このスレッドはパー速VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

【ここだけ】永夜世界part3【なりきり】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2014/11/01(土) 20:01:06.53 ID:M92lqves0
ここだけ】永夜世界【なりきり】
────────────────

【永夜世界とは】
ようこそ、永夜世界へ!
このスレは二ヶ月間の期間限定のスレです!三大イベント攻略、エンディングを目指してロールプレイ、なりきりをするスレです
貴方は今、《夜》という破壊と崩壊の性質を持った漆黒の龍に空を覆い尽くされ、食い荒らされた世界にいます
そこで貴方は《夜》から産み出された魔獣達と戦いつつも、《夜》の打破、もしくは魔獣となり人々を殲滅してもらいます

◇人間側は、非常に強力で、魔獣と対等又はそれ以上に渡り合う事が可能だが、使う毎に魔獣へと近づいて行く《焔装》があります
◇もしくは《焔装》の模倣品ではあるが、非常に未来性があるものの、《焔装》には劣る《月装》を用いて《夜》に立ち向かってもらいます

◆夜陣営では知能のある魔獣になり、人間を喰らい、ひたすら破壊と殲滅の限りを尽くしてもらいます
◆夜陣営では人型、獣型などの様々な容姿、高い知能指数など持ち合わせる特殊な魔獣となることができます!

他にも両陣営とも各々の特性を抱えておりますが、詳細はwikiなどをご覧ください
《人間陣営》もしくは《夜陣営》を選び、規定にしたがってキャラメイクした後、ロールプレイを楽しみましょう!

────────────────


────────────────

【お役立ちリンク等】
これはテンプレートなので詳細等は書いておりません
世界観、ルールの詳細などはwiki、その他のお役立ちリンク等は下記の通りです

・@wiki: http://www63.atwiki.jp/yeh-yah/pages/7.html
・twitter:@eiya_sekai
・したらば:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/subject.cgi/sports/42093/
・mail:eiyasekai@gmail.com
・前スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1412432337/
────────────────
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このパー速VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :エイル ◆Ipx2yTTnb6 [sage]:2014/11/01(土) 21:33:06.67 ID:vK72h9tf0
>>1おつでっす!

前989

 その重圧は異質だった。
 今まで対峙してきた魔獣よりも、何よりも。
 理性があった、知性があった、慈しみがあった。
 遥かに人で、この世界の夜の元生きる命達よりも慈悲がみえているとすら思える程に。
 だから――それが怖かった。戦慄が走った。

「――――っ!!!」

 流れ出る夜の瘴気、潜るように足を動かす。エイルの能力は遠距離。もとい視界の範囲全てだ。故に距離を詰める必要なんてなかった。
 だけれども、ここで足を止めていては、何か飲まれる気がしてしまった。
 エイルは残念なことに、幸運な事に普通だった。だから恐怖も感じる。それに対し危機とした感情以外刷り込まれない。
 それはこの戦場においては、残念な事に足枷となる。視界に彼女がいる。既に射程範囲内だ。

「あんた――なあ、<夜>っ!!」
 
 近づいたのはその為じゃない。自らの問いの解を求める為。
 それはアリシアという少女の物よりも弱く、摘めば千切れる程の声。一つ利点があるならば、それは透き通るように響く位なものだ。

「……何が、目的なんだ……?
何であんたたちは、こんな事するんだよ――」

 覚悟が足りなかった。
 魔獣と化した少女の夢を見た。儚い痕になって散っていった。
 そこに何の差があった。今の少女と自らに何の差がある?
 いくら捻ろうともわからなかった。だからエイルは、こうやって尋ねる事しかできない。敵と明確に、認識できないまま。
3 :ヒメノカグヤ──【夜龍四牙:盈龍】 :2014/11/01(土) 21:46:01.88 ID:DC31jLTeo
>>ALL

カグヤは、閉ざされた視界の中で、飽和した闇に恍惚を覚えながらも、人間という形で受肉した感触の悦に浸っていた。カグヤの想起する世界に存在するのは闇だけではなく。
音に表わせば静謐を宿した発行が、闇の中に一つ、浮かんでいた。それはもうこの世界からは見えないであろう月。カグヤは瞳を閉じながらにして、月見を楽しんでいた。
あの光をもう一度垣間見ることができたのならば――願望は常に願望の範疇を洩れる事は無い。カグヤはその事を否定するかの如く、想像の月に手を伸ばす。
……しかし、カグヤが手に取ったのは月の光ではなく。
カグヤは鼻腔の水分が凍てつくのを感じた。鼻呼吸をするたびに鼻腔の中を針のような何かで疲れる様な感覚。恐らく、温度を使役する能力者が付近にいるのだろう。
不動。けたたましい複数の跫音にたじろぐこともなく、しかし何か対応して見せることも無く。

「馬鹿らしい」

括目するミュルサドの視界に映えるのは、地獄だろう。

嘲笑を含有て吐き捨てられた言葉はシャイナに限らずに、そこにいた人間全員に突き刺さる事だろう。そして刻限、カグヤの頭頂部、更に上。振りかざされる氷の大刀は揺るぎない太刀筋のままにカグヤの頭を文字通り、割った。

かぐや姫。かち割れる寸前、カグヤの脳は細微な呟きさえ拾っていた。同時、真っ二つになった頭頂部に弾丸が抉りこんだと思えば、その弾丸が貪欲により深く、より深くとカグヤの躯体を蝕み、ついには貫通する。

霧桐が放った瓦礫など、魔獣の目前には灰燼に等しい。だが、カグヤの腹部に直撃したそれは例外だった。速度を伴った瓦礫の一撃は、重厚である筈の十二単を穿ち、カグヤの腹の皮を裂いた。
そのまま人間と同じ、肉の部分である腸の辺りを掻き毟る様に抉りこむ。表情は読めない。かち割れているのだから。

久良岐の理不尽なまでの黒霧は、一度カグヤの十二単に纏わりついたと思えば、カグヤを圧倒的な殺意をもって殴打した痕跡の様な物だけを残していく。既に受けた傷痕に一撃一撃をおしこめるその黒霧にカグヤは成す術もなく。

アリシアの問いに返答することなどできない。刹那残響する幾度となく、間隙なく続く殺意の連続に身を殺され続ける最中、話すための器官でさえ破壊されているカグヤに返答の余地は無い。
アリシアが目の当たりにする攻撃達は、アリシア自身の心持の根底を揺るがすかもしれない。話す余地があれば動け、と。周囲の視線を感じ取るだろう。

ユウトも同じだ。目の前にいる仇を今殺さずに何時[ピーーー]。その手元にある武器は何だ。今まで何を思い生きて来た。この場では躊躇えば死ぬ、運命の息が貴方にかかっている。

シャーロットは冷静だ。確かに、周囲を守り、尚且つ自分たちを立てる為にはまず足場からであることを知っている。無残に殺意を収集するカグヤを見て……それは無駄だったと嘲笑うか

エイルを掠めるのは霧桐の放ったカグヤの腹部めがけての瓦礫の一撃。そして、四方八方から押し寄せる殺意の濁流。カグヤに対する戦慄よりも、周囲の人間の圧倒的な狂気に身を震わせるだろう。


徹底的な破壊。カグヤに残るのは無残にも真っ二つにされた頭部と、隙間なく敷き詰められた殴打の痕。そして抉りこむように引き裂かれた腹部、
一瞬だった。夜は、存外呆気なかった。そうだ。呆気ないんだ。あの魔獣でさえ打ち勝てる我々人間が、夜とはいえ受肉した産まれたての魔獣に負けるはずがないんだ。貴方達が感じるのは、尊大なる自尊心と、夜に勝てるという自信。そしてそれによる矜持。
貴方達の視界にあるのは、一匹の夜を打ち破った称賛の雨霰に、勝利の証である、少しでも晴れた空。幸運なことに、今は朝の様で、久々に見た太陽が見える。暖かい。温かみはそれだけではなく、貴方の傍らには守り抜いてきた人々、それだけでなく。
柔和な表情と雰囲気で包み込んでくれる家族。友人。思い人。恩師。夜を殺せば何もかもが帰って来るのだ。よく考えてみれば当たり前だ。奪われたを取り戻したのだから、それが当たり前。


違う。絶望。死。恐怖。
歪んだ叫びだった。貴方の目の前にいる筈の大事な人々は皆――自分がカグヤに放った筈の一撃或は行おうとしていた一撃によって、殺され尽くしていく。目の前にいる筈の守り抜いてきた人々。手を伸ばしても届かない。
ある人は茫然立ちつくしたまま失われていく場所を見つめ、ある人は愛した人を自分の黒霧で嬲り[ピーーー]幻想。儚く、否、壮絶に死んでいく彼彼女を、貴方は見てしまう。

「可哀想に」

貴方達の耳に残り、残響し続けるのは、憐憫を込めた、カグヤの言葉だった
4 :テュール ◆1Nq8G.D3xA [sage]:2014/11/01(土) 21:56:39.17 ID:p4Jn+tu6o
>>3
潰れた?間違いない。死んだ?間違いない。終わった?間違いない。
何か気配を感じて振り返った。立っているのは失った人、母親、父親、妹に、自分を慕っていた後輩までが、自分の前に、立っていた。

「ただいま、日葉」

確かな息遣いを感じた。手を伸ばしてきた。口々に「ただいま」何て言って、手を伸ばしてきて。



ぜんぶきえた。



「……、は」

跪いていた。身体的左右では無く、精神的左右を以って。そのちっぽけな"人間"は、跪いていた。
そうする事しかできなかった。それ程に脆弱で、彼我の力の差は圧倒的だった。陽遥という人間には。"耐えられなかった"。
もう、無理だった。

「……何だ、それは」

強い言葉で繕おうとも。その裏側に在るのは、諦めなのかもしれない―――――――― 結局の所、この、一人の人間は。
唯々、一人の人間でしかなかった。夜が来る前は。実家に住まい、中小企業に勤めて家と会社を往復するだけの、唯の人間だった。
それでよかった、それで満足だった。刺激も求めなかったし、それで楽しかったから。どれだけ行っても、唯の人間だった。
その証拠が、今。左眼から、そして《月》に光を奪われた右眼から流れてくる、絶望の作用による溢れ出す滴だった。
僅かな支えが完全に崩れ。裏返る。

「何だよ、それ。何考えてるの?……返して、よ。返してよ」



そして、焔装機構が終わりを告げる。只々―――――――― 暗い夜へと墜ちていく。



全身から噴き出す《夜》にも酷似した瘴気、それを受け入れるかのごとく、両手を広げて、それが全身を包み込んだ。
左手の指先から形を変えていった。人間の形をしていたはずのそれが、人間の色をしていた其れが、組み替えられていった。
黒い甲殻の様な姿をして形をしていた、それはゆっくりと、然し急速に蝕んで、その身体を衣服ごと巻き込んで蝕んで、広がっていった。
顔の左半分が、外骨格に閉ざされた――――――――瞬く間に、その身体の半分が変質していた――――――― そして、留まらない。
やがて、その右半身も同様に閉ざされた。人ならざる者の材質で、少しずつ作り替えられていった。右半身は、ぼろぼろの金鍍金の様な色をしていた。
彼女はゆっくりと。"かつて同族であった彼等へと相対する"。


そしてまた一人。



「―――――――― なんでだよ」








 《夜》に落ちる
5 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E [saga]:2014/11/01(土) 22:09:20.99 ID:M92lqves0
>>3
らが放った瓦礫と同時、その場にいた焔装、月装使いたちのほとんどが攻撃を開始した
氷の刃が嫌味に綺麗なカグヤの頭をぶち割り、弾丸それをさらにえぐる
黒霧がカグヤを包んだと思えば、晴れたときには痣だらけ。
そして瓦礫が―――カグヤの腹を抉った

数秒、あっただろうか。そう思うほどに事は一瞬だった。
全身がズタズタになったカグヤは動かなくなり、雲が晴れた。光が、太陽が自分たちを照らしている。

「ははっ・・・・・・あははっ・・・・・・
倒した!私が、私がやったんだ!私が『夜』に傷をつけたんだ!!!」

つい先ほど前まで恐怖に埋もれていた少女の頭、それは今歓喜に埋まっていた。
自分が『夜』に傷をつけたこと、それによって呼び起こされた自尊心により、少女の自信は完成する。
生まれて夜が落ちるまで、ただ虐げられるだけだった自分。それがいまや英雄だ。
ほら、その証拠に私が守った人々が手を振っている。笑いかけている。

私はやっと、私の『人生』を手に入れたんだ。
殴られて、殴られて、他人を慰めるだけの人生じゃない、私が拓く私のための人生を
少女の頭に浮かぶ、これからのこと。楽しい楽しい人生のこと。
だが

―――夢から覚めるのは、いつだって突然

人々の脳天に落ちる、巨大な瓦礫。ぐちゃり、気分の悪い気持ちの悪い音が響きいっせいに倒れていく人々
潰れた人々の中、見上げる視線が一つ。
それは自分自身だった。一番大切な自分が、恨めしそうに自分を見ていた

「ああっ・・・・・・ああああああああああ!!!!」

それと同時に、少女の幻想も音を立てて潰された
ふと落ちる意識、それから目を覚ましたときには目の前にカグヤは居ず
ビルの路地裏で倒れていた
6 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E [saga]:2014/11/01(土) 22:11:52.36 ID:M92lqves0
>>5
//すみませんしたらばのほうよく読んでいませんでした・・・・・・・
//このレスはいったん取り消しでお願いします
7 :テュール【2】 ◆1Nq8G.D3xA [sage]:2014/11/01(土) 22:20:51.42 ID:p4Jn+tu6o
>>4
/書き忘れ……当方の担当は2ですので場所は路地裏でお願いします
8 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E [saga]:2014/11/01(土) 22:23:34.92 ID:M92lqves0
自らが放った瓦礫と同時、その場にいた焔装、月装使いたちのほとんどが攻撃を開始した
氷の刃が嫌味に綺麗なカグヤの頭をぶち割り、弾丸それをさらにえぐる
黒霧がカグヤを包んだと思えば、晴れたときには痣だらけ。
そして瓦礫が―――カグヤの腹を抉った

数秒、あっただろうか。そう思うほどに事は一瞬だった。
全身がズタズタになったカグヤは動かなくなり、雲が晴れた。光が、太陽が自分たちを照らしている。

「ははっ・・・・・・あははっ・・・・・・
倒した!私が、私がやったんだ!私が『夜』に傷をつけたんだ!!!」

つい先ほど前まで恐怖に埋もれていた少女の頭、それは今歓喜に埋まっていた。
自分が『夜』に傷をつけたこと、それによって呼び起こされた自尊心により、少女の自信は完成する。
生まれて夜が落ちるまで、ただ虐げられるだけだった自分。それがいまや英雄だ。
ほら、その証拠に私が守った人々が手を振っている。笑いかけている。

私はやっと、私の『人生』を手に入れたんだ。
殴られて、殴られて、他人を慰めるだけの人生じゃない、私が拓く私のための人生を
少女の頭に浮かぶ、これからのこと。楽しい楽しい人生のこと。
だが

―――夢から覚めるのは、いつだって突然

人々の脳天に落ちる、巨大な瓦礫。ぐちゃり、気分の悪い気持ちの悪い音が響きいっせいに倒れていく人々
潰れた人々の中、見上げる視線が一つ。
それは自分自身だった。一番大切な自分が、恨めしそうに自分を見ていた

「ああっ・・・・・・ああああああああああ!!!!」

それと同時に、少女の幻想も音を立てて潰された
ふと落ちる意識、それから目を覚ましたときには目の前にカグヤは居ず、場所は路地裏に変わっており
居たのは少女、だったらしき魔獣。

(墜ち・・・・・・たの?)

ほんの少しだけ、さっきカグヤに銃弾を放った少女の面影が残っている
おそらく彼女も自分と同じ衝撃を受けて、そして、墜ちたのだ

「いや、イや、いや、いやぁぁぁぁああああああああ!!」

指先から走る閃光が五本、エネルギー糸がテュールの首めがけて伸びる
見たくない、自分が最も恐れていた魔獣化、それを認めたくない。
少女は耳をふさぎ、目を閉じ、事を一瞬で終わらせようとしていた。
伸びたエネルギー糸は何もされなければ鋼鉄の硬さと万力並の力でテュールの首を切断するだろう

なにも、なければ
9 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw :2014/11/01(土) 22:28:06.46 ID:aPItED+q0
>>3
「何だこれはよ」

目の前で弟が、村にいたほぼ全員が現れていた。
何もかもが懐かしい。もう会えないと思っていた郷里の人々。

しかしそれらは。全て、ミュルサドの右手の平から出た線上の焔と化した血で頚を薙がれていた。
「ああ?何だよ判らねぇ」
各々の心臓の鼓動に合わせて吹き出る深紅の噴水。

ぼそりと呟く。意味が分からない。そしてその、惚けたような顔が。
これまでに一度も顕したことのない、それこそ今の彼の体内を巡る太陽のような以上な怒りの顔へ変わっていた。
「だからよぉ、なんで俺に二度も殺させる手間掛けてんだ糞どもがッ――」
瞬間。頚を薙いだ糸が半ばほどからぶつりと途切れ、ミュルサドの手のひらへ繋がった方はするすると戻っていく。
然しもう片方。一瞬宙に浮いたそれは瞬時に液体に戻り―爆ぜた。
残ったのは足首から下だけだ。
それ以外は奇麗さっぱり、全く何の痕跡も無いまま太陽に喰われていた。

「俺は今から――夜を晴らしに行かなきゃあならないんだッ」

その一言を言い放って、目を覚ました。四肢に力を込め、ゆっくりと立ち上がる。
目の前には盈龍ヒメノカグヤ。
右手が熱い。どくどくと流れ出る焔が、次第に固まり長剣を形作りそれを両手で握りしめ、切っ先を十二単に向けた。
足に力を込め、爆発的とも言うべき速度でそれに迫る。
狙うは頚への刺突。盈盈とした見た目に一点似つかわしくない、黒龍の入れ墨。
10 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/01(土) 22:32:44.17 ID:qslctnH60
>>3>>4
「…ッ!俺も攻撃しねぇと!」

自分が武器を構えている間にも他の能力者があの夜へと攻撃している
早く自分も攻撃しなければ、とトリガーに指をかけたところで―――

「―――え?」

ヒメノカグヤは、呆気なく死んだ
当たってもどうということはないから攻撃を避けなかったのかと思えば、魔獣よりも簡単に死んだ
頭は両断され、腹は抉られ、体には大量の殴打の痕―――どう考えても生きていない

「…ははっ、なんだ俺たち勝てるじゃん」

なんだ、夜というのも大したことはないではないか
焦っていた自分が馬鹿のようだ
これならば、勝利への道が見えてくる―――自分たちの力に自信を持った瞬間だった
自分のボウガンの一撃が、死んだはずの仲間の体を切り裂いたのは


「…え?」

嘘だ、違う、こんなことがあるはずがない、確かにこの手であいつが死んだのを確認したんだ、してしまったんだ
これは幻覚だ、きっとそうに違いない――――だから、早く消えてくれ
―――幻覚だ、そう思っても消えない
苦しみながら、助けてくれと言うようにこちらに手を伸ばしてくる

「ア、アアアアアア!!!」

嘘だ、嘘だ、と呟きながらその場から逃げ出した
路地裏へと逃げ込むと、そこには魔獣がいた
元はと言えば、全部お前らがいたからこうなったんだ
お前らがいなければ、あいつは死ななかった!―――吐きそうになるのを堪えつつ、怒りをすべて目の前の魔獣に向ける
そうでもしないと、自分を保っていられない

「死ね、死ね死ね死ね死ねェェェェ!!」

剣についたボウガンを魔獣へ乱射しながら走って近づいていく
近づければ、大剣で斬りかかるだろう
11 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/01(土) 22:37:18.22 ID:lMjncvsKo

闇。闇。闇。暗闇が全てを支配する。
差し込む光の無い真っ暗なビル街、その路地裏には正義と愛と未来とが腐敗した、
とてもこの世の物とは思えない酷い悪臭が漂っていた。―――もっとも、その匂いの正体は単純だ。

 『―――……悲、シイナ。ドウシタ?……モウ、終ワリカ。
  ソレデハ、ヴェイドハ、楽シメヌ。ヴェイドハ求メル、ヨリ強ク、逞シイ、魂ノ鼓動ヲ……。』

先ず最初に、諸君の目に入るのは―――金属の巨体だろうか。
圧倒的な質量の調合金で掘り出された、一種の彫刻のような美しい肉体。
アーティストが生み出したかのような欠点のない姿。優れた筋肉質を全て多い尽くす、銀光。

"機械"―――いや、むしろ"ロボット"か。魂を持った金属の人形。
その不思議な"金属生命体"は、目の前にいる、勇敢にも銃を握り彼を打倒しようとした一人の人間を"掴み上げて"
片手で高く持ち上げると、何の造作もなくその頭蓋骨を―――まるでビスケットか何かを砕くかのように軽く、破砕してしまった。


 『―――ケレド、モ。コノ"武器"ハ……悪ク、ナサソウダ。』


そしてその死体を放り投げると、コノ路地裏へと転移してきた三人の勇者―――否、犠牲者達へと振り返り。
死亡した兵士の持っていた銃器類、丁度其れはアサルト・ライフルにグレネード・ランチャーを組み合わせた
全時代のOICWであったのだが―――それを引っつかめば、なんと、その銃器を金属生命体は、腕の中へと"吸収"してしまった。

 
 『マズク、ナイ……ダガ欲スル。ヨリ強イ魂。寄越セ……寄越セ……』



             『  貴  様  ラ  ノ  、  "  武  器  "  モ  …  …  寄  越  セ  。  』


金属生命体は吼える。間高い、鉄と鉄とが擦れ合う、強烈な唸り声を挙げながら。
彼の名はジェノヴェイド。ジェノヴェイド・マーヴェック。金属生命体にして、焔装堕ちの魔獣。
力を欲し、ただ敵を滅するだけの―――ただの、凶悪なマシーンだ。

/3番区域、半壊ビル内部の方々お待たせしました〜!
なんか雑談でジェノバイドとか言われてますが、ジェノヴェイドです。ジェノヴェイドです。もう一回言いますがジェノヴェイドです!
よろしくおねがいしま〜す。
12 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/01(土) 22:39:17.65 ID:lMjncvsKo
/あ、すんません。直前まで路地裏の方だと勘違いしてたせいで本文に路地裏という単語が出ていますが
ビル内部の間違いです!すいません!運営のはげさんが滅茶苦茶だったので、ボクのせいじゃありません!
よろしくおねがいしま〜す
13 :シャーロット ◆PWPXgddfYg [saga]:2014/11/01(土) 22:45:37.14 ID:QGrwf1bi0
>>3

冷徹で、そして殊勝な判断。蛇腹剣は《夜》が落とす影を切り刻み、戦友に伸びる魔の手を叩き落とす。
やがて――人間が力を結集して放った総攻撃は、呆気無く宵闇の姫君を討ち果たした。

汚泥めいて旧市街に広がった黒の波は急速に引いていき、空からは一条の光が差し込む。
曙の光によって露わになったスクランブル交差点の中心。シャーロットは、自分の方へと手を振る影を見つけた。

「……お父様、お母様……モリィにアシュリン……ああっ、みんな……!!」

 余所者の身でわたしを育てるために《月装》を使って勇猛に戦い、そして散っていったはずの両親。
 小さな頃、一緒に妖精の絵本を読んだり、同じ食卓を囲んだりした親友たち。
 《夜》によって奪わて、もう記憶の中にしかいない彼らが――確かに、そこにいた。
 しかも旧知の人々だけではない。フリージアが、そしてビーチェが。多くの自警団の戦士が。
 目の前で失われた生命が、欠けることなく勢揃いしていたのだ。

ああ、もう細かなことなどどうでもいい。きっといじわるな神様もようやく機嫌を直してくれたのだろう。
《月装》を鞘に納め駆け出す。《夜》が訪れるその前のように、無邪気な足取りで。
優しい家族が、ダブリンの仲間が、すべての人々が、腕を広げて迎えてくれる場所へ!


…………?


  『よくも』
                  『生きたかったのに』
           『なんで』

 『お前のために』     
                『どうして』  

      『どうして、私たちだけが――』


――――、ひ、……い、……な、い。

――――――、なさい……ごめん、なさい……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

>>4

数分か、数時間か。いかほどの時間がそれから経ったのかは分からない。
一つ確かなのは、夢幻より覚めたシャーロットを待っていたのが、また悪夢だったということだ。

「……う、あっ、……その、声は……!」

研究所解放戦の後処理において、共に同じ部屋を探索した女性――ヒヨウ。
シャーロットを本能的に目覚めさせた魔獣の声は、紛れも無く彼女のもの。

「わたし、言ったわよね。足を縛りつけてでも……引き戻してやる、って……」

力なく、絞り出すように問い掛けながら《月装》を抜く。その刀身には、見るも無残な罅が走っていた。
この少女の長所は、すなわち想いを受け継ぐこと。そして忘れないこと。
だがヒメノカグヤの邪念による侵食を受けたいま――あらゆる『重荷』を引き受けるその精神は、余りにも脆弱。
到底、≪クロウ・クルワッハ≫のちからを満足に振るえる状態ではなかった。
14 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/01(土) 22:53:29.28 ID:yTcbhOtSO
>>3 >>11


「な、んだっ!?……」

氷の大刀が、自分の大切な人であった『母親』を殺めた。
シャイナの身体が止まる。『母親』を手に掛けた?嘘だ、信じない。
…だがそれは、目の前でそれは起こっていた。

「ママ…ママッ!!!!?ああああああああっ!!」

唯一、自分を真に愛してくれた存在を、消してしまった。受け入れられない。耐えられない。――意識が落ちた。

「あ、ああああああああっ!!!」

目を覚ませばビル内部、シャイナはその場に蹲る。『ママ』を殺してしまった、もう嫌だ。何も聞きたくない。何も見たくない。目を閉じて、耳を塞ぐ。――全て凍らせてしまおう。

「全部凍ってしまええええっ!!!」

シャイナの身体は『絶対零度』を下回り、『負の温度』に達した。氷が足元から染み出る。途方もない冷気が周囲を支配する
この氷に触れたものは―――全てが凍てつく。



15 :アリシア・P・シノット【3】 ◆w46sJzDLAPZx [sage saga]:2014/11/01(土) 22:53:55.49 ID:a9QF07w20
>>3
「それ以上の沈黙には威嚇射撃で応じ……ッ!」

 沈黙を守る少女に、アリシアはそう言いかけて――そして周囲から放たれる凄惨な全力攻撃に、一瞬だけ息を呑む。
 反射的に、アリシアはトリガーを引いた。光弾が放たれた。もはや肉塊と化した少女の身体を、それは抉った。
 はっ、と息を呑む。その理由は、対話の機会を失ったことに気付いたからだけではない。確かなぬくもりを、彼女は感じていた。
 彼女は振り向いた。あたたかい朝の日差しが、窶れた身体を照らした。アリシア自身が取り戻そうとしていたものが、そこにはあった。
 
「……父さん、母さん……ッ――」

 薄い唇から零れたのは、全てを懐かしむような呟き。
 彼女は銃を降ろした。ゆっくりと歩み寄っていった。自らを技術者として育てた父、何時でも自らを支えてくれた母、共に育った妹。変わり者の自分にいつも笑顔で付き合ってくれた幼馴染。
 初めて文庫本を買った時に会計を行った店員。アリシアを何年も担当した数学の家庭教師。フィールドワークの基礎を教えてくれた白髭の老人。そばにいてくれた、全ての人たち。
 ふらふらと歩み寄る彼女の足取りは、まるで生まれたての赤子のようだった。見開いた目からは、だらだらと涙が零れた。
 彼女は銃を取り落とした。そして開いた右腕を、伸ばそうと。

「え?」

 そして、父の顔が爆ぜた。母の胸が射抜かれた。妹は脚を灼かれ、そして腕を吹き飛ばされて動かなくなった。
 幼馴染は彼女を睨みながら、腸を抉られて血を噴いた。光弾に撃ち抜かれた店員の頭は、下顎のみを残して消えた。
 教師からの叫び声が聞こえる。老人の罵声が聞こえる。あらゆる人々の怨嗟の声が聞こえる。彼女は両膝をついて、小さく声を漏らす。

「――あ、あ、あっ……あっ……」

 自らを罵倒しながら倒れていく人々に、彼女は追い縋ろうとした。何回も痩せ細った蒼白い手が伸びて、そして同じ回数だけ空を掻いた。
 やがて、動くものはいなくなった。地面に落とした自身の両掌に流れてくるのは、誰のものともわからぬ血であった。脳漿と脳髄と骨、そして肉の焦げる臭いが、朝日の中に立ち込めた。
 この人殺しが。死んでしまえ。何故お前が。――いつまでも響く言葉を掻き消せぬまま、彼女は凄惨な血の海に倒れこみ、意識を失った。



「……あ"ぁ"?」

 しかし、最後に彼女は、誰のものでもない憐憫を耳にした――「可哀想に」。それは彼女の脳内に残ったあらゆる阿鼻叫喚と殺意の絶叫を掻き消した。彼女はほとんど無意識の内に立ち上がった。
 銀色のグリップが、再び握られる。左ポケットを乱雑に掻き回し、取り出すのは一つの小瓶。彼女はそれを、地面に叩き付ける。

「……残念だが貴様は私を激怒させた。非常に残念だ残念だ、貴様から訊くべきことなどもはや何一つとてない。
 今の私には貴様を殺すことしか考えちゃいないんだから……今の私の全力を以って、貴様を叩き潰す……ッ!!
 よくも死者を冒涜したな、よくも私の思い出を踏み躙ったな……本気でキレるのは実に数年ぶりだ、あの世送りで済むと思うなよ……!!」

 喉の奥から絞り出すような声。激怒の溶岩を腸から溢れさせるような言葉。アリシアは少女を睨んだ――双眸の淵から、一筋の涙が落ちて。
 小瓶の破片の中、更に小さな骨片を彼女は手に取る。それは彼女の掌の上で光り、スナイパーライフルの光学照準器へとその姿を変える。
 彼女は躊躇せず、それを自らの《月装》に取り付けた。彼女の周囲の空間が、歪んでいく――
 
16 :【崩月真夢】《人間》【有創無奏】 ◆C0h0UWNn2I [saga]:2014/11/01(土) 23:02:43.04 ID:pdtheW7NO
>>3>>4
放つ。ただ、放つ。右腕を振るって、ただ闇色の衝撃波を放つ。
消し飛べ。消散しろ。霧散せよ。周囲を侵食する《夜》ごと――――いなくなれ。
お伽話の登場人物が現実の世界に出てくるんじゃない。お前がかぐや姫だと言うのなら、物語の通り月に帰れ。

相対するは、魔獣というより、《夜》そのもの。これが本丸。
衝撃波は真っ直ぐに飛んで行く。嗚呼、勝った。完膚なきまでに叩き潰した。なんて呆気無いものだろう。
確信。絶対。真実。真理。思い知ったか、人間の、奪われた者の力を。

「―――――――――は?」

いや、違う。これは――――――家族と、友人だったもの達。目の前に、ずらりと並んでいる。自分を迎えてくれる人たちが。
皆、笑っている。此方に手を振って。
黒の波動は止まらない。やめろ、止まれ。避けろ。

――――――――消えた。

「あ………………」

茫然自失。跡形もなく消し去った大切な人たち。それを行ったのは、殺したのは、自分。

「――――――――あ、嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼あああああああああああああアアアアッ!!」

絶叫。大切な者達を再び殺してしまった自分を嘲笑うかのように耳に張り付くカグヤの嗤い声。
遠くなっていく、意識――――――――――



―――――目を覚ましたのは、路地裏だった。
目の前に魔獣がいる。嗚呼、殺さなきゃ――――――

「死ね――――――――――――!!!」

乱雑に右腕を振るう。闇色の衝撃波が目の前の魔獣に飛来する。
喰らえば、後方に遠く吹き飛ばされる。
17 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/01(土) 23:04:42.82 ID:ghxGgNZ6o
>>3

目の前の姫は綺麗だった。 記憶の中で美化され続けた彼女よりも、ひょっとすると美しかったかもしれない。
この世の美しさも、この世の馬鹿らしさも共感の行くもの。繊細な声もまた心地良い。

女に会えば何時も亡き彼女と比較し、無意識の内に重ねてきた。今晩のそれはいつにも増して感傷的だったから
想いを振り切るために放った攻撃には、その想いに比肩する覚悟があり――。

「――

       ――      

             ――」

求め続けてきた相手が朽ちる。白皙の肌も鮮やかな着物も損なわれることは無く、ただその身体に満ちる命だけが削り取られる。
腕はだらりと、骨が折れたように力なく落ちる。黒く丸い瞳から光が消え、唇は呆けたようにうっすらと開いたまま戻らない。
倒れ、崩れ、見た目には何の傷も無いままに中身だけが壊れていく。

「あ……ぁ……ぃ」

その名を呼ぼうと吸い込んだ息は、喉を枯らしていくばかり。声の出し方さえ分からない。
ずっと恐れていた。相手がそうと分からないまま“あの子”を殺してしまうこと。何度もそんな悪夢を見た。
そしてそのいずれの悪夢よりも鮮明に、生々しく、最大最悪の恐怖を突き付けられる。

「ぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」


あと少しだけ久良岐の意志が強かったなら、その一撃は幻の彼女を完全に葬って、同時に彼自身の心も壊しきることになっただろう。
あと少しだけ久良岐の覚悟が弱かったなら、その幻影は脆弱な男を完膚なきまでに叩きのめし、支柱を失った精神は崩れ落ちただろう。

彼はどうしようもなく中途半端で、英雄でも無ければ只の凡夫というわけでも無かったから――夜に墜ちる前に、彼は一瞬気を失った。


>>11 >>14

目を覚ませばビルの中。だが場所の変化に気を回すほどの余裕すら今の彼には残っていない。
今にもバランスを崩して夜へと堕ちていきそうな心を引き戻すのは、魔獣の言葉。

「渡さない。もう何も、何一つ、貴様らに奪わせてなるものか」

使い慣れた短刀を抜こうとする身体を寸前で押しとどめ、代わりに構えるのは日本刀。
虚空蔵谷時雨の増やしたうちの一本。布で刀身を巻き、余った布を肩にひっかけて持ってきたもの。

「この衝動、この魂は、最後まで渡さない」

今彼女の短刀を抜けば、きっと平静ではいられない。だから代わりに、使い慣れない日本刀を構える。
布を解き、地面に対して垂直に。多少の心得はあるが、経験不足の武器を手に。

よく磨き上げられた刀身は、蒼銀の機械人形を映し出して合わせ鏡となる。
機能的にして華麗。鉄と鉄との反射と反射は、心を吸い込んでいくような摩訶不思議な美に満ち、気を紛らわすのにちょうどいい。
18 :テュール【2】 ◆1Nq8G.D3xA [sage]:2014/11/01(土) 23:12:26.23 ID:p4Jn+tu6o
>>8>>10>>13>>16
もう何も見えなかった、夜を喰らうと言う意思は、ボロボロに崩れて消えていった。最初から、砂で出来ていたのだろう。
魔獣の本能を抑えきる事は出来なかった。彼女如きには、過ぎた願望であり、過ぎた鍍金だったのだろう。
だから今。こうなっている。ただ、部屋の隅で座り続けていれば、或いは。こうもならなかったのかもしれない。
目前の少女は自分を見て、叫んだのだろう。

「神への道は閉ざされ。この世には、ただ絶望が在り続ける」

一瞬で終わるのは。美しい景色だけ。今、彼女が見た幻影の様に。

後は只々。続くのは絶望。

霧桐 舞。彼女によって伸ばされた五本の糸に対して、右腕が突き出された。剥がれかけた金色のそれは、ぐにゃりと形を変えた。
そのエネルギー糸を、辿り着く前に。全て"喰らい尽くしていった"、届かせなかった、そして、あまつさえ。
右腕が変形する。細く細く引き伸ばされる、五本の糸。それは、送り返すとばかりに彼女の首を搦め取ろうとして。
幾重にも別れて、ビルとビルの間にそれが張られ、其処で右腕から切り離された。つまりは、絞首刑。縊り殺そうと、糸が躍る。

「何時だって死ぬのは人間で、転がされるだけなんだろうさ、私達なんて」

ユウト。彼の放つボウガンの矢の嵐を、変形した右腕、それが再現した右腕が西洋大剣の体を成し、矢を叩き落とし。
振り下ろされる大剣に対して、切り結ぶ。刃の向こう側から、閉ざされた隻眼が、彼の目を見据える。

弱い人間の末路が見据える。

無造作な前蹴りが繰り出される。が、その身体は最早人間の物では無く、遥か向こう側に在る。
唯単に、彼を引きはがそうとして繰り出されたその攻撃は、人体に多大な影響を与えるにふさわしい物と成る。

「シャーロット、お前は本当に優しいな。あんな悪夢を見て尚、立ち続けられるか。
 私には無理だった。結局の所、戯言でしかなかった」

シャーロット。それでも彼女は尚も、立っていた。それでも、彼女は諦めようとはしなかった。
多分、そう言う人間こそが"強者なのだろう"。自分は、弱かった。だから、こうして、"墜ちていった"。

「私は。未来を歩めなかった。お前もきっとそうなるのだろう。だから、今。此処で、強いままに。

 死んでいけ。」

右腕が変形する。再度其処に顕現したのは、"捕食"と言う概念を形にしたような、鋭い牙を無数に並べた化物。
余りにも弱々しい彼女を、呑み込まんと叫び、狂い、かかる。

崩月真夢。彼が放った攻撃は、その魔獣の身体に当たった。そしてその威力の通りに、其の身体が後方へと、弾き飛ばされた。
狭い路地裏で、ビルの壁へと叩き付けられて漸く停止する。

「死ぬのは。私達、いや。お前達の方なんだ」

けれども、それは立ち上がった。ゆっくりと、然し雑作も無く、何の変調もきたしていないとばかりに、立ち上がった。
魔獣だから。人間じゃないから、立ち上がれた。

「ほうら、見ろ。何ともない。魔獣は強いだろう?

 絶望を見ただろう?それが人間だ」

右腕が可変、大きな口を空けた砲口から、轟音と共に巨大な榴弾が、彼へと向けて放たれる。
こんなに遠くに在ろうとも。

《夜》と言う絶望は、すぐ其処まで這ってきている。
19 :エイル ◆Ipx2yTTnb6 [sage]:2014/11/01(土) 23:14:32.42 ID:vK72h9tf0
>>3
「……何が」

 ――何が。


 ――何が、起きた?


 目の前で崩れる男と女。誰だ? 知らない。 いやでも、記憶にある。
 知っている? でも知らない。頭の隅が痛む。ちりちりと焼けるような痛みが走る。

 ――あれは、父さんと母さん?
 じゃあ、何で消し飛んだ? 一部分だけ残っている? 私が攻撃した?
 自分が? どうして? だってさっきまで、話しかけて――


「――いや、待て」

 
 そもそも、父と母は生きてない。
 だって、だって、父と母が死んだのは――――

 ――ああ、そうだったのか。 思い出しちゃった。



「おい、皆! どうして――」



 頬をかすめる瓦礫の衝撃と、筋をつくり頬を切る攻撃に、呆然と立ち尽くしたエイルの思考が動く。
 幸運か不幸か、記憶のないエイルは他より立ち直るのが早かった。……ある意味では逃げ。
 明確に、帰ってくる人も、自らが失った人もわからない。靄がかかったように朧で微か。思考が結論に追いつく僅か前に視界が戻る。
 苦悶と焦りの声に混じるのは、困惑に塗り固められた思考の吐露。
 辺りを見回す、皆の攻撃は確かに視界に写った。

「おい、ひよ――」

 彼女だった物に手を伸ばす。言葉一つ浮かぶまでの刹那の間に、彼女は人でなくなってしまった。
 
「シャロ――っ! 久良岐っ!」

 崩れる友。知り合い。たった一度の仲であっても、ただ僅かな時間を共有した仲であっても、エイルにはそれは必要な物だった。
 どうすればいい、と捻る頭をよそに――気づけば、突然だ。認識するよりもはやく、景色が入れ替わる。


>>11>>14>>17

「ま、じゅう――だぁあっくそっ! 何がなんだか、全く分からねえなぁおい!!!」

 乱暴に頭の片側を抑え、目の前の魔獣を睨むようにして目を合わせる。
 発言した連続は超常現象だ。元からその塊じみた能力を使っている事に気づけば、多少は納得できた。
 自らの物だって規格外なのだ。これ位あり得る。それよりも今は、目の前だ。

「おい、バカ――こっちまで被害が及んだらどうする!!」

 見た事のない少女、彼女の冷気のような物は、空気をつれて伝わる。
 不味い、理解できるのはそれだけだが、このまま範囲が広がったら不味い。

「――久良岐ぃっ! 三人寄ればなんとやらって知ってるよなぁっ!?」

 咄嗟に距離を取る、目の前の魔獣よりも、もっと遠くへ。
 それでも距離は詰めようと思えば詰められる距離。再開を笑う時間はないようだ。
 二人は間違いなく不安定だ。各個撃破なんてオチになったら笑えない。
20 :ヒメノカグヤ──【夜龍四牙:盈龍】 [saga]:2014/11/01(土) 23:14:52.48 ID:DC31jLTeo
>>9>>15
非現実に現を抜かしてばかりではいけない、とカグヤは目を背けていた筈の現実を見る。再び開けた視界の中には、自分が無差別に選出した哀れな犠牲共。カグヤは徹していた無表情を初めて、美しく、美しく、歪ませた。
人々は何時か美を語る。しかし万人に美しいと思わせるものは決してない。プロタゴラスがかく語る様に、美など個々人によって変わる、不定形な物。しかし、カグヤのその微笑みは、誰も彼にでも強制的に美しいと思わせるもので。
脆弱な白さを纏ったカグヤの歪んだ笑みに、残された二人は畏怖の念を顔に浮かべるか。カグヤから放たれる、親しげで、しかし触れてはいけない穏やかさは、即ち〈死〉そのものだった。
カグヤの微笑みは、一つの動作を伴っての事だった。十二単の袖をこちらへ駆ける者、ミュルサドへと向ける。異常な速度を伴っての一撃は、カグヤの動体視力を持ってすれば回避することは容易い。だが、カグヤは単純に攻撃を避けなかった。
シャーロットが掃った夜、その残滓がミュルサドの足元へと纏わりつく。その場にはなかった筈だ。態々敵の置いた罠にはまりに行くほど愚かではないのは重々承知だ。気付くだろうか、カグヤが袖を向けた瞬間、地面から粘着質な夜の塊が滲み出てきていることに。
足を取られれば勢いを失ってしまうだろう。だがしかし、ミュルサドの勢いを掃いきることはかなわず。
ミュルサドの進軍を許してしまったカグヤの表情は、しかし変わってはいなかった。

「ねぇ……」

甘い、甘い吐息がかかった囁きだった。ミュルサドの剣戟はカグヤの首を掠める結果に終わった。ミュルサドは思うだろう、自らの太刀筋が、それも勢いを纏ったその一撃が、不動のカグヤを外すことなどない、と。
だがそうではなかった。事実、カグヤを掠めるだけで終わってしまったのだ。ミュルサドは刹那垣間見えたカグヤの首筋に合る、黒龍の紋章のねめつける様な視線が、判然と脳裏に浮かび上り、同時に首元に小さな夜らしきものが展開されていた事に気が付くだろう。
その夜は、順行の性質を持つ。順行はカグヤの首筋を掠める方向へと差し向ける様に、そのままミュルサドの剣を流したのだ。

「なんでそんなに必死なの」

首元に流れるのは黒い血。カグヤの視界に映えるのはミュルサドの怒りと同じ色の表情、或はそれ以上の劇場を浮かべたアリシアだった。ミュルサドへの囁きは何時の間にか、アリシアへと向けられている。
差し向けたままの袖口を、アリシアへと照準を合わせ、カグヤは再び呟いた。アリシアから見れば袖口の中は虚無。次の瞬間、カグヤの袖から発せられるのは、吐き出すような夜の濁流。
夜の濁流は、触れるもの全ての時間を逆行させる。それに気が付くのは、アリシア画素の濁流に触れた時、緩慢に遡っていく自らの脚を見てからの事だろう。気付かずそのままでいれば、やがて足は胎児の様に……終には逆行する時間の濁流に溺死して、この世から消え去ってしまう。

「可哀想に。私が貴方だったら、死んでいる」

アリシアとミュルサドに向けられるのは同情。漆黒を宿した双眸は、微笑みながらも小さく垂れ下がっていて。
カグヤは背後にいるミュルサドの脚に纏わりついているであろう、夜を、上へ、上へと浸食させていく。やがてその夜は身体中を蝕み、体の中へと侵入してくるだろう。
ミュルサドに纏わりつく夜は、冷たく、しかし親しげな――そう、〈死〉そのものだ。

アリシアは濁流を回避するためには、全力で後退するか、逆行の濁流を消滅させるか、だ。
ミュルサドが夜を振り払うには、駆ける時点で闇を切り裂くか、それとも纏わりついてしまっても、その夜に強力な力、或は能力をぶつければ、祓う事もたやすいだろう。
21 :霧桐 舞</b> ◇B9EHjUGtIZ4E<b> :2014/11/01(土) 23:31:43.77 ID:M92lqves0
>>18
目を閉じ、耳をふさぎ、聞こえるのは、感じるのは、魔獣の絶命。
それだけ、そのはずだった。しかし指先から感じる感触は魔獣の首をはねた感触ではなく、糸が潰れてちぎれて食われる感触

「来るな・・・・・・来るなぁぁ!!」

返された五本の糸、錯乱した少女はすこし後ずさるだけでそれを避けることはできず

「あっ・・・・・・がぁ・・・・・」

首を吊られ、あっさりと絞首刑。その表情は断頭台の罪人のよう、涙を流して必死にもがく少女
死にたくない、死にたくない、それだけの思いで必死にもがき、やっとのことで首を絞める糸から脱出した
首と糸のわずかな隙間、そこに自身のエネルギー糸をもぐりこませ、緩ませたのだ

絶望を見たのだろう? その問いに対する答えは少女の表情そのもの。
だらしなく開いた口から切れた息が漏れ、涙を無様に晒して、助けてくれといわんばかりの表情
これを絶望と呼ばないなら、何を絶望というのか。
夜に恨みを持つ焔装、月装使い達はこれで絶望したりはしないのだろう。既に夜の襲来という絶望を知っているから
しかし少女はそれを知らない。夜の襲来は彼女にとって救いであったから
故に少女がとる行動は―――敗走
細い足を必死に動かして、魔獣に背を向けて、少女は逃げ出した

>>2班の方All

情けない背中を晒して走る少女は魔獣に、人間達にどう見えるだろうか
戦力外だとして見捨てるか、見逃すか
それでも人間だとして助けるか、追撃するか
それは自由な選択。この場の三人と一匹はどう動くか
22 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/01(土) 23:32:01.29 ID:lMjncvsKo
>>14>>17>>19

トラウマを抱えた彼等の叫び声が木霊する。
破壊された瓦礫や、朽ちた鉄柱など遮蔽物の多いビルの内部においても
彼等の慟哭は凄まじく大きく聞こえて―――まるで、それは魂の叫びか。そう、魂の―――……。


 『ア、アア、アァ……イイ。イイ、デスネ。イイデスヨ、トテモ……モット、聞カセテ欲シイ……。』

 『トテモ素敵ナ、金キリ声デシタ……"股間"ガ、有レバ、反応シテシマッタデショウ……美シイ、音色ダ……。』
 
 『ドウスレバ、モット、モット聞ケマスカ……?ソノ声、如何スレバ……アア、欲スル。ヴェイドハ欲スル。』

 『音色ヲ。』

 『音色ヲ。』

 『―――音色ヲ。欲スル。』


瞬間、金属質の巨体は諸君らの想像を遥かに超えるであろう―――とてつもなく俊敏な動きを見せた。
先ずは背中からせり出した巨大な"メカユニット"が火を噴く―――これは、"ジェット機"の噴射口、か。
強烈な炎を撒き散らし、ビル内の温度を爆裂的に上昇させ、そのままジェット噴射で飛翔、先ずは
"シャイナ"の放った絶対零度を超える低音―――"負の温度"による攻撃を素早く回避。否、迎撃!!

 『ソノ温度ハ……ヴェイドニ、届カナイ。』

続いて放たれるのはジェットの炎を更に凶悪にしたような、超高温の業火である。
彼の金属質の口がガバッ、と大きく開き、その内側に見える火炎放射器から
猛烈な勢いの炎を吐き出し、さながらドラゴン・ブレスの様に攻撃、攻撃、攻撃―――ッ!!

超高温と極低温がぶつかり合う事で空気が炸裂、"水蒸気爆発"によって周囲が一時的に大爆発に見舞われるだろう―――ッ!!


―――だが、面白いのはここからだ。
白煙の中から現れたジェノヴェイドは全くの無傷だった。
爆風のダメージは正直に言って強烈そのもの、所謂バズーカやミサイル、
爆薬に利用されるTNT火薬などを遥かに凌駕する程の威力であったにも拘らず、だ。

その謎の正体は彼の身体を覆い包んだ超硬質の異次元合金、「アンチニウム」にある。
彼の元の焔装は「触れている間その物体を存在し得ないまでの硬度に上昇させる」という物であって
これが変異し全身へと転移した彼の肉体は現在、特別な方法でダメージを与えない限りは物理的に
破壊困難と言えるほどに強化されていたのだ―――そしてこれに、更なる攻撃が続く。

火炎の次はお返しとばかりに口から"冷気ガス"を噴射、短刀を構えた久良岐、そして逃げるエイルに向けて
絶対零度とまではいかぬ物の、数秒触れていれば芯までカチンコチンになるであろう強烈な冷気を撃ち放つだろうッ!!
23 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/01(土) 23:34:20.16 ID:aPItED+q0
>>20
嗚呼、悲しいかな男は気付かない。
視界が赤く染まる程の激情をもって、夜という敵を殺す事以外は頭の外へ消えている。
ねぇ――甘い声。激情がすうと冷えかたまる。

せっかく手に入れた自由をたった数時間で街に閉じ込められた気分が判るか。何ヶ月計画に費やしたと思ってる。故郷の人間を全員殺して、漸く手に入れた俺だけの時間を。
そんな思いが不意に消えて、甘いささやきだけが刺さる。足下に蟻走感のような怖気。


気にならない。

怒りを再燃させろ―――これが無ければもはやどうでも良くなる。
甘い声に身を任せてしまえと諦めが囁く。――――五月蝿い、燃えろ!


選んだ道は下策だったかもしれない。
足は絡めとられている。しかし、
「お前を殺す事ぐらいなら――」
唐竹割に振り下ろす。それがそらされても次は左から、右から。左腕だけで斬撃を繰り出し続ける。
右腕はただ焔によってできた円錐形の、突撃槍から柄を無くしたような形状の者を作りだし、自らの背後の宙に浮かべ続ける。今の本数は5本程度にすぎないが―

それらの切っ先は全て、ヒメノカグヤに向いている。
24 :アリシア・P・シノット【3】 ◆w46sJzDLAPZx [sage saga]:2014/11/01(土) 23:37:15.46 ID:a9QF07w20
>>20

 その微笑みはあらゆる者を虜にするのかもしれない。その吐息はあらゆる者を蕩けさせるのかもしれない。
 されど彼女の怒りは、そんな情欲を全て焼き払うだけの熱量を持っていた――歪んだ周囲の空間が、幾つもの金属片を吐き出していく。
 漆黒と深紅の燐光を放つそれらは、次々にアリシアの体に纏わり付き――そして、一つの「鎧」となる。
 吸い込まれるような闇色の上に鮮血に似た赤を走らせた装甲。その背中から生えるのは、黒曜石の如き輝きを放つ二対四枚の「翼」。
 翼の脇から生える、八本の機械腕。握られるのは全て凶器である。爪、鉄杭、刀、機関砲、電磁砲。
 そして、彼女の背中に備えられた一対の戦車砲――今この瞬間、彼女の持つ全ての武器は、目の前のヒメノカグヤを完膚なきまでに粉砕するために存在していた。

「……決まっているだろう。私が今から貴様を殺すからだ」

 彼女の声は未だ怒りに震えていた。吐き出される黒い虚無と夜の濁流を見ても、彼女の激情が変わることはない。
 金属音を軋ませながら、彼女の持つ巨大な翼が動く。大気が揺れる。彼女は、跳ねる――その躰が、宙へ留まる。
 彼女は人間でありながら「空を飛んだ」。翼から吹き出る無数の蒼白い焔は、彼女の躰と超重量の鎧を支えているのだろう。
 眼鏡の奥の蒼い瞳は、ギラギラと輝きながらヒメノカグヤを上空から見下ろして――見下して、いる。

「ならばとっとと死ね……! その肉片すらもこの世界に残すんじゃないッ!
 それを拒むならば、私がそうしてやる……!」

 ――爆音が響く。機械鎧の背中に取り付けられた大型のジェットエンジンを、彼女は起動させた。
 翼は折り畳まれ空気抵抗を極限まで減らす。彼女の身体は半ば墜落するように、ヒメノカグヤへと突進していく。
 機械腕が振り被られ、刃渡り2m近い刀と大型の杭打ち機を構える。どちらも、凡庸な魔獣なら一撃で葬るほどの威力。
 挑むのは接近格闘戦――空対地というアドバンテージを自ら捨てるほどに、彼女は冷静な判断力を失っていた。
25 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/01(土) 23:49:35.44 ID:qslctnH60
>>13>>16>>18>>21
ボウガンの攻撃は打ち払われたが近づくことはできた
力任せに切り裂こうと剣を振り上げるも魔獣は簡単にその一撃を防ぐ
そして、がら空きの腹部に魔獣の蹴りが叩き込まれ―――

「また、かよ」

―――尋常ではないその威力に、吹き飛ばされる
前にも斬りかかって蹴り飛ばされたことがあり、咄嗟に力を入れたため、そして硬質化のおかげで行動不能にはならなかったが、それでもかなりのダメージだ
接近戦は得策では無さそうだ、ボウガンで遠距離からの攻撃をしたほうがいいだろう
剣を支えになんとか立ち上がると、一人の少女が背を向けて逃げ出していた
強力な魔獣が相手なのだ、無理もない―――だが、今は不味い
もし追撃でもされようものなら死んでしまうかもしれない

「―――オオオオオラァッ!!」

もうこれ以上、目の前で誰かに死なれたくない
追撃させてなるものかと、少女の直線上に立つ
そして、少しでもダメージを与えようとボウガンに特殊なエネルギーを纏わせ一気に一発一発の威力をあげる
そして、それを射てる限界の三発を一気に魔獣へと撃ち込んだ
26 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/01(土) 23:49:36.87 ID:yTcbhOtSO
>>22

「……早く凍れえぇぇっ!!!」

爆発の中、シャイナも魔獣と同様に無傷である。本来なら致命傷を与えるであろう爆発は、全て氷の塊となっていた。
立ち上がり、フラフラとした動作で歩むその先に居るのは魔獣――シャイナは魔獣を抱き締めるつもりだ
『負の温度』での抱擁を受ければ――その生物は終焉を迎えるであろう。
その足元からは、氷が際限無く産み出され続ける。
それらがビルを覆い尽くすのに――そう時間は掛からない。

27 :ヒメノカグヤ──【夜龍四牙:盈龍】 [saga]:2014/11/01(土) 23:54:56.81 ID:DC31jLTeo
>>23>>24
世界を美しさで染め上げてしまえば、この様な愚かな人間たちは消えるのだろうか。夜龍四牙、盈龍を冠する者、ヒメノカグヤは美に対する執着がかなり強い。夜の清廉な黒さを絶対として崇める彼女は限りない自尊心の塊だ。
背後にいる無垢な男は何故足掻き続けるのだろうか。醜悪な体を晒してまで生きる必要があったことか。素直に夜を受け入れ、夜に落ちてしまえば何もかもが美しく、片付くというのに。
冷酷で穏やかな〈死〉は夜に似ている。夜に満たされる、つまり〈死〉に満たさてる事こそ、盈龍ヒメノカグヤの世界に向けた祈り。
幾度となく、ミュルサドは抵抗し続ける。醜くも愚かな、カグヤの一番嫌いな美を受け入れない人間たちの鑑。カグヤは最早怒りを放棄し、必死に足掻くミュルサドに食傷してしまった。

「もういい。飽き――」

手元に簡易な夜で創造した刀を発現し、ミュルサドに切りかかろうとした瞬間だった。カグヤは尋常ではない質量を、その背中で感じ取った。その質量は物質的にも、感情的にも重い。
見た事も、感じたことも無かった、人間の希望。しかし、その希望は余りにも暴力的で、醜く、見るに堪えない物だった。カグヤは一瞬驚嘆を浮かべ、アリシアの姿を目に焼き付けるが、直ぐに目を閉じてしまった。
溜息。その程度か、と。カグヤは落胆し、再びミュルサドの方へと向き直り。

「嗚呼、人間とは儚い物だな。――時雨」

言葉を残し、霧散した。カグヤはその身を夜の霧へと落とし、アリシアの一撃が直撃する直前に、その場から消え去ってしまった。アリシアの攻撃と、ミュルサドの攻撃が、ぶつかり合ってしまうだろう。
そして天高く、空に構えるのは、巨大な漆黒の東洋龍だ。

「まだ、甘いな。お前等には落胆した。今日が削がれた。今度は、お前等でなく時雨を狙う事にしよう――それとも、まだやるか?」

東洋龍の姿となったカグヤは吠える。その咆哮は、永夜全天に響き渡って。
もし、攻撃するならばしてみるがいい。己の無力を、知りたければ。
28 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/01(土) 23:57:49.83 ID:ghxGgNZ6o
>>19 >>22 >>26

まだ動き出してもいないのに息が荒い。
獣染みた吐息が冷えた空気の中で白く煙っていたが、黒霧の中ではそれが見えることは無い。
タキシードから溢れ出す陰惨な霧が、ビルの中を包んでいく。目を凝らせばまだ周囲は見える。だが見えなくなるのも時間の問題。

「寄るな女ァ! 俺の隣にいていいのはあの子だけだ」

再会した協力者からの共闘要請でさえ、今の彼には雑音も同じ。
見えず聞こえず、猛り狂う情動に身を任せる姿は魔獣と紙一重。

――だからこそ、今の久良岐の焔装は強い。


空気どころか空間までも凍り付かせる冷気は既に一度目にし、霧によって識ったもの。
ああそうだ、これも俺からあの子を奪おうとした輩だ。自身から熱が奪われること自体許せないのに、あの売女の行動を許せるはずもない。

骨の髄までマイナスに染まり切った状態で振るわれる焔装は、超常の力を感知するのみならず、その発生にまで干渉する。

廃ビル全体へとばら蒔かれた『負の温度』さえも霧の中に奪い去り、その後の高音と爆発も同様に削り取る。
自分以外は全員死んでしまえばいいとの思惑に反して、コントロールの効いていない焔装はビル全体から衝撃を吸収した。

結果として、ビル自体とシャイナ・エイルまでも爆発から守る形になり、図らずも最低限の連携が叶うことになる。

当面の狙いは、自身の魂・声・魂までも食い物にしようとする魔獣。日本刀を片手に握ったまま、久良岐は走り出す。
爆発によって崩れ、落ちてきた壁の一部を半ば無意識に飛び越えて。シャイナの後を追う形。
29 :エイル ◆Ipx2yTTnb6 [sage]:2014/11/02(日) 00:13:45.48 ID:2mxFDmoC0
>>22>>26>>29
「こ……んっの……ヘタレ男が――!!!!」

 雑音と斬り伏せられたのだろう。そう思えば僅かな苛立ちを覚えた。
 いつまでも居ない奴の影を追いやがって――もう片方には声すら届いていない。
 二人にこっちが合わせる形になると、巻き込む可能性がある。巻き込んだ場合、かすり傷じゃない。全部消える。
 そうなると最悪だ。一人じゃ戦えないが、だからといって連携を取れないと周りが怪我をする――我ながら面倒な能力だと思うが、それ以上は考えても仕方ない。

「なっ……」

 迫りくる冷気。エイルという少女の武器にして防御はこの眼と焔装機構だけだ。
 瞳で範囲に入れて放とうとした時、それを吸収する者――そしてそれは、久良岐。

「ありが…tね感謝もしちゃ駄目ってか」

 結局罵倒じみた返事をされたのを思い出して、声を返そうとして代わりに小さく悪態をつく。
 もう一人の少女も歩みよって――歩み寄る!?

「おい、てめっ――」

 無策という訳じゃないのはわかるが、何とも怖い行動だ。
 相手の背後部分、後ろのブースターを削るようにして範囲を定めて、焔装を発動する。
 それは音もなく、違和感を生じた後に発生するブラックホール。その範囲にあったものは跡形もなくなくなる
 しかし、それを回避するは難しくない。体をその範囲から移動すればいい。範囲も精々人一人を包める程度の円形。 
30 :シャーロット ◆PWPXgddfYg [saga]:2014/11/02(日) 00:14:29.40 ID:bhjU0OB80
>>18

「だって、立ち続けなければ……座りこんでいるよりも苦しいもの……!
 わたしの足下には、既にいくつもの亡骸が積み上がっている。
 その上に立たせてもらって、ようやく生きているのに――のうのうと寝転がるなんて……!」

シャーロットの胸の内では、今も自分のために死んでいった者達が生きている。《夜》に堕ちた魔獣も例外ではない。
誰かを守るために、勝手な判断で功利主義の天秤から軽く見える方を切り捨ててきたのだ。
本当は全部を救いたいのに――未だ叶わないから、心に冷たく重い灰が積もっていく。

「――!」

陽遥であったモノの右手がぐにゃりと捻じれ、魔獣の顎門を作り出す。
毀れた刃のみを手にその前に立つ少女の意志は、まるで青い果実。頑なで、そして未熟。
《月装》を突き出しながら攻撃を牽制しようとするものの、噛み付きの勢いは止まらない。
捕食≠フ概念は≪クロウ・クルワッハ≫の刃を半ばから断ち切り、その余波でシャーロットの体は大きく跳ね飛ばされた。

>>21 >>25

軽い脳震盪によって揺らぐ視界の中を、ひとつの影が走り抜けていく。
それは先程まで戦いの場にいた少女。おそらく――陽遥の圧倒的な力に気圧され、逃げ去ろうとしたのだろう。

……咎めることなどできない。生命の恐怖を感じたならば退く。それが正常な思考回路だ。
だが、魔獣と化した友人――少なくともシャーロットにとっては――の本能は、それを許さないはず。
あの娘は殺される。そして、殺させてしまう。
そう思うと――いちどは萎えかけた手足に、血と力がどっと流れ込んできた。痛みに堪えて、身を起こす。

「怖かった……いえ、今も怖いわ……あいつが見せてきた悪夢(げんじつ)が。
 自分が生きていてもいいのか、正直わからない。ずっと気にしてきたことを、全部突きつけられてしまったんだもの」

「だけれど、こんなわたしにも確かに言えることが一つあるの。

 ――――――ヒヨウ、あなたは……ここで死ぬべき《人間》じゃない」

再び立ち上がったシャーロットは、《月装》の柄頭に取り付けられた黄金の飾りを握りしめる。
すると、欠けたはずの刃が元通りに――否、それ以上の鋭利さに鍛えなおされ、元の形象を取り戻したではないか。


「これが、《夜》を晴らす《暁月》の剣――≪クラウ・ソラス≫ !」


青白い夜明けの光をまとった剣を手に、シャーロットは敵の懐へ飛び込もうとするだろう。
ちょうど、ユウトの三点バーストに乗じる形で――接近が成ったならば、右腕に斬り付けようとする。

《聖遺骸》のあらゆる概念の干渉を否定する$ォ質を攻撃に転用した攻撃を受け止めるのは、事実上不可能だ。
もしも傷を受けたならば、体内を満たす《夜》の一部すらも消し去られてしまうかもしれない。
何を隠そう、それこそがシャーロットの狙いだった。
31 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/02(日) 00:17:34.19 ID:4mlcDRgy0
>>24>>27
「消ぃぃぃえェろォッ!!」

剣がほどける。それは焔であり彼の血液であるが故に、液体と化した。
液状化した部分が空気に触れるや、深紅より赤い輝きと化して爆発する。

それと同時、七本にまで増した槍がその体を貫かんと飛翔を開始した。
太陽のごときと評される程の温度は、ヒメノカグヤを蒸発せしめる―かに見えた。
轟音にまぎれ、時雨という人間の名前が聞こえる。
しかし、焔が消えたときにはその姿は無い。

一見消し飛んだそれはいつの間にか夜天に坐す龍と化し、猛々しく咆哮する。

「不味い――――落ちろ!」

空を掛ける鋼鉄を纏った少女に、上空へ向かった紅に染まった槍が迫る。打ち下ろすような角度で放ったそのうちの一本は、ヒメノカグヤの夜に「流されて」しまったようだ。
それはミュルサドが思うや否や垂直に地面へ向かう――が、アリシアの速度次第でどうなるかは判らない。
32 :【崩月真夢】《人間》【有創無奏】 ◆C0h0UWNn2I [saga]:2014/11/02(日) 00:17:47.27 ID:JLIrpk3NO
>>18
絶望に呑まれそうな心。結局さっきの光景は唯の幻で、摩耶香しで蜃気楼だった事にも気づかない。
たったあれだけで人は絶望する。なんて脆い――――――それが人間の心。
怒りと、悲しみと、後悔と、憎しみと、諦念と、歓喜と、ぐちゃぐちゃに混じった感情がそのまま溢れだす。
生の感情を曝け出す崩月に、理性という概念は存在しない。唯、目の前の敵を喰らい尽くすだけの獣のような。

後方に吹き飛ばした後に、左手に剣が現れ、それを右手で握る。そして、駆ける。
彼女の右腕から巨大な榴弾が発射された事を気にも留めず、ただ走り続ける。

何か、熱い感触がした。そして、左腕の肘から先の感覚がない。
そう、崩月の左腕は見事に吹き飛ばされた。大量の血液を撒き散らしながら、それでも駆け抜ける。

「五月蝿いなぁっ……!!とっとと死ねよ…!!魔獣なんだからさぁっ!」

血走った眼が濁る事はない。ただ単純に、闇雲な突撃を仕掛ける。
接近が叶えば、右腕で剣を彼女を両断しようと縦に振るう。その軌道は、彼女を捉えられるだろうか。
33 :アリシア・P・シノット ◆w46sJzDLAPZx [sage]:2014/11/02(日) 00:19:22.30 ID:w6Uv2Aas0
>>27>>31

 ヒメノカグヤの言葉に青筋を立てながらも、彼女は振りかざした日本刀と構えたパイルバンカーを止めることはない。
 しかし、それらがヒメノカグヤの柔肌を引き裂かんとした瞬間――細い身体は、黒い霧となって消えた。
 目標を失った鉄の塊が衝突するのは、ミュルサドの放った一撃だ。
 相対した力は拮抗していたようで、あらゆるエネルギーは激しい衝撃波を生むことで相殺された。
 彼女は舌打ちをして、ミュルサドを睨み付けた――そして、背後からの圧倒的な存在を感じて、一瞬だけ狼狽する。

「……ッ! まだまだァッ……!」 

 されど怒りに駆られた彼女は、幾ら愚かしくても止まることを知らない――ヒメノカグヤへと構えられる、更なる機械腕。
 握られた大型のミサイルランチャーのロックオンが終了すれば、彼女は躊躇せずにトリガーを引いた。
 アリシアの身体すら包み込む白煙を撒き散らしながら、あまりにも巨大な誘導弾は遥か上空の黒い龍に向かった。
 仮にそれが直撃すれば、辺りに吹き荒れるのは熱風だろう――威力は、核迫撃砲に匹敵する。
 加えて彼女は、更なる追撃の準備も行っていた。超大型の回転式機関砲が、モーター音の唸りを上げる。
 一度射撃を開始すれば毎分4000発もの徹甲弾を放つそれにまともに射抜かれれば、例え戦車であろうと原型を留めない。
 ――されど、それらが《夜》への有効打となるはずもない。

「時雨だと……? なぜ貴様が彼女の名を知っている!
 答えろ、デカブツッ……!」

 時雨――人名である。彼女はその単語に反応した。彼女の同業者であり、彼女の同居人。
 故に、時雨に手を出させてはならなかった――居丈高に構えたヒメノカグヤに、アリシアはあらん限りの声を張り上げて問いかけた。
34 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/02(日) 00:30:54.52 ID:5LTkUNRFo
>>26>>28-29

―――冷気は消えていく。
それは時間経過による物理現象の其れではない、焔装と言う名の
ある種人が持ち得た奇跡の効力によって無理やりに捻じ曲げられた現象である―――。


 『ア、アアアァ……コレガ、貴方ノ、"武器"デスネ……イイ。イイ。イイノニ……ヴェイド、ソレ使エヌ。』

 『焔ノ、名ヲ持ツ武装……ヴェイド、何度モ手ニ入レヨウトシテ、壊シテ、亡クシテ、葬ッテ、キタ……』

 『欲スル。ヴェイド、欲スル。去レド……ヴェイドニハ、使エナイ。』


ビル全体を覆いつくそうとしていたシャイナの滅茶苦茶な攻撃すらも全て呑み込み、
結果的に火炎やジェットを使うまでもなく、ヴェイドはその驚異的な冷気から護られたのだった。
考えられる効力は一つ―――"消滅"の力、か。
久良岐の持つ其の力を、ヴェイドはとても―――とても羨ましそうに、興味深いと言った体で見つめる。


―――欲しい。使えぬ。けれども。欲しい。ああ。嗚呼。


 『……ヴェイド、寂シイ……我ノ魂、鼓動、音ガナラナイ……故ニ欲スル、求メル、命ノ……焔ノ、音ヲ。』


ヴェイドは動き出した。まずは冷気を撃ち放つシャイナ目掛けて両腕を変形させる事で出現させた
二挺のプラズマ・キャノンを展開。先程の温度にも増して超高温のプラズマ光が連続で射出され
弾丸のような形状で向かい来る"熱現象"に対し冷気を操る少女はどう立ち向かうのか―――、いや、答えは見えている。
だがその代わり、氷で触れれば再び爆発が起こる。そしてそれは周囲に展開したエイルにも影響を及ぼす事にも繋がるのだ―――!

しかし其の直後、エイルの放った焔装によりジェットが"消滅"、彼はビルの床へと叩き付けられた。
強烈な金属が重量を以って降り立った為に、凄まじい衝撃が内部を襲う。だが―――。
消滅したジェットユニットに代わって、"別の"ユニットが競り出て来るではないか!


 『寂シイ……故ニ、沢山、沢山、吸収シタ……欲シテキタ、我ガ物ニシタ、コレカラモ……、』

恐らくは、一つや二つではないのだろう。彼の吸収した武装はかなりの数に及ぶ。
もしも彼を行動不能にするなら各部の破壊ではなく―――本体を狙うのが、吉だろうか。
しかしソレよりも前に、すかさずヴェイドは背部装甲を展開、そこから出現する新たな武装はなんと―――
ミサイル・ポッド。それも大量のミサイルが一斉に放たれ、ビルの外へと一旦解き放たれた後、シャイナ、エイル、久良岐の
三人を「別々」に攻撃し始めるだろうッ!!仮にそれが久良岐の霧でかき消されても問題ないといわんばかりに
今度は周囲360度へ向けて毒ガスを口内より放射、二重の攻撃によって隙を与えず相手を殲滅しようと暴れまわる―――ッ!!
35 :ヒメノカグヤ──【夜龍四牙:盈龍】 [saga]:2014/11/02(日) 00:33:50.33 ID:o6p51xoTo
>>31>>33
夜に臥す盈龍は、地上にいる全ての人間を睥睨し、そしてやはり嘲笑った。幾ら足掻けども結局は行きつく先も同じだというのに。カグヤは龍の姿でさえ、美しい。
美があれば醜がある。死があれば生がある。人は生を美として慈しむ。しかし、生は死を伴って漸く輝けるのだ。それを人々は知らない。だが私は知っている。

「一度死ねば分かる」

アリシアの問いに、漸く答えた。カグヤの眼前、人知の範疇にはあるが、その威力を容易に超えてしまった、禁忌にも近い武装。だが所詮人間の武器だ、とカグヤは言う。発言は咆哮となり、誘導弾を破壊する。
順行と逆行、そして破壊と崩壊を使役する盈龍カグヤ。余りにも強大過ぎる夜に平伏することを選ばずに、耐え抜き抗い続ける哀れな人間たち。
誘導弾が割れる様に破裂すれば、盈龍の皮膚に感じるのは熱。死の冷たさには届かない、生温い物だった。
機関砲の弾丸が盈龍の身体に抉りこんでいく。それでも、盈龍はびくともしない。否、えぐりこんでいるのではない。
よく見れば、当たる直前で粉々に破壊されているのだ。熱もそうだった。当たっているように見えて、表面に限りなく近い所で逸れている。

「また、今度。今度はもう少し、魅せてみろ」

盈龍は再び霧散する。夜には帰らずに、何処か、この地上に暫く残るつもりらしい。
盈龍が帰った後。ミュルサドとアリシアは何を思うだろうか。
夜に対しての絶対的な絶望、それとも、まだもしかすれば勝てるかも、などと希望を持つのか
同情かは分からない。ただ、ミュルサドに纏わり付いた〈死〉の塊である夜は、剥がれ落ちていた
36 :テュール【2】 ◆1Nq8G.D3xA [sage]:2014/11/02(日) 00:34:40.65 ID:PZKOthZeo
>>21>>25>>30>>32
逃走が。必ずしも愚かな行動とは限らない。自分だって、逃げれば良かった。逃げ出したかった。
そう思うと、何処か嫉妬にも似た感情が産まれた。自分の弱さへと従属することが出来る、彼女に対して、だ。
故に。その背を撃とうと思った。右腕を、彼女の背へと重ねると―――――――― 其処に、重なる姿があった。
放たれた矢を避けるには、少女へと意識が引っ張られ過ぎていた、三本の矢は、右肩部、右上腕、左脚の太腿へと突き刺さる。
成程、これが暁月。魔獣の身体を貫いて、痛みを感じさせるほどに、強い。焔装とは、自分の戦いとは果たして意味があったのかと。
疑いたくなるほどに。それもまた、激情を誘い。

「―――――――― 止めろよ」

右腕が、千切れ飛んだ。それもまた、暁月だった―――――――― 夜を晴らす、だなんて。


余りにも甘く。そして彼女には劇物だった。



「そう言うの、やめろってんだよ!どうせ、どうせみんな死ぬんだ!!私も、お前達もだ!!!
 だというのに、夜を晴らすだとか、あまつさえ、私は此処で死ぬべきじゃない……?


  い   い   加   減   に   し   ろ   !   !   」


彼女の狙い通りだった。魔獣の身体は、半身は。切断された右腕から、ゆっくりと普通の人間へと、戻ろうとしていた。
陽遥、と名乗った女になろうとしていた。けれども、その思考は、魔獣に蝕まれる事を原因にするには、余りにもズタズタだった。
許せなかった。その希望が。自分の何もかもを否定するかのように見えた。それが被害妄想だとしても、それは只管に、希望と言う絶望だった。
崩月真夢、彼のその唯々闇雲な剣が、その身体をなぞった。その通り、余りにも容易く、その外骨格が裂かれ、鮮血が噴き出した。

それでも、激情は留まらない。


「希望なんて、ありはしない。只々続くのは、終わりだけだ――――――――ッ!!!」


切断された右腕が、消滅する―――――――― 現れるのは、巨大な剣。二メートルにも達する、出刃包丁の如き片刃の大剣。
正真正銘、"捕食"という概念が形を成して。一息に、振るわれる。


実行されるのは、"喰らった"物を単純な破壊エネルギーへと変換した、"斬撃"。


前方、魔獣に相対する者達に大して、周囲のビル群を叩き壊しながらの、範囲攻撃が行われる―――― ただし。
それは強力無比であるが。反面、それは"概念攻撃"では無い。ただの"破壊"であり、十分に防ぐことが可能な"現象"。

そして今、其処にいる魔獣は。暁月の直撃を受け、動きを止めている。


"きっと、どうとでもなろう"。
37 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/02(日) 00:49:24.24 ID:4mlcDRgy0
>>33>>35
「時雨…か」
正直、ここでもその名前を聞くとは思わなかった。
これまで会った二人の焔装使いが探し求め、また、自らも探していた人物。

そして、宙に浮く少女は知り合いのようだった。
纏わり付く死が剥がれて落ち、地面に当たって砕けた。

そして一つ、軽く息を吐く。
怒りの形相は忽ち消えて、その最中に思っていた事もさっぱり頭から抜け落ちている。
そこにあったのは、いつもと同じ、人なつこい笑顔。

「済まなかったな、嬢ちゃん」

胸の前で手を合わせて謝ると、相手の反応を待った。
恐らくこの男は何も言わず飛び去っても文句は言わないだろう。
38 :アリシア・P・シノット ◆w46sJzDLAPZx [sage saga]:2014/11/02(日) 00:56:42.59 ID:w6Uv2Aas0
「ざけんじゃねえッ……そんなのは答えになってねぇんだよ……!
 どこまで私を、私でなくさせるつもりだ……!」

 アリシアの放った連撃は、支配者たる《夜》が湛えた峻厳かつ莫大な力によって全て無へと帰した。
 彼女は無力だった。しかしそれでも、彼女は振り絞るように絶叫した。その戦意だけは欠片も衰えてはいなかった――当然である。
 今彼女が戦う理由は、その全てにおいて利己的な、単純さを究めた復讐心。
 それが晴らされた時――即ちカグヤが彼女に跪くまで、彼女の殺意が失われることはないのだ。
 しかしそれは、あらゆるものを受け流し破壊するカグヤの前において、あまりにも純粋すぎた。

「ここまで私の感情が揺れ動いたのは初めてだよ……。くく。
 ……潰す。絶対に、叩き潰す。完膚なきまでに。
 よくも私を虚仮にしたな、よくも私を……!!」

 地上に降り立った彼女はカグヤが霧散するのを目にし、そして相も変わらぬ恨み節を吐き続けていた。
 涙は眼鏡のレンズと彼女の頬を濡らして、そして繰り返し地面に落ち込んで、消える。

「一つ言っておこう……二度と私に攻撃を当てるんじゃない。
 ――時雨が気にかかる。私は先に帰る」

 全身鎧は燐光となって消失し、そして彼女の身体と《月装》、その光学照準器だけを残した。
 ミュルサドに一つ言い放ち、彼女は踵を返した。
 赤子のように引きずる足取りで、研究所の方角へと歩いていく。
39 :アリシア・P・シノット ◆w46sJzDLAPZx [sage]:2014/11/02(日) 00:57:46.19 ID:w6Uv2Aas0
/>>38>>37>>35宛ですー。
40 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/02(日) 00:59:46.07 ID:ZRSHA7YT0
>>36>>25>>30
背を向けた直後、響く轟音。振り返りたくない、はずなのに、首は勝手に動いてしまう
見えたのは、自分が逃げたせいで倒れる人間達。それならまだよかったんだ。
見えたのは、自分の背をを守って矢を放つ少年と、青白く神々しい剣で魔獣を斬った少女。
二人が放った攻撃は確実に魔獣に効いていた。効いてしまっていた。
自分が勝てないと絶望し、逃げ出した相手に、二人は立ち向かい、そして傷をつけていた

「・・・・・・・・・止めてよ」

止めて、私の意味を取らないで、私を要らない子にしないで。そんな思いがふとこぼれ、それは皮肉にも魔獣と重なっていた。
逃げていた足が止まる。戦わなければ、戦わなければ私は―――
戦えという脅迫的な自己暗示により、思考がやけに冷静になる。
おかげで魔獣の放つ衝撃波により、崩れ落ちる瓦礫はゆっくりと見えた。
両手十本の指を突き出し、放つ十本の光糸。
少女がくいと曲げると同時それらは瓦礫に接続され

「・・・・・・消えろぉぉおおおおおおお!!」

その叫びと同時に、両手を思いきり振り回す。光糸の支配下となった瓦礫はその動きにつられて路地裏を縦横無尽に駆け回る
瓦礫が瓦礫にぶつかり降り注ぐビルは人間達へ届くことなく塵となり、魔獣の放った範囲攻撃のほとんどを消し飛ばした


少女の叫びは魔獣へ向けたものか、それとも自分の役割を奪う人間達に向けたものか
それは少女にも分からなかった。

>>2班All

少女の焔装により魔獣への道は拓かれ、そして魔獣は動きを止めている。
人間達の動きを阻むのは魔獣の放った衝撃波一つのみだ。
41 :アリシア・P・シノット ◆w46sJzDLAPZx [sage]:2014/11/02(日) 01:00:02.87 ID:w6Uv2Aas0
/あ、これで〆ですね……連投すみません、お二方お疲れさまでした。
42 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/02(日) 01:02:12.04 ID:Y7jSBUt2O
>>34

「くくっ、くくくくくっ!!…ははははははははっ!!舐めるな魔獣がッ!!」

プラズマキャノンはすべてシャイナの身体に命中し、氷と反応して爆発が起きる。シャイナには通用しない。だがエイルという女性は危険になるか、
地面の氷の一部が蠢き、エイルの身体を囲い込む障壁となって爆発から護る。氷は身体に触れていなくとも操作可能なのだ。
これはミサイル・ポッドからもエイルを護る筈だ

そしてシャイナの身体をも氷が包み込み、ミサイル・ポッドを全て防ぎきる。そこに毒ガスが侵入する隙間は無い 絶対防御である
また地面の一部の氷が蠢き、槍となって魔獣に向けて、足を貫こうと迫る
貫かれればそこから徐々に凍結が広がり、やがて全身が凍り付くだろう。
43 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/02(日) 01:09:46.31 ID:4mlcDRgy0
>>38
「わざとじゃないんだ、勘弁してくれ」

背中を向ける彼女に、もう一度声をかけておく。
それに反応はなく、名前を聞いても返事は返らないだろう。そう判断して、ミュルサドは地面に座り込んだ。

ポケットの中に煙草を探る。
くしゃくしゃになってしまったそれはどうしてもこの街では見つからない。
故郷で唯一気に入ったその味はもう味わうチャンスが数本しか無い。

「なるほどね、時雨とやらの研究所はあっちか」
少女の行くを見やりながら漸く一本を取り出す。くしゃくしゃになったそれは、シガリロに分類される細い葉巻だった。

ぼそりと呟いて、未だ地面に突き立つ槍でそれに火をつけて、一口。
瞳から焔の色は消えて、槍も幻だったかのように立ち消える。
「これがあるうちは人間で居られる気がするねぇ」

甘い、甘い。夜のささやきのような味がした。
44 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/02(日) 01:11:31.80 ID:b+wMKDbKo
>>29 >>34 >>42

「ヘタレで構わん! 俺が真っ当な人間でないことなど当に分かっている。
だが、そんな俺の全てを受け入れてくれる唯一の女がいた。――いいや、まだいる!」

一度その場で立ち止まり、両手で柄を握り直す。刀身へと霧が巻き付いていき、初めからそうであったように黒く染まる。
その思考の大半を埋める彼女の濡れ羽色の艶髪とは似ても似つかない不浄の黒。

「この魂、この命。力さえも全て彼女が与えてくれた。だからお前らに使えるはずがない。だから奪われるわけがない!」

まず切るのは目の前の相手。邪魔な女に向かって、横薙ぎに刀を振るう。
焔装によって侵蝕された刃は、その身を守る氷点下の壁さえも奪い、その身を切り捨てんとする凶気の刃。
だが飛びかかりながら繰り出された斬撃は浅い。経験の浅い武器を使った分、その動きにはムラがある。


「唯一の相手、唯一の力を持たぬ木偶が――その執着は見るに堪えん」


ミサイルも毒も、霧を通して存在を感知できる。だが力を奪う焔装では、物質を消し去ることはできない。
毒は彼の弱点に当たるもの。力の操作で遠さげるくらいが限界。そして今の彼に細かな運動力の制御を行うだけの集中力は無い。

代わりに彼が取った行動は、力の解放。これまでに吸い込んだ冷気をもって自分に向かってくるミサイルを凍り付かせ、さらに衝撃と熱波によって毒を吹き飛ばす。
先ほどと同じように、結果として共闘する二人に対する攻撃にまで対抗する形だが、今度のそれは前回よりも大雑把。
完全に凍り付いて停止するのは久良岐へと向かう分だけで、残りのミサイルのいくらかは変わらず狙いに向かって飛翔する。
45 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/02(日) 01:14:49.65 ID:5LTkUNRFo
>>44
/ん?すいません、6行目で剣を振るった邪魔な女性、というのはどちら様のことでしょうか?
私に向けての刃ですか?ヴェイド、男。アレ、生エテナイケド、男。
46 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/02(日) 01:17:16.47 ID:b+wMKDbKo
>>45
/後ろからシャイナに斬りつけてます。  分かりづらくてすいません。
47 :エイル ◆Ipx2yTTnb6 [sage]:2014/11/02(日) 01:21:10.76 ID:2mxFDmoC0
>>34>>42>>44
「そういう意味じゃねぇ馬鹿っ!
アホみたいにどうでもいい所だけ反応してないで協力しろって!」

 ヘタレという部分だけ察しやがってこの阿呆ーー、コントか何かかと思って僅かに気が緩んだが、どうも場違いだ。
 攻撃は直撃、背中のブースターを落とす事に成功したが、再び突出するのは別のブースター。
 軽い動作でぽんと出てこられると、どうも背中のアレを落とすのは無駄の可能性が高い……ならば、本体を叩くしかなさそうだ。

「お前ら! 聞こえてるかわかんねーけどな、動きを止めろ! そうしたら後はあたしがどうにかする!」

 一撃必殺。それとは少し違うが、エイルの攻撃はまさにどれも一撃必殺。当たれば勝てる正に反則技。
 ならば、やみくもに打つより一瞬の隙を縫い合わせる方が楽だ。

「そこのあんた――それは協力するって事でいいんだよなっ!?」

 氷の障壁、それがミサイルから守ってくれたが、迫りくる爆風に目を塞がねばならない。
 爆風により吹っ飛び、かろうじて着地するが、二人よりかなり後方に入ってしまった。
 間を詰められたらまずい――抑止の為に一度、体を捕えて巨大へと焔装の攻撃を発動しながら、二人へと距離を詰める。
 当たるとは思っていない……牽制の一手のつもりだ。もしよければ、二人へと繋がればいいと考えながら。
48 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 01:22:45.96 ID:VNeW/kDP0
>>30>>32>>36>>40
魔獣もあと一息で倒すことが出来そうだ
止めの一撃を放つために大剣から弓の形へと武器の形状を変えたところで衝撃波による強力な範囲攻撃と、それによって引き起こされた破壊によい大量の瓦礫が振ってくる
不味い、瓦礫と衝撃波、そのどちらにも対抗する手段を持っていない
せめて、瓦礫だけでも落とそうと矢を引き絞ると―――後ろから光糸がのび、それにより瓦礫が塵とかした
先程の少女がやってくれたのだろうか―――
心のなかで感謝しながら、エネルギー体の剣を弓に構える

「ハァァァァァッ!!!」

衝撃波は防ぐことはできないが、避けることも自分にはできない
ならば仕方がないと開き直り、弓に全神経を集中させる
―――限界まで引き絞ったエネルギー体の剣を魔獣へと放つ
威力は、先程のボウガンの攻撃を遥かに上回る一撃だ

「……ッ」

全身の力が抜け、暁月が解除される
その場に倒れそうになった所に衝撃波がぶつかり、吹き飛ばされる
―――受け身もとれず地面を転がり、完全に気絶する
骨がいくつか折れ死にかけ、という状況ではあるが死んではいない
なにかの攻撃が当たらない限り死ぬことはないだろう
49 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/02(日) 01:23:21.67 ID:5LTkUNRFo
>>47
/申し訳ない、このままいくと物凄く時間がかかりそうなのでそろそろ〆たいのです。
次の必殺の一撃を待つと三時突入コース待ったなしなので、攻撃もぶっぱして貰っていいですか?
50 :シャーロット ◆PWPXgddfYg [saga]:2014/11/02(日) 01:28:08.68 ID:bhjU0OB80
>>36 >>40 >>48

荒ぶる斬撃の波濤を前にして、≪クラウ・ソラス≫は驚くべき変容を遂げた。
なんと――その『蛇腹』を構築するセグメントが一つ一つ分離し、主の周辺を取り巻くように浮き上がったのだ。
舞い踊る刃の断片すべてが、《聖遺骸》に等しい。それらは無数の螺旋を描きながら、押し寄せる破壊を打ち消し≠トいく。

それでも、近距離で完全な防御網を展開することはできなかったのだろう。
鎌鼬に引き裂かれたように、シャーロットの右脇腹にぱっくりと大きな傷が創られた。

「痛い……やっぱり、あなたは強いわ。
 だけれど――人間として、誰でもない自分であろうとしたあなたはもっと強かった!
 わたしなんかが止めることは烏滸がましいと思えるほどに!」

まなじりを決して、気迫を振り絞って投げかける言葉に滲む感情――それは怒りであった。
憐憫でも気配りでもなく、ただ陽遥という『ひとり』を知る者としての感情が、シャーロットを突き動かす。

 誰も戦う理由があり、誰も止めることはできない。
 でも、だから何だと言うのだ。今のわたしは絶対に後悔したくないんだ。
 今日この瞬間だけは――シャーロット・プランケットは、自分のために戦う。そう、決めた。

「ヒヨウが我を通そうって事なら、わたしもそうする。わたしの希望をあなたにも伝染(うつ)す。
 ――――ちょっと悔しい思いをさせてでも、立ち止まって考える時間を与えてあげるんだから!」

シャーロットが指揮棒めいて剣の柄を眼前へ突きつけたなら、浮遊刃もそれに追従して一様に切っ先を向け、
彗星のように光の尾を引きながら、陽遥のもとへと飛来する――!

魔獣の動体視力であれば、それらが全部で8枚の刃であるということを認識できるだろうか。
一見して舞い散る木の葉のように薄く儚い礫は、闇を斬り裂く無毀の業物。
回避に臨むことができなければ、外骨格とその内側にわだかまる《夜》を外側から削り落としていくに違いない。

>>32

その猛攻の間、シャーロットはあなたに向けて、

「……ねえ。わたし、あの『人』と知り合いなの。
 できれば生命を奪って終わりなんてことにしたくない――お願い!」

声を張り上げて、自分の『エゴ』を衒うことなく主張するだろう。
ただ、受け入れるか否かは完全にあなたの自由だ。
51 :【崩月真夢】《人間》【有創無奏】 ◆C0h0UWNn2I [saga]:2014/11/02(日) 01:30:15.07 ID:JLIrpk3NO
>>36
魔獣の外骨格を引き裂く感触。嗚呼、心地良い。この調子で。
もっと喰らえ。もっと喰らえ。まだ足りない。その血肉を、焔装に捧げさせないと。
足りない、まだ足りない――――――――

「……………………!!!」

そろそろ戦いも終局の時間。振るわれた大剣は、正面の崩月を真っ先に狙っている。
剣を構え、受け止めようとするが、まず質量が違いすぎる。二倍以上はあるであろう質量に打ち勝つなど不可能な事。
物理法則に従い、その身体は軽く後方へと吹き飛ばされる。

「………………づっ!?」

空を舞っている最中、漸く我に帰ったというか、理性的な判断が戻ってきた。
しかし、そんなものは今更で空を舞っている最中には何の効果もない。身体の激痛と、失われた左腕も今は意味が分からなかった。
左腕は後々拾えば焔装でくっつけられるだろうが、そんな悠長な余裕もない。

何よりも、地面に叩きつけられた今、身体がまったく動かないのだ。
相当な無茶をしていたらしい。骨が数本折れる音も聞こえた。
崩月はこれにて、事実上、これ以上の戦闘は不可能な状態となった。
だが、恐らく次でもう決着はついているのだろう――――――――

>>50
「…………はっ、こんな状態じゃ、どうする事も出来ないだろ………」

崩月は最早身動きが出来ない状態。
従って、生殺与奪権などは存在し得ない。シャーロットの思うようにやれば良い。
52 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 01:31:13.27 ID:VNeW/kDP0
>>30>>32>>36>>40
魔獣もあと一息で倒すことが出来そうだ
止めの一撃を放つために大剣から弓の形へと武器の形状を変えたところで衝撃波による強力な範囲攻撃と、それによって引き起こされた破壊によい大量の瓦礫が振ってくる
不味い、瓦礫と衝撃波、そのどちらにも対抗する手段を持っていない
せめて、瓦礫だけでも落とそうと矢を引き絞ると―――後ろから光糸がのび、それにより瓦礫が塵とかした
先程の少女がやってくれたのだろうか―――
心のなかで感謝しながら、エネルギー体の剣を弓に構える

「ハァァァァァッ!!!」

衝撃波は防ぐことはできないが、避けることも自分にはできない
ならば仕方がないと開き直り、弓に全神経を集中させる
―――限界まで引き絞ったエネルギー体の剣を魔獣へと放つ
威力は、先程のボウガンの攻撃を遥かに上回る一撃だ

「……ッ」

全身の力が抜け、暁月が解除される
その場に倒れそうになった所に衝撃波がぶつかり、吹き飛ばされる
―――受け身もとれず地面を転がり、完全に気絶する
骨がいくつか折れ死にかけ、という状況ではあるが死んではいない
なにかの攻撃が当たらない限り死ぬことはないだろう
53 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 01:37:42.96 ID:VNeW/kDP0
/連投してしまいました…
/すいません
54 :テュール【2】 ◆1Nq8G.D3xA [sage]:2014/11/02(日) 01:40:02.90 ID:PZKOthZeo
>>40
>>48
>>50
>>51
見た。自分の攻撃が防がれるのを。それは手と手を取り合って、切り抜ける……まるで、自分には出来なかった事。
何故。何故自分はそれが出来なかったのだろう。何故、自分はあんな意地を張っていたんだろう……今と成っては、全て、過ぎた事。
墜ちてまで、墜ちてまで、墜ちてまで、自分は届かない。逃げてまで、逃げてまで、逃げてまで、自分は余りにも弱い。

一度逃げ出しながらも、もう一度「立ち向かう事」勇気や「あんな言葉」を吐ける、強いエゴもありはしなかった。


「……なんで、貴方達は」


叩き付けられるその剣を、左手を以ってして防ごうとした。当然、切り落とされて胸部に刺さる。
削ぎ落される。この自分を包み込む人非ざる形、渦巻く夜の力が消えていく。
なんで今更になって、そんな希望を与えてくるのか。如何にも理解できなかった。―――― ゆっくりと、"上がっていく"。


膝をついた。顔の半分を覆う外骨格を、無理矢理引き千切った。一部、皮を巻き込みながら、それがけれど、人の姿をしていた。


嗚呼。それなのに私は。


「結局。私は、何も成し得なかった」



取り落された喰《夜》大剣が、突き刺さる事も無く、其処に大きな音を立てて転がった。傍には、人の姿をして。
俯いている人型があった。両腕を失って、拭うても無く泣いている。ただの、人間が独りだけ。
55 :エイル ◆Ipx2yTTnb6 [saga]:2014/11/02(日) 01:47:44.12 ID:2mxFDmoC0
>>49
それなら、こっちがパナした攻撃の数を増やして、いっぺんに何個も出して四方の逃げ道を塞ぐ感じにしてくだされば……ごめんなさい、今気づきました!
56 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/02(日) 01:58:03.68 ID:ZRSHA7YT0
>>54
墜ちた少女は人間の少女『シャーロット』の希望に救いあげられ、人間に戻った。
本に書いてあるような、夢みたいなハッピーエンドだ。自分には到底為せない、素敵素敵な終わり方

「・・・・・・ふざけるな」

零れ落ちた妬みは誰にも聞こえず、風にさらわれていったはず
自分は無様に絶望して、無様に逃げて、無様に無様で無様なのに。
何で彼らは、この『人間』たちはこうも眩しいのだろう。まるでいつか見た太陽のように、眩しすぎてねたましい太陽のように

少女は泣きわめく人間に何もしない。
ただシャーロットの作る希望に耐え切れなくなって、少女はまた背を向け、逃げる。

その場を去ろうとする少女の目からは一筋の真っ赤な涙が、真っ赤な右目から落ちていた
血濡れのルビーのように真紅な瞳はいつものように戻る気配はなく
少女の右目は魔獣そのもの。素敵な素敵なハッピーエンドに、影が一つ降りていた。

>>52
逃げる最中、吹き飛ばされた少年を見つけた。
自分を守ってくれた少年すらもねたましかったけど、何も言わないのは流石に気分が悪いから

「・・・・・・ありがとう」

無表情に礼を呟き、少女は逃げるようにその場を去る。
―――見えただろうか、少女の瞳が真紅に染まり、魔獣の瞳と化していたことが
57 :ジェノヴェイド・マーヴェック ◆9sW3v0gLG2 [sage]:2014/11/02(日) 02:02:42.29 ID:5LTkUNRFo
>>42>>44>>47>>55

ミサイルの爆炎が晴れる―――……其の殆どは、氷の生み出した壁と、
そしてまたもや久良岐が発動した霧の効果によって図らずとも防がれていた。
つまるところ、人類側に未だ支障は無し。そしてジェノヴェイドは、と言えば―――、


 『……アァ、凍ル……発熱シタ、武装ガ……オーバーヒートスルノヲ、避ケル様ニ……』

 『ツメ、タイ……?コノ、感覚ハ……?冷タイ……?冷エル……エル……エル……エル…………』






  『お、亜、アアア、あっガッキュゥ、――――ゥ、
  
   ォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!』



貫かれた。シャイナの放った氷の槍が脚部に命中すると同時、
奪い去られた熱により脚部の合金は芯まで凍らされて、脆くなった故に"貫通"する。そう。
この調合金の弱点は極低音による分子崩壊―――衝撃で破壊出来ぬのならば、一旦凍らせてから破砕すれば良かったのだ。

そして底から続々と、氷の進撃が続いていく。冷えては装甲を切り離し、凍りかけた部位を体から解離させるも。
時既に遅く、脚部から続々と冷下の攻撃が金属生命体の身体を侵食していく。この間、"ヴェイド"は動く事すら出来ない。
そしてそこに、エイルの攻撃が更に重なった。消失を司る焔装のそれが氷ごと、ヴェイドの合金を消滅、消滅、消滅―――――ッ。



 『オ、ゴ、アアアァ……ッ!』


 『ン、グ、ググギキ……ッ、キュオオオオオォォッ……ア、オ、オオオ、』






 『―――――――――――あぁ。感じる。冷たい……。』









全身が氷で覆われる直前、そんな言葉を漏らし。
ヴェイドはどこか不気味な、表情の読み取れぬ機械の仮面をつけたまま、凍死した。
しかし何故だろう―――見る者によっては、彼の表情にはどこか満足げな笑みを称えている様にも見えて――――、



だがそれも、数刻までの話。ぴゅう、とビルの間を風が抜ければ。
その風圧にさらわれて、機械の人形はさらり、さらりと崩れていって。
そのままどこか遠く―――遥か遠くへと、旅立っていった。




/以上で〆とさせていただきます。しょっぱい幕切れで申し訳ない!あざしたー
58 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/02(日) 02:16:00.11 ID:dDvgsg/j0
>>44 >>57

「…ぐうっ!!…な、にぃ……?」

背中に痛みが奔る 魔獣に気が向いていて。人間に攻撃されるとは思ってなくて。
背中から血を流しながら倒れ伏せる
魔獣に仕掛けた攻撃の結果を知ること無く、そのまま意識を失った。

//お疲れ様でした。ありがとうございましたー。もう眠気がマッハなので失礼しますー
59 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 02:19:18.54 ID:VNeW/kDP0
>>54
「……ァ」

口から血を吐きながら、意識が戻る
全く動けない上に、下手をすれば死ぬかもしれないダメージなのが全身の激痛から分かる
分離した銃と剣に目を向けると―――銃へのヒビがさらに深くなっている上に、剣にも少しヒビが入っていた
もう、戦うことすら出来ないかもしれないな―――
そんな事を考えつつ魔獣はどうなったのかと目を向ければ―――
少女の暁月と思われる武器の力で、魔獣は人間に戻っていた

「に…ん…げ…ん…?」

破壊をもたらし、この場にいる人間を圧倒した魔獣は確かに人間へと戻っていた
信じられないことだが、目の前で起こった以上納得するしかない
人間に対して攻撃をしたのには多少罪悪感があるが――――まぁ、お互い様だろう

>>56
守った少女の礼が聞こえる
やはり守った人間からの感謝は気分がいいものだ

「ま……て」

―――再び薄れていく意識のなか、確かに見た
少女の目が、魔獣と同じものになっているのを
呼び止めようとするも、少女は去り、自分の意識も落ちていった―――


/ありがとうございました
60 :シャーロット ◆PWPXgddfYg [saga]:2014/11/02(日) 02:26:09.95 ID:bhjU0OB80
>>54

「はぁ、はぁ、はぁっ……ぐうっ!」

人間の思念で独立した軌道を辿る8つの飛翔体を操るのは容易ではない。
額に稲妻を打ち込まれるような痛みを感じて、分割された刃を一処に戻し、納刀した。

息を整える間も無く、シャーロットは陽遥の元へと駆け寄っていく。
カタチを崩さずに残された異形の大剣に絶えず注意を向けながらも、その灰色の瞳には抑えきれない感情があふれていた。

「わたしだって今まで何も出来なかったわ。でもこの一ヶ月で、考えることと強情を張り続けることを知ったの。
 『何か』を『いつ』できるようになるかなんて、生きてる限り分かったものじゃないのよ」

もし触れることが出来るほどに近づけたなら、白く細い指が陽遥の目尻を拭うだろう。
脇腹の傷を庇うことすら忘れ、相手の血に濡れることも厭わずに。

「ねえ、一緒に引き上げましょう。大丈夫。あなたは今も人間よ。
 自分で人間であることを選んだ――強い、人間だから」

傷の手当もしなければいけないし、と気遣わしげに見つめるのは、失われた腕と剣で穿たれた胸だ。
不可抗力とはいえ、これを治療するのには急を要する。
彼女が《夜》からの解放と同時に特殊な力を失っていた場合には、尚更だ。

>>51 >>56 >>59

走り去る足音にシャーロットは振り向いて、「待って」と声をかけたが、それに答えが返ることはなかった。
それどころか、舞の瞳に生じた変化を知ることすらなく、その背に引き離されることになってしまう。
意味ありげな反応を見せた青年も意識を投げ出し、この場に疑問を解き明かす人はいなくなった。

「みんなにも、いずれお礼を言わないと……」

どこまでも愚直な善性は、それが残酷な結末を齎すかもしれないことを、まだ知らない。

/とりあえず全体に対してはこんなところで……お疲れ様でした! 遅レス気味でごめんなさい!
61 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/02(日) 02:27:18.39 ID:b+wMKDbKo
>>47 >>55 >>57 >>58

不慣れで武器では、それが相手の命を奪ったかも分からず。
シャイナが倒れたことだけを認識して、それ以上のことを考える余裕はない。


「づッ……熱……い……」

冷たさに呻くジェノヴェイドとは逆に、熱さを訴えてその場に崩れ落ちる。
焔装の臨界点。この戦闘で久良岐は、考え無しに奪いすぎた。過ぎた力を霧に宿せば、それだけ魔獣化が早まる。

内から何かが孵ろうとする感覚。取り返しのつかない快感。
今にも壊れようとした瞬間に――エイルの焔装が発動した。

「エイル……?」

ジェノヴェイドへのトドメを刺すと同時に、それは久良岐の霧をも消失させ、結果的に焔装を強制的に止めることになる。
己が半身にも等しい霧を打ち消された衝撃。当に限界を超えていた意地はついに吹き飛ばされ、久良岐はその場に倒れ伏した。

その場の誰のことも理解しようとせず。誰の手も借りようとしないままに、男は偶然に助けられた。
そのことの不満を口にする気力さえ、もう残ってはいない。ゆっくりと、瞳が閉じる。

/おつかれさまでしたー
62 :【崩月真夢】《人間》【有創無奏】 ◆C0h0UWNn2I [saga]:2014/11/02(日) 02:29:05.73 ID:JLIrpk3NO
>>54
「これで………終わり、ね……」

事の顛末を、崩月は地面から眺めていた。結論から言えば、見事希望は絶望に打ち勝ちハッピーエンド……そんなところか。
自分が理性を失って無茶をしたという事はすぐに想像がついた。思えば、あれは唯の幻影だったという事を考えればなんとも馬鹿馬鹿しい話ではないだろうか。
だが、それよりも特筆すべきは魔獣が人間に戻った―――という点だろう。それを見る事になるのはこれで二度目だが、今度は純粋な魔獣の状態から戻ったのだ。

「…………戻るんじゃん、魔獣」

人の希望の光でも見せつけられたような気分である。いや、それこそが月装であり暁月なのであろうが――――
比べて、焔装は絶望の光。その根源には必ず絶望が関わっており、だからこそ魔獣に堕ちる。
光と闇で、自分は後者。でも、もうそうなってしまったのだから仕方がない。後戻りなど、出来やしない。

それよりも、次に湧いてきたのはカグヤに対する激しい怒りの感情。
それも当然、死者を冒涜し、崩月のプライドを崩し、最悪な映像を見せつけたのだから。

「………あいつは、必ず」

ずるずると芋虫のように這いずって、自身の左腕を回収する。
継ぎ接ぎも同然だが、何とか再生できるだろう。次の戦いに向けて、早めに万全な状態へと戻さなければ――――
しかし、暫くはこの地面に転がっている羽目になるのだろうが。

/ありがとうございました!
63 :テュール【2】 ◆1Nq8G.D3xA [sage]:2014/11/02(日) 02:39:02.51 ID:PZKOthZeo
>>56>>59>>60>>62
余りにも都合が良すぎる終わり。その通り。これで彼女は何もかもの力を失って、唯の、一人の人間に戻ってしまう。
戦いの場からは逃げ出して。唯の人間になる。余りにも造作も無く、余りにも無力な、唯の人間になる。
そうして、涙を拭ってくれる人間がすらも手に入れて。彼女は、唯々、普通だった自分へと還っていく事になる。

「――――――――あっ――――――――」

言葉を発しようとしたところで、去っていく三人の姿を視線で追った。二つ。どうしようもない物が見えた。
何か声をかけようとしたけれど、それをするには余りにも遅すぎた。
確かに自分が浸っていたから分かる。あれは―――――――あれは、間違いなく絶望の色だった。
だから彼女はその分も、目の前の頼りがいのある彼女へと向けて。

「……約束、して。私に、出来なかった事。シャーロット、貴方が――――――――」


自分勝手だとは分かっているけれども。
久し振りに、誰かに頼ると言う事をして。



「ごめん、皆、本当に、ごめん」


絶望への引き金を引いてしまったかもしれない誰かの背へと。自分勝手だとは分かっているけれども。
久し振りに、誰かに謝る、と言う事をして。




やがてその剣は。風に吹かれて崩れて消えた。

/うぉぉ絡みありがとうございましたァァァ!!!
64 :エイル ◆Ipx2yTTnb6 [saga]:2014/11/02(日) 02:46:28.40 ID:2mxFDmoC0
>>55>>57>>58>>61
「久良岐、お前何してんだっ!!」

 いきなり味方に斬りかかる久良岐、それと同時に機能を停止する魔獣。
 慌てて駆け寄り――一度に五つもの展開は流石に疲労が溜まった。それだけじゃない、侵攻ですらも、今では分かる。

「ったく……あーもー、てめぇら何もかも押し付けやがって、よ……」

 綺麗に倒れた三つに、息を上がらせて一つがダウン。
 この中で意識があるのはエイルだけになったのだが――。

「だめだ、なーんもわかんねえ、起き上がったら全員に聞いてやるとして……こいつら二人は話した方がいいな。
そんで、医務室に運んで……いや、思いよなあ、救援待ちか?」

 色んな事が頭に浮かぶ、やがて自らも寝転がり、最後に考え付くのは――夜による生じる、自らの事。

「――なーんだ、簡単じゃねーか、なあ。
これだけ使って、他の奴より意識保ててる訳、ないもんな」

 誰にも聞こえない事を確認すれば、理解してしまった全てを声に出す。
 記憶の片隅にいた父と母を思い出してしまった。知らなかった、筈なのに。
 知らなければ、幸せだったかもしれない、のに。

「私=c…もう、限界なんだな」

 
/それでは、こっちもこれで〆ますね……途中トラブルでごめんなさい、ありがとうございました!!  
65 :シャーロット ◆PWPXgddfYg [saga]:2014/11/02(日) 03:05:12.24 ID:bhjU0OB80
>>63

消えていく二つの影を追う陽遥の眼と、詰まった言葉に、シャーロットは恐ろしい確信を得た。
《夜》と人間の戦いが第二フェーズに入った今、《焔装》使いの損耗はこれまで以上に激しくなるだろう。
摩滅した魂は闇に堕ち、その思い残しと異能が魔獣の身に囚われる。

「うん。《夜》の先≠ヨと、あなたを、みんなを連れて行くわ。
 《焔装》使いを助ける道は見えた。なら最後まで戦い続けるのは、《月装(わたし)》の役目だもの」

陽遥を安心させたいと思って、柔らかく微笑む。

取り零すことが怖いからと言って、助けようとしないのは本当の愚か者の行動だ。
死者の上にいることに疲れたから自分も死ぬなら、それ以上の冒涜はない。
喘いで、揺れ動いて、悩みながら研ぎ澄まされてきたシャーロットの意志は、今ここにひとつの完成を見た。

「きっとお天道さまを見ましょう。一人でも沢山の人といっしょに」

――風が、黄金色の髪を揺らす。そのきらめきは、一筋の陽光に似ていた。

/締めておきます! 改めてありがとうございました!
66 :ニルマーナ ◆uUSGl74XoM [sage]:2014/11/02(日) 21:55:25.89 ID:2ABo0QLIo
 旧市街区低階層アパートメント。その残骸を蹴散らすように男はは暴れていた。
 傷痕は残らない。残るのは屈辱と怒り。感情のみがこころに積もる。
 勝利はなく。喜びは去っていく。ワイン壜の底に澱が溜まるようにただ敗北のみが募る。

 手には片手の宝石剣。吼える。吼える。振るう。残骸。散る。空しい感触。

「……なにが残る。この手に! こんなことをして!」

 解っているからこその苛立ち。本物になろうと向かう意思は、宝石ほど硬くはないのだろうか。
 ただ残骸を散らす。

/イベントには参加できそうにないので、お暇な人がいれば23時ぐらいまで待ってます
67 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 22:43:30.14 ID:VNeW/kDP0
>>66
結局、あの現象はなんだったのか
焔装使いらしき人間が夜に堕ち、魔獣へと変わったのにも関わらず、人に戻った
名前は聞けなかったが、あの月装使い……いや、暁月使いがなんらかの手段で戻したようだが
あの力があれば、堕ちた魔獣なら全てを人間へと戻せるのだろうか―――

「…痛ッ」

思考の最中、ただ歩いているだけなのにも関わらず体に激痛が走り、思考を中断する
元々あの時ほとんど死に体だったのだ、動けているだけましだろう
乱雑に巻かれた包帯に少し滲んだ血を見て自嘲気味に笑う
この程度の力でよくもまぁ夜と戦おうと思えたものだ―――聞いたことのある声が聞こえ、ふと視線を前に向けると―――
因縁の相手といっても言い様な魔獣を見つける

「…さぁて、行きますか」

約束もある、自分の中の信念もある
この体でも魔獣を見逃すわけにはいかない―――腰のパーツを手に取り、大剣を組み立てる
相手は片腕を失っている、条件は互角のようなものだろう
そして、後ろから斬りかからんと、魔獣へと駆け出した―――
68 :ニルマーナ ◆uUSGl74XoM [sage]:2014/11/02(日) 22:53:19.90 ID:2ABo0QLIo
>>67
 感じるのはいつも背中。もはや懐かしい、親しみすら覚えるその感覚。
 三度。それだけ交わせばもはやそれは挨拶のようなもの。ニィと笑いニルマーナは振り返る。

「芸がないなあ、人間! 小賢しさも底をついたか!?」

 左腕に握る片手剣は大剣へと変貌した。
 振り上げられ、大剣と大剣がぶつかり衝撃で弾けるようにわずか下がる。
 ビリビリと痺れる左腕。その間をうめるように、宙にナイフを一本作りだしキックでユウトへ跳ね飛ばす。

「こちらも挨拶を返しておこう! エンジンは温めるんだよ!」
69 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 23:07:33.77 ID:VNeW/kDP0
>>68
「ほざけ魔獣!」

これで三度目、攻撃が防がれることなどもはや予定調和だ
片手でこちらの全力と張り合う魔獣の腕力はやはり凄まじい―――
剣と剣とがぶつかり合う衝撃ですら、今の自分にはダメージとなる
そして、近距離で張り合ったなら当然―――

「お前こそ芸がないじゃねぇか!近づかれれば蹴りしか出せないってか!」

当然、前蹴りが来る
何度もくらえばバカでも学ぶ―――素早くその動作を見切り、後ろに跳んでギリギリで蹴りを避ける
ある程度あいた距離、いつも通り馬鹿正直に突っ込めば一分と持たず自分は死ぬ

「さぁ、来いよ魔獣!小細工なんざ捨ててかかってこい!」

剣を構え直し、挑発するように叫ぶ
70 :ニルマーナ ◆uUSGl74XoM [sage]:2014/11/02(日) 23:18:40.34 ID:2ABo0QLIo
>>69
「かかっていくのは構わないが、顔が痛みで歪んだのはどうなの!
 弱っている人間は無茶をして! 背水の陣を敷いたつもりかよ!」

 違和感はある。目の前のユウトは健在ではないと解る。だが出会えば戦うのが人間と魔獣。
 手負いの動物こそがもっとも恐ろしい。完全包囲をしてしまえば特攻もできるのが人間だ。
 それでいい。生物の全力。それを乗り越えればきっと見える。偽物だって、本物を超えられる瞬間が。

「望みどおりにはするがあ! 受けとめられる気でいるってのは間違ってるって訂正するんだよ!」

 宝石は左腕を覆うように、片腕を覆うヴァンブレストと化す。撓む足は爆薬のように、その体を砲弾の如く押し出す。
 振りかぶられる大剣にて上段切り。重量と加速によって斬りつけようとする。
 それだけにして、人間と魔獣の差がもっとも分かりやすい一撃。
71 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/02(日) 23:45:25.70 ID:VNeW/kDP0
>>70
「…あぁ、俺は戦う前からボロボロだよ。逃げ出したくて堪らない
でもなぁ!仲間との約束が、自分の信念が!俺に戦えって叫んでんだよ!」

たとえ、死ぬことになっても逃げるわけにはいかない
だって、こんな怪物を相手にあいつは本当に最後まで戦い抜いたんだから

「お前らみたいな怪物の攻撃をまともに受ける気は更々ねーよ!今は特になぁ!」

相手の片腕が鎧のように覆われる
来るか、どんな攻撃であれ受け流してカウンターを決めてやる
そう、思っていたが―――

「な!?」

距離を一瞬で詰められ、攻撃を受けるしかなくなる
幸いだったのは、上段切りで起動がわかりやすく防ぎやすかったこと
不幸だったのは―――圧倒的なまでの、力の差

「ち、くしょ…!」

あまりの威力に、膝をつく
先日の戦いで入った剣のヒビが、大きくなる
受け止めただけで開いた傷口―――このままでは、死ぬ
腕にエネルギーを纏わせ、爆発的に腕力を高める
剣をなんとか横に押し、その勢いで転がるように剣を避ける

「やっぱ、出し惜しみなんてさせてくれないよなぁ…!」

包帯に、どんどん血が滲んでいく―――一撃をくらうまでもなく、時間経過で死ぬ可能性が出てきた
だが、逃げない、逃げてたまるか
そして、ホルダーから銃を取り出す
きっと、これで暁月は使えなくなるのだろう―――だが、もう構わない
剣と銃が輝きを放ち、姿を弓へと変える

「そろそろ、お前とも決着つけねぇとなぁ
俺が死ぬにしても、お前が死ぬにしてもこれが最後だろ
だから最後にもしも名前があるんだったら教えてくれよ」

静かに見つめ一本の矢を取りだし、放つ
威力は剣の一撃を上回っている
72 :ニルマーナ ◆uUSGl74XoM [saga]:2014/11/03(月) 00:07:28.58 ID:gUH3cL56o
>>71
 軋んだ衝突で転がり、距離を取るユウトは弓を持った。それを見て笑う。人間の本物の勝利への執念。

「そうだ! その人間の力の暁月というものに打ち勝り魔獣はニルマーナと言うんだよ、宝石の!
 剣弓の暁月使いは、墓標に刻む名前ぐらいは残させてやる!」

 必殺の一撃を受けとめる手段は? やはり必死の防御に他ならない。それを超えればきっと――。

「南無三!」

 あるいは横へ跳べば回避できるのかもしれない。だがそれをとどまり、男へ向かって突進。
 ヴァンブレストと大剣。二つを合わせ突撃槍のような分厚い円錐に変化させ突き出すように矢を受けた。
 力を逸らすように斜めに受けた矢はしかし、円錐ごと腕を砕いた。左腕は肘下から砕け散る。

「矢を番える時間まで残させるわけではない!」

 両腕損傷。ならば獣らしく。口に加えるは長剣。それは幻によって、短剣の外観を与えられている。
 紙一重で反撃に転じようとするのなら、残りの刃が切り裂くだろう。それを、頸の力だけでユウトの首を狩らんと振り抜く……!
73 :ユウト ◆39xv3A50ls [sage saga]:2014/11/03(月) 00:22:03.15 ID:+flvEOcb0
>>72
「俺はユウトだ、もしも俺が生きてたらお前の墓くらいは作ってやるよ」

あの矢は、避けさせるつもりだった
避けたところに、全身全霊を込めた一撃を放ち、倒すつもりだった
だが、相手は避けなかった
さらに、残った片腕が砕けたのにもかかわらずこちらに向かってくる
そのことに意表をつかれ、反応が遅れる―――

「まさしく獣だな!だが、まだ俺には切り札がある!」

口に加えられた―――短剣
それが首を狩りとる前に、剣をエネルギー体とした必殺の武器を作り上げ放とうとして―――

「!!!」

この短剣、幻覚だ―――!
それに気づいた時にはもう遅い、首を長剣が切り裂こうとしている
いつもなら紙一重で避けられたかもしれない
だが、この傷で避けるなど、到底不可能だ
放とうとした切り札は、ニルマーナの顔の横を通り抜けていく
ついに、首が切り落とされる
だが、最後までその目は怯えず、ニルマーナを睨んでいた―――



/ありがとうございました!
74 :ニルマーナ ◆uUSGl74XoM [saga]:2014/11/03(月) 00:40:27.75 ID:gUH3cL56o
>>73
 肉と骨を断ち切る感触。すぐそばを通り、巨大さと余波にて頭の半分を削り取っていくヒカリ。
 立ち止まることなど到底できずと倒れ転がりながら笑う。

「大剣の月装使い、ユウトという名前は、ここに刻んでおく!」

 コンクリートを割り地面に突き立つ長剣。その柄に、掘るかのようにユウトの名を刻む。
 片目をじろりと、落ちた首へ向けた。戦士の貌をしている。最後まで、最期まで。

「墓標には充分だろうが。そう睨むな……たった数十秒、オレの勝利を味わう美酒の時間でしょ」

 再生するには時間が必要だ。頭の半分を失って、過ごせる時間ではない。
 暗くなる視界のなか、ずっと戦士の瞳を見ていた。

「ダイヤモンドじゃないが、ジルコニアだって半永久の輝きだ」

 輝く大剣の代わりに、輝く剣を墓に捧げて、ニルマーナは視線で凍り付くように無数の宝石片となり砕け散った。

/ありがとうございました!
75 :アリシア・P・シノット ◆w46sJzDLAPZx [sage saga]:2014/11/03(月) 22:03:53.67 ID:IH6YiwfU0

 彼女は泣いていた。現存する唯一の研究所、彼女がそこに持ち込んだビジネスデスクの上で、腕を組んで机に突っ伏していた。読めない走り書きの残る、無数の書類に埋もれていた。
 彼女は泣いていた。そして、眠っていた。泣き腫らして真っ赤になった目元を隠そうともしないまま、荒い寝息を立てていた。
 
「……ぅ、ぁ……ぃ、ぁっ…………ぅぁ、っ……」

 彼女は悪夢を見ているようだった。作業着と髪の隙間から見える首筋は、粘性の少ない汗でぐっしょりと濡れていた。
 引っ切り無しに口から漏れる呻きは、嗚咽に似ていた。まるで、両親に酷く叱られた子供が溢すような声色だった。
 彼女は泣いていた。彼女は、全てに於いて無力だったから。

「…………めん、なさいっ……」

 小さく、また彼女は呻いた。
 この研究所に帰り、時雨の安否を確認してすぐに、彼女はこの机に縋るように倒れ込んだ。
 以来、彼女は飲まず食わずで泣き通しだった――酷く痩せきったその体は、さらに細くなっているようだった。
 研究所に時雨はいるだろうか。或いは、誰か来訪者はいるだろうか。もしも後者がいるのならば、研究所の入り口にはそれを伝える手段があった。
76 :アリシア・P・シノット ◆w46sJzDLAPZx [sage]:2014/11/04(火) 21:02:00.80 ID:/GsJTutN0
/>>75でもう一度ばかしっ……。
77 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(SSL) :2014/11/06(木) 22:08:15.83 ID:Y51III8T0
78 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs [sage]:2014/11/07(金) 21:34:35.28 ID:HP4rD1qyO
───とあるビル群。
奴は立っていた。待っていた。とある人間達を。

「────────」

分かっていた。遺そうとして努力していたが、とうとうその時期を迎えるかもしれないと何処かで予期していたが、どうやらそうかもしれない。
だからこそ、ここまで「笑える」のだろうか。

「─────そろそろ来るな」

分かりやすい様にビルの上に立ち、周りを見渡す。まだ奴等は来ていないようだ。
手に持つ資料はスカヤが「心」を取り戻してから集めた「魔獣」についての資料。そして魔獣になった事での影響が詳しく書かれているだろう。

「待っていた、とうとう俺は「遺す」事が出来る」

//よろしくお願いしますー
79 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/07(金) 21:49:33.82 ID:Ff7RVrPVo
>>78

「聞きたいことがある」

糊の利いた礼装はいつになく整っていた。袖口から裾に至るまで汚れ一つなく、すらりとした立ち姿は劇役者のよう。
打ち棄てられた廃ビルの中、彼だけが浮いていた。瞳に満ちるのは今に対する抵抗ではなく、過去に対する執着。

「街に入る手引きでも、自治会への攻撃でも、何でもしてやる」

魔獣の立つビルの下から、タキシードの男が見上げる形。朗々とした声が、冷たい空に響き渡る。

「答えろ。夜とは何だ。空の上には、何がある」

既に愛用の短刀は引き抜かれている。左手に鞘、右手に刃。
周囲に満ちる黒い霧は、久良岐の臨戦態勢を象徴する。
80 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/07(金) 21:56:50.64 ID:m8IxKw0r0
>>78>>79
男もまた、その舞台に立った。名はミュルサドという。
全身を襤褸の格好で包み、その顔には無精髭。

いつも通り人なつこい笑みを浮かべるその瞳は、普段の金色ではなく焔装発動時の炎色が既に透けている。
「あの」ヒメノカグヤの一戦以降、この状態が続いていた。
足下にまとわりつく「死」の感触を思い出すたびに、何の機構が働くのか自分の意に添わない焔装の発動が多くなった。

魔獣と相対するという、幾度となく行ってきた行動。
何も恐れる事は無い――そう自分に言い聞かせると、渋々というよう体内の焔装が力を弱めて行く。
金色の瞳に先に着いていた久良岐とスカヤの姿を納め、あっけらかんと言った。

「待ったまった。そいつは俺としても気になるところだが、自治会云々や侵入の手引き不味いじゃないの、お前さん」
「そんな喧嘩腰にならないでも良いじゃないか、何か喋りたそうにしてるんだから、な?」

一人だけ陽気な雰囲気で話を進めようとする物の、やはりスカヤの言葉は気になるようで。

「まあ、じっくり話そうや。何を残してくれるって?―魔獣の兄さんよぅ」
81 :【2】ヘルパー [saga]:2014/11/07(金) 21:57:25.47 ID:mK7XTK3T0
幾千に転がる瓦礫の山。荒廃を視覚で表す惨状。
その状況で 明確に 敵と認識できる物は降臨していた。

 「……ああ、そうか」

その見た目は人間だった。 何処に目をやっても人であり、その姿を保っていた。
一つ違う事があるとすれば、片目が髪でおおわれ、その物から明確に魔獣としての気迫がある事。

 「――夜が降りたのか」

空けぬ空を朧な視界へと移り混ませれば、その静かな声は闇夜に響いた。

/2番のヘルパーです! お願いします!!
82 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/07(金) 22:06:45.04 ID:HP4rD1qyO
>>79
「俺も《夜》に関しては最後まで知る事が出来なかった、すまないな」
「所詮魔獣の端くれには、知らせてくれない禁則事項だったのかもしれんな……」

久良岐の質問に答える。スカヤも自分を魔獣にした、《夜》の存在を掴もうとしたが「全く」分からなかった。まるで「何も無い」ように資料が残されていなかった。

「俺もこればかりは心残りだ……お前等が見つける事を祈ってるよ」

皮肉る様に呟き、空を見上げる。相変わらず、何も映さない闇ばかりが覆っていた。

「まァ…あるとするならば、綺麗な星や月じゃないのか?」
「こんなメルヘンを言うなんて随分と阿呆になっているのかもしれんな」

>>80
「よォ───初めましてか、人間?」
「焔装の長時間運用は身体に負担がかかる、あまりお勧めは出来んなァ」

ミュルサドの徐々に戻る瞳の色を観察し、奴も「焔装使い」だと認識する。
今回集めたのはどちらも「焔装使い」。嘗て「焔装使い」であったスカヤはその資料ともうひとつ、「焔装」の使用についても何か言いたいそうだ。

「「残す」?……違うね、「遺す」んだよ」
「俺も分かるんだよ、魔獣の寿命って奴がよ」
「ああ…せめて、《夜》に一つ泡を食わせてやりたかったぜ」

そして、彼等2人の前に降り立つ。まだ「変身」はしていない。

「それで…だ。君達頭の良い焔装使いに俺の体験談でも渡してやろうと思ってね…」
「君達もいつか来るかもしれない…来て欲しくはないが、魔獣化についての話だ」

そして渡す。スカヤが本能と戦い、刺激しない様隠れに隠れて綴った「資料」を2人に「遺した」。
83 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/07(金) 22:10:27.48 ID:MDmNxN7G0
>>81
一歩、瓦礫を踏みしめる音が夜に響く。
現るは少女。骨のように細い四肢一つで、魔獣の眼前に立っていた。

「・・・・・・夜は明けるの。お前達魔獣の死を持って」

なんて強く出るのは台詞だけ。
少女の手足は震えて、明らかにおびえていた。
それでも少女は戦わなければ成らなかった。戦うことだけが、自分が生きる方法だから。

「だ、だから・・・・・・吐いて貰う。お前が知ってるもの、全部!」

まっすぐ伸びた人差し指を魔獣に向ける。
蛍光色の光が一閃、少女の指先から光糸が伸び、魔獣を狙った。

//よろしくですー
84 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/07(金) 22:27:14.35 ID:Ff7RVrPVo
>>80 >>82

「信用ならないな。魔獣の言葉など。そして、初対面の人間もだ」

矛盾している。本当に信用していないなら問うことに意味は無い。答えを待つ必要も無い。

ヒメノカグヤに見せられた悪夢以来、久良岐の心は揺れたままだ。
形にならない想念が己を暴力的に突き動かす。瞬き、煌き、焼け付くそれは――なるほど焔の名を冠するにふさわしい。
彼が生きるために必要なものでありながら、彼を内から壊していく。

「だがその言葉は聞き捨てならない。魔獣の寿命だと? 魔獣はエネルギーの補給無しで生存できる存在ではなかったのか。
寿命があるなら、あの子はどうなる。死ぬのか? もう既に一度死んでいるというのに、また死の苦しみを味わう羽目になるのか?」

「知らせてくれない、ということは、何らかの情報を与えた上位存在がいるのか?」
「お前はどういう状態にある? 利害の一致の結果としてなら魔獣と手を組める可能性は感じたが、お前は……いったい」

霧はただ周囲に漂っているだけ。何も奪うことなく、重みを感じさせることもなく、その場に満ちている。
今にも決壊しそうな炎を、薄氷が覆った偽りの冷静さ。今にも当たり散らしたい思いを閉じ込めて、少しでも情報を引き出そうと言葉を続ける。
全てに答えてくれるとは彼自身も期待していないが、出来得る限りのことは聞いておきたい。勝てるとは限らない。途中で撤退を余儀なくされる可能性もある。

――途中で戦いを切り止める選択を視野に入れる程度に、今の久良岐は冷静だ。

短刀を構えたまま不動。自分からは仕掛けず、霧から感じる力の流動に集中する構えは彼本来のもの。
限界寸前で稼働する焔装と、落ち着いて戦いに向き合う精神とが、奇跡的な均衡を保っている。
85 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/07(金) 22:31:12.75 ID:h2AiqgxhO
>>81 >>84

「くく、やぁ魔獣… 酒でも一杯どうだ? 美味いぞ」

フラフラと覚束ない足取りで魔獣の前に姿を現す この少女は泥酔していた
魔獣を前にしてこの堕落した態度 少女の中には恐れなど微塵もない
身につけている物が純白に染まり 全身に蒼いラインが走る
周囲を冷気が包み込む中 あっけらかんと笑って酒瓶を口に運んだ

「あぁ…美味い。やはり酒は最高だ」


86 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/07(金) 22:31:35.63 ID:h2AiqgxhO
//よろしくお願いしますー
87 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/07(金) 22:40:05.39 ID:m8IxKw0r0
>>82>>84

「ああ、初めましてだ、魔獣の兄さん。 俺はミュルサドって言うんだ、宜しくな」
少し間を空けて、宜しくは違うな、と頭を掻きつつ呟く。
「ま、それはそれとしてその口ぶり――魔獣にも寿命があるって言うのか?」
「それに俺は魔獣ってのは夜に絶対服従の生き物だと……」

一泡吹かせてやりたい、そんな事を口にしたのだ。それは晴天の霹靂に等しい衝撃だった。
そして、久良岐の言葉に肩をすくめつつも、真っ向から切り掛からないその冷静さに安堵する。
ひやりとする空気感―いつバランスを崩してもおかしくない綱渡りを
見ているかのよう、それが今の彼への率直な感想だった。

「使いすぎは体に良くない、聴いてはいるんだがね」
この瞬間にも、滔々とこの身を流れる血が熱を求めているのを感じる。
「あんたも元々は焔装使いだったのか……」
体験談。つまりそれは、彼が以前こちら側に―人の側に立ちながらも、夜に墜ちて行った存在だと言う事だろう。
それはつまり、人間としての「死」だ。その未来を一瞬想像しかけ――踏みとどまる。
死を思うたびに、血液が燃焼を始めようと暴れる。
「っと、なんだ?」
突然目の前に降り立ったスカヤから、紙の束―だろうか、手書きのそれを受け取り、目を走らせようとする。
さて、その内容は―――?
88 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/07(金) 22:44:24.78 ID:HP4rD1qyO
>>84

「まあ、信用ならないならそれでいい」
「俺は滅びて、それで終わりだ」

「寿命か、いや生きようと思えば生きられるさ、それはお前の見解で合っている」
「だが、俺の精神が許さないんだよ、魔獣で有り続ける事に」

素直に魔獣に徹していれば、生死などに縛られるはずはない。ただ破壊し、雄叫びを上げる獣に過ぎない。
ただし。獣に知能が、人間が宿ったら。
それは────世界が認めるわけでは無いだろう。

「イレギュラーになってしまった以上、俺は徐々に追放されつつある」
「はっきり言って中身人間の魔獣なんかこの世界には「求められていない」、そして俺は《夜》に「干渉」できない」

スカヤの手から、「砂」が落ちる。
それを見て、少し苦い顔を表す。

「だから、間に合わないのさ……全てを解決するまで時間が、ない」
89 :【2】ヘルパー [saga]:2014/11/07(金) 22:46:41.63 ID:mK7XTK3T0
>>83
 「――違うな、ああ、違うね」

なけなしの勇気と評価するのが好意的だろうか。
怯えを拭うように出した答えは、悠然とした一言に消される。
そこには確固とした自信があって、しかし威圧を感じるほど、敵意がある訳ではなかった。

 「堕ちるのも楽しいが、分からないか」

光の糸が伸びていく、それを見つめて自らの寸での所まで眺めた後に、僅かに体を反らして流した。

>>85
 「……人間――俺もそうだったが……君達はいつ最後の瞬間が訪れるかもわからない身だぞ?」
 「次の瞬間かもしれない。少なくとも今はその可能性を感じるべきだ。そんな情けない顔で死ぬつもりか?」

呆れたように溜息を零し、シャイナの方へと体を向ければ、地を蹴り距離を詰める。
僅かな瓦礫を砂埃として舞わせながら、どてっぱらに拳を叩きこもうと一撃を放つ。
90 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/07(金) 22:59:37.77 ID:6y5S9c7n0
>>87

「おう……その身に感じる「絶望」は今まで感じた苦痛の全てよりも苦しく、そして「安らか」だったな」
「まるで今までの縛りから「解かれる」ように……おかげで暫く記憶は思い出せなくなって、「獣」に成り下がったが」

渡した資料の一部を話す。
その内容は主観的な意見が多く、信憑性があるかと言えば分からないが、人間側にとって貴重な資料になるだろう。

「あともう一つこの身を賭けて教えたいものがある───」

そしてローブを脱ぎ、筋骨隆々の身体が露わになり……そして「変身」した。

「悪りいな、最後まで我儘に付き合わせてもらおう」
「君達が戦うのは俺よりはるかに強い《夜》」
「それを倒すならば、俺を倒すまで強い者でなければ死ぬに死にきれない」

既に身体から「砂」が零れ始めている。スカヤが現界していられるのも───長くはない

「だから最後のお願いをしておこう、この「スカヤ」……いや、人間であった時では「タカヤ」だったか」
「勝負しろ、この俺と勝負し、そして《夜》を倒す糧にしておけ!」

全身にその雄叫びに同調するように電流が走る。
それはまるで最後の輝きを見せる恒星のようでもあった。
91 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/07(金) 23:00:35.57 ID:Ff7RVrPVo
>>87 >>88

「人と理解し合える魔獣がいないのではなく、そうなった魔獣が消えていた……?」

これまで一度も考えてみたことも無かった。
たとえ姿が変わっていても、その上心まで変わっていたとしても、彼女となら分かり合えると盲信していたから――
自分と彼女だけは特別で、世界に関係無く永遠だという幻想。それが、この逆転の発想から自然と目を背けさせていた。

「お前が《夜》に干渉できない――なら、《夜》に手が届けば、その法則は変えられるんだろう?」

スカヤの手から零れていく砂は、きっとその言葉が真実である何よりの証。
霧を通して力の流れを読み取れる久良岐は、ぼんやりとその現象を理解する。

この事実はもっと自身にとって衝撃的なはずなのに、自然とそれを受け入れていた。
数多の理不尽を燃料に決意はなおもって燃え上がる。


「おい、ミュルなんとか。《夜》に挑む覚悟はあるか?」

一人では届かないことくらいは分かっている。残った人類が全員束になっても。目の前のイレギュラーが力を貸してくれても。
《夜》はなおもって遥か天上にある存在。だが、彼は目的に進む最善の方法を考えるだけだ。今までずっと、そう生きてきた。
92 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/07(金) 23:01:40.43 ID:MDmNxN7G0
>>85
(・・・・・・戦う気、ないの?)

味方らしき少女の足取りはおぼつかず、完全な酔っ払い。
それでいてさらに酒を飲み、敵にすら酒を勧めやがる。
一応能力はあるようだが、正直頼りになるとは思えない

(私一人で、やらなきゃ・・・・・・)

少女は決心を胸に、また魔獣を見つめる
>>89
「違う?・・・・・・何が違うの!?」

魔獣特有の殺気、それすら感じられない人型の魔獣。
気配は確かに魔獣なのだが、この魔獣は敵なのか。そんな考えが浮かび始め
少女は伸ばした光糸を手元に戻す。

「墜ちる・・・・・・人間・・・・・・まさか
 あなたは元焔装使い、なの?」

相手は人間だったことを自覚している魔獣。それならば本当に敵ではないのかも知れない
そう思ったのもつかの間、魔獣は酔っ払った少女に対し拳を放つ

「結局っ、敵なのね!」

ぎりりと歯をきしませ、少女は覚悟を決める。
魔獣となっても人間の姿と思考を保っていられるなら――そう考えた自分が甘かった
三本の光糸を足元の瓦礫のさらにその下、狼形の魔獣三体に接続
そしてその三体は瓦礫を飛ばして起き上がり、魔獣の首に牙を、腹に爪を、胸に脚を繰り出す
93 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/07(金) 23:13:08.31 ID:6y5S9c7n0
>>91

「世界は修正されるのさ、人間と魔獣は必ずしも対立せねばならない」

「変身」を終えたスカヤが久良岐達の方へ歩みを進める。

「だがもし───もし、君達が《夜》を「[ピーーー]」のならば」
「その前に、やる事、あるんじゃあないのか?」

辺りに散らす火花。恐らく強い電流による作用であろう。散らした本人の身体は甲虫のように鈍い光を照らしていた。

「君達は良い選択をしている……そうだ、何時も化け物を倒すのは人間なんだ、俺じゃない」
「立ち向かえる程の…その実力が向上出来るよう、俺は君達と勝負したい」
「俺も人間の精神に戻って「初めて」変身したが…悪くはない」

さて、やろうか。
この合図を持って、世界は廻り始める。再び「魔獣」と「人間」は対立した。
雄叫びと共に、スカヤは2人と対峙した。
94 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/07(金) 23:21:11.25 ID:m8IxKw0r0
>>90>>91>>93
「こいつは貴重だ、ありがたく貰っておこう」
ひゅうと口笛を一吹き。
そして、スカヤの願い―久良岐の呼びかけ。
そして―彼のおそらく最後の変身。

「ミュルサドだって言ってんだろ、名乗りもしないやつめ」
に、と口角を更につり上げる。
その瞬間、常夜のビル街を吹き抜ける冷たい風が、熱風に変わる――!

「ああ、仕方ねぇな」
炎色の瞳を以て、その威容を捉える。
上半身を包んでいたボロボロの外套にタカヤの『遺した』ものをつつみ、少しだけ遠くに投げた。
あらわになった上半身は、古傷まみれの褐色。その腹から、胴間声が夜を奔る。
それは、いつか宝石の魔獣に言われた名だった。
「俺は『太陽の血炎』のミュルサド!乗り越えさせてもらうぞ――タカヤッ!」

右手の平から輝くような焔の色をした液体が流れ出す。
これが『太陽の血炎』の由来たる、太陽のような温度の燃える血液だ。

それはただ流れ出すのではなく、意思もつかの様に溢れ、一本の長剣じみた形になって固まり、それを両手に構える。
形だけではなく、切れ味も強度も在る、更には温度も失われていない。

夜を切り裂く太陽の、紅い輝きがそこにあった。
95 :シャイナ ◆33B37h/HCM :2014/11/07(金) 23:24:33.48 ID:h2AiqgxhO
>>89 >>92

「最後の瞬間だと?くくくっ、あり得んな 私は 私達は死なぬ 我々人間は絶対に勝つからな」

パリン 酒瓶が地に落ちて音が響き 琥珀色の液体が広がり周囲に 匂いを漂わせる
右腕を魔獣に向けると 氷の盾が作られ魔獣の拳を防ぐ
だがやはり力が違う 直撃こそ防いだものの 呆気なく吹き飛ばされるて無様に地面を転がる
吹き飛ばされる中 左腕から氷で作られた矢が三本 魔獣の頭部に向けて放たれた

「ぐぐっ、やるじゃないか…流石は魔獣だな だが 私を舐めるな!」



96 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs [sage]:2014/11/07(金) 23:37:20.98 ID:6y5S9c7n0
>>94
「フン、確かに死期は近い、が────」

鍛え抜かれた四肢は未だ衰えず、大きく屈伸して、構える。
流れる電流は抑えきれず、至る所に飛び散る。

「知力を得た魔獣は君達が出会った魔獣達よりも……少々厄介かもしれないぞ?」

真っ直ぐ見据え、口元を緩ませる。
その顔は、「魔獣」が見せる嫌味な笑顔では無く、嘗て「焔装使い」として戦った自信ある顔がそこにあった。

「─────ついてこれるか、人間?」

その刹那、スカヤは「飛蝗」の如き跳躍力でミュルサドに近づき、雷撃の籠った蹴りが放つ────!
数百Vもあるその電撃は蹴りの衝撃と共にミュルサドの持つ「炎剣」ごと打ち砕かんと遅いかかる!

97 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/07(金) 23:40:18.91 ID:Ff7RVrPVo
>>93 >>94

「化け物退治とか、世界の打破だとか、どれも俺には過ぎた話だ。
だがそれしか道が無いなら、ついでにやってやるさ。どんな手段を使っても、な……」

スカヤの燐光。ミュルサドの陽光。二人が戦いに向けて輝くのとは対照的に、久良岐が操るのは闇。
既に展開された夜色の靄が一層深みを増す。二者の光と競うように霧が広がっていく。

「敵も味方も光源を持っているなら都合が良い。俺だけが隠れられる」

純白のタキシードは二人の光を受けて一度鮮やかな光沢を見せ、そして霧の中に消えていく。

霧の中でも炎は紅く、はっきりとした熱と光で戦場を切り裂き、十分な視界を確保することだろう。
ミュルサドに対する返答が無いのは、戦士としての彼を信用しているからというのもある。
一度視界の隅にミュルサドの笑みを捉えてから、スカヤのいる方に向き直る。

「技を競うなら先手を取るべきだが、気持ちの問題なら先に動いた方が負けだと……そう諭されたことがあった。
 来いよ、魔獣。これは、そういう戦いだろう? なあ」

宣言の後に一歩。まずはスカヤの後ろを取ることをめざし、霧の中で動き出す。
落ち着いて。想いの丈の分だけ静かに。最小限の焔装行使で戦い切るだけの技術は、既に彼の手にあるはずだ。
98 :【2】ヘルパー [saga]:2014/11/07(金) 23:41:20.78 ID:mK7XTK3T0
>>92>>95
 「――空が堕ちる」

魔獣が告げる一言は漠然と、確固として一つの意味があるとは思えない程可能性の択を広げていた。

 「間もなく空と地は一つとなり、全てが始まり全てが終わる」
 「戯言と受け取るかどうかは君の自由だが……そうだな、君は夜が明ける為にといったが」

吹き飛ぶシャイナ。しかしただでは終わらなかったようだ。
そこから飛び出すのは三本の氷矢。しかし、魔獣がそれに手で触れる――。

 「その自信は何処から来るのか、空の全てを見渡せるのか?」

――ぱりん、と崩れ落ちる。
それは力でも、防御でもない。触れた瞬間、力を失ったように崩れ落ちた。

 「ただ、言葉が通じるだけで、俺を敵とすら思わない」
 「刹那の時すら支配できぬ君達に何ができる? 答えを示せるのか?」

三体の魔獣の攻撃を潜り抜ける。しゃがみこみ、体を反らし、足を蹴り、跳躍。
三体の魔獣の背後を取れば、つながり光の糸へと触れる――触れれば、またしてもぱりん、と糸が割れる。
まるで異能でも消し去っているかのように。

 「俺が人間だったらどうする? 次は君の手順かもしれないぞ?」

そのまま、今度は舞へと距離を詰める。間合いに入れば、かますのは回し蹴り、横っ腹を蹴り飛ばそうとするだろう。
99 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/07(金) 23:44:05.89 ID:Ff7RVrPVo
/すいません 確認不足でした
/>>97は結局霧に隠れつつスカヤの後背に回り込もうとしているだけなので、その扱いで
/スカヤ→久良岐・ミュルサド(順不同)進行で了解です。この周の私の分は>>97ということで、ミュルサドさんの返しが来たら進めちゃってください
100 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/07(金) 23:57:53.05 ID:m8IxKw0r0

「っっづぇらァ!」

バチリと弾ける電光。そして、やはり魔獣―獣じみた身体能力は感嘆に値する。
その一条一条を見極める―可能としているのは巡る焔の恩恵。
バネのように跳ねたタカヤは背負った夜に映える稲妻を内包した蹴りだ。
しかし、ミュルサドは一歩も退かない。
そして、こちらも獣じみた動きでもって、その蹴撃を弾かんと刃の腹を叩き付ける。

あたかも金属同士が激突したかのような轟音が響き渡る。
剣は折れていない。幻想の物質たる凝固した焔は砕ける事の無い性質を持っていた。
しかし、それを持つ人間の体は大きく吹き飛ばされている。
いくら焔によって強化された身体能力をもつとて、質量の問題は解決出来ない。
後ろへ弾かれ―なんとか足を付けて着地する。

「ああ。着いて行くどころか追い越すって言ったろう、魔獣」
「俺の幻想(ユメ)を嘗めるな」

爆発するかのような勢いで、今度はこちらからタカヤに向かって行く。
そして、袈裟に両断せんと、右上から炎剣を振るう――

タカヤの後ろに、霧のような闇が蟠る機を待ちながら。
視線を送るようなヘマはしないが―ミュルサドはどれだけタカヤの目を引きつけられるのか。
101 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/07(金) 23:59:05.68 ID:MDmNxN7G0
>>98>>92
空が墜ちる―――あまりに漠然とした言葉だが
先日、文字通りに空から墜ちてきたヒメノカグヤの存在。
それを考えれば、結局は漠然としたままなのだが、言葉の意味はなんとなく伝わる。
だがそんなことは続く魔獣の台詞によってどうでもよくなってしまう。

次は自分の順番かも知れない、その言葉が少女の思考を埋め尽くし

「―――うるさいっ!!魔獣がっ、喋るなぁあっ!!」

必死に考えないようにしてきたこと。必死に頭から消し去っていたこと。
それを言葉にされると全ての思考が吹き飛んで、冷静さは消えてなくなる。
怒号と共に飛ぶのは無数の瓦礫。少女の放つ光糸は鋼鉄並みの強度を持ち、簡単に壊れるものではない。
ならば先ほど光糸が消されたのは物理的でない手段なのだろう。触れたものを消滅させるとか、おそらくそんな風な能力で。
だったら触れて消せないほどの物量でせめてやればいい。十本の光糸を高速で動かし、ありったけの瓦礫を魔獣にぶつける

「何ができるじゃない、やるんだ
 でないと私は・・・・・・どうしようもないんだ」

攻撃の勢いとは真反対の、弱弱しい、どこか諦めにも似た言葉
>>92
魔獣へと飛ぶ無数の瓦礫はシャイナにとって邪魔になるだろう
が、少女の暁月であればこの瓦礫をさらなる攻撃手段へ消化させることもできるはず
102 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/07(金) 23:59:30.90 ID:m8IxKw0r0
//あ、安価忘れてました…>>96>>97宛です
103 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs [sage]:2014/11/08(土) 00:07:19.15 ID:CINkR8+S0
>>100>>97

「その意気や良し、勝つならばどのような方法を用いても勝て!」
「たとえそれがどれだけ無様でもッ!人間には勝つ理由があり、未来を得る権利がある!」

決してスカヤは久良岐の戦法に非難をすることはなかった。生前でも彼は久良岐のような戦い方はしなかったが、どの戦い方も必ず「生きる希望」を見出せていた。
自分の持つ「絶望」への戦い方では決して《夜》には勝てるわけがない。

「だが、魔獣を甘く見過ぎだ!」
「それとも、今まで楽な奴等と戦ってきたのか!?」

スカヤはミュルサドに蹴りを放つと共に、全身から電気を放射する。
一点に集中しない電気の為、幾分か電力は下がるが、それでも人間を痺れさせる事の出来る威力だ。

「お前が何処に隠れようとも、背後の一撃で斃れるほど、見くびられても困る!」

全方位電撃放射。360°全てに撒き散らす電撃は例え「霧」で隠れようとも、何かしらの防御策が無い限り、当たるのかもしれない。

「いつか真正面から戦わなくてはならない、そんな時が来た時に反応が出来ないようでは、《夜》に勝とうだなんて思うなよ?」

そしてミュルサドを見据える。彼の一撃は
まさしく重い一撃だった。だが───魔獣の中ではその程度の判断に過ぎない。

「ミュルサドとやら、無闇に剣を振るうはかえって自身にダメージを与えかねない……次は刃を考えて繰り出せ!」

そして全身から電気を発しながらミュルサドへ近づく。剣には剣を。昆虫らしい「剣」を。

「─────────シッ!!」

短い息継ぎと一緒に放つのは「蟷螂」の如き刃。
手刀と化した右腕はそのままミュルサドの左肩へ振り下ろされる。そのギザギザとした刃は再びくっつけられないほどの組織をズタズタにしかね無いほどギラギラと煌めいていた。



104 :【2】ヘルパー [saga]:2014/11/08(土) 00:16:13.80 ID:KfV7p/FJ0
>>101
 「刹那すら支配できぬ戯れに、一刻を超えられる筈もなし、か」
 
喚くような一言に、透かした態度で返事を返す。
たった一言紡いだだけで、その堅い意志は揺らいで消える。
口に出すは堅い意思。しかし想いは低く弱く、重圧に潰れそうな程、儚い蛍の輝きのように――魔獣には見えた。

 「――つまり、空を倒し、超えるというのだな?」
 「なら、俺くらいには勝てるだろう? 一人でもな」

迫りくる瓦礫。それらが全て均一の速さで来る事はないだろう。
テンポの遅れた瓦礫の合間に滑り込み、光糸を手で触れる。
割れる音と共に制御を失った瓦礫は、そのまま落ちるだろう。
一部分だけ開いた隙、そこめがけて迫りくる瓦礫を受け流しつつ、致命傷を避けて前に進む。
身体に付着する砂埃とすり切れるような痣と血液。しかしそれにも体を止めず、今度こそ距離を詰めて――今度は腹部へ向けて膝を叩きこまんとする
105 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/08(土) 00:26:39.66 ID:w7wLXKzFo
>>100 >>103

あと一歩で短刀の間合いに入る距離。スカヤのすぐ後ろまで近づいたところで全方位の電撃が奔る。
霧を通した事前察知により、電撃と共に飛ぶ火花さえ久良岐に掠ることは無いが、
あと一歩まで迫っておきながら飛び退くことになり、ミュルサドとの同時攻撃のチャンスを逃す。

「だが電撃なら理解の範疇だ。全身から出ているのなら、その動きの一挙手一投足に至るまで読める」

ミュルサドに向かって近づいていくスカヤを後ろから追う。
電力の流れ、甲殻に包まれた身体の躍動。その力の行く先、次の動作を予測する。

「左肩だ。かわせ!」

声は間に合わない。理解し、一手読み、それを声にした時点で既にスカヤの動作は半ば終わっている。
身体動作よりよほど早いはずの音でさえ、手刀の速度に追いつけていない。

だがスカヤが攻撃を行う瞬間に、久良岐もまた攻撃を行う。
手に持った短刀をスカヤに向かって投擲。黒く染まった刃は霧の黒の溶け込み、叫びと同時に投げられた短刀は音からの察知も困難。
力を奪う霧を宿した刃がスカヤの背に襲い掛かる。

全身から爆ぜる電流は、こちらの位置が分かっていない証拠。なら、十分な隠蔽を施した攻撃は悟れないはず――!
一手目で唯一の武器を手放す選択には、それなりの勝算がある。
106 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/08(土) 00:29:03.46 ID:X1ri90z40
>>103
「考えてるよ―今のところはな」

いままでのにやけた面とは意味合いの違う―不敵な笑み。電撃を受け、身体に痛みとともにしびれが奔る。
そして、振り抜いた炎剣を取り落とす―それは痺れによって落としたように見えたかもしれない。
思惑があった。一手、初撃だからこそ出来る不意打ち。

頭上に蟷螂の刃が迫る――
久良岐の警告する声が聞こえる。―――判ってるさ。
そして、今こそミュルサドの焔装、その真価が発現する。
「幻熾逆(さかしま)」

その一言で、弾けるように液体と化す炎剣だったもの。
それが地面に落ちるでも無く滞空したのは、刹那の時間。
その間にミュルサドは大きく後ろへ跳躍しながら、思念にてそのスイッチを押した。
―――爆ぜろ、と。

「剣で対応してくれようとしたのに悪かったな、こっちは剣術なんて知らないもんでね」
彼の炎血は、個体として固める事も出来るが液体に戻す事によって高威力の爆発を引き起こす。

近接戦闘向きの能力として今まで戦ってきた男だが、ここに来て奥の手とも言える技を繰り出した。さて、その効果はいかほどだっただろうか。
107 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/08(土) 00:29:42.78 ID:OPviN8Po0
>>104
考えなしに繰り出された無数の瓦礫は自信の視界すらさえぎっていた。
瓦礫で埋まっていた視界に魔獣が現れたときはもう遅く、後方に逃げようと脚に力を入れたその瞬間
魔獣のひざは既にやせた腹にめり込んでおり

「あぎっ・・・・・・がっ・・・・・・ああぁ・・・・・・」

あっけも無く、吹き飛ぶ。
肉の無い体は衝撃を吸収することができず、内臓に直接衝撃が襲い、息ができなくなる。
呼吸の変わりに漏れるのは血。潰れたはらわたから血が込み上げ、どろりと少女の口から溢れ出す。
酔っ払いでも誰でもいい。助けて欲しい、涙を流してそう願い、辺りを見回すがいつの間にか少女はいない。
嗚呼―――一人とは、そういうことか

少女がここまで追い詰められたのは初めてだった。一人の時は雑魚の魔獣を一撃で潰すことしかしてこなかったから。
あれほど語っていた堅い意思はぼろぼろに崩れて落ち、強い言葉はもうでてこない。
代わりに助けて、助けてとかすかな声が漏れるだけ。
少女に戦闘の意思は無かった。否、握りつぶされてしまった。
もし戦闘の意思が残っているのなら、無様に這いずり、必死に逃げようとする姿など晒すわけがない
108 :【2】ヘルパー [saga]:2014/11/08(土) 00:40:24.64 ID:KfV7p/FJ0
>>107
――コツ、コツ――
吹き飛んだ舞へと歩みを進める、魔獣。
それは死刑宣告にも思えるかもしれない。歩いてくる断頭台に思われるだろうか、なんて魔獣は思いながら歩みを進める。
そこに映るのは、必死になって逃げようとする人の姿。這いずり回って、逃げきれる訳もないのに、逃げようとする姿。
戦意は感じられない。そこには明日を願う永遠だけ。

 「――これが差だ。一人のではない。全ての、全体の差」
 「超えたいか? 空が欲しいか――覚えておけ」
 「そこには力しかない。上回れば終わりだ。俺なんかより、遥かに高みだがな」

それだけ告げて、魔獣はその場から去る。
焔装使いは敵。この場で殺すのが常なのだろう。息の根を占めるのが答えなのだろう。
――しかし、一人消して何になる? ここで一人葬って、これが瞬きしか埋めぬのなら、屠る意味すらない。
全ての夜の龍の手に、それに比べれば俺も、あいつも――そう、石ころ同然なのだから。
109 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/08(土) 00:43:37.99 ID:CINkR8+S0
>>105-106

「……ほう、その能力はそこまで使えるのか」
「俺の知る焔装は皆手放して使える物では無かったからな」

刺さった。ナイフは間違いなくスカヤの脇腹に、極めて静かに刺さった。

「グッ───────!?」

途端に電気を「奪われた」気がしたが、それも一瞬。
そして見事なコンビネーションによるミュルサドの爆撃も何も防御出来ずに食らってしまった。


「────────SHIT」


思わず汚い言葉が漏れる。ここまで強い人間のタッグと戦うのはスカヤも初めて体験する。


「ならば……昆虫の真髄、見せつけようぞ」


零れていく「砂」を止めること無く、また次の戦術を見出す。
頭頂部から生える「触角」。五感以上に敏感で、鋭い感覚を持つ器官を生やす。
肩から生える「第二の腕」。昆虫故に足は「6本」ある、そして残りの「2本の腕」を露わにする。


「これからはこの、触角で相手しよう」

こちらが読み取るは「空気」、最早視覚や聴覚にも頼らない、「空気の流れ」だ。
これならば、「霧に動くモノ」も読み取る事ができる。

だが、まずは「ミュルサド」。奴を倒さねば。
そして向き合う、ミュルサドの方向へ。

「さあ……行くぞ」

左右の腕には「鍬形」の顎の如き鋭い爪を生やし、頭部には「甲虫」の如き角が生やしながら一気に近づく。

「まずは手数勝負だ─────!」

四本の腕から織りなす数比べ(ラッシュ)。その速度は今までの何倍も早く、鋭い。

まだ、久良岐には注意こそ払っているが、相手にしていない分動けるだろう。
ミュルサドは、彼のラッシュに何処まで追いつけるか─────!
110 :霧桐 舞 ◆B9EHjUGtIZ4E :2014/11/08(土) 00:56:00.95 ID:OPviN8Po0
>>108
魔獣の言葉は深く、深く、少女の胸に突き刺さる。
自分は力が無い。それは自覚していたはずなのに、予想以上で。
魔獣は消えて、この場に残ったのは無様さだけ。
殺されるよりも悔しい結果。要するに自分は[ピーーー]価値もないといわれたのだから。

助けて欲しい、死にたくないと願ったのは確か。
けれどもお前には[ピーーー]価値はないと、そういわれたのは死を宣告されるよりも重く。
少女はもはや助けてくれということも無く、ただただうずくまっていた

//おつかれさまでしたー!!
111 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/08(土) 00:59:12.92 ID:w7wLXKzFo
>>106 >>109

「気が会うな。一手目から同じ選択か」

一撃目から得物を手放す奇襲戦術。初撃は決まったがそれだけで終わるはずが無い。
そしてミュルサドに比べて単純火力で劣る久良岐の攻撃も、それだけでは終わらない。

「手放すわけがなかろう。あの子の守り刀は、まだ俺の能力の手の中だ」

突き刺さった刃から霧が漏れ出し、スカヤの体内に浸透していく。
爆発の余波と迸る電撃を吸うだけでは飽き足らず、身体を動かす活力や、傷を塞ごうとする再生力まで喰わらんと霧が這いずり回る。
淡く輝く甲殻の身体を、内から染め上げんとする無形の黒――。

「ミュル。お前の剣の方も、一回こっきりってわけじゃないだろ。一本よこせ」

霧に隠れた久良岐からはスカヤの形態変化を見ることはできないが、それが固有能力の行使なら霧を通して把握できる。
その上で、標的にされたミュルサドへの助太刀には入らず、要求だけを述べる。

いや、既に出来ることはやっている。霧を通した力の奪取、スカヤの六本腕への干渉。
あとは自分でどうにかしろ、と。そういうことなのだろう。
112 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/08(土) 01:04:18.10 ID:X1ri90z40
>>109
「まずは、ね――」

手数勝負だというのなら、それにつきあうのも構わない――
この魔獣に正面から勝てない限り、あの夜龍四牙に勝てる訳など無いのだから。

右手の傷からさらに焔があふれる―それは4本の小剣の形を取り、周囲に浮遊する。
それは甲虫の如き角を備えた腕の攻撃を弾き、切りつけ、応戦していく―!
しかしそれも一瞬、押され始める勢い。

ミュルサドの肌に一条、又一条と血の線が走り始める。
「夜を晴らすために糧にさせてもらうぞ…!!」

口元に、血が届く。
咆哮は、口角泡とともに血を飛ばし、色をもつかの様に夜を染め上げる。
右手から、更に二本の長剣が射出される。
それは隠し腕の二本の付け根を狙い、一直線に駈ける。
113 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/08(土) 01:06:49.02 ID:X1ri90z40
//>>112の最後に追加で…
//「そんな便利なもん作れねぇよ!手が焼けただれても良いなら別だけどなぁ!」
114 :【2】ヘルパー [saga]:2014/11/08(土) 01:13:48.94 ID:KfV7p/FJ0
>>110
はい、絡みありがとうございました!!!!!
115 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs [sage]:2014/11/08(土) 01:26:38.19 ID:CINkR8+S0
>>111-112

突如、違和感を感じる。その方角は彼の脇腹。
ナイフが刺さった場所から自分の活力が奪われる感覚に襲われる───!

「ここまで嫌味な焔装使いは初めてだ…!」

咄嗟に一本の腕を回し、ナイフを抜き取る。これでエネルギーは吸われないだろう……が、そこから砂が零れて落ちる。


「どちらにしても、長くは無いか───!」

そして数比べ(ラッシュ)。
こちらは、スカヤが推しているが、何しろ「時間」が足りない。
徐々にそのスピードは落ちていき────


「────クソッ」

長剣こそ弾いたが、ついにこそ片膝をついてしまう。
「砂」を、出しすぎたのだ。
身体を構成するモノが「砂化」されていき、原型すら留められない。
装甲にヒビが生えていく。
スカヤの限界も近づいていた。
116 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/08(土) 01:37:25.84 ID:w7wLXKzFo
>>112 >>115

競り合いをしている最中のスカヤの横から、久良岐が飛び出す。手を伸ばした先にあるのはスカヤに弾かれた長剣。
その柄を掴めば、一瞬で血肉を炭に変え得る熱に襲われることになる。だが、それは元より予測できていたこと。

「しっかり作ってくれたじゃないか」

手元に霧を集め、溢れ出る熱を奪い取る。驚異的な熱量、吸い続ければ焔装機構が破綻する。長くは持っていられない。
だがそれだけの威力を秘めていることが頼もしい。剣先の発する熱で視界が揺らぐが、目に頼らない戦いには慣れている。

「いいフェイントだ。嘘吐きの才能があるぞ!」

剣を握りしめる。地に足が着くや否やの急転回。その場で回りながら、剣を振るう。
弧を描く剣先から火の粉が舞い、狙う先はスカヤの腹部。短刀が抜かれたばかりの脇腹を再度狙っている。

腕の一本はナイフを抜いた直後。その瞬間を突いての側面からの一撃。
柄を包む霧から自身へと、奪ったばかりの活力を乗せて。空を断つ迅さはスカヤ自身のものに匹敵する。
117 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/08(土) 01:40:12.71 ID:X1ri90z40
>>115
「はぁ―、っは―」

がらん、とおとをたてて浮遊していた小剣が地に墜ちる。
一度に精密な操作をした負担からか、相当な疲労が蓄積しているようだ。

なんとか整息して、声を絞り出した。
「それが夜に拒絶された魔獣の成れの果てか…」

膝を着いたタカヤに、歩いて近づいて行く。
さらさらとこぼれ落ちて行く砂は、彼の命そのものなのだろう。

「最後はどう死ぬのが望みなんだ、タカヤ」

それはこの男をして、迷っている証左だった。
魔獣として焔装使いに殺されるのを望むのか、それとも人間の精神を持ったまま、死を看取るべきなのか――
118 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/08(土) 02:01:37.60 ID:CINkR8+S0
>>116-117

「ククッ───クカカカカカ!!」
「どうせ長くない命、散るなら責めて悔いの無い様に」

砕けかけていた装甲を無理矢理抑え、何とか形を保つ。
砂も一度は保った、が、次こそは止められずに消滅することは目に見えていた。


「最後の…最高の、悪足掻き────とくと見よ」


全身に纏う電流はリミッターが外れた様に循環されていき、光源になれる程の電気を発する。
まるで光球のように───光り輝くモノは地に穴を穿ち、廃ビルに穴を開けながら進み、2人に迫る。
今出せる電力は雷と同等の10億V。生命の何もかもを投げ打った最高の一撃とは、自らが光球となってブチかますものであった。


「ォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


その光は破壊と共に全てを照らし────この闇夜を数年ぶりの陽が差したかのように光で包み込んだ。
119 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/08(土) 02:18:01.50 ID:X1ri90z40
>>118
「おいおいまじかよ―ッ」

迫る光球。
走る、走る。それは先ほど投げた外套にくるまった、タカヤが遺したものの方向。
そして―そのうえにうずくまるようにすると、右手の傷跡から血を放出、半分に切られたドームのようなものを形作る。
幻想で形づくられたそれは破壊こそされない物の、吹きすさぶ衝撃を0にする事は出来ない。

最早視界すら遮られる爆発的な光芒に世界が飲まれて行くなか、先ほどまでいたもう一人を捜している。

「ッぐああッ――――!」

必死に壁面に体を押し付けて衝撃を耐え、抜こうとしたが―――

落雷に匹敵する衝撃に、彼の意識は闇におちていた。
120 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/08(土) 02:22:44.59 ID:w7wLXKzFo
>>117-119

「っ。このタイミング……元からこのつもりだったか!?」

剣を振り切った瞬間。手ごたえを感じる余裕も無く、スカヤの全身が光り輝き、目を開けていることすら困難になる。
技後の硬直。動けない。電流は際限無く高まり続け、このままスカヤの横にいればその末路は火を見るより明らか。

「自爆のどこが悔いの無い終わり方なんだ……ッ! 看取る相手の無い死に何の意味がある!」

その場で取れる回避手段は、ある。奪い取った爆炎を解放し、その衝撃で自らを吹っ飛ばすことで距離を取ること。
だが――そんなことをすれば服がダメになる。命を天秤に掛けてなお、それは自らが許せない。

「うああああああああああッ!」

その逡巡で回避する余裕は失われ、次の瞬間には光そのものとなって輪郭さえおぼろげなスカヤが目前にいる。
手の中の炎剣をスカヤに叩きつけるが、人と魔獣では膂力の差は歴然。まして相手に死ぬ覚悟があるなら、受け止められるはずが無い。
拮抗するのは最初の瞬間だけ。すぐに押され、このままなら次の瞬間には黒焦げになって吹っ飛ばされることになる。

「もう一回ぶっ放せッ!」

その状況で、自分ごと手の中の炎剣を吹っ飛ばせと言っている。
大切な服を守りつつ生き残る。それには、ミュルサドの起こす爆発でスカヤの最後の一矢を受け止め、熱を吸収して服を守る。それしか思いつかなかった。

視界を――世界全体を白く包んでいく光に対して、久良岐の抵抗はあまりにも弱く。
声が届いたかを確認する間もなく、圧倒的な衝撃に意識が刈り取られていく。

意識と無意識の境界の中、それでも思い出の品である守り刀と服だけは死守しようと――。

121 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/08(土) 02:32:46.99 ID:w7wLXKzFo
/すいません、ここ不確定だと返し辛いですよね
/炎を剣の形に留めていた力を奪い、スカヤさんの方に向かって剣を爆発させたことにします
122 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs :2014/11/08(土) 02:38:48.21 ID:CINkR8+S0
>>119-120

衝撃を与えた後、忽然と光球は消える。
自分の持つ電流は全てを放ち、そして照らした。終わると同時に変身は解け、そしてより速い速度で「砂化」が進行し始めた。

「────まだ、生きているか?」

おそらくミュルサドは様子から見て、意識を閉ざしてしまったのだろう。
久良岐の方へ振り向く。奴の方はミュルサドよりは意識を保っているように見えた。
いや、もうスカヤは何も見えない。それ程までに「砂化」が進んでいた。

「絶望に堕ちた身に看取る必要はない、どうせ地獄行きは確定なのだ、自分自身のこの行動には満足している」
「ところで……お前達は見えたか、俺の光で包んだ世界」

小規模ではあったが見せつけた光の世界。
青白い世界ではあったが、街の一角全体を照らすのには問題なかった。

「こんなに暗い世界だからな、最後くらい見せたかったのさ、「明るい」世界を少しだけ」
「何が見えたのか俺にはもう分からないが、君達それぞれには何か見えてくれたならそいつは嬉しい限りだ」


そう言っている内に「砂化」は進行、どんどん身体の部位が砂になり、欠けていく。
もう、助かる術は無し、静かに死を待つのみとなった。


「独りよがりですまないが、そういうのが人間らしさだと考えている……」
「後は死を待つだけだ、あと一つ、あと一つだけ質問に答えられる時間があるが、どうする?」

123 :ミュルサド・オーディアール  ◆D.MsnJCMDw [saga]:2014/11/08(土) 02:57:58.98 ID:X1ri90z40
>>122
「ごほっ、―――っごほ」

何秒気を失っていただろうか、いつの間にか無意識下に焔装は解除されており、夜風が裸の上半身に沁みた。
「えっくし」

くしゃみを一つ、外套をきようと広げる―その中からおちる紙の束。
思い出す。 これは、人間の心を取り戻した魔獣の遺したものだ。
では、その本人は―――

半分砂に化したタカヤの姿が目に入った。
資料を小脇に抱え、足を引きずりつつそちらに向かう。
「ああ、明るかったぜ…十分に」
砂とかしつつある魔獣の近くに座り込む。

「だとよ…なんかあるか?お前さん」

そう言って、もう一人の方を見やった。
124 :久良岐 ◆7brYoWVdSQ [sage]:2014/11/08(土) 02:58:51.89 ID:w7wLXKzFo
>>122

至近距離で荒れ狂った光と音とに頭をかき回されて、スカヤの言葉を理解することさえ難しい。
倒れ伏しながら確認するのは、目的を果たす日まで使い続けると誓った服の安否。傷は酷いが、まだ繕えば……。

「悪いが……星空に未練は無くてな」

断片的に聞き取った言葉に対する返答は、会話の噛み合わないことの多い彼には珍しく、ちゃんと意味を成していた。
つまり、彼が垣間見た空は星に彩られていたのだろう。ミュルサドの烈日の如き光とは違う、スカヤの光の見せた色。

既に意識の大半は途切れた。それでも光の無い現実にしがみ付いているのは、スカヤをまだ信用していないから。
人が人の尊厳を失った凶行に走ることなど日常茶飯事で、そもそも久良岐の精神は当に擦り切れて自分と違う行動理念を理解できなくなっている。
相手が人であるかなど、もう彼にとっては大した意味を持ってはいないのだ。

誰のことも理解できないから、誰のことも信頼し切れない。

そんな彼が最後に発した問いは――。

「お前、会いたい奴はいるか? もし俺が会えたら何か伝えてやる。
『まだ生きてるよ』って言うのと、『もう死んだ』ってのなら、どっちがいい?」

返答次第ではこの魔獣を信じられると――そんな人間らしい願いが自分の中に残っていたことが、意外だった。
125 :スカヤ ◆LDvlEW/eDs [sage]:2014/11/08(土) 08:07:17.88 ID:GJr4an2mO
>>123-4

「なんだ…君達はそのような質問をするのか」

久良岐たちの質問は「会いたい奴はいるか」「もしいたら、自分の事をどう話して欲しい」というものだった。

「俺は魔獣になってから名を捨て、記憶を捨てた者だ」
「もう魔獣の時点で人間の世界から切り離されたから、思うことは無い」

徐々に砕け散る身体。それに抗うように2人を指差す。

「それ以上、「遺した」以上、君達にはしっかり仲間に伝えて欲しい」
「魔獣になるとは、こういうことであり、例え精神を取り戻しても「消される」結末になるということ」
「これこそ最後の「体験談」───死に際まで君達に教えられる事で寧ろ感謝すらしているよ」

だが、虚しくも指は崩れ、四肢は崩れ落ち、仰向けに倒れこむ。

「もし出来ることなら、例え魔獣と対峙しても「信念」を持って行動しろ」
「俺は「遺す」為に命を燃やした。君達は何の為に戦うか分からないが、その気持ちは「焔装使い」にとって大事なことだ」
「ああ───満足した。ここまでこの世界で満足した人生、誰が迎えただろうか」


砕け散る身体に身を任せ、とうとう全てを放り出し、砕け散った。
「砂」は風と共に去り、闇夜の中に消え去った。


//お二方、お疲れ様でした。返事は自由にして構いません。
148.20 KB   

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)