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【人類最後の希望】ここだけメカ少女世界【それは鋼鉄の戦乙女たち】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2013/12/23(月) 00:06:18.33 ID:j0OSKO4p0
西暦1935年に地球外から飛来した謎の敵性生命群「フィーンド」と人類の戦争は、既に10年以上に及んでいた。
既存の兵器による攻撃を無力化する特殊力場と、未知の物質で構築された細胞を持つ彼らに対抗する手段は、ただひとつを除いて存在しない。

人類の希望たる唯一の兵器――その名は「セイバーユニット」。
フィーンドの『コア』とオーバー・テクノロジーを解析して作り上げられた、フィーンドと同じ力を持つ戦闘システム。
だが、『コア』と同調しその力を制御下に置くことができるのは、本来なら銃後の祈りに徹するべき、うら若き乙女だけだった。
柔肌を鋼の翼で包み、細腕に余る巨大な武器を抱え、少女たちは陸海空の戦場に向かっていく。

世界を守るために、明日を生きるために、残酷な時代を戦乙女は駆け抜ける。
そんな、戦場に儚く咲き誇る花々の物語を刻むのは、他でもない貴方なのだ。

【はじめての方へ】
このスレは「生身にさまざまな機械的装備を付けて戦う少女」――いわゆる「メカ少女」を表現することに特化した、オリキャラなりきりスレです。
物語を円滑に進めていくために、守らなくてはならないルールや、心掛けた方がよいことを以下に示します。

・PCとして使用できるキャラクターは、最大で20代後半までの人間の女性『のみ』です。男性PCの使用は一切許可されていません
・演出用のゲストとして男性ゲストを出すことは問題ありませんが、男性ゲストだけの活躍で中程度以上の強さの敵を倒す、などといった描写はできません
・オリジナルキャラクター以外の使用は禁止です。ただし、この規定は既存作品の設定や描写を参考にすることを妨げるものではありません
・ニッチでフェティッシュなジャンルを扱うスレのため、15歳未満の方の閲覧はお奨めできません
・あまりに強力なキャラクターは使用禁止です(例:大型の敵の群れを一撃で倒すことができる、地球の裏側まで狙撃できる、など)
・それでも武装が強いと思う場合、弱点や不得手を与えるとインフレをマイルドにしつつ設定に奥行きが生まれるでしょう
・戦闘における確定描写は「原則的に」禁止です
・過度なエログロ描写は控えましょう。仮に相手が良かったとしても、ギャラリーは不愉快になります
・軍事もの・戦場ロマンの要素を強く含んだスレではありますが、過度なリアリティの追求は楽しみの共有を妨げるので気をつけましょう

【各種URL】
wiki:http://www57.atwiki.jp/mechasho/
暫定雑談所:http://yy71.60.kg/test/read.cgi/narikirigoudou/1381853198/
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2013/12/23(月) 00:19:45.97 ID:dd6GNL5go
スレ立てお疲れ様です
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2013/12/23(月) 00:20:04.47 ID:DfdXxts8o
スレ立ておつかれですー
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/12/23(月) 00:20:18.54 ID:ucs+r9RKo
乙にございます
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2013/12/23(月) 00:22:18.63 ID:M/Q86quRo
スレ立て乙であります!
6 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/05(日) 21:32:40.54 ID:fAxpRbms0
何という俺得スレ、パー速も漁ってみるもんだな
でも割と過疎ってる?
7 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/05(日) 21:51:35.08 ID:QI9yRWd7o
見ているんだけどねぇ
8 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/05(日) 21:56:45.21 ID:fAxpRbms0
ファッ!?
9 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/05(日) 21:59:00.40 ID:fAxpRbms0
と、とりあえずwiki読んで世界観を知ってるとこなので、キャラ考えるのはそれからにしようと思いますん
10 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/05(日) 22:13:56.95 ID:u8oWQqk4o
暫定避難所から正式な避難所が出来たのでURLはっておきますね
ttp://jbbs.shitaraba.net/internet/19576/
11 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/27(月) 23:12:19.29 ID:vPJRohsC0
―――グロースクロイツ帝国、欧州中央戦闘指揮所。
ここはヴォルガ連邦を含めた欧州全体の軍が集結する大規模基地だ。
現状人類連合軍の主力とも言うべき、アルビオン王国軍とプリマス合衆国軍も、皆ここを通じてヴォルガ連邦領地内のフィーンド撃滅やアフリカ戦線へと赴く。それ故にここは基地とは思えぬような流通の中心地として発展し、人々で賑わっていた。
そして今日もまた一機、プリマス軍のエンブレムが施された輸送車が、広場の片隅に停められていた。

「……という訳だ。これから最低数ヶ月はこちらで暮らす事になる、君の世話役は今までと変わらんが、ここを取り仕切っているのは事実上クロイツ軍だからな
 あんまり妙な真似をして、プリマスの株を落とさないようにしてくれ」

士官服を着た中年男性が、少女に向けて何やらを話している。いや、ちょうど話終わったところのようだった。

「了解しました」

相手の少女は、プリマス軍の輸送車に乗り込む彼を、敬礼して見送る。その髪は色素が抜けたかのような銀髪で、その瞳は燃えるように赤かった。

「……」

輸送車が見えなくなると、少女はふう、と小さく息を吐いて肩を下ろす。そして二度、三度と辺りを見回した。
その胸には、プリマス陸軍所属のセイバーであることを伝える、赤と青に縁どられた黒丸に白い星のエンブレムがあった。

「自由時間…ですか」

少女は困ったように見回し、近くにあったベンチに腰掛ける。
12 :タチアナ(ターニャ)@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/28(火) 08:09:45.72 ID:aIskAqtTo
>>11

グロースクロイツ帝国でのヴォルガに対する扱いは悪いのではないだろうか、と
ここについた次の日にタチアナは思った。ふとした違和感がこの不信感に繋がったが
ウォッカを仰いでいるうちにそんな考えも忘却の彼方に飛んでいった。どこに国でも酔っぱらいに対する
扱いは似ているのだった。

「Здравствуйте!」

おそらく、異国の挨拶の言葉であろう、
元気な女性の声がラナが座ったベンチの後ろから響く。
挨拶と同時にタチアナは背もたれに体の前からもたれかかかってラナの顔を見る。
耳垂帽子をかぶったくせっ毛気味の紅毛の下にあるのは、ニコニコともニヤニヤとも
判断できる中途半端な笑みを浮かべた眼帯の女性の顔だ。

そして、彼女の吐息とかすかに判る体臭にはアルコール臭が混じっていた。
軍服を見れば、ヴォルガに所属している事が判る。
「やア、やア!これはアタシの推測だけド、君ついさっキ来たよネ?」
おそらく、士官との会話を見ていたのだろう。訛りの強い共通語で訊ねた。
「アタシも昨日来たんダ、新任同士よろしくネ!」

そう言いながら、タチアナは右手の手袋を脱ぎ握手を求める。
13 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/28(火) 09:36:39.59 ID:RpDhC9rw0
>>12

「Здравствуйте!」

突然の後ろからの声掛けに、ラナはびくりと肩を震わせた。
元来引っ込み思案な彼女はこういった状況に慣れていない。
そして後ろを振り向けば、自分が今しがた座ったベンチの背もたれに寄りかかる女性がいた。年齢はラナより上、二十歳は超えている感じだ。

「…Здравствуйте(ズドラーストヴィチエ)、ヴォルガ連邦の方ですか?」

落ち着きを取り戻した彼女は、すっと立ち上がって敬礼し、流暢なヴォルガ語で返事を返した。
彼女はプリマスの中でもかなり特別な待遇を受けている。外国語の習得も厳しく訓練されたので、この程度の挨拶は慣れたものだ。
眼帯をつけた女性は奇妙な薄ら笑いを浮かべている。立ち上がってしっかりと見てみれば、その軍服には鎌とハンマーの意匠、そして金縁の赤い星が描かれていた。

「…セイバー」

ラナは小さくつぶやき、それもそうだと自己解決する。ここは対フィーンドの中央戦闘指揮所。ここにいる年頃の女性といえば、8割型セイバーに決まっている。

「やア、やア!これはアタシの推測だけド、君ついさっキ来たよネ?」

ヴォルガ人の彼女はわかりやすいヴォルガ訛りの共通語で話し始める。

「アタシも昨日来たんダ、新任同士よろしくネ!」

「そうでしたか…私は、プリマス陸軍第2特務連隊所属、ラナ・モーゼズ少尉と申します。あなたは…?」

握手をかわそうと手を差し出してきた彼女に、ラナは敬礼を解いて彼女に近寄る。
そこで、ラナの鼻はある匂いを感じ取った。ツン、とくる独特の香り。

「…まさか、酔っ払っているんですか?こんな昼間から?」

握手を交わす直前でぴたりと止まり、ラナは呆れたような顔をした。
14 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/28(火) 19:22:29.06 ID:iEtFIt65o
>>13

タチアナにしてみれば母国語で返事を返されるとは考えていなかったようで、
目を少し丸くした後、少し驚いたかのように再び口を開く。飛び出てくるのはヴォルガの言葉
『……ウチの言葉が判るのかい?』


そう訊ねた後、歯を見せて笑ったのを見ると親近感を覚えたようだ。
握手を求めて伸ばした手は、握られる事無く寸前で止まったのを見ると
ヴォルガの女は、首を傾げた。
「イーや、ふつーだヨ。シフラシラフだから安心しテ」

質問が悪かった。真っ昼間から酒を飲んでいるのは事実であるが、
酔っ払っているかと訊ねられれば、彼女は明確に否定した。
否定した上で、停止しいたラナの右手をこちらから握りに生きながら
彼女は名乗った。

「ヴォルガ連邦陸軍所属のタチアナ・トハチェフスカヤ曹長ト申しマす!」

すらすらと言えるのは、これだけは正しく言えるように、と練習してきたからか。
「少尉とハ知らズに馴れ馴れしクしてしまイましタ」

名乗った後、すっとまっすぐ背を伸ばし奇麗な敬礼の形を取る。
敬礼をしながら、彼女は視線を落とした後上目遣いでラナを見ながら
助けを求めるような小声を出した。

「こウいウ真面目は苦手なのデ、先ほドの態度ヲ許しテ欲しイ所でス」
どうやら、彼女はいわゆる不良兵士のようだ。昼間から酒の匂いを漂わせているのを
考えれば、それもかなりの、らしい
15 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/28(火) 22:06:13.78 ID:RpDhC9rw0
「Да(ダー)」

ラナは彼女の問いに「はい」を意味するヴォルガ語で答えた。
更に続けて、ヴォルガ語で言う

『列強各国が使う言語は、ほぼマスターしています。特務に就く兵士として最低限の事です』

そう答えるその表情は、何も感じていないかのように変化がない。
そんな動きのないラナに反して、ヴォルガ人の女性は歯を見せてニカッと笑う。

「イーや、ふつーだヨ。シフラシラフだから安心しテ」

「…そう、ですか」

ラナには到底不可能な基礎テンションの違いに困惑しつつも、彼女は握られた手を振り払おうとは思わなかった。
何というか、ちょうどいいのだ。彼女のこの状態が彼女にとって最適なのだと、ラナはそう感じて一人頷いた。

タチアナと名乗ったヴォルガ人の女性は、握手を解き敬礼の姿勢をとる。

「少尉とハ知らズに馴れ馴れしクしてしまイましタ」

「いえ、大丈夫です。私のこの階級は、単なる建前なので…」

「こウいウ真面目は苦手なのデ、先ほドの態度ヲ許しテ欲しイ所でス」

「……フフ」

あまりに真面目そうな態度を取るタチアナが、どうにもぎこちない様子だったのを見て、ラナはクスリと笑った。

「先程も言いましたが、私は階級こそ少尉ですが、単なる建前上のものです。私はプリマス軍の中でかなり特殊な存在なので。
 だから、そんなに真面目になる必要はありません。私の軍にも、あなたの様な素状不良な兵士はいました」

「むしろ、そんな風にぎこちなくとも真面目な受け答えができるのなら、何も問題はないかと」
16 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/28(火) 23:18:51.06 ID:a4zTktUQo
>>15

はい、と答えたラナに対してヴォルガ語で話すかどうか
少し逡巡していたが、どうせ話すならプライベートな所が良いなと考え、
共通語をつかうことを決めた。


弱ったような表情を見せて、タチアナなりのお願いをし、それが叶えられると
タチアナはすぐに敬礼を止めて、深々と息を吐いた。少なくとも、彼女は許可がとれたと考えているようである。

「スパシーバ、やっぱリああいうノリは嫌いだネ」
一息つくかのように、首からぶら下げている水筒を手に取ると、
その蓋を開けて、無色の液体を口の中に流し込む。
中身は少なくともただの水ではない。ヴォトカだ。

口の中をそれで満たし、嚥下した後で実に気持ちよさそうな表情を一瞬浮かべた。
「しカし、ラナさん特務の仕事をしてるンだネ。すごイもんダ」
様々な言語をマスターしているという事実に感心しているらしく、
なんども頷いていた。

「というコとは、こっちデもなにカきナ臭いこトでも起キたノ?」
片目を細めながら、じっと見るように訊く。
そことなく、私にだけ教えてよ、と媚を含んだような笑みを浮かべているのは
気のせいだろうか。
17 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/29(水) 08:26:28.99 ID:fIFqJhhb0
「しカし、ラナさん特務の仕事をしてるンだネ。すごイもんダ」

ラナからの許可を得て最初の様子に戻ったタチアナは、水(だと思うが…)を嚥下し感心したように何度も頷きながらこう言った。

「特務連隊に所属のことですか?それなら…」

「こっちデもなにカきナ臭いこトでも起キたノ?」

目を細めて聞いてくる彼女に、ラナはきょとんとする。

「…いえ、そんな事では無いです。特務連隊という場に所属こそして、もちろん時としてそのような仕事をする事もありますが、私は基本的に新型機のテストパイロットを勤めています」

「今回ここに来た理由に関しても、プリマス軍の開発した新型機の実戦テストの為です。
 …なのですが、肝心のその新型機の納入が遅れているとのことで、数ヶ月はここに閉じ込めのようですね」

「もちろん、新型機の情報に関しては機密事項なので言えません。いずれ明るみに出るかとは思いますが」

つらつらと言葉を重ねるラナ。その表情は静かなままピクリとも動かない、まるで人形か何かのようだ。口元の動きも小さいが、そうとは思えないはっきりとした声である。
と、唐突にその口元を手で隠し、ラナは目を逸らした。

「…初対面の人と、こんなに話したのは初めてです」

そう言って、先程とは違ったぼそぼそとした声で話し始めた。

「私は…孤児だったので、親も、兄弟もいない、身寄りのない子でした。セイバーユニットへの高い適合性があるという理由でプリマス軍に引き取られ、軍人とともに、軍人として育てられてきました。だから…」

だから、と言葉を一度きり、ラナは再びタチアナを見つめる。

「こういう、女性同士の他愛ないお話って、ちょっと憧れていたんですよね…もっと、女の子らしいことがしたいな、って、ずっと思っていました」

会話の内容はどう考えても女性らしくも他愛のない話でもないが、彼女にとってはほぼ同年代の女性と話し合うという行為そのものが、憧れの対象だったのだ。
それだけ彼女はプリマス軍内でも特別視され、過保護とも言うべき状態にあったのである。

余談だが、今回のこの欧州派遣は、年頃の少女である彼女にこう言った女性らしい物事をさせてやろうという意味も含められていた。無論彼女は知らないが、その計画は大成功のようだった。なにせ到着してすぐに彼女は打ち解ける事ができる存在に出会えたのだから。
18 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/29(水) 22:14:52.39 ID:crf2cWaAo
>>17

「へェ、テストパイロットなンだ」

意外そうに答えるのは、おとなしそうな彼女がテストパイロットに向いていないからだ。
とはいえ、よく改めて考えてみればおとなしい方が、研究者側からすればお使いやすく
向いているかもしれない、と思う。そして。
(……そういう仕事もか)

不穏な言葉について、態度にこそ出さないが
心の奥底に刻んでいた。こういった情報を抑えるのが彼女なりの処世術であった。

「おやマ、数ヶ月とは随分長いのネ。その間は、通常パイロットとしテの
仕事でモやらさレるノか?」

ヴォルガ連邦の事情で考えれば、テストパイロットといえども
数ヶ月もセイバー適正を持つ兵士を遊ばせる事は少ない。
そういったプリマス軍の事情をタチアナは探ろうとしていた。

が、いきなり彼女が目をそらすのを見て、いきなり訊ねすぎた己に対して
舌打ちをしそうになるが、彼女の次の言葉を聞いてぎょっと目を丸くした。

そうして、黙って彼女の話が終わるのを待ち弱ったように
後頭部の髪の毛を掻く。彼女が話を終えると、タチアナはベンチの前に来て
ようやく彼女の隣に座った。

「ラナは……マだ十代かナ?物心つク頃には戦争始まっテいタし
災難だっタね」

タチアナは青春を戦場の中で暮らしてきたが、ラナは今まさにある青春時代を
軍隊という中で燃やしている。そんなラナにタチアナは同情を覚えた。
おそらくラナは今までの生涯ほとんどを軍隊に捧げたのだろう。そうタチアナは考えると、
ラナが不憫で、どうにかしてあげたい気持ちが溢れるばかりに生まれる。

「アタシは、女の子らしイ遊びハ忘れちゃっタけド、イケない遊びだったラ
少シ教えらラるヨ?」

片目を潤ませたタチアナは顔を下げたかと思うと、ラナの耳元に
口を近づけ、そっと囁いた。
19 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/29(水) 23:21:18.74 ID:fIFqJhhb0
「ラナは……マだ十代かナ?物心つク頃には戦争始まっテいタし
 災難だっタね」

「…いえ、災難とは思っていません。むしろ、孤児院にいた時よりも、密度の高い毎日を楽しんでいます」

隣り合って座ったラナとタチアナは、静かな会話を続ける。

「身寄りもなく、友もおらず、ただ孤児院の寒々しい部屋の中で小さくなっていた私を、軍の人たちはとても丁寧に扱ってくれました。
 たとえそれが、私が希有な存在だったからであったとしても、私はそれが、保護されることがとても嬉しかった」

ラナは朗々と、他人事のように話し続ける。

「最初こそ、充実していました。けれど人は慣れると、更なる刺激を求めたくなるものです。
 私は軍人としては充実した日々でしたが、女性としては味気のない日々でした。だから、憧れていたんです。こういう事に」

空を見上げていた顔を戻し、小さくふう、と息をつく

「…少し、喋りすぎましたね
 ……あれ、何か、おっしゃいましたか?」

耳元で何事か囁かれたようだが、彼女は自分の世界に浸っており聞こえていなかったようだ。
だが、タチアナが耳元に口を近づけた体勢のままでラナは振り返ったので、驚く程の至近距離でふたりは目があった。

「…泣いてるんですか?何故?」

その顕になった片目が潤んでいるのを至近距離から見て、ラナは小首をかしげ、訊ねた。
20 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/30(木) 16:09:41.49 ID:LJQG5UnXo
軍隊の中に居る方が楽しめていると答える彼女に対して、
強い娘だ、と思えども同情心は変わらぬままだ。

気がつけば、
21 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/30(木) 16:09:51.58 ID:LJQG5UnXo
/途中投稿
22 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/30(木) 16:38:41.81 ID:LJQG5UnXo
軍隊の中に居る方が楽しめていると答える彼女に対して、
強い娘だ、と思えども同情心は変わらぬままだ。

気がつけば、相手の双眸がすぐ目の前にあり
瞳が潤んでいた事に気が付き慌てて顔を離した。
もしかしたら、というより確実にラナはタチアナの吐息にアルコールが
混じっていたことに気がついただろう。

「泣いテなンかないヨ!いやだナぁ」

若干、語気を強くしながらもタチアナは否定する。
それから、手のひらを潤んだ目に押しこむようにして、こぼれかかった涙を拭こうとする。
このような女兵士を見てきたが何度見ても、いつもこんな反応だ。

「いヤ、遊ビぐらいナら教えラれルよって言っただけだヨ」

タチアナが言う遊びとは、不良兵士が興ずるような遊びだった。
別に、退廃的なものを教えようとしていたわけでは、決してなかった。
わざわざイケない、と言ったのもかなり生真面目そうなラナなら
思いつかないようなのも含まれているからなだけであった。

「しかシ、こういノに憧れテいるのカ。ラナは軍に入っテ何年目になル?」

しんみりとした気分も、ある程度吹っ切った上でタチアナは訊ねる。
23 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/30(木) 22:18:00.85 ID:/o5iBRHB0
「泣いテなンかないヨ!いやだナぁ」

「……」

目を押し込むように手で覆うタチアナ、ラナはきょとんとした顔のまま、けれどそれ以上追求しない

「いヤ、遊ビぐらいナら教えラれルよって言っただけだヨ」

最初の調子を取り戻したタチアナの声色に少し安堵しつつ、ラナは彼女の言葉の意味を咀嚼する。

「遊び…ですか、私がやったことがあるのはパズルか、チェスくらいですが」

パズルは頭脳教育の一環としてかなりやりこんだが、チェスは暇を持て余した兵士に付き合ってやった程度。
彼女の知る遊びなど、所詮その程度なのだ。不良兵士が興ずるようなトランプ遊びや石切ゲームなどは彼女はほとんど知らない。

「しかシ、こういノに憧れテいるのカ。ラナは軍に入っテ何年目になル?」

「別に遊びに憧れているわけではありませんが…いえ、何でもありません。
 そうですね…孤児院から引き取られたのは、かなり前です。7年…いえ、8年前でしょうか」

ラナはその細い顎に手を当てて答える。
彼女の外見から察するに、ほぼ間違いなく10歳かそれ以下の頃に軍へとやってきたことになる。
年頃の女性めいた行動を憧れるのも、至極当然というわけだ。
24 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/01/31(金) 02:16:14.26 ID:oRAMtuB8o
>>23

「そンなの遊ビなンていわないヨ」

タチアナが知る遊びから遠く離れたものを耳にすると
少しだけイタズラっぽい笑みを浮かべた。
パズルなんてやったことないし、チェスについても
戦友同士の対局に対して、どちらか勝てるかと賭けたぐらいだ。

「アー、憧れていルのは女の子らしイことだったナ」
ちょっと苦笑しながらタチアナは続けた。
「女の子らしイ事なンて忘れそウだけド、話していルだけでモいいンだっけネ」

最後のほうは、半ば独白するように呟くと
彼女の返答に対して、小さく頷く。
「そうカ、そうカ……アタシが大体兵士ニなっタ頃カ」

そうして、自分の顎を撫でて何か考えるような素振りを見せる。
「明日モ時間空いテいルかイ?外に連れ出しテあげるヨ」

そうして、ニコニコしながらタチアナは言った。
この様子じゃ、軍地基地以外の所にも行った事がないように思えたからだ。
25 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/01/31(金) 22:56:16.69 ID:wG8DI3LO0
「明日モ時間空いテいルかイ?外に連れ出しテあげるヨ」

そう言うタチアナは今までにない笑顔だった。
だが、そんな好意に対してラナは困惑する。

「しかし…私は…」

そんな事をしていいのだろうか、という躊躇い。
今までそんなことは一度もしなかった、しようとも思わなかった。
厳しくも保護された軍という世界に満足して、それ以外のところへ行きたくなかったのだ。
それに、規律を破れば怒られる…

「怒られるのは…いやです…」

孤児院の頃を思い出すから。と彼女は声に出さずに続けた。
それは軍にとっては都合のいい事で、より一層彼女を過保護に扱う要因ともなった。
規律に忠実で、セイバーユニットとの適合性も高い、戦う能力は訓練でどうとでもなる。理想の兵士だと軍は思っていることだろう。しかし彼女はそれでもいいと、それを願った。

「それに、私にはそう言った身辺の事柄を管理する世話役がいまして…」

「ラナちゃーん、おまたせー」

と、そこへ、ラナを呼ぶ声がした。グロースクロイツ訛りの共通語、声は大人びた女性だ。
ラナは顔を上げ、立ち上がる。

「はい、ラケル大尉。ここです」

「おお、そっちか」

わざとらしい態度でひょいひょいとやってきたのは、白衣にタレ目が特徴の淑女。
胸元にはグロースクロイツ軍である事を示す白と黒の十字マークが

「……。あ、準備できたらしいからチャーリーの4号棟に行っててちょうだいな」

「了解しました」

ラケル大尉と呼ばれた淑女は、ちらりとタチアナに目をやる。
そして少しの間をおいて、ラナを先に行かせると、彼女を振り返った。

「こんにちは、そして初めまして。私はグロースクロイツ軍技術士官、エルネスティーネ・ラケル。階級は大尉だけど、別に呼び捨てでも構わないわ、技術士官だしね。
 あなたは…タチアナ曹長よね?つい先日ここに配属されたっていう。あ、横、いいかしら?」

返答も待たずにタチアナの隣にどっかと腰掛け、懐からタバコを取り出し火をつける。

「ちょっと覗いて見てたんだけど、結構仲よさげに話してたじゃない?そこでちょっと頼みごとがあるんだけど…」

ラケルはクスリと笑みを浮かべて言う

「あの子と友達になってくれないかしら」

唐突に現れいきなり隣に座り、そして頼みごと。いきなり知らない人にこんなことを言われて首を縦に振る人などいるのだろうか
26 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/01(土) 15:04:50.72 ID:ddgTxd6jo
>>25

「……怒られルのが嫌カ」

見せていた笑顔が、波が引くように無くなっていった。
しかし、タチアナは先ほどのラナの言葉をしっかりと聞いていた。
そのうち、考えを変えられるだろうと楽観視しながらも、ここはこれ以上誘わない。
「マー、無理とハ言わないシ」

と、ここで知らない女性、それもグロースクロイツ軍所属のが
来るのを見ると、少しだけ顔をこわばらせた。兵士の間ならいざしらず
国全体で見ると、ヴォルガとグロースクロイツはそこまで仲が良いとは言えないのだ。
たまに、兵士の中にもそういうめんどくさいのが居て、タチアナはそれを警戒していたが、
彼女の態度を見ると、友好的でホッと一息ついた。

「タチアナ・トハチェフスカヤ曹長でス。あ、火をどうゾ」
フランクな態度を持つラケルに、好感を持ったようで
彼女がタバコを取り出すのを見ると、タチアナは赤星の匠が入った
頑丈そうなライターを取り出し彼女のタバコに火を灯す。

それから、頼み事を聞くとタチアナは若干ひきつらせたような笑みを見せた。
「……ンー、悪イ遊びを教えルかもしれまセんヨ?」

扱いやすい従順な兵士に、自分のような不良兵士を友達にさせていいのか、
と暗に言っていた。
「アタシとしたラ、構いませンけド」

若干、唇を尖らせる。
友達になってくれ、と頼まれる事自体になにか言葉にしがたい
モニョモニョ感でも持っているのだろうか。
27 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/02(日) 00:26:08.89 ID:S788jwTN0
「あら、気が利くわね」

タチアナから火を貰い、一服といった様子で煙を吐く。

「……ンー、悪イ遊びを教えルかもしれまセんヨ?」

「いいのよ、それで。あの子がそういう遊びを受け入れるかどうかは別だけど…」

引きつった笑みを浮かべるタチアナに、柔らかな笑みで返すラケル

「あの子は凝り固まりすぎてたの…プリマス国内だと、性悪頑固な大将中将の言いなり、普通に海外派遣をしてもそれは変わらなかった。
 今回は、私みたいな部外者が関わってる事からもわかるだろうけど、プリマス軍の管轄から少し離れてるのよ。それが何を意味するか、分かる?」

シガーを更に一吸いし、ラケルは問いかける。
そう、彼女を外に連れ出してやろうと考えているのは、何もタチアナに限った事ではないのだ。

「…プリマス軍の中にも、あの子には年頃の女の子らしい生活もして欲しい、と思ってる人は結構いるわ。特に彼女の過去を知る人間はね」

だから、とラケルはぱっと顔を輝かせる。

「どんな人でも構わない、あの子と一緒に話し合えて、遊んでくれる子が欲しかったのよ。私じゃ年齢が違いすぎるから相手にならないかなと思ってたんだけど、見に来てみれば仲良さげに話し合ってる子がいるじゃない、という訳」

「あの子も実はああいうことに憧れてる感じだし、構わないって言うなら、お願いね」

それだけ言うと、ラケルはシガーをもみ消し、立ち上がる。

「さて、私もあんまり休んでないで行かないと。ごめんなさいね慌ただしくて、まだあの子が着いたばかりだから、色々と処理しなきゃいけない事があるのよ」

そうしてラケルは、慌ただしくやってきたように、慌ただしく去っていった。タチアナはベンチにひとり残される。
28 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/03(月) 14:23:24.26 ID:4CSm6CSh0
タチアナは今までの経験上知っていた。ラナのようになにもしらなかった人が、今までの反動のためか
反抗的になってしまし、いっぱしの不良兵士の出来上がりとなる。
それがわかっている上で、タチアナはラナを誘っているのだが。

「ぷります軍っテ優しいンだナ。と、今のハ聞かなかっタ事にしテ」
セイバーといえども、軍部に対する不満を言っていた、と密告される可能性零ではない。
もとより、タチアナは札付きでただでさえ悪い意味で目をつけられているのに。

「まァ、自信はないけド、いいヨ」
ラケルが見せた笑顔を意外に思いながらも、タチアナは了解した。
ていのいいお守り役かもしれないが、それでも別にかまいはしない。
やはりああいう子は、できるだけ救わなければならない。それが、ベテランが
すべきこととタチアナは自負していた。
「ハーイ、それジャ、また近イうチに声をかけるヨ」
29 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/03(月) 14:24:24.60 ID:4CSm6CSh0
/途中送信

タチアナは今までの経験上知っていた。ラナのようになにもしらなかった人が、今までの反動のためか
反抗的になってしまし、いっぱしの不良兵士の出来上がりとなる。
それがわかっている上で、タチアナはラナを誘っているのだが。

「ぷります軍っテ優しいンだナ。と、今のハ聞かなかっタ事にしテ」
セイバーといえども、軍部に対する不満を言っていた、と密告される可能性零ではない。
もとより、タチアナは札付きでただでさえ悪い意味で目をつけられているのに。

「まァ、自信はないけド、いいヨ」
ラケルが見せた笑顔を意外に思いながらも、タチアナは了解した。
ていのいいお守り役かもしれないが、それでも別にかまいはしない。
やはりああいう子は、できるだけ救わなければならない。それが、ベテランが
すべきこととタチアナは自負していた。
「ハーイ、それジャ、また近イうチに声をかけるヨ」

あわただしく立ち去る彼女の背中に向かって、タチアナは別れの言葉をつげ
首から下げていた水筒の液体を飲むと、また別のところへ向かっていった。
30 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/08(土) 22:41:12.25 ID:GSB9YMXB0
ロンバルディア公国領地、カターニア島(イタリア、シチリア島に相当)
人類連合地中海方面軍の要衝であるここには、多くのトーチカ、砲台陣地などが敷設され、海を隔てた向かい側…アフリカ大陸からはるばるとやってくる飛行型フィーンドの迎撃や、水棲フィーンドとの戦いに備えて多くの軍艦も常駐している。

「ロンバルディア陸軍の応援要請を受けて参りました。プリマス陸軍所属、ラナ・モーゼズ少尉です」

そんなカターニア前線基地の司令の前に集合したのは、>>31のあなたと、そしてその隣に立つ白髪赤眼の少女。
ラナ・モーゼズと名乗った彼女は、規律正しそうな風貌で、敬礼をそつなくこなした。司令は黙ったまま頷き、そして>>31のあなたの方へと目を向けた。
31 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/08(土) 22:50:41.54 ID:VBYkZHVpo
>>30

「グロースクロイツ帝国空軍所属、ルーツィエ・タールハイム伍長です。
 同じく応援要請受け当基地に着任いたしました。」

ラナの隣で長身の女性が同じくカターニア基地司令に敬礼する。

温暖な地中海気候であるというのにクロイツの冬用ロングコートを着用した
彼女、ルーツィエ・タールハイムは無表情で機械的に所属、氏名、階級を述べ、
司令の次の言葉を待った。
32 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/08(土) 23:16:11.31 ID:GSB9YMXB0
「伍長に少尉殿、か…」

顎鬚をたくわえた基地司令は、厳かに話し始める。

「フン、どうもプリマスは、欧州に借りを作りたくて仕方ないらしい…」

「……」

司令の言葉に、ラナは一瞬ムッとする。
そんな表情の変化を読み取ったのか、司令は片眉を上げてさらに続けた。

「事実を言ったまでだ…各方面にも随分な手練を送り込んで、手柄を掻払っているそうじゃないか
 フィーンドを排除しきったあとに、何を要求してくるのか、今から楽しみだよ…」

司令はクフフ…と意地悪げに笑い、ルーツィエにも向き直った。

「さて、招集に感謝するよ。モーゼズ少尉、タールハイム伍長。
 知っての通りここカターニア島は地中海方面軍、特に海軍の要衝だ。
 表の軍港を見たかね…ロンバルディア・ゴール・イベリア…フランク連合が誇る主力艦隊だ。陸の戦いではセイバーユニットの独壇場だと聞くが、海上ならば、未だ圧倒的火力を誇る戦艦群は戦場の中心にいる」

司令は自慢げに話し、そして急に顔をしかめ、「しかし」と続けた。

「しかし…その巨体さに見合う対価が必要なのもしかりだ。現在、地中海の入口たるジブラルタル海峡の制海権がフィーンド側にある。グロースクロイツやその他欧州各国からの資源輸送が滞り、まともに動ける艦艇が少ない
 しかも偵察班の話では、ケリビア半島(チュニジアのシチリア島に向かって伸びる半島)でフィーンドの大規模部隊が蠢いているらしい。この状態で攻め込まれるのは厳しいのでな、是非とも君らの力を貸してもらいたいと―――」

と、その時だ。突如基地中を覆い尽くすサイレン音!
ハッ、と身構えるラナ。司令はため息をついた。

「来てそうそうすまんな…仕事だ。早急に戦闘準備を整え、迎撃にあたってくれ」

「…了解しました」

フィーンド側は、待ってはくれないようだ。ラナは短く敬礼を済ませ、司令室を後にする。
33 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/08(土) 23:35:34.17 ID:VBYkZHVpo
>>32

「了解しました。タールハイム伍長、
 これよりフィーンドの迎撃に移ります。」

ラナと同様に手早く敬礼を済ませると既に基地のセイバー整備室に
届いているであろう自身の愛機、ウェアヴォルフを迎えに走る。

輸送機で揺られる中でこの周辺の地形や気候、気流状況といったデータと共に、
すぐに『あの子』を迎えに行くために基地の見取り図も頭の中の入れておいた事が幸いして、
初めて訪れた場所だというのに、まるで慣れ親しんだ道をたどるかのように
最短経路で整備室へとたどり着くことができた。

「……ヴォルフ[、寂しかったでしょう。」

セイバーを装着しつつ、インコムの通信機能が
同調テストを終えて接続を完了する前に誰にともなくつぶやく。
彼女の愛機『ウェアヴォルフ』は人型からさほど逸脱しないシルエットが示す通り
装着するユニットが少なく、急な襲撃にも対応が容易なのだ。

「出ます。」

機体の簡易チェック終了と共に、
ルーツィエは友軍にそれだけを伝えると上空へと飛び出した。
34 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/08(土) 23:50:34.48 ID:GSB9YMXB0
「…早い」

充分急いだつもりであったのに、ラナが出る頃には既に空に彼女の隣にいたルーツィエが中空に待機していた。
戦闘準備には自信があったので少し凹む。だが、今はそんなことで沈んでいる場合ではない。

「ラナ・モーゼズ、M1943ブリュンヒルデ、出ます。」

プリマス陸戦セイバー特有の曲面を多用したセイバーを駆り、彼女を追う。

『こちらB4ブロック沿岸防衛隊、増援を求む!飛行型フィーンド、ロッヒェン型が接近中だ!こちらの高射砲だけでは間に合わない!』

オープンチャンネルの無線で若い兵士の慌てふためく声が入った。

「B4ブロック、了解しました。すぐ向かいます」

ラナは返答するとともに、チラリと空のルーツィエを見上げる。彼女も同じ無線を聞いただろう、敵は飛行型、同じ土俵で戦える彼女のほうが主力になるはずだ。

「…タールハイム伍長、聞こえますか。モーゼズです。今回の相手は飛行型、空戦であるあなたが主力となるのは明らかです。私は援護と、歩兵隊の支援を行いますので、敵の主力はそちらにお願いしてもよろしいですか?」

B4へと向かいながら、ラナは極短域のチャンネルで無線を飛ばす。ルーツィエに向けて
35 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/09(日) 00:12:28.57 ID:65+qAi8To
>>34

「了解しました、少尉。敵主力は私が。」

ラナに返事を返すや否や脚部の、および背部のスラスターモジュールを作動。
ルーツィエは青白い光の筋を微かに曳きながら、砲弾のようにB4ブロックへと移動を開始した。

(……ロッヒェン型、データ収集の相手としては適当ですね。)

同時にコアから腕のモジュールに優先接続された、
試験兵器対F力場用プラズマライフルの安全装置を外すと、
肥大した盾形部分から音叉、あるいは電極のような1対の銃身が飛び出し、
スラスターからの噴射光とどうように青白い光を帯び始める。
36 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/09(日) 00:42:38.82 ID:JdgLyIpP0
>>35

(…高エネルギー兵器?不思議な形をしてますね)

ラナはルーツィエが構えた武器を一瞬だけ見やる。しかし次の瞬間には彼女はB4ブロックへと飛び去っていってしまった。

「…空戦型の速さには憧れますね」

そう言いつつ彼女はぐっ、と姿勢を低くする。

「でも、追いつかないと…」

背部ユニットが展開し、大きな噴射口を覗かせる。
噴射口から微かに白い粉末が舞ったかと思うと

「っ!!」

ズドン!という爆音とともに、彼女の体が鞭打ちにせんばかりの勢いで前方へ吹き飛んだ。
窒素化合物を用いた瞬間的に超加速する加速装置だ。フィーンドコアとの高い適合性を持ち、防御性エフ力場で体を守れる彼女だからこそ出来る無茶苦茶な装置である。

「…っ!」

凄まじい加速によって吹き飛んだ彼女は、そのままの勢いで地上を滑走し、ルーツィエへと追従する。
すでにB4ブロックでは高射砲の曳光が舞い散っている。砲撃の合間を縫って、エイともカラスともつかぬ異形の怪物が地上に攻撃を仕掛けていた。
だが、陣地内に侵入したのはそう多くはない、ラナは海の方へと目を向ける。複数の影が、沖合からこちらへ向かってきている。

「…主力はあちらですか」

ラナは小さくつぶやき、左肩に手を伸ばした。パーツの一部が旋回し、彼女の手元へメインウエポンとなる25mmライフルを渡す。

『私は陣地内に侵入し、高射砲から漏れた敵を優先して撃破します。伍長は、後続からくる敵主力部隊の排除を』

先程と同じチャンネルで、ラナはルーツィエに伝える。
空戦型が高射砲の斉射の中で戦うのはかなり危険だ。フレンドリーファイアの可能性もある。

『陣地内の敵勢力殲滅の後、援護に回ります。それまで沖合の敵を近付けないようにお願いします』

25mmライフルを構え、ラナは通信を切る。ホロスコープにロッヒェン型の扁平な胴体が映りこんだ。
すかさずトリガーを引いた、25mm徹甲弾が、貫通性エフ力場の力を借りて撃ち出される。

「!」

着弾、ロッヒェン型の頭部の赤い単眼がギョロリと動き彼女を睨みつけたが、その光もすぐに失せた。
ロッヒェン型のコアは胴体中央にある。よく知られた弱点だ。ラナはそのまま、2発、3発と続けざまに撃ち。陣地到着までに3体のロッヒェン型を撃ち落とした。
37 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/09(日) 01:11:53.57 ID:65+qAi8To
>>36

「任務了解。B4防空は少尉にお任せし、
 小官は後詰めを叩きます。」

ルーツィエはラナの指示に訓練された猟犬を思わせる、
鋭利かつ従順な態度で答えると、スラスターの推力を維持しながら沖合へ。
横目に見えるB4ブロックでは高射砲の軌跡が空にオレンジの筋を描き、
25o弾が炸裂してフィーンドが落下していくさまが見えた。

「……エネルギー充填率、89.1%、推力に異常なし。
 コア出力、問題なし。良い傾向です。」

例のエネルギーライフルのエネルギー充填も十分。
この調子なら、敵本隊への初撃にはそれなりの一撃を叩き込めるだろう。
軽いチェックしかしていないとはいえ、スーツその他装備の状態も良好。

いつでも敵主力との交戦状態にはいる事ができる。
38 :飛行型フィーンド [sage]:2014/02/09(日) 01:20:04.40 ID:JdgLyIpP0
「!」

「!!」

沖合を飛行していたフィーンドたちは、ルーツィエの接近を認識し、速度を緩めた。
ほとんどが陣地内に侵入したのと同じロッヒェン型だが、中には腹に大きな腫瘍めいたものを抱えた種もいる。
ロッヒェン型の亜種、ボマータイプだ。腹に抱えた腫瘍はつまるところ爆弾で、落下すると強力な攻性エフ=フィールドを撒き散らし周囲を破壊する。

「!!」「!」

と、そのボマータイプが後方へといったん下がった。重い爆弾を持つ者の宿命というべきか、彼らは通常型に比べ機動力が低く、空対空の戦闘は不慣れなのだ。
その代わり、通常の銃砲が取り付いたタイプが、ルーツィエを囲むように飛来する。
39 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/09(日) 01:41:20.87 ID:65+qAi8To
>>38

接近する無数のロッヒェンタイプ。
どちらかといえば大型向けでこうした数で押すタイプのフィーンドに、
エネルギー喰いのライフルは不向き。

しかしながら、既に充填率は最大近くこの状態であれば、
着弾時の小爆発で密集した2〜3体程度のフィーンドのFフィールドをほぼ完全に無効化できる。

「――ッ。」

こちらに気づいた敵が敵がごくわずかに、互いの距離を狭めた一瞬。
その隙を見逃さず、トリガーを引くとすかさず太腿にベルトで固定した13o級に武装を持ち帰る。
着弾確認、などという事はせずとにかく弾丸をばらまきながら突っ込み打撃を与えるつもりなのだ。
40 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/09(日) 11:57:32.12 ID:JdgLyIpP0
>>39

「!」

轟!と青白い雷球が前衛部隊を貫いた。フィーンドは認識してはいたようだが、回避行動は取らなかった。
カテゴリー1程度の知能など所詮そんなものである、相性の悪い相手は避け、攻撃目標が定まれば突撃する。数に任せ押しつぶす。
それ故に、数で大きく劣る人類はユーラシア大陸から彼らを殲滅することができた。戦術という武器を用いて、数の優位を覆したのだ。
だが、ルーツィエが撃ったのは所詮単発のプラズマ。撃ち落とせたのは2体、そして1体が片翼を焼かれバランスを崩した程度。
横に広く展開したロッヒェン部隊には決定的ダメージは与えられていない


―――一方その後方、陣地内では

「おお、ワルキューレが来てくれたぞ!ありがたい!」

ワルキューレ。ポエム好きなロンバルディア人の兵士は、女性のみで構成されるセイバー達をこう呼ぶ
神話に登場する戦乙女は、まさしく彼女たちに相応しい名だと、そういうことなのだろう。

「状況は」

ラナは短く兵士…現場を取り仕切っているらしい士官の男に尋ねる。

「ギリギリだったな…あっちの大部隊まで来られてたら間違いなく全滅してた。幸い死者は無い、軽傷が何人か…あと高射砲が一機同化されかけた、もう使い物にならん」

「了解。陣地内に侵入した敵勢力排除ののち、沖合にて迎撃している空戦セイバーの支援を行います。海側を見渡せる場所は?」

「トーチカの2階部分がいいだろう、残った高射砲も支援に回そう」

「ありがとうございます」

優秀な士官だ。さすがは地中海の要衝である。
ラナは再び25mmライフルを手に取り、陣地内敵勢力の排除を進める。
41 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/09(日) 20:51:25.15 ID:65+qAi8To
>>49

ルーツィエは敵集団の被害状況をすばやく確認すると、
13mm級の弾幕を兎角、敵の密集地点に打ち込みつつ突貫。
とはいえ、いくら相手がカテゴリー1とはいえどあの数に包囲されてしまうのはまずい。

ある程度距離を詰めてから、ウェアヴォルフの優れた上昇性能を活かして
横に広く展開した敵集団を飛び越えるように、頭上を取り。

(少尉もそろそろ陣地内の掃討を終える頃合いでしょう。
 集団戦は私より、少尉の装備が向いている。となれば……。)

となれば、自身の役目は敵に出血を強いりながらも足止めを行い、
ラナ少尉の到着を待つことであろう。そう判断したルーツィエは携行していた
M24型柄付き手榴弾をさながら、爆撃のように全てフィーンド集団上からばらまいた。
42 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/09(日) 22:34:32.94 ID:JdgLyIpP0
>>41

「これで最後…のようですね」

専用12.7mm口径短機関銃を腰に戻し、ラナは25mmライフルのマガジンを取り換える。
弾切れと同時に上空から襲いかかってきたのには一瞬驚いたが、冷静に対処すれば問題ない。カテゴリー1如きに苦戦するわけにはいかないのだ。
手近なトーチカに入り、階段を駆け上る。

『タールハイム伍長、お待たせしました。これより支援を行います』

ルーツィエとの通信チャンネルに伝えると、トーチカの射撃口に25mmライフルの砲身を乗せ、スコープを覗き込む。

『…大丈夫ですか』

手榴弾による爆炎を見て、思わずラナは彼女の安否を確認する。
43 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/09(日) 22:55:46.48 ID:65+qAi8To
>>42

「こちらヴォルフW。Fフィールド強度98%以上。
 出力、弾薬残量ともに問題なし。」

既にラナから見て、敵集団の向こう側。
ちょうど挟撃の形となる場所で13o級をばら撒いていたルーツィエは、
特に声色を変えることなく、淡々とラナからの通信に応えた。

先ほどの攻撃で手榴弾は使い終えたが、
13o級の弾薬には余裕があるし、いざとなればエネルギーライフルを使えばよい。

「……このまま敵集団を殲滅しましょう。」

敵集団の裏に回ったルーツィエは、
鈍重で例え逃がしたところで補足しやすい爆撃型より、
小型でそれなりに素早い通常型を優先的に撃破すべく、火力を集中する。
44 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/09(日) 23:47:45.51 ID:EifSRCmlo
/新規絡み募集ですー

欧州前線、丘陵地。夜、戦闘後だ。味方の軍が砲撃したせいであっちこっちの
地面に大穴が開いている。戦果は出たが、被害も当然出た。
”戦死“をするならまだ良いだろう。それ以上苦しまずに済むのだから。
しかし、なんにも無いど真ん中に取り残されてしまった兵士はどうなるだろうか。

大きな負傷をしていない限り、生きて帰還する事を望むだろう。
ここにもまた一人、そんな兵士が居た。

『動け、動け、この動けっ!……………ん、よしっ、これで…………』

おそらく今夜の寝床になるだろう、わりかし広い蛸壺の中で
赤毛の女性兵士がランドセルのような箱――大型無線――を使って味方との通信をする。
通信を終えて、一息つけた女は常に携帯しているスキットルを手に取り、蓋をあけ、中に入っているはずの
命の水を口にしようとしたところで、水滴のみが舌を潤した。

『いつ最後呑んだかな』
怪訝そうな顔を浮かべながら、彼女は嘆息する。
一晩、それも一人で、フィーンドが出てきても遅くない場所で寝るのに
ウォッカな無いという事実に、絶望し、もう一度嘆息を漏らす。

救援も、早くても明日の朝の朝になる可能性が高い。
それまで、自分が生きているだろうか。
攻撃を食らってしまい稼働しなくなった戦闘スーツを見て、三度目の嘆息。
フィーンドに気が付かれたら、同化される前に自決するしかないのだろうか。
そんな事をぼんやり思いながら、タチアナは体を丸め、膝を抱えるようにし、頭をそこに乗せる。

『誰か隣にいればいいのに……』
ぼそっとつぶやき、タチアナは神経を研ぎ澄ましながら
目を閉じた。
45 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/10(月) 08:32:25.29 ID:2tMna75N0
>>43

『そうですか…了解しました』

問題ない、という彼女の言葉に、今一度気を引き締めてライフルを構える。
この時代には珍しい、高倍率光学ホロスコープによって、遠方沖合の彼女の戦闘領域までしっかり見える。

「…ボマー型がいますね」

『伍長、敵の構成は分かりますか?こちらから確認したところ、ボマー型が複数いるようですが』

ラナは再び通信にて訊く。ボマー型は動きが鈍く、高射砲でも簡単に撃墜できるだろう。
また、ロッヒェンにはロケットのようなものを装備した攻撃機型も存在する。それももしかしたらいるかもしれない


―――フィーンド側

ラナの尋ねてきた種構成(沖合敵主力)は以下の通りだ。

通常型:23/31 内8体がルーツィエの攻撃によって撃墜
ボマー型:19/19 後方を大きく迂回しつつ陣地へと向かっている

増援は今のところ無いようだ。
素早いルーツィエの機動によって通常型は翻弄されつつも、生物らしい柔軟な動きで未だ彼女を包囲しようとしている。13mm級銃砲によって少しづつ数は削られているものの、依然としてその数は多く、弾幕も厚い。
事実、彼女の体を何度か彼らの放つ肉塊じみた銃弾が掠め、装甲に着弾痕も残していた。
人間などが当たればそこから擬似的に同化侵食される侵食弾だ。もちろんセイバーには装甲エフフィールドが存在するのでちょっとやそっとでは効かない。
46 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/10(月) 20:28:14.74 ID:DtY2PdQIo
>>45

「ロッヒェンの通常型残り23体、ボマータイプを19体確認。
 通常型を優先して撃破していますが、やや数が多いかと。」

空戦型セイバーの中では優れた防御性能を誇るウェアヴォルフと言えど、
この数の敵に囲まれ十字砲火を受ければあっという間にFフィールドを破られる。
ルーツィエは決して敵に囲まれないよう、加速力を生かした急制動で防御的に
たちまわるものの、あまり時間をかけすぎると、味方の陣地にボマータイプが
到達してしまう。

(……今後の装備改修のためのデータとしては有用ですが。
 そろそろ、仕掛けていかなければなりませんね。)

ちょうど、エネルギーライフルも充填率が最大値近く回復している。
ルーツィエは一瞬の隙を見てライフルの銃身を展開、再び最大チャージのライフルで
回避運動の中で意識して一方向にまとめた通常型ロッヒェンに対し、攻撃を試みる。
47 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/10(月) 23:00:33.47 ID:2tMna75N0
>>46

「!」

再びの青白光、一方向に固められたロッヒェン型が爆発と衝撃波によって、蜘蛛の子を散らすようにバラバラと海に落ちていく。

『やりますね』

ラナはその様子をスコープ越しに見て、彼女を賞賛した。

「…さて」

そして銃身を横に動かす。ルーツィエを迂回してこちらに向かってくるボマー型を射線上に捉える。

「1時の方向に爆撃タイプのフィーンドが接近しています。距離約1500、高射砲、応戦願います」

彼女はよく通る声で兵士たちの操作する高射砲に命令を下す。士官候補生と同様の訓練を受けてきた彼女は、声の張り上げ方も慣れたものだ。

「了解、応戦準備!距離1000を切ったら射撃開始!撃ち漏らすなよ!」

彼女は一瞬スコープから視線を外し、高射砲陣地を見下ろす。
一機失ったが、残りの高射砲は健在だ。ボマー型ならば問題なく排除出来るだけの戦力はあるだろう。

『タールハイム伍長、そちらの援護に回れ…』

ラナは再びスコープを覗き込み、そして見た。暗い海中に、新たな影。

『伍長、下です!海面下!何かいます!』

その声に反応したかのように、暗い影が浮上!

「あれは…」

鯨めいた巨体に、背中に多数突出したイボ。

「カテゴリー2…ウォートホエール…!」

伏兵としてはあまりに強力な存在。フィーンドには知能はないと言ったが、それは果たして本当なのだろうか?
ウォートホエールは、まるで吠えるように口らしき器官を大きく開け、嘶いた。
その背中のイボから、次々と小さなタマゴのようなものが射出される。

『タールハイム伍長、あれは空母型フィーンドです!このままでは多勢に無勢です!一時撤退を!』

ラナが珍しく焦りを見せ、ルーツィエに撤退を促した。
ウォートホエールの背中から射出されたタマゴは空中で孵化し、細身に薄羽を生やしたフィーンドが現れる。その数、32
48 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/10(月) 23:20:24.71 ID:wbOfHW+Xo
>>44
 どれ程の時間が経過しただろう。 もう常人では正確に時間を言い当てるのは時計が無い限り難しいだろうという程度の時間が経過していた。
運よくフィーンドには発見されていないが耳を澄ませば微かに地響きが聞こえてくる。
精神的に消耗するであろう環境だが、まだ救援を期待できるほどには時間は経過していない。
戦場の日の出は追われる時に早く、待ち望む時に遠い。

 通信が入る。 この中途半端な時間に入る通信の指し示す意味は、その多くが救助の延期だろう。
救助活動という物は簡単ではない。 救助活動とは数日かかったとしても、戦場ではむしろ早い方だ。
それどころか戦場に救助隊を送るということ自体が普通ではないという価値観すら納得できよう。

『こちらアルビオン王国第九実験部隊独立陸戦回収班、コアの回収を依頼され待機していましたがただ今到着いたしました。
本部より護衛組の一部を救助に割くよう指示されました。 状況の報告をお願いします。
なお声を出せず通信に返答できない場合は通信のオンオフによるモールス信号により返答をお願いします。
一分以内に応答が無い場合こちらの判断で救助活動を行います、どうぞ』

 しかし、どうやら運よく動きのいい回収班が用意されていたようだ。 あからさまに幼い声が流れる。
49 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/10(月) 23:27:35.64 ID:DtY2PdQIo
>>47

B4からの高射砲支援が始まった。
つまりは、見立て通り陣地内のフィーンド掃討が済んだという事。
ラナ大尉も残敵を掃討すべく、こちらにやってくるはず。

「良い傾向です。これで――。」

戦局はこちらに傾きつつある。
ルーツィエはごく、客観的に状況を判断しそうつぶやきかけた。

<<伍長、下です!海面下!何かいます!>>

「――!!」

ラナのやや焦りを含んだ声色。

「ウォートホエール!?」

ラナからの通信で聞いた名前はルーツィエにとって
軍のフィーンド資料の知識しかない個体の名前。実際にその目で見るのは初めてであり、
確か小型フィーンドを射出する特性を備えたタイプだったはずだ。

ロッヒェンの群れ相手でも一人ではそれなりに骨が折れるというのに、
これ以上増えるとなればこの場に留まる事はかなりまずい。なるだけ早く、友軍――。
ラナと合流すべく、ルーツィエはスラスター推力を最大まで絞り上げたが……。

「……少尉。救援を要請します。
 ヴォルフW、遺憾ながら敵に包囲攻撃を受けています。」

自身の周りで弾ける様に羽化し、中から滑り出してくる虫のようなフィーンドの群れを、
ついにはヨーツィエは突破できず、敵中に取り残される形となった。上昇性能を活かし、
上昇しての突破を試みるが空戦型のF・フィールドがどこまで持つものだろうか。
50 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/10(月) 23:43:08.37 ID:8eeultMSo
>>48

タチアナは時計を持っていた。しかし、今彼女はその存在を忘れていた。
血液の中からアルコールが消え去ってしまい、彼女は小刻み体を震わしていた。
いつも彼女が飲んでいるのには理由がある。寝ようとしても、この10年で見たきた光景が
フラッシュバックとして蘇り、彼女の精神を蝕んでいく。酒は、彼女の安定剤なのだ。

不意に入ってきた幼い声が、タチアナを現実に一瞬引き戻した。
しかし、今の彼女の正常な判断を求めるのは酷であった。

『た、タチアナ軍曹、こ、こ、ここに!は、はやく、きき、て!』

通信機に向かって、彼女は錯乱したように母国の言葉で叫ぶ。
叫んだのち、タチアナは体を縮こませ、頭を抱えながらもう一度体を震わす。
彼女の普段の剽軽な態度からは想像できない、まるで別人のような反応である。
だが、おそらく酒が切れている彼女の今の姿がタチアナの正体なのかもしれない。

『なんで、なんでよ……もう……』
痙攣する手を、ポケットにツッコミ彼女はモノクロの写真を取り出し
それを見た後、自分を落ち着かせる為にそれを自分の胸に押し付ける。
51 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/10(月) 23:52:44.49 ID:wbOfHW+Xo
>>50
 一方その頃通信機の向こう側では。

「……反応あったけどなんて? 聞き取れないというかわからなかったんですけど」

 勉強不足がたたり他の回収班の者に通話ログを聞かせて翻訳を頼む。

「……場所! 状況報告なしに探すのはフィーンド寄ってくるかもしれないし」

 再びの通信、今度は極力声を落ち着け、相手を安心させようと精一杯言葉を選ぶ。

『こちら回収班、今のところ周囲にフィーンドは見当たりません。
落ち着いて、現状報告並びに現在位置を伝えてください。 できる範囲で結構です。
こちらはすぐにでも駆けつけられる準備が整っています、どうぞ』
52 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 00:22:40.42 ID:78wFC/xeo
>>51

もう一度、無線から連絡が入る。
その言葉を断片的に理解し、気だるそうに通信機の方へ体を這わせる。
いとしの写真を握り、深呼吸をしてタチアナはもう一度口を開いた。

「……自分でモ、判ラなイ……けド……蛸壺の中ニいル」

昼間の戦いがあった場所を口に、弱々しい声で最後に見た
周囲の光景を話す。が、この周りの光景はどこも似たり寄ったりなものだ。
それでタチアナは自分が判ることを、なんども繰り返す。

最後に、タチアナは自分が思いついたことを口にする。
「そうダ、銃ヲ撃つ。拳銃があル、その火花か音デ気づいテ」

彼女は、拳銃を携帯している。お古の合衆国渡りの回転式銃槍拳銃だ。
それを、弾がある限り天に向かって撃つ。馬鹿げた提案だが、タチアナはそれが
妙案だと思っていた。
53 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/11(火) 00:33:33.17 ID:xMhChjnco
>>52
『十分です、これより捜索を開始します』

 発砲音が響く。 どこから響くというのもわからないが意外と遠くは無くその方向を理解するものはゼロではない。
捜索が開始され回収班の軽装なセイバーユニットの発する音が移動していく。 大まかな方向しかわからないまま。

「上空へ撃てたということは瓦礫に埋もれているわけではないということです。
蛸壺といっていましたからどこかの窪みの中でしょう。 上から見ればいるかいないか簡単に判別できます」

 回収班護衛組としての経験を先任より聞かされたのだろうか、素早い判断でそれを指揮する。
少し時間を置けば、回収班のセイバーユニットの音が、聞こえてくるかもしれない。
54 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 00:43:34.62 ID:78wFC/xeo
>>53

『……やった』

通信が切れた後、ふらふらとタチアナは柔い土を踏み
蛸壺の中から頭を取り出し、ホルスターから拳銃を取り出した。
まだこれで自分の頭を撃たないで済むことに安堵しながら、天に銃を向け発砲。

『…………もう一度』

銃声。彼女は一度だけじゃなくてもう一度撃った。
さらに繰り返して、彼女は結局四発銃声を闇に響かせた。
四発分の銃声、位置を特定されるのには十分だろう。
だが、特定するのは人類だけではない……

『……まだ、なの……ねえ』

自分の指を強くかみながら、救助を待ち震えるタチアナ。
しまいには五発目の銃声を響かせようと、銃を天に向けた所で
慣れぬ音が聞き、耳をすませ、それがセイバーユニットが放つ音だと気がつき
音の方向を見つめる。
55 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/11(火) 01:06:38.54 ID:xMhChjnco
>>54
 周囲の窪みという窪みが覗き込まれる。 かなり近い距離での銃声は位置の特定を容易にした。
ふと、影が差す。 逆光で見づらいが、陸戦機としては異様なほどに小柄な軽装のセイバーユニット。
空戦格闘機なのだろうか、しかしそれよりも重要なことは。

「一名の生存を確認、救助を行います」

 その声は通信機より聞こえてきた声であった。 救助活動が始まる。
56 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 01:13:35.11 ID:78wFC/xeo
>>55

銃声は間違いなくフィーンドも呼んでいた。
現場に来ている救助隊は果たして一人だろうか?
57 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 01:13:43.28 ID:78wFC/xeo
/途中送信
58 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 01:27:19.96 ID:78wFC/xeo
>>55

銃声は迅速な救いを読んだ。だが同時にフィーンドも呼んでいた。
現場に来ている救助隊は果たして一人だろうか。蛸壺から顔を出していたタチアナが
闇夜で赤い点が蠢いた事に気がついていた。そして、それと同時にほとんど助けも来ていた。

タチアナは逡巡し、すぐに決断した。

「待っテ、君もすぐに蛸壺の中ニ隠レて。フィーンドらシき影を見つけタ」
そう助けに来た彼女に言いながら、タチアナは緊張の糸がきれないうちに行動する。
彼女は幸いにして、特別な武装を持っていた。彼女の片目を覆っている眼帯を外し
赤い点を見つけた方向を睨む。眼帯の下に隠された義眼が、赤い点を瞬時に特定した。
魔眼じみた能力があるこの眼は、鷹の目のような視力と認識力を著しく向上させる。暗視効果もあった。

そして、今まで何度も見たことあるフィーンドの姿を脳裏に焼き付けて
タチアナはもう一度片目を眼帯で焼きつくし、表情をしかめながら
落ちるように蛸壺の中に戻っていく。

その際、助けに来た人も引きづりこむようにその手首を握ろうとした。
「き、気が付かレタラ……ヤッカイ……こと……に……哨戒型、ダ」

基本的に単体で現れ、行動するフィーンドだ。それ自身の戦闘能力はかなり低いが
撃破されたり、人間を見つけると援軍を呼び、大量のフィーンドを召喚してしまうのだ。
おそらく、タチアナの銃声を聞いてソレもやってきたのだろう。
59 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/11(火) 01:34:08.56 ID:MOmLK8Fu0
>>49

「おい、カテゴリー2だと!?聞いてないぞ!」

ラナの声を聞いたのか、眼下の兵士が動揺し始める。

「沖合のワルキューレが包囲されています!」

観測手も叫ぶ。

「こんな時に…!」

ウォートホエールは現状カテゴリー2ではあるが、戦闘能力の高さからカテゴリー3に昇格すべきではとの議論がなされる上位種だ。
たった二人のセイバーのみで対処できる相手ではない、ましてや、空戦型が一人だけでは

「…私が彼女を包囲するフィーンドの包囲網に穴を開けます。高射砲1番2番は、彼女の包囲突破を確認後そちらへの制圧射撃をお願いいたします!
残りの高射砲は引き続きこちらに接近中のボマー型を!」

立ち上がり、眼下の兵士たちに命令を下す。

「あのカテゴリー2はどうするんだ!?お嬢さんの銃でやれんのか!?」

高射砲に座る砲手が耐ショック用ゴーグルを外して訊ねる。
25mmライフルを構え直そうとしたラナは、わずかに躊躇するように体を強ばらせた。

「…やれないこともありません。ですが、どうしても戦力不足です…それに、タールハイム伍長を見捨てるわけにも行かない。
 考えている余裕はありません、やれるだけのことをやりましょう」

ラナはライフルを構え、ルーツィエに向け通信回線を開く

『タールハイム伍長、私が今から包囲網に穴を開けます。その穴を突いて脱出してください。その後、高射砲による制圧射撃が行われます。
 一時沿岸まで退却、陸上からの支援が受けやすい位置にて敵を待ち構えましょう…カテゴリー2に有効打を与えられる武装はありますか?』

言いながら、彼女はライフルの引き金を引く。正確無比な射撃によって、一匹、また一匹と包囲網を上手く削っていく。

『今です、脱出を!』

8発のデュアルマグを撃ちきったところで、ルーツィエが脱出するのに十分な経路が形成された。
60 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/11(火) 01:36:01.27 ID:xMhChjnco
>>56
 無論回収班は複数名いる。 しかし回収のための装備であり、その護衛組は回収班を守らなければならない。
故に実働戦力は、現状は護衛組にも関わらず特異な性質を持つ一機のみ、それ以外は援護射撃を期待する程度の要因にしかならなかった。
そう、援護射撃は期待できる。 その程度の人数はいた。 救助時に動かないセイバーユニットを運び、同時に護衛しなければならないのだから。
つまるところ、案外数が揃っていて、当然な事に身を隠せる場所は周囲にある無数の窪みしかなく、

「えっとですね、私が隠れても、多分他の回収班の人たちが見つかっちゃって、もう手遅れなんじゃないかな〜と思うのです」

 現状はある種最悪だった。 無論回収班はこういった活動のエキスパートだ。 すぐに隠れる判断を下せよう。
しかし、とても集中して固まりね隠れるということはそれだけ見つかりやすいということでもあった。 散らばる時間など無かった。
61 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 01:49:32.97 ID:gk/snFLqo
>>60

1つの判断ミスが、全体に広がってしまった。そんな中で
タチアナは疲労でまともな思考ができていない。幸いと言うべきか、
それだけは自分でも自覚できていた。なればこそ次の言葉が出るのだろうか。

「……人命優先ダ。出来る事をしてくレ」
ここに置いて、タチアナこの幼い声を持は回収班に
自身の運命を委ねた。それと同時に機体も放棄してもいい、と伝えた。
まずは、この場をなんとかするしかない。この際、機体はどうにでもなってしまえばいいのだ。


哨戒型フィーンドとの距離はおよそ700m。闇夜のうごめく赤い点。
スライムのような半液体の体を持ち、赤い点とコアしか持っていないフィーンドだ。
62 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/11(火) 02:01:06.33 ID:xMhChjnco
>>61
「人命優先ですね、了解です。 これより貴女のセイバーユニットを放棄しコアと貴女のみを回収、戦線を離脱します」

 回収班、人命を優先、それは決して見捨てないという選択であった。
争いというのは時に何かを見捨てる選択肢が必要となる。 だが回収班は、それをしない。 そんな選択肢はない。
無論上官命令には逆らえない。 だからこそ、揚げ足を取るのだ。 救うために。

「救助対象確保! これより撤退戦を行う!」

 大声での宣言。 正に敵に気付いてくれといわんばかりの堂々とした立ち振る舞い。
人類の生き残りをかけた者として相応しくない愚かな姿。 それでも、その小さな機体を軋ませ、後ろを見据えた。

「支援攻撃可能区域まで撤退するよ! 上官命令として人命を優先しろとの通達あり! 作戦開始!」

 その行動を、少しも恥じている様子は無かった。 後ろめたい事を隠したい、忘れたいという色を瞳の奥に宿しながらも、少も恥じない立ち振る舞いだった。
63 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/11(火) 02:09:44.40 ID:gk/snFLqo
>>62

ここでタチアナが言った人命とは、回収班の人命のことだった。
機体は無視していいだろう、どうせ何年前のものだ。自分も、10年前の遺物だ。
そう思いながらも、彼女の耳にぼんやり幼いものたちの声が入っていく。

ここに来て、初めてタチアナは自分の過ちに気が付いた。なぜ戦闘行動をとっているのだろうか、と自分に問う。
すでに賽は投げられていた。ならば、タチアナも最後の気力を振り絞り蛸壺の中から這い出る。
今の彼女の体を動かしているのは、アドレナリンであった。

「……手伝ウ、位置と特徴ヲ伝えよウ」

そう言いながら、彼女は眼帯を外した。
観測の仕事だけはしてやる、とタチアナは決意していた。
夜の戦いがここで幕を開ける。哨戒型のフィーンドの次には少ないと
言えない数のフィーンドが襲来してくる。

その戦いの途中で、タチアナは意識を失っていた。
次に目覚めた時は、どうなっていたのだろうか。
64 :アイヴィー/アルビオン [sage]:2014/02/11(火) 02:21:52.56 ID:xMhChjnco
>>63
「位置と特徴……? ……あぁ! 了解です」

 まさか接触距離でしか戦えない機体であるためほぼその場で対処していたとは夢にも思わないだろう。
他の回収班の一人が近づいてくる。 そして簡易保護フィールドと陸上推進器のみの、セイバーユニットの起源のような代物を組み立てた。

「非常用の機動機です。 最低限以下の性能しか持ち合わせていませんが、生身は論外ですので」

 今ここに、非戦闘員を抱えて、非戦闘員すら役割を持つ一部隊が臨時で生まれた。
65 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/11(火) 21:14:48.65 ID:VmIKijpgo
>>59

(……Fフィールド強度48%。
 いけない、このままでは……。)

周囲から霰のように小型弾を浴びせかけてくる敵フィーンド。
回避行動をとろうにもこの状況ではそれもかなわず、防御は完全にフィールド頼みの状況で
突破力のあるエネルギーライフルもフィールド温存のために使えず、ルーツィエは13o級を
完全にここで撃ち尽くす勢いで乱射したが、このままではなぶり殺しにされるだけだった。

と、ここで包囲外円部のフィーンドが一匹、また一匹と撃墜されていく。

<<タールハイム伍長、私が今から包囲網に穴を開けます。その穴を突いて脱出してください。その後、高射砲による制圧射撃が行われます。
 一時沿岸まで退却、陸上からの支援が受けやすい位置にて敵を待ち構えましょう…カテゴリー2に有効打を与えられる武装はありますか?>>

外部からの支援。ラナの援護射撃だ。

「申し訳ありません、少尉。」

ルーツィエはそれに呼応するように、ここで火線を内側から
ラナの射撃を受けるフィーンドたちに集中。包囲の一角を突き崩すと、
指示通り沿岸部まで退却すべく、スラスター推力をこんどこそ最大まで吹かし、
フィーンドを振り切った。

「少尉、敵フィーンド、ウォートホエールに有効と考えられる武装は
 私の手持ちではエネルギーライフルのみです。そして少尉の保有する武装で、
 アレに打撃を与えられる物は25oのライフルのみだと記憶しています。
 間違いありませんか?」

安全が確保できたと見るや、
ルーツィエはラナに先ほどの質問の答えを返し。

「……例の私の武装はF力場減衰力に秀でています。
 ウォートホエールにうまくあてることあてることができれば、
 陣地からの砲撃でも奴を削ることができるかもしれません。」
66 :ウィス ◆Dl8RDFPb.U [sage]:2014/02/11(火) 22:23:17.07 ID:MOmLK8Fu0
>>65

「少尉、敵フィーンド、ウォートホエールに有効と考えられる武装は私の手持ちではエネルギーライフルのみです。
 そして少尉の保有する武装で、 アレに打撃を与えられる物は25oのライフルのみだと記憶しています。
 間違いありませんか?」

「ええ」

沿岸まで退却したルーツィエの問いに頷きで返す。
高射砲の制圧射撃によって、ウォートホエールから射出されたモスキートおよび残ったロッヒェンがこちらに来るのは少し時間がかかるだろう。

「……例の私の武装はF力場減衰力に秀でています。
 ウォートホエールにうまくあてることあてることができれば、 陣地からの砲撃でも奴を削ることができるかもしれません。」

「…好都合ですね。ここはいわば要塞、砲陣地は数多くあります。
 伍長のエネルギー兵器でFフィールドを削り、その後陸上砲台からの斉射。それでまだ生きているようなら私が25mmライフルでコアを撃ち抜きます」

ラナは言い終えると、素早く状況判断。

「…しかし、その為にはまず射出されたモスキートの排除が必要ですね。数を減らさなくてはウォートホエールに接近することもままならない」

そして顔をしかめる。戦力の絶対数が足りないのだ。
今いる飛行型を潰したところで、母艦が無事な以上すぐさま補填されるのが落ちだ。

「ウォートホエールに関しては未だ調査が不足しています。どれほどの数の飛行フィーンドを放出できるのか、まったくもって未知数です。
 ネストではない以上、数は限界があるはずなのですが…奴の弾が切れるまでやり合うわけにも行きません」

「意外とヤワいぜ奴ら!嬢ちゃんたち、そんなことが気になるんなら俺らが掃除してやらぁ!」

制圧射撃でぽとぽとと落ちていくモスキートを見て、高射砲の砲手が満面の笑みで言う。どうやら彼はだいぶ好戦的な性格のようだ。
だがそんな砲手に指揮を行う士官は首を横に振った。

「ダメだ、補給が少ないんだぞ。弾薬はできるだけ温存しておきたい、この襲撃が終わってまた次がいつ来るかわからん」

そして更に士官はラナを振り向いて言う

「陸上砲からの斉射も、出来て数回だ。ケチくさいと思うかもしれんが、何が何でもここをフィーンド共にくれてやるわけにはいかん。安全策が必要なんだ、わかってくれるか」

「………」

ラナはその細い顎に手を当て、わずかに黙考する。
そして背中に提げた12.5mm短機関銃を手に取ると、上空にいるルーツィエへと投げ渡した。

「集団戦に適性のある機関銃です。私も後方から支援いたしますので、それを用い、低空を飛行し敵の攻撃を回避しながらウォートホエールを射程圏内に捉えてください。
 敵のエフフィールドさえ減衰させてしまえばこちらのものです。
 無茶をさせてしまい申し訳ありません。ですが、これが現状考えうる最も良い作戦でしょう、やれますか?」

ラナは真剣な顔つきでルーツィエに訊ねた。
67 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/11(火) 22:23:56.07 ID:MOmLK8Fu0
>>65

「少尉、敵フィーンド、ウォートホエールに有効と考えられる武装は私の手持ちではエネルギーライフルのみです。
 そして少尉の保有する武装で、 アレに打撃を与えられる物は25oのライフルのみだと記憶しています。
 間違いありませんか?」

「ええ」

沿岸まで退却したルーツィエの問いに頷きで返す。
高射砲の制圧射撃によって、ウォートホエールから射出されたモスキートおよび残ったロッヒェンがこちらに来るのは少し時間がかかるだろう。

「……例の私の武装はF力場減衰力に秀でています。
 ウォートホエールにうまくあてることあてることができれば、 陣地からの砲撃でも奴を削ることができるかもしれません。」

「…好都合ですね。ここはいわば要塞、砲陣地は数多くあります。
 伍長のエネルギー兵器でFフィールドを削り、その後陸上砲台からの斉射。それでまだ生きているようなら私が25mmライフルでコアを撃ち抜きます」

ラナは言い終えると、素早く状況判断。

「…しかし、その為にはまず射出されたモスキートの排除が必要ですね。数を減らさなくてはウォートホエールに接近することもままならない」

そして顔をしかめる。戦力の絶対数が足りないのだ。
今いる飛行型を潰したところで、母艦が無事な以上すぐさま補填されるのが落ちだ。

「ウォートホエールに関しては未だ調査が不足しています。どれほどの数の飛行フィーンドを放出できるのか、まったくもって未知数です。
 ネストではない以上、数は限界があるはずなのですが…奴の弾が切れるまでやり合うわけにも行きません」

「意外とヤワいぜ奴ら!嬢ちゃんたち、そんなことが気になるんなら俺らが掃除してやらぁ!」

制圧射撃でぽとぽとと落ちていくモスキートを見て、高射砲の砲手が満面の笑みで言う。どうやら彼はだいぶ好戦的な性格のようだ。
だがそんな砲手に指揮を行う士官は首を横に振った。

「ダメだ、補給が少ないんだぞ。弾薬はできるだけ温存しておきたい、この襲撃が終わってまた次がいつ来るかわからん」

そして更に士官はラナを振り向いて言う

「陸上砲からの斉射も、出来て数回だ。ケチくさいと思うかもしれんが、何が何でもここをフィーンド共にくれてやるわけにはいかん。安全策が必要なんだ、わかってくれるか」

「………」

ラナはその細い顎に手を当て、わずかに黙考する。
そして背中に提げた12.5mm短機関銃を手に取ると、上空にいるルーツィエへと投げ渡した。

「集団戦に適性のある機関銃です。私も後方から支援いたしますので、それを用い、低空を飛行し敵の攻撃を回避しながらウォートホエールを射程圏内に捉えてください。
 敵のエフフィールドさえ減衰させてしまえばこちらのものです。
 無茶をさせてしまい申し訳ありません。ですが、これが現状考えうる最も良い作戦でしょう、やれますか?」

ラナは真剣な顔つきでルーツィエに訊ねた。
68 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/11(火) 23:18:50.76 ID:VmIKijpgo
>>67

(Fフィールド強度69.34……せめて80%……。
 いえ、あと5%が欲しいところですが間に合いませんでしたか。)

陣地まで帰還したルーツィエは、敵が押し寄せるまでのわずかな間に補給を済ませ、再び空に。
損耗したFフィールドの回復率をチェックしながら。眼下ではラナが、
下士官や砲手たちと、会話を交わしている。

<<これが現状考えうる最も良い作戦でしょう、やれますか?>>

「やります。」

ラナからの端的な作戦指示。
やれる、ではなくやる、と答えた。

士官の言葉通り弾丸は有限であり、ここで大量に消費してしまえば
たとえ敵を一時撃退できたとしても、さらなる攻勢をかけられた際にどうなることか。
貴重な打撃翌力を無為に消費する事だけは、避けなければならない。

故に、やる。なんとしてもやり通さなければならない。

「ウォートホエールはデータ通り、鈍重と見えます。
 あれなら多少距離が離れていても狙撃は難しくない。
 作戦成功率は十二分にあると、小官も判断いたします。」

ラナから投げ渡された12.5mmの状態をチェックしながら。

その表情に焦りの色は見えなかったが、額には玉のような汗が浮かび
肩で大きく息をしている様子が見える。ウェアヴォルフ共々、先ほどの戦闘で
心身共にかなり消耗しているようだ。
69 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/02/12(水) 20:38:51.73 ID:cN2+J2s5o
>>64

…………………………
……………
……

戦いは辛勝に終わった。タチアナがフィーンドに侵食されかける等危うい場面もあったが、
最終的にはさらにヴォルガ連邦からのセイバー達が援軍とやってきて、無事全員生きて帰ってこれた。
機体回収のおまけ付きでもある。

勝因というのも、思いの外やってきたフィーンドの数が少なく
回収班の奮闘もあり、最後まで時間を稼げたという所だろう。
とはいえ、疲労とタチアナの具合が芳しくなく、タチアナは即座に病院に送られた。

この回収班の戦いぶりは、見事に讃えられた。
機体もセイバーも見捨てる事無く最後まで戦い、そして勝った。
近いうちに、彼らが勲章を貰うという噂もある。とはいえ、それは別の機会に語られるだろう。
70 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/12(水) 22:32:13.05 ID:VpvDDM6A0
>>68

「…無理はしないでくださいね」

快い返事を返したルーツィエだが、肩で息をする彼女を見て、ラナは険しい顔をして言う。
陸上に居る彼女はほとんど被弾しておらず、消耗も少ない。
出来ることなら彼女が代わってやりたいところだが、今彼女の手元には空戦型セイバーユニットはない。

(グロースクロイツの集積場から持ってくるべきでしたね…いえ、過ぎた事を悔やんでも仕方がない)

「では、作戦を開始してください。高射砲は、手が空き次第彼女に接近するフィーンドの排除を」

ラナは25mmライフルを構え、静かに火蓋を下ろす。
上空のルーツィエに群がろうとするモスキートを、一発一発、確実に、そして素早く片付けていく。

(…ッチ)

しかし、その数は減らない。落とした矢先から、ウォートホエールの背中から飛び出してくるのだ。

(時間は掛けられませんね…タールハイム伍長、頼みますよ)
71 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/12(水) 23:19:45.07 ID:0Uqh7Tueo
>>70

「了解。」

ラナと陣地からの支援を受け、
ルーツィエは弾丸のように敵フィーンド集団へ突貫を開始した。
ウォートホエールに接近するまではできるだけ低空を飛び進路上に立ちふさがる
物だけを撃ち落とす。それ以外は味方の支援とウェアヴォルフの防御用F力場のみが
頼りだ。

一つ、二つ、三つ……。

モスキートを叩き落とし、ロッヒェンを穴あきのチーズに変えて。
友軍の射撃でバラバラに吹き飛んだフィーンドのかけらが、
F力場にはじかれて、海へと落ちていく。

「カテゴリー2を確認。これより狙撃を試みます。支援を……。」

(Fフィールド強度……9.46%……。)

ようやく、カテゴリー1の群れを突破しウォートホエールを狙える位置へと
抜け出たルーツィエだったが、ライフルのチャージに出力を取られているために
通常よりも防御用F力へと回せるエネルギーが少なく、もはやこれ以上攻撃を受ければ
撃墜は必死の状態となっていたが……。

……ルーツィエの精神はこの状況でも、一切の同様を起こさない。
ヴォルフ計画による改造は精神にもおよんでおり、コアと効率的に同調するために、
恐慌や混乱といったネガティブな感情を抑制する調整が行われているからだ。

(エネルギー充填率98%……コンデンサ状態良好、
 力場安定率問題なし、圧縮率正常……。)

澄み切った精神の中、海面から顔を出したウォートホエールめがけて照準を合わせ、
静かに引き金を引く。微かな破裂音が響き青白い雷の矢が目標めがけて降り注ぐ。
狙いは完璧。

(…………!)

しかし、ルーツィエの背後。
一体のロッヒェンが友軍の支援をすり抜け狙撃に神経を集中していた彼女に
ほとんど体当たりをするように、突撃を仕掛けていて――。
72 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/14(金) 09:05:25.00 ID:3iNIPsYF0
>>71

(ここまでは順調…いえ、被弾が多いですね…)

ラナは険しい顔をしながら25mmライフルに弾を込め続ける。

(ですが、そろそろ射程には捉えられるはず…)

「士官さん、砲撃準備、願います」

「もう完了している、いつでも行けるぞ」

「ありがとうございま…。!」

『伍長!後方に…!』

小さく笑みを浮かべて再びスコープを覗き込んだ彼女に、ルーツィエの背後から迫るフィーンドが映る。

(…まずい、狙えない!)

そのフィーンドは、彼女とルーツィエの間に割って入るように飛んでいた。このまま撃てば、フィーンドを貫通した弾が彼女にも当たってしまう。
ほんの一瞬の躊躇。それはすなわち死に繋がる。訓練は豊富でも実戦の少ない彼女には、その躊躇を振り切れる力は無かった。
引き金は、引けなかった。
73 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/15(土) 22:58:15.77 ID:zm9J9iAyo
>>72

「しまッ――。」

ルーツィエに油断はなかった。
そんな感情はすでに調整によって排除されてしまったからだ。
そして、ラナも、陣地の兵士たちも皆が最善を尽くした。
ならばなぜ、ならばなぜこうなった?

「がっ……!!」

突貫しながら放たれるフィーンドのコイルガンが、
減衰しきったフィールドに穴を穿ち、突き破る。そのうちの2、3発が
ウェアヴォルフの左脚部、腰部装甲を捉えその衝撃でルーツィエは空中で大きく
バランスを崩し……。

――ドガッ!!

開いたままの通信回線からノイズ混じりの衝突音が響いた。
ルーツィエはロッヒェンの突撃を回避できず、まともに体当たりを受けたのだ。

「…………。」

スコープをのぞき込んでいたラナには見えただろう。
美しい灰の髪を真っ赤に染め、地中海へと落下していくルーツィエの姿が……。
74 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/16(日) 13:53:00.52 ID:fHbJdI0O0
>>73

「っ――――!!」

何故、撃たなかったのか。まずその気持ちが湧き出した。
こうなる事は、わかっていたはずなのに、しかし、指は動いてくれなかった。

「ワ、ワルキューレ、撃墜!」

「何!?」

眼下の兵士たちがどよめき立つ。

「…あ」

その声にようやく気付いたように、ラナは茫然自失とし、ライフルを取り落とす。

「海面に墜落していきます!」

「駆逐艦を出せ!救助するんだ!何でもいい、増援を呼べ!」

士官が命令し、通信兵が慌ただしく通信機を回す。

「おい少尉!何をぼさっとしている!支援するんじゃなかったのか!」

「あ…え…あ…」

士官の怒号にも似た声色に、ラナは取り落としたライフルを拾い上げ、再び構える。

「…撃て、撃てませんでした…射線上、でした」

「その結果がこれか!?あいつがいないとカテゴリー2は倒せんし、救助にも向かえぞ!」

「わ、わたし…私は…」

ラナはあまりの事に口をもごもごとさせ、ろくに喋れていない。

「中尉殿!繋がりました!」

「っ……」

士官は眉間に深いしわを寄せてさらに何かを叫ぼうとしたが通信兵の言葉に遮られ、深い息を吐く。

「…ああ、分かった。モーゼズ少尉、彼女に群がるフィーンドに対処しろ」

「…了解、しました」

ラナも小さく息を吐き、再びライフルを構える。
怒号を受けることには慣れている、厳しい訓練時代に、幾らでも聞いた。だが彼女の心は深く抉られ、傷つけられていた。
それは、まだ情が浅いとは言え自分に背中をあずけてくれた仲間を裏切ってしまったことに対する、罪悪感。
そんな雑念を払うかのように、ラナはライフルで海面に群がるフィーンドを撃滅していく。
スコープの奥に映るウォートホエールが、彼女を嘲笑うかのように横切っていった。

「……!」

ぎり、と歯ぎしりをする。今ライフルには、奴のエフフィールドを剥ぐくらいの残弾は残っている。
しかしそんな事をすれば……
75 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/16(日) 14:05:39.43 ID:fHbJdI0O0
「嬢ちゃんよぉ!もっと俺らを頼って良いんだぜ!あの子だって、まだ死んだと決まったわけじゃねえ!そんなに落ち込むなよ!変なこと考えてばっかいると、狙いがぶれるぞ!」

その時、砲手がなんとか彼女を元気づけようと、声を張り上げる。
ラナは少しだけスコープから目を外し、彼を見た。自信たっぷりな陽気な笑みがそこにあった。

「…はい」

彼女は決心した。ここで決めなければ、彼女を失ってしまう。自分の中に、永遠に融けることのないわだかまりが出来てしまう。
通信機に向かって話す士官を一瞬だけ目に留め、彼女は大きく息を吸った。

「高射砲全門、海面に墜落したタールハイム伍長に群がるフィーンドの排除に専念してください!
 陸上砲台はウォートホエールに照準合わせ!私の指示で一斉砲撃してください!」

ぎょっとした顔の士官が振り向く。彼女の表情は揺るがない。

「タールハイム伍長の安否は、海軍の救出艇に任せます。
 今私にできるのは、あのカテゴリー2を排除し、一刻も早く彼女を救出できるようにする事です!
 その為に、皆さんの力を貸してください!」

言い終えて、彼女は再びライフルを構えた。

「了解だ!」「いいぞ!」「ワルキューレは失うわけにはいかないものな!」「美人さんの願いとあっちゃあ断れねえ!」

高射砲に関わる兵士たちが口々に叫ぶ。彼女はスコープを覗きながら、小さく笑った。そして、気を引き締めた。
士官はため息のような息をつき、やれやれと肩をすくめ、再び通信機に向き直った。

「…タールハイム伍長、必ず助けます」

ラナは25mmライフルのコッキングレバーに手を添えたまま、引き金を引く。迷いなく、普段通りに
ボルトアクションとは思えない連射で、ウォートホエールの頭部、そのコアを隠す口周辺を執拗に狙う。ウォートホエールが鬱陶しげに嘶いた。その口内に、赤く輝くコアが見えた。

(…まだ、まだです)

ラナは表情を変えず、撃ち続ける。射撃、コッキング、射撃、コッキング、マガジン交換、射撃…

バツン、と何かが破けるような音がかすかにした。と同時に、小さな光の粒子がウォートホエールの頭部から霧散した。

『今です!』

ラナは通信機に向かって叫ぶ。回線は陸上砲台陣地。
一瞬の間を置いて、各所に点在する20.5cm連装砲が一斉に火を噴いた。狙うは苦しげに身動ぎするウォートホエール。
海上に浮かぶルーツィエに意識があり、空を見上げていたなら、弧を描いて自らの上を通過していく巨大な砲弾をいくつも見たことだろう。

「――――!!」

飽和攻撃にも等しい数の砲弾、いくつかは外れたが、それでも多くの砲弾が、エフフィールドを失ったウォートホエールを貫いた。
脳天が潰れ、口内に隠されたコアが砲弾の重みと爆轟によって圧壊した。
76 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/16(日) 14:17:13.06 ID:fHbJdI0O0
「…やりました」

ラナはライフルを縦に持ち、静かに言った。

「ウオオーッ!」「やったぞ!」「ざまあみやがれフィーンド共!」

その声を発端に、堤防が決壊したかのように歓声が湧き上がった。

「駆逐艦、ベルサリエーレがタールハイム伍長救出に出航した。間もなくポイントに到達だ」

士官が笑いながらラナを見上げる。

「ノリのいいロンバルディア公国の兵士ばかりで良かったな。普通の軍じゃあ、よそ者の命令なんて聞いちゃくれないぞ」

「…そうですね。ですが、必ず手伝ってくれると信じていました」

ラナもこう言って、士官に笑い返した。
77 :ルーツィエ・タールハイム/クロイツ帝国空軍 [sage]:2014/02/16(日) 19:43:07.92 ID:da3K26doo
>>76

「ぅ……・うぅ……。」

ルーツィエが静かに瞼を開けた時、血液で半ば赤く染まった瞳に
飛び込んできた光景は周囲にはF・フィールドによって半球形に押しのけられた海水と、
地中海の穏やかな空に浮かぶ、無数のフィーンドだった。

何故、生きている……?
そう自問自答しかけたその時、インコムを通じて眼前に投射される
機体情報データがようやく目に入る。いや、先ほどから見えてはいたが、
ようやく理解が追いついたというほうが正しいか。

(……F力場強度、0.41%……。)

そう、ウェアヴォルフのコアから出力されたF力場は、
コイルガンを受け止める事が出来ないほど微弱となってはいたものの、
あの体当たり……そしてその後の水面への墜落の際にも完全に消滅はせず、
クッションとなって致命的な衝撃を避けていたのだ。

しかし、ここは敵中のど真ん中。遅かれ早かれ、自身は敵の牙にかかるだろう。
生憎、コアを破壊できそうな装備も自決に使えそうな装備もない。

(…………ここで、おわり……。
 みんな。ごめんなさい……仇、とれなかった……。)

荒い息をついて力なく、空を眺めるルーツィエ。
意識を手放す寸前、薄れた視界の中で、何かが飛んでいく。
爆音、と熱風。弱り切ったFフィールドがそれに反応しノイズのように揺らめく。

(みかた…・・・てき……どっち……だろう……。)

ルーツィエはそう、考えたのを最後に意識を手放す。
それから……ベルサリエーレがルーツィエを回収したのは30分後の事だった。
78 :ラナ・モーゼズ/プリマス陸軍 [sage]:2014/02/17(月) 23:39:32.91 ID:kid3FqTi0
>>77

『こちらロンバルディア公国海軍、駆逐艦ベルサリエーレ…ルーツィエ・タールハイム伍長の引き上げに成功
 …意識不明、外傷重体也。至急港へ帰投、集中医務室への運び入れを要求』

『こちら管制室、駆逐艦ベルサリエーレ、集中医務室の開放了解されたし。港にて救護班を待機させておく』

通信機のオープンチャンネルから聞こえる声を聞きながら、ラナは格納庫の隅のベンチに深く座り、天井を見つめていた。

(…無事、だったのでしょうか)

通信からは、生存の安否は流れてこない。だが、医務室を要求したということは少なくとも息はあるか、心臓が動いているということだ。
しかしそれでも意識不明の重体。彼女の中に、罪悪感が渦巻いた。

(…いえ、これは戦争なんです。いつか、誰かが死ぬ瞬間を…自分を信頼してくれた仲間が失われる瞬間をこの眼で見ることになる…
 今回の長期欧州遠征…何よりも実戦に重きを置いたこの遠征…間違いなく、見ることになるでしょう)

「…今回のような失態は、無くさなければ」

ラナは険しい顔を決意に固め、自らのセイバーユニットを見定めた。

/episode end...
79 :タチアナ(ターニャ)・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦陸軍 :2014/03/02(日) 16:22:07.80 ID:Tq4cBl7co
/パー速復活age
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