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俺の初恋が10年目に突入した - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 00:15:17.61 ID:fep7Ykz0O
その記念にこれまでの10年を書き綴ってみる
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 00:19:40.20 ID:fep7Ykz0O
片思い一年目。
小五の春。
友人の森山が恋の病に罹ったため、俺は奴の相談役になった。
同級生の早見さんに恋した森山は、
「あいつを見ていると胸が痛い・・・」
「あいつと話してると体が熱い・・・」
「あいつと同じ塾に入ろうかな・・・」
などと供述しており、心の底からどうでもいい。
話はさらに飛躍し、
「おまえも一緒に入ってくれよ〜〜」
こんなことまで言う始末。
森山とは入学ほやほやの頃からの付き合いだからその頼みを無下に断るわけにもいかなかった。
「無理だろうけどいちおう親に相談してみるよ」
まだ決まってないのにオーバーに感謝された覚えがある。
森山はどちらかというとアホ丸出しのとにかくどうしようもない奴で、どこにでもいるお調子者だった。
当時も、そして今になっても俺は思う。授業中でもうんこうんこ言ってたおまえはどこに行ってしまったんだと。

結局その塾に俺が入ることはなかった。まあわかっていたけど、森山も。
3 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 00:27:06.79 ID:lpAymYSs0
失礼な話だけど、森山が早見さんの話をするようになって俺は彼女を初めて意識して見るようになった。
目で追うと、彼女はいつも教室の隅で学級文庫の本を漁っていた。
日本人離れした鼻と小学生とは思えない大人びた表情は周囲を寄せ付けないオーラに包まれていて、それは悪く言えば声をかけづらい。
その結果、特定の友達がいないように見えた。
ひとりで淋しくないのかな、という俺の心配をよそに、恋する森山は真剣に読書をする早見さんの視界の中にずけずけと入り込んでいく。
「今日は何の本よんでんだ?」
「それ面白いのか?」
「マンガ持ってきたから一緒に読もうぜ!」
森山のアプローチはことごとく失敗してしまう。
失敗のお手本のようなそれを見てきた俺は自分で気づかないのであれば仕方ないと、森山に助言してやることにした。
「このままだとゼッタイきらわれると思う」
「えぇぇ!?」
「森山が漫画を読んでいるときに俺に話しかけられたらどう思う?」
「えっ・・・一緒に読もうって言う」
俺は開いた口がふさがらなかった。
森山には昔から『ひとりよりふたりの方がいい、ふたりよりさんにんの方がいい』という短絡的なモットーがある。
王様のブランチの買い物の達人に出ることがあれば、NGワードは絶対に『一緒に』だ。そのくらい頻繁に使う。
とにかくしつこく付きまとうと嫌われてしまうから気をつけろ、と俺は森山に忠告した。
忠告したはずなのだが、森山は相も変らぬしつこさで早見さんに付きまとうのであった。
4 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 00:43:48.33 ID:lpAymYSs0
早見さんについて延々と語られることに俺も嫌気を差しはじめていた頃。
早見さんの森山への扱いもぞんざいになってきていた。
森山に話しかけられてもうなずくだけになった。
早見さんだけではなく俺までもそうするようになると森山がヒステリーになった。
「なんで無視すんの?オレのこと嫌いになったの?」
そういうわけじゃない、と俺が否定しても森山は疑心暗鬼になっているのか、
「怒ってるぅぅぅ!!」
俺の言い方がわるかったのかもしれないが、すんなりと呑みこんでくれない。
仕方がないから、森山に冷たくしている理由を正直に話した。
早見さん関連の話をもう聞き飽きたこと、早見さんに嫌がられているのにしつこくしている森山を見ているのが友としては辛いこと。
「なんで嫌がられるんだろ」
「森山おもしろいんだから、普通にしてれば仲良くなれると思う」
「ふつうに・・フツウニ・・・」
俺よけいなこと言ったか!?と子供ながらにして思う小五の俺であった。
5 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 00:54:50.94 ID:lpAymYSs0
ある日の放課後。俺のアドバイスが裏目に出て、よくわからんアプローチをしている森山を置いて、俺はひとりで帰ることにした。
昇降口で上履きから靴に履きかえようと腰をかがめると、背中のランドセルを誰かに思い切り蹴られた。
とっさに振り向くと、赤いランドセルを背負った少女が階段を駆け上がっていく姿が目に入った。
突然の出来事に頭はすっかり混乱していたが、腹が立ったことには立ったので少女の跡を追った。
懸命に走った結果、追いついた。
追いついたというか、少女は立ち止っていた。
少女の目の前には鬼の異名を持つ体育の先生がいて、先生は追いかけてきた俺をぎろりと睨んで、間髪入れずに「おまえか!!!!」と叫んだ。
は?
二人とも先生に怒られた。
廊下を走ったことについて怒られるのは当然だと受け入れよう。
だが、女子をおびえさせるなと注意されたときは「はい!?」と、つい反応してしまいそれも踏まえて怒られた。
俺だけが怒られているとき少女がにやりと唇を傾けた。
6 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 01:01:04.56 ID:lpAymYSs0
先生から釈放されると、少女は再び逃走をこころみた。
だが阻止。
ランドセルを掴むと、少女の口からカエルの鳴き声のような音がでた。
まったく反省していないのは説教をくらっているときからわかっていたので、用心しておいてよかった。
「なんでさっき俺のこと蹴った」
問うと、また逃げようとしたのでランドセルを掴む手に力を入れる。
「逃げるな。別におこってるわけじゃない」
「・・・ほんとう?」
行動と似つかない弱々しい少女の声。うなずくと少女が力をゆるめていくのをランドセル越しに感じた。
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) [sage]:2014/08/10(日) 01:08:09.43 ID:Ee3hJcqX0
8 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 01:11:47.85 ID:lpAymYSs0
俺はとても小さくて華奢なからだの少女を勝手に低学年なのだろうと思い込んでいたが、見当違いだった。
昇降口に戻り六年生の靴箱から靴を取り出そうとする少女を見て気づいた。
「六年!?」
「そうだよ!」
憤り全開の形相で睨まれた。
中庭を通ると、少女は何も言わずにブランコに飛び乗った。
自由人だなと思いながら、少女との間にブランコをひとつ挟んで、俺もブランコに腰掛けた。
「それで、なんでさっき俺のこと蹴ったの?」
するとこの少女、繰り返される質問にうんざりしたような憎たらしい顔で答える。
「仕返し」
投げやりな言い方だった。
しかし俺には思い当たる節が何もなかった。人違いではないかと確認すると、「言い逃れするつもりか?あぁん?」というふうに睨まれた。
俺自身が仕返しの一因であることを一向に自覚しないことに、少女はしびれをきらして「こっちはなぁ、ウラ取れてんだよぉ」みたいなことを言った。
ブランコと共にからだを揺らしながら、少女が語りだす。
9 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 01:26:05.67 ID:lpAymYSs0
あたしは早見の友達の萌。早見がおまえのことで悩んでるって聞いて、早見の代わりに仕返ししてやったのさ。
と萌の言い分を簡潔に書いてみた。実際はありえないほどくどかった。
最後にキッときつく睨まれたりもしたが、俺は話されている間ぽかんと口をあけていた。
「それ俺じゃない。それやってんの森山っていう俺の友達」
突拍子もない話をやっとの思いで理解してそう言うと、今度は萌の顔が固まった。
「人違いだよ」
「えっ、で、でもぉ・・・」
「人違いだよ」
萌は頭を抱えていた。抱えたいのは俺のほうだった。
萌はどうしてそんな勘違いをしてしまったのか?
そんな疑問よりも、当時の俺には自分の疑いが晴れたことと、このエキセントリックな少女から解放されることに安堵する気持ちのほうが大きかった。
「じゃ、帰るわ」
俺がそう告げると、まだ何か言いたそうな顔をしていた萌だったが、また墓穴を掘ることをおそれたのか黙り込み、追いかけてくることはなかった。

翌日から休み時間になると萌は俺たちの教室に来るようになった。
早見さんは萌と俺が知り合ったことを知ると、恥ずかしそうに顔を本で隠し、ちいさな声で萌を叱った。
10 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 01:30:16.75 ID:lpAymYSs0
こうして、早見さんにつきまとう森山を見つけては怒り狂ったり、去りぎわに俺に舐めた発言をして逃げるものの、結局つかまり俺に叱られる・・・。
そんな萌と過ごす時間が俺たちの日常の一コマになっていった。
11 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 01:32:30.72 ID:lpAymYSs0
一時半を過ぎたのでこの続きはまたあとで書くことにします
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(田舎おでん) [sage]:2014/08/10(日) 01:58:34.00 ID:kwxiRxGro
wktk
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2014/08/10(日) 02:13:21.12 ID:swSWT8r9O
しえん
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) :2014/08/10(日) 08:14:01.63 ID:J3M5ZTrg0
期待
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) :2014/08/10(日) 10:27:19.55 ID:s86bTDbl0
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2014/08/10(日) 10:39:34.68 ID:+Ef1sZVio
つC
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県) :2014/08/10(日) 14:30:51.02 ID:+Q8P5i9l0
wktk
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県) :2014/08/10(日) 14:31:03.44 ID:+Q8P5i9l0
wktk
19 :なすーん [なすーん]:なすーん
                     __        、]l./⌒ヽ、 `ヽ、     ,r'7'"´Z__
                      `ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ   `iーr=<    ─フ
                     <   /´  r'´   `   ` \  `| ノ     ∠_
                     `ヽ、__//  /   |/| ヽ __\ \ヽ  |く   ___彡'′
                      ``ー//   |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|!  | `ヽ=='´
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                   r|__     ト、,-<"´´          /ト、
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                             |          | |
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/10(日) 21:06:43.75 ID:AjEsQOxp0
wkwk
21 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 23:19:06.70 ID:lpAymYSs0
支援やwwktkありがとう
少しずつだけど今日も書いていきます
22 :岡田 [sage]:2014/08/10(日) 23:24:54.73 ID:lpAymYSs0
一学期の終業式。
クラスで整列するとき背が高い俺はいつも最後尾だった。
校長の退屈極まりない話には耳をかたむけず、首を少しかたむけて自分の列の前方を見る。
器用にも立ちながら舟をこいでいる森山を発見した。
隣の女子にもそれを伝え、二人でくすくす笑っていると、斜め前にいる早見さんが少しだけ顔をこっちに向けた。
目が合うと、早見さんは一度ぱちりとまばたきして、目をほそめてうなずいた。
『森山くん寝てる』
『あいつ最高にアホ』
おたがいの思いはアイコンタクトだけで十分伝わった。
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2014/08/10(日) 23:26:41.76 ID:+Ef1sZVio
待ってた
紫煙
24 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/10(日) 23:33:24.10 ID:lpAymYSs0
体育館から教室への移動中、すでに心は夏休み一色の森山が学校主催のキャンプについて熱く語っていた。
表向きには森山の話を聞きながらてきとうに相槌を打っていた俺だったが、心の中では同じくらいキャンプに思いをはせていた。
一年前の夏休み、俺と森山はこのキャンプに参加している。
日中はレクリエーションをして過ごし、夕方になるとカレーを作りはじめ、夜は校内肝試し、そして夜も更けたころ先生や親の目を掻い潜り校内脱出を図った。
「早見も来るかな・・・」
一年前のキャンプに早見さんの姿はなかった。
彼女は元々インドア派だから来たがるようには到底思えないが、恋する森山の背中を押すように「誘えば?」と提案してみた。
言わずもがな俺の提案に対して森山は「それだ!」と興奮してそのままの勢いで誘い、言わずもがな早見さんから丁重に断られてしまうのであった。
25 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/10(日) 23:41:39.74 ID:lpAymYSs0
学校キャンプ当日。
森山とはおたがいの家が小学校から反対方向にあるので、普段の登下校同様、別々で学校に向かった。
学校近くの歩道橋を渡っていると、「岡田!」とうしろから俺の名前を呼ぶ声がした。
振り向くと頭のサイズに合っていない大きな麦わら帽子を被った萌がこっちに向かって走ってくる。
終業式の日から五日ほど経っていた。
萌と並んで歩きながらここまでの夏休みについて話していたら学校に着いた。
集合場所である体育館に向かう前、萌が喉が渇いた水が飲みたいとうるさいから中庭にある水飲み場まで付き合ってやった。
26 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/10(日) 23:50:25.32 ID:lpAymYSs0
中庭のブランコに腰かけて、水飲み場で美味しそうにごくごくと水を飲んでいる萌を眺めていた。
萌には蛇口に口を付けて水を飲む癖があって、俺はそれを見つけると汚いからやめろとよく注意してきたが、何度注意してもやめないので放っておくことにしていた。
注意すると逆に切れるし、放っておいてもうるさくなるのが萌というやつで、
「おーい。口付けてるよ〜。いいの〜?」
と、からかうような表情で誘ってくる。
とにかく人に構われることが大好きなやつだった。
そのときちょうど森山があらわれた。殴りたくなる顔で。
「あれ〜?もしかして〜ここってデートスポットですかあ?」
森山の程度の低い冗談に呆れながらも慣れない弄られ方に動揺する俺がいた。
あと本気でキレて森山を追い掛け回す萌もいた。
27 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/10(日) 23:58:28.66 ID:lpAymYSs0
午後。校庭でカレー作りをしているときのことだった。
昼頃から雲に覆われていた空から、その場にいた全員が予期していたとおり大量の雨が降りだした。
大人たちが作業の中止を呼びかけたり作りかけの食材などを片付けている中、一部の男子が移動先の体育館でバスケをやろうと話し合っていた。
俺も森山に誘われたが、怒られることが何よりも嫌いだからそれには乗らず、校庭に残って大人たちのサポート役に回った。
そこで出会ったのが萌の同級生である佐藤くんだ。
佐藤くんは自分より一学年上の先輩らしくリーダーの素質を持った優等生だった。
残ってみたはいいものの何から手伝えばいいかわからなかった俺に指示を出してくれたり、大人たちと意見を出し合いながら仕事をこなす佐藤くんを見ながら、「かっこいい」と思った。
28 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/11(月) 00:04:14.24 ID:YgzhM6WS0
俺の中で完全に憧れの先輩となった佐藤くんと話せたのは、もはや避難所と化した体育館で夕飯を食べているときのことだった。
班などで食べるルールではなかったので、俺はいつもと変わらず森山と食べることにした。
自分で握った形の悪いおにぎりを頬張りながらなんとなく周囲を見まわしていると、ある一点に目を留めた。
体育館の二階。バスケのゴールが取り付けられている柵のうしろに俺たちがいる一階をぼうっとして眺めている萌がいた。
小さなからだをより一層縮めるように体育座りをしている萌にはなんだか寂しそうな、悲しそうな、そんな気配が漂っているように見えた。
出会ってからずっと萌を見ていて感じることがあった。
音楽などの授業前の移動教室のとき、集会や全校生徒で行うレクリエーションで見かけたとき、萌はいつも一人ぼっちだった。
まわりが集団になるときの萌の顔をじっくり見たのも、他人を見てきりきりとした胸の痛みを感じたのも、そのときが初めてだった。
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/11(月) 00:05:26.87 ID:GKwQSsmLO
一瞬佐藤くんルートかと思ったぜ…
30 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/11(月) 00:06:40.15 ID:YgzhM6WS0
途中からトリップを付けた
零時を過ぎたので続きはまたあとで
31 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/11(月) 00:08:32.17 ID:YgzhM6WS0
>>29
残念ながらそっち系の話じゃないww
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2014/08/11(月) 17:51:03.47 ID:eHR6UiOh0
つC
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/11(月) 17:51:29.27 ID:eHR6UiOh0
さげわすれた
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/15(金) 09:22:23.95 ID:ghxRTyp7O
しえん
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(石川県) [sage]:2014/08/17(日) 19:24:56.98 ID:PbWmvg+0o
つC
36 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/22(金) 22:49:04.82 ID:HV4/wBYH0
完全に放置してごめんなさいね
帰省期間が思いのほか長引いちゃって
37 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/22(金) 23:06:07.54 ID:HV4/wBYH0
「萌」
子供のくせにどこか大人びた声で名前を呼んだのは、一人ぼっちの萌に誰よりも早く気づき、体育館の舞台袖にある階段を俺より先にのぼっていった佐藤くんだった。
「下で皆と食べようよ」
佐藤くんのやさしい声を背中で聞きながら、自分らしくない行動をとった今のダサい自分から逃げるようにこそこそと階段を降りようとしたが、
「友達も来てくれてるし」
ぎくりとして振り向くと、佐藤くんがこっちを見ながら手招きしていた。
仕方なく二人のそばに近づく。
佐藤くんの肩越しに見える萌が俺を見て驚いた顔をして、「岡田!なんで?」と聞いてきた。
俺が黙っていると、「心配して来てくれたんだよ」と佐藤くんが俺の気持ちを代弁してくれた。
38 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/22(金) 23:19:33.52 ID:HV4/wBYH0
萌の横に佐藤くんが座るのを見て、その横に俺も座った。
佐藤くんの話によると、萌は他の女子といることが苦手で基本的に一人でいることが多い。
それについて萌は否定していたが、今までに何度かその光景を見てきたので佐藤くんの話を信じることにした。
クラスのリーダー的存在である佐藤くんはそのことについて頭を悩ませているようだった。
俺にも意見を求められたが、本人のいる前でしていい話なのかどうかわからなかったので言葉を濁した。
学年が違うけど俺たちとは仲良くしてるからいいんじゃないかと思った。
ふと一階を見ると森山がこっちをにやけ顔で見ていたので顔をしかめるとオーバーリアクションで仲間のところへ逃げて行った。
それを萌に伝えようとしたが、佐藤くんが萌に話しているところだったので口を閉ざしてしまった。
二人の会話を聞いていると、あまり話しなれていないのかなんだかよそよそしくて、佐藤くんが時々困ったように俺に話を振ってきたりして、無理して話す必要なんてないのにと思った。
萌と佐藤くんが話しているのを見ていたとき、俺の中にある感情が芽生えていた。
39 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/22(金) 23:34:44.74 ID:HV4/wBYH0
夕飯をとると、今度は待ちに待った肝試しが始まった。
全体の流れを簡単に説明すると、体育館を出たあと教室があるA棟に入り、奥の渡り廊下からB棟の理科室を目指す。
グループ構成は人数の多い六年生が二人、五年生と四年生から一人ずつの計四人。
組み合わせは先生の独断で決められた。
ボードに貼り出された用紙を見て、六年の女子二人と四年の男子と同じグループだということを知った。
萌と佐藤くんは同じ班だった。森山が誰と一緒だったかについてはまったく覚えていない。
自分たちの順番を待っているあいだ女子二人から質問攻めにあった。
質問は萌のことだった。
途中から二人の表情から悪意のようなものを感じ、俺はてきとうにあしらった。
こっちの雑な受け答えが二人の逆鱗に触れてしまい、まったく楽しくない肝試しになってしまった。
体育館に戻ると仲間の前で「全然怖くなかったわ〜」と明らかに強がっている森山を見つけて、そっと近づき背後から押してやった。
漫画みたいに驚き悶える森山を見てその場にいた全員が爆笑した。
40 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/22(金) 23:52:10.76 ID:HV4/wBYH0
しばらく森山たちと馬鹿なことをして盛り上がっていると、少し離れたところでこっちを見ている萌に気づいた。
全体的に見るとぶすっとした感じだったがよく見ると目が笑っている。俺の目はごまかしきれななかった。
近くまで行って声をかける。
萌は俺に気づくと一瞬パッと表情を明るくさせたが、それを無理矢理抑えこむように俯いてしまう。
近づくときにそこから離れたところにいる女子の集団がこっちの様子をうかがっていることには気づいていた。
「早見さん今頃なにしてるかな」
「さあね。気になんの?」
首を横に振って否定すると、
「なんだ。森山病になったのかと思った」
二人でくすくす笑った。
笑って零れた涙が萌の目元を濡らしたのに気づき、指でさっと拭いてやった。
「やめ〜〜〜〜い!」
「ようやく笑った」
そう言うと、またしゅんとして落ち込む萌を見て、俺は触れてはいけないものに触れた気がした。
ここまで同級生を敵対視しているということは相当厄介な問題だと思いながら、六年生のいるあたりを見ているとそれに気づいた萌に肩を叩かれる。
「あっち見んな!」
激情を顕わにした萌に驚いた。
怒りとどこか怯える萌を横目で見ながら、俺はあることを決意した。
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/23(土) 09:48:12.23 ID:xeTVqcd4O
つC
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/25(月) 22:00:55.11 ID:8jVt9LM2O
ほうほう
43 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:18:19.56 ID:HNEanGS80
支援どもども
更新ペースなど低調なのに有難いです
44 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:24:32.34 ID:HNEanGS80
夕方に降った大雨によってキャンプの定番であるテントを張って校庭で寝ることは叶わず、体育館で寝泊まりすることになった。
テントの中で使用するはずだった寝袋に入る。男子と女子で体育館を半分ずつ使った。
俺は森山を含めた仲のいい奴らを集めた。
当時流行っていたゲームの話やその日来てなかった同級生の話などで盛り上がった。
気づくと森山の姿がなかった。トイレにでも行ったと思い数分待ったが戻ってくるようすがない。
行方不明の友人を探すという好奇心がくすぐられる目的に負けて電気が点いていない体育館の中を彷徨った。
寝袋が死体のように並んでいるのを薄気味悪く感じながら歩いていると、女子のエリアに行き当った。
「岡田だ〜。なにしてんの?」
恋愛トークに花咲かせている同級生の班に捕まった。
肴(俺)はきゃーきゃーと騒がれながらも、ある探りを入れるためタオルケットにくるまりながら話し込んだ。
親愛なる森山の為にこんなときしか聞けないからそれとなく早見さんのことを聞いてみることにした。
あくまでも目的はそれであり、女子と話したかったから女子会に潜入したわけではない。
普段多くを語らない早見さんの情報を女子はまったく持ってなかったが、女子の間では結構好意的に思われているようで安心した。
女子たちと別れ、入口付近にいた保護者の目を掻いくぐり体育館を抜け出した。
45 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:29:39.53 ID:HNEanGS80
夏の夜の付き物である虫の鳴き声がうるさくて好きじゃないのだが、キャンプの日に限って言えばその音色も自分の昂揚感をたかめてくれて悪くない。
中庭を抜けて校庭に向かうと、職員玄関のほうから大人たちの笑い声が聞こえた。
物陰からじっと様子をうかがう。
酒盛りしている大人の集団の中に平然と混じって楽しそうな森山の姿が見え、やっぱりと思った。
うしろから近づき森山の坊主頭をつかんで言う。
「ここ来るなら俺も誘えよ」
「だっていない奴の話なんかしててもつまんね〜もん」
実は一年前のキャンプでも酒盛りに俺と森山も参加していた。
森山の父親がこういう行事を仕切る会の会長だから友達の俺も特別に混ぜてもらえたりした。
俺たちの他にもそういう繋がりで参加している生徒たちも違う席にいて、そこに佐藤くんがいたたものだから俺は驚いた。
一方で、佐藤くんはそのうち俺も来ると前もって森山から聞いていたから驚きもせず、手を振りながら人懐っこい顔をしてこっちに近寄ってきた。
46 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:37:19.29 ID:HNEanGS80
森山の親父さんが俺たち用に用意してくれていた三ツ矢サイダーを片手に俺たちは語り合った。
話題は最初から恋の話になった。実のところ話し始めたのは俺だ。
「佐藤くんって萌のこと好きですよね?」
「へっ?」
「ええ〜〜〜!?それマジっすか!?」
「いや、は、かっ、へえっ!?」
動揺が隠しきれていない佐藤くんを見て、俺はいじわるい表情を浮かべながら感じていたことを伝える。
夕飯のとき熱心に萌と話している佐藤くんの姿が、早見さんと話しているときの森山の姿と重なった。
「それでぴんときたんです。はずれですか?あたりでしょう?」
森山もにやけ顔で聞いていた。ウブな佐藤くんは顔全体を真っ赤に染めてあたまを左右に振り続ける。
「佐藤さん隠しても無駄っすよ〜!こいつそういうの鋭いんで!」
「別に恥ずかしいことしてるわけじゃないんですから隠さないでください。恥ずかしいことしてるのはこいつだけです」
「俺って恥ずかしいの!?」
俺と森山による自虐ネタ(森山イジリ)を披露すると、次第に佐藤くんの表情から俺たちへの警戒心が薄らいでいくのを感じた。
47 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:42:09.82 ID:HNEanGS80
予想したとおり佐藤くんは萌に恋していた。
萌への恋心が佐藤くんの胸に芽生えたのは小学五年生のころ、森山の初恋と同じように一目惚れだったそうだ。
萌はショートカットのよく似合う丸顔で、オリラジあっちゃんの嫁(潰れたマシュマロ)に似ている。
「あ〜〜チビガキだけどよく見りゃ可愛いもんな〜」
「可愛いか?」
「可愛いだろう!あとチビガキ言うな!」
「それに比べて早見ってすげぇよな。美人でおしとやかで・・・」
萌について熱く語る二人を眺めていると、自分の胸がざわめいていくのを感じた。
こいつらはどうして一人の女子に対してそこまで本気になれるんだろう。
どちらの相手とも出会って間もない状況で相手のことを好きになったという。
しかも目の前の二人に限った話ではない。
中学年になったあたりから仲間内でその手の話題をする者が増えていた。
輪の中には照れくさそうに頬を掻きながら自分の恋心を語る人間であふれていた。
そこにぽつんとそんな彼らを見て羨ましく思う自分がいた。
48 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:45:24.69 ID:HNEanGS80
佐藤くんと親しくなったことで、俺と森山は六年生の内情に少々くわしくなった。
そこにはやはりどこかで聞いたようなありふれた問題が蔓延っていた。
一年前、男女問わず誰とでも仲良くしていた萌は、同級生の女子が思いを寄せていた男子から告白された。
その女子というのが女王蜂のような奴で、そいつの反感を買った萌はハブられた。
以降、萌は女子たちから無視されたり陰口を叩かれたりしているようだ。
直接的な被害はないにせよ、萌の気持ちを思うと胸が痛む。
ある程度の事情を知ったところで、俺からある提案をしてみた。
「学校が始まったら俺と森山で佐藤さんのクラスに行ってもいいですか?」
49 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:48:14.63 ID:HNEanGS80
暇さえあれば萌が俺たちの教室に来るようになったのは居心地が悪い教室から逃げ出すためだった。
そして、早見さんへの森山の恋が萌にとって俺たちの教室に居ていい口実になったといえる。
結局のところ萌は逃げている。
これは逃げてもいい問題かもしれない。だが、自分勝手な俺にとっては解決したい問題だった。
あのとき胸に突き刺さった痛みを消し去りたかった。
「萌は色々めんどくさい奴だけど、一応俺の友達なんで」
「俺たちの、な!」
森山の茶々が入った。
心の中で訂正し、佐藤くんの目を見据えて、意識して力強く言う。
「なんとかします。佐藤さんも協力してください」
50 :岡田 ◆FD8rzb26e9nZ [sage]:2014/08/27(水) 00:51:25.03 ID:HNEanGS80
佐藤くんを佐藤さんって呼ぶほどまでに眠いから寝る・・・
51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2014/08/27(水) 09:41:29.11 ID:2ChHgWhnO
実は佐藤は女で佐藤と結ばれる展開に違いない
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