、男の処理を決めるようだ。

//こんな感じですが、時間なのでおちます。
//ありがとうごさいました。
187 :クリオネ [saga]:2013/03/16(土) 00:36:11.79 ID:P7yNrgE8o
>>186
「まあね、珍しく何にも巻き込まれずにゆっくり出来ると思ったのにさ……」

最近はメイザースに招集されたり、その他で事件に巻き込めれたりと忙しい日々を送っていたためゆっくり食事ができる時間は貴重だった。
そんな時間を邪魔したのだから、制裁は受けてしかるべきだろう。

「面倒だと思うならはじめから来なきゃいいのに……」

この少女の職業を知らない身からすれば、こんなものは放っておいてさっさとどこかに行けばいいと思っている。
少なくとも、クリオネはこんな面白展開にもならない喧嘩に進んで首を突っ込みたくはない。

「ま、もらってくれるならそれが一番だね。下手に他の警察に介入されると私まで拘束されて面倒になっちゃうし。
 ……じゃ、なんだか知らないけど頑張ってね」

結局なぜ首を突っ込んできたのかも聞かずに、店員と話す少女を背に店を出る。
仕返しに気をつけろという事だったが、この程度の雑魚が何をしようがクリオネにとっては何の問題にもならないだろう。
むしろ、タイミングによってはいい暇つぶしが出来ると喜ぶかもしれない。

帰りの道中、このコーヒーのシミを付けたまま歩くのは嫌だと、適当な服屋に入り先ほど男から取った金で新しいワイシャツを買うのであった。

//お疲れ様でした。またお願いしますー
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/03/16(土) 17:56:26.91 ID:JT9JMsNh0
VIP自転車リレー企画会議室
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1363394598/

このスレで一つの自転車を乗り回してリレーする企画作ってます
でも始める人がいないので募集してます
自転車買える人とかいらない自転車くれる人もきてください
ただしスレの企画に反対する人はアンチですからこないでください
189 :ミレーヌ [saga]:2013/03/16(土) 23:36:39.84 ID:P7yNrgE8o
山道を走る輸送車両。
この車両は、軍隊や傭兵などを戦場へと送る役割を持ち、今日も数人の傭兵を運んでいる。

カチャリ……と座って音を立てながら、アサルトライフルであるCTAR-21のチェックをしている幼い少女が一人。
オレンジ色のツインテールに、まだ幼ががあるがつり目で少々気の強そうな顔立ち。
最低限の鎧で兵士としてはかなりの軽装は、機動力を意識したもの。

今日の任務は、車両を降りた地点から森を抜け、その先にある軍の基地を襲撃すること。
小規模な基地ではあるが、流石に銃無しで行くわけにもいかない。

一度セーフティを外し、外へ向かって構える。
セーフティを外すと自動的にレッドドットサイトが付く仕組みなのだが、それが正常に作動するかをチェック。
その姿は幼いながら、幾つもの戦場を経験しているかのような慣れを感じさせる。

正常に動作することを確認すると、再びセーフティをかけて銃を下ろす。
今回の作戦は、大人数でまとまって行くのではなく、少人数のチームでいくつかのルートから進むらしいのだが、果たして自分と同じチームになるのは誰なのだろうか。
190 :アーサー :2013/03/16(土) 23:53:04.25 ID:goy0A5eYo
>>189
SA58-Paraと呼ばれる銃器がある。
ベルギーFN社の名銃FN-FALを他社がライセンス生産した空挺部隊モデル。
折りたたみストックと短縮バレル仕様のほっそりしたライフルだ。
アーサー・ヴィショップはその愛銃を抱え込むようにして、火をつけていない煙草を口先で揺らす。

アーサーは生真面目そうな仏頂面に退屈の色を浮かべながら、銃器を整備するミレーヌの隣に座っている。

彼はもう銃器の整備を済ませていた。体を包む野戦服と弾帯ハーネスもきっちり固定されており、無数のポーチには予備弾倉や小物類がぎっしり詰め込まれている。

猛烈に煙草が吸いたい。
がしかし、荷台はあまりに狭すぎ、そしてアーサーは女性の隣で煙草を吸うのを嫌っていた。

「熱心だな。動作に問題は?」

何をするでもない時間に耐えかねたのかアーサーはミレーヌへと話しかける。
191 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 00:05:01.47 ID:Is1XRTQWo
>>190
CTAR-21のチェックが終わり、隣に立てかけるように置く。
仕事だから銃のチェックはするが、やはり銃は積極的に使いたいものではない。
そのため、実のところ整備も得意ではない。

「ん……? アーサーお兄ちゃん……」

隣から話しかける人物の方へを向き、その姿を確認する。
彼は今までミレーヌといくつかの戦場を共にしたことがある。
そのため、ミレーヌもアーサーの事をお兄ちゃんと呼ぶ。

「もしかして、今日はお兄ちゃんが一緒のチーム? だったら嬉しいや」

屈託の無い笑顔を向けながら、スカートまくって左太ももに付けてあるグロック18Cと、ククリナイフを確認。
更に、右太ももには大きな剣を幾つかに分割し、それを緑の紐でつないである連接剣が巻きつけられていた。

アーサーに比べるとポーチの数は少なく、スカートにいくつか付いている位だ。
通常の兵士よりも、持ち歩く弾薬が少ないのだ。

「銃は問題ないよ……でもこんなの持って行きたくないよ。
 近づいて切ったほうが早いもん……」

そう。なぜ銃を積極的に使いたくないかというと、ミレーヌは近接戦闘が大好き。
しかもその腕前は凄まじいものがあるため、銃より剣を使いたがるのだ。
192 :アーサー :2013/03/17(日) 00:22:07.54 ID:j2SuckICo
>>191
お兄ちゃん、そう呼ばれて息苦しさを覚えたのはほんの一瞬のこと。
アーサーはミレーヌの服装に目をやり、いつも通りだなと小さく苦笑する。
これから戦闘任務に就くというのに、ミレーヌの服装はスカートだった。

軽装にすぎるし、いつ何があるのかわからない戦場に着てくる服ではない。露出が多ければ擦過傷も増えるし、なにより戦場にスカート姿で着て敵に捕まりでもしたら、凄惨な辱めを受けること間違いなしだ。

とはいえ過去にそれを指摘して治らなかったのも事実。彼女がそんな目に合わないように自分がついていればいい。

「相変わらずの近接好きか」

銃より刃物というのも戦場では奇特だ。
しかしそれを可能にするだけの技量がこの少女にはあることをアーサーは知っている。
とはいえ心配にならないわけではない。

「あまりおれより前に出るなよ?
怪我されたらこまる」

言い聞かせるようにゆったりとそう命じて、アーサーはフィンガーレスグローブに覆われた手をミレーヌの頭にぽんと載せる。
193 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 00:37:24.13 ID:Is1XRTQWo
>>192
「ふふん、よく言うでしょ? 一発の弾丸じゃ一人しか殺せないけど、一本のナイフならたくさん殺せるって」

得意げな顔でよく言うかどうかもよくわからない事を言う。
アーサーの苦笑には気づかずに、着々と装備を整えていき、CTAR-21を肩にかけるまで。
ちなみに、この軽装の事を注意したとしてもミレーヌはおそらく聞かないだろう。
”動きづらいから嫌”
この一言で終了であろう。

「えへへ……でも大丈夫だよ。私は銃弾なんて食らわないし、お兄ちゃんも私が守るからね。
 それに、前に出ないと切れないよ……?」

手を載せられると、嬉しそうに目を瞑ってアーサに寄りかかろうとするだろう。
いざ戦闘が始まれば、残忍な顔を出すミレーヌだが、味方に対してはこれだ。

やがて、山道の途中で輸送車両が止まると乗っていた傭兵立ちはさっさと降りてチームごとに走って行ってしまった。

「着いたみたいだね。行こっ」

テテテ……と車から飛び降りて体を伸ばす。
雨も風のなく、良い感じだ。夜だから視界は良くないが、それは敵も同じだ。

ここから森に入り、ずっと直進すると敵の基地に到着する。
当然、巡回の兵士などが待ち構えているだろうが、きっとこの二人なら大丈夫。
194 :アーサー :2013/03/17(日) 00:51:40.05 ID:j2SuckICo
>>193
「だが一発の銃弾なら300メートルから人を殺せるぞ?」

戦闘の優位性はどれだけ一方的な要素を手に入れられるか。かつて訓練時代にそう教わった覚えがある。
どれほど強力な剣士でも銃には勝ち得ないのだと。

無論その例外をゆく者はいるし、まさしくミレーヌこそがそうである。
だが仮に同じだけの実力者が銃と剣で向き合えば往々にして銃が勝つ。

とはいえそんなことを口にするほど野暮ではない。
この少女は県の名手。
剣を愛し、至近での殺傷に特化しているからこそこれだけの自信を有していられる。
それにアーサーとて、銃剣戦闘のプロであった。

「女の子に守られるような情けない男にはなりたくないな……
前に出て何かあったらどうする。戦場では銃弾以外にも飛んでくるぞ」
195 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 01:02:53.60 ID:Is1XRTQWo
>>194
「むー……私だって、300メートル……は無理だけど」

口を尖らせて反論したいが、実際にはその通りである。
特に不特定多数の敵が徘徊している敵地で、近接武器だけで勝ち残るはほとんど不可能。
理性ではわかっているからこそ、一応こうしてアサルトライフルとハンドガンを持ち歩いているのだが、剣士としては納得し辛い。

記憶を失ったが、この体に記憶されている剣士としての魂はまだ生きているようだ。

「はーい……。もう、お説教は嫌い。早く行こっ」

しょんぼりしていたはずのミレーヌだったが、セリフを言い終わる頃には再び明るい表情に戻っていた。
こうしてコロコロ表情が変わるところもまた、傭兵らしくないと言える。


CTAR-21を両手に持ちながら、一歩森へと入る。
流石にまだ基地から離れたこの場所では敵兵の姿は確認できない。
子供っぽいとはいえ、流石に幾つもの戦場を生き残ってきたミレーヌ。
いきなり駆け出していくような愚行はしない。
196 :アーサー :2013/03/17(日) 01:16:55.72 ID:j2SuckICo
>>195
「俺なら銃次第で1キロ半はいける」

戦場で恐ろしのはスナイパーだ。
目視できない距離から一撃の元に標的の脳髄を撃ち抜く死神。
不用意に身を晒した味方が何人も射殺されるのを見たアーサーにとって、敵に身をさらすミレーヌの安全は頭痛の種だ。

そういった相手にすこしでも対応できるようにとアーサーのSA58-Paraには4倍率ACOGスコープと高精度のバレルに弾薬が使われているが、何処まで期待できるかは怪しい。

「お説教はしっかりきくものだよ?」

まだまだ子どもなのだ。
そう理解しているからこそ、戦場に立つミレーヌを見るたびに遣る瀬無さが胸をよぎる。

アーサーはSA58-Paraの安全装置を下ろしてミレーヌをあっさり追い抜くと、草の生え方が薄い部分を足場に、人が通らなそうな道順をわざと選んで歩き出す。

そそくさと静かに前進するその手並みはまさしく手練れだった。
197 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 01:28:45.70 ID:Is1XRTQWo
>>196
「そんな距離で敵を殺したって面白くないと思うんだけどなー」

戦闘を楽しむ癖があるミレーヌは、離れた場所であっさり相手が倒れるのを面白いと思わない。
真っ向からの打ち合いに面白さを見出すタイプなのだ。
ミレーヌは生まれた時代を間違えたのかもしれない。戦国時代などに生まれていれば、かなり名のある武将にまでなった可能性も……
いや、指揮能力を鑑みればそれはないか。

「お説教を聞く暇があったら一人でも敵を殺せってねっ」

最早真面目に説教を聞くきなど一切ないのだろう。
つまらない話、都合の悪い話は聞かないというスタンスなのだ。戦場におけるミレーヌのパートナーはさぞ疲れるだろう。

「お兄ちゃんと二人っきりの作戦っていうのも新鮮でいいね」

あっさりと追い抜いていったアーサーに先頭を譲り、側面や背後へ銃を構えて警戒しながら先を進んでいく。
銃の腕は平均的なミレーヌだが、その目には自信があるので索敵能力は高い。
198 :アーサー :2013/03/17(日) 01:37:34.43 ID:j2SuckICo
>>197
「おれは殺しを楽しんだりしない」

アーサーは戦闘に関してはストイックなタイプであり、殺人に快楽を感じたりなどしないしそもそも避けたがるタイプだ。

そもそも戦闘に快楽を見出すのは戦う者として3流だとすら、密かに思っている。
戦いは機械的に効率を求めるべきだ。余計な事を考えるやつは死に、楽しみを見出すものは機械化された兵士に勝ち得ない。

徹底された暗殺者としての思考。本来ミレーヌとは相入れない筈であるが、アーサーはミレーヌを捨て置く事ができなかった。

「そんなに[ピーーー]のが好きなのか?」

呆れた様子もなく、無線インカムを通して小声で尋ねる。
その間も構えられたSA58-Paraの筒先に意識を傾け、敵の気配を探り続ける。

「珍しくはある……警戒を怠るな」

下生え、木陰、窪み。死角になり得るそのすべてに注意を払い、アーサーは前進する。
199 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 01:51:11.71 ID:Is1XRTQWo
>>198
「殺すのが好きって言うよりは、戦うのが好きかな。
 今もこうして、ヘタすればすぐに死んじゃうような戦場にいる。
 そんな生死の境目に居るその時が、私は一番生きているって感じる。私は存在しているって感じるの」

この考えは記憶を無くす前からそうだったのか、記憶をなくした後からこういう考えを持ちだしたのか。
それは分からないが、今ミレーヌが一番生を感じて充実した時間を過ごせるのは間違いなく戦場で命のやり取りをしている時だ。

ミレーヌの戦いに大義は無い。
国のためでもなければ人のためでもない。
だからこそ、このような奔放な性格をしているのだろう。
だが同時に、だからこそ兵士として完成された強さを持たない。

「りょーかいっ。みんな死んでないといいなぁ」

みんなというのはこの作戦で別ルートを行く傭兵部隊の仲間。
仲間を大切に思うミレーヌは、傭兵ながら味方が誰も死なないといいという甘い考えを持っている。

200 :アーサー :2013/03/17(日) 02:08:35.70 ID:j2SuckICo
>>199
「頭のネジがどっかしら欠如してるんじゃないだろうね……
そんな生き方、長くは生きられない
おれは君が死んだなんて報は聞きたくないぞ」

死神は気まぐれ。
気分次第で狙う相手を変えてしまう。そんななかでいつまでもジョーカーを引かずにいられるなどというのは都合がよすぎる。
こんな生き方をしていたらいつかきっと、死んでしまう。

ふと思い出されるのは、掠れて消えゆく命の熱。
自分の腕のなかで息絶えたあまりにもか細い命の、その残滓。

苛立ちまぎれに舌打ちして、アーサーは意識をまえに向け直す。
子供が死ぬのは誰だって嫌なものだ。
特に、年下の女性の死など想像したくもない。
ああ……嫌だ。本当に嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
ぎりと噛み締めた奥歯が、噛み締めすぎで鈍く痛む。

落ち着けアーサー。
お前は兵士だ。一個の機械だ。
雑念は捨てろ。照準を覗き込み、ただ敵を探ればいい。

すっと体内でとぐろを巻いていた熱が冷却され、アーサーは目を細める。
途端、研ぎ澄まされた感覚に異変を察知したアーサーは、握りこぶしを頭の横に掲げる。
停止のハンドシグナル。続いて手のひらを下にしてすっと地面に垂直に下ろす動作で、姿勢を落とすように伝える。

「どうやら友軍より先にこちらの身を心配するべきだ」

ぼそりとインカムに語りかけ、人差し指と中指で自分の目を示してからその先を森の奥へ向ける。

距離にして20メートルほど先に人影。
敵のパトロールが4人。
201 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 02:21:33.31 ID:Is1XRTQWo
>>200
「お兄ちゃんひどーい……そりゃあ、記憶がない時点でどこかしらのネジが無いんだろうけどさ。
 でも私は死なないよ。
 戦い続ける……それをやめて私が私じゃなくなったら死んじゃったも同じだもん……だから戦い続けて、私は死なない……」

明るい口調で言っていた言葉は、だんだんとトーンを落としていき、最終的には自分に言い聞かせているかのような言い方になる。
記憶が無いということととは別に、アーサーの言うとおりどこか頭のネジが飛んでいるのかもしれない。
ただ遊び半分なだけで戦場にいるわけでは無いのだろう。

はっ……と、アーサーのハンドシグナルが視界に入る。
続く合図を見るまでもなく状況を把握し、すぐさま音もなく姿勢を落として身を隠す。

20メートル先に4人……
近づければ一瞬で片付けられるが、草木の生い茂る森で音を立てずに一瞬で20メートルを詰めるのはミレーヌと言えども難しい。

「どうする……? ここから撃って片付けようか?
 二人同時に撃てば二人同時に殺せるし、一人二発で終わるよね」

流石に20メートルの距離であれば確実に当てられるが。
202 :アーサー :2013/03/17(日) 02:34:58.13 ID:j2SuckICo
>>201
「いつかババ引く時がくる。どんなに強く立って、いつか必ず
戦いなんてやめて普通に生きろよ。その方がずっといい…………たとえどんなことがあっても、命があってなんぼなんだ」

偽らざる本音。
死んでしまえばそこまでだ。戦いに固執するなんて馬鹿らしい。そう本気で思っている。
思っているからこそ、誰かの分もアーサーは戦おうとするのだ。
たとえどんな理由があろうと、どんな事情があろうと、命を落としては意味がない。

いつかきっとこの子を戦場から引き剥がす。
そう硬く決めて、アーサーはSA58-Paraの筒先のハイダーをねじって外す。
かわりにねじ込んだのはサプレッサ。射撃音を減少させる道具だ。

「いまここで銃声を出して接近をバラしたくない
サプレッサ持ってるか?」

なければ連射で自分が仕留める、ということらしい。
203 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 02:47:43.73 ID:Is1XRTQWo
>>202
「ミレーヌには普通なんてわからないよ……ミレーヌにとってはこれが普通だもん……
 戦いをやめて生きるミレーヌはきっと普通じゃない……」

視線を下げてつぶやくその言葉。
そこにどんな真意が隠れているのかを全て知ることは出来ないが、心臓が動いていることよりも、戦場で戦っている方が重要であるとミレーヌは感じている。
いつか、戦場を去る時が来るのだろうか。
来るとしたら、それは死んだ時なのか。はたまた別の生き方を見つけた時なのか……

「サプレッサ……持ってない」

眉をハの字にしてしょんぼりした顔になる。
銃のアタッチメントなど、基本パーツでついていたレッドドットサイトしか無かったのだ。
もともと銃を主軸に立ちまわるという意識が薄い為、アタッチメントはおろか銃弾も持っている数が少ないのだ。
この状況も、アーサーが居なければすぐさま接近戦の選択肢を取っただろう。

「じゃあ、お兄ちゃん一人でやるの?」

眼の前に居るこのアーサーという男であれば、4人位さっさと殺すことは可能だろう。
204 :アーサー :2013/03/17(日) 02:58:37.45 ID:j2SuckICo
>>203
「…………普通じゃなくたっていい………生きていれば…生きていてさえくれれば」

もしミレーヌがアーサーの顔を見たなら、そこに苦悶と哀しみを見て取ることができるだろう。
アーサーは困ったように眉根を寄せ、湿り気を帯びた青い瞳でミレーヌをみつめたあと、SA58-Paraを構える。

「周辺パーツは持ち歩け。その方がいい」

安全装置をフルへ。
ストックに頬を当てて照準を覗き込む。距離が20メートルであるならば4倍率は高すぎる。ACOGの上の小さなホロサイトを敵へ合わせた。

「アレぐらいなら一瞬だ」

深呼吸。
外しようがない近距離。
トリガーが絞られると、装填されていた7.62mm弾が射出され、瞬く間に敵の肉体を損壊させる。
まず一人を屠り、二人目が貫通弾で巻き添えになった。
そのまま短く指切り連射を3セットで弾倉を撃ちきると、戦果を確認するまえにポジションを慎重に移動する。

周辺に敵はいないのか、一瞬の虐殺のあとは何の音もない。
205 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 03:09:54.30 ID:Is1XRTQWo
>>204
「わかんない……わかんないよ……生きるために戦うのに……」

それはもうアーサーへの受け答えと言うよりは、自問自答に近い答えだった。
アーサーの悲しみに満ちた表情の真意すら図ることが出来ずに、ただ再び下を向くだけだった。
ミレーヌは何を持って生きていると言えるのかを見失っているのかもしれない。
だからこそ、生きている実感を得られる戦闘という行為に固執する。

「はーい……お兄ちゃんが言うならそのくらいは持ち歩こうかな」

サプレッサなど大した大きさではない。
それでアーサーの役に立てるなら……と、おそらく次の作戦からは持ってくるだろう。
味方に対しては基本的に素直だ。

「流石だね、お兄ちゃん」

腰を低くしたまま、アーサーの後を後ろ歩きでついていく。
アーサーの視界に入らない場所は、ミレーヌがカバーする。二人いればほとんど全方位警戒することが可能だ。

「あの四人が死んだから、定期連絡の有無で侵入がバレちゃうかもね」

どれだけ静かに殺したとしても、あの死んだ兵士の代わりに定期連絡をするわけにもいかない。
そのうち侵入者が居るということはバレるかもしれない。
206 :アーサー :2013/03/17(日) 18:16:04.17 ID:MlgMpl30O
>>205
「死ぬために生き急ぐ、の間違いだ」

短く、そしてにべもなくバッサリと斬って捨てる。
いまのアーサーにはまともに受け答えするだけの人間的思考が欠落している。
完全に戦闘にスイッチを切り替えた臨戦体制。敵あらばその喉笛めがけて牙を剥く脅威にすぎない。

サプレッサ付きの銃口で背の低い木の枝をよけ、物言わぬ4つの骸をしばし見つめる。
完全に死亡したかどうかを確かめるためだが、しっかり死んでいるようだった。

「あのぐらいできないならおっ死ぬだけだ」

草陰から身を晒して死体へ近づくと、足で死体をぐいと押す。現地兵の装備は軽装で、銃器も出回っているAKだ。
全員胸や頭を弾で撃ち抜かれ、血肉を撒き散らして無残な様子を晒している。

「急ごう。気づかれるまえにたどり着く」

どちらにせよ他のグループも接敵する頃合い。
あとはどれだけ早く動けるか、だ。
207 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 18:35:11.09 ID:Is1XRTQWo
>>206
「生きたいよ……でも私にとっての生きるは戦場にしか無いもん」

ミレーヌは戦場以外のことを知らなさすぎる。
自分の中の最古の記憶は2年前。そこですら戦場で、今までずっと普通の生活をしたことなど無いのだから。
もし、どこかで別の生活に触れる機会があるのなら、ミレーヌの中に何かしらの変化が現れるかもしれない。
あくまで、かもだが……

「あーあ……何にもできずに死んじゃって……
 ま、相手が悪かったよね」

その死体を見る目に、嫌悪感などは無く今までいくらでも死体を見てきたかのような慣れがある。
銃撃戦ではなく、接近戦をしていたなら面白い相手だったのだろうか……と内心思うが、口にすればまたアーサーの説教が飛んできそうなので胸にそっと閉まっておく。

「速さなら得意だよ。これでも行軍速度は部隊一って言われてるんだから」

その軽装備によって移動速度が上がりやすいというのもあるし、元々お世辞にも慎重な方ではないミレーヌは敵陣の中でもガツガツ進む方だ。
だが、その分敵に見るかれば窮地に陥りやすくなる。実際、ピンチになって仲間に怒られたこともある。

その時、遠い所で銃声が聞こえる。
距離はだいぶ離れている為、自分たちが気づかれたようではないようだ。
おそらく、別働隊が接敵して銃撃戦を始めたのかもしれない。

「ちょっと本格的に急いだほうがいいかな……?」

スタート地点から敵の基地まで、直線距離で言えばだいたい3分の1を超えた辺り。
スピードを上げればさほど時間はかからずに到着する。
208 :アーサー :2013/03/17(日) 18:53:26.64 ID:MlgMpl30O
>>207
「ほかのことも見てから知ったような口を聞くんだな」

殺し屋になって8年。
渡り歩いた戦場はそれこそ手足の指では足らない。
しかしその職業ゆえにアーサーは世界中を渡り歩き、様々なものを目にしてきた。
そんなかれからするとミレーヌはひどくもどかしい。見識があまりにも狭すぎ、そして無知すぎる。

「何もできずに死んだ方が苦しむよりマシだ」

即死したのだろう4人の死体を一瞥して、アーサーはそれ踏み越える。すでに興味はないのか、それ以上何かをすることはない。

「行軍には慎重さも求められるって知ってるか?」

いけと命じればそのまま駆け出してしまいそうなミレーヌに呆れたようにそう返すと、アーサーは索敵かのうなギリギリの速度で駆け出す。
それほど時間がない。素早く突入して手早く片付けるのが一番だ。

「そう思うなら銃を構えてついてこい」
209 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 19:10:10.71 ID:Is1XRTQWo
>>208
「知らないものは知らないんだから仕方ないもーん
 今知ってることで喋るしか無いでしょ。色々知るまで喋っちゃいけないのもつまらないし」

二年前から現在までがミレーヌの知る世界のすべてだ。
一度戦場を離れて普通の街で生きてみるのも良いかもしれないが、それをミレーヌに言ったとしても聞きはしないだろう。
ミレーヌの肉体年齢は14歳だが、精神年齢は実はそれ以下なのかもしれない。

「知ってるよー、慎重かつ大胆にってやつだよね?
 このくらいならもう走り抜けちゃったほうが早くていいのに」

敵が巡回しているような場所なのだから地雷のたぐいは埋まっていないだろうという考えなのだが、敵に見つかってピンチになるということはあまり考えていないらしい。
以前の失敗から特に何も学ばなかったようだ。

「はいはーい。 お兄ちゃん作戦中は厳しいんだから」

そう言いつつも、素直に銃を構えて後をついていく。
アーサーが傷つくのは嫌なので、索敵に関しても全力で気を張っている。
210 :アーサー :2013/03/17(日) 20:06:06.65 ID:MlgMpl30O
>>209
「しらないことまでベラベラかたる奴ほど面倒な相手はいないんだよ」

実際に知ったような口を聞く同僚は多いが、アーサーはことごとくそのすべてと距離を置いている。
理由は単純に疲れるから、である。
そう言った点ミレーヌの相手は神経を使うのだが、普段のアーサーであればその程度は許容する。
しかし残念ながらいまは戦闘中。
そこまで余裕があるわけではない。

「飛び出した先で出くわしたくない」

間違って敵前に出てしまったら目も当てられない。
それより他所の戦闘に敵が意識を割いている間に接近し制圧すべきだというのがアーサーの考えだ。

「帰ったら甘やかしてやるから、いまは真面目にしてくれよ」

倒木を超え、友軍の戦闘音を聞きながら森をひたすらにかける。
211 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 20:21:42.56 ID:Is1XRTQWo
>>210
「そうなんだ……でもお兄ちゃんに面倒って思われるのは嫌……
 黙ってる……」

シュンとして大人しくなってしまうミレーヌ。
味方の人が自分から離れていってしまう事を極端に嫌う性格であるため、こういうことを言うと大人しくなるのである。
だが、それも今は直接敵と対峙していないからで、いざ直接敵と合えば再びうるさいミレーヌに戻ってしまう。

「大丈夫だよ……出くわしてもミレーヌが殺してあげるから」

出くわすという事は近いということ。
つまりはミレーヌの距離で負けるはずはないと信じて疑わないのだ。

「はーい…………待って、お兄ちゃん隠れて」

アーサーとは別の方を警戒していたミレーヌが足を止め、低い声色に変えて呼びかける。

「なにか草むら辺りで動いた……距離は210m。でも人間かどうか分からない。動いた影は1つだけど、もっと居るかも……
 確かめてこようか……?」

木の影に隠れながらアーサーに状況を説明する。
ミレーヌの持つ能力に目の良さがある。これは、視界を常に三次元的に理解し、対象との距離やその向きなどを一瞬の内に正確に把握できるものである。
この能力があるからこそ、猪突猛進のミレーヌでも今まで生き残ってきたのかもしれない」
212 :アーサー :2013/03/17(日) 20:33:44.10 ID:MlgMpl30O
>>211
「……………あとで好きなだけ喋らせてやる」

落ち込んだ様子のミレーヌに、しまったな、と後悔の念を抱いたアーサーは気まずそうにそう返す。
あまりに余裕がなさすぎる自分も、まだまだ未熟な面が多々あるのだ。

「そりゃ心強い」

アーサーが苦笑したのはほんの一瞬のこと。
ミレーヌの警戒がかかればすぐに姿勢を落として、彼女の示した方向へ銃口を向ける。

「援護する。いってこい」

肉眼で捉えるにはあまりに遠いが、ミレーヌの眼力は信用している。
となれば危険が存在する可能性もあり得るわけで、ここは斬り殺したくてウズウズしているだろうミレーヌに任せて自分は援護に徹するべきか。

213 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 21:02:39.01 ID:Is1XRTQWo
>>212
「うん……やっぱりお兄ちゃんは優しいね」

なんだかんだ言いつつ結局付き合ってくれるアーサーは、言葉ほど非情な人間ではないのだろう。
面倒見の良い人間でないなら、ミレーヌと付き合ってられなくなるだろうから。

「うん、じゃあ行ってくるよ……」

そう言った時のミレーヌの眼は鋭く、うるさい子供の眼ではなく完全に狩人の眼をしていた。
これこそが戦場におけるミレーヌの本性である。

「でも一直線に行ったらバレちゃうよね……じゃあ」

仮に見えた影が敵だった場合、このまま突っ込んでいけばいい的だ。
そこで、ミレーヌは左手を上に上げて、能力で作り出した緑色の魔力の紐”マジックストリング”を出す。
それはそのまま上へと登って行き、やがて木の一番高いところにある枝まで到達しガムのようにくっ付く。
ミレーヌはマジックストリングに捕まると、その長さをどんどん短くしていく。
こうすれば、敵からは見えない角度から音も立てずに上を取れる。

一番高い枝に登ったミレーヌは、次に右手で別の木の枝にマジックストリングを付け、同じ要領で今度は前に進んでいく。
ターザンのように右手と左手を交互に使用し、高い木の頂上付近を音もなく進んでいく。
仮に敵が銃を持ってミレーヌたちを狙っているのであれば、意識は前方に向いている。
まさか音もなく木を伝って真上を取られるとは思ってもいない。

(み〜つけた……)

案の定、敵が三人。草影で伏せているのが二人で、残りの一人が周囲の警戒をしている。
だが、真上を見るということはしていない。

ミレーヌは、警戒中の一人が一瞬よそ見をしたその瞬間に、枝から飛び降りる。
途中、スカートの中から連接剣を取り出し、鞭のようにしならせる。
もう着地を待つ必要すら無く、ミレーヌは落下中、連接剣の射程に入った瞬間にまず一人の首を跳ねた。

「キャハッ! ねぇねぇ、そこで何やってるの?」

着地音と同時に振り返る狙撃役二人。だが、その時にはもう仲間の一人は死んでいて……
そこの兵士の瞳に映るのは、戦闘狂の残忍な顔。

「な、いつのまっ……!」

言葉も言えず、銃を向ける間もなく、連接剣のしなるような動きで二人同時に首を斬られて死亡する。
剣の硬い型を感じさせない、予測不能の動き。
ミレーヌは連接剣を二、三回振り血をまき散らした後に、再び綺麗に右太ももへ着地させる。

「お兄ちゃーん、片付いたよー」

先ほどとは打って変わって、再び無邪気な表情に戻ると、手を振って終わったことをアピールする。
214 :アーサー :2013/03/17(日) 21:23:35.80 ID:MlgMpl30O
>>213
「優しかったらここにはいないだろうと思う」

恥らうように指で鼻先を掻いて、アーサーは肩を竦める。
自分がミレーヌの面倒を見るのはただ単に気になるからというだけのこと。
自分が好き好んで首を突っ込む道楽にすぎず、優しさとは疎遠だというのがアーサーの見解だ。

手早く木に登り、さっささっさと木の枝を支柱に進んで行くミレーヌ。その背中を見送りながら、アーサーは半ば呆れたようにその様子を眺めている。

さすがに頭上から敵がくるとは思うまい。アーサーは化物相手の戦闘にも慣れているからそうでもないが、上から敵が降ってくるなど普通は想像しない。

ACOGスコープのど真ん中で首が舞う。
照準器越しに噴き上がる赤い霧のような血潮。
そのままほぼ同時に追加2つの頭がぽんと空へとはね上がれば、アーサーは死んだ敵兵への瞑目を捧げる。

「あまり姿を晒すな……敵、背後だ」

ミレーヌの後ろ、アーサーからほぼ300m。
別所に伏せていたらしい影を2つ視認すると同時、セミオートに絞ったSA58-Paraをしっかりと構え、ACOGの目盛りを頼りに照準。
発砲、6発立て続け。
着脱の血煙が散り、2人が倒れる。
215 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 21:54:56.12 ID:Is1XRTQWo
>>214
「そうかなー、前に部隊のおじさんが言ってたよ。
 お説教も優しさだってね。個人的には嫌だけど……」

説教と聞けばすぐさま逃げ出すミレーヌだが、大抵そこに優しさがあると理解はしている。
まぁ、理解しているからといって素直に聞くかというとそんなことはない。
理性より感情が先走るお年ごろなのだ。

「ありがと、お兄ちゃんっ」

初めからアーサーの援護を信じているかのように、背後にいる敵の方すら見ない。
仮に生き残っていても気配でわかるので、この距離であれば相手のほうを向こうが向くまいが危険度は大して変わらない。

「さ、もうすぐ敵の基地に到着するね。早く言って片付けちゃおっ」

もう少し進めば敵の基地に到着だ。
アーサーの元へと歩いて行き、先へ進もうと促す。
見れば、ミレーヌの頬は軽く紅潮し色気を伴った興奮をしているわかるかもしれない。

ミレーヌの気分はやや高揚していた。
ようやく敵地で敵を斬って血を見ることが出来たからである。
故に、早く行こうと促すのは、早く作戦を完遂させたいからではなく、早く敵の基地で戦いたいからにほかならない。
216 :アーサー :2013/03/17(日) 22:13:08.04 ID:MlgMpl30O
>>215
「そら、どうでもいい相手には説教はしないだろうけど」

自分のそれが優しさゆえかと問われれば、それに自信を持って頷くことはできそうにない。
とはいえ気がかりだからこそ説教をするし、面倒を見るわけであって。
ううむ、とアーサーは唸ってため息をつく。

「警戒を怠るなよ。おれが外したら死んでいたぞ」

ほかに敵がいないか、周囲を見回して確認。
目に付く限り敵の存在は確認出来ない。始末したと判断していいだろうか。

「焦るなミレーヌ、敵は逃げない」

興奮した様子のミレーヌを諌めるように、彼女の頭に手を延ばしてぽんぽんと軽く叩く。
蒸気した頬に目を留め、色気付いた様子に鼻を鳴らす。

「いくぞ」

サプレッサを取り外して通常のマズルへ取り替え、アーサーはそこに銃剣をはめ込んだ。

自分も銃剣で戦闘をするきなのだ
217 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 22:36:27.37 ID:Is1XRTQWo
>>216
「へへ……じゃあお兄ちゃんはミレーヌのことどうでもいいって思ってないってことだよね?
 嬉しいな〜」

説教はウザいが、どうでもいいと思われていないと言うのであれば、ちょっと暗い説教も聞いてもいいかも……
なんて思ってしまう。が、実際説教の場になったら逃げ出す。
以前も同じような思考パターンになった気がする……
成長していない。

「大丈夫大丈夫、ミレーヌ気づいてたし、お兄ちゃんは外さないでしょ?」

本気でアーサーを信頼しているのか、それとも単に脳天気なだけか。
少なくともさっきの状況で死ぬなどとは毛ほども思っていない様子。

「ん……はぁ……
 わかってるよ……逃げない敵を狩るんだよね……」

本当にわかっているのだろうか……
これを狩りと表現することから見ても、そもそも戦いに対するスタンスがアーサーや一般的な傭兵とは違うことを物語る。

「お兄ちゃんと一緒に接近戦かー、面白そう」

サプレッサを外したということは、もう隠れて銃撃戦をする気はないということと認識する。
そして、銃剣を出したということは、自分と一緒に全面に出て戦うのだと考えて喜びをあらわにする。


それから少し歩いて行くと、森の景色が切れる。
切れるというのは、その先が崖になっていて、進んでいるミレーヌたちから見れば地面が切れているかのように見えるということ。

「ようやく着いたね、お兄ちゃん……」

まだ他の部隊は到着していない様子。警備兵は多いが、臨戦態勢は取っていない。
敵の基地は静かなものだ。敵の基地は、ミレーヌたちの方は崖になっているが、少し回り込めば安全に下へと降りられそうだ。
建物らしい建物は無く、大半がテントで構成された、永く居座る拠点と言うよりは、一時的な拠点に見える。
崖はちょうど、基地入り口から見て右奥にあり、回りこんで下から基地に攻めこむと側面よりやや入口側からになる。
基地の奥の方に、幾つもの骨組みを使用した大きなテントがある。これが指揮官がいるテントだろうか。
218 :アーサー :2013/03/17(日) 22:50:41.70 ID:MlgMpl30O
>>217
「どうでもいいと思っているなら、いまここにいない」

それが答えだと言わんばかりに。
まったくもって素直ではない。が、顔は至って大真面目である。

「大した度胸だよ、おまえ」

たしかにアーサーあの距離で外す気はさらさらないわけだが。
それとこれとは全くの別問題である。

「さ、いくぞ。あまりのんびりできない」

銃剣をどうつかうのか。
そういえば銃剣戦闘をミレーヌに見せたことはなかったように思う。
なら今回、ミレーヌに自分の戦い方を見せるのも悪くない。

「警備は手薄……まだ警備体制も整えてない、か」

だが2人で突入するにはあまりに危険なのに変わりはない。
しかし周りこむにしても入口に近い位置からというのもあまり気持ちのいいものではなく、アーサーはやや考え込んだあと。

「側面から侵入して奇襲にするか、崖を迂回して入口側からかちこむか」

どちらがいい?とミレーヌに問う
219 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 23:03:47.14 ID:Is1XRTQWo
>>218
「えへへ……やっぱり優しいじゃん」

小さめの声で、つぶやくミレーヌ。
もう少し砕けてもいいのにな……なんて思う時もいっぱいあるが、アーサーも優しい仲間の一人だ。

「度胸がないと敵に近づけないからね〜」

それを度胸というのかはよく分からないが、ミレーヌは得意げだ。
基本的に恐れというものがまるで無い。
それが一騎当千を可能にするとも言えるが、死期を早めるとも言える。

「崖から攻めちゃおうか……その方がかっこいいし。
 何より正面からだと弾幕が厚くて近づけないかも知れないから、奇襲でさっさと相手の懐に入っちゃおうよ」

崖の傾斜は急で、高さもある。
普通の兵士ならここを降りようとは思わないし、そもそも身体能力的に無理だ。
だが、この二人は普通の兵士ではない。

ミレーヌは肩にかけていたアサルトライフルを、体にかけずに手に持つ。
最初だけ使って後はさっさと捨てる気満々だ。
220 :アーサー :2013/03/17(日) 23:21:56.42 ID:MlgMpl30O
>>219
「だから無理はするなよ?」

ミレーヌのつぶやきには気づかないまま、敵陣を見据えてそう諭す。
結局お人好しの若造なのかもしれない。

「無謀と履き違えて死ぬなよ?」

少なくとも自分ならあんな戦い方は遠慮したいところだ。
自分なら徹底的に位置を秘匿して狙撃でしまつする方を選ぶだろう。

「かっこいいかはともかく崖からは賛成だ。さっさとケリをつける」

アーサーは並の兵士ではないが、並通りの戦い方を選ぶ傾向にある。
だからこそ、バックパックから取り出したラペリングロープを気に巻きつけて金具で身体と固定し、ロープ降下の準備に取り掛かる。

「いくか」
221 :ミレーヌ [saga]:2013/03/17(日) 23:40:59.48 ID:Is1XRTQWo
>>220
「死んだらもう戦えないからね。死なないよ……」

面白く戦って生き残る。
それがミレーヌの信条だ。
目の良さという能力を見れば、スナイパー向きでおそらく世のスナイパーは喉から手が出るほどに欲しい能力なのだろうが、肝心のミレーヌはスナイパーなどやる気はない。
おそらく5分で飽きて敵に走り出していくだろう。

「うん、ミレーヌ達が暴れれば後続の部隊が突入しやすくなるしね」

そうして右手にマジックストリングを出し、地面へくっ付ける。
左手でアサルトライフルを持ち、強襲を仕掛けるつもりだ。

「早くしないと置いて行っちゃうよ、お兄ちゃんっ」

そうして一気に崖から飛び降りるミレーヌ。
マジックストリングの長さを調節しつつ、地面に着地した時に怪我をしない程度の速度で降りる。
しかし、それはほぼ落下と変わらない降り方で、かなりのスピードが出ている。

「ほら、死んじゃえっ!」

落下中、ミレーヌは右手で持ったアサルトライフルを近くを通っている兵士に向かってぶっ放す。
命中精度などまるで気にしないそれは、一発で仕留めることなど出来ないが撃っている数が数なだけに問題なく命中する。
広がって進む弾丸は、狙った敵だけでなく一緒に歩いている兵士にも当たっていく。

「て、敵襲っ!!」

当然、そんな派手なことをすれば狙った敵を殺せたとしても他の兵士にすぐバレる。
近くにいる兵士たちはミレーヌに気づいて、続々と襲い掛かってくる。

ミレーヌは着地と同時に地面を一回転し、衝撃を逃すとすぐさま連接剣を抜いてアサルトライフルを捨てる。
もうこの距離で銃を使う意味はミレーヌにはない。

派手な戦闘が幕を開けた。
222 :アーサー :2013/03/17(日) 23:50:40.88 ID:MlgMpl30O
>>221
「それでいい……のか?」

戦うために生き残る、というのはどうなのだろうなどと思案しながらも、アーサーは崖を下り始めた。
飛び降りる、ではなく駆け下りる。
ロープを左手で掴み、金具で速度を調整しながら疾駆。
右手に構えたSA58-Paraを適当にバカバカとばら撒きながら、地面が目前に迫ると減速、壁を蹴るようにして着地。

剣をぬいたミレーヌの後背につき、彼女を狙ってアサルトライフルを構えた敵の背中から銃剣を突き刺した。

奇妙な呻きと共に吐血した兵士に、銃口を押し付けたまま3連連射。
弾丸でミンチになった背中に銃口を押し込み、兵士の身体を貫くようにして胸側から銃口と銃剣を突き出す。

えげつない方法だが、これでミートシールドの完成だ。
肺を貫かれてすでに意識が朦朧としている兵士の襟首を掴んで向きを返させながら、彼の胸から突き出た銃口を他の敵へと向け、連射する。
223 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 00:04:24.31 ID:g4WVXH2Ho
>>222
「へーそんな方法があるんだぁ……」

敵兵を貫いて盾にする。
そんな戦い方を見て、感心しているようだ。
そうして、

「私もやるっ! はぁあっ!」

体制を低くしたまま、大柄な兵士に狙いを付け、連接剣を一直線に伸ばす。
兵士は銃を横にして付きだしてガートを試みるが、そんなもので止まるミレーヌの攻撃ではない。
銃ごと兵士の腹部を貫き、その後連接剣を丸めるようにして兵士を掴む。

「こうかなっ……!」

一度捕縛した兵士を引き寄せた後、敵の集団に向かってそれを飛ばす。
同時に、ミレーヌは身体強化の力を足に集中して跳躍。
飛ばした兵士に隠れるようにして自分も飛んだのだ。
即興で思いついた無茶な方法だが、ミレーヌだからこその技だろう。

味方を打てないという心理をついたと言うよりは、余りにも奇抜かつ残忍な方法にあっけにとられた兵士たちは、銃を撃つことも忘れてミレーヌの接近を許す。
敵に近づいた途端、遮蔽物にしていた兵士を掴んで地面に叩きつける。
敵から見れば、味方が飛んできたと思ったらその影から敵が飛び出てきたという訳のわからない状況。

「撃たないの? 死んじゃうよ……? ほら」

空中で体を回転させながら、連接剣が舞う。
射程内にあるもの全てを切り裂きながら、先へと進む。
224 :アーサー :2013/03/18(月) 00:12:51.72 ID:aRqfC3yQO
>>223
「うわぁ」

連節剣などという色物を目の当たりにした兵士たちが、奇抜な戦法によってズタズタにされていく。

哀れといえば哀れなその光景にアーサーは同情を禁じ得ない。
が、すぐにその光景から目を逸らし、手近なテントの一つ一つに手榴弾を投げ込んでいく。

反撃されるまえに徹底的に叩く。
機関銃陣地の土嚢にも手榴弾をお見舞いし、SA58-Paraで手当り次第に敵を撃つ。
何時の間にか事きれていたミートシールドの兵士から銃を引き抜くと、血肉したたるその穂先を、逃げずに立ち向かう兵士達へと向け直した。
225 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 00:27:22.93 ID:g4WVXH2Ho
>>224
ミレーヌが近接戦闘をやりたがるので、必然的に敵が近い。
数をこなせば中には懐まで入り込む敵もいる。
連接剣の弱点と言えば、伸ばして状態で懐に入られること。
伸びた状態で打ち合いは出来ないので、かなり不利になるのだが……

「残念、ハズレっ!」

銃剣を持って額に突き刺しにくる相手を、体を地面と水平に倒して回避する。
当然、それでは足が地面に付いていないので転倒する所だが、体を捻って片足だけ地面に付けて転倒を回避。
もう片方の足を振り上げて、靴に仕込んだダガーで相手の首を斬る。
連接剣の弱点が懐だからといって、ミレーヌの懐に入るのは自殺行為だ。

「はぁ……はぁ……もう、たまんない……」

顔は紅潮し、時折自分を抱きかかえるようにするその姿は、完全に興奮状態にあるとわかる。
ただ、やはりその状況で進んでいけば……

「…………あれ? 囲まれちゃった?」

気づけばアーサーとは少し離れた位置まで来てしまったようだ。
肉眼ですぐさま確認できる位置ではあるが、ミレーヌとアーサーの間には敵兵がおり、ミレーヌは敵兵に囲まれていた。
226 :アーサー :2013/03/18(月) 00:49:37.85 ID:aRqfC3yQO
>>225
ただ黙々と引鉄を絞る。
テントや地面に血潮のペイントアート。
頭を撃ち抜かれた敵や、心臓を射抜かれた敵。肺や腹部を撃ち抜かれ、死に切れぬままのたうちまわる彼らにも、拳銃で慈悲の一撃を加えていく。

「あの……バカたれが」

そんな作業を終えてミレーヌをみれば、彼女は敵に囲まれている。
アーサーは舌うちと共に罵り、再装填したSA58-Paraでミレーヌを囲む敵の一角に銃撃を加える。
他方から銃撃を受けたが見向きもせず、代わりにピンをぬいた手榴弾を転がす。

「ミレーヌ、伏せてろ!」

さらに手榴弾をもう1つ。
こんどはミレーヌを囲む敵の背後に投擲。
227 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 00:57:44.57 ID:g4WVXH2Ho
>>226
「みんな殺してあげる…………」

返り血のついた指を口に含んで舐めとる。
血の味がする……大好きな血の味。

「……ふぇ?」

この状況かつ、血を口にしたことにより完全にトリップしそうになる直前、アーサーの声で引き戻される。
そこで見える手榴弾。
わわわ……とアーサーの声に従って頭を抱えて伏せる。
爆発音とともに開かれる突破口を見逃さずに、すかさず立ち上がってアーサーの方へと駆け寄る。

「ありがと、お兄ちゃん……あっ」

そこでアーサーが血を流していることに気がつく。
少なくともさっきまで血を流すような傷は無かったはず……

「もしかして、ミレーヌを助けるときに……?」
228 :アーサー :2013/03/18(月) 01:07:05.01 ID:aRqfC3yQO
>>227
立て続けの炸裂で敵が浮き足立つ。
その好機を見逃さず、突破口からこちらへと駆け寄るミレーヌを援護するためにSA58-Paraの残弾をすべてばら撒いた。

社外製の箱型長弾倉には7.62mm弾が30発。
通常の純正は20発だが、これは乱戦時用にアーサーが取り寄せたもの。

残弾を吐き出し切ったSA58-Paraを左に傾け、エジェクトポートが開放されている事を確認する。
ジャムではなく間違いない弾切れだと判ずるや否や、アーサーはスリングで身体に繋がっているSA58-Paraから手を離して、腿のM&P40自動拳銃へと切り替えた。

「いつ怪我したかは知らないがたぶんさっきだ」

致命傷には程遠いがそれなりに血がでているのはわかる。
アーサーは拳銃で敵に牽制を加えながら、左手をミレーヌの腰に回すとひょいと抱え上げ、身を翻して乗り捨てられた軍用車両の影へ飛び込む。
そこに叩き込まれる機関銃の制圧射撃。

敵が体制を整えつつあった。
229 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 01:15:51.12 ID:g4WVXH2Ho
>>228
「ごめんなさい……ミレーヌのせいで……」

車両の影で小さくなりながら素直に謝るその姿は歳相応のものだろう。
自分が先行しすぎた為に、アーサーに怪我を負わせたのだ。

「お兄ちゃんを撃った奴……捕まえたら限界までなます切りにしてやる……」

そこにはストレートな憎悪の感情。
眼は完全にハンターの眼になっていた。

「……って言ってもこの弾幕じゃあ表に出れない。どうしよう……
 私が囮になってる間にお兄ちゃんが機銃使ってる奴を殺す作戦はどう?」

いくらミレーヌでも機銃相手に飛び出すのはかなり危険だが、少なくともアーサーをお取りにするよりは成功率が高いと判断した。
それでなくとも仲間思いのミレーヌが、仲間を囮にする作戦を言い出すはずはない。
230 :アーサー :2013/03/18(月) 01:27:01.05 ID:aRqfC3yQO
>>229
「構わない……学んで次回に生かせるならな」

弾切れのM&P自動拳銃に新しい弾倉を挿し込んでスライドを前進させてホルスターへ戻す。
そしてSA58-Paraに30発弾倉をはめ直して薬室を閉鎖、初弾装填。

「その気持ちはありがたいんだが……さっき手榴弾で弾け飛んだとおもうぞ」

完全にスイッチが入ったミレーヌに苦笑して、アーサーは破片と爆発で弾け飛んだ死体の方を示す。

「一瞬で始末できればなんとか……だけど、どうやら味方も遅いご到着らしい」

にわかに騒がしくなってきた入口側で、爆炎が噴き上がる。
どうやら別グループも到着したらしく、アーサーはその方向をしめしてから、膝立ち姿勢で背を限界まで丸めSA58-Paraを地面に水平に構える。

足をピンと伸ばして地面に這いつくばるような姿勢のまま、車体下の隙間から敵の足を狙う。
足を撃ち抜かれて倒れた敵は、そのまま胸や頭部に食らって死亡した。
231 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 01:38:16.81 ID:g4WVXH2Ho
>>230
「次からは怪我なしだよ……?
 ミレーヌも出来るだけ……気をつけるから」

とは言うものの、おそらく戦闘になると気を付けない。
いや、きっと戦闘中はそんな会話をしたことすら思い出さないだろう。

「なーんだ……ミレーヌが捕まえたら最高の殺し方をしてあげたのに」

瞳に映る憎悪がスッと引っ込み、目つきも元に戻り始める。
対象がもう居ないのであれば、どうしようもない。

「やっとだね……ミレーヌ達が暴れたから中にはいるのは簡単だったみたいだね。
 乱戦に巻き込まれるのはゴメンだし、二人で奥のおっきいテントを叩こうよ」

銃を構えるアーサーの服をつまんで引っ張りながら、もう片方の手で奥にある一番大きいテントを指さす。
この敵襲の中、複数の兵士がテントの入口を動かずにそこを守っているのを見るに、落とされてはマズい場所なのだろう。
232 :アーサー :2013/03/18(月) 01:49:30.32 ID:aRqfC3yQO
>>231
「努力はするが確約はしかねる」

真面目くさってそう返すアーサーは、内心で次回までにはミレーヌは注意された事も忘れているのだろうと諦念を抱いていた。

「彼も幸運だったな、あっさり[ピーーー]て」

もし生きていたら酸鼻極まる凄惨な死体が出来上がっただろうことは想像に難く無い。

「わかったが、"絶対に飛び出すな"。おれが背中をカバーする」

守りが固そうなテントに目を眇め、
アーサーは残った唯一の手榴弾をつかむ。
外の守衛を吹き飛ばすつもりだ。
233 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 01:56:14.20 ID:g4WVXH2Ho
>>232
「またそうやって難しい言い方するー
 もっと砕けて話したほうがモテるよ、お兄ちゃん」

いつもそうやって言い回しが硬いのだ。
ミレーヌの砕けすぎる言葉遣いとは正反対。
戦い方も、喋り方も正反対のこのコンビは相当に凸凹コンビだ。

「はーい……でも飛び出さないって難しいよ。
 何時になったら行っていいの?」

すでに一歩踏み出していたミレーヌはアーサーの一言で停止する。
またあのテントに突っ込もうとしていたのだ。
さっきあったことがすでに頭にない。
234 :アーサー :2013/03/18(月) 02:03:23.04 ID:aRqfC3yQO
>>233
「どうせ女運には恵まれてないよ」

けっ、と悔しげに吐き捨てると、鬱憤を晴らすべく手榴弾を投擲する。
空中でレバーが弾け飛び、放物線を描いたそれは見事敵の頭の高さで炸裂。

たちまちのうちに守衛をなぎ倒し、アーサーはSA58-Paraを構えてミレーヌよりも先に駆け出す。

「合図は手榴弾だ」

いつになったら行っていいのかという問いに返しながら、慌てて飛び出して来た士官の胸に叩き込む
235 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 02:11:03.26 ID:g4WVXH2Ho
>>234
「でもお兄ちゃんにはミレーヌが居てあげるから平気だよね
 これは部隊のおじさん達が聞いたら怒るかな……?」

むさい男集団である傭兵部隊で紅一点のミレーヌは、その中で姫の様に扱われている。
デザートのフルーツ缶詰を分けてくれたり、飴玉をくれたりするのだ。
そのみんなが一人に入れ込むミレーヌを見れば暴動を起こす……かもしれない。

「ちょっと……! 先に言ってくれなきゃわかんないよ」

遅れてアーサーに続くミレーヌ。
テントを守っている兵士を二人ほど斬りつけて、アーサーを追う。
背中をカバーすると言っておきながら先行するのはアーサーだ。
236 :アーサー :2013/03/18(月) 02:17:44.64 ID:aRqfC3yQO
>>235
「生涯ついて来てくれるわけじゃあるまいし
あの爺さんどものことは知らん」

暴動もなんのその。
いい歳して14の少女にデレデレする野郎集団のことなどアーサーの預かり知らぬことだ
暴れ出したら適当に折檻すれば済む話だった。

「いつも先に飛び出す罰だ罰」

テントめがけ30発をすべて撃ち切り、弾倉をはじきとばして入れ替えると、応戦に現れる増援もすべて射[ピーーー]る
237 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 02:28:23.38 ID:g4WVXH2Ho
>>236
「そんなこと言ってると、いざ生涯付いてきてくれる人が現れてもすれられちゃうよー
 それにおじさん達優しいんだから」

おじさん達を見習ってもっと気さくに笑ったりすればいいのになーと常日頃から思う。
同じ傭兵のおじさん達は笑ったりするが、アーサーが笑ったりするのは見ない。

「もう、私だって……!」

アーサーに獲物を全て取られてはたまらないと、外から連接剣を突き入れるが、感触がない。
どうやら遅かったようだ、流石に弾丸全て撃ちこめば中で逃げるスペースなど無い。
獲物は残っていなかった。

辺りの銃声も徐々に止み始める。
突入してきた部隊が次々と制圧し、この拠点を完全に落とすことに成功したようだ。
残っている敵兵も抵抗を止め、おとなしく捕まっている。

「んーっ……これで今日の作戦は終わりだねっ
 疲れたー」

体を大きく伸ばして、欠伸をする。
軽く見渡すが、こちらの死者が出たような感じはない。流石は歴戦の傭兵たちか。
じきに、初めに乗ってきた輸送車両がここへ到着するだろう。
それに乗って帰れば、今日の仕事は完全に終了となる。
238 :アーサー :2013/03/18(月) 02:35:50.78 ID:aRqfC3yQO
>>237
「現れない現れない。おれの前に女神はいない
爺さんどもに優しくされてデレデレしてればいいんじゃないか?」

じとっと、アーサーはミレーヌを睨みつける
女性問題が禁忌だったのか、やたらと野郎集団を持ち上げるのが気に食わないのか
おそらくは両方だろう

「残念、手柄はいただきだ」

地面の上でもがく瀕死の敵兵に拳銃で一撃
そのままテント内部を検分して全員の死亡を確かめる頃にはすべてが終わっていた

「まだまだ。あと一日中戦えるよ」

アーサーは疲れた様子もなく、煙草をふかしながら弾薬の山に腰掛けている

「だがまあ、お疲れさま」
239 :ミレーヌ [saga]:2013/03/18(月) 02:46:26.51 ID:g4WVXH2Ho
>>238
「別にデレデレなんてして無いもん……
 いーっだ!」

口を尖らせてそっぽを向いてしまう。
喧嘩腰には喧嘩腰。ミレーヌから折れることは稀だ。

「なーんかまだ不完全燃焼って感じ……
 一瞬、なんだか最高な気分になりかけたんだけど、なんだったんだろ」

おそらく敵に囲まれたあの時のことだろうが、あの時のトリップ感覚は今までに味わったことはなかった。
あの先の世界を知りたいと内心ドキドキしながら思っていた。

「あ、来たきたー
 さ、行こお兄ちゃん」

基地の中央辺りに輸送車両が停車する。
そこへ歩きながら、右手に持つ連接剣を右太ももへと巻きつけて手ぶらになる。
そうして、乗り込んだ途端無防備に横になって寝てしまうのであった。

「んー今日の戦いも面白かったー夢で今日の戦いを思い出せるかな……
 興奮したなー……」

ゆっくりと夢の世界へと落ちていく。
帰りの最中、ミレーヌがどんな夢を見れたのかは、また別のお話。

//こんな感じで〆でいいでしょうか
//なんだかかなりの時間ロールにお付き合いいただいてありがとうございます。とても楽しかったです。
240 :アーサー :2013/03/18(月) 02:52:27.12 ID:aRqfC3yQO
>>239
「いいやデレデレしてるね」

はんっ、と鼻でせせら笑うと、アーサーは口をへの字に歪める。
彼も彼で、なかなかに頑固だ。

「そんな気分は知らなくていい。というか知るな忘れろ」

絶対にロクなものではないだろう
殺しすぎでハイになったかなにかだとあたりをつけ、アーサーはすべてを片付けた。

「ったく、行きも帰りも人を急かすなよ」

車両に乗るや否や横になったミレーヌの隣に座り、ミレーヌを見つめてにやけている野郎集団に鋭い視線を投げかける

帰り道、アーサーの気の休まる時間は一切なかったとか。

/あいあいよかです
/こちらも楽しかったです。ぜひまた!
241 :ジャンク [sage saga]:2013/03/18(月) 22:34:00.78 ID:ijSKSIX2o
「――たすk……!?」

路地裏。そこに悲鳴と衝撃音と水音が響いた。
地面に崩れ落ちる音、それは肉が生み出すそれ、血、肉が飛び散ってへばりついた。
そして、その肉塊の傍らに佇む一つの影があった。
黒いロングコートに、下に着込んでいるのは黒い戦闘服。
右手には長柄の斧が有り、それを影は振りぬき血を払った。
月の灯が長方形に切り取られた夜空から差し込んでいく、スポットライトとして。
照らされる影のシルエットは、少女。夜に長い影を伸ばして、銀糸としてはくすんだ色合いの髪にこびり付いた血を少女は拭い取った。

「あと、743回。……任務成功率も上々、良い感じ。良い感じ。
……ん?」

殺した相手は、近辺で幅を利かせていたマフィアの下っ端だった。
周囲にも数人転がっていた当たり、少女の受けていた任務は殲滅任務だった事が伺える。
そして、その死体に抱きつきながら泣き叫ぶ、一人の少女が居た。
恐らく、その下っ端の子供だったのだろう。少女に向けて憎しみをねりこんだ視線を向けていた。

「――復讐を、しても。此処で逃げても。
私は、止めない。だけど――、刃を向けるなら、銃口を向けるなら。
私は容赦しない。死にたくないから、君を殺す。それで、どうする?」

かつん。一歩歩みを進めて、血溜まりがぴちゃりと音を立てた。
少女の周囲に唐突に銃弾が5発浮かび上がり、目の前の少女にその先端を向ける。
泣き叫びながら父親の名前を呼ぶ子供を前に、灰被りは只無慈悲に佇むのみだった。
242 :クリオネ [saga]:2013/03/18(月) 22:47:09.74 ID:g4WVXH2Ho
>>241
裏路地というのは歩き慣れている。
そこには常に様々な匂いが漂っているから、その匂いで事件が起こっているか否かが判別できる。
血の匂い……珍しいことではないが、そこに子供の鳴き声がプラスされることは珍しい。
殺しを行うのであれば、目撃者は全員殺すし泣き叫ばれては他の人に感づかれる可能性がある。

帰宅途中にふと感じ取った匂いに釣られて、裏路地まで来てみればいつか見た少女と死体が一つ。そして泣き叫ぶ子供が一人。
ふむ……
これだけでだいたい察しはつく。要は、ターゲットは男だが、一緒に居た子供を即座に殺せないでいるのだろうと。

「ふーん……元気そうだね、ジャンク」

路地の入口から入ってくるのは、真紅の髪とそれと同じ色のロングコートを着た少女。
コートの中は白いワイシャツで、下はミニスカートを履いている。
そのつり目は、なかなかおもしろい状況に出くわしたものだと言った感じに若干細くなった。

「それ、早く殺さないの……?」

右手の人差し指で、ジャンクの後ろにいる少女を指さす。
このまま泣き叫ばれては、人も集まってくる可能性があるのではないか。
243 :ジャンク [sage saga]:2013/03/18(月) 22:54:54.98 ID:ijSKSIX2o
>>242
「――クリ、オネか。久しぶり」

前回の模擬戦以来の遭遇ではあるが、ジャンクの雰囲気は大分変わったことが分かるだろう。
気負った様子は無く、自然体でそこに立っている。
前の人形めいた様子は多少和らぎ、ごく僅かな人間性を少女は感じさせていた。
そして、泣きながら死体に縋りつく少女を挟んで、女二人は言葉を交わす。

「向かってこないものは、任務でなければ殺さない。
それが私のルールであり、私の規律。この子が、父親の右手に握られたグロック17を握って私に銃口を突きつけ、命を奪おうとするなら。
私はその子を殺すけど。そうでなければ、殺さない。どうせそろそろトンズラしようと、していた、から」

それだけ行って、寒いのかコートの首元を寄せて。
ほふ、と息を吐くとクリオネに目線を向ける。
無感動な灰色の瞳は、僅かな人間性を孕んで相手の視線と交錯する。
だが、その視線に込められた感情は、見えない。

「……今から、晩御飯。一人で食べるの、飽きるから。
偶には、誰か誘おうと思う。クリオネ、一緒に御飯。食べに行こう」

死体まみれの路地裏で、啜り泣きをこぼす少女を尻目に。
クリオネに向けて灰色の少女は夕飯のお誘いをするのであった。
244 :クリオネ [saga]:2013/03/18(月) 23:09:19.69 ID:g4WVXH2Ho
>>243
「ひ、久しぶり……」

模擬戦とはいえ、殺し合いをして更にあれだけ色々煽った相手にしてはあまりにも普通の反応。
もうちょっと邪険にされて、そこからまた色々言ってやろうかと思っていたクリオネは出鼻を挫かれる。
クリオネが戸惑った理由はそれだけではない。
模擬戦の時にも感じた、あのろくに自我のない人形のようなジャンクが、今はそれを感じさせない雰囲気を出しているからである。
しばらく会っていなかったが、あのジャンクを変える何かがここしばらくの期間であったのだろう。

「今はそれでもいいかもしれないけどね……そいつが今じゃないいつか、牙を向けるかもしれないよ。
 標的がキミならいい……でも、復讐のターゲットが直接的である確証はない。いつか、キミの近しい人を狙うかもしれないよ」

ま、別にキミのやり方に口出しする気はないけどね……
と、付け加え後は興味が無いかのように視線を子供から外す。
グロック17……あの子供がこれから生きていく上でどれだけ力になるだろう。
母親が居ればいいし、居なくとも他に身寄りがあればまっとうな生活を遅れるだろうが、いずれも居なかった場合……
自分と似たような育ち方をするんだろうな、なんて一瞬考えるも、これも関係ないことだと割りきって捨てる。

「晩……御飯……?
 ……ははっ、まさかキミから食事の誘いが来るとは思わなかったよ。
 やっぱり最初に感じたものは間違ってなかった。少し変わったね、キミ……
 いいよ、キミと行くのも面白そうだ」

ジャンクと食事をする時が来るなんて思いもしなかった。
今日は何だか面白いことに巻き込まれる。
245 :ジャンク [sage saga]:2013/03/18(月) 23:16:32.49 ID:ijSKSIX2o
>>244
「牙を剥かれれば殺す、剥かれなければ殺さない。
そして私には私以外何もないし、私にも何もない。だから、何も怖く、無い。
私はジャンクだから。だから、私以外に危害は向かないし、屑に価値を見出すものはそう居ない。
だから大丈夫。それに私は、死ぬつもりは欠片もないし――ね」

斧を肩に担ぎ上げながら、ジャンクは淡々と言葉を吐き出していく。
復讐のターゲットが周囲に向こうが知ったことではない。なにせ、彼女が己を預ける存在は存在しないのだから。
親を知らず、過去を知らず。ただ着の身着のままでそこにいるのがジャンクという少女だ。
失うものが0に近いのに、失うことを恐れるはずがない。兵士としては完璧だろう。
死んでも誰も悲しまないし、死んでも誰も困らないのだから。

「じゃあ、行こう。苦手な、食べ物は?
私は、なんでも食べれるから。クリオネの、好きなもので」

ジャンクは、踵を返して路地裏から歩き出そうとする。
後ろを向いたタイミングと同じく、少女は父親の手元からグロックを受け取っていた所だ。
遺品であるグロックの重さをこらえながら、少女は震える手でジャンクの背中へと銃口を向ける。
しかし、ジャンクは気にしない。このまま放置すれば、弾丸はジャンクに向けて放たれることだろう。
246 :クリオネ [saga]:2013/03/18(月) 23:34:21.27 ID:g4WVXH2Ho
>>245
「なるほど……もともと他に向くような対象が無いってわけね。
 ちなみにキミに関しては心配してないよ、あんなの体の中に飼ってる奴はそうそう死なないでしょ」

ジャンクには心の拠り所が無いのだろうか。
いつか、自分にあったあんな場所が……
いや、無いならそれでいいと思う。あれば弱みになる。知れば再び欲しいと願い、綻びとなる。

「んー、私はそんなに食にこだわり無いし……まぁ今更腐ったパンと泥水を食事にするのは嫌だけど……
 …………はぁ」

クリオネは右手の裾の中からスッと一本のナイフを出して掴む。
そのまま半分だけ体を後ろへ向け、下から上へ腕を振ってナイフを投げる。
狙いは銃を構えた少女……その右手。
ナイフはちょうど親指に付け根辺りをかすって傷を付ける。特にどうという傷ではないが、幼い少女からすればかなり痛いはず。
少女は右手を押さえて、銃を落としてしまう。

「復讐するなら確実にやりな……無駄死にはアホのすることだよ」

それだけ言うと、コートのポケットに手を入れ、もう少女の方を見ずにジャンクに続いて歩き出す。

「あ、そういえばこの近くにワイン専門店があるよ
 酒はワインしか置いてないけど、色々イタリアン系の食事もあるし」

付いてきて……と言わんばかりにジャンクを追い抜いて歩いて行く。

スラム街に程近い、裏路地の一角に地下へと続く階段がある。
その階段を下り、木製の扉を開ければ、そこにはバーのような空間がある。
テーブルも、カウンターも木製でかなり雰囲気重視の店だ。
表の者も裏の者も皆入れるバーだ。
ちょうど奥の席が空いているようで、そこに座れるようだ。
247 :ジャンク [sage saga]:2013/03/18(月) 23:41:58.60 ID:ijSKSIX2o
>>246
「ネメシスは、私の分身のようなものだから。
……敵対するものを殺し尽くすのが、私の本質。かも」

一言そう呟きつつ、ジャンクは平時と態度を変えずに、小首を傾げた。
そして、くさったパンと泥水との言葉に、露骨に顔を歪めて。

「明日死ぬともわからないから。ご飯だけでも良い物が良い。
死ぬ前に食べるのは、美味しいものが良いから」

幸い、ジャンクは命の危険に比例して金が多く支払われる立ち位置にある。
人権を持たず、戸籍を持たず、記憶を持たない捨て駒だからこそ、金で解決されている。
ジャンクの金の使い道の大半は、刃物や銃器の整備購入、及び食費に消えていくものだった。
故に、クリオネが口にしたような内容の食事は、ジャンクに取っては耐え難いものだったのだ。

「……お疲れ。撃たれてたら殺してたところだった」

空中に浮かぶ弾丸は、健在のまま。
撃てば弾丸を撃ち落として少女の心臓を弾丸は貫いていたことだろう。
専守防衛こそがジャンクの強み。攻撃されれば攻撃を潰して命を潰す事がジャンクには可能だ。
だからといって、好んでそれを成したいわけではないジャンクは、クリオネの配慮に感謝をした。

「……ご飯、美味しいなら。行く」

それだけ言って、ジャンクは無言で死体と腕を抑えながら鳴く少女を尻目に歩いて行った。
木製の扉をくぐって、奥の席に座り込むとジャンクは腹を抑えて。
長めの前髪の隙間から瞳をのぞかせて、呟く。

「おなか、へった」
248 :クリオネ [saga]:2013/03/18(月) 23:55:43.80 ID:g4WVXH2Ho
>>247
「随分荒っぽい本質だね……キミを怒らせるのはやめたほうがよさそうだ
 普段静かな奴ほど切れたら怖いって言うしね」

以前見たあんなものが本質だというのであれば、このジャンクは一体どういう面を隠しているのだろう。
少なくとも、普段の感じからはあのような荒っぽい感じは見受けられない。

「私だってそう思うけどね。そんなものしか食べれない状況っていうのもあったんだよ……昔ね。
 今はもうあれに戻るのは勘弁だけどね」

能力が発現するのがもう少し早ければ……いや、生まれつきのものであればあんな生活をしていた期間は無かったのかもしれない。
使いこなせないで死んでいた可能性もあるのだが。

「別に……キミのためでもあの子のためでもないよ。
 ああいうのウザいから……」

生きる道をわざわざ自分で閉ざすなど考えられない。
父親を殺されたのが恨めしいのは分かるが、それならもっと方法を考えるべきだ。
人を殺すのは感情に身を任せて突発的にやるものではなく、計画を練って成功率を上げてからすべきだ。
あの子が成長し、もっと確実性の高い方法を見つけ出した時に改めて復讐をすればいい。
その時になったら復讐の気持ちなど無くなっているかもしれないし、無くなっているならそれは所詮その程度の感情で今、命をかけてやるようなことではない。


バーの席に付くと、メニューを取ってジャンクの方へ置く。
2つあるので、一人一つメニューを見ることが出来る。

「はいはい……頼めばすぐ来るよ」

この店は基本的にイタリアンなので、和食などはない。
その代わり、イタリア料理ならどんなものでもあるだろう。

「ジャンクはどんなものを普段食べてるのさ」
249 :ジャンク [sage saga]:2013/03/19(火) 00:04:47.96 ID:BsXTY3jho
>>248
バーの席に座りながら、メニューを見るジャンク。
顔を見れば分かる。笑っていた、見て分かるレベルで、口元は笑みの形を作っている。
目の動きは忙しなく、時々声が漏れる当たり、どこと無く幸せそう。
ジャンクにとっての娯楽は食べること。だから、食事中くらいは足りない感情も喜びで補われるようだ。

「普段は――、なんでも。私、自身。料理は、作れる、から。
偶に、こってりしたもの、食べたいなら。ラーメン、二郎、とか。
いつも、大豚ダブルヤサイマシマシニンニクマシカラメアブラマシマシで食べてるけど。
他だと、個人経営のレストランとか、食堂とか。色々、行くから。気になった所に入ったり、食べ歩きしたり」

普段何を食べているか、そう問われても困るのがジャンク。
一日3食と4回のおやつと夜食を欠かさない手技である為、なんでも食べるのだ。
それでも美味しいものを探して日々知らない店に入るジャンクは、いうなれば孤独のグルメだったろう。

「……ん、ラザニアと、カルボナーラと、アラビアータ。
あと、マルゲリータと、カプレーゼ。お願い、します」

なにやら頼みたい放題の大盤振る舞いをしている少女がそこに居た。
ウズウズしつつ炭酸水を口元に運び、すいすいと飲み干していく。
食いしん坊バンザイである。
250 :クリオネ [saga]:2013/03/19(火) 00:15:00.20 ID:S3J7KV5Jo
>>249
(ふーん、そういう顔もするんだ……)

自分のメニュー越しにジャンクの顔を見ると、それは普段の仮面のような無表情ではない。
まさかメニューを見るだけで笑みが出るとは……ちょっと可愛い。

「ん? な、なに……野菜、からめ……なに?」

なんだかいつもより饒舌な気がするジャンクから飛び出るのはわけの分からない呪文のような言葉。
クリオネにはまるで理解できず、かろうじて理解できたのは豚と野菜という単語のみ。

「雰囲気変わったと思ったけど、こういうところに来ても変わるんだね……
 新しい一面を見れた気がするよ」

そうして自分も何を食べようかとメニューに視線を落とす。
品揃えがいいのは嬉しいが、ありすぎてどれを頼むか迷うのも考えものだ。
特にこだわりもないし、いつもと同じ感じでいいか。

「えっと、ジェノベーゼパスタと白のグラスワイン
 ……って、え? そんなに食べるわけ?」

驚きの表情でジャンクの方を見る。
なかなかどうして……この小さい体にどうやってそこまで入るのか。
251 :ジャンク [sage saga]:2013/03/19(火) 00:22:57.95 ID:BsXTY3jho
>>250

「大豚ダブルヤサイマシマシニンニクマシカラメアブラマシマシ。何時かクリオネも。ジロリアン、なるなら。
覚えておいて、損はない。あとは……、偶に、スタバも入るけど、欲張りだから、
シングル ベンティ ヘーゼルナッツ アーモンド キャラメル モカ ホワイトモカ キャラメルソース チョコレートソース チョコレートチップ アドジェリー ロースト エキストラロースト
チャイ エキストラシロップ エキストラソース エキストラアイス ツーパーセント バニラクリームフラペチーノとかも。頼む」

ジャンクは、また謎の呪文を口から吐き出していく。
どうやら、食べ物の話となると舌の滑りが良くなるらしい、大分機嫌も良さそうだ。
何方にしろ、普通は覚えなくても良い呪文だ。気にしなくても良いだろう。

「……ご飯は、娯楽、幸せ。
だから、これだけには妥協しないことにしてる。
戦場だと、糧食食べなきゃならないから、余計。美味しいものが、恋しくなる」

レーションの味というものは、あまり良くないのだ。
保存料や、レトルト特有のあの臭いは、好ましいものではないし、味も濃い。
時折戦場に出向くジャンクとしては、不味い飯を喰うからこそ、余計に美食的な方向性が強まっていくのだ。

「……悪、い?
私、これでも。傭兵。毎日、訓練もしてるから。
食べないと、体作れない。――ほら、腹筋、ちょっと割れてる」

ジャンクに向けられるクリオネの視線にちょっとむっとした視線で。
おもむろにコートを脱ぎ捨て、服をその場でまくり上げて腹を魅せつけた。
褐色の腹は肌ツヤがよく、程よく引き締まっており、僅かなラインが目に鮮やか。
しかしながら、僅かに下着がちらりと見えてたりして、近くの客から口笛などが聞こえていた。
252 :クリオネ [saga]:2013/03/19(火) 00:35:11.41 ID:S3J7KV5Jo
>>251
「え……あっ……え……??
 しんぐる……あーもんど……ソース……?」

これが漫画の世界なら、クリオネの眼は蚊取り線香のようにグルグルになって回っているだろう。
頼む。というくらいだからメニューの一つなのだろうが、こんなに長い商品があるものか?
しかもそれをジャンクは覚えているとは……もう、写真だけ載せて1番とか2番で良いじゃないかと内心思う。

「それを頼むと一体どんなものが出てくるのは興味は湧いてきたよ……」

しかし実際行くと疲れそうだ……
あの長い呪文を覚えられる気もしないし。

「まぁ、食事が娯楽の一つっていうのはわかるけど、キミはその毛がかなり強いね。
 食べ物なんて、大抵のものは食べられるし栄養がそれなりにあればなんでも大して変わらないとおもうけど」

食にこだわりのある人とこだわりのない人は相容れないのかもしれない。
きっと根本的に考え方が違うのだから。
クリオネは出来立てのパンでも腐ったパンでも最終的には同じと言い出しそうだ。

「ふふっ……別に悪いなんて言ってないよ。好きなものを好きなだけ食べな。
 キミの行動にとやかく言う権利は誰にもないんだから
 ……へえ、確かに傭兵って言うだけあって良いからだしてるね」

そうして身を乗り出して、ジャンクのお腹にさわろうとするだろう。
鍛えているだけあって、いい触り心地をしていそうだ。

「でも、こんなところで脱ぎだしたら、周りの人はストリップショーが始まるんじゃないかって期待するよ?
 やってあげれば?」

と笑いながら、周りの反応を見て言う。
実際ここでジャンクがストリップショーをし始めたらクリオネは止めずに大爆笑するだろう。
253 :ジャンク [sage saga]:2013/03/19(火) 00:44:13.77 ID:BsXTY3jho
>>252
「一回、インターネットで、見たの。頼んでみたけど。
悪くない。でも、頼むの面倒だから、普通のフラペチーノにしてる」

呪文を唱えるのが面倒なのは、ジャンクも一緒のようだ。
それでも頼んでみるのは、ひとえにジャンクの食への飽くなき探究心に他ならない。

「それでも。私には、食事くらいしか幸せって、無いから。
良い服なんて、殺し合いじゃ邪魔なだけだし、綺麗な宝石なんて必要ないし。
だったらせめて。生きていくのに必要な食べ物くらいは、いいものが食べたい、だけ」

ジャンクが食に拘るのは、己に何もなくて、なにもない己が何かこだわれるものがそれくらいしか無いから。
空虚な体と心を埋めるように、ジャンクは大盛りの食事を平らげていくのである。

「……うん。スパゲッティ類は、すぐに燃料になるから、戦闘前にはよく食べる。
でも、チーズとかも、好き。伸びるし。あと、なんか、くすぐったい」

好きなものを好きなだけ食べな、をジャンクは脳内で奢ってくれるとさり気なく解釈。
ん、と一人納得したように頭を縦に振った。
そして、クリオネの手に触れるジャンクの腹の感触は、筋肉の上にさらりとのった女性的な柔らかさが有るもの。
程よく引き締まったクビレも有る脇腹は、ジャンクの外見の幼さと相まって何処と無く犯罪的だ。

「依頼だったら脱いでもいいけど。依頼じゃないから、や」

そういって、服の裾を戻して、軍服を肩に羽織った。
さり気なく此方に視線を向けてきた客達にジャンクが灰色の瞳をしばらく向けると、視線は逃げ出していく。
254 :クリオネ [saga]:2013/03/19(火) 00:54:54.94 ID:S3J7KV5Jo
>>253
「随分と短いメニューもあるんだね……いや、そのくらいが普通か……
 気になるから今度一緒に行ってみようよ。私の代わりにその長いメニューを言って欲しいんだけど」

あの長い呪文を聞いた後だと、フラペチーノがとても短く感じる。
とはいえ、そのフラペチーノとやらも何かよくわからないので、クリオネは一人で確かめに行くにはためらっている様子。
情報が不足している状況で未開の地に行くのは危険だ。

「それでも食事っていう幸せがあるだけいいね。それは生き残る上で重要な要素になり得るから……
 ま、食事以外にも楽しみを見つけたほうが年頃の女の子って感じがするけどね」

とは言うが、実際クリオネも似たようなものだ。
一点だけ違うのは、クリオネには現状一つも幸せを感じられるものが無いということか。
その一つあるか否かがどれだけ精神に影響するか。

「チーズは私も大好きだよ。食事を取らないときに酒を呑むなら間違い無くチーズだからね。
 ……んーなんかイイ気持ち……」

ジャンクのお腹を撫で回してとてもいい気持ちだ。
ほどよいプニプニとカチカチの融合がなんとも言えない。

「残念……だったら私が今依頼したら脱いでくれるの?」

イタズラっぽい笑みを浮かべてジャンクを見つめる。
そこで、注文していた料理が到着してテーブルの上に置かれた。
クリオネはグラスワインを最初に手に持って一口飲み始める。

255 :ジャンク [sage saga]:2013/03/19(火) 01:01:43.78 ID:BsXTY3jho
>>254
「それに、カスタマイズを加えると。ヘーゼルナッツダークモカチップクリームフラペチーノ、になる。
私は、いっつも、それで頼んでるけど。……今度行く、なら。教える。あの呪文は、面倒だから」

ジャンク自身、某☆バックスの注文は呪文であると認識している模様。しかたないね!
それでも、誘われれば一緒に行く程度のつもりはあるようだ。

「酒、飲んだこと無い。……酔うって、なんか。わからないから、怖い」

酒の話を聞きつつ、ジャンクは実は酒を飲んだ経験が無いと言う。
酔うという感覚を知らないようであり、未知に恐怖を感じているようだ。
それでも、ちらりちらりとクリオネの手元のワインに目線を向ける当たり、興味は有りそうだ。

「依頼料にも因る。人前に裸体を晒すリスクと、私の羞恥心などを勘案して値段は決めるけど。
値段によってはこの場で脱いでもいい。……脱ぐ?」

また、服の裾をまくり上げつつ、無表情でジャンクは首を傾げる。
死ねと言う命令でない限り、ジャンクはおおかたの命令を受け付けることだろう。
目の前に札束を置かれれば、迷うこと無くジャンクは脱ぐ。そういう人間だ。
256 :クリオネ [saga]:2013/03/19(火) 01:10:00.39 ID:S3J7KV5Jo
>>255
「ま、待ってもう分からないから……
 一緒に行った時の注文は任せるよ……客は全員その呪文を覚えてるの?」

どんな品物が出てくるか興味はあるが、あの呪文は聞いただけで目眩がしそうだ。
一緒に行った時も自分は離れて待っていたほうがいいかもしれない。

「無いの……? ふーん……」

そのセリフを聞いた途端、クリオネはにや〜っと笑い、グラスをジャンクに向かって差し出した。

「はい、じゃあ今日初挑戦だね。 ぐいっと飲んでみなよ」

白ワインだし、あまり辛いタイプではないので飲みやすい部類に入るこのワイン。
ただ、ワインには変わりないので、ジャンクの酒の強さによってはどうなるか。

「ふむ……ぜひ依頼したいけど手持ちのお金も小切手もない……
 くっ……面白そうだから500万くらいは出してもいいのに……っ!」

割と本気で悔しそうだ。
一枚くらい小切手をかける紙は持ち歩いているのだが、今日に限って持ち歩いていなかった……
こんな面白そうなことをみすみす逃すとは。
257 :ジャンク [sage saga]:2013/03/19(火) 01:18:02.59 ID:BsXTY3jho
>>256
「大抵の、人は、覚えてる。
私も、気づいたら覚えていた、から。簡単?」

こてんと首をかしげて、そんなに難しいだろうかと思案するジャンク。
食への飽くなき探究心は、一回のリピートで大抵のメニューを覚えてしまう。
ある意味便利な能力である。日常で役に立つ。
そして、差し出された白ワインのグラスを前に、僅かにたじろぐジャンク。
だが、一呼吸を置いた後に、クリオネの手からジャンクの手にグラスが移って。

「……んく……ぅ、ん、……んっ、ぷ、は……」

一息でグラスは空っぽに。
ジャンクはことり、とテーブルにグラスをおいて、息を吐いて。

「発酵したぶどうジュースの味。アルコールの味は始めてだけど。
あまり、味を楽しむものではない? 独特の風味がある、鼻に抜けるぶどうの、香りは嫌いじゃない、けど」

と、何処ぞの評論家のように感想を口にしていき。
その間も、ひょいひょいとテーブルの上の食べ物は平らげられていき。
数分後、ジャンクの周囲にはいくつかのグラスが有って、無言でつっぷす銀髪褐色ロリが居た。

「揺れる」

一言呟きつつ、テーブルに頭を乗っけたまま体を揺さぶり始めた。
特段饒舌になる訳ではないようだが、酔わないわけではないようだ。
何処と無く動作がわけわからない感じでシュールに成りつつ有った。
258 :クリオネ [saga]:2013/03/19(火) 01:25:56.79 ID:S3J7KV5Jo
>>257
「いや……少なくとも私はさっきのあれを覚えられる気がしないよ……
 初心者用のメニューがあればいいけど」

いきなりあんな長いものは難易度が高い。
挑戦するにしても、段階を踏みたいものだ。

「へぇ、いい飲みっぷりだね……初めて飲む人の飲み方じゃないけど……」

幸い、嫌いではないようだ。
確かにその味自体は感動するほど美味しいというものではないだろう。
単純な味だけを求めるのであればもっと良い飲み物がありそうだ。

しかし、結局潰れてしまったジャンク。
ペースも量も加減せずに飲むからこうなるのだ……教えないクリオネが悪といえば悪いのだが。

「それはキミが揺れてるんだよ……ちょっと、大丈夫……?」

これではなんだか芋虫のようではないか。
おかしな酔い方をするものだと、クリオネはジャンクの肩に手を延ばす。
259 :ジャンク [sage saga]:2013/03/19(火) 01:30:20.82 ID:BsXTY3jho
>>258
「………んぁう」

褐色の肌は、赤らんでもあまり目立つことはない。
だがしかし、突っ伏した顔が上がれば、よっていることは明白だった。
とろんと垂れ下がった目尻に、緩んだ表情は、印象を大きく変えるもの。

「んー……」

何故か近くにあったクリオネの腕に猫のように頬ずりするジャンク。
ひとしきり頬ずりしてから、そのままゆっくりと立ち上がって。
ふらふらゆらゆらおぼつかない足取りで歩きながら、唐突にこてんと壁に頭を押し付けながら。
ぐりん、と首をクリオネの方に向けて。

「……眠い、寝る」

と言って、謎の体勢のまま眠りはじめた。
なんとも困った酔い方だ。吐かないだけマシなのだろうが。
260 :クリオネ [saga]:2013/03/19(火) 01:41:06.24 ID:S3J7KV5Jo
>>259
「え、ちょっと寝るって……」

こんなところでどうやって寝る気だと思った瞬間にはもうジャンクは寝ていた。
それも、とてもじゃないが真似できない不思議な体制でだ……

「人間ここまで出来るのね……」

意外と人間どこでだって寝られるのかもしれない。
実際、幼い頃にはどこでだって寝ていたが、体制はちゃんと横向きだった。

「……っていってもこのまま放置する訳にはいかないでしょ」

これで外で放っておいて男に襲われたりしたら目覚めが悪い。
そこで、クリオネはジャンクを抱え上げてスラム街の方へ歩き出す。

スラム街にあるアパートの一室。
ここはクリオネが自宅以外に持っている拠点の一つで、ソファーとテーブル意外何もない部屋だが寝泊まりくらいは出来る。

「なんで私がこんなことを……」

抱えるジャンクをソファーの上に寝かせ、テーブルの上にあるメモ帳に文字を書いていく。
それをジャンクの近くに置くと、音を立てずに部屋から出て行く。
この界隈の人はこの部屋がクリオネのもので、手を出すと殺されることがわかりきっているのでひとまず安全だ。

ジャンクの近くにおいてある紙にはこう書いてあった。

−今度タダでストリップショーしてもらうよ−


//ではこんな感じでいいでしょうか
//久々に絡めてとても面白かったです、ありがとうございました
261 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/19(火) 23:42:51.76 ID:4IhPDPy+o

「ん、ふっ……ぁ、くっ……はぁ、はぁ……」

雨が降っていた。視界の先数十メートルが霞んで見えるくらいの豪雨。
車のエンジン音や人々の足音が雨音に紛れて行く―――小さな嗚咽すら。

様々な建物や施設の建つ街の構造上、どうしても死角になってしまう場所がある。
例えば路地裏、袋小路などが挙げられる。その場所は闇の掃き溜めでもあった。
夜になると街は表情を変える。昼間は笑顔でも、深夜になれば魔物の巣窟だ。

「………はぁ、ぁ……うぁ、んぁっ!」

肩で息をしながら、壁に背を預けてその場に座りこんだ。身体が言うことを聞いてくれない。
ビルとビルの隙間、人が二人並んで入れる程度のスペースで修道服の女性は震えていた。
右腕にぐるぐる巻きにされた朱い布を抑えて、歯を食いしばり頬を紅潮させ蹲る。

雨に打たれ身体は冷えきっていた。だけど、胸の奥が熱い。まるでドロドロに溶かされてる様だ。
胸に架けた十字架を握って、彼女は祈る―――早く救済を、と知れず口から漏れでた。

見ればシスターと思わしき彼女のブロンドの髪は血に塗れ、その修道服も朱い斑点が目立つ。
傷を負っているのか、座り込んだ彼女の足元には血溜まりが―――それも雨に流され、薄れていって。

それは決して死ぬ様な怪我でもない。だが、今宵の任務で彼女は何時もよりも重く後遺症を患っていた。
眼の見えない盲目の聖女は闇の中、冷えた身体と溶岩の様に火照る精神の鎮静をひたすらに待っていた―――。
262 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 00:30:39.46 ID:rdJtyL2Mo
>>261
「救済の前に死ぬよ、キミ……」

こんな場所に似つかわしくない修道女姿の女のそばに立つのは、真紅の髪にそれと同じ色のロングコート。
コートの中には白いワイシャツと下にはミニスカートを履いている少女。
黒い傘をさして、座り込む女を見下ろす姿は、よくある困った人を助けに来たようなものではなく今のところ敵とも味方ともつかないような表情だった。

この界隈は自宅も近いし、スラムへ行く最中でもよく通る場所だ。
故に、異変にも気づきやすく今日はおかしな奴が居るな……と感じてここまで来たのだ。
見れば死にかけの修道女。
このまま放置して死なすには、好奇心的な意味で少々惜しい。

「今キミを救ってくれるのは神じゃない。自分自身か……助けてくれる誰かだと思うけど」

決して自分が助けるとは言っていないが、少なくともこの状況で神様が降臨してこの修道女を助けるなどありえないだろう。

//まだいらっしゃれば
263 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 00:43:10.72 ID:+M2M+7Odo
>>262

「―――――ぁ」

雨音の中、足音が聞こえたが身動きも取れなかった。
今日はいつもよりもごっそりと”持っていかれた”―――危ない、かな。
近づく気配に気づきながらも、彼女はそこに縮こまったままであり。

「………私は、死にません」

死んで楽になるなら、もう死んでいるに違いないのだ。
私に示された救済の道が死であるならば疾うの昔に救済されている。

盲目の聖女は柔和な笑顔を浮かべて、閉じた瞳で真っ赤なロングコートの彼女を見た。
顔は青ざめ、寒さに震えながらも、頬は紅潮して―――どうやら、この症状は。

「ふ、ふふ―――んっ、神は……いらっしゃい、ますよ……っ」

こうして私の目の前に貴女を導いてくれた。それだけでも神の力は偉大だと信ずる。
盲信か狂信か、何れにせよ彼女はそういったニュアンスで彼女に笑いかけて――――ずるり、と倒れた。
薄くなった朱が交じる水たまりにうつ伏せになって、荒い息のまま昏倒。高熱で意識もままならないようだった。

この状況、このまま捨て置けば確かに死ぬのかもしれない。彼女の背中には切創があり、それが出血の要因となっていた。
更に雨に身体が冷え、体力の低下に伴う内的要因から―――端的に言えば、魂が弱り果て”生命力”が薄れていた。


/いらっしゃいますともぉ!
264 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 00:59:52.54 ID:rdJtyL2Mo
>>263
「死にかけてる奴が言うセリフじゃないよね……」

こんな状態で死なないと言われても、あまりに説得力がない。
しかし、何者かの攻撃による傷と出血によって死にかけているのかと思っていたがこれは……
確かにそれも死にかけである要因の一つなのであろうが、見たところ熱……風邪のような症状にも襲われて居るようで、それがよりこの修道女を弱々しく見せているのか。

「はっ……神なんて居るわけ……ってちょっと……!」

こちらが煽る前に、話を聞ける状況ではなくなってしまった。
つい反射的に膝を折って右手で修道女の額に触る。

「熱い……見た目以上に発熱が酷いね、それに傷も……まぁこれは塞げば死ぬほどじゃないか」

このまま放置すればこの女は死ぬ……
そう思い、右手を引いてコートのポケットの中へ。
その中には、人が死ぬときに側に居ればその魂を吸収するアミュレットがあり、それを握る。
この女の魂を取るか……そうすれば、いずれ自らの目的を達成するための礎となる。

「………………はぁ、ホント……どっかの誰かに毒されてる気がする」

次の瞬間には、もう右手はポケットから出ていて修道女の肩を持って体を起こし支えようとする。
その手には、アミュレットは握られていない。

「ちょっと動けるの? 何れにしてもここにいると死ぬよ……その、私の事務所に来なよ」

一応聞くが、この状態では動けないかもしれない。
動けないならドールを出して運ぶしか無いか。

265 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 01:14:46.84 ID:+M2M+7Odo
>>264

「います、とも―――この、示し合わせこそ……んっ……」

神がいない、という言葉は聞き捨てられないと朧気に口を動かす。
とはいえ自身が盲信し狂信しようと無理矢理に押し付けるつもりはない。
発熱もあってか、それ以上の言葉はなく―――応答の後は静かに意識を閉じていって。

冷えた掌が額に当たる。それが目の前にいる彼女の手なのだろうけど、反応なんて出来なくて。
然しながら、不思議と彼女に対する危機はなかった。恐らくではあるが、彼女は善人の部類の人間ではないか。
そうでなくとも今この場で自分を殺すという選択肢は無いように感じた―――完全に勘だけども。

「―――――――だい、じょ」

弱々しく紡がれた言葉は最後まで発せられる事はなかった。
ぷつん、と目の前が真っ暗になった気がした。盲目であるゆえ、そもそも真っ暗なのだけど。
意識が強制的に閉じられた、と言って良い。何にせよそれは緊張の糸が完全に切れたと言うことでもあった。

詰まる所、肩を貸され自分の身を心配してくれる彼女に委ねても良いと思えたのだ。
安堵、という感情が意識を手放す前の彼女の最後の記憶だった―――後は為すがままに事務所へと運ばれるだろう。

酷い発熱、全身ずぶ濡れ、背中にナイフの様な刃物による30cm程の軽い切創。
修道服に染み付いた血はどうやら彼女のものよりも、何者かの血の方が割合が多い様だった。
266 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 01:35:30.69 ID:rdJtyL2Mo
>>265
「私が味方だってわからないのに示し合わせも何も無いでしょ……」

どうやら見た目通り、彼女は神様第一の熱心な信者のようだ。
このような状況でも、自分の言葉に反論してみせるのだから、なかなかなものだ。

「……大丈夫じゃないじゃん……」

半ば呆れつつも、こちらに体重をかける修道女の体を支える。
どうしてこんな人助けみたいな事をするハメになるのか……ただ、流石にこのまま放置して死なれては目覚めが悪い。

そこで、修道女の体より少し大きめのドールをいったい生成し、修道女をおんぶする。
ドールに体温は無いため、人肌で温めることは出来ないがそこまで面倒見切れない。
頭の部分が広がり傘のようになっているため、背中に居る修道女が濡れることはない。
少々マヌケなドールだが、戦闘をするわけでもないのでまぁいいだろう。

そこから少し歩くと、古いビルが一つ。
スラム街と表の世界の境目辺りにあるそのビルの4階に、クリオネが何でも屋をやっている事務所がある。
階段を上がるとすぐにドアが一つ。その他にはドアが無くこの階にはクリオネの事務所しか無いというのが分かる。

事務所に入ると、そこにはコーヒーの匂い。
壁際においてある棚に、コーヒーメーカーが置いてあり何時でも飲めるのだ。
入り口から見て左手前には背の低いテーブルとソファーが2つ。ここでクライアントと話をする。
正面最奥には、長方形の机とちょっと高そうな椅子。ここで普段クリオネは書類仕事などをしている。

今回、修道女を連れてきたのはここを見せるためではない。
部屋の右手に、一つのドアがあり、別の部屋に繋がっている。
クリオネはそのドアを開けて中へ入る。修道女を背負うドールも続けて中へ……
その中は、事務所とは全く異なる空間で、完全にマンションの一室のような生活空間だった。
入り口から見て左手にキッチン。正面には背の高い椅子とテーブル。ここでご飯を食べれそうだ。
左手にはソファーやテレビなど……そしてもう一つ扉。
その扉を開けばようやく寝室。とは言え、クローゼットやベッドなど最低限のものしか無い。
ベッドは黒いフレームに白い毛布となかなかオシャレだ。

クリオネは毛布を取っ払って修道女をうつ伏せに寝かせる。
役目を終えたドールは、そのまま消え去ってしまう。

「さて……何から手をつけようか……」

とりあえず、タオルや包帯などが必要なので隣の部屋へと取りに向かってしまう。
267 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 01:55:09.95 ID:+M2M+7Odo
>>266

「………んっ、ぁ」

何かにおぶさる衝撃に意識が僅かに戻る―――なんだろう、これは。
人形、の様な感覚。温もりはなく、人型で、硬くて。肌で感じた感覚から割り出せるのはそれくらい。
ベアトリスはまた、意識を闇に沈めて行く。温もりはないが、なんだか安心感が―――。



「―――――ぁ、くしゅんっ……ベッド?」

ドールによって寝室へと運びこまれたベアトリスは自分のくしゃみで意識を取り戻した。
朦朧とはしているが、自分が横になっているのがベッドであると理解する。どうやら、此処は寝室の様だ。
間違いなく、彼女が運んでくれたのだろう―――が、同時に気づいた事があった。

「あっ、濡れちゃいます―――痛っ」

ベッドを自分の修道服で濡らしてしまう。既に遅いが、シーツから何までぐしょぐしょだ。
とはいえこれ以上、被害を広げるわけにはいかない―――力の入りにくい身体を起こして、修道服をゆっくり脱ぎ始める。
ずるり、と上半身から脱いで行くが、身体の言うことが聞かないのかどうにもぎこちなく、背中の傷を痛めてしまう。

「……く、ぁ……はぁ、はぁ……えっと、誰も、いない?」

意識を取り戻した時には丁度クリオネが部屋を出た所だった。気配を感じないので、ベッドに倒れ込んだまま思考を纏める。
だが、熱に侵された頭はどうやらまともには動かないらしい。上半身、豊満な胸をはだけたまま横になりながら呆然としていた―――もぞもぞ、と服を脱ごうと悪戦苦闘。
268 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 02:10:31.59 ID:rdJtyL2Mo
>>267
必要なのはタオルと治療道具と……
幸い、自分がいつ怪我を負ってもおかしくない立場にいるため、そういったものの準備はあった。

「ああ、そうだお風呂……はやめておいたほうがいいか。とりあえずお湯。後は……お粥?
 ……お粥を作っといて、この前買った料理本があるでしょそれ見て……」

自分ではない誰かに指示を飛ばす。
この声は寝室からでも聞こえるかもしれないが、誰に指示をしたのかは分からないだろう。
電気ケトルで常にお湯があるため、それを耐熱性のある洗面器に入れる。
少々熱いが、すぐに冷めるだろう。

そうして必要そうなものを集めた後に、再び寝室へと戻る。
するとそこに居るのは、服を脱ぎかけでうごめく謎の物体……

「それは……誘ってるの……? そういうのは体を直してからの方がいいと思うけど……」

ベッドの上に半裸の女性。場合によっては喜ばしいことだが、この場合はというとなぜ大人しくしていないのかという感想が真っ先に浮かぶ。
仕方なく近づいて、ひとまず持ってきた色々をベッド横の小さな棚の上などに置く。
そうして修道服を脱ぎやすいように、頭の方から引っ張ろうとするだろう。
269 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 02:27:59.93 ID:+M2M+7Odo
>>268

「ん……さっきの、人……?」

やっぱり、あの人は善人なんだろう。少なくとも、私はそう思ってしまう。
彼女の行為はどう見ても善行であるし、聞こえてくる声はベアトリスを気遣うものだから。
そこまでお世話になってしまうとは、若干申し訳なくもある―――とはいえ、虚脱状態ではどうにもならないか。

とりあえず、最低限このずぶ濡れの衣服は脱いでおかないと。
熱で侵された頭だからなのだろうか。それとも元から天然気質だからだろうか。
着替えがあるわけもなし。その柔肌を晒す事になるという事実に―――気づけなかった辺り、熱が酷い様だった。

「―――――ひゃっ、ち、ちがいますから!」

半裸もいいところ、白い肩が見え、うつ伏せの体勢故に肩甲骨が露出していた。
突然、声をかけられて「誘っているのか」と言われて驚いてしまう。とはいえこの脱ぎかけの衣服、どうしたものか。

「ベッドを、濡らしてはいけない、と思って―――んっ、んー……あ、有難うございます……」

弁明しながらも、ベアトリスはもぞもぞ動いていた。脱ごうとしたり、着直そうとしたり。どうやら少しパニックの様だ。
いやしかし、女性が女性に向かって誘っているのなどと。いや、しかしそういう道がある事も知っているけど……。

「…………あ、あの。ご迷惑を、お掛けします。私は、その……ベアトリス・セイクリッドと申します」

「L.M.G.の異端審問官を務めております……えっと、貴女は……?」

結局、頭の方からクリオネに修道服を剥ぎ取られる形で事態は収束する。
脱がせてみれば、下着は非常に簡素ではあるが、手触りの良さそうなシルク―――スタイルは良い、と言って過言ではないだろう。
そして背中の切創だけではなく、身体の至る所に打撲痕も見られる。白い肌が、赤黒く変色している箇所が幾つかあった。

肌が露出している事が恥ずかしいのか、傷跡を見られるのが嫌なのか、毛布で身体を隠す様に縮こまる。
下着姿と右腕に巻かれた朱い布以外には何も纏っていないのだから、当然の反応だろうか―――熱に侵されている事もあり、直ぐに毛布は剥ぎ取れるが。
簡単に謝罪と自己紹介を交えつつ、ベアトリスは目の前に居る女性に名を尋ねていた。にこり、と弱々しく笑みを浮かべて。
270 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 02:43:18.35 ID:rdJtyL2Mo
>>269
「なんだ、違ったの? 助けてくれたお礼をしてくれるのかと思ったのに」

イタズラっぽい笑みを浮かべながら、剥ぎ取った修道服をベッド横の床に置く。
続いて、乾燥しているバスタオルを手にとって広げ彼女に一歩近づく。
お湯に付けたタオルで体を温めながら汚れを落とすのもいいが、まずは冷たい水分を取ってしまおう。
傷は急を要する者でも無さそうだし、焦らずとも平気そうだ。

「異端審問官……珍しい役職だね。
 私はクリオネだよ、ベアトリス」

異端審問官の話は聞いたことがあるが、実際どのような活動をしているのかはよく知らない。
文字通り、異端を狩るものであれば自分と敵対する者なのではないだろうか。
まぁその時はその時だ、ここまで連れてきてしまった以上面倒を見るしか無い。

「なにやってんの? それじゃあ体拭けないでしょ……」

これ以上濡れたまま放置して体温が下がれば、病状は悪化する。
ここは強引にでも行かせてもらう……
ベアトリスから毛布を剥ぎとって、自分もベッドに腰掛けてベアトリスに寄り添う。
そうして近い位置にあるベアトリスの右腕を手にとって拭き始めるだろう。
右腕から肩へ、肩から左腕へ……
そうした後は、今度は胴へ。
しかし、そうなると下着が邪魔だ。下着も濡れている為、このままだとブラのホックを外して下着も脱がせてしまうだろう。
271 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 02:56:48.29 ID:+M2M+7Odo
>>270

「ち、違います!そういったお礼は、致しません!」

顔を真っ赤にして反論する姿は弱々しくも凛とした佇まいであった。
神に誓ってそういった見返りを与える事はない、と断言するベアトリス。
なんだか調子が狂って来た。その所為か熱は確かにあるのだけど、幾分か頭は覚醒した気がする。

「えぇ、まぁ……あまり、ありふれた職ではないでしょうね」

「クリオネさん、ですね……有難うございます、あのままだと、危なかったかもしれませんね」

死なない、と言いながらもあのままであるなら間違い無く死んでいただろう。
だが、彼女の言う”死なない”とはこういった”状況”に陥る事で死ぬ事はないという事だ。
つまり、クリオネがベアトリスの目の前に現れた時点で死ぬ事はないと確信していた――死ぬなら、疾うの昔に死んで楽になっているんだ。

「――――――っ!?」

毛布にしがみつきながら、礼を言うが否や―――まぁ、あっという間に剥がされてしまった。
いや、確かにクリオネの言う事は正しいのだけれども。如何に女性同士であっても、ベアトリスには羞恥心という物がある。

「その、私、自分で―――あっ、ちょっ、あの……っ!」

自分でやる、と言っても出来ないのは目に見えて明らかだった。熱で身体に力が入らないからこそ、服も脱げなかったのだし。
結局、顔を真赤にしながらされるがままだった。クリオネの行為は善意であるし、正当なものだろう。だから、暫くすれば観念したように静かになった。
なんだか不思議な気分でもある。盲目故に、触れられている箇所が敏感に理解出来る。恥ずかしそうに、押し黙ったままで。

ブラのホック、下着と脱がされる時にはやはり慌てふためいたが、気力がないのかまた静かになる―――。
溢れんばかりの胸は抑制を失い顕になる。世の男性が大艦巨砲主義が大多数である原因が、今此処に。
押し黙り、されるがままに……気を張ったのか、羞恥心にやられたのか。身体を拭き終わる頃にはベアトリスはぐったりとしていた。
272 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 03:21:04.56 ID:rdJtyL2Mo
>>271
「くく……なんだ、ざーんねん」

笑いながら言うセリフは、そこまで本気ではないという意思が感じられるかもしれない。
クリオネとしては、そういったお礼の申し出は受け取るが、さすが聖職者だ、ガードが硬い。
しかしこのベアトリスはからかうと面白い反応をするな……と内心面白がっているクリオネ。
最近はなぜか弄られ役になることが多いが、本来はこちら側のはずなのだ。

「別に……あのまま死なれても目覚めが悪いから。
 キミのためじゃないよ、あくまで私のため」

自分が人助けをしたということを素直に受け入れられないので、これは自分の目覚めが悪くならないようにやっただけだと言い聞かせる。
結果的に人助けをしたことには変わらないのだが、そこは素直に言えない性格をしている。

「なに? もしかして恥ずかしいの? いいじゃん、別に減るものでもないし……」

恥ずかしがるベアトリスに遠慮すること無く、全身の水気を取っていく。
観念したようで、あまり騒がなくなった後は実に拭きやすくさっさと体を拭き終えた。
水気を取ったら、今度は新しいタオルをお湯に付け、温かいタオルでもう一度先程よりも丁寧に体を拭いていく。
体を温めるのと、汚れを取るのを同時にしているので、それなりにやさしい手つきで全身をマッサージする様にタオルを動かしていく。

傷口もついでにと、温かいタオルで軽く抑えるようにして血や汚れを取っていく。
その手つきは割と慣れていて、あまり痛みは感じないはずだ。それどころか、温かいタオルのマッサージに気持ちよさを覚えるかもしれない。
そうして、近くにおいてある救急セットから消毒液やガーゼなど取ると同じく慣れた手つきで傷の処置をしていく。


その時、コンコン……と扉を二回ノックする音が聞こえる。
良いよ……とクリオネが返事をすると入ってくるのはメイド服を着た黒髪のメイドが現れた。
髪は短めで、肩にかからないくらい。キリッとした表情の中にどこか優しさのある顔つきだ。
手にはおぼんを持っていて、容器に入っているのはお粥だ。

「お嬢様……お客様のお食事が出来ました」

「じゃあ適当に置いておいて……」

そう指示すると、メイドは”はい……”と返事をしてベッド近くの棚におぼんを置くと部屋を去っていった。
クリオネはと言うと、近くのクローゼットから上下の下着とワイシャツを取って来てベアトリスへと渡す。

「これ着て……あんまり服持ってないからこれしかないけど。
 着たらご飯食べれる?」

修道服と先ほど外したブラをかき集める。
ショーツも脱げばそれを手にとって洗濯する気だ。
273 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 03:38:22.09 ID:+M2M+7Odo
>>272

クリオネの語調からなんだか誂われている気がした。
確かにこういう反応をすれば、面白がって付け上がるのだろうか。
でも、どうしてもそういう反応をしてしまうし―――何より、まぁ、慣れていた。
ベアトリスは良くも悪くも虐げられる存在であり、受け入れる人間なのだから。

「………難しいこと、ではないのです。貴女が自分の為、と言った行為が……」

「私の為にもなったなら、それは素晴らしい事です―――だから、有難うございます」

別に宗教じみた話ではない。自己犠牲だとか自己満足だとかそういった類の話でもない。
純粋に両者の幸福を考えるならば、それは素晴らしい事だ……だが、どうやら目の前の彼女は素直じゃないらしい。
くすり、と悪戯する子供を見て苦笑するような、そんな柔和な笑顔を浮かべていた。

「恥ずか、しいに……決まってますっ! 減る、とか……そ、そういう、んっ!」

「私の……精神が、磨り減ります……ぁ、ん!」

減る、というなら正しくそうだ。羞恥により精神がすり減っていくというもの。度し難い羞恥に襲われているのだから。
丁寧に身体を拭き取られ、何度かタオルを変えて、更に丁寧に―――正直に言えば、気持ちが良いのだ。
傷口の汚れを拭き取る仕草までも、不思議と快感を覚えるものだった。少し、意志に反した声を漏らして口を抑えてしまう。
流石に消毒された時は痛みしか感じず、少し眼を潤ませてしまうが、抵抗はしなかった。

コンコン、とノックの音が響いてベアトリスはびくんと身体を震わせた。
まさか、彼女以外に誰かこの家に居たとは―――ましてやこの格好。みるみる彼女の顔は真っ赤に。

クリオネとメイドと思わしき女性との会話を聞きながら、ベアトリスはゆっくりと毛布へと逃げていた。
身体の汚れが落ちて、綺麗になった所為か気持ち身体は楽になっていた。後は――――。

「あ、すいません……何から、何まで。えぇ、身体も暖まってきましたから、渡してくれれば一人で食べれます」

開かぬ眼ではあるが、器用なものだった。クリオネに渡された服をゆっくりと着けて行く。
一瞬、ショーツを脱ぐか迷ったが渡された事もあって、履き替える―――これは、洗濯して返そう……。

そうして、着替えを終えたベアトリスは毛布にまた下半身を潜らせ、上体を起こしてクリオネから容器を渡されるのを待つ。
手にさえ持たせてくれたなら、彼女は器用に食事を行うだろう。その辺りは盲目、とは思えないスムーズな動きだ。
274 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 03:56:48.55 ID:rdJtyL2Mo
>>273
「な、何笑ってるのさ……勘違いしないで、本当にキミのためとかじゃないから。
 私の為……私の……為だから」

そのベアトリスの笑顔は、何かこちらの真意を見抜いているかのような気がして気に入らなかった。
つい視線を外して、自分にも言い聞かせるようにつぶやく。
礼を言われることに慣れていないのだ。

「そういう色っぽい声を出すと襲っちゃうよ。
 キミを助けたのはただの善人じゃないんだからね……」

ここで自分が男だったらどうするだろうと考えてみる。
この状況では自制するのか、それとも……むしろ、ベアトリスを拾ったのが自分ではなくて男だったら……
うん、面白いことになりそうだ。

「あのメイドは尚更恥ずかしがること無いよ……あれは私が作った物で頭はほとんど私と繋がってるから、実質私が二人居るようなものだと思ってくれれば……」

そう、あのメイドはクリオネが作ったドールだ。
ただし、凄まじく高性能なもので、このビルの階層には自分の魔力波を増幅させる術式が施されている。
このビルの4階でだけ、クリオネの能力は強化されるのだ。
その状態で作ったあのドールは、クリオネの能力の最上位のドールで完全自立型のドールだ。
ほぼ自我と同じ物を持ち、思考もする。ただし、記憶されているものはクリオネの頭のなかと同じなので、基本的にクリオネが知らないことは知らない。
その上、このビルの4階から出るとただのドールに戻るため、仕事や生活上の雑用をさせるしか無いというのが現状。
仕事に持っていけたらこの上なく楽ができるというのに……

「そ……じゃあはい。多分まともに作れてると思うけど……まずかったら後でメイドにお仕置きしていいよ」

クリオネはベアトリスの手に、おかゆが入った容器を持たせる。
おかゆは、卵と鮭が入ったどっちつかずのおかゆだ。
おかゆは熱いが、手に持つ部分が熱くならないようになっている容器なので問題なく持てるだろう。

「じゃあ洗濯してくるから……」

といって、クリオネは修道服とブラジャー、ショーツを持って部屋を出て行ってしまう。
275 :ベアトリス・セイクリッド [sage saga]:2013/03/20(水) 04:17:00.87 ID:+M2M+7Odo
>>274

「はい、わかっています。では、私も私の為に、貴女にお礼を言ってるまで、です」

お礼を言われなれていない、という彼女はとても純粋な人間に思えた。
素性を知らないし、どういう人間か分からないけど―――可愛らしい人間、か。

「襲……っ!?」

襲うと言われて、おろおろと狼狽する。本気じゃないにせよ、今ならされなかねない。
クリオネが思考する一方、ベアトリスもまた考えていた。もし、クリオネじゃなくて質の悪い男達だったなら。
この世に良い人間ばかりでないのは身を持って知っている。もしそうだったなら、今頃は――恐ろしいな、と苦笑して。

「は、はぁ……クリオネさんは、人形師さんなのでしょうか?」

ふと、意識を集中させれば魔力の流れを感じた―――魔術の流れを汲む人形師だろうか?
この建物全体に強力な魔術増幅の結界が敷かれている事に気づき、此処が工房なのだろうかと思考する。
なんにせよ、クリオネが唯の女性であるという訳では無さそうだ、と感心するように辺りを伺っていた。

「はい、ありがとう―――あっ、はい!お願いします……」

渡された容器から漂う匂いに、疲弊した身体は単純に反応を示した。ベアトリスの腹で仔虫が鳴いた。
そうして、クリオネが衣類を持って洗濯に向かう―――自分の下着類も持っているのか、と思うとやはり気恥ずかしい。


「………ん、美味しい。今日は、大変でしたね……まったく、この子は……」

クリオネが部屋から出た後、一人つぶやきながら粥を頬張る。疲れた身体に染みる、温かい味だった。
熱は下がる気配はないが、身体が清潔になり大分楽になった。温まった身体は発汗し、ゆっくりと体調を整えて行く。
ベアトリスはこの発熱が豪雨によるものだけでないと知っていた―――この右腕の”厄災”の副作用の他にはない。

この抑制の聖骸布を解けば現れる聖遺物は使用すればするほど彼女の魂を喰っていく。
今宵の発熱もその喰われた魂が徐々に元の形に戻る為の副作用。今の彼女の身体には限りなく魔力がなくなっていた―――。


「―――――ん、ぅ」

クリオネが戻る頃、粥を平らげたベアトリスはベッドで横になって深い眠りについていた。
疲労感がどっと現れたのか静かに泥のように。発熱により時々魘されるし、悪夢の所為か涙すら流す事もある。
それでも最後には幸福そうな顔で微睡み続ける―――結局、起きたのは翌日の早朝であった。


/ね、眠いです!この辺りで〆させて頂きますね!ありがとうございましたっ
276 :クリオネ [saga]:2013/03/20(水) 04:29:28.79 ID:rdJtyL2Mo
>>275
「あ……あっそ、好きにすれば?」

それでもなお礼を言うのであれば、こちらとしてはどうすることも出来ない。
クリオネはそっぽを向いて、それ以上何も言わなかった。

「人形師……まぁ人形師だね。そんな言い方をされたのは初めてだけど」

ただ、一般的な人形師のそれとは異なるだろうが……
人形師は大抵、自分の作る人形にこだわりを持って魂を込めるが、クリオネにとっての人形はただの駒。使い捨てだ。
あまり入れこむとろくな事にならさそうだから。

ベアトリスの服を持って部屋をでる。
風呂場の近くにある洗濯機に全部入れ、洗剤も入れてスイッチ・オン。
修道服は破れたりしていたので後で直す必要があるが、生憎とクリオネに裁縫は出来ない。
これは自分でやってもらうしか無い。

洗濯機のスイッチを入れて寝室へと戻ると、そこに聞こえるのは安らかな寝息。
どうやら食べてすぐに寝てしまったようだ。
あったばかりの何処の馬の骨とも分からない人の家でこうも寝てしまうとは……

「全く……ホントに襲うよ……?」

クリオネはベアトリスの毛布をかけ直すと、空いた食器を持って部屋を出る。
メイドに食器の片付けを任せると、事務所のパソコンの前に座り裁縫のページを調べるのだった。

//お疲れ様でしたー楽しかったです。
277 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/20(水) 18:14:27.78 ID:vnaU8j8Bo
【商店街 ハナマル金物店】
鍛冶には自信がある。
駄洒落になるが家事もそこそこできるが、今は鍛冶の方だ。
情勢が情勢なだけに店に武器を持ってくる客も多い。
とはいえボルテクスは鍛冶職人であって武器職人ではない。
何でもできるが、何もかもが中途半端なのだ。
日用雑貨が一番性にあっている。

溜息一つ。

「今日は店じまいにして商店街のルーフを仕上げようかな。」
店頭で呟いて溜息もう一つ。
金属の勉強をもっとすべき時が来たのかもしれない。
が、自分以外の良い鍛冶師と知り合えないものだろうか。
それも武器職人の知り合いが欲しいものだ。
278 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/20(水) 19:30:31.16 ID:vnaU8j8Bo
 ふと思う。
「もしくは経験かな…。」
 金属ならば戦でも日常でも毎日のように叩いていた。
 今の生活もそんな具合だ。
 武器に手を出さなかったのだから武器を仕上げられない。直せない。
 しかし金属の扱いならばそれなりには心得ているつもりだ。
 研ぎは流石に殆ど未経験だが、その前迄の工程なら他でやった事もある。
「この世界のこの場所のこの時代で仕事をするなら、覚えておかないとやっていけないね。」
 そろそろ欲しい物を買う金も貯まって来た。炉を購入する資金だ。
 一人で何かを修めるのは不可能に近いが、練習はしておいて損はない。
「店は閉めて、でもちょっと商店街に出るか。」
 向かう先は石工と建築屋の店。
 日も落ちて薄明かりに照らされた商店街を歩く長身の女性。
「まだ夜は寒いな。」
 今日は誰かと関わるのか、誰とも関わらないのか。

 例えば肩が当たる人がいるかもしれない。
 落し物をする人がいるかもしれない。
 彼女が何かを落としてそれに気付くかもしれない。 
279 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 20:17:23.13 ID:aTfphbw6o
「あは、あはははは!」

賑わう夜の街の外れにひっそりとそびえ立つ廃ビルや瓦礫の山、それに今は使われていない古い井戸
戦争の爪痕と思わしき、今となっては誰も寄り付かないようなこの街、所謂ゴーストタウンだ

そんな廃ビルの屋上のフェンスから、その小さな身体を乗り出して、誰の耳にも届くことのないのかもしれない、そんな空しい笑い声をあげながら活気に満ち溢れている街を眺める
向こうの街から届くネオンの光が、星空と共に僅かにこの場所を照らす

もしも人がいれば頭のねじが取れた子ども、もしくは今から死のうとしている子どもとでも映るのだろうか
しかしここには人はいない、まわりの目を気にする必要もまったくない
ここで干からびてもきっと誰の目にも止まらない
280 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/20(水) 20:38:56.19 ID:vnaU8j8Bo
>>279
「クッ…。
 人が寝ている所で、やかましいぞ!!」
 低く、太く、重く、しかし伸びる声。
 大きな声が廃ビルの上で鳴り響く。

「叫びたいならカラオケか貸しスタジオにでも行きやがれ!」
 人気のない廃ビル屋上に少女一人、人は二人。
 この巨漢は完全に気配を消してそこで眠っていた。
 少女の甲高い笑い声に叩き起こされたようで機嫌が悪い。
281 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 20:49:40.59 ID:aTfphbw6o
>>280
「……まさか人がいるかだなんて思わないもん!」

伸びる声が耳に届き漢に目をやるのは
金属性の大きな箱を背負い、ポーチを肩からぶら下げて
ブロンドの髪に黒い髪留めをした、そんな小さな女の子
身なりは一見整っているように見える

「それに叫ぶだけなのにそんなところにいくなんて、お金の無駄!」

口ぶりだけだと本当に叫びたかっただけのように見える
頬を膨らませて抗議の声をあげている
282 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/20(水) 20:58:27.16 ID:vnaU8j8Bo
>>281
「あ〜なんでこんな所に餓鬼が居るんだ。
 人がいるとは思わなかっただと?
 こっちの台詞だぜ。目が覚めちまったよ。」
 あくびをしながらゆっくり立ち上がる。
 やはり鬼塚はでかい。
 エリアを見下ろしながら忠告する。
「廃屋はお譲ちゃんの遊び場にしては危ないぜ。
 カラオケ代すら勿体無いなら家に帰りな。
 最近は化物も増えているんだ。
 取って食われるぞ?」
283 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 21:13:13.50 ID:aTfphbw6o
>>282
立ち上がった大男の大きいこと
やや荒っぽく感じられる彼のその口調とその体格が、少女には
非力な人を取って食ってしまいそうな巨人に映る

「化け物って……あなたのこと?」
普段ならばお兄さんないしお姉さんと人を呼んでいる
しかし目の前の巨人に対して、そんな風に呼ぶ心の余裕などどこにもなかった
僅かな声の震えが、少女にとっての彼の印象を表している

彼のいう通りだ、ほんの少しの油断がこのような事態を引き起こすとは

284 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/20(水) 21:19:06.26 ID:vnaU8j8Bo
>>283
「ふん」
 化物呼ばわりされて軽く笑う。
 ただ近づいてくるだけで威圧的な男だ。
「俺もある意味そう、化物だろうな。
 いいから家に帰るん…動くな!!じっとしていろ!!」
 目の前の巨漢が突然エリアに迫り覆いかぶさるように抱きしめようとしてきた。
 避けるべきか、そのままにしているべきか。この場に複数の殺気が満ちる。
285 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 21:27:34.75 ID:aTfphbw6o
>>284
「……!」
今日はのんびり景色を眺めて適当に過ごす予定を立てていたはず
しかし悲しいがな適当というわけにはいかなくなったようだ

平和に浸っていても、体に染みつき離れない警戒心
それが少女に警笛を鳴らす
男の態度からして、彼にも想定外の出来事であるかもしれない
威圧的なその態度に一種の恐れを抱いていたものの、
そういったことも言っていられないようだ

そのまま抱きしめられておく少女
ポーチに手を入れておきながら
286 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/20(水) 21:49:42.48 ID:vnaU8j8Bo
>>285
 何か鋭い物が肉を貫く鈍い音が数回聞こえる。
「ここから階下へ走って逃げられるか?」
 大男がエリアに尋ねる。口からは血が流れている。
「誰かを庇いながら…戦う余裕はない相手が来た。
 全速力で走って階段を降りて逃げる自信はあるか?」

 宙に浮く東洋人の男が鬼塚の肩越しに見える。
 手入れの行き届いた髪に化粧をした不気味な男。
『思ってもいない展開ね、魔法警察シオン。
 こんな廃ビルにわたし達をおびき寄せようとしていたのに、
 あらあら、民間人を庇いながら戦うなんてあなたでも無理でしょう?
 これってチャンスよね?わたし達のチャンスじゃないかしら。』
 周囲に現れる五人の男達。全て何かが出来そうな雰囲気の五人。
 今鬼塚とエリアは六人の異能に囲まれている。

 鬼塚が叫ぶ。
「時間は作る。逃げろお譲ちゃん。三秒数える。三、二、一で走って逃げろ。
 いいか。三…二…」

『さあ!ヤクを返してもらうわよ!!死になさいシオンと目撃者!!』

「一!行け!お譲ちゃん!!…変身!!」
- 変身の要請受理 -
 大男の身体が閃光を放ちオカマと配下の五人の目眩ましになる。
「突っ走って逃げろ!!」
287 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 22:06:32.29 ID:ZFlI+nSbo
>>286
今目の前で起こっている出来事を整理するなら
目の前の大男は警察で、自分はなんらかの作戦に
知らず知らずのうちに巻き込まれていた
ということになるのだろうか

ゆっくりしている暇がないことは確かだ
自分達を囲んでいる相手は本当の悪人である

「うん」
うなずき、そして合図とともに一目散に駆けだす
金属の箱を片手に持ちかえて
能力者が相手では流石に分が悪い
銃でも習っておけばよかったと、今になって後悔する

彼のことも心配ではあるものの、逃げろというのであれば逃げるだけだ
態勢を立て直すにしろ、とりあえず逃げなければ
288 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/20(水) 22:26:12.60 ID:vnaU8j8Bo
>>287
「タオの連中は血の滲むような修行で異能になった連中だ!
 ネイティブより体系立っているが、自然に能力を出せない!
 ラグという形で隙がある!全速力で逃げれば逃げられる!!」
 男の声が甲高く変わった。いや、女の、むしろ女の子の声だ。

「さあ、ポリスレディオ!」
- 装備を選択して下さい -
「プロテクター、対象はあの女の子だ!」
- 了解しました -

エリアの後からさっきのオカマが追いかけてくる。
『言ったでしょお!!目撃者も生かして返さないって!』
どういう脚力なのか壁すら踏みしめエリアを追いかけてくる。
『お前達はシオンを仕留めなさい!わたしはあの子を追いかけるわよ!』
エリアに迫るオカマ。武器は円月輪。動きが速い。
『あなた可愛らしい顔をしているわね。その血を紅にお化粧がしたいわぁ…!』
迫るオカマと謎の金属片。金属片もエリアめがけて飛んできている。
289 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 22:35:57.61 ID:ZFlI+nSbo
>>288
「オカマ嫌いオカマ嫌いオカマ嫌い!」
悲鳴にも見た声をあげながらも、振り向いてみれば金属片が飛んできている
――あの吸血鬼といいこのオカマといい、
どうしてオカマという人種は皆女の子を汚そうとするのだろうか

ポーチから牽制を兼ねて数本のナイフを取り出し、オカマに投げつける
そのあとに左手に持った箱から血で赤く湿った大鎌を取り出し、右手で持つ
そして左手に持った金属の箱を盾がわりに利用しようと構える
290 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/20(水) 22:50:26.10 ID:vnaU8j8Bo
>>289
『オホホホ!』
 オカマの異能は単純な念力。
 投擲されたナイフを睨んだ順番に落としていく。
『小賢しい小娘ね!そんな大鎌と重そうな箱をどう振り回すつもりなの?』
 両腕の円月輪をエリアに投げつける。
 それは左右からエリアを攻撃しようとする。

 そして… 金 属 片 が 円 月 輪 を 弾 く 。
 金属片はエリアに向かって飛んでいき盾のように変形する。

「聞こえるか嬢ちゃん!俺はお譲ちゃんに防護服の異能を使った!
 ちょっとやそっとじゃ壊れはしねえ!そのまま逃げろ!!」
 女の子の声がする。口調はさっきの大男に似ている。
 というよりエリアは詩音がシオンに返信する時の声変わりを聞いている。

 ちょっとやそっとじゃ壊れない防護服。
「いいか!安全な所まで逃げろ!」
 エリアに攻撃手段があればこれは援護。戦える。
「相手が諦めるまで逃げるんだ!嬢ちゃん!」
 相手をぶちのめす用意にもなっている。

 ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ ジャリ …。
 金属片のような破片は完全にエリアを包み込んでロングジャケットのようになった。
291 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 23:08:14.29 ID:ZFlI+nSbo
>>290
刃が赤く輝いているナイフは地面に落ちる

「……声が変わった気がしたのって、気のせいじゃなかったんだ」

自身に纏われるのは金属片
これは戦えということなのだろうか
逃げろと言われているがこれは……

「これってさ……」

……オカマに復讐する機会を得たということなのだろうか

属の箱を投げ捨てる
今の状態の少女には必要のないものだ


(……賭けてみよう)
立ち止まり、ポーチを探る少女
そこから取り出したのは手榴弾

栓を抜き地面に転がせば、それは白色の煙を放ち始める
292 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/20(水) 23:20:23.69 ID:vnaU8j8Bo
>>291
投げつけられたものを見てオカマは推理する。
これは煙幕なのか閃光弾なのか、もしくは手榴弾?
『あ〜ら、これは何なのかしら。怖い怖いわ〜。』

目の前に居るのはよくわからないロングジャケットを羽織った少女。
そして投げつけられた物が例え手榴弾であっても、
このオカマには硬気功の排打で弾く自信がある。
関係無い。目の前の小娘を切り刻んでそして次はシオンを潰す。
最もそのシオンは部下達が倒してしまっているかもしれないが。
『バイバイお譲ちゃん。巻き込んじゃってごめんね♪』
円月輪を使ってエリアに接近、大鎌のリーチの内側で斬りかかる。
293 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/20(水) 23:37:45.47 ID:ZFlI+nSbo
>>292
「うーん、接近されるとまずいのは困りもの」
一撃なら耐えられるか……?
いや、不確定な可能性に賭けるのはまずい
それにロングジャケット以外の部位を狙われる可能性も否定できない

やがて白い煙は二人を包むようにして広がりだす
煙幕と見て間違いなさそうである

完全に接近される前に、
この場所にいる二人の姿を覆い隠すような白い煙に紛れて、脇に逸れようと試みる
光り物を手に持っていないために目立つことはないはず
相手もこちらの正確な場所がわからなければ正確に急所を狙うことは難しいだろう
そこから逃げることも、反撃に転じることも考えてはいた

……もっとも、これも賭けであった
下手を打つとここで少女の人生も終わりかねないものだが
294 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/20(水) 23:50:37.67 ID:vnaU8j8Bo
>>293
『オホホホ!煙幕だなんて、ただの目眩まし。
 お嬢さんの終わりよ!』
 オカマの異能は単純なサイコキネシス。
 煙幕が拡がる前に円月輪を射出して振り回しエリアを数回撫で斬る。

 ギィン!…シャカシャカと音を立てロングジャケットが再生する。
 ガギィン!…シャカシャカと音を立てロングジャケットが再生する。
 ギギィン!!…シャカシャカと音を立てロングジャケットが再生する。

『何…これ?何なのよこれは?!
 当たった手応えはあるのに、切り裂いた手応えがないわ?!』
 オカマが狼狽し始める。そしてついに煙幕が充満する。
 オカマにはエリアの姿が見つけられない。両手に円月輪を持って闇雲に振り回す。
『[ピーーー]ぁ、小娘!どこぉ!どこだァ!小娘!小娘!小娘!小娘えぇぇ!』
 風切り音を鳴らしながらオカマは円月輪を振り回す。エリアを[ピーーー]ために。
295 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/21(木) 00:07:08.02 ID:um8K1Siyo
>>294
思った以上に強力な魔法をかけてもらっていたらしい
彼には感謝しなければならないか
自分だけであったなら逃げ切れたかも怪しい

オカマにも防具を狙ったことだけは感謝しておこうか
そしてオカマのメッキが剥がされる

振り回すだけならばリーチで勝るこちらに分がある
冷静さを失い、武器を振り回すだけのオカマの
わずかに聞こえてくる武器の風切り音を頼りに距離を調整する、そして
――大鎌を振るう
296 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/21(木) 00:12:13.57 ID:jxtq3D/lo
>>295
後頭部にゴツンと大鎌の柄が当たる感触。
『え?』
オカマは詰んだ。エリアが刃を引けばオカマの首は落ちる。
『こんな小娘にわたしが負けたですって?!』
297 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/21(木) 00:22:00.28 ID:um8K1Siyo
>>296
「あの人は知らないけど、私に情はないよ?
私だって死にたくないからね」

自分だけの力ではない、あの声の変わった男のおかげであった
やはりこの世界を渡り歩くならもっと力が必要なのだろうか

人を騙し人を殺し、そんな裏の世界で生きてきたかつての記憶が蘇る
いかに自分が平和に浸れていたのかを、今になって実感する

少女は刃を引く、邪魔が入らなければ
この場所に人が訪れなければ、そのまま躊躇も情けもなくその手を汚すだろう
298 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/21(木) 00:38:53.15 ID:jxtq3D/lo
>>297
『ぎゃあああああああ』
 まるで断末魔のような悲鳴をあげて首を擦られてオカマはそのまま倒れて失神した。

「おっしゃ!いい覚悟だ!だが、まだ人殺しは早い歳だぜ。」
 さっきの元大男の女の子の声が聞こえる。
 いつの間にか金属音を立てて防護服は拘束具に変わっていた。
 今のエリアは誰を攻撃しても無駄に終わる状態に変わっていた。
「ったく、よりによってこのビルに来るとはな。さあ、帰りな。
 そのオカマを潰してくれた事には感謝するぜ!」

 エリアを守っていた防護服はエリアを拘束する拘束具に変わると金属片となって屋上に戻っていった。
「タオ五人くらいなら俺でもなんとかなる。お譲ちゃんは…逃げな!」

 選択肢は二つ、逃げると戻るだ。
299 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/21(木) 01:03:01.96 ID:d8te0Bdlo
>>298
「あう」

殺しが好きなわけではなかった
別に拘束されようが止められようが、
自分に危害が加えられないのであればなんら問題ない

「魔法警察って言われるぐらいだから、その言葉信じるよ
じゃあね」
箱を拾うと、振り向くことなく逃げることにしたのだった

//眠気に襲われたので区切りっぽいこのあたりで失礼……
楽しかったです、お疲れ様でした!
300 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/21(木) 01:11:25.24 ID:jxtq3D/lo
>>299
「気をつけて帰れよ!って、こいつをやっちまったのか。」
 気絶した老師レベルの道士を見て驚くシオン。
 しかも元気そうに帰っていく。
「こっちは五人とはいえ師傅レベルで一杯一杯だったんだぜ?
 世の中ってのは広いもんだぜ。まったく笑える。」
 携帯端末を取り出すとシオンは魔法警察の仲間を呼んだ。
 マフィアの一つが潰れたという報告だ。

【 麻薬密売組織 白猿 壊滅 】

// お相手ありがとうございました。おやすみなさい。
301 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 20:08:49.92 ID:nIQfufeuo
タッタッタッタッタ……

「はぁ……はぁ……」

表通りから逸れた裏通りを走る少女。
軽いウェーブのかかった銀のロングヘアーをなびかせて、しきりに背後を気にしている。
裾にフリルのついたベージュのワイシャツは走るのには問題ないが、アイボリー色のロングスカートはかなり走りづらそうだ。

「これは……一体……」


家を出て直ぐに視線を感じた。
初めは気のせい、もしくは自意識過剰によるものだと特段気にしなかったのだが、その視線はしばらくたっても消えず明らかにこちらを監視するかのような距離を保っていた。
面倒事になれば、近くにいる人に迷惑がかかる。
そのため、人通りの少ない裏路地に入り、直接呼びかけて見ることにしたのだ。

「……どなたですか? 人に付け狙われる心当たりは無いのですが」

周りに一般人は居ない。仮に戦闘になっても、自分の力ならそうそう遅れは取らないと思う。
直ぐに後ろは向かない。注意は当然後ろに向けているが、後ろにだけ相手が居るとは限らない。

「……貴様の捕縛命令が出ている。……理由は分かるはずだ」

「……何のことだか、分かりかねます」

少し間を置くが、はっきりとした口調で答える。
しかしながら、本当はわかっていた。自分をなぜ、誰が捕縛しようとしているのかを……
姿を表わしたのは、スーツを着た30代の男。
それと同時に、三人ほど同じような格好の男が姿を表わす。
とっさにそちらの方を向くが、すぐさま振り向いて逃げようとするも、反対側の方向からも4人。
狭い通路で囲まれた……

「……っ!!」

判断は一瞬。相手が戦闘態勢を整える前に強行突破する。
体制を低くしたまま、最初に男が現れた方とは逆の方へと素早く移動し、能力によって氷柱を生成。
相手の手に当てて怯んだ一瞬の隙に突破し、走りながら背後に氷壁を作って追手を防ぐ。

とは言え、自分を捕縛しに来たような奴らだ。
氷壁は直ぐに壊されるだろうし、そもそもこの入り組んだ裏路地でそこを通らずとも自分を追うことは可能。

裏路地を疾走する千早。
次に会う人物は果たして敵か味方か……
302 :アーサー :2013/03/22(金) 20:24:56.97 ID:jw0QIb7d0
>>301
裏仕事の依頼を受けてその商談に出向いた帰り道。
裏路地をつかって行きつけの喫茶店まで短縮しようという目論みだった。
背中にしょっているケースにはベネリ M4 RIOTショットガン。懐にはベレッタM96A1ピストル。
それを覆うように黒いコートを羽織り、よく手入れされている割に乱雑に短くされた金髪の青年。それがアーサー・ビショップのい出立ちである。

傍から見てちょっと一般人には見えがたい彼。
実際、アーサーは一般人ではなく殺し殺される世界の住人なわけだが、そんな事情から争いやトラブルの気配には敏感である。
だからこそ、路地の向こうから駆けてくる女性を見たとき、仕事柄培われた嗅覚が何かを拾い上げた。
なにかトラブルの気配。女性はなにからか逃げているように見えて、アーサーは眉を吊り上げると、

「こんばんは」

何を思ったのか声をかけるのであった。
303 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 20:35:04.58 ID:nIQfufeuo
>>302
「……っ!」

正面に人……一般人ではない。
この状況で一般人ではない誰かに会えば、当然追手に追いつかれたと判断する。
千早はまだ相手と距離がある場所で止まり、斜めに構えて相手を警戒する。

「……」

どう言葉を発していいか迷う……もし、相手を追ってと断定してそれ用の言葉を発して違ったら困る。
だからと言って、ここで一般人向けの挨拶をするというのもあまり状況にそぐわないかもしれない……

「こん……ばんは。申し訳ありませんが、私(わたくし)急いでいるので、そこをどいては頂けませんか……?」

結果的に、一般人向けの言葉と追って向けの言葉を混ぜたような返答になる。
はじめに追手と顔を合わせた場所からそう離れていないこの場所で時間を食えば、直ぐに追いつかれてしまうだろうから。
304 :アーサー :2013/03/22(金) 20:50:22.81 ID:jw0QIb7d0
>>303
「ああ……たしかに急いでそうですね」
 
 あからさまに警戒されて、アーサーは苦笑ともつかない微妙な笑みを口元に浮かべた。
 そりゃそうだ、と納得もしている。よそから見て自分が一般人とは言えないことも。
 だからこそこの女性が自分を警戒するのは当たり前だし、それは全く気にしていない。

「なら急いだほうがいいんでしょうが、あてがないなら隠れたほうがいいかも」

 アーサーは千早ではなく、彼女が来た道の奥をじっと見つめる。
 まるでそこに何かがいるとでもいうかのように、入り組んだ路地の奥を見つめるその眼は鋭かった。
 
「それにまあ、なにか困ってるようですし。どうです? 追っ手を撒く手伝いくらいはしますけど」

 もちろん信用してもらえるなら、ですが。
 そんな風に付け加えて、アーサーは残りいくばくもない時間を確認して、自分のすぐ背後にある大きな金属のダストボックスを示す。ふたが閉じられたそこなら隠れることは十分可能だろうか。
305 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 21:27:53.98 ID:nIQfufeuo
>>304
まさか…信じるのか、この男を……?
今あったばかりの男に追手を撒いてあげると言われて、はいどうもありがとうと言うのはどうだろう。
示されたダストボックス……ここに隠れれば逃げ場はない。
仮にこの男が敵だったら、もう袋のネズミ……逃げることは出来ない。

しかしながら、このまま逃げ切れる絶対の自信はない。
相手は少なくとも8人だ。やがて追い詰められるだろう。

どうする……
そうして迷っていると、後ろの方から数人の足音が聞こえ始める。
とっさに後ろを見るが、まだ姿は見えないようだ。
だが、時間がないことには変わらない。

「……くっ、申し訳ありませんがご助力願います。
 ただし、そちらに危害が加わるようでしたら見捨てて構いません」

そう言うと、正面の大きなダストボックスの蓋を開け、そこへ飛び込む。
中にゴミ類は無かったが、お世辞にもいい匂いではない。
贅沢を言っていられる状況ではないので、それは我慢して蓋を閉じる。


それから直ぐに4人のスーツの男が走って近づいてくる。
4人はそれぞれ、麻酔銃を持ち、腰にはスタンロッドをぶら下げている。
すると、ダストボックスの側にいる男に近づいて、一人が口を開く。

「おい、この近くに銀髪の女を見なかったか?」

この返答で正直にダストボックスの中に隠れている等といえば、たちどころに千早は窮地に陥る事になる。
306 :アーサー :2013/03/22(金) 21:38:31.78 ID:jw0QIb7d0
>>305
瞬間の葛藤。
自分が敵か味方かを思案している様子の女性をしり目に、アーサーは懐から煙草を取り出して銜える。
銘柄は『DEATH』。黒いパッケージにドクロマークの、アーサー御用達の英国製煙草だった。

マッチを取り出して片手で箱から一本抜き取る間に、路地の奥から人の気配が近寄ってくる。
どうやら追手がすぐそこに来ているのだろうと一人納得しながら、アーサーは慣れた手つきで片手のままマッチを擦る。

「困ってる様子だから助けるだけさ。
 それに男としてそんな情けないことはできそうにない」

煙草の穂先にマッチを近づけ、女性がダストボックスに身を隠したことを確認する。
彼女の運命がいま自分に託されていることを理解したうえで、アーサーは路地の向こうから走ってきた男たちに目を止めた。
武装は捕獲用装備。少なくとも殺害が目的ではないのか、と思案する一方、このご時世に人さらいともなればその後の運命は似たようなものだとも理解している。

「あんたたちは人探し? あるいは人さらいかな?」

質問へは返答せず、逆に尋ね返しながらアーサーはマッチの火を消して棒をそこいらに放り投げる。
指先に挟んだ煙草を軽くゆすって燃え殻を地面に落とすと、詰問する色を含んだ蒼い瞳を男たちに投げかけた。
307 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 21:49:12.70 ID:nIQfufeuo
>>306
ダストボックスの中から耳を付けて聞き耳を立てる。
匿ってくれるという男が裏切らないか、そして男が危険な目にあわないか。これを確認する必要がある。
流石に見ず知らずの人に命を張ってもらう必要はない。
いざとなればここから出て相手の目を引くか、おとなしく捕まるしか無い。
なに、相手はこちらの捕縛を目的としているのだから、捕まっても殺されはしない。
すると聞こえてくる、匿ってくれた男と、追手の話し声が……

「質問に答えてもらおうか。あの女の進行ルート上間違いなくここを通ったはず。
 なのに、俺達も先回りしている部隊も見つけられないとなると、ここらへんに身を潜めているはずなのだ」

喋っている人物がどうやら4人の中で一番偉そうだ。
残りの三人が、銃を構えて脅しの姿勢に入る。喋らないとどうなるかわかっているんだろうな……と言うよくある手だ。

「そして進行ルートに貴様のような奴が居るということは、匿っている可能性もある。正直に言えば見逃してやる」

まだ脅しだ。本当に撃つ気は無さそうだ。
だが、本格的に敵だと思われれば躊躇いなく撃たれるだろう。
308 :アーサー :2013/03/22(金) 22:04:48.21 ID:jw0QIb7d0
>>307
まいったなあ、と。肩をすくめて、アーサーはため息をつく。
その動作には相手をからかうような色があって、まだまだ余裕だと言いたげな雰囲気を漂わせていた。
先ほど千早に対して向けたようなあいまいな笑みとともに、アーサーはプロでも見逃しかねないほどさりげなく視線を巡らせる。

裏路地だけあって距離が近くなりやすいのが幸いした。
双方の距離はだいたい一歩と少しといったところ。十分に近接制圧可能な間合い。
対して自分は、肩から下げたケースに散弾銃、懐に拳銃。そして右足首にバックアップのバックアップであるベレッタM1934小型拳銃が1つ。
と、そこでアーサーは戦力計算を無理やり打ち切り、最初から戦闘を前提に考えている自分を戒めた。

「人さらいか…………ああ、見たよ。珍しいからな、銀髪。ちら見した程度だけど美人だったし」

悪びれもせずに煙草をふかして、リーダー格の男に向き直る。
部隊というからには何らかの組織の手下なのだろうか。PMCか、最近のはやりになりつつあるとかいう企業私兵か。
どちらにしてもあまり接触したくないのが素直な気持ちだ。

「やだなあ、物騒物騒。
 正直に言えと言われても、おれは見かけただけだよ。ああ、まあたしかに彼女はここを通ったわけだけど、なにも通路ばかりが道じゃないわけだし」

そこそこ、と指差した先は商社向けのビルの裏口。
普段はあまり使われない古ぼけたドアだ。

「この辺は物騒な割に泥棒だとか少ないからね
 そういう通路は開けっ放し。道以外にもいろいろ通路になる場所はあるんだよ」

男たちがドアを確認しようとすれば、確かにすんなりとドアが開くだろう。
309 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 22:18:03.80 ID:nIQfufeuo
>>308
「……」

自分を見た。
その言葉が聞こえた瞬間、聞き耳を立てる千早の心臓が一瞬大きく波打つ。
自分の居場所を言うか……?
と、疑うがそれは杞憂。続く言葉を耳にすれば、その考えを改める。

リーダーの男は、目線と手の動きで指示を飛ばし4人中2人をビルの方へを向かわせる。

「貴様が嘘を付いている可能性もあるからな。……それに、貴様はビルの方を示唆しただけで、女があそこへ入ったとは言っていない」

ついにリーダー格の男も銃を構える。
一応、可能性の一つとしてビルの調査はするが、この男が示した事を信じるわけではない。
指示を受けた2人は、ビルの裏口を開けてその中へと入っていく。
外で大きな動きがあるか、ビル内部の調査が終わるまでは戻ってこないだろう。

「高々女一人の捕縛に時間など掛けたくない。貴様が匿っているのであれば正直に言え」

しつこく疑うスーツ姿の男。
失言だったのは、うっかり先ほどの問いに答えてしまったということだ。
この部隊の目的は女の捕縛。故に殺傷能力の低い、捕縛用の装備をしているのだ。
310 :アーサー :2013/03/22(金) 22:43:14.39 ID:jw0QIb7d0
>>309
「ずいぶんしつこいんだなぁ、まったくこれだからド素人は」

聞こえるか聞こえないか、ぼそりと嘲るように唇をゆがめる。
だいたいこういう手合いがこちらの言を鵜呑みにしてくれるとも思っていない。
だからこそ最初のうちに戦力を図ったわけで、できれば避けたかった自体がやむを得ず足元に転がっただけのこと。

アーサーはほぼ燃え尽きた煙草を捨ててふみけし、箱を取り出す。
男が戦闘――ことに特殊戦や暗殺といった方面に長けたものだったなら、あるいはアーサーの仏頂面に剣呑な色が薄くにじんだのがわかるかもしれない。

「教えるってことは入ったってことだ。いちいち言質とらないと生きていけない人種じゃあるまいし、まず自分で考えるってことを……っておいおいやめてくれよ」

リーダー格の銃口がこちらに向けられ、アーサーはあわてた様子で眉根を寄せる。
動揺からか箱から振り出した煙草が地面に落ち、アーサーは舌打ちともにそれを拾うためにしゃがみ込む。

「もったいないなあ……ほんと」

しゃがみこむとコートの裾が地面に触れて広がり、彼の足もとを覆い尽くす。
それが唯一の勝機。アーサーは煙草を拾うはずの指先を足首へ走らせ、アンクルホルスターに収まった小さなサプレッサ拳銃を引き抜く。
その動作はあまりに自然で、一般人なら気づけないほど。

アーサーが地面を蹴る。しゃがみ込んだ体が、弾丸じみた速度で跳ね上がった。
不意を打つならそこしかない。腰に寄せた拳銃を、勘に従って男の胸へと乱射しながら、彼が自分に向けていた拳銃を左手で払いのけようとする。
もし先読みされて敵が銃を撃てば不利になると理解はしていたが、かかわった時点で織り込み済みのこと。
それならそれで次の手を模索するだけだ。
311 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 22:57:07.12 ID:nIQfufeuo
>>310
「入ったとは言っていない……そんな事を言って言い逃れようとする奴が大勢いるのでな」

そちらが勝手に勘違いしたことだと言いはって、自分の非を認めない。
詐欺師によくある話だが、リーダー格の男はそれを危惧していたらしい。

するとそこで、男がしゃがみ込むのを確認する。
リーダー格の男はその時点で警戒し、すでに回避が取れるように切り替えた。
しかしながらもう一人の男は警戒が緩く、後の攻撃に対して対処することが出来ない。

放たれた銃弾になすすべもなく、スーツ姿の男は断末魔を上げながらその場に倒れ血の池を作っていく。

「くっ……やはりただの一般人じゃないな!」

生き延びたリーダーは、右に移動して回避行動を取りながらアーサーへ向かって麻酔銃を3発放つ。
狙いは最も標的が大きい胴体。とりあえず当たれば薬によって無効化出来るため、命中率を優先した。

そしてすぐさまコートの内ポケットに手を入れ、何かを操作した。
操作は一瞬で、内ポケットに入れた手は直ぐにまた表へ出てくる。
312 :アーサー :2013/03/22(金) 23:07:07.56 ID:jw0QIb7d0
>>311
「マンハンターだよ、ただのな」

射殺した雑魚に用はない。
打ち切ったM1934をポケットへ落とし込み、アーサーはコートを翻して胴体を隠す。
麻酔銃の着弾とともに、コートの表面に薄く蒼い波紋。防護呪符入りの生地が所定の効果を発揮したためだが、それに感謝するだけの余裕はない。

片手でケースを肩から下ろし、マジックテープの固定をこじ開けて中に手を突っ込んだアーサーは、そのまま安全装置を外してベネリを放つ。
狭い通路に散弾が撒かれ、連射の轟音が響く中、もう片方の手はやや苦心しながらもベレッタM96A1を抜いていた。

「わるい、しくじった。さっさと逃げるぞ」

ガンガンと足でダストボックスを蹴りつけて、中にいる女性に詫びながら、アーサーは拳銃と散弾銃の合わせ技でリーダーをけん制――あわよくばそのまま射殺しようと攻撃を続ける。
先ほどポケットに手を入れたのが気になったが、それがなんであるかを考えるだけ今は無駄だ。
どちらにせよ位置が知れた以上、殺し合いになるのは間違いない。
313 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 23:21:50.88 ID:nIQfufeuo
>>312
麻酔銃が効いていない。そして、新たに出された武器に対して警戒し、リーダーはとっさに物陰に飛び込んで散弾の直撃を交わす。
身のこなしや洞察眼から見て、先ほど死んだ奴とは格が違う相手だと言う事が分かる。
だが、運悪く物陰に飛び込む際に、足に銃弾がかすり傷を負う。
追跡者にとって足を負傷するのはかなりの痛手だ。

ダストボックスに隠れていた千早は、聞き耳を立てて随時状況を把握していた。
その上で、ダストボックスを蹴って合図をされればすぐさま蓋を開けて外へと飛び出した。

「は、はい……! 巻き込んでしまって申し訳ありません」

付いて行く千早は、内心申し訳ない気持ちで一杯だった。
民間人……とは言えないが、今しがたあったばかりの人をこんなことに巻き込んでしまった。

2人で走って行くと、正面から4人のスーツ姿の男が走ってくる。
すでに銃を手に持っていて、こちらに攻撃してくる気満々だ。

先ほどリーダーが服の中で操作したもの。
それは、緊急時のビーコンのようなもので、スイッチを押すだけで部隊内の全員に緊急事態を知らせるものだ。
更に、押された端末がある場所も分かるためすぐさま別の部隊が駆けつけたというわけだ。
314 :アーサー :2013/03/22(金) 23:28:36.14 ID:jw0QIb7d0
>>313
「いいさ、どうせいつものことだから」

謝罪する女性に短くそう返し、アーサーは拳銃でリーダーの動きを封じながら首にチェーンでぶら下がったバッチを下げる。
PASFと印字されたそれは、彼の雇い主である情報機関が仕事の円滑化のために用意したもの。
偽物というわけではないが、彼自身は本物の警官とも言い難い。だが役に立つことは確かだ。

前方からかけてくる4人を目視。先ほどのはやはりビーコンかと内心に舌打ちし、アーサーは散弾銃に残った分をすべてばら撒いて千早の前に出る。
自らを盾にするように、散弾銃を背負い弾倉を切り替えた拳銃を連射しながら、立ち止まることなく吶喊する。

はた目自殺行為にしか見えない行いだが、アーサーにはまだ防弾衣服が残されている、
315 :千早 [saga]:2013/03/22(金) 23:45:56.62 ID:nIQfufeuo
>>314
「いつもこのようなことを……?」

それでよく今まで死ななかったものだ。
しかしPASFのバッジを見るに、仕事柄こういう状況に慣れていることもうなずける。
だからと言って巻き込んでいいかというとまたそれは別の話なのだが、とにかくこれ以上の謝罪も感謝も後だ。
ともかく生き残らなくては何にもならない。

前に出た男に対して、敵部隊は麻酔銃を撃つ。
しかし、初めに撒いた散弾銃で4人中2人が死亡。残った2人も重軽傷を負ってまともに狙いをつけることは出来ない。
命中率がかなり低い上に当たっても防弾服によって大した被害は無いだろう。

散弾銃の後の拳銃により更に一人がやられる。
残り一人だが、覚悟を決めたのかかなり冷静に狙いをつけているようだ。
防弾服のない場所を狙うかもしれない。

「マズい……申し訳ありません、氷柱舞っ」

左手を開いて前に突き出せば、麻酔銃を構える男が立つ地面の一部が一瞬で凍る。
その直後、四方から男の胴体に向かって4つの氷柱が飛び出してその体を貫く。
最後の麻酔銃を撃つこと無く、男は絶命。
とりえずこの場は突破できる。

この場に留まるのもマズいので、それから少し走って追手が居た場所から少し離れた場所まで。

「あの、ありがとうございました。私は、千早と申します。
 あなたのおかげで助かりました」

深々とお辞儀をする姿は、とても様になっていて綺麗な動作をしている。
目の前の男による助けがなければ、捕まっていた可能性が高い。
316 :アーサー :2013/03/22(金) 23:55:26.80 ID:jw0QIb7d0
>>315
「趣味とは言えないけど、まあ毎度毎度ね」

派手な銃声を響かせながら、それに負けない大声で返す。
手早く3人を始末し、最後の一人が女性の能力で無力化されたのを見れば感心したように小さくうなずき、そのまま足を止めずに走り続ける。

「おれはアーサー・ビショップ
 礼はいらないよ、別に。どう見ても向こうは一般人じゃないし、困ったらお互い様でしょう」

あっさりと数人射殺した男が困ったらお互い様などというのはどうだろう、などと自分の言葉を反芻しながら、アーサーは散弾銃に散弾を詰めなおす。
そして弾切れしていた拳銃の弾倉も差し替えると、女性のお辞儀に気恥ずかしそうに頬を掻く。

「しかしまあ、なんで追われてるんだい?」
317 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 00:20:52.96 ID:cc8kY8Ojo
>>316
「アーサーさんですね。この御恩は必ずお返しします」

残念ながら、貧乏の千早に報酬を払うことは不可能。ここはツケにしておいてほしいものだ。
ただし何時金が入るのかというと、入る予定は一切ない。

追手の殆どを殺してしまった。
これからはもっと露骨に追われるかもしれない……

「それは……」

少しうつむいて言うか否かを迷う。
アーサーはきっと敵じゃない。もし敵ならとっくに襲ってきているはずだし、現に自分を捕まえられるタイミングはいくらでもあったはず。
しかし気軽に言えるものでもない。
迷うが、ここまで巻き込んでしまって事情を説明しないというのも筋が通らないだろう。
千早はゆっくりと前を見据えて口を開き始める。

「あの人達は、きっと研究所に雇われた人たちでしょう……」

研究所から出てまだ日が浅いため、自分を追うような人は表には居ないはず。
ならば考えられるのは研究所しか無い。

「あなたは……人工的に作られた人間が居ると思いますか……?」

要領のいい説明とはいえないが、ゆっくりと自分について話していく。

「私は、ある研究所の完璧な、理想の人間を作るというプロジェクトで人工的に作られた人間です。
 この体の大きさ、髪の色、瞳の色、そして……今あなたの話しているこの人格も、研究者によって作られたものです。
 素体であるこの肉体をまず造り、別のコンピュータ内で作られた人格のデータを素体の脳にインストールすれば、私の出来上がりです。
 それに加え私は、素体を作る段階で人工的に異能を付与した、人工能力者でもあります。
 このような事が実用化されれば、世界中が良い人で溢れ、有能な政治家が数多く現れるでしょう」

と、ひと通り自分の基礎的な部分についての説明をしていく。
……が、それらが終わると少しだけ千早の顔に陰りが生じる。

「……と言うのが、表での建前。そして今まで私が信じてきたことでした。
 ですが……ですが、その研究の真実は、完璧な人間を作ることではなく、完璧は兵器を作ることだったのです。
 常人を超える運動能力を持ち、強力かつ望むままの異能を付与された人間。
 自ら考え、知識と経験を持って敵を殲滅する……究極の生物兵器です。
 …………その研究成果の一つが、私。
 私の居た研究所は事故によって消滅しました。その時に私は初めて研究所から出たのですが……きっと別の研究所が私の事を嗅ぎつけて追手を出したのでしょう」

捕まればどうなるのだろうか。
再び毎日実験台にされるのだろうか。
それとも廃棄処分? それともより兵器として効率のいい人格への上書き?
分からないが、あまり捕まりたくないことは確かだ。
318 :アーサー :2013/03/23(土) 00:34:23.22 ID:ov1uW4/u0
>>317
「今回のは売り込みの無料お試しだから
 支払は次回からで」

 煙草をくわえて火をつける。
 彼の視線は千早ではなく、追っ手を警戒して周囲へと向けられていた。
 さすがに5人を殺されれば向こうにとって痛手だろうが、逆上して自棄にならないとも限らない。
 そう考えるとむしろ、千早に迷惑をかけたのは自分かもしれなかった。

「研究所、ね」

 へえ、と相槌を打ちながら、アーサーはそこから続く説明に耳を傾ける。
 なるほど、人為的に完ぺきな人間を開発するというのは過去幾度かフィクションでも取り上げられた題材。
 それも軍事転用目的となればありふれているだろうが、実際の話とすればそれはわけが違う。

 しかしアーサーはその一種おぞましいプロジェクトの仔細にではなく、千早そのものに興味を抱いた、
 なるほど完ぺきな人間を目指すとなれば、千早の端正な容姿や抜群のプロポーションにも、折り目正しい態度にも納得がいく。
 だが、その完璧さはどうでもいい。気になるのはその作られた完璧さを彼女がどう感じているのか。
 空虚か、苦痛か、悲しみか、怒りか。あるいはそう作られたことへの幸福感か?
 自分という存在を他者が左右し思いのままにする。ともすれば存在そのものへの凌辱行為ともとれるだろう。
 我知らず、プロジェクトへの苦々しい嫌悪感をアーサーは飲み下す。

「人工的に完ぺきな兵士を作るってのは話としてはありがちだよ
 だけど、目の前にその被験者がいるとは思わなかった。いや、それをしてどうおもうって話じゃないんだけど
 おれから言えることはないよ。聞いておいてなんだが、いやな話をさせた。すまない」

 所在なくアーサーは頭を下げ、眉根を寄せて警戒を再開する。
 ここまでして彼女を追い詰める敵が、まさかあきらめてくれるはずがない。

「行くあて、ある?」
319 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 00:52:16.08 ID:cc8kY8Ojo
>>318
「無料お試しにしては、随分と行き届いたサービスでしたね
 ……わかりました。次回からは必ずお支払い致します」

無理に払うと言っても聞かないかもしれないし、金の宛がない千早にとってその申し出はありがたかった。
しかし実弾もタダではない。今の戦闘で結構の弾を使わせてしまったようで、相手からすればとんだ無料サービスだっただろう。

千早もアーサーに習って周囲を警戒してみるが、足音も気配もなし。
相手に残った戦力は、ビルに入った2人と負傷したリーダー1人。
流石に分が悪いと見て今回は撤退したのかもしれない。
部隊の人間を殺したことによって、今後さらに本腰を入れて捕縛にかかってくるかもしれないが、殺さなければここまで逃げてくることは困難だっただろう。

「いえ、勝手に話したのは私です。それに、ここまでしていただいて説明なしと言うのもどうかと思いますので。
 ……確かに、今まで話題に上がったことのある内容ではあると思います。
 ですが、おそらく稼働している状態のものが世を出歩くのは私が初めてだと思います」

実際話すことについてはそこまで嫌ではない。
人工的に作られたということに関しては生まれたその瞬間から知っていることだし、それについて嫌だと思ったことはない。
ただし、自分が兵器だと知ったときはかなりショックを受けたのだが。

自分のコードナンバーは005。
つまり、001や002があったということで、それらが今居ないということは……

「行くあて……どうでしょう。
 あの追手は私が家を出た直後から居ましたから、もう自宅は知られているようですし……
 しばらくは野宿や廃墟……いざとなればスラム街へ流れて身を潜めるかもしれません」

生憎とスラム街についての知識はない。
つまりスラム街での生き方を知らないということで、力はあれどスラムの知識がない少女がスラム街に流れれば、狡猾な手によってあっさり負ける可能性もある。
とは言え、何か別のあてがあるわけでもないのだが。
320 :アーサー :2013/03/23(土) 01:10:03.61 ID:ov1uW4/u0
>>319
「きめ細やかなサービスを気に入ってもらえたならいいんだけど」

弾薬一発につき10円弱。
消費したのは1000円にも満たないのは秘密である。

「仲間もいないのか……そうか」

それはきつかろう、と。
あの追っ手から女一人で逃げ切るのは分の悪すぎる賭け。
いや、もはや賭けとすらいえないモノかもしれない。
そして自分の関与も彼女への追跡をさらに熾烈なものとするだろう。
あのまま何もしなければどうなっていたかわからないとはいえ、面白い話ではない。

「スラムはやめたほうがいい。誰が敵かすら分からなくなる。
 セーフハウス……というよりは心当たりのある無人家屋なら、いくつか知ってる」

過去にかかわりのあった同業や、敵。
そのなかでも死んだ連中が使っていたセーフハウスのいくつかをアーサーは知っていた。
321 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 01:24:12.72 ID:cc8kY8Ojo
>>320
「ふふっ……もし何かあれば次回も利用させて頂きますね。
 腕は申し分ないようですから」

先ほどの戦闘を見るに、アーサーはかなり腕が立つ。
相手だってそれなりな部隊だったはずなのだが、それを苦もなくほぼ壊滅状態にまでしてしまった。
実際に次回お願いしたらいくら取られてしまうのか……
内心そんなことを考えるも、実際依頼することは無いからこそ考えることが出来る。
出来るだけ他人を巻き込みたくない。
これは、自分と研究所の生まれた時からの因縁だ。

「仲間……ええ、おそらくは居ないでしょう。以前に作られた方が失敗作だからこそ、私が作られたのですし。
 しかし、1人は1人で気楽でいいものです。逃げるのにも楽ですから」

そうして笑ってみせるも、それは本心ではなく強がり。
追手の影が見えない今までなら、そう悲観することもなくとりあえず生きていればよかった。
だが、これからの逃亡生活を考えると、何時まで逃げればいいのか……終わりはあるのか……
先ほどからそんな不安が心のなかを渦巻いている。

「以前もスラム街はやめたほうがいいと言われました……その時とはスラム街に行く理由が異なるのですが、やはり出来るだけ避けたほうが良いようですね。
 もしご迷惑でなければ、その家屋を教えて頂けませんか?
 ……長期間は留まりません。他の場所が見つかれば直ぐにお返ししますので……」

一時的にでも身を隠す場所があるなら是非教えてほしい。
アーサーも使っているかもしれないので、長居は出来ないかもしれないが次の隠れ家を見つけるまでの間、そこを貸して欲しかった。
どの道一つの場所に留まれば、いずれ追っ手の目が届く。
これからはひとつの場所に長期間とどまることは難しいかもしれない。
322 :アーサー :2013/03/23(土) 01:35:06.99 ID:ov1uW4/u0
>>321
「何となんとお巡りさんとして呼ぶとその費用はすべて警察負担……つまり100%OFF」

見よう見まねで深夜番組の司会者のまねをしてみたのは、胸の中に鬱積した靄を吹き散らすため。
しかし完全な棒読みと仏頂面の域を出ない表情に司会者の巧みな話術が演じられるはずもなく。
結果として、ぎこちない茶番の完成である。

実際問題として、アーサーはまた呼ばれても無償で戦うだろう。
もとより他者のために戦いたいという、幼稚とも取れる理由が兵士への道の原初。
さらに言えば、美人に呼ばれて美人のために戦うならそれも悪くないな、などと普段決して表に出ない下心巣tら働いているのがこの青年だ。仏頂面だが。

「そっか…………仲間がいないなら、仲間でも募ればいいんじゃないか?」

人の不安は顔に出ずとも察することができる。
相手の心中を探り当て、読み取ることも仕事のうちである以上、そこに意識の介在は必要ない。
だからこそアーサーは何の気なしにそんなことを言ったわけだが、実現できる見込みがあるわけがない。
自分が手を差し伸べられればそうしたい、というのが偽らざる心境。
しかしそれを相手が受け取ってくれるかは別問題で、そういった点で奥手なアーサーは、断られるのが嫌で言い出せないでいる。

「返さなくていい。主人が死んだもぬけの殻だから、使われたほうが本望だろう
 こういう業種だと、敵にせよ味方にせよ誰かしら死人の家ってのは耳に入ってくるんだ。腐るほどね」

いこうか、と。
千早に促して、アーサーは一番近くにあるセーフハウスへと歩き出す。
323 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 01:48:38.27 ID:cc8kY8Ojo
>>322
「確かに、警察の方が市民からお金を取ったら大問題になってしまいますね。
 まぁ、私にはその市民権が無いのですけど」

なんとも反応に困るブラックジョークを交える。
千早には当然戸籍がない。戸籍がないということは、市民ではないということで、警察は相手にしてくれるのだろうか。
まぁ、こういう冗談を言えるということは、千早自信はそこまでそのことを気にしていないのだろう。

アーサーは正義感の強いタイプなのだろうか。
見ず知らずの追われている女のために、命がけで謎の部隊と戦ってくれる。
ただし、アーサーがいくら下心を抱いていようが、おそらく千早は気にしないだろうが、いい関係になったりはしないだろう。

「仲間……ですか。いえ、やはり今の私に仲間は不要です。
 私と行動を共にしても、相手に迷惑をかけるだけで何のメリットもありませんから……」

きっと相手は自分の心中を察したのだろう。
しかしながら、自分が仲間を作るということは、自分の運命の輪に相手を巻き込んでしまうということ。
それはどんなに危険なことだろうか……その上で自分の仲間になって巻き込まれてくれだなんて言えるはずもない。

「そう……ですか。わかりました、では気兼ねなく使わさせて頂きます」

言われてみれば確かにそう。
主が居ないのであれば、せめて一時的にでも私が家屋としての役割を復活させてあげられる。
そう考えることにしよう。
そうして千早はアーサーの後を歩いて付いて行く。
324 :アーサー :2013/03/23(土) 02:07:50.09 ID:ov1uW4/u0
>>323
「いまどき間口は広く開かれてる
 市民権があるかないかなんて、緊急センターが電話受け取った段階じゃわからないんだし」

こういう話になると急に難しげな表情で真面目に返してしまう。
それが自分の悪いところだわかってはいてもなかなかに変えがたいのも事実。おかげでいまだに治らない。
というより直すつもりがないともいえる。自分はあくまで自分であり続けるだけなのだ。

そんなわけだからどんなトラブルにでも首を突っ込み、火薬と煤とが織りなす世界を生きているのだ。
正義感が強いというか、ある意味でいくつかあるトラウマの一つに追い立てられているだけともいえるのだが。
彼のあこがれは仮面ライダーのようなもの。無償で人を助け、孤独に戦うその背中に感銘というか、羨望を抱いたのはもう何年前だったか。
ああいった生き方ができる人種にあこがれて、義父に弟子入りし兵士の道を歩んだ。
その時から平穏にかんしてはあきらめているし、色恋沙汰やまともな友人を作ることすら不能と判じている。
が、時折恋人だとか気の置けない親友というものにあこがれるのも事実。それはまだ、アーサーが若いからだ。

「なかにはその迷惑を楽しんでいるバカもいるんだけどね
 それに男はロマンの生き物だ。困ったら助けてと叫ぶのもわるくはない」

コートを羽織って散弾銃を担いだ背中が、なぜか所在無げに小さくなる。
自分の発言を恥じているのか、無力を嘆いているのか。
あるいはもっと別な、彼だけの事情かもしれない。

「それにセーフハウスである以上、いろいろいいものもそろってるし」

人気のない道をわざと選んで足早に進んでいく。
そのまま20分ほど歩けば、無人でもないしスラムのようにやかましいわけでもない、ある種別の秩序によって維持された住宅街へたどり着くだろう。
そこにはライフルを下げた服装もばらばらな男たちが何人か行き来し、ややみすぼらしい衣装の子供たちが元気に遊んでいる。

「市民権がない連中が身を寄せ合って作ってるんだ。自警団もいるからやたらと外部は介入しない」
325 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 02:24:13.32 ID:cc8kY8Ojo
>>324
「緊急センターが電話を貰ったらいちいち市民権の有無を照合していたら緊急ではありませんね」

アーサーの真面目な感じとは裏腹に、千早はそうでもない感じだ。
市民権の有無などは気にしていないし、いかなる状態でも自分自身のことに関して警察に電話することはないと考えているので、自然と口調も表情も軽いものになってしまう。
しかし、気にしていないといっても問題がある。
市民権……戸籍が無いと履歴書がかけないのである。
つまり、バイトに応募できないのでお金を稼ぐのが非常に大変なのである。

「ふふっ、アーサーさんは私が叫んだら助けてくれそうですね。
 お言葉に甘えて、いずれ助けていただくことがあるかもしれません。
 ……社交辞令じゃありませんよ? 本当に助けて頂きますからね」

冗談交じりにアーサーに微笑みかける。
この人になら、いざとなったら助けを求めてもいいかもしれない。
きっと助けてくれるだろうし、力量から言って命を落とすこともないだろう。

そうしていると、やがて景色が変わってきた。
表の世界の住宅地ではないようだが、スラムのイメージでもない。
ここは何なのだろうか

「そうでしたか……では私のようなものが勝手に踏み入っても良いのでしょうか……?」

こういうところだからこそ、外部から見慣れぬものが来れば警戒するのではないか。
326 :アーサー :2013/03/23(土) 02:37:08.55 ID:ov1uW4/u0
>>325
「それに市民権なんて半ば形骸化してるし
 費用はそれなりだけど、そういうの偽装してくれる連中とかはそこらへんにごまんと」

密入国者も増大しているし、偽造パスの取り締まりすら遅々として進まない中で市民権などというものはどこまで意味があるやら疑問視されている。
それでもやはり、千早のように市民権がないための弊害というのも存在するのだが。
なおPASFは時折市民権のないはずの人間を登用するケースがあるとかないとか。警察機構がそれでいいのかははなはだ疑問だが、アーサーは悪いとは思っていない。

「世界のどこにいてもとはいえないけどね
 電話とかで助けを求められたらかけつけるよ、可能な限り」

絶対、とはいえない。
アーサーはこういう時、可能な限り、だとか、善処する、といった風に返す。
別段意味があるわけでも意識したわけでもなく、本人も気づかないうちに「絶対」を避けていた。

「誰が連れてくるかによると思う」

自警団の一人がアーサーを見つけて駆け寄ってくる。
まだ若い、それこそ少年と形容すべき彼はアーサーににこやかに話しかけると、千早のほうへ視線を向ける。
千早がアーサーたちの会話に耳を傾ければ、外部から武装した不審者が来るかもしれない旨と、その時は千早を逃がすなりかくまうなりするように頼み込んでいるのがわかるかもしれない。
少年はそれを嫌がる風もなく受け入れ、自警団の元へと戻っていく。
そちらでは少年から説明を受けた年かさの自警団員が千早とアーサーに気のいい笑顔を浮かべていた。

「こういうところだからこそ、話の通る警官だとかは重宝される。
 ギブアンドテイク、お互いに仲間みたいなものだよ、俺たちは」

アーサーはそのまま歩き出す。
何もなければ、街の中央付近にある一軒立てへたどり着くだろう。
327 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 02:54:30.89 ID:cc8kY8Ojo
>>326
「偽装ですか……そんな事をする方も居るのですね……
 お金がない私には縁遠い話しだと思いますが……
 でも確かに普通に生活していて市民権が関わってくる状況というのは非常に限られてきますね。
 書類作成の時に困るくらいでしょうか」

その書類作成ができなくてどれだけの店に働かせてくれと頼み込んだことか。
履歴書なしで頼み込んで実際にアルバイトをさせてくれたところは、今のところ十分の一あればいい方だ。
それも短期で数日たてばおさらばのバイト。
定期収入への道は遠い。

「そうですね、海外どころか別の町くらい離れている状況でも助けに来るのは難しいでしょうし。
 でも、言ったことには責任をとって頂きますよ。……きっちりとね」

そう言って笑う千早。案外強引で強かなのかもしれない。
いざ助けを求めると決めてしまうと、容赦なく使ってしまいそうな、そんな性格をしている。

「え……? あ、あの……」

アーサーと話す少年。
その会話の内容が耳に入り、とっさに呼び止めようとするが、それよりも早く向こうへ行ってしまう。
そんなことをする必要は無い。そう言いたいが、今から再び駆けつけてそれを言えば、無効はよく思わないだろう。

「ここの方は私のことを知らないはずです。ですのにどうして私を守るという事を承諾するのでしょう」

アーサーとは知り合いかもしれないが、相手からすれば千早は今はじめて見たよそ者。
体を張って守るような間柄ではない。
今の千早にはあまり理解できなかった。

「ここが……その場所ですか……
 その、思った以上に大きいですね」

ずっと物置のような小屋を想像していたため、それは想定外である。
良くて小さめの小屋、悪くて家畜小屋のような場所だと考えていて、そういった所で寝泊まりする覚悟を歩いている最中にしていたのだが。
328 :アーサー :2013/03/23(土) 03:11:31.71 ID:3MIYjDsg0
>>327
「まあ、医療機関とかに門前払い喰らいたくないって理由で買うケースが多いらしいんだけど
 書類とかはこまるよなぁ」

かくいうアーサーは義父のおかげでそのあたりの苦労をまったく味わったことがないのだが。
思えば、孤児になった自分に必要なものをすべて与えてくれたのは義父だった。
割と運がいいほうだったのだな、と今更の感慨をかみしめながら、アーサーは銜えたたばこの灰を落とす。

「そうだな
 約束は果たす。それだけは約束する。約束は守るよ、俺の名誉にかけて」

真面目に、そしてなぜか思いつめたようなそんな緊張をにじませた顔で。
アーサーは重々しくうなずいて、前をひたと見据える。蒼い瞳には静謐で固い意志の色が浮かんでいた。
何がアーサーにそんな顔をさせるのか。それはアーサーしか知りえない。

「ん? そうだな、俺と彼らの関係は、基本的にこちらから与えるばかりになっている。
 たとえば誰かが急病の時、俺の市民番号と保障でもって門前払いを避けたり。あとは何かしらの認可を下ろしたり普段手に入らない要り様のものを融通したり
 その見返りが、例えばよろしくない連中に関するうわさ。あるいはもしもの時の隠れ家の手配、もろもろ」

つまり何かしら役に立つと踏んだうえでの投資というわけである。
事実アーサーは彼らのおかげで危ないところから救われたりしているから無駄ではない。

「今回おれが君に何かしら援助してほしいとお願いしたのは、まず第1にほっておけないから
 第2に、君のことを負っている連中が気になるからかな。人間を人為的に作り実験するって、いろいろと人道的にやばいでしょ。そういうのは仕事柄見過ごせない
 これは余談で、第3に女性には優しくするべきだってのが家訓だってのもあるかな」

最後だけ茶化すように言って、アーサーは家の門に手を駆ける。スライド式のありがちな鉄門だ。
今回、アーサーは何の理由もなく千早に恩を売るわけではない。
自分としても彼女を追う研究所とやらが気になっているから、あわよくば追跡者からその足掛かりを得て探りを入れてやろうという魂胆だった。
下心――というより女性を救うために尽力するというありがちな夢想がそれを助長したのもあるが、本人はそれを認めないだろう。
ここの住人にしても、これでアーサーの言いつけを守れば見返りをそれなりに得られるし、もしアーサーが研究所に関して何かしらをつかんで成果を上げればその分報酬も期待できると踏んでいるのだ。

「セーフ“ハウス”だからね。家だよ」

長らく使われて否かったドアを開け、アーサーは千早を招き入れる。
まだ電気が通っているのか、スイッチをいれれば明かりがついた。
329 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 03:30:40.28 ID:cc8kY8Ojo
>>328
「幸い、私の体は非常に傷の治りが早く、様々な病原菌や毒に対する抗体を実験等によって得ているので病院などには行かなくて済むのですが、職探しは大変です。
 これからはもっと大変になるかもしれませんが」

生物兵器が戦場に行ったは良いが、病気で動けませんでしたでは話にならない。
そのため、千早の体には様々な抗体が仕込まれている。……とはいえ、その抗体を得るために様々な人体実験をされたのだが。
千早にとって怖いのは病気ではなく、面接官だった。

「名誉……ですか。そこまで深刻になっていただかなくとも良いのですが……
 ですが、親身になっていただけていると受け取っておきます」

今日あった時からここまで、アーサーは様々なことをしてくれている。
それはただのお人好しではすまないようなことで、きっとアーサーにはそれ相応の理由があるのだろうと考えていた。
だからと言ってそれを聞くのははばかられるし、聞く気もない。
自分がそれを知るとすれば、それはそれに相応しい場というものがあるのだろう。

「ギブアンドテイクというやつですか……私に関しても。
 ですが、男性的には第三の理由を話すだけで良かったのではないでしょうか?
 そうすれば、私からの評価ももっと上がったかもしれませんね」

冗談めかして笑いかける。
案外冗談を多く言う性格なのかもしれない。きっと千早の性格を作った人物が設定したのだろう。

それにしてもなるほど。
この街は自分たちの空間を維持するために、アーサーとある種契約を交している。
お互いがお互いを利用し、自分の生活を守っている。
だが、先ほどの子供や自警団との関わりを見るに、ギブアンドテイクだけの冷めた関係とはとても思えなかった。

「言われてみればそうですね……本当に普通の家のよう……
 隠れ家にするには勿体無いくらいですね」

近くにあった電気のスイッチを入れ、明かりが付くのを確認する。
中に入り、キッチンや部屋などを見て回る。
330 :アーサー :2013/03/23(土) 03:52:52.34 ID:3MIYjDsg0
>>329
「風邪とかひかないのか……合法的に仕事を休めないのは困ったな」

真面目に仕事をする気があるのかどうか疑いたくなる発言だが、本人はいたって真面目。
過酷な仕事の中のたまの休みに体調不良を楽しみにするという極めてまれなケースがここにいる。

「個人的には大事なことなんだよ、名誉
 英国紳士が女性の身を守れないなんて名折れだし」

さりげなく自分の故郷を引き合いに出して、恭しく一礼して見せる。
もちろん理由はそれだけではない。むしろそんなモノとは比べようがないほどに重要な原因がアーサーにはあったが、それを教えるべき相手はいまだ彼の前に現れていないのだ。
そしてきっと、それを教えられるほどに大事な人物は自分には表れないと、そう思ってすらいる。

「すくなくともその体裁は整える。でないと、一方的だと気まずいでしょ
 っと……なるほどそうか。おれが女性を口説くのが下手なのはその辺があるのか」

うぅむと真剣に困った様子。
アーサー・ビショップ24歳。悩みは女性関連での自分の技術不足と運のなさ。
夢は心優しいお嫁さんと子宝に恵まれること。なんとも小市民的である。

「むしろあからさまな隠れ家はよろしくない」

アーサーはまず階段下に近づき、壁に手を触れる。
と、壁の一部がかちりと凹み、そこがかすかに動いて扉が現れた。知らない者ならまず気づかない巧妙な隠され方をしている。
いわゆる隠し扉。さすがセーフハウスである。奥をのぞけば、コンクリートで作られた地下室までの階段があり、防火設備を整えた地下室の強固な扉が見えた。

「地下室はよし、と」

部屋を見分すると、生活設備はまだ生きている様子。
アーサーはそれに安心したのか、セーフハウスの本棚からこの近くの地図を取り出すと何やら記入しはじめる。
331 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 04:07:57.56 ID:cc8kY8Ojo
>>330
「風邪と同じ症状は一度経験したことがありますが、それっきりですね。その実験で私の体にそういった症状が出ないように抗体が出来ました。
 ふふっ……そういう時は、心の病気と言って休むことにしましょう」

千早が正職に付くことがあるのかわからないが、確かに病欠の類は出来ない。
これまでのウィルスと全く異なる新種のウィスルなどが出てくればかかるかもしれないが、ウィルスというのは大抵何かしらの派生で生まれるもの。
千早の体はその派生全てに対して抗体を持つため、全く新しいウィルスでないと効かない。

「ええ、ですから今日は見事に守って頂きました。
 名誉も守られ、そしてこれからも見せ場を提供いたしますのでよろしくお願い致しますね」

千早に関わっていれば、嫌でも見せ場に恵まれるだろう。
英国紳士として女性を守りたいという願望があるのなら、千早のそばにいるのは最適かもしれない。

「女性は打算無く、純粋に守っていただける方に惹かれるものかと思いますよ。
 とは言え、私がそうかというとそれはまた別の話になってしまうのですが……」

そういえば、今まで自分の好みなど考えたことがなかった。
自分とはどのような人なら合うのだろうか……どういう人に惹かれるのだろうか……
知識はあれど、人生経験2年の千早にはまだそれを考えるのは早いかもしれない。

「地下室まで……これは一時的な住まいではなく、永住したくなるような環境ですね……
 本当にこのようなところを提供していただいてありがとうございます」

その気なればワインセラーなど作れるのではないだろうか……などと考える。
武器庫を作るなどとは考えない所が、軍人とは思考回路が違うのだろう。

「何を書いているのですか……?」
332 :アーサー :2013/03/23(土) 04:28:06.41 ID:3MIYjDsg0
>>331
「そうなるとうちはカウンセラーが押し掛けるからなぁ
 知ってるかい? PASFお抱えのカウンセラーはとんだデリカシー欠乏症なんだ」

正確にはAMS特殊部門のカウンセラーが、であるが。
人のことを根掘り葉掘り聞こうとするとんでもないデリカシーなしとして知られる女医の顔を思い出すだけで頭が痛くな。
過去に性欲云々性癖云々まで聞かれれた同僚がおり、アーサーもそれの例にもれずさんざんな目に合わされていた。

「その時は颯爽と駆け付けるよ、だから……遠慮なく呼んでほしい
 おれはそういう時のためにこういうことをしているんだ」

夢は仮面ライダーだと語るようになる前は、00ナンバーを冠した英国の諜報部員を夢見たものである。
ひょうひょうとした態度と危険に物怖じしないスーツの紳士を夢見る少年は今や、銃を手に戦う兵士に育っていた。
だからこそ、その力を誰かのために扱いたい。

「なるほど確かにそうかもしれない。
 でもほら、嘘はつかないようにしているんだ、俺は」

君がその類でないなら嘘をつく理由もないし、と付け足す。
そもそも相手がどうあれ、アーサーは自分の得るメリットについて言及しただろう。
お互いに利益があるとわかっているほうが人は何かを頼みやすくなるものだから。

「俺のものじゃない。このままなら取り壊されるか誰かが使い始めるかしてただろうから、礼はこれを用意させた故人に、だ」

そういえばここには携帯端末があったな、などと思いだし、アーサーは棚のひとつを開ける。
そこには扱いが簡単なメール通信だけに限られた携帯モドキが転がっていて、それを手にアーサーはテーブルへと戻る。

「俺が他に知っている無人セーフハウスの地図。とはいえここ以外だと周りの助力がないから、本当に危ないときに一時的な仮屋にする程度にしたほうがいい。
何かあれば、こいつで連絡をくれればいく」

そういって地図と携帯モドキを差し出す
モドキのほうは電源が切れているが、充電器もセットだ

ここの家主はアーサーの知人だったから連絡先も知っている
家主が自分の死を前に遺言を届けたのが、この携帯モドキだった
333 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 04:41:33.11 ID:cc8kY8Ojo
>>332
「カウンセラーとは普通そういったことに特別気を使う職種なのではないでしょうか……
 相談するとかえってひどくなりそうな」

むしろそれはカウンセラーと言えるのだろうか……
カウンセラーとは相手を不快にさせないことが大前提。
それでは相手を不快にさせることもあるだろうに。

「ええ……遠慮は致しませんよ。
 もう助けを求めると決めてしまいましたから」

一度決めてしまうと割かし遠慮がなくなるものである。
当初は誰の助力も得ないと決めていたが、アーサーの面倒見の良さについつい甘えて居る。
現にこうして家まで用意してもらってしまった。

「そうですね、元々の家主の名も顔も存じませんが、感謝致します。
 ですが、アーサーさんにも感謝していますからね。
 私が今日野宿しなくても住んだのは紛れもなくアーサーさんのお陰ですから」

もしあの時アーサーと会っていなかったらどうなっていただろう。
今頃捕まって研究所に運ばれているか、どこかで野宿をしていただろう。
それを考えると今のこの状況は奇跡的に良い状態だ。

「携帯ですか……わかりました。何から何までありがとうございます。
 初めは無料お試し期間ということでしたが、いずれ必ずお礼をさせて頂きます」

地図と携帯を受け取り、胸のあたりで携帯を握り締める。
戸籍がないので携帯電話の契約が出来ない為、こういった通信手段があるのは非常にありがたい。
334 :アーサー :2013/03/23(土) 04:52:56.85 ID:3MIYjDsg0
>>333
「美人だから許されているけど男だったら絶対に許さない……絶対に、絶対に、だ」

自分のことを根掘り葉掘りされさらに口車に乗せられて恥ずかしいことまでぺらぺらと。
あの日あの時の屈辱は永遠に癒えない。しかし美人だから許してしまうあたり下心ありである。
ぐぬぬぬぬ、と悔しげにうなりながら、いつか逆に恥をかかせてやると誓うのだった。

「そうか、じゃあ安心した
 何時でも格好つける用意しておくよ」

ニコリと、無邪気な子供のように心からの笑み。
歳よりやや大人びて見える仏頂面が浮かべる初めてのちゃんとした笑顔だ。
生来はしゃぎ下手なアーサーが笑うのはなかなかにレアなことである。

「無駄に凝って要塞になっているからな。ここはなかなかに硬い
 あれは神様のイタズラみたいな巡り合わせだよ。まあ、気持ちは受け取るけど」

気恥ずかしそうに顔をそむけ、ほこりが堆積した割にこぎれいな部屋を見回す。
持ち主の趣味なのかシックな内装で、壁の陶器を収めた棚の上に写真たてをみつけたアーサーは、そっと目を細めた。
コートを着込んで生硬い顔をひきつらせたアーサーと、その袖を引く快活そうな女性の写真。
アーサーは立ち上がり、その写真たてをポケットに押し込む。もうここは仲間の家ではない。

「支払う内容はそちらで決めてくれ。
 金がほしいわけじゃないし、ある意味強固な要塞を与えて君を餌にしたともいえる。
 ただしつこいようだけど、餌にするからにはケアもしっかりするつもりだ」

そういえばいまだに光熱費を支払っているのは誰なのだろうな、などと電灯を見上げる。
もう死亡報告は届いているのに、まるでそんなこと認めないとでもいうかのように、電灯は輝き続けていた。
335 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 05:04:55.22 ID:cc8kY8Ojo
>>334
「弱みを握られているのでしょうか……だとしたら一度でもカウンセリングを受けた人はもうその人には逆らえないようですね……」

カウンセラーの立場を利用してみんなの情報を集める。
そうすれば誰もその人に頭が上がらなくなってしまうだろう。
そしてアーサーもその例外では無いようで。

「ええ、お願いします。そうやって笑ったほうがきっと女性受けもいいですよ」

今日はじめてアーサーの笑顔を見た。
普段あまり笑わないということを知らない千早はそれがレアだということに気が付かない。
次見れるのはいつになるのだろう。

「この場所であればいざとなっても平気そうですね。
 ですが、出来る限りこの状態を維持したまま使用するようにしましょう。
 ……きっとその方がいい気がします」

遠慮無く使わせてもらうつもりだが、後から来た新参者である自分がこの家を必要以上に荒らすのは気が引ける。
物に魂が宿るとしたら、きっとこの家にある物はきっと荒らされたくないと思うはずだから。

「報酬は考えておきます。私にできることの範疇で出来る限りのことを……
 餌……ですか。ふふっ、わかりました。では、餌として働く代わりに見返りを求めるとしましょう」

とは言え、当面はこの場所に居れば足はつかないだろう。
こんな場所まで探りを入れてくるのは何時になるやら分からない。
しばらくは安全に過ごせそうだ。
336 :アーサー :2013/03/23(土) 05:22:04.20 ID:3MIYjDsg0
>>335
「…………………………………」

アーサーの顔が仏頂面を越して完全な無表情に。
そして顔色が沸騰するように真っ赤になって、今度は頭のてっぺんから真っ青に変色していく。
人間の顔色はこうも変化するのだろうか。そう思わずにはいられないほどの変わり具合だ。

「笑うの、苦手なんだよ」

困ったように口の端にだけ笑みを刻む。
うまく笑えない、というのはささやかかつ大きなアーサーの悩みだった。
もうかれこれ10年以上付き合ってきたどうしようもないコンプレックスだ。

「そうだな、俺なら狙わない家だ
 そうしてもらえれば前任者も喜ぶ。衣服はまだ収納してあるから、サイズが合えば使ってくれていい」

昔はここに頻繁に通ったものだ。
ここの自警団とのつながりも、前任者のそれを引き継いだだけともいえる。
今はもういない仲間の築きあげたものを壊したくなくて、アーサーはまだここを残してあるのだ。

「あまり力は入れないでくれ。こちらが申し訳なくなるから
 今度差し入れを持ってくるよ。あと、この家の4軒隣の洋食店、店員が足りなくてこまってると」

とりあえずの資金源に関する情報を与え、アーサーは立ち上がる。
長居するのはやめておこう。千早は襲撃のおかげで疲れているだろうし、自警団長にもうすこし詳しい言伝を残さねばならない。
そのあとは先ほど襲撃者を殺した現場に戻り、自分なりに調査を始めねば。

一通りの方針を決め、アーサーは玄関へと向かう。
さりげなく靴箱の上に、給料が手に入るまでの今後しばらくの資金として札を置くと、そのまま家を出ていくだろう。

/とりあえずここで〆で!
337 :千早 [saga]:2013/03/23(土) 05:37:22.43 ID:cc8kY8Ojo
>>336
「そ、そこまで酷いのですか……」

表情の変化に乏しい彼をそこまでさせるとは相当のやり手なのだろうか。
そこまでだと逆に一度見てみたいものだ。
自分について色々聞かれるのは微妙だが、どんな人物なのか興味がある。

「そうなのですか? でも、今はちゃんと笑えていましたよ」

少なくとも先ほどの笑みは自然で、ちゃんと笑えているように思えた。
不意に出た笑みであれば、それが隠された素なのかもしれない。

「服もまだあるのですか……? ですが衣服まで借りるのは少々気が引けますね……
 緊急時はお借りするかもしれませんが、基本的には自分のものを使うことに致します」

使っていた家に一度戻って服を取りに行こうか……
少々リスキーだが、色々と取りに行きたいものもある。
今度すきを見て荷物をこちらに移そう。

「いえ、命の恩人ですから、色々させて頂きますよ。
 ……洋食店ですか。わかりました、訪ねてみます」

職の斡旋までしてもらってしまう。
悪いとは思うが、食がないのも事実。ここは甘えて言って見ることにしよう。

「では、またいらしてください。いつでもお待ちしていますから」

そう言って見送る千早。
アーサーが置いてあった札に気がつくのは、アーサーがすでに見えなくなってからだった。
流石にこれを使うのはとりあえず控えておこう。あまりにもお金がなかった時に使わせてもらうことにする。

//ありがとうございました
//眠気でかなり適当になってしまってすいません
338 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 19:11:33.69 ID:i+aaAG5y0
「ここは一つ穏便に行きたいね」
笑いながら私は発言する。
「この状況を楽しもうじゃないか」
手に持っている本を投げ捨てる
「だから言おう、助けてくれ」
私は今、崖にぶら下がっていた
339 :魔法警察シオン(女リーゼントのロリ)魔法の警察装備と身体強化 :2013/03/23(土) 19:29:24.80 ID:0YebO4sQo
>>338
 バイクを流していた途中での話。
「随分と変わった岬の楽しみ方だな。」
 気紛れに海を見に来れば珍しい場面に遭遇するも、
 声の主は落ち着いた声で話しかけてきた。
「こっちの手は届くかい?」
 大男がしゃがみこんで岬にぶら下がっている男に手を延ばす。
340 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 19:30:08.75 ID:0YebO4sQo
>>339
// 失敬、名前欄ミスです。
341 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 19:32:40.57 ID:DeAGNXMEo

右脚を軸に、半身を捻る。全体重を受け、押し出された拳が相手の腹部、右側へとめり込んでいく。
コークスクリュー・ブロー。
加えていた一回転のひねりが皮下脂肪を穿ち、肝臓にまで達したのを皮切りに、レルは、自分の脳に言い知れぬ快楽の波を覚えていた。


                 「────僕より強い奴に、会いに行く」


「……なぁ〜んちゃって、恰好付け過ぎですかねぇ」

一撃の下に崩れ落ちる、自分よりも遥かに大柄の男性。拳の応酬はあったが、決定打が最後の一発だった事は自明だった。
練り上げてきた技と、犠牲を以て得た力で、体格で勝る相手を叩きのめす充足感──
ふと街中の、どこかの広告にあった宣伝文句を格好付けて真似てみると、自分が何か、特別な存在にさえ思えてくる。

決闘、と呼べるほど崇高なものではなかった。私闘──単なる喧嘩、それは、レルにとっての娯楽と言い換えて良い。


表通りからそう離れていない、ここは路地裏──倒れた男を端へ引きずりながら、彼女は新たな娯楽≠探し出そうと画策していた。
342 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 19:34:41.02 ID:i+aaAG5y0
>>339
「手は届くが、気をつけてくれよ。私の体はすぐ骨が折れるからね」
そういい、男の手を取り、崖を上がる
343 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 19:40:40.59 ID:0YebO4sQo
>>342
「ん?それはどういう意味だ?」
 人一人持ち上げようというのだ。
 気をつけるにしても力は入る。
344 :アーサー :2013/03/23(土) 19:43:34.35 ID:V6Rq6Z00O
>>341
この娘との遭遇は暴力沙汰場面ばかりになってしまうのではないか。
そんな疑念とちょっとした頭痛を押さえつけ、アーサーは煙草を取り出す。

DEATHの文字と髑髏のパッケージから一本咥えて、マッチで火を付ける。
いつも通りの動作は淀みなく、片手でも10秒とかからない。

年頃の女の子が裏路地で大の大人を殴り倒すことについて、自分は叱るなり嗜めるなりした方が良いのだろうか。
思春期真っ盛りに違いないレル相手になかなか言い出す勇気がないのもまた事実だが、流石に大人として見過ごすのもはばかられる。
うぅむ、と呻きが漏れる。
どちらもどちらだ。言わないのはダメだろうが、言っても地雷を踏んだら面倒なことになる。

というより自分は体面上とはいえ警官である。
暴力沙汰を見て見ぬ振りすることも考慮しているから名乗るのもおこがましいが。

「まあいいや…………やあ、元気してた?」

とりあえずは接触することから。
アーサーは気さくな態度で、レルに声をかける。
345 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 19:43:49.67 ID:i+aaAG5y0
>>343
「冗談だ、気にするな」
何とか崖を上がり助けてくれた人に感謝を言おうとするが

「ところでここはどこだ?」
346 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 19:47:48.96 ID:0YebO4sQo
>>345
「街外れの岬だが。落ちないで良かったな。」
立ち上がり自分のバイクに戻っていくと横向きに腰掛けた。
「どこだってのも変な話だ。自分の足でここにきたんじゃないのか?」
347 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 19:52:09.09 ID:i+aaAG5y0
>>346
「あぁそれは私の能力のせいでな、」
服の泥を落とす
「時々意味が分からん能力が出てくるんだ。」
私は、本を取出し読みだす
348 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 19:55:26.24 ID:0YebO4sQo
>>347
「能力者か…、それにしてもそいつは大変だな。
 自分で制御はできないのか?」
349 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 19:59:22.56 ID:i+aaAG5y0
>>348
「あぁ、今わかっている能力でも三つってところだ」
本を次のページにめくる
「それよりも腹がすいたな、よければそのバイクで町まで連れて言ってくれ」
350 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 20:03:19.08 ID:DeAGNXMEo
>>344

「……おや」

背後からの聞き覚えのある──アーサーの声に、レルは間の抜けた声で応じて、頭だけを彼の方へと展開させる。
いつも通り、横一文字に閉じられた眼。
普通、存在しないはずの視線≠ェアーサーを捉えるのと同時に、彼女の口元が淡く綻ぶ。


「アーサーさんじゃないですかぁ、お久しぶりです」「ご覧の通り、僕は元気ですよ」
「遊びにかまける程度には、ぴんぴんしています」

彼が警官である事は重々承知していた、同時に、この程度の行為で目くじらを立てるような人物ではない、とも。
無論、それは単なる主観なのだが。故に、レルの態度は直前までの動向とは似つかぬ、至って普遍的なもので──


「アーサーさんも、お変わりないようで」
「……その煙草のセンスも含めて、ですけど」「ひょっとして、僕に感化でもされましたか?」

やがてレルは体全体をその場で展開させて、火種が当たらんとばかりの距離まで歩み寄って、首を傾いでみせるのだった。
くゆる紫煙を顔に受けても、別段動じる様子は無く──きっと、以前と変わりの無いだろう彼の顔を、まじまじと見詰める。
351 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 20:04:23.03 ID:0YebO4sQo
>>349
「随分とマイペースなやつだな。」
 断る理由もないが、初対面で意外なことを頼んでくるもんだ。
「まあ、かまわないぜ。適当な駅前でおろせばいいのか?」
 馬鹿でかいエンジンがミスマッチしているがよく見ればホンダのカブだ。
352 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 20:05:28.12 ID:i+aaAG5y0
>>351
「あぁ、駅前で」
バイクのうしろに乗る
353 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 20:10:42.72 ID:0YebO4sQo
>>352
「変なのを拾ったもんだな。おれは鬼塚詩音だ。」
 そう言うとスターターを蹴ってエンジンを回す。
「飯食うならモールか市場の近くでいいな。」
 ギアを入れると後輪を滑らせながら公道に入った。
354 :アーサー :2013/03/23(土) 20:13:40.14 ID:V6Rq6Z00O
>>350
「遊びで大人を殴るなよ」

頭が痛い、と目頭を揉んで遺憾のため息。
もし今後レルと思しき少女の噂が流れ出したなら面倒を避けるためにその火消しをせねばならないかもしれない。
とはいってもそれはアーサーに及ぶ面倒ではなく、レルが厄介ごとにまきこまれないようにという要らぬお節介であるのだが。
とまあ、アーサーは殴り倒された男よりも見知った少女のために動く程度にはルールだとかいうモノから逸脱する傾向がある。

ともあれこの娘はいつも通りらしい。
そこだけはよかったと、心から安堵しながら不器用にすぎる笑みを浮かべる。
はたからみれば唇が引きつって吊り上ったようにしか見えないかもしれない。

「おれのスタイルはあまり変わらないと思うんだけど」

ぐいと寄せられた顔に、思わずギョッとする。
レルに当たらないようにと煙草を指先に挟んでどけると、まじまじとこちらを観察するレルに引きつった笑みを浮かべた。

顔が赤熱する。
熱を帯びた顔を悟られまいとアーサーは後退して、レルの脇をすり抜けるて仰臥した男の傍に立つ。

「しかしまあ、君も年頃の女の子なんだから…………こう、荒事を避けるとかしようぜ
怪我したら大変だし、殴り倒された方もプライドってもんがだな……」

モノの見事にKOされた男に同情を禁じ得ないアーサーだった
355 :一春間 [saga]:2013/03/23(土) 20:14:41.63 ID:i+aaAG5y0
>>353
「いやーすまないなぁというか風がきもちいい」
なんだろうまるで鳥になったような気分だ
「そしてこれが酔いか…」
そのままバイクから落ち転落する
そのあと一瞬で消え去った

//すいません、用事が出来てしまいました。またでよければからんでください
356 :鬼塚詩音(リーゼントの大男)身体強化と変質 :2013/03/23(土) 20:17:42.47 ID:0YebO4sQo
>>355
「ん?おい?!」
 さっきあった男はなんだったのだろう。
 よくわからないが、どこかに倒れているわけでもなし。
 釈然としないがそのまま周囲を確認すると詩音は一人で街に向かった。
// りょうかいです。お疲れ様でした。
357 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 20:28:16.79 ID:DeAGNXMEo
>>354

「あははっ、何分、こういう事ばかりして育ってきたもので」

「第一、合意の上での喧嘩なんですから、まあ、慢心はあったでしょうね」
「人を見かけで判断すると、痛い目に遭う……って訳です」

若干、羞恥を交えた笑み。けれども、別段特別な事ではないとばかりの口ぶり。
盲目故、彼の頬に朱が差している事など露ほども気取れずに、
不自然に後退してから脇をすり抜けたアーサーに、レルは頭へ疑問符を掲げてまた首を傾ぐ。


「……そういえば」「スーツを頂いたときも、そういう<Zンスをしていらっしゃいましたね」
「それにしても、死神に仕える神官の前でそんな銘柄の煙草を吸うなんて──」

「──、一体全体どういう了見でしょう?」

若干、馬鹿にするような、強調を添えての言葉遣い。
部分、部分で毒舌を発揮する辺りも、どうやら以前と変わりないようだった。
くすくすと、笑みを零しながら問い掛ける、その声に怒気は無かった。
358 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 20:47:49.86 ID:0YebO4sQo
【花丸商店街】
そろそろ各店舗のシャッターも飲み屋意外は全て下りようとしている。
同商店街にある本屋に急ぐ金物屋の店主がいた。まだ開いていたはず。
ファッション誌を選びたかったのだが自分の仕事が長引いてこの時間である。
走る女、ゆれる髪、暴れる胸。全力疾走。
まだ人通りもある空間を走るにしてはハイペースだ。
359 :アーサー :2013/03/23(土) 20:51:47.20 ID:V6Rq6Z00O
>>357
「君は将来苦労するぞ……って、そうか。神官は異性とはそうならないのかな?」

どうなんだろうなどと自己完結した疑問に首を傾げる。
下世話な想像を働かせているらしい。

「しっかしまあ、こんなんじゃしばらく自尊心が傷ついたままだろうなぁ」

遭われ、女子に殴り倒された大人。
アーサーは彼に瞑目し、やれやれと立ち上がって煙草を咥え直す。
しかしこの男が相手を女子と見くびったのは間違いないだろうし、アーサーはほんの少しだけざまあみろと思っていたりもする。

「そういうセンスってどんなセンスだよ」

わけわからんと肩を竦め、アーサーは煙草の燃え殻を落として銜える。
燻る紫煙を見つめながら、どういう了見か、という問いにやや思案して、

「DEATH(死神)そのものだからな、俺は
殺し屋はある意味死神だよ。おれは無宗教だから不遜にもそう名乗る」

おどけた態度でそう返しまた紫煙を吐き出す。
そして男のそばから離れると、

「ここで話すのもなんだし、どこかいかないか?」
360 :シンラ・アマツキ :2013/03/23(土) 21:02:27.80 ID:PnwVEjFP0
>>358
彼女の向かえからもまた、同じように人ごみを掻き分けるナニカがヒトリ
女性的な肢体を携えた女とはまた対照的な生物
幼く小さく 揺れる胸さえも無い 男かも女なのかも分からない生物だ

そんな、小動物的なナニカは必死に走っていたからか、はたまた 別の理由で視界が晴れていないのか
どちらにせよ女性の足元に、盛大に衝突しようとしていた
恐らくこのまま衝突すれば、小動物はさながらサッカーボールを蹴り上げと様に転がってしまうだろう
361 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 21:08:54.50 ID:0YebO4sQo
>>360
「っわ!危ない!避けろ!」
 しまった、急ぎすぎたと後悔してももう遅い。衝突は必至。
「すまないッ!」
 踏みつけるのは言語道断として止まるのも飛び越えるのも無理。
 そこでボルテクスは重心を下げてからぶつかった後で
 相手を抱きしめて、抱え込んだままスライディングした。
「大丈夫か?こちらの不注意だ。怪我はないか?」
 
362 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 21:13:51.49 ID:DeAGNXMEo
>>359

「ご明察、基本的に結婚はしませんので、老婆心じみた心配はご無用ですよ」
「とはいえ今じゃ神官の絶対数なんて雀の涙ほどですから、場合によりけりですけど」

「でも、介抱したらかえって傷つきそうじゃないですか」

アーサーの想像に釘を差しつつ、レルは改めて足元の──倒れ伏した男へ顔を向けた。
だから、せめて人目に晒されないよう隅っこへ寄せてやったのだ、と注釈を入れてみる。


「毎度の事ですけど、神官の前でよくそんな事言えますよねぇ」
「まあ、僕らはどこぞの大所帯さんとは違って、信心を強要したりはしませんけど」

「……っと、賛成です」「いつまでもそこの人の傍に居る訳にもいきませんし」
「あ、どこへ行くかはアーサーさんにお任せしますよ」「僕、他の遊びはあんまり知りませんし」

どんな、と問われると、言葉に困る。
どう表現すべきかこまねいていた所を、続くアーサーの言葉に、ごまかそうと便乗するのだった。
363 :アーサー :2013/03/23(土) 21:30:28.60 ID:PMtpItX00
>>362
「老後が大変そうだ。独り身人生はさびしいぞ〜
 ってもまあその分なら誰かしら介護してくれそうだけど」

まるで自分がついぞ縁に恵まれなかった老人であるかのような言い分。
まだまだどっこい20代だが、自分の女運の悪さ。もとい自分といい雰囲気になった女性の運の悪さを身に染みているアーサーの言はどこか陰鬱だ。

「俺ならかわいい女の子に殴られて介抱されたという素晴らしい思い出にする。もう家宝だね」

などと真顔で言い切るあたりこの男、下心満々である。
ただまあそんな余裕綽々なのは自分がそういう目に合うまでだろうが。
実際に殴られ介抱されたら――いや、やはり喜ぶかもしれない。

「ちょっと機嫌を損ねたらライフル並みの高精度高速で刃物投擲して来たり拳で石柱破壊する人外がこの世にはいてだな
 俺の部署はそういう人たちと拳と拳、もとい神秘と科学技術の応報による取引も行うんだ」

宗教がらみの前で尻込みしていたら生き残れないと言いたいのかもしれない。
なにせ彼らは対邪神のプロ。教会保有の邪神関連に首を突っ込んで火中の栗を拾うのがお仕事だ。

「喫茶店でいいかな? 行きつけの店」

そういえば女性をこういう風に誘うのはかなり久しぶりな気がする。
この娘を女性といっていいのだろうか、という疑問は脇に置いておいた。
364 :シンラ・アマツキ :2013/03/23(土) 21:35:53.86 ID:PnwVEjFP0
>>361
『っわ!危ない!避けろ!』
ひたすらに駆けていた最中。 
その唐突な声に反応なぞ出切る訳も無く
「ほぇ!? わっはー・・・!?」
顔面に奔る衝撃とともに地面に叩き付けられる映像も脳内を過ぎり
痛みと恐怖により眉を顰めたのだが…

(あり…? 痛くない…? やわらかい…?) 

そっと…目を開けば、眼前には恐らく己を抱きしめてくれているだろう女性
柔らかさと暖かさに顔を真赤にさせたのち、小動物は無言でぺこぺこと頭を上下させ…
同じく相手を抱きしめ、相手との体に身を隠すようにしながら
その場で暫しの沈黙を決め込む…。 恐らく女性からすれば、小党物は変質者に違いなく
叫ばれる投げ棄てられる殴られるなんて、ことをされてもおかしくは無いのだが

「おねがいします….匿ってください…! 」

と、小さく呟く。 その数秒後。 小動物の走ってきた方向から、数人の警察官が走り寄ってくる
女性が匿うことを拒絶すれば、警官達は少年に気付き こちらに寄ってくるであろう
女性が匿うことを拒絶しなかった場合、警官達はその場を過ぎ去り、先ほどより聊か少女寄りの顔をした生物が女性に礼を言いながら、僅かに距離をとるはずだ

365 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 21:46:12.21 ID:0YebO4sQo
>>364
「ん?あなたおと…おとととっととおとと男の子?!」
 基本、彼女には異性への免疫がない。
 が…もう一つの性格というか性癖を持っている。
 戦闘狂の気がある。危機の中では冷静さも保っていられる。
 状況が男性恐怖と戦闘狂を上手く重ねてくれたか。

 匿うか匿わないかの選択だけなら、匿うを選んで良いが「わたしは何をすればいい?」
366 :レル/神官ボクサー [sage saga]:2013/03/23(土) 21:47:00.49 ID:DeAGNXMEo
>>363

「まあそれ以前に、そこまで長生きできるのか、という話ではありますけどね」

こんな仕事ですし、と自虐気味に付け足してから。
やけに悲哀めいたアーサーの口ぶり、それから、見え透いた下心に苦笑してみる。

「……僕の拳は、冥王からの借りものですからね?」「そんな変態じみた事には、断じて用いませんから」

さりげなくかわいい≠ニ称された件については触れず、冷ややかな視線をアーサーへと送って。
実際、どう受け取ったのかは定かではないけれども、少なくとも、悪い気はしない──はず。


「……でもそれ、後者は僕にもあてはまりますよね」

覚えているだろうか、以前出会った時、彼女も拳で容易く墓石を砕いていた事を。
別段、気分を害した訳ではなく、ともすれば敵にも成り得る間柄である、という事実を再認識しての言動だった。

アーサーの申し出に「ごちそうさまです」と、早々に奢ってもらう意思を表明しつつ。
きっと、件の喫茶店へ先導するのであろう彼の後へ続こうと、足を踏み出す。


/すいません、次ちょっとだけ遅れそうです
367 :シンラ・アマツキ :2013/03/23(土) 21:56:11.17 ID:PnwVEjFP0
>>365
「うん…? ぁ、、、じゃぁ、女の子になるから…
 このまま一緒に立ち上がって…手を繋いでここから逃げてくれないかな
 出きれば、姉妹みたいな感じで…」

理由は、今は聞かないで…と。
少女のなりをした少年がそそくさと立ち上がり、女性に手を差し伸べる
警察官達は、何か怪しむように少女と女性を睨んでいるが…
女性がこのまま挑発的な視線に逆上することがなければ逃げ切れるだろうか…?

『うぇひ…! ニオゥ、ニオウジィ、アッコガヨォォォオ…
 ウェヒヒ… コロシてぇ…、コロシてぇよォ』

警察官の虚ろな目で放つ睨みと、不気味な言葉…
されど言葉とは裏腹に警察官は、無関係の人間を巻き込む気は無いようで
疑わしきを罰する事無く。少女達の動向を不気味に目でおっていた

368 :アーサー :2013/03/23(土) 22:02:37.58 ID:PMtpItX00
>>366
「俺よりは長く生きると思うよ。これはまあ決まった話というか、寿命がだいたい知れているからともいえるんだけど」

なんでもないことであるかのように、さらりとそんなことを口にしてみる。
煙草をふかしてレルの前を行くアーサーの顔ははっきりと彼女からは見えないが、その横顔には夜の街灯がつくりだす深い陰影と虚無的な無表情が同居していた。
機械的な無でもなく、諦念が生み出す虚ろでもない。
あるものを事実として受け入れて、それが当然だと疑わないあまりに自然な無表情。
悲壮感もなければ哀愁もなく、ただそこにあるだけの空虚だ。

「しかし私闘に使うのはよい、と。よくわからんね」

冷ややかな視線を感じては苦笑に頬を吊り上げ、両手を肩まで上げてすまんすまんと詫びを入れる。
その様子はどこか浮かれているようにも見え、故意的にそうあろうとしているようにも見える。

「墓石を粉砕、だっけ」

さすがにあのときは唖然としたものだ。
アーサーといえど墓石を拳で砕く少女など見たことも聞いたこともなかったから。
とはいえ墓石程度拳で破壊するものがこの世にいないわけではなく、そこまで驚かなかったともいえるのだが。

「ま、君と戦わないことを祈る。そしたらおれはきっと負けるから。いや、間違いなく、かな」

だからやだよ、と。
言い逃れするようにそう付け足して、アーサーはまたおごることになった流れを粛々と受け入れる。
そのまま少し歩けば喫茶店へたどり着き、アーサーはやや奥まった仕切りつきの席を選ぶだろう。
そこは自分の特等席であり、神官風といういかにも目立つレルを目立たなくするには最適だ。

/あいー
369 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 22:04:32.78 ID:0YebO4sQo
>>367
 状況は分からないが身の振り方がわかれば今は充分か。
「え?あ…どっちでも、君の好きなように…。」
 目の前の少女だか少年だかの手をつないで歩き出す。

 それにしてもあの警察官たち、本当に警察官なのだろうか。
 いきなり飛びかかっては来ないだろうか。正気の人間に見えない。
「早く行こう。あれが普通の警官じゃない事は理解した。」
 手をつないだまま足早にそこを去ろうとする。
 保険になりそうな機械は自販機から自動車まで結構あるものだ。
370 :シンラ・アマツキ :2013/03/23(土) 22:21:28.10 ID:PnwVEjFP0
>>369
『キヒッ…キキキノセッカ!? ツギ。ツギハギ!? 
 ツギハ…ハ.ハヤクゴドジデエエエエエエエエエエエ!!!
 シンラァァアアァァア! あま、あま、アマチュキィィイイイイイイ!? 』

虚ろな瞳に淡々と去り行く少女達を収めながら、警察官は人込みに消えていき…
その不気味な気配が背後から去ったことを確認すると、少女はすぐさま女に頭を下げると
またしてもいつの間にか少年の姿に戻り、はにかみながらつぶやいた

「えとえと、まずはぶつかってごめんなさい…それと」
「ありがとうございました! ぼく…シンラって言いま…『アマチュキィィイイイイイイ!? 』

が、その刹那…少年の背後より腕を刃のように変貌させ 少年の首を刎ねようとする
先程の警察官。 そのほんの囁きに反応をする聴力と 刃と化した右腕を見れば、警察官が普通ではないのは明らかだ
そして、少年が その驚異の速度で振り下ろされた刃への反応が間に合わないであろうことも……


371 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 22:32:44.71 ID:0YebO4sQo
>>370
「いや、わたしもこんな所で走っていたからな。
 わたしから当たりに行ったようなものだよ。
 そうか君の名前はシン…ラッ!!」
 自己紹介の暇もあったものではない。
 変身、変形も、機械兵の生成も間に合わない。
 ボルテクスはシンラを突き飛ばし、身長差による影響で背中を斬りつけられる。
「シンラッ!怪我はないか!」
 背を深く斬られながら叫ぶ!
 油断していた。こんなに不審者の接近を許すとは我ながら不覚。
「シンラ!ここは走って逃げろ!追って助けに行く!」
 そう伝えると視界に写った軽自動車に向かって近づいていく。
372 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 22:40:57.19 ID:DeAGNXMEo
>>368

「お互い、早死にしそうな業種ですものねぇ……って、いやいや」
「自分の力を試すのと、そんなM字型に倒錯した趣味の為に使うのとでは、意味合いが違いますって」

相も変わらず辛辣な言葉をさらりと紡いで、けれどそれは、アーサーの突込みに応じられなかった証左でもある。
「この変態」言い逃れじみた罵倒を、頬を膨らせ、最大限まで尖らせた視線を共に放ってやった。

その間にちらりと伺えた、顔色>氛泱ウ色、とでも形容すべきだろうか、
レルはそこに、飄々としたアーサーの内面を、一瞬ながら見出した気がした。


「僕も、そう思っていますよ。少なくとも、僕の個人的≠ネ意見ではありますけど」



───少しの時を経て、喫茶店にたどり着いたアーサーと、レル。


「ねぇねぇ、僕知ってますよ、こういう喫茶店には裏メニュー≠ェあるって」
「アーサーさんくらいになるといつもの≠チて言うだけでそれが出てくるんですよね?当然、そうですよね?」

席へ案内されるや否や、アーサーの前に踊り出て着席して開口一番、得意げに言ってみせる。
いささか、ハードルを上げ過ぎの気も、しないではない。
途中、ちらちらと仕切りから顔を突き出して店内を覗き込む辺り、平静を装いつつも興味津々──といった具合。

時代錯誤なレルの衣装、温暖なギリシャの気候からくる薄着のせいもあるだろうか、周囲の視線を感じなくもなかった。


/もどりました……!
373 :シンラ・アマツキ :2013/03/23(土) 22:56:34.99 ID:PnwVEjFP0
>>371

『ウェヒィ!? チゲェ! チッゲェエェンダヨゥ!? 
 シンラ! シンラ! シンラァ! てめーはちっがうわぁ! 』

警察官は刃を女の背中から引き抜き、そのぬらりと揺れる焦点をシンラに合わせる
が、当のシンラは涙を流しながら地を這いながら退いていき…
それを追う警察官。 ボルテックスが軽自動車に辿り着くまでの時間は十二分にあるはずで…

「お、おねーちゃん…! これ…!」
『キひゃァ! シネェ、シネィあまつきぃ!』

その間にシンラは女性に向けて光の矢を放ち
その間に警察官は少年に向けて刃を降ろし…
繰り返される回避と斬撃の応酬。 もし、彼女へと向けて放たれたう矢がボルテックスを貫いたのならば
背中の傷はたちまちにいえるであろう。 
少年もまた、常識から外れた存在であることの証明であった…
374 :アーサー :2013/03/23(土) 23:04:17.62 ID:PMtpItX00
>>372
「やだなあ、そんな業界に女の子がいるなんて……あーやだやだ本当に嫌だ」

わざとらしく、しかし何か思うところがあるのかしかめっ面でアーサーはそう口にする。
まるで気に食わないと言いたげに。駄々をこねる子供のように、アーサーの声は頑なだ。

「これであの哀れな男がマゾヒストに目覚めなければいいんだが。というか君、そういうことは知ってるのな」

田舎から出てきて常識が欠落している割に知らなくていいことはよく知っている。
これはゆゆしき問題だろうにとアーサーは呆れた様子でため息を一つ。
しかし彼は同時に理解している、きっとその変な知識の偏りは自分も関与するところだろうと。

「褒め言葉だ、ありがとう。世の中には変態紳士という言葉があるそうだ。英国紳士のおれにはいいあだ名だよ、レル“ちゃん”」

おどけて、からかうように。
頬を膨らませてこちらを睨みつける表情が、大人を殴り倒すレルの闘士としての姿とあまりに差がある気がして、アーサーは思わず笑い出す。

「どれだけ目が怖くても、頬を膨らませたら……くくっ……けほっ」

吸いかけの紫煙が喉に絡んで咳き込む。
ひとしきり笑って満足したのか、アーサーは煙草を携帯灰皿へ押し込んだ。

「そうだね、個人的見解でなくてもいいと思う。俺に神様は殺せても、年下の女の子はまちがいなく殺せない」

先ほどまで笑っていたとは思えないほどに、一瞬で表情が欠落する。
予見どころかそれが真実だと断定しきって、アーサーは口の端に笑みを刻んだ。
少なくとも笑ったつもりだったが、実際のところそれはどこか破たんした神経が痙攣を起こしたかのようで。
薄暗がりの中で光る蒼い目だけが、一抹の感情をたたえていた。


〜喫茶店〜

なるほどそう来たかとため息。
最初からハードルを吊り上げやがってと内心に吐き捨てる一方、どうやらそれなりに興味が尽きないらしい様子に微笑ましいなと思う。
しかしここに裏メニューなどなく、残念ながら普通のメニュー以外に存在しない。

「なあ、前にメニューから消えたあれ、ある?」

しかしアーサーは過去に消えたゲテモノを知っていた。
店員に尋ねると、何かを察したのか彼はうなずき厨房へ消える。
周囲から向けられる好奇の視線に、笑顔なのにどこかうすら寒い奇妙な感覚を抱かせるスマイルを振りまくと、周囲は浅慮がちに視線をそらし始めた。

そして、注文の品が運ばれてくる。
黄金色で構成された長い三角形、見る者が見ればそれはエッフェル塔だとわかるだろうが、その構成物はフライドポテトだ。

「あれ? こんなデカかったか?」

ちなみにサイズはメートル程度である。
375 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 23:12:17.91 ID:0YebO4sQo
>>373
「腰が抜けたか…あれでは逃げられない…。」
 そのシンラが自分に攻撃してきた。
「シンラ…?!」
 シンラの放った光の矢に貫かれた事で一瞬隙はできるが、
 自分の身体に起こった事の変化で動作の意味を知る。
 まず、自販機を叩く、電話ボックスを叩く、路駐のバイクも叩く。
「起きろ!目覚めよ下僕たちよ!」

『王!王!主!我らが主!』
『命令を!攻撃命令を!殲滅命令を!虐殺命令を!』

「これは戦争ではなく救出作戦だ。あいつを取り押さえろ!」
 警察官を指さし命令を出すと六体程の機械の獣に跨った
 機械の兵がシンラ達の方向へ駆け出す。武器は刺叉。
「生け捕りにしろ!あとで尋問にかける!」

 そしてボルテクス自身は軽自動車と融合すると、
 機械の騎馬兵の後から巨人の姿で走りよってくる。

『シンラ殿助太刀いたす!』
 騎馬三体、騎兵三体、合わせて三体の騎兵がシンラにまず加勢する。
376 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 23:26:07.94 ID:DeAGNXMEo
>>374

「おお、あるんですね」「少しだけですが、見直してあげても構いませんよ?」

普段は毒舌気味の彼女だったが、やはり、初物の期待感は耐え難いものらしかった。

彼女の想像していた通りの、曖昧な注文。
それはレルの目にひどく恰好良く映ったが、変態紳士、もといアーサーなのでプラマイゼロ、とは彼女の談。

果たして何が待ち受けているのやら、もはや溢れる興奮を抑えきれずに眼を輝かせ、そして──


「……何ですか、これは」

数分後、彼女は下から上へ、視界をぶち抜く程に高く積み上げられたフライドポテトの山と対峙していた。
○郎だとかマ○ンテンだとか、そんなレベルでは断じてない。メートル級の巨峰を前に、レルはただ打ちひしがれる他なかった。
それが感動なのか、落胆なのかはさておいて、茫然自失といった具合でアーサーに問い掛ける。

ひょいとひとかけ程つまみあげ、口へと運ぶ──「美味しい、美味しいですけど……」


「───これ、全部食べきれるんですかねぇ……?」

377 :シンラ・アマツキ :2013/03/23(土) 23:32:49.81 ID:PnwVEjFP0
>>375
「あ、ありがと…! えっと…せんしさんたち! 」

心強い救援達がやってきて、どこかホッとしたのか…
ふらりふらりと立ち上がり、警察官の振り下ろした刃を防ぐように光の刃を生み出し応戦
警察官は、ニヤリと口を緩ませると その醜貌を歪ませながら、一歩二歩と後退し…
軽く…指を鳴らして見せた…次いで、街の人間の一部が一斉にシンラやボルテックスの方を見遣る

『アァァァァア… ンン…邪魔邪魔邪魔
 ジャマはお一人サマ一回まで出ッ所ォガ !?
 苦ォ路背ええええええええええエエエ』

ボルテックスが機械達を兵士に代えてみせたように
警察官もまた、周囲の無実の人間達を同様の怪物にしてみせたのだ
次いでその怪物たちが一斉にボルテックスとシンラに飛び掛る…
シンラは機械兵達を傷つけまいと、平然と住人を両断してしまう

ボルテックスもまた、住人達に平然と刃を向けるのであろうか?





378 :アーサー :2013/03/23(土) 23:33:15.79 ID:PMtpItX00
>>376
「全面的に見直してくれ」

短くそう返して、アーサーは追加でビールを注文する。

そそり立つ巨影。
この店にかつて君臨し、売れずに消えてしまったはずのメニュー。
店中の視線がそのタワーと、レル、そしてアーサーにまとわりつくなか、アーサーはしれっとした顔でビールをちびちび。

メートル級のポテト。
完食すればこの店の商品を5000円分まで購入できる商品券プレゼント。
その旨をレルに伝え、食いきれなければ3000円だとも付け加える。

「味はいいんだ。そのうち飽きるけどさ」

経験者は語る。
経験者は過去の地獄を思い出す。
経験者は――その日の修羅を忘れない。
379 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/23(土) 23:49:39.87 ID:DeAGNXMEo
>>378

「前向きに善処させて頂きます」

どこぞ政界の定型文じみた返答をしながら、レルも勝手にウェイターへクリームソーダを注文。
果たして、本当に世間知らずと言えるのだろうか。


「商品券ですか」「だったらほら、アーサーさんも食べてくださいよ」

もう一口、やはり味は良いのだが、ポテトの山は全くもって目減りしていない。
飽きるけどな、というアーサーの言に、幾らか恨めしそうにしながら、彼を睨みつけて。

「……なんでまた、そんなものを頼むんですか」
「僕を太らせたい願望でもあるんですかね、僕なら軽く数日は過ごせる量、ありますよ」

「[ピザ]専ですか」などとあらぬ言を浴びせながら、その裏でポテトをぼりぼり貪っていくのだった。
380 :アーサー :2013/03/23(土) 23:55:59.92 ID:PMtpItX00
>>379
「これは適応されないパターンだな」

うんうんと他人事のようにうなずいて見せる。
もとより何と思われようと自分は自分、そういうスタンスで生きているのだから。
とはいえ見直されるのなら見直されたいが。

「食べきったら商品券あげる」

もしゃもしゃとセットのマヨネーズにポテトを突っ込んで先端から減らしていく。
慣れているのかコショウ、ケチャップ、マスタードまで注文で用意させていたりする。
恨めしそうなレルの視線には「どうかしたかい」と言いたげな見事なスマイル。

「裏メニュー期待したんだろう? だから答えただけだよ
 それにまあ女性はやはり胸にせよなんにせよややふくよかなほうが人気があるわけで」

やけっぱちにマヨネーズでポテトを減らしながら、黙々と口を動かす。
その間にも減らず口が出てくるのはさすがというべきか。

「そういえばきのう見事なプロポーションの女性に出会ってね。しかも美人の銀髪
 おかげで面倒も増えたけど、やはり役得役得。女性のためなら頑張れる。
 だから頑張ってこれも減らそう」

さすがにレルだけでは荷が重かろうと、ペースを上げる。
381 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 :2013/03/23(土) 23:56:41.59 ID:0YebO4sQo
>>377
「ちっ、こんな手をもっていたのか。
 それを引き出したのはわたしの失態か。
 この商店街には世話になっているのに…。」

 シンラには一言。
「一つ頼みがある、お前は自分の身を守るためだけに人を殺せ。
 わたしの分身は守らなくていい。」
 そして。
「そして予定変更だ。そこの警官の首を取るぞ。
 わたしは忘れていた。生け捕りなど性にあわないんだ。」
 怪物として死んだ住人を見ると歯を食いしばる。
「あれは[ピーーー]ぞ!」
『御意!』 『御意!』 『御意!』
 ただし機械兵の武装は刺叉。首にかけて殺さず生け捕る武器。
 あるいは全て生け捕るかもしれない。
 あるいは何体か破壊されるかもしれない。
 あるいは全滅するかもしれない。

 ボルテクスの瞳に映るのは警察官のみ。
「大将首頂戴つかまつる!」軽自動車を取り込んで巨大化したボルテクスは警察官に迫る。
382 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/23(土) 23:58:33.57 ID:0YebO4sQo
// 一旦〆ますね〜
383 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/24(日) 19:27:12.29 ID:NQWNF5Ufo
>>380

「残念ながら」つまんだポテトの先端でマスタードを掬って、その合間に、アーサーの方を見遣る。
どうやらタダ券の魅力は万国共通らしく、すかした態度を取りつつも、ポテトを取る手が休まる気配は無い。

「へー、はぁ、それでこの大盤振る舞い」「いやー、優しいなあ流石アーサーさん惚れちゃいますねぇ」
「それだけ気配りが出来るのなら、さぞかし女の子からは人気なんでしょうね、憧れちゃうなぁ」

レルの体格は、筋力はさておき平均的な女性と比べて華奢だった──遺憾ながら、胸部にも同じ事が言える。
それを知ってか知らずか、アーサーの口から零れた言葉に、レルは抑揚の無い声で賛辞を並べ立てて、椅子にどさりと背を預けた。


「……って、言った矢先にこれですよ、見事なプロポーション=v「僕もあやかりたいものですねぇ」
「その人が不憫でなりませんよ、こんな、紳士を騙って自分の変態行為を正当化するド変態に付きまとわれるだなんて」

何か、マイナスの方向にスイッチが入ったような気も、しないでもない。
その間、ポテトを貪る速度は──無意識の内に、なのだろう、ヤケ食いとばかりに上昇していくのだった
384 :アーサー :2013/03/24(日) 19:43:28.44 ID:5LqmkM63O
>>383
まずは予定通り。
相手がその気になってくれたならそれは非常にありがたい。
たかだか3000円を払うのは構わない。
しかしここの店主の前で食い残しは非常にマズイというのがアーサーの経験だった。
具体的には、次回から扱いがぞんざいになったり、睨まれたり。

「だろう? なかなか気が利く方だと思うんだ、おれ
いやまあ残念ながら人気のにの字もなくて扱いはぞんざいだけど」

レルの方など見もせずにポテトをテキパキと始末しにかかる。
そもそも気づいてすらいないらしい。
この男の悪い癖だ。相手に慣れてしまうとペラペラと言わなければいいような言葉が溢れ出す。

「ちなみに見事なプロポーションもグッドだが、細いのが悪いというわけではない
細いのには細いなりの良さがある」

言い訳のつもりなのだろうか。
あるいはレルの体形をみて彼なりにフォローしたつもりなのかもしれない。
どちらにしても余計な一言である。

「助けただけだよ、つきまとってないぞ
どうしたトゲトゲしい」

マヨネーズからケチャップへと切り替え、飽きないうちにさっさとポテトを減らしてしまう。
時間との勝負、タイムロスは敗北だ。
385 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/24(日) 20:03:49.85 ID:NQWNF5Ufo
>>384

「もぐ……なんたって、僕自身かなりぞんざいに扱ってたりしますもんね」

そんな、アーサーの経験則から来る目論みなど露ほども知らず。
手に取っては食べ、手に取っては食べ、終始咀嚼し続ける、レル。
華奢な肉体に篭った力と人並み外れた運動量が、彼女をどうやら大食らいたらしめているらしかった。

「そりゃあどうも、ありがとうござます」

やっぱり皮肉交じりに言い返しつつ、口元に寄っていた指先を、軋ませるように歯噛み。
「どうすれば大きくなるのやら」──微かに口を震わせて、そんな事を呟いたような、呟いていないような。


「んぐ、でもどうせアーサーさんの事ですし、口説いたり……家に誘ったりしたんでしょう?」
「第一その人、歳はいくつなんですかねぇ」

レルの消化速度がやけにハイペースな事もあって、着実に減っていくポテトの山──
それまで、一度に二本ずつ手にしていたのが、三本、四本と、増大しつつあった。
386 :アーサー :2013/03/24(日) 20:11:15.94 ID:5LqmkM63O
>>385
「ひどい! 証拠隠滅とかしてあげたのに!」

憤慨したようにアーサーは鼻を鳴らし、握った分を一口で始末する。
もはや咀嚼すら挟んでいないのではないか。
そう疑念を抱かずにはいられないほどに素早くポテトを漸減してゆく。

「それにまあ細っこいと父性をくすぐられるというかなんというか
歳上ならムッチリでいいが歳下は細いに限る」

至って大真面目に持論展開するアーサー。
手を拭いてビールジョッキをつかみ、ぐびぐびと煽る。
口周りについた泡にも気づかずほっと一息つくと、またポテトに手を延ばした。
あと半分。

「口説いてないし家にもよんで……家を与えはしたか
見た感じ20前後だと思うけど」

マヨネーズとケチャップを混ぜて新たな味を用意し、アーサーは空き家一つを提供そたのだと告げる
387 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 20:15:52.33 ID:TqkT3WRw0
>>381
胴から切裂かれ二対の怪物はパタリと地に堕ちる。
次いで機械兵達により取り押さえられる住人達。どうやら、警察官ほどの身体能力は持ち合わせていないようで
刺す又により容易く拘束され、抗うことも出来ずにのたうちまわっていた
それに倣いシンラもまた、光の環を生みだし怪物を拘束して見せると、少しだけ悲しそうな顔をしながら呟いた
「ぁ、ぁぅ…ごめんなさい…! 」
されど、分身と言われるとやはり内心不安になり、殺しをせずに分身たちを守ろうと拘束に全力を注ぐことにしたようで
その場で祈りを捧げる様に手を組み屈み、全怪物たちの拘束に勤める体制に移行していた
…のだが、それを見た警察官はといえば

『ァー… ありゃァ、アンタノしジカ!? 
 以外t化しケーじゃネェカヨォ』

と、わざとらしく苦虫を噛み潰したような表情を見せて両手を左右に居た怪物たちに添えると
『貴女が殺してくれれば。もっと効率良く吸収できたのですが…。いやはや、残念 残念至極』
ドロドロと…怪物たちは容を失い、警察官へと取り込まれていき…
警察官の背へと流れ二対の翼へと変貌…どうやら、他者を取り込む力と肉体変化の能力者のようだ
『本部…! 本部! こちら佐藤巡査長…! 商店街にて暴走した能力者と交戦中!
 至急救援願う! 対象はアマツキシンラを名乗る少年! 能力は光の操作と怪物の創造と思われます! 
 私は引き続き鎮圧に徹しますので、現場に救援を…!』

次いで警察官は早口でトランシーバーにそう吹き込み、それを踏み潰すと女性へと向き直った


『さて…貴方も暴走した怪物少年の被害者と成ってもらいましょうか
 哀れな被害者に かわいそうな亡骸に…ね
 でも本当はこんなに殺したくなかったのにな…迷惑な人ですよね。貴方』

彼は、そう嘯くと 僅かに地面を蹴りボルテックスへと肉薄、次いで背に生えた人間二人分の質量を持つ翼を硬化させ
巨大化した女性の心臓、両足、顔面のそれぞれを狙い、穿つ様に翼を羽ばたかせてみせた
388 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/24(日) 20:28:38.30 ID:NQWNF5Ufo
>>386

「僕からの好感度は上がりましたから、良いじゃないですか」「百分率換算で、3くらいですけど」

どこぞの年配さながらにビールを流し込み、下卑た言葉を吐くアーサーに「ロリコン」と一言告げて。
口腔にこびりついた塩分を打ち消そうと、彼女もクリームソーダに刺さったストローへ唇を付ける。


「家を与えって、それ、絶対に下心込めての行動ですよね」
「空き家だとしても普通、何の打算もなしにあげるものじゃないでしょうに」「何をしでかすつもりなんですかねぇ」

どうやらレルの脳内には、監視カメラ等を随所に仕込んだ言うなれば盗撮ハウス%Iなものが浮かんでいるらしく。
怪訝そうな眼でアーサーを見詰めて、ようやく折り返し地点を越えた黄色い塊に、再び手を付け始めるのだった。
389 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 20:39:26.46 ID:uAGklE7Bo
>>387
軽自動車では大した体格は作り出せない。
それでも2〜3m程の鉄の巨人には…
厳密に言えばアルミニウムが多い。

シンラにはただ二言。
「反省も後悔も、逆に開き直ることだって後回しにしろ。
 集中しないと殺されるということだ。」

それにしても警察官のように見えた男、本当に警官らしい。
社会的身分がしっかりしている犯罪者とは厄介な相手だ。
見た目は全身鎧の騎士のようだが、傷つき前に出るのを嫌がり退くボルテクス。
翼の連撃はどうやら軽車両の装甲で完全に防ぎきれるものではないらしい。
一刀両断にされる事もなさそうだが、斬り合いの刻み合いという泥仕合は避けたい。
彼女自身のダメージになるからだ。

体内で自分の携帯電話を動作させながら佐藤巡査長に尋ねる。
「佐藤と言ったな。一つ聞きたいが構わないか?殺人はお前の趣味か?」
390 :アーサー :2013/03/24(日) 20:46:30.01 ID:5LqmkM63O
>>388
「それはないも同然か!」

元の得点がしりたいような、しりたくないような。
好奇心はあれど真実に手を伸ばす勇気だけは存在しない。なぜならチキンだから。
ロリコンと罵られれば曖昧な笑みでそれを受け流し、否定するでもなくまたビールに口をつける。
アーサーがこうもベラベラと碌でもないことを口にするのはひとえにレルを信用しているからに他ならない。

「困っていたから与えただけだ。というか紹介しただけだ
俺の持ち物ではないから挙げても損はないし」

なにもしでかさないよと苦笑し、油まみれの手を紙で拭う。
そしてビールの追加を頼むと、「そうだな」とおもむろにふざけた雰囲気を打ち消し、生真面目ないつも通りの仏頂面を取り戻す。

「企みがあるとすれば、ある意味私怨と言えるとおもう
警官だから人助け、相手が女性で美人だからてを貸すなんてのは本当は二の次なんだと思うよ」

なにに対しての怨みか。
それだけは語らず、やりきれないと言いたげな顔でタバコを取り出す。
391 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 20:59:50.77 ID:TqkT3WRw0
>>389
「うん…! じゃぁ、僕は…全力でこの人たちを抑え込む! 傷付けないように…傷つかないように」
女性の言葉に首を促し、集中して拘束を続ける
このまま無事に戦闘が終われば、もしかすれば人間に戻るという可能性も0では無いと信じて
転じて佐藤巡査長のボルテックスに対する返答は…

『えー? ボク、殺人なんてしてないですよ? 人を切倒したのはそこの少年
 ボクは通りすがりの人間に新しい力を与えただけ…ボクの一部になるという至高の悦びを与えただけです
それに佐藤巡査長はボクの名前じゃありませんしね(笑)
そうだ、ここらで自己紹介をしましょうか! ボクの名前は…そう』

────アマツキ・シンラ

その囁きは、眼前に居るボルテックスにしか聞こえぬであろうほどに小さく
その囁きに添えられた微笑は、酷く歪で、不気味な物だった

『なーんて、与太話も程々に…応援が来る前に終らせましょうか
 ボクもこうみえて、忙しいですしね(笑)』

ズルズルと…警察官の腕が体内へと取り込まれ 翼が幾重にも分離し
無数の腕と化し、ボルテックスへと貫手を放つ
それは、ただの肉体操作能力者の攻撃ならばたいした脅威ではないが
先ほど人間を溶かしてみせたこの男。迂闊に触れられれば、その機械の装甲をも溶かしてしまうのかもしれない

392 :レル/神官ボクサー [sage]:2013/03/24(日) 21:04:42.43 ID:NQWNF5Ufo
>>390

「ご明察」

塩分で乾いた唇を、舌先で軽く拭いながら一言。
実際の数値は彼女のみぞ知る……といった所だけど、この態度を鑑みるに、淡い期待は決して抱けまい。
けれども、どれだけ生来の毒舌を発揮しても軽く流す彼に、多少親近感を持っているのは、事実だろう。

「まさか、廃屋に居座ってたんですか」

浮浪者だのホームレスだの、そんな雑言を吐き捨てんとばかりに口を尖らせる、のだけれど。
不意にいつもの調子を取り戻す彼に、レルも一瞬眉根を寄せてから、同じように、神妙な表情を取るのだった。


「怨み、是非とも聞かせて頂きたい……ものですけど」
「僕たち、そこまでお互いの事に立ち入るような仲じゃあ、ありませんものね」

アーサーの独白じみた語りに応じるそれは、断じて本心ではなかった。
どちらかと言えば、相手の言葉の続きを誘い出す、誘導尋問めいたもの。
ただ、別段理由がある訳でもない、純然な興味から──

随分もの寂しくなってきたポテトの山に、追い打ちをかけるように手を伸ばす。
393 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 21:14:20.30 ID:uAGklE7Bo
>>391
なりすまし?
この男も姓名の順逆はともかくシンラを名乗った。
混乱を避けるために男の正体は考えない事にした。
体格を犠牲に一振りの大剣を右手から生成する。
体格を犠牲に一振りの大盾を左手から生成する。
2m強程のサイズにまで縮むがこの戦い方しか今は思い浮かばない。

鉄人の足はタイヤから生成、駆動力を生かして素早く突進する。
「貴様!佐藤とやらは偽名か?」不意に思いついたのは成り代わり。
目の前の異形に大声で尋ねながら剣を後に構え大盾での体当たりを試す。

394 :アーサー :2013/03/24(日) 21:28:10.22 ID:5LqmkM63O
>>392
「もうすこし優しくされていいと思うの」

しみじみと、アーサーは遠くを見つめて呟く。
生来女運が悪い彼にとって、レルは気兼ねなく話しかけられる数少ない知人。
なんだかんだと毒舌を吐かれ蔑まれても、それはそれで楽しんでいたりする。
そのある種のメンタルの強靭さこそがアーサーの長所であり、彼を彼たらしめる。

「死んだ知人の家だよ。おれは普通の家に住んでる」

と、コートのポケットにいれたままの小さな写真立てを思い出し、そっと中身を覗く。
その知人の家から持ち出した写真立てには在りし日の笑顔が写り込んでいて、アーサーの表情をさらに陰鬱なものとした。

「そう、おれと君の間柄で語るはなしじゃない
本当にくだらない話だよ。いつもいつも拾えずに取りこぼして来たうちの、最初の1つだ」

誰にいうでもなく、うつむき加減に。
無機質な蒼い瞳は胡乱に漂い、ここにはない何かを幻視しているかのよう。
395 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 21:37:23.32 ID:TqkT3WRw0
>>393
『え? まぁ、偽名というかなんといいますか…
 数ある本名の一つですよ(笑) 本物の佐藤は数年前に死んでますし(笑)
 でもそんなこときいてどうするんで…へヴぅ!!』

戦闘中にもかかわらず、無駄に口数が多いのは戦に慣れていないからであろうか
はたまた、自分にでもよっているのだろうか…
結果として、翼に頼りきりぺらぺらと喋り倒していた男は大盾の一撃を浴び
後方へと弾き飛ばされ…。 地に伏しながらもなお言葉を吐き続けた

『あは…(笑) 悪役が喋ってるあいだは攻撃しないってルール…守ってくれなきゃ困りますよう…(笑)
 まぁ、何処からかパトカーのサイレンも聞こえてきましたし…
 佐藤巡査長は殉職…街の人間は怪物と化し後に死亡…としておきましょうか
 いやぁ、何て悲劇的な結末だ。 泣いてしまいそうだ。 しくしく(泣)』

男は嘯く。男は溶けるように涙を流し、男は大地に染み渡るように溶けていく
比ゆではなく…どろどろと溶けて消え行く…やがてシンラや機械兵に拘束されていた人間達もどろどろと溶解してゆき
パトカーもボルテックスの視野に入るまで近づいてきている。

「え…? え!? ぼくなんにもしてないよ!?
 街の人が…かってに…! ぼく…ぼく…」

転じてシンラはといえば拘束の対象が消えうろたえるばかりで
逃走を図るか否かも決めかねているようで…
涙に潤んだその瞳を、先ほどであったばかりの女性に、縋るように 向けていた
396 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 21:59:08.50 ID:uAGklE7Bo
>>395
「よく話してくれた…」
 倒されて逃走した何者かをこれ以上は追わない。
 追う先がわからない。
 自分自身は変身、変形を解き、機械兵達も
 元の自販機、バイク、軽自動車等に戻る。

「シンラ…少しこの場を離れた方が良さそうだ。
 それにしてもあいつ、大きな勘違いをしているな。」

 佐藤巡査長はさっき警察に連絡を入れたばかりだ。
 そこから佐藤巡査長の死体でも出ない限りは殉職扱いにならない。
 ある日突然佐藤が現れなくなればその巡査長は行方不明となるはず。

 もっとも、あの謎の人物がその事に気付けば、
 再び佐藤巡査長に化けて警官達の前に顔を出すだろう。

「シンラ、走って逃げるな。
 機械は元に戻した。奴も人も溶けていなくなった。
 この場所には殺人事件どころか、乱闘の痕跡すらない。
 落ち着いて歩いて逃げよう。
 そうすれば警官たちはそれこそ佐藤が指摘しない限りわたし達を怪しまない。」
 携帯を弄ってシンラについてくるよう促す。
397 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 22:08:11.42 ID:TqkT3WRw0

>>396
「は、はい! そ、それと…ごめんなさいお姉さん…見ず知らずのぼくのせいで背中を斬られたり
 変な警察との戦いもまかせっきりで…」

首を垂らしとぼとぼと女性についていく
自分はことあるごとに助けられてばかりだ。しかも、主に女性に
何故に自分はこうも頼りないのか…自覚はあるのだが、やはり悲しい
自分も、この女性のように冷静な判断力と彼を払いのけるだけの力があれば、なんて夢想に浸るもむなしいだけで

「ごめんなさい…それと、ありがとう…」

ただ、とぼとぼと頼りがいのある背中を追いかけた
398 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 22:16:50.35 ID:uAGklE7Bo
>>397
 二人の進行方向とすれ違うサイレン音。
「ここに偽佐藤が再び現れなければ大丈夫だから安心していい」

「それに怪我の事なら構わなくていい。
 わたしは子供を守るのは大人の責務だと考えている。
 それにその怪我ならシンラ、君が治してくれた。
 心強い、そして優しい良い能力だと思うぞ。」
 シンラに振り返ると微笑する。
「こちらこそありがとう。」
399 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 22:29:28.76 ID:TqkT3WRw0
>>398
「でも…あの人は突然出てくるよ…?
 さっきもそうだった…食事中に突然出てきて…追いかけられて…
 その途中でぶつかっちゃったんだ…」

食事中に…というのは普通疑問を覚えるだろうが
その疑問に答えるかのように、少年は言葉を続けた

「でもぼくの力は…人から命を奪わなきゃ使えないんだ…
 他人から取った生命力をおねえさんに送っただけだから…
 でもね…それにね…遠くにいる人を治したのはあれがはじめてだったの…」
実験台にしたわけじゃないのだけれど
それでも…
「だいじょうぶだった、、、? 痛くなかった…? 
 傷跡に痛みとかはない…? 
 ううん。やっぱり、もういっかい…おくっておくね」
女性に寄りそうように生命力を送りながら、少年は言葉を続ける

「だけどね…ぼく子供じゃいやなんだ…
 大人に守られてばっかりで…いっつも大人の人が傷付くの…
 それにね? ぼく妹もいるの…だから、守る側にね…なりたいの」

頼もしい女性に 答えを問うように 少年は囁いた
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(大阪府) [sage]:2013/03/24(日) 22:34:32.18 ID:NQWNF5Ufo
>>394

「僕は十分優しいですよ?」「殴られないだけ、ましだと思ってください」

これまで何度も暴力沙汰を目撃されているのだ、それはもう、信ぴょう性も伴うというもので。
レルは、笑顔でしれっと首を傾げて、束にしたポテトを片手で頬張る。

それから──重く、沈んだアーサーの表情に、口を噤んで。


「……えぇと」
「ぼ、僕……そろそろ行きますね?」「タダ券は、今度会った時のお楽しみという事で」

毒舌、常日頃罵倒している彼女だが、この期に及んでその手の言葉を浴びせかけるほど、性格が悪い訳では無い。
かといって、ここで優しく身を乗り出せる程、出来た人間でもなく──結果、二人の間に流れる、しばしの沈黙。
ほんの少し、アーサーを気遣うような表情を垣間見せた後、気まずそうに言葉を繋いで、残ったポテトを口へと掻きこむ。


「あまり油を売っていると、怒られちゃいますしね」「これでも、冥府に仕える身ですから」

彼女にとって、特に苦手な空気だった、逃げ出すように腰を浮かせて、奥まった通路をするりと通り抜ける。
呼び止められなければ、そのまま「ごちそうさまでした」と一礼して、店を後にしようとするだろう。
401 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 22:43:37.20 ID:uAGklE7Bo
>>399
「傷跡の痛みも不快感もない。
 しかし能力を使えたということは奪ったのだな。
 どうして他人の生命を奪う?…食事とはそれか。」
 落胆するように尋ねる。
「もしも君が人喰いの化物ならば、
 わたしは君を退治するか通報する側の立場にいる。」
 立ち止まってシンラの顔を見る。
「…。」
 人畜無害そうな雰囲気を認めて溜息を一つ。
「誰かを守りたいならわかりやすい強さではなく、
 人格的な強さも必要になる。意志の強さ、
 心の柔軟さ、賢さ、優しさ、色々だ。
 沢山あるが全てを持ち合わせる必要はない。
 実際のところわたしも欠けている所は多い。
 自分にできる事をすれば良い。」

 さて、偽佐藤は突然出てくるという話も気になる。あれは明らかに危険な存在だ。
 普通なら偽佐藤がこちらを指さして叫べば、警官達はこちらの言い分を信じないだろう。
402 :アーサー :2013/03/24(日) 22:45:03.65 ID:5LqmkM63O
>>400
「殴られるのはご褒美だよ」

ふざけているのか真面目なのか。
いまいち判別がつきづらい含み笑いと共に、アーサーはビールを飲み干す。
明らかにペースが早い。
やけになっていると見えなくもなかった。

「…………そうか、わかった」

しまったな、と思わず顔をしかめてアーサーは小さく頭を下げる。
陰鬱な自分の態度が彼女に不快な思いをさせた。その一念が苦々しい後悔を抱かせる。
むしろこういう時こそ罵って欲しいとすら思う。
そうしてくれればいつも通りのノリで返せる。
しかし付き合いが浅い相手にそれを望むのは酷だろう。

「大変なんだな、神官も」

ようやくそれだけ絞り出すと、立ち去るレルの背中を見送る。
何か声をかけるべきだろうか。そんな逡巡を経て、アーサーはただ一言「長生きしろよ」とだけ声をかける。
それが届いたかは知らない。

あとはただ一人、ポテトの相手だ。
403 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 23:06:00.56 ID:TqkT3WRw0

>>401
「…うん。人食いの怪物…他の生物から生命力を奪わなきゃ生きられないの…
 チョコレートを食べても、キャンディーを食べても。泣いても笑っても、人の真似をしてみても
 ぼくはやっぱりなれないの…人間みたいには…憧れの肉体(からだ)には……
 でもね、おねーさんがぼくのことを退治するなら…ぼくもがんばって戦うよ」
「お家で、ぼくの帰りを待っている人がいるから…帰らなきゃいけないの…」

そこで、立ち止まったボルテックスと視線が交わり 少しカラダに力が入る
戦闘になれば、敗北は確定だ。 だが抗わなければならない。 帰らねば成らないからだ
しかし、彼女と交えた視線の応酬は 静かな溜息一つ。 刃ではなく平穏なものだった
「それなら、ぼくは…優しくなりたいな…
 人よりも 誰よりも 優しく。 優しい強さが…欲しいかな」
そこで警戒の念を解かないボルテックスに気付き、シンラは僅かに手を叩き

「あ…! ぼくの能力…。周囲から生命力を奪う能力をおさえてつかったら…
 もしかしたら、、、索敵にも使えるかも…」
と、のたまい シンラはまたしても祈るような仕草をみせる
これもまた思いつき。 成功するかは分からないのだが…

「うん…どこまでテキヨウされてるのかわかんないけど…
 たぶん…ここらへんには、ぼくとおねーさんしかいない…と思うな…」

なんて、自信なさげに呟いて、少年は女性の顔を覗き込み

「そういえば…どこにむかってるの…? 」

聊かおそすぎる質問を投げかけるのだった

404 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 23:22:04.58 ID:uAGklE7Bo
>>403
「現場から離れることだけ考えていたから行き先は考えていないが…。」
 少し考える。
「帰りを待っている人がいるのか。ならば君はそこに向かえば良い。
 シンラ、君の言う通りここにわたしと君しかここにいないのならば、
 家に帰れば良いだけだ。わたしが恐いなら、わたしから逃げれば良い。
 戦うつもりでも今は逃げて充分に準備をするんだ。
 学んで知識を蓄えろ。知識を組み立てて知恵を絞れ。
 人も怪物もそこは同じだ。世界はそこそこ公平にできている。」
405 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 23:32:29.81 ID:TqkT3WRw0
>>404
「怖い…とは違うかな。おねーさんが敵になるかもしれないって思っても…
 なんだか、安心しちゃうから…かっこいいし優しいから。
 ぼくの家族を思いだすからかな…えへへ…」

でも、警察官が自分達を探していないという保証は無い
ドロドロに溶けた液体の元が人間だとバレないという保証も無い
巡査長が行方不明になり直前に連絡があった、名前と能力もばれている
となれば、彼女の言うように、逃げて計画を練り 戦わなければならないのだ

「うん。。。じゃぁぼくは帰るね…
 もっと話してみたかったけど、もっとおれいをいいたいのだけど…
 きっとまたあえるよね。 じゃぁね…おねーさん」

ぺこりと頭を下げてから、少年は背を向けて歩みだした
帰らねば、家族のもとへ、今夜も 明日も 明後日も
家族がいる限り、なにがあろうと、死ぬわけには 行かないのだから
406 :ボルテクス(褐色長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/03/24(日) 23:41:01.08 ID:uAGklE7Bo
>>405
「そうか。気をつけてな。
 わたしも帰る…連絡先と店の地図を渡しておく。
 警官に捕まっても正体は隠しておけ。ずるさも力だ。」
 今のボルテクスはもう一匹の怪物が気になっている。

 しばらく帰路に向かうシンラの背中を見送ると、
 彼女も商店街に帰ろうと歩きはじめた。
 
407 :シンラ・アマツキ :2013/03/24(日) 23:50:48.53 ID:TqkT3WRw0
>>406
「うん…今度は戦うかもしれないのに、やっぱり
おねーさんは優しいね…また、あおうね。必ず。絶対に」

だれに聞かせるでもなく呟く約束の言葉
帰路につきながら受け取ったメモに目を通せば

「あれ、ししょうとおんなじ商店街で働いてるんだ…
えへへ…おもったよりはやめにあえそうかも」
なんて一人、微笑むのであった

/絡みありがとうございましたぁ!
/ながながとお付き合いしていただき感謝です…!


408 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 20:30:03.21 ID:hvuuJjwvo
裏路地を歩くのは灰色のクロークを着て、フードを被っている人間。
フードは改造されており、顎から鼻まで隠せる様に前面にも布が縫い付けられて居るため顔全体を確認することは出来ない。
ただ、隙間から見える銀の髪は特徴的で暗い夜道にはやや目立つ。

(この前襲ってきた部隊……何か雇い主の手がかりがあればこちらから打って出ることも可能かもしれない……)

先日、千早は8人の正体不明の部隊に襲撃された。
目的は千早の捕縛であり、正確な雇い主は不明……ただし、どこかの研究所だということはほぼ確定的。
そのため、先日襲ってきた部隊が雇い主に繋がる何かを残していないかを探している最中である。
襲われて戦闘を行った場所を改めて訪れ、膝を曲げて地面を調べたりして落としたものがあるかを探す。
流石に死体などはもう残っているはずもないし、正直そのような証拠を残す失態があるとも思えないが、現状これしか調べる手段がないのも確か。

今の千早は誰とも分からぬものから追われる身。
この姿を晒して出歩けば、自分を探すものの眼に引っかかるかもしれないとこのようなクロークを用意して全身を隠している。
ただし千早は重大なことを見落としていた……
砂漠でもないこの街で、こんなクロークは逆にとても目立つということに。
409 :アーサー :2013/03/26(火) 20:47:28.17 ID:bcMCfoC5o
>>408
そんな千早の背後に、人影が一つ。

黒いコートを羽織り、火をつけていない煙草を銜えている。
スーツにコートを重ねた上からでも、鍛えられた体躯は明らか。
見るものが見れば、膨らんだ左脇や右足首に拳銃が収納されていると気づくかもれない。

明らかに一般人ではない。
そもそも気配がなく、足音一つ立てずにそろそろと近寄るその手並みからも、ただの市民には見えないだろう。

例えるなら暗殺者。
あるいは、場慣れした犯罪者。

男の手が伸びる。
手は手袋に覆われていて、人の気配を遮断している。

その手が、千早の肩に触れ……

「なにしてんの?」

気の抜けた張りのある声が怪訝に質問を投げかけた。
410 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 20:58:21.78 ID:hvuuJjwvo
>>409
(やっぱりそうそう痕跡は見つからない……)

そもそもあの部隊が正確な雇い主を知っていたかどうかも分からない。
小賢しい手を考える人物なら、何かを中間に置いて実働部隊には自分の存在を知らせない。
あえて見つかって探るという手も考えられないことはないが、あまりにもリスクが高い……これは最終手段にした方がいいだろう。

今日は収穫なしか……
そんなことを考え、ふと気を抜いたその瞬間肩に見える手。

「……っ! 氷柱舞!!」

しゃがんでいた状態から右手を地面につけ、自分の周囲に無数の氷柱を発生させる。
襲撃に備えるということに過敏になっている千早は、手をかける人物が誰かを確認する前に攻撃に移る。
その後、前方へと飛んで一回転。相手の姿を正面に捉えるだろう。
411 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 21:01:12.20 ID:Y7Rs4LMDo
>>408,>>409
 そんな千早を見て独り言。
「街中で…遭難?」
 花売りも今日は店じまい。
 手提げ籠にクロスをかけて帰り路についていた。

 見ていると拳銃を持った"デキそう"な男が千早に近づいていく。
 見ず知らずの女性の危険を察知して男の方に歩きはじめた。
 男の手が女の肩に伸びる…殺気を放ち粒子で腕を削ってやろうかと
 意識を集中し始めたその時、男の口から呑気そうな「なにしてんの?」
 そのアーサーの声にずっこけそうになった。
412 :アーサー :2013/03/26(火) 21:09:08.89 ID:bcMCfoC50
>>410>>411
「うぉぉおおっ!?」

見知った顔に声をかけた。そのはずだった。そう、そのはずなのである。
しかし自分を歓迎したのは記憶にある女性の顔ではなく、突如として姿を現す氷の柱。
女性に安易に触れようとしたのが悪かったのか。
そういえばたしか、義父が女性は不用意に触れられることを嫌がると聞いた。
なるほどそりゃたしかにそうだ、だれだってべたべた触られたいわけがない。

などと、ずれた感想および結論へと至るのがアーサー・ビショップクオリティ。
確約された高品質な愚鈍さは今日も好調に活動し、アーサーはまるで熟練の技を凝縮したかのような滑らかな体捌きを発動させる。
飛び退く躰。
瞬時にひざを折り曲げて足を地面につき、完ぺきな角度で手を接地。そのまま見事な土下座の姿勢を完成させる。

「ごめんなさい」

それがいまのまぎれもない本心である。
413 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 21:13:40.47 ID:Y7Rs4LMDo
>>410
目の前に突然現れる氷柱に驚き嫌な汗がでる。
あと一歩前に出ていたら直撃していた。

予想外の展開に驚き、アーサーの隣で立ったままカタカタ震えていた。
414 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 21:18:19.41 ID:Y7Rs4LMDo
>>412
 まだ心臓がバクバク言っている。
「危なかったね…。」
 当たり障りない言葉しか出ない。
415 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 21:22:53.47 ID:hvuuJjwvo
>>411>>413
先ほど伸ばされてた手の主の方をすぐさま確認する。
……すると目に映るのは見知った顔が土下座した姿……

「何をしているんですか、アーサーさん……」

攻撃をしてしまったことよりもまず、なぜアーサーがここにいて方に手を伸ばしたのか。
そしてなぜこの場で土下座をしているのかが気になった。

もう一つ予想外の展開。背後に居るのは1人だと思っていたが、なんと2人目が居た。
しかし、その2人目はこちらを襲ってくるどころか震えているではないか。

「あ、あの……っ! 巻き込んでしまいましたか!? 申し訳ありません……」

すぐさま立ち上がって震える少女に駆け寄る。とりあえずアーサーは放置だ。
もしかしたら怪我をしてしまったかもしれない。
確認せずに前方位攻撃はあまりにもまずかったか……
416 :アーサー :2013/03/26(火) 21:28:28.68 ID:bcMCfoC50
>>414>>415

「…………あ、危うく命を落としかけたぜ……いや、それより君こそ大丈夫かい?」

とりえず危険慣れした自分はさておき、見知らぬ少女こそ心配である。
アーサーは土下座姿勢を保ったまま、ちらりとそちらに視線を投げかける。
かわいそうに、危険に直面した少女はがたがたと震えていた。が、千早が自分より少女を優先したのを見て、安堵のため息を漏らす。
自分が後に回されるのは当然のことである。なぜなら兵隊だから。ついでに言えば警官で殺し屋でもあるし。

アーサーは土下座を解かない。
むしろ無関係の市民を巻き込みかけたことへの反省から、向きを変え二人へ土下座をささげる始末。
仕立ての衣服が土で汚れるのも全く気にせず、姿勢を保ち続ける。

「いや、不用意に触れようとして気分を害したようで申し訳ない。非常に申し訳ない」

結局、原因には気づいていない。
見れば彼の腕は引っ込める段で氷に巻き込まれたのか、手首から先に霜が付着している。
実のところ冷え切って損害が不明であるから、そのままにしていたりするのは内緒だ。
417 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 21:34:01.68 ID:Y7Rs4LMDo
>>415
 冷や汗を流しながら笑顔を作る。
「お…お構いなく。怪我はしてないよ。」
 躊躇のない相手だ。
 刺激しないようにしておこうと思った。

 そう躊躇がない反応の仕方だ。
 しかし何を思ったのだろう。
 いや、誰に肩を掴まれたと思ったのだろう。
 日常的な生活をしている人物の反応ではない。
「このお兄さんを誰だと思ったの?」

>>416
「大丈夫。怪我はしてないよ。
 おじさんのおかげかな…。」
 気の抜けた声に歩みを止められたのだ。
 こんな形でも生命の恩人になるのだろう。
「わたしには謝らなくていいよ。
 むしろありがとう。
 このお姉さんは知ってる人?」
 千早の事だ。
418 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 21:47:10.87 ID:hvuuJjwvo
>>417
「そうですか……それは良かった……本当に申し訳ありません」

心底ホッとしたように胸を撫で下ろす。
直接手をかけてきた人物ならまだしも、たまたま居合わせた何の関係もない少女を巻き込んで怪我させてしまったらもうどうしていいか……
しかし怖がらせてしまったことは本当に申し訳なく思う。

「いえ……その、私(わたくし)追われている身ですから……追ってかと……」

少々バツの悪そうな言い方で、アーサーの方を見る。
顔の半分を隠しているため、表情は読み取り辛いかもしれないが、少女に対してだけでなくアーサーに対しても気まずいと思っている。

>>416
「いきなり攻撃をしてしまって申し訳ありません。
 触れた事自体は気にしていませんので。……ただ、私は少々神経を尖らせすぎているかもしれません。今後はいきなり手をかけるのは控えてください……」

実際この場所は襲撃された場所。
自分と同じく、相手もこの場所に戻ってくる可能性も十分にありえたのだ。
そこでいきなり声も気配もなく手をかけられればこうもなる……と内心ちょっと思う。

「あっ……」

そこでアーサーの手の霜を確認し、直撃はないにせよ多少巻き込まれている事を確認する。
流石に確認せずに攻撃を行ったのは自分なので、これはマズい。
千早はアーサーの前で膝を曲げ、霜の付く手を握った。

「あの、顔を上げてください……これは私のせいですね……」

とりあえず自分の体温で溶かせば兵器だろうか。

419 :アーサー :2013/03/26(火) 21:53:22.33 ID:bcMCfoC50
>>417>>418
「そそ、一応知り合い」

少女の疑問に短く返し、まず指先を確認する。
もぞもぞと動くあたり凍結はしていないようだが、過冷却で感覚がマヒしきっているのは確かだった。
どうにも動きと感覚が一致しない。残念なことにしばらくしびれそうだ。

「よくよく考えればなれなれしく女性の肩をたたこうなどというのが間違いであって非は全面的にこちらに存在すると推察されるのだけれどそこはどうなるんだろうか」

勘違いは続いたまま。
そもそも犯人は犯行現場に舞い戻る、というのは愉快犯の話であり、組織的に行動する相手や殺し屋などはむしろ戻ってくること自体が非常識。
そういう認識の上に生きているアーサーにとって、間違われたというのは思考の埒外である。
最初から選択肢に入っていない。なので浮かび上がらないのだ。

「反応が遅れて冷やされたみたいだ」

言われた通りに顔をあげ、まだしっかりと動かない指を動かそうと努力する。
感覚がマヒしているので、結果として芋虫がのたうつような奇妙な動作になっていた。


420 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 22:00:09.40 ID:Y7Rs4LMDo
>>418
「追っ手?
 変な人に追われているならお巡りさんに相談する…といいのかな??」
 事情もよくわからないので一般論を提示してみた。
 逆に警察に追われるような人物ならば話も変わるが。
「よくわからないけれど、二人共お知り合い?
 わたしは螢子。よろしく。」

>>419
「そう、わたしは螢子。よろしく。」
 花籠を置いてしゃがみ込むと中身を漁りはじめた。
 そして紅色のクリーム状の物が入った瓶を取り出す。
「おじさん手を見せて。血行を良くする軟膏を塗ってあげる。」
 材料は唐辛子等を中心とした日常的な物ばかりである。
 気休めで終わることはあれど、状態が悪くなる事もあるまい。
 
421 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 22:08:57.29 ID:hvuuJjwvo
>>419
「特段、肩を叩かれるということに対して抵抗はありません。追われているという状況で、突然背後から手が伸びてきたものですから敵かもしれないと勘違いをしただけです」

肩を叩こうとしたから非があると言うのは間違いだろう。
少なくとも攻撃を先に行ったのは自分なので、全面的にアーサー側に非があるとはいえない。
とりあえず自分が攻撃に至った経緯を説明するが、アーサーが勘違いをしているとは思っていない。

「手は……そこまで酷くはないようですね、しばらくしていれば自然と治りそうです。良かった……」

勘違いで致命傷を与えてしまうなど笑い話にもならない。

>>420
「いえ、その警察はちょっと……心配してくださってありがとうございます。
 ただ、警察の手をお借りする程のことでもありませんので」

警察に話すというのは今まで全く考えていなかった。
そもそも警察に言ってまともに取り合ってくれるかどうかも怪しいし、何より出来るだけ他人を巻き込みたくなかった。

「この方は私の恩人です。
 私は、千早と申します。よろしくお願いします、螢子さん」

そこでようやくフードと顔を隠していた布を取っ払えば、そこに収まっていた銀の髪と凛々しい顔が表に出る。
422 :アーサー :2013/03/26(火) 22:18:07.47 ID:bcMCfoC50
>>420>>421
「おじさんじゃない、まだ24歳だ」

さすがに20も半ばを越えないうちからオジサン呼ばわりされたくはない。
その部分に訂正をくわえて、アーサーは少女に手を差し出す。なにやら紅色のクリームを塗ってくれるらしい。
もらえるものはもらう主義のアーサーは、是非に、とかじかんだ手を開いた。

「……なるほど、背後から近寄って手をかけるのは確かに怪しいか…………注意が足りていないな」

反省だ、と肩を落として、あわてた際に口から離れてしまった煙草を地面に探す。
まだ火をつけてすらいない煙草は、あわてすぎて踏みつぶしたのか、目の前でひしゃげていた。

「まあ、ほら、もしだめでも今は生体義手とか、あるし」

論点はそこなのだろうか。というよりそれでいいのだろうか。
しかしアーサーはいたって真面目だし、攻撃されたことに対して全く気にしていないように見える。
事実彼はそういったことは些末な問題として片づけてしまうタイプであり、なおかつ衣服に仕込んだ防護処理が軽減してくれたことも理解している。
あの程度では最初から致命傷にはなりえない。

「あ、ちなみに俺は警察だから」

螢子と千早の会話にそう注釈を入れ、やれやれとためいきをついて立ち上がる。
423 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 22:24:14.77 ID:Y7Rs4LMDo
>>421
 綺麗な人…。
 少し頬が紅くなる。

「うん。とにかく困った時に頼れる人がいるなら良いと思う。」

>>422
 軟膏は生薬なので劇的な効果を一瞬でという訳にはいかないがそれなりに効くはずだ。

「おじ…お兄さん、お巡りさん?」
 アーサーの顔を見て足元まで視線を落とすとまた目を見る。
 そしてしばらく考えこんでから一言。
「人は見かけによらない…。」
424 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 22:36:25.59 ID:hvuuJjwvo
>>422
「いえ、察知できなかった私の責任でもありますから……」

戦闘訓練は十分に積んでいるが、別の方に意識を割きすぎたのかアーサーがこちらの索敵能力を上回ったのか。
事前に近寄ってくることを察知していたのであればこうはならなかっただろう。

「義手なんてよくありません。やはり自分自身のものが一番扱いやすいでしょうし……それにこちらが申し訳なくてどうにかなってしまいそうですから」

人一人作る技術がこの世にあるなら、手を完全に組成させる技術もあるのだろうか。
とは言っても手を失わないほうがいいし、何より人一人を完璧に作る技術が一般的なのかどうかよく知らない。

「螢子さんの薬で良くなればいいのですが……」

まぁもとよりそこまで深刻なものでもないので、問題はないだろうが。

「そういえば、初めから私だと分かってて肩を叩いたのでしょうか……?」

一応このクロークとフードで身を隠しているはず。
それなのに自分だとわかったのであればこの変装は意味を成さないことになる

>>423
「そう……そうね。いざとなったら誰かに頼ることにします。どうもありがとうございます。
 ……顔、大丈夫でしょうか」

実際は頼る気などまるで無いが、好意で言ってくれているのだからこの場はこうやって答えておこう。
すこし赤くなった顔が気になり少し顔を近づけてみる。
やっぱり先ほどの攻撃でどこか痛めたのだろうかと。
425 :アーサー :2013/03/26(火) 22:46:56.11 ID:bcMCfoC50
>>423>>424
「それは老けているといいたいのか風体が怪しいといいたいのか」

もしやどちらもなんていわないだろうな、と。
アーサーは言外の疑問を少女へ投げかけ、怪訝な視線を向ける。

「まあ、気配消してたしね」

よもや驚かしてみようとしたなどといえるわけもない。
がしかし、いまの発言は半ば以上に口を滑らせたも同然。
アーサーはしまったな、と仏頂面を動かしもせずに後悔する。

「いやいや、すまない。冗談だよ、あの程度でいきなり腕がポロリなんてことはないから大丈夫」

直撃したらどうだろうかというのは受けたことがないので疑問である。
が、防護衣服が削いでくれるだろうと信じることにして、アーサーはクリームが塗られた手首を確かめる。
効果がすぐにあらわれるものでもなかろうが、何とかなるだろうと見切りをつけ、名も知らぬ少女に「ありがとな」と微笑んで見せた。

「まあだいたい目星はついてた。あの時の現場だし、おおまかな体格からして女性。しかも砂漠でもないのにクロークなんて偽装してますって白状するようなものだし。怪しいことこの上ないよ、その服装」
426 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 22:48:04.90 ID:Y7Rs4LMDo
>>424,>>425
「千早さんは…綺麗。
 追っ手だけじゃなくてそこのお巡りさんにも注意。」

「わたし…家に帰らないと行けないから今日はここで。
 また会えると、嬉しいな。」
 今度は張り付いた笑顔じゃなくて本物の笑顔。
 花売りの少女はさようならを言ってから街道を行った。

// ではお二方ありがとうございました。
427 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 22:48:17.58 ID:Y7Rs4LMDo
【スラムに続く繁華街】
 螢子は女性と警官と別れて帰り路に戻っていた。

 もう良い時刻だがお腹が空く。
 そういえば今日は夕飯を取っていなかった。
 財布を覗く…。
 ぴったり缶ジュースが一本買えるだけの金額。

「貯金…無理しすぎたかな。」
 夜食のために積立金を解約するのは馬鹿馬鹿しい。
 お米を買い忘れた。小麦粉も切らせたまま忘れていた。
「お腹すいたな。」
 そう呟くと肩を落として再び街道を逸れて公園に入っていった。
 人気の少ない公園。若いというより幼いくらいの女の子が一人で
 うろつく様な場所ではないがここは水道が開放されていて水飲み場もある。
 今日は水でお腹を膨らまそう。
428 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 23:00:02.48 ID:hvuuJjwvo
>>426
「ふふっ、ありがとうございます。
 そうですね、十分気をつけるようにします」

とりあえずこの少女の恐怖は取り除くことが出来ただろうか。
怪我もさせなかったようだし良かった。
ええ、また……とだけ返事をして笑みを浮かべたままその少女を見送った。

//ありがとうございましたー

>>425
「あえて気配を消して背後から忍び寄る……あまり感心しませんね……」

ジト目でアーサーを見つめる千早。
まさかやましいことをしようとしたわけでも無いだろうが、女性に対して気配を殺して背後から忍び寄るのは少々頂けない。
肩を叩かれることに対しては構わないといったが、それとこれは別だ。
もしとても気の弱い子や男性が苦手な子だったらこれでは済まないだろう。

「それもそうでしょうね、そもそもあの技に対象を凍らせる効果などありません。多少術の発生に巻き込まれた程度でしょうから」

あまり謝っても仕方がないので、隠れた強かさをつい出す。
実際大事無いようだし、相手としてもこれ以上謝罪されても困るだけだろう。

「…………怪しいでしょうか、この格好……
 私だとバレないようにと考えてみたのですが……」

クロークを摘んで上げてみたりして自分の格好を確かめる。
これなら自分の顔はバレないし、完璧な偽装だと信じて疑わなかったのだが……
429 :アーサー :2013/03/26(火) 23:10:10.35 ID:bcMCfoC50
>>426
「おいおい……おれは犯罪者か」

立ち去る少女の背中に手を振りながら、ぼそりとつぶやく。
今日は俗にいう厄日というやつに違いない。そう胸中に嘆息し、アーサーは煙草を取り出した。

「ほら、あれだよ。世の中には接近したことすら相手に気取らせないという実例を示しただけだ」

目をそらし、口元にあいまいな笑みを浮かべてすべてをうやむやにしようとする。
とはいえ自分が追っ手であったならあのまま麻酔銃で仕留めて連れ去れたのも事実であり、千早の行動がうかつに過ぎたのも事実だ。
仮にこのあたりに追手が張っていたならば、そのまま千早の命運はついえていたであろうことも想像に難くない。

「仮に直撃しても防護服が防いだと思う」

とは湿った衣服をぬぐうアーサーの言。
軽度とはいえ能力体勢を付与された防護服なら何とかなったろいうというのが彼の結論だ。

「怪しいよ、怪しい。
 それなら髪を団子状に丸めて、帽子で隠したほうがいいだろう。銀髪は目立つから」
430 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/26(火) 23:14:31.05 ID:30Q4k3ZQo
>>427
木々が月光に濡れている。青々と自然が映える場所というのはここらでは少なくも無い
街を歩けば本当に小さな範囲ではあるが、存在感が浮き彫りとなった自然がある
その一つが公園。噴水を中心とし、周りに街灯が伴って存在し、近くには遊具がある、それこそ子供が使うような公園が隣接している
そこには綺麗とは言えないが、誰でも飲めるような水道があるのだ
トマス・デ・トルケマダは珍しくも、というよりはあろうことか、遊具のある方の公園のベンチで仰向けになっていた
服装も珍しく、黒い羽織に白いスカート、黒い絹の靴下が膝元にまで伸びている
肌の露出度が多い日に限って、何故か風が心持ち冷たい。だがトマスはそのような事関係が無いとでも言う様に、顔に一冊の本を乗せて寝ていた
ベンチに腿が食い込んでいて官能的だが、痛くはないのだろうか。寝息を立てているあたり熟睡だ

「すー……キャラメルポップコーンに塩をかけるのか……おのれ黒いネズミめ……魔のコンボ……」

何の夢を見ているのかは特筆するべき点では無く、普段ならば氾濫図書という空間を展開して寝ている筈のトマスが、何故公園のベンチに寝ているかが問題だ
それ程年も食ってない上に、スカートなのだ、誰かがトマスを見れば思わず上げてしまうだろう
というかL.M.G.の要人であるのに、無防備過ぎる。護衛の一人や二人居ても良いのだが
付近には空腹の少女が水を飲みにやってくるだろう──トマスもそれなりに有名だ、これはもしかすると
胸の辺りに膨らみがある。きっと金目の物かもしれないし、ベンチの足元には黒い手提げ鞄がある
431 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 23:28:17.16 ID:hvuuJjwvo
>>429
「そうですね、それに関して迂闊だったことは認めます。
 ただし、感心しないということは変わりません。そのような後から取ってつけたような事を今更聞いても説得力にかけますので」

アーサーの言っていることは正しいのだが、このタイミングで言われてもこれは後付け設定というやつだ。
以前襲撃された部隊程度であれば接近には気がつくし、接近に気が付かないようなアーサークラスの刺客が差し向けられるなら、仮に気づいても捕縛されていたかもしれない。
相手があまり強い刺客を送り込んでこない事を祈るばかりだ。
捕まったら最後、相手は自分を無力化する術は当然持っているだろうから、一度捕まれば逃げることはほぼ不可能だろう。

「その防護服は高性能ですね。そんなものを使う傭兵が増えれば私は窮地に陥るのでしょうね」

あまり火力の無い千早にとって、防御が硬い相手は苦労する。
そんな相手が数を揃えてくるとしたらぞっとする。

「そう、ですか……いい考えだと思ったのですが……今後はやめておきましょう」

隠れていたつもりがかえって目立つとなると、この格好はしないほうがいいということだ。
しかし、この長い髪を丸めてしまうのはあまりやりたくなかった。

「以前、髪をまとめて帽子の中に入れたらとても暑かったんです……蒸れてしまって大変でした。
 別の方法を考えるか、いっそ変装は止めにします……」

ポンチョの様に上から被って着ていたクロークを、体を折りながら上を上げて脱ぐ。
下はなんと裸……では無く、ちゃんといつもの服を着ていた。前回アーサーと会った時と同じ服だ。
432 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/26(火) 23:31:41.31 ID:Y7Rs4LMDo
>>430
ここでは浮浪者や日雇い労働者、所謂無宿の
人間がベンチで寝ているのならばよく見かける。

珍しい人が眠っているなと思いながら螢子はそのまま水飲み場へ。
背を伸ばしつま先立ちでカルキ臭のする水をたらふく飲む。
どうしてこんなに高さのある水飲み器を接地したのだろう。
まあいい、これで空腹はおさまった気もしないではない。

さて…トマスである。
「もしもし…」
小さな声で声をかけてみる。ささやき声のような声が地声なのだ。
「こんな所で寝ていたら、変なおじさんに悪戯されるよ。」
少女の声が夢の中に届くのか、変なおじさんが夢の中に現れるのか。
433 :アーサー :2013/03/26(火) 23:38:16.19 ID:bcMCfoC50
>>431
「うぐっ…………わるかったよ」

とはいえ、次も練度の低い刺客が送られてくる保証はない。
敵がこちらの評価を改めれば、脅威度の高い相手が送り込まれる可能性は十二分。
その際抵抗が許されるかという話になれば、一方的な展開の末にあえなく捕縛というのは十分にあり得る事態だ。
言い訳とは別に、実際的な問題として千早の身を案じるアーサーであった。
そして同時に、そうなった際に自分が介入するだけの余裕があることを祈ってもいる。

「これは大量生産品じゃないし、普通は手に入らない職人の作品だから性能は高いよ。その分値段も希少性も段違いだけど」

具体的に言えば一着ウン十万。
しかも生産数わずか5着。希少も希少である。

「髪を切るのは……いや、もったいないな」

千早の豪奢な銀髪を見やり、アーサーはうぅむとうなる。
丸めないとなると偽装は難しい。銀髪はあまりに目立ちすぎるからだ。

「となるとやはり出歩かないのがいい、かな」
434 :千早 [saga]:2013/03/26(火) 23:50:06.86 ID:hvuuJjwvo
>>433
「ええ、ですからいきなり攻撃を行った私とお相子ということで……
 次からは私も、アーサーさんの接近を察知できるようにしますから」

この生活を続けていれば嫌でも索敵能力は鍛えられそうだ。
心やすまる暇がだいぶ少なくなるだろうが、それも永遠のことではない。
自分が負けるか、研究所が負ければそこで終わる。正直のところ、自分が負けるのであればそれはそれで良いのかもしれない……
積極的に負ける気はないが、そんな考えも一握りあるということも事実。

「それを聞いて安心しました。後は、私を狙う研究所が対私用に防護服を作らなければ、それに関しては問題無さそうですね」

とは言え、そこまでの予算を割いて自分を手に入れるかというと正直自分にはわからない。
現状、研究所やその他から見た自分の価値というのを測りかねているというのが実際のところだ。
いくら予算を割いててでも手に入れたいレベルなのか、それとも手に入れられるなら一応手に入れとくレベルなのか……

「髪は……あまり切りたくありませんね。これでも気に入っていますから……以前褒められたこともありますし。
 出かけない……というのはある意味正解かも知れません。出歩かなければ見つかりませんから。
 ですが、あまり現実的な策とは言えませんね……当面は変装なしで様子を見ようかと思います」

出来るだけ外出は控えるようにはするが、あまり過剰に気にしても身がもたない。
意外と楽観視しているのかもしれない。
435 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/26(火) 23:53:03.26 ID:30Q4k3ZQo
>>432
三月ももう終わりだというのに肌寒く、強い風のおかげもあり、トマスは深い微睡の沼の中から這い出る気分を味わった
生活習慣という言葉が似合わない彼女にとって睡眠などという敵など、今までにいなかったのだが悩みの所為でストレスが溜まっていたらしい
疲労が溜まれば欲求で解消しようとするのが人の体だ。どのような者でも人間で有る限りは逆らえない──それが何の欲求であろうとも、だ
トマスの耳に入る、可愛らしい少女の声は冷水が如く覚醒するには申し分無い物だった
目に覆いかぶさる闇を祓う為に能力にて本を宙に浮かせると、目に月光と街灯の光が焼き付いて痛く感じる
目の端に残る眠気の残滓を脱ぎ去って、仰向けの体制のまま、少女の目を真っ直ぐに見つめた
体制が体制な為に、全貌を見ることは出来ないが、声の通りに小柄な可愛らしい少女
もし自分が男なら起こされた事にときめいていたかもしれないが、そんな事はどうでもいい
数秒間、思考の為の空白が産まれた
少女がそれを気まずく感じるのかはわからないが、トマスはただ少女の目を見つめて離さない

「……そうね、変なおじさんに犯されたりして大変な事になる所だったわ、同人誌みたいに」

感謝の気持ちを述べる事もなく、トマスは再び目を瞑る
だが今度は本を被せずに。眼鏡を拾って軽く鼻の上に乗せた
反省の色が見れない。否、違う
トマスの寝そべるベンチから周囲一帯に魔方陣が張り巡らされて行く──
少女には拒否する事もできるし、そのまま受け入れて何処かの空間へと引きづり込まれる事だって可能だ
未知の世界に、抗う欲求は正常
436 :アーサー :2013/03/26(火) 23:59:30.96 ID:bcMCfoC50
>>434
「いつか気づいてもらえることを楽しみにしておくよ」

アーサー自身がそれを習得するのに4年と少しの実戦を要したわけだが、さてはた千早がどのくらいかかるかといえば彼女の才能次第である。
しかし、である。手に入れれば役に立つとはいえ、手に入れたということはそれなり以上の修羅場をくぐるということ。
できれば千早にはそうなってほしくないというのが本音であり、そうなる前にけりがつけばいい、とも思っている。

「そうだね。こいつは生産にウン十万、開発にはその何倍かかっているかすらわからないから。生産コストと開発コストは別だし」

そもそもそこまで重要度が高い相手なら最初から本気だろう。
と考えるといきなり重装備の相手に襲われるなどという危険性は考慮しなくていいはず。
あくまで推察ではあるが、それが正しいと信じていた。

「おれも切るのはもったいないと思う。きれいだし、ね」

箱から取り出した煙草を銜える。

「ただ出かけるのは、本当に気を付けたほうがいい。どういう認識でいるかはわからないけど、相手が非合法な手を使う以上君だけの問題じゃない。また誰かしらが被害にあわないとも限らないんだから、解決のための糸口として、気を付けてほしい」

まるで道具扱いしているかのようで、アーサーは自己嫌悪に口元をゆがめる。
そして火をつけるでもなく、周囲を見回すと、

「立ち話もなんだし、場所を移さない?」
437 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/27(水) 00:09:59.25 ID:TMD6AmJUo
>>435
「おはよう。同人誌…?」と、よく知らない言葉にキョトンとする。
 数秒間の思考時間は同人誌ってなんだろ?という疑問に使われる。

 突如拡がる魔法陣に驚き金属の粒子がトマスに吹きつけられる。
 吸ってもむせはしない。これはただのサイコキネシス。
 螢子の力は強すぎて力が像となって相手に見えてしまうのだ。
 粒子が瞬時に固まりトマスの周囲で数百の杭となり突きつけられる。
 勿論そう見えるだけ。これは相手を突き刺し引き裂く準備というわけだが…。
 視覚に惑わされて本質が見えれば大したもの。針や杭の召喚能力に見える。

「動かないで…。何もしないで…。どういうつもり?口だけ動かして良い。」
 幽霊は醜女より美女のほうが恐いものだが、殺人者もそうなのだろうか。
 何度も人を殺したことがある人間が持つ独特の冷たい視線。
 それが今、キラキラ輝く金属片の漂う空間の中でトマスに向けられている。
438 :千早 [saga]:2013/03/27(水) 00:14:47.50 ID:XTZ0UGG+o
>>436
「ええ、必ず……直ぐには無理かもしれませんが、習得して見せます」

少なくとも、自分がそれを習得するにあったっての才能が欠落しているということはありえないと思う。
そういう風に作られたのであれば、当然習得は可能なはず。
最近は意外と平気として作られた自分を客観的に見ることが出来るようになり、以前よりは前向きにこのことを見れるようになったと思う。
ただ、完全に受け入れたというわけではなく、無理やりそういう風に思って押し込めているだけ……とも言える。

「そうですね、相手方もまだ本腰を入れてはいないようですし、それほど費用のかかるものをわざわざ用意はしないでしょう。
 一応、警戒はしておきますが」

研究所もまだ自分がプロジェクトの遺産だと確信を持っていないのだろうか。
それが原因で本腰を入れていないのであれば、前回の襲撃でリーダーを取り逃がしたのは少々まずい。
逃亡するときに一度能力を使っているため、あのリーダーが上に報告したことで完全にバレた可能性もある。

「対象が私であるとは限らない……心得ています。細心の注意は払いますので……それに……いえ、なんでもありません」

そうなったらおそらく自分を抑えられずに相手を捕まえて雇い主を吐かせるか、おとなしく捕まって研究所に連れて行かれる。
どの道決着が付く。

「今日はやめておきます、申し訳ありませんがこれで失礼させて頂きますね。
 この前教えていただいた料理店、近いうちに言ってみようと思います」

綺麗に頭を下げて礼をすると、アーサーに与えられた今住んでいる家の方へ向かって歩き出す。
少々考えたいこともあるし、長時間外にいるのもマズいだろう。

//申し訳ない。かなり眠いのと明日用事があるのとで今日はこれで〆させてください。
//ありがとうございました。
439 :アーサー :2013/03/27(水) 00:21:59.29 ID:gH8ZZwfko
>>438
「その時は何か奢るよ」

だから楽しみにしている、と。
思ってもないことを笑顔と共に口にして、アーサーは肩を竦める。
千早がどう作られたかは知っている。
だからこそいつか追いつかれるだろうとも、頭の何処かで理解していた。

「今度も本腰いれるかはわからないしね」

本腰をいれればいれたで、動きはこちらにも伝わる。
より大きなアクションを引き出せればそれに越したことはない。
たとえ危険と隣り合わせでも、だ。

「とりあえず何かあったら俺をよんでくれ。
家を貸したのも何もかも、そのためであると言っていい」

どんな相手であれ恐れるつもりはない。
敵であるなら叩き潰すのみ。

「そうか、わかった
じゃ、またな」

立ち去る千早を見送り、アーサーもその場を立ち去る。
このあとは地回り調査だ。

/あいあいおー
/おつさまー
440 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/27(水) 00:26:14.79 ID:gC40FV7Ho
>>437
覚醒したのは良い物の、思考する程に脳が完全に起動しきっていないのは仕方のない事
魔方陣の侵食は止まっているが、紅と黒の円形の魔方陣は鈍く光り輝き美しい
顔に魔方陣の光を得ているトマスは本を読むための眼鏡を通して、一面の漆黒と、イレギュラーな銀色を見る
トマスは自分が何かしたのか、思い出す事ができず、ただ自分におかれる状況を判断していた
多分、言うなれば今自分は磔刑に処されている
自分が裁き贖わせる立場であるというのに、一体どういうことだろうか
動けば殺されるという事は、自分の不甲斐なさが滲み出てきて嫌悪感を覚える
全身に力が漲ってくるのを裏に、トマスは少女のいう通りに口だけを動かした

「貴方を……そう、私の部屋に呼ぼうと思って……それで……ふわぁ……」

ふざけているつもりではない。余裕を見せている訳でもなく、ただ単純に眠気が再び襲ってきただけの事
動かしてはいけないと言われているのであくびを手元で隠しきれず吐き出す

「とりあえず……何もしないからこれ、やめてくれないかしら……」
441 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/27(水) 00:37:49.52 ID:TMD6AmJUo
>>440
「お部屋?」
 予想外の回答に集中力が途切れ全ての杭が金属の粒子に戻る。
 信じていいものだろうか…と、トマスの顔を見る。

 どこかで見た事がある顔だ。
「貴方とわたし…どこかで会った事ある?」
 思い出した…雪合戦だ。顔見知りと知り緊張を解く。
 輝く霧のような金属の粒子は揮発するように消えた。
「貴方はわたしを覚えている?」
 イベントでの一度きりの出会いだ。忘れられていても仕方はないが。

「ところでお部屋に魔法で帰るの?」
442 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/27(水) 00:58:17.87 ID:gC40FV7Ho
>>441
銀色の束縛から放たれ、文字通りの鋼鉄の重苦しさから解かれると、紅と黒の円形の魔方陣は再び広がり始めた
少女の目を仰ぐトマスに投げかけられた質問は、再び合間見えるとは思った事もない相手
否、覚えてないと言った方が正しいが失礼になってしまう。自分が主催で行った雪合戦の時の参加者だ
確か同じチームだった気がするが、二度会うとは思いもしなかったせいか、トマスは仄かな記憶しか脳には無かった
この様な子も居たなと言う曖昧な記憶のまま、曖昧な返事を返す

「あー、いたわねぇ、あんときの……元気してた?私は元気だわ……っとぉ」

何の考えもなしにした的当な返事を終えて、寝そべっていたベンチから勢いをつけて立ち上がると、そこはもうすでに室内
少女の疑問に対して返答する意味がなくなったが、一応の説明はつけておいた方が良いだろう

「ようこそ……そしてさっきは起こしてくれてありがとうね
ここは、L.M.G.副官長である私、トマス・デ・トルケマダの個人展開空間、氾濫図書の私室内よ
まぁ処刑用の空間を魔改造した結果がこれって訳ね。安心して処刑なんてさらさらするき無いから……それに……」

トマスが宙に浮かせていた本を操り、手に手繰り寄せると部屋の四方を囲む本棚の一角に仕舞う
部屋の構成として本棚に囲まれており、中央に黒いソファーとガラスの机、赤と黒のベッドが部屋の南方に置かれている
足元の赤い絨毯が温かみを演出しており、ベンチがある筈のそこは何も無くなっていた
目を見張る様な景色に少女の応対はどうなるのだろうか、ちょっとした楽しみである
本を仕舞ったトマスはベンチがあったそこを、何の気なしに通り過ぎると、ソファーに深く腰掛けて指を鳴らした
音に反応するかのように本棚の一つが揺れて、上から茶菓子とティーセットが落ちてくる
緑色の表紙の本で器用に受け取ると、机の上に置いて流れるように少女を向かい側のソファーに座るよう促した

「それに、貴方はとても面白いって事が分かったわ
変わってる、っていったら失礼だかしらね」
443 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/27(水) 01:10:05.04 ID:TMD6AmJUo
>>442
 ジト目でトマスを見てポツリと呟く。
「忘れかけてる。」
 とはいえ別に傷ついた様子もないようだ。

「ここは?…あれ?」
 一瞬の出来事に驚きながらトマスの説明を聞いている。
 そして部屋の中の蔵書を興味深そうに見ている。

 トマスが本をしまった。なるほどこういう事もできるのか。
 部屋の中を目を輝かせながら見て動いて、蔵書の表題を時々見て、
 タイトルすら読めない本が多い事に気付く。少ししたら落ち着いたのか
 トマスに誘われてソファーに座る。お菓子を凝視。ひたすら凝視。
「いただいて…良いの?」唾をゴクリと飲み込む。

 所でさっきL.M.G,副官長という言葉が耳に入ったのだが、
 トマスにも興味を持ったようでそわそわしはじめる。
 何か話題を、話題…「螢子…私の名前」今はこれしか出ない。


 
444 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/27(水) 01:33:51.75 ID:gC40FV7Ho
>>443
護身の意味も兼ねて四方八方本で埋め尽くされた部屋にしたのだが、本棚を動かせば機能的になる夢のある空間だ
トマスのプライベートの中でも最も深い場所で、トマスが寝床に困った時に使われる
接待などは表の、普段の空間を使いそこから相手によって警戒しているのなら階層を増やしたりなど工夫を重ねて行く
少女の行動から察するに、本に興味があるのだろうか、そうならば共通の話題ができて話しやすい
トマスは向かいに座る少女──蛍子と名乗る少女の目を再び見た

「遠慮せずに食べて良いわ……消費期限にも余裕あるから大丈夫よ……かりんとうだし
忘れるのもしかたないわよ、私前半はずっと砲台のお守りしてたんだからね」

座り心地が悪かったのか、一旦立ち上がってスカートの裾を直してからもう一度座り直す
やはり慣れていないことはすべきでは無いのだ

「貴方──いえ、蛍子ちゃんね。良く私から金品盗み出そうとしなかったわね?私なら迷わずとってたけど──お腹も減ってたんでしょう?」

察するに、こんな時間帯に空腹で公園の水を飲むなど言ってしまえば普通ではない
トマスも異常だが、自身でどうにかできる年齢だからこその行動であり、しかし蛍子は背丈から考えて普通なら未熟と言われて良い
だが、蛍子の纏う雰囲気は何処か完成された、大人の苦しみを知っているかの様な感触さえ覚えるのだ

「欲求に逆らって人徳のある行動をした貴方は賞賛されて当然なんだわ
そうね、良かったらお礼としてここの本、好きに持ってって良いわよ
結構高めに売れる本も揃ってるだろうしね」

見渡す限りの本達が、どこか貰われたそうな視線を蛍子にぶつけている様だ

「助けられたお礼よ……それでL.M.G.の良さを宣伝して頂戴ね」

冗談だろうが、半分本気の悪どい笑みだ
445 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/27(水) 01:48:01.82 ID:TMD6AmJUo
>>444
「L.M.G.は処刑場でターゲットをデリート…わたしとは逆。」
 小さく呟く。
「いただきます。砲台…思い出した。雪合戦、楽しかった。」
 嬉しそうにかりんとうをカリカリとかじりながら話を続ける。

 座り直す仕草に疑問を感じて少し首をかしげる。
「お金を盗る?」これもよくわからない発想だ。
 考えすらしなかったようだ。
 もちろん盗むという概念を知らないわけではない。
「それに眠っていたから盗っていいのか尋ねられない。
 それじゃ盗れないよ?」冗談を言ってみる。
「本も…貸してくれたら嬉しいけれど貰えない。
 返しに来たい時はどうすればいいの?」

「L.M.G.は最近、派閥争いが起こっているって聞いた。
 それが終わってからイメージを回復すれば良いと思う。
 わたしは手伝えないけれど、何が起こっているの?」
446 :トマス【L.M.G異端審問副官長】──銀短髪 [saga]:2013/03/27(水) 02:20:04.96 ID:gC40FV7Ho
>>445
何だ、自分が腐ってただけなのかと自責の念というか、後悔を感じる
純粋な少女に何を問うたか、何だか恥ずかしくもなってきたトマスは、それを隠すように少女の話に乗る
暑くなって来たのか白い羽織を脱ぐと薄手のセーター姿のトマスはこれ以上に無いくらいの私的感を醸し出している
安心できる相手だからこそできるのだ。この思いに裏は無い

「返さなくても良いのに……あー、一週間後ぐらいに勝手に消えるからそこらにほっぽいたらいいわ
あら、子供なのに結構深い所まで抉りこんでくるのねぇ……そうねぇ簡単に言えば……」

トマスは本棚に向かって指を指すと、本が何冊か取り出されて少女の目の前を踊り出した
赤い本、黒い本、白い本、緑の本だ
懐からペンとメモ帳を取り出して何か文字をさらさらと書き綴ると、それぞれの本に文字が見えるようにして挟む
トマスは満足げにそれを見渡すと説明を始めた

「私達L.M.G.は葬式の為にカトリックと繋がってるってあるけどね、あれは表向きの理由で、本当は元来の異端審問──ようは裁判をする所の古いバージョンの生まれた所がカトリックなの
カトリックではヒエラルキー、いえ、偉い順が決められてて一番偉い人である教皇は最も神に近いと言われてるの
その教皇様を決める教皇選定、コンクラーベがもうすぐ行われるかもしれないのよね
教皇様のご体調が優れないらしくてもしかしたらーの段階だからまだ分からないんだけどね
万が一行われたら、結構私達がピンチなの
教皇様の下には枢機卿という役所があってね……この緑の本が教皇様、赤と黒が枢機卿ね。そして白が私達L.M.G.
もし教皇様が退位なされるとなったら、コンクラーベが行われるでしょ?
コンクラーベは世界中から集められた枢機卿の中から何日かかけて機密に選定を行うの
枢機卿の中にはL.M.G.の味方、この黒い本と敵、赤い本がいるわ
今の教皇様は赤と黒、どっちともつかずだったけど今度はそうはいかない
二派に別れている現在ではどちらかが教皇になることでL.M.G.の存亡はかかってるの
L.M.G.が消えれば困る人も多いの……まぁ言いにくいけど」

緑の本が机の下まで沈み、赤と黒が喧嘩をする図が空中に出来上がっている
白い本はそれを心配そうに見つめているだけだ

「つまりL.M.G.は今度の教皇様が誰かによって安寧を得られるか終わるか決まってくるの
そこに事もあろうか、私達の事大っ嫌いな枢機卿が今度家庭訪問にくんのよ……新聞紙にのってたでしょ……」

地方の新聞紙に載っているのは人の良さそうな白装束の好青年
白い歯を見せて笑っている、汚れだらけのトマスとは正反対だ

「イメージアップも大切なんだけど……今はコンクラーベが怖いわ……
あーあ、蛍子ちゃんもうちで働いてくれればなー」

机の上にだらしなく覆い被さるトマスの顔はだらしなくヨダレを垂らしている
よっぽど面倒臭いらしい
447 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/27(水) 02:48:18.67 ID:TMD6AmJUo
>>446
「蜘蛛の巣…」
 話のあとで本棚にかかっている蜘蛛の巣を見つける。
 そしてトマスをじっと見る。大きな組織の副管理長には見えない。

「枢機卿さんは身なりが綺麗だね。
 L.M.G.は表の顔を用意してお化粧をしないの?
 そうすればカトリックの内外にも味方は増えると思うよ。」
 多種多様な本が並べられた本棚を指差す。
 ソファーの間だけがこの部屋の全てじゃない。

「ねえ、トマスさんにとってL.M.G.のお仕事はこの世の中に必要な物だと思う?
 もしもそう思うのなら、この人に連絡をとってみて。」 リボックの名刺を渡す。
「わたしは理由があってどこかの組織に入る事はできないの。
 でもその人を説得できたら、ほs…"代わりの人"を助っ人に呼べるよ。」
448 :蛍子(花売りの薬師)金属質生成 [saga]:2013/03/27(水) 04:10:39.80 ID:TMD6AmJUo
>>446
// お相手感謝。本日は一旦〆で。
449 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/27(水) 21:41:42.90 ID:A02je/l3o
ある夜の都会から外れた木の下での一幕
「……」

ブロンドの髪を髪留めで一纏めにした、幼い顔立ちの小さな少女
片手で数えられてしまうほどしか花びらを開いていない桜の木の下にブルーシートを敷き、金属の箱を立て掛ける
そしてその木を一人眺めながらコンビニ弁当を取り出し、ペットボトルを置く
その桜の木が振りまくのは華やかさではなく荒涼さ
このあたりは人気もなく、閑散としているようだ
少女は一人物思いにふけながらも、殺風景な桜を眺めながらも無言でコンビニ弁当を食べる
お花見をしているようにも見えなくもないこの光景、果たして声をかける者はいるものか……?
450 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/27(水) 22:08:06.20 ID:T+sJXY9Qo
>>449
冷たい水の粒が、一滴二滴と空から降り注ぐ。少女を照らす月を、どんよりとした暗い色の雲が覆い隠して。
そうして辺りは、瞬く間に暗闇に包まれて。滴る雨粒が、桜の花弁を濡らしていく。

「お花見なんて、いつぶりかしら……」

降り注ぐ雨の中心地で、女性は慈しむようにそう呟いた。
人気の無い郊外。この時間ならば誰にも迷惑をかけずに花見を楽しめる。そう考えて、彼女はこの場所へ訪れた。
まさか先客が居るなどと思いもせず、一歩また一歩と閑散とした桜並木の中へと踏み込んでいく。

「雨に濡れた桜も、夜の闇も。とても綺麗だわ」

雨は次第にその勢いを増していく。雨粒からその身を守ることが出来るのは、傘を携えた女性ただ一人。
花見を楽しんでいた少女は、もしかすると雨に濡れてしまっているだろうか。それに気付くこともなく、女性は夜の桜に見とれる。
ただ、しんしんと降り注ぐ雨と共に。
451 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/27(水) 22:23:39.89 ID:W6hE9Esto
>>450
「……冷たい」
頬を伝う涙……? これは雨粒か
ふと空を見上げれば暗い色の雲に空が覆われていた

少女は枝の隙間から落ちてくる雫から弁当を守るために蓋をし、金属の箱に入れる
雨の勢いは少女を拒絶するかの如く勢いを増す

このままだと風を引く……、少女は金属の箱から袋を取り出す
そしてそこから万が一を考えて持ってきていた黄色いレインコートを取り出す

そうしてそれを身につけようとして、雫で歪んで見える人の姿
そしてそれはこちらに近づいてくる

(人……? でもぼんやりとしか見えないよ?
……もしかして幽)
コートを着ようとしていた手がピタリと止まり、少女は小刻みに震えだす
それは寒さのためでも雨に濡れたためでもなく、たった一つの勘違いのせい
しかし傍から見れば雨に濡れたせいとも取れるこの光景
女性がこれをみたなら果たしてどうとらえるのだろうか
452 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/27(水) 22:33:54.40 ID:T+sJXY9Qo
>>451
「……あら?」

視線の先で立ちすくんでいたのは、可愛らしい外見の少女だった。
足元に広がるシートと抱えた荷物。もしかして、と女性は考える。

(どうやら邪魔をしてしまったみたい)

いつだって、誰かのために生きたいと思っていて。しかしそれは全てが裏目に出てしまう。
雨宮涙子はそういう星の元に生まれ、そしてこれまで生きてきた。

「……ごめんなさい」

雨の中心に居るのは何時だって涙子で。近付けば、少女はより強い雨に襲われることになるだろう。
それでも涙子はレインコートの少女の元へと歩み寄っていく。俯き加減で、ゆっくりとした足取り。

「私はもう行くから、この傘を使って」

首を傾げて微笑む。傘を差し出した女性の仕草はもしかすると、ただ少女の恐怖心を煽るだけかもしれない。
453 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/27(水) 22:47:33.46 ID:W6hE9Esto
>>452
「……」
未練を残して現世に留まるような死人は苦手であった
呪い殺されてしまったり、そうでなくとも見えないことを利用して
四六時中自分を見張っている、などと思うともう……

雨は心底どうでもいい、濡れてもきっと風邪を引くだけだ
けれどもあの足取りは……、俯いていて顔の見えないあれは……

――もうだめ、私はここで睨み殺されるんだ
恨みは沢山の人から買ってるけど、幽霊に呪われて死ぬだなんて……

けれども体は勝手に動いてしまう
顔面蒼白の少女は、魂が抜け落ちたかのような動きで傘を受け取ろうとする

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……呪わないで……」
力なく呟き続ける少女、しまいには頬を雫ではなく涙が伝いだす
はっきりと彼女の顔が見えなければ……いや幽霊でないと認識できなければ恐らくこのままであろう
しかし幽霊でないと……いやしっかりと顔を見ることができたなら、少女も異なる行動を取るであろう
454 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/27(水) 23:00:25.88 ID:T+sJXY9Qo
>>453
少女に傘を渡そうと、前に踏み出した一歩。その歩みは足元のぬかるみに絡め取られて。

「きゃ…あっ!」

手から離れたこうもり傘が宙を舞う。それが重力に従い地に落ちた時……。
雨宮涙子は体を地に伏せたまま、全身を泥まみれにして少女を見上げていた。

「う……ぷぅ……」

こんな情けない姿を見てもなお涙子を幽霊だと信じ込むのであれば、少女は余程思い込みが強い。
泥まみれで、しかしはにかむような笑みを浮かべた涙子には、敵意など微塵も無いのだから。
455 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/27(水) 23:17:14.86 ID:W6hE9Esto
>>454
「……」
思わず笑みが零れ落ちる
彼女は根の国からの使者かテレビから這い出てきた怪物、と思い込んでいた少し前のこと
しかし本当にそうならこんなミスなど犯さないはず
確実に自分をどこか遠くの場所へと連れて行くはず……
使者だとしてもきっと新入りだろう、違いない
それならきっと抵抗できる

そんな虚勢や思い込みもはにかむような笑みを前にしてどこかに溶けていく
体の中に魂が戻ってきたような、生きているという実感が体に満たされる

「……ありがと、手貸そうか?」
いつしかその言葉はお礼へと変わっていた
おぼつかない足取りで女性の元へと歩いていき、
雨粒を一身に受けながらも手を出す
456 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/27(水) 23:28:54.04 ID:T+sJXY9Qo
>>455
「……ありがとう」

差し出された少女の手。それを見て申し訳なさそうに女性は呟いた。

「でも、ごめんなさい」

それは、拒絶。目の前の間の抜けた光景とはかけ離れた、冷淡な言葉。
二人の体を濡らす雨が、一層強さを増していく。頭上で一輪、桜の花びらが散る。
女性は自力で立ち上がって、体に纏わり付いた泥を手で落とす。
目の前の少女の手を借りようとはせず、その眼差しはどこか虚空を見つめてさまようだけ。

「お花見、邪魔してしまったわね」

不意に呟いた陰りのある言葉が、寂しげに闇の中を通り過ぎた。
降り止まぬ雨音が、涙子の言葉も心もかき消して。距離にして一歩分、涙子は少女の元から遠ざかる。
457 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/27(水) 23:39:06.40 ID:W6hE9Esto
>>456
「あ……」
見ず知らずの人間の手を借りはしない、ということだろうか?
とすると彼女は人間不信のきらいがあるのだろうか……自分と同じように

「ううん、ぜんぜん邪魔なんかじゃないよ
一人でお花見ほどつまらないものはないって思い始めていたところだもん」

あっけらかんと話す少女
本当に空しいだけであった、桜の木の華のなさと合わせて
しかしその光景になぜだか心惹かれた、
その空虚な桜の木はどことなく自分自身を見ているようだった

「……だから、もしよかったら……」
言いかけて、足元がぐらつく感覚に襲われる
息が苦しくなってくる、頭が痛い……

次の瞬間、少女は力なく地に伏した
458 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/27(水) 23:54:34.36 ID:T+sJXY9Qo
>>457
「でも……」

明らかに自分よりも年下の少女に気を遣われたような気がして、涙子は少し居心地の悪い気持ちになりかける。
どこか心苦しいような、そんな感情。けれど、そんなつまらぬ感情が沸き上がるよりも先に。

「えっ―――?」

少女はその場に倒れ伏した。それを受けて、涙子は数瞬の間硬直する。
追い付かない。思考も行動も。どうすれば良い?何をすれば……?
普通なら、常人なら。きっと少女に駆け寄り、そして助け起こそうとするだろう。
けれど涙子にはそれが出来ない。彼女は普通でも、常人でもないから。
助け起こすことも、ましてや近付くことも出来ない。そんなことをすれば、きっと少女を殺してしまう。
殺してしまう、けれど―――。

「だ、大丈夫っ!?」

気付いた時には駆け寄っていた。助け起こして、呼びかけていた。後のことなど何も考えずに。
少女の後ろ首に腕を添えて、抱き起こすように。涙子は必死になって少女に呼びかける。
その背後で渦巻く透き通るような影に、彼女は未だ気付いていない。
呼び寄せられたのは、災厄。少女と、涙子と、青白い恋人。三者の邂逅がもたらすものは、果たして……。
459 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/28(木) 00:08:53.44 ID:LUsaZ/Gno
>>458
当然といえば当然か、これだけの雨に晒され続けたのだから
ああ、やはり自分は人間……、などと考えている余裕はなかった

抱き起した女性は感じるはずだ、少女が明らかに熱く感じることに
どうやら風邪を引いたらしい……、話そうとしても声が掠れる

「ゴホッ、うん……、ごめん、心配かけて……」
これでも身体の頑丈さには自信があったはずなのだが
だがどれほど雨粒に晒されようとも、それに潰されるほど軟な体でないのは確かだ

しかし風邪を引いたからといって寝ているわけにはいかないのかもしれない
嫌な予感に駆られた少女は、涙子の補助を受けながらもよろよろと立ち上がろうとする
460 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/28(木) 00:25:50.57 ID:RFtLua/yo
>>459
「体が熱い……無理をしては―――!」

無理に立ち上がろうとする少女を制止して、そしてその時になってようやく涙子は背後の気配に感づく。
それは彼女にかけられた呪い。雨宮涙子に接触する全てを排除する、自立行動型の超能力―Pale lover―
それは涙子と他人の接触をキーにして発動する、制御不能の暴風雨。この場合の標的はもちろん、目の前の少女。

「―――っだめ!」

水で形成された人型の影。鋭い爪や牙を持つ人型の虚像。少女との間に割って入るように、涙子は影の前に立ちはだかった。
けれどもそれは、変幻自在の水の人形。彼にとっては目の前の宿主の存在さえ、障害にすらなり得ないだろう。

「………」

ふらつく少女を支えながら、涙子はじりじりとその場から後ずさる。Pale loverが宿主を傷つけることは無い。
けれど、このままでは少女の身に危険が及ぶことは確実だ。

(どうにかしてこの子を逃がさないと……)

今はジッと動かない水の人形。しかし、彼が行動を開始するのも時間の問題だろう。
461 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/28(木) 00:42:42.41 ID:LUsaZ/Gno
>>460
「あはは……ゴホッ、大丈夫、だよ」

雨に晒され続けて力も満足に発揮できない、声はかすれて弱弱しくなる、咳込みもいよいよ酷くなる
しかしそんな体に鞭打って、今の状況を整理してみようとする

目の前にいるのは影、水で形成された人型の虚像
彼女の様子を見るに、彼女と関わりがあろうことはなんとなく想像つく

……死んだふりでもすれば見逃してくれる?
駄目だ、熊ですら効かないのに

「金属の箱……私と同じぐらいの大きさなの
雨にやられて錆びちゃってるかもしれないけど、
そこに私を入れてくれれば、多少の攻撃からなら身を守れる……かも」
弱弱しい口調でそう進言する少女、影の狙いが自分であることを悟ってのこと

最悪自らに刻まれた吸血鬼の種に身を任せれば、水はむしろこちらに益をもたらすだろう
しかしそれは最後の手段、それは即ち人をやめるということだから
462 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/28(木) 01:04:54.68 ID:RFtLua/yo
>>461
「無理よ。それでは彼から逃げられない……」

青ざめた表情。それは雨に濡れたせいではない。制御の利かない能力に、涙子は怯える。
誰かを殺めることでしか、Pale loverは止まらない。水も硫酸も血液も、全ての液体を操る青白い恋人。
いまも涙子に望まぬ生を与え続けている、理不尽な力。それは涙子には止めようもない。それならば―――。

「だからお願い、私を殺して。そうすればきっと、彼は止まるから」

ならば元を断つ。Pale loverの原動力となるのは雨宮涙子の生命力。故にPale loverは彼女を死なせるわけにはいかない。
雨宮涙子はこれまでに幾度と無く自殺を試みた。戦闘で重症を負うことさえあった。
しかしその度にPale loverが彼女を生かす。雨宮涙子を守るという、ただ一つの行動原理に基づいて。
逆に言えばその行動原理を奪い取ってしまうことで、Pale loverの行動は抑制することが可能となる。それは雨宮涙子の死という形で。

「お願い、殺して」

死を与えたくない一心で、彼女は自身の死を求める。他人にそれを強いることが、どれだけ非常なことかを知っているはずなのに。
463 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/28(木) 01:28:25.71 ID:LUsaZ/Gno
>>462
「……そうなの……? ゴホッ」

いよいよ人をやめなければならないか
覚悟を決める必要がありそうだ

花見をしていれば自分が花の鬼となる……
なんという皮肉だろうか
「……殺す?」

逃げられない、そして殺せと彼女は言う……
会って間もない人間に情など湧かない、本来なら
幾ら優しい人間と言われようとも、そこまで人間ができていない、はず

「……ダメ、他に方法がある、きっと
お姉さんを死なせたらダメって、なぜか思うの」
しかしなぜだかそれを拒絶しようとする
ほかに方法……水に耐性を持つこと以外に思いつかない

自身にとって最悪の結末、人をやめること
それも覚悟して、少女は彼女の手から離れようとする
464 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/28(木) 02:03:02.23 ID:RFtLua/yo
>>463
自分の元から離れて行く少女。その手の中から零れ落ちるように失われていく体温。
もう一度少女を掴もうとして、空を切った手の平。

「行かないで!」

そう願った涙子の想いに応えるように、離れ行く少女を繋ぎとめた巨大な腕。
透き通るような水の身体に、鋭く尖った鋭利な爪。それは紛れもなく人の姿を模った水の人形。
透明なその瞳は感情を映し出すでもなく、ただ無表情に少女を見つめる。

「……なぜ」

通常は涙子の命令に従うことのないPale lover。しかしそれが今、彼女の意思によって行動を制御されている。
それはPale loverが元の術師の影響下から長く離れ、涙子に寄生を続けた結果生まれた新たな命令系統。

「……そう、私の言うことを聞いてくれるのね」

それは雨宮涙子の意思によって操作される、新たなPale lover。原理は分からずとも、しかし涙子は瞬時にそのことを理解した。


「ごめんね、ありがとう」

虚空に放たれた言葉は、きっと少女に向けて。
平和に過ごしていたであろう少女を身勝手に巻き込んで。
涙子はもう少しで彼女を汚すところだった。
一生治ることのない、深い傷を与えるところだった。
自分が一番嫌なことを、他人に強いた。涙子は少女に殺してと、そう言った。
そんな身勝手な自分が嫌いだった。ずっと、ずっと昔から。死んでしまえば良いと、思っていた。
そしていま、彼女にはその願いを叶える力がある。ならば、選択肢はひとつ。

「―――さようなら」

刃が涙子の胸を突く。透明だったそれは、途端に朱に染まって。それを確認してから、涙子は一度だけ笑顔を見せた。
それは彼女のこれまでの人生の中で、最も心安らかな表情だったと思う。
彼女が瞼を下ろした時には、胸を突いた刃も水の人形も、全てがその形を失いただの液体と化していた。
仰向けで地に伏した涙子の胸からは、ただ血液が溢れ出るだけだった。
465 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/28(木) 02:25:59.45 ID:LUsaZ/Gno
>>464
「……」
なぜ、なぜなのだろう?
会って間もない自分を見殺しにしようとせず……
……いや、こうなるのなら自分で手を下すべきだったのかもしれない

「……どう、してなの?」
わからなかった
誰かに問うこともできない、もう知ることもできないかもしれない
自分の思い上がりが、自分の無力さが、今のこの結果を招いた
あらゆる言葉は誰にも伝わることなく、虚空に消えていく
それは世界の理不尽さを物語る
力なく、けれども確実な足取りで少女は彼女の元へと歩み寄る


「どうして、どうしてなの?
おかしいよ、ねえ……、どうして私を生かしたの……? ねえ……」

狂いそうだった、理解できなかった、誰に伝わるかもわからない悲痛な叫びをあげていた
これが性質の悪い夢であったならどれほどよかったことか

彼女のその頬に触れようとする、微かにでも体温があれば助けられるかもしれない
……助けようとすること自体が思い上がりなのだろうか
だとすると自分は今までどれほど思い上がってきたのだろうか

自問自答は後に回して少女は確かめようとする
彼女の倒れるその様は、少女に少なからず影響を与えた
466 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/28(木) 02:40:34.18 ID:RFtLua/yo
>>465
どくどく、と。傷口から溢れる赤黒い血液は止まらない。どこか主要な血管を損傷したのだろうか。
その体からは徐々に体温が失われていく。もはや涙子にはPale loverを行使するだけの力も残ってはいない。
ただ目を閉じて、遠くから聞こえる少女の声に耳を傾けるだけ。

(生かした……?違うわ)

人殺しになるのが嫌だった。これ以上、誰かの命を背負って生きることに、涙子は疲れてしまった。
殺すくらいなら、殺されたかった。そうして他の誰かに、この重さを肩代わりして欲しかったのだ。
ただ、楽になりたかっただけ。自ら命を絶つ理由としては、酷く身勝手で。

(私が貴方を、殺すの。命の重さで、押しつぶすのよ)

だから涙子は謝り続ける。ただ、ひとこと。

―――ごめんなさい。
467 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/28(木) 03:00:22.55 ID:LUsaZ/Gno
>>466
一つの経験として割り切るには、あまりにも重すぎる
目の前で自害される痛み……自分で手を下しておけばここまで苦しまずに済んだだろうか?
涙を流すことはなく、聞こえる音すべてが虚しく通り過ぎていく

医療の心得があるわけでもない、まして自分は本質的にはただの人間
これほどまでに自分の無力さを身を持って知らされたことはなかった
あまりにも自分は無力過ぎた、そうしてそれを理解しながらも問題を先に延ばし過ぎた
もう、前に進まなければならない

「謝られたって、どう返せばいいのかわからないよ……」
金属の箱から取り出す包帯
それを傷口に巻き、記憶にとどめていた止血を試みようとする

これが少女にできた唯一の抵抗
そしてそれはきっと無意味な抵抗
468 :雨宮涙子 [saga]:2013/03/28(木) 03:30:44.04 ID:RFtLua/yo
>>467
傷口に当てられた包帯。けれど、血液の流動は止まらない。
次第に冷たく、そして無機質的になっていく雨宮涙子の肉体。そこにはもう、命など宿ってはいなかった。

思えば、惨めな最期だった。結局、雨宮涙子は負けたのだ。自分を取り巻く環境の全てに。
差し伸べられた手を振り払って、最期まで悲しみに暮れ続けたその成れの果て。
結局彼女には、誰かを幸福にすることは出来なかった。不幸にするだけしか、出来なかった。
目の前の少女は泣いていた。雨宮涙子が一身に受けていた呪いは、彼女へと受け継がれるだろう。

(ごめんなさい。でも、許してくれなくても良いの)

少女が背負う命の重さ。きっとこれから、多くの人が彼女の為に不幸となるだろう。
そしてその度に、少女は自身を呪うのだ。怒りや無力感。誰かが犠牲になる度、少女は―――。

(許さないで。それが私の罪だから……)

もう、動かない。全ての時が止まったかのように。桜並木を照らす月光だけが、揺れるように動いて。
気付くと雨は止んでいた。それはつまり、雨宮涙子の死を意味していて。
明日は彼女が――雨女が始めて迎える晴れ日和。きっとよく晴れた、気持ちの良い青空が広がることだろう……。

/もう、ただひたすらごめんなさい。爆弾みたいなロールでした……
/ここまで長々とお付き合いして頂いて、ありがとうございましたー!
469 :一春間 [saga]:2013/03/28(木) 03:37:53.15 ID:qAM1E8740
「正直に言おう、私は弱い」
血だらけな人物が一人立っている
「といっいても、私が弱いのは能力を使わないから」
だがこれは彼の血ではない
「私が能力を使えば、この通り」
これは通りすがりの暗殺者の返り血であった
「皆殺しだ」
その数38人
470 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/03/28(木) 03:55:27.75 ID:LUsaZ/Gno
>>468
なにもかも思い上がりであった……いや逃げていたというのが正しいのだろうか
何度も何度も機会はあったはずなのに、それらの機会を全て無駄にし続けた
それどころか舞い上がってすらいたのかもしれない

ぽっかりと魂の抜け落ちた、そして体もを無くした名も知らぬ彼女の肉体
彼女がどういった人生を歩んできたのかを知ることは、もうできないかもしれない
しかし苦しんでいたことだけは伝わってきた
ここに至るまでの一連の行動の一つ一つがそれを物語っていたように、今となっては思う

「知らない、知らないよ……
もう、知らないよ……」
彼女の呪いは少女にも受け継がれるという
それは即ち、普通の少女ではいられなくなると言うこと

「……あ、はははは、あははははは!!!!!」
気付けばだれの耳にも届くことのない空虚な笑い声をあげていた
客観的に考えればこんなことで苦しむほうがおかしいではないが
目の前にいる人物は勝手に死んでいっただけじゃないか、そうに決まっている

とでも思わなければ頭が狂いそうだった
もうこれまでのように表立って生きていける自信もなくしていた
目に映るものすべてが、色を失って見えた

晴れ日和、それは少女にとって新たな旅立ち
夢の一つであったふつうの少女になれなかった少女の、新たな旅立ちだ……

//いえいえ、これはこれで……
こちらこそ長々とありがとうございましたーーー!
471 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/01(月) 21:40:41.79 ID:qi8iGkfgo
【車輌廃棄場】
 丁度スラムと都市区の間に車輌の廃棄上がある。
 掘り出し物はないものかと金物屋の女性が粗大ゴミを物色していた。
 民間用、軍事用の別け隔てもなく、再利用の見込みもない車輌がある。
 例えばレクサスの隣にシャーマン戦車が捨ててあったりするような広場。
 ボルテクスはそこで一機の軍用ヘリコプターに目を止める。
 川崎重工業製偵察ヘリOH-1「Ninja」。ちょっとした攻撃能力もある。
「大きさも丁度いいな。」
 しかし動くのだろうか。取り込む機械の故障は自身のダメージになる。
 老朽化しているだけなら疲労の原因程度で済むものだが…。

 読んでみればわかる話だ。機体に触れて目を閉じる。
「トレース…。
 …ふ、ふふふ。これは良い拾い物になりそうだな。」
 半壊している機体だが、修繕して使えない程ではない。
「今は融合は無理だが、直せれば使えるな。」
 問題は3.5dの機体をどうやって持って帰るかだ。
 ここで直してしまえればいいのだが、逆に機材をここに持ち込むのも難しい。
 それにヘリをメンテナンスできるような工具や機材は持っていない。
「欲しいな。欲しいが…諦めるか。」溜息一つ。
472 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/01(月) 23:56:21.68 ID:qi8iGkfgo
 しかし諦めきれない。
 レンタルで借りたクレーン車では運べないが、
 解体していけば小分けに自分の工房にも運び込めそうだ。
「融合能力…!」
 ボルテクスが異能を使いOH-1を分解、というより両断する。
 それぞれの部品を1d未満のモジュールに小分けしていく。
「組立て修理と整備はあとでやろう。
 これは良い鎧になりそうだ。」
 機能単位で分解されたOH-1をトラックに載せて積んでいく。
 ヘリの再現に成功すればボルテクスは空を手に入れる事となる。
「なかなかの重労働になりそうだが、良い拾い物が手に入った。」
 鉄くずの山の中で少女が花を摘むようにガラクタを集める。
「良い変形も考えておかないとな。」
473 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 00:14:15.77 ID:T5cY4f4qo
巻き込まれて背負うことになったあれやそれを思い浮かべると沈鬱な気持ちになる
けれどもそれらは進むための道標にもなる

今自分の持てる様々な技術を磨くべくあてもない旅に出ていた、金髪蒼目の幼い姿の少女
けれども自分一人では限界があったのもまた事実
さらに言えばそのために彼女はボルテクスの元からも姿を消していた、置手紙も残すことなく

背に背負っているのは金属製の棺桶のような形をした箱、肩からはポーチをぶら下げる
「……お姉さん?」

金属の匂いが嗅覚を刺激するこの場所、少女はこの匂いに連れられてこの場所を訪れていた
そうして花を摘むようにガラクタを集めているボルテクスの姿を見つける
なにも言わずに消えたことの気まずさよりも、好奇心のほうがはるかに上回り

「なにしてるの? よかったら手伝おうか?」
幼さを前面に出した、そんな口調を作り出してそう声をかけようとしてみる

474 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 00:24:23.72 ID:0B75pD5Do
>>473
「ん?エリアか。大丈夫だ。この世界のエンジンは凄いな。
 いや、燃料が凄い。石油なんてわたしの世界にはなかったからな。」
 クレーン車の馬力に感心しながらディーゼルエンジンのパワーにしばらく見入っている。
 しかしレバーを操作し機械も手も止めて、エリアに近づいて来た。
「いや、せっかくだから手伝ってもらおうか。
 お か え り エ リ ア 。
 会いたかったぞ。どうした?憂鬱そうな顔をして。」
 悩みとは無縁そうな力強い笑顔でエリアを迎える。
475 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 00:40:38.33 ID:T5cY4f4qo
>>474
「……へぇそうなんだ」

石油がない……? この世界……?
そういえばこの前別の世界を仄めかすようなことを話してたような……

ボルテクスが語るのをよそに、少女は思案に耽ってしまう

「うん、ただいま、お姉さん」

……彼女はきっと大丈夫、死ぬところなんて想像もつかない

その笑顔にいくらか安らぎを覚え、同時に帰ってきたと思えた少女
実は自分のまわりは強者ぞろいで、死など端からいらぬ心配だったのでは?
そんな錯覚すら抱いてしまいそうになる
一番脆いのは自分ではないだろうか……

「いろいろあってね、私自身がどうにかして強くなれないかなって、
そんなことを思いながら旅してたの」
恐らく憂鬱そうな表情はそのいろいろに集約されているのだろう

「……それはそうと手伝うよ、なにしたらいい?
力には自信あるよ?」
見て呉れは華奢な体つきであるが、力には自信があると少女はいう
476 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 00:59:06.56 ID:0B75pD5Do
>>475
「おかえり。
 うむ、この揮発性燃料の能力は松脂やアルコール以上だな。
 これだけ便利な燃料があれば電動機関が未発達なのも仕方がない。
 羨ましいエネルギーを得られる可燃物だ。素晴らしいな。」

 ここでエリアが何か迷い惑い、そして恐れている事を察する。
 エリアが具体的に何を考えているのかまではわからないが。
「うん?強い?それは戦いの強さか…エリアはその強さが欲しいのか?
 やめておけ。あんなもの、人の才の一つに過ぎん。
 例外はあれど、そういうのは男どもや化物達のものだ。
 自惚れるつもりはないがわたしも強い。化物だからな。
 そう、強い事で得をした事などあまりないぞ。」
 信号音を鳴らしながら動くクレーン車。
「手伝って欲しいのは荷造りになるな。
 このヘリコプターの部品を荷台に載せたい。」
477 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 01:08:24.57 ID:T5cY4f4qo
>>476
「……私は電動機関のほうがいいかも
それで電動機関って……自動車を電気で動かすみたいな感じの機関?」

やや困惑気味の表情を浮かべている少女
そういった知識には疎いのかもしれない

「そうかな……?」
しかし少女はつくづく思う

「でも力が伴わないと、生きてくこともままならないよね……」

止められそうで止められなかった、半ば自殺のあの光景への自責の念
それに自分を追いつめようとする者の存在が、少女に沈鬱な表情を浮かべさせる
もしかすると少女は、戦いの力だけを力と認識しているのかもしれない

「……そうなの?」
そういえばそんな話を聞いた気がする
身近にいた強者に、少女は目を丸くする

「はーい」
そしてヘリコプターの部品のほうへと歩いていくことに
478 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 01:19:45.71 ID:0B75pD5Do
>>477
「こちらの世界にない物質があってな。
 水晶に似た性質の金属で圧力をかけると放電する。」

「力にも色々な種類の力がある。
 愛嬌すら力と呼んでいいのかもしれない。
 わたしが持っている力はより強い力に振れると死を招く。
 これは暴力という力だ。強い者が弱い者を蹂躙し殲滅する。
 そんな力を好きになれるか?
 …どうやらわたしは何か思い違いをしているようだな。
 何かあったのか?言いたくないなら黙っていて良いが。」
 部品事に分けられた軍事ヘリの部品をワイヤーで縛りながら。
「持てる重さの部品をこの金属の紐で巻いてくれ。
 これをウィンチという器具で縛って束ねる。
 普通なら持ちあげられない重さになるだろうが、
 それはクレーン車で荷台に積み込める。」
479 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 01:32:45.97 ID:T5cY4f4qo
>>478
「そんな金属もあるんだ……

ちょっと見てみたいかも」
成り行きにしても、金属とは触れ合った仲
故に興味を持った様子の少女

「愛嬌も……?」

一瞬、彼女がなにを言っているのか理解に苦しんだ
しかし整理をつけて考えてみる、この容姿故に自分にもたらされた徳の数々を

「……どうだろ、心の持ち方次第って気はする」

悩むようなそぶりを見せたかと思うと、少女は弱弱しくもそう返す
道具にしてもなんにしても、扱い方次第でどうとでも転んでしまう

「……私の友達やお姉さんに迷惑をかける、なんていう吸血鬼に会っちゃったの
私の力が及ばなかったせいで、目の前で人が死んじゃったの」

少女が話す二つの事柄、一つは吸血鬼
もう一つは桜の木の下での出来事
話し進めていくと顔に険しい表情が浮かびあがってくる
苦しみを堪えてでも、少女は語る
無意識のうちに自分自身への被害ではなく、周囲への被害を強調していた

「うん」
やや顔色は悪かったものの、握力は衰えてはいない
適当に金属を数枚取り出して、それを束ねてみる
480 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 01:48:09.65 ID:0B75pD5Do
>>479
 話を聞いていると違和感を覚える。
 こういう時は遠慮しないのがボルテクスのやり方だ。
「エリアは子供だと思っていたけれど、違ったんだな。
 いや、天才と呼ばれる子供なのかもしれないけれど。
 フフフ…。」
 エリアに近づいて抱きしめようとする。
「怖がるな。わたしはエリアの味方だ。
 その友達はどこか違う世界で人を、群雄を皆殺しにしてきた酷い女だ。
 わたしを嫌いになってくれて構わないがわたしは一方的にエリアを好きでいるぞ。
 わたしが好きならわたしを頼れ。わたしを嫌いになったならわたしを利用しろ。
 その吸血鬼…鉄くずの兵隊にしてやる。自殺した女…気の毒だったな。
 辛かったろう。わたしにも背負わせろ。

 良いか?善でもなく、悪でもなく、自分が起こした行動に偽りはない。
 エリアはどんなになってもエリアだ。泣きたくなればわたしのところに来い。
 抱きしめてやる。気が済むまで泣けば良い。そして吹っ切れろ。
 そうでないと、他人の死なんて重たくて受け止められない。」
481 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 02:14:19.94 ID:T5cY4f4qo
>>480

「えっ……?」
少女はその手に収まる

……自分一人で背負わなくても、いい……?
一瞬呆気に取られる、それ以上言葉は紡げなかったし動くこともままならなかった
自分が起こした行動に偽りはない、そういった考え方などしたこともなかった気がする
誰かと仲良くなったとしても、ほんの小さな幸せを手に入れたとしても
そんな幸せはそれ以上の理不尽な力で塗りつぶされ、奪われる
どう足掻いても積もる無力さは心を蝕み
こんなどうしようもない自分の、苦しみも辛さも彼女は背負ってくれると言ってくれた
見捨てることだってできたはずなのに……

――彼女は好きだと言ってくれた、こんな無力な私を
……頬から伝う冷たいこの感じ
長らく忘れていた気がする………

「うう、ううう……」
少女はボルテクスの胸の中に崩れ落ちるようにして涙する
呪縛から解き放たれたかのように、力なく

「怖かった……、怖かったよぉ……」

やがてそれは嗚咽に変わる
目を腫らし、苦しみを吐きだすかのように、
その小さな胸に秘めた恐怖を吐きだすかのように、小さな少女は泣き崩れた
482 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 02:29:20.54 ID:0B75pD5Do
>>481
 表情は不敵だが「わたしも怖い」と言った。
 そしてエリアを抱きしめて後ろ髪を優しく撫でる。
「自分も他人も怖い。もしかしたら皆そうなのかもしれないな。
 わたしはそんな時に暴力に逃げたんだ。
 男が怖かった。人が怖かった。国が怖かった。社会が怖かった。
 そして自分のいた世界から逃げるようにしてこの世界に来たんだ。
 見つかったよ、怖くない世界が。きっとエリアにも見つかる。」
 そして抱きしめる力を強くする。
「エリアにも見つかる。何も怖くない世界が見つかる。
 わたしが手伝ってやる。でも…今はただ泣いていい。
 一緒に探そう。
 楽しい世界は案外ここにもあるのかもしれないぞ?
 …とは言っても懲りないわたしだ。
 戦場で使うそれ、ヘリコプターの部品を積み込んでしまおう。」
 苦笑しながら戦闘ヘリのパーツをクレーンでトラックに載せていく。
「手伝ってもらえて助かったよ。
 これは結構な重労働だ。」
483 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 02:56:23.54 ID:T5cY4f4qo
>>482
誰にでも恐ろしい物はある、という
そして彼女は暴力に逃げた、ともいう

そしてそれはまさに少女が歩もうとしていた道
無力さに打ちひしがれて、失意のままに踏み外そうとしていた茨の道
少女は嗚咽を漏らす、ボルテクスの言葉の一つ一つが心に突き刺さった
そうしてほんの少しの時間が経過したころに

「……うん、見つけたいな
見つけられればいいな」

その瞳に戻る明るさ、涙を拭って、わずかにかすれた声を発する少女
なにも一人で強くなれなくともいい
ほんの少しだけ自分自信を守れるだけの力が、
ほんの少しだけ友達の手助けができる力が持てればそれでいい
そんな風に考え始めていた

「……あはは、きっとあるんだろうね」

いつも以上に子どもらしい、明るい笑顔を浮かべる少女
幸せな世界の一つは、もうすでに見つけていたのかもしれない
しかし、永遠に留まることはできない

「どういたしまして、私もできる限りのことはしないと」

今はこれが精一杯
いかに偉大に映るボルテクスですらも、恐ろしいものがあるらしい
完璧な人間など存在しないというならば、せめて自分がその部分を補いたい

笑顔の裏で、新たな道標が芽生えつつあった

484 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 03:16:15.04 ID:0B75pD5Do
>>483
「克服しよう。
 暴力は使っていい。
 使いたくないけれど世の中がそれを許してくれない事もある。
 でもな、でも暴力に頼っちゃダメなんだ。
 暴力を振るうにしても使うんだ。使われちゃダメなんだ。
 それが…ああ、そうか。これが武なんだな…。」
 覇王は武王へ、ボルテクスは生き方を見つけた。
 抱きしめる力は更に強くなる。
 そして震えている。
「エリア、いてくれてありがとう。
 わたしと会ってくれてありがとう。
 新しい生き方はあったよ。あるよ。
 今、エリアがわたしに教えてくれたんだ。」
 裏表も何もない。
 王で無くなった彼女に、この目の前の少女が教えてくれた。
 中国の文字である武は戈を止めると書く。抗う、もしくは守る力が武だ。
「なんと頼もしい友達ができたのだろう。わたしはエリアが好きだ。」
 暴力の全てが善意の存在を陵辱するわけではない。
 この世にある武人という概念。異世界の覇王はそれを知った。
「わたしはエリアを守る。だからエリアもわたしを守ってくれ。」
 その道標の中にボルテクスは入っているのだろうか。

 言葉のやり取りの中で作業も続いており積荷はトラックに乗った。
「そういえば、今日の宿は決まっているのか?まだなら泊まっていってくれ。
 というか…エリア。好きに出かけてくれて構わないんだぞ?
 お前の部屋は常にあけているんだ。」
 そう言ってクレーン付きトラックに乗り込むとエンジンをかける。
「今日はどうする?うちに泊まるなら乗れ。」
// そろそろ眠いので〆にしたいのですがよろしいですか?
485 :エリア 猫かぶり少女 [saga]:2013/04/02(火) 04:02:25.38 ID:T5cY4f4qo
>>484
「力を使われちゃ、ダメ……」

力に振り回されてしまう、利用されてしまう
それは力を得ていない少女が恐れる最悪の結末
故に見据えなければならない

ボルテクス自身の震えを身に受けて少女は抱き返す
うまく力は入らなかったが、それでもいいだろう

「どう、いたしまして
私が役に立てるなんて、思ってもみなかったよ……」

運命に翻弄され続けた少女が、こうして誰かにお礼を言われる……
目をゆっくりと閉じて、目蓋に浮かんだのは悲劇の記憶
しかしそれらが掻き消えるほどに、彼女の言葉は心に響いた

「私こそ、お姉さんに会えなかったら今頃私は……
本当にありがとう、拾ってくれて……ううん、会ってくれてありがと」
きっ最初にと彼女と会えなければ、今の自分はいなかった
彼女の言葉の一つ一つが、少女に少なからず影響を与えていたのだから

「うん、私もお姉さんが大好き!」
自分や友人達を飲み込もうとする理不尽な力に立ち向かうために

「もちろん、補いあったら怖い物なんてきっとなくなるよ!」
そしてボルテクスを含めた帰る場所を守るために

「あ……今日は決まってないや
それじゃ、お言葉に甘えて!」

暴力とは異なるある種の力、この繋がりを信じ
新たな力を求めて少女はもう一度突き進むことにした

//一瞬寝落ちていました、ごめんなさい……
〆で構いません、こんな遅くまでお付き合いいただきありがとうございました!
486 :ボルテクス(作業着の長身女性)商店街の金属工房店主 [saga]:2013/04/02(火) 04:19:14.46 ID:0B75pD5Do
>>485
「うん、誰かに使われちゃ駄目だ。
 力も、気持ちも、何もかも…。
 わたし達はわたし達でだけであろう。

 エリア、わたし達はこの世界、社会の中では少々不自由な生き方を強いられそうだ。
 それでも、自由に生きて行ける。この制約の中できっと自由に生きて行けるよ。」
 そう言ってトラックを進ませる。
「この世界はきっと、優しい顔も持っている。」
 エリアを乗せてボルテクスは自分の工房へ進路を取った。
 帰り道は決まっている。これは不自由。
 帰る場所があってそこに向かえる。これは自由。
「もう、何も怖くない」
 憑き物が一つとれたような顔でボルテクスは帰路につく。

// いえいえ、お付き合い感謝します。
 
487 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 19:44:44.57 ID:baOKTXMI0
日に日に暖かくなってゆく世界。
風もさわやかなものへと移り変わって、春の訪れを感じさせている。

服装も交代の季節だ。上着は厚い素材のコートから薄めのジャケットへと入れ替わった。
深めに被っていたニット帽も、さわやかな雰囲気の黒いハットに入れ替わっている。

「ふぁ……」
リリアーナは、夜のベンチに座って人を待っているところであった。
時々あくびを漏らしては、眠そうに目をこすったりしている。
488 :ヴェルナー :2013/04/02(火) 19:56:00.64 ID:AtyHlLOyo
>>487
たとえ季節が移ろうとしても、ヴェルナーの服装は変わらない。
相変わらずの黒いスーツとネクタイに、黒のコート。
暑苦しいというよりは重苦しい印象の組み合わせは、どういう訳かヴェルナーによく似合う。

お気に入りの煙草を銜え、まるで気配など存在しないかのようにヴェルナーの足取りは静かだ。
もしかしたら、遠目には幽鬼の類に見えかねないほどに。

そんな彼の目的は剣の受け渡し。
依頼した相手が待っているベンチを見つけると、そちらにゆらりと近づいていく。

「やあ、こんばんは」
489 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 20:09:01.06 ID:baOKTXMIo
>>488
「ええ? あっ……こんばんは」
眠気の影響もあって、近づくヴェルナーの存在に気がつくことができなかった。
あわてて身だしなみを整えると、しばしばとする目を擦ってから現われたヴェルナーへと首を曲げる。

「約束の物、できあがりました」
約束のもの――リリアーナのすぐ隣には、鞘に包まれた状態の一本の剣が置かれてある。
鞘は高級感のある新品のもので、身長されてあった。
「あなたが満足できるものが、出来上がっているとよいのですが……」
490 :ヴェルナー :2013/04/02(火) 20:12:52.26 ID:AtyHlLOyo
>>489
「寝てたかな?」

こんな夜更けに呼び出してまできてもらったのだ。
本来なら昼間でも良かったのだが、剣の具合が気になってしまった。
ヴェルナーは済まなそうに苦笑する。

「どうやらそのようだね」

リリアーナ隣にある剣へと目を向け、見事な仕上がりの外観に頷く。
なるほど、腕はなかなかのものだろう。それはみるだけでわかった。
問題は中身がどうか、である。

「見せてもらっても?」
491 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 20:30:26.59 ID:baOKTXMIo
>>490
「すいません……剣の仕事をしてると、いつもこうなんです」
剣の話をするだけでも興奮してしまう性格。
実際に剣をうつともなれば、色々と大変なことになってしまうのだ。

「ええ、ぜひ見ていただきたいです」
そのために持ってきたのです――とも話した。

サーベルの刃につぎはぎ等はなく、一度は二つに折れて劣化したということはどこにも感じさせないはずだ。
「……もとあったものと同じようには、できません」
見た目の変容や僅かな重量の違いは、持ち主のヴェルナーが誰よりも分かるだろう。
「生き返ったのではなく……生まれ変わったのだと、そう考えていただけたら幸いです」
青白い刀身は夜の微かな光をその身に集め、淡く輝いている。

492 :ヴェルナー :2013/04/02(火) 20:38:06.70 ID:AtyHlLOyo
>>491
「さすがに職人、かな?」

戦闘となると興奮を抑えきれない自分も似たようなものだ。
ヴェルナーはにこりと微笑むと、煙草を携帯灰皿へ捨てる。

「ん……わかった。ありがとう」

まず鞘を手にする。
重くはない。手触りも滑らかで持ちやすい。
次いで剣を抜く。
ほんの微かに軽く感じられた。
緩やかな弧を描く刃は破損していたとは思えぬほどに頑強な印象を受ける。
軽く振るってみると、鋭い風切り音がする。

「うん、いいバランスだ。振りやすい」
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/04/02(火) 20:40:21.89 ID:13tKre6R0
tes
494 :ヴェルナー :2013/04/02(火) 20:42:34.56 ID:AtyHlLOyo
>>493
/どなーた?
495 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 20:48:18.60 ID:baOKTXMIo
>>492
「必要な素材は、ほとんど同じような物を使いました。
普段は扱われないような古い年代のものばかりで……その影響で時間がかかってしまいました、すいません」

「重さは大丈夫ですか? 扱いやすいように総重量は元よりも軽くなっています。
扱いやすさや癖に合うように、振った感触はもとの重さに近いよう重心を整えてみたのですが……」
どこか心配そう表情で問いかける。 勝手に手を加えて、叱られてしまえばどうすることもできない。

「あと、硬さにはこだわってあります。とにかく、剣としての硬さに重きをおいてつくってあります」
剣を眺めるヴェルナーを、変わらず心配そうに眺めている。
496 :ヴェルナー :2013/04/02(火) 20:55:05.09 ID:AtyHlLOyo
>>495
「いやいや、そこまで気を回してくれてありがたい。最新素材になることも覚悟していたんだ」

突き、袈裟斬り、そこからの切り上げ
軽く慣らし程度に剣を振るってバランスをはかる。なかなかに良くできた剣だな、とヴェルナーは感心した。

「むしろ軽くて振りやすい。重心は刃先かな? 軽さを重心移動で補ってあるね。これなら威力も劣らない」

心配気なリリアーナをよそに、ヴェルナーは満足そのものの表情。
軽やかに斬撃を繰り出し、生まれ変わった相棒の出来に浸っているらしい。

「この剣のよさは強度。それが損なわれないなら何よりだよ。ありがとう」

ひゅん、と剣を払い、そのまま流れるような所作で納刀する
497 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 21:11:14.03 ID:baOKTXMIo
>>496
「そう言ってもらえると……うれしいです」
自分から買って出た仕事なのだ。
満足してもらえなければ、顔もあわせられない。

「それで……あのこういうのは尋ねてよいのかどうか、分からないのですが」
言葉を一度切り、改まった態度を見せる。
「調べたわけじゃないんです。ただ、作業している過程でどうしても気になったのです。
その剣の扱われた形跡や年代、素材の変化の仕方を見ていると……変なんです」
指を組みながら、尋ねにくそうに言葉を続ける。
「あなたの年齢や剣の扱われた年代……かみ合わないんです。時の流れが、飛んでしまているような……」
498 :ヴェルナー :2013/04/02(火) 21:18:10.39 ID:cIM0kJjLo
>>497
「いい刀鍛冶だ。わたしがそれを保証する」

鞘に収まった剣。その柄を撫で、満足したのかやや間をおいてリリアーナのとなりに腰掛ける。

彼女がこちらへむけた質問は当然のものだろう。
だからこそヴェルナーは口をつぐんで、言葉を探すように眉根を寄せる。
話していいものか否か、というのは思考の埒外。
金銭とは別に、自分と共に歩んだ愛剣の本質を見抜いた彼女への報酬として、教えてもいいだろうと決めていた。

「もしわたしが亡者だとしたら君はどうする? 文字通りの死人だとしたら」
499 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 21:27:17.61 ID:baOKTXMIo
>>498
「ええと、ありがとうございます」
職人として、これほど嬉しい瞬間は多くはないだろう。
剣を作るのは勿論だが、その剣で喜んでもらうのも嬉しいことだ。


「ど、どうするだなんて……」
亡者、死人――空白の解答欄にその言葉を書き込むのならば、簡単にイコールが成立する。
「そんなこと……聞かないでください」
尋ねても、よい結果が訪れるとは思えなかし、心の内にとどめておく事もできただろう。
それでも聞いてしまった、その結果が――組んだ指を、俯いたように見つめている。
500 :ヴェルナー・シンクレール :2013/04/02(火) 21:40:41.94 ID:cIM0kJjL0
>>499
「またなにか依頼するかもしれないから、その時はよろしく」

若いが信用できる鍛冶師だとヴェルナーはリリアーナに判を押した。
これほどの剣を作れる人物はそうそういるまいと、誰に言うでもなくつぶやく。

「脈をはかるなり、胸に触れるなりしてみてくれ」

袖をまくってリリアーナに差し出す。
触れたならば、熱はあっても脈拍がない。生命の痕跡そのものがないということがわかるだろう。
生者でありながら死者でもある。そんな矛盾の元に存在している照明。

「生まれたのはそれこそ120年も前の話だ。本当は老いぼれさ」
501 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 21:53:28.28 ID:baOKTXMIo
>>500
「私は、気に入った仕事しか請けませんよ?」
そうでもなければ、お金をとっちゃいます。とも。


差し出されたヴェルナーの腕にそっと触れる。
ヴェルナーの言葉を信じていない分けではない。ただ、何かの冗談だったら良いと考えていた。

「こういうときは、どうすれば良いのでしょう?
喜ぶような場面ではありませんが……あんまり落ち込んじゃ、貴方に迷惑をかけちゃいますよね……」
他人のことでこんな気持ちになるなった経験はほとんど無い。
苦い笑いを浮かべるのも、暗い表情を浮かべることもいまのリリアーナには難しく思えた。
502 :ヴェルナー・シンクレール :2013/04/02(火) 22:00:21.94 ID:cIM0kJjL0
>>501
「じゃあ気に入ってもらえる仕事を持ってくるとするさ」

そもそもどんな依頼であろうと報酬金を支払う。
そのために今日は現金を持ってきているわけだし。

「べつにわたしは気にしないよ。死人であることには慣れたし、受け入れもした。当然のことだからね」

私はナチスドイツの走狗だった、と。
苦笑とも自嘲ともつかない微妙な笑みを浮かべてヴェルナーはつぶやく。
503 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 22:14:05.66 ID:baOKTXMIo
>>502
「そういうことなら……はい、楽しみに待っています」
ふふふ、と微笑を見せた。
「ああ、今回の仕事に関してはお代は要りません。借りを一つ作ったってことにして置いてください」


「すぐには、受け入れられません……」
重苦しいため息を一つ漏らした。
「このため息は、私の弱さです。 それも今ので吐き出しました」
上手くはいかないが、いつもどおりの表情をつくってみる。
「私も、気にしないことにします。
悲しいような、複雑な気持ちもありますが……貴方とはこうして話をすることもできますしね」
504 :ヴェルナー・シンクレール :2013/04/02(火) 22:20:36.95 ID:cIM0kJjL0
>>303
「しかし支払わないのもバツが悪いのだが……」

ポケットの札束をどうしたものかともてあそぶ。
しかし本人がそういっているのに無理強いもできないだろう。

「そうさ、わたしたちはこうして話していられる。心臓が動いていようがいまいが些末な問題だ、取るに足らんよ」

ニコリと微笑むと、ヴェルナーはもういちど剣を抜く。
月光を反射して青みがかった煌めきを宿す刃をしばし見つめた後、おもむろに何事かつぶやいた。

途端、剣を握るヴェルナーの手が黒い装甲に包まれる。

「やはりいい剣だ。本当に」
505 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 22:32:18.17 ID:baOKTXMIo
>>504
「もちろん、タダとは思わないでくださいよ?」
タダより怖いものはないとも言う。
お金以外での取引の形。恩を売っておくことで形成されるネットワーク……。
それがリリアーナーの生まれ育った家のやり方だというのは、ヴェルナーの知る余地のないことだろう。

「本当、そうですね」
ヴェルナーに微笑まれれば、照れくさいこともあってか自然と表情が解れ、いつもの明るい表情が生まれる。

「……それは?」
黒い装甲……だが、夜の闇でしっかりと判別することはできなかった。
506 :ヴェルナー・シンクレール :2013/04/02(火) 22:35:24.90 ID:cIM0kJjL0
>>504
「なにかしらの見返りを期待して、か」

なるほど、それはある意味金より高額かもしれない。
なかなかにやり手らしいと理解して肩をすくめる。

「生命の有無は二の次三の次だよ。大事なのは相手がそこにいるかいないか、だ」

ようやく本調子を取り戻したらしいリリアーナに安心したのか、ヴェルナーは笑みをたたえたまま剣の刃先を見分する。

「これは私の戦衣装の一部だ。機甲服、と呼ぶべきか」
507 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 22:47:03.89 ID:baOKTXMIo
>>506
「馬鹿馬鹿しいような要求をしたりなんかはしませんよ。
もちろん、私が作りたかったという気持ちも、嘘じゃありませんからね」
最近は何でも屋という妙な家業をしているリリアーナには、なによりも人とのつながりが必要だ考えている。
「それと、剣をつくった際のデータ。これも報酬みたいなもんなんです」
本人の経験。これも貴重な要素になるのだ。

「はい、私もそう思います」
ヴェルナー死人だということは、もはや意識していない。
それくらい些細なことなのだ。

「全然わからないです……そんな技術もあるんですね」
ベンチから腰をあげて、近くでみようとする。
508 :ヴェルナー・シンクレール :2013/04/02(火) 22:53:35.51 ID:cIM0kJjL0
>>507
「どんな要求が来るのかを楽しみに待っているよ」

最初に思っていたよりずっと思慮深くて人当たりのいい人物だということに今更気づいて、ヴェルナーはすこしだけ反省したように頭を掻く。
若くして職人の道を歩むというのは並大抵の苦労ではなく、金にがめつい人物が多いというのが偏見じみた印象だった。

「経験は金に勝る、か」

一日の戦闘は訓練に勝る、だっただろうか。そんな格言を思い出す。

「これは私の部隊に配備されていたものだ。あまり近寄りすぎるとよくない」

勘が鋭い人物なら、装甲から濃密な血臭と怨嗟が感じ取れるかもしれない。
509 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/04/02(火) 23:04:56.31 ID:baOKTXMIo
>>508
「た……楽しむようなことでもないと思いますけれどね」
期待されるとまたやりにくいし、何よりも期待されるようなことではないのだ。

「お金じゃ買えないものがあるって、いいますよね」
お金が全てだとは思っていない。それだけのことなのである。

途中、はっとしたように装甲に近寄るのを躊躇う。何かただ事ではないものを感じ取った。
「そうですね……素人手に扱えそうなものでもなさそうです」
危険なものだからこそ近寄ってみたくもなるが、今回は気持ちを抑えた。


「それでは……すみません、少々別の用事もあるので今回はこれで失礼します。
 こんどは剣の感想を教えてくださいね」
深く帽子を被り直すと、一度ヴェルナーに向き直ってから歩き出すのであった。


//時間なのでこのあたりで失礼します。
//ありがとうございましたー
510 :ヴェルナー・シンクレール :2013/04/02(火) 23:12:17.45 ID:lPqPAw8K0
>>509
「プライスレス、友情、友人あとなんだろうね」

金そのものに興味はなく、自分が生きるに適した場所を求めるのがヴェルナーだった。

「ちょっと一般人の健康にはよろしくないものだから。すまない」

本当ならしっかりと見せてあげたいのが本音だが、さすがに危害が及ばないとも限らないものに近寄らせるわけにはいかない。

「しっかり使い込んで感想を教えるよ。次回までにね」

立ち去るリリアーナを見送り、ヴェルナーは煙草を銜える。
そのあとしばらく剣を見分したのちにじぶんも帰途に就くだろう

/おつさまー
511 :でんわー ◆VJv3z9l/d. :2013/04/05(金) 15:13:38.17 ID:t89wsHix0
4月20日に高島トレイルします(笑)(爆)
詳しくはワタシのパー速に持ってる旅スレでo(^o^)o

【残雪】滋賀高島トレイル一気に歩く【あるかな】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1364907352/
512 :白衣の女 :2013/04/05(金) 22:04:16.10 ID:a1rz+kwe0
路地裏。
白のローブを羽織った女
何かを数えて 一人笑む

「いいねぇ…超能力ってのは最高だねェ…わくわくするよ、ゾクゾクするよ
 無限の可能性と運命がいまアタシの薄汚い掌に寄せ集められている気さえするねぃ」

周囲に漂う 腐臭 腐臭 腐臭
しかし死体は何処にもなく
白衣の女が 煤けた白髪を地面に散らし かがみこんで ほくそえむ
証拠も無い 何も残らない 完璧な殺人鬼
それが…

「能力者…さまさまってやつだねぇ」
513 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/05(金) 22:33:08.64 ID:U9N0lV/No
>>512
「そりゃ目撃者がいなかったら完全犯罪だよな。
 しかしサイコメトラー、クレアボヤンス、プレコグの存在。
 能力者さまさまなのは警官も変わらないらしいぜ。」
 残留思念を読むサイコメトラー。
 千里眼のクレアボヤンス。
 そして未来予知、プレコグ。
 異能が認められた社会で完全犯罪はむしろ一層難しいものになっていた。
「ま、おれはそういうのじゃないし、ここで何が起こったのかわからないがね。」
514 :白衣の女 :2013/04/05(金) 22:58:19.94 ID:a1rz+kwe0
>>513
「あれま…それは盲点だったねぇ。 んでも無能力者の犯罪者がのうのうと生きてこれたあたり
現代警察はやはり無能だと思うけどねェ…マフィアの抗争も後は絶えないし
暗殺家業の人間だって何千といるしねェ…」

女は男の声に反応を示すようにゆったりとした仕草で立ち上がり、男に向けて振り返る
先ほどまで闇に覆われ隠れていた女の顔は、所々泥や垢に塗れ薄汚くはあったが、素材そのものはなかなかに良質なようで
キメ細かな白い皮膚や 白い眉 睫毛 そして白濁とした瞳もまた、どれも端麗で泥の中の宝石を連想させるようで
反面、その容姿と状況が異質な光景を産み出し、美貌よりも不気味さを際立たせているのあるが…

「でもねェ…能力者の恐ろしいとこってのはさぁ、その警察さえも容易くころしちまうとこじゃないのかねぇ…
んまぁ、アタシもここでなにがあったのかは知らないけどねぇ。知らぬが仏って奴だねぃ」

女はそんなことも 男のことも 大して意識していないようで ただ、薄汚くへらへらと微笑むのであった


515 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/05(金) 23:07:05.82 ID:U9N0lV/No
>>514
「知らぬが仏、違いない。
 が、世の中はそこまで厳しくはないもんだ。
 雉も鳴かずば撃たれまいとも言ってね。
 ちくりゃしねえよ。
 見逃してくれよ。
 そうすれば藪を突いて蛇を出すような失敗はしないで済むぜ?」
 話を言葉遊びに変えながらケラケラ笑う。
「ところでお前さん。何をしたんだ?
 面白いちからを持ってそうだな。」
516 :白衣の女 :2013/04/05(金) 23:19:44.51 ID:a1rz+kwe0
>>515

「雉は鳴かなけりゃァ殺されなくともねェ…猫は好奇心もったそのときにゃぁ、すでに死んだも同然らしいがねェ
 んーまぁ、あたしゃ雉でも猫でもナイ、、、人間なのだけどねぇ」

女は素足をひたひたとならし
男に 一歩二歩と 歩み寄り
静かに 静かに 耳を打つ

「火遊びさ…くわしくききたきゃぁ、アタシのカラダに聞いてみな」

それは 泥に塗れた 遊女の誘い
男は猫か雉か 人間か?
はたまた…
517 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/05(金) 23:26:55.31 ID:U9N0lV/No
>>516
「火遊びねえ。
 女の子との火遊びは嫌いじゃないな。」
 直接は何もしない。
 能力の出し惜しみは戦う能力者にとって処世術の一つ。
 勿論最初から自分の異能や魔術をぶっぱなしてくるタイプもいるが。
「君の身体を詳しく調べてみたいかもね。
 さて、どう選択する?
 俺に手を出すか、出さないか。」
518 :白衣の女 :2013/04/05(金) 23:50:36.48 ID:a1rz+kwe0
>>517
「選択…選択ねェ…アタシは自分を拘束するナニカが大嫌いなのだけどねェ」

女は、先日 能力に目覚めたばかりであった
謂わば能力の使い方においては素人…しかも能力自体も複雑怪奇
最強とも祭弱ともなりうる奇天烈な能力…
使いこなせるとは、自分でも思えない 

だが

(コロしは手馴れたもんだがねぃ!)

女は 笑顔や 特定の仕草
能力者たちが戦闘を開始するさいにみせる特定の隙や動作を見せずに
全く突然 右脚を振り上げた

手では無く 脚。 生まれ持っての武器。 慣れ親しんだ武器。
転じて、男の選択を超えた ワイルドカードたる一撃。
その破壊力や、掠っただけの壁を破壊するほどであった
519 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/05(金) 23:58:59.59 ID:U9N0lV/No
>>518
路面を覆う素材が割れ窪みが出来上がる。
脚を狙った強烈な一撃が不自然な逸らされ方で地面に流された。
「へえ…、面白い事できるじゃん。
 あ、しまったぁ〜」
片手を顔に当てて呟く。
「360度で反射させたらその癖の悪い脚を潰せてたじゃん。
 俺も詰めがあまいんだよなぁ〜。あ〜あ。」
そのままの姿勢でトカレフを取り出して白衣の女に発砲する。
特に抜きが速いわけでもなく、普通の射撃だ。
520 :白衣の女 :2013/04/06(土) 00:08:15.43 ID:4zyJqn8g0
>>519

脚に生じる違和感…
女は人生で始めて、他人に能力を使われたと実感した
今までは能力というものに対し酷くあいまいな感性しか持ち合わせていなかったが
能力者同士の戦闘ともなるとなかなかどうして 感性が研ぎ澄まされるよううだった

次いで響く発砲音。 しかし、それに対し全く動じることは無く
足元を奪われた反動で倒れこむかのようにカラダを倒し…
両手をささえとしたまま両足を交え回転蹴りを放つ

そしてなぜか上下の反転した肉体から 血が流れることは 無かった

/すいませぬ…とうけつおねがいします。。。!
521 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/06(土) 00:11:01.72 ID:ib0nuot/o
>>520
「噛合いの悪そうな相手だな。」
 楽しそうに男は言った。
/了解です。
522 :白衣の女 :2013/04/07(日) 21:22:00.52 ID:1WAqLdWK0
>>521

(恐らくこいつは能力者だろうねぇ、能力者ってのはこういう場面に慣れているのかねェ
先日までのかよわいアタシなら銃で撃っても死なない相手ナンザ相手にしないだろうしねぇ…)

体制を立てなおし、数歩後退をしながら相手を視界に治める
彼女の能力の一つは接近戦に長けている。応用の幅も利くはずだ…と自負しているが

(使い慣れてないからねぇ…用途があんまし思いつかないし、使い勝手も難しいシネェ
 ま、新しい使いかたでも 試してみると しようかねぃ)

相手の様子を伺いながら 能力を使用する
突如、女の背より現れた蠍の尾のようなものが 相手の男目掛けて穿たれた


/昨晩はこれず申し訳ありませんでした
523 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/08(月) 19:23:08.01 ID:DYluxdpho
>>522
単発のテレフォンパンチなら捌ける自身はある。
接近戦も望む所。それを補うための銃なのだから。

白いライダースーツの男は後退した相手から何か
放たれたのを目撃した。このくらいなら反応はできる。
白衣の女の攻撃が白いライダースーツの男に触れると、
まただ…軌道を逸らされる。押し返すというより、
レール上を誘導されて返されるような感覚だ。
「今度はドンピシャ180度の反射だぜ。」
// こちらこそ。今度はこっちが欠席しちゃいました。失敬。
524 :白衣の女 :2013/04/08(月) 20:32:21.99 ID:PJ/Dsw910

>>525
男の言葉通り、男を一撃で仕留めようと放たれたその尾は、キシキシと乾いた音をあげて決壊した
が、やはり血は流れない…しかし、バラバラと砕ける尾の残骸に紛れるように
細く 長い何かが、女の背後へと巻き込まれていった
恐らく、男にもそれが確認できるであろう
次いで、女もまた、短い間で考察を開始。 女は無能力者時代からの殺し屋だ。
機転が利かなければ、今ここに立ってなどいない。

(んんッッ! 奇妙だねェ…能力ってやつぁね。 言葉を真っ当に受け取るならアタシの攻撃を反射しているようだけどねぇ
 空間を湾曲でもさせてるのかねぃ…それとも文字通り全てを反射する能力者...)

思考を終えた女は次いで、新たな攻撃を試みる
始めに牽制として地面を蹴り上げ、砕けたコンクリートの弾丸を相手に放つ
複数の点状攻撃への反応を見るために
そして、全身から白衣を突き破り生える無数の棘
凶器となった肉体と元より高い身体能力を用いて相手への抱擁
これは面での攻撃、ただ来たものを着た方向に帰すだけの能力ならば、反射によるダメージのフィードバックは少ないはずだと踏み...

(アタシの能力を肉体の変化だけじゃない...
 いわば変化能力なんてただのおまけさね...)

その抱擁反射されようがされまいが、相手に巻きつけようとした腕部より、コンクリートをも溶かす液体を散らす

意識外への攻撃にも反射されるか否かの牽制
威力と量は それほどない

おかえしおいておきまする!
525 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/08(月) 20:44:43.26 ID:DYluxdpho
>>524
そう、考えなければならない。
白衣の女は白いライダースーツの男の能力を。
白いライダースーツの男は白衣の女の能力を。
そして一番良いのは自分だけに考える時間を作ること。
焦らせて、焦らして、平常心を独占して自分だけが答えを出す。
それが一番良い。

コンクリートの礫は着弾と同時に男の体表面を流れるように這い出す。
この巻き付く茨のような攻撃は不味い。相手にヒントを与えてしまう事になるが…。
「ちっこりゃバレちまったかな?」
男の体表面を這っていたコンクリートの礫をぶつけ隙間を作って、
この接近戦の間合いを更に詰めようと前に逃げる。
返さないのではない。返しきれないのだ。

そして飛び散って来た液体までをも返して来た。一滴すら残さずに。
威力も質もわからないので相手のダメージを見て効果を観察するつもりだ。
526 :白衣の女 :2013/04/08(月) 21:12:56.38 ID:PJ/Dsw910

>>525
(礫の動きが奇妙だねぇ...やはり空間湾曲? いや、体表面に変な流れでも操作してるのかねぇ?
 アタシの溶解液も...否、アタシの体もキチンと返してくれたしねぇ!
あたしへの肉薄なんて愚作も愚作ゥ! 面での攻撃が効くと分かれば、泥ッドロにしてあげるよぅ! )

男により反射された溶解液、それは水溜りに落ちた雨水のように女の体へと溶け込んでいく
溶解液をかけられた箇所が波紋を生み、また平然と女の肉体を形成する
死体は何処にもなかった、辺りには腐臭が広がっていた。 死体はどこにいった? 女は腐臭が漂うほど長時間も現場にいたのだろうか?

答えは否、死体は... 死体はいま

「どろどろになりナァ! アイツみたいにねぇ! 」

男を更に引き寄せるために、女は甲殻を携えた鋭い触手を背より二対生やし
男を抱きしめに掛かる

触れたもの時には自身さえ溶解し、別の物・形へと変えてしまう能力
それが女の力、それが女の 力の片鱗だ
527 :白いライダースーツの覆面男 [saga]:2013/04/08(月) 21:27:00.18 ID:DYluxdpho
>>526
「能力の謎を解いたのは俺が先立ったようだなぁ!」
 強烈な右拳が左拳が右拳が左拳が順番に襲ってくる。
 とても人間の攻撃とは思えない。これは彼の能力の応用。
 衝撃を計測できる機械で計ればプロ格闘家の二倍以上だろう。
 なんせ作用はそのままに反作用も前に作用させているのだから。

 ホールド、捕まるのを嫌がったのは上手く返す力の流し方がないからだ。
 だが打撃ならば違う。そう、接触も違う。掛り伝う液体は彼に当たれば前に弾かれる。

 しかし勝ったと思った所に触手の追い打ち。「おいおいありかよ…。」
 がっしり掴まれる。
 弾き飛ばすのでなくジワジワと礼の溶解液を分泌されたら、
 いずれは影響反射の能力も途絶える。「こいつはヤバイね…。」

 再びトカレフを抜き至近距離で突きつける。
 弾丸は徹甲弾。これを弾ける異能はそうそういない。
「これはおれの負けか、引き分けか…勝ちがないってのは惨めだね。」
528 :白衣の女 :2013/04/08(月) 22:19:34.96 ID:PJ/Dsw910
>>526

男と同じように女もまた、勝利を確信していた
恐らく男の能力は体表面の流れの操作、教養の無い女にはどう言葉で説明すればいいのかは分からなかったが
身体で感じ 探り当てた勝利の糸口 点ではなく円での拘束
反射をされても元より、抱擁など攻撃にはならないのだから、抱擁を反射されたところで相手に触れることができなくなるだけ
百利はあれど 一害も無し。 なんて、甘い考え…であったのだ。

(速い…! そして強いね! 触手のせいで避けられず 衝撃も逃げていかないねぇ…
 脳がゆさぶられるみたいだよぉ。 能力者ってのもやはり人間なんだねぃ
 まぁ、でも… それはアンタもだろう? 能力者さんよぉ)

今は耐え 今は忍ぶ。 連打の応酬で女を仕留めるのが男の戦いなら、男がへばり溶けて死ぬまで耐えるのが女の戦いだ。
眩む視界のなか まどろむ脳で 簸たすらに耐え忍ぶ

─────[ピーーー] [ピーーー] [ピーーー]

呪詛を唱えること三度。 一言目に響く銃声 二言目には焼けるような痛み 三言呟き砕ける音が。
女は理解し、女は呪う 眼前の男を 

次いで男の拘束は解けるだろう
地面へと落ちた女のもとに触手が収束し、傷の修復に取り掛かりだしたからだ
細胞にイゾンするタイプの能力ゆえかはたまた別の理由だったのか
意識を失った女のからだを修復する異能...
敵がまだ至近距離にいるにもかかわらず...その姿はひどく無様で空きだらけ、だった。
529 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/08(月) 22:27:11.24 ID:DYluxdpho
>>528
拘束が解け命拾いはしたようだ。
マスクを取れば透き通る程白い伊達眼鏡の男。

「ふぅ…死ぬかと思ったぜ。良〜いスリルはあった。」

白衣の女を支えるとニヤリと笑う。
「こいつ、使えそうだな。」
面白い玩具を優しく支える。

「おい、一人で歩けるか?肩くらいなら貸すぜ?」
この男は間違いなく悪党だ。白衣の女を何に使うつもりなのやら。
「面白い遊びがあるんだが、一緒にどうだい?やってみないか?」


530 :白衣の女 :2013/04/08(月) 22:40:21.13 ID:PJ/Dsw910
>>528

女はまどろみの中で質問を受け止めた
女の体内では有余った肉を傷口周辺に掻き集め無理やり傷口を塞ぎ
痛覚も遮断するというむちゃくちゃな荒療治が行われているのだが

「ふん…らっくであたしにかった男が調子にのんじゃぁないよぉ
 あたしはねぇ、ハイになれば組織一つを抹消するくらいのちからはあんだからねぇ、、、」

ぼぞぼぞとうわ言のように囁く
虚ろな目 まともに動かない体とそして口

しかし、意識はあるようで

「金だ…かねいりがいんならかんがえてやるよぉ
 ついでに、、、マフィアにおわれってからねぇ…かくれがも、よういしな」

ちいさく ちいさく つぶやいた
531 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/08(月) 22:50:23.19 ID:DYluxdpho
>>530
「金が入るか入らないかはあんた次第だねぇ。」
 ゆるい話しぶりと鋭い微笑み。
「ああ、隠れ家ならすでに用意してある。
 まさかあんたみたいな拾い物まで見つかるとはね。
 こりゃ、今回の金庫破りは楽な仕事になりそうだ…。
 抱え込めないくらいの札束にキスさせてやるよ」
 ケハハハと笑い白衣の女を連れて行く。

 アジトは大型ゴミ処理場にあるケチなプレハブ住宅だ。
 そこには表情険しい悪党どもが揃っている。
「シラトリサーン、その女ハナンデスーカ?」
 日本語のたどたどしいメンバーが白鳥に尋ねる。
「ん〜。なんていうか、増援?今は怪我してるから寝かしといてやって。」
 都市の地図がテーブルの上に拡げられている。
 複数の銀行に?。そして一つの銀行に○。
532 :白衣の女 :2013/04/08(月) 23:04:51.90 ID:PJ/Dsw910
>>531

「なるほどねェ…。 何と無く話はつかめたよぉ
 金庫破り、ねぇ。楽しそうじゃぁないか」

表情の険しい男達をみると一瞬だけ体が強張り次いであからさまな殺気を放つ
男性恐怖症なのだろうか、それともいかつい男が嫌いなだけなのか

「あたしじゃ誰の指示も受けないよぅ
 だが、あんたらのしたいことにあたしの能力はぴったしだろう? 」

横になりながらふてぶてしく呟いた
しかし、女の言う事は大方男の思惑にあっているのではないだろうか?
肉体の変化に物質の溶解さえあれば
別人になりすまし堂々と金を奪えるのだから
533 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/08(月) 23:14:07.07 ID:DYluxdpho
>>532
「あ〜、なんとなくだけれどさ。
 あんたって能力をあんまり使わないタイプ?」
 最近目覚めましたなんてタイプは珍しいのでそう判断したらしい。

『おいおい素人かよ…』メンバーの一人が残念そうに呟く。
「お前の能力じゃこの女には触れた瞬間殺されるがな。」

『そ…そんなにおっかない女なのか?』別メンバーが尋ねる。
「相性次第だがお前はこの人と噛み合うんじゃね?」

『ま、俺には関係ないがね。ああ、おれはサイコメトラーだ。
 名前は木村英二っていう。銀行内の状況をあんたらに伝える役だ。』
「こいつは戦力にはならないが、この襲撃の要だ。」

 さ・て・と…、
「溶解液の能力なんだがひょっとして人だけじゃなくて物にも使える?」
 白鳥は白衣の女に尋ねた。
534 :白衣の女 :2013/04/08(月) 23:37:55.36 ID:PJ/Dsw910
>>533

「余り使わないんじゃないよぅ、使い方がわからないだけさねェ
 突然体を変えられる能力が手に入ったんだからねぃ、使い勝手もわからんもんさ」

次いで素人と呼んだ男を視線だけで威圧し、言葉を繋ぐ

「ちなみにだ、あたしはガキの時からとある組織の飼い犬でねェ
[ピーーー]ことと犯られることを生業にしてきたんだ。
次に、素人なんてほざいたらねェ、[ピーーー]よぅ?」

ここで傷はだいぶ治まってきたようで…
地面に軽く手を当てながら言葉を紡ぐ

「ちなみに、組織ではハーヴェストと呼ばれていたねぇ
 ま、呼びかたなんざなんでもいーがね」

語りながら女は地面を溶かし、沈む 沈む
端から見れば地面から女の首が生えているようにみえるだろう

「命の保障はできないけどねぃ、あんたらの顔だって変えることもできるよぅ」
535 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/08(月) 23:50:15.80 ID:DYluxdpho
>>534
『ああん?
 こっちだって生まれた時からアサルトライフルの弾道を自由自在にだな!』
「ああ、紹介しておく。こいつは限定的高出力サイコキノのホセっていう名だ。
 見ての通り金属への干渉は強いが頭は悪い。それでも頼りになる。」
 ホセは銃弾の弾道を自由自在に設定できるらしい。

『よ、よろしく』
 気の弱そうな男が白衣の女に挨拶する。
「有名人の星の君の劣化版だ。粒子状のエネルギーを使う。
 金庫の破壊はこいつにさせる予定だったが、作戦変更もありだな。
 あとはサイコメトラーの木村、そしてあんたと俺が今回の仕事仲間だ。」

 白鳥は白衣の女に改めて挨拶する。
「おれはホワイトバードだ。ちょっとは有名なヒーローなんだぜ?
 あんたの事は、ここでもハーヴェストと呼んでいいかな?」

 メンバーを順番に紹介しながら確認をした。
536 :白衣の女 :2013/04/09(火) 00:00:54.61 ID:dnYlny480
>>535

「あぁ、よろしくねぃ…花が無いのは星の君の劣化にヒーローたぁ…
なかなかどうして気に喰わない連中ばっかだよぅ」

ま、金が入ればいいさね なんて呟いて
地上へと這い出てくれば

「なんでもいいっていったろぅ?
 勝手によべばいいのさねぇ、名前なんかにこだわりなんざないよぅ
ほわいとーばーど? 」

皮肉たっぷりに名を呼んでみせる
御託はいいから現場へつれていけ、そういいたいのだろう
仮にも先ほど自分をのした相手なのだが…態度はやはり、ふてぶてしい
537 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/09(火) 00:19:30.08 ID:AhWHtwxKo
>>536
「もう、動けるのか?じゃあ、やるか。」
 応!の声と友にメンバーが動き出す。
「行きと帰りの途中は電車だからね♪」

『おれ、大柴っていいます。よろしく。』
 劣化版星の君が言ってきた。

「じゃあ〜作戦の説明を行いま〜す。」
 白鳥が作戦の説明を始める。
「狙いは四つ葉銀行の花蔵区支店な。
 こいつは見た目はただの四つ葉銀行支店だが、
 四つ葉グループの金をプールする大銀行だ。
 今回はこいつを襲撃する。そして有価証券意外の全てを頂く。
 金塊の貯蔵量が多いのがここなんだよね。
 IDもなにもない価値がそこにある。換金できる金のインゴットだ。
 それを奪って花蔵岬に車を落とせば仕事は終わりだ。
 じゃあ、行こうか♪」

 銀行の営業時間が終わりシャッターが閉まる。
 このタイミングが美味しい。ここだ。
「じゃあ、突入するぜ〜!」
 大柴がまず前に出る。シャッターを意念の粒子で削る。
 これで突入は可能になった。
「さあ、さあ、行こうか。」白鳥は面白そうに歩いて中に入っていく。
538 :白衣の女 :2013/04/10(水) 22:55:59.00 ID:PfHE1fyT0
>>537

「名前? あんたの呼名なんざ偽星で充分さねぇ
 ま、覚えてほしいなら相応の働きをするんさねぃ」

女はあくまでも一時的協力者なのにも関らず
相変わらずの悪態だ

かくして銀行につけば

「あたしも盗みは専門外さねぇ
 わくわくするよぉ、楽しみだねェ」

偽星の能力に少しだけ感心したような表情をしながら
女もまた中に入っていく

539 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/10(水) 23:44:35.78 ID:6MJPq30Lo
>>538
 偽星はやめてくれと行ったあと大柴が驚いた顔をする。
「愛想のない女だな。
 へえあんたも盗みははじめてかい。おれも専門外だ。」

 ヒスパニック系の男、ホセもそうだと答えた。

 ここで以外な事を木村が明かした。
「そもそも白鳥さんも詐欺師だよ。
 僕だって人偏師、つまり公文書の偽造が専門。
 ハーヴェストさんもそうだという事はここに
 プロの泥棒は居ない事になるね。」

 白鳥が笑いながら言う。
「だいたい真正面から乗り込んでくる強盗なんていねえよ。
 言ったろう?強盗をしにきたと。金を盗むのもついでさ。」
540 :白衣の女 :2013/04/11(木) 22:36:58.46 ID:yt5wnl7D0

>>539
「さっきも言ったけどねぃ、偽星よぉ、あたしの専門はあくまで[ピーーー]ことと犯られる事さ
愛想が欲しいなら金を払いなよぉ? ま、能力を手にした今じゃぁ、ヤル気もないがねぃ」

女は組織に飼われていた売春婦にして殺し屋だ
殺し屋は獲物から命以外を奪いはしない。欲をみせると足元をすくわれるからだ。

だが、そんな女でも白鳥の言葉に疑問を覚える程度の知能はあった

「白鳥ィ、あんたが何を企んでるのかなんざしったこっちゃないさねぇ
でも、金はしっかりいただくよぅ、あたしゃ無碍な殺しはしないんだ
プロは無料じゃ動かんからねぃ? 」

軽く顔面に手をあて、即席のノンメリとした白面を顔に貼り付けながら
女は白鳥に耳打ちをしてみせた 
541 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/11(木) 23:01:12.63 ID:mx7FrZCNo
>>540
「可愛げのない。それでよく売女なんてやってられたな。」
 中に入ればATMの並ぶ部屋があり、左手にまたシャッターとドアが見える。
 窓口サービスはとっくに終わっていて、ATMも今さっき止まったところだ。

 木村がドアとシャッターの間にあるキー端末に触れる。
「今日の認証番号は5…8…3…2」
 偽造した電子キーを入力して4桁のパスを入力するとドアの鍵が解ける。

 白鳥の返事は相変わらずのニヤけ面だ。
「ハーヴェスト。
 殺したいなら殺していいし、殺したくないなら殺さなくて良い。
 ただ、銀行員にも被害は欲しい所だな。かすり傷でも構わんよ。
 じゃあ、ホセかハーヴェストどっちか突入お願い。
 非常ベルだって 押 さ せ て も 構 わ な い 。」

 そんな指示を受けてホセはハーヴェストの顔を見る。
「二人同時の突入もできそうだな。どうする?」
 
542 :白衣の女 :2013/04/11(木) 23:20:56.38 ID:yt5wnl7D0

>>541

「地獄の沙汰も金次第ってやつさねぇ? 金さえありゃぁ腰でも尻尾でも振って笑って見せるよぅ」

白鳥の意味有り気な笑みを気にすることも無く
女はともに歩みを進めていく
プロは金が発生しないならば仕事はしない
しかし、自分に害のあるものを排除するのは動物として当然の性で…

「あたし一人で構わんさねぃ、突入と同時に溶解液を浴びせるよ? 問題ないだろう?」

と、了承を得る間もなく特攻
宣言どおり、中を確認することも無く溶解液を散らして見せたが…
銀行員達は、どうなったのだろうか?
543 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/11(木) 23:34:25.67 ID:mx7FrZCNo
>>542
白衣の女が飛び込んだ所には警備員が数名。
当たり前の話だが侵入は防犯カメラで見られていた。
ドアの前には二人の警備員が立っており待ちぶせしていた。
警備員達の身に着けていたプロテクトアーマー表面で
ジュワァと溶解液が反応する。警棒を携帯、突撃銃を所持。
少し離れたところから白衣の女にそれぞれ発砲した。

ホセが白衣の女の後方について援護射撃を行う。

周りの状況としては銀行員もいるようで窓口裏で避難の準備をしている。

白鳥は笑って言った。「良い具合に不手際だ。
 なんて手際の悪い銀行強盗なんだろう。
 忍びこむでもなくシャッターを破壊し正面から入って来て、
 まずはその姿を防犯カメラに全員が捉えられてしまう所から始まる。
 そして窓口サービスのある部屋に突入するなり警備員と交戦だ。」
 そう言い終えると拍手を始める。「実に計画通りだよ。」
544 :白衣の女 :2013/04/11(木) 23:50:44.28 ID:yt5wnl7D0
>>543

「弾丸…くだらだないねぇ、さっき撃たれたばっかりさ。対策は完璧さね」

女の能力、返信能力の応用では先ほども仮面を生み出したように
対表面に高硬度を誇る甲殻のようなものを産み出すこともできる
炸裂鉄鋼弾は流石に効いたが、多少の弾丸ならば受けてもなにも問題は無い
それどころか、全身を液体化させれば、痛みには耐えられずとも、鉄鋼弾すら無効にする自身もあった

転じて、自慢の脚力を活用し、銀行員や警備員への肉薄
次いで、獣のように両腕をなぎ、無差別に触れたものを溶かしてゆく
反射能力者などを相手取らなければ、問答無用で規格外の能力だ

この能力があれば、これからも夢幻に金を稼げる
女は、改めて自覚した
白鳥の計画などきづかずにただただ、人間を殺していたのだ

545 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/12(金) 00:06:08.68 ID:CkqONJ5ro
>>544
ただのネクタイスーツの銀行員がそんな能力から逃げられるわけもなく、
自分の身体が壊死していく身体を見ながら悲鳴を上げて死んでいった。

白鳥にしてみれば「いいねいいねぇ。ポイント高いねぇ。」

プロテクトギアを身に着けている二人は腕を跳ね上げられ、
そのまま通過された後で振り返り、再び白衣の女に次は
突撃銃をオートに切り替え弾丸を連射してきた。
どうやら普通の防護服では無いようだ。
よく見れば何か呪文のような物が書きこまれている。
それも今はゆっくり溶けていってる最中だが。

奥の大扉から警備員の増援三人、ホセも入り口から飛び出してきた。
彼が撃った弾丸は一旦銃口付近で止まり、鬱陶しくたかりついてくる
羽虫のように防弾スーツを着込んだ警備員を殴りつけていた。

「俺は木村と大柴を守りながら金庫室へいく。
 ホセとハーヴェストはそいつらを無力化してくれ。」
546 :白衣の女 :2013/04/12(金) 00:25:10.09 ID:00zhLeyn0
>>545

「金を持ち逃げでもしたらただじゃぁおかないよぅ!?」

白鳥に悪態を吐き
警備員の無力化に徹する

全く最高の能力に目覚めたと思った矢先に、斯くも容易く無効化されつづけるとは
女は若干の虚しさを抱えながらも連射された弾丸への対処を行う
いくら低威力といえど、それは弾丸だ。無数に撃たれればいずれは装甲を破壊し肉体を貫くだろう

ゆえに、女は避ける。 右へ 左へ 跳んで 這って 縦横無尽に

もとより肉体は人間をやめているに等しいのだから
肉体を強化し、状況を打開する


背中には三対の大爪  鋭利な尾をはやし
腕を獣のように変化させ這う
高速で、大爪で壁を這い 地を這い
尾で穿つ。 溶かし穿つ
雑魚にかまっているひまなどないのだ
自分の目的は金の回収なのだから
547 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/12(金) 00:37:20.71 ID:CkqONJ5ro
>>546
白鳥は「そんなセコい事はしないさ。
ついでに札束でもポケットにほうりこんどきな。」と言い残し前進。
木村と大柴がどんどん隔壁を破壊、もしくは解除してすすんでいく。

警備員達は顔を見合わせる。
ホセの攻撃は嫌がらせ以上の効果がないようだが、
一人だけ仕留める事が出来た。ハーヴェストと名乗る女が溶解液で
無駄にしてしまった警備員のプロテクターの一部を撃ち抜く事に
成功したのだ。防弾スーツの中で鉛弾にぐしゃぐしゃにされる警備員。
残り四人。

溶かし穿つそのコンビネーションは有効だったようで二人目の警備員も
白衣の女に貫かれ痙攣しゆっくりと動かなくなっていく。
残り三人。

ここに来てはじめて警備員の一人が口を開いた。
「分かった。降参だ。あんた達に敵う気がしない。」
548 :白衣の女 :2013/04/13(土) 21:54:05.47 ID:JCNgS0Mo0
>>547
警備員の言葉を聞き、女は小さく
誰にも聞こえないよう呟いた

「銃野郎…あんた中々良い殺し方をするじゃぁないかぃ?
 その弾丸が体内を掻き毟る姿…柄にも無くワクワクしちまったよぉ」

警備員の言葉に同調したのか?
女は攻撃の手を休め、一度生身の人間の姿に戻ってみせ、ゆったりとした動作で防弾スーツに溜まった肉塊へと歩み寄った
そして、暫し死肉を見つめた後に 屈みこみ防弾スーツの中に腕を突っ込む
ずるり、ずるり。何かが蠢く様な音を響かせながら、女が微笑む。

「許すわきゃないだろう? あたしの体に散々ぶちこんでくれたんだからねぃ!」

肉塊を吸収し全身の傷を癒し、肉体に倍の質量を手に入れた女は
変形により二の腕を伸ばし、二の腕より先を大剣のように変形させ、鋏で切裂くような要領で警備員達を一掃しようとする女
到底、人間のなせる業とは思えないほど、その姿は恐ろしく醜悪であった



549 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/14(日) 19:36:38.93 ID:jXJGXFgSo
>>548
あいつは怒らせないようにしよう。
倍の体格差でもって人を挟み殺す様を見せられホセが立ちすくんでいた。

奥の金庫室から「終わった〜?」と呑気な問いかけ。
「全員片付いた。生き残りはなしだが…大丈夫なのか?」

白鳥の返事は「ああ、大丈夫だぜ。何も問題はない。」
それでは早く金を運び出そうという指示だった。
しばらくすると木村と大柴が「お疲れさん」と言いながら
金を満載した巨大な自走式のキャリアを引いて来た。
行内の惨状を見て木村が青ざめる。

大柴は先に「おい、突っ立ってないで逃げるぞ。」銀行駐車場に向かう。
ここのトラックを使って逃げる計画だったから普通の車で来たわけだ。
550 :白衣の女 :2013/04/14(日) 21:07:59.90 ID:Hhr+WFwv0
>>549

「あぁ、帰ろうさねぃ…さぁ、早く乗るんだよぅ」

黄金を確認した女はにやりともせずに相槌を打つ
皆の表情など何処吹く風で、今から金の使い道なんかを考えている始末であった

プロとしては失格の油断
不意を打てば、男たちでも女を気絶させられる程度に
彼女は隙だらけで男たちについていくのであった
551 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/14(日) 21:33:46.70 ID:jXJGXFgSo
>>550
 大柴の運転中、白鳥が呟く。
「あ、金も"洗浄"すりゃつかえるんだった。
 まあいっか。俺のものになったようなもんだし。」

 ホセがここで皆に気になっていた事を聞く。
 ゆったりくつろいでいる白衣の女を見て思いついた。
「なあ、ところでなんでこんな急ごしらえの強盗に参加したんだ?
 色々あるだろ。成功はするのか?とか仲間割れの心配は?とか。」
 木村がキョトンとする。
 大柴が「聞いてなかったのか?」と信じられないと続けた。
 ホセとハーヴェスト。計画犯罪者には向かないのかもしれない。
 白鳥は「はははは、面白いメンバーだろw
 分け前かい?おまえらで山分けで良いよ。」とまた爆弾発言。

 ホセが「はいぃ?!」どういう事だろう。
 事情を知る木村と大柴も「そりゃ白鳥さんに悪い気が。」と遠慮する。
 変な犯罪集団だ。

 そしてしばらくトラックで走っていると港が見えてきた。
552 :白衣の女 :2013/04/14(日) 21:59:12.96 ID:Hhr+WFwv0
>>551

「はぁ、あたしの本職は殺し屋っていっただろう?
 失敗すれば関係者は皆殺しさね。 裏切りもおんなじことだよぅ」

内心、事が済めば皆を殺して金を持ち出す算段もあったのだが
偽星とホセ、そして白鳥と同時に相対し勝ち逃げる自信はなくなり
丸くなったねェ、、、なんて呟き 少しだけ笑う
白鳥の分け前がいらないのならそれでも構わない
自分はあくまで個人主義である

「大して興味はないがねぇ、あんたらこそなにがしたかったのさ?
 野良のあたしをとッ捕まえて強盗に使うなんてねぃ
 どうかしてるよぉ?」

と、たずねる



553 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/14(日) 22:18:29.45 ID:jXJGXFgSo
>>552
 白鳥が説明を始める。
「複数台のカメラが俺たちの犯行を撮影している。
 行き当たりばったりで、素人の犯行だとすぐわかる。」

 不意に対向車線の向こうからサイレンの音が聞こえる。
 すれ違うパトランプとサイレンの音。

「四つ葉銀行の損害は全国に多数存在する数店舗のうち
 花蔵区支店の従業員の命と金塊のみ。その損害も保険が
 補填してくれるから銀行はそんなに損をしてないのさ。
 今回の一番の被害者は銀行の警備を請け負っていた
 セキュリティーサービス。そこの信用を落とし、株を暴落
 させるのが俺の目的だったわけ。そろそろ筆頭株主かな。
 これで件のセキュリティサービスの人事権を掌握した。」

「今回の銀行襲撃は互いが他人同士の方が後腐れなくていいんだよ。」

 そこまで解説してトラックは港の埠頭に止まる。
 そこにももう一人いた。黒スーツの男が白鳥に近づいてくる。
『盗難用の車は一台追加しておいた。
 それぞれ資金洗浄の済んだ円がトランクに積んである。』
「ご苦労さん。お互い中身を改めて解散としますか。」

 白鳥は白衣の女、ブラジル系の男、小男と痩男に合図し中身を改めるよう促す。
「金はちゃんと入っているかな。四億ずつ入ってるはずだけれど。
 確認したら、解散ということで。みんな今日はお疲れさん。」
554 :白衣の女 [saga]:2013/04/14(日) 22:38:30.05 ID:Hhr+WFwv0
>>553

「あぁ、そうかい…、あんたの目論見はよくわからんねぇ…
 まぁ、どうでもいいけどねぃ」
(闇に乗じればあのハッカー野郎はヤレルかねぃ…
偽星も不意を討てば殺せるかねぇ…)

最後の最後まで、自分勝手な志向に身を任せるも
闇に塗れている間に眠気に襲われて…

金をひぃふぅみぃと大雑把に数え終えると

「あたしゃずらかるよぅ
 またなんかあったら連絡しな、路地裏をうろついてりゃであえるだろうさねぃ」

なんてのたまいながら 翼を生やし 逃走の準備を図る
555 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/14(日) 22:43:04.08 ID:jXJGXFgSo
>>554
白鳥がニコニコしながら見ている。

ホセも似たことを考えていたようだが、
諦めて車に乗り込んだ。

大柴はそのまま分け前を受け取る。

木村が白衣の女に声をかける。
「この量の金担いでとべるの?」

とりあえず金と金塊の確認は互いに終わり、
黒服は船に金塊の乗ったトラックを積み始めた。

// お疲れ様です。この強盗イベはこれで終了です。
// 長引かせてしまってすみません。おつきあい感謝。
556 :白衣の女 [saga]:2013/04/14(日) 23:06:32.57 ID:Hhr+WFwv0
>>555

「あたりまえだろう? あたしは能力者になったんだからねぃ…」

木村の方をみながらなんら問題ないといった表情で応えた
能力への過信は今回の戦闘で何度もへし折られたはずだが…

「じゃぁねぃ、あたしゃおさらばだよぅ」

なんて声を残し、女は海の彼方へと飛んでゆく

後日、二億相当の札束が空から降って来た…
なんてニュースもながれるのだが…
その事件の招待をしるものは多分、いない。。。

/へぃ! 途切れ途切れになりましたが楽しかったです!
/ありがとうございましたぁ!
557 :白鳥景介(オールバックの青年)No.07アモン [saga]:2013/04/15(月) 01:04:54.46 ID:rR2xY7Kgo
【 強盗事件事後のお話 】
 ネットを通じて四つ葉銀行 花蔵区支店の襲撃事件は思ったより早く公知された。
 滑り台、いや崖を転がり落ちるように売り出される四ツ葉銀行の株の値段。
 そしてそこを警備していた泉セキュリティサービスの株価の下落。
 ここで、不思議な現象が起こる。泉セキュリティの株価の変動が緩いのだ。
 投資家、投機家達はわけもわからず泉セキュリティの株を塩漬けにした。
 素人に滅茶苦茶にされた警備会社の株価は誰かが買いつけたようだ。

「これで、この警備会社は俺のもんだな。」白鳥はニヤリと笑った。
「さてさて…次はAMSへの電話かね。どう話をはじめようか。。。」
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2013/04/24(水) 04:24:38.18 ID:x0ShMtkyo
【日向公園】
中央広場と噴水が名所になっている少し広めの森林公園がある。
同公園内にはルアーフィッシング趣味の客で賑わう溜め池もあるのだが...
「今週だけで三件目か。」
渋い表情で犠牲者の亡骸を見る刑事たち。
「全部で二十三名、同じ犯人による連続殺人。
 いや、加害者は人じゃなさそうだな。」
アーチ状の鈍い刃物で挟み切られたような遺体の傷。
歯型はない。引き千切られたというふうでもない。
しかしこの傷はどうも獣害を連想させる。

この溜め池は透明度が高い。
深くない箇所では藻や水草の間から水底が見える。
今もフナが目の前を元気に泳いで通り過ぎた。

巨大な緑色の水蛇の目撃情報ならばあるが胡散臭い。
この溜め池にそんなものが生息していれば目立ち過ぎる。

「しばらくは周辺立ち入り禁止だな。」
謎の捕食者がいるのだ。
おそらくはこの池の中にそいつはいる。
見えない所に...この池に死角はあるのか?
警官達は気づいていなかった。

 そいつは今も水面上の様子を見てうかがっている
559 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/24(水) 19:35:28.33 ID:P8tf94ZPo
人気のない夜、とある廃墟。
ここは数十年前に廃棄された工場で、立ち入りが禁止されている場所である。
しかしながら、【立ち入り禁止】の看板がたてられているくらいで、その気になれば誰でも簡単に入り込むことができてしまう。
廃墟が立ち並ぶ寂しい街並みで、人間の生活臭がほとんどない。時々、犬の遠吠えが響くいがいには、夜には深い静寂に包まれてしまうのである。

「は……ああああぁっ!」
そんな建物内に響く気合いの掛け声。同時に、赤い光が空間に迸る。
大神の腕から火炎が放たれ、厚い鉄の壁に触れては四散するのを繰り返していた。

専用の施設でもない限り、能力の使用はどうしても目立ってしまう。
だからこうして、人気のない場所で一人能力の特訓中であった。
560 :青いドレスの金髪ゴージャスロール [saga]:2013/04/24(水) 20:01:08.77 ID:JTabdCUTo
>>559
「全く……今日の相手はまるで面白くありませんでしたわ」

廃墟が立ち並ぶ街を歩くのは、足首までスカートが伸びている青いワンピースドレスを着た女性。
長い金髪は縦にロールし、背中に何本かの縦ロールがかかっている。

場所とは全く不釣り合いなこの女。先程まで一戦やりあってきたのだ。
廃墟が並ぶこの区域は、人が隠れるには最適であり、表の世界には出られない組織を作るには最適の場所。
半ば趣味とかしている悪の組織潰しをしてきた帰り、誰も居ないかと思っていた視界の隅に赤い閃光が映る。

「あら……? もうこの辺には誰も居ないかと思っていましたのに……
 先ほどとは別のグループの方ですの?」

でしたら……と、方向を変えて閃光の見えた工場へと足を動かす。
一歩、また一歩と近づいていくと、光と同時に声がするのを確認。女性の声っぽいが、それならより不可解だ。
自分以外に女性がこの辺りをうろつくのは考えにくい。

工場へと近づく女は全く気配を消すこと無く、堂々と正面からその入口へと足を伸ばす。
……が、肝心の声がする建物へ入るには回りこまなければならないようで、目の前には固く閉ざされた鉄製のドア。

「んー回りこんで正面入口へ行くのも面倒ですわね……」

おそらく非常口の役割を持っている錆びついたドアのドアノブに手をかけると……
バキッ……と何かが外れるような壊れるような凄まじい音を立ててドアが外れる。
開いたのではない。外れたのだ……

「あら……意外と脆いんですのね……」

当然、錆びついた鉄製のドアを押したり引いたりしたくらいでドアごと外れるわけがない。
この女……ドアを片手で破壊するほどに怪力なのである。
左手でドアを持ちながら一歩中へ入ると、女性が1人。

突然ドアを破壊した上、そのドアを片手で持ちながら入ってきた乱入者。
まったく普通ではない。
561 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/24(水) 20:17:15.70 ID:P8tf94ZPo
「ふっ……」
やや身を下げて繰り出す、上段の回し蹴り。真っ赤な火の粉が脚の軌跡を描く。
「……はっ!」
脚を地面につけ、こんどはバク宙をする。古ぼけたマントか、風に揺れてヒラリ――

――空中で逆さになり、天と地が逆さになっていた時であった。
大きな部屋の中に、全く予想をしていなかった轟音が響いた。
「な、なにが? ……っっ」
音に驚いてしまい、着地が大きく乱れてしまった。
よろけてバランスを崩し、片足を地面につけてなんとか転倒を阻止した。

人気がないからこそ、この場所を選んでいたのである。そんなわけだから、誰かがこの空間に侵入してくるなどいう考えは殆どない。
こ人が現れたことには動揺があって、それを隠ぺいして冷静さをつくる。

「何だ、お前」
一人の特訓を邪魔されたには、面白くない。
口調は荒いし、視線も細く攻撃的だ。
562 :ナタリア・S・キャンヴェルディッシュ [saga]:2013/04/24(水) 20:32:13.19 ID:JTabdCUTo
>>561
建物の中に居たのは1人。どうやら悪の組織が根城に使っている場所ではないようだ。
それを期待していたので若干落胆。

「何だお前とはご挨拶ですわね」

左手に持っていたドアを投げ捨て、腕を組む。
攻撃的な視線を真っ向から受けるも、引きもしなければ押しもしない。
その視線を受けながらまるで気にしていないというのが正しいのだろうか。

「私(わたくし)は、ナタリア・キャンヴェルディッシュ。
 イギリスにおける”超”名門の貴族、キャンヴェルディッシュ家の者ですわ。
 あなたこそ、こんなところで何をしているんですの?」

有り余る胸を更に前に突き出し、その堂々とした立ち居振る舞いは貴族だからなのか性格ゆえか。
今にも”おーほっほっほっほっほっほ”と笑い出しそうなナタリアは、左手の指を顎へと持って行き、眼を細める。

見た感じは1人で訓練でもしていただけのようだが、悪の組織とつながりがある人物であれば、その情報を聴きだして潰しにこうなどと考える。
563 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/24(水) 21:02:46.37 ID:P8tf94ZPo
>>562
「名家の娘だと?」
身に付けているものや、その立ち振る舞いは確かに貴族のそれと言えるだろう。
しかしそうだとしすえば、単純なある疑問が脳裏に浮かぶ。
「そんな奴が、どうしてこんなところにいるんだ?」
ナタリアを名乗った女性が持っていたドアは鉄製の者。目の前の女性が軽々と持ち上げられるとは考えにくい。
なんらかの能力者であると考えらる――能力者が人気のない所にいというのは、ロクな出来事どとは思えない。

「俺は、身体を動かしていただけだ」
この場所を使用する許可なんてものは、当然とってはいない。
不法侵入はもちろん悪だが、それを気にする様子は無い。たとえ目の前の女性がこの土地の管理人だという可能性があってもだ。
564 :ナタリア・S・キャンヴェルディッシュ [saga]:2013/04/24(水) 21:14:28.11 ID:JTabdCUTo
>>563
「この辺りは非合法な組織の隠れ蓑になっております故、討伐をしておりましたの。
 ここへ来たのもその帰りですわ。何やら怪しげな光と声がしたものですから」

ニヤリと口元を曲げ、面白いことでも言うように口を開く。
ナタリアの悪の組織潰しは半ば趣味で遊び半分だ。
故に戦闘用の服を着込んで万全の装備で相手の拠点に行くというのはありえない。
いつもこの格好でスラム街を歩いたり、組織を襲撃したりしている。もちろん、顔を隠すなどということは考えもしない。

「このような場所で体を動かしているだけ……? にわかには信じられない話ですわね。
 あなたも悪の組織の一員なのではありませんの?」

完全な言いがかりだが、その可能性も無いとはいえない。
まぁ、ナタリアがそこまで色々考えているわけが無く、単純に悪の組織の一員だったらいいなーくらいに思っているだけである。

565 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/24(水) 21:30:45.01 ID:P8tf94ZPo
>>564
「悪の組織?」
非合法な組織などという話は聞いたことが無い。
何度かこの場所に通ってはいるが、この場所以外に立ち寄ることはなく、地理も詳しくない。

「迂闊であった……か」
独り言で呟く。どのような目的で使う場所であっても、詳しく調べるべきであった。

「信じられないと言われても、俺にはどうすることもできん」
無関係であったことを証明することなんてできないし、いままで自分が何をしていたかを証明するものもない。
「信じてくれ、そうとしか言いようがない」

「ところで、なぜ悪の組織なんかを追っているんだ?」
何かの組織の仕事なのか、能力者なら個人的な因縁でもおかしくはない。
「お嬢様が悪人退治……そちらのほうが、信じがたい話だと感じるが」
566 :ナタリア・S・キャンヴェルディッシュ [saga]:2013/04/24(水) 21:43:26.88 ID:JTabdCUTo
>>565
「ま、先ほど私が華麗に壊滅させて来たのでもう居ませんわ。あまりにも弱くて興ざめでしたけれど」

つまらなさそうに目を閉じて軽く左手を降る。
あまりにもあっさりケリが付いたので不完全燃焼で終わってしまったのだ。
趣味としてやっている組織潰しだが、相手がそれなりに強くないと面白くないため趣味として成立しない。

「信じる……ねぇ。確かにあなたが善人である証拠がなければ悪人である証拠もない……ここは信じておきますわ」

そこで目の前の女から質問が飛んでくる。
割りとよくされる質問ではあるが、答えは決まりきっている。

「なぜって……そんなの面白いからに決まっていますわ。
 貴族である私が、平民の中でも底辺の悪人を成敗する。そして悪人たちは高貴な私に為す術なくやられひれ伏すんですわ。
 そしてその中で行われる戦い……いずれも私を燃えさせる。
 私の生活のスパイスとしてはなかなか上等ですわ」

そう、ナタリアは正義の味方ではない。
ほとんど私利私欲のためにやっていることだ。
結果として悪人が居なくなるが、動機としては不純だろうか。
567 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/24(水) 22:07:01.37 ID:P8tf94ZPo
>>566
「その組織の連中はどうしたんだ?」
生き残りが居るのならば、警察機関や救急機関などに連絡をするべきだろう。
そうなるとこの辺りが騒がしくなって、使えなくなるのが残念だが。

「そうか……すまないな」
ニコリともしないで、感謝の言葉を述べる。
表情は乏しいが傲慢なきもちではなく、感謝の気持ちを少しは伝えようとしている。

不法侵入の身、疑われても仕方が無く考えていた。
それを信じてもらえるのは、目の前の人物のおかげであった。

自分の質問に対するナタリアの言葉を聞き、眉をひそめる。ナタリアの考え方に、いい顔はできなかった。
「……あまり、関心はしない」
しかし、特に口出しをするつもりはなく無かった。コメントも、賛同できないという程度に留めた。
568 :ナタリア・S・キャンヴェルディッシュ [saga]:2013/04/24(水) 22:24:03.20 ID:JTabdCUTo
>>567
「組織の連中……? さあ、運が良ければ生きていると思いますわ。
 悪人の生き死にには興味ありませんもの、いちいち確認していませんし」

ナタリアは警察も救急車も呼んでいないし、非合法組織の連中が自分から警察や救急車を呼ぶわけがない。
ただ、ナタリアは殺しを目的としている訳ではない為、案外死者は居ないというケースが多い。

「別に、本当に信じているわけではありませんわ……律儀な方ですのね」

一応、流れで信じるという言葉は言ったが、信じているわけでは無い。
問い詰める材料がないために引き下がっただけで、人の言うことを信じる良い人では断じて無い。

「まぁ……特段、誰かに感心してもらいたくてしていることではありませんわ。
 褒められようが貶されようが、私は私のやりたいようにやるだけですもの」

ちらりと左右を見て建物内に何かないか探すも、結局この女一人しかいない。
軽くため息を吐いた後、直進して正面の入り口へと歩き出す。

「では、私はこれで失礼致しますわ。ごきげんよう。
 私の名前はきっちりと覚えておいてくださいね」

女とすれ違いざまにそれだけ言うと、ちゃんとした出入り口から外へと出て行く。
今日の不完全燃焼はどうやって消化しようか。家のメイドでも虐めて気を晴らすか、それともストリートファイトでもして帰ろうか……

//次いつ来るかわからないので、今回はこれで〆させてください。
//ありがとうございました。
569 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/24(水) 22:27:52.39 ID:P8tf94ZPo
>>568
「余計なお世話だろうが……なんであれ夜の道だ、気をつけろよ」
それから、大神はゆっくりと歩き出す。
悪人だろうとなんであろうと、見捨てる訳にはいかない。

//お疲れ様でした、ありがとうございました
570 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/25(木) 22:50:00.64 ID:YBX2xvYO0
深夜、人気の無い路地裏。
妹と自分だけが知っている秘密の待ち合わせ場所…こんなところに来ても妹は居ないと、頭では理解しているのだが、気付いたら此処に居た
自分が謎の警官に冤罪を被せられ知らない間に罪を上塗りされ、逃亡を図り幾日がすぎただろうか
家に帰れば迷惑を掛けるから、と。大切な家族に連絡もせず何日、孤独に過ごしただろうか

「もし会ったら…クララやお姉ちゃんが危ないって.分かってるのに…
 期待して、つい来ちゃいます…。 悪い子ですね…ぼくは…」

逃走を始めてから解くことの無かった変性も大分板についてきて
今では独り言でさえ少女のように喋る始末。

白いローブに包まれた華奢な肢体と肩まで流れるように伸びた栗色の髪、獲物から拝借した十字のネックレスも相俟って、美女そろいの家族の中でも見劣りはしない自身はあるのだが
何分、一家の唯一の男を自称してきたこともあり、自分の情けなさに目が滲む

あいたいけれど、あいたくない
こんな姿は見られたくないし 迷惑も掛けたくない

でも気付いたら来てしまう
家族と初めて出会った場所に
妹と合流し、いつものように獲物を差し出していた、この場所に
571 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/25(木) 23:02:48.30 ID:KcObKrvxo
ブーツの足音がコツーン…コツーン…と鳴り響く。
そう、彼女もまたシンラを探していた。
今なら特に用事があるわけではない。ただ会いたい。

こんな時間になる事もあるが、殆ど毎日ここに来ていた。
「あら?」
様変わりしたシンラを見つけたクララはそのシンラに話しかける。
「こんばんは。」
572 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/25(木) 23:17:49.15 ID:YBX2xvYO0
>>571
一定のリズムで刻まれる音響にシンラは内心、身構えていた
妹のクララは何時もビルの上から現れるアクティブ(?)な娘であったし
姉のルーシェはこんな夜更けにここに来るほどセンチな性格でも無いと認識していたから。

しかし、次に聞こえたものは懐かしい声、愛しい妹のそれだ。
淑女になると意気込みながらもビル間を駆け回っていた妹、そんな彼女が今、ブーツを履いて可憐に一言、「こんばんは」と囁くのだから
シンラも思わず吹きだし、けれども感付かれないように、下を向きながら小さく呟くように返す



「あら…素敵なレディーさんね…、こんばんは
 何を、しているの…? あなたみたいな可愛い子、一人で歩いてたら、危ない…よ?」

内心、妹が初対面に礼儀正しく挨拶を出きるようになった悦びと久びざの妹との邂逅に涙が溢れそうになり気が気でないのだが
あくまで、冷静に 首を傾げてみせた

ちなみに、女装がばれているなんて発想は一切無いようにも思える
それだけ、自分の変性に自信があるようだ。
相手は、変態のプロなのに。
573 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 07:14:11.12 ID:/w/Pvyljo
>>572
「おねえさんこそ危ないわよ。どうしてこんな所にいるの?」

 自分の事については再開したい人がいるからとだけ述べた。
「ここがお兄様とのわたしたちの待ち合わせ場所だったの。
 今もどこかで元気にしているのかしら。
 いつかここに寄ってくれるのかしら。」
 空を見上げながら呟くように。
574 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 18:38:28.95 ID:uTrbzkww0
>>573
シンラは毎日、此処に通っていたわけではない
いつも同じところを巡回していればいつか、偽佐藤や賞金稼ぎ、警察等の機関に狙われる可能性があると考えてだ
しかし、今日立ち寄った此処には妹が居た
それは神の導きなんかじゃなく、運命的なものでも無いのだろう

きっと妹が、可愛いクララが自分を探しに来てくれたのだと
なんとなく確信した。 それがただの妄想でなければ良いのだが
しかし、空を見上げ呟く様に語る妹の なんと美しいことか なんと愛らしいことか
今すぐにでも兄として抱きしめてしまいたい
そう、おもわせるには充分すぎるほど、シンラは家族を求めていたし
今の妹は美しかったのだ。

しかし、ここで衝動的な行動を取るわけにもいかず
能力をしようし、周囲の生命反応を確認し、安全を確信したうえで

「ぼくもね…素敵なれでぃー、会いたい人がいたの…
 とっても可愛くて、とっても素敵な女の子に…ね」

なんて呟いてから
空を見上げる妹の、両目を小さな掌でおおってみせて

「─────だーれだ?」

冷たい硝子のような手で、少女を抱き寄せるように
小動物のような、頼りない声で、ささやいた
575 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 18:53:17.90 ID:/w/Pvyljo
>>574
「会いたい人との待ち合わせ場所がここなの?
 奇遇ね。
 わたしもこんな殺風景な所を待ち合わせ場所にしていた人がいて、
 そうよ、わたしを家族として迎え入れた人がいるの。
 こんな所でもわたしにとって大切な場所なの。」

 そこまで言うとしばらく黙っていた。
 静寂を断ち切ったのは女性の囁き声。

「─────だーれだ?」

 だれ?まさか?

「お兄…様?お兄様なの?」
 ふるえながら見ず知らずの女性に尋ねる。
576 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 19:07:30.77 ID:uTrbzkww0

>>575

「違うよ、キミを家族に迎え入れたんじゃない
 あの日、ぼくたちは家族になったんだ
 ぼくはむしろ…受け入れられた側だとおもうけどね」

目を塞いだまま、少女への返答
あの日この場所で、なんの因果か三人は家族となった
一人は人の命を喰らい 一人は人の屍を喰らい 一人は人の遺物を漁りに

命を喰らう怪物は、己を受け入れられた存在とのたまい
その言葉は転じて、少女からの問いにたいする答えであり

「ただいまクララ。 またせてごめんね? 」

と、またいっそう強く 抱きしめる
577 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 19:12:51.96 ID:/w/Pvyljo
>>576
 振り向いてシンラを強く抱きしめる。
「おかえりなさい。おかえりなさい、お兄様。
 お兄様の馬鹿!何処に行ってたの?
 寂しかったわ。本当に…本当によ。」
 ここで人喰らいは人喰らいと再開を果たす。
 人の脅威たる二人はこの先、一部の人々の魂の救いとなるがそれはまだまだ先の話。
 今は何も知らず、明日の事も考えていない化物達がただ抱擁しあい再開を喜ぶ。

 そしてしばらくして、クララはシンラに伝えた。
「誰にも正体が知られていないとはいっても、
 人の敵として追われるのはもう疲れたわ…。
 お兄様はどう?」
578 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/04/27(土) 19:54:02.84 ID:UFCl7Lceo
>>577

「ぼくも寂しかったよ...本当に 本当にね...」

迷惑を掛けまいと決意をしてみても
いざ会ってしまえば家族の暖かさに決意は容易く溶かされて
喜びを意味する沈黙をただ全身に浴びながら、
しんらは涙をこらえていた

「ぼくも...実は、人間から追われてるんだ...
食事をね、みられちゃって...」

故に迷惑を掛けまいと逃走を図っていた旨を手短に伝え
クララの悲しい言葉に胸をうたれる

「ぼくも疲れたよ...。
どんなに人間を愛しても、ぼくらは彼等を食べなきゃ生きられない」

今まで、人間関係?や自身の生き方に悩み、幾度か挫けそうになったこともある
だが、いつも胸のうちに佇み しんらを支えてくれた希望があった


「クララ...前に話してた、新しい世界の話を聞かせてよ
動物達は食べられるために生きてるんじゃないとか
好きなものだけをまもればいい
素敵な、世界の話を...」
579 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 20:05:11.49 ID:/w/Pvyljo
>>578
「ええ、お兄様。
 でもその姿は、女の子みたい。」
 少しの間シンラの姿を見て不思議そうな顔をしている。

 まあいい。
 今、クララは人間社会の理と人間という生き物の性質。
 今まで学んで来た人間という動物についての考えと扱いを話しだす。
「ねえ、どうして人間達は軍隊や警察を作るのかしら。
 いいえ、どうして?と考えてはいけないのかもしれないわ。
 それが人間なのね。
 彼等は全く知らない人とお互いを守りあう約束を持っているの。
 勿論犯罪もあるわ。戦争もあるわ。でも人は他人を守るようにも出来ている。」
 ここで少し不気味な笑みを浮かべる。
「でもそれが窮屈な人間だって沢山いる事を知ったの。
 ねえ、人間達が作った発明である"社会"を潰さない?
 全てを壊す事は難しい、できないかもしれない。
 でも、社会を持たない人間を集める事はきっとできるわ。
 家族だけが点在する世界、そんな世界をこの社会に落とすの。
 そんな宗教を作るの。
 人間の教祖を立てて、私達はただシンボルであればいい。
 私達の宗教の教祖を探しましょう。扱い易い教祖を。」
580 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/04/27(土) 20:45:11.17 ID:UFCl7Lceo
>>579

女の子みたい。の言葉に顔を赤らめて照れながらも、続くクララの演説じみた言葉は然りと聞いていた
人間を利用する...という点を除けば 人間ではなく"社会"そのものを破壊する提案に意義は無い

社会から溢れてしまった人間
社会に弾かれた人間

そんな人たちを シンラもまた、知っている

「クララは...ずいぶんとかしこくなったよね。
えへへ...このままだと置いてかれちゃうかもね、ぼくが」

でも、と間をおき

「教祖を利用する以外は、素敵な話だね、やっぱり。
教祖の件も きみや ぼくの知っている人たちを幸せにできるなら
ぼくは それでもいいかなぁ...」


恋は人を盲目にし 愛は怪物を狂信的にさせる
クララのため、と考えれば迷いはさらりと消えていく

「でも、そんな大きな夢をかなえるなら、力がいるよね。
それに...仲間も たくさん」

力、それはシンの求める強さ
仲間、シンラにいわせれば、或いは家族

「ねぇ、クララ。
きみって、強いの...かな? 」

妹に手をだすのは迷いもあるが
しんらはやはり確信している

人類の捕食者たる彼女は強い
恐らく 自分よりもだと
581 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 21:02:00.64 ID:/w/Pvyljo
>>580
「えっへん、わたしだって沢山勉強しているのよ?」
 誇らしげに言う。そしてシンラの意義にも堂々と答えた。
「利用は…それでもするわよ。代わりにわたしを利用させてあげる。
 だから、その人も幸せに生きる事だって出来るはずよ。
 勿論利用の仕方と生き方を間違えなければのお話ね。
 力はいらないわ。魅力的な幻想を用意すればそれで充分よ。
 仲間だって、その幻想に同調する人達がいればどんどん増えるわ。」

 と、その話はそこまでで、次のシンラからの問いへの返答には詰まる。
「わたし…強いのかな。異能者だったけれど人間に負けた事があるわよ。
 特別な空間での試し合いだったから怪我も病気もしていないけれど。
 でも、そこでわたしは負けたの。実際に現実世界で戦えば死んでいたかもしれない。

 それに、強かったら自分の居場所を拡げようだなんて思わない。
 でもお兄様は、今はお姉様?お姉様はどうしてそんな事を聞くの?」
582 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 21:18:41.96 ID:uTrbzkww0
>>581

「そっか...お互いに利用しあうね。 おもえばぼくたちも最初は、そんな仲だったものね...」

最初、一人と二匹との出会いは死体をどうするかの話し合いであった
途中で、利用しあうといった言葉を聞き、自分がその関係を家族とよんだことが始まりだったか
そう思えばわるくない。存外、そんな気がしてきた。 でも、

「力は、いるよ...現にぼくらは迫害されてるし、強さは、優しさにもなるんだ
 とっても強い御姉さんがいってたからね。 強さは必要だよ? 」

己もまた妹のように薄い胸を張ってみせた
多少ジコ的な介錯で見解が歪められているが、強さは必要だと主張したいらしい

「でも、クララはビルをかけまわったり、おねえちゃんを殺し屋からまもったりしたんでしょう?
 強いよ、とってもね。 でも、その人間は許せないかも...
 あいや、違うや。 だからね、えーと... ぼくは強くなりたいんだ

 できればクララも強くなって欲しい。 だからさ、修行...なんて怖いいいかただけれど...
ぼくと、たたかってみない.。。?」
583 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 21:28:41.80 ID:/w/Pvyljo
>>582
「はじめての出会い、懐かしくも感じるわ。
 あの頃からわたし達はすでに人間社会から見れば怪物だったわね。」
 思い出せばそうだ。最初はこの義姉妹も利用しあうつもりで近づいたのだ。
 しかし今は違う。勿論利用しあう関係は残るのだろうが、それだけではない。
 互いの存在を求め合っているのではないだろうか。

 だからクララはシンラと戦う事に躊躇する。
「お兄様と戦う?わたし…お兄様と戦えるかしら。
 お兄様より強いとか弱いとか、わからないわ。
 でも、傷つけたくない人なのは確かな気持ちなの。
 辛い事を言うのはやめて欲しい。。。



 それでもと言うなら…。わたしは…わたしは…。」
 提案が頼み事のように聞こえる。だからか迷っているようだ。
 自分はシンラを攻撃していいのかについて。
584 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 21:44:53.08 ID:uTrbzkww0
>>583

「優しいね、クララは...
 それだけでもきみは充分強いのかも。 
 やっぱり、ぼくなんかよりね」

シンラもまた最初は、提案さえ躊躇った
しかし、勝ってしまったのだ、戦闘への欲求が
されど、クララはそれを悲しいことのように問い返してきた

胸が痛む。 過ちとわかっていたから

「いや、やっぱり、間違ってたのかな…
 ぼくがクララよりも強くなって、守ってあげれば全部解決だもの...
 えへへ、応援してね? クララ」

シンラは優しい少女の表情に戦意を失い
少しだけ暗い顔で微笑み
そこに一言の謝罪を添えた

ごめんね、と

585 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 21:52:39.87 ID:/w/Pvyljo
>>584
「お兄…様?」
 本気だったのだろうか。
 いや、今もその気なのだろうか。
「応援はしています。
 それ以上にすでにお兄様を信じています。
 それでもわたしの存在がお兄様の心の中で龍が腰をおろしているように存在しているのならば…」
 もしもその気なのならば、クララはシンラに応えるつもりだった。
586 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 22:02:22.57 ID:uTrbzkww0
>>585

「違う...違うんだよクララ...
 キミを打ち負かしてやりたいとか、買ったり負けたりしたいとかじゃなくて...
 クララと戦えば...強くなれる、きがしたんだ...」

 戦意を失っていたが
 妹がまた自分に信頼をおいて応えてくれるのなら、やはり...

「ねぇ、クララ。 ぼくは傷つけらてもすぐに癒せる
 きみが傷ついてもすぐに癒せる。 
 壊せば直せばいいなんてはなしじゃいけどね...」

 そこで、ぽけっとからコインを抜き出し
 軽く真上になげてみせた

「応えてくれるなら、これが落ちたらぼくに一撃をくれてもいい
 やっぱり嫌だったら...これが落ちたらまた、手を繋いで、二人で帰ろう
 ぼくの、隠れ家とか...どうかな? 」

 無論、戦闘を行っても、少女とは此処で合流し社会つぶしを続けるきはある
 

 そして沈黙を切裂くように コインが 甲高い音をたて 地に落ちた
587 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 22:09:00.90 ID:/w/Pvyljo
>>586
 クララはコインが落ちる前に腕を伸ばしコインをつかむ。
「クララはお兄様の味方よ。だから…お兄様が望むなら先手を。」
 表情からは覚悟が見て取れる。そしてその瞳からは悲しみの感情が。
588 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 22:21:40.67 ID:uTrbzkww0
>>587

「きみは...どこまでも優しいんだねクララ...
 そんなところも 大好きだよ」

 悲しい目、自分の胸を穿つような
 己はこの戦いでなにかを掴まなければいけない
 縦横無尽に飛び交う彼女の動きを模倣し、会得する
 こんな目をさせておいて、何も得られませんでした、なんてことはありえない

「じゃぁ せんて もらうよ! 」

 クララに向かい右腕を突き出し、掌から三本の光の矢を放つ
 しかし、これは癒しの光。 もし被弾しても傷一つさえつかず
 むしろ再生能力を増し、彼女の力を増加させる可能性さえある
589 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 22:39:03.13 ID:/w/Pvyljo
>>588
放たれたのは加護だが、しかし受けたのは宣戦布告だ。
だから光の矢を避けようと姿勢を下げて横に駆け出す。
クララ、異世界のスプリガン、宝箱に潜むミミック、形を捨てられる怪物。
彼女は今モンスターとしての本性をシンラに向ける形でははじめて出した。

ここは裏路地。
建造物の壁に囲まれたこの空間はクララにとって理想的な場所だ。
シンラの背後に向かって飛び、そして壁模様に身体を偽装し完全に姿を消した。
「お兄様…お兄様…ごめんなさい、だなんて言いません。
 お兄様が望むならばわたしは悪魔にだってなれるのです。
 わたしを倒さないといけないならば、わたしを倒してください。」

 そんな言葉の後に続いて壁から伸びる鉤爪つきの触手がシンラを襲う。
590 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 22:51:30.63 ID:uTrbzkww0
>>589

「ぼくもクララのためなら...なんにだってなるよ
 それだけ、きみが優しいから...」

 初撃を受けることなく回避したクララ
 やはり、そうでなくてはならない。
 この速さ、この機動力、更には新しく目にしたステルスのような能力
 この全てを打倒し、習得するのだ。 
 
 これはやはり、利用なのだろうか?
 
 目を閉じて生命探知を高速で行いながら
 シンラは一瞬だけ考え、背後からの奇襲にうたれる

 素の状態では防御面で劣るシンラ。 鍵爪は背を抉るようにして、光の粉を散らしながら、過ぎていき
 シンラの体はたやすくはじきとばされた

「いったいなぁ...よけいなこと考えたから、罰、あたったのかな」

それをもまた生命力の補充で修復し、足元に拒絶の光を収束させ、自身もまた妹のように ビルの屋上付近へと跳ね上がり

「くららちゃん! みーつけたっ! 」

先ほどの探知でクララが居た範囲を狙い、低威力だが広範囲を破壊する、フレアのように拒絶の光を放つ
無数の小さな弾丸となった光は、壁や地面に当たるだけで消滅していく。 そのうち幾らがクララに届き
そのうちのいくつが被弾するのか。 それは決して多いものとは思えなかった
591 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 23:05:06.65 ID:/w/Pvyljo
>>590
「戦いたくないのに、なんだか鬼ごっこみたい…。
 クスッ…クスクスクスクス…。」
 シンラが見たのは壁に薄く、広く拡がった何かだった。
 これは新しい能力ではなくまだ見せていなかった能力。
 擬態である。

 ビル屋上付近に無数の目が開く。
 攻撃を視認して、攻撃に合わせて孔を作り、被弾を避ける。
 しかし数が多いのかクララの身体には拒絶の弾丸を受ける。
「痛いだけ。痛いだけじゃ女の子はへこたれないわよ。」
 ダメージを受けながら無数の触手がシンラを捉えようと伸びてくる。
 無数の目が捉える無数の鉤爪と刺のついた触手を投げてくる。
592 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 23:22:44.69 ID:uTrbzkww0
>>591

「ほら、やってみればやっぱり楽しいじゃない! 
 それと、ないすきゃっちだよ? くらら 」

広範囲に及ぶ代わりに一撃の威力が弱い光は、クララに苦にもされずにあしらわれ
空中に放り出され無防備になった状態のシンラを無数の触手が拘束する
しかし、それは好機。 シンラは刺突や斬撃よりも衝撃に弱いのだ、全身に拒絶の光を高密度にして纏えば
触手の攻撃から体を数秒は守れる。 その数秒のうちにシンラのとる反撃は、

「命の流れに干渉し、時に奪い、時に与える
 全身を循環する命の奔流に、拒絶の光を、直接流す!」

同化の力、対象へと生命力を還元しその身を癒す技
拒絶の力、生命力を拒絶のエネルギーへと変換し操る技
その二つを掛け合わせ、シンラは己に絡みつく触手へ、その生物へ拒絶の光を流し込む

体の内から破壊される痛み。 それはダメージとして現れるのか、ただの激痛しか残らないのかは分からない
シンラもこの技を使ったのは初めてだったから
もしかすれば、この攻撃自体がが無力化されるということも相手の生態を考えれば、なんら不思議ではないのだ

593 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/27(土) 23:35:21.59 ID:/w/Pvyljo
>>592
結果から言えば効いた。
「…うぐッ!」
どうやら攻撃の性質の相性が良いらしい。
クララの攻撃というのは体当たりのような特殊な物は置いておいて、
斬撃と刺突がその真骨頂なのだ。クララはなるほどとシンラの性質を観る。
「お兄様…これから痛くしますね。」

そう言うとクララはしばらくシンラへの攻撃をやめ、
再開された攻撃はシンラへの強い抱擁、というより締め付けだった。
そう、締め付けようという形で触手を回りこませる。
シンラの発達した勘が警報を鳴らす。これに捕まっては危ない。
594 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/27(土) 23:53:24.66 ID:uTrbzkww0
>>593

一旦攻撃が止まる。 怪物に通用する体内破壊なら中々の精度といえよう
しかし、こんなことで満足していては、この戦いで負けてしまう
勝ち負けに拘らないとはいったものの、こう楽しくなってしまうと勝ちたくなるのが男の子だ

次いで、触手が力をあげて全身を締め付けてくる
更に数も増えるようで、前回の野生の動物じみた男との戦闘ゆえか
幾分、危険への察知力も高まったのか、とにかく この攻撃が危険ということは理解出来た

ならば、逃げるしかあるまい
いくら怪物といえどクララも自分も生物なのだ
その生物にできることが 生命を操る自分にできない道理は無い

シンラは背より拒絶の光で構成された翼を生やし、空気を拒絶した羽ばたきにより静止状態から突然の加速を始めた
もし、その加速がクララの拘束力よりも勝っていたのならば、触手を伝にクララを引き摺りだし、ビルに叩きつけるのがシンラ魂胆であった

しかし、ビルに張付いているクララの拘束力が勝っていたのならば、クララを中心にシンラは大きく弧を描き、自身がビルへと衝突することになるだろう
595 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/28(日) 00:04:24.41 ID:YKqfKNNFo
>>594
拘束力と牽引する力。力はシンラの方がクララより強いようだ。
ただ、クララは恐ろしい事を考えていた。なのにシンラは拘束を解かなかったのだ。

クララの考えていた事は加速度をつけたビル屋上付近から地面への落下である。

シンラの羽ばたきによりクララは壁から引き剥がされビルに叩きつけられる。
そのままガツンという衝撃のあと、クララはシンラを捕まえたまま自分の身体を地面に叩きつけた。
「かふぅ…!」この玉砕覚悟の攻撃はクララにとっても二重のダメージとなり吐血する。
まるで自分の無事も顧みないかのようなこの攻撃は、元がミミックという守護生命ならではのもの。
シンラは勝ちを狙っていたようだが、クララは対象を破壊する闘いかたをする。
596 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/28(日) 00:20:18.45 ID:8GgBzE7L0
>>595

クララの考えはシンラの稚拙な攻撃方法よりも格段にえげつのないものであった
シンラはクララが秘法を守護していた怪物だなんてことは知らない
異世界から来た怪物と言う事は把握していたが...
よもやここまで策を練る力とそれを実行に移す精神力を秘めているとは思うまい

しかし、結果として皹の入った華奢な体が、シンラの敗北を告げていて
それが悔しくもあり、なんだか嬉しくもあった。

されど余韻に浸ることも無く すぐにクララのもとへと向き直り、吐血で汚れた顔を拭ってみせ

「ごめんね、クララ。 こんなに無茶させちゃって...
 やっぱり強いね、クララは」

その吐血や 傷が癒えるように、シンラはなけなしの生命力を癒しの光に振り切り、クララへと送るのだった
597 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/28(日) 00:25:35.98 ID:YKqfKNNFo
>>596
全てを出し切る。
これがクララにできる事だった。
クララは全てを出しきってシンラの胸の上で眠っていた。
シンラの生命を受けながら、心地よく眠りに入っていた。

「…お兄…様。」

「は?!お兄様?!大丈夫?気分は悪くない?何処か痛くない?」

一時失神して目覚めたクララはシンラを気遣い狼狽していた。
598 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/28(日) 00:38:16.70 ID:8GgBzE7L0
>>597

「えへへ、ぼくは大丈夫だよ...?
 クララこそだいじょうぶ? どこかいたくない? 」

クララが眠りについているあいだ
起きたときに心配をさせまいと、シンラは自身の顔の傷だけを癒していた
全身に奔った皹は、まぁ、ニ三人分の人間を捕食すれば癒えるだろうという算段
短くはあったが、激しい攻防でもあったと シンラは思った

(んー...最初は迷惑を掛けたくないっておもってたけど...
 クララ、ぼくより強いし、似たようなタイプの能力をもってる偽佐藤のことも倒しちゃうかも...)

ついでにそんなことを考えて

「くらら...きみの調子が治ったら、おねえちゃんに合いに行こうか
 おねえちゃんにも話さなきゃ...ぼくのこと、三人そろって家族だって自分でいったのに
 ちょっと、無責任だったかも...」



599 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/04/28(日) 00:44:05.94 ID:YKqfKNNFo
>>598
 クララは佐藤の事はもちろん、最近のシンラの事を知らない。
「ええ、わたし達のお家に帰りましょう?
 でも、もう少しだけお兄様の胸の上で休みたいの。」
 怪我は治れど疲れは残る。疲れるという事は生きている証だから。
「お姉様は元気にしているのかしら。」
 そう呟くと、また少しクララは微睡みはじめた。

// すみませんが、今回はこれを〆という事でお願いします。
600 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/04/28(日) 00:48:04.25 ID:8GgBzE7L0
>>599

「ぼく、冷たいから、風をひいてもしらないよ? 」

なんてのたまって、自分もまたクララの心地よい重さとぬくもりによって
まどろみにのまれていくのであった
あぁ、此処にこの横に自分達の姉がいればどれだけ素敵であっただろうか

そんな平和な日常を堂々と 平然と手に入れるためにも 夢をみる怪物達は、明日も生きるのだ

/ですね! おやすみなさいです!
おだいじに!
601 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/28(日) 23:53:36.70 ID:D5vnxhdco
某所にある、とある教会。
元は個人の教会だったのだが、現在はL.M.Gの拠点となっている。

教会そのものは古い教会を再利用してものであり、教会の至る所に劣化が見られる。
業者に修理を依頼するようなお金はないし、仮にあったとしても、すぐに別の用件に消えてしまうのである。
そんなわけで、教会の修復は大神自身の手で、コツコツと進められているのがいまの状況だ。

今日は来客もなく、一日中修復作業や家事仕事をすることができた。
日が傾きかけた教会側の庭で、廃材の整理をおこなっているところである。
「……………」
黙々と、そんな作業をつづけている。
602 :トマス【副官長】 [sage]:2013/04/29(月) 00:43:34.75 ID:fkXa1rJHo
>>601
本を読むときに注意して読むべき個所というのは、見難いところにあることが多い
建前上の伝えたいことを分かりやすいところに置いておき、本当に伝えたいことを分かりにくい場所に置く
自分が本当に伝えたいことである筈なのだが、何故隠されるのだろうか
それは知識があるもの、否、見抜く力を身に着けている者にしか見せたくないからだろうか
周囲を草や木に覆われ、六に舗装されてもいない道を、本を読みながら歩く銀髪の女が一人いた
視界を本だけに集中して、危なっかしい歩き方でその獣道を進んでいく
銀短髪を揺らしながら歩くその姿から発せられる雰囲気は独特のもので、近づきがたい物
女、トマスは本を読み終えたわけでもなく、ふっと一息を吐いて俯瞰切っていた顔を起こした
目の前には、とても安息の土地とは呼べない、錆びれたゴッシク式の教会が開けていた
トマスの所属する組織の中では珍しい形を持った拠点であり、ここには何人か部下がいるはずなのだ
一般的な教会と同じく、日曜にはミサが開かれているはずなのだが、さすがにこの時間では無理だろう
大きな木製の扉を少し開けると、古びた音が無機質に教会の中に響いた
反響する音は人の気配がなく、恐らくだがあるのは十字架にかけられた主だけである

「噂には聞いてたっていうか何回も来てるんだけど、相変わらずここはひどいわね……」

トマスは片手に持っていた本を宙に浮かして、手持無沙汰になった両手で大きな扉を完全に押しやった
誰もいないことがやはり認められた。トマスは再び溜息をつくと、真っ直ぐと祭壇へと歩いていく
通常、祭壇に上がっていいのは決められた者のみが許されるのだが、トマスはその位置にあるのか
それともそのようなことに一切興味を持たないのかは解らないが、祭壇に上がって全体を見渡してみた
一般的なローマ・カトリックの教会。イメージとしてはケルン大聖堂をモチーフとして作られたと文献に書いてあったが
あまりにも老朽化したここは、とても住めるような場所ではない。少なくとも本で散らかっている自分の部屋のほうがましな気がする
確か地下は整備されており、人が住める程度にはなっているようだが――ミサを行えないのは致命的だ
もうすぐ、枢機卿が来日してしまう。明確な本拠地がないL.M.Gが会談するには場所が必要
それも組織の大本であるカトリック教会の枢機卿なのだ。自分がいくら嫌いと言っても相手をするからには環境を整えておきたい

「取り敢えず私も手伝おうかしらねぇ……できるなら黎明に代わりたいのだけれども……」

黎明に代わって力仕事を任すのもありなのだが、もしその途中で何かされたらたまったものではないし
黎明である間はできる限り部下に見せたくはない――一度ベアトリスに見せてしまった気もするが
とにかく整理整頓と掃除をしなければ話にならない
それ以前にここを守護するはずの部下が見当たらない。いったいどこにいるのだろうかと、トマスは口を噤んで耳を澄ました
人の足音か、警戒の色を見せない淡々とした跫音が庭の方で起こっている
作業中なのだろうか、ともなれば姿が見えなかったのも納得できる
トマスは祭壇から降りて、宙に浮かしていた本を手にかざして空間へとしまうと、音のほうへと近づいて行った

「こんばんは、仕事がんばってるようね……名前はえっと――」

作業を行う少女の背後へと、気配もなく現れるトマス
何の脈絡もなく現れた上司にどういった態度をとるのだろうか
603 :大神恭子/異端審問官 [sage]:2013/04/29(月) 01:14:35.16 ID:1crs8Hmjo
>>602
「……誰だ?」
同居人ではない。足音で分かる。ただ、知らない足音でも無い。
答えを待たず、振り返って確かめる。

どうやって自分に近づいたのか――関係は薄いが、一応知っている人物。バレンタインの良く分からない茶番を企画していたはずだ。

相手は自分のような異端審問官を取り締まる役職にある人物。自分の目の上の人物だ。
L.M.G.という組織で、目上の人物と会話をするのはこれが初めて。どのような態度で臨むべきか戸惑う。
「これは……当然のことを、しているだけだ」
結局、いつも通りの自分でのぞむことにする。

トマスには『仕事』と言われたが、大神にはそのつもりが無い。
この場所で寝泊りを繰り返している大神にとって、この教会はすでに安息の場所となっており、その整備は家の掃除をしているようなものだった。
だから、『仕事』という言葉がいまいちピンと来ないのである。

「大神――おおかみ きょうこ、だ」
洗濯物の中から、自分のマントを引き取る。乾き方がイマイチだが、仕方がない。
「突然、来るなんて? ……連絡をもらえれば、迎えに行ったのだが」
604 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 16:40:18.74 ID:BVIpy6+zo
【 スラムへ続く商店街 】
今日のクララは機嫌が良かった。
何故ならば大好きな姉と兄のうち兄であるシンラと買い物に来られたのだから。
この辺りは治安が悪いが代わりに物価が安い。消耗品を買うにはちょうど良い。
一緒に買物をする事でちょっとしたデート気分も味わえる。

「こんなところかしら」
例えばタオル、例えば石鹸。この手の物は安く手に入ればそれが一番だ。

上機嫌のままでクララはシンラに尋ねる。
「教祖にできる人ってなかなか見つからないわね。
 宗教団体にこだわる必要もないのかも。」
605 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/05/03(金) 16:55:53.82 ID:vqBvF5ja0
>>604
クララの横を歩く少年、アマツキシンラもまた同じく
平和なデートを謳歌していた
なにせスラム街では窮屈な女装をする必要もないし、愛しい妹と堂々と歩けるのだから
今のシンラにとってこれ以上に幸せなことなど、他になにがあろうか?
まぁ、タオルや石鹸などはシンラにとって余り必要なものとは思えなくて
ただにこにこしながら「うん。そうだね」、なんて間の抜けた返答しか吐けないのだけれど

次の質問にも少しだけ眉を顰めて
「うーん…ぼくには難しいこと良く分からないけど…
 教祖様じゃなくてもクララがアイドルみたいにまえに立つのもいいとおもうな!」

なんて、更におばかな言葉を返すことしかできず…
それでも暢気に幸せそうに、悪びれるふうも無く「クララはかわいいからみんなついてくるとおもうなー」、なんて間抜けな顔で呟くのだった
606 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 17:03:59.00 ID:BVIpy6+zo
>>605
「あら?
 偶像(アイドル)はわたしとお兄さまよ。わたし達は人間じゃない。
 お姉様だってその中に入っていい。死なない能力ですもの。」
 無邪気な顔で笑って答えた。
「欲しいのは教祖なの。わたし達のために働いてくれる教祖。
 わたし達のために尽くしてくれる教祖が欲しいのよ。
 子供や若い女の人だけだとトップに立てないわ。」

 さて、スポンジの安い店があったので立ち寄って二人で歩く。
「ねえお兄様。手をつないでもいい?」
607 :アマツキ・シンラ ゆるふわ女の子もーど [saga]:2013/05/03(金) 17:21:49.08 ID:vqBvF5ja0
>>607

「ん…、そうだね、確かにぼくたち怪物とおねえちゃんの力は似てるかも。
 でもおねえちゃんは人間だからいいんだよ? ぼくたちを受け入れてくれる人間。
 とっても素敵で、優しい人。 ぼくたちと彼等(にんげん)を繋ぐ大事なひとだもの! 」

 シンラは今の能力を御しきることが出来るなら、人間を怪物にすることも可能だと自覚しはじめている
 しかし、今のシンラは姉を怪物に変えようとは思わない。 数多の人間と関り自分が怪物であると言う事実を悲観的に受け止めることもなくなったが、それでもだ。
 無論、それは姉を仲間外れにしたいなんて理由ではなく、怪物である自分を受け入れてくれる彼女を人間として受け入れたいと思っているからなのだが。

「にゃー…、難しいねぇ、自尊心とかがすっごくたかいひととかがいいのかな?
 たとえばこんな街だったら、社会を捨ててでも偉くなりたがるひとはいるだろうけど…」
 
 問題は、その人間をどう説得するか──シンラは間抜けな顔を少しだけ引き締め考える、しかし。

「え、て!? いーけれど…、えへへ、ちょっと照れちゃうなぁ」

 すぐにアホ面がかえってきて、人喰いの怪物二人が歩いているなどだれも思えないほどの無害そうな笑顔を浮かべて
 けれども、笑みは照れくさそうに、少しだけ目を細めながら左手を差し出した
608 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 17:32:00.41 ID:BVIpy6+zo
>>607
「うふふふ、わたしは何も企んでいないわ。」
 そう言ってシンラと手をつなぐ。
「いや、企んでいるかもしれない。でもね。
 何も謀らずに生きて行ける世界がほしいの。
 だから人間にも野生を取り戻してもらわないとね。」

クララがそこまで話した所で女性の悲鳴が聞こえた。
そう、ここはスラムへ続く商店街。

だから人が来ない。
だから物が安い。

『きゃああ!やめて下さい!』
これだけの人通りがあるのに白昼堂々と若い女性に言い寄る男達がいる。
彼等はただ恋愛対象を求めているのではなく、あからさまにさらおうとしていた。
見て見ぬふりの通行人や商店の経営者達。

「お兄様、あのお姉さんを助けましょう。ちょうどお腹も空いてきたし。」
609 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 17:58:10.02 ID:vqBvF5ja0

>>608

「そうだね、ぼくはクララや大事な人たちと幸せに生きれるなら満足だけれど…
 それでも、ぼくはキミに望む世界をみせてあげたいな。
 だから、クララのためならなんでもするよ」

 微笑、小さく柔らかな手を握れば思わず零れてしまう。
 それだけシンラにとってクララとは大切で愛しい存在なのだ。
 倫理感を狂わせるほどに、世界を壊しても構わないと、思えてしまうほどに。

「お買い物からのお食事なんて、やっぱり今日はデートだね。
ここは男の子としてぼくにやらせてよ、クララ」

甘い言葉とは裏腹に、暴漢と女性を見据えるシンラの心中は穏やかではない。
デートを邪魔されたことと、女性に暴力を振るう男がいるという事実に、憤りをおぼえた。
シンラは生きるためならば犯罪さえも許されると信じているが、生と関連しない犯罪を犯すものは、ただの食料でしかない。

「このまえ、クララと戦ったかいがあったんだ。
 ぼく、ちょっとだけ面白いことも出来るようになったんだよ?」

 ──呟き、微笑む、シンラ。 
いつものように両手を組み、祈りを捧げるような動作を見せると、その背からは 『少女』が現れる。
 それは肉体を持たず、光で出来た幻影のようなもので、ゆらゆらと揺らめく翼を生やしたその姿は、天使か、はたまた女神を思わせる。

───ZustoβenUndine 

次いで、何処からか囁きが漏れる。 シンラは口を動かさず祈りを捧げたままだ
だが、その声に反応するように、女神はその指を暴漢へと向け、鋭利化したその指を、男へと伸ばし穿とうとする。
その動きは、明らかに先日のクララを意識したものであった
610 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 18:07:20.43 ID:BVIpy6+zo
>>609
頬を染める。
「お兄様がわたしのために何かしたいと思ってくれているなら、
 わたしもお兄様のために何かをしなくてはいけないかも…。」
嬉しそうにそう言うとさっきの騒動だ。
そこにシンラが前に立つ。
なんだお前?とチンピラ。そこで祈るような仕草のシンラ。
「お兄様?!」
しかしシンラの伸ばした指が早かった。
女に言い寄り、連れ去ろうとしていた一人は身体を貫かれる。
『な、なんだこれ?』これが彼の最後の言葉。

悲鳴は助けられた女性や商店街の群衆からあがった。
611 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 18:17:36.75 ID:vqBvF5ja0
>>610

「クララはこのままで良いんだよ? 
 クララがそばに居てくれることが、ぼくにとっての幸せだもの」

 女神とシンラの間に、感覚の共有は無いが、確かな手ごたえを感じて小さく笑む。
 思ったよりも使い勝手が良い。 これを生命探知と合わせれば 正確に心臓を付狙うホーミング機能を付けることも可能か
 悲鳴をよそに、シンラはぼんやりと考えた。 もとよりこの姿は指名手配犯の姿。
 今更罪を隠す必要もあるまい。

「でも、折角のデートが、やっぱり台無しだね。
 どうするクララ? それを持って逃げようか?」

 男の死体を指差し、首を傾げながら問う。
612 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 18:30:47.47 ID:BVIpy6+zo
>>611
「わたしはわたしで良いの?
 やっぱりお兄様はお兄様だわ。
 そう言ってくれるのはお姉様とお兄様だけですもの。」
クララはシンラに抱きつく。

そして女性に言い寄っていた男達は、
いや、むしろさらおうとしていた男達は走って逃げていった。

「逃げないわ」とクララははっきりと言った。
「助けたい人を助けたわたし達が悪い人達みたいに逃げる必要はないの。」
これは幼さからくる無知なのか、組織設立者の意地なのか。
「歩いて帰りましょう?その前にお豆腐を買わなくちゃ。」
613 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 18:44:39.38 ID:vqBvF5ja0
>>612

「そう、くららはクララのままで、ぼくの妹のままでいいんだよ。
 人を食べる怪物、可愛いぼくの妹。 それがクララ、可愛いクララだ」

抱きつかれ、照れくさそうに笑いながら、頭を撫でる。
自分だって数ヶ月前は、怪物であることに嘆き、葛藤していたこともあったが
そんな蟠りなど、たくさんの優しい人達の温かさで溶けてしまった。
ゆえに、怪物は冷たい手で、怪物の頭を撫でる。
その感触もまた優しく。 自分と違い、温かった。

「そっか。 そうだね。 さすがはクララだ!
 やっぱりキミは素敵だよ! ぼくの自慢のいもうとだねっ
…ところで、今夜のご飯はなぁに? 湯豆腐? 」

逃げない。そう堂々といってのける妹の姿は、どんなに誇らしいことか。
泣き虫のシンラは感動からくる涙を誤魔化すように、豆腐の将来を問うてみた。
湯豆腐、肉豆腐、きっとそれがなんであれ、家族と食べれば美味しいのだろうけれど。
614 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 18:52:27.46 ID:BVIpy6+zo
>>613
シンラの殺した者の流血の血溜まり。
それを気にせずシンラの手を寄せる。
「今日はね。お豆腐を油で揚げてから出汁で煮こむの。
 美味しいらしいわよ。」
他人の死は大事ではない。社会が騒ぎすぎるだけだ。
どうせ警官が来るまで数十分はかかるのだろう。
気にする事はない。

本当なら警官の存在すら気にしたくはないのだが。

ああ、通行人の無関心が心地良い。
これこそが野生という生き方だ。
615 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/05/03(金) 19:08:56.24 ID:D4l3EFOfo
>>614

「へぇ...手が込んでるねぇ...
楽しみだなぁ…えへへ...
でも、夕食前に食べてく? もってかえる? それ」

亡骸を一瞥し尋ねた。
クララの捕食方法を考えれば、ひとひとりなど五分も掛からないだろう

そして、悲鳴も止み
通行人もみてみぬふり
成る程、これが妹の理想なのか。 シンラは誰に向けるでもなく頷いた

「クララ...きみの望む世界はやっぱり
快適だと思うよ。 ぼくもきっと、嫌いじゃない。
ルールとか約束事が嫌いなおねえちゃんもきっと
賛同してくれると思うな」
616 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 19:35:01.14 ID:BVIpy6+zo
>>615
「少し可哀想だけれどね。
 あの人が死んでも仲間は彼のために悲しみも怒りもしなかった。
 でも、ゴロツキなんてそんなものかもしれないわね。
 大切な人がいる世界で大切な人だけ守れる世界。
 そのヒントがこの商店街にはあるの。」

 死体をみて喉をゴクリと鳴らす。
「人肉も長く食べてないわね。もって帰ってもいいかしら?」

 例えば弱い草食獣の群れがいたとする。
 肉食獣が現れた。そうすれば草食獣達は逃げるだろう。
 狩りは成功するのか失敗するのかわからない。
 だが成功すれば…食べてもいいんじゃないか?

 人間達はそうならないように工夫して生活している。
 ここまではクララの許容範囲だ。
 しかし、人が食われてしまっても『人肉の味を覚えた』などといい、
 人間達は野獣達を食うでもない目的でわざわざ狩りにいくのだ。
 それが許せない。捕食者が獲物を狩って何が悪いのだろう。

 それに人間達は楽しみのために狩りをし、剥製までつくる。
「お兄様。お兄様は人間に優しいから鈍感になっているけれど…
 お兄様。お兄様は人間も獣だという事を忘れていると思うの。
 人も獣も化物も同じよ。生きたがって、恋をして、子供を愛する。」

 そこまで言ってクララは一つの事に気付いた。
 酪農のおぞましさだ。「食べられるために育てられる動物がこの世にいる…」
617 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/05/03(金) 20:08:27.94 ID:Xzhp81Fto
>>616

クララの言葉を シンラは一言さえ聞き漏らしの無いように聞いていた
しかし、「お兄様は人に優しいから」「鈍感になっている」「人も獣も、変わらない」

この言葉が出た瞬間、何度も言葉が脳内で反響し
暫しの沈黙の後に
シンラの頬を 涙が伝った


シンラは 生命の価値 というものに対し
誰よりも平等であることを自負していたし、誇りにさえ思っていた
数ひきの動物を[ピーーー]くらいなら 一人の人間を喰らい生き延びる。
そう生きてきたはずだった

が、いつからだろうか

人を[ピーーー]ことが、妹のためになり
人を喰らうことが、ただの習慣となっていたのは

クララのいうとおり
シンラは忘れていた、忘れようとしていた
人に憧れるあまりに、己の価値観が崩れていたことに


「あ、ありがとう。クララ。
きみのおかげで思い出したよ。 そう、人も獣も変わらない。
でも、獣を悪として駆逐する人間もいるけど、
そういう人間"も"いるってことを...
忘れないであげてほしいな...きみには」

618 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 20:27:25.51 ID:BVIpy6+zo
>>617
シンラの言葉を聞いて頷く。
「お兄様…そう言う人間"も"いるのがいけないのよ。
 わたしも人間が好き。好きだから好んで襲わない。
 でもそれだけよ。」
 シンラの瞳を覗きこむ。
「人間が好きな化物は人を食べないわ。
 そうでないなら人間だって食べるの。
 それでいいじゃない?」


「自分が天敵に捕食されるのも自然な事じゃない?」
619 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 20:36:31.97 ID:vqBvF5ja0
>>618

クララがこちらを見つめる
思わず、背けたくなるような、真っ直ぐな瞳。

「確かに…そうかもしれないね。
 天敵がいたとしても、守りたい人を守りたい人間が、怪物が守ればいい。
 それでも食べられるなら、しょうがないのかも。
 いや、きっとそれでいいんだ。 そうできないから、人間達は、非道に走る。
 そんな人間¨も¨産まれるんだろうね」

クララの瞳に呑まれるように、シンラは頷いた
620 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 20:38:16.30 ID:BVIpy6+zo
>>619
「そうじゃなくて、自分にとって大切な人だけを大切にすれば良いんじゃないかな、って事。」
621 :ユニフォーム :2013/05/03(金) 20:47:44.32 ID:R1gyKPjro
【路地裏】

 夜の闇に融けるように、老人は車椅子に掛ける。
 その老人の前には、真新しい死体。
 
 その死体には無数の傷が付いており、老人の腰に据えられたレイピアにもまた、真新しい血がべったりと張り付いていた。
 老人は、枯れ枝のような指で老眼鏡にふれ、フレームを少しだけ押し上げて溜息を吐いた。
622 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 20:50:03.15 ID:vqBvF5ja0
>>619
「」>>619

大切な人だけを大切にすればいい
周りを見渡せば誰も亡骸に同情などしてはいない
先ほどもいっていた無関心、野生の姿か。
それも、この街の人間にとってこの男が大切な人ではないから、逃げていった男達の中でも、きっと

「単純だけれど…、難しいなぁ。
 とりあえず、そろそろ警察が来るかも。
 歩こうか、クララ」

シンラは先ほどの女神の右腕だけを作り
男を宙に浮かせると、クララに右手を差し出しだ
623 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 20:53:24.89 ID:BVIpy6+zo
>>622
「お兄様すごい」
 差し出された手をとって彼女はシンラを見ている。
 きっとこの人は今までできなかったことができる。
 本物の能力者、天部の才を与えられた存在なのかも。
624 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 21:03:59.00 ID:kDCJARBGo
>>621
「例えば、自分の行動の意味を考えたことがあるかい?」

車椅子に座る老人の背後から歩いてくるのは、真紅の髪をなびかせる少女。
少女の着るロングコートもまた、その髪の色と同じ。
それは少女の内なる炎か、それともこれまで歩んできた道の色か。

以前、一度あったことのある老人を見かけ、かつて面白いことを話していたヴィクターを思い出す。

「ヴィクターの行動は世間の何一つ変えること無く、そして死んだ。
 キミはどう? キミの行動で世間が変わると思うかい?」

両手をコートのポケットに入れたまま、また一歩ユニフォームへと近寄る。
ユニフォームの近くに転がる死体を見るに、今もまたこの老人の思想によって殺しが行われたのだろう。
だが、クリオネにはその行動を完全に理解することはできなかった。
ヴィクターも考え方は面白かったが、それが実を結ぶかどうかはまた別の話だと思うからだ。
625 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 21:07:49.35 ID:vqBvF5ja0
>>623

「ぼくがこんなことを出来るようになったのも、クララのおかげだよ?
 キミがぼくのために悪魔になってくれたから、全部、クララのおかげさ。
 だから、凄いのはきっとキミだよ、クララ」

この女神のモデルは、シンラの中に居るクララだ。
世界の改変を目論む彼女のイメージゆえに女神のように神々しく、美しく、力強い。
自在に姿を変え、無慈悲に命を刈り取る女神、それがこの形状の基盤であった。 

 しかし、そんなことを言ってみても、やっぱり妹に褒められたのが嬉しくて
 先ほどの真面目な話も忘れ、結局帰りはにこにこ笑顔。
 クララの目指す世界がどこにあれ、いつまでもこんな風にいたいな、とシンラは思う。
 毎回、毎回、帰路に着くたびに祈るのだ、空の上に居座る神にでなく、いつも、隣を歩む、自分だけの女神様に…
626 :ユニフォーム :2013/05/03(金) 21:10:01.01 ID:R1gyKPjro
>>624
「意味なんてないさ。ただ私は私のやりたいようにやっているだけだ」
 にっこりとほほ笑みながら、老人は言う。
 その笑顔はどこか、ぞくりとするような冷たさを秘めていた。

「彼は彼なりに立派に正義を成し遂げたさ。彼のことを悪く言うな」
 笑みは溶け落ち、老人はどこか憤慨したように言葉を吐き捨てる。
 それはまるで、孫を侮辱された祖父の様で。
627 :クララ(ブロンド美少女)ミミック [saga]:2013/05/03(金) 21:12:05.23 ID:BVIpy6+zo
>>625
「いつもの生活がね。
 いつもやってきてくれたら素敵でしょう?
 わたしが”社会”を潰したいのはそのためなの」

// すみません。疲れたので〆で良いですか?
628 :アマツキ・シンラ [saga]:2013/05/03(金) 21:16:08.98 ID:vqBvF5ja0
>>627
/ふへぇ、遅レスで申し訳ない...!
/ちょうどいいとこですし、〆にしましょう
/辛味ありおつでした!
629 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 21:19:41.29 ID:kDCJARBGo
>>626
「なるほど、キミの行動に大義なんて無いってわけ。
 ま、正義の味方でもあるまいしキミの行動にどうこう言うつもりはないけどね」

自分もまた、好きな様にやっている身である。他人をどうこう言う権利などもとより無い。
だが、この男の行動に終わりはあるのだろうか。
死ぬまで戦い続けるのか……いや、この老人ならいいそうな事ではあるが。

「ふふっ……なにそれ? 親心ってやつ?
 やめてよね、死んだらなんの意味もないんだから」

相手の怒りなど気にもとめないような口調。
相変わらずポケットから手を出さないまま、近くにある壁に寄りかかる。

「……じゃあキミなりの正義ってなんなのさ」

人にはそれぞれ正義がある。
司法や道徳では無い個人の正義。
この男は何を正義として生きるのだろうか。
630 :ユニフォーム :2013/05/03(金) 21:26:33.21 ID:R1gyKPjro
>>629
「私の行動に大義なんてないさ。全ての行動は、私の自己満足そのものなのだから」
 そして老人は、体を丸めて笑った。
「殺したいのならば殺せば良いさ。私はそれに足るだけのことをしてのけたのだから」

「……はは、そうだな。人は[ピーーー]ば、ゴミになる」
 自らに言い聞かせるように、老人は呟く。
 怒りはどうやら、霧散したようだ。

「……私の正義、か。これは難しい。しかし――」
 老人は、少し息を吸い込み、言葉を紡ぐ。
「――誠実であること、かな。40年以上続けてきた、私の『正義』だ」
 そして老人は、自嘲気味に笑う。
「はは、『誠実さなんて、むなしいだけの言葉』さ」
 古い歌の一節を口ずさんで、老人は悲しげに笑った。
631 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 21:38:19.26 ID:kDCJARBGo
>>630
「そりゃ一番たちの悪いタイプだね、止めようがないし……」

止める気など全くないクリオネがよく言う。
おそらくクリオネが何回生まれ変わっても正義の味方になることはないだろう。

「そのセリフは私に言うことじゃないね。キミを殺す理由なんてまるで無いし……
 ま、内心止めてほしいなんて思ってるなら引導を渡してあげてもいいけどね」

イタズラっぽい笑みを浮かべながら横目にユニフォームを見る。
大体、殺せばいいなんて言っているが、いざ殺そうとすれば抵抗するに決まっている。
殺せばいいなんて言うのは、殺そうとしてきても抵抗しませんという言葉と一緒に言ってほしいものだ。

「そうそう、だから私は絶対に死なないんだよ。成すべきことを成すまでは……ね」

語尾こそ冗談めかしているが、その言葉に冗談は含まれない。
今の自分にはすることがある……と。

「あっはっはっはっはっ! 
 キミから”誠実”なんて言葉が出てくるとは思わなかったよ。
 今まで死体を転がしながら誠実であるなんて言う奴は1人もあったことが無いよ」

クリオネは心底面白そうに笑い始め、ちらりと死体に眼を向けた。
”誠実”なんていうのは善の世界に入り浸っているお人好しか、お固い公務員が言うものだと思っていたからだ。
632 :ユニフォーム [saga]:2013/05/03(金) 21:46:50.25 ID:R1gyKPjro
>>631
 くつくつと喉を鳴らし、老人は笑う。
「気に入らなかったら殺せば良いさ。私がそうしているのと同じように」
 老人は悲しげに笑い、そう言った。
 死にたがりなのか、それとも試しているのか、それはわからない。

「成すべきこと? 君がなすべきこととは、何かね?」
 老眼鏡ごしにクリオネの瞳をみつめ、老人は問う。

「ふふ、私も似つかわしくない言葉だと思っているよ。だが……」
 ふぅ、と大きく息を吐いて、老人は言葉を紡ぐ。
「『俺』は、誠実の名のもとに、多くの人を殺してきたから。もうこの『正義』は変えられないんだ」
 老人の体が、異様な音を立てながら変形してゆく。
 皺は消え、枯れ枝のような指には肉が突き、そして……。
 彼は若返っていた。
 外見はおそらく、20代前半だろうか。
633 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 21:48:49.01 ID:8rs95q75o
>>631>>632
/*乱入したいのー……*/
634 :ユニフォーム【外見年齢25】 [saga]:2013/05/03(金) 21:49:59.57 ID:R1gyKPjro
>>633
いいよ!こいよ!
635 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 21:58:54.08 ID:kDCJARBGo
>>632
「それなら尚更キミを殺す理由はないよ。
 私はキミが好きだからね」

下らない正義感を振りかざすような奴よりも、堂々と自分のやりたいことをやると言う奴のほうが好きだ。
それに、そういった奴のほうが信用できる。
キレイ事を並べて腹の中を隠す”善人”などまるで信用ならない。

「ひ・み・つ……細かいことはここじゃ言えないよ。
 でもね、私はかつて光を見たんだ。こんな下らない世界の中でね……
 だから私は取り戻す、光を……そして今度こそ、誰にも奪わせはしない」

言えないと言いつつ、言葉を紡いでいく最中にだんだんと自分の世界に入り込むように、その言葉はやがて独り言のようになっていく。
その言葉の最後は、すでにユニフォームの方を向いては居なかった。

「へぇ……それがキミの能力、手の内だね。
 その能力を使って、誠実の名のもとに殺しを繰り返す……いいね、面白い」

一瞬驚いたような顔をするも、それは直ぐに笑みに変わり、外見の変わったユニフォームをまじまじと見た。
車椅子の老人がこれまで戦えてきたのはこの能力のおかげなのか。

「面白い能力だね……ていうかそれ私も欲しい」

なんと便利な能力か。
自分の外見を変化させられるということは、潜入任務も楽だし何よりずっと若い体でいられるのだ。
636 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 21:59:12.35 ID:kDCJARBGo
>>633
来なさいよっ!
637 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 21:59:17.41 ID:8rs95q75o
>>631>>632
「――その正義、悪の権化である僕が肯定しよう。
初めまして、ユニフォーム・エクスレイ。そして久しぶりだね、クリオネ?」

声が聞こえた。子供のように甲高いのに、老人の様に枯れ果てた声。
老いと若さを共存させ、性別は声変わり前故に何方とも取れる曖昧さ。
悪人にも思えるし、善人とも言えるかもしれないその不思議な色彩を持つ声を色で表すならば、絶対の白。
その白が悪か善かは見るものが決め、白自体はただ白としてそこに存在していた。

素足がコンクリートに触れ、ローブの裾が風に吹かれてざわりと揺れる。
その揺れに混ざるもう一つの白は足元まで伸びる長髪。その色彩も純然たる白。
ローブの胸元から覗ける胸板は極めて薄く、肋すら浮く有様。
袖から伸びる手もまた、重病人かのようにか細く、触れれば折れるかのように薄っぺらい肉体だ。
顔立ちも幼く、理知的な色は感じさせるものの普通の青少年の域を出ないもの。

誰が見ても分かる程に、この少年とも少女とも取れない存在は、弱々しい生き物だ。
だがしかし、誰が見てもこの生き物は、一度見れば記憶に刻み込まれる強い存在感を持っていた。

――灰色の瞳。

その瞳に宿った、絶望とも希望とも取れない、しかし底知れない意志の光がそこには有ったから。
だからこの生き物は、弱くともきっと、強かった。
口元には微笑みを欠かさず、目元は柔和に細められ。
白の化身は歩みを一歩前に進めた。

「君たちのなすべき事を僕は否定しない。
だから僕も、僕のなすべき事を成そうと思う。――そうだろう、クリオネ?」

くすり、とクリオネにいつもの様に微笑みかける生き物は、敵意も悪意も欠片も抱えていなかった。
この純粋の塊こそが、この世界に敵対し、無数の死者と戦場を生み出した円環の楽園の盟主、リドル・メイザースであった。
638 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 22:01:01.96 ID:8rs95q75o
>>634>>636
/*久々で遅いかもだけどよろしくお願いしまするのー*/
639 :ユニフォーム【外見年齢25】 [saga]:2013/05/03(金) 22:08:14.16 ID:R1gyKPjro
>>635
「はは、君は人を見る目がない……」
 相も変わらず自嘲気味に、『青年』は呟く。

「光、か。懐かしいなぁ。俺も、昔は本当に正義の味方だった。本当に光を求めていたのに」
 クリオネにむけて、言葉を紡ぐ。
 君は一人ではない、とでも言いたげに。

「あぁ。手札はこれで全てだよ。あの若造……ヴィクターほど面白い能力ではないが、存外に役に立つ」
 そして老人は、車椅子から立ちあがった。
「良いことばかりではないさ。この能力が解けたら、俺はまた老いぼれになってしまう」
 くつくつと、喉を鳴らして青年は笑う。

>>637
「悪の権化? はは、面白いことを言う。私に殺してくれとでもいうつもりかね?」
 青年は、笑いながら言った。
 灰色の瞳を見ても、たじろいだりはしない。
 彼は死にたがりの戦争屋。争いを好む、筋金入りの戦争狂だ。
//よろしくですの!
640 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 22:20:17.29 ID:kDCJARBGo
>>637
「うぇ……」

その知った声を聞くやいなや、目を細めて”見つかってしまった……”と言わんばかりの声をひねり出す。
相手は一応、自分の上司に当たるメイザース。
が、正直言ってこのメイザースは好かない。というより、苦手といったほうがいいだろうか。

「仰せのままに、ご主人様。
 でも、日本からいきなりドーバー海峡に呼び出したりするのは勘弁して欲しいんだけど」

メイザースは何を考えているのかまるで分からない。
故に信用出来ないし、出来る限り近寄りたくない。
手の内が分からない相手は苦手なのだ。

そう、所属する組織のトップだろうと信用しない。
あくまで自分の目的を達成するための駒なのだ。自分以外は全て駒。
目的の為ならすぐさま裏切るし、必要ならばメイザースを……

>>639
「見る目があるかないかは自分で決めることにするよ。
 少なくとも今のところ、自分の目に疑いは持ってないね。
 私は自分に被害のない範囲で面白いことをしでかす人間が好きなんだよ」

クリオネからすれば、ヴィクターの行動もユニフォームの行動も、面白い見物対象の一つ。
事が動く様を外から眺めて楽しむのが、クリオネの趣味だ。

「堕天したってわけかい? ははっ、それがどうしてこんな道になったのやら。
 光を失うほうが悪いのさ……あの時私は、その光をこの手にとどめておく力がなかった」

組んでいた腕をぎゅっと引き締め、体を抱くようにするも、その眼は鋭かった。

「それでも便利な能力には違いないよ。
 それは……戦闘力も上がるのかな……?」

ただ外見を変えるだけなのか、なにか別の効果があるのか。
ヴィクターといい、ユニフォームといい飽きない能力者だ。
641 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 22:27:04.82 ID:8rs95q75o
>>639
「君が僕を殺そうというのならば、僕はそれを止めようとはしないよ?
僕は君の正しさを否定しない。確かに僕は、この世界の多くから見れば紛れもなく悪。
だから、言い訳はしないし、君が僕を殺そうとするのも受け入れることが出来る。
かといって、死ぬかどうかは別の話だけれどね。僕にも目的が有るから」

青年の言葉に対して、少年はいつもと変わらない態度をとる。

――メイザースは肯定し、否定をしない。ただ目的を貫くだけ。

だから、どんな悪党だろうが、どんな聖人だろうがメイザースの前では人でしかない。
平等の視点に立ち、メイザースは平等の視点を持ったまま人を殺せるし、善悪の律を抱えたまま大悪に手を染めることが出来る。
その目的の理由≠ノついては、メイザースは多くを語ろうとしないが。
それでも、簡単に死ねない程度の信念は、この掴みどころのない少年ももっているようだ。

「ただ、君の有様は好ましい。己の正義を歪んでいると知りながら貫く有様は、僕から見ると美しいよ。
正義の盲信者よりも、迷い、歪みながら進むもののほうがより強い。
鉄が叩かれてしなやかに、強靭になるように、荒んだ正義の方がやはり強いし美しい。
純粋で高潔で有れば有るほど、一度汚れれば取り返しの付かないことになってしまうから」

何かを見て、何かを知ったのだろう言葉。
そして、メイザースは慈しみを感じさせるような態度、好ましさを感じていることを全面に押し出した態度でそこに居た。
相手の発言が物騒な方向にとぼうと、メイザースが揺らぐことはない。
己の中に善にも悪にも冒されぬ、純白の柱を持っているが故に、価値観をそう崩されることは無いのだ。

>>640
「安心して欲しいかな。もう僕らは移動手段を確立しているわけだしね。
直ぐに君も駆けつけることは出来るだろうし、飛行機のチケットも国境も関係ないからさ。
まあ、もう少しだ。あと幾度かの後に、僕の目的は一端を達せられる。
それには君がここに居る目的も絡むかもしれないしね」

笑みを崩さない灰色の瞳は、大きなゆらぎを産むことが欠片もない。
だからこそ、どこまでも人間らしいような振る舞いをしているというのに、どこか人間味が薄い。
警戒心の強い人間――例えばクリオネのような――ならば、不気味さや警戒を感じてもおかしくはない。
そしてメイザースは、澄み切った灰色の瞳をじぃ、とクリオネの瞳と交錯させて、口を開く。

「いやはは、随分と苦手意識を持たれているようだねえ。僕としては君の在り方も好ましいんだけど。
――やっぱり僕みたいなのは信用できないかい?」

苦笑を浮かべながらの問いは、瞳を通してクリオネの思考の一端を読んだかのような発言だったろうか。
しかしながら、やはりいつも通り悪意は無いし、威圧感など欠片もない。
だというのに、裏切る可能性のある相手の前でも無防備な姿を晒しているのだった。
642 :ユニフォーム【外見年齢25】 [saga]:2013/05/03(金) 22:31:43.39 ID:R1gyKPjro
>>640
「ほう。それは良いことだ。未来ある若人を非行の道に進ませるのは気が引けるからね」
 そして、青年はひとしきり笑う。

「私は軍属だった身だ。その時に君には想像もできないほどの罪をかぶっている」
 慰めるように、諭すように、青年は言った。

「それは切り札だよ。私と殺し合いをしたくないのなら、それ以上俺の能力を探らないでくれ」
 悲しげに、青年は言う。

>>641
「は、手前からケンカを吹っかける度胸はないってか?」
 先ほどまでの穏やかな口調が嘘のように、荒々しい言葉遣いで青年は言う。

「俺は俺だけに好かれれば良い。お前に好かれてもうれしくはないね」
 けんか腰に、青年は言う。
 彼の素なのか、それとも戦いの火ぶたのためなのか、それはわからない。
643 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 22:47:29.66 ID:kDCJARBGo
>>641
「まぁあれは便利な代物だよ。いざというときの逃げに最適だし。
 今度勝手に部屋を作らせてもらうよ」

まだ海から出したばかりの船で、ほとんど中身が手付かずだ。
部屋の割り振りなど言われていないので、早い者勝ちだろう。自分の城を作ってしまおう。

便利とはいえ、この船もまたメイザースに対する不信感を増長させる材料となる。
一体どこからあんなオーパーツとも呼べる代物の情報を得てくるのか。
いつも最低限のことしかこちらには言わず、手の内を見せない。

クリオネはいつもの笑みを見せず、眼だけでメイザースの方を見るだけ。
そこには信頼関係などまるで無い。

「信用しろって方が無理でしょ。
 カードを見せない相手とは距離を取れってね……
 もっとも、にこりと笑って猫なで声でご機嫌取りでもした方が良かった?
 そうしないと今後協力しないと言うならしてあげるけど」

とは言うが、相手は組織のトップ。
手札を見せろという方が無理だが、もうこれは癖だろう。
まぁ、相手が誰であれクリオネが手放しで信用できる相手など何人いるのか。

>>624
「非行の道って……まるでお固いおじさんだね
 ……ってもうおじいさんだったか。
 非行の道に進ませたくないっていうなら残念、もう進んじゃってるからね。生まれた時から」

気づいたらスラム街に居たという状況で、非行に走らないで生き残る術はあったのだろうか。
一瞬そんなことを考えてみたが、どういうルートを想像しても途中で死ぬか非行の道に走っている。

「罪の量なんてどれほどに重要なのさ。
 生き残って目的を達成出来れば過程なんてどうだっていいでしょ。
 ……そうは思わない?」

軍の裏事情に精通しているわけではないが、噂程度には聞くことがある。
特に戦争中なんていうのは、国のためという大義名分のもとやりたいほうだだろう。
だが、それが一体何だというのか。結果的に勝てばいいというのはクリオネの持論だ。

「おっと、怖いから聞くのはもうやめておこうかな。
 キミとは戦いたくないよ。分からない事がある相手とは極力戦わない主義だからね」

戦うのは相手の情報を集め終わってから。
それが基本的な戦い方としているが、そもそもユニフォームと敵対する気はないのでこれ以上の詮索は止めにする。
644 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 22:48:36.59 ID:kDCJARBGo
安価ミス
>>624 → >>642
645 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 22:52:22.08 ID:8rs95q75o
>>642
「僕は℃繧「からね。だから僕は仲間を集めているのだし。
だから僕は君に挑まない。火蓋を切るのは僕ではないよ、君が切るというなら僕は否定しないけれど」

相手の有様が荒々しくなったとしても、柳に風。大海の水面が揺れようと水底まで波紋が広がることはない。
揺らがぬ様。膨大な魔力どころか魔力も気も異能の気配を何一つ感じさせぬまま、そこにメイザースは或る。
ある意味では、この少年のこの振る舞いは虚勢と取られてもおかしくはないだろう。
なにせ、実力の裏付けたるものを一つとして示すこと無く、しかしながら異能者を眼前としながら怯え一つ見せていないのだから。
能力魔術無しで強いと思考することも出来るだろうが、この少年の身体を見ればそれもあり得ないと分かる。
だが、少年は己を弱いと嘯き、魔術も能力も晒さずに相手の荒々しさを受け流した。

「確かにそうだ。君のその思考はごもっとも。だから否定をしない」

青年の喧嘩腰を前にして、メイザースは子供をあやすような柔和な態度を執る。
そしてまた、メイザースは肯定≠オた。
敵対者すら受け入れ、悪性を抱きしめ、善性を愛す。それがメイザース。
だから、敵対者が眼前にあろうとその振る舞いは変わることはないし、メイザースから火蓋を切ることはない。

「ただし」

とメイザースは言葉を繋いだ。
灰色の瞳は、変わらぬままに。ただユニフォームの瞳を真っ直ぐに見ただけ。
魔力は発露しない、魔眼など無い。ただ、灰色の球体が無機質に正義を観察していただけ。

「――そこの娘、クリオネは僕の同胞でね。僕を殺されると彼女は困る。利害の関係だからね。
だから僕が殺されるならば、彼女は僕に対する好悪は置いても、君と闘うこととなるだろう。
それを望んででも君が火蓋を切りたいのならば、僕は君のその勇気を肯定する。
さて、ユニフォーム・エクスレイ。僕は選択をしない、選択権は全て君にある。君は自由だ」

メイザースは、ユニフォーム・エクスレイの人間味に語りかけるような発言をする。
それを踏み越えて己を殺しに来るならばそれで良い、それを肯定する。その勇気を認める。
そこで踏みとどまり、冷静さを保つのならばそれが良い、肯定する。その仁愛を讃える。
どう転ぼうとも、メイザースの中では好ましいこと。だから、どうしてもいい。ユニフォーム・エクスレイは自由だ。

「好きにすると良い=v

大人とも子供とも女とも男とも悪とも善とも人とも人外とも取れる、万能の白の声。
あいも変わらずの笑みのまま、悪の組織の長≠ヘそこにいた。

>>643
「――とまあ、こんな感じなんだけれど。ここで僕が殺されたら、クリオネ。君は困るよね?
君の目的を達する為に、利害関係だけで僕らは組んでいるのだし。
情を抜きにしても、僕の死は君の不利益となる。ある意味感情よりも確かな繋がりだ。信用はなくともね。
だから今はそれで良い。いつか君が僕らの組織を依り代とするのならば、それもまた良し、肯定し受け入れるよ」

手札を見せぬまま、しかし手札を見せることを求める是非は是と認めて。
そして、信用は今は得られぬままでも良いとした。
646 :ユニフォーム【外見年齢25】 [saga]:2013/05/03(金) 22:57:33.42 ID:R1gyKPjro
>>643
「あぁ、それは残念。至極残念」
 ゆっくりと首を振り、青年は言う。

「もともと、俺たちは使い捨ての戦力さ。この年齢まで生きるとは思ってもいなかったがね」

>>645
「は、そうかい」
 冷たく吐き捨て、青年は言う。
 至極興味なさげに、しかし、どこか興味深げに
647 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 23:11:03.29 ID:kDCJARBGo
>>645
「人をボディーガード扱いするのはやめてよね。
 キミのそういうところが嫌いなんだけど」

だが、実際メイザースが窮地に陥れば助けなければならないのがクリオネの置かれた立場。
もっと言ってしまえば、メイザースはクリオネを切れるが、クリオネはメイザースを切れない。
利害関係とは言うが、その実圧倒的にメイザースが優勢に事を進められる。
いくら嫌でもなんでも従うしか無い。
どんな理不尽な命令だって嫌々ながら従わなければ、目的にはたどり着けない。

「まぁでも、ユニフォームは事を構える気無さそうだし今日のところは大丈夫でしょ。
 大体、ボディーガードならもっと忠誠心の高い奴に頼むんだね」

組織にはメイザースに忠誠を誓う奴がいくらでもいる。
むしろクリオネのようなメンバーはイレギュラーな為、ボディーガードをクリオネに言うのは最高にミスキャストだろう。

>>646
「ホントに残念がってる訳? ふふっ、お父さんじゃあるまいし。今更非行がどうこうなんて言われるとは思わなかったよ」

非行とは言ったものの、クリオネ自信は今までの行いを悪いとは思っていない。
一般的には悪いことだとわかっているが、主観的には悪いことではないのだ。

「せっかく生き残ったのにやってることがこれなわけ?
 もっと余生を満喫したらいいのに……」

生き残った後にもまた戦いに赴く。
戦闘狂か、死にたがりにも見える。

//申し訳ない、そろそろ離脱しまする。
//次かその次くらいに抜けます
648 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 23:18:04.27 ID:8rs95q75o
>>646
「ああ、そうだ。僕はそういう人間だからね、そうするしかないのさ。
不快に思ったならばそれでいい。そう思うのも当然だろうからね」

青年の態度に見える二面性を前に、メイザースはまた肯定。
メイザースに興味を持ったとて、そう多くの情報は振る舞いから見えはしない。
強いのかも、弱いのかも、年齢も、何も。この少年は確かなモノの多くを覆い隠していたから。

>>647
「別にボディガード扱いという訳でもないんだけれどね。
まあ、守ってくれると期待はしている訳だし、そう言われても文句は言えないんだけど。
ま、僕も君に危機があれば駆けつけるさ、出来るかぎりはね。
といっても、僕は戦わないから余り役に立たないかもしれないけど」

ボディガード扱いしているとの事に、少しだけ困ったような表情を浮かべてみせて。
そして、メイザースはやはりというか何というか、当然のように己の手札を見せることはなかった。
何が出来て何が出来ないのか、円環に長く居るものすら、そう多くは知っていない。
もしクリオネが試してみれば、案外たやすくメイザースは死ぬかもしれない。しかし、死なないかもしれない。
どうなるかは、メイザースしか知らないのだ。これが、メイザースの汚い所だろう。
徹底して己の全てを覆い隠し、相手の想像をひたすらに煽り、容易に動けなくしてしまうのだから。
ある意味、その振る舞いこそがメイザースの実力と言えるかもしれない。

「いやいや、ボディガードが必要なことになれば僕は迷わず逃げるからね。
だから僕にボディガードをつけるのはあんまり意味が無いかもしれない。
それに僕の散歩についてくるのはきっと面倒だろうし」

メイザースは神出鬼没だ。くるりと振り返って一歩歩けばそこから消えてしまう。
そんな彼に逐一付いて歩くのは、苦行といって間違いない。

/*りゃうかいですようー*/
649 :ユニフォーム【外見年齢25】 [saga]:2013/05/03(金) 23:21:14.88 ID:R1gyKPjro
>>647
「この年になると、若人を見るのが楽しみでね」

「戦争で歯車が壊れてしまってね。これぐらいでしか生きられないんだよ」
 数十年前からの狂人の性は、構成できないほどに歪んでいた。

>>648
「はは、結構結構。私に怖じずに良く言ってのけた」
 笑いながら手をたたきながら、青年は言った


//すいません、ちょっと私用ができたので落ちます。お相手ありがとうございました。
650 :クリオネ [saga]:2013/05/03(金) 23:32:26.08 ID:kDCJARBGo
>>649
「それ、隠居した爺さんのセリフみたい……」

年齢的には間違っていないのだろうが、いざ言われてみるとなんともじじ臭い。
今、ユニフォームの外見は若い為なんとも違和感がある。

「そうだね、一度狂った歯車をもとに戻すのは難しい」

いや、無理かもしれない……
そう言いかけた口をグッと力を入れて閉じ、口から出ないようにする。
出せば、本当に無理になってしまうかもしれないから。

>>648
「期待しないで待ってるよ。
 私はキミにそういうことは期待してないし……キミに期待しているのは一つだけだから」

なにとは言わないが、クリオネが組織に入った理由はひとつだけだった。
それさえ達成出来れば他はどうでもいいと言えるほどの。

もとより助け合いを是とする組織でもないだろう。
仲良しクラブでもあるまいし、組織に入る前も入った後も、他者を当てにしないスタンスは変わらない。
故に、自分一人では達成できないこの目的に歯がゆさを感じることもある。

「そういえばそういう奴だったね。
 だったらユニフォームを挑発した上で私の名前を出すのはやめてよね。
 自分が巻き込まれる面倒事は好きじゃないし」

面倒事は外から見るから面白いのだ。
巻き込まれては面白さを感じる余裕がなくなる。

「じゃあ、私は帰るよ。
 次の作戦はもう少し楽なので頼むね」

そう言って片手を上げたクリオネは、路地の闇に消えていく。
いつか……いつか必ずこの手に光を。

//私もこれで失礼します
//ありがとうございました
651 :メイザース [saga]:2013/05/03(金) 23:34:14.32 ID:8rs95q75o
>>649>>650
去っていく二人を見送って暫くメイザースはそこに佇んでいて。
ローブの裾が蛭が得れば既にそこには居なかった。

/*おつでしたー!*/
652 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/05/12(日) 17:24:48.00 ID:wUi3UE2go
深夜の静かな街。
辺りは静寂と暗闇に包まれていて、人の気配もほとんど感じられない。
眠ってしまった街。もしなにが起きたとしても、その出来事は闇につつまれてしまうことだろう。

「面白げのない、お仕事でした」
夜空に輝く月へとため息を吐きだすのは、闇の中でもよく目立つ桃色の髪の毛をした少女。
自分の仕事への不満を吐きだしているのであった。
「まあ……お仕事ですから、しかたがないのですけれど」
少女の隣を、真っ黒な犬が歩いている。
真夜中に現れる不審人物から身を守るには、とても心強い味方だ。

「ああ……なんでしょうかねぇ」
仕事に不満はない。ただ、ものすごく『退屈だ』という気持ちを抱えながら少女は歩いていた。
653 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/05/12(日) 17:59:23.95 ID:ZfP95oXZo
>>652
彼女の、少し向こうから
音が聞こえる─────ずるずると...
何かを引きずるような音が...

暫くすると 彼女の元に、小さな少年が現れる

栗色の癖ッ毛をふわふわと揺らしながら
無害そうな顔に似合わない黒コートをはおり
ヒトガタに膨らんだ袋を引きずった、少年が


「こんばんは。 おねえさん。
こんな夜中にお散歩ですか? 」


少年は女を見つけると、少し怯えたような表情を浮かべながら
首を傾げた


余談だが、少年はいま、数件の殺人容疑をもつ指名手配犯として
裏社会を騒がせているのだが...女は果たして、気付くだろうか...


しょっぱなおくれてすいませぬぅ!
654 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/05/12(日) 18:13:15.94 ID:wUi3UE2go
>>653
「……はえ?」
確かに退屈は抱えていた――しかし、この重苦しい退屈が晴れるような奇妙なことがおこるとは思っていない。
起こるはずがない。いくらなんでも、そんな都合のよいことは――しかし、こんな夜更けで誰かに出会うという考えは無かった。、
そのため、誰かに声をかけられたというのは、非常に驚きであった。

「こんばんは、ええと……」
声の主は幼い人物のようであった。 それはこのような時間に、一人で出歩くような年齢の人物ではない。
なにか妙だ。 そう考えて訝しげに表情が険しくなった。

「いいえ散歩ではありませんよ。
これから、家に帰るところでした……」
正体が分からない相手。とりあえずは好意的に質問に答えておく。


『ガルウゥウゥウゥゥx……』
「こら、ハウンド!」
野生の感性は、すでに相手の正体を捕えているのだろう。傍らにいた黒犬は警戒をするように低い声をあげていた。
しかい、リリアーナに制止をされてすぐに静かになる。よくしつけされているのだろう。
「ごめんなさい、本当は怖い子ではないのですよ……」
655 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/05/12(日) 19:01:48.44 ID:ZfP95oXZo
「わ...可愛いわんちゃんだね...
そっか、帰りかぁ。 ぼくと一緒だ」

犬、嗅覚が鋭く、そのうえ良く仕付けられた犬
彼へと向ける少年の目は、ひどく怯えていて...

「あは、あはは...ぼくの名前は、シンラです...
よかったら、一緒にかえらない...?」

思い付いたように、目をキョロキョロとさせながら
たずねてみせた


シンラ自信は慎重に包装したつもりなのだが...
やはり、漏れだしている、隠しきれない死の香り

確かにただよう 袋の中身
犬には 下手をすれば女にも感づかれるほど...
ふしゅうは隠しきれていなかった


/遅れてごめんなさい...雑でごめん際...!
656 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/05/12(日) 19:23:05.05 ID:wUi3UE2go
>>655
「可愛い、ですか?」
ハウンドは黒くて大きい分類に入る犬。
もちろんかわいらしい所も沢山あるのだが……初対面の人物には怖がられることが多い。
「ふふふ……ありがとうございます。 このこも喜んでいるみたいです」

「怖がらなくても大丈夫ですよ。おかしな人が相手でもなければ、噛んだりはしませんから」
おびえた視線に気がついて、あまり怖がらせるのも良くないので言葉で伝える。
逆にいえば 妙な動きをすれば、すぐに犬に噛まれるということだ。

――警戒はするが、危険な人物だと決めつけるのも良くない。
「ええ……道が大きく離れないのであれば、一緒に歩きましょう。」
退屈であったことを思い出して、少年の提案には頷くことにした。

犬は鋭い。きっと異質な臭いに気が付いているのだろうが、リリアーナに口止めされてしまったので、黒い眼光を光らせているのみである、
傍らを歩く少女はというと、年頃の娘が身につけるような香水の匂いで、今は気が付いていなようである。

「それで、こんな夜遅くにどうしてひとりでいたのですか?」
無言で歩き続けるわけもなく、当然の疑問を少年に投げつけることにした。

//遅くなってすいません。ちょっと忙しくなってしまいまして……orz
657 :あまつき・しんこ / 女の子だよっ [sage]:2013/05/12(日) 19:48:39.68 ID:gOfkLhTFo
>>656
「えへへ...みためはおっかないけど、あたたかそうで可愛いです...」


可愛い...けれど、やはり警戒の対象
人の命を食らう怪物は、やはり常人とは体からして違うし
妹の食事である袋の中身を捨てるわけにもいかない

「うーん...ぼくは、食事かなぁ...?
あっ、おねえさんは、こんな時間までなにしてたの!?
こんなおっきいわんちゃんまでつれてさ! 」


質問に正直に応えてしまい
ごまかすように問い返す
658 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/05/12(日) 21:47:13.95 ID:wUi3UE2go
>>957
「触ってみても大丈夫ですよ。
おとなしい子なんです、人にもなつきやすいですし……」
少年へと微笑んでみせる。

「食事……ですか?」
これはまた妙な答えが戻ってきた。
「あー……ええと、あまり遅くに食事をとると、身体に悪いと思いますよ」
少なくとも、自分にはそうである。この体系を維持するためには苦労も多かったり少なかったり。

「私は、お仕事をちょっと……」
少年相手にどこまで話していいのかを悩む。
胸を張って大口を開いて騙れるような仕事ではない。
「用心棒、みたいなものです。この子と一緒にね」
と、犬の頭を撫でながら。
659 :シンラ・アマツキ [saga]:2013/05/12(日) 22:17:19.76 ID:r0uvH1g60
>>959

「え、ほんとに!? えへへ、かまれないかなぁ…」

女の言葉を聞いて、犬に目を移す。 黒くて大きい…犬というだけで可愛くはみえるけれど
自分の本質に気付かれる可能性もあるのだ…うかつには…

「じゃぁ、ちょっとだけ! 」

なんて考えも、犬を触ってみたいという欲求には逆らえず
にこにこと犬に手を伸ばす。 

「ぼくはほら…食べ盛りだから…!
 ん…? 用心棒? えー、じゃぁ、おねえさん強いの!? 」

手が届くか否かのところで
パッと顔を輝かせ、女性の方へ向き直る
無害そうな顔をしていながら、存外、戦闘狂の類なのか

意識をせずとも、その体から漏れ出ている
魔力に似て非なるナニカが
もし彼女が魔力などの類を認識できる存在であれば、若干の敵意を伴ったそれに気付くことも容易だ
660 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/05/12(日) 22:44:23.11 ID:wUi3UE2go
>>659
「本当に大丈夫ですって、噛みませんよ」
片手を腰に当てて、胸を張りながら言う。
「自信ありです、コレは誓ってもいいですよ」

腕を差し出されても、犬は大人しいままで暴れたることはない。
ただ、素っ気なくそっぽをむいたままで、可愛げや愛嬌も全くない。

毛はツンツンに整えられており、やはり可愛げは感じられないだろう。
ペットというよりは、やはりどうもうな狩人といったところだ。

「食べ盛り……?」
先ほどから、微妙に会話がかみ合っていない気分である。
しかしながら、自分には理解できない何かがあるのだろう。 いまはあまり追求しなくてもいいはずだ。
「でも、食べ過ぎには気を付けてくださいよ」

「いえいえ、強いってことはありませんよ。
ただ、そういう仕事に向いた力があるってだけで……」
よろこんでいる? ――の、だろうか。この少年の目は。――単に犬に触れる直前だったたけということも否定はできない。

「……あの、妙な質問になりますけれど、あなたは一体なにもの者なのでしょう?」
意識を集中させれば、妙な力も感じる。普通でないことは確かだ。
661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/05/26(日) 03:47:01.36 ID:/VtKIHmXO
誰も居ない御様子ですね〜
662 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(青森県) [sage]:2013/05/26(日) 03:55:05.51 ID:qvTjlt38o
>>661
避難所の方にはいつも誰かがいるので、そちらにいけば、色々とできるはずですよ
663 :トマス【副官長】 [sage]:2013/05/27(月) 21:32:25.64 ID:BynoXtgBo
>>603
少し嗅ぎなれない匂いが鼻腔の奥に届いた。少し顔を顰め、くしゃみを一つすると間の抜けた顔で天を仰ぎ小さく喘ぐ
草の香りと共に、瓦礫などの小さな粒子が鼻に入ってきたのだろう。よくこんな環境で仕事ができるものだ
鼻の頭をかきながら、振り返った大神の目を一瞥する。周囲を見れば数日では終わらなそうな環境が整ってしまっている
冬の冷たい風を薙ぎながら大神の横に行き、一緒になって作業を始めた
手には薄手の絹でできた黒い手袋を着けており、汚れは気にならないだろうが作業をするには危なっかしい
その様なことも気にせず、トマスはただ瓦礫の一つを両手で持ち上げた

「よっこらせっ……おぉ、重いわ……よくこんなもの一人で持ち運びできるわね
私なら三日で飽きちゃうわ。それに、こんなところで寝泊まりしてたら貴方、アレルギーとかでないの?」

初めて会った部下にいきなりの説教。これでも思いやりを持って言っているつもりらしい
トマスは自らの表情が硬いと自覚している。伏し目がちだからというのもある。だが、自分から笑顔を見せるということは少ない。
無理に笑う事も一応はある。だが、その度に愛想笑いだということが見抜かれてしまうが故に、自然と硬い表情になってしまっているのだろう
大神の指示を待つ間に、幾つか辞書を、氾濫図書の一部展開により出現させる。瓦礫を一つ一つそこに置いていき、空中に止めた
これで何度も往復する手間は省けるだろう。だが、あまり多くは保っていられない。各々に神経を通わせているのと同じ状況を保つのはかなり集中する
単純に、本たちを左右に移動させることなどはほぼ無意識にでもできる。だが、繊細な動きをするのはある程度の収れんが必要なのだ
トマスはそれでもまだできる方だろう。部下に示しを見せるためかすまし顔でいる

「あら、私は気分でここに来ただけだから迎えとかいらないわ。逆に、気分だからこそ迎えに来られたくなかったの
――当然の事、ねぇ……
仕事は楽しいかしら?異端審問官として、人を裁くのは大変でしょう?」

自由になった手で、私服のポケットからハンカチを取り出して額に薄らと滲む汗を拭う
これが何度も続くと思えば相当な労働量だ。正直給料を上げてもいいのではないか
ハンカチをしまい、ずれてしまっていた眼鏡を目に寄せ、大神の表情を見る
《仕事は楽しいか》。この言葉に何の意味があるのだろうか
664 :大神 恭子/異端審問官 [sage]:2013/05/27(月) 22:15:25.45 ID:jRVTP9aBo
「これくらいは、造作もない」
自分に取り柄が多いとは思わないが、身体を扱う仕事には自信がある。
「それに……自分で必要だと思って、行っていることだから」

「………………」
仕事を手伝おうとするトマスに、感情に変化があったらしく僅かに表情が揺らた。
小さな変化で感情を読み取ることは出来ないが、好意的なものらしいとはなんとなく感じ取れるだろう。

「私にとっては、数少ない落ち着ける場所だ」
実際に会うのは初めて。だが、こちらのことは資料などで知っているはずだ。
それならば自分の欠点。例えば閉所恐怖症のことも知っているだろう。
「ここは、広いからな」
個室程度の大きさでも安心が得られない大神にとっては、広い礼拝堂で寝泊りをさせてもらえるこの教会はどこよりも落ち着く場所である。
「……私は、此処がどこよりも落ち着く」
むしろ別のの場所にいるほうが、アレルギーでも起こしそうだ。
そのような個人的な理由もあって、大神はトマスの感情を理解しにくい。

「気分、で?」
仕事ならば分かるが、特に目的が無くこの教会を訪ねたといことだろうか。
同じ組織とはいえ、目的も無く尋ねられるというのならば、妙な気分である。

作業の腕を一度止めトマスの質問の意味を、そして自分の答えを考える。
「楽しんでは、いない……詰まらないと感じたこともないが、楽しんだ記憶も無い」
蘇る記憶には、確かに楽しんでいた記憶は無い。
「質問の答えにはならないが、今の仕事に満足はしている」
鋭い、黄色い瞳がトマスを見返す。
もともと感情を露にしにくい大神の表情だが、その表情は眼帯代わりの包帯に顔の半部うを包まれて、さらに感情を読み取りにくい。
665 :トマス【副官長】 [sage]:2013/05/27(月) 22:41:25.55 ID:BynoXtgBo
>>664
十人十色とはよく言ったものだ。辞書たちを操作し、取り敢えず何処か一か所に集めようと、いい空間を探す
辺りを見回す限り、やはり木々があり、教会があるだけ。それが大神にとっては最適だということに、個性というものを感じた
人材確保のために資料は読みつくした。氾濫図書内の私的空間の中にも、何時でも読めるようにと枕元に置いてある
人の経歴を読むのは楽しい物だ。個性も出ており、歴史書を読んでいるような気分を味わえる
大神は閉所恐怖症だった。多分、私的空間に招待などすればパニックを起こしてしまうだろう
理由は分からない。だが、それを知る気にもなれない。訊いたところで何も変わらないからだ

「そう……ここは自由に使ってもいいし、修復の費用も貴方の頑張りを認めてちょっとあげとくわ。楽しみにしておいてちょうだいな」

伏し目がちの目を無理に見開いて真っ直ぐと大神の目を見る。微かに宿る、生命としての光が映えていた
その光が月の光だということに気付くのは、トマスが何となしに空を見上げてからの事である
考え事をする時に空を見るのは良いことだ。それが例え対話中であったとしても。相手が言葉を選んでいる時くらいなら許されるであろう
大神は少なくとも、自覚はないだろうが今の仕事に満足はしていても、目標を持っていない
個人の目的ではなく、この組織に所属した理由。つまり自らが何故この組織に入る必要があったのか

「必要だと思っていることに、意味はあるのかしら?」

的を得ていない質問。だからこそ深い意味がある。答えてほしい答えがある。
睨めつける様な黄色の瞳に怯えることはない。この子は感情を表に出すのが苦手だったはずだ。自分と一緒。
トマスは視線を断ずることはなく、笑みを含めて諭すように語りかけた

「私は気分でここに来たわ。勿論理由なんて考えてない。だけれども、貴方は少なくとも理由があってこの組織に入ったはずよね?気分で、なんてありえないわ
ふふ、面接みたいで面白いでしょう?」

ふと漏れた自然な笑みは自身でも気付かなかったのか、気にせずに大神の答えを待った
666 :大神 恭子/異端審問官 [sage]:2013/05/27(月) 23:22:06.15 ID:jRVTP9aBo
>>665

「費用を上げてもらえるというのは嬉しいことだ。
 それに、人の好意を拒絶するものではないと分かっている……」
僅かな沈黙。トマスの好意を断るのは心苦しいことだと、大神の眉間の皺に現れている。
 
「だが……受け取れない。こんな場所の修理よりも、お金が必要な場所があるはずだ」
今でもやりくりできているのだ、これ以上もらうのは贅沢すぎる。
それに自分たちなどではなく、より必要な場所に予算を分けて欲しいというのは大神の本心だ。
「すまない」
黙って受け取っておき、適当に処理をするなんとコトは大神の性格が許さないコトだ。

「その意味が悪いことか、善いことか、あるいはそのどちらでもないのかもしれないが、意味はあると思っている。
 それと、私はその……その意味は、善いことだと信じている。正しいことであると」
そう言葉にした後、考え込むような素振りを見せる。
「うまく説明しろと言われれば難しいが、私はこう思っている」
トマスの笑いを見ると、瞳が微かに震え、微かに柔らかさが宿る。

「大きな理由なんてものは、無い。 ただ、身近なできごとの積み重ねだったと今は思う

日常の不満、違和感、疑問、理不尽さ。あるいは喜びや感動も理由の一部といえるだろう。
「何かがおかしいと思った。それで……此処に居て、審問官として戦うことが一番正しいことだと思った」

「……理由と言えるほど具体的なものにするのは、難しいのかもしれない。
 ただ、正しいということを信じているんだ。今でも」
答えはどこか抽象的なもの。自分の気持ちを言葉にするのも上手いとはいえない。
667 :大坂澪 [saga]:2013/05/28(火) 21:17:11.10 ID:OEtrLV4o0
――海岸沿いの公園

夜の帳はとうに落ち昼間の子供の歓声もどこへやら、静かな空気と月の光だけが公園内を埋める。
風に吹かれた木の葉の擦れる音、虫の音……聞こえる音は、自然の音ばかり。まるで、そこには元々人が居なかったかのようで……

誰もいない遊具だけが夜風に吹かれて佇んでいる―――ただ一つ、ジャングルジムを除いて。

―――丸いステンレス柱が組み合わさって作られたジャングルジムの上に、ちょこんと腰を掛ける一人の少女の影があった。
丁度そのジャングルジムは海に面して立っており、登れば水平線を一望できる格好のスポットだった。
……実は昼間、買い物の帰りに見かけて登りたいなぁと思って……しかし、とてもじゃないけど小さな子供に交じって登る訳にも行かず、泣く泣く諦めていたのだが……
……今は夜。そう、誰もいない。恥ずかしがることなくジャングルジムに上って景色を堪能できるという訳だ。
彼女は程よい涼しさが心地良い海風を全身に受けて、ただそこに座っている……本当にただそれだけ。

「―――うん、ええ風や……」

一言呟けば、後ろに束ねた黒髪を浜風に靡かせて、気持ち良さそうに目を細める……
今晩は満月、空を飾る丸い月もジャングルジムから見える開放的な景色に彩りを添える。
波の音は此方に響き、何とも言えない絶妙な雰囲気を醸し出してくれる。
……本当に心の落ち着く空間。日頃の疲れを癒し、心のリフレッシュをするにはもってこいの場所。
今この瞬間だけは切り盛りしている店のことも忘れ、ただの少女としてそこに座っている……



――さて。以上のように彼女はジャングルジムの上で涼風と妙景を心行くままに堪能して、リラックスしているわけだが……

果たしてこんな時間に誰かが通りかかったら彼女はどうするだろうか?
彼女は年甲斐もなくジャングルジムに上っているのを見られるのが嫌で、こんな時間に公園に来ている……
しかし―――もし人が公園前を通れば確実に目に付く場所に座っているということを、彼女は気づいていない
全く周囲のことを気に留めずに景色だけを眺めている彼女が、もし突然声を掛けられたら……?


もし見られているとしてもそのことに気付かないまま、彼女はただジャングルジムの上に座っている―――
668 :トマス【副官長】 [sage]:2013/05/28(火) 21:55:51.62 ID:kPEG3wfwo
>>666
運が良かったのか、手袋をしているにもかかわらず怪我をせずに済んだ
両手の手袋を脱ぎ、丁寧にたたんでポケットの中にしまう。手をパンパン、と鳴らして「休憩」と小声でつぶやいた
音に反応したかのように、トマスの背後に無数の本たちが、先ほど作業をしていた本たちとは入れ替わりで現れる
トマスは慣れているのか、遠慮もなく後ろの本たちの方向へと身を投じる。器用に操作して、自らの体を受け止めた
何時の間にか赤色の絨毯もひかれ、作業の疲れ――黎明ではない限り、魔翌力は多くとも体力はないのだ――を癒すように目を瞑った
一瞬、深い眠りに誘われかけたが部下の目の前で寝顔など見せるわけにもいかない。胸の動悸を抑えるために、一つ咳をつく
胡坐をかき、衣服の乱れを整える。そして大神の目を見、頷いて見せた

「貴方は優しすぎるのわ。ここは少なくとも、貴方が思っているほど白に染まってはいない。限りなく黒に近い灰色の世界
貴方が信じる善い世界とはかけ離れているの――ごめんなさいね、子供の目の前でサンタさんは居ないなんて否定している気分だわ
エンターテイナーとしては、貴方に夢を見させるのもいいと思っているわ。だけどそれではいけないの
……もうすぐ、いえ、それは遠い先のことかもしれないけど貴方は貴女でいることができない時が来るかもしれない」

腕を組み、俯いて表情を見せない。元より見せる表情など、無に等しいが大神は気遣いができる。不器用で、器用な気遣いが
それが今のトマスには痛い。嘘を吐くなど、日常茶飯事にあってもおかしくはない世界。だが、身内にだけは優しく接してあげたい
この様な職業に就いていても、仲間としての感情だけは忘れたくはない。頭では理解している。している筈だ
微かに表れる身の震えを、無自覚に抑えている。発散したい感情を抑え込み、抱え込む
腕を組む力が力強くなったと思えば暫くして脱力し、顔を上げた

「貴方の理由はしかと受け止めたわ。そうね、貴方はこの組織の《正しさ》でいて頂戴
それが私が貴方に与える、ここに居る《理由》よ」

何を言っているんだ。自嘲の笑みを浮かべ、自分らしくもないと本に寝転んだ
絨毯の匂いがトマスの体を優しく包み込む。こうして悠々としていられるのも今が安寧にあるからだ
何が起こり、誰が死んでも自分たちは何もすることはできない。事前に防ぐ事しかできないのならば、自分は彼女たちを全力で守るだけだ
自らを信頼して付いてきてくれた部下を駒のようには見ない。一人一人が大切な財産で、家族
ベットのような形態から、深めの椅子の形態に移行して、わざとらしく口元に手を当てて笑ってみせる

「ふぁーぁ……ぶっちゃけたら疲れちゃったわぁ予算は全部私の本代にでも費やそうかしらねぇ
私は貴方に自由にできる程度のお小遣い程度にあげようと思ってたんだけど。それなら残念ねー
あぁ、そうだ。じゃぁ今度一緒にデートしましょうか。仕事忘れて、平穏を味わってみるのも、新しい考えができて楽しい物だと思うわよ」
669 :大神 恭子/異端審問官 [sage]:2013/05/28(火) 23:14:30.61 ID:5HH1vbXzo
>>668
休憩をしようと言うトマスの声に、作業を止める。
「そうだな……客が尋ねて来たというのに、作業を続けるのは良くないか」
大神としては、今日の作業をやめるつもりらしい。散乱した作業道具を片付けながらも、時々トマスの本へと視線を向ける。
仕事柄能力者は良く見かけるのだが、超自然的な力は、何度見ても慣れない。

「優しい……?」
確か、ついこの前にも似たようなことを言われた記憶がある――自分とは程遠いものと思っている言葉であり、意味を捉えがたい言葉でもあった。
ただそれでも他の言葉を紡ぐことで、トマスの伝えたいことは理解できた。
「お前の言うことは、正しいと思う。
だからこそ、私は私で居られなくなるその時まで、私で居たい。
その最後の時まで、私が何よりも信じる正しさの中にいたい。そうであるべきだと、思うんだ」
サンタが居ないなら、私がサンタになりたい。そんなことを、本気で考え、実行する。大神はそれが善いことだと信じている。

「……分かった。約束をする、私は正しさである、と。」
約束という言葉は、気安く扱っているものではない。真剣な表情でトマスに言葉を向けた。
「理由は、しっかりと受け止めた。……大切にするよ」
臭い台詞と受け止められるような言葉の選び方――大神としては、非常に真面目に言っているのだが。

「でぇと……? 何を言っているんだ」
ここまで表情に乏しかった大神が、困惑の表情を見せる。
670 :トマス【副官長】 [sage]:2013/05/28(火) 23:32:38.62 ID:kPEG3wfwo
>>669
本当に伝えたいことを隠して、彼女を試した。だが、彼女は見事に、自分の真意を見出してくれた
それ以上の喜びはない。何故言葉を言葉で隠すのか。それは相手に言ってほしいからだ
例えそのセリフがどれだけ臭かろうと、下手糞な表現であろうと、カタコトであろうと。代弁してくれただけで全て良い
トマスは笑う。普段使っていなかった表情の筋肉に無理を言って、口の端を釣り上げた
無様で、下手糞な笑顔だ。トマス自身も分かっている。だが、この気持ちを彼女に伝えたいのだ
解ってくれて有難う。口に出さなくとも、相手に伝わればそれでよい

トマスはつと空を見上げた。雲に翳る月は、気付けば綺麗に晴れて大きな満月を中心に抱えている
大神の目の中に浮かぶ無邪気な金色。彼女ならば世界を優しく包み込めるだろう
自分とは違う、だからこそ必要。自分が悪で、彼女が善。足りないところを補い合うのが組織というものだ
良い部下を持ったと、しみじみ思う。疲れも一瞬で取れ、肩も軽くなった
本から飛び降りて、氾濫図書へと返し、トマスは大神へと抱き付きに行った
我慢しきれなくなったのだ。感情の爆発。否、暴発といったところだろうか。満面の笑みで抱き付きに行こうとする

「ふふっー!可愛いわぁ……純粋無垢な子って一番好きだわ」

前、大人びた幼女と会話を交わしたが、何だか大人びすぎている感じが否めなかった
大神の場合は別だ。純粋な心を持ち、玲瓏な感情を持つ。目を見て解るのだ
デートを知らないのは流石に驚いたが、それさえも可愛い

「デートってのは二人で街中を歩いて散歩とか買い物をしたりするのよ
貴方、服とか興味無いの?おいしいご飯も食べて、帰りは……ふ、ふふ」

671 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/28(火) 23:36:56.57 ID:db4l6b1vo
>>667
この辺りに申凌学園( モウリョウガクエン )という公立高校がある。
平たく言えば不良校だ。なんせこのご時世に暴走族が巣食っている時代錯誤の領域。
禁止しても無駄なのでバイク通学も可能。なぜか他校の生徒には手を出さない事でも有名である。

噂では番長がいて他所へのちょっかいを食い止めているという噂もあるが…今時番長(笑)

その申凌学園の制服を来たやたら体格の良い長身の大男が公園の前を通りすがる。
頭にはこれまた見事なリーゼント。
笑ってはいけないというバラエティ番組に仕込まれたかのような不良少年だ。
片手に学生鞄。もう片手には紙袋。

ジャングルジムの澪に気付いて立ち止まる。
「おい…お前、何をしているんだ?」
672 :大神 恭子/異端審問官 [sage]:2013/05/29(水) 00:10:03.38 ID:ruAAGtBXo
自分の思いを素直に伝えた。それが正しいことだと思ったから。
私はただ正しいことをするだけだと、そう伝えた。
誰かに理解なんかされなくてもいい。信じるのは聖人、そしてその聖人の言葉を信じている自分自身なのだから。

青臭さを説教されるか、子供の考え方だと一笑されるか……審問官に向いていないと拒絶されるとも考えていたのだが。
「と、トマス……?」
実際は、全く予想をしていなかったことが起こった。
近寄る気配は感じていたため避けられないことはなかっただろうが、そうする理由は無いのでもちろん避けない。
その結果――何故か、抱きつかれてしまった。

氷のような変化のない声も、この時ばかりはやや裏返る。
まさか抱き返すわけにもいかないだろう。両腕は行き先を見失ってフラフラと揺れる。
「トマス……これは、なんだ?」
一体何なのか――何であるとして、自分は何を求められているのか。
他人の心情は分からなくてあたりまえだとしても、今の大神にはトマスの目的が全く分からなかった。
「もちろんこれが抱擁だというのは、分かっているが……」
冷静さを繕おうとして、冷静を演技しているような調子になってしまう。
よく大神を観察していなければ分からない程度の僅かな変化だが、言葉の調子はいつもより早く、動きに落ち着きもない。
彼女は非常に――焦って、戸惑っている。

「それは……」
デートなんてものはしたことは無いし、どんなことをするのかと聞かれれば説明できるかどうかあやしい。
よく知らないのもそうだが、大神を困惑させたのは――同姓からしようと言われる物ではないということだけはとりあえず理解していたからである。
「私は……そのような、アレではない」
673 :大坂澪 [saga]:2013/05/29(水) 00:12:43.86 ID:/lPzWsSL0
>>671
公園内を通る浜風。磯の香りが心地良い……
自然というのは良いもので、人の手が加わっていなくても美しい。月影が水面に映り込みゆらゆら揺れている……
紺色の海に映り込む月はもう一つの夜空のようで、このジャングルジムの上から月が二つ見えるようだ……。

―――と、自然の美しさに心を癒されていた彼女だが……

    
    ……声が聞こえた……?


こんな夜に……?いやいやまさか、きっと聞き違い……

だってわざわざ人に見られないように夜を選んだもの、人は来るはずない……


まさかとは思いつつも恐る恐る振り返ると……そこにいた。間違いなく、誰かがいた。認めたくないけど、人がいた。
瞬間、彼女の頭に駆け巡った二つの感情は、焦りと何とも言えない恥ずかしさ……

人に見られたくないから夜に公園に来たのに……年甲斐も無くジャングルジムなんかに上っちゃったのに……
(み、見られちゃったよ!というか誰や?なんでこんな遅くに人が公園に来るんや……?)
(もしかして、不審者……?まさか私を狙ってる!?)
(というか何やねんあの格好!?不良!?もしかして不良っちゅうやつか!?)
(ど、どないしよ……私、襲われても何もできへんで!?戦えへんで!?)


見られた……小学生でもないのにジャングルジムなんかに上ってるとこを見られた……これだけのことで彼女の頭は恥ずかしさで真っ白。
その上、その人影は何だか一昔を思い起こさせるようないわゆる不良……時間は深夜……私は16歳。
真っ白な頭で考えられる最悪の想定……もしかしたら襲われるんじゃないか!?
焦りと恥ずかしさで頭がこんがらかった彼女は、訳も分からずとっさに返事をする……

「だ、誰や!?う、ウチに何か用か!?」

必死に返事を考えるだけ考えて、口をついて出た言葉はこれだけ。彼女の頭は真っ白だった。
依然彼女はジャングルジムの上……しかし、今の彼女の心はリラックスどころか焦りと混乱で真っ白。
さて、この無駄に混乱している彼女にどう対応するのか……
674 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/29(水) 00:42:10.62 ID:j+E2osrbo
>>673
内心はこちらも穏やかではない。
その少女の顔を見る限り完全に警戒されている。
叫び声でも上げられたら絶対に色んな人に誤解される。
そして警官を呼ばれ、取調室で紙袋の中にある恥ずかしい
物を物色されて笑いものにされるのだ!

マカロン…ややアーモンド風味でしっとりフワフワ。
その作り方のφ(`д´)メモメモ...と材料がきっちり揃っている紙袋の中身を探られる?!

「おい!」

おい!から先の台詞が出てこない。
何かを言おうとして声をかけたのだ。
そう、悪戯に絡んだわけではない。

おれはこの女に何を言おうとしていたんだ?
その時に夜風が思い出させてくれた。

「横だけだが…パンツみえてたぞ。」
675 :大坂澪 [saga]:2013/05/29(水) 01:06:05.51 ID:/lPzWsSL0
>>674
夜風は相変わらず涼しい……が、今はそれどころではない。眼前の人物が気がかりで仕方がない……

どうみても、いかにもな感じの不良。それがこんな夜に声を掛けて来た……対応は!?対応はどうする!?
誰か正解を教えて!不良に絡まれた時のマニュアルを……!

月の光は優しく公園内を照らす……が、公園内の空気は秋ほどまでの穏やかなものではなく、混乱した彼女を中心に変な空気に包まれている。

そして、頭の中が真っ白になっている彼女に追い打ちを掛けるように、さら声が掛けられる。
強い声で『おい!』なんて言われたもんだから、ビクッと飛び上がって「ひゃい!」と返事……噛んだ上に声が上ずっている。

―――そして、妙な沈黙。
此方はもちろん頭が真っ白で言葉が出てこない。そして、何故だか知らないがあちらも声を掛けたはいいものの先の言葉が見つからないようで……
……結果、暫く生み出される何とも気まずい沈黙が公園を支配する。

(一体何のために私に声を掛けたんや……?お、襲って来るんじゃなかったら何?か、金!?)
(ウチにある売上取られたら生活できへんで……!どないするんや………)

また勝手な想定で一人焦っている彼女……だが、その彼女に突き付けられた言葉はあまりにも予想外で―――

「……へ?」

予想外の言葉に、また鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして素っ頓狂な声を上げる。

パ、パ――――

私はいったいどうすればいいのか……年甲斐もなくジャングルジムに上って、下着まで見られて……
彼女の顔は、恥ずかしさのあまりに茹だこみたいに真っ赤になっていた。

(な、な――――!?ああもう、私は一体どないすればええんや!!アカン、めっちゃ恥ずかしい……)

ジャングルジムの上で恥ずかしさを紛らわすように俯く……が、顔真っ赤。
さあ、とっても恥ずかしい思いをしている彼女にどう対応するのか―――?

//すみません、明日もあるので今日はこの辺で凍結お願いします!
676 :大坂澪 [saga]:2013/05/29(水) 01:10:05.76 ID:/lPzWsSL0
>>675
//おっと、秋ほどじゃなくて「先程」です!失礼しました!
677 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/29(水) 01:15:44.70 ID:j+E2osrbo
>>675
「ひゃいじゃねえ!
 その、なんだ。あぶねえぞ。スカートでジャングルジム…。」
 もう何を言っているのか自分でもわかってない。

「道草食ってこの時間てわけじゃなさそうだが…、
 家までなら送るぜ。女子供がうろつく時間じゃねえよ。
 一人で降りれるか?」

「あと白いパンツは見てないから!
 さっきのは気のせいだし気にすんな。な?」
 澪のパンツが桃色なのか水色なのか白なのかは分からない。
 だがこの暗い夜空の下ではすべてのパンツが白パンツになるだろう。

「チッ…面倒くさいやつだな。」

// 了解しました〜 お相手感謝です。
678 :大坂澪 [saga]:2013/05/29(水) 19:25:31.70 ID:/lPzWsSL0
>>677
涼しい風が吹いているのだが、彼女の顔は真っ赤に染まり今にも湯気が出て来そうな程。
昼間よりかなり下がった気温が、恥ずかしくて頭に血が上っていることを際立たせている。
もじもじと下を向く彼女に、容赦なくとどめの言葉が突き刺さる……


―――白いって……バッチリ見られとる!


「――――――!!///」


プシューという効果音が出て来そうな程に恥ずかしがり、彼女の頭の中は真っ白、外は真っ赤……
最早これまで、ジャングルジムに上ってるところを完璧に見られた上に下着まで見られるとは……!

彼女が下を向いて黙り込んだ間、其方の声だけが妙にくっきりと公園内に反響する 。
どうすればいい、何て言えばいい、どう対応すればいい……ただ恥ずかしい(と、少なくとも彼女は思っている)所を見られた人に……


「お、降りられる!その、ウチは子供ちゃうから!!子供ちゃうから降りられる!!」


怒っているのとはまた違った意味で顔を真っ赤にしながら、必死に噛み噛みの返事。
子供じゃないなんて必死に言い張っている姿は、皮肉にも何だか子供っぽい……
普段一人で店を切り盛りしている時の彼女の姿とはかけ離れた、一人の少女の姿がそこにあった。
下着を見られて恥ずかしがったり子供の遊具に上ってるのを恥ずかしがったりと年相応の反応………若干年以下の反応な気もするが。

わななく手つきで半ば落ちるようにしてジャングルジムから下りると、ようやく暗い夜空の下でも彼女の姿が判然とするだろう。
全体的にすらっとした印象の、中高生ほどの年齢の少女だ。
若草色のシャツにチェックのスカート、そこから伸びる細くて白い手足。長い黒髪は後ろで束ねてポニーテールにしている。
手足と同じく色白のはずの顔は、今は血が上って真っ赤。丸いブラウンの瞳は伏せがちに下を向く……


「…………」


返す言葉が見つからない。どうすればいいのだろうか、私は……
とーっても恥ずかしい思いをした上に、こんな時間に自分がここにいることを心配されているようで、本当に子ども扱いされている気がする……

とりあえず彼女のできることは一つ、ようやく喉の奥から声を絞り出して……

「だ、大丈夫……私は一人で帰れる……」

……と、俯きながら一言だけ発する……が、きっと真っ白な彼女の頭では警戒心もゼロだろう。
―――果たして足元も注意していない彼女は、帰ろうとフラフラと歩き始めた次の瞬間石に躓いて転んだ。
この様子だと家に辿り着くまでどうなるか分からないのは確かだ……

//お返ししておきます!ちょっと夕飯に出かけますので返事が遅れるかもしれません!
679 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/30(木) 07:38:00.30 ID:wZH1axr9o
>>678
「子供、か。
 一応世間じゃ俺も子供って事になるんだよな。」
 ところで鬼塚の目から見て大坂は美少女だ。
 それでも今は頼りないその様子が気になる。
 放って置くのもよろしくない気がする。

「立てるか?」
 倒れた澪の前でしゃがんで手を差し出した。
680 :大坂澪 [saga]:2013/05/30(木) 20:19:27.40 ID:tTPi1/1S0
>>679

躓いて見事に転んだ彼女は、ヘッドスライディングを決めたポーズのまま5秒ほど静止。―――というより、恥ずかしくて起き上がれない。
子供の遊具で遊んでいるのを見られて、下着を見られて、挙句転ぶ瞬間も始めから終りまで見られて……何なんだ、今日の私は……
厄日?今日は厄日とでも言うの?何か罰が当たる事でもしたっけ?―――俯せのまま今日の行いを振り返るけど思い当たる節も無く。
―――……はぁ……  溜息だけが口から漏れ出す。散々な目に遭った……



ようやく頭に上った血が収まりかけて、落ち着きを取り戻した彼女……恥ずかしかったのは変わらないが……

さて、一部始終を見られた青年は自分が思っていたほど怖くは無くて、転んだ自分のことを心配して手を差し伸べてくれている。
見た目は少々アレだが、きっと内面は優しいのだろう……ようやく彼女は彼に抱いていた不審感を解いたのか、僅かに微笑んだ。


「ありがと。」


会釈をしつつ差し出された手を握ってゆっくりと起き上ると、お気に入りの服に着いた砂を手でパンパンと払う。
そういえば彼はどんな人なんだろうか……姿恰好が何だか昔の不良ドラマに出てくる人みたいで、今時珍しい。
その上にこんな夜に町外れの辺鄙な海岸沿いを歩いていた……一体何者なんだろうか?
先程まで抱いていた不審感の代わりに今度は興味が湧いてきて、暗い夜の中彼の顔を覗き込んで話しかける。


「……なぁ、アンタは一体誰なんや?どうして私に声掛けたん?」


怖い人物ではないと分かったとはいえ、急に話しかけられた人物のことが気になるのは仕方ないこと。
暗闇の中で彼女の瞳は彼をじーっと見つめている……
681 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/30(木) 20:35:06.00 ID:wZH1axr9o
>>680
 大男は仏頂面のまま「怪我はないか?」とハ○ーキティのハンカチを差し出して、
「まだ使ってないから綺麗だ。そのままお前にやる。」と野太い声で言った。

 澪の微笑みに俯くように左下へ顔をむける。
「これは気にするな。」

 いくつか尋ねられて正直に言った。
「そうだな。名前も知らなきゃはじまらないか。
 鬼塚詩音、オニヅカウタネだ。この道はバイト帰りに通った。
 声をかけた理由は…見てて危なっかしかったから、だな。
 人通りの少ないこんなトコに女子一人ってのもなぁ。」
 目だけ大坂澪の視線に合わせる。
682 :大坂澪 [saga]:2013/05/30(木) 21:06:21.54 ID:tTPi1/1S0
>>681
彼はハンカチを差し出してくれた。……実はものすごくいい人なんじゃないか、この人は……
……と、その差し出されたハンカチを見れば……あら、可愛らしい有名猫キャラクターの絵柄がプリントされている。
何でこんな物を持ているのかどうかは知らないけど、きっと女の子だからと気を遣ってくれたんだろうなぁ……
彼に対する事実を何も知らない彼女は、素直に彼の行為を受け取りニコッと笑う。

 ……なんだかちょっと不愛想な感じの人だけど、根はとってもいい人だというのは分かった。
きっと不器用な人で、好意でやったことを素直に笑えないんだろうなぁ……なんて、彼の人となりを推測してみる。
こんな所に一人でいた私を心配してくれたり、手を差し伸べてくれたり……こんなことする人だもの、いい人に決まっている。

そっぽを向かれたけどいい人だという事は分かったから、彼女はやっぱりニコッと微笑んだ。
彼女は悪意を持たない人に対しては、どんな人でも明るい笑みを顔に浮かべる。……いい人ならなおさら。



名前は鬼塚詩音と言うらしい。……詩音か。何だか見た目に比べて可愛らしい名前だなぁ……
私に声を掛けた理由は、やっぱり私を心配してくれての事だったみたい。
……よく考えたら彼の言う通りかもしれない。確かにこんな時間に一人で出歩くのは危ないかも……
ちょっと反省した彼女は、もう一度彼の方を向いた。

「……へへへ、心配してくれたんやね……ありがと!
 名乗ってくれたんやから私も自己紹介せなアカンな!私は大坂澪って名前や!
 私な、この公園が大好きやねん!ええ眺めやろ?海がよう見えて風も通るし、静かな雰囲気もお気に入りや!」

この公園が大好きだという彼女。仕事で一杯一杯な彼女にはちょうどいいリラックススペースだ。
彼女はこの公園のことを嬉しそうに話す。時折目を細めたり、パッと笑ってみたり、とても表情豊か。

そういえばさっき送ってくれるって言っていたなぁ……親切な彼に何かお返しでも出来たらと考えてみる。
―――暫く考えて決めたのが、自慢の料理を振る舞うこと。

先程まで恥ずかしがっていた人とは別人のように元気になった彼女は、彼に更に声を掛ける。
 
「せや、せっかく送ってくれるんやったらウチへ寄ってくか?
 ウチはな、料理屋やっとるんや!こう見えて料理も上手いんやで?」

折角なんだ、美味しい料理でも食べてもらおう。
同意してくれたなら、早速彼女は自分の家兼店まで歩き出すだろう……
683 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/30(木) 21:16:24.52 ID:wZH1axr9o
>>682
こんなに屈託なく笑う子がいたのかと少し驚く。
いや、自分の私生活が殺伐としすぎているだけか。
不良校で学園の問題児と喧嘩し、他校の問題児と喧嘩し、
しまいには魔法警察という組織で犯罪者と殺し合ってる。

「お前の笑顔は好きだ。」淡々と普通に好き嫌いを言うのが彼だ。

「澪か。この公園にはたまに来ていたんだが初対面が今日か。
 ああ、ここは良い浜風が吹く。バイクでもたまに立ち寄る。」
 無表情な仏頂面が解けて少しだけ微笑んだ。

「料理屋?」
 確認するような感じで尋ねる。
「料理が得意なのか?少し聞きたい事があるんだがいいか?」
684 :大坂澪 [saga]:2013/05/30(木) 21:32:42.74 ID:tTPi1/1S0
>>683
パッと笑ったりニコッと微笑んだり……とにかく彼女はいつも笑顔。……先程みたいな恥ずかしかったりする時は除くが……
そんな彼女の代名詞とも言える笑顔は、彼女自身は自覚していないが周りに思わぬ効果を生むときもある。

……でも、さすがに直球ど真ん中で男性から「好きだ」なんて言われたことは無くて……
突然自分の笑顔が好きなんて言われたもんだから、驚いたように目を丸くする。
……うん、きっと恋愛的な意味での好きじゃなくてlikeの方の好きだろうな、と頭の中を落ち着かせるのに10秒ほどかかった。

まあ、好きだと言われて悪い気はしないけど……


この公園が好きなのは彼も同じらしい。今まで彼に会うことは無かったが、きっと彼もこの公園の雰囲気は好きなんだろうなぁ……
私と同じだねと笑って見せると、またこの公園を通る涼しい浜風が彼女の髪や木々の葉を揺らして行く。
―――いい風だ。


さて、そろそろ帰路に就こうかと彼に自分の店に寄るか訊いてみると……なんだか尋ねたいことがあるらしい。
何だろう?料理を教えて欲しいとかかな?……いやいや待て待て、こんな男の人がそんなこと聞くかな?――まあいいや、とりあえず聞いてみよう。

「ん?どしたん?ウチの店の事か?」

微笑みながら質問を訊いてみる。きっと彼女ならどんな質問も笑顔で答えてくれるだろう―――
685 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/30(木) 22:14:45.96 ID:wZH1axr9o
>>684
「お前、いちいちかわいいな。」

「ん?あ、そのだな…笑うなよ。
 菓子作りが…その好きでな。
 マカロンが上手く焼けないんだが、洋菓子作りに助言は貰えるか?」
 紙袋を見せて「頼む!教えてくれ!」頭を下げる。
686 :大坂澪 [saga]:2013/05/30(木) 22:52:45.31 ID:tTPi1/1S0
>>685
……なんだか飾りっ気のない人だな、という印象。彼は優しいんだけど、ぶっきらぼうかも……
でも唐突に可愛いなんて言ってくれるから、嬉しいなぁ……
彼女とて女の子、女の子だから可愛いと言われたら素直にうれしい。普段は仕事とかでお洒落をしたりすることも無いんだけど……
お洒落をしたり可愛いと言われたりするのは女の子の本望、やっぱりそういうこともしたい年頃だ。

「えへへ……そう?可愛い?……ありがと♪
 私、あんまりお洒落もせえへんからこうやってたまに外出するときにお気に入りの服着るのが精一杯なんや……
 せやから、せめて顔だけでも笑っていようかって思っとるんや!」

嬉しそうに返事をするとニコッと笑う。
……きらびやかな服も美しい宝石も持ってないけど、彼女のこの笑顔だけは誰にも負けない……。
誰にでも出来る、人を最も魅力的に見せる方法……それが、笑うことなのかもしれないなぁなんて、これは中の人の個人的な意見。


さて、彼の訊きたいことは何だろう?和食のマナーかな?ウチの店の場所かな?
……なんて予想を立てていたら、彼から帰って来たのは全く予想外の事だった……

「……マカロン?
 ……そーか、マカロンか……どないしよ、私の専門は和食やからあんまり上手いこと説明できるかは分からんけど……
 心配せんでええ、自信持ち!素敵な趣味やん、お菓子作れるなんて!」

……彼はきっと、お菓子作りが男の趣味じゃないから恥ずかしいと思ったのだろう……
でも、彼女は笑わない。絶対に人をバカにしない。人道に外れたり、常軌を逸していたりするようなものでない限り、否定はしない。
だって、バカにする権利がどこにある?百人いたら百通りの趣味があっていい。それを似合ってないとか変だとか言ってバカにするような人間は、彼女は嫌いだ。

「任せとき!私なりの考えを言うたる!
 ……せやな、マカロンは卵白が強すぎるとひび割れてダメになってしまうんや。
 せやから卵白は割ったばかりのを使うんやのうて、割ってから二日ほど置いたものを使うとええ!
 あと、混ぜすぎもアカン!やりすぎると生地がいつまで経っても乾燥せんからな!
 マカロン生地をヘラで持ち上げたとき、ゆーっくり落ちて少し形が残り、絞った生地が少しだけ広がる位が丁度ええんや!
 最後に、焼く前の生地の乾燥はしっかりする!乾燥不足もひびの元や!
 ……どうやろ?これぐらいしか言えへんけど、アドバイスになったか?」

……彼女なりに丁寧に解説。
マカロンは生地の絶妙な強さが肝心。強すぎると罅割れるし弱すぎるといつまでも乾燥しない。
687 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/30(木) 23:11:34.89 ID:wZH1axr9o
>>686
 慌てて「あ、変な意味はないぜ?」と何かを否定する。
 言葉で否定しただけで、実際は悪く思っていないが。

「和食専門だったか。
 その割に詳しいんだな。
 澪は凄い女の子なんだな。」

「今日は上手く焼けるかな。」
688 :大坂澪 [saga]:2013/05/30(木) 23:39:12.04 ID:tTPi1/1S0
>>687
彼女は店を取り仕切っているだけに、料理は専門職と思われがちだが……本当は料理が「好き」なのだ。
そう、料理が趣味の女の子。和食ばかり作ってるわけじゃない。お菓子だって作るし創作料理にもチャレンジしてみたりする。
だから、お菓子に関するアドバイスも彼女なりに出来たという事……さて、このアドバイスは果たして役に立たのだろうか?

「えへへ、凄くないって!ウチはただ料理が好きなだけや!
 料理ってさ、どんな人も笑顔にできるやん?美味しい食べ物を食べた時の人の顔は、皆幸せそうやと思うねん。
 せやから、そんな人を笑顔のする力がある料理が、私は大好きなんや!」

彼女自身が笑顔であるのと同時に、彼女の周りの人も笑顔でいて欲しい。それが彼女の最大の願い。
だから、人を笑顔にする力がある「料理」が大好き!
周りが笑顔でいられるという小さな幸せが実は人生で一番の幸せかもしれないと、これも中の人の個人的な意見。

「上手い事焼けたらええな!私のアドバイス、ちょっとでも役に立ったら嬉しいんやけど……
 きっと上手いこと行くと思うで!」



―――さて、一通りアドバイスを終えたなら、自分の家に歩き出す……暫く歩いたならば店が見えてくるだろう。
彼女の店舗は小さい落ち着いた日本家屋。木で作られた温かいぬくもりの感じられる店舗。

「……どうする?もう遅いしアンタも家に帰る?なんか食べていく?
 帰るんやったら何かお土産包むけど……」

彼は家に送ってくれた……それならば、何かお礼をしなければ……
彼がそのまま帰るというなら何かお土産を持ってくるだろう
689 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/30(木) 23:59:34.72 ID:wZH1axr9o
>>688
「そ、そうか。ありがとうな。
 ところで、ここが家なのか?」
 木造の店舗を見てなるほどと頷く。

「今日は何か詰めて貰えるか?一箱買ってくわ。」
690 :大坂澪 [saga]:2013/05/31(金) 00:17:38.84 ID:YArhQjoi0
>>689
「せやで!ここが私の家兼店や!
 ちょっとボロいけど、落ち着いた雰囲気が大好きなんや。私の自慢の店や!」

見た目は古いが、その分新築では決して出すことのできない落ち着きを醸し出す、木造建築。
木でできたこの家が大好き。木というのは何故だか人の心を落ち着かせる不思議な建築材だ。
彼女は飾り気のない質素で落ち着いた雰囲気を何よりも気に入っている。


「よっしゃ、ほなちょっと待っててな!美味しいモンを包んだるから……」

彼は何かを包んでほしいと希望した。……よし、美味しいお土産を持ってあげなければ。
親切にしてくれたお礼だもの、こちらも心を込めるのが当然だ……さて、何にしようか。
ちょっと考えた後彼女はご自慢の店の中へ入って行き……しばらくして包みを抱えて出て来た。

「はい、そしたらこれ持って帰り!
 ああ、お代はええよ!これは親切してくれたアンタへのお礼やから!」

ぶっきらぼうだけど優しかった彼に贈るプレゼント……中身はかりんとう。
お菓子作りが好きと言っていたのを思い出し、和菓子ならきっと喜んでくれると思って箱に詰めた。
もちろん彼女の手作り。残念ながら帰って来たばかりで作りたてという訳にはいかなかったが、手作りならではの温かい美味しさがある事だろう。

「……今日はわざわざ送ってくれてありがとうな!
 もし良かったらまたウチに来てや!その時はご馳走したるから!
 ……じゃあ、お休み!」

もう一度あの屈託のない笑顔を見せると、ひらりと踵を返し家の中へ消えて行った……

//こんな所でよろしいでしょうか?
//久し振りのロールで遅いわ拙いわで酷かったですが、お付き合いいただきありがとうございました!
691 :鬼塚詩音 [saga]:2013/05/31(金) 00:20:51.62 ID:2jz9T0eso
>>690
「おい!ただじゃ貰えな…ま、いいか。」
 また来るとしよう。
 変な女だな、などと思いながら花林糖を受け取りそのまま帰路につく。

// お付き合い感謝です。ではではおやすみなさい。
692 :大坂澪 [saga]:2013/05/31(金) 20:53:34.42 ID:YArhQjoi0
帰宅を急ぐ人、飲みに行く人……様々な人が行きかうとある商店街の道……
ここの商店街は個人経営の店が多く、チェーン店では出せないきめ細やかな対応やアットホームな雰囲気を売りとしている。
そんな商店街の中に、ある少女が切り盛りしている一軒の小料理屋があった。
一昔前にはよく見かけたような木造2階建ての一軒家、その1階部分が店舗になっている。
道の前にはこれも木で出来た看板で、「食事処みおつくし」と大き過ぎず小さ過ぎずの字で書かれている。
この店の外見をパッと見た印象―――「素朴な感じ」だろうか?


―――食事処みおつくし 店内―――


カラリと引き戸を開ければ、中に見えるのは木肌の色の店内。
質素な感じを持つが、それでいてケチ臭くは無く……一言で言えば、やっぱり「素朴」。
机や椅子は檜で出来ていて、何とも薫りが良い。無駄な飾りは一切なく、白熱灯の色をした明かりが木の柔らかい色合いとマッチしている。
……何とも目に優しい店内。

そんな小料理屋の店内、ちょっと奥に入った所に一人の少女が洗い物に勤しんでいた。
客の多い帰宅時の多客時間を漸く乗り越え、その客が残していった洗い物が掃けたら本日の仕事は大方片付くと言った所か……
今日も沢山の笑顔が見れたなぁ……なんて、ちょっと前の客たちの顔を思い出してみてはフッと微笑んでみる。
こうして人を幸せにできる自分は幸せなのだろうな……

鼻歌交じりに小さな幸せを噛みしめながら食器を洗う彼女。……さて、この茶碗が洗えたら終わりっと……
……はい、終わった!

食器を洗い終えた彼女は、ふぅと一息ついてお気に入りの揺り椅子へと深く腰掛ける。
……客が掃けてちょっと暇な時はいつもこうしているのだが……客は来るかも知れないという事はもちろん重々承知。
きっと誰かが店内に訪れたら、その時はいつもの笑顔で出迎えることだろう……
693 :ジャンク [saga]:2013/05/31(金) 21:03:10.53 ID:fXqw/gEFo
>>692
鼻歌響く店内に、引き戸が開く音が小さく響く。
注意深く聞かなければわからない程小さい音量で開かれた戸は全開ではなく、頭ひとつ出せるくらいの隙間だった。
そして、そこから頭をひょこりと出して店内を見回す影が一つ。

「…………あい、てる?」

ぼそり。枯れた少女の小さな声が、淡々と店内に響いた。
暫く頭だけを出して店内を眺めると、少女は戸を開けて体全体を店の中に運んでいった。
ブーツの厚底が床を叩き、硬い音を作り出す。何処と無く、非日常を感じさせる硬い音だ。
店の優しい空気にはそぐわない、硬直した気配、鉄火場の薫りが運び込まれてしまった。

「…………」

そこに立っていたのは、10代前半から半ば程度の年齢の小柄な少女だ。
灰色の髪に灰色の瞳、褐色の肌、夏仕様でかなり薄い生地であるとは言え、季節に合わないロングコート。
顔には表情や感情というものが殆ど見受けられることは無く、精緻な人形かのような印象を覚えさせるだろうか。
無表情のままふと首を傾げて、人の気配の感じられる方へと歩いて行く。

「……あの、あい…………」

キッチンへと顔を覗かせて、無表情で店主の少女に話しかけるその黒ずくめの少女。
しかしながら、その言葉を遮るように腹の鳴る音がキッチンに反響し、言葉は噤まれて曖昧に消えていくのであった。
消えた腹音と、消えた言葉。そこに残っていたのは物々しい外見の無表情少女一匹。
沈黙の後に、僅かに目を細めて少女はこてんと首を傾げて無言で灰色の瞳を店主に向け続けていたことだろう。
694 :大坂澪 [saga]:2013/05/31(金) 21:30:08.45 ID:YArhQjoi0
>>693
〜♪

鼻歌交じりに揺り椅子を揺らしてつかの間のリラックスをする彼女。
……と、ゆらゆら揺れながら耳に入る微かな物音。―――何だろう?

チラッと物音のした玄関の方に目を向けると、そこに見えたのは自分と同い年か少し下程の少女。
こういった店にはあまり来たことが無いのか、小さな頭だけがこちらを覗いている。
……この店はそんなに注意深く緊張するような場所じゃないのに。

その少女は暫くしてようやく店内に入って来た。カツ、カツ、とこちらに足を運ぶ物音は些かその少女にはそぐわないような気がする……
ちょっとだけ妙な違和感を覚えつつも、その違和感が何なのかを知る由もなく―――彼女に出来ることはただ一つ。


「―――はいはい、いらっしゃい!」


―――いつもの人懐っこい笑顔で応対する。これが全てだ。
相手が誰であろうと、せっかく店に足を運んでくれたんだ……笑顔になってもらいたい。
それが怖い兄ちゃんでも、煩いオヤジでも、――――無表情の人形みたいな少女でも。
もちろん彼女に何があったか、今までどんなものを見たかなんて知らない。でも、ただ一つ、この店主が笑顔で出迎えてくれることは確かだ。

後ろに束ねた黒髪をひらりと翻し、椅子から立ち上がって来客をお出迎え。
丸い瞳を真っ直ぐお客さんの方へ向けて、ニコッと微笑む。
夏仕様の浴衣風仕事着の鮮やかな流水の模様、紺色の帯……ひらひらと袖を揺らしながらそちらへ歩み寄り、「さ、入って入って!」と促す。


さて、今は閑散としている店内。そんな時に一人の客が来たら、決まって案内する席がある。
それは、キッチン前のカウンター席。ここでお客さんといろんな話がするのが大好きなのだ。
……という訳で、御多分に漏れずこの少女もカウンター席にご案内。

「よっしゃ、折角やからここに座り!私がとっておきの料理を作ったるから!
 ……何にする?好きなもん頼んでや!」

任せとき!と言わんばかりににっと笑うと、注文を伺う。きっと彼女は、何を頼んでも真心こめて作るだろう……
695 :ジャンク [saga]:2013/05/31(金) 21:43:20.46 ID:fXqw/gEFo
>>694
視界には、やたら人懐っこい気配のする、穏やかそうな少女の姿。
敵意など欠片も感じられない少女が即座に襲ってくることは無いだろうと判断。
僅かに警戒を緩め、いざという時に相手を殺害するのではなく身を守る程度の警戒度へと移行した。
その上で、じっと無味乾燥な瞳を相手の瞳に向けて、数秒。

「えっと。いらっしゃい、ました?」

傾げた首を逆方向に傾げ直して、少女は笑顔で応対してきた少女に反応を返す。
なんとなく、脱力するような雰囲気と、外見の年齢と中身の年齢の不整合、妙な幼さを感じるかもしれない。
どちらにしろ、現状ジャンクには敵意は無く、何かが置きない限りは物騒なことは起きそうにない。

「……えっと」

基本的にこういう人懐っこい人と関わることが少ない為、困惑気味のジャンク。
困惑したままに導かれて、気がつけばキッチン前のカウンターへと座っていた。
数秒悩んでから少女はコートに手を掛けて、コートを脱ぎ隣の椅子に置く。
直ぐ手に握れる場所に武器を置くために、カウンターへと斧を立てかけておいた。
非日常的な雰囲気だが、彼女にとってはそれが日常で、動作も危なげが無いため、問題は無さそうかもしれない。
コートの下は身体に密着するタイプのボディスーツと、かなり丈夫な繊維で作られたワークパンツ。
ほっそりとした身体はしかしながら強靭に鍛えぬかれていたのが見て分かる程度には洗練されていた。

そんな少女は、相手に好きなものを頼んでいいかと聞かれて、沈黙。
無表情のまま俯いたり上を向いたりしつつたっぷり十秒間を置いて、おもむろに口を開いた。

「えっと。お腹へってる。から。お腹いっぱいに。なって美味しいものが。良い。
魚とか。好き、なんだ。だから。魚料理。いいなって。思う。……良い?」

淡々と、言葉を時折不自然に切りながらも、自分の注文を伝えようとする少女。
わずかに口元が綻んでおり、どういうものが出て来るのか楽しみにしているのが伺えるだろう。
ぱっと見は人形の様でも、なんだかんだでしっかりと自分の意志というものをこの少女は持っていた。
そして、注文をしてから気がついたようにまた口を開き。

「あの。甘いもの。も。食べたい。よ?」

と、追加注文をするのであった。
696 :大坂澪 [saga]:2013/05/31(金) 22:18:04.68 ID:YArhQjoi0
>>695
……うーん、何だろう、この違和感……
……上手く表現できないけど、バランスが整っていないような感じかな……
彼女にはきっと分かることが無い違和感を抱えたまま、席へと案内する。……もちろん、怪しんでいる訳ではないよ。

―――と、次の瞬間。
ギョッとした。な、何でこんな年端もいかない少女が、斧なんか持ってるの……!?
この子林業でもしてるのかな!?……いやいや、林業をしてる人でも斧なんか持ち歩かないよね、普通……
何にせよ、不思議な子……無表情なのも相まって、何だか妙な雰囲気を持っている気がする……

……でも、料理となれば話は別。自慢じゃないが、自分の料理には自信を持っている。
色んな人に美味しいと言ってもらったのが、私の一番の自慢!よーし、この子も笑顔にさせちゃうぞー!


「……魚?お魚が大好きかー、そらええ事やな!魚は健康にもええし、美味しいもんな!
 よっしゃ、任せとき!とびっきり美味しいの作ったる!」


魚かぁ、魚は良い!
和食は肉料理より圧倒的に魚料理の方が多いんだけど、日本食ブームで一躍注目を浴びたのが魚料理。
動物タンパクを取りつつとっても健康に良い食材だもの、この子もなかなか目の付け所が良い!

という訳でキッチンに移動。
えーっと、魚料理と甘いもの、ね……よし、旬のアナゴを使ってみよう!
アナゴは丁度夏が旬!梅雨の時期にさっぱりした物を作ったら喜んでくれるかな……と、喜んでくれた時の顔を想像してみたり。

アナゴの背びれを取って塩を振り、五等分に切り分ける。
慣れた手つきで包丁を捌く彼女は少女らしくなく、熟練した職人の雰囲気さえ漂わせる。
コンロに火をかけると、生姜・みりん・調理酒等々を入れてアナゴを炊く。……調味料の香りがそちらにも漂って来るだろう。
―――炊き上がるまで15分。ちょっと、話でもしましょうか……

「……今日は来てくれてありがとうな!
 ねええねえ、魚のどういうところが好きなん?
 私も魚が大好きなんや!私は何と言っても鯖が好き!しまった白身にあふれる脂……たまらんわぁ……
 良かったら魚の好きな所とか教えて欲しいなーって……」

魚が好きと聞いて、自分と同じだなぁとニコニコと笑いながら話しかける。
敵意なんてものはカケラもなく、本当に親しげに……
697 :ジャンク [saga]:2013/05/31(金) 22:31:16.75 ID:fXqw/gEFo
>>696
「……たの。しみ」

目を細めながら、小さな声で少女はそうつぶやいた。
小さな身体を乗り出しつつ、キッチンを無表情で観察し始める少女。
少々奇妙な光景ではあるが、本人も料理好きである少女としてはこういったものには興味が有るのだ。

全くワクワクを表に出さずにワクワクして調理風景を眺める少女。
目ざとく穴子を視界に収めると、唐突に口を開き話し始める。

「穴子。旬だから、美味しい。……この前、天ぷら。屋さんで。
穴子、美味しかった。楽しみ。夏なら、うなぎより。穴子。
土用の丑の日。は。平賀源内。の、広告。戦略。……ずるい」

料理や食べ物の話になると、少女は途端に饒舌となる。
穴子天を食べた話をしつつ、少しだけ顔を歳相応に綻ばせて。
細切れの言葉を発しつつ、ジャンクは料理風景を眺め続けていた。
因みに調理のバックミュージックはジャンクの腹音だ。肉体的には一応育ち盛りの為、腹ペコなのは仕方がない。

「魚。……鱗。ピカピカして。可愛い。でも。可愛いのに美味しいのも。好き。
青背の魚。全般的に、好きなの。秋口だと。さんまとか。沢山買って甘露煮。作ったり。
安いのに。脂乗ってて。ご飯が、進むから。あと、偶に。みりん漬けの赤い魚。も、食べる。
あれも。美味しい。銀カレイ、結構好き。……食べ物。何でも好きなんだけど。
気が向いたら。結構料理作る。仲間に。評判。皆。身体動かすから。
濃い味。好みだけど。身体。悪いから。出汁とか。旨味。強くしてるの」

話を振られてみれば、語る語るはご飯の話である。
本人も料理をするようで、割りと作る側の視点からの話も出てきたりして。
話をしつつ、段々お腹が減ってきたのか無表情のまま振る舞いにすこし落ち着きがなくなってくるのであった。
698 :大坂澪 [saga]:2013/05/31(金) 23:08:22.50 ID:YArhQjoi0
>>697
アナゴは(多分)順調に炊けている。コトコトという音と共にいいダシの香りを纏った湯気が漏れ出す。
……煮込む音に混じって時折どこからか聞こえる腹の虫。……といっても、店内に自分以外は彼女一人。きっとお腹が空いてるんだろうなぁ……

そんな彼女は料理が大好きなのか、食材を見かけると、キッチンの方へ身を乗り出してきた―――
―――あ、あれ。乗り出しただけじゃなかった。急に喋りだした。顔はピクリとも動かないけど何だか楽しそう……

「そーか、天ぷらか!穴子天も美味しいよなぁ……揚げたての、な!
 でも今日は天ぷらやのうて煮穴子やで!これも天ぷらと違うてさっぱりして美味しいんや!」

ずいぶんと詳しい……ほ、本当に料理が大好きなんだ。―――ふふっ、私と一緒だ!
……あ、笑った。ちょっぴりだけど笑った。……これは彼女にとっての満面の笑みなのかも?
やっぱりこうやってお客さんと会話するのは楽しい。お客さんの色んな事が分かるもの……
これはチェーン店のマニュアル対応じゃ絶対に出来ない事だと、個人的に思っている。

彼女の様子を観察しつつ、話は進む。

「平賀源内ってあのエレキテルの人か?へぇ、あの時代に広告戦略もやっとったんか……策士やな……
 まあウナギも旨いしええんちゃう?美味しいモンは美味しいて!」

……彼女は物知りだなぁ……そんなことは何も知らなかった店主は感心しきり。
土用は鰻なんて誰が決めたのかと思っていたが、平賀源内だったのか……

何だか楽しくなってきた。ニコニコ笑顔の彼女はさらに会話に興じる。

「あー、可愛いかぁ……
 せやな、確かに可愛い……けど、仕事で料理を作る身にとっては、可愛いなんて言うとったら仕事にならん!
 感情を押し殺すんや!殺し屋みたいに!……ただの料理屋と殺し屋を同列に言うたら殺し屋が迷惑やな……」

はははと笑いながら料理の時の自分の気持ちを超大袈裟に語ってみる。
実際は可愛いなんて思う間もなく捌いてしまうのだが……

……先程の彼女と今の彼女は別人かなぁ……
とってもよく話してくれるのがもちろん嬉しいのだが、何だかさっきの様子を思い出すと不思議な感じ。

……さて。
お客さんはだんだんと待ち焦がれているようだが……お待ち遠様。穴子がようやく炊き上がった。
プルンと炊きあがった穴子にダシがしっかりと染み込んで、立ち上る香りはきっとお客さんの胃袋を刺激することだろう。
だけど、もうちょーっとだけ待って欲しい。最後に盛り付けを……

冷水で粗熱を取って冷やす。この季節、きっと冷たい料理が美味しいと感じるだろうなぁと思って考えたのが冷やし穴子。
穴子の白身に生姜とオクラ、ワサビを盛りつければ―――完成!

「甘いもの」も抜かりはない。
冷蔵庫から取り出したのは蕎麦饅頭。そば粉をふんだんに使った香り良い饅頭で、餡の甘さと蕎麦の風味が同時に楽しめる一品。

「……はい、お待たせー!」

穴子とまんじゅうをお盆にのせて、カウンターへと差し出す。
パッと店内に広がる料理の香り。さあ、もう待つ必要はありません。存分に味わって下さい……!
699 :ジャンク [saga]:2013/05/31(金) 23:27:54.34 ID:fXqw/gEFo
>>698
「うん。仕事は仕事。だから。私も。いっつも。お仕事。確りやってる、よ?
悪い人とか。相手だから。可愛いとか。思わないから。楽」

殺し屋、という言葉に僅かに眉根をぴくりと動かしてみせて。
感情の動きがただでさえ少ない顔から、微塵も感情を漏らさず、そう呟いた。
数秒後にはまた料理が出てくるのを待ち望んでいる腹ぺこの少女になるのだが。

基本的に、ジャンクは人が嫌いな人間では一切ない。
話下手であるし、仕事柄コミュニケーション力が求められない以上どうしても無愛想に見られてしまう。
しかしながら、人並みに喜怒哀楽の感情を持ちあわせてはいるし、人と仲良くなりたいとも思うのだ。
だから、こうして話下手な自分に付き合ってくれる人というものは、少女にとっては貴重かつありがたい存在なのだ。

それはさておき、少女の意識は目の前に出された美味しそうな冷やし穴子とそば饅頭。
一瞬の間の後に、すぅ、と深呼吸をして穴子の出汁の薫りを思いっきり鼻孔に捉えこんで。
ほんのりと緩んだ雰囲気を漏らしつつ、割り箸を手に取る前に両手をピッタリとあわせた。

「……頂き。ます」

ぺこりと深々と頭を下げてから割り箸を手にして、ぱきりと小気味良い音を立てて割った。
達者な箸使いで穴子を箸で切り、一切れを口に運ぶ。
口の中に出汁の味と穴子の旨味が広がり、脂が満足感を与えてくる。
ぷるぷると炊き上がった穴子は口の中で蕩けるようで、ジャンクは誰もが見て分かる笑顔を浮かべざるを得なかった。

「ん、ん」

飲み込んでから、暫くうんうんと納得するように頷いて、無言でもう一口。
生姜と一緒に食べて、さっぱりとした感覚を味わっていく。
美味しい、そしてご飯が進む。無言ながらも幸せそうな雰囲気を漂わせて一定のペースで穴子を平らげていくジャンク。
次の一切れは、とわさびをつけてまた頬張って、直後。

「……! 辛……」

うっかりわさびをつけすぎたのか、口元を抑えて暫く沈黙。
水を一口口に含み、数秒後にはまた食事を再開して。
がっつくでもなく、だらだら食べるでもなく、味わいながらジャンクは穴子を食べ終わって。

「穴子。……すごく。すごく、美味しかった。よ?
さっぱり。でも、がっつり。良かった」

こてん、と首を傾げつつ、ようやく料理の感想を口にして。
口元だけではなく、目元を細める形の笑顔を大阪に向けるのであった。
そして、最後に残ったのはそば饅頭。両手に握って、おもむろに一口。

「おいしい」

お茶と一緒に黙々とまんじゅうを食べ、最後に残ったお茶をひとすすり。

「……………………ごちそう、様」

目を合わせて、そう言うと同時手を合わせて頭を下げるのであった。
700 :大坂澪 [saga]:2013/05/31(金) 23:52:40.88 ID:YArhQjoi0
>>699
魚が好きという彼女のために作った穴子料理。折角足を運んでくれたんだから美味しいと言ってもらいたくて。
きっと喜んでくれると思って、きっと笑ってくれると思って。幸せな気分になってくたら、それがこの小さな店主の一番の幸せ。

「……どう?」

一口、穴子を口に運んだ彼女に味を伺ってみる……が、返事は聞くまでも無かったようだ。

―――ああ、笑ってくれた……―――

とても満足してくれたようで、何も喋ってくれないけれど美味しそうに自分の作った料理を食べてくれる……
この瞬間。そう、こうやって幸せそうに自分の料理を食べてくれるお客さんを見るのが、一番の幸せなんだ……
いつも笑っている店主だが、この時は何時もに増して幸せそうに笑みを湛えている。
愉快とか、可笑しいとか、そういった物ではないけど……とにかく、幸せなのだ。

ニコニコしながら、食べる様子を眺めていると……あらあら、山葵が多すぎたのかな?
ちょっとした失敗をしたり、可愛い笑みを浮かべてみたり……
こうして見ていると本当に可愛い少女だなぁなんて、店に入って来た時の無表情と比べながら。


……間もなく全て食べ終わったようだ。
ふと気づいたこと、食べ方が本当に綺麗。口には出してないけどこういう所からも感謝の気持ちが伝わったりして嬉しい。
そして、最も嬉しい事を言ってくれた―――笑顔で「美味しかった」と。
この一言を聞けただけで、この笑顔を見れただけでもう十分。ああ、幸せだ―――

「―――ありがとう!
 私はその一言が聞けて満足や!」

本当に、本当に幸せそうに微笑むと、こちらこそと感謝の言葉を述べる。
顔を見ればわかるだろう。きっとその言葉は偽りのない本心であると―――

さて、あとは片づけ。食べ終えた食器を受け取り、お盆に載せて流し台まで持って行く。
洗い物の前に勘定をしなくては……客を待たせるわけにはいかない。後で出来ることは客扱いの後!
701 :ジャンク [saga]:2013/05/31(金) 23:58:15.84 ID:fXqw/gEFo
>>700
「……私も。御飯作るから。ごちそうさまは。しっかり言う。んだ」

僅かに口元をほころばせつつ、作る人が何が一番嬉しいか知っているからこそ、それは欠かしていないことを語る。
片付けを終え、お勘定という事で、ジャンクはコートを羽織り、胸元から財布を取り出す。
大分年季が入っている様子の皮財布を開けば、ちらりと多めの札が見て取れて。
その中から1万円札を取り出すと、大坂に渡すことだろう。

「あの。又今度。食べに、来る。から」

ごそごそと斧をコートの内側に仕舞い込みつつ、満足気な表情でまた来ると言って。
お釣りを受け取ると店に入る時とは対照的な足取りで、店を後にしていくのだった。

/*乙でしたのようー*/
702 :大坂澪 [saga]:2013/06/01(土) 00:14:16.47 ID:3Ud2X4lK0
>>701
……ああ、この子は分かってくれていたんだ。料理を作る人にとって何が一番嬉しいのかを……
それはお金でも対価でもない。少なくとも彼女は、ただ喜んでくれるのが一番嬉しくて料理を作るのだ。
その事が分かっているなら、もう何も言うことは無い。こんな人に料理を作れて、まさに料理人冥利に尽きるというものだ。

「そうか、しっかり言うんやな!
 ……ホンマにええことや。感謝の気持ちは何よりも大事やから……」

本当に満足そうに微笑みながら、とっても好きなお客さんの一言に相槌を打つ。
この人になら、また料理を作ってあげたい……そう思わずにはいられなかった。

さて、最後に勘定。
本心を言うと美味しいという一言を聞けたら彼女は大満足なのだが、一応生活していかなければならないからお代は貰っておかなくては……
彼女の店の料金設定がかなり良心的なのもここに由来する。本来はお客さんの笑顔と美味しいの一言を聞きたいだけで、お代はオマケなのだ。
万札を預かると、レジからちょっと嵩張るかもしれないけど沢山の1000円札、それと小銭をおつりとして返す。
――そして最後に聞けた一言に、ニコッと微笑んで返す。

「……うん!いつでも待ってるで!」

そして、先程ギョッとした斧を仕舞い込んで帰って行く彼女の後姿をしばらく眺めてから、店じまいの準備。
今日も幸せな一日でした―――

//はい、そちらこそお疲れさまでしたー!……本当に遅くてごめんなさい!
703 :トマス【副官長】 [sage]:2013/06/03(月) 21:51:47.87 ID:BeVUcPlMo
>>672
服の向こうからでも、微量の温かみを感じる。どれだけ表情は冷たくとも、生きている限りは暖かいのだ
自分の冷たい頬を大神に無理やり押し付けて、自分に温かみを移そうとする。大神としては傍迷惑な話だろう
動物同士のスキンシップのようだ、と心のどこかで思う。確かに、自分たちは動物だ。あくまでヒトという動物
哲学的な思考をすると止まらずに呆けた顔をしてしまう。だからトマスは走る思考を留めるために、抱き寄せる力を強くした
非力なトマスとしては結構な力量で抱き合っているつもりだが、肉体派の人間にとってはちょっときつめの抱擁としか感じられない
こうして力強く抱きしめると、胸の弾みが消えていくのだ。爆発しかねない心を落ち着かせているという意味でもある
本来ならこのまま個人空間に引きずり込むのもありだ。しかし、大神の体質を考えるとそれはできない
トマスは抱き付いたまま、大神の耳元で優しく囁いた

「――解ってるじゃない、抱き合ってるのよ。生命の確認、又は愛情の確認と言ってもいいかしらね」

悪戯に、笑みを含めて言ってみる。敢えて誤解を生む言い方をすると、相手が戸惑って面白い
ハプニングが好きなトマスとして、そういったことには自ら突っ込んでいく。ないし、自分が生み出していく楽しみ
トマスが言う愛とは、立場は違えども同じ組織で働く家族としての愛だ。言うまでもないが、恋愛対象だ、というわけではない
どういった反応をするのだろうか。期待に胸を躍らせて、耳を甘噛みした後、また優しくつぶやく

「ふふ、知ってるわよ。私は基本どんなことでも出来るわ。だけど相手にそれは求めない。相手のするがままに落ちていくのが好きなんだわ
なんて、ね。フフ、デート、っていうのは友達として、一緒に街へ繰り出そうという意味よ
仕事ばっかりでは疲れるでしょう。否、貴方は疲れていない気なんでしょうけれども、それは疲れていないことを知らないだけ
息抜きっていうのも、案外大事なんだから。それに、こんな時間もうすぐに取れなくなりかねないし、ね
ベアも誘ったら良いじゃない?デートじゃなくなるけれども今はやりの女子会っていうの?したら良いじゃない
きっと、忘れられない日になるわよ。だって、組織の同僚としてではなく、同じ女の子としての友達ができるんですからね」

何時の間にか、無自覚の内に饒舌になってしまっている
704 :ボルテクス [saga]:2013/06/03(月) 23:00:01.61 ID:t45XOlz5o
【花丸商店街】
少し小腹がすいたな、と出かけた彼女だがこの時に思い出す。
この商店街を端から端まで歩いてみた事はなかった。
意外に復興も早かったと聞く。実際に店は多いし賑やかだ。
商店街のルーフの修理の仕事もまだ途中だ。
全体を見物してみようと、普段は超えない交差点を超える。

ここで腹の虫がなる。
「何かつまむか。」
軽食を扱っている店は多いようで、何を選ぶかで迷うくらいだ。
705 :大神 恭子/異端審問官 [sage]:2013/06/04(火) 18:49:22.24 ID:AtVCvqdoo
>>703
「……と、トマス!?」
耳の甘噛みには大神も驚かされた様子。頬の色が、微かに赤色にそまっていく。


甘噛みしていた大神の耳だが、毛の生えそろった三角形の耳へと、いつの間にか変化してしまっている。。
変化したからといって、そこに毒が塗っている訳ではないが……夏場は毛も抜けやすいので、口に入らないようにトマスは注意をしたほうがよいだろう。

――普段は意識して人間の姿を装い、人間の社会で生活をしている大神だが、その正体は人狼の一族の末裔である。
実体は人間では無く、狼人間なのだ。気持ちが昂ぶるなどして精神が乱れると、本人の意思とは関係なく人間の姿が崩れてしまうのだ。

犬型の、灰色の耳を生やしている大神。それだけトマスの行動に心を動かされているということだ。

「それは理解している。 が、俺が言いたいのは、そういうことではなくて……」
自分を形容する言葉も『私』ではなく『俺』へと変化している。
使われている言葉そのものの変化は、大神の言葉をしっかりと聞いていなければ分からないだろう。
ただ、大神の話す調子そのものが自然体に近づいており、心情が変化していることはすぐに感じ取れるだろう。
「むぅ……」
トマスに『愛情』だと言われてしまえば、その気持ちを無下にすることはできない。――抱き返すべきかとも悩んだが――大神自身はそのまま、何もしないで立っている。

「だが、俺は……」
休息など考えられないと言おうとするが、トマスに自分の言葉を奪われてまた口ごもってしまう。
「ベアトリスを……? そうだな、それは良い。
 分かった、お前がそこまで言うなら……私も、そうしたい」
トマスの言葉が、それが正しいと思う。信じられる人だ、と。

「……お前も、ここに居ればどうなんだ?」
もともと、此処をL.M.G.の拠点にする予定なのだ。トマスがいれば拠点としての意味は非常に強固なものになる。
「俺はお前の部下だから……これはお願いだ。 ……お前は大変だろうし、気が向いたときに止まるだけとかでもいいんだ」
706 :神谷宗一『幻の男』 :2013/06/07(金) 23:21:34.14 ID:kYcW2/r40
「ついに…帰ってきたぞ…」
夜の闇を嘲笑うかのように光る繁華街、今こいつは伝説となって帰ってきた
707 :アラン :2013/06/07(金) 23:31:35.51 ID:UN++zsufo
>>706
「なんだあいつ」

ボソボソと呟いている男にちらりと視線を投げかける
708 :神谷宗一『幻の男』 :2013/06/07(金) 23:36:43.76 ID:kYcW2/r40
>>708
「おぉ…アランじゃないか…久しぶり」

目が合ったので彼にそう告げる
709 :神谷宗一『幻の男』 :2013/06/07(金) 23:39:07.41 ID:kYcW2/r40
>>707
「はは…すまない、安価ミスだ」
710 :機械獣『レベル1・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 20:30:57.14 ID:btoZNfkY0
「…」
ここに一人、いや、一体のマントに包まれた物体がいた、そもそも生きているか分からないし、動いているのも分からない。
ただ、分かることは、コイツは、人を殺すために創られた悲しき無生物
「目標補足・破壊」
ただ、それだけだった

711 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 20:40:34.86 ID:+FWMuQUxo
- 脳波、心拍数、副腎値安定しています -

 何の異能なのかは把握できないし、されてもいない。
 ただただ強力な出力を持っている事だけが知られている。
 力が目に見える輝きを持っているためにそれは流星のように見える。
 光の輪を飛ばす反作用で宙を跳ぶように跳んでくる小柄なヒーロー。
「目標補足・消去する。」冷たく言い放つとそいつは機械獣のもとへ降り立つ。
 ハンドグレネードを腰に携帯した前進コートの子供は、相手を睨むのでもなくただ見る。
 
712 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 20:43:30.24 ID:+FWMuQUxo
失敬、>>711>>710へのレスです。

>>710
- 脳波、心拍数、副腎値安定しています -

 何の異能なのかは把握できないし、されてもいない。
 ただただ強力な出力を持っている事だけが知られている。
 力が目に見える輝きを持っているためにそれは流星のように見える。
 光の輪を飛ばす反作用で宙を跳ぶように跳んでくる小柄なヒーロー。
「目標補足・消去する。」冷たく言い放つとそいつは機械獣のもとへ降り立つ。
 ハンドグレネードを腰に携帯した前進コートの子供は、相手を睨むのでもなくただ見る。
713 :機械獣『レベル1・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 20:50:36.33 ID:btoZNfkY0
>>711
「人物・観察・想定ランク7・危険レベル3・勝利確立68%」
マントが真紅の炎に包まれ、消し炭になる、マントの下から露になったのは
盛り上がった筋肉と、さび付いた鉄金属、ところ構わなくオイルと人の焼けたにおいが混じってむせ返る。
緑色の目は危険信号のように赤に変わり、自分が立っているところは地面が割れる、
そして、いよいよ、命がけの戦いが…いや、生物と無生物の戦いが始まる
「戦闘開始」
714 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 20:56:42.58 ID:+FWMuQUxo
>>713
「観察結果…相手は強力な熱源を持っているか、
 そういう能力者だ。液化窒素弾頭の仕様許可を求める。」
 無線に武装の利用許可を申請しながらすでに弾は装填している。
- 許可します。 -
「許可を確認。これより標的の消去を始める。」
 前進コートに深い帽子の子供はハンドグレネードを構え間合いをつめる。
715 :機械獣『レベル1・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 21:05:19.29 ID:btoZNfkY0
>>713
「第一制御解除、能力『60年式回転銃』」
右手の機械からガトリングガンが出てくる。
このガトリングガンは毎秒300発の銃弾を発射し、
相手の体を風通しのよい体にしてしまう
「発射」
そう告げた瞬間、勢いよく銃弾が飛ぶ
716 :機械獣『レベル1・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 21:05:45.27 ID:btoZNfkY0
ミス
>>714
「第一制御解除、能力『60年式回転銃』」
右手の機械からガトリングガンが出てくる。
このガトリングガンは毎秒300発の銃弾を発射し、
相手の体を風通しのよい体にしてしまう
「発射」
そう告げた瞬間、勢いよく銃弾が飛ぶ
717 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 21:18:03.90 ID:+FWMuQUxo
>>716
「チッ…さすがに高額の賞金首だな。良い玩具をもっている。」
 星の君は異能で生み出される謎の物質を前方に照射しバック。
 そこから右側へと謎の発光体を射出し反作用で左へ逃げる。
「…環境に優しくない存在だな。」
 こちらからも機械獣へ超低温の液化窒素弾頭を射出する。
 動きながらの射撃なので狙いはやや甘い。
718 :機械獣『レベル1・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 21:25:35.25 ID:btoZNfkY0
>>717
「情報収集・武器・冷弾・対抗策発動」
ガトリングガンをしまいこみ、背中の穴から煙が出る。
その瞬間、体は急激に凍り、相手の攻撃を無効にする…とまでは行かないが
軽い傷程度で済む、
「『追撃爆薬弾』」
肩から追撃用のミサイルを発射する
719 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 21:35:00.52 ID:+FWMuQUxo
>>718
「動きはこちらが速い。一方的に攻撃できる…
 しかし困ったな。かすり傷しか追わせられないか。」
 ミサイルに対して異能の新物質の輪を発射する。
 どうやら電子機械にも干渉、物によっては破壊すら
 できるようで、追尾ミサイルはただのミサイルになった。

 ただし残った機能で星の君のいる付近で爆発する。
 爆発に巻き込まれ防弾、防塵素材のコートを着ている星の君も無傷ではいられない。
「星の君より本部へ報告。防護服の性能に対ショック等の改善を要求する。」
 頭からの、顔からの出血はコートの中に流れていく。
「わたしは攻勢に入る。バックアップ用の車両を回してくれ。」
 仲間に通信してから相手に話しかける。
「諦めろ。わたしを殺してもお前は死ぬ。だから楽に死ね。」
720 :機械獣『レベル2・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 21:44:00.73 ID:btoZNfkY0
「・・・」
一瞬、動きが止まる、
「目標再確認・危険レベル8・勝利確立11%」
それだけいうと、機械獣の体は完全に変わり、赤い目から光が消える、
そして
「『第二進化』発動」
機械獣の体から鉄金属が落ち、肉や骨が露になる。
この戦いで、無生物は、生物へと変わった
「グレードアップ『レベル2』」
721 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 21:51:03.73 ID:+FWMuQUxo
>>720
「なんだこれ、随分と気持ち悪い姿になったな。」
 機械獣の前に降り立つ。負傷はしているが大事ではない。
 両手を拡げながらサポートに通信を入れる。
「個体超強酸弾頭の使用許可を求める。」
- ちょっとまってください。 -
「早い返事を待っている。」

// そういえば私達はどこで戦っているのでしょう。
722 :機械獣『レベル2・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 22:04:06.58 ID:btoZNfkY0
>>721
「『ネイルブレード』」
巨大化した三つ指の爪を太く、硬く、鋭く、伸ばす
「宣言しよう」
二足歩行で歩く二本の足を分裂しケンタウロスのようになる
「よけるが身のためだ」

//廃棄された研究所で
723 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 22:13:40.53 ID:+FWMuQUxo
>>722
「なんだ、話せるんじゃないか。自首する意思はあるか?」

 ナマクラでは論外、名刀も無意味、聖剣のような伝説上の存在があっても同じく無意味。
 形も重さも一定ではない、新物質という能力を別の形で発現すると、それは光の粒子が
 両手の間を勢い良く流れるように運用される。太くない。細かい。硬い。長さはない。細かい。

「もしくは削り殺されるか?」

- 個体超強酸弾頭の使用許可がおりました -

「了解。酸で焼き殺されるという選択肢がお前に与えられた。
 投降するか?」
724 :機械獣『レベル2・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 22:23:28.13 ID:btoZNfkY0
>>723
「私を殺す…か」
殺す…と聞いて鼻で笑う、
「『目標条件・殺られる前に殺れ』」
腕を大きく振り上げ、相手の頭から一直線に切り倒そうとする
725 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 22:37:54.29 ID:+FWMuQUxo
>>724
「投降の意思はないものと判断する。ならば消去する。」
 星の君が使ったのは例えるなら砂か金属粉か。
 それが振り下ろされた腕を削りながら跳ね上げる。
726 :機械獣『レベル2・破滅の象徴』【賞金首1億3千万】 [saga]:2013/06/08(土) 22:41:25.64 ID:btoZNfkY0
>>725
「ふむ…どうやら…燃料…切れ…か」

動き回っていた機械獣は燃料切れにより動かなくなってしまった

//すいません、ここで終了させていただきます、機械獣は最後破壊で終わらせてください
727 :星の君 [saga]:2013/06/08(土) 22:59:04.05 ID:+FWMuQUxo
>>726
「対象の停止と沈黙を確認した。
 どうやら駆動時間に見合ったエネルギー源を備えていなかったらしい。」

- お疲れ様です。では、ターゲットを破壊してから戦線を離脱してください。 -

「了解。」
 異能の粒子で肉を全て削り落とし、星の君は骨だけになった機械獣を後に去っていった。

// おつかれさまでした。
728 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 21:16:49.30 ID:sEEfQkLyo
【新世界 夜の街】
時刻にすれば、日付が変わったあたり。
首輪をしていない黒い大型犬を引き連れて、毎夜の日課である犬の散歩中である。

「全く、もう……暑いんですけれど」
誰にでもなく、悪態を吐き出して道を歩く。

深夜にも関わらず、熱い夜であった。
にも関わらず、長い袖に長いズボンという格好。頭には帽子が乗っかり、季節の変わり目に取り残されたような状態だ。

そんな恰好で、夜の人気のない道をあるく、
月が雲に隠れれば、桃色の髪は淡く光を放っていた。
729 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 21:27:06.78 ID:nT9eLpTBo
>>728
まだ幼い少女が花籠を下げて通りすがる。
少し立ち止まって犬を気にしている風だが。
「この子…お姉さんの友達?」
静かな掠れ声が特徴のショートヘアの子だ。
730 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 21:37:55.45 ID:sEEfQkLyo
>>729
夜の散歩での出会いは、リリアーナ大きな楽しみの一つだ。
こんな時間帯に出会える人々には、だいたいいつも何か、新しい発見がある。
「ええ……と?」
少女の声に足を止める。
静かな声の少女。 こんな時間帯に一人で歩いているには、若すぎる気がする少女だ。

小首を傾げながらも、深くは考えず質問に答える。
「そう、ですね。 正確なお話をすれば、少し違うのですが……まあ、友達でも間違いではないでしょう」
黒い犬は、幼い人間と同じぐらいのサイズがある。小柄な子供であれば、間違いなく犬の方が大きいだろう。
「怖くは、ないのですか?」
黒い眼光、鋭い牙。大きな犬の叫び声は、ずいぶんと遠くまで響くことだろう。
731 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 21:43:20.37 ID:nT9eLpTBo
>>730
 自分を見つめるリリアーナに一言。
「なに?…」
 実際14歳。
 学生なら夜遊びを覚える子もいる
 だろうけれどやはり夜遊びは早い。

 犬とリリアーナを交互に見て答えた。
「犬は好き。恐くないよ。
 でもこの子がどんな子か知らない。
 この子…噛む?」
 無表情なまま飼い主に尋ねた。
732 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 21:56:58.99 ID:sEEfQkLyo
>>731
「こんな時刻に一人であるくなんて、危険じゃありませんか?」
ただでさえ、大戦から今は治安が悪くなっているのだ。
少女一人だなんて、いくらなんでも危険すぎる。


「なにごとも無ければ、絶対に危害は加えません」
大型犬の鋭い視線は普通の犬とはどこか違い、なにか知性の輝きのようなものを秘めている。
見知らぬ人間に近づかれて狼狽えもしなければ、吠えることもない。
「この子が噛むのは、悪い物だけです」
悪い物は噛むと。 直接ではないが、正体の分からなに少女をけん制する意味もある言葉であった。
733 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 22:02:09.74 ID:nT9eLpTBo
>>732
「危険?」
 しばらく考えると答えた。
「大丈夫、わたしは人に乱暴はしない。」
 どちらが危険かの話を履き違えた模様。

 犬のまえでしゃがむ。
「そう…良い子なんだ。…撫でても良い?」
 牽制の空気には気付いていない。
 ただただ飼い主らしき女性に聞いてみる。
734 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 22:09:15.12 ID:sEEfQkLyo
>>733
「え……ええと」
話が噛みあわない様子に、もう一度首を傾げる。
「いえ、まあ……それは、分かります。 私自身、あなたが乱暴をするような人には見えませんから。
危険なのは、貴女が誰かに襲われないかということなのですが……余計な心配でしょうか?」

「ええ、どうぞ。 でも優しくして下さいね。
期限を損ねると、大変なんですよ。 頭は良いんですけれど、それだけプライドが高くて、かわいげがない子なんです」
リリアーナは少女を全く経過していなかった。なにかおかしなことをされれば、真っ先に犬が反応するからだ。
そんなわけで、リリアーナは明るい表情で、自然な調子のまま話す。
735 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 22:18:53.47 ID:nT9eLpTBo
>>734
「…夜伽ならお金を払ってくれれば付き合う。
 あまりお金を払えない人にはそれなりの事しかしない。」
 なにか言い出した。

「ありがとう。
 よろしくねワンコさん。お名前は?」
 犬の両頬をまだ小さな手で挟むように包む。
736 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 22:32:53.77 ID:sEEfQkLyo
>>735
「ああ……なるほど」
笑いが凍りついて、ぎこちないものになる。
そういうものはとうぜんあるし、仕事柄よく知っている世界だ。
それでも、少女の口からそういうセリフを言われて、平常心でいられる自分ではない。
そのまま、言葉も失って、複雑そうな表情を浮かべている。

「私がワンコなんて呼び方をすれば……ものすごい形相で起こるんですれどね」
犬は無愛想だが、怒ってはいない様子。 無表情のまま、少女に撫でられている。
「名前は、パーシーです。まあ、パーシーなんて名前の顔はしていませんけれどね……」
ため息を吐き出すリリアーナ。犬とは仲がいいのか悪いのか、良く分からない。
737 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 22:39:00.57 ID:nT9eLpTBo
>>736
「どうかしたの、お姉さん?」
 無言になったリリアーナを怪訝そうな顔で見る。
 
 犬の名前を聞いて頭から背中へ優しくなでる。
「よろしくねパーシーさん。あなたは毛並みが気持ちいいね。
 ワンコて呼んだら怒るの?
 でもこの子はお姉さんが嫌いじゃないと思う。
 でないと一緒にお散歩なんてしないはずだから。」
738 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 22:53:07.22 ID:sEEfQkLyo
>>737
「いいえ、その……なんと言えばいいのか、分からないのですが」
どんな言葉を選ぶべきか、どんな表情をするべきかとっさには出てこない。
あるいは、この様に気を使ってしまうこと自体、失礼にあたるのかもしてない。
「そんなことを言われるとは思ってなくて、驚いてしまいました……」
仕方が無く、素直な思いを選んで、少女に伝えることにした


「ああ、分かりますか? 私もその子の毛並みが好きなんですよ」
短めの黒い毛。少々固めだが、それが逆に指を包み込むようで、触っていると気持ちが良い。
「まあ、ワンコって顔じゃありませんからね……子ども扱いされるみたいで、好きじゃにみたいなんですよ」
実際、若い犬ではないのだ。人で言えば、青年ぐらいの歳である。

「どう、でしょうか? 少なくとも、その子は私の犬ですから……私には逆らえない。
そういうことになっているんです。ですから、究極的には、その子の気持ちなんて関係ないんです」
長い吐息を漏らす。
「もちろん嫌々じゃなくて、好きでやってくれているのならば、それに越したことはないのですが」
739 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 22:58:00.71 ID:nT9eLpTBo
>>738
「気にしないで。軽蔑してもいいよ。
 どういうお仕事なのかはホントは知ってる。」
 少し沈黙してから再び口を開く。
「もっと酷いお仕事も知ってるから、
 辞めるのも面倒になっちゃった。」
 感情の抑揚が現れない声でそう言った。

 少し微笑む。
「傍目から見たら二人は仲良しに見えるよ。」

 
740 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 23:04:14.30 ID:sEEfQkLyo
>>739
「軽蔑だなんて、そんな気持ちは無いんです。ただ、驚いてしまって。
 いえ、今更何を言っても、言い訳にしかなりませんけれど……」
俯き気味に、そう話す。時々、好きなはずの夜の散歩が嫌いになる。こういう、どこか無力な夜は大嫌いだった。
「あの……ごめんなさい、貴女を傷つけるつもりは無かったんです」

「仲良し、ですか?」
そうでしょうか? と首を傾げながら。
「そんなこと、無いと思いますけれど……」
傍らで、犬は小さな唸り声をあげている。
時々、蛍子に顔を擦りつけたりしている。 どうやら懐いてしまったようだ。
741 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 23:11:51.66 ID:nT9eLpTBo
>>740
「傷は…ないかな。」
 首をかしげて言い切る。
「慣れの世界だし、今なら辞めたい時にやめられるし。
 そういうお仕事を見つけたから…。」

 パーシーに抱きついて気持ちよさそうにしている。
「いい子いい子♪」そして頬擦りで返す。
742 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 23:20:37.80 ID:sEEfQkLyo
>>741
「え、えと……」
やはり、どこか話がかみ合わない。 
だけれどこの感触は嫌いにはなれず、むしろ不思議な好意感をリリアーナに抱かせた。
「私、リリアーナって言うんです」
名乗りながら、自身の名前と連絡先が書かれた名刺を渡す。
「それから、問題ごとを解決するお手伝いをお仕事にしていまして、ようするにヤクザなしごとなんですが……なにかあったら、連絡を下さい」
「パーシーのお友達なら、料金もいくらかは安くしないと、いけませんしね」
最近は忙しいので、なかなか連絡がとれないかもしれませんが。 と説明を付け加える。

「そういうの、少しうらやましいかもしれません……その子が子供の頃は、私もやったんですけれどね」
しゃがみこんで、犬と少女の様子を、時々幼い自分を重ねながら眺める。

普段は本当に堅い犬なのだが、今日は口を開けてじゃれ合おうとしていた。
743 :螢子 [saga]:2013/06/17(月) 23:26:41.19 ID:nT9eLpTBo
>>742
「あ…ごめんなさい。
 わたし、螢子。リリアーナさんね。
 お姉さんよろしく。」
 名刺を受け取ってから「わたし名刺持ってない…」と呟く。

「ヤクザ屋さんなの?」そうは言ってないはずだがそう受け取った。

 何か考えはじめる。「どこの組の人なの?」
 間違ったまま話が進んでいきそうになる。


 パーシーを抱えたままリリアーナに告白する。
「優しい子だと思う。お友達がいるの羨ましいな。」
744 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/06/17(月) 23:45:10.36 ID:sEEfQkLyo
>>743
「蛍子ちゃ……いえ、蛍子さん。ですね」
咄嗟に、『ちゃん』では流石に失礼だろうと考え、言いかけた言葉を飲み込んで訂正する。
「知り合の人は、長い本名ではなく、『リリー』の愛称で呼ぶんですけれどね」
パーシーと仲の良い人物ならば、愛称で呼ばれることになんの抵抗もない。もちろん、愛称呼びを強制するようなこともないが。

「いえいえ、持ってなくても問題ありませんよ」
「そういうのは……ほら、必要になれば自然と手に入るものですから」

「まあ、ヤクザ家業と似ている部分も多いのですが……。
でも、法外な金額を要求したりとか、そういうことはないですよ。 信頼が、一番大切ですからね」

「いえ、その……だから、極道をやってるんじゃないですよ。ものの表現ですから……」
焦った様子で、必死に説明をする。


「ええ、優しい子です。それは良く分かっています。
 それから、貴女も優しい人なのでしょう。パーシーは、そういう人にはすごい良く懐くんですよ」
「羨ましい、ですか? それは、私が感じたことのない感触なのかもしれません」
今日までに友達が居なくて困ったことは無い。憶測で物事を話す訳にもいかず、分からないことにはなかなか言葉が出ない。、
「私達が、何か力になれたら良いのですが……難しいですね」
745 :螢子 [saga]:2013/06/18(火) 00:21:45.46 ID:QlbeZWKmo
>>744
「じゃあリリーさん。」

「リリーさん面白いね。
 またワンちゃん触らせてね。」
 そう告げて今日は帰っていった。
746 :白熊 佐助/No.15エリゴス :2013/06/23(日) 00:47:07.22 ID:B/SqvoqIo
【とあるバーにて】
「次からは喧嘩相手と場所を選ぶんだな・・・」
此処は円環の楽園に所属する構成員の一部が溜まり場にしてたバーだ・・・
とは言っても、拠点が出来てからは俺も来てなかったけどな・・・
久しぶりに来てみたら、見た事も無い奴等が溜まり場にしてたんだが・・・
俺達が居なくなった代わりにガラの悪い奴等が溜まり場にする様になったんだろう・・・
なんとそいつ等はビールを飲んでた俺に喧嘩を吹っかけて来た。
“ガキが来るには未だ早い”だとさ・・・
カウンター席で背中を向けてたし、つーか面倒くさいから無視したが・・・
そいつ等はなんと後ろからビール瓶で殴ってきやがった。
だから向かってきた奴全員ボコボコにしてナイフ向けたり投げたりしてたら逃げていったけどな・・・

「良いねぇ、貸切って言うのは・・・」
おかげ様で壊れた机もあるし、壁にはナイフが刺さってる。
つーか普通の客も逃げちまった・・・
まぁ、そのおかげで俺は貸切みたいな状態でゆっくりとビールが飲めるんだけどな・・・
俺はこの貸切状態のバーで唐翌揚げを摘みながらビールを飲む。

【佐助は派手に暴れまわっており、路地裏の奥とは言え、この様な騒ぎを起こせば誰かが来るかもしれないが・・・】
747 :メイザース [saga]:2013/06/23(日) 01:04:34.65 ID:snkuOTRAo
>>746
ビールを飲み、唐揚げを摘みながら酒を楽しんでいるエリゴスが居る、その空間。
先程までの争いの喧騒は既に失われており、現在は強制的に作られたことが伺える静けさに飲まれていた。
そんな空間に、エリゴスがビールのジョッキをカウンターに置く硬質な音が空虚に響いたその瞬間のことだ。

ことり、と小さくグラスをカウンターに置く音が、ジョッキの音に続いた。

エリゴスの隣には、白が佇んでいた。
何時からそこに居たのかはわからない、だが『それ』はそこに居た。間違い用もなく、だ。
白い髪、白いローブ、白い肌、灰の瞳。
ローブの胸元から除くのは痛々しいほどに鮮烈な紅の魔法陣。
彼の名を知り、彼と近しいものは彼のことをこう呼ぶ、メイザース、と。
そして、彼を別の名で呼ぶとすれば、世界の敵、または盟主、と。

異様な白さ、色彩の無さを持つ少年は椅子をくるりと回して、傍らに佇むエリゴスに向き直った。
ふわり、と幼さが残っていながらどこか枯れ果てた要素を感じさせる笑みを少年は浮かべ、口を開く。
発せられる声も又、変声を終えていない中性的な声だというのに、持ちうるはずの瑞々しさは存在していなかった。

「――やあ、エリゴス。此処は少なからず僕達も利用していた場所だったからね。
君のその行動も、その結果も僕は肯定しようと思うよ」

少年が最初に口にしたのは、肯定。
メイザースの全ては常に認めるところから始まっていく。
今回の肯定は、エリゴスが溜まり場で暴れ、バーを貸切状態にしたこと。
ちょっとやそっとの無法な行いで少年は感情を揺らすことはない。何せ、円環の楽園は大悪だ。
ならば、悪事をして、無法を侵そうともそれは何ら問題ではない、むしろ称賛されてしかるべきだ。
だからメイザースは、エリゴスの行いもその結果も全てを肯定した。

少年は意味ありげな笑みを浮かべながら、その賞賛にさらなる言葉を連ねていった。

「きっと、彼≠煌ぶことだろう。此処は彼――――ガープもよく使っていたから」

エリゴスは、よく知っていることだろう。
この少年を目覚めさせた立役者たる悪魔が、二人の連なる楽園の車座に存在していた℃魔。
それを少年が口に出した意図は図りかねるだろうが、少年の言葉はずぐりと棘となってエリゴスの心に刺激を与えるだろうか。
748 :白鳥景介 No.07 アモン [saga]:2013/06/23(日) 01:15:11.32 ID:VRdGO69Jo
>>746-747
「なんなら買い取っちゃう?この店。」
 天然茶髪の黄色人種。
 アルビノの赤い目が二人をみながらニタニタと笑っている。
「風情はなくなるけれど、場所を独占する事ならできる。」

 そう言ってからメイザースに一束の書類を投げた。
「最近また円の信用度が上がってきたから、これはおみやげ。」
 総額で兆を超える資金をいつでも引き出せる準備ができた事の証明書を少年に渡す。
749 :白熊 佐助/No.15エリゴス :2013/06/23(日) 21:40:41.36 ID:B/SqvoqIo
>>747
「・・・・・・・!!」
突然の気配に反応し、俺は食事の手を止める。
何処から来たのはまるで解らなかった・・・
急に現われたような・・・

「悪いな、後ろからビール瓶で殴られて無視出来るほど、大人じゃ無いんだ・・・」
本当に神出鬼没な奴だ・・・
だが、悪の組織を束ねる身としてか・・・
俺がやった事を否定しようとしない・・・
しかも、認めているような口ぶりだ・・・
俺の行動の感想はどうあれ、この人の気になるセリフはその後だ・・・

「シモン・・・」
ガープって言葉を聞き、俺は残ったビールを一気に飲み干す・・・
そしてジョッキを握っていたその右手に力を入れ、その握力でジョッキにヒビを入れる。

「シモンを取った奴が誰か・・・メイザースは知ってるんじゃないのか?」
ロンドンで一緒に戦ってた仲間が死んだ・・・
結果的にはメイザースの復活に貢献したが、俺もロンドンで戦ってたんだ・・・
俺はシモンを殺した奴を探しているが、それがどんな奴なのかも解らない・・・
ロンドンで戦っていたとは言え、俺が居たのはまた別の場所だったからな・・・

>>748
「・・・・・・・・?」
見かけない奴だ・・・
しかもメイザースにヤケに馴れ馴れしい・・・
しかもこの感覚・・・

『アンタもそうか?白熊 佐助だ・・・メイザースからエリゴスの名を貰っている。』
俺はこの感覚の正体を確かめる為に、ある事を試す。
テレパシーだ。円環の楽園に属する構成員はメイザースより焼印を貰い受ける。
その焼印には構成員同士のテレパシーの能力が植えつけられる。
もし、あの男が構成員だとしたら、このテレパシーを感じ取れるはずだ。

「ところでそれ・・・」
メイザースに投げた書類・・・
チラッと見えたが・・・あの書類は、兆を超える金を引き出す事を証明している・・・

「大した奴だな・・・俺も組織の利益には貢献してきたが、この金額は俺には無理だ。
 それに、この有様をやってしまったからな・・・
 稼いだ金を組織に貢献して、残りをこの店の修理代に使ったら今月は厳しくなりそうなんだ・・・
 買い取るか、修理代を建て替えてくれたら何とかなりそうだぜ・・・
 そうじゃ無いと、今月も拠点の屋上に生えてる野草や植物で生活する事になるからな・・・
 あそこは色々な植物があって食うには困らないが、頻繁に下痢や嘔吐に苦しむ事になるからな・・・」

拠点・・・飛船レオナルド・ダ・ヴィンチの事だ。
あれはメイザースがバミューダ海域から浮上させた村規模の大きさを持った船だ。
屋上があり、あそこには色々な植物や動物が居る。
俺が食費に困って野草や植物を採って食った事があるが、当たり外れが激しかった。
動物は流石に食わなかったが、見た事の無い野草やキノコを採って色々と食ってみたが・・・
旨い物もあれば、食ってみれば突然の嘔吐や下痢に見舞われることもあった。
750 :白鳥景介 [saga]:2013/06/26(水) 09:18:19.21 ID:Sl02yeJAo
>>749
「ただし、一括で一回しか引き落とせない金だけれどね。
 千円の物を買うにしてもたった一つの物を買えばおしまい。」
 肩をすくめて残念そうな態度を演じる。

「エリゴスさんか。
 俺は新参者のアモン、よろしく先輩。
 本名は白鳥景介だ。
 そういや、俺が入る前の円環は知らないな。」
 テレパシーは受け取った。
 間違いなくメンバーだ。
751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/07/01(月) 23:22:19.54 ID:4muXlqT5O
【来たれ能力者】ここだけ自由度の高いなりきりスレ【仮】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1372681631/

新興なりきりスレができました
掛け持ちでもいいので参加したい方はこのスレまで!
752 :トマス【副官長】 [sage]:2013/07/13(土) 23:20:05.52 ID:rPMVc6Pmo
【トマスと大神の話は後日実行される事となった。休日ができたのである】
【と言っても、トマスがそうなるように裏で色々とこなしていたのはまた別の話となるのだが】
【夜、街中の光は相変わらず輝かしくある。、教会の上に浮かんでいた月はここでは存在できない】
【その月に興味も示さないトマスは、その光から少し離れた町外れの小さな公園の噴水、周りにあるベンチに座って本を読んでいた】
【戦争と平和。トルストイのロシア人の葛藤を描いた物語である】

「……」

【時折視線をずらして辺りを確認する動作が行われる。定期的に五分に一回。狂いなく機械的に】
【それから解るのは誰か待ち人をしているという事。辺りは噴出する激しい水の音がなるばかりであった】
753 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/13(土) 23:31:26.01 ID:JolSAl4Lo
>>752
トマスが待っているであろうその人物が現れたのは、約束の時間の十分前。
今は休日だということだが、普段仕事をする時とほぼ変わりのない格好で現れた。
いつもと違う部分は、隻眼を包むものが包帯から清潔感のあるガーゼパット眼帯になっていることぐらいだ。
――要所にL.M.Gの装飾が施された大神の格好は、普通の道を歩くには、非常に目立つ恰好であった。

「……待たせたか?」
チラリと、オレンジ色の腕時計に視線を落とす。
約束の時間には早いが、約束の相手はずっと前から待っていた様子だ。
754 :トマス【副官長】 [sage]:2013/07/13(土) 23:45:17.17 ID:rPMVc6Pmo
>>753
【トマスが顔を上げた瞬間、目の前にはいつもの姿で立っている目的の人物、大神】
【トマスの服装というと、普段着である黒いポンチョに白いスカート。大神はその正反対である仕事着だ】
【少し苦笑いを浮かべて本を懐にしまい立ち上がって大神に軽く礼をする】
【これは仕事ではなく、あくまで遊びなのだ。休日であり、作業を行う日ではないことをしっかりと理解させないといけないようだ】
【折角だからまずは服装を変えさせようか。トマスの内心では普段仕事中には見せない、女の子らしさというものを秘めていた】

「いえ、全然待ってないから安心して頂戴。というか貴方、もう少しラフな格好でもよかったのに……
まずは服を買いに行こうかしらねぇ」

【トマスは微笑みながら大神の手を取ろうと光の方へと小走りに走り近づいていく】
【腕時計をつけているのとは逆の手で、時間を確認している大神にとっては不意打ちになるかもしれない】

「さぁ、行きましょう」

【まずは街中にある服を売っている場所。内装は比較的新しい、高校生などが立ち寄るような場所だ】
【いつもとは違う仕事の上司に大神は困惑しても仕方ない。否、いつも通りか】
755 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 00:08:58.68 ID:CSYGsoj+o
>>754
「そうか、それならば……良かった」
人を待たせるのは良い事でない。それが目上の相手ならば、いっそのことである。

「他の格好といっても……あとは、体操着ぐらいしかないぞ」
体操着――前回、教会にいた時に着ていたジャージのことだ。
大方の人が予想するように、服装に関しては非常にドライのようだ。

「お前のそれは……良いと思う」
主語が抜け落ちているため、少々分かりにくいかもしれないが、トマスの格好についての話しているようだ。
服装についての会話だったため、大神なりにも意見を述べたのだろう。

「ま、待て……そんなに急ぐことはないだろう……」
トマスにここまでの積極性があるとは、大神は全く予想していない。
手を引いて、前を行くその姿に、完璧に引っ張られてしまっている。


そうして、連れてこられる街中の店。
「何処に行くのも構わないが……こんな店は、随分と来ていないぞ?」
そう、どこかきらきらとしたお店を見つめながら。
756 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 00:24:05.00 ID:b+/mljqwo
>>755
急ぐなと言われても時間はもう午後の9時を過ぎようとしている。トマスは私的空間内にて短い時間の中どれだけ店に入れるか、そして楽しめるかを自分なりに考えて予定を組んでいる
だからこそ、今日という日は無駄にしたくは無いというエンターテイナーの血が煮えたぎっているのだ
トマスは足早に人混みを突き進んで行く。その度に大神の手を放しそうになってしまうが、その度に力強く握り締めた
普段辞書くらいしか重いものを持たないトマスの必死の抵抗だ。離すまいとしっかりと
着いた場所はやはり光り輝く店。中に入って店員に軽い挨拶をされた後に大きく一つ深呼吸をした

「はぁ、はぁ……んー、確かにあんまり急ぐのもあれかしらね……
そうそう。私の格好を褒められる位の感性を持っているのなら、貴方にだってここの服を選べる筈よ
戦場を思い出しなさい。敵には優先順位があるわ。状況、環境、相手の様相、武器、全てを考慮して戦う順番を決める
それはとてもセンスのいることなのよ」

大神には大神なりの感性がある。これが似合う、これが可愛いと押し付けるのもありだ。だが、今回の目的はあくまでも大神の一般慣れ
実は自分が選びたくてうずうずしてずっとにやけているのは小走りの披露で隠しているのだが、深呼吸をしたせいでボロがでかけている
握っていた手を離しずれかけたメガネを直して、大神に好きな服を選ぶ様に命じた

「これは私の楽しみであり、貴方の楽しみであるわ。つまり、今日は貴方にとっては難しいかもしれないけれども、羽を伸ばす事を覚えて貰うわ
まずは女の子らしく服装からしっかりとしましょう
仕事着なんて着ていたら、仕事の事を忘れて遊べないでしょう?
さぁ、いったいった」

優しい微笑みを、仕事でもあまり見せない笑顔を見せたトマスは、きっと思いで深くなることを神に祈った
757 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 00:41:33.52 ID:CSYGsoj+o
>>756
前を進むトマスは、勢いがあって頼れる存在であったが、勢いがありすぎて危なっかしくも感じられた。
それでも、トマスの思いは伝わるので、大神も必死についていこうとする。

「何処に行って何をするかは、もちろん重要だ。
けれど、目的はそれだけではないだろう? てきぱきと行動するのは美徳だろうが……
けれど、あまり急ぐと大切なものを見落とす……とも、思う」
バランスが重要なのかもな。 そう、付け足した。

「あと……走るお前は、なんだか危なっかしい」
少しの間を置いて、最後にボソリと付け足すのは、非常に自然な調子であった。

「そうか……分かった」
内心では奇妙な命令だと考えながらも、トマスの言葉には素直に頷く。
考えろと言われてしまえば、真面目に考える他は無い。 
「戦場を思い出せば……良いのか?」

「そうは言ったが、これらはどういうものなのだろうか……」
流行の物の奇抜な色の薄い素材の服を見つけては、首を傾げる。
穴の開けられたジーパンの見つけた時には、不良品が混じっていると叫びだしそうな勢いである。

「むう……」
本気でファッションを組み立てると、普段は気にしない隻眼が非常にネックになる――時折、助けをもとめるようにチラリとトマスの方へと視線を向けている。
758 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 00:54:30.78 ID:b+/mljqwo
>>757
走る姿が危なっかしい、か。行きすぎるのもいけないという事だ。反省しよう
だが何と無く大神も自然に接してくれているのは感じられる。トマスはこれ以上の事を求めていなかった。強いて言えば楽しんで満面の笑みを見せて欲しいと言ったところか

「ふふ、確かに服を選ぶのは難しいわよね」

普通ならば可愛いものがありすぎて取捨選択できないなどと言って困るものだが、大神は勝手が違うと言ったところか
迷うことは大いに構わないのだ。むしろ迷ってくれた方が見ていて微笑ましい
と、背後から常に微笑んでいたトマスに救援を求める大神の視線が当たる。それに気づいたトマスは近寄って、一つの黒いスウェットを選んだ
黒を基調として、会社のキャラクターと英語のロゴが描かれた良くあるスウェットだ
夏場に着るには少し暑いかもしれないが、夜なので丁度いいかもしれない

「これなら普段着っぽくて、尚且つ可愛いらしくていいじゃない?」

トマスも普段着に関してはファッション雑誌の真似事で、センスがあるかないかと問われればない方だが、きっとこの服なら安定しているだろう

「ほら、試しに着てみて。自分で判断してみなさい?」

まるで子供を諭すような言い方となってしまっているが、実際トマスの内心では娘ができた気分にもなっている
試着室を指差して、やはり微笑んでいる
759 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 01:05:35.58 ID:b+/mljqwo
/スウェットってなんやパーカーやあほか
760 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 01:13:14.64 ID:CSYGsoj+o
>>758
「すまない……これくらいは、出来て当然なのだろうが」
好きにしてよい――と言われてしまえば、一番困ってしまう。
大神自身、弱点だとも自分の悪い点だとも感じていた。

「うむ? ……そうだな、見た感じも動きやすそうだ」
色は派手ではない黒。 派手な装飾があるわけでもないし、プリントも街でよく見かけるようなものだ。
「実際に試してみるのが、一番手っ取り早い、か。 そうだな」
小さく頷いて、トマスに了解を伝える。
選択されたスウェットは、両腕でしっかりと抱きしめられていた。

ローラーが走って、カーテンが閉じる。
ゴソゴソと、カーテンの内側で人が動く気配。 しばらくして、カーテンが再び開く。
「トマス、どうだ?」
ゆるい感じの格好は慣れないらしく、少々複雑そうな表情でトマスに問う。
761 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 01:13:45.59 ID:CSYGsoj+o
>>760
//パーカーに読み替えて下さいー
762 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 01:24:54.93 ID:b+/mljqwo
>>760
試着室へと向かって行く大神の姿を後ろから手を振って見送る
これから時間はたっぷりとは言わないがしっかりとある。この後は二人で軽食を取ってからそこらのゲームセンターいでもよって、などと考えていたが軽食を取る時間もなさそうだ
プランには幾つかの枝があり、一つ折ってしまっても困らない様にできている
ここは折った枝を違う枝に引っ付ける事で対処しよう。クレープなどの持ち運べる食べ物にして──

などと考え事をしている間に、着替えが完了したようだ。期待に胸を踊らせながら、カーテンがあくのをツバを飲んで見守る
想像どうりの姿。やはり似合っている。元が良いからだろうか。トマスは飛び跳ねて喜びながら大神に近寄って

「さっすが私の部下だわー!ちょう可愛い!ひゃっはー!」

一人で盛り上がり過ぎでは無いだろうか
いつもとは違い過ぎる上司に困惑するかもしれないが、これが普通であり、素のトマスであることを示している
このまま誘発されて大神も素の姿が出るといい、などと考えている。もし、仕事が素なのであれば、こういう普通という楽しみも知って欲しい

「え、ちょ。めっちゃいいわー!うぅ、私的には完璧なんだけれども……おっほん。貴方はどう思うのかしら?自分の意思で決めなさい──はい」

懐から万札を取り出して大神に差し出す
何のためらいも無く、自然に。遠慮されても押し通すだろう
763 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 01:44:16.43 ID:CSYGsoj+o
>>762
「お……落ち着いてくれ、トマス。 このような時間だが、まだ人目もあるのだ……」
テンションが高いトマスは、普通の少女のようで……この時間帯にこの騒がしさは、周囲から目立つのではないか。
そんな心配をしてか、やんわりと注意の言葉を述べた。

「トマス。 俺も、今日のためのお金は持ってきているぞ」

とりあえず、大神の中でこのパーカーを買うことは確定だ。
――それに、この服を今日はこのまま着るつもりでもあった。 仕事着はトマスに好まれなかったのだから、違う格好の方が良いだろう。
そんな理由もあって、パーカーは着たままだ。

「お金というのは……着易く扱ってよいものではないだろう?」
絶対に言葉にはしないが――施しとは、必要としている人に行うべきもの、持つものが、持たざる者に行う行為。 ――そういう考えが根底にあり、簡単には受け取れない
そうはいっても、トマスの好意は前にも断っている。好意を折られて喜ぶ人もいないものだ。

「……有難う」
トマスに押し込まれてしまえば一度大きく頭を下げて、その行為を受け取る。
764 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 01:55:41.88 ID:b+/mljqwo
>>763
あ、と自分の愚行に気づいたトマスは、L.M.G.の責任者たる自分がどれだけ恥ずかしい事をしていたのか、と胸の中で自分を責める
顔を真っ赤にしていつの間にか正気を失っていた事に対して、大神の注意をありがたくおもい、謝罪と共に感謝を述べた
何と無く、上司と部下という関係であっても注意して貰えるのは嬉しい。その関係が薄くなっているようで
だが、それほどまで似合っていた、ということだ。トマス自身はもっとはしゃぎたかったが、これ以上大人気ないところを見せるわけにはいけないと、胸中に留めた

「あら、そうなの。けど今日は全部私の奢りでもいいつもりできたんだけれどもね……まぁ、そこは貴方に任せるかしら」

確かにそうか。買い物に行くというのに自身で金を持ってきてないはずがない。もし持ってきてないというのならば天然のヒモとしての才能があるとしか言いようがない
押し付けた金が入っていた財布を懐にしまい、じゃぁ今日はこれで奢りお終い!と言って微笑んだ
常に笑顔が絶えないトマス。相当楽しんでいるようだ

「さて、次はどこに行きましょうか──貴方はどこか行きたいところあるかしら?特にないなら軽食を取ってゲームセンターにでも、って考えているのだけれども」

/そろそろ眠気がヤバイので凍結いいですかね?
/明日空いてますか?できれば明日がいいんですが
765 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 01:57:54.62 ID:CSYGsoj+o
>>764
//凍結、了解です
//明日の夜とかならば、全然大丈夫なはずです。今日はお疲れ様でしたー
766 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 02:10:45.66 ID:CSYGsoj+o
>>764
「……トマス?」
謝罪の言葉に反省をした様子――そうさせてしまったのは、自分の言葉だ。

「お前は……いつもL.M.G.の人物として、何時もは多くの物を背負っている人物だ。
だからこういう時ぐらいは、お前にとって一番良い状態にするべきなのだろうが……すまない」
こちらから頼ってばかりだし、こちらの事情のために気を使わせてばかりだ。と、大神は言う。
「すまない、俺は……」
重ねて述べられる、謝罪の言葉。表情は俯き気味である。

パーカーの他にも、軽く衣類を漁る。 ふとトマスの方を振り向いて、口を開く。
「そういえば俺、更衣室でも大丈夫だった……外には、お前が居るって分かっていたから」
大神の閉所恐怖症――それは後天的なもので、一応は適切な治療をうければ回復も見込めるものだ。
信頼できる要素による、症状の緩和――小さなものだが、回復の片鱗と言えるのかもしれない。

「私に問うな……どうせ、ロクな場所は思いつかないんだ」
それでも強いて言うなら『神社』や『寺』になってしまう。
大神の血統と一族の問題になるのだが、特に神社には知り合いが多い。
「今日は、お前に付き合うって約束だ、任せる」
767 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 22:25:14.20 ID:b+/mljqwo
>>766
【身下げれば大理石の床は定期的に清掃されている為に真っ白だ。清潔感を保つことは全体のイメージを上げることにも繋がる】
【それと同じように、一人は全体に作用する。皆は一人の為に、一人は皆の為になどという本日の標語が的確だ】
【相反して一人が失敗を犯せばそれが全体に影響を及ぼす。故に一人一人がL.M.G.のメンバーとして気を遣うのは当たり前だ】
【例え休日であったとしても、だ。堅苦しい休日にはしたくはないが故にはっちゃけすぎたのもある。トマスの内心も申し訳ない気持ちで一杯になってしまう】
【大神の言葉も合間ってどう対応したものかと視線を逸らす。いつもの自信満々のトマスが、申し訳なさそうにしている】
【が、折角のデート……休日だという事を思い出して微笑みを取り戻して大神に顔を上げる様に言った】

「ほ、ほら!ね?ごめん。私もちょっと騒ぎ過ぎたし、私が悪いんだわ、だから貴方は間違ってないのよ
それに私は好きで物を背負ってるんだから、ね?」

【物という表現は全体を見て考える人間特有の言い回しだ。トマスはやはり申し訳なさそうに直接大神を見ずに頬をかく】

「……そうね、貴方はもっと強くなるわ……うん」

【閉所恐怖症──意識をしていなかった。自分のデリカシーのなさに胸が痛くなる。全体を見すぎる余り小さな所が見れなかった】
【それではいけないのだ。トップとして、まとめるものとして全体を見つつ個人を見なければ】
【力強く拳を握ったところで、今日は休日だと思い出す。自分の両頬を強く叩いて、力を入れ直す】

「んー、そのろくでもない所に行きたかったのだけれども──じゃぁゲーセン行きましょうかね
あぁ、もう服はいいかしら?」

【もしもう良いのであればゲームセンターのエアホッケーをしようと提案する。ゲームセンターは歩いて五分の近場だ】
768 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 22:46:50.46 ID:CSYGsoj+o
>>767
「トマス……」
移り変わるトマスの表情。 当人は隠そうとしているのかもしれないが、断片を拾い上げていけば何を考えているのか大体見当がつく。
「今日は、楽しい一日にしよう――俺だけではなく、お前にとっても」
俺も頑張るからと、トマスの方を見ながら。言い放つ。
その一言が何かのスイッチになったように、大神の肩から力が抜けたようだ。

「そんなに気負わないでくれ。 更衣室に入りたくなかったのなら、俺はハッキリと話していた」
自分の病気でパニックなど起こしてしまえば、折角のトマスの休日が最悪の日になってしまう。それだけh絶対に駄目だ。
「俺が言いたいのはつまり……感謝をしているってなんだ。 お前と居ると、こころがとても落ち着く」

「ああ……すまない、あと少しだけ待ってくれ。 一つだけ、買いたいものが出来た」
時間が押しているらしいので、小走りでレジへと向かった。 人も多くはないので、すぐに戻ってくる。


「だが、近場には私が知っている良い場所が無いから……私の行きたい場所は、また機会があったらにしよう」
ゲーセンに行こうという言葉に、小さく頷いた。
「だが、意外だな……お前も、そういう場所に行くのか?」
トマスの雰囲気に似合わない、ゲームセンターという場所。 意外だとう感情は、表情にも表れている。
769 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 23:03:27.06 ID:b+/mljqwo
>>768
大神は根っから優しい。凄く、暖かい。大神がトマスであるように、トマスも大神といると楽しくなる節がある
最初にあった時に確信していたのだ。人を見極める目を持つ──否、正確に言えばトマスの帰納法が──トマスにとってそれは容易で
大神の雰囲気が最初よりかは和らいだ気がする。トマスも無駄にはしゃぐ事は今後ないだろう

「……なんだかくすぐったいわ、ありがとう
わかったわ……っと、じゃぁ行きましょうか」

何を買ったのだろうか。大神が自身で選んだことに対して関心しながらも、その関心を得た物に対して興味が湧いた
だがそれは聞くべきではないだろう。トマスは喉の奥に興味を押しとどめて、大神の手を取り店を出た
そして数分後

「んー、まぁ私も滅多にこないんだけど。たまぁーにストレス発散に来るんだわ
じゃぁまた今度、これ決定ね!」

エアホッケーの台の前で、意外だと思われた事は納得できるなと自身で思いながらも二人分の金を入れる
空気と機械の稼働音と共に、《球》が出てくる。球といってもただの青い円盤なのだが、トマスの表現では球
時間数は無限、5点先取の簡単なルール

「やり方は分かる?このマレットっていうのでこの球を弾いて相手のゴールに入れるだけの簡単なルールよ。先に5点入れた方が勝ち」

片方に立ってマレットを構える。普段戦闘を行わないトマスと、戦闘や筋肉を使う事務をこなす大神との戦いだが──

「お先にどうぞ?」

相当自身があるようだ
770 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 23:18:27.67 ID:CSYGsoj+o
>>769
「すまない、待たせた」
黒い買い物袋を持って、大神が戻ってくる。
中身を聞かれかどうかトマスの方を気にしていたが、聞かれないということが分かると落ち着いてトマスと共に歩き出す。

そうして、数分後にゲームセンターへと到着した。

「イメージはしていたが……騒がしいところだな。 こんな時間だというのに、人も多い」
口調から察するに、ゲームセンターは初めてな様子。 少々浮世離れしているという印象は、間違いではないのだろう。
「なるほど……こういう所もあるのだな」

「ああ、やり方は分かるぞ。 何処かは忘れたが……確か、見たことがある」
幼いころ、どこかで見たことがある。 ――いったい、どこだっただろう。

「俺……こういうのでも、絶対に負けたくない」
こんな些細なことでも、手を抜くつもりは無い。――むしろ、些細なことだからこそ力は抜けない。
ゲームセンターのゲームといっても、こういうものは負けたくないものだ。
勝ち負けよりも、大切なこともあるというのも、重々理解しているが。

球を相手のゴールに押し込むだけ。 スポーツだとすれば、非常にシンプルなものだ。
大神が先行のスタート。 真っ直ぐにゴールを狙うが、初めてなこともあってか速度は遅めだ。
771 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 23:31:41.78 ID:b+/mljqwo
>>770
大神の台詞を聞いて安心した──全力で行こうか
トマスは基本魔術回路を主とした戦い方を好み、自分の魔翌力量での力押し、否ゴリ押しが一番好きなのだ
と言ってもトマスのゴリ押しは普通ではない。しっかりと考え込まれたゴリ押しを行うのだ
戦場でも作戦を寝るとしたら少数精鋭をした方が効率的な場合はそうするが、終盤で相手が疲弊し切っていた場合は総力を挙げて潰しにかかるのが好きだ──それもゲームの話だが
それと同じでエアホッケーも頭を使いつつ、力で押して押して押し続ける

「ふふ、上司だからって遠慮はいらないわ──よっとぉッ!」

刹那、トマスの肩から下が消えた
精確に言えば消えたのではなく、高速で弾き飛ばされたのだ。それと追随して緩慢目の前に突き進む球を弾き飛ばし、一直線に大神側のゴールへと飛んで行く
南兵庫黎明に変われば確かに身体能力は格段に上がるが、今は確かにトマスの雰囲気だ
身体能力が急激に上がることはあり得ない。ましてや肉弾戦を得意としないトマスが、だ

「容赦はしないわよ?」
772 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/14(日) 23:45:32.07 ID:CSYGsoj+o
>>771
大神としては、様子を見るために第一手であったが、容赦のない反撃を浴びせられる。
トマスが見せたあの自身気な様子は、何かの冗談ではないらしい。 間違いなく相手は本気に見えた。

自分の目でもしっかりと追えない、目が覚めるようなトマスの腕の速さ。
「……ッ!」
大神はといえば、二手三手を読むよりは、その場で臨機応変に判断を繰り替えすタイプである。
直観的かつ反射的であり、つまるとことは野性的な行動パターン。

トマスの強襲へと動体視力だけで追いついて、辛うじてゴールの前でブロックする。
苦し紛れのクリアボール。 フィールドのどこに飛んでいくかまではコントロールできていない。

「悪い、トマス……私は、お前を見誤っていたようだ」
黄色い瞳が鋭くなって、フィールドを睨みつける。
773 :トマス [sage]:2013/07/14(日) 23:59:26.65 ID:b+/mljqwo
>>772
トマスは腕力も無ければ、握力も無い。あるのは経験だけで、威力の高い攻撃を出すのは普通考えられない
寧ろモヤシだと揶揄られても仕方が無いほどだ。そのトマスが何故こんな事ができるかというと理由がある
だがそれは本来ならば誰でも知っている事──戦闘をおこなう上で大事な事を行っているだけだ
先程放った一撃は跳ね返され、壁に当たり変則的にこちらへと戻ってくる
まだトマスの経験で対処できる。スピードは対応しきれないが、こうなることが分かっていた様に、大神がブロックした瞬間には次の位置にマケットで弾く事ができる構えをしていた

「──っ!」

聞こえるだろうか、トマスの大きな吐息の音が
ゲームセンターは常に音で飽和している。だからこそ自分のゲームに集中しているのだ
その轟音の最中異常な程に甲高い弾く音が響き、観衆を集める結果となってしまった
何人か台の周りに集まるものの、二人の圧倒する雰囲気の為か距離を取って二人の試合の行方を見守っている
トマスの中では早い段階だとは思っていたが、見られている事によって余計に力が入らない為の制御に集中した
速さが相乗され、先程より強力な一撃となった球が、やはり一直線に大神の元へと向かって行く

「ふふ、楽しみましょう、ね?」

大神の目をしっかりと見据えて、口の端を深くつりあげた
774 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/15(月) 00:12:29.70 ID:kElScdqwo
>>773
「……………っ」
カコンと渇いた音を響かせて、球がゴールポストの内側に収まる。
二度目の攻撃は、追い切れなかった。 トマスの腕力自体は、変わっていないということは、遠目に眺めていても分かる。
筋力や動体視力などでは、トマスには悪が圧倒的にこちらに優位があるはずだ。

「そうだな、楽しもう」
腰を折って、台の下から球を拾い上げる。
身体能力の優位は、トマスの計略によって打ち消されているようだった。
球の反射や、パワーと速度の関係性。ゲームのルールや台の特徴。それらを非常に良く理解して、瞬時にそれらの情報を実戦レベルで応用している。――上位の審問官としての役職は、伊達では無かった。

「次、いくぞ……」
同じように、コントロール重視の球でゲームを再開する。
トマスの戦法が分かっても、なにかできるわけではない。自分には、彼女を上回る作戦が組めるわけがない。
だから――自分の優位で、相手を圧倒するほかに手立ては無かった。
775 :トマス [sage]:2013/07/15(月) 00:31:20.92 ID:rr2y+01Ko
>>774
このゲームだけでなく、戦闘でも休息でも言えることだ
トマスは力を込めて球を弾いているのではなく逆に脱力して放っている。つまり、右腕に体重をかけてマケットに重心をやり、球に当てる
トマスの構えを詳しくみれば、まず始めに助走をつけるように左足を力強く前に出し、右腕を脱力したままマケットを地面と並行に持ち、直撃
そしてそれと同時に大きく深呼吸を入れる事によって脱力に磨きをかけるのだ
靴下に砂を入れ、何回か捻じり振り回す臨時の護身用の武器がある。それと同じ用法だと思ってもらっても構わない
とにかく、トマスは無駄に力まないようにしているのだ

「あら、諦めっちゃだめよ?しっかりと楽しませてもらわないと」

点数が入ったことに喜びを感じて、小さなステップを取る。大人気ないとは分かっていても小さな勝利に酔いしれたい
だがもうそろそろ侮れないであろう。大神は対応ができる子だと知っているトマスにとって、一・二点目はまだ猶予の時間だと考えている
だからこそ、今の内に余裕を見せて牽制して起きたいのだ
1-0。トマスは再び腰を深く構えて右腕を構える。同じ戦法を取るようだ
脱力の事が大神にはもう見破られているのだろうか。それとも観衆の声で脱力時の声は掻き消えて聞こえないか
楽しもうという大神の一言にトマスの心が脈をうった

「……!」

コントロール重視。だがそれはトマスにとっての経験上の物で──

「っと」

やはり一直線。同時に、大きく体軸がずれた。重心が強くぶれて態勢を崩してしまったが、勢いに変わりはない
ただ、跳ね返された時の対処がトマスの身体能力ではかなり難しい、ということだ
776 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/15(月) 00:38:55.49 ID:kElScdqwo
>>775





トマスの球を見るのは、コレで三度目。 初めに比べると、目も慣れてきた。
「――はっ」
777 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/15(月) 00:39:17.53 ID:kElScdqwo
>>776
//ミスです……
778 :大神 恭子 【異端審問官】 [sage]:2013/07/15(月) 00:46:02.63 ID:kElScdqwo
>>775
「すごいな……」
張った力ではなく、身体の芯で球を捉えている。
理屈でわかっても、なかなか出来る事では無い。 ふと、トマスには格闘の才能があるのではないかと考えた。

ギャラリーの声は聞こえてこない。それこそ、初めからギャラリーなどいないような状態だ。
大神はすでに戦闘時のテンション。 ――全力で戦うことこそが、いちばん“楽しめる”事だと信じていた。

トマスの球を見るのは、コレで三度目。 初めに比べると、目も慣れてきた。
「――はっ」
回数を増すごとに集中は鋭くなり、動きに余裕があらわれる。
比較的に小さな動きで、ゴール前から跳ね返した球は、速度こそトマスのよりも一回り遅いが、ゴールの枠は確実にとらえる角度で、飛来していく。


//すみません、そろそろ時間が厳しくなってしまいました
//凍結をお願いできるでしょうか?
779 :トマス [sage]:2013/07/15(月) 00:49:10.66 ID:rr2y+01Ko
>>778
/了解です!ではまた今度予定があけばお願いしますね!
780 :一ノ宮総華【賞金首:3100万】 [saga]:2013/07/29(月) 22:20:42.32 ID:Vnr6VfWT0
「クククッ!!俺の手にかかれば、車の一台や二台なんて事はないんだよ!!」

家族用のワゴン車の車の運転席の窓ガラスを割り、そこから侵入した男は、愉快に爽快に笑っていた。

服装は何処かの外国の囚人服を思わせる縞々のパーカーを羽織っており、髪は金髪に染めて、車のハンドルを握っていた。

「さぁて、さっさとトンズラしようと思うんですけど………」

ワゴン車のいたるところを調べるが、お目当ての物が見つからない。愉快に爽快に笑っていた顔が段々と青ざめていった。

一頻り探し終わると、少年はため息を付き、夜中の駐車場とも忘れて

「どうして車の鍵がないのぉおおおおおおおおおおお!!?」

と叫んでしまった。
781 :瓜生瑛斗 [sage]:2013/08/01(木) 16:46:50.98 ID:pBLO+wWZo
「ここ、何処だ?」

気の向くままに歩いたのが仇となったか。
土地鑑がある訳でも無し、初めて来る場所ならば少しは考えて歩くべきだった。
本日、泊まる所を探す為に大通りを歩いていたつもりが、気付けばそこは方向すら検討の着かない路地裏。

壁に沿って歩けば大通りに出られるだろう、となけなしの頭で考えた知恵すらも目の前に立ち塞がった別の壁に打ち砕かれた。
進めど進めど、壁、壁、壁。
日陰の癖に蒸し暑いのも相まって、イライラは募るばかりである。
少々乱暴にワイシャツの第一ボタンを開け、ジーパンからシャツを出した。
背負った荷物の持ち手に沿うかの様に、右肩部分のシャツは汗で濡れている。

「……くそったれ。たまったもんじゃないぜ、こんなん」

現状を脱却する手段はイライラと暑さで茹で上がった頭では出て来ない。
まずは人を探そうか。
誰にもぶつける事の出来ない怒りを、転がっていたドラム缶を蹴り飛ばすことで発散させ、再度大通りを探して歩きだす。
782 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 19:22:55.55 ID:KClMJINbo
>>781
「ひっ!」
 音に驚いて女の子が短く小さな悲鳴をあげる。
 ウェービーなブロンド神に碧眼、人種は白人だろう。
 日傘をさしてフリルのついた白い衣装に身を包んでいる。
「乱暴な人ね。驚いたじゃない。」
 しかし流暢な日本語で文句を言ってきた。

 こんな街中の迷宮のような路地裏に一人で何をしていたのやら。
「あなたはこんな所で何をしているの?」
783 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 19:43:46.40 ID:pBLO+wWZo
>>782
「……あ?」

振り返った先、視界に入ったのはあまり見慣れない姿の少女だった。
先程の悲鳴を聞き、自分の蹴ったドラム缶が原因である事を悟る。

「あ!ゴメン、驚かせるつもりは無かった!ちょっと気が立ってたんだ」

状況がどうであれ、自分に非があるならば、謝罪すべし。その相手が少女なら尚の事。


「ちょいと迷っちまったんだ。今日泊まれそうな所を探してたらこんな所に来ちまってさ」

気まずさを紛らわす為に頭を掻く。
その頭からは2、3本程茶色の毛が抜けた。
しかしながら、探していた人が向こうから来てくれたなら好都合。
こちらから探す手間が省けたというモノだ。
泊まれる場所を聞くのも悪く無いが、まだこの地形には詳しく無い。
この少女は近隣の人なのだろうか?

「……一つ聞きたいんだけどさ、ここ何処?俺初めてなんだ、ここ」
784 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 20:05:33.20 ID:KClMJINbo
>>783
「道に迷ってこんな所まで?
 今は廃区画になっているみたいね。
 この場所にも名前はあったのでしょうけれど知らないわ。」

 ビルに止まって並んでいるエアコンの
 室外機は乾いた地面の上で埃をかぶっていた。

「街にでれば人通りもあるわ。
 本屋さんかコンビニで地図でも買えばどうかしら。
 案内するわよ。」
785 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 20:23:22.46 ID:pBLO+wWZo
>>784
「廃、区画?」

そこまで聞いて漸く周りが寂れている場所であった事に気付いた。
ぽつぽつと建ったビルには人気が無く、周囲の風景も何処かこざっぱりとしている。

「お!そうして貰えると助かるよ!」
「俺は瓜生瑛斗。好きに呼んでくれ。えっと……」

と、ここまで聞いておきながらこれまた漸く名前を聞いていなかった事に気付いた。
どれだけ焦っていたのか。シャツの袖で額の汗を拭こうとするも、額に感じるのは腕輪のひんやりとした感覚。

「……君の名前は?」
786 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 20:30:47.98 ID:KClMJINbo
>>785
「クララよ。ニックネームじゃなくて本名。
 よろしくね瓜生さん。」
 瓜生の手を取りビルの迷宮の中を歩き出す。

「建て増しされた建物が多いわね。
 食堂はここでいいかしら。」と独り言を呟き、
「ところで素敵な腕輪をしてるのね。
 誰かがプレゼントしてくれたの?」
 瓜生に話しかけてきた。
787 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 20:39:24.46 ID:pBLO+wWZo
>>786
「OK.クララちゃん、で良いのかな?」

握られた手に引っ張られる様に未見の土地を見回しながら歩く。
『食堂』と気になるワードを発言したにも関わらず、周囲の道を覚えるのに精一杯であった彼は、それについて追求はしなかった。

「これ?これ、親父がくれたんだ」
何処か遠くを見る様な目。
多くを語るべきか悩んだが、今は良いか、と心の中に留めた。

「随分詳しい様だけどクララちゃんはこの辺りの人なの?」
788 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 20:52:26.90 ID:KClMJINbo
>>787
「呼び捨てでもいいわよ。
 子供扱いされるのって好きじゃないの。」
 しばらく歩いていると、こういうのも生活臭と呼ぶのだろうか
 飲食店から漏れてくる美味しそうな匂いや排気ガスの匂い。
 あとは普段は意識していない人の匂いがしてきた。
「お父様のプレゼントなのね。大切なもの?

 えっとわたしは隣町の住人よ。
 今日はお買い物とお散歩でここに来たのよ。」
789 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 21:04:15.67 ID:pBLO+wWZo
>>788
「ん、そっか。ならクララって呼ばせて貰うよ」

ふっと開けた先に見えたのは、先程とは正反対の景色だった。
殺風景だった街並みとは打って変わり、賑やかな様子。
独特な匂いに包まれながらも本来の場所に帰って来れた事に安堵する。

「大事なモノ。自分の身を守る為のモノでもあるんだけどさ」
もう片方の手で腕輪を軽く握り、見つめる。
路地裏の時に着いた汗の所為かそれは鈍く銀色に光った。

「あぁそうなのか。買い物はともかく……あんな所まで散歩に?色々と大丈夫なのかい?」
790 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 21:13:57.87 ID:KClMJINbo
>>789
「自分の身を守る?
 御守りみたいなものかしら。心強いわね。
 わたしはそういう物は持っていないけれどでも心配いらないわ。」
 そろそろ人通りも増えて日傘も邪魔になってきたのでたたんだ。
「大通りには出られたわよ。
 地図は駅前にもあるけれど一冊持っておいたらどうかしら?
 だって街の中で迷子になってしまうくらいなのだもの、クスクス。」
 ここはオフィス街らしい。商店も多くないなりに点在している。
「あなた旅行者でしょう?泊まる所は決めておいた方がいいわよ。」
791 :【レベル2】機械獣【賞金首1000万】 [saga]:2013/08/01(木) 21:21:43.70 ID:KzJnAg1i0
「破壊粉砕切断貫通爆発………」

言葉であろうノイズ交じりの声が機械仕掛けの人形から発している。

何時作られたのか?何のために存在するのか?そんなことは分からない。

ただ、分かる事は唯一つ、この機械人形は、人を[ピーーー]。

それだけだ。

それだけで、十分だった。
792 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 21:22:46.67 ID:pBLO+wWZo
>>790
「簡単に言えばそんなん。心配無いってのなら良いけど俺が変なんだったら危なかったんじゃないかな、と。現にあんな出会い方だった訳だし」

周りに人がいなかったと思ったからこその行動と言ってしまえば仕方ないで済むかもしれないが、何分それで済ませる事が出来る程気はデカくないのである。

「そーなのよ。駅前で地図は確認出来るから最悪持ってなかったとしてもどうにかなるけど宿がなぁ」

野宿にはこの環境は辛い。寝れない事は無いが、この近辺についての知識は地図で得られるモノしか無い。
迂闊に寝て身包み剥がれた日には死に一直線だ。

「……宿、知ってたりしない?聞いてばかりで申し訳ないんだけどさ。隣町からならこっちで泊まる事とか無い?」
793 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 21:36:37.41 ID:KClMJINbo
>>792
「そうね。
 あなたが変な人だったら危なかったわね。」
 あっさりした返答だけが返ってきた。
 その言葉に含まれる危なかったは特殊な意味があるが。
 それはかすかな違和感だけを匂わせられる言い方。

「泊まれるところ?
 この辺りに住んでいるし、一人で部屋を取ったことはないわ。」
 この子供の姿では当然そうなるだろう。

「ネット喫茶に入ってみる?
 近所にあるホテルのクチコミ評判が拾えるでしょ。
 瓜生さんはお店に入れる歳かしら。」
 指さしたビルに丁度看板がかかっている。
794 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 21:49:09.95 ID:pBLO+wWZo
>>793
「……おう。変な人じゃなくて良かったな」

『心配いらないわ』
今の言葉と先の言葉の何処かが繋がった様な気がした。
深く立ち入っては行けない。本能がそう告げている。

「……考えてみりゃ一人で泊まれないか。こりゃ失礼」
「ってそれだ!ネット喫茶があった!」

突如大きな声を上げた。

「値段も安く済むし情報も入るし良い事だらけじゃないか!何で気付かなかったんだ!」
795 :クララ [sage]:2013/08/01(木) 22:00:54.73 ID:KClMJINbo
>>794
「優しい人は好きよ。」
 そう言って信号待ちの集団に向かう。

「いいホテルが見つかるといいわね。
 わたしも一緒に入店していいかしら。
 少し調べたい事があるのだけれど、PC持ってないの。」
796 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 22:06:21.08 ID:pBLO+wWZo
>>795
「そりゃどーも。女性には親切にってな」

「ここまで来るとネット喫茶に泊まるんで良いかもしれんね。ついて来たければ遠慮なく来て下さいな。色々と恩もあるし」

バックの中の財布を確認。
ネット喫茶を利用する程度には十分な手持ちがある。
二人分払うことになったとしても問題はない。
ビルを見上げてネット喫茶である事を再度確認。
もうすぐ赤から青に変わるであろう信号を見つめた。
797 :クララ :2013/08/01(木) 22:15:47.74 ID:KClMJINbo
>>796
「あら、紳士なのね。
 え、ネット喫茶に泊まってしまうの?そんな事を考えた事はなかったわ。」
 信号が変わって盲人案内のメロディが流れる。
 瓜生と手をつないで人の流れに入る。
「あの瓜生さん。自分のお金なら持っているわよ。」
 顔を下から覗き込んで告げる。

 ビルに入りエレベータで二階に移ると清潔な店舗がそこにあった。
 貸しシャワーもあるネット喫茶で宿泊するにも良さそうだ。
「こうなってたんだ。ねえねえ、ジュースを好きに飲んで良いんですって。」
798 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 22:22:12.84 ID:pBLO+wWZo
>>797
「……もしかしてお嬢様だったり?」

お金を持っているのは買い物に来たのだから理解出来る。
でもネット喫茶に泊まる事を知らない?
いや、年齢考えたら知らないのも当たり前か。
そんな事を悶々と考えながらも、受付で札を受け取り席を探す。

「ん?まぁネット喫茶だしな。アレだったら好きなの取るよ?」
799 :クララ :2013/08/01(木) 22:32:39.06 ID:KClMJINbo
>>798
「ううん。一人ぼっちでこっちに来たの。
 でもいまはお兄様とお姉様がいるわ。」
 
「本当はこの国の事はそんなに詳しくないの。
 えっとコーラを飲みたいわ。」

 席を二つ瓜生にとってもらい飲み物を受け取って一方に入る。
 パーティションに区切られた空間で
 電源を入れたらOSの起動画面がモニタに表示される。

「ねえ瓜生さん。本当にここに泊まるの?」
 壁の向こうから少女の声が聞こえた。
 貸し毛布もあるようだし快適に過ごせそうではある。
800 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 22:44:12.99 ID:pBLO+wWZo
>>799
「ん。兄貴と姉さん居んのか。一人だけじゃなくてよかった」

ほい、と頼まれたコーラを手渡し、入ったのを確認して自分もブースに入る。
以前使用していた人が電源を落とし忘れていた様で、デスクトップには既に喫茶の名前が表示された画面が映し出されていた。
検索ボックスを見てみると、そこには『機械獣』の文字。
新手のロボットだろうか?特に意識せず文字を消した。

「俺は泊まるつもり、かな?嫌なら嫌で考えるよー。と、言ってもクララも泊まる必要があるなら、だけど」

隣町から来たと言っていた。
帰る事自体は何も無ければ容易だろうが、着いて来てくれたのも何か理由があっての事だろう。
801 :クララ :2013/08/01(木) 22:50:07.45 ID:KClMJINbo
>>800
「わたしは用事が終わったらおうちに帰るわよ。」
 リクライニングに気づいておらず寝苦しそうだと心配しただけだ。
「椅子で眠るの?疲れないかしら。
 一泊の安いホテルならあるみたいよ。」
802 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 22:54:54.45 ID:pBLO+wWZo
>>801
「そっかそっか。なら心配はいらないね」

既に背もたれを倒し、ゆっくりとくつろいでいた。
この街の事。今まで見て来たモノ。色々な事を調べなければならない。
何故喫茶を使う事を考えなかったのか。
誠に嘆かわしい。

「大丈夫、大丈夫。外で寝るよりよっぽどマシさね。調べたい事もあるしここが丁度良いよ。ありがとな、教えてくれて」
803 :クララ :2013/08/01(木) 23:02:33.09 ID:KClMJINbo
>>802
「良いのなら気にしないけれど。」
 しばらくしたらプリンターが動く音が聞こえてくる。
 そして隣の区画から出てきたクララが桐生に声を書ける。
「終わったわ。
 それじゃあ瓜生さん、また御縁があればあいましょう。
 あまり遅くなると心配してくれる人達もいるし。
 今日はありがとう。」
 そう言って彼女は会計を済ませにカウンターへ向かった。

// 今日はこの辺りで。お付き合いありがとうございました。
804 :瓜生瑛斗 :2013/08/01(木) 23:10:12.81 ID:pBLO+wWZo
>>803
「おう!暗くならない内に帰れよー。またなー!」

彼女の後ろ姿に手を振り、デスクトップの画面に視線を移す。
クララ、と言ったか。良い子だった。
『今は』
つまりは昔ひとりぼっちだったのだろう。
彼女に家族が出来て良かった。

さて何を調べようか。
次に何を目指して動くべきか。目標を定めない事には動けない。

何時になったら寝れるだろうか?夜は長くなりそうだ。

//こちらこそありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
//また宜しくお願い致します。
805 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/02(金) 21:17:22.73 ID:pmXt8AUno
>>780
「もう……騒がしいですよ!」
駐車場に響く、まだ若い女性の声。
その内容は男を非難するもの。 どこか眠そうな調子と、鋭い指摘の調子が混じっていた。

声の主は一台の車の陰に立っており。フロントから、上半身がはみ出して見えるだろう。
女性はヨーロッパ系の白人だと遠目からでも判断できる。桃色の髪色が特徴的であり、何をしなくても目立ってしまうだろう。
その髪色を隠すように、濃い赤の帽子を頭に被っていた。

「もう……貴方、今何時だと思っているんですか? 近所迷惑なんですよ!」
そういう非難の声は、少年の叫びと大差ないほどうるさいのだが、女性がそれに気づく様子は無い。
英語らしい海外の言葉で、批難の言葉をいくつかぶつける。
女性の傍らにある所有物らしい車は、車に詳しくないものでも高級車だと分かってしまうものだ。
806 :一ノ宮総華【賞金首:3100万】 [saga]:2013/08/02(金) 21:36:47.65 ID:hAro3GIO0
>>805
「げ!!警察か!?」

声が車の外から聞こえ、思わず身を掲げてしまうが、
その声が高かったので、もしかするとと思い自分で割った車の窓から声の方へと向く。


「……んだよ!!やっぱ女じゃねーか!!」

案の定、その声の先に少女がいたので、安堵の息を漏らす。
と同時に『俺はこんな女にビビッていたのか』と言う思いが芽生え、イラつき始める。


「てか、お前も声でけーよ!!警察にばれたら捕まっちまうだろーが!!」

少女の声が自分と同様に声がでかかったので、注意をしてしまうが、
自分の声もでかいと察してしまい、つい口に手を置いてしまった。

807 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/02(金) 21:48:38.46 ID:pmXt8AUno
>>806
「あの、その口調から予測すると……あなた、犯罪でもおかしてのですか?」
公安組織に恐れを抱く理由なんて、かなり限られてくる。
真っ先に警察を思い浮かべるだなんて――警察に捕まる理由がある人物だと、多くの人が推断するだろう。


「女だからって、何だと言うつもりです?」
女性の言葉に含まれている、不愉快そうな調子が一層強いものとなった。
傍らの高級車に肘を乗せ、その上に頬杖を付く。 少年を見つめる瞳は、非常に不愉快そうなものである。

「五月蠅いですね……貴方よりはまだマシですよ」
自分の事は棚の上の上の方へと押し上げ、とにかく相手の方が悪いのだと批判を続ける。

ふぅー。 っと、長いため息を漏らす。
「なんだかよく分かりませんけれど、良く見たらその車の窓が割れてますし……。
 風貌も言動もなんだかおかしいですし……とりあえず、通報をしますか」
真夏だというのに、女性は長袖に長いズボン。ポケットに手を突っ込むと、携帯電話を取り出そうとしている。
808 :一ノ宮総華【賞金首:3100万】 [saga]:2013/08/02(金) 22:04:07.16 ID:hAro3GIO0
>>807
「ちょ!!ちょちょちょちょちょちょいちょい待て待て!!」

『通報』、その言葉で通報=警察に御用、と想像してしまい、止める。
ただでさえ賞金首の上に隠れ家で待っているお嬢様(誘拐)が待っていると言うのに。


「通報だけは勘弁してくれ!!俺賞金首だから絶対死刑確定なんだよ!!」

と、言わなくてもいい情報を言ってしまった。
巻き戻しされたかのように再度口に手を置いてしまうが、
言葉は弾丸と同じように、一度発すると戻って来ない。

通報確定。そう脳裏に浮かんでしまい、脳内に選択肢が浮かぶ。

@説得する。
A逃げる。


「……うん、間違いなくAだろ!!」

そう言い捨てるや否や、運転席の隣の窓をぶち破り、外に逃げる


「捕まってたまるかよぉおおおおおおおお!!!」

と、外に出た瞬間体制を崩してしまい、
地面とぶつかってしまった。


809 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/02(金) 22:24:24.05 ID:pmXt8AUno
>>808
「…………」
待てといわれて、待つ理由は思い当たらない。

そのうえ、なにもしていないし聞いてもいないのに、勝手に自白のようなことをされた――

この人物の言葉を鵜呑みにするのならば、目の前に居るこの人物は死刑確定の賞金首ということだ。
こんな世界であるとしても道端で賞金首に出会って、しかもこうして言葉を交わすだなんてことは信じにくいことだ信じがたいことだ。
とはいえ、そのような嘘を並べられる理由は無のだから、やはり本当のことなのだろうか。

「あ、待ちなさい……っ!」
動き出した男を、むざむざ逃さないようにと女性も飛び出す。
――とはいえ、無理に追いかける必要は無かったようだ。 男は車からの脱出を失敗した。
やっぱり、こんなドジな男が死刑確定の賞金首だなんてことはないだろう。 とっくに死んでいるべきだ、こんなドジな賞金首は。

コツリ、コツリ。革靴が闇夜に堅い音を響かせている。
地面に崩れた少年を見下すように、情勢にしては割と長身なその女性は立つだろう。
「例えば、ですよ……?」
左腕に握られたスマートフォンは、タッチ一つで警察官へのコールを開始する。
冷たい瞳に、甘い笑み。 女性は、賞金首らしい男性へと一つの問いを投げかけている。
「この場で私が貴方を見逃してあげたとすれば……私は貴方の命の恩人ということ、ですよね?」

女性と男の距離は数メートル。 例えば、力に頼って脱出を試みるならば、取っ組み合いになるような距離であった。
810 :一ノ宮総華【賞金首:3100万】 [saga]:2013/08/02(金) 22:49:01.87 ID:hAro3GIO0
>>809
「………逃してくれると言うのなら、確かに命の恩人かもな。」

地面にぶつけた額を擦りながら、ゆっくりと立ち上がる。
もちろん、この少女を警戒しながらだ。実際、賞金首だと言うのに、
どうしてこうも冷静でいられるのか分からなかったが、考える事は一つ。


どうやって逃げるか、シンプルな考え唯一つだった。
この不思議な世界には、いろいろの特殊な力を持つ者ばかり、
運が悪い事に、俺はそんな能力を扱う事は出来ない体質だった、
だから相手が特殊な力を持つというのなら、かなり分が悪い。
勝てる確立はかなり低いだろう。


だがそれを補うための知識と肉体を手に入れた。
逃げるだけの力はある。相手を撒く力がある。
そこまで、頭の思考回路を巡らせ、自分が発した言葉の続きを言う。

「だけど、俺は逃げるぜ、俺を待っている奴もいるんだ」

次の言葉を発する前に、ここの地形を思い出し、逃走経路を練る。
最初は逃げ切る確立は低かったが、考えるほどに確率は上がっていき、
逃走経路を完了た時には確立はほぼ100%に近かった。

笑みを浮かべ、相手に挑戦状をたたきつけるように、言葉を発する

「追いかけたけりゃ追いかけて来いよ、必ず撒いてやるけどな」

811 :瓜生瑛斗  :2013/08/02(金) 23:03:31.06 ID:lH2ub/lQ0
濡れた髪をかき上げ、一晩お世話になったビルを出た。

結論から言ってしまえば、次の目標は見つからなかった。
この近辺の地図は確保出来たから道に迷う事は無いが何を目指すべきかが分からない。
インターネットを利用出来た事は大きな収穫であったものの、そこから得た物は地図と僅かな情報のみ。
一つ、賞金首の類が多く居る事。二つ、多種多様な組織が存在する事。三つ、人間以外の生物が存在している事。

自分が今まで旅してきた地域ではどれも該当しなかったモノだ。
盗賊だか何だか分からないチンピラは何処にでも居たし、そんなのは撃退出来るだけの力は持っているつもりだ。
野宿を重ねても荷物が無事である事が何よりの証拠である。
しかし今回は訳が違う。
『賞金首』という事はそれなりの実力を持っている奴だろうし、『組織』なんて一人で対応出来る様なモンじゃない。
人間以外の生物に至っては、まさしく未知の領域だ。

もしかしたら、この地域に伝わるオカルトなのかもしれない。
それでも引っかかる事は多かった。

『組織』
親父の手がかりはこの辺りで掴めるのだろうか。
直接的な情報が手に入らなくても、取っ掛かりは掴めるかもしれない。

現時点で可能な限りの情報は手に入れた。
今度は行動に移す番だ。

812 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/02(金) 23:09:13.00 ID:pmXt8AUno
>>810
「逃げようとするのであれば……それは、それで構いませんよ」
少女のベルトからは、黒い西洋の剣ぶら下がっている。 先ほどから身に着けられていたのだが、今までは車の陰になっていて見えなかったのだ。
「でも賞金というのは美味しそうですから、私は私の方法をとらせてもらいますよ」

「逃げるのも戦うのも自由です。 でも、私としてはそれはあまり嬉しくない選択です。」

「私としては……ここで貴方に命一個分の恩を売っておきたいところなんですよね……。 どうです、私を恩人にしておくというのは?」
だめでしょうか? と、小声のつぶやきを挟んで、言葉を続ける。
「どうしてそんなことをするのかと、疑問に思うかもしれませんが……賞金首一人に、恩を売った。 コレ、結構大きな価値のあることなんですよ」

ふー。 っと、吐息を漏らして、男から半歩離れる。 逃げるというのならば、逃げられるようにという配慮だ。
「私としては……あなたに撒かれてみるっていうのも、悪くない体験になりそうですけれどね……本当に」
そう呟くその表情には、絶対に逃がさないという決意と自身があらわれている。
813 :一ノ宮総華【賞金首:3100万】 [saga]:2013/08/02(金) 23:24:20.31 ID:hAro3GIO0
>>812
「よし、そう来なくちゃ……な!!」

石を投げる。さっき地面にぶつかった時に拾った物だ。
投げた瞬間、相手との反対方向に逃げる。投げたい石は、
傷は与えられなくとも、時間稼ぎになるだろう。
駐車場スペースから外に出て、町の商店街の道へと進む。


夜の商店街は、人気がなく、殆どの店は閉まって、
酒場の看板に電気がつき、酔っ払い浮浪者が現れる。


途中、ゴミ箱を倒し、相手の移動の際に障害を請じさせる。
総華は、口に出さずに、頭の中で思う。

『危険な鬼ごっこの始まりだ』と。
814 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/02(金) 23:55:31.24 ID:pmXt8AUno
>>813
石が飛んでくる――予備動作から、反応をすることは難しくなかった。
反射的に鞘を立てて、石を弾く。

「ああ、もう……私の提案は拒否ですかっ!?」
悪い提案では無いと考えていたが、相手にとってはそうでは無かったらしい。
非常に、残念な答えではあるが。

石を弾いている隙に、男に逃げられてしまった。
「……ハウンド」
背中を視線で追いながら、使い魔の名前と造形の呪文を唱える。
光とともに剣が消えて、代わりに訪れるのは黒い大型犬。

逃げるのには自身のあった様子の男だが、果たして犬の身体能力と嗅覚から逃れられるのか……。
「いいえ……もう、良いです」
けれど、なんとなく興が冷めてしまった。 なんだか、うまくいってない気がする。
追いかけてどうしてやろうか――何をしても、イマイチな感触なのだ。

「はぁ……次に出会った時で、良いとしましょうか」
振り返って、自分の車へともどる。
形容しがたいモヤモヤ感は、今度出会ったときに払拭しようと考えておいた。


//すみません、時間がきてしまったのでこんな感じで切らせていただきます。
//ありがとうございました、それからこんな感じしかできなくてすみませんでした。
815 :メイザース&ジェーン [saga]:2013/08/04(日) 20:39:17.19 ID:YJN3bIOEo
星降り、星辰を読むのは何時だって魔術師の基本技能とされてきた。
都市の中心、とある高層ビルの最上階に佇み、光の中で空の弱き光を見据える影がひとつ。
その影の与える印象は――白、それに尽きる。
白い肌、白い髪、白い服。瞳までも白とは言わないが、白に限りなく近い銀色の瞳。
裸足でコンクリートを踏む一つの影の存在感は極めて強いのに、極めて薄かった。

「――星は良い感じ。そろそろ、かもしれないね。幕引きは。
そうだろう、ジェーン?」

空を見上げたまま、虚空に向かってそう問いかけるメイザース。
その声に答える声は、屋上よりも少し下からだった。
かつり、かつり。普通に床を歩くような音で歩む音の主は、壁に立っていた。

「お前の幕引きの後に、私の目的は始まる。故に、そこまでは付き合ってやろう。
ただ、その後はおまえを殺す、それ以外も殺す。それだけは忘れるな」

圧倒的な魔力によって物理法則をねじ伏せながら壁を歩く女。
そして、その女は走るでもなく、ゆっくりと壁面を散歩して、屋上へとたどり着く。
――ここは、とある軍事企業の本社ビル。先程まで、生者の気配にあふれていたそのビルには、現在二人しか存在していない。

階下には、未だ誰も集まっていない。そう、警察すらも。
音もなく、騒ぎもなく。ここに居た数百の人々の命は、容易く奪い去られていた。
警察も軍も気づいていないにしろ、おそらく誰かが嗅ぎつける。この、異様な気配の元を。
816 :ヴェルナー :2013/08/04(日) 21:06:50.74 ID:GqrircC/o
>>815
自身が屍者であるがゆえに、死人の気配、死の匂いには敏感だった。
それは自身の主も同じこと。
違うところは、主は屍者の群れを従え、自分はその臣民であるということだけ。

その二人が異常を察知したのはつい先刻のことだった。
ほんの一時間と経たぬうちに、同じ場所で数百の命が喪われた。それを理解したからこそ、ヴェルナー・シンクレールは銃を持ち、剣を提げてその場へと赴く。
一方主は、指揮下にある仲間へと連絡をつけに向かっている。

いわば自分は斥候兵、偵察の役目を仰せつかったヴェルナーは、見知った企業名の看板を掲げたビルの前で立ち止まると、銜えていた煙草を落として踏み消し、墓標のように沈黙した石塊の天辺へと目を細める。

「ああ、こいつはまずい。トラブルにしてはデカすぎるよ」

どこか苦々しげな声とともに、ヴェルナーは打倒すべき敵へ睨めつけるような視線を送った。
817 :メイザース&ジェーン [saga]:2013/08/04(日) 21:14:41.23 ID:YJN3bIOEo
>>816
「――こんばんは。ヴェルナー・シンクレール」

ビルの屋上の縁から、見下ろすように白い少年が男の視線を受け止める。
呟く声は、小さいというのになぜか耳元で囁かれたかのように鮮明に聞こえたことだろう。
そして、死者故に相手は理解できるかもしれない。
――ここで、死んだ者達の魂の一人分すら、もはやこのビルの中には残っていないという事が。

異様に存在感の薄い少年をかき消すかのような存在感が、少年の傍らに現れて。
女は眼下のヴェルナーに向けて、地上51階から手招きをしてみせた。
かかってこい。そんな露骨な挑発をする女も又、ひどい静寂を身に纏う。

惨劇の現場の中で、揺らがず風の影響すらうけない二人は、ただ悠然と佇むのみだった。
もしヴェルナーがビルの中に入り、上を目指すならば、ビルの中の惨状も眼に入るはずだ。
誰ひとり、何一つ。荒れること無く、暴れる様子を見せることもなく、全員一撃でその生命を奪われている図を。

そして、屋上にもしヴェルナーがたどり着いたとしたら、変わらぬ様子で佇む二人が、相手を迎えるはずである。
818 :ヴェルナー :2013/08/04(日) 21:28:47.11 ID:uJXTD6PVo
>>817
「やれやれ、隠れる気がなかったとはいえ、最初から見られているというのもなんともまあ、好かんね」

肩を竦める。
視線の先には、星空を背後に控えた少年がいて、ヴェルナーはロンドン襲撃事件を思い出す。
そうだ、この声は、あの姿はあの日霧の都をおそった者共の首魁ではなかったか。
なるほど、とヴェルナーは独り言ちて、あまりに静かにすぎるビルへと意識を向ける。
死者の意識がたむろすれば、屍者たるヴェルナーにはその声が聞こえてしまう。
にも関わらず一帯はあまりにも静か過ぎ、ある意味でいえば空気そのものが死んでいるかのように落ち着き切っていた。

どういうことか、いちいち思案はせず、ヴェルナーはもう一度屋上を見る。

一度対峙した相手のことは忘れない。
ジェーンの挑発的な態度に苦笑を漏らしたのを最後に、ヴェルナーはビルの中へと足を踏み入れる。
なにも妨害がなければ、そのまま屋上へとたどり着くだろう。
819 :メイザース&ジェーン [saga]:2013/08/04(日) 21:38:57.20 ID:YJN3bIOEo
>>818
「やあ。さすがに有能と褒めておこうかな? この前はジェーンが迷惑をかけたようで済まなかったね、ヴェルナー」

屋上にたどり着いてみれば、異能も魔術も善悪の気配も感じさせぬ、空白のような少年の歓迎の言葉がヴェルナーを迎える。
この少年、隣に護衛となるだろうジェーンが居ることを考慮したとしても、敵意がないどころか、害意すら存在していないようで。
先程までの地獄を足元に敷いて立つロンドン襲撃事件の首魁であるとは、到底思えない穏やかさだったろう。

「それで、君はどうするんだい? 僕を殺せば円環は終る。そう思っているのかもしれないけれど。
……殺すかい? ジェーンが邪魔をするだろうけど、それを掻い潜って討ち死にする覚悟が有れば僕を殺すのは可能かもしれない。
なにせ、僕は見ての通り異能も無いし魔力も無い。君が手を出すまでもなく、ここから落ちて地面に衝突すれば容易く死んでしまう」

メイザースは、己を殺すのかとヴェルナーに問いかけ、殺せるとヴェルナーに示す。
確かにジェーンは脅威ではあるが、腕の四五本犠牲にする覚悟があれば、今から全力で向かえばメイザースに攻撃が届いてもおかしくはない。
だが、その事実を前にしてもなお、メイザースは揺らがず。ただ何もない空間よりも空虚故に逆に目立つ存在感で、そこに居た。

「さあ、どうする? 僕はどちらを選ぼうとも肯定しよう。
逃げられる前に僕を屠るために全力を出すのも、仲間が来るまで時間を稼いでから本格的に僕を狙うのも。
はたまた、ここで情報を集め、来るべき第三の衝突に備えるのも。どれも正しく、どれも間違っている。
故に、僕は君の取る行動の総てを肯定し、受け入れよう。そして、その上で僕はどの選択にも真っ向から相対させてもらうよ」

どうする、とメイザースは問う。
どれも正しいが、どれもなにか一つ以上の問題点を抱くもの。
故に、メイザースはどれを選ぼうとも、その選択を肯定し、その選択をした勇気を汲む筈だ。
820 :ヴェルナー :2013/08/04(日) 22:24:48.46 ID:uJXTD6PVo
>>819
「犬には鋭い嗅覚がもとより備わるように、わたしは勘がいいだけのことだ。有能かどうかではなくて、そうあるだけだよ」

戦闘に迷惑もなにもないだろう、と苦笑して、いいんだよという風に手を振る。
敵意のないメイザースと同じように、ヴェルナーも先ほどのような鋭さはなりを潜めている。
緊張も敵意も警戒心もなく、あくまで困ったなと言いたげな複雑そうな心境を表情に浮かべ、メイザースを見やる。

真っ白。真っ先にその言葉が浮かんだ。
言ってしまえば、個人の色、特徴というものが存在しない。悪だとか善だとか、そういう単純な区別すらできない。

「どうしようか。世の中、悪の首魁を始末すれば一件落着というほど簡単ではないから。
それに、そこの剣士の気狂いなほどの腕は理解しているからね、都合よく勝つにはあまりに分が悪い。
もっといえば、あなたをただの少年程度にしか評価しないというのもまず無理がある。
5分より勝算が低いと賭けではなく自殺だ。」

勝てない戦い、確実性のない戦闘はしない、したくない。
長く続いた兵隊生活が導き出した生存の秘訣。必要なら命をかなぐり捨てる覚悟はあったが、いまヴェルナーは斥候という役目を負っていた。
死人に口無し。
死人であるヴェルナーは死んだところで主の元へ還るだけだが、屍者であるいま、[ピーーー]ば残るのは意識なき抜け殻だけがのみ。
偵察役としては受け入れられるものではない。

「嫌な選択をくれるね。
偵察の身分としては戦わない方がいい、とはいってもあとで犠牲が出ることを考えれば[ピーーー]べき。
どちらも魅力的でどちらもいやな選択だ
性格が悪いと言われたことはないかい?」

困ったなぁと呟いて、ヴェルナーは腰の剣をポンポンと叩く。

「戦闘員のままだったなら斬り掛かっていただろうけど、偵察兵としては勝率が低すぎて話にならない」

どうするべきだろうね、とヴェルナーはメイザースに方をすくめて見せた。
821 :メイザース&ジェーン [saga]:2013/08/04(日) 22:36:45.33 ID:YJN3bIOEo
>>820
「そこに気がついているという事は、僕を殺すことも、ジェーンを殺すことも、円環を止めるには足らないことは理解できているわけだ。
君は理性的だね、極めて。――、一度死んでいるからこそ、生死には敏感なのかい?
まあ、五分より勝算が低いと見て、そこに賭けないそのリスク管理は特筆に値するね。素晴らしい」

無言でメイザースの傍らに佇むジェーンは、返り血一つ浴びること無くそこに立っている。
まあ、この女ならば返り血の一滴すら触れる前に消し飛ばしそうである故、静かに殺さなくとも血を浴びることは無いかもしれないが。
どちらにしろ、ジェーンは今はメイザースの守り刀に徹しているようで。
とりあえずは、互いに動かなければ状況が膠着したままではあるだろう。

「よく言われる。僕の仲間にもね、最悪とか最低とか悪魔とか色々酷いことを言われるものだ。
でも、僕は君たちに強いることは無い。何時だって選ぶのは君たちで、僕らはその選択に真っ向から向かうだけのこと。
だから、その選択に対する責任は、選択をしたものが取る他ないだろうね」

メイザースは、何時だって否定をしない。
そして、メイザースは選択肢を提案こそすれど、その選択を強いることはしない。
何時だって、選ぶのはメイザースではないのだ。ただ、選択肢を提案することで、人を手の上で転がすことはあるが。
その結果自滅しようとも、それはメイザースのせいではない。それを選んだ、その人のせいなのだ。
それが、メイザースの狡く、そして強かな点なのだろう。

「そうだね、今日は調子が良いから少し位なら世間話をしても良いと思う。
――どうだい、悪の首領とその右腕との雑談というのは」

いつの間にか、そう本当にいつの間にか。
最初から底にあったかのように、ティーセットとテーブル、椅子が整えられていた。
すでに少年は席についており、ジェーンもまた驚く様子は無く隣に佇むのみ。
メイザースは笑顔で席につくように勧めるだろう。ただ、それを無視してスキだらけの少年に斬りかかるのもまた自由だ。
822 :ヴェルナー :2013/08/04(日) 22:58:59.72 ID:uJXTD6PVo
>>821
「首を切り落としてそれで終わりなら、世の中対テロ戦争は今頃収束している。
であるにもどこもかしこもテロ、テロ、テロ、テロなのはつまり、首は頭脳であっても心臓ではないということだ。脳みそからの信号が途絶えて心臓が止まる前に首がすげ変われば、それで元通り。
犬死はしたくないだけだよ、意味もなく死ぬ価値がない」

前回の闘志は何処へやら。
石像よろしく少年の横に佇立しているジェーンをちらりと一瞥し、とりあえずいまは敵ではないということを確認する。
斬りかからない限り斬られないなら、斬りに行く道理はない。

「強いる方がよほど優しいと思える相手っているのも珍しい。
うちの主人とは対極だ、完璧に。
共通点は酷い言われようっていうところぐらいだね、いい共通項じゃない。
いやだいやだ、軍隊の方が気楽だ」

ヴェルナーはつねに命令を受けて動く立場にいた。
上意下達、縦社会の軍隊においては強いられこそすれ、自分の責任の元に選択することはほとんどと言っていいほどにない。
まあそのヴェルナーとて、今では責任をおい、強いる側に立つ立場だったが。

「悪くない。得難い経験だ、ぜひともお願いしたいものだよ」

意識の外、音も気配もなく現れた一式の道具に口笛を吹き、ヴェルナーは椅子に腰をかける。
剣に手をかけることも、銃を抜くこともなく、あくまで会話に徹するつもりらしい。
823 :ヴェルナー :2013/08/05(月) 19:51:40.13 ID:vzbktnuco
陽は半ば沈み、はしゃぐ子供の声も遠ざかった。
真っ赤な地平線から遠ざかれば遠ざかるほど、空は紫を経て澄んだ青、そして闇に近い藍色へと変化して行く。

その様子を眺めながら、ヴェルナーは通りに面したカフェテラスに腰をおろし、新聞とメモをテーブルに並べている。
氷が溶けかかったアイスコーヒーのグラスは雫が浮かび、ヴェルナーはそれを指先でなぞっては伝う雫を楽しげに眺めている。

「休暇、か」

しばらく取れなかった分の有休消化が始まってからの日課。
毎日このカフェテラスへと足を運び、通行人と空を眺めてゆったりと新聞を読む。

久々の穏やかな時間。
ある意味、ヴェルナーを知る者からすれば特異な光景だったかもしれない
824 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 20:10:59.62 ID:bNy8LO7Ao
「……あれ、ヴェルナーさん?」
通りを歩く、魔法職人。帽子の隙間からこぼれる桃色の髪は、人ごみの中でも酷く目立っている。
「やっぱりそうだ、お久しぶりです」
おしゃれなテラスに、黒い珈琲。――このような一面もあるのだと、小さく笑みを浮かべた。

「こんな所で会うだなんて……不思議な縁も、ありますね」
久々に出会った知り合いということもあって、言葉はどこか楽しげだ。

「あの、ええっと……」
ヴェルナーのテーブルの傍で、戸惑ったような表情を浮かべている。
偶然出会った、親しい相手。今日も色々と話したいことがある。
が……休息中らしいヴェルナーのプライベートな時間を奪うことにならないかと考えているようだ。
ヴェルナーの好意的な印象さえあればすぐにでも同じテーブルへと座るだろう。
825 :ヴェルナー :2013/08/05(月) 20:40:57.77 ID:vzbktnuco
>>824
グラスを伝った雫がコースターに染みていく。
その様子を何をするでもなく眺めていると、不意に意識が引き戻された。

声をかけられた。
そう理解する間に、ヴェルナーは湿った指先を服で拭う。ぼんやりしていたらしい、とため息をつき、声の方向を見やる。

「ああ、お久しぶり、元気そうだね」

椅子に持たれていた背筋を正し、深く腰掛け直す。ヴェルナーはずいぶんだらけた服装をしていた。
ノータイのシャツに、地味色のジャケット。胸元もややはだけ、日に焼けた胸板が覗いている。

「縁というのは、どうつながるかわからない」

クスクスとヴェルナー笑って、対面の座席を示す。

「どうだい? 座らないかい?」

リリアーナの戸惑った様子を見て、ニッコリと微笑んだヴェルナーは着席を促す。
プライベートはプライベートでも、孤独でいるための時間ではない。むしろリリアーナとの会話は、いつだってヴェルナーのプライベートだった。
826 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 21:01:11.59 ID:bNy8LO7Ao


「はい。 貴方も、元気そうで良かったです」
人差し指で帽子を押し上げて、ヴェルナーへと自分の表情を見せる。
白い肌は、全く日に焼けた様子が無い。


「ええxxと……そ、それではお邪魔しますね」
頭の帽子を深く被りなおすと、ヴェルナーの正面の席へと腰を下ろす。

「意外です、 そういう格好」
真面目で堅苦しい。 と、いうのがリリアーナがヴェルナーから感じていた印象であった。
「似合っていますよ、そういうの」
お世辞ではなく、ヴェルナーは格好良と感じた。こういうのは、センスが大切なのだろう。

リリアーナのほうも、カジュアルな色と形状の服装を選んでおり、年相応におしゃれをしている。
知識があれば、身に着けているものが結構な値のするものだと分かるだろう。
ただ、ブーツ、長めのズボン、ジャケット。それに帽子と……夏にしては、その格好は厚着であった。
827 :ヴェルナー :2013/08/05(月) 21:21:51.75 ID:vzbktnuco
>>826
「わたしは何時だって元気さ、体調を崩したことはない」

相変わらずのようだね、と自分とは対照的に殆ど日に焼けていないリリアーナの様子に微笑む。
ここ最近外回りが増えたせいで、ヴェルナーの肌はこんがりと焼け、小麦色に変わっている。

「意外かな? まあ、職務中はしない格好だけど」

仕事柄、仕事の間はきっちりと防弾装備を着込んでスーツで固めている。
しかし今は休暇中であり、いつもと同じなのはショルダーホルスターと拳銃だけだった。

「センスに自信がなかったから、安心したよ」

いつも黒づくめだとねぇ、と肩を竦め、ヴェルナーは飲み干したコーヒーの追加注文のためにウェイトレスを呼ぶ。

「君も何か注文するかい?」

さりげなくヴェルナーはリリアーナの服装を見やる。
見識眼というべきか、ものの価値に目ざといヴェルナーはリリアーナの身につけたものに一通り目を通すと、ほう、と感心したようにため息を漏らす。

「そっちも似合っているね。衣服にお金を使うのは、適度であれば悪くない」

828 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 21:46:36.05 ID:bNy8LO7Ao
>>827
「ヴェルナーさんが健康だということは……街は安全ということでしょうかね?」
休暇がとれるぐらいならば、とりあえず大きな事件は起こっていないということだろう。
――観察できる情報は、参考までに拾えるだけ拾っておくのだ。

「それじゃあ、私もコーヒーをいただきます」

「まあ、センスが無いのは私も同じでしょうけれど……」
人を評価できるほど、ファッションセンスがあるとは自分でも思わない。
「あくまで、個人の意見です。 ファッションデザイナーの意見ということでは、ないですから」

「本当は、あまり服装にこだわりは無いのです。
けれど……半端な格好は舐められてしまう業界、第一印象は大切ですから」
適度であれば。というヴェルナーの言葉に、同意するように頷く。
本当に必要なのは、着心地が良く非常に長持ちな衣服だ。 キラキラの指輪や華美なピアスなんてものは必要ない。 

「でも……私のは、ちょっと古臭いですよね」
落ち着いた色合いに、形の整った服。 若い子の服装では無い。

「かといって、奇抜で肌を出したあの恰好は苦手です。 ヴェルナーさんだと、どちらが好きです?」
首を傾げながら。異性の好みを尋ねているが、別に深い意味があるわけでもなく。
829 :ヴェルナー :2013/08/05(月) 22:07:53.39 ID:vzbktnuco
>>828
「うーん、どうだろうね。凍った東部で延々と仕事するよりは幾分、この街の方が生活しやすい」

茶化すようにそう言って、ヴェルナーは肩を竦める。
そもそも重犯罪への対策に余念が無いICOD、その職員が平和でもない時に休みなど取れるはずがないのだ。

「そうでもないと思うけどね。センスがない人っていうのは本当に、そう、ひどい
女性の目からして大丈夫なら、それは何より心強い。個人の意見ならなおさらさ」

センスではなく機能性を選びがちな職種。
であるからしてセンスとやらは薄れがちだが、だからこそ女性からの客観的な意見というのは非常にありがたい。

「わたしの業界も、衣服は大事だ。スーツが便利で汎用が効く。本当なら黒で揃えてしまいたいけど」

だからスーツだ。
あるいはただのジーパンに革ジャン。
シンプルでいい、ごちゃごちゃした飾りはいらない。指輪やピアスなぞ、邪魔になるだけだった。

「いいんじゃないかな? トラディショナルとは言わないけど、流行りでもない。だからこそ、いいこともある。素朴であることは悪くないだろう?」

自身がそうだ。
古臭い服装は着ないが、かといって新しいものも好まない。
理由はただ、いい感じに安いからという理由なのだが。

「あまり相手の露出が多いとどこを見ていいかわからない。だから、今くらいでいいのさ」
830 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 22:13:25.81 ID:bNy8LO7Ao




「男の人っていうのは、ごちゃごちゃしていたは駄目なんです。
だらしないのは論外ですけれど……今のヴェルナーさんぐらいの具合が、私は好きですよ」

言葉を交わした印象から察すると、お互いに服装は最低限で良いという認識を持っているようだ。
そのほうが良いと思う。服装の話をされても、上手に答える地震は無かった。

「なるほど……参考になります」
どこ見ていいか分からない。 何気ない一言であったが、何よりもヴェルナーらしい言葉だと感じ、静かに言葉の響きを噛みしめる。
831 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 22:14:06.16 ID:bNy8LO7Ao
//すみません、途中投下してしまいした
//もう少し待ってください
832 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 22:24:13.98 ID:bNy8LO7Ao
>>829
「日中に珈琲を飲むぐらいの余裕、ありますもんね。 ……そんな、平和なはずなんてないのですが」
街を歩みゆく人々は、きっと日常の中に居る。 そんな人々にとっては、いまの世界も当たり前の日常に見えているのだろうか。

「まあ、正義の機関ともあろうものが適当な格好をしていたら……私、苦情を出してしまいますね」
その人物の立場に見合った最低限の格好というものはあるだろ。
自分で実行するにこれほど煩わしいことも少ないが、相手にするときは判断材料として非常に役に立つものだ。

「男の人っていうのは、ごちゃごちゃしたのは駄目ですよ
 今のヴェルナーさんみたいにしていたほうが、私は好きです」

言葉を交わした印象から察すると、お互いに服装は最低限で良いという認識を持っているようだ。
それで良いのだと思う。 どこのメーカーのどんな服がどうだ……なんてことを語る自分の姿は、全く想像ができない。

「なるほど、そういう考え方もあるのですか」
『どこ見ていいか分からない』。
ヴェルナーにとっては、何気ない一言なのだろうが、その人物のシャイな一面が表れており、非常に面白い一言であった。

「あの、ヴェルナーさん? あなたは、私はどんな人物だと思っていますか?」
店員が持ってきたコーヒーを片手に持って、そう問いかけてみる。
リリアーナの口調は、至って何気ない、親しい人物と雑談を交わすような調子だ。
833 :ヴェルナー :2013/08/05(月) 22:38:53.54 ID:vzbktnuco
>>832
「ほんらい、わたしは戦争やテロでもない限り出ることがない筈だしね。本来は暇人だよ、ほんとうに」

どこか蜃気楼を見るような、そんな切なげな視線を街並みに向ける。
街灯が灯り始め、それでも人の数は減ることなく街を流れて行く。いつも通りの光景に、果たしてヴェルナーは何を見るのか。

「中には不良じみたやつもいるけど、まあ大概は真面目さ、多分」

一体誰を思い出したのか、苦笑を浮かべたヴェルナーはようやく運ばれてきたコーヒーのグラスを手にすると、何も混ぜず一口。
そのあと、2、3回口をつけてから砂糖を一つだけ落とし込んだ。

「あまり混み合った服装だと、何もかもが煩雑になる。手軽なくらいがいい、そう思うんだ。
好きと言ってもらえると、いまの自分に自信が持てるよ」

ありがとう、とそう一言添えて、テーブルのメモに何事か書き込む。
一言、ごちゃごちゃしたのは駄目、と流れるような筆跡で綴ると、ヴェルナーはやや姿勢を崩して背もたれに寄りかかった。

「どうもね、前に言ったと思うけど、生まれた時代が違いすぎる。どれだけ長く現代で生活しても、わたしは古い人間なんだ」

肘掛に両肘をついて、腹部のあたりで指を組む。懐かしむような視線を、今しがた使ったばかりの古びた万年筆へ一瞬だけ注いで、ヴェルナーは口を開いた。

「うん? 君を、か。そうだね、純朴ないい娘だと思っているよ。君の年頃の女性と話していて疲れないのは珍しい。ありがたい会話相手、かな?」
834 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/05(月) 23:08:53.84 ID:bNy8LO7Ao
>>833
「それじゃあ……本当に世界が平和になったらどうするのですか?」
田舎で隠居暮らし――失礼かもしれないが、似合いそうだと思ってしまった。

「確かに、時々そういう方も見かけますね……」
心当たりが、少しだけある。 彼らは彼らで、何らかのメリットがあってああいった格好をしているのだろう。
「けれど、ああいう方って本流じゃ無いと思います。 必要悪と、似たような存在ではないでしょうか?」
少なくとも、リリアーナとしては苦手な存在であった。

「かといって、手軽さだけを追求したものはまた違うんですよね……私は、服装職人では無いので、詳しいことは分かりませんが」
当たり前のことだが、カッコいい服、動きやすい服。高価な服、安価な服。 それぞれ、いろいろなことが考えられてつくられているのだろう。
「でもヴェルナーさんはそういう格好が似合いすぎて、他の格好がイメージできないっていうのが……欠点ではないですけれど、そんな感覚があります」
スーツが良く似合いすぎて、それ以外がどうなのか全く見当がつかない。

「古いものは、良いものです。 新しいものにだって劣らないところが沢山あります」
新しいものに対応する柔軟性ももちろん必要であるが、古いものから学ぶ姿勢も大切なこと。 そのバランスが難しいのだ。

「ありがとうございます……でも、自分の評価を直接聞くなんて、ナンセンスでしたね」
口にしてしまってから、自分らしくない質問だったと思う。
それから珈琲を口に運ぼうとして、腕が途中で止まる。 俯きかけた表情は、コップの中で揺れる黒い水面を力なく見つめている。
「自分の姿が、ものすごく不安なのです。 少なくとも、昔の私はこんな人物では……ありませんでした」
835 :ヴェルナー :2013/08/05(月) 23:42:43.77 ID:vzbktnuco
>>834
「そう、だな…………農夫でもいいし、裁縫で稼ぐのも悪くない」

ヴェルナーは裁縫が趣味だった。肩に吊るしているホルスターもヴェルナーが自作したもので、腰のマグパウチも同じだった。

「まあ、あれはあれでスラムに入りやすいと言っていたやつがいたっけなぁ」

なにも皆が皆、ファッションのためだけに派手な服装をするわけではない。
そのうちの何割かが目的あってそうしているのは確かであって、ヴェルナーとしては知人の名誉のために訂正せざるを得ないことだった。

「ふむ、なるほどね。わたしは手軽で見くびられなければそれでいい、かなぁ」

舐められるのもバカにされるのも癪だ。
とはいえ外見にいちいち気を使うのも面倒で、自分なりに折り合いをつけていまの服装にたどり着いている。

「よく言われるな、それは。これ意外だとスーツかポロシャツくらいだからね、ジーパンはそれなりに重宝している」

行く場所次第で服装を変える程度のことはする。
とはいえヴェルナーはたった3種類でローテーションしているのだが。

「現存する古風は古風なりに、生き残るだけの理由がある、か」

古いもの、新しいもの。
時代に取り残されて行くものに、時代と決定的なズレを感じているヴェルナーはなによりも親近感を覚えるのだ。
家族も友も死に絶えたいま、時を経たそれらだけが唯一の同胞。
そんな感傷に浸る程度には、ヴェルナーは繊細さを持ち合わせている。

「いいじゃないか、たまには。ナンセンスも、"たまには"わるくない」

うつむいたリリアーナにそっと目を細め、視線をそらす。
人には何かしら抱えているものがあり、悩みがあるものだ。

「じゃあ聞くけど、きみはいまの自分と昔の自分、どちらが好きなんだい?」
836 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/06(火) 00:07:34.26 ID:v0TH0x55o
>>835
「裁縫ですか?」
うーん、と唸るような声を漏らす。ものすごく似合うけれど、ものすごく似合わない趣味である。

「ああ、なるほど……あの格好にも、そういう意味があるのですね」
やはり、聞いてみないと事情は分からない。
そうして集めた情報は、案外どこかで役に立ったりするものだ。

「人は見かけによらない。理解していても、印象でほとんどを決めてしまいがちですからね」
頭で理解をしていても、上手くできるとは限らない。むしろ、ままならない事の方が多い。
「……そういう所は、男の人の方が楽じゃないですか?」
男性は、ネクタイを締めてしっかりとベルトを巻いておけば、それなりにしっかりと見えるもではないか? と。

うん、うん。 と、ヴェルナーの言葉に頷く。
「そうそう、そんなものですよ。 私のおじさんも、そういう人でした……。
 だからという訳ではありませんが、なんだか親近感があります」

「とはいっても……私も現代の人間には違いないので、貴方とは物事の見方は違うのでしょう」
リリアーナの古いものが好きと、ヴェルナーの古いものが好きとでは、同じ感情であっても大きな違いがあるのだろう。

「その問いは……それは、今の私の方が好きで、昔の私は大嫌いです」
握っていた珈琲を、静かにテーブルの上へと置く。結局、少しも口に付けていない。
「自分の過去を隠して貴方と向き合うこと、それは卑怯なことだと思いませんか?」

「本当は、こんなことを言いに来たのではないのです。話すべきことでも、無いでしょうし……」
ただ、耐えられなかった。今の自分が、本当の自分ではない。そんな気持ちが、何時も頭の片隅にある。

「……なにか、良いお話はありませんか?」
こんな話は続けるべきではない。話題を切り替えようとして、ヴェルナーに言葉を求める。
837 :ヴェルナー :2013/08/06(火) 00:37:40.45 ID:uop20WKWo
>>836
「昔っから好きでね。そう、まだわたしがドイツの兵士だった頃からの趣味だ」

これとかね、と、手製のカードケースをテーブルに置く。よく磨かれた革製のケースで、使い込まれたことによる光沢が生まれている。

「何も考えずああしている場合もあるにはあるけどさ」

まあそれはそれで個人の好き好き。自分がそれでいいなら、周りに迷惑のない限り干渉する必要をヴェルナーは感じない。

「とくにわたしのような人種は、ね。第一印象が何よりも大事だから」

見た目が怪しければ声をかけたり、場合次第では包囲したりもする。内面など触れない限り知りようがないものだから。

「まあ、確かに。そうしておけば大概外れはしないから楽かもしれないな」

だからセンスに自信がない分スーツに逃げる。
いちばん手頃で適度にフォーマルな衣装であるからこそ、スーツはヴェルナーの相棒であった。

「おじさんとは意見が合いそうだ。古いものは経た時間が長ければ長いほど色を増す。それがたまらなく、なんというかな……愛おしいというべきかな?

そう、だね。わたしは感傷的なのだろうと常々思っている。古いもの、時代がおいて行ったものが同胞に見えて仕方が無い」

じじいの戯言だけどねぇとコーヒーに口をつける。黒い水面を揺らしながらグラスを回して、ヴェルナーはリリアーナの言に聞き入った。

「そうか……そうだな、卑怯だとは微塵も思わない。ただそれは、君にとっては不誠実なことなのかもしれないね。わたしはかけらも気にしないんだけど」

それにね、とヴェルナーは一言つけたし、グラスをテーブルにおいて身を起こす。

「わたしはいまの君しか知らない。君は今の自分がいいという。ならそれでいいじゃないか、別に。
過去の君がどうだったか、下世話な話興味がないわけではないけど、いま私たちにとって大事なのは、まさしくいまそこにいるリリアーナ・スミスそのものだ。在りし日の君じゃあない」

何でもないことをいうように、そうさらりと言い切って、ヴェルナーは足を組む。

「いい話、か。そうだな、また1人、浄化された、ってことかな?」
838 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/06(火) 01:02:39.93 ID:v0TH0x55o
>>837
これでも職人である。その作品を見れば、手がけたものの能力は、分かるつもりだ。
「本当、好きでやっているのですね……」
思いのこもった作品、腕にも熟練が感じられた。
カードケースの方へと指を差し向け、手に取ってよいかと視線で問いかける。


「なるほど……気を付けます」
観察、洞察能力。こればかりは、訓練で身につけるしかないのだろう。

「魔術師同士であれば、なんとなく分かったりするのですけれどね」
その身のこなしから相手の戒律が悪か全か、それくらいはだいたい感じ取れてしまう。
「だから私、ヴェルナーさんに初めてであった時から、この人はいい人なんだろうなって、思っていました」
その予測は、今までは間違っていなかったし、これからも間違いにはならないはずだ。

「とはいえ……大体の相手は一般人な訳ですし、そういう人にどういった印象をもってどんな印象を持たれるか……。
 もうこの際ですし、印象操作の魔術でも練ってしまいましょうかね?」
これも秘湯の結論ではないだろうか? そういう技術をもっている訳であるのだ。

「ヴェルナーさんとお話していると、よく親戚達の事を思い出してしまいます。
 ああ、いや……別に深い意味はないですよ。 ただ、なんだか懐かしいものがあるのです」
リリアーナ自身も説明しがたい不思議な感覚。それが心のうちに湧き上がってしまうのだ。

「結局は私の問題……なのでしょうか?」
ヴェルナーへの不誠実ということを盾にして、何かから逃げようとしている……そんな気もする。

ヴェルナーに自分の名前を呼ばれて、ゆっくりと顔を上げる。
それから、重いものが抜けていくように小さな微笑みを浮かべた。
「すみません……私、当たり前のことを見失っていたみたいです」

「浄化された、ですか?」
どういうことだろうと、疑問の表情を浮かべている。
839 :ヴェルナー :2013/08/06(火) 07:03:33.43 ID:XzXtD+SPo
>>838
「好きでなければ続かないから、ね」

触ってくれていいよ、と指先でケースを押し出す。
なめし革のケースで、刺繍も何もない。二つ折りに出来、定期や身分証明書が収まっている。

「ああ……同業というのはたしかにそういうものかもしれない。わたしにもわかるから」

褒めても何も出ないよ? と苦笑して、半分ほどにまで減ったコーヒーにまた砂糖を一つだけ。
ヴェルナーは一瞬だけ、自分は善人だろうかと思案する。自信がなかった、自分は人殺しだという実感だけが胸にわだかまる。

「うーん、それも手だけど、わたしは素のわたしのままでいいかなぁ。印象操作は、あまり好きではないというか、なんだか違和感があるよ」

なんだかんだ素のままありのままが一番、と続けたヴェルナーは、ウェイトレスを呼び寄せて新たなコーヒーを注文する。

「君の親戚にわたしは似ているのかな?」

ニコニコと、興味深々と言った様子で残ったコーヒーをちびちびと処理しにかかる。

「そうだね、結局は君次第だ。君にとってはどうなのか、というのがなによりも重要なものだよ」

誰だって、いつも何かしらを見失っている。だからそんなに深刻に考えることでもないと思うんだ、と。
ヴェルナーは続けて、

「そうそう、浄化。ええとね、言ったかどうか覚えていないけど、一応わたしは亡者なんだ、意味は、だいたいわかるかな?」

自分は生者ではない、亡者である。
一度死に、訳あって現世に引きとめられた亡霊の類。
ヴェルナーは周囲を確認したあと、小さく人除け、ことに人々の意識が自分たちから逸れる類の簡易術式を行使すると、指をパチンと鳴らす。

と、ヴェルナーの周囲が薄く揺らめいた。
ぼんやりとした青い蜃気楼はやがて形をなし、ヴェルナーの周辺に数人の人影、まさしく亡霊と呼ばれるものたちが姿を現す。

「わたしは訳あって殺され、ある人物に取り込まれた。屍者の煉獄、死して魂魄だけになった者共を取り込む一個の魔界、その中でも特異なのが私でね
いわゆるカウンセラーみたいなものなんだ。現世に大きな怨みを抱いて残った連中の話を聞き、可能なら浄化してやる」

わかりやすくいえば成仏させてやるってことだね、と。
ヴェルナーは小さく微笑んで指を鳴らす。
すると亡霊たちはヴェルナーに一礼し、出現と同じように静かにかき消えた。
840 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/07(水) 12:12:15.83 ID:/2rrVyelo

「偉そうなことを言いたいのではないのですけれど……こういう作品を見ると、言葉を交わすよりも、その人のことが良く分かる。そんな気がするのです」
感謝の言葉を告げ、カードケースを手に取る。一見すると地味なケースだが、そのすべてにヴェルナーという人物が表れているように感じられた。

「ごく単純な印象操作どと、術師はもちろん、最近はほとんどの能力者相手に全然使い物にならなくなりました……」
日ごろ相手にするのは、民間人では無く異能者なのだ。 そう考えると、良い考えだとは思えない。
「……印象操作は相手だけでなくて、自分も偽ってしまう術です
 そんなものに頼ってしまっては、本当に駄目な人間になってしまいますよね……」
ヴェルナーの否定的な言葉にも、落ち着いて頷きかえす。リリアーナも本気でそんな手段を使おうとは微塵も考えていない。

「おじさんとヴェルナーさん……容姿は全くの別人ですけれど、声や話し方がそっくりなんです」
一度、珈琲を口へと運んで、それから言葉を続ける。
「そうそう、そういえば彼もドイツの人でした。 それから、私が一番お世話になっていた頃は、丁度ヴェルナーさんと同じくらいの年齢でした」
自然と弾んでしまう言葉。可能な限り感情を抑えようとするが、楽しかった思い出を語る時に、笑みは隠せない。
「大バカだった頃の私――いいえ、今でも馬鹿ですけれど――そんな私に優しく接してくれる、数少ない人でした」

「亡者――はい、それはもちろん」
ヴェルナーの正体を知ってから、自分なりにそれがどういう技術なのかを調べてみた。
家系や組織に属さないリリアーナの情報というのはたがが知れたものだが、それでも基本的なことは理解できた。

しばらく、ヴェルナーが魔術を行使する様子を、静かにながめている。
亡霊が消えてからしばらくして、再び口を開く。
「知っていたつもりですが、実際に目にしてみるとイメージをしていたものとは、違うものですね……」
なんとなく、ヴェルナーに良く似合った仕事だと思う。そんな意味合いの言葉を呟いた。

「でも、これはどうやって形成を……正直に言ってこんな大魔術は、とても考えられません」
ヴェルナーが『魔界』と形容した術式。それは、若い魔術師には信じがたい技術であった。
841 :ヴェルナー :2013/08/07(水) 12:58:14.20 ID:iFW4I60fo
>>840
「手間暇込めて作ったものには作者の内面が写り込む。その人の内奥そのものが投影される」

刀剣であれ、銃砲、衣服、どんなものであっても例外なく、人の手で作られた物には特徴が宿る。
リリアーナの打った剣も同じで、ヴェルナーはあのサーベル、ヴェアヴォルフを気に入っていた。

「印象操作や気配隠匿は、最近では高尚な魔術師のものになりつつあるからね。魔術の拡散も考えものさ。それに、自分を見失ってしまう」

実際のところ、ヴェルナーもその方面にある程度の知識がある。仕事柄使うこともあるし、何度も世話になったものだが、使えば使うほど自分が希薄になって行く感覚があった。

「そっか、似てるのか」

へぇと、どこか楽しそうなリリアーナの表情につられて笑みを浮かべ、相槌を打つ。

「そういえば、君もドイツの方とかなのかい? わたしは利巧である必要はないと思うけどね。バカであることが悪いわけではないし、君がバカだとは思えない。いいじゃないか、お馬鹿さんでも、君が君なら」

私が生きていた頃、ちょうど君くらいの妹がいたからね、懐かしいのさ。そう笑って、ヴェルナーはウェイトレスが持ってきたコーヒーを手に取る。

「亡者、死霊、まあいい印象のあるものじゃないだろうね。いま呼び寄せたのも良識があるやつで、多くは怨念の塊そのものだから」

手をかざす。
すると1秒と経たずにその手が装甲に包まれ、禍々しく黒味を帯びた瘴気が薄く漂う。
ヴェルナーはそれを消して、

「わたしの主である結界師、その当人そのものが結界になった結果。魔術というより現象に近い、本人が歩く異界であり、魂魄を引き寄せてしまうせいで、ね」

842 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/08(木) 13:42:07.72 ID:kZq+zt2so
>>841
「モノの内側にその人の本質が映り込むのだとしたら……職人ほど、本質を問われる職業も滅多にないってことになりますよね?」
ありがとうございます。……っと、ヴェルナーにカードケースを返却する。
「これは……印象操作の術なんて練習する暇、無いかもしれません」
モノの本質にまで印象操作を宿すことなんてできるのだろうか? 考える暇があるなら、自分の本質を磨いた方が早そうだ。

「でも、まあ……それらの術で争いを避けられることも多いですから。ものは使い様だなんて言ってしまえば、くだらない結論になってしまいますけれど」
ものごとを穏便に済ませたい時など、便利なこともある――大体は、悪事に使われるだろうが。

「父はイギリスの人で、母はイタリア……私は、その二国の多重国籍です。
 まあ私の家の場合だと、うまれた国なんてあって無いようなものなのです。
 長い歴史の中、血縁者は世界中あちこちにちらばっていて、事実私の実家はスウェーデンにありましたし……」

「そのくせ一番がイギリスで、二番目に長い期間暮らしていたのはドイツです。だから、知り合いの多くはドイツの方ですね」
 ……商家として活躍するには、世界中に人を配置しておいた方が良いとかなんとかで」
武器職人として技術屋の一面と、武器商人という商家としての一面。リリアーナの家系にはその二つがある。
最近は商家としての一面のみ肥大化していらしい……。

「……ああ、駄目です。多分ですけれど、このまま続けていれば家への悪口ばっかりになりそうです」
はぁ……。と、ため息を漏らして、ゴクリと珈琲を飲む。

「私が私であることが、嫌だ。ってところがあるのです。
 ヴェルナーさんだって、そうでしょう? 今の自分は完成だなんて思えないし、自分の中に改善したいところっているのはいくつかあるはずなんです。
 だから、お馬鹿さんじゃいられないのです。 私は、もっともっとやらないといけないのですから……」
打つたびに鋭くなる剣のように、自分の錆は減らしていかなければならない。
「……でも、今のままの自分でもいいって言ってくれたのは、ちょっと嬉しいです」
呟いてから、照れくさそうに帽子を深く被りなおした。

「……妹さま、ですか?」
初めて聞く話に、首を傾げた。
「いや、勝手な印象ですけれど……すごく出来の良さそうな女性が想像できるような……」
ヴェルナーの印象から、その家族を想像してみる。 こういうのはあたるときはあたるが、ダメなときは全然あたらないものだ。

「ヴェルナーさんの主には失礼ですけれど……また、随分と面倒な現象をしてくれてますね……」
結果術は専門から大きく外れてしまうので、どうこう言うことは出来ない。
が、霊をこんな風に扱ってしまうというのは、世界のシステムからすると、非常に迷惑だろうと考えられた。
843 :ヴェルナー :2013/08/08(木) 18:16:32.20 ID:8exXSqHvo
>>842
「そんな脇道に逸れてしまうくらいなら、長所でも伸ばす方がいいんじゃないか、とは思うね。たしかに物は使いよう、だけど使わないほうがいいものだってある」

印象操作なんて最たる例じゃないか、と返しながらカードケースをふところ仕舞い込む。

「わたしの母は日系だった。父は生粋のドイツ人だったけど、ね。
そうか……商家の、ね。たしかにそうなると、世界各地を回ったりするだろうし、コネも必要になる。
いろんな国を巡ってきたのかい?」

ヴェルナーはいまでこそ世界中を回っているが、生者だったころはドイツを防衛する精鋭の士官として国につきっきりだった。
若いうちに世界を回れる、という事実に、目を輝かせて聴きいる。

「家が嫌いなのかな?」

キョトンと目を丸くして、ちびちびとコーヒーに口をつけながら。

「わたしの場合はもう、そういうのには諦めがついているからね。自分の限界値が見えていて、だからこそ納得もしている。
悪いところを治す暇があるなら、わたしは長所でも伸ばすことにしているんだ。それが正解だとは思わないけどさ」

目深に帽子をかぶったリリアーナに微笑んで、ヴェルナーは懐かしむように視線を細める。

「いや、ドジで不器用な子だった。歳が離れていてね、いつもわたしについて回ろうとしていたけど、長らく会えていないからね」

妹が20になるかどうかという頃に、ヴェルナーは東部の大地に屍を晒した。わかっているのは彼女が戦後日本に移ったということだけ。
幸せに生きたならいいけど、と遠くを見て、ヴェルナーはつぶやく。

「本人もほとほと困り果てているよ、あれには。体質的なものだからね、どうしようもない」

たしかに、リリアーナのいうとおり面倒なものだ。
煉獄には怨嗟だけが充満し、刻刻とその濃度を高めている。解放されてしまえば周囲を侵食し尽くすほどに。
844 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/08/09(金) 21:39:01.21 ID:14JgPmZyo
>>843
「力の扱いって……間違えたくありませんね。それは、ものすごく難しい事なのでしょうけれど」
力の使い方を誤ればどうなるか……学びたければ、その例はそこらじゅうに溢れかえっている。

「国は、色々なところを回りましたよ。本当、一か所にとどまる方が珍しいぐらいでした」
そのおかげで、友達はほとんどできませんでした。とも呟く。
「それでもドイツには、一年ぐらいは……あそこは、良い国ですよ」

「あまり、美しいことではありませんが……家は大っ嫌いなんです」

「人を[ピーーー]なら、銃やミサイルでも使ったほうがより安全だし、魔法剣が必要な精霊や悪魔も昔ほど脅威で無くなってしまいました。
 彼ら――家の人々は、魔法剣をアンティークと考えている人が多数です」
酷く思いため息を吐き出す。言葉を吐き出す表情は、酷く暗い。

「スミス家が職人の家系であってのは、昔の話です。
 現在は古くから所有している土地でとれる魔具の素材と、ファッションブランドか何かと混同している魔法剣を売る。それが今の実態ですよ」
部屋に飾るとか、子供へのプレゼントだとか……武器として使用されることは、ほとんど無い。
「職人技術なんて最低限、研究は『どうすればより売れるか』ということに傾いていて、『武器』としての能力は、この数十年全く進歩をしていなかったのですよ」

「私は……剣を打つことが得意でしたし、なによりも好きでしたから。そんな家の状態が、なんと許せなかったのです」
溶けかけの珈琲が、水面でカラリと音を鳴らす。

「すぐれた職人や名剣に触れる機会を提供をしてくれたりと、将来家を背負う職人として、期待されていた時期もありましたよ。
 私は、学んだとおりに『より優れた武器――剣』を打とうとしました……けれど、彼らはそんなものを求めては居ませんから、当然意見は衝突しますよね」
大衆もしくは組織の中で、他に染まらないものは疎まれてしまう。それがは、血族というくくりであっても変わることは無い。

「一族の伝統を忘れてしまった彼らを軽蔑している私ほうも、彼らのことは軽蔑をしていましたから……。
 最後には大喧嘩をして、家を飛び出してしまいました」

「すみません……詰まらない上に、長い話になってしまいました」


「限界、ですか。 ……ヴェルナーさんがそう捉えるなら、そうなのかもしれません。
 けれど、剣について研究をしていると……限界はいつか乗り越えなければいけないものだと、そう考えさせられます。
 それは、きっと人間でも同じことではないかと、私は考えます」

「やっぱり……今でも会いたいと思います、よね?」
長い時を経て、大切な人と再開するのはどういう気持ちなのだろうか。
ヴェルナーの時は長すぎて、全く想像がつかない。 

「その人にも会ってみたいような……でも、会いたくないような……」
興味があるが、興味だけで関わるには少々危険な気もする。そんな印象だ。
845 :ヴェルナー :2013/08/09(金) 23:11:40.05 ID:Cv/K+aB/o
>>844
「そうだね、わが故郷であるという点を差し引いてもいい国だ。誇るべき祖国だ」

汚点は確かに存在するがな、と。
不満を隠しもせずに、かつて自分たちを統率した独裁者の名を短く罵る。
ヴェルナーにしては珍しいことだったが、それほどに憎い存在だったと言うことだろう。

「武器とは効率を目指して行くものだからね。怪異であっても強力な火器がありふれた現代では驚異度が低くなる。
君は、魔法剣をアンティークにしてしまった家族が嫌いなんだね」

たしかに、それは思うところはあるのだろう。
自分が憧れた存在との乖離、理想とかけ離れてしまうことがどれほど辛いか、ヴェルナーはそれをよく理解している。

「時代が進めばすべてはアンティークになっていく。かつて活躍したコルトのシングルアクションも、いまでは骨董品、半世紀前の銃器も殆どがコレクターのお宝さ」

かつて自分が高潔なプロイセン軍人としてあろうと夢見たようなものだろうか。
国防の礎としての役目を果たさんとし、故郷を離れた雪原に斃れたように。

「ただ、剣本来の道を追い求めれば、君の剣は人を[ピーーー]ことになる。わたしが打ち直しを依頼したヴェアヴォルフがそうであるように、目的如何に関わらず、人を斬るためのものになる」

それが嫌ではないのか?と。
ヴェルナーは問いかけるような視線をリリアーナに投げかける。
ヴェルナーにとって、武器は武器だ。さだめられた凶器の役割を果たすための作りにこそ、武器の美しさがあると信じている。
しかしそれは、とどのつまり殺しの道具に他ならないのだ。

「いや、いいさ。意外な面が知れて良かった」

意外と跳ねっ返りのお転婆なんだなぁ、などと苦笑して、ヴェルナーは肩を竦める。

「わたしは歳だからね、限界が見えてしまう。君はまだ若い、そんなものははるか彼方、かすみの向こうだ」

だから真っ直ぐ好きなように進めばいいずゃないか。そうつけたして、ヴェルナーはリリアーナの問いにやや考え込み。

「会いたいとは思う。だが会うことは叶わないだろう、もう亡くなっているからね」

ヴェルナーが死したのはもう1世紀近くも前のこと。
仮に生きていても相当の高翌齢だっただろう。

「事実上わたしの血縁だ、変なやつではないよ。言ってしまえばわたしの妹の曽孫だ」
846 :リリアーナ /魔法剣職人 [sage saga]:2013/08/19(月) 14:37:10.05 ID:FqZTj41+o
>>845
「そのころを知らないので……なんとも言えません」
独裁者の、戦争の時代。 けれど自分が知っているのは、情報として残っているかつてそういうことがあったという記録だ。
それしかもたない自分が、実際にそれを体験してきた人物を前に何かを語って良いことがあるとは思えない。

「お金に目がくらんで、魔法剣を鍛える喜びを見失っているのです……」
不機嫌そうに揺れる眉、言葉もどこか拗ねたそうな調子。家庭の事情を語るときはずっとこんな調子だ。
「骨董品になっても、誇りをもって骨董品をつくるなら、私に不満はありません」
手に取った珈琲を、一気に飲み込む。

「パンやバターを切り下すために、私は剣を造っている訳ではありませから」
単に刃物が欲しいだけならば、ナイフでも包丁でも簡単に手に入れることができるだろう。
「私が造っているのは、生きたモノを斬る道具です……私自身がそう決めているのですから、誰にも違うとは言えはしません」
ヴェルナーの言葉へ重なるように、自分の口から『目的如何に関わらず、人を斬るためのもの』だと語る。

「自分で決めて、自分で作ったモノを、嫌になる。……そんなこと、ありませんよ。
 何があっても、嫌いになんてなれません。 自分のした事には、責任を持つべきですから」
自分が何を作っているかは、良く理解しているつもりだ。 だからこそ、作る前から覚悟はできている。

「だから私の剣は、信頼できる――剣のことを嫌にならない人にだけ託したいと考えます。
 自分の剣が、どのように扱われるか……作った後の事にも、作った人に責任はあるはずでしょう?」

「意外……でしょうかね?」
そうかな? と、首を傾げてみる。――一体、ヴェルナーにはどのような人物だと見られていたのか。
答えを見つけられず珈琲のカップに指を伸ばすが、随分と軽くなったカップの中身には溶けかけの氷しか残っていなかった。

「そういう言葉を使われると、貴方と私で歳がずっと離れている気がします。
 いいえ、実際のところはかなり離れているのでしょうけれど……あまり、そんな気はしないのですよね」
ヴェルナーの容姿のせいだろうか。自分が孫かひ孫になるぐらいの年齢差がるという実感は薄い。

「そう、ですよね……すみません」
もう亡くなっている――相手の事情を少し考えれば分かったことだ。
失言だったと感じつつ――ちいさく頭を俯かせる。

「……血縁」
聞けば聞くほど、事情に複雑な糸が絡まり合っていく。
どこまで踏み込んでよいものか、推し量ることは難しそうだ。 
847 :ヴェルナー :2013/08/19(月) 20:33:11.59 ID:2rom1HT+o
>>846
「仕方が無いさ、もう過去の出来事だから」

その戦争を戦った身として、ヴェルナーは見えない何かを見出そうとするかのように目を細めて微笑む。
戦友がいて、愛する人たちがいて、守るべき祖国があった。しかしそれももう過去のこと、過ぎ去った時間に挟まった記録でしかない。

「ふぅん……誇り、かぁ…。そうだね、それだけはきっと、無くしてはならないものなんだとおもう」

懐かしいなぁ、と。
苦笑したヴェルナーは、失礼、と一言前置きして懐から煙草を取り出す。
箱を軽く振って一本銜えると、古びたマッチを擦って穂先へ灯す。

「覚悟があるならいいんだ。そうであるなら、私は口を出さないし、出せない。なにせ、その剣を使う側だから」

自分とて覚悟をして戦いに身を投じている。
誰に命じられようと、どのようが理由があろうと、戦いに身を投じる、その選択は自分のものだ。それが、他ならぬ自分の殺意表明なのだから。

「ならわたしは、君の信頼に答えられるように頑張ろう。わたしには君の期待に答える責任がある」

「もっと、なんというか大人しいかと思っていた。勝手な感想だけど」

所在無げにはにかんで、ヴェルナーは煙草を指に挟むと灰皿へ燃え殻を落とす。
第二次世界大戦でドイツ軍の嗜好品だったR2、古い銘柄に似合った渋みの強い香りが広がる。

「自分も自分の年齢がわからなくなる。肉体と精神の乖離が激しいと、ね」

なにせ心持ちは30代のまま、経た時間だけが積み重なっているのだから。

「気にすることじゃない。あの子は幸せに生きたようだからね、死に際に会えただけでも私は満足している」

いいんだよと手を軽く振って、ヴェルナーは苦笑した。
むしろ気を使われる方が辛いこともある。

「運命の巡り合わせというやつかもしれないね」
848 :Epilogue [saga]:2013/10/01(火) 16:13:55.25 ID:ARjLf3dNo
全てが順調だった。
一つの光明から、色のない地の底の世界から脱却出来る最高のチャンスを得た。
物事が順調に進む時は、怖いくらいに万事うまく行く。

「……はずだったんだけど……ね」

真紅の髪を持つ一人の少女は、暗い夜の街……その少し外れた人気のない路地裏を歩いていた。
その姿に力はない。真紅の髪の色が全身に映ったかのように、少女の体は赤い色に染まっていた。

ふらふらと壁伝いに歩きながらも、いい加減に限界が来たようで、壁に寄りかかった直後にズルズルと地面へと座り込む。

「光……私の、光……」

一つのきっかけで物事が順調に動き出すのであれば、その逆もしかり。
一つのミス、一つの偶然、一つのイレギュラー……その一つで全てが瓦解する。

最初のきっかけは、ある人物に出会ったこと。
これが、自分の光を取り戻せるチャンスだった。

そして、物事を逆の方向へと動かしたもう一つのきっかけ……
余りにも下らない、ただのミスだ。

敵に情けをかけた。
相手が幼い少女だったから、殺すのを一瞬ためらった。
以前の自分はそんな人間ではなかったはず。
敵は殺す。自分以外がどうなろうと何も関係ない……そう、思っていた。

その一瞬が全ての誤りだった。
少女には爆弾が仕掛けられていた。
少女を差し向けた何者かにとっては、初めからこの爆弾が本命だったらしい。

事実は作り物の小説のように上手くは行かない。
致命傷を負ったにもかかわらず、奇跡の力で復活し自らの目的を果たす。
フィクション物語であれば、今この状況はそのように動いたであろう。

少女はコートのポケットに手を入れ、一つのアミュレットを取り出す。

「もう……必要なくなったね」

いつか怪しげな人物から貰った、人の魂を吸収するアミュレット。
自分の目的を果たすための材料となるはずのものだった。

少女が力を入れると、いとも簡単にそのアミュレットにヒビが入り、やがて音を立てて砕け散る。
すると、そのアミュレットから無数の光が拡散していく。
まるで、少女の周りを蛍の光が照らしているかのように……

「今まで取ってきた魂ってわけ……? 我ながら結構取ったね……」

光の粒子一つ一つが、これまで吸収した人の魂なのであれば、今までに何人もの命を取ってきたのだろうか。

「……ねぇ、お姉様。 お姉様は、天国に居るかな……? それとも地獄……?」

光の粒子に照らされながら、輝きを失いかけている瞳は天に登る月を見る。

「きっと、天国だよね……あんな世界で、人を信じ続けて、私を救ってくれたお姉様……だから……」

少女の頬に、一筋の雫。

「……だから、もう逢えないね。 私は、地獄行きだろうから」

少女がこれまでに奪ってきた命の多さを考えれば、お世辞にも天国に行けるなどとは言えないだろう。

「でも……でもね、私は地獄にいても、生まれ変わってもお姉様の事を忘れないからね。
 ……お姉さま……は、……いつまでも…………私、の……お姉さまだから……ね」
849 :Epilogue [saga]:2013/10/01(火) 16:14:05.41 ID:ARjLf3dNo
――――――――――――――――――――――――


それは、失われつつある生命が見せた、最後の夢か幻か……
少女が瞳を閉じた後の一瞬のお話。


「ちょっと待ってよ! ねえ、お姉様!」

そこは、人の往来激しい街の大通り。
幾つもの店が並び、学校帰りに遊ぶ者、仕事に勤しむ者、はたまた暇を持て余す主婦達が喫茶店でお茶する……争い事など無縁の世界。

真紅の髪をなびかせながら、少女の前方で楽しげに歩く茶髪の少女を追いかける。

「なーにやってんの? 置いてっちゃうよ〜」

振り向いて赤毛の少女に声をかけるも、減速する様子はない。
茶髪の少女が歩くのが速いかと言うとそうでもないのだが、後方で追ってきている赤毛の少女が持っている荷物が問題だった。

「これ重いんだから、お姉様も手伝ってよ!」

大きいレジ袋にパンパンに入った食材類。
小柄な少女が持つには少し厳しいか。

「勝負に負けたんだからしょうがないでしょ。それに、作るのは全部私なんだからそれくらいはしてよね」

茶髪の少女の言い分に、”もー”と困ったように答えながらも、どこか嬉しそうな赤毛の少女。
二人一緒に帰路につき、きっと、なんだかんだで二人で楽しく料理をするのだろう。

「私だって最近料理出来るようになったんだからね!」

「はいはい、じゃあ見せてもらいましょうかねー」

「疑ってるでしょー……」

「別に〜……」

…………

……




〜Fin〜
850 :Epilogue [saga]:2013/10/01(火) 16:14:46.72 ID:ARjLf3dNo
やはり無理だったのだろうか。
自分が人並みの生活をし、幸せを掴むのは……

研究所の捜索能力を甘く見たわけではない。
そこまでして自分を捕まえようとする意思、本気さを見誤ったのだ。

客観的に見れば、人工的に人間を作り、さらにその容姿、性格、能力まで全て制作者の思う通りに作ることが出来る技術は恐ろしく価値のあるものだ。
ただ、自分がそのように価値のある物だとはなかなか自覚ができないものである。

判断の誤りは致命的なものだった。
いくら高い能力を持つとはいえ、多勢に無勢。
消耗戦を強いられれば必ず敗北する。

その結果が、体に幾つものチューブを刺され培養カプセルに入れられた自分だ。
意識はある。
眼も見えるし、耳も聞こえる。
ただし、体は一切動かない。

自分が入っている培養カプセルを取り囲むように数人の研究者が話をしている。
これから自分に何をするのか。なんとなく予想が付いた。

「捕獲に苦労しましたが、ようやくこれで計画が完成しますね」

「ああ……後はこの人格データを上書きすれば、世界がひっくり返るほどの生物兵器が完成する」

やはりというべきか、来るべき時が来たというべきか……
この結末は予想しなかったわけではない。
当然、起こる可能性がある未来として想定はしていた。

「今入っている人格データは失敗作だ。あの忌々しいジジイがこんな人格データを勝手に入れるから、やたらと手間取ってしまった」

自分は本来この体に入る人格データではなかったみたいだ。
ではなぜ、自分はここに存在しているのだろうか……





851 :Epilogue [saga]:2013/10/01(火) 16:15:16.92 ID:ARjLf3dNo
あるところに稀代の天才が一人。
若くして様々な発明をし、技術で世の中を変えてきた人物の一人だ。
何かを作るのが好きだった。
富や名声などの為ではなく、好きだからやっていただけのこと。

ただ、人というものは一度成功してしまうとその次を求めてしまうものだ。
天才とはいえ、その例外ではなかった。
多くの発明で世の中を席巻した天才技術者は、その次を求めた。

より直接的に成果を見れるステージ、より賞賛を浴びやすいステージへと研究の土俵を移したのだ。
その土俵が、兵器開発だった。
より効率的に相手を殺す事を考え、画期的な兵器を開発する。
彼は土俵を移した後も、その天才的な発想でいくつもの兵器を開発し、成果を挙げた。

やがて、ミサイルや毒ガスなどでは物足りなくなった天才は生物兵器に手を出した。
あらゆる倫理的問題を無視し、人工生物、キメラ……考えうる全てを試したのだ。

数十年の時がたち、彼の目の前には培養カプセルに入った一人の女性の姿があった。

-Chihaya-

カプセルのラベルにはそう書かれている。
人生約70年……その集大成とも言える研究成果が、今ここにあった。

思考する兵器。
これは、彼が目指していた兵器の最終地点だった。
局所的なシーンでしか使用できない兵器ではなく、あらゆる場面で兵器自体がその場で最適解を導き出して行動する。
その完成形がここに出来ようとしていた。

後は、人格データを脳にインストールするだけ。
そこで、彼は一息入れることにした。
コーヒーを手に取り、一口……ほんの一息だ……

思い出す……
70年間の研究の日々……
幾つもの兵器開発に心血を注ぎ、あらゆるものを犠牲にして他者を殺す兵器を開発した。

だがどうだろう。
何か……何かが今までと違う。
こう、”くる”ものがない……
今までは自分の研究成果を思い出せば、心が沸き立ち次の研究へのモチベーションへと繋がった。

なのに……
今、心にくるものは……虚脱感。

結局自分は何のために兵器を開発していたのか……
もともとは何で技術者になったのだ……

違うはずだ。
兵器を作るために技術者になったのではない。

彼はコーヒーを置いた。
パソコンに向かい、常人では何をしているのか全く理解できなようなスピードでコードを打ち込んでいく。
一日……二日……

彼は何日も休まずにパソコンに向かっていた。
そうして、完成する……新しい人格データ。

人を殺すためではなく、守るためでもない。
全てはこれからこの子が決められるようにあらゆることに自由度をもたせたこの人格データを……この素体に入れる。

稀代の天才技術者……最後の仕事だった。



852 :Epilogue [saga]:2013/10/01(火) 16:15:36.21 ID:ARjLf3dNo
「しかし! あの耄碌したジジイはもう居ない! 究極の兵器……その完成だ……」

一人の研究者が培養カプセルに近いパソコンを操作し始めた。
機械が動く音が聞こえる。

いよいよここまでだろう……
しかしまぁ、上手くやったほうだろう。
研究所で一生を終えると思っていた自分が、世間に出ていろいろな体験をした。

もう十分だ……

意識が薄れていく……
自分の脳内が何者かに侵食されていくイメージ。
自分が自分でなくなっていく感覚が、リアルタイムで感じることが出来る。

この人格は危険だ……
けれども、最早自分にできる事は何一つ無い。

これが、未完成な人格データを入れられた兵器の末路。
満足はしている、後悔はしていない……

……ただ

…………ただ、一つだけ

一つだけ、最後に思うことは……


- 誰か、私を殺してください -


〜Fin〜
853 :星の君 :2013/10/19(土) 09:11:49.05 ID:s8IYykiuo
 輸送ヘリの中で、
 お茶の間で人気の正義のヒーロー星の君がオペレーターと通話している。
「再確認作業に入る…。
 危険物の固有波形をデバイスに、特徴を口頭でわたしに伝えてくれ。」
 厚手のアーマージャケットに身を包んだそれは再確認作業に入る。
 そして通信相手からの返事が返ってくる。
「どの組織に属しているかは不明だが、何らかのいくらか以上の規模を
 持った研究所で造られた人造人間がターゲットだ。容姿は人に近い。
 君くらいの歳の子供だ。トライアドの協定から外れた組織の作った
 生物兵器は根絶しなければならない。それを君に依頼する。」

 蛍子はボイスチェンジャー越しに「了解」と通信相手に了承の意思を伝える。
「情報は他にはないのか?」
「TIHAYA…よくわからないが品物はチハヤというコードネームで呼ばれているらしい。」
「名前があるのか?トライアドの連中はそのCHIHAYAの存在の完成を阻止できなかったのか?」

 通信相手、オペレーターは暗号通信を入れてから星の君に告げ口をした。
「実はこれはトライアドも関わっていた研究だったんだよね。とは言っても、
 彼等は出資していた程度の関わりなんだけれど、究極の兵器を作るという云百件の内の、
 優良なプロジェクト、レベル5の開発プログラムの中に一つの生物兵器開発計画があった。
 その成果が動き出したらしい。」
 それだけを星の君に告げるとオペレーターは暗号を切る。

「もしも〜し!聞こえるか星の君?通信が上手く繋がっていないようだが。」
 そんな猿芝居に星の君は付き合う。
「断片的にだがCHIHAYAの完成を阻止できなかった事だけわかった。
 天候のせいか通信事情が良くないようだ。
 とりあえずわたしはCHIHAYAをどうすればいい?」
 その問に対してのオーダーは「破壊せよ。」であり、
 星の君の返答も「了解。」だけである。

- 誰か、私を殺してください - 

 何者かのその望みはマスコミでお馴染みの彼が果たすのかもしれない。
854 :シンラ・アマツキ [sega]:2013/10/30(水) 13:25:08.99 ID:1fBcaOni0
>>660

「ふへへぇ...かわいー…。よしよしよしー」

不愛想そんなものは関係ない。
シンラは嬉々として反応の無い犬をなで回し悦に浸る

「うん! 必要以上にはたべないようにしてるよ
 質問にもどうじにこたえちゃうけど、ボクは人間じゃないからね」

さらりとカミングアウト
食事の内容もその存在も『普通』ではないのだ

「ちまたでは化け物とか怪物ってよばれてるみたい」

855 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/10/30(水) 20:59:35.50 ID:OcoMU7Xko
>>854
「可愛いというよりは、カッコいいと言ってあげる方が喜びそうですけれど……」
犬の様子が何か妙なことに気がついて、少女も微かに警戒を浮かべる。


「人間では無いですか? は、はぁ……」
少年に堂々と、自分は"化け物"です。などと語られてしまえば、驚いたり身構えたりよりするよりも、拍子抜けしたような気持ちにさせられてしまう。
それは少女に限ったことでなく、犬も同じ様子であり、あれだけ張りつめていた犬の緊張も簡単に解けてしまった。

「……それでまあ、化け物さんは一体なにを食べいるのですか?」
自分を化け物だと語る相手だが、なんとなく警戒をする気にもなれず、何気なくそんなことを尋ねる。
856 :しんら [sage]:2013/10/30(水) 23:02:37.80 ID:A/SRXUfYo
>>855

よしよしよし…犬を撫でながら至って平然に

「うぅ…聞いちゃう? んー…あんまりいわないんだけど
生命力…? きゅうけつきみたいな」

−−−−がおー! どう、こわい?

と、しんらは怪物ギャグを披露
やはり迫力はなく…吸血鬼のように人を襲うといっても説得力にかけていて

「妹はヒトなんてからだごと食べちゃうんだよ? 僕よりすごいんだから!」

なんて胸をはってみせる
857 :リリアーナ/魔法剣職人 [sage]:2013/10/31(木) 16:34:29.15 ID:Shkb+BTuo
>>856
「……それって、つまりは」
少女は困ったような様子で、犬と顔を見合わせる。
その様子は、言葉なしに犬とコミュニケーションをとっているようにも見えなくない。

「大丈夫なんでしょうか? 例えば、そばに居る私とか」
相手の言葉を信じるならば――相手にとった自分は捕食対象ということになるだろう。
危険な可能性のある相手そのものに危険かどうかなどと尋ねるのは間抜けな光景でもあるが、今の状況では他に確かめる方法も思いつかなかった。

「怖くありません……ね、すみません」
首を傾げて見せる――本当に驚かすつもりがあるのだろうか? ――なぜか、力の入っていないその演技には不満そうな少女である。

「あの、一応私は人間ですから……なんというか……」
と、目も前の人物の言葉には、戸惑いの色が濃くなっていく一方である。
858 :しんら [sage]:2013/11/02(土) 13:06:11.91 ID:/R7C+W7Po
>>857

「やっぱり怖くないか…まぁ、僕たちはわるいひとしかたべないよ? 」
だから、心配しないでね? とシンラは付け足す

「僕たちは…いや、僕は、人が好きだから…ね」
「意味もなく人を殺したりしないし、必要以上にはたべないの」

「でも…お姉さんがわるいひとなら…」

−−−食べちゃうかもね。

幼い笑顔で、首をかしげる
その仕草は先程よりもよほど怪物染みていて

「なーんて…お姉さんはいい人そうだからそんなことしないけどね!」
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