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【少女の行為はもう終わったのか】能力者スレ【童話の消えた森/天使の爪痕】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2015/12/21(月) 00:08:54.63 ID:y2pVFpV80
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。


無限大の大きさのこの世界。
多くのことが語られたこの世界だが、まだまだ多くの空白がある。
先人たちの戦い、絆、そして因縁。これらが絡み合い、この世界は混沌としている。
もしかすると、初めて見た貴方はとっつきづらいと思うかも知れない。
――だが、この世界の住人は新しい来訪者にことのほか優しい。
恐れず、以下に示す雑談所や、場合によってはこのスレでも質問をしてみてくれ。
すぐにスレへの溶け込み方を教えてくれるだろう。


【雑談所。質問や現状、雑談などはこちらでどうぞ】
PC【http://jbbs.livedoor.jp/internet/14029/


【はじめに】
このスレの元ネタはVIPで行われていた邪気眼スレです。
長く続けるに際して、いくつかのルールを設けています。以下にそれを記します。
・この世界は「多様性のある世界」です。
・完全無敵の能力は戦闘の楽しみがなくなり、またスレの雰囲気も壊れますので『禁止』です。
・弱点などがあると戦闘の駆け引きが楽しめます。
・戦闘では自分の行動結果に対する確定的な描写を避けること。【例:○○に刀で斬り付ける。○○の首が斬れる】など。
・基本の心構えですが、「自分が楽しむのと同じくらい相手が楽しむことも考える」ことが大事です。
・書きこむ前にリロードを。場の状況をしっかり把握するのは生き残る秘訣です。
・描写はできるだけ丁寧に。読ませる楽しみと、しっかりと状況を共有することになります。
・他のキャラクターにも絡んでみると新たな世界が広がるかも。自分の世界を滔々と語ってもついてきてもらえません。
・新規の方から「誰が誰だかわからない」等の要望があったため、議論の結果コテハンは「推奨」となりました。強制ではありませんが、一考をお願いします
・基本的に次スレは>>950が責任を持って立ててください。無理なら他の能力者に代行してもらってください。また、950を超えても次スレが立たない場合は減速を。
・スレチなネタは程々に。
・スレの性質上『煽り文句』や『暴言』が数多く使用されますが過剰な表現は抑えてください。
・基本的に演じるキャラクターはオリキャラで。マンガ・アニメ・ゲームなどのキャラの使用は禁じます。(設定はその限りでない)

【インフレについて】
過去、特に能力に制限を設けていなかったのでインフレが起きました。
下記の事について自重してください。
・国など、大規模を一瞬で破壊できるような能力を使用。
・他の人に断り無しに勝手に絶対神などを名乗る。
・時空を自由に操る能力、道具などを使用する。時空を消し飛ばして敵の攻撃を回避、などが該当します。
・特定の物しか効かないなどの、相手にとって絶対に倒せないような防御を使う。
・あくまで能力者であり、サイヤ人ではありません。【一瞬で相手の後ろに回り込む】などは、それが可能な能力かどうか自分でもう一度確認を。
・全世界に影響を及ぼしたり、一国まるごとに影響が及ぶような大きなイベントは一度雑談所でみんなの意見を聞いてみてください。

 勝手に世界を氷河期などにはしないように。
・能力上回避手段が思いついても、たまには空気を読んで攻撃を受けたりするのも大事。
・エロ描写について

 確かに愛を確かめ合う描写は、キャラの関係のあるひとつの結末ではあります。
 なので、全面的な禁止はしていません。
 ですが、ここは不特定多数の人が閲覧する『掲示板』です。そういった行為に対して不快感も持つ人も確実に存在します
 やる前には、本当にキャラにとって必要なことなのか。自分の欲望だけで望んでいないか考えましょう。
 カップル、夫婦など生活の一部として日常的に行う場合には、一緒のベッドに入り、【禁則事項です】だけでも十分事足ります。
 あまり細部まで描写するのはお勧めしません。脳内補完という選択も存在しますよ。

前スレ【http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1441887689/
wiki  【http://www53.atwiki.jp/nrks/
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :闇氷【こおり】の女王@準備中 ◆rSG8DouFi6 :2015/12/21(月) 00:58:09.77 ID:44DnamxDO
(誰もいない…のかな…???)
3 :闇氷【こおり】の女王@準備中 ◆rSG8DouFi6 [sage]:2015/12/21(月) 01:19:32.74 ID:44DnamxDO
(連投すまんな、誰もいないみたいなのでまたくる…お邪魔しますたノシ。)
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2015/12/21(月) 20:44:05.15 ID:n2uC42HZO
630 名前: ◆MF.nwBIujs [sage] :2015/12/21(月) 19:09:37.34 ID:iNHWDLsa
結局うやむやのまま終わったんだな、何となく虚しい

637 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! [sage] :2015/12/21(月) 20:36:54.46 ID:QzJH7JlN
>>630
カガリ?

639 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! [sage] :2015/12/21(月) 20:38:35.71 ID:PgHGJg5t
え、本当だ、俺酉出ちゃってるじゃん、まぁおーぷんでやってるし問題ないわ
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2015/12/22(火) 00:39:17.80 ID:GHTZorIr0
>>1乙です

>>2>>3
このスレはまだ立ったばかりで、前スレが埋まってないので、こちらのスレにはまだ誰も居ない状態なのです……
このスレに興味があるようでしたら、>>1にある雑談所ってところに来ていただければ、みなさん居るかと思いますよっ
6 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/24(木) 23:06:25.11 ID:ww9h58Cm0
>>1乙です

前スレ>>1000

【そうこうする内に戻ってきた皐月は素朴な疑問を投げかける。ははは、何でもありませんよと答える彼女の笑顔は消え入りそうに儚かった】
【選んできた洋服について嬉々として説明する皐月の言葉に、彼女は、ほうほう、なるほど!などとそれらしき相槌を打ちながらも、頭上にはてなマークが浮かんでいることがありありとわかる様子である】

(パンツ…?パンツってあの、ズボンの下に履く?)
(アウター…アウター…?アウターってなんですか?アウトロー的な何かですか?……あっ、シャツ!シャツはわかるぞ!)

【結局彼女は理屈を理解しようとすることをやめ、師匠の言う事だ、間違いは無いだろうということで早速着てみることにした】
【待つこと数分。しばらく沈黙が続いた後、うーん、こんな感じの着方であってるのかな、そんなやや不安げな呟きが聞こえたかと思うと、更衣室のカーテンがばっと開かれた】

ど、どうでしょう…?私、こういう感じの服着る事って無いですから…
師匠、どうです…?私この恰好、何か変だったりしないですか…?

【先程の自信満々の姿はどこへやら、恥ずかしげに顔を少し赤らめながら、たどたどしいポーズをとりながら熊出等比が現れた】
【その姿は、このまま外のにぎやかな街へ出て行っても全く違和感なく溶け込めるほどサマになっていた。まるでこの姿こそが彼女本来の姿であったかのような自然さである】
【さっきまで彼女に憑りついていた悪霊が祓われたような、そんな印象さえ受けるかもしれない】

7 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/24(木) 23:32:09.61 ID:ZW967KoI0
>>6

【儚げな笑顔の理由は、知る由もなく。持つ者は、持たざる者の悩みなどきっと分かりはしないのだ……残念ながら】

【色々説明しては見るが、たぶん半分も分かっていない様子。……まあいいか、着てみてくれればそれでいいのだし】
【とりあえず、貴女の事を精一杯思って選んだという事だけは分かってくれた筈だから……着替えるのを待とう】
【似合うものを選んだつもりだが本当に似合っているだろうか、気に入ってくれるだろうか……と、少し心配しつつも】
【反面、カッコ良くなるかな、彼女がより素敵に見えるかな……なんて、楽しみでもあったり。】
【―――やがて、数分すると彼女は更衣室から出てくる。……着替えに数分って、結構掛かったなぁ。】

―――おお……!

【彼女の姿を見ると、皐月は感嘆の声を上げた。似合う服を選んだのは確かだが、それでも思った以上に似合っていて】
【野暮ったさはもう欠片も無く、活発でクールな印象を受けるような姿。かと言って、彼女本来の明るさも損なわれることなく】
【スキニージーンズとジーンズでカジュアルに纏めたボトムも、彼女の持つ脚線美を主役に最大限引き立てられている】
【ぎこちない動きをしながら恥ずかしがる姿だって、むしろ可愛い。とっても魅力的な女の子の姿が、そこにはあった】
【彼女がとっても魅力的になったのを、とても嬉しそうに微笑みながら見つめて……一つ、お洒落のアドバイス】

うんうん、バッチリです。とってもいい感じに出来てますよ!―――でも、一番素敵なのは貴女自身です。
服は、着ている本人の良い所を引き出すだけですから……貴女自身が魅力的だからこそ、服が映えるんです。
もっともっと、どうすれば自分の良さを引き出せるかを考えれば、オシャレも楽しくなるんじゃないかなー……って思います!

―――さて、それで良いなら買いましょうか。お代は私が払いますよ、貴女へのクリスマスプレゼントです!
試しに、その服で職場にでも行ってみたら?きっと、ビックリされちゃいますよ!
8 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 00:17:47.19 ID:Gi67KHBs0
>>7

【落ち着かない様子だった彼女も、皐月の心からの肯定ですっかり安心したようである。ぱっと表情が明るさを取り戻し、はしゃぎだした】

本当ですかっ!いい感じですか!?ありがとうございます、こんな衣装を見繕ってもらって!
ははあ、「自分の魅力を引き出す」が極意ですね!?わかりました!この私、また一歩ファッションの階段を上がったような気がしますっ!

【眼を輝かせて語る彼女は、皐月の助言を真摯に受け止めつつもやはりまだどこか危なっかしげであった。もしも彼女が服を新調しに行くと聞いたならば、当分の間は購入予定の品を疑ってかかるのが良いかもしれない】
【さて、気になるお値段の方であるが、自費で払うという皐月の発現を受けて彼女は目を丸くして驚き、まくし立てた】

いえいえいえいえいえいえいえいえ!そんなワケにはっ!そんなワケにはいきませんっ!
値札見ましたけどけっこーありましたし!何から何まで師匠にかかりっきりでは不肖、この熊出等比の恥というものです!
大丈夫です、結構前の任務でこれくらいの金額なら全然余裕で払えるくらいの……

【言いながらがまぐち金魚の財布を取り出してジッパーを開く。空だった】

……そう言えばこの前訓練場のフェンスを勢い余って壊した修理費で使い切ったんでした……

【数秒後、そこには土下座しながら詫びを入れる等比の姿があった】

すみません!本当に何から何までお世話になってしまいっ!いい年こいて本当申し訳ありません!踏んでください!

【結局、代金は皐月が払う形となった。カウンターへ向かう列に二人並ぶ間も、彼女の懺悔の言葉が尽きることは無かった】
【購入が済んだのち、二人は少し休憩といった様子で設置されたベンチに腰掛ける。職場の仲間に見せたらどうかと提案する皐月に、等比は少し考えるようにして答えた】

うーん、基本的に私の勤務先は私服禁止なんでお披露目するとしたらそこ以外ですねー。もっと位の高い人だと私服オッケーになるんですけど。
今日は師匠と色々楽しんだ後はまた訓練場に戻る予定なんですけど、そうですね、この恰好で行っちゃいましょう!反応が楽しみですねえ、うふふ…。

【もっとも彼女は職場において割と「いじられる」タイプであるので、同僚や後輩、上官達が彼女の見違えるような姿を真面目に褒めてくれるかどうかは微妙なところだったが】
9 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 00:47:00.75 ID:EOwZUDzw0
>>8

【空っぽの財布を見れば、皐月は可笑しそうにくすりと笑って。それから、謝る彼女に微笑みかける。大丈夫、気にすることありません!って】

ふふっ、いいのですよ。いつも頑張っている貴女に、ご褒美です!
新聞やニュースで貴女の名前を見かけるたびに、私はとっても元気を貰っているのですよ。ああ、貴女も頑張ってるんだなぁって……
ま、ここは一つドーンと年長者に任せておきなさい!こういうものは年上が支払ってあげるものです!
―――本当に、見違えましたよ。ふふ……これからもどんな成長を見せてくれるのか、楽しみに見てますね!

【新進気鋭の若手として目覚ましい活躍をする彼女。その話は任地から離れた所にいる皐月にも聞き及んでいて】
【彼女の活躍を聞くたびに、皐月は嬉しくなる。あの時生きる在り方を諭した彼女が、今はもうこんなに立派になってるんだ、と】
【彼女は自分の子ではないけれど、まるで我が子が活躍しているみたいな気分になる。何度、その活躍に元気づけられたことか】
【それに比べれば、服の代金くらい安いものだ。立派になった彼女にご褒美をあげるくらい、許してほしい】

――――

【職場のお話なんかも、なかなか興味深い所。彼女の勤務先は厳しいようだ。自分の職場なんてだいたい皆私服の緩い環境なのに】
【だが、戦うことを仕事をするのだからそれくらい引き締まっているのがいいのかもしれない。厳しい環境が、彼女を成長させているのだろう】
【―――でも、たまには女の子らしくお洒落をしたり恋をしたりするのだってきっと大切。服はもう大丈夫、では次気になる人を見つけよう!】

へぇ……なかなか厳しい職場なのですね。私なんて、ほぼ毎日私服なのに……
でも、とりあえず外見は何とかなりましたね。ふふふっ……あとは、気になる子にアタックするだけです!
私が等比ちゃんくらいの頃には、もう赤ちゃんもいましたっけ……。自分の子供って、本当にいいものですよ。とっても可愛いんです!
10 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 01:11:20.27 ID:Gi67KHBs0
>>9

【気になる人、との言葉にいまいちぱっとしない表情を見せる彼女。気になる人かー、そう呟いてから等比は語りだす】

んんーーー…… 気になる人……。今のところ、思いつかないです……。
なんでしょうねー…自警団の支部ではあんまり思いつきませんね、恋愛したいなーっていうのはあるんですけど。
恋に恋する乙女と言いますか……。ふふふ、そんなこと学生の頃から言い続けてる間にあっという間に20代ですよ、ふふふふ……

【普段の活発さからは考えられないほど顔に影を落として、自嘲気味に笑って見せる。どうも今現在、恋愛の話は彼女にとってタブーであるようだった】

はー、赤ちゃんですか!衣織ちゃんのことですね?本当利発そうなお子さんで!可愛かったなー、懐かしいです。
私は子供なんてまだ全然全然……。これで何度目の独り身のクリスマスでしょうかって感じで、ははは……
その点で言うと師匠はすっごい羨ましいです。クリスマスはご家族で過ごされるんですよね?
いいなー、可愛い娘さんと、きっと素敵な夫さんとでおいしい料理を食べるんだろうなあ…。

【何気なく触れたその言葉。そうである、彼女、熊出等比は、自身の恩師であるところの神谷皐月の過去に起こった悲劇について、知らなかったのだった】
【もしも皐月の顔色に変化が起こったのならば。師匠?なんて隣の彼女に向かって問いかけるだろう】
11 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 01:46:08.51 ID:EOwZUDzw0
>>10

……あ、えーっと……だ、大丈夫!貴女もきっとそのうちいい人が見つかります!たぶん!きっと……!

【今日何回目かの乾いた笑顔に、慌てて皐月はフォローを入れる。語尾が少し自信なさげなのは気のせい。たぶん。】


【子供が可愛いって話も、会話の流れの中での他愛ない話題のつもりだった。恋愛・結婚の延長線として……】
【でも、その家族という話題が思いもよらない事を思い出させた。夫――――その一言を聞いた皐月の表情が、僅かに揺れた】
【だが、それだけ。露骨に表情を曇らせることも、表情に暗い影を落とすこともなく、ただ何時ものように微笑んで】

―――はい、家族で過ごしますよー!娘へのクリスマスプレゼントも、もう用意しちゃってます!
旦那さんがいれば、もっと楽しいクリスマスだったんでしょうけど……衣織には、きっと寂しい思いをさせてるでしょうね。
衣織は、生まれてから一度も父親という存在を知らないんです。きっと、父親が居ないことを寂しく思うこともあったでしょうに……
……私は、あの子さえいれば寂しくなんてないです。ふふ、ホントですよ?

―――でも、真琴さんに衣織の姿を見せてあげられなかった事は、少しだけ悔しいかな……
ふふっ……天国から大きくなった衣織の姿を見たら、きっとびっくりするだろうなぁ……
あの時お腹の中にいた子が、こんなに大きくなったんだって……―――

【―――夫はもうこの世に居ない。その現実を、もう皐月は受け入れていた。もう、偲ぶことはあっても悲しむことはなかった。】
【ただ一つ、生まれた子の顔を見せてあげられなかったことだけが悔しかったけれど……―――きっと、天国から見ているだろう】
【今はもう居ない大好きだった人と自分の血を引く娘。どこかあの人と同じ雰囲気を持つ子が、自分を耐えがたき寂しさから救ってくれた】

……ねえ、等比さん。子供って可愛いですよ。―――心に空いた埋まる筈のない大きな穴まで、埋めてくれるくらい。

【もう一度、同じことを噛みしめるように言う。癒えることのない悲しみさえ癒してくれた我が子を、強く想いながら―――】
12 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 02:31:08.69 ID:Gi67KHBs0
>>11

【ほんの一瞬、彼女のごくわずかな表情の変化に等比は気づいたわけではない。ただ問いかけた等比の表情からは、浮かれた雰囲気が消えていた】
【衣織が父の存在を知らないと聞いたとき彼女の頭に野暮な邪推が浮かび、悪いことを聞いたかなと思ったが、続く言葉を受け止めて、彼女は事の真相を知った】
【皐月の夫はもはやこの世にいないのだ。饒舌だった等比は一転して押し黙り、ただ彼女の紡ぐ言葉を聞いていた】
【長い沈黙の後、彼女は、あのですね、と切り出した。彼女は決して気が利くタイプではないし、頭が良いわけでもない】
【だから最愛の人を失った人物に掛けるべき言葉なんて見つからなかったけれど、自分の中に浮かんだあるイメージを、どうしても皐月に伝えたかったのだ】

…私、師匠の夫さんがどんな人だったのかは全然知らないです。衣織ちゃんの姿から想像を膨らませることくらいしか、それを知るすべはありません。
でも、天国にいる夫さんの姿を想像したらですね、…笑ってたんです。あったかい笑顔が、頭に浮かんだんです。ちょうど、衣織ちゃんみたいな…。

【自身の言葉が自身の感情を上手く伝えられたのか、自信は無いけれど彼女はふっと頭を上げ、そう結んだ】
【この先何が起こっても、神谷皐月と神谷衣織の二人なら絶対に大丈夫、幸福に暮らしていける。等比はそんな確信を胸に抱いて、あくまで皐月の表情を伺うことはせずに、彼女の言葉を待った】




13 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 02:35:24.25 ID:EOwZUDzw0
//すみません、予告していた通りですがそろそろ落ちます……!
//明日(今日?)も同じくらいの時間に来れると思いますので……!
14 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 02:38:50.43 ID:Gi67KHBs0
>>14
/了解です、それでは明日?も引き続きよろしくお願いします!
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2015/12/25(金) 18:09:38.12 ID:o9gmf7ZK0
【街はずれ――小高い丘の、廃教会】
【時刻は少し前、遠くで白々としたオレンジを帯びる空と、まあるくて、おおきな、満月が登りだした頃】
【壁どころか天井さえなく、骨組さえ頽れ、聖母の像は盗まれて、十字架さえも風雨に曝されて折れたような、そんな場所で】
【砕けて積もった天井の破片の上、まさに今ちんまりと腰掛けたのは小柄な少女で――或いは子供にも見えるような、少女で】

……まさか聖人様だって、自分の誕生日が若者たちが盛りに盛るような日になるとは思っていなかったろうに。

【足元に小さく転がっていた色付きの硝子――ステンドグラスの欠片を拾い上げた手はひどく華奢で小さい、その癖に、呟く声は埃かぶった古書の頁のように掠れ】
【赤く赤く濁った欠片をそっと大きな大きな月に透かしてみても。何も見えないから、少女はそのうちに、眼の前から硝子の欠片を退かしてしまって】

【――わずかにくすんだ金髪。くるりと毛先が巻く癖毛で、特徴的なのは、その毛先だけが淡くピンク色に染まっていること――強い風に、時々バサバサと靡き】
【あどけなさを微かに残す顔は、ただ、勿忘草色の瞳だけが、嫌に鋭くて。表情も、どこか拗ねた子供のようなもの。肌は色白いが、どちらと言えば不健康な白さで】
【分厚い布地の白いミニ丈コートに、ふんわりという言葉を少し超えるくらいに布地を重ねたロングスカート。足元はブーツのようだけれど、踵はほとんど無く】
【首元には暗い赤のマフラーを何重かに巻いて。寒いのか、顔をマフラーの中にうずめるように、或いは隠すようにしていて】
【身長は近くで見たって小さな高さ、百四十二センチ――なんて、遠目で見れば、ただの不良子供のように見えたって仕方がないほど】

――――だから、ほら、聖人様が怒っているようじゃないか、真っ赤な満月だなんて……吸血鬼でも出てくるのかしらん?

【もふりとした手袋で包んだ手元。拾い上げたステンドグラスの赤い欠片を手持無沙汰なように弄んで――そのうち、飽いたように、後ろも見ずに放り投げるのだ】
【けれどよっぽど運動神経が悪いのか、放り投げた赤さはへなちょこな軌跡を描いて、変な方に落ちていく――もし誰かに当たるようなことがあれば、きっと、それなり以上に痛いはずで】
【そうでなくても。こんな時間にこんな場所。誰かが居るというだけで、もし誰かが通るなどするなら。……それなりに、目立つ、ような気がした】
16 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 20:11:50.67 ID:EOwZUDzw0
>>12

【夫の死は、これまでの人生で最も悲しかったし、苦しかった。自分も死んでしまいたいくらいに辛かった。けれど……】
【寂しさに泣きそうになる度に、お腹の中にいた娘が励ますかのように動いて、自分は一人ではないと気付かせてくれて】
【やがて数日後に生まれてきた我が子の顔を見れば、癒えないと思っていた心の傷さえも癒えてしまった。だって―――】
【―――あの子の笑顔は、自分が大好きだったあの人の笑顔とそっくりだったから】

【今、夫は空から自分たちを見てくれているのだろうか。自分そっくりに元気に育つ娘を見て、どう思うのだろうか】
【娘と幸せに暮らす自分を、喜んでくれているだろうか。もしそうなら、嬉しいな―――】

―――そうですね。きっと、笑ってると思います。
衣織と同じで、誰かの幸せを心から喜べる人でしたから……私、あの人のそういう所に惚れたんですよ。
私が笑ってたら、あの人も嬉しそうに笑ってて……その笑顔が、私は大好きでした。

きっとあの人も、私が悲しむ姿なんかより幸せに生きている姿を見るほうが嬉しいから……
だから、幸せに生きるって決めたんです。ずっと、あの人が天国で私の姿を笑顔で見られるように―――
ふふっ……私、幸せですよ。だって、こんなに沢山の大切な人に囲まれて生きているんですもの!

【ふっと小さく微笑むその顔に、悲しみは無かった。―――夫の為に、自分の幸せな姿を見せ続けるって決めたから】
【愛おしい娘と、大切な友人と……愛する人は失ったけれど、自分にはこんなに沢山の人に囲まれている。きっと、これも幸せだ】

ふふっ、ごめんなさいね。クリスマスだというのにこんな湿っぽい話につき合わせちゃって……
さ、帰りましょうか。クリスマスだというのに衣織を一人にさせるわけにはいきませんもの!

【―――さあ、もうこの話はおしまい。クリスマスだというのにこんな話ばかりじゃ、台無しだ】

【「良かったら、晩御飯も一緒に食べますか?」なんて、笑顔で訊いたりして……もし頷いてくれたなら、一緒に家に向かう】
【その夜は、以前会った時より幾分か大きくなった衣織と一緒に、グリルで焼いたチキンや手作りのケーキを食べたりして】
【帰る時まで、とっても幸せな時間を過ごした筈だ。勿論、母娘もとても楽しそうにしていたのは言うまでもない】

【もし都合が悪くて来れなかったのなら、今日はここでお別れということになるか。】
「それではお元気で!体を壊さないように、温かくするんですよ!」なんて、お母さんみたいなことを言って】
【いつか会った時より随分と頼もしくなった背中を、どこか嬉しそうな目で見送る―――】
17 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 20:47:00.91 ID:Gi67KHBs0

>>16

【不要に周りの人々を心配させまいと、強くあろうと振る舞っている。それは等比の主観にすぎなかったが、彼女の目には眼前の人物がより大きな存在として映っていた】

(…敵わないな、やっぱり。)

【そう心中でつぶやくと彼女は皐月と一緒に立ち上がり、普段通りの明るい笑みを浮かべて見せた】

そうですね、師匠の言う通りですっ!今夜はぱーっと行きましょう!
晩御飯ですか?行きす行きます!師匠のお家、是非遊びに行きたいなと思っていたものでして!

【無責任にそう発言したのち、牛丼一つ食べることもできない自身の金銭状態を思い出した彼女が、皐月へ本日何度目かの懺悔土下座をかましたことは言うまでもない】
【そして皐月の提案を受け、二人は彼女の自宅へと向かう。いつも以上に賑わう町の中、見繕ってもらった新しい服を来てはしゃぐ等比は、もう道行くカップルたちのことなど気にしていなかった】

18 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 21:13:43.14 ID:EOwZUDzw0

>>17

ふふっ、それじゃあ決まりですね!さてさて、鶏肉多めに買わなくっちゃ……

【一緒に帰るという事が決まると皐月は嬉しそうに頷いて、一緒に帰路に就く……のだが、その前にちょっとスーパーに寄って】
【三人分に増えた夕飯を賄うために、買い物を済ませて……それから、家に戻る】


「おかえりー!――あ、等比さん!お久しぶり!えへへ……どうしたの?遊びに来たの?」

【家に帰ると、皐月の娘である衣織がお出迎え。以前にあった時より少しだけ背も伸びて、どこか大人びた雰囲気】
【皐月は「夫に似た」と評しているが、皐月にもとってもよく似ていて……実の娘であるという事がよく分かるだろう】
【でも、明るく無邪気な笑顔は変わらずそのまま。周りがぱあっと明るくなるような、元気で活発な子で】
【ぺこりとお辞儀をすれば、「ささ、中へどうぞー!」って、彼女を案内する筈だ。】

さてさて……等比さんが来たから、三人分の料理を作らなくっちゃいけませんね。
手伝ってくれるかしら?等比さんの料理の腕、知らないから……ふふっ、ちょっぴり興味があります!

「等比さんは、一人暮らしなんでしょ?何か、家でお料理でもするの?」

【―――まあ、料理と言ったって鶏肉にバジルやスパイス・塩コショウ、ニンニクで下味をつけてグリルで焼いたり】
【サラダにするためにキュウリやトマトをスライスするくらいなのだが……さてさて、どうだろうか】
【もしかしたら、意外と上手かったりして……】
19 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 21:54:17.39 ID:Gi67KHBs0
>>18

【玄関が開き、現れたのは神谷衣織であった。その姿を見て彼女は嬉しそうに駆け寄った】

きゃー衣織ちゃーん!久しぶり〜!元気してた〜?

【傍まで来たかと思えば握手した手をぶんぶんと振り回したり頭を撫でたり、とかく年下の少女が可愛くて仕方が無かったようだ】

私三人兄弟の長女なんですけど、下の妹は本っっ当に生意気で!あーあ、私にもこんな可愛い妹がいたらなー!マジでなー!

【言いつつ笑顔で衣織の頭をわしわしと撫でる。口調は不機嫌そうだったが、別に仲が悪いというわけでもなさそうである】
【衣織のお辞儀に対して律儀にお辞儀を返すと、案内を受けて家の中へ入っていく。他愛無い話をしながら、キッチンへ】

そーだ衣織ちゃん、年頃の乙女なんだしカレ……

【言葉が止まる。眼鏡が光って瞳を隠す】

カレー好きだよね。

【さて、ダイニングで手を洗うと親子二人から振られたのは料理の話。勿論手伝いますとも!と答えながらも、額には時期に似合わぬ汗が浮かぶ】

ううん、一人暮らしじゃなくて自警団の宿舎に泊まってる。この前言わなかったっけ?
それで宿舎では基本的には自炊だからね。するよー、料理!めちゃくちゃするよ!

【その両手に貼られた幾つもの絆創膏は戦士としての勲章か、それとも?】
【借りた包丁を握り、彼女はまな板の上のトマトと対面している。耳をすませば何故か地響きが聞こえてきそうな、緊迫した空気が彼女の周りにのみ流れている】
【吸った息を、ゆっくりと吐きだす。閉じた目が、開かれる】

…為せば成る!!

【そう言い放つと、握られた包丁が勢いよく振り下ろされた!】

ああああああああああああ!指がああああああああ!!

【成らなかったようだ。血を流しながら床をのたうちまわる。以前神谷家を訪れたときちょろっと本人が口にしていたのだが、彼女の料理の腕は壊滅的だった】
【そんなこんなで、結局等比は神谷親子の女子力におんぶに抱っこの状態で調理を進める手はずとなった。彼女がスカーレットの隊員であることは母親づてに聞いていたかもしれないが、この惨状を目にした衣織がそれを信じていられるかどうかは、はなはだ疑問である】
20 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 22:20:00.38 ID:EOwZUDzw0
>>19

「へー、妹さんがいるんですか!いいなー、私一人っ子だから妹とか羨ましくて……へ?かれー?」

【先の事情もあり、衣織には妹も弟もいない。友達に兄弟や姉妹がいるのが、少し羨ましかったりもしたから】
【なんだか元気なお姉難ができたみたいで嬉しくて、ぱあっと笑顔がはじける。可愛いと言われたのも、嬉しかったり】
【……乙女とカレーがどう関係するというのかはあえて訊かないでおく。安心して下さい、彼氏はまだいませんよ。】
【ただ、以前見た時より幾分か成長していたのは身長だけでなく……少し大きくなってる。どこがとは言わないが。】
【母親から受け継いだのは性格や顔立ちだけじゃなかったようで……数年のうちに追い越されるかも……?】


「わあ、自炊してるんですか!じゃあ料理も期待できるかも……!ん?等比さん……?」

【……トマトを切るくらいで、何をそんなに緊張しているのだろうか。何か嫌な予感がする……】

――――あ。
「―――あ。」

【…………。うん。とりあえず絆創膏貼ろっか。】

【そんなこんなで、等比にはもっぱら盛り付けや料理を運ぶのを担当してもらうことにして……料理は進む】
【空腹な二人。オーブンから香る美味しそうな匂いには、否応なく期待感が膨らんて―――ふふっ、早く食べたいね】
【やがてバジルの香りが食欲をを擽る神谷家特製グリルチキンが完成すれば、三人とも食卓につくことになる】

「―――いただきまーす!」

さ、等比さんもどうぞ召し上がれ!ふふっ、美味しくできたかな……?

【グリルチキンの他にも、コーンスープやサラダ、スーパーで買ったローストビーフなどなどが食卓に並んで】
【親子は、早速食べ始める。さて、彼女は美味しいって言ってくれるだろうか……?】
21 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/25(金) 23:14:51.48 ID:Gi67KHBs0
>>20

【彼女は眼前の少女の発育の良さには気づいていなかった。ゆえにこれは神のみぞ知ることであったが、以前神谷家を訪れた時点で、彼女は既に敗北していたのであった。】
【並ぶ者はおれど、それを下回る者は無し。人はそれを絶壁と呼ぶ。】
【そうして料理は無事完成し、食卓に並ぶのは彼女が日ごろ目にすることのない豪勢な品々。何から何までお世話になってと、衣織にも感謝の言葉を述べながら、彼女は食前の祈りを捧げた。】
【いただきますと両手を合わせ、早速目の前のチキンにかぶりつく。日々の油っ気のない食事とは余りにも違いすぎて、彼女の目はうるんでいた。】

美味しいですっとっっても!師匠マジで天才ですよ!ああ、なんか昔食べてたお母さんの料理を思い出します。
もぐもぐ、でもやっぱりアレですね、自分も手伝って作った料理となるとまた一つ味わい深くなると言いますか感慨深くなると言いますか!
衣織ちゃんも、どう、おいしい?あ、でもあんまりがっついちゃダメだよ、はしたないからね!

【言いながら彼女はがつがつと料理を平らげていく。口周りや鼻の頭はソースやなんやでべたべたである。】
【そうこうするうち、等比は自分のバッグから何かを取り出しテーブルに置いた。それは小石ほどの大きさしかない、ごくごく小さな酒瓶に見えた。】

ふっふっふ、本来なら寮に帰ってから一人酒といく予定でしたが、まさかこんなところで開けられるとは!
それでは景気づけにちょっとしたマジックと洒落込みましょう。行きますよ、…『復元(リアライズ)』!

【すると言葉と共に酒瓶はみるみる大きくなり、食卓の上には通常サイズの酒瓶が一本現れた。】
【彼女の能力は簡単に言えば「物の大きさを操る能力」。ゆえにこういった手品じみた真似や、アイテムの携帯はお手のものなのである。】

どうどう!?衣織ちゃん、びっくりした?あ、師匠にも私の能力を見せるのって初めてでしたよね!驚きました!?

【なんて愉快そうに二人に尋ねる。そして彼女はグラスを拝借し、良ければ師匠もどうですか、とすすめた。】
【ふっふっふ、どうだい衣織ちゃん。これが大人のたしなみだよー、などと言いながらグラスをあおる。年上として、精一杯カッコつけているといった様子であった。】
【そして数分後。だいたい予想の付く展開がそこには待ち受けていた。】

なんだよ別によー、独身がなんだってんだー!くだんねーんだよ男なんてよー!
衣織ちゃ〜ん、恋愛がんばった方がいいよ〜、うかうかしてるとすーぐお姉さんみたいになっちゃうからね〜〜……、うふふふふ……

【ほんの数杯も飲まない内に彼女は潰れていた。溜まっていた何かを解放するように、今の彼女は本音がダダ漏れである。】
【特に衣織に対する接し方はまるで飲み会で新人OLにうざったく付きまとうおじさんそのもので。ああなってはいけない、そんな感想を抱かせるかもしれない。】
【その後もトイレを借りようとした等比がぶっ倒れたり、あまつさえ成人女性にあるまじき行為を行ったり…ロマンチックさとはほど遠かったけれど、そうして夜は賑やかに更けていった。】

22 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/25(金) 23:50:42.45 ID:EOwZUDzw0
>>21

ふふん、何せ私も一児のお母さんですからね!これくらいの料理、お手の物です!
あらあら、そんなに焦って食べなくてもチキンは逃げませんよ。ふふっ……

「私にとってはこれが母の味ですから!えへへ……お母さんの料理って、毎日食べるけど美味しいですよね。」

もう、衣織ったら!褒めたって何も出ませんよ?……おかわりは出ますけど。

【美味しいと言って貰えれば、料理を作った甲斐もあるというもの。やっぱり、美味しく食べて貰えるのが一番嬉しい】
【兎に角、喜んでくれたなら何より。微笑ましく娘たちを見つめながら、皐月も自分で作った料理を食べるのだった】

【そして、何やら彼女は見せたいものがある模様。「なになに、どうしたの?」と、二人は彼女に注目して】
【やがて披露される手品じみた光景に、二人して「おーっ!」って驚きの声を上げたりして……】
【衣織なんかは、目をキラキラ輝かせたりしてすっかり興味津々。好奇心旺盛なのも母親譲りらしい】

「すごい、すごいです!へー、等比さんこんな事が出来るんだ……魔術師みたい!」
ふふっ、ビックリしちゃいました!この能力、宴会のかくし芸とかにも使えそう……

【その後、お酒を飲むというなら皐月も大歓迎。あ、頂きます!なんて、嬉しそうに久しぶりのお酒を注いでもらって】
【こればっかりは、衣織には味わえない大人の特権。親しい人と飲めば、お酒の美味しさだって倍増する】

【……で、数分後。すっかり出来上がった等比に困惑する皐月と衣織の姿が、そこにはあった】
【まさかの絡み酒。完全にお酒に飲まれた彼女は世知辛い本音を漏らしつつ、ぐでぐでになってしまっていて】

「は、はい……あはは……」

ふふっ、なに言ってるんですか等比ちゃん!あなたなんてまだ若いのに……
私なんて40歳よ40歳!気付いたらこんな歳になっちゃって……もうオバサンよー……


【衣織は何とも言えない苦笑いで誤魔化すしかなかったのであった……】
【ちなみに、皐月は皐月でいつもとあまり変わらない様子に見えるが……少し、年齢への愚痴が多くなっている】
【もう40歳。見た目は若々しくても、実年齢が40歳であるという事実はなかなか思う所があるようだ……】
【―――そんなこんなで、楽しくクリスマスの夜は過ぎていく。男っ気は、全く無かったが……まあ、来年に期待という事で】

【さて、翌朝の等比ちゃんはどうなっていることやら……】
23 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/26(土) 00:46:24.83 ID:iIk5eG790
>>22

【なかなか普段は聞くことのできない皐月の愚痴を聞き、活発どころかとろけたバターみたいになっている彼女はテーブルに突っ伏しながら言った】

いーじゃないですか師匠は……そもそもアレなんですよ、師匠にとっての40歳と私にとっての24歳は別物なんですよ…
ていうか私が40歳なんれすよ、心にシワが刻まれてれば誰だっれおばさんなんでしゅよ……
そして師匠は永遠の17歳……

【もはやろれつが回っていない、口にしている内容も意味不明だ。悪酔いここに極まれりである】
【時刻はかなり周っており、そろそろ衣織など子供にとっては起きているのが辛い時間だろうか。ただ眠気に関しては等比も同様であるようで、半分眠っているような状態である】
【そのとき不意に、彼女の携帯電話(もちろんガラケーである)の着信音が鳴った。あ、すいません師匠、ちょっと…と断りを入れてから、物凄くだるそうに、酔った勢いのまま電話に出た】

もしもーーし…どちら様ですかぁ? ああー、わかったぁ、サンタさんでし

『ごらあああああああああああああああああああああああああ!!熊出ェ、てめぇどーーーーこほっつき歩いてんだぁあああああ!!』

【電話越しに皐月にまで丸聞こえになるような大声が等比の耳をつんざく。そこに至って、彼女は酔いから一瞬にして覚醒した】
【声色からして、どうやら電話の相手は女性であるようだった。とてもそれに似つかわしくない口調ではあったものの】

あ、ああ、ア…… アビ教官っ!! え、え?だって私今日休みって

『うっさい、急に私の気が変わったんだ!それになーに酔ってやがんだ、そんなご身分かてめぇは、ああ!?』
『とにかく通達だ、明日までに荷物まとめてソッコーで雷の国まで飛ぶように、任務だ!!あ、その前に今すぐ私の執務室に来いっ!!』
『詳しい事情はそこで話す!言うまでも無いが、これは命令ではなく運命である!!じゃっねーん。遅れたらお前銃殺刑な♡』

【ブツッと音を立て、嵐の様に電話の主は消えた。そしてとまどっているであろう皐月達に、血の気が引いた顔で彼女は説明した】

…アビ教官。私に戦闘技術を教え込んだ教官で、私が所属する水の国自警団の支部の中で、多分一番偉い人です。
聞こえてたと思いますけど、そういう理由で、私いますぐこの国を出発することにならなくなりました!まさか急にこんなことになるとは思ってなくて!
残念です、本当はもっと二人といたかったのに…

【急展開である。何やらただならぬ事態に彼女は巻き込まれ始めているようで、皐月もそれを理解してはくれるだろうが、あまりに唐突な別れだった】
【すみません、失礼します!と急いで荷物をまとめ上げ、彼女は玄関先に立った。もっとも、この仕事が終わりさえすればまた会えるのだけれど】
【今日は本当に何から何までありがとうございました!と深々と皐月に対して頭を下げると、彼女は皐月を呼び寄せるような仕草をし、深刻な表情で、皐月の耳元で小さな声で囁いた】

(あの、衣織ちゃんなんですけど、あの子ってまだサンタさん信じてますか?)
(あの子にクリスマスプレゼントあげたいんですけど、もし信じてたら今渡すのってまずいですよね?そこのところってどうでしょう?)

【そう尋ねる彼女の表情は真剣そのもの。自身のことも大事だが、少女の夢を壊してしまうのかどうかも彼女にとっては一大事であった】

24 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/26(土) 01:04:07.61 ID:mu4Xmvul0
>>23

【二人が酒に酔っている間に、衣織はうつらうつらとし始めていた。気が付けばもう、すやすやと寝息を立てていて】
【とりあえず、寝室に運んであげようか……なんて思っていたら、次の瞬間―――】

うわぁ……

【「うっひゃー……。」電話がかかっている間の皐月は、そんな感じの表情をしていた。……なんともまあ、怖い上司だ】
【皐月は教授という割と人の上に立つことが多い立場なだけに、こういう上から威圧される様子には慣れていなくて】
【まるで関係のないこっちまで身が竦んでしまいそうな声に、思わず圧倒されっぱなしなのであった……】

【そして、言いたい事だけ一方的に言われた所で電話は切れる。……なるほど、彼女も色々と大変なようだ】

そうですか、残念です……。折角、朝まで一緒にいられるって思ったのに……。
でも、お仕事なら仕方ないですよね……怖い上司に逆らう訳にも行きませんものね……。
……きっと、戦いの場に赴くのでしょう?―――どうか、無事で帰ってきてくださいね。


え?サンタ、ですか?……あはは、あの子も流石にもう中学生ですし……
多分、本当にサンタがいるなんて思ってないんじゃないですか?それに―――

―――サンタさんからよりも、貴女からのプレゼントって分かった方が、あの子はきっと喜びますよ。
25 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/26(土) 01:40:47.50 ID:iIk5eG790

>>24

【詳しい任務の内容は等比自身まだ知らされていないが、直観的にかなりヤバい「ヤマ」であることを彼女は感じていた。】
【多分、命懸けになるだろう。それを悟ったうえで、彼女は答えた。】

ええ、絶対に無事で戻ってきますよ。私が絶対って言ったら、それはもう絶対です!

【覚悟を宿した瞳でそう宣言する。出来る出来ないが問題なのではない。大切なのは思いなのだから。】
【そして、続く皐月の言葉を受けて、彼女はそうですか、そういうことでしたら…とバッグの中から何かを取り出す。】
【リアライズ、そう唱えて彼女の手のひらの上に現れたのは、鮭を口にくわえた木彫りの熊の像であった。】

師匠も櫻の出身でしたら、見たことありませんか?いわゆる「木彫りの熊」という置物でして、縁起が良いとされてるんですよ!
ご存じの通り、熊は産まれたころは人の手のひらに乗ってしまうくらいに小さいんです。しかし、それが成長すると人間の何倍もの大きさになります。
だから熊の像は、子供を健やかに成長させる意味があると信じられているんです!立派に大きくなるように、と!
衣織ちゃんには師匠から伝えてあげてくださいね!

【そうして皐月に手渡された木彫りの熊は、年頃の少女にあげるクリスマスの贈り物としては正直センスに欠けているだろう。】
【だが、彼女はやはり真剣に、衣織に相応しいものであるという思いのもとにこの像を選んだのだ。】
【本当は直接渡してあげたかったんですけど、と彼女は言う。でも起こしてしまっては悪いからと、彼女は出発の準備を終えた。】
【そして彼女がとったのは敬礼のポーズ。一人の兵士として、守るべきものを守るべき者として、敬意を抱く相手に対して、それが最もふさわしいと思ったから。】

本日は何から何までお世話になりました!またお会いしましょう、それでは!

【彼女はそうして神谷家を発った。この一日の間、頼りなく、危なっかしくばかり見えていたその背中はこの時初めて、見送る皐月の目にきっと大きく違った印象を感じさせたことだろう。】






/以上でこちらの〆となります、3日間に渡りお付き合い頂きありがとうございました!
26 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/26(土) 01:56:21.36 ID:mu4Xmvul0
>>25
//はい、此方こそありがとうございましたー!〆は起きてから書かせて頂きます……それでは!
27 :神谷皐月 ◆jw.vgDRcAc [sage saga]:2015/12/26(土) 10:16:07.44 ID:mu4Xmvul0
>>24

―――よろしい。ふふっ、また元気な顔を見せて下さいな。

【戦地へ赴く彼女を不安に思わない訳ではない。身の危険を思えばこそ、心配にならないと言えばうそになるが】
【彼女の揺るぎない瞳を見れば、皐月は静かに頷く。―――この瞳を見て、どうして彼女を信じずにいられようか】
【彼女の言葉を信じて待つことが、自分にできるただ一つの事。……ならば、今はただ無事を信じて願うだけ】

【そうして手渡されたのは木彫りの熊。クリスマスプレゼントにしては幾分古風でミスマッチかもしれないが】
【それでも、彼女の想いや願いが詰まった贈り物。ここまで衣織の事を考えてくれていたのが、皐月には嬉しかった】
【だって、こんな物はすぐには用意できまい。きっと、クリスマスの前から贈り物を考えていたに違いない】
【贈り物は、贈り主の想いも一緒に込められている。彼女の想いは、確かに親子に届いただろう―――】

そうでしたか……。―――貴女がそんなに衣織の事を考えてくれていたなんて……
ええ、伝えておきますよ。ふふ、貴女の想いは確かに受け取りました!

―――いってらっしゃい。頑張って下さいね、私も陰ながら応援しています!

【贈り物をしっかりと受け取れば、後はもう彼女を見送るだけ。―――凛とした彼女の姿は、幾分大きく見えて】
【皐月は、いつか会った時と見違えるように立派になった彼女の姿を、少し嬉しそうな笑顔で見送った―――】

//という訳で、此方も〆です!此方こそ有難う御座いましたー!
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 20:01:08.07 ID:eDEVHcMr0
【――――雷の国『ブレザシティ』 国軍駐屯地】
【『セードムシティ』の解放が済み、かの地に燻る問題を現地で抱えて尚、この場所の重要性も失われたとは言い難いものがあった】
【『セードムシティ』の問題を分割して担当する後方支援基地として、今もなお、その活動は続いていたのである】

【――――空軍空港 第4管理区画。闇の中に、山の様な陸上戦艦のシルエットが浮かび上がっていた】
【陸上戦艦『ドランクドラゴン』――――その巨体を収容し管理しうる場所は、2年前に急造された駐屯地には、ここしかなかったのである】
【水上ではなく陸上に、新たな戦艦を収容し得るドックなど存在するはずもなく、そしてそれが、これから始まる悲劇の遠因となって行くのだった――――】



――――よぉ、これから交代か?
「あぁ、ここのところ、物々しさも減って良い感じだよな。ちょっと一雨来そうなのが、ツイてないってところだが……」
そうだな……雷が近い、冬の嵐になりそうだ……ま、済んだら一杯ひっかけて、暖まれば良いさ
「ははっ、……んじゃな」

【歩哨がすれ違う。幾ら基地の内部と言った所で、警戒を怠って良いものではない。ましてや、こう広い場所では、目を行き届かせるには人力が不可欠だ】
【ライフルを携え、それとなく行き違う兵士たち――――ごくありふれた、いつもの光景だったはずだった】

「ん……? おい、お前らペアで見張るんじゃなかったのか?」
――――っし!
「なッ、っ、あ…………ッ!?」

【異変に気付いた兵士が、不審な兵士を呼び止める。その瞬間――――『本物の兵士』の額に、細い何かが突き刺さり、頭蓋を穿たれていた】
【ギクギクと痙攣する身体も、ものの2秒ほどでくず折れる。その細い何かが、『偽物の兵士』の指先に繋がっていた】

――――馬鹿ね。物々しさが減ったって、あなた達の仕事が変わる訳ないじゃない……それに、行きつく運命もね……

【――――『偽物の兵士』が、己の首を掴むと、思いきり引き抜いた】
【まるでヘルメットを脱ぐかの如く、むしり取られた頭。それに合わせて、その姿が淡く発光しながら、別なものに変わって行く】

【右袖に瑠璃溝隠(ロベリア)、左袖に池を伴った雪景色、そして背中に満月をそれぞれあしらった、派手な赤地の櫻の衣装を優雅に身に纏い】
【艶やかな光を纏った黒い長髪を、金の簪と共に複雑に頭上に編み上げて、丸みを残しながらも目鼻立ちのすっきりした顔に、紅の口紅が色を添える】
【首から、紐に通され、額に特殊な印の様なものを刻み込まれている、4つの頭蓋骨をぶら下げている、身長160cm前後の女性】

【――――六罪王が一角、首狩 殺鬼。指先から発した『鉄の糸』が、兵士の脳をすりつぶし、かき混ぜる】
【そしてその指先が、死体と持ち物とを吸い込んで、飲み込んでしまう――――後には、何も残らない】

……そう、これから交代なの……なら、急いだ方がいいわね
パウルの持ってきたあの情報……私たちから奪った物は、しっかりと返してもらわなくちゃ……

【わずかに血の残った指先を唇に寄せながら、六罪王は薄く笑う】
【見据える先には、陸上戦艦『ドランクドラゴン』――――機関から奪取した研究成果を試験運用する為に用意された、動く城の姿があった】

/続きます
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 20:01:21.71 ID:eDEVHcMr0
【国軍空港、第2作戦室――――異変が伝わったのは、それから7分後。致命的なまでに時間が過ぎ去ってからだった】

「――――!?
 ど、ドランクドラゴンの管理システムに不正アクセス! ドランクドラゴン、発進準備に入っています!」
<なっ……なに、確かか!?>
「はい、例の管理システムがエンジン点火準備に入りました! 既に制御・通信は独立挙動に入っています!」
<馬鹿な……その不正アクセスはどこから!?>
「独立挙動に入るまで、アクセスログに変化はありません……アクセス元は……ッ、ドランクドラゴンそのものです!」
<……まさか……何者かに、直接乗っ取られたと言うのか……!?>
――――――――――――――――えぇ、その通りよ
「!?」<!?>

【突然起動する陸上戦艦。混乱する室内に、外部からの通信が飛び込んでくる】
【巨大モニターに映るのは――――断続的な稲光を背景に、戦艦の甲板に不敵に佇む、首狩 殺鬼の姿だった】

あなた達がグラトンから、『RAGNAROK LABORATORY』から奪ったもの……それを返してもらいに来たの
私たちの、新しい目的の為に、これは大いに役立つ物ですものね……この戦艦は行きがけの駄賃よ。おまけとして戴いて行くわね
<……まさか、サツキ・ザ・ヘッドスラッシャー……貴様が!>
えぇそうよ。しっかりと形にしてくれてた様じゃない……おかげで、私1人でもこの仕事が出来たわ
管理さえしっかりしていれば良いなんて……驕ったわね。私たちがその程度で、手も足も出なくなる訳、ないでしょ?
<くっ!>
さあ……そこで見てなさい! 私たちの新しい船出……ドランクドラゴン、雷の国国軍に先駆けて、処女航海の始まりよ!

【天を仰ぐように両手を広げて、声高々に宣言する殺鬼。囃し立てる様に、一際巨大な稲光が夜空を切り裂いた】

「……ドランクドラゴン、どうやら発進準備が完了したようです……こちらのチェックも遮断されました……」
<……装甲部隊に、基地の封鎖を急がせろ。攻撃機部隊、爆撃装備に換装し、すぐに発進準備、出来たものから送り出せ!>
「間に合いません!」
<間に合わなくてもやれッ! そして国内に、緊急の救援要請を発信しろ! 無線、拡声、なんでも良い!
 あの六罪王をあそこから引き摺り下ろし得るなら、誰の手でも良いから借りるんだ! それで時間を稼ぐ! 復唱ッ!!>
「りょ、了解! 装甲部隊、攻撃機部隊に出動命令、次いで無差別に救援要請を出します!!」

【悲鳴の様な命令と応答が、作戦室に響き渡る。駐屯地に、けたたましいサイレンの音が響き渡る。国内に、緊急の軍事放送が響き渡る】
【――――年の暮れ近づく雷の国に、血の動乱の足音が近づいてきた】



――――無駄よ。こっちだって、外には迎えぐらい用意するわ……それに、生半な能力者に、私をどうこう出来ると、本気で思うのかしら……!?

【無人にも関わらず、推進をし始めたドランクドラゴン。その甲板で、殺鬼はただ邪な笑みを浮かべる】
【――――12月の冷たい雨が、ポツポツと地面を叩き始めていた】

/これよりイベントを開始します。参加者はこれにレスをお願いしますー!
30 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2015/12/26(土) 20:23:51.17 ID:QjWFo/HI0
____パシャパシャパシャパシャ

【雨音とサイレンと軍事放送の鳴り響く雷の国を駆ける一つの影があった】

「今回は陸上戦艦かぁ……どんなんだろう?」

【影は小柄で声は女の子の様に高い、そして明らかに常人を越える移動速度で軍事空港を目指していた】

「どっちにしても…悪い人を捕まえればおねぇちゃんにいい子いい子してもらえるの!」

【程なくして軍事空港に到着したその人物はフードを上げ、艶のある紫の長髪と深紅の瞳を雨粒に晒す】

「とりあえず……あの人が集まってる方にいくの!」

【背中から自分の獲物である長物の武器、戟を引き抜いて少年…ワザワイ・エスパスは臆することなくこの戦いへと身を投じていった。】
31 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/26(土) 20:27:18.07 ID:iIk5eG790
>>29

【混乱の真っただ中に、けたたましい翼の回転音を響かせながら一機のヘリコプターが現れる】
【降ろされた縄梯子に掴まっていた人物が、常人では絶対に無傷では済まないような高度から飛び降り、甲板に着地する】
【灰色の短髪をなびかせ、水の国の自警団員であることをあらわす制服に身を包んだ、20代程の女性が、眼前の敵に向けて名乗りをあげた】

私の名前は熊出 等比!スカーレット隊員の一人として、この国の秩序を守る使命を受けた者です!
六罪王が一角、サツキ・ザ・ヘッドスラッシャー!この戦艦から直ちに立ち退きなさい!

【主武装である、先端に5本の鉤爪のついた金属棒を目の前にかざし、彼女はそう宣言した】
【敵の強大さは知っている、そして自身との実力の差も。この世界における事実上の最高戦力を前にして、しかし彼女の闘争心は微塵も揺らぐことはなかった】
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 20:47:43.48 ID:eDEVHcMr0
>>30

……来た――――っ、子供……?
いえ、油断はならないわね…………いつぞやの、あの忍の子の事もある……!

【雨に身体を打たれながら、余裕の表情で周囲を睥睨していた殺鬼は、そこに異質な影が走るのを見て取った】
【相手は子供。まずそれは間違いないだろう。だが、ならば取るに足らない相手なのかと言われれば、それはNoだ】
【異能をその身に携えた人間に、大人も子供も関係無い。むしろ、生半な人間と比較して、そうした人間はよっぽど手慣れである事が多いのだ】
【――――かつて自分自身も、年端もいかない能力者に命を脅かされた事がある。今回は扇動や陽動ではないとはいえ、あの様な無様は、何度も晒したくは無い】

……良いわよ。さっさと掛かってきなさい…………この仕事、私は……あまり待ってはあげないから……!

【ぬるりと、舌が唇を緩く舐めずる。――――雨の勢いが、より一層強まった】

>>31

っ、航空戦力!? まだ立ち直るには早いと思っていたけれど……!?

【上空から近づいてくるローター音に、殺鬼はハッと空を見上げる】
【――――戦艦の掌握及び脱出。そこには十分に間に合う計算だったが、早計だったかと】
【だが、それはまた違っていた。小さな影が、ヘリから飛び降りて――――ドスンと甲板に着地する】

……SCARLET……!
へえ……あなた達にしては優秀じゃない。こうも早く対応ができるなんてね…………流石は、夜凪レラのお仲間と言うだけはあるのかしら……!?

【少女――――熊出の名乗りに、殺鬼は目を見張る――――この人物はどうやら、色々と驚かせてくれるようだった】
【実に手際のよい対応もさることながら、SCARLETの一員であると言う事。即ち、以前の『仕事』であわや致命傷を貰いそうになった、夜凪レラの仲間である】
【因果な話だと、殺鬼は口元に苦笑を浮かべる。もし、熊出が見かけ倒しでなければ、苦戦する事になるかもしれない――――】

――――お勤めご苦労様と言っておくわ。どうせ意味の無いその言葉も、職務上言わなきゃならないんでしょ?
でも、私が答えに用いるのは、ただあなた達の血だけ……さあ、あなた達に、地獄の向こう側を見せてあげるから、構えなさい……!

【警告に冷笑を返す殺鬼。当たり前の話だが、ここまでやって、はいそうですかと引き下がる道理など無い】
【ただ、相手を実力で以って排除する事だけが、この場の真実なのだ。殺鬼の手がゆらりと持ちあげられる――――戦闘態勢に入った】
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 20:47:54.14 ID:eDEVHcMr0
>>30-31

さて、それじゃ……私の方も、準備をしなくちゃ、ね……!

【敵対者達を眼前に迎えて、殺鬼の腕が、調子を確かめる様にクイクイと軽く曲げ伸ばされ】
【殺鬼の指から糸が走る。糸が閃いて――――殺鬼の首をすっぱりと切断していた】
【グラリと傾き、身体から離れた首は、光の粒子となって散り、首から提げていた頭蓋骨の1つに収束すると、強力な光を放つ――――】

――――よぉっし、さて……あたしの邪魔をする奴等は、全員ぶっ飛ばしてやるんだから!

【首の挿げ替え――――彼女の能力が行使され、そこにある姿は全く別のものへと変化していた】

【青いターバンで頭髪を覆い、質素なワンピースと紫色のマントで身体を包んでいる】
【右手に、頭に色とりどりの鉱石が爪の様に飛び出ている、大きな杖を握り締めている】
【勝気そうな大きくて黒い瞳と、同じく芯の強さを思わせる黒い長髪の、身長160cm前後の少女】

【小娘、といった姿に変じているその姿は、一見すれば殺鬼と同一人物である事すら分からないかもしれない】
【しかし、変わらず指先からは、何本かの糸が飛び出て蠢いており、彼女は殺鬼が変異した存在であるのだと言う事を、暗に物語っていた】

じゃあ、まず最初は……押し流すよー!!

【激しさを増す降雨の中、少女と化した殺鬼は手に携えた杖を2人へと向ける】
【杖の先端に備えられた青い石が、その動作に合わせて発光し――――魔力が周囲に作用する】
【その瞬間――――天より降り注いでいた雨が、突如として「横から吹きつける」形で打ち出される】
【超巨大なシャワーに、正面から水を浴びせられると言った格好だ。雨の出発点と目的地が、捻じ曲げられた】
【大粒の雨が絶え間なく浴びせられるのは、傷を負う、と言った程でも無いが、動きが確実に制限され、射出する類の攻撃も使いにくくなるだろう】
【まずは、相手の手足を封じる所から狙っていったのかもしれない】
34 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2015/12/26(土) 21:16:37.80 ID:QjWFo/HI0
>>32-33
【程なくして少年は見上げるような巨大な戦艦とその上に佇む女性を発見した】

「忍の子……?……あっ!あの子かぁー」

【一人で何やらうんうんと頷いている少年、何故ならこの少年はかつてその忍の少女ととある大会で競った事があるからである】

「うりゃー!」

【右手を戦艦へ向けると共に氷でできた鎖が飛び出す、その先端の楔が戦艦の一部に周囲の水と共に凍らせて固まると数回引っ張って感触を確かめてから一気に引っ張って濡れた表面を凍らせて足掛かりにかけ上がって甲板に降り立つ】

「えぇ!?」

【いきなり自分の首を切り落とした殺鬼に驚くがその一瞬の間に殺鬼は姿を変える】

「えっと…あのおばさん?おねぇちゃん?を倒せばいいんだよね?」

【と、確認をとってから戟を構えると正面から豪雨が吹き付ける】

「これがあのおねぇちゃんの能力……でも、僕の能力と相性が悪かったかな!」

【ダン!と甲板を踏みつけると降りつける雨そのものが凍結し、少年や>>31の隊員達の前に防壁を造り出す】
35 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/26(土) 21:25:02.16 ID:iIk5eG790
>>32-33

【返される言葉に当然交渉の余地は無い。だがそれも慣れたもの、それならそうで構わない。】
【無用な血を流さないための言葉ではあったが、ならば全力を掛けて目の前の相手を捕縛するのみ。】
【そして眼前が光に包まれると、現れたのはあどけない少女。噂に聞いていた形態変化の能力に驚く間もなく、少女の可愛らしい言葉とともに暴風雨が吹き荒れた!】

…っ!復元(リアライズ)!!

【唱えるとともに現れたのは等比の目の前に現れたのは、彼女の身長の2倍ほどはある大きな岩石。サツキからすれば、それこそ自分同様に魔術でも使ったような光景である。】
【熊出等比の能力は物質の大きさを操るもの。そこにサツキの思考が行き着くかどうかはともかく、岩陰に隠れる形で等比はサツキの位置と現状を把握せんとする。】

…天変地異とはこのことですか!「生身」じゃ満足に動くこともできなさそうですね…ならば!

【彼女の体が淡い光に包まれ、そしてあろうことか雨の嵐の中へ彼女はその身を投じた。駆けるそのスピードは、やや雨の抵抗を受けながらも決して遅くは無い。】
【「能力者」とは巨大なエネルギーを体内に秘めているようなものであり、ならばそのエネルギーを「異能」ではなく、エネルギーそのものとして身体能力の底上げに用いる。修行の末に彼女が見出した新たな技術であった。】
【大きな円を描くようにサツキの周囲を駆けながら、その軌道上に次々に大岩を設置していく。今度はこちらが彼女の視界をくらます番だ。】
【岩の森の中でサツキが彼女の姿を見失ったならば。】

『小熊の長腕(テディスラッシュ)!!』

【岩陰のうちの一つから、鋭い金属がギュウウウンと凄まじい速度でサツキに向かい伸びていく。能力によって、彼女の持つメイスの柄(え)の長さを操る技だった。】
【鉄板をも貫く速度で、鋭利な鉤爪がサツキの首元に伸びていく!】
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 21:51:36.45 ID:eDEVHcMr0
>>34

……あんたも、関係者なんだ。結構顔が広いのね、あの子……
(……益々、私のものとして、欲しくなってきたわ……!)

【距離は遠かったが、殺鬼はその呟きを拾い上げた様だった。どうやらあの子供――――男か女か、やや判断に苦しむ――――も、レラの事を知っているようで】
【それはつまり、やはり彼女は大した力を持った人物である事を暗示している。その首を、新たな『コレクション』として所望する殺鬼は、なお意気を高める】

おばさんでもおねえちゃんでも良いんだよ?
……挿げ替える首さえあれば、おじさんにもおにいちゃんにもなれるんだから!

【どうやら、己の変じた姿に合わせて、言動もやや変えているらしい殺鬼は、わざと軽口を叩いて見せる】
【最近ご無沙汰とは言え、扇動を目的に何度か姿を表していたのに、彼が己を良く知らないと言うのは意外だったが】
【ならば、これを機に更に刻みつけてやれば良いだけの事だと、殺鬼は身構える】

へえー……氷を操るんだ…………
(惜しいわね……『ガイラ』の首なら、熱量操作でやりやすそうな相手だけど、今はその隙が無さそう……まあ、この首でも出来ない訳では……!)

【雨を凍らせ壁となし、それで凌ぐ――――先ほど甲板へと飛び乗ってきた方法と相まって、この子供の能力は『氷』にまず大きな特徴がある】
【様子見としては悪くは無い。1つ判断材料が出来たと、殺鬼は表情を引き締める】
【――――氷壁を超えて、どう攻撃するか。既に次の手の模索に入っていた】

>>35

うそ、岩の召喚!?
(レラと言い、この子……熊出と言ったわね、この子と言い……どうもSCARLETには厄介な連中が集っている様ね……!)

【――――流石に一見で能力の本質を見破るのは、殺鬼の手にも余る。そこには、素直な驚きが見えた】
【レラの場合は、アポートとアスポートを組み合わせた転送によって、武器を操っていたが、あるいはそれに近いものなのだろうか。ともあれ、警戒は必要だ】

っくぅッ……まずい、これ!

【それを超えて計算外だったのは、その岩の設置が幾度となく繰り返されていると言う事】
【このまま囲まれてしまえば、向こうに有利な形でフィールドを形成される事になる。底が見えない分、その事態が現実味を持って迫って来る】

――――ッ、糸……っ、きゃあっ!

【囲まれた格好で、殺鬼は微かな焦燥と共に気配を探っていたが、そこに伸びてくるのは突起を伴った刺突】
【慌てて殺鬼は、指先から『鉄の糸』を展開すると、それで防壁を形成する。体内に貯蔵した金属を厚く展開する事で、受け止めようとしたのだ】
【しかし、咄嗟の事で完璧な防御が出来ず、盾もろとも突き飛ばされてしまう。幸いにして、喉元を抉られる事だけは防げたが、突かれて身体に走る衝撃は、どうしようもない】

うーん……これしかない、か……!

【敵は2人とも、防御を固めると言う形で此方の牽制を凌いだ。ならば、それに合わせて立ち回りを考えなければならない】
【氷壁と岩を睨みつけながら、殺鬼はグッと杖を握りしめた】
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 21:51:47.00 ID:eDEVHcMr0
>>34-35

全く……やるよね2人とも! でも、あたしだって、そうそう弱くはないんだから!

【杖を引いて構えると、再び杖の頭の、青い鉱石が輝き始める】
【同時に――――杖を伝って、杖の足の方へとその光が伸びやかに伝っていき、溜まって行く】
【まるで、水が溜まって行くように、青い光が杖の先端へと収束していった】

こう言う目隠しをするんだったら……あたしの方は無視しちゃうよ!
『風の糸』で……氷の激流を、導くッ!

【杖を逆に持ちかえて、殺鬼は左手をパッと構える】
【右手に保持された杖が、中空にブンブンと振るわれる。先端に溜まった光が、空中に軌跡となって引かれ――――いつしかそれは、単純な魔方陣を形成していた】
【同時に、殺鬼の左手は見えない『糸』を放出する。それは、>>34の氷壁を跨いで、あるいは>>35の岩の森の間隙を縫う様に伸びていく】
【もしも、その『糸』に直接触れる事があれば、風の流れの様なものが感じられるはずだ】

――――バラバラになれぇー!

【空中に描かれた魔方陣が完成し、殺鬼が叫ぶ。その瞬間、雨粒が氷と化し、堅い氷柱の様になって降り注ぐ】
【それは、無差別に降り注ぐかと思われたが――――なんとなれば、2人を狙う様にして、複雑に曲がり、障害を避けながら飛んでいく】
【――――事前に引いた『風の糸』が、魔術によって生成された大量の氷柱弾を誘導していたのだ】
【防御を迂回して、直接攻撃を狙う――――状況に合わせた、確実な一撃を選択したのである】

/風呂に入る為、少々遅れますー
38 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2015/12/26(土) 22:20:22.33 ID:QjWFo/HI0
>>36-37
「へぇ、すごーい!そういう能力なんだね!」

【こんな状況だというのに素直に感心したような事を言う少年】
【しかし呑気な事を言っている間にも相手の放った氷柱がまるで意思を持つかのように襲いかかる】

「そっかぁ…でもね、あろうことか氷柱で僕に勝とうなんて………無理だよ!」

【氷壁の裏側で小さく笑顔を作ると戟を大きくしならせる】

「無理無理無理無理……無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理イィィィィィ!!!!!!!!!!」

【紫の髪を振り乱して乱打乱打乱打乱打!】
【戟によって砕かれた細かな破片に傷を受けながらも飛んでくる氷柱を全て追撃する】
【直ぐ様自分の傷を凍らせて止血を済ませると氷壁の後ろから出てくると殺鬼に向けて両手をつき出す】

「ねぇ、それじゃあその首……ぜーんぶとっちゃったらどうなるの?」

【そして少年は自らの身に宿す異能の名を宣言する】

「『血塗れかき氷(ブラッティアイスエイジ)』!」

【少年を中心に冷気が立ち込め、ドリルのような形をした無数の氷柱が殺鬼へと向かって回転しながら襲いかかる、当たるかどうかなんて事を最初から考えない乱れ射ちではあるが果たして…】

/了解ですー、どうぞごゆっくりー
39 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/26(土) 22:32:20.33 ID:iIk5eG790

>>36-37

【突き飛ばされたサツキの姿を見て、少なからず彼女は驚いた。】

(通じた…!?六罪王に!?……演技には見えない、ならば少なくとも、「あの形態」ならば攻撃への反応速度は人並み、か!?)

【そう判断した彼女の首筋に、風が当たるような感触。とっさに悪寒を感じて振り返ると、一本の氷柱が彼女の頬をかすめた。】

…!!

【そして眼前に迫りくる無数の氷柱。リアライズ、間一髪のところでそう叫び、胸元の小さなエンブレムのような盾が巨大化する。】
【ガガガガッと次々に金属製の盾に衝突し、氷柱が砕け散る。その押される圧力に負けぬよう裏側から押し返す彼女の頬がぱくりと割れ、血が筋になって垂れた。】

(水に氷に…!どうやら私の苦手な非物質系の攻撃を得意とする形態のよう。でも、直接的な戦闘能力が低いのならば…!)
(もともとまともに戦って勝てる相手じゃ無い、…機は今、行くしかない!!)

【盾をその場に残し、延長させたままのメイスを左手に持つ。そして右手にはめたのは、鋭い爪を持った鋼鉄製のガントレット。】
【能力者としての格の違いは明らかである、ならば長期決戦に持ち込まれれば敗北は確実。そう判断した彼女は、命すら失いかねない賭けに出た。】
【伸ばしたままのメイスの鉤爪を、サツキに最も近い岩に突き立て、引っかける。こうして等比とサツキは細長い金属の棒で一直線に結ばれた形となった。】

『収縮(ミニマイズ)』ッ!

【伸ばしていたメイスが、元の大きさへ!それに従い、凄まじい速度で等比自身がメイスに引っ張られる形でサツキに接近する!】
【リアライズ、重ねてそう唱えると右手のガントレットが巨大化し、それは巨大な鋼鉄の熊の手に!】
【その大きさは人間をまるごと押しつぶしてしまえるほどのもの。彼女はそれを振り上げ、サツキの全身に影が降りる!】

『大熊の剛速爪(グリズリーズバイト)』ッ!!

【彼女の全霊を掛けた一撃が放たれた!】
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 23:00:27.31 ID:eDEVHcMr0
>>38

くぅっ、やかましい!
(うるさいけど、言うだけの事はある様ねっ、あの戟……使いこなしは本物かしら!?)

【満を持して、と言うほど大げさなものでもないが、生半な一撃ではない心算だったそれを、見事に迎撃していく】
【どうやら、本格的にその力が分かってきた。ここに来て物理的な手段をとったからには、異能は氷の一手だけだろう】
【ただし、その両者の使いこなしは一定以上のレベルにある。ならば、油断はできない――――】

――――回転させなきゃ、勝ちの目もあったのに…………『炎の糸』!

【続けて放たれるは、スクリュー回転しながら放たれる、意趣返しの様な氷柱の雨】
【この姿、差して直接戦闘は得意ではなく、またそうした身体能力も高くは無い。その中でこれを喰らえば、大きな痛手になる事は必至だ】
【だが――――殺鬼は笑う。我が意を得たりと、ニヤリと】
【――――指先から線状に形成された炎が飛び出し、飛来する氷柱の一本一本に巻き付き、溶かしていく】
【――――回転とは、即ち運動量。それは、熱の発生も伝導も、通常よりも増す事を意味する。つまりは――――より、溶かしやすい】
【それを踏んで、殺鬼は効率的に、飛来する矢玉を迎撃する事が出来たのだ】

っ、ぐぅ……ッ!

【――――その中にあっても、流石に1発、左の太腿を掠め、浅いとはいえ、抉られてしまったのだが】

>>39

今度は……盾っ?
(……まさか本当に、レラと同じ様な能力を? ……いや、待って…………違う、あれは、転送されたんじゃない。もっと直接的に『出てきたもの』だ……!
 さっき伸びてきたあの棒と言い……――――そうか、これらは、サイズが変わっているのね……!)

【岩の間隙を突いて、氷柱の攻撃が当たるのが見えた――――が、そこで熊出は、更に盾を展開してどうにか受け切っている】
【二重の防御。なるほどこれならば、受けに回っても押し負ける事もないだろう。だが、その姿が、ついに殺鬼に能力のアタリをつけさせる】
【身近なもののサイズを変える。恐らくはそれが、熊出の異能の正体なのだ――――と】

っ、なに……何をするの!?

【鉤爪のメイスを岩に掛け、熊出は何かを狙っている。その狙いは何なのか――――模索より先に、それが実行される】

――――もうダメ、変えるしかない!

【急接近する熊出の手には、巨大化された鉤爪の手甲。その瞬間に熊出の狙いは分かったが、この瞬間で察してもわずかに遅い】
【もうグズグズはしていられない。模索よりも早く、殺鬼は指先から出した糸で、自分の首を切り落とした――――再び姿を変じさせる、合図だ】
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 23:00:46.23 ID:eDEVHcMr0
>>38-39

【――――>>39の接近の一撃。それに対応するべく、殺鬼は再び己の首を切り落とした】
【ゴトッと地面に転がる、その嫌な音を聞く前に――――首は光り、新たな姿となって表われる】

――――拙者を、ここまで追い詰めるとは…………お前達、どうやら拙者を本気にさせたい様であるな……?

【嫌に古めかしい言葉を紡ぐのは、先ほどとは違って男性の声。巨大化した手甲が振り下ろされた場所にいたその姿は】

【無造作に伸び放題となっている髪を、後頭部で大雑把に一束に括っている】
【平素な白い胴着を身に纏い、手には背丈をわずかに越す、先端に幅広の刃が据えられた槍を伴っている】
【まるで爬虫類かの如く、縦に細長い瞳をその目に宿している、身長170cm前後の男性】

【振り下ろされた手甲を、手に持った槍で受け止め、目を怒らせている、男の姿だった】

【――――本来なら、そのまま押し返しも出来るのかもしれないが、>>38によって足に帯びた負傷が響いているのだろう】
【早々に、往なして横へと逸らす形で、手甲の一撃から逃れた。左足を前に、後ろに引いた右足に重心を移す】

まずは……その忌々しい守り、捨ててもらおう……!

【槍を右手に引くと、男と化した殺鬼は、指先から『鉄の糸』を放ち、周囲にやたらと振り回す】
【――――鉄製のコンテナすら切り裂き得る、堅いワイヤーの様なものである。氷壁も岩も、邪魔だと言わんばかりに斬り伏せて】
【無論、それに巻き込まれれば、ただでは済まない。対象が大物である為、大振りになっており、回避は困難でこそ無さそうだが……】
42 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2015/12/26(土) 23:24:07.53 ID:QjWFo/HI0
>>40-41
「へぇ、今度はおにぃちゃんなんだぁ…」

【手品のように姿を、声を、変える殺鬼を観察していると自分が身を隠している氷壁が破壊されていく】

「あはは、でもこれはチャンスかなぁ?」

【崩れる氷壁を踏み台に大きくジャンプする】

「UHYAAAAAAAAAAAAA!!!!!」

>>39と刃を交え、更に此方の防御を崩そうとしている殺鬼は攻める側から見れば無防備も同然、そこへと弧を描くようにとびかかり、捕網のように先端に楔が付いた鎖を大量に射ち放つ】

43 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/26(土) 23:33:04.04 ID:iIk5eG790
>>40-41

【仕留められなかった、それよりも先に「生き延びた」という感覚を彼女は瞬時に感じた。】

(これだけの重さで、あれほどの速度が乗った一撃を、槍一本で受け止めるなんて…!いつかのベクターと同類、化け物…!)

【衝撃をいなされ、男の脇に倒れかけるも、すんでのところで受け身を取る。】
【ミニマイズ、そう唱えてガントレットを通常の大きさに戻したのとほぼ同時、男は周囲のあらゆる物体を切り裂き始めた!】

(…っぶな…!)

【彼女の灰の髪の先端が切り裂かれる。男のごく近くにいたことが幸いし、反応が遅れたにも関わらず、しゃがみこんだ彼女は致命傷を負わずに済んだ。】
【暴風のように吹き荒れる斬撃。しかし攻撃の性質上、サツキ本人の周囲は糸の密度が薄いのでは?自身すら攻撃しかねないようなことはしない、彼女はそう判断し、自身が好機の中にあることに気づく。】

(やっぱり、近くでこうして伏せていれば攻撃範囲から逃れられる!やつが周囲の掃除に気をとられているなら…!)
(そしてもう一つ、あいつ、形態が変化しても蓄積したダメージは消えるわけじゃない!ならば…!)

【ほふくの体勢をとりながら、男の足元に忍び寄り、ガントレットの鉤爪による直接攻撃を狙う。】
【能力を使用する際の詠唱で気づかれるのを避けるための直接攻撃である。奇抜さこそ無いが、その刺突は身体能力の向上によりある程度の攻撃翌力を保っている。】
【男のこの形態がどれほどの身体能力を備えているかはわからない、しかしこのポジションをチャンスと見て、彼女は負傷した右足への追撃を狙った。】

44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/26(土) 23:58:39.90 ID:eDEVHcMr0
>>42

――――それは、愚策であるぞ、少年……!

【ジャンプによって飛び出た少年を見上げながら、殺鬼は不吉な笑みを浮かべる】
【周囲を薙いだ糸が、今度は飛来する鎖を断つべく振るわれる。流石に糸を持ち替えるだけの余裕は存在しなかった様だ】
【氷の鎖は、割かれ、砕かれる。だが、流石に全てを無力化するには、片手では足りな過ぎた】

っぐ、ぅ…………くっ!

【右腕に突き刺さり、左の鎖骨に突き立つ。先ほどよりずっと強固な身体とは言え、ダメージを無視できる訳でも無い】
【その表情に、確かな苦悶が浮かぶ。だが、その目はまだなにも諦めていない。尚も勝機を窺う表情を湛えていて】

>>43

おのれ……奇抜な動きをしてくれる……!

【邪魔な障害物を排除する過程で、相手にダメージも通れば好都合――――そう考えていたのだが】
【しゃがみ込み、接近する事で範囲から逃れるとは、中々クレバーな判断だと、唸らされる】
【出し惜しみをしている心算は無いが、先ほどから有効打が放てていない。このままでは、一撃のもとに仕留めるのも、困難だ】
【消耗した相手をこそ、一撃で倒せるのである。ましてやそれが手慣れの相手であれば、尚更だ】

チィッ! ……っぐ、もう良い、足などくれてやろう!

【ここで足を狙われたからと言って、スタンスを変える訳にはいかない。それでは鉄の糸が遊び、斬撃の意味を成さなくなってしまう】
【咄嗟に、保持していた槍の柄でガントレットを払いのけようとするが、これはどちらかと言うと悪あがきの部類だ】
【引いていた右足にも切り傷が走り、足首の筋が痛めつけられる。その顔に痛みと苛立ちとが、徐々に表れ始めていた】

>>42-43

お前達……この身体が、ただの人間であると、思わない事だ……
首狩 殺鬼のコレクション……ただの槍兵であろうはずも、ない……! ――――――――Drache blut!

【キッと上げられたその顔は、確かな殺意の表情に染まっていた】
【その縦長の瞳が不吉に閃くと、その身体に更なる変質が現われる】

【顎が前方へと突き出し、獣の如く牙が生え揃っていき、逆に後方へと伸びていく上頭部からは2本の角が飛び出し】
【全身から緑色の鱗が皮膚の下から突き出し、首周りには巨大な宝石とも思われる球体が幾つも取り巻いている】
【――――竜人。そう形容されるだろう姿だ】

【――――ドラゴニュートさながらの姿になり、改めて槍を構える。風が逆巻き始め、稲光が荒れ狂う】
【翼こそもたない姿だが、首の竜玉にも、その全身にも、風は吸い寄せられるように巻き上がり】

――――空で拙者に敵うものか!

【跳躍していた>>42を追いかける様に、その身に風を纏って飛び上がる。槍を携えた突きの一撃は、電光石火と呼ぶに相応しく】
【成否に関わらず宙返りをする様に反転すると、今度は>>43へと向けて一直線に降下して槍を突き下ろす】
【ワンテンポの猶予こそあるが、突き刺されれば、串刺しは避けられないだろう。風を支配する竜の一撃が、2人を襲う】
45 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2015/12/27(日) 00:16:09.24 ID:4SiAuXQK0
>>44
「もう人間ですらないよー!?」

【体格や能力を変化させる能力なのは理解していたが流石に竜人などというのは完全に想定外であった】

「うぅっ…!」

【咄嗟に吹雪を纏わせた戟を打ち付けて槍の突きを迎え撃つものの、力負けして地面に強く体を打ってしまう】

「かっ……はぁっ…」

【戟を杖代わりに起き上がると>>43に向かって襲いかかる殺鬼に向かって走り出す】

「はあぁぁぁぁぁぁ!」

【足元の地面が凍り付き、スケートリンクを滑るようにして加速する、この飛行場に来た際と同じ高速駆動】

「とりゃあぁぁぁぁ!!!!」

【そして勢いを殺さぬままに両足に吹雪を纏った飛び蹴りを放つ、隙は大きいが全体重を乗せた一撃…はたして…】
46 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/27(日) 00:45:56.94 ID:khD6PRXQ0
>>44

【音を立ててその姿を異形へと変えていく姿に、彼女はおぞましい戦慄を覚えた。】

(…くそ、あの姿じゃあとてもじゃないけど、さっきみたいな通常攻撃は通りそうも無い!)
(かといって短期決戦に持ち込んだツケがある、効くかどうかもわからない能力を連発する余力もない!どうすれば…!?)

【ほふくの体勢から、膝をついて休息の体勢へ。竜人へ変化する途中のスキを狙う力も無いほど、彼女の疲弊は大きい。】
【そして中空へと舞い上がった男の姿を見て、彼女の戦慄は遥かに増した。空を自在に舞う相手に対応できるほど、彼女の能力は万能では無い。】
【彼女は今自分に何ができるか、必死で策をめぐらした。】

(まずあの高度にいて、かつあのウロコがある以上、ここから有効打を決めるのは不可能と思って良い。)
(ならやはり、自分のフィールドまで引きずり下ろすしかない!『小熊の長腕(テディスラッシュ)』で鉤爪を奴の表皮に引っかけ、ミニマイズで奴を引き寄せる!)

【そう考え、彼女は戦いのさ中で一度手放した主武装のメイスを拾いに行く。少し離れた場所に落ちていたそれを見つけ、駆け寄る。】
【そして彼女は、サツキに対してこの戦いが始まってから初めて無防備な背中を晒した。】
【男はもう一人の戦士、エスパスと戦っている最中。その考えは間違いでは無かったが、風を纏う竜人の制空権を、彼女は見誤ったのだ。】

うっ……ぐああああああああああああああ!!

【風を切る音に振り向いた彼女の腹部を、竜の一撃が貫いた。槍の先は地面にまで達し、彼女は戦艦の甲板へ昆虫採集の虫の様に縫い付けられた。】
【出血がひどく、致命傷であることは誰の目にも明らかであった。短く呼吸を繰り返す彼女の眼はおぼろで、焦点はもはやサツキに合っていなかった。】

(あー…、師匠。すいません、私もう駄目っぽいです…)

【彼女の脳に、自身の恩師やその愛娘、そして軍の仲間たちの顔が浮かぶ。死なぬと約束はしたけれど、世の中はそうそう思い通りに運ぶものでは無い。】
【おぼろげだった彼女の眼が、サツキを捕らえる。その顔は、悟りを開いた者のように笑みを浮かべていた。】

…サツキさん。奇しくも私にとどめをさした者の名が私を生かした人と同じとは、世の中奇妙なものですね…。
これも不思議な縁ってやつですか。まあそういう縁つながりってことで……

いっちょう、私と一緒に死んでくれます?

【竜は舞い降りた。その遥か上空から、彼女が投げた小石が降ってくる。】
【それは見る間に甲板を覆い尽くさんほどの巨岩となって、1つになった竜人と軍人の上へ落ちてゆく。】

…『一滴の巨岩(ベアーズ・ティアドロップ)』……

【熊出等比はそう微笑んで。轟音が夜の静寂に轟いた。】
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/27(日) 01:16:26.09 ID:kBMdjcQa0
>>45

文句は、この首の、元の主に言うのだな……!

【竜族の血を引いた戦士――――殺鬼の興味を引くに、十分な奇抜さと強さを併せ持っていたのだろう】
【だからこそ首を狩られ、こうして力の一端として行使されているのだが――――】

……これを受け止めたか。だが、その落着ではしばらく動けまい……!

【狙い違わず墜落する少年を、上空から垣間見る。更に降下して追撃に入る為に、それ以上視線で追い掛ける事はしなかったが】

>>46

――――決まったな。拙者は……殺鬼は言っていたはずだ。敵は、必ず倒すと。そして……死んだ程度では、許されんと……

【貫通した槍が、熊出を甲板へと突き刺す。この槍を抜けば、後は確実な死だけが待っている】
【竜人の目には、トドメを差す気配がありありと見て取れた。この六罪王――――首狩 殺鬼は、敵に対して手心を加える類の人間ではない】
【それに、無力化しなければならない人間は、他にもう1人居るのだ。ここで時間を消耗する訳にはいかない】
【突き刺した槍に力を込め、ボロ布からそうする様に抜き取ってしまおう――――そうした、刹那だった】

……負け惜しみか? ――――――――ッ!?

【――――光った稲光。だが、自分は大きな影の下に居る。先ほどから、雨粒が身体に降り注いで来ない】
【頭上を見上げれば、その疑問の答えは露骨な程に大きく鎮座していた――――自分よりも確実に、上から押しつぶす】

>>45-46

ぐ、はぁッ!! ぅ……謝ったわ、こんな!!

>>45の飛び蹴りが、姿勢を砕き、力を込めにくくする。思わず、男の身体である事も忘れて、素の女性口調で焦る殺鬼】
【共に死ぬつもりなど更々無いが、このままでは本当に、>>46の放った岩の一撃で、諸共圧死してしまう】
【何より、この戦艦は絶対に回収しなければならないものなのだ。ここで、下手に航行不能にでもなれば、作戦も失敗に終わってしまう――――】

――――ィゥングァァァァァァァァァ――――――――――――――――!!

【呻き声も唸り声も叫び声も、全てが綯い交ぜになった絶叫と共に、殺鬼は頭上の岩目掛けて飛翔する】
【両足はズタズタで、身体を支えきれない。ただでさえそこに>>45のダメージが走って、身体に力が入らないのだ】
【ならばとにかく、飛翔し打ち砕くしかない。槍をうっちゃり、両の拳に力を込めて、巨大化した岩を叩き割る】
【――――叩きつけた両腕が、グシャッと嫌な音を立てる。岩に罅は入る。だがまだ足りない、まだ自分たちの圧死の危機は去っていない】

ガアアアアアアアアアアアッッッ!!

【あらん限りの竜の力で、叫ぶ。その叫びが風の暴虐となって、岩へと叩きつけられる――――遂に、岩はバラバラに砕けた】
【飛び散る岩なら、一度に戦艦を踏みつけにはすまい。最悪の危機は去ったのだが――――当然に、代償も大きかった】

ぅぁ――――

【力を失い、熊出の隣にドサリと墜落する殺鬼。両腕はバックリと裂け、両足は切り裂かれ、立ち上がる力すら、満足に発揮できない】
【満身創痍。その言葉が最も的確だろう。さしもの六罪王も、これ以上の戦いは出来そうになかった】
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage !red_res]:2015/12/27(日) 01:16:38.62 ID:kBMdjcQa0
>>45-46

【――――状況は、ここに落ち着いた。半死半生の熊出に、ボロボロになった殺鬼。まだ余力を残しているのは、少年だろうか】
【殺鬼の変身も解かれ、血まみれの女性の姿が――――彼女本来の姿が、そこに表われる】
【だが、これは殺鬼の敗北を意味するものではない――――彼女は1人で戦い続けたが、1人ではなかったのだ】
【――――雷鳴とは違う轟音が、近づいてくる】

ッッ……間に合った、様ね……!
「サツキ! 迎えに来たぞ!」

【満身創痍の殺鬼の元へと、響き渡る胴間声――――そう、いつの間にか、陸上戦艦ドランクドラゴンは、基地の外周部にまで到達していたのだ】
【そして、そこへと飛来してくる、機関の紋章のプリントが施された、4機の戦闘ヘリコプター】
【銃座から顔を覗かせるテンガロンハットの男は、強奪が成立した事を物語っていた】

……手古摺らされたけど……頂いて行くわよ……この船は……!
もしも……邪魔をするなら、この市街地で…………戦争が始まるんだと、覚悟しなさい……!

【震える手で空を指差して、殺鬼は瞳を怒らせる。上空を旋回する軍の攻撃機は、対地攻撃を出来ない様子で、攻めあぐねていた】
【人口密集地がさほど遠くないこの場所で、本気の空対地戦が始まれば、被害は甚大なものになる】
【――――それを見越して、殺鬼は単身乗り込むと言う荒業を強行したのだろう】

……じゃあ、またどこかで…………地獄を見る事になるのを、精々震えて待つのね……ッ!
……グラトン博士の遺産も、回収は出来た…………これで、私は…………ッ!

【ヘリからの威嚇射が>>45に向けられ、殺鬼は重い身体を引き摺って、>>46を槍ごと甲板から投げ捨てる】
【本来、死体であっても回収し、『糸』の材料にするところであるが、今はその余力さえ残されていなかったのである――――トドメを刺す事さえ出来ず】

――――この戦艦を動かす、力は…………世界を変え得る、力…………――――必ず…………! ッ――――――――

【そばの砲身にもたれかかる様にして、殺鬼は意識を手放す。もはや限界だったのだ】

【六罪王の脅威は、今また雷の国を襲う。年の暮れ、彼らに心穏やかに時間を過ごす事を、彼女は許さなかった――――】

/これにてイベントは終了となります。ありがとうございましたー!
49 :熊出 等比 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2015/12/27(日) 01:45:40.14 ID:khD6PRXQ0
>>47

【腹部への刺突は彼女の重要な内臓を甚大に破壊していて。とめどなく流れ出る血液は、隣のサツキを染めあげるほど。】
【死に至る傷。それがもはや逃れられない運命だということは本人が一番良くわかっていた。今この場にどんな凄腕の能力者が現れても、彼女は、もう】

(あー…終わったなー。本当に本当の意味で、終わりだ。)
(死ぬってこんな感じかー…。あ、やばい過去の思い出が…。走馬灯ってやつか、マジであったんだコレ…。)
(…中学高校の私ひっどいなー。そりゃ留年するわ……あはは、妹と弟にバカにされてやんの。そりゃ父さんに家も追い出されるよなぁ…)

【過去の記憶。家族の記憶。】

(無理やり自警団に入れられた時はもー最悪だったなー。やる気ゼロで、叱られてばっかで…)
(それでパトロールってかぶらぶらしてたら、そう、師匠に会ったんだっけ…)
(人は変われるんだって。殻は破れるんだって、…そうだ、それで私は…自分の現実から逃避することを辞めたんだっけ。)

【水の国に来てからの記憶。出会いの記憶。】

(そっからは早かったなー。とにかく頑張れるだけ頑張って、アビ教官には地獄を見せられて、能力の制御に死ぬ思いして…)
(でも楽しかった。仲間もできたし、衣織ちゃんとも…)
(あ、駄目だ泣きそうだ…。…もっともっとあの子と遊びたかったなぁ、師匠にはまだまだ服とかお料理とか教えてもらうはずで…)

【霞んでいく目。溜まった涙が一滴、頬を伝って。】

ごめんなさい師匠…やくそく、まもれませんでした…

(…死ぬときは笑顔で死にたいって、おもってたんだけど、な……)

【涙に濡れたその顔は、瞳を閉じることすら叶わずに。】
【そして、彼女の瞳に宿った光は…うっすらと溶けていくように、闇の中へ消えていった……】



【熊出 等比――――――――死亡】



50 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2015/12/27(日) 03:27:08.41 ID:4SiAuXQK0
>>47-48
>>46の捨て身の攻撃の一助となったかどうかは解らないが何とか跳び蹴りを当てる事には成功する】

「くっ…やったか!?」

【落下によるダメージが未だに残る中、力尽きた殺鬼の遺体を確認しようとするがいつの間にか空港についていた戦艦に殺鬼の仲間と思われるヘリからの威嚇射撃によって身動きが取れなくなる】

「そんな…仲間入が…っ!?」

【たまらず甲板から飛び降りるもこれ以上の戦闘は市街地に危険が及ぶとのことでできなかった】

>>49
「………」

【奇しくもこの女性、熊出 投比の最期を見届けることとなったのは彼、ワザワイ・エスパスであった】

「…………動かなく…なっちゃったんだね…」

【雨粒とは別の液体で瞳を濡らしながら消えていく光、少年はせめてもとその瞼を閉じさせてやり腹部を大きく貫いた槍を引き抜いて素手である程度溢れた内臓を元の位置に押し込んで、これ以上水を吸って状態が悪くならないように氷で棺桶を作ってやり、氷の造花で満たした】

「………これで…いいのかな?」
「よく…わかんないや……」

【かつて、路地裏で略奪と殺人で生きてきたこの少年に、自分の姉となってくれた人物以外で揺れる心はない】

「なら……なんで僕はこうしたんだろう…?」

【聞けば自分がかつて夏の大会で競った相手の仲間と聞く…そのせいだろうか?】

「でも……この人にも…家族がいるんだよね……」

【かつて天涯孤独の身であったこの少年には、そのことがとても尊いことに思えてその家族のために、こうせざるを得なかったのだ】
51 :水無月 悠 闇氷【こおり】の女王@0.85 [sage]:2015/12/29(火) 19:02:03.05 ID:uRUV12uDO
さて、本日も強者【オトコ】漁りに精を出すとするか…今宵の獲物はどいつか…ククク
【金髪、コートを着た少年が一人、不敵な笑みを浮かべ立っている。】…まぁ、この身体では出来る事は少ないかも知れぬがな…こやつの訳の解らぬ術のせいで制限がついてしまったしな…。

…はぁ〜、余計な事しなければ良かった…【暗い顔でうつむきため息を吐いて呟く】。
52 : ◆lS99Qcg7Ec [sage]:2015/12/30(水) 21:57:48.33 ID:CnaXdFCS0
【とある博物館】

【ここは都市の中心部近くにある巨大な博物館―――。】
【様々な骨董品、記念品、魔導に関する重要な書物など沢山の物が管理されている】
【多くの研究者などが訪れるため昼夜を問わず開放されており、この時間でもまばらに人の姿が見える】

【そんな中、歴史書籍の閲覧コーナーの一角、仕切りによって隔てられた一人用の机の一つに書籍が大量に積み上がっている】
【その多くが今まで起きてきた戦い≠フ歴史についての書籍だ。それらを読んでいる人物は】

しっかしとんでもねぇなこの世界はよ、年がら年中お祭り騒ぎをしてやがんのか?
これだけやってれば確かに境界≠ノも綻びが生まれるはずだ、俺のような不純物≠熾エれ込む。

あるいは誰かが―――まぁそんな事はどうでもいいか。
ようやく身体も馴染んできたところだ、何か面白い事はないかねぇ。

【深紅の髪をゆるく逆立て、赤いドレスシャツの上に黒いフード付きのロングコートを纏っており】
【淀んで隈の浮き上がった金色の瞳でどこか退廃的な雰囲気を醸し出しているスラリとした細身の少年】

【少年はだるそうな様子で背もたれへと項垂れている。どの様子は館内の人がまばらな事もあって眼を引くかもしれない】
53 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 17:12:20.68 ID:3jgBS+YU0

【薄暗く人通りの少ない夜道。街灯のわずかな明かりが差すのみであるそこを、一人の男がおぼつかない足取りで歩いていた】

なんだってんだよ畜生、俺が一体何をしたってんだぁ〜!?どうして新年早々働かなきゃあなんねえ〜んだよ…ヒック。

【スーツを着た赤ら顔の中年男性である。相当に酔いが深いようで、聞く者もいない愚痴を大声でわめき散らしている】
【すると突然男は、闇に紛れて足元にあった何かにつまずき派手に転んだ。コンクリートの道に手を付き、悪態を吐きながら振り返る】

…ってぇな、誰だよ道のど真ん中にこんなもん置いた馬鹿はよ!?

【そこにあったのは大きな黒い金属製の箱だった。一辺の長さは丁度1メートルくらいで、立方体の形をしている】
【模様や文字らしきものは何も描かれておらず、用途は一見してもわからない。どことなく不気味な雰囲気を漂わせる、そんな箱であった】
【男は少し箱の外観に謎を感じつつも、やがてどうでもいいことだと判断したようで、立ち上がり様に箱を革靴の底で思い切り蹴とばした】
【箱は傾き、ゴトンと音を立てて道の脇へと倒れた】

ったく、やってらんねぇっ!!

【そして再び男は歩き出す。その後ろで横たわったままの箱が、音もたてずにゆっくりと開き出した】

【ここは薄暗く人通りの少ない夜道。風が木々の葉をざわめかせて、人の心まで落ち着かなくさせるかのようだ】
【コンクリートの道路には幾つもの傷と破壊の跡が残されている。その少し先には、腕や足がバラバラになった男の死体が散乱していた】
【道の真ん中には真っ黒な金属製の箱が一つ置いてある。何に使うのかわからない、奇妙な見た目の箱だった】

54 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/02(土) 19:02:45.22 ID:oeu9RuYbo
>>53
/まだいらっしゃったりしますかー?
55 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 19:04:09.43 ID:3jgBS+YU0
>>53

/おります
56 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/02(土) 19:22:08.35 ID:oeu9RuYbo
>>55
/でしたら!

【宵闇が静かにその色を深める、薄墨色の風を携えて】
【ひたり―――塗りたくったような黒金属の箱】
【誘われる足音の靡く色合いに似せて】


――――――わ、忘れ物、なの


【仄かに金色の混じったプラチナブロンドの長い髪、大きなマリンブルーの瞳】
【ゴシック調の紅いミニシルクハットと同じくゴシック調の白いブラウス、首元には紅のリボンタイ】
【紅いチェックのミニスカートの上から黒いコルセットで細いウェストを締め上げ】
【編み上げブーツに黒いニーソックスの雪のように儚い印象の少女】

【道路に落ちている金属の箱、それを見つけて、とてとてと近づく】
【直ぐ側によって、少しかがむ、膝をかすかに曲げただけで視線の高さは同じくらい】
【手を伸ばして、止める――――――その先に散乱した男の死体を見つけたから】


……すごくね、悪い予感、するの――――――


【かたん、と音を鳴らす大きなバイオリンケース、両手でヨイショと持って】
【つんつん、とその先端で箱の表面を突いてみる】
57 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 20:08:03.39 ID:3jgBS+YU0
>>56

【コンコンと少女が箱を突く。それに呼応してか、箱がカタカタとひとりでに震えだした】

…うふ。うふふ、うふふふふふふ……!

【突然、女の笑い声が「箱の中から」聞こえてきた。凍り付くような不気味な声色と共に、なんと箱が宙へと浮き上がった】
【不思議な力で動き出した箱は、鳥や虫のような軽やかさで少女のまわりを、円を描くように回りだした】

…貴女(あなた)、とっても綺麗ね。まだ中学生くらいかしら? ああ、年頃の娘ってどうしてこんなにも美しいのでしょう。

【喜ぶ様に揺れながら「箱」が喋る。黒い箱の外見に変化は無いが、特異な能力を持つものならば、箱が発する禍々しい妖気のようなものを感じ取れるかもしれない】
【舐めまわすように少女の観察を終えると、箱は少女の目線に合うように空中で静止した】

貴女の感じたそれはきっと正解よ。私、とっても悪くて強い人だもの……。
…ふふ、こんな姿で「人」っていうのも変かもしれないけれど。一応れっきとした人間のつもりよ、私はね。うふふふふ…!

【状況から考えるに、どうやらこの箱の中には一人の女が入っているようだ。人間が一人入るにはやや狭いように思える。かなり窮屈な体勢でいるのだろうか】

…自己紹介がまだだったわね。私の名前はパンドラ。
≪災厄の少女=竄ニ呼ばれた、カノッサ機関の≪No.8≫よ…!

【そう言って彼女は笑う。名乗られた肩書は、箱の女がこの世界において知らぬ者無き組織の幹部であることを示していた】

私の方は済んだわ、今度は貴女のことを聞かせて頂戴…?
私、貴女にとっても興味があるんですもの。さっきのゴミとは違ってね……うふふ。

【ふわふわと宙に浮きながら、箱は目の前の少女にそう問いかけた】




58 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/02(土) 20:23:16.38 ID:oeu9RuYbo
>>57

【いきなり揺れだす箱に、びくりと肩を震えさせる】
【ぽわぽわとした瞳に緊張が走る、軽く地面を蹴って距離を空けるだろう】
【藪をつついて出てきたのは、蛇であれば重畳と呼べるほどの災厄なのだろう】

【嬌声を響かせる箱、周囲を旋回するそれを一挙手一投足見逃さない】
【マリンブルーの瞳が観察する、動きの軌跡を夜のキャンパスに残して】
【問いかける声、告げられた災禍の名前は、その身の証左には十分で】


……機関≠フ、ナンバーズ――――――名前はね、十分、知ってるの
そこの人もね、貴方がやったの


【名称しがたき箱、漏れる声の様子とは裏腹に彼女の身体には緊張がみなぎっている】
【華奢な両肩、少しでも力を入れたなら砕けてしまいそうな繊細さで】
【機関の名を関する相手に相対するには、あまりにも儚い存在であれど】

【言葉が震える、ソプラノが唄う、悪を許せない旋律を】


UNITED TRIGGER<\ニア=エカチェリーナ=ドラグノフ

――――――狙撃手≠ノ見つかったらね、逃げられないの、教えてあげる


【左足を前に、右足をその後方に来るように半身になる】
【同時に左手を伸ばし、その手に握ったバイオリンケースを揺らめかせ】
【右手がケースをたたき、そのまま後方へと引き抜く、刹那、バイオリンケースがからんと開いて】


――――――RaumKrankheit


【少女の両手で握られる身長ほどもある黒い狙撃銃】
【伸ばした左手は銃身を、振りぬいた右手はそのまま引き金に駆けられる】
【ブーツが地面をカ噛む、小石が踏みつけられ、僅かな軋む音をたてて】

【長い銃口は箱の直ぐ目の前に、重心越しにマリンブルーの瞳が覗く】
【プラチナブロンドの前髪が揺れてそのまま銃弾を放つだろう、照準をつけてから、躊躇いがない】
【早いが、重自体が大きいぶん、予備動作も大きい、回避はそう難しくないだろう】
59 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 21:04:08.60 ID:3jgBS+YU0
>>58

【「UNITED TRIGGER」。そして続く少女の名を聞いて、箱はにわかに纏う雰囲気を変化させた】

へぇ、貴女がソニア…。あの忌々しい金髪女のお仲間ね?
そう、それなら私達が争うには充分じゃない。早速「[ピーーー]気」みたいのようですもの、ね。

【機関と幾度も衝突を繰り返してきた組織の一人、ソニアの名は彼女も聞き及んでいたようである】
【しかしそれでも箱の発する、禍々しくもどこか弛緩したような空気は変わらない。それは少女が戦闘態勢を取り、銃口を構えてもだ】
【あまつさえ、獲物を屠らんとする銃弾がその眼前に迫っても】

神は人類にあらゆる災厄を贈ったわ。病気、恐怖、諍い、色欲、絶望、痛み…
全ての災厄が私の糧…

【金属と金属のぶつかりあう激しい高音が響く。ひしゃげた銃弾が弾かれて地に落ちる。そして箱は、何ら変わることなくその場に浮かんでいた】
【ありえないことである、男一人に蹴とばされる程度の重量の金属なのだ、狙撃銃の一撃を真正面から喰らったというのに箱には傷一つついていない】

うふふ、凄い威力ね…!一撃でこれほどの糧となるなんて…

【何か仕掛けがある、歴戦の能力者ならばそう気づくはずだ。しかしその疑問は目の前の箱自身によりあっさり解かれることとなる】

不思議かしら?なら大サービスで教えてあげましょう。
私の能力『箱詰めの地獄(パンドラボックス)』は名の通り箱を操る能力…。
能力によって具現化された、私が入っているこの箱は、どんな攻撃を喰らおうとも!絶対に!…破壊されることは無いのよ。
絶望かしら…?ねえ、どう…?私に勝とうとあがく姿を見せて。うふ、うふふ、うふふふふふ……!

【箱はそう言って哄笑する。眼前の少女のレベルを知りながらなおも、彼女は自身の能力に絶対の自信を持っているようだった】
60 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/02(土) 21:17:52.52 ID:oeu9RuYbo
>>59

【琥珀色の音がなってからの薬莢が排出される】
【地面を叩いて響かせる音が一つ、連射は殆どできないのだろう】
【硝煙越しにマリンブルーが射抜く、その視線の先の箱を】


……っ……効いてない、の……


【白い頬に戸惑いの色が生じる、冷や汗が沙雪に僅かな色を混じえて】
【けれどもすぐさま頭を振る、プラチナブロンドの長い髪が呼吸を一つ】
【じりり、と足の裏が地面を擦る、不安そうな表情を見せたらダメだと、言い聞かせるように】


壊れないものなんて、ないの、この世界のものはね、全部いずれ、壊れるの
だからね、ソニアたちは、守るの、大事なものが、悪い力で、壊されないように


――――――それがどんな壁でもね狙撃手≠ェ射抜けない、壁はないの――――――!!


【静かな調べが波及を生む、細雪に一枚の結晶が混じって】
【再び銃口を構える、腰を後方に向けて重心を低くする】
【スカートの裾が吹き抜ける風を伝えて、言葉を一つ飲み込む】

【再び放たれる銃弾、狙いは先程銃弾が着弾した箇所】
【微塵の狂いもなく、同じ箇所を狙い撃つだろう、蓄積させる事が狙いか】
【条件は違えど、狙いは精密で、少女の高い技量を伺わせる】

【銃弾を放ったなら、銃身を引き寄せ、両手で抱え込むだろう】
【右足で地面を蹴って少し距離を空ける、両足を肩幅に開いたら、視線は前に】
【リロードであろう、高い攻撃翌力の代償は大きい】
61 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 21:50:10.44 ID:3jgBS+YU0
>>60

【「絶対に破壊されない」、そう豪語する彼女の言葉の真偽は不明である】
【だがそうとまで言い切ったパンドラに対し、ダメージの蓄積を狙った少女の判断はリスキーだった】
【続く2発目の弾丸へ、パンドラはやはり何の対策を取ることもなく真正面から攻撃を受ける。まるでダメージを受けること、それ自体が目的であるように】

…言ったじゃない、たとえどんな攻撃を喰らっても壊れないって。
不屈の心とそれを体現することのできる精神力は見上げたものね。でも、その勇気が逆に貴方を苦しめることになるのよ…

【笑うように箱が揺れる。先程よりも威力を込めて放ったであろう一撃が、一切効いていないように見えるこの現状に、少女はどのような思いを抱くだろう】

さて、受けるばかりでは戦闘にならないわ、私からも仕掛けなければね…
「懐古と追憶のおもちゃ箱(カラクリ・トイボックス)」…

【パンドラがそう宣言すると同時、黒い箱の両脇に、同じ程度の大きさのピンク色の箱が出現する】
【2つのピンク色の箱が開くと、中からは数体の人形が降りてきた。各々の大きさは少女の膝の高さに届くか届かないか程度である】
【ぬいぐるみやブリキの人形が4、5体。そのそれぞれが、手に剣や槍、ノコギリなどを持って少女に向かい飛びかかってくる】
【さらにピンクの箱の中には、無数の人形たちが巣から出てくる蟻のようにひしめきあっている。人形兵に時間を取られていると、新たな人形兵が湧いてくるようだ】
【ピンクの箱は、パンドラが入っている「本体」とは別種の箱のようである。漂う気配を察知する余裕があるならば、その違いに気づくことができるかもしれない】


62 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/02(土) 22:06:41.52 ID:oeu9RuYbo
>>61

【烟る、排煙が夜を滲ませ、呼吸の音を空かすかのように】
【空回りする薬莢の音、唇の端を噛むと、人形のような表情に焦りが見えて】
【蠱惑的な貴方の声が、睦言のように甘美な味わいを響かせる】


嘘……!?……そんなの、撃ちぬけないの……っ――――――


【マリンブルーの大きな瞳に波紋が生じる、湖面を揺らす災いが一つ】
【彼女の銃弾の貫通力はかなりのものだ、足りない力を補って余りあるほどに】
【だからこそ、だ、嘲笑用なあなたの言葉が反芻する】

【必然、次の異変への対処が遅れる】


……っ――――――!!あぁ……ぅ……!!


【飛びかかってくる人形、狙撃銃で振り落とそうとするも、動作は大雑把で】
【振り落とせなかった幾つかが、両腕に細かい傷をつける】
【白いブラウスに血が滲む、漏れた吐息の白色が、夜を鮮やかに染める】

【思わず膝を落として崩れそうになるのを、銃底を地面につけ、杖にする形で耐える】
【両足が力無く開いて、銃にしがみつくように崩れ落ちるのを耐えた】
【肩で荒い呼吸を整える、ダメージ以上に動揺が大きいだろう】


(どうすればいいか、分かんないの……でも、まずは人形をどうにかしないと、いけないの
乱発は出来ないの、なら――――――)


【前髪越しに見上げる表情、力はあるものの、困惑が強い】
【硝子細工の横顔が、濡れた髪の水面にも似て】
【振り払うように次の銃弾を込めつつ、観察をするだろう】
63 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 22:45:02.56 ID:3jgBS+YU0
>>62

【ピンクの箱から放たれた人形のいくつかが少女の柔肌を傷つけると、その光景を見ていたパンドラの様子が変化した。】

…もう良いわ。戻りなさい、お前たち。

【その言葉に反応して人形兵達が振り向き、どたどたと走りながらピンクのおもちゃ箱の中へと戻っていく。最後の一体が箱の中へ戻るとフタが閉まり、本体の両脇に存在していたおもちゃ箱が消滅した。】

…案外すぐに堕ちてしまうのね。人形たちの小手調べ程度、軽く蹴散らしてくれるものだと思っていたのだけれど。
屈服の表情は、苦痛に耐え抜く過程が面白くなければ意味が無い。…少々貴女のこと、買いかぶっていたかしら。
もう少し楽しむ予定だったけど、気が変わったわ。これでお終いにしましょう…

【黒い箱を覆う空気が変わる。弛んだ雰囲気は微塵も無く、空間が歪むような、おぞましい感覚が周囲を包んでいく!】

箱詰めになったあらゆる災厄は、一人の愚かな女によって地上へ解き放たれた…!

黒き奔流と化し世界に散れ!「神が与えた最悪の箱(デスピア)」!!

【女の入っていた箱が凄まじい勢いで開かれ、中から漆黒のエネルギーが嵐のように溢れだした!】
【轟轟と吹き出す黒色のエネルギー体に触れた小石が真っ二つに切断される。道路や街灯を巻き込みながら、破壊の力が少女を襲う!】
【これが彼女の能力の本質である。すなわち、箱に与えられたあらゆる厄災(ダメージ)は、災厄として箱の中へため込まれてしまう。】
【そしてその箱のフタを開くことにより、蓄積された全ての災厄(ダメージ)が破壊の嵐として吹き荒れる。】
【常人ならば黒き箱が開いた瞬間にその命を落とすだろう。しかし破壊の暴風雨が吹き荒れる中で、よく敵の姿を観察することができたならば、パンドラ本体が堅牢な箱に守られていないのは唯一この瞬間だけであるということに気が付くはずだ。】
【少女が目を凝らしたならばきっと見えるはずだ、黒い箱に入った、両手両足を根元からもがれた裸の女の姿が。】
64 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/02(土) 23:01:03.74 ID:oeu9RuYbo
>>63

【声色が変わった、道化の仮面の下には冷血な美女が一つ】
【妖艶な色を拭き落としたら、そこには罪過に見えて】
【呼吸音が零れる、息を引き締める微かな音色】


――――――!!すごい……!!力、なの……!!


【吹き荒れる暴風、災厄がその姿を表し、破壊を蹂躙する様】
【それはさながらそのたいを名で表すがごとく、パンドラの底に残っていた災禍と言いたげに】
【爪先が震える、逃げ出してしまいたい、マリンブルーに映る怯え】


ダメ……!!此処で逃げちゃ、ダメ、なの――――――!!

(視る≠フ、ソニア、しっかりと、視るの……っ!!
堅い守りに、これだけのエネルギー、その両立なんて、できない……!!)


【身体一つとってみれば、彼女は底イラの少女と変わらない、それでも正義の名のもとに戦うのは】
【最後に遺る一本の芯、心だけは誰にも譲れないから】
【マリンブルーが射抜く、黒い箱に残った女の姿を】

【吐息を飲み込む、冷たさが身体の中に降りて、熱を冷ましていく】
【両足を開いて、しっかりと地面をつかむ、狙撃銃を振り上げ、振り下ろす】
【銃口の先は、吹き荒れる災厄、そしてその奥の箱へと】


大丈夫、今度は、はずさないの――――――!!


【爆ぜる銃声弾丸が夜を先一筋の尾を描く】
【夜の雪原に遺るシュプール、振りぬく一陣の風とも知らずに】
【銃弾が光の尾をまとい速度をます、暴風雨へと漕ぎ出る旅路の果てに】

【銃弾の狙いは暴風を切り裂きその先の女へと向かうだろう、狙いは右肩の辺りだ】
【彼女の弾丸は貫通力は高いが破壊力は低い、直撃しても箇所が悪くなければ致命傷にはならないほどだ】
【反動で僅か後ずさる、銃口が地面に落ちて、両手でその銃身を支えた】

【向ける視線――――――銃弾の先は、どこへ】

65 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/02(土) 23:28:58.37 ID:3jgBS+YU0
>>64

【放たれた弾丸は光を纏って、闇を切り裂くかのように】

バカな…!この状況下で前に進むなんてっ…!

【破壊の嵐によってその体積を少しずつ削り取られつつも、ソニアの放った銃弾は彼女の右肩に着弾し、鮮血が箱の中へ散った】

ぐぅァッ…!…おのれ、この私が体に傷を負うなどッ…!!

(しまった…!焦りすぎた、銃弾2発分の「災厄」では、反撃の弾丸を破壊しきるのに必要なエネルギーに届かなかったのか…!)

【苦渋でその表情を歪ませる、「パンドラ」を名乗る女の姿が露わになる】
【黒い箱の中に、四肢の無い裸の女が収まっている。長い金色の髪に、整った顔立ちは絶世の美女と呼ぶのに充分だった。その形相は、苦痛と怒りで醜く彩られていたけれど】
【黒い箱は蓄積したエネルギーの全てを放出しきり、女は荒く息を吐いている。女の怒りはその名に泥を塗られたことよりも、別の理由に強く起因していたようだった】

…見たなッ……!!
…この姿を見て良い者は、我が「同胞たち」と「お嬢様」だけだッ!!
憐れむような眼で私を見るんじゃない…!私に普通の感覚を思い出させるんじゃあない、私に過去を思い出させるんじゃあ無いッ!!

【一切の余裕を失い、忘我の状態でパンドラはソニアに向かい叫ぶ。今にも少女に噛みつかんとする勢いのパンドラだが、理性を失い取り乱しているようで、新たな攻撃に転じようとはしない】

66 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/02(土) 23:38:11.99 ID:oeu9RuYbo
>>65

【膝が砕けそうに鳴るのを踏ん張って耐える、吐き出した呼吸から一遍に力が抜けていきそうで】
【空っぽの薬莢を爪先で弾いて、顕になった相手の姿を見る】
【美しい横顔、歪む音色がより一層、そのアリアを美しく彩るのだろう】

【狙撃銃が消える、元のバイオリンケースを両手で持つと、よろよろと歩み寄るだろう】
【滲む血の色、ブラウスが紅に彩られたなら、彼女のダメージを伝えて】
【大きな瞳が見つめる貴方の姿、そこにもう戦意はなくて】


――――――ひどい傷、なの、大丈夫……?


【ぺたんと座り込んだら、自分の前にバイオリンケースを置いて中から応急キットを取り出して】
【両手いっぱいに消毒液やら何やらを抱えて、貴方の傷口を見ようとする】
【彼女のつけた銃創、その治療をしようとしているのだろうか】


えっとね、それとね、おねーさんの、身体――――――


【言葉に詰まった、あどけない少女が視るには凄惨すぎる光景であったから】
【次の言葉がみつkらなかった、そしてソレが過ちだったと気づくように】
【しゅん、と表情をしぼめて捨てられた子犬のように、縮こまる】
67 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/03(日) 00:21:52.80 ID:okXMeRyn0
>>66

【あろうことか先程まで自身を殺さんとしていた狂人に近づいていく。少女のそんな姿を見てパンドラの感情は、怒りを通り越し混乱の域に達しようとしていた。】

一体何なんだ、お前はッ!!傷の治療だと?意味が分からない、なんなんだ、何なの…!!

【理解できない、といった表情で彼女はソニアの行動を見つめている。だがその瞳には、先程まで宿っていた狂気が消えていた。】
【ソニアがこれまでに辿ってきた道筋は、恐らく並大抵の少女の辿るそれとは大いに違っていただろう。】
【パンドラにしてもそれは同様だ。その特異な姿は否応なしに、彼女の過去に何があったかを想像させる。ソニアと程度の違いこそあれ、彼女もまた苦難に満ちた人生を送ってきたに違いない。】
【だが片方は守るために。片方は破壊のために、今を生きている。二人の間に存在する距離は途方も無く大きい様に思える、だが。】
【横たわるパンドラのすぐ近くにソニアは居る。二人の距離は、別の意味ではあるけれど、ほんの少ししか無く。パンドラがソニアの目を見る。】

…ソニア、あなた、一体

「そこまでだ」

【交差する視線を遮るように、どこからともなく一人の男が現れ、二人の間に立ちはだかった。】
【長身痩躯の、20代後半程に見える男だ。血の様な真紅の短髪に、ワインレッドのシャツを着ている。】

…っ!ギード、何の用よ!?
「お嬢様からの指令だ。こんなところで力を使ってるんじゃねえ。『国盗り』に支障が出ることがあっちゃならねぇだろ」

【一見して、何の変哲も無い普通の男に見える。だが男の口から「お嬢様」という言葉が出た途端、パンドラは声を詰まらせた。】
【ギードと呼ばれた男は黒い箱のフタを閉じ肩の上に担ぎ上げ、この場を立ち去ろうとする。こうしてパンドラの表情は再び見えなくなってしまったが、去り際に彼女はソニアにこう告げた。】

…「我々」にはやらねばならない使命があるわ。だけどそれと今夜の戦いは別の話…
私の姿を見たとあってはとにかく生かしておくわけにはいかない。それが私の信条だから。
次は必ずその息の根を止めてあげるわ。覚えておきなさい、小娘…

【箱の女はそう言って去って行った。「お嬢様」「同胞たち」「国盗り」、意味深ないくつもの言葉を残して。】
【もしも少女が渦巻く彼等の策謀の中へその身を投じることがあるならば。きっと運命は、今日の日の二人を引き合わせるだろう。】



/こちらはこれにて〆となります、有難うございました!
68 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/03(日) 00:36:40.84 ID:tVuaPs2Mo
>>67

【彼女の思考はどこまでも単純で、どこまでも真っ直ぐだから】
【ソレがたとえ誰であろうと、彼女は死を嫌い行動する】
【命の取り合いをした次の瞬間にはもう、そのことを忘れているかのように】


……だったらね、ソニアは、息の根が止まらないように、頑張るの
それでね、おねーさん達を、止めるの、何度でも


【紡ぐ声は届くかはわからない、静かな音色は旋律と呼ぶには淡く】
【けれどもその先に聞いている誰かがいると信じていたかったb】


/お疲れ様でしたー!
69 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/05(火) 20:58:42.94 ID:bAMW1iJc0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――風の国 公園】

……六罪王が、雷の国で派手にやらかしたそうだな……おまけに、SCARLETに殉職者まで出る、か……
「無理ないっちゃ無理ないけど、やっぱりみんな、どことなく暗い信念よね。対岸の火事、とも言い切れない訳だし、ね……」
 ……春燕、大丈夫かな……参っちゃってるんじゃ……」
……知り合いの、SCARLET隊員、だったか……?

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【まるで何かに苛立ちを感じている様な攻撃的な眼をしている、身長170cm前後の青年と】

【明るいピンク色の長髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、前髪をやや膨らませる様にセットしている】
【紫色に着色されたカジュアルジャケットと、レギンスとハーフパンツを組み合わせて着用している】
【――――目元にレンズ、両耳に円形のボディ、後頭部に装着用の調節器が一体化した、機械的なバイザーをつけている、身長160cm前後の女性が】

【ベンチに並んで腰かけ、青年の手にした端末を一緒に覗き込み、難しい表情で画面を見つめている】
【小さいディスプレイの中には、機関に襲撃され、基地を突破して行く雷の国の陸上戦艦の映像が、映されていた】

……今後、どう出るかだな。まずは、それを確かめてからでないと、周りもどうしようもないか……
「外堀から埋めていかなきゃ、ね…………ところで、その包みって……」
……別行動してる間に、ちょっと買ってきた。帰ったら喰うか? このチーズケーキ……
「おっ、嬉しいの買ってくれるじゃん! だったら今日はこれくらいに、ね?」

【吐く呼気が白む中で、2人の姿がベンチから立ち上がる。先ほどまでの物憂げな表情が一転、どことなくリラックスした表情を見せていた】



【――――所変わって、雷の国 広場】

――――おぅ、屋台の兄さん! 予算が50000あるから、ここいら辺の客たちに、なにか暖まる酒でも振る舞ってやってくれ!
あぶく銭だ、さっさと使い切りたいんでな!

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【出店で賑わう立ち食いスペースの一角で、札びらを切りながら周りに酒を振る舞っている】
【その場にちらほら見えていた客たちは、戸惑いながらも酒を受け取り、やがて賑わい始める】

……新年早々、ツイてたって奴だな。……サツキの奴は、まだ動けそうにないけど、な……

【自分自身も、プラカップのビールをゆっくりと傾けながら、男性は晴々とした表情で、場に居合わせた客たちの賑わいを見つめる】
【――――カップに隠れた口中に、ふと物憂げな呟きを流し込みながら】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
70 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/05(火) 21:59:59.27 ID:bAMW1iJc0
/>>69取り消しで
71 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/07(木) 20:06:34.05 ID:4qEs0Kap0
【街はずれ――海辺の、海に大きくせり出した足場】
【見上げれば空には薄い刃のような三日月と、数えきれないような星屑と】
【灯台の灯りが何度もめぐって、ただ、明かりのないこの場所はほんの少しの街明かりだけが照らして】

……。

【ざんと低い波音、黒い海から白い波が流れ着いては、足元のコンクリに小さく砕けて消え】
【ぽつんと佇む人影がひとつ、じいと見つめる海は何が潜むんだかも窺えないほどの黒色インクの水面で】
【時々吹く生臭いような海風が人影の髪を微かに揺らす、――どうやら、それは、華奢な少女のよう】

【くすんだ金髪は毛先で緩く巻く癖毛、巻いた毛先には淡くピンク色が染めて、長さは肩よりも少し下に伸びる程度】
【わずかにあどけなさの残る顔はいやに鋭い勿忘草の瞳ばかりが目立って、肌の青白いまでの色白さもあってか、かわいらしさというのは摩耗しつくし】
【分厚い布地を幾重にも重ねたような生成り色のロングワンピース、羽織るケープも布地が分厚い重たそうなもので、こちらは赤く】
【手にはぎゅっと何かを大切そうに抱きしめていて――、年季の入った児童書である、というのは、もし誰かが覗きこめば簡単に分かるのだけど】

ッ、こんな、もの……!

【低く掠れた声が小さな声で、それでも叫ぶようにして声をひねり出す、ぎゅっと右手に掴んで振りかぶるのは、やはりと言うべきか、抱きしめていた件の本で】
【けれど真っ黒の海に投げ捨ててしまうことができずに、力の入った華奢な右だけがわなわな震えて――】
【――なんてことを、どうやら、この少女は。もうかれこれ一時間以上、何度も、何度も、繰り返しているようなのだった】
72 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/07(木) 21:40:51.04 ID:u3qC/Tqr0
>>71
今いらっしゃいますでしょうか〜
73 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/07(木) 21:49:41.59 ID:4qEs0Kap0
>>72
/いますよー。ただ日付変わるころで凍結お願いすることになるかと思いますが……!
74 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/07(木) 21:53:35.40 ID:u3qC/Tqr0
>>73
それまでで構いませんのでお付き合い願えると
ちなみにこちらのキャラは「フウァル」ですが、問題はありますでしょうか
75 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/07(木) 21:57:47.84 ID:4qEs0Kap0
>>74
/大丈夫ですよー!
76 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/07(木) 22:00:56.50 ID:u3qC/Tqr0
>>75
/では早速書かせていただきますねー
77 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/07(木) 22:27:05.69 ID:u3qC/Tqr0
【街外れの海辺、灯台の光やコンクリートが届く程度には人に近い場所であり、夜に人の姿が消える程度には人から離れた場所である】
【そんな場所に訪れる人物と言えばこの病人服の少女のように潮風に吹かれる為に訪れた者か、それとも】

あれ? あの方はこんな所で何をしているのでしょうか

【海辺に立ち、なにやら思いつめた様子で立ち尽くす女の子、つまりは人目を避けてここにいる人物位であろう】

こんな所で何をしていらっしゃるのですかー!?

【遠目から叫んで ――そんなに声量がある訳ではないので軽く風魔法で声を送りつつ―― どこの誰とも知れぬ他人の事情に首を突っ込もうとするこの少女は、シャリエールの件といい少々迂闊といえる】
78 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/07(木) 22:38:55.25 ID:4qEs0Kap0
>>77

【何度も振りかぶっては投げ捨てようとする、たったそれだけなのに、何度も失敗して、ただの一度たりとも成功しない】
【何度も何度も投げ捨てろと命令したはずの腕は力の入れ方を忘れてしまったみたいに震えて、古びた児童書は、接着剤で張り付けたように、離れはせず】
【ぎりと歯を噛み締めて今度こそ思い切ろうとする。気付けば周りの景色はすっかりと暗くなっていて、ここに来た頃は明るかったはずなのに――けれどどうでもいい】

……――ッ!

【今度こそ、と、振りかぶった。その時、後ろから声が聞こえて。少女の華奢な身体は面白いくらいに跳ね上がる、その拍子に】
【本はするりと手からこぼれて――ばさん、と、海ではない。少女が立つコンクリートの上に、落ちる。古びた背表紙はコンクリートに削られて、小さく跳ね】
【吹き抜けた風にばらら、と、頁がまくられる音がする。――とっさに振り向いた少女の顔はひどく慌てて見えたのを、いまだ遠い相手が気付くかはさておいて】
【膝をついてまで本を拾い上げる少女の様子に違和感を覚えるかもしれない。その態度は、或いは何よりも大切なものを扱うようだったし、】
【ぐうと唇をかみしめて本を胸に抱く少女の眦には涙さえ浮かんでいるように見え】

…………。

【――向ける視線は、たぶん、それ以上に辛辣な色を宿すのは難しいんじゃないか、というくらいに。辛辣で、冷たくて、或いは敵意さえあり】
【いまだ遠い相手をそれでも明確に睨みつけるから、届いた声が相手のものだとは、理解――或いは決めつけているよう】
【たとえ近づいたとしても何かされることはないけれど――ただ、ものすごく睨まれるのは、居心地の悪さが素晴らしいだろう、というのは、一応】
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/07(木) 23:05:34.54 ID:4qEs0Kap0
>>77
/ちょっとノートパソコンの挙動が怪しいので再起動かけてきます。お待たせしてしまうかもですが、少し待っていただけたら幸いです
80 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/07(木) 23:57:48.94 ID:u3qC/Tqr0
>>79
/こちらも書くのに時間をかけてしまい申し訳有りません

>>78

【病弱なこの身では、ただ走るだけでも息切れが激しくなる ……なのでただ走るよりも楽な方法に頼った】
【風魔法で追い風を作ってそれに背を押させるのだ、流石に風よりかは体重の方が重いので追い風より遅れて走る事にはなるのだが】

今からそっちに行きますねー!

【彼女の走る様子を見た者は奇妙に思うだろう、何せ砂埃が後ろではなく前に舞っているのだから】
【本人や周囲の人がそれを吸わないように気流を調整しているのでそういう心配は必要ないのだが、それにしても奇妙な現象を目撃するだろう】

到着っと、こんな夜更けにこんな場所で会えるなんて奇遇ですね、袖振り合うも他生の縁と言いますし世間話でもしませんか?

【向けられる視線に気付いていない訳では無い、それ以上に目の前の少女が気になって仕方が無いのだ】
【つまりこの病人服の少女は、好奇心だけで一人の人間に関わろうとしている ――それは不躾な事だろう】
【自身の失礼は重々承知、怒鳴られたって仕方ないだろう、だけど会話によって彼女を少しでも知る事が出来たのなら】

(その後どうするつもりなんだろう、私)

【知ってどうするのだろうか、自分でも分からない、それは知ってから考えるのだろう、力になる? 話を聞くだけ?】
【あまりに無責任すぎる自分に落胆する、記憶を失う前の私もこうだったのだろうか】

ここ座りますね ……貴女もどうでしょう、立ち話もなんですし

【そう言って地べたに座る、いい風ですね、なんて言いながら海を照らす灯台へ顔を向け、自身への落胆を誤魔化しながら】
81 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/08(金) 00:14:09.70 ID:PeyRtrF10
>>80

【たった今自分で投げ捨てようとした本を何よりも大事なように抱きしめる矛盾、見れば少女自身、まだ、子供のように背丈が小さく。それでも子供ではないのだけど、】
【子供が癇癪を起して愚図っているように見えなくもない。目の前で繰り広げられる珍妙な光景もどうでもよかった、――それほどまでに、余裕がなかった】
【ぎりと歯を噛み締めて親の仇かのように睨み付ける、元より目つきが悪いものだから。少なくとも、それは、初対面の人間に向けるべき顔ではない。だろう、も要らない】
【ぎゅうと本だけに縋るかのように抱きしめて、身体を少しだけ小さく、硬くする。――相手の言葉にはわずかに身動ぎをするが、よほど拒絶するわけでもないから】
【それくらいは無視してしまって問題ないだろう。噛み締めた歯の隙間から漏れる吐息は白く登って、それなら、彼女が、幽鬼の類ではないと分かるよう】

…………。

【近い距離に座る相手を咎めはしない。けれど、睨む目つきが変わるわけでもない】
【本をぎゅっと握りしめたままの彼女は、野良猫か野良犬かのような視線を向け続けて――、そのうちに、特別な害はなさそうだ、と判断したのか】
【そこでようやく相手から視線を逸らすのだろう。そうすれば、抱きしめる本へと視線を落として、落としてしまったことでのダメージを確かめ始め】

……こんな夜更けにこんな場所に訪れる奇人と袖なんか振りたくなかった。

【やがてぼそりと漏れる声は低くて掠れた声、どこか埃っぽいような、古書の頁をまくったときのような、古びたような声で】
【それなら最初からここに居た自分は相手以上に変な人間だと分かり切って決めつけているうえで言っているような声音、視線は今度は本から逸れず】
【わずかに塗装の剥げてしまった背表紙をしきりに気にして撫でている、そして、ほんのわずかにだけ泣きそうに口元をゆがめて】

彼方の方が街灯もある、具合が悪いようなら彼方に行った方がいい。

【八つ当たりのように言い捨てて、指が彼方を指す。相手の恰好を見て病人か何かだとでも判断したのだろう、それなら、安全な方に行けばいいと】
【親切なのか独りで居たいだけなのか、すぐに指を戻して元のように本を抱きしめる、その腕も、足も、身体も、今にも折れてしまいほうに細くって】
【それなら、相手よりも少女のほうがよほど不健康に見えかねないくらいだった。肌も――慢性的な貧血でもあるのか、すっかりと蒼褪めていて】

/そしてすいません、時間ですので凍結お願いできますでしょうか?
/明日からでしたら時間制限もなく再開できますので、都合の合う時間を教えていただけましたら……
82 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/08(金) 00:22:59.96 ID:HBXy1LAo0
>>81
/明日なら大体9時半頃からかと
/終わりについてはその時にならないと分かりませんが
/それでよろしければお願いします
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/08(金) 00:26:23.98 ID:PeyRtrF10
>>82
/9時半ごろ了解です、それくらいの頃に待機しておりますねー
/ではまた明日よろしくお願いしますっ。おやすみなさいませ!
84 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/08(金) 00:45:12.78 ID:HBXy1LAo0
>>83
/おやすみなさーい
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/08(金) 18:38:40.83 ID:PeyRtrF10
>>81>>84
/ID変わってないと思いますが、昨日の者です。
/大変申し訳ないのですが、食事が外になってしまったので、9時半ごろに間に合わない……かもしれません。
/出来るだけ間に合うように善処しますが、なんだったら明日以降の再開でも置きレスでも大丈夫ですので……!
/本当に申し訳ないです……。
86 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/08(金) 21:27:46.02 ID:98teuoW/0
【雷の国 山荘】

最近忙しそうにしてたみたいだけど……どうなんだ、旦那?
「忙しくなるかと思ったら……私の関わる余地は、今のところほとんどだ……
 流石は、ウルバヌス博士の遺産と言ったところかな……一度掌握してしまえば、もう粗方は上手くいってしまったよ」

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性と】

【一目見て研究員である事が分かる白衣を身に纏い、胸ポケットに4本の4色ボールペンとメジャーを押し込んでいる】
【やや白髪交じりの為に、全体的にグレーに見える髪をきっちりとバックに整え、神経質そうな印象のメガネを掛けている】
【やつれ気味の頬と、眉間に寄っている皺が特徴的な、身長160cm前後の男性が】

【別荘らしい山荘の中に小さな明かりを灯し、リビングでくつろぎながら言葉を交わしている】
【テンガロンハットの男性は、グラスやボトルを忙しなく弄り、飲み物を用意しているようで】
【白衣の男性は、しきりにメガネの位置を直しながら、ソファに腰掛けてその様子を見守っていた】

【テンガロンハットには、≪No.21≫と書かれた、逆五芒星の象られたバッジが留めてあり、白衣の襟の部分には、≪No.84≫と言う刺繍が施されている】

へえ、そいつは凄い……殺鬼の奴も、まだ身体が癒えてないってのに、溌剌してたからな……それだけ弄り甲斐があるって事か
「……ウルバヌス博士に及ばなかった所を、彼女は上手く抑えている……もし、博士が生きている内に彼女が台頭してくれていれば……詮無き話か……」
どうせ噂に聞くグラトン博士じゃ、殺鬼に素直についてたか、分からないぞ?
「……それもそうだな」

【テンガロンハットの男性の寄越したグラスを受け取り、白衣の男性もホッと一息つく】
【対面の椅子に腰かけたテンガロンハットの男性も、その手にグラスを握りしめていた】

「……それより、なんでこの様な場所で会おうと言ったのだ? わざわざ……」
……いや、「ついで」よ「ついで」……久しぶりに『確保』もしておきたかったからな

【――――部屋の隅には、4人の親子と思しき死体が、整列した様に並べられていた】
【揃って頭部に銃創があるその死体は、恐らくはこの山荘の、本来の所有者だったのだろう】
【新年の休暇を、この場所で過ごそうとでも思っていたのかもしれない】

【白衣の男性はそれが気になるらしく、横目で一瞥し、もう一度メガネを手で修正する】
【テンガロンハットの男性はそんな様子に苦笑しながら、窓の外を見やる――――さぁっと小雨の降りる音が聞こえてきた】
87 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/08(金) 22:59:43.93 ID:98teuoW/0
/>>86取り消しでー
88 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/08(金) 23:50:42.84 ID:HBXy1LAo0
>>81

【こちらに帰るよう促してはいるが、自分から離れていこうとする様子は無い】
【いわゆるツンデレというものなのか、この場所そのものに用があるのか、それともたまたまか】
【いづれにしてもこちらから立ち去る理由は無い、例えただの好奇心から始めた事だとしても途中で投げ出すのはいただけないし】

実はこれでも調子が良い方なんですよ? 今日みたいに出歩ける日はあまり多くないし、まだ帰る気はしないですね

【自分から切り上げるつもりは無いですよ、と暗に告げてみる】
【もしも向こうが話を切り上げて立ち去ると言うのなら、それ以上踏み込むことは出来ない】
【しかし彼女の言葉は拒絶しているように見えてこちらに判断をゆだねるものであり、どこかで踏み込まれるのを待っているようにも見えるのだ】

どうでしょう、貴女もあまり具合がよろしくないみたいですし、お茶代わりにポーションでもいかがですか?

【彼女の健康状態は見たところ貧血、というより声といい細すぎる身体といい ――偏見になるが精神状態から見ても―― 恐らくは慢性的な栄養失調】
【生育に必要な栄養素すら足りないとすれば、見た目より年齢が上だったとしてもおかしくは無いが、この場で年齢を聞くのは止めておいたほうがいいだろう】
【そこで、栄養たっぷりでいてとんでもなく不味い、しかし身体が欲するのであれば至福の味となる不可思議な色のドロドロとしたポーションを取り出しコップに分ける】
【それを目の前で飲んで見せて ――ちなみに私は美味しくいただける―― 毒でない事を示す】
【主治医のような研究者から処方薬のように持たされたものではあるが、栄養状態を回復させるものである為他人に飲ませても大丈夫な筈だ】
89 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/08(金) 23:56:12.78 ID:EK+sMG/90
【――――人里から大きく離れた湖】
【其れは密林にも似た森の中に存在して居て、とても人間が入り込むとも思えない場所】
【然れど、今宵は其処に少しばかりイレギュラーが起きていた】

【大凡人の持つ魔力とは比べられないほどの其れ。更には、其れは“風”という魔力のみで満たされていた】
【まるで風の魔力のみが集ったかの如く。だからと言って、吹き荒れている訳でも無く】


【森を進み、湖に辿り着いたならば。先ず、一人の青年が視界に入るであろうか】
【まるで法衣にも似た物を纏った緑の髪の男。手にしているのは酒か、湖面に映る月を眺めながらチビチビと口に運び】


「現物を眺めているよりも、別なレンズを通して見る物の方が綺麗に見える事も多いなんて不思議な話だねぇ
あ、コレ美女にも美少女にも言える事ね。ほら、何だか撮った後でパソコン使ってカタカタってしたりするんでしょ?本に載せるとき
……実際に見て綺麗な人なら、良い酒の肴にもなるんだけど」

【この男が、件の魔力の正体であろう。まるで、魔力その物が人の形を成しているかの様】
【此処を訪れた者の気配を感じ取ったのか、投げかけた言葉は何とも気が抜けるようで】
【同時に、何と無くこの男の性も知れる事だろう。実直とはほど遠い軟派者】


「所で――――こんな辺鄙な場所に何か用かい、旅人さん
生憎見たとおり此処は人が滅多に来る事も無くてね……僕が出来る持て成しはこのお酒を分けてあげる事くらいだけど」

【徳利を揺らし、ちゃぷんちゃぷんと音を立てて聞かせ】
【――少なからず危険な存在で無い事は理解出来るか。振り向く事も無く、視線は湖面に向けられて居るのみ】
【注意を向けさせるのも、或いは側まで歩み寄ってみるのも。将又踵を返して歩き出すのも。全て、訪れた者の自由であって】








【――――昼間は活気を見せる街も、夜ともなればひっそりと静まり返っていて】
【そんな中、暖かな光が窓から漏れる店が一つ。扉には『OPEN』の看板か下げられている事からまだ営業時間内であろう】

【スライド式の扉を開けて中に入ったなら、先ず視界に入るのは店の内装】
【落ち着いた雰囲気の喫茶とでも表すべきか、カウンター席が主で他にはテーブル席が幾つかある程度】
【店の少し奥に置かれた掲示板には様々な事が書かれて居るようだけれど】


「いらっしゃいませ。初めての方……ですよね。ご注文の方はまだお決まりではありませんでしたか?」

【僅かに遅れて入店の挨拶をしたのは一人の女性だ】
【恐らくは二十代の半ば。穏やかな愛想の良い笑みを浮かべ、取り敢えずはとカウンター席の方へ着席を促すのだろう】
【素直に従うも良し、でなければ先ずは話を聞くのも良いのだろうが】
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 00:04:44.94 ID:GB0u0vL30
>>88

【そのまま帰ればいい。と、小さなつぶやきが聞こえた気がした。下唇をきりと噛んで、視線は相手には向かないけれど、変わりにどこかを見るというわけでもなく】
【独りにしてほしい――静かに悲鳴をあげるようでありながら、それでも、どこか、他人を希求するような強い拒絶。子供が泣きじゃくりながら母に追いすがるような、】
【きっと普通の人ならば三つ、四つ、或いは五つや六つで通り過ぎるはずの場所に、きっと、彼女は取り残されているような気配があって】

……私は具合が悪いのだけれど。

【本を抱きしめたままの手にわずかに力が入る、ただでさえ白い指先は入れられた力に余計に白くなって、わずかに震えるようなら】
【寒いのか、それとも怒っているのか。或いは自分の気持ちすら分からないでいるのかもしれない、具合が悪いという白状はほんの少しの弱音のよう】
【こんなにも細くて顔色が悪ければそれは具合も悪くなるだろう。まして一月の寒空の下、海辺の風はきりりと冷たく、肌を突き刺すほどで】

…………要らない。

【――そう、そして、相手の偏見は当たっていた。この少女、ろくな食事もしないまま、もうずっと生き続けているような状態で】
【食べたものと言えば一昨日くらいに食べた食パン一枚と少しのジャム……とかそんなレベルだ。その細い指に吐くような痕跡は見えないから、そう、ではないのだろうけど】
【野良猫に初めてきゅうりを見せたみたいな顔をしていた。なんだそれ。目と態度とがすべてで拒絶するレベルで、彼女はなるべく辛辣な声を吐き】
【ドリンクミーなんて言われて飲んで奇天烈なことになっても困る――なんて思っている間に相手は自分の分を飲むのだけど、それでも、怪訝な目は変わらない】

そんな怪しいものを飲むほどに落ちぶれてないのだから。

【最終的にファンタジーめいた色合いの液体から目を逸らしてつんとした態度を取る。落ちぶれるなんてとうに通り越して今にもぶっ倒れそうだけれど、】
【それでこの場でそうですかと飲める性格だったなら、きっと、こうもなっていないのだ。少女は嫌だと口を噤んでしまう、本だけに心を寄り添わせて】
【怪しい――それが問題であるようだった。相手が飲んだのを見ていても、怪しくて飲む気にならない。要らない、欲しくない、眉をきゅうと吊り上げて】
【体育座りのように身体に膝を寄せて、小さくなる――とうてい十八には見えない、子供みたいな。否、我儘に拗ねた子供のような、態度の、少女だ】
91 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 00:58:40.20 ID:I/qhzfOY0
>>89

【静かで穏やかな力の支配する湖に、いびつで濁ったもう一つの力が干渉する】

…旅人ねぇ。振り向いて私の姿を見ても、まだ私のことを人と貴方は呼ぶのかしら?うふふふ……!

【毒気の込められた女の声。くぐもったその音はまるで鎧の中から発せられているかのようだった】

貴方にはこの湖が綺麗に見えないのかしら?だったら無粋ね、私と同じ…

【そう続け、不気味な女の笑い声が静寂を黒く染め上げていく。もっともこの侵入者がどの程度場に満ちる空気を変えられるのかは、男の持つ力の大小によって変わってくるのだが】
【男が目線をやったならば、眼前には空中に浮翌遊する大きな黒い箱が現れるだろう。一辺の長さが1メートルほどの、立方体の形をした箱だ】
【声は箱の中から聞こえてくる。中に人間が入るにはやや窮屈に見えるその箱は、笑うようにその姿を揺らしていた】


/まだいらっしゃいましたらば

92 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/09(土) 01:13:22.98 ID:2p0vY0T40
>>90

ははは、ですよねー ……私がこれを最初に飲んだのは無理矢理流し込まれたものでしたし

【あんなポーションを取り出したのは流石に冗談である、もし飲んでくれたのなら意外な美味に驚く顔を見物してみたかったというのもあるのだが】
【少々残念に思いながらもポーションを鞄にしまって、代わりに別のビンを取り出す】

ならこれはどうでしょう

【そう言って取り出したるは普通の栄養ドリンク、適当に果物とか野菜とかをミキサーに突っ込んでから濾しただけのものである、植物性タンパクも豊富だ】
【固形物や食物繊維は弱った消化器官に対して酷だろうという配慮のもと取り出したものであるが、本来なら夜中のピクニックに広げる飲み物】
【こちらもコップに分けて飲んで見せる、これで「施しはいらない」なんて断られたらどう返そうかと、というよりどうやって栄養を取らせようかと思案しながら】

ささ、どうぞどうぞ、試飲の御代は結構ですので

【御代といえば先程のポーション、売ったらどの位になるんだろうなとちょっと考える】
【あれでいて結構保存状態に気を使わないといけないし、製造に関わる技術が無駄に高度だから ……1ヶ月程度をそこそこの宿で寝泊りできるかもしれない】
【効果からして処方された彼女自身でなければ一週間位食べずともよくなってしまうような代物だし、そんなものかもしれない】
【なんて事をジュースの残りをジャムにしたサンドイッチを食べながら考えていた】
93 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 01:21:46.37 ID:jpx5wJaG0
>>91
「旅人……いや、旅箱?まあ、呼称なんてどうでもいいかな
何であれそうして俺に問い掛け出来る程度にはキミにも意思ってモノが備わってるんだろう?
形が四角でも丸でも取り敢えず意思の疎通が出来そうなら人扱いしとこうか」

【声――――視線を向けてみればその通りの光景。こりゃまた珍客だ、なんて呟きを漏らしたならば頭を掻いて】
【動揺した様子が見られないのは人外に慣れているからか、それとも男も又人外で在るが故か】
【暫しの間眺めていたのだが、やがては言葉を返して】


「いやいや、俺にも綺麗な物は綺麗に見えるさ。でもねぇ……どっちかというと、自然だ何だの綺麗よりも女の子の綺麗可愛いの方が――……」

【不誠実。お堅い女性が相手ならば先ず平手が飛びそうな事を真面目に言うのだから尚の事】
【然れどその魔力は本物なのだろう。揺らぐ事は無く、そして其れが攻撃として物体へと向けられる事も無い。少なくとも、今は】
【嗚呼、其れで。そんな言葉を発したと思えば、更に言葉が紡がれて】


「別に完全な立方体とかに興奮するような変態でも無いから勘違いしないように
…………さて。大凡人間とも言い難いキミは何故こんな所に来たんだい
サイコロの様に気紛れで転がってきた、と言うには少し無理がありそうだけど
中に入って出れなくなったなら手伝ってあげようか」

【更に問うのは此処を訪れたその理由だろう】
【酒を一口飲めば答えを促すように視線を向け。冗談交じりの言葉で答えを待つ】

/居ます!が、そんなに長くは出来ないかも知れません……!
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 01:26:28.71 ID:GB0u0vL30
>>92

【できれば何も食べたくないし飲みたくもなかった、味も、食感も、緩く身体が拒絶し始めているのをなんとなく感じていたし、】
【本さえ読めればそのほかは要らないのにだなんて思考は、ただ、そういう体質ではないから外には漏れないし、きっと相手にも届かないのだろう】

そんなもの、飲ませようとして……、――。

【じとりとした目が向く。それなら自分も嫌だと言い張る理由にもしてしまう、飲みたくないのだ。食べ物なんて救済も、或いは、他人の優しさなんてものも】
【それでも。それでも、本当の最初、一番最初に相手へと向けた視線よりは、ほんのわずかに柔らかいものになっている。――まだ、まだ、鋭いけれど】
【雲丹の棘の先端を軽く折ってみましたよ程度の軟化を感じないでもない。やっぱり危険人物かと身体を引くが、やはり逃げ出しもしない、不慣れな野良猫のよう】

……要らない。

【ついと閉じた眼で顔ごと視線が逸れる、くるりと巻いた癖毛の中に見える首はやはり病的なまでに細く、なんなら、へし折ることさえできそうなほど】
【本の点検ももう飽きたか諦めたか、本が温かいかのように、暖を求めて湯たんぽでも抱きしめるかのように本を抱くのだけど、もちろん、それが暖かいはずもなく】
【寒さにほんの微かに震えている、――十数秒ほど置いて、視線は緩やかに相手のほうへと戻り】

【露骨に観察こそしないが、こんな自分に話しかけて構って来る珍妙な人間を隠し見るように眺めるのだろう、それは、失礼ともいえる目だったけれど】
【確かに彼女が相手へ興味を持ち始めた証拠でもあって、――食べるサンドイッチに対しては、気持ち、謎ドリンクに対するそれよりは好意的な目を向けたような気がする】

【――変な色のドリンク。何が入っているのか分からないドリンク。それなら、いっそ、ある程度原材料を推定できるサンドイッチのほうが安全に見える、それだけの話】
【もとよりパンを常食しているため抵抗も薄い、空腹感は別段に感じていないから、それは、ほんの一瞬だけ。撫でる程度に見せた、いっときのものだったのだけど】
【もしも相手がそれに気づいてそのサンドイッチを差し出しでもするなら。この少女も折れる――のかもしれなかった】
95 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 01:49:48.77 ID:I/qhzfOY0
>>93

【男の軽口に、箱はくすくすと笑って見せる。今のところ、よどんだ空気を発してはいるものの眼前の男に敵意は向けられていないようだ】

いやね。これでも私、人間よ?…少なくともそのつもりだわ。うふふ、この「中身」を見せてあげられないのが残念だわ……
中を見たらきっと貴方、びっくりするわよ。死んじゃうくらいにね…

【不吉で意味深な言葉を箱は投げかける。いまいち真意の掴めない、ふわふわとした語り口だ】

…それにしても貴方、見た目にそぐわず好色なのね。ますます箱の中身を見せられないのが残念。
私はパンドラ。呪われた箱は、決して開けてはならない禁忌の象徴……

【どうやらこの箱の中には女性が一人入っているようで、人外のたぐいでは無いと彼女は言う。】
【そして自身の名乗りもそこそこに、男の質問に対し答えだした。】

理由?簡単よ、とても強い力がこの辺り一帯を覆っていた。そしてその中心を探って進んでみたならば貴方が居た、それだけのことよ。
…強い人は、好きだから。そんな存在に興味を持って近づいてくることは当然だと思わない?うふふ……!

【言って箱の女は笑う。もっともただ何の目的も無く近づいてきたというわけでも無さそうである。彼女の纏う空気は、世間話をしに来たようなそれでは無かった。】

さて、今度は私の番。周囲に満ちる力の根源は貴方でしょう?私だって「力」は持っているから、それくらいは簡単にわかるの。
…貴方は誰?名前はなんていうのかしら。…興味があるの、教えてくれないかしら…?

【箱は眼前の男にそう問いかけた。どこか含みを持たせた、腹に何かを抱えているような、そんな口調だった。】



/了解です!
96 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/09(土) 02:10:21.00 ID:2p0vY0T40
>>94

【一度目に飲み込ませる気の無い高い要求を告げ、次に少し妥協したけど本命ではない要求を告げ、二度断わらせた事で断りにくくした所で三度目に本命を突きつける】
【――なんて事を意識してやった訳では無い、というか二度目のドリンクを飲ませるつもりだったのだ】
【つまりサンドイッチに目を向けられた事は予想外のことであり、消化器官に対する不安が高すぎるがまぁ、食べさせないよりはよいだろう】

【そこで病人服の少女がとった行動はサンドイッチの入ったカゴを自分と彼女の間に置くこと ……それだけ】
【食なさい、とも、食べてもいいよとも言わない、強要されるのも許可をされるのも癪だろうし、それ以上に見下しているようで嫌だったから】

【ドリンクに不安を持っているのならドリンクから濾された原材料のサンドイッチは食べないかもしれないと、そちらの方は先に食べてしまう】
【同じ材料で作られたものは具の調理法も含めれば一つや二つではないので、食べるサンドイッチの偏りを見抜かれる可能性は十分にある】
【ドリンクには変な材料が入っているでもなく、きちんと味にも気を使って調整されているので普通においしくいただけるはず】

【カゴの中のサンドイッチを食したのなら「お味はどうでしょうか、私が作ったのですがお口には合いましたか?」などと雑談を試みるつもりである】
97 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 02:13:42.22 ID:jpx5wJaG0
>>95
「よくSF映画とかで変な液体の中に浮かぶ脳味噌とか色々あるけどまさかそんな感じ?
あー……それとも体がバラバラになった状態で入ってるとか
玉手箱みたいな仕組みになってても困るからねぇ。俺みたいな格好いい人がシワシワになっても世界の損失だしさ」

【箱の中を見せられない、と言われても無理強いする事は無い】
【性格からして相手が女性である事を考慮してか――――それとも、言葉に含みを感じたからか】
【適当に思い付いた事を並べはしても、結局其れは答えを求める行為では無くただの遊び】
【また最後に冗談か本気かも分からない言葉を交えれば肩を竦め】


「何時の時代だって男は女が好きさ。俺もその例に漏れていないだけ
で……嗚呼、俺についてだっけ?本当だったらもっとこう、ちゃんとした女の子に教えたいんだけどなァ……
お茶でも啜りながら互いの距離を縮めて、みたいな?なんて今言っても虚しいだけか……

俺の呼び方なんて適当だよ。その時々で変わる
彼だったりアイツだったり、彼女だったりあの子だったり。時代によって変われば人によっても変わる
言っちゃえば固定化されてないんだ。だけど、そうだな――――……敢えて最近の主な呼ばれ方を教えるなら」

【まるで実体が無いような、外見は疎か性別も変わるかのような。そして、長らく生きているかのような】
【適当な言葉にも取れるが、事実を述べているようにも取れる】
【少しの間だけ口を閉ざしたのは何をどう伝えれば良いか考えている素振りか】


「エアリアル。確かそんな呼ばれ方が多い筈
意味は……なんかの詩か歌か忘れたけど、それの登場人物の一人さ

しかしパンドラねぇ……。どうにも奇妙な名前だ
その箱を開ければ希望、なんて名前の女の子がすやすや眠ってるなんて落ちだったら俺としては一番の希望なんだけど」

【力の下りに対しては頷きはするものの、深く教える事は無い】
【ただ、魔力を知りながらも近づいてきたとなれば――――浮かぶ考えは幾つかあるものの、大体は穏便では無い事ばかり】
【己が風の精霊である。その事は態と告げる事無く、今はただ成り行きに任せ】
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 02:21:39.16 ID:GB0u0vL30
>>96

【サンドイッチの籠が自分と相手の間に置かれる、ぎゅっと身構える子供のように身体を小さく硬くしていた少女はそれを見て、】
【ひどくゆっくり――それこそ数分の時間をかけて、そのうち、ぺたりと座るのだ。正座というには崩れた、そう、あひる座りとか、お姉さん座りとかいうもの】
【それでも頑なに本を抱きしめる手を緩めないのだけど。――じっと黙って、時々相手の様子を窺う、別に沈黙が苦になるタイプではないのだろう】
【だんまりを続ける割にはだいぶんと元気なように見えるから、そういう意味では図太いのかもしれない。というか――まず、か弱く臆病なタイプではない】

…………。

【そうしてしばらく(一方的に)睨みつけていたのだけど、少女はたっぷりと時間を間延びさせた後に、ようやく、観念したように籠へと手を伸ばすのだろう】
【伸ばした手はけれど一度戸惑ったようにぴくりと跳ねる、それでも、そのうち、籠の中の一つを選び取って――、それでさえ重たいように、指をふらつかせながら】
【自分の元まで腕を戻して。ふんわりというよりごっさり、布地のずいぶん多いロングワンピースの布の上、厳密には膝の上に、数秒手ごと置くようにして】
【じっと見下ろしていたのだけど――これまた三分近いような時間をかけて、最後に、ようやく、ちんまりと口へと運ぶのだろう】
【その一口はびっくりするくらいに小さくて人間サイズのハムスターでももう少しまともに食べそうな感じがする、けれど、食べたことは確かで】
【しばらく放っておけば、一般的な人間でいうところの二口、三口、それくらいまでは食べるだろう。その目はわずかに冥く澱んでいたけれど――嫌がってはいないよう】

……――別に、普通かしら。

【――味には問題がないということだろうか。ぼそりと呟いた声は低く掠れて、だけど、不味いとサンドイッチを魚の餌にしてしまうこともない】
【何より小さくではあったけれどある程度減らしたのがその証拠にもなるだろうか、普段食べているような白いばっかのパンに、一ミリにも満たないジャムを塗っただけの】
【そういう食事に比べたらずっとマシだし、少しでもまっとうな人間なら美味しくも感じるだろう。――しばらく食べたところで、彼女は、】
【また手が疲れたようにサンドイッチごとを膝の上に置いてしまったけど。それでも――食べる前と後。明らかに、今度こそ、態度がいくらもマシになったのが伝わりそうで】
99 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 02:37:38.06 ID:I/qhzfOY0
>>97

【男が箱の中身へ興味を示しているのが面白いようで、やはり箱は笑ってみせる】

残念、今挙げた3つともハズレ。…うふふ、それにしても貴方なかなかユニークね。タマテバコなんて櫻の伝説に例えられたのは初めてよ。
ああ本当に残念、でもこの箱を開くわけにはいかないわ。そういう制限のもと作られてある能力だから……

【浮かぶ奇妙な箱はどうやらこの世界でいう能力の産物であるようだ。しかし箱の女は自身の力について続けることはせず、男の言葉に耳を傾けた】

何時の時代でも…?エアリアル、…もしかして貴方、人間では無いの…?
…それなりに数奇な人生を送ってきた自負はあるわ。でも、人間でない存在と接触するのはそう何度もなかった…

【箱が漂わせる雰囲気が変化する。常に余裕を持ったその感触から、やや平静さを欠いたような、わずか警戒するような気配】

…ひょっとすると、貴方に名前を聞く意味なんて無いのかもしれない。
私はおよそ一般的では無いとはいえ、人間の枠から外れる存在でもない。…とりあえずエアリアルと呼ぶけれど、貴方一体、「何」なの…?

【箱の女はそう問いかけた。眼前の男が何やら異様な存在であることを察し、男についてのより多くの詳細を求めているようだった】
【もっとも男に応える必要は無い。目の前の箱の女が何を目的とする何者であるのか、その多くを彼女もまた語っていないのだから】
100 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 02:57:47.81 ID:jpx5wJaG0
>>99

「さあ……?俺自身でもよく分からないナニカさ
いや、仮に分かって居たとしてもまだキミに教えられるほど仲良くなっても居ない
――――それに、多少は謎めいていた方がキミだって面白いだろう?」

【名前を教えた、それで十分じゃ無いか。その言葉で終えてしまえばまた酒を呑み】
【教えれば面倒な事になる、と踏んだ故の行動であろう。それ以上は自身について加える事もせず】
【それでも相手の容姿を見て人間の枠から外れる存在でも無い、との言葉に可笑しさを覚えたか】


「クク――……それに俺だって初めてさ。見れば奇妙な箱なのに、その声の主が人間の枠から外れる存在じゃ無いなんて言うなんて
確かにキミが言う通り俺は人間とは遠い種族だよ。だけど、同時に人間に近い存在でもある
全てを答えるにしても俺だけじゃあ不公平だろう?
俺の事を教えるにしても其処までキミを深くは知って無いし其処までの仲でも無い
…………一期一会なんて言葉もあるくらいだ。変に深みに嵌まるよりも互いにあっさりとした関係の方が良くないかい?」

【はぐらかす、訳でも無い。ただ、互いに必要以上に探る事は為にならないとの言葉】
【何れまた会う時があれば其れは偶然とも言い難い。だから、その時にでも】
【首を傾げて見せたのは、箱の返答を待つ仕草か】
101 :パンドラ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 03:30:17.17 ID:I/qhzfOY0
>>100

【目の前の男は自身についての多くを語りたがらない。その一筋縄ではいかない気配を、箱の女も敏感に感じ取ったようである】

…どうにも、貴方は少し私の手には余る存在だったようね。とても「勧誘」って雰囲気じゃあないみたい。
運命論は嫌いじゃないわ、今はまだ「その時」では無い… …そういうことなのかしらね。

【そう言って箱は浮翌遊し、鳥のように中空へと舞い上がった。自在に空を飛んで見せる奇妙な箱は、去り際にこう告げた】

エアリアル。…もしも貴方が退屈を持て余しているのならば、鉄の国南部の街「クラング」に行ってみると良いわ。
鉄の国南部では、新国家の樹立を求めて武装勢力が独立戦争を行っているの。その中心地が先の街、クラング…
貴方の求める女っ気なんて欠片も無い街だけれど。良きにしろ悪きにしろ、倦怠感とは無縁の地域よ。
…私もその件について、一枚噛んでいるのだから……  うっふふふふふふ…!

【笑い声を残し、箱の女はまた闇の中へと戻っていった。深入りを避けんとする男の言葉に同調するように】
【パンドラの残していった情報を男がどのように受け止めるかは自由である。もしも男が興味を抱き現地に足を運んだのならば、きっとそこには新たな出会いが待ち受けているはずだ】
【とある紛争地帯の話に、超越者は一体何を思うのだろうか。それはエアリアルと名乗った「彼」以外には、知りようの無いことであった】




/こちらはこれで〆となります。こんな深夜にお付き合いいただきありがとうございました!
102 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/09(土) 03:32:14.61 ID:2p0vY0T40
>>98

そうですか ……それはよかったです

【特に料理を極めていたりするつもりではなかったので、普通に美味しければそれでよく、食欲もない状態で何度も飲み込んでくれたのなら十分】
【というより、こちらの出した食べ物を食べてくれただけでもかなりの進歩だと思い直す】

よろしければまたこのように、貴女と一緒に食事をしたいのですが お願いできますか?

【大事にしてそうな本について切り出すのはまだ早計、いくらか心を開いてくれたとはいえ初対面の人物に話せるものでもないだろう】
【時間が足りない ……とは言わない、ただ時間をかけるだけで人の心をどうにかできるわけではない】
【だからまず一緒に食事をする、同じ釜の飯を食べた仲という言葉があるように食事は心の距離を縮める、群れを成す動物の本能を刺激するとも言える】
【少女はそこまで計算をしている訳では無い、というより今回だけで彼女に心を許しきってしまっている節が有る】

もし私の作った食事をまた食べて頂けるのなら、お名前を教えて下さい

【また会った時、名前を知らなければ不便だと思いそう口にする】
【名前を聞くなら自分から名乗れ、なんて事を言われたのなら「それは失礼しました」と言ってから名乗るだろう】
【そろそろサンドイッチもなくなりそうだ、食べ終わるまでに名乗られなかったのなら、カゴをたたんで立ち去るつもりである】

/承諾したら「日に一度フウァルと食事を共にすることにより栄養状態が改善された」という設定が与えられるかもしれません
/拒否しても完全にコネクションの機会を失うわけではありません
103 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 03:36:07.43 ID:jpx5wJaG0
>>101
/お疲れ様でした!本当に申し訳無いのですがそろそろ出なければならず、この後一言二言話して別れたといった形にして頂ければ……!
104 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 03:39:02.88 ID:I/qhzfOY0
>>103
/了解です!
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 03:45:55.53 ID:GB0u0vL30
>>102

【湿った海風が少女の癖毛を揺らしていく、時折強いものが吹き抜ければ、彼女は冷たいように身体を小さくしながらも】
【ときおり、本当にふと思い出した彼のように食べ残しのサンドイッチを齧るのだろう。吐き出してしまうほどの重症ではない、ただ、苦手なだけ】
【何か引け目のようなものがあるようにも見えるかもしれない、食べることに対する引け目――とは、まず、普通に暮らしていればめったに現れないものだけど】

…………。

【不味くはない、と、口が動いた気がした。けれど声は微かすぎて聴き取れない、ただ、何か、ほんの微かに口が動いたような気配だけがして】
【三角か、四角か、どちらにせよサンドイッチを半分と少しまで減らしたところで、少女は満腹感でも覚えたかのように目を細めて、だけど、それでも、】
【目の前の相手に気でも使ったのか、ぼんやりと食べ進めるのだ。そしてそのまま、相手の提案を聞いて――、はて、なんて風に、首をかしげると】

私なぞと居たところで面白くない――だろうに。

【この人は何を言っているのだろう、なんて、感情をわずかに浮かべるのだ。誘われた、そのことを真っ先に拒絶するでもなく、ただ、】

道端の石ころでも拾って喋っていた方が有意義だと思うけれど。

【ただぽつりとそう言って。――ふらり、と、立ち上がる。身長は百四十二センチしかない、それなら、やはり、子供のような背丈でしかない】
【やせぎすの手足、小さな背丈、勿忘草色の瞳だけがいやにぎらついて、それでも、相手よりも高く立ち上がった様子に、威圧感――みたいなものは薄く】
【餌付けというほどに心を許したわけではない。ただ、この相手は現状無害なものだと理解したのだろう。野良猫が貰った餌を車の下で食べたような】
【そのレベルの信頼――だけど、最初の殺意すら宿しそうなほどの視線を思えば、ずっと、ずっと、柔らかいものであるのは確かで】

……アンネリーゼ。

【それから控えめな声で付け足したのは、おそらく彼女の名前だ。苗字は言わない、ただ、自分を表す部分だけを告げて】
【一瞬だけ視線をわずかに動かして――その次の瞬間には、もう立ち去ろうとしてしまうのだろう。一瞬の逡巡は、或いは、相手の名を聞こうとしたのか】
【華奢な彼女は歩みも遅いから、追いつくことも、そのせなに言葉を投げることも、容易いだろう。或いは、もっと、別の方法さえあるのかもしれない】

【――相手の提案に明確な拒絶はなかった。約束でも取り付けてしまえば、ふらりと現れるかもしれないし、現れないかも、しれない】
【夜風に煽られてかわずかに振れる足取りは、放っておけば闇の中に消えてしまいそうで――】
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 04:01:24.55 ID:GB0u0vL30
>>102>>105
/申し訳ないです、いけるかなと思ったのですが、やっぱり眠気が酷いので、もう一度凍結お願いできますでしょうか……?
/今日こそはきちんと待機できますので、あと少しとは思いますが、もう少しお付き合いいただけたら嬉しいです……!
107 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/09(土) 04:04:40.86 ID:2p0vY0T40
>>105

【答えてくれた、そう口にする訳では無いが笑顔が浮かぶ】
【立ち去ろうとしたアンネリーゼの背に、今の自分が持つ名前を返す】

アンネリーゼさん! 私の名前はフウァルです! 今度会った時は好きな食べ物を教えて下さーい!

【また会いましょう! と叫んで、彼女のもとへ走ってきた時のように追い風に吹かれながら走り去る】
【アンネリーゼがフウァルの声を聞き振り向くなら気がつくだろう ――ビンに入った栄養ドリンクを置き去りにしている事に】
【そのビンにはご丁寧にもフウァルの名前が刻んであり、否が応にも彼女の持ち物である事を理解させられてしまうはずだ】 
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 04:25:56.79 ID:GB0u0vL30
>>107

【びくり、と、小さな身体が跳ねたようだった。足が速いというか――明らかに能力なのだろうけど、】
【あんまりに他人のそういうものを見たことがないからだ。少し驚いてしまう、引き籠り体質には、少し、刺激が強かった、……わけでもないのだけど】
【一瞬だけ丸くしてしまった瞳をすぐに拗ねたような形へ戻す、むすりと口を噤んで、――それから、ふと、振り返った先には】

【忘れ物、だろうか。……そう、忘れ物だ。そう認識した。ふと身体の向きを瓶の方へと変えて、けれど、刹那の逡巡】
【拾ってやる義理はあるだろうかと考えるような一瞬。――けれど、すぐ、ふわりと彼女の身体の周りに現れるのは、勿忘草色のきらきらとした光をこぼす靄】
【それはするすると夜の暗がりを泳いで、やがて瓶へとたどり着けば、――そっと、持ち上げるのだ。そして、少女の元へとそれを運び】

……――。

【最後は自らの手でそっと受け取る。それから、本と一緒、ぎゅと胸元に抱き込んで】
【今度こそ、海辺から居なくなる――真っ暗な海辺から人影は消えて、今度こそ、幽鬼の彷徨うような光景の中】
【後ろに置き去りにしても振り返らない、そうしたら引きずり込まれるのはお約束事だし、】

【――忘れ物なら届けてやらなければ、いけないのだし】

/……と思ったのですが、綺麗にまとめていただいたので、これで……!
/おつかれさまでした、久しぶりの子だったのでいろいろと不手際申し訳ないです……っ!
109 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/09(土) 04:26:05.39 ID:2p0vY0T40
>>106

/いえいえー とはいえもうそちらのレスで終われる流れにしてしまったので、明日はそれでおわるかとー
110 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/09(土) 05:01:09.18 ID:Xs7TJcdio
シ ェ ン 愚 痴 ス レ ラ ジ オ 出 演 記 念
http://yomogi.2ch.net/test/read.cgi/net/1452181832/
111 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 13:04:49.38 ID:L9H/CdPgo
【薄暗いスラムの一角。ぴしりとしたスーツ姿の女性が右足をあげ、壁を踏むようにしていた】
【もっと正確には壁と革靴の間には男の頭があって】
【微かに石造りの壁面に側頭部を埋める彼は、呻くこともなく絶命しており】

……君のせいで服が汚れたぞ、その成りで弁償してくれるのか?
今度生まれ変わって死ぬときは血の吐き方くらいは弁えて欲しいものだな
大分高いんだ……この仕事の報酬と同じくらいね。

【死体にそう語り掛けながら足を引き、スーツの埃を軽く払う】
【取り出した純白のハンカチで赤く汚れたカフスボタンと服の袖を幾度か拭うと】
【もう用済みと、カフスボタンの代わりに赤く染まった布切れを死体に手向け】
【カチャ、と眼鏡をかけ直した。身に付けたものの中で、それだけが古びて見えた】
112 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 13:33:18.11 ID:bkliAjGKo
>>111

【"パァン"―――という、乾いた炸裂音がブラックスーツの背後より響いたのは、その直後だった。】
【黒色火薬特有の濃い香りが鼻腔を突く。彼女が銃器類に詳しいのならば、その香りと音で襲撃者の正体はあらかた予想が着くだろう。】


 ―――高いスーツ着て、やる仕事が"殺し"とはね。アンタは007か何かかい?
 それなら是非とも"殺しのライセンス"ってヤツを見せて欲しいトコだ、QとMは今日もMI6でお留守番、かな。

【飛来した弾丸はスーツの女性の顔面横を通り抜け、路地裏の吐しゃ物と血液が混じった汚い壁に炸裂する。】
【45口径の弾丸が穿つ穴は、至近距離ゆえ想像以上に深く、鋭い。まるで射手の怒りを代弁しているかのように―――……】
【そう、時代がかった銃器に特有の相手を挑発する口調、振り替えた先に目に入るのはこの世界ならば名の知れた一人のガンマン。】

 UNITED TRIGGER所属、セリーナ・ザ・"キッド"。
 ま、名乗るまでもないかな、アンタ見たところ"プロ"でしょう。
 誰に雇われて何の目的で"そんな事"をしているのかは知らないけど―――

 おとなしくお縄について貰おうか、抵抗しなきゃ"痛く"は無い筈だ。
 両手を後ろに組んで膝をつき、投降しろ。一度しか言わないよ、殺し屋。

【セリーナ・ザ・"キッド"。テンガロン・ハットに白のシャツ、土気色のベストの上にグレーのロング・コートを纏い】
【冬用装備となった彼女の手には、季節を問わず握られる相棒"COLT SAA"が握られておりゆっくりと、銃口が女性を狙っていた。】
 
113 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 13:47:24.71 ID:L9H/CdPgo
>>112

【縁がくすんだ眼鏡の奥で怜悧な瞳が細く、自身の背後へと向けられる】
【気配を察する前の銃撃。それが警告だった事を喜ぶべきか】

あのスパイは殺しが専門だったか? 私のこれは流儀でね
仕事の対象が誰であろうとボロをまとった浮浪者に刺されるよりは気分も良いだろう。
……何より、こんな格好をした人間は調査対象にならないのだよ

本来なら、そのセオリーに従って……さも仕事を終え
これから別な取引先へ向かう。そういう体でコーヒーでも飲もうかと思っていたんだが

【完全に白いとはいえない肌色、丁寧な手入れが伺える髪は後ろで束ね】
【よくよく見れば彼女の持ち物らしいステッキが死体の隣に立て掛けてあり】
【注意するかはまた別ながら、ひとまずは大人しく両手を頭の後ろで組み】

……最悪だ、また服が汚れたじゃないか。
UNITED TRIGGERか……儲かっているんだろうな?
クリーニング代は最後の一桁まで狂いなく払ってもらうぞ、正義漢め。

【両膝を薄汚れた路面につける。ちょうど自分が殺した相手に向かい合う形】
【駆けつけた彼女からすれば跪いて背中を晒す格好になるか】
【存外におとなしい。見たところ、銃器の類は持っていないようだった】
114 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 14:04:25.94 ID:7GTAgmk7O
586 : シェン中身 2013/10/12(土) 00:06:43 ID:MUhIsFLA0
>>584>>585
やはりどういった点を罪として捉えるか、その資料の用意というのが難しそうですね…。
軽くログを計算しただけでも1万レスを優に超える量なので
単語を抽出するにしても拾いきれない部分もありますし、確かに非現実的だったかもしれません

ただTwitterの方に関してはお二人のご意見を参考にさせて頂こうかと思います
現在は当該アカウントを使うのも気味が悪いので削除してしまいましたが
正直、個人を特定しようと思えば十分に可能であったろうと思います。
自分の不用心がそれを招いたにせよ、コピペされた件やその魚拓も控えておきます

こちらの件については、今でこそこうして普通にいられますが
一時的にかなり追い詰められたのは確かです。たった一行の文章で特定されたわけですから
……ともかく、何処か公的もしくは法的な場所に申し出てみます、ご助言ありがとうございます

また愚痴スレの閲覧ですが……確かに見ていて良いことは全く無いですよね
自分であれは戯言だ、なんて言いながら勝手に気を重くしてるのが馬鹿みたいでした。
今後一切、覗かないように致します。

最後に自身の事ですが……全くログや証拠が有りませんし
自分がどのような書き込みをどの程度の頻度でしていたかはなんとも言えません
自分自身、あまりハッキリと覚えていないのが正直なところです。
ただ特定の個人を貶めたり、粗探しをしたりは決してしておりません。……これもまた悪魔の証明ですが。

また少なくともリセット後は少しでもスレの役に立てればと思って活動してきたつもりです
果たして自分のイベントやキャラの行動が実際役に立ったかは分かりませんが
自分なりに償いの様な感覚も持ちながら今まで参加してきた面があります

……だからなんだ、とも思いますが。ただ、少なくともこの一年はそうしてきました
なので結果として『今を見て』頂けるのは、純粋に嬉しいです。
当然といえば当然のことですが、今後もそれを此処がけて参加したいと思います。ありがとうございます。
115 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 14:06:08.87 ID:bkliAjGKo
>>113

【なるほど。"スーツだからこそ目立たない"―――という理屈か。プロらしい考えだ。】
【確かに、見たところ特別な武器を持っているわけでもないし、見かけには普通の"ワーキング・ウーマン"だ。】
【このまま何事も無かったよう現場を後にし、お洒落なカフェで"マッキン・トッシュ"のスマート・パッドでも眺めていれば、様になる。】


 (……武器は見当たらない。暗器か……? ヒットマンならそれも十分考えられる。)
 (けど……さっきは"顔面"を踏み砕いていた。……格闘術の使い手? あのスーツでそれを……?)

 ……オーライ、そのままじっとしていて。黙秘権はあると思うけど、現行犯は現行犯だ。
 あんまり丁重な扱いは期待しないで欲しいかな、それに貴女も"お金を貰っている"側の人間。
 そういう覚悟は―――できてるよね、色々聞かせてもらよ。大丈夫、"コーヒー"くらいは用意するさ。

 ……どうかな。クリーニングするのは服の方じゃなくて君の心の中になるかもしれないよ。
 と言っても、仕事で人を殺しているヤツに更正を促すのは骨が折れそうだけど―――っと。
 悪いけど、身体調査させてもらうね。武器が他にないか、ちょっとばかりチェックが必要だ。


【セリーナはそう言うとゆっくり彼女の背後へ回り、銃を右手で構えつつ、左手で腰、太もも、腹部、】
【果てには胸部からお尻まで手早く武器が無いかをチェックしょうとするだろう。女性は何処に何を持っているか、油断できないからだ。】


 ……尤も。正義漢ってのはちょっとズレた表現だ。アタシはもう大々的に"正義"ってのを掲げるのを辞めにしてね。
 どちらかといえば君達に近い悪人―――みたいな、そういう存在かもしれない。……だから隅々まで調べさせて貰うよ、悪く思わないでね。


【髪の後ろ、束ねている器具から靴の先まで、全てを手で触って確認するセリーナ。】
【かなり用心深くチェックを重ね、最後に傍らへ立て掛けてあったステッキを―――手に取り、預かろうとする。】
【だが、ここで隙が生まれる。片手は銃、片手はステッキ。そう、両手が埋まっているのだ。引き金に指は掛かっているが―――……】


【この至近距離ならば、"或いは"もありえるか。】
116 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 14:18:37.54 ID:7GTAgmk7O
589 : シェン中身 2013/10/12(土) 15:35:13 ID:ZYprZJNE0
>>587>>588
セリーナの方、ご意見ありがとうございます
確かにそうですよね、遊びの筈なのにそれに疑心暗鬼になっていたら
楽しむどころでもなく、そもそも本末転倒もいいところです。

私としてはもう二度と愚痴スレを覗きも書き込みもしない所存です
楽しくてスレに参加しているのに妙な気を張っていたのが間違いでした

また尊敬しているというお言葉ですが、心の底から『恐縮』です、と…。

私からすればセリーナの方、もといキングの方は自分が
ルナというキャラクターで初めてスレに参加し、初めて絡んで頂いた相手であり
そしてその時、最も輝いて見えたいわば憧れの存在、目標のような方です
シェンという自分のメインキャラも、『キング』というキャラクター性に影響を受けている程に。

ですからお褒めの言葉は本当にありがたくもあり
同時に自分の行動が一時でも失望を抱かせてしまったことを申し訳なく思います

こんな自分でもよければ、また絡んでいただけると嬉しいです。本当に。
今後とも、よろしくお願いします
117 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 14:25:13.78 ID:L9H/CdPgo
>>115

【武器のチェックは滞り無く終わるだろう。結果から言えば暗器が幾つか】
【袖に短めのナイフが一本、胸元に小口径弾が二発装填可能なハンドガン】

【後は口紅、小銭入れ。髪を束ねているのは長めの絹糸】
【体型はややふくよかにも思える。スーツとシャツだけではない柔らかさがあるからだ】

【この行為に対しての反応は淡々としている。生娘のように顔を赤らめるでもなく】
【身を捩りもしない。武器が見つかれば舌打ちもせず無言で姿勢を維持し】

……あぁ、それに触るのか。なら気を付けたほうが良いぞ、君。
殺し屋の持つステッキなんて、シロウトが素手で触るものじゃない

【マホガニー材で作られた上等なステッキは、一見して普通のそれだが】
【持てば重く、軽い物を想像していたならば現実との差に虚を突かれるかも知れない】

【同時に投げかける殺し屋の言葉。武器を取り上げ動きを封じても口は塞げない】
【真面目に受け止めるかどうかは当人次第だが、言葉の直後に女は動く】

【膝立ちの格好から右足を滑らせ、セリーナの足を払おうとするのである】
【その威力は強烈で、触れた折の柔らかさとは別次元の硬さもあり】
【同時に状態を後ろへ倒し、足払いが外れようとも後方へ一回転】
【背中や髪まで汚れてしまったが、動きだけは華麗かつ敏捷に立ち上がって相手に向き合い】
118 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 14:37:44.12 ID:bkliAjGKo
>>117

【出てくる出てくる、"いかにも"といった装備軍の数々。セリーナは苦笑いした。】
【どれもこれも"慣れた人間"ではないと扱いづらい武器ばかりだったからだ。小さなナイフもそう、ハンドガンもだ。】
【"コンシールド・キャリー"は政府側の要人警護等に使われる正に"プロフェッショナル"の装備であり、素人にはとても上手く扱えない代物。】


 ("こんな小さなハンドガン"―――って、素人さんなら笑うところだろうね。)
 (けどコイツは使いこなせたら一級品だ。まず何処にでも隠せるサイズだし、威力も人を[ピーーー]には十分。)
 (バレルは短いけど至近距離で発砲できるならそんなものは関係ないし―――当てられるヤツは、これで離れたところから撃つ。)

 ……漫画のオープニングみたいに、口紅から弾薬が出てきてそれをこの"二連発銃"に装填するのかい?
 さながら"ルパン・ザ・サード"だ。小さい頃よく見てたよ、本物をこうしてお目にかかれるとは―――思わなかったけど。

 ……、気をつけろ……? 残念、そうは言っても仕込み武器は―――っ、


【ステッキを手に取る。ズシリ、とした感覚が腕を伝って脳裏に実感として伝わる。重い。】
【ソレそのものが鈍器として使用できそうなほどに―――よくよく考えれば、不思議な話だった。】
【彼女は殺し屋。まだ若く、脚は弱っていそうでもない。そればかりか、先程は脚で人間を殺していた。】

【つまるところ―――これもまた、ただのステッキではないというわけであって。】
【一瞬、その重みに想定外の反応を見せたセリーナの隙を見逃さない辺りが―――本物の強さか。】
【素早くなぎ払われた脚部にセリーナの足場は即崩され、体勢を崩したところでステッキを放してしまい―――、……。】

 (―――っ!! まず…・・・ッ!!)

【すっ、と立ち上がった相手。尻餅をつくことはなかったが、なんとか受身で膝を着くセリーナ。形成は、逆転したようにも見えた。】
【脚を払われた時勢いで宙に放り投げられたステッキが―――落下してくる。ソレを受け取るのが、開戦の合図になるか、それとも。】
119 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 14:46:02.44 ID:L9H/CdPgo
>>118

【放られたステッキを苦もなく掴み取りながら、殺し屋は即座に動く】
【狙いはセリーナ・ザ・"キッド"。膝をついた相手に】
【身体を半身にして、右足での蹴りを叩きこもうとする】

……私は足が弱くてね。人生唯一の手術で切ったんだ
ステッキは武器であると同時に本物さ。
もし"こいつ"の調子が悪くなったら、杖なしじゃ歩きづらくて仕方がない

【その右足での蹴りは、重い。パンプスの裾がいくらか捲れ】
【覗くのは肌。しかしその肌色、よくよく見れば顔のそれとは全く違う】

【義足、そしてそれを覆う擬似的な筋繊維と肉。だとしたら】
【服の上から触れてもわかるまい。だが実際に強力な機構を搭載しているのだから】
【蹴りの威力。つまり、男の頭を壁にめり込ませるだけのパワーも納得が行くというものだった】
120 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 15:01:58.37 ID:bkliAjGKo
>>119

【義足―――セリーナはガンナー故に動体視力には相当な自信がある。】
【放たれた鋭い蹴り、揺れたパンプスの裾から覗いたのは、機械的印象を隠した人造筋肉。】
【素早くその正体を見破るも、それだけでは対応には間に合わない。"危険だ"―――とは、直感的に分かっても。】


 ―――くっ、……ッ!! ……う、ゥッ……!


【引き抜いた"もう一つの相棒"―――魔銃・"弾"末魔の強固なグリップ部分と、両腕を盾にして】
【なんとか"頭部"や"間接"等の弱い部位への直撃だけは避けるものの―――ミシリ、という嫌な音がする。】
【銃の方は流石に、魔界の技術を用いて作られているだけあって弾かれるだけに留まったが、腕はそうも行かなかった。】


 (―――痛ッ……!! 打撲―――、いや、それじゃすまないか……!? )
 (……骨の……どこまでやられたかは、分からないけど―――くっ、ミスったねコイツは……!!)
 (潰されるなら腕より脚の方が良かった……! ……ふふっ、どうやら暫くぶりで、鈍ってたみたいだね……けどッ!!)


【じん、と両腕に鈍い痛みが走る。皹が入ったか、若しくは打撲で済んだか。分からないが、ガンスリンガーには痛手だ。】
【戦闘後に病院に行けばどうと言う事はないだろう、よくある怪我だ。しかし問題は―――まだ、戦闘が始まったばかりである、と言う事と】
【この状態でプロを相手に、戦闘を"無事"終えられることができるかどうか―――という点にあった。セリーナはその中で尚、ニヤリと笑みを零す。】

【蹴りを受けたままの姿勢―――つまりは路地の奥へと吹き飛ばされながらになるが】
【その状況のまま素早く片手に握ったSAAをすかさず発砲、連続で二撃をスーツ姿の女めがけ叩き込もうとする!】
【狙いは当然義足―――破壊を試みようという思惑、だが一撃で破壊できるとはとても思えない。強度を測る為のテストも兼ねていた。】
【もう一撃は危険な香りのする重いステッキへの一撃、つまりは両方とも人体へ向けた射撃ではなく―――無力化をはかる為の攻撃、であった。】

 ―――……脚が弱い? 冗談きついね、ダブルオー……、いや。
 "キングスマン"の方が的確かな。ホラ、居たでしょう? 敵の女に、義足にブレードつけた、おっかないスーツ姿のヤツ。
 名前が分かるまではそう呼ばせてもらうよ、ついでにそのステッキが"傘に仕込んだ銃"みたいに恐ろしいモノじゃないと―――良いんだけど、ね。

【そのまま、セリーナは体勢を立て直す。攻撃の影響でずれたテンガロン・ハットを深く被りなおし。両者は向かい合った―――開戦。】
121 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 15:16:34.31 ID:L9H/CdPgo
>>120

腕で受けるか……銃を使うにしては悪手だな
私は自分の蹴りを受けたことはないがね、コレで骨が軋む感覚はよく分かるよ。
聞く所ではヒビより骨折の方が治りは早いそうだが、ッ……!

【もう一度喰らっておくかと問う前の銃撃だった】
【受けるに当たって、蹴りを放った直後。横への回避は間に合わないと踏んだか】
【両腕で胸元と頭をカバーし、右足。つまり義足を上げて身体を守った】

【狙った場所が義足であったから、その表皮を覆う部分が撃ち削られ】
【内部に覗く白銀の義足が見えた。しかしそれで防御するということは】
【およそ脆弱ではないのだろう。攻撃に使うのだから、そもそも当然だが】

……お前は私に散財させる天才だな、セリーナ・ザ・"キッド"。
このマホガニー加工がいくらしたと思っているんだ?
領収書は君の事務所に必ず送りつける。……死んでも財産は残るからな

【もう一つ。撃たれたステッキは表面の上等な木材が剥げて】
【重さの原因であろう、内部の鉄筒が見えた。微かにその鉄も銃弾によって歪んでおり】

【それでも構わず杖を構える。さながらマスケット銃でも手にした衛士のように】
【木材の隙間、僅かな箇所を長めの爪を差し入れてキィ、となぞれば】
【スイッチが入り、内部の仕込みが発動して、先端のゴムキャップは外れて銃口へ代わり】

【やがてステッキの所謂手持ち部分。コレをカコっ、と斜めに引くと】
【ショットガンじみた、しかしそれよりも射程は短く鉛球のサイズも小さな】
【"ラッパ銃"とでもいうべき形状から、仕込み散弾がセリーナめがけてバラ撒かれる】

【ラッキーなのは先の銃撃でステッキ内部の鉄筒が歪んでいたことか】
【セリーナから見て左手側には、無数の鉄球が極端に数を減らす空間があった】
122 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 15:17:59.83 ID:bkliAjGKo
>>121
/もうしわけございません、用事が入って二時間ほど席を離れます。
お待ちいただくことは可能でしょうか?
123 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 15:19:41.85 ID:L9H/CdPgo
>>122
/構いませんよ、休日ですのでゆっくりお待ちしています。
124 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 15:20:59.82 ID:bkliAjGKo
>>123
/大変申し訳ないです、よろしくお願いします。
125 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 18:16:44.41 ID:bkliAjGKo
>>121

【流石に、アレを生身にもう一撃も貰うわけには行かないだろう。セリーナは能力者でもなければ、超人でもない。】
【特殊な武装を用いこそすれ、その身体は常人と同じ様に出来ており、これ程強烈な攻撃を何発も受けて無事ではいられまい。】
【皹が骨折にされる前に―――そもそも病院に行く事ができなくなるかどうか、という所だろう。だが、こんな所で死ぬわけにもいかなかった。】


 ―――、やっぱ……頑丈、か……。
 (……ある意味想像通り、普通に銃弾で破壊できるような強度じゃない、か……。)
 (なら同じ部位を集中して……いや、それより本体の無力化を図る方が健全。とてもじゃないけど―――壊せそうに、ない……!)

 ……ははっ。壊せなくても、財布と懐にダメージを与えて気力を奪う事くらいは……出来そうだね。
 ……マホガニー加工がなんだって? 幾らするか知らないけど、値段の心配なんてする必要ないさ、"キングスマン"。
 それより、これから自分がブチ込まれる監獄がどんな場所なのか心配するべきだよ。アーカム精神病院じゃないことを、祈りな……っ!

【銃撃を普通に加えるだけでも、腕にかかる衝撃で激痛が走る。戦闘続行は可能だが、持久戦は不可能だ。】
【時が経てば、追い詰められるのは此方だ―――セリーナは二挺の"愛銃"を握り、ハンマーをゆっくりと、起こす。】
【指ではなく腕全体でガチリ、と両銃の撃鉄を上げ、今度は義足やステッキではなく肉体を狙うべく、銃を構えるが―――】

 ―――ッ! やっぱり、そういう"仕込み"が―――、っ!!

【一寸早く構えられたステッキの先端が展開し、散弾が放たれると狙いをつけることをやめ、防御に徹する。】
【しかし盾も強靭な肉体も持っていないセリーナに出来る防御は限られており―――彼女は彼女の、切り札を一つ使用した。】
【先端のゴムキャップが外れた直後、散弾が放たると同時に、此方も銃撃を加えたのだ―――と言っても、それはただの銃撃ではなかった。】


                           騎士怪醒―――<ティターン・アーマー> !!

【セリーナが放った銃弾は、愛銃"弾"末魔による一撃。その軌道は向かい来る散弾とピタリと一致し】
【そしてぶつかる直前で青白い輝きと共に巨大な"召還陣"―――ゲートの様なモノを形成、それ自体が盾として機能する!】
【散弾を防ぎきった後に、セリーナは駆け出しその召還陣の中へと突撃―――瞬間、ゲートを抜けた先に現れた彼女は、彼女でなくなっていた。】

【全身を覆った群青色の悪魔的な鎧と、魔翌力を漂わせる背中の魔道エンジン、機械と生体が合わさったような風格―――】
【一目に悪魔の技術で作られた"外装"と分かる強固な鎧を召還、瞬時に装着した彼女は、もはや生身の人間ではなくパワード・スーツを身に着けた戦士。】


 ―――"マナーが、紳士を作る。分かるか?"……映画の台詞さ。アタシもアンタも紳士にはなれそうに、ないねッ!!

【そのままの勢いでセリーナは駆け出し突進、ステッキによる射撃を無力化しようと、近接戦闘に繰り出した!】
【すぐさまステッキに掴みかかろうとし、成功したならば片手でそれを押さえつけ、自身はミドルキックにより相手を攻撃しようとするだろう!】

/遅れました、お待たせしてしまい申し訳ございません。
126 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 18:32:20.98 ID:L9H/CdPgo
>>125

【魔銃による防御。そして一瞬にして全身を覆う鎧が出現すると
【澄んだ眼鏡の水晶越しに視線は険しく、しかし舌打ちするほどの不快感は示さずに】
【ただ淡々とステッキを下ろし、その機構が歪んだことを確認して】

……確かに加工どころではないな、これは。
銃が歪むと根本から作り直す必要があるんだ
仕込みである分、作りは恐ろしく繊細でね……あぁ、まったく。

【ベキョッ、という奇妙な音。俯きがちに両手で持ったステッキを】
【逆さに持ち、いわば銃口に当たる先端部分を中ほどから捻じ曲げる】

【無論行為は素手であり、仕込み銃だから軟な鉄を使っていると言うはずもない】
【ステッキは見る間に持ち手のついた、穂先数十センチの鉄塊となり】
【さながらバットでも構えるかのようにして両手で、ソレを右側に構えると】

……クリケットは紳士のスポーツだよ、カウガール。
一緒にしないで欲しいな、私と君とを……ッ!

【眼鏡をかちゃり、とかけ直してから、接近戦を挑むセリーナを見据え】
【凄まじいスイングで風音を立てながら装甲に覆われた足、彼女の蹴りを「打ち返そう」とする】
【先ほどの蹴りも凄まじかった。しかしながら、鉄製のステッキを圧し折るパワー】
【そしてこのスイング。銃や剣に強い鎧でも、衝撃までは防げるだろうか】

/いえいえ、改めてよろしくお願いしますね。
127 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 18:50:53.43 ID:bkliAjGKo
>>126

【散弾の軌道は見切る事ができなかったが、どうやら口ぶりから100%のパワーを発揮する事は出来なくなっている様だ。】
【セリーナはソレを確認すると、銃撃で破壊できるのは義足ではなくむしろ―――ステッキである、と言う事を頭に叩き込んだ。】
【だがしかし、それでも減らせるのは遠距離における攻撃手段のみ。むしろ彼女の場合、怖いのは矢張り―――義足の方だろう。】


 (これだけ近いと、ショットガンも使えな―――……っ!?)
 っ、うっそ……!! なんでそんな―――くっ、どんな怪力してるんだか、これ一応銃身入ってるんだよね!?

【掴みかかった矢先、信じ難い怪力で折曲がったステッキによってセリーナのミドルキックは"迎撃"され】
【そればかりか逆に押し返される程―――否、この場合は完全に"弾かれた"と言ってももはや過言ではないだろう。】
【キックは軌道が逸れ、その上とてつもない衝撃が脚部を襲う―――瞬時に、警告が響きHUDにダメージ・レベルが表示された。】

 (そん、な―――っ!!)
 う、くっ……ッ!!
 
【完全に破壊されたわけではないが、もう一撃でも脚部に攻撃を貰えば装甲は弾け飛ぶだろう。】
【いや、それだけなら良いが、衝撃は完全に消しきれず、現在でさえもセリーナの右足には鈍い痛みが奔る―――】
【思わず後退し、脚を下げようとするが―――じん、という痺れが取れず、距離を開く事が出来ない。瞬時にセリーナは身を屈めて】


 クリケット……? ははっ……! そうだね、こんな野蛮な行為を紳士のスポーツと混同してしまったら、
 それこそ全英のクリケット協会が―――まあ、そんなものがあるのかは、知らないけど、さッ!!


【そのまま身体をばねにし強烈なアッパー・カット―――魔翌力による補助機構で力を底上げされた拳を、下方から腹部めがけ、穿つ!】
【―――と、同時に。逆の方の腕でSAAを引き抜き、なれた動きで銃身をクルリと一回転、グリップ部分を相手に向けるよう起用に掴むと、】
【叩きつけるような動きで上から思い切り―――振り下ろす。下と、上。両方からの同時攻撃、それもアッパーをフェイントに使っての一撃だ。】


 ―――ガンナーだからって……近接戦闘が出来ないと思ったら、大間違いだッ!!
128 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 19:08:06.65 ID:L9H/CdPgo
>>127

【相手の攻撃を弾き飛ばした"ステッキ"からは手を離さず】
【強く叩いた分、同じように両腕がしびれるのを感じながら深く一度息を吐く】
【殺し屋で近接戦闘が出来るからといって、格闘家のように慣れているわけではない】
【強烈な一撃の後には休息も要る。同時に思わぬ手練れに、額に汗が浮かび】

【その一呼吸後には、まず相手の下方からの攻撃を"ステッキ"で受け止める】
【左手は折り曲げた部位を抑えるようにして、間接的に衝撃を押し[ピーーー]】

【だが相手にしたように衝撃は伝わる。関節がみし、と音を立て】

【ほぼ同時に繰り出された、SAAによる「打撃」については】
【アッパーカットを受け止めるのに精一杯だったこともあってか、反撃もなく】
【ギリギリの所で頭を後ろに引いて、かすめる程度に止めるが】
【ぱたたっ、と鮮血が路面を彩る。同時に古びた眼鏡が足下に落ち、右眼側のレンズが割れ】

っ……。 その使い方……ライフル協会が聞けば泣くだろうな。

頑丈とはいえ銃器を鈍器にするなと……フッ、スーツは新しく買うしか無いか……。

【額がぱっくりと割れ、滴る血がスーツの襟や胸元を汚していく】
【瞳を数度ぱちりとしてから、近いままの距離を「見定め」るように目を細め】

【おもむろに"ステッキ"を手から離すと、素早く一歩飛び出して】
【右の拳を。そう、手袋もガントレットも無い素手の拳を勢いに任せて突き出すと】
【鎧に包まれた相手の胸元を、正面から思い切り殴りつけようとする】

【その折に興味深いのは、"キングスマン"の右腕はスーツが全て肩口から裂け】
【人間構造状ありえない程に力強く、腕の筋肉が盛り上がっていたことである】
【「鎧を破壊するのに十分な所」まで急速に膨らんだ腕の筋繊維によって、服が破れた】
【そう判断できるだろう。威力は蹴りやステッキに寄る殴打とは、更に一つ桁が違っていた】

【だがこの行為は相手の懐に入るということ。仮により強力な近接戦闘の機構があったなら】
【"キングスマン"はただ攻撃するだけでは済まないだろう。それもまた事実だった】
129 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 19:24:33.32 ID:bkliAjGKo
>>128

【息が切れている―――とまではいかずとも、強烈な打撃の後には呼吸を整える仕草を見せる女。】
【近接戦闘のスペシャリスト、というまでは行かないのだろうか。暫し逡巡するが、手馴れているのは紛れもない事実だ。】
【格闘家の様な動きこそ出来ないのかもしれないが、強力な相手。セリーナは二撃目が掠めるのに終わったのを見届けると、一歩下がり。】


 ―――多分ね、アタシの戦うところをライフル教会の会長が見たら、エピソード7のネタバレを喰らったナードみたいな表情で、
 アタシをブン殴りに来るだろうさ。けど、これでも気を遣ってきちんとグリップで殴ってるんだ……多少は見逃して欲しい、けどね!


【銃を元の持ち方に戻すと、迎撃の構えをしようとするが―――撃鉄が上がったままの銃を放り出すほどの衝撃が、走った。】
【凄まじいまでの筋肉の隆起。大昔の漫画か映画でなければ見た事がない様な―――それこそ本当に、"化け物"の様な筋肉だ。】
【量だけならあの"ベクター"や"フレデリック"にも匹敵するだろう、異常なまでの筋肉が生み出す脅威の一撃は、後退していたとは言えど、】
【ティターン・アーマーの胸部装甲へと一直線に襲い掛かり、そのまま正面より穿つ―――刹那、金属音が響く。鋼鉄がひしゃげる断末魔が響いた。】


 ―――……がっ……ッ!? う、ぐっ―――あ、ああああッ!?

【―――いや、もう一つ。セリーナのうめき声が路地裏に響く。当然だ、この頑強なアーマーが―――嗚呼。】
【信じ難いことに、弾丸の直撃も刀による刺突も防ぐこの悪魔的パワード・スーツが、"た っ た の 一 撃"で破砕されたのだ。】
【胸部装甲はあってはならない凹み方をしており、当然その一部は裂け、シャツに包まれたセリーナの肢体が覗いてしまうほど。と言う事は、必然的に】


 ……う、……くっ―――!! がふっ……!! 
 (な……なん、って……力、なの……っ!! くっ、っそ…・・・ッ!!)
 

【セリーナ本人の胸部にも、殺しきれないダメージが向かっているということになり。】
【蹲ったセリーナ、後方へと倒れるがしかし―――その瞬間に、握り締めて絶対に放さなかったもう片方の"愛銃"】
【"弾"末魔による"魔弾"の攻撃を即座に決行、倒れ伏しながらも筋肉が隆起していないもう片方の腕を狙い一直線に、魔弾が奔る―――!!】
【召還陣を伴わない、純粋な破壊力を秘めた魔弾は、至近距離ではかなりの破壊力を発揮するが―――このタイミングで、彼女に届くか―――!!】
130 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 19:40:39.66 ID:L9H/CdPgo
>>129

【相手の装甲を殴って、砕く。その反動とはどれほどのものだろうか】
【「シュウゥ」と音と湯気を立ち上らせて、隆起した筋繊維は即座に萎み】
【風船かなにか、曲芸だったのではないかと思わせる赤らんだ女性の腕がそこにあって】

【深く呼吸する。つまり、それが反動なのだ】
【「その時に必要なだけの力を発揮する」のは、人体に多大な負担が掛かる】
【鎧を相手にすれば尚更。心臓が破裂しそうなほど強烈に脈打っていた】
【目眩がする。一歩たたらを踏んだ所で、左腕に"魔弾"が直撃し】
【先の比ではない量の血液が周囲に散って、削げた腕の肉からは白い物すら覗き】

スーツに、眼鏡……治療費、道具も諸々……。

……採算が取れないじゃないか。あぁ、困ったことをしてくれる奴だ……
っ…眼鏡は、ん……此処だったか……?

【急上昇した体温を示すように、白んだ吐息が口から漏れる】
【倒れるように膝をつくと、右目のレンズが割れた眼鏡を探り出し、拾い上げ】
【その割れているのを見て痛みとは別に顔をしかめながら、かけ直すと】

【立ち上がりざまに「がちゃり」と音をさせる、まるで機械の連結が外れたような音は】

この礼は……いずれお前の始末を依頼された時にするとしよう。
私怨はあるが、っ……。 ……そこまで馬鹿では、無いのでね……っ!

【右足、義足の外れた音。取り出したのは恐らく手製であろう小型の手榴弾だ】
【破片を撒き散らすタイプではなく、爆破の衝撃で人を殺めるタイプか】

【ピンを抜くと倒れ伏したセリーナの方へと放り投げて、即座に義足を接続しなおし】
【ふらりと立ち上がって、暗い路地のより奥へ。左腕を庇うようにしながら】
【撤退、しようとするだろう。爆破の範囲は、およそ半径3mほどにまで及ぶものの】

【爆発までは微かに間もある。立ち上がって逃げるか、或いは拾い上げるか】
【時間が稼げればそれで良いのだ。人目につかない暗部を頼って、"キングスマン"は逃走を図った】
131 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 19:57:26.16 ID:bkliAjGKo
>>130

【隆起した筋肉が元に戻っていく―――凄まじい光景だ。まるで風船が萎んでいくのを見ているよう。】
【しかし萎むのが風船ならどれだけよかった事か。あの中には車の装甲を破壊できる程の圧倒的物量が封印されているのだ。】
【セリーナは銃弾を撃ち終えた直後、超過したダメージに傷つき倒れ伏す。とてもではないが、瞬時に立ち上がって追いかける事は、出来そうにない。】


 ―――……っ、あっ……はぁっ……はぁっ……!!
 (こんな―――強烈な……、アーマーに穴が開くほどの……"パンチ"、って……ははっ……!)
 (乾いた笑いが漏れるね……それじゃあこの、スーツに身を包んだ可憐なお嬢さんは……あの六罪王級の火力を持ってる、って事かい……!!)


【弾丸が肉体を抉るのが見えた。だが、追撃を行うほどのパワーが、力が腕に入らない。】
【相手が息を整えているのと同様、セリーナも受けた傷が大きすぎて、呼吸を整えるのが精一杯だった。】
【砕けた破片のいくつかは、外側から強く殴りつけられた為にセリーナの肉体に突き刺さっており――――血が噴出す。】

【それでもなんとか、片手を地面に着き、立ち上がろうとする。だがその前に、もう片方の手で、】
【自ら胸部装甲を引っぺがす―――もうどうせ破壊された部位だ、あるだけ無駄と判断したのだろう。】
【剥がした装甲を端に捨て、自分の手で身体に刺さった破片を思い切り―――引き抜く。一つ、また一つ。】


 うぅぅぅっ……!! んっ、ぐ―――はぁ……っ! こ、の、くそ……っ!!


【全て破片を取り終えると、口から血を吐き出し、それでもセリーナは息を整え、立ち上がった。】
【フラリ、と足元がぐらつくが、構わない。アーマーの補助機能が、彼女を遂にはしっかりと、立ち上がらせるのだ。】
【そのまま残り四発となった"弾"末魔を腰溜めに構え、ハンマーをゆっくりと、両手で起こしていく―――装填、完了。銃を、向けて】


 ―――依頼……ね。残念だけど、その仕事は来ないさ……アタシが、今、……あぅっ……、ぐ、……此処でっ!!

 ―――アンタを、逃がさないからッ!!


【義足の中から取り出された手榴弾を、セリーナはなんと―――"召還陣"で、そう"弾"末魔の発砲により】
【それを綺麗に―――かつ、衝撃を与えすぎないよう弾き返し、開いた二人の間で爆破させる。衝撃波がゆっくりと、伝わるが】
【まだ防御能力を残していたアーマーには、離れすぎた衝撃波では傷をつけられない。その間、セリーナは呼び出した武装を、手に取り装着!】


                         連鎖大蛇―――<バジリスク・チェーン>!!


【手に巻き付いて現れたその武装は、バジリスク―――寓話に登場する巨大な蛇をモチーフとした、鎖型の武装!】
【自在に長さを調節できるその鎖を、カウボーイのロープ・アクション同様華麗に投擲、義足ではないほうの足めがけ絡みつかせようとするだろう!】


 ―――……にが、さない……ッ!!
132 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 20:16:30.79 ID:L9H/CdPgo
>>131

【手榴弾が爆発しないように加減をして、2人の合間で炸裂させる】
【妙技だ。その腕に舌を巻きつつ、爆風に髪が揺れて】
【既に距離は「遠い」と言える。あとはこのまま、暗がりに逃げこむだけ】

手傷を負った相手には気をつけること……鉄則ではないか?
ましてや相手の能力も素性も知れない、それを逃がさない、とは……。

……驕りが過ぎるぞ、セリーナ・ザ・"キッド"…ッ!!

【義足でない足。つまり左足に絡みつく蛇のような鎖は、確かにその細脚を捕らえた】
【しかしながら"キングスマン"は動じない。力強く右足で地面を捉えると】
【先ほど腕でそうしたように。今度は「鎧を着込んだ女性一人を引き寄せられる所」まで】
【袖に比べればゆったりとしたパンプス故に、その布が裂けることこそ無いものの】

【太腿は宛ら巨木の如く。脹脛もまた、その子節のように隆々として】
【サッカーでボールを蹴る時のように大きく左足を引っ張ると】

【自身を拘束する鎖越しに、セリーナを全力で引き寄せようとするだろう】
【相手が手を離して、鎖を諦めるならばそれで全ては終わるのだ】

【だが、もし手放さなければ。動く右腕も用いて引っ張り寄せた鎖から】
【セリーナを手繰り寄せ、その距離さえ詰まってしまえば】
【大きく後ろに引いた左足で、満身の力を込めた蹴撃を見舞う事になるだろう】

【腕と足では、そこに付く筋肉の絶対量が違う。此処に来てなお、"キングスマン"は】
【パワーという絶対的なモノの桁を、更に一桁上げて攻撃することになるだろう】
133 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 20:31:43.93 ID:bkliAjGKo
>>132

【そう。驕りが過ぎる。セリーナは自分の実力に自信を持っており、常に命をダイスした様な戦法を好む。】
【だが―――それと同様に、相手の実力をも、"信じている"節がある。敵が強大だ、と素直に認めるだけの、胆力だ。】
【そしてそれら二つ、自らの能力への自信と、相手への信頼が合わさる事で、ある事象が発現する。それは何か―――簡単だ。】


 ―――アンタの……能力は―――筋肉量を増大……収縮させる、力……。
 義足には……それがない。―――だから、"敢えて"そうした。

 ―――"敢えて"……"そっちの脚"に、縄を掛けた……ッ!!


 ―――そうすれば……アンタは、必ず―――……其処に力を集約させ―――アタシを、……

 ―――――――――"引き寄せようとする"からだ!!

 
【予測。敵のパワーの強大さ、慎重さ、その全てを加味した上での行動、それらは相手の行動の―――予測へと、繋がる!】
【彼女ならそうする―――自分が彼女なら、同じ様にそうするからだ。そう、自分の考えへの"驕り"<自信>と、相手への"驕り"<信頼>!】
【引き寄せられる事、その最中にガリガリと路面で鎧を削られる事、ダメージが拡大する事、そして最後には敵の強大な一撃が待っている、と言う事―――】

【その全てを、加味した上での、"猪突猛進"ともいえる"接近"!! 命がけの"突撃"!!】
【セリーナは引きずられながら"弾"末魔を発砲―――召還陣を形成、素早くもう片方の腕に、新たな武装を、装着するッ!!】


                        一角閃攻―――<モノケラス・ドリル>!!

【装着された武装は、岩石を破砕しコンクリートを砕く、対人用には余りに強力すぎる近接戦闘用装備・"巨大ドリル"ッ!!】
【その破壊力は折り紙つきであり、強烈な勢いで引き寄せられるその勢いもあいまって―――魔道エンジンが、唸りを上げて木霊する。】
【強烈な回転力を持った先端が、F1マシンのホイールが如く回り出し、魔界で採れる鉱物や加工金属を元に作られた刃を持ったソレを―――ッ!】


 う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!


【突き、出す―――左足の懇親の一撃に合わせるように、正面から破砕せんと―――猛撃が、襲い掛かるッ!】
【力には力を―――アーマーのパワーを全開にし、魔翌力を全てドリルと装着した腕へ流し込んだ、最後の一撃が今―――放たれる。】
【正真正銘、その後にセリーナの隠しだまはもう―――ない。】
134 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 20:55:31.75 ID:L9H/CdPgo
>>133

【「引き寄せようとする」それを読んでいた、あるいは】
【そうさせるつもりで鎖を放った、のだとしたら】

【それが如何に恐ろしい事かは、きっと実際に鎖を足に任せ】
【常人には不可能な力でセリーナという自身への不幸を引き寄せてしまった】
【"キングスマン"。すなわち眼鏡の奥で目を見開く女性にしか、分からないだろう】

っ……く、ッ…! 今更軌道の修正は出来ない……。
"慣性"があるからな……! そして……そうだ、君の言う通りだセリーナ・ザ・"キッド"……。
私の能力はあくまで筋力を増大させるだけ……

……あぁそうさ、その頑健さまでは変わらない
「ドリル」か。血が飛び散るから、私は全く使わなかったがね……

【距離が詰まる。最早これまでと小さく笑うと、"キングスマン"は振りかぶった足を前へ】
【自らの肉体が何処まで耐えられるかを試すように、回転刃に左足を強烈にブツけ】

グ、ぅ、あぁぁぁぁあああ―――ッッ!! 

        っ、お、おっ……まだまだァァ――ッ!!!

【――その音は耳を塞ぎたくなる程のものであった。頭を殴られ】
【左腕を撃ちぬかれ。それより余程凄惨で、多量の血が宙へと舞い散り】
【分厚い筋肉に覆われた左足は、その脛の辺りでゴリゴリと骨すらも削り取られ】
【やがて決死の勢いで"キングスマン"は足を振りぬく、が】

がッ、あ……っ、……。 ふ、フフっ……フフフフ……ッ!
これは、流石に……金で買えそうにない、損害だ…な……? っ…あぁ……。

【果たして、その振りぬいた懇親の蹴りは全力の5割も出すことは出来ず】
【ドリルごとセリーナを蹴飛ばすには十分ながら、ダメージを与えるには程度が足りないだろうか】

【やがてドクドクと血を溢れさせながら、"キングスマン"は路面に倒れ伏した】
【割れた眼鏡のレンズ越しに空を見つめながら、その出血により急速に意識が遠のくなか】
【微かに笑んだ表情のまま――静かに、その胸元の動きを止めたのだった】


【勝者:セリーナ・ザ・"キッド"。無名の"キングスマン"―――――――死亡】
【なお余談ながら、彼女の素性は調べても一向に浮かび上がることはなかった】
【身分証明証、知人、指紋登録、一切なし。暗殺者の死は、薄暗い闇に包まれていた】

/では、この辺りで。お疲れ様でしたっ!
135 :セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 21:11:14.16 ID:bkliAjGKo
>>134

【ギュルルルルルゥン。肉を裂き、骨を砕きながら、刃が―――、それでも尚、停止する……】
【凄まじいまでの筋肉量。魔道エンジンが唸りを上げ続けるも、もはやパワーが持続できないのだ―――否。】
【圧倒的な物量が、刃を最終的には肉体内部で留めていた。ドリルの機構部は有り余るパワーと、動かない刃の間でショートを起こし】

 (―――、ここまで……かっ……!!)
 う、ぐっ―――ああああッ……!!


【蹴り―――飛ばされる。敵の脚部も相当なダメージを負っただろうが、ドリルは最終的に】
【機構部がバチバチと火を上げるほどに破損していた―――全く、恐ろしいまでの怪力。生命力を感じさせる、パワーだ。】
【アーマーが、破損状態とエネルギーの使いすぎで強制的にパージ。煙を上げ、中から全身打撲と骨折に見舞われたセリーナが、排出され。】

【転がったまま―――セリーナは、相手の様子を見やる。出血量、体の動きから見て―――どうやら、ここまでか。】
【生かしたまま捕らえる必要があった。素性を明らかにする必要があった。背後の組織の存在を、暴く必要があった。】
【これほどまでの能力、これほどまでの戦闘術、生半可な覚悟では手に入れることが出来ない、そういうレベルの暗殺者】


 ―――アンタほどの……、とんでもないヤツを、お抱えにしてる組織―――いや、依頼主ってのは……ぐっ……、

 ……いや、辞めておくよ。もう、詮索するだけの―――力が……ぐ、ふっ……、残って、ないや……。


【―――強大だ。であれば、その後ろに居る存在は―――想像もしたくないほど。】
【セリーナは唯一動く指でW-Phoneを操作、警察と自警団を呼び寄せると、彼女の死体と、"最初の男の死体"のチェック】
【そして―――自身の保護を申し出た。後日、聞いたところによればそれでも素性は不明、とのことで―――セリーナは入院しながら、一人逡巡する。】

【あの路地裏の奥には―――まだ、他に恐ろしい闇が眠っているのではないか、と。】


/とても楽しい戦闘でした、ありがとうございます。
お疲れ様でした!
136 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 21:14:35.10 ID:I/qhzfOY0
【神谷家に熊出等比の死亡広告が届けられたのは、彼女の死から数日が経過してからのことである】
【そこに記されていたのは、彼女の葬儀についての情報だった。「1月某日 正午より 水の国 首都フルーソ 戦没者霊園脇 聖教会にて」】

【晴天である。空の青さに雲の白さが映える、好天の日だった。草原を経た丘の上にある教会には、彼女の死を悼む多くの人々が集まっていた】
【落ち着いた服装に身を包む一般の人々に交じり、彼女と同じ水の国の自警団であることを示す制服に身を包んだ者も多く見受けられた。幾つか言葉を交わしながらも、空と対照的に彼等の表情は悲しみに包まれている】
【時刻は11時を少し過ぎた頃。皐月が教会の前まで辿り着いたならば、荘厳な門からやや離れ、訪れた人々と会話をする一人の男性の姿が目に入るはずだ】
【熊を思わせる茶色の髪と髭を豊かに蓄えた大柄な紳士である。遺族であることを示す喪章と黒い喪服に身を包んだ、50過ぎの男が皐月の姿を認めて向き直った】

…こうして面と向かって話をするのは初めてですな。私が等比の父、ベアーウト・フィボナッチという者です。
貴方のお噂はかねがね聞いておりました。同じレイリス大においても、…娘からも。

【深々と頭を下げる眼前の紳士は、皐月と同じレイリス大で数学教授として教鞭をとっている者だった。彼女が一度そう話していたのを、皐月は覚えているだろうか】
【鮮やかな茶色の瞳は壮年男性としての落ち着きを思わせるものだったが、やはりそこに宿す光は悲しみを帯びていた。冬の空に照る太陽が、彼らの影を足元の草に落としている】



137 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 21:43:57.79 ID:W6zESrmC0
>>136

【願わくば、その報せは嘘であって欲しかった。けれど、舞い込んだ書状は既に彼女は居ないという非情な現実を告げる】
【一度ならず二度までも、大切な人を非業の形で失うとは。……こんな思い、もう二度と味わいたくないと思っていたのに】
【―――其処には、彼女の葬儀の日程が記されていた。行かなくては。せめて、見送ってあげなければ……―――】
【皮肉なもので、その日は素晴らしい好天に恵まれた。まるで彼女の明るい笑顔のように、冬の空は高く明るく】
【彼女が天国でこっそり晴れになるように神様にお願いでもしたのだろうか?せめて、この場が明るくなるようにと……】
【いつものカジュアルな服装とは違い、今は黒いスーツと真珠のネックレスを纏う皐月。表情も、どこか影を落としていて】
【学校の制服を着た衣織も、いつもの活発で無邪気な姿ではない。やや俯き加減で母親に付き従っている】

【やがて、声を掛けられる。……この人は確か、彼女のお父様。娘を亡くした辛さは、きっと計り知れないものだろうに】
【それでも、気丈に振舞っている。きっと厳しくも立派な方だったのだろう……】

……貴方が、等比さんの……―――。……この度はご愁傷様です。
神谷皐月と申します。娘さんには、生前本当に懇意にさせて頂いて……
同じ子を持つ親として、貴方の辛さは痛切に感じます。……どうか、お手伝いできる事があれば何でもお申し付けください。

【礼に応じるように、皐月も深く頭を下げる。……血の繋がりのない自分ですらこんなに辛いのだ。きっと彼はもっと辛い。】
【何か自分にも出来ることがあれば。そんな事を伝えて、もう一度小さく黙礼するのだった】
138 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 22:23:26.37 ID:I/qhzfOY0
>>137

【母に付き添う様に立つ衣織の姿を認めると、彼女に対してもまた礼をする】
【皐月の語るその口調は痛ましい程に真摯だった。目の前の女性が娘の言う通りの人物であったことをフィボナッチは確信し、話を続けた】

…そのお気持ちだけで充分です。今日はどうか無理をなさらず、ただ娘と、娘の友人達、娘を良く知る者達と過ごして下さい。
それから皐月さんの御子息、…衣織さんでしたか。貴方もどうか、娘を暖かく送ってやって下さい。
…立ち話も何でしょう、中へお入り下さい。あなた方と同じ思いを持つ者たちが集まっています。

【その言葉と共に、フィボナッチは皐月達を教会内へ案内した。十字架の掲げられた聖堂にはまだ人の姿は少ない。その代わり、聖堂から通路で繋がった別室へと人々は向かっていく】
【室内はホテルの小ホールのような広い部屋だった。椅子が各所に設けられ、ある者は立ちながら、ある者は椅子に座りながら思い思いに話をしている】
【どうやら、故人の思い出について語る場であるようだった。顔に笑みを浮かべている者もいる。それぞれが、それぞれの悲しみと追悼の思いを分かち合っているのだろう】
【そして扉を開けてすぐ、部屋の前方の壇上にそれはあった。熊出等比の亡骸が収まった、純白の棺がそこにあった】
【棺の蓋は開けられ、彼女の全身が見られるようになっている。白いクッションの中に、好んで彼女が着た自警団の制服に身を包み、手を組んで安らかに眠る熊出等比の姿があった】
【綺麗な死に顔だった。先の戦闘において貫かれた腹部も、軍属の解剖医によって綺麗に修復されている。彼女は棺の中で、ただ眠っていた。】



139 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/09(土) 22:47:33.28 ID:W6zESrmC0
>>138

「……はい、神谷衣織と申します。……その……、……お悔やみ申し上げます。」

【一度大切な者の死を経験した皐月とは違い、衣織は葬儀に出るのもこれが初めて。表情を見るにそのショックも大きかったようで】
【いつもの活発な声もそこには無い。ただ、小さくぺこりとお辞儀をするのが精いっぱいの様子だった……】

……そう言って頂けるなら、嬉しいです。
これが最後の別れとなってしまうのは寂しいですが……せめて、暖かく見送らせていただきたいと思っています。

【――案内されるがままに付いていくと、そこは小さなホール。小さいながらも自分の知らない色んな人がいて】
【彼女は自分の知らない所でも多くの人に愛されていたのだと、しみじみとした気分になてしまう。……そして】

【壇上には、棺。覗いてみれば、そこには生前と何一つ変わらない彼女の姿があった。】
【今にも、動き出しそうだ。ただ深い眠りについているだけなんじゃないかと思ってしまうくらいに】
【……動いてくれたらいいのに。今からでも、自分をだます壮大なドッキリだったと冗談みたいに笑ってくれたらいいのに。】

―――等比さん。会いに来ましたよ。……ふふっ、綺麗なお顔。ほら、私の言ったとおり貴女は可愛いじゃないですか。
……もう、笑ってはくれないのですか。私に、貴女の素敵な笑顔を見せてはくれないのですか。
……駄目な師匠ですね……こうやってあなたの姿を見てしまうと……、……、…………―――っ……

【今にもいつものような笑顔が見られそうな気がして、でもそれはもう二度と永久に叶う事は無い事も分かっていて】
【微笑みかけるつもりだったのに、こみ上げる涙を抑えることが出来ない。―――ズルいよ。貴女は綺麗に化粧をして貰ってるのに】
【これじゃあ、私の顔は涙でぐちゃぐちゃになってしまうじゃないか―――】
140 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/09(土) 23:24:58.47 ID:I/qhzfOY0
>>139

【感情の爆発。頬を伝うその涙が、嗚咽が、まるで伝播するかのように。神よ、とそう男はつぶやいて。皺の刻まれた片手で、その両目を覆った。】
【天を仰ぐように顔を上げる。敷かれたカーペットに、一滴の涙が落ちる。屋根を超えたその空は、知らん顔をする様に澄み渡っていた。】

【皐月がひとしきりの落ち着きを取り戻したならば、フィボナッチは棺からやや離れた椅子に二人の着席を促すだろう。】
【紳士の様子はだいぶん落ち着いている。それから昔話をするように、等比についての思い出語りを始めた。】

娘は…とても、活発な子でした。運動をするのが好きだったのです。間の抜けたところも多かったですが、その分とても明るく、友人にも恵まれていました。
ただ、勉学になると途端にやる気を失いまして。…手を焼きました。等比の下の二人は優秀でしたから、余計に心配したものです。
様々な経験を経て、娘も随分立派になったものでした。…今思い返せば、少々厳しくしすぎたのかもしれません。
大学にも入らず遊んでいてはふぬけるばかりだと、強引に自警団に入れさせたのも私です。
娘は見違えるようにたくましくなり、娘自身も軍の一員であることに誇りを持っていたようですが… 無理にでも退役させていれば、こんな事にはならなかったでしょう…

【悔やんでも悔やみきれぬ、という様に男は両手を組んで視線を下に落とす。長女の死に、責任を感じているようだった。】
【その時である。ふと皐月の目線が男の肩を超え、ホールの壁際に移ったならば。そこには、一瞬目を疑う光景があるだろう。】
【灰色のショートヘアに、水色の瞳。ややぶっきらぼうな顔つきをしてはいたが、熊出等比に瓜二つな外見をした一人の少年が壁によりかかっていた。】
【フィボナッチ同様黒い喪服に身を包んでいる、高校生くらいに見える少年だ。その表情は、何か苛立ちを覚えているような、怒りを宿しているようなものである。】
【瞬間、少年が皐月の視線に気づく。すると少年はなにか不機嫌そうな顔つきをしたあと、扉から部屋の外へ出て行った。】
【皐月や衣織がその少年について何か問いかけようとするならば、フィボナッチは応じるだろう。そうしないならば、もう少し彼の語りは続く。】


141 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 23:27:34.92 ID:bkliAjGKo

【喧騒が夜の街を包み込む。全く、帳が降りたというのに誰一人として眠ろうとしていない。呆れた物だ。】
【自分もその一人だったが、やむを得ない事情と、種族としての"役目"があった。ビルの屋上へ上ると、夜風が肌を貫く。】
【―――寒い。それなのに、この町の人間はどうしてこうも外に出たがるのだろう。それも夜ばかり。身体に悪い液体を流し込んでまで―――】


 ……、そうまでして。夜更かししたいものだろうか。自分には―――、理解できないな。


【肩に背負っていた、ギターケースを床へと下ろす。落ちていた枯葉をぱっ、ぱっと払い、ケースの中身を取り出した。】
【ストック。バレル。マガジン。スコープ。そしてサイレンサー。必要なものはこれだけ、仕事道具が嵩張らないのは在り難かった。】
【モノの二分もしない間に、慣れた手つきで"道具"を組み立てると、自分は屋上の縁へと近づき、肩膝を突く格好でその場に―――座り込む。】


 ―――スコープ、チェック。レティクル……、調整は完璧。流石に、街のガンスミスとは違うな。
 "マクスウェル・ファイヤー・アームズ"……社長は嫌な人だけど、仕事は完璧。抜かりがないみたいだ。


【マガジンに一発だけ弾丸を込める。338、ラプアー・マグナム弾。対人用として長距離狙撃を専門に作られた弾頭で】
【威力は絶対無比、アンチ・マテリアルライフルの50口径弾にこそ劣るものの―――最長狙撃の記録を常に争い続ける、一線級の弾丸だ。】

【ボルトをカチャリ、と操作し起こすと、一気に後方へと引っ張り弾丸を装填。押し戻し、コッキング動作を完了する。】
【銃が動かぬようチーク・パッドが取り付けられたストックにしっかりと頬付けし―――レティクルを覗き込む。その先には、スーツを着込んだ一人の男。】


 ……。"過激派"のボスは……どうやら、遊びも"過激"らしいね。


【視線の先、700mほど離れた位置に居るその男は、両脇に女性を抱え、丁度高級クラブから出てくるところだった。】
【彼の目の前には、地の国における海岸沿いの大都市、アズテリオスを本拠地とする世界的車両メーカー・ハディガン・モーターズ製の】
【V12エンジン搭載型超巨大リムジンが待機。当然、その脇にはガードマンが三人。一人は懐にパーソナル・ディフェンス・ウェポンを忍ばせている様だ。】

【両脇に美女、屈強なガードマン、超がつく高級車の出迎え。大物だが、いささか調子に乗りすぎている様だ。】
【スコープに映る彼は美女の胸部に腕を突っ込み、尻を撫で回し、首筋に顔をうずめるなどやりたい放題で―――、】





  ―――悪いね。




【―――プス。まるで、缶コーヒーを真冬に開けたときの音の様な、小気味の良い銃声が響き】
【発射された弾丸はその男の脳天を直撃、真っ二つに割る勢いで吹き飛ばした。鮮血が両脇の美女へかかり、悲鳴が上がるのが遠くからでも聞こえた。】



 ……仕事じゃない。これは―――自分達の為に、必要な事なんだ。
 あなたの様なニンゲンが……、そう、ニンゲンが跋扈していると。色々、大変なんだよ。


【続いて、銃を構えて死体をリムジンへ移送しようとするガードマン―――事件の目撃者達に、彼は無慈悲にスコープを移し、そして―――。】
142 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/09(土) 23:40:15.56 ID:WygLZCKy0
>>141
/持ち越し濃厚になりそうですが、それでも大丈夫でしょうか……?
143 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/09(土) 23:45:13.54 ID:bkliAjGKo
>>142
/やったぜ。どうぞどうぞ、お願いします!
144 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/09(土) 23:59:04.20 ID:WygLZCKy0
>>143
/では、お願いします

>>141

……久しく、忘れていた……普段過ごす時間が、こんなに安らかに流れていくなんて……

【夜の街。雑多な人々の行きかうその場所には、十人十色な人間模様がある】
【「その人物」も、その中の1人でしかない、はずなのだが――――その風貌はそれでもなお、雑多な中にあって目立つものがあった】

世の中は、少し落ち着いている……これなら、心静かにもいられるってものだね……

【黒いコートをしっかりと着込み、魔術師である事を如実に表す黒のハットを被った】
【手には、頭部に青い石が嵌めこまれて先端を鋭く尖らされている、細い金属製の杖を握り締めている】
【漆黒のボブカットと、幼さを残しながらも憂いを帯びた様な瞳をした、身長160cm前後の中性的な青年】

【夜の繁華街にはあまり似つかわしくない姿の青年だが、本人はそれを気にする風でもなく、街をそれとなく歩いている】
【特に周囲の店などに興味を示している様子もなく、ただの通り道としてその場を歩いているようで】

――――っ
(流石に……)

【そんな中で、青年は眼前に派手な送迎を迎えて店から足を伸ばす一行の姿を目撃する】
【こうした場面で、流石に素知らぬ態度を取る訳にもいかない。道を避けて通り過ぎようかと、迂回路を模索すべく周囲を見回した――――その瞬間】

――――っ、な……ぁ……!?

【――――爆発した様に、男の頭が爆ぜる。幾重にも重なる悲鳴に目を向ければ、その光景を目の当たりにする事になる】
【青年は思わず目を見開いて、己の中に跳ね上がった驚愕を受けとめる。次の瞬間には、その視線は忙しなく周囲を見回した】

(誰かが、誰かが彼に『仕掛けた』のは、まず間違いない……なら、方向は、倒れた方向から見て、逆――――あっちか!)
――――レル(風)・フェン(飛翔)・ラー(心)・ビン(レベル2)、『ホークアイ』!!

【まずは、事態を把握しなければならない。青年は咄嗟に口中でスペルを紡ぐと、魔力を解放する】
【――――緑の光球が、宵闇の中を突き進んでいく。同時に、青年のその目も緑色の光を帯びて】

(っ、居た……ライフルを構えて…………まだ撃つ気か!?)
――――隠れろ、まだ狙っているぞ!!

【その姿を――――遠くのビルに、不鮮明とは言え捉えた。その人物が、未だライフルを構えている所も】
【咄嗟に青年は、周囲に警告を怒鳴る。状況はよくわからないが、まだ銃を構えていると言うのは穏やかではない】

(……せめて、その姿を……!)

【光球を通じて、青年の視界は遠くを映す。仕掛けた人物の詳細を垣間見ようと、青年は光球を、よりビルの屋上へと近づけるべく加速させた――――】
145 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/10(日) 00:03:37.59 ID:fzdmwX+Z0
>>140

【やりきれない想いを抱えて、拭い去れない悲しみを抱えて、皐月は静かに目を腫らした。……ああ、せっかく笑顔を見せようと思ったのに。】
【こんな顔を見ても、きっと彼女は喜ばないと分かっているのに。―――どうしたって、目の前の現実に涙が止まらない】

【―――涙が枯れ果てた訳ではない。けれど、いつまでも泣き顔を見せるのは情けないから、ハンカチで涙をぬぐって】
【体裁だけでも顔を整えると、招かれるままに席に座る。……思い出話で故人を偲ぶのだろう。自分も、話は尽きない】

―――決して彼女の死を肯定したいわけではありませんが……でも、彼女は責任と使命を持つことにより輝けたのではないですか。

……知ってますか?最初は惰性で仕事を続けていた等比さんが、どうして変わることが出来たのか。
最初に遭った時、彼女は語ってくれました。「ヒーローになりたくて、でも現実は夢とは程遠くて、惰性で日々を過ごしていた」と……
彼女の夢は誰かを格好良く救えるような人だったけれど、その夢が手に届かないほどに遠く感じてしまって諦めていたように見えました。

一言、そんな等比さんに言葉を添えてあげたんです。「自分を変えたいなら、自分に向き合う勇気、自分を変えようとする意志を持とう」って。
手が届かないように見えても、少しずつ変えていけばいつか夢は叶うんだって……
たった、それだけです。それだけで、彼女はあんなに変わった……彼女は自分の現実と向き合い、夢へと変わる努力を続けたんです。

―――最期まで、等比さんは誰かを助ける為に戦っていたと聞いています。
叶わぬと思っていた夢が、いつのまにか現実になってたんです。―――自警団は、決して親に押し付けられた仕事ではなく、彼女の夢であり誇りだったんです。
どうか、彼女の夢を否定しないであげて下さい。ヒーローになれた等比さんを、褒めてあげて下さい。―――きっと、その方が彼女も喜びます……

でも……願わくば、もっともっと彼女が変わっていく姿を見ていたかった。ずっと、楽しみにしていたのです。彼女が変わっていく姿を―――

【―――自警団に入ったことは、決して間違いではなかった。それだけは、何としてでも伝えたかった】
【彼女は、自身の夢に向かって努力したからこそ輝き続けられた。……それを否定することだけは、止めて欲しい……そんな思いを伝え】
【……でも、どんな事をしてでも娘の死だけは避けたかったという思いは分かるだけに、余計に辛い。自分が彼なら、きっと同じことを言っているだろう】


【―――ふと、目線を外す。すると、其処には等比さんの姿―――!?思わず皐月は夢でも見ているのかと二度見してしまうが】
【よくよく見れば、彼女によく似た少年。……不機嫌な表情を浮かべている。悲しみというよりも、怒りの感情……】

……あっ、……

【―――間もなく、彼は出て行ってしまう。彼は、いったい誰だったのだろうか―――】

146 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/10(日) 00:08:08.88 ID:4b8K+t/s0
【森の奧地。魔物も多いと噂され、普段ならば人気など皆無である筈の其処】
【今宵は二人分の足音が聞こえ――――身形を見るに、謂わば雇われ傭兵である事も直ぐに理解出来るか】


「しっかし美味しい依頼に有り付けたモンだなぁ。精霊だか妖精だか分からないがガキ一人生け捕りにするだけで数千万が手に入るなんてよ
この手錠を填めちまえば魔力も制限出来ちまって後はコッチのもんなんだろ?」

「……何でも生き肝を喰らうとその力を手に入れられるだかとか何とからしい
人間では無いのだから相手も只の子供では無いだろう。そんな軽口を叩いて油断しているとあっと言う間に消し炭にされるかもしれないぞ」

【一人は長剣を腰に提げたラフな格好の男。もう一人は弓を手に辺りを警戒しつつ進む男】
【二人の遣り取りからして、何らかの捕獲の依頼を受けて此処まで来た事は分かる】
【然れど、その対象が魔物だとかでは無くどちらかと言えば幻獣にも似た部類ではあるのだが――――】

【何にせよ、何者かが近くを通る或いは様子を伺ったならば双方共に其方へと顔を向けて】










【月光に照らされる森の中。其処に響くのは魔物達の咆哮】
【見遣れば其れは人と同じ形をしていて――――知識、或いは戦闘経験があるならば其れは曾て“人間”で在った存在だと知れるか】
【今となっては思考するだけの力も無く、満たされる事の無い空腹を満たそうと延々生物を殺めるのみ】
【そんな中、乾いた音が数回。どれもが見事に心臓、又は頭部を破壊して居り】


「死んだ後も良い様にコキ使われる何て大変だよねぇ……
――――ま、安心してよ。原因は突き止めてるしキミ達の遺体も手篤く埋葬するように指示してあるからさ」

【遅れて空から舞い降りたのは純白の翼を生やした一人の修道女】
【両手に持つ双銃がその職らしからぬ印象を与えるが――――……】
【無駄な弾痕を残す事無く一発で葬ったのは彼女の優しさか、一人その場で月を見上げ】

【――――場所が場所だ。そして今宵は月が明るい事もあり、見つける事は難しくも無く】
【“音”だって存外遠くまで響いたのだから場所を特定するのも難しくは無い】
【仮にその場を訪れて見れば、翼を生やしたその通りの女が一人月を見上げている姿が視界に入るのだけれど】
147 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/10(日) 00:15:32.16 ID:lu5qIqVQo
>>144

<SIDE:SNIPER>


【死んだかどうかを確認する為に、もう一発ほど胸に撃ち込む必要があったりするのだが―――】
【ラプアは良い。顔に当たればほぼ確実に殺せるし、何よりこの距離だ。確認するまでもなく、当該の男は死んでいた。】
【だが状況説明を細々とされては困る。女二人は良いとして―――ガードマン。この三人は消しておきたかった。……気が進まないけれど。】


 しょうがないんだ。・・・・・・恨むなら、恨んでくれても良い。
 けど、自分等には―――、その男の死と、周囲の人間の口封じが必要なんだ。

 ―――ごめん。君達に恨みは……つっ!?


【現場に駆け寄る影を見つけてしまった。厄介だ、[ピーーー]相手が三人から四人に増えたのだから。】
【しかもその間にも、二人はリムジンの中に逃走、残った一匹は懐から取り出したMP7―――PDWを取り出し、臨戦態勢に。】
【狙って此方に弾を届かせる事は出来ないだろうが―――マガジンが豊富なら撃ちまくってくることだって考えられる。これは非常に良くない。何より。】


 ……君は、誰かな。"此方"の問題に首を突っ込むと……あまり、良いことにはならないよ。
 だから―――嗚呼。"ゲイル"には、余計なニンゲンは[ピーーー]な、と言われているっていうのに……いつもいつも。
 自分の任務は難儀なもの、ばっかりだ。……どうやって、無力化するかな。


【―――魔法使い。それも、いち早く狙撃手の存在に気づいているかのような青年。】
【勘が鋭く、場慣れしていて、且つ反撃手段と防護手段を持ったイレギュラー……作戦は中止にすべきだ。】
【普通ならそう進言するところだけど、生憎今日、この場に自分を従えるリーダーや隊長は居らず、無線機だって持っていない。】

【―――自分の判断で。どうにかするしかない。静かにこの場を収めて、あの青年を殺さず、他の三人を抹[ピーーー]る。】
【大丈夫、自分には出来るだろう。此方は銃の利があり、まだ"バレ"てもいないのだから……そう、圧倒的に有利。だから―――】


 ―――眠ってもらおう、青年。



【現れた魔術師の脚部めがけ、弾丸が飛来する。無力化を図る。なら当然、狙うのは―――移動手段たる、脚に決まっていた。】
【音もなく、サイレンサーの先端から放たれた弾丸が音速を超えたスピードで一気に―――まるで病魔の様に静かに、且つ鮮明に、襲い掛かった。】



<SIDE:GARDMAN>

「クソッ……クソッ、クソッ!! 店からリムジンまで、ほんの数歩だ! ほんの一分かそこらだ!! なのに……!!」

「野郎、なのにどうやって狙撃なんてしやがったんだ、クソッたれ!! こんな―――ああ、畜生!! 本社になんて連絡すりゃいい!?」

「だいたい、い、一発で……一撃で頭を―――あ、あんなのどうやったってふ、防ぎようがねえじゃねえか畜生ッ!! 出て来い!!」

「出てきやがれ、糞野郎ーッ!!」


【パララララ、という連射音がリムジン周辺に響いた。凄まじい勢いで弾丸が放たれていく。】
【錯乱したガードマンの一人が、自前のMP7―――サブマシンガンを滅茶苦茶に撃ちまくっているのだ。】
【これでは逆に狙撃されやすいのは愚か、民間人まで巻き込み兼ねない―――彼を止める必要が、ありそうだ。】
148 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/10(日) 00:35:51.07 ID:SJhg9VYs0
>>147

(……もう少しで、姿は捉えられる……このまま――――ッ!?)
っ……おい……!!

【光球を推進させて、狙撃者の姿を、正確に捉える。それができるまで、あともう少しの所だった】
【狙撃された人物の護衛を任されていたのだろう――――男が、サブマシンガンを取り出し、闇雲の乱射を始めたのだ】
【思わず、青年は頭を振って苛立ちを見せる――――もしかしたら1kmは離れているかもしれない。正確な距離感は分からないが、これでどうにかなるはずがない】
【まして、余計な被害を広めてしまうだけだ。謎の狙撃者よりも先に、此方をどうにかしなければならないだろう】

――――スーレル(光)・ナコ(阻害)・ジー(安定)・ザン(レベル3)……『クロスホールド』! 少し、頭を冷やすんだ!!

【左手に握り締めた杖を、錯乱したガードマンに向けられ、青年の荒々しいスペルの詠唱が向けられる】
【――――キラキラと、光がガードマンの周囲を揺蕩い始める。そのままガードマンが、それに対して反応して、何らかのアクションを起こさなければ】
【彼を、光の十字架が覆い、抑えつけてしまうだろう。それはさながら、十字の棺の様に】
【――――同時に、その光は外からの影響に対する守りにもなる。狙い撃ちされても、光が生きている内は保護できるはずだ】
【その中で、彼が幾ばくかでも、冷静さを取り戻す事を期待する】

……しまった、あっちの姿を見据えるのが、お留守に――――っっぐ、ぅ……あ!?

【そうして、ガードマンの混乱に対処している内に、光球からの情報を処理する事が遅れてしまっていた】
【咄嗟に、其方に意識を戻そうとするが、その刹那――――右足が、弾けた様に掬われ、間髪置かずに痛みが跳ね上がる】
【――――自分が狙撃されたのだと気付くまで、2秒かかった】

っぐ……やっぱり、形振り構わず、かな……! だけど、そっちがその気なら、手前にも手は……っ、ある……!
――――スーオー(闇)・フェン(飛翔)・ゼル(自身)・ザン(レベル3)――――『デビルズハイウェイ』……!

【この脚は、到底身体を支えられる状況にない。四つん這いの姿勢で歯を食いしばりながら、青年はスペルを紡ぐ】
【光球による情報収集は失敗に終わってしまった。ならば、――――自ら、確かめるまで】
【青年の姿がふわっと浮かび上がると、空を飛翔し始め――――程なく、その姿が闇に解ける】
【不可視の姿となって、空を飛ぶ――――視覚に頼る狙撃者には、有効な手だろうと踏んで】
【そのまま、近距離――――出来るならば10m以内ほど――――まで、近づこうと言うのだろう】
【何らかの、霊的・魔力的な探知の手段がなければ、青年の姿は、彼の随意で姿を表すまで、覗く事叶わないものとなる】

【残存魔力 17/25】
149 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [sage]:2016/01/10(日) 00:52:59.72 ID:lu5qIqVQo
>>148

<SIDE:GARDMAN>

「ああああああアーッ!! クソッたれ、出て来いッ!! あの男は金のなる木だったんぞ、畜生め!」

「よくも殺しやがったな、俺の仕事までなくなっちまうだろうが!! クソッ、クソクソクソッ!」

「あとちょっとで……!! あの"クソ獣人ども"の土地をブン獲れたら、こんなリムジンよりヘリで移動するような生活が待ってるんだ―――ッ!!」

「ふざけやがって―――、あっ!?」

【取り乱していたガードマンの一人、銃器を持った男の両手がガチリ、ガチリと拘束具によって戒められていく。】
【嗚呼、勿体無い。貼り付けにされているのが屈強な男でさえなければ、目の保養にもなっただろうに。世の中上手くいかない。】
【そう、丁度その辺りで伸びている"風俗嬢"のお姉さま方なんて―――嗚呼、伸びているからダメな様だ。これじゃ捕まえても面白くないだろう。】

【ともあれ―――男は腕を拘束され、そのまま光の中に閉じ込められる。弾丸からもガードされるし、一石二鳥だ。】
【しかし、問題は"魔術師"の方。脚部を狙い撃ちにされ、尚も新たな魔法を紡ぎ始める―――効いてはいるが、戦意を奪うまでは至らず、か。】



<SIDE:SNIPER>


 ……困ったなあ。脚を抜かれたのにあの表情。……慣れている。
 と言う事は、厄介事専門の魔術師、ってトコロかい? ……厄介なのは君の存在そのものだよ。
 心臓や……頭は……最悪の場合にしか狙えない。というより―――彼、狙わせてくれなさそうだね。矢張り、上手いようだ。


【自分は舌を巻いていた。狙撃手相手に即座に対応、脚を抜かれても痛みに震える事すらなく、次の手を考える。】
【術の展開が速いのは勿論、彼は対応も上手いのだ。そう、歩いて近づく様じゃどうにもならない。なら、いっそ―――。】
【空。それはスナイパーが最も苦手とするフィールドの一つ。陸と違い移動が三次元的であり、且つ距離感を掴むのが難しい】


 ……全く。それも姿を消すとはね。

 けど―――残念。自分は……"目"だけで敵をみているわけじゃない。



【―――次の瞬間、全ての感覚が研ぎ澄まされていく。嗚呼、聞こえる。感じる。そして―――鼻腔をくすぐる。異形の匂い。】
【もとより自分の周囲に人は展開しておらず、匂いは建物と、そして銃と、自分の匂いだけ。他の匂いがすれば、それが"彼"の匂いであり】
【そして姿が見えなくなっていても、動けば風が流れ、魔法を使って飛行していれば音も聞こえる。何より―――血だ。血の、匂い。撃たれた箇所の―――】


 くん、くん―――ああ、そこだね。


【―――異常なまでの嗅覚・感覚神経。だが、それこそがまさに彼の"能力"の一つ。】
【接近すれば分かるだろう、なぜ彼がそこまで"敏感"なのか―――顔の横から見えるふさふさとした毛、腕を包む毛、毛、毛。】


【パシュン。再びの発砲、今度は飛来する相手に向かって、感覚でのみの射撃となる為狙いは先程より正確ではない。】
【だがしかし、それでも尚―――この状況で、見えない相手にこうも正確に弾を届けようとしてくる彼は―――、】


 ……獣には。ようく、わかってしまうんだ。においと、かぜが―――君のいちを、教えてくれるから、ね。……ごめんよ。


【―――犬顔の、獣人。いや、この鋭い顔つきはむしろ―――狼、か。人間の手足を持ち、人の背格好をしているが、彼は紛れもなく、"獣人"だった。】
150 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/10(日) 01:05:26.45 ID:1MmFVCip0
>>145

【皐月の紡ぐ言葉を一言一言、噛みしめるようにフィボナッチは聞いていた。時おり、胸を痛めるような表情を見せながら。】

いいえ、初めて耳にする話ばかりです。娘が貴方について語るときは、もっぱら愉快な話しかしませんでしたから。
…そうですか、娘はそんなことを。確かに小さいころから、それこそ少年が好むような英雄像に憧れているような娘でした。

【「パパ、パパ!いくよ、ぎゃらくてぃっくびーーーーーむ!!」「いいかい等比、人間の手から光線が出るなんていうのは自然科学的見地から考えるに不可能なことなんだよ」】
【そんなやり取りがあったこともフィボナッチは付け加えた。特に冗談を言っているような雰囲気でもない彼は、どこか娘と同じで少しズレているのかもしれない。】

…お恥ずかしい話、私自身若いころは怠惰な男でした。ですが様々経験を積むうち、努力を苦にしないようになったのです。
娘にとっては、皐月さんとの出会いこそがまさに、人生の転機だったのでしょう。
弱きを助け悪をくじく、そんな理想のもとに娘が従軍していたとは…。色々娘から話を聞いてはいましたが、そうだったのですか…
最近の活発な姿から、娘はその命と仕事に充実を感じているだろうことは想像がつきました。
私の娘は、夢に生きたのですか… …貴方から、その言葉を聞けて良かった。命懸けで生きていた娘は、きっと幸福な日々を送れていたのでしょうから…
…ええ、もちろん約束します。娘の生きた日々は、否定するどころか、私にとって、最大の誇りであったと… 自慢の、娘であったと…
この場を借り、娘の分まで伝えます。「貴方に会えて良かった」、と…

【老紳士の瞳は、淡く涙を浮かべているようだった。悲しみというよりも、目の前の相手に対する感謝から湧き上がってきた、そんな涙だった。】
【ふと、皐月が何かに反応する。それに合わせ背後を振り向くも、そこに人の姿は無く。どうかしましたか、と続けた後、察したように続けた。】

…もしかすると、群(グン)の奴ですか?彼は、娘の弟です。
娘の下には2人の姉弟がいるのです。今年で19になる島沙(トウサ)と、17になるグン。…特にグンと等比は妻に似ていますから、…それで驚かれたのですかな。
ぶっきらぼうで、人見知りをする繊細な息子なのです。今日もまだ感情が落ち着いていないようです。

【どうやら先の少年は熊出等比の弟であるらしかった。名は「熊出 群」と言うらしい。もう一方の姉弟である島沙の姿は見えなかった。】
【そして話は先に少し触れた、老紳士の妻の話に至った。この葬儀の場に姿が見えないこともあり、皐月や衣織にも、およそ想像はついていたかもしれなかったが。】

…群はまだ2歳の頃に母の熊出海沙(くまいで かいさ)を病で亡くしました。島沙が4つ、等比が10歳の時のことです。
話を聞くに、等比は貴方をとても慕っていました。貴方と娘がいたときは、年端もいかない生娘のような振る舞いもしていたとか。
…亡くした母の面影を、貴方に重ねていたのかもしれません。…妻も貴方と同じことを言っていました、「あの子をもっと見ていたかった」と…

【等比が肉親の死を経験していたことを聞き、皐月は何を思うだろう。明るく、陰りの一つも見せなかった彼女の振る舞いは、自分の中で無くした心の一部を埋められる喜びゆえだったのかもしれない。】
【話をするうち、そろそろ葬儀が開始される時刻となるだろう。この別室から棺を聖堂内に移し、そうして葬儀は始められる。】
【時刻はすでに正午を過ぎていた。人々がざわめきたち、聖堂へと移動していく。東の空からはゆっくりと、雨雲が近づいてきていた。】



151 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/10(日) 01:16:14.17 ID:SJhg9VYs0
>>149

……訳のわからない事を喚くぐらいなら、少し黙っているんだ……!
(……土地を分捕る? ……地上げ屋かなにかなのか、この男たち……いや、幾らなんでも大げさすぎる……!
 ……予想以上に、厄介なことに首を突っ込んでしまった様だね……全く……!)

【光の十字架に捉えられたガードマンを一瞥し、戒めの言葉を短く叩きつける青年。これで、とりあえず『こちら側』の混乱の種は摘んだ事になるのだろうか】
【――――その中で青年は、いくつか気になるワードを、己の胸の内に刻みつけていた】
【こんなクラブに、派手に出入りする様な人間なのだから、何かきな臭い物はあるのだろうとは思っていたが】
【どうやら自分は、それだけでも済まない事態に巻き込まれかかっているのだと、薄々の予想がつき】
【再び軽く頭を振って、我が身の不運を嘆いた。機関の厄介事が遠ざかり、相棒の厄介事が片付いて、やっと平穏が手に入ったと言うのに――――】



(――――近づいている、確実に……!
 この脚、相当大口径の弾丸で撃たれたみたいだ……! ……長く放っておくのは危険みたいだな、なるべく早く、済ませないと……!)

【姿を闇に紛れさせながら、青年は空を駆け、狙撃者の元へと近づいていく】
【足のダメージがあっても、空ならば移動にはさほど影響しない。航行する様に、順調に距離を詰めていき】
【それでも、痛みと、神経を突き上げる不快感はどうにかなるものでも無い。キンキンと頭の中で眩暈がするのを、必死にこらえて】

――――――――なっ!?

【――――思わず、声が出てしまった。それほどまでに、その光景は信じ難いものであったのだ】
【自分を知覚できないはずのスナイパーが、此方へと銃を向ける。明らかに、自分を狙っている】
【何故? ――――それを追求するのは、今すべき事ではない。ともあれ、あの弾丸が自分の命を奪う事を防がなければならない】
【距離を詰めている以上、もう反応してどうこうするのは無理がある。元より音速を超える弾丸はそれは期待すべきものではないが】
【距離が近い事は、より一層、彼我のコンタクトを確実なものにする。このまま接近を続けるようでは――――良い的だ】

く、ぅッ!!

【咄嗟に降下――――空中での、正に彼が懸念する所の、三次元的な移動。それによって青年は、かろうじて第2の弾丸を回避した】
【だが、スナイパーライフルとなると、一撃の重さが銃の中でも大きい。近くを通り過ぎた弾丸の残した風圧が、頭を揺さぶる】
【ただでさえ無理な機動に、姿勢を制御しきれず、青年はそばのビルの屋上に降り立ち、その姿を見せる】
【彼我の距離は、おおよそ35m――――青年が、スナイパーを、2度程の緩い角度で、見上げる様な格好だ】

っ、ワーウルフ!?
…………お前、一体何者だ……さっきの狙撃は、どういう事だ……ッ!?

【ようやく、青年はスナイパーの姿を認める事が叶う。青年は、思わず声を届ける為に、微かにふらつく中で声を――――中性的で、不思議な耳の心地良さがある――――張り上げる】
【――――魔海の住人だろうか。しかしそれにしては、人間の文明の利器であるスナイパーを、完璧に使いこなしている】
【青年は、思わず己の疑問をストレートにぶつける――――彼の素性と、その目的。緊張状態にあるだろう相手が、素直に応じる可能性は、決して高くは無いだろうが――――】
152 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 01:28:53.29 ID:lu5qIqVQo
>>151

【空中での機動―――自分は舌打ちをしたくなって、それをグッと堪えた。舌打ちは嫌いだ。するのもされるのも。】
【他人が無自覚に舌打ちしているのを聞くと、正直タバコの煙を正面から吹きかけられるのよりイライラしてしまうのは自分だけだろうか】
【何か間に触る事をしたというなら、そんな風に態度に表さず素直に口に出してくれた方が気持ちが楽なのに―――ニンゲン特有の動作に、呆れ返る。】

【―――そしてそんな、"あまり好きではない"ニンゲンのいやな部分を、無自覚にまねしてしまいそうな自分が居る事にも―――腹が立つ。】


 ……外れた。いや、分かってた事だけどね。それにしたって―――凄い機動力だ。
 銃口が向いたその瞬間に、自分が君を"察知"しているという事実に素早く感付いて―――即座に退避行動。
 頭が下がるよ、銃を向けられてこの距離で怯えず、そんな行動が出来るのだから……やれやれ。嫌な人に目をつけられたなあ、ほんとに。


【カチャコン。ボルト・アクションを手馴れた手つきで行いながら、足場の向こう、離れたビルに着地した魔術師に言葉を投げかける。】


 ……ああ。会話、したいのかい? 悪いけど―――その。秘密主義なんだ、これで色々……業が深いというか、なんというか。
 あんまりたくさん、喋っちゃいけないって言われてるし―――自分自身、君に理由を説明するのは厄介事を増やしそうで、怖いからさ。

 只一つ言えるのは……ワーウルフ。その呼び方は……あまり、好きじゃないな。
 君は自分のことを、「ニンゲン」だとか、「ホモ・サピエンス」だとか―――なんだろう、そういう風に呼ばれて、嬉しいかい?

 そりゃあ、ニンゲンはニンゲンだろう。ホモ―――長ったらしいな、ホモはホモだ。けど、君は君、魔術師の―――名前はなんていうんだい?
 教えてくれなくても良いけど、……要は、そういうこと。狼男、だとか。そういう風に呼ばないで欲しいんだ。自分は―――、


 ……、ごめん。こんなことを言ってなんだけど……名前も、明かせないや。


【パシュン。即座に構え、会話の最中―――再びの発砲。それも、深く狙いをつけず、なんとボルト・アクションの狙撃銃を―――】
【なんと腰溜め撃ちにして、だ。それでもしっかりと、先程同様に脚部を―――それも同じ側の脚を狙って正確に射撃できるのだから、驚きだ。】
【もはやこの距離なら、スコープを覗かずとも―――という事だろう。ワー・ウルフと呼ばれるのを嫌がる煮え切らないワー・ウルフは、魔術師を見下ろした。】


 ……殺す気はないんだ。頼むから……その、えーっと……、暴れないで、気絶だけしてくれないかい?
 そしたら全部、丸く……ああ、でも此処まで見られたんじゃ……もう、殺した方が良いのかな。ねえ、君は―――どっちの結末が、お望みだい?
153 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/10(日) 01:42:24.78 ID:fzdmwX+Z0
>>150

【彼女の死によって齎されるのが悲しみのみなんて、彼女が報われない。彼女の歩んだ生は決して間違いでは無かったと伝えたかった】
【その死は決して無駄ではなかったこと、その一生は短くとも誇るべきものだったことを……何としてでも、伝えたかった】
【夢に生き、夢を追い、いつしか彼方の理想に手を伸ばし掴み取り、その果てに命を落とした彼女は……間違いなく、立派に生きた】
【彼女の命が失われたのは悲しい。でも、悲しみに暮れてばかりではきっと彼女も悲しむから―――】

――――その言葉が聞けただけで、良かった。
……きっと、彼女も喜んでいます。貴方の誇りとなれた事、貴女が悲しみばかりに暮れずに、自分を誇ってくれる事を……

【―――悲しみに暮れるより、誇りに思った方がきっと喜ぶ。彼女は、誰よりも眩しい笑顔を見せる子だったから】
【理想の果てに、厳しかった父親の自慢とまでなれたのならば……多少は、彼女も報われるのではないか。そんな、気がした】
【勿論、自分も同じ願いだ。―――悲しみが消える事は無いけれど、最後まで立派に戦った彼女を誇らしく思う】
【……出来れば、生て帰ってきた彼女にこの言葉を伝えたかったけれど。それが叶わぬのならば、せめて祈りよ天に届け―――】


【先程の彼女そっくりの少年は、妹らしい。なるほど、道理でああも瓜二つだったのか……】
【感情が不安定になるのも無理はあるまい。姉を失ったのに、平然といられる訳がない……。さらに話は続き】

……そうでしたか、奥様も既に亡くなられていたのですか……
―――私が彼女のお母様の代わりになれていたのなら、嬉しいです。……そうですか、だからあんなに私を……
元気な娘がもう一人出来たみたいな気分でしたけど―――本当に、母親だと思ってくれてたんですね。
……私も、ずっと昔この子が生まれる前に夫を亡くしています。だから、家族を失った心の空虚さは理解できるつもりです。
その穴を私が埋められていたなら……それは、とても嬉しい事です。
……不思議ですよね。どんな親も、子の成長を見ていたいと思うのは同じなんて―――

【―――彼女があんなに自分を慕ってくれていた裏側には、そんな事情があったとは。】
【自分は本物の母親ではないけれど…そうやって少しでも彼女の心の隙間を埋められたのなら、嬉しい】

【そろそろ、葬儀が始まる。行かなくては。――――最後の別れを告げるために】
154 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/10(日) 01:48:18.81 ID:fzdmwX+Z0
//っと、眠気が限界で次のレスは一度寝てからになりそうです……!
//今日も昨日と同じくらいの時間に来れますので、時間の都合が宜しければ宜しくお願いします!
//今日のが不可能であれば、来週の金曜土曜もOKですので!
155 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/10(日) 01:56:47.96 ID:SJhg9VYs0
>>152

……手前だって、行き当たりたくてこんな場面に行き当たった訳じゃない……
巡り合わせが悪かったんだって、諦めてもらうしかないね……!

【嫌なダメージが身体に残る。頭の芯がガリガリと鑢で擦られている様な――――】
【そんな、不快で苦痛な感覚を身体に抱え込みながら、青年は獣人を見上げる】
【偶然が、この2人を引き合わせた。もしも行き合わなければ、青年は獣人とこうして邂逅する事もなく】
【獣人は粛々と目的を達成でき、青年も日常の中に時を過ごす事を甘受していられた――――今となっては、詮無き事である】

……これだけの事を、しでかして……なんの弁明もなく、逃げると言うのかい……!?
……悪いけど、それだと手前は、無駄に傷を負い、魔力を消耗しただけで終わる……正直、受け入れられるものじゃない……ッ

【無論、青年とて理解はしている。問われたから応える――――こういう暗殺に手を染める様な人間が、そんな態度を取る訳がないと】
【ただ、青年は自ら事態に介入し、怒っている事を把握したいと思った。だからこそ、少なくない手間や犠牲を、この事態に掛けた】
【このまま、何も分からないままに下がったのでは、割に合わない――――せめてもう1つ、コトの真相に踏み込みたい】
【――――手傷を負った青年は、その念でこの場を堪えていた】

……なら、お前……とでも、言えば良いのか……?
どちらにせよ、名を知らないんじゃあ、呼び様がない……呼びやすい様に、適当に呼ぶしか、ないじゃないか……!

【単に、事態を把握する為に、その言葉が自然と口をついて出てきたのだが――――どうやらそれが、相手の気分を害したらしい】
【あの場面では、他に何とも形容しようがなかった。その事を青年は、ハッキリと主張する】
【――――そんな事より、意識を回さなければならない問題はあるはずなのだが】

っ、ふざけてるの――――――――っ、が、ぁ……! ぅ、うあ……ぁ、ぐぁ……あ…………ッ!

【名を問いながら、名乗れないと言う獣人に、青年は思わず「ふざけているのか」と詰め寄ろうとした】
【が、畳みかける様に放たれるライフル弾。しかもそれが、今度ははっきりと右足を捉えて】
【完全に立っていられなくなり、這いつくばる青年。口からは、もう噛み殺し切れない苦痛の呻きが漏れて】

――――――――スーオー(闇)・エル(集積)・イム(怒り)・ザン(レベル3)……『マイクロブラックホール』
……少なくとも、死ぬつもりは……ない…………足がやられても、手前には、まだ……!

【這いつくばりながらも、青年は獣人をキッと見上げると、何度目かになるスペルを詠唱する】
【両者の、ちょうど中間地点に黒い力場が形成される。同時に、吸い込まれるように、周辺の全てへと力場から力が作用される。文字通り、強力な吸引力だ】

……もう、その銃弾は、此方には届かない……! ……これで尚お前が退かないと言うなら……こっちにだって、手はあるんだ……!
……あの男の言っていた「土地を分捕る」と言う言葉……少なくとも、それがどういう意味かぐらいは、確かめさせてもらうよ……!

【その力場は、ライフル弾をも、あるいは捉えうるのかもしれない。そして、引き込まれたものは、強い力の作用でバラバラに分解されていく】
【膝立ちの姿勢になりながら、青年は杖を構える。言葉を紡ぎながら、次の一手を模索し始めた――――】

【マイクロブラックホール持続時間 残り3レス】
【残存魔力 14/25】

/すみません、そろそろ限界です……置きへの移行、お願いして良いでしょうか?
156 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/10(日) 02:13:35.64 ID:1MmFVCip0
>>154
/了解です!こちらは明日恐らくいつからでも開始できると思われます
/続きの投下文に、好きなタイミングでレスして頂ければと思います 
/では引き続きよろしくお願いします!
157 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 02:21:11.32 ID:lu5qIqVQo
>>155

【巡り合わせ。それは好きな言葉だった。運命という概念は、動物の中にはあまりない。】
【知っている獣人は、カルトや占いが好きな子が多い。少なくとも、自分の周りにはそういうモノが多かった。】
【それは多分―――獣が持ち合わせることがなかった"運命"という言葉を、概念を、人の血を持つ獣人は理解できるから、だろう】

【基本的に、獣の世界は"必然"の理のみで回っている。強いから生き残り、弱いから死に。】
【食うものが居るから喰われるものが居て、生き残るものと死するもので分かれていく―――全てが必然。】
【だが人は、そこに" 別の何か "を見出す。偶然、という言葉。運命、という概念。神という―――特別な、存在の有無。】


 ―――……好きだよ、運命、って言葉は。とても不思議な感じがするんだ。
 つまり、これは誰か―――上の方で見ている"何か"が、意図的に仕組んだものだ、とか
 そういう考え方だろう? 運命―――面白いね。自分はかなり気に入っている言葉の一つだ、運命は。


 だけど―――好きだからこそ、なんていうか心に突き刺さるよ。
 そうか、こういう……悪い意味での"巡り合わせ"っていうのも、確かに―――あるんだね。

 君の言う事も尤もだ。これだけのことをしておいて、"おとなしく帰って、どうぞ"だなんて……ちょっと、酷いよね。ごめんよ。


【そう言いながらも、彼はボルトをコッキングする。弾丸が装填され、金属薬莢が排莢される乾いた音が屋上に響いた。】
【す―――と、銃を向ければ、今度は目の前に暗闇が広がった。匂いのしない、不気味な暗闇―――なんだろう、風が―――】
【空気が、逆向きに動いている。先程まではこちらに向かって吹いていた風が、局所的に"吸い込まれる"様な―――なるほど、これか】


 ……、とてもとても強力な―――掃除機、みたいな? そういうアレ、かな。
 ごめん、自分はあまり科学は強くなくて……銃の分解は得意なんだけど、それじゃ君の魔術の意味は、理解出来そうにないね。

 けど危ないもので、且つ自分の銃撃を"防げる"モノであろうことは分かったよ。成るほど、良い手だ。
 自分は君を鎮圧しなくちゃいけない。けど、君は鎮圧されないよう踏ん張り―――情報を聞き出そうとする。うむ。

 ―――良い手だ。けどね、限度はある。君には出血というハンデ、反面自分には弾切れがない。
 っていうのも―――ああ、まあこれくらいのネタ晴らしは、赦してもらえるかな。能力者なんだ、獣人なのに、ね。

 ―――"WANTED<ウォンテッド>"。それが自分の能力の名前だ。弾がね、減らなくなるんだ。一発でも入っていれば、そこから次は、
 補充しなくても減らなくなる。つまり、弾切れを待っていられるほど君は悠長な手段に出られない―――っていう、そういうわけ、なんだけど。

 ……参ったなあ。あんまり、話しちゃいけない、って言われてるんだけど―――でもまあ、"彼"も有名人だし。
 君の事も後できっちり殺すから、まあこの場では納得させる為に一度ネタ晴らししておこうか。それが健全だね、うん。

/ちょっと続きます。
158 :?????? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 02:21:20.79 ID:lu5qIqVQo
>>155

【銃を構えるのを辞め、狼男は一旦腰を下ろすと、つらつらと―――事の顛末を語り始めた。】


 ……さっき、撃たれた男さ。偶然か、必然か。自分は運命という言葉が好きだといっただろう。ソレと同じ。
 彼はね、撃たれる運命にあった―――撃たれなくちゃいけない人だった。必然でもあるし、偶然でもあるんだよ。

 彼が自分等の住んでいる土地を不当に取り上げることを目的としていて、その土地の大規模売買で得た財産を元に
 地の国の外れ街の政界を牛耳ろうとしている薄汚い大地主の家系の無能な一人息子に生まれてしまったことは全くの偶然だし、
 そういう理由だから自分等の様な存在がこぞって"消したがる"のも無理はない話で―――あのさぁ、考えても見て欲しいんだ、魔術師さん。

 ……不当に火を起こしてそれを自分等のせいにしたり、狩に入ってきたニンゲンが野生の子達に襲われたのを槍玉にあげたり、
 そういうやり方で自分らに"土地"の所有権も生存権もないんだ、なんて主張してるニンゲンを―――どう、赦せって言うんだい?
 ……最近、結構高まってるんだよ。自分等の様な連中と、君らの様な"ニンゲン"との間にある溝が原因の―――緊張、がさ。


 ―――ま、そのくらいの事は……殺された彼の身辺を調査すれば分かっちゃう事だから、もらしても仕方がないよね。
 で、つまり自分は―――嗚呼、その……よ、汚れ役……いや、でも経験がある以上買って出るしかなかったんだけど、その……。

 ……まあ、君も撃たれてくれよ。大丈夫、さっきの人見ただろう? 一撃だよ、脳天に一発。痛みを感じる暇も無い、ヴァルハラへ送ったげるからさ。


【再び―――狼男は悲しそうな声で、銃を構える。どうやら―――水面下で、一部の獣とニンゲンの間の紛争が―――始まっている、ようだった。】

/了解です。それでは次のレスからは置きレスへ移行、と言う事でお願いします。
今夜はありがとうございました、おやすみなさいませ。
 
159 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/10(日) 02:35:21.22 ID:1MmFVCip0
>>153

【皐月が自身と同じく配偶者を亡くしていることを聞き、老紳士は哀悼の言葉を述べた。】

そうだったのですか、夫を… …貴方が深い悲しみを背負っていたからこそ、娘はどこか近しい想いを感じたのかもしれませんな…
…子よりも親が先に死ぬのが自然の流れというものです。本能とでも言いましょうか、だからこそ我々は、その本能に反することが起きると悲しむように、刷り込まれているのかもしれません…

【そうするうちに、時刻がやって来た。私は準備に入るので失礼します、と喪主であるフィボナッチが席を離れる。】
【通路をたどり聖堂へ戻ったならば、多くの人たちが何列にもなった横長の座席に腰掛けて、葬儀の開始を待っている。】
【聖堂内はざわめいている。神谷親子の間でも、何か交わす言葉はあるのだろうか。大きな十字架の下の壇上には遺影のみが飾られている。まばゆいばかりの笑顔がそこにあった。】

【鐘の音が鳴り響くと共に、人々のざわめきが止む。そして重厚なオルガンの演奏が始まると、教会の荘厳な扉が音を立てて開かれた。】
【「彼女」の入場だった。棺を先導する牧師に続き、喪主のベアーウト・フィボナッチ、さらに遺族である二人の子供が中央の通路を行く。】
【一人はブラウンの髪を長く伸ばした、落ち着いた雰囲気の少女だった。彼女こそが先の話に出た、等比の妹「熊出 島沙」であろう。】
【もう一人は先程皐月が見かけた、等比に瓜二つの少年。尖った空気を纏う彼が等比の弟「熊出 群」だ。】
【参列者は起立して彼女等を出迎える。壇上に純白の棺が置かれ、オルガンの演奏が止むと、牧師による説話が始められた。葬儀の始まりだった。】
【宗教の形式に従って、葬儀は厳正に進められた。牧師が祈りを捧げ、参列者が黙祷を捧げる。聖歌を歌い、神の下、故人の安らかな眠りが祈られる。】
【参列者達が、あるいは皐月と衣織が、神への信仰を持っているのか、実はそれは大した問題では無い。故人の死を悼むという想いこそが大事であり、それこそが此処に集う人々の共通点なのだから。】
【そして葬儀の形式にのっとり、最後の儀式となる献花が始められた。参列者は思い思いに一輪の花を持ち寄り、祈りの言葉と共に棺へ花を捧げる。】
【人々は立ち上がって列を作り、棺へ花を供えていく。棺の蓋は開かれていて、すなわち皐月が等比の顔を見ることができるのは、これが最後となる。】
【正真正銘、これが本当の最後。皐月の前に居た参列者の献花が、終えられた。】

160 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 12:32:34.28 ID:JEbe2CNpo
【路地裏】

【街の外れ、薄暗い路地裏、冷たい風が吹き抜ける夜。不用意に足を踏み入れるものではない】
【だがしかしとあるカップルが不用意に、この夜の寒さに急かされ近道をするために立ち入った】
【2人は酒に酔っていた。それに男は地元の小さなチームの不良で護身用に小口径の拳銃も持っていた】
【どうせ何もないと、何かあっても大丈夫だという自信があった。どうせ居るのは浮浪者か他のチンピラぐらいだろう】

【彼らの前から、路地裏の奥から段々と人影がやってくる。2人は気にも留めない。人影はわざとらしくその整髪料で】
【きっちりと固められたオールバックの黒髪を掌で整え直すと、ニィと右側の口端で笑う】

【ひとつ銃声が鳴り響いた】

オイオイオイオイ……痛いじゃないか。それに、せっかく仕立てたスーツが台無しだ

【二人の前に立ちふさがった人影はスーツの右胸に空いた穴を惜しそうに撫でる。シャツに赤いシミが浮かんでいた】
【そして自分の整髪料で固めた黒髪のオールバックを撫でるとにやりとわざとらしく笑った】

【カップルは固まっていた。何故?目の前のやつに銃をぶっ放してやった。なのに何故だ。外した?いや違う】
【乏しい街灯の灯りでも奴に当たったのは見えるじゃないか、足元にも血が飛び散ってやがる。なのに何故…】

オイオイオイオイ…終わりかぁ?…っつまんねぇなぁ……もっと撃てよ、ほら。撃てって。ホラ

【人影は両手を広げて、わざとらしくアピールする。 拳銃を持つ手が震えた。叫ぶことすら出来ない。代わりに今度は3発銃声を響かせた】




【商店街】

【雑多な広くもない通りに、ところ狭しと幾つもの屋台が出ている。端から端まで何処まで続いているのかわからないぐらい長い】
【見上げればせり出したネオン看板のせいで空まで塞がれているよう。モノと喧騒で飽和した市場を駆け抜ける男】
【人を押し分けて、突き飛ばして、まるで追われるように。いや実際に追われているのだ。突き飛ばされた通行人がまた突き飛ばされた】

まて…この……ッッ!!

【うず高く積まれたビールケースをわざと倒して逃げる男。追っていた人物―赤いジャケットの女はそれを見るやいなや飛び越える】
【それは単に、運動神経がいいという限度を超えた、跳躍。その場に居る人すらゆうに飛び越えるほどの飛躍とも言うべきジャンプ!】
【女はその圧倒的な跳躍で一気に逃げる男の背まで…真上まで迫り、そのまま飛びかかるようにタックル!男は突き飛ばされて】
【目の前の肉まんの屋台に突っ込んで、蒸し器やらなにやらをひっくり返して倒れこんだ。店主のババアが驚いた後、激怒している。蒸し器の蓋で男を叩く叩く】

やっと捕まえた…!連続スリ犯め…とうとう現行犯でおさえた。お前には黙秘権等々の…ちょっとオバサン!やめなって
…んで、えーと…なんだっけ…取り敢えず手錠手錠…時間は…

【倒れる男にのしかかって女は高強度プラ製の手錠を掛ける。騒動でまわりには人だかりができていたが見えない障壁があるかのように一定の距離を保っていた】
161 : ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 13:27:52.04 ID:lu5qIqVQo
>>160
/まだいらっしゃいますでしょうか!
162 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 13:45:02.87 ID:JEbe2CNpo
>>161
居ます!
163 : ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 13:47:33.02 ID:lu5qIqVQo
>>162
/アリガトナス!
それじゃ絡みますね、よろしくお願いします!
164 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 14:05:26.81 ID:lu5qIqVQo
>>160

【どんがら、がっしゃーん。アジアの露店が多い街道で追跡劇が起こると、必ず物が引っくり返される。】
【鶏を売ってる見せの前を通ると必ず鳥が泣き出して、積んである果物は全て吹き飛ばされ、そしてトニー・ジャーが―――】
【閑話休題。ともかく、所狭しと並べられた雑多な荷物が崩れる音と店主の怒号、そして"追う側"と"追われる側"の叫び声が商店街に木霊した】


 ―――ええ、分かってるわ。料金はいつもの……、あら?
 ちょっと。随分値が上がってるじゃない。足元見るのは仕事だから仕方ないんでしょうけど、
 私は金払いがかなり良い言わば"上客"よ? あんまり不当に値上げするなら、別の売人を見つけたっていいん、―――!?

 ……なにかしら。スリ……? 荷物が滅茶苦茶にひっくり返ってるけど―――って、げっ!
 なによ、警察……!? あぁ、ツイてない! 大体、売人のアンタが"この辺りはガサ入れも少ないから安全だ"、って
 そういうから信用してここで取引してあげたって言うのに、値段は上がるわ警察は介入するわどうなってんのよ、もうアンタからは買わな……、


 ……って言うか。逃げましょうか。ホラ、アンタも急いで! ……なんていうかあの女……"手馴れてない"感じが逆に―――危ない香りがするわ。


【さて―――そんな喧騒の商店街は、どうやら悪人にとっては格好の"隠れ家"となっているようで】
【騒動に巻き込まれまいとそそくさ逃げ出す売人やら、露天商やらもチラホラ。其方にまで気が回っているかは分からないが、】
【人ごみに紛れて逃げ出そうとする"いかにも"といった恰好の"売人"と―――こんな場所には似つかわしくない、"学生服"の少女が一人、チラと見える。】

【どうやらあまり"宜しくない"取引をしていた様な両者は、スリを捕まえようとしている警察か―――若しくは自警団員か、定かではないが】
【正義を掲げているであろう彼女―――赤いジャケットを羽織った常人場慣れした運動能力の存在から、こっそりその場を離れるようにしていく。】
【見つからないよう、注目を浴びないよう、決して"興味"をもたれない様―――茶色がかったブレザーを着た女学生と売人は、ゆっくり距離を開け始め】

【その姿に気づくか、気づかないか―――それはジャケットの彼女しだいではあった。が、物珍しさに集まっていた人達も段々と捌け始め】
【人混みが解消されてくれば―――或いは。"こんな時間にこんな場所"をうろついているチェックのスカートとスクール・バッグに、目が行くかもしれない。】


/それでは、よろしくお願いします。
165 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 14:34:13.59 ID:JEbe2CNpo
>>164

【女刑事(実際は階級は警部ないし警部補に相当する)はスリの男を縛り上げ、手帳を見せつけそこに書かれている】
【ミランダ警告を(暗記していない為にゆっくり)読み上げ、時間と場所をメモして、無線ではなく普通のケータイで応援を要請する】

もしもし?アレックスだけど。誰?ジェイク?部長は?…ああ、また会議?好きねあの人。…いや、市場の外れで一人しょっ引いたから
1台よこして欲しい。…そうそう、あの若ハゲのスリ師。ニット被ってたけど。適当にパトロール回して。…ありがと、それじゃ

【不慣れな割に口調は落ち着いていて、手短に電話を終えるとスリ師も観念したようでもがいていたのをやめる】
【そんな頃合いになると、このあたりの自警団の何人かが騒ぎを聞きつけてやってくる。女刑事は事情を説明し、警官が来るまで】
【抑えておくように指示をすると、のしかかっていたスリからどいて立ち上がる】

【彼女は暗いブルーの髪色でショートカット。アシンメトリにカットしていて、ブルーの瞳が特徴的だ】
【着古した赤ジャケットにジーンズ。警官でも制服ではない。ただ腰のホルスターには馬鹿にごつい自動拳銃が収められていた】
【映画の小道具のようなそいつは世論の動きに合わせて一部で採用された非殺傷武器。ショック電流を発生させるためのコンデンサやバッテリが】
【小型化出来なかったがための巨大化だ。オマケに命中率も悪い。多くの警官はそんなものは使わず自前の拳銃を用意していた】

さて………

【立ち上がった女刑事は歩き出し、その場を離れようとする。人の輪はそれをサッと避ける。海が割れるかのごとく美しく避けている】
【彼女の足取りは明確に決まってるかのごとくストレート。青の瞳はスクールガールを次の目標に定めている】
【あからさまなプレッシャー。気配を消す尾行も仕事柄できるだろう。しかし、そのプレッシャーが人の波を割るのに役立っている】
【走りだすなどしなければ距離は徐々に詰められて、刑事は声をかけるだろう。しかし、何故あの騒ぎの中で、それを見つけることが出来たのだろう】
【仕事は不慣れで荒っぽいが周りを見る、刑事の目というやつは鍛えられているということなのだろうか】
166 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 14:50:18.29 ID:lu5qIqVQo
>>165

【携帯電話―――無線は装備していない。私服警官―――刑事か。話しぶりを聞くに、自警団員ではなさそうだった。】
【"パトロール"、"適当に一台まわして"―――その言葉でそれらは確信に変わる。彼女は警察所属の人間、それもデカだ。】
【普通の警官ではない、刑事というのは此方の人間からすれば最も厄介な存在の一人であり、目をつけられるのは避けたいところ】


 「……なぁ、オイ。……デカか?」

 ……遠巻きに聞こえてくる声は、ソレらしい事を言ってるわね。
 少なくともヘボ警官や自警団の連中とは違うみたいよ。その割には―――、なんていうか。
 ちょい抜けてるみたいな部分もあるようだけれど。……え? いや、アレよ。読み上げる時に手帳をチラ見してるの。

 「……なんか、逆に嫌だな。」

 ……でしょ。ああいうタイプに限って、"こんなもん読み上げるよりさっさと捕まえるのが先だ"とか言って
 直ぐに次の獲物を見つけるのに夢中になるような、妙に勘の良いドラマに出てくるタイプの破天荒―――、……。

 「……おい、どうした。オイ。」

 ……走るわよ!!


【腰元の銃器。見た事があった。確かアレは、別の場所で"いつもの様に"買い物をしていたとき】
【潜入捜査官が"代物"の代わりにバックからいそいそ取り出した"アレ"で、あっという間に売人二人を鎮圧した際の銃。】
【ビリビリ酷い音が鳴っていたし、その後の痙攣を見れば一発で分かる―――アレはエレクトリック・ショック・ガン。最近流行の鎮圧兵器だ。】

 
 ……あの時は離れたところから見ていただけだったけど。見つかったら私も危なかったわね。
 大男一人瞬時にノセる威力なら―――そりゃまあ、痛みは感じるだろうし……とにかく、アレで撃たれたらやばい……!!

 「なんだよっ、くそっ―――おい、突然走り出すな、バレて―――くっ、もう"追ってきてる"ってワケか……!!」


【二人は二手に分かれようとする。勘と嗅覚に優れる私服警官が、すぐに距離を詰めてきている事に気づいたのだろう。】
【猛スピードで駆け出すと女子高生は右側の車道へ、そして売人と思わしき男の方は向かって左手の裏路地が多い脇道へ逃走。】
【もはや"逃げている事"を隠そうともせず―――二人と一人、真昼間の決闘ならぬ、カーチェ……ならぬ、ランニング・チェイスが始まった。】
167 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 15:14:39.21 ID:JEbe2CNpo
>>166

【ターゲットを補足したブルーの瞳は獲物を狙う鷹の目の如し。人混みをすり抜け近づいていく】
【二人組が走りだすと、刑事も追従する。大捕り物のあとでも体力に問題はない。二手にわかれたのを見ると】
【また彼女は走りながらケータイを取り出した。かけるのはまた先ほどの本署である】

ジェイク?…部長はまだ?……いいから市場の10番から18番ブロック封鎖して。…出来ない?…理由?
……虫の知らせってやつ。いいから、何かある。アンタの居るデスクと違って現場はナマモノなんだから早く
…は?ここまで話させて出来ない?…だから警察が舐められるんだ。じゃあアンタが来て。北西13番ブロック
ラーリィ・カイセルの海賊版CDショップの横から一人抜けてった。男…多分。容姿?“いかにも悪人”。
私はもう一人を追うから。いい?

【クールに淡々と話すが、警察という陳腐化されたシステムには今日も苛立ちが隠し切れないつい声に力が入る】
【電話を終え、ため息でもつきたいが走りだしているためそれは出来ない。代わりに大きく吸い込んで力を込める】

【スクールガールにつづいて同じく、刑事も車道に飛び出す。急ブレーキとクラクション、怒声。手帳を見せつけて黙らせる】

文句なら、次の市民投票で警察の予算減額に賛成でも投票することね
168 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 15:33:12.34 ID:lu5qIqVQo
>>167

【手際が良い―――学生服の少女は舌打ちを打った。携帯で怒鳴り気味に言っている言葉の中で】
【"封鎖"という単語が聞こえた時は流石に驚いた。コソ泥相手にブロックごと一帯を封鎖しようとは、恐れ入った。】
【しかしそういうことでもやりかねない、後ろから追いかけてくる女性の勢いはまさにそういう"執念"の様なモノを感じさせた。】


 (……売人の方は……嗚呼、多分"裏道"に詳しいんでしょうね、なんたってむこうが指定してきた場所ですもの。)
 (クソッ……あっちの道に逃げ込めばよかった、でもそれじゃ二手には分かれられないし―――それに、なんだって!!)
 (なんだって売人の方じゃなくて私の方を―――あのクソアマッ……!! 派手なレッドのジャケットなんて着やがって……!)

 ―――チィッ。邪魔よ、どきなさいッ!!


【さて、先程の跳躍から"ジャケットの女性"―――名前はアレックスといったか、彼女の運動能力は相当な物であることが判明したが】
【彼女から見てこのスクール・ガールの運動能力は―――どの程度の物に映るだろうか。非常に興味深い疑問である、何と言ってもこの少女―――】


 ―――よっ、っと……!!


【鳴り止まないクラクションと運転手の罵声を遮るようにして素早く宙へ舞い、そのまま車の上へ着地、】
【ボンネットを凹ませルーフ・トップを引き裂きながら次々と―――まるで"ニンジャ"の様に飛び移り、走るのだ。】
【跳躍力もそうだが反射神経、そして運動の持続力が相当に高いと見て取れるはず。M3クーペの屋根を傷だらけにした後】
【学生服の少女は再び道路へ戻ると今度は走っている車へ―――そう、トレーラー・ヘッドの巨大貨物車へ飛び移り、そのまま走り出す―――!!】


 ……アディオース、"レクシィ"?

【憎たらしい笑みを零し、車やらバイクやらが荷台に乗せられたトレーラーの上へとよじ登り、―――車はこのままだと大きな街道へ進むだろう。】
169 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 15:59:55.38 ID:JEbe2CNpo
>>168

【裏道に潜り込むのは良いアイデアに聞こえるかもしれない。ただそれは此方からしても考えつく】
【オールドスタイル。街の住人は把握しきれないぐらいに流動的だが地理まではそう簡単には変わらない】
【よほどのレアな地下道や抜け道、誰かの協力がなければ此方も人数さえ確保できれば行動を予測できる】

【車道の一般市民からすれば降って湧いたアクシデントにクラクションでお返しする。だが此方もそんなことに】
【かまっている暇はない。追っかけていたスクールガールも引けをとらない身体的パフォーマンス】

……何処まで行く気かな?お嬢さん

【ふふん、面白くなってきたと言わんばかりの笑みで車道で立ち止まり、辺りを見渡し、ロックオン】

『ったくよぉ〜お祭り騒ぎはニューイヤーで暫く休みにしてくれっつーの!』
『ま、オレっちの車が無事でよかったぜ…まったく女神さんは俺っちを愛してくれてんのな!!HAHAHA!!』

…警察よ。それ貸して

『はぁ?イカれてんのか?警察ってのはこうも堕落したもんかぁ?かわいい一般市民を――』

公妨でぶち込むぞ、クソッタレ。大人しく貸すか、コレの威力を味わって貸すか選びな
安心しろ、この距離なら外さないから

【ウーファー聞かせたラップをガンガンかけていた若者の乗るオープンカー。そのドライバーに】
【手帳(ともう一つ)を突き付けて運転手を引きずり下ろし、アクセルを吹かし、トレーラーを追いかける】

『………畜生!!訴えてやっからな!!』
170 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 16:17:05.02 ID:lu5qIqVQo
>>169

【貨物車の素晴らしい所は―――信号の多い様なゴミゴミとしたアリの尻よりも小さい道路を好んで通ったりはしない所だ。】
【どんなエンジンを積んでるんだかは知らないが、貨物で運んでるピーナツみたいな軽自動車のエンジンを10倍したような物では足りない程】
【強力で凄まじい馬力を発揮する心臓部を載せているに違いなく、その上後ろの荷物は重量超過寸前というくらいに大きい。となれば目指すのは―――、】


 ……ハン。呆気なかったわね。ハイ・ウェイに乗ってさえしまえばこっちのモン―――、

 ……、ねぇ。ちょっと。ああ、嘘。冗談でしょ……だめ、だめよ! そんな"速そうな"マシンを押収するなんて―――ああん、もう!!

 たかが女子高生一人を相手に随分とまあ本気出してくれるじゃない、幾らなんでも"張り切り"過ぎなんじゃないの!? 越権行為よあんなの!! クソッ……!


【視界の端にどんどん小さくなっていくアレックス。だが、彼女が若者から"トルチョーク"気味に"クラスト"したのは】
【ロー・ライダーカスタムが似合いそうな】随分と古い見た目のオープン・カーだった。走行性能は―――まあ然程ではないだろうが】
【それでも、そんじょそこらの悲鳴を上げながら追い越し車線を走っている黄色いナンバーの車に比べたらパワーの差は歴然で、何より―――。】


 ……チッ……追いつかれるのは時間の問題、か……まったく!!
 厄介な女を連れ込んでくれたわね、あのクソ売人……!! 無事に帰れたら、尻穴から"ミルク・セーキ"を逆流させてやるんだから……っ!!


【このトレーラーはそう速くない。直線ならまだしも、機動力はオープンカーと比べて雲泥の差がある。】
【少女は何かを決したように貨物の上へと登り、追いかけてくるオープンカーめがけ視線を捕らえると―――】


 ハイ・ウェイ・バトル―――やってみたかったのよねぇ、一回くらいは!
 マッド・マックスはもう見た? 生憎ギター小僧は居ないけど―――V8のケツでも、眺めてなさい!!


【ガチャン、とレバーを操作。トレーラー部分のリモコンを起動すると、走行中の貨物部分が―――なんと。】
【走行中にも関わらず"オープン"していく、そうして少女がスイッチを入れれば、そこからはもう想像するまでもない。】
【ロック機構が外された最後尾の車が、トレーラーから放り出されて後方へと―――凄まじい勢いで"吹き飛ばされて"いく!】

【車自体を放り出す事で武器として、オープン・カーの追撃を逃れようとしているのだ。】
【だが当然、後方がそんな事になっていれば運転手が気づいて運転を止めようとするの、だが―――。】


 ヘイ、トラック・ドライバー? 運転を続けてちょうだい、さもないと―――今夜パブで"ホッピー"を飲む事は叶わなくなるよ。
 なんたって"44・マグナム"がアンタのほっぺたを貫通して風穴を作るから、ね。―――アクセルを。もっと、もっと強く!! そのままハイウェイへ!!


【少女はスクールバッグから取り出したのだろう、銃器を運転手に突きつけ暴走を指示。車はそのまま―――高速へ、進んでいく。】
171 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 16:49:22.08 ID:JEbe2CNpo
>>170

【ハイウェイのいいところは全部同じ方向に走ってくれているところだ】
【警察の特権で下道でも非常時ならスピード制限はないが横から飛び出す車を気にしてちゃ】
【結局のところスピードは出せない。…まあそういうときは大抵犯人はクラッシュして捕まるから問題ない】

…後ろに余計なものつんでるな。リアが滑る。少しオーバーステアだ…まあ固いよりはマシだけど

【古いマシンだから余計なコンピュータ制御がないのは幸い。いくらでもベタ踏みで突っ走れる】
【割れんばかりのエンジン音。整備不良気味でクラッチがよくない。けれど速度はやはり出ている】

【車に慣れてきたところで追い迫る。オープンカーだから視界は広い。トラックの上のスクールガールが見える】
【五月蝿いラップミュージックを切る。BPMが今の状況に合わない。そこで不意の着信。片手操作でコールに出る】

もしもし…部長?何ですか、後にして……は?電話?車を取られた?知りません知りません今?仕事中に決まってるじゃ……ッッ!!

【電話に気を取られてトラックで何が起きているのかに気がつくのが一瞬遅れた。その時、彼女のブルーの目が微かに光を放つ】
【たとえじゃない。現実に瞳を通して青白く光った。クラッチを操作し、ハンドブレーキを一瞬引く。戻してクラッチ、アクセルとハンドルをさばく】
【次が来ても、その運転技術ですんででよけていく。サイドミラーが吹き飛ばされるぐらいギリギリ、ルーフがないおかげで上を飛んだ車を避けれた】
【テクニックもさることながらその反射神経、動体視力も人間離れとわかる。車がスピンしたが、取り直して、またレースに復帰する】

……ああ、すみません、部長。ちょっと取り込んでいたものでして…後でかけ直しますね。ではでは

【全部避けきった。電話口でなんだかわあわあ言っていたが無視して切って携帯をしまう。ラジオのチューンをいじる。ちょうどいい曲で手を止めて】

さて、お次はどう楽しませてくれるのかな…?

<Biting Elbows - 'Bad Motherfucker'>


//すみませんが、用事があるものでして一時中断とさせて頂きたいのですが…
//今日戻るとなると10時以降になると思います。置きレスにするかどうするかはお任せします
172 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 16:51:41.18 ID:lu5qIqVQo
>>171
/了解しました、置きレスは今二つ並行して行っている物がありますので
出来れば今夜にでもちゃちゃっと進めて頂ければ、と思います。
10時までに此方にお返事は書いておきますので、問題なければ続行、という形でお願いします。。
173 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 18:10:00.45 ID:lu5qIqVQo
>>170

【後は何と言っても、何キロ出しても特にお咎めが無い、という点が素晴らし―――え。】
【速度規制があるのだっけ。ふと見上げてみると80kmという看板が見えた。知った事か、どうせ犯罪者だし。】
【もっと飛ばせないの!? 今何キロで走ってるのよ! そんな風にドライバーを怒鳴りつつ後方を振り返ると、恐ろしい事になっていた】


 まったく、こんな図体でなんでもっとパワーが……はぁぁぁぁっ!?
 え、ちょ―――なによアイツ、F1ドライバー!? 若しくは"トップ・ギア"のシンプソン・ヘルメット被った―――ええっと、名前は

 「スティグだろ。」

 ああそう、そうだったわねスティ―――黙って運転してろ! もっと早く、早くするのよアンタが!スティグみたいに!!
 ……チィッ! 車を放り出しても避けるんじゃ……こうなればっ!!


【回避。回避。またその次も回避。携帯電話で軽快な会話をしつつ、涼しげな表情でハンドリングの悪そうな車を操る彼女。】
【ヤバイ。とんでもないヤツに目をつけられてしまった様だ―――と、いまさら後悔しても仕方が無い訳で。おお、凄いドリフト。じゃなくて。】
【ノリノリなナンバーが流れる中、少女は苦虫を噛み潰したような表情になり、そのまま後方の貨物の方へと再び飛び移る。そのまま貨物の中に入り】


 …・・・使えそうなヤツは……ああ、こっちはだめ。鍵が無い、こっちは―――原付じゃ逃げられない! 
 なら―――こいつはっ! ……はん。丁度良さそうじゃない、これならあの"ニキ・ラウダ"とも……やりあえるんじゃなくて?


【貨物を次々に放り出す。牽制の一撃だ―――といっても、直撃すればそれが致命傷になりうる物ばかりだったが。】
【なんせ車だ、軽自動車、セダン、ワゴン(海賊漫画のダサイステッカー入り)、またセダンがはいって、そして―――最後に。】
【ドルルルルン、という単気筒エンジン特有の軽快・且つ重低音のトルク・サウンドが鳴り響けば、貨物の最後部からなんと―――。】


 ―――ハード・ロックがお好き? おねー、さんッ!!


【2ストロークエンジンが低音で発する白い煙をサイレンサーより盛大に撒き散らしながら】
【後部から出てきたのは"エンジンが起動している"中型バイク―――と、逸れに跨ったあの、少女!】
【そう、貨物の中から見付だしたバイクに跨り、なんと高速で走行中のトレーラーより彼女は飛び出したのだ!】


 やっぱりバイクは―――2stに限るわね、もっともっと煙を喰らいなさいッ!!


【そのまま凄まじい勢いで方向転換をすると、オレンジ色の車体が眩しい異世界製の"オフロード"バイクは】
【凄まじい勢いで加速、トレーラーを追い抜き右側の追い越し車線へと突撃、次々に車を追い抜き車列の中に紛れ込もうとしていく―――!!】
174 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/10(日) 20:44:14.15 ID:fzdmwX+Z0
>>159

【親は子の幸せを世界中の誰よりも願うい、時には己の命よりも大切に思う。それはどんな世界でもいつの時代でも同じ】
【親心は変わらぬ普遍の感情。だからこそ、親が子の死を見るのはこの上ない苦しみなのかもしれない】

【喪主である彼は、先に準備のために席を立つ。計り知れない心労と悲嘆を乗せた背中に、小さく一礼をして】
【自分たちも葬儀に備えて聖堂に入る。そっと己の娘を抱きしめる皐月の胸中には、どんな思いが去来していたのだろうか】

【―――やがて、葬儀は静謐の中しめやかに始まった。入場した親族を、神谷親子も立ち上がって迎える】
【先程の少年も其処には居た。その横に居るのは彼女の妹だろうか。活発だった彼女とは正反対の淑やかな印象の少女だ】
【棺を前にして、残された弟妹の胸中はいかばかりか。年の近い衣織も、彼らの姿に何か感じるものがあったらしい】

【そして、一連の流れに従い葬儀は進む。櫻の国の葬儀とは幾分と違うところもあったが、想いはちゃんと届いたはず】

【最後の献花。皆が思い思いの花を持ち寄り亡き彼女に手向けてゆく。やがて、順番は皐月に巡り】
【皐月はそっと一輪の白い花を取り出す。―――この花を、覚えているだろうか?】
【エーデルワイス……花言葉に想いを託した、思い出の花。初めて会った時に彼女に贈った、小さな花】
【花言葉は「忍耐」「勇気」。勇気を持ち忍耐して、自分を変えて欲しい。そんなエールを送ったのは、もう随分前の事】
【あの時の事を、皐月は忘れはしなかった。彼女はその言葉通りに立派になってくれたのだから―――】

【実は、エーデルワイスにはもう一つ花言葉がある。それは―――「大切な思い出」。】

―――等比さん、覚えてますか?貴女に最初に贈った花ですよ。
あの時、貴女は私に約束してくれましたね。少しずつでも変わっていって、立派な姿を見せてくれると……
……よく頑張りましたね。貴女は、師匠<わたし>の……いえ、此処にいる皆の自慢です。―――どうか、安らかに眠って下さい。
貴女の顔を見ることがもう二度と叶わないのだとしても……貴女との大切な思い出を、私は一生忘れる事は無いでしょう。
これが最後の別れなんて寂しいけれど―――天国で見守っててくださいな。

【一筋の滴が頬を伝う。涙を流しながら、それでも皐月は微笑みかけた。―――最後は笑顔で送ると決めていたから】
【でも、大好きだった彼女の顔を見れるのはこれが最後なのに、涙で霞んでよく見えない。何度ハンカチで拭っても、よく見えない】
【これまでの彼女との出来事が、走馬灯のように脳内を駆け巡るのだ。……ああ、やっぱり私はダメな師匠だ】
【これが最後の別れなのに、貴女を笑顔で送ることが出来ない―――】

【涙目で最後の彼女の顔を頭に焼き付けると、皐月は静かに棺を離れる。―――これでもう二度と、彼女の顔を見る事は出来ない】
【けれど、追憶すればまだ彼女の生き生きとした笑顔が浮かび上がる。こんな師匠を元気づけようと、笑いかけてくる―――】
175 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/10(日) 22:37:52.56 ID:1MmFVCip0
>>174

【後に自身が師と仰ぐこととなる皐月との出会いの日を、当然ながら彼女は一度たりとも忘れたことは無かった。】
【裁縫や花なんて女性らしさとはおよそ縁の無い彼女だったけれど、気高い言葉を秘めて渡されたその花を、エーデルワイスを、彼女はいつしか好むようになっていた。】
【込められたもう一つの意味。「思い出」なんて、まるで彼女が辿った運命を象徴しているようだ。耐え忍んだ勇気の道の果て。神がもしもいるのなら、一体それはどれほど皮肉で残酷な存在なのだろう。】
【その証拠のように、彼女の遺体は恩師の言葉に反応を示すことも無く。眠る彼女が、零れた涙で蘇ることも、また、無かった。】
【立ち込めた雨雲はやがて丘の一帯を覆う。今朝の晴天が嘘のように、空は灰色に染まり始めていた。】

【棺が遺族と葬儀屋達の手によって、教会を出たすぐそばの霊園へ運ばれていく。希望する者はそれに追従し、彼女の埋葬に立ち会うこととなるだろう。】
【人々はやがて無数の墓碑が立ち並ぶ霊園にたどり着く。掘り起こされた墓穴の前には、彼女の名と生きた期間が刻まれた、真新しいレリーフがあった。】
【彼女の生きた24年は、一体どのようなものだっただろうか。彼女は自身の人生に、どのような感想を抱いているのだろうか。】
【それを知る術は無く、残された者達は想いをめぐらせることしかできない。「死」は死者のもとには無く、いつだって今を生きる人々の中にしか無いのだから。】
【牧師が祈りを捧げ、彼女の眠る棺が穴の底へ横たえられる。人々は黙祷を捧げ、こうして彼女、熊出 等比の葬儀は終えられた。】

【掘られた土の山を彼女の亡骸の上に被せていくその作業は、これまでの静けさに包まれた儀式とは違い、余りにも「死」を実感させるものだった。】
【皐月がその様子を見ようとそうでなかろうと、先の老紳士、フィボナッチ氏が彼女の前に現れるだろう。】

…皐月さん、今日は本当に有難うございました。貴方の祈った全てが娘のもとへ届くよう、私も祈り続けましょう。
…娘の埋葬を見ていられるのはお辛いでしょう。今日はこの後、私を含めた親しい者達での会食を予定しております。是非ご出席下さい…

【そう言い、喪服の紳士が一礼した。皐月が望むならばこれで教会の立つ草原からは離れ、しかるべき場所での夕食会に出席することとなるだろう。】
【周囲を見渡せば、参列者の多くはここで帰路に着くようだ。人陰はまばらとなり、丘の下へ点々と人々の黒い影が続いている。】
【その時である。雲間からわずかに差す夕日に皐月の視線が導かれたならば、ある光景が目に入るだろう。】
【小高い丘の上に、巨大な十字型の建造物がある。俗に「十字切りの墓碑」と呼ばれる、戦死者の名が無数に刻まれたこの霊園のシンボルだ。】
【その前に、夕日に照らされて一人の女性が立っていた。】
【燃えるような真紅の短髪を風になびかせ、その上から軍帽を被っている。はためく黒いコートの下には、等比と同じ自警団の白い制服を着ていた。】
【コートの両肩にはアルファベットで「A」「B」の文字が刻まれている。両手を地面に突き立てた尖剣の上に重ね、墓碑を見据えるように佇む長身の女性である。】
【感の良い彼女ならば気づくかもしれない。恐らくはあの女性が、等比が「教官」と呼んでいた……】
【そしてその予想が正しければ、神谷衣織は一度フィボナッチ氏に預けておいた方が良いかもしれない。この先に交わされるだろう会話は、きっと血と硝煙の香りで満ちているだろうから。】
【皐月が十字切りの墓碑の下へ行き、赤い髪の女の近くに立ったならば。彼女は振り向き、皐月の言葉を待つまでも無くこう言うだろう。】

…貴方が、神谷皐月か。
私はアビ・ジャハンナム。熊出の上官です。

【聞き覚えのある、威圧するような声。かつて電話越しに聞こえてきたその声の主が、切り裂くような空気を纏い、そこに居た。】
176 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 22:44:23.59 ID:JEbe2CNpo
>>173

【しかしながら今回のドライバーはスティグの警官の従兄弟である。なんでもコーヒーに冷却水を入れるとか】
【…とまあドライビングスキルはその動体視力による補助が大きい。彼女からすれば時速50キロでパイロコーンを避けるに等しく】
【この高速でもそれぐらい難易度がさがって見えていて、考える猶予がある。あとは動揺さえしなければ教習所で習ったとおりに】
【ドリフトやスピンを繰り出せばいい。…何処で習うって?そりゃ某牧場でしょう】

これだけ遊ばれると、タイヤが持たない…下道に入られると不味いな


【バイクの加速は時のごとし弾丸のようなぶっ飛び方で、相変わらずそれに追いつくのは一苦労なことだ】
【いくらこの車が名車だったとしてもカタログスペックは到底出そうにない。ただ馬鹿にありがちな改造でターボチャージャは載っている】
【でもタイヤは多少マシなぐらいで金をかけていない。サスも固い。ミラーにぶら下がった変なアクセサリが邪魔】
【余計なスピーカーやらチューンナップはしているくせにカーナビはついていない。しかたなしにラジオを交通情報に合わせる】
【路地や渋滞に突っ込まれたら撒かれる。高速から下ろすわけにはいかなかった】

【本来このオープンカーを選んだのは飛び乗るのも視野に入れていたからで、その必要がないならわざわざこんなクソ寒いもの】
【乗るのなんて馬鹿らしいと思う。旧車はシートも固いし、燃費も悪いし。わざわざ古臭い車をありがたがる奴らの気持ちは彼女はわからない】
【映画に出てくるのは映画の中だからいいのだ。リアルじゃむしろ現実が目について嫌いになってしまう。スティーヴマックイーンが乗るからカッコいいのだ】
【排ガスも食らうし……まあ人の車だから文句もコレぐらいにしよう。そういってターボのスイッチをONに入れて車線を追走する】

/ただいま帰宅しました。よろしくお願いします
177 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 23:01:19.59 ID:lu5qIqVQo
>>176

【びゅん、びゅんと風を切る音が顔面を直撃する―――当然だ、ヘルメットなど持っていない。】
【速度違反、車線変更時にウィンカーつけ忘れ、すり抜け、そもそも高速料金を払っていない上―――、】
【忘れていたが麻薬の取引までしていた。嗚呼、今日一日でどれだけ罪を重ねたのだろう。アーメン、許してね。】


 ―――チィッ……加速が上がった……!? あんなボロ車の癖に、ターボでも搭載してるって訳……!?
 見るからに"アメリカン・マッスル"って感じの鈍くさいマシンにスーパーチャージャーじゃなくてターボだなんて―――
 悪趣味にも程があるわね、そんな屋根の空いた車で一体何キロ出そうって言うのよ……!! 次の出口は……あと10km先!

 (そこまで逃げ切れば―――或いは……ッ!!)


【スロットルを全開にし、エンジンが悲鳴を上げる中バイクは更に加速する。しかし、オフロードバイクには限界がある。】
【元よりオンロードレース・ユースに作られてはいないし、ここは高速道路の上で、相手はターボつきの車だ。機動力では勝てても、】
【最高速度では絶対的な差がある―――となれば、矢張り撒くには渋滞に誘い込むしかない。予定とは狂ったが、下道に逃げ込む算段をつけ】


 ……しつこい女はモテないって、知ってる!?

【少女は右手でスロットルを握りながら左手にリボルバー……シルバー・フレームが眩い大型拳銃を引き抜き】
【容赦なく発砲、しかし狙いは正確ではないようだ。オープン・カーのボンネットや助手席側のガラスに何発か、弾丸が飛来する。】
【銃口の向きから軌道を読むことも可能かもしれないが、そんな事をせずとも致命傷にはならないだろう。最も、エンジンや駆動系に当たれば―――】

 ……クソッ、タイヤに狙いが……出口まではあと何キロ!? ……8kmか、間に合え……!

【或いは、も在り得るか。少女は右に、左に車線を変えて車の間を抜き去り、追跡を振り切ろうとする……!!】

/いえいえ、お待ちしていました。よろしくお願いします。
178 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/10(日) 23:12:55.26 ID:fzdmwX+Z0
>>175

【空を覆う雨雲。それは、間もなく涙雨を落とすのだろう。……ああ、貴女も泣いているのですか。私の悲しむ姿を見たくないと、そう言いたいのですか】
【ごめんなさい。でも、それは出来そうにありません。―――貴女は、私の心の中に深く生きた跡を刻んでいたのですから。】

【献花が終わると、あとはもう埋葬の作業を残すだけ。皐月は、親しかった者としてそれを見届けねばならないと追従するが】
【……やはり、正視は出来ない。これでもう二度と彼女の姿を見る事は出来ないのだと思うと、悲しいの一言では表しきれない感情が胸を渦巻く】
【墓標に刻まれた、彼女の名前と短すぎる生涯。たった24年、自分の半分程度しか生きられなかった彼女の無念を思えばこそ、辛い】
【天国というものがあるのならば、いつか其処に行く日が来るならば、訊いてみたい。―――貴女は、幸せだったのかと】
【ちょっと長いけど、あと50年くらい待ってくれるかな。……それまではゆっくり、先生や衣織を見守っててください。】

【埋葬が終われば、これで葬儀は一応の終わりを見せるのだろう。暫し墓標の前で佇んでいると、彼女の父親から会食の誘いがあった】

いえ、其方こそ御心労の中お疲れさまでした。
はは……ええ、すこし辛いですね。でも、辛くても等比さんの事は最後まで見届けようと思います。
是非、お食事には伺いたいと思います。では、また後程……

【深く一礼すると、最後まで彼女が埋められるのを見届け、やがて皐月も墓地を後にする……が。】
【―――あれは誰?……ああ、もしかして。そう思って、皐月は衣織を預けて小走りに丘の上へ向かっていく】
【そこに居たのは、女性の中では身長が高い方の皐月よりもさらに背の高い女性。皐月とはまた違った怜悧さを身に纏っていた】
【ひょっとすると、彼女は等比さんの上官?そんな予感は、どうやら正しかったようだ】

……ああ、やはりそうでしたか。ええ、私が神谷皐月です。
でも、どうして私の名前を?……やっぱり等比さんからですか?

【立場が高い人物であるのは一目で分かる。もしかしたら、彼女の話が聞けるかもしれない……】
179 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 23:30:10.86 ID:JEbe2CNpo
>>177

【バイクが蛇行して牽制しようとしてもこちらはつられない。どうせ逃げられはしないし追い越しにいれば】
【スピードは確保できる。タイヤの体力をこれ以上すり減らすわけにはいかない。それよりもそろそろハイウェイパトロールが】
【異変を察知してやってくるところだろう。さっきの出口を通った時に2台居るはずだ。追ってきているならそろそろランプが見えるはず】

もしもし、ジェイク!?そっちは?…ええ?何?聞こえない?聞こえない!こっちはハイウェイ!…知らない!私だって!
出口封鎖して!エアポート手前の埠頭行き以外全部!!…出来ない?!管轄が違う?…やるだけやってみてよ!!

【またも電話で指示を飛ばす。こちらも下りられないように工作するしか無い。しかし高速は警察…それも所轄がどうこうできる場所でもない】
【始末書だって何枚分か。そろそろクビかもしれない。まあでもそれはそれだ。今はやれることをやるしか無い】

……ッッ!!撃ってきたか

【ハンドルを切ったが流れるようにガラスには風穴が開く。どうせ人の車だからどうでもいい。ただタイヤが…ステアの悲鳴が聞こえるようだ】
【こちらも応戦しようにも銃はあの命中率一桁揶揄される立派な正式銃しかなく。悪趣味な男も銃を携帯するほど悪趣味では無かったらしい】
【そもそも、撃って停めてしまってはここまで追っかけた意味が無い。人気のない行き止まりまで誘い込む。もうコレしか無かった】
【それが成功するかは車のご機嫌と、頭の硬い大人たちがどれ位動いてくれるかだ。次まではあと5キロもない。まだゲートは開いている…】
180 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/10(日) 23:37:45.50 ID:1MmFVCip0
>>178

【一度差した夕日は再び灰の雲の中に姿を消す。巨大な墓標の前に佇む二人に雲の影が落ちる。】
【改めて皐月が目の前の人物、アビ教官の姿を眺めたならば、やはりまずその長身が目に入るだろう。】
【170cmと女性にしてはかなりの高身長だった等比よりも更に一回り大きい。180cm近くはあるだろうか。】
【だがそれよりも印象的に、彼女の金の瞳が光る。射貫くようなその眼光をたたえた眼前の人物は、まさに「鬼教官」と呼ぶにふさわしい外見の持ち主だった。】
【皐月の言葉を受けて、アビは「十字切りの墓碑」に目をやった。刻まれたばかりの部下の名を見ながら彼女は言う。その表情に笑顔は無い。】

奴(ヤツ)から貴方の話はそれこそくどい様に聞かされていました。およそ軍人らしくも無くはしゃぐ姿は、まあ鬱陶しかったですな。
それよりも、まず私は貴方に謝らなければならない。例の雷の国における任務、そこへ熊出を向かわせたのは私です。
…事前の情報では、かの六罪王が出てくるような案件では無かった。私が奴を殺したようなものだ。

【墓標からやや下に目線を落としてそう彼女は言う。アビはそれを知らないが、等比を例の任務に呼び出す際の通話を、皐月は間近で聞いていたのだ。】
【等比を死地に送り出した張本人、そう呼んでも良かったかもしれない。皐月には、目の前の軍人を恨む権利があった。】

181 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/10(日) 23:45:11.86 ID:lu5qIqVQo
>>179

【その日、ハイウェイ・パトロールは朝から厄介ごとの連続で時間に追われていた。】
【まず最初の事件が夜中に一つ、果物を載せたトラックが後方の扉をしっかりロックしなかったせいで】
【大量のバナナが路上にブチ撒けられゴリラが大喜びしそうな光景を作ったのが始まりで、その後は道路に鹿が侵入】
【事故にならないよう誘導するので早朝は完全に時間を取られた挙句、今度は"怪しいトレーラージャック犯が暴走中"だとか。】

 「冗談じゃないぜ。俺は今日何時になったら仕事終えてビールがのめるんだ?
  既に始末書だけで手一杯なのにこの後本部への報告が三件あって、オマケに今も事件が継続中だってよ。」

 『笑わせてくれるぜ……横転した車が道をふさいで大渋滞が出来てるとよ。ウォシャウスキー兄弟に撮影許可は取らせたのか?』

 「知った事か、それにも昔の映画の話はやめろ。……クソっ、映画よりよっぽど厄介じゃねえか。もうこうなったらヤケクソだ。」

 『ヘイ、まさか―――冗談だろ! 余計に渋滞が―――』

 「"知った事か"、そう言ってるだろ。警察サマのお達しだ、管轄だのなんだの吼えてるが―――やるぞ、ゲートクローズだ!」

 『……ああ、神よ。嫁さんに伝えてくれ、誕生日を祝えないのは俺のせいじゃなくどっかの"間抜け"な"ハイジャック犯"のせいだ、ってな……。』


【表記を見やる。凄まじい風が髪を撫でて視界が悪い。やっと見つけたあと"3km"という出口までの電子表示が―――】


 ……え……、ちょっ、嘘ッ!? 通行止め……!? くっ、本気なの!?
 たかがコソ泥相手にどうしてこんな―――ああん、もう!! トラックなんて盗むんじゃなかった!!
 これじゃ完全に"ダイ・ハード"か"スピード"の世界じゃない! 生憎私にはハゲもハンサムも付いてくれてないんだけど……!!

 (どうする……どうする、どうするどうするどうする!!)


【ゲートが閉まった。次の出口も、また次の出口も。次第に車の列が出てきて、後方からは高速道路専用の警察―――】
【ハイウェイ・パトロールが生粋のスポーツ・カーを追跡用に改造したパトカーと、白バイ警官が複数猛スピードで突撃してくる―――!!】


 (……向こうの武器はスタンガンもどきだけ。なら……どうにか、なるか……イチかバチか!!)


【少女はあろう事か―――猛加速の後スピン・ターン、タイヤを極限まですり減らし煙を轟々と上げながら】
【逆走を開始する―――その間にバッグから取り出したタオルを顔面に巻いて正面からの顔バレを防ぎつつ】
【向かってくるオープン・カーにめがけ―――バイクを突貫させようとする! 成功すれば、本人は車に飛び移り】

 ―――動くな!!

【ジャケットの女性―――アレックスに銃を突きつけようと、するだろう。】
182 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 00:03:36.94 ID:ghTq0nzAo
>>181

【夏場だったならばマイケルダグラスもブチ切れて歩いて家に帰るような状況だがおかげ様、今はこの場所も冬である】
【渋滞中は大人しく車にこもってもらっていたほうがこちらも処理が楽で助かる。しかしまあオープンカーというのは冷える】

……やるじゃないか。…ククッ、そうか、皆、ヤケクソか。いいね、最高にロックじゃないか

【情熱が全てをこじ開けた(ゲートは閉じたが)。やってみるもんだと、まだ世の中も捨てたもんじゃないなと思う】
【車をパクって高速をぶっ飛ばしてカーチェイス。ここまで映画じみてれば映画みたいなプロットも叶うってものか】

さあ、出口まで時間もない。今のうちに応援を置いておいて貰おう……何っ?!

【どうやらこの映画、尺はまだ余っているらしい。ラストにはそう簡単に突っ走らしてくれないみたいだ】
【ジェイクに電話を入れるためにまたまたケータイを持ったところでバイクがUターン。こっちに向かってくる】
【慌ててケータイをいつもの癖で助手席に投げたら外にぶっ飛んでった。ブレーキをかけても間に合わない】
【ハンドルを切って、車のケツでバイクが吹っ飛んでったのを衝撃と視界の端で捉える。…やっちゃったかな?と思った矢先】

……無事で何よりだよ。…あー、動かないと運転は出来ないから勘弁してもらいたい
183 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/11(月) 00:05:29.08 ID:7XRogWUv0
>>180

【―――知っていた。この人が、彼女が最後を迎えた場である戦地に送り出した人物であるという事は。】


ふふっ、そうでしたか。―――その姿が目に浮かびます。

……彼女も、一人の軍人でした。六罪王のような巨悪から人々を護るのが彼女の夢だと、私に語ってくれました。
その道を与えて下さった貴女に、感謝こそすれ謝られる必要など御座いません。

貴女も一人の上官です。過去を悔やんでばかりでは、刻一刻と変わる戦いの「今」に対応出来ないでしょう?
後悔するよりも、前を向いて下さい。あの子の……等比さんの想いを無駄にしない為に、どうか前を向いて戦い続けて下さい。
誰かを護ることこそが、彼女の夢であり目標でした。―――どうか、彼女の死を無駄にしないよう努力し続けて下さい。
それだけが、私の願いです。

【―――そう言って、皐月はそっと微笑む。悲しみを帯びてはいたが、決して恨むような事は無く―――】
184 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/11(月) 00:16:44.50 ID:TN44Bk98o
>>182

【身体能力には自信が―――というレベルではない。クラスに一人はいる優等生、とかではなく】
【ましてやサッカー部のエースでもなければ体操の高校大会で優勝しているとか、そういう類の何かでもなく】
【完全に常人離れしている動き―――それもそうだ、投げ出したバイクから突撃した車の助手席に着地できるのだから】


 ……無事ねぇ。無事かしら。後ろには援軍がたくさん、アンタが隙を突けばギリギリ銃を奪える様な距離。
 正直あんまり油断も出来ない状況よ、けど―――丁度良い人質にはなってくれそうね。アンタ無線は?
 ……携帯は? ……どうしよう。後ろにいる連中に"追って来るな"って連絡を入れたいんだけど……


 これじゃアピール出来ないじゃない!! ちょっとアンタ、正直に言って何なのよ!?
 しつこく追ってくる、車は盗む、お次はドリフトにワイルド・スピードごっこと来たわ、アンタ本当に警察!?
 映画の主役だってもうちょい落ち着いて追跡するわよ、終いには出口まで封鎖して小娘一人にどんだけ本気なのよ!!

 だいたい―――ああん、もう! 携帯電話以外に無線くらい持っておきなさいよ、メガホンとか無いの!?
 人質を取ってるってアピールが―――、クソッ!


【銃を突きつけたまま暴言を吐きまくる少女―――声色はまだ10代後半にも満たないような感じだ。】
【ただし口調と語彙は相当に酷い。まるで喋る毒舌マシンガンだ。秒間30発を超えるフルオートでまくし立てると】
【彼女はアレックスに銃を突きつけた状態のまま、後方から迫るパトロール車両に向かって顔を出し―――そして叫ぶ!】


 追って来るなぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!


【―――怒り爆発。たかが麻薬取引の女子高生相手になんでこんなとんでもない追跡劇演じてんだ。】
【そんな思いをこめて、"人質を取った"だの"ここで戦争をおっぱじめるぞ"だの、言いたい放題怒鳴りまくっている。】
【だが逆に言えば注意は後方の警察官達に向いている、という意味でもあり―――これは一つの隙、と言えるのではないだろうか】
185 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/11(月) 00:31:46.59 ID:HVW76Wwb0
>>183

【自身を前にして笑って見せる皐月の姿に、アビは意外そうな表情で彼女を見た。】
【気丈な女性だ、そう思いはしたけれど口に出すことは無く。やや纏う空気が柔らかくなり、続けた。】

言われずとも。戦いに生きることこそが我々の使命ですので。

【だが一瞬弛緩した場の空気は、アビが皐月の内に潜む「それ」に感付いたことにより、再び鋭さを増す。】
【アビは皐月にその鋭い視線を合わせ、問いかけた。】

一つ、貴方にお聞きしたい。貴方は、奴を失った悲しみをどうするつもりでいるのです。
知っての通り、熊出を葬ったのは首狩殺鬼とかいう畜生です。我々は私怨を抜きにしても、奴と戦わなければならない運命にある。そして、そのための「力」も持ち合わせている。
今日、貴方に会って解った。貴方も、我々と同じに「力」を持つ者だ。決して無力な、か弱い一般人では有り得ない。
率直に聞きましょう、貴方は奴への復讐を考えてはいませんか。

【今まで幾多の戦地に駆り出され、或は自らおもむき、無数の死と接してきた。そしてそれに必ずついて回る悲しみと、憎悪にも。】
【その経験が、目の前の女性の奥底に少なからず押し込められているであろう復讐心を嗅ぎ取った。射貫くような目線が皐月に合わせられる。】

186 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 00:42:29.96 ID:ghTq0nzAo
>>184

【女は普通に大人しく運転している。銃を奪い取ってやろうともしないし、自分の銃に手をかける様子もない】

…どうせ追ってこいと言っても一定の距離は保つし、来るなと言ってもコッソリつけてくるよ。どうせ
むしろ電話があったらあの手この手何でもいいから聞き出すために延々かけてくるから無くて正解
それがネゴシエーションだかだって自慢気にいうけど…役に立ってんのかわかんないね。結局現場が動くんだから

あはは…いやぁ…つい熱くなっちゃう質で…つい。ああ、でも、警察なのは本当。手帳もあるよ。

【胸ポケットにある手帳。バッチも本物、写真も名前も本人っぽい。階級もそこそこあるが偉くもない。そんなところだ】
【つい熱くなっちゃうぐらいでここまでひっくり返すのもどうかと思うが口調は至ってクールで静かに話すタイプのようだ】

無線機ってかさばるんだよね。どうせ電波は居るところに大体居るしさ…メガホンてあのベースボールの応援に使う?
あー…ほら、私あんまりスポーツ見ないから。…結構文系なの。割りと。…でも車にはつんでるかも。後ろ見てくんない?

【ちょっとジュース取って、ぐらいの感覚で。クールというか図太いというかデリカシーが無いというか】
【そもそも、彼女は追っかけたスクールガールが麻薬取引してたとは知らないのである。なのにここまで追ってきたのである】

そいじゃあ、そろそろ銃は降ろして貰えると助かるんだけど。…そんな似合わない44なんて使わないでさ
象でも狩るなら別だけど、どうせ当たればおんなじだ。どうせ持つならもっと軽いのでいいじゃないハースタルなんかポリマーフレームだし

【そう、この女刑事はちょっと派手な学生の補導ぐらいの感覚でここまで追ってきたのである】
187 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/11(月) 00:50:40.97 ID:7XRogWUv0
>>185

【―――問われたのは、彼女を手に掛けた六罪王への復讐心。皐月は図星と言わんばかりにハッとした。が……】
【皐月は複雑な表情をする。その理由とは―――】

……ええ。初めて彼女の訃報に接した時は、彼女を手にかけた六罪王を恨みました。今だって、憎い……
彼女の無念を私の手で晴らすことも考えました。でも、……

―――私は、誰かを失う痛みをよく知っているつもりです。
私は衣織の母です。……もし衣織が母親を失う事になれば、その辛さはきっと計り知れないものになるでしょう。
衣織には、父親はいません。私が戦って死んでしまえば、あの子は誰が養うのか……。
衣織を世界中の誰よりも愛している者として、そあの子を一人にさせるのは絶対に許されるものではありません。……だから、……

迷っているのです。彼女の無念はこの手で晴らしたいけれど、私一人で六罪王に挑むのはあまりにも危険過ぎる……
私の身は私一人の物ではありません。私が傷つき命を落とせば、私の一番大切な娘も傷ついてしまう―――

【そう。恨みはあるが、彼女には自分の命よりも大切な娘がいる。―――己の命は、己一人の物ではないのだ】
【激情に身を任せ強大な敵に突進すれば、命を落としかねない。娘の為には、この命は何があろうと落とす訳にはいかない】
【皐月は、軽率な人間ではなかった。悲しみと恨みは強くとも、忘れてはいけない娘の事をは頭に留めていた】
188 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/11(月) 00:53:20.29 ID:TN44Bk98o
>>186

【信じられない落ち着きようだ。まるで撃たれると言う可能性を殆ど考慮していないほどに。】
【クール・ビューティという言葉があって、その言葉は「かっこよくも美しい女性」という、良い意味で使われるが】
【今日、今この時ばかりは使い方を訂正したい。"お化け屋敷で脅し役のお化けをがっかりさせるタイプの人間"とかが適切だ。】


 ……いや。いやいや、いやいやいやいやいや!!
 そーいうことじゃないでしょ!? あのさぁ、あのさぁ!! なんかもっと―――、
 こう、ないわけ?! 「落ち着いて、君にも家族がいるんだろう」とか、「そんな事をしても学校の友達は云々」……、とか。

【家族。その言葉が出たときは何故か、少女は一瞬悲しそうな表情をして。でも直ぐに、怒りの形相を取り戻し】


 と、とにかくもっと焦りなさいよ!? これね、44口径! そうそう、アンタも言ってる通り象狩りの―――って!
 私は嫌いなのよファブリク・ナショナルなんて最低! ていうか銃はこのリボルバー以外……興味ないの、そんな事は良いから!

 アンタのお陰でただの"お薬"取引がいつの間にか"カーチェイス&ガンアクション"に早変わりよ!
 どうしてくれるわけ!? ……、……あ。

【―――と、そんなこんなで自分が何をしていたのか漏らしてしまうのだが。】
【教育指導をしにきたおねーさんは、一体何を思うのだろうか。少女は言葉を詰まらせるも、すぐに後方へ向かいまた怒鳴り始めた。】
189 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 01:13:22.68 ID:ghTq0nzAo
>>188

ははっ、そんな陳腐なセリフ、実際に言ってたとしてもそりゃ突入するときの時間稼ぎにしか使えないよ
そんなんで絆されて投稿するような犯人なんて最初から犯罪なんてしないさ。ドラマの見過ぎだよ

【こんなジェイソン・ステイサムも禿げ上がる様なカーアクション決める奴にそんなことを言われたくもないだろうが】
【嫌だなあハハハーなんて笑っている。多分実際なら口説く前にぶん殴って手錠を掛けるぐらいしているはずだ】
【それか車をわざとクラッシュさせるとか…まあどちらにせよとんでもない方法を選ぶはずだ。これまでの傾向的に】

焦ってる焦ってる。この後部長に絶対大目玉だ。ただでさえ薄給なのに減給されたら溜まったもんじゃないよ
有給だって取りづらくなるし…あ、そうじゃないってね。分かってるわかってる。ハハハ

えー?今日日リボルバーなんて、西部劇の見過ぎの都会のカウボーイかフィルム・ノワールにかぶれた気取り屋ぐらいじゃない

【なんて話していたが、真実の一部を聞いてしまうと、彼女は少し黙って運転してた。サイレンは近づいてきているようだ】

…そっか、そうだよね。何もないわけ無いか。わかっていたはずだけど。……うん

あー…まあ、そうだね。人質に取られているから仕方ない。このまま予定どうりに降りよう。多分ジェイク…同僚が待ってる。場所を知ってるのは彼だけだろう
そしたらこのクルマで逃げればいい。埠頭には廃倉庫も多い。暫く隠れて、エアポートまで行って、車を捨ててタクシーでも乗れば逃げきれる
190 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/11(月) 01:23:55.01 ID:TN44Bk98o
>>189

【まあ確かに、言われてみれば"そんな陳腐な言葉"であった。彼女の言う通り、意味の無い単語の羅列。】
【だがそれでも、こんな突拍子もない反応をされるよりは"犯人側"としては落ち着くのであって―――犯人を落ち着かせるなんて】
【考えてもみれば可笑しな話か。そういう意味では、相手のペースを乱す彼女の飄々とした態度とやり口は、そう的外れな物でもないようだった。】


 ……まあね。でもまあ、そんな言葉でも掛けて貰えるだけ案外、"在り難い"って思ったりは……するかもよ。
 いや、私がそうだって言ってるんじゃなくて、なんていうかその―――あ、アンタはちょっと、犯人に対する配慮が無さ過ぎなのよ!
 そりゃあ、確かにそんな言葉が通用する相手なら、って考えも分かるけど……だ、大体私はそんな極悪犯なんかじゃないからね!? 言っとくけど!!

 ……っ。い、良いでしょ別に……リボルバー持ってたって。
 ……これが一番なの。……民間用によく出回ってるから……"形見"になることだって、あるのよ。

【ボソ、とそんな事をつぶやいて。改めて道路の状況を確認する。一応、向こうも確認が取れたのか】
【先程よりは距離を多く取って追跡してくる―――それでも矢張り追跡は辞めない辺り、舐められている気がした。】
【だがそんな事や警察の対応なんかより余程少女を驚かせたのは、その次にアレックスが発した言葉の数々であって―――。】


 ……は……?  いやいや、え……、? なに、アンタ今、なんて―――はぁ!?
 み、……のがして、くれるの? あいや、人質なんだから見逃しなさいよ!! ……でも、……いいの?

【命令する立場にあるのは分かる。だが、それにしたって彼女は幾らなんでも素直すぎるし、そもそも本気で言ってそうだ。】
【真偽を確かめるべく、少女はもう一度質問する。"逃がすつもりなのか―――"と。】
191 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/11(月) 01:29:46.99 ID:HVW76Wwb0
>>187

【母としての強い自覚が込められた皐月の返答を聞き、アビは表情に出すことこそなかったものの安堵したようだった。】

…貴方が賢明な人で良かった。復讐の炎に身を焦がし醜い鬼となってしまえば、仮に命を落とさず仇を討てたとしても、お嬢さんに向ける顔が無いでしょう。
貴方には守るべき家族がいる。お嬢さんにとって貴方は唯一の肉親なのです。どうかそれを、ゆめゆめ忘れぬ様にしてください。
…鬼となるのは、我々だけで充分です。

【そう言い、そして付け加えるようにして続けた。】

熊出の話になりますが。奴はそれこそ絵に描いたようなお人好しでした。先の首狩り女との戦いにおいても、先ずはじめに投降するように呼びかけたとか。
…馬鹿のやることです。そんなものに応じるような相手では無いでしょうに、だがそれは奴の口癖のようなものでした。
我々は必要とあらば民衆の被害を最小限に抑えるべく、敵を死に至らしめることもあります。奴は違った。奴は結局、数多の悪に相対しながら、一度たりとも人を殺したことは無かった。
奴の言葉です。「何も[ピーーー]ことは無いでしょう」、と。奴は、どんな悪党にも悪を為すだけの理由があるのだから責めてはならない、わかりあえる…そんな英雄じみた理想論を持っていたのでしょう。
迷っておられる貴方が、もしも何者かと戦う時があるならば。…どうか奴の掲げた理想を思い返して下さい。

【軍人として生きていくには余りにも甘すぎる、そんな理想がまかり通るならば世界はもっと良くなっている。そう思うものが大半だろう。】
【しかしそれでも、どんな悲しみや理不尽に襲われても、それを他者への怒りや恨みとして返してはいけないと。受け止め、耐え抜くことが大事なのだと。それが等比の掲げた信念だったのだろう。】


192 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 01:44:01.65 ID:ghTq0nzAo
>>190

…私は口下手だから。そういうことは行動で伝えたいんだ。…それしか出来ないってのもあるけど。
配慮してるじゃない。こうやって刺激しないように安全運転でさ。急ブレーキで引き金引かれても困るし
はいはい、わかったから。大人しく座ってなよ。凶悪犯さん

【そうしてハイウェイを降りるためにレーンを変える。予定していた埠頭近くの出口だ。ゲートには数人の】
【ハイウェイパトロールと職員が見えたが、追ってはこない。下道はもう彼らの管轄外だからだ】

形見なら、なおさら使うもんじゃないんじゃない?…わからないけどさ。…まあなんにせよ私のおもちゃに比べれば
なんだってマシだけどね。ありゃほんとに酷いもんさ

【それでも使っているのには何らかの訳があるんだろう。やはり非殺傷だからなのか、別を用意するお金もないのか】

このままあそこで車を止めれば、応援に来たヘリのスナイパーに撃たれて終わりだよ。この世の中、銃を抜くのに
誰も躊躇なんてしない。学生だろうと後付の理由でいくらでも市民を納得させることができる…嫌なことだよ
……そうなると私も無事じゃすまないってのもあるんだけどね。まだ、死ぬわけにはいかないんだ。今はまだ…
それに殉職じゃ部長が大喜びしちゃうのを考えるとムカつくし

【ハナから期待していなかった警察の応援は所轄違いの問題だとかでまたまたもめているらしく見当たらない】
【やってくる頃にはすべてコトが終わっているだろう。埠頭のコンテナの山がもうすぐ近くに見えた】
193 :???? ◆/iCzTYjx0Y [saga]:2016/01/11(月) 01:57:49.70 ID:TN44Bk98o
>>192

【―――そういう事に使うな、か。言われてみればその通り。だが―――今の自分には。】
【どうしてもこういった"潤滑油"が必要だった。無くなったらそれこそ、何かが自分の中で音を立てて崩れそうな】
【そんな予感さえしてしまう。だからそれを手に入れる為にはなんだってするし、その為には形見だって―――、本当は。……。】


 ……そうね。お父さんも泣いてそう。


【―――たったの一言。ぽつりとそう零したまま、じっと押し黙った。】
【暫くすれば、埠頭のコンテナが詰まれた地帯が見えてくる。この辺りには人の行き交いも少ない。】
【あとはまあ、どうとでもなる。タクシーがいるならそれを、なければまた車を奪って逃走するか、若しくは―――"自力"をつかう、か。】


 ……確かに。警察も最近は装備が偉い事になってきてるわね、AR-15が標準でパトカーに積まれてるって聞いたわ。
 ヘリのスナイパーもさぞかし"デカイ"のをお持ちなんでしょう、小娘一人相手に聞いてあきれるわ。けどね……
 私、実際そんなにヤワじゃないのよ。貴女には……怒り半分、感謝半分。見逃してくれてありがとう、と言いたいのと
 追跡がいくらなんでも横暴すぎ、とも言いたいわね。この車の持ち主、多分後数日はレゲエもラップも聴けないわよ、きっと。


【車がコンテナの中に入って行き、速度が落ちると彼女はひょい、と身を投げ―――そこからだった。】
【凄まじいまでの暴風が"吹き荒れる"―――まるでヘリが近場に降りて来ているかのような風の流れが、アレックスに吹きかかるだろう。】

【だがその正体は決してヘリコプターなどではない、それは巨大な―――蜻蛉<トンボ>。】
【一匹の、人間を丸々一人か二人余裕で背に乗せてしまえそうな程のサイズのトンボが、突如として現われ】
【少女はその背に慣れた様子で乗り移る。そう―――つまりはこの少女が瞬時に"呼び寄せた"存在。と言う事は―――、】


 ……ごめんなさいね。やさしくしてもらったのに、最後の最後で"能力者"だってバラしちゃって。
 どう? もっと捕まえたくなった? ……気にかけてくれるんだか、自分の身を案じてるんだか、煮えきれないけど
 アンタの事はそんなに嫌いじゃないわよ、私。じゃあね、アレックス。―――あんまり遅くなると、"お父さん"も"お母さん"も、泣くのよ。


 ―――はやく、仇を取れって。天国で泣いてるの。それじゃ、また―――ふふっ。もう会わない方が、お互いの為かしらね?


【ブゥゥゥゥン―――という独特の羽音を立てて、戦闘機染みた挙動でトンボは飛翔していく。】
【人目が多い場所では能力は使えないが、こういう場所なら話は別だ。彼女は一瞬にして頭上高く舞い上がり、そして消えた。】

【激しいカーチェイス。であった能力者の少女と、一風変わった破天荒な女刑事。その出会いが次に生み出す物は戦闘か、それとも―――。】

/と、キリが良いのでこの辺りで〆とさせて頂きます。
なんだか当初の予想とまったく違うトンデモ展開になりましたが、クッソ楽しかったです。
楽しんで頂けたでしょうか? それではありがとうございましたー。
194 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/11(月) 02:07:19.48 ID:7XRogWUv0
>>191

【そう、皐月は大切な人を二度も失った。だからこそ、人の死というものがどれだけ冷たく重い物なのかを知っている】
【願わくば……いや、何があっても娘に同じ辛さを味わわせる訳にはいかない。そんな思いは皐月の心に強くあった】
【娘への想いが、暴走してしまいそうな心を寸での所で食い止めていたということが、今の言葉で分かっただろう】
【その思いを後押しするように、彼女の言葉が続く。】

―――ええ、決して忘れることはありませんよ。……私は、母です。何があっても、娘の事を忘れたりはしません。

【子を護り幸せにする事こそが母の務め。大切な人の形見である娘の事を忘れた事など―――衣織が生まれてから、一度だって無い】
【話はまだ続く。彼女の信念……戦い護る者として持っていた心や戦地での様子を初めて知らされて、皐月は括目する】

……等比さんが、そんな事を……―――ああ、やっぱり等比さんははとっても優しい子だったんだ……
―――決して恨まずに、助ける事。それこそが、等比さんの目標だったのですね。敵味方問わず、全てを……

なら……―――私も、恨みに囚われてしまう訳にはいきませんね。
私が等比さんの死のせいで復讐に駆り立てられる姿を見せれば、一番悲しむのは等比さんですものね。

―――ああ、迷いが吹っ切れました。
悲しみや恨みさえも受け止めて、耐えて、分かり合える……それが等比さんの願う理想なら、私ももう恨みはしません。
……等比さん、天国で笑顔になってくれますかね。これが、あの子が望んでいることでしょうか―――

【ふっと、皐月の表情が柔らかくなった。失った悲しみは癒えないけれど……失った恨みは、彼女の残した理想によって消えた】
【あの子が悲しむような事は出来ない。殺した相手を恨むなんて、等比さんはきっと望んでいない―――そう、分かったから】

【……そろそろ会食に向かわなくては。話は尽きないが、きっと本当に伝えたいことは伝わっただろうから】
【もうこれ以上話がないのなら、皐月は深く一礼をして……もう一度等比の墓前で「また会いに来ますからね」と一言添えると】
【愛娘が待つ会場に戻り、思い出話とともに会食に興じるのだろう―――】

195 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 02:21:23.77 ID:ghTq0nzAo
>>193

【前だけ見て運転していた。複雑な事情に突っ込めるほどの勇気がなかった】
【そういうところの勇気は持ち合わせいなくて逆に繊細な面がある。それは自分の過去のこともあり】

多分“エルクロ”ならマシな方。多分M249でささっと片付けるでしょうね
…元々、貴女を助けるつもりでここまで来た。…目的通り、任務達成。…安いもんでしょ

あ、ちょっと…!……クッッ!!

【急ブレーキをかけて、ハンドルを切る。軽くスピンして、彼女は見上げる】
【ちょっと…!と声をかけようと手を伸ばしたが、舞い上がったトンボは消えていく。空を切った手で拳を握る】

……いいや、もっと追いかけたくなった。…私だって、同じだからさ
私も復讐するの、アイツに。“私を殺した”アイツを……


【そして遠くからクラクション。水色の丸っこい軽自動車がのこのこやってくる】

…ジェイク、遅い。何してたの?向こうの男は?

『骨が折れたがとっ捕まえた。ヤクの売人だった。…しっかしお前のせいで渋滞がどこも酷くて…… そっちは?』

不良少女を一人確保。家に返したとこ

『…ほんとかぁ?…そんなんじゃ減給どころか降格ついでに停職だぞ』

…じゃあ、売人ノメして組織ごとしょっ引けばトントンになるんじゃない?いいアイディアだ。…さあ早く!


/お疲れ様でした!こちらもめっちゃ楽しかったです。当初の予想ってどんなのか気になりますが
/兎に角、お付き合いありがとうございました!
196 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/11(月) 03:01:31.72 ID:HVW76Wwb0
>>194

【憑き物が落ちたかのような皐月の様子を見て、わずかにアビは微笑んだ。】

…奴の遺志が貴方の笑顔となるのならば、奴にとってそれほどの喜びは無いでしょうな。
まだ私が奴について語りたいことはありますが…まあ、これ以上は野暮というものでしょう。

【意味深な言葉と共に、アビは自身の懐を探り始める。そして取り出されたのは、1つの茶封筒だった。】

…自警団の奴の私室から、遺品整理の時に発見されたものです。「親愛なる神谷皐月様へ」。貴方あてのもののようです。
そうそう、遺書を残すのは軍則で禁じられていますから、私には何が書いてあるのかはさっぱりわからんのですがね。
それでは失礼します。今度会った時はアバ茶の1つでも振る舞いますので、どうぞ宜しく。

【とぼける様にそう言った後、彼女、アビ教官はひらひらと手を振って去っていった。】
【どう考えても、その封筒の内容などわかりきっているだろうに。意外に融通の利く性格の持ち主であるようだった。】
【そして皐月が封筒を開いたならば、一枚の便せんが入っているだろう。それは、彼女が皐月へ向けた、最後のメッセージだった。】
【以下はその全文である。】

『この手紙を貴方、神谷皐月が読んでいるということは、私は既にこの世にいないということでしょう。』
『……なんちゃって!すいません師匠(ししょう)、このフレーズどうしても一回書いてみたかったんです!だってなんか格好いいじゃないですか!』
『…すいませんふざけすぎました、話を戻しましょう。まあこれはいわゆる遺書というやつでして、私の身に何かあった時のために書いておいたものです。』
『…本当はアビ教官からきつく禁じられているですけどね。「死を前提に戦うなんて何事だ、生還を最優先しろっつってんだろ!」なんて、よく言われてますし……教官に見つかったら多分燃やされてますね、コレ。』
『さておき、まあ今私は多分、死んでいるのでしょう。…そして多分、職業柄、誰かに殺されてると思うんですよね。』
『いやまあ、案外私のことですからどっかでドジって滑って転んで死んでる可能性も無くはないと思いますけど!…我ながらそいつはイヤです、はい。』
『で、十中八九は私を殺した「誰か」がいると思うんですね。そこで、師匠にお願いがあるんです。』
『もし私が死んで悲しかったり、あるいはその誰かを恨んだりすることがあっても…できる限り、割り切ってください。』
『何て言うんですかね、ほら、世の中理不尽なこととか色々あるじゃないですか。突然の不幸とか、事故とか…』
『だけど人生ってそういうものだと思うんです。だから、うーん、何でしょうね、つまり…あんまりくよくよしないでくださいってことですかね?』
『自分の中にそういう負の感情みたいなものが生まれたとしても、なんとかそれを押し込めて、耐えて、あるいは笑い飛ばしてしまう。そういうの、とても大事なことだと、私はそう思うんです。』
『…なんか師匠に対して私の分際で何言ってんだって感じですけども!そこはお許しください、これだけは言っておきたかったんです!』
『とまあ、そんな感じですかね。あんまりこういう文章って書きなれてないので、難しいです…』
『叶うならこの封筒が一生開かれないことを祈ります。それで私が年取って軍を退役して、そのとき師匠の家で開封したら色々面白そうじゃありません?私的には当然そっちが望みなんですけど。』
『でもそうじゃなかったら…これで、師匠とはお別れです。でも大丈夫です、私割と霊感ありますから!』
『なんて…本当は師匠とお別れすることを考えるのは辛いですけど。でも、こうして言葉を残しておかないと、やっぱり後悔すると思いましたから。…後悔するのは、辛いですから。』
『…それでは師匠、先に逝くことを許してください。私、天国(行けるかなあ…)で待ってますから!そして一緒にお酒でも飲みましょう!大丈夫です、結構私お酒強いほうですよ!』
『「大好きな師匠へ」』

【天国からの手紙は、そう締めくくられていた。】
【急に立ち込めた黒雲はついぞ雨を降らすこと無く、力強く吹く薫風に流されて彼方へ消えた。鮮やかに見える夕陽が皐月と草原を照らす。】
【失ったものを取り戻すことは叶わずとも。残された言葉が、託された遺志が、今を生きる人々の救いとなることを信じて。】
【丘の下では老紳士の傍で、彼女の愛娘が母の帰りを待っていた。】




/以上で〆となります!会食については穏やかに進められましたが、なぜか等比の弟の群だけは姿を見せなかった、ということにしておいてください。島沙の方は普通に居ます。
/遅くまでお付き合いいただき有難うございました!

197 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/11(月) 03:08:29.20 ID:7XRogWUv0
//お疲れ様でしたー!此方の〆は一旦寝させて頂いてからという事にします……!
//長時間お付き合い頂き有難う御座いました!
198 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/11(月) 04:12:51.63 ID:HVW76Wwb0
>>196のその後

【丘の上、すっかり晴れ上がった空はオレンジに染まる。】
【その丘を下り、木々の立ち並ぶ場所へとアビは向かっていく。人気の少ない木々の下には、3人の男女が立っていた。】
【いずれも等比と同じ水の国自警団支部に所属することを示す、白い制服に身を包んでいる。そしてそのうちの2人は、SCARLETに所属することを示す腕章を付けていた。】
【向かってくるアビから見て一番左に立つのは、等比と同じくらいの年頃に見える女性だ。オレンジ色の長髪を持ち、前髪をおでこの部分で二つに分けて垂らしている。】
【その上に同じくオレンジ色のベレー帽を被り、勝ち気そうな雰囲気を漂わせて両手を組み、木の1つに寄り掛かっている。】
【中央に立つのは、高校生くらいに見える少女だった。身長はかなり低く、白い長髪の頂点から一本飛び出た大きく跳ねた髪の毛は蝶の口のようである。】
【頭にはもふもふとした耳当てを付けた、全体的にふわふわとした印象を受ける少女だ。表情はやや暗く、地面に視線を落としている。】
【その少女を心配そうに見つめているのが、最も右に立つ坊主頭の大男だ。身長はアビを更に越す、ゆうに2メートルはあろうかという巨漢である。】
【肌の色は黒く、異国の出身を思わせる。筋骨隆々なその外観と裏腹に、とても優しい目をしていた。】

待たせた。エルストン。ラファイエットの様子はどうだ?
「ええ、だいぶ回復したようデス。私の責任だ、と泣いてばかりでしタから…」
「いやいや、どう考えてもアビ教官の方が責任重大ですって。気にすること無いよ、ラフィ」
黙れジュリア、死にたいか?
「冗談になってませんって……」

【オレンジの帽子を被った女性が冷や汗をかく。ラファイエットと呼ばれた少女は、まだうつむいて言葉を発さないままだ。】

熊出等比、か……

【そんな3人の様子を見て、アビは昔を懐古するかのように目を閉じる。熊出を含めた4人の姿を思い起こしたあと、口を開いた。】

馬鹿だったな。
「アホでしたね」「ドジだった…」「少々間が抜けてたデスね」

【口を揃えてそう答える。どうやら熊出等比という人物は、自警団の中でも結局そういう立ち位置にいたようだ。】
【アビはもう一度3人を見渡し、鋭い視線を向けながら言った。3人の間に緊張が走る。】

お前たちも知っての通り、奴は凄まじい勢いで成長していった。それこそ当初の怠惰ぶりが嘘のように、だ。
地道な努力の積み重ねにかけて奴の右に出る者はいなかった。そして命を落とす恐怖すら抱えて戦う勇気も持ち合わせていた。…そして死んだ。

【立ち並ぶ3人が、それぞれに戦友の姿を思い出す。間の抜けたところはあったけれど、心から尊敬していた友人の姿を。】
【瞳に宿す色が変わる。平時の落ち着いたものから、戦地に赴く軍人の瞳へ。宿す覚悟に違いはあれど、彼等の目的はただ一つ。】
【口に出さずとも伝わる彼らの意思。それを見て取ったと同時、アビ・ジャハンナムは声を張り上げる。】

諸君らに告ぐ!熊出の10倍の覚悟を抱き、100倍の鍛錬を積め!!超えるべき目標として、奴の姿を魂に刻み続けろ!!
標的はカノッサ機関、六罪王が一人、首狩殺鬼!!全霊を尽くして、奴の「生け捕り」を遂行する!!
ジュリア!「ハイ!」ラファイエット!「…はっ!」 エルストン!「ハッ!」

行くぞ!! 「「「イエス、マム!!」」」

【戦いの火蓋が切って落とされた。】


/これで等比の葬式ロールは完全に終了となります、重ね重ねお付き合いいただき有難うございました!
199 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/11(月) 16:19:43.07 ID:7XRogWUv0
>>196

――――等比さんが、私に……?……

【渡された封筒。それが彼女の遺した物である事は容易に想像できた。宛名は自分……。彼女は、どんな言葉を遺したのだろうか】
【そっと封筒を開いて、中に入っていた便箋を取り出す。―――そこには、見覚えのある彼女の文字が書き記されていて】
【皐月は、我を忘れて読み進める。彼女の遺した想いを、一文字ずつ受け取っていく―――その目には、涙】
【読み進めるにつれて、涙とともに色んな感情が溢れていく。でもそれは、決して負の感情ではなく―――】

―――、……―――等比さんの、バカ……!こんな言葉を贈られたら、私……―――っ……
私だって……っ、……貴女と別れるのは、辛いよ……―――でも、貴女の……こんな想いを、伝えられたら……―――!

……分かりました、約束です……私は、貴女の死を……決して恨んだり、悔いたりはしません……!
貴女の分まで―――……笑顔で、生きます……っ。だから、―――安心して、天国でゆっくり待ってて下さい……!
いつか、大好きな貴女に、……笑顔で会いに行きますからね―――!

【もう、彼女の死を悲しみ嘆く事は無い。それは彼女が願っていない事であると、分かったから】
【悲しみに囚われるより、前を向いて笑顔で生きる事こそが彼女の願いであるという事が、分かったから】
【そんな彼女の願いを裏切らない為に、今を生き前を見よう。そして……いつかまた会える日が来るのなら、その時はまた笑顔で話そう】

【―――照らし出す夕日の光が、涙で乱反射する。暗雲と共に、胸の奥に残っていたどす黒い感情はスッと消え失せた】
【彼女の最後の願いは、託された想いは、確かに伝わった。手の届く筈のない生死の壁に隔てられてしまった二人の想いが、その壁をも越えて繋がった】
【皐月は、前を向く。彼女の遺した最後の約束を果たす為に、涙を拭いて何時もの快活な笑顔を見せて―――一歩、前に踏み出した】

//此方もこれで〆です!改めてありがとうございましたー!
200 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/11(月) 20:44:57.00 ID:6+WRiLw8o
【水の国、広場】

【宵闇の色が深くなって、人通りが静かになっていく中】
【水面に広がる波紋のような、人だかりが一つ】
【ざわめく色合いを見せながら、その様子を強めていた】


わわ……今日はいっぱいあるので、押さないで下さい!
えーっと、こっちは風邪用の薬で、こっちは咳止めで
あ、増毛薬はこれです、見込みが無い人には効かないですけど


【こぼれてくる声を聞けば薬屋だろうか、薬の名前がちらほらと風にのる】
【やわらかなソプラノの響き、琴の音に似た柔らかくも確かな芯を持った響きで】
【盛況なのだろう、あたふたとしながら人だかりをさばいていく】

【数十分して、人だかりが絶えたら、ちょこんとその場に腰掛ける少女の姿が一つ】

【硝子細工のように透き通った蒼白の長い髪】
【白い無袖で丈の短い着物の上に藍色の鮮やかな羽織を羽織る】
【黒いサイハイソックスにマフラーの細身の少女】
【藍色の瞳に紫紺のブーツ、藍色の帯に刀が一本刺さっている】

【粗末なござの上に座って薬有ります≠フ文字が書かれた旗をそばに置いてる】 
201 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/11(月) 22:25:32.93 ID:mWb0VctE0
>>200
/まだいらっしゃいますか?
202 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/11(月) 22:36:54.15 ID:mWb0VctE0
/おられない様なので、>>201は無かった事でお願いします
203 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/12(火) 12:54:00.98 ID:3mf69HRo0
シェンさんどうして愚痴スレラジオに
参加した事を言わないのですか
204 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 19:33:14.64 ID:THbT7IBeo
【市場】

【ネオン看板が空を覆い、夜の帳もここまでは届いていないようだ。この時間でも多くの人が行き来し】
【幾つもの屋台や商店が通りにひしめいて並んでいて、まだ開けている店も多い。この場所は夜行性だ】
【屋台の種類も様々で洋服からコンピュータの部品、九官鳥、焼き鳥屋、海賊版のDVD…様々だ】

【人並みの中から一人ふらりと屋台に入った。赤いジャケットで少し目立っていた。櫻の国の料理の屋台】
【だか店主はその出身ではなく、メニューもその地域らへんいろいろなもので、おまけに味も少し違っている】

おじさん、天丼一つ…全部エビ、エビ4つにして。

『そんな…せいぜい2本で十分ですよ』

…ああそう、じゃあうどんもつけて

【食欲旺盛な注文をするのはダークブルーの髪色でアシンメトリのショートカットの女。ブルーの瞳であった】
【腰につるしたホルスタには警察が最近導入した非殺傷武器、ショックガンがおさめられている。その為彼女が】
【警察関係であると、それを知っていれば感づくのも容易い。見た目はそれほど特徴的に無駄にごついのだ】
205 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 20:12:54.98 ID:J3dAHZYJo
>>204

【雛芥子の香りが一つ、空の雲間から顔を出す宵月のように溢れて】
【人影が屋台の前を通れば、立ち止まる足音の旋律】
【砂利をはたく靴の響きと、入ってくる瀟洒な雰囲気】

【硝子細工のように透き通った蒼白の長い髪】
【白い無袖で丈の短い着物の上に藍色の鮮やかな羽織を羽織る】
【黒いサイハイソックスにマフラーの細身の少女】
【藍色の瞳に紫紺のブーツ、藍色の帯に刀が一本刺さっている】

【そちらを見たなら分かるだろう、軸のぶれない理想的な足運び】
【均整のとれたスタイル、一つ一つの動作に気品すらも感じるような動き】
【貴方の側の席にそっと腰掛けたなら、爪弾く琴の音が一つ】


……一番安いかけを、ネギ(無料)と天カス(無料)をいっぱいつけてください


【しかして頼むのは、イメージよりもずっと、なんというか経済的というかみみっちいというか】
【ちょこんと席に腰掛けたなら、ちらちらと貴方の武器を見ているだろう】
【怪しさ満点である】
206 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 20:41:56.65 ID:THbT7IBeo
>>205

【圧倒的なスピードで天丼とうどんはやってくる。もう既に用意されていたんじゃないかというほど】
【天丼は米に揚げ物というところまではあっているが沢山の野菜が敷き詰められ甘辛いタレがかかっている】
【うどんも麺はとろけそうなほど煮こまれていて何故か豚骨ベースのような味のするスープであった】

【割り箸を割ったところで、彼女の携帯電話が鳴る。めんどくさそうに表示を見て、電話にでる】

はい…もしもし。何?今?ディナータイム。何の用事?…は?…そんなもの自分で行って。
それに私、知ってるだろうけどこないだの件で停職中なの。デスクにはよらないから。

【ぶっきらぼうな口調で淡々と一方通行気味に話を終えるとうどんを啜る。クタクタに柔らかいのが美味い】

【一方、一番安いかけも豚骨ベースであった。尚、店主は菜箸の先でメニューの看板を示す】
【トッピング増量、有料。各種…。どれも気持ち程度のものだが天カスどころか七味や生姜ですら有料で】
【それもやはり土地柄というか何でもちょっとでも稼いでやろうという意地、根性、心意気が垣間見れた】

……何

【また戻って彼女はその視線に気がつく。警察の勘というやつか、鋭く察してじいいっと見つめ返す】
【蒼の瞳に、濃いシャドウ、持ち前の雰囲気、職業病で睨んでいるようにも見えるだろうが、そんなつもりはない】

………特別よ

【暫く黙って、“取り調べ”した彼女は天丼の甘辛くて馬鹿でかい海老天を一本、となりの器に渡すのであった】
207 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 20:54:06.68 ID:J3dAHZYJo
>>206

【注文を通した後、彼女はその罠に気づく】
【慌てて懐から粗末ながま口を取り出し、中身を数える】
【それはさながら空気でも抜けたように、ぺったんこの中身で】


い、いえ――――――何でもありません……
まったく、なんですかこの店は……義理も人情も、あったものじゃないです
うちが子どもの時は、こないな店あらへんかったのになぁ……


【ぶつぶつ、と恨み節を述べる、さながら呪詛のごとく】
【藍色の大きな瞳がうつむき加減でふせられる、一流の絵画のような憂いを帯びた表情】
【口調がどんどん揺れていくのは、それが素であるかのように】

【貴方の鋭い視線に向き合い、別に、と慌てて視線を器に戻すだろう】
【たしかに美味しそうである、けれども、絵に描いたような素のかけうどん】
【見てたらね、ネギがいっぱいに増えるの、とでも言いたげにじっと見つめてたら】

【花が開く、鮮やかに海老天の花がひらりと咲き誇るだろう】


な――――――!!わ、わわわわえええ!!?わ、こ、こここんなんええの!?
うううう、うちお金なんかあらへんよ、そないな事しはっても、何も見返りなんてあらへんし


【驚天動地、蒼白の髪がふわふわと揺れて、藍色の羽織が乱れる】
【最初の証左な雰囲気はどこへやら、視線はチラチラと海老天に向く】
【ふんわり、さくさくしてそう、口元からよだれがたれそうになって、あわてて口元を袖で拭った】
208 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 21:08:06.85 ID:THbT7IBeo
>>207

【どうせみみっちく金をとられるのはわかっていたからマイ一味を同じぐらい赤いジャケットのポケットから】
【取り出して、ぱっぱとかけては天丼をかきこむ。こんな姿みたら親がどう思うかとたまに思うが警察という】
【仕事柄それが癖になってしまうのだ。上品に食べても給料は上がらないし、犯人も待ってはくれない】

義理と人情じゃやってけないんでしょ。不景気だし

『その通り』

どうせこれもエビじゃないでしょ。なんか変におっきいし

『それはエビだよ。でも最近のバイオテクノロジーって凄いのよ』

【グレーな屋台をいちいち検挙しているほど世の中は平和じゃない。それに安いことは事実なのでこういう店が】
【市民の生活を支えていると思うと黙認すべきだと思っていた。自分も食べたいし。つーか、それがメイン】

…そんなに食べたそうなんだから別にいいよ。エビまがいでよかったら。
見返りなんて求めてたら警察なんてそんな仕事務まらないよ。割にあわないってものじゃない。
……まあ、だから、食べたら、家に帰りなさい。こんなところ夜に出歩くものじゃないよ

【彼女は腰の拳銃を見られてた…ではなく、海老天を見られていたと勘違いしていた。勘の精度は正確ではない】
209 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 21:19:29.53 ID:J3dAHZYJo
>>208

【貴方の答えを聞いてがしっと貴方の手を両手で握ろうとするだろう】
【できたなら白鍵を撫でていそうな指先が、絡みついて、自分の顔の前に持ってきて】
【大きな瞳をきらっきらに輝かせて】


おおきにぃ!!


【ぽんと音を立てて、海老天を頬張るだろう】
【小さな口いっぱいにエビを詰め込んで、一口一口味わうように噛みしめる】
【恍惚の色に乱れる長いまつげがとろんと溶けて、肌の水面に波紋が揺れる】

【天国状態でそのままかけうどんを全部頬張るだろう】
【最後には知るまで飲んで、完飲、かたんと丼を置く音】
【余韻にひたる、にへら〜とゅるんだ頬が、だらしない】


ありがとうございます、おかげで助からはりました
ほんまに三日間ぐらい何も食べてへんかったさかい……
警察の人って優しいんやね、うちあんあま知らへんから――――――わわ……

ごめんなさい、ちょっと素が……いやでも、ありがとうございます
この恩は、絶対忘れません、ぜーったいの、ぜったいに、です


【言葉が多い、それはもう、苛烈に、紡ぐ音律が言の葉を靡かせて】
【はんなりとしたイントネーションを溶かして、言葉を均す】
【背筋を伸ばして向き直る、長い髪が彼女を修飾する】

【櫻然「とした装いに振るまい、出身を知るのに無理は無いだろう】
【ちなみに帰る気はない】
210 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 21:43:23.29 ID:THbT7IBeo
>>209

【勝手に持ってかれた腕はなすがままという感じで、器用に食事も続ける】
【利き手が持って行かれていたとしても逆に箸を持ち替えて食べ続ける器用さである】

はいはい、どういたしまして。

【相変わらず、抑揚のない冷静というかぶっきらぼうというかやる気の無さそうな返事】
【丼を上げて、代金を支払う。横の少女の分までまとめてだ。警察は薄給で有名だがそれぐらいは持ち合わせている】

イメージアップに繋がったら何より。最近はずっと、めっきり評判は悪いから。
…さ、食べたなら帰りましょ。送ってあげるから。恩なんていいから、危ない目に合わないうちに
全く。こないだから出歩いている子が多い。全く、警察は何を……まあ、そっか、それは知ってるか

【職業柄、帰らせようとするのに一歩も引かない。帰れ帰らないの押し問答になっても、最後は公権力を出すのも辞さない覚悟だ】
211 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 21:53:59.66 ID:J3dAHZYJo
>>210

【そして支払われる代金、空いた口がふさがらないといった様子で】
【目をパチクリしてほっぺたを自分でつねってみる、これが現実なのかといった様子で】
【そして貴方が声をかけたなら、ぎゅーっと抱きつこうとするだろう】


わ、わ、わわわわ!!そ、そんなお金も出してもらって……!!
そ、その、ほんとにありがとうございます!!――――――わぁ……
これで明日も温かいご飯が食べれますぅ!


【細い彼女の両腕、触れたら簡単に砕けてしまいそうな細身で】
【ふんわりとした着物に身を包んでいても、それは十分に伝わるだろうか】
【蒼白の髪が乱れたなら、ふわふわと貴方のほっぺたを擽って】

【からん、と腰に下げた刀がぶつかる音で我に返って】
【ぶんぶんと頭を振って、まともな感じに戻る】


――――――その、さっきから帰るって言ってはりますけど、私、帰るとこなんて無いですよ?
こう見えても行商人なので、国から国、街から街へ放浪中なのですよ

……とは言っても、ほとんど行き倒れ同然の身ですが


【頬を掻いて苦笑する、年相応のあどけない様子で】
【語られる身の上はやや特殊だけども、この世界では珍しくないこと】
【不良娘の鏡みたいな状況で、国家権力は何を行うだろうか】
212 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 22:15:52.75 ID:THbT7IBeo
>>211

あーはいはい。放して放して

【明後日の方向を向いて平静を貫いているが意外とまんざらでもなく】
【直視するとその純粋さに毒されそうであるのと照れとニヤケが出そうなのを隠していた】

【仕事だと容疑者のおっさんとしか触れ合う(主に拳銃で)機会が無い。こういう仕事も悪くないな】
【でもそういや今は停職中だったなと…いろんなことを考えた】

はぁ……ああ、そういうタイプね。そりゃ表通りは規制が厳しいから出られないか…何を売ってるの?
生憎だけどもし…武器とか、麻薬とかだったら流石に本署まで来てもらうことになるけど

【麻薬は即取り締まり対象。武器はこの地域の場合ある程度の規制がかかっている】
【そこら辺で爆弾でも安売りされたら治安が一瞬でポストアポカリプス。流石に警察もそれぐらいは働いている】

【じぃいいと見る目は、取り調べの時と同じ種類のどんな冗談も通じないタイプのやつだ】
【嘘をついて見ぬかれた時、取り調べの担当は彼女から禿げたオヤジと、マフィアみたいなオヤジに変わってしまうことだろう】
213 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 22:26:58.36 ID:J3dAHZYJo
>>212

【じんわりと堪能してから貴方を話してちょこんと両手は膝の上】
【近くの席に行儀よく座ったなら貴方の言葉を聞いて、ギクッみたいな顔】
【指先でなぞる頬、柔赤そうなラインに赤みが混じる、濡らしたチークの紅にも似て】


わぅ……すいません、ほんとは、クスリの売人なんですぅ……
あ、あの!でもですね、そんな怪しいお薬売ってるわけじゃないですよ!
服用したら三日三晩元気はつらつになるとか!超ハッピーな夢が見れるとかとかです!


【両手をパタタと振って必至に弁解、懇願するように貴方とめを合わせて】
【そして射抜くような鋭い視線に、うぅと目をそらすだろう】
【藍色に染まる視界、映る鋭い貴方の眼の色は氷柱のように澄んでいて】

【――――――耐え切れないみたいに、ぽぷんと音がした】


ふぇえええん!!堪忍してくださぁい……つい出来心だったんですぅ……
でも友ちゃんみたいな、頭悪くて、どじな女の子に出来る商売、他に、無かったんですぅ……


【じぃと見上げる視線、藍色の瞳にいっぱいの涙を浮かべて】
【麻薬とまでは行かないが、怪しい薬売りなのは間違いないみたいで】
【これから友ちゃんを焼いて食べるんですか?みたいな視線】

【友ちゃんとは彼女の名前であろうか、名称にちゃん付けとは中々に子どもで】
【形の良い鼻を赤くしながら、頬を濡らした】
214 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 22:46:02.13 ID:THbT7IBeo
>>213

【カチリ。彼女の中の仕事用のスイッチが入る。舐められない、容赦のない何も言う前に自白させるオーラ】
【じいっと黙っているのはこれからのことを考えているからだ。手錠、パトカー、鏡張りの取調室、寂しい留置所】
【そんなイメージが付随する。警察が優しいのは一般市民にだけなんだぞ。容疑者には慈悲もないぞ…といった感じが】

荷物はそれだけ?宿にあるなら見せて。作成場所も仲間も言うなら今のうち。ちょうどね、一昨日捕まえた売人を
全部取り調べたところで上に手柄持ってかれて、ちょうど埋め合わせが欲しかったの

【頼もしい警官である。相手が子供でも泣き出しても、眉一つ動かないのである。罪を憎んで人を憎まずとも言うが】
【裏を返せばどんな人間だろうと犯罪は犯罪である。さあ、行きましょうと。案内しなさいと、圧力。口調が全然変わらないのが逆に凄い】

あのね、一瞬の幸福を人に与えても、それは本当の幸福じゃない。長い目で見ればその人の不幸を育てていることになる
被害者なき犯罪というけど…その被害者は、いうなれば“未来”。…何にせよ、よくないことにはかわりない
そもそも、食うに困るほど売れない麻薬って何?聞いたこと無い……

【もう行く宛もありませんということならば、今度は彼女が先頭になる。こういう時に限って、あの腰の拳銃が大きく見えることだろう】
215 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 22:59:05.53 ID:J3dAHZYJo
>>214

【ふぇ、え、とあたふた、おかしい、さっきまでの優しいお姉さんは何処へ、と】
【にへへーよ笑うも、今にも食べら得てしまいそうなプレッシャーが目の前に】
【たじたじ、サイハイソックスに包まれた膝頭がこつん、と音を立てた】


……わ、わ……ぁ……ぅ、こ、これですぅ……
友ちゃんがですね、作ってみたら、ですね、普通の風邪薬だったのです
でも、でもぉ……なんかすっごく変な作用があるみたいで……


【そう言って羽織の袖から小さな包を出すだろう】
【手のひらサイズの薬包紙である、中には見るからに怪しい白い粉】
【少し調べてみれば、成分自体には異常がないと分かるだろう】

【舐めてみたなら効能が分かるだろう、目が冴え身体が軽くなる】
【要するにすごく効くクスリなのである、謎すぎる】


……これから、どうなるんですかぁ……裁判になっても、お金ないですよぅ
友ちゃん知ってはるんです、警察に捕まったら厳しい拷問が……!!
うぅ……痛いのやですよぉ……


【妄想中、顔が真っ白である】
216 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 23:21:01.65 ID:THbT7IBeo
>>215

【薬を手にとって、中身を見てみる。うむ、わからん。ラムネを潰した奴と言われても信じる】
【よくわからないので、取り敢えずは押収。ペロッとするのは実際は危険だからするわけにいかない】

…効き過ぎるか……うーん、まぁー…うーん……これは…………。ああ、大丈夫
法律で弁護士は一人つくから。…まあ、たいていやる気ないか新人だから、負けるけど

【サッサか歩いていたが、急に足を止める。頭を両手で抱えてぐるぐる、くしゃくしゃ。正直困った】
【最初は唸っていただけだが、段々声が大きくなって、わー!っと叫んだら、きっぱりと】

……よし、やめよう。

【刑事(実際の階級ではない)の勘というやつで、この娘の犯罪性は薄い…ということにした。多分、文化的なやつだ】
【もっと、トラディショナルでオリエンタルな国なら合法だろう。あのうどんに入れても良いぐらいのものだろう】
【それに今から取り調べして、鑑識呼んで、調書取るのは面倒だし、周りも渋い顔をするはずだ。すぐ放免になるだろうし】
【そもそも私は非番なのだ。なんでもかんでも仕事熱心はよくない。この娘が嘘つきならもう、この世はアポカリプスだ】

【そう自分を納得させながら、どんどんどんどん歩いて行く。もしもほんとに極悪人だったら。そういう小悪魔も多いぞ】
【それに背後には大きな組織が居て彼女は脅されて………ふと気がついたらストリート沿いの自分のアパートの前だった】

あーあ……わかった、もういいから。うん。もういいよ。信じる、信じるから。今後は普通の風邪薬だっていいなさい。
世の中ね、いい警官なんてそうそう居るもんじゃないんだから。次は無いから。はい、終わり。
…………あー、家泊まってく?……ちょっと、散らかってるけど
217 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/12(火) 23:31:26.14 ID:J3dAHZYJo
>>216

【警察の綺麗だけど怖いおねーさんに付いて行く、こんなに恐ろしいことはない】
【ちらりと後ろを見たなら、頼りなさ気に腰元の刀に手を添えている】
【抜く気はない、むしろ、もっと、お守りのようにも見えて】

【小動物のように縮こまって、貴方の叫び声にビクッとしたりして】


あわわ……わ、え、えっと……?
無罪ですか?無罪なんですか!わー!これで痛いことされないですみますぅ!
お姉さん、怖いけど優しいんですね、友ちゃん安心しました


【肩の力が抜けたのか、へくちと小さなくしゃみを一つ】
【羽織をそっと引き寄せて、華奢な身を包むのだろう】
【ミニスカで袖のない着物に羽織、おおよそ暖かさとは無縁の服装で】

【首元のマフラーに顔を埋めて、暖かいですーなんてバカなことしてる】
【そしてそんな事してたら、お持ち帰り(物理)】
【ほえ、なんて声を出してアパートを見つめた】


え!!いいんですか!!お家泊めてくれはるんですか!?
これで野良犬や野良猫と縄張り争いしなくて良いんですね!
ふ、不束者ですが、何卒よろしくお願いします!


【ぴょんぴょんと跳びはねる、ほっぺたに綻びの色が強まって】
【あどけない笑みが瞬きとともに揺れて、薊色の頬に喜びが強まる】
【さりげに情けないことを言いながら貴方をじっと見つめるだろう】
218 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 23:49:55.78 ID:THbT7IBeo
>>217

【振り返って、ぴょんぴょんはねて喜んでる少女を見るとああコレでよかったんだとも】
【でもあの時誓った正義とは…とも思い、だが少女を見てまあ保護したなら職務を全うしているとも】
【しかしほんとうの意味の教育なら警察に…というところでアパートの階段上がって2階へ】

【一人暮らしにはちょうどいい1DK。部屋は広めでその分家賃は高いが補助が出るから気にしない】
【まあそんな間取りよりも気になるのはその部屋の汚れ具合である。所謂一人暮らしにありがちな】
【脱ぎ散らかした服、洗ってない食器、捨て残ったゴミ…というものは無い。然し所狭しとイーゼルにたてかけられた】
【描きかけの油絵、テーブルの上には筆や画材、描きかけのものやラフの山、画集や参考書があちこちに山となり】
【本棚からははみ出し、いろいろなところにはねた絵の具がカラフルな模様と化している。まあ、結局汚い】

【そんなこんなで足の踏み場もない様な状況で、かろうじてソファとテレビが無事であった】
【また寝室と思われる一部屋はほとんど使っていないようで真新しく、きちっとしていた】

まあ……こんなんだから。奥の部屋で寝ていいよ。私、どうせいつもソファだから。
食べ物は…水とミルクとパンぐらいしか無いや。いつもコーヒーだから…コーヒー飲まないでしょ?

【一部の壁に何枚か絵が貼り付けられている。風景画だった。丁寧に書かれて色が重ねられた、いろいろな場所の】
【ただ、ちょっと片付けを始めた彼女だが作品はどうでもいいみたいでわりと雑に重ねたり寄せたりしていた】
219 :友ちゃん ◆zO7JlnSovk :2016/01/13(水) 00:12:38.82 ID:S6cAHwaEo
>>218

【感嘆の声を漏らした彼女、無理も無いそれほどまでに大量の絵があったから】
【そんな教養など無いのにふんふん、と頷いてみたりする】
【それでも、貴方の絵を見る彼女の様子は純粋に、その絵に惹かれているのだろう】


ふふ、友ちゃんを舐めないで欲しいですね!珈琲なんて飲めるはず無いじゃないですか
更に言うのであれば苦いからとかではなく、お水以外ほとんど飲んだこと無いのできっと身体が受け付けません
とゆう訳でしてお水が頂きたいです、あ!水道水で大丈夫ですよ!

友ちゃんの胃袋は丈夫なので、そんじょそこいらの生水じゃお腹げりぴーにならないのです


【どやる、自身気な表情が顔に揺れたならえへへ,と笑うだろう】
【それは本当に楽しそうで、寝る場所を得たからなどではなく、むしろ】
【人の親切に触れること、あるいは、接する事が楽しいからで】

【ソファにちょこんと座る、子猫のように小さくてスペースは取らない】


絵かくの、好きなんですかぁ?……お姉さん、やなくて……
まだお名前聞いてませんでしたよね――――――

友ちゃんは、友ちゃんです、それ以上でもそれ以下でもないのでそう呼んで下さい


【きょろきょろと絵を見渡しながら、言葉を紡ぐ】
220 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/13(水) 00:43:15.52 ID:GXdqAoO0o
>>219

【彼女の絵の良し悪しはわからないが、かつて美大を目指していた事もあり、父親が彫刻家という情報があれば】
【ある程度の基礎、技量は備わっていると思われる。少なくとも数ならそこらの素人画家より書いているつもりだ】

……じゃあ、まあ、好きなだけ蛇口を捻ってくださいな。
私はコーヒー飲むけどね。好きなものなんてそれぐらいだから。

【と、同じくソファに腰掛ける。テーブルには朝飲み残したコーヒーがカップに残っている。それでいいやと彼女は飲んだ】
【ミルやらサイフォンもあることからかなり拘りは強いみたいだが、無頓着な要素もある。好きなんだかどうなんだか】

…好きだった時もあるけど、今はどうかな。…絵を描いているときは絵だけを考えていればいいから、その時間は好きかも
なんか、描きたいなって思うし。……何言ってるんだろうね。よくわからないなあ…

【好きかどうかと聞かれると素直に言えないし、何故描くのかと言われてもその理由はいつからか失って未だ見つけていない】
【長いこと何かを作っていると失われていく感覚。趣味と本業の間に揺れるとそういう揺れた状態になる】
【でも今更、絵を描くことを失うことは出来ないほど、自分に占める存在も大きい。だから、普段は考えないようにしているのだ】

私は、アレックス。御存知の通り、仕事は警察………はいはい、わかったから。友ちゃんは友ちゃんなのね

【ここで少しだけ見せる彼女の微笑。家に帰って緊張がほぐれたのだろうか。クールも少しやわらかくなっていた】

【と、ここでケータイにコール。着信はいつものところだ。跳ね起きて、電話にでる】

…もしもし?緊急?…護送車の襲撃?相手は?……なるほど。それで対能力者の非常召集ね。了解

友ちゃん。私、仕事だから。絵も好きだけど、私はこっちの道を選んだくらい、こっちも気に入ってる。
…出てく時、鍵かけ無くてもいいから。好きにして。私、いつ帰るかわからないし。どうせ、価値あるものもテレビぐらいだし
それじゃ…いつでもよってね。

【そういって、階段を駆け下りる。停めたバイクに飛び乗って、急加速で飛び出していく。床に転がったラフスケッチには】
【現場や、容疑者…のしごとに関するものも混在している。絵はイメージを具象化するものだ。写像との違いは…また今度に】


/すみませんが、明日も早いのでこの辺で締めにさせて頂きたいと思います
/お付き合いいただいてありがとうございました!

221 :友ちゃん ◆zO7JlnSovk :2016/01/13(水) 00:48:47.89 ID:S6cAHwaEo
>>220

【クールなアレックスが見せたアンニュイな表情にぱちくりとまばたきをする】
【何でなんだろうと小首をかしげて考えるも、彼女にはよく分からなくて】
【蒼白の髪の毛を指先でくるくると弄りながら言葉を探した】

【言葉を探しているうちに何やら慌しい様子、家主は今から出て行くと言う】
【ふぇ、えなんて言っている間に、目の前から消えていきそうで】
【去りゆく背中に一言だけかけられるのなら】


――――――いってらっしゃいですよ!気をつけてくださいね!


【なんて言いながら、去りゆく背中を見つめているのだろう】


/お疲れ様でしたー!
222 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 00:04:21.05 ID:US9GFf1+o
【路地裏】

う、ぐ…っ……。 ぐす、うぅ……っ、けほ……。

【一人の少女が暗がりにうずくまって泣いていた。その衣服は――】
【――衣服と呼ぶには簡素過ぎるか。枕カバーを裂いたような布切れであり】

【しかしそれでいて、少女の手足は比較的綺麗な状態でもあった】
【髪は白。肌もまた同様であり、色素欠乏症のような欠落感がある】
【周囲に関係者らしい姿も、死体も無いけれど】
【ただ薄暗い一角に、少女のすすり泣きが響いていた】
223 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 01:24:53.95 ID:WfYz5va90
>>222

【辺りに響く少女の泣き声を聞きつけてか、その少女の前に一人の男が現れた】
【男は一人すすり泣く少女とその身なりを見て、問いかけた】

ヘイ、ユー!どうしマシタか!?
ワタシは自警団の者デス、怪しい者じゃあありませんヨ!

【少女が置かれている状況になんらかの事件性を嗅ぎ取ったらしく、自警団を名乗る男はそう言った】
【大きな男である。2メートルを超す長身に、筋肉質な体。黒い肌の上から身に着ける白を基調とした服は、見る者が見れば水の国の自警団支部の制服であるとわかるだろう】
【さらにその右腕には、対犯罪者組織「SCARLET」の一員であることを示すシンボルが描かれた腕章をはめている】
【もっともそれらの知識を目の前の少女が持っていなくとも、男のブラウンの瞳はとても穏やかで、悪意など欠片も込められてはいなかった】
224 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 01:52:42.01 ID:US9GFf1+o
>>223

っ、あ……。 おニイ、さん……?
……、…………助、ケテ…っ!

【言葉が辿々しい。大男ながら、明るい雰囲気の男に最初は驚き】
【すぐ背後にある鉄製のゴミ箱に腕がぶつかり鈍い音がする】

【しかしすぐに空いてが誰か、それとなく察したのだろう】
【泣きはらした紅い瞳で彼を見ると、地面に座り込んだまま】
【言葉通り、助けを求めるように手を伸ばした。――何から、までは言わなかったが】

/すみません、気付くのが遅れてしまって……
225 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 02:15:16.52 ID:WfYz5va90
>>224

【ちなみにこの大男、年齢は今年で38歳である。お兄さんと呼ばれるような年では無いし、外見もそれ相応の顔つきである】
【ともかく少女の助けを聞き、伸ばされたか細い手を対象的な太い腕でがっしと掴んだ】
【自身と同じく、ややカタコト気味の言葉。異国の出身の者だろうか。そんなことを思いながら、少女が自力で立ち上がれないのならばその手助けをする】

お嬢サン、今「助けて」と、ソウ言いマシタね?
何者かに襲われているのデスか?…落ち着いたらで良いデスので、話して下さイ。
ワタシはエルストン・ボブディラン。水の国の自警団に所属する者デス。

【混乱している様子の少女を見て、まず自身を信頼してもらうため懐から身分証を取り出す。そこには確かに男の名乗る通りの身分が示されていた】
【少女の発した言葉は少なかったが、まず暴漢に襲われた可能性が高い。そして現在も身の危険を感じているということは、辺りにその暴漢はまだ潜んでいる?】
【そこまで考え、念のため壁と自身の間に少女を挟み込むような陣形を取る。男は少女に背中を向け周囲の気配を探っている。少女が何か言葉を発したならば、それに応じるだろう】


/いえいえ、全然問題ありません

226 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 02:33:25.05 ID:US9GFf1+o
>>225

【力強く腕を掴まれると、折れてしまいそうな指で握り返す】
【身体は軽い。自力で起き上がる前に手助けを受けると】
【そのまま反対側に倒れてしまいそうなほど軽々と身を起こす】

【――手は握ったまま。精一杯の力強さで大きな手を握っていた】
【線の細い少女の外見で唯一尖った爪が、男の肌に血を滲ませかねないほどで】

…………。 ……える、ス…トン……?
ミズの……水、の…国……。……アッチ、に…。

【片言――というより、言語に不慣れとでもいうような反応で】
【おもむろにもう一方の手。その人差し指で路地裏の奥を指す】
【暗がり。恐らく三叉路か何かになっているはずだが、良くは見えない】

【少女は手を離すことなくそちらを見つめて、次にエルストンを見上げた】
【赤い瞳は空虚、或いは疲れきっていて。小柄な身体は小刻みに震えていた】
227 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 02:55:48.32 ID:WfYz5va90
>>226

【少女の爪が仮に男の肉に食い込んでも、男は声1つ上げずに周囲に気をめぐらし続ける。人民の生活を守る者として、少女の身の安全を確保するのが最優先事項だからだ】
【少女の言葉に反応し、指さした先の分かれ道を見る。だが今のところ何者かが潜んでいる気配も無く、物音もしない】
【男は少女に向き直り、身長差からやや見下ろす形になってしまうが、あくまで優し気な声色で問いかけようとする】
【しかし、先の少女の言葉に違和感。どうもうまくコミュニケーションが取れていない様子である。言語教育を受けていない子なのだろうか、と少し考え込んだ】
【結局、少々失礼な形になってしまうが男は直接少女に尋ねてみることにした】

そうデス、水の国の者ですヨ。
…お嬢サン、そノ……ワタシの話す言葉は、わかりマスか?

【申し訳なさそうにそう問うた。少女の様子からすると、軽いパニック状態に陥ったため一時的な失語状態になっているようにも思える。もしかするとその両方か】
【それならそれで少女を保護する方法も変わってくる。男は周囲への警戒を続けたまま、少女の返答、あるいは何らかの反応を待っている】


228 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 03:01:31.76 ID:US9GFf1+o
>>227

コトバ……? ……分かル、けど、少し……。
……ムズカシイね、"アナタ達"のコトバ、は……。

【返事は――方向性の違った物だった。握った手の力がより強まる】
【人体の限度を超えているように思えるその握力は】
【下手をすれば少女の手が折れてしまいかねない。それほどのものであり】

【そして返事の直後、少女の背後にあった鉄製のゴミ箱から"何か"が飛び出す】
【生物だろうか。凄まじい速さで飛び出た"ソレ"は、大男の頭部を貪り食おうと食らい付く】
【顎は"上下"ではなく"上下左右"――口の裏側にはびっしりと細かい牙が並ぶ】
【もし、油断していたなら。男の首から上は、この一撃で胴と分離するだろうと思われた】
229 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 03:19:13.61 ID:WfYz5va90
>>228

【奇妙な少女の返答に疑問を覚えたその瞬間、男の目の前に「何か」としか形容しようのないものが飛び出してきた】
【丁度正面から襲い来ることとなったその物体に男は目を丸くし、さらに右腕は少女の異様な怪力で押さえられている】
【化物じみた口が男の眼前に迫り。】

…ッ!『発毛腕(ハッピーニューヘアー)』!!


【スキンヘッドだった男の頭部から、凄まじい速さで頭髪が生え、伸びていく。触手の様に髪の房は自在に動き、目の前の生物を絡めとるように縛った】
【男の能力『発毛腕』は、名の通り発毛を操る能力。自身に生えている体毛を伸縮自在に操ることができ、また触れた壁や床などから髪を生やすことも可能な、応用力の高い能力だ】
【ぐぐぐ、と生物の顎は男の首元の直前で静止する。流石に想定外の事態だったようで、男は化物と力を拮抗させながら少女に問いかけた】

…お嬢サン、コレは一体!?あなたはコイツに襲われていたのデスカ!?それトモッ…!

【男の目がやや悲し気な色を帯びる。自警団としての長年の経験が、自身を窮地に追い込んでいる張本人が目の前の少女であるという考えに思い当たったからだ】




230 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 03:31:56.26 ID:US9GFf1+o
>>229

【ギリギリと縛り上げられた"ナニか"――その体表は生物的な赤と桃色の中間であり】
【体表は粘膜に覆われている。軟体で、骨があるかは不明だが】
【間違いなく目は無かった。口だけが四方に裂け、そこから唾液がだらりと垂れて】
【――「ジュウ」と路面を焦がす。つまり唾液の性質は強い酸性であることを示し】

ァ……失敗シタ、よ……? シッパイ…しっぱい……。
エルス、トン……このチカラ、は……ナニ…?

【縛り上げられた"ナニか"――その蛇のような形状と色合いから】
【仮に"触手"とするが。頭髪に縛られたソレは急速に収縮し、鉄箱の中に姿を隠す】

【――ウナギがのたうつような音がして、直後に再びエルストンへと二筋の触手が迫る】
【より体表の粘膜が多い。同じように縛り上げても、ずるりと表皮が滑ってしまうだろうか】
【攻撃手段も違う。口は閉じ、代わりにその中央から30cm程の尖った棘が伸びていた】
【一方は胴体を、一方は頭部を。それぞれ刺されば死を狙える位置へと高速で迫る】

【少女は――笑いもせず、不思議そうにエルストンを見つめていた】
【"能力"が珍しい。そういうような口ぶりで、じっと赤い瞳を向けていた】
231 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 04:03:19.30 ID:WfYz5va90
>>230

【少女の言葉から、エルストンは自身の悪い予想が的中したことを確信した】
【こんないたいけな少女がためらい無く人の命を奪おうとしている。あるいは、そもそも人間社会における常識や倫理が無い?】
【ひょっとすると目の前の少女は人外の存在、そんな考えが彼の頭をめぐる】
【だが悠長に考えている暇は無く、触手が鉄箱に姿を隠したと同時、男は少女に拘束されたままの右腕を、肉が裂けることすらいとわず強引に引き抜いた】
【右腕から血が滴る。とはいえこれで拘束は解け、自由に四肢を動かせるようになった】
【それと同時、彼のもとへ高速で迫る二本の触手。先とは違う粘膜の様子を察知し、男もそれに即座に対応した】

発毛腕(ハッピーニューヘアー)…『硬質化(ハードワックス)』!

【男の両腕に生えた腕毛がそれぞれ触手に向かい伸びていく。男が叫ぶと同時、毛の束の先がまとまり、さながら刃のような鋭さを持った】
【それらは二本の触手の肉体部分を貫通し、エルストンへ棘が届く前に動きを止めた。丁度、泳ぐ魚をモリで突き刺したような状態である】
【得体のしれぬ少女の奇襲にもうまく立ち回って見せるのは流石SCARLETの一員といったところか。少女にエルストンは正面から対峙する】
【彼は考えていた。眼前の少女は悪であるのか、それとも力の使い方がわからないだけの無垢な存在であるのか。後者であることに望みをかけ、男は口を開く】

お嬢サン、よく聞いてくだサイ!私のこの毛を操る力は、この世界で「能力」と呼ばれる不思議な力(ちから)デス!
「能力」とは自分の心の力で制御するモノ!アナタがもしこの生き物で誰かを傷つけたく無いのナラバ、そう強く心に念じるんデス!

【当然、少女と触手の関係がいわゆる『能力』によるものなのかどうかはわからない。何らかの科学技術によるのかもしれないし、あるいは少女が人外の存在であるのなら、少女に生来備わっている機能なのかもしれない】
【だが男は少女が無垢な存在であるという可能性に賭け、説得を試みた。真紅の瞳を見つめ返すそのブラウンの瞳は、あくまで慈愛に満ちていた】



232 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 04:20:14.11 ID:US9GFf1+o
>>231

『鋳彙ィtあtk麌ガ、っ淤――!』

【貫かれた触手から声とは思えない叫びが響く】
【流れ出る血は紅い。しかし粘液と混ざっているからか】
【元からそうなのか。粘性を持ってベッタリと落ちていき】
【ただ刺されただけでは動きは止まらないらしく、身を撓らせて棘を引き抜き】

【――ほぼ同じタイミングで、少女は手に残ったエルストンの肉、表皮】
【それを"口へ運ぶ"のである。鉄錆の味すら無味というように】
【美味しそうでも、不味そうでもなく。静かに咀嚼しながら】
【"間違った"というように指を噛む。爪が砕け、滴る血も紅い舌を覗かせて舐め取り】

『樵、ッレrGg盧膿li彰李膺kルく……?』

……コレが能力、……のう、りょく?
こ、ころ……? …――こころ、は、ナニ…? え…エルン、スト……ォ?

【悪か、無知か。そのいずれでもないという可能性があるとしたら、どうか】

【――触手は近接戦闘では敵わないと学んだのだろう】
【棘を収め鉄箱から双頭を見せたまま、エルンストへと"唾液"を吐きつけた】
【その成分は強度の酸性。量もまた多く、容易に顔を覆うだけの分はあり】
【少女は変わらずジッとエルンストを見つめていた。割れた爪から溢れる血を舐めながら。】
233 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 04:54:07.38 ID:WfYz5va90
>>232

【自らの血肉を咀嚼して見せる少女の姿を見て、エルストンの額に汗が浮かぶ】
【やはり眼前の少女は人ならざる存在なのだろうか。もしそうならば我々人間はどうすれば良いのか、人間の考える善悪の基準を少女に当てはめても良いのか】
【それでも彼に逡巡している暇は無く、強酸の固まりが飛ばされる。瞬時に彼が地面に両手をつくと、コンクリート表面から樹木のように「毛の壁」が産み出された】
【何層にも構成された綿密な毛の壁は、酸によりジュウジュウと音を立て溶かされながらも、能力者本体…エルストンの身を守ることに成功した】
【防御面に関してもかなりの性能を誇る「自在に毛髪を生み出し操る能力」。何より場慣れしている様子の男の立ち回りも相まって、男はいまだ決定打を喰らわずにいる】
【毛髪の壁は左右に分かれ、二人を結ぶ視線が復活する。少女は変わらず感情の読めない表情で男を見つめていた】
【しかし発される言葉には動揺の雰囲気が読み取れて。少女の胸中を正確にエルストンが見破ることはできなかったけれど、その動揺を信じて、なおも男は力ではなく言葉に賭けた】

そうデス、心デス!心から相手を傷つけたくないと思うなら、きっとその生き物はその通りに動いてくれるのデス!
能力の中には、一見自分の意思とは関係なく発揮されるものもありマス、しかしそれはその人の深層心理…つまり、心の奥の奥の、本当の気持ちに従って動いているのデス。
もしかするとアナタのその「生き物」は、アナタが周りになんとなく感じている不信感や不安感に従っているのかもしれマセン!
でも、ワタシはアナタを傷つけまセン!お嬢サン、どうかワタシを信用してくだサイ!!

【男はなおも力強く少女の瞳を見つめる。まるで自分の見当違いかもしれない、理解し合えるような相手ではないのかもしれない。それでもなんとか男は、目の前の少女に人間らしく生きてほしかった】




234 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 05:06:45.55 ID:US9GFf1+o
>>233

【壁を創りだして酸の攻撃を防ぎ止めたエルストンを、ジッと少女は見つめる】
【それと似たような動きを触手が見せる。無いはずの目でじぃ、と見て】
【相手が戦闘に長けていると学んだのか、近接攻撃は勿論のこと】
【酸を含みこそすれ吐きはせず。――相手の言葉に、返事をするより先に】

【『ぞぶっ』――少女の肉体を腰から上、半分ばかり】
【ただ一口に触手が喰らうと、その身体は制御を失って膝を付き】

【残った身体をもう一つの"頭部"が喰らいつき、"ごりごり"と音を立てながら】
【細長い胴体の奥深くへと飲み込んで、少女の痕跡すら残さず"食して"しまい】

『盧膿li彰李膺kルく……矯ミミbかィ鋳。
細ボO塢唹う、える、す都、トnNg……喰、た――。』

【言語、なのか。双頭の触手は鉄箱の中へと姿を消すと、ガタガタと箱が揺れ始め】
【そして、静寂――恐る恐る鉄箱を覗きこめば、そこには多量の粘液と】
【箱の底、路面を溶かして下水道へと続く穴が形作られていた】

【――逃げたのだろう。戦うに利がないと判断したのか】
【でなければ目的を達したのか。どちらか分からないが――ひとまずの脅威は、去った】

/時間も時間ですので、こちらはこれにて下がりますね。深夜にありがとうございました!
235 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 05:08:24.58 ID:WfYz5va90
>>234
/こちらこそ有難うございました!〆は起きてから書きます
236 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/14(木) 17:18:06.37 ID:WfYz5va90
>>234

【少女の反応を待つ男の目の前で展開されたのは信じがたい光景。】

…お嬢サン!!くソ…!

【腕毛を伸ばしなんとか触手の動きを止めようとするも、間に合わず少女の体は半分になってしまった。】
【更にもう半分も触手により「捕食」されたのか、状況を理解する余裕も無いまま、後には異形の触手のみが残った。】

(喋っタ…!?あの触手自体が意思を持ってイル?ならばあの子は!?一体…!?)

【迷う男を置き去りに、触手は箱の中へと消えていった。異形の存在がこの場を去った気配を感じ取ると男は箱の中をのぞき、続く先の下水道に気づく。】
【視線を箱の中へ落としながら男はできる限りの推測をする。先の少女と触手の関係性や、その性質について。】

(…あの子を触手が食してから触手は言語らしきものを発しタ。ならば、少女は疑似餌であり触手こそが本体…?)
(それと『"アナタ達"のコトバ』という発言には不自然さを感じル…魔海から来た新種の生物か何かカ?)

【しかしいくら考えども答えが出ることは無い。ならば自分に出来ることは仮説に基づく調査と、新たな被害が出ることの予防。】

(…出会ったのが私で良かっタ。これが無力な一般人であったナラ、ひとたまりも無くその命を落としていたでショウ…)
(あの少女は危険すぎル。野放しにしておくわけには行かナイ…!一刻も早く保護するか、あるいハ…!)

【おそらく真実は、男の考えた「或いは」の状況に近いのだろう。少女が人民に大きな危害を加える存在であるならば、自治組織は少女を「駆除」しなければならない。】
【それは男自身も気が付いていたのだが、その可能性を認めたくないとでも言うように首を振り、戦闘の跡残る路地裏を去っていった。】
【そして、ついぞ男は「この戦いにより少女がなんらかの成果を挙げることに成功した」という可能性に気づくことは無かった。そこに辿り着けなかったのは仕方のないミスなのか、或いは…】


/これでこちらも〆となります、お疲れ様でした!


237 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/14(木) 20:52:57.64 ID:5vggO6Weo
【水の国、広場】

【街の喧騒から少し離れた広場、噴水で有名ではあるが】
【今夜は一段と寒く、沙雪がちらほらと姿を見せる頃合いで】
【人通りは耐え忍ぶように厚着をしていて】


お薬は……お薬はいりませんか……?
はぁ、ちっとも売れはらへん……このままやと、また飲んだくれのパパンに虐められるわ
友ちゃんは強い子でいはるけど、このままじゃ涙がでらはる、だって女の子だもん


【マッチ売りの少女気分の少女が一つ、言の葉を揺らして】
【硝子細工のように透き通った蒼白の長い髪】
【白い無袖で丈の短い着物の上に藍色の鮮やかな羽織を羽織る】
【黒いサイハイソックスにマフラーの細身の少女】
【藍色の瞳に紫紺のブーツ、藍色の帯に刀が一本刺さっている】

【口ぶりからは割と余裕そうではあるが、寒そうな格好なのも事実で】


くしゅん!!……あー……ほんまに召されそう


【羽織をばさーっと着込んで粗末なござの上にちょこんと座っている】
【きちゃない字で書かれた旗が側にあって、薬売りますと書かれている】
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/15(金) 19:19:54.84 ID:ZrvPVJb60
【水の国――首都にある国立図書館】
【ジャンルは様々、強いて言えば本であるというジャンルさえ共通していれば、どんな本でもあるようなこの場所】
【数こそ多くないけれど、禁書と呼ばれるようなものまで納められている――もちろん、一般人が踏み込むことは、許されていないけれど】

…………。

【特別に古びた本棚の集まるエリア、更にその奥にある、入口。常に見張りが立っているような――その向こうにある本を思えば、仕方のないことか】
【本棚の影からちらりと眺めるのは人影がひとつ、それも、まだずいぶんと華奢で、背が小さく――子供のようだが、それにしては少女のようで】

【くすんだような金色の髪は毛先が薄らとピンク色の色素を持つ、先に向かうほどくるりと巻く、緩い癖毛で】
【あどけなさを多少残す顔はそれでも、拗ねた子供のような表情をしていて。特別に鋭いのは勿忘草色の瞳、――肌はいかにも貧血か不健康めいて蒼白く】
【これもくすんだような生成りのワンピースは足首まで隠すロング丈、布地を多く使っているもので、身体つきはようくうかがえないが、それでも華奢すぎるくらいなのは分かる】
【それにぎゅっと古びた茶色のフード付きのマントを羽織っていて。さすがにフードこそかぶっていないものの、なんというか、布に被さられた、という印象がある】
【その背丈は百四十二センチほどだから。少し服が大きく見える――というか、実際に、少しサイズが合っていないのかもしれなかった】

……――はぁ。

【小さなため息を漏らして、少女は隔離された区画への入り口から目を逸らす。――さっきからちらちらと門番と目が合っているし、そろそろ限界のような気がして、】
【近くの本棚から見繕った、最悪人を殺せるだろう本を落とさぬように抱き直して、くるりと背中を向ける。――蘇生術について書かれた本だ。けれど、】
【年季こそ入っていても、まさか本当に本当、本物の蘇生術について書かれているわけでもない、にせもの。それでも大事に本を抱いた少女は】
【放っておけば同じ室内にあるテーブルの隅っこに陣取って、それでもどこかすがるような真面目さで、本を開くのだろう】

【窓の外はすっかりと暗くなっていた。だけれど、閉館まではまだまだ時間がある】
【部屋の中はしんと静かで、時々、うるさくない程度の物音が、聞こえてくるのがせいぜいで――もし何か音でもすれば、すぐに気付くはずだった】
239 : ◆7UX9cGhBg6nv [sage]:2016/01/15(金) 19:24:08.12 ID:rmp2JxLdO
【暗い路地裏。この星の国において、その場所は最悪の意味を持つ】

【犯罪者、テロリスト。とにかくそういった反社会的な存在が集まる場所だ】

【それらに属するわけでもなくそこに向かうのは、よほどの酔狂か、あるいは自殺志願者か】

【しかし『そいつ』は、自らの意思でそこに踏み入ったのである】

「て、てめえ何もんだ! 俺の能力をものともしねぇで、身体系の能力者か!?」

はて、生まれてこのかた、医者にそんな特異体質があるとは聞かされていないな。

【血まみれになり吠える男に迫るのは、なんとも異様な姿をしたナニカ】

【黒いボディスーツに身を包み、しかし顔には幾重にも包帯を巻いたそいつは、目の有るであろうあたりから赤い光を漏らしていた】

「政府の連中か? それとも機関の人間の気まぐれか!? なんだって俺を狙うんだ!?」

どちらでもない。まずそれが一つ目の質問の答えだ。

【人差し指を一本見せつけるように上げ、そいつは出来の悪い生徒にものを教えるように語りかける】

そして二つ目、なぜお前を狙うか。

【次は中指を上げ、そいつは答える】

お前が、能力をもつからだ。

【そのまま二本の指を、相手の眼球に突き刺す】

【男はそのまま、悲鳴をあげることもなく倒れ伏した】

ふむ、少し力を込めすぎたか。こいつから仲間の居場所を聞くつもりだったんだが。
まあいい。能力持ちのクズなんて、探せばいくらでも見つかるだろう。

【そう言って、あてもなくそいつは彷徨う。そいつの名はタレンツデッド。能力を持つ人間を狙う死神だ】
240 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga sage]:2016/01/15(金) 21:02:53.71 ID:NG7UISB80
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――雷の国 路地裏】

……忍び寄る様は流石だったが、それでも所詮は喰い詰め者だな……

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【まるで何かに苛立ちを感じている様な攻撃的な眼をしている、身長170cm前後の青年が】
【呻きながら足元に倒れ伏す、浮浪者と思しき男に対して、侮蔑の視線で見下ろしている】
【――――男の左足は、曲がってはいけない方向に曲がっており、そばには重りを布で包んだ粗末な棍棒が転がっていた】

……運が悪ければ、そのまま死ぬだろ。それがなくても、病院に掛かる事もないなら、もう2度と歩けまい……
つまり、お前に殴られて財布を奪われる様な人間は、もう出てこないって事だ……

【足元に転がっている財布を、青年は拾い上げる。どうやら、揉み合った末に落としてしまったものらしく】
【軽く埃を叩き落とすと、青年はそれを懐へと仕舞いこんだ】



【――――所変わって、水の国 路地裏】

よーし、お前ら……腕に覚えがあるって言うなら、俺について来ないか?
このバッジを見れば分かるだろう? ……お偉いさんに覚え目出度くなれば、もっと面白おかしい世界に行ける事になるんだぞ?

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【数人の柄の悪い青年達を前にして、したり顔で誘いの言葉を掛けている】
【青年たちは、胡散臭そうに、だが同時に興味を引かれると言った様子で、その男性の言葉に耳を傾けていた】

【――――男性のテンガロンハットには、逆五芒星を象り、その下に≪No.21≫とあしらわれたバッジが留められていた】

分かるさ。お前らファッションじゃない、本気のワルだろう? ひょっとしたら、もう人殺しの経験もあるんじゃないのか?
なら、決して悪い話でも無いと思うぞ? お前らにツキがあるなら、お前らは欲しい物に、どこまでも手を伸ばしていけるのさ
――――なにせ俺には、今ホットな『あの』六罪王に、直接繋がりがあるんだからな?

【男性の口にした六罪王と言う言葉に、青年たちはハッキリと顔を上げる】
【ただでさえ薄暗いその空間に、胸焼けしそうな空気が垂れこめ始めていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
241 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/15(金) 22:46:00.38 ID:92VfL4Fa0
>>239

【性別不詳、正体不明の怪しい人物が繰り広げる凄惨な光景を前に、1つの人陰がおずおずと進み出てきた】
【白いボブカットの頂点から一本大きな毛が跳ねた髪型が特徴的な、高校生ほどに見える少女だ。頭には茶色の耳当てをかぶり、身に着けるのは水の国の自警団支部の制服】
【その眼光はどこか気だるげで、しかし目の前の包帯人間相手に怖気づいている様子は無かった】
【倒れ伏した男と、たたずむ怪人を見やってから少女は口を開く】

…見てた。……能力持ってる人間なんて大して珍しくも無いのに。…変なこと考える人。
…とりあえず人殺しを見逃すわけにはいかないから。現行犯で逮捕するよ…変態スーツ女。

【おとなしそうな外見とは裏腹、相手を小馬鹿にするような珍妙な呼び名と共に少女はそう宣戦布告した(ちなみに少女は口振りから相手を女と判断したらしい)】
【見る者が見れば少女が治安維持組織に組する者と知れるだろうが、そんな知識は無くともスーツの人物にとって、少女は敵対するに充分な理由を持っていた】

…『蝶々夫人(バタフライエフェクト)』…

【言葉と共に少女の背中に現れたのは、黄緑に光る蝶の羽。羽の輪郭はおぼろで、その端の部分から風に乗って無数の粉末が周囲を取り巻き始める】
【紛れも無い能力者の証。眼前の人物が最も忌み嫌う対象がそこに存在していた】



242 :タレンツデッド ◆GiVMSIhFkA [sage saga]:2016/01/15(金) 23:29:08.40 ID:l12AnxA90
>>241
やぁお嬢さん、こんな夜更けに奇遇だね。そんな君に、幾つか質問してもいいかな?

【包帯を巻いたそいつは、答えを聞く前に質問を行う】

一つ、私のこれは正当防衛とは思わないかな?
見るからに危険なこの男と、包帯でぐるぐる巻きな私。果たしてどちらが弱者だろう。
もしかすれば、身を守るためにこの男を殺害したかもしれないぞ?

【先ほどと同じように、彼女は人差し指を立てる】

【その指には、赤い液体が付いていることが嫌でもわかるだろう】

二つ、私が女であるとは限らないとは思わないかな?
ご覧の通り、胸元は膨れてやしない。この黒いボディスーツだって、目立たないように着込んだものだ。

どこぞの英雄を召喚するゲームや、敵の基地に気づかれないように潜入するゲームにも、ボディスーツのような服装をした男のキャラクターも存在する。
ほら、どちらかはわからない。

【そう言って、今度は中指を立てる】
【赤く染まったその二本の指は、まさに先ほどの光景の焼き回しだろう】

ところで、君は今バタフライエフェクトと言ったかな?
そしてその散らばる鱗粉のようなもの。
これじゃあまるで……君が能力持ちみたいじゃないかぁっ!

【そう言ってそいつは、足元に転がる死体を相手に向けて蹴り飛ばす】

【これの目的は二つ。一つは相手の能力の様子見】
【もしも接触することで反応するタイプなら、これで何かしらのアクションを見られるはず】
【もう一つは目くらましの一種として】
【飛んでくる死体にかまけてる間に接近と攻撃を同時に行おうという寸法だ】

【あの死体に何の異常も起きなければ接近を行い、何かが起きればじっとその正体を考察する】

【戦闘はもう始まっているのだ】
243 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/16(土) 00:01:45.66 ID:+AkXjk740
>>242

【蹴り飛ばされた死体を少女は軽やかに避けて見せる。一般の少女の身のこなしではない、相当に足腰が鍛えられているのだろう】
【舞う粉塵に死体は頭から突っ込んだが、特に異常は見られない。それを見て、目の前の「そいつ」はどういう判断を下すだろうか】

意外によく喋る…。…あんまり喋ると小物っぽく見えるよ。
…それに、全部見てたし…。あの人は完全に戦意を喪失してた、正当防衛でも何でもないと思う…。
…性別に関してはそうだね…じゃあ訂正する、変態スーツさん…

【そう言う彼女も結構よく喋る。ああ言えばこう言うというやつだろうか、舌戦でも負ける気は無いといった様子である】
【死体を避けつつ、「彼」に間合いを詰められないよう後方へ跳ぶ。二人の動きで周囲に舞う砂塵は、いつしか霧のようにその濃度を増していく】
【ラファイエットの能力『蝶々夫人(バタフライエフェクト)』は「粉」を自在に操る能力である。周囲に存在する粉状の物質を操ったり、あるいは自ら様々な粉末を生成して戦う能力だ】
【少女の羽ばたきが増すと共に、粉末が「彼」の周りを渦上に取り囲んでいく。濃密に敷き詰められた粉末は目くらましとして働き、更には特殊な効果も持ち合わせていた】
【もしも一般の人間がその粉末を吸い込んだり、あるいは目に入れたりしたならば、強い刺激が各器官を襲うだろう。いわゆる催涙剤の効果を及ぼす粉末が「彼」を取り囲んでいた】
【効果は痛みにとどまらず、咳、嘔吐感、涙などが数分に渡って持続する。もっとも相手が人間である保証は無いし、包帯が特殊な素材で構成されているならば話は変わってくる。効くのかな、そんなことを思いながら少女は相手の反応を待った】
244 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga saga]:2016/01/16(土) 00:22:09.05 ID:TikB7deJ0
>>243
【みたところ死体に異常なし。となれば、あの能力は自動反応するタイプでないか、或いは生きたものにしか使う必要がないか】

ぬぐっ!

【効果は唐突に現れた】

(この痛み、それに加え咳、吐き気、涙。催涙系の毒か!)

【気づけば辺りは濃密な鱗粉に囲まれていた】
【路地裏というフィールドの関係上、やたら方向転換でもしなければ相手のいる方向自体はなんとかわかる】

【だが、その鱗粉に加えトメドメなく流れ続ける涙と激痛があったのでは、目は使い物になるまい】

(ぬかった! 相手の術中にハマるなんて恥さらしもいいところだ!)

【よろりと壁際に手をつく。少なくともこのままでは肉弾戦に持ち込むのは絶望的といえる。
なら、肉弾戦に頼らない戦い方を考えなければならない】

ドゴン!

【イラついたように、壁を思い切り殴る。少なくとも、この鱗粉が能力者本人に通用しないならそう見えただろう】

【コンクリート片が、その殴打とともにボロボロと崩れ落ちていく】

【今はまだ、動かない】
245 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/16(土) 00:44:27.96 ID:f5Qxev960
【森の奧地。魔物も多いと噂され、普段ならば人気など皆無である筈の其処】
【今宵は二人分の足音が聞こえ――――身形を見るに、謂わば雇われ傭兵である事も直ぐに理解出来るか】


「しっかし美味しい依頼に有り付けたモンだなぁ。精霊だか妖精だか分からないがガキ一人生け捕りにするだけで数千万が手に入るなんてよ
この手錠を填めちまえば魔力も制限出来ちまって後はコッチのもんなんだろ?」

「……何でも生き肝を喰らうとその力を手に入れられるだかとか何とからしい
人間では無いのだから相手も只の子供では無いだろう。そんな軽口を叩いて油断しているとあっと言う間に消し炭にされるかもしれないぞ」

【一人は長剣を腰に提げたラフな格好の男。もう一人は弓を手に辺りを警戒しつつ進む男】
【二人の遣り取りからして、何らかの捕獲の依頼を受けて此処まで来た事は分かる】
【然れど、その対象が魔物だとかでは無くどちらかと言えば幻獣にも似た部類ではあるのだが――――】

【何にせよ、何者かが近くを通る或いは様子を伺ったならば双方共に其方へと顔を向けて】







【路地裏。日々諍いが絶えることは無く、常に新しい血が古い血痕を上塗りしていると言い表しても良い其処】
【今宵もまた怒号やらが響き渡っていたのだが――――事の中心人物は、何ともこの場には似合わない者であった】
【修道着を纏った赤髪の女。それだけならばただ女が襲われて居るのだと判断も出来ようが】
【奇しくもその逆。女が一方的に複数の人物を叩きのめしている、なんて展開だ】


「――――笑えるわね。たった一人の女を殺す為に複数人で襲ってきた挙げ句何も出来ずに返り討ちだなんて
……さて、答えて貰おうかしら。アンタ達が連れてった子供達についてだけど」

【傍目から見ればどちらが悪者かなんて分かったものでは無い】
【血塗れの男達に、返り血のみの女。更にはその髪を掴んで持ち上げている、なんて状況なのだから】

【先程の怒号もこの時間なれば遠くまで響く事だろうし、或いは戦闘の音を聞いた者も居るであろう】
【何であろうと、この場を訪れたのならば。女の鋭い視線が其方へと向けられる事になるはずで】
246 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/16(土) 00:48:26.01 ID:+AkXjk740
>>244

【「彼」の手は容易に粉塵の壁を抜けて壁に到達する。彼女の能力はあくまで「粉状の物体」しか操れないため、粉末を凝縮させ固体と化し堅牢な防壁を作る、などといった芸当は不可能なのである】
【能力の性質上、粉塵のうずの中にいる相手の様子を察知することは容易い。意外にも相手は催涙剤へ通常通りの反応を示したが、かといって少女の警戒が緩むことは無かった】
【「彼」が無理やりに壁を突き抜け突撃してきた場合に備え、少女の羽の色が黄緑から赤へと変わる。そして少女は口を開いた】

…もしもし、聞こえる…?…あんまり余裕無いと思うけど、…よく聞いて…
…私この国の人間じゃないけど…。星の国の自治組織とは前もって話をつけてあるから…そのうちにここに増援がたくさん来るはず…
…死体もあるし、…変態スーツさんを逮捕する理由は揃ってる…。…だから、大人しく捕まったほうが良いと思う…
…私、その気になったらもっと致命的な粉末とかも出せるし… …第一、そのまま粉末を吸い続けてるだけでも、塵肺(粉塵を多量に吸い込むことにより起こる肺の病気)のリスクが高まる…
…投降する気があれば、能力は解除するから… …当然、逃げられないように出口は催涙剤で塞ぐけど…

【相手が犯罪者とはいえ、むやみに傷つけたり疾患を負わせるのは自治組織の一員として規則に違反する。相手が見たところ動く気配が無いのを感じて、少女は投降を呼びかけた】
【ちなみに付け加えておくと、周囲に舞う粉末は全てラファイエットの能力の支配下にある。微粒子の1つ1つを操ることにより、ラファイエット自身は催涙剤の濃霧の中にいても、雨の中傘を差すように自身や味方を防護することができるのだ】



247 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 01:25:36.60 ID:TikB7deJ0
ゲホッ、ああ、それはまずいな……ならば、仕方あるまい……命を散らし、一矢報いるとしよう!

【先ほど動きそのものを阻害しなかったことからも、鱗粉自体に物理的な拘束力はない様だ】

【だからこそ、このコンクリート片たちが役に立つ】

【タレンツデッドはおもむろにコンクリート片をつかむ。大きさは大体、こぶしの半分くらいか。それを、思い切り相手がいるであろう方向に投げつける】

【それも一つや二つではない。なるべくばらけるように、六つほど投擲】

【身体能力の強化という至極単純で、しかし強大なその能力を用い投擲されるそれらは、一つ一つが必殺の威力を秘めている】

【だが、そんな不確かなものに頼るほどバカではない】

【自らも相手のほうへ、走りぬける】

【コンクリート片に意識を捕らわれているうちに、かすむ視界でも相手を補足できるほどに近づき、仕留めようというのだ】

【それに気づかれたら、あるいはほんの一瞬でもその致命的な鱗粉を出せるのならどうしようもないが】

【だが、手も足も出ずに封殺されましたじゃ、格好もつくまい】

【弾丸のごときコンクリート片と、その後ろからヒョウのようなスピードで迫るタレンツデッド】

【この二つの脅威を前に、彼女がとる行動はいかに】
248 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/16(土) 01:54:31.94 ID:+AkXjk740
>>247

【自身が操る粉末の渦の中で、自身の意思に反して動く粒子たち。すなわちそれは相手がなんらかの行動を起こしたことを示す】
【粉塵の舞う中で相手が起こす行動は、能力から手に取るように把握できる。そしてラファイエットの表情は、しまった、という様に変化する】
【彼女の能力は毒性の粉塵の幕を張って相手の動きを制圧することが専門であり、その幕を強引に抜けた敵の攻撃に対する防御手段にはあまり長けていないのであった】
【大砲の砲弾に匹敵する投擲が6発、更に敵本体がそれぞれ豪速で接近。防御手段は無し。無表情だった彼女は苦虫を噛み潰したように、腰のホルスターへ収められた拳銃を取り出し、構えた】

…この手はなるべく使いたくなかったんだけどっ…!

【放たれた一発の弾丸は、丁度自身とタレンツデッドの中間あたりでコンクリート片と衝突し、「火花が散った」。】
【轟音。地響き。周囲の窓ガラスが吹き飛ぶ。俗に言う「粉塵爆発」である。粉塵爆発が起きるのに特別な粉末は必要ない、能力を駆使すれば爆発の条件を満たすのは至極容易であった】
【大爆発の威力によって、コンクリート片は軌道を変えられあらぬ方向へと飛んで行った。もくもくと立ち込める煙の中、ラファイエットは頭から血を流し膝立ちになっていた】
【制服は爆風に耐えられるよう対策が施されてある。だが爆風によって吹き飛ばされること自体は防御しようも無いので、後方の壁に勢いよく激突した結果だ】
【それ以外に目立った外傷は無い。事前に素肌は耐火用クリームを塗ってあるし、飛び散ったコンクリート片は運良く彼女の体を貫かなかったようだ】

…殺しちゃったかな…

【ふらつく頭を抑えるようにして立ち上がる。事前準備が万端であったラファイエットに対し、タレンツデッドはどうであろうか。底の知れない様子はあったため油断は禁物であるが、果たして】


249 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 02:26:03.63 ID:TikB7deJ0
【それはほんの一瞬の出来事だった。本当に一瞬のうちに、視界は光に包まれて、耳から血が噴き出るほどの轟音に襲われる】

【そんな圧倒的な破壊を前に、耐えきる肉体など持ち合わせていなかった】

【体中あちこちが黒く焦げ、腕も一本吹き飛んだ。当然包帯に包まれていた素顔もさらされているが、しかしそこにあったのは醜いとさえいえるほどに、傷に包まれた顔だった。当然、それは爆発によってできたものではないだろう】

【熱か、あるいは酸か。溶けたゴムが冷え固まったかのようにごつごつとした皮膚。ほほには歯が見えるほどに大きな傷がついている】

【一般人にこれをさせるのは少し骨が折れる。つまりこれは、能力者によるものだ】

ああ、口惜しい……まだ少ししか殺せていなかったというのに……

だが、しかし、少しといえるうちに終わらせることができたのは、よかったのかもしれない、な……

【それが、最期の言葉となった】



//ロールお付き合いいただきありがとうございました!
//いやあ、なかなかに難しいものですね……でもその分考える楽しみもありました。
//また機会があれば、お相手お願いします!
//お疲れさまでした!
250 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/16(土) 02:30:20.47 ID:+AkXjk740
>>249
/お疲れ様でした!こちらも〆の文をすぐ書こうと思うのですが、タレンツデッドさんは完全に死んでしまったのでしょうか?
/次のレスの内容にかかわってくるため、お答え頂けると嬉しいです
251 : ◆GiVMSIhFkA [sage]:2016/01/16(土) 02:50:19.43 ID:TikB7deJ0
>>250
あ、わかりづらい書き方してしまってすみません!
完全にお亡くなりになってますよ。
252 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/16(土) 03:18:14.91 ID:+AkXjk740
>>249

【ふらふらと少女はタレンツデッドに近寄る。爆発はその体を直撃したようで、最早助からないことは明白だった】
【能力によって見る影も無いほどに破壊された顔。そこから、彼女はタレンツデッドの行動原理を少しだけ理解した】
【最期の言葉を聞き終え、少女はその場に立ち尽くした。もう声が届かないことはわかっているだろうに、彼女は口を開く】

…復讐するなら、もっと違う方法があったはずなのに…
…どうしてそんな、後戻り出来ない道を…
…馬鹿だよ、タレンツデッド………

【止むを得ず爆殺した相手を見下ろすその目に涙は無かったが、憐れみだけでない無情な思いが篭められていた】
【人を殺したのは初めてでは無い。職業に加えてこんな世界だ、少女の手はとっくに血で染め上げられている】
【今目の前で死んでいったこの者にも家族がいて、その者なりの人生があり、幸福があった。そんなことはわかっている】
【それでも彼女には守るべき国があり、守るべき人々がいた。その為にもこんなところで立ち止まるわけには行かない、後戻りはできない】
【彼女は立ち去り、また道を歩んでいく。彼女もまた、信念の為に理屈や損得を捨て、自分を殺して生きる、「馬鹿」の一人なのだから】



/というわけでこれにて〆となります、改めてお付き合い頂き有難うございました!

253 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/16(土) 21:05:37.98 ID:eT7lMoNU0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――雷の国 レストラン】
【それなりの賑わいを見せていた、とあるレストランに響き渡る銃声。遅れて悲鳴】
【断続的に響いた10発の銃声の合間に、テーブルや椅子が引き倒される音が重なる】

――――悪いなあんたら。運が悪かったと思って、諦めてくれよ!

【床に這いつくばる客たちを見下ろし、場を支配するかの如く仁王立ちするのは】

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性】

【テンガロンハットには、逆五芒星を象り、その下に≪No.21≫とあしらわれたバッジが留められていた】

――――10発撃って、当たったのは6人。死んだらしいのは3人か……ちょっと今日はいまいちだな……ま、そんな日もあるさ。そんな死にかたもな

【一頻り撃ち尽くすと、カチャカチャと銃弾をリロードし、怯える客たちを尻目に、そそくさと出口へと向かおうとする】
【ただ撃って、出ていくだけ――――背中に背負った大きなリュックを揺らして、何とも不条理に男性はその場を後にしようとしていた】



【――――所変わって、風の国 河原】

――――私の鍛錬に付き合っても、仕方ないと思いますよ――――?
「……そう言いなさんなって。ただ見てるだけさ……あたしゃ、ただ動くだけでそれなりだからねぇ……」
<…………>

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のどこか虚ろなオッドアイを持ち、額に大きな傷跡が残っている】
【白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女と】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性と】

【灰色のフード付きパーカーに、さっぱりした色合いのチェック柄の入ったスカートを履いた】
【額に、正三角形の形に、赤・青・緑の点が浮かび、それらを繋ぐ様にぼんやりと光の円環が浮かび上がっている】
【少し癖のあるオレンジ色のショートカットと、緑色の瞳が印象的な、身長140cm前後の少女が】

【緩やかな流れを臨む河口で、暗い水を覗き込む様に並んで立っている】
【ラベンダー色の髪の少女は憮然とした態度で。サングラスの女性はどこか投げやりな態度で。オレンジの髪の少女は、じっと痛みをこらえる様に】
【オレンジ色の髪の少女の手には、微かに膨らんだ買い物袋が抱きしめられていた】

「別に見てたっていいだろう? あたしだって、あんたのやり方には興味があるのさ」
――――なら、好きにして構いません――――

【――――冬の冷たい風が、水面をザラザラと撫で上げ、粟立たせていた――――】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】

/10時頃まで待ちますー
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/16(土) 21:13:06.37 ID:Bg1Xt5TI0
【街中――大通り沿いの歩道】
【クリスマス前から飾られっぱなしのイルミネーションが彩る、設置されたスピーカーからはよく知らない流行りの曲が流れ】
【仕事帰りか、それともこれから遊びに行くのか、人でごった返す通り、その中に混ざりこむ人影ひとつ】

……――、っ、

【なんだかおっかなびっくり歩いているように見えるだろうか、人混みに慣れていない――というわけよりか、何か、気になることがあるように】
【或いは気もそぞろなよう、実際、“彼女”は時々ではあるがすれ違う人とぶつかることもあるようで、そのたび、むしろ大げさなぐらいにその身体を揺らし】
【――最終的には、自分の足に蹴躓いて転ぶなんて情けない有様だ。それも、結構本気で――べたん、という風にまで転んでしまって】

【髪は透き通るほどの純白色、瞳は鮮やかに血の色をして、おおよそ色素というものを置き去りにしたような少女は、その肌も壊れ物のように白く】
【体温めいた温度さえどこかに忘れてきたように表情は乏しいものの、さすがに受け身も取れずに本気で転べばだいぶん痛みは覚えるのか、ひっそりと眉は顰められ】
【服と言えば黒く編んだカーディガンと赤を基調としたワンピース、ふわふわと膨らむスカートのすそからは、たっぷりに重ねたパニエの可愛らしいレースが覗いて、】
【足元はヒールがそうも高くない編み上げのブーツ。転んでから一瞬遅れてひらりと身体の上に被さる長い丈のケープは、冥い赤色をしていて】

ぐう……、――。

【背はどちらかと言えば高い方か、百六十五ほどあって。ドレスグローブで包んだ指先でぐっと地面を押して身体を起こす、それから、乱れた髪を乱雑に掻き上げ】
【長い髪。腰さえ超えて尻のあたりまで届く髪はすっかりとぼさついていたけれど。彼女はそれになんら興味のないように、数分かけてゆっくりと立ち上がると】
【なんなら生まれたての小鹿のような足取りで、よたよたと、人の少ない壁際へと、避難する――ただ、その足に特別ひどい怪我が見えるわけでもないのなら】
【――生まれて初めて、本当に初めて、ヒールのある靴を履いた時のような。そんな、慣れない感じ――、分かる人には分かるかもしれないけれど】

【服を汚した、とか、そんなことを小さく呟いて一生懸命にスカートの裾を叩く。なんだか――いろんなものに慣れていない、そんな、不思議な違和感がそこにはあった】
255 :アリアドネ ◆GiVMSIhFkA [sage]:2016/01/16(土) 21:51:19.74 ID:TikB7deJ0
ホホー、ここが噂に聞く外の国というやつなのね?

【誰に聞くわけでもなく、彼女、アリアドネは感嘆の言葉をつぶやいた】

【彼女の出身地は魔海。森の外とはほとんど繋がりのない陸の孤島とも言えるべき場所だ。ゆえに、その目に映るものは全てが新鮮である】

おとと、いつまでも感動してる場合じゃないのね。アリアドネの目的は観光じゃなくてボーイハンティングだもの。

【彼女の種族には、男が存在しない。ゆえに、古来より他の種族から子種をいただき、それで子孫を残してきたのだ】

【彼女も今年で14。外の世界ではどうか知らないが、自分たちの村では立派な大人だ。しっかりと伴侶を見つけなければ、イキオクレというやつになってしまう】

うう、それだけは嫌なのね……

【向かいのタヤンさんみたいに年中ボーイハンティングなんて、さすがに嫌だ】

【さらにいうなら、本当の意味でのハンティングのようにあんなギラギラした目で相手を探すのはもっと嫌だ】

でも、問題ないのね。アリアドネの魅惑のボディーの前には、男たちなんて骨抜きなのね!

【彼女の自己評価は、何も自信過剰じゃない。ウェーブのかかった金色の長髪、宝石のように輝く青い瞳。その整った顔立ちは、あどけなさを残しながらも他種族からだって褒められてきた。だから自分を傷つけまいというお世辞でもない限り、この外の世界でだって通用するはずだ】

とか言ってる間に第一ボーイ発見! ヘイそこのあなた! アリアドネという名のパンドラの箱、開けてみないなのね!

【村を出る前に考えてきた99の口説き文句、それでなびくかどうかは、別の問題だがな】

ヒ、ヒェッ!

ちょ、なんで逃げるのね!?

【しかし、なんということか。せっかく見つけた相手は、悲鳴を上げて逃げてしまった】

な、なんなのね。顔を見て悲鳴あげるなんて、とっても失礼なのね。

【口説き文句の出来はともかくとして、悲鳴を上げて逃げられるいわれはない。顔の構造は特に差はないはずなのだが】

ま、まさか、アリアドネは美人じゃなかったのね……!?

【顔自体は問題ない。むしろ自己評価通り美人だ】

【だが、問題は別にある】

そういえばあの人、アリアドネの美脚を見て悲鳴をあげていたような……

【その美脚に問題があった。黒光りするそれは、まさしく蜘蛛の脚】

【ああ、なんということだろう。彼女は知らなかったのだ。外の世界ではアラクネが一般的でないことに】

【そんなことはつゆ知らず、ただ呆然としながら、彼女は佇む】
256 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/16(土) 21:57:03.88 ID:98AuntZNo
>>253

【少女二人に女性が一人、しかもその皆々が蠱惑の息が漏れそうなくらいの美人なら】
【ここはひょっとしたらぱらいそなのかしら?と思う心もそのままに、何やらシリアスそうな様子】
【踏み入れる足音の一つが少しだけ浮いたハイトーンみたいに】


はうう……寒い寒い、ほんに暖冬ってゆうのはどこの誰がゆうてはるんやろか
――――――って、あら、何やら真面目な雰囲気はけーんですよ


【鈴蘭が揺れたら声色は淡く、紡ぐ歌の音律にもにた】

【硝子細工のように透き通った蒼白の長い髪】
【白い無袖で丈の短い着物の上に藍色の鮮やかな羽織を羽織る】
【黒いサイハイソックスにマフラーの細身の少女が三人に近づいてくるだろう】
【藍色の瞳に紫紺のブーツ、藍色の帯に刀が一本刺さっている】


失礼します!北の町から南の町まで、さすらいの薬売り、友ちゃんです!
何かおくすりいりようだったり、しはらはります?


【そそくさと近づいてきたなら、右の手をふりふりと振ってアピールするだろう】
【小動物のようにきゃぴきゃぴとした笑顔、微妙にこの場の雰囲気とは合っていないが……】
257 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/16(土) 22:16:28.44 ID:eT7lMoNU0
>>256

――――それでは――――――――ッ?
「ん……なんだい?」
<…………、?>

【ラベンダー色の髪の少女が、そっと瞑目する。身体に走る金色の光のラインが微かに光量を強めて】
【何かが起きようとしていた――――正にそんな瞬間だったのだろう。声を掛けてきた4人目の人物に、全員の視線が集中する】
【どこか緊張感を伴っていた場の空気も、ほんのわずかに弛緩して】

<薬売り、さんですか……?>

【まず最初に応えたのは、オレンジ色の髪の少女。どこか思いつめた様な表情だった彼女は、やはりホッと緊張が解けた様な表情で】
【とは言え、何かを懸念している面持ちは、まだ拭いきれていない。おずおずと返答した、と言う言葉が良く似合う状況だ】

「……あたしゃ別に、薬って要り様じゃないけどね……どんなもんを取り扱ってるんだい?」

【続いて、銀色のウェーブヘアーにサングラスの女性が覗き込んでくる】
【鋼鉄の腕で、サングラスのずれを直しながら――――手甲と言う意味ではないのだろう。文字通りの『鋼鉄の腕』だ】
【要り用ではないと言いながら、興味はある様で。薬売りと名乗った着物の少女へと向き直る】

――――――――――――――――

【身の丈に合わない、ボロボロのコートを着込んだラベンダー色の髪の少女は、ただ向き直るだけで、着物の少女には近づこうともしない】
【他の2人が応対する事で出遅れたのか、それとも状況にさして心が動かされていないのか――――】

<あの……怪我とかを治す薬なんかがあったら、良いんじゃないですか……みんなも……?>
「あぁ……確かに、そこはあると便利かもねぇ……――――傷の養生に使える薬、なんてあるのかい?」

【ふと思いついた様に、オレンジ色の髪の少女は、傷薬を口にする。それにサングラスの女性は同意し、具体的に着物の少女へと問う】
【――――どうやら、商談に乗ってきたようだった。着物の少女の様な明るい雰囲気、とまでは言えない、真面目くさった雰囲気ではあったが――――】
258 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/16(土) 22:31:15.10 ID:98AuntZNo
>>257

【当の本人はといえば、営業スマイルといった様子で、満面の笑み】
【長いまつげを柔肌の水面に浸して、澄んだ笑みを作って】
【てくてくと近づいて、距離を近づけるだろう】


えへへ、のってきてくれはりましたね!その通りです、薬売りなんです!
なんといってもうちのお薬は天下一品です!今日はここ風の国で商売してはらはるけど
普段は友ちゃんが水の国に行けば!もう、こんなすごいお客さんがいらはるんですよ!

――――――そーんなぁ、効き目ばーーっちりのお薬を今回だけのお値打価格で提供させてもらいますよ!


【ぱんと一回大きく手を叩いたら、すりすり、揉み手の仕種が妙に似合っているだろう】
【にやりと表情に僅かな鋭さを加えたなら中々一介の商売人のような表情で】
【だけどまあやっぱりは、ただの女の子の息は出ないようであろう】

【鮮やかな藍色の羽織から零れる掌、ピアニストのようにしなやかな指先】
【けれどもその手の様子や腰の刀から、それなりの実力者であると想像できるかもしれない】
【――――――もっとも、話す口調は恋話をしてる女の子のそれで】


ふふふーん!傷薬ってことですね!そりゃもう山のように有りますよ!
友ちゃん特性の傷薬はその効き目たるや、切れた腕が根本からもりもりと再生し
気力だけでなくその他諸々の能力すらも全快にしちゃうんですよ!


【ね!すごいでしょ!と言いたげに笑みを向けるだろう、長い髪がふわりと揺れて】
【そそくさと着物のたもとをまさぐって、小さな巾着袋に包まれた包を掌の上に差し出すだろう】
【どう見ても普通の傷薬である、彼女の言うような効能があるようには見えないが……】
259 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/16(土) 22:55:32.06 ID:eT7lMoNU0
>>258

<……ふふっ>
「へえ……水の国から行商に来たのか。てっきり櫻の人間だと思ったんだけどねぇ……」

【淀みなく紡がれる売り文句に、思わず釣られて表情を綻ばせるオレンジ色の髪の少女】
【買い物袋を抱きしめたその姿は、どこか切り詰められた様子だったが、ようやくリラックスした雰囲気が見え始めていた】
【逆に、サングラスの女性の方は、そうした営業トーク――――なのだろう――――には特に引き摺られる事もなく、変わらず内容に聴き入っている】
【どうやら普段は水の国を拠点としている、との事だったが、その服装は典型的な櫻の国のものである】
【一応、その辺も知識として入っていたのだろう。サングラスの女性は意外そうに頷いていた】

(――――――――この人、もしかして……護身の為だけじゃ、ない……?)

【そうした様子を、少し離れた立ち位置で、ただ静かに見つめていた、ラベンダー色の髪の少女】
【腰の刀、そして掌に一瞬垣間見えた、肉刺の跡の様な物を認めた瞬間、フッと目に力が入る】
【――――ラベンダー色の髪の少女も、この商人に興味が向き始めていた】

<え……えーと、ん……?>
「いや、悩む所じゃ無いさね。そこまでの事があるはずないよ……出来に、自信はあるみたいだけどねぇ……」

【大仰な宣伝文句に、思わず首をかしげるオレンジ色の髪の少女。本当なのかと、半ば疑っている様で】
【だが、半ばでも悩む様な事じゃないだろうと、サングラスの女性は突っ込みを入れながら、その包みを見やる】
【ざっと見た所――――自分はそう言う所に疎いのだが――――何らかの魔術的な要素が関わっているとも思えない、普通の薬だ】
【まずは、この薬がどれ位効くのか、試してみたいところだが――――】

――――まず、その包みをもらいます。お金は、ちゃんと払いますから――――
「っ……どうしたい、急に?」
<ラベンダーちゃん……>

【過大な宣伝につられて、と言った風情ではないが、ラベンダー色の髪の少女も、静かに歩み寄って来る】
【――――その手には、小さな抜き身のナイフが握り締められている。既に話し込んでいた2人の表情に、戦慄が走る】

だから、まずは試させて下さい――――――――ッ、ぃ――――ぐ、ぅ――――!
<ら、っ……ラベンダーちゃん!?>

【手の中のナイフで、ラベンダー色の少女は、自らの左腕を切り裂いて見せた】
【しかも、どうやら動脈に到達したらしく、ジクジクと拍動に合わせて血が溢れ出て来る】
【慌てて、オレンジ色の髪の少女が、傷薬を取り上げて、中身を傷ついた腕へと注いだ――――後払いと言う形になるが、何よりまずは傷を治さなければならない】
【――――ラベンダー色の髪の少女は、自分の身体で試す意図があったのだろう。それでも、あまりに唐突な行動には変わりないが】
260 :ソニア ◆zO7JlnSovk :2016/01/16(土) 23:12:49.40 ID:98AuntZNo
>>259

【耳をピクピクとさせて聴き逃しませんよみたいな反応】
【こがらな彼女は、やや見上げるような体制になって、藍色の視線を向ける】
【紡ぐ言葉の音律が一音一音しっかりと刻まれるように】


生まれは櫻の国です、だから友ちゃんのお薬は、櫻直伝のしょーしんしょーめいの良いものです!
櫻の国も凄く良い所であらはるけど、やっぱり友ちゃんは旅に憧れるお年頃なので
生まれ育った街を離れて寂しさと不安を片手に歩くのも、それはそれで楽しい物ですし


【長い言葉、お喋りが好きなのだろう、えへへーと綻ばせる表情の切れ端】
【なでしこのように愛らしいエクボを作ったなら、後は愛嬌を振りまいて】
【何だか商人というより、はじめてのおつかいのようではあるが】

【どうやら傷薬に興味をもってもらえた、やったーと言いたげに跳ねたのもつかの間】
【瞼をパチクリ、目の前に溢れ出る先決、他の二人と比べ、反応速度が数手遅い】
【反応速度の遅さどうやらあまり大した腕前ではないようだが】


わわわわわ!!!何をしてはるんですかぁ!!
わぅ……確かに友ちゃんはすごい効くって言わはりましたけど、そないな風にしたら
あああ!!血が!!なんか拭くもん――――――


【驚きの声が上がって、少女の傷口を見るだろう、すぐさま歩み寄って羽織を揺らす】
【傷薬は確かに良い効き目で、止血効果は高いだろう、それでも市販のものよりは優れている程度で】
【動脈を傷つけるほどの傷を、すぐに止めるほどではないから】

【慌てて羽織の袖を伸ばして、袖ごと抑える形で貴方の傷口に手を重ねようとする】
【とっさの行動にしては、彼女にとってはベストを尽くしたつもりなのだろう】
261 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/16(土) 23:35:34.79 ID:eT7lMoNU0
>>260

「……櫻の伝統の薬かい。そりゃ確かに……効果がありそうな印象もあるってもんだねぇ」

【一行の中で一番年上らしいサングラスの女性は、得心が言った様に、うんうんと頷いて見せる】
【独自色の強い文化を育んできた国である分、櫻の国と言うのは他と峻別される物が多い】
【今でも通用する伝統のもの――――そうしたものも、櫻の国ならば納得と言うものである】

「――――逞しいもんじゃないかい。あたしゃ、そんなバイタリティは持ってないよ……」
<……後から思い返してみると、そう言う不安って……結構、楽しかったりしますよね>

【旅の行商と言う事で、どうやら出身が櫻であるのは間違いない様だ】
【しかし、自らの手による商品の販売で世界を回ると言うのは――――サングラスの女性には、中々想像の出来ない範疇で】
【逆に、オレンジ色の髪の少女の方が、分かる様子で頷いていた。その表情には、若干の苦笑が混じる】
【――――実感として、似た様な体験を彼女も持っているのかもしれない】

<……そんな不安の中だから、何か良い事があると……とっても嬉しくなるんですよね……>

【ふと、オレンジ色の髪の少女は、胸元の袋をギュッと抱きしめる。何か、口にした己自身の言葉を噛みしめる様な所作だった】
【内心の不安や痛みを、無理やり抑え込む様な――――そんな仕草に見えて】



っっっ、ぐ――――
「ラベンダー、あんたなんて無茶を!」
<す、すみません薬屋さん……ラベンダーちゃん!!>

【取り落とされたナイフが、サクッと地面に浅く突き立つ。ラベンダー色の髪の少女の、その苦痛の表情は、意外な程に弱く】
【しかし、周りで見ている面々にとっては気が気ではない。オレンジ色の髪の少女は、抱いていた買い物袋を足元にうっちゃり、一緒になって傷口を抑え込む】
【――――ジワッと、嫋やかな着物の生地に、血の色が広がる。サングラスの女性の口元が引き攣った】

っ、う――――確かに――――効きは、良いものがありますね――――っ――――
――――薬屋さん。この薬――――あるだけ、全部――――金額にして、幾らになりますか――――?
「……何考えてんのさラベンダー! 今はそんな金の話なんて……!」
――――金で、命を買うことはできません――――でも、金で買った物で、命を救う事は出来るんです――――ぃ、ぎぅ――――ッ
――――どうせ、使い道がないですから、お金に余裕は、ありますし――――
<――――…………っ、く……ぅ>

【先ほどの威勢の良い売り文句はどこへやら、な光景だが、それでもラベンダー色の髪の少女は、その効き目に納得したらしい】
【傷に呻きながらも、彼女はそのまま、この傷薬をあるだけ欲しいと、場違いな状態で商談を進めようとして】
【――――傷口を抑えるオレンジ色の髪の少女の頬に、ハッキリと涙の筋が伸びていた】
262 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/16(土) 23:47:39.08 ID:98AuntZNo
>>261

【長い髪が頬にひりつく、伝う汗の証左がそこには在って】
【確かに商売熱心ではある、見えてる外側だけをたどれば一人前なのだろうけども】
【その中身はまだ年端もいかない少女だから】


やめてください!もう……なんでこんな真似しはるんですか!
確かにお薬は、傷を治すものです、でも、一番いいのは、お薬なんか使わないことなんです!
分からはったら、傷口見せてください――――――……うぅ、けっこう深いですね……

もう、信じられません、せっかくの綺麗なおててが……


【藍色の瞳が、ラベンダーの少女を強く見つめるだろう】
【責める視線ではない、むしろそれよりもずっと、労りに満ちていて】
【――――――薬やという理yが伺えるかもしれない】

【しゅん、と表情を曇らせて、羽織が汚れるのも気にせず、止血を続けるだろう】
【薬の効果も在ってか、少しすれば血も止まるだろう】
【表情は曇ったままで、自分の誇張広告のせいもあってか】


だーめーでーっす!!こないな事しはらはる人のためのお薬じゃないんですっ!
友ちゃんのお薬は、世の中の人が元気で明るく過ごせるためのお手伝いをするものなんです
……それをこういう風に使わはるのはダメダメなんですからね!


【じぃ、とあいいろの瞳がラベンダーの少女に向けられるだろう】
【幼子をたしなめるようなそんな口調、頬に一筋の雫を揺らして】
【ぐいぐいと袖で拭ったら、ため息を一つ】
263 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 23:57:42.89 ID:A2KlMOipo
【路地裏】

………………、…………?

【その右手で街のパンフレットを摘むようにして眺める女性がいた】
【不思議なものを拾い上げて見物している、そんな状態で】
【斜めになったパンフレットに合わせて首も傾けていた】

【問題はそれが"誰の持ち物だったか"ということであって】
【冬にも関わらず、白いワンピースにも見えるボロ布を纏った女性の足元には】
【頭部を失した若者の死体が、新鮮な血を垂れ流して転がっていた】

【背の高い建造物に挟まれた狭い路地の合間、異様な静寂が漂って】
【建物の壁面に張り巡らされた排水管が詰まりでもしたか、ごぼごぼと音を立てていた】
264 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/17(日) 00:13:32.83 ID:XgVxi++e0
>>262

――――っ、大した事じゃ、ありません――――戦場では、もっと手酷い傷を負う事は、珍しくないです――――
どれくらいが、限界点なのか――――はっきりと、見定めておかなきゃ、いけませんからね――――

【何か、空虚な瞳を傷口へと向けながら、ラベンダー色の髪の少女は、無感動な言葉で返事する】
【まるで、スポーツ選手が自己記録にトライする、とでも言わんばかりの、あっけらかんとした言葉で】
【自分の傷に、大した興味をすら抱いていなようだった。それ以外の何かを念頭に置いている、と言うべきか】

「……これは、済まなかったね…………せっかくの着物に、血の染みを付ける事になってしまった……
 あたしが、止めておけばこんな事にも――――悪かったよ……」

【サングラスの少女は、着物の袖に染み込んだ血を見て、いたたまれない様子で頭を下げる】
【他人の血で服を汚すと言うのは、精神衛生上好ましいものではない。ましてや、原因はラベンダー色の髪の少女の、暴走とも言うべき所作にある】
【この場合、悪いのは自分たちだと、サングラスの女性は責任を感じたのだろう】

「――――気を悪くされるのも当然さ、ラベンダー……!
 もう少し、人を慮ってやっても良いんじゃないのかい!? 普通に失礼だし、迷惑もかけちまっただろッ!?」
――――服の事は、確かに――――――――っ、ですが、重ねてお願いします――――
――――私たちの仕事は、人の為に血を流す事ですから。無駄な死を遠ざける為に、血を流すのが私たちのやる事ですから
――――その助けが、必要なんです

【激昂した様子の着物の少女に触発された様に、サングラスの女性はラベンダー色の髪の少女に対して怒りを発する】
【目の前で商品を試す、と言う行為が既に、考えようによっては失礼な物で。更に言えばその為に、薬を消費するのは、無駄とも思われる物だ】
【そんな不実な態度に、サングラスの女性は憤りを覚えたのだろう】

【――――が。当のラベンダー色の髪の少女は、着物の事を指摘された時に、わずかに口ごもって罪悪感を覗かせはしたものの】
【次には、重ねて売買を求める言葉で、着物の少女へと食い下がった】
【――――コートのポケットから、『ワンド』のモチーフがあしらわれた携帯端末を取り出して、身分証の様に翳して見せる】
【――――世の秩序を守る為に戦う人間の一派『UNITED TRIGGER』の一員である事を示す品物だった】

私たちは――――敵と戦います。誰かを守る為に、誰かの涙に報いる為に――――その時に、力が必要です
それは自らの身を癒す為に、それに――――誰かの傷を癒す為に――――
こんな馬鹿な使い方は、これっきりです。ですから、どうか――――
<…………っ、ぅ…………>

【滔々と、ラベンダーの少女はそれを口にする。その傷薬が、誰かを助ける役に立つのだと】
【無論、自分たちの装備としての目的を見ているのだろう。だが、時にはそれが直接的に、人を救う事にも繋がるだろうと】
【恐らくは怒りで、口元を引き攣らせているのだろうサングラスの女性を尻目に、いつの間にか一行の先頭に立って、彼女はそれを問う】

【――――オレンジ色の髪の少女の唇が、嗚咽を堪える様に震えていた】
265 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 00:27:56.89 ID:C3l/Ag1Zo
>>264

【ラベンダーの少女の言葉、気圧されるように言葉を探す】
【蒼白色の髪の毛は、朝靄よりも柔らかく宵闇よりもふしだらに彼女の表情を悩ませて】
【吐き出すような大きなため息を付いたなら、ラベンダーの少女の頭をぺしっと叩こうとするだろう】


あーたーりまえです!何回もこういうことされはったら、恐ろしくてお薬お売り歩きなんかしはりませんっ!
そうなったらもうAmazonもびっくりの一大薬通販サイトを立ち上げて、キャリアウーマンに友ちゃんはなります
ピシっとしたスーツにメガネのできる女のこ像が、見えてきませんか?


【白百合のような頬の色が綻んで、石楠花のような笑みを浮かべる】
【微笑んだなら、左手でメガネをクイッとするジェスチャー】
【どうやらあまり長く怒るタイプじゃなくって、ふふっと表情を緩めたら】

【まだ残ってるかなーっとがさごそと羽織の袖を漁って、複数個取り出して手渡すだろう】
【血で汚れたことなど大した問題じゃないと言いたげに、ひらひらと羽織の袖を振って】
【シリアスモード終わりと紡ぐ声を一つ】


それにしてもかっこいい端末ですね!どこに売ってはるんですかぁ?
友ちゃんもこうゆうの欲しくなりますっ、えいやぁ、この印籠が目に入らぬかぁ、みたいな?
友ちゃんがやってきたからには、皆さんまるっと、癒やされちゃいますよ!的な?


【一人で楽しそうに話したなら、表情をまたほころばせて小動物のようにニコニコ】
【どうも真面目な表情が続かない子、みたい】
266 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/17(日) 00:49:16.70 ID:XgVxi++e0
>>265

「(……言い訳している。多分、この子の言ってる事は……建前って領域にあるんだろうね……
  ……本当は、ただ……「壊れるまで戦いたい」って、だけのはず…………人間じゃなくても、こうも心に振り回されるなんて、ねぇ……)」

【どこか緊迫感のあるやり取りの最中、サングラスの女性は人知れず眉を潜めていた】
【ラベンダーの少女の言葉に、若干の欺瞞が混ざっているのを感じ取ったのだろう】
【怒りの中に、やり切れなさが混じり込み、思わずグッと口元に力が籠った】

――――っ?
「あ……アマ、ゾン……?」
<…………っ>

【着物の少女の言葉を待つ一行だったが――――さっと雰囲気を切り替える様なその言葉に、思わず面食らってしまう】
【ラベンダーの少女とサングラスの女性は、分かりやすいキョトン顔に。今にも泣き崩れそうだったオレンジの髪の少女は、不思議そうに顔を上げて】
【――――言葉の意味はよく分からないが、とにかく空気を変えようと茶化してくれたのだろう】

――――ありがとう、ございます――――ッ
「……支払いは、幾らになるんだい? 勿論、現金で…………あるんだよな、持ち合わせ?」
<え、は……はい! ラベンダーちゃんから、かなり預けてもらってるので……>

【ともあれ、商談は成立。薬を受け取るラベンダーの少女に、オレンジ色の髪の少女は支払いの段に出る】
【無論、先ほどの薬の分も含めて、彼女たちは値切る様なケチな事もせず、言い値で購入するのだろう】

――――これは、『UNITED TRIGGER』の身内で使っている端末ですから――――
「店売りのものじゃないらしいね。誰か、こういうのを用意してくれる人間が、いるらしくてねぇ……
 なんでも、治安維持組織のタスクフォースみたいな……『SCARLET』って連中もいるんだけど、そっちでも持ってるらしいって聞くよ」
――――マークはそれぞれですけど、コレそのものが、メンバーの証って言うのは、その通りです

【どうやら『W-Phone』に興味を持ったらしい着物の少女に、ラベンダーの少女とサングラスの女性は説明する】
【これは量販品ではなく、身内のカスタム端末なのだと。つまり――――外見を似せる物は作れても、それそのものは簡単には用意できないのだ】
【無論、彼女はデザイン面について興味を持っているのだから、あまり詳しく説明しても野暮になってしまうのだが――――】

<……あの、薬屋さん……友さんって、言うんですか?>

【そんな中で、オレンジ色の髪の少女が、逆に質問を向ける】
【先ほどからの着物の少女の一人称『友ちゃん』――――ふと、その一人称は名前を元にしているのかと、そこが気になったのだ】
【妙な着眼点だが――――先ほどの緊張がほぐれてか、涙の跡は残っているが、その表情はやはりリラックスしたもので】
【――――どうやら彼女は、本当に着物の少女に「まるっと癒されている」のかもしれない】
267 :友ちゃん ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 01:03:18.19 ID:C3l/Ag1Zo
>>266

【支払の言葉を受けてぱん、と両手を合わせてはい!とお返事】
【待ってましたーと言いたげにニコニコ、長い髪をふにふにと揺らして】
【ちゃっかりしているのか、あるいはしっかりものなのか、分からないけど】


えーっと大鬼神が、しめて2500円になりまぁす!
ふふふー中々お安くはないですよぅ、2500円は大金ですしねっ!
大体友ちゃんの月の食費がそれぐらいです、ふふふ……ふふふ……


【後半になるにつれて言葉のトーンが下がっていく、自嘲気味の笑みをこぼして】
【あまり裕福では内容で、苦労してるのかなぁって感じもするのだろうか】
【そしてそして、続くその端末の説明に対して――――――】


ゆないてっどとりがぁ、ですか、変わったお名前ですねぇ
はーそれにしても、こういう端末を作れる人はほんに尊敬しはります
友ちゃんはお薬ぐらいしか作れないですから、ちょっぴりちょっぴり嫉妬です


【緩む表情、軽い口ぶりがふふんと鼻歌のように揺れたら】
【手持ち無沙汰なようで長い髪の毛先を飛騨r手の指でくるくると巻き始める】
【――――――なのでオレンジ色の髪の男子に声をかけられて、ふぇ!?っと反応した】


ふぁ、あ、はい!そうです!友ちゃんは友ちゃんです
だからみなさんも友ちゃんのことは友ちゃんとよぶべきですよぅ

――――――っと、あんまり長居してもダメですね、夜も遅いので失礼します
お買い上げ、ありがとうございましたぁ♪


【まるで歌でも唄うように、ソプラノをh日かせたなら、後はゆずのように】
【琥珀色の芳香を残したら、最後にお名前をキイ、その場を後にするだろう】
【蒼白の髪がなびく音だけが、風の名前を告げるように】


/お疲れ様でしたー!
268 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/17(日) 01:16:13.43 ID:XgVxi++e0
>>267

「え……」
<…………そ、そうですね……>
(――――月の食費――――10倍は掛かるのが普通だと思うけど――――)

【提示された値段。予想外のその金額に、またしても一行の言葉が止まる】
【――――これだけの効力を発揮する薬なのだ。もう1つ桁を乗せる位の心積もりだったのだが】
【何と言葉を返して良いか分からず、深追いする事は避けた】

――――確かに、こういう機械は、使い方を覚えるのが精一杯で――――中身の事とかを考えるのは――――
<薬を作れるって言うのも、もう十分に凄い事だと思いますよ。私なんて……>

【着物の少女――――友ちゃんの言葉に、ふと考え込んでしまう2人】
【普段、なんて事の無い様子で使っているものだが、いざそうして考えてみると、実は身の周りには不思議なものが一杯ある】
【そうしたものを作っている人間――――それはひょっとして、凄い事なのではないか。思いがけず、そんな事を思い馳せて】

「(……技術が凄いって言うのも、考えものさね……)」

【1人、サングラスの女性だけは、口に出さないながら、もやもやしたものをその問答に感じ取っていた】

<あ……じゃあ、またよろしくお願いします、友ちゃん!>
――――また会う事があったら、薬をお願いしますね――――
「……気をつけて帰りなよ。あと、その袖の事、本当に悪かったよ……」

【去っていく友ちゃんに三者三様の別れの挨拶を向ける。色々とごたついたが、ともあれ彼女らは良い出会いをしたのだろう】
【確かに手元に残った薬。流血を止めたその効力は、既に折り紙つきだ】

<……ラベンダーちゃん。一応これを……もうトレーニングなんてしないでしょ、今日は……
 血を流しちゃったんだから……水は飲んでおいたほうが良いよ……>
――――分かった。ありがとう――――
「……さて、あたしらも帰るとするか……」

【オレンジの髪の少女は、紙袋からアイソトニック飲料を取り出し、ラベンダーの少女へと手渡す】
【本来の目的は果たせなかったが、それでも彼女等は得難い経験をした事を胸に、家路につく――――】

/遅くまで乙でしたー!
269 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 13:09:31.03 ID:2dflPC1bo
【路地裏】

【ここは世界でも有数の都市の外れに位置する言わば下町の様な区域の路地裏】
【いつ建てられたかわからない古いビルがギュウギュウに並びその路地は幾つも伸び】
【昼間だというのに薄暗かった。また、雪が少し振る、よいとは言いがたい天気だった】

【一人の少女が歩いていた。少女と言っても十代後半、背伸びした化粧と格好で少女には見えないが…】
【高いヒールのブーツが歩きづらそうでスマホの画面を見つつ、路地裏を歩く。…それを見ていた人影】
【路地裏の奥へと消える。少女は何か違和感を感じ取り、振り返ったがそこには誰もいない。気のせいか】

【気を取り直してまた歩き出し、角を曲がった先に人影が立ちふさがっていた。少女はスマホに気を取られていたので】
【気づくのが遅れたが人影が声を発したので、彼女はある一定の距離のところで気がついた】

…アシュリー・コートワールだな?

【酒やけした若そうな男の声。人影はまさにと言った風で、背が高く、深く被ったフェドーラ、トレンチコート、サングラスと】
【映画に出てくるマフィア、殺し屋といった様子。………あああ!殺される!と少女は頭を過る、理由までは思いつかない】

『―――いやぁぁああ!!誰かー!!殺されるわ!!助けて!!』

【生きようという本能が恐怖をまさる。スマホを殺し屋に投げつけて、精一杯の拡声器ばりの声で叫んで走りだす】

…いや、違う違う!オレはアンタの親父さん…ちょっと、聞いて…あ、おいっ!!

【投げつけられたスマホ(痛い)を拾って、追いかける。クソ、足速いな。というかこんなとこ誰かに見られたら相当、マズい…】
270 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 17:21:27.30 ID:5qMKsTl+o
【路地裏】

………………、…………?

【その右手で街のパンフレットを摘むようにして眺める女性がいた】
【不思議なものを拾い上げて見物している、そんな状態で】
【斜めになったパンフレットに合わせて首も傾けていた】

【問題はそれが"誰の持ち物だったか"ということであって】
【冬にも関わらず、白いワンピースにも見えるボロ布を纏った女性の足元には】
【頭部を失した若者の死体が、新鮮な血を垂れ流して転がっていた】

【背の高い建造物に挟まれた狭い路地の合間、異様な静寂が漂って】
【建物の壁面に張り巡らされた排水管が詰まりでもしたか、ごぼごぼと音を立てていた】
271 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 18:25:36.42 ID:Mb8EuubsO
>>270

【迷いこむ言の葉の破片に似た、淡い雑音を微かに打ち鳴らして】
【立てる踵の地面を踏みしだく旋律、路地裏に迷い込む不可視の調べ】
【それはさながらファンファーレのように、異様な静寂の中に響いて】


――――――わわわ!!いきなりものすごぉいスプラッターな現場が!
だ、大丈夫ですか!?何がおきはったんですか?


【声が響いた、視線を傾けたなら、小さな人影が一人】
【宵闇と明星の間に混じる、朝靄みたいな微睡みに染まってしまわないよう】
【ぱたぱたと走って、少女の側に近づこうとするだろう】

【硝子細工のように透き通った蒼白の長い髪】
【白い無袖で丈の短い着物の上に藍色の鮮やかな羽織を羽織る】
【黒いサイハイソックスにマフラーの細身の少女で】
【藍色の瞳に紫紺のブーツ、藍色の帯に刀が一本刺さっている】


取り敢えずお怪我は……?


【そうして羽織の袖をガサゴソと漁って、何かを出そうとしているだろう】
272 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 18:39:32.82 ID:5qMKsTl+o
>>271

ぁ……、……? 小さ、イ…"マエの"、より……。

【少女の言葉に反して、靴も履いていないつま先に鮮血が触れた女性は】
【まったくそれを気にすることなく。鮮明とはいえない返事をした】
【背は170cm後半か、180cmはあるか。髪は白く目は紅い、色素欠乏症らしい外見で】

【手にしていたパンフレットを下ろさぬままに】
【空虚な瞳でジロリと少女を見つめると、整った衣服や刀を見つめ】

ふく、っ……? 服、ハ…きる、モノ……?
……アナタは、のぅ…能、りょ…―『―盧膿li彰李膺kルく』……ヲ…っ?

【ノイズが混じったような声だった。少女の生きる世界と歯車が一つズレている】
【そんな回答だった。手先や肌は霜焼けで赤く染まり、息は真っ白に染まって】
【にも関わらず半裸に近い衣装。つま先から土踏まずまでが流れる血液で赤に彩られ】
【少女の動きを邪魔こそしないものの、ぱしゃ、と血だまりを踏んで一歩、彼女の方へ近寄ろうとした】
273 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 18:52:04.32 ID:Mb8EuubsO
>>272

【――――――ぞくり、と背筋が総毛立つ、それはさながら畏怖にも似た感情】
【この世の人ならざるものを見た感覚にも似て、近づくあなたに一歩退くように脚を戻した】
【いや、でもと頭を振る、様子がおかしくても尚、それが助けるべき相手だと言いたげに】


……ぁ……うっ……こんな寒いのにそんなうすぎじゃダメですよー
ほらほら、綺麗なお手手でがしもやけでヒリヒリしちゃいますよぅ
待っててくださいね――――――今、しもやけに効くお薬出しますからっ


【取り繕うように笑った、虚勢を張って言葉を紡ぐ】
【揺れる、調和のとれたソプラノのアリアが、僅かな軋みを見せて】
【細い喉がつややかに照らしだされる、光を浴びて白く煌めいて】

【貴方に触れられるぐらいの距離まで近づいたなら、羽織の袖から塗り薬を出して】
【150cmほどの小柄なあ彼女はやや見上げるようにして、直ぐ側まで近づくだろう】

274 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 19:02:08.18 ID:5qMKsTl+o
>>273

【少女の健気な言葉への返答――らしい、物はない】
【口は動かず、身振り手振りも全く無い。けれども瞳は動いていた】
【見下す形になる。真っ赤な目は少女を静かに見つめ、声を紡ぐ口元と】
【それから小柄な背丈、塗り薬と。不思議そうに見つめつつ、相手の接近もまた、許し】

アナタ、は……誰…――ナニ……?
"SCARLET"…――? えるす、ト、ン……じゃ、無い……あー、ぁ――。

【意思疎通が可能か、と言えばYESかもしれない。言語はあるのだ】
【見た目だって普通の女性。背が少々高くはあったが】
【もし塗り薬を肌に、という試みをするのなら成功するだろう】
【ひやりとした素肌は驚くほど滑らかで、乾燥とは無縁に思えるほど弾力に富み】

【だが同時に、少女へと背後から迫るモノも在った】
【音は無く、気配もまた薄い。然しながら"ぽたり"――"ジュウ"】
【何かが滴り、何かが溶解する音。それに気付けば、また話は別だったろうが】

【――もしも気付く素振りがあれば、女性は大柄な身体で不意に少女に抱きつこうとするだろう】
275 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 19:13:19.82 ID:Mb8EuubsO
>>274

【――――――肌に塗る傷薬、肌の感触に小首を傾げるも塗るのを続けるだろう】
【効き目はなかなか良いようであるが、その反応が得られるかは分からない】
【塗りながらあなたの言葉を反芻するだろう、脳内で問いかけるように】


友ちゃんですか?友ちゃんって言います!
お姉さんのお名前はなんて――――――……


【言葉を切った、蒼白の髪から零れる小さな耳が音を呼び込んだ】
【溶解の音、酸性の物質のそれに似た音】
【細い喉を雫が伝う、呼吸音を飲み込んで、高鳴る心臓の鼓動を打ち鳴らす】

【塗り薬を塗る手が止まる、それが始まりの合図とでも言いたげに】
【彼女の気付き、それに対応する形で女性が抱きつきにかかる】
【間髪入れずに少女は地面を蹴って後方に飛ぶ、飛び退くように距離を空ける】


――――――っ……そんな情熱的な挨拶、友ちゃん喜んじゃいますけどっ
そういうのは、もっとですね……親密な仲になってからの方が良いかと思います


【蒼髪の髪が一枚散った、百合色の沙雪が散る色を見せるように】
【首元のマフラーを左手で強く抑える、その尾がひらひらと揺れて】
【吹き抜ける路地裏の風、凍てつくような冷気】

【右手の親指が腰元の刀の鍔に触れる、金属音を一つ幕間の拍手の代わりにする】
276 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 19:14:40.60 ID:2dflPC1bo
>>269
ゆるっと再募集です
277 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 19:26:54.75 ID:5qMKsTl+o
>>275

【少女が飛び退いた直後、ほんの一秒前まで彼女が居た場所には】
【『触手』というべきか――粘性の体液を纏った、蛇のような生物が】
【4つに開いた口で、地べたを喰んでいた。背後、上方からの奇襲だ】
【そのまま立っていれば丸呑みにされていただろうか。なんにせよ、回避したのは懸命だ】

【そのすぐ目の前に立つ女性は、何ら驚いた様子もなく】
【腕に塗られた薬の匂いを嗅いでから、目と同じように白い舌でそれを舐め】

『ハa弾zズ駟i爲厦tた、死…――し、p…ア、邂愛イ……。……した。』

……美味しく、ナイ。 ぁ……でモ、ニク、に…染み、テ……。
ハ、ぁ…ンっ……。 ……けほっ…。

【ノイズのような――声、と言っていいのか。それらし音は"触手"から聞こえた】
【地表から口を離す。目はなく、色はピンクとも赤とも付かないグロテスクな物で】
【噛み付いた場所が半分ばかり溶けている。その唾液が先ほどの音の正体だろう】

【身体の根本をたどれば、それは排水管に辿り着く。壁面に張り巡らされた無数の配管】
【蒸気を通すものもあれば、汚水を通すそれもあるだろう。だが】
【この触手にそれは関係ないように見えた。表皮を覆う体液が身を守る、ように思え】

【――少女が口に含んだ薬を吐き出した。そのための咳が、次の行動のスイッチ】
【壁面高くの配管から長い蛇状の身体を晒した触手は、大きく身体を撓らせると】
【その口から唾液の塊を少女へと飛ばした。性質は最早言うまでもないだろう】
【狙いはかなり正確で、細かな飛沫もまた本命の一撃を補助するように周囲へ飛び散っていく】

【とはいえ動作が大振りに過ぎる。がたがたと古びた配管を揺らしながら、触手は攻撃の反応を待ち――】
278 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 19:38:25.26 ID:Mb8EuubsO
>>277

【寸刻の間もおかずに目の前に現れた異形に息を呑んだ、明らかにそれは理解の範疇を超えている】
【両足を肩幅に開く、じりっと、ブーツの踵が路地裏の土を噛んで】
【刹那放たれる唾液の塊、おそらくは粘性のそれ、刀で触れることは得策ではない】

【――――――しかし――――――】


――――――儚きは我が決意=\―――――


【抜刀、左手で刀の柄を握り、振りぬく、右足に重心をかけ、斜め前に身体を倒しながらの一閃】
【左足が弧を描く、路上に一筋の突きが描かれたなら】
【打ち払う¢チ液の塊を切り裂き、攻撃をかき消すだろう】

【通常の剣技では考えられない現象、何かしらの能力に依るものか】
【切り裂かれた唾液は、通常切り裂かれたのとは違い、霧散しかき消されるだろう】
【少し遅れて炸裂音が響き、土煙だけが色合いを強める】


……っ……どういう了見かは分かりませんけど、今のは敵意だと、判断します
それなら私≠ノとって、やイアbを振るう、十分な理由になります

十三代目染衣友禅藍那――――――推して参る


【左半身に刀を置き、左手で刀の柄の頭を、右手で抱きかかえるように鍔の縁を持つ】
【右足を前に踏み込み、左足は後方をしっかりと踏む、刀の切っ先は斜め下方向に向いて】
【通常の刀の構えに対して、刀が高い方から低い方向へ向いた独特の構え】

【距離は5mほど、貴方の動きを待ってるのだろうか、彼女はそのまま微動だにしない】
279 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 19:55:21.77 ID:5qMKsTl+o
>>278

『…………――? ?、キ……斬r、つk、岔……?』

【唾液の塊は大きな質量を誇る。それを叩き切り、かつ霧散させる】
【その嫌疑に直面し、触手は目こそ無く、舌もまた回らなかったが】
【ざり、と口内の歯列を擦りあわせた。しかしながら、人間とは違う】
【すぐに次の手を考え――閉じた口の合間から、鋭く長い棘を伸ばすと】

【真っ直ぐに少女を狙い、猛進する。その動きは矢にも似て】
【しかしながら動きもする。下へ、右斜め上、左、右斜め下、上――。】

【非常にしなやかな動きだ。体表の下は分厚い筋繊維に覆われているに違いない】
【撹乱しながらも接近を続けると、少女の右腿を貫こうと顎を仕向けた】
【その鋭さは肉は勿論、骨すらも貫きかねない勢いを持っており】

と……ト、書館……ン? ろしょ、か、ん……。
……「知識…の……イズミ」……。 ……いず、み?
なぁに、いずみ…。これ、ハ……知る…シ、り、たい……?

【使役者、なのか――女性はひどく無関心な様子で、下ろさずにいたパンフレットを読み上げる】
【図書館。その説明書きとして、知識の泉であるとでも記してあるのか】
【興味深そうに瞳を近づけてじぃ、と見る。まるで少女の事は忘れたように】

【――その一方で、第三の音源が現れる。それは少女の背後、足元であった】
【"ガンッ"と配管を破壊して、姿を見せるのはより小さな触手が一匹】
【つまり二匹目。サイズは半分ほどもないが、首を振って少女の位置をじっと見定めた】
280 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 20:13:27.61 ID:Mb8EuubsO
>>279

【変幻自在に動く棘、それはさながら夢幻の弾丸のように】
【視線の動きを見ていれば分かるだろう、彼女の動体視力は棘を追いきれていない】
【貫かんと襲いかかる棘、しかして彼女の視線はまだ直ぐ側に迫る攻撃を捉えては居なくて】

【寸刻遅れて攻撃の位置に気づく、だが攻撃はもうすぐ側、剣を振るう隙間も、ないくらい】


――――――徒然なる操り夢幻庵=\―――――ッ!!


【左手を刀の柄から離し、右手で刀を振り抜く、丁度地面と平行に一閃を放つよう】
【刹那、斬撃がねじ曲がる♂。薙ぎに放たれた一閃がその軌道を変え、彼女に襲いかかる棘に向かう】
【丁度上から下へ降り下ろすように、攻撃を弾かんと切り落とそうと試みる】

【左足が後方に下がって、右足の後方に座す、防御後の姿はさながら絵画のように】
【刀の切っ先は地面につき、左手は柄の頭を押さえる】
【細い一筋の刀のように、研ぎ澄まされた一瞬を煌めかせて】

【蒼白の髪が靡いた、ふわりと孕む風の色合いを伝えて】


意識が疎かですよ……!殺陣の中で気を抜くなどもってのほか
研ぎ澄まされた剣技の前では、刃は空間すらも超えるんです


【再び体勢を元に戻す、両足を肩幅に開き、抱きかかえるように右手を移動】
【高い位置から切っ先が下に向く形――――――突き≠ノ適した形】
【体勢を低くし、右足に重心をかける、口を真一文字に噛みしめる】

【――――――機を伺っているのだろう】
281 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 20:30:25.99 ID:5qMKsTl+o
>>280

【尋常では有り得ない太刀筋は、異形にとっても脅威足り得るらしく】
【上より下へ、"真っ直ぐにねじ曲がった一撃"は、その棘を綺麗に切り落とす】

【しかしながら異形もまた、尋常でないからこそ"異形"である】
【棘の切り口から吹き出す血液はどす黒く、鼻を突く酸性の臭い】
【それをごく至近まで近付いた状態で撒き散らす。相手に酸性のシャワーを浴びせるようなもの】
【棘でなく首そのものを落としたほうがまだ良かったか。触手は身悶えしつつ血飛沫を振るい】

た…テ……? 剣、ぎ……知ら、ナい……っ。
……図書、カンに…行かな、イ……と、ぉ……?

『―――矯ミミbかィ鋳、盧膿li彰李膺kルく‥‥。
 ノ……寤、能―驪Lイ嘉く、力、し箭翕a……者―ッ!』

【棘で少女を狙った触手は血を振りまきつつも徐々に後退】
【そして少女はといえば、無垢な表情でパンフレットをじっと眺め】
【ぐるりと向きを変え、背中を見せて。路地裏の奥へと、ふらりと一歩を歩き出し】

【――転んだ。死体に足が引っかかって、前のめりに倒れこんだ】


【そしてもう一匹。少女の背後、字面をはうようにして現れた小さな触手は】
【するすると地表を張って、刀を構える少女へと接近していく】
【音、気配、共に察知は用意。しかしながらそのサイズはアオダイショウほどであり】
【仮に近付ききれたならば、その口を開いて左の足首へと強く噛み付こうとするだろう】
282 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 20:48:34.54 ID:Mb8EuubsO
>>281

【吹き出す鈍黒の血液、振りまかれた血飛沫が彼女へと振りかかる】
【変幻自在の剣技や打ち払い等それだけの技術の者ならば、対応できるだろう】
【けれどもそれができなかった、まるで、目で追うのがやっとだと言いたげに】


あぁ……っ!!――――――くぅ……!!
これは……っ、酸、でしょうか、迂闊に攻撃するのは、まずいですね……!!


【飛沫が直撃する、狙われた右足に酸性が直接かかったようだ】
【サイハイソックスの一部が溶ける、さんが皮膚を焼き、肉を溶かす不快な音が響く】
【呼吸が乱れる、漏れる声がざんせ奥のように激しく、彼女の痛みを伝えるのだろう】

【ぐらりと身体の軸が揺らぐのを、右足を強く踏みしめて耐える、寸刻、さんで灼かれた脚が激痛を響かせる】
【白い喉が悲鳴を上げる、津熱を持った脚はさながら灼かれているかのように】
【頬に張り付く蒼白の髪、苦悶の色が整った顔を曇らせ】

【特徴的な構えは、すなわち体全身を使う剣技ということなのだろう】
【右足に受けたダメージは決して軽くない――――――だが】


水面静かに――――――


【彼女の姿が消える、夜に溶けて揺らめく陽炎のように】
【それはさながら幽幻のよう、次の瞬間には彼女は貴方との距離を詰め、直ぐ後方に出現するだろう】
【またの名を縮地*シうての剣士のみが使える、神速の足さばき】

【回避と接近を同時に試みる、先程まで開いていた5mほどの距離を詰め、背後の触手との距離を空ける】


――――――大地の烈日渡らせて

背中を見せちゃ、ダメですよ、いつなんどき、迫るかわからないですから


【下に向いた切っ先、前のめりに倒れた貴方に攻撃するには非常に適した構え】
【切っ先が地面をなぞる、右手を振りぬき、下方向への一閃を放つだろう】
【振りぬく瞬間に手首を返し、刃が付いている部分とは逆の部分で一閃を放つ】

【いわゆる峰打ち≠ナある、倒れた貴方の足首に向けて放つ】
【峰打ちであるため、切り裂かれることはない、ただ、強く殴られたようなダメージだろう】
【振りぬいたなら刀を返し、ぐらりと揺れた体勢を、左膝を着いて支える】
283 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 21:04:57.84 ID:5qMKsTl+o
>>282

【背後から迫った触手が空を喰む。自身をすり抜けるように姿を消した】
【その絶技。少女の背中を、すぐには寄れない距離から二頭の触手がじぃ、と見つめ】

……ッ、あ…ぅ、うぅっ……! イタ、い…――!!

【刃、ではないにしろ。無防備極まる足首を鉄塊足る刀が打ち据えると】
【鈍い音を立てて、足首を構成する無数の骨片の幾つかが破砕する】
【うつ伏せに這うような格好で女性は息をつまらせ、がり、と路面を爪で引っかき】
【その爪が剥げて血がにじむ。――滲んだ血は、"ジュウ"と音を立て】


【瞬間、女性の腹部。背面を突き破って小型の触手が少女へと飛び出してゆく】
【数は1。背後から迫っていたそれよりもより小さく、その動きは非常に素早い】

【黒い体表の生物はやはり蛇のように、女性の体内に尾を隠したまま】
【少女の首筋へと、4つに裂けた口を開いて食らいつこうとする】
【腔内はざらりとした細かな牙がびっしりと並び、もし肌に牙を立てたなら】
【その肉を食い破り、体内へと頭部を潜りこませようとすらするだろう】

【これは背後から少女を追っていた二匹もまた同じ】
【配管から姿を見せる大型のものは、彼女を頭から丸呑みにしてしまおうと】
【小型のものはもう一度と、その右足首へと牙を剥く】

【だが――女性は変わらず、無防備だ。仮に彼女が"宿主"であったとしたら】
【この防御を捨てた攻撃一辺倒のやり方は、実にずさんな戦法に思えた】
284 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 21:29:19.46 ID:Mb8EuubsO
>>283

【左膝をつく少女、見た感じ小柄な体躯に準じるだけの力しかないようで】
【その状態で放たれる剣技は、明らかにその身体能力を超えている】
【故にであろうか、右足に受けたダメージの大きさを詳細に伝え】


はぁ……ぁ……っ――――――くぅ……!!


【酸はまだ消えた訳ではなくて、動く度に染み渡り痛覚を苛む】
【神経に直接ノイズが混じる、意識が飛びそうなくらいの激痛、長いまつげが瞼を濡らす】
【――――――それでも】

【朽葉が霧散してもその誇りを失わないように、雛芥子に僅かな思いを託して】
【片膝に着いた汚れを、振り払いもせず、その手に持つ刀だけを信じる】
【可憐な一枚の剣士の姿は、諦めを踏破する響きに寄せて】


……水面はまだ静かに、揺らぎを知らず、止めどなく凪を続けます
達人の剣技は、一振りで水面に無数の波紋を浮かべるのだそうです
奔る一閃の烈日を、見逃さないよう――――――!!


【右足が地面を踏みしめる、やや内股気味に体勢を中心に寄せて】
【左膝が地面から離れる、振りぬいた右手の刀、その柄の頭に左手を添えて】
【切っ先が向く下芳香、今までの構えが中段の構えとすれば、下段の構えで】

【振りぬく一閃、右方向の刀を手首を元の方向に返して、彼女から右から左へと横薙ぐ】
【貴方の背中から食いつきにかかる蛇の頭部を切り伏せる一撃、そのまま蛇の首をおとそうという勢いか】
【けれども、それだけでは背後からあの攻撃に対応できない――――――筈で】

【刹那、一つ、また一つと風が舞い上がる、砂埃が吹き上がる砂塵のように】
【揺らぐ風の響く音、それはさながら銃創のように響きあって】
【剣閃が響く、攻撃はわずか一振り、けれども斬撃が彼女の周囲に広がっていく】


水面静かに大地の烈日渡らせて=\―――――!!


【後方から迫る二匹にも斬撃が放たれるだろう、切り伏せるような一閃が二発、それぞれ首を落とそうと言う狙い】
【彼女が振りぬいたには一閃、けれども放たれる斬撃は三閃】
【僅かなタイムラグもなく同時≠ノ斬撃が、彼女に向かう三匹へ放たれるだろう】

【攻撃は刀に依るものと一緒である、切断力は十分にある】
【けれどもそれだけである、異能を孕んでいない斬撃は、先ほどの二の鉄を踏む】
【蛇の血飛沫を避けるすべは今の彼女にはないのだから】
285 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 21:51:13.38 ID:5qMKsTl+o
>>284

【異形にも知能はある。しかしながらそれは、狩人のそれであって】
【反撃手段を持つ――特に、特殊な能力を持つ獲物というのはそう居ない】

【多彩な攻撃手段を持つ物の、その肉体はあくまで骨すら無い軟体】
【ほぼ同瞬の斬撃は、確かな手応えを以って三匹の首を切り落とす】
【これにあたり、背後からの二匹は特に死という言葉にふさわしい反応を示した】

【小型のそれは、落ちた首から数十cmほどの所で地に落ちて】
【ずるずると慣性に従って地表を滑りながら、ビクビクとのた打ち回り】
【やがて声にもならない、血のあぶくに混じった呼気を漏らしながら絶命した】

【もう一方――配管より姿を見せていた巨大な一匹は、よりその動きを大きくしたものとなる】
【勢いは強く、少女が身動きを取れないとなれば首のない肉体が彼女の背にぶつかりすらするだろう】
【血液は当然ながら酸性で、棘を斬るより量は多い。】
【バケツで酸性の液体をぶち撒けたような、絶望的な"攻撃"ともなるか】


『―――廼o帶ぉォ、寤、rrrヨく、者aあ…ア閼……。』


【唯一反応が違いのは黒い一匹、女性の肉体より這い出したソレであり】
【落ちた首は、その勢いを失わずに少女へと向かい、なおも食らいつこうとするだろう】
【肌に牙が触れればヒルのように血を啜り、服に触れれば布を破って、しかし力を失い落ちてゆく】

【"脳"に近い部位が頭部に存在するのかもしれない。"栄養源"とは繋がったままだったが】
【黒い体表の触手は、その胴が倒れ伏し。そして早くも干からびつつ在った】

【女性は動かない。絶命寸前の人体らしく、びくりと反射的に跳ねるものの】
【背中を突き破られて生き残るのは難しいだろう。もっとも――】
【――彼女がまっとうな人間であったかは、分からないが】
286 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 22:06:00.29 ID:Mb8EuubsO
>>285

【灼熱で身を焼くが如く、単純な斬撃や打撃ならば、その痛みは一瞬で】
【けれども酸の痛みは、それらとは比べるまでもなく強く響く】
【皮膚を蝕み、神経を焼く、傷口に指を突っ込まれて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような、熱】


ぐぅ……ぁっ……!!!んぅ……ハァ……ハァ……!!

(ダメです……!!まだ、耐えなきゃ……!!耐えて……!!)


【背中に酸が直撃する、あまりの激痛に、目が限界まで見開かれて】
【一瞬意識が飛びそうになるのを、唇の端を噛んで耐えた、頭の中で警告音が鳴り響く】
【羽織を溶かしそのまま中の着物までも侵食する、肢体が顕になって雪銀を描く】

【耐えきれるものではなく、地面にバタリと倒れ込むだろう、さんで灼かれた傷口は視るも無残に焼かれて】
【さながらそれは背中に熱湯をかけたような、凄惨な傷口があって】
【掌が虚空を掴む、新井呼吸が地面を濡らして】

【止めどなく溢れる涙、卓越した剣技を持っていてもまだ年端もいかない少女が為】
【なおも食いつかんとする黒い一匹、右手の刀を握るも立ち上がる気力はなく】
【そのまま左腕に食らいつかれるだろう】


――――――ゃ……!やめて……っ!!離して……!
んぅ……ぁ……吸わない……でぇ―――……


【身体が跳ねるように揺れた、すすられる血の感覚、全身が総毛立つ不快感】
【その光景もさることながら、その生物自体への嫌悪感も強く、漏れる声に嗚咽が混じる】
【涙でくしゃくしゃに顔を汚して、張り付く髪の淡さを伝えた】
287 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 22:22:13.87 ID:5qMKsTl+o
>>286

【酸性の液体というものの恐ろしさは、刃などと違い】
【触れたら終わり、ではないということ。それは衣を溶かし、肌を焼き】
【しばらくはジリジリとダメージを与え続ける致死にこそ及ばないが】
【その痛みと、肉を焦がす臭いは想像を絶するものであると言えるだろう】

【さて――左腕に食らいついた黒い触手の頭部が、血を啜る】
【これで胴が繋がっていれば、体内にまで侵入したかも知れないが】
【幸いというべきか、腔内の器官によって血液を引き出すのみであり】

【首が切れているために、啜った血は内部の袋へと溜まっていき】
【次第に切断面から水風船のようにした垂れ下がり、膨らんで、一定の所で"バチン"と千切れ】
【大きな血袋として落ち、モノ言わぬ肉塊となった女性の側へと転がっていき】


『う…甕u婀莪アAゥ鑄餘邑生い…――ギ、ぐ……!』

「酷――ひど、イ、コトを…スる、な……ぁ……。
 ワレ、ら…も……生きて、居る…――の、に…――?」


【少女の肌にドス黒い痣を残して、やがて頭部だけとなった触手はぼとりと落ちる】
【一つ目の呻き声はその断末魔。そしてもう一つは――路面、マンホールを開いた物の声】

【――といっても、それはやはり触手であった。しかしながら蛇状ではなく】
【それが集合体となって、人を模した様な形状をしているのだ】
【べっとりとした粘液を体表にまとわせたそれは、下水に繋がるマンホールから這い出ると】
【頭部を――人間であればつむじのある箇所を、死した女性と側の血袋に向けると】

【"ずるぅ"と頭部を身長させ、2つの物質をまるごと飲み干し、"ごりゅっ"と体内で磨り潰し】
【血なまぐさい吐息を漏らしながら、無いはずの瞳でダメージを負った少女を見つめて】
【彼女が何かしらの攻撃に移らなければ――そのまま、縦穴へと姿を消そうとするだろう】
288 : ◆zO7JlnSovk :2016/01/17(日) 22:32:26.82 ID:Mb8EuubsO
>>287

【目の前の光景から湧き上がる不快感、胃の奥底から酸味が巻き上がるぐらいに】
【えづくのを何とか耐えて、目の前に現れた触手へと視線を向けるのだろう】
【限界が近い、それでも、何もせずに逃がすわけには行かなかった】


―――……っ……ぁ……まだ……です……っ!!
貴方のようなものを……逃がすわけには……!!


【右手のひじをついて、上半身を上げる、左手に力が入らない、血液を失いすぎたのだろうか】
【さんで灼かれた背中が風に触れるだけでじんじんと痛む、身体を起こそうとして、一度倒れこむ】
【は大に擦り傷がつく、それでも、何とか上体を起こして】

【藍色のh血お見は未だ力を失わず、それでも蒼白の髪を揺らして】
【マフラーの端を噛んでぐっと力を入れた、そして、上体を起こす】
【近くの壁に凭れる形で何とか座り込んだなら、右手一本で刀を握る】

【正中線上に刀を構える、まだ諦めないと言いたげに】
【けれども満足に身体を動かせるような状態ではない】


――――――黒髪乱れて――――――修羅と……


【からん、と音がなった、刀が地面に放り出される音】
【限界の糸がプチンと切れて、そのまままぶたを閉じるだろう、淡く息が漏れる】
【もうとうに限界であって、そのまま意識を失うのだろう】

【そして触手は姿を消すだろう、後にボロボロの少女を残して】


/お疲れ様でしたー!
289 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 22:52:03.77 ID:5qMKsTl+o
>>288

【相手は攻撃に移れない――それを確認すると、触手は迎撃に移らず】
【体内で咀嚼するのに適さない、女性の身につけていた布切れを吐き出してから】
【しばし周囲を眺め、パンフレットを拾い上げてから】
【ガラ、とマンホールの蓋を閉じて、その姿を消していった】


【――その後、しばらくして配管の調子が悪いと確認に来た人物により、少女は発見され】
【重傷であったことから、すぐさま病院へと送られる事となる】

【一方、頭部を失して死亡していた人物は通りすがりの旅行者であり】
【身分こそ知れなかったが、後に"触手状の生物の被害者"として処理された】
【この過程で問題点があったとすれば、少女の証言の信憑性であろうか】

【なぜなら、その場には彼女が切り捨てたという"触手の死体"が見当たらず】
【ただ風化した灰のような、でなければ干からびた植物の茎のような】
【踏めばパリパリと砕け散って塵芥と化す、屑としての"何か"があっただけだったから、だ】


【それともう一つ。彼女が証言するだろう、女性の見た目についてだが】
【これは紹介した結果該当人物が見つかった。もっとも、行方不明者であり】

【年齢は8歳。名はヒリア・クレイス、さる家庭のごく一般的な少女ながら】
【いわゆる"アルビノ"であったため、通院歴からこれが判明した】
【また、『SCARLET』の直近の報告にも似たような報告が挙がっており】
【もし気になるのならば、そちらを――経過報告に病室へ足を運んだ刑事は、そう伝えて立ち去ったのだった】

/お疲れ様でした!
290 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/17(日) 23:45:18.30 ID:sNz9qiW60
【――――夜の繁華街。行き交う人々の人種も様々であり】
【その中でも一際目立った存在が一つ。如何にも高そうな服を纏い、お高くとまった様な性格】
【一見すれば令嬢にも見えるのだが、だからこそこんな場所に一人で居る事がより一層違和感を引き立たせ】


「全く、お姉様にも困ったものですわ……何故私がこんな買い出しなんかを…………そもそもそんな事は従者達に任せれば良いと言うのに――」

【一人で文句を言いながら辺りを見渡し】
【同時に固まれば、もう一度辺りを見渡し。次に手元の地図を見れば小首を傾げた】
【地図をひっくり返したり、裏にしてみたり。其れ等の動作から分かる事はただ一つ】


「…………さて、此処は何処なのでしょう。適当に歩いていれば港に着くと思って居りましたが……」

【完全に道に迷った事。因みに、港は此処から遙か彼方】
【其れすらも分からない女は辺りをキョロキョロと見遣って。「聞いていた話と大分違いますわね」と暢気な台詞を並べながらその場に立ち尽くすこととなる】
【時間も時間だ。近寄る全てが善人とも考えがたいのだが――――そんな様なのだから兎にも角にも“目立っている”事は確かで】










【――――月光と星々の明かりのみに照らし出された森の中】
【普段ならば平穏で在ろうこの場所も、今宵ばかりは魔獣達の唸りに静寂も打ち破られ】
【その方向を見遣れば一人の少女が魔術を用いて魔獣達を葬っている事が知れるか】


「人々を無意味に殺めるのならば我々教会が処罰します
血には血を以ての償い。血でしか止める事が出来ないならば、其れはイリニ達の役目です」

【純白のローブに白銀の髪。同じ色の双眸は感情を浮かべる事も無くただ魔獣達を敵として認識しているだけの様】
【色々と記すべき事はあるのだが――――何より特筆すべきはその手に装備された“手甲”の様な物だろうか】
【其れは大きな魔力を漂わせており、たった一薙ぎでも獣達にとっては致命的な一撃】

【程なくして、その森に舞い戻ったのは静寂。無数に転がる骸の中、ぼうっと立っているのはその少女のみ】
【辺り一面が朱に汚れる中、その少女だけは汚れる事無く純白を保ったままで】


「任務の完遂を確認。取り逃した存在は零だとイリニは確信しました
――――少し休んでから帰還します、とだけ告げてイリニの報告は終了します」

【徐に取り出したのは水晶だ。恐らくは通信機代わりなのだろうが――――其れに報告をすれば、再びその場でぼうっと立って月を見上げる事となる】
【魔獣達の咆哮だとか魔力だとかを辿れば此処に辿り着くのはそう難しい事でも無い】
【そして、この場を訪れた者が見ることになるのは上記の通り。血にまみれた中、少女が一人月を見上げているなんて状況】
【声を掛けるにせよ、何にせよ。白の少女は感情を浮かべる事も無く其方を見遣ればじっと視線が送られて】
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/18(月) 22:37:48.41 ID:Ggc+PyLa0
【街はずれ――暗がりの広場】
【よくよく分からない芸術家の作った像やモニュメントが多く飾られる場所】
【上弦から一つだけ進んだ少しだけ丸い月、表裏一体なんてタイトルのつけられたよく分からない像の銀色に、ぴかりと照り映えて】

……――ああ、子供が手放してしまったのかしらん。

【その、なんとも表現しがたいような像の、絡まり合いながらにゅと突き出した部分に、見上げれば引っ掛かって揺れるのは、黄色い風船で】
【高さにして二メートルか三メートルか、なかなかに大きい像だから、きっと取れなかったのだろう。夜風に無念そうに身体を震わす、黄色は鮮やかに目立ち】
【ぼうと見上げているのはそれこそ自分さえ子供みたいな背の高さをした少女、真っ白な吐息をこぼして、刹那だけ視線を辺りに移ろわせ】

【くすんだ金色の髪。毛先には緩く癖がついていて、くるりと巻くような毛先にはピンク色が乗る。長さと言えば肩を少し通り過ぎるほどの、セミロングヘアで】
【あどけなさを微かに残す顔はそれでも拗ねきった子供のような気に食わなさがこびりつく、いっとう鋭い眼は勿忘草の花の色によく似て】
【紅茶染めのワンピースは布地をたっぷりと使ったロング丈、身体つきを隠すような長めのケープは色あせたような赤色で、ただ、中の華奢なのはよく分かる】
【平たい靴を履いているなら、その身長は百四十五にも満たないくらいで、もっと言えば百四十二センチ、背丈だけで言えば本当に子供のような、少女で】

かわいそうに。

【そっと黄色く震える風船を抱くかのように少女は手を伸ばす、もちろん届くわけのない距離を、冷たい夜風がひるりと抜けて――】
【――きらり、と、指先できらめくのは勿忘草色。その色味のわたあめに、たくさんのラメを散らしたような、そんな、魔力で出来た靄が現れ】
【するりと宙を伸びて、やがて、まるで見えない手でもあって、それが風船を引き寄せたかのように。少女の伸ばした両手に、そっと、風船は納められ】

【「置いて行かれたの」と少しだけ掠れた低い声が緩く風船に尋ねる、――子供のような見てくれと、原色の鮮やかな黄色。それが、夜の中で、異質なように見えた】
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/19(火) 19:29:57.71 ID:iJGw4GlF0
>>291
/のんびりと再掲で……
293 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 20:30:08.38 ID:78Zqt74Mo
【路地裏】

【ここは世界でも有数の都市の外れに位置する言わば下町の様な区域の路地裏】
【いつ建てられたかわからない古いビルがギュウギュウに並びその路地は幾つも伸び】
【昼間だというのに薄暗かった。また、雪が少し振る、よいとは言いがたい天気だった】

【一人の少女が歩いていた。少女と言っても十代後半、背伸びした化粧と格好で少女には見えないが…】
【高いヒールのブーツが歩きづらそうでスマホの画面を見つつ、路地裏を歩く。…それを見ていた人影】
【路地裏の奥へと消える。少女は何か違和感を感じ取り、振り返ったがそこには誰もいない。気のせいか】

【気を取り直してまた歩き出し、角を曲がった先に人影が立ちふさがっていた。少女はスマホに気を取られていたので】
【気づくのが遅れたが人影が声を発したので、彼女はある一定の距離のところで気がついた】

…アシュリー・コートワールだな?

【酒やけした若そうな男の声。人影はまさにと言った風で、背が高く、深く被ったフェドーラ、トレンチコート、サングラスと】
【映画に出てくるマフィア、殺し屋といった様子。………あああ!殺される!と少女は頭を過る、理由までは思いつかない】

『―――いやぁぁああ!!誰かー!!殺されるわ!!助けて!!』

【生きようという本能が恐怖をまさる。スマホを殺し屋に投げつけて、精一杯の拡声器ばりの声で叫んで走りだす】

…いや、違う違う!オレはアンタの親父さん…ちょっと、聞いて…あ、おいっ!!

【投げつけられたスマホ(痛い)を拾って、追いかける。クソ、足速いな。というかこんなとこ誰かに見られたら相当、マズい】




【街中】

【辺りに飛び散った鮮血が灰色のアスファルトをドス黒く染める。ここは繁華街の交差点。街の中心地だ】
【その近くに居た人は証言する。信号が赤で待っていたら、窓ガラスか何か割れたような音がした。音を探すと雑居ビルの2階の窓が】
【割れていて、何かが落ちてきた。なにかと思って見ると、それは“頭のない死体”だった。悲鳴がそこらじゅうから上がる】
【そして“そいつ”がその割れた窓から飛び降りてきたらしい。止まっていた車の屋根に飛び降りたんだそして――――】

…ハァ……ハァ……クハッ…ハハハハ…スゴイ…凄い力…
ナメやがって……クッ…だから…こうなるんだよ…

【割れたメガネを掛けた男。白いシャツが血だらけで、いや全身血だらけで、周りの関心を他所にぶつぶつと何かいいながら一人笑っていた】

【何が起こったかわからない野次馬は一定の距離を起きつつ、そのあたりでざわざわとしている。病院?…いや、自警団に連絡?つーか何?やばくね】
【野次馬の一人がケータイを取り出して、カメラを向ける。ざわざわ…一人二人、続いて写真を撮ろうとした】

あああああ?何してんだよ?…みせもんじゃねえよ……ふざけんじゃねえよ!!クソが!!

【男が観衆に向かって飛び掛かる。その跳躍たるや、人間を超えていた。ザワッと分かれた人混み、逃げ遅れた一人が腕を掴まれる】
【メキメキと辺りに鈍い音が響いた。その腕の骨が粉々に折れていく。持っていたケータイが落ちる。眼鏡の男はニィイイと笑い、目が青白く光ったのだ】

能力者に、刃向かえると思ってんのか?クズが

【思い切り捕まえた野次馬の腹を蹴飛ばすと、これも人の域を超えた力で吹っ飛ばした。そうして被害者が2人に増えたところで大パニックが発生したのだ】

294 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/19(火) 21:10:08.72 ID:uj1u3g+40
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――風の国 大通り】

また、あいつに借りを作っちゃったな……良い物を調達してくれたよ……
「綺麗だったよねぇあれ。ねぇ、もう1回見せてよ?」
だ、ダメだよこんな街中で!
「あっはは、冗談冗談!」

【燃えるような赤い短髪に黄金色の瞳を持ち、首には緑色のスカーフを巻いた】
【長旅用の生地の厚い服の上から、胸部を覆うブレストアーマーとショルダーパッド、焦げ茶のマントを羽織り】
【腰に歩兵用の両手剣を佩いた、身長170cm前後の青年と】

【白いストレートの長髪に赤く緩やかな光を纏った瞳をしている】
【白いタンクトップの上から白いジャケットを羽織り、白いハンドグローブに白いスカートを履いた】
【肌の色白さも相まって、眩いほどに白さが際立っている、身長160cm前後の少女が】

【ちらちらと雪の舞い始めた雑踏の中を、機嫌良さげに揃って歩いている】
【青年は、スカーフをマフラーの様に、首元の冷たさを避けようとしてか、ちょっと手をやって直し、ほぅっと一息つく】
【少女の方はと言えば、その寒そうな外見に反して、全く冷気に堪えている様子が無かった】

んと……折角だ、何か食べていこうか?
「おっ、良いねー! ……あ、でも唐辛子料理とかダメだよ?」
……ふふ、バレたか……

【チラリと、外食店が連なる通りへと視線を向ける青年と少女。2人の表情も綻びを見せた】



【――――所変わって、水の国 路地裏】

――――くたばれッ!

【メシャッと、湿ったモノが砕け散る音が響き渡る。血の臭いが漂い始める中で、肩で息をしている人影が立っていた】

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【まるで何かに苛立ちを感じている様な攻撃的な眼をしている、身長170cm前後の青年と】

【明るいピンク色の長髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、前髪をやや膨らませる様にセットしている】
【紫色に着色されたカジュアルジャケットと、レギンスとハーフパンツを組み合わせて着用している】
【目元にレンズ、両耳に円形のボディ、後頭部に装着用の調節器が一体化した、機械的なバイザーをつけている、身長160cm前後の女性】

【足元には、強い力で粉砕され、一部がバラバラにもなっている、3人の男性の死体と】
【苦しげに身悶え、口から泡を吹いている1人の女性の姿があった。その腕には、小さな穿刺痕――――そばに千切れた男の腕には、注射器が握られていた】

……畜生、間に合わなかった…………済まない…………ッ
「…………」

【苦しむ女性のそばで、力なくうなだれる青年。それをバイザーの女性は、ただ沈黙のままに見守っていた――――】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
295 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 21:32:52.70 ID:BAk9NlTx0
一時間→四十分
296 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/19(火) 21:39:47.71 ID:WH+JIO0mo
>>294

【水の国の路地裏にて】

……あぁ、さて。こいつはどうしたものかな

【物陰から独り言のような小さな声。姿を現したのは軍服姿の偉丈夫だ】
【くしゃくしゃの赤い髪を困ったように撫でつけながら、目の前に立っている二人と倒れている四人を見て溜息をついていた】

先に状況を聴き直すのがいい、か
おい坊主、これは一体どういう状態なんだ?
なかなか、愉しくなさそうには見えるんだが

【自分へと確認する言葉に続けて、威圧感のある低い声が赤髪の青年へと向けられる】
【男はわざとらしく肩を回した。その動きに合わせて、背負った大剣の柄が揺れる】
297 :トライデント&アコーディオン ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/19(火) 21:55:17.96 ID:uj1u3g+40
>>296

「……ねぇ、そろそろ……」
……っ、あぁ……分かっている――――――――ッ!?

【渋面でうなだれる青年に、女性は何かを促す様に言葉を掛ける】
【ギュッと瞑った目を開いて、青年は答える様に顔を上げる――――第三者の声がその場に掛けられたのは、そのタイミングだった】

「……っと」
……何者だ、お前は…………
……そこの女が、この連中に無理やり押さえつけられて、薬をやられている場面に行き当たっただけだ
だから、俺がこの3人を殺した……ただ、それだけの事だ

【半身を引く様にして、女性は現われた軍服の男へと向き直る。青年は、首だけで振り返りながら返答した】
【派手な3つの死体は、自分のやった事だと、青年は投げやりな口調で告げる。意識は、ただ足元の女性の方に向いている様だった】

……相当、性質の悪い薬だったんだろう。先ほどから、こっちの呼びかけにも反応しないで、ずっとこのままだ……
もっと早くこの馬鹿共を殺せていれば、こんな物を打ち込ませなくて済んだかもしれないのにな……

【虫の様にもがき苦しむ女性は、まるで毒を煽ったの如く、今にも力尽きそうな雰囲気だった】
【こうなってしまっては、もう出来る事など無い――――このまま死ねばそれまで。生き残っても、依存症などの後遺症を引きずる事になるだろう】
【――――どうやら青年は、それに心を痛めている様だった】
298 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/19(火) 22:08:56.74 ID:WH+JIO0mo
>>297

なるほど、見たとおりの状況というわけか

【手短な返事をしながら男は素早い動きで女性の元へと駆け寄った】
【側で屈みこみ、ポケットの中から光り輝く石のようなものを取り出して掲げる】

それなら、早く救助なり何なり呼ばなければな
あぁ、そっちの嬢ちゃんは少し彼女を抑えててくれないか?
暴れられると、こっちもやり辛くてな

【助けを呼ぶように青年に目配せをしてから、男はもう一人の女性に手伝いを求めた】
299 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/19(火) 22:23:38.65 ID:uj1u3g+40
>>298

……ッ

【見た通りの状況。その言葉にふと、視線がぐるりともう1度、周囲の状況を見回す】
【青年は、千切れた腕の注射器を目に留めて、不快感を舌打ちと言う形で、素直に表現した】
【――――殺してもなお足りない位に、こいつらの行いには反吐が出る――――と】

っ、何をするつもりだ……?

【とりあえず被害者の女性をどうにかしようとしていると言うのは青年にも分かったが】
【それでも、今のこの女性に手の施しようがあるのか――――青年は思わず戸惑った】

「――――え……? や、あたしはちょっと……」
い、いや! それは俺がやる……だから連絡を、頼む!
「あ、うん……分かったって、ね!」

【経過を見守っていた女性だが、軍服の男から「抑えてくれ」と声を掛けられると、不思議に躊躇う様子を見せ】
【同時に、青年の方もどこか慌てた様子で、バイザーの女性を制して、肩口から両手で抑えつける様に、足元の女性を抑えつける】
【――――本当ならば、身体を横向けにして、嘔吐などに備えるべきなのだが、抑えながらそれは難しいので、妥協した様だ】

「――――救急です。女性が1人、薬物中毒みたいな様子で、苦しんで倒れてる
 場所は路地裏……えーと、ここから近い通りは――――」

【携帯端末を取り出し、救急へと連絡を入れる女性。場所と症状とを、正確に伝えようと、何とか冷静に対処している様だった】
【――――どうやら、ある程度『危急の事態』には慣れているらしい。それは青年にも言える事だが――――】
300 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 22:35:56.34 ID:WH+JIO0mo
>>299

(動きは手早いな。荒事には慣れてるということか)
(まぁ薬を使ったというだけで三人を殺すようであれば、当然か)

っと、集中しなくてはな

【二人の早い対処に思うところはあったが、男はまずは目の前の事態に意識を向けることとした】
【彼が数秒間、意識を集中させると石の輝きが強くなり、治癒の魔術が発動する】
【女性の体内に作用する類のもので、応急処置のようなものだった】

効果があるかは知らんが、やらないよりはマシだろう
これで生き残れるかは当人と運命次第だな
あぁ、もう、離してもいいぞ。顔を傾けてやった方がいいかもしれないな

【青年にそう言って男は立ち上がった。彼ができることはもうないようだ】
【次に男は無惨な状態になっている男たちの死体へと近づいた】

おーおー、これは酷いな
あぁ、嬢ちゃん。バラバラ死体が三つある、とも教えてやれ。彼らもいきなり見たら驚くだろう

【軍人故か、死体や薬物で痙攣する女性などを見ても、男は何ら動転する様子はなかった】
【もしも死体の中に頭が残っていれば、その目を閉じさせてやるだろう】
301 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/19(火) 22:50:34.75 ID:uj1u3g+40
>>300

(……なんかの、魔術的な品か……?)

【女性を抑えつつも、青年は横目で、軍服の男が石を翳す様子を見ていた】
【そうした道具であるのなら、確かに多少の効果は期待できるのかもしれない】
【――――光を浴びて数秒、女性の抵抗が弱まる。小康状態になったのか、それとももう本当に今際の際にいるのか――――それは分からない】

あ、あぁ……分かった……

【女性の身体を横へと向け、腕と足とでその姿勢を支える様に、体勢を作ってやる】
【そこまでやって、ようやく青年は身体を起こす事が出来た。割合、女性の悶え方は強かったのだろう。フゥッと大きめのため息をこぼした】

「――――あ、そうだ……近くに下手人の死体がある。そっちは、もう完全に死んでるから、どうしようもないけど……
 とにかく、女性の症状が酷そうだから……そう、急いでもらいたいって、ね
 ――――女性はもう、横向きに寝かせてある。怪我とかもしてない様だから……もう、身体を動かさせるのも、どうかって所で――――」

【通信している女性は、声を掛けた男に対して、頷いて了承のサインを送ると、その内容を相手へと伝え始めた】
【バイザー故に、その表情は読み取りづらいだろうが、真摯に、かつ冷静に、状況に対応しているのは分かるだろう】
【必要な連絡を一通り終えると、後は、到着までに細かい指示などで、判断を仰ぐ過程に入っていた】
【もっとも、現場の処置としてはそれなりの事をしているので、その内容に従う事も無さそうだが――――】

あんた――――この国の軍人か?
こんな所で軍人に会うって言うのも何だが……

【そうこうしている内に、青年は余裕が出来たのか、男自身へと意識を向け始める】
【――――頭部が残っている死体は1つだけ。その目を閉じさせる軍服の男に、青年は問いかける】
302 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 22:58:49.03 ID:WH+JIO0mo
>>301

はは、もしもこの国の軍人ならお前たちを捕まえているさ
いくらこいつらが犯罪を行ったとはいえ、それについて判断する権限をお前たちは持たない。そうだろう?

【男も少し気が抜けたのか、軽い笑顔を覗かせた】
【死体の目を閉じさせた後、彼は改めて青年に向き直った】

まぁ、なんだ。一般人にあれこれ話すようなものでもない“用事”の後でな
散歩がてらうろついていたんだが、運悪くここに来ちまったってわけだ
全く、仕事でないときぐらい、緊急事態と死体からは離れていたいんだが、今のご時世じゃそうもいかないな

【愚痴をこぼすように言って、彼は懐から煙草を取り出して咥える】
【だがライターが見つからないらしく、苦笑いを一つしてみせた】

で、坊主と嬢ちゃんは何者なんだ? 夜の散歩をしてるカップルには見えないな
さっきも言ったが、俺はこの国の公権力じゃないから答えたくないなら答えなくてもいいが
303 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/19(火) 23:17:21.51 ID:uj1u3g+40
>>302

……そうか。それならある意味で都合が良い。余計な衝突をしないで済むからな……

【死体の目を閉じさせる、と言う行為にあまり良い気分ではないのだろう、ややその目を細めながら青年は答える】
【心底、この面々に対しては憎しみの様な物を抱いているらしく】
【それでも同時に、この軍服の男が人道に沿った人間であるらしい事は分かる。ならば、自分たちが衝突する理由もない】
【都合が良いと言ったのは、それなりに青年の本心であるらしかった】

なるほど。気晴らしで出歩いてこれとは、確かに運がなかったんだな……
……その『用事』とやらは、聞かない事にしておく。マジックアイテムをここで消費した人間が、後ろ暗い物を抱えていると考えるのも不自然だ……

【イライラした表情ながらも、わずかに愁眉を開いて見せる青年は、男の答えに頷いた】
【水の国の軍人では無くても、どこかの所属の人間である事は間違いないのだろう】
【ならば、余計な詮索をここでする事もない。先ほどの応急処置の事を考えても、彼が大手を振って歩けない人間とも、思い難かった】
【あるいは、自分たちよりよっぽど『真っ当』な立場にある人間なのかもしれない】

――――ただの賞金稼ぎ、傭兵の真似事をしているだけの人間だよ……
こいつらの、こう言う首とか……あるいはどこかの動乱で動く機関だのなんだのとやり合う事で、金を稼いでる……
「――――ま、雷の国の軍部とか『SCARLET』とかにお得意様がいてね?
 フリーの立場で、色々やってるって訳って、ね……。あ、あと4分ほどで着くってさ、レスキュー」

【逆に立場を問い返されて。青年は『賞金稼ぎの様なもの』と答えた】
【実際、ここらで粉砕されたこの3つの死体を見るに、実力としては相応の物を持っているのだろう】
【それを使って、己の腕1本で渡り歩いているのだろう。今回のこの『仕事』は、実益よりも私情を優先した様だが】
【それを、連絡を切り上げたのだろう、女性が補足する。フリーの立場と言う事は、『UNITED TRIGGER』や『SCARLET』の人間ではないのだろう】
【あくまで、ペアで動いているだけの人間――――いくつかの動乱に参じて、実際に大きな仕事を経験しているのかもしれない】
304 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 23:34:15.86 ID:WH+JIO0mo
>>303

賞金稼ぎ、か。そのあたりは同僚受けが悪いな
俺たち軍人からすれば、賞金稼ぎや傭兵の類は“ハイエナ”のように見られがちだ
俺はそうは思わんのだが……まぁ、なんだ、彼らにもちょっとしたプライドがある
絡んできても、大目に見てやってくれ

【男は困ったように笑うと、やっと見つけたライターで煙草に火を点ける】
【夜空に向けて煙を吐き出して、落ち着いた表情を見せた】

んー、SCARLETか。最近、聞かん名前だな
そこにUT、だったか? それにお前たちフリーの人間もそうだが、俺としては頭が上がらんな
あぁ、救急への連絡ご苦労。四分とはこの国の連中は優秀だな

【今度は女性に向けて困ったような笑いを浮かべる。軍人として、意識をする相手であるようだった】

……で、そこの坊主が不機嫌そうなんだが、心当たりは?

【煙草を持った手で青年を示して女性に質問を投げかける】
【自分の動作で機嫌を悪くしているのはわかっていたが、当人よりも近しい別人から聞いた方が詳細が分かる、と判断したためだ】
305 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/19(火) 23:48:18.66 ID:KXVFCyPP0
>>293
【狂乱の繁華街に響く車輪の滑走音。混乱の中心部に現れたのはオートバイでもパトカーでも無く、たった一人の女性であった】
【突如、男のすぐ脇を猛烈な勢いの突風が吹き抜けていった。男の眼鏡を吹き飛ばしかねないほどの風、その吹いてきた元を振り返れば、右腕を男へかざして立つ者の姿が見えるだろう】
【オレンジの長髪の上から同じくオレンジのベレー帽を被り、前髪をひたいの前で二つに分け長く垂らした、20代程に見える女性である】
【右腕は素手。左手には円形の盾を手にしており、両足に装着しているのは二輪式のローラースケートといういささか奇妙な恰好。水の国の自警団であることを示す白の制服に身を包み、右腕には傭兵組織「SCARLET」の一員であることを示す腕章をはめていた】

ちょっとちょっとお兄さん、何してくれてんのさ。
そっちの首なしさんとの間に何があったかは知らないけどさ、殺ったのはあんたでしょ?
それにそっちの蹴っ飛ばされたヒト、これは言い逃れできないよね。器物損壊と暴行と殺人の容疑で…まーいいや、そういうのは。
水の国自警団支部兼SCARLET所属、ジュリア・クレイパス!悪いけどさっさと捕まってもらうよ!

【女はそう名乗りをあげた。勝ち気そうに笑う鋭い瞳が男を見据える。背負った大きな槍に女が手を伸ばす。戦闘開始の合図だった】


306 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/19(火) 23:50:53.66 ID:uj1u3g+40
>>304

……なるほどそうなんだろうな。確かに、考えてみれば商売敵でもある、か……
雷の国では、それなりに売り込みに成功したから、そう言う認識が薄くなっていた……
まぁ、当時猫の手も借りたそうな情勢だったから、というのもあるだろうが……

【ハイエナと評され、青年は一瞬眉を潜めるが、考えてみれば然りと思い至った】
【同業の存在がいくらかもいる事で、そこの認識が曖昧になってしまっていたが、確かにグレーゾーンでごそごそやっている、と言う印象を持たれても仕方がない】
【自分が雷の国軍部に、ある程度でも顔を効かせられる様になったのは、時節の影響が強かったからなのだと、再認識して】

……一線を越えない限りは、事を荒立てるつもりは無いさ。敵を作りたい訳ではないんだ……

【無用な対立を生む事が目的なのではないと、青年も頷いて見せる】
【尤も、逆に言うならば――――対立が決定的になれば、彼ならば容赦はしないだろう。この死体はそれを物語っている】

――――『SCARLET』ならば、最近……機関の六罪王に、犠牲者を出されたと、ちょっとした騒ぎになっていたな……
その六罪王が強力すぎたのか、あるいは下手を踏んでしまったのか……2週間ほど前まで、雷の国がかなり浮ついていたのを覚えているぞ……
「まぁ……需要があるから、そう言う組織が出てくる訳って、ね
 ……でも、『SCARLET』隊員の死者って言うのは、本気で驚いたよ……彼らは、言わば公安の側なのにって、ね……」

【――――最近聞かないと言われた『SCARLET』の名だが、彼らにはつい先ごろ、強烈なニュースと共にその名が刻まれていた】
【機関、六罪王の手による、雷の国の戦艦強奪事件。そして、そこでのSCARLET隊員の殉職】
【世間を震撼させる、と言う程でも無いが、局所的に大きなショックを与えていた事件である】
【そう――――そうした強者があちこちに点在している中で、なおそれを抑えつけるほど、世の悪――――カノッサ機関は、強大なのだ】

「さぁ、別に? ……単純に、この子こういう連中大っ嫌いだから、ね?
 盗人なら手か足を壊して、人殺しなら問答無用で抹殺……って、そう言うタイプだからねぇ……あたしにとっては、もういつもの事で、今さらって感じなんだよねぇ……」

【青年の事を指摘されて、口元に苦笑を浮かべながら女性は心当たりを答えてみる】
【――――この青年、いつもこうなのだ。自分にとっては異常と言う感覚が薄れてしまっている程に】
【要するに、青年は単に『悪』に対する憎しみの心が凄まじいと言う事らしい。こうした事も、2度や3度では済まないのだろう】
307 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/20(水) 00:10:46.72 ID:/W3KkQomo
>>306

あぁ、そういえばそんなことも聞いたな……“本職”の人間としては申し訳なく思うぐらいだ
各国の軍人や警察、治安部隊がもう少し上手く立ち回れるなら、フリーの人間や若い奴らを死地に送ることもないだろうに
いや、何かいい手はないかと考えてもいるんだが、これが難しい

……できれば、もう少し勧誘する人間を絞ってくれるといいんだが
能力だの何だの戦闘面における価値が高く、志が高いだけじゃ“やっていけん”からな
それもこれも本職の連中のせいなんだが、世の中ままならんな?

【犠牲者のことを聞くと男はわずかばかりに表情を暗くした。不甲斐なさや罪悪感を覚えているようだ】
【苦言、とも思える言葉にさえ自嘲が続く。最後にはまた苦笑を覗かせた】

あー、何だ、坊主は“そっちのタイプ”か。それもまた、ままならんな
まぁできれば司法に引き渡してやれ、とは思うが……いやはや、言っても仕方のないことか

【何度目かの苦笑をしてから、煙草の火を消して携帯灰皿へねじ込む】
【懐中時計で時刻を確認すると、随分と夜が更けていた】

もうこんな時間か。そろそろ帰らないと明日に響くな
悪いが、救急隊員への引き継ぎはやっておいてくれよ。俺は通行人だし、まぁいいだろ?
じゃ、次に会うときは死体のない場所を願ってるぜ

【別れの挨拶を告げ、男は足早にその場を去っていった】

//乙
308 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/01/20(水) 00:28:32.92 ID:WxrPvbJ60
>>307

「……まぁ、しょうがないよ。今回はかなりギリギリのところで、無理やり止めようとしたって所らしいし、ねぇ? 
 これに関しては……六罪王の方が、サツキの方が上手だったって、ね……」

【女性が、男の漏らした苦言に、仕方がないと言葉を向ける】
【――――基地の内部に、能力を用いて侵入しての、強奪。更に、それを何とか阻止しようと、形振り構わず救援要請を飛ばし、空手である事を露呈した軍】
【初手から、既に実行犯である六罪王サツキはイニシアチブを握っていた。これでは、対処が後手に回ってしまうのは仕方がない事だ】
【そんな中で犠牲者が出てしまったのも、個人の努力でどうこう出来るレベルでは無かったはずだ、と――――】

――――そういう連中だからこそ、そういう場所に集うんだろう?
本職としての軍では無く、な……

【更に、男の漏らした周辺への苦言については、青年が跡を引き継いだ】
【そう言う人材だけではダメだと言うのは、プロの視線だろう。だが『志』の旗の下にそう言う人材は集まって来るのだ】
【これはいわば、性と言うべき物でしかない。本質的に、軍以外の治安組織はそうして成り立つものなのだ】
【同時に、だからこそ軍には手の届かない領域を彼らがカバーできるのだが――――】

……これは俺の生き方だ。悪いが変えるつもりは無い……!

【端的に、微かな怒気を言葉の中に含んで。青年は男の言葉に反発の返事を返した】
【『悪』に対する憎しみ――――尋常ではないその情念を、青年は心の内に燃やしている。それを生き方とまで評して】

「あぁ、そう……確かにそうだね。分かった……この人の事は、任せてもらって大丈夫って、ね!」
もう、世も更けるか……気をつけて、な

【引き上げると言う男に対して、最初に事態に遭遇したものとして、引き継ぎはちゃんとやっておくとその背中に答える】
【救急隊を待つまでの間、彼らは周りの死体に気圧されるでもなく、ただ静かに女性を見守り続けていた――――】

/乙でしたー!
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 20:59:37.67 ID:gAUQ+T+c0
【街はずれ――広がる草原の中、枯死する大木の下】
【空にはぽったりと膨らんだお月様とお星さま、冴え切った空には雲一つなく、】
【枯れてなお色あせた長い丈の草の中にぽつりとたたずむ人影が、ひとつ、そっと冷たい風に長い髪を揺らし】

……よい、しょっ。

【とうの昔に死んでしまった朽木に両手でそっと触れる、一瞬の間があってから、気付いたように彼女は両手につけたドレスグローブを外して、】
【もう一度ひどく荒れて皮の剥がれた、それどころか裂けた内部までうかがえるような渇いた木、その幹にぐうと魔力を流し込む――、ちらりと、こぼれた魔力片が夜に舞い】
【少女の横顔をそっと照らしてから、どこかへと消えて行く。――そのうちに、きらり、きらり、魔力片はひとつふたつみっつ……とどこまでも増えていくようで】

【長い髪は黒く伸びて腰ほどまである、真っ白な肌は寒さにあてられてか頬が赤くなっていて、あどけなさの残る顔を彩って】
【丸くて少しだけ釣った眼は左右で色が違っていて、黒色と赤色。右の耳には片方だけのピアスがつけられて――宝玉の欠片が、はめ込まれている、それ】
【臙脂色のワンピース、袖などの一部は生成りの布が使われていて、裾をふんわりと膨らませるパニエの黒色レースがちらりと覗き】
【淵にレースをあしらったサイハイソックスと編み上げのブーツ。羽織っているのは分厚い布地のケープかマントかというような長さのもので】

う、ん、――だめ、かなぁ……?

【少女はそうしてしばらく朽木に触れては魔力を流し込んでいたのだけれど。しばらく後に、ゆるやかに朽木を見上げてみれば】
【――見える景色は最初となんにも変わらない、すっかりと枯れたままの姿で、夜風に揺れながら、そこに立っていて】

【小さな声でむうと唸って距離を置く、それからじっと見つめる右手の手のひら――そこに、きらりと、魔力の光が煌めいて】
【いまだその場にとどまって煌めきながら舞う桜の花びらのような魔力片もあるなら、――その光景は、ある程度離れているところからでも、見えるのかもしれない】
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 21:49:47.99 ID:91y3h3lc0
>>309

【小さな人影が草原の中でぴょこぴょこと踊る。草を履んで前へと進む】
【背負う長袋が揺れて、風が長い髪を揺らす。何れも夜陰に紛れて見えない】
【次いでに寒さで身体が震える。歩く足を止めて雲も無い星月夜を仰ぐ】

【ふと、人影が微かな光にぴくりと気づく。悴む手を擦って温めてから風上を伺う】
【視線の先には、広がる叢草を見下ろすような枯木が立っていた】
【葉を全て失い花もつけないだろう枯木に泡沫のような光が舞う】

【魔力の余剰である光が枯木に季節外れの花吹雪を齎している】
【人影が異世界のような美しさにほうっと白い息をついた頃には、枯木の花盛りが終わりを告げていた】
【再び月の明かりが冷たく青く、黒い影の輪郭を照らす】

……?

狐火……かな?

【人影は首を傾げて考え込む】
【蛍の季節でもない草原で、宙に浮く光といえば狐火等が該当する】
【好奇心がそそられるが、狐火が真実だとすれば鬼の類の災いが近い印である】

【果たして関わる(調べる)べきか、否か】
【しかし、先程魔力で光っていた枯木は人影の進む道の先にあるものであった】
【首を傾げるような問題が立ち消えて、再び足を進める事に決める】

【通り過ぎる間も枯木に目を向けて、首を捻りながらも視界から枯木を外さず】
【やがて間隔を徐々に小さくする歩幅が完全に無くなり、振り向いて立ち止まった時も枯木を凝視し続ける】
【影を覆い尽くす夜の帳に目を凝らしながら、或いは聞き逃さないように耳をすましながら】

/まだいらっしゃいましたら……
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 22:02:32.08 ID:gAUQ+T+c0
>>310
/いました! これからレス用意しますので、少しお待ちいただけたら……!
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 22:12:02.99 ID:gAUQ+T+c0
>>310

【きらりきらりと光をあふれさせる掌をじっと見つめる――その視界にふと混じりこむもの、吐息のぼんやりとした実体のない色】
【そこでやっと思い出す、今が冬であることと、今宵が、いつも通りに寒い夜であること。――忘れていたわけじゃない、そのはずなのだけど】
【ちょっぴり意識から抜けていたというか。それに気づいた少女は寒そうに身体を縮こめる、――見れば、その額には、ほんのわずかではあるが汗がにじんでいて】

わあ、すっごい寒い……、どうしよ? まだ上手にできないし――今日は、えっと、帰ろうかな……。
厚着してきたんだけどな――、はあ、早く春になってほしいの。そしたら桜だって咲くし、暖かくなるのに……。

【それに気づいてか少し行儀悪くも袖で額をぬぐう、それからまた自分を抱きしめるようにきゅうと身体を縮めて、自分の身体を守るような仕草を繰り返す】
【その呟きは高く透き通り、物で例えるなら鈴の音によく似ていた。まだ上手にできないしとはさっきの煌めきのことだろうか、それなら、何かの練習だったのか】
【ふううと真っ白の息をこぼしてあらためて木に振り返る、――朽木にはもはや一片の桜色すらうかがえない。気付けば、舞う燐光でさえも消えてしまっていて】
【魔力をぎゅっとたくさん操ったことで火照った身体が少しずつ冷えていく、寒そうに肩をすくめて、華奢な身体にケープの布地を巻きつけるように】

……帰る前にどこかでココアとか飲みたいな、カフェとか……。おなかすいたし……。――あれ?

【あどけなさが残る顔をむぎゅっと顰めて、少女はそんな風に呟く。そうして、街のほう――そちらに足を向けた、その少しあと】
【よく考えた視界に誰かの人影が見えた気がして、少女は振り返るのだ。そうすれば、或いは相手がかくれんぼなんてし始めたわけでなければ、】
【その色違いの瞳はきっと相手を見つけ出す、だろう。それが叶っても叶わなくても彼女は丸い目をきょとんといっそう丸めて、ぱちくりと一度、二度、瞬いて】

……こんばんは?

【なんて、小さく首を傾げながら、人影の方向へ――敵意のない、緩やかな声を投げるのだろう】

【――息が白いなら少なくとも幽霊ではなさそうだ。幽鬼めいた不吉な気配も、彼女は纏ってはいない】
【けれどよほどその類に敏感ならば、彼女がいわゆる人間でないことも気付けるかもしれない。しかし、それは、巧妙に偽装されていて――容易では、ないが】
【少なくとも今は、という注釈は必要かもしれないけれど、敵ではないように見えた。相手が姿を隠してさえいなければ、彼女は、きっと、あどけなさのある笑みも向けるから】
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 22:39:48.64 ID:91y3h3lc0
>>312

【少女の声に驚いた人影はびくりと強張らせ、一歩後退る】
【草木が擦れる音しかしない環境下で明らかに人の声は異質なのであった】
【人影は後ろに踏んだ足を止めて、先程の人の声を頭の中で反芻する】

【こんばんは……疑問の色を残す一言であるが挨拶には違いなかった】
【またそれは、先の狐火が霊現象でなく人の仕業である事を暗に告げる】
【人影はひとまず、声のする方へ歩み寄る。月明かりで互いの姿が認識できる距離まで】

【人影の背は子供と間違えるぐらいには低めであった】
【長い金髪にツーサイドアップ。外套を着込んでも、何故か手袋はしていない】
【足首までの丈のキュロットスカートとブーツ、この季節にしては少し寒そうであったが、人影は意に介していない】

【立ち止まり、ぺこりと一礼をしてから】

こんばんは、です

【と挨拶で返す。声音は高く、普通の感覚ならば女性或いは子供の声と認識できる程であった】
【左手は鳩尾にあり、表情も少し硬い。人馴れをしていない様子かもしれない】
【続いて、金髪の少女は相手が答えるか否かに任せる質問を投げかけてみる】

えと、さっきのは……あなたが、やったの?
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 22:47:11.60 ID:gAUQ+T+c0
>>313

【色違いの瞳は視線の先でちいさな人影を見つけ出す、その相手をどうやら驚かせてしまったらしいと見れば、少女はその顔を少し慌てたようにして】
【そのつもりはなかったのを言い訳するように手を伸ばしかけるのだけど――それで余計に驚かせてしまうかもしれない、と、その手をなるべくそうっと戻し】
【相手に見えるような位置で、というよりもお腹の前辺りで指先を絡ませたり、爪を緩くいじったりしながら、少し、困惑したようだったのだけど】

あ……えっと、うん、わたし、なの――、……えっと。魔力を操る練習、かな……?
――わたし、小さなものなら、得意なんだけど。その、あんまり、大きいものは苦手だから……、……たまに、練習するの。

…………本当はね、もっと……満開の桜の花みたいに、したかったんだけど。

【やがて相手が挨拶を返してくれれば少し安心したような顔をする、そうして、寒さに赤くなった頬をほころばせるように笑い】
【あっさりと相手に尋ねられたことを答えるのだろう。警戒は薄く見える、それは自信の表れなのか、それとも、油断なのか、――なんにも考えていないのか】
【それから冗談めかせて「寒いから調子が出ないの」なんて言っている、言い訳めいて苦笑して、ゆるりと木を見上げても――枯れ枝の向こうに空が見えるだけ】

あなたは――えっと、どうしたの? お家はそっちにあるの? もう、だいぶ、時間も遅いけど……。

【その視線を戻せば、今度は少女が彼女に問うのだろう。子供のように見える相手に、どうしてこんな場所にこんな時間に居るのかと、責める声ではないものの】
【そう尋ねて、それとも進む先に家か何かがあるのかと首をかしげてみせる。――それから一瞬、相手から視線を逸らして。じゃらりと鳴かす鎖で、】
【どうやら古びた懐中時計でも確認しているらしい。数秒もすれば視線は相手へと戻され、あまりに見つめすぎない程度に、相手を見つめるのだろうか】
315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 22:57:47.69 ID:0O88WvjA0
【淀みの無い湖、其れを照らし出すのは銀色の月。――――静寂も合わさればどことなく神聖な雰囲気さえ感じ取れそうな其処】
【然れど、漂うのは全く正反対の性質だ。有り体に表すならば“瘴気”であろうか】
【…………その類に耐性が無い者ならば意識がゆっくりと侵される程には濃い、と記せば何と無く濃度も知り得よう】


「正しい心、って言うのは何なのかしらね。不思議ね不思議
貴方達の正しさなんて、誰が決めてくれるのかしら。その正しい行いは、本当に正しい事なのかしら
――――ふふ、もう聞こえてないわよね。何も聞こえて無いわよね」

【所謂悪魔だとか、魔族だとか。人によって呼び方は変わるのかも知れないけれど、全てに通じている事として決して好ましい存在では無い事】
【災厄を撒く様な、不幸を連鎖させる様な。人の負の感情を己の喜びとするような、そんな存在】
【――――故に。少女の姿は、似付かわしくなく】


「また一つ、また二つ。此処で貴方達の命が消えてしまっても、世界は何時も通りに動いてしまうの
――――残念ね。貴方達の正義なんてこの世界、そしてみんなから見ればその程度なのよ?残念ね残念
全てを賭けても、見向きもして貰えないのだもの。居た事すら知られず、ひっそり舞台から消えてしまうの」

【月光に照らし出される金色の髪は眩く其れを反射させ、虚空を見つめる紅色の双眸は楽しそうに歪められていた】
【幾分遠くに居ようとも、瘴気と言う“イレギュラー”を感じ取るのは容易な事だろう。だからこそ、この場に辿り着くのもまた容易な筈】
【この場に訪れたのが善で在ろうと悪で在ろうと、或いは不幸な迷い人であろうと。その者はクスリと小さく笑めば、微笑みを向けるのだけれど】

【――――そして。この場に訪れた者が目にするであろう物がもう一つ】
【それは男女の遺体だ。どちらも腹を割かれ、臓物が溢れ出ている】
【恐らくは割かれた後も意識があったのだろう。血の跡は、少し前の位置から大量に続いていて】







【某繁華街。何時の日も、どんな時も喧騒に包まれる其所は日々諍いも絶えず】
【――――今宵其処を見回りしていたのは一人の少女】
【軍服を一切の乱れなく纏い、きっちりと制帽を被った姿はその性格を表している様で】
【片目を覆うのは眼帯。自警団の腕章に“SCARLET”所属を示すバッヂを着けているとなれば一介の自警団員とも異なるか】


「全く……楽しむ事自体は良いのでありますが、もっと節度を弁えて欲しいものであります
暴れて他人を傷付ければ楽しむ事も出来ないでありますよ…………」

【小さく愚痴を零しながらの巡回。流石に彼女の横を過ぎる時は幾分シャンとした姿となる者が多くとも、少し過ぎてしまえば下手をすれば女性に絡む者まで居る始末で有る】
【はあ、と溜息を漏らしながらも巡回を続ける姿は中々に目立ち】

【同じ正義の徒の目に留まる事も否めず――――同時に、何か騒ぎがあれば巻き込まれる可能性も否定出来ず】
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/01/20(水) 23:11:39.92 ID:91y3h3lc0
>>314

【金髪の少女は、相手が手を遊ばしている様子ではなく、相手の顔を見ている】
【殆ど凝視に近いそれは、話を進めさせる頭を持ち合わせていないか、ただ単に一言一句漏らさぬように集中しているか】
【相手の話が終わるまで相槌すら忘れた様子で聞き続ける】

あう、桜には……見えなかったけど
蛍のようには、見えたよ

【相手の幾許かの後悔を感じ取って、感想を兼ねたフォローを入れてみる】
【鬼火か何かと疑っていた金髪の少女は緊張を緩め、溜め息を一つ漏らす】
【両手を口の前に持って行き、体温の込められた息を受け止める】

【両者が疑いの空気から解放されて、雰囲気も緩やかに解かれる】
【金髪の少女の瞳も凝視から、普段通りの瞬きのある視線に戻る】
【相手からの疑問に、さも当然のようにとんでもない事を口にする】

あの山を、越える

【指差したその先に、どこにでもあるような野山が佇む】
【普通と言うには、時間が遅すぎる。不審といえば不審である】
【恐らく、顔を顰めそうな回答に金髪の少女は「そうしたら5駅分は節約できる」と付け加える】

【両手を腰に当ててふんすと自慢げにする】
【ただし、恥ずかしさからわたわたと先の行動を取り消すように慌ててしまい】
【貫禄の欠片も消え去ってしまう。子供のような雰囲気を漂わせている】

あなたは、家に帰るの?

【先の内気な仕草に戻って相手の問いを鸚鵡返しするような質問を投げかけるのだろう】
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 23:23:44.77 ID:gAUQ+T+c0
>>316

【「桜には見えなかった」「蛍のように見えた」】
【相手の言葉に、少女は一瞬の間をあけてから、ため息と一緒に顔を両手で覆う。その左手の薬指にはきらりと指輪が嵌められていたが、今の場ではどうでもよく】
【そうしてしばらく顔を隠していたのだけど、十数秒もすれば「そっか……」と小さなつぶやきで手を降ろす。残念そう、或いは――がっかりするよう】

【フォローはあんまり意味をなしていないよう。だけど、相手がそうしようとしているのに気付けば、少女は少しだけ眉を下げながらも、「ありがとう」と伝えて】

……――やま? やまって、あの、……神様が座ってたりするやつ? あれ?

【だけど、そんな少女の思考回路が一瞬停止する。やま。山。そこまでは簡単に連想出来て、櫻のほうではそういうらしい――そんな山に対する知識を述べたあとに、】
【相手の指さした先を視線が追いかけて自分が勘違いしていないことを認識しながらも、本当にそれなのかと少女もまた指さす、相手と同じ山を】

五駅……? ……え、でも、絶対電車乗った方がいいよ、だって、もう、夜だし、寒いし、……熊とか居るかもだし――。

【完全にびっくりしてしまっている。五駅という言葉、自慢げな様子、いいこと思いついたみたいな顔をしたのかもしれないけれど、彼女にしてみれば、】
【なんかドヤ顔な自殺志願者というか遭難志願者というか、そういうものに見えてしまうのだ。それは別に相手のことを見下しているとか、そんなわけではなく、】

――どうして山に登りたいの? だって絶対危ないよ、真っ暗だもん……、ね、ほら、夜の山は悪いものが居るかもしれないの、やめたほうが……。

【自分が家に帰るのか、とか、そういうのより。相手がこの後山登りしようとしていることの方が少女にとっては問題であるらしい】
【慌てたような、或いは困惑するような、そんな様子でさっきも聞いたような言葉を繰り返す、ざくり、と、枯草を踏みつけて、相手へと数歩近づこうとして】
【「やめよう?」なんて尋ねてくるのだ。初対面、本当の初対面、そんなこと言う権利はないのかもしれないけど――どうやら、この少女、なかなかの心配性らしい】
318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/20(水) 23:46:43.62 ID:91y3h3lc0
>>317

【相手の心配そうな声を他所に、金髪の少女は言い訳がましく「お金が無い」だの「熊より強い魔物倒した」だのぼそぼそ口にする】
【近寄ってくる少女に目線を合わせようとせず。現実に即した言い訳を自省するように】
【目を閉じて、思い付く言い訳を一旦締め出す。そして相手の顔を見て本当の理由を口にする】

今日の深夜
この山の中で、小さな偏差が起きるの

【今度の話は真実らしく、真剣そうな顔で訳を話し始める】
【長すぎても分かりにくく、正確に言おうとすれば分からない単語が沢山飛んで出る】
【そんな、事情を次の一言で締めくくるように一息の考える合間を空けて】

元の世界に、帰れる、手掛かりは逃したく無い……の

【俯向くのは一瞬。次の瞬きで藍色の瞳に力を込めて、相手を見つめる】
【そんな決意の様子もそう長くは続かず、眉をハの字にして困った様子になる】
【確かに、相手が懸念した危険は金髪の少女も承知していたのであったが】

えと、無理しない方が、良いのかな?
サボっちゃってもいいの、かな?

【なんて、軽く戸惑いの一言を漏らす。寒さに当てられたのか、今更ながらにぶるりと震えてしまう】
【相手の真剣そうな表情に、忘れ去っていた山の怖さを再認識してしまったのだろう】
【どう答えても、金髪の彼女は相手の回答に合わせるだろう】
319 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 00:01:55.21 ID:Ah2+HRSN0
>>318

【近づけるようなら彼女は相手のあんがい近くまで歩いて、軽く目線を合わせるようにするのだろう】
【この少女、あどけないような顔をしていながらに、身長は案外高くて百六十くらいあるし、靴もそれなりに底が高い】
【それなら大人びた顔でもしていればよかったのに。――そんなことはなく、相手のぼそぼそとした言葉に、ううんと困ったように眉を下げ】

……へんさ? ――えっと、ごめんね、分かんないや、……偏差ってなあに?
えっと……あの山で何かあるの?

【続いた相手の言葉に、その困り顔は余計に加速することになった。偏差という言葉の意味が分からない、音だけならば尚更によく分からなくって】
【少女は困ったように目線まで下げて、自らの頬に触れる、掻くような撫でるような仕草を数度して、それから、最終的にはその言葉の意味を考えずにそう尋ね】

元の世界――?

【そうやって呟く声は不思議な感情を湛えていた。だけどそれはあまりにも複雑に感情をないまぜにしたもの、ぐるぐるに混ぜ切った絵の具のように】
【もはや元がどんな色をしていたのかも分からないくらいの、もの。小さく呟いて、少女は少し気にくわないような、そんな、眉を顰めるような表情をして】

……、もう、なら、しょうがないの、……わたしもついていって、だいじょうぶ?
一人で行くよりきっといいの、わたし、あんまり強くないけど――えっと、動物くらいなら、きっと、大丈夫だから……。

【数秒そうして眉をひそめて遠くの山を睨んでいたのだけど。少ししてから諦めたようなため息を吐くと、そんな風なことを提案するのだろう】
【山に行っても良い。けれど自分もついて行っていいだろうか? そんな問いかけだ、――そんな風に尋ねる少女は、なんとも、華奢で、なんていうのだろう】
【むしろ戦えない側の人間に見えるのだけど。動物くらいなら大丈夫なはずだという程度には戦えるということだろうか、――頼り甲斐はなさそう、だけども、】
【独りで行くよりは確かに安全かもしれない。――それを受け入れるかどうかは相手次第だ。「どうかな」と尋ねる声は柔らかく、それなら、確かに相手を心配しているようだった】
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 00:28:54.38 ID:0u2ZKXgo0
>>319

……それじゃあ
ちょっとだけ、頑張ってみる

【恐らく見上げるほどの身長差のある相手に金髪の少女は控えめに答える】
【少しだけ申し訳なさそうに、仕切りに相槌のような礼をして】
【深呼吸を一回。吸いすぎた外気で震えてしまい意識の切り替えに失敗してしまう】

だ、大丈夫
倒れるほど、じゃなかったら

【独り言が出た後から、金髪の少女の雰囲気が少し変化する】
【それは会った時と同じようで全く違う警戒の、恐れるというカタチではなく潜ませるというカタチ】
【夜よりも黒い霧が両手に集まり、黒い杖に形を変える】

【瞳からみずみずしさが消失して、機械的に状況把握に徹底する】

私も強くは無い、けど
生き残るのだけは、なんとか

【相手に怖がられないように声音は変えず、山に入ろうとする】

私は、木花(このか)
片桐木花といいます、よろしくお願いします

【一度だけ振り向いて、信頼を得るための自己紹介を行う。相手からの返事があればその後に、なければ一拍おいて山に向き合う】
【このまま進めば数時間以内に目的の場所に着けるだろう。その場所はなんの変哲も無い森の中である】
【その間は少女からは話はしない。しかし、なにか話題をふれば答えるだろう】
321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 00:42:25.42 ID:Ah2+HRSN0
>>320

【そうだねと小さく呟いて、少女はそれで目線を合わせるようにしていたのをやめる、すらと立てば、頭の位置は相手よりも高く】
【背は少しは高いのだけど華奢なことと顔のあどけないこと、身体つきもどちらかと言えば子供ぽく、女性らしさのないこと――から、あまり年上感はないのだろう】
【ふと相手を見た眼が瞬く、それから、一瞬だけ何かを考えるように視線は逸れて――、】

……――これ使っていいよ、寒いでしょ。おまじないをかけてもらってるの、だから、少しはあったかいと思うよ――。

【それから――相手がよほど拒むようなことをしなければ、半ば有無を言わさないような形で、柔らかな感触が相手に触れるだろうか。或いは包み込むように、】
【――少女が身に着けていたケープだ。ケープと言い切るには少し丈が長い、ただ、マントと言い切るには少し丈が短い。そんな中途半端なもの】
【分厚い布地はなるべく暖かくあれと作者が願ったようでもあるし実際に暖かい、ただ、それ以上に暖かく感じる――そんな風な魔術が仕込んである】
【少女はいいと言うし。相手さえよければ使って問題ないだろう、さすがにこうも冷える夜だと万全に暖かいというわけではないものの、暖かいのは確かなはずだ】

うん、相手が人間でも、よっぽどじゃなかったら、へいき。

【(あなたを逃がす時間くらいは稼げる)】
【言葉にはそんな意味が宿る、けれど、声も顔もたいして変わらない。少なくとも自分を餌にしても構わない、そんな、思想はなかなかに分かりづらく】
【大丈夫だよと掛ける声は何かあったら自分を殺すと自分で決める、それをあまりにも当たり前に思っているから、なんともないように、生き残れるよと無責任に】

鈴音だよ。白神鈴音。

【りんね。鈴の音のような声で名乗れば、名は体をなんとやら、そんな言葉が思い浮かびそうなほど】
【それで相手が納得するなら、彼女もまた山へとついていくのだろう。別段用事はないものだけど――子供を一人、見つけておきながらに放置するより、ずっとまし】
【道中は――或いはどうでもいい話でも振ったのかもしれない。本当に些細な、世間話。あんまりに重要めいた話は、きっと、振らないはずだった】

【――道が分からないせいか、彼女は木花より少し後ろを歩く。それでも、きょろきょろと視線はずっと周りを見ていたし】
【やはり年下と一緒に居るということでか、常より周りに意識を向けている、そんな印象があった。――相手は、知らないのだろうけれど】

/申し訳ないです、そろそろ時間なので、明日に引継ぎをお願いしても大丈夫でしょうか……?
/今のところ明日は用事ないですので、7時か、8時か、それくらいには再開が出来るかと思うのですが……!
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 00:44:50.62 ID:0u2ZKXgo0
>>321
/引き継ぎ了解です
/夜遅くまでありがとうございました
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 19:01:29.05 ID:0u2ZKXgo0
>>321
【木花は鈴音から貸してもらったケープの暖かさに溜め息をつく】
【両手で自分の胸に押さえて、気持ちよさそうに目を閉じる】
【寒くても平気、倒れなければ大丈夫。そう信じ込んでいた木花も、初春のような風に包まれて精神が安らぐ】

【意識を研ぎ澄ますとは異なった、精神統一の恩恵を感じるままに、ありがとうと笑みをこぼす】
【そうして、相手の意思表示も自己紹介も顔を綻ばせて相槌を打つ】
【相槌を打つ、それはすなわち言外の意図は届いていない証拠かもしれない】

それじゃあ、いくよ

【そうして木花達は山を目指して歩き始める。最初は枯れ草の砕かれる音、次第に小さな枝の折れる音が増える】
【風で揺れる梢がざわざわと輪唱し、それが彼女達が山の中に入った事を暗に告げる】
【道中は散発的な雑談を繰り返し、夜間登山とは思えない程の弛緩した雰囲気が続く】

【幸運にも魔物や猛獣による襲撃を受けずに済むこととなる】
【それは鈴音が周囲を警戒してくれたお陰と言った方が的を得ている。一方木花は会話の合間に携帯端末を覗いて方角を確認する】
【そうして木花が偏差と呼んだ場所に辿り着くと『影響範囲内に入りました』と電子音がアナウンスする】

【そこは開かれた場所でもなく、単なる林の中。木々が月夜を幽閉するように立ち並ぶ】
【変な所があるとすれば、この場所自体か或いは輪唱していた梢全てが口を顰めるように沈黙している所か】
【木花は杖を右手で持ち、左手で自分の髪を撫でると、ポケットから携帯端末を取り出す。そうして空を見上げる】

【空を見つめ集中している様子の木花であるが、声を掛けられたり肩を叩かれたりしたら気付いてくれるだろう】
【何か気づいた事、話したい事があるならばこの時が一番かもしれない】
【風さえも眠りに落ちた暗闇の中で、携帯端末を少し強く握りしめながら】

/いつでも再開大丈夫です。
/本日もよろしくお願いします。
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 19:22:19.35 ID:Ah2+HRSN0
>>323

【それはほんの少しの強がりだった。この少女は、諸事情から寒さや暑さ、そういった環境に適応することが、あんまり得意ではなく】
【それなら出来れば暖かくしているのが一番いい、それでも――目の前で年下の女の子が寒そうな顔をしたとして、自分をあっさりと諦めるのが、この少女の性質で】
【肌に突き刺さるような寒さに一瞬身体を震わすが、露骨にそれを悟らせるような顔はしなかった。ただ、ただ、白い息をふわりと吐いて】

【――時々紡ぐ会話はなんてことなければきっと大した意味もない、それよりもどんどんと口数の減っていく彼女は、気付けば唇を緩く噛み】
【せめて少しだけ長い袖の中に手を引っ込めて寒さに耐えているのだった。――だけど、相手がこちらを向くときには、きっと、いつも穏やかに笑っていて】

えっと……、……ここ、で、いいの……?
――良かった、野生動物とか、変なひととか、居なくって、……、うぅ。

【しばらく歩いた後、木花が立ち止まれば、彼女もまた立ち止まる。ここでいいのかと尋ねる声ははじめよりも少し細く、心なしか震えてもいるよう】
【その安堵は本当ではあったけれど。今度こそ寒そうに身体を縮めた彼女は、木花の視線を追いかけるように、数秒ほど遅れてから、空を見上げ】

……、えっと。偏差ってよく分からないけど、……。――ここに、それが、あるの?

【――彼女は体質的な問題から魔力には敏感な性質だ。ここが"そう"だと言うなら、何か変わった気配でもしないかと、そういう目線で意識を巡らせ】
【特別に変な場所がなければ不思議そうに首をかしげるなりするだろうか。――ただ、まあ、不思議な場所を見つけたとしても、首をかしげるのだけれど】
【基本的には木花を邪魔するようなことはないだろう。というより――自業自得なのだけど。身体がすっかり冷えてしまって、身体をそっと木の幹の影に隠す】
【せめて夜風からは隠れようとして――そうして潜り込めば、少し一息ついて。あらためて、場をゆっくりと見渡すのだった】

/よろしくお願いします!
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 20:00:21.11 ID:0u2ZKXgo0
>>324

【鈴音からの問い掛けに数瞬遅れて反応する。まずはこくりと頷き】
【どこまで説明して良いか考え込むように目を瞑って黙り込む】
【凪の中で全ての音が消え去ったのもほんの一時のみ、木花が呟くように】

多分
影響範囲内と言うならば……

【その言葉を合図としたのか、電子音のアナウンスが再開される】
【『MAINS再接続……成功 システムの復旧再開します 進行率50……60……65……』極めて事務的な状況報告が続く】
【木花が待ち望んだように頬を上気させて画面を見つめる。気恥ずかしそうに逸る気持ちを抑えて鈴音を見つめる】

えっと、これが元の世界へ戻る手掛かりなの
ただ、すんなりと上手くいく保証は出来ないけど

【何回かお世話になった事があるから、と注釈を加えて軽く流してみる】
【必死だった様子にしては混ざらない筈の小さな諦めの色が滲み出る】
【その点についても疑問に思うならば訊いてみても嫌な顔はされないだろう、尤も訊かれなくとも少々遅れて理由を言いだすのだが】

進行率が100になればこれを作った人が別の世界に引っ張ってくれるけど
すんなりといった事は無かったかも、大抵は厄介事を押し付けられるから……

【その間にもアナウンスは続く。進行率は70,73と増え方が小刻みになりつつあるが】
【影響範囲内という言葉通り、別の場所に移動を提案しても大丈夫なのだろう、或いは作ったという人とやらについて訊いても】
【木花が鈴音の無理に少々勘付いてしまったのか、困り顔で『ケープありがとね』と口にする】

326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 20:16:28.37 ID:Ah2+HRSN0
>>325

【機械的、なのだろうか――? そういうものをこの少女は得意としない、或いは魔術的なのだとしても、その方面にもたいして明るくない】
【それでも木花が嬉しそうにしているのを見れば、なんだか、寒いのも少しは気にならなくなる。――いろいろと分からないことばっかりだけど、】
【これでいいかななんて緩やかに思うのだ。結局自分が役に立てたのかどうかも、よく分からないけど――、身体をわずかに縮めながら、木花の様子を眺め】

そう……なの? じゃあ、ここに来たら帰れるわけでも、ないんだ……。

【そうなんだと小さく呟く、それなら少し残念なようでもある。――そんなにやすやすと世界を超えられるなんて、あんまり思ってもいないものだけど】
【何回かお世話になったということは何回も駄目だったという意味だろう、なぜだか少女のほうが残念そうにしゅんと眉を下げて、微かに震える唇から白い吐息を漏らす】

えっと……、そのひとは、魔術師さん? それとも、えっと、違うのかな……、……科学者?
……――厄介ごと、? それも、よく、分からないけど……、――わたしに手伝えることなら、なんでも言ってね。
わたしに出来ることなら、やるから――。

【作ったひとというのがどんなひとなのかは想像もつかない、そもそも、その機械がどんなものなのかも、きっと、よく分かっていないし――】
【それならば気になるのは製作者よりも厄介ごとのほう。どんな厄介ごとがあるのだろうと、緩く首を傾げながら、彼女はきっとそんな風なことを言って】
【何かあれば手伝いたいなんて言って、ゆるりと視線を巡らす。最初の光景を覚えていれば、初歩の魔術くらいなら使えるのかもしれない、魔力操作はある程度上手なようだったし】
【それなら完璧に何も出来ないというわけでもなさそうなのだけど――その力が、いま、この場で役に立つかどうか。それは全く別の話で】

【――木花にお礼を言われれば、少女は僅かに顔をむっとさせてから、そんなの大丈夫なの――なんて、言葉を紡ぐ】
【むっとした顔は自分に向けてだ。だけれど勘違いさせてしまうかもしれないと思えば、指先で冷える頬をむにむと数度弄んでから、】
【「だいじょうぶだよ」――そう、改めて、告げるのだった】
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 20:44:27.42 ID:0u2ZKXgo0
>>327

うん、科学者にして能力者
そのまた別の世界の組織のセクション統括者

【よくわからない事を言っている、そう自覚している木花は、それ以外に説明する術が無く】
【鈴音が質問を言い終わってから、順を追うように答える。その間も困った気持ちと申し訳無さの中間のような顔色で】
【まだ、話は続いてしまうのであった】

その部下と知り合いで、そのよしみでこのトラブルを助けてもらっているの

【このトラブル、とは木花がこの世界に飛ばされた事を指して言っているのであろう】
【そして、木花は再び考え込んでしまう。何しろ次に答えるべきは、文字通り厄介ごとなのであるから】
【これまでの態度から、自分から相手を頼む事を苦手としていると妄想めいた推測が出来なくもない木花の性状】
【鎌首をもたげるように木花に悩みの拍車を掛ける。やがて、神妙な面持ちで口を開き始める】

えっと、ね
前の世界では『人に心臓が爆弾になったと思い込ませる病にして、実際に大爆発させて殺す能力者』が栓になって元の世界に戻れなかったの

あまり、言いたく無いけど、私の厄介事は関わらない方が良いと思うよ?

【木花が恐ろしい事を口にする間も草木は眠りについたように黙り込む】
【怪談の舞台に相応しいその情景は生々しい告白によってタチの悪い恐怖がカタチを為そうとする】
【まだ表情が崩しきれない木花であるが、多分押しには弱いのだろう。引くか乗りかかるかは鈴音の手に委ねられたまま……】
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/21(木) 20:50:59.77 ID:0u2ZKXgo0
/すみません、>>326宛てでした
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 20:58:18.15 ID:Ah2+HRSN0
>>327

……そう、なんだ。あ、じゃあ、えっと――あ、でも、そんな知り合い、居なかったかな……。
えっと――でも、少し分かったの。多分だけど……、科学者さんなら、頭いいのかな……? わたし、あんまりお勉強は得意じゃないから――。

【セクション統括者の辺りで少女は考えることを半ば放棄して、とりあえず、自分にも理解できる――科学者であり能力者、という辺りを重点的に聞くようにした】
【ミルフィーユみたいに難しい言葉が積み重なっていく、いちごのミルフィーユは大好きだけど、難しい言葉のミルフィーユは、ちょっと、苦手かも――なんて思いながらも】

……そっか。

【なんかわかったような気になって――或いはわかったような顔をして、小さく頷く。とりあえず、能力者で科学者、そのひとの部下と知り合いで――云々】
【とにかくそのひとが協力者であるというのは理解して、なら、うん、それでいいだろうとそんな様子。――少し困惑したようだったが、ついていこうとしているのは分かるか】

う、ん、――ええ、と、……心臓、は、困るな。ほかのところなら別にいいんだけど――えっと、よくはないんだけど……。

【木花の話を聞く、栓になるとかはよく分からない、まさか物理的に詰まるわけじゃないだろうと思いながらも、イメージはお風呂の栓をぴんと抜いた瞬間】
【よく分からない思考イメージがぐるぐると排水溝から流れていく中で、ぶちぶちと小さく呟く声は、それはそれで不穏でよく分からないようなもの】
【それは前の話でそれなら別にいいんけどなんて思いながらも即決するにはさすがに少し思い切りが足りない、ううんと眉をひそめて、手で口元を隠しながら】

…………えっと、出来ればお手伝いしたいの。だけど、わたし、――あんまり、その、強くないし。
だから……、――わたしね、UNITED TRIGGERってところでお仕事してるの。……みんなのためにいろんなことやるような、お店、……かな。

これって――今日じゃなくっちゃ、駄目、かな? それなら、……えっと、誰かに来てもらうの、きっと、難しいから。……わたしでいいなら、――。

【たっぷりと十数秒悩んでから、少女はそんな風に切り出す。怖気づいたような言葉、するりと下に落ちて地面を撫でる視線は、ただ、】
【そのうちに木花へときっちり向いて。自分の所属を明かす、それから、少し慌てたように「戦うために居るんじゃないんだけど」なんて、少し言い訳めく】
【――だから、コネクションがあるよと言うことなのだろう。なにかそういう助けが必要なら、そこに頼めばいいんじゃないか、と、そう下がり眉ながら】
【一つの提案として。「――どうかな」と尋ねるのは、どちらを選ぶかということなのだろうか。後日ながらも頼り甲斐のあるひとか、今日だけど――少し頼りない少女か】
【木花が引っ込み思案めくように、どうやらこの少女も少し臆病というか、引っ込み思案なところがあるらしい。――困ったように笑いながら、首をかしげて】
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 21:27:35.25 ID:0u2ZKXgo0
>>329

【鈴音の誘いに神妙な顔から控えめに吹き出して笑ってしまう】
【無遠慮に笑ってしまった事を恥じて、ごめんねとしょげかえる】
【そのまんまに、ぽつりぽつりと言い訳じみた返事を始める】

前にも、誰かに誘われた事があるの
でも入り方が分からなくて、今まで困ってたの

【それはUTに関する事であった】
【まだ、世界に入って浅い木花は情勢についても浅い。所謂情報収集に利用するつもりが手詰まりだったのだろう】
【言い終わった木花は携帯端末の背を下敷きにして、長鞄から取り出した紙片にさらさらと書く】
【それは、木花が持つこの端末の番号であった。後で調べるとどこかの港町だけで『魔獣しか殺せないガキ』と噂される木花の連絡先であった】

えっと、取り継ぎをお願いできたら嬉しいかも
でも、連絡出来てしまうという事はさっきの厄介事の始まりでもあるけど……

【そう言いながら申し訳なさそうに、やっている事は図々しいのであるが、鈴音に連絡先を書いた紙片を渡す】
【すなわち、鈴音の誘いに乗る気がある証拠であった】
【それを受け取るか、自分でやれと言うかはたまたそれ以外の返事をしても木花は承るつもりなのだろう】
【そんな猶予のある一時を置いて、先程の電子音が『強制着信が来ています』と電子機器らしくない挙動をアナウンスするだろう】
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 21:38:18.70 ID:Ah2+HRSN0
>>330

【笑われたとき、きっと、少女はひどくきょとんとした――顔をして。次いで、どうして笑われたのかが分かっていない顔をして、最後に、少し拗ねたように口を噤んだ】
【怒ってはいないのだけど――それでも少し。わたしは今少し拗ねていますというのをアピールするような顔をするのだから、あんがい、子供っぽい性格なのかもしれない】
【それでも寒さにあてられるようにその表情は消えていくから。だから、きっと、長続きしないタイプでもあるのだろう】

……えっとね、基本的には、リーダーのセリーナってひとに、お願いして、混ぜてもらう……のかな?
ごめんね、わたしは、えっと……お料理するひとだから。あんまりね、そういう、勝手においでーっていうのは、出来ないんだけど――、

【少なくとも自分はそうした方法を伝える、自分の時はすでにUTに知り合いが居て、誘ってもらって、――それで、いま、仕事をしている】
【だけど正式なメンバーではない、正式、というか、所謂戦うためのメンバーではない、というか。……曰く、お料理するひとらしい】
【聞いたことがあるかもしれない、件のUTは夜なんかは酒場として店舗を開放していたりするらしくて。知っていれば、きっと、そこの担当なのだと推測できるのかもしれない】

じゃあ――うん、えっと、渡しておく。もしセリーナが忙しそうだったら、直接渡せないかもしれないけど……見えるところに置いておくね。
……あ、そうだ、でも。セリーナにお願いするんだったら、……そっか、お金かかるんだ――。

【紙片を受け取る、それで、ちらりと文字を視線が撫でて――大丈夫だよとやさしく笑って、紙片をさらに畳んでポケットに仕舞い込――】
【――みながら、ふと、その表情が何かに気付いたように変わる。なんともばかげた話なのだけど、忘れていたらしい。自分自身、UTに依頼することはなかったし】
【え、えーと、大丈夫かな、みたいな、そんな少し慌てたような顔が振り向く。――その時だった、割り込んでくるのは電子音、……また、ぱちくりと瞬き】

でんわ?

【なんて、ものすごくのんびりとした声で尋ねるのだ、危機感が足りないというか――なんていうか。性格なのだろう、視線は、木花の持つ端末へと真っ直ぐ向いていて】
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 21:59:19.33 ID:0u2ZKXgo0
>>331

ありがと!

えっと
ガニメデの事件の時に貰った報奨金で大丈夫かな?

【と、言い終わるや否や強制着信が割り込む。緊張を隠し切れず木花は顔が強張ってしまう】
【鈴音の指摘に、強張りを隠しながら怖がらせないようにありがとう、と受け答えする】
【強制着信のカウントが始まる。0を告げる前に木花は思わず『進行率が100でもないのに』と呟いてしまう】

『やぁ、こんにちは木花』
『相変わらず元の世界に戻れず、世界を転々とする仮探索者(コネクター)さん』

こんばん……は

【強制着信から繋がった音声はそれまでの電子音と異なった妖艶な雰囲気を漂わせる女性の声】
【女性の声は勝手にスピーカーフォンに接続されているらしく、鈴音にも聞こえている状態となっている】

『そう言えば、ここは夜だったみたいね』
『ごめんなさいね、でもこのまま戻れず別の世界に盥回しされると私が儲かって嬉しい限りなのよ』
『それも、今回でおしまい』

【木花は怪訝そうに女性の冗談を流す。冗談にされたのが腹が立つというよりかは、何かを覚悟しているような】
【右手に持つ杖に力が入って、しかし余分な力を入れないように……杖は震えないが顔は緊張のまま】
【鈴音は女性に話し掛ける事も可能なのだろう。問いかければ何か答えてくれるのかもしれないが、不遜な言い回しを返されるのは避けられない】
【女性がおしまいの次に続ける言葉を紡ぎ始めるにはまだ一時の猶予が用意されているのだから】
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 22:21:50.12 ID:Ah2+HRSN0
>>332

【電話は少し苦手だ。仕事をしているうちに大分慣れたとはいえ、なんだか、少し――緊張してしまうから】
【そんな風に思いながらちらりと木花を窺う、――そうしてみれば、どうやら、彼女も緊張しているような。……そんな気配がして】
【少しだけ戸惑うような声を漏らす、えぇと、なんて、今日何度言ったろう。だけど、その数秒後――木花さえ許せば、ふわりと、触れるのは優しげな手つき】
【大丈夫だよと小さな子を安堵させるときのように、頭を撫でようとするのだった。子供扱いだなんて、怒らせてしまうかも、しれないけど】

あ……、……――さっき、言ってたひと?

【やがて電話がつながる、聞こえてくる声は大人びた――だろうか。女のひとの声、聞いたことのない声】
【電話を邪魔してはいけないという認識があるのだろう、潜めた声は、それでも、電話の向こうの女性が、さっき言っていたひと――科学者で能力者の、ひとなのかと】
【そうやって訪ねて、首をかしげる。きょとんとした顔にはきっと深刻度みたいなものが足りず、木花のそばに立って耳を澄ませているなら】

【――或いは、木花の手にぎゅっと入った力に気付くのも必然だったのかもしれない。こちらも、また、木花が拒まなければ――ではあるものの、】
【まして冷え切った指で触れられるのはもしかしたら嫌かもしれないけれど。大丈夫だと言うみたいに、その右手にそっと自分の手を重ねようとするのだろう】
【それが叶えば、優しく包むようにして。――手はひどく冷えていたけれど、優しさだけは、氷みたいな体温から伝われば嬉しくて】

……――えっと。科学者さんかな、……こんばんは、かな。ごきげんよう、かな。――まあいいや。
木花ちゃんとはね、さっきそこで会ったの……だから、いま、木花ちゃんは一人じゃなくって。……わたしも居るの。

……だからね、良かったらでいいんだけど――どういうことなのかって教えてほしいな、いろんなこと――わたし馬鹿だから、よく分からないの。

【それで木花が落ち着くのなら、別に背後から抱きしめてもよかった。さすがに急にはやらないだろうけれど、やろうとすれば出来るくらいの距離、彼女はそこに立ち】
【一瞬ためらうような間をあけてから、女性の言葉の隙間に、そっと自分の言葉を差し込むのだ。鈴の音の声、金属質の声、――よく響いて、電話口にも聞こえるはず】
【女性からすれば部外者かもしれない、というより、木花にとっても部外者なのかもしれない。だけれど、緊張した顔や、力の入った手、それを知っているなら】
【やっぱり部外者だからとだんまりを続けるのは、すこし、違う気がしたのだ。――それでも、少しくらいはびびっているのだろう。それとも、寒いのか】
【指先は僅かに震えていて、――よく聞けば、声も、最初に出会った時よりも少しか細く、震えているように思えた。――それが、電話越しの彼女に、どう伝わるのか】
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 22:59:17.06 ID:0u2ZKXgo0
>>333


ありがと

【手を握られるのを受け入れて、感謝を返す。冷たい手では温まらないのだが】
【木花はケープのお礼として、鈴音の冷えがマシになればとぼんやりと思う】

そう、この声の人がさっき言った作った人

【鈴音の呼びかけは女性に届き、女性は言葉を告げる順番を変えるように頭をかく。ガジガジという音がスピーカーから発せられる】

『あら、涼やかな声だこと』
『こんばんわお嬢さん。残念だけど木花はそれでも一人なのよ』

【にべもなく返す女性の声。言外に『子供は寝る時間よ』という嘲笑がこめられる】
【クスクスと笑いながら、まるで他人事のように続きを話す】

『最初の世界でナノマシンと高出力ビームでバラバラに焼却されても、その世界の人々は誰も助けに来なかった』
『仕方なく規則を破って、体を戻してあげたけど元の世界に帰るための繋がりだけが無かったのよ』
『繋がりは8つの欠片になり、色んな世界に飛び散った。私の組織の無賃金バイトを任されながら一人で集めてきたのよ、健気よねぇ』
『そして、この世界にあるのが最後の欠片……第二異能幻影(フラグメント)タイプ7β』

ファーストマグニチュード・アークトゥルス

『そう、木花ちゃん達が大嫌いな「檀君の導き」の導師』

【木花が呟く声に得心がいったように女性の嘲笑は続く】
【その後の話を要約するならば、別の世界を転々とする木花の旅もこの世界で終わり。でもそれには障害があった】
【アークトゥルス。そう呼ばれる幻影は常人の300倍の脳処理能力と妖魔に比肩する膂力・機動性を持った少年の幻影】
【超反応と嵐のような暴力を併せ持つ魔力の塊が、この世界にいるのかもしれない。】

『そういえば、この端末……電話機能が復活したみたいねぇ』
『またの○太君みたいに助けを求めちゃうの、ねぇ?』

【女性の声が木花を詰るように言い募る。何か裏があるみたいだが、単に上司の八つ当たりという類のものともいう】
【木花は相変わらず緊張を解かないが、鈴音には努めて平静であるように、鈴音の方を向いてこくりと頷く】
【女性も木花の返答待ちであるが、鈴音の問い掛けに答える余裕ぐらい持っているようであった】
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 23:16:43.78 ID:Ah2+HRSN0
>>334

……涼しいんじゃなくって、寒いの。冬だもの、わたし、いま、上着ないし……。
――――冗談なの。

【込められた嘲笑にきっと少女は気付いている、気付いているけれど、どうでもいいような、それこそ言葉遊びみたいなものを並べて】
【最後にくすくすと鈴を指先で転がしたかのような声で笑う。別に木花を責めるわけじゃない、確かに今は冬で確かに今自分は上着を着ていない、それだけ】
【涼しいどころじゃないよと冗談めかして、――「あと、わたし、大人だよ」というのを付け足してみる。これで大人というのも、信用できない話、だったけれど】

……ナノマシンとか、そういうの、分からないの。フラグメントって何? 知らないし――ファーストなんとかはもっと知らないけど。
あとね、檀なんとかっていうのも、分かんないな――、ねえ、分かるように言ってくれないと分からないの、わたしは、そんなに、なんでも知らないし――。
――ううん、知らないことばっかりだし。だから、もしかしたら、頭のいいひとなら、今の言葉、全部分かるのかもしれないけど……。

そのなんだかよく分からないけど凄い奴を殺せばいいの?

【分からないを重ねて作っていくのは言葉のケーキのよう、重ねて、重ねて、最後に、ほんのそこに落ちた本を拾えばいいのかと尋ねるかのような声で、疑問符を飾る】

うん、じゃあ、やっぱり、セリーナにお願いしたほうがいいかも……、ね、今度UTのお店に来てほしいな。
セリーナが居るか分からないけど……えっと、先に電話してくれたら。セリーナも予定、空けてくれると思う。

【平静を喪ったわけではない。怒っているようには見えない。ただ、さっきもそうしたみたいに、何かの力になりたがる】
【独自解釈で話を進めている節があるのでもしかしたら間違えているかもしれない、その、アークトゥルスという奴は殺すべき相手ではないのかもしれない、けど、】
【本当に大雑把にしか理解していないせいでそこは二の次だった、とりあえず、そいつをどうにかすればいいんでしょう、と、単純な考え】

【それから木花に「間違えてる?」と尋ねるような目を向ける。のだけど。いろいろ言った後なので間違えていたとしても多少の手遅れ感は否めず、】
【間違いだと知ればきっと謝罪くらいは入れるのだろうけど。――真っ白な吐息が立ち上る、夜が更けるごとに、暴力的なまでに気温が下がっていくようだった】
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/21(木) 23:44:23.07 ID:0u2ZKXgo0
>>335

うん、それであってる
眠っている段階で粉砕できたら誰も傷つけずに元の世界に帰れる

『幸いにも今はまだおネムよ。まあ、起きたとしてもアークトゥルスは能力者以外は傷つけられない』

【鈴音の分かりやすい解釈に木花はこくりと肯定する。女性の声が続いてアークトゥルスの居場所を語る】
【春の星座であるアークトゥルスが昼間にもチカチカと光る地域、夜ならば満月並みの明るさでチカチカ光る】
【範囲は狭く、チカチカの具合も短期間で済む事から大抵の人は錯覚か何かと思って気にしないという】

『私は何も手伝えないけど、頑張れよー』

うん、ありがと

【妖艶な声とは異なったダウナー気味の少女の声が届く】
【恐らくは、この声の主は木花が協力してくれる人のようである】

『最後にコレ、早く切断した方が良いわよ?』
『木花の世界との繋がりを作るコレは、木花が倒した化け物を蘇らせる……東南東に700メートル先、敗残兵(scared soldier)1体』

……ッ! MAINS切断!

【木花が慌てたように口頭のコマンドで端末の通話を切る】
【『NAINSシャットダウンまで残り60秒』と通話前の電子音がカウントを始める】
【その木花達の左後方に、折れた矢が沢山刺さった人影が突如出現する。手には剣を持ち隅々まで真っ黒の影が】

【影は木花を狙い大上段で太刀を振り下ろそうとしている】
【最初から下段に杖を構えていた木花は太刀筋を躱す序でに能力で影の腹を切り裂く目算ではあった】
【黒杖の先には青い燐光、尾を曳いては薙刀のような白刃に変化し始める。木花が攻撃するより早いか、鈴音が影を攻撃する方が早いかは神のみぞ知る】
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 00:04:16.05 ID:eehW2g0b0
>>336
/すいません、レスが消し飛んだので次のレスが遅れます……というのと、
/今日も時間がそろそろ迫ってますので、ちょうどいいっていうのは変ですけど、もう一度凍結お願いできますでしょうか?
/今夜は今日より少し遅くて八時九時ごろの待機になるかと思います。レスはこの後返しておきますので……。
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 00:08:16.65 ID:Lr0wfjog0
>>337
/凍結了解しました
/無理をなさらずどうぞ。今日もありがとうございました

/修正箇所が二つあります
/×春の星座のアークトゥルス 春の星座うしかい座の首星アークトゥルス
/×鈴音の攻撃 ○鈴音のアクション

/それでは、おやすみなさい
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 00:20:17.52 ID:eehW2g0b0
>>336

【それで合っていると言われれば、彼女は少し嬉しいような得意げなような、頬をほころばせて、微かに笑う。それは到底大人の表情ではなかったけど、】
【「じゃあ寝首を掻かなくっちゃ」と少しだけ悪戯ぽい声で呟く少女を本当に子供と言い切ってしまっていいのかは、きっと、疑問が残る】
【子供でもないけれど大人でもない。そんな立ち位置なのかもしれなかった、――だけど、さっき、あまりにも堂々と大人だと自称した】

【アークトゥルスが星に関連する名前なのだとは補足でやっと察した。そうなんだと思って見上げる空は、人里遠いからか暗く、星が無数に散らばって見え】
【だけどどの星がどの名前を持つのかは分からない。いつか悪食の知り合いに教えてもらった星の名前は、記憶の中に薄れてしまった。――ゆるりと上げた指先は、】
【その記憶の剥落を寂しがる、或いは残念がるように星と星を繋ごうとして――けれどオリオン座の三つ星しかつなげずに、ため息が白く立ち昇って消えて行く】

【そうして彼女は一瞬、星空の世界に意識を落とすのだ。思い浮かべた星の名前はけれど夏の大三角、それなら今にあるはずもなく、ぼんやりと見上げ】
【どれが冬の三角だろう? なんて考えている。だから、――そうでさえなければ動けたはずの最速はあっさりと取りこぼすことに、なるのだけれど】

――?

【木花の慌てたような声でようやく視線は降りてくる、意識も、また、この木々の中に舞い戻り。どうしたの、と、問いかけようとした視界に異物が紛れ込む】
【範囲選択とバケツツールで塗ったようなヒトガタ、物か者かはどちらでもよくて、ただ、少女は――"それ"に気付いた後でも、さらに一秒、二病、動けない】

――っ、!

【まるでその見えないバケツに意識まで一瞬染められたように黒くなる、嫌だと思ってしまう、すぐにそんなわけがないと思い直しても、身体が凍り付いたように動かない】
【或いは本当に凍り付いてしまったのかもしれない、この寒さの中でずっと凍えていた身体がばきばきと軋んで砕けるような錯覚すらある、それくらいに、動かなくて】
【自分ですら意図も意味も分からない声をあげかけた喉を意識的にひねりつぶすようなイメージ、かろうじて声を抑え込んだなら、】

【――桜色の燐光。或いは夜闇の中では一筋突き抜けた軌跡までも見えるだろうか。少なくとも宙を駆けるはずのないものが宙を切り裂いて行った、】
【刀とか呼ばれる類の得物。――見れば、たっぷりと十数秒動きの遅れた彼女が、ただ、何かを振りかぶって思い切り投げたあとのような姿勢をしていて、】
【それなら刀匠泣かせのように刀をブン投げたのが彼女だともすぐわかる。――それでも咄嗟の行動、元より投擲を前提に作られていない刀は真っ直ぐも飛ばず】
【気付けば横を向いて、それでいて、偶然か、狙ったのか、影が木花へと振り下ろそうとした太刀へときっかりぶつかるような軌跡になっている。もちろんそれだけでは、】
【太刀を防ぐほどの力はない。誰が振るうでもない投げられた刀は、太刀へとぶつかろうと、躱されるなりで外れようとも、さらにその十数秒後には無数の花びらと化し消えて】

……――、そいつ、喋らないよね?

【苦虫を噛んだというよりは苦虫百パーセントのジュースを一気飲みすることを強いられた後、みたいな顔。それだけで疲れたように眉をひそめた彼女の手には】
【たった今さっき投擲された花びらと消えたはずの同じ刀が、再び握られている。――どうやらこの刀が、少女の得物であるようだった】
【とあれば剣士の類と見ればいいのか。初撃でいきなり獲物である刀を投げる少女を、その分類にカテゴライズなんてしたら、いろんなひとが泣きそうだったけれど】
340 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/22(金) 04:34:21.20 ID:oJy/sqUR0
/>>305ですが取り下げます
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 19:04:01.26 ID:Lr0wfjog0
>>339

【影が振り下ろす一閃は、中途の所で止まる。腹に一太刀入れられて後ろによろけてしまい縦斬りが止まる】
【木花がとった一連の動きは、霞之長刀……天真正伝香取神道流と呼ばれる古武術中の薙刀術表之薙刀の一つ。その劣化模倣(見様見真似)】
【回避の足運びを利用して影の腹に一文字の斬撃を刻んだ。一閃の終端に杖を薙刀に変じさせていた白刃は消え去っていた】
【続いて木花は型を崩す。影に向き直し、杖を縦に半回転させて、右手を前にした石突の構えを取る。しかし杖による打撃ではなく】
【杖の先端にさらなる燐光。青く照らされる影にピシュンと空気の抜けるような音と無数の針の散弾が浴びせ掛けられる】

【防御の構えを取る影だが、針の俄雨に対処出来ず身体中に突き刺さる。外れた針も木や土に無音で刺さっては数秒後に砕けて消える】
【影は太刀が外れても、地面を裂いた衝撃音で森の獣達を起こし、二人を襲わせる算段をしていたが目論見は外れた。木花も消音に徹した能力攻撃を選んでいる】
【その影の刀身に白刃が突き刺さる、鈴音が投げつけたそれは、影のよろけに拍車をかける結果となった。影と数メートルの間合いが空く】

【影は鈴音の言葉を聞いたか知らないが、鈴音の問い掛けの一拍後に、肩をいからせてビクンビクンと動く。或いは魔王の哄笑のイメージに近いその行動】
【木花は腕を交差させる動作を解き、杖を構え直す。視線の先に影を見据え、先程から木花にしか向いていない影と相対する】
【その木花には、あり得ぬ赤黒い魔力の燐光が身体中に張り付いている。腹に一文字、全身に絵の具を蒔いたような斑点が。鈴音はその異変に気付くかもしれない】

『適応現象が確認されました』
『「転嫁」を「呪詛返し」に上書き(オーバーライド)』
『以上により適応率100%に達しました』

うそで……しょ……ッ!?

【影は相変わらず痙攣して動く様子もない。対する木花は顔を凍りつかせながらも、回避を取ろうとナナメ後ろに跳ぼうとする】
【その始動に少し動くと、赤黒い燐光が先程より少しズレたような気がしなくもない。腹の一文字が横っ腹に掠める程度には】
【電子音のアナウンスが無情に報告し終えた後意味を為そうとする赤黒いカタチ、既に消えた刀が残す魔力残渣の小さな桜吹雪、その中に追加される色とは……?】

/今日も、よろしくお願いします
/いつでも再開大丈夫です
/ちなみに、鈴音には赤黒い燐光は一つもありません
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 19:25:22.68 ID:eehW2g0b0
>>341

【寒さに強張る身体を無理繰りに動かす、思考の邪魔をする思考を無理やりに押しのけて、なるべく意識を正常に保つ、どちらも簡単なことではないのだけど】
【だからといってどちらも放棄してじゃあ春までおやすみなさいと落ち葉をかぶって冬眠することが許されるはずもないし、自分だって、そんなことは許さない】
【再び手の中に舞い戻る刀の煌めく銀色に愛しい蛇を思い出す、――大丈夫、一緒に居る。一人じゃない。だから――大丈夫だと、口の中で、その単語を転がして】
【――それをきっかけにしたように、刃に水面が満ちる。薄桜色の液体が刃を包み込むようにあふれ出る。確かめるように一度振り抜けば、びちゃりと滴は落ち葉を溶かした】

……わたし、"こういうやつ"、やなんだけどな……。

【だけど大丈夫でしょうと自分に言い聞かせる。もう六年も前の話なんだからと――思いながらも、視線はびくりびくりと戦いて笑うような影をじろりと睨みつけているし】
【木花にこびりつくような赤黒い魔力にも気づいている。魔力には敏感な性質だ。……だけれど、それは、敏感であるだけ。それ何の意味を持つかは、ちいとも分からず、分かれず】

だけど――、

【ざんざと夜風に薙がれて流れる桜吹雪の最後のひとひら。それがまさに今消えようとした刹那に、いっとう強く、夜空の一等星かのようにぎらめき】
【ぐるりと渦巻いて、刹那の間に形を成す。――蛇、だ。桜色の鱗をびっしりと身体にまとった、蛇。「りん!」と激しく鈴の音を響かせ、そいつは身体をぐねりと宙に踊らすと】

――なんにも出来ないだけなのは、もっと嫌なの。

【空中であるというのに身体を発条のように縮めて、それから、黒影へと跳躍するのだろう。やがて開かれる口の中は、刀が纏うような薄桜の水で満ちていて】
【さらにその向こうには銀の小さな鈴がひとつ、浮かんでいるのが見えた。――どうやらこれが鈴の音の源――と思うより先、細く頼りない毒牙がぐばりと膨張し】
【その尾からどんどんと身体を構成する魔力を喪いながら――その分を自らの牙へと変換しながら、蛇は黒影へ噛み付こうとするのだろう】

【――こいつは素早かったけれど、急にこさえたものなら、狙いが幾分か甘かった。それに軌道は真っ直ぐにもほどがあるくらいで、壊すのも、回避も、或いは容易く】
【けれどそのぶん。その牙を身体に受ければ――ひりつくような、焼けつくような、痛み。覚えるかもしれない。影に痛覚があるのかは分からないのだけど】
【蛇――毒蛇。この蛇の持つ毒は、つまり、強い酸性の性質を持つのだった】
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 20:05:10.12 ID:Lr0wfjog0
>>342

【影は依然と哄笑のような痙攣を続ける。それは、赤黒い燐光を避けきれずに左手に斑点を残してしまった木花の顰め顔を眺めるように】
【一文字を避け切っても、偏在する斑に被弾して、木花の能力では起きないはずの痛苦と刺傷が浮かび上がる】
【そうして影が、刀を右手持ちに変えて左手で誘うような仕草で挑発する動作をする。その一瞬後】

【距離をとる木花と入れ替わるように桜吹雪が殺到する。正しくは鱗を持った『水の災厄』が虚空を跛行しながら迫る】
【影は挑発に気を取られて反応に遅れてしまう、だがまるで消えたかのようにその場から消滅してしまう】
【出現時に700メートル差を一瞬で詰めた瞬発力が再び。しかし、逃げ遅れた刀身と蛇の毒牙が擦過する】

【鮮血の赤に続いて鈴の音。桜色の蛇に猛毒の黒、牙と刀が巻き起こした橙色の火花、そうして、8メートル先の巨木から立ち昇る灰煙と轟音】
【影は林の木に激突してふらふらと揺れる。首が前に折れて、ぷらぷらと揺れている。影の自滅は周囲の鳥類の雨のような地鳴きを呼び寄せる】
【影の刀は強酸の害を受けたらしく、鋒が不規則に溶けて形が変わり、灰色に色褪せてしまう。強度が落ちたように見えなくもない】

【木花は、決意を固めたらしい鈴音を覗き見る。左手甲から一筋血を流し、顔を顰めながら】
【鈴音の魔力操作。凡そ最初に会った枯木の時と違い、桜色の蛇を呼び出した少女の力量に目を見張る】
【次に何をすべきかを考える。能力攻撃は自身に跳ね返ってしまう。囀りの漣を聞きながら、温存を決め込む。そして】

鈴音ちゃん
そいつ、死なない。死んでも『死んだふり』をする奴だから

あいつの瞬発力に気を付けて
あと、30秒したら消えてくれるからそれまで耐えて

【影は両手で首の位置を直し、中段の構えにする。鈴音はその隙に攻撃する事は可能である】
【しかし、木花の方からの支援はこの1アクトのみ期待できないであろう】
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 20:22:24.61 ID:eehW2g0b0
>>343

【桜色の蛇は最終的には頭だけになって、それでも意地か義務か、影の持つ刀に鋭く膨れ上がった牙を突き立てる。――そして、霧散する】
【けむのように消えた影を少女は忌々し気に睨み付ける、――水が少ないな、と、思った。傍に川でもあれば良かったのに。だけど――そうだとしても、】
【どうにかしないといけない。……それにしても影の狙いは木花なのか。いくらも遅れて、少女は、やっとその点に思い至る】
【自分を見ない。じとりと不満なように目を伏せて、うるさいほどの鳥のさえずりへ眉を顰める表情へ変わる。――というか、うるさかった】

……じゃあ、わたしとおんなじね。

【なんて、なんてことのないことみたいに呟く。ここでようやく木花のそばへと戻った彼女は、手首の動きで、そっと右手にある刀を揺らし】

わたしは首が折れたら、生きてられないけど――。

【ゆらり、と、その髪が不自然に揺れた。ちらりと毛先からごく小さく溢れてこぼれる光の粒子は桜色の魔力光】
【大木レベルの操作は不得手でも、これくらいなら出来た。――というよりも、出来なければ、生きていけないのだから】
【蛇が威嚇するときに首を揺らすように。髪束がふわ、ふわ、と、揺れる。構えた刀は型もなんにもない、それなら、彼女がまともに教わったわけでないとも分かる】
【だけどそれはとうにばれていたかもしれない、どこかでまっとうなひとに教わったなら、刀を投げようなんて、まず思わないだろうし――余談】

三十秒? ……うん、いいよ。消えちゃうまで、あなたを守ればいいのね。

【(自分を犠牲にしてでも)】
【そうと木花の前に立とうとする、その身体はひどく華奢で頼りないけれど、普段は秘めて宿す魔力を見せつけるように溢れさせれば、ただの少女でもないよう】
【ただの少女というにはその魔力は多かったし、濃かった。――それで威嚇になるなら御の字、ならないなら、それでも、影は木花を狙う気がする】

【――弱み、だった。彼女はまともな刀の扱い方を知らない。だから……影が動くまで、動けない。後手に回らないと、何がどうなるのかさえ、よく分かっていないのだった】
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 20:44:53.55 ID:kOleR69ZO
>>344

【木花は鈴音のブラックジョークに少し頬を緩めながら】

えっと、まるで妖魔みたいだね

【と月並みに返してしまう。返事をしている頃には鈴音は魔力操作で髪をなびかせており、恐らくは大技の準備にとりかかっている】
【木花はその邪魔をしないように最小限の言葉を選び取る。そして、再び左手に力を込め始める】
【あの影の攻撃に備える。恐らく鈴音が魔力を集中してしまった影響で攻撃パターンを変えてくるのだろう】
【それに対する迎撃の準備を終える。左手の痛苦に冷や汗を流しながら】

【影は中段の構えから……刀を真上に投げつける。鈴音に対する脅威度を更新したのだろう、恐らくは只のヤケ】
【……ではなく、片足立ちとなり刀の柄を左足で押し出すように蹴る。瞬発力を乗せられた刀は鷹の降下に引けを取らない速さで木花に殺到する】
【木花も、咄嗟に杖で横殴りにし飛翔する刀を弾き飛ばす】

【その一瞬の隙に影はまたも姿を消す。瞬発と分かるなら、鈴音に一定以上の動体視力が備わっている場合、その影の行動に気づけるだろう】
【影は鈴音に殺到し、引きちぎった自身の頭を木花に投げつける一連の動作を】
【それは、刀と首が近い場所(虚空)を漂ってしまう事を指す】

【或いは、その一瞬の攻防の隙に対抗する事も可能かもしれない】
【影が消えるまで残り20秒弱。その攻防の結末や如何に】
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 21:00:45.38 ID:eehW2g0b0
>>345

【――そういうつもりでは、あんまりなかった。大技らしい大技というのを自分は持っていなかったし。それなら、これは、本当に純粋な威嚇と】
【何かあった時に咄嗟に対応するための魔力の予備。この程度の発露なら機能に問題はない、それなら――見せつけて相手が勘ぐって黙ってくれるなら、時間稼ぎになるのなら】

【――――だけど、その、予備の魔力は。すぐに使われることになる、自分がやるのを真似たようで、それでいて少し違う攻撃。刀が、ぎゅんと空気を切り裂いて】
【鋭く迫るのを木花が弾き飛ばす、というのを認識する、次の刹那に相手の姿は見えなくなっている、なら、――こちらに来る? そこまでを見ることは出来なくて】
【そもそも蛇は視覚にすぐれない。嗅覚が得意だが、彼女は中途半端なのでそれも不得手。それなら刀がなければこちらに向かって来るという単純でしかない予測の元、】

早い、けど!

【消えたのを認識した瞬間には、だん! と足を強く地面にたたきつける。それは散らしていた、集めていた魔力を、一度に――あまりにも一度に、足元の地面に叩き込み】
【きらりと堪らず地面から溢れて煌めく欠片が魔術の形を成してリボンのように繋がっていく、そして、地面にずるりと吸い込まれていき】
【――次の瞬間には。少女の立つほんとうの目の前、まさに少女の服や肌ですらわずかに切り裂き抉りながら、神速で膨らみ伸び咲き誇るもの――桜の木、?】
【もちろんそこらへんに生えているものとは違う。すべてが桜色で出来ていた。枝、花、すべてが一緒くたに魔力色の桜色で出来ていて】

【早くて見えなくても相手から突っ込んでくるなら捕まえられる。枝はまるで地獄かのように鋭く尖り。咲き誇る花弁は、鋭く薄ぺらい、刃物のよう】
【もしもまともに踏み込んでしまえば、身体が大変なことになるのは必至とも言えるほど。もちろん相手の防御力や、それこそこの木すらも避けることができるのなら】
【たくさんの魔力を一度に放出したせいで少女は十数秒か、数十秒、動けそうにない。桜の木は立派な大木くらいはあるから、】
【直接の攻撃範囲に捉えることができなくても、いっときの盾くらいにはなる――だろうか?】

【――貧血のような眩めきが意識を襲う。すぐには動けない。だけれど、ちかちかと黒白でゆがむ視界で、きっと彼女は、木花のほうへと振り返って――】
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 21:22:55.55 ID:kOleR69ZO
>>346

【鈴音の目の前に突如として桜の地獄が展開される。桜の先祖たる薔薇科の特徴……荊の威容が】
【影は瞬発はできても制動には距離を要してしまう。高速度から捨てるように投げた首は確かに木花の方へ向かって投射された】
【その代償に、影は花弁や棘に苛まれ、或いは歪に14分割されるように砕け散る】

【飛んだ首はと言えば、木花の近辺で弾き飛ばされた刀を噛んで持ち、空中で縦回転しようとする】
【それは木花を縦に切り裂こうと上空から振り落とされる断首の如き一閃】
【しかし、首は接近する荊を感知出来ずにただ木花を斬る事に執着していた為、荊のしなりになす術なく吹き飛ばされる】

!?
ありがと!

【木花は少し距離のある鈴音に対して咄嗟にお礼を言う。刀を弾き飛ばした時点で左手に感覚がなく、さらなる攻撃に対応できなかったからである】
【電子音のカウントが0を告げる。バラバラになった影の欠片、刀を加えた首は虚空に解けるように消え去った】
【木花は安堵の溜息を殺して、右手で長鞄から警棒を取り出し、術発動中の鈴音に向かって何かを言う】

早く逃げないと
野犬の群れがくるかも!

【その言葉が言い切られるよりも早く、狼の遠吠えが上がる】
【鈴音はその声と、木花が無事な右手で持っている帯電警棒。それらが見えるならば、何かを決める必要があるかもしれない】
【逃げる方向、或いはそれ以外の何かをであった……それは魔力不足の疲労で消耗する鈴音にとっては難しい選択になるだろう】
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 21:37:21.92 ID:eehW2g0b0
>>347

【くらりと視界がゆがむ、倒れこみこそしないものの、音さえも遠く聞こえるようで】
【結局魔力を繰る練習をしていてもとっさに使えないのなら意味がない、これでも、前よりはだいぶんましになったのだけど――そっと、自嘲して】

え――、?

【零の声で安堵したのか、それとも、単に限界だったのか。零を数えて一つ、二つ、三秒もすれば】
【桜色に咲き誇る魔術の桜はざらりと隅から崩れ落ちるように、或いは腐り落ちるように、最終的には汚泥のようにぼとぼとと地面に落ち】
【振り向きざまにようやく狼の遠吠えが聞こえて、ぎくりと身体がこわばる。しまった、気付かなかった、――刀を握ったままの右手で頭を押さえる、そして、】
【わざと乱暴に頭を振って意識をなるだけはっきりさせる。それで、ぐっと唇を噛んで。せめてもの魔力の回収にと刀を再び消す、――ゲーム終盤の薬草くらいにはなる】

行こう……!

【一歩目の足は揺れて、けれど転んでしまわぬようにと踏ん張る。踏ん張って、その走り出す勢いのまま、木花の手を少し乱暴ながらも掴もうとする】
【もし掴めればそのまま引っ張るように走り出すはずだ。足は遅くない、だけど、ふらつく身体にはあんまり好ましくない――けれど、棒立ちよりはましなはず】

――待って、今、もう少しで……起動できるの……!

【――それでも掴めなければ。あるいは振り払うでもすれば、彼女は無理やりにでも木花の手を掴もうとするし、一緒に行こうと引っ張る。それは何度も、諦めなくて】
【ひっぱれたなら走りながら、そうでなければ――どちらにせよ必死めいた顔で、そう言うのだ。それなら、何か、――何かしらの手がある、らしい。逃げるための――】
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 21:57:14.87 ID:kOleR69ZO
>>348

うん!
でも、一手は打つ!

【鈴音の呼びかけに一つ返事で答える。その間に左手で持っていた杖を斜めに地面へと突き刺す。抱えながら、体重を乗せるように】
【そうして、反動で跳ねるように走り始める。鈴音の差し伸べられた手の方向に】
【鈴音の方も木花をつかむ事には成功するのであった。そのあとで鈴音が何をするかは自由である】

『呪詛返し』があるなら、できる!

- Fire Arch

【木花のものとは思えぬ冷めた口調が響く。それを合図に地面に刺さった杖から白刃の砲弾が高射角で打ち出されるだろう】
【それは木花達とは逆方向の少し離れた林の中に金属の爆轟音を響かせながら着弾するだろう】
【目のいい者が見れば杖の先に付いた血が白刃の砲弾に移って行くのが見えるかもしれない】

【この行動は、狼の気をそらすのと血の匂いを分散させる。という目論見の下に行われる】
【それが効果が有ったかは不明であるが、着弾後から狼の声が徐々に遠ざかる結果を引き寄せる事になる】
【それを見届けられるか否かは鈴音の行動に掛かっている】

私の刃(能力)……自分に跳ね返るようになっちゃったけど
ケープは守ったよ、傷一つ付いてない

【或いは緊張を少し緩めながら木花がこんな冗談を言いだすのかもしれない】
【目を細めて無邪気に笑うそれは、恐らくは身近な者にしか見せない表情なのかもしれない】
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 22:26:07.62 ID:eehW2g0b0
>>349

【ぎんと金属質な音が響く、自分の声とは違う金属質――びりと耳に響いて、驚いたか、気が逸れたか、足ががくりと折れかける】
【とっさに「きゃあ」なんて声を上げる、けれど転んではいけないとそれだけで足場の悪い中を駆け抜けて――狼の声が少しだけ遠くなる、だけど、】
【きっとそれを彼女が気付くのは難しい。――、それどころではない。魔力の消費量が足をふらつかせて、普段ならばすぐに起動できる式さえ、怪しく揺れて】

出来――っ、きゃ!

【だけれどある瞬間で歯車と歯車がかちりと合うように、淡く魔力の光が広がる。その瞬間、ぐるりと景色が捻じ曲がる――目を開けていると、乗り物酔いのようになるかも】
【転移の魔術式だった。それは世界を飛び越えるほどのすさまじいものではないけれど、例えば、――さっきの枯れ木から見える街明かりの場所くらいまでは、】

【本当の一瞬で世界が変わる。或いは空気の匂いさえ変わって――けれど格好良く決まらないのは、転移の瞬間、思わず気の逸れた彼女が今度こそ転んだから】
【場所は街中の石畳の広場。本当になんにもなければ二人はそこに降り立って、――というか、彼女の場合、本当にむぎゅと転んで身体で着地したようなものなのだけど】

【――転移は無事に成るだろうか。それさえ叶えば、二人はきっと、平和と言っていいだろう街の中に降り立つことになる】
【だけれどもしも何かの理由でそれが叶っていないなら――少女は木の根に足を引っかけてしまって、木の枝や石の多く転がる場所に、きっと思い切り転がることになって】
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 22:46:17.27 ID:kOleR69ZO
>>350

これは
ガニメデのナイン(囚人)が使った……!

【ねじ曲がる風景。折りたたむように世界を閉ざす。さらに続く謎の移動感】
【その奇妙な感覚を半年前の事件の記憶と結びつける。完全に外界と途絶されるよりも早く置き去りにした杖を黒い霧に戻す】
【そうして完全に林と木花達の関連性が消失する】

【とある街 東の大通り】

【転移は刹那の間に完了する。足をつく感覚が自然の柔らかさから石器文明より続く硬質な感覚に切り替わる】
【巻き込まれた枝葉が爆ぜるように快音を鳴らして折れて、それでも少女達の勢いを殺しきれていない】
【石畳の道に叩かれるように転んでしまいそうになる】

っ……! 届いて!

【木花が足に力を入れて鈴音を支えようとする。だが伸ばした手が悪かった】
【怪我した左手では人の体重はおろか、椅子すら支えられないのは必然】
【木花も鈴音も木の枝を撒き散らしながら石畳に真正面からすっ転ぶ】

いたた
大丈……夫?

【木花は石畳に仰向けになりながらそんな事を口にする】
【起き上がるかどうかはまだ決めていない。ケープ洗わないとなあ……とぼんやり思っている】
【遅れたように枯葉が木花の後頭部にひらりと軟着陸するのであった】
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/22(金) 22:50:06.21 ID:kOleR69ZO
>>351
/訂正
/×後頭部 ○額
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 22:58:33.85 ID:eehW2g0b0
>>351

【周りから見れば、唐突に宙から現れた少女二人。それも物凄い勢いで飛び出てきて、そのまま、地面に正面衝突、ある意味気持ちのいいくらいに転んで】
【一人くらいは手を差し伸べてくれても良さそうなものなのだけど――今日は居合わせたひとが悪いようだった。誰もかれもが、そっと、静かに、気配を消して、去っていく】

いた、た、……。

【びたんと地面に接した身体の前側が全部痛かった。それでも歯を折ったりしなかったなら上出来だろう、思うに、多分、どこかが折れているようなこともない】
【それでも打撲めいた痛みは脳に突き刺さって冷たさか痛みか疲労か、もう、なんだか起き上がりたくなかった。このまま寝たい……多分凍死するけれど】

木花ちゃん、だいじょうぶ? ……ごめんね、最後転んじゃった……、急に出来たからびっくりしちゃったの、もうちょっと時間がかかるかなって思って――あ、

【痛みに顔をゆがめながらも身体を起こす、そして、木花のほうへと振り返る、ぺたんと座って、ぶつけたおでこを丸く赤くしながら、少し気弱そうに笑って】
【転ぶつもりじゃなかったんだけどと小さく呟くが。だいたいのひとはたいてい転ぶつもりなく転ぶものだろう、――ひっかけて縺れた足を、念のため、そっと伸ばして確認して】
【予定ではもう少し時間がかかるはずだったらしい。だから急で驚いた。だから転んだ。――まあ、言い訳だ。結局はこうして無事なのだから、それでいいのだろうけど】
【むーっと拗ねたような顔をしている彼女、――不思議な声を上げていっそうにむくれたような顔をする。……その視線は一瞬前に手元をちらりと見て】
【そして、その手元には。森の中で巻き込んで持ってきてしまったのだろうか、鮮やかな紫色の――鳥の羽が一枚。数秒のちに、なかなか拗ねたような声で「まあいいや」と呟き声】

……木花ちゃん、だいじょうぶなら、えっと……ごめんね、あの山に用事があったんだ、よね?
今日の宿とか、決まってる? この辺の宿、空いてるかな――、……空いてなかったらうちに、……来る?

【その羽根の軸を指先でくるくるしながら少女はそんな風に眉を下げる。まだ用事はあったかもしれないのに、もしかしたら、邪魔してしまったんじゃないかと】
【そして急に連れてきたものだから、宿は大丈夫かと心配する。見れば時刻はもう遅い、急に見つからないようなら――家に来れば、なんて、申し訳なげに誘うのだった】
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 23:20:40.68 ID:kOleR69ZO
>>353

【木花は起き上がり、鈴音につられて笑い合う。鳥の羽は何かを記すように風に靡いている】
【そのあとの鈴音の誘いに対して、木花も笑いを一旦やめて、柔らかい表情で】

あの山の用事は通話が来た瞬間には終わっていたよ
でも、その後のアレはびっくりしたかも……

うーん
寅の刻(午前3時)だとどこも空いてなかもだから、鈴音のおうちにお世話になれたら嬉しいかも

【木花はスカートや貸してもらったケープに付いた枝葉を丁寧に落とす】
【退けられた枝葉が石畳に載せられる。そこだけ自然が反旗を翻したように】
【或いは朝の光と共に起き出す数多の箒持つ人々が吹き飛ばすのを震えて待つように風に攫われる】

【木花は頭を掻きながら鈴音の返答を待っている】
【了承するならば、木花は鈴音の家に招かれてケープを洗う等の手伝いをしてくれるだろう。否ならばこのまま別れて始発まで時間を潰して列車で眠り込むだろう】
【或いは、先のトラブルについて追加で訊きたい事があるなら大して引っかかることなく答えてくれるだろう】

【朝日は地平線の下で眠りに着く。昼の領域たる暁の光すら地下に引っ込めて、懇々と今はまだ】
【夜闇の中で星々が輝く。輝星を数多く擁する冬の星座は西に傾きつつあり、地平線にうしかい座の並びが分断されていた】
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 23:22:36.63 ID:kOleR69ZO
>>354
/訂正
/×鈴音 ○鈴音ちゃん
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 23:27:53.47 ID:eehW2g0b0
>>354

ほんとう? ……なら良かったもう一度戻るのは、ちょっと、大変そうだし……。

【あどけない顔が安堵したようにほころぶ、気にしていたのだろう。邪魔したのではないかと】
【家に来るというならばその笑みはいっそう強くなって嬉しそうになる、「全然だいじょうぶだよ」と笑ってから、】

あ……でも、あの、……木花ちゃん、動物だいじょうぶ?
あのね、ペットが居るの。猫と、ジャッカロープと、バジリスクと、……あと、あの、ドラゴン……。

【どうやった彼女の家にはペットが居るらしい、それならもしかしたらアレルギーでもあるかもしれないと、急に顔を不安にして】
【だけど本当に心配なのはアレルギーというより、もっと、変な……変な動物は大丈夫ですか、と、そういう意味合いのほうが多いかもしれない】
【始めこそ「猫」とか言っていたけど次の言葉から十分におかしい。「ああ、でも、みんな子供だから!」と少し慌てたように付け足す意味、あるのだろうか】
【まだ子供だから……と繰り返して、弱気な表情。だいじょうぶ……? と長い睫毛を微かに震わせて、じっと木花に向く視線は、もちろん苦手ならば無理強いするわけもなく】
【ただ木花がそれらが大丈夫であるようなら、――彼女は問題なく家に泊めるだろう。必要なら食事も用意できるし、着替えは……まあ、少女のものでよければいくらでもあるし】

動物が怖くないなら……えっと、大丈夫だよ。
それに、猫は二匹居るんだけど、その子たちと、あと、炎……あ、竜。その子以外は、みんな檻に入れてあるから。
木花が言うなら、その子たちもわたしの部屋に入れておくよ。

【こんな時間じゃ行く場所もないだろう。それなら女の子を一人置き去りにするわけにもいかない、むしろ、どちらかと言えば家に来てほしい】
【何か問題があればペットたちは自室にでもしまうからと言って、誘う。――どうなるかは、ほんとうに、木花の返事しだいだ】
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 23:41:29.37 ID:kOleR69ZO
>>356

【木花は少し首を傾げてしまう。鈴音の慌て方が変だという意味ではなく、動物の構成という意味で】
【成体だろうが幼体だろうが動物は動物と思い込んでいるのだろうか】
【そんな短慮を置き去りにして、木花は一度だけ頷いて】

うん、鈴音に任せるよ!

【木花は右手に握っていた対動物用スタン兵器として使う予定だっあ警棒を長鞄の中にしまい】
【手を差し伸べる。無意識なのか、わざとなのか怪我していない右手を】
【その手を取るか否かは鈴音の手に委ねられている】

【長い金髪が風に靡く。寒風が肌に突き刺されどケープの魔力が体を守る】
【頬も手も霜焼けで赤くなりながら、鈴音を待つ木花なのであった】

/以上でこちらは終了になります
/三日間色々お付き合いして下さってありがとうございました
/それではゆっくりおやすみ下さいませー
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/01/22(金) 23:42:44.16 ID:kOleR69ZO
>>357
/修正
/会話文でまたちゃん付け忘れてしまいました
/何度もすみませんです
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/22(金) 23:58:42.74 ID:eehW2g0b0
>>357

【木花さえ大丈夫なようなら、少女は、差し出された手をぎゅっと取って。さっきは急だったから乱暴だったけれど、今度は、しっかりとやさしく】
【そうしてもう一度転移の魔術式を起動させて――今度は、どこかの、洋館の前にたどり着く。どうやらここが少女の家らしく、】

【――内装は案外普通だった。強いて言えば家具が猫足だったりする趣味が窺えたり、ソファにぬいぐるみが転がっていたり、】
【そのぬいぐるみを枕にするように寝ている二匹の白黒の子猫、それから大きな炬燵と――なんて、リビングはそんな感じで。洋館らしさは実は薄く】
【やけに人懐っこいドラゴンの子供と、遊びたい盛りの子猫二匹と、遊んでいれば服なり、必要なら食事なり、用意するだろう。その間に、部屋も準備したようで】
【木花に貸し出す部屋は誰も使っていないのかやけにこぎれいでひんやりとした部屋、寂しいならぬいぐるみ貸すよなんて提案もあって】
【欲しいものがあれば言えばいいだろう。あれば貸してくれる、ひとまず家らしいものはちゃんとあるから、最低限一泊するくらいでなら、不便もないと思われて】

「…………」

【――問題があるとすれば、ものすごく愛想の悪い、なんだか、全身真白な男……それも身長が二メートルもあるような男が。ふらふらとうろついているくらい、だろうか】
【聞けばその真っ白いひとは少女の旦那らしい。だから、居て当然なのだけど――少し離れたところから木花を観察する様子はさながら拾ってきたばかりの子猫のようで】
【悪いひとではないようなのだけど――彼が慣れるまで、すこし、居心地が悪いのかもしれなかった】

/おつかれさまです!ありがとうございました!
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/23(土) 00:53:12.24 ID:ZwVTfQ5/0
【森の奧地。魔物も多いと噂され、普段ならば人気など皆無である筈の其処】
【今宵は二人分の足音が聞こえ――――身形を見るに、謂わば雇われ傭兵である事も直ぐに理解出来るか】


「しっかし美味しい依頼に有り付けたモンだなぁ。精霊だか妖精だか分からないがガキ一人生け捕りにするだけで数千万が手に入るなんてよ
この手錠を填めちまえば魔力も制限出来ちまって後はコッチのもんなんだろ?」

「……何でも生き肝を喰らうとその力を手に入れられるだかとか何とからしい
人間では無いのだから相手も只の子供では無いだろう。そんな軽口を叩いて油断しているとあっと言う間に消し炭にされるかもしれないぞ」

【一人は長剣を腰に提げたラフな格好の男。もう一人は弓を手に辺りを警戒しつつ進む男】
【二人の遣り取りからして、何らかの捕獲の依頼を受けて此処まで来た事は分かる】
【然れど、その対象が魔物だとかでは無くどちらかと言えば幻獣にも似た部類ではあるのだが――――】

【何にせよ、何者かが近くを通る或いは様子を伺ったならば双方共に其方へと顔を向けて】







【満月の夜――――人々からその存在を忘れ去られ、ただ朽ち行くだけの遺跡】
【嘗ては祈りを捧げるのであっただろうその場所も今となっては誰一人として訪れる事は無くなった……が】
【今宵は、無礼にも其処に座る女が居た。金色の髪に、同じ色の双眸。何よりも特筆すべきは背に生やした純白の翼】

【在りし日の其処を思い、思慮に耽っている訳でも無い様。ただ単純に単純に月光浴を楽しんでいるのか】



「――――今日は星も月も良く見える良い夜だ。風も心地良いし…………ボクだって偶にはこんな夜も、ね」

【漏らした言葉は誰に向けた物でも無い。ただ、何と無く慈しむ様に己の座る台座を掌で撫で】
【バサリ、と一度羽ばたかせた翼。純白の羽が月光を浴び銀色となって風に舞い】

【辺りに人気は無い。だからこそ、この女の存在も相対的に目立つというもの】
【もし、女の存在に気付いて近寄ったならば――――「ボクに何かご用かな」なんて言葉と共に、緩んだ笑みを向けるのだけれど】
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/23(土) 19:52:07.57 ID:TZ9Mg0Pwo
>>305

【人の波が一気に引き下がる。事情の知らない人々にもその異常なパニックが伝染し】
【急に飛び出した人を避けた車がショウウィンドウに突っ込んだり、タクシーが衝突したり】
【乗り捨てた車と急発進して、無人の交差点が出来上がる。そうしてみると…街は静かだ】

……誰だ?…くっ…ククク…何?そうか…自警団…いぃぃや、SCARLET!!面白い!!
俺はそれ程の脅威となった!!ふふふ…ハハハ……ああ、気分がいい…

【落ちたスマホを踏み潰し、大きく首を傾けながらじろりと駆けつけた自警団員を見た】
【わざとらしく眼鏡を中指で上げて、何ぞの悦に浸る笑みを浮かべていた】

ああ、やったさ。やってやった。この手で!!この俺が!!2人も殺し、こうしている!!
オマエも殺してやるぞ、SCARLET。俺の力を!見せてやるよ!!

【奴の割れたレンズの奥の目が青白く光り、血まみれの姿で迫り来る】
【特に武装らしき物は見当たらなく、ただそのスピードは人間離れ、腕の構えから懐に入ったなら】
【奴はストレートで殴りかかるだろう。攻撃翌力はまだわからないが、ただじゃすまないはずである】
362 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/23(土) 20:23:05.50 ID:uBznJOx+0
>>361

【相手はいわゆる悪党としての格が上がったことに対して喜びを感じている。カノッサの構成員かともジュリアは思ったが、男の外見にそれらしき様子は見られない】
【ともあれ自身が為す出来事に変わりはないと言わんばかりに、彼女の周囲の空気の圧迫感が増した。周囲に特殊な力が渦を巻いて集まっていく】

…『『極渦(ポーラーサイクロン)』』!

【人間離れした速度で殴り掛かる男の脇を疾風が駆ける。彼女の両足に装備されたローラースケートの車輪が能力によって回転することにより、車やバイクに相当するスピードを生み出し男の殴打を回避したのだ】
【ジュリア・クレイパスの能力『極渦』は回転運動を操る能力。自身が力を込めた物体・物質を任意で回転させる能力である。この能力を応用することにより、ジュリアは予備動作無しでの高速移動を可能とするのである】
【もっとも白シャツの男とジュリア、その出せる最高速度はどちらが上回るのかは現状、不明だ。彼女は警戒を解くことなく、体を反転させて男の方へ向き直る。二人の間合いは7、8メートルほどか】

脅威だ何だか知らないけど。人の命を理由なく奪っといてよくもまあそうはしゃげるモンだね。
そこらの甘ちゃんとは違ってあたしは厳しいから。世界に悲しみを振りまいたその罪、しっかり償ってもらうよ!

【言葉と共に、身長ほどもある長い槍の先を男へ掲げる。金属製のその先端はドリル状になっており、これが前述の能力により超回転し高い貫通力を生み出す仕組みだ】
【ただジュリアはそのまま突っ込むことは無く、男の様子を観察している。未知の戦闘力を持つ者にうかつに接近するのは危険と判断しての行為である。相手の真価を推し量ろうとするジュリアに対し、男はどう出るか】
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/23(土) 20:56:10.01 ID:TZ9Mg0Pwo
>>362

【男のスピードはそれが自信に現れている様に速い。しかし、能力と装備を組み合わせたジュリアには及ばない】
【それにその動きは大ぶりで粗く、戦闘に慣れていない、素人そのものだ。しかし、再三だがその動きは人間離れだ】

………!!能力者!…いいぞ、コレは素晴らしい戦いだ!!…ああ、そうさ…俺は能力者だ!!

【男はまた叫んだ。能力者、能力。その言葉に固執して、そして自身がそうであることに陶酔する。まるで何も見えていないようだ】

なら……見せてやるよ……本物の…能力ってやつを……!!ハハハハハハッッ!!!

【血走った目が光り輝く。顔の皮膚の血管が浮き上がり、その皮膚が徐々に徐々にドス黒く染まっていく】
【ズズズ… 首も、手も腕も黒く、皮膚から色が侵食している。悪魔にとり憑かれた様に男は様変わりした】

ハアァァハァァァ!!!

【奴はまた脅威の脚力でジュリアに向かって走り出す。力が、奴の体の中を駆け巡っている。速さが増している!!】

どうだぁぁああ??!!!スカァアアアレットォオオッッ!!!

【ぐんと地面を蹴って、また大ぶりのストレート。奴の拳は黒く、太くまるで悪魔の腕だ。威力も明らかにマシいるようだ】
【だが相変わらず隙は大きい。戦闘の素人であることは変わらない】
364 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/23(土) 21:23:02.51 ID:uBznJOx+0
>>363

【能力者であることにこだわりを見せるその姿勢。能力者選民主義のGIFTの連中かとも思ったが、男の所属を推測するよりもまずジュリアは男の変貌していく様子をまじまじと見ている】

(サイコ野郎め…!…あの外見、能力発動にかかるまでの時間から見て、身体強化に特化した能力か?…さて、どうする…!?)

【逡巡している彼女へ男は先より格段に上がった速度で突進してくる。攻撃は直線的。普段ならば容易に回避できただろうその一撃は、増した速度のぶんジュリアの意表を突いた】
【小さく舌打ちをしてから、左手に掴んだ円形の盾を敵の拳へかざす。円盾は高速回転し、攻撃を受けるというよりも弾き、軌道を変えることで衝撃をいなすことを目的とした防御法だった】

…っ!

【ジュリアの表情が歪む。いなしたはずのダメージは、盾を通じて彼女の腕へ。鈍い痛みが左腕に走る。想定よりも遥かに強い腕力。なんとか彼女は男の腕をはじき返し、やや中腰の体勢から姿勢をひるがえし、右手の槍を操った】

…っの、馬鹿力が!

【望まない形で接近される形となったが、これは窮地であるとともに好機であると判断し、超回転する鋭い槍の刺突で男の足を狙った。機動力を削ぐことが狙いである】
【分厚い鋼鉄の壁すらうがつ回転槍の一撃は男のドス黒い足にどれだけのダメージを及ぼすか。様子見をするつもりも余裕も無い、全霊を込めて彼女は男の太もも部分を狙った】
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/23(土) 22:17:26.03 ID:TZ9Mg0Pwo
>>364

【悪魔の一撃は加速に載って更に威力を増して叩きつけた。鉄パイプで殴られたよりも重い衝撃だろう】
【ただ、回転によっていなされ、力が拡散されたことは確かだ。だがやはり奴は素人じみていて弾かれた男は】
【おおきな隙が生まれた。肉体は人間を凌駕していても精神までは強化されることはないらしい】

俺の力!!見ろッッ!!恐怖しろッッ!!

【心まで黒く染め上げられた男は叫ぶ、力を振り回し、見せつけて誇示する】
【男はその自慢の力を叩き込むことに執着しているのかそれしか知らないのか、距離が近いうちにもう一発殴ろうとする】
【故にそれに気を取られていたせいで足への攻撃の回避に遅れる。奴が気がついて退いたが、その時には大きく太ももを削られる】

ああああああああああ!!!クソが!!クソがッッ!!

【血は変わらず赤かった。奴が俊敏に下がり、血の跡を点々と残して、その場に片膝をついた。大きく削られては普通なら立つことは無理だ】
【それに大動脈もあり、そこが切れていたらものの数分で失血死するだろう。……しかしやつは】

違う…まだこんな…こんなところで…死んでたまるか…能力を…もっと力をくれ!!“レグバ”ッッ!!

【奴は雄叫びのような言葉にならぬ声を上げると、目が、そして傷ついた脚が青白く光る。小さな発光体が集まるといったほうがただしいか】
【光る小さな何かが黒い肌の足を覆い、そいつはまた立ち上がったのだ。光が収まると、それは癒えている。ただその足は慌てて溶接したような】
【ぼろぼろな治り方で、また一つ奴は人から遠のいた。破れた服から見えるその異型の脚を手に入れたのだった】

力を…能力を…もっと……もっと!!!!

【もっと速く、もっと強く、乱暴で、野性的な、理性のかけらもないジュリアに向かってくる突撃。だがまた一段と上昇している。繊細さのかけらもなく】
【動きを読めば回避もできるだろう。距離を詰められたのなら、あの異型の脚による飛び蹴り、そして拳による殴打の連続が待っている】
366 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/23(土) 23:06:11.15 ID:uBznJOx+0
>>365

【光の収束と共に男の傷は癒えた。男からすれば応急処置であると理解できても、初めて見るジュリアにとってそれは脅威に他ならない】

(マジ!?アイツ、再生能力まで持ってんの!?…殺さないよう手加減とか言ってる場合じゃないわコレ、仕留める覚悟でいかなきゃあたしが死ぬ!)

【ここまでの男の戦術はずさんの一言。強力な体を活かしての攻撃のみ、まるで獣のような戦い方だ。だがその負傷をものともしない突撃戦法は、常人の考えを超えているとも言えよう】
【回復を終えてまた突撃してくるであろうときまでの刹那の時間、男と対照にジュリアは思考を巡らせる。如何にして奴という脅威を無力化すべきか、その方法について】

(奴に隙が生じるのは攻撃が「ヒットした」直後!避けるのは得策じゃあ無さそう、瞬発力もバケモンレベルだろうし!だったら…!!)

【瞬間、男が更なる加速と共に突撃してくる。対してジュリアがとったのは、片手持ちの円盾にもう一方の手も添え、姿勢を落とした「正面衝突」の選択!】
【回避を捨て、回転のエネルギーの全てをこの一瞬だけ盾に込める。そして男の脚による悪魔的な一撃が、火花を散らして旋回する盾にぶち当たる!】

っが…!!

【鋭い金属音を上げて円盾が粉砕される。鈍い破壊音と共に彼女の両腕の骨に亀裂が走る。防御手段を打ち破ったことにより男が笑いを浮かべたのならば】

…ハッ。「良い」んだよ、コレで!!

【蹴りの衝撃により遥か後方へ吹き飛ばされながらジュリアが笑う。捕らえられて袋叩きにされての死より、大ダメージを覚悟で攻撃を受けて見せた!】
【蹴り飛ばされるその空中で、ポケットから多くの小さい金属製の玉を取り出す。それは丁度パチンコ玉と同じくらいの大きさの鉄球だった】
【それらを両手に握れるだけ握ると、空中で彼女自身がコマのように超高速で自転し始めた!そして円運動による遠心力で超加速された鉄球達が、銃弾を遥かに超える威力で同時に投擲される!】

喰らいな、『回転式完全被弾性衝突(ベアリングマシンガン)』!!

【2、30発はあろうかという弾丸が、散弾銃から放たれるが如く男を襲う。はじめ直線的に進んでいた球体達は、男の数メートル手前でその弾道を変え始めた!】
【あらかじめジュリアによって力の込められた弾丸は彼女の意思により360°自在な方向に自転できる。それらは野球における変化球のように、空気抵抗を受け変幻自在に動くことができるのだ】
【言わば高威力かつ高性能なホーミング弾。高度な追尾性能を持つ銃弾の雨が、男に向かって降り注ぐ!】
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/23(土) 23:33:11.93 ID:TZ9Mg0Pwo
>>366

【激しい蹴り技は腕よりももっと重い鉄の丸太のような力を持っていた。パワーは凄まじい】
【しかもこの短時間で能力らしきものを使っていくたびに上昇し、挙句に回復までして更に強くなる】
【このような能力者が無差別に暴れまわるというのなら相当な危険となる。機関、GIFTどちらにせよ、だ】

俺は力だ!!もっと!もっと!寄越せ!!力を!!もっt――――

【男には笑うような理性すら無いのか、飢えた獣のようにただひたすらに力を欲す。使うことを渇望する】
【ジュリアの読み通り、奴の隙は大きく。読み通りやつは次の攻撃までに一呼吸、余白がうまれた】

【迫り来る球に気がついた時には既に遅く、避けるにも数が多すぎて、とっさに腕で頭を覆って防御に徹するしか無かった】

グゥウウアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!

【どれぐらいの威力か、ただ全部受けてしまった男はただではすまないだろう。全身に弾丸を浴びて血が飛び散る】

マダダァ……力を…体を……まだ俺は力をおおぉおお!!

【血を振り払い、男は一歩、一歩…ゆら…ゆらと、歩く。血を滴らせ、傷口のいたるところに青白く発光する何かが集合し、這いずる様に…】
368 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/24(日) 00:12:23.91 ID:csFATupC0
>>367

【使える金属球は全て使った。それだけの成果はあったのか、男の受けたダメージは甚大といった様子である】
【だが男は奇妙な再生能力を持ち、更に身体能力の上がりようは底知れないものがある。この時点で捕縛するわけにはいかない、ならばもっと弱らせる必要がある。彼女はそう判断した】
【亀裂走り、動かすだけで激痛がひびく両腕に鞭を打って、彼女は両腕を男の方へ広げて見せた。まるで誰かを抱擁するようなポーズである】
【その両手の間に、弱いつむじ風のようなものが吹いた。能力の応用によって両手の間にある空気を一つの大きな物質とみて、空中に強制的に気流を発生させているのだ】
【時間をかけなければ発動することのできない大技。男の機動力が一時的に削がれているのを見て、ジュリアは締めの攻撃に移ろうとしていた】
【その耳に届く男の言葉。ともすれば人のものとは思えないような、理性無き獣のようなうめき声。その中で唯一人間的な「力」という言葉を唱え続ける男に、彼女が疑問を抱いたのは至極当然のことだった】

…あんた、何なんだよ。力、力ってさ。そんな生き方って本当の「力」じゃあ無いだろ?
あんたはその凄い力をさ、周りの人やモノを壊すために振るってる。だけどそんな突発的な暴力、いずれ私達みたいな…権力とか、政治力とか、そういうものに負けちまうだろ?
あんたのことなんか何も知らないし、的外れなこと言ってンのかも知れないけどさ。あんたが力を使って「何か」を打ち倒したいのなら、そんな生き方間違ってるって、あたしは思う。

【彼女の言う通りにそれは全く無意味な言葉だったのかもしれないけれど、彼女は言わずにいられなかった。その気持ちがどこから湧いてきたのかはジュリア自身にもわからない】
【言葉を終える頃には、彼女の両腕の間に生まれた風は旋風となり、竜巻となった。轟轟と音を立て逆巻く暴風は、彼女の意思一つで男に牙を剥く】
【ジュリアは何かを待っていた。それが危険な男に対する様子見なのか、言葉への返答を期待してなのかは、やはり彼女自身わからないのだろう】
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/24(日) 00:38:56.61 ID:ZhEzKWnD0
【――――人里から大きく離れた湖】
【其れは密林にも似た森の中に存在して居て、とても人間が入り込むとも思えない場所】
【今宵は其処に不自然にも其処に“風”の魔力が満ちていて】

【不審に思ってか或いは興味を抱いてか湖に近づいたならば一人の姿が見える事になるか】
【緑色の髪に灰のローブを纏った青年。何をする訳でも無く、酒を片手にただ水面に浮かぶ月を眺め】


「酒……お酒ねえ……美味しいお酒があっても肴が無ければ味も半減するってもんだね
――――とは言え、ここら辺を都合良く美女美少女が歩いている訳も無いか」

【溜息混じりに息を吐けば酒を煽ればまた同じ様に溜息を吐く】
【恐らくは辺りに満ちる魔力の根源がこの男なのだが……何とも残念であり】








【櫻の国――――封魔城、と呼ばれる其処。古来より悪しき妖怪達を封印し、滅する為に作られたその城は妖怪と対峙する要の場所とも言えるか】
【普段ならば厳粛に閉ざされた門も、今宵ばかりは開かれており】
【所謂、他の者達と交流を図る日なのだろう。人間妖怪問わず、訪れる者を拒む事は無い】
【無論厳重な警備が為されているのだから物々しい雰囲気ではあるが…………其れでも庭にはちらほらと訪れてきた者達も姿も見える事だろう】

【さて、その一角。大きな池に架けられた石橋の上に立つのは一人の少女の姿だ】
【成人前なのに、ハッキリとした威厳を感じ取れる程。それでいて凛とした雰囲気を放っているのだから他の者達も近づけないのであろうか】
【――――何より一番の理由は、武装した家臣達が側に立っている事であろうが】


「……ようこそいらっしゃいましたね。決して楽しいと言える様な場所ではありませんが――――折角訪れて下さったのです
せめて足の疲れを癒やしていくのは如何ですか」

【もしも臆する事無く近づけたならば。或いは、気付かない間に側を通ったならば。きっとそんな言葉が投げられる事だろう】
【決して傲慢では無い物腰。僅かに笑みを見せたならば、必要以上に警戒させる事が無い様家臣達を少しばかり離れさせて】


【どう答えようが、其れは訪れた者の自由だ。ただ何と無しに寄ってみたでも良し】
【どんな理由であろうと、嫌な顔一つせずに受け入れる事だけは確かだ】
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/24(日) 00:56:09.61 ID:DKjKRMbto
>>368

【男の全身に光が這いずり、肉体が変化する。ひび割れた鱗のような、一歩一歩悪魔へ近づく】

……俺は…力を使い、力を………うっ…!!どうなってる…まだ……この程度で……
体が……クソッッ!!まだ…力をくれ!レグバッッ!!

【全身の発光が、急速に弱くなり始め、自体は急速に動き出した】
【体から流れ落ちていた血は止まったが、鱗のようなその変化した皮膚が鉱石のようなどす黒いそれが】
【ひび割れ、柔らかさを急速に失っていく。歩くたびに、その脚から崩れる。指を動かすと燃え尽きた炭のように】
【バキバキとボロボになっていく。まるで枯れ木だ。風化した岩のようだ】

……チクショウ…せっかく、能力を手に入れたってのに…まさか…そんな…
クソ…アイツ…騙しやがったな……嫌だ…死にたく……

【突如、この静かな交差点に銃声が、ひとつ。男はぐらりと体を揺らし、刹那、全身が一瞬にして燃え上がった】
【ガソリンがかけられた時のような一瞬の燃え上がりで業火に包まれる。青白い、細かな光を放ちながら】

レグバ!!…見ているのか?!……クハハッ、もう何も感じない…素晴らしい…
SCARLET、気をつけろ…レグバは気まぐれだ。奴は、俺のように…それ以上の―――

【もう一つ銃声が鳴り響き、男は崩れ落ちた。炎はメラメラと燃えていた。ジュリアの声はとっくに届かなかったが】
【もはやもう届くことは叶わない。人として最後まで残ったのは割れた眼鏡だけだった】
371 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/24(日) 01:44:05.09 ID:csFATupC0
>>370

【男の体に異変。膨大な力の代償であったかのように、その肉体が崩れ落ちていく。どう見ても戦闘を続行できるような状況では無い。いや、ひょっとするともう…】

…っ!?オイ、お前!…っなんだよ、どうしたんだよ!!

【ジュリアは即座に駆けだしていた。男に起こる破滅的な異変を何とか止めるべく。荒れ狂う竜巻は霧散し、周囲に静けさが戻った】

騙した!?お前をはめた奴がいるのか!?…っとにかく、死なせねーよ!安心しろ、今治療専門の能力者を

【言い終える間もなく男は何者かの処刑を受けた。踊る炎が、目の前の絶望的な光景が、近づく彼女の足を寸前で止める】
【ジュリアはなにか得体の知れない感情に震えながら男の言葉を聞いていた。無為な助けを求めようとして、その言葉を聞き逃すわけにはいかなかったから】
【何かを言おうとした彼女の口が止まった。更なる追撃によって、男の完全な絶命を悟ったから】
【人間だかなんだかわからないものになってしまった男と、残った眼鏡にジュリアは視線を落とす】

…ふざけんなよ。 …何が「気を付けろ」だよ! お前、ほんとはちゃんと優しいじゃねーかよ!!
…死ぬってときに他人の心配してる場合じゃ、ねえだろうがよ……

【彼女の瞳から涙がこぼれ落ちる。なぜ自分は泣いているのだろう。自ら問いかけたそれに答えが出ることは無く】
【しばらくの間、ジュリアはそこで立ち尽くしていた。それが冷静さに欠けた行動であったことに、落ち着きを取り戻してから彼女が気づく】
【銃声が聞こえたということは、彼を処刑した人物は近くにいる可能性が高い。遅ればせながら自身の為すべきことを思い出し、彼女は駆けながら叫んだ】

こいつを処刑したのは誰だ!こいつは何でこんな目に合わなきゃなんなかったんだ!レグバとかいう野郎、聞いてンだったら出てきやがれーッ!!

【必死で彼女は周囲を探し回る。心の波はいまだ激しく波打っている。形容しがたい怒りに包まれながら、ジュリアは捜索を続けた】

372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/24(日) 02:22:09.29 ID:DKjKRMbto
>>371

【全てが静寂に戻った。声は響くこと無く霧散するだけで返すものは何もない。信号機は赤のままだ】

悪魔と契約したのさ、レグバはトリックスターだ。本当に居たとしても、出てきやしない
それにこの舞台には元々、出てきてないんだ。奴は

【代わりに答えたのは女性の声。ダークブルーの髪色でアシンメトリのショートカット。濃いシャドウで】
【雰囲気と口調からその正確が予想できそうだ。真っ赤なジャケットで腰のホルスターには拳銃が】

敵じゃないよ。私は、警察。名前はアレックス…これが証明

【ポケットから警察手帳を見せる。見たところ本物のようだ、階級はそこそこ高いが所詮は所轄のようだ】

SCARLETの方が対応にあたってると聞いて、警察と自警団で辺りの安全の確保を行った。ただ貴女を支援できるような
腕のたつ人間は用意できなかった。…上に変わって、お詫びする。私も事情があって近寄れなかった

【警察や自警団が乗り込んできても死人を増やすだけだ。その判断は間違いではない。戦闘が終わったことにより】
【警察や自警団の一部がそろそろやってくるだろう】

【事情とは、一つは事件の詳細がアレックスまでくるのに時間がかかり、また遠くに居たこともあって到着した時には】
【既に銃声がして、付近のビルに上がり、とっさの判断で犯人を探したという】

けど、犯人は見つけられなかった。銃は捨ててあった。新式の狙撃銃と弾丸。特殊焼夷系弾丸という珍しいものが
使われていたが手に入らなくはない代物…詳しくは検視にかけるけど…多分、何も出ないだろうさ

そして、もう一つは…おそらく…私と、そのホトケは…同じ悪魔にとり憑かれていたんだ
だから接触した時に何かあるかもしれない。そう思って、近寄れなかったんだ
373 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/24(日) 02:52:55.66 ID:csFATupC0
>>372

【現れたのはアレックスと名乗る警察官。提示された手帳に同じくジュリアも自身の所属を説明した。SCARLETとして世界を飛び回っているが本来は水の国の自警団、その支部の一員であることなどだ】
【先程まで自身を取り巻いていた状況、特に自分が先導したわけでもないのに民間人の避難が速やかに済んだ理由などをジュリアは相槌を打ちつつ聞く】
【「彼」の死に関する部分に際して彼女の表情はわずか曇った。そうして全ての事情を聴き終え、彼女はアレックスに言った】

アレックスさん…いや、アレックスで良いかな。なんか堅苦しいのって嫌いでさ、そう呼ばせて。
アレックスが謝ることは無いよ、偶然あたしが一番近くにいただけだし。こっちこそ被害の拡大を防いでもらって感謝してる、ありがとう。

【あたしのこともジュリアで良いよ、そんな風に言いながら彼女は続ける。話の核心部分に触れるために】

それでさ、アレックス。聞きたいんだ。レグバって一体何者なんだ?
SCARLETとして…あるいは水の国で自警団やってる時も、そんな名前は聞いたことが無い。
それにあそこで殺されたやつとアレックスが同じ悪魔にってのも気になる。
確かにアイツが能力を発動した姿は悪魔みたいだった。そしてその能力は、多分レグバって野郎から与えられたもの。
あたし、知りたいんだ。こうなった以上、あたしはレグバって野郎を追わなきゃあいけないから。
アレックス。アレックスには一体、何が憑りついてたんだ?

【決然とした覚悟を宿した目つきでジュリアはそう問いかける。社会の秩序を守る為に。そして何より、目の前で踊らされ死んでいった男の無念を晴らすために】
374 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2016/01/24(日) 03:48:52.50 ID:MtZVPT+ro

【この街は腐っている】

【綺麗に整えられたのは外装だけで、薄皮一枚剥げば穢れたヘドロが噴出する】
【マフィアが通りを我が物顔で闊歩し、娼婦は陽の下に遊ぶ子供にさえ絡みつく】
【警察は麻薬組織と癒着し私腹を肥やすばかりで何もしない。それどころか善良な人間を虐げる始末】

【奴らは糞だ。この街の暗闇で蠢く奴ばら全員、薬と暴力と姦淫に酔い痴れた豚畜生だ。生きる価値などありはしない】
【ここが世界の最果てと言われればそうなのかもしれない。この地はあまりに汚らわしすぎる】
【この地は呪われているのか? いいや違う、土地は土地にすぎない。ただの砂利とコンクリートに何の力があるものか】

【人間だ。すべては人間がやったことだ。この膿んだ塵溜めは、俺たち人間が形作った排泄物に他ならない】
【いっそのこと天からの硫黄と火が何もかも焼き尽くして浄化してくれればどれだけいいか。だが神は何もしない】
【誰かがやらねばならない。道端に散らばっている糞も、糞に集る蠅共も、腐肉から沸く蛆虫も、跡形残さず掃除しなければならない】
【そう、誰かが動かなければならないのだ。誰かが……】


【今朝七時二十分、女が強姦されて殺された】
【その話は少なからず街中に出回ったが、さしたる興味を示す住人はいなかった。彼らにとっては日常茶飯事だからだ】
【警察は形ばかりの捜査を行った。しかし犯人がある麻薬組織の一員と知れた瞬間、操作は容易く打ち切られた】
【下手人は組織の中でも下っ端にすぎなかったが、彼らと警察は仲良しこよしで手を取り合っている。一言で言うなら揉み消されたのだ】
【女が娼婦で、身寄りがなかったことも拍車をかけた。後ろ盾のない人間は、この街では人権など無いも同じである】

【だから、この事件は闇に消える】
【いつものように、変わらぬままに、彼方へ葬り去られて終わり、忘れ去られるのみ】
【……だが、それを決して逃がさない者がいる】

【深夜二時過ぎ】
【とうの昔に打ち棄てられ、誰もいないはずの廃工場に、二つの人影があった】
【一つは若く、まだ二十の半ば。恵まれた体格の彼は、しかしすっかり萎縮して、厳つい顔つきは血と涙に塗れていた】
【鼻梁は曲がり、歯は数本まとめて折れ砕けており、片方の耳が引き千切れていて、右の眼球が潰れている】
【彼は酒焼けした声で叫ぶ、助けてくれと。何でも言うとおりにする、組織の情報だって渡してもいいと】
【己を見下ろすもう一つの影に向かって、みっともなく、必死に、絶叫して命を乞うた】

「笑わせるな」

【しゃがれた声で、男は即答する】
【そして半ばから折れて杭のように尖った鉄パイプを躊躇いなく彼の心臓に突き刺した】
【断末魔をあげる彼の声が、せり上がる血で途切れた。くぐもった水音を残して、彼の全身から力が抜けていく】

【それでも男は止めなかった。鉄パイプを引き抜いて、もう一度彼の身体に突き立てた】
【びくんと跳ねる彼に、尊厳などないとばかりにもう一度。引き抜き、刺して、引き抜き、刺して、引き抜き、刺す】
【何度も何度も執拗に、万が一にも蘇らぬように、二度と生まれてくるなと言うかのごとく】

【そうして十を数えようかというところで刺突を止めた。朽ちたコンクリート床には血と、それ以外の中身を零れさせた骸がある】
【それを見下ろして立つ男は、端的に言って異様な姿だった】
【コート、スーツ、皮手袋、ツバ広帽子、すべてが闇に溶け込むかのような黒。そこに当然の理屈として、返り血の赤が多量に付着している】
【その中で、すっぽりと顔を覆う覆面だけが一点の染みもない白色だった】
【体格、身長、ともに平凡そのものの姿であるからこそ、肌を全く露出させない服装と、なによりその覆面が奇怪な気配を醸し出している】

【横たわる肉塊が完全に絶命していることを認めたのだろう。もはや用はないと、この場を立ち去りかけて――】

375 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/24(日) 03:59:18.98 ID:DKjKRMbto
>>373

【アレックスはポケットに手を入れて、ずっと遠くの方を見ていた】
【ホトケや事件の方は見ない。普通の事件だったならどんなバイオレンスな死体も持って来いだが】
【今回の様な事件は、特にプライベートに関わり、いろいろと複雑なのだ】

……私にも何もわからない。私は、それを知るために警察になった
けど、何一つつかめていない。…今まで、奴らは行動していなかった
多分、研究段階だったんだ。…けれど、ここ最近、今回のような…似たような“能力者の暴走”が数件
いろいろな地域で報告に上がるようになった。奴らが何かの目的があってやっているのかもしれない
あるいは…次の段階に入ったのかも。どちらにせよ、私は奴を探したい

【レグバという名前すら仮定である。ある地域の民族宗教の神の一人から取られた名前が何を指すのか】
【組織か、能力か、黒幕か…ただ、黒幕が居ることは確かだ。たとえそれがレグバでなかったとしても】

これはあくまで予測だけど…今回のやつが似た能力であることは確かだと思う。けど、悪魔になるのは
多分…失敗。能力が暴走したか、体が持たなかったか、元々、そういうふうに仕組まれていたか…
ごめん…本当に知らないんだ。警察という組織である以上、単独での捜査は余りできないから
それに、私が…所謂“レグバ”に会ったのは…もう10年は前の事だしね

【もう此処には要はない。それにあまりいたくないのか、もう立ち去ろうとしていた】

…とり憑いたのは、例えるなら寄生虫。能力を与え、人格を食らう。…そう例えるぐらいにしか言えない
私はずっと、2人の自分に戸惑っている。どちらが私かわからないでいる
…ホトケの身元を洗えば黒幕への糸口が見つかるかもしれない。わかったら連絡するよ

【何者かが能力の拡散しようとしている。今はそれしかわからない。全くの闇の中だが、その危険を知るのは】
【今は多分、この2人だけだろう。証拠はとうに燃え尽きてしまった】
【アレックスはそれだけ話して立ち去ってしまう。プライベートな話、したくない話でもあった】
【しかし、動き出したレグバに立ち向かう仲間が出来たことはありがたい。後日、連絡があることだろう】


/そろそろ眠たいので〆にさせていただきます 
/お付き合いいただいてありがとうございました!おつかれさまでした
376 :ジュリア ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/01/24(日) 05:13:11.32 ID:csFATupC0
>>375

【ジュリアはアレックスから語られる出来事に耳を傾ける。アレックスが警察となった動機について。「能力の暴走」の件について。そして「2人のアレックス」について】
【聞き終えた彼女の表情は複雑だ。何しろ目の前の気丈な女性が自らの人生を賭して追い続けているにも関わらず、レグバに関してわかっていることはほんの僅かなのである】
【それだけレグバを覆う闇は深いということか。相手が一筋縄ではいかないことを察したジュリアの顔が曇る】
【アレックスが意図的に話さなかった情報もあるだろうが、とはいえジュリアはレグバに関する情報を手に入れた。レグバに関する組織が活動を活発化させていることや、能力者の扇動事件に関わっているだろうこと】
【そしてレグバが与える力は、それと引き換えに人間らしい理性を奪ってしまうこと。ジュリアは先の男の様子を思い出し、早くにその真相へ達せなかったことを悔やむ】
【話は死体の処理の件に及び、ジュリアは言われるがままこれをアレックス等警察側に任せた。足早に立ち去ろうとするアレックスをジュリアは呼び止め、先の戦闘で入手した情報を伝えた】

あの死んだ男についてだけど。あいつ、焼け死ぬ間際に言ってたんだ。『レグバは気まぐれだ』『奴は俺のように、それ以上の』…そこまで言ってから撃たれた。
あいつの言葉を信じるなら、少なくとも「レグバ」ってのは個人を指す名称だと思う。まあその辺は実際に会ったって言うんだからアレックスの方が詳しいと思うけど、一応。
それと、交戦中のあいつはやたら「力」って言葉にこだわってた。自分の力を誇示し、振るうことが最大の目的にして喜び…そんな感じだった。
もっと言うと、もともとあいつは無能力者だったんだと思う。能力の制御がまるでずさんだったし、口振りとかからも判断した。…力に飢えていた人間、そういう風にも言えるはず。
『奴は俺のように、それ以上の』ってのが戦闘能力に関してでなく精神面についての言葉だったなら、そこからレグバの心理とかがわかるかも知れない。
犯罪心理プロファイリングとかやってる部門に一応この件、伝えてみて。あの男の言葉は一字一句記憶してる。手がかりになるかもしれないから。
それじゃ、アレックス。あたしも独自に探ってみるよ。きみがきみの目的を達成できるよう、祈ってるよ。

【そう言いジュリアも交差点を去っていった。幸い両腕の負傷はそれほどでもなく、戦線に復帰できるのはすぐのはずだ】
【しかし彼女は一抹の不安を感じていた。それは知り合った刑事、アレックスが纏うどこか儚げな雰囲気を思ってのことであった】
【事件だけじゃない。彼女もまた、何かの闇を抱えている… その闇の深さを思って、ジュリアはもっと彼女と話してみたいと、そう願った】


/こちらもこれで〆となります、遅くまでお付き合いいただき有難うございました!
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/24(日) 11:40:22.75 ID:DKjKRMbto
>>376

【後日、メールにて事件の詳細が上がってくる。警察のアドレス、差出人はアレックスだ】

SCARLETとの捜査協定から連絡先はわかったから送った。時間がかかった事をお詫びする
これでも早い方なんだ。SCARLETの名前を借りたらすぐに全面協力となったよ。ありがたい

この間の例の男はやはり無能力者の一般人だった。数カ月前に会社を首になって、アルコールで喧嘩の前歴
それと薬物所持があった。初めに殺されていた首無しはその上司だったらしい。その日以前にも
例の男が関与したかと思われる殺人が何件か見られる。詳細は添付したファイルを確認して欲しい

だから捜査をするなら薬物の売人かそのネットワークを辿るといいかもしれない。カノッサ機関がそのルートを通じて
『beyond』を流通させようとしたケースと似ている。“レグバ”は機関かも知れない。ただ薬物関係はD.R.U.G.S.の庭だ
警察は関与しづらい。奴らが勢力の拡大のために機関を真似た…とも考えられるが…
私は今まで人身売買のルートで探していた。実験体が必要だろう…と。怪しい人物は何人か候補はいるが、未だ確証はない

“レグバは気まぐれ”。これは、別の説として能力自体を指すのかもしれない。不安定な能力という意味
そしてそれ以上…というのは更に強力か、凶悪な“レグバ”が存在するということかも。名前は“ゼウス”とかかも
全ては憶測の域。ただ、黒幕が何かそれ以上のものか事をし始めているということはあっているだろうね
調べてみたら奇しくも…レグバは交差点に住む悪魔らしい。運命の十字路とも…となるとGIFTがやりそうな手口に見えてくる

以上だ。見ての通り大した情報はない。もし手伝いが必要なら私が行けなくとも何人か紹介できる。なにかわかったら連絡する

【添付されたファイルは詳細についてのレポート。ただ新たな情報は無かった。もしかすると情報が上で制限されているのかもしれないが】
【何にせよ殆どすべてが暗雲の中だということだ。いや、我々はこれからその中に突っ込もうとしているのかもしれない】
378 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/24(日) 12:30:43.68 ID:61PeWlQt0
【街中――、ひとの多い大通り】
【休日の昼間。遊びに来た男女や、買い物に来た女性。いろんなひとが溢れる通りは、なんだか窮屈で】
【いろんな声や気配が溢れている、――その中に、ぽつりとひとつ、どうしようもない違和感が紛れ込んでいて】

……え、えぇと。あの。

【誰もが目的の場所に動いているひとごみの中、ひとりだけ、少女が立ち止まっていた。少し困惑したような声で、じっと誰かと何かを話していて】
【――少女は困惑していて、だけど、怯えたりはしていなかった。だけど、きっと、誰かが見れば分かるのだ。きっと少女が話している相手は、】
【きっとヒトガタであるのだけが分かる程度にヒトガタをしただけの、何か。もっと魔術に通じるひとならば、それが認識阻害の魔術だと気付けるだろうけど】
【髪の色も肌の色も服装でさえも認識させない魔術をすっぽりとかぶった誰かが、少女の話している相手で――そして、それは、なかなかに不思議な光景で】

……――?

【長い黒髪は腰まで届く。ダリアの花を模した造花の髪飾りを差していて、右の耳には片耳だけ、宝玉の欠片をあしらったピアスがあり】
【瞳は左右で色が違って黒と赤、肌は抜けるように白く、その身体つきが華奢なのは服の上からでも見て取れて】
【胸元に赤いリボンをあしらった黒のブラウス、赤いミニスカートには黒レースのパニエがぎゅっと詰め込まれて、裾からちらりと覗き】
【スカートにもあしらわれた大きなリボン飾りがふわふわと揺れる、足元は編上げのロングブーツで――、踵が少し高くて】

【どうやら手紙らしいものをよく分からない何かから受け取った少女は困惑多めであっさりと立ち去った何かを見ている、それで、】
【きっと咄嗟に伸ばした手を勢いよく誰かの脇腹で小突く形にしてしまってから、あわてたようにぺこぺこと謝っているのだった。少しだけ泣きそうな目をして】

【ふわぁ……とため息を吐く。その光景を誰かが見ていたなら、――興味を持つのは、現場に取り残されて手紙をぎゅっと握りしめる少女なのか、】
【それとも。自分をばらしたくないのか念入りに隠したわりに、案外悠々と歩いて立ち去っている方の何かなのか。どちらにせよ――きっと捕まえるのは、容易くて】

/退屈なので日付変わるくらいまで投げておきますっ
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/24(日) 20:43:54.09 ID:+QfZM0mGo
>>374
/まだ募集しとりますー
380 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/25(月) 22:39:21.34 ID:J1H4fGib0
【何時もならば、静寂が支配しているであろう森の一角――――】
【太陽も月光も刺さない其処。ゆらゆらと揺らめくのは人魂の様な炎で、ピンと立てた指先に其れを宿して森の中を歩くのは、少女と女性の丁度中間の年頃の女】
【黒いローブと、とんがり帽子。所謂、典型的な魔女の姿で】


「ほんっっと、何処に行ったんだろ
幾ら僕の主だからといって、好き勝手されたらたまったモンじゃないさ
隙があったらあの頭をポカッと一発…………」

【愚痴グチぐち――――】
【件の“主”が居ない事を良い事に、連ねる言葉は不満の数々】
【……けれども、その主に勝てないのは理解して居るのだろう。だからこそ漏れる溜息】
【無理だよなぁ――何て呟けば、夜空へと顔を上げて】

【――――視界を遮るのは、一羽のフクロウ。まるで女に問うかの様に、クイッと首を傾げれば】


「お前、僕の主が何処に行ったか知らないか?
――――……そうか。知らないなら、いい。…………役立たず
……にゃっ?!こ、コラ!小便を引っ掛けようとするなァ!!」

【女の言葉を解したのか、ホー。と一声返す程度だったけれど】
【ボソリと呟かれた言葉は、流石に癪に障ったのだろう。バサバサと飛び立てば、まるで蝉のようにみみっちい攻撃】

【――一方の女。まさかの不意打ちに驚けば、帽子の隙間からピンと猫の耳を立たせて】
【焦げ茶色で、癖のあるロングヘア。其れに掛からないようにと、慌てて帽子を深く被るけど】
【静かな森――――騒がしい声は、よく通った事だろう】








【――――人里から大きく離れた湖】
【其れは密林にも似た森の中に存在して居て、とても人間が入り込むとも思えない場所】
【今宵は其処に不自然にも其処に“風”の魔力が満ちていて】

【不審に思ってか或いは興味を抱いてか湖に近づいたならば一人の姿が見える事になるか】
【緑色の髪に灰のローブを纏った青年。何をする訳でも無く、酒を片手にただ水面に浮かぶ月を眺め】


「酒……お酒ねえ……美味しいお酒があっても肴が無ければ味も半減するってもんだね
――――とは言え、ここら辺を都合良く美女美少女が歩いている訳も無いか」

【溜息混じりに息を吐けば酒を煽ればまた同じ様に溜息を吐く】
【恐らくは辺りに満ちる魔力の根源がこの男なのだが……何とも残念であり】
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/26(火) 21:59:02.60 ID:+If9/3M70
【街中――海を一望できる広場】
【空からは何度目かの雪がはらはらと降っていた、気温はぐんと冷えて、吐息など絵の具で塗ったように白く】
【少し前の時間なら足早に家へと向かっていた人影もだいぶん減ってしまった、それなら、余計にその人影は目立つようで】

……春など来なければいいのに。そうしたら……、……このままうずもれてしまえるのに――。

【その広場。大通りに比較的近い場所で、高台にあるから少し離れた海を一望できる場所。昼間ならばデートのカップルなんかも多いけれど、】
【さすがに雪の降り始めた夜では人影も少なく、ベンチに座っているのは華奢で小さな影一つ、どうやら少女で――というよりも、背丈だけで言えば子供のよう】

【見ればくすんだ金髪には雪が薄らではあるが積もりだして。癖のある巻いた髪さき、ピンク色がぼんやりと乗る辺りにも、雪の粒がちらりちらりと絡まっていて】
【体育座りの要領でうずめた顔、それでもわずかに見える眼はいやに鋭く拗ねたような表情の勿忘草色。肌は白いが色白というよりか、不健康なほうの白さに見え】
【ぎゅっと足を抱きしめる指先はふんわりとした手袋でうかがえない。分厚い布地のコートと、ふわり広がる踝までのロングワンピースと。ブーツのつま先がちらと覗き】
【首元にはマフラーなんかも巻いていて、きちんと防寒はしているのだけど。さすがに雪の中で雪が積もるまでじいとしていれば、当然、】

【――寒いというよりも冷え切って、震えているようだった。だけども立ち去らないまま、或いは睨むように彼女は海の墨汁のよな黒さを見つめていて】

ずうと春になんてならなければいい……。

【掠れた古書のような声、小さく呟いて。震える自らの手から目をそらすように、少女はぎゅっと顔を、膝と身体の間に伏せた】
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/26(火) 22:53:40.39 ID:Xp6pOfuVo
【もしも彼女の様子を目にしたならば、人は何を想うだろうか?】
【良識のある人間ならば心配するだろう。そして、少しばかり積極性のある大人ならば、家に帰るように言うだろう】

【――ざく、ざく】

【察しの良い、または自分でそう思っている者ならば、彼女の心情を推し量りそっとしておく】
【そして性根の下衆な人種であれば、こんな時間に一人でいる彼女に何らかの危害を加えようとする】

【――ざく、ざく】

【いずれにせよ彼女に何がしかの関心を抱くに違いない】
【そうでない者、つまり寒空に独り震える少女を目にして、何ら感情を抱かない者は少数派だ】

【――ざく、ざく】

【善きにつけ、悪しきにつけ、奇異な存在には何らかの情を抱かずにはいられないのが人の性である】
【ゆえに子供とすら言ってもよい彼女を見て何も思わずにいられる人間はそういないはずだが……】

「もし、そこのお方」

【雪降る夜空に、溶けるように響く低い男の声】
【積もる雪を踏みしめる音はうずくまる彼女のすぐ後ろで止まり、語りかけていた】

「初対面の方に不躾な問いだと、承知してはいるのですが」

【そして一つ、男の声色には奇妙な点があった。いや、人によってはそうおかしいとは思わないかもしれないが……】
【もう遅い時間帯に、雪の降る寒い日に、傘も差さずに一人でいる少女……】
【このような人物に声をかけるなら、その声には心配そうな響きがあって然るべきだ】
【それが本心からの気遣いであれ、信頼させ騙そうとする一歩であれ……】
【あるいはそうでなければ、より単純に直情的に軽薄な色があるのか。騙すなどと、そんな面倒な手順を踏まずに、強引に事を進めようとする浅薄さしか持たない手合いであれば、少女を気遣う善人の心配など装うことはないだろう】

【だが、これはいずれも違う】
【声に色がない。心配そうな声色も、聞けばすぐに分かる浅ましさも、この男の声にはなかった】
【つまりはこの状況にあって、平時と何ら変わらぬ常態としての感情しかないということで……】
【言うなれば無関心。そうでありながらなぜか声をかけるという、理由が不明瞭にすぎる稀な事態が表れていた】

「――武術の心得はおありでしょうか」

【声の主は、身長百九十センチに近い巨躯を黒いマオカラースーツに包んだ男だった】
【腰には黒鞘の打刀を佩いていて、隙のない気配を纏うことから彼が武に関わる人間であると推測できる】
【無造作に伸びた黒髪、不健康に白い肌……全体的に暗い色彩の中で、血のような真っ赤なの瞳が異彩を放っていた。】
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/26(火) 22:54:19.51 ID:Xp6pOfuVo
/>>382>>381宛です
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/26(火) 23:03:16.78 ID:+If9/3M70
>>382

【ざくりざくりとまだ新しい雪を踏みつける音、聞こえているはずでも、少女は顔を上げようとしなかった】
【ただ顔を伏せてぎゅうと足を抱きしめたわずかな隙間から白い息をこぼして、たったのそれだけとわずかな震えで生きていることを示して】
【もういっそここで凍り付いて氷のように溶けてしまいたいと願うみたいに。ちいさな背中を少しずつ雪が白く染めていく、そのさなかに】

…………。

【声を掛けられれば。たしかに意識はあるらしい少女はさすがにわずかに反応する、すなわち肩を小さく揺らして、重たそうに、ゆるやかに頭を持ち上げて】
【それから本当に重たい重たいものを持ち上げ動かすみたいに、ぐるりと振り返って――じ、と、見上げるのだ。訪れた誰かの、うんと高い頭の位置】
【勿忘草色の瞳は寒そうにすっかりと色を亡くした顔の中で、それだけがやっぱりいやにぎらぎらと鋭くて。例えるなら、うんと拗ねた子供がするような、目】

……あるように見えるのなら――キミの目は節穴だと、私は思うのだけれど……。

【細い呼吸が白く染まって立ち昇る。微かに震える唇を無視して、返す言葉は、つまりそんなものは持ち合わせないと】
【分厚いコートの上からでも分かるような華奢さ、その腕はとうてい得物を握るようには見えないし、その足は、百どころか五十も走ったら縺れてしまいそう】
【細い眉がわずかに顰められる。遭いたくない類の人物に遭遇した、と、気にくわないような目が言っている気がした。――言葉には出ないけれど】

【ふわりと動いた右手が、そっと、自分の頭の上に積もった雪を掻き落とす。百四十二センチの矮躯、座っている今、なおさら近づいてきた男はうんと大きくて】
【もしもその刀を抜けば、たぶん、五分もあれば彼女を殺せる。そんな風に思えてしまうくらい――きっと、彼女には、なんにもなくって】
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/26(火) 23:28:55.03 ID:Xp6pOfuVo
>>384

「そうですか」

【彼女の答えを聞いて、しかし男は何ら特筆するべき反応は見せなかった】
【ただ、そうですか、と。鳥が空を飛ぶように、魚が水に遊ぶように、当たり前のものが当たり前の行動を行う様を目にしたかのごとく、その口調には何ら変化は訪れない】
【彼にとって、それは予定調和だったのかもしれない。いや、彼でなくともそうだろう】

【節穴――彼女の言った、その言葉がすべてを表している】
【彼女が武芸者に見えるのなら、その者の目はまさしく節穴だ】
【気配も、体格も、体格から推測できる筋肉量も、武の道に生きる者のそれではないのだから】

【ゆえに彼女に武芸の心得があるとは最初から思っていなかったのだろう】
【だが、彼は……それでも問いかけるのを止めはしなかった】

「では武術でなくとも、何らかの手段で戦闘を行うことは可能ですか」

【男は彼女の目を見て話している。だから彼女が言外に告げている不愉快という感情にも、当然ながら気づいてはいる】
【しかし頓着しない。相手の状態を気にもかけないその様子は、文字にすれば傲岸かつ自分勝手なものだ】
【だが、彼は……少女の目の前に立つこの男は、そうした色が見受けられない】

【なぜなら、薄いのだ】
【傲岸も、勝手も、その反対である誠実も真摯さも――強いて分類するなら後者だろうが、そうした感情の色があまりに希薄すぎる】
【見れば、彼は少女と同じく傘も差さず】
【頭頂部に降り積もる雪をそのままにして、払い除けもしない】
【どころか寒さを感じている様子もなく、微動だにせず少女を直視する様は……まるで、幽鬼か機械のようだ、と】
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/01/26(火) 23:36:05.27 ID:/xK6bXbw0
【――――昼間は活気を見せる街も、夜ともなればひっそりと静まり返っていて】
【そんな中、暖かな光が窓から漏れる店が一つ。扉には『OPEN』の看板か下げられている事からまだ営業時間内であろう】

【スライド式の扉を開けて中に入ったなら、先ず視界に入るのは店の内装】
【落ち着いた雰囲気の喫茶とでも表すべきか、カウンター席が主で他にはテーブル席が幾つかある程度】
【店の少し奥に置かれた掲示板には様々な事が書かれて居るようだけれど】


「いらっしゃいませ。初めての方……ですよね。ご注文の方はまだお決まりではありませんでしたか?」

【僅かに遅れて入店の挨拶をしたのは一人の女性だ】
【恐らくは二十代の半ば。穏やかな愛想の良い笑みを浮かべ、取り敢えずはとカウンター席の方へ着席を促すのだろう】
【素直に従うも良し、でなければ先ずは話を聞くのも良いのだろうが】
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/26(火) 23:44:22.17 ID:+If9/3M70
>>385

【顔を上げるまでは或いは死んでるんじゃないかと思うほどに静かだった少女も、さすがに、目の前に誰かが居るのだとすでに分かっているのなら】
【寒そうに手袋の指先に息を吐きかけてみる、そんな、ほんの少しの行動くらいはするらしい。そうして数度真っ白の息を雪の結晶が絡まる手袋に吐きかけて】
【小さな身体をいっとう小さくするようにマフラーの中に顔の下半分をうずめこむ。目ばかり見られることに慣れていないのか、気付けば視線は相手から逸れていて】

【――彼の言葉に、少女は僅かに目を細める。何らかの感情を示して、ただ、ほんの少し見ただけでは分からないような、いろいろな感情を詰め込んだもの】
【体力さえたいしてないのかそれとも寒さに言うことを聞かないのか、それとも、それとも、雪でつるりと滑ったのか】
【緩めていた腕の隙間から畳んだ足が落ちる、それで、きちりと正しくベンチに座る姿勢になる。今までは足を上に乗せていたので行儀が悪くて】

……それも、

【視線だけで見ていた。それからいくらも遅れて、ようやく少女は身体まで振り返らせて、それでも座っているならすべては難しく】
【座ったままの姿勢で問題がない程度にのみ、振り返る。それで、】

何もないのだけど。
路地裏にでも行けばいいんじゃないかしらん、あそこならいくらでも居るのではないかしら……行かないから分からないけれど。
……少なくとも私と話しているよりか。そちらで探した方が効率がいいと思うよ、キミなら、私だなんて、カップ麺が出来上がるより先に殺せそうなものだし――。

【寒さに体力というか気力というか、そんなものを奪われて。そのせいか喋るのが少し遅いというよりも、ぽつ、ぽつ、と、隙間ができるような感じがある】
【嘘は言っていないように見える。無能力者だとは言い切らないが戦う力がないとは言い切って。というよりそのつもりもきっとないのだろう、自衛のためとしても、】
【眼前の相手を殺してやろうと奮起するだけのやる気もないように見える。或いは薄い希死念慮、少なくとも、雪の降るよな夜にじっと座り込んでいる程度には】

なんにもないのだもの……、キミが望むようなことは、なにひとつ。

【手袋の指先を引っ張って、脱ぐ。ほら、と、見せた手は。どんな得物を使う形跡もない、いっそ、肉刺や胼胝さえできたことがないくらいに細く華奢で】
【爪が少しだけ伸びていた。――それだけの、なんてことない、少し細すぎるきらいはあったが、戦闘や荒事を知らない、少女の手】
388 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 00:08:21.04 ID:tQSD93Cgo
>>387

【無気力な少女だ】
【――彼が彼女に抱いた感想は、それがすべてだった】
【戦うための力を感じない。本人の言葉通り、武術もなければ異能力すら持ち合わせていない】

【……後者に関しては、まだ分からないが】
【少なくとも、こちらが唐突に襲い掛かったとして、抗おうとする気概すら感じ取れぬのは確かなこと】
【であればやはり、彼女は“違う”のだろう。闘う者ではない】
【あるいはひょっとして、極限まで殺気を隠して隙を突かんとする暗殺者である可能性が無いわけではないが……この手を見るに、それすら薄いように思う】

「なるほど」

【ゆえに、彼女は彼の求める人種ではなかったのだろう】
【路地裏に行けばいい、と……その言葉からして、感性もおそらく一般と変わらぬそれだ。非日常的な世界を知っているようにも思えない】

「失礼しました。此方の見当違いで、たいへん不愉快な思いをされたと存じます。申し訳ありません」

【ゆえに練武を旨とする彼としては、もはや尋ねるべきことが無くなった】
【男とて、だれかれ構わず同じようなことを聞いて回っているわけではない。この世界において、周囲に馴染めぬ異質な者は、尋常ならざる異能力を持ち合わせた“能力者”であることが多い】
【だから目立つ者、普遍的な風景から浮上した人物を中心に、こうして同じことを尋ねている。むろん彼が求める人物がいれば、そうでない人もいるのが世の常で……】
【今回は、後者だった。ただそれだけのことで、彼にとって特筆すべきことではない】

「――それはそうと」

【だから、ここからはまったく関係のない話】
【先の非常識な質問とはまるで様相を異にする話題】

「保護者の方は、いらっしゃらないのですか」

【二十過ぎの男が推定十代の娘にかける言葉として、非常に常識的なものだった】
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 00:21:47.02 ID:sjliiTDn0
>>388

【死にたいと願って死んでしまうような人。死にたいと願って来るみながら生きる人。ただ冗談のように死にたいと笑って楽しく生きる人】
【死にたいにもいろいろあるけれど、この少女の場合はどれなのだろう。それとも口に出していないなら、ただの馬鹿か酔狂でこんな場所で雪にまみれているのか、】
【何かしらの理由があるようには見えなかった。広場から見下ろせる海は変わらずに黒々とした口をぽっかり空けていて、まるでそこが地獄の入り口のよう】

【手を見せてしばらく。相手が満足したらしいと見れば、彼女はまたゆっくりとした動作で手袋をちゃんと手に嵌めて】
【思い出したか気付いたようにもう一度脱いで雪をはたいて、また嵌めた。それから、ぐるぐるに巻いたマフラーの端を持ち上げて、口元を隠し】

【いつからか逸らしていた目がちらりとまた彼を見た。失礼しましたなんて謝られても顔色が変わらない、喜びも悲しみもしないで、強いて言えば寒そうにのみ見え】
【必要であるようだと思えば「別に構わないけれど」くらいは言うだろうか。間が空いたりするようなら言うだろう。――怒っているわけでは、ないよう】

【それならば相手は自分に興味はなくなるだろう、と、緩やかに判断して、元のように体育座りになろうとする少女は、たぶん、そういう意味では馬鹿にしか思えないもの】
【そこにあらためて声を掛けられるなら、少し不満げな目がまた向く。さっきのどこか嫌悪する目とは違う、今度は、純粋に不満っぽい目だったけれれども】

……どこかには居るだろうけれど。死んだという報せもないし……この間も金が振り込まれていたから――まさかどこぞの富豪とかではあるまいよ。
別に私としてはそれでもかまわないのだけれど……もう何年も見すらしていない人たちだから……。

【保護者。保護者。その単語に少女はぽつんと数秒ばかしの間をあけた。答える言葉を探すような、それとも、そんな言葉を久しぶりに聞いた、言われたというような】
【それから返す言葉はなんというか後ろ向きで。つまり保護者は存命だろうがどこにいるか知ったこっちゃない、というものだった。どうでもいいとまで彼女は言うのだけど】
【どこか無気力というか無抵抗というか、やる気のないさっきまでと違って。今の目はどこか冥いような――少しだけ違う色を宿す。何倍にも希釈されたような感情が覗き】

どこに居るのだろうね。手紙は来たらすぐに燃やしてしまうから、知らないのだけど……、……。

【――不仲、なのだろうか。もはやこびりついてしまったように拗ねた表情の目を細めて、ちいさく呟いた】
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 00:48:36.56 ID:tQSD93Cgo
>>389

【少女の言葉を、じっと黙って聞いていた】
【黒いマオカラーにへばりつき、溶けて水滴となり、染み込んでいく雪を払おうともせず】
【それはどのような心持ちから来る不動なのだろう。それは彼以外には分からない。いやひょっとしたら、彼自身でも分からないのかもしれないが】

「……話を聞く限り」

【そうして再び口を開く】
【紡ぎ出される言葉は重く、暗く沈み込むようで。やはり、感情らしき感情の波は見受けられず】
【……なぜ会話を続けているのだろうか。仮に第三者というものがいたなら、そんな感想を抱くだろう様子】
【第三者ですらそうなのだから、当事者たる彼女からしてみれば余計にそう感じられるかもしれない】

【それほどまでに、この男はあらゆる情が薄いように見えた。いっそロボットと言い切れそうなほどに――】
【……否、それともどこか違うのだ。喩えるなら深海の底に沈んだラジオ】
【あまりの深みにあるために、声そのものがひどく小さく聞こえていて、そこに込められた感情の程などとうてい推し量れないというかのような……】

「必ずとは言いませんが。金銭も振り込まれ、手紙も届く。あなたの親御様は、あなたを愛しているように見受けられます」

【ゆえに彼の真紅の瞳に何らかの感情が揺らいだように見えたのは、果たして錯覚なのだろうか】
【それはほんの一瞬で、とても小さくて、少し見ただけではそもそも確かにあったと言い切れるものではなかろうし、見えたとしてもその感情の正体が何なのかは分からないようなものだ】
【善いものなのか、悪いものなのか。複雑で曖昧で、分からない】
【ただそれでも、彼の声音に変化は無いように思えて……】

「……やはり、会いたいとは思いませんか」

【問いかける言葉は、初対面の相手にかけるそれとしては些か以上に踏み込んだものだろう】
【はたしてそれが彼自身の性質なのか。ただ単純に、男が図太いというだけの話であるのか】
【それとも……本来、人間にあって然るべき感情がそうさせているのか……】
【それは分からない。そう、ひょっとしたら彼自身にも】
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 01:03:10.74 ID:sjliiTDn0
>>390

【どこに居るのかは知らない。一年に一度か、多くて二度か、少なくて一年半に一度か、とにかく、たまにポストに突っ込まれる封筒を、】
【彼女は確認した三秒後にはちりぢりにちぎってしまうし、その後は流れ作業のベルトコンベアのように庭で燃すので、分かりようがない。知る気もない】
【もしかしたら少女の顔にこびりつく頑なに拗ねたような表情はこんなところから来るのかもしれない。親に対する感情、春なんて二度と来てほしくないような気持ち】

彼方からすればそうなのかもしれないけれど――、

【掠れ声は途中で途切れた。或いは続く言葉を推定するなら、自分はそうは思わない、とか。きっと、そんなような意味の言葉が続くのだろう】
【もうあちらから来る感情になんて興味もないくらい、こちらから向かう感情はとうに枯れつくしたくらい、そんな風な様子に見えて、小さなため息】
【じと見上げる彼の顔に、どうしてこんな言葉を自分に向けるのか。その理由が書いてないかしらと探すみたいに数秒見つめる。当然それは見つかるはずもないけれど】
【その代わりに小さな感情の揺らぎを見つけた。だけどその意味をたどるにはあまりにも知らなすぎる、それに――他人というものに踏み込むほど、彼女はそういう性質ではないよう】

もう五年か六年か前だったらばそう思えたかもしれないのだけど……今更戻ってこられても、もはや困るのだし。
何もかも置いていってゴミばかりを持って帰ってくる家に意味なんてないのではないかしらん。それさえも、ずっと戻ってこないのだし――。

【もうそんな気持ちは分からない。ただそれを迷惑だと言ってみて、少女はそのあたりで、彼に対する不思議さというか、疑念みたいなものを、緩やかにどこかにやった】
【それは彼を敵性と判断したわけでもなく、なんだか、なんとなく、そんなような軽さで。話す相手であるという認識をしたみたいに、ぼうと見上げて】
【何もかも置いてかれたうちの一つが自分だし、要らないと置いていったゴミに埋もれるのも自分。二つをイコールで結んでしまう思考回路は、とうに何度も繰り返したあと】

それともキミは両親に逢いたいのかしら……。

【なんとなしに、そんな言葉がこぼれる。どうして他人である自分とその両親についてのことで、そんなことを言うのやら】
【それならばこの自分よりも大きい彼はもしかしたら会いたいのかもしれない、なんて、――鈍った頭での、そんな、連想ゲーム】
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 01:26:37.43 ID:tQSD93Cgo
>>391


【複雑な家庭環境なのだろうと、彼は正しく理解した】
【そして、それは自分のような他人が口出しできるようなことではないということも。初対面の相手に、それも多感な時期の少女に、踏み込んでよいことではないのだろうと】
【しかし、なぜだか……それでも彼は言葉を発する。まるでそれが義務だとでも言うように】

「…………」

【両親に、会いたいのか】
【見ず知らずの他人がここまで言うのだ。少女にとってみれば当然の疑問であり、当たり前の問いかけといえる】
【彼は何か、親に強い思い入れがあるのだろうと。だからここまで言ってくるのだろうと】

「いえ。特に会いたいと――」

【ゆえに、彼が言いかけた言葉は奇妙不可思議なものであり】

「――――」

【口を開いた状態のまま動きを止めた男の姿は、途方もなく不自然極まりないものとして映るだろう】

「――失礼しました」

【それはほんの一秒ほどの空白。しかし、言葉の途中で一秒ほど“停止”することなどそうそうあるものだろうか】
【あったとしても、何かがある。そうでなければあり得ない。意味もなく、理由もなく、言葉を途中で切るなどない。ましてや彼は、そのような奇矯な仕草を好むような者にはとうてい見えない】
【ならばそこには、やはり何らかの理由があることに間違いはなく……】

「孝行のしたい時分に親はなし、という諺があります。やはり一目会うだけでも、と思いますが」

【何事もなかったかのように語りだす男の声は先ほどと些かも変わらぬもので……それが余計に、違和感を加速させる要因になるのだろう】
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 01:43:37.77 ID:sjliiTDn0
>>392

【停止した彼に、ただ、少女は何も言わなかった。ただ尋ねたままで数秒見ていたけれど、その眼に感情は数リットルもの水で希釈した墨汁のように薄く】
【明らかなその反応に踏み込むでもなければわざとらしく触れないのでもなく、ただ、ぼうと眺めて。それ以上何を聞くでもなくて】

……そうしようにも彼らの連絡先も現住所も知らないのだもの。彼方から来なければ私は知らないのだし――彼方からは、来ないのだし。
彼らにとっては家に価値がないのじゃないかしら……特に必要もないけれど捨てるには惜しい本ばかりを積みあげて、
管理させるつもりなのかは知らないけれど、私が居て――今頃もしかしたらどこかの国で家でも建てている、そうだとしても、私は知らない。

…………或いは妹か弟でも出来ていたりするのかしら。そうだとしたら……。

【一目。彼はそういうけれど、もしも彼女がそれを願ったとしても、それだけでは叶わない。だって、彼女がずうと拒否し続けてきたから】
【それに多分、旅みたいに定住していないはずだから、特定の場所には居着いていないはず。それなら尚更一層に連絡先なんて知らない、あちらは知っていても、】
【この間に破って燃やしたばかりだからしばらく手紙も来ないだろう。というので、少女が返すのは、そんな、自分のせいではないという言い訳のような】
【――それから、意図的に作ったような表情、ほんの少しだけ頑張って、無理をして作ったような、口角を上げるだけ、その程度の薄らとした笑み】
【そうだとしたら――?なんて、何も言わないで】

会いたいなら会えばいいよ――それこそ、孝行したいときに親はないのだし。

【「キミこそ」なんて前置き一つ。続けるのは、彼の言葉をそのまま返すような、鸚鵡返し】
【相手の事情なんて何も知らない。だからきっとそんなことが言える、自分の問題点を何もかも無視して、ただ、戯れのように言葉を跳ねっ返し】

私の家は、もう、壊れてしまったのだから……。

【寒くて、凍えそうだった。――というか、もう、凍えていた。だけど、そんなの、きっとずっと昔からで】
【もう手遅れなくらいに冷たく感じる、――身体が、ではない。そういう話じゃなくて、今寒くて冷たくて眠ってしまいそうなのは関係がなくて】
【五年、六年、前と言った。それくらいが期待の限界で、本当の時間はもう少し長い。期待なんて水をもらえないままで枯れてしまった、それぎりの冷たい心のはなし】
【寒くて冷え切って鈍った思考回路にごまかして、或いは初めてそんなことを呟いてみるけれど。相手にしてみれば、そんなのは知れるわけもなく】
【ただ見上げる瞳が少しだけ泣きそうにゆがんだようにだけ見えて。――わずかに噛んだ唇が震える、それがもう寒さのせいなのか、泣きそうなのか、自分でも分からなかったけど】
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 02:09:40.89 ID:tQSD93Cgo
>>393


【少女の、潤んだ――ような、もしかしたらそうであろうと思えるような様を見て、彼は何を思うのか】
【彼の赤い瞳に色が揺らぐ。それはここまで彼女と話してきて、初めてと言えるほどはっきりとした感情の発露であり】
【やはり、ひどく小さくはあるけれど……それでも分かる。いま彼は、彼女に対して何らかの感情を抱いているのだと】

「いいえ、違います」

【だからだろうか。今までよりも少しだけ強く、言葉を放つ】
【肩に、頭に、積もるばかりだった雪が落ちる。長身を屈め、ひどく小さくみえる彼女に目線を合わせ】
【彼女が浮かべた、無理矢理に作ったものだと誰でも分かるような笑みすら、彼は表してはいないが】
【つい先ほどまでとは違う……あの機械のような印象ではない。どこがどう、とは確かには言えはしないが、今の彼は、とても人間らしかった】

「まだ遅くない。あなたはまだ間に合う」

【困惑するだろうか。少なくとも彼は、今の己に困惑している】
【湖面のように凪いでいた。何の情動も起きなかった。何事も自分の内面を揺らすことはできなかった。心などないと思っていた】
【だが、裡に巻き起こる正体不明のコレは何だ。たった一つのもの以外に、こうも自分が揺るがされるのか】
【まるで震災だ。燻るばかりだった熱が動き出し、肉体という地表が鳴動している。わけのわからぬ衝動だ】

「あなたの親御様は、生きているのだから」

【そして決定的な一言を口に出した】
【本来の彼ならこんなことは言わぬであろう。初対面の相手に踏み込むことこそあれ、自分の身の上を吐露するようなことなど】
【これにてするりと納得がいく。ああ、つまり、だからそういうことか、と】
【彼はこの少女に己を重ね合わせているのだ。だから何もできなかった自分の代わりにと、みっともなく懇願しているに等しい】

【ああ、それはなんて……】
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 02:40:15.50 ID:sjliiTDn0
>>394

【何も知らないままの、"あの日"が来る前の自分に戻れたなら、どれだけいいだろう。そんなことを何度考えただろう、】
【ただの子供で良かった頃の話。だけどもうその続きはあり得ない、だって分岐点はとうに超えてしまって、時間は戻るはずもないのだから】

【視線が合わせられる、勿忘草色の瞳は少しだけ曖昧な青色、それが、きちんと、今度こそ、その赤い瞳を見つめている、そんな感じがするようだった】
【人の目はあんまり得意ではないし、背が小さいなら物理的に届かないことも多い。それなら、こうして、視線さえ、目線さえ合わせてもらえるのなら、】
【少し覗いてみようと思うくらいの社交性は持ち合わせていた――いや、きっと、違っていて。そうでもしないと、たぶん、怖いのだ。こわくて、みていられない】
【そうされて初めて少しだけ気が向く。多分、そう。或いは野生動物みたい、車の下からじっとこちらを観察している、野良猫のような】

【さっきまでとは明確に様子を違えた彼を見ていた、もしかしたら驚いたのかもしれないし、もしかしたら、気圧されているのかもしれないけど】
【黙って聞いていた、――そして、知るのだった。きっと彼の両親は死んでいること、それなら、やっと、彼の言葉にあった意味が見えてくるよう】
【彼の両親はもう生きていなくて、もしかしたら後悔しているのかもしれない。だから彼はそんなことを自分に向けたのかもしれない、だけど、】

……っ、だけれど、私は、もう――、……愛せない、のだ、もの、

【言葉を躊躇ったように見えた。開きかけた唇がわなと震えて、だけど、正直に述べた言葉は、それだった】
【生きていようとも愛せない、会いに来たら迷惑で、手紙が届けばすぐに燃やして、死なない程度に渡される金だけに価値があって】
【声はとうに忘れたし顔もなんなら思い出せない、好きな本のキャラクターの名前は言えても、たぶん、両親の名前を思い出すのには、何分か欲しい】

だってあの人たちは私を選んでくれなかった……。

【多分、これが全部だった。ぎゅうと歯を噛んで――わずかに潤んでしまった瞳を、そんな感情なにもなかったみたいに、ごまかすように、ぐしと拭って】
【けれど雪が溶けて濡れた手元だと濡れ具合で言えばひどくなるくらい、それでもどうでもいいみたいに、或いは雪解けでうやむやにしてしまうみたいに、数度】
【繰り返して、ぐうと眉を寄せる。うっかりと言ってしまったことを後悔するみたいに、自分自身に苛立っているような様子で、】

生きていたって、意味はないのだもの……、きっと死ぬまで戻ってこない。探し物は見つからない。見つかったとしても……もとには戻らない。
こぼした水を盆に戻そうとするよりも無意味で罪深いのだから――もとに戻しては、いけないのだから。

【生きていたところでもう戻れない。自分でそう決めているから、だから、たぶん、彼の懇願は届かない。そして、きっと、今そう決めた】
【戻らない、戻してはいけない、自分に言い聞かせるみたいに繰り返して。だけどきっと本当は、その方法さえわかれば、時計を戻してしまいたいように】
【きっと何かがあった。大きなこと。両親とこの少女だけの話ではなくて、何かパーツが足りないようで。だけど、そこに触れようとはしなくって】
【選ばれた誰かが居るはずなのに。ぎゅうと噛んだ唇は頑ななのだけどどこか子供のようでもあって。心までも寒さにずっと震えているような――だけど、誰も縋れないような】
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 03:38:39.42 ID:tQSD93Cgo
>>395

【彼はただじっと、見つめている。その赤い瞳には確かに光が宿っていて、揺れ動く煌きが彼の感情を表しているようにも見えた】
【少女の言葉は一人ぼっちで迷子になってしまった子供の嗚咽に聞こえた。寂しいと、悲しいと、泣き叫ぶ幼子のように】

「本当にそうなのでしょうか」

【そんな彼女の心を救い上げることなどこの男にはできはしないだろう。なぜなら人の心と相対することなど、これが初めてだからだ】
【剣を振るって敵を切り伏せることはできる。ただ一太刀の下に、命を散らすことは容易だ】
【だが少女の心を解き明かし、闇を晴らすなど……この男にはできぬ。このような人殺しに、どうしてそのようなことができようか】
「もう二度と、幸福にはなれないのでしょうか」

【だのになおも言葉を紡ぐこの男はいったい何を考えているのか?】
【よもや自分が、この娘を救えるなどと? だとしたら甚だ可笑しい。笑止千万、馬鹿な男の愚かな夢にすぎない】
【この男は救済者になどなれない。ただ敵と対し、斬り捨てることしかできぬ殺戮人形だ。腰に佩いた刀に、握りしめたその手に、いったいどれほどの血がこびりついたと思っている】

「覆水は盆に戻らない。過去に戻ることなどできはしない。確かに、それはその通りでしょう。
 千切れた糸を結びなおしても、決して同じ一本の糸にはならない。しかし、それで必ず悪い結末になるわけではない」

【つまらぬ。下らぬ。反吐が出る。この男の内面と今までの行いを鑑みれば、端的に言ってあり得ない】
【否、あり得てはならぬ。決して犯してはならぬ禁忌を侵犯しているのだ、この男は】
【それほどまでに悔いているのか。それほどまでに嘆いているのか。だからこのような娘に、乞食のごとく縋り付いているのか】
【お前も戻りたいのか、あの頃とやらに。だがお前に戻るべき幸福などありはしない】
【貴様は、産まれ落ちた時より――】

【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】

「自分は、貴女に何も言うことはできない。なぜなら自分と貴女は、未だ何も知らないに等しいからだ」

【そう、彼と彼女は未だ他人同士】
【男の両親は死んだ。少女と両親は破綻した。知っているのはこのくらいで、他の何をも分からない】
【まだまだ彼らは見知らぬ人で……だからこそ、この出会いが何らかの契機になるかもしれないのだ】

「辛いことは、吐き出せば楽になると聞きます。貴女さえよければ……。
 ……いえ、そうですね。自分のことは、地蔵か何かと思えばよろしいかと」

【ここには誰もいない。何を言おうと、目の前にあるのは石でできた人形なのだと】
【だから心配はない――と、これは彼なりの冗句か何かだろうか? それにしては彼は真顔だ。判断がつかない】
【だが言葉通り、彼は微動だにしなくなった。まさしく地蔵のように、瞬きはおろか呼吸すら止めているように思える】
【しかし赤くも青くもならない顔色からして――いや、始めから若干青白くはあるが――さすがに息はしているのだろう】

/すみませんとんでもなく遅くなりました
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 04:14:00.07 ID:sjliiTDn0
>>396

【じっと見つめる瞳を、彼女はいつしか睨み返していた。見ればちいさな手はぎゅうと握りしめられて、なにか、感情を抑え込んでいるよう】
【泣いてしまいそうだった瞳は今は怒っているのか悲しんでいるのかさえもよく分からなくなるような感情を載せて、もう、たぶん、きっと彼女にも分からない】
【ただひとつそのどうしようもない顔から見て取れることがあるとすれば、――泣いたらすべてがそこで終わってしまうと、もう折れてしまうと、きっと信じていること】

【――うるさいと言えたら良かった。うるさいと突っぱねられたら、放っておいてほしいと言えたら、或いは、それだけの力があれば】
【この身長差では、きっと、全力で突き飛ばしたとして、転ぶのは自分だ。だから彼を無理やりに排除することは、自分が逃げ出してしまうしか、きっとない】
【それを分かりながら彼女は立ち上がらなかった。冷えた身体が動かないではないはずと思いながらもその気が起きないのは、】
【どこかで甘えたい自分が居るようで、それがどこにあるのかも分からないけれど、いっとう不機嫌な顔をすることで、なんとか、ごまかしたような気になって】

【ずっと閉じ込めてきた気持ちがぐるぐると渦を巻く、だけど、それらを吐き出してしまったらきっと自分は駄目になると、何年も考えて、分かりきっていて】
【分かり切っているのに。それなのに分からなかった。どうしたいのか。言いたくないはずなのに。言うなと自分で決めたはずなのに、と、思考の押し問答】

【そして黙ってしまった彼に、少女の心中は余計に混乱する。困ったような怯えたような目が一瞬彼を見て、すぐに逸れて、ぎゅうと閉じられて、またどこかを見て、】
【小さな声が漏れるけれどそれ自体に意味はない、強いて意味を見出すなら、どうしたらいいのか分からない、古いコンピューターがガリガリとうるさいみたいに】
【たぶん、そんな、思考ばっかりが幾重にも重ねられてフリーズしかける声なのだろうし、――そして、それだけ、ずっと我慢していた証拠にもなるのかもしれない】
【もっと素直な幼子の頃だったなら、きっと、すぐに言えただろう。或いはずっと未来の、何もかも諦めた後の女だったなら、笑いながら話せたのかも】
【だけれどここに居るのはどちらにもなれない少女で、報われないのも救われないのも嫌だと赤い炎に小さく悲鳴をあげたのは、もう、いくらか前のことだけど】

……、――、姉が、……六つの時に、死んで――、双子で、……、

【小さな声だった。ほんとうに小さな、雪の降り積む微かな音で消えてしまいそうなくらいに】
【ぷつぷつと途切れ途切れなのはためらいがちだからなのかもしれない、泣いてしまわないように、要らないことを言ってしまわないように】

一卵性双生児で――、……。

【同じ顔と同じ声、考えていることも一緒で、好きな食べ物も一緒。違うところを探すほうが難しいなんてみんな言ったけど、少しくらいは違っていたけど】
【だけど明確な違いが自我として現れる前に、死んでしまった。六つの子供にはそれは自分が死んだのと同じように思えて、ある日、もう一人の自分が、死んでしまって】
【言葉としては不明瞭でも単語として時々漏れるものを繋ぎ合わせれば、――自分がどんな顔で死ぬのかが分かった、とか、そんなことを言ってもいて】

…………、両親(あの人たち)は、姉を生き返らせるために、どこかへ行ってしまったよ。十二年も前に――。

【そこだけ。投げやりなような言い方だった。死んでしまった姉は悪くない。――悪いのは、】
【さっきの言葉を覚えているなら、悪いのは、きっと、自分を選ばなかった両親。それか、選ぶ価値もなかった自分】

【きっとその方法を見つけてくるから、それまで、いい子で待っていてね――母親がどんな声音で言ったのか、もう、思い出せないのに】
【まるで呪いのようにこびりつく、もう一度幸せになりたいなら、ずっと、一人で、あの家で、――待っていろ、と。そんな風に聞こえて、もう消えない】

/すいませんこちらも遅くなりました……! そろそろ結構な時間ですが、眠気など大丈夫でしょうか……?
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 04:26:08.89 ID:tQSD93Cgo
>>397
/実を言うと結構眠いです……! 今日の夕方ごろには戻ってきますので、それまで待っていただけますでしょうか……?
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 04:31:51.19 ID:sjliiTDn0
>>426
/実を言うとこちらも眠気が……ですので、全然大丈夫ですよ!
/ただあさっての朝が早いので今日みたいに遅くまでは出来ないのですが……夕方再開も了解です
/こちらが何時ごろになるかが少し不明瞭なので、もしこちらが遅いようでしたらレス先に返しておいてもらえたら
/時間でき次第すぐに再開できるかな、とか思いますが、お任せします……! ひとまずお疲れ様でした!
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2016/01/27(水) 19:25:19.87 ID:UCRd+c7Uo
>>397

【しんしんと降り積む雪の音。すべてを呑み込んで消してしまう真っ黒な海が立てるさざ波の音色】
【消え入るように小さな少女の声は、そんなものにすら負けてしまうくらい微かな囁きで……】
【けれどその声は、きっとずっと閉じ込めるつもりだった彼女がやっと絞り出した呟きは、たしかに彼の耳に届いている】
【今にも泣きだしてしまいそうなその姿は最初よりも、もっともっと小さく見えた】
【痛ましく、弱弱しく、哀れな、哀れな泣き伏せる童のように……】

「……これは、独り言ですが」

【それでも男は、あくまで何も聞いていないのだと。自分は地蔵で聞く耳も答える口も持たないから、これは単なる独白にすぎないのだと前置いて】
【語る言葉の正誤の判断すら任せるかのように、しかし決して軽薄ではない、たしかな重みをもって紡ぎだす】

「死んだ者を蘇らせたい。愛する者を取り戻したい。……それは人であるならば当然の想いです」

【近しい人間を亡くした経験のある者であるなら、誰もが共感できる想いだ。きっとそれを芯から否定できる人間などいやしない】
【当たり前だ、だって愛していたのだから。好きだったのだから。悲憤し、慟哭し、もう一度逢いたいと考えるのは、決しておかしなことではない】
【……だからこそ、なぜかちくりと、不明の感触を覚えた胸に些かの疑問を覚えて。しかし構わず言葉を続けていく】

「ですが、それは許されない道だ。生きる者は生きねばならない。死んだ者は死なねばならない。
 死した者を蘇らせることは、きっと誰もが本当は望みながらも、しかしだからこそ最も重い罪であり禁忌であるに他ならない」
 
【それが人としての道理。それを為してよいのは、おそらく天上に座す神だけなのだろう】
【人に赦された所業ではない。それでも尚、それを実現させようとするのなら……】

「冥府魔道を往くしかない。血を流し、呪いに塗れ、心身共に穢れ、人ではない何かに身を堕とすよりほかに方法はない。
 神の奇蹟など、存在しないのだから。どだいまっとうな法では達成できぬ以上、呪詛と災禍を撒き散らしながら進む地獄の鬼になるしかないのです」
 
【たった一つの希望のために、無数の災厄を解き放つ箱のように――】
【泥の底に眠る宝石を掴むためには、自ら泥に潜らねばならない。それがどれだけの悪性を秘めたものだとしても、諦められない輝きがあるのなら】
【深淵を覗き込み、自らもまた深淵と化すとしても。それが分かっていたとしても……】

「禁忌に手を染めたがゆえに人々に蔑まれ迫害され、自分たちもまた人間以外に変わっていく。
 絶望。苦痛。浸蝕と崩壊、その道行に幸福など決してありはしない。……貴女の親御様は、それが分かっていたのではないでしょうか」
 
【少なくとも、きっと、自分なら……】
【娘、あるいは弟か妹がいたのなら。愛する存在があったのなら、そうしたのではないのかと……】
【考えかけたところでわずかに瞼を伏せ、振り払った。……詮無い仮定だ。何の意味もない、無為な考え】

【そして、なにより……】

「愛とは物ではない。それを分けたとて、総量の減るようなものでは決してないのです。情とは、内から幾らでも湧きあがってくるものだ。
 貴女の親御様は、それはとても愛の深い御方なのでしょう。だから、情のままに行動した。貴女を置いてゆくことの意味を知りながら、それでも自分たちに付き合わせるよりはマシだと信じて」
 
【そう、知っている。かつて、あの日に、母より授けられた言葉の一つ】
【それが正しいことだと思っている。人間とは、汚いばかりの存在ではないのだと信じている。悪い面も善い面も、両方とも持っているのだと】

「貴女は選ばれなかったわけではない。言うならそう、ただ間が悪かっただけなのだ。貴女の親御様は仮に貴女が死んだとて、同じように蘇生の法を求めに往くでしょう。
 そうでなければ、それほど狂気の所業に手を染めながら、未だ貴女のことを忘れずにいるなどできましょうか。
 貴女は想われているのだ。確かに愛されているのだ。……それでもやはり、彼らを愛することはできそうにありませんか」
 
【これはすべて、彼の推測だ。なんの根拠もない憶測にもにて、そしてやはり、どこか男の奥底に眠る願望なのかもしれない】
【だけど――それでも――それでも彼は、ただひたすらに真摯にそれを信じていて――】

/お返ししておきます……! ちょっと遅くなってすみません!
401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 20:03:50.55 ID:sjliiTDn0
>>400

【地蔵の独り言。本当ならありえないはずのものでも、その地蔵がさっきまで喋っていたのを知っているなら、別に、悲鳴を上げるようなこともない】
【悲しいのか寂しいのか辛いのか苦しいのかも、正直に言ってしまえばもう分からなかった、ただ、何か――そういう感情、見えないように隠したはずのそれを、】
【ほんの端っこでも見つけてしまえば、それはきっとずるずると溢れ出して、何もかも壊れてしまうとだけ分かっていて、それに、独りの時間は長すぎて】
【もはや大人と言えば自分を置き去りにした両親という印象ばかりがあって、子供と言えば自分を置き去りにした姉という印象ばかりがあって、苦手意識めいてこびりつき】

だって叶わないのだもの、叶えてはいけない、だのに、諦めもしない……!

【初めはそこに期待や希望があった。だけれどそれは一日一日紙を破るごとに死んでいって、もう、亡骸すらも風化したあとみたいな気持ち】
【いつしかそこに何も見いだせなくなって、だけど、誰も戻ってこなくて。死者を生き返らせてはいけないことなど知っている、だけど、縋りたかった】
【だけど――もうそんなのもどうでもよくなった。姉は死んだし自分は生きているしどうしようもなくて、ならばと後を追うには、母親の残した呪いが絡み付いて】
【そんな方法は見つからなかった。諦める。それでよかったのに。それも何もないままに時間は過ぎて。十二年なんて時間は、そうなるには、十分すぎて】

【――それなのに、いまだに夢に見る。あの日が来ないまま、何も変わらないまま、平和に過ごす、そんなありえたかもしれない未来】
【夢でなくたって。或いはその方法を見つけ出して――みんなが帰ってくるような、そして、また、続いていくような】
【そんなあこがれだけがずっと遠くできらきらと煌めいて、手は届かなくて、だのに眩しくて、救われなくて、――或いは報われなくて】

そうだとしても――、

【もうずっと積み重ねて降り積もって来た気持ちは容易には変わらない。――というよりも、きっと、変えてはいけないという意識がそこにある】
【泣いてはいけない、気付いてはいけないし、その気持ちを変えることも、いけない。自分で決めたルールだった、本を読むことだけ、自分に許して】
【意固地な有様というよりは輪っかにぶら下げたロープの前で躊躇うような、そんな、或いはみじめなくらいの様子】

春なんか来なければいい……大嫌いだのに……。

【この雪だって、もしかしたら今年では最後かもしれない。それくらいに春は近づいて、綻んで、きっと皆は嬉しいのだろう】
【だけれど自分は嬉しくない、春は嫌いだし、――例えば自分の今の状況が冬なのだとして、その先の、春、――きっとないだろう春も、大嫌いで】
【気付けば当たり前に移ろっていく物事の変化ですらも嫌になっていた、視線がぼうと未だ雪の降りやまない空を見上げて――吐息が、ひとつ、ふわと漏れ】

【小さく動いた口は寒いと訴えたように見えたけど。声にはならなくて――ただ、何かに縋りたいようなか弱さが、確かにあって】

/気付くのが遅れました……! そして申し訳ないのですが食事のため次レス遅れるかもです……。
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 21:20:37.33 ID:UCRd+c7Uo
>>401

【どうすればよいのだろう。いったいこのようなときに、どのような言葉をかけるべきなのだろう】
【どうれば。どうすればこの少女を――救えるのだろう、と】
【……そう、救う。彼は今はっきりと断言できるくらい、この少女を救いたがっていた】

「…………」

【けれど彼にはその術がない。泥に沈みかけている少女をどのようにしたら掬い上げられるのか、この男はとんと分からなくて想像もできない】
【今まで生きてきて、そんなことを考えたのは一度だってなかったから。救いたいと願ったこともなかったし、そして実際、結果的にでも救ったことなどなかった】
【自分はそういうモノなのだと。そのように作られ、そのように生まれてきたのだと。呪詛と災禍を撒き散らしながら進む地獄の鬼――先の言がそのまま自分に跳ね返る】
【いったいどの口が言うのか。言えた義理ではない、鬼と言うなら誰より自分がそうだろうから】

【だから、きっとこの瞬間こそは、夢幻の類なのだろう】
【夜闇と雪が見せた夢か幻。一夜が明ければすべて消え去る、脆く儚く、しかしだからこそ美しいもの】
【血泥に塗れた鬼が幼気な少女を救う、などと――そんな、甘く切なく滑稽な夢】
【己はここにいていい者ではない。自分の役目はきっと他にいる。もっと上手く、容易く少女を救済できる、光に満ちた勇者とでもいうべき者が――】

【だから、おそらくきっとこれも、同じことなのだ】

「――――」

【ばさりと、黒い何かが少女を包む】
【それは彼女にとってはとても大きくて、だからこそ頭から被せられたマオカラーは彼女をすっぽりと覆っていて】
【雪に塗れて冷たいけれど、しかしかすかに暖かくて】

「自分はそうは思わない」

【白いワイシャツ姿となった男は、その身を襲っているであろう寒波を気にも留めていなかった】
【ただ寒さに震える少女を守るように、彼女を包むマオカラーの襟元をしっかりと握りしめていた】

「失ったものは戻らない。しかし、失われた過去よりも善い結果を目指して歩むことはできる」

【頭が痛い。鼓膜の奥で延々と耳鳴りが響いていて、全身が引き裂かれるような痛みを訴えている】
【これが何なのかは分からない。だがしかし、己の中の何かが軋んでいるのは感じ取れた】
【もうやめろ。いい加減に分を弁えろ。気持ちの悪い茶番劇を今すぐに終わらせろ――と。何かが、誰かが囁いているような】

「それは決して非難されることではない。いいや、非難されようとかまわない。世間の言うことなど知ったことではない。
 ……きっと、あなたの親御様も。叶わないと知りながら、それでも諦めきれずに往ったのだと思います」
 
【あるいはそれは、己の中の鬼なのかもしれない。未練がましくも未だ人に縋り付いている、みっともなくて無様な自分を罵っているのかもしれない】
【……そんなことは自覚している。もはやこのような感傷など許されぬ身であると、誰よりも己自身が承知している】
【しかし、だが、それでも自分は……】

「変わらぬものなどない。貴女にも必ず、春は訪れる」

【口をついて出る言葉などいつもは単なる羅列にすぎず、そこに字面以上の意味はないはずだった】
【なのに、これは何だ。自分はこんな台詞を吐けるほど上等な人間ではないだろうが】
【物語に喩えるなら、己はしょせん悪漢にすぎない。こんな言葉を紡ぐことなど、どう足掻こうが不可能なはずなのに……】

「そしてきっと、それが歓びに思える日が来る。貴女は未だ、陽の光の下にあるのだから」

【これが巨大な電算機に生じた刹那の狂いであったとしても。おそらくは、誰にとっても予期しえないエラーなのだとしても】
【しょせん夢幻にすぎないのだとしても……それでも、この娘が歩き出せるのなら】
【それがきっと、彼という男の最初の願いで――】

/すみませんまたしてもだいぶ遅れてしまいました……
403 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 21:51:59.06 ID:sjliiTDn0
>>402

【ばさりと自分に被さる黒色、反射的にぎゅと目を塞いで身体を縮めた彼女は、よりいっそう小さい、雪に震えるただの迷い子のよう】
【けれどそこにわずかに残るぬくもりが伝わらないほどに凍り付いてはいない、のか、――数秒遅れて不安げな目を持ち上げて】
【白いシャツ姿の彼を見ている、――鬱陶しいような、嬉しいような、相反する感情がぐるりと渦巻いて、……おとなしく、かぶっていることにしたようだ】

【頭上できらきらと煌めく憧れを見上げるのは自分だけが深い深い穴に落ちてしまったよう、それで、ずっと向こうにある、太陽の光を見ているみたい】
【そこに行くことだけがすべてだった、それ以外は要らない、欲しくない、――だけれど、その先が禁忌の産物だとも、ずっとまえから分かり切っていて】
【それ以外など考えたこともなかったなら、彼の言葉に、わずかに困惑したような目をする。それ以上なんて――それ以外なんて――】

【そんなの、裏切るのと変わらない】

【微かな声が呟いて、小さな頭をふらふらと揺らす。我儘をする子供みたいにいやいやをして、ぎゅうと唇を噛んで】
【気付けば始めには目立っていた震えも少なくなっている、――その身体は当然のように最初よりも冷えていて】
【性別的に女性のほうが寒さには強いだなんて言ったりもするけれど、――この華奢さではたいして意味はないだろう。ただ被せられた布地の端を、ぎゅっと握り】

…………――、

【認められない、認めたくない、――微かに俯いた動きで、ぞろりとくすんだ金の髪に積もっていた雪が滑って落ちた】
【毛先のピンクはすっかり水分を含んで垂れている、ゆるやかな巻き毛も、今では癖のついたストレートヘアのようになっていて】

だって死んでしまったのに――ローゼは幸せになれないのに……。

【裏切りと言う単語。まだ幼いうちに自分の片割れのような姉を喪った彼女にとって、自分と姉の区別はごくごく弱く、微かなもので】
【自分の中には姉が居たし、姉の中には自分が居た。それが当たり前で、まるで自分がもう一人そこに居るようで――そうだったのに、ある日、あまりにも】
【あまりにも急に、無残に、奪われてしまった。それは家族でも、姉でも、――或いは自分でもあって。突然に身体の一部をむしり取られるような】

【その名はきっと姉のものなのだろう。自分だけが救われるのはいけない、それは裏切りになるから、――これも、また、彼女が自分で定めたルールか】
【自分を自分の言葉でがんじがらめにしているのだろう。そして多分そうでないと自分で自分を許したり、認めたり、出来なかったのだ。そういう、性格だと】
【言ってしまえば簡単だけど、その性格がいろんなことを邪魔しているように見えて。彼が自分に似合わないことをしているのと、或いは、もしかしたら、おなじくらい】

【こうして、この程度だって――誰かの言葉を聞いて、自分で封印を施した感情をそれでも動かそうとして、あるいは、その真っ黒の服を受け入れたことだって】
【頑張っているのかもしれなかった。寒さにぼうとする思考が眠ってしまわないようにして。いっそこのまま眠ってしまえたらきっと逝けるのにという甘美を考えないようにして――】

【――彼も不器用ならきっと彼女も不器用で。どうしたら正解なのか、何が正解なのか、何も分からないような目が。ただ、ときどき、彼を見て、逸れていくのだった】
404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 22:36:06.19 ID:UCRd+c7Uo
>>403

【いよいよもって、彼を襲う異変は甚大なものとなっていた】
【万力で頭蓋骨を圧迫されているような鈍痛。脳髄を直接掻き回されているかのごとき激痛。皮膚が無数の針で裂かれる灼熱の傷みを感じ、筋肉の一本一本が引き千切られているかのような感覚を覚える】
【もはや意識すらも定かならない。目の前の光景が明滅し、視界の端からゆっくりと黒く染まっていくのは寒さだけでは決してないだろう】
【それは、もしかしたら男の総身に染み込んでその魂を焦がす罪悪の証なのかもしれない】
【渾沌に穴を穿てば死んでしまう。魚が陸を奔り、鳥が深海に潜るなどあり得ないし許されない。それほどまでに、今の男の行いは道理に合わないのだ】

「……貴女も、自分、も。正しきことなど何一つ分からぬ、未熟な身」

【それでも、彼は内面を圧する痛みをおくびにも出さない】
【ここで折れるわけにはいかないから。ここでは、ここでだけは、失うわけにはいかないから。まだもう少しだけ保たせる必要があるのだと、擦り切れつつある意識を総動員する】
【あるいはそれは気力、と呼べるものなのだろう。彼女を見つけ、定型通りの文句を口にしたすこし前の男と比すれば、今の彼は外見こそさしたる違いはないが、その内はもはや別人ともいえる】

「であればこそ、それを探すしかないのです。人は元来、無垢のままに産まれ落ちる。その身に何らの使命も制約も課せられてはいないはず」

【襟元を握るその両手に、ほんの僅かだけ力が込められたのは痛みの表れか、それ以外のゆえからか】
【もはや機械のような男はどこにもいなかった。その表情は相も変わらず無のようであるが、それだけではない】
【それは、どこか目の前の少女と似ているようにも見えて……しかしながら決して交わることはない、どうにもならない差異を孕んでいるようにも見えたのは……はたして気の迷いだろうか】

「何かを探し、求めること……それこそが元来、人の人生というものであると……自分は聞いています」

【それはある意味で、一つの真理なのかもしれなかった】
【人は何にも縛られない。それを制限するのは、自分だけであると。そしてまさしく自分自身こそが、己の周囲を形作る世界の基点であるのだと】

「そのために、まず立たねばなりません。立って、歩き出さなければなりません。その先に、どれほど辛い結末が待っているように思えても……」

【厳しい言葉に聞こえるかもしれない。実際、震える少女にかける慰めとしては適切ではないだろう】
【そうだとも、これは決して慰めではない。何かに依存した未来に幸福はきっとないと、彼の中の何かがそう思っている】
【だが……それでも彼は、少女に立ちあがってほしい。光指す未来に向けて歩み出してほしいのだ】

「幸福になるべきだ。貴女の姉御も、親御様も、きっと貴女の不幸など望んではいない。貴女が報われるのは、決して裏切りなどではない」

【それは言葉としては稚拙で、端的に意を伝えるだけのものだ】
【だがだからこそ、その言葉は彼の本心から出たものに他ならず――】
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/27(水) 23:00:06.73 ID:sjliiTDn0
>>404

【――寒い。頭がぼうとする。このまま眠ってしまいたいような、このまま雪にうずもれてしまえれば、そのまま、雪になってしまえると思い込んでしまいそうな】
【この辺りがきっと限界なのだろう。雪の中で漬物みたいに埋もれるには人の身体は丈夫には出来ていないし――、だけれど、立ち去ろうという、その踏ん切りはつかなくて】

【怯えたような目が彼を見ていた。だけれどそれは彼に怯えているのではなくて、もっと、違う、なにか――よくわからない、ただ心中から無限に去来する気持ちのようなものに】
【被せられた暖かさは雪に濡れたコートが冷たく遮ってしまう、だけど、被せてくれた暖かさは、確かに分かる――、そういう認識】
【ぎゅっと力のこもる手に視線が落ちる、――ずうと被せられた黒の中に垂れていた右手が、ふと、動かされて】
【彼の手に微かに触れてみようとする気まぐれ。或いは兆戦、――だけれど、それはなされることもなく、持ち上げたのち、緩やかに元の位置へ戻され】

…………、

【他人とこんなにも近づくのでさえ、数か月ぶりのことだった。ずうと他人を拒絶して生きてきた、ほとんど外に出ず、誰とも喋らず、ずっと】
【それで不便はなかった。大好きな本さえ読めればそれでよかった。……あとは死なない程度の食事と、それを用意するための金があれば】
【掛けられる言葉を一生懸命に脳の中で文字列に書き換えていく、文字ならばすんなりと分かるのに、言葉で聞く限り、それは、ひどい難しい暗号か何かのような】
【鈍る頭の中で文字に書き換えて、それから、また、意味へと変える。立ち上がれと、自分で歩けと、――ああ、そんなこと、どこかの魔女にも言われた気がする】

だけれど……あの子は死んでしまったのに。助けられなかったのは、私だのに――。

【――きっと、認められないのだろう。彼の言葉が、彼女が自分のために用意した基準に、その言葉は合致しない】
【自分に許せるものの中に彼の言葉を含められない。だから受け入れることが出来ない、苦しいように或いは辛いように、ぐうと眉根を寄せ】

誰も助けられない手なら、はじめからなければよかったのに……。

【深く吐息を吐き出すように言葉を漏らす、――と、その少女の頭の横に、きらりと、淡く微かな光が瞬いて】
【瞳と同じ勿忘草色……その魔力を糸にしてふわふわに絡めたような、魔力の靄。きらきらとラメパウダーを散らしたようにきらめきをこぼすそれは】
【ゆるく、それこそ蛞蝓か蝸牛かの行脚のよう、のったりとした速度で彼のほうへ揺らいで――本当に敵意もないまま、その身体に触れさせようとする、だろう】

【――その靄は、生き物には触れられない。まっとうな生き物であれば、それは、何の感覚も与えないままにすり抜ける、そんなもので】
【少女の絞り出すよに言った言葉を考慮するなら"手"なのだろうか。生き物に触れることの出来ない手。――大事な存在さえ助けることのできない、いみのないもの】
【そしてこれが少女の持つ能力なのだろう。――戦う力などないと言い切った少女の。……彼の言葉に耳を塞ぐように、わずかに、矛先を変えた言葉で、彼女は返答した】
406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/27(水) 23:42:01.94 ID:UCRd+c7Uo
>>405

【勿忘草の色をした、霧にも似た靄が、ゆっくりと彼に近づいてくる】
【一心に彼女を見つめるままの彼の瞳に、果たしてそれは映っているのかいないのか。もう、もはや、今の彼の視界がどれほどの明瞭さを保っているかすらも不明ではあるが】
【それでも、彼は接近するソレに対して何の反応も見せなかった。いっそ見えていないとすら言い切ってもいいかもしれないほど不感で、おぼろげで、まさしく地蔵のように黙っている】
【それはおそらく、この少女に何を語るべきかを吟味しているのだろうが――】

【――その靄が、彼の肉体をすり抜けようとする】
【一見して男は人間だ。生き物に見え、無感情の気はあったもののその有様は確かに生物のようで、やはり何の感触も与えず透過するかのように見えた】
【だが――蝸牛めいて遅い靄の進行は、僅かに皮下へ沈み込んだところで止まる】
【……これはいったい如何なる事態なのか。確かに、男の皮はすり抜けたのだ。魔翌力で編まれた“手”が生物をすり抜けるのなら、その事実こそが男が生物であると証明している】

【しかし、ならばどうして止まった? その“手”は、彼に内在する何かに触れたのだ。触れたがゆえに止まって、今もその何かに触れ続けている】
【……その正体。仮に靄に感触があったならば、流動し、熱くはなく、しかし冷たくもない微温の感覚を伝えてくる】
【男の肉体に流れるもの。つまりはそれこそが、彼女の“手”が触れたものの正体であり……】
【彼にとっての核心。この奇妙な男の素性へと指をかけたことになるのだ】

「……やはり貴女はどうにも、自己嫌悪がすぎるようだ」

【己に触れる靄を認識しているのか、そうでないのか。委細構わぬとでも言うような風に話す口調は、やはり変わらず重く低い】
【右の手が襟元から離れる。それは彼女の靄と同じように遅くて、とても緩慢な動作で】
【そして、ひどく力のない動きだった。きっとこの手は、彼女の細腕でさえも簡単に跳ねのけられそうなほど、力を失っている】

「異能など……特別な力などなくとも……貴女にはこの“手”がある。
 それだけではない。確かな心もあれば、それを伝えられるだけの言葉もある。……その声は、誰かに響かせることができるのです。自分にさえ、届けることができたのだから」
 
【そっと、緩やかに、まるで壊れものを扱うかのような手つきで、彼女の手に触れようとした】
【それは言うまでもなく、能力ではない、彼女自身の偽りない“手”であって……】
【男の無骨に骨ばった手は冷たく、注意しなければ見逃してしまいそうなほど微細にだが震えていた。それは、やはり寒さからくるものだろうか?】
【あるいはもっと、別の……】
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/28(木) 00:04:32.88 ID:hHfeIRTS0
>>406

【その見えない手は、やはり彼を通り抜けるように思われた。生き物に触れることの出来ない手、まだ生きていた時の"彼女"を掴めなかった】
【やはり意味なんてない、必要もない、それならば最初からなければ良かった、――思いかけて、ふと、違和感がおとなう】
【緩慢に瞬きをした視線が持ち上がって、――突き抜けていない、そこで曖昧に、或いは異能そのものが困惑しているかのように取り残されたものを見て、】

…………ああ、どうして、私に何かを言うような人は……触れられるのかしら――、あの魔女も、そうだった、けれど…………。

【ぼうとした声が不思議がるように呟く。今までだれにも触れてこなかったはずの手が。自分にそんな言葉を投げるような人に限って、触れてしまうのだ】
【多分、これは、何かの偶然。彼が或いは生き物ではないかもしれないことを彼女は糾弾するわけでもない。ただ、触れられる、生きているように見えるのに、触れた――】
【自らの手よりだいぶん鈍いが感覚はある。触れた感覚に目を細めて、ゆるりと確かめるように、もう一度あらためて彼に触れさせてから。そっと、その手は浮かび上がる】
【彼からすれば、すり抜けることがないなら――確かに手のような、指が五本ある、そんな物体が触れる感覚があったはずだ。――確かに、それは、見えないけれど手であって】

【熱くも、冷たくもない、何か、――確かに触れた彼の本質に。どこかで、ふと、張っていた糸が緩んだような感じがした、ように思えた】

――嫌い、なのだもの。

【この見えない手は、目の前で足を滑らせた姉をすり抜けた。その認識と現実はいつしかひね曲がって意識に沈着する、いつしか生き物が苦手だと思うようになった】
【触れられる存在は――少し、安心する。触れてしまった彼や魔女を無生物と断言してしまうのは違うと分かっているけれど、触れられると安堵できた】

だけれど――私の半分は、もう、どこにも居ない……。

【自分は不完全な片割れであるという認識。欠けた傷は塞がったのかもしれなくても欠損した部位までは戻らない、――自分にさえという言葉をすべて理解するほど】
【彼女はまだ彼のことを知らなかった。名前でさえ、知らないのだから。そして、彼も、彼女の名前すら知りもしないで】
【――彼が触れようとした手。ぴくりと一瞬だけわずかに跳ねて、服の陰に隠れようとするのだろう。だけれどほんの一瞬の間を置いて、】
【左手でちまりと指先をつまんで引っ張る、――濡れた手袋がずるりと外されて、見える素肌はひたすらに白く――寒さのせいかほんとうの陶器のように強張り】

【桜貝のように薄ぺらな爪が少しだけ伸びている。指そのものは飴細工のように繊細で華奢で、手のひらも、やはり到底武器など握れぬほどに平たく】
【背も小さいから仕方ないのだけれど、子供のように小さな手だった。体温は彼とたいして変わらないほどに冷え切って、ただ、性差ゆえなのだろうけれど】
【細いのはそうなのだけど、彼ほどまでに骨ばったような感じはしない。――或いは触れるはずがないと思って伸ばした手よりも、そこには不安が溢れて】

【見れば顔は不安そうなものになっていて。――或いは困惑だろうか、利き手であろう右手を彼に預けたまま、陶器のお人形のように、彼女は口を噤んでしまって】
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/28(木) 00:48:41.06 ID:KfaLbnuYo
>>407

【――彼女の推測は、おそらく正しいのだろう】
【純粋な人間ではない。かといって霊体ではない。彼には肉があり、骨があり、血が流れている。ならば機械か? いや、それも違うように思える】
【人でも、魔でも、機でもなく、聖なるものではない。男の本質は、きっとこの世の何にも喩えられないものであり……】
【不可知の存在。意識の外に在るモノ。本来、人間どころかこの世のあらゆる生物が触れえない存在であることが――】

【……男の胸に去来した感情は、安堵にも似ていた】
【魔女という存在。己以外の救済者。この哀れな少女を救い出すことのできるかもしれない者が、確かにいるのだと】
【自分では、この娘をまったき光の中に導くことなどできないから。どんなに救いたいと願っても、刹那のうちに消えてしまうことを無意識ながらに認識しているから】
【この瞬間こそは奇蹟なのだということを。きっともう二度とあり得ない、夢のようなひと時なのだということを、どこかで彼は諦念とともに理解していた】

【だが……】
【だが、しかし、それでも……】
【光の中へと連れ出すことはできなくても、せめて泥から引き揚げることくらいなら……】

【鋼のように冷え切った男の手に、熱が宿る】
【それは如何なる術理だろうか。燻っていた火種が再度燃え上がるかのように、急速に体温を取り戻していくかのような熱は、とても暖かくて】
【確かに触れたはずの生温い彼の本質が、まるで嘘だったかのような生気を帯びる。それでも、見えない彼女の“手”は男の身体に触れたままで】

【彼は、その“手”を取ろうと手を伸ばした。そして少女の手と“手”を、祈るように重ね合わせて】
【いいや……実際のところ、それはまさしく祈りであったのだろう。届かないと知りながら、それでも神へと手を伸ばす】
【人を救う神などいやしない。それは分かっている、分かっているのだ。だが、彼は何度目になるかも分からない“それでも”を願う】

「それでも、貴女は生きている」

【自我の固着する以前に起きた断裂。彼女と、彼女の姉はまさしく一心同体であったのだろう】
【あまりにも自分に似すぎた、まさしく鏡写しのような存在……それが消えてしまったがために、彼女は自己肯定ができないまま、今に至るまで生きてきた】
【それはどれほどの苦難だったろう。希望は次第に薄れ、暗い闇に心が閉ざされていく。他人を拒絶するばかりか己すら信じられず、それでも呪いのような生を送るしかなかった】
【彼には想像することしかできない。彼は彼女ではなく、彼女もまた彼ではない。その想いを理解できるなどとは、口が裂けても言えない】

「喪った者に報いるために……自分ではなく、貴女が片割れと信じる者のために……。
 まずは、そこからで構わない。彼女のために、生きてください。それがきっと、貴女にとっての救いとなる」

【今の少女は行道を見失った迷い児に等しい。どうしたらいいのか分からなくて、それでも終わるわけにはいかないから暗闇に佇んでいる子供だ】
【生まれたての小鹿のように足元がふらつき、立つことが精いっぱいで……折れてしまった足には添え木が必要なのだろう】
【いずれ、それが彼女を救うのだと信じて……信じることしかできないから、ただただ彼は祈るように言葉を紡いでいく】
【その表情は、やはり変わらない。しかしどこか、泣いているようにも見えて……】
409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/28(木) 01:17:34.87 ID:hHfeIRTS0
>>408

【きっと世界の何でもない眼前の彼は、ただ、たしかに、迷い子のような少女の前に、現れて】
【人ではないのかもしれない、生きてもいないのかもしれない、だけど、たぶん、彼女にとってそれは些細な問題でしかなくて】
【或いはいっそ触れることが出来るという安堵でさえあるのかもしれない。――だれにも触れることの出来ない、誰も存在しない、呪いで編んだ暗闇の世界に】
【ぽつりと確かに現れた、存在。前に触れたものは魔女だった、それなら、彼は何なのか。――それは、多分、考えても分からないことだけど】

……――っ、!

【びく、と、驚いたような手が跳ねた。急激に現れた体温に火傷してしまいそうな錯覚を覚える、きっと、それは、暖かな部屋の中では普通なのかもしれないけれど】
【うんと雪のなかで冷やした身体には熱すぎる、そんな風に思えて。――けれど逃げはしなかった。目の前に居るのは彼だ、だから、何度も思い出すのは失礼かもしれない】
【それでもあの日に頭を撫でてくれた魔女の手の温度にも似るようだったから。――彼女とて人なら。ひね曲がって拗れただけの少女なら。暖かさに綻んでも、おかしくはなく】

【――見えない手は、彼女の手をすり抜けた。すり抜けて、彼の手に緩やかに触れる】
【それならば彼の手には、少女の――人としての冷え切った手と、異能としての、そもそも温度を持たない手が、同時に触れるのだろう】
【二つの手が同時に彼の手に触れる。――少女にとって触れているのは彼の手だけ、自らのもう一方を動かすことは出来ても感じることはできない、妙な感覚】
【急激に暖められた手がじんじんと不快なような快いような、――その右手だけが生きていて、それ以外の自分はすでに死んでしまっているような、そんな錯覚】

…………。

【あまりの冷たさと暖かさ、相反するものを同時に感じて、ぼうと澱む思考は緩やかに考えることを放棄しつつあった。彼の言葉は、ちょうど、その瞬間】
【自分の生死さえも分からなくなりかけた彼女に、生きている、と、――そう、届けて。緩慢な瞬きひとつ、ついと彼の赤い瞳へ向く勿忘草色は】
【この瞬間に初めてそれを知ったような、今まで知らなかったような、そんな色をしているのだろう。そう、すこしだけ、きょとんとした、或いはぽかんとした】

【ちらりと視線が動いた。彼と触れている右手、彼が重ねた、自らの見えない手。本当の手と能力の手、どちらの感覚はあっても、二つが触れ合う感覚は、ない】
【何よりもそれが自分が生きている証拠だったはずなのに。今まで知らなかったように、そんなこと考えもしなかったように、――何か足りないものが、そこにある気がした】

――どうして、そんな顔を、するのかしら……、……これは、私たちの、ことだのに。

【それでも、今宵にそれを拾い上げるだけの体力は、もうない。ぼうとする。初めよりも寒くないように思えるのは、彼の被せてくれた黒色のおかげなのか】
【それともそれさえ分からなくなっただけなのか。それを判断することももうできなくて、――だから考えるのをやめて、緩く低い声で問うのは、見間違いかもしれないと】
【そんな風に考えながら、彼のことだった。右手が暖かくて、だけど、もう、それしか分からなくなりつつある。眠たい――とも違う、もっと、暗くて重たい何か】

【帰らなければいけない、と、微かに思う。多分このままでいたら死ぬ。――少し前は、それでもいいように思っていた、気がするけど】
【いまは――そう、今は。少しだけ違う、のかも、しれなかった。微かな身動ぎ、けれど身体は思うように動かなくて】

/そして申し訳ありません、そろそろ時間的に厳しくなってきたので、もう一度凍結をお願いできますでしょうか?
/今日は8時ごろ、遅くて9時ごろには待機していられるかと思うのですが……
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/28(木) 01:23:19.93 ID:KfaLbnuYo
>>409
/了解しました、ではそれまでにはお返ししておきます! いったん乙でしたー!
411 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/28(木) 01:28:28.12 ID:hHfeIRTS0
>>410
/ありがとうございます、ひとまずお疲れ様でした! また明日よろしくお願いします!
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/28(木) 20:11:30.32 ID:KfaLbnuYo
>>409

【そんな顔、とは。いったい、どのような顔なのだろう】
【自分がどんな顔をしているのか。思えば、最初から己の表情がどうであるかなど気にしたことがなかった。そんな必要も機会もありはしなかったから】
【産まれてから一度たりとて、表情筋が動くのを自覚したことはない。あるいは自分に顔などないのかもしれないと、……それすら考えたことも、なかったけれど】
【ならば、だったら、今の自分はどうなのだ? 今も彼には自覚がない。いや実際に男の顔は些かも動いてはいないが、であればそれ以外の何かが彼に表情というものを与えていて】

「……。分かりません」

【それは少女のなぜという問いに対してなのか。それとも自分がどんな顔を浮かべているのかという疑問なのか】
【おそらくそれはどちらもで、ひょっとしたら彼は自分というものがどんなものであるのかが分からなくて……】
【ほんの少しだけ握りしめた欠片を繋ぎ合わせて構成している歪な人形じみた個我。何もかもが抜け落ちている、きっと少女以上に色んなものが欠けているのが彼というモノで……】
【だからこそ、常に彼を苛んでいるたった一つの感情以外で、初めて波及したものを見失いたくないと感じていた】

「ただ自分は、貴女が幸福になるべきだと……いや……違う」

【己の内奥で、何かが沸々と湧きあがっている】
【それは深い深い海の底から昇ってくる気泡のように小さく頼りなげなものではあった。だがその想いは、確かに彼の内側からせり上がってくるもので……】
【肺が捻じれる。胸骨が軋む。声帯がずたずたに引き裂かれて、舌が鉋で削がれているような痛みを覚える】
【寒さに晒され、いまやほとんど感覚を失った身体。それでも襲い掛かる激痛の嵐は、少しも衰えることなく彼を鋭く切り刻んでいて……】
【あるいは上昇した彼の温度は、その痛みによって喚起されたものなのかもしれないけれど】
【焼き切れそうな神経回路をひた隠しにしたまま、彼はやはり、祈るように少女の勿忘草色をした瞳を覗き込む】

「――自分は、貴女に……幸せになってほしいと思っている」

【それは、何度目かになる自己意志の発露】
【機械のようだった男が、人形じみていた彼が、今やすっかり人間らしい感情を見せているのは、決して見間違いなどではない】

「……もう、ずいぶんと長くお引き留めしてしまいました。お送りします」

【握りしめる少女の手は、ひどく冷たくて。感覚を失った彼の手でも、小さな手がどれだけ温度をなくしているのかくらいはわかったから】
【これだけ冷たい体を引き摺って、彼女の家に辿り着けるとは思えなかったから。……そんな、ともすれば図々しいというような申し出を】
413 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/28(木) 21:07:14.56 ID:hHfeIRTS0
>>412

【彼の顔は見るにはじめとはちいとも差異はなかった。だけれど、何か――そこに表情があるような、気がして】
【それはほんの一瞬のみの気付き、改めて視線を向けてしまえばもう分からない。だから次の瞬間には自分の言葉の証拠さえも彼女は見失い】
【だけれどなぜか泣いたように見えた刹那が記憶にはきちんと残っている、だから、間違いではないはず、それとも、それさえも――その記憶さえも嘘吐きなのか】

【泣いているかと思ったのに、と、小さく呟く。だけど今視線を向ける彼に涙などない。或いは悲哀すらも見えない。だのに、どうしてそう思ったのだろう】

【ぼうとした目が、感情さえ寒さに凍ってしまったような目が、覗きこまれる。気付けば最初よりもきちんと見つめ返される――そんな感じがあるはずだ】
【彼女を迷い子だというのなら。――迷い子なんてものは、だいたいが、不安と、怯えと、そんなものに支配されていることが多くって】
【或いはこの少女も、ずっとそうだったのかもしれない。だから、ふと、迷ってしまったの? と尋ねてくれた、彼に】
【ほんの少しだけ、拗ねてひね曲がった心を向けてみようと、気まぐれかもしれないけれど、或いは、――ものすごく頑張って】

どうして――……、

【――だけど、分からなかった。初対面でしかないはずの彼が、どうして、たくさんの言葉を自分に向けてくれて】
【まして幸せになってほしいだなんて、……まだ、理解には距離がある。ふと視線が下に落ちる、――しゅん、と、眉が下がって】
【触れたままの手、その指先がぴくりと小さく動く。――彼の中にある致命的な苦しみには気付けないまま。もしかしたら残酷なくらい、何も知らないで】

……家までは、少し、歩くから……、一人でも帰れるよ――地元、なのだし、

【それとこれとは少しだけ話が違うように思うのだが。曰く地元だから一人で帰れると言い張った彼女は、やはりどこか頑なで】
【すでに凍え切った、或いは凍り付いたとさえ錯覚するほどの身体を駆動する――、と、平気だと言い放った言葉の、ほんの、十数秒後】
【あっさりと雪に足を取られるのだ。或いはその足はもはや歩くために細胞同士が繋がっていることさえ忘れてしまったように、歩き出せなくて】
【座り込むように崩れ落ちる、――ちぃと小さく聞こえたのが少女の舌打ちなら、続くのは「ああ、もう、」なんて、小さな独り言】

キミこそ、……帰る場所があるのじゃないかしら……、寒い、だろう、――そんな恰好では。

【――それで、話題を転嫁するかのように、そう言いだすのだった。……彼の上着は、自分がいまだに被ってしまっている】
【言いながらも華奢な手が肩口にまわる。そうして、何もなければ上着を脱いで、彼に渡そうとするの、だろう】

/お待たせしました。再開できるようになりましたので、あと少しと思いますが本日もよろしくお願いします!
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/28(木) 21:40:27.25 ID:28gprnzgo
>>413

【その言葉が、聞こえたのか聞こえなかったのか】
【頭の中で延々と鳴り響くノイズは鼓膜を破壊しようとしているように止む気配がない。それはあたかも少女の言葉をこれ以上耳に入れまいとしているかのように】
【男の唸り声。女の金切り声。老人の呻き声。子供の鳴いている声――大音量で彼の耳を壊しにかかる音声は発狂を促し、まるでまともな大人のような振る舞いを中断させようとしている】
【だから、なのだろうか。もはや少女のか細い声を捉えられるほど、彼の聴力は正常さを保っていないのかもしれない】
【ゆえに無反応で黙殺していて……いや、もしかしたら、聞こえていながら聞こえていないふりをしていただけかもしれないが】

【そうして、歩き出そうとする少女があっけなく崩れた様を見ていた】
【やはり、と思っていたのだろうか。寒さと言うものは当人の思っている以上に体力を奪う。そしてどれだけ外にいたのかも知れない、冷え切った身体では……】
【立ち上がり、少女の下へと歩き出す。その動きは寒さも痛みも感じさせない平然とした、平常どおりのそれで】
【それを為すためにどれだけの痛苦が彼を襲っているかなど、本人以外には想像もつかないほど激甚の傷みだった】

「いいえ」

【言いながら再び少女の下に屈んで、黒い上着を取ろうと肩口に手を掛けた彼女を止めた】

「自分に定まった住居はありません。お気になさらず」

【その言葉から推測できるのは、おそらく彼が旅人か、それに準じる類の者であるということ】
【各地を放浪し、流れるままに転々とする生き方。どこか浮世離れしたような彼には、妙に似合っているようにも思えて】

「やはりお送りします。今の貴女では、ろくろく動くこともできない」

【そう言って、屈んだまま後ろを向いた】
【それが意味するところは、おぶされ、ということなのか。そうしたきり無言となった以上、やはりそういうことなのだろうし】

/よろしくお願いしますー!
415 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/28(木) 22:03:49.98 ID:hHfeIRTS0
>>414

【冷たい――寒い。この十数分で薄れてしまったから、ここが雪の中であることすら、意識から遠ざかりつつあった】
【けれど現実に身体は石か何かになりつつある呪いみたいに動きやしなくて、みっともなくぼふと座り込んでしまった雪のなか、円く広がったロングスカートの裾】
【悔しいか悔しいか、微かに握りしめてから――前述のとおり、被せてもらった上着をするりと外そうとして。……その手を、止められて】

【微かに拗ねたように口角が下がる。そうしてまたじ、と彼を見つめ】

……じゃあ……あの人たちと同じなのかしら……、……どこに居るのかなんて知らないけれど……。
どこかで……会っているかも、――分からない、ね? そんなことはないだろう、けれど、――。

【少しだけ――ほんの少しだけ、許せた、気がする。居なくなってしまった両親、もう、どこにいるのかの察しもつかない】
【彼のことを旅人だと認識したのだろう――そうして、そんな風な言葉を、ゆるりとした音階で紡ぐ。なだらかで起伏の少ない、そんな声音】
【微かに震えた吐息を漏らして。ある程度穏やかに聞こえたのは、きっと、彼の功績なのだろう。とうに体力が尽きているせいもあるのかもしれないけれど――】
【――それだって。彼の言葉があったから、思考能力の奪われた今、こうして言えたはずで】

…………、遠い、のに。

【長い息がひとつ。だけどそれはため息と言うよりか、身体の中にたまった悪い空気を一度に吐き出すような】
【それで彼女は諦めたようだった。諦めたという顔をして、好意に縋ることにした、というのが、本当のところなのだけど。素直ではない】
【はじめに不可視の手が彼の肩に緩く触れる。それから少し遅れて、本当の――華奢で微かな手が、そ、と、その肩に触れ】
【緩慢な仕草の身体は見た目通りに軽いが強張っていて、なんなら、いっそ、すでに硬直しきった死体を背負うようでもあるのかもしれない、なんて】
【だけれど確かに生きている彼女はためらうような仕草を時々混ぜながらも、そのうちに彼のせなに身体を預ける、のだろう】

住所を言えば分かるかしら……、……ああ、分かりづらいから――、川が見えたら……遡ればいいのだけれど……、
鍵は閉めていないから――、家の方は……。

【掠れて低い声は耳元で聴いてやっと全うに聞こえるほどの声量。住所が必要だと彼が言えば住所を呟く、そうすれば、近くはあるが隣街であるのが知れ】
【いちおう晴れていれば二、三十分もあるけば辿り着くような、散歩程度の距離。けれど今は雪のぼたぼた降る夜で、それなら、いくらも歩きづらいか】
【住所では分からないならばせなから少女が道を言うだろう。とはいえ、この辺りで川と言えば、あの海に流れ着く川がひとつあるだけ、なのだけど】
416 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/28(木) 22:45:49.53 ID:28gprnzgo
>>415

【どこまでも頑なであるように見えた少女の言が、どこか強張りが緩んだことを、彼は確かに認識した】
【もう、男の耳は本来の十分の一ほども機能していない。けれど、それでも……彼女のどんな些細な言葉すら聞き逃すものかと、無感であったはずの心中に楔のように打ち込んでいたから】

【少女の身体を背負う。それはひどく冷えていて、もともと小さな彼女が、もっと縮こまっているようにすら思えた】
【そうして苦もなさげに立ちあがる。彼女はましさく羽のようで、雪解け水を吸って重くなった衣服を加味しても、男にはあまりに軽かった】

「諒解しました」

【黒いブーツが積もった雪を踏みしめる】
【ざくりざくりと、来たときと同じ音を立てて。一定のリズムから外れない足音は彼にとってなんでもないことだと、思える】
【一歩一歩と踏み出す足取りに迷いはない。この辺りの地理は把握している。川が一つしかないというのも既知のことだったために】
【だから、彼の歩みが滞ることはなかった。雪道であるためやはり多少の時間はかかるが、この程度の悪路であれば問題にならなかった】
【彼が武術を旨とする人間である以上、当然のように肉体は鍛え上げられていた。強靭な脚の行進は、淀むことも乱れることもない

【歩けばやがて、川が見え。彼女の言葉通りに遡っていき、隣街へと】
【もう、人影もない。みな暖かい家の中にいるのだろう。通りから見える家々の窓から、楽しそうな家族の団欒が聞こえる】
【男は何も話さなかった。必要ないと思っているのか、無言こそが彼の性質なのか、それとも他の理由からであるのか】
【ただ彼の背中は、少女にはとても大きく感じられるだろうか。それは単純な体格差に他ならないが、もしかしたら……】
【段々と温度を失っていく背、しかしそれでも最後の熱だけは離さないその温度に、何かを思うのだろうか】

【――そして、気付けば彼女の家が、もうすぐそこまで見えていた】
【着実に、確実に、進む脚は止まらない。決して、決して、歩幅も速度も一度たりとて乱さないまま、少女の住処に辿り着いた】

「……開いてもよろしいでしょうか」

【鍵は開いていると聞いている。それでも許可を求めるのは、彼が律儀な者であることを示していて】
【許可を得たならば、扉を開き……彼女を、どこか休める場所に下すだろう】
417 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/28(木) 23:06:01.84 ID:hHfeIRTS0
>>416

【川沿いに、煉瓦造りの洋館がある。その裏に家があるから。そう囁いて、道が分かるようなら、少女はそのずっと広い背中で、緩く、目蓋を降ろす】
【なんだか疲れてしまった。頭がぼうっとする。少しくらいは冷えるつもりで外には出たけれど、こんなに冷え切るつもりはなかった――薄らと考えて】
【眠るわけではない。たぶん、今眠ったら、そのまま死んでしまいそうだ。寝たら死ぬぞなんてドラマか映画か本のセリフだと思っていた、けど、】
【――ざくざくと雪を掻き分ける足音、揺れる背中、いつか父親に負ぶわれて川沿いを散歩した夕暮れの景色が、まるで、午後の陽だまりの中で見る夢のように想起され】

…………――――、ああ、構わないよ。

【気付けば、その道中の記憶はなかったから、やはり眠ってしまっていたのかもしれない。声を掛けられて、十数秒の時間。稚児がひどく遅れて返事をした話のように】
【ずっとずっと遅れて返事をする、――やはり鍵は開いていた。それなりに大きな洋館があるのに、ある程度の広さがある庭と、離れのような建物】
【どうやらそちらが彼女の住まいらしい――と、そうして、彼女の許可で彼が扉を開くなら。――玄関先からすでに室内は暗黒のように暗く】
【見れば窓という窓には暗幕が多い被せられて。明かりをつけても古びた電球はたいして明るくもしてくれない、そして、なにより、玄関先の、この時点から】
【この家の中には、本が溢れていた。むしろ本しかないと言ってもいいだろう。ごく最低限の歩ける程度にのみ床は確保されて、他には、本が嘘みたいに積んである】

【だからそもそもどの部屋がどうとか、そういう話ではないのだ。本がない道……歩ける場所をたどって行けば、自然と、彼女の自室に行くしかなくなる】
【埃っぽく微かにかび臭い古書の匂いが充満した部屋。やはり本で埋もれた空間で、数冊の本と原稿用紙だかが放置された書き物机と、子供用の二段ベッド】
【それから、少女らしさといえばそうなのだけど、この家の惨状を見た後ではひどく違和感のようでもある――ワインレッドの鮮やかな毛色の、大きなテディベア】
【それが二段ベッドの下の段に鎮座していた。見るに彼女が使っているのも下段のようだから、もしかしたら、一緒に寝ているのかもしれない。――余談、なのだけど】

そこらへんに着替えがあるから取ってもらえるかしら……、

【休めるような場所など極端に少ない。それでもなんとか自室の床におろしてもらって、ただ、雪の粒が溶けた水が床に滴るのが、いやなようだった】
【だからといって運んでもらった以上文句を言う権利がないことくらいは分かっていて、ぼうとした目をしながらも少しだけ眉根を寄せて、見えぬ手で本を端へと押しやっている】
【それである程度の空間をなんとか確保すると、――指すのは適当なゴミ袋に突っ込まれた服のどれか。一応言っておけばコインランドリーから持って帰った、そのまま】

【(そう、あの"手"はどうやら何本かあるようなのだった。現れた靄は全部で六つであったから、三対なのかもしれない――本当の手も含めて、彼女の手は四対あるのだろうか)】

ああ、……悪いね、うちにはあんまり大きなものが、なくって、小さいのだけど……足りるかしら……。

【――と、ふと思い出したように彼女はそう呟く。勿忘草色の靄が瞬いて、見えぬ手が違った袋からするりとひっぱり出す。――飾り気のない、フェイスタオル】
【それを手渡そうとして、だけど、さすがにあんまりだと思ったのか。もうしばらく悩むか迷うか思い出すような顔をしてから、別所からバスタオルを引きずり出すのだろう】
【よくよく考えてみれば客人なのだ。もてなすものでもあれば良かったのだけど……と、わずかに考える。とりあえず――少し毛羽だった、あまり新しくないらしいバスタオルを差し出し】
418 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/28(木) 23:48:13.49 ID:28gprnzgo
>>417

【その場所を目にした感想を言うなら、乱雑な書房だった。ただの部屋と言うには本が多すぎて、整然としてはいないから書庫でもない】
【そこかしこに本が無秩序に積まれた家は足の踏み場もなく、辛うじて露出している床は獣道にも喩えられようか】
【滴る水が山積する書物に当たらぬよう、極力注意を払いながら彼女の部屋に行きついた】
【同じく本が埋め尽くす光景を目にするが、別段反応はなかった。年頃の少女の自室というには相応しからぬ様相を、見回すこともしない】

【はい、と返答して、指し示された……ゴミ袋の中に放られている衣服に目を向ける】
【よもやと思ったが、一見して汚れた様子はなく清潔であった。だからすっかり濡れ鼠の自分が触ってもよいものだろうかと一瞬躊躇しかけたが、思い直して手を伸ばす】
【男に少女の衣服の良し悪しを解するセンスなどない。頑丈か否か、動きやすいか否か、そうしたものが基準であって、ほとんどそれがすべてと言っていい】
【だから上の方にある適当なものを渡して、ゆえに無難なものに落ち着いた】

【そうして、差し出されたタオルに視線を向けて】

「ありがとうございます」

【まず目礼を示してから、言葉を続けた】

「しかし、これ以上のご迷惑をおかけするつもりはありません。すぐに発ちますので、お気遣いなく」

【どうやら彼は、本当に送り届けるだけであった様子のようだ】
【彼女を家まで送ったことを、自分の勝手を通したと認識している。それを咎だと感じていて、客人などと上等な身分ではないと思っている】
【だからこれ以上の迷惑をかけないように、消耗した彼女に手間をかけさせてはいけないと。今すぐにでも立ち去るべきだと、本心から感じているのだ】
【加えていえば、らしからぬとはいえうら若き少女の部屋に自分のような無骨者が立ち入っていることに多少の罪悪感も抱えているのかもしれない。それはある種、まっとうな感性と言えるものなのだろう】

「床を汚してしまったことに関しては深く謝罪します。しかしどうかご容赦いただきたく」

【だから徹頭徹尾腰が低い。聞きようによっては嫌味に感じられるかもしれないほど謝罪を繰り返すが、しかし彼の重く低い声には真摯な色しかなくて】
【ゆえに誰が聞いても、彼は本気で詫びているのだと分かるものだった】

「……それでは。どうかご自愛を。ごゆっくり、御休みください」

【それだけ言い残して踵を返す。言葉に一切の偽りなく、この場から立ち去ろうとしている】
【自分の名も告げぬまま。少女の名前も聞かないまま。黒いマオカラーも床に放置して……】
419 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/29(金) 00:13:52.53 ID:hHN3WOHq0
>>418

【たくさんの本はそれでもある程度秩序だって積み上げられていた、それは例えば作者の名前だったり、本そのもののタイトルだったり】
【しかしてその塔あるいは山ごとにその並べ方が変わってしまうので、やはり乱雑なのだろう。それとも気まぐれなのか、どうでもよかったのか】
【それでも埃がたいして積もっていないのを見れば、比較的に短いスパンで整理でもしているのかもしれなかった。真っ暗な部屋で、きっと、あの不可視の腕で】

【室内がこのありさまであるからして、まっとうに家事など出来ないのだろう、そもそもやる気がない、と言えるのかもしれないけど】
【洗濯物は適当に溜まったらコインランドリーに持っていくばかりだし、洗濯機はあるけれど……長らく使った記憶もないので、多分、化石になっている】
【適当なものを渡される。少女自身それで良かった。服にあまり頓着はしない、少しくらい濡れても、そもそもぬれねずみである今の服よりはマシ】

【受け取った服を一瞬認めてから、けれど彼の前で着替えるわけにもいかないからだろう。下段のベッドに投げて、その間ふよふよとタオルが浮いている】
【腕がいっぱいあるのはこういう時に便利なのかもしれなかった。これだけ本を積み上げてしまったのも、或いは、腕が全部で八つもあるから、なのかもしれない】
【最悪ベッドから動く必要さえなく本が取れるし戻せる。ある種最高に怠惰な惨状がこれとも言えた。――まあ、やはり、余談なのだけど、】

…………そう。

【どうせ外に出れば雪だ。もうしばらくしたら雨にもなるかもしれない。だから、今、着替えもないのにタオルを渡すことに、もしかして意味はないのかもしれないけれど】
【表情は薄かったから残念がっているのか、それともどうとも思っていないのか、それもよく分からない。ただ気持ちゆるりと高度を下げた不可視の腕は】
【少しふらふらと揺れてから、やがて少女本人にバスタオルを手渡した。……彼女はそれを手元で数度いじくってから、もふりと頭にかぶり】

――じゃあ玄関先の傘を持って行っても構わないよ。古びたものばかりだから、穴が開いていないとは、限らないのだけど……。
父のものなら大きいのじゃないかしら、……そのままではキミこそ風邪をひいてしまいそうなのだし――。

【そう告げた。構わないなんて言いながらもその実は持っていくのを強制……というほどでもないけれど、望んでいるような、そんな声で】
【好きにしていいよとぼうと告げる声は、ただ、少女なりに何か恩返しめいたことをしたいのかもしれない。自分の傘では、小さすぎるだろうから】

【立ち去ると言う彼に、これ以上引き止める言葉はなかった。何しろこの家には本ばかりしかない、いかにもメインの建物っぽい洋館には、なおさら】
【あちらこそ本しかない。だって図書館なのだ、あくまで、代々集めてきた本や両親の蒐集癖で集めた本を趣味の範疇で開放していた、――その程度だけど】

【――書き物机に、一冊の本が置いてあった。児童書だ、古びていて――背表紙には、落としでもしたのか、傷ついた跡がある】
【裏表紙が表になるように置かれたその本には。ネームペンだろう、まるこくふとい文字で、Anneliese、Anneroseと二つの名が書いてあり】
【他にもよく見れば、部屋に置かれる子供向の本であれば、そのどちらかの名前がどこかに書いてあるのだった。――となれば、それが、どうやらこの少女の名であり】
【そして姉の名前でもあるのだろう。――そういえば彼女は姉のことをローゼ、なんて、呼んでいたっけ】

もしも本が読みたくなったらば、……いつでも、鍵を開けるから。

【去る背中を止めるわけではない。彼が置き去りにしたマオカラーを床から引きずり上げて、小さく呟く声】
【もしもそれで彼が少しでも足を止めるのなら。……扉を閉めるようなその刹那に合うはずだった、ちいさな、感謝を告げる声が聞こえるだろうか】
【たぶん、それが、少女の好意を表す言葉の、今の段階での限界だった。もはや誰も訪れることのない図書館を、彼が必要とするならば、いつでも――なんて】

【――或いは彼が振り返ってくれるのなら。その上着を少しだけ困ったように握って、要らないの、という目を向ける。そんな彼女が見られるのだけど――気付かなくても、問題はなかった】
420 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/29(金) 00:55:56.21 ID:l8R+GCY0o
>>419

【本に充たされた部屋。その中にあって、机に乗っている児童書の存在に……彼は気付かない】
【それがただ単に、本というものが多すぎるゆえか。それとも、もしくはそれ以外のゆえんか】
【だから……その本が、実像としては見えていても本質的な意味で視界に入ってはいないのだから。至極、当然、そこにある二つの名前も、今の彼には見えていない】

【――傘を使っていいよと、そんな些細な申し出でさえも、彼は深く謝意を表しながら、断ろうとした】
【しかし、躊躇うように言葉を淀ませたのち、ありがとうございます、と。ご厚意に甘えるようで申し訳ありませんが、と、やはり借用させてもらう意を】
【伝えようとして、振り返り。彼女の手には大きすぎるような、黒いマオカラーが目に入った】

「――……申し訳ありません。失念していました」

【そうだ、自分は彼女に……と。己がそう厚くもないワイシャツしか着ていないことを、漸う思い出したように】
【受け取り、再び着用する。存分に水を吸って重く、冷たい上着の感覚が肌を刺す】
【だがやはり委細構わずボタンを留め直した。その裾から、袖から、足元からぽたぽたと滴り続ける雫に目を向け、それから彼女の瞳をまっすぐに見て】

「ありがとうございます」

【もう一度、目礼をした。数秒にも満たないその行為が終わってしまえば、もう彼女の住まいに留まり続ける理由はなくなって】
【だから彼は、再び雪降る街中に戻ろうとして……振り返りかけた足を止め、再度少女の勿忘草色の瞳を見つめて】

「……おやすみなさい」

【そう言った、瞬間――】
【ほんのかすかに、僅かな角度に、注意していても見逃してしまうほど小さく――】
【……彼が、笑った、ように見えたのは……きっと、気のせいなのだろうか】

【次の瞬間には――いや、今も変わらなかったのかもしれないが――元の無表情に戻っていた】
【何事もなかったというように、今度こそ扉を開け、去っていく。その後ろ姿は、常の彼と少しも変わらない、泰然としながらもどこか存在感の薄いようなものであり】
【やはり、見間違いだったのだろう。あの彼が……笑うなど】
【たかが会って少し程度の人間でも、彼と話せばどのような人物なのかが把握できる。彼女の場合は些か以上に特殊すぎたが、それでも決して表情を変えることはなかった】
【たとえ、どれだけ変わったように見えていても……物理的には、彼の顔は一切なにも変化を見せなかったのだから】

【だから、きっと……】
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/29(金) 01:12:49.90 ID:hHN3WOHq0
>>420

【彼女の部屋には――いや、多分、それは違っていて。彼女と、"姉"の部屋には。子供向けの本が、たくさんあるようだった】
【それにどれだけの頻度で彼女が手を付けるのかは、分からない。大人向けの……というより、普通の本もたくさんあった。ただ、この部屋には、】
【部屋の外に詰んである本の中には混じっていない、児童書や絵本がたくさんあったのだ。まるで、ぜんぶ、ここの部屋にだけ集めたみたいに】

【あるいは、――きっと彼女にとって一番安心できるはずの、この部屋で。進んでいく時計の針を忘れたがるみたいに】

――――。

【表情は薄ぺらだった。だけど、確かに、その瞬間。微かに、綻んだような――そんな、気配があった】
【たぶん、本が好きなのだ。姉が死んで、両親さえ居なくなって、幼い少女はただいい子であれと我儘も寂しさも悲しさも押し隠して、ただ、本を読むことだけ】
【ただそれだけを自分に許した。本を読んでいる自分なら、少しくらいは赦せる気がした。――だから本が好きだし、本を読む。小さなころから、ずっと、好きなもの】

【たくさんの本に囲まれたこの空間は安心できる。たくさんの許しが積み重なっている。一見すれば正気さえ疑われる光景だとしても、それでも、】
【――ぱた、ぽた、と、冷たい雫の落ちる音がする。きっと冷たいだろう、ストーブでもあれば良かったと、本当に、微かに、思う】
【確か洋館の方にはあったはずだと思いながらも燃料などありもしないのをすぐに思い出すから、無意味だ。――もしかしたら引き止めたかったのかもしれない、少しだけ、】
【だけど――それだけの言葉は見当たらなくて。ただ、――本当に、本当に。数年ぶりに。言われた言葉だった。もう、ずっと、誰も、――誰も、言わなかったこと】

……おやすみなさい。

【……ああ、そうだ、眠たいのだった。緩やかに眠気が想起される、もう、今にも頽れてしまいそうだと、気付く】
【閉まるドア、部屋の中は何も変わらない。もう何時間も前に家を出た時と何も変わらない、――自分だけの空間。私だけの、場所】
【だのに床に広がる水染みは誰かが居たことの証であって、強張りろくに動かない濡れた身体がここにあるのは、誰かが助けてくれたことの証であって】

【笑顔の錯覚に、彼女が返したのは、目を細める程度の、ほんに微かな緩み。それが笑みなのか、そうでないのか、――ごくごく強いて分類すれば、前者なのだろうけど】

【部屋の中で微かに耳を澄ます。家にはもうずっと誰も居ない。だから、ほんとうに、些細な音ですら、違和感として耳に届く】
【彼が本当に家を出るまで――たぶん、彼女は、そうしているのだ。それが彼女なりの礼儀であるように、誰も見ていないのだとしても、しんと、呼吸まで潜めて】

/そして申し訳ないですっ、今日も時間が危うい感じでして……本当にあと少しだと思うのですがっ
/時間は今日と同じくらいだと思います、次のレスで〆ていただけるようでしたら、帰宅次第それに返しますので……
/申し訳ないのですが今日もお先に失礼させていただきます……!
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/29(金) 04:11:41.60 ID:IbJMhohRo
>>421

【――彼女の邸宅から借り受けた傘を差して、雪の降る街を歩く】
【聞けば、これは彼女の父君のものだという。そのようなものを一時的にとはいえ持って行ってしまってよいものだろうかと考えたが、やはり借りていくことにした】
【肉体は氷のように冷えていた。細胞まで凍結しているようだと、益体のないことを考える。流石にこれ以上の体温低下は看過できない。体温を下げる要因は可能な限り排するべきだ。】
【……いや、今更か。要因云々を言うならば、そもそも衣服自体がそうなっている。冷却された身体に、温かさなどというものはもはや欠片も残っていない】
【どこにも、熱を生むべきものが存在しないのだ。であれば、やはり無為なものなのだろう。自分が持ち合わせているすべての物も。あの娘から借り受けた、この傘も……】

【やはり借りるべきではなかったか。これは本来、自分のような者が持っていてよいものではない】
【彼女はそうは思わないだろう。しかし、これは確かに、彼女の親御が残したものの一つなのだ。ぞんざいに扱っていいはずがない。それだけの価値がある】
【子は子として産まれてくる。だが親は、始めから親として在るわけではないのだ。ゆえに、上手い親もいれば下手な親もいる】
【……きっと少しだけ、少しだけ不器用だっただけなのだろう。子を喪ってしまった現実を目視するのが精一杯で、他に目を向ける余裕などなかったに違いない】
【子を愛さぬ親などおらぬ。親とは我が子を、どうしようもなく愛するものなのだ。それこそ、命を擲ってまで救おうとするほどに】
「彼女に……伝わってくれていれば、……よいのだが」

【己は弁の立つ人種ではない。それに年頃の娘と接したことも、数えるほどしかない。上手く言って聞かせることなど、できようはずもない】
【しかし、それだけは分かってほしかった。あの、暗夜に震える独りの少女に。縋るべき光など何一つなく、進むことすらできず膝を抱えることしかできない幼子に】
【諭す、などと……できたものではないが。それができる人間は、他にいると承知してはいるが。もっと上手くできる者が、確かに存在するのだと弁えているが……】

【もう、どれだけ歩いたのか。気付けば街の境を越えている。周辺地理は実際に歩き、目で見て頭に入れてはいるが】
【この街並みがいったい何処であったか、判断ができなかった。確かに見たはずなのだ。歩き、確認した。しかし、これは……】
【ああ、そうか。そういう、ことだったのか】

「――――」

【衝撃。急激に視界が変転し、数瞬経って己が如何なる状態にあるのかを理解する】
【もはや自分は歩行どころか、立つことすらままならないでいるのだと。全身に力が入らない。もう、筋繊維の一本でも動かすことはできないだろう】
【低い視界に映る屑籠とゴミの入った袋と己の半身を浸す汚泥から、ここが路地裏であることが分かる】
【それを確認して、少しだけ安堵する。ここであれば人目につくまい。この街に……平凡な幸福を享受するただの街に、行き倒れなど似合わない】

【……左手にあった、かすかな感触が消えている。みれば少し向こうの地面に、開いたままの傘があった】
【汚してしまったな、と思う。それに付随して申し訳ないという気持ちも。しっかりと……洗って、返さねば。何か礼を、贈る必要がある】

「…………」

【ああ、しかし……彼女の前で、このような様を晒す羽目にならなかったことは、唯一の僥倖か】
【自分がこのような姿を見せれば、要らぬ罪悪感を抱かせることになっただろう。そんなものは、必要ない。自分は、そんな情を抱かれてよい者ではないのだ】
【憎悪と、殺意。侮蔑と、嘲笑。呪詛。怨念。憤怒。怨讐――嘲罵と悪罵こそが、自分に向けられるべき感情】
【愚劣で、不浄で、暴虐で醜悪でしかない、邪悪な鬼である己には……そのような悪意こそが相応しい。それ以外であってはならない】

【彼女の宅を出る際、少しだけ足を縺れさせてしまったが……問題ないだろう。気付くまい、あの程度】

/続きます
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/01/29(金) 04:12:18.30 ID:IbJMhohRo
>>421

【……雪がいつしか、雨に変わる。暗く分厚い屋根で空を覆われたこの路地裏に、それでも薄く積もっていた雪が溶けて、泥はより水を含んで泥濘へと変じる】
【衣服に、肌に、浸蝕していくかのような感触。底のない沼に、どこまでも沈んでゆく錯覚を覚えた】
【だが、おそらくそれこそが己の末路なのだ。きっと己の最期は、このように暗く独りで消えるものなのだろう】
【それでいい。己に安息など許されようはずもない。悪魔とは……悪鬼とは……地獄に堕ちる以外などないのだから】

「……、……。――――」

【貴女が来られる場所ではないのだ。泥に沈むのは自分のような者でなければならない。貴女は、幸福な結末を迎えられるがよい】
【人は泣きながら産まれてくる。始点が同じだからこそ、善良な貴女は笑っているべきなのだ。己は卑劣漢として、相応しい様で朽ち果てよう】
【自分では彼女を救いきることはできない。光の輪の中へは連れてゆけない。それは分かっている。分かっているのだ】

「……それでも」

【それでも、せめて。彼女が光へと駆け上がるための、礎の一つにでもなれたのなら】
【だとしたら、こんな果報はない。死を振り撒くことしかできない己でも、踏み台程度にはなれたのだと、思わせてくれたら】
【それだけで自分には過ぎた宝石だ。眩しすぎて目を焼かれそうなほど輝く唯一無二の宝物だ】

【自分は死なない。少なくとも、この程度では。何かが簡単には、己の死を許さないのだと、そんな妄念めいた確信がある】
【ゆえにおそらく、ここでは終われない。終わることができたならと、何度考えたことか。だが、それでも止まらない。止まれない】
【歩いていくしかないのだ、この呪われた道を。死屍血河をひたすらに築きあげる、穢れた鬼の道を】

【ああ、分かる】
【分かるのだ、もうすぐそこまで来ている】
【夢の終わり。たった一つの邂逅が齎した、誰もが予期しえなかった狂いによって生じた、一夜限りの優しい夢が】

【もう、自分が彼女にしてやれることは何もない。あったとしても、それは善いものでは決してない】
【かの娘の闇は未だ晴れていない。それは、やはり心残りだが……きっと大丈夫だろう。彼女には、自分以外にも案じてくれる人がいる】
【視界が霞む。意識が遠のく。鉛のように重かった身体から、すべての感覚と最後の熱が消えていく】
【そうだ、己などいつ死のうが消えようが構わない。だが、しかし、けれど、どうか――】

「……――どうか、彼女を……」

【最後に、名も知らぬ娘の幸福だけを願って――】

【彼の意識は、そこで途絶えた】


【――数日後】
【あの雪が嘘のようによく晴れた日。まだ寒くはあるが雲一つない空は、春の足音を感じさせるもので】

【――彼女の家の扉の前に、いつの間にやらあの傘が置かれていた】
【その元に、添えるように置かれた包装紙。空ければそこには白いブックカバーに包まれた、出版されたばかりの児童書があった】
【頁を開けば、そこに描かれているのは甘く優しく、幸福な少女の物語で……苦難に遭うことはあるけれど、少女は諦めず、ときに立派な仲間たちの助けを借りて、最後は王子様と結ばれて幸せに生きていく、お話】

【……そして読み終わったあとに、ふと気づけば裏表紙とブックカバーの間から何かが覗いているのが見える】
【それは簡素な、白いカードで……そこに「ありがとうございました」と、一言だけ記してあった】


/これにて〆ということで、お疲れさまでしたー! これだけの長丁場になってしまったのは間違いなく自分の遅筆が原因ですので、お気になさらず!
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/29(金) 18:46:53.54 ID:hHN3WOHq0
>>422>>423

【しんと耳を澄ませた先で、微かに、音が乱れる。気付けば閉じていた目を薄らと開いて、頭ごと、そちらのほうへと向ける】
【しかして透視能力など持ちえないなら現状を知ることはできない、もしかしたら山積みの本に蹴躓いたのかもしれない。……ぼう、と、瞬きを二つほど挟んで】
【少女は緩やかに立ち上がった、身体はがちがちに凍り付くように強張っていたが。それでも外に居るときはずうとマシで。息は微かに白いけれど】

…………、ああ。

【思うように動かない身体が、健常ならすぐにたどり着けるはずの限界にたどり着いたのは、数分も後で】
【その頃に彼の姿はそこにない。探したみたが本に崩れるような乱れもなく――変わらず自分が置いたままで林立している、異様な日常】
【一瞬考えるようにと瞳を伏せるが、その実頭はたいして働いていない。小さくため息を漏らしながら、ついでのように彼女は家の扉に施錠をして、】

【――今宵微かにでも誰かを受け入れてみたくなった、そんな自分のこころに、鍵をする。或いはこれも奇跡だったのだ、寒さが思考を鈍らせて】
【ほんの微かに残っていた/捨て去れなかった希望や甘えのようなものが――ほんのかすかに露呈した。だからと言ってそれが明日には無意味になるのかと言えば、きっと、それは、】
【違っているはずだ。風邪の時に看病してもらったら嬉しいように、その人に対する気持ちが変わるみたいに。弱っていたからこそ、その言葉は、届いて】

【ふらふらふわふわとした頭で自室に戻る。それから濡れた服を脱いで――これも、また、ゴミ袋へと突っ込む。たぶん、そのまま、コインランドリー行になるもの】
【濡れた身体と髪を見えない腕でわしわしと拭いて、もはや手抜きか日常かも分からないけれど、その腕で服まで着る。それから、もぞりとベッドにもぐりこみ】

――、

【華奢な腕でワインレッドの毛色をしたテディベアを抱きしめる。目を細めて、すっかりと安堵したように、熊の頭を胸に抱き】

は、あ――、

【ふと。何かに気付いたような吐息を漏らす。それから、ぽつりと、熊に呼びかける名は、――彼女が姉を呼んだものと、同じもので】
【「名前を聞いていなかった、」と、今になってようやく気付くのだ。……呟いて、けれど、言い終わるころには。意識は緩やかに手放され、薄い吐息に変わり――】


【――数日後。玄関先に置かれた傘と、白い包み】
【しかし、それが室内に取り込まれるのは、そこからさらに数日後のことになる。――雨が降らなかったのは、本当に、幸いだったのだろう】
【気付かなかった、そのわけはない。――家から、ただの一度たりとも、出なかったのだ。なんだか苦しいように顰めた眉で久しぶりに外に出た少女は、】
【それに蹴躓きかけて気付いて、見えない腕で、そのまま室内に放り込む。顔が紅潮していた、――どこに向かったのか。その先は、――病院だったようだから】
【多分、あれが致命的なダメージになって、体調を崩した。けれど或いは死んでもおかしくなかったはずだから、これで済むのなら、……あんがい運はいいのかもしれない】

【薬を飲んで落ち着いてから包みを開ければ、中にあるのは本だった。一緒にあの傘もあったから、きっと、彼なのだ。それはすぐに理解して】
【風邪のせいか活字に目が取られて吸い込まれるような錯覚がある、頭痛がする、……だけど、どうしても、いま読みたくて】

【さしもの彼女も本を読まなかったこの数日。久しぶりに読んだのは彼が用意したもので――途中で力尽き、本を傍らに置いたままで、そっと眠る】

【――夕暮れだった。家の目の前にある川べりの散歩道を、三人で、歩いていた】
【自分は父親に負ぶわれていて、眼下から――というより地面から、しきりに、リーゼばっかりずるい、交代して、と、姉の声がする】
【自分が父親を独占しているうれしさと、ずっと高くから見る世界の美しさに――絶対にやだと笑って返した、いつかの、記憶の、夢を見た】

【綻んだような、穏やかな寝顔。もうずっと忘れていたはずの記憶――それを揺り起こしたのも、きっと、また、彼なのだった】

/おつかれさまでした! こちらも早い時間で切り上げないといけなかったので、そちらこそ気になさらないでください……!
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/30(土) 00:15:19.93 ID:+zfgUi4J0
【森の奧地。魔物も多いと噂され、普段ならば人気など皆無である筈の其処】
【今宵は二人分の足音が聞こえ――――身形を見るに、謂わば雇われ傭兵である事も直ぐに理解出来るか】


「しっかし美味しい依頼に有り付けたモンだなぁ。精霊だか妖精だか分からないがガキ一人生け捕りにするだけで数千万が手に入るなんてよ
この手錠を填めちまえば魔力も制限出来ちまって後はコッチのもんなんだろ?」

「……何でも生き肝を喰らうとその力を手に入れられるだかとか何とからしい
人間では無いのだから相手も只の子供では無いだろう。そんな軽口を叩いて油断しているとあっと言う間に消し炭にされるかもしれないぞ」

【一人は長剣を腰に提げたラフな格好の男。もう一人は弓を手に辺りを警戒しつつ進む男】
【二人の遣り取りからして、何らかの捕獲の依頼を受けて此処まで来た事は分かる】
【然れど、その対象が魔物だとかでは無くどちらかと言えば幻獣にも似た部類ではあるのだが――――】

【何にせよ、何者かが近くを通る或いは様子を伺ったならば双方共に其方へと顔を向けて】







【――――櫻の国。月光差し込む森の奧地】
【普段ならば野鳥、或いは獣程度しか存在しない其処だが今宵は一つの“妖気”が感じ取れて】
【見遣れば居るのは巫女装束を纏った妖狐が一人。首に提げる翡翠の首飾りからは神聖な気配が漂うも、ソレに焼かれている風でも無いのだから悪しき存在では無いと知れるか】


「この位集まれば……お城の皆さんにもちゃんと、お分け出来るでしょうか……?」

【手に持つ籠には沢山の野草。見る者が見れば、其れ等は全て食える物である事も分かる】
【山菜採り、と表すのが最も適切であろうか。まだ二十歳にも満たない子供が一人、なのだから不用心にも思えるけれど】
【現に近場では獣の声も聞こえるし、若しかすれば夜盗だとかと鉢合わせする可能性も否めまい】

【――――一通り集め終われば短く吐息を漏らし。誰かが訪れるとすれば、丁度その頃か】
【物音を聞き取れば、不安げな表情と共に其方を向くのだけれど】

426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/01/30(土) 20:13:00.97 ID:6we6DTaU0
【街中――大通り沿いのカフェ】
【撤去しそこなったままの、それにしては電飾を街灯に巻いただけの、しょうもないイルミネーションがぺかぺかと光るのが見える窓際席】
【とさりと小さくはあるけれどたくさんの紙袋を向かいの席に積み上げて、席に座り込んだのは――女が一人、で】

……バレンタインの研究ね、去年も同じように誘われた気がするけど。

【もし分かる人が見れば、その小さな紙袋はぜーんぶ、どうやらチョコをメインに売り出しているパティスリーのもので】
【もっと言えばここから近いところにあるデパートでやっているチョコレート展に出している店ばかりだ。――それなら、そこの帰りだろうと見え】

今年も店で配るだなんて言うのかしら? ……去年も手伝わされた……気がするけど……。

【別段悩むこともなくブラックコーヒーを頼んだ彼女は備え付けのレモン水を緩く飲みながら、ちらと山になった紙袋を見て】
【どこか微笑ましいように小さく笑んでから、――非常にとてつもなく面倒くさいかのように、表情を無にして。なんなら色さえ失うような錯覚】
【しばらくそうして魂を抜いていたのだけど。数分もして店員がブラックコーヒーを持って来れば、「まあいいわ」だなんて呟きで立ち直る】

【髪は腰には届かない程度の長さ。色は濃い紺色で、ほぼ黒に見えるのだけど、光に当たって透ける髪色や、照り返しを見れば、青みがあるのがよく分かり】
【瞳も髪と同じような色をしていて、少し目つきが悪い。真っ黒なコーヒーを緩やかに傾けつつ、視線は通りを時々ちらりと眺め】
【赤いネクタイを締めた黒色のシャツ、アシンメトリーのプリーツスカートと、丈の長いサイハイのソックス、足元は踵の分厚いのだけが見えるブーツと、レッグカバーと】
【女としては少しだけ背が高い、うんと高いわけではないのだけれど。――そんな彼女は、懐から薄ぺらい携帯電話を取り出すと、なんとなしにいじりはじめ】

ま、楽しそうにしてるのが一番いいわね。しばらくチョコばっかり食べることになるの、飽きるけど。

【なんて緩やかに一人で解決してる。――とはいえ、時刻はちょうど人通りも多い時間。そのせいか、このカフェもなかなかに混雑していて】
【席に座ろうと思うのならそろそろ空いた場所がなくなりつつある――人によっては、相席、なんて頼んでいる人もちらとうかがえ】
【荷物こそ詰んであるとはいえ、彼女が座る二人掛けの席はひとつ椅子が空いていた。視線は手元の液晶に落ちて――うっすらとチョコの香りがするのは、もしかしたら、気のせいなのかもしれないけど】
427 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/01/30(土) 23:45:31.97 ID:2gakljtKo
【喫茶店】

【手入れの行き届いた街路樹、オレンジ色の光を放つ街灯が等間隔に並ぶストリート】
【石畳の歩道はこの街の古い建物に見合うよう、役所が景観を意識したから使われたニューオールドスタイル】
【今日は生憎、冬の雨だったが人通りは途切れること無く】

よくまあ、そんな出かける用事があるもんだ

【そんなことを通り沿いにある去年オープンしたばかりだが半世紀はそこにいるような顔をしたカフェの窓際の席で】
【コーヒーを飲みながらぼんやりと考えている。ダークブルーの髪色でアシンメトリのショートカット。濃いシャドウに】
【拒絶するような赤の口紅、真っ赤なきどったジャケットを着ていて、その内側にはホルスタともに警察の新式採用の】
【非殺傷拳銃を所持している。それは彼女が警官だからであり、非番の日でも所持するようにお達しが出ているからである】

【テーブルの上にはスケッチブックが一冊、窓の外の景色を書いている。鉛筆書きのラフだかデッサンだか落書きだかであるが】
【美術的なスキルは基礎は学んでいて描き慣れている、スピードはとても早く、そして迷いがない。素人には見えないだろう】
【飲み屋を除けばこれからの時間、開いている店は少ない。ここは今時珍しい深夜営業もしているところだ】
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/01(月) 00:54:06.53 ID:RAIyIXts0
【人間は疎か魔物も近づく事の少ない遺跡】
【普段なれば風の吹き込む音のみが聞こえる其処だけれど、今日は二人分の話し声が聞こえて】
【――――或いは、魔力に敏感な者ならば“火”の魔力の塊めいたものも感じ取れるであろうか】


『アルカっ!もう今日は終わり?
あのね、わたし今日のごはんはお肉がいい!』

「お肉、かぁ……うーん……じゃあ先ずはギルドに報告を終わらせてからにしよう、ね?」

【見てみれば、緑色のローブを纏った女が一人とボロ布の様な物を纏った少女が一人】
【恐らくは遺跡の探索が丁度終わった辺り。普段は人が居ないが故に、今宵は目立ち】
【更にはその魔力も聡い者ならば離れた位置から探知出来るのだから見つけるのは容易】
【尤も、ある程度まで近寄れば二人分の視線を受ける事になるのだけれど】
429 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/02(火) 00:04:45.33 ID:sbLBIrGfo
【酒場】

【路地の先にあるのは古臭いパブリックバー。取ってつけたような照明が光っているだけで】
【この薄暗がりでは店の名前もわからない。ドアのすりガラスから光は漏れていてOPENの看板がかかっている】

【この寂れたパブは噂がある。店主のそれまでの経歴からいろいろな世界の住人が集うという。泥棒、マフィア、賞金首と賞金稼ぎ】
【テロリスト、軍上層…世間じゃくつろぐ場所もない。ルールさえ守れば誰でもいい。此処では仕事をしない。それだけ】

【メニューも特に無しこのパブでただひとつ手書きの紙が貼り付けられていた。それは他のものと違い真新しい】
【癖の強いなんだかスカした字体で『探偵います。どんな仕事も募集。詳細は中まで』とあった】

【店の中も掃除は行き届いているが古臭さは否めない。灯りは暖かな色合いで、暖炉が暖かく燃えている。そして、店主は居ない】
【代わりにソファで余った足を投げ出して寝ている男がいる。三つ揃えのスーツ、つけっぱなしのテレビは今日のフットボールのリプレイ】

……マスターは居ないぜ。どうせ常連だろ?…勝手に飲んで置いていけ

【物音で起きた男は寝ぼけた声で来客の方すら見ずに返事。テーブルにはバーボンのボトル。煙草は3箱、吸い殻が沢山】

それとも、探偵がお探しで?

【起き上がって、頭をワシャワシャとダルそうに掻いて、客人の方を向く。サングラスをしている。ニヤリと口が笑った】
430 :アビ・ジャハンナム ◆/Pbzx9FKd2 :2016/02/02(火) 11:11:18.80 ID:W55wsoVJ0
【冬、水の国。道を行く人々の数は少なく、解け残った雪が場の温度を見た目にもさらに下げている】
【そんな通りにある色あせた看板の古本屋。雪の積もった雨よけの下で、一人の女性が文庫本を片手で支えて読んでいた】
【女性としては非常に背が高い。軍帽を頭から被り、両肩に「A」「B」の文字が刺繍された黒いコートをボタンも留めずに羽織っている】
【下に着るのは自警団であることを示す白い制服。足には茶の編み上げのブーツを履いた、若い女だった。パーマのかかった赤い短髪と金の瞳はどこか攻撃的な雰囲気を発している】
【女は器用に片手でページをめくる。そして目線を落とすと少しした後にその手が震えだし、終いには本を閉じて大笑いを始めた】

…フッ。フフフフフハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハ!!

【笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である。大柄かつ威圧的な外見をしている彼女が訳も無く笑っている姿を見たならば、奇妙というよりも恐怖の感情が先立つだろう】
【もっとも、近寄ってよく見たならば彼女が手にしていたものは漫画本であることがわかるだろう。彼女はいまだ本を閉じたままくっくっと肩を震わせている】


431 :鳩ヶ谷 廉 ◆eKWCneGadk [sage]:2016/02/04(木) 13:14:59.77 ID:SKGOBPY+O
【公園のベンチ】


なあ、そろそろバレンティンだぜ。光が見えねえよ……。


【黒いハットに同色のインバネスを纏い、寒さ対策に肌色のマフラーと白い革の手袋を填めた青年だ。】
【あろうことか彼はベンチの上にわざわざ体育座りをしては、同席する野良猫に話しかけていた。内容は、酷くみじめなものだ……。】
432 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 :2016/02/04(木) 14:02:00.06 ID:LBafHQ/R0
>>431

【少女ははじめベンチの上に黒のゴミ袋が落ちているのだと思っていた。】
【てくてくと急ぐわけでもない足取りで進むのは、白髪をボブカットにした小柄な女性である。頭の上から一本跳ねた大きな髪の房は蝶の口を思わせる】
【暖かそうなダッフルコートに身を包み、頭にはコートと同色の耳当てをつけた、全体的にふわふわとした印象を受ける少女だ】
【ゴミ収集所はここじゃ無いのに、そんなことを考えながら彼女はベンチまでたどり着き、ごしごしと目をこすった】

…………………………。
……ッ!!

【喋った。相当に驚いたようで、閉じ気味だった目が大きく開かれている。よく見れば「彼」は黒を基調とした服装の一般的な青年だった】
【だがそこそこ大きな図体をした男性が一人、寒空のもとベンチで体育座りをしているという光景は異様だ。彼女は混乱しつつもなんとか状況を整理して、】

……物乞い?

【そう言うのが精いっぱいだった】
433 :鳩ヶ谷 廉 ◆eKWCneGadk [sage]:2016/02/04(木) 14:27:37.60 ID:SKGOBPY+O
>>432

【寄ってきた人物に視線を向ける。可愛らしい女性のようだ。】
【普段なら失礼なとでもいうところだが、寒さが染みた心は、】
【女性が話しかけてきた≠ニいう事のみで暖まった様子で、口角を少し上げた。】


……ふふふ、乞えば愛情たっぷりのチョコレイトが頂けるッてんなら、最初からそーしてるぜ……。


【虚ろな目をしてそう答えた。不気味だ。】
434 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 :2016/02/04(木) 14:45:47.22 ID:LBafHQ/R0
>>433

【男の返答に対して彼女は青ざめた。ドン引きだった。なんだろう、一言で言い表すのならば…痛々しい】
【彼の心中などいざ知らず、彼女は早くもこの場を立ち去りたがっていた。ただ経験上、無言で立ち去ると後を追ってこられる場合がある】
【そう判断した彼女は穏便に場を収めるべく、とりあえず目の前の男との会話をそれとなく打ち切ろうとする方向へ話を誘導しようとした】

……気が早くない?……不安定な人?

【危険な人物とも、それとは別の意味で危険な人物とも、やっぱり関わらないのが一番である。彼女は言葉を続けながらも、雰囲気で帰れそうなタイミングを探っていた】
【それにしても彼女、蓋を開けてみれば意外に口が悪い。初対面の人間に向かいおよそ相応しくない言葉ばかりを浴びせかけている。それは場を荒立てずに済ますのとはまるで逆方向の行為であるように思えるが、そういう喋り方のクセなのだろうか】
435 :鳩ヶ谷 廉 ◆eKWCneGadk [sage]:2016/02/04(木) 14:56:02.20 ID:SKGOBPY+O
>>434


ふむ──いや、ま、確かに。バレンタインの近い時期に知らぬ女性に話しかけられた程度でチョコのチャンスと考えるのは気が早いな……


【体育座りを解く。インバネスの胸元に自警団の紋章が見える。】
【顎の辺りに手をおいてふむ、と考えると、確かに、と。】


だが、分かるだろう? 人は寒くなると愛情を欲するものなんだ。──愛情がなくてもいい、暖かいチョコをくだざい。


【女性の目の前跪き、両手前だし物乞い開始。】
436 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/04(木) 15:19:26.36 ID:LBafHQ/R0
>>435

(イヤきみ私が話しかける前から……)

【喉まで出かかったその言葉を彼女は飲み込んだ。なんとなく触れてはいけない部分であるように思えたからだ】
【そして自警団を示すそのシンボルに気づく間もなく、ラファイエットは謎の男にひれ伏されることとなった。私そんな趣味無いって、思ったところで口にしても仕方が無く】
【何しろ着の身着のまま、持ち歩いているのは拳銃だとか弾薬だとかそんなものだけだ。一応ポケットティッシュは持っているが、そんなものそこらの駅前で配っている。男に渡した時の反応は、それはそれで面白そうだったが】
【しばらく思案したあと、彼女は振り向いて公園から少し離れた場所にある大規模な百貨店に目をやった】

……普通持ってないよ。……そこにスーパーあるけど。……買って来たら?
……それを君が私に渡して、そのあと私が渡す。……みじめな気分にならないならそれでいいんじゃない。

【出された提案はなんとも風情の無い、むしろやらない方が良いくらいのイベントだった。この興醒めはなはだしい案に男はどう出るか】
437 :鳩ヶ谷 廉 ◆eKWCneGadk [sage]:2016/02/04(木) 15:26:38.39 ID:SKGOBPY+O
>>436


……ヂョゴじゃなぐでもいい! 贈与どいうがたちで! なにがじら! 俺の財産でなく貴方の財産で!


【愛情がなくてもいいとは言ったが、渡されるものすら自分で調達となると】
【それはもはや義理ですらなく──と、涙ながらに訴える様子が最早自分ですら惨めに思えた。】
【が、後戻りは今さら不可能。そのためにしつこそうだ。】
438 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/04(木) 15:41:07.74 ID:LBafHQ/R0
>>437

【泣かせてしまった、彼女はそうは思わなかった。こいつ面白いな、そう思った】
【見たところ良い歳だ、体格もまあまあ良いし成人している可能性も充分ある。そんな大の男がチョコ一つで取り乱している異様な姿に彼女は少し興奮しはじめていた】
【内心笑いをこらえるのに必死になりながら彼女はできる最高のプレゼントを思案する。さて、何を渡したら一番面白い展開になるだろうか】
【しばらくした後、泣かないで、と男に一枚の紙きれを手渡した】

……レシート……

【以前映画を見に行ったときのチケット(使用済み)と迷ったすえ、こちらを渡すことにした。彼女は内心爆笑中である】
439 :鳩ヶ谷 廉 ◆eKWCneGadk [sage]:2016/02/04(木) 15:48:48.26 ID:SKGOBPY+O
>>438


……



【思案する女性の様子に、期待が膨らむ。】
【強気に押してみたかいあったということか。惨めたらしくお願いしたことが効を奏したと──】



【──手渡された用紙。みたところチケット? 大胆にも一緒にデートをしてくれるということか──】

【──そこに記載されているのは済の文字、なぜ? 次いで女性の口から放たれた言葉に合点がいく──】

【──ぷちい】




──財産じゃねえじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!

【ひどい、あんまりだ。彼は涙を流しながら怒っていた。】
440 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/04(木) 16:01:09.64 ID:LBafHQ/R0
>>439

【彼女はとても穏やかかつ暖かな微笑みを彼に投げかけている。大満足のようだった】
【が、さすがに彼女にも同情の気持ちが湧いたのか、怒りながらも悲しみにくれる男の肩に左手を置き、右親指を立てウィンクをしながら笑いかけた】
【「いいことあるって!」そんな言葉がどこからか聞こえてきそうなほど、それは爽やかな笑顔であったという】
【面白そうな人間は全力でおちょくりにかかる…それがラファイエット・メイジャーの流儀だった。自警団員の一人としてそれはどうなんだという話ではあるが】
441 :鳩ヶ谷 廉 ◆eKWCneGadk [sage]:2016/02/04(木) 16:05:48.38 ID:SKGOBPY+O
>>440


【──ああ、なんていい笑顔なんだろう、この世に希望がみちあふれてくるようだ……。】
【──などと思うはずもなく、青筋がぴかいと浮き出た。】
【とはいえ、とはいえである。】


……すー はー。


【バレンタインデーはあと二週間ある。深呼吸しながらそう考えれば、自然と気分が落ち着く。】
【きっかけはどうであれ一度感情を爆発させたのも切り替えられる要因になったのだろう。】
【だが】


──君に期待するのはやめた。俺は近所のおばあちゃんやおばちゃんとの親交を深める。またな。


【──どこか失礼にも感じる言葉をはいて、その場から立ち去っていくのだった……。】

/切りがいいのでこの辺で!お疲れさまでした!
442 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/04(木) 16:19:08.70 ID:LBafHQ/R0
>>441

【終わってみれば、奇人から立ち去る方法を思案していたはずが、むしろ相手が被害をこうむる結果となった】
【彼女もまた相当な変人ということか。去っていく名も知らない男の後ろ姿を見ながら、彼女はある事実に思い当たる】

(そう言えば彼のコートについてたエンブレム、あれは確かどこかの自警団の…)

【遅い。同職ならば真っ先に気づくべきそれを、今更ながらに彼女は思い出した。】
【後日、彼女の個人的な調査により、彼の素性が判明することとなる。記憶の通りに彼は自警団の一員、そして名前は】

レン・ハトガヤ……ふぅん。

【水の国自警団支部内、情報統制室のメインコンピューターの前で、チョコバーをさくさく食べながら彼女はそう呟いた】


/お疲れ様でした!
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/04(木) 19:54:33.53 ID:tkVz+O0Y0
【街中――人通りの少ない通り】
【きんと冷えた空気が満ちる、空には銀色の冴えた三日月、青みを帯びた白の電灯は、ぢかぢかと激しく点滅して】

……もう、取り替えてないのかな。目が痛くなっちゃうね、こんなの――。

【白い吐息で少女がひとりごちる、それから腕の中に抱くものを大事そうに、取り落とさないようにとするみたいに抱き留め直し】

今日お休みだけど……、することないし、お店、行こうかなぁ――、……家に居てもやること、ないし。
んー、ん、チョコばっか食べるの飽きちゃったし……。にきび出来ちゃうもん。

【ふわぁと別段小さくもない欠伸、ぐうと身体を伸ばそうとして、腕が伸ばせないことに気付けば。なんとなしに身体だけを伸びさせて】
【ぶんぶんと首の仕草だけで少し乱れていた長めの前髪を直す。それでも少し気にくわないのか追い打ちで数度首を揺らしたあとに】

【「でも、お酒飲みに行っても、どうせお仕事するんだし……」なんて小さなつぶやきをひとつ、漏らす】

【――長い髪は腰ほどまで届くだろうか。艶やかな黒色、たいして肌は抜けるように白く、けれど頬は寒さにか薄らと赤くなり】
【瞳は左右で色の違う黒と赤、右の耳には片方だけのピアス――宝玉の欠片をあしらってウロボロスを模したものを身に着けていて】
【赤いワンピース。腰元を編み上げるようなデザインと、スカートに金糸で細かな刺繍を入れてあるのが、ときおりきらりと輝くよう】
【ふわと膨らませたスカートはひらりひらりというより少女の動きたびにもふもふと塊で揺れていた。足元は丈の長い靴下と、底の分厚く高いパンプスで】
【ケープと言うには少し丈の長い、けれどマントというには少し丈の短い黒色を羽織っていて】

……でもあそこじゃないとお酒飲むのめんどくさいし……。

【どうやら手に抱いているのはたくさんの紙の束、あどけなさをたっぷり残す顔を少しだけ不機嫌そうにして、呟く少女は年上に見たって十六かそのあたり】
【とうてい酒を飲んでいい歳には見えないのだけど――ふわりとため息吐息を漏らして、ひとまず場を変えようと少女は歩くのだろう】
【その姿は、その背後にあるぽっかりと口を開けた暗黒の、……そう、路地裏なんて呼ばれる場所から出てきたわりには、ずいぶんとこぎれいで、整ったもの】
【しかして彼女が武器を持ち合わせているようには見えなくて。運が良かったのか、それとも、――】
444 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/04(木) 23:42:36.88 ID:g8OuI9nfo
// >>427>>429で再募集します
445 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU :2016/02/06(土) 00:46:41.04 ID:N7rhhPBD0
>>427
【ストリートの喧騒の中を一人小走りで走る人物がいた】

うぅ、僕は濡れても大丈夫だけど流石に寒いよぉ…

【パシャパシャと水溜まりを踏みながらどうにかしてこの人影はとある喫茶店に少し慌ただしく入店する】
【店内の落ち着いた雰囲気を感じながらミルクココアを注文すると席に就き、ふーふーと冷ましながらチビチビと湯気が立ち上るココアを口にする】

ほんっとぉに、こういう時に役に立たないよねぇ…僕の能力…

【他ならぬ自分の能力に愚痴を溢すその人影はふと、近くでスケッチブックに鉛筆を走らせている人物に気がついて目を向ける】
【人影…ワザワイ・エスパスは何時も水兵服を身に付け】
【小さな女の子のような顔立ちに腰まで届く紫の髪】
【背中には漆黒に染まった戟と呼ばれる一種の槍のような物を背負っている】

(何を…描いてるのかなぁ?)

(大きな深紅の瞳にスケッチブックに画かれていく物を見ようと、首を伸ばし、更に少し身を乗り出す)

//久しぶりですがよろしくお願いします!
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 01:25:34.17 ID:aCfEbZ4n0
【森の奧地。魔物も多いと噂され、普段ならば人気など皆無である筈の其処】
【今宵は二人分の足音が聞こえ――――身形を見るに、謂わば雇われ傭兵である事も直ぐに理解出来るか】


「しっかし美味しい依頼に有り付けたモンだなぁ。精霊だか妖精だか分からないがガキ一人生け捕りにするだけで数千万が手に入るなんてよ
この手錠を填めちまえば魔力も制限出来ちまって後はコッチのもんなんだろ?」

「……何でも生き肝を喰らうとその力を手に入れられるだかとか何とからしい
人間では無いのだから相手も只の子供では無いだろう。そんな軽口を叩いて油断しているとあっと言う間に消し炭にされるかもしれないぞ」

【一人は長剣を腰に提げたラフな格好の男。もう一人は弓を手に辺りを警戒しつつ進む男】
【二人の遣り取りからして、何らかの捕獲の依頼を受けて此処まで来た事は分かる】
【然れど、その対象が魔物だとかでは無くどちらかと言えば幻獣にも似た部類ではあるのだが――――】

【何にせよ、何者かが近くを通る或いは様子を伺ったならば双方共に其方へと顔を向けて】







【――――夜の繁華街。行き交う人々の人種も様々であり】
【その中でも一際目立った存在が一つ。如何にも高そうな服を纏い、お高くとまった様な性格】
【一見すれば令嬢にも見えるのだが、だからこそこんな場所に一人で居る事がより一層違和感を引き立たせ】


「全く、お姉様にも困ったものですわ……何故私がこんな買い出しなんかを…………そもそもそんな事は従者達に任せれば良いと言うのに――」

【一人で文句を言いながら辺りを見渡し】
【同時に固まれば、もう一度辺りを見渡し。次に手元の地図を見れば小首を傾げた】
【地図をひっくり返したり、裏にしてみたり。其れ等の動作から分かる事はただ一つ】


「…………さて、此処は何処なのでしょう。適当に歩いていれば港に着くと思って居りましたが……」

【完全に道に迷った事。因みに、港は此処から遙か彼方】
【其れすらも分からない女は辺りをキョロキョロと見遣って。「聞いていた話と大分違いますわね」と暢気な台詞を並べながらその場に立ち尽くすこととなる】
【時間も時間だ。近寄る全てが善人とも考えがたいのだが――――そんな様なのだから兎にも角にも“目立っている”事は確かで】
447 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/06(土) 01:30:27.26 ID:sErPfpOlo
>>445

【彼女の鉛筆の動きは止まることはない。次のガイド線が見えるかのようにさらさらと書き続ける】
【道行く人はこの一時間弱に通りすぎた人で特徴的だった人を抜き出す。白髪の紳士、赤髪の自警団員】
【街灯の下でずっと誰かを待っている女性…車道の車はぼかす。真っ赤なロメオだけ印象的だったな…】
【そんな構成を脳内で作り上げて、そのままアウトプットする答えがあるのだから簡単と彼女はよく人に言う】

【最後に右下に今日の日付を描き入れると鉛筆を放り投げる。出来上がった。ざっと見回してこれ以上修正すべき場所も見当たらない】
【労力と妥協の交差点、それが完成。完成品には何の感動も無い。単なる落書きだし、いつも書いてるうちに見飽きてしまうのだ】
【スケッチブックも適当に置いて、コーヒーを飲む。鉛筆の粉で汚れた手を気にしてお絞りで手を拭く。忌々しい】

こんな時間まで出歩くのはよくないよ、お嬢さん。…不良だね
店に通す店主も店主だ。法律が無いといっても、後で指導はしなくちゃならないな。非行を助長している、と

【一段落ついたので話しかけることにする。先に言葉より多く行動によって語りかけてきたのは向こうだ。自分は言葉で返す】
448 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/02/06(土) 01:52:48.84 ID:N7rhhPBD0
>>447
……おぉー…

【小さく、感嘆の声を上げる】
【そのデッサンを書き上げる速度、そして出来映え】
【恐らく窓から見える街頭の景色なのだろうが中々どうして描かれている人物のキャラクターが立ち、かといって主張し過ぎずに風景と同化することで活気と一種の気品を感じる出来である】
【しかしその作者はあまり楽しそうには見えず、鉛筆を放り出してスケッチブックの扱いも適当だ】
【悠然とコーヒーを飲んでいるところを見るとそこまであのデッサンを気にかけている風ではない】

(どぉしてだろぉ………気に入らなかったのかなぁ…?)

【一人首をかしげていると件の人物からいきなり声を掛けられてびくっと肩を震わせる】

ムムム、遅くまで出歩くのと不良な事にインガカンケーはないの!
リーベおねぇちゃんは遅くまで遊んでても何も言わないし…
そして飲食店でココアを飲むのは非行じゃないの!

【人に逆らいたい年頃なのもあってか、最近変に知恵を付けたせいで一々食ってかかる】
【もっともこの小柄な人物が一番に補導される原因があるとするならその抜き身の刃の付いた武器を背中に背負っていることだろう】
449 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/06(土) 02:23:48.88 ID:sErPfpOlo
>>448

【興味のないスケッチブックに目をくれることもなく、見るのなら本物のほうがいいと外を眺める】
【別にコーヒーを飲むのに目は必要ないから何処かに置いておきたかっただけで何の理由もない】
【ただ鉛筆は少し気にかかる。そろそろ削らなくちゃな。それだけ。ペンケースには鉛筆と消しゴムしか入っていない】

普通の学生なら昼間学校に行っているのだから、夜出歩くのはおかしいんじゃないかな。眠らない人が居るなら兎も角
そう、喫茶店で何を飲もうと…未成年者の飲酒は駄目だね…まあ、要は時間だ。夜寝ないと背が伸びないよ

【こんな風に小言を言う大人はこの街じゃ少ないだろう。それぐらいのことを気にするほど世の中は平和じゃない】
【だからといってほっといていいわけがない。小さな事こそ大きなものに追々繋がっていくもんだと彼女は思っている】

あなたが武道に自信があろうと、能力者だろうとそういうことは問題じゃない。夜のほうが危険が多いことは確か
私は警官。どんな理由があろうと私の裁量で警察署で一晩お説教もできるんだ。スキンヘッドのおじさんと一緒に
…この後、真っ直ぐ家に帰ると約束しないとね

【鋭い目つき。背中の武器を見てもまだ言う。彼女も相当な意固地だ。間違ったことには容赦しない。例え一人の夜遊びにしても】
【将来のことを考えれば、あの街外れに立ち寄るような人間に成長させないために、今此処で家に帰すべきだと考える】
450 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/02/06(土) 02:44:46.69 ID:N7rhhPBD0
>>449
【深紅の瞳で睨み付けるがココアを吹きながら飲む最中のため、何処が上目遣いのようになってしまう】

べ、勉強とかはリーベおねぇちゃんが教えてくれてるからいいもん…
う、うぅ…背が伸びないのはやだよぉ…

【かつてストリートチルドレンだったころも今も自分に説教をしようなんていうのは愛しの姉を置いて他に居なかった為に若干怯む】

むぅ〜、僕は強いのにぃ…

【自分で強いと言う奴程未熟者である】

そ、それは嫌なの!スキンヘッドのおじさんは堪忍なのぉ…
あぅ…や、約束するのぉ……

【他人から真っ直ぐ見つめられるという経験などなかったワザワイは今までこれこそ名前が変わる前までは夜遊びどころではなかったと言うのに既にその深紅の瞳に大粒の涙を貯めて悔しそうに唇を噛んでいる】

(わるくちとか言ってくるなら叩いても良いけど、わるくちじゃないからたたいちゃだめなの…)

だ、だからスキンヘッドのおじさんは堪忍なの……それならお家に帰るの!
451 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/06(土) 03:38:40.48 ID:sErPfpOlo
>>450

学校は、勉強だけしに行くところじゃない。それに勉強も学校のほうが効率的

【とはいったものの彼女も実際は早くから美大進学を考えていたのでその他の授業は殆ど…だったし】
【絵の勉強をしていたから学校もほとんどおろそかだった。まあ、今は警察だからそれも役立っていない】

強い人ほど夜は人を欺く。それに強さは関係ないんだ。そもそも……あーまあいいや。向いてないし、こういうの

【クールぶった見た目で絵なんかかいているが仕事のタイプは腕っ節で解決するタイプなのだ。なんだか恥ずかしいし向いてない】
【こういうことは何を言うかでなく誰が言うかなのだ。自分がいくらいったとて大した効果は無いだろう】

スキンヘッドのおじさんはこの季節でも上着は着ないんだよ。(筋肉を着ているから)
…まあ、本当は家に電話して連れて帰るか、呼び出してどちらにせよお説教なんだけど…今日は約束してくれたらそれでいい
私は信じる、貴女は裏切らない。約束して。いい?

【ちょうどその時、彼女の携帯にコール。買った時のままの呼び出し音“設定1”の単調な音。すぐに彼女は出る】

もしもし…緊急?何?駅に爆弾魔?詳細は?…ダイナマイトで隠してる?なにを……全裸?はい?…露出魔?ちょっと、どっちかにしてよ
…なんかよくわからないけど行くから…デスクにへばりついてないでアンタも来て

【電話を切って、ため息。髪の毛もむしゃくしゃに掻いてため息。残ったコーヒーを飲む。ペンケースとスケッチブックを持つ】

じゃあ、私、仕事が入ったから。…いい?真っ直ぐ帰るんだよ。…あと駅には近づかないように。その…えーと…なんか大変……だから

【通りをサイレン鳴らしたパトカーが何台か走っていった。そこそこの事情らしい。だがなんだか腑に落ちない表情で彼女は現場に向かっていった】


/すみません。ここのところの疲れか思ったよりも眠気が…キリもいいのでシメにさせていただきます
/ちょっと短い時間でしたがおつかれさまでした!また機会があった時にはよろしくお願いします!
452 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/02/06(土) 03:46:15.28 ID:N7rhhPBD0
>>451
//はい、お疲れ様でした!
//学校が忙しくって中々昔のようにはこれませんが春休みやイベントの際には万難を排して馳せ参じます!
//またご縁がありましたら是非!お休みなさいませ!
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 14:50:12.26 ID:F6B+pXEM0
【街――大きな噴水のある広場】
【柔らかいお日様が降り注いでいた、冬にしてあたたかな午後の小春日和、――暦ではもう春らしいけれど】
【それでも風は少しだけ冷たいのが、なんなら少し暑くもある太陽の光をやわらげて、ちょうどいい】

ん、く、ぅ――、ふわ、……お日様浴びたの、久しぶりな気がする……。
お仕事の買い出しのときはあんまりゆっくりできないし……。あったかい――。

【ぐう、と、人目を気にもせず身体を伸ばす、終えたその時にたまたま目の前を歩いていたおばあさんと目があって、恥ずかしいように身体を縮めた少女は】
【その失態を誰にごまかすでもないはずなのにそんな独り言を漏らし。――件のおばあさんが立ち去れば、一瞬様子をうかがってから。その暖かさに目を細めて】
【なんだか眠っちゃいそう……と小さく呟く声はすでに眠たそうだった。大事そうに腕に抱いているのは洒落て可愛らしい柄の書かれた、紙袋】
【ふわぁと大きな欠伸を手で隠して、ぷつりと言葉が途切れる。――次の瞬間にはかくんと頭が舟をこぐように揺れるから、驚きの入眠速度、とか、余談なのかもしれないけど】

【腰まで届く長い黒髪。後ろで三つ編みのように編んであって、露出する右の耳には、片方だけに宝玉の欠片のピアスがきらめき】
【肌は透けるかと思うほどに白い、瞳は左右で色の違う黒赤のオッドアイだったけれど、うつらうつらと目を閉じる今では、それはよく見えず】
【赤から黒にグラデーションしていく色味のワンピース、袖はたっぷりと布地を余らせた姫袖、むなもとにはふんわりとしたリボン飾りがあり】
【羽織るのは暖かそうなケープ。それもうたたねしかける今では毛布かブランケットにしか見えないのだけど。お行儀よく揃えた足には、編み上げのブーツを履いて】

【すー、と、柔らかな吐息。数秒後にはっと顔を上げて、だけど、また数秒後にはうつらうつらと船をこいでいる】
【午後の陽だまりの中での和やかな光景、本人は多分結構頑張って起きたり寝たりしているようなのだけど――はたから見れば、結構面白い感じだったりするのだった】
454 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 17:11:15.26 ID:hrw/X6wo0
>>453

【うらららかな日差しを受けて眠る少女。ずいぶんそうしていた後にふと顔を上げたならば、目の前で先程から動こうとしない者がいるだろう】
【老人を背負った、高校生くらいに見える少女だ。スリットの入った青いチャイナ服に身を包み、黒いショートヘアの前髪を切りそろえ、いわゆるおかっぱ頭にしている】
【その少女にぶらさがるようにして、肩の奥にもう一つ見える老人の顔は伸ばしっぱなしのぼさぼさの白髪に覆われてよく見えない。かろうじて髪の間から大きなかぎ鼻と口元が見えるだけだ】
【老人は少女の背中に収まってしまうほど小さい。ぼろきれにしか見えない汚れた薄い生地の服を着て、その両手で少女にしがみついていた】
【一見、怪我をした老人を背負う親切な少女に見えなくもない。あるいは孫娘と祖父。もしかすると曾祖父である可能性もあるくらいに老人は老け込んでいた】

ちが

【背の老人が言葉を発した。しわがれているが良く通る、そして気味の悪い声だった】

その子の血が、みたい

【牧歌的な広場の空気におよそ似つかわしくないその言葉。それだけを言うと老人は黙った。中華服の娘が少女を冷え切った瞳で見下ろす】
【娘の表情に変化は無い。感情のこもらない無表情。ただ娘は自身の使命を認識したように、眼前の人物へこう告げた】

…そういうことだ。悪いが娘、貴方にはここで死んでもらう。立て。

【言うと同時、中華服の娘が鋭利な殺気を周囲へ放つ。紙袋を抱えた少女はとっくに起きているだろうが、残った眠気すら吹き飛ばすような力の流れが少女に向けられていた】
【中華服の娘は少女が戦いの準備を整えるのを待っている。穏便にこの場を収めるという選択肢は、おそらく少女には与えられていなかった】

455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 17:48:09.44 ID:F6B+pXEM0
>>454
/申しwけないです、気付くのが遅れてしまったので、返レス少し遅れます……それでよろしければ少しお待ちいただけましたらっ
456 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 17:49:39.75 ID:hrw/X6wo0
>>455
/了解です、あとお望みであればこの流れから非戦闘ロールも可能ですので…
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 18:01:56.08 ID:F6B+pXEM0
>>454

【眠たい。眠たいから眠ってしまいたいけれど、ここは家の外で、眠ってはいけない場所で――頑張って目を開けるのだけど、なかなか開かなくて】
【半目というかなんとも妙な顔をして格闘している。……と。通りすがりかとなんとなく思っていた相手が、一向に動いていないことに彼女はいくらも遅れて気付く】

……、……?

【ふわあと欠伸を手で隠して、相手の姿を眠たそうな目がじっと見つめる。……と、そこに、老人の声が重なり】
【ちが、という言葉に少しだけ怪訝そうに眉をひそめて首を傾げた、そこに、さらに言葉が重なる。その子。……どの子、?】

【ちらりと少女の視線が抱きしめる紙袋に向かう。この子だろうか、と、一瞬考えるのはおかしな思考、だけれど、中身がぬいぐるみであると白状するなら】
【少女が"そういう性質"であることが知れるだけでなんら問題はない。それでもすぐにぬいぐるみは血を出さないし、と、判断を正し】

え、っと……。

【いまだ脳は目覚めていない。中華服の相手の言葉になんとも不明瞭な声が向く。その声は鈴の音のようにどこか金属質で澄んでいたけれど】
【残る眠たさが揺らがせる、――相手に向けていたどこか起こされて不満なような顔が、ただ、その殺意に気付いた瞬間に、すっと醒めるのだろう】
【最後に一度だけ区切りをつけるように欠伸をする、それから、訝しむように目を細めて。その視線は数秒ほど辺りを――そう、麗らかな小春日和を楽しむ広場を眺め】

……――ここでやるの? せめて他のひと、みんなにどこかに行ってもらうとか……。

【そんなのルール違反ではないのか、と、そんな。少しだけ責めるような目を相手に向けるのだ。そこには自分よりも周り、というような色が強く】
【それは自分が殺されることはないという自信なのか、その不安以上に他者が心配であるのか。がさりと乾いた音で、少女は紙袋を膝の上から、座っていたベンチの上に】

今の間にわたしが逃げちゃったら、どうするの?

【言ったくせに手を出さない相手。そんなこと言う前に殺してしまえばいいのに、と、あどけない顔の割に思考は怪しく】

ここは嫌。誰かが居る場所は駄目。……殺されちゃうのも、本当は嫌だけど。

【いまだ座ったままで、きぱりと少女は相手にそう言うのだろう。まだ彼女は戦う準備を済ませたようには見えない。それなら、先手を取るにも容易いはずだ――】
【――さっきまで新手の変な動物みたいに眠気と戦っていた少女と見比べれば、別人のようにりんと褪めた金属質の声。丸くて釣った眼はじっと、相手を見つめていて】
458 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 18:24:37.88 ID:hrw/X6wo0
>>457

【少女の言葉を受けて、中華服の娘は顔にこそ出さなかったが内心驚いていた。この状況下で他者を気遣う余裕があるか、と。】
【雰囲気から、眼前の鈴の音のような声色で喋る少女が「一般人」でないことは察していたが、その肝の据わった様子に感嘆したのだった。】

…構わない。師父がお選びになったのは貴様だけだ。望むならば場所を変えよう。
…逃げられはしない、師父がお望みだ。私としても逃がす気は無いし、どのみち師父の「能力」の前に逃走は無意味だ。

【そう言って、血生臭い光景を繰り広げるのに相応しい場所への移動をうながすのだろう。少女がそれを承諾したならば、二人(正しくは三人)はどこか人気の無い、少女が望むような場所へ移動するはずだ。】
【そして少女が場所の移動を拒むならば、すなわち戦闘を拒むならば。中華服の娘は即座に少女の片手を、握手をするように握るだろう。】
【それ自体は攻撃でもなんでもない。ただその手に掴まれると同時に「能力」が発動することによって、少女は強制的にどこかの路地裏にでも連れていかれるだろう。】
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 18:40:57.03 ID:F6B+pXEM0
>>458

……じゃあ、そうするの。どこでもいいけど、ひとの居ない場所がいいな――。
師父、さん? そのひとがどんなひとなのかは、わたし、分かんないけど……、……あんまりこういうこと、しないほうがいいと思うよ。

【不満げなため息がひとつ漏れる。別段戦闘が好きな類ではないのだろう、それどころか、嫌い/苦手なようにすら見受けられる】
【逃げられないと言われればそれで最後に諦めたらしい。逃げるのも無意味だと言われれば――転移魔術はどうなのかと考えたが、】
【それは、たぶん、ほんとうに追い詰められたときに使うためのものだから。ゆるやかにだんまりを決め込んで、「じゃあどこかに、」と、】
【言いかけた手を半ば強制的に取られる。手は指先がほんの少しだけ冷えていたが暖かく、もっと言えば柔らかで、戦いどころか得物さえ握ったこともないように思えるほど】

【一瞬遅れて振り払おうとする動きは、きっと無駄に終わるのだろう。或いは――連れて行かれた先の路地裏にて、その手を振り払うのだろうか】
【路地裏と言い切るには少しだけ広い場所、少女がすぐに視認したのはごうごうとしわがれた声で冷風を吹き出す室外機】
【他にもごみ箱やらあるかもしれない。相手の視点からのみ見える物もきっとあるだろう。――むすりとあどけない顔の頬をわずかに膨らませ、眉を吊り上げる彼女は】

あらためて……ごきげんよう。せっかくの暖かい日なのに、こんな場所に来るなんて、思ってなかったけど……。

【或いは少し嫌味なように笑って、首をわずかに傾げる。さっきまでのうつらうつらとしていた少女とは違う、その身体はもちろん、髪の先まで魔力を満ち満ちさせて】
【微かに体表から溢れ出す魔力は淡く煌めく桜色。秘匿するように足から地面に向かって微かにこぼされた魔力は、地面の中にぐるりと渦巻く】
【相手が魔力の探知に敏感な性質であれば、地面の中に解き放たれた、何か長いもの――魔力の塊――に気付くことは容易いだろう。たとえそうでなくとも、】
【"りん"と、どこかで鈴の音がする。どこか――というよりも、地面の中から。そしてそれは少女の声によく似る鈴の音だが、少女の声ではなく】
460 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 19:20:05.57 ID:hrw/X6wo0
>>459

【少女の話が中華服の娘の背負う老人について触れたとき、娘の発する殺気がより強固なものとなった。きっと少女を見据える目が鋭くなって娘は言う。】

…偉大な人物だ。

【ただそうとだけ答え、娘は移動を始める。その背に小さく背負われるその姿からは偉大さや威厳など欠片も感じられなかった。】
【少女は場の移動に応じたため、中華服の娘は移動に関する能力を使わなかった。ゆえに奇妙な一団は徒歩で、少女の指定した路地裏に向かうこととなる。】
【そしてついた先。眼前の人形のような少女は言葉と共に異能の力をみなぎらせた。中華服の娘に緊張が走る。この少女、年は自分と同じくらいだろうか、それにしては場慣れしている…そう考える。】
【それに呼応して、中華服の娘の周囲にも力があふれ出す。「能力」の発動だった。】

…『天国歩行者(スカイウォーカー)』

【少女に向かい合うように立っていた娘は、一見、その場で足踏みをしだしたように見えるだろう。足踏みというよりも、階段を上るような仕草だ。】
【するとあろうことか、そこに本当に見えない階段があるかのように、娘はすたすたと空気中を歩いたのだった。5、6歩階段を上るようにして、娘は「空気中で」立ち止まった。】
【見えないブロックがそこにあるかのように、娘は両足で空中に立っている。】
【『天国歩行者(スカイウォーカー)』は、「どんな場所でも歩くことのできる能力」である。空気中、反り立つ壁面、水面の上、ありとあらゆる場所を「足場」として自在に動き回ることができる。】
【娘がその靴底を向けた場所すべてが足場となって、道をすたすたと歩くようにどんな場所でも歩くことができるのだ。やろうと思えば、天井に逆さまに立って歩くことすら可能である。】

これは師父の持つ「能力」だ。『天国歩行者(スカイウォーカー)』は能力者本体に触れている人間もその恩恵を受けることができる。

【中華服の娘はそう少女に説明してみせる。娘の流儀なのだろうか、彼女は聞かれてもいない自身の手の内を晒した。場所の移動を承諾するあたり、彼女自身はどうやら正々堂々と戦うことを好むらしい。】
【彼女が言うにはこれは背の老人の能力だと言う。ならば彼女も彼女で別の「能力」を持つということだろうか。】
【準備は終わったと言わんばかりに、彼女は空中で構えを取る。老人を背負ったままなので両手は塞がっているが、恐らくは足技を駆使して戦うのだろう。】

私はカノッサ機関87。≪白天龍の子=竅Aウー・リーシャン。能力は「脚力を強化する能力」。
貴様、名前は?

【そして彼女は眼前の少女にそう問うた。戦闘に際して名乗りを重んじるなど、古風というか形式を重視するタイプのようである。少女がそれにどういう形であれ答えたならば、戦闘が始まる。】
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 19:34:53.68 ID:F6B+pXEM0
>>460

【相手の態度が変わったことで、まずいことに触れたかと、少女は一瞬身構える。けれどそれ以上のことはなく、なるだけ、相手に隠すように小さく息を吐く】
【あんまり気が強いほうではないのかもしれない。その割には慣れたような様子がある、――或いは自分が殺されるかもしれないことに、ある程度以上の恐れがないようにも】

……――わあ、

【戦いの前に手札を見せる能力者なんてものは、たぶん、初めて見たように思う。ひとによっては、普段の生活でさえ隠すひとが居たりするのに】
【その小さな声はそんな驚きでもあったし、視覚的に分かりやすい能力についてだったようにも思う。なんなら少し興味深いようでもあった、宙が歩けるなんて――と】
【少し場には不釣合いな目をしてみせて。だけどすぐに思い出してか、きっと表情を引き締め】

そんなの、教えないほうがいいのに……。

【自分だったらそんなことはしないだろう、と、そんな風に呟くのだ。わざわざ宣言して待っていたこと、場所の移動を了承したこと】
【それらを考えれば、彼女が正々堂々を好むのは初対面の少女でも分かった。それでも、なんでそんなことをするのだろう――と、思うのだ】
【損なのに、と。自分ならしないだろう――否、自分は、そんなこと、してこなかった。誰にも、誰に対しても、一度たりとも】

……UNITED TRIGGER、の、……給仕さんだよ。白神鈴音――、……能力も言わなきゃ駄目?
まあ、いいや、――魔力で物を作れるの。上手だよ、……たくさん練習したもの。

【カノッサ。その組織の名にわずかに眉をひそめたように見えたが、長めの前髪越しではよく見えず】
【名前を問われれば少し悩むような――言いたくないと言うより、言っていいのか、悩むような。自分をそこに加えるか一瞬悩んだようにしてから、けれどそう名乗る】
【鈴の音と書いてりんね。それから相手がそうしたことに対して、あんまり気乗りしないというように呟くのだけど。――そこは相手の流儀に合わせるようにしたらしい】
【自らの能力を物体生成だと名乗って。――多分そういうのなら相手には自信があるのだろう、と、思う。何か隠していることがあるのか、それは自分には分からなくて】

【だから――少しだけ、隠し事をしていた。その能力は嘘ではない。けれど、それは漠然としていて、大雑把で、相手に比べ、具体的でもなかったのだから】

【――はらり、ひらり、と、彼女の身体から発露していた魔力が、ついに形を持ち始めた。桜色は薄ぺらく鱗片のようになって舞う。それは、まるで、桜の花弁のよう】
【淡く発光するなら路地裏ではよく見えた。攻撃というよりか、自然に溢れ出す類のように見えたが――魔力で物体を作り出す少女の、まぎれもない魔力片なのは、確かで】
462 :リーシャンと老人 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 20:07:23.12 ID:hrw/X6wo0
>>461

【こうして素直に感嘆するところを見るとただの少女にしか見えない。だが満ちる力は明らかに異能を示しており、どこかちぐはぐな印象をリーシャンは受けた。】

リンネ。貴様がか…

【その言葉はUNITED TRIGGERに属する鈴音という存在をあらかじめ知っていたもの。実物を見るのはこれがはじめてだと、そういうことなのだろう。】
【しかしその素性や、戦闘能力に関しての知識は皆無であった。だから鈴音が自身同様に能力を教え始めたのを見て、リーシャンは驚いて見せた。】

…能力まで言う必要は無い。…[ピーーー]と宣言している相手に手の内を明かすとは、奇妙な奴だ。
私が手の内をさらすのは、それが私の流儀だからだ。私がこの世で最も尊敬する男が、かつてそうしてきたからだ。

【そう言う彼女の眼はどこか遠く。彼女が背負う老人は「師父」と呼ばれていたが、彼女が最も尊敬する人物とはこの老人とまた別なのだろうか。】
【仮に鈴音がそこに疑問を抱いて質問をしたとしても、そこまで答える気は彼女に無かった。】

ちなみに私の歳は16だ。

【言い忘れていたようだった。】
【魔翌力で物体を生成する、その言葉を念頭に彼女は相手を見据える。いくらか戦ったことがあるが、「能力」にはいくつか種類がある…自身のように一つのことしかできないものや、相手のようにもっと多岐に渡る一言では言い表せないようなもの。】
【後者は総じて魔法などと呼ばれたりする…そこまで考え、充分な警戒を払ったままついに戦闘が開始された。】

いざ、尋常に……勝負!!

【言うが同時、彼女はそのまま空中を駆けていく。リーシャン自身の「脚力を強化する能力」によって、そのスピードはかなりのものだ。人間一人を背負ったうえでこの動き、訓練されていることがわかる。】
【空中の足場を蹴り、駆ける速度をそのまま載せて飛び蹴りを放つ。標的は鈴音本体ではなく桜色の魔翌力片である。】

突足速撃(トゥーツースーチー)!

【様子見の一撃。まずはこれら魔翌力片がどのような性質をもっているのかを把握するための蹴りが放たれた。】
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 20:26:00.19 ID:F6B+pXEM0
>>462

【相手の言葉に、彼女は。む、と、少しだけ表情を変える。――不本意とは言えテレビに出たこともある、それに、】
【気付けばもう一年よりも前になったりするのだけど。UTが始めた――孤児やそういったひとびとに無償で食事を提供する、というボランティア】
【その中心に居るのが彼女なのだから。やはり知られていてもおかしくない、とは、分かっているのだけど。……なんだか、不思議な気持ちになって】

だって、あなたがそうしたから……、カノッサ機関は嫌いだけれど――。

【カノッサは嫌い。だけど眼前の相手がどんな人となりであるのか、自分はまだ知らないから】
【だから、その括りだけで嫌いだとは言い切らない。その流儀に合わせて、自ら不利である情報をしゃべることも、ある】
【――変な子だと言ってしまえば、そうだろう。よく言えば素直なのかもしれない】

――二十二歳。身体は十六だよ。

【そこも律儀に名乗るのだった。それにしては奇妙なものだけど――しかして身体が十六であるなら、同い年と見ていいだろう】
【鍛えたような様子も薄い、華奢な十六歳の少女。異能持ちであることを除けば、彼女は、そうにしか見えなかったから】

【――早い、と、小さく呟く。しかし呟きは小さくともその声音は金属質であるからよくとおり、それが相手に届いても不思議ではない】
【とんと小さな足音で身体を一歩引く、ちらりと意思を与えられたように花弁はゆらり宙を動いて――ほんの次の瞬間には、少女の前に網のように編まれた風になり】
【攻撃ではない。そこに蹴りを入れればいくらか柔らかくぐんと押すだろうが、突き抜けることは容易ではないだろう。よほどの脚力や勢いがあれば、可能ではあるものの】
【こちらもまた様子見の意味があるのだろう。引けば網はそれ以上に追随することもなく、むしろ、役割を終えたように腐ったようになって壊れていくほど】

……――カノッサ機関って、最近おとなしいなあって思ってたの。だから、……久しぶりに見た、な――。

【また、地中からちりんという音がする。地中にある魔力反応が、ぐん!と強くなったように思え】
【少女の立つ前の地面がまるで水面のように揺らめく。――次の瞬間、その波紋の中心から飛び出してくるのは、一匹と言っていいのか。水で出来た、蛇だった】

【淡く桜色の水で出来た蛇。頭の中には銀色の小さな鈴がひとつ浮いていて、それが先ほどからりんりんと鳴いていたらしい】
【そいつは地面からしゃっと飛び出して、相手の頭を狙うように飛び掛かる――その水には酸性、という性質があるから、あまり触れないほうが良いのは確かで】
【これは攻撃だった。しかして動きは速いが軌道は単純。少し動けばそれだけで回避できる一手だった】

/そしてすいません。食事してきますので、少しお待ちください……!
464 :リーシャンと老人 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 21:32:02.51 ID:hrw/X6wo0
>>463

【少女の若干奇妙な年齢の言い方に、ひっかかりよりも先に驚きの方がリーシャンの頭を走った。】

(年上だったのか… 年下だと思ってた…)

【その後、「身体は十六」という部分に奇妙さを抱きつつも彼女は突進。変形した魔翌力片に受け止められて、いくらか壁を変形させたところで攻撃は止まった。】

(相当自在に動かせるな… 別に網の能力というわけでも無いだろう、厄介な…)

【停止と同時、くるんと跳ねて後方の空中へ移動し間合いを取る。自在に空を跳び回る姿は虫や鳥の動きに近い。】
【カノッサの動きが最近活発ではないとの言葉に、リーシャンは否定も肯定もしなかった。言われてみればそうである気もするし、そうでない気もした。】
【ただそもそもの問題として彼女が16歳である以上、当然ながら彼女は組織の古株では有り得ない。ナンバーズとはいえ彼女もそこまで内部事情に詳しいわけでは無いのだろう。】
【そして下方から迫りくる蛇を模した、水、だろうか。鈴音の力の全容を把握しているわけではない以上、迂闊な動きはとれないが、なんとかその性質は把握する必要がある。】
【見たところ、頭の鈴が蛇の核か。そう踏んで、彼女は回転しながら鈴を弾き飛ばすように蛇へ蹴りを入れた。】

旋閃足(シャンシャンツー)…ッ!

【迎撃と共に彼女の顔が苦痛に歪む。足を焦がすこの感覚は酸。即座に足を振りぬいたため浸かっていた時間は短くさほどダメージもなかったが、しっかり痛みは通っていた。】
【何もない場所から水を出すなど、多岐にわたる鈴音の力にリーシャンは苦戦気味だった。一度彼女は地表に降り立ち、体勢を立て直す。】
【リーシャンの脚力強化の能力は足の防御力も上げる。肝であるスピードを殺されるような事態には陥っていないのが救いである。】
【インターバルの後、彼女は再度空中へと跳躍した。攻撃ではなく高速で鈴音の周囲を、それこそ360°全方位に渡って飛び跳ね始める。空中をキックして空中で着地するその動きは、まさに空中殺法と呼ぶにふさわしい。】

風々跳(ファンファンティアオ)!

【できる限りの速度で跳びまわって、鈴音の視界から抜け死角を突こうとする。もしも動きを捉えきれずに隙を見せれば、彼女の蹴りが鈴音を襲うだろう。】
【しかしその際に狙われるのは頭や心臓といった急所では無く、四肢のうちのどれかだ。何故戦闘を決することのできる場所を狙わないのか、それは今のところ不明である。】
465 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/06(土) 21:45:58.81 ID:WV6iDUlj0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――雷の国 荒野】

――――ふーん……あれが、機関に強奪された陸上戦艦かぁ……
あんな風に野営されちゃうと、流石に攻めあぐねるよね……後手に回ってる感じが、酷いなぁ……

【明るいピンク色の長髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、前髪をやや膨らませる様にセットしている】
【紫色に着色されたカジュアルジャケットと、レギンスとハーフパンツを組み合わせて着用している】
【目元にレンズ、両耳に円形のボディ、後頭部に装着用の調節器が一体化した、機械的なバイザーをつけている、身長160cm前後の女性が】
【小さな台地の続く、荒れ果てた荒野の岩陰から、遠くに映る光景に視線を注いでいる】
【遠く離れたその場所には、巨大な船の様なものが数隻、崖を背にして鎮座していた】

……ここら辺も、哨戒の範囲内のはずよね。もう少し撮影するにしても、気をつけないと……

【その辺の街中に居そうなその服装は、この何もない大地の中では明らかに浮いている】
【それでも彼女は、ある種の緊張感を維持したまま、肌寒さに怯む事無く、遠くの船を窺っていた】



【――――所変わって、水の国 繁華街】

……暗号化ツールの使い方は、郵送したマニュアル通りだ。無くすんじゃないぞ?
それと、そのマニュアルをデジタル化しない様に……じゃなきゃわざわざ分けた意味がないからな?
……あぁ、それじゃあ定常の活動に戻って良い。下手は踏むんじゃないぞ?

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【まばらに人の行きかう中、通信機で何事かを話し込みながら歩いている】
【やがて通話も切れたようで、通信機もしまい込むと、他の雑踏となんら変わらない様子で振る舞い始めた】

――――おっ、宝くじ屋か…………――――よし

【ふと視界に入った宝くじ売り場に、男性の足が止まる。懐からコインを取り出し、その場でトスすると、窓口へと向かい】

姉さん、300の即興くじ1枚! ……ハイよ。それで…………っと、出たぁ10000当たり! 姉さんこれ交換な!

【1枚だけ買ったくじが、見事に当たりを引いたようで。得意げにガッツポーズを取る男性に、売り場のおばさんは驚きの表情を見せていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 21:47:18.39 ID:F6B+pXEM0
>>464

【きらきらと煌めいていたはずの花弁だったものはあっという間に朽ち果てて地面に落ちる。そしてやがて溶けて消えて、地面の汚れにさえなることなく】
【水蛇は彼女の足に砕かれる。所詮は水だ、特別な防御力は持たずに、あまりにもあっさりと飛び散って――そして相手の足を侵す】
【水しぶきはぱしゃりと地面に落ち、微かに泡立たせた。しかしよほど危ないというほどではない、その濃度が一律であるのか、それとも操作できるのか。それは分からないけど】

【続く相手の行動に、少女は対応できなかった。ただ生き物のように地面を駆け抜けることなら、ある程度対処できたのかもしれなけれど】
【宙を。それも鳥か何か動物めいて――その速度で動かれれば、最初はなんとか視線で追おうとしていたのだろうけれど、そのうちに顔まで動かすようにして】
【眉をひそめて――けれど追いつけない。きらと少女の周りに再び花びらが現れ煌めくが、相手の位置もよく分からないのならば、どう操作するのかも分かりかねるようで】

っ、きゃあ!

【――背後を取られた。警戒してか、それとも彼女のくせなのか、ぎゅっと胸元にまとめていた腕ではなく、華奢な――或いは手折れそうなほどの右足】
【ひざかっくんなんて悪戯があるけれど、それよりも鮮烈に、鮮明に、痛みより先に崩れたバランスが襲い掛かる。足が変な方に蹴り飛ばされて、華奢な身体は揺れ】
【転ぶと理解する。その刹那に光輝くのは少女が先ほどに散らした花弁。乱暴なまでにぎらりと輝き――魔力を注ぎ込まれ、変質する過程の、ひときわ強い煌めき】

ぐ、う――っ、

【少女そのものは崩したバランスを立て直せず、ずしゃりと地面に転がった。転がると言うよりは擦れるようになって、しかし、】
【次の瞬間には身体をむりくりに引きずり起こし、その右手は相手のことを真っ直ぐに指さす、のだろう】

【――発光から、少女が転び、身体を起こし、相手を指さすまで、数秒の間がある】
【その間に何もしなければ――大規模なものではない、片手ほどの数の花びらから、その小ささから考えられない程度の、三十センチほどの――棘、のようなものが形作られる】
【それは相手を追尾するなどということはないが、相手に向かって伸びるのだ。迂闊にしていたら突き刺さるほどの鋭さはあり】
【だけれど予兆のうちに対処しておくか、それとも、その魔力の棘が育つより先に動くか――もちろん、他の対処の余地がないものではない】
467 :リーシャンと老人 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 22:24:19.68 ID:hrw/X6wo0
>>466

【浅い、瞬間彼女はそう思った。というよりかは、あえて膝を曲げることによって衝撃を殺したか。いずれにせよほとんどダメージには至らず、鈴音はリーシャンの蹴りをやり過ごした。】
【技を確実に決められなかったことへの迷いでリーシャンの魔翌力片への反応が遅れる。伸びた鋭利な棘が彼女の体を襲い、これをリーシャンはなんとか上体の動きで回避するものの、そのうちの一片が頬を切り裂いた。】
【彼女の白い肌を鮮血が流れ落ちる。皮一枚が切れただけでダメージは無いに近いが、リーシャンの表情は歪んだ。攻防を変幻自在にこなして見せる目の前の少女の厄介さに対してか。】
【違う。彼女の首元に目をこらしたならば、骨と皮ばかりの細腕が、両手でリーシャンの首をぎりぎりと締め上げていた。爪が彼女の首元に食い込み、苦し気な表情を浮かべる。】

師父…!けほっ、申し訳ありません。今すぐにも奴を血祭りにあげます、今しばらくお待ちをッ…!

【彼女が背負う老人の仕業だった。耳元でなんだかああ、とかうう、とか言っている老人の表情は髪に隠れて見えないが、苛立っている様子だ。】
【首絞めは終えられ、リーシャンはゴホゴホと咳き込んでいる。仲間割れ、だろうか。だが彼女の表情に意外の色は無い。苦し気ではあるが「仕方がない」といった雰囲気の表情を浮かべていた。】

…早く決めなくては

【彼女がそう小さく呟いたのは鈴音の耳に届くだろうか。だがその如何に関わらず、三度リーシャンは鈴音へと突進していく。先と同じ技だ、今度は確実なダメージを与える腹なのだろう。】
【先よりも速度の増した「風々跳(ファンファンティアオ)」を仕掛けながらリーシャンが言う。声の方向と飛び交う影の方向がずれる。より位置情報を多く与えて混乱させるのが目的か。

やるなリンネ!電信柱すらなぎ倒す私の「能力」の込められた蹴りを喰らって無傷で済ますとは!
今度こそ確実に決める!喰らえばその足、千切れると思え!

【先の光景の再演だ。老人の異様な行動のせいもあって、リーシャンの動きは先程よりもキレが増している。】
【だがそれにしても奇妙な二人組である。あんなことをされてもリーシャンは文句ひとつ言わずに「師父」とやらに従っている。本来ならば彼女が攻撃の矛先を向けるのは、背の老人に対してなのではなかろうか。】
【そんな疑問を鈴音が抱いたとしても、そして問うたとしてもやはり彼女は答えないだろう。問いかけることそれ自体に意味があるのかどうかは、また別の話だったけれど。】
468 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/06(土) 22:44:18.52 ID:WV6iDUlj0
/>>465取り消しで
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/06(土) 22:50:57.37 ID:F6B+pXEM0
>>467

【無傷――では、ない。いきなりに変な方向に強い衝撃を受けた足は、一瞬とはいえ、きっと曲がってはいけない方向に曲がったのが見えたはずで】
【地面に転がる彼女は身体を起こしこそしたが、立ち上がる様子がなかった。折れてはいない――かもしれないけれど、少なくとも、いま、動けはしないで】
【ぐうと顔を痛みかに歪める、右足を少しだけ曲げてみようとして、諦めた。……棘もまた、腐り落ちるように崩れていく。桜色の煌めきは、いま、あまりにも少なく】

…………。

【首を絞められている。気が付いて、ただ、彼女は眼をわずかに細めただけだった】
【それはどうしてそんな風にされても従うのかと不思議がるようでもあったが、それ以上に、そんなことがあっても誰かを好きでいる気持ちを知ったことがあるような】
【そんなものを宿して。指さすようにした刹那緩んで、――しかしすぐに力強さを取り戻す。足に損傷こそ負ったが、致命傷ではない。だから、まだ、動く】

セリーナが特訓してくれてるの、強くなってなかったら、そんなの嘘だよ――、――それは嫌だけど。

【言っても、しかし、右足がずきずきと痛む。折れてない、折れてないはず、言い聞かせて。痛みに顰めた眉で、けれど、彼女は笑ってみせるのだろう】
【自分がUTの仲間であることに誇りを持っているような。あのセリーナに特訓をつけてもらっているのだから、こんな、こんなところでは負けないと】
【そう言うみたいに。言い張るみたいに。――どこか得意げなような、痛みをその裏に隠したように笑って】

【だけれどもう相手の姿は見つけられない。その声が狭い路地に反響して耳にわんわんと重なって届くよう。ぐむと顔をしかめて視線は相手を探すけれど】
【見つけるのは残像ばかりできっとそこにもう相手は居ない。予想をつけようにも、その声が。思惑通りに彼女の思考と聴覚と視覚をかき乱し】

あなたがどうしてそのひとを好きなのかは、分からないし、あなたのやりたいことも、わからないけど。
わたしにも、好きなひとが居るの。そのひとが応援してくれる、やりたいことがあるの。……だから、ね、

……ごめんね、この足、あげるわけにはいかないの――。

【そのうちに、少女は緩やかに目を閉じた。だけれどそれは諦めきった自殺願望ではない、少女の黒髪が、艶めく桜色の煌めきに薄く照らされて】
【祈るように結んだ手をそうと開けば、桜色の魔力がそこに集められていて。――りん、と、鈴の音。となれば――と考えるより早く、の塊は水蛇に変わり】
【けれど相手を狙うではなく、上に。上に飛び掛かっていき――そして、空中で、爆ぜる。あの桜色の水が飛び散る――けれど、すぐに気付けるだろう】

【今度のそれに、酸性というのは含まれていなかった。一切合切ただの水、それなら、まるで狙いは相手の気をそちらに向けて、意識を逸らそうとするよう――で、】

――――ッ!

【少しでも動きが鈍るなら、視認出来る。立ち止まってくれるなら、狙える。一番に困るのは、相手がそれを意に介さないこと。そうしたら、狙いはついえる】
【痛みが喉を捻るようでもなんとか声をあげてしまうことを踏みとどまって。だんと鋭い足音、それまで動こうとしなかった少女は、この場で、まるで、】
【蛇が獲物に飛び掛かるような素早さでもってして――捕まえられると“推定”して相手の場所へ、跳ぶのだろう。その手にはきらりと幾度目かの桜色がきらめき】
【現るのは櫻で侍などが使うような得物――そう、刀。けれど刃はうかがえず、黒くて細かな模様があしらわれた鞘に納められたままの、それ】

【もちろん彼女の予想通りに行くとは限らないだろう。まして相手はナンバーズで、まして足を強化できるというなら、予想外の動きをする可能性だって十分あった】
【それでも彼女はそこに賭けた。外れれば、手負いの足で無理をした彼女は相手を捕まえられないままで、痛みに蹲るだろう。それでも、もしも、届くなら】
【飛び掛かる勢いを乗せた袈裟斬り、――右利きであるなら、相手からすれば左の方を狙う軌跡。手負いの蛇が飛び込んでくる。それを勝機と見るかは――相手次第で】
470 :リーシャンと老人 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/06(土) 23:40:19.69 ID:hrw/X6wo0
>>469

【確かな苦痛を感じながらも、けして屈さずに笑う彼女の姿を見て飛び交うリーシャンが青ざめる。その精神力自体目を見張るものがあるが、それはそういう意味では無かった。】
【痛みや恐怖に屈さない誇り高き姿、それは背の老人が最も嫌うものであったからだ。まずい、本当に仕留めなければ私が只ではすまない…焦るリーシャンの精神が決着を急がせる。】
【少女は何を考えてか目を閉じた。絶好の機会と見て飛びついたリーシャンの判断は迂闊と言えただろう。思惑通りに彼女は鈴音の策にはまり、酸の雨への対応で上を見上げた瞬間。】

がっ……!!

【彼女の能力は脚力強化。格闘家として鍛え上げられているとはいえ、腰から上に関してはおよそ無能力者としての防御力しか備えてはいない。】
【その無防備な胴部分に、鈴音の渾身の一撃が直撃した。軽い音を立て骨が折れる。本来リーシャンが飛びかかるその速度も威力に加算され、彼女は後方へ吹き飛ばされた。】
【無様に背中から落ちるわけにはいかない。師父の体を守ることを第一に考え、なんとか受け身だけはとってみせたが、片膝をつき肩で息をする彼女はもはや満身創痍である。】
【お互いに手負いの状態。それでも、鈴音に生き残らなければならない理由があるのと同様、彼女にも殺さねばならない理由がある。何より、少女の「その言葉」を聞き逃す訳にはいかなかったから。】
【リーシャンがよろよろと立ち上がる。受け身の際にぶつけでもしたか、切れた口元から浮いた血を吐きだして見せる。そして彼女は叫んだ。】

好きだ嫌いだじゃない!「恩義」だ!!私が背負っているのは、そんな曖昧な思いでありはしない!!
生きねばならない理由があるというならばこの奥義、受けきってみろ!!

【叫ぶと同時、彼女は空へと跳び上がった。一度の跳躍で5〜6メートル、それを何度も繰り返す。足を負傷した鈴音が見る間に、リーシャンは遥か上空の点となった。】

喰らえ我が最大の技…!

【白雲立ち込める天空から、一匹の龍が降りてくる。重力の勢いを受け時速何百キロにも加速されながら彼女が落ちてくる。】
【しかもその動きは直線的では無い。予測される落下点から鈴音が離れたならば、能力によって空中を蹴り、その落下軌道を変えて逃げる相手を追尾する。】
【ジグザグと空から降るその軌道はまさに雷。彼女の異名の元となった、最大の一撃が放たれた。】

雷落白天龍(レイルォバイティアンロン)!!
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/07(日) 00:03:29.06 ID:D5tutR6L0
>>470

【その感覚は、もしかしたら初めてだったかもしれない。刃でなく――鞘でひとを打つという感覚。刃の切り裂く鋭さとは違った、手ごたえ】
【後ろへと吹き飛ばされた相手の身体、自分だって飛び掛かった勢いがある、華奢で軽いとはいえ人並みの重さで着地するなら、確かに彼女からも悲鳴のような声が聞こえた】
【足の痛みがいよいよひどくなってきたよう。鼓動のたびにずぐずぐと痛む、まるでそこに心臓が出来てしまったように、強く噛んだ唇、額にはじとりと汗が浮き】

だけど……だからって、苦しむ必要は、きっと、ないの。

【どうしてそんな気持ちを知っているのか、分からなかった。思い返す限りにそんな気持ちは知らないはずだのに、胸が痛い気さえする】
【それとも足の痛みが巡り巡って胸まで届いたのか。立っているのがやっとなくらい、重症でいえばきっと相手のほうが酷い。自分がしたことだ、だけど、】
【機動力をそがれてしまった。殺されるかもしれない、それが、ここに来て目の前に対峙しているよう。――そして、きっと、彼女は自分を殺すのだろう。座り込んでしまったら】

……わたしはね、生きてなくっちゃいけないの。生まれてくるときに、そうして約束をしたの。大切なひとと――、
だけど、いまは。自分で生きるって決めたから、生きてるの。わたしがやりたいこと、やるために、生きるって決めたの……我儘のために。

【或いは杖のようにして身体を支えていた刀をまたゆらりと持ち上げる。――で、ろ、り、と。まるで嘘みたいに鞘が溶けていく光景は、或いは悍ましいのか、美しいのか】
【中より現るのは“桜色の水”を纏った刃。するりと透き通ったように見えるほどに冴えた銀の刃。これこそが本当の姿なのだろう】

その我儘で一番大切なひとを悲しませてるのも、分かってるの――だけど。

【「死んじゃ駄目って、知らないお姉さんに言われたばっかりだから」】

【――それはきっとほんのわずかの時間だろう。だけれど彼女は確かに取り残されて、絶望的なまでに暴力的な流星として降り注ぐ彼女を、じっと見上げる】
【願いごとをするにはあまりにも早い。それでも手慣れた、ずうと使い続けている得物を扱うならば、或いは魔力を繰るよりも、早く出来る気さえして】
【刀がばらりとほどけるように無数の花びらへと変わる。それを呼び水にしたように、少女が湛える魔力は堰を切ったように、まるで河川の氾濫のように、溢れ出し】
【やがて少女は視認すら難しいほどに――けれど足音がない。高いヒールの靴だったから、少しは音がするはず。ちらりと見える黒髪は、はじめと変わらぬ場所にあり】
【それなら移動さえ諦めたのかもしれない。まるで花開く前のつぼみのよう、芋虫が身体を作り変える蛹のよう、気付けばぎゅうと一か所に集まりきった桜の花びらは】
【訪う衝撃から少女を護るためのもの、一見すれば、相手を傷つけるためのものではないように見え】

【とうてい言葉にしがたいような音で、毬のようになった花弁の塊は、相手の奥義を受けた。ひとつひとつにそれなり以上の魔力が込められたそれらは、けれど、】
【衝撃をすべて殺すことなどできずに、その中身ごと――吹き飛ぶことになる。その最中、ばらりばらりとひとひらずつが剥がれ落ち辺りへ舞うのだろう】
【それは紙の淵が指を切ることがあるような、その程度の鋭さを持ち。あまりにその中に身を置けば、致命傷にはなりえないだろうけれど、細かな傷くらいなら負うかもしれず】

――――っ、

【――だけれどそれは余談でしかない。無数の花びらごと壁にたたきつけられた彼女は、その花びらの塊を維持することも出来なくなってしまったよう】
【防壁があったところで衝撃ばっかりは変わらない。その華奢な身体をほとんど威力の衰退もないままで壁にたたきつけられて】
【そのまま、姉妹喧嘩に巻き込まれて投げつけられたぬいぐるみかのように、ぼとり、と、地面に落ちるのだろう。残った花弁がちらちらと少女の上に落ちて――】
【――それが落ちることもないほどに身じろぐことが、精一杯のようだった。呼吸はもちろん、意識もあるよう――だけれど】
472 :リーシャンと老人 ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/07(日) 01:05:38.00 ID:mjqQikN/0
>>471

【リーシャンの奥義「雷落白天龍(レイルォバイティアンロン)」によって、路地裏には巨大な穴が開いている。小規模な隕石の衝突にも似た衝撃がコンクリートを砕いた結果だ。】
【その爆発によって周囲は濁った粉塵が巻き上がり、視界を悪くさせていた。もうもうと立ち込める煙の中から少女が現れ、鈴音の前に立つ。】
【全身ボロボロの姿だった。能力で強化されているとはいえ強大な負荷のかかった足は、到底戦闘を続行できるような状態では無い。落下の際の衝撃は上半身にも達し、体の内部の損傷もより激しくなっているようだ。】
【更には花弁の塊に突っ込んだことにより、体中が切り裂かれ、血を流している。しかし背負われた老人は、鈴音からは見えないものの無傷のままだ。全てのダメージを、自身を盾にして老人に届かぬようリーシャンが受けたのだろう。】
【ゴホ、と彼女が咳き込む。その動きだけで体が痛むようで、表情を歪めつつも彼女は鈴音を見下ろした。】

…泣いたり叫んだり、しないのだな。

【その目ははじめ会ったときの冷徹なものではなく、むしろ穏やかなもの。尊敬する相手を見るような、そんな目だった。】
【ふぅ、と息をついて彼女はその場にしゃがみ込む。膝を折りたたみ、まるで見下ろしているのが鈴音に対して失礼だとでも言うように。】

運が良い…のじゃあ、無いのだろう。決意のもと、意図的にか。…凄いな。
今、君が痛みで泣き叫んでいたのならば、師父は完全にお目覚めになられていただろう。もしそうだったら、私は君をこれから拷問しなきゃあならなかった。…とことん悪趣味な方法でだ。
とことん怯えない君に、師父はお飽きになられたようだ。…今は半ば眠っている。だからここに今、私が君を殺さねばならない理由が無くなった。

【鈴音がなんとか目をやったならば、リーシャンに背負われる老人がこくりこくりと舟をこいでいる姿が見えるだろう。】
【今の言葉から、リーシャンと老人の関係性が見えてきただろうか。すなわちこの老人は他者が泣き叫び、血を流し死んでいく様が見たくてリーシャンを良いように使っているのだ。】
【そして彼女は老人を「師父」と呼び、恩義のために従うと言った。つまり老人は彼女にとって、武術の師範であるとともに命の恩人でもあるのだろう。】

生まれてくるときに約束をしたとか、君の望みで誰かが悲しむとか… 君は難解なことを言う。私にはよくわからない。
だが、やりたいことのため生きるというのは私も同じだ。私も私がやりたいことのために生きているし、全ては自分の責任だ。
師父には従いたいから従っている。師父が殺せというならば[ピーーー]し、いたぶれと言うならばいたぶる。それが許されぬ行為であることも知っている。…わかったうえでやっている。
…だから、別に苦しくなど無い。自分で決めたことだ。

【機関員として老人の言われるままに悪事を重ねる目の前のナンバーズは、そんな人生を老人のせいにするつもりも無いのだろう。苦しくないと、その言葉は強がりだったかもしれないけれど。】

だいぶ派手に戦ったからじきに人が来るだろう。白昼だ、場所は悪いが訪れる人はそう悪くないのが来るだろう。多分、助けが来るはずだ。
…戦いは好きじゃないのだろう。態度で分かる。今日は…いや、なんでもない。

【リーシャンは謝罪の言葉を口にしかけて、止めた。気恥ずかしさでは無い、今まで自分が殺してきた人々に対して不公平だと考えたからだ。】

…長話をしているわけにはいかない。師父がお目覚めになる前に此処を離れるとしよう。
…私も私の我儘のために生きている。そのせいでたくさんの人々が悲しんでいる。…まぁ社会悪である以上、私の方がよっぽどタチが悪いか。
さらばだ、リンネ。

【最後にそう鈴音の名前を呼んで、リーシャンは痛む足に鞭打ちながら、老人を背負って白昼の空へと消えて行った。】
【加虐趣味の老人と、それに自由意志で付き従う少女。自身が許されない存在であることを自覚しながら悪を働く彼女に、鈴音の存在はどのように感じられたのだろうか。】
【鈴音が自身の境遇について話すならばそれを聞き届けてから彼女は消えるだろうが、どちらにせよリーシャンの今後は今日の日の戦いによって少し変わってくるのだろう。】


/こちらはこれにて〆となります、長時間有難うございました!
473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/07(日) 01:30:45.29 ID:D5tutR6L0
>>472

【身体中が痛かった。背中から壁に突っ込んだとは言え、衝撃は身体の中にまで潜り込み。意識が途切れそうになる、身体を動かす方法を忘れてしまったみたいに】
【その痛みを噛み締めて、殺されてしまうだろうか、と、ぼんやり考える。そうしたら約束を破ることになるな、とも。――約束したわけではないけど、忠告を無視することになる】
【それになにより連絡が取れねばUTの店やセリーナに迷惑をかけるだろう。電話……と思っても、荷物は広場に置いてきてしまった。――近づいた相手を感じ取りながらも】
【わずかに頭を動かして横目で見るのが精一杯なよう。見上げる瞳は恐れてもいなかった、怒っているでも、なくて。強いて言えば――死んで迷惑をかけることを、悔やんでいる】

……泣き虫、だもの、すぐに泣いちゃうの……。だから……。

【自分は泣き虫だから。そんな言葉は答えになっているだろうか。じっと相手を見つめる、自分をこれから殺す相手を、ただ見ていたいという風に】

泣いちゃ、駄目なの、そしたら――濡れた手じゃ、誰かの手、掴んであげられない……から、
勇気を出して、その手を伸ばしてくれたのかもしれないの。それを、落としちゃったら、意味、ない……でしょ。
誰かを助けるなら、自分のこと、終わらせてなくっちゃ、いけないんだよ……。わたしはね、そうやって、思うの――。

【自分のことを弱虫で泣き虫だと認識している。だから、誰かのために“それ”をやると決めたとき、そんな自分は、制御できるようにしようと思った】
【無くしてしまうのじゃない、それでは、自分が自分でなくなってしまう。悲しいことも辛いこともそこにあって、楽しかった記憶は思い出せないけれど、】
【それが自分なのだから。その自分に区切りをつけて、誰かのために何かをやる。誰かを悲しませて苦しませて壊すだけの自分を、終わらせる、終わらせた、】

…………そのひとはね、わたしが生まれてくるのを、ずっと待っていてくれたの。ずっとひとりぼっちで、真っ暗な中で、まっててくれたの。
だけど、いま、ひどいことをしてる……悪い子、だね、わたし……、……。

【ぽつり、と、言葉が漏れる。それはもしかしたら相手には向けていないのかもしれない、自分で、そのひとが、そうであると認識するためだけのものなのかもしれない】
【悪い子だと呟いて、そこで初めて、ほんの一粒だけの涙を落とす。けれどそれをぬぐうことも出来ないまま、眼にわずかに涙の粒を乗せて、】

――だけどね、苦しいは、毒だよ。すごく苦しいのに、どんどん、分からなくなっていくの……なにも……。
そのうちに苦しいのも、悲しいのも、辛いのも、嬉しいのも、楽しいのも、分からなくなっちゃうの……。

【「だから、気を付けて」】
【それだけは凛とした声だった。明確に相手へと向けて、覚えていてほしいように】

うん――だいじょうぶ。すぐに、治るから……。
ばいばい、ありがとう――。

【謝らなくていい。だけれど、殺さずにいてくれて、ありがとう】
【そうやって紡いだ少女は、安堵したのか、それとも限界だったのか。その言葉を最後に、意識を手放したようだった】
【リーシャンが予想した通り、その数分後には訪れた人間によって運びだされる彼女も目撃されており――確かに、その命は助かったのだろう】

【――たんぽぽ。それが彼女が誰かのために伸ばした手の、名前だった。お金がなくてもUT(そこ)に行けば食事を摂れる、それも、一般家庭で楽しまれるような】
【暖かいものは暖かく、冷たいものは冷たく、なんてことなく“普通”の食事。これに関連することは、調べればある程度は分かるだろう。――或いは、彼女が孤児の出であることも】
【どこかのインタビューか何かでしゃべった記憶があるものだから。……これに穴をあけるわけには、いかなかったのだ。だから、死ねなかった。死ぬわけにいかなかった】
【どちらにせよこの怪我ではしばらくは休養かもしれないけど。――死ぬよりはずっとましでしょう、と、きっと、思う】

/お疲れ様でした!
474 :宣教師 :2016/02/08(月) 00:10:05.98 ID:kuw1E3D+0
おーぷんでマリアの人が立てたスレッドに移住しましょう遠未来風SFなりきりがやってみたい人集まれ!というスレッドですこのスレッドよりも人が居て楽しいですよ
475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/08(月) 00:43:40.04 ID:br4C1L0D0
【路地裏。日々争いの絶えない其処であるが、今宵も例外なく其処で一つの不穏な出来事】
【壁に追い詰められているのは金色の髪の少女であろうか。手にした杖をギュ、と握るも其れを振るうだけの勇気は無いようで】
【トン、と背が壁にぶつかり最早逃げ道が無い事を知る。対して、男達二人組は笑みを浮かべながら近寄って】


「――――だっ、誰か!!誰か助けて下さいッ!!!」

【響き渡るのは悲痛な悲鳴。歳からして恐らくは17程度の女】
【無論、男二人に対して対抗する力は無い。――――無い、筈である】
【何はともあれ比較的表通りに近い場所であるが故に助けを求める声は聞こえるかも知れないし】
【或いは巡回中の自警団だとかが発見する可能性も否めず】

【――――徐々に詰め寄られる距離。男達が得物を手にしていない事が幸いだが……猶予は、余り無い】
【然れど見るからにただのゴロツキなのだから多少腕っ節が強い者であってもどうにか出来るか】
476 :アビ・ジャハンナム ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/08(月) 04:14:46.11 ID:vBYkWHXT0
>>475

【その時ちょうど、少女が暴漢に襲われんとするその場へ一人の女が歩き近寄ってきていた。】

んっ

【遠方からの叫び声に反応して女は目をやり、そしてその状況に気づいたゆえに出た声だった。】
【少女の方からは距離があり見ることは難しいだろうが、女性にしてはかなり長身の赤い短髪の女である。白い軍服風の姿の上から黒のコートを羽織り、腰には細身の剣を差している。】
【彼女の名はアビ・ジャハンナム。水の国の自警団に所属する者であり、この場には別の事件についての調査でやってきたから、少女と暴漢たちに出くわしたのは偶然と言えよう。】
【街の平和を守る自治組織の一員である以上、彼女には金髪の少女を助ける責務がある。ここはさっそうと暴漢の前へ躍り出て、少女を危機から救い出すのが普通だろう。】
【しかしあろうことか彼女はさっとその場の物陰に隠れ、少女を取り巻く状況を観察し始めた。なにか戦略があってのことでは無い、これは完全に彼女の興味本位の行動だった。】

またベタな…

【のんきな表情をしながらそう呟く。明らかに面白半分で彼女はことの成り行きを見学していた。】
【およそ自警団らしからぬ行動であるが、さすがに少女に危害が加えられるような事態が起こるならば彼女は助けに入る。また物陰に潜んではいるものの、少女が気づくことも可能な程度の距離に彼女はいた。】

477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(青森県) [sage]:2016/02/08(月) 18:51:49.62 ID:Lq3kS5/po
【路地裏】


んァ〜……腹減ったな

【気の抜けた気怠そうな声が路地裏に響く】
【声の元を辿れはそこには伸びをした一人の男が立ち尽くしていた】

【金髪ソフトモヒカン、黒のスカジャンに】
【両手の十指のうちいくつかに人間の臓器や器官を模った趣味の悪いシルバーリング】

【男の容姿はここ路地裏によく見られるチンピラの様で】


飯、探しに行くか……ヒャヒャッ

【男はそう言うと耳障りな笑い声をあげふらふらと歩きだした】
478 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/08(月) 23:35:14.86 ID:JgyzEVa5o
【路地裏】

【ここは世界でも有数の都市の外れに位置する言わば下町の様な区域の路地裏】
【いつ建てられたかわからない古いビルがギュウギュウに並びその路地は幾つも伸び】
【昼間だというのに薄暗かった。また、雪が少し振る、よいとは言いがたい天気だった】

【一人の少女が歩いていた。少女と言っても十代後半、背伸びした化粧と格好で少女には見えにくい】
【高いヒールのブーツで歩きづらそうにスマホの画面を見つつ、路地裏を歩く。…それを見ている人影がいる】
【路地裏の奥へと消える。少女は何か違和感を感じ取り、振り返ったがそこには誰もいない。…気のせいか】

【気を取り直してまた歩き出し、角を曲がった先に人影が立ちふさがっていた。少女はスマホに気を取られていたので】
【気づくのが遅れたが人影が声を発したので、彼女はある一定の距離のところで気がついた】

…アシュリー・コートワールだな?

【酒やけした若そうな男の声。人影はまさにと言った風で、背が高く、深く被ったフェドーラ、トレンチコート、サングラスと】
【映画に出てくるマフィア、殺し屋といった様子。………あああ!殺される!と少女は頭を過る、理由までは思いつかない】

『―――いやぁぁああ!!誰かー!!殺されるわ!!助けて!!』

【生きようという本能が恐怖をまさる。スマホを殺し屋に投げつけて、精一杯の拡声器ばりの声で叫んで走りだす】

…いや、違う違う!オレはアンタの親父さん…ちょっと、聞いて…あ、おいっ!!

【投げつけられたスマホ(痛い)を拾って、追いかける。クソ、足速いな。というかこんなとこ誰かに見られたら相当マズい】
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/09(火) 00:26:12.52 ID:UyxX6VKl0
>>477
/申し訳無いです、後ほど置きレスでお返ししても宜しいでしょうか……!
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/09(火) 02:32:28.02 ID:UyxX6VKl0
/>>479>>476の方宛ての安価ミスでした。本当に申し訳無いです……!


>>476
『路地裏の悪魔と呼ばれたこの俺様の財布を盗むとは度胸があるなァお嬢ちゃんよぉ……
安心しろって。その顔が腫れ上がって誰だか分からなくなった頃には許してやるって言ってるだろォ……?』

『ヒヒヒ――。それとも、泣いて謝って詫びるかァ?
最近女を抱いちゃいねぇからなぁ……青臭い女だがソレで許してやってもいいぜェ?』

「だ、だから……っ!貴方達の財布の事なんて私は知りませんし、私は貴方の事何て何にも――――!!」

【男の言葉から察するに、少女が財布を盗ったが故に起きた出来事――らしいが】
【はて、誰がどうみても非力な少女。握る杖が震えている所から窮地を脱するだけの力量が無い事も分かる】
【ジリジリと詰められてゆく距離。…………四歩、三歩。二歩】
【――――肩に手が掛かるその瞬間、少女の視界に件の女性が入る事になるのだろう】


「せ、先輩っ!!助けて下さい!
私、何も知らないのにさっきからあの人達が因縁を付けてきて私に乱暴しようとするんですっ!!」

【上手く男二人の間を潜るようにしてその手を躱し、そのままの勢いで女性の元へと駆け寄る事になろうか】
【……さて。聞き間違いで無ければ少女は女性を“先輩”と呼んだ】
【かといって自警団で顔を会わせた覚えも無いのだろうから女性ならば直ぐに見破れる嘘】
【助けを求めるその行為を無視するもどうするも女性の自由ではあるのだが】


『先輩、だァ……?おい、そこの姉ちゃん……まさかそのガキンチョのお守りか何かじゃねェだろうな?』

『先輩だろうが姉妹だろうがどうでも良いけどよ。さっさとソイツを引き渡さないとお前も一緒に“詫びて”貰うぜェ?』

【少し遅れて男二人が女性の存在に気付く事となり。所詮相手は女、と侮ったのか高圧的な態度でその子供を渡せと告げる事となろう】
【対して少女は、軍服の裾を掴み不安げな表情で見上げているのだけれど】
481 :アビ・ジャハンナム ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/09(火) 03:18:15.67 ID:wXDXdVfK0
>>480

【やべ、気づかれた。内心そう毒づいて軍服の女は物陰からその姿を現した。ゲスな暴漢とそれに襲われるかよわい少女、というあまりにもベタで逆に奇跡的な展開に遭遇したことに対する感慨に浸る時間はもう終わりである。】
【改めて見ると本当に背の高い女性だ。180cmはあろうかという長身に、赤の短髪はパーマがかかっており、その上から軍帽を被っている。】
【黒のコートの両肩には「A」「B」の文字が刺繍されており、軍服風の白い服は水の国の自警団のとある支部に所属することを示す制服だ。】
【彼女はその口汚い言葉に耳も貸さず男二人を一瞥する。】

(ただのチンピラだな… これなら能力無しでも楽勝…)

【そう考える彼女は内心のんきなもので特に攻撃的な感情は抱いていなかったのだが、生まれついてかその目つきはとても鋭く、それだけで一般人程度ならすくみあがる程の威圧感を発していた。】

あん?先輩?

【少女の言葉に怪訝(けげん)そうに反応して見せるジャハンナム。当然ながら少女のことなど何も知らない。それに少女らの会話もどこか妙だ、そんなことを考えながら彼女はとん、と地面を蹴った。】

とりあえず当て身。

【その姿が消えたかと思うと、即座に女は男二人の背後に回り込んでいた。見れば、いつの間にか暴漢らは頭の上で黄色い星を回しながらその場に倒れ伏している。】
【女の手には尖剣…というか、剣は剣なのだがその先端部分がフライパンのような形状に変化した奇妙な道具が握られていた。何かの能力だろうか。】
【掴まれた袖を振り切る形で移動した彼女が金髪の少女に向き直る。】

こいつらがやかましくしてるとゆっくり話ってわけにもいかないからねぇ。
私はアビ・ジャハンナム。自警団。こいつらは見るからに悪そうな顔してたから気絶してもらった。
んで、えー…名無しのお嬢さん。きみ私に厄介ごと押し付けようとしなかった?普通見知らぬ人に助けを呼ぶときに「先輩」なんて呼ばないよねぇ。
あと財布盗んだって本当?なんかきみすっごい怪しい雰囲気するんだよね、勘だけど。そのへんのことおねーさんに教えてくれない?

【にっこり笑うその表情には少女に向けての明確な疑念が篭められていた。彼女は金髪の少女の不自然な言動を悪意あるものとして受け取ったようである。】
【たまたま訪れた人間に罪をなすりつけ、あわよくば自分は悪事を働いたうえで無罪放免。それが彼女が即興で脳内で描いたシナリオだった。】
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/09(火) 03:43:01.23 ID:UyxX6VKl0
>>481
『おいおい、女が何一丁前に俺様に向かってガン送っちゃってる訳ェ?
世間知らずの女には世の中の厳しさってヤツを――――……ウボォ!!!!』

『あ、相棒ーーッッ!!女ァ、生きて帰れるとは思って――――ヘブォ!!』

【力量を計れるだけの経験も無ければ実力も無い。結果、瞬殺の二文字に相応しい答えがその場に広がる事となる】
【恐らくは気絶させられた事にすら気付くことは無いのだろう。男達からすれば痛みを感じる暇も無く気を失ったのが幸いか…………】
【否、ある意味では自称路地裏の悪魔の名が汚れた事を嘆くのか】
【何であれ、厄介事は終わった。有り難う御座いました、と一度お辞儀をした後にその場を去ろうとして――――】


「へっ……あ、あの。いや、お姉さんは強そうだな〜、って思って咄嗟に助けをお願いする為に出た嘘と言いますか……
財布なんか盗んでませんよ!だって私、この人達とちょっと横を擦れ違う時に因縁を付けられただけで……」

【そそくさとその場を立ち去ろうとしたその姿も懐疑を抱かせる要因の一つとなろうか】
【……思えば。悪漢達は因縁を付けるにしても態々財布を盗った等と具体的な因縁を言い表す者は少ない事は自警団たる彼女ならば分かるだろう】
【精々肩がぶつかっただとか睨んできたからだとかその程度。況してや、乞食にも見えない少女に対して財布を盗んだ。など】


「助けて貰った事には感謝しています。でも……でも、お姉さんまで私を疑うんですか……?私、何にも悪い事なんてしてないのに…………
だって、可笑しいじゃ無いですかっ!!なんであんなに壊そうな人からお金なんて盗らなきゃ――――……」

【潤んだ瞳。それは歳相応にして、人によっては同情を抱かせるもの】
【信じて貰えない事に肩を落とし、涙を一筋流したその時。…………ぼとり】
【落ちたのは少女に似合わぬ重そうな皮財布。中に詰まった金は子供一人で持ち歩くには不用心すぎる金額で在り】
【――――――……空白。沈黙。どう見ても男物であるのはこれまた明白】
【これは……。なんて言葉には出すが後は続かず】
483 :アビ・ジャハンナム ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/09(火) 04:12:48.40 ID:wXDXdVfK0
>>482

【落下音。もはやその財布に目をくれることすらせず、ただ彼女は少女に向かい満面の笑みを浮かべながら肩に手を掛けた。】

さ…署まで、来ようか。

【よく見るとうっすら開かれたまぶたからは金の瞳が覗いている。置かれた手に籠められた力はさほど強くないが、絶対に逃がさないという意思を感じさせる雰囲気を発していた。】
【このあたりの自治体でも当然ながら窃盗は犯罪。この場合、現行犯であるから逮捕状を待つ必要すらない。見たあたり未成年であろうから刑務所に行くことは無いが、それにしたって少女にとって非常にまずい事態に陥ることは確実である。】

お嬢ちゃん知ってる?私の生まれた国では嘘を付いた人は死んだ後に地獄で閻魔翌様って偉い人に、ペンチで舌を引っこ抜かれるんだよ。
…ところで私は今ペンチを持っている。

【みし、と肩にこめられる力が強くなった。痛みを感じる程度では無いだろうが、彼女の発する威圧感が一層に増す。】
【ジャハンナムはその時あ、と呟き、思い出したように落ちた財布に手を伸ばした。開いて中をあらためている。その際に小銭のいくつかを拝借したように見えたのは気のせいか。】
【彼女は金髪の少女から手を離すと、財布を掴んで先の男達が横たわる場所へと放り投げた。すたすたと男達のもとへ歩いていき、二人の体を起こすと素手で顔面を殴り始めた。】

おら起きろ!財布取り返してやったからさっさと持ってここから離れな!つーか二度とここに来んなよ、私の仕事が増えるからな!

【血を飛び散らせて彼女は男どもを殴りつけながら言う。鬼の所業である、どちらがゴロツキかわかったものではない。】
【そんなジャハンナムの背を見ながら少女はどうするだろうか。今のうちに逃げてしまうのが得策ではあろうが、眼前の暴力女から逃げ切れるのかははなはだ疑問である。】
484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/09(火) 04:42:34.34 ID:UyxX6VKl0
>>483
「――――ッチ。五月蠅いなぁ、離せよッ!」

【先程までとは打って変わり、荒げた声】
【女性が財布を放り投げた次の瞬間であろうか。気付けば、その財布は少女の手中へと戻っている事となる】
【所謂神速か――――それにしては風すらも生じる事が無かった。ならば、やはり“異能”か】
【物を転移させる力か位置を戻す力か。何で有れ、常人で無い事は確かであり】


「大体にしてそいつ等もアンタもお嬢ちゃんお嬢ちゃんって、僕は男だっての!
ちょっと女の子の格好してれば直ぐに色々釣れるんだから楽だよねホント
どうせそいつ等のだってまともに稼いだ金じゃ無いんだから、僕が使ってやった方が金を奪われた奴等だって喜ぶだろ?」

【得意げに明かすのは自身の性別。とは言えど、確かに言われなければ女としか見えず】
【果たしてそれが男として良い事か否かは分からないが――――少なからず、弱い獲物としてのカモフラージュは成功しているのだろう】
【手にしていた杖をクルクルと回せば集い始める風。同時に、路地裏に転がる大小様々なゴミもその場に集まり始めて】


「そんなわ・け・で。このお金は僕が貰っていくからね、おねーさん♪
本当だったらアンタが持ってる金目の物も持ってく筈だったのに……ま、良いや。コレだけあれば何日かは暮らしていけそうだし」

【にこり、と小憎たらしい笑みを向けたならば手にした財布をぷらぷらと振るのだろう】
【結局は追い詰められていた事自体も更に獲物を釣るための策。しかし、今夜ばかりはその相手が悪かった】
【武力が敵うことが無いのは戦わずとも分かる。ならば大きなリスクを犯すよりも堅実に――――と】

【少女――否、少年を覆い尽くす程にゴミが集った後に其れ等は一気に四方八方へと勢い良く散乱する事となる】
【ぶつかった所で精々切り傷や軽い打撲程度。但し、視界を覆うには十分】
【素早い少年からすれば僅か数秒の間視界を奪えれば良い。暴風が止んだ頃には、少年の姿も闇へと紛れて消えている事だろう】



【――――殴り起こされた男達についてだが。これまた飛来した物体の当たり所が悪かったのか、双方共に気絶する事となる】
【放って置いても良いのだろうが、腹いせとばかりに余罪を言及して牢にぶち込んでしまうのも良い】
【それは女性の匙加減次第だった、とか】


/そろそろ時間も良い感じですのでこの辺りで……!お相手頂き有り難う御座いましたですよー!
485 :アビ・ジャハンナム ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/02/09(火) 05:18:28.17 ID:wXDXdVfK0
>>484

【うお、と思わず声が漏れる。意表を突かれる形で脱出に成功した少女に向き直り、告げられるのは衝撃の事実。】

男ぉ!?全然見えない!!

【窃盗についての嘘は見抜けても、流石に性別すらあざむいているとは読めなかったようで素直に驚く。態度の豹変についてはさほど驚いてはいなかった(ムカついてはいた)が、それにより彼の異能の発動への反応が遅れた。】
【小さく舌打ちをして、風とともに飛んでくる幾つもの障害物を手にした尖剣で弾き飛ばしていく。キン、キンと音を立ててゴミは弾かれ、その全てが倒れる男達の脳天に直撃していく。】
【この程度の攻撃で傷を負うような鍛え方はしていない。だがその全てを切り伏せたあとには少年の姿は消えていた。】

あんにゃろう、逃がすか!『百鬼万来(ひゃっきばんらい)――――』

【能力を発動しかけて、途中で詠唱を止める。今から発動しても捕まえるのは困難であることを悟り、彼女の周囲に渦巻き始めた力は霧散した。】

あーくそ、逃げられた… あの野郎、許さん!私を小馬鹿にした罪として次会ったときは地獄送りだ!!

【しかし感情の矛先は収める場所が無かったらしく、怒りをあらわにしながら彼女はその場を去っていった。】
【少年の一件により、もはや彼女の脳内からチンピラ二人組のことは完全に消え去っていた。ゴミや物質を操作する、杖を持った女装少年はこの瞬間から彼女等自警団の捜査の対象となるのだが、男二人のことは一時間もすればその顔すら忘れているのだった。】


/こちらもこんな遅い時間にお付き合いいただき有難うございました!
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/10(水) 22:45:55.04 ID:Cp/KibGk0
【街中――中心街、その、路地裏】
【晴れた日の猫の目みたいに細い三日月の僅かな光も届かない場所、建物ばかりごっちゃり詰め合わせたような、澱んだ空気の場所】
【けれど今は煙で燻ったようになっていて、甘たるい、チョコレートのような臭いが立ち込めて】

…………帰りたい。

【こんなにも燻るのだから何本目かも分からない煙草を薄汚れた壁でもみ消す、今更捨てても誰も頓着しないだろうに吸い殻を携帯灰皿に押し込んだ彼女は、】
【物語上で重要なことを教えてくれるNPCみたいな重厚さで呟くのだけれど内容は大したものでもなく、コートのポケットから出した携帯電話で時間を確認すれば】
【あっさりと「帰りましょう」なんて呟くのだった。――甘ったるく猫をとろかすような癖のある声、嘘みたいに甘い煙草の副流煙の中なら、妙に似合っても聞こえて】

【黒猫の毛色をした髪、緩く内巻きのセミロングヘア、その割に瞳は宝石のようにぺかりと艶めく青りんご色で、いやに夜の闇の中で目立っていて】
【それこそ野生動物の目のようでもあった。肌は化粧でごまかされているけれど相当に蒼白く。とはいえ病弱には見えない、変な様子があり】
【ぴったりとボタンを締め切った黒のコート、足元は薄手のタイツとヒールの高いパンプスだけが見えて。女性的な身体つきだけが、服の上からうかがえ】

こんな寒い日に仕事する意味はないでしょう、……常識的に考えるべきでしたわ、寒い。

【なんて緩やかに自分を肯定しながら足を向けるのは大通りのほう。けれどそこまではまだだいぶんと距離があって】
【途中で誰かとすれ違ったりしてもおかしくはない、――だろう。そうなれば、お互いに無視するわけにはいかない程度に、この道は狭くって、煙たい】
487 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/11(木) 22:18:14.35 ID:pY61XXBK0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――風の国 公園】

……心を昂らせたり研ぎ澄ませたりってのは、今までやってきたが……円やかにするってのは、中々慣れねぇもんだな……
けど、そうでもしないと柔軟性が無くなっちまう……新しい事ってのは、総じて難しいもんだなぁ……

【前面を開いたままで青いコートを羽織り、魔術師である事を如実に表す青のハットを被った】
【手には指輪と、グリップの部分に赤い石をあしらわれている、金属製の棍を握り締めている】
【がっしりとした体格の、深い眼窩が鋭い視線を放っている、身長180cm前後の居丈夫が】
【1本の大木の根元に腰をおろし、瞑想する様に居住まいを正して、背筋を伸ばしている】
【この国に特有の、止む事の無い風が、枝葉をざわざわと鳴らしていた】

……へっ、今までリラックスって奴が、遠ざかってたってのがあるのかよ?
ああいう心境ってのは、こう静かな環境でも……狙っても上手くいかねぇって……慣れ過ぎたんだな、殺し合いって奴によぉ……

【身じろぎせずに瞑目しながら、追憶に耽る青年は思わず苦笑する】
【自然の営みを感じ取れる、静かで穏やかな環境の中で、泰然自若とした様子で、青年は大木の幹に背を預けた】



【――――所変わって、雷の国 路地裏】

……くっ、こいつら……どこで嗅ぎつけてきたのやら……

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【どこか荒く息を弾ませ、どきつく鼓動を宥めようとする様に、胸に手を当てて佇んでいる】
【――――足元には、銃弾を頭部に喰らって絶命している、2人の男女の死体があった】
【同じ様に転がっているハンドガンや。魔石を加工したと思しきナイフの様な物から、彼らもある程度武装していた事が窺える】

……全く、今日はノリが良くないな。こんな日は、ツキがあまり付いて来ないもんだ……
こいつらの魂だけ頂いて、さっさと引き上げるに限る、か……

【思いだしたように、腰のリボルバーを引き出すと銃弾をリロードする。不快な物を見た様に、男性は頭を振りながら呼吸を整え始めていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
488 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/11(木) 23:22:03.58 ID:pY61XXBK0
/>>487取り消しで
489 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/12(金) 19:34:34.15 ID:GnEmUDbwo
>>478で再募集します
490 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/12(金) 21:41:54.84 ID:0WeZ7rCr0
【風の国――UNITED TRIGGERの店舗内】
【――時刻は昼過ぎもいくらか過ぎたころで、見れば、ちょうど時計が三度音を鳴らして】
【誰かが扉を開けるなら、本当にちょうど――誰も居ない店内、いかにも三時のおやつを始めようとした少女を見つけるのだろう】

ふんふふん――、セリーナに見つかったら食べられちゃうから……。

【かたんとティーポットとカップを机に並べて、それから最後に持ち手付きのケーキ箱を机の真ん中に、大切そうに置けば】
【上機嫌な鼻歌まじりで箱からケーキ――というよりもタルトを取り出して、放射状に切っていく】

【髪は腰の長さまである黒髪、少し長い前髪を編み込むようにしていて。ちらりと見える右の耳にだけ宝玉の欠片をあしらったピアスをしていて】
【瞳は左右で色違いの黒と赤色、丸くて釣ったかたちの眼はどこか蛇の目に似るようでもあって。肌は抜けるように白くて、ほのかに頬が赤く】
【生成りの襟元と大きくあしらった黒色のリボン、紅色を基調にしたワンピースは、スカートの背面にふっくらとした段のフリルがあしらわれて、丸く揺れ】
【丈の長い靴下と黒色の踵の分厚いパンプス、ころころと足音が、遠くで放置されたラジオの音に混じって聞こえて】

……ミハエルもお誕生日だよね、今年は何にしようかな……、そんなにいろいろ作るなら、やっぱり下のキッチン貸してもらわないと……。
お客さんにはクッキーとかでいいかなぁ? ――いっぺんに作れるもんね、クッキーにしようかな……。常温で置いておけるし……。

【まだ十六程度の少女だった。それだのに居て当然と言う顔でお茶の用意なんてして、むしろ、食べ始めている光景】
【自分のために取り分けたチョコレートの生クリームをたっぷりと載せた生チョコレートタルトを頬張れば、あどけなさをたくさん残す顔を嬉しそうにほころばせ】

おいしい。

【なんて、鈴の音とよく似た高く澄んだ声音でころころと笑って、「分量はこれでいいみたい」なんて、背もたれに緩く身体を預けた】
491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/13(土) 20:38:04.04 ID:mqZ8urRV0
>>490
/再募集でお願いします……
492 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/13(土) 21:11:29.26 ID:5OgMTPd80
>>490

【――――人気の絶えた昼の酒場に、来客の足音が近づいて来ていた】
【ガタっと扉が開かれると、そこには時間帯を外した来客の姿があった】

……少し、早過ぎたかな……?

【ビビッドな色合いのブラウンのポロシャツと、羅紗を生地としているらしい、高級そうなズボンを着用している】
【やや白髪交じりの為に、全体的にグレーに見える髪をきっちりとバックに整え、神経質そうな印象のメガネを掛けている】
【やつれ気味の頬と、眉間に寄っている皺が特徴的な、身長160cm前後の男性】

【がらんとした店内、そして遅めの昼食を――――ではなく、間食を取っているらしい少女の姿を目にして、クイッとメガネの位置を直す】
【どことなくハイソな身なりをした、壮年の男性が入口に立っていた】

あー……お酒を頂くには、まだ少し早かったかな……?

【腕時計に視線を落としながら、男性はその場にただ1人いた少女へと問い掛ける】
【もう既に食事時には遅い時間帯である。酒場としてのこの店を訪ねたのは間違いないのだろうが、まだ日が落ちている訳でも無い】
【本人にも、その自覚はあるのだろう。その声にはどこか躊躇いがちな色合いが含まれていた】
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/13(土) 21:33:11.76 ID:mqZ8urRV0
>>492

【上機嫌な彼女はまた一口とチョコレートタルトを頬張る、それでまた上機嫌そうに笑うのだから、その性格の一端がわずかに覗くようで】
【――と、そのタイミングでちょうど扉が開く。からんと古びた鐘が誰かの訪れたのを告げて、これはもう反射的なものだろう、がたんと立ち上がった彼女は】

――〜〜ッ!

【……たぶん、ものすごく油断していたのだろう。真っ白な頬はちょうどひまわりの種を一粒仕舞い込んだばっかりのハムスターのように、わずかに膨らんだまま】
【慌てたままとりあえず口の中のものを急いで飲みこんで、立ち上がって、いらっしゃいませ。それが彼女のやろうとしたこと――だけれど現実は大きく異なり】

【まず彼女は飲みこみ損ねてそれでも頑張って控えめに咽て、立ち上がった仕草はそのまま机の脚に自分の足を強打する。痛くて驚いてさらに脛を椅子にたたきつけるおまけ付きの光景と】
【机の脚を蹴りッ上げたような形になった衝撃でティーカップからあたたかな紅茶が波打って溢れてタルトのお皿に溜まる、がちゃん!と咄嗟に皿の淵に掛けたフォークが落ちて床にまで転がり――】

……こ、こんにちは、――いら、っしゃいませ、……えへへ、

【それでも時間としては数秒のできごと。まるでビデオの早回しのように多分人生でもあんまりないくらい忙しそうだった彼女は、】
【十秒も相手を待たせる前に振り返って、ひきつってはいたが、一応は笑顔を向けるのだろう。――鈴の音のような高くて金属質な声は、上ずっていたから】
【歴戦の給仕というにはずいぶんと物足りなかったが。――椅子の前に身体を出して、後ろ手で椅子をしまう。とりあえず、いろんなことをごまかすように笑って】

えっと。お酒はまだやってないの……、……えっと、いま、仕込みの時間で……あっ、でも、あの、バレンタインの試食を……三時だから……。

【「おやつ……」と小さな声で呟いて白い頬を赤くした彼女は、やはりまだ混乱しているのだろう。時計を指さして三時であると主張しながらも、】

い、今用意出来てるものなら……えっと――、

【仕込みが終わってたり、大した仕込みが要らない料理でよければ出せる、なんて、そう、しどろもどろに口にするのだろう】
【つまり酒も、彼が望むなら出せるということのはずで。――客を出迎えるためにようやく入口に向かった彼女は、素のままで彼ほどの身長があり】
【さらに高い靴を履いていることから、彼よりいくらか頭が上にあるのだろう。……そのわりにはずいぶんと幼いというか、不釣合いさのある、給仕なのだった】

/気付くの少し遅れましたっ、よろしくおねがいします!
494 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/13(土) 21:46:22.76 ID:5OgMTPd80
>>493

っぉ…………?

【声をかければ相手は応答する。リアクションを返してくる。それは自明の理だ】
【だが――――こんな忙しない反応が返ってくるとは思っても見なかったようで、男性も完全に言葉を詰まらせる】
【――――人間、こういう場面に突然行き合うと、まずは驚きの感情が先行してしまうものだ】

あー……うむ…………

【何やら言葉が出てこないと言った様子で、男性は曖昧な相槌を打つ】
【普通に案内される分には、わざわざ返答を考える事もないのだが、今はこうでもしないと間がもたない、と言う事なのだろう】
【ただ、零れた紅茶がズボンを汚していないかだけ、軽くチェックをして、ついでにもう1度、メガネの位置を直す】

むぅ……やはり、少し時間が早かったか……まぁ、それは仕方がないな

【仕込みの時間。それも道理だろうと、わずかに落胆した様子を男性は見せる】
【本来のかきいれ時は日が落ちてからなのだ。まだ日のあるうちは準備時間と考えて、ほとんど間違いない】
【そこに文句を言っても仕方がないと、男性はすぐに切り替えた様子で顔を上げる】

分かった……もし用意が出来るのであれば、ブランデーをストレートで……なければ紅茶を
それと、合う酒肴かお茶請けを……店員さんのお勧めで、何か頼むとしよう……

【案内を待たずに、男性は手近な席に――――先ほどの騒動のあった席とは、当然に別――――腰を落ち着け、注文を伝える】
【やはりまずは酒を提案してみるが、それが難しいとなれば、と代替案も口にする】
【ともあれ、軽食と共に少し時間を潰したいらしい、そんな注文の仕方だった】
495 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/13(土) 22:05:15.62 ID:mqZ8urRV0
>>494

【出てきた少女はとりあえずいろんなことをごまかすようににこにこと笑っている、微妙にひきつってはいたが、それでも、時間を経るごとに落ち着きは戻ってきて】
【いちおう彼女が一人お茶会を広げていた机は入口とはかなり遠い席であったから彼の服を汚しているということもないだろう。少し痛そうに足元でそっと脛をこすり合わせて、】

えっと、やっぱりもう少し遅い時間なの、たまにセリーナの知り合いのひととか来ると、なんか、もう、やっちゃったりすることもあるけど……。
ごめんなさい、それでもまだやっぱり早いから、あんまり準備が出来てなくて――。

【しゅんと眉を下げて言う、この時間に来ると言えばセリーナに用事がある、いわゆる"そっち"の客が多い。酒場の用意となると、まだまだ出来ていないのだろう】
【普通の酒場なら昼間は鍵でも掛ければいい。けれどここでそれは出来ないなら、――それにしたって少し驚きすぎたように思うけれど――小心者、らしい】

あ……ごめんなさい、わたし、あんまりお酒って詳しくなくって。前なら詳しい子が居たんだけど……、えっと、好きな物、自分で選んでもらえたら嬉しいな。
いろいろなものはあると思うよ、お客さんが変なの持ってきたりもするし、あとは、セリーナの趣味とか――、わたしは甘いお酒しか、飲めないから、よく分からないの。

【ブランデーというものは分かる。分かるけれど、その等級がどう、とか、そういうのはよく分からなくて】
【たぶん、夜でもそうなのだろう、選んでほしいとお願いするのは少し慣れた様、酒場の給仕としては失格めいてるけれど、どう見ても彼女は少女でしかなく】
【その割には甘いお酒じゃなきゃなんて不思議なことを言っているけれど、とりあえず、あっちと指さした先には、なるほど確かにいろんな酒があり】
【よく見る酒もあればよく分からない意味の分からない酒があったり、なんだか、本当にごっちゃりとした有様で】

【(――と、これは余談の光景。彼女がさっきまで座っていた席、そこできらりと微かな魔力反応が煌めいて)】
【(こっそりと床から姿を現したのは、薄桜色の液体で身体を構成した、水の蛇。頭の中には小さな銀の鈴を一個抱いていて、そんな、生物(?)が)】
【(するーっと身体を伸ばして、彼女が食べていた残りお茶に浸ったタルトをもごもごと食べているのだった。――別にそれだけ、なのだけど、)】

お茶なら、えっと、試作の生チョコレートタルトでよければ……あ。
…………ごめんなさい、わたしの能力なの。――えっと、違うものが良ければ、……サンドイッチとかなら、作れる、の。

【少女に気付かれれば水蛇は出てきたときのようにこーっそりと床下にもぐっていく。困ったように笑いながらも、一切れだけ切り取られたチョコタルトを少女は指し】
【自分は美味しいと思ったけれど試作は試作、それが少しということなら、それくらいならすぐに作れるだなんて言い添えて――】

【彼が気付くか気付かないかは別にして。ちょうどお菓子があるのと振り返った彼女はその水蛇と目を合わせ、一秒】
496 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/13(土) 22:29:28.86 ID:5OgMTPd80
>>495

いや、時間が時間だから仕方がない。お嬢さんのせいではないよ。それに、私が勝手に漁る訳にもいかん……
……まぁ確かに、酒を口にするには幾分早過ぎるな……まだ酔いに身を任せる時間でもない、か……

【クイッとメガネの位置を直しながら――――大して間をおかずに、もう3回目となる――――男性も苦笑する】
【大して気にもしていなかったが、夜にならない内に酒を飲もうと言うのも、褒められた話ではないだろうと】
【それに、自分が酒を取ると言うのも良い話ではない。何らかの事情で保存しておきたい酒が、棚に紛れていないとも限らない】
【そうした酒は、普通棚には並べないだろうと言うのが、順当な考えだが、ない事もない】
【殊酒に関するトラブルは、なるべく発生させないようにするのが無難だ】

だから、紅茶で構わないよ……――――――――ん?

【とりあえず注文は済ませたいと、男性は紅茶を指定して――――そんな時に、件のテーブルに視線が吸い寄せられた】
【奇妙な光景がそこに見えたが、何てことは無いのだろう。多少首をかしげながらも、深くは追及しない】
【――――深く追求して、どうなるものでも無いと言う様な予感が、あったのかもしれない】

……じゃあ、タルトの方にしよう。店員さんのお勧めはそっちなんだろう?
……いや、実は深い意味があってここに来た訳ではないんだよ。ここは普通とは違う酒場なんだろう?
たまたまそばに来たのでね。話の種にと入ってみただけなんだ……まぁ、流石に普通とは違う場所だなと思うよ……

【男性は、最初に口に上がったタルトの方を指名する。その選択には、然程の深い意味はなかった】
【ただ、この場所――――『UNITED TRIGGER』自体を求めてやってきた、ある種の物見遊山の様な物だったらしい】
【店員が、早速に能力者と言う所で、早くも男性は普通とは違う不思議な経験に遭遇したのだ】
【――――最初の顛末も、滅多にない事と言えばそうなのかもしれないが】
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/13(土) 22:52:41.07 ID:mqZ8urRV0
>>496
/申し訳ないです、レス消えちゃったのでもう少し待っていただけますでしょうか……
498 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/13(土) 22:55:00.62 ID:5OgMTPd80
>>497
/問題ないですよー。ただ、日付変わる前辺りで、今日は落ちる事になりますが……
499 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/13(土) 23:15:03.52 ID:mqZ8urRV0
>>496

そう? だけどね、常連さんはみんな持ってっちゃうの。わたしに言っても、あんまり分からないって分かってるから――。
ほんとうはお勉強しなきゃって分かってるんだけど……、時間がない、ってね、言い訳なの……。

【少しだけ苦い顔をする。本当なら覚えなければいけないのは分かっていて、だけれど、その勉強ははかどっていないのだろう】
【飲まないからかなぁなんて小さく呟く。――ちらりと向けた視線が酒の棚を見て、一番手前の名前を撫でる。名前と大雑把な味わいくらいは、覚えたのだけど――小さくため息】

じゃあ――えっと、ミルクとお砂糖は? ミルクティーでも、ロイヤルミルクティーでも、大丈夫だよ。

【一つ頷いてから少女はどんな紅茶を、と、そう尋ねるのだろう。よほど変わった淹れ方を指定しない限りは、彼の言った通りのものが出てくるはずだ】
【さすがによくできた執事やメイドのように細かな温度まではかったりはしないのだけど、不味いものが出てくるということもない。必要なら、ミルクポットとシュガーポットも添え】
【酒場の割にずいぶんと可愛らしいティーポットとカップだったから、もしかしたら少女の趣味なのかもしれない――だなんて、余談だったけれど】

え、あ……えっと、そうなの。わたし一人じゃ食べきらないから、食べてもらえたら嬉しいな――。
……もうすぐバレンタインでしょ、だからね、UT(ここ)のひとに差し入れなの。わたし給仕さんだから、普段みんなとあんまり会わなくて……忙しいみたいだし。
だからこういう時くらいは、って思って。……試作品だから、お金もいいよ。それで――よかったら、感想聞かせてほしいの。

【お勧めはそっちだろうと言われれば一瞬図星めいて目をきょろきょろとさせるのだけど少し照れたようにうなずく、白の頬をわずかに赤くして、笑って】
【もともとここで提供するためのものではなかったらしい。そもそも試作であるなら本当は客に出すものではない――のかもしれないけど、ゆえに、代金も要らないらしい】
【それでも自分で美味しそうに食べていたのだし変なものではない、一般的なひとが普通に食べて美味しい、手作りのタルトで】

【――問題がなければ、そちらも切り分けたのちに彼に提供するのだろう、見た目はこぎれいに作られていて】
【チョコレート風味の生クリームは食べれば軽い舌触りで甘さを控えてある、タルトにたっぷり注がれたチョコレートも柔らかく口どけがよくって】
【チョコそのものの微かな苦みが死なない程度の甘さ、ビスケットを砕いた土台には時々わざと荒く砕いたものが混ぜられていて、ときどき食感を変え】
【それも市販のものではないらしい。どこかじゃきじゃきとした歯ごたえなら全粒粉の物なのか――これもそんなに甘くはないなら、見た目ほど甘たるく重たいものではなく】

【さすがにプロのパティシエレベルではない。家庭的なレベルで美味しいもので――けれどもちろんひとによって評価が変わる可能性は十分で】

/すいませんもう一回消えて遅れました、日付変わるころも了解です……わたしもそれくらいが限界なのでっ
500 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/13(土) 23:38:03.87 ID:5OgMTPd80
>>499

それは常連だからだろうね。棚の置き方の意味とか、ちゃんと分かっているんだろう……
一見の私が同じ事をする訳にもいかないよ

【店に親しんでいる馴染みならば、そうした事もあるだろうと、男性は背もたれに身体を預けながら答える】
【それは当然、大体の店の相場と言う事も含むのだろう。気の置けない仲だからこそ、ゆるゆるのやり取りも成立するのだ】
【自分が同じ事をしても、白眼視されるのがオチだろうと、メガネのフレームを掴んでまたも位置を直した】

……酒の事が本当に分かって来るのは、30も過ぎて辺りからだろう。親しまなければ、そんなものだと思うよ……

【自分に結び付かない知識は、どうしたって定着してこない。少女が酒に疎いのも無理は無い】
【無論、仕事である以上、ある程度は分かってもらわなければ困るが、常連客は困っていない――――それで通っていると言う事は】
【ここは、そうしたリピーターの多い酒場と言う事になるのだろう。ならば、チェーン系の様な固く野暮な事を言っても仕方がない】

うむ……砂糖のみで頂こうか。ミルクは結構……

【手短に自分の好みを伝える男性。居住まいを正し、椅子の座り方を少し改める】
【――――先ほどからのメガネのいじり方と言い、相当に神経質なタイプの様で】
【その所作は、常にどこか落ち着きの無いものである事が見て取れるだろう】

……なるほど、試作と言うのは正に、君の物だったと言う事か……
只で良いと言うのは、少し申し訳ない気もするが……では、頂こうかな……

【妙にアンティークな紅茶セットに、わずかに戸惑う様にコクコクと小さく頷きながら、男性はタルトを受け取る】
【砂糖を、匙半分くらいの少量、紅茶に流しこむと、男性はそれを唇を湿らせる程度に傾け、そしてタルトにフォークを入れる】

……んっ、うむ…………――――うん、旨いと思うよ
私の好みで言えば、もう少し滑らかさが欲しい所だけど、これはこれで十分に旨いと思うな……
甘さが後を引かない程度なのも良い……紅茶の味も香りも邪魔しないで済む……セットで考えるなら、これ位が丁度良いんだろう……

【タルトを一口頬張り、喉を鳴らす。そこに紅茶を、今度はハッキリと一口飲みこんで】
【男性は好反応を見せた。ビスケットの食感が多少気にはなった様だが、そこは自分の好みの範疇だと流して】
【基本的には、その出来に満足してくれたと思って構わないらしい】

……しかし……そうか、やはり忙しいと言うんだね…………雷の国であった騒動も、今のところ収束していないし、そう言う事か……
……まぁ、それでも然程物々しさがないのは、予想と違っていたかな…………もっと、傭兵の詰め所みたいな所をイメージしていたよ……

【ふと男性は、少女の言う「みんな忙しい」と言う言葉に意識を向ける。雷の国で起きた機関の騒動を思い返しながら】
【そんな中でも、こうして茶菓子を楽しめると言うのは、男性にとっては予想外だったようだが……】
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/13(土) 23:57:35.50 ID:mqZ8urRV0
>>500

うん、だけどいいの。同じ大きさで作った方が、おんなじ味にできるから、大きく作ってるだけだし――。

【同じ分量で作るから大きくなる。だけど正直な話、当日でもない今日では、こんなにたくさんは要らなくて】
【だから食べてもらえるのは嬉しいのだろう。にこにこと上機嫌そうにしていて、そもそも自分の作ったものを食べてもらうのが好きなようにも見え】
【――給仕と言っても基本的に料理を作るのも彼女だ。実際のところは確かにひとにご飯を食べさせるのが好き、もっと言えば、おいしいと言ってもらうのが好き、とか、】
【余談だけど――、彼が知っているかは分からないけれど、この店は月の後半頃の昼間に、孤児やお金がないひとたちのため、無料で食事を提供している】
【その立案者と実際に調理をしているのが彼女だった。――いろんなものを全部ひっくるめて、料理が好き、なのだろう】

……そっかあ、じゃあ、もうちょっと普通のビスケットみたいなほうがいいのかな……、タルトってあんまり食べないの、だから、よく分からなくて――。
上が柔らかいから、少しくらい歯ごたえがあるほうがいいかなって思って。……もうちょっと柔らかいビスケットも試してみるね、それともどっちも作ればいいかな……。

【そもそもタルト生地ではない簡易的なものだけれど。ざくざくとしたビスケットなのか、ほろほろしたビスケットなのか、ううんと小さく唸って】
【それとも荒く砕いたものをもっと減らすとか、そもそもなくしてしまうとか、いろいろ考えて――、甘さに関しては、】

やっぱりチョコレートってチョコレートの味がするから美味しいんだってね、思うの。だから、あんまり甘いと分からなくなっちゃうかなーって。

【なんて言って。満足してくれたらしい相手の反応に安堵したような嬉しいような、そんな笑みを浮かべる。――そうすると、いっそう酒場に似合わないあどけなさが目立ち】

みんなどこかに行ったりしてるのかな……あんまり会わないの。わたしは給仕さんだから、みんなみたいに戦うためにここに居るんじゃないし、そういうのも苦手で――。
だから、そうやってみんなのお手伝いは出来ないの。――どこかでお仕事して、帰ってきて、それでここも物騒な感じだったら、きっと疲れちゃう、もの。

……わたし、得意なことってあんまりなくって。お料理くらいしか出来ないから……。

【自分は戦闘するための人員ではない。戦闘は苦手だと思うし、怖がりだし、――だから、たぶん、そういう意味で手伝おうとしても迷惑をかけてしまうから】
【それならここが自分のお仕事で居るべき場所、帰って来た彼らに何か作ってくれと言われれば作るし、たまにはこうしてお菓子を作って差し入れなんかもしていたりして】
【少し気弱そうに眉を下げて笑う、お料理くらいしか出来ないから、だから、こうして料理を作っている。けれど戦えないことを恥じるわけでもなく、どこか、誇るようにして】
502 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/14(日) 00:15:19.18 ID:2MvemvPL0
>>501

あぁ、なるほど……味を均等にするには、サイズを大きくする、と言う事か……
多くの人に出すのなら、それは確かに……

【口に残るビスケットの感触を紅茶で流し込みながら、男性は小さく頷く】
【3人程度の食べる物なら、そんなにサイズは必要無い。それに味のばらつきが出ても、それも楽しみのうちだろう】
【だが、何十人と、店で提供するとなれば、そんな事は言ってられない。確実なものを、確実な人数に出す必要があるのだ】
【それを考えれば、食べきれないくらいの試作品と言うのは、なるほど尤もなことだ】

(――――昼の食事処の事は知っていたが、ここまでアットホームな物だったとは、な……)

【紅茶を小さく啜りながら、メガネに手をやる。酷く忙しない動作だが、本人としては当然の事をしているつもりなのだろう】
【ふと浮かんだ感慨は、紅茶の香りと共に抜けて、そして余韻を残して消えていく】

……まぁ、そこは私の好みだ。どちらが正解と言う事でも無いのだろうよ……私からは、何とも言えないな……

【あくまで全体の構成要素として、そこにアクセントを織り込むのが間違っている訳ではない】
【ただ、男性の好みは、求めているものが違うと言う事なのだろう。故に、あまり多くのアドバイスを残す事は出来ない】
【しっとりした食感を貫徹して欲しいのか、それともアクセントが欲しいのか――――そこは、人それぞれだ】

あぁ、確かにそうだ……重く濃厚な豆の香りや、微かに上品な苦さ……チョコレートと言う事なら、そこは是非堅持して欲しい所だな……
単に甘いだけならば、チョコレートである必要すらない……そこは私も同意見だよ

【少女の言葉に、男性も同意する。更に言葉を重ねて、深く頷いて。どうも男性としても、そこには譲れないラインがあるらしい】
【――――先ほどからの神経質な所作と同様、男性の中で、それは譲れないこだわりとなっているのだろう】

――――確かにそうだね……君の言うとおりだ。戦場に出る人間だけじゃない、今は人が誰でも疲れ果てている……
私の様な人間まで、世相の慌ただしさに巻き込まれているのだから……平和が乱れると仕事が増えると言うのも、嫌な話だ……

【紅茶の水面を覗き込みながら、男性も思わず眉を潜める。こうした場でささやかな救いを得て――――そんな和みが、どれだけ貴重なモノになっているのだろう】
【そして、そんな役割が切実に求められていると言う事の、何とやり切れないものだろうか、と】
【つい男性は、少女の言葉に逡巡してしまっていた。世の平和が乱れる事で、失われるものと得られるもの。そうしたものが頭を掠めて】

/そろそろ持ち越し良いでしょうか? とりあえず明日は来れそうですが、明後日はちと難しいです……
503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/14(日) 00:23:54.16 ID:mRiDozJK0
>>502
/了解ですー。明日はちょっと夜まで来られないですので、なんなら置きにしていただけた方が確実……かもです
/基本的に夜でしたらわたしは来られるかと思うので、そちらの都合の合うようにしていただけたらとっ!
504 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/14(日) 00:27:00.61 ID:2MvemvPL0
>>503
/了解です。では置き移行と言う事で、今日は失礼しますー
505 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/14(日) 00:31:13.83 ID:mRiDozJK0
>>504
/了解ですっ、次の返レスは一応こちらに返しておくので、どちらに返すかはお任せしますっ
/ひとまずお疲れ様でした、おやすみなさいです
506 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/14(日) 18:03:07.73 ID:DAE3H2aMo
【路地裏】

【ここはいつもの様にカビ臭い。しかし、今日は血腥い】
【首を締め上げられながら壁に押し付け、持ち上げられる、恰幅のいい男】
【ヒップホップを真似た格好。ジタバタと不毛に動きまわり顔が真っ赤になる】

【持ち上げているのは白く細い腕の女だ。血管が異常に浮き出て、男を片手で持ち上げる】
【腰まであるような長いストレートの黒髪、冬だというのに肩の出たタイトなドレスと目立つ恵まれたスタイル】
【目が、青白く光っている。力を込めるたびにそれが煌々と光るようだ。そして右腕はまるで大剣のようだった】
【手入れの行き届いた白い肌はその右腕だけ肩から人のものではない黒く幾重にも重ねられた鱗のように】
【しかし刃は黒曜石のナイフの様。それが人の腕の何倍ものサイズで彼女の腕に取りついている】

【そして壁には一面に血が飛び散っている。足元は血の川が流れている。既に切り捨てられた男たちが】
【凄惨な躯となって転がっている。首を締め上げられたのは最後の一人だ。女は微笑みを湛えて】

おやすみなさい。

【そして、その腕の大剣を振り上げる―――】



【山奥――とある秘湯】

【鬱蒼と木々生えるこの山は古くから尼僧の修行の寺がある男子禁制の神山と言われていた】
【その理由は地層の鉱石に魔翌力が含まれていて、山ごもりした高僧がその恩恵を受けたことに始まる】

【麓には温泉街もあり、今その一部はパワースポットないし観光地化されている。しかし、言い伝えられる山頂近くの秘湯は】
【今も四合目以上は男子禁制。荒行に使われたかつての参道しか道はなく二時間ばかしにの山道プラス猛獣や魔獣が多く生息している。】

【なのに温泉はよく整備されている。それは湯守とよばれる人が寺の支援を受けて維持しているからだ。湯守は落ち延びた貴族の末裔だの】
【天狗だの狐だのと言われているが定かではない。露天風呂にはシャワー設備、脱衣所に自販機、トイレにはウォシュレットと現代的だ】
【効能は疲労回復、肩こり、リウマチ、冷え性、痛風、高血圧、魔翌力回復、能力向上、心体浄化、スタイル抜群、バカも浸かれば治る……など】
【だから今でも能力を持つものや強さを求めるもの、あとは護衛を引き連れたニッチな温泉マニアぐらいの執念のある人がくるのだ】

【今日の客は一人。荒れた山道を登り、刀で邪魔するものは斬り捨てて辺りを道標のごとく血まみれにして訪れた。自動の券売機、無人の受付】
【血に濡れたウィンドブレーカーは洗面台で軽く洗って扇風機の前で干す。刀はなぜかある重厚なガンロッカーに入れてカギをかける】
【眼鏡を風呂用に変える。やはり誰もいない秘湯を独り占めできる。彼女は少しにやける。背中一面に龍と刀と見返り美人の和彫りが見える】
【あまりにも現代的に整備されすぎていて神秘的な様子はない。湯につかってメガネが曇る。】

507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/14(日) 19:22:04.03 ID:mRiDozJK0
>>502

……だけどね、わたしは、ずっとそうなんだって思うの。
みんな疲れてるの、最近は特にそうなのかもしれないけど……わたしはあんまり、戦うようなひとじゃないから。よく分からないけど、ね、――。

あんな場所があるのが当たり前になってるの。入ったら殺されちゃっても仕方ないねって言われちゃうような、場所。
どこにでもあるの、水の国にも、わたしの住んでる夜の国にも、……ここがあっても、風の国にだって、あるよ。

【今に限った話じゃない、と、思う。自分は彼に比べたらずっとずっと幼くて、彼は自分よりもずっと大人なのは分かっているのだけど】
【本当に一本、大通りから逸れたら死体が落ちている可能性さえある。まして自分がそうなるかもしれない。そんな場所が、実際に存在している】
【丸い瞳をわずかに伏せて少しだけ声を潜めて呟く、或いは囁く。それはなんだか悲しいような寂しいような声音をして、】

路地裏だなんてみんなは言うけど。だけどあそこにしか居場所がないひとだって居るの。あそこに行くしかなくなって、二度と、出てこられないひとだっているの。

【手すさびのようにスカートのすそをつまんで揺らす、「お客さんが何のお仕事のひとなのかは、分からないけど」と続けて、】

わたしはそんな子たちにせめて普通のご飯を食べさせてあげたいって思うの。
ごみ箱から拾って来るんじゃなくて、誰とも取り合わなくっていいご飯、……あの子たちがこのまま大人になったら、多分、なんにも変わらないから。

【もしかしたら見当違いのことを言っているかもしれない。所詮彼女は少女でしかなくて、まして彼の仕事のことなど知らなくて】
【ただ料理くらいしか取柄のない自分の話を少しだけしてみるのだ、その、疲れている――世界を、もしかしたら、少しでも、変えられるかもしれないという希望】

普通のひとが疲れてるなら、あそこの子供たちは、きっと、もう、とっくに病気なの。
治してあげないで放っておいたら、きっと、どこまでも伝染っていくの。わたしが得意なの、お料理だけだから――ね、おいしかった?

【めくれ上がるほどでもなく摘み上げたスカートの裾をひらりと落としてまた摘んで落とす、少しいたずらぽく笑って、そこで、今更気づいたように「あ」と声を漏らし】

……あ、っとね、わたしね、ここでやらせてもらってることがあるの。
“たんぽぽ”って言って。……お金がなくっても、ここに来れば、ご飯を食べられるよっていう、やつなの。

【いろいろ言ったくせに大事なことを言っていなかった。うっかりしたのをごまかすように小さく笑って、少女はカウンターの裏から、チラシを一枚持ってくる】
【孤児や浮浪者のための食事提供サービス、――今はまだ行われる日時が決まっている、試験運用のような時期らしいのだけど】
【「お客さん、知ってた? ……知っててくれたなら、嬉しいなぁ」なんて、訪ねるのだろう】

/お返ししておきます、こちらか置きかに返していただけましたら!
508 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/15(月) 21:55:51.14 ID:FN6+sy8X0
【街中――大きなビルの陰にある児童公園】
【一日中日陰という立地のせいかいつかに降った雪がいまだに残っている、がちがちの氷のようになって】
【滑り台なんて滑る場所に一枚つるりとした氷が貼りついていて、だれも使えないようになっている】

ふぅ――、

【ふわりと白い湯気がくると渦巻いて上がる、ちいさな水筒、蓋に注がれた紅茶の紅色は、けれど黒い蓋の色にごまかされて、ただ黒い水面となって】
【小さく身体を丸めた体育座りの膝の上をテーブル代わりにして吐息でさざめかせながらちまちまと飲んでいる。少女だった、それもまだ背丈の小さな、子供のよう】
【――だなんて思って見るとあんがい幼くないのにも気付けるだろうか。背こそ子供のように小さいけれど、どうやら、そう幼くもない、少女であって】

【くすんだような金色の髪、癖の強い毛先にはピンク色が乗って、くるんと巻いていて】
【不健康めいて白い肌、顔には多少あどけなさが残るが、その瞳――勿忘草色の双眸ばかりは、いやに鋭く、また、口元も拗ねたようにへの字で】
【踝まで裾のあるようなロング丈のワンピースは布地が非常に多くって身体つきが分かりづらい、それだとしても分かるくらいに、どうやら華奢らしく】
【裾をいくつも重ねたようなティアードのワンピースの上に羽織っているのはケープ、服もケープもどちらもが紅茶染めの赤みがある色味】
【靴はつま先くらいまでしか見えないけれどブーツらしい、底があまり高くないもので、それなら身長もごまかせない、百四十二センチの矮躯】

――……いただきます、

【ベンチに体育座りで座っている、お尻の横には近くのコンビニかで買ってきたような小さなビニール袋が置かれていて】
【水筒のふたに注いだ紅茶をちまちまと一分くらいかけて飲んだ後にビニールから取り出すのは市販のサンドイッチひとつ、べりと包装を破いて】
【ハムスターか何かが乗り移ったかのように小さな口で食べている、――なんて、そんな光景】

【――和やかではある、のだろう、けれど。この時間にとなると、少しだけ、異質に見えてもおかしくのない光景】
【ビニール袋のない側の横には伏せられた画板が置いてあって。その上には、ナイフで削った跡のある鉛筆と小さなカッターナイフ】
【もしもこの場面の前より誰かが彼女を見ていたなら――少女がこの場所でずうと、画板に向かって何かをしていたことを、知っているのかもしれないけれど】
509 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/02/16(火) 00:50:53.83 ID:9dUEjsNC0
>>508
【上弦の月が既に没した冬の深夜】
【新雪は陽の照暖及ばぬ日陰にしんしんと降り積もる】
【日陰の及ぶ児童公園、隣接する路傍にまで浸食するそれが少女の歩みを乱す】

……っ!とと!

【ツーサイドアップの金髪が跳ねる。外套やキュロットスカートの裾がふわりとはためく】
【バランスを取り戻そうと力を入れ藍色の瞳を閉じる。長鞄が背中を叩く衝撃で眉間に皺が入る】
【明日の準備の為の買い出しの帰り。袋の中身は無事らしく、低い背丈が安堵の溜息を漏らす】

【立ち止まった場所から、ベンチに座る少女が見える】
【買い出しが理由であろうが深夜帯を出歩いてしまっているこの少女と同様に浮いた存在になっている少女へと歩み寄る】
【恐らくは挨拶。次いで何をしているかを聞き、状況によっては一緒に帰る魂胆なのだろう】
【夜道は危ない。それぐらいは能力者である少女でも知っている事であろうから】

こんばんは
えと、何しているのかな?

【小さくお辞儀してベンチに座る少女に話しかけようとする】
【近づく間、画材道具の存在には気づいてはいないようだ。だから当たり障りなく話をしようとする】
【恐らく会釈しただけでも会話を成立してしまうような第一声をか細く発するのであった】
510 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/02/16(火) 00:55:50.29 ID:9dUEjsNC0
/返すのに遅れましたが
/今日はよろしくお願いします
511 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 01:07:06.72 ID:j4HGEfI70
>>509

【自分で作ろうと思えば案外に面倒くさいサンドイッチ、適当に小銭いくつかで買ったコンビニエンスは三角形は、特別に美味しいということもないけれど】
【別段不味くないので別にいいかと緩い思考が通り過ぎる、なんて考えながら数口も齧ればもう空腹的には満足していて、まだたんまりあることに辟易しかける】
【そんな心中を知られたら一体どんな胃の容量かと思われるだろうか。それだとしても、ほんとうに、これ以上は要らないと思う程度には空腹は消えて】

……何と言われても。食事なのだけれど――それ以外に見えるのかしらん。

【「ティータイムというにはずいぶんと陽が遠いのではないかしら」】
【声を掛けられて、ちらりと相手へ向く勿忘草色はつんとしたというよりはもっとぎざぎざとしたような視線、つんざくようというよりか、千切られた紙の断面のよう】
【思考を千々乱した後の残滓のようでもある。いくらも遅れて「こんばんは」と返すから会話する気のないわけではないのだろう、――ただ態度は悪かった】
【萎びた薄っぺらいキュウリをぱりと噛み潰す、マスタードの混ざったマヨネーズが地味に辛いのがなんとなく気に食わないように、少女は眉間に薄く皺をよせ】

【いくらも間をあけてから、やがて仕方なく諦めたかのような声で「キミは」と、問うのだろう。疑問形と言うには平坦だったから、もしかしたら気付かないかもしれないけれど――】

【横に置いていた未だ湯気を上げる水筒のふたのコップでまた紅茶を飲む、多分甘くもない。ミルクが入っているようには見えない。ティータイムというにはあまりにも浮かれていない】
【気まぐれに空を見上げてもまだらな雲がかくしてしまって冬空は見えやしない、と、】

……――ああ、もう春なのだっけ。

【思考の流れで彼女としては自然な言葉が漏れて、ただ、それは相手には意味の分からない言葉だろう】
【寄りかかるようにベンチの背中に身体を預ける、それでも体育座りはやめないまま、眼前の相手のために画板や袋を退かすというのも、まだなく】
【なんならハムスターというよりカタツムリかと思うような一口分でサンドイッチを齧っている、目減りというよりは間違い探しのような、そんな、光景】

/気付くのが遅れました、よろしくお願いします
512 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/02/16(火) 01:35:11.38 ID:9dUEjsNC0
>>511

えと、そうだね……

【少々棘のある声音に怯えて言葉が詰まってしまう】
【よく見れば分かった事でもある。湯気の昇るコップに三角形の何か、海苔の破れる音からおにぎりと分かるそれらを総合すると】
【どう見ても食事風景。違和感があるとすればその時間のみ。どうやら金髪の少女は行動と言葉がズレてしまったようである】

【その代償に話し掛けておきながら話題を切らしてしまう失態をかく。冷や汗が流れる合間に只の一声も漏れず】
【やがて、マスタードの苦味から抜けたのであろう少女から、短い返事で問い直される事となった】

えと、買い物帰りかな
退治に手間取って遅れちゃって、店があんまり空いてなかった

【助かった、と言わんばかりに緊張を解き彼女にしては饒舌に返す】
【言い終わるや否や少し会釈する。ありがとう、と言いたかった気持ちがほんの少し頭を下げさせる】
【冷や汗と強張りが溶けて消え、漸く会話する状態に戻った少女に向かって、ぽつりと呟きが振り落ちる】

うん
昨日は暖かかったのにね……

それはそうと、ここでご飯はちょっと危ないと思うです

【忘れていた本題が呼び戻される。自信なさげに眉を下げて一言、心配する気持ちを乗せてもう一度問いかけてみる】
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 01:48:14.70 ID:j4HGEfI70
>>512

【「そうかい」と小さな声。掠れる低い声は古書を連想させるよう、毛先のピンクはともかく全体的にくすんだような色味の彼女は、】
【古い本に人格と姿を与えたらこうなるだろうかなんて感じでもある、ただ無駄にマスタードが辛いだけの薄っぺらなサンドイッチを時々食んでは】
【別に美味しくも不味くもなさそうに顔を変えもしない、むしろ紅茶を飲んでいる時のほうが、身体が温まるだけ、美味しそうにしている気さえして】

【対人スキルがないといえば相手もそうなのかもしれないけれど、彼女もなかなかだろう。尋ねておきながらあっさりと言い終えてしまって、目を伏せている】
【それも別に何かを考えているわけでもなく何も考えていなくて、強いて言えば、自分の頭の中の思考回路に耳を傾けている。無意識な思考回路、ただの言葉の奔流】
【というにはいくらもおとなしい、なんといえばいいのか、本をさかさまにしてばさばさ振って全部の文字を剥がして落としたのを手ですくってばらまいたみたいな、】
【そんなたいして意味もない言葉の羅列が脳内でずっと踊っているのは昔からのくせだったから今更どうとも思いやしないのだけど。――なんて無意味な思考は】

……春一番も吹いたのだったかしら、家の中に居たから知らなかったのだけれど。

【相手の言葉を拾い上げて辛うじて意識がこちらに向いたことでいっとき置かれる、ちらりとただ見ただけの視線は、ただ目つきの鋭さから睨むよう】
【悪気はないのかもしれないけれど態度は前と会ったときと変わらずにやっぱり悪い。悪癖だろう、或いはこれ以外を知らないのか。――と、】
【立ちっぱなしの相手に一瞬彼女は訝しむような目を向ける。といってもわずかに目を細めた程度、それから、自分の座るベンチに目を向けたら】
【そこでようやく気づいたように――ふわりと空中に勿忘草色に煌めく靄を出現させる、二つ現れた靄はどういう原理か、画板を空の袋を持ち上げると】
【少女が緩く靄から画板なりを受け取って、体育座りの膝と身体の間に挟む。以上。――だから座ればいいと言うことなのだけど、それを言葉にはしないままで】

春は嫌いなのだけど。

【ぶすくれて呟くのだった】
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 01:48:44.86 ID:j4HGEfI70
>>512>513
/ごめんなさい途中送信です、書き足してきますのでもう少しお待ちをば……!
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 01:53:04.58 ID:j4HGEfI70
>>512>513

【「そうかい」と小さな声。掠れる低い声は古書を連想させるよう、毛先のピンクはともかく全体的にくすんだような色味の彼女は、】
【古い本に人格と姿を与えたらこうなるだろうかなんて感じでもある、ただ無駄にマスタードが辛いだけの薄っぺらなサンドイッチを時々食んでは】
【別に美味しくも不味くもなさそうに顔を変えもしない、むしろ紅茶を飲んでいる時のほうが、身体が温まるだけ、美味しそうにしている気さえして】

【対人スキルがないといえば相手もそうなのかもしれないけれど、彼女もなかなかだろう。尋ねておきながらあっさりと言い終えてしまって、目を伏せている】
【それも別に何かを考えているわけでもなく何も考えていなくて、強いて言えば、自分の頭の中の思考回路に耳を傾けている。無意識な思考回路、ただの言葉の奔流】
【というにはいくらもおとなしい、なんといえばいいのか、本をさかさまにしてばさばさ振って全部の文字を剥がして落としたのを手ですくってばらまいたみたいな、】
【そんなたいして意味もない言葉の羅列が脳内でずっと踊っているのは昔からのくせだったから今更どうとも思いやしないのだけど。――なんて無意味な思考は】

……春一番も吹いたのだったかしら、家の中に居たから知らなかったのだけれど。

【相手の言葉を拾い上げて辛うじて意識がこちらに向いたことでいっとき置かれる、ちらりとただ見ただけの視線は、ただ目つきの鋭さから睨むよう】
【悪気はないのかもしれないけれど態度は前と会ったときと変わらずにやっぱり悪い。悪癖だろう、或いはこれ以外を知らないのか。――と、】
【立ちっぱなしの相手に一瞬彼女は訝しむような目を向ける。といってもわずかに目を細めた程度、それから、自分の座るベンチに目を向けたら】
【そこでようやく気づいたように――ふわりと空中に勿忘草色に煌めく靄を出現させる、二つ現れた靄はどういう原理か、画板を空の袋を持ち上げると】
【少女が緩く靄から画板なりを受け取って、体育座りの膝と身体の間に挟む。以上。――だから座ればいいと言うことなのだけど、それを言葉にはしないままで】

春は嫌いなのだけど。

【ぶすくれて呟くのだった――眉をひそめて。けれどそんな声を掛けられれば、ちら、と、勿忘草は相手を見やり】

別段構わないのじゃないかしら、子供でもないのだし……。

【だなんて。――自分より子供に見える相手に向け、そう、なんなら当てつけのような言葉、に取ることだってできるだろう】
【家で食事を摂る気にはあんまりならなかった。外のほうがまだ気が向く。――だなんて言い訳だけど、本当のところは、だいぶんと思考が滞りだしたので、】
【応援というかなんというか気分転換程度に食べている、という認識だった。だからもう数口で満腹感さえ感じているし、食べ残しそう】
【食べかけの半分はともかくとして手も口もつけていないもう一切れはどうしようかと考えたところで、】
【――「食べても構わんよ」なんて言って、ぷらりと包装の端を摘み上げて、残ったサンドイッチを示してみるのだった。キュウリとハムだけの、一番安いものだ】
516 : ◆mZU.GztUV. :2016/02/16(火) 02:19:24.03 ID:9dUEjsNC0
>>515

【素っ気なく返される返答。心配を無碍にされたのに関わらず大して気にした様子もなく少女を見守る】
【少々間が空いて、春一番に気づかなかったという返事に対して少女は軽く言葉を返す】

外に出ない方が良かったからね

【何の意図を持っていたか不明であるが、目を閉じてうんうんと頷く】
【その目に皺が寄り始める。羽虫を追い払うような手振り、何か嫌なものを思い出したらしく慌てて追憶を遮断する】
【目を開けると勿忘草色の露が画板と袋を動かしてスペースを空けてくれている】
【藍色の目を開けてきょとんとした表情で相手を見つめる。やがて笑みを零す】

スペースありがとね

【ベンチの空いているスペースに座り長鞄を脇に買い物袋を膝に置いて一息をつく】
【渡されたサンドイッチを「ありがとう」という言葉を添えて受け取り、相手の少女とそう変わらない食べ方(ペース)で塩味とみずみずしさを味わう】
【それまで頷きだけで話を聞いていた言葉2つと状況をよく咀嚼して飲み込む】

魔物よりも人間の方が危ないからね
こういうのは子供も大人も無いと思うの

えと、絵を描いていたの?

【後者の言葉に返す。そうしてから出された質問は、動き出すまで認識の外にあった画材道具に対するものであった】
【食べ掛けのサンドイッチを両手に持ち、一旦食べるのを止めたまま少女の返答を待っているのであった】
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 02:32:37.72 ID:j4HGEfI70
>>516

花粉症かしらん。私は違うけれど。

【――なんだか絶妙なところで会話がかみ合っていない感じがする。自分は花粉症ではないという多分誰も聞いていない情報を彼女はこぼして、】
【時々思い出したようにサンドイッチを齧るのだけど口が進んでいない。脳みそがこれ以上食べ物は要らないと訴えている。だからと言って】
【食べ物を無駄にする人間はよろしくないという思考回路があるから食べるしかない。最悪吐かなければそれでいいかしらと考えるでもなく考えて、一瞬のことだけど】

……。

【別にどうとも言わなかった。別にあなたのためじゃないと言い訳するでもなければ感謝を受け取るでもない。身体をコンパクトにまとめて、だんまりするだけ】
【サンドイッチの片割れを処分できたのにも大した感情は見せなかった。強いて言えば無駄にならなくてよかったとわずかに目を細めたけれど、本当に些細な変化だ】
【だけれどそれではあまりに不足かとたまに思うくらいのことはあるらしい。ふと何かを言おうとするのだけど、よく思いつかなくて、諦めたのだけど――】

魔物も人間もたいして差異はないと思うけれど。悪意があるかないかくらいならば、結果の死は変わらないのだし……。
死んだあとの身体が食われようと犯されようと私は頓着しないもの。そんなの分からないのだから。

……絵は描かない。描いてもいいのだけれど、特別に上手いわけでもないのだもの。

【結局殺されるならどうだっていい、命乞い出来る可能性があるだけ人間の方がマシかもしれない、だけど、そこも結局は興味が薄く】
【それなら自主的に死なないだけで死にたがっているようにも見えるのか。積極的ではない程度の希死念慮、? だけれど、やはりひどいものではない】
【檻の付いた部屋に閉じ込める必要があるほどではないだろう。そのあとに続くのはまあ個人の感想程度で。自分はそこに興味を持たない、と、理由もなんとなしに添え】
【わずかに目を細めるように伏せてから、ちらりと画板の内側を見せる。といっても身体と膝のわずかな隙間で倒しただけだから、たいして見えるわけでもないものの】
【原稿用紙を挟んでいる癖に升目をまるで無視して文字がぎっしりと書き込まれている。けれど読ませたいほどのものではないのか、またすぐ身体で挟んでしまって】

外の方が気が散る。

【だから来た。そんな口ぶりだった――普通なら、気が散るなんて嫌がるように思うのだけれど】
518 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/02/16(火) 02:56:55.46 ID:9dUEjsNC0
>>517

【花粉症かどうか、それについては遠からず当たってはいた。早過ぎる春、という点で共通した災難の話はこの場で出番は無い】

【少女はうんうんと頷きながら話を聞き続ける。藍色の瞳が餌をねだる小鳥のように期待を浮かばせながら】
【勿忘草色の少女の死生観に疑問が湧くものの、顔に出さないように遮らず】
【藍色の瞳の中で、人間の害を浮かべる。恐らく能力者に取って「障害」となり得る事実】
【人を殺してはいけない】

気が、散るの?
せいせいする、じゃなくて?

【金髪の少女は感覚だけで返してしまう。視界の端の原稿用紙から連想した個人的な感想】
【「埋める」という鬱屈した行為に対して率直に返す】
【何か返しが来るとは想定していない言葉がつるりと出た後、後腐れ無く次の質問に移るのであった】

じゃあ、物書きの途中なのかな?

【原稿用紙を埋める字を見ながらなんとなく気になって、少女は心なしか弾むように聞いてみる】
【接続詞の意義を無視した前後の繋がりがない。感嘆詞の類であるそれは、聞いた人間を混乱させる一因になるのかもしれない】
【そこまでの異常な神経質さがあれば、の話である】
【金髪の少女はサンドイッチの処理を再び始めるのであった。返事があれば食べるのを中断してくれるのだろう】
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 03:06:05.80 ID:j4HGEfI70
>>518
/ごめんなさいレス消えちゃいました、すぐ書き直しますので少しお待ちください……!
520 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/02/16(火) 03:08:31.29 ID:9dUEjsNC0
>>519
/了解しました
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 03:16:05.78 ID:j4HGEfI70
>>518

【人を殺してはいけない。当たり前のルールだ、たぶん、街中を歩いている人に尋ねれば九十九パーセントくらいの人がそう答えるだろう、一パーセントは考慮しない】
【だけれど別にその法律を侵してまでも誰かを殺したいくらいに憎いなら殺せばいいとも彼女は思うし、実際に、そういう事件だって多いのだから】
【そのルールが世界で一番偉い王様の彫像のように眩しく誰もがひれ伏して二度と頭を上げられないほどなら、そもそも路地裏なんてひとくくりの危険地帯は存在しないはずで】
【たぶん、街中を歩いている人に今から路地裏に行ってくれと頼んでも大多数の人が断るだろう。それくらいに認知されているのに、何も変わらない】
【そしてそんな場所に踏み入って殺されかけた時に「人を殺してはいけない」のだと言ったところで誰が聞くのだろう。たぶん、誰も聞かない】

……気が散るのだから来るのだろう、キミみたいな人が居れば、思考も止まるのだし。

【人の思考形態というのは個人によって違うらしい。考えることが文字として浮かぶ人間、音として浮かぶ人間、或いは映像として浮かぶ人間も居るのだとか】
【それなら彼女の思考形態は文字だった、本が好きだから文字のかたちになったのか、文字のかたちだから本が好きなのか、それは分からないけれど】
【だから基本的に彼女の脳裏には文字が溢れている。思考が止まるから得をするわけでもないけれど、まあ、気分転換にはなる、と、そんな程度の返答をして】
【――ただ気が散るから外に出るというのは盲信というほどではなくても、基本的にみんなそうなんじゃないかしら、程度の口ぶりだった】

それも違うのだけれど。……なんにもしていない、家に居る気分ではなかったから――。
なんにも考えずにただ文字だけ書いていた。それだけだよ。

【外で気が散るのなら家では散らないのか。そんなのは余談だけれど、ただ文字を書いていただけだと言う割には、ちらりと見せた紙は黒くなっていたように思う】
【よく見れば彼女の手の小指球の辺りは鉛筆の芯で黒くなっていて。別にそれを気にした風もなくたまーにすこーしずつサンドイッチを食べている】

【相手の少女の物の言い方には頓着していないようだった。興味がない――というよりは、本当に、気にしない性質なのだろう】
【神経質そうに眉をいつもひそめているくせに、実質はそうでもないのか、と言えば、そうでもないのだろうけれど】
【ただ潔癖症の人間がなぜかそれでも生きているように、どこか、自分の中でこれは平気と言うルールを課している、みたいに】
522 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/02/16(火) 03:46:07.78 ID:9dUEjsNC0
>>521

うん、だったら良いかも

【食べる手を止めて呟いた言葉は、自分が役に立ったのでは……という淡い期待を乗せて空に消える】
【勿忘草色の少女の思考形態が文字ならば、金髪の少女の思考形態は過去の記憶となっている】
【いつかの言葉を思い出す。身近な人の言葉を信じ続ける。或いは、記憶以外の思考形態を持たない小さな子供のような稚拙な手段】

【頭でも撫でて貰えたならば、また違った幸せな記憶を呼び起こしてくれるのだろう】
【だが今は、少ない言葉(リソース)を掻き集める為に勿忘草色の少女の話を聞く】
【星月夜の空に瞬きが映り込む。空気の流れでも起きるそれはさわさわという音と共に二人を通り過ぎる】

水墨画、みたいになっているね

【消しゴムの滲みを炭と水の滲みと無理矢理に喩えてみる。一筆の揺らぎを書き迷う書生に見立てるように】
【手を汚してまで拘泥していないとは言えないのだろう、という言葉が浮かび上がる。但し目の前の相手はそれに該当しないのだろう】
【一口のサンドイッチの欠片を飲み込んで、真剣さを解かずに聞く】

うん、今日はちょっと良い天気みたいだし

【風に揺れる金髪を無視して、右手で東の空低くを指差す】

もうすぐすると夏の大三角が見えるよ
……ちょっとだけだけど

【冬の星空にあり得ないアステリズムの名前を口にする。オリオンと蠍の逸話を知っているならば少々驚く話】
【天文学の素養があれば少々無理のある話だと一笑に付せるような妄言】
【金髪の少女は、思索の多い勿忘草色の少女の気を紛らわさせるように冗談を口にしてみた】
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 03:59:44.25 ID:j4HGEfI70
>>522

【人づきあいはあんまり得意としない。ちらりと横目で相手の少女に視線を向ける、気配はある。けれど。言葉は付随しない】
【それはお互いが言葉を介さずとも真意が通じあうという信頼ではない。だけれど、どんな言葉を選ぶべきなのかを悩んでやめてしまうような雰囲気がある】

ああ、……そうかしらん。櫻のほうの物だったかしら、あまりよく知らないのだけど。

【そもそも絵画とかそういったものは見たことがない、小さいころ美術館に行ったような記憶はある、気がするけれど】
【何かを見たという記憶がないのだ。*と二人で遊んでいた気がする。……だから、見たことがない、と、考えておくことにする】

【文字と生きている。文字で生きている。或いは文字に縛り付けられている。もぐと行儀悪くサンドイッチを口で咥えてぶら下げた少女は、】
【ふとまろんだ言葉でもあったのか身体の隙間から画板を引きずりだして、でこぼこに削った鉛筆でせめても空いた場所に文字をさらに詰め込んでいくのだろう】
【その際に覗きこめば、本当に脈絡もなくひっくり返したおもちゃ箱よりも乱雑な、大きな街のスクランブル交差点よりもごたごたした、紙面が見られるはず】
【こちらに卵焼きとか書いてあるかと思えばあちらには多分知っている限りの紅茶の茶葉の名前が書き連ねてあったり、あちらにはカフェ・ロワイヤルという単語があったり】
【そうかと思えばロシアンティー(物理(打消し線))(毒入り紅茶でやるやつ)みたいな言いたいことが分かるような分からないような落書きもあったりして】

いい天気だったのかしらん。夜になってから出たからよく分からなくって。

【そうして隙間に多分他者にとってはどうでもいいことを書き終えた彼女はそんな風に返す、たぶん、メモを取る程度には彼女にもどうでもいいこと】
【食べ掛けのサンドイッチをなんだか奇妙な光景だけれど膝の上に置いて。捨てる気はないけれど食べる気もあんまりない】

未だ春だのに?

【再び身体で挟む前に。彼女はそう尋ね返しながら、ほぼ黒い紙面を指先でなぞった。その指が黒くなったのを視止めて、満足したように親指とで擦り】
【さっき言われたのはこれだったのだろうと納得する。ついでに掌で小指球のあたりも擦って黒色をぼやかしながら】

……星はあんまり詳しくなくて。嫌いではないのだけれど。

【大雑把なエピソードしか知らない。そう続けて、呟くのだろう】
524 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/02/16(火) 04:26:02.83 ID:9dUEjsNC0
>>523

うん
夏の大三角は蠍・射手座生まれの恋人同士だってお姉ちゃんが言ってた

受け売りだから、私も自信は無いかも

【地の文より更に難解な比喩で返す。この返事には相手の事が全く考えられていない】
【理解させる気がないのか、或いは不意に気遣いを忘れてしまったか】
【どちらにせよ、冗談みたいなやり取りは金髪の少女の頭から水のように流れ去っていく】

【手を下ろして勿忘草色の少女を見つめる。ふと何かに気づいた少女は長鞄から何かを探し始める】
【取り出したのはポケットティッシュ。ウエットティッシュになっているそれは手の汚れを落とすぐらいは可能である】

よかったらどうぞ

【差し出されたポケットティッシュを受け取るか否かあまり気にはしていないようである。要らないと言ってもただ仕舞うだけである】
【或いは受け取ったならば「貰っていっていいよ」と返却しなくてもいいというような事を口にするだろう】
【そのやり取りの後、サンドイッチを食べきると長鞄を抱えなおして】

明日はピアノの椅子ぐらいの大きさのワーム退治依頼があるから、もうもどらなくちゃ

【そうして立ち上がり、サンドイッチのお礼と共に「またね」と別れの挨拶をするのだろう】
【引き止める事も可能であるが、お互い一言交わすぐらいに終わるだろう】
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 04:47:26.73 ID:j4HGEfI70
>>524

そう、私は蠍座だけれど。知らなかった。

【十月二十七日。それが彼女の誕生日だった。だから、星座で言えば蠍座ということになる】
【だからと言って水が特別に好きということもないのだからたいして星座なんてものは人生に関わらないのだろう、というか、水は苦手だ】
【本を湿気らすのだから好きになれなんて方が無理とも思う、同じように本を害するという理由で火も嫌い。地と風はそうでもないから、その二つの星座とは仲良くなれるかも】
【なんて思考回路は結局、本……というよりか或いは文字かもしれない。そこに向かって細くではあるが思考が紡ぐ、ふうんと興味なさげな顔だけれど、】

【帰ったら星座に関する本を探して広げてもいいかな、なんて、思っている程度の顔はしているように見えるのだろう】
【知識欲や好奇心がないわけではない、どちらかと言えば強い方だろう。ちらりと相手をみやって、受け売りでも、知らないことであるのは確かだったのだから】

【差し出されたウェットティッシュにはひとつ瞬きを挟んでから、緩やかな仕草で受け取る。感謝の言葉は小さなつぶやきで、だけど、確かに紡いで】
【一枚んべと引きずりだして手をぬぐう。あらかた汚れが取れたら、手のひらを覗き込むようにして。――あの紙の黒さだと、またすぐに汚してしまいそうだけれど】

それは大きい方なのかしらん、ずいぶんと小さなように思うのだけれど。

【イメージで言えばワームなんてなんだか二十メートルくらいありそうな化け物というイメージがある、それなら、ピアノ椅子と言えばあんな程度で】
【常識的に考えればピアノ椅子程度の蟲と言えば女子が悲鳴を上げて逃げていきそうなものだが。そういった可愛げは無いのだろう、一瞬考えるようにしてから、】

……ああ、大きいね。釣り餌にするのだっけ。ミミズは皮が硬いと聞いたことがあるよ。ワームも硬いのかしら。

【いくらか遅れて常識的な方のワームを思い出したらしい。結局興味を持ったのが皮の硬さである辺り、変人ではあるらしい】
【そういう類の本を読み過ぎてかワーム退治という言葉も案外普通に思えてしまっているのだった。――なんて、やっぱり余談なのだけど】

昆虫食はどうして忌まれるのかしら、動物を食べるのと同じに虫を食べているというだけだのに。

【なんて呟いた、呟いて、数秒して、「ああ、戻るのだっけ」と思い出したように呟いて】
【じゃあと形式的な声を出してもまたねともさよならとも言わないし手も振らない、だけれど、「冥いところには気を付けて」と、それだけ、付け足すように添え】
526 :片桐木花 ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/02/16(火) 05:20:22.01 ID:9dUEjsNC0
>>525

うーん、えと……これもお姉ちゃんの受け売りなんだけど

人間が動物として認識できるのは脊椎動物までで、それ以外はみんな化物に見えちゃう

ハエトリグサを丸齧りしているようなイメージなんだって。要は得体が知れないから血肉にしたく……ないのかな?

それと、ね

【金髪の少女は歩き出すのを止めて少々考え込んで、その途中経過のような返事を返してみる】
【更に両手を上げて真っ黒な杖を顕現させると、地面に突き立てる】
【立てた場所とは別の金髪の少女の左後方。ひらひらと舞う木の葉を串刺しにするように青白い金属が垂直に伸びて消える】

ワームは地面側の皮が柔らかいから退治は一応できるよ

【ひらりと身を躱して、自分の体に張り付いた赤黒い魔力の一文字を引っぺがす】
【そうして、今更のように勿忘草色の少女の別れの言葉に対して】

うん、またね
夜道には気をつけてね

【金髪の少女は手を振って別れの挨拶をして、その後には何事も無く宿に到着するのであった】
【星月夜の空に麦星が瞬く。今日の所はいつも通り、シリウスよりも暗くレグルスよりも明るく】
【それでも、地面を照らす事が出来ず別れた金髪の少女を直ちに搔き消す程の夜闇が横たわっていた】

/私の方はここで終了になります
/こんな時間までありがとうございました
/ゆっくりお休み下さいませ

/すみませんが一つ質問があります
/一度会った事があるようですが、そちらのキャラ名は何でしょうか?
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/16(火) 05:38:56.82 ID:j4HGEfI70
>>526

そう、ならばクラゲも化け物なのだね。あれは有毒だから仕方がないのかしら。
脊椎があったってヘビなんかは忌まれるイメージもあるけれど。あれも有毒だからかしらん?
やはり毒のある生物は仕方がないのだろうね、私は嫌いではないのだけれど。もちろん刺される咬まれるというのは嫌だけれど。

【つらりと言葉を並べて見ても多分実際にはあんまり考えていない、思考を垂れ流す連想ゲーム、彼女の場合は文字がただ訥々と流れ出る、それを言葉にしたらこうなるというだけの】
【結局は毒の有無なのかしらと適当すぎる結論を緩く導いて、少し考えた後、「カエルとかも有毒なのだけどね」と、なんとなしに呟いて】

ハエトリソウはあまりに突くと死んでしまうのだって。きっと苦心して手に入れたのだろう能力で死んでいては元も子もないね。
……それならばいいのだけれど。釣り針を仕込むなら腹に刺せばいいのだね、そんなにも大きな虫で釣りをする予定はないと思うけれど。
UMAでも釣り上げる機会があったら試してみようかしら。

【くすりとなぜだか愉快げな笑みをこぼした、微かなものだけれど、彼女は確かに一瞬だけでも笑みを浮かべて】
【蒼白さには別段驚いた様子もなければ怖がる様子もなかった。興味深いように長めこそしたが、それより、ワーム(大)での釣りのほうに興味があるよう】
【どんな魚が釣れるかしらとしばらくくすくすしていたのだけれど、そのうちに飽きたか。ほんの数秒で飽きるものだから――】

【けれど何かが思いついたらしい。またねと言ってくれた相手をちらりと見てから、視線はまた引きずり出した画板に沈み込むかのよう】
【鉛筆を揺らしてどこか書く場所を探して見つからなくて紙を裏返すのだけど、当然すでに裏返してあるのだから、もう、そちらが真っ黒づくめなのは当然のよう】
【仕方がないのですでに書いてある文字の上に別の文字を重ねていく、――結局、彼女がサンドイッチを食べ終えたのは、相手が立ち去ってから二時間も経ってからだったし】
【書く場所はとうに書き潰したはずの少女がそれでも何か文字をがりがり刻んで立ち去ったのは、さらにそこから一時間半も後のことで、】
【すっかりと夜の中を画板を大切そうに抱いて歩く、――物理的に読めない紙だ、どうせひと眠りしたら内容も忘れてしまうのだけど、そんなのは、どうでもよかった】

/おつかれさまでした!
/確か一度お会いしていると思いますが、もしかしたら名乗ってないかも……です
/アンネリーゼです、もしこちらの記憶違いでお会いしていないようだったら申し訳ないです……!
528 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/02/16(火) 10:14:40.62 ID:9dUEjsNC0
>>527
/寝落ちして返事が遅れてすみません

/一度会っていますし、最後の方でちゃんと名乗っております
/キャラ名を間違って使わない為に訊いたのですが、ちゃんとお答え下さいましてありがとうございました

/本当にかなり遅い時間までお付き合いありがとうございました
529 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/16(火) 20:35:43.59 ID:EaFmHb+Xo
>>478>>506で再投下です
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/17(水) 19:28:18.04 ID:LAFXh7IJ0
【大通り――その街角】
【時刻はちょうどみんなが帰りだすような頃で、それなら、道にはたくさんのヒトが溢れていて】
【いっぱいのヒトでごった返す大通りをあちらへちょこまか、こちらへちょこまか、小さな身体で動き回るのは――ちいちゃな、女の子が1人】

こんばんは、なの! あのね、あのね、これね、お兄ちゃんにあげたいなって!
あのね、バレンタインでしょ、終わっちゃったけど! あのね、みんなにね、喜んでもらえたらうれしいなーってね、私、思っ、あー!

【にっこにこと浮かべているのはさながら真夏の太陽のように鮮やかな笑顔、青空に映えて咲き誇るひまわりの花みたいに楽し気な、彼女は】
【どうやらさっきから通りがかるヒトを捕まえては小さな袋を押し付けているらしい。その言葉を聞く限り、チョコレート、なのだろう】
【バレンタインだとか言いながらもすでに何日も前の話、それでもお茶会に遅れて来るうさぎさんみたいにぴょこぴょこと跳ねまわって、また誰かに差し出すのだけど】
【悪意はなさそうでもどうしたって怪しい幼女からチョコレートをもらうヒトだなんて少ないらしい、何度目かのフラれっぷりに、幼子はがーんと頭を垂らして】

【くしゅっとしたわたあめみたいに細くてやらかい癖毛はクリーム色、頭の高い位置で2つに結んだツインテールは、彼女が動くたびにゆいゆいと揺れ】
【まあるい垂れ目は真夏の青空とおんなじくらいに鮮やかな青色、右目の下には、毒々しいような紫色でもって蝶の刺青が彫り込まれていて】
【白を基調としたワンピ―スはいろんなところにぱっと明るい赤色のリボンをあしらって。ふわっとはおったケープにも、童話をモチーフにした柄があしらわれ】
【つま先のまあるいおでこ靴の底がころころとれんがの地面でいい音を出す、――とは言い切れないのは、彼女が走ったり跳ねまわったりしているからで】

もー、もう!

【受け取ってもらえなかったショックから抜け出た彼女は少し怒ったように頬を膨らます。その年頃はまだ5つか6つ程度、だろうか】
【手に下げたフェイクファーをあしらった可愛らしい鞄には見ればぎっちりと配り歩こうとしているのと同じチョコレートらしいものが詰まっていて】
【それでもめげずに、通りすがるヒトにランダムにチョコレートのお誘いを持ちかけている、のだった。――女のヒト相手にも差し出したりしているので、結構貞操無し】
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/18(木) 21:44:30.42 ID:0liviiq30
【街はずれの薔薇園――】
【しんと暗い帳の降りた夜の中、それでも春が近いのなら空気はぼんやりと冷たい程度にとどまって、息も白くならない夜】
【空にはぽってりと肥えた月、こんな時期に来る人なんて考慮していないのだろう、開け放たれた門をぎしと軋ませて、立ち入る人影がひとつ】

……、やっぱり家のも手入れしないと駄目なのかしら、ん、

【ふらりと歩くのはどうやら少女だ。それにしても背丈は華奢で、シルエットだけならば子供のようにも見えるのだけれど、】
【ようく見ればそうではないと知れる。――そんな彼女はゆるりと中を歩んで、とうに葉を落としきって剪定も終えられた、たくさんの薔薇を見下ろし】
【わずかに腰を折って、稲妻みたいな形で生える薔薇の一本を眺めている。ぷくと膨らんだつぼみを華奢な指先でからかって遊び】

【くすんだ金髪。毛先はくしゅっと丸まるような癖毛で、その毛先には淡いピンク色が乗っていて】
【あどけなさを微かに残す顔は不健康なくらいに白い、いやに拗ねたように鋭い瞳は勿忘草の花の色をしていて、口は、むとしたへの字で】
【袖も裾も長い、身体つきを隠しこむような生成りのワンピース。掠れたペンで書いたようなリボンで結ぶケープと、色味はなんとも古びたようなものばかり】
【底のない靴を履いているならば身長はごく小さくて百四十五にも満たない程度、そんな彼女が、大した感慨もなく、春に綻ぶのを待つ芽を見ていて】

去年も何もしなかったのだし……別にいいかしら。

【そうしてしばらくしていたのだけど、そのうちに飽いたのか。すっくと立ちあがる仕草にスカートがふわりと揺れる、彼女はそのまま立ち去ろうとするのだけど】
【ぐいと何かに掴まれるような感覚があって――振り返れば、今までまさに見ていた薔薇の枝、そのごついくらいの棘が、裾をぐっと掴んでいて、】

……ち。

【ぐいぐい引っ張ってみてから、更に別の枝が布地を捕まえたことに気付く。――眉をひそめて舌打ちをもう一度重ねた彼女は、どうやらもう少し、立ち去れそうになくって】
532 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/20(土) 21:18:08.85 ID:5EMQuWOz0
【ある無法地帯の少し開けた場所にふらりふらりと歩く人影が一つ、その影は後ろ手に何か重たいものを引き摺るようにして歩いていた】
【影でなく実像としてその姿を捉えた時、多くの人はその光景に目を疑うだろう ……明らかに力仕事など不可能な筈の病人服の少女が、血みどろの大剣を引き摺っているのだから】
【血の臭いにつられてふと周囲を見れば、胴を両断され上半身と下半身が泣き別れした者や頭を叩き潰され脳髄をぶちまけた者などをいくつか見る事になる】
【手配書をよく読んだ者なら、転がっている凄惨な肉塊の中には“生死問わず”の賞金首かつ、その中でも特に凶悪で、救いようの無い犯罪者しかいない事が分かる筈だ】
【しかし獲物を探す餓えた獣のような、生者を引き込もうとする幽鬼のような少女の様子を見る限り、彼女の方がもっと性質の悪い、あるいは化物のように映る事だろう】

【もし何かの誤解か酔狂で声をかけた人物が居たのなら振り返った彼女の顔を直視することになる、転がる肉塊の元となった輩と同類でなければ、その顔を見る時間は気のせいとも思える程の短い間で済むが――】
533 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/20(土) 22:04:35.40 ID:QfvBlWRP0
>>532
/まだいらっしゃいますか?
534 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/20(土) 22:09:47.90 ID:5EMQuWOz0
>>533
いるよー
535 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/20(土) 22:20:47.77 ID:QfvBlWRP0
>>534
/では失礼します

>>532

……どうしたんだ……人気が、少ない……?
何か、変な……!?

【横道から、コツコツとやや大きめの足音が響いてくる。それはちょうど、凄惨なその場に近付いてくる様な気配で】
【同時に、その主は状況がただならぬものである事を察したのだろう。俄かにその歩調は早まり、姿を表す】

っ、ぅ……何だ……!? これは……どうなってる……!

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【まるで何かに苛立ちを感じている様な攻撃的な眼をしている、身長170cm前後の青年】

【そこここに、強大な膂力で破壊されたと思しき死体が転がっている状況に、表情を引き締めながら周囲を油断なく見回している】
【――――常人ならば、卒倒してもおかしくない様なその現場を目の当たりにして、そうした反応を返す所から見て、どうやらある程度『慣れている』様だ】
【やがて、巨大な剣を引き摺りながら道を往く人影を認める事になる。その瞬間、その目はギュッと引き絞られた】

……待て、貴様かこれは……!?

【怒号を飛ばしてその場に仁王立ちする青年。状況から考えて、明らかにその剣の持ち主が、この殺戮の実行者だろう】
【怒鳴りつける青年の拳が、グッと力を込めて握られた】
536 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/20(土) 23:15:59.16 ID:5EMQuWOz0
>>535

【怒号を受けた少女は振り向いて義憤に燃える青年の姿を見た直後、己が人であった事を思い出したようにハッと理性の光を取り戻す】

また、やってしまいましたか……

【呟きどこか遠くを見つめるように空を見上げる少女の声色は、後悔よりも諦めの感情が大部分を占めるそれを吐き出している様だった】
【しばらくそうした後、あ。と一時その存在を忘れ去ってしまっていた青年に向き直る】

確かにこれをやったのは私ですが、その前に一つお伺いしたいことがあります

【ぐぐっ、と大剣を持ち上げ上段に構え、相手に対する警戒の念を込めて少女は問う】

ここはまともな地図であれば“近寄るな”と書いてあるような無法地帯ですよ?
私が言えた義理ではありませんが「流血沙汰で義憤を感じるような人間」が何故こんな所にいらっしゃるのでしょうか

【「この異常な場所にまともな感性を持った人がいる事」まずそれがおかしいと少女は警戒する】
【無法地帯というその文字通りの場所であり、殺人罪すら適応されないのがここなのだ】
【賞金首がそれを狩る者や司法から逃れる為に集まる場所、一度で他人を助ける意味などない事を理解できる筈の場所】
【信じるものが救われるのは足元だけ、それがこの場所だ、この惨状の周囲に死体漁りや青年の様な外からきた甘ちゃんを食い物にしようとする悪党が群がっているのがその証拠】
【後者には威圧すら生易しい“殺意”を叩きつけてご退場願っているが、それがなければ一体どうなっている事か】
【こんな所に来る物好きなのだから、それなりの備えをしている事を切に願う】
537 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/20(土) 23:35:16.03 ID:QfvBlWRP0
>>536

……ッ
(トリップでもしていたのか? ……いや、そんな状態で、こんな大それたことが出来るはずがない……覚束ない、なんて事は無いはずだ……)

【返答よりも先に表われた反応に、青年の表情は一瞬疑問を抱く】
【何か、我を見失っていた様な、そんな奇妙なタイミングでの覚醒の仕草】
【一瞬、心神喪失の状態でもあったのかと、胸中に違和感が過るが、それではこの様な大規模な力の行使が説明つきにくい】
【その疑問について考えるのは、とりあえず後回しだ】

……そうか。なら……覚悟は出来ているんだろうな……ッ?

【返答は、肯定――――それを認めると、青年の言葉が低く押し込められた様に絞られていく】
【ゆっくりと背中を丸めて身体の重心を下げる。同時に、握り締められていた両手を、パッと開く】
【瞬間、妖しく光る紅いラインで複雑な文様が描かれた、ハンドボールほどの大きさの、金属製と思われる3つの黒い球体が、閃光と共に虚空から現われる】
【――――能力者。それは間違いあるまい】

…………!?

【戦いの準備はできた。そんな折に向けられる少女の問いに、青年は怒りとは別の様子で眉を潜める】
【その問いかけに、上手く説明のつかない違和感がもう1つ、胸中に膨らんだからだ】

……待て、もしかして……目的は同じなのか?
――――俺は、逃げ込んだ『鼠』を仕留めに来たんだ……この辺がふざけた界隈なのは知っている……お前、もしかしてクズ共を狩りに……?

【その違和感に明確に気が付いた瞬間、青年は思わず問いに問いを返していた】
【まずは、問いに答える。彼もまた、この場所に居るらしい悪人を狩りに来たのだと。周辺の有様に動じないのも、やはり只者でなかった事の証明なのだろう】
【同時に、青年は問い返す。この殺し、最初は理由の無いものだと受け取っていたが、もしかして「理由のあった殺し」なのではないか、と――――】
【その問いの言葉には、「敵愾心を抱くにはまだ早いかもしれない」と言う、自制の響きが含まれていた】
538 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/21(日) 00:30:11.97 ID:8awTHiBC0
>>537


【青年の言葉に彼の人格を見てああなる程と彼が来た理由を理解する、残念ながら彼女の理由は青年とは因果が逆なのだが】

狩り ……そうですね、飢えを満たすならそれしかないという点でいえば、確かにそうです

【少女は時折殺傷を起こす衝動を持っている、特にある条件を満たした者の場合はその飢えが通常より癒される衝動】
【条件そのものは善人だろうと悪人だろうと、それこそ何の罪も無い幼子だろうと凶悪犯だろうと満たしたりする】
【それでいてここに来ているのは、平たく言えば消し去っても良心が痛まない輩を遠慮なくヤる為】
【悪人だから息の根を止めたいのか、餓えているから悪人を狙ったのか。そこには隔たりがあるだろう】

貴方をどうこうする気はありませんが『鼠の習性』によっては私が狩った方が良いかもしれません
……あらかじめお伝えしますが、今の私との共闘はお勧めできませんよ?

【ああ、さっき漏らした言葉と合わせれば分かるなぁ、けど衝動に任せて後ろからバッサリ行かない自信ないから伝えておかないと、戦闘になったら逃げよう】
【戦う方向とは別の決意をして青年との距離を測る、防御用の能力を展開しておいて攻撃の予兆があったら全力で逃げる構えだ】
539 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/21(日) 00:32:19.75 ID:n2IpCNH20
>>538
/すみません、そろそろ今日は眠気が限界です
/明日の夜は来れそうなので、持ち越しと言う事で良いでしょうか?
540 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/21(日) 00:38:13.30 ID:8awTHiBC0
>>539
/持ち越しでお願いします
/ただ、ちょっと明日どうなるかわからないので居なかったらごめんなさい
541 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/21(日) 00:41:59.57 ID:n2IpCNH20
>>540
/分かりました。ただ、明後日、明々後日は、此方が来れないので、その時には置きスレ移行でお願いします
/それでは、今夜は失礼しますー
542 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/21(日) 21:37:16.67 ID:n2IpCNH20
>>538

……何、飢え……?
……何か、厄介な物を抱え込んでいる様だな……詳しくは知らないけど、俺にはそう見える……

【少女の言葉は抽象的で、その実体を上手く捉えるには至らない。だが青年には、1つピンと来るものがあった】
【それを「飢え」と表現する。それは、ある種の欲動を満たす事、というニュアンスが感じられる】
【この派手な殺しが、欲を満たす為の物だと言うのなら――――確実ではないが、恐らくは視野に入るだろう。「殺したいと言う欲望」が、そこにある事を】
【難しそうな表情を見せる青年。こうした相手だと言うのは、流石に予想の範疇を超えていた】

……正直、俺から見れば、勢い余って何をしでかすか分からないんでな……余計な被害を出す事を、許すつもりもない……
元より共闘するつもりはないが、ここに居る限り、目を離すつもりも――――ッぐ!?

【青年からしてみれば、まだ少女は得体のしれない人物と言う事になる。それはお互い様なのだろうが――――】
【そんな彼女が、まだ悪人ではないと言う確証を得られていない。ただでさえ派手な殺しをしているのだ】
【少なくとも、この区画に居る間は、彼女が無関係な人間を巻き込まないか、そばで見ているつもりだと】

【――――そう宣言しようとした所で、青年の言葉は不意に途切れ、身体がガクッとよろめく】
【その背中に、クロスボウの矢が1本、ざっくり突き立っていた】



「――――しつこい奴だ。人の庭にまで突っかかってきやがって……おまけに物騒な女が一緒たぁ……何をべちゃべちゃやってんだ……!」

【青年の背後、8m程の地点に、スキンヘッドにサングラス、頬に傷跡の走る、1つの典型的な悪人面の男が、クロスボウを片手に仁王立ちしていた】
【青年を背中から撃ったのは、間違いなくこの男だろう】

っ……貴様……あの子供はどこだ……!?
「いらねぇ事に首突っ込みやがって……あのガキなら、この中だ……おい!」

【激痛に身体を震わせながらも、よろめいた身体を立て直し、青年は男を睨みつける】
【男の合図と共に、そこここから6人の加勢が現われ、その中の1人が、大きな麻の袋をその場に放り出した】
【ボスっと、重い落着音が響いて。何か重いモノが中に入っているのは間違いない――――が、中からは何も反応がない】

「貴様ら散々この辺を踏み散らしてくれたんだ……楽に死ねると思うんじゃねぇぞ……!」

【男の言葉と共に、一団はその手に、思い思いの武器を取りだす。スリング、ガロット、ブラックジャック――――】
【誘拐グループの一団に、2人は包囲された格好となっていた】
543 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/21(日) 22:59:10.92 ID:8awTHiBC0
>>542

/誘拐犯はエキストラでしょうか、というより「どうとでもしちゃって構わない奴ら」でしょうか?
544 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/21(日) 23:18:24.10 ID:n2IpCNH20
>>543
/はい、モブ扱いで結構です
545 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/22(月) 00:18:35.12 ID:/XNlIhV00
>>542

あれが、貴方の言っていた『鼠』でしょうか? もしそうならその習性 ……例えば巣穴や狩りの方法等を教えていただきたいのですが

【もしくは利口な鼠自身から聞きだしましょうか。なんて妙な言い回しをしながら大げさに肩をすくめて見せる彼女の眼は既に先程の、人とは思えない化物の眼へと転じていた】
【周囲を取り囲む悪党を見ているようで見ていないその瞳を見て確信するだろう、理性を失っている訳ではなく狂気に堕ちているのだと】
【ただ、その理性が人間のものでなかったから勘違いしてしまったのだと】

どちらにしても「終わってから」で構わない、か

【自身に向けられた下卑た視線に気がついた瞬間、今度は『狂気が抜け堕ちた』――そして惨劇が始まる】   ・・・・・
【統率の取れていない為に固まって動きにくい場所に居る飛び道具持ちを、ボウリングのピンでも撥ね飛ばす様に大剣を投擲】
【大剣であるにも関わらず投擲武器と何も変わらないモーションで放たれ飛んで行き、しかし威力は大剣のままに数人を両断】
【いつの間にやら瞬間移動でもしたのかのように柄の部分に少女が現れ、彼女を軸にぐるりと方向を変えて同じ光景が何回か ……見る内に瞬間移動そのものである事を理解する】
【惨劇を免れたのは、青年と、腰を抜かして失禁したリーダー格の男、袋の中の子ども 最も、最後は本当に入っているのならだが】

この男、どうします? 他の下っ端はともかく彼はこの集団の指揮者だったみたいですし、ある程度の情報は持っていそうですけど

【狂気が戻った少女が青年に問うが、その目はどちらかといえば生かしておきたそうだ】
546 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/22(月) 00:49:19.41 ID:EoTHdLIF0
>>545

……さあ、な。詳しい事は知らない……ただ、人浚いの現場に行き当たって、追いかけてきただけだ……!

【少々無理矢理に身体を捻り、背中の矢を引き抜いて捨てながら、青年は答える】
【賞金稼ぎとして獲物を狙うのであれば、それ相応に事前の情報収集などもしているのだろうが、今回は偶然の遭遇】
【青年にしても、今回の敵の詳しい内容までは、知らないらしかったのだ】

(……何か、妙だ……この女、やっぱり尋常じゃないモノを内に秘めてる……
 これが、さっきの皆殺しに繋がってる訳か……鬼が出るか蛇が出るかって奴だな……!)

【自分自身も応戦の構えを見せようとして――――青年はそれでも、そばの少女の様子の方に気を取られていた】
【それが、人に害なすものなのか否か。青年の興味はそこだ。自分たちと克ち合いさえしなければ、とりあえず問題は無いと考えて良い】
【それを知る為にも、青年は少女の様子を窺う事を選択したのだ】

「行くぞ、ぶちのめせぇッ!! ――――ぁ、なっ、わぁあッ!!」

【そうした2人のやり取りにお構いなく、暴漢達は攻撃を開始する。まずは投擲で痛めつけ、接近して殴り倒して締め上げる――――いつもの手で行こうとして】
【ものの見事にそのたくらみは失敗する。数に任せた猛攻だけでは、不幸な事にこの2人には通用しなかったのだ】
【立ち木を薙ぎ払う様にして両断されていく人間。唯一死を免れた男も、その一瞬で戦意を喪失していた】

(……能力者、か……まぁ、当たり前か。でなきゃ、1人であんなに殺せるはずがない……俺みたいな事を、誰もが出来る訳じゃない……)

【その有様を見て、なお取り乱す事の無かった青年。それは、彼自身も同じ様なものだからだろう】

――――こいつは子供を殺した。俺のルールでは、そう言う奴は殺す。それ以外に選択なんて、無いんだよ……!
「ま、待て! ……へへ、お前ら他の子供は助けなくて良いのかよ? ……そ、そうだよもう良い、俺を公安に引き渡せ!
 俺だって、このままリンチに遭って死ぬなんて、まっぴら御免だ……!」
……少なくとも人1人殺しておいて、何を都合の良い事を……ッッッ!
「ぃっ、ぃぁぁぁああああッッ!!」

【チラリと、投げ出された麻袋を一瞥して、青年は言葉を籠らせる――――じわじわと、血の滲みが広がって行く麻袋を一瞥して】
【男は、その状況の中で「開き直る」事を選択した様だった。これが唯一の犯行ではない事を匂わせて、情報と引き換えに自分の死を避けようとする】
【しかし青年は、益々瞳を怒らせて男を睨みつける。周囲に展開されていた、青年の召喚した金属球の1つが、男の左手首を薙ぎ払う】
【ゴリッと、曲がってはいけない方向に手首が曲がる。男の悲鳴がけたたましく響き渡った】

【――――少女とは逆。青年はこの男を、生かしておく腹が無いようだ】

/すみません。今日は今日で、このレスだけで落ちる事になると思います……
/そして先述の通り、明日と明後日はここに顔が出せません。少々間が空いてしまうので、続きは其方にお任せします
547 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/22(月) 01:20:36.30 ID:/XNlIhV00
>>546

馬鹿ですね、[ピーーー]にしても拷問して吐かせるだけ吐かせてからにすればよかったのに、こういう手合いなら出来たでしょう

【彼女が生かしたかった理由は二つ『情報』そして『恐怖』男の命そのものはまた会った時にでも構わないという程度の話、温情でも何でもない】
【悪を狩るにしろ目先の欲に囚われたあまりの考えなしな行動に少女は失望した】

彼方は正義の味方でも悪の敵でもなんでもない、もしどちらかだったとしても畑違いの私にすら馬鹿にされる程のお粗末なものですね
今の行動で助からなくなった罪なき人がどれだけ生まれたのでしょうか?

【相手の危険度すら感じ取れないお粗末な浚い屋など、リーダー格であってもただの末端だろう】
【所詮トカゲの尻尾、彼らが約束の時間に来なければ少し付け根の部分が死んだと看做して手持ちを持って帰るだけ】
【つまり彼の行動は今情報を得られれば助かる筈だった子どもをみすみす売り飛ばさせたに等しい】

まぁ、わたしにとっては“ついでの人助け”ができなくなる程度ですし、どうでもいいですけど
だって、どうでもよかったからこそ彼方に任せた訳ですしね?

【どうでもよかった、失敗してもよかったから他人に任せた。そうは言いつつも彼女の顔には怒りが浮かんでいた】
【「貴方の方が確実だと思ったのに」少女の目は、少女が意識せぬままにそう語っていた】

さよなら

【もうここにはいたくないとても告げるようにその四文字を吐きつけて、風のような速度で去っていく】
548 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/22(月) 01:43:23.69 ID:/XNlIhV00
/この次か次の次あたりで締めにできそうですねー
549 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/22(月) 18:17:06.29 ID:/XNlIhV00
>>547 はミスです
まだ止め刺していないのを見落としてました
550 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/22(月) 18:58:18.73 ID:/XNlIhV00
>>547 をもう一度書き直します、今は無理ですがお待ちください
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 20:03:09.77 ID:EK3cLtF20
【街中――大通りに近い児童公園】
【曇り空がどんよりと広がる、街灯は蒼白い冷たい色で照らして、さび付いた遊具は前文明の遺した何かのような、】
【だなんてほどでもないのだけど。とかく大通りから近いこの場所には、それなりの人通りがあって、人の声もちらほらと聞こえ】

……――酔った。

【だから多分ベンチで何か後悔するみたいに頭を抱える人影がひとつあったとて別段に変なことではない、はず】
【そこらへんの自販機か何かで買ったのだろう飲みさしのペットボトルの茶を頬に押し当てて、熱い気のする頬を冷やして】
【それからキャップを開けて飲んでいる。――ひといき置いて飲み終えた彼女がため息をついて天を仰ぐ、その両眼が暗がりの獣の目のように光に艶めいて】

【黒猫の毛色をした黒髪、緩く内に巻いたセミロングヘアに、その肌はひどく蒼褪めたように白いのだけど――顔ばかりは化粧で隠し】
【つんと釣ったアーモンド型の眼はどこか猫にも似るよう、なんだか人の眼とはどこかが違うような印象があって、長い睫毛が眼に影を落としていた】
【胸元に飾りリボンのついたシャツとハイウェストのミニスカートが臙脂色、羽織ったコートはテオレ色の丈の短いもので】
【足元は一応冬めいた気温だというのに薄いストッキングだけ、それから、ヒールの高いパンプスで。そんな女は足を、少しだけ神経質っぽいように組んでから、】

……誕生日おめでとうだなんて嬉しくありませんの。
あの子は童顔ですから、いいのかもわかりませんけれど……。

【コートのポケットから薄っぺらい携帯電話を取り出して眺めて、それからひとりごちる】
【曰く誕生日らしいのだけど、ふうともう一度ため息を吐いて画面に目を落とす彼女の様子を見れば、あんまり喜ばしくもないらしく】
【まあ女性的に複雑なのだろう――とは簡単な推測、それでも綺麗にそろえたつま先の指先で操作する画面には、すごく喜んでいるようなメッセージを投げて――】

どうせですから、もう少しどこかで飲みましょうかしら……。

【古い木のベンチを軋ませて寄りかかる、――余談だけれど、その胸元は女性らしさをぎゅっと集めて詰め込んだように豊かで、】
【わざとでもないのだろうけれど、それがひどく強調されるような形になっているのだった】
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 21:35:37.75 ID:MR2I37Bpo
>>551


やあお姉さん。どうかしたの?


【──特徴的な、月明かりに映える長い金色の頭髪を後ろで纏め、】
【色白の肌にきりりとつり上がった眼と、割と整った顔立ち。】
【これといった特徴のないカジュアルな服装と長いマフラー纏った、小柄な青年が、白い吐息混じり、後ろから声をかけた。】
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 21:47:31.39 ID:EK3cLtF20
>>552

まあ、どうもしませんことよ。春も近いことですから、蛙はいつ起き上がるのかと考えていましたの。

【なんてことのない嘘、そんなこと考えても居なかったままつらりと並べ立てる嘘は立てた板に水よりも滑らかに滑り落ちて消えていく】
【相手が背後に立ったのを気付いた瞬間には携帯電話の画面をオフにしていたから酔ったなんて言う割には意識がはっきりしているように見え】
【というよりも顔に出ないタイプなのか、それともまるで素面とも見てとれそうなほど、その様子に酩酊したような様子はなく】

わたくしに何か御用ですの? 道案内程度でしたら、お力になれるかと思うのですけれど――。

【にこり、と、ある意味では完成しきった、出来上がった笑みを向けるのだろう。振り返って、背後の彼へと】
【なんだかいっそ作り笑顔という印象さえ消えてなくなりそうなほどの、笑みだった。にこりと笑う――けれどその吐息は微かに酒の香りがして、】
【それなら言葉は嘘ではなかったのだろうけどなんて余談。それと、彼女からは、甘たるい煙草の煙の臭いが、少しだけした】
554 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/22(月) 21:50:55.64 ID:/XNlIhV00
>>546

お待ち下さい、私は浚われた子ども達が気になります、この場で終わらせるにしても公安に引き渡すにしても手遅れになるかもしれません
ここは私に任せていただけませんか?

【男を生かしておきたい理由なんて『死の恐怖を刻み付ける』ことと『男の持つ情報』それだけ、前者に関しては衝動を満たす為だ】
【そもそもが“どんな目に遭わせても心が痛まない相手”を求めてここに来た彼女が「命までは」なんて心がけをしている訳が無い】
【その証拠に服の袖から拷問器具やら薬剤やら注射器が出てくる】

どうします? 人助けについては“ついで”なのでこのまま帰っても構いませんが……

【ついでと言いつつも、少女の瞳は青年の短絡的な行動を咎めていた】
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 21:58:55.12 ID:MR2I37Bpo
>>553


【──結論から先に述べれば、彼は確かに迷っていた。】
【それは道にだとかそういう話ではなく、記憶があやふや、つまるところ記憶喪失という状態らしい。】
【なぜ声をかける相手に彼女を選んだのか、これも結論からいえば負のオーラを感じたからだ。つまりお節介を焼こうとしたのである。】
【記憶喪失の癖に、お節介を焼こうとする──自分の言動から、かつての自分の像がちょっと掴めてきそうな気がする──】


【閑話休題】


あァうん。えーとね、泊まれるところを探してンだけどさ──酔っぱらった女性が考えることじゃないよね、それ。


【けたけた、と笑いながら近寄ってみる。なんだか受け入れて貰えなさそうだけど。】

556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 22:05:49.51 ID:EK3cLtF20
>>555

【二十三とか言う年齢になってしまった。二十三て、昔は、もっと、ずっと未来の事柄のはずで】
【そうしたらその頃にはなんか多分よく分からないけど大人になってたりして大人ってよく知らないけどなんかとりあえず、】
【なんか凄かったはずなのだ。だけれど今の自分を思い返してみれば、とか、そういう、ナイーブなものではない】

【もっと、こう、純粋に――歳とかもう取るのやめたいのですけれど、という、切実なもの、だった】

宿泊できるところですの? ええ、わたくしの知っているところでよろしければお伝えできますのよ。
お金はどれくらいお持ちですかしら? この辺りでしたら安宿もありますのよ、さすがにドアに鍵のないところは嫌ですわね?

【近づくこと、それ自体は拒まなかった。必要がるようならベンチの左右どちらかに避けて、彼が座れる程度のスペースも確保するだろう】
【けれど合コンやらで酔っ払った女が見せるようななんでもいいから!みたいなところがあるでもなく、やはり意識はしっかりとしているようで】
【彼の言葉にそう返した彼女はくすくすとどこか愉快がるような声をあげる口元を手で隠している、リップを引いた唇は、さかむけの一つもなく手入れされていて】
【口に添える指先も。ささくれどころか爪の先端の丸みさえ一定に揃えてあるよう、血色のいいピンクの爪には、透明のマニキュアが塗り重ねてあって、街灯に艶めき】
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 22:15:31.21 ID:MR2I37Bpo
>>556


【触れてはいけない女性の領域──】
【青年がそこに足を踏み込むのは、まだちょっと早い、気がする。】
【でも23ってまだ全然若いと思うんですけど(哲学)】


んー…まあ自衛くらいならできると思うから、どこでもいいけど、──おいしょ、。これで足りねーかな。


【彼女の隣に腰を下ろせば、自身の懐からがま口財布を取り出す。】
【大して膨らんでないそれを広げて、小銭ぽとぽとと掌におとしては彼女に見せ。】


これで足りるかな?


【日本円にして、300円程度。】
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 22:23:42.12 ID:EK3cLtF20
>>557

【だけど二十を超えた日から年齢なんてどうでもよくなるものだ。むしろ鬱陶しくもなる。もういいでしょう、そんなこと、ずっと言ってた気がする】
【それでも見てくれだけなら彼女はむしろ見様によっては未成年にも見えるほどだ、十八はあり得ないけれど十九ならばもしかしたらあり得るかも、という顔】
【それは化粧のせいなのかは分からなかったけれど。ただそうでなくても見た目よりか若く見える――そんな風な感じがして】

あら、自衛が出来るだなんて仰っても……売人がノックなしにお邪魔してきましてよ?
何のとは言いませんけれど――鍵くらいはあったほうがいいと思うのですけれど。

【どうやら彼女の言う安宿と言えばそんなド底辺までを取り揃えているらしい。むしろどうして知っているのかという話にもなりかねないのだけど、】
【とりあえず鍵くらいはあったほうがいいはずだと進言しておく、それからよく手入れされた髪の、豊かな胸元に乗った毛先を指先でちりちりと弄ぶようにして、】

そうですわね、ドアに大穴が空いて六年目とかそんな感じの宿でしたら……。

【その声は冗談なんだか本当なんだか、分かりづらい。いつもいつでも猫を甘ったるくとろかすような猫撫で声、真意なんて、表情からも読み取れず】

あなたさまは、旅人ですかしら? この辺りでそれだと難しいと思うのですけれど――、

【口元で両手を合わせるような仕草。視線は相手の示した小銭を見て、――それから、彼女はひときわ、――この瞬間だけは感情がよく見て取れて――嬉しそうに、】

あなたさまさえよろしければ、わたくしが用意して差し上げましてよ?

【だなんて、言うのだった】
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 22:32:42.82 ID:MR2I37Bpo
>>558


むむ、売人? ── 確かに寝てる間とかは不味いかもな……。


【どんな輩が飛び出すのか。彼にとってはちょっと検討がつかない様子だが、】
【路地裏レベルでやばそうな宿とか紹介されそうで怖い。】
【彼女の進言を聞きながら、気づけば予想以上に豊かな胸元へちょっと視線送って酔ってもいないのに頬をちょっと赤らめつつも】
【よほど世間知らずなのか、彼女の言葉を信用するために吟味する材料なぞないし、冗談混じりの言葉も真剣な表情で聞くのだった。】


──まあ、旅人みたい、な、ものかな。──マジで? いいの?


【じじぃ、彼女の顔を見つめ、確認。】
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 22:39:50.19 ID:EK3cLtF20
>>559

【そして、多分、ああいう場所は治安だけでなく衛生的にもよろしくないだろう】
【数回行ったことがあるが使った痕跡のある注射器やら避妊具やら落ちていたのだし、やはりオススメは出来るわけもなく】

ええ、構いませんのよ。今日は誕生日ですもの。大した思い出もありませんから……。
――あなたさまと出逢ったこと、思い出にして覚えておきます、……なんて。

【いいのかと確認されれば彼女はいっそう嬉しそうに顔を綻ばせる、丸いが釣った眼は変わらずどこか不思議或いは不気味――?な様子ではあったが、】
【当人自体は悪人ではないようだった。少なくとも今まで、彼に対して見せた顔だけを見るのなら。目だけがどこか異質。それ以外は、よほど変な場所は、きっとない】
【或いは彼を認識して以降ずっと笑っていることとか。違和感になるのかもしれないけれど】

ご希望はありまして? あんまりに高いところだと、困ってしまいますけれど――。

【まるで彼に対して何か出来ることが嬉しい様子の彼女はそうやって訪ねるとまた携帯電話の画面を点灯させる、それで、】
【一緒に見てほしい、なんて、そんな風のことを言って彼をベンチの隣へ誘うのだろう。素直に彼が来てくれるようならば、】
【パーソナルスペースという単語を知らないか忘れてしまったかのように近辺の宿泊施設について検索途中の液晶画面を、見せようとするのだろう】
【(ただ、どこかで彼が少しでも拒むような嫌がるようなそぶりを見せれば、次の瞬間にはスイッチを切り替えたように、距離感の取り方が、変わるのだけど――)】
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 22:48:22.62 ID:MR2I37Bpo
>>560


──お姉さん、今日誕生日なのかよ! 本来なら、俺がお姉さんにあげなきゃの処なのに……。誕生日おめでとな!


【もしかして最初ずーんとしてたのは、誕生日一人で寂しかったから?──などと思考巡らすもののそこは、自重。】
【両手ぎゅう、と握れば、彼自身ほぼ無一文なために何か与えることはできないけれども、お祝いの言葉を伝えて。】
【後日お礼とお祝い、別にして何か贈り物をしなくては、などと思考の片隅に覚えておき──。】


うゥン。布団が暖かければ、どこでもいいのだけど……。


【ずず、当然のように女性に身を寄せれば、一緒に確認するように携帯の画面を覗く。】
【候補の中、なるべく安そうなホテルを探してみて。】
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 22:56:38.46 ID:EK3cLtF20
>>561

ええ、そうですの。だからといって特別なことがあるわけでもないのですけれど――まあ、ふふ、ありがとうございます。

【一瞬だけほんの一瞬だけ何か暗いオーラがよぎったような気がするが、気のせいだ。というか気付いたらいけないやつ、多分SAN値辺りを持っていかれる事態に】
【なるはずもないけれど、まあ、触れぬが吉だろう。お祝いしてもらう気持ちは確かに受け取ったらしい彼女はやはり笑ってみせて、】

それでしたら……ここのベッドは寝心地が良かったように記憶していますわ、――少し遠いのですけれど。
あなたさまがそれでいいのでしたら、誕生日だと言うに一人ぼっちのわたくしとしばらく歩いてくださいましな、あなたさまとお話がしたいですから――。

【それでもやっぱり距離感というのは違和感として分かりやすいかもしれない。初対面の異性であるはずだのに、恥じらうような様子も、勘違いされたくない様子も、】
【彼女はどちらも持ち合わせていないようだった。男のパーソナルスペースは横に広くて前が狭いらしい。女は逆で、だから、これは、性差かもしれないけれど】
【何も躊躇う様子もなくある程度の距離まで顔を近づけることだってある彼女は、記憶のない彼にとってはどう見えるのだろう。――香水の、少し甘い香りがする】

【――ちなみに、彼女が指さして示したホテル……旅館?は、ちょっとした郊外にある代わり、敷地や部屋を広くとっているようで】
【一泊で一番高価な札が三枚以上飛ぶような部屋を彼女は指していた。なんてことなく、これくらいがきっとよろしいですわよね、なんて、当たり前のように】
【ちなみにその部屋には貸し切りのちょっとした温泉なんかもついているらしい。……彼が構いやしないなら、結構、というか、かなり美味しい話のようにも思えて】
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 23:09:11.42 ID:MR2I37Bpo
>>562

【記憶喪失の彼にとって世間知らずという表現が適当かどうかは定かではないが。】
【少なくとも、ジェンダー的な違和感はなく──むしろ、記憶喪失であったために、うまい具合に馴染めているようだった。】


──そ、そうなの、か? 、つかいいのか、こンなとk──……、


【値段が見えた。本来ならば断らなければならない、気がする。】
【ただ、女性があまりにも当たり前のように、かつ、そこが標準とでも言うように選んだため、】
【流されるように、うなずいたのだった。】
【女性の、女性らしい挙動よりも、ついうなずいてしまった申し訳なさのためにそわそわとした様子で】
【もっと安いとこでいいといおうかなぁ〜と迷いつつも、結局、運が良かったと歩みを進めるのだ。】


──ええ、とお姉さんは名前なんていうの?


【道のりの途中、ようやく相手の名前を聞く】
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 23:16:29.53 ID:EK3cLtF20
>>563

【場所が場所で相手が相手なら、たぶん、連れて行かれるのは、ヤバい場所……だったりするのだろう】
【たとえば硝子がバキバキに割れくだけちりまくった廃工場、血みどろがピチャピチャするような路地裏の最深部、だけど、】
【結論から先に言っておけば、彼らが辿り着くのは。なんらかの妨害でもない限り、ちゃんと、さっき携帯電話で見せた通りの宿になる】

名前ですの? 二谷音々子。お好きなように呼んでくださいませな。
……あなたさまはなんてお名前なのですかしら。知らないままだなんて寂しいですわ、教えていただきたいのですけれど――。

【道が分かるのが自分だけなら多少は先導するような形になるだろうか。肩越しに振り返った彼女はやはり変わらず笑んでいて、ただ、】
【いつも全く同じ笑顔でないのが性質が悪いのだった。いろんな笑顔の仮面を適宜付け替えているような――、目をにこりと笑ませて、そう名乗る】
【ふたやねねこ。好きなように呼んでと結果を相手に丸投げにして、かつんと足音が高く一つ、ひときわ大きく夜に響くよう】

【歩くスピードを少しだけ変えて、彼の横に並ぼうとする。――多分、彼女のすることのほとんど全部に、これは当てはまるのだけど】
【彼が無意識でも意識的にでも拒絶するような仕草を取れば、その瞬間、彼女の態度は確実に、ただ、少しずつ変わる。瞳はじっと彼を、見ている】
【ただそれでさえいつまでもじろじろと目を見ているわけでもなく、時々逸らし、時々見つめ、――ただ、気は常に向けられている感じがするの、かも】

旅人さんでしたわね、どちらから来たんですの?
わたくしはこの辺りから出たことがないものですから――他所の国のことなど、とんと分かりませんの。

【やっぱり笑った彼女は彼にそう尋ねるのだろう。どの国――というよりか、どんな場所から来たのか。そう、緩く首をかしげて】
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 23:30:39.69 ID:MR2I37Bpo
>>564


ねねこサン。俺の名前は──ええ、と。──小辰丸……?、そう、小辰丸。


【名乗っているはずなのに、語尾がやけに不確かなのは、単純に身に着けた物に書いてある名前を、そのまま自分の名として扱っているから。】
【こたつまる、などというおかしな名前を名乗れば、寧ろそれが当然のように女性と歩幅を合わせるのだった。】
【ねねこから感じる意識に、ようやく少し感じた違和感を抱くものの、別に其がどうしたという訳でもないので態度には微塵も現れない。】


──それが、実は俺にもよくわからないんだよネ……実際のところ、さっき名乗った名前も自分のかどうか分からない。記憶が曖昧なんだ。


【そしてそこでようやく、自分の身の上を話す。】
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 23:39:07.54 ID:EK3cLtF20
>>565

【笑っている。けれどその向こうで、いつも、あまりにも表情のない目が、じっと相手を見つめている】
【そんなような錯覚。だけどそうして見ても、瞳はあまりにもにこやかで、その笑顔が心底からのもののようにしか見えないほど】
【察しが悪い性質であれば、そもそもそれが作ったものだとも気付けないかもしれない。それくらいの、贋作】

小辰丸、様ですのね?

【そう尋ね返した彼女は「珍しいお名前ですのね」と微笑む、「わたくしも、同じ名前の人とは出会ったことがありませんけれど」と付け足して】
【「なんという字を書くのですかしら?」と尋ねるのなら、名前の音もそうだった。櫻のほうの人間なのだろう。……の割に、瞳はいやに鮮やかな青りんご色で】
【どちらかと言えば夜の獣めいた瞳の艶めきといい、まるで宝石をはめ込んだようだ。――なんて、それは、余談だった。きっと、純血ではないのだろう】

……まあ、記憶喪失みたいなものなのですかしら。
ドラマや映画ではよく見かけるのですけれど――、……ふふ、お困りでしたら、なんでも言ってくださいな。
わたくしに出来ることでしたら、お手伝いさせていただきますから――、

【――本当なら金を請求するのだけど、と、笑った表情の裏で、隠しきって、そんな風に思う】
【けれどさっきの様子を見れば金は持ち合わせていないよう、それなら、別に人助けくらいしてみたっていいでしょう、とも】
【元来こういうのが嫌いだとは思ったことがなかった。だから、うん、問題はない、と、判断して】

【(本当は、嘘だ。人助けが嫌いなんじゃない。むしろ、逆で、"好きすぎる"性質。だから――これらの言葉も、或いは、本当に、心底の善意にも似ていて)】
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/22(月) 23:49:39.26 ID:MR2I37Bpo
>>566

【察しが悪い上に、所謂本物の笑顔を見た記憶がない。】
【彼が、彼女の笑顔の真偽に気づけるはずもなく、ただ、感じの良い人という印象を受ける。】


様はいらないけどね……。というより、俺が、ねねサンに様付けしたほうがいいかもしれない。


【やはりまだちょっと申し訳なさそう。というより、彼女の善意の、強さ≠ンたいなものには気づいてしまうのだろう。】
【とんでもない人の良さ。加えてこんなにも下手に出られたら、自分は偉いのではないかと勘違いしてしまいそうだ。】
【あるいは、もしかしたら、物凄くいいとこ出の、教育が確りしたお嬢様なのだろうか?】
【──さっそくちょっと名前を省略してあだ名のような感じで呼びながらも、上の推測を前提に、少し話を進めてみた。】


ここまでして貰って、これ以上迷惑はかけられないよ! でも、安くてもいいから、仕事とかないのかな?


【もしかしたら、もしかしたら! コネで働かせてもらえるかもしれない。そんなことを思った。】
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 23:59:14.78 ID:EK3cLtF20
>>567

え、いえ? わたくしのことなど道端の野良猫とでも思ってくださいな、ふふ。

【道端の野良猫。その割にはずいぶんと出張ってくるのだけど、まあ、そのあたりはいいのだろう】
【そこら辺を歩く野良猫に様付けなんてする人はいない。適当にタマとかミケとかどうでもいい名前で呼んで、誰もがそれでいい】
【――から、彼女に対しても、それでいいのだ。というのを本人に言われるとやりづらいのかもしれないけれど、】

【確かに彼女はこうでもしていなければ、名前も何も関係ないモノでしかないのだから。――ほんとうに、それで、いいのだけど、】

【(娼婦。どこかに所属するわけでもなく、ただ、行きずりの男を捕まえて寝るだけの、まず普通の人には見下される、或いは野良猫の方が、立場は上かもしれない)】

お仕事ですの? そうですわね、……今すぐにというわけにはいきませんけれど、もしかしたら。

【――だから、その、もしかしたら用意できるかもしれない仕事というのも、そういったコネを伝ったものになる】
【それを言いやしないのだから性質が悪いのだけど、――彼がそれで頷くようなら、たぶん、適当な仕事を見繕うくらい、世話焼きの彼女ならするのだろう】
【世話焼き。むしろ焼きすぎて焦げているきらいすらあるのだけど、それが彼女の性質だった。――そろそろ、目指す宿も見えて来る頃だろう】
【値段が値段なのである程度想定していたかもしれないけど、……結構ないい宿だった。ちなみに電話はすでにしてあって、空き部屋の確認は済んでいるから、】
【向かえばとりあえず今晩は確実に眠れるというのが確定していた。多分食事もついているだろう、夜は難しいかもしれないけど――まあ、朝は、多分】
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/02/23(火) 00:15:42.57 ID:fPtW1hL8o
>>568


助けてくれた人を、野良猫扱いはできない……。野良猫も可愛いけどね。


【少し自分を卑下しすぎているような気もする──】
【彼女の身の上なんて、知るよしもないから、その言葉の裏にどんな意味があるのかも、わかるはずもない。】
【ただ、彼女が恩人ということにはかわりない。】
【それに多分、娼婦と言われても、ぴんとこなさそうだ。】


──お仕事の件は、まあ無理に、とは言わないから。もし、そういう話があって、俺のことを覚えてたら──程度でいいからさ。
今日の誕生日も、恩返しもちゃんとするからさ。とにかく、今日はありがとな! 今年一年、ねねこサンにとっていい一年になりますように!


【ようやく見えてきた旅館。区切りのいいところで上記のように告げれば、彼女の背が見えなくなるまで、見送ることになるだろう。】


/切りがいいのでこの辺で!お疲れさまでした!
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/23(火) 00:25:56.95 ID:1n1mummR0
>>569

いえ、そんなの。お礼だなんて要りませんの、誕生日をお祝いしていただいたのですから――。

【そういう性質だからこそ、礼だなんてものには頓着しないのだろう。そんな風な言葉を並べつつも、ただ、そのうち、適切なタイミングで、】
【「では、楽しみにしていますわ」だなんて言葉に切り替えて。いい一年になりますようにという言葉も受け取ることにしたのだろう。――にこり、と、笑って】

【やがてその場所へ着けば、一通りの手続きまで変わりに済ませるのだろう。自分が泊まるわけではないから、支払いやら、なんやら、済ませるまで終え、】
【それから彼に見送られて街明かりのほうへと帰っていくのだろう。時計をちらりと確認してみればそう遅くもないけれど、早くもない時間】
【最後に一度振り返って彼に手を振って。どこかハシゴでもする予定だったけれど、――なんて考えながら、ふらりと、家へと向かう、】

【――出迎えた同居人に「なんで携帯見ないの? 馬鹿なの?」だとか煽られた、なんて後日談は、きっと余談だ】
【幼馴染の友達が居ない間にと誕生日パーティの用意をしてくれていて、だけど戻らないものだから、携帯にメッセージ数件、ちょうどさっき探しに出たらしい】
【その"彼女"を探しに出ながら――それでも何か機嫌のいい感じがしたのは、きっと、彼のおかげなのだろう】

【(そして、これは、余談か、後日談か。けれど彼にとっては、或いは大事かもしれないこと)】
【(チェックアウトの際、宿のほうから荷物を預かっている、なんて、封筒を渡されるだろう。もちろん受け取れないというのもあるのかもしれないけど、)】
【(中身は高額の紙幣が数枚と、きっと彼女のものだと思われる連絡先。試しに電話でもかけてみれば彼女が出る、それくらいには直通の、本物の番号だった)】

/おつかれさまでした!
571 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/23(火) 19:22:31.12 ID:IDiWragvo
【酒場】

【こういう街の外れにある安酒場でトラブルなんてまあいつものことなわけで今更どうこういう必要もない】
【カードゲームの勝敗か金の貸し借りか理由もなくなんか気に入らねえとかその程度で喧嘩が起きる】
【今日も今この場所で何が理由かは知らないけど喧嘩沙汰だ。3対3で地元のチンピラかなんかだ】

『またかよ、馬鹿ばっかりだなこの街は』
『おい、さっさと自警団に連絡しろ。UTも近かったし、おい誰か』
『…警察?どうせこねえよこんな事には』

【周りはなれたもんでささっと距離をとって、眺めている。店主は受話器をとっている】
【誰が呼びに行くかでジャンケン貧乏くじの引き合いだ】

…おい、まだゲームの途中だろ。帰るんじゃ…

『やめだやめだ。素人の喧嘩なんぞ巻き込まれちゃこまる。今日は帰るぜ』

【酔っぱらいの愚行をみてシラケた客が帰っていく。ポーカーも終いだ。卓に残された一人の背の高い男】
【サングラスに古びたダブルのライダース、腰にはホルスターと2丁拳銃。エングレービングされたリボルバー】
【立ち上がって呼び止める。…カードを投げ捨てて椅子に腰掛ける。つまらねえとつぶやいて】


/>>506の投下文でもオッケーです
572 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/23(火) 21:00:20.78 ID:cVQMA0kVo
>>506

【――山奥の細い参道にて】
【首なし馬に乗った一人の女はとある場所へと向かっていた】
【それは秘湯とも呼ばれる温泉であった、この女にとっては何時もの風呂場であるが】

「もう少し、だな。もうちょっとだけ頑張れるか?」

【首なし馬は前脚を上げ、ヒーンと鳴き上げると】
【パカラパカラと再び歩みを進める、あまり元気ではなさそうだが】
【かれこれ2時間ほど歩き続けている、いくら馬といえども疲れるもので】

「あれ、やけに今日は血が散ってるな・・・」

【辺りが秘湯の場所を指し示すかのように赤く染まっている】
【それはおそらく血。鉄の臭いが辺りに充満してしまっていた】
【――今日は誰か入っているな、そんなことを感じて】

【温泉の脱衣所で鎧を脱ぎ、縦長のロッカーの中に入れる】
【うまく博物館に飾ってある鎧のようにに立ち、多少満足気になって】
【おっと、右手に持っている頭を首の上に付ける。実際は動きに合わせて霊力で動かすのだが。】

「よいしょ、っと。失礼。」

【といい、ドアを開けて風呂場へと入っていく。】
【やはり人はいたようだ。ここは男子禁制の浴場と聞くし、おそらく女子であろう】
【さて、この女も風呂につかろうと歩くのであったが・・・】

「うわあッ!?」

【ドシン。】
【何故か床に落ちていた石鹸を見事に踏み、見事にこけてしまった】
【体はもちろん後ろにつんのめって倒れてしまった】

「あっ・・・、そういえば」

【・・・頭が空中に残ったままになっていた】
【急いで右手に引き戻し、頭へとつけるようにして、何事もなかったかのように風呂につかろうとする】
【湯けむりで見えなかっただろうか、いや、多分見えたであろう。此の女は人外であるのを、気づかれてしまったか】

//すいません、まだよろしいでしょうか・・・?
573 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/23(火) 22:03:58.80 ID:IDiWragvo
>>572

【カポーンと湯につかってこれまでの道中の疲れを落とす(勿論、血を軽く落としてから入った)】
【野犬らしき群れ、紫の大猿、普通のたぬき、大蛇、たぬき…しかし私にかかれば造作も無い】
【むしろ普通に山道を歩いたことのほうがずっと疲れる。最近はデスクワークばかりでなまったか…】

【なんて考えているとガラガラと引き戸の開く音に少し驚いた。まさか他にも客くるほどの場所とは思っても見なかった】
【どうやらガイジンさん(櫻の国特有の島国的名称)らしい。温泉ブームとは聞くがよもやこんなところまで】
【まあ霊峰にサンダル履きで登るポジティブな奴らだと聞くし、外人というのはなんとも自由気まま――】

あっ、大丈夫ですか……あ

【ドッシーンと目の前でコケたから、瞬発的に手でもかそうかと思ったけど違和感は一瞬で気がつく】

(おやおやおやおや?おや…?)

【一旦思考停止、再開。理解。首が取れてるけど生きてる。……首を温泉の効能表に向ける】

……切り傷?


/すみません。気がつくのに遅れました まだいらっしゃいましたらよろしくお願いします
574 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/23(火) 22:13:38.24 ID:cVQMA0kVo
>>573

【多分もろに首が取れたところを見られてしまった】
【そういう生物、というか霊体であるし、致し方ないと思って】
【湯につかろうと、浴槽に入ると、女性の声が耳に入って】

「いっ・・・、いや!さすがに切り傷じゃない!
普通の人間なら首取れたら死んでしまうだろう!?」

【―言い終えてから、あっ、と言葉が漏れた】
【人間でないことを自ら肯定してしまったようなものだ】
【まあ、人外狩りとかの人間じゃないだろうと信じて風呂に入る】

「ふう、久しぶりの温泉は気持ちいいなぁ・・・」

【何故か風呂に入るのにチャプとも音を立てることがない】
【でも体は見えている。一種の幽霊のようなもので】
【そのまま此の女は座った姿勢を維持しようとする。話しかければ応答するであろう】

//いえいえ、よろしくお願いします
575 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/23(火) 22:31:53.72 ID:IDiWragvo
>>574

いや…霊山ともなればというか目の前で首が取れるのを見たら
もう逆にありえるというか…って首と体が離れてるのになぜそこは現実的な意見を

【自分だけ取り残されているような気分だ。どこにリアルの線引があるの…と思っても】
【地球は回り続けているないし相手はまあそれはそれとしてといったどこ吹く風でのんびり浸かっている】

えーっと…?どこから整理すればいいのか…兎に角、クビの取れる人間じゃなくて、クビの取れる人間の形の霊的な

【眉間にしわを寄せ、指をやって考えている。リアリストなのだ。能力とかそういうものを知らないわけじゃなくて】
【それのどれにカテゴライズすべきかという余計な悩みでいっぱいだった】

くっ……頭がグラグラする。一回出よう

【今度は彼女のほうが先にあがる。その時に長い黒髪に隠れながらも背中の立派な刺青が見えることだろう】
【ちなみにここの温泉に刺青のある方禁止…とは書いていない。刺青の組織の方々も同様である】
576 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/23(火) 22:40:39.36 ID:cVQMA0kVo
>>575

「え、ま、まあ。というか、ここって霊山なのか?」

【普通にこの山に暮らして生きているこの女からすると、霊山とは思わないようで】
【この温泉にもたびたび来ている、書いてある効能はなぜかないが】
【霊峰、というのなら聞いたことがあるが、霊山とは聞いていなかった】

「ああ、まあ人型をした霊とでも考えれば・・・」

【やけに悩んでいるようだった】
【眉間にしわを寄せ、指をあてて考えている】
【全く、霊の常識は人間の非常識であるということを此の女は知らない】

【ここで、のぼせかけたのか女性が湯船から上がる】
【さらりと伸びた黒髪に目を遣るが、背には見事な刺青が伺えて】

「人間ってのは自分の体に奇抜な絵を描くんだな。
それにしても、すごい上手く見事に描かれてるなあ。」

【おー、という声とともに、驚嘆の意を伝える】
【霊世界にはそんな、体に絵を描くなんて文化はなかったもので】
【もちろん、人間界で刺青をした人間がどのような人間なのかを知らない】

「よっし、私も洗おうかな・・・」

【なんて此の女も湯船から上がり、シャワー椅子に座る】
【すると、頭を太ももの上にのせて、首なしの体が頭を洗い始めた】
【なんというか、ものすごく奇妙な光景であろう。人間であれば見ることはないと思う。】
577 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/23(火) 23:13:17.35 ID:IDiWragvo
>>576

霊峰、霊山、神山…まあ全部似たようなものだしなんだっていいけど
知らないくらい昔からありがたーいお山だそうよ。もうちょっとリアルに言えば
魔翌力の濃度が濃いらしくてそれが能力開発だの魔獣の出現だのの原因になっていて…

…まあ、だから貴女もその関係で居るんじゃないのでは?
落ち延びて山に潜り魔翌力の影響で今の姿になっても何百年と生きながらえている…
もうきっと今はクビをはねた人も骨も残ってないでしょうね。

【と考えればこの姿でこんな風に生きていても納得ができる?ここで納得しとかないとこの先が困るのだ】
【だから山を降りるわけにもいかず成仏も出来ぬ。唖々、南無阿弥陀仏。妄想だが同情しよう】

極一部の人間でしょうけどね。私みたいなやくざ者か、調子に乗った若造ぐらいなもので

【疲れを取りに来たはずなのに余計に疲れるのはクビの取れる落武者という大物すぎる違和感のせいだろう】
【さっさとあがろう。そう思うが髪を洗うのには妥協はしない。持ち込んだ洗髪料で丁寧に丁寧にしつこいぐらいに洗う】
【まさに女は髪が命とでも言いたげな念の入りようでずぼらなやつなら3回は洗い終わっているぐらいの時間をかける】
578 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/23(火) 23:40:03.99 ID:cVQMA0kVo
>>577

「へえ、そうなのか。ありがとう、勉強になったよ。
・・・、いや、私はれっきとした霊人だぞ?」

【というと、頭だけ其処に残して、青光りする大剣を浴場に持ってきた】
【なんていうデリカシーのないやつなのであろうか】
【すると、体はそれをブンブンと振り始めた】

「これは私の家に伝わる剣、<<断死の大剣>>だ。
これで、いつも“仕事”をしてる。簡単に言えば、死にかけた人の魂を解放すること。」

【おそらく、誤った捉え方をされているのであろう】
【其れであれば、正した方がいいというのが此の女の考え】
【だが、もっと混乱させてしまうかもしれない】

「なるほど、ごく一部の人間のみなんだな。
というか、やくざ者っていったい何なんだ・・・?」

【彼女が時間をかけて髪を洗っている間、体は大剣をロッカーに戻して】
【頭を流し、体を洗って、風呂桶に顔を入れて、少女の方を見ていた】
【すごく気になってしまうであろうが・・・、少女の洗髪はいつ終わるか】
579 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/23(火) 23:45:14.13 ID:cVQMA0kVo
>>577

//すいません、次返すのが遅れるかもです・・・・
//申し訳ない・・・
580 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/24(水) 00:06:45.73 ID:LhOysCZco
>>578

だから、霊人ってなに…あっ、ちょっと!

【クビが取れるとここまで自由奔放になるのか。と疑問に思う】
【それには関連はなくてそういう性分なんだろうとうことは勿論わかっているが】

……はあ、そうですか。

【死にかけた人の魂の解放。そうです。もう、余計なことは考えるのはよそう】
【想像では末期がんのジジイを叩き切ってるが、まあそれが仕事というのならよろしい】

仕事と言うのなら…それで生計が立ってるわけですよね?ビジネスになるかしら
確かに安楽死が非合法な国であれば、霊に命をとなればむしろそれは自然死……

【しいて言うならお金の臭いがしなくもない。彼女はリアリストで経営者でもある】
【合法非合法なんて霊には関係ないだろう。もしかするとこれは……】

やくざ者ってのはろくでなしとかそういう意味よ。もう一つの意味は、私みたいな
“これ”で仁義を貫く人のことよ

【彼女が左手を突き出す。何もない。しかし、その何もない手に瞬きするうちに鞘に収められた刀が現れる】

581 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/24(水) 00:55:32.52 ID:+E4Rg6yAo
>>580

「霊人っていうのは、人型の霊のことを指す。」

【一応程度にまともに答えてみせる】
【本人は自由奔放、とは思っていないようであるが・・・】

「ああ、一応それが仕事であり使命だからな・・・」
「あと、金はあまり稼げないぞ?むしろ人々からは恨まれる仕事だ。
でも、安楽死は個人的に、だがいいことだとおもう。」

【此の女、一応程度に使命感は持ち合わせているようで】
【だが、仕事の内容的に人々からは確実に恨まれてしまう】
【でも、それが使命であるがゆえ、致し方無いと割りきっていたが】

「なるほど。ろくでなしな人をヤクザものって言うのか・・・!?」

【手に握られていたのは刀の鞘】
【瞬く間もなく、いつの間にか彼女の手に握られていた】
【おそらくは、異能の持ち主、"左眼"が反応していない・・・!】

「ふふ、すごい能力だね。一体どんな能力なんだい?」

【と、体だけずい、と彼女に近づいて訪ねてみる】
【と言うか、首がないというだけなのに、違和感は半端ないであろう・・・】

//すいません、遅れました・・・
582 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/24(水) 01:33:46.27 ID:+E4Rg6yAo
>>580
//すいません、落ちさせていただきます・・・
//当方は明日も大丈夫です、そちらの都合に合わさせていただきます
583 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/24(水) 01:34:21.14 ID:LhOysCZco
>>581

いやだから……もういい。人智の及ばないということにするわ様はお化けとか妖怪ね
カラカサとかドラキュラとかろくろ首とかの!!

…世間を知ってるのか知らないのかどっちなのか

【山にこもった落武者かと思えば最新の医療倫理も理解があるし】
【降りているのか登っているのか、まあいくら考えたとてそれは人間の思考であって】
【自分は辿りつけないのだろう。霊と倫理のディスカッションするのもナンセンスだ】

【髪をまとめて湯に戻る。良く見ればその体のあちこちには様々な古傷が見えるだろう】
【傷一つ無い美しい彫り物の背中は決して背中を見せなかった彼女の生き様の証でもある】
【霊と違って彼女はまだ、生きている】

どうだっていいじゃない。能力なんて。刀を出せるだけよ。これでおしまい
どんな能力を持とうがその人間の心が、信念が最も重要なのよ。生き様ってのは…とお化けに言っても伝わるかしら

【ぽーいと刀を捨てると落ちる前に消えてなくなる。相手と違って能力にはこだわりも興味もないらしい】
【言うとおりに刀を出すだけならその技術こそ必要となるはずだ。一息ついて】

私はそろそろあがるけど、貴女は山に住んでいるの?面白そうな人だから良かったら仕事をしない?
まあ、殺しか半殺しぐらいしかないけど。相手はろくでなしよりもひどいクズばかり。…やる?
584 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/24(水) 01:35:42.70 ID:LhOysCZco
>>582
//了解しました。明日も同じぐらいの時間には居ますので
/昼間でもレスしていただければ合間の時間で返したいと思います おやすみなさい!
585 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/24(水) 18:44:48.77 ID:+E4Rg6yAo
>>583

「まあ、そんな感じであってるな。
ふふ、私は霊人。人間の世間のことなんかあまり知りはしない。」

【確かに、人智の及ばないような存在である】
【だが、人間の世間のことには非常に疎く、知ることも少ない】
【理由は風呂に入るときのあれを見ていればわかるであろう】

「・・・、貴女、結構戦ってるね?
それにしても、身体の背に傷がないって珍しいな・・・。」

【此の女は、少女の体にいくつもの傷が入っていることに気付いた】
【だが、其の傷は背に及んでおらず、それが不思議だったようだ】

「確かに。私も能力云々関係なく、信念をもって動いてる。」

【――死前に晒された者を救え、なんてことを言われたものだった】
【その教えられたデュラハンとしての信念に従って、何人もの人間を殺してきた】
【罪悪感はあまりない、というのも信念に従って動いている、というのが理由なのであろう】

「すまんが、その仕事、断らせてもらうよ。
というのも、私の能力は左眼とさっきの大剣が組み合わさってできている。
というのもだな・・・、死期が近付いたことを左眼で察しないと、大剣で斬り殺せないんだ。」

【代々この女の家系に伝わっていた大剣には、制限が掛けられており】
【能力で死期が近いということを察しないと、完全に[ピーーー]に至らない、というものであって】
【それであれば、もちろん彼女の仕事の邪魔になるであろうて】

「あと、名前、教えてくれないか?何かの縁、ってことでさ。」

【彼女は風呂を上がる、それなら自分も上がろうと、身体はタオルで体を拭き上げ】
【次に、頭部を拭き、髪をちゃんと拭くと入ってきたときのように右手に持った】
【さて、彼女は名前を教えてくれるであろうか】

//すいません、お返ししておきます
586 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/24(水) 21:19:35.41 ID:LhOysCZco
>>585

人間の醜い争いってやつよ。でも、私は正義の為に戦っている
世間はどう思ってるか知らない…知ったこっちゃないけど
…背中を見せるような真似はしないし、背中を斬られるほど目が腐っても居ないわ
ウチのメンツに泥を塗るような傷は…ありえない。

【風呂から上がって体を拭いて、元のラフな服装に着替える】
【血染めのウィンドブレーカーは水洗いしたが温泉の熱で乾いていていてよかった】
【髪の毛のブローにまた沢山の時間をかけて帰り支度をする】

あらそう?死期が近い者を更に近くするなんて、難儀な仕事ね
そのあとはヴァルキリーに引き渡して閻魔翌様にさばいてもらうのかしら

【そんな冗談を言いながら、ロッカーの刀を取り出す。能力があってもこの刀は特別だ】
【きっとその刀から発せられる強大な魔翌力、禍々しい呪いのような何かを特に感じられるだろう】
【例えるならば戦場で生まれる感情や力が全てその場ごと詰まっているような雰囲気…】
【それが無理やり閉じ込められている様だ。強固であり脆く崩れそうな封印によって】

富嶽会、会長秘書…霧崎舞衣。何かの時はおいでになって。

【シンプルに名乗る。笑うことも少ない刀のような女はこの世界でも有数のマフィア】
【髪留めで長い髪をひとまとめにすると、何かの縁とジュースでも奢って、そこを立つことだろう】
【次にあうのは何処であろうか。このような何事もない場所であることを願いたい…山道は勘弁してもらいたいが…】


/戻ってきたのでお返しします!そしてなんだかキリもいいのでこれでシメということでもよろしいでしょうか
587 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/24(水) 21:38:45.42 ID:PA0QK4+G0
>>554

……後から探す、その腹だったんだがな…………だが、まぁ良いだろう。そうしたいなら、俺は任せるよ……っ

【浚われた他の子供の事については、青年も忘れていた訳ではない。ただ、それが男を生かしておく理由にはならないと踏んでいた様だ】
【恐らく、アテなく彷徨う事にはならないと言う、何らかの考えが、青年にはあったのだろう】
【ただ、他の被害者を確実に助けたいと言う少女の言葉に、青年は渋面を作りつつも頷いて】

――――逃げるなよ。逃げたなら、背中からぶち抜く……!
「ぃぎ、ひぃッ!?」

【冷え切った表情で男を見下ろすと、青年は牽制の言葉をぶつける。同時に、金属球から、赤い光弾が1発、足元の地面を銃撃する】
【逃げても撃ち止める事は十分に出来る。それを明示した青年のデモンストレーションだ】

さて……それじゃあ任せる。お手並み拝見と洒落込ませてもらうぞ……
「き、ぃ……貴様ら……!」

【青年は1歩下がって男から離れ、少女に男の処遇を委ねた】
【青年のそばに展開していた3つの金属球が、空中に三角型に整列し、青年は周囲へと視線を散らし始める】
【どうやら、男の逃亡に備えて、同時に周囲からの横やりに備えて、対応の準備を決めていくつもりらしい】

【男の方は、折れまがった手首を抑えて痛みに呻きながら、圧倒的かつ私的な暴力を振るってくる2人に、恨みの視線を返す】
【この男に、それを咎める権利があるとは、到底言えない状況でもあるのだが……】
588 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/24(水) 22:48:18.71 ID:7RX+iXyb0

>>587

任されました ……まぁ、ご期待に沿えるかは分かりかねますけど

【そう言って雲の流れと太陽を見上げる少女は、しばらく考え込んだ後に口だけを動かして青年に言伝をした】

『あらかじめ伝えておきますが“私は殺さない”事をこの男に約束します、取り乱さないで下さいね?』

【青年がその言伝について何を起こそうとしたのかに関わらず ――先ずは小指を鋭い針で貫く】
【言葉にならない叫び声を上げる男を見て少女の顔は剣呑になる、一体何を考えているのか】
【続いて大剣を首筋に添えて動きを恐怖で止めさせた後、流れるように注射器で薬剤を投与した】

今投与した薬は痛覚を増大させるものです、今回のような拷問用に作られた薬ですからね、だからほら、物凄く痛いでしょう?

【そう言いながら今度は人差し指を歪んだ針で貫く】
【人差し指を後にしたのは理由がある、人差し指の方がよく使われている分敏感で、前回より大きくなった痛みによる思い込みを狙ったもの】
【薬の効果だって存在するが思い込みを重ねた方が効果が高い】
【『薬剤まで使った前準備』に、ここからどんな拷問が始まるのかと恐怖する男の鳩尾に蹴りを入れて動けなくした後、もう一度薬剤を投与した】

さて、私はあまり拷問の心得が無いので殺さず手加減できる自信がありません
なので早く吐いて下さらないと、いつか加減を間違えて ……あれらと同じ状態になってしまうかもしれません

【そう言って彼女は男の視線を惨劇の跡に向けさせる】
【だが男はそれと青年を見比べてこう言った】

「ははっ、だけどよぉ……吐いたら吐いたで用済みにされる未来しか見えないぞ?」

それもそうですね、あなたの命なんてどうでも良いですし

【雲が太陽を覆い、少女に影が差した直後にブン、と大剣を振り下ろし男を袈裟斬りにする少女、傷口は浅いが男に恐怖を与えるには十分だった】

なら『吐けば楽に逝ける』と思いませんか? 吐かないのならその分時間は延びますが……あなたの拷問に割く時間をそう長くとる訳にもいきませんし
そうですね、この砂時計が落ちきるまででしょうか

【そう言ってあまり時間が長くない砂時計を取り出す ……その時間は5分も無いだろう】
【先程の威勢はどこへやら、男は恐怖に顔を歪ませガチガチと歯を鳴らす、最早このまま拷問するだけでも吐いてしまいそうだ】
【しかし少女はしゃがんで男と目線を合わせ、慈母のような笑顔を見せた ――瞬間、雲が太陽から退けて少女に後光が差す】

ですが私にはわざわざ命を奪わなければいけない理由もありません、だから『私はあなたを見逃す』という約束もできますよ

【ね? と青年の方を見る少女の姿は、男にとっては救いの女神のように見えたことだろう】
【だが少女は青年に向かってこうも言っている】

『あなたについては何も言っていません』

【青年が笑ったにしろ顔を背けたにしろ、もう男には青年も見逃す事が決まったようにしか見えないだろう】

公安に引き渡す時も、自白してくれたら色々と温情をかけてもらいやすいと思います

【少女に泣きながら感謝した男の持つ情報が出てくるまで、そう時間はかからなかった】
【そして少女が立ち去った後にどうなったか、それは語るまでも無いだろう】

/今までに時間帯の描写が無かったので、こちらで勝手にしてみました
589 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/02/24(水) 23:14:40.12 ID:+E4Rg6yAo
>>586

「人間は泥臭い争いが好きだからなぁ・・・。
ただ、自分の正義を貫くことはいいことだと思う。」
「ふふっ、さすがは剣士だ。背を見せるほど甘くはない、か。」

【彼女は自らの正義の為に仕事を為している】
【これを聞いただけで、この女は満足していた】
【それは、此の女も同じような境遇にあったからなのかもしれない】

「私たちは死期の近づいているものを楽にする、っていう意味で斬ってる。
ほら、苦しんで苦しんで、生にしがみついて生きるのは醜い姿だろう・・・?」
「ただ、死後の世界は知らない。ヴァルキリーが連れて行ってくれるんじゃないか?」

【―苦しんで死ぬ、というのは最も醜い死に方である】
【と、幾度も言い続けられてきた此の女からすると、生に縋る姿は醜いようで】
【ただ、死後の世界のことはあまり詳しくない、斬り[ピーーー]までが仕事であるから】

「霧崎舞衣、ね。いい名前。富獄会、っていうのは何かの集まりかな?
私はプロフィート・クォリーラ・ヘッレヴィ。ヘッレヴィでいいよ。」

【彼女の言う富嶽会、とは何かの集まりということは分かったが】
【人間の世の中には詳しくない、と言った通りどのような集まりかまでは分からないようだ】
【そして、此の女も名を名乗った】

【何かの縁、とオレンジジュースを奢ってもらった】
【相変わらず、人間の飲み物はなぜこんなに美味しいのか】
【彼女とも、また出会うであろう。口笛を吹き、首なし馬を呼び上げると】
【それに乗り、何処かへと去っていった。別れ際、彼女には手を振って】

//はい、ありがとうございました!
//また機会がありましたら
590 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/24(水) 23:20:40.73 ID:PA0QK4+G0
>>588

……?

【どういう事だ――――と問い返そうとしたが、言葉に出してしまっては密談の意味がない】
【言い出しかねている内に、事態は推移を始め、とりあえず青年は成り行きを見守る事に専念する】

(そんなモノまで用意があるか……つくづく、腹の読めない女だな。どういう人間なんだ……?)

【明らかに痛めつける事を目的として、準備として持ち合わせている。それが青年には気になる所であった】
【獲物を狙い定めて甚振る事を悦ぶサディスト――――と言った様な、ぎらついた雰囲気は感じない】
【かといって、誰彼構わずと言う訳でも無いのだろう。だが、その態度には慣れたものを感じさせる】
【それが、どうも青年には理解しかねたのだ】

(……上手いな。恐怖を植え付け時間を区切り、妥協と言うか、緩めてみせる……これなら、後は度合いの調整次第だ……)
――――――――フン

【じっとしかめっ面で状況を見ながら、その実胸中では、青年は少女のやり方に感心していた】
【人の心を、上手く揺さぶっている。そうして、やがてつらつらと情報は漏れだした】
【青年は、小さく頷いた。情報を得た事の手応え、そして自分のやる事の理解のサイン――――】
【情報が引きだし終わり、空気が弛緩した瞬間。青年の操作する金属球が1体、薙ぎ払われて――――男の頭部を粉砕した】
【柘榴の様に弾けた男の頭。当然、即死である】

……素直に吐いたからな。楽に逝かせてやったよ……約束を違えた訳じゃない……

【鼻白みながら、青年はポツリと一言だけ、死体へと言葉を向ける】
【単に痛めつける様な時間を惜しんだだけだったが、偶然にも、少女が最初に口にした「楽に死ねる」と言う状況に合致した事に、妙な可笑しさを感じたのだ】
【ともあれ、手に入れた情報に、やるべき事は見つけた。いつまでも構ってはいられないと、青年も歩を進めた――――】



【――――6人の男たちと事を構えた現場からほど近い場所にある、1棟の畜舎小屋】
【ご丁寧に、漆喰で塗り固められた窓は封印され、扉は大仰な錠で閉じられている「いかにも」な場所である】
【青年は、男の頭を叩き割ったのと同じ要領で、金属球を以って鍵を破壊し、扉を開く】
【――――中には、2体の子供の死体と、縄で縛られている、10歳に満たない程度の、男女4人の子供たちが、着物も着せられずに囚われていた】
【6人の襲撃と言うのは、彼らの戦力の総動員であったらしく、場の抑えとなる仲間は居なかった】
【事実上、これで子供たちの保護は完了したと考えて良いようだ】
591 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/25(木) 00:46:20.85 ID:/PNEzTsK0
>>588
/すみません、今日もそろそろ落ちさせてもらいます
592 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/25(木) 23:29:39.54 ID:3lySkExN0
>>591

>>590 で終わりにしちゃってもいい感じかとも思いますが……
593 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/02/26(金) 21:01:39.18 ID:tXwhw+Jpo
【路地裏】

【ここはいつもの様にカビ臭い。しかし、今日は血腥い】
【首を締め上げられながら壁に押し付け、持ち上げられる、恰幅のいい男】
【ヒップホップを真似た格好。ジタバタと不毛に動きまわり顔が真っ赤になる】

【持ち上げているのは白く細い腕の女だ。血管が異常に浮き出て、男を片手で持ち上げる】
【腰まであるような長いストレートの黒髪、冬だというのに肩の出たタイトなドレスと目立つ恵まれたスタイル】
【目が、青白く光っている。力を込めるたびにそれが煌々と光るようだ。そして右腕はまるで大剣のようだった】
【手入れの行き届いた白い肌はその右腕だけ肩から人のものではない黒く幾重にも重ねられた鱗のように】
【しかし刃は黒曜石のナイフの様。それが人の腕の何倍ものサイズで彼女の腕に取りついている】

【そして壁には一面に血が飛び散っている。足元は血の川が流れている。既に切り捨てられた男たちが】
【凄惨な躯となって転がっている。首を締め上げられたのは最後の一人だ。女は微笑みを湛えて】

おやすみなさい。

【そして、その腕の大剣を振り上げる―――】
594 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/02/27(土) 21:03:41.43 ID:SasXGBe20
>>592
/ではその様に。お疲れ様でしたー
595 : ◆YQBzKyX2hw9R :2016/02/27(土) 21:27:33.70 ID:Z3st2bEp0
>>594

でしたー
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/29(月) 18:32:34.55 ID:Lc17PLMQ0
【街中――道沿いのカフェ】
【時刻は少し遡って夕暮れ頃、気温は春が近い冬らしく生ぬるく、天気は薄曇りだけれど、微かに春の匂いがする】

いただきまーす――!

【大通りの道に面したカフェのテラス席。通りすがるひととはほんの一メートルもない距離感の席で、そんな、嬉し気な声がひとつ上がる】
【高くて澄んだ声は鈴の音とよく似た声音をしていて、人混みの中にもよく通る。――見れば、そこには少女が一人、ちょんとお行儀よく席に腰かけていて】
【机の上にはティーポットのロイヤルミルクティーとチョコレートケーキ、つやっと茶色い三角に彼女がちょうどフォークをあてがったところで】

【よく手入れされた黒髪は腰ほどの長さ。リボンの髪飾りでハーフアップにしていて、露出した右の耳には、こちら側だけに宝玉の欠片のピアスがあり】
【丸く釣った眼はどこか蛇に似た様子。右が赤く左が黒い色違いで、ただ、ころころと表情を浮かべる顔はどうにもあどけなさが残り、子供ぽい】
【生成りのブラウスに赤いジャンパースカートは大きくスリットが入っていて、下にはたくさんに重ねた黒色のパニエがふんわりと溢れ出さんばかりに詰め込まれ】
【足元は丈の長い靴下と底の分厚いパンプス、――まだ十六ほどの少女だろうか。同じテーブルの空席には、可愛らしい鞄が置かれていて】

……あ、えっと、置いといてください。そこらへんに――。

【もぐもぐとチョコレートケーキを頬張る少女の座るテーブルにまた店員がやってくる。その手の盆には、ほかにも数種のケーキが乗っていて】
【上機嫌めいて笑ってティーポットを退かして作ったスペースにチーズケーキ、ショートケーキ、ロールケーキ、……なんて置いて、立ち去っていく】
【机の上をケーキだらけにした彼女はいたって嬉しそうにチョコレートケーキを食べていて――お行儀が悪いながら、また、ケーキのメニューなんて見ているのだった】
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/02/29(月) 20:47:45.24 ID:Lc17PLMQ0
>>596
/日付変わるくらいまで投げときますー
598 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/03/01(火) 01:07:03.96 ID:fylib+b0o
>>593

一人の女騎士が、街を闊歩していた。
目的は人里での買い物。酒などを買って帰ると喜ばれるから。
女は店を物色し、ある程度のものを買っていたのだが―

「・・・ッ!!」

”感じる”。明らかな人間の死期の近づきを感じる。
女騎士は急ぎ路地裏へとかけると口笛を吹き、首なし馬を喚ぶ。
そして騎乗し、鞭で胴をしばくと、馬はかけ出した。

路地裏の曲がった道を進み、匂いが濃くなる。
鉄の匂いやら、其れこそ死期の近づきやら。
おそらく、狙われている者はなんにせよ死ぬ、ならば――狩るのみ。

左腕には大剣を構え、右腕には頭を持ち。
首なし馬に騎乗したまま、男を見定めると、其処には男を斬らんとする少女。
地面は凄惨な模様と化していた。既に息絶えている。ならば。

「その首、貰ってもいい?」

なんて無理を言い、男の首筋めがけ、大剣を放つ。
男は助けに来たと思いこちらを見ていたのか、ギョッとした目になっていた。
だが、如何にせよ、男は死ぬ。問題は、どちらの剣が男の首を刎ねるかだ。
599 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/03/01(火) 01:29:46.85 ID:TfiaBIpno
>>598

あらぁ?あらあらあらあら……フフッ、嫌ね。

【女は目を丸くして驚いた様子であったが次第に表情は何かを含んだ笑みに変わる】
【真っ赤な口紅はこのくらい路地裏にしてもよく目立つ。暗闇に浮かぶ赤い三日月のようだ】

まさかここは中世の領主様のお膝元の裏路地だったかしら?葡萄の蔦が絡まったパブは何処かしら
それともアーサー王と円卓の騎士に惹かれた、パラノイアのラ・マンチャがいるだけかしら
そしたら私は妄想の中の公爵夫人ね。ああ、でも、単なる娼婦なのかしら…あら、貴方はどう思う?

【オペラか芝居の台詞のような言葉をまるで歌うように感情にあふれたリズミカルな口調で女は話す】
【首を絞める男に「ねえ?」と問いかけるが窒息間近の男は暴れるだけでYESともNOとも表現しない】

…ええ、そうね。まだ話すところはそこだけじゃないわね?だってデュラハンなんですもの
どちらの予告かしら。私は無神論者だから、やってくるはずないわ。…あら貴方、意外と敬虔深いのかしら
それしても少し遅すぎるんじゃないかしら。お祈りするまもなく、もう運命のロウソクは私が吹き消すとこなのよ

【騎乗した騎士に女はその唇を鳴らし『まだ、焦るんじゃない』と剣を抜くのを微笑とともに待ったをかける』

魂が存在するのならいくらでも後であげるわ。ただ、この男のろうそくを吹き消すのはアタシよ。デュラハン
…あら、デュラハンというのは男性名だったかしら?そしたらバンシーのほうがいいのかしら。
首を狩ったら、おしまいじゃない。折角、このつまらないスプラッタムービィショーが残酷物語となったというのに

【愉快そうに女は笑う。芝居がかった女の言動にこの場所が映画のワンシーンの気がしてくるようだ】
600 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/03/01(火) 01:42:19.79 ID:fylib+b0o
>>599

「いや、ちょっと待って・・・。話すの早くない?
しかも何話してるのか全く理解できないんだけど・・・」

【芝居のセリフをリズムよく歌うようにして話す女がいた】
【が、意味が理解できない上、なんとなく紅い口紅が目立つ】
【しかも、殺戮者ときた。結構危なそうであるが、それは自分も変わりない】

「私は死ぬと分かりきってる人しか”斬れない”からね。
何にせよ、貴女の首は斬れないってこと。だから、其の人を斬らせてほしい。
・・・、遅いのは仕方ない、さっきまで買い物してたんだからさ。」
「あと、私も無神論者だよ。」

【どうやら、剣を振るうにはまだ早かったようだ】
【其れはいいこととして、ただ気がかりなのはこの女だ】
【―遅かったのは仕方あるまい、まさか突然感じるなんて思ってもなかった】

「いやいや、だから、首刎ねちゃったら魂消えちゃうし・・・
女のデュラハンも居るには居るんだよ?少ないかもだけど。
まあ、貴女が首を刎ねるっていうんだったら、それでもいいよ。」

【首なし馬を還してやる。もともと目が無いので此の場にはもったいないと】
【ただ、魂なんていくらでもある、探しさえすれば幾らでも見つかるのであるから】
【此処は女に譲ることとした、変に戦いたくもなくて】

「それにしても、なんでその人達を殺したんだい?
別に咎めるような気はないし、単純に興味だから、応えてくれなくてもいいけど。」

【ただ、殺した理由だけは聞きたかった】
【此れは単純な興味であり、一切咎めようとか、そんな気は含まないが】
601 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/03/01(火) 02:17:31.38 ID:TfiaBIpno
>>600

【女はまた舌を鳴らして「無粋なことを言うんじゃ無い」と咎める】

なら、そうであるかのように振る舞いなさい。セリフがなくてもカメラは回っているのなら
空気が伝わるのよ。間が大事。フィルムでも舞台でも伝播するのは…感情よ
一人だけ世界が違うと空気が混ざっちゃうじゃない。純度の高い空間こそ本物の芝居よ

【彼女は面白いことを聞いた、面白いものを見た、新しいおもちゃを手に入れたと言った風でまた微笑し】

では、この男をアタシも、貴女も逃がしたとしても、この男は死ぬのかしら。ロウソクの長さが余っていても
私や貴女ではない他の誰かが吹き消すのかしら。それとも、最早この男のロウソクはとうに溶けきってしまっているというの?
死の運命を知る貴女は”最早これまで”を感じ取るのね。不思議ね。……そうね、一つ質問してもいいかしら?

【ちらりと、男の方を見やった。そして、女は何の前触れもなくその大剣を急に振り上げて、一気に男の腹を突いた】
【男は叫び声を上げたそうだったが、女の細腕が首をきつく絞めているので目を見開いて口を開けることすら出来なかった】
【大剣となっている腕を二度、三度。その威力は見た目以上なのか、肋骨を砕き、臓器を潰し、血を撒き散らして数秒で男は絶命した】

それでね。そこの大通りで私が適当に何人か殺したとしましょう。貴女は、いつぐらいからその被害者の死が見えるのかしら
私が[ピーーー]であろう人の検討がつくのかしら。それとも何の前触れのなかった人に急に死神が一息を吹きかけるのかしら
死は…私達“人間”にしたら急なものなの。降って湧いた、偶然。予測できるのなら貴女は…貴女のその力、沢山の人が欲しがるわ

【顔に跳ねた血を拭う。大剣とかしたその腕はその男の血を、命を吸い上げているようだ。太い血管のような黒い管が脈動し彼女の中へ吸い込まれる】
【そしてその腕は徐々に人間のものへと変える。血まみれのドレスを着た、細腕の女。死体の山に立ち、さもなんてことないように話を続ける】

あら、天に召されないのね魂は。ならやっぱり天国も存在しないのかしら。どっちだっていいけれど。生きてる理由もないのと同じで
…あっ、ごめんなさい。首をはねるのを忘れていたわ。なんだか面倒くさくて。両手ふさがっていたでしょ?[ピーーー]なら同じだからいいかしら

【彼女はちょっと待ち合わせに遅刻した時と同じような可愛さを少し足した簡単な謝罪をする】

理由?15分も付きまとわれていて、ちょっとこの道を通りたかったのよ。それなのにとうせんぼするから。邪魔だなって思ったの
602 : ◆nPpl/5.T6. [sage]:2016/03/01(火) 02:31:51.23 ID:fylib+b0o
>>601

「えっ、あっ、そういうものなの?」

【空気を読むということが苦手であるというか人間の感性がわからぬ】

「確実に、って言うわけじゃないけど。近づいたんなら感じることができる。
具体的には、視るんだけど。ただ、それが確実とは限らない、ってこと。」

【具体的に正確というわけではなく、あくまで目安】
【近づいた、と感知したのなら積極的に魂を狩りに行くし】
【もし其れが間違っていれば、何があっても[ピーーー]ことは”できない”】

【不意に、女は男の腹を剣で突いた】
【一瞬のことであった、男はまもなく臓物をぶちまけ、血を垂れ流し絶命した】
【もはや見慣れた風景だ、どうとも思うことはないが】

「うーん、なんとなく、なら。運命を読み取る、ってのが役割だからね。
その役割を果たさなきゃならないから、逆に感知する能力を持つわけだけど。
ただ、急にメーターが振り切れるように死に近づいたら感知はできないだろうけど。」

【死に対するレーダーというのがこの女騎士にはあり】
【それは敏感に反応する、ただ、一瞬のことであると反応はできない】
【そのうえ、此の女騎士の場合は眼だ、殺人に追いつかないこともしばしばある】

「生に醜く縋るのであれば、死のほうがマシだ、って私は思ってるから。
天国なんて存在しないだろうね、多分現世だけ。」

【首を刎ねる云々はもうどうだっていい、事実、男は死んだのであるから】
【ならば、其れ以下も、其れ以上も求める必要がなくなった】
【ただそれだけで】

「ああ、なるほどね。そういう奴、たまに居るよね。」

【付きまとい、というのが主原因だったのだ】
【ならば致し方無いか、なんて割り切るように考えてみて】

//すいません、始まったばかりですが眠気が限界でして・・・
//凍結してもらってもよろしいでしょうか?
603 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/03/01(火) 16:59:00.76 ID:TfiaBIpno
>>602

世界は二種類の役割によってわけられるわ。善と悪、秩序と混沌、破壊と再生、生と死
どちらがどうというわけじゃない。ただたった2種類のどちらかに私たちは属し、複雑に絡み合って
それが悲劇ともなり喜劇ともなる。人間の壮大な叙事詩はシンプルな集合体なのよ

【相手がどういう反応であるかなんて女は気にしない。長台詞のシーンであるかのように振る舞う】
【引きこむように声に強弱をつけ、アクセントに特徴を付け、頭に入りやすくしようと演技の技法を使う】

では、貴女は死の観察者というわけね。貴女が手をくださずとも死は訪れる。貴女はそれを知る
貴女はロウソクを吹き消す役目であっても、それは貴女だけではない。では、死は何ものなのかしら
…貴女は凄惨たる死の予感を手にした時、どうするのかしら。紛争、テロリズム…多くの人が風前の灯火と晒された時
その死を吹き消す彼らとともに呼吸を整えるのかしら、その魂に火を灯し、騎士として真実たる死に書き換えるのかしら
どちらにせよ…傍観者じゃ、つまらない…そうよね?

【怪しく目が光る。たとえではなく実際に、青白くその瞳が光り輝いた。魔翌力めいたものを感じる。そして“もう一人”】
【彼女の中にもう一人いるような複雑な気の乱れのようなものが女の中にはある】

この世しか無いなら、なおのこと私は生き続けるわ。どんなに醜かろうと、私は生きる。だからこの醜い力を手に入れたわ

…汚れちゃったし、シャワーに入りたいわ。死体なり、何なりはどうぞご勝手に。いらないなら転がしとけばすぐに誰か片付けにくるでしょう

【戦ったり、なにもしないならと彼女は腕時計で時間を確認し、軽く手を降って、雑誌の表紙になるような笑顔で路地の奥へと消えていく】
【タツタツと途中まで血の足跡が続いていたが、何処から先には不意に無くなって、誰も後を追うことは出来ないだろう】


/自分も眠かったので落ちてしまいました。すみません
/当方今日明日夜にこれないと思いますのでこれでシメということでお願いします。お付き合いありがとうございました
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/04(金) 16:31:38.70 ID:EfTLDmSg0
【街はずれ――手つかずの草原地帯】
【ざあとあたたかな風が吹き抜けて萌えつつある新芽を揺らす、ふっと気付けば、お日様はだいぶ傾いていて】
【ぼーっとした頭で緩く流れる雲を数秒眺めた少女は、次の瞬間、発条のおもちゃのように身体を跳ね起こした】

……わっ、わ、え、炎!? 炎どこー!?

【きんと草原に突き刺さるような声は高く澄んだ金属音のような声質、あわてているのかあせっているのか、その声は常よりも高く耳障りに思え】
【地面に一応引きましたという様子で引かれた、隅っこが風にぱたぱたぱたぱたうるさいレジャーシートを手で無意味に数度叩いて探すのは、何かを見失ったよう】
【すっかりと動転した頭でしきりに何かの名前を呼ぶから、何か生き物であろうことは推測できるのだけど――と、少女からいくらも離れた草むらの中から】
【「んぎえー」とおおよそ人間じゃねえなと分からせる声が聞こえて。その声に少女はひどく安堵したように顔をほころばせると】

――……もう、だめじゃない、一人で歩いちゃ駄目なの。迷子になっちゃったら、もう、分かんなくなっちゃうんだからね。

【小走りで近づいて行って、語り掛けるような口調で以って喋りながら、草むらの中から「よいしょ」と何かを抱き上げる、――黒くて、ごつごつした鱗の、いきもの】
【十人に聞けば多分十人が「竜」とか「ドラゴン」と答えそうな、――というか、まだ幼く小さな個体だが、確かにそいつは竜に見え】

【その竜を抱き上げた少女は満足げにレジャーシートの場所に戻って元のように座る。――ふわふわと揺らす黒髪は長くって腰ほどまで届く、くらい】
【丸いながらも少し釣った眼は左右で色が違っていて、黒色と赤色。右の耳には片方だけのピアスがわずかに艶めいて】
【深い赤色を基調にしたワンピース、袖はふんわりと広がった姫袖で、そこから覗く指先はどちらかと言えば少し子供っぽい、仔竜をやさしく抱きしめて】
【踵の分厚いパンプスは疲れたように草むらの中に脱ぎ捨ててある、――まだ十六歳程度の少女だろうか。黒い鱗の仔竜を抱きしめ、おおきな欠伸をひとつ】

ふわ……、もう、もっかい寝よっか……。

【んぎゃーと気の抜けた低音ボイスで返すドラゴンと、二度寝の姿勢に入る少女と。――今は静かなものだけれど、さっきの声はひどくやかましくって】
【風の音くらいしかしない場所なものだから、誰かに気付かれていたとしても、おかしいことは、きっとない】
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/07(月) 21:06:51.40 ID:sSWORlWJ0
>>604
/再掲しときますー
606 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/03/08(火) 21:50:28.57 ID:07fOSrtl0
【櫻の国 漁村を臨む丘陵】

――――朧月夜を期待していたけど、あいにくの霧ね……
久しぶりに、国に帰ってきたっていうのに、これではねぇ……

【右袖に瑠璃溝隠(ロベリア)、左袖に池を伴った雪景色、そして背中に満月をそれぞれあしらった、派手な赤地の櫻の衣装を優雅に身に纏い】
【艶やかな光を纏った黒い長髪を、金の簪と共に複雑に頭上に編み上げて、丸みを残しながらも目鼻立ちのすっきりした顔に、紅の口紅が色を添える】
【首から、紐に通され、額に特殊な印の様なものを刻み込まれている、4つの頭蓋骨をぶら下げている、身長160cm前後の女性が】
【霧の立ち込める港を見下ろしながら、白けた表情で佇んでいる】
【――――ここのところの温暖な天気から、急な気温の低下で、濃密な夜霧が掛かっていた】
【その霧の濃さたるや、漁村の明かりすら仄暗くしか届いて来ない程である】

……なら、この霧を血煙に変えてしまいましょうか?
そうすれば、少なくとも味もそっけもないこの光景も、趣深いものになるわよね……
夜が明ければ、連中は怯えて蹲る事でしょうねぇ……!

【つい、と指先が唇を滑り、口元が愉悦に歪む。首から提げた骸骨が、カラカラと笑う様に音を立てた――――】
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/11(金) 14:05:26.51 ID:LJJ7ujtT0
【街はずれ――手つかずの草原、なぜだか一本だけ生えた河津桜の木の下】
【ゆるく散りだした花びらが足元に積もる、見れば去年の物か、すっかりと茶色く掠れた花びらの残骸も混じり】
【咲き誇る花越しの柔らかな木漏れ日をヴェールのようにすっぽりかぶって、木の根に腰かけるのは、どうやら一人の少女のよう】

……――、

【ぱり、と、みずみずしい果実のはじけるような音。見れば子供みたいに小さな手にはつやのある真っ赤な林檎、時々気が向いたように齧って】
【三口と齧った頃にすでに顎が疲労困憊、みたいな顔をして、頭を腰掛ける木の幹に預けて。ふと、花の中に視線を動かすと】

……おや、

【見出すのは緑みがかった羽色の小鳥、しきりに花蜜でも吸っているのか、何羽もがちょんちょんとたくさんの花の中を忙しそうに動き回り】
【――と、すいとまるで下から差し出されるようにして現れた赤い果実に驚き飛びずさって、さらに数秒後、敵性がないと判断すれば、やっとついばんでみる】
【そのうちに数羽が集ってついばむようになって。それを少女は見上げて小さな欠伸、――けれど力技でブン投げたわけでも、なんでもなくって】

【宙にふわりと浮き上がる林檎は勿忘草色の靄で包まれていた。きらきらとアニメ的ともいえるようなきらめきを携えた魔力の靄――それが、林檎をふわりと浮かせて】
【枝の又に林檎を設置して、また、少女の方に戻っていく。――から、それはきっと少女の異能か何かなのだと、推測でき】

【くしゅりと巻いた癖のある金髪はくすんだ色、けれど毛先の方だけに鮮やかなピンク色が乗っていて】
【あどけない顔つきなのだけどいやに勿忘草色の瞳だけが鋭く。口元も拗ねたようなへの字、肌はいたって不健康なように色白で、見れば身体つきも華奢すぎるほど】
【紅茶で淡く染めた色味の布をたっぷり使ってこしらえたようなワンピース、袖も裾も長くって、ふわりと膨らむシルエットは中身を隠しこむように】
【身長は百四十をやっと超えた程度の小ささで。だけど子供というには成熟している、――座り込むその横には、鈍器にもなりそうな古びた本、】

どうせ誰も来ないのだし、少し、眠ろうかしら……。

【くれてやった林檎をついばみ倒す鳥たちをもう一度確認してから古書に手を伸ばそうとしたタイミングで、彼女は欠伸をひとつ噛み殺し】
【もう一つ欠伸を重ねてから周囲を軽く見渡して、そんな風に呟く。それでも一応はと本を取り上げて、ぎゅっと抱いて持つようにして】
【背に身体を預けると、そっと目を閉じるのだった。――緩く暖かな風が吹いていて、いかにも過ごしやすい、春の陽気の日】
608 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/03/12(土) 21:26:33.11 ID:YFj4h4ak0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――昼の国 公園】

う、ん、と……sanka inaratajia……じゃない、kansa inatarajia……か……うーん

【前面を開いたままで青いコートを羽織り、魔術師である事を如実に表す青のハットを被った】
【手には指輪と、グリップの部分に赤い石をあしらわれている、金属製の棍を握り締めている】
【がっしりとした体格の、深い眼窩が鋭い視線を放っている、身長180cm前後の居丈夫が】
【大木の根元に座り込み、木の幹を背もたれにして本を読んでいる】
【陽が落ちる事の無いこの国において、今も燦々と輝く太陽が、その書籍を照らしていて】
【本の中身に目を通している居丈夫は、非常に難しい表情をしていた。どうも、結構な難物の書物であるらしい】

……やっぱ、複雑よなぁこれ……ああもう、やっぱりコツコツとやらなきゃならねぇか……
まぁ、焦ってもしょうがねぇ……休憩がてら、じっくりと行きますかね……

【目頭を指で揉みほぐし、疲れを取る仕草を見せる。どうやらそこそこに時間を掛けていたらしく】
【軽く頭を振って気を切り替えると、居丈夫は再び文書の中に意識を集中させていく――――】



【――――所変わって、風の国 公園】

……ツイてた、ツイてた……今日はびっくりするぐらいツイてたな……
まさか、あのやけっぱちが大当たりするなんて、流石に想定外だよ……

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【やけに上機嫌そうにニヤついた笑みを浮かべながら、足早に公園の中に踏み入って行く】
【葉巻を1本取りだすと、豪奢なライターで着火。そばの子供の集団の訝しがる目を余所に、旨そうに燻らせ始めた】

……おいそこの坊主たち、聞こえてるぞ?
ギャングっぽい、じゃない。俺は本当にギャングだよ。だから……あんまりチョロチョロするな! ……ハッハッハ……!

【ひそひそ声を立てていた子供たちに、男性は洒落にならない言葉を向ける】
【いそいそとその場を去ろうとする少年たちを、男性は愉快そうに見送っていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
609 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/12(土) 23:52:11.82 ID:dmB2CfBd0
>>608
【昼の国・公園】

【一筋の煙草の煙が揺れる。先の子供達の容赦の無い視線が金髪の男のニヤけ顔に僅かな曇りを生じさせた一幕】
【散らされる子供達は、力こそ全てという嫌な現実を思い知る。授業料に高揚感と遊び場所を置き去りにする】
【怪訝な顔で立ち去った一団。その中に一人、彼らと数歩だけ共に歩いては立ち止まる少年。彼に気づく事なく子供達が走り去る中でぽつんと残る】

おじさんは……

【背を向けた少年は、カッターシャツの上から黒いベストを着ており、ジーンズを履いているという個性的な服装をしている】
【茶色の短髪には、鬼ごっこの名残である木の枝や葉っぱが数本・数枚と髪の毛の間にしがみついている】
【振り向くと、襟に蝶ネクタイがある。朱色の双眸は頭を傾げる動作に加えて男から見て僅かに斜めに並ぶ】

何が、そんなに嬉しいの?

【ニヤける大人に向かい大して何も考えてなさそうな少年の問いが投げかけられる。少年はその姿勢のまま金髪の男を魚眼視する】
【少年の問い掛けは主語・質問・催促の三段構えとなっている。意味合いは何一つ変わらず最後の段階へ流れようとしている】
【この子供が邪魔だと思うならば、この段階で何らかのアクションが必要になるだろう。尤も通常の手段では追い払えないかもしれない】

ねぇ、教えてよ

【少年の表情は笑みを浮かべながら全く動いていない。じっと男を見つめるばかりである。そのまま永遠に続きそうな好奇心の発露であった】
【遠く空の上で満月と同じ明るさの光点が点滅し始めた】

/まだいらっしゃれば……
610 : ◆mZU.GztUV. :2016/03/12(土) 23:53:50.90 ID:dmB2CfBd0
>>609
/すみません
/ミス ×昼の国 ○風の国
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/15(火) 21:10:50.03 ID:MCtSn4N30
【街はずれ――海と浜辺のエリア】
【遠く空には太い三日月と灰色の雲が薄く照らされる、眼前には墨汁みたいに黒い海の水面と、白波の先だけが白く浮かび上がり】
【灰色の砂浜には足跡がてんてんと続いて伸びている、その先端でふと立ち止まるのは、どうやら背の高い女で】

……あら、遠くまで来すぎたかしら。

【長く伸びた髪に隠れた耳元からすっとイヤホンを抜き取る、ごく微かに音漏れの余韻は、すぐにうすぺらな携帯電話を操作した指に消され】
【見れば確かに彼女がつけてきたであろう足跡はうんと遠くまで――微かにごま粒のように見えるくらいまで、長く長く続いて】

ま、いいわ、明日休みだもの。

【なんにも考えてなかったことに雑な反省をしつつも後悔はしない、緩やかに呟いて、代わりにさらに遠くまで歩もうとした足の向きを】
【海の波打ち際へ向けて、けれど波の届かない場所――その位置に止めて、ぼうと海へ視線を落として】

【髪は暗い紺色。綺麗に切りそろえた前髪と後ろ髪、長さは腰にいくらか届かない程度で】
【瞳もまた髪と同じ色味の紺色。顔は――というより肌は少し日焼けしたような跡があって】
【シンプルなシャツに胸元のリボン飾りはシンプルなもので、赤色のプリーツスカートと、その上に薄手のコートを羽織って。靴は編上げのロングブーツ】
【靴の底が高いことも考慮に入れればその身長は百七十を少し越すくらいか】

【――夏ならばともかく、この時期。人気は少ないが、時々犬の散歩に訪れたらしい人とすれ違うこともある、人通りはないというほどでもなく】
【それでも静かな場所。ざんざと波の打つ音がいくつもいくつも重なって――それでも波打ち際でただぼうとしている彼女は、少しは目立っていて】
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 18:15:07.30 ID:/4LIVrUo0
>>611
/再掲で投げておきます
613 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/16(水) 20:18:45.22 ID:iLwYhwzVO
>>611
【晩冬の砂浜。砕けた波頭が月の光を吸い込んで白い飛沫を上げる。それ以外は濃紺の夜空に沈んでいる】
【砂地に捺された足跡達より離れてもう一人の人影が佇んでいる。肩で息をして、少々苦しそうに外套が揺れる】
【両手には人影よりも長い黒杖。片手を離して額を拭う。金髪のツーサイドアップが重力に従って垂れている】
【一息で切り上げると、顔を起こして黒杖を両手で持ち、再び構え直す。どうやら彼女は鍛錬の途中らしい】

せいっ!

【回転を利用して前方を横・斜めに薙ぎ払う、前に跳ねて黒杖が地面を擦れない程度の高度を得て縦の満月斬り、着地の一拍から更に横一閃】
【凡そ実戦向きではない派手な演舞。しかし彼女の能力にとっては重要なブラフの練習。乱打された足跡の群れに一列の足跡が連なる】
【その終わり。地べたに置いた長鞄からタオルと水筒を取り出す。汗拭いと水分補給を終わらせて帰路につく】
【鍛錬疲れでとぼとぼ歩く彼女の視界に見慣れない足跡の列が映り込む。この時期はあまり人がいないのに……と誰かから伝え聞いた情報に文句をつける】

誰なんだろ……?

【そう思いついたような疑問を口にして、つられるように足跡を辿り始める。暫くして犬の鳴き声や砂を踏みしめる音が耳に入り始める】
【彼女の「人がいない」という見立ては、彼女の集中力が為した意識のブラインドによって奇跡的に実現しただけのものであった】
【足跡の先には夜空と同じ髪を持つ少女がぼうっと立っていた。人影を少女と認識できたのは端末の光が人影を照らしていたのもあったのだろう。それにしても少女は背は高い】

こんばんはー

【一応声を掛けてみようとする。人がいないという誤解が解けてもなお端末に照らされた少女の姿が気になってしょうがない】
【久々に見たのかもしれない端末の灯りに、故郷の情景が浮かんだのだろうか、もしかすると……】
【妄想に近い期待と、世間話を始めようとワクワクする気持ち。恐らくそのどちらに応えても大丈夫のだろう】

/まだいらっしゃいますでしょうか?
/別の話になりますが、609は取り消します
614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 20:35:13.45 ID:/4LIVrUo0
>>613
/気付くの少し遅れました、今からレス用意しますので、お待ちいただけましたら!
615 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 20:48:21.89 ID:/4LIVrUo0
>>613

【まだかすかに冬を感じさせる風の温度、しかして冬将軍は撤退寸前、桜の蕾はだいぶんと膨らむ時期に、肌を刺すような寒さは遠く】
【ざんと黒白の波が足元まで押し寄せてきて、すっと消えていく。黒い浜辺には後ろばっかりに明かりがあって、彼女の髪の青が微かに透ける】
【一応夜だからとコートを着てきたけれどこの程度ならたいして要りもしなかったなんて緩く考えた思考がふと止まる、足音と、掛けられる声に】

……あら、こんばんは。いい夜ね。きっと昨日と大差ない辺りが。

【コートのポケットに両手を突っ込んだままで振り返る女は少女とは言い切れない年齢のように見えた。もう少し上で、ただ、二十五は超えないだろう程度】
【なんとなく気だるげな眼をしているが、それが眼前の相手のためのものではなくて、多分いつもそうなのだろう、というのも、きっとすぐに知れて】
【声は少し低くて掠れたノイジーなもの、たびたびこの辺りには訪れているのか、「前来たときとも大差ないわ」と、どうでもよさそうに呟き】

あなたは何してるのかしら。子供がうろついていていい時間じゃないわよ。早く帰りなさい。

【きっと年下と見れば容赦なく子供扱いするというのも大雑把な話だろう。けれどそれ以上に咎めるでもなければ、】
【性質の悪い大人ではないのだろうが、善良な大人でもなさそうな対応。一応聞いた、一応言った、ゆえに後のことは知らないとばかりの】

補導されても知らないわよ、年齢詐称なら悪いわね。

【「幼馴染が子供にしか見えなくて」と付け足してからかうようにわずかに笑う、相手の年齢なんて知りもしない、故のからかい】
【とうに薄ぺらの携帯端末はpocketに仕舞い込まれている。から、明かりは遠く街明かりと、あいまいな太さの三日月くらい】
【暗さによって黒髪にも見える彼女の髪は、けれど、些細な動きで月明かりにその青を透かして】
616 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/16(水) 21:19:33.52 ID:Fl3hf9bL0
>>615

【確かに前来たときと大差は無い。例え見知らぬ場所だろうが、風景が姿を変えるに一日程度じゃあまるで足りない。そんな意味合いも込めて曖昧に頷く】
【少女の曖昧な目線に合わせて少々見上げる。金髪の少女は輪を掛けて背が低いらしくある意味年齢詐称であるらしい。テンションの低そうな少女に気圧されてしまう】

あ……うん!
大丈夫だよ。慣れているから

今年で17だけどこういうのには、ね

【少女の注意に対して、気持ち胸を張りながら応答する。それは場所に慣れているのではなく状況に慣れているという意味合い】
【無理な自信が言葉の末尾で吃音という形で現れる。ばつの悪そうに顔を赤くして顔をそらしてしまう】

えと……
さっきまで薙刀の鍛錬していたよ。それで、あなたは?

【頭を振って、赤面を直してから目を見て質問を返す。視線は顔から青く透かされる髪、そうしてポケットへ移る】
【答えている間も興味深そうに仕舞われた筈の端末を見つめるのだろう。これに答えれば斜め上の話題にシフトする可能性がある】
【はぐらかせば、いつも通り。所謂気にはなるが問い詰める程ではない程度。藍色の瞳で魚眼視しながら時間が過ぎていこうとする】

/それではよろしくお願いします
/すみませんが、次の返事は少々遅れます……
617 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 21:39:26.57 ID:/4LIVrUo0
>>616

あら、そう、じゃあいいわ。気を付けるのよ。

【明らかに相手よりも年上の彼女はそうしてそれ以上の追及をしなかった。それでも一応は気を付けてなんて言葉を付け足すけれど、】
【当然嘘ではないのだろう、ただ、心底本気とも思えない声だった。まあ路地裏をうろついている、とか、そういうわけでもないのだし】
【ここなら見晴らしもいいし明らかな異常にはすぐに気付くだろう。それに、まあ、どこまで頼れるかは分からないが、犬の散歩の老人なんかも居るのだし】

そう。私は散歩よね、明日仕事が休みだから歩いてきたの。それだけよ、気が済んだら歩いて帰るわ。
ここにはたまに来るの。土がたくさんあるから好きなのよね。家からは少し遠いけど。

【じっと目を見つめられた彼女は一瞬相手を見つめてから、緩く目を逸らした。というよりも、そうして相手の目を見つめ続けるタイプではないよう】
【薄っぺらい携帯電話ごとコートに突っ込んだままの両手、行儀こそ悪いが相手のことを信用しているわけではないのだろう、見せようともせず】
【知っている相手ではないし、どうやら得物まで持っているらしい。となれば、すぐに信用しないくらい、この世界では普通なのかもしれないけど】
【ただ土があるからいいわよねと、普通に考えれば土マニアの変態かと思われかねない呟き、それから足の仕草で、砂浜の黒々とした灰色の土に跡をつけ】

十七ね、懐かしいわ。この辺りに越してきたころがそれくらいだったの。

【だなんて、ふと思い出した程度の言葉を添えるのだろう】
【――あまり愛想のいいタイプではないようだ。けれど話すことに躊躇いはない、会話だけなら、きっと、なんら問題もないだろう――多分】
618 : ◆mZU.GztUV. :2016/03/16(水) 22:09:44.88 ID:Fl3hf9bL0
>>617

休日なんですね
趣味で来ていたんですね

【視線はポケットから海の上の水平線へと移行する。携帯端末への興味は薄らいでしまったのだろう】
【そこは、昼でも夜でも明度を振り切りる形で境界線がぼやけている。何処までも続きそうな予感をさせる】
【その意味でなら、シーズンオフ海に来る理由になるんじゃないかと金髪の少女は思う。だが相手はどうやらそうでもないらしい】

うーん、土ですか……

【目を閉じて鼻の頭に手を置いて考え込む。金髪の少女にとっては盲点になるものであったから上手く言葉を飲み込めない】
【その場にしゃがんで両手で砂を掬い取る。キュロットスカートの特性として、袴に近い形であるが故にスカートの中身を気にせずに済むというのがある】
【立ち上がり、両手の中にある砂は夜空の青を孕んで小豆色に見える。叢草のような砂粒に反射による煌めきさえも無い】
【貝殻があれば畑の土になるかな、等と呟いてみては零れ落ちないように手に意識を注いで力を込める】

ここは、思い出の場所なんですか?

【砂の零れが落ち着くと、再び相手の顔を見つめる。先程の「懐かしい」という言葉に対する返事となっている】
【相手の過去話に期待しているらしい。藍色の瞳を輝かせながら見つめている。聞く気にはなっているが、ちょっとのことで気を逸らされてしまうのかもしれない】
【騙し通せそうなぐらいの隙の大きさが金髪の少女の弱点なのかもしれない】
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 22:18:26.12 ID:/4LIVrUo0
>>618

ええ、散歩よ。家に帰ってもどうせこんな時間じゃ誰も居ないわ。
同居人の仕事の邪魔する気もないし、幼馴染の仕事の邪魔する気もないの。
かといって家でゲーム漬けってのもね、今日は気分じゃないわ。ゲーセン行っても良かったけど。

【どうやら一人暮らしではないらしい。それを匂わせながらも大したことではないように呟いて、まあ、つまり、気まぐれなのだ】
【今日はたまたま気分でここに居る。それ以上でもないしそれ以下でもない。……趣味かと言い切るには少し首をかしげたくなるので、断言はしなかったけれど】

駄目ね、海の砂じゃ塩がついてるわ。トマトとかアイスプラントなら喜ぶかもしれないけど。

【相手の呟きに断言に近いような声が返る。じゃりと靴底で砂を抉って、酔っ払ってのたくったミミズのような跡をつけて】
【「ハマエンドウとかなら喜ぶかもしれないわね」なんて、適当に呟き。どっちにしろそれも砂浜の植物だ。そこらへんのを育てるのは無理、と、そういう意味合い】
【洗ったら使えるかもしれないわねとこれは呟きで返して】

いいえ、思い出なんてないわ。適当に選んだの。ましてここはただの散歩道だもの。
家の近くにも思い出はないけどね、とりあえず決まった場所に住んでるんだもの、拘りなんてないわよ、何も。

【「まあ、一般的な思い出くらいはあるわね」】
【特別な思い出はない。この浜辺で人魚とエンカウントして竜宮城に行ったこともないし――なんて、そういう意味合いでの雑な返答】
【この辺りに特別な印象がって暮らしているわけではないらしい。それなら小さいころから育った土地というわけでもないのだろう】
620 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/03/16(水) 22:44:32.98 ID:Fl3hf9bL0
>>619

あっ……確かに

【塩があった事を失念していた。手に持っている砂が只の砂に変わった瞬間であった。ちょっと残念そうに眉を下げる】
【風向きを気にして、相手にかからないように砂を解放する。月明かりでは輝かず、小さな煙幕みたいな靄が海に伸びる】
【その中には期待していた貝殻の鈍く落ちる音すら存在せず、名残惜しそうに遠くを見つめる】
【相手が言い終わるまで顔を合わせて必死に話を聞く。少し考えて、ここに意味がなかったのかな、と結論付けようとする】

ここ、落ち着きますよね
……人の声が少なくて

【目を閉じて波の音を聞く。気持ち良さそうに、まるでしがらみから外れて気楽に構えるように】
【目を開けても瞼の裏とそんなに変わらない濃紺の天海。頭を茹で曲げるような太陽の照り返しを恐れる必要もない】
【もう一度相手を見て、微笑みながら見解と感想を混同させたような返しをしてみる】

それで、わたしと同じようにここを選んだのかな

【風がスナミミズの形を僅かに更新させる。ツーサイドアップが目に直撃しないように片方だけ手で押さえながら……】
621 : ◆mZU.GztUV. :2016/03/16(水) 22:53:26.34 ID:Fl3hf9bL0
/すみません
/×顔を合わせて ◯目線を合わせて
622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 22:55:19.80 ID:/4LIVrUo0
>>620

可哀想な草が塩にへたり込むのを見たいなら話は別よ。夏休みの自由研究なんかにもいいかもしれないわね。

【どちらにせよ草は死ぬことを前提にした意見だ。彼女が残念そうな顔をするのを見やって、百七十をいくらも超える身長の彼女は、】
【じゃぐりと砂粒を軋ませて、一歩か、二歩か、相手に寄るのだろう。別にそこには敵意は無くて、ただ、ほんの少しだけ、魔力特有の匂いか、気配か、】

花が好きなの? 私も好きよ。良かったらあげるわ、そのうち萎びるでしょうけど。

【ふわとやっとこ相手に見せた手は右手、すらとした手だが特別綺麗なような印象もない、少し見れば、爪の中にどうしても取れなかったのだろう土の痕が見える】
【となれば土に日常的か今日がたまたまなのか、触れてきた後なのだろうと分かる。――そして言葉も考慮に入れるなら、きっと、日常的に土に触れるのだ】
【その手で一瞬だけ魔力の紺色が瞬く、そして、次の瞬間そこにあるのは一輪の魔力で形作られた薔薇の花。色はピンクか、赤か、白か、もしかしたら虹かもしれない】
【出すその瞬間まで色は誰にもわからないランダム性。或いは相手の少女がこの色がいいと思った色でも出て来るのかもしれない、全部――偶然だけど】

【手品なんてものじゃない。だってどう見ても魔力の匂いと、煌めきはたしかにあって】
【けれどタネなし手品のように一輪、花が咲くというのは面白いのかもしれない。――とにかく彼女は、そうして、相手に花を差し出し】

そうね、こんな時期と時間に海水浴をするなんてよっぽどの変人よね。

【――多分、この女は、そういうことを考えていないのだ。理由と言えばここが家から適度な運動にちょうどいい距離感であること、それから、】
【さっき言ったように土がたくさんあること。――だから人気のこととか多分あんまり考えてなくて、ただ、その言葉を無下にするよりか、静かなのは好きで】
【だからそうは返すのだけど。――とりあえず、この場所自体は気に入っているらしい。相手が花を受け取れば、空っぽになった手で、ついと髪を耳に掻き上げ】
623 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/16(水) 23:29:06.65 ID:Fl3hf9bL0
>>622

ふわあ……
綺麗な顕現(アポーツ)……

【紅色の花ではなく、一連の魔術めいた工程に対しての感嘆である。濃紺の魔力残渣を目で追っている】
【近づく程、更なる身長差が浮き彫りになる。同時に砂に対する不慣れの証拠まで露わになっていく】
【差し出された花を受け取る。注意深く触り、荊を避ける。痛みはなかったがなおもワレモノを扱うような緊張感が抜けない】

【花からは園芸品店でよくある水と草の匂いに仄かな芳香が混じる。それで少女はこの花が本物であると悟る】

……偶然だね
わたしにちょっとだけ関係があるかも

【何の因果か自分の名前と少し関係のあるものを受け取る事になった。目を閉じて芳香を楽しむ一方で妙な運命を可笑しく思う】
【初めて触る薔薇の感触はその他の花とそれ程大差もない。ありがとう、と呟いてまた微笑んでしまう】

えっと
わたしの故郷(まち)では、年中海水浴をしたがる幽霊(ひと)が結構いたよ

きっと、おかしくは無いかも

【ブラックジョークが混じった返事であった。最大限気を遣ったのかもしれないが、聞く人によっては大変な事になりかねない】
【話題が尽きてしまったらしい。金髪の少女が何かに思い付くまでは沈黙が続いてしまうかもしれない】
【それまでは散りばめられた話のタネを拾っても良し。或いは沈黙を続けるも良し。これを頃合いと見るのもよろしいかもしれない】
【そうして、少し置いて金髪の少女はこんな事を聞こうとするかもしれない】

お仕事、どんなのですか?
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/16(水) 23:42:34.78 ID:/4LIVrUo0
>>623

子供ウケはいいのよ。泣いてる迷子に押し付けてやるの、迷子センターまで連れてってやるのもいいけど、泣いてるのは面倒くさいもの。

【これが能力とは言わない。けれど魔術のようには見えないだろう、それなら能力なのだろうけど――花を出すだけ、なら、ひどく地味すぎる】
【それも結局は魔力で形作るだけ、本物ではないし、――ただそうだからこそ、現実にはあり得ない花びらを咲かせるものも、時々現れる】
【虹色、繊細な模様の走ったもの、現実にはあり得ない薔薇までも咲かせる力。――本当は花を出すだけなんて地味でもないけれど、そこまで言う義理も義務もない】

そう、それなら良かったわ。

【変わらない仏頂面。けれど言葉はそうも硬いわけでなく、ただ表情筋をサボらせているだけなのかもしれない、と、思うほど】
【表情に乏しいが声音までも乏しいわけではないのだった。実際声だけは少し緩んだようにも聞こえたし、――花が好きな人間が、好きなのかもしれない、とは余談】

珍しいわね。よっぽど南にあるのかしら。

【言葉で聞く限り、その文字列の不穏さには気付かない。だから音通りに受け取った彼女は、そんな風に返すのだろう】
【南と言えば昼の国――とかだろうか。夜の国になら行ったことがあるが、昼には行ったことがない。興味がないわけではないけれど――いや、むしろ、あるけれど、】
【「遠いわね」と呟くのは独り言だ。なんせ思考の延長線だから、そこを拾い上げようにも、前後の繋がりがどこにも見えなくって】

花屋よ。花屋のバイト。花屋って言うと齟齬があるかしら? 園芸店ね。切り花じゃなくて、根っこのついてる方の花。
鉢花専門、切り花は専門外よ。嫌いじゃないけど、未来がないものね。得意じゃないわ。

【意外にも(?)彼女が口にするのは、ちっちゃな女の子が憧れる職業トップスリーに入りそうな職業だ。とはいえいわゆる花屋、とは違うようで】
【根っこのあるほうだなんて言い方は少し変わっている、まあとにかく花に関連する職業――ということでいいだろう。それなら、やはり、花が好きらしい】

母の日の前に休んでおくのよ。なるだけね。

【それから、終末を告げる預言者のような声で続けるのだった。うんざりとしたように目を伏せて、――嫌な事実を思い出したように、ため息を漏らし】
【けれどそこはどうでもいいらしい。「ま、いいわ」と続けて】
625 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/17(木) 00:12:26.16 ID:8rL0Jl920
>>624

ううん、わたしのまちは雪が降るの
海水浴したがるのは好きでじゃなくて能力の代償なの

ワープ能力の代償に、一日一回寝ている間は幽体離脱して海に還らないといけないんだって。破ると低体温症で生死を彷徨うの

その人が言うには、幽体の間は三伏の猛暑でさえも空の青が身を刺し殺す程に寒くて、暖かい海に早く帰りたくなるんだって

【そんな、どうでも良い返しをする。恐らく「遠い」というのは正解であって、それ以外は致命的にズレてしまっている】
【少し奇妙な能力の話をしている間、金髪の少女は何かを思うようにぼうっと見つめる。それが沈黙の間を作り出す】
【それに気づいて慌てて、何処で働いているかの質問をしてみると、相手はあまり嫌な顔せずに答えてくれた】
【少し暗くなったような気がするが、言葉通りにあまり気にしないでみる】

鉢植えとか並べているのかな
花も生命だから、切っちゃうの躊躇っちゃいそうかも

【眉を下げて困った表情を一瞬作る。感想はこの辺りで終了する。長鞄に薔薇を刺して両手をフリーにする】
【頭を掻きながら、今度は自分の身の上話をしようとする】

わたしも用心棒みたいなのやってるよ
昨日はイノシシの群れを日が暮れるまで追い払ってた
そうすると、決まった休みの日が欲しくなっちゃうかも

【もしかすると、今もお呼びになるかもしれない。と自信なさそうに呟く。即ち危機とは安息日のあの字も知らない不信心者なのであった】
【金髪の少女は腕を組んで一息をつく。あまり良くない思い出に再度苦しめられているのであった。疲労もまた不信心者なのである】
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/17(木) 00:24:02.52 ID:AcEYB0Z50
>>625

あら、そう、じゃあ寒いわね。それもとっても。

【――相手は知らないことがあった。それは彼女の性格……というか性質だろうか、或いは生き方、かもしれない】
【彼女はどうしようもないほどの面倒くさがりで、面倒くさいことはだいたいやらない。件の同居人というのも、彼女にしれみれば、面倒なことをやらせるだとか】
【そういう意図があるのをどうしても否定できない、そういう感じの同居人。――悪意はない、ただ、何を言い出したかよく分からない相手の言葉を、】
【彼女はそう右から左に、あまりに滑らかに聞き流して。大変ね、と、言葉を締める】

木を切らないっていう環境破壊もあるのよ。花だって、咲き終わった古いのを摘んでやらないと枯れるわね、それは極端だけど。
だいたいは弱るわ、だって種を作るために生きてるのに、種を作らせちゃったら、大往生よね? いつまでも種が出来なければ頑張って咲くけど。

【生きているからと言って躊躇う必要なんてない、それが例えば猫の首を切るのは可哀想という話だったなら、彼女も同意するのかもしれないけど】
【花を楽しむために品種改良され流通し買われていった咲くためだけの存在にそれは通用しないだろうと言うのが彼女の意見、別に、そういうのなら】
【好きにすればいいとも思うけれど、花を長く楽しみたいのならこまめな花がら摘みをどうぞ、とにこやかにお勧めするのが、強いて言えば彼女の役割だろう】

それに、綺麗な花が見たくて買ったのに汚い萎びた花がいつまでもくっついてたら見た目を損なうじゃない。花にも可哀想よ。

【なんて最後にそうでしょう、なんて顔して、言って、】

猪を追い払うだなんて猟友会みたいね、彼らは仕事、しないのかしら。
私ってば猪なんて見たことがないの、まあ見たいとも思わないわね、思わないけど……、ま、大変そうなのは分かるわ。
しつけがなってないどころじゃないものね、道理が通用しないわけだもの。

【自分はしょせん草相手、それなら言葉を発することもなければ暴れて被害を出したりすることもない。――、まあ、一般的には】
【どこぞの国では櫻から持ち込まれた植物で一帯を覆われて大変なことになっているとか言うけれど。棘もあったりするけれど。自主的に動いて被害は出さないものだから】
【その点で動物相手は大変そうねとそう言って。少し冷えてきたのか、開け放していたコートのボタンをひとつふたつと閉めていく】

この辺りにも猪は出るのかしら? 猪って海も泳いで渡るらしいわね。
627 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/17(木) 00:58:20.85 ID:8rL0Jl920
>>626

【金髪の少女は一連の持論を聞いて、深く頷く。それは不必要な程に、大袈裟な動作を用いずに沈黙によって為す】

うん
終わりは、きっと一番大切

【その言葉だけ、少女の根源から汲み出されたのだろう。とても重く静かに声を響かせる。何かに懲りたような何かに気づいたように】
【でも長続きはしない。イノシシの話を拾ってくれた事によって、意識が深淵から元の世間話へ移行する】

うん、鹿も泳いで来るよ
それにゴミ箱サイズの芋虫が鳥に運ばれてやってきた事もあったかも

【前者はまだマシ。さらりと凄まじく不快な状況が語られる。曰く、畑のおばあちゃんが山の本堂の阿修羅像のように怒り狂ったらしい】
【漫画表現で大汗を流しているような困惑具合に表情が変わり果ててしまう。頭を何度か振って気を取り直す】
【両手から黒杖を呼び出す。黒い霧が杖の形を取るように集結する。それが金髪の少女の能力かもしれない】

時折、命を奪っても止める場合もあるよ
頑張ってそうならないようにしているけど、血の味を覚えられたら危ないの

こういう時に、この力は勇気と共に必要になるからね……

【杖を構えず、両手で水平に持ちながら呟き、それが終わると黒杖を夜霧に還す。大丈夫だから、と補足してみる】
【忘れたように夜風の寒に襲われる。ふと見ると相手の方もボタンをしめなおしている。その後の金髪の少女の行動は……】
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/17(木) 01:13:46.70 ID:AcEYB0Z50
>>627

そうね、役割を果たしたなら成仏できるでしょうけど。種も作らず枯れるんだったら可哀想だわ、草も化けて出るのかしら。

【重い話をしたがらないように、きっと相手は草の話をしていない、けれど、彼女は草の話にとすり替えている】
【冗談めかして小さく笑んでみる。ふわとこぼした吐息は、気付けば薄らと白い色を持つようになっていた。ここ少しの時間で、めっきりと冷え込んだらしい】
【周りを見れば時間の経過とともに犬に散歩されているような老人の姿も見かけず、ジョギングしている若者の姿も見かけず、すっかりと二人だけのようになって】

そうなの、鹿も泳ぐのね。知らなかったわ。私、海で泳いだことがないの。鹿以下ね。ついでに言うと猪以下だわ。
……まあ、そんなの嫌ね。捕殺にしても靴底がぎとぎとになりそう……。

【今までの言葉からして、彼女はこの海にたびたび訪れているらしい。けれど泳いだことはない、と、言って、足を波打ち際に寄せ】
【薄ぺらく早くなった波が靴底を撫でていく、高い底だから、足が濡れないのを分かり切ってやっているのだろう。そうして何度も足元を掬わせ】
【大きな芋虫に関しては結構本気で嫌そうな顔をするのだった。「手で潰すのは無理ね」とか言っているあたり、所謂女子的な感想でないのは、知れたが】

ま、仕方ないわね。かわいそうだけど。

【動物は嫌い――では、ないのだろう。だからと言って好きではない、間違えても、間違えた方向で、好きではない】
【かわいそうだとは言うけれど軽度の同情でしかない、雉も鳴かずばと呟く感情に似るのかもしれないけれど、動物を殺すなんて!と叫ぶことはなく】
【変わりにポケットから引きずり出した携帯端末でちらりと時間を確認して、】

帰らなくていいのかしら? 保護者が心配して泣きすぎて脱水症状で死ぬわよ。

【そう、どこか気怠いように尋ねるのだろう。――おおよそ、そろそろ帰るかと思ったけれど、未成年を置き去りにするのも、という感じだろう。推測するに、】
【必要なようならどこかまで送るからというのを言外に態度で示しながら、相手に携帯電話のロック画面を――すなわちデジタルな時計を見せつけて】
【関係ないが、待ち受けは色とりどりの薔薇の花束の写真だった。よっぽど薔薇が好きであるらしい……とか、余談】
629 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/17(木) 01:41:46.84 ID:8rL0Jl920
>>628

保護者(ふうちゃん)なら、もう泣き腫らした後かも

でも、それももう終わり
わたしも早く帰らなくちゃね

【金髪の少女は冗談のような返しをする。続く言葉は言外の意味を全圧縮したような謎の響きを残す】

おばあちゃん達に挨拶をして、UTと協力して麦星を破壊して、このリープを終わらせないと……

【鞄を持ち直し、相手から差し出された端末の時計を見る。少しずつ冷や汗の群れが滝汗の群れに進化する】
【1:30前、即ち草木の理すらも外れた無理をしようとしていたのであった。三日月は当然の如く既に沈んでいる】

あ……あわわわわ
明日、は蜂の巣×8なのにこれじゃあまた夜まで

【やんちゃな生活リズムをしていたしっぺ返しなのだろう。これでは決まった休日を設けるまでにまだまだ時間は掛かりそうである】
【相手側の誘いに、大丈夫と慌ててながらも自信がありそうに返し、急ぎ帰りの支度を整える】
【ただ単に鞄を持って砂を払うだけの動作が要所要所で余計な動作に阻まれて時間が遅延してしまう】
【走り出す前に、思い出したように金髪の少女は口走る】

わたし、片桐木花っていいます
それじゃあ、またね!

【走り去る金髪の少女の人影。静かな砂浜では遠くとも声は聞こえる。自己紹介を返せばきっと名前で呼んでもう一度別れの挨拶をしてくれるだろう】
【この騒乱ももって3分程度。その後は浜辺に元の静寂が戻る。音のジャミングから解放された星々が、その存在を主張しようと僅かに明るく瞬き始めるのであった】

/自分の方はこれで終わりになります
/遅くまでありがとうございました

/それでは、おやすみなさいませ
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/17(木) 01:54:19.47 ID:AcEYB0Z50
>>629

そう、かわいそうね。あんまり心配させてると、早死にするわよ?
親孝行したいときには……だなんて言うじゃない。

【幼馴染のことを思い出す。両親などとうに死んだ少女のこと、母の日にカーネーションが欲しいと言われて、用意したことがある】
【結局あの花はどうしたのだろうと思いはしたが、嬉しそうに戻って来た顔を見たらどうでもよくなったものだ。――だから、まあ、】
【感謝できる相手が居るなら、居るうちに感謝しておけと。緩く年上めいた助言をしてやって】

【「あら」なんて小さな呟き。相手の言葉に一瞬だけ引っ掛かって、けど、それ以上追及はしない、だって、時間が不味いようだし、――それに】
【違ったら面倒くさいから。余計なことは言わないに尽きる、UTで働いている知り合いが居るだとか。そういうのは、余談にしておけばいい】
【鈴の音の声音の少女。少し前に思い返した幼馴染と同一人物。思い返しながらも相手の動作をどこか少しだけ微笑ましいように見て――手伝いは、しないのだけど】

気を付けるのよ、今の時期の蜂なら大人しいように思うけど。

【そういってやって――名乗られれば、一瞬の間を置いてから、たいして平常と変わらぬ声で返すのだろう】
【相上天音。もしかしたら聞こえないかもしれない、低くてノイジーな声は、不思議と夜のさざ波の音によく混じって――】

【――すぐに、誰も居なくなる。見れば息はさっきよりも白く染まり、これなら、待ちぼうけだったなら同居人もすでに家かもしれない、と、考えて】
【それならあんまり留守にしても不機嫌になるだろう、と、緩い推測――すでに歩き回りたい気も済んでいるなら、まあ、帰るか、と逡巡は一瞬】
【少し遅れて、彼女もまた、浜辺から立ち去るのだった――足跡だけがその場に取り残されて、それも、やがて、風に崩される】

/おつかれさまでした!
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/19(土) 16:35:07.99 ID:TfwB726Z0
【街の中心にある噴水広場】
【曇り模様だった空もすっかり晴れて数時間。噴水広場の周りには、ずらりと軽食の移動販売のワゴンが並んで】
【ちょうどお腹もすいてくる夕方の傾いてきた太陽の明るさの中、辺りにはいい匂いがふわりふわりと漂っていて】

……なくならないのだけれど。

【その広場の中央、大きな噴水の淵は椅子のようになっていて、ぽつぽつと人が座っているのが見受けられ】
【彼女もまたそのうちの一人だった。――背丈のひどい小さな人影だが、どうやら子供ではない。手にはワゴン車のクレープを持っていて、】
【ときどき齧っているのだけどド真面目な顔でふざけているとしか思えないような、――ハムスターだってもうちょっとマシに食べるくらいの食べっぷりで】
【そのうちうんざりしたのか眉をひそめて小さな舌打ちまでするのだった。ちなみにクレープはほぼ無傷のままで】

【くすんだ金髪の癖毛、くるくると跳ねあがって巻く毛先にはピンク色が乗って、肌は色白だったが、どうにも不健康なほうの色白に見え】
【瞳は勿忘草の花の色、目つきはいやに鋭くて拗ねた子供のよう。ただ顔自体は少しだけあどけなさの残る、少女らしいもの】
【紅茶染めの布地でこさえたロング丈のワンピース、袖は掌までを隠して、裾は踝までを隠して。たっぷりあしらったスカートの布地もあって、着られている印象があり】
【足元は底のないパンプス、噴水の淵に深く腰掛けたせいで足先は地面についておらず、――百四十センチほどの身長だろうか、華奢なのもあり、ひどく小柄で】

……――。

【甘くないツナのクレープ。多分自分で頼んだわりに、どうやら、ツナの油分に胃袋と心をやられているらしい】
【見た目からしてどう見ても食の細い少女が案の定食の細さを発揮している光景。しきりに生地を食べるがために崩落しかかっているクレープ相手に難儀して】
【頭痛が痛い――みたいな顔をしているのだった。ごく小さく舌打ちをして、それでも食べようとしている辺り、そういう性質なのだろうけれど】
【心底うんざり……みたいな顔をしているので、それはそれでどうなんだろう、と、そんな様子だった】
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/22(火) 20:13:34.55 ID:7Hyq2A460
>>631
/これ再掲でお願いします
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/03/26(土) 22:12:52.01 ID:B+QMyLV00
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――雷の国 郊外】

――――全く、ダメダメだな、お前達……俺1人に敵わないで、何でサツキの奴をどうこうしようなんて思うんだよ……?
全く自分を見誤ってるよ、全く……

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【周囲に民家も少ない、寂しい道路の上で、足元に転がる3つの死体を見下ろしながら、ため息をついている】
【どうやら、この一行の間で一悶着あったらしく、周囲には血の臭いと共に、火薬の臭いも微かに立ち込めていた】

……まぁ、死んでしまえばみんな一緒か。悪いけど、死んでもお前達の時間は終わらないんだよ
まぁ、魂だけになっても、精々嘆いていてくれよ――――――――コォォォォォ…………!

【瞑目し、男性は深く深呼吸を始める。それに呼応してか、3つの死体から青白い人魂の様な物が浮かび上がり】
【男性の呼吸に合わせる様に、その身体に吸い寄せられていき、そして吸い込まれていった――――】

【男性のテンガロンハットには、逆五芒星を象り、その下に≪No.21≫とあしらわれたバッジが留められていた】



【――――所変わって、風の国 公園】

――――どうしたんです、こんな所で――――
「今、仕事終わって引き上げてきたんだろう? ……ほら、こいつを煽っときな
 幾らあんただって、疲れない訳じゃないだろう? ……疲労には、栄養と休養さね」

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のまるで死人の様な冷たいオッドアイを持ち、体表に紋様の様な、仄かな光を放つ金色のラインが走っている】
【白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女と】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性が】

【遊歩道の中ほどの自販機前で、相対する様に立ち話をしていた。女性が差しだす紙袋を、少女が事もなげに受け取る】

――――栄養食品と、ドリンク剤、ですか――――
「……あの子がお前の為にって、用意してたものさ。後で礼を言っとけよ?」
――――別に、彼女を悲しませたい訳じゃないんです。でも、悲しまれても困るんです――――
「はぁ……言いたい事はそれだけかい。まぁ、そうなんだろうさ……今は何を言っても無駄だろうね……
 まぁ良いさ。ともあれ、寄り道なんかしないで帰るんだろ? さっさと帰って、喰って、寝ちまいなよ」

【砕けた様子の会話ではあるが、その雰囲気はどこか刺々しい物を孕んでいた】
【連れ立って歩きだすその様子は、友好的とは言い難い歩調。夜の帳が垂れこめる道を、風が軽やかに駆け抜ける――――】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/26(土) 23:19:16.85 ID:Ne8GZlOK0
>>633
/まだいらっしゃいますでしょうか?
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/03/27(日) 20:49:57.09 ID:oCrIYDVJ0
>>634
/申し訳ないです。昨日は落ちてしまってました
636 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/28(月) 20:04:35.24 ID:0MCYXWZ60
【街はずれ――街から遠ざかっていく道】
【時刻は午前中の頃、まだ太陽は少しだけ低い位置にあって、ただ、春めいて気温は暖かく】
【通りすがった公園の桜の木は緩やかに蕾を開きつつある、そんな時期。――よいしょ、と、小さく呟くのは、いっとう人通りのない方へ向かって行く人影】

……――。

【いやにご機嫌に見える彼女は両手いっぱいに大きな花束を抱えていた、淡く桜色に咲き誇る桜の花をメインにした花束、ラッピング紙もまた桜と淡い白を基調にして】
【落とさないように大事に、けれど形を崩してしまわないように優しく、それでも少し重たく疲れたような抱き方。きっと遠くから歩いてきたのだろう――と窺え】

【腰まで届くような長い黒髪はハーフアップのようにまとめられていて、ただ、右耳の少し上の辺りに、その黒髪が薔薇の花のように編まれていて】
【瞳は左右で色の違う黒と赤、真っ白に透き通るような肌は暖かさか嬉しさかにほのかに上気して、頬のあたりをわずかに染め】
【ふわっと袖の広がった黒色のシャツにふわっと広がるミニ丈のスカート、たっぷりの布地の中にはたくさんパニエを詰め込んで、ふわと広げ】
【腰元にはあくまで飾りのコルセット、足元は底の分厚く高いパンプスで、塗装も少ない街はずれとなれば、少し歩きづらいように思うのだけれど】
【上機嫌に歩く十六ほどの少女はそれをまったく気にした様子もなく。ただ一度、街の方を一度振り返ったなら、】

……もう、へびさまも来れば良かったのに。ひとみしりなのかな、蛇だから? ……普段はそうでもないのに……。
せっかくお父さんとお母さんのところに行くのに――、……歩くからヤだったのかなぁ。……二時間くらいなのに。

【あどけなさを多分に残す顔の柔らかそうに白い頬をわざとらしく拗ねたように膨らませてみる、戯れのように数秒そうすれば、それですぐ飽きたように】
【もとの上機嫌なような顔に戻って、また、人通りどころか舗装さえ怪しい方へと歩いていく、――この先、と言えば、よく言えばひたすら自然ばかりの、】
【それならどこかハイキングにでも行ったほうが楽しいんじゃないかと言う場所なのだけど。……そう、強いて言えば大きな大きな桜の木があるらしい、けれど、】

へびさまってばすぐに疲れちゃうの、少しくらい運動したほうがいいね――。

【そう見れば彼女の抱く桜の花束は関係があるようにも見えななくもない。ひとりごちてまた歩き出す背中は華奢で】
【夜なら獣なんかもきっといるだろう方へ歩いていくには――どうにも、頼りないように見えて】
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/29(火) 18:56:11.05 ID:dSY07lwS0
>>636
/途中食事で離席しますが、日付変わるくらいまで緩やかに再掲しておきますー
638 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/29(火) 22:19:22.59 ID:oKjXSpBW0
>>636 >>637
/まだいらっしゃいますでしょうか?
639 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/29(火) 23:11:18.01 ID:dSY07lwS0
>>638
/申し訳ないです、今気づきました……日付変わるころで引き継ぎになってしまうのですが、それでよろしければお願いしたいです
/ただまだレスが出来てないので、その分もお待たせすることになってしまうのですが……!
640 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/29(火) 23:12:13.44 ID:dSY07lwS0
>>639
/ごめんなさい、ちょっと間違えましたっ。そちらがよろしくてレスいただければ、すぐ開始できます……っ!
641 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/29(火) 23:16:49.34 ID:oKjXSpBW0
>>636

【朝のさっぱりした空気が残る小径。桜の花びらが舞いそうな天気のいい日】
【首にかけたタオルで汗を拭う小さな人影が町に向かって歩いている。偶に伸びなどをして疲れを吹き飛ばそうとする】
【金髪のツーサイドアップに外套とインナー、そして袴のようなキュロットスカートを履く。藍色の瞳の先に空が映る】

今日は暖かくなるかな?

【そんな独り言を呟く。冬が解かれて雨多くなる季節、家でカンヅメになる鬱屈を朝の鍛錬で晴らしてきたばっかりである】
【気持ち良さに少しの間目を閉じる。久々の晴れ、かつ久々の休日になる。残り半分をどう過ごそうか考えてみる】
【ぶらぶらと歩く、アレの情報を集めてみる、そう言えば次の納品の準備は、とやりたい事が多過ぎて苦笑してしまう】

【ふと、自分(街)とは逆方向に歩く少女が見える。遠目で見て花束を抱えているのが分かる。会う約束だろうか、それとも墓参りだろうか】
【尽きぬ興味で半日費やす事に決めて、まだ少し離れている段階から声を掛ける事に決める。少し深呼吸して息と気分を整える】

おはようございまーす

【まるで見知った人に掛けるような遠慮のない挨拶が飛び出る。大きく手を振る仕草に加えて嬉しそうな表情】
【暖かいのか外套のボタンが全部外されていてTシャツが見える。手を振るのに合わせて外套の裾が揺れている】
【遠目でそれらが見えなくても、少女が馴れ馴れしくも珍しく気楽そうな雰囲気を漂わせているのが分かるかもしれない】

>>639 >>640

/ええ、それでOKです
/今日は少しの間だけですが、よろしくお願いします
642 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/29(火) 23:38:00.89 ID:dSY07lwS0
>>641

【帰りには来るときに見かけた和菓子屋さんに寄ろうとそっと心の中で決めていた、桜餅を買って、それから、大福も買おうかな、なんて】
【ああでもそれじゃ餡子ばっかりだなんて思っても和菓子なんてほとんど餡子だと思い直して、それなら、それなら、最中も食べたいなぁ、なんて、】
【暖かいからかお腹が空いてくる。ぎゅと抱いた胸元の花束からは、ほんの微かに蜜の香りがする――、遠くの空をめじろが高く飛んでいく】

……あ、――ふふ、おはよう。

【この抱え抱いた枝の中に舞い降りて来たら面白いのにと小さく笑う、けれどあっという間にその姿は小さく見えなくなってしまって、それならとめぐる視線は】
【空に鮮やかな色彩を探そうとするのだけど、目当ては見つからない。……と、そうして視線を落とした頃だった。声を掛けられれば、きょとんと瞬きひとつ】
【緩く振り返って、――こちらもすぐにあどけない顔を喜色で満たす。ぱぁと笑えば、腕に抱くその満開に咲き誇る桜花のうれしさまで、顔に満たしてしまったようで】

【声は小さかった。あまり張るタイプではないのかもしれない、どちらかと言えば――そう、囁くような声の似合う性質】
【それでもその鈴の音とよく似た声質は春のうすぼんやりあったかくてなまぬるくてやわらかい温度の中でも、きっとよく相手に届き】

久しぶり……かな? 元気にしてた? 今どきの時期は、寒くなったり暖かくなったりするから――、

【よいしょと花束を抱き直して首をかしげるようにして笑う、そうして尋ねるのは相手との距離をどちらからか、詰めたその先のことで】
【まず最初はどうでもいい世間話のようなものだ。とってもいい天気ですねと同じくらいの無難さ、それから、彼女はどこか自慢するような顔をすると】

ほら、見て、? とっても綺麗でしょ――、お友達にね、いつも選んでもらうの、その子はね、お花がだいすきで、とっても詳しいから……いいお店も知ってるの。

【ほらほらと見せつけようとするのだ、腕に抱く、立派な桜の花束。近くで見ればなるほど確かに桜の花束としか言いようがなく、というか、他の花が入っていないほど】
【くしゅっとしてなんだか豪華に見える気がするカスミソウもなければ同じくピンクの花を盛り付けて鮮やかにしようとする気概もない、ただ、桜の花ばかりが詰め込まれ】
【木だからこそ大きくごつく見える面もあるのだろう。背丈はそれなりに大きいながらも華奢な少女が持てば、入学当日のやけに大きなランドセルのような、少し不釣合いな印象】

【ひとしきり自慢すれば、「どこかに行くところなの?」だなんて尋ねるのだろう。その顔はいつもにましてにこにことあどけなく、これから嬉しいことがあるかのようで】

/それではよろしくおねがいします!
643 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/30(水) 00:10:11.21 ID:J+wGkQAF0
>>642

【ひとしきり手を振って、少女へと駆け寄っていく。話ができる距離で足を止めて一度息を吐いて整える】
【少女からの挨拶に「うん、元気にしてたよ」と、軽やかに返事をする。そして視線は花束の方へと向かう】

そうなんだ、珍しいね
いつかそのお店にも行ってみようかな

【花束の包みを見て、柔らかい草花の方の花だとてっきり思っていたが硬質な樹花が混じっていた】
【薄い桜色が混じっているのも相まって、一般的な花束のイメージとかけ離れた花束が気になって凝視してしまう】
【それ故に少女からの問いに一拍遅れてしまうのであった】

ううん、今日は休みだから暇だよ
日課の薙刀も終わって、これから何しようか考えてた

【色々考えていたような気がするが、一番しっくりくるものを声を弾ませながら返す。休日にスイッチが切り替わるタチなのかもしれない】
【気分が落ち着いたのか、今更になって気になった汗をタオルでひと拭いする。そして視線を相手に合わせながら】

何かいい事あったの?

【相手の笑みにつられて自分も笑顔になる。ただ、何が嬉しかったのか知りたくて聞いてみる】
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/30(水) 00:26:27.09 ID:r/dIO0nY0
>>643

【大事に抱きしめている。けど、少し手が疲れているらしい、持つ手の高さはなんとも曖昧に低い――が、相手に見せる段になれば】
【とっておきの宝物を見せるみたいに見せつけるのだ。少しでこぼことした桜の枝、満開に咲く淡い花、濃くピンクに染まる丸い蕾と――】
【ラッピングは少しだけ濃い桜色の和紙素材に薄く透ける白い紙を重ねたもの。縛るのもリボンというよりかは櫻の紐のようで】

うん、あんまり見ないかも――だけどね、ふふ、だけど、今のものだから。
それともこの子たち、ハウスの子なのかな? ……とっても綺麗だから、そうなのかも。だけど桜って、一度は寒いって思わないと、咲かないんだって――。

【「あったかいだけじゃ駄目なんだって、友達が言ってたの」と笑う。たびたび嬉しそうにほころぶ顔はよっぽど機嫌がいいらしい、咲き誇る花を間近で見つめて、】
【また嬉しそうにしている。案外子供っぽい性格なのかもしれない――というか、そういうところがあるのだろう。数度会う相手なら、知っているはずで】

そう、? わたしはね、今日お仕事なの。だから、あんまりのんびりは出来ないんだけど……、だけど、出かけるっていうのは、言ってあるから。

【最悪遅れても大丈夫だろうと少し気の抜けたような顔で笑う。「そしたら連絡するの、なるだけ急ぐけど――」と、それは、そうなのだけど】

――ふふ、お父さんとお母さんに、会いに行くの。桜が咲いたらって決めてるんだ、お母さんは桜が好きだったってね、教えてもらったことがあるの。
ほんとうはどこに居るのかも分からないの。わたし、だから、勝手に、そこに行けば会えるって、決めてるの。……むかしね、みんなで行ったから。

【それでももし遅れそうなら急ぎそうな顔はしていなかった。真っ白の頬が嬉しそうな紅に染まっている、桜が咲いたらと示すのは花束の桜】
【これは開花調整やらでこの時期に出せるようにされているのだけど、――そうでなくて、そこらへんの、いわゆる公園の桜とか、そういう桜の話】
【けれど言葉はどこかが少しおかしい。会いに行くといいながらどこに居るのかを知らないと言う。好きだったという言葉は過去形だし、その場を選ぶ理由も、過去にある】

大きな桜の木があるの。今から、そこに行くんだよ。

【桜の元へ向かうのに、桜の花を持つ。それは少し不思議なようだけど、彼女の中では、決まり事なのだろう】
【「一緒に行く?」と明言こそしない。けれど柔らかに笑んで首をかしげるなら、それは、きっとそう尋ねているに違いなく】
【相手さえよければ――二人でそこへ向かうことに、なるのだろう】

/そして12時を回りましたので、ここで凍結していただけましたら……!
/明日は急用さえ入らなければ8時ごろには待機出来ているかと思いますっ
645 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/03/30(水) 00:31:45.61 ID:J+wGkQAF0
>>644
/凍結了解しました
/ではまた明日よろしくお願いします
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/30(水) 00:40:58.17 ID:r/dIO0nY0
>>645
/ありがとうございます、ひとまずおやすみなさい。また明日よろしくお願いします!
647 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/30(水) 09:12:41.45 ID:J+wGkQAF0
>>644

あ……そうなんだ
お仕事、頑張ってね

【少女と少女の時間は異なっている。例えば金髪の少女は港湾集落での用心棒と雑用を仕事にしている】
【休日と仕事がランダムに来るこの少女は、目の前の少女も自分と同じく休日なのだと考えてしまっていた。その落差に少し驚いてしまう】
【言い終わった後でふと思い出す。この人は確かお店をやっていたような気がする、そうして心の中で納得する】

うん
そういうの、行くだけでも価値があるからね

【相手のほんの少しの翳りに呼応するように少女も意識の深い所から言葉を紡ぎ出す】
【少女は眉を下げて曖昧に微笑む。それは相手の違和感を許容するかのように、或いは別の何かを思い出すように】
【花束の中にある花と同じ所に行くと言われれば、この少女の返事も一つしかない。何か淡い期待を込めておずおずと】

えっと、よかったら
わたしも、一緒に行ってもいいかな?

【相手にそう訊いてみる。これを断っても少女は特に拘泥する事もなく、別れの挨拶を一言、そして町へ帰るだけだろう】
【或いは了承したのならば「ありがとう」と返した後に、少女は相手の引かれるがままついて行くだろう】
【途中相手からの注文にも答え、雑談を交わしながらの道中になるのかもしれない】

/一応返しておきます
/再開はそちらのタイミングで、いつでもかまいません
648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/30(水) 19:17:43.36 ID:r/dIO0nY0
>>647

うん、だけどね、今日は平日だからあんまり忙しくないと思う。
金曜日とかはね、すっごいの――みんなお仕事頑張ってきてるんだから、きっと、疲れてるんだよね。

【それにしても、すごい飲むお客さんばっかりなの……と苦笑する。「身体に悪いね」なんて言うけれど、それを必要以上に咎めるのをしないのは、】
【その酒を売った金で暮らしているのか。と思いかねないけれど、多分、緩く身体に悪いと思っている程度で、そう深刻にとらえているのでもないのだろう】

――うん、そうなの。普段は行かないから、こういう時くらいには行かないと……って。
それでもね、たまには行くんだよ。桜の時期じゃなくっても――、少し、寂しくなっちゃったとき、とか。

【行くことに価値がある。そう言われれば彼女は嬉しそうに笑う、なんだかんだ、特に仕事を初めてからは、行く機会がぐんと減っている】
【かといって昔は昔でそもそもこの辺りに来るための金もなかったので、よくよく考えたら、――増えている、気も、したのだけど?】
【なんだかよく覚えていない。自分の少し弱みのようなことを言えば、すぐに眉を下げながら、「それはいいんだけど」と付け足し」

とっても綺麗なんだよ。多分ね、もう咲いてると思う――満開じゃあ、ないかもしれないけど。
だけどちょっぴりだけ歩くの、一時間しないくらいかな? 行って、帰って、二時間くらい……多分。

【ふふ、と、笑う。それは名言こそしなかったが、もちろん、という返答の意味合いを持ち】
【少し歩くんだけどと前置き、それで相手がいいとさえ言えば、今度こそ歩き出すのだろう。塗装が少しずつなくなっていく、地面には若い草の芽が満ち溢れて】
【それでもやはり旅人か誰か、人間が踏み固めているような気配はある地面。やはり彼女の恰好は不釣合いに見えるのだけど、まあ、多分、それでいいのだ】

もうすっかり春だね、ほら、たんぽぽ……、――ふふ。

【歩き出した彼女は緩やかな歩調で歩く、普段からこの速度で歩いて一時間、というなら、実はもっと近い場所なのかもしれない】
【嬉しそうに春風に長い髪を揺らして、そこらへんに生えている草に興味を示しながら歩いている。もちろんもっと早くとせっつけば、早く歩くのだろうけど】
【たんぽぽの花を見つけて嬉しそうに笑う――もし知っていたら、彼女が。件の酒場で月末の昼間にやっていることを、知っていたりするのなら】
【孤児の子供達への無料食事提供サービス、その名前が“たんぽぽ”であると――知っていたのなら。目を細めて吐息混じりに笑ったその表情は、いやに大人びて見えたのかもしれない】

/お返ししておきますっ。ですが安定して再会できるのは食事が終わってからになります……!
649 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/30(水) 20:49:05.48 ID:J+wGkQAF0
>>648

【相手の了承に、得意そうな顔で靴のつま先で地面をトントンと叩く。片手を腰に置いて何か自慢げな様子の少女】

大丈夫
歩くのは慣れているよ

【使い古した革の長靴の底に着いた泥を落とすつもりなのだろうか。傷や染みで汚れた靴はその程度で綺麗になる筈もなく】
【相手の後ろをついて行くように歩き出す。ふと肩を竦めてみせるが、いつもの長鞄の衝撃がなく肩透かしを食らう】
【風で金髪が揺れ、いつもよりも軽い身体を弾ませながら土を踏みしめていく】

本当だ……
ここでも咲いているんだね

【微笑みながらタンポポを見つめる。相手の少女が店をやっていたのを知ってはいても、その店の名前を金髪の少女はまだ知らない】
【夢を見ているかのように目を細める。鼻先に止まったテントウムシに気づかないぐらいにぼーっと歩いてしまう】
【指摘しないにしてもテントウムシは勝手に飛び去っていく。意識の深層でタンポポを見ていた相手の顔を思い浮かべる】

何か思い入れでもあるの?

【無意識で出た言葉であった。気になった事を知らないままにするのはこの少女の性に合わないのだろうか】
【そんな唯一の根のある積極性が漏れて出る。少女は既に夢想から離れて、相手をしっかり見ており、話を聞く事ができる状態に戻っていた】
【答えようが、答えまいが咎めはしない。そうして時が過ぎ去って行く。その先に大きな木の影でも見えてきたのかもしれない】

/遅れてしまってすみませんでした
/今日もよろしくお願いします!
650 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/30(水) 21:33:35.33 ID:r/dIO0nY0
>>649

そう、なら良かったの。わたしもね、よく歩くから……ううん、車とかね、乗れないの。
なんだろう、酔っちゃうし、わたしは、あの――あんまり、格好いいとは、思わないなぁ……、あ、ううん、内緒ね。
お店に来るお客さんってね、すごいそういうの好きなひとが多いから。凄いなぁとは思うの、けど、よく分かんないや――。

【車は乗れない。酔うから。……それもそうなのだけど、まず、免許もないし、取ろうと言う気概もない】
【なんならもっと言えば自転車も実は乗れやしない、練習すれば乗れるようになるのだろうとは思っているけど――あんまり必要に思わない】
【基本的に歩いてばっかりだ。歩くのが好き。いろんなものを見ながら歩くのが好き。――だから、今も、きっと、たんぽぽを見つけたのだろう】

きっとどこにでも咲いてるの。はじめに咲いたのはどこの国なんだろう……この子もきっと遠くから来たのかな。
風でふわふわ飛んでいくのってきっと楽しそう、わたしはそんなの出来ないから、ちょっとだけ羨ましいの。

【きっと手が空いていればしゃがみこんででも触れただろう。けれど今は両手には大きな花束を抱きしめていて】
【それなら触ることは叶わず、ふわとあどけなく、けれど柔らかく笑んで。綿毛でもあれば飛ばしたのに――もちろん、それにはまだずっと早い】

……ううん、そんなに凄い理由じゃないの。だけどね、ちょっぴり、安心するのかな……。
たんぽぽでしょ、おおいぬのふぐりでしょ、……あー春だなーってね、思うな。――寒いのは苦手なの、だから、
これから暖かくなるなぁって思うと、嬉しいし、安心するの。一月ごろなんてね、もしかしたらこのままずっと冬なんじゃないか……って思っちゃう。

【尋ねられ、少し困ったように笑う。自分の考えなんて薄っぺらいからと口にして――安心する、なんて言葉、続けるのだ】
【挙げるのは春の花だ。桜よりも先に咲く花たち、「あ、ほとけのざも――」なんて付け足す。けどきりがなさそうなので、そこで彼女も黙って】
【少し目を細めてそんなことを言って。気付けばふらりと歩き出している、たんぽぽの花は、あちらにも、こちらにも、ぽつりぽつりと咲いている、】

たんぽぽの花は冬が終わるよって教えてくれてるみたいだって思うの。これから暖かくなるよ、だから大丈夫だよって。言ってくれてるみたい。

【よいしょと小さな声で花束を抱き直す。遠くには青空、まだ桜の木は、見えてこない】

/ごめんなさい、少し遅くなりました……! タイムリミット昨日と同じですが、今夜もよろしくおねがいします
651 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/30(水) 22:04:47.09 ID:J+wGkQAF0
>>650

ふぇっ!?
……え、え……?

【様子が少し変になる。タンポポの別名を聞いた瞬間に顔を赤らめてしまう。悟られまいと声を抑え始める】
【そして、愛想笑いで誤魔化そうとする。調子を戻すのも早い。どうか気づかないようにと首筋に冷や汗を一筋】
【少女の指差すままに野草に目移りしていく。定番の草花を見つける度に改めて春の実感を覚えていく】

【そんな紹介が一度取り止めになる。目の前に疎らなタンポポの花畑を擁しながら少女が金髪の少女に語り掛ける】

そうだね
この子達は、厚い雪を割ってきたんだもん。もう冬将軍も白旗を振っているよね

【金髪の少女はしゃがんで草花を慈しむように一撫でする。斜面を見つめては草原が作り出す緑の波に見とれる】
【立ち上がり、土を踏んで確かめる。白くざくざくした感触はもう無く、手を虚空に伸ばしては何かをかき集めるように手を動かす】

もう雪うさぎが作れないのがちょっとだけ残念だけどね

【眉をほんの少し下げて、冬の白さを名残惜しそうにする。それも笑顔で直ぐに搔き消えてしまう】
【季節の楽しみは、四度変わりながら巡る。永遠は無い。こうして、名残惜しそうな顔を直ぐに解いたように】
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/30(水) 22:31:46.54 ID:r/dIO0nY0
>>651

小さい青いお花だよ。触るとすぐに首が取れちゃうの。だから、とっても可愛いけど、あんまり触れないの――。

【――気付いているのか、居ないのか。或いはいいようによっては、知っているか、居ないのか、そういうことにもなるのかもしれない】
【でもこの少女なら、人間相手ならともかく犬猫相手なら別段気にしないような気もするよう。まあとりあえず、彼女は顔色一つ、動かさずに】

春に一番最初に咲くの、だけど、背がちいさくって、あんまり目立つ花じゃないから、気付かないひとも多いのかな。

【なんて呟いている。足元で伸び始めた草――ぺんぺん草を軽くけっ飛ばして、からかってみて】

うん、きっと、もうとうに熱中症で倒れて救急搬送かな……、だけど、あんまり暑いのも苦手なの、わたし――。
えっとね、友達の子も、あんまり、夏は好きじゃないみたい。ずうとお外でお仕事しなきゃならないから、嫌なんだってね、言ってた。

【となれば今頃飛び交うのは春の妖精か、春ですよと歌って飛び交うものと言えばうぐいすなんて思い浮かぶけど、彼らは果たして妖精なのか】
【寒いのは苦手だが暑いのも苦手。たいがい我儘めいているが、薄っぺらい肌の色では、確かに、暑さも寒さも苦手なように見え】

あ――わたしね、かまくらを作ってみたいの。ちっちゃいのじゃなくって、おっきな、おっきな、お部屋みたいな、おっきな奴。
入れるくらいのやつならね、この間作ったんだ。屋根から落とした雪に穴を掘っただけだけど――それでもね、ちょっと、楽しかったから。

【雪うさぎ。そこからの連想で口にするのはもうちょっと大がかりな雪遊び。中に入って……火鉢でお餅とか焼いてみたい、だなんて、呟いて】

そしたら今年の冬かな、だけど、その頃には、きっと、わたし、あったかいのがいいなぁって言ってるから――。

【なんでも終わったあとならなんとでも言える。今となっては寒いのも楽しかったかもなんていうけれど、】
【当然寒いころにはもうやだこんなのやだ冬眠する……と言っている自分が容易に想像できるのだ、なんて、】

/ごめんなさい、所用で一瞬離席していて遅れました……!
653 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/30(水) 23:11:26.97 ID:J+wGkQAF0
>>652

かまくら……作れるのかな?
わたしのいた町なら、多分大きいの何個でも作れそうだけど

【顎に手を当てて考える。相手の気持ちは分からなくはないが、大きいのと聞いてどうしても小部屋サイズのかまくらを思い浮かべる】
【七輪とお餅、或いは豆火鉢を中心に据えて、お友達を呼んで、おしゃべりをする。それは楽しそう、と声を漏らして微笑む】
【それを成立させる雪の量を考えると、扉が無事では済まない程度の雪。そうでなくても雪原を成立させる広い野原】

うん、わたしも暖かい方が好き
だから、冬は見て楽しむものだと思うの

【さらに「冬はつとめて」と一言口にする。ある有名な随筆の一部分を引き合いに出してみると】

息の白さ、お餅の白さ、いつも見ていた野山のお化粧姿、夜空を彩る無数の点々、こたつでアイスクリーム

全部その時にしか見れない楽しみだね

【部屋の中から見れる全てを挙げてみせる。寒いのが苦手な同士、冬の体感を遠ざける為の現実逃避】
【その場で一回転して、腕を後ろにして、さらに前に伸びをする。そうして弾む心のままに続けて】

今はこうして外に出られる
草相撲とか、花冠とか、これから見れるものとか、残さず体感してみたいな

【目を細めて笑う。期待を込めて道の先をふと見遣る】
【そして、相手に目線を再び合わせる。距離があり、小柄である金髪の少女が見上げる必要もなく】

春になったら、何してみたい?
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/30(水) 23:24:51.04 ID:r/dIO0nY0
>>653

うん……でも、雪のひどいときなら作れるかも。
わたしの住んでるところはまだそんなにひどくない場所なの、もうちょっと北に行けば、ひどいみたい。
……夜の国に住んでるって、言ったっけ。冬はね、すっごい寒いよ、おひさま、オールウェイズ冬眠してるから――。

【確かに少女が浮かべているのもそのレベルだった。もう寝転んだりしても平気なくらいの広いかまくら、絶対に楽しそうだと頬をほころばせ】

窓の中から雪が降っているのを見るのはね、好きだよ。最初はよく遊びに出たけど……最近はめっきりなの。
へびさまも寒いの苦手だし、*ちゃんも興味ないみたいだから。

【彼女がそこに住まうようになったのは数年前からだ。だからまだそんなに雪降る冬を過ごしたのは数度の話、それでもめっきり慣れて、或いは飽きて】
【家に入る時にちんまりとした雪だるまを作っておいて冷凍庫に入れておくのだと言う。――気付けば溶けてしまっていて、そこには何も残らないけれど】

おこたならおみかんもいいな。手が黄色くなっちゃうけど、とっても美味しいの。あとおせんべいも好きだけど……それは、あんまりしないのかなぁ。
だけどなんでもいいね、わたし、おこたが好きなだけなのかも――あったかくって、眠たくなっちゃうの。
寝ちゃったら、喉、からからになって起きちゃうんだけど……。

【少女の身体の身動ぎで胸元の花束がかさりと鳴く、まだこたつをしまったわけではないけれど、少し前のようには楽しめなくなりつつある】
【それでもまだ夜の国の“夜”は寒いけど――だいぶ、暖かくなったなぁという、そういう自覚はもちろんあって】

うん、たんぽぽとか、しろつめくさとか、お花をいっぱい入れた冠を作るの。
あとはたんぽぽの茎を水車にしたり……、しゃぼん玉も出来るね、すぎなで当てっこして、ぺんぺん草で遊んで……いっぱいいっぱい、出来ること、あるの。

……わたし? わたしは……、まだ寒いところの子たちに、せめて、綺麗に咲いたお花だけでも、見せてあげたいな。
暖かさまでは持っていけないけど、きっと、お花くらいなら持っていけるの。わたしは……、もう、十分、あったかいから、いいや。

【くすすと小さく笑う、植物はきっと好きなのだろう。それでも専門的な知識というのではなく、たぶん、もっと、小さなころに野っ原で遊んだ子のような】
【四葉のクローバーを探したりね、と、楽し気に笑う。だけど――続く問いかけには、少し、笑みをひそめて。声が、少しだけ、落ちついた真面目な色を抱き】
【たぶん、何かのたとえ話なのだ。それが本当に寒さであったり、花であるとは、限らない。だから、きっと、少し分かりづらい言葉なのだけど】
【自分はもう満足であるから、誰かのために――その気持ちは、理由までも分からずとも、或いは伝わりやすいのかもしれない】
655 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/03/31(木) 00:15:21.26 ID:K2bkDFiN0
>>654

【多分聞いた、と相手の少女の故郷の話に対して相槌を入れる。もう既に半年以上もの前の話なのかも、と目を閉じてみる】
【少女の話に相槌を入れながら、枕草子の暗唱、自分が訊くタイミングを計る。それらも全て完遂させた頃】

そうなんだ
それでも届けられるって凄い事だと思うの。気持ちが伝わっているといいね

【抽象的な言葉に対して、こちらも曖昧な言葉で返す。今まで貰うだけの立場であった金髪の少女に取って、その行動の価値を推し量る事ができない】
【閉じた瞼の先に、自分に色々なものをくれた人々を思い起こす。そうして、彼らの苦労を追体験するかのようにゆっくりと目を開き】

でも、気をつけてね
雪の女王の欠片は、感じる心すら凍りつかせてしまうらしいの。だから、もういいやって言葉は少しだけ心配かも

わたしは、それでふうちゃんにちょっとだけ迷惑をかけてきちゃったから

【眉を下げて心配そうに相手を見つめている。詳しくは語らないが、死に纏わる話とは違った少女の翳りが垣間見える】
【それ以上は語らず、聞こうとしてもはぐらかされるだけになるだろう。そして自分の両頬をぴしゃっと叩いて気分を一新させる】

そう言えば、今から行く桜の木だけど
どれぐらいの大きさになるの?

【訊いたのも束の間、次の辻にある木が何なのか遊びで賭けてみる、なんて言い始めるのである】
【相手の答えも聞かずに少女はヤマ勘だけで梅の木と弾ませながら答えている。意図は分からないが顔はワクワクさせている】
【まるで、今から横断歩道の白線踏みを始めようとする子供みたいな】


656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/31(木) 00:20:23.25 ID:BandnMBr0
>>655
/ごめんなさい、返事を書く前なのですが、眠気がどうにもひどく……時間も過ぎてしまいましたので、凍結お願いしたいです
/あれなようでしたら置きでの続行も出来ますのでそちらのほうが良ければ言っていただけましたら……
/一応金土なら普通に遅くまでロールが出来ますので、そのあたりはそちらにお任せします……っ
657 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/03/31(木) 00:30:31.75 ID:K2bkDFiN0
>>656
/では、最初に言ったとおり凍結致しましょう
/再開のタイミングは其方に一任します
/遅くまでありがとうございました
/それでは、ゆっくりおやすみなさいませ
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/31(木) 21:14:14.58 ID:8k2zYkSh0
>>655

【故郷ではない。故郷と言えば、水の国のとある街――それなら、ここからのほうがよほど近く】
【とはいえ大人になってからはもう一回も出向いていないから、故郷と言えるほどに故郷と言う自覚も、ない】
【家の周りの小さな路地に並ぶ色とりどりのビオラの花は思い出せても、子供の目線より上にあったのだろう表札や家の景色は、思い出せないまま】
【行けば懐かしくなるのだろうかもしれない、だけど、行く気は――】

……ん、伝わると、いいなぁ。やっぱりね、難しいの。難しいね、とっても――、……だけど、やるって、決めたことだから。
出来なくなるところまで、やりたいの。出来るぎりぎりまで、やってみたいの。出来なくなっちゃったら……えっと、みんなに、頼りたい、けど、
それまではね。わたしがやるの。出来るだけわたしの力で、やってみたい。

【くしゅとした笑顔、だけれどそうだと語る瞳は不思議と強く煌めいて、彼女の――我の強いような、そんな、少し珍しい面を見せる】
【自分で決めたことは絶対に自分でやりたい。四つや五つの子供がしきりにバスの停車ボタンを押したがるような、そうして愚図るような、そんなさま】
【或いは子供らしい性質、そういう子供にはボタンを押させてやるのが一番いい。だって、そうじゃないと、覚えている限り、いつまでも拗ねているのだから】

――……分かってるの、だけど、決めたことなの。
だいじょうぶだよ、ちゃんとね、分かってるの。ときどき、羨ましくなることもあるけど――、でもね、大丈夫、なの。

【それは諦め、或いは、自己犠牲の美しさと言うひともいるのかもしれないけれど】
【憧れたものはあまりにも眩しくて手が届かない、太陽みたいなものだと知ってしまった。地を這う蛇である自分がそこに憧れてしまったのが、最初の罪深さ】
【引く血は禁忌を食べさせた蛇のものだが、在り様は禁忌を食べてしまった女に似るようでもある。――それを知った。だから、もう、――そんな期待をしたくない】
【憧れながら、羨みながら、けれど鮮烈なまでに焦がれるような気持ちは、もう、怖かった。……だ、なんて、】

……ふうちゃん?

【そんな一瞬だけの複雑そうな表情は、すぐにきょとんとしたものに変わって。「お友達?」と首を傾げ尋ね】

えっとね――とっても大きいの。下から見上げたら、お空なんて見えなくなっちゃうくらい。

【自分のことでもないのに、少し得意げに、自慢げに、笑うのだった】

/昨夜は申し訳ないです、お返事を見る前に力尽きてまして……
/少し遅くなってしまいましたがお返しします。本日も同じリミットですが、よろしくおねがいします
659 : ◆mZU.GztUV. :2016/03/31(木) 22:29:16.64 ID:K2bkDFiN0
>>658

うん
気づいているのなら大丈夫。強いんだね

【相手の返事を聞いて少女の心配が霧散する。魔法の欠片が春風に溶かされるように微笑んでいる】
【一拍置かれた後の賛辞は、自分の弱さに直面できる事に対するものである。金髪の少女ができなかったものでもある】
【微風を楽しむように目を閉じる。手を後ろに組んで伸びをし、リラックスしてから更に続ける】

ふうちゃんは私の友達
ここにはいないけど、わたしに大切な事を教えてくれた人かな

【言いながら、ふうちゃんという人物を思い起こしていたのか、終始はにかむような表情を見せる】
【家族ではないにせよ、少女に近しい人物の事らしい。愛称を使っているところから家族レベルの距離なのかもしれない】
【そして辻にさしかかり、木を指差す。どうやら梅ではなく楓だったらしい。対して落胆する事なく、また相手の顔を見る】

空も覆い尽くしちゃうんだ

楽しみだね
桜吹雪とか見れちゃいそうかな

【想像する。根元から見上げれば地平線まで届きそうな枝の天蓋に、それらを疎らに覆う桜色の雲が立ち込める幻想空間】
【手を伸ばせば雪のようにしんしんと降りしきる春の欠片に手が届く。融解の理から外れたそれは握りしめても消える事はない】
【ふと、桜餅なんている言葉がよぎる。ゆっくりするには贅沢な風景になりそうだと、逸る気持ちが芽生えてくる】

【それと共に、金髪の少女から腹の虫が鳴るのかもしれない。妄想した対価としては可愛らしい恥になるのだろうか】

/こちらこそ気づくのに遅れてすみませんでした
/引き続き今日もよろしくお願いします
660 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/03/31(木) 22:45:55.95 ID:8k2zYkSh0
>>659

だけどね、気付くまでは、とても悲しかったの。なんで駄目なのかなって、ずっと思ってた、かな――。

【昔のことだ。そうして気付いて、そう思えるようになるまで、いろんなことが――そう、本当に、いろんなことが、】
【だけどもう悲しまないと決めた。違う、それじゃいけないと決めたのだ。だから、】

……そっか。わたしもね、そういう子、居るの、いろんなこと教えてくれて……、今も、いろんなこと、教えてもらってるの。
魔術とかも、そう。お勉強も教えてもらうの、本当にね、いろんなこと。

【「その子が居なかったら、わたし、きっとこうじゃない」】
【そう呟くほどに大切なひと。彼女にもいるらしい、静かに目を細めて、けれど、少し嬉しそうで】

あ……でも、今年は、もしかしたらまだ少し早いかも。そうしたら、桜吹雪は見られないかもしれないけど……、
だけど、それでも、とっても綺麗だよ。本当なの。本当に大きな木、天音ちゃんに聞いたら染井吉野はそんな風にならないっていうから、きっと、違う桜なんだね。

【ふと視線が逸れて考える、そうまで開いているだろうか。あの桜はきっと誰も見に来ないから、開花予想なんてないし、開花状況も分からない】
【毎年分からないながらに歩いて行って楽しんでくるのが或いは決まり事みたいになっていた、ふとこぼす名は相手にとっては聞き覚えがあるのかもしれないけど】
【「なんてお名前の子なのかなぁ」と少し嬉し気にはにかむ横顔はあどけなくて子供っぽい。ぎゅっと腕の中の花束を大事そうに抱えて】

……あ、う、ううん、そうだね、せっかくだから、何か食べ物持って来れば、良かったかな……――ごめんね、わたし、今日何も持ってない……。

【その音を聞き付ければ。はたと気付いたようになる、――当然だ、ひとりで行くつもりだったのだから、特別な準備は何もしていなくて】
【つまり相手の空腹をうずめてやるためのものを何も持っていない、……申し訳ないような顔が、ちら、と、相手を見つめた】
661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/01(金) 01:02:29.16 ID:MBLqUnWr0
>>659>>660
/申し訳ないです、時間も時間なので凍結で……今日は来るのが遅れてしまってすいませんでした。
662 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/04/01(金) 05:03:14.83 ID:r0Y6iGcy0
>>661
/こちらこそすみませんでした
/返事が遅れたのに加えて、あの後すぐに寝落ちしてしまいました……
/凍結了解です
/明日もまた、よろしくお願いします
/重ね重ねすみませんでした
663 : ◆mZU.GztUV. :2016/04/01(金) 05:37:38.70 ID:r0Y6iGcy0
>>660

だ、だだ……大丈夫
こういうのは慣れているから!

【お腹を一度押さえる。焦って言葉に詰まりながら一気に捲したてる。顔が赤いけどそれ程長くは続かない】
【また、眉を下げて微笑する。それは「まぁ、これは仕方がないな」なんて言い出しそうな顔なんだろうか。しかし黙ったまま】
【押さえていた手を離し、目を閉じる。それはいつも通り、沈静化とも黙祷ともつかない。瞼の裏に白いこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいが舞う】

お仕事とかでお昼抜きは結構あるの
だから、気にしなくて大丈夫

【目を開けて今までの慌てぶりを無かった事にするように笑いかける。そういうのに頓着しないとは言葉にしている】
【一応、言いながらも腹の虫が鳴っているが詰まらずに言い切っている。指摘しなければ大丈夫なのかもしれない】
【これ以降腹の虫が鳴ることは無いが、腹を押さえる事も、先の顔をする事は無いだろう。気になって訊いても咎められる事は無いだろう】

桜にもいっぱいあるんだね
桜吹雪にならない桜っていうのも楽しみ

【巨木と言われただけでも珍しいのに、あまり散らない桜というのも金髪の少女には想像出来ないものである。期待の目が変わる事は無い】
【先に挙げた梅の花は桜のようにはらはらと散るなんて聞いたこともないにも関わらず少女は微笑んで歩き続ける】
【顎に手を当てて、んーと間抜けな声を出して考え込む。楽しそうに考え込んだ後続けて……】

昨日は魔物が思いの外粘っちゃって
その前の前は蜂に一日中追い回されたんだ

頼んでくれた人のありがとう、って言葉に助けられるんだ

【唐突にそんな事を言い始める。脈絡は無いが、文脈から辛うじて先の仕事に関する事なのかもしれない】
【ざくざくと歩みを止めずに、それは何か逸らすように……】

/一応返しておきます
/再開のタイミングは変わらずあなたに一任致します
/よろしければまたロールお願いいたします
664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/01(金) 21:42:05.19 ID:MBLqUnWr0
>>663

……そ、そう? ごめんね、お弁当作ってこようかなぁってちょっと思ってたんだけど、すぐに帰るつもりだったから……。
ご飯はお店で食べようかなって、思ってて、――。

【申し訳なさそうに眉を下げる。ぎゅっと両手で花束を抱いたまま、ただ、そのポケットの中には飴玉の一つも、今日はない】
【普段はたびたび持ち歩いているのだけど――たまたま、切らしてしまっていて】

ううん、今年はちょっと早いだけなの。もうちょっとのんびり行けば、きっと桜吹雪だよ。あと一週間くらい……かなぁ。
そうやって考えたら、ちょっと残念かもね。……木花ちゃん、暇だったら、あとでまた遊びに行ったらいいよ。
そしたらきっと綺麗な桜吹雪なの、わたしは、ちょっと、忙しいかもしれないから――分からないけど……。

【散らない桜というのも、確かにある。首ごと落ちるような桜も確かにあるけれど、あれは、昔に行った時は、満開の花吹雪だったときもある】
【だから興味があるなら後でまた行けばいい――だなんて言うのだ。もちろん自分の所有物ではないから、それを、この少女に許可を乞う必要もない】

魔物――? 魔物と、戦うの?
蜂は……、……わたし、苦手なの、怖くて――。……みつばちなら、いいんだけど――すずめばちとかね、あの、……怖いな……。

【魔物という言葉だけではうまくイメージできなかったのだろう。きょとんとした顔のあと、露骨に嫌な顔になる】
【言葉通りに蜂が苦手なのだろう。存在が……というよりは、多分、刺されるのが怖いのだ】

……――わたしもね、みんなに、美味しいって言ってもらえたら、とっても嬉しいな。
得意なことってお料理くらいしかないから、ね、……あ。

【ありがとうと言う言葉のうれしさはよく知っていた。だから、浮かべる表情は、嬉しそうに和らいで】
【くすくす笑って視線を前に移す、と、――小さな声。それから、「ほら」と、彼女は木花に促すのだろう】
【その通りに相手が目線を動かせば。……まだ遠くはあるが、淡く桜色で太陽の眩さを照り返す、大きな木があるのが、見えるだろう】
【距離はまだ遠い――けれど】
665 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/01(金) 22:13:38.50 ID:r0Y6iGcy0
>>664

わあ……

【相手の指差した先、春の霞が薄く覆う木の影が見えた。手で日光を遮り、双眼鏡で覗くような格好でそれを見る】
【そうして見えた桜の大樹を見て、感想よりも先に感嘆の声を上げる。そのまま暫く絶句してしまうのである】
【次に相手を見て、子供のように笑いかける。宝物を見つけたかのように誇らしげにうきうきと心が弾むように】

凄い綺麗……
ねえ、早く行ってみようよ!

【手を伸ばし駆け出そうとするが、途中で止まる。興奮しすぎて、まるで自分の手柄のようにはしゃいでいた自分を恥じる】
【赤い顔のまま「えっと……」と詰まらせてしまう。伸ばし損ねた手を胸に当てて、黙ったままになる】
【一間隔押し黙り、目を瞑ってうんと頷けば、赤い顔を元に戻して相手にもう一度語りかける】

連れてきてくれてありがと

【伸ばした手はゆっくりと、おずおずする様子は無い。ごめんね、という言葉を回避するように選ぶのに時間を掛けたらしい】
【そういう行動の理由もまたここでは語られない。ただ、目の前の人とはっきりとした桜の勇姿を見たいと願う】
【静かに立つ。引かれるならば、抵抗は思った以上に無い。相手の差し伸べられる手を待っているのかもしれない】

【その手を掴むのも良い。だが、金髪の少女が失念していた「両手で抱える桜の花束」の事を指摘しても構わない】
【桜は春霞の悪戯にも悠然と構えている。ここだけ時間がゆっくりと流れている感覚を覚えるのかもしれない、そんな一幕】

/それでは今日もよろしくお願いします
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/01(金) 22:50:52.82 ID:MBLqUnWr0
>>665

【その花と会うのは一年ぶりだ。しかして輝きは変わらず、そこにそびえるように、咲いている】
【それを見ると堪らなく嬉しくなる。変わらずそこに居てくれた――去年と同じ、空の色さえも、あの日からスポイトで抜き取ったような】

……もう、あせったら転んじゃうの、桜の木は、どこにも行かないから――。

【こちらからすれば何度目もの景色。だから、多少、薄れているのかもしれない。感動みたいな、そんな気持ち】
【それでも真っ白の頬を嬉しそうに上気させて笑っているから、嬉しくはあるのだろう。或いは彼女こそ、駆けだして少しでも早く、木に向かいたい様子がある】
【だからこそわざとゆっくり行くのを推奨するのは、もしかしたら、転んだら両手の使えない自分を戒めるために言っているのかもしれない――なんて、予想でしかないけど】

ううん、わたしをここに連れて来てくれたのは、お父さんと、お母さんなの。わたしは、知ってる場所に、来ただけ――。

【手は繋げなかった。この重たい花束を片手で抱ける気はしなくて、そして、間違えても落としたくはなかったから】
【それは仕方のないことなのだろう、彼女は両親に逢うためにここに来ている。その両親のために持ってきたものを、】
【砂利だらけの地面に落してしまうなんて、きっと、許せないのだから】

【――そうして、遠くに見えた木にたどり着くには、さらに十分ほどの時間がかかるだろうか。やがて辿り着いた彼女は、自分よりもずうと大きな背丈を見上げ】
【本当に嬉しそうな――或いは安堵したように笑って、それから、そっと、静かに、ずっと抱きかかえていた桜の花束を、その根元においてやる】

…………お父さん、お母さん、今年も来たよ――。

【その瞬間、きっと、彼女は、相手のことを忘れる。ひどく優しい声で呟いて、本当に愛おしいように囁いて、そっと、手を合わせる】
【もう十何年も前に“死んでしまった”両親のことを考える。ほとんど覚えてない、けれど、たしかに、覚えている、あのひとたちのこと】

【きっと、これは、墓標なのだろう。どこに居るか分からないと言っていた。だから、きっと、本当の墓の場所を彼女は知らなくて】
【もしかしたら墓さえないのかもしれない。だから、彼女は、親子三人で見に来た、この桜を墓標に決めて、毎年、参っている】
【それが今日の真相。――数分の間、たぶん、彼女は見えやしない、けれどそこに居ると信じるひとたちとの時間を、大事にしたがるのだろう】
【だから――少しの間、木花は桜の木を見ていたほうが、多分、いい。怒りはしないだろうけれど、少しの間見つめられて、目を細められても平気なような、】
【そんな強靭な精神力があれば――別だけれど】
667 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/01(金) 23:22:51.99 ID:r0Y6iGcy0
>>666

あっ……

【花束を見る。繋げない事が分かるとそっと手を下ろし、相手の歩くに従って自分もついていく】
【桜の威容は近づく度にはっきりとなる。最初に言っていた通り「桜の天蓋」を余す所なくキョロキョロと見る】
【一見不審者にも見えかねない行動は、端々で漏れる感嘆と輝かせる目により子供のような仕草となった】

【鈴音が桜に向かい語りかける。最初木花はその行動を不思議に思っていたが、根元に置かれた花束を見て気づく】
【慰霊碑、又は墓標。そんな言葉が頭の片隅に出てくる。木花の時代にもあった「ある人々」に対する無縁仏回避手段】
【木花ではなく、木花が言ったふうちゃんでもない「親友」が、昔々木箱とタグだけで帰ってきた「親友」のお兄ちゃんにへとした行為】

【上の空が終わり、焦点が桜の天蓋へと戻ると、予感のままに目を瞑り神妙に手を合わせる。木花にはこれ以外の手段を想像する事はできない】
【目を開けてもう一度桜を見る。今度は感動よりも、鎮魂の意を込めて視界を動かさないように桜を視界の中心に収める】
【視線すら気づかない程に集中する。桜と聞いて最初に思い浮かべたもう一つの連想、飛梅伝説を思考の隅へと追い出して丹念に消す】

【多分、相手から語り掛けられない限り木花も黙ったまま桜を見続けるだろう。木花もまたこの桜色の彼岸に沈んでいる】
【過去と、そのまた過去に残した思いに呪縛されて、笑みさえも消す。真面目な顔のままただ桜を見るのであった】
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/01(金) 23:44:36.30 ID:MBLqUnWr0
>>667

……うん、ごめんね、ここね、勝手に、だけど――お父さんとお母さんのお墓だと、思ってるの。
わたしは……二人が今どこに居るのか、知らないの。だから、ここに来れば逢えるって――勝手に、思ってるの。

【だから、本当は、居ないかもしれないんだけど――】
【数分ほど黙ったり、時折木へと話しかけていた視線が、やっと相手へと戻される】
【泣いたりはしない。ただ少し安堵したような安らかさで笑って、ふらりと相手のそばへと立ち上がり、歩めば】
【そう信じているだけの話だ。根拠はない。――だけど、きっと、それで、この少女は和らいだのだから、悪いこととも言いきれず】

小さな子供の頃だったから、たまにね、会いたいなって思うの……、そしたら、いろいろなお話、出来るのにな。
……来てくれてありがとう、――きっと、この木も喜んでると思う。こんな場所に誰も来ないもの、だから、多分、喜んでる――。

【木の気持ちなんて分からない。だけど、たぶん、喜んでいる……気がする。そう、なんとなく、思うのだ】
【見れば蜜を吸っていためじろが飛び立つ、その羽ばたきで落ちた花びらが、ひらり、ひらり、と、ちょうど二人の目の前に落ちてきて】
【それが木からの返事であるようにも思えた。それは、少し、メルヘンすぎる解釈なのかもしれないけれど――】

木花はこの後、どうするの? わたしは……えっと、お仕事だから、あんまり、もう、居られないんだけど……。

【――だけど続く言葉は嫌に現実的だった。薄ぺらの携帯電話を取り出して時間を確かめる、……あんまり余裕はないらしい。眉を下げながら、】
【まだ見ていたいならそれでもいいだろう。一緒に戻るとしても、どうやら一緒にどこかへ行ったりするのは、難しいようなら】
【相手に結果はゆだねられるのだろう。どう答えても、きっと、彼女は頷くはずだ】
669 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/02(土) 00:17:24.14 ID:DuaJfgkW0
>>668

【木花は鈴音から話し掛けられる。行く前に言っていた事と今を繋げる言葉であったのだから、頭を横に振って】

こんな綺麗な場所教えてくれてありがとね
たとえ彼岸の先へ旅立っても、ここなら戻ってこられると思うよ

木もそうだけど、鈴音ちゃんの気持ちも、繋ぎとめる力になると思う。意味のない事だと思わないよ

【いつか聞いた神霊の起源の話。依り代という体と、祈る人が揃って神となる。寺社は言うに及ばず時として石にすら人の想いが宿る】
【そして、それを為すモノは神とは限らない。有名どころで言えば靖国社、さらに卑近になれば石碑。特に後者は神ではない】
【神式の祈り。木花はそれを過去の記憶から必死に手繰り寄せて形を成した。木花なりの礼儀であるのかもしれない】

 家にして 恋ひつつあらずは 汝が佩ける
 大刀になりても 斎ひてしかも

おねえちゃんだったらそう言い出しそうかも

【諳んじる一句は万葉集が一。あずま歌に数えられるそれは、父が軍役に旅立つ息子を想って歌ったものである】
【伝え聞いたように危うげに言い切る。先の記憶遡行に引かれてやってきたものをぽろっと零しただけに過ぎないものであった】

わたしは、ここで日没までゆっくりするね
こんなに暖かい景色なら、消え去った過去も追いついてきそうだから

【目を閉じて気持ち良さそうに自分の髪を撫でる。笑顔でもう一度鈴音にありがとうと告げて、目を開ける。その言葉は目を閉じては伝わらない類のもの】

お仕事頑張ってね

【過去に揺蕩う前に、現実にいる鈴音へその姿を見据えて一言口にする。目を閉じては伝わらない相手を想う気持ちを紡ぎ出そうとした】
670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/02(土) 00:40:26.09 ID:XFetjnaV0
>>669

……そう、かな。だけどこんなに大きな木なら、きっと、遠い場所からでも、見えるってね、思うの。
きっと空にだって近いよ、一番てっぺんまで登ったら、もう、雲に手が届くかも。……なんて、ね。

【そういううたは、分からない。学術的な教養は彼女にはほとんどないと言っていいだろう、だって、学校に行ったことがない】
【そうであるべき年齢にほとんど監禁に等しく虐待され、解放されればしばらく家のない子として過ごして――そんな余裕は、なかったものだから】
【だからきょとんと首をかしげる。それが何の物であるのかもわからないし、なんなら、意味でさえ、分かっていないのかもしれなくて】

そっか、……じゃあ、わたし、戻るね。ごめんね、出来れば、もうちょっと居たかったんだけど……、間に合うようなら、間に合いたいの。
わたしもおなか、すいちゃった。……今度は何か美味しいものでも食べに行こうね、今日のお詫び。……ちゃんとお菓子持ってないと、駄目だね――。

【あどけない顔を少し恥ずかしいようにする。平たくて薄いお腹をそっと押さえて、お腹空いた、と、小さく呟き】
【今度はだなんて約束を結ぼうとするのはつまりそういう意味でいいだろう、少し長い髪の毛が春風で顔にかかる、少し邪魔なように、指で退かして】

うん、……――じゃあ、また、来るね。

【木花に頷いてから、それから、木に、そう、語り掛けるだろう】
【きっとそこに居ると信じるだいすきなひとに、――、それを終えれば、少しすっきりとしたように笑って、】

今度お店に遊びに来てね。あんまりお客さんのいないときなら、おしゃべり出来ると思うから――。

【最後にそう言って。「じゃあ、」と呟き一つ。そのまま、来た街のほうへと戻っていこうとするのだろう】
【それでも特別に急ぐ様子はない、ただ、これ以上居るのは難しい、そんな時間帯なのだろう。途中でちらりと一度振り返ると、】
【「またね!」と鈴の音の声を辺りに響かせて。それを最後にして、もう、振り返らなかった】

/申し訳ないです、明日急に出かけることになってしまって……これ以上になると長くなってしまいますので、少し無理やりですが、ここで〆にしていただけますと……。
/こちらの都合ばっかりになってしまってすいません。おつかれさまでした!
671 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/02(土) 00:59:45.62 ID:DuaJfgkW0
>>670

それじゃあまたね、鈴音ちゃん

【そう言って鈴音の姿が見えなくなるまで手を振る。最初の大袈裟なそれとは異なり、小さく長く手を振り続ける】
【自分へと届いた桜の花びらを握りしめてそのまま地べたに座り込む。首にかけたタオルを枕にして横たわる】
【そうして、目を閉じる。今度は過去への旅路、目を開ける事を意識せず、夢へと深く深く沈む】

あやちゃん、ごめんね。約束破っちゃって
ふうちゃんの元に帰るの、だからもう一緒の時を生きられないの

一人で死なせようとしちゃってごめんね

でも、わたしの時は……だか……わ…………う……しょ……に……………る、の

【さらに沈む。そうして意識まで手放した先に、昔日の夢が蘇る。謝罪するように、忘れないように】
【戻る場所をこの場所ではないと再確認するように、そんな消え去った過去を再生し始めた】

/こちらもここで終了になります
/そちらのは別に自然に終わったと思いますので、気にしなくて大丈夫だと思います
/3日間ロールありがとうございました
/それでは急用に備えてご自愛ください。お疲れ様でした!
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/05(火) 22:01:15.31 ID:5qqOUQNy0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――昼の国 公園】

……さて……これが、これで……こうなん、だな…………
となると、構文は…………こんな感じ、か…………と、再検討…………

【前面を開いたままで青いコートを羽織り、魔術師である事を如実に表す青のハットを被った】
【手には指輪と、グリップの部分に赤い石をあしらわれている、金属製の棍を握り締めている】
【がっしりとした体格の、深い眼窩が鋭い視線を放っている、身長180cm前後の居丈夫が】
【公園備えつけのベンチに腰掛け、分厚い本を覗き込みながら、膝の上に広げたノートにペンを走らせている】
【こんがらがる頭を解す様に、時折唇を軽く噛み、指先が落ち着きなくピクピクと動いている】
【傍目には、集中が続いていないと言う様に映るだろう】

……あー、ダメだ、またミスってやがる!
やっぱり本式に勉強するって、きついってんだなぁ……ま、焦ったってしょうがねぇ……!

【本とノートを見比べて、居丈夫はやり切れないと言った様子で背もたれに身体を預ける】
【しばし力を抜いてダラけると、再び本に視線を落として黙読を始める――――】



【――――所変わって、雷の国 】

おいおい、ギャンブルに負けて払う金が無い、じゃ済まされないだろ!?
見せ金も確認しないで勝負した俺も俺だけどよ……はぁ、まぁしょうがない……

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【テーブル代わりにしていたのだろう木箱を挟んで、ガラの悪い服装をした少女と向かい合い、表情を苛立たせている】
【木箱の上には、散乱するトランプ――――どうやら、何らかのゲームが行われていたらしい】
【男性はため息一つを零すと、素早く腰のリボルバーを抜いて、少女へと突きつけた。少女の表情が恐怖に歪む】

落とし前だ……成功率50%のロシアンルーレットをやってもらうぞ?
リボルバーを何回回すか、指定しな? その後で、俺がお前に引き金を引く……お前が勝ったら、有り金全部で勘弁してやろう……
負けたら、ま……泣くんだな。ほら……30秒以内に腹くくりな。じゃなきゃ今すぐ撃つぞ?

【一度弾倉を開き、手早く中身を確認すると、男性は真っすぐに少女を見据える】
【震える少女が指定の言葉を口にするのを待ちながら、男性は胸中で時間を数え始めていた――――】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】

/持ち越し濃厚ですが、それでよろしければ。23時まで募集します
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/05(火) 22:03:26.51 ID:5qqOUQNy0
/>>672ミス
/【――――所変わって、雷の国 】→【――――所変わって、雷の国 路地裏】
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/09(土) 21:07:56.78 ID:60vVnIxK0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――水の国 商店街】

……参った、なぁ…………少し、休んで行こうって、ね……

【明るいピンク色の長髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、前髪をやや膨らませる様にセットしている】
【紫色に着色されたカジュアルジャケットと、レギンスとハーフパンツを組み合わせて着用している】
【目元にレンズ、両耳に円形のボディ、後頭部に装着用の調節器が一体化した、機械的なバイザーをつけている、身長160cm前後の女性が】
【とあるテンポの前の備えつけベンチに腰を落ち着け、ぼうっと端末を覗き込んでいる】
【――――微かに緩んだ口元に、ややペースの速い呼吸、そして背もたれに身体を預ける気だるげな雰囲気】
【どこか、風邪が流行っている時期の内科にいる、待合室の患者の様な様子である】

……明日の予定は、とりあえず無い、かぁ…………ゆっくりと、身体を休めておいた方が、良いのかな……
あんまり長引かなきゃ、良いんだけど、ね……

【時刻を確認すると、空を仰いでほぅっとため息を零す】
【バイザーに隠れた瞳は、恐らく星の数でも数えようとしているのだろう――――】



【――――所変わって、雷の国 歓楽街】

……やってしまった、交通費まで掛けてしまったら、意味が無いってのに……!
全く、熱くなって引き際失ったら、そりゃ負けるに決まってるんだ……!

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【ふてくされた様子で、足早に裏路地から表通りへと現われ、そのままの歩調で歩き続けている】
【時折声を掛けてくる客引きも、完全に無視する様子で、男性は歩き続ける】

歩きで……大体1時間か? 全く……ちょっとした寄り道も無しでそれってのは……何やってるんだかな、俺は……

【ちらちらと、視線は左右の店へと泳ぎ、その度に自嘲気味に首を振りながら歩を進める事に専念する】
【徐々にその背中に、哀愁の様な物が混じり始めていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】

/23時まで待ちますー
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/13(水) 18:21:51.44 ID:7oHWBRhP0
【街の中央にある国立図書館】
【太陽はまだ空高い時刻、平日なのもあってか、人影は休日に比べ疎らながらも、それなりに多く】
【学生なんかはほとんど居ないような時間だからか、少しだけ目立っている人影があった。まだあどけなさを残す、一人の少女】

……くぅ、ふ、

【くしゅと癖のあるくすんだ金の髪、毛先に向かうにしたがってピンク色を帯びるグラデーションの髪は肩に触れる程度の長さで】
【ひどく不健康めいて白い肌に嫌に鋭さを孕んだ勿忘草色の瞳、或いは何か常に不満げにも見える瞳はただ、少しだけ疲れたような色を浮かべ】
【生成りの布地を幾重も重ねたロング丈のワンピース、肌と言えば顔と指先くらいしか見えないのだけど、華奢なのはよく分かる、そんな彼女の手元には、】
【いっそ凶器にさえなりそうな本が開かれていて。大分長いこと読んでいるような様子はあるのだが、まだ半分ほども捲られていない――ようで】

【長い間座っていたせいで固まった肩まわりを曖昧に解す、欠伸を噛み殺して遠くにある時計をちらと睥睨すれば、】
【ふうと小さなため息ひとつ、伸ばしていた腕をそっとおろして――ふと、自らの手の甲に視線を落とすなり】

――日焼けしたかしらん。そろそろ引き籠る準備をしないと駄目な時期かしら……。

【呟くのだけど、表すのにFが五つくらい必要そうな肌色はとうてい日焼けしたようには見えず、むしろ白すぎるくらいの様相、けれど彼女は気にすることもなく】
【もう一度開いたままの本に視線を落とすのだけど、数十秒もしないでまた目を上げて来る。ため息まじりに放り投げていた栞を挟み込むなら、】
【本を閉じて室内に目を向ける、――相当の目つきは悪く、なんならいっそあたり構わず喧嘩を売っているくらいにも見えかねないほどの視線で、辺りを緩く見渡して――】

【――何かに興味でも抱けば、特に数秒注視されることになるだろう。睨み付けるような目線、ただ、悪意こそないのだけど】
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/17(日) 14:50:55.28 ID:MYtqv67s0
【街中――公園】
【きゃあきゃあとした子供達の声がはしゃいでいた、大きな噴水のある公園には、たくさんの子供達と、その親と】
【とにかくたくさんのヒトたちが溢れていて――ぶらりと鉄棒にぶら下がって揺れる女の子も、また、その1人で】

コウモリさんなのー!

【支柱をよじ登るようにして、それから鉄棒部分に移動して、最後に足を引っかけて、体をぶらんと投げだす。たっぷりと数分かけたその動作、】
【やがて声高らかに1人で宣言するが、多分誰も聞いていない現状。それでも彼女は満足げにあどけなさしかないような顔をたっぷりと笑わせていて】
【調子に乗ったように前後に体を揺らす、きゃっきゃと楽し気な笑い声を漏らして、――だけれど、そこには子供特有の思考の足りなさというか、】
【――あまりに体を揺らして遊び過ぎたのだろう。ひっかけていた足がふと緩んだ、その次の瞬間には、すでに彼女の華奢な体はずべしと地面に落ちていて】

【くしゃっとした猫毛の髪は明るいクリーム色、頭の高いところで二つに結ったツインテール、フリルをたくさんあしらったヘッドドレスには垂れたウサミミめいた飾り】
【丸く大きな垂れ目の瞳、色味と言えば鮮やかな真夏の青空のようにぱきっとした青で、右目の下には子供らしさに違和感のように目立つ、紫色の蝶の刺青】
【フリルをたくさんあしらったゴスロリ風の恰好、黒白基調のワンピースにつま先の丸いおでこ靴。ぶら下げているポシェットが、ただ、子供らしく】
【年頃はまだ五つか六つ程度だろうか。地面に落とした大福もちみたいに伸びきっていた彼女は、しばらくぷしゅうと魂が抜けたようにしていたのだけれど】

う、うー……失敗したわっ、うっかりしてたの! 

【そのうちにむくりと地面と貼りついたような体を剥がして起き上がる、案外元気そうに汚れた服や頬っぺたの土汚れを落としながら、】

もっとね、高い鉄棒だったらね、きっとね、ネコさんみたいにくるんって着地できるんだわ!

【ポジティブバカ――みたいなセリフを吐き出し、今度はもっと高い、大人でも高いような鉄棒を目指して歩き出す、その瞳に一切の疑いもなく】
【もし誰かが聞いていれば突っ込みどころしかないようなものだった。というより、多分、着地がしたくてぶら下がっていたわけではないはずなのに】
【きっともうそんなこと覚えていなくって。――そして、落下した時に衝撃でポシェットから、こぼれたのだろう。瓶を模した入れ物に入った、ラムネ菓子には、気付かないまま】
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2016/04/18(月) 14:02:58.04 ID:iDF6lrbYo
age
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/18(月) 21:19:36.69 ID:r4LRLO0A0
>>676
/日付変わるころまで再掲で……よろしかったらお願いします
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/23(土) 22:17:31.34 ID:A0L4+y0P0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――昼の国 公園】

――――せあッ、おおおぉぉぉ……ッ!!

【前面を開いたままで青いコートを羽織り、魔術師である事を如実に表す青のハットを被った】
【手には指輪と、グリップの部分に赤い石をあしらわれている、金属製の棍を握り締めている】
【がっしりとした体格の、深い眼窩が鋭い視線を放っている、身長180cm前後の居丈夫が】
【陽が落ちる事のないその場所で、満身に陽光を浴びながら、豪快に棍を振り回している】
【空を薙ぎ払い、勢いを殺さずに流れる様な鮮やかさで、棍はブンブンと振り回される】
【その動きは、もしその場に人間がいれば、一振り毎に薙ぎ倒されていくだろうと、容易に察せられる物だった】

っっ、はぁぁ……ふぅ
……メリハリな、メリハリ。ちょっと一休みするか……頭も解れるだろうよ…………

【動作を終え、構えを解くと、居丈夫はつかつかとそばの立ち木の根元に腰を下ろす】
【置いてあった魔術書らしき本を胸にかき抱くと、眠る様に瞑目し、やがて本当に寝息を立て始めた――――】



【――――所変わって、風の国 廃工場】

――――大丈夫ですか?
{まぁ、ね……しかし、あんたも容赦ないわねぇ……ま、おかげで密輸物資、ちゃんと見つけられんだけどさ}

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のまるで死人の様な冷たいオッドアイを持ち、体表に紋様の様な、仄かな光を放つ金色のラインが走っている】
【白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女と】

【灰色のフード付きパーカーに、さっぱりした色合いのチェック柄の入ったスカートを履いた】
【額に、正三角形の形に、赤・青・緑の点が浮かび、それらを繋ぐ様にぼんやりと光の円環が浮かび上がっている】
【少し癖のあるオレンジ色のショートカットと、青色の瞳が印象的な、身長140cm前後の少女が】

【10体ほどの死体に囲まれて、弾んだ息を整えながら、立ち尽くしている】
【たった今死んだばかりの死体である事が明確な、新鮮な血をぶちまけてくず折れる姿。眉を潜めるパーカーの少女とは対照的に、コートの少女は冷徹な表情で】
【パーカーの少女は更に、その手に皮張りのバッグを2つ、重そうにぶら提げていた】
【そのコートの少女の身からは、尋常ならざる量の魔力が感じ取れるかもしれない】

{まぁ、頼まれた仕事はちゃんと済ませたんだし、さっさと公安に知らせて、この荷物も回収してもらいましょ?
 こいつらみたいな生半な連中なら無いとは思うけど、応援が来ないとも限らないんだし、さっさと抑えてしまうべきだわ……}
――――そうですね。今、敵を制圧したと連絡します――――

【返り血を気にするのか、パーカーの少女はどうも落ちつかなげに身体のあちこちに視線を飛ばしながら、そう提案する】
【それを受けて通信端末を操作し始めるコートの少女は――――まるでロボットか何かの様な、端的かつ冷徹な言動を見せていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
680 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 :2016/04/23(土) 23:53:43.03 ID:ByBA0CpU0
>>679
【眠る男の姿から少し目をやった先から、一人の少女が歩いてくる。その足取りはまるで病人のようにおぼついておらず、今にも倒れそうだった。】
【白の髪をボブカットにした、高校生くらいの少女だ。頭にはヘッドホンとマイクが一体化したいわゆるヘッドセットを装着しているだけで帽子のたぐいを身に付けていないことを考えると、彼女は熱中症に陥っているのかもしれない。】
【ぶつぶつと何かを呟きながら、ふらふらになりながら歩き続けていた彼女はついに】

……暑い……死ぬ……

【と口にしながらつんのめり、そのまま地面へどさりと倒れた。周囲には男以外の人気は無く、うつ伏せの少女は本当に死んだようにその動きを止めていた。】
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/24(日) 00:14:25.34 ID:LbHQzFXk0
>>680

【――――むー、すー――――と、深くゆっくりとした呼吸で、居丈夫は眠り続ける】
【すっかり寝入ってしまっている様で、陽気に当てられて非常に気持ちよさそうな昼寝と言った風情を見せていた】

【――――そばに、少女が倒れ伏す音が響くその時まで】

んっ……んぁ、んん……?

【寝入っていたとはいえ、さほど時間はたっていない。その眠りも深かったのだろう】
【物音に目覚めた様子の居丈夫は、パチパチと目を瞬かせながら、何事かとムクリと起き上がった】

ん――――あぁ?
なんだってんだ一体……!?

【そうして見回すまでもなく、すぐそばに見つける、倒れ伏した人影】
【流石に慌てた様子で、居丈夫はそのそばへと掛け寄る。手には分厚い本と棍を携えて】

おい……おい、大丈夫か?

【とりあえず、少女を横向きに身体をずらさせ、肩を叩いて応答を待つ】
【どうしてこんな様子になっているのか分からない限り、無難な方法に留めておかなければならないからだ】
【もしも頭に傷でも負っているのならば、安静にしなければならない。ましてや身体を揺さぶるのは以ての外だ――――と】
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/24(日) 00:15:36.02 ID:LbHQzFXk0
/>>681修正
/【寝入っていたとはいえ、さほど時間はたっていない。その眠りも深かったのだろう】
/↓
/【寝入っていたとはいえ、さほど時間はたっていない。その眠りも浅かったのだろう】
683 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/24(日) 00:33:19.04 ID:6/BK7/C80
>>681

【死人のように青ざめた顔色をした少女は男がしばらく様子をみているうちに気が付いたようで、その瞳をぱちぱちとまたたかせた。】
【うつろな目線が男の顔のあたりをとらえる。光を背にシルエットで浮かび上がる男の姿はその魔術師風の帽子のせいで少女にやや違和感を覚えさせたが、どうこう考えていられる余裕など無いようだった。】

み…――ガガ・・・ピー…――みず…

【まるで砂漠に倒れた旅人のような台詞を少女は口にする。この場が単なる市内の公園に過ぎないことを思うといささかその言葉は滑稽に聞こえる。】
【ただ事態はそんな悠長ことを考えている場合では無く、やはりこの日差しにあてられてか少女は軽い脱水症状を起こしているようである。必要な水分さえ与えられれば少女はじきに元気になるだろう。】
【一点、奇妙なことと言えば彼女の発した音声に機械音が混じっていたこと。このヘッドセットのマイクは拡声器も兼ねているのか、だとすれば謎の少女の素性はさらに怪しげなものとなるが…】
684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/24(日) 00:51:17.40 ID:LbHQzFXk0
>>683

おい大丈夫か、俺の声が聞こえてるかよ……?

【どうにか気がついたようだが、居丈夫はまだ安心しない。頭が働いていなければ、やはり同じ事なのだ】
【まずはこの少女の反応を待つ。少しずつ確認をしていこう――――と、そんな事を考えていたのだが】

ぁ……水ぅ!?
……なんだ、乾いてるのか? ……っ、しょうがねぇな……ちょっと待ってろよ!

【あっさりと、倒れた原因らしい事を少女は口走る。その内容は何とも予想外な物だったが】
【となれば、対応は水分摂取と、身体の冷却である。居丈夫は半分呆れながらも、倒れた少女をそのままにもしてはおけないと、公園内に設置されていたはずの自販機へと駆けだして行く】

(……あの電子音ノイズ……なんだってんだ……?)

【感じ取った疑問は、ひとまず心の隅へと追いやって】

よし……あった、アイソトニックウォーター…………――――ほれ、大丈夫か、ゆっくりと飲めよ……?

【程なく、居丈夫はペットボトルのスポーツドリンク、そして缶の適当なドリンクを2つ携えて戻ってきた】
【まずは、ペットボトルを開くと、少しずつ少女の口へと流し込む。誤飲を避ける為に、慎重に口に水を含ませて】
【――――同時に、2つの缶飲料は、少女の両腋へと挟みこませる。熱中症用の対応で、いささか大袈裟かもしれないが、これは念のためだ】
【太い血管の走っている箇所から身体を冷やさせ、熱のダメージを軽減させる――――陽気の為に倒れたらしい少女にも、一定の効果はあるだろうと】

……ちょっと試してみるか……
――――Mimi mapenzi bunduki inatarajia . Yeye ni uponyaji kupata kwamba
(私は望む。目の前の女が癒える事を)

【ここまでして、居丈夫はふと思いついた様に、少女に向かって左手を翳すと、何事かの良く分からない言葉を口にする】
【瞬間、居丈夫の左手から、雪の様な細かく仄かな光が少女へと降り注ぐ。――――水分摂取などの効果が、多少早く表われるだろう】

……こんなもんだな

【居丈夫は、ようやく一息つく。これである程度の応急処置としては十分だと判断したのだろう】
685 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 01:05:29.81 ID:G2TQE2US0
【風の国 郊外】

【ちょっとした町外れ】
【1mくらいの大きな岩が行くも並んでいる】

「じゃ〜〜〜〜〜んぷっ!」

【勢いよく岩場から飛び立った女の子,】
【ヒヨコの着ぐるみから顔だけ出した小柄な女の子は】
【飛べるはずもなく顔から地面に衝突する】

「うぐぐ……もう一回」

【涙目になりながら,もう一度岩場に登っていく】

【この子はもう2時間以上もこんなことを繰り返している】
686 :ラファイエット ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/24(日) 01:33:55.89 ID:6/BK7/C80
>>684

【男の適切な処置の甲斐あって、10分ほど経ったのちに少女は完全回復に至った。男が初めよりかかっていた木陰のあたりに二人は移動し、ようやくまともな思考能力を取り戻した少女はようやくまともに利くようになった口で男に礼を述べる。】

・・・先程は本当にありがとうございました。あのまま行倒れていたらどうなっていたか…

【白いスカートから露出した膝を地面につけ、深々と男へと頭を下げる。額こそ付けなかったものの突然土下座を始めるあたり、この少女どこかズレている。】
【両足を地面につけたまま彼女は顔を上げて続けた。】

・・・私はラファイエット・メイジャー。水の国で自警団を勤めている者です。

【改めて男が少女の服装に目をやれば、どこかの学校の制服のように見えるだろう。見る者が見れば、その白を基調として青のラインの入った上着とスカートは水の国のある自警団支部の制服であるとわかるものだ。】
【もっともここは遠く異国の果ての昼の国、さらに旅人然とした男の出身地など想像も付かず、そのローカルな情報を男が知っている可能性は極めて低かったが。】
【少女はすっかり落ち着いた様子で男へ事情の説明を続けようとした。しかしその最中ヘッドセットから先と同様の異音が起こり、彼女は顔をしかめた。】

ここ昼の国には仕事で――ガガ――来ていたんですけど――ピー――徹夜明けで疲労が――ガガガガガ――ジジジ――ガガッガガッ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと待っていただけますか?

【そう言って頭からヘッドセットを取り外すと、彼女は上着のポケットから針金のような金属線を取り出した。ヘッドセット内の溝にそれを挿しこんだかと思うと、ぱかりと頭にかけるアーチ部分が割れ中から電気系統のコード類が覗く。】
【複雑そうに見えるその金属線の群れの中を慣れた手つきで針金を操り、ものの数分で修理は終わったらしく元通りに彼女は頭へヘッドセットを付けなおした。】

はい直りました。これでもう大丈ガガッ夫です。

【駄目なのかよ。】
687 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/24(日) 01:49:55.67 ID:LbHQzFXk0
>>686

……なんとかなったみてぇだな……

【木陰へと移動し、居丈夫は一息つく。ちょっとした休憩のつもりが妙な事になってしまったが、とりあえず大事には至らずに済んだ】
【何気なく、少女の腋の下を冷やさせていた缶飲料を1つ飲んで、居丈夫も人心地がついたようで】

お、おいおい……そんな大袈裟な

【大仰に頭を下げられると、居丈夫も苦笑しながらそれを押しとどめる】
【単に行き合わせた所で、ちょっとした介添えをしただけと言うつもりなのだ。こうも丁寧な礼を述べられる立場には無いはずで】
【妙な娘だな、と、居丈夫は苦笑しながら頭を掻く】

……へぇ、水の国の自警団、ねぇ…………
俺はレグルス。レグルス=バーナルド。まぁ、何と言うか……流れの魔術師見習いだ

【少女――――ラファイエットの名乗りに、どこか意外そうに頷きながら、居丈夫――――レグルスも名乗り返す】
【先ほど、妙な術を使ったのも、その格好通りの魔術によるものらしい】
【――――見た目通りと言うのならば、その屈強な体格は、魔術師と言うイメージから離れた物かもしれないが】
【ともあれ、ラファイエットの続く言葉に、レグルスも耳を傾けて――――】

……そのガリっつぅかノイズっつぅか…………一体どうしたんだよ?

【――――耳を傾けようとして、レグルスはついつい、その疑問に突っ込まざるを得なかった】
【恐らくは、自警団としての装備か何かなのだろうが――――どうも調子が良いとは言いにくそうで】

……しかし、水の国の自警団が、昼の国に仕事ってのは……なんか繋がらねぇな――――どういう出張なんだ?

【ある種の『ツッコミ』の様な、瑣末な疑問はさておき、むしろレグルスにはそっちの方が気になった】
【水の国と昼の国とで、こうした人の行き来と言うのは、理由が分かりづらい。何らかの犯罪者が、水の国から昼の国へと逃げ込んだりしたのだろうか?】
【先ほどから色々と、考えさせられる事が多かった為か、レグルスはふとそこにも疑問を持ったらしい】

/すみません、そろそろ限界です……置きスレへの移行、お願いできますか?
688 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/24(日) 01:54:50.94 ID:6/BK7/C80
>>687
/私としてはできる限り本スレの方でロールを続けたいのですが次回本スレでロールできるのはいつ頃になるでしょうか?
/中々都合がつかないということであれば提案通り置きへ移行したいと思います
689 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/24(日) 02:06:44.08 ID:LbHQzFXk0
>>688
/実を言うと、今の見通しでは早くて火曜日になってしまうのです……
/なので、そこまでお待たせするのもどうか、と思いまして
690 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/24(日) 02:08:40.43 ID:6/BK7/C80
>>689
/了解です、では置きで続行という形でお願いします
/ひとまずお疲れ様でした!
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/04/24(日) 02:10:32.04 ID:LbHQzFXk0
>>690
/はい、ではお疲れ様ですー!
692 :ラファイエット&??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/24(日) 03:46:29.34 ID:6/BK7/C80
>>687
【得意げな様子で身に付ける機器の修理に当たっていた彼女は、それが失敗したことについて男―レグルス―から特に何のフォローも揶揄(やゆ)も無かったことが逆に恥ずかしかったらしく、薄暗い木陰の中ではわかり辛いもののやや赤面しながらもう一度ヘッドセットの修理に当たった。】
【今度こそ滞りなく修理は完了したようである。拡声機能付きヘッドセットを元通り装着して彼女はレグルスの疑問に答える。】

・・・ただの故障です。気にする必要はありません。
今日…いや一昨日ですね。この国に入ったのはまあ捜査というか何というか…拉致されてきたというか…
・・・ともかく、上官に連れられて先日この国に入りました。上官が言うには「気になることがあるから」とかで。
実際に言い渡された業務は・・・

【と、そこまで言ったところで彼女の言葉が止まる。ここから先は捜査内容に抵触する話だ。目の前の魔術師は情報を提供するに相応しい人物だろうか、そんな目つきを彼女はこともあろうか恩人へと向けた。】
【通常、見ず知らずの人間を手際よく、いやそれ以上の魔術的な処置さえ施して介抱してくれた相手を信用できない人物と判断する者はいない。だが彼女はそんな通常に含まれる人物では無かったから。】

・・・業務内容を民間人に安易に漏えいすることは法的に禁じられていますので、これ以上はお答えできません。
申し訳ありませんが、私はこれで失礼します。本当に今日は有難うございました…

【彼女の職務は情報管理職。自警団の本部に戻り、彼女が独自開発したプログラムを利用して、「世界中のデータベース内で『レグルス・バーナルド』を洗ってから初めて」彼女は男を信頼するつもりでいた。】
【疑り深いどころでは無い。性根がねじ曲がっていると言って良いほどに彼女は「情報」「データ」「確証」「裏付け」を信仰していた。】
【仕事について突っ込んだ質問をされた時点で彼女はレグルスに疑念を抱いた。先程までの丁重な礼もそこそこに、言葉だけの感情の残らない愛想を残して彼女は木陰から去ろうとする。】
【その時であった。人気の無い公園の一角から、小型の四角い拡声器を手にして腹から血を流した男が現れた。】

え〜〜間もなく〜〜ラファイエット〜ラファイエット駅で〜〜ございます。
御降りのお客様は御足元に〜〜ご注意下さい、ラファイエット駅〜〜間もなく到着で〜〜ございます。

【鉄道の車掌の恰好をした若い男である。手には血濡れの拡声器、目深に被った車掌の帽子の中央には逆五芒星のシンボル。カノッサ機関の先兵が其処に居た。】
【異様な言動であるがこの男、確かにラファイエットの名を呼んだ。ならば車掌の男の腹部の傷――銃創――は彼女が負わせたものか。】

え〜〜我らが主(あるじ)〜〜カノッサ機関の上位ナンバーズ様の周りを嗅ぎまわるお客様は〜〜なんぴとたりとも始末させていただきますのでご注意〜〜ください。

【言葉と共に男の体から邪悪なオーラが溢れ出る。この「車掌の男」、能力者だ。異能を持つ者ならば共通して感じる感覚、それはきっとレグルスも。】
693 :ラファイエット&ウィード ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/24(日) 03:48:37.47 ID:6/BK7/C80
>>687
え〜〜車掌はわたくし、ウィードでございます。この電車はウィード駅発、ラファイエット駅行で〜〜ございます。

【異様な掛け声ののち、男の腹部の銃創から拳銃の弾丸が飛び出した!拳銃から発射されたのと変わらないスピードで弾丸は一直線にラファイエットの元へと向かう!】
【彼女は病み上がりの体で何とか横方向へ回避を試みる。しかしその彼女の動きを追跡するかのように、弾丸は軌道を変え曲線を描いて彼女を襲う!】
【「車掌の男」ウィードの能力『鉄道少年の憩(スーパーベルズ)』は駅と電車の関係を模した能力である。この能力の射程距離の中では、ウィードを含めあらゆる人間は「駅」となり、あらゆる物体が「電車」となる。】
【ウィードから発射された何らかの物体(弾丸など)をその身に喰らった者は「駅」として認識され、両者の間には「線路」ができる。その線路にウィードは「電車」(何らかの物体)を走らせ、ホーミング攻撃を放つことが可能となるのだ。】
【これはウィードに対し遠距離攻撃を先に仕掛けた者も同様となる。ウィードへ放った攻撃は「電車」として認識され、両者の間には「線路」ができ、その「線路」を利用してウィードは攻撃を相手へ跳ね返すことができる(電車は駅に到着しなければならないため、仮に炎の攻撃を相手に返す場合、一度ウィードに停車、つまりダメージを喰らう必要がある)。】
【要約すれば『鉄道少年の憩(スーパーベルズ)』はウィードに攻撃を当てた者、あるいはウィードの攻撃を喰らった者へあらゆる物体を追尾弾として射出する能力だ。】

電車到着します、ご注意下さい。電車到着で〜〜ございま〜〜〜〜す。

【その能力によって射出された弾丸が彼女の面前へと迫る。満足に動くことができないのか、彼女がとることのできる防御手段は無い――】
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 16:54:37.84 ID:G2TQE2US0
【風の国 郊外】

【ちょっとした町外れ】
【1mくらいの大きな岩が行くも並んでいる】

「じゃ〜〜〜〜〜んぷっ!」

【勢いよく岩場から飛び立った女の子,】
【ヒヨコの着ぐるみから顔だけ出した小柄な女の子は】
【飛べるはずもなく顔から地面に衝突する】

「うぐぐ……もう一回」

【涙目になりながら,もう一度岩場に登っていく】

【この子はもう3時間以上もこんなことを繰り返している】
695 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 20:57:02.48 ID:xFK7ErZO0
>>694

ん、むー……

【疲れを感じて伸びをする。目的地までは少し遠い道の途上。やや強い風で長いツーサイドアップの金髪が踊る。目に入っては危ない】
【頭を両手で押さえると身長の低さが際立つ。袖余りの外套やインナー、袴のように長くなってしまったキュロットスカートからは幼さまで醸し出されている始末である】
【『ひゃ〜』と小さい悲鳴を上げながら逃げるように風下の岩へ。背負う長鞄を下ろして地べたに座ろうとする】

えっと、ちょっとだけ休んだら……

【何か人並みに重い物が落下した音が聞こえる。旅路をサボろうとした少女は突然の音に驚いて鞄を背負い直す】
【怖いとは思う。恐る恐る音のする方向へ歩み寄る。その先に黄色い何かが落ちていた。そして何かからの声で少女は一瞬ビクリと怯える】

だ……大丈夫ですか?

【少女の声はすっかり空回りしてしまい、上手く出てきてない為非常に聞き取りにくい】
【黄色い何かが岩肌を登り始めようとしている。少女はその様子を呆然と見ているだけであったが……】

【多分そのまま登り始めたならば、少女は冷静に戻った思考力で黄色い何かの正体に気づいて『ひ……ひよこさん?』と呟くだろう】
【登りきるまで気づかなくとも、岩から見下ろせば少女の姿が見えるかもしれない。今の所少女はその場を離れる事は無いようだ】

/今いらっしゃいましたら……
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 21:12:00.03 ID:G2TQE2US0
>>695

「うぅーーなぜ飛べないんだろ〜〜〜〜っ」

【少女のことなど気がつかず,頂上にまで上りつめ】

「やっぱ,飛び方を変えた方が良いのかなぁ」

【そんなことを悩みながら】

「でも!考える前にやっぱ練習だよねっ!練習!」
「いっきま〜〜〜〜〜すっ!」

【あたりをよく見ずに飛び跳ね】

【そして】

「えっ?!?!?!?!あああぁああっ!?!?!だれかいるうぅぅぅううぅぅ!!!!」

【運悪く少女に向かって落下,それはもう綺麗な自由落下をしていくだろう】
【幸いそんなに速度はないのですぐ避けられるかもしれない】
【そもそも,ぶつからずにちょっと横にそれるのかもしれない】
【もしも当たっても,普通ならそこまで大惨事にならなさそうなことだけは確かだ】

//いまっ!!す!よろしくお願いします!!
697 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 21:26:47.61 ID:xFK7ErZO0
>>696

ふぇっ!?

【一瞬だけ驚く。大きなひよこがこちらに向かって自由落下を始める。目を丸くしてその姿を捉え続ける】
【その刹那、ひよこの落着地が少しズレている事に気づき、その反対方向へ半歩身体をズラして避けようとする】

【それが災いするのかもしれない。具体的に言えば避け切った場合、ひよこと地面の正面衝突を招いてしまう事】
【助けようとした少女が、さらなる傷を招くとは何たる皮肉か。避けた後少女は後悔と混乱で慌てふためくかもしれない】

【逆にひよこと正面衝突する可能性も0とは言い切れない。その場合は少女は押し倒される状態となる。鞄で緩衝材にする用意もある為頭への強打も免れるかもしれない】

/それではよろしくお願いしますー
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 21:32:38.62 ID:G2TQE2US0
>>697

「あぁぁっぁっぁあ!!?!?!?!ごめんなさいいぃぃぃっいいぃ」

【大声で謝りながら,ひよこは少女に向かって落下し続け】

【ずしゃーんっ】
【とてもいい音を立てて,少女のちょうど目の前に顔から地面に衝突した】

「うぅ……また失敗したぁああっ」

【顔を地面に密着させたままひよこは悔しがっている】
699 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 21:40:59.62 ID:xFK7ErZO0
>>698

【目の前に落ちた。それも豪快に。
少女は目の前に爆竹が破裂したように驚いて後ろに跳ぶ】

ご、ごめんなさ……

【だが、ひよこ少女は先と同じ事を呟く。ひよこ少女は落下の衝撃を気にしてないように、同じトーンで】
【それを聞いて驚きが引っ込んでしまう。代わりに頭の中が真っ白になる。『え、あ……』と要領を得ず、何をしていいのか分からず】
【故に、単純な事を聞いてみる事にした。それを答えるか否かは特に問題にはならないだろう】

えと、何をしているの?

【落下したひよこ少女に向かって、少し間を置いて自信なさそうに声を掛けた】
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 21:48:04.42 ID:G2TQE2US0
>>699

「ん……っ!あっ,えっ,えっと,こんにちゔゃ?!」

【突然少女に声をかけられて,かなりテンパったらしい】
【びっくりしたように顔をあげて喋ろうとした途端,舌を噛んでしまった】

「いたたぁ……」

【地面への落下より,舌を噛んだことの方が痛いらしい】
【すごく涙目になりつつ,痛みで自分を落ち着かせてから】

「えっと,わたしは空を飛ぶ練習をしてたんだよっ」
「急に落ちてきちゃってごめんねっ!」

【首をブンブン振って笑顔になってからそう答えた】
701 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 21:59:57.17 ID:xFK7ErZO0
>>700

あ……うん!

【挨拶をすっかり忘れていた事に気づいて、ハッとする少女。それで少女なりの冷静さを取り戻す】

こんにちは

【腰を曲げてお辞儀をする。そしてひよこ少女の顔を見始める】
【そして「空を飛ぶ」という目的を聞く。聞いたのはいいが、それだけでは少々何かが足りなさそうに『うーん』と唸る】

どうして、飛ぼうとしているの?
えと、それと怪我は大丈夫?

【次は目的を聞こうとする。方法は二の次に思いつくままに訊き始める。長鞄から消毒液を探そうと後ろに手を伸ばそうとしている】
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 22:06:56.80 ID:G2TQE2US0
>>701

「こちらこそこーんにちはっ!」

【挨拶をされ,自分が先ほどちゃんとあいさつできなかったことを思い出して,もう一回挨拶をする】

「ふっふっふ〜それはねー」

【ズバッと立ち上がり,腰に手を当て】

「空を飛べると楽しそうだからなのだっ!ふふんっ!」

【すごくいいドヤ顔をしている】
【本気でそれ以外の理由がなさそうというくらい清々しい】

「えっ,怪我?あぁ,こんなの大丈夫!自然乾燥で治るよ!」
「心配してくれてありがと!きみ,すっごい優しいんだねっ!」

【実際,顔から落ちたにも関わらず傷は軽い擦り傷くらいしかない】
703 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 22:19:16.49 ID:xFK7ErZO0
>>702

楽しい……

【少女は思い浮かべる。渡り鳥、蒲公英の綿毛、幽霊、魔女の箒。重力の鎖から外れた世界の光景】
【ぼーっとしながら、徐々に楽しそうに微笑み始める】

うん、確かに楽しそうかも!

【消毒液を探す手が思わず止まってしまうぐらいの夢想が広がる。というのも、手の中に消毒液の無機質な感触を捉えた後でもある】
【その余裕のまま、ひよこ少女から話しかけられる。それに対して少し恥ずかしそうに俯いてしまう】

え、えと
傷が化膿したら大変だからね……

【知識でケムに巻く。漸く取り出したそれは沃度丁幾。しみる傷薬として有名なアレが握られている】

これしかなかったけど、よかったら……

【再度自信なさそうに訊く。痛い傷薬を押し付けるほどの豪胆を少女は持ち合わせてはいないようだ】
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 22:26:09.41 ID:G2TQE2US0
>>703

「えへへっそーでしょ,そーでしょーとも!」
「きみも一緒にやってみる?」

【ひよこはウンウン頷きながら,楽しそうな顔をしている少女を誘う】

「化膿……!確かにそれはちょっと嫌だ……」
「きみは物知りなんだねー」

【素直な表情で感心しながら】

「えっ!?いいの?遠慮なくもらっちゃうよ?」

【傷薬をくれるというので,なんの疑いもなしに】
【受け取ろうとする】
【たぶん表情から,沃度丁幾がしみて痛いなどという事実は一切知らないのだろう】
705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 22:26:53.76 ID:G2TQE2US0
>>704 (>>703)
//P.S. ちょっと30分ほど離席するので次のレス遅れるかもしれません!ごめんなさい!
706 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/04/24(日) 22:36:42.83 ID:xFK7ErZO0
>>704

えっ!?

それ、凄く痛い傷薬なんだけど……大丈夫?

【何の躊躇いも無く受け取ろうとする。少女は目の前のひよこ少女がひょっとしたら凄い人間なのかと錯覚してしまう】
【単に説明を忘れただけとは知らずに、目を見開いて驚く】

ごめんね
痛くないの丁度切らしちゃってて……

治療できる能力(ちから)があれば良いんだけど、私は持っていなくて……

【受け取るか否かも問わず、少女は申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。内省も込めた言葉はこもるように小さく、さらに小さくなっていく】
【やがて、トーンを戻して、もう一つを聞いてみる。それ如何で自分の次の行動を決めるらしい】

えと、もう一つ訊いていい
どうやって飛ぼうとしているのかな?
707 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/04/24(日) 22:37:43.24 ID:xFK7ErZO0
>>705
/了解しました
/確認する前に返信しちゃってすみませんでした……
708 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 22:57:37.82 ID:G2TQE2US0
>>706

「えっ!?これ痛い薬なの?」
「どっ……どーしよー……痛いのは嫌だなぁ……」

【さすがに痛いのは困るといった感じで悩んでいる】
【注射を嫌がる子供っぽい雰囲気を感じるだろう】

「そっ!そんなこと気にしないんでいいんだよ!」
「私は心配してくれるだけでも嬉しいのに……そんな気にしないでっ!ね?ね?」

【申し訳なさそうな顔をして慌ててフォローを入れる】
【たぶん渡されたらいままで痛いかどうかで迷っていたのが嘘のように】
【意を決して使う勢いでフォローを入れているのだ】

「えっ?どうやって?」

【不意の質問,ひよこにとっては至極当然であろうといった質問に】
【不思議そうに首を傾げながら】

「飛ぶ能力を持ってない人が飛ぶ方法なんて」
「ジャンプして,それから頑張って腕をバタバタさせる以外にあるの……?」

【疑問たっぷりの子供のような視線を向ける】

//>>707
//いえいえ!こちらこそすみません!
709 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 23:09:32.66 ID:xFK7ErZO0
>>708

そ、そうなんだ……

【ひよこ少女の返答を聞いてたじろぐ。何しろ自分が今まで見ていた光景を再解釈しないといけない状況であるからだ】
【『あれは、落ちていただけなんじゃ……』という言葉を噛み砕いて、頭を振って吹っ飛ばす。それでも振り切れぬ】

えっと……最大限薄めては、みる!

【揺らぐ決意を感じて、自分から治療行為に入る。一旦はそれで忘れようと考えた】
【果たして、その傷薬が効くかどうかは神のみぞ知る。ピンセットで摘んだ綿玉に水で薄めた傷薬を染み込ませて傷口に当てる】
【あとは絆創膏を貼って応急処置は終わる。ガーゼやテープも必要かなと思っていると】

き、傷薬あと何個必要になるかな……

【ぼそぼそと絶望的観測を口にする。聞こえないようにはしていた、どうなのかは分からない】
710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 23:18:24.98 ID:G2TQE2US0
>>709

「そーだよっ!やっぱり難しくて何度も失敗しちゃうけどね!」

【あははーと軽く笑いながら頭を掻く】

「んっ……い,痛いけど思ったより痛くない……!」

【水で薄めた効果からか痛みは我慢できる程度になっている】
【色々と手当てをしてくれる少女に対して】

「こんなにしてもらって……本当にありが……いててっ」

【お礼を言おうとしてちょっと傷口にしみたらしい】
【それからは終わるまで,じっと静かにしている】

「?」

【絶望的観測はよく聞こえていなかったようだ】
【いくら傷がいくらかあるといっても,少女の顔だ】
【たぶん使ってもそこそこの個数で終わるだろう】
711 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 23:29:01.59 ID:xFK7ErZO0
>>710

【それほど消費せずに、ちょっとの時間で処置が終了する。応急処置ではあるが、無いよりかはマシと思いながら少女は息巻く】

よし、終わりだよ

【道具を片付け始める。ビンを見て一瞬嫌な顔をしてしまう。もしもひよこ少女の手を取れば自分もこの傷薬のお世話になる】
【身に染みて、その威力を想起する。最早嫌というレベルを普通に超えていた】

そういえば「飛ぶ能力」って言ってたみたいだけど、あなたも能力者なの?

【と、思い出したようにまた訊いてみる。今度は道具を片付けながらであるため、目線が合わないままである】
【口振りからしてこの少女も能力者であるらしい。答えたり、沈黙したり、逆に聞き返してみても大丈夫だろう】
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/24(日) 23:36:38.85 ID:G2TQE2US0
>>711

「ふぅ……ありがとうございますっ!」
「えっと,それでお礼とかはどーしたらいい?」
「今持ち合わせがあんまりないんだけど……」

【治療が終了するとペコリとお辞儀をしながら少女に恐る恐る聞く】
【油田とか請求されたらどうしようかって顔をちょっとしている】

「そーだよっ!飛ぶ能力じゃないけどねっ」

【そう言うとひよこの体毛が突如黄色から虹色に変化を始めた】
【まるでお祭りので店でよく出ていたカラーひよこで作ったカラーボールみたいだ】

「こーんなかんじで触ってるものを変化させることができるんだっ!すっごいでしょー!」

【すっごい自慢げに威張っている】

「もしかして,「あなたも」ってことは君も能力者なの!?」
「どんな能力なんだろー」

【興味津々そうに少女をじーっと見つめている】
713 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/24(日) 23:50:14.55 ID:xFK7ErZO0
>>713

えと、お代は大丈夫だよ
こういうのはお互い様だからね

【微笑みながら、ひよこ少女を見る。そして聞いた答えが目の前で実演される。外観から相俟ってカラーひよこ、或いはGIF画像を見るような変化(へんげ)】
【少女はふと「蛍烏賊」「ヒョウモンダコ」を思い出す。いつかテレビで見た鮮やかな光変化を見せる生物たちである】

わたし?
じゃあ、やってみる

【両手に黒い霧が結集し、黒杖の形を取る。それを掴んで構え、ひよこ少女に当てないように右斜めに振り下ろす】

 -Invisible One

 並びに-Metal Howl

【薙ぎの余力でさらに進む。右手を離し90° 180° 270°。回した黒杖を右手で掴み直して構える】
【爆発するような金属の咆哮。小さな鉄と石がぶつかる高音を数十。その先の小さな木に針が数本刺さる】
【そして小さな木は「左斜め」に斬り裂かれた】

えと、金属生成能力かな
714 : ◆mZU.GztUV. :2016/04/24(日) 23:51:14.76 ID:xFK7ErZO0
/すみません
/ >>713ではなく>>712です
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 00:00:03.45 ID:41QJb6IM0
>>713

「あぅう……ほっ,本当にいいの?」
「あんまり高くないご,ご飯とかくらいなら……奢っても全然大丈夫なんだよ?」

【お礼を断られてそれはそれでちょっと申し訳なさそうな顔になってる】

「……っ!おぉ!?」
「すっすごい!!!えっ,すごい!かっこいいっ!」

【キラキラと目を輝かせて少女の手に持つ黒杖を見たり】
【恐る恐る木に刺さった針を見たりしている】

//>>714
//りょーかーいですっ!
716 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 00:11:42.84 ID:dMdPeG9w0
>>715

【針はひよこ少女が見ている間にボロボロと崩れ、雪塵のように何も残さず消え去る。作った金属の寿命は非常に短いらしい】

えと、あう……

【褒められて嬉しい反面、恥ずかしさで手を覆ってしまう。耳まで真っ赤になっている】
【思考が定まらない。お礼、お礼、一体どうしよう。ぶつぶつと小さな声で思考内容を漏らしてしまう】
【やがて、顔を真っ赤にしながらもひよこ少女に話しかけようと顔を上げる】

あの……本当にお礼される程の事じゃないけど
それじゃあ、ちょっとお言葉に……

【腹の虫が鳴る。音源は少女の方であった。長旅でちゃんと食事を取らなかったツケが今になって回る。違う意味で恥ずかしくなった】
717 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 00:19:49.09 ID:41QJb6IM0
>>716

「消えた……っ!」

【さっと消えたのを見て驚く】
【少女が悩んでいるのは針を見ているのでよく気がつかなかったようだ】

「うんっ!ごはんね!任せて!」
「何が食べたい?」

【お腹の音を聞いて,にっこりと笑って】

「うんっ!お腹が空いてるなら急がなきゃねっ!私もペコペコだもん!」

【ひよこの方も負けじとばかりにお腹が鳴る】
【少女とは対照的に全然恥ずかしそうではない】
718 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 00:33:39.09 ID:dMdPeG9w0
>>717

えと、おにぎり……

【精一杯安いものを選んだつもりらしい。う○い棒だと食欲が加速される恐れがある。恥ずかしさで頭がぐらぐらしながら答える】
【ひよこ少女の飛び(下り)に驚き、その意思を凄いと思い、傷薬の事で憂鬱になったり、ひよこ少女の鮮やかな変化能力に感心したり、忙しく感情が変化する日であった】
【少女からしたら面白かった、と素直に括る事ができる日だとも言える。その意味を込めて何かを紡ぐ】

ありがとね

【どう伝わったかは相手にしか分からない。いつの間にか顔の紅潮が引いている。はぐらかしには成功したらしい】

えと、自己紹介遅れちゃったけど
わたしは片桐木花(このか)って言います

【微笑んで自己紹介を終える。腹の虫さえなければそのままであった。相手が答えるか沈黙する間を置いて鳴る、恥ずかしさで脱力したように女の子座りになる】
【こうなると、無理矢理にでも引っ張らない限り立たない。限界を超えたらしい】
719 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 00:47:05.93 ID:41QJb6IM0
>>718

「えっ!?そんなのでいいの?」
「もっと遠慮しないで!,牛丼とか,ラーメンとか,すてーk……ステーキはちょっとお財布が……」

【あまりにも控えめすぎる答えに,びっくりしながら提案をする】
【自分で提案していてお腹が空いて行くような顔をしている】

「??どーいたしまして?」

【突然ありがとうといわれて,よくわからないけど】
【神経反射で言っている】

「片桐木花ちゃんって言うんだねっ!片桐ちゃん?片桐さん?このかちゃん?何て呼べばいいだろう……」

【自己紹介されて悩みながら】

「あ,自己紹介されたから,私も悩んでないでするね!」
「私の名前は,陽横雛乃(ひよこひなの)っていうの!よろしくねっ!」

【そういうと木花に背中を向けて】

「よかったら,背中乗ってく?すっごい早いよ!」

【ドヤ顔でサムズアップしている】
720 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 01:02:11.57 ID:dMdPeG9w0
>>719

あう……
お願いします……

【木花は消え入りそうな声で応じる】
【木花は凡そ10歳前後の背丈しかなく、体重も比較的軽い方ではある。問題はどうやって立たせるかである】
【腰は抜けていないらしく立つ事は可能。多分少々時間がかかるかもしれない】

【おぶわれたならば、特に暴れる事もなく雑談に応じられれば興じるであろう。恐らく食事の方もいざこざは無い】
【別れる時も名前で呼んでくれるだろう。そのあと木花は宿を探しに街中をもう少し彷徨う羽目になるだろう】

/すみません、明日は少々早いのでここら辺で切り上げさせて頂きます
/一旦凍結で、明日再開でも構いません
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 01:08:50.28 ID:41QJb6IM0
>>720

「おっけーっ!」
「んーと,気をつけてねっ!痛かったら教えて!」

【立てなさそうなのを確認すると】
【ひよこの尻尾が柔らかく大きなロープのように長くなり】
【木花が何も抵抗をしなければそのまま優しく巻きついて持ち上げ,背中に乗せようとする】
【もし,背中に乗せることができたなら,尻尾はシートベルトみたいな役割を果たしてくれるだろう】
【着ぐるみは全身モフモフですごく乗り心地は良いと思う】

//了解ですっ!では,明日再開でお願いしていいですか?
722 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/04/25(月) 01:11:28.88 ID:dMdPeG9w0
>>721
/ありがとうございます
/大体21:00から始められますので、それまでに返しておきます
/すみませんでした……
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 01:16:22.68 ID:41QJb6IM0
>>722
//了解ですーっ!
//では,私もそれくらいまでに来れるように頑張ります
//いえいえ,こちらこそこんな遅くまで付き合わせてしまってごめんなさいっ!
724 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 20:56:18.45 ID:dMdPeG9w0
>>721
【ひよこの尾が伸びて、短い悲鳴を上げる木花。陽横雛乃の能力を「変色能力」と早とちりした上での形態変化故に驚いただけである】
【特に暴れる事もなく陽横の背に乗せられる。羽毛の感触が心地よいらしく、陶然とならないように努めて平静にお礼を言う】

あり、がと……
雛乃ちゃん

【初めて会った人間に、いきなりちゃん付けである。先の一幕から木花は空想癖が強く距離感がややおかしい一面があると捉えられる】
【他人に慣れていない人間の性情か。或いはそうでないのか。乗せられた木花は暴れ出す事は無い、寧ろ大人し過ぎる】
【話しかけに応じるぐらいの正気は残ってはいるらしい】

はふぅ……

【基本ふわふわしたものは好きらしい。何かを思い出しているのかもしれない】

/返信しておきました
/いつでも再開OKです

/今日もよろしくお願いします
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 21:07:55.49 ID:41QJb6IM0
>>724

「どーいたしましてっ木花ちゃんっ!」
「気をつけて捕まっててね!舌噛んじゃうかもだからーっ」

【ちゃん付けで呼ばれたから自分も読んでも大丈夫だろうくらいの安易な考えでひよこもちゃん付けで呼ぶ】
【ひよこは走る途中で振り落とさないか心配なので,動かないでいてくれるのは非常に助かっているくらいしか考えていないだろう】

【ある程度おとなしいのを確認すると,ひよこの,木花には危険が及ばないであろう足の付け根辺りにジェットエンジンが現れ】
【びゅーんっ】
【すごい勢いで動作を始めた】
【そう,このジェットエンジンの勢いを利用して街まで高速に走ろうというのだ】
【確かにすごい勢いで走ることになるが,きちんと締められた尻尾のおかげで暴れなければ振り落とされることはないだろう】

「木花ちゃん,もしかしてもふもふ大好きなのー?」

【車と遜色ない,下手したらそれより早いスピードで走りながら】
【もふもふに身を委ねているであろう木花に話しかける】

//了解ですっ!
//こちらこそよろしくお願いしまーすっ!
726 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/04/25(月) 21:19:51.11 ID:dMdPeG9w0
>>725

!?

エ、エンジン?

【誘惑に負けて陶然となっている所に、劈くような高音が飛び込む。どう考えても飛行機のアレ以外に木花は思いつかない】
【高音に紛れて小さく呻くように呟く。聞き分けるには相当な聴力を要するだろう。その後で雛乃から質問される】

うん、大好き
よくぬいぐるみさんとかお布団とかぎゅーっとしながら寝……

えっと、人並み以上には大好きだよ、うん

【気分の良さにつられて余計な事まで口にして自爆する。苦し紛れに事実だけを復唱するが果たしてどうなるやら】
【恐らく雛乃のひよこの着ぐるみが風防になって木花は高速移動による暴風を受けずに済んでいる。気分が安らいでいる理由の一つになるだろう】
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 21:30:44.03 ID:41QJb6IM0
>>726

「そーだよっ!ただ走るのはさすがに疲れるからねっ」

【得意げな顔をして答える】
【きっと,着ぐるみを変化させて,骨伝導イヤホンならぬ『もふ伝導』イヤホン的なもので密着していれば聞き取れるのだろう】

「良かったぁー,気に入ってくれてー」
「じゃあ,好きなだけ,このもふもふの虜になっていいよっ!」

【もふもふが好きだった事がすごく嬉しいらしい】
【一段ともふもふ加減が増えた気がするかもしれない】
728 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 21:40:51.69 ID:dMdPeG9w0
>>727

あ、あれ……?
ふ、増えた?

【体感で羽毛がやや増えた事に気づく。驚くのも無理は無い、まだ木花は雛乃の能力を勘違いしたまんまである】
【故に口を開ける。エンジン音等の轟音で聞こえるかどうか分からないが、自分の呟きを聞き取った「何か」に賭けて、自分から聞いてみる】

えと、これも能力?

【羽毛が心なしか増えた事に対して言及する。取り敢えず声が届くように木花なりの大声を出した】
729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 21:49:36.48 ID:41QJb6IM0
>>728

「ふっふ〜んっ!そーだよっ!」
「素肌で触れてれば変化させられるからねー」
「もふもふをふやてみたのっ!」

【ドヤ顔しながら答える】
【調子に乗ってどんどんもふもふがもふもふしていくだろう】
【もはや ひよこ というより ひつじ の方が近いかもしれない】
【たぶんこのまま行けばもふもふに飲み込まれてしまうかもしれない】
【飲み込まれてももふもふで気持ちいい以上のことはないだろうけれど】
730 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 22:03:24.81 ID:dMdPeG9w0
>>729

そうなん……
ふぇっ!? どんどん増えて……

【最後まで言い切るよりも早く羽毛が加速度的に増えていく。もはや心なしかのレベルではなく、外観まで変化する程の増量】
【もふもふが増えていく事には何ら問題はない。羽毛同士の抵抗力が木花の身体を押し上げているので羽毛に埋もれて息苦しい思いは多分しないだろう】

あわ、わっ……わっ……

【寧ろ無尽蔵に増えゆく感触に戸惑いと一抹の不安を見せる。短い悲鳴に乗せられた色はそれらと陶然を混ぜて砕いたもの】
【言葉にならない声を漏らしながら、ふと思い浮かべる。それはこの能力の行き着く先、具体的にはどこまでもふもふが加速するのかを】

も、もしかして
これ使ったら飛べるんじゃないのかな?

【それは二つの意味を持った言葉。羽を生やせば則ち空気を掴む力と揚力で空を飛び、速度を上げればやがて重力を振り切る力を宿す】
【鳥の羽搏き、ロケット、この二つの違う可能性について聞いてみる。慌てながらも木花は耳を傾けているのか沈黙を守ってくれるだろう】
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 22:13:09.26 ID:41QJb6IM0
>>730

「ふっふ〜〜んっ」
「どーだーすごいでしょぉー」

【増えていくのは止まらない,まるで無尽蔵だ】
【外から見れなまるでおとぎ話みたいな風景になっているのだろう】

「えっ,そんなんで飛んでもズルみたいで楽しくないじゃーんっ」
「わたしは自分の力で飛んでみたいんだー」

【怒ってるわけでもなく,ただただ当たり前じゃんといった風に笑っている】
【ひよこにとって,能力を使って飛ぶのはは邪道であって,非常につまんないことなのだということがわかるだろう】
732 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 22:28:06.43 ID:dMdPeG9w0
>>731

【それを聞き届ける。うーんと唸りながら、そう言えば「自分の力で飛ぶ」と言っていた事を思い出す】
【笑みが声となって漏れる。嘲笑ではなく自嘲の意味、野暮な事を聞いてしまったという意味で微笑む】

そうだね
「自分の力で飛ぶ」って言ってたもんね。変な事聞いちゃってごめんね

【深刻そうにはしていない。相手が楽しそうなのに自分だけ沈んで水を差してしまわないように、努めてそのように】
【また、思い出した何かに堰を切られてしまうように自然に口を開く】

ふふっ
能力主義者(オカルトマニア)のおねえちゃんが聞いたら物凄い顔をしそうかも

【誰だか分からない人物の名前を口にする。控えめな木花には似つかわしくない冗談のような軽口を紡いだ】
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 22:38:17.65 ID:41QJb6IM0
>>732

「まぁ気にしなくていいよっ」

【木花の難しい考えや努力なんて一ミリも感じ取ってないくらい能天気に】
【笑顔で木花に答える】

「オカルト……マニア……?」
「どーんなひとなの?」
「もしかして……空飛ぶのが嫌いな人っ!?」

【まったくもって聞きなれない言葉に聴いてみる】
【なにやら,よく思われないっぽいことは感じ取れたので少々恐る恐るといった感じである】
734 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 22:48:13.14 ID:dMdPeG9w0
>>733

えーっと……
わたしのおねえちゃんだけど、そうじゃない人。「部長」だよ

そして能力が大好きなの
「能力とは人に与えられた二つ目の口。魂に刻まれた力ある言葉なのだ!」

が口癖の人かな

【真似の部分に傲岸不遜な「おねえちゃん」の口調を真似て態とらしく言ってみたが、木花の控えめな色が抜けきっていない】
【中途半端な真似にしかならずに笑みを零してしまう】

わたしにいっぱい知識をくれた人だよ
それで、みんなは「変人」とか「変態」という風に呼んでたかな

【フォローのつもりか容赦の無い言葉で人となりをまとめ上げた。どうやら普通の人間とは外れた人らしい】
【木花は『あんまり気にしなくて大丈夫かも』と付け加えるようにフォローの言葉を口にした】
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 22:55:32.48 ID:41QJb6IM0
>>734

「おねーちゃんだけど……そーじゃない……???」

【ちょっと頭が混乱してしまったようだ】

「ほへぇ……能力についてすっごい考えるすごい人なんだねっ!」
「面白そうっ!」

【能力に対してそこまで,というか今までまったく考えたこともないのだろう】
【口癖を聴いて,ただただ興味深そうに聴いている】
【話だけを聞くと,物語の登場人物のようであり】
【ひよこはそんな面白い人もいるんだなぁ会ってみたいなぁと心の中で考えている】
736 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 23:12:13.89 ID:dMdPeG9w0
>>735

幻影を運ぶ蜻蛉の群れを呼んだり、家よりも大きなページで押し潰したりする能力を持っているよ

ただ、蜻蛉は人の物を盗んで一つ不幸をもたらす悪い虫なんだって。それが弱点

【「おねえちゃん」の能力について言及する。多分それだけを聞けば自分の能力が大好きなナルシストのようにしか思えなかったのだろう】
【続いて木花はトーンを落として、少々深刻な事を口にし始める】

さらに、能力を使う毎にページが進んじゃって、ENDを迎えると心と記憶が死んじゃう副作用まであったの

私たちに気を使って本当に危なくなるまで隠していたのはちょっと寂しかったかも……

【言葉通り寂しそうにトーンが下がり、フェドーアウトするように言葉が終わる】
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 23:25:48.89 ID:41QJb6IM0
>>736

「すごいつよそーな能力だねっ」
「いままであんまりそういう能力者を見たことないから」
「そんなすごい能力者がいるんだぁ……」

【感心していたところ,どんどん木花のトーンが下がっていくことにさすがに気がついて】
【もしかして悲しませることを聴いちゃったのだろうかという考えが頭に浮かび】
【たぶん木花にはすごい伝わるほど,どうしようフォローしなきゃってという動揺が現れていることをすぐ感じられるだろう】

「あ,あ……え,えっとっ……」

【必死でフォローの言葉を考えていると,ふと食事屋さんにそろそろ到着することに気がつき】

「あっ!あーっ!そろそろご飯屋さんにつくよっ!」
「早くおいしいもの食べよっ!ねっ?」

【あからさますぎるくらいに焦りながら話題を変えようとしたのだった】
738 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 23:34:57.92 ID:dMdPeG9w0
>>737

あっ……ごめんね
こんな話勝手にしちゃって

【沈んだ気持ちをはね返そうと、最初は空元気で、次いで気持ちも込めて返す。それ程深刻でも無いらしく数瞬で気分を戻す】
【辺りを見ると、既に岩石地帯から脱しているらしく、人々の活気が見えてくるような街並みが広がりつつある】

この近くなんだ……

【意識は定食屋の方に向く。腹の虫が鳴らないように意識をごはんに向かないように風景を楽しみ始める】
【恐らくNGワードはごはんの話である。その瞬間に木花の空腹の音が鳴り響く事になるだろう】
739 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/25(月) 23:41:26.60 ID:41QJb6IM0
>>738

「私もこんなこと聞いてごめんねーっ,全然気にしないでっ!」
「わたし,いっぱい木花ちゃんのお話聞きたいもんっ」
「どーして,あんな岩場にいたのかとかは?すっごいきになるーっ」

【気分を戻したのを確認して,安堵して,別の話を始める】

「そーだよーっいい匂いしてくるかも?」

【そんな木花の頑張りには気がつかず,ご飯の話をしてしまう】
【ひよこが言った通り,いい匂いがしてくるかもしれない】
740 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/25(月) 23:56:25.37 ID:dMdPeG9w0
>>739

えっと、今日はアークトゥルスの目撃情報探しで向こうの街に行ってたの

目撃情報は無かったけど、気長に探す予定なの。街(ここ)の駅から電車に乗って家に帰る途中で岩場を通ったの

【聞きなれない単語がさらりと口に出るが御構い無しに自分の状況を語る。長くならないように切った間に匂いを指摘される】
【そう言えば、と意識が山の稜線や羊の形をした雲から美味しそうな匂いにシフトする。そして……】

どんなのかな、楽し……

【割って入る腹の虫。お腹が振動した感じがする。音源は言うまでもなく自分。空虚さに押し潰されるような恥ずかしさを覚える】
【顔を羽毛に押し付けそうになるが、押し止まる。両手で顔を覆う】

い、いまのは聞かなかった事に……ね

【念をおしてみる。早く食べたいよりも穴に入って埋まりたい衝動が勝ってしまった結果であった】
741 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 00:09:06.16 ID:a1jhiD6D0
>>740

「アークトゥルス……んー,なーんだろー……?」
「木花ちゃんもすごいがんばってるんだねっ!」

【面白そうに聞きながら】
【木花が匂いにつられたことに気がつき】

「うんっ!だいじょーぶだよっ!」
「わたしは木花ちゃんのお腹の音なんて聞こえてないよっ!」

【ニッコリと笑いながら答える】
【完全に悪気がなく,純粋に答えているらしいことはなんとなくわかるかもしれない】

「あっ,あそこを曲がるとつくね!」

【そう言って速度を上げる】
【何事もなければもうすぐにでも到着するだろう】
742 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 00:33:45.65 ID:3fgjs7te0
>>741

あう……ありがたい、です

【お腹の音に気にしないと言われて、胸を撫で下す。余波で羽毛を気持ち抱きしめてしまっている】
【ハッと気づいてバレないようにゆっくり解く。骨伝導を用いているならばその様子に気づけるかもしれない】
【無かった事にして胸を撫で下すか、否かは行動にかかっている】

わっ……と

【カーブで遠心力が掛かる。思わず投げ出されそうになるが、重心移動と咄嗟に羽毛にしがみついた事で免れる】
【それでタガが外れたのかそのまんまとなる。声を掛けておけば止めてくれるのだろう。気持ち良さそうではある】

/すみません、眠気がやばくなったので、今日はここで切り上げさせていただきたいです
/続きはまた、明日の同じ時間帯(21:00)ぐらいには用意できそうです
/返信遅れてしまってすみません……
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 00:45:48.32 ID:a1jhiD6D0
>>742

「えへへ……どーいたしましてっ」
「残念ながらもふもふももうそろそろ終わりだけどねっ」

【抱きしめられていること自体は気がついていたが,まぁそっかーくらいでスルーをする】

「はいとーちゃーくっ!」

【掴まれたのをそのまま気にしないことにしながら,店の前に到着する】

//了解ですっ!おつかれさまでしたーーー
//はーいっ!たぶん私も大丈夫なので,それくらいの時間にお願いします!
//いえいえ,気にしないでください
744 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/04/26(火) 00:49:11.31 ID:3fgjs7te0
>>743
/ありがとうございます
/それでは、おやすみなさいですー
745 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 21:01:50.34 ID:3fgjs7te0
>>743

【店に到着したと聞いて跳ねるように起きる。相当リラックスしていたらしく、反応の落差が非常に大きい。冷や汗すら浮かべる】

あ、ありがと……
わっ……とと

【羽毛を掴んでゆっくりと着地する。しっかりした地面の感触を捉えきれず、少々立ちくらみをする】
【目を瞑って耐え、姿勢を正しくする勢いを用いて伸びを行う。疲れているわけではないが、眩みを消す為の気分転換のつもりである】
【伸びから一回深呼吸。左手の甲で額の汗を一拭いして漸く目を開ける。そこで見たものは……】

へぇ〜
ここにあるんだね

【反応からして嫌そうではないのは明らかなのだろう】

/それでは返信しておきます
/いつでも再開OKです
/よろしくお願いします
746 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 21:18:16.86 ID:a1jhiD6D0
>>745

「気をつけてねーっ!」

【降りてく木花に声をかける】
【降り切ればもふもふがどんどん萎んで最初に会った頃くらいになるだろう】

「うんっ!けっこー美味しくて量があるからオススメだよっ!」

【元の着ぐるみに戻ったひよこはそう説明しながらお店に入ろうとする】
【店の外にディスプレイされている食品サンプルからは】
【牛丼からお蕎麦,オムライスに焼き魚定食まで色々揃っているようだ】

//はいっ!こんばんはー
//よろしくお願いしますねっ!
747 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 21:28:36.26 ID:3fgjs7te0
>>746

うん。ありがと
雛乃ちゃん!

【ディスプレイの商品に目を通す。美味しそうな料理に目移りするものの、価格が気になるのか難しい顔をする】
【せめて、ワンコインで……その縛りで探し続けてもパフェぐらいしか該当しない。お腹が膨れるかどうか怪しい】
【旅の疲れもある。軽い主食系のを探すがどれもこれもワンコインで済んでいない】

あう……どうしよ……

【悩んで決められない。或いは焦って同じ所しか見ておらず、見落としているメニューとかもあるのだろう】
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 21:40:26.47 ID:a1jhiD6D0
>>747

「えへへっ,なんでも食べたいもの頼んでねっ!」

【ニコニコしながら木花が選んでいるのを見ている】
【木花があまりに迷ってるのを見て】

「ねーねー,これとかどうかなっ」

【指差したのはディスプレイの一番上に貼られた】
【10人前食べきったら賞金!】
【という張り紙だった】
【きっと,木花が量が足りなくて困っているんだと勘違いしたのだろう,わりかし本気で勧めてるのがわかるだろう】
749 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 21:51:29.23 ID:3fgjs7te0
>>747

あう……それはちょっと……

【張り紙の内容。テレビではタレントがバケツ並みの料理を苦しそうに食べきる記憶しか残っていない】
【旅疲れとはいえ、身の丈程度の少食である木花にとって間違いなくお腹を壊すものである】

じ、じゃあ私はこれで!

【大食いに巻き込まれないように口早に決める。指差した先にはウェハースやプレッツェルにイチゴなどの小さなカットフルーツが生クリームの上に盛られたパフェである】
【ワンコイン縛りからほんの少しオーバーしてしまったが、目をつけていたのは確かである】
【宿の夕食に差し障りのないものを選んだのであった】
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 22:09:20.92 ID:a1jhiD6D0
>>749

「そっかーざんねーんっ」
「じゃあ,私は親子丼10人前にチャレンジしよーっと」

【あまり気にせず,ひよこも自分のものを決めていく】
【当たり前のように食べ切る自信があるのか,10人前を選ぶ】

「お腹すごい空いてるっぽいけどだいじょーぶ?もっと遠慮しなくてもいいんだよ?」

【ひよこは,自分の食べる量と比較してあまりにも少なすぎるからか】
【本心から心配している】
751 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 22:28:19.29 ID:3fgjs7te0
>>750

うん、大丈夫だよ
お腹減るのもいっぱいになるのも早いだけだから

【ある意味では自慢にも聞こえなくもない。小柄が保てる「欠点」は真にそう呼べる訳がなく、往々にして顰蹙を買いやすい】
【旅の途上での体調悪化は即ち深刻なトラブルにもなり得る。木花はそれも知らずに無意識に言葉を選び間違える】

えっと、それじゃあ入ろっか

【長鞄の外付きポケットを触って小銭があるかどうか確かめる。先の言葉の間にもう一度パフェの価格が確認できた】
【6と8を間違えたらしい。少々どころか凄まじいオーバーとなっている。今のうちに払えるかどうか確認したらしい】

【急かしているように見えるが、無意識にそういう言葉を選びがちな性分らしい。悪気だけは無いらしい】
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 22:38:30.19 ID:a1jhiD6D0
>>751

「すぐお腹いっぱいになるのはうらやましーなー」
「私なんて一杯食べないとお腹いっぱいにならないくせにすぐお腹空いちゃうんだもんっ!」

【ひよこは素直に羨ましいと思っているようだ】
【にっこりと笑いながら答えていることからも察することができると思う】

「うんっ!もうぺこぺこだもんね!」

【ひよこも頷いてついていく】
【ひよこはあまり深く考えない質だからだろうか,木花の発言に嫌な気分を感じず】
【むしろ楽しそうについていく】
753 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 22:55:30.51 ID:3fgjs7te0
>>752

【店に入り、通された席は窓辺の禁煙席。人は疎らに見えるが、一つのテーブル席のスペースの大半を埋めており意外と多い】
【ウィンドーで確認していたため、メニューを置きに来た店員に直接注文を言い渡す。大食いが注文されたときに少々ざわめきが広がったぐらいか】
【出窓にはカップサイズの小さなプラスチック製の観葉植物や小さなテディベアの置物、レースのカーテンがあしらわれる。喫茶店タイプのお店らしい】

【ドリンクバー方式になっており、希望するものを言えば率先して木花が取りに行ってくれるだろう】
【長鞄を傍らに置き、ドリンクを調達して席につく。一息ついて窓と反対側の壁にモネの『睡蓮』が飾られている】

ふぇ……珍しいかも……

【感心か、懐かしさか、ため息混じりで呟く。恐らく『ついぞ最近』まで見かけなかったモノを発見したのだから無理はない】
【注文がくるまでの間に少々話ができるぐらいの時間が空いているのであった】
754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 23:24:37.50 ID:a1jhiD6D0
>>753

「ここに来るの初めてだったけど,いいお店だねー」

【さも行きつけのように案内しておきながら初来店だったのだ】
【もし失敗したらどうするんだろうみたいな発想は楽観的すぎるきらいがあるひよこからは1ミリも出てこない】

「めずらしい?なにがー?」

【珍しい,そんな発言に気になって質問をする】

//ごめんなさいっちょっと離席してて遅くなりました!
755 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/26(火) 23:42:26.28 ID:3fgjs7te0
>>754

えっと、あの淡い睡蓮の絵かな
画家さんのお家の美術目録にも無かった絵だから珍しいなぁ……って

【少し趣旨より外す。単に店のオーナーや関係者の自作絵の可能性を無視しておきながら『珍しい』と注釈を入れる】
【顔の緊張が心なしかさらに和らぐ。意識はしていないが何かが木花の心をついて出てくる。その度に微笑みが漏れる】

うん、私もいい店だって思うかも

【屈託なく感想を漏らす。行きつけ或いはこの街に来れば必ず行く店にするぐらいの勢いで気に入っているらしい】
【そんな平穏が重々しい音で破られる】

『お待たせしました。親子丼10人前です

ルールはこのメニューを男性なら25分、女性なら30分以内に完食してください。出来なければ……』

【それは紙幣が何枚か必要なぐらいのペナルティー料である。客のざわめきが更に大きくなる】

『マ……マジか……』
『あんな小さな女の子が頼みやがった』
『相変わらずだがでけぇ……』
『ねぇ、ちょっと本当に大丈夫なのかな?』
『チャレンジャーだ……呟いとこ』

【店員はそれはもう最高レベルの営業スマイルを浮かべて雛乃に開始を言い渡す】

『それでは、チャレンジスタート!』

【さあ、その食べっぷりは如何程となるか。目の前の木花は心配そうな顔して青ざめている。今にも『本当に大丈夫?』と言い出しそうな気配である】
【もしかすると、厨房の奥で邪悪な視線が降ってきているのかもしれない】
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/26(火) 23:57:41.66 ID:a1jhiD6D0
>>755

「ほへぇ……全然絵なんてわからないから」
「気がつかなかったけどそんなすごい絵なんだぁ」

【そう言われて興味深そうにじっくり見ている】

「ふっふっふ……まっかせなさーいっ」

【そう言って悠々とスプーンを……ひよこは箸で丼を食べるのは苦手なのだ】

「ん〜〜〜〜っおいひいぃつ」

【バーっと口の中にかき込んでは30回ほどきちんと噛み,飲み込んでからまたかき込む】
【その様子は周囲の視線や厨房の奥からくる邪悪な視線など気にも留めないかのようだ】

「ふぅ……まずは一杯っ」

【2分ジャスト,悠々と平らげ次の丼に手をつけようとする】
【食べ終えても全然余裕といった表情でニコニコしている】
【口元にご飯粒がついたりとご飯を食べると一段と子供っぽさが溢れている】
757 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 00:08:37.41 ID:wQf45HCj0
>>756

『お待たせしました。チョコアソートとレッドフルーツのパフェになります』

あ、はーい

【今更ながら届いたパフェを受け取った木花は刺さっていた細いスプーンでつつき始める。思ったよりも量が多い】
【ちらりと見る。雛乃は最早『飲み込む』という驚異的なスピードで親子丼を処理していく。木花は先とは違った意味で青ざめている】

『『『飲み込んだのかよ!?』』』

【何人かの悲鳴が重なる。発してしまった人が恥ずかしそうに頭をかいたりすごすごと小さくなる。いらない注目を浴びた代償であった】
【そして丼一杯が終わる。店員は予想しないスピードを目の当たりにして空いた口が塞がらない】

【ざわざわ、ざわざわ】
【静寂、安心が売りの飲食店内に微かに熱狂の渦が芽生えつつある。引き続き丼が供給された雛乃はどう出るだろうか?】
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 00:16:52.48 ID:Tz1NHPE20
>>757

「あっ,パフェおいしそーだねー」
「私も頼めばよかったかなぁ」
「しっぱいしっぱい」

【食べ終わった丼をおきつつ】
【木花に届いたパフェを見ながら話す】

「おっかわりーおっかわりー」

【よくわからないリズムでお代わりの丼を手に取ると】
【またも食べ始める】
【周囲の声など一ミリも聞こえていないかのように】
【もぐもぐと食べて,いや飲んでいる】

「二杯目〜〜〜」

【次は1分半,かなりの速度である】
【このような高ペースで親子丼をあっという間に10人前の半分以上平らげた】
759 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 00:29:14.82 ID:wQf45HCj0
>>758

あ、うん
何個か残してあげるよ。無理はしないでね

【フォークを取り出してテーブルに置く。木花は丼を完食した後ぐらいに食べるだろうと思い、何個か残す】
【恐らくチョコアソートのプレッツェル、ウェハース、さくらんぼ、いちごを残してくれる。どれを選ぶかは自由である】
【今はまだ生クリームの高峰を攻略中であった。ストローを使うにはまだ早い】

『す、すげぇ……』
『なんちゅースピードだよ』
『え……え……!? これってもしかして……』
『てか……ひよ……こ?』
『ひよこだこれ』
『なんかこんな感じのカラクリ爪楊枝入れ見たことある気がする』
『○○ごしシ○ジなう』

【最後のは人によっては蔑称になりかねない勢いである。取り敢えず各々が感想を漏らしつつある】
【十数分経過、女性ノルマの3、4割程度の時間で半分を平らげる。最早店員が口を開けることすら忘れて青ざめている】
【厨房のニタニタ笑いがざわめきに押し流され真っ青な顔して天を仰ぎ始めた】
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 00:39:33.06 ID:Tz1NHPE20
>>759

「えっ,そんな悪いよっ!残してもらうだなんて!」
「木花ちゃんもお腹空いているんだからお腹いっぱいになるだけ食べて!」

【口では必死に立派なことを言いつつ,口からは羨ましそうによだれを垂らし,目は物欲しそうに輝かせている】
【全くもってどうしようもない食い意地であった】

「あっ,あれ,残り一杯……」

【そんなこんなで木花とお話ししながら飲み込んでいると】
【気がつけば,残りが一杯まで食べてしまっていたのだ】
761 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 00:56:58.09 ID:wQf45HCj0
>>760

ううん
美味しいから、お裾分けだよ

【あまり躊躇なくそんな事を口にする。人見知りであるはずなのだが、気にしてはいないらしい】
【所謂天然の性分である。頭をで考えて気にしている筈なのに抜けている。もしもウェイターならばコップをよく落とすような人である】
【高峰が圷に変わり、ストローを用い始める。残されたフルーツやプレッツェル、ウェハースがやや寂しく鎮座しはじめる】

って、もう後1杯……?

【まだ66%も経過していない、その言葉が引き金となって店内の熱狂がピークとなる】

『うおおお!』
『で、伝説な……投稿すんの忘れた』
『えええ!』
『……ッ!』
『あ、入れ歯落ちた』

【すごく微妙な言葉が流れる。お構いなしに誰もかれもがカウントを始める。何故か覚えている経過時間を合唱し始める】

『56、57、58……』
『お、俺様の仇が!』
『っしゃああああ! 嫌がらせバナナ鼻のヴォ○デ○ート店主の鼻を明かしてやれ、泣いて詫びろクソ店主!』
『そうだそうだ! 3万返せ屑人間!』
『あん? ……んだとコラ』
『あん?』
『表』
『……』

【と、数人程が店の外に出る。店主が混ざっていたような気がするが、どうなのだろうか。最後の一杯が今引き渡された……】
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 01:07:12.85 ID:Tz1NHPE20
>>761

「ほんとにっ!?」
「えへへっ……木花ちゃんは優しいなぁ」
「ほんとありがとっ!!」

【嬉しそうな顔でにっこりとお礼を言っている】
【ひよこから見れば木花が人見知りだなんてなかなか信じられない】

「えーと,じゃあ最後の一杯」
「いっただっきまーすっ」

【最後の一杯をこれまでと変わらぬペースで口にかき込む】
【特に観衆へのファンサービスなどというものは考えてない】
【むしろ,周りの喧騒は自分のことだなんていうのは一切気がついていないのだ】
【だから,全く気にせず最後の一杯を】

「ごっちそーさまぁ」
「多いかなぁと思ったけど,結構あっという間だった!」

【難なく食べ終えて両手を合わせて食べ終わりましたと宣言する】
【かかった時間は1分ジャスト】
763 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 01:19:25.39 ID:wQf45HCj0
>>762

……がんばれ!

【小さく木花も応援を始める。熱狂の渦は常連客だけでなく木花を始めとした部外者まで波及する】
【最早静かで安心、という謳い文句が虚偽広告として訴えられるレベルであった。酒場並みの喧騒が収束する】

【静寂、そして】

『に、21分ジャスト……完食です』

『『『『『うおおおおおおおお!』』』』』

【雄叫びが全てを包む。呆然とした店主がタイムストップをカチカチ押し続け、ウェイターが空のお盆を落とす】
【カオスと化した客が雛乃に殺到する。どうやら初の完食者だったらしい】

お、おめで……

『おめでとう!』
『いやー凄いな、ひよこの嬢ちゃん!』
『胴上げじゃ胴上げ!』

【木花の祝いがかき消される。胴上げされそうになっているが、抵抗する事もできる。流石に女の子に了承無しに触り始める変態達でもないらしい】
764 : ◆mZU.GztUV. :2016/04/27(水) 01:22:21.81 ID:wQf45HCj0
>>763
/訂正があります
/×店主 ○ウェイトレス
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 01:37:57.36 ID:Tz1NHPE20
>>763

【突然の観客が集まってきての胴上げ】
【ひよこにとって1ミリも予期しないことであったがためにひよこは頭からはてなが浮かびながらされるがままである】

「えっ?!?!!?胴上げ!??!?!?!」
「空飛ぶのをお手伝いしてくれるの????」

【ひよこにとって本気で一切話がわかってていないためか】
【素っ頓狂なことを聞いてしまう】
766 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 01:47:50.72 ID:wQf45HCj0
>>765

『空を飛ぶ?
店ん中じゃあ危ねえが、好きにしな!』
『ばんざーい! ばんざーい!』

【そのまま胴上げが始まる。所によっては照明に当たりそうになり、胴上げされている本人からすると中々に恐怖映像である】
【だが、それとは別に。遠巻きのクールなお姉さん達など】

へ、変態のおじさん達……かも

『ただ触りたかっただけじゃないの?』
『うわー幻滅』
『……変態クソジジイ』
『折角の偉業がぁぁ』
『あなた……』
『ぼくもしてーぼくもー』

【木花までドン引きしている。万歳組は男女混沌と化しているが、遠くに行く程こんな有様である】
【なお、彼らの明日の喫茶店生活は一切保障できないものとする】
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 02:01:44.60 ID:Tz1NHPE20
>>766

「ひゃっふぅぅううぅうぅぅぅ!」

【胴上げされるたびに頑張って腕をバタバタさせて羽ばたいているがうまくいかない】
【照明などは,どうせ着ぐるみで安全だろうと思っており全然怖がっている様子はない】
【全力で胴上げを楽しんでいるようだ】

「木花ちゃ〜〜〜〜んっ!楽しいからいっしょにしてもらったらいいよぉっ!!!」

【変態だとかそんなことは1ミリ考えておらず,ただただ胴上げを楽しんでいる】
【そのため,一緒に楽しんでもらおうと,木花に大声で声をかける】
【万歳組の明日を考えれば尋常ではないくらいに能天気だろう】
768 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 02:18:46.04 ID:wQf45HCj0
>>767

え……遠慮しておくね……

【木花の声だけがする。既に遠巻きの軍団の中に紛れて身を隠した後であった。何故か隣の女性から頭を撫でてもらっている】
【そして喧騒が終わる。万歳組は戻れると普通に信じている日常に回帰し始める】

『嬢ちゃん、いいモン見せてくれてありがとさん!』
『それってパンツなんじゃ?』
『は? 着ぐるみで見えんじゃろうが』

『ごめんよエイミー! これからも変わらず君に尽くすと決めているから、とりあえずトイレは止めて! アッ! 何そのシリンダー!? ってスタンガがガガガ……アッー!』

『わーい!ありがとーおかーさーん!』

『いてまどうどワレェ!』
『うるせぇ! メンタンピンチビデブハゲ8数え役満野郎!』
『あー! 言ってはいけない事言ったー! よーしテメェ!ブッコロ!』

【店外から聞こえてくるスラングの応酬はこの場の混乱とあまり関係はない。常連客曰く店主おなじみの光景らしい】
【いつの間にか席に戻っている木花。チョコが解けないようにロック(アイス)で挟んでいる】
【フォークを差し出して雛乃に一言】

おめでと
私からのお祝いだよ

【前に言ったチョコアソートのプレッツェル、ウェハース、カットフルーツから選ぶ事ができる。しかし、そのどれもがちょっと冷えてる気がしなくもない】
769 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 02:23:25.69 ID:Tz1NHPE20
>>768

「そっかーざんn……ひゃあぁあっぁっ」

【遠慮の声を聞いて残念そうな声をあげつつ飛ぶ訓練を頑張ってる】
【胴上げから解放されて木花の席に戻ってくると】

「いやーざんねんっ,また飛べなかったなぁ〜」

【ちょっと悔しいけど,まぁ楽しかったからいいやみたいな雰囲気で戻って来る】

「えっ,ほんといいの!?」
「えへへ〜〜〜〜木花ちゃんだーいすきっ」

【すっごい嬉しそうな顔で,今にも木花に抱きつきそうな勢いだ】
【そう言ってチョコアソートのプレッツェルをもらおうとするだろう】
770 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 02:33:18.95 ID:wQf45HCj0
>>769

じゃあ、わたしはこれー

【選んだのはウェハース。その後も具が無くなって氷山と化すまでパフェは踏破される事となった】
【会計に行くと店員から金一封が渡される。最高額の紙幣数枚程度が入っているが、子供からすると驚天動地の額である】
【そして店外に出る。遠くの方で何やら聞いた事のある喧騒が聞こえる気がする。木花は気にせず雛乃に向かい】

今日は美味しかったよ!
ありがとう!

【笑みでお礼をする。最初のかっちりした礼とは異なってさらに打ち解けた感じがしなくもない】
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 02:39:01.47 ID:Tz1NHPE20
>>770

「やっぱおいしーねっ!これ」

【美味しそうにプレッツェルを食べている】

「どどどどどどうしよう……こんなお金使い切れない……」

【もらった金一封の多さにびっくりして泡を吹いて倒れかけたのはいい思い出となるだろう】

「こちらこそっ!一緒に食べてくれる人がいるとやっぱり美味しいよね!」

【こっちも満面の笑みで感謝を述べる】
【ひよこはいつもはほぼひとりでご飯を食べているせいで,誰かと食べてなおさら美味しく感じたようだ】

「そーいえば,このあとはどーするの?」
772 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 02:48:49.82 ID:wQf45HCj0
>>771

わたしは、宿に泊まるかな
ここでも何か聞けそうな気がするかも

【上機嫌そうに唸った後、予定を口にする。引き続き『アークトゥルス』とやらの情報を探すらしい】
【木花は両頬を軽く押さえてくるりと横に一回転。くすぐったそうな笑みから、先のパフェの味が気に入ったのらしい】

『キミら面白そうだからまたおいでなー』

【店の玄関から出たダウナーそうな少女からそう声を掛けられる。木花はうんと一言返して見送る】
【多分何かを言えばテキトーそうに返してくれるらしい。その後ダウナー少女はそのまま大通りの先に消える】

雛乃ちゃんは?

【と、弾むような声で質問したのであった】
773 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 02:56:55.68 ID:Tz1NHPE20
>>772

「たしかに,ここすっごい大きい街だもんね」

【辺りを見回しながら】

「はーいっ!今度は20杯に挑戦するからよろしくねっ」

【ダウナー少女に向かって笑顔でバイバーイと手を振りながら】

「私は今から巣を作るよ!」
「鳥をまねするためにはちゃんと巣を作らないといけないからねっ!」

【この街のどこかで巣作りをするのだろう】
【なかなかイメージから入るタイプのようだ】
774 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 03:05:17.88 ID:wQf45HCj0
>>773

あはは……えっと、頑張ってねー

【テキトーに返してしまう。それではあんまりだと思い一度うーんと唸る】

えと……わたしの世界の話だけど
部長やふうちゃんが帰りを待っているところで空を飛んだ人がいたかも

『空気を掴む技』を狂気のように練習してついに無能力で空を飛べだんだって。それで後付けのように空を走る能力に目覚めたらしいよ

【なんて、凄まじく難解な話をし始める。話半分でいいよ、と注釈は一度入れてある。要は飛べるかもしれない、という事を言いたかったらしい】
【半歩歩いて大通りに出た木花。手を振って挨拶をする】

また会おうね!
雛乃ちゃん!
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 03:14:11.78 ID:Tz1NHPE20
>>774

「ふむふむ……!」

【話を聞きながら能力に目覚めたと聞いたときに目の色が変わる】

「ほんとにっ!?そんなすごい人がいるの……!」
「弟子入りをしたらできるようになったりできるかな……?」

【半ば独り言としてボソッとつぶやく】
【ひよこの中で当面の目標が定まった瞬間だった】
【まぁ,そんな人物がどこを探せばいるなんか全く見当はついていないのだが】

「うんっ!ばいばーいっ!またあったらまたいっぱいおはなししよ〜〜ねっ!」

【両手を大きく振りながら見送る態勢をとる】
776 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/04/27(水) 03:23:02.69 ID:wQf45HCj0
>>775

ばいばーい

【見えなくなるまで手を振り続ける。そうして大通りの雑踏のうちの一人となる】
【その後で勝手のきかないこの街で宿探しに一苦労してしまうだろう。時間帯もあり満室のものも少なくはない】
【観光と洒落込むにしては夜闇は危険極まりなく、それも承知で探し続けなんとか見つける事が出来るだろう】

【この街での収穫も0である。もしかすると端末の先にいる『保護責任者』が嘘をついているのではないかと疑い始めるレベルであった】
【だが、予感だけはしていた。終わりは遠いようで近い。逆も然り】

【次の日の列車で港町に帰る間雛乃と食べたパフェの味を思い出しながら、車窓からの風の国の風景を楽しんだのであった】

/こちらからはここで以上になります
/連日のロールありがとうございました
/それでは、ゆっくりとお休みくださいませー
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/27(水) 03:33:35.40 ID:Tz1NHPE20
>>776

//なんとなくキリがいいから私も>>775で以上にします
//こちらこそおつきあいいただきありがとうございましたっ!また機会があればよろしくお願いしますね
//それではおやすみなさーいっ
778 :??? ◆/Pbzx9FKd2 :2016/04/29(金) 00:16:50.79 ID:W+Hr4z950
【水の国、夜。大半の人々がもう眠りにつく頃のことである。とある住宅街の片隅に、草が生い茂るだけの公園とも呼べぬような空き地が広がっていた。】
【殺風景な空き地を覆うフェンスの注意書き「ひろばはみんなでたのしくつかいましょう」に目を通してから中へ入り、広場の中央にその男は立った。】
【周囲をぐるっと見渡し、人のいないことを確認すると彼は背に担いでいたギターケースを地に下ろす。】

・・・・・・良いアイディアが浮かんできそうだ、NA

【一人呟いたのはスキンヘッドにサングラス姿の男である。2メートルを優に越しているであろう長身は闇の中で一本の木のように見えた。】
【ケースからギターを取り出し、ストラップを肩にかけ慣れた手つきで構える。黒色のサングラスの位置を微調整すると男は足でリズムを取り始めた。】

ぁワン、トゥー。ぁワン・トゥー・スリー・フォゥッ

【闇夜の中で開始された男の演奏は下手だった。素人が聞いてもわかる調子外れの音程、口ずさむ鼻歌は進行するコードと微妙にずれている。】
【当の本人は素知らぬ顔で体を揺らしながら演奏を続ける。近隣の住宅のことを考えごく控えめな音量でギターを弾く様からある程度の良識を持っていることはわかるが、それでもやはり近づき難い雰囲気を発している変人がそこにいた。】
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 00:47:24.16 ID:6D3yk8U00
>>778

「んー……?なんのおと……?」

【男の近くの茂みからごそごそと音がする】
【何やらそこで寝ていたのであろう少女の声が聞こえる】

「おばけじゃありませんよーに……」

【恐る恐る茂みから顔を出してきたのは】
【ヒヨコの着ぐるみ,顔以外着ぐるみに覆われた少女である】

「あぁ,よかった,おばけじゃなかった……」

【普通の男らしいことを見て少しホッとした表情をしているのがわかるだろう】

//まだいらっしゃいますか……?
780 :??? ◆/Pbzx9FKd2 :2016/04/29(金) 01:10:19.44 ID:W+Hr4z950
>>779
【ヘイ、ヨウなどと口ずさみながら演奏を続けていた男の視線が物音に反応して茂みの方へ向いた。現れた者の姿を目にして男の動きと演奏が停止する。】

・・・・・・バード?

【男も大概だったが目の前の少女もまた変人であった。ひよこの着ぐるみに全身を包んだ彼女の姿を見て男はフリーズしたままである。】
【スキンヘッドに黒サングラスでギターを手にした大男と、着ぐるみの少女が闇の中無言で向き合っているその姿ははたから見たら意味不明であろう。だが意味不明だったのは当の男もまた同じであった。】
【しばし男は言葉が見つからないままに硬直していたが、やがてその口を開いた。】

Ah(アー)・・・お嬢ちゃん、その格好(スタイル)は…?

【先程までのギタリスト風の振る舞いはどこへやら、男の質問はごく普通のものであった。やや口調が特徴的であることを除けばであるが。】

/おります
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 01:29:53.37 ID:6D3yk8U00
>>780

【突然話しかけられたことに驚き】
【しばらく自分も固まって男を見ていたが】

「はっ,はいっ?!鳥……とり見習いなのですっ!!」
「こんばんはっ!夜分遅くにご苦労様ですっ!」

【よくわからないが男の反応にビックリして】
【びしっと敬礼しつつトンチンカンなことを喋っている】
【少女がすごくテンパっていることは見たらすぐにわかってしまうだろう】

//よろしくおねがいしますっ
782 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 02:01:22.66 ID:W+Hr4z950
>>781

【鳥見習い。初めて聞く単語と、仕事でも何でもないのにかけられたねぎらいの言葉。男の頭上に大量の疑問符が浮かんでいたが、目の前の少女、どうやら怪しい者ではなさそうだ。彼はそう判断した。】
【ここで言う怪しい者とはいわゆる悪人のことである。どう見たって少女の姿は怪しかったが、警戒の必要は無いと見て男は態度を緩めた。】
【改めて観察すればこの少女、緊張している様子である。自身の威圧的な風貌は自覚していたから、無理ないことかと思いながら彼は少女に警戒の必要がないことを示した。】

HAHAHA(ハハハ)!Heyガール、OREは怪しい者じゃ無いZE!
OREの名前はエルストン・ボブディラン!この近辺で自警団として活動しているGUY(男)さ!

【その名乗りはなんだかとてもうさん臭く、怪しいアクセサリーでも売りつけてくるような雰囲気を纏っていた。しかし彼女にそれを確かめる術は無いものの、彼の口にした内容は真実である。】
【エルストン・ボブディラン。水の国自警団所属。38歳。国際的自治・傭兵組織「SCARLET」の一員。見た目と語りからは信じがたいが嘘偽りの無い情報である。】
【変わらないハイな口調のままで男は紹介を続けようとしている。】

ちゃんと身分証だって持ってるYO。ホラ、これだ!

【そう言って懐から上記の身分を保証する手帳を取り出したが、ここで辺りが暗く細かな文字や写真の細部などが見えないことに彼は気づいた。】

・・・・・・しまった、こう暗くっちゃあ見えないNA。ガール、懐中電灯か何か持って・・・無いよNA。
・・・・・・へヴィな事態だ。

【男は腰に手を当てたままなんとか別の方法で彼女に身分を証明する方法を思案している。実際近くに光源は無く、わずかに月明かりが照らすのみである。】
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 02:14:29.00 ID:6D3yk8U00
>>782

【男が必死で身分を証明する方法を模索しているのを見て】

「……あははっ」

【笑いはじめる,男が必死に誤解を解こうとする姿を見て,安心したようだ】

「え,えーと笑ってごめんなさいっ!」

【笑ったことに対してぺこりとお辞儀をする】
【このひよこ,いちいち動作が大きすぎるところがある】

「懐中電灯ですかっ?まかせてくださーいっ」

【そう言うと,体毛が突然7色に輝き始めあたりを照らす】
【身分証も見えるようになるだろうし,ひよこの光るドヤ顔も観れるだろう】



784 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 02:26:52.82 ID:W+Hr4z950
>>783

【突如まばゆい光を放ち出した少女に男は驚く。異様な格好をしていたとはいえただの少女、その可能性は低いと彼は思っていたが・・・】

・・・こいつはへヴィだ。ガール、YOUも能力者だったのか!
ありがたいZE。ほら、これで見えるだろう?ちょっと眩しいが、派手なのはOREも大好きさ!

【この少女、能力者だ。だが彼に警戒の様子は無い。善良な能力者ならば彼の取り締まりの対象にはならない。一般の善良な市民と同じである。】
【ひとしきり少女が手帳の確認を終えたならば彼は「どうだい怪しい人じゃないだろう」といったふうにニコリと笑って見せる。サングラス姿ではあってもその笑顔は悪意や作り物とは無縁のものであった。】

785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 02:34:11.08 ID:6D3yk8U00
>>784

「えへへ,私も派手なのは楽しくて大好きですっ!」

【嬉しそうに満面の笑みだ】
【警戒は完全に解けたようだ】

「そうですね!本当に疑ってごめんなさいっ」
「そんな,いい人っぽいのに見た目で判断しちゃって……うぅっ!」

【確認し終わると本当に申し訳ないといった感じでなんどもあやまっている】
【本当に疑ったことを申し訳なく思っているようだ】
786 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 02:52:28.20 ID:W+Hr4z950
>>785

【申し訳なさそうにする少女の姿を見て、彼は「この子が何か悪いことでもしたのだろうか?」とでもいうような表情をしていた。】
【彼、エルストンは気さくで明るいがそれゆえに神経が図太く、細かなことを気にするタイプの人間の心情が理解できない。ゆえに少女が何をそんなに謝るのか理解しかねていたが、やがて考えても仕方無いといったように。】

HAHAHA!ガール、何も気にする必要なんて無いYO!悪党をやっつける仕事をしてるんだから、見た目が怖いなんて褒め言葉さ!

【とりあえず彼は笑い飛ばしてみせた。この男は年中こんな調子であるから無神経だということで嫌われることも多いが、根っからの明るさによって好かれることも多い。】
【ささいなことさ、と笑って少女の肩(ひよこの肩とはどこだろう?)を叩いてから、男は当然の疑問を彼女にぶつける。】

そんなことよりガール、こんな野原で何してたんだい?いたいけな女の子が出歩くにはちょっとばかし遅い時間だNA。

【人気(ひとけ)の無い草むらの中で少女が寝入っていたことなど想定できるはずもなく、彼には少女が原っぱに偶然おとずれたように見えていた。】

ひょっとして、OREの奏でるメロディに惹かれてやってきたのかい!?HOO(フー)!そしたらOREは最高にハッピーさ!!夜道に寄り道するのも仕方ないってヤツさ、HAHAHA!

【その可能性だけは絶対にありえないのだが、結構真面目に可能性の1つとして男は考えている。彼には自身の音楽がただの雑音であるという認識が無かった。】
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 03:07:53.61 ID:6D3yk8U00
>>786

「本当にいいんですか……?」

【すごく申し訳なさそうな顔をしている】
【心なしかひよこがちっちゃく見える】

「えーと,立派な鳥になるために巣で寝てましたっ!」

【ドヤ顔で自分が入っていた茂みをかきわける】
【そこには,木の棒をためただけの「巣」らしきものがあった】

「んー,確かにおじさんの奏でるメロディで起きたから確かに惹かれたかもですー?」

【首を傾げながら答えた】
【皮肉ではなく,純粋に確かに……といった感じで喋っている】
【特に少女としても雑音だとは思っていなかった,というかそこまで聞いてなかったっていうのが正しいのだが】
788 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 03:28:40.88 ID:W+Hr4z950
>>787

【少女があらわにして見せた「巣」を見て、そして「鳥になるため」という言葉を聞いて。】

・・・・・・へヴィ・・・・・・

【男はそう呟いた。鳥になることを夢見る女の子がいる、それ自体は普通のことだ。ただしそれは幼少期から徐々に成長していく過程の中でいずれ消え去っていくもの。】
【見たところ少女はそういった時期をとうに過ぎているように見える。この子、人畜無害ではあるがちょっと頭がまずい娘なのでは、そう思った彼は直球型の性格だったので。】

Ahー、お嬢ちゃん。YOUはマジに鳥になろうと思っているのかい?OREの目が悪くなければ君は人間にしか見えないんだがNA。
ガール、今何歳だい?君のママやパパは君のその夢を知ってる?「人間の子供は成長しても人間になるだけ、鳥にはなれない」、そうファミリーから教わらなかったかい?スクールでもそう言われなかったかい?

【なんとこの男、いたいけな少女の夢を丸ごとぶち壊しにするようなことを平然と言ってのけた。もう少し言い方というものがあるだろうに、つくづくデリカシーというものが存在しない。】
【しかし男の言う事それ自体は至極まっとうな内容で、少女を取り巻く家庭や学校という環境が普通のものならば彼女はとうにそういった空想から卒業している年齢であるはずである。】
【ギターのことなどそっちのけ。男は男なりに少女の行く末を心配して、ストレートにも程がある質問を彼女に投げかけた。】
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 03:38:23.56 ID:6D3yk8U00
>>788

「はいっ!習ってますよ!」
「それくらい私だって知ってますからねっ」

【かるくって笑いながら答える】
【少女もそれくらいの常識は持ち合わせていたようだ】


「でも,空を飛ぶくらいは,人間でも」
「ものすご〜く頑張ったらできそうじゃないですかっ!」
「とりの姿をしているのは」
「そのためのイメージトレーニングですよっ!」

【両手を腰に当てて,ふんすといった感じでそれは完璧なドヤ顔を浮かべている】
【少女の中では「完全に決まった……」といった気持ちなのだろう】
790 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 04:15:22.06 ID:W+Hr4z950
>>789

【この少女、いつからこの空想に憑りつかれているのかは知らないが、まさかこれまでずっとこの回答で押し通してきたというのか?】
【幾つかの可能性を考えてみる。1つ、実はこの少女『魔海(ワンダー・フォレスト)』(人間以外の未確認知的生命体が多数存在するとされているブラックボックス的地域。詳細不明)からやってきた亜人種、それも鳥類と人類の混合系?】
【いや、それは有り得ない。その種の幼体であるならば脚部や翼部に鳥類としての特徴が色濃く見て取れるはずだから。…専門的な知識にはうといがその程度は判断できる。】
【1つ、懸命に少女が努力を重ねることにより「空を飛ぶ」能力を身に付ける可能性。これも無い、なぜなら「能力」は原則として一人につき一つ。彼女が先程見せた能力はどう見ても空を飛ぶことには使えない。既に一つの能力を身に付けている以上、新たな能力の発現は考え難い……】
【様々考えたが、やはり可能性はゼロだ。目の前の少女に一体どう対応したらいいのか、内心彼は頭を抱えるくらいにうろたえていた。】
【胸を張る少女の前で長考していたが、やがて彼は口を開いた。いっぱいにその白い歯をのぞかせて。】

・・・HAHAHA、HAHAHA。…HAHAHAHAHA!!良いじゃないか、OREが間違っていたよ、YOUのその魂(ソウル)、受け止めたZE!
「空を飛びたい」、素晴らしいドリームだ!YOUは空を飛ぶのが好きで、そのために頑張るのが好き、ハートを燃やすのが好き!最高じゃないか!!
「やりたい」って感情は人生の中で最高にへヴィなものなのさ、それに向かって突き進むことこそが「生きる」ってことだ!!
HEY YOU 気に入ったZE!名前はなんて言う!?このOREは全力でYOUの夢を応援しよう!いつだって頼りにしてくれよNA!

【そうとも、悲観的にとらえることなど無いのだ。眼前の少女が熱い衝動の持ち主であるのならば、それに向かい努力することは人生で最も重大なこと。彼は彼自身の人生観と照らし合わせて少女にそうエールを送った。】
【もはや常識がどうとかは関係無いのだ。少女が飛べようが飛べなかろうが、それは大した問題ではないのだ。努力と失敗と痛みと成功と。長い人生の中でそれらこそが非常に大切なものなのだから。】
【適当なその場しのぎでなく、エルストンなりに彼女の現状と幸福を最大限に考えて。少女からすれば「このおじさんは何そんな当たり前のこと言ってるんだろう」くらいの意見だっただろうが、それが彼なりの真剣な返答であった。】
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 04:30:06.35 ID:6D3yk8U00
>>790

「おじさん……見かけによらず,本当にすごくいい人だねっ!」

【犬ならば千切れそうなくらい尻尾を揺らしているだろうほどに,キラキラ目を輝かせながらエルストンに言う】
【きっと,自分の思いを受け止めてもらえたことがよほど嬉しかったのだろう】
【敬語すら忘れ,純粋な眼差しで見つめている。ハタから見れば懐かれた,というところだろうか】

「あっ,えーとっ!あぁ,確かに,名前を言っていなかった」
「私の名前は,陽横雛乃(ひよこひなの)です!よろしくお願いしますっ」

【ぺこりと,さっきとは違い挨拶としてのお辞儀をしながら自己紹介をする】
【顔を上げると,ちょっとどうしようかという顔をしてから】

「おじさん……えーと,エルストンおじさんって呼んだほうがいいのかな?」
「早速だけど,お願いがっ!ありますっ!」

【意を決して発言をする】
792 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 04:41:08.54 ID:W+Hr4z950
>>791

ヒヨコ・ヒナノ!オーケイ、良い名前だ!

【その名を忘れないようしっかと記憶にとどめる。そして改まった様子で申し出る様子に彼は胸を張って。】

呼び名も敬語もしゃらくさいZE、YOUの好きなように呼んだら良い!
願い!何だいヒナノ、言ってごらん!このエルストン、いくらだって君の夢に付き合おう!

Let Me Hear(聞かせてくれ)!!
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 04:45:00.51 ID:6D3yk8U00
>>792

「じゃあ,お言葉に甘えてっ!エルストンおじさんっ!お願いはねっ!」

【エルストンの言葉を聞いて,吹っ切れたように】

「私にいい感じに筋肉を付ける方法を教えてーっ!」
「いまね,私が飛べない理由はきっと筋肉が足りなからかなぁっておもってってね」
「エルストンおじさん,すごい筋肉ありそーだし,おしえてほしいなぁっって思ってるの!」

【ひよこはひどく真剣な顔でそういった】
【冗談でもなんでもなく,完全に本心なのだろう】
794 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 05:20:53.71 ID:W+Hr4z950

>>793

【少女の言葉を受けて、彼は笑う。】

HAHAHA!目の付け所が良いNA、ヒナノ!そうとも、これがOREの鍛えられたBODY(バディ)!!

【言葉と共に彼は衣服を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿となった!】
【当然上半身だけなので安心である。そしてさらけ出された彼の肉体はまさに彼女の期待通りであったと言うべきだろう。丸太のような上腕二頭筋と三頭筋、広々と広がる背筋、鋼鉄のような硬さが目に見えてわかるほど隆起した腹筋。】
【実際彼自身鍛え上げた肉体を披露するのは音楽以外の趣味の1つであった。しばらく様々なポージングを良い笑顔でとった後に、彼女の質問に応える。】

筋肉をつける方法!そいつはとっても簡単さ、よく鍛錬し、よく食べ、よく寝る!それを毎日続ける、それが全てさ!
「継続は力なり」、これほどの格言は無いNA、いいかいヒナノ!強い筋肉を育てようと思うならば面倒くさがっちゃあ駄目だZE。
辛くとも限界まで筋肉に刺激を与え、お腹いっぱいでもご飯を詰め込む!そして夜更かししたくてもしっかり寝る!地味でへヴィな道のりだが共にゆこうガール!

【そうして彼は懐からメモ翌用紙のようなものを取り出し、さらさらとペンで何かを書き込んで彼女に渡した。渡されたそれは彼・エルストンの連絡先であった。】

何かあったらいつでも此処に連絡するんだYO。筋肉を鍛えるうえでの質問・その他なんだって構わないZE!
OREが勤める自警団の支部内にはトレーニングルームもある!ヒナノが望むならそこだって使えるYO!
みんな気の良い奴らさ、こころよくYOUのことを受け入れてくれる!保証するYO!

【そう言ってウィンクをし(サングラス越しなので無意味だが)、親指を立て白い歯を見せ笑う。本当に暑苦しいが彼もまた気の良い男だった。】
【時刻はもう夜半を過ぎる頃か。不健康な生活は筋肉の最大のエネミーさ、そう言って彼はそろそろ家に帰る頃だと告げた。】
【彼は自警団支部の団員寮に宿泊しているが、心配なのは彼女の寝床である。彼女のポリシーとはいえ流石にこの夜の中、一人野宿というのは安全性から考えても良くない。】

HEYヒナノ、君のファミリーの住む家の近くに「巣」は作るべきじゃあ無いかい?YOUのパパとママを心配させちゃいけないZE。
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 05:35:09.36 ID:6D3yk8U00
>>794

「おぉ……っ!触ってみたいほどの筋肉だぁ……」

【その素晴らしい筋肉を見て息を飲む】
【ひよこは特段そのようなフェチを持ち合わせているというわけではなかったが】
【その素晴らしい筋肉はひよこにとって,空を飛ぶために目指すべき目標の一つに思えた】

「なるほどぉ」
「さーいえっさー!教官!日々精進していくでありますーっ!」

【テンション高くメモ帳に書き込みながら喋る】
【流石にすごい筋肉には説得力が宿るらしい】

「あっ,ありがとうっ!こんな良い所も紹介してもらえるなんて……!」
「やっぱりエルストンおじさんはすごい恩人です!」

【感謝の視線を投げかけながら,なんども感謝の言葉を述べている】
【が,家の話になったときに】

「え,えーと……」

【すごく目が泳いでいる】

「実は家は無断で飛び出しまして……」
「ビッグな鳥になるまで帰らないよっって書き置きだけして……」

【言っていること自体は真実のようだ】
【彼女からは帰りたくないオーラ,少なくとも飛べるようになるまでは帰りたくないオーラがすごくでている】
796 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 06:03:08.72 ID:W+Hr4z950
>>795

【家出をしてきたと語る彼女、さらに目的を果たすまでは帰らないという言葉にはかなりの真実味が宿っていた。巣という名の野宿をしていたところからうっすらそんな想像はしていたが、彼女は現在帰る家すら無いようで。】
【Hmmm(フーム)、とうなってから彼は】

ヒナノ、ちょっと待っていてくれないか?5分くらいで済むはずDA。

【そう言って地面に脱ぎ捨てたままの上着から携帯端末を取り出した。何か口頭で端末に向けて喋ったあと、端末をズボンのポケットにしまって彼女に向き直る。】

HEY、良い情報が入ったYO!たまたまこの近くに無料で貸し出し中の空き家が一件あるそうDA!
「巣」には住めないが、立派に空を飛べるようになるまでに悪党に襲われてしまっては元も子も無い。なら夜は安全な屋内で寝るのも良いんじゃないか?
あるいはその部屋の中に巣を作る、とかNE。どうだい、この寒空の中で夜を過ごすよりはそっちの方が良いとは思わないかい?

【それとこれはYOUさえ良ければの話なんだが、と彼は付け加える。】

どうしても屋外の巣に住みたいというならば、OREたち自警団の支部内の敷地にここと似たような環境がある。そこなら屋外でも安全性は確保されている、必ず敷地内は見張りがいるからNA。
もっとも、ヒナノの好きにするのが一番DA。どこか一つのところに留まるのが嫌ならば、流浪の旅を続けるのもまた良いだろう。何か行動を起こす時最もへヴィなことは「君がどうしたいか」なんだからNE。

【そう言って彼はいくつかの選択肢を提示した。無論そのどれをも選ばないということも可能だ。さて、着ぐるみの少女は何を願うだろうか?】
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 06:17:15.94 ID:6D3yk8U00
>>796

「はーいぅ」

【突然ちょっとまってくれといわれ,困惑しながらおとなしく待ってると】

「空き家?!無料の!?!?」

【突然の誘いに悩みながら】

「んー,悩むなぁー」
「家の中でカゴの中の鳥的な生活……飛びたいのに飛べない……ある日突然解放されて飛び立てるように……」
「伝書鳩……帰巣本能……そもそも固定の巣が必要……」

【変なことを口走りながらウンウン唸っている】
【一頻り悩んだ後,顔を上げてエルストンに】

「はいっ!それじゃあ,そのお家をもらっていいですかっ?」
「やっぱり,形から入るためにはイメージできる方法が一つでも多いほうがいいよねっ!!」

【ひよこはイメージから入るタイプらしい】
【最終的にイメージさえつけばなんでもいいのだと思う】
798 :エルストン ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/04/29(金) 07:09:04.15 ID:W+Hr4z950
>>797

【幼げな挙動の多かった少女が不意に口にして見せた意味深な言葉の羅列。それに若干の違和感を感じつつも、それは今ここで疑問に思ったところでしょうがないと判断し、彼は少女の返答に応じた。】

オーケイ!それじゃあホラ、そこのフェンスの向こう側を見てくれ。あの白い一軒家の左隣に2階建てのアパートがあるのが見えるだろう?
そこの2階、階段を上がって一番奥の部屋DA。ここからも見えるから迷わないだろう。
生活に必要な一通りのものは揃ってるから、あとは大家さんと相談して決めてくれ。わからないことがあったらいつでも聞いてくれYO!
あと親元を離れているんであれば、食事は自分でまかなわなきゃいけないZE。ガール一人では難しいだろうから稼ぎに困ったら連絡をくれたまえ。何か仕事を紹介できるはずDA。
それから、一通り落ち着いたらファミリーに連絡を入れるんだYO。きっと心配しているだろうからNE。

【彼はこの家出少女が相当に心配なようで、あれこれ注意や助言を付け加える。初対面の人間に対してなぜここまで関心を持つのかというと、それは彼がそういう性格だから、に尽きてしまう。】
【少女のひとまずの寝床を確保したところで、彼の仕事・・・家出少女の保護は終えられたこととなる。心配ごとは尽きないが、現状これ以上に自分にできることは無いと思い、彼は少女に向き直り。】

さて!そろそろ夜も遅い。夜更かしは筋肉だけでなく肌荒れの原因にもなるからNE。YOUも今夜はもう寝て、空を飛ぶための特訓はそれからにするべきだNA。
道はわかるかい?それじゃあここでお別れDA。OREも明日にトレーニングの疲労を残さないために帰らなきゃあNA。ギターの練習はあまりできなかったが、YOUと会えたことで良い歌詞が書けそうだYO!
さらば熱きソウルを胸に秘めたリトル・バード!成長した姿を楽しみにしてるZE。それじゃあセンキュウ、Good Bye(また会おう)!

【HAHAHAHA・・・高らかな笑い声と共にギタリスト風の筋肉男、エルストン・ボブディランは去っていった。】
【結局今夜彼は仕事をサボってギターの練習ついでに少女との交流をエンジョイしていたのだが、ともかく好き放題やって去っていった彼の背中にはある種の清々しささえ漂っていたのであった。】



/こちらはこれで〆となります、長時間お付き合いいただきありがとうございました!
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/04/29(金) 07:18:08.64 ID:6D3yk8U00
>>798

「はっ,はいっ!わかったっ!」

【あれこれ助言を付け加えられた内容を一つづつメモに取りながら聞いている】

「こんな夜遅くに色々してくれてありがとうございましたっ!!」
「エルストンおじさんっ,本当にありがとうございますっ!!」

【去って行くとき,いいのがしてはいけないと】
【少女は男の背中に向かって叫ぶ】
【いつかあのすごいおじさんに恩返しできるように頑張って空を飛べるようになろう】
【ちょっとずれている気もするがそんなことを考えるひよこだった】

//じゃあわたしも〆で!!こちらこそいろいろありがとうございました!
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/29(金) 21:58:52.16 ID:Kx/eXKtp0
【街のはずれ――海辺の砂浜】
【綺麗に澄んだ夜空が満天に広がる場所、明かりは少ないけれど、見下ろす月の明かりで最低限だけは見通せて】
【それでも振り返れば街明かりが見えるなら寂しい場所ではないように思えた。――ざんと波の音と、しゃらしゃら攫われる砂粒の笑い声を重ねて】

…………あれ、なんだろ、あれ――。

【夜更けの散歩めいてふらりふらり歩いていた人影がふっと立ち止まる、華奢な身体付きや腰まで届く髪の長さ、シルエットだけで、その性別は遠くからでも知れ】
【まして呟く声は高く澄んで鈴の音によく似ていた。 辺りを数度見渡してから少し躊躇うようにする、それでも、そのうちに興味に負けたように】
【それでも少しおっかなびっくりにも見える仕草で波打ち際――半分埋まっているような、"それ"を、細かい砂地からごそっと引き抜いて】

……壜? ――あ、! お手紙入れてるやつかな……。

【どうやら古びた硝子の容器、擦れたような傷とまとわりついた砂粒で中身はようくうかがえないのだけれど、】
【見つけた少女は首を傾げた数秒後にふと思いついた可能性にぱっとあどけない顔を輝かせ】

【――黒い髪を腰ほどまでに伸ばした少女。肌は色味を忘れてきたような白で、その頬は興味深いものを見つけた嬉しさに、微かに赤らんでいて】
【左右で色の違う瞳は左が黒くて右が赤い、どうやら右の耳には片方だけのピアスを身に付け。ちかりと月明かりに艶めくのは、小さな宝玉の欠片】
【黒いシャツに赤いジャンパースカート、腰元から一部が裂けた布地からは、細かい刺繍が丁寧に施されたペチコートが覗いていて】
【きゅとリボンで結んだ編み上げのサンダル、踵は分厚く高くて、靴底に彫りが仕込まれているのか、砂浜に残る少女の足跡には蔦もようがてんてんと残る】

ん、ん――、蓋が歪んじゃってるの、どうしよ、それに、なんか穴開いてるし……。

【まだあどけなさをたくさん残すような少女は、真っ白の顔がぱーっと赤くなるくらいに力を入れて壜の蓋をねじるのだけど、どうやら相手は素直でないらしい】
【痛くなったようにふらふらと手首を揺らす、言葉通りにでこぼこに歪んだ蓋は、並大抵の腕力で開く気はないと宣言していて、何より小さな穴ぼこは】
【多分中身がまっとうでないことも告げるのだけど――実際揺らすたびにちゃぱちゃぱと微かな音がしていたし――それでも少女的には、興味深いらしい】

岩――、岩かなんかに投げたら……。

【いかにも強行突破を目指して呟く、またもきょろきょろとしまくる様子は、遠目からでもちょっぴり、おかしくて】
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/29(金) 22:55:36.87 ID:Akx5g6RM0
>>800

―――投げつけるのか?

【潮風に乗って、背後から聞こえてくる声。少女の鈴の音のような声とはまた違う、透き通ったガラスのような声】
【振り返ればそこに、幼い少女の姿があるはずだ。13歳前後だろうか?けれど、歳の割には随分と大人びた雰囲気を纏う】

【まるで色を塗るのを忘れたみたいに白い肌。腰まで伸びる長い髪は銀色だけれど、ところどころに緑色が混じって】
【儚げな顔つきには、表情は浮かんでいない。……と言っても感情が無い訳ではなく、じっと見つめる瞳には、少女の行動を不思議がる感情が浮かぶ】、
【纏うのは、黒と白のモノトーンで纏められた丈の長いワンピースに、黒い靴。そして、手には……杖。魔法に使う杖ではなく、歩行補助のための杖。】
【歩行は杖をつきながらでないと出来ないようだ。足が弱いのだろうか……】

変わった人だ。拾ったビンを開けようと必死になってるなんて……ふふっ。
……どうして、開けようと思った?あ、いや。特に意味が無いなら無いで構わないのだが……

【面白そうにほんの少しだけ頬を緩めて、その行動の意味を尋ねてみる。落ちてたビンを、どうしてそんな必死に開けようとしたのだろうか……と】
【そんなことに興味を持つ自分も、大概変わっているのだろうと思いつつ、でも訊かずにはいられなかった】

//まだいらっしゃいましたら!2時が限界ですが……!
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/29(金) 23:17:42.93 ID:Kx/eXKtp0
>>801
/すいません、今気付きました! 今からレスするのでよければ、少しお待ちいただけたら嬉しいです……!
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/29(金) 23:19:55.63 ID:Akx5g6RM0
>>802
//了解ですよ!2時が限界で宜しければ……!
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/29(金) 23:28:11.17 ID:Kx/eXKtp0
>>801

【「ひゃあ」なんて声で少女の肩が跳ねた。実際はもっとなんというか複雑な発音、とうてい文字になど表せないような、ただの声の見本市】
【きっと背後からの声に驚いたのだろう。手ごろな岩でもあればぶん投げのちに叩き割ってやろうと気付けば壜は逆手に持たれていて、物騒この上なく】
【しゅばと結構な速さで振り向いて相手の姿を認め目を丸くしたのち、半身を返したきりで止まっていたのに気付いたか、いくらも遅れて身体ごと相手に振り返り、】
【それからまだ壜を物騒な角度で構えていたことを思い出した或いは気付いたように、ごまかすような笑みを浮かべながら、そっと、背中に手ごと隠し――】

あ、え、えっと、その、でこぼこだから、開かないなって思って……壜だから――割れるかな、って、その、

【壜を持った右手は背中の裏に。取り残された左手は指先で自身の頬に軽く触れたり、服装のむなもと辺りの布地をいじくってみたり】
【或いは少し長く垂れた、もみあげ部分の毛先をいじってみたり、して、少し言い訳がましく、澄んだ声のわりにはもごもごと言葉を転がしていたのだけど】
【そのうちに「ほ、ほら、」なんて風に言って、件の壜を相手にも見せるのだろう、隠した意味とは。なんて感じの行為だけど、対して隠した意味もなかったらしい】

【確かに見せる壜は 長い間海底かどこかで転がりまくって壜生を謳歌しまくっていたのだろう、辛うじて壜そのものは割れてはいないが、蓋はでこぼこになっていて】
【前述のとおり蓋には小さな穴まで開いている始末――相手に見せようとした少女の仕草だけで、中から小さく水音がする】

――えっと、あの、小さいころ、テレビで見たの、こういうの、でも、やったことないし、だから――、

【見せた壜を自分のそばにそっと戻す、まだ濡れた砂がまとわりつくのを、指先でそっとぬぐってやる。まるですり硝子のように傷ついた壜は、中もろくに見えないのだが、】

中がお手紙だったら、いいなあって……。

【年頃で言えば十六ごろに見える。童顔という扱いでいいだろう。それならもう少し幼くも見えかねない、彼女は、】
【本当に楽しみで興味をいっぱいに抱きしめるように、色違いの瞳をきらきらとさせて。月明かりに壜を透かしてみる、――或いは、目の前の相手よりも、子供っぽい】

/大丈夫です! よろしくおねがいします!
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 00:00:06.42 ID:GZGap70c0
>>804

ああ、すまない……驚かせるつもりではなかったのだが。

【物音に反応した猫みたいに、ビクッと反応した少女。素っ頓狂な声が、二人以外に人影も無い浜辺に響く】
【決して、驚かせて困らせようとか悪戯しようとか、そういうつもりはなかったのだが……】
【……まあ、こんな夜中に誰も居ないはずの浜辺で背後から声を掛けられれば、誰でも驚くか。】

【何か見られちゃ不味い物を隠すみたいにするけれど……拾ったビンにそんな不味い物が入っている筈も無いだろう】
【話を聞くに、ビンの中身が見たくて石で割ろうとしていたとのこと。なるほど、それで投げつけようとしたのか】

……そういうことか。
どこから流れ着いたかもわからないビンだから、遠い海の向こうの人の手紙が入っているかも……か。。

【見せて貰ったビンは、酷く痛んでいた。……そりゃあそうだろう、此処までずっと波に攫われて流れ着いたのだから】
【……中から水音がする。この分だと、中に手紙が入っていたとしても無事かどうかは分からないし】
【そもそも、中身が見えないから手紙が入っているかも分からない状態だが……でも】

……ふふ。奇遇だな、私もその中身を知りたいと思った。
どこかも分からない遠い海の向こうから流れてきたビンの中身……ふふ、なかなかロマンがあるな。
……開けて、中を見てみるか?あいにく私は力持ちではないから、ビンを開ける事には協力できないが……

【大人びた顔つきのこの少女も、好奇心は負けていないようだ。小さくニヤッと笑ったその表情には、楽しそうな色が浮かんで】
【……非力な自分には、開ける事に関しては協力は出来ないけれど……それでも、中身は見てみたいらしい】
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 00:16:12.32 ID:GPdyrEcS0
>>805

……そう! そうなの――、きっとね、遠いところから来た子なの、どこの子なのかは、分からないけど……。

【声をかけられた瞬間に跳ね上がったことも、とっさに壜を隠したことも、どうやら彼女は案外怖がりな性質らしい、と思わせるには十分で、】
【しかしてこの様子を見れば、ひどくひとなつこく、或いは好奇心旺盛で、それから、少し短絡的(或いは少し乱暴)なところがあるとも分かるかもしれず、】
【そして多分それが本当に彼女の性格らしいことも分かるだろう。つまり子供っぽさが目立つ、これで本当はとうに成人しているのだから――なんだか、もう、】

少しだけね、こうやって揺らすと、小さな音がするの。石ころかもしれないけど――、

【ちぱりちぱりと小さな水音、揺らしていると、そのうちに、何か小さく硬く、そして軽いものが、そっと壜の硝子にぶつかるような、そんな音がする】
【なんだろうと呟く鈴の音の声は、平常の彼女の声を知る人間なら、ものすごくわくわくとしていることに――いや、初対面だとしても、それはすぐに分かるだろう】
【穴――或いは裂けめ――は小さいから、そうそう石ころは入りそうにないところが、また、彼女の興味を誘うのだろう。誰かが、入れたものかもしれない、と】

じゃあ――! ……えっと、どうしよう、でも、この辺り、あんまり大きな岩とか、ないし……。
わたしも、昔だったなら、これくらいなら割れたかなって思うけど――もうできないの、だから、普通に開けるのは諦めて……。

【壜を持ったままで思案する。曲げた人差し指の関節で唇に触れる、辺りを見渡せば、相手も分かるだろう。この辺りに、いかにもこさえたような岩はなく】
【叩き付けるに適した玄能などもちろんあるわけもない。原始人よろしく大振りな石を叩き付けようにも、素手じゃあたいそう痛いだろうし、そもそも石も見当たらない】

わたしもね、開けたいの。ね、一緒に開ける方法、考えて欲しいな――、変な物入ってても、文句のいいっこなしだよ。

【ふふと少しいたずらぽく、或いはお姉さんぶるような声で、少女はそう持ちかけるのだろう。或いは、相手を共犯にしてしまおうという、悪い顔】
【それでも顔は幼くあどけなく声も高く澄んでいるからなんとも気が抜ける、左の黒眼を丁寧に閉じて、それから、なんならうやうやしいように壜を相手に差し出して、】

やってみる?

【と。とりあえず挑戦だけでもしてみたら、と、そんな風に言うのだった】
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 00:40:50.91 ID:GZGap70c0
>>806

―――む、本当だ。中に何か入っているらしいな……。硬い物だろうか……

【先ほどは大人びたなんて表現を使ったが、こうやって知らないものに興味を示すのは少女と同じらしい】
【やけに真剣な顔つきで、ビンの中から聞こえる音に耳を澄ませたりして……中に何が入っているのか考えてみたりして】
【そんな仕草を見れば、興味津々であることはすぐに知れるだろう。知りたがりなのだ、彼女も―――】

【しかし、中身を知るには開けなければならない。開けなけらばならないのだが……そう簡単には開かない】
【何せ蓋が歪んでしまっているし、割ろうにも一面だだっ広い砂浜に岩礁らしきものは存在せず割る事も出来ず】
【それならばと、一緒に空ける方法を考えようと提案される。……文殊の知恵には一人足りないが、二人で考えれば何か名案が湧くだろうか】

……む、考えるだけ考えてみようとは思うが……
私はただの非力な子供だ。特別な技能など何もないぞ?それでも良いのなら……

【渡された瓶を手に、真剣な顔で色々首を傾げたりして考え始めて……少女はまんまと思惑通り共犯(?)として巻き込まれるのだった】

【……しかし、困った。本当に己には何の技能も無い。力も無い。何か力を以て開けるというのは不可能だ】
【地面に置いて持っていた杖で叩き割ってみようとしたりするが、得られたのは手のしびれただけ。じんじんと響く感触に顔を顰めて】

……むぅ、私では力不足なようだ……。
せめて火でもあれば、熱膨張で割れたりするのかもしれないが……物理的な力だけでは、何とも。……貴女は、魔法は使えるのか?

【ビンを手渡しながら、火を起こせるかなんてことを尋ねるのだった。】
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 00:58:26.33 ID:GPdyrEcS0
>>807

【なんだろうね、と、呟く。 ぼうと少し熱に浮かされるような声音、これが綺麗に澄んだままの壜だったなら、こうはいかないだろう】
【決して見えない、けれどそこに何かの存在する気配がする。 わくわくする気持ち、本当に子供みたいに、少女はころころと表情を変えていて】

ううん、そんなことないの。子供ってね、大人は知らないこと、いろいろ知ってたりするんだよ。
それにね、したくないなーって思っちゃうようなこと、当たり前みたいにやっちゃったりするの。 わたしたちには、もう、できないことをね。

……あ、でもね、わたし、まだ虫とか捕まえられるよ。蝶々と蝉は、ちょっと、嫌だけど……毒のあるやつも――。

【特別な技能なんてないだなんて彼女は言うけれど、だけど、少女は、そもそも、子供であることこそ特別な技能だなんて、言いだしそうなくらい】
【何かいいことを言ったような軽めのどや顔で「わたしはもう大人だから」なんていうのだけど、どう見ても少女でしかない。少しの違和感と、】
【その割になんだか子供らしさで張りあおうとしてくる辺りが何とも奇妙な味わい。蝶は手に粉がつくから。蝉は捕まえると凄いうるさいから。理由はそれだけ、だけど】

【真剣な顔で悩み込む相手を見て、少し楽しそうにしているのだった。なんなら少女は開かない現状も楽しんでいるみたいに見える、目的は開封でありながらも】
【最終的にどうしても開けたいなら、砂浜から離れてそこらへんのコンクリに叩き付ければいい。それをしない辺り、わざと遊んでいる気持ちの部分も、あるのだろう】

火? 炎は……、わたしの家ね、ずっと昔から、水なの。だから、得意じゃなくって……、ライターとかも、持ってないし……、……。
硬いものも――持ってないし。頭突き……ううん、頭痛くなっちゃう。地面にぶつけても、砂だもんね、絶対割れないし――、

【魔法――或いは魔術の存在については否定しなかった。けれどそれは炎ではなく、むしろ対極にある力】
【言いぶりだとまじりけなく水を引き継ぐ家系であるらしい。もちろん、この少女が知っている限り、ではあるのだが】

……あ、えっと、そうだ。お名前、よかったら、教えて欲しいな。
わたしね、りんねって言うの。白神鈴音。

【何かを言おうとして、少しだまって、それから相手の名前を尋ねた。相手が察しのよいタイプなら、少女の訪ねようとしたことも、すぐに分かるのだろうか】
【あなたには何かそういう力があるの。そんなことを尋ねたかったのだろう、自分の胸にいまだ開いている左手をそっと添えて、そう名乗る】
【もしテレビをよく見る性質で記憶力がよかったりすれば、数年前のそのどこかで彼女を見たことがある……かもしれないけれど。まあ、それは、今関係のないこと、余談でしかない】
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 01:33:37.84 ID:GZGap70c0
>>808

そうか。……それなら、私は子供ではないのかもしれないな。
私は何も知らない。―――本当に、知らない事ばかりだ。……だからこそ、様々な事を知りたいと思うのかもしれないがな。

……生き物を捕まえてやるのは、あまり好きではないな。ああ、生き物自体は好きだが……
どうにも、捕まえて狭く限られた空間に閉じ込めるのが不憫でな。私には、自由な自然の中で眺めている方が性に合うらしい。


【子供が知らない事を知っているというなら、自分は子供ではないのだろう。……自分はまだ真っ白で、詰め込まれた知識以外は何も知らないのだから】
【知りたいと思う気持ちが湧くのは、きっと何も知らないからなのだろう。そんな事を想う少女は、やはりどこか子供らしからぬ雰囲気を纏っていた。】

【虫は嫌いではない。……というより、生きとし生けるもの全てに興味がある。命ある物の息遣いやうねりを感じるのが好きだ】
【けれど、捕まえるのは嫌い。全ての生き物は、自分の意志で生きるべきだと思うのだ―――決して、囚われた操り人形などではなく】

水か……だが、魔法は使えるのだな。立派な事だ……。
私は一般的な魔術は勉強中の未熟者だからな。きっと、余計にそう思うのだろう。
しかし、水でガラスを割るか……氷なら何とかできそうだが……ん?

ああ、貴女はリンネと言うのか。
私はレイナ。……レイナ・シャリエール。――――ふふっ、この名を名乗るのはまだ慣れないな……

【テレビは見たことが無い。……というより、生まれてからつい最近まで外部からの情報を一切知らずに生きてきたから、鈴音のことは知る由も無く】
【――――だが、逆に鈴音は彼女の名前……正確には姓を聞いた覚えがあるかもしれない。】
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 01:52:13.47 ID:GZGap70c0
//事前にお伝えした通り、そろそろ時間が無くなってきました……!
//今日も20時以降ならまたお返事が可能ですので!
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 01:54:11.93 ID:GPdyrEcS0
>>809

【「だけど、」と、鈴の音が前置きを一つする。身長は(ある意味)無駄に百六十もある少女は、これまた無駄に、高い靴を履いているから、】
【しゃんと背筋を伸ばして見せれば、顔や振る舞いのわりには妙に大人びて見える不思議。さっきもしたように、彼女はくすんで砂まみれの壜を月に透かすと、】

いろんなこと、知りたいでしょ? きっとね、これから、いろんな大人たちが気付かないこと、いっぱい気付いて、知っていくんだと思うの。

【ふふ、と、少しだけからかうような、或いは自分だけ愉快がっているような、そんな風に笑う。嫌味ではない、きっと、本当にうらやんでいるように】
【けど次の瞬間には、「ひとまず、これの中身が知りたいよね!」と再び子供ぽい声で目をきらきらさせて蓋と格闘しているから、なんとも威厳はなくて、また力加減に頬が赤くなる】

わ、で、でも、わたしも、最近はあんまり捕まえてないの、お家にペットの子たちなら居るけど――、あの、ね、友達……ううん、知り合いの子が連れて来るの。
いきなり連れて来るからね、可愛いけど、ちょっと困っちゃうの……だからね、もう駄目って言ったんだ。

【――なんてことをしていたら、少し予想外の言葉が、少女の子供っぽい部分に案外刺さり込む。一瞬うろたえたようにして、けど、だなんて言い訳】
【虫とかはあんまり捕まえてないらしい。ただ家に飼っている動物はいるらしく、ペットという言葉は少し違うように思っているようなのだけど、】
【分かりやすく言えばペットだろう。なんだろう、気持ち的には、家族……というか、同居している友達、みたいなものと思っている】

ううん、わたしなんてまだまだなの、教えてもらってるばっかり、まだまだできないことの方が多いし――、え、あれ?

【魔法と魔術の区別の付け方。例えば彼女でなければ分類出来たのかもしれないけれど、この少女ではどうにも難しいらしく】
【つまり魔術は教わっているけど能力は生まれついて持っている。なんて言いたかったのだけど、それより、言葉は途中で途切れてしまって】

レイナ……うん、レイナ、……、……。

【ただでさえ丸い目をいっそう丸くして、色違いの瞳がじっとレイナを見つめるのだろう。少し驚いたような――というより、理解が追い付いていない、ような】

あ、でも……うん、そっか、――うん、

【けれど数秒ほど少し不可解な顔をしただけで、すぐに何かを理解したか、納得したらしい。それはもしかしたら違う納得なのかもしれないけれど】
【彼女が思うに、この前マリアに会ってから(或いはそれより前かもしれないけど、)養子的な……何かそういったものでこのレイナを、と、】
【そういう認識をすることで納得したのだった。……その分野にはあんまり明るくないから、まあ、あくまで漠然としたイメージでの、納得なのだが】

じゃあ、とりあえず……わたしの持ってるもの、出してみよっか、何か開けるヒントになるかもしれないし――。

【よいしょと持っていた鞄を持ち出してみる、なんだか、ある意味、サバイバルみを帯びてきたというか、方向性がぶれだしてきた予感が、しないでもなく】

/そろそろ時間ですけれど、どうしましょうか! 明日でしたらフリーの予定なので、出かける予定が入らなければお昼頃から再開できるかと思うのですが……
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 02:09:15.69 ID:GZGap70c0
//お昼でしたら、15時頃に可能です!
//18時から21時まで一旦落ちることになりますが……
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 02:16:12.21 ID:GPdyrEcS0
<<812
/了解です、できるだけ見てるようにしますので、レス返していただければ、気付き次第再開ということでお願いします!
/明後日が朝早いので、あんまり遅くまでは出来ないのですが……置きも大丈夫なので、その場合は言っていただけたらと
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 10:47:39.66 ID:GZGap70c0
>>811
……ああ。私は、色んな事を知りたい。色々な物事をこの目で確かめたい。
世界は私が思っていたよりも随分と広いようだからな。きっと、数えきれない程知らない事もあるのだろう。
ふふ……そう思うと、少し心が躍る。私はこの先何に出会い、何を知るのか……楽しみだ。

―――虚飾の女王として与えられた玉座に坐しているより、唯の少女として広い外を歩く方が余程楽しいな。

【これからきっと、様々な事を見聞きして知っていくのだ。そう言われると、心なしか嬉しそうに表情を緩めて】
【それから、水底のように深く澄んだ瞳で鈴音を見つめる。―――ああ、きっと女王≠フままでは彼女にも出会わなかったのだろう】
【鈴音には意味が解らないかもしれない言葉をつぶやいて、小さく微笑む。自分自身として生きる事の楽しさを感じながら―――】

【それから動物の話や魔術の話を交わしつつ、途中で自己紹介……なのだが。自分の名前を名乗れば、鈴音が驚いた表情をする】

……うん?私の名前が、どうかしたか?
……?

【鈴音は数秒の後に、納得したようだが……今度はレイナがその不可解な顔に対して不可解そうな顔をする】
【初対面の筈だが、自分の名前に何か不思議な点でもあったのだろうか、と。……よもや母親の知り合いであるとは思いもせず】
【一体何を不思議がっているのだろうかと、レイナもまた不思議がっているのだった】


【とりあえずこのままでは埒が明かないという事で、使えそうな道具を考えてみようと鞄を開ける鈴音】
【そっと、鞄の中身をのぞき込んでみる。さて、一体どんな道具が入っているのか……】

//かなり早いですがお返ししておきます!安定してお返事できるのは15時ころかと……
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 11:45:14.08 ID:GPdyrEcS0
>>814

わたしもね、ずっと昔は誰とも喋ったことがなくて、名前を呼んでもらったことも、ないころがあって――だけど、いろんなひとと会うようになって、
悲しいことも嫌なこともたくさんあったけど、……ううん、それしか、覚えてないけど……、間違えたとは、思ってないの、だから……、だから?

レイナもね、いろんなところに行って、いろんなひととお喋りして、――えっと、いろんなこと、知ったら、いいと思うの。
怖いこととか、辛いこととか、あるかもしれないけど、……いろんなところに行ったり、いろんなひとに会ったり、そういうのが、きっと、助けてくれるの。

【それこそレイナの見た目のような頃、やっと十歳を超えて、十二、十三くらいの年齢だったころ。彼女は、だれにも名前を呼んでもらったことはなかったし】
【だれとも喋ったこともなければ、当然抱きしめてもらったようなこともなかった。路地裏の冥い場所で捨てられた食べ物を拾って生きていたような、そんな頃】
【ほんの気まぐれだったのか、どうだったのか、もうよく思い出せないけど。いろんなひとと関わるようになって、いろんなことがあって、だけど、】
【今の自分で納得はしている。だからレイナにもいろんなことを知ってほしいと思う、――少し口が下手なようだけど、】
【直接的でこそないものの声音は案外やさしく、こうして会った自分も、何かあったら助けてあげたいと思っている、なんて、そんなことを言っていて】

【虚飾の女王についてはよく分からなかったらしい。ただ、続く言葉には、目を細めるようにして、小さく笑う】
【相手の嬉しそうな顔につられたのだろう。女王であった経験なんてない、けど、ただの少女として生きる嬉しさを、きっと自分は知っていたはずで】
【覚えてないからこそ、それが楽しかったのだとも推察できる。――プラスの記憶がほとんど消えている、なんて、些細な話だろう】

ううん。知り合いのひと……、わたしのやりたいこと、応援してくれる、大切なひと。そのひとのこと、思い出したの――、

【関係性がまだよく分からない。だから彼女はそう微かにぼかすにとどまって、見せる鞄は、洋服に合わせた色味の、落ち着いた黒色の、赤の差し色が地味すぎないもので】
【中と言えば、かわいらしいデザインの財布、化粧品の小さなポーチだろうか、ほかには手帳と、飴玉が詰まっている巾着袋、食べさしの苺味のグミと、飲みさしのペットボトルと、】
【ああこれ別に特別なものなんて入ってなくて、まあ当然ながら壜を粉砕突破するための道具など見当たらず、言いだした彼女も、なんにもないね……などと呟く仕上がりレベル】
【強いて言えば、ペンなんて入っていない半分透けるプラスチックの筆箱があって。レイナには気付けるだろうか、強い風の魔力――を宿した、紫色の羽根が大事にしまわれている】
【わざわざ専用の入れ物を与えられた羽根。また強い魔力を持っていることもあって――平凡な鞄の中では異質、としか言いようがない、ほど】

/お返ししておきます、返レスはそちらの都合のいい時間で大丈夫ですので!
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 12:46:51.94 ID:GZGap70c0
>>815

【鈴音という少女の言葉には、決して思い付きや出任せの言葉では持ち得ない重い実感が籠っていた。】
【それは、きっと彼女の歩んだ人生に裏付けられた言葉。だからこそ、確かに伝わるモノがあって】
【だからこそ、その言葉を正しいと思えた。―――人との繋がりは己を助けてくれるという、その言葉を。】

【自分よりも長い時間を生きたであろう人生の先輩からの言葉を、レイナは静かに受け取った】
【辛い事や苦しい事があっても助けてくれる人がいる―――その人の中には、鈴音も入っているのだろう】


……そうか。
やりたいことを、応援してくれる人か。ふふっ……私の母上のようだ。
「貴女は貴女の思うように生きなさい。私がそれを支えてあげますから。」と、口癖のようによく言われる。

どれも、瓶を開けるというその一点では役には立たないようだが……ん?
……これは、羽根か?瓶を開ける役には立たないだろうが……何だろう、この強い魔力は。
瓶を開ける方法も気になるが……鈴音、私はこれも気になるな。一体これは何だ?言えない秘密ならば言わなくても良いが……

【彼女の表現する大切な人に己の身近な人との共通点を見つけて、面白そうに小さく笑う】
【母親が背中を押してくれているから、今自分はやりたいことをやれている。有り難い事だ】

【鞄から出てきた雑多な日用品の中には、ビンを開けられそうなものは無かった……のだが。一つ、目を引くものが存在した】
【好奇心の対象は、その不思議な羽根に寄せられる。強い魔力のこもった羽根、しかも大切に梱包されている……大切な物だろうか】

//ありがとうございます、とりあえずお返ししておきますね!
//今から少し出かけるのですが、15時くらいに帰れると思っていたのが16〜17時辺りになりそうです……間違いなく17時には帰れるとは思いますが!
//それと、夜の予定が無くなったので17時以降はずっと大丈夫です!急に予定が変わってしまい、申し訳ないです……
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 13:08:47.87 ID:GPdyrEcS0
>>816

【レイナの言葉に、ほんの刹那のみ、わずかに目を丸くした彼女は、次の瞬間には、嬉しいような、安堵するような、なぜか少しだけ照れるようにも、柔らかく笑う】
【やはり思い浮かべるのは同じ人物かという確信めいた感覚と、自分の知らない場所でもやはりそういうひとなのかという、どこか新鮮なような、発見と】

……え? あ、うん、これね、いつも持ち歩くようにって言われてるの、ええっと、……知りあいの子に。
その子は普段遠いところに居るから、何か用事があったら、これで呼べって――あんまり使ったこと、ないの。……だって、気付いたらお家の中に居たりするから。
鍵は渡してあるけど……きっと、使ったこと、ないし――、あ、ううん、これもね、多分、瓶を開けるのには使えない……かも?

【むしろ彼女はそれを入れていることさえ、忘れているようだった。言われてようやく気付いたようにぱちくりして、そういえば、という顔をする】
【それほどに当たり前のもの、それか、どうでもいいものなのだろう。実際、なんの問題もないように説明する限りでは、そう特別な物ではないように思え】
【つまりどこぞの誰かを呼びつけるための物、らしい。そしてそのどこぞの誰かというのは呼ばずとも頻繁に顔出しするようで、少し拗ねたような顔をするものの】
【それこそ話の脱線だと気付いてか、ぱたんとペンケースの蓋を開けて取り出してみる。大きな羽根だ、鳥で言えば、鷹ほどもありそうな――色味は鮮やかな紫色で】
【すなわち普通の鳥のものではない。いくら鳥といえども、こんなに鮮やかで魔力のこもったものは、なかなか居ないだろうと思えるから】

――レイナは何か、持ってる?

【そういえば、鞄の中には薄ぺらな携帯端末も入っていた。だけど、それも対して意味はないだろう。後は家の鍵も――か。これも、別段意味はなく】
【レイナが羽根に興味があるというなら渡しさえもするだろう。受け取るか受け取らないかは別として、渡すかしまうかで彼女はまた手を空っぽにすると】
【鞄をごそごそと漁ってみるのだけど、何もでてきやしない。ううんと小さくうなるが、特別なものを入れた記憶がないので、さも当然の結末でしかないのだけど】

【――もしも羽根を受け取ったなら、まだそれについて話してもいいのかもしれない】
【空高くで吹き抜けるような奔放さも、誰にも等しく吹き付ける平等さも、南風や北風の温度も持ち合わせるような魔力はひしひしと強く、】
【持っているそれだけで緩やかな風の吹くのを感じるかもしれないほど。――或いは、眼前の少女がきっと自身のであろう水の魔力の中に、微かにではあるものの】
【羽根に宿るのと同じ色味の魔力を隠し宿していること。――なんて、ほかにも、気付くことがあれば尋ねてみるのも、いいかもしれなくって】

/了解しました! ではそのあたりに待機しております。
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 16:55:56.46 ID:GZGap70c0
>>917

【その羽の正体は、誰かを呼び出すためのマジックアイテムらしい。なんでも、いつでも持ち歩くように言われているのだとか】
【……心配症なのだろうか。何かあったらいつでも駆けつけるように持たせている、という事なのだろうか……?】
【話を聞く限り、呼び出すまでもなく自由に家に出入りしたりと、随分と気心が知れているのだろう。……鈴音は少し不満そうだが。】

【流石に鈴音の為と思って与えたであろうその羽を受け取るのは憚られるが、手に取って見るくらいはしてもいいだろう】
【……随分と大きな羽根だ。野生の鳥ではありえないほどに強い魔力を感じる。唯の鳥の羽根ではないというのは十分に分かる】


ん、私か?
……そうだな……杖と、財布と、イマイチ使い方の分からぬ携帯電話くらいだ。瓶を開ける役には立たないな。
うむ……少し待っていろ。家から何か使えそうなものを取ってくる。

【見れば分かる通り、レイナも特に何か特別な物を持っているわけではない。杖と、財布と、携帯電話と。持っているのはそれだけ】
【このままではどうしようもないと感じたレイナは、少し考えた挙句に家から道具を取ってくると言い出した】
【だからといって、今から家まで歩いていく訳ではあるまい。そんなことをしていたら夜が明けるだろう……。ならば一体どうするのか?】

【―――レイナは、何か呪文を呟く。すると、誰かがよく使う転移魔術が展開され……光と共に彼女の体は消え去り】
【それから1分程後、彼女は再び同じ場所に光と共に現れる。手には、日曜大工でよく使われる金槌が握られていた】

……私もその瓶の中身は是非見てみたいのでな。さあ、これで叩き割るのはどうだろう?


//ただいま帰りました!

819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 19:12:41.70 ID:GPdyrEcS0
>>818

【確かに彼女は不満げであるが、それは、ずいぶんと機嫌のいい様子で、心底反吐が出ると吐き捨てるほどでは当然なく、むしろその人物を好きであるのだろう、と、】
【きっとそのうちに羽根を返却してもらえたら、また半透明の筆箱にしまい込む。特別大切そうな手つきではないが、けっして羽根がよじれるような手つきでもなく】

そっかぁ……――、え、あ、わ、わたし行くよ? レイナはここで待――、

【相手の鞄の中身を聞いて、ちょっとした吐息まじりに、どうしようかなぁ、なんて風に、彼女は呟く】
【そんな様子で居たら、レイナは家から何かを取ってくる、だなんて、言いだして。慌てたように言いだすのだけど、その時にはすでに遅く】
【そうも言うだなんてお互いに家が随分と近いのか、……と思えば、そんなこともない。レイナは転移魔術を使うし、自分だって、そのつもりであって】
【少し慌てたからだろう。転移の魔術には既視感こそ覚えるが、誰の――とまでは、すぐに思い当たらずに】

……もう、ありがとう、これできっと、開くね。

【さすがにちょっとふざけすぎただろうか、と、申し訳ないように眉を下げる。開けるのが目的だが――随分と遊んでいた、自覚をちょっと、唇と一緒に噛んで】
【それでもありがとうと笑って、言葉を終える。そのころには、また、最初の子供っぽさを思い出したよう、目をきらきらとさせていて】
【外気に乾いてきた砂粒のこびりついた壜、硬い殻と小さな水音――は、どこか、蝶の蛹を連想させるみたいで、静かに、改めて世界に生まれ出るのを待つように】
【ぱぁとした笑顔でレイナが持ってきた金づちに手を伸ばす、……けれど、ふと、思い立って。というよりも、急に、お姉さんぶったようにして、】

それとも、レイナが割る?

【だなんて、尋ねるのだった。子供っぽく手を伸ばしはすれど、自分にあの羽根を押し付けた誰かさんみたいでなければ見た目通りの子供であろう、レイナから】
【その役目を黙って奪ってしまうほどは、子供ぽくもなく。なんせ道具はレイナのものである。レイナがやりたいというのなら、彼女はその役目を譲るだろう】
【もちろんレイナがやりたいと言ったとしても、妙な顔などしない。当たり前に渡すから、最終的な話では、誰が開けても開くのだし――ということ、なのか】

/ごめんなさい、4時半くらいまで記憶があるんですけど、寝落ちしてたみたいで……!お待たせしてしまいました……
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 19:46:37.81 ID:GPdyrEcS0
/たびたび申し訳ないです。食事のため少し離席します……!
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 19:48:15.51 ID:GZGap70c0
>>819

【よく考えれば、杖をつかなければ歩くことが難しいような少女がこんな辺鄙な浜辺に一人で来れるはずも無い】
【ならば、此処にもその転移魔術を使って来たのだろう。足が不自由な彼女にとって、その魔術は重宝していた】

【余談。なぜこんな場所に来たのかというと、実は人目のつかない場所で歩く練習をしたかったという事情があった】
【砂浜ならば転んでもさして痛くはないし、個人的に波音や潮風が好き。そんな訳だから、歩く練習の場所に浜辺を選んだのだ】
【そして、そこに偶然鈴音が居た、という訳だ。】

いやいや、礼には及ばん。私だって、この中身を見たいのでな……

【兎にも角にも、レイナは間もなく戻ってきた。】
【申し訳なさそうにしている鈴音に対して、「どうしてそんな顔をするんだ?」とでも言いたげな表情を浮かべて】
【今までの行動に疑問を抱かない辺り、案外彼女もノリノリだった様子。遊ぶのも、嫌いじゃない】

【さて。いよいよと言うべきか、瓶を開ける時が来た。レイナもまた、未知の中身には少なからず興味を持っているようで】
【鈴音ほど明らかに目を輝かせたりはしないものの、じっと瓶を見つめる目つきには好奇心が見え隠れしている】

【金槌に手を伸ばす鈴音の楽しげな笑顔と、そのあとに急にお姉さんぶって譲る様子のギャップがなんとも可笑しくて】
【レイナは可笑しそうにクスリと微笑んで、「いいさ。瓶は鈴音が見つけたのだから、鈴音が割ればいい。」と金槌を渡す】
【きっと、年下の子供である自分の事を想って譲ってくれたのだろう。幼さやあどけなさはあるのに子供に優しい、不思議な人だ】

【―――さあ、いよいよ瓶の中身を見る時。何が入っているのだろうか……?】

//いえいえ、大丈夫ですよ!
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 21:43:42.42 ID:GPdyrEcS0
>>821

【レイナの事情を、彼女は知る由もなかった。ここに居た理由と言えば、ふと、海へ行きたい気持ちになったからだ】
【その理由というのも説明するのは難しい、なんていうか、なんというか、なんとなく――海に来たくなったのだ。貝殻が拾いたかったのかもしれない】

…………え、う、ん、――じゃ、じゃあ、わたし、割るね? 

【レイナが受け取ることをある程度前提にしていたらしい彼女は、その役目を譲られて、気を使われたように少し感じるのだけど、】
【そこで押し問答を始めるのは時間がもったいないし、――やっていいと言われれば、やりたかった。やっぱり、その中身はだいたい子供であって】

【金づちを受け取ると、彼女はきょろきょろと辺りを見渡して。それからやがて足元を靴でなんとなく平らに均すと、そこに壜を置いて】
【「割るね」なんて囁くよな声で言う。その声は分かりやすく高揚していて、――がつん。一度目は、下が砂なこともあってか衝撃を殺され、割り損じ】
【二度目でびしりと罅が入る。案外丈夫な壜だったのかもしれない。だから、蓋こそ歪み裂けたが、壜そのものはこうして健全であって――三度目】

――わっ!

【ごちゃん、と、濁った音で、ついに壜が割れ砕けた。金づちの頭はさっきまで壜の内部空間であった場所に入り込んでいて】
【中身を壊してしまうかもしれないと慌てたのか漏れる声、割れた壜の中からは少量の海水がじわっと流れでて、乾いていた砂をわずかに黒く染め】
【金づちを横に置いて、割れた硝子の破片を気を付けて取り除く。――ちなみにレイナが触ろうとしても、危ないから、と、手で制するのかもしれない】
【ひとまず大まかな欠片を退かすのまでは自分でやろうとするはずだ。(酒場でバイトなんてしているから、割れた硝子を拾うのも無駄に上手い、のかも)】

う、ううん、お手紙みたいなの、入ってないね……、海の中に居たから、腐っちゃったのかな――。

【そうしてあらわになる中身は、きっとボトルメールを相手にしては思い浮かべないような、 なんというか……しばらく海の中に居た感のある、汚さ】
【謎の気持ち悪い生物なんかは入っちゃいないけれど、何かよく分からない沈殿物のようなものがあったり、砂が出てきたり、ロマンチックなものは一見してはなく】

それとも、ただの壜だったのかな……。

【――残念そうに眉を下げる。誰かが偶然落とした壜なのかもしれない、と、呟いて。小さな吐息ひとつ、こんなものなのか、と、現実を受け入れだしたところに】
【多分、彼女からは見えない角度なのだ。しかし、レイナの立ち位置からは見えるものも、あるだろう】
【砂にまみれて半分埋まる中に、何かが光っている。手を伸ばすなら、誰もそれを邪魔しないだろう。――ボタン、だろうか。埋まっていたのは、親指大ほどのボタン】
【多分材質は貝殻で、不思議につやつやと虹色の艶めきを持った、ボタン――それが、いくつか、転がっていて。或いは、それ以外の――例えば硝子玉なんかもあるのかも】
【すぐに見当たるのは件のボタンだけ。けれどそれ以外の、子供の宝物のような品々を"発掘"するのは。きっと大人である彼女ではなく、子供であるレイナが発見する、】
【そんな工程が必要なのかもしれなかった。――だって、子供は、大人の見出しもしない宝物を見つけ出す、その天才なのだから】

/申し訳ないです、非常に遅くなりました……!
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 22:22:56.24 ID:GZGap70c0
>>822

【見るからにわくわくしているのが見て取れる鈴音。その分かりやすい表情を見るに、きっと素直な人なのだろう】
【―――なんて思っているレイナだって、平静を装いながら楽しげな微笑みが隠せていないのだが。】

【二度叩いても割れなかった瓶。叩いたのが非力な女性であるという事を差し引いても、その頑丈さはなかなかのもの】
【なるほど、こんなにも頑丈だったから長い時間波に晒されても平気だったのだろう。製作者の腕が良かったのか】

【けれど、それも三度目には割れた。見えなかった中身が、ついに明らかになる――――と、その前に】
【砕けたガラスの破片を除く鈴音。危ないと言って破片を触れさせない、少し大人らしい一面も見せて】

―――うむ……少なくとも、中身は手紙ではないようだな。

【……結果として、中身は何とも言えない澱みとか砂とか。少なくとも遠い誰かからのメッセージでは無かったらしい】
【落胆したような表情を浮かべる鈴音。彼女は手紙が無いと分かったところで、瓶の中身に注目するのを辞めたようだが】

【―――けれど、レイナは手紙が無かったと分かった後も、まだその瓶の中身をまじまじと見つめていた】
【「何かあるかもしれない」と、子供らしい好奇心を失っていなかった。そして―――その好奇心が、何か≠見つける】

――――これは、……ボタンか?綺麗な色……。
こっちは……銀貨?見たことのない紋様だ……あ、硝子玉も。

鈴音、見ろ!手紙は無かったが……綺麗なボタンだぞ。こっちは、見たことも無い異国の銀貨だ。
普通、瓶にこんなものは入っていないだろう?きっと、誰かが入れて流したのだ!
誰が何のために流したのかは知らないが……きっと、何か想いを込めて流したに違いない!

【相変わらず控えめに、でも確かに目を輝かせて嬉しそうに発見≠報告するレイナ。その姿は確かに子供の姿そのもので】
【―――偽りの玉座に飾られていた女王ではなく、一人の少女として自分の人生を生きる姿でもあった。】
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 22:43:47.46 ID:GPdyrEcS0
>>823

【手紙は腐ってしまったのだろう。きっと、蓋に穴が開いていたからこそ、そう思ってしまったのだろう】
【残念がりながらもこういうものだと思ってしまう、いかに子供ぽい性格をしていたとして、二十二年生きたという事実はたいして変わらないなら、】
【そう思ってしまう思考回路はある程度仕方なくもあるはず、過度に期待すれば痛い目を見る、諦めることも必要である、――身に染みている】

【だけど、だからといって、彼女が諦めた後もレイナがじっと中身を見ていたことも、間違いではないのだ。どちらも間違いではない、ただ、少し違っただけ】
【結果として彼女一人であればたくさんの宝物を見つけることはなかっただろう。だから――これを宝物の詰まったボトルメールにしたのは、まさしくレイナであって】

……――、?

【ああそう言えばこんな時間にレイナは出歩いていてもいいのだろうか。中身不明のボトルメールという高揚の褪めた彼女はごく自然にそんな思考へ以降していた、】
【タイミングを見計らって訪ねよう、必要なようなら家に……いや、転移の魔術があるなら大丈夫だろうか。そんなことを考えていたら、レイナの声が耳に届く】

――わ、あっ……、凄い、こんなにいろいろ、入ってたんだ――ちっとも気付かなかったの!
うん、きっと、誰かがこれを入れて、流したの、きっとそうだね――、 だったら、やっぱり、お手紙も……入ってたのかも――。

【始めはきょとんとして覗き込んだ、その先には、さっきまで自分が見ていたはずの壜の中身。砂とか硝子の破片しかなかったはずの、場所】
【言われて気付けば不思議な色に艶めく貝殻のボタンに、見たこともない硬貨。綺麗な色の硝子玉――レイナの言う通り、到底自然には入り込まないものたち】
【となればこれはやはり誰かが流したのだとレイナの気づきに少し遅れて気付く。ぱぁと再びあどけなく顔を輝かせて】

…………ふふ、レイナのおかげだね。わたし一人だったら、きっと、見つけられなかったの。
これを流したひとと、レイナと、二人が居たから、わたし、今夜はとっても楽しくて、嬉しくて、しあわせなの。

【それからレイナに笑ってそう言うのだ、言葉の少し大人びた様子と、仕草や表情の子供ぽさと、どちらもがそこにある様は、見た目通りの少女のような】
【少女としての数年間にのみ許される、未熟な、だけれどとても大事な時間。本当はとうに過ぎ去ったはずの時期だが、その時間に縛り付けられたままの存在として】
【まあ言動が子供ぽいのは性格というので言い訳が利かないのだけど――とは余談、と、】

あ――ねえ、レイナ、シーグラスって、知ってる?
浜辺に流れ着く、壜とかの硝子の欠片のことなの。海でずうっと転がってるから、丸くなって、とてもかわいいんだよ。
……でね、この欠片。流したら――今日のわたしたちみたいには足りないかもしれないけど、誰かが、また、わくわくしたり、喜ぶかもしれないって思うの。

【「よかったら、しない?」】
【と、尋ねて悪戯ぽく微笑む。どうせ割ってしまったのだ。ここに放置するわけにはいかない、砂浜だなんて、はだしで歩くひとだって多い】
【それならどこかに捨てるしかない、と、それなら――海に流してしまえば、ころんと丸くてかわいらしい、シーグラスになるんじゃないかと、思ったのだ】
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 23:22:31.56 ID:GZGap70c0
>>824

【二十二年の経験は、時にはこういう事もあると諦めるという潔さを生んだのだろう。けれど】
【レイナにはそんなものは持ち合わせていなかった。なぜなら―――彼女はまだ子供だったから】

【見つけた宝物を、嬉しそうに見せる。決して期待外れなのではなかったと報せたくって】
【その瓶が誰かの想いを乗せたものであったという事を教えてあげたくて……声を弾ませる】

手紙は無かったが……でも、これは確かに誰かが流した瓶だ。
この銀貨も、このボタンも、きっと遠い海の向こうで、誰かが何かを想って入れたのだ。
……今、この瓶を流した人は何を思っているのだろうな。
私達に拾われているなんて、思ってもいないだろうな……

そうか。私が居たから幸せ、か。ふふっ……あぁ、人とつながるとはこういう事なのだな?
うん……悪くない気分だ。

【鈴音の言葉には、子供のような純粋さと大人びた穏やかさが同居している。大人でもあり、子供でもある、そんな印象】
【……やはり、不思議な人だ。あどけない表情を見せたかと思えば、落ち着いた顔も見せるのだから。】

【自分が居たから幸せ。その言葉に不思議と胸が温かくなるのは、何故だろう。……でも、悪い気分ではない】
【両親以外で感じた、初めての温かみ。……これが、誰かとつながるという事なのだろうか。】

シー……グラス?なんだ、それは……あぁ成程、波で風化したガラスの事か。
……ふふ、そうか。それでは、このガラスがまた誰かの宝物になるかもしれないのだな?

うん、いいかもしれない。誰が拾うのだろうな?顔も名前も知らない誰かがこれを拾うかもしれないと思うと、感慨深い。
……ああ、あの瓶を流した人もこんな事を思って流したのだろうな。ふふっ……

【ニヤリと微笑む、その表情は同意と受け取って良いだろう。これが誰かの宝物になるかもしれないなんて、なかなか素敵じゃないか】
【尖った鋭利なガラスが、波風に晒されて丸く優しくなる。まるで、人間のようだな……なんてことを思いながら】
【レイナは、鈴音と一緒にガラスを海に流す。……さて、この破片が拾われるのはいつになるのだろう。】


【さあ、瓶の中身も分かった所で、そろそろ時間だ。あんまり遅いと心配する人がいるから……】
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/04/30(土) 23:44:12.38 ID:GPdyrEcS0
>>825

【レイナが嬉しそうに見せる宝物を、彼女はこちらもまた嬉しそうに目をきらきらとさせて見るのだろう。銀貨など、「どこのだろう……」と呟いて】
【「どこのか調べてみるのも、楽しいかもしれないね」なんて、呟くのだ。せっかく縁があった物なのだ、相手がどんなひとだか、知りたいと思うのも悪くはないはず】
【まさか会える奇跡は難しいだろうけれど、もしかしたら国や地域や年代くらいなら分かるかもしれない。……もしかしたら、ものすごく昔からの物なのかもしれない、と空想】

ふふ、どうだろうね? 会えたら、お話が聞けるのに――残念だなって思うの、きっとね、そのひとは、手紙も入れたよね。
わたしだったら、入れるもの。知らない誰かへ、わたしの宝物を入れておきます、お返事ください……って、きっとね、書くと思うの。

そうなの、この壜を流したひとをわたしたちは知らないし、きっと、会うことも難しいけど……そのひとが居て、壜を流してくれて、
わたしが拾って……レイナが居てくれて、わたしが見つけられなかったものを見つけてくれて。

わたしだけだったら、ただの壜だったと思って、あんまり探さないで捨てちゃったかもしれない。……わたしね、お店でお料理作ってるから、あんまり手を怪我したくないの。
だけどレイナが居てくれたから、こんなに素敵なもの、たくさん見つけたよ。――そうだ、お家に持って帰って、"お母さん"に見せてあげたら、どう?
きっとね、喜ぶと思うの、――ふふ。

【本当に残念だ。こんなに素敵なものを入れてくれたひとの、その気持ちを知ることが出来ないのだから。男のひとか女のひとかさえ、分からないのだから】
【だけど、知りえないひととの、これも出会いで繋がりだろう。もちろん目の前でこうして話すレイナとも、また、見えない何かが繋がって】
【それからまたいたずらぽく笑う。けれど今度のいたずらはレイナに向けてではない。――そういう意味で、彼女はまたレイナを共犯にしようとする、悪い子だ】

……うん。波と、砂とで、こんなに尖った破片だって、丸くなっていくの。
きっと、硝子も海の中でいろんなものと会うんだよ、波も砂も、その一つなの。
魚とか、貝とか、わかめとか……そういうものとかとたくさん会って、ゆっくりゆっくり、時間をかけて丸くなっていくの。

【ひとつ欠片を拾い上げる。ひときわ大きな欠片は、擦れた表面と透き通る断面、或いは裏面が二面性を持つようで、なんだか心のある生き物のよう】
【けれど長い時間を旅してきたのだから、もしかしたら本当に心を持つのかもしれない。なんて、想像だけど――この子たちもまた海の中でみんなに会うだろう、と笑って】
【二人で硝子片を海に流す、波が引いた時には、もう、それがどこにあるのかもわからなくなって】

よし、……ねえレイナ、もう遅いから、レイナはお家に帰らなくっちゃ。お家の前まで、一緒に行く?

【硝子片を集めたことで手についた砂粒をぱたぱたと拍手するような仕草で払う。それから提案するのはもう帰ったほうがいいと、年長としてある種当然の言葉】
【むしろ今までテンション上がってしまって忘れていたことの方が問題なのだけど。目線を合わせるようにして、送って行こうかとも提案して――】
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/01(日) 00:04:27.44 ID:wdUzypUz0
>>826

【偶然この砂浜に流れ着いて、偶然鈴音が拾って、偶然そこに自分が居たから見つけた宝物。】
【幾重にも折り重なった偶然のうち何か一つでも欠けていたら、きっと見つける事は無かったのだろう。】
【そう思うと―――この世界の物事は、全ていくつもの偶然が重なり合って起こった奇跡なのかもしれない。】

……ああ、そうしよう。綺麗な物は、母上も好きだろうからな。

【その悪戯っぽい笑顔の裏にある考えは理解できなかったレイナは、素直に頷く。】
【まんまと載せられたレイナは、きっと帰ってから母に今日の事を伝えるのだろう。繋がりが、これでまた一つ―――】

―――そうか。コレもまた、色んな出会いをしてきたのだな……
……私も、出会いを経てこのガラスのように綺麗で優しい色合いになるのだろうか。……ん?

ああ、もうそんな時間か……そうだな、あまり遅いと父上と母上に心配を掛けることになる。
ついて来てくれると言うのなら、勿論拒みはしないが……。

【少し戸惑ったように見せる表情は、言外に「家はここから遠いが、足労を掛けることにならないか?」と心配していて】
【鈴音が転移魔術を使えることを知らないレイナは、迷惑を掛けることにならないかと案じていた】
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/01(日) 00:10:34.44 ID:WrmAeZMS0
>>827
/申し訳ないです、もう少しだとは思うのですが、明日の朝が早いので、ここでもう一度凍結お願いできますでしょうか?
/明日はちょっと時間がよく分からないので、難しいようでしたら置きでも大丈夫ですので……
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/01(日) 00:18:03.22 ID:wdUzypUz0
>>828
//了解です!それでは置きの方にお返事いただければ!
//それでは今日はお疲れ様でした!
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/01(日) 00:20:06.72 ID:WrmAeZMS0
>>829
/ありがとうございます!では明日帰宅次第お返事します……ひとまず今日はお疲れさまでした!
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/01(日) 21:04:36.89 ID:RQTBH8v9O
【水の国 早朝】

【早朝の,人がそろそろ起きて,活動を始めるであろう時間】
【そんな少し静かな早朝の街を堂々と闊歩するひよこ】
【……正確にはひよこのコスプレをして顔だけ出している女の子がいた】

「きょ〜のおべんとっ,鳥の照り焼きっ!ソースは手作りたーのしみっ」

【よくわからない鼻歌を歌いながら街をルンルンとスキップしている】
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga sage]:2016/05/07(土) 21:38:02.45 ID:jJY8YQ790
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――昼の国 歓楽街】

っへへへー、大丈夫大丈夫!
今の俺なら、二層式洗濯機にだって勝てるってんだよ! ……あ、意味が分からねぇ? ……そういや、俺も分からねぇや!
まぁ、ともかく大丈夫だ! 自分の面倒ぐらい見れらぁ! じゃあな、ごちそうさん!

【前面を開いたままで青いコートを羽織り、魔術師である事を如実に表す青のハットを被った】
【手には指輪と、グリップの部分に赤い石をあしらわれている、金属製の棍を握り締めている】
【がっしりとした体格の、深い眼窩が鋭い視線を放っている、身長180cm前後の居丈夫が】
【一軒のダイニングバーから、完全に酒に酔い「出来あがった」様子で、フラフラと出てくる】
【夜の帳と無縁なこの国でも、居酒屋と言う業態は人気がある様で、通りもそうした店の活気に溢れている】

……頭が凝り固まっちまったら、空っぽにするのが一番だってんだ……
俺の頭のオンオフ……スイッチはどこだっけかぁ……?

【やや覚束ないながらも、居丈夫は人にぶつかる様子もなく、通りをそのまま歩いていく】
【それでも、その姿は一目で、酒気を孕んでいる事が分かるものだが――――】



【――――所変わって、水の国 路地裏】

へぇ、お嬢さん……お前さん、運が良いじゃないか……

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【手に、発砲し尽くしたリボルバーを構え、眼前にくず折れている少女に対して、好奇の目を向けている】
【――――壁にもたれかかる少女の頭部から、2cm離れた壁には、弾痕の跡が残り、周囲には5体の人間の死体が転がっていた】
【――――少女がたまたま、銃弾が命中せずに延命した事は、容易に読みとれる。引き攣ったままの少女の表情は、完全に死の恐怖に染まっていた】

【男性の被るテンガロンハットには、逆五芒星を象り、その下に≪No.21≫とあしらわれたバッジが留められていた】

ここで運よく拾った命、大事にしなよ?
運が尽きるのも上向いて行くのも、これからのお前さん次第だからな……

【リボルバーに弾丸を詰め直すと、男性はそのまま銃をガンベルトに仕舞い込み、放心状態の少女に背を向け、歩き始める】
【どうやら本当に、少女を見逃すようで――――その代わり、死体から湧き出た人魂が、男性の身体に吸い込まれていった】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/07(土) 22:15:44.27 ID:pQ7yKOOH0
>>832

【水の国 路地裏】

「あっ?!うぎゃあぁっぁっあぁぁあぁ落ちるうぅぅううぅぅ」

【男の後ろ側から少女の叫び声がする】
【見逃した少女とは明らかに違った声だ】

「お兄さん避けてぇええぇええぇええ」

【何やら男に向かって叫ばれた言葉らしい】
【まぁ,そんな焦って避けなくても簡単に避けれるだろうし】
【そもそも当たらないかもしれない】

//だいじょーぶですか……?
834 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/07(土) 22:28:59.00 ID:jJY8YQ790
>>833

はぁ……銃弾だって、タダじゃないんだ。だからってナイフにしてもしょうがないが……――――っ、なんだ……!?

【ある種の危険地帯で、男性は自分が見逃した相手にはもう興味もないと言った様子で、歩きながらポケットをまさぐる】
【そうして、タバコを取りだした所で――――背後から突然に響き渡って来る、どこか場違いな叫び声を耳にした】

っ、誰だ!

【咄嗟に腰のナイフを引きぬいて、両手に構えながら、男性はその場で急転して背後に振り向く】
【先ほどまで、人を殺すと言う後ろめたい行動をしていたからこそ、その反応は非常に機敏な物だった】

/まだ大丈夫ですよー
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/07(土) 22:40:51.10 ID:pQ7yKOOH0
>>834

【すごい衝撃】

「……ぷはぁ,誰にも当たらなくてよかった」

【頭から地面に突っ込んだ,少女】
【正確にはひよこの着ぐるみ,から顔だけ出した少女は】
【全身をブルブルと震わせて体についた土を落とすと】

「え,えーと……」

【突然刃物を向けた男を目の前にして,目を合わせたらやばいと思ったのか】
【ちらっと横を見て】

「あれっ……死んでる?」

【転がった死体を見て】

「もしかして,お兄さんが?」

【男に聞く】
【まだいまいち現実味がないのだろう,純粋に疑問に思ったくらいの質問だ】

//よろしくおねがいしまーす
836 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/07(土) 22:50:42.38 ID:jJY8YQ790
>>835

ぇ……なんだぁ……?

【墜落してきた物体に眼をやって、男性は思わず呟く。先ほどの鋭い叫びとは打って変わって、気の抜けた様子で】

……おいおい。俺はこんなびっくり神籤なんて引いた覚えは無いぞ?
で、このひよこは大吉なのか、それとも末吉か……?

【ひよこの着ぐるみを着込んだ少女――――なんでそんなモノが落ちてきたのだろうと、男性も思わず下らない事を口にする】
【そうやって洒落のめしでもしなければ、なんとリアクションして良いのか、見当もつかなかったのだろう】

……なんだか、気が抜けるが……あぁ、そうだよ。ちょっとした運試しって奴だ……
で、そんな男の前に飛び出て来たお前さんは、なんのつもりなんだ?

【どこまで本気なのだろう――――いまいち状況を理解し切れていない様子の少女に、男性は理解を促す様に、問いに答える】
【――――今ここは、この男性の殺戮が終わったばかりの死地。ましてや男性のハットには、カノッサ機関の所属である事を表すバッジ】
【――――人殺しを厭わない悪人の前に、少女は落ちてきた格好なのだ。だのに、少女にはそうした認識が無い様に見える】
【だからこそ男性は、そこの所をちゃんと理解しているのか、と、思わず手より先に口が走ったのだろう】
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/07(土) 23:04:12.38 ID:pQ7yKOOH0
>>836

「まぁ,私をみつけたってことは,大吉だって思っていいですよっ」

【男が漏らした言葉に反射的にそう答える】
【何も考えてないことは丸分かりだ,きっと男にとっては大凶かもしれない】

「わたし?私は空を飛ぼうとあそこのビルから飛び降りして飛べなかったんです」
「今日もまた失敗しちゃったんですけどねー,あはは」

【そう言って近くのビルを指差す】
【屈託のない笑顔からは嘘はわかるまい】

「お兄さんたち(?)は運試し?ロシアンルーレットってやつですかっ?」
「あっ,じゃあもしかして倒れてる人たちは死んでるんじゃなくて気絶してるんですね!」
「勘違いしてごめんなさいっ!」

【全力で勘違いを始める】
【少女はバッジの存在にも気がつかず,本当に男たちがただ「運試し」をして怪我をしているだけ】
【だと思ってしまったようだ】

「えーと,倒れてる人たち,血がいっぱい出て大変そうだから救急車……呼びます?」

【その後,屈託のない顔で続けている】
【天然を装った策士,などではなく完璧に天然である】
【彼らは怪我をして,気絶している。危ないから救急車を呼んであげよう】
【そんな気持ちで提案をする】
838 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/07(土) 23:22:18.74 ID:jJY8YQ790
>>837

……あり得ない……
(こりゃ、とびっきりだ……今日は俺、どうやらツイてないらしい……)

【思わず、ナイフの尻で自分の額をゴツン、と叩きながら、男性は渋面を作る】
【本当に頭痛でも起こしてしまいそうだ。こんな形でのリプライなど、望んでいた訳ではなかったのだが――――】

……なんで空を飛ぶのにそんな着ぐるみを着てるんだよ……
それじゃ却って、重りになるだけじゃないのか……

【心底あきれ果てた、と言った様子のため息を吐きつつ、男性は呟く様に一人零す】
【なんだか分からない。良く分からない。そんな人物が目の前に落ちてきたのだ】
【先ほどまでの、生死が懸かった張り詰めた空気は、一体どこに行ったと言うのか】

ロシアンルーレットで気絶するか馬鹿!
ロシアンルーレットで負けるって言うのは死ぬって事なんだよ!
見てみろ、そこらに転がってるのは全部死んでるんだよ!

【いよいよ堪え切れなくなってか、男性は怒号を飛ばしてその場で腕を振り回す】
【どういう勘違いをしたらそうなるのか――――男性も、思わずそこを聞きたくもなったが】
【何より、根底的な所でこの少女の空気に当てられてはならない、と勘が告げたのだ。無理やりにでも自分の言葉で、この場のねじ曲がった空気を元に戻す】

――――呼ぶのかッ? 呼ぶならみんな死んでもらうぞ!?

【――――もう、言葉の上でうろつきまわるのはナシだ。男性もいい加減、気持ちを切り替えると】
【右手に構えていたナイフを腰に戻し、同時に、まだ暖かいリボルバーを抜き放ち、少女へと向けて発砲する】
【当てる心算ではなかった為、銃弾は、少女の足元10cm程の部分を砕くにとどまったが――――その銃がジョークグッズやパーティグッズの類で無い事は、ハッキリと伝わるだろう】

……空でもなんでも、飛べるものなら飛んで、どこかに行ってしまうと良いさ……撃ち落としてやるから、な……!

【左手のナイフをその場で閃かせながら、右手のリボルバーの照準を、再び少女へと向ける男性】
【――――ハッキリと、誇示して見せた。何を勘違いしているのかは知らないが、ここで行われているのは、れっきとした命のやり取りである、と】
【そして、そんな男の前に顔を出したのは、標的になりに来たようなものなのだ、と】
【銃口の奥で獲物を見据える銃弾は、己自身よりも先に、現実を認識する事を少女に叩きつけていた】

【残弾数 5/6】

/次、遅れます
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/07(土) 23:32:32.15 ID:pQ7yKOOH0
>>838

「あっえっえーと……何か私悪いことでも言いまs……」

【突然男が怒り始めてしまって】
【自分が何か怒らせてしまったのかと焦っていると】

「いやっ,私まだ飛べなくて練習中d……」
「私のこと食べても美味しくないですよぉおぉっっ!?」
「せめて飛べるようになるまで食べるのは待ってくださいっ」

【突然銃口を向けられて】
【テンパってしまい,顔を精一杯着ぐるみの腕のような羽根で覆っている】
【きっと彼女はこれまで命のやり取りなどしたことないのだろう】
【一般人として銃口を見せつけられ,恐れる反応をしている】

//りょうかいでーす!
840 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/08(日) 00:05:32.57 ID:cqTSiXCO0
>>839

……別にこんな事を言うのは柄じゃないが、お前さんに言うなら「無知は罪」って奴だろうな!
さっさと逃げ出しでもすれば、見逃してやったかも分からないものを、な……!

【妙に調子を狂わされた事で、男性もどこか苛立ちを募らせていたのだろう。半ば無茶な言葉で怒鳴りつける】
【まぁ、実際こんな事をしている男性が、どこまで少女を「素の状態なら見逃せていた」と言えるのかは、微妙な所であるが】

……また訳の分からん事を……!
別にお前を食べる必要なんざ無いさ。俺はお前の『魂』を食わせてもらえば、それで十分だからな!

【――――今度は鳥になったつもりででもいるのだろうか?】
【男性の眉がぎゅっと窄まると、ハッキリと男性はリボルバーの照準を絞る】
【先ほどから妙な言動を繰り返しているこの少女は、本当に自分の危機を理解していない様である】
【そうであるならば、仕方がない。男性はただ淡々と、自分のやるべき事をやるだけであると、己に言い聞かせた】

(……唯一問題と言えるのは、着ぐるみのせいでダボついて、心臓が狙いにくいって所だな……
 頭を狙うにしても、ああも着ぶくれしていると、馬鹿な話、銃弾が到達しない可能性もある……
 1発では仕留め切れる可能性が低い……さて、どうする?)

【引き金に力を入れる――――その瞬間、男性は冷静に「どうやって少女を殺害するか」を頭の中で反芻する】
【この有様では、まともな戦闘にもならないかもしれない。ただ、その着ぐるみと言う服装が厄介だ】
【腕で頭部を庇っていると、よほど大口径でもない限り、ハンドガンで致命傷を与えるのは難しい】
【さりとて、胴体を狙っても、その丸みの強い造形のせいで、撃ち抜けなかったり、狙いが逸れたりする事も考え得る】
【あまり銃弾を浪費してしまうのも、と先ほど頭を掠めたばかり故に、より効率的な方法を、男性は脳内で探し回っていた】

(なら……とりあえずコレだ……!)

【――――先の動きを、頭の中で組み立てながら、男性は銃弾を1発、少女へと向けて発射する】
【狙いは、頭を庇っている少女の腕。まずは反撃に際して、尤も使われる可能性の高い部分に、ダメージを与え、同時に防御を解かせようと考えたのだ】

【残弾数 4/6】

/ただ今戻りましたー
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/08(日) 00:24:42.70 ID:7+0MHoC+0
>>840

「魂……心臓のことですかっ!?!?」
「今晩のお酒のおつまみになるなんて嫌ですぅぅうっ!」

【全力で絶叫しながら顔を隠している】
【顔を隠しているために男の顔が見えていないためにどのような状況かはわかっていないようだ】

「ほんと,ご飯になるのだけは許してくだs……うにゃあぅっ」

【銃弾は左腕にヒットした】
【幸い,あまり不覚にはいかなかったようだが,左腕は切れて血が漏れている】

「も,もしかして,これって狩りってやつなんですか……」
「狩りから逃げ切れたらまた,鳥に一歩近づいて空が飛べるようになりそう……!」

【痛みに顔をしかめながら,腕の合間から男の顔を見る】
【またもや,何か不思議な勘違いを始めたようだ】

「ふふふ,いいですよ……お兄さんが私を狩るんだったら」
「私は絶対逃げ切ってみせますよ」

【そういうと,少女は顔を覆ったまま,轟音を鳴り響かせる】
【なにやら,ジェット噴射機が鳴る音のようだ】

「まだまだ子供といえど,鳥の突進力,なめないでくださいねっ」

【腕で顔の防御を解除した瞬間,男にめがけて突進する】
【なにやらおしりにジェット噴射機が付いおり,その推進力を利用して飛んでいることがわかる】
【早いといえど,非常に直線的な突進なので,避けようと思えばそのまま避けれるかもしれない】

//おかえりなさーい
842 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/08(日) 00:44:51.66 ID:cqTSiXCO0
>>841

(……もはや、何も言うまい……)

【――――本当の意味で、魂を喰らって強くなる男性だが、余計な事は言わない】
【この少女の事だ、また妙な解釈をして変な発言が飛んでくるのでは――――と言う警戒心が働いた】
【先ほど、死体から吸いだした人魂を吸収したのは――――墜落してくる最中だ。流石に見えなかったのかもしれないが】

ったく、一体どんな夢見てるんだよ!? まだ寝てるのか、お前の頭はよぉ!

【やはり、この少女は正気を疑う所にいるのでは、と言う疑念が男性に渦巻く】
【ここまで来ると、本当にその可能性も考えなければならない。ともすればこの少女、既に恍惚の人なのかもしれない――――と】
【苛立ち紛れに、普段の男性ならあまり使わない、やや汚い口調が混じりながらも、一方で脳内ではその可能性も並行して回っており】

っち、面倒くさい……このまま一気に――――っ、なんだこの音……!?

【とにかく、このまま狙い定めてトドメを刺そうと、男性も腹を決めた】
【エンジン音の様な轟きを耳にしたのは、そのタイミングだった。ここにきての不確定要素に、流石の男性もギョッと警戒する】

チッ、何だこれは!?
(これを使って、空飛ぼうとか言っていた訳か!? ただの着ぐるみじゃなかったって訳か!)

【正体を把握するのと、少女が突進してくるのと。そのタイミングはほぼ同時だった】
【先ほどからの、会話の噛み合わなさはともかく、少女の言ってる事は、全くの迷妄からなる空想と言う訳ではなかった様だ】
【その推進力と人間の体重を活かした質量攻撃――――即ち『体当たり』は、この場合、結構馬鹿にならない】

……っぐ、くそうッ!

【咄嗟に後方へと飛び退きざまに、男性はそのまま背後から地面へと転がった】
【幾ら低空飛行とは言え、地面を掠める程に低くは飛べないはずだ。それが出来るなら、最初から空も飛べているだろう】
【頭上に少女を逃がす形で、体当たりを回避したのである】

【――――とは言え、無理な姿勢から地面に身を投げ出したのは間違いなく、一瞬息が詰まる】
【右手で受け身は取ったと言え、その姿勢からのショックを無力化するのは、到底不可能だ】
【だが男性も、ただ回避するだけには留めなかった。左手のナイフを、頭上を過ぎ去り様の少女へと撃ち込む様に刺そうと突き出したのだ】
【――――難を言えば、無理な姿勢から、効き腕とは逆の手で、モロに着ぐるみに邪魔されそうな点である】
【つまり、この一手に限れば、完全な悪あがきに近い有様なのだ。一応首元を狙ってみたとはいえ、その無理な体勢では、上半身のどこに当たるとも】
【そして、そもそも命中しないとも知れない。どのようにでも転びうる一撃だった】
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/08(日) 01:00:36.71 ID:7+0MHoC+0
>>842

「そりゃあ,寝ても覚めても夢見てますよおおぉっ空飛ぶことをおぉっっ」

【絶叫しつつ突進する,が】
【男が突然地面に転がったのを見て】

「えぇぇっ?!いきなり転んだらあぶないですょおぉっっぉ!??!」
「避けてえええぇえぇっ」

【自分から突進したにも関わらず避けろと叫ぶ】
【きっと,少女は自分が逃げ切るかどうかで,男を傷つける意図はなかったのだろう】
【ジェット噴射機の出力を0にするが,突然はやはり止まれず】
【それなりの速度で】
【そう,男に覆いかぶさるように素っ転んでしまいそうになる】
【きっと,避けようと思えばそれなりに避けられるかもしれない】
【着ぐるみを着てるとはいえ,横っ腹をければ倒れる方向を避けられるかもしれない】
【だが,覆いかぶさるようにすっ転んでしまったせいで,このままだと左腕にナイフが刺さってしまう可能性は大いにあるだろう】
【刺さってもモフモフと言った食感でほとんど肉には届かないかもしれない】
844 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/08(日) 01:17:13.53 ID:cqTSiXCO0
>>843

……チッ
(……ダメだ、こいつとはまともに会話が成立しない。もう本当に、余計な事を言うのは無しだ……)

【無精髭の残る口元が、忌々しげに舌打ちをする】
【今はただ、この少女の息の根を止める事だけを考えよう。思考を切り替えながら、男性は眼前の状況を見やる】

――――なっ!?
(くそっ、のしかかりかよ……!?)

【頭上に逸らすはずだった体当たり。だが、相手はそこで速力を落して頭上から落ちてきた】
【咄嗟に右手の銃を向ける――――間に合わない。身体を避けさせようとする――――無理だ、左手で突き出したナイフの動作を引くのが間に合わない】
【ナイフが刺さった感触はあるが、やはり毛皮の塊をついた程度の頼りない物で。そのまま男性は組み伏せられる】

ぐ、はぁッ……
(くそ、この馬鹿……計った訳でもないだろうが、嫌な状態を作ってしまったな……!)

【成人男性に組み伏せられる事を想えば、まだ少女は軽い。とはいえ人一人、30kgの玄米袋を乗せるよりも重いのだ】
【ただでさえ、自ら転んだ形で絶息していた所に、これは辛い。思わず口から呻き声が漏れる】
【ましてやこの状況、行動が著しく制限される。突き立てたナイフを抜くが、その次に刺すべき場所が分からない】

(こうなりゃ……勿体ないとも、言ってられない……。くそめ……!)
――――『ゲヘナ』ァァァァァ!!

【何度目かも分からない、苛立ちで眉が撓められると、男性は覚悟した様に、かすれた声で叫ぶ】
【――――男性の身体から、ブワッと灰色のオーラが吹き出ると、爆発的に周囲に放射され、一種の衝撃波と化す】
【上にのしかかった少女を、そのまま吹き飛ばしてしまおうと言う算段なのだろう。男性も、とうとう観念して、能力を行使、本気で少女を殺しに来た格好だ】
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/08(日) 01:31:41.40 ID:7+0MHoC+0
>>844

「はぁ……はぁ……」

【覆いかぶさって息を切らしていると】

「へ,うひゃぁっぁあ」

【突如放たれた能力によって空に吹き飛ばされてしまう】

「これは……もしかして空を飛んでるっ?!?!」
「ひゃっほぉおっ」

【空中に放り投げられて,羽をバタバタふるってそらを飛べたかどうか確認するが】
【やはり,少女の腕を振るわせたぐらいでは飛べず】

「あっ……やっっぱおちるぅうっ!?!?」

【少女は空から落ちてくる】
【もし男のゲヘナが長時間発動するのでなければ,足の鉤爪から降ってくる少女にぶつかるかもしれない】
【だが,十分に時間があったために体勢を立て直すことも十分可能だろう】
【そもそも長時間発動するならばゲヘナで吹き飛ばされるかもしれない】
846 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/08(日) 01:45:39.37 ID:cqTSiXCO0
>>845

っく、ようやく……!

【能力を用い、のしかかってきた少女を上空へと吹き飛ばした男性】
【ショックで整わない呼吸を落ちつけようとしてか、胸元を手で撫ぜながら、ようやく男性は立ち上がった】
【左手のナイフも、腰の鞘へと仕舞いこむ。ここで取り落としでもしたら、洒落にならない】

(落ちてくる……タイミングを合わせて……)

【オーラをその身に纏ったまま、男性はその場から数歩ステップ、少女を仰ぎ見るポジションへと移行する】
【せっかくの『収穫』を、ここで使うのは――――と躊躇したが、もうここまできたら最後までやり切るべき、と、男性は割り切った】

――――喰らってくたばれッ!!

【真下から逃れた男性は、墜ちてくる少女を見据えると、左手を真っすぐに伸ばした】
【――――男性の能力『ゲヘナ』は「取り込んだ『霊魂』をエネルギーとして操作する」物である】
【その身にたぎらせたオーラは、左腕へと収束し、強力な破壊力のビームとして、左腕から少女目掛けて発射された】
【着ぐるみの耐久力にもよるが、先ほどの銃弾やナイフの様にはいかないだろう。通路の奥まで吹き飛ばされるか、悪くすれば着ぐるみの上から身体を抉られる】
【戦いの手段を、ほとんどと言って良い程に持っていない少女に対しては、多少やり過ぎとも言えるかもしれない】

(……こんな形で、さっきの霊魂を使ってしまうなんてよ……)

【男性がこの能力を使用する事を躊躇していたのは、取り込んだ霊魂を浪費する事を恐れていたからだった】
【使用すれば、当然の事、エネルギーは消費する。その場合、男性は新しく霊魂を確保して来なければならない】
【こんな妙な顛末で、先ほどの回収作業を徒労にしてしまいたくは無かったが、確実を期すためには仕方がない――――と、眼をつぶったのだ】
847 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/08(日) 02:01:35.62 ID:7+0MHoC+0
>>846

「へっ!?よけなくていいんですかぁぁあっ!?!?」

【男が何かを構えているのにびっくりして】
【叫びながら落ちていく瞬間】

「ひぇえっっぇえうぅっ」

【打ち込まれたビームによって】
【水平に吹き飛ばされて,20mくらい吹き飛ばされた後】
【ビルの壁にめり込む】

「痛い……と,とりあえず守らなきゃ……」

【壁にのめり込みながら】
【ビームで傷ついた着ぐるみがどんどん,最初の頃のように綺麗になっていく】
【彼女の能力……身につけているものを変化させる能力によって】
【自らの着ぐるみの傷を修繕していくのだ】
【しかしながら,治せるのは彼女の身につけているものだけであって,彼女自身は一切治せないため】
【彼女の体には,着ぐるみで吸収しきれなかった分の少なくないダメージが強く残っている】
848 :パウル=ミュンツァー ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/08(日) 02:19:12.65 ID:cqTSiXCO0
>>847

……大体、7人分……5人殺してこれじゃあ、もう足が出ちまってるな……

【ビームと化した霊魂を放ち終え、感覚で消費された量を確かめる】
【既に、男性は取り込んだ以上の霊魂を、今の一連の攻撃で使ってしまっていた】
【そこに嫌な物を感じるが、それは仕方がない。今はともあれ、確実に完遂する事が大事なのだと、自分に言い聞かせた】

……っ、着ぐるみが、再生してる……? ……質量操作、とか……そんな感じか……
(道理で、あんなものを身につけてる訳だ……あれなら、丁度良い材料にもなる…………使いこなせてもいないようだが……
 だが、そうなると厄介だ……あの着ぐるみ剥ぎ取るなり一息に倒し切るなりしないと、致命傷を与えるのは、難しいか……?)

【見れば、壁に叩きつけられた少女は、着ぐるみの損傷を回復させている】
【ここにきて、ようやく少女の本質が見えた男性だが、そこに空恐ろしい物を感じていた】
【――――のしかかられたあの瞬間、あの能力を活用すれば、どんな事をされていたか、分かった物ではなかったのだ】
【尤も、あの少女はそこら辺に気を回すタイプでも無さそうだと、そんな事も考えられたが】

――――だったら、頭ごと吹き飛ばす心算で……!

【右手に握った銃を、少女へと向ける。種さえ分かれば対処の仕様はある。今度こそ――――と指先に力を込めるが】
【――――突如として、電気的な大音響が、周囲に響き渡る。発生源は、男性のポケットだった】

あ!? 非常招集!? どういう事だよ!?
「――――今すぐ戻って来なさい! すぐに貴方に頼みたい事があるのよ、大至急!」
チッ……分かったよ、迎えは寄越すんだろうな……!

【スピーカーモードが作動でもしたのだろう。周囲に、通信端末越しの、女の声が響く】
【そこに悪態をつきながら、男性は渋々と銃を腰へと下ろす――――どうやら、何かののっぴきならない事態に、巻き込まれた様だった】

……くそ、トドメを刺し切らないのに、時間が無いなんて…………くそう、今日はツイてない!!

【未練がましく、壁にめり込んだ少女を睨みつけるが、今は時間が惜しい状況だ】
【男性は、自分が空振っている事を自覚し、そんな自分を「ツイていない」と自虐しつつ、その場から逃げだす様にして走り去った】

【――――不吉な夜は、人知れず闇の中に去り、終わりを迎える事になる――――】

/すみません、もう眠気が限界なので、強引ですがこれで……乙でしたー!
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2016/05/08(日) 02:26:34.38 ID:7+0MHoC+0
>>848

「はぁ……はぁ……」

【必死で着ぐるみを回復させながら】
【男の方を見ると】

「ま,まだ狩られるわけn……ひっ!?」

【男の動きを見ながらなんとか必死にガードできるようにと考えていると】
【突如として響き渡った大音量に悲鳴をあげる】

「な,なんかよくわからないけど帰ってく……?」

【電話をしているらしいということはわかったが,それ以上,話などは聞き取れなかった】
【だが,切羽詰まってるらしいまではなんとなく察しがついて】

「はぁ,今度は狩られないように頑張って精進しないと……」
「次は負けませんからねっ!逃げ切ってみせますからね!」

【あくまで狩りだと思っていた彼女は】
【逃げていく男に声をかける。聞こえてたかはわからない】

//はーいっ!ありがとうございましたっ!
850 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/14(土) 21:18:29.20 ID:q9jqxONU0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――水の国 大通り】

……気にはなっていたんだ。ただ、一体どうしたものか……
……事態はどうなるか……まだ直接、顔を出すべきじゃないな……?

【黒いコートをしっかりと着込み、魔術師である事を如実に表す黒のハットを被った】
【手には、頭部に青い石が嵌めこまれて先端を鋭く尖らされている、細い金属製の杖を握り締めている】
【漆黒のボブカットと、幼さを残しながらも憂いを帯びた様な瞳をした、身長160cm前後の中性的な青年が】
【背中に、大きなライフル銃を括りつけるような状態で背負い、何喰わぬ様子で人ごみの中を歩いている】
【道を行き交う人々も、その光景に訝しげな視線を向け、あるいは遠巻きに様子を窺っている】
【魔術師と思しき服装をしている人間が、背中にスナイパーライフルを背負っていると言うのも、中々に珍妙な光景だが――――】

……言い訳が立つ程度の加工は、してきた……さて、どうしようか……?

【そのスナイパーライフルは、一応銃口を塞いであるらしく、外付けの鉄キャップが溶接されており、実銃としての機能を封印されている】
【また、銃身には、地の国の銃器メーカー『マクスウェル・ファイヤー・アームズ』の紋が見て取れた】



【――――所変わって、雷の国 広場】

……珍しく、今日は何事もなかったな。まぁ、そっちもネタが何もないんじゃ困るだろうが……
「まぁ、良いじゃないたまには、ね? そりゃ、何にもない日だってあるよ。それは分かるでしょ?」

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【まるで何かに苛立ちを感じている様な攻撃的な眼をしている、身長170cm前後の青年と】

【明るいピンク色の長髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、前髪をやや膨らませる様にセットしている】
【紫色に着色されたカジュアルジャケットと、レギンスとハーフパンツを組み合わせて着用している】
【目元にレンズ、両耳に円形のボディ、後頭部に装着用の調節器が一体化した、機械的なバイザーをつけている、身長160cm前後の女性が】

【屋台のそばで揃いのサンドイッチを手に、軽食を取りながら佇んでいる】
【青年の方は眉間に皺を寄せながら淡々とサンドイッチを頬張っているが、女性の方はどこか楽しそうに微笑を浮かべながら青年を窺い】
【青年の口元にトマトの果肉がくっついているのを見て取ると、いきなり指を這わせてそれを拭いとってしまう】

……おい、せめてそう言う事をするなら、外ではやるなと……
「一丁前に照れちゃってるって、ね! ちゃんと綺麗に食べなきゃダメだよー」

【元より苛立った様子の表情を尚顰めながら、青年は女性を睨みつけるが、どこ吹く風と言った様子で、女性は指を咥えて見せる】
【何かぎこちない様子ながらも、そうやって戯れている光景は、それなりに目立っていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
851 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/14(土) 22:16:43.10 ID:q9jqxONU0
/>>850取り消しで
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/19(木) 20:24:31.55 ID:Z1d6REWg0
【街外れ――自然公園の一角】
【ハーブ園に囲まれた東屋、辺りにはラベンダーの香りが溢れかえって、けれど、昼間ならば羽音のうるさい蜂も今はとんと姿を消し】
【緩やかに吹き続ける少し冷たい風がひたすらにラベンダーの香りをばらまいているばかり。空は暗くなってからしばらく立って、烏も飛ばない時間】

そういえば庭の薔薇の手入れをしてやらないといけないのかしらん。

【東屋に設置された机と椅子を長らく数時間も占拠していた人影が、ふ、と、顔を上げる。手元には画板と挟まれた紙、手には刃物で削ったような鉛筆と】
【今まで外界など存在しないかのように詰めていた気がふと緩む、鉛筆を握っていた手をほどいてみれば、その小指側はすっかりと黒くなっていて】
【というより紙そのものがまるでホラー映画の悪霊が恨み言を百年くらい綴り続けたくらいに文字だらけに真っ黒なのだから、ひたすら黒に向かう少女は異質とも言えて】
【その手を汚染する具合を今更ながら認識したらしい彼女は指先でちょんとつまんで紙をぱらとめくる、その裏面もまた怨嗟のようにひたすらの漆黒が渦巻き、】

……。

【読めないと気付く思考は一瞬、けれどどうでもいいかのように、机に放置してあった原稿用紙の袋を手に取れば、新しいのを画板に留めてやろうと金具を持ち上げ、】
【――その瞬間にたまたま一つ、少しだけ強い風が吹き抜けた。びゅうと抜けた冷たさが真っ黒な紙と真っ白な紙をはためかせ、最後にはどちらもを宙へと舞わせ】

【なんて思う刹那に、びたんと叩き付ける音。見れば吹き飛んだはずの白紙が東屋の柱に押し付けられるようになっていて】
【きらきらとラメをまぶした綿あめのような勿忘草色の靄、魔力で形作られたものが、ぎゅっと白紙を押さえつけている――そんな光景の、向こう側】
【きっとその現象の原因である少女が眉をひそめて舌打ちをした音は、きっと、静かな中ではよく響いて】

【くすんだような金色の髪は毛先に向かうにしたがってピンク色へと変わる色合い、くしゃりとした癖が強く、その毛先はくるんと巻いて】
【あどけなさを多少残す顔の中でいやに目立つのが勿忘草色の瞳、いやに拗ねきった子供のような目元と、不機嫌そうな口元と、とかく愛想が枯渇したような】
【袖口が大きく広がった白のワンピースは踝まで隠すような長いもの、紅茶染の布地やレースをたっぷりと重ねて、胸元や裾や袖には青糸で細かな刺繍が施されていて】
【踵のないぺたんとしたパンプスを履く、そのせい――ではないのだけれど、ひどく背丈の小さな少女だ。百四十二センチ、なんて、小学生に並ぶほどの】

【――びちりと鉛筆の芯で真っ黒に染め上げられた紙が、ハーブ畑に植えられたメラレウカの大木に引っかかる。幸いにもそんなに大して高い枝でもないのなら】
【もしも誰かが通りがかれば、簡単に手で取れるはず。――きっと自らの能力で捕まえた白紙をひっつかんだままで辺りを見渡す少女が黒紙の持ち主であるのは、一目で分かるようだった】
853 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/19(木) 21:13:20.03 ID:bZdr+vMq0
>>852

【両腕をめいいっぱい伸ばし、んーっと可愛らしく唸る。それだけで、一日の疲れが吹き飛ぶような気がするのだという】

ハチの次は蚊かぁ
小さくて当てにくかったよ

【一息ついて、昼間の仕事について独りごちる。背中の長鞄の位置が悪かったのか、肩だけ弾ませて長鞄の位置を変える】
【しっくり来たらしく、目を閉ざして夜風に当たる。昼間の温風が冷やされて1月前の冷たさを運んでくる。丁度良かったらしく、されるがままに金色の髪を揺らす】
【さわさわという音に気づいて横を見ると、白い花をつける木とその下に耕されて色を濃くした地面】

公園にもあるんだ……

【しゃがむ時の慣性でツーサイドアップがウサギの耳のように一瞬だけ立つ。髪がしなって下がり肩に当たり終わる頃には指先を地面に当てて確認していた】
【当たり前のように湿った感触が纏わりつく。そろそろ彼女にとって珍しくなくなったものではあるが、好奇心故に止まらないらしい】
【そこだけはある意味整然と並ぶ名も無き草花達。自然に詳しくない彼女でも植えられたモノが「他人のもの」であると認識したらしい】

んしょ
……あれ?

【ハーブ畑に特に目もくれず、そのまま立ち上がった彼女は、木の間に「葉っぱとは違う揺れ方をする何か」の影を見る】
【取れそうな高さにはあるものの、いまいち扱いに困るらしく腰に手を当てて考えようとする】
【その間にも断続的にやってくる微風がキュロットスカートの裾や全開きの外套、インナー代わりのTシャツを小さく揺らす】
【適度なクールダウンになるらしく、周りが見えなくなる程に没頭してしまう。このままだと声を掛けられない限り突っ立ったままとなるだろう】

/まだいらっしゃいましたら……
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/19(木) 21:33:17.96 ID:Z1d6REWg0
>>853
/すいません、一瞬画面から目を離しておりましたっ
/これからレス用意するので少し遅くなりますが、それで大丈夫なようでしたら、少しお待ちいただけると幸いですっ
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/19(木) 21:47:42.28 ID:Z1d6REWg0
>>853

【多分怨嗟とか呪怨とかそういうものが書かれているわけではないのだろう、けれどその書いた本人でさえ苦心して読むのを諦めた個所のある紙は、】
【ある程度の一般人であれば怖いから近寄らないでおこうと思う程度に呪われそうな見た目をしていて、それなら、触らない道を選んだのは、或いは正しいのかもしれない】

【――びたびたと風に煽られ揺れていた紙が、ふと、まるで透明人間がそこに現れ、ついと摘み上げたかのような動きをするだろう】
【持ちあがる黒くなった紙にまとわりつくのは、ほんの数秒前に東屋にきらめいた勿忘草色の靄――そして、たぶん、東屋の少女の異能の発露のそれで】
【本当に何事もなければ、それはついーっと、本当にただ手で持っているかのようになめらかな動きで、東屋のほうへ向う――はずで】
【それで相手が視線をそちらへ向けるなら、白紙を白紙ゆえか少し雑に掴んだ手と、空いている手は、確かにきっかりと勿忘草色の靄の延長線上】
【相手さえ邪魔しなければ、そのまま、呪いのアイテムみたいな黒紙は少女の手元に戻って、何事もない、たぶん、それで平和に終わるもの】

…………。

【どこまでも飛んでいく可能性を思えばよっぽどマシ、けれどくしゃついた紙を取り戻した彼女は、たいそう不機嫌なように一人舌打ちを一つ、それから、】
【今度こそ吹き飛ばしてしまわないようにときちりと画板の金具で固定する。固定して、辺りにはつかの間の静寂が戻って、刹那強かった風も、また、元の弱さへ】

【――そして、多分、この場面で「やだ久しぶりー! 元気だったー?」なんて言える性格をしていたなら、こんなにもひねまがった顔はしないだろう、彼女は】
【また元のように東屋の古い丸太の椅子に腰かける、シロアリの食事した痕が目立つおんぼろは、椅子だけじゃなくて机も、東屋そのものも】
【なんなら夏の台風で倒壊しそうな場所でわざわざ怨嗟の塊みたいな紙を書いて、飛ばして、回収して、今現在は解読しようとしている。奇特と言えば奇特なさま、】
【いちおう、黙っていたとしても明らかに異能らしい光景と魔力の気配はそこにあって、その現象は彼女へと帰ったから、少女がそこに居ること自体はすぐわかる、はず】
【声はかけない。ただ拒絶はしない。その程度の距離感が、数度見たことのある知り合いに対する、どうやら彼女の許容範囲である、らしくて】

【それでもさすがに相手が近づいてくるようなら、何かしらの反応を向けることは確かだろう。近寄ってくる人間を無視するほど、人に慣れた性質でもないのだから】
856 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/19(木) 22:24:16.38 ID:bZdr+vMq0
>>855

【揺れる何かについて考察する。人のように奇形で生えた葉っぱなのか、ゴミが引っかかっただけなのか、黄色いハンカチなのか】
【取り敢えず、不審なモノだから安易に触ってはいけないと一人合点する。そうして目を開け真っ黒な霧から呼び出した杖に意識を集中する】

 - Silver Pharos

【能力の発動。数秒で粉雪と消える金属の生成。予兆である杖先の青い燐光を土星の輪のように取り囲む小さな銀筋の群れ】
【攻撃ではなく、照明用の発露。しかし、彼女の思惑通りのものは映さず、代わりに緑色系の魔力残渣がキラキラと反射する】

あれ……
これって、もしかして

【記憶にはあったらしい。この色系統の雰囲気を持った人の事を思い浮かべる。時間も経っているらしく「児童公園?」と小さな声で会った場所を自信なく呟く】
【残渣の銀漢は彼女とは別方向に伸びている。公園の地理に慣れていないらしくその先に何があるのかわからないらしい】
【元々不審であった揺れている何かの行方が消えて、考える必要が無くなったと無意識のうちに思うと、次なる興味の方向へ足を運び始める】

【案外近くに東屋の休憩所があったらしく、彼女の冒険も1分弱で終了する。日も落ちて暗く、そこに更に暗い影を落としており、なんとなく恐ろしいと思う】
【たじろいでも何も解決せず、緑の銀漢は闇の奥へと続く。人がいるだろうと高を括っても本能的に怖い】
【ただ単に怖くて歩き始めの時から目を瞑りっぱなしであっただけで、実際には物書きの為の灯りが焚かれているのだろう】

お、おじゃましまーす……

【終始目を閉じて、青い燐の点光源を発する杖を両手で握りしめる。まずは失礼のないように、自分が近づいている事を伝えてみた】

/事情了解しました
/こちらは大丈夫です
/少々遅れましたが、よろしくお願いします
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/19(木) 22:48:32.78 ID:Z1d6REWg0
>>856

【勿忘草と言えば、ちょうど今の時期に咲いている花だ。今まさに咲き誇る花と同じ蒼い色。けれどより一層身近に思うには、あの少女の眼の色という事実でいいだろう】
【おっかなびっくり近づいた東屋にはやはりかつて数度出会った少女が居て、自らが描き出した紙ぺらの世界観をどうやら必死に解読しようとしていたらしい】
【明かりらしい明かりこそないが、そばにはいまだ、きらきらときらめきをこぼしつつ舞う勿忘草色の靄がたゆたっているから、蛍雪の功のまねごとなのかも、なんて】
【実際は、家を出たころは余裕で明るかったので、何も持たずに来たというだけだ。眉を顰めていた顔が、掛けられる声にゆるむ――ことはなかったけど】

お邪魔も何も、私の私物じゃないのだけれど。

【両手に持つようにしていた黒紙(と画板)を机にぱたんと倒して、向ける瞳は相も変らぬ人見知り色、忘れないでと訴える割に忘れろと刃物で迫るような、複雑な色味】
【後者は多分彼女の性格のせいなのだが、なんとも不機嫌に見える目。冷たい色だから余計にそう見えるのかもしれない、――なんて、好意的な解釈】
【声は地声が低いというよりかは、かわいらしくふるまうのが嫌で投げやりに声を出したらこうなるだろう、というような高さ。声質はかすれるようだから】
【いっそう少女らしいみずみずしさは期待できるわけもない、相手が訪れたことである程度解読を諦めたように、古いベンチに華奢な体を預ければ】

散歩かしらん。この辺りはハーブ臭いだろうにね。

【だなんて、行儀が悪いのだけど、そのままでそんな風に言葉を投げるのだろう。きっとずっと紙に向かって何かをしていたのだ、少し疲れたよな様子】
【見ればラベンダーだけでなく辺りにはいろいろなハーブが植えこまれている、最も、一番目立つように植えられているのはラベンダーなのだけれども、】
【ふわりと漂う香りは少しならばよくってもずうと居れば飽き飽きするし嫌にもなる。実際少女はすでに嫌気がさしているかのように、悪い目つきで植えられたものを見、】

アングスティフォリア系というのだって。家にもあったのだけれどね、放っておいたら枯れてしまったよ。
どうして植物の亡骸は当てつけがましく乾くのかしら。

【それから固まった体をほぐすように、ぐうと体を伸ばすのだ。それで、椅子に深く体を預けて。やはり、相手を拒絶することはない、けど、】
【何かを誘うことも、たぶん、今はまだない。彼女の向かいにも空いた椅子がある。背もたれのある、丸太の、手作り感のある――古びた、椅子】
【座ってしまってもいいだろう。というよりも座られることこそ椅子の使命とみれば、なんでもない少女程度が存在理由を奪うなんて、できないのは当然とも言えて】
858 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/19(木) 23:28:15.82 ID:bZdr+vMq0
>>857

【相手から声を掛けられて目を開ける。閉じた瞳が映していた世界とは色味を変えて、現実の色彩が飛び込む】
【見覚えのある顔と、思ったよりかは暗くない四阿の中。勿論これが公共物である事は知っている】

こんばんは
今は、椋鳥の群れみたいな藪蚊をどうにかしてきた仕事の帰り道だよ

【当たり障りなく近況報告。相手の迫力にビビっているらしく、分裂したような意識下で言葉と微笑みをこさえる】
【強い香草の匂いが相手の印象をさらに強める。警戒が無いとは言い切れないが、傍目からも及び腰になっている少女】
【説明される通りの植物を見る。恐らく彼女の文化圏ではあまり見掛けない珍しい草。どういうものだろうと首を捻る】

んー……
命(みず)を使い切ったからかな?

【漏れる、という言葉がある。水は星の上にある限り、上から下へ常に漏れ出す。留める命が無くなればその摂理が執行される】
【聞いたことのある誰かの薀蓄を極限圧縮した為に、当たり前の事を時間を掛けて答える事になった】
【そして立ち疲れたのか「すみません」という前置きを入れて椅子に座る。一息ついて幸せそうな顔をしている】

お久しぶりです

【そのまま挨拶をする。呑気そうな顔をしているこの少女、相手の記憶が正しければ片桐木花という名前だったと思い出すのかもしれない】
【しかし、木花の方はといえば明らかに相手の名前を避けて言葉を選んでいる。顔や雰囲気等の人となりは分かるが名前はあやふや、そんな状態である】
【木花が消極的な姿勢から変えられない以上、話の主導権は相手側に与えられた状態のままである】
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/19(木) 23:51:09.71 ID:Z1d6REWg0
>>858

よっぽど椋鳥よりか藪蚊の方が人口密度が高いように私は思うのだけど、そうでもないのかしら。

【愛想が悪い、相手と会話を楽しもうとする気概が見えない――というより、その方法を、まるで知らないかのような声音が、そっくりと返る】
【正直椋鳥と藪蚊の人口密度の違いなんてどうでもいいとしか思えないし、たぶん、言い放った本人でさえ重大な事柄とは、きっと、認識していないのだ】
【迫力らしい迫力というのを出しているつもりはないのだけど、愛想の悪さなら呪文を重ねに重ねた後のラーメンのよう、おそらくはものすごい山のようになって】

それなら、水を欠かさなければ草は枯れないのかね。家のラベンダーは長雨に当たって腐ったように思ったけれど……ま、どうでもいいのだけど。
昔は庭の片隅に居たのだよ。大きいのが。だけれど気付いたら枯れてしまって、今も残骸が残っていてね。どうしてああも未練がましいのかしら。
さっさと朽ち果てて地面の栄養分になった方が幸せだろうに。雑草に転生できる。

【揚げ足を取るような言葉、けど、別段対した意味はない。ただ家で死んだラベンダーは長く続いた雨で腐って枯れた、と、その過去を言っているだけ】
【ついでに言えば、白骨化したように残る枝の残骸を疎ましく思っている、その程度の言葉でしかない。片づける気もない少女の、草へのただの愚痴でしかないもの】
【雑草なんて名前の草はないというけれどヒメジョオンとハルジオンの区別もつきやしない。まして小さくはびこるイネ科ということのみ分かる草とか、興味もないのだから】
【最悪エノコログサかメヒシバかもどうでもいいし、多分、相手にとってもどうでもいい。から、もう、喉を動かそうと思うことすら、無駄でしかない思考回路】

何の話だったかしらん、……ああ、そうなのだっけ。あまり外に出ないから、よく覚えていないのだけれど……。

【――なんてことを考えていたら、一瞬だけ、相手の言葉を聞き逃した。ぶつりと小さく呟いてから思考が追い付いて、緩やかに返事を紡ぐ】
【あんまり外に出ないならかえって覚えていそうなものなのだけど、そうでもなかったらしい。けれど相手が知りあいというのは覚えている、分かっている】
【それは相手にも分かる程度には伝わるはずだ。愛想よくニコニコしたりしないのは性格だろうから、どこかで妥協するのがよさそうだ、というのも】

……気付けばもう初夏なのだもの。おとついくらいまで桜が咲いていたように思うのだけどね。

【くしゃついた白紙を机の上で掌で伸ばす、手慰みと、そんなことはありえないなら、それだけ普段家から出ないことの証拠。平になるはずもない紙が、かしゃかしゃ鳴いて】

/申し訳ないです、眠気がひどいですので、一度ここで引き継ぎにしていただけましたら……
/明日でしたら食事が住み次第手すきですので、そちらの都合のいいタイミングでレス返しておいていただければ、準備出来次第お返事しておきますっ
860 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/05/19(木) 23:56:00.37 ID:bZdr+vMq0
>>859
/了解しました
/丁度自分も眠気が凄かったので、有難いです

/お疲れ様です
/ゆっくりお休みくださいませ
861 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/20(金) 20:42:40.98 ID:Sh2Uv0v30
>>859

【桜が早く散ったと言われて、顎に指を当てて考える。身近であるが、同時に意識したこともないようなモノの話を出されて頭がフリーズする】
【一通り考えて、真っ先に思い出した2つのビジョンに満開の桜がない。そう言えば、という感じで相手の言葉を飲み込む】

言われててみればそうみたいだね
これって槿花一日の栄って言うのかな?

【何となく似たような言葉を探し出して、そのまま相手に投げかける。流石に桜を昼間のうちに枯れるムクゲと同列にみるのは違和感があるのかもしれない】
【紙と鉛筆を視界の中に収めるが、特に気にすることはないらしい。何となく周囲のモノを探して話のタネを見つけ出そうとする】
【ツーサイドアップを指でくるくると弄っている。木花は何か変な感じを覚えているのか、少し落ち着いていない】

【ふと手遊びをしていない右手を見る。未だに灯り続ける黒杖に気づいて合点がいく。相手に気づかれないようにしれっと杖を黒い霧に還す】
【数秒で霧が消え、手遊びも収まる。そして残される「話題がない」状況。どうしたものかと頭を捻り始める】
【話をするならば、この沈黙の間に投げかけると良い。木花も自分から話を切り出す気は無いらしく、返事をする程度となる】

ちょっとだけ良いかな?

変な事を訊くけどアークトゥルス……じゃなくて、最近能力者が突然暴れ出した事件とか聞いたりする?

【相手の話が挟まれるか、何もなく1分弱経つと、突然変な事を質問してくる。能力者が犯罪に走ったり暴走したりする事件があったか否か】
【声色は拙く柔らかいままだが、表情は真剣そのものである。何か木花と関係があるのだろうか、変な単語まで飛び出してくるし】
【多分、答えは「聞かない」であろう。木花も飽きてしまうぐらいにそれを聞いているらしく、余り食い下がってはこないだろう】

/それでは今日もよろしくお願いします
/いつでも再開大丈夫です
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/20(金) 21:38:04.57 ID:Pz7+OEM20
>>861

時期で言えばそろそろハイドレンジアの時期じゃあないかね。紫陽花と言った方が分かりやすいのかしら。

【自らの瞳の色、勿忘草の花のことなど忘れてしまったように、今時期ならば紫陽花じゃないかしらとごちる声は、別段植物に興味がないながらも】
【無関心、或いは無知すぎることもない程度であろうことは見て取れる、だからといって詳しくはない――のだろうけれど】
【相手が少し戸惑うようにきょろきょろと視線を動かしていたとしても、少女は特に動じていなかった。沈黙は不安である、という、ありがちな思考回路】
【そもそもそれが形成されるほどに人と関わってこなかった弊害。いっそ家では数日単位で喋らなかったりするものだから、この状況こそ、かえって困惑するのだろうか】

さあ。家にはテレビがないものだから。新聞も取っていなくてね、それとも十年ほど前の新聞でも持ってこようか?
……別に能力者が最近だから暴れないということもないのじゃないかしら、そうだとすれば、今日日子供に路地裏に近づくなと教えないだろうよ。

【相手の質問に、彼女は一瞬程度、はてと黙り込んで、けれど答えは、ある種論外とも言える、情報源の乏しさ】
【それでも続く言葉は、それが木花の言うものかは別として、その事象自体はなくなりはしないだろうと、そんな色合い】
【自分だって、路地裏には近づいてはいけないと言われて育てられた。悪い鬼にさらわれてしまう……とかいうけれど、実際のところは鬼よりも非道い連中が居るのだろう】

なんだったかしら、それは知らないけれど。私に聞くよりか、そこらへんの人間捕まえた方がよほど効率的なように思うよ。

【それから付けたして、そうとも言う。相手の言った単語は知らない。――それなら、よほどそこらへんの一般人の方が知っているんじゃないか、とも、】

悪いね、何か知っていればよかったのだけれど――。

【――特別、表情は変わらなかった。ただ、少しだけ――ほんの少し、角が丸くなった程度の顔を、浮かべて】
863 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/20(金) 22:09:34.30 ID:Sh2Uv0v30
>>862

紫陽花かぁ……もうすぐ梅雨なんだね
どこかの国で確か来月から収穫の月になるんだって。葡萄だったかな……?

【紫陽花と聞いて、何となく故郷を思い出す木花。梅雨という言葉もそこに由来する】
【また、木花が曖昧に披露したものはフランス革命暦に因むものらしく、6月20日頃からの一月間は収穫月と呼ばれたのだという】
【そう答えて、ふと考え込む。唐突に思い浮かんだ「そう言えば情報集めれてないなぁ」という感想と、目の前にいる人物】
【訊いた結果、大体の人と同じ「路地裏なら」というもの。相槌を打って、申し訳なさそうに言葉をかける】

ありがと
いきなり訊いてごめんなさい

新聞は嬉しいけど、ごく最近のじゃないと意味がないの

【その後に掛けられる気遣いが嬉しかったのか、相手の話が終わるまでしきりに会釈する。でも、そこまでであった】
【木花の表情に陰りが入る。見た目幼く見える少女の暗い表情は、人によっては痛々しくて見てられないものでもある】
【それを知ってか知らんでか、自分からその顔になる事だけは無意識のうちに避けていたらしい。故に、続く言葉は弱音かそれに準ずる何かである】

最近、自分の記憶に自信がないの
本当にわたしは別の世界で生まれ育ったのかって……

あっちの記憶でも同じような病気があるの
「神隠し」って名前が付いているのに「健忘症」として扱われる病気

【言い終わってハッとする。疲れ過ぎた故の身勝手にしては、少々やり過ぎたか。わたわたと手を振って大丈夫な事をアピールする】

あわわ……

えっと、もう大丈夫だからごめんね
偶にそういうのあったりするよね

【髪先をくるくるさせて、誤魔化そうとする。冗談のように同意を求めようとするが健忘症に罹る事自体が既に異常である】
【きっとど忘れの事を指しているのだろう。冷や汗を浮かせながら、相手の言葉を待っている木花であった】
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/20(金) 22:46:01.88 ID:Pz7+OEM20
>>863

そうらしいけれど、梅雨は嫌いなのだがね。湿気るのだもの、本だとか――、

【くしゃりとした癖毛はさぞかし梅雨の湿気に弱いのだろう。顔を不機嫌そうにして、ふわと小さく息をつき】

そうだろうね。別に必要のあるものではないから、欲しいならば持って行けばいいけれども。
それともどこかで買えばどうかしら。駅前のゴミ箱だとかに大量に捨てられているイメージだけれど。

【むしろこれで十年前の物がいいと言われたら驚いてしまう。当たり前に納得しながら、それから、当たり前な意見を述べてみる】
【最新の情報が知りたければ新聞を買えばいい。そうでもないなら、そこらへんに捨てられているのを拾えばどうだろう】
【さすがに後者の意見は少しどうかとも思うのだけど、彼女としては案外ふざけたつもりもないらしい。――なんてしていたら、相手の表情が陰り】

……ところで、自分の記憶のすべてに完璧に自信がある人間というのはどうなのだろうね?
どんな些細なことも、例えば一年前に一丁目の街角ですれ違った女の瞳がハシバミ色だったかと、言えるような?
そんな人間はどうかしらん。居るには居るらしいのだよ、けれど、だいたいの人は違うんだと思っていたけれど……。

【ここでおろおろとうろたえ不安がり涙でも浮かべ相手を宥めれば、まだ、かわいらしさは残っていた、と、思えたのかもしれないけれど】
【やはり対して顔を動かさなかった彼女は、ただ、紡ぐ言葉は、それでも不器用に相手を気遣っている、つもりなのかもしれない】

誰もが自分のその記憶が本物だとは証明できないのだから。

【「私にだって、」】
【「忘れている本当の出来事や、覚えている嘘の出来事があるかもしれないのだし」】

【くしゃり、と、しわだらけになった白紙を、ようやく諦めたらしい彼女は、それでも書き物をするのに無理ではないと気付いたらしい】
【丁寧に重ね合わせて畳み、画板の金具に挟んでやる。それから、黒く汚れた手を軽く、けれど無意味にはたくようにして】

世界は五分前に創られたという仮説もあるくらいなのだから。

【それでも駄目かしらん、なんて目が、じっと相手へ向けられるのだった。――これでも、気遣いの、つもり】

/申し訳ないです、遅れてしまいまして……
865 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/20(金) 23:15:02.13 ID:Sh2Uv0v30
>>864

えへへ、心配してくれてありがと
住めば都って言葉だね

友達もできたし、この病気も二回目だし、8 回もジャンプしたのになにやってんだろ

【口調は自嘲気味ではあるが、声色に明るさが戻っている。手遊びが止んで髪の揺れ方が微風に靡くパターンに回帰する】
【キュロットスカートをパンパンと叩いて埃を落とし、両手で自分の顔をぴしゃりと叩いて吹っ切れる】

うん、もう大丈夫
ありがとね……えっと……えっと…………

【またも表情が曇る。今度は深刻そうでもなさそうではある。瞬間冷や汗がまた浮く。悪い事をしたがバレた時みたいな表情】
【間隔は更に長く。沈黙が折り重なる度に汗の量が増える。先から避けていた事にぶつかって万策が尽きる。観念するしかない】

えと、名前ど忘れしちゃって……
ごめんなさい

【それにしても直接的である。顔見知りの名前を忘れて隠していたにも関わらず、さらりと失礼な事をのたまう】
【承知の上でもある。木花の表情が真剣なほどに端から見ればコミカルさが増してしまう。恐らく「なんでもしますから」と口走りそうな、そんな雰囲気を漂わせる】
【そう言いながらも、気になるものがふと視界に入ったのか、訊くのを我慢する。その余計な努力が、真剣さに拍車をかけているようでもあった】

/いえ、こちらも遅筆ですみません
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/20(金) 23:43:10.27 ID:Pz7+OEM20
>>865

【名前を尋ねられた、その時に、彼女はわずかに目を細めたように見えただろう。或いはそれは、不機嫌さが増したようにも、見えるかもしれない】
【生まれた瞬間にはすでに"自分"がもう一人居た、双子として生まれた人間として。名前というのは、きっと、自分を区別するための大事な部品の一つで】
【その一つを相手が思いだせないとなれば、それは、なかなかに不愉快な出来事のはずだ。顔や声や思考回路で、自分と"自分"は区別できないと】
【そう思っているからこそ、或いは、思いこんでいるからこそ。――すでに死んだはずの"自分"に引きずられていることがぶざまだと、どこかで分かりながらも】

【ましてこの少女は自分の片割れを知るはずもないと分かりながらも、ただ、それでも、その不愉快な出来事は反射的に顔に現れてしまって、】

………………。

【そこそこ以上の地雷を踏んだ、と、言葉を後悔するには十分な、或いは十分すぎるくらいな時間、きっと彼女は沈黙するだろう】
【相手を見るわけでもない、ただなんとなしに黒く汚れた手を見ているだけという風ながら、このタイミングでその仕草をするのは不自然でしかない】
【やがて数十秒も黙った彼女は、それからようやく、仕方がないような顔をして――多分、脳内での思考整理に一区切りがついて――視線を持ち上げる】

アンネリーゼ。

【ぼそとようやく改め名乗る声はいつもより低く掠れる、電話口でこの声で喋られたらよく分からないだろう、なんて、思うくらい】
【珍しく相手をじっと見つめる視線は睥睨とのぎりぎりに揺れる、それでも怒りこそはしないのだけれど、ただ、明確に不機嫌めいている】

……はて、キミの名前はなんだったかしら。

【そこからさらに十数秒。やがて彼女が口を開くのは、唐突なタイミング】
【ひどく不器用にリカバリしようとする、未だ不機嫌そうな顔をしていたが、よほどよく観察していたのなら】
【途中からは表情が変わらなかったというだけで少し困惑したような――どうすればいいのかを考えるような、そんな気配の変化があって】
【それに気付いていたなら、これも案外考えた結果の言葉だと伝わるのかも、しれないけれど】
867 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/21(土) 00:12:05.21 ID:l5qw9mt/0
>>866

【思った以上の地雷を踏み抜いたらしい。そうは直接思わなくても、まとわりつく空気が教える】
【粘性の増した沈黙。人を押さえつけるのに適した空気感。何故こうなったかは細かい事を知らないまでも、何をすべきかは悟る】
【それまでの当たり障りない楽しげな雰囲気を全て引っ込めて、根に残る人見知りが顕となる】

……。
えっと、ありがとうございます

【名前忌避。最初は誤魔化し今度は人への恐怖から。たとえ赤ちゃん相手でさえも、その視線は崩れず】
【目が僅かに潤うのは、決して相手の為ではなく、行き場のない感情の落着点。涙を流さないぐらいには彼女なりにも耐える】
【失礼の上に更なる失礼を相乗して、もはや為すべき事も見つからない。目はアンネリーゼに向けられたまま凍りつく】

ふぇっ
えっと、わたしは木花(このか)。片桐木花です

【芋づる式に出された種々の反応。全身をビクつかせるぐらいの群発的な衝撃に耐えて、何とか平静さを保とうとする】
【声色も先程とはかなり異なる。もしかすると木花の本性に近い怯えの表情。根源衝動の回避をかなぐり捨てた約数年程度の退行】
【木花も沈黙を破る手段を探している。言葉にはならないが、意味のない手振りとして漏れる意図】

えと……

【木花では沈黙を破るのに役立たないらしい。状況はアンネリーゼの出方次第となっているままであった】
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/21(土) 00:33:36.27 ID:KDz/ex3d0
>>867

【双子は同じ顔で同じ声で同じ存在だったからこそ、大人たちは名前で自分たちを呼び分け反応した方を姉/妹として判断していた】
【だから時々からかうように姉の名前に返事をしてみたこともあったけど、大人たち――或いは両親も――は、まず、気付かないままで自分を姉として扱った】
【名前だけが自分を姉と区別するためにある、それ以外は全部一緒。……子供の頃に覚え込んだ認識はめったに変わらない、だけど、】

【不機嫌を無愛想で包んで誤魔化したつもり、結局周りから見れば最悪に機嫌を損ねたようにしか見えないのだけれど】
【本人としてはそちらのほうがマシな気がしてそうふるまってみた、そんな、気遣いのつもりだった。確かにそれはひどく不愉快な言葉だったが、】
【それをぶつける意味のなさも予想がついたから、だけど、その方法がどうやら違うらしいとわずかに気付いても、どうしたら軌道修正できるのかも、よく分からない】

【――相手の名前を忘れたわけではなかった、覚えていた。だけど、自分も忘れたような"ふり"をする】
【けれどそこは十年以上も真っ当に人に関わってこなかったような人間だから、そこまでは出来ても、それ以上はうまくできなくて】
【なんと言えばよいのかもよく分からずに、結局、「そう」と返すのだから。……少しだけ、視線が困ったようにしていたものの】

…………、

【何かを言おうとしても言うべきものは浮かばない、件の文字だらけで真っ黒な紙へ視線を落としても、別に答えは書いてない】
【「テディベアの中にクッキーを一枚。そうすれば餓死しません」適当に書いた文字列をにらんで流す、この紙には、そんな落書きばかりだった】
【多分そのときどきで思いついた妙な単語や文字列をつなげて書いたのだろう、支離滅裂というか、ものによっては文体さえも崩壊しているような文字の羅列】
【「キャラメルに命を吹き込む方法:百年世話をする」だとか、――何かのネタ帳にしてもさすがにひどい、ほど】
【さらに言えばそのうちのほとんどが文字を何度も重ねてしまっているせいで読めなくて、けど、こんな内容ばかりだと思うと、頭が痛くなるよう】

……帰らなくっていいのかしら。

【こちらから喋らなければ、多分一生、それこそ死んで骨になるまでどちらも喋らないような予感がした。視線は机の木目を数えるように動いて】
【それでも時々相手のことをうかがう、――とはいっても、胸元くらいまで視線を持ち上げて、また、机に戻しているばかりなのだけど】
869 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/21(土) 01:26:30.08 ID:l5qw9mt/0
>>868

【帰らなくて良いか? 謝意を表すに当たり障りのない魅力的な選択肢を提示される。投了の選択肢を選ぶのが常であろう】
【顔に複数の表情が溶け合う。木花が選ぶ道とは……】

ううん
ちょっとだけ、あとちょっとだけ耐えてみる

【曇り空の表情のまま決断する。心理学では莫大なストレッサーを要求する「決断」という行為。逃避ではなく、足掻く】
【例え、嫌われるとしても、何も変わらなくても、取り敢えず何かを残していく。冷や汗を引っ込めて、おずおずと口を開く】

前に、同じような事があって
おねえちゃんから『そんなんだから、記憶にも見捨てられちゃうんだよ』って言われた事があるの

1度目の神隠し(健忘症)で、時間が100年近く前のまま凍り付いていたわたしを心配して掛けてくれた言葉だけど

その時は何も言えなかったの
図星だったから。わたしの記憶の中の町が全て消えちゃってて、空っぽになっちゃってたから

【唐突に話を始める。何も事情を知らない相手を配慮してか、出来るだけ話を曖昧に、不必要なものを削ぎ落として】
【その度に詰まる、辿々しくて聞きづらい。質問や注文を挟む事が出来るぐらいに遅い。ある意味ではそれらの絶好の機会でもある】

代わりにふうちゃんが答えてくれたの

『2世界分の記憶は多過ぎる。1つでもど忘れする奴がいるぐらいだから尚更。その上で何を選んで何を捨てるかが一番大切だ

 だから、木花には多くの時間が必要であるし、有限故にそれを上手く使おうと木花自身が努力する必要もある』

ふうちゃんは、わたしに似ている親友を同じように失った事があって、これはそのリベンジだって後で言ってたけどね

わたしは恥ずかしかった。こんな事を言わせるほどに酷くしちゃって、それをまた繰り返してしまうなんて

【木花の出来る事といえば、元の世界の話しかない。そこから始めるしかない、目に力を込めて間違えないように確実に】

さっきはごめんね
次はもっと確実に覚えれるように、選んでみせるよ

【鞄から何かを取り出して、差し出す。何の変哲の無い真っ黒な硬貨。恐らくは木花にとって大切なモノのうちの一つ】

これは、ある人の『あり得たはずの未来の可能性』がお金(魔力)に変わったもの。わたしの世界では屈指の純度を誇る魔力結晶

本当は道標の一つだけど、あげる
無いままで、元の世界に帰ってみせる

【表情は晴れていないが、決意は本物らしい。大切なものと引き換えに、それを持っている人を忘れない】
【受け取るか否かは、委ねられている】
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/21(土) 01:36:56.50 ID:KDz/ex3d0
>>869
/申し訳ないです、眠気がちょっとひどいので、再びになりますが凍結お願いできますでしょうか?
/ひとまず日中には返しておけるかと思います……
871 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/21(土) 01:49:22.70 ID:l5qw9mt/0
>>870
/了解しました
/今回返信がかなり遅れてすみませんでした
/明日は所用で晩まで潰れてしまっていますので、21:00ぐらい再開でお願いできないでしょうか?

/ひとまず、遅くまでありがとうございました
/それではゆっくりお休み下さいませ
872 : ◆mZU.GztUV. [sage]:2016/05/21(土) 01:51:01.10 ID:l5qw9mt/0
870ミス
×明日 ○今日(5/21)
873 : ◆mZU.GztUV. :2016/05/21(土) 01:51:50.80 ID:l5qw9mt/0
/871で訂正でした
/何度も間違ってすみません……
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/21(土) 01:58:21.30 ID:KDz/ex3d0
/21時ごろ了解しました、そのころまでにレスお返ししておきます。ひとまずお疲れさまでした!
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/21(土) 19:41:12.65 ID:KDz/ex3d0
>>86

【もう少し耐えてみるという言葉、きっと、もっと、他者と仲良くなるのがうまくって】
【――そうまで行かなくても、もう少し他者と関わることに慣れている人間だったなら、その言葉にうまく反応出来たのだろう、けれど、】

【それならば帰ればいいのに。――向けられる眼がそう考えているように見えた。別に、それでこちらの行動は、別段変わりはしないと】
【そんなにも嫌なら早く帰ればいいのに。それともこちらが帰ればいいのだろうか、――作業という作業でもないし、別に構いやしないけど、と、華奢な手が机へつけられて】
【軽く体重を預けて、立ち上がろうとする仕草。見ればきっと最低限の手入れしかしてない唇は特に口角が下がっていて、表情はお世辞にも好意的には見えず】

別に……いいんじゃないかしらん。どうせ両親も、客人たちも、私が姉か妹か、見分けることもできなかったのだから。

【だから名前を忘れたのも仕方ないんじゃないかしら。とうに世界から消えた姉を相手は知るわけもないのに、今までの経験で返す、そんな意地悪】
【名前が分からなければ双子のどちらなのかは特定できない、けど、二分の一で当たるのだからと、ひねまがった思考回路が、その顔や態度にまろび出る】
【きっと特別に相手が悪いわけでもなく、ただ――人慣れしていない彼女の中で、この辺りが今日の許容値の限界だったのだろう。自分しか居なくても、二択は外れるのだし】

……家は本だらけだから。きっと無くしてしまっても悪いのだし、キミが自分で持っていればいい。

【ふわりと立ち上がる仕草で布地の多い服が揺れる、きっと彼女なら興味を持ちそうな相手の言葉に、ただ、手を伸ばすことはなく】
【未来なんてとうに見失ってしまった、ありえたかもしれない未来も、もはや希望ではなく、重たい奴隷の足かせのようでしかないもの】
【未来も希望も終わりに向かうだけなら、別に――なくてもいいだなんて、拗ね切った子供の意見】

それなら私は帰るから、ここは好きに使えばいいんじゃないかしら、……どうせ私の所有物じゃないのだし。

【相手が耐えようとしたならこちらは耐えようともしなかった。立ち上がれば画板を胸に抱えて、ただそれだけを言って、立ち去ろうとする仕草で、そのまま視線を逸らす】
【何もなければそのまま立ち去ってしまうのだろう、何の言葉も添えず、ただ。――小さい背丈では、少しの距離でもうんと離れた距離に、見えてしまう】

/お返ししておきます、宜しくお願いしますー
876 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/21(土) 21:27:26.44 ID:l5qw9mt/0
>>875

【狂躁が過ぎて元の静かな夜に戻る。風は心象に一切靡かず、金色の少女の髪をいつもの通りに揺らし続ける】
【『ああ、何故気付かなかったんだろう』『あんなにも前から避けていたのに。分かっていた筈なのに』】
【表情はそのままに口角だけを柔らかく上げて、雰囲気は最初の時に戻す。目もいつもの頼りないあの形に】

うん、そうさせてもらうね
これも持っておくし、ここにももうちょっとだけいさせてもらうね

最初に言った事ぐらいは曲げちゃ駄目だから

【黒い硬貨を鞄に戻し、アンネリーゼの言った事に返す。これは持っておいたまま、そうして東屋でゆっくりしておく】
【木花の方は長鞄を置いて、くつろぐ体制に入る。意志の弱い割には強情な気も持っているらしい】
【アンネリーゼが一式を片付け終わるのを見守り、終わり次第を見計らって言葉を用意しておく】

それじゃあまたね
アンネリーゼちゃん

【相手からの反応は期待していないらしい。ただ言うだけ言って、手をひらひらと振って別れの挨拶する】
【恐らく、木花にはこれ以上何も持ち合わせていないだろう。だから、この二人の時間はこれでもうおしまい】
【多分、相手の姿が逆光の闇の中に消えるまで手を振り続けてくれるだろう】

/残り少ないですが
/今日もよろしくお願いします
877 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/21(土) 22:00:42.60 ID:RVw2O8rl0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――雷の国 荒野】

――――ふぅ、はぁ……ったく、こんな所でご苦労なものだな……
こっそりと探りに来たつもりなんだろうが、そう甘くは無いんだよ……っ

【くたびれた薄いスーツを右肩にひっかけ、Yシャツにスラックスとテンガロンハットにその身を包んでいる】
【やや無精髭の目立つ顎に、やや長めでだらしなく乱れ気味の金髪とは裏腹に、活力に満ちた瞳を光らせている】
【腰に、鞘に収まったごつい2本のナイフ、何本ものハードダーツ、そして一丁のリボルバーハンドガンをぶら下げている、身長170cm前後の男性が】
【呼吸を乱しながら、足元に倒れた3体の死体を見下ろし、気だるげに汗を拭っている】
【戦闘でも起こったのだろう。周囲には小爆発の跡と思しき放射状の焦げ付きや、直線状に地面を抉った跡などが残っている】

【テンガロンハットには、逆五芒星を象り、その下に≪No.21≫とあしらわれたバッジが留められていた】

しかし……なんだな、魂を頂けるって言うのは、悪い話じゃない……流石に、死体を持って帰る事までは、出来ないだろうけどな……!

【男性の肉体から、灰色のオーラの様な物が立ち上り、ゆるゆると足元の砂粒が逆巻き始める】
【――――嵐が近いのだろうか。遠く稲光が、一瞬の閃きを見せた】



【――――所変わって、風の国 公園】

――――なんというか、気を使われると、却って収まりが尽きません――――
だから、私の事は、そんなに気にしないでください――――
<でも……私だって、なんだか……嫌なんです。出来る事なら、また……前みたいに、笑ってもらいたいって……>
「……ま、難しいだろう事は、重々承知さね。けどさ、あんたのせいで周りの誰かが暗くなるのは、良くないんじゃないのかい?」

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のまるで死人の様な冷たいオッドアイを持ち、体表に紋様の様な、仄かな光を放つ金色のラインが走っている】
【白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女と】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性と】

【灰色のフード付きパーカーに、さっぱりした色合いのチェック柄の入ったスカートを履いた】
【額に、正三角形の形に、赤・青・緑の点が浮かび、それらを繋ぐ様にぼんやりと光の円環が浮かび上がっている】
【少し癖のあるオレンジ色のショートカットと、緑色の瞳が印象的な、身長140cm前後の少女が】

【それぞれ、手に買い物袋を下げ、街灯の下のベンチに並んで座っている】
【オッドアイの少女は凛とした様子で、オレンジ色の髪の少女は身体を縮こませるように、ライダースーツの女性は憮然とした様子で口元を抑えながら】
【ほぼ頭上から照らされる光の為に、彼女たちの作る影は、酷く短かった】

「この子は納得できないって言ってるのさ。あんたは「納得しなくても良い」とか思ってるんだろうけどね?
 あたしがこんな事を言うのも何だろうけど、それって全然良くない事だと思うんだよ」
――――私には、応えられません。もうふらつきたくはないんです――――
<……辛い、んだよね……>
――――そうですね。こうしていた方が、よっぽど楽です。少なくとも、それは間違いありません――――

【その会話は、華いだ様子もなく、どちらかと言うと陰鬱な雰囲気を湛えていた。昏い夜空が、それを助長する――――】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/21(土) 22:45:17.74 ID:KDz/ex3d0
>>876

【蒼色が、さっきまでよりも褪めているように見えた。花の咲き盛りを過ぎて、これからただ萎れていくだけみたいに】
【ぎゅっと画板と袋のままの原稿用紙、それだけを抱きしめて、目の前の他人との関係を、ひとまず今は――或いはこの先全部なのかもしれないけれど、逃避する】
【もしかたらそれが彼女そのものといえるのかもしれない、人ではなくて、文字や紙をずっと好んできた。だから、人間よりもずっと安心する】

【またね、の言葉に、きっと返事はなかった。くしゅくしゅの髪をラベンダーの香りの風に揺らして、布地の多い服もまた、ふわふわと尾ひれのように揺れる】
【ただでさえ小さな背丈だから、きっと、何メートルもある化け物よりは、あっさりとその姿は見えなくなるのだろう。木々の向こう、そっと隠れてしまって】
【戻ってくることもない、――だけれど、いつか、気付くだろうか】

【古びた丸太の机の上。紙ばっかりに意識を取られていたのだろう、これもまた古く短い鉛筆が、すっかりと置き忘れられていて】
【がりがりと刃物で削った乱雑なもの、何も特別なところのない、ただの鉛筆――多分、捨てられたり気付かれなくっても、誰も文句を言わないような】

/遅れてしまってすいませんでした……そしてお疲れさまでしたっ
879 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/05/21(土) 23:03:00.20 ID:RVw2O8rl0
/>>877取り消しでー
880 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/05/21(土) 23:23:37.97 ID:l5qw9mt/0
>>878

【アンネリーゼが見えなくなって、手を下ろす。そして、机の上の鉛筆が残っている事に気づく】

あれ、忘れ物……かな?

【伸ばした先に誰もいない。既に遅すぎたらしい。手持ち無沙汰に目が闇の中を探し、鉛筆は握られるだけ】
【良案が浮かばず、眠気が這いよってくる。糖分不足に脳が上手く働かない。目をこすりながら、反対側の手で鉛筆を握る】
【腕を枕にして、寝る準備が整ってしまう。そうすれば後は突っ伏してしまうのみ】

……。

早く……みんなの、所……に、帰り……たい…………な……

【夢を見始める。微睡みの中で全てのものが蒼黒の輪郭だけになる。しんしんと粉雪が舞い始める】
【あの日の夢。ただ布団も無しに寝ただけなのに、その寒さに引き摺られてやってきた最初の景色】

【多分、昼前まで眠り続ける。その間は鉛筆を握って、盗まれないようにするだろう。気づいてそっと取ったとしても、木花は気付かない】
【それが無ければ、起きてから今度会うまで鉛筆を預かるという発想に行き着くようだ。大切に保管してくれるだろう】
【静かに満ちる寸前の月が昇り始める。叢雲もなく、月光が東屋を照らし続ける。まるで疲れ切ったかのように眠り続けるのであった】

/こちらもこれで終了になります
/お疲れ様でした!
/数日間と長丁場になりましたがロールありがとうございました!

/全然遅くないので大丈夫だと思います

/それではゆっくりお休み下さいませ
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/22(日) 22:58:36.00 ID:zrKPYRD+0
【某国】

【覆いかぶさるような曇天の空に、色彩を吸い取られたかのようなくすんだ街】
【その郊外に、かつてガラス工場として使用されていた建物がある】
【明り取りの窓は悪童の投石に割られ、その破片や礫、由来のわからない木片が床に散乱する】
【もはや人の出入りは絶えたその廃工場に――今、三つの人影があった】

【そのうち二人はブラックスーツとサングラスという出で立ち】
【首筋に彫られた竜のタトゥーが、二人が『ただものではない』ことを雄弁に物語っていた】
【その目は抜き身のナイフのように鋭く、睨むだけで堅気の人間を竦ませる威圧感を孕んでいる】
【なぜか一人は角ばったアタッシュケースを提げていた】

【そして残りの一人は――】
【どちらかというと痩せ形、長身の男。歳は二十代か三十代だろうか】
【他の二人とは違い、くたびれたロングコートを着て、使い古したブーツを履いていた】
【鹿爪らしい表情だったが、どこか眠たげな目はやや迫力に欠けた】
【こちらはがまぐちの、大きな旅行鞄を提げていた】

【コートの男が口を開く】

 ……極竜会のミスター・サトウで間違いないですね?

【スーツの男の一人が応じる】

「ああ。そっちは、カノッサ機関のスミスだな?」

【コートの男はこくりと頷く】

 では、取り引きと行きましょうか……ック。

【コートの男は、不意打ちのように襲ってきたくしゃみを噛み殺した】

【コートの男がスーツの男のほうへ数歩進み、旅行鞄を置いて、また数歩戻る】
【スーツの男がコートの男のほうへ数歩進み、アタッシュケースを置いて、また数歩戻る】
【するとスーツの男たちとコートの男は、一定の距離を保ったまま鞄を中心に移動し、位置を入れ替える】
【そして同時に鞄のほうへ進み、スーツの男は旅行鞄を、コートの男はアタッシュケースを手に取る】
【男たちはまた距離を取る】

(……やれやれ、終わった、終わった)
(後はこのアタッシュケースを持ち帰れば俺の仕事は終わりだ)

【コートの男――カノッサ機関構成員デリック・ガーランドは、安堵というより疲労感からそう考えた】
【スミスというのは偽名だ。向こうのサトウというのもおそらくは偽名だ】
【この取り引きはごく小さなものではあったが、末端の構成員であるガーランドにとってはブラック・ボックスであった】
【しかし、あの鞄の中身も、このケースの中身も、知りたいとは思わない】
【あの鞄の中身も、このケースの中身も、知ればそれだけ口封じに殺される可能性が高まるというもの――】
【ガーランドは、その中へ首を突っ込み映画のような大冒険をするよりも、早く家に帰って昨日の残りのミート・パイにありつきたいと思っていた】

【そのとき、入口のほうで音がした】
【散乱するガラス片を踏み割ってしまったのか、高く小さな、しかし確かな音だった】

 ッ!?

【ガーランドは半ば反射的にそちらを向く】
【空いている右手は、脇にぶら下げた銃を取ろうとコートの内側に差し入れられている】

【廃工場に現れたのは何者だろう】
【取り引きの情報を聞きつけた正義の味方だろうか】
【偶然迷い込んだ一般人だろうか】
【はたまた、下っ端一人での取り引きを心配に思った機関の人間だろうか】
【それとも――】
882 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/22(日) 23:31:18.03 ID:zrKPYRD+0
>>881です
離席します
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/23(月) 21:21:09.16 ID:rmzJ03Qa0
【駅前広場――かわいらしいデザインの時計、の下】
【がやがやがとにぎやかな声が辺りに溢れていた、名前はよく思いだせないけれど、誰か有名人のデザインしたという時計の下は、】
【待ち合わせスポットとしてよく利用されていて。それならそこにしばらく――三十分ほどだろうか、ぽつんと佇む少女も、また、人待ちのような顔】

……――え、あれっ? え、ぇ……。

【――だったのだけれど。ぶーっと震えた携帯端末を起動して画面を確認したなら、そのあどけない顔は困惑したように変わって】
【携帯端末片手に振り返り見上げ時間を確認する、それから画面をじーっと確認して、最後にもう一度だけ時間を確認して】

……も、もう、時間過ぎるまで教えてくれないなんて、ひどいの――。

【どうやら待ち合わせがご破算になったらしい、もうと拗ねた子供のような顔と声で呟く、――それでも別段怒っているわけでもないようなのだけど】

【真っ黒な髪は腰の長さのストレートヘア、頭には生花のように繊細な赤い薔薇をふんだんにあしらった髪飾り、結んだリボンがふわりと尾ひれのように揺れて】
【真っ白な肌とあどけなさの目立つ顔、少しだけ釣った丸い瞳は黒色と赤色、左右で色が違っていて。薄い化粧を施しているらしいのが、あどけなさの中に見え】
【深い落ち着いた赤のワンピース、ふっくらとパニエが膨らませた裾の丸み、生成りのオーバースカートは前よりも後ろの長いデザインで】
【足元は踵の分厚い編み上げのサンダル、高い踵も合わせれば身長は百七十二も届くような少女】

どうしよっかな……、お腹空いちゃったし……。

【少し困ったような、少しだけ不安そうな、そんな顔をして、彼女はきょろきょろと辺りを見渡して】
【確率が低いのを分かっていながら一緒にご飯食べに行ける知り合いを探しているようなそぶり、――そんなように、ひとや周囲に気を向けているものだから】
【何かおかしなことがあれば、きっとすぐに気付くだろう。或いは――、彼女の方が誰かに気付かれるのかもしれない。UTの関係者であることは、少し調べれば容易に知れることだったから】
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/24(火) 19:34:20.05 ID:TxheFQZq0
>>883
/これ再掲しておきますー
885 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 00:59:30.49 ID:L0YiLvdRo
>>883

【――周囲から浮いている者がいる】
【それはたとえば夏場にコートを着込む者。たとえば女子供の周りをうろつく男。羊の群れに紛れる狼】
【往々にして、それらは目立つ。当然だ、周りから浮くということは他と違うということで、同じじゃないから人目を引く】

【だが曰く、それらは二流三流にすぎない。自らとの差異を、他者との隔たりを、悟らせるままにしておくのは案山子に等しい】
【爪を隠し、牙を潜ませ、周りにそれと気づかせない。明らかに違う者に対して、意識を向けさせない】
【他者の目をすり抜ける。盗賊、暗殺者、盗みと殺し――多くはそうしたものを生業にする者らが身に着ける技術】
【ゆえにこうした業を使う者は、大抵がろくでもない人種である】

「…………」

【黒いマオカラー。同色の編み上げブーツ。腰には黒鞘の打刀を佩いていて、隙のない身のこなしから彼が武に関わる人間だということが窺える】
【恰好に関してはさして問題もないだろう。しかし男の容貌そのものが、この場の空気と決定的にかけ離れていた】
【無造作に伸びた黒髪、不健康に白い肌。まだ一般的な範囲に収まるその姿に、止めを刺しているのは血のように紅い双眸】
【その眼に光は無かった。見た目通りの年齢――二十代半ばごろ――ならば満ち満ちていて当然のはずの生気が欠片も感じられない】
【想起するのは幽鬼。この世のものではない亡霊。しかし感じられるのは確固たる人間の、肉体の気配】

【有体に言って異様だった。しかし周りの者らは、どうもこの男を気にも留めていない】
【感覚の調子を外す技。己に意識を向けさせぬ技術。まるで本当の幽霊のように、人の間を縫ってすいすいと】
【向かう先は――時計塔の下。辺りを見回す、少女の元】

【おそらく彼女は気付くだろう、それも早い段階から。周りの人々はまったく気にもしていないが、男の異様な気配を彼女だけは感じ取れるはず】
【そういう位置を取って歩いている。周囲には悟らせずとも、彼女にだけはそうしない。呼吸も外さず、目線も誘導しないし掻い潜らない】
【何がしかの意図があるのだろうか。無意味にこのような真似はすまい。それがどのような考えの下に行われているのかは、彼以外分からぬことだろうが――】

「失礼します」

【果たして少女の前に立った男は身長百九十センチに届こうかという巨躯であった】
【光なく景色を反射するだけの赤い瞳が少女の姿を捉える。喩えるなら闇を凝縮したような低い声を、男は紡ぎだし……】

「貴女が『赤い白雪姫』殿、でしょうか」

【投げかけた問いは、しかし少女にとっては意味の分からないだろう言葉だった】
【男の態度にふざけているような様子はない。そもそも彼がふざけることなどあるのだろうかと思えるほど、その雰囲気は暗く、重い】
【よって、あえて分類するなら真面目といえる。そう、真面目に聞いているのだ。冗談を言っているとはまったく思えない】
【しかしおそらく彼女に心当たりはない。心当たりがないなら、これは……まさか単なる人違いか?】

/とりあえず投げるだけ投げておきます。
 もし可能でしたら、お暇なときにでも付き合っていただけると泣いて喜びます
886 :以下、名無しにかわりましてパー速民が送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 06:58:22.84 ID:i/a0qNRx0
>>885
/すいません、いま気づきました……!
/これから出かけてしまうので、帰宅後の返レスでよろしければぜひロールお願いしたいのですが、大丈夫でしょうか……?
/時間は夕方〜夜ごろになるかと思います……申し訳ないのですが
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 12:12:56.68 ID:LdGCiAgRO
>>885
/もちろんです、流石に平日昼間からというのは自分も難しいですからね
/自分の方も夕方〜夜には大丈夫になりますので、よろしくお願いしますー
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 19:27:06.43 ID:i/a0qNRx0
>>885

【少女がその存在に気付いたのは偶然のような、それとも必然のような、曖昧さが重なりあった結果のもので】
【空腹をどうしてやろうかと悩んで見渡した視線の向こうに彼を見つけた、――そして、数秒ばかし、その眼を離せなかった】

【恰好こそ異質ではない、特別、この時期に真冬の夜の国の一番寒い場所で野宿しようとする馬鹿みたいな恰好をしているわけでもないのに】
【少しだらしなく見える髪や白磁の肌も、瞳の赤も――色だけなら毎日見るほど見慣れたものなのに、何か、ちょっとしたものがおかしいような】
【遠目で見る限りにはただぼんやりとした模様にしか見えないものが近づけば不快害虫の長の群れだと気付く、その一瞬だけ前のような、何か漠然とした違和感ばかり】

【――けれど、きっと、すぐに気付くのだろう。彼のおかしなところは見てくれではなく態度、或いは気配。確かにそこにいるのに、見えてはいけない存在みたいな】
【目を合わせたらその瞬間に憑りつかれて向こう百年くらい肩が重たいような、……だけれど彼は生きていると、彼女の、どこか――どこかが、告げてもいて】

【路地裏のひとたちみたいだ、と、思った。ただ群れてかろうじて生きるひとたちではない、もっと、路地裏の中でも上の方に居る、こわいひとたち】
【"そういう"ことを知っているような、もっと言えば慣れているような、そんな人間が、明らかに自分に意識を向けている。そして、こちらに歩いてくる】

…………え、えっと、

【それでも彼女の選んだ行動は、そこに残ることだった。彼の異質さに気付きながらも、逃げるでもなく留まる。さすがにあどけない顔は困惑めいていたけれど、】
【高く澄んだ鈴の音が、それでも人当たりのよい高さを選んで、だけど動揺の音を漏らしている。――大きなひとだと思った。だけど、"彼"より少し小さいかな】
【――困惑はしている。けれどそれは異質な人間が近づいてきたというだけに見え。せいの大きな人間に対して恐縮する様子はないなら、慣れているのか】

――え? ええ、? えっと……、

【何を言われるのかと微かに身構えた刹那、闇のような声音が紡ぎ出すのは、彼女にしてみれば心当たりのない、それどころか全く心当たりのない、単語】
【普通であれば知らないと言えばいいのに、けれど、彼女はなぜか躊躇うような――不安そうな手が頬や口元や喉元に触れていく、記憶を思い返すように、している】

【そんな困惑は、ただ質問に答えるには長いくらいの時間、続くのだろう。時間が経過するごとに追い詰められたようになっていく眼は、最後は微かに震えるようになって】
【「あの」とそのうち絞り出すように漏らした言葉、声音はひどく不安そうに震えて、改めて相手を見上げる目は、何かを決意したような、その色】
【もしかしたら相手からすればおかしく見えるかもしれないくらい、――そして多分、それが、どこかずれていることも、予感として彼は抱くのかも】

…………ご、めんなさい、えっと、わたし、あんまり、昔のことって、覚えてなくて……その――、……それは、……わたしのこと、なの?

【長めの時間をかけてようやく返した言葉が、これだった。いわく、昔のことをよく覚えていない。だから、それが"そう"なのかも、よく分からない】

わたしが覚えてるだけでいいなら、……――違う、と、……。

【申し訳ないような顔をする、それなら、彼女の性質は少し知れるよう。案外素直で、だけど臆病。それでいて――よほど彼が感覚に優れているなら、或いは気付くだろうか】
【――この少女、きっと、人間ではなかった。巧妙に偽装している、或いは、上手に擬態している。だけど、何か、隠せないどこかで、それが微かに滲む】
【彼がひとごみに紛れてみせたように、彼女もまた、ひとごみの中に紛れていた。それだのに年頃の少女のように困惑した顔をして、だけど当たり前に相手と対する】
【もしかしたら、その様も異質なのかもしれないけれど。――普通の少女のようだけど、何かが違う、そんな、奇妙な存在は、困惑に微かな笑みを混ぜて、相手の返答を待つ】

/帰宅しましたのでお返ししておきます、よろしくおねがいしますー
889 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 21:06:22.21 ID:L0YiLvdRo
>>888

【返答を受けて男が浮かべた相は……無】
【何もない。眉毛の一本ほども、ぴくりとも動かない。まるで無表情のまま固定されているかのように、青白い顔は能面のごとく不動を保っている】
【これはいったいどういうことなのか。人違いであったのなら何かしら反応はあって然るべきだろう】
それとも、違うと言われることは織り込み済みであったのか。この展開が予想していたとおりのものであるというのなら、同様の一端すら見えないというのは筋が通る】

「…………」

【しかし、だとするならこの沈黙は何だ?】
【目算に沿った流れなら、続く言葉もすらすらと出てくるはずだ。しかしそれがない以上、問題が発生したということに他ならず】
【そしてこの場において、その要因となるものは一つしかない。すなわち問いかけに対して否を返されたことで……】
【初っ端から出鼻を挫かれる。違いあるまいと思っていた人物が間違いであると言われたとき、当たり前に発生する当惑と僅かな思考停止】

【つまり。ああつまり、これは――人違い?】

「(……赤薔薇の髪飾り。ドレスの意匠を含んだ赤い衣服)」

【視界に映る少女の姿を確認する。間違いない。聞いていた、二つの要素がある】
【そして背格好も一致しているように思える。まさしく今日この場所で落ち合う予定の人物のはずだが……】

「(人違い、なのだろうか)」

【赤い衣服が被るのは、まあ分かる。赤薔薇の髪飾りが一緒というのも認めよう】
【だが背格好までもが同じなど……そこまで偶然の一致を見せることなどあり得るのだろうか。しかもこの少女、誰かを探している様子すら見受けられた】
【それも含めれば四つ。状況と周囲の人物の様子を鑑みて、確実に彼女であろうと……判断したのだが】

「…………」

【もしやこれは一種の試し、あるいは戯れなのだろうかと考え始めた矢先に……】

「……失礼します」

【懐の携帯端末が震えた。黒い二つ折りの携帯を取り出し、受信していたメールを開く。目に飛び込んできた文面は――】


   依頼がキャンセルされました。
   以下、クライアントからの連絡本文。
   
   
   ――やっぱナシで。
   
   
「……。…………。………………」

【無言。沈黙。言葉が出てこない】
【少女が返答を躊躇っていた時間よりも、ひょっとすると長いかもしれない間、押し黙る】
【漸う動き出した男は携帯をぱたんと閉じて懐にしまい込み、改めて向き直った】

「――申し訳ありません」

【斜め四十五度、綺麗に腰を折る最敬礼。深い謝意を全身で示す格好に、含むところは何もなく】
【つまり、理解したのだ。完全にこちらの間違いであったと。この少女はまったく無関係な人物であったのだと】
【正直ここまでの偶然があるものかと俄かに信じがたいところはあるが、こうして連絡があった以上は認める他になく……】

「こちらの手違いでした。非は全面的に自分にあります。たいへんご不快な思いをなされたと拝察致しますが、何卒ご容赦をいただきたく」

【ここまで言う必要があるのかと思えるほど丁寧に、謝罪の言葉を口にした】
【その姿から、先ほどのある種不気味な気配は完全には消えていない。消えてはいないがだからこそ、滑稽にも映る様を見せている】


/遅くなりました、すみません……! よろしくおねがいしますー
890 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 21:40:25.88 ID:i/a0qNRx0
>>889

【どうしよう、多分ひと違いだ。だけれど、違うと言いきるだけの材料がない】
【彼のいいようなら、たぶん、ここ最近の約束の話をしている。それなら、違う。絶対違う。そんなの恥ずかしくて自称できない!(他意なし)】
【林檎は好きだけど七人も小人はいらないし赤く焼いた鉄靴を履かす魔女も知りあいには居ないから、どうしよう、どうしよう、と、思考回路は斜めにぶっ飛び】
【けれど顔は変わらず困惑あるいは申し訳なさそうに押し黙る、押し黙って……ふと気付けば、すっかりと相手も黙っている。――いっとう、少女は困り果ててしまって】

え、えっと、あの、ごめんなさい、なんだか……えっと――。

【どうしたらいいのかわからなくて手をぱたぱたと揺らす、すっかりと沈黙してしまった彼の、まるで電源の切れてしまったような彼の】
【再起動を試みようとしている割に謎の動きを繰り返す、多分本当にひと違いだったのだろう。……それから、彼が携帯電話を閉じたなら】
【やっと動いたと少し目的がずれた喜びで彼女は困惑顔を少しだけ綻ばせる、それなら躊躇う悪人のような中途半端な高さの手、――その指先はすぐに驚きに跳ね】

え、えぇ、えええ、と、あの、わたし、大丈夫なの――えっと、あの、大丈夫だからっ……!
あ、の、わたし、友達と、えっと、音々子ちゃんって言う子で、えっと、子供の頃から知ってて……それで……っ、えと、
ご飯食べに行く約束してて、だけど、さっき、来られないって言うから……どうしようかなって思ってて、お腹空いたなって、……あああ、えっと、ちがくって……!

【あまりにも綺麗なお辞儀、見た目の通りにきっと櫻の血を引く彼女でさえ、こうまで完成されたものは見たことがない】
【どうみたって未成年ながらも成人済み、職場はUTの酒場、……やらかして客に謝ることがあったとしても、こんな礼をした記憶もない】
【高く金属質な声は慌てたようにひっくり返れば、どこか不協和音めいた耳障りさを孕む。それでも内容はいたって言う必要のないここに居た理由を述べるだけで】
【つまり実害なんて何もないから謝らないでほしいと言いたいのだろうが、言葉は少し足りない。無駄に空腹であることまで述べてしまえば、さすがにそこは恥じらうものの】

えっと、あの、白雪さん? ……来られなくなっちゃったの?

【いろんなことを口走った事実を遅れて理解する。透き通るような白磁の肌はすっかりと赤くなって、どうしようと考えるような一瞬、彼女は両手で顔を覆い】
【数秒ほどぷしゅうとガス抜きするような沈黙、それからようやく掌を外す顔は、やはりまだ真っ赤なのだけど、多少なりとも落ち着きを取り戻したように見え】

【それでもまだ彼が頭を下げているようなことがあれば、やめるように促しながら。――そんなようなことを、訪ねるのだろう】

/よろしくおねがいします!
891 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2016/05/25(水) 22:29:05.48 ID:L0YiLvdRo
>>890
/本当にすみません、いろいろ立て込みまして、しばらく書き込むことが難しい状況に陥ってしまいました……
/始めたばかりで恐縮なのですが、破棄という形にさせていただけると幸いです。本当に申し訳ありません……!
892 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/25(水) 22:33:52.58 ID:i/a0qNRx0
>>891
/了解しました、お気になさらずです!
893 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/05/28(土) 22:36:09.36 ID:wqfXfkAf0
(初夏の陽射しが人々に袖をまくらせる午後)
(とあるこじんまりとした公園のベンチに戟と呼ばれる槍に類する武器を携えた人物が佇んでいた)
(その人物はこれから真夏に向けて更に暑くなるその陽射しを浴びながら額にうっすらと滲んだ汗を拭う)

「うー…もう少しで夏かぁ…カキ氷屋さんでもやろうかな?」

(そう呟く人物は小柄で長い紫の髪をツインテールに纏め、深紅の瞳を眩しそうに細めと)

「ちょっと…暑いや……『血塗れかき氷(ブラッティアイスエイジ)』……納涼版…」

(それはその人物の使う異能、一瞬フワリと白い冷気がそのノースリーブの水平服を着た人物から溢れて外気を快適な物に変える)

「んー、涼しーい」

(懐から取り出した袋からおやつのラムレーズを食べる人物のその声は、飴玉を転がすような高い子供のそれであった)

【それでは改めまして宜しく御願いします、うーんやっぱりブランクありましたね】
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/05/28(土) 22:42:16.63 ID:m1K75Bnwo
>>893


──なにしてるのー? 僕にもちょーだーい。


【ワザワイに声をかけたのは、これまたワザワイと同じ程度の歳のくらいと見受けられる、齢12ほどの少年だった。】
【繊維のように細く柔らかな、プラチナカラーの頭髪に、ぴょこんとしたアホ毛。】
【赤い瞳に、柔らかそうなほっぺた。ぷっくりとした唇。】
【色白で、華奢で、少女のような様相である。】

【ともあれ少年は、ワザワイがおいしそうに食べるそのお菓子につられてやってきたのだった。】
895 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/05/28(土) 22:52:37.06 ID:wqfXfkAf0
>>894
(突然声を掛けられたワザワイは少年のことを見つめる)
(ここは小さいながらも公園、自分と同じくらいの子供がいても何一つ不思議は無い)

「君はだぁれぇ?」
「うーんとねぇ…ひなたぼっこしてたの!」

(そう答えてにっこりと笑うと自分が持っていたお菓子を半分分けてあげる、軽くラム酒で香りをつけてある干し葡萄は甘い香りを放ちながら丁度同じ数づつ二人の手の上に転がされる)
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/05/28(土) 22:59:44.06 ID:m1K75Bnwo
>>895


ありがと。──あんまりおいしくない……。


【礼を述べて、断りなく彼の隣に座る。背が低く足が地につかず、白い生足をぷらぷら。】
【干し葡萄を口に放り込めば、吐き出さずとも失礼極まりない感想述べて】

/すいません、30ふんほど席はずします。
897 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/05/28(土) 23:08:29.43 ID:wqfXfkAf0
>>896

「えー、美味しいよ?」

(そういいつつ自分の手のひらから摘まんで口に運ぶが特に怒ったような素振りは見せない)

(横に少年が座るのを受けてワザワイも少し横にズレる)
(そして自分も少年に倣って半ズボンから伸びる足をぷらぷらさせる)
(ワザワイとしてはこうして同世代の子供と接する機会が無かったため子供の遊びなど殆ど知らない)
(もっとも、『かくれんぼ』や『おいかけっこ』に関して言うならば大人どころか野生動物にも敗けはしないだれうが)

「えへへぇ〜」

(キュッと少年と手を繋ぐとブンブンと勢い良く振る)

/了解いたしました!
898 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/05/28(土) 23:45:10.12 ID:m1K75Bnwo
>>897


いやー、ぼくはあまり好きじゃあないなあ………君はかわってるねー


【されるがまま。の様子で、握られた手のひらは年相応の大きさで、しっとりとあせばむ。】
【アホ毛が生き物のようにたらんと垂れている様子が、落胆している心情を表しているようだ……。】


ただいま戻りました。
899 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/05/28(土) 23:55:37.76 ID:wqfXfkAf0
>>898

「うーん…そぉかなぁ?」

(首をかしげながらも片手を繋いでいるため摘まんで食べることができなくなったラムレーズンをザラザラと口の中に納める)

「もしゃもしゃ…ふふ、君のコレ(アノ毛)面白いね♪」

(そして乗せていたおやつを食べ終えて自由になったてで背中に背負った戟を抜いて柄の方でアホ毛をツンツンと弄ぶ)
900 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2016/05/29(日) 00:01:22.23 ID:yDbw6X5Mo
>>899


お、面白くないよ……。てゆーか、危ないよ、それ。


【あほ毛いじられると、両手にて頭おさえ、その後フード被り…】
【──ふと、欠伸ひとつこぼせば、ベンチから降りるように立ち】


なんだか眠くなってきちゃった……、もう、帰らなきゃ……。


【そういってその場から去っていくのだった…】

/すいません、朝早くから用事があったため眠気が…
/ここらで落ちます。機会があればまたよろしくお願いします。
901 :ワザワイ・エスパス ◆0OEYGVrXeU [sage]:2016/05/29(日) 00:13:39.95 ID:zCeJh6UD0
>>900

「そんなことないよ?大丈夫だよ!たぶん!」

(柄の方だから良い物の…刃の方には布を巻くことすらしていない純然たる凶器である)
(そこまでしてアホ毛を守ろうとする少年が可笑しくて再び笑う)

そっか…じゃあまたね!

(公園から去って行く少年に微笑みながら手を振る)

ん……ほわぁ…ボクも帰ろぉ……ふっふっー♪リーベおねぇちゃんに新しいお友だちができたって教えてあげなきゃね!

(烏の濡羽色の愛しの姉の事を想いながらワザワイもまた帰路へつくのであった)

/いえいえいえいえ、どうかお気に病まれず
/また機会がございましたら是非!
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/29(日) 13:05:18.06 ID:mDsXuY0A0
【街中――大通りに面したカフェ】
【真夏よりは涼しい、けども春からすれば十分に暑苦しい気温の中、街には賑やかな声が溢れていて】

……失敗したわ、あんなに品ぞろえが悪いだなんて。
どうしようかしら、遠出なのよね――、どこか行く場所なんてあったかしら。

【一つのカフェのテラス席、少し温かい少し湿った風が吹き抜ける四人掛けの席には、どうやら女が一人居て】
【日曜の昼下がり、混んだ店内では一つの席だのに共通点の見えないような相席の客が増えつつある、ちらりと横目で眺め、頬杖に溜息を一つ吐いて】

けどここからどこかに行くのも面倒くさいわ、この辺りで何かないかしら……。

【揃えられた暗い紺色の髪は肩甲骨を少し過ぎる程度の長さ、少し日焼けした色の肌と、瞳は髪と同じ色、言葉のように気だるげに視線を机に落とし】
【指を絡ませる程度に手遊びする、服装と言えばシンプルなブラウスとスカートで、足元は踵のあるショートブーツ。飾り気のほとんどないような恰好で】
【少し背が高いくらいしか特筆することのないような見た目、どうやら二十四五ほどに見え。落とした視線の先で、すっかりと汗をかいたアイスコーヒーのグラスの縁を指でぬぐい】
【それからそっと口をつける。しばらく居座っているのか中の氷はだいぶんと丸みを帯びていて、ころりと柔らかい音を立て】

誰か呼び出せるかしら。

【なんて呟きで視線は続いて薄ぺらの携帯端末に移る、ついついと指先で操作する彼女の、アイスコーヒーはまだ半分は残っていて】
【まだ立ち去る気配もなく、それから、席も鞄を置いた分と自分の座る分以外の二つは空いて居て――ほかの席に座れそうな場所は、ほとんどなくて】
903 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/29(日) 19:09:55.35 ID:bboyqfCP0
>>902
【人で賑わうカフェの中、何やら騒がしい話し声が聞こえてくる。目を向ければ、それはどうやら客と店員が口論している様子であるようだ。】

ですからお客様、ただいま満席の状態となっておりまして、相席でのご用意しか……
満席?馬鹿いうなよ。これだけ店の面積とってるんだぜ、一人用の席くらいあるだろ?君はしっかり見て回ったのか?そうでなかったら職務怠慢だよこれは。
それにもうすぐ空きそうな席とか大体君、予想付くだろう?あるいは用も無いのにヒマそーにしてるやつら追っ払うとかさ、なんかあるだろうに。給料貰ってるならそれくらいはして当然じゃないのか?

【まくし立てるような口調と、相手が1を言ったら10を返すような理屈っぽい喧嘩腰。よく通る声とその言葉で注視を集める珍客は意外にも小柄な少女であった。】
【濃紺の長髪に、同じく濃紺のセーラー服。その上から羽織るぶかぶかの白衣が少女の素性を不明瞭にさせている。あどけない顔つきと身長から判断すれば歳は14から15といったところだろう。】
【しばらく文句は続き、結局少女は観念して店員の指示に従うことにしたようだ。露骨に機嫌の悪そうな表情を浮かべつつ、少女は端末をいじる女性の席へと向かう。】

まったく、僕が君の何百倍長く生きてると思ってるんだ。目上の人は敬えと学校で習っただろ?うん?何を困ったような顔してるんだよ。もしや疑っているんじゃ無いだろうな。
この僕がたかだかカフェの席をとるためにくだらない嘘をつくようなやつに見えるのか?あ、おい待てこら、質問しているだろ!

【少女を彼女のテーブルへ連れてきた店員は心底困ったという表情で、逃げ道を求める様に「こちらのお客様がご相席を希望しているのですが、よろしいでしょうか」と彼女に尋ねる。】
【承諾を得たならば少女は対面するようにして彼女と向き合い座る。「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」、口早に告げて店員はそそくさと来た道を戻っていった。】
【少女はいまだにぶつくさと店員への文句を言い続けている。よほど気が短いのか、神経質な性格なのか。あるいは単に口数がやたらに多いだけの人物か。彼女が少女にどのような印象を受けたかはわからないことである。】
【やがて少女は今気づいたというように彼女へ向かい言葉を投げかける。その言葉は先のやり取りから判断すればわりあい無難なものであった。】

や、失礼。聞き分けの無い輩がいたものだから。見苦しい様を見せてしまったかな?

【先の態度とは一転して目を細め、笑顔を浮かべて少女は社交辞令を述べた。彼女を気遣ってのことだろうか、何にしても面と向かって座る相手に挨拶の1つもないというのは無礼だろう。】
【その言葉を最後にメニューへ手を伸ばすかと思いきや、少女は彼女の両目をしっかりと見つめ、組んだ両手をテーブルの上に置いたままで、明らかに辞令を超えた会話を始めたのだった。】

さて。君が今見て聞いた通りの相席だ。これから少しばかし、これまでの人生で一切関係の無かった僕らは同じ食卓を囲むことになるわけだね。
妙な話だと思うだろう?でもそれが飲食店ってやつの生み出した制度だ。君はこの制度をどう思う?たいていの人間は鬱陶しいって思うだろうな。
だが君が何を思う思わないに関わらず、僕は君と今から会話をしようと思う。機会というものは有効に活用するべきさ。神のお告げだ運命だなんて信じちゃいないが、こういう「想定外」ってな事態は結構気に入っていてね。
陳腐な言葉だが「何かの縁」さ。お互いに少しの間、退屈しのぎをしようじゃないか。

【初対面の人間を前にしてひたすらにまくし立てるその姿は、目の前の少女が先程店員を困らせていた珍客であることを如実に示していた。】
【横を通る店員を呼び止め注文を済ませると少女は女性に向き直る。奇妙な少女は笑みを浮かべたままに彼女の眼を見つめていた。】
904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/29(日) 20:04:00.73 ID:mDsXuY0A0
>>903
/申し訳ないです、今気づいたことと、いまから食事ですので、レス返せるのはもう少し先になってしまいそうです……
/それでよろしければレスお待ちいただけますでしょうか?
905 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/29(日) 20:06:25.30 ID:bboyqfCP0
/はい 大丈夫です
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/29(日) 21:29:09.40 ID:mDsXuY0A0
>>903

【「ごめんね、さっきまでならちょっと暇だったんだけど……」】
【メッセージを送信して少し。返ってくるのは、つまり空いた席を埋めるついでに、退屈を過ごすことはできないとのこと、続くスタンプはかわいらしい絵のもので】
【寝てるのが分かりつくしたまま送ったメッセージには既読マークがついて数分後にベランダで育てているバラの枝にナイフを突きつける画像が返ってくる】
【つまるところ気楽に呼び出せるメンツは全滅らしいと見れば、ネットの掲示板なんかでは伏字になるような単語を送りつけてやって、――と、どこからか聞こえて来る声】

【面倒くさいやつが傍に居る、と、あまりにも直感で思う。彼女がどんな性格であるかを知っていれば、多分、この思考回路には誰もが納得するよう】
【究極なまでの面倒くさがり。用もないのにヒマそーにしている人物のある意味筆頭でもある彼女は、アイスコーヒーのコップに手を伸ばして】
【気にしないでと送ったメッセージにまた「ごめんね、今度お店に来てね!」と返ってきたメッセージをそのまま無視して、殺すと送ったきり返事のない同居人は二度寝したかと無視する】

【――なんてしていたら、少し、手遅れだった。気付けばその面倒くさそうなやつを連れた店員が傍に居て、もっと気付いた時には、すでに空席に座られている】

ああ、構やしないわ、用事もないのにヒマだから居座っているのよ。もう少しで帰るから、そしたらあなたがこの机を使えばいいわよ。

【相手の言葉に、相手の言葉の一部を使うようにしてそう返す。多少薄まった色のアイスコーヒーを飲みながら、その態度は互いの間に壁を感じるような】
【というより、めんどくさそうという印象の壁をぶち立てている。もう少しで帰るという言葉通りにアイスコーヒーはみるみる目減りして、すぐにでもなくなりそうで】

そうよね、鬱陶しいわ。他人は嫌いじゃないけど、過干渉は嫌よ、暑苦しいわ。これからの時期は特にそうよね?

【相席について尋ねられれば、素直だった。素直に鬱陶しいと告げ、態度では、まるで相手のような人間が鬱陶しいとまで言っているかのよう】

私ってば、面倒くさいことは嫌いなのよね。暇つぶしは嫌いじゃないとしてもね。

【鬱陶しくするな、面倒くさいようにするな、存外率直な物言いをするのが彼女であるらしい。からんと残った氷がコップで滑る、――中身は飲みつくしてしまった】
【空いた椅子に置いて居た鞄を手繰り寄せる、もう今すぐにでも帰ってしまいそうな様、――二十三四に見える彼女だが、相手が年下に見えても、別段優しくする素振りもない】

/おかえしします! ……が、まだちょっと状況が不安定なので、たびたびレス遅れるかもです……申し訳ないです
907 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/29(日) 22:19:20.78 ID:bboyqfCP0


>>906

【露骨なまでに少女を拒絶して見せる女性に対し、あくまで少女の態度は変わらない。腹を立てるでもなく、いぜん何か面白いものを見るような目つきで彼女を見つめたまま言葉を続ける。】

なんだ聞いていたのかい。ふふ、良い返しだ。そうとも、君の様な存在に帰れと言ったのは僕なんだからその態度は至極理に適っていると言えるね。
さっきの店員よりよほど話が通じそうだが、君が望まないというならば仕方無い。僕が自己紹介をしてそれで終わりさ。

【存外に少女は聞き分けが良かった。女性を引き留めようとするでもなければ文句を言うでもない。本来ならばさらに多くの言葉を機関銃のように浴びせかけていたのだろうが、すぐにも目の前の相手が帰るだろうことを知ってか、不要な言葉を並べ立てることはしなかった。】
【彼女は既に席を立っている頃か、あるいは少女に背を向け歩き出している頃か。いずれにせよその彼女の姿を視界の中心に捉えたままで少女は言った。】

僕の名前はベル。ベル・ヨークシャーだ。
カノッサ機関科学研究局Bブロックの統括を務めている。専門は生物兵器の製造・開発。Bはbio(生物の〜)の頭文字さ。

【あっさりと、なんてことのないように少女は自身の素性を明かした。それを笠に着るでも自慢するでもない口調。学生が自分の所属する校名を告げるのと同じくらいの気軽さで。】
【カノッサ機関。世界的に存在の知れ渡っている巨大テロ組織。長ったらしい役職名が示すものがなんであるかを彼女が把握できたかはわからないが、とにかく自身はその組織に組するものであることを告げたのである。】
【羽織る白衣は研究者気取りか、脇で会話を聞いていた男がおかしそうに笑って口元を抑える。誰がどう見ても中学生かそこらの少女が口にするには仰々しい肩書き。脇の男を気にするでもなく、少女はあくまで変わらない態度で、ただ当たり前のことを言っただけだというように微笑んでいた。】
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/29(日) 22:53:58.43 ID:mDsXuY0A0
>>907

あら、聞こえてたも聞こえてたわ、このカフェに居た人間は聞いたんじゃないかしらね。
……そうね、面倒ごとは嫌いなの。生まれつきだから許してくれるかしら? 同居人にも死ぬほど言われて飽きてるの。

【引き寄せた鞄の中から財布を取り出す、自分用の伝票――といってもコーヒーだけの注文だから、値段はすでに分かっているのだけど】
【それを手繰り寄せてちゃり、ちゃり、と小銭を数えて。――面倒くさがりは性質であると別段反省もしてない言い訳を重ね】

こんな場所を出歩いていていいのかしら? 私がこの後自警団を呼び付けたとしても文句は言わないことね。
それとも今この場所で悲鳴を上げてもいいのよ、……まあ、しないわ。私の面倒くさがりに感謝してくれる?

それか、ちっともそんなの興味ないのよね。好きにすればいいわ、私、そんなに正義の心にあふれてるわけでもないの。

【ぴくり、と、あんまり表情を動かさなかった彼女の表情が、さすがにその名乗りには微かに変わる】
【それでも怯えた顔をしたり悲鳴を上げたり逃げようとしたり――そういうことはなく、態度はあくまで淡々と変わらず】
【或いは冷たいのかもしれない、――なんて言いながらも、鞄にしまおうとする仕草で手元に携帯電話は置かれていて】
【さっき携帯電話を扱っていた手つきを見ていれば、相当なれているらしいのは知れたから。多分――数秒で、自警団なり警察なりの番号を鳴らせる】

私も名乗った方がいいのかしら? けど残念ね、面倒くさいからやめておくわ。
カノッサに名前なんて知られたら面倒くさそうじゃない? 

【ちゃりん、と、コーヒー代金分の小銭を一列に積み上げて――思考の裏では、微かに、考え事】
【この場に残るのかどうか。別段カノッサの構成員であることに興味はない、いっそ、一般人らしい反応ではない】
【ただ――これで放置して何かあっても目覚めが悪いような、それはそれで面倒くさいような。……財布を鞄に戻して、】

【――まだ。この一瞬では、立ち上がらない】
909 :ベル・ヨークシャー ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/29(日) 23:40:46.42 ID:bboyqfCP0

>>908

【ほんのわずか彼女に流れた感覚。危機を察知する力と呼ぶべきか、それは生物が生き残るためにはどんな異能よりも大切な能力である。】
【彼女が反応したという事実に少女…ベルも反応する。周囲に漂う空気が瞬間で冷え込んだかのような、そんな感覚を彼女が感じたならば。】
【少女は浮かべる笑みを一層強めるように、場を弛緩させるように明るく言ってみせた。】

おいおい、何も警戒することは無いんだ。僕は確かにいわゆる悪の組織に所属する者だが、別にこの場で君を取って食おうとかそんなんじゃない。後で食べるわけでももちろん無い。
何なら通報したって構わないよ。それで君が安心するんならね。それで僕が困るわけでも無いし、他の誰かが困るわけでも無い。
名乗っておいてなんだが基本的に僕は人畜無害な人間さ。君が一体何をしようと不快に思うことは無い。安心したまえ。
面倒は嫌いと言ったね、気にするなよ、生まれつきの性質ってものはそう変えられないものさ。僕だってこの惑星に誕生したそのときからずっとお喋りでね。どうでもいいようなことをよく喋るのさ。
誰に対してもそんな感じでね、興味の有る無しに関わらずついつい話し込んでしまうのさ。気に障ったなら謝ろう。

【彼女が少なからず自身の話に反応したことが嬉しかったのだろう、言葉の節々に妙な響きこそあるものの、極めて穏やかな態度のままベルは言葉を続けた。】
【話す少女の姿に嘘偽りを述べているような雰囲気は一切無く。ただ単純に話し相手として彼女を見据えていたのだった。】

というわけでさ、君の名前や素性を知ったところでどうこうしようって気は一切無いんだ。君の方から少しの自己紹介でもあればだいぶ話が弾みそうなんだがな。
まあそこは君の好きにしてくれよ、強いるつもりは無い。少しは僕に興味を持ってくれたかい?

【彼女が席を立つことに躊躇をみせていることを嬉しがるように、かといって何かあくどいことを企んでいるという風でも無く。ベルは会話を続けようとする。】
【実際、害意のようなものは感じ取れないであろうし、また仮に取っ組み合いになったとしても見るからに相手は小柄な少女だ。その道の人間なら気づくことができるだろう、異能のたぐいを所持しているわけでも無い。】

そしたら話を続けよう。一つ僕は最近の自分の振る舞いに疑問を抱き始めていてね。研究の息抜きがてら他人の見解でも参考にしようと思うわけさ。
「この惑星に人間は要らない」と僕は思っている。君はどう思う?

【気軽な口調でベルは彼女にそう問うた。脇に座っていた男の腕に蚊が止まる。音を立てて彼は腕をはたき、止まっていた蚊は潰れて死んだ。】
910 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/30(月) 00:18:00.87 ID:VCrjW7LI0
>>909

【まず――彼女は、その立場も暮らしも、一般人と言って差し支えないだろう。というより、これは、一般を外れた人間ではない】
【しいて言えば能力こそ持っているが、それ以上でもそれ以下でもない。誰かを傷つけるためにその力を使ったこともなければ、誰かを守るために使ったことも、ない】

本当にそうかしらね?
おあいにく様だけど信用なんてしないの、悪いわね。

【答えは簡単だった。危害が与えるつもりがないということも、通報したところで困らないということも、多方面へ、曖昧な不信を返す】
【というよりもこの様子でいけば、特別に人間というものを信頼して回る人間ではないようにも思えた。――基本的に、独りを好むタイプなのだろう】

あら、嫌よ。個人情報って大切なの、知らない人に名前なんて教えちゃいけないわ。まして、あなたみたいな奴には教えないわよ。
……さあ、どうかしらね。私ってば他の人ってどうでもいいの。面倒くさいわ、それぞれ別の思考回路があるだなんて。もっと簡略化してくれないかしら。

【気だるそうな瞳、暗い紺色の瞳はただ一見するだけなら黒と見まごうほど、けれど光が入れば、それが青いのだと知れて】
【髪もまた、おんなじだ。光に透かせば青く変わる髪。――手元に近い机に置いたままにしていた携帯電話の、通知を知らせる緑のランプがちかりと瞬いて】
【引き寄せた手でそのまま起動してパスコードを通す、……「目がさえたんですけど」の一言は、これは穏やかな気持ちで既読をつけたまま無視して】

それもどうでもいいわ。人が居なければ少なくとも植物界隈の多様性は失われてたわね。
私って草は好きなの。だから人が居ないと困るわ、イーストパークってバラを知っている? とても綺麗なバラなのよ。去年の新品種なの。

【人間の有無もまたどうでもいい。或いはそういう面倒くさい質問に、きちんと答えることを避けているようでもある】
【だけど多分それは考えた結果ではなく、本能的にそうしているのだろう。結論としては居なくなったら自分は困る、とだけ言って】

/申し訳ないです、明日早いのでここで凍結お願いします
/明日は今日開始した辺りには多分再開できるかと思います
911 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/30(月) 00:20:25.67 ID:LA7hS8Bz0
/了解しました おそらくこちらも明日再開できると思われます 
912 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/30(月) 20:30:57.03 ID:LA7hS8Bz0
>>910
/申し訳ありません 事情により再開は10時頃になってしまうと思われます
/責任を持って終わらせますのでどうかもう少しお付き合いください
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/30(月) 21:09:52.32 ID:VCrjW7LI0
/了解しました、ごゆっくりとうぞです!
914 :ベル・ヨークシャー ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/30(月) 22:10:34.04 ID:LA7hS8Bz0
>>910

【名も知らぬ女性は自身への警戒を一切解こうとしない。尽くす言葉は尽くしたといった様子のベルはさすがに困ったという仕草で、苦笑いを浮かべつつ頭に片手を添えた。】

うーん、君は随分と疑り深いんだね。本当に何か悪さをしでかすつもりなんて無いのさ、そこだけは信用してもらいたいんだけどな。
ふふ、これも日ごろの行いってやつかな…… まあ、それならそれで構わないさ。慎重すぎるくらいがちょうど良いときだってあるしね。

【信用を得られないならばそれでいい、といった風に少女はそうまとめた。対人における態度の違いにこだわるのはお互いにとって無意味であると知っているからだ。】
【さておき少女は彼女の返答を興味深そうに聞いている。うん?と意外そうに相槌を打つ様子から判断して、その植物の存在は知らなかったらしい。】
【草が好きと答えた彼女の言葉にベルの笑みは強まる。ようやく彼女の個人的な趣向を聞けたことが嬉しかったのか、それとも趣味が合うとでも思ったのか。】
【彼女の返答を聞き終え、うんうんと頷きながら少女はそれを咀嚼している。そして変わらず興味深そうな、楽しげな目つきで口を開いた。】

なるほど君の言う通り、確かに人間が存在しなければこの惑星に存在し得なかった生物種というものはあるだろう。
彼等は自然を愛するからこそ研鑽を重ね、その結晶として生み出される新種が存在する。それもまた人間の歴史の中で幾度となく繰り返されてきたことだ。
だがそこで一つ想像して欲しい世界があるんだ。君は植物が好きと言ったね、是非想像力を存分に働かせて聞いてほしい。
世界というのは「人間及び知的生命体の存在しない世界」さ。「脳髄の存在しない世界」と言っても良い。それは例えばこの惑星から人間や猿なんかがきれいさっぱり消え去ってしまって、それから数万年が経った先の世界だ。
その世界を君は自在に観察することができる。幽霊のようにふわふわと、海の中を覗いたり、鳥のように空を飛んで世界を見渡すこともできる。君は世界にたった一人存在する神の如き観察者だ。
牛や馬が植物を食む(はむ)のは変わらないけれど、人間の手によって破壊される自然も無ければ切られる大木も存在しない。文明の遺跡は遥か昔に木々の根深くへ埋もれてしまった、そんな世界さ。

【語られるその言葉から彼女が思い描くのはいったいどんな風景だろうか。まるで「自分はそこを見てきたことがある」とでもいうような語り口で、流暢に少女は空想の世界を描いた。】
【ここまでの彼女の応対からして、素直に話に乗ってくれるかどうかはわからない。言葉の途中で愛想を尽かし少女の前から消えてしまう可能性も充分にある。】
【だが、もしも彼女がベルの語る世界を少しでも脳裏に描いたのならば、彼女が口を開くよりも前に少女は質問を投げかける。】

そんな世界を「一度でいいから見てみたい」と。そう思わないかい?

【愉快な悪戯を思いついた子供のように、大きな目を極限まで細めてベル・ヨークシャーはそう聞いた。】
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/30(月) 22:44:44.53 ID:VCrjW7LI0
>>914

あら、日ごろの行いじゃあないわ、そんな場所に名前を連ねた過去の行いよね、自業自得だわ。

【おあいにく様ねと呟いて頬杖に顎を乗せる、拒絶はしないけれど、肯定もしない。許さない代わりに、許しもしない】
【相手のどこか嬉しそうな様子に比べ、こちらは変わらずの仏頂面だ。にこりともしてみせない、その顔をほころばすこともない】
【ただ変わらずに愛想の悪い顔をしている。――どこか気だるい色の瞳、ただ時々相手を観察するように眺める瞬間がある、ありはする】

……残念ね、興味ないわ。私、人の手が加わってるやつらの方が好きなの。
鉢植えから逃げ出したミントの謳歌は好きよ、けど、きちんと剪定された植物の方が、かわいらしいと思わない?

ま、どっちも好きだけど。けど、だいたいの植物は人の手があるからこそ美しいのよ?
放っておいたら、きっと、ナガミヒナゲシみたいなやつばっかりが跋扈するわね、そんな世界見たらひっくり返ってそれこそ死ぬわ。

【自然な様は確かに美しいものもある、けれど、だいたい放っておいた草は好き勝手に伸びて、終わった花は溶け腐って終わる、となれば】
【きちんと鋏で持って人間の好きなようにしてやるのが、今の植物たちにとっては、多分、いい】

それに私忙しいのよね。明日も仕事があるの、そんなことしてる暇ないわ。

【それでも全く興味がないわけでも、ないのだけど――とは、特別に顔には出さない。言えば、面倒臭いことになりそうで】
【少し溶けた氷だった水で口の中を潤す、――いたって忙しいと、そう、アピールして】

/申し訳ないです、眠気がひどくて、今夜はあんまり長くできそうにないです……すいません
916 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/30(月) 23:01:53.56 ID:LA7hS8Bz0
>>915
/こちらも申し訳ありません、事情により次でこちらは〆のレスとさせていただきますが何時になるかの目途が立ちません
/不安定な時期にロールを申し込んでしまい本当にごめんなさい!今夜中には〆レスを書きあげます!
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/30(月) 23:19:41.20 ID:VCrjW7LI0
>>916
/了解です、こちらこそ気付くのが遅れたりなんだりで申し訳ないです……
/明日以降でしたら暇なので、レスはそちらの都合のいい時で大丈夫です、お疲れさまでした
918 :ベル・ヨークシャー ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/05/31(火) 01:24:01.30 ID:ppXNnbXy0
>>915
【「興味が無い」というその言葉。これまで一切の躊躇いや迷いを見せず毅然として振る舞っていた彼女の、その僅かな虚偽を確かに少女は感じ取った。】
【少女が数分前に注文した品を持った店員が近づいてくる。この場を離れたいという意思を全面に示す彼女が席を立つにはちょうど良いタイミングか。】
【コトリと音を立てて置かれたアイスティラミス。離れていく給仕の背を横目に少女が言う。】

「チケット」は僕が持っている。渡すには少し時間が掛かってしまうかもしれないが・・・

きっと君の期待通りの世界が待っている。

お帰りかい?それじゃあさよならだ。君みたいにはっきり他人を拒絶できるタイプの人間ってのは嫌いじゃないぜ。
僕にとってはなかなか愉快な時間だった。縁があったらまた会うこともあるだろう。それじゃ、ばいばい。

【笑顔で手を振る少女の姿を彼女は目にしていたかどうか。終始一人で勝手に楽しそうにしながらベルは彼女との対話を終えたのだった。】
【少女がフォークに手を伸ばす。脇のテーブル席に座っていた男の背後に大きな動物の口のようなものが現れる。男が気づくはずも無い。】

君は死ぬから困るだろうけど

【手にしたフォークで小さなティラミスを一息に口に運ぶ。】

蚊だって困る。

【男はピンク色の空間に呑み込まれ、空間が閉じると肉と骨の砕ける音が周囲へ僅かに漏れた。】
【客の一部はそれを見ていたが、突如謎の口に男が呑まれて消滅し、後には座席だけが残ったというそんな非現実的な光景をそのまま信じるわけもなく、違和感を抱きつつも結局思考は中途半端に終えられる。】

僕は等価交換だと思うんだがなあ。

【そう呟いて少女は口内を甘い感触で満たしつつ、対話を終えても未だ残っている疑念に思考を費やすことにしたのだった。】
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/05/31(火) 12:43:08.21 ID:1KfpIrRE0
>>918

いいえ、帰らないわよ。移動するの、それだけよね。
カノッサの人間と話し込んでいるところだなんて見られたくないわけじゃない? 
たまたま捕まってしまったかわいそうな人でいたいの、……謝らないわよ?

【そう言う性質であること、それから、相手がカノッサの構成員であったこと。それが、この積み重ねる態度の理由、なのだろう】
【面倒くさいと何度口にしていたか。そういうのは全部、彼女にとっては面倒くさくて、厄介で、お断り願いたい事柄であるのにきっと違いはなく】
【よく考えたら正義組織の一員でもなんでもない自分が相手を見はっている理由もない……と遅まきながらに気付いたのだろう、多分、ちょっとだけ動揺してしまった、と】
【緩く考えながらも表情は変わらない、――ついさっきも画面越しに言葉を交わした幼馴染を思いだす、彼女は正義組織に関わっている人間だけれど、】
【――まあ、特別に連絡する必要もないだろう、と、……そうして、彼女は席を立ち】

【ことの顛末は見なかったのだろう。そのまま会計のために店内へと姿を消し、立ち止まりも振り返りもせず、きっと、どこかへ去っていく】
【確かに通報はしなかったらしく、その後警察や自警団が駆け付けるということもなかったはずだ――ゆっくりと、アイスティラミスを味わうことができるだろう】

/おつかれさまでした!
920 : ◆auPC5auEAk [saga sage]:2016/06/01(水) 22:06:47.23 ID:dbBlDMQU0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――水の国 路地裏】

……ここ最近、安定してたから安心してたが、久々に出てしまったよな……
「う……うん…………まぁ、ね…………」

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【まるで何かに苛立ちを感じている様な攻撃的な眼をしている、身長170cm前後の青年と】

【明るいピンク色の長髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、前髪をやや膨らませる様にセットしている】
【紫色に着色されたカジュアルジャケットと、レギンスとハーフパンツを組み合わせて着用している】
【目元にレンズ、両耳に円形のボディ、後頭部に装着用の調節器が一体化した、機械的なバイザーをつけている、身長160cm前後の女性が】

【人気のない道を、静かに歩いている――――正確には、青年が女性の事を背に背負い、負ぶって歩いている】
【女性の呼吸は深く、弾み気味で、熱に当てられた様な様子を見せている。それを青年は、肩越しに感じながら、ただ前方を睨みつけて歩いていた】

……家までの辛抱だ。そうしたら横になれる。……それまで我慢してくれ……
「……負んぶされるのも……良いんだけどなぁ……」
……そう言う事を言えるなら、まだまだ大丈夫か……

【青年も、流石に負担が大きいらしく、汗の筋が額から頬を走る】
【時折周囲に飛ばす視線は、闇の中に意識を飛ばし、警戒している様だった】



【――――所変わって、風の国 郊外】

「良くやったじゃないのさ。今日は随分とスムーズだったさねぇ?」
――――あの程度、大した事ありません。無事に公安への引き渡しも済みましたし、汚れも落とせました。後は帰るだけです――――
<…………>

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のまるで死人の様な冷たいオッドアイを持ち、体表に紋様の様な、仄かな光を放つ金色のラインが走っている】
【白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女と】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性と】

【灰色のフード付きパーカーに、さっぱりした色合いのチェック柄の入ったスカートを履いた】
【額に、正三角形の形に、赤・青・緑の点が浮かび、それらを繋ぐ様にぼんやりと光の円環が浮かび上がっている】
【少し癖のあるオレンジ色のショートカットと、緑色の瞳が印象的な、身長140cm前後の少女が】

【街灯が照らす、人気のまばらな幹線道路を、並んで歩いている】
【平然と歩くオッドアイの少女に対し、ライダースーツの女性はどこか慎重な、身体の具合を確かめる様な歩調で】
【オレンジ色の髪の少女の方は、陰鬱な雰囲気を纏い、俯き加減に2人の後ろをついて歩いていた】

「ま、仕事終わりならゆっくりと休むがいいさね。……そういや、あんたは後で図書館に行く予定なんだろ?」
<え……ぁ、はい……でも、それは……明日でも>

【逆に、彼女たちの交わす言葉は、ライダースーツの女性の言葉に、端的なオッドアイの少女と、やはり力ないオレンジ色の髪の少女の言葉が引き摺られている】
【――――照らし出された道を、そうしたぎこちない集団が歩いていた】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】

/22:45まで待ちます
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/04(土) 21:24:10.87 ID:nkdrpFUA0

【ある港町】

【この町を水運の要衝たらしめている美しい海は、丑三つ時の今は巨大な闇そのもの】
【船乗りたちで賑わう街もひっそりと静まり返り、空はごうごうと風の音が響くばかりで星は見えない】
【黒と紺に塗りつぶされた景色の中で岬の灯台だけが弱々しく輝いている】

【その臨海部、貨物集積所】
【無数の立方体――昔ながらの木箱と、鉄の国からもたらされたコンテナ――が並び、積み上がり】
【悪趣味なパッチワークの山々を成し、その谷間に途方もない暗闇を映し出す】

【今、その谷底で、毒虫が一匹蠢いていた】


【引き締まった体つきの長身の男が、彼の腹くらいの高さの木箱を前にして何やら作業に勤しんでいる】
【男の顔だちにはやや縮れた頭髪、眠たげな目のほかにこれといった特徴はない】
【しかし、彼は上下とも黒の戦闘服に身を包んでいたし】
【身動きするたびに鳴る金属音が、全身に武器を保持していることを物語っていた】

【男はシャベルを使い、木箱の中にぎっしりと詰まった砂状の何かを掘っていた】
【零れて足元に散らばったものを見れば――何のことはない、ただの塩である】
【男は木箱に詰まった大量の塩に向けて機械的にシャベルを振るっていた】

【やがて大量の塩の中に穴が完成すると、男はシャベルを足元へ置く】
【そして足元から持ち上げたのは――】

【――蝋のようになった肌、あちこち弛緩した肉体】
【やや劣化してはいるが、それは――かつて『人間だったもの』であることに疑いはなかった】

【死体を木箱の塩の穴の中へ放り込む男】
【ところが、死体は骨があることであちこちが突っ張り、塩の穴に収まらない】
【男は舌打ちして、すっかり塩まみれになった塩を持ち上げる】

【次の瞬間、男の袖口から影が飛び出た】
【影は旋風のごとく死体に纏わりつき、そして――】
【角材を何本かまとめてへし折ったような音が響く】

【男が再度投げ込むと、骨を折られ軟らかくなった死体は穴にすっぽりと収まった】
【男はシャベルを拾って穴に塩をかけ死体を隠したうえで、木箱の蓋を閉める】
【そういう設計なのか、木箱の蓋はぴったりと閉じて二度と開きそうにない】

 ……骨を折らせやがって。

【ぼそりと妙な独り言を言って】
【男は懐から、瓶入りの糊と何かの紙を取り出し、糊を使って紙を木箱の蓋に貼り付ける】
【紙にはこう書かれていた――『国際郵便 カサノ商会鉄の国本部行き 内容物:塩漬け』】
【その後木箱をひょいと抱え上げ、近くにあった貨物の山の中へ紛れ込ませた】


【男は近くにあった木箱に腰かけ、またポケットを探る】
【巻煙草を見つけたのはいいが、ライターがどうしても見つからない】
【見つけた、と思ったら】
【指についていた塩の粒のせいで手がずるりと滑り】
【ライターはからからと遠くへと転がる……】

922 :921 [sage saga]:2016/06/04(土) 22:11:27.83 ID:nkdrpFUA0
/離席します
/明日も夜に来ます
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/05(日) 20:15:03.08 ID:cf2zBvWr0
/>>921をもう一度投げておきます
924 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/06/05(日) 22:00:41.43 ID:uKA6kwDR0
>>921

【転がったそれはかつんと音を立てて黒いヒールの先端にぶつかった。視線を上へとやれば、そこに立っていたのは一人の少女であった。】
【黒の長髪、同じ色をした裾の短めなワンピース。怜悧な目をした無表情が彼女の年齢をいまひとつ不明にしている。】
【手ぶらでコンテナの影から現れた少女は一見して平凡な印象を受けるだろう。外見的に目立った特徴も無ければ、何か目に留まるような行為をしているわけでもない。】
【強いて言うならばこの時間帯に、およそ17くらいの少女が一人このような場所に居ることが異様といえば異様か。】
【ともあれ男がどう思おうとも、彼女は男と箱に目をやる。無表情に変わりは無く、ややもすると影の中立つその姿は亡霊のように見えるかもしれなかった。】
【彼女の視線が男の貼りつけた紙片に移る。「カサノ商会」の文字を認めると、ようやく彼女は口を開いた。】

カノッサの者?

【男を見つめながら問うた彼女の声は、その表情と同様に感情が篭められていなかった。寒い夜の話である。】
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/05(日) 22:42:59.28 ID:cf2zBvWr0

【男はライターを目で追って、少女を目にする】
【――眉間が、ぴくりと痙攣した】

【そして少女を胡散臭そうに一瞥したのち、問いを耳にして】
【――また、眉間を反応させる】

 ……ああ、いや……。

【男は頭の回転はあまりよろしくないようで、それっきり俯き沈黙する】
【しばらく巻煙草の箱を手で弄んでいたが、不自然な動作であることに気づき慌てて箱をしまう】

【気のせいだったんじゃないか、と淡い希望を抱いて顔を上げるが】
【やはりそこに居る少女を見て、ぱっと目を伏せる】
【そして、ようやく絞り出すようにこう言った】

 ……違いますよ。

 私は、ここの警備隊のものです。

 この集積所が犯罪の温床になっていると町民から苦情がありまして、雇われたんです……。

【男はまた目をそらして、腕組みをする】
【両脇にぶら下げた機関銃を少しでも隠そうとしてのことだった】
【全身の銃やら爆弾やらは警備隊にしてはあまりにも物騒であることは、男も重々承知だったのである】

 そんなわけで、お嬢さん……

 こんなところにこんな時間に居ては、危険なんですよ。

 交番に行こうとか、つまらないことは言いませんから……家までお送りさせていただけますね?

【男はあくまで少女を子ども扱いして、適当にあしらうつもりだった】
【少女の纏う雰囲気も、ほとんど読めてはいなかったのである】

/よろしくお願いします
926 :??? ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/06/05(日) 22:55:40.10 ID:uKA6kwDR0
>>925

【男の言葉を耳にしていた少女の無表情が変わることは無い。しかしその瞳に宿る冷たさが僅かに増した。】
【2発の銃声。服の内側に隠し持っていた大口径の拳銃から放たれた弾丸が先の木箱に風穴を開ける。】
【白い砂状の物質がコンクリートへ広がっていくと共に、先に詰められた人間の死体が穴から覗いた。】

カノッサ機関一般構成員、ルナ。

【少女は短く名乗りを終えて男を見た。その視線は冷徹というよりもにらみつけると言った方が正しいだろう。】
【「くだらない嘘を吐くな」と。少女の瞳が如実に物語っていた。】



927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/05(日) 23:25:56.84 ID:cf2zBvWr0

【男は言葉を投げかけたのち、ちらりと少女のほうを伺う】
【そして少女の手に拳銃を見つけ、同時に銃声を聞く】

【ばね仕掛けのように立ち上がり】
【左脇の短機関銃を抜いて、安全装置を解除しつつ少女のほうへ指向する】
【これまでの動作からは想像もつかないような俊敏な動きだった】
【また、今まで眠たげだった目は、冷えた金属のような光を帯びていて――】

【しかし少女の名乗りを聞くと、男の目は怪訝そうなものに変わる】
【じろりと嘗め回すように見て、夜遊びに興じる少女らしからぬ表情や服装、雰囲気に気づく】
【最後に、少女は伝票を見ただけで自分が機関の一員だと見抜いたのだと思い至り】
【少女は『ただ者』ではない――つまり、カノッサ機関の構成員でもおかしくはないと判断した】

 ……何だ、お仲間だったのか……。

【男は銃をホルスターに収めると】
【演技したのが馬鹿らしくなってきて、頭をぼりぼりと掻いた】

 いや、すまない。気づかなかったんだ。

 まさか君みたいな女の子が……な……。

【男は珍種の動物に向けるような視線で少女を一瞥したのち】
【一瞬だけ、深い感情のこもった目つきをして】
【また、近くの木箱に腰を落ち着けた】

 俺はデリック・ガーランド。

 今年の秋からこの町で動いていた、君と同じ一般構成員だ。

 まあ、来年からは他所に移る予定なんだが……

【男は、死体の詰まった木箱に目を向けた】
【箱には大きな穴が二つ空き、塩が溢れ出して死体の一部まで覗いている】

 ……あれはどうしたものかな。

 明日の船に乗せなければ任務は失敗、俺はこの町に据え置きになってしまうんだが。

【男は嘘をついた手前、少女に強く出ることができず、やや迂遠な言い回しをした】
928 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/06/05(日) 23:43:55.26 ID:uKA6kwDR0
>>927

【男の身のこなしと、宿す目の空気の変化を彼女…ルナは鋭敏に感じ取った。男、デリックは警戒を解き武器を収めるも、彼女はいまだ片手に拳銃を携えたままである。】
【彼の名乗りを聞いて、自身の直感が当たっていたことを知る。男の推測とは異なり彼女はもっぱら別の要素から彼を機関員だと判断したのだがそれを彼女が示すことは無いので、結局何を理由に男の正体を見抜くことができたのかはわからないままである。】
【続く言葉を彼女は聞いているのかいないのか。特に興味も無いといった様子で男の愚痴を聞き流すと、「知ったことでは無い」というようにまるで男を無視した形の質問を投げかけた。】

「カサノ商会」とは?

【男に比べずとも彼女の言葉は非常に少なく、また無駄な部分が無かった。それが性格に由来するのかどうかはわからないが、必要最低限のことしか語らないと決めているのだろう。】

929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/06(月) 00:20:01.71 ID:SjGEQEMJ0

【デリックは、ルナが木箱について全く責任を負うつもりがないと察し】
【悲しげというか、寂しげというか、とにかく哀れみを誘うような表情をした】
【煙草くらい吸っても罰は当たらないだろうと思い、再び煙草を取り出すが】
【肝心のライターはルナの足元に転がっているし、ルナは何故か拳銃を構えたままでとても近づけない】
【デリックは煙草も断念し溜息をつくと、少女の質問に応じた】

 カサノ商会というのは……鉄の国における、カノッサ機関の隠れ蓑の一つだ。

 この木箱の中の男は、もともとは名の知れた鉄の国のマフィアだったらしいんだが、

 どういうわけかカノッサ機関に命を狙われることになったわけだな。

 この男は裏社会では顔が利いたらしいが、その地位を全部捨ててここまで逃げてきた。

 ……だが、ここにも機関の刺客は居たわけだ。

 そして今、男はあそこに納まっている。

【デリックは首を巡らせて木箱のほうを振り返った】
【その表情は何者も窺い知ることはできなかった】
【しばしの沈黙ののち、デリックはルナのほうへ向き直る】

 鉄の国の構成員どもはよほどこの男が許せないらしくてな。

 確実に死んだことを確認したいから、死体を送れと言ってきたんだ。

 そこで、「カノッサ機関」と書いて送るわけにはいかないから、カサノ商会宛に送るわけだ。

 まったく、何でそこまで神経質になっているのか……。

【デリックは大げさに肩をすくめると、ルナに眠たげな目を向けた】

 ……ところでルナ。君はどうしてこんなところに居るのかな。

 星は見えないが……日の出でも見に来たのかい?

 それとも、この町の七不思議「闇夜にだけ出没する怪魚」を確かめにきたクチかい?

 実はあれは機関の潜水艦なんだがな。

 ……おっと。俺に火花が飛んでくるようなことなら言わなくていいぜ。
930 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/06/06(月) 00:51:05.30 ID:ZsgvWl840
>>929

【男、デリックはときに悲しげに、ときにユーモアを交えて饒舌に語る。それに比して、彼の言葉をただ黙って聞いている少女ルナの無感動はどうしたことだろう。】
【見たところ未成年とおぼしきその顔立ちをぴくりとも反応させることなく、夜の闇に髪と服を溶かしたまま佇むその姿は不気味と形容する他に無い。】
【しかし任務の概要を語り終えたデリックが彼女の名を呼び、親し気な口調を示したと同時。銃声が一つ。】
【放たれた弾丸は紙一重でデリックの頬の横をすり抜け空を切った。表情こそ変わらないものの、彼女の纏う近づき難い気配が一層強まったかのように見えた。】
【閉じられたままの口の代わりに瞳が語る。「くだらない話をするなと言ったでしょう?」】
【高温の銃口をそのままに、拳銃をホルスターへ収める。まるで目の前の人間への用事は一切無くなったとでも言わんばかりに、彼女はデリックに背を向けて立ち去ろうとする。】
【任務の妨害、ぶしつけで攻撃的な態度、質問へ解答を示したことへの礼すら無し。いくら同じ機関員とはいえ、彼は眼前の少女を始末するに充分な理由を持っていた。】
【彼はルナに襲い掛かろうとするか、或いは呼び止めでもするか。そのどちらにせよ、去っていく彼女の足取りは止まり、ほんの少しの逡巡(しゅんじゅん)を見せた後、前置きもせずに彼女は一つの質問をした。】

貴方は自分の命もろとも、この惑星を滅ぼしたいと思う?

【奇妙な質問であった。ともすれば冗談にすら聞こえる程に。振り返った彼女の姿を月光が照らす。その光景の神秘さが、質問に対する極めて真摯な彼女の姿勢を現していた。】
【この質問に答え方を間違えたならば、ほんのわずかでも男がふざけた態度や無駄な言葉を並べたならば。どういう事態が起こるかは彼女の眼を見ればわかるだろう。何よりも暗く深い闇色の眼を。】
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/06(月) 01:45:35.24 ID:SjGEQEMJ0

【銃声】

【刹那、デリックの袖口から影が走り、植物のツルのように体に巻き付く】
【紐状の影の先端には二つの光が灯り、真っ赤な何かがちろちろと覗いた】
【――蛇だった。長大な蛇がデリックの危機を感知したかのように飛び出したのだ】

【銃弾はデリックにも蛇にも当たらず通り過ぎる】
【しかし、デリックはそれに安堵する様子もなく機関銃を抜き、再びルナに向ける】
【蛇もきしるような声を立てて威嚇した】

 ……て、てめえ……

【デリックは理解が追い付いていなかった】

(同じ機関員で、あまつさえ少しではあるが友好的に言葉を交わした相手に発砲するとは――)

(――友好的に?)

【デリックは改めて少女と相対する】
【ルナの華奢な体は、たとえ手に拳銃が握られていたとしてもデリックにとって何ら恐れるものではない】
【しかし、仮面のような顔――飲み込まれそうな闇色の瞳を見たとき、デリックの背筋に冷たいものが走った】

(こいつは――こいつには――)

(『友好的』なんて概念はあるんだろうか?)



【たらりと流れる汗を感じながら、デリックはルナの質問を耳にした】
【雲間から差した月光の醸し出す得体の知れない雰囲気に、ごくりと唾を飲み込む】

(……何を言っているんだこいつは。頭がおかしいんじゃないか……)

(……命もろとも、惑星を、だと……?)

【どこか現実離れした場の雰囲気に飲まれたのか】
【デリックは意図せず自らの根底にあったものを暴露する】

 ……御免だね。

 どんな条件でも、自分の命もろともなんてのは絶対に嫌だ。丁重にお断りするぜ。

 生きてなけりゃ焼きたてのパンにかぶりつくことも、

 シアターでコメディー映画を見て馬鹿笑いすることも、

 夜の街に繰り出して目いっぱい酒と女に溺れることもできねえ。

 命もろとも何をどうとか――俺にとっちゃまるっきり本末転倒だね……!



【デリックは機関銃と大蛇でルナの牽制を図りつつ、腰へ左手を伸ばした】

(拳銃なら俺の大蛇で防げるが……)
(この女、こんな大それたことを言うからには能力者なんだろう)

【そう予想するデリックは、ルナが何か大きなアクションを起こしたならば】
【攻撃が来る前に、腰の後ろ側に差したグレネードランチャーを抜き、即座に発射するつもりだった】


/遅れて申し訳ありません、ここで一旦凍結という形にしていただきたいです
/再開は明日の夜でよろしいでしょうか……?
932 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage]:2016/06/06(月) 01:51:50.18 ID:ZsgvWl840
>>931
/了解です
/おそらく明日の夜で大丈夫かと思われますが…もしかすると駄目かもしれません
/レスは返しておきますので、返せるタイミングで返していただけると幸いです
933 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage ]:2016/06/06(月) 03:00:58.44 ID:ZsgvWl840
>>931

【男の返答は否。それも当然、いったい誰がこの世と心中することを望むというのだろう?】
【きっとそれを望んでいるのは、目の前の彼女だけなのだろう。ルナはそっと目を閉じる。「そう、貴方はそちらを選ぶのね。」そう言わんばかりに。】
【男が顕現させた蛇の姿を認めても、さして彼女は不思議そうにしていない。先の木箱への発砲の件からも、彼女は彼の今宵の動向を全て見ていたと考えるのが妥当だろう。】
【構えられた機関銃と能力の顕現は明確な戦闘の意思の表れ。彼はルナを攻撃するに充分な動機を持っていたが、彼女からすればそうでは無い。】
【本来同じ組織に属する者どうしなのだから争うことに利益は無く、彼女からすればただ走り去りこの場から姿を消しても良いはずであった。】
【だが彼女はデリックへ向かい歩を進めた。一歩、二歩、なんら動じることなく距離を詰めていく。死にたいのだろうか。そうかもしれなかった。】
【男の細かな所作、服の凹凸、衣擦れの音から幾つもの武器を隠し持つタイプと彼女はデリックの戦闘スタイルを看破した。何らの苦も無く、あっさりと。】
【ならば話は早いと言わんばかりに、彼女は隠し持っていた手榴弾を取り出した。そして計5つのそれを、迷いなく安全装置を外したうえで投擲したのであった。】
【その狙いは正確無比、一発はデリックの目と鼻の先に、残りの4発はデリックの四方をやや離れて取り囲むように配置。そしてそれらは示し合わせたように一斉に炸裂した。……攻撃半径に彼女自身も存在するのに?】
【爆裂によって生じる無数の鋭利な金属片がデリックを、そして当然ルナに八方から襲い掛かる。しかしそこで展開された光景は異様なものであった。】
【金属片が高速で彼女の肌に接したかと思うと、一瞬、時が止まったかのように破片は運動を停止した。そしてそのまま重力に従い破片は音を立てコンクリートの地面に落ちた。それは幾度となく同時に繰り返され、乱舞する凶器の中、彼女は無傷で立っていた。】
【ルナの能力『静止の境(アイドルストップ)』は停止の能力。触れた物体の「速度」をゼロにする能力である。一度止まった物体はもう一度力を込めなければ運動することは無い。ゆえに一度停止した金属片は、爆薬によって加えられた力による運動を停止させられ、加わる力が重力のみとなったので落下したのである。】
【端的に言うならば「飛び道具の一切を無効化する能力」。だからこそルナは自身へのダメージを一切考慮せず手榴弾その他の爆発物を自由に使うことができるのである。】
【初手から彼女は一切の無駄なく最善を尽くした。「無駄に時間を使いたくない」という意思の表れであろう。この死の嵐の中デリックが何らかの方法で生き残っている可能性も考慮して、手榴弾への対応へ追われているだろう彼目がけて、いまだ金属片が飛翔している中で彼女は片手に拳銃を構え2発3発とダメ押しを繰り出したのだった。】
【口を開くことは無い。行動で示せば事足りる。彼女を構成する全身の細胞が「死になさい」と囁いていた。】
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/06(月) 21:32:20.57 ID:SjGEQEMJ0
>>933

【デリックは、目の前の少女が攻撃を続けるならば躊躇なく反撃するつもりでいた】
【ルナが銃を抜いたなら短機関銃を、能力を使う兆候を見せればランチャーを発射しようと考えていた】
【それだけに、ルナのとった『接近』という第三の行動に僅かに動揺した】

(何だこいつは!至近距離で銃弾を浴びようというのか!?)
(まさか、銃弾を跳ね返すような能力を――?)

【ルナの想定内か、想定外か】
【いずれにしても、デリックに一瞬の隙が生じて――手榴弾投擲を許してしまった】

(手榴弾!?こいつ、自爆する気か!?)

【またも、動揺】
【デリックはルナを攻撃したのち回避できるタイミングを逃す】

【しかし何もせず爆死するほど彼は愚かではない】
【デリックは背後のコンテナの山へと手を伸ばす】
【その瞬間、素早く鎌首を巡らせた大蛇が、その手の差す方向へと砲弾のように突進する】
【銅鑼に似た音が響き、大蛇の頭部がコンテナにめり込む】
【すると、頭部とデリックの袖口を繋ぐ大蛇の体が勢いよく縮み、デリックの体を後方へと引き寄せる】

【轟音】
【退避するデリックに飛来する無数の金属片を、ブーツを貫き飛び出した大蛇の尻尾が叩き落していく】
【信管の破片を弾き飛ばしたのち、デリックは退避しつつもルナを撃とうとして――】

【デリックは見た】
【平等に襲うはずの手榴弾の破片が、ルナに触れたとたん糸が切れたように落下する様子を】

(――何ッ!?)

【襲い掛かる追い打ちの弾丸】
【一つ目の弾丸を弾き飛ばし、二つ目の弾丸を払い落とすが】
【直前に目にした光景のせいで迎撃に集中できていなかった彼は、三つ目の弾丸を防御し損ねた】
【尻尾をかすめた弾丸は、デリックの左脇腹へと――】
【――衝突しただけで、突き刺さらずにあらぬ方向へ跳弾した】

【デリックが地面を蹴飛ばすと、大の男であるはずの彼の体がふわりと浮いて】
【大蛇の頭部が突き刺さったコンテナの上に着地する】
【同時に大蛇は頭部を引き抜き、再びデリックの近くに寄り添った】

【戦闘服の左脇腹、銃弾に切り裂かれた部分から覗くのはデリックの肉体ではなく――灰色の鱗】
【デリックは大蛇の体を全身に巻き付け、鎧として、また、パワードスーツとして活用していたのだ】
【死体の入った木箱を軽々と持ち上げたり、先ほど銃弾を弾き飛ばしたりしたタネがこれだった】

【ごく一瞬の硬直】
【デリックの表情が、僅かに歪んだ】

(――仲間同士で殺しあう……これもカノッサの流儀かな)

【刹那、デリックはグレネード・ランチャーを引き抜く】
【大蛇が動き、デリックの腰にある弾薬をランチャーに装填する】
【そしてその照準が、眼前の少女へと定められる――この間コンマ数秒】

 やってやろうじゃねえか、クソガキィ!

【殺意の瞳】
【寸分の躊躇いもなく引き金は引かれ、発射された榴弾は――】
【ルナではなく、ルナの足元の地面を狙っていた】

【デリックは、先ほど見た光景から、ただの攻撃は通用しないと判断した】
【そこで、弾丸ではなく爆風で攻撃を図ったのだ】

(死んでたまるか――てめえが死ね!)
935 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage ]:2016/06/06(月) 22:16:38.70 ID:ZsgvWl840
>>934
【デリックが回避するとみられた地点を予測し放った手榴弾を、彼はその異能を持って完全に回避して見せた。蛇の瞬発力・筋力をやや見誤っていたことを知り、ルナはそれらを上方修正する。】
【同時爆破によって物理的弾幕を張ったのが裏目に出たか、ならばと彼女は次々に予測を組み立てて行く。攻撃が失敗に終わったことへの動揺や狼狽は微塵も無かった。】
【穏やかな皮を被っていた男の荒々しく凶暴な姿が露わとなる。耳障りだわ、とでも言いたげに眼光鋭く彼女は男をねめつけた。】
【発射されたグレネードランチャーの弾頭、足元への着弾と同時に後方へ跳ぶ。爆風を利用して綺麗な後方宙返りをみせる彼女へ破壊されたコンクリート片が衝突していくが、それらは「アイドルストップ」により無力化される。】
【ことここに至ればデリックも気づくであろう。この少女、こと銃火器を用いた戦闘において天才的なセンスを持っている。】
【爆撃が静まり、お互いに間合いを取る形となったため、およそ両者を結ぶ距離は20メートル弱。能力の片鱗を見られた以上、彼女の側にも明確に男を殺害する理由が出来上がった。】
【ときに堅牢な鎧、ときに移動・回避用のワイヤーとなる蛇の性質を察知した彼女は、片手で拳銃を構え2発3発と精確に男の蛇に覆われていない部分を銃弾で狙いつつ、さらに空いた片手で器用に信管を外して追加の手榴弾を投擲する。】
【榴弾の一発目が回避されたなら、次はその回避場所へ2発目を。それが回避されたなら更にその先へ3発目、4発目と、一時たりとも爆裂する金属片を途切れさせない。手持ちの手榴弾が無くなるまで彼女は投擲を続ける。】
【先の攻撃が物理的包囲ならば今度の攻撃は時間的包囲。絶え間なく手榴弾による爆破を続けていれば、幾ら蛇による回避が優秀とはいえ隙は出来上がるはず。それで金属片が彼の脳髄に突き刺さればそれで良いし、致命傷に至らずとも頭部をもう片手に構えた拳銃で撃ち抜けば良い。】
【徹底的に接近を避け、遠距離から拳銃・手榴弾による精確な攻撃の手を休めない。「撃たれない射手」、彼女の能力を最大限に活かした戦闘スタイルであった。】

936 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/06(月) 23:13:15.85 ID:SjGEQEMJ0

 チッ!

【デリックは、精一杯機転を利かせた攻撃が簡単に回避されたのを見て舌打ちした】
【そこへ無防備な部分を狙う銃弾と手榴弾が襲い来る】
【今度は冷静さを保ち、大蛇で銃弾を叩き落し、隣のコンテナに飛び移って爆発から逃れ】
【蛇にランチャーを再装填し、ルナのほうへ向ける】

【――しかしそこで、第二の銃弾と手榴弾が飛来する】
【慌ててコンテナの山から飛び降り、その陰に身を隠す……そして、また舌打ち】

(おのれ……戦いなれてやがるな)
(しかも、能力頼りの無茶苦茶な戦闘じゃない)
(体と武器の使い方を知り尽くしたうえで、能力と上手く組み合わせているんだ)

【先ほど投げられた手榴弾が炸裂する】
【コンテナの山が崩れ、その一つがデリックのすぐ横へ落下した】
【デリックは沈黙したまま、それに目をやって――】

【空を切って銃弾が通り過ぎた】
【その直後、デリックの左の眉毛の上がぱっくりと裂けて、赤い液体が噴き出す】

 ぐおっ……!

【呻くデリックのもとへ、手榴弾が飛んでくる】
【しかし痛みで敏感になったデリックはそれを素早く察知し、大蛇で明後日の方向へ弾き飛ばした】

(な、なんて腕だ!この距離から当ててくるとは……!)

【パワードスーツのおかげで照準は合わせやすくなっているが、デリック自身の射撃センスはさほどではない】
【それだけに、距離のある相手からの顔面への一撃は驚愕だった】
【――しかし、それはデリックへ思考の転換をもたらすことにもなった】

(……射撃では敵わないか。なら……)
(『射撃競争』のステージに乗らない!)

【デリックは脱兎の如く駆け出し、コンテナの陰へ消える】
【直前に弾き飛ばした手榴弾が粉塵を巻き上げ、皮肉にも彼の逃走を手助けした】
【――逃走、といっても、デリックはルナとの戦いから逃れたわけではない】
【苛烈な攻撃から逃れるため、一時的に姿を隠したのだ】
【銃と手榴弾では、どこにいるかわからない敵を攻撃することはできない】
【ルナの無敵の戦闘スタイルに、遮蔽物の多い環境を利用して対抗した形だった】

(この傷の対価は高くつくぞ……クソガキッ!)

【デリックはコンテナの山々の谷間を走り、ルナへの接近を図る】
【最強の盾たるルナの能力を突破する方法を練りながら……】
937 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage ]:2016/06/06(月) 23:41:42.39 ID:ZsgvWl840
>>936
【デリックが爆撃の中姿を消したことを受け、ルナは跳躍を繰り替えしコンテナの山々の一角の上へ立った。】
【夜目を効かせて周囲を探る。だがそこは相手も凡人では無い、うまく気配を隠したまま、その居所を掴ませない。】
【遠距離戦を不利と見た相手が接近戦へ持ち込んでくる、そのパターンも幾度も彼女にとっては経験済みのことであった。故に、彼の策略の裏を取ることもまた至極簡単な事であった。】
【しなる鞭のごとく動かし投擲を続けていた左手を右手に添え、彼女は拳銃を初めて両手で構えた。】
【そして静寂の訪れた港で彼女は全神経を研ぎ澄まし始める。人のいない夜の港、相手は大の男、物音一つ立てず動くことができるはずもない。】
【ましてや相手は相手なりに自身を仕留めることを考えている。ならば攻撃へ移るその瞬間、絶対に「姿を現さなければならない」。】
【その必然的に現れる一瞬を逃さず男の脳天を撃ち抜けばいいだけの話である、彼女は落ち着き払ってその瞬間を待っていた。】
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/06(月) 23:43:38.99 ID:SjGEQEMJ0
/申し訳ありませんが、今夜はここで凍結させていただきたいです
/続きはまた明日の夜でよろしいでしょうか?
939 : ◆/Pbzx9FKd2 [sage ]:2016/06/06(月) 23:48:39.29 ID:ZsgvWl840
>>938
/了解です
/恐らくは大丈夫だろうと思われます、もし不可能な場合はしたらば掲示板の方で連絡します
940 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/06(月) 23:50:40.56 ID:SjGEQEMJ0
>>939
/承知しました
941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2016/06/07(火) 22:31:36.56 ID:8pwxw/Y/0
>>937
【デリックは姿を消したのち、ルナの近くのコンテナの山へとよじ登った】
【ルナの上方に占位し、より効果的な不意打ちを繰り出そうとしたのだ】
【その際少々音が発生したが、ルナが集中し始める前だったので聞かれることはなかった】
【山の頂上に位置するコンテナの陰から、少しだけ顔を出して様子を伺い】
【ルナが隣のコンテナの山の頂上に陣取ったことに気づいた】

(なるほど……出てこないなら迎え撃とうという腹か……)

【デリックは垂れてくる血を拭いつつ、頭の中で作戦を練り直す】
【彼は銃弾を無効化する能力者との戦闘など考えたこともなかったから、その作戦は現地で考え出したものだったが】
【やはり現地で得た発想で、単なる思い付きを『戦略』へと昇華させた】

【デリックは大蛇を自分の体に這わせる】
【大蛇は、サスペンダーに固定されていた六つの手榴弾のうち四つを絡めとって】
【器用に安全装置を外し、それを勢いよく投擲した】

【四つの手榴弾はルナが陣取った山のほうへと飛んで】
【ルナの四方を、ある程度距離を持って取り囲むように落下した】
【最初の攻撃の意趣返しのようでもあった】
【デリックの手榴弾は爆炎で攻撃する種類であり、破片で攻撃する手榴弾より攻撃範囲が狭い】
【ゆえに、四つの手榴弾の中心――現在ルナがいる位置には、安全地帯が出来上がる】
【しかしそこから二三歩歩けば、すぐさま爆炎に晒される――そんな配置】

【続いてデリックは、体に巻き付く大蛇を足と腕に集中させる】
【そして、今身を隠しているコンテナに手をかけて、一気に持ち上げた】
【足元のコンテナが、重量に耐えかねて軋む】
【山が崩壊するのではないかと焦ったが、構わず手足に感覚を集中し】
【――コンテナを、思い切り投げた】
【その間デリックはコンテナを盾にして、攻撃を防ぐかわりに視界を奪われるが】
【狙いを外す心配はない。弾は小さな金属ではなく、巨大なコンテナなのだから】

【コンテナは谷間を飛び越し飛んでいく】
【まもなく、ルナの居る山の頂上――その『安全地帯』へと落下し、下にあるものを容赦なく押しつぶすだろう】

【デリックは、先刻ルナが手榴弾の破片を止めた際、その金属片が落下したことを思い出していた】

(貴様は、勢いは殺せるかもしれないが)
(『重力』は殺せないんじゃないか?)
(コンテナなら、勢いを殺したところで『重力』だけで圧殺できる)
(さあ、避けろ。避ければ手榴弾でローストビーフだ……!)

【勝利を確信するデリック】
【しかしその攻撃の代償に、胴体の鎧は解かれている】
【また、激しい動作の直後だから、弾丸を叩き落すような能動的防御もやや鈍くなるだろう――】
942 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage ]:2016/06/07(火) 23:48:11.50 ID:ZuwK99U+0
>>941

【男がわずかの間に練り上げた戦略は未知の能力者の能力、その正体にほぼ肉薄していることを含め極めて見事なものであった。】
【四方に展開された手榴弾による爆炎に動きを阻まれ、そして同時に落下する膨大な重量を持つコンテナが彼女を襲う。】
【ああ、だというのに!彼女の心のなんと動じないことか!身震い一つ起こさず、ただ感情の籠らない眼で落下するコンテナを見つめるその光景の恐ろしさ!】
【まるで自身が爆発半径にちょうど含まれないことを知っていたかのように手榴弾へは目もくれず、彼女はその左手を上空へと掲げた。】
【その白い指先が落下するコンテナに触れる。コンテナは一瞬速度を失うが、また重力によって大地へ引かれ、彼女の華奢な肉体を推し潰す。それが物理の法則である。】
【しかしここからが異様であった。重力加速度を生じたコンテナが再び動き出そうとするその瞬間、いや、彼女がその指をコンテナに触れさせたと同時のこと。】
【左手の5本の指で、さながら凄腕の鍵盤奏者が如き指先の速さで彼女はコンテナを寸分の間もおかず連打し始めた!】
【指先が触れると同時に、コンテナは巨人の腕で鷲掴みにされた如く動きを止める。そして再び重力に従い動きはじめると同時、離れた指と別の指が再びコンテナに触れる。】
【それを何十何百と高速で続けた場合どうなるか。彼女が「演奏」を続けながらゆるやかに左手を降ろしていくとともに、極限まで落下の自由を奪われたコンテナは非常にゆっくりとしたペースで地表へ近づいていくこととなる。】
【こと自身で動く能力を持たない「飛び道具」を用いた戦闘は彼女の能力の独壇場であった。そしてその指先の連打は、爆風が消え去るのに必要な時間を充分に稼いだ。】
【能力を高速かつ連続で使用することによりコンテナはゆっくりと落下。そして「空いた時間を利用して」、右手で拳銃を構え無防備な男の胴体へ拳銃を連射する。】
【そして四方の安全がとれたところで、最後にトン、と指先での連打を終えるとともに横へ跳躍。轟音を鳴らし着地したコンテナ脇で、彼女は月光を浴びながら立っていた。】
【こと自身で動く力を持たない「飛び道具」を用いた戦闘は、彼女の能力「アイドルストップ」の独壇場であった。】
943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/08(水) 00:46:11.27 ID:oMw05XGb0
>>942

【デリックは目にした】
【放り上げたコンテナが――練り上げた作戦が、敵に何の損害を与えることもなく止められる衝撃的な光景を】

(な……何だと!?)

【「滅茶苦茶だ」】
【戦場においてはあまりにも場違いな言葉がデリックの頭に浮かぶ】
【デリックの能力の名は『サイドワインダー』――灰色の大蛇を生み出し、操る能力】
【大蛇は驚異的なスピードとパワー、強靭性を誇るが、物理法則を無視するような派手さはない】
【ルナが少しも動かずに乱舞する凶器を無効化するのを見たとき】
【「ただそれだけのこと」――そう思い込み、コンテナで『チェックメイト』だと確信してしまったのは】
【自分の能力に対するコンプレックスによるものも、少しはあったのだろう】

【巻きあがった煙の向こうからの発砲音】
【呆然としていたデリックは、一瞬遅れてそれを知覚した】

 うぅおおおッ!防御しろ『サイドワインダー』!

【デリックが無茶な姿勢で回避を試みるのと同時に、大蛇がやや鈍い動きで飛び出す】
【一発目の弾丸は幸運にも大蛇の体をかすめ、デリックの左の首すれすれを通過した】
【しかし二発目の弾丸は何ら遮られることなく進み――右肩をえぐり、鎖骨を砕いた】

 ぐぅあ……ぎいッ

【デリックはコンテナの上に無様に転がって、呻き】
【拳銃の射線から逃れようと這って、ついにコンテナから落下する】
【大蛇はデリックの周囲に格子状に体を広げてクッションとなり、その衝撃を緩和した】

(まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい)
(死にたくない……死にたくない、俺は、まだ……!)

【もはや先ほどの作戦を発想した冷静さはない】
【デリックは右腕を立て起き上がろうとするが、肩に走る激痛によって失敗し倒れこむ】
【――そのとき、地面を伝わってくる低い音が聞こえた】

(ッ!これは、エンジン音……!)

【その瞬間、生存本能が彼に再び思考を取り戻させた】
【大蛇のパワードスーツで地面を蹴り、コンテナの陰に飛び込む】
【現れたのは、その町の自警団のジープ】
【シートと荷台に、完全武装した団員を満載している】

(――ああ、神よ!貴方は俺を見捨てなかった!)

【デリックは短機関銃を抜き躊躇なく発砲】
【拳銃弾をしこたま撃ち込まれた隊員たちが射的の的のように倒れていく】
【骨のある者がデリックへマシンガンを発射するが】
【大蛇が弾丸を悉く跳ね飛ばし、そのまま襲い掛かって頸部を噛み砕き即死させる】
【デリックは陰から飛び出し、暴走するジープに飛び乗り】
【暴れ馬を乗りこなすようにしてハンドルを切り、思い切りアクセルを踏み込んだ】
【この隊員たちは、手榴弾の爆発音を聞いた町民から通報を受け急行してきたに違いない】
【それをデリックが逃走に使用するのだから、ルナにとっては手榴弾を多用したことがアダとなった形である】

(――いつか、この借りは返す……)

【デリックは一瞬そう考えたが、直後激しくかぶりを振った】

(……いや、もう二度と会いたくないな!)

【猛スピードで疾走するジープはコンテナの山の谷間へ消える】
【デリックが木箱をも放り出して逃走したことで、今夜の劇は終わるが】
【――世界中を闇に包む夜は、まだ明けそうにない】

/こちらはこれで〆となります
/初めてのロールなので、不自然な点等あれば教えていただけると参考になります
944 :ルナ ◆/Pbzx9FKd2 [sage ]:2016/06/08(水) 01:30:31.80 ID:8+u88lmq0
>>943

【幾度となく撃ち込んだ弾丸がようやっとデリックの右肩を屠る。痛みで硬直する彼の命を今度こそ絶とうと彼女は追撃を行ったが、器用にも男はコンテナ陰へと隠れ射線上から消えた。】
【そして偶然訪れたジープを男は強奪、その人殺しへの躊躇の無さは流石の彼女も少し感心したようで、砕けていく自警団の頭をしばし眺めていた。】
【そして男は逃走、すかさず地表へ着地し拳銃をジープへ向けるが、既に男は射程距離遥か遠くへと逃げ去ってしまった。】
【しばし思案した後に彼女は拳銃をホルスターへ仕舞う。実は高速で走り去る彼を「追跡する手段」は存在したのだが、種々の事情により彼女はその選択肢を放棄したのであった。】
【本来ならば能力の詳細を知られた以上男は始末せねばならなかったが、相手は名も顔も割れている。「どうとでもなる」、そんな風な表情を浮かべて彼女は再び闇の中へと姿を消した。】
【異様な判断力と揺るがない精神を持った謎の少女、ルナ。「一般構成員」に似つかわしくない戦闘経験と戦闘力。多くの違和感と薄気味の悪さを残して、異例の機関員どうしの戦闘は幕を閉じたのであった。】

/こちらもこれで〆となります、3日間お付き合いいただきありがとうございました!

945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/10(金) 22:59:10.35 ID:4OSXcG3v0
【路地裏――街明かりも遠く遠く届かないエリア】
【赤い三日月だけが光源になる夜、建物に挟まれたこの空間はひどく薄暗く、昼間に暖められた生ぬるさが、いまだに降り積もっている】
【中に何が入ってるんだかもよく分からない建物の室外機から噴き出す生ぬるい温風もまた、そこに立つ人間さえも腐敗させようと企むようで】

…………誰も居ないみたい。

【ころんと女物の靴の踵を転がすような音がして、続く呟きの高く澄んだ声質は、つまりそこに居るのが少女だと辺りに知らせるよう】
【ふーと少し長めに息を吐き出して、その後には「涼しい場所に居るのかなぁ」と続ける、身体の向きを返る程度の布の擦れる音に、また、足の仕草の音】
【生ぬるく吹いた風にぱたたと薄ぺらの紙がはためくような音が混ざる、――もしも誰かが彼女の存在をかぎつけるのなら】

【そこに立つのは、やはり、聞こえて来る情報から推察できる通りの人影、すなわち成人に満たないことを確信できるほどにあどけない見た目の少女】
【腰までの黒髪は薔薇の花を模すように編み込まれて、左右で色の違う眼は左が黒くて右が赤い、透き通るような白肌は、澱んだ暑さに赤くなっていて】
【黒を基調にしたワンピース、胸元と腰元には飾りの編み上げが施されていて、膨らませたスカートのシルエットは至って丸く、ふわりと広がり】
【丈の長い靴下にもまた赤いリボンが通されている、足元は踵の分厚く高いサンダルで、そのつま先は、元が何だったかも推測できない薄汚い布を踏みつけていた】

うーんと……、……あっちに行けば、大通りに出られるはずだから、そっちから帰って――。

【その両腕は胸元を抱きしめるようになっていて、見れば、どうやらいくらかのチラシのようなものを抱きとめているらしい】
【どうやらそこそこ正確にこの辺りの地形を記憶しているらしく、確かに大きな道の方角を見ながらつぶやく少女は、この場において、確かに異質な姿かたちをしていて】
【さも慣れた街で今日はどの道を使って帰ろうか、と、悩むかのような仕草――、一枚のパズルの中に、一つだけ、違うピースが紛れ込んだように、そこに居た】
946 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/11(土) 17:49:24.30 ID:U1oha3PR0
>>945

/これ再掲しておきますー
947 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/11(土) 23:43:39.80 ID:MZ7ow3Sv0
>>945

【少女の居る地点から少しだけ離れた場所】
【摩天楼の狭間に取り残されたかのように存在する小さな公園には、くすんだ色の地面と、半ばさび付いた遊具と、背の高い雑草だけがある】
【――いや、正確にはあと一つ】

【薄汚れたベンチに腰掛ける人影】
【長身でがたいもよいその背格好は筋肉質な男性のものだったが、異様なのはその姿】
【ゴムのようにのっぺりしたものが全身をくまなく覆っており、頭や手足にはヘッドギアあるいは籠手のように黒く硬そうなものを纏っている】

【その人影は、ベンチに足を組んで座ったまま視線を手元に落としている】
【持っていたのは手の平に納まるくらいの大きさのカード――数は五枚から六枚だろうか――を一枚一枚確かめるように繰り、じっくりと見ていた】
【その顔が奇妙に歪む。どうやら薄笑いであるらしい】

 ……フ、フ……イイぺーすダ。

 コノ町ハ集メヤスイ……。

【その声はトンネルを通したような、やけに響く無機質な声だった】

【そのとき、人影はぴたりとその動作を止めた】
【それは少女の発する音を認識したから――少女は前述のとおり少し遠くに居て、思い切り叫んだとしても聞こえないほどの距離があったにも関わらず、である】
【少女がこちらに向かってくるのを確認すると、後ろめたいことがあるかのようにいそいそとカードを籠手の中に差し込む】
【そして――奇怪!】
【人影の肌が、輪郭が、ぐにゃりと歪み、少しずつ黒ずみ、真黒な何かに変わる】
【しばらく蠢いていたそれは、やがて人の形に戻り、ゆっくりと黒色が薄らいでいく】
【次の瞬間、そこには何の変哲もないスーツ姿のサラリーマンが腰かけていた】
【やや小柄で短髪のサラリーマンは、懐から携帯電話を取り出しいじり始めた】

【もうすぐ少女はこの公園の横を通り過ぎるだろう】
【真夜中の公園に一人サラリーマンが居るというのもかなり不自然だが、少女はそれに対し何らかのアクションを取るのだろうか】
【――そして、この人影は、少女に何らかのアクションを起こすのだろうか】
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/11(土) 23:48:28.22 ID:MZ7ow3Sv0
/この公園は少女の帰り道の途中にあるということでお願いします
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 00:06:07.17 ID:KH9wZQIH0
>>947

【空気までもが黒く濁って澱んだような場所の中を、けれど少女は、いたって気楽な帰り路か、それとも、友達の家に向かうかのよな足取りで歩く】
【もしかしたら昨日までひとの亡骸が転がっていたかもしれない血染みの地面も、微かな腐臭も、その一つとて少女の感覚器官には、届かないように】

【――けれど、その少女の仕草が、その公園……そこにあることさえ何か見てはいけない幻を見てしまったかのような気分になる、その公園に】
【そのベンチに、ひとが腰かけていることに気付いて。もともと嬉しそうにしていたわけでも、怒っていたわけでも、なんでもなかった、無表情が】
【丸くて釣ったあどけない眼が、一瞬だけ、わずかに細められる。柔らかそうな頬の丸みは変わらなくても、どこか、その表情は変わったように見えるだろうか】
【無表情から無表情に変わるだなんておかしな話だけれど、――たしかに、なにか、纏うものが変わったのだ。そう、そして、それは、】
【確かにこんな薄暗の無法地帯に居る人間が纏うもの、そのもので。――まだ薄い、殺意でもなければ、敵意でもない。他者を認識した、意識した、それだけだけれど】

…………こんばんは。

【あどけない顔があどけなく笑ってみせた、ただ通り過ぎてしまえば終わったように思える一瞬のすれ違いに、ただ、彼女は彼に近づくことを選んで】
【多分その理由を尋ねたとしても答えられやしないのかもしれない、考えがあるようには見えない。ただお隣さんとすれ違ったアパートの住人のよう、鈴の音に似た声は軽く】
【けれど、きっと、気付いたのだ。彼が彼女を意識した瞬間の、ほんの、自分に向けられた気持ちの端っこに。"勘"とか"第六感"とか呼ばれたりする、何かが】

【そのまま背中を向けて歩いてはいけないような、――もしかしたら考えすぎなのかもしれない、なんせ、彼女の性質と言えば、立派に怖がりと、不安がりと言ってよく】
【ただ胸に変わらずチラシの束を抱きとめたままの彼女はよほどおびえたさまを見せているでもない、その手に武器はなく、腕は手折れそうに細く】

今ね、これを配ってるの。お兄さんはきっと大丈夫だと思うけど……、えっと、もらってくれるひとにはね、渡すことにしてるから。
要らなくっても、名前を覚えてくれたら、嬉しいな――。

【きっと鈴が意思を持って喋るなら、こんな声で喋るのではないか。そう思えるほどに金属質な声の少女の声は少なくとも今は、彼に好意的でひとなつこく向けられ】
【近づいていく足が拒まれずにある程度まで近づけるなら、ぺらりと、抱いていた紙束から一枚、彼へきっと差し出すのだろう】

【――風の国の正義組織が、孤児や浮浪者に向けて、無料で食事を提供しているよ、と、そのチラシだ。或いは、彼もそれを知っていてもおかしくはないだろう】
【一時期、真冬になぜかリーダーが水着でこのことについて宣伝するCMが流れまくったから、だ。そしてそのCMを知っているなら、】
【今まさにチラシを差し出す少女も同じCMに写されていたと思いだすことまで、簡単なのかもしれない。――もちろん、テレビをあまり見ない性質なら、知らない可能性も十分にある】

【とにかく、話しかけてきた少女に敵意は見えなかった。ただチラシを渡そうとして近づいてきただけ――に、見える】
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 00:34:08.74 ID:ViYb2NBQ0
>>949

【サラリーマンはかけられた言葉に対し、無言のまま胡散臭げに見返すという形で答えた】
【そしてチラシが差し出される】

(……断ル理由ハナイナ)

【受け取り、おざなりに目を通して、いつだったかこの慈善事業のCMを見たことを思い出す】
【加えて、目の前の少女がそれに写っていたことにも思い至った】
【その素晴らしさがサラリーマンの琴線に触れることはなかったが――】

(ム……?コレハ……?)

【『風の国の正義組織』という文字が目についた】

【サラリーマンはもう一度少女のほうへ視線を向ける】
【先ほどの胡散臭げなものではなく、いくらか柔らかな視線だ】
【そして――先ほどの声とは似ても似つかない、人間味に満ちたいくらかハスキーな声で問いかけた】

 この組織というのは……能力者が大勢いる、UTや各国の自警団のようなものなのかい?

 ……いや、僕は能力者でも何でもないんだがね。

 UTのファンなものだから、気になったのさ。
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 00:52:51.21 ID:KH9wZQIH0
>>950

【胡散臭げな目が向けられる、けれどそんな目には大方慣れっこなのだろう、にこにことあどけない顔は別段変わることもなく、気を悪くした顔もない】

んんん、UTだよ、ほら、ここ、書いてあるの――、わたしね、UTでお仕事してるの。

【彼の言葉に彼女はそう返す、それから、ふわと身体を近づけて、彼がきっと眺めているチラシの一か所を、細い指でついと指し示せば】
【確かにUNITED TRIGGERの名前を見付けることができるだろう。また書かれた住所も、UNITED TRIGGERその場所の住所であって】
【あっさりと関係者だと口にした少女は変わらないひとなつこいような態度で、それでも少しだけ得意げなような、やはり少し幼いものを顔に浮かべ】

UTが好きなの? ふふ、

【それから彼の言葉に案外素直にうれしそうな顔をするのだった。仕事をしているという言葉、今ここで自称以上に裏付ける証拠こそないけれど】
【正式なUTのCMに(本人的には若干不本意ながら)映っていたのもあるし、なんならその彼が持つ携帯端末で検索をかければ、調べるのは不可能ではないだろう】
【例えば酒場のウェイトレス兼料理人がオッドアイの少女であるとか――それくらいなら、簡単に出るのではないだろうか。どうも未成年にしか見えない彼女は、酒場では目立つから】

あ――もしかしてお店に来てくれたこと、あるのかな……、ええと――。

【小さな声を漏らしてその可能性を思いついた彼女は、そう強くではないけれど、尋ねるのだろう。記憶を思い返すように、視線が微かに逸れて――】
【記憶の中、目の前の彼の姿を探してみようとするのだろう。けれど、彼女も、抜群の記憶力があるわけではない、客人はなるだけ覚えるようにしていたが、】
【その頭の中から零れている存在もたくさんあるだろう。それに、彼が店に来てくれたことがあるとも、限らないのだから】
952 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 01:32:50.84 ID:ViYb2NBQ0
>>951

【少女が自分はUTの関係者であると明かしたとき、サラリーマンは少し驚いたような顔をして】
【――ほんの少しだけ、武道の達人でないとわからないくらい少しだけ、体を緊張させた】

(コンナトコロデ、UNITED TRIGGERノ一員ト出クワストハ……)
(トイウコトハコノ女、マサカ能力者カ?)

【しかしその緊張はサラリーマンの表情には現れない】
【ただ、口角を少し持ち上げて、少女の言葉に応じる】

 お店というのは何の事だかわからないが……僕はUTに関係のある建物には行ったことがないから、きっとそのお店には行ったことはないよ。

 ファンといっても、本を買うとかその程度なんだ。実際に建物に行こうとは思わなくてね……。

 ――ところで、君はUTの関係者らしいが……

【携帯電話をしまい掌を見せるようなジェスチャーをすると同時に、口角がさらに上がる】
【その笑みは先刻の、顔を歪ませるような不気味なものだった】

 君も、能力者なのかい?

【その問いと同時に、眼前の少女に、何らかの『能力』が働きかけようとする】
【それを察知することは難しいが、少女に害を加えるものではなかった】
【その能力は――少女の身体的特徴を、記憶を、技能を、読み取ろうとしていたのである】
953 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 01:57:09.22 ID:KH9wZQIH0
>>952

【その変化には、きっと、気付かなかった。武術に関しては不得手だ、達人であったことなど、一度もないし】
【どうやら話してみれば普通のひとに近しいのではないかと少し気を緩ませた――そのタイミングと、ほとんど、かぶさっていた】
【もちろん会話する相手として彼を意識する、けれど、こんな場だ。意識の向け方はそれだけではない、ただ、言葉の通じない気狂いではないらしいと、認識したタイミング】

酒場をね、やってるの。わたしがお料理作って――お料理については結構任せてもらってるの、お酒は詳しくないけど……。
お客さんの方が詳しいから、あんまり困ってはないの。自分たちで飲みたいように飲んでるから、――、

【あれ、と、思った。少しだけ、わずかな疑念。UTが酒場を経営していることは、今となっては、結構なひとが知っていると思っていたから、というのと】
【ファンだというなら、知っていておかしくはないことのはずではないのかと、むしろ、知らないことが、おかしいのではないのかと】
【あどけなく笑い話す裏で思考回路が追いついていく、言葉尻が曖昧に途切れるのは、違和感が思考に追いつくのと同じ瞬間、彼の表情が、歪む瞬間】
【笑顔の残滓が唇の端っこにわずかに引っかかっていた、けれど、或いは口よりも語るという目元は、その温度は、す、と、冷えていくようで】

――!

【問いかけ一つ、けれど、彼女が反応したのはそこではないように見えた。びくと身体を跳ねさせる、ご飯を食べる猫の背後に胡瓜を置いた時のような、】
【足のばねで跳ね上がる、咄嗟に取ろうとした距離は対して大きくはないが、けれど、反射的で本能的だったからこそ、どんな言い訳も、その仕草には通用しなくて】
【見開いた眼が辺りを見渡す、けれど何もない、――何かが確かに触れようとした。嫌なものが、きっと、よくないものが、自分を捉えようとした】
【――鋭くなった視線が、彼を見るだろう。いまだ疑念と訝しむ色味を湛えて、自らを紙束越しにぎゅうと抱きしめるようにして、相手を睥睨して――】

…………今、何かしたの?

【――人間じゃなかった。彼女は人間じゃない。身体には魔術式が張り巡らされていて、記憶には大きな欠落が見られ、異能は今この瞬間さえ一定の割合で働いている】
【彼の能力の精度にも因るだろう、何より彼女は気付いて、逃げた。一瞬のことだから、彼がどれだけ読み取るのかは、分からないし。彼女は、それが何かも分かっていない】
【けれどこれらが知るかもしれないこと、或いは、もっと深く探れる可能性のあること。――それとも、物理的な数歩の距離では、防げないのかもしれない】

能力者かは、教えてあげない。

【この場所に居ること。それが答えでもあった。治安の悪いこの場所で彼女のような少女が生き残るためのすべと言えば、限られたものしかないのだから】
【露骨に警戒を見せつけて、少女は答えなかった。――じ、と、相手の些細な仕草さえ見逃さないという風に、視線を向けている】
954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 02:48:23.74 ID:ViYb2NBQ0
>>953

【サラリーマン――正確にはサラリーマンの姿をした何か――は、内心で仰天した】
【少女が能力の干渉を察知し、距離を取ったのを見て】
【また、少女が『人間ではなかった』ということを読み取って、である】

(……フフッ)
(面白イ。七ツ目ノ『かーど』ハオ前ノ情報デ作ルコトニスルゾ……)

【その意図は心の中に留められ――サラリーマンの顔は、怪訝そうな表情に変わる】

……どうかしたのかい?

【端的に言うと、すっとぼけた】
【そして、表情はバツの悪そうなものに変わり】

もしかして、僕の質問が気に障ったんだろうか……?
……そうに決まってるよな。すまない。

【と、謝る】
【こうすれば少女は、『誤解を解いてやらなくては』と思い、この場に留まるだろうと予想してのことだった】
【――もっとも、少女のサラリーマンに対しての警戒が厳しければ通用はしない手だが】

【その間にも、再び情報を盗む能力は、少女に作用しようとしていた】
【今度は急激にではなく、ゆっくりと――気づかれぬように】

/一旦ここで凍結させていただきたいです。
/明日なら一日空いておりますので、そちらの都合の良い時間を教えていただければその時間に再開できます
955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 02:55:03.54 ID:KH9wZQIH0
>>954
/了解しました!明日ですと基本的に一日空いているかな、と思います
/後でお返ししておきますので、そちらの時間が大丈夫になったタイミングで返していただけたら!
/ひとまずお疲れさまでしたー
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 19:51:27.99 ID:KH9wZQIH0
>>954

【巧妙に偽装されている。まず、だいたいの人間は気付かないだろうほど――けれど、そういった、特別な方法で探られれば】
【それでもなおよく人間と似ているのだけれど、何かが違う。人間じゃない――それが知れる、或いは、ばれる】

……、違う……違うの。あなた――今、わたしに、何かしたの?

【怪訝そうな顔に、少女のにらみつけるような目元がわずかに困惑する、眉をひそめて、こちらも怪訝そうな色が表情ににじむ】
【質問のせいではない。けれど、少女はそれが"何"であったのか、分かって居ない。だから、言葉はどうにも曖昧になり】
【気持ち悪いものに触れられたという感覚は確かにあった、ざわと微かに鳥肌が立つ腕をぎゅうと身体に寄せて、自らを守るように抱きしめ】

【彼が予想した気持ちは、確かにある。けれど警戒も強い、警戒するとげとげしさを見せながら彼女はその場に留まる、じっと彼を見つめて/睨んでいる】

【――この場所に何か気持ち悪いものがあるのか、それとも、眼前の彼が何かをしているのか。身体ではない"自分"に、まだ、気持ち悪さが残っている気がして】
【落ち着こうとしたのか細く吐いた息が、微かに震えていた。このサラリーマンはどうしてこんな場所に居るのか、さっきの歪んだ笑みは、何なのか】

――……、っ、……、

【ゆっくりと作用する力、気付かれぬようと潜めたそれを、けれど少女は感じとったのだろうか。今度は逃げ出すことはないのだけれど、その身体はぎゅうと硬くなり】
【自分を守ろうとするような魔力がその身体からじわりと滲む、桜色の煌めきは山奥を流れる清流と同じ香り、――不快感をこらえる顔、相手を向く視線は鋭く】

何を――してるの?

【この場所のせいではない、と、ほぼ決めているのだろう。相手へとそう尋ねる、――けれど声は先ほどまでよりうんと低く、褪めて、抜き身の刃物のようであり】
【変わらぬ金属質ではあるが、彼への強い疑念と薄い敵意を抱き始めているさまがありありと見て取れる、けれど……今度は、変わらぬ位置で、逃げることもないなら】
【その異能自体は拒まれていない。少なくとも今この瞬間の話ではあるものの、――ただ、彼女を深く探ろうとするならば、必ず、何かが強く邪魔をする】
【表面を撫でる以上に触れようとすれば、何か強いもの――紫色をした魔力が、こびりつくようにして、覆い隠そうとするのだ。彼女を護ろうと、抱きしめるように】
【それでも表面的なものであるならば、読み取ることもできるだろう。――彼女から滲んだ魔力が花びらのような形になって、ちり、と、地面に散り落ちた】

/申し訳ないです、いろいろあって遅くなりました……!
/これからでも大丈夫でしたら、続きお願いできたら嬉しいです……
957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 22:33:49.47 ID:ViYb2NBQ0
>>956

【サラリーマンは演技が通用しないとみると、早々とバツの悪そうな表情をやめた】
【無表情のまま、自分を警戒する少女を観察しているうち――読み取りの進行状況が芳しくないことに気づく】

(ドウイウコトダ?)
(ヨリ深クヲ読ミ取ロウトスルト……何カニ阻マレル)

【彼は身を乗り出すようにして少女をねめつける】
【鋭い視線も、投げかけられた問いも、感じないかのように無視する】
【そして阻むものについて読み取りを試みて、何度か失敗したが、やがてそれが魔力だと判ずる】
【少女の体から魔力の欠片が落ちるのを見ると、その判断が間違っていないと確信して薄笑いを浮かべた】

(ナルホド……ドウヤラ、タダノ人形デハナイヨウダナ)
(俄然興味ガ湧イテキタゾ。何トシテモ情報ヲ手ニ入レテヤル……)


【彼は一度俯き、やにわ立ち上がる】
【足元の土がじゃり、と音を立てた】

――我々の細胞の中には、「遺伝子」というものがあるらしい。

【問いに答えるでもない、唐突で無関係な発言】
【少女に向けているようで、中空に投げたようでもあった】
【しかし、その言葉には先ほどまでにはない『何か』があった】
【威圧するものは全くないのに、聞くものが寒気を感じずにはいられないような、凄み、あるいは迫力】

それは体の設計図――つまり、我々の体の一切の情報を持っているものらしいんだな……。
つまり、その内容が分かれば、自分がいつ病気になるか、だとか、その類のことが全てわかるんだ。
だから医学者たちは、それを読み取ろうと奮闘しているらしい。

【サラリーマンは、公園を取り囲む建物をゆっくりと見回す】
【一つだけ明りのついた窓を見つると、何をするでもなくその窓を見つめた】

その情報は簡単には読み取れない。細胞の中にあるからな。
でも、調べる方法はあるんだ。

【窓から差した光を受ける彼の影が、ごく僅かに、風を受けた海面のように隆起した】
【いや、正確には彼の影ではない】
【生物の情報を『写し取り』、『読み取る』物質――】
【少女の足元へも広がっている真黒な物質の一部が蠢いたのである】

――遠心分離機にかけて、細胞ごとぐちゃぐちゃにするんだよ。

【その瞬間、サラリーマンの放つ雰囲気が緊張に満ちたものに変化する】
【顔がぐぐっと歪み、『あの笑み』を浮かべて、少女を睥睨した】

/こちらも返しが遅くなってしまいました……申し訳ありません
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/12(日) 22:57:29.02 ID:KH9wZQIH0
>>957

だから……何、なの。

【遺伝子。名前とか存在は知っているけれど、細かなこと――詳しいことは、よく分からない】
【それは彼女が学校に行ったことがないこともあるのだろうけれど、きっと、そう興味がないのだろう】
【学校に行っていたって興味がなければよく知らない事柄、それなら、そのどちらでもないなら、ことさら詳しく知らなくたっておかしくない】

……今、そんな話、してないの。わたしに――わたしに、何を、しているの?
答えて……答えないと、"いや"なの。

【彼女は好奇心が強い方だ、最近ようやく小規模ながらも勉強を教えてもらう機会ができて、その場では、とても楽しそうに学ぶという】
【しかして、この場で遺伝子がどんなものかとか、そんな話には、興味がないらしい。それよりも――ぞわりと感覚に広がる奇妙な不快さは何なのかと、】
【何度目かにもなる問い、それから、今度は強く付けたされる。いやと言葉こそあどけなく子供のようだが、そこに込められた力は強く、明確で】
【きらと煌めき花びらのようなかけらが舞い落ちる魔力の漏れ出す様は綺麗だが恐ろしい、能力者か魔術師か、いまだ区別こそつかないけれど――】

…………――、

【どうでもいい話で気をひこうとしているのだろうか、だとしたら不意を打つタイミングを狙っているのか、それとも、これがそのまま何かに関係してくるのか?】
【彼の力もこの不快感の理由もいまだ分からない彼女には理解が及ばない、その言葉に今がかかわるのかどうか、それさえもわからない、わからない、けど、】

【彼の視線が一つだけ明るい窓へ向く。彼女の視線は彼の身体を見ていた、そして刹那、彼の視線の先を確かめるように同じく明るい窓を見つめて――足元の異変を見逃した】
【うかつ、と言えるだろう。或いはまだ未熟、見た目通りならば十六近く、――現実としてはもうすぐで二十三を数えるのだが、正式な戦闘の経験は、そう多くはない】
【相手の仕草や言葉に意識をとられてしまう瞬間がある、そして運が悪ければ、こうして、何かを見逃す瞬間もある。――彼女は、それが、影と思っていた】

……――、……それを、わたしに、するの?

【彼の雰囲気が変わる。表情は三度歪み、強くにらみつけられる】
【彼の言葉の持つ意味を脳裏に浮かべたのか、それとも、その雰囲気の変貌にか、ほんのわずか――怯えのようなものがちらついて、けれど、動揺はしない】
【逃げ出しもしない、ただ、今度こそ敵意を持って、相手へ視線を同じくにらむようにして、返す。じり、と、地面に落ちた魔力片が蕩けるように壊れていく】
【微かに輝くそれも光源には足りず、それならこの場は、変わらずに暗い――足元の暗さの正体に、まだ、どうやら、気付いていないようだった】

/いえ、こちらが遅れてしまいましたのでお気になさらず……明日朝早いのであまり遅くまでできませんが、よろしくお願いします!
959 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 00:03:35.29 ID:sF7BLRF10
>>958

【横目に見た少女は話題に込めた威圧に屈する様子がない】
【サラリーマンは『若いのにエライな』と馬鹿げたことを考えて、心中で口笛を吹いた】
【――まあ、威圧に屈して逃げ出したとしても、そのまま逃がしてやる気はさらさら無かったのだが】

【その褒美をくれてやろうと思ったわけではないが、何となくその気になって、少女の質問に応じる】

そうだなあ……して欲しいならしてやってもいいが、僕としてはそのつもりはないよ。
僕は情報を読み取れればいいんでね、邪魔な魔力さえ消えてくれればいいんだ。

【彼は少女に向き直り、またも掌を見せるようなジェスチャーをした】

魔力は君をミンチにしなくても……
首を切り落とすか、土手っ腹に風穴を開ければ消えるんじゃないかと予想しているんだが、違うのかい?

【彼がひどく物騒なことを平然と言い放つと同時に、少女の背後に伸びた『影』が三つの細長いものを形作って】
【一つ一つがぴょこりと鎌首をもたげて、軋るような声を立てて空中に飛び出した】
【『影』が三匹の毒蛇に変化し、少女に襲いかかったのである】
【一匹一匹が致死の猛毒を持つ毒蛇だった】
【しかし、その動きは通常の毒蛇と何ら変わりなく、声を聞いて避けることも難しくはないだろう】

【本当に恐ろしいのはサラリーマンのほうだった】
【顔が、体が、アイスクリームが溶けるようにぐにゃりと変化し、黒く染まる】
【変化が収まったとき、そこに立っていたのは】
【ゴムのような白い肌、黒いプロテクターの、あの怪人物】
【怪人物は地面を蹴って少女に接近を図り、そして――】

シィッ!

【掛け声とともに放たれたボディーブローは、猛獣のそれの如き破壊力を秘めていた】
【もしまともに受ければ、『土手っ腹に風穴』が空くだろう】

【突然繰り出された前後からの攻撃に、少女はどう対応するのだろうか】
960 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 00:24:27.77 ID:Ps6+sF9e0
>>959

……嫌だ、って言ったら、どうするの?
この身体は少しだってあげない、し、……邪魔って、何?

なんにもしてないの、わたし、あなたの、……邪魔なんて。

【彼女の色は、桜色だった。それは今すぐにでも見て取れるだろう、彼女から溢れる魔力は、桜の花の色をしている】
【けれど見えない場所で彼から彼女を護る魔力は、間違いなく違う色をしていたのだ。紫色――鮮やかな、紫色。強固な守護の魔術式】
【それをどうやら彼女は知らない、だから、少しずれたことを言う。むしろこちらのほうがひどいことをされている、と、少し不満のある声を出す――、と、】

【背後で何か変な音がして、少女は振り返る――ではなく、身体をひいて、半身になるような形で、背後を視野に入れた。彼にせなを向けることはなく、】
【ぴくとわずかに跳ねた身体、けれど思考はすぐにこれが攻撃だと気付く、年頃の少女ならそれ以上に蛇に怯えてもよさそうなものだけれど――】

――!

【だん、と、足が地面を踏みつけた。すると、彼女の身体からじりじりと滲みだしていた魔力が、足を媒介に、地面にぎゅうと押し込まれて、地面がわずかに波打つ】
【目測で狙いを付けて指示する、その刹那に鈴の音が辺りに響いて、揺らめいた地面から這い出し宙へ飛び出すのは、――これも、また、蛇であった】
【薄桜色の液体で身体を構成する蛇。透けた身体の中には、頭の部分に一匹一つ銀の鈴を浮かべていて、それが水中だというのに、どうやらりんりんと鳴いているらしい】

【何よりも恐ろしいのは、その蛇が、その蛇を構成する水分が、強い酸性を持っていることだった。厳密には酸とは違うもの、しかし、明確に相手を害すもの】
【水蛇は三匹、きちりとした標準で、少女へ向かう蛇へとびかかるのだろう。相殺――或いは、少女に襲い掛かれないほどまで、破壊せんとする】

【――蛇の結果を彼女は確かめない。そのまま彼へ視線を移ろわせ、こちらに接近することに気付く、が、後ろに下がれば、毒蛇に咬まれるのかもしれない】
【ばちゃりとはためく音を彼は聞くだろう、というか、目でも見るだろう。ぎゅっと振りかぶる仕草、その手にはずっと抱いていた、彼に渡したチラシの束】
【ばしょばしょと何とも言い表しがたいよな音が響いて、少女は彼へ向けてチラシの束を投げつけた。当然縦横無尽に散るチラシは、数秒か、それとも十数秒か、彼女を覆い隠さんばかりに舞い】

【狙いを逸らすのが目的、もっと言えば隙を作れたらよくて、それでも拳を振るうなら、さっきまで居た場所に、彼女は居ない】
【瞬間移動なんて高等なものではなくて、もっと単純――、振られる拳の先よりも、下に、しゃがみこんでいる】
【両手はぐっと地面に押しつけられていて、濃い魔力が流し込まれる。背後の蛇たちの動きは見られない。彼の細かな動きも、チラシのせいで見えない】
【けれどそれはきっと相手も同じだと信じて、次の動きの準備をする。――もしも毒蛇か、彼か、彼女の予想を上回る動きをするなら、容易に妨害されるのだろう】

/申し訳ないです、日付変わってしまったので、ここで凍結お願いしたく……!
/明日は六時〜七時ごろから再開できるかと思いますが、一度食事を挟むことになるかと思います……
961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 01:00:46.40 ID:Ps6+sF9e0
/すいません、一時ですので、お先に落ちさせていただきます……
/必要でしたら置きへ移動することも可能ですので、ひとまずはお疲れさまでしたっ
962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 01:20:08.86 ID:sF7BLRF10
>>960

【毒蛇と水蛇が交錯して、じゅっ、という音がした】
【微かな断末魔の鳴き声とともに落ちた毒蛇たちは、酸に体を溶かされたためあっという間に絶命し――】
【その肉体は『影』に戻った】

(ムッ。アレガコイツノ能力ナノカ……)

【怪人物は接近しつつそれを視認した――その直後チラシがばらまかれ、彼は少女を見失う】
【構わず振り抜いた腕は虚しく空を切り、少女が次の動作に備えていることも察知できない】

 小癪ナ……!

【怪人物は水蛇を警戒し、バックステップで距離を取る】
【直後、地面に広がった『影』がぶるりと震えて――】

【次の瞬間、少女の周囲の地面から沢山の何かが勢いよく飛び出した】
【――筍だった。筍が猛烈な勢いで生えて、地上にあるものを突き通さんとしたのである】
【破壊しなければそのまま成長し、少女の周囲にはちょっとした竹林が完成するだろう】
【筍はそこそこ多かったが、正確に照準したものではないので少女に当たるかどうかは甚だ疑問】
【とどのつまり苦し紛れの攻撃でしかなかった】

 ……ヤッタカ?

【怪人物は少し離れたところに立ち、少女の様子を伺う】


【――たった一つ明かりのついた窓の奥で、人が動く気配がした】
【中に居る人物が筍の生える音に気づき、公園のほうを見たのかもしれない】
【しかし暗闇の中のことで、公園で何が起こっているのかはわからないだろう……】

/了解しましたー
/では明日の6時から7時頃再開ということで、自分も途中で離脱するかもしれませんがよろしくお願いします
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 18:27:19.08 ID:Ps6+sF9e0
>>962

【水蛇たちは所詮は水であるかのよう、毒蛇を相殺した衝撃で、そのかたちを崩し、ただの水となって地面を濡らす、染みになる】
【低く地面にしゃがみ込む少女の身体にぱたたと残滓が降り注ぐ、けれど水蛇の主であろう少女の身体はただ濡れるだけ、毒蛇のように溶けることはなく】

【――ごわ、と、少女が両手をぺたりと付けて力を注ぎ込む地面で、魔力が溢れた。りん!と再び聞こえる鈴の音は、再びの水蛇の召喚を予感させ】
【けれどその直前、直後、あるいは全く同じタイミング。地面から迫り出す筍の群れに、驚いたのか小さいながらも確かに少女のものだろう、高い声が聞こえるはずだ】
【となれば少女の位置はすぐに知れる、ばさりと翻ったチラシの一枚の向こうに、少女の姿が微かながら見える、――そして見る、だろう】
【地面から桜色があふれ出して、さっきの水蛇よりも何十倍も大きいような――人よりも大きな、大きなものが、ぞろりと這い出る】
【しかして先ほどと違うのは、その身体が現れるたび、ぺきぺきと桜色の鱗を纏っていくことだ。時間としてはほんの数秒もないだろう、一瞬のこと】

――っ!

【びしびしと鱗を纏った魔力の蛇が頭を揺らした、その次の瞬間、びゃんと、彼が生やした筍を真似するような勢い、けれど向かう向きは斜めを向いて】
【さっきまで彼が居た方向に向けて、飛び出すのだ。その首元にぎゅっと抱きついた少女を実らせての、体当たり――或いは、局地的な竹林から逃げ出すよう】
【ちょうど眼前に生え出た竹を頭突きで持って粉砕して跳ぶ、鱗があるせいか水蛇よりは強度があるらしい。ばぎゃんと高い音を立てて竹は折れ】
【魔力蛇ごと少女は竹林から抜け出すことになる。そして、そこから数メートル離れた位置まで跳び、着地しようとするのだろう】
【その間に彼が位置していることがあれば轢かれることもあるかもしれない軌道。けれど、相手の位置を把握していなかったのは、こちらも同じだから、狙いは甘い】
【奇襲としての体当たり。結果として竹林からも脱出した少女は、ただ、地面に激突して魔力片と散る蛇の残骸と、地面をずさりと転がされ】

く、うぅ……、

【地面に爪を立てて身体を起こす、その頬には、蛇が頭突きでへし折った竹の破片で切ったのか、そう小さくもない切り傷が刻まれていて】
【真っ白く柔らかいだろう肌を赤く滲ませていた。――そう戦い慣れしていないのだろう、すぐ体勢を立て直せないで、ただ視線はすぐに彼を向く】
【砂を噛んだか口の中が少しだけじゃりじゃりとする、不快そうに眉をひそめたが、】

……なに、なの?

【相手が何であるのか、目的は何なのか、そういったことを纏めて、簡単に、そう尋ねる】
【人間ではないだろうことは見てわかる。目的は――分からない、いきなり遺伝子の話をされて、それだけだから】
【だけれど相手に任せたら、きっと、殺される。地面の砂粒が爪に入るのも気にしないままで、手に力を込めて、さらに身体を起きあがらせて】

/お返しします、よろしくおねがいします!
964 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 21:26:10.09 ID:sF7BLRF10
>>963

【怪人物は漏れ聞いた少女の高い声に、命中を予想して心の中でほくそ笑むが】
【――その直後、竹をへし折りながら突進してきた魔力蛇を見て仰天した】

ヌウッ……!

【慌てて飛び退いた直後、少女をぶら下げた魔力蛇がさっきまで居た空間をえぐった】
【もし狙いがもう少し正確だったら――怪人物の背筋にひやりとしたものが走り、反射的に緊張したファイティング・ポーズを取る】
【しかし、少女が地面に放り出されて呻いたのを見ると、彼のたたずまいに悠然としたものが戻った】

(……今ノハ、驚イタガ……)
(コノ様子デハコイツ、戦闘ハ『トーシロー』ダナ?)
(『恐ルルニ足ラズ』ダ……)

【そう判断して警戒レベルを下げた判断は正しいのか、否か――それは全てが終わったあとにわかること】


【少女の質問を耳にすると、その態度は更に弛緩したものに変化する】

『ナニ』カ、カ……ワザワザ教エテヤルト思ウカ?

愚カナヤツ……愚カナ、ウスノロガ……

【子供じみた悪口はきっと、さっきの不意打ちに驚かされた苛立ちから出たものだろう】
【怪人物は腕組みをして体を少し反らし、少女を見下す】
【――竹林が少しずつ『影』に戻っていく】

……フフフ。
マァホンノ少シダケ教エテヤロウ。『冥土ノ土産』ダ……。

私ハ情報ヲ集メテイル者ダ。
『能力者』『異能持ち』アルイハ『魔法使い』……ソウイウ類ノ人間ノ情報ヲナ。

【怪人物は籠手の下からカードを一枚取り出し、ひらひらと動かし見せつけた】
【夜闇の中で真っ黒なカードが踊る……】

コレガソノ情報ダ。正確ニハ情報ヲ写シ取ッタモノダガネ。
コノ中ニハ、ソノ人間ノ『体』『記憶』……加エテ『能力』ノ一切ガ詰マッテイル。

ソシテ情報ヲ頂イタラ、ソノ人間ニハ死ンデモラウ。
私の存在ヲ知ラレタ以上、生カシテハオケナイカラナ……。
私ハしゃいナンダ。

【手首のスナップを効かせカードを少女のほうへ向ける】

――ソシテ、君モソウナル。

【竹林を成していた『影』が怪人物の周囲へと集結し、一つの生き物のように蠢いた】


【窓から覗いていた人物は、暗闇で状況がわからないのに痺れを切らして】
【直接公園に行って確かめようと思い立ち、部屋を出た】

【たった一つの明かりが消えて、公園の闇は一層濃くなる】
【月光だけが、相対する二人を照らした……】

/本当に申し訳ありません、返しが遅れました!
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 21:50:28.36 ID:Ps6+sF9e0
>>964

【地面に激突した衝撃でばらばらに砕けた蛇の欠片がざぁと降り積む、少女の髪や服に絡みついて、そのうちに薄く消えていく】
【じゃりじゃりとした唾液をわざと飲み込んでにらみつける、そうしながらも身体を起きあがらせる――したたかにぶつけた痛みはあるが、動かないほどではない】
【まして折れているはずもなく、それなら動く。口の中が砂っぽい以外は何ら問題もない、少しの擦り傷も打ち身も、そんなの、嫌になるほどやってきた】

情報を……集めて、る?

【愚か、うすのろ、連ねられる悪口に、ただ、少女は特別な反応を示さなかった。わずかに目を細めたものの、それで冷静を失うということもなく】
【冥土の土産とまで言われても、怯えた素振りは、薄い。自分の力に自信があるのだろうか、――受け身も上手に取れないくらい、なのに?】
【異能そのものは弱くないように見える、けれど、少女そのものはどうだろう。腕も足も華奢で、到底武器を扱うようにも見えないし、それを、持っている素振りもない】

そんなの……何の意味が、あるの――、

【攻撃が、来ない。それを見て、少女は、やっと立ち上がる。ぐっと地面を両手で押して、そんな仕草のわりに、凛と立つ】
【地面を転がったせいか、見れば髪や服には細かい砂粒がたくさんついていて、全体的に白っちゃけたようになって、みずぼらしく】
【身体、記憶、能力のコピーしたもの、それがあの黒いカード、そこまでは、分かったけれど。それを集めてどうするのか、それが何か意味があるのか――】
【――例えばそれをどうにかして、そのコピーした人間をこの場に模倣してみせたりするのか。そうなれば、一対多数になってしまう、それは、避けたくて、】

…………だけどね、何か、勘違い……してるみたい。
わたしはお前みたいなやつに、なにひとつ、あげたりなんてしないの……、シャイだなんてそんなのも、関係ないの。
UTのファンなんでしょう? セリーナのことは好き? ――セリーナに全部喋ってあげる、全部……。

【――彼の言葉が本当なら、すでに最低でも一人は殺されているのだろう。すっと瞳を細めて、視線はそのカードをじっと見やる】
【何か書いてはいないかと期待するけれど――見つからなければ、そのうちに視線は彼へと戻り】
【そうっと右手を彼へと伸ばす、指先はあまり力を入れられていない風で手のひらは天を向いて、そのうちに水が容器から溢れるかのような様で、魔力が滲みだし】
【やがて手のひらという容器からあふれ出して、またも花びらのように形を成しながら、地面へと散り落ちていく。水と花、それが、彼女の魔力の性質である、らしい】
966 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/13(月) 22:01:57.64 ID:Rafmrh6Ho
【路地裏】

【久しぶりに俺はこの街の路地裏を歩いていた。一周回って戻ってきた。そんな感じだ】
【違うのは、前はなにかに追われていて、今は追っている。そんなところだ。あとは大体、変わらない】
【格好も相変わらずスーツにマーチン。サングラスは買い換えた。髭はあんまり剃らなくなった。評判はあまり良くはない】
【リボルバーは変わらず2つ携帯してる。自分の謎は謎のままで、自分のことはほったらかしで人のことばっか世話している】

【手に握られたのは珍しい絵柄、アイコンのようなものが赤のボールペンで描かれた一枚。カノッサのものに似ていたが】
【こちらは六芒星で中心に手形のようなものが大きくある。…魔術的な法陣というべきか…そういう代物だ】

……あった

【男は足を止めて、レンガ造りの古いアパートの壁を見上げる。サングラスを外して、まじまじとよく見る。彼の目は白眼が赤く瞳は黒】
【見上げたアパートの壁には一面に赤い何かで、彼も持っている紙と同じ絵柄が書かれていた。到底、人の描けるサイズではなかった】

【紙に目を落とし、再度見上げて同じものか確認するとサングラスをかけ直した。紙をポケットに押し込んで、煙草を取り出して火をつける】
【この仕事を始めてからキャメルに変えた。探偵というのは“そう”いうものだ。最初のうちは先人に習うべきだろう】
【白い煙がもうもうと立ち込める。代わりに、頭のなかは霧が晴れて、混ざり合った思考を整理するのを手伝ってくれる。日常の欠片】

…さて、どうしたもんかな
967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 22:57:35.12 ID:sF7BLRF10
>>965

情報ハナ……アレバアルホドイインダ。
ソレガ答エジャア駄目ナノカナ……

【問いをはぐらかし、また腕組みして、指先に挟んだカードで二の腕を何回か打った】
【筋肉でごつごつと隆起した白い肌が、暗闇にぼんやりと浮き上がる不気味な光景……】

せりーな……カ。
聞イタコトガナイナア。UTノ洗濯婦カイ?

【日陰者には恐ろしいはずの脅し文句にも、小馬鹿にしたような切り返しをしたきりで全く動じる様子はない】
【少女が戦闘態勢を整える姿に粘着くような視線を向けて】
【――やがて怪人物もゆっくりと構えをとる】


【上空】
【暗雲がごくゆっくりと、赤い月を侵していく】
【どこか不穏ではあったが、地上を静かに照らしていた光が――】
【今、完全に絶たれた】


 シィッ!

【掛け声】
【猛獣の殺傷力を秘めた右脚が地面に振るわれ、めり込み、突き抜ける】
【掬い上げられた土くれは猛烈な勢いで少女の方へ飛んでいった】
【直撃すれば華奢な少女を吹っ飛ばすくらいの威力はあるが、単純な軌道ゆえ、飛び退けば回避することは充分可能だろう】
【その攻撃は、少女の動きを封じるための牽制だった】

【後方で怪人物が動く】
【素早くカードをこめかみまで持っていき、ぐっと押し込む】
【カードは何の抵抗もなく頭に埋まる】
【怪人物は体を小さく痙攣させる】
【そして同時に、右手を振り上げて――】

 チェーンメイル
『心鉄鎖』

【ぽつりと呟いたのは、カードに記録されていた能力の名前】
【かつて某国の自警団員が、カノッサ機関から母国を守るため振るった能力だった】

【怪人物の右手に鎖が現れ、巻きついて、指先から空中へと伸びていく】
【響き渡る金属音、そびえ立つ鉄鎖の柱】
【――右手が下ろされる】
【振るわれた鎖――当たれば肉を裂き骨を砕く凶器が、唸りを上げて少女の方へ落下した】
968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/13(月) 23:22:46.06 ID:Ps6+sF9e0
>>967

【情報はあればあるだけいい、セリーナのことは知らない、彼の言葉を頭の中に覚えさせていく、――生きて帰ること、それが、どうやら今日の目標らしい】
【普通に大通りに抜けて帰る、つもり、だったのだけど――生きて帰って、こいつのことをセリーナに報告する。そして――否、その先は、よく分からないけれど】

【月明りが途絶える、光源と言えば彼女が右手に灯す魔力の明るさばかり、それも――遠くまで届くほどに眩く輝きは、しない】

っ、!?

【振り上げた足が、予想よりも鋭く地面へと振りぬかれる。めり込みつき抜けた足の挙動に、そうまでも力強いことを思い知らされて】
【びゅんと無数の石つぶて、砂つぶとなって迫る土塊に、咄嗟に足のばねだけで跳ぶ、ずざ、ざ、と、大きく右に跳んだ勢いで、生える雑草が引きちぎられていく】
【けれどダメージを負ったのは草だけでない、あんまり動き回るに適さない、靴――変に擦れた足が傷んで、ヒールがへし折れることこそ、すぐにはないのだろうけれど】
【跳んだ勢いを殺した姿勢、しゃがみ込んだ姿勢。両手が足元に降りる――その間に、まるで悪夢のようにそびえ立つ、きっと自分など容易に殺す暴力性】
【ひや、と、心中に冷たいものが落ちる。あれは受け止められない、それだけは一瞬で理解する、受け止めようなんて、間違えても期待しないように】

――!

【びょんと跳ぶ仕草はもはや蛇を使役した少女というよりも蛙でも操りそうなほど、それでも身体能力は低くないのだろう。ほとんどモーションもなく、大きく跳ぶ】
【――きっと地面を揺らすほどに叩きつけられる鎖を、彼女は、ほんとうに紙一重――黒い毛先をかすめるほど、危うく避ける。その風圧に煽られ、身体はぐらと揺れ】
【再び転がり込むようになりながら――けれど、今度は、さっきよりも身体をうまく扱っていた。――ぎゅ、と、何かが二つ、彼へ向けて投擲されている】
【桜色の魔力をぎらぎらと纏わりつかせて彼へ飛ぶのは、――女物の靴。すなわち、彼女がさっきまで履いていたものに違いなく、実際に彼女は今、素足だ】

【狙いは彼の頭の辺りだ。しかし所詮は少女の細腕による投擲、狙いがそこそこ正確とはいえ、速度はそこまで驚異的でもない】
【けれど――本当の狙いは、そこではなくて。この靴……というよりか、まとわりついている魔力は、何かに触れれば、弾けるようになって、辺りに強い光と花びらをまき散らす】
【暗い場であるからこその目つぶしと、念押しで視界を遮ろうとするもの。チラシの投擲といい、彼の視野を奪おうとするのは――それだけ、力量があることを理解しているようでもあって】

【――転がった勢いで、今度は上手に立ち上がる。その手には再び桜色があふれ出していて、振るう仕草で、それらは空中で一番初めに見せた、水の蛇へと変わる】
【りんと鈴の音がいくつか重なって、四、五匹の蛇が、少女の手の指令で一斉に彼へと跳びかかっていく――だろう。しかして毒性は始めよりは薄く、致死性は低くなっており】
【動きは素早いが直線的、防御力はほとんどないが、壊せば飛び散る水しぶきが厄介。致死性の減少は、けれど、その水を素肌に浴びても必ず無事であるという意味ではなくって】

けほっ……、――。

【わずかに上がった息を整えようとするよう、その一瞬に深く息を吸い込んで、吐き出す。体力が切れたら、多分、殺されるから――、ぎゅ、と、胸元を握りしめて、刹那、相手の反応を伺った】
969 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/13(月) 23:39:44.08 ID:GEZ5Bpp/0
>>966

【汚穢、粉塵、退廃を深い影が覆い隠す。目を凝らせば数日前の新聞の切れ端が直角の麓にへばり付いている】
【昼に見かけると汚ならしすぎて近付きたくもない、夜に通りかかれば不気味で近付きたくもない。ここはそんな路地裏の一つ】
【酒に潰された溺死体にヤクのトリップで精魂尽き果てた餓死体、あと一人……小さなモノリスのようなものを覗きながらふらふらと歩く少女の影】

【金髪のツーサイドアップに季節外れの外套とキュロットスカート。長鞄の規則正しい音が無ければ亡霊か何かにしか見えない】
【人の目が無くて触法行為も許されるのだろうか、11才前後にしか見えない少女は堂々と歩きスマホに勤しむ】
【逃げ遅れたトカゲが尻尾ごと革靴に踏み潰され、風で飛ばされた辻占の「愚者」のタロットがツーサイドアップに引っかかる。それでも歩みは止めない】

何だろ……
珍しいな、意味も無くコレが反応するなんて

【コレ呼ばわりされたモノリス……ではなく携帯端末は引っ切り無しに警告音を鳴らし続ける。画面には路地裏の地図と赤い点】
【少女が目指しているのもそこであるらしい。時々視界の端で見える影を確認しながら正しいルートで分かれ道を選んでいく】
【目の前を見ないでいけば、いずれかは何かに当たる。犬ならば棒、蝶々なら蜘蛛の巣、少女ならばその先で何かを見つけたであろうサングラスの男】

今日も何も話が聞けなかったけど
どうだろ……蛇が出なかったらいいなぁ

【語調は垂れ下がり、頼りない独り言を漏らしながらはたはたと歩く。相変わらず前は見えていない】
【もしかすると、ここが路地裏だということも分からないのだろう。しばらくしたら、男にぶつかってしまうのは言うまでもない】
【または、その間に声を掛けて止めさせる等のアクションを起こす時間もたっぷりとある事も示している】

/こんばんは
/よろしければ、お相手お願いします
970 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 00:30:38.06 ID:dOGrszmA0
>>968

【土くれは少女の横を飛び去り、叩きつけた鉄鎖も紙一重で躱される】
【戦闘モードに移行した怪人物はそれに対して感情を抱くこともなく、冷静にその動きを頭に叩き込む】
【暗闇の中のこと、常人であれば細かい観察ができようもないが、怪人物の目には周囲が昼間のように見えていた】
【怪人物の目は僅かな光でも周囲を把握できる猫のような能力があった】

【ところが直後、それが仇となる】
【飛んでくる二つの靴を、鎖を波打たせて弾き飛ばし防ぐ】
【――そのとき、靴に込められた魔力が炸裂し光線を放った】
【少女にとってはちょっとした目潰しのつもりだったかもしれないが、その光度も怪人物にとっては数倍に感じられたのである】

グッ!?

【反射的に顔を手で覆い、後ろに飛び退く】
【花びらは無意味となったが、怪人物の目は何も見えないほどに眩んでいて】
【少女の様子を見なければと思いつつも、目がチカチカしてただ悶絶するばかり】
【そこへ、水蛇たちが襲いかかる――】

ナメルナッ……!

【筍攻撃のときと似た、しかしその時よりずっと大きな音】
【一瞬にして跳びかかる水蛇たちの途上に『壁』が出現した】
【木だった。太い樹木が五本並ぶ形で一斉に生えたのである】
【目が眩んでいるがゆえに無駄の多い、しかし確実な防御】
【酸性の弱い水蛇では、その盾を突破することはできないだろう】

【木の後ろで、怪人物は体勢を立て直す】
【そして少しのタイムラグもなく足を振り上げ、先ほど生やした木のうちの一本の幹を思い切り蹴りつけた】
【水蛇の酸により脆くなっているであろう木は容易に破砕され、飛散する大小様々な木片となって少女を襲う】

【木片はそこそこ広い範囲に飛ぶだろうが、丸っきり盲うちである】
【少女の身体能力をもってすればすべてをかわすことは難しくないだろう】
【怪人物も先ほど見た光景からそれは百も承知だったが、視界を確保までの時間稼ぎのため何かしらの方法で攻撃せずにはいられなかったのである】
【その怪人物は残る木を盾にして、しきりに顔をこすっていた……】
971 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/14(火) 00:32:30.44 ID:icb1FeOco
>>969

【彼は周りのことは気にもとめずに煙草を吸いながら思考を巡らせていた。といっても、これまでのことを整理しているだけだ】
【そして観察すべきことリストを上から順に思い出していく。だが、見たとおりだ。大きな六芒星のマーク。辺りには焼け焦げたような】
【痕があちこちに残っている。まるで焼け付けた様だ。グラフティアーティストが“OBEY”をあちこちに貼るのとはわけが違う】

その目的も意味も、わからない。……取り敢えず

【彼は足音に身構える。何気ない動作でポケットを漁るふりをしながらリボルバーの柄に手をかけた…がはっと我に返る】

気にしすぎか…俺は

【どんなに荒れ果てたアンダーグラウンドの口であっても直ぐ様、獲物を抜かなきゃならない状況なんてものは早々無い】
【昔の癖もあり気にしすぎていた。やってくるのは少女。そりゃそうだ。そうでなくちゃこまる。緊張をといて、汗ばんだ手を開く】

【仕事に戻ろう。何処まで考えていたか…まあいい、取り敢えずデータを残さなくてはと思い立ち】
【上着からスマートフォンを取り出す。一番新しくて一番いいやつ。逆に言えばみんなが持っている有名な機種だ】
【彼は操作に手間取っていた。カメラ機能一つ上手く扱えない古いタイプの人間なのだ。無駄な足掻きはせず直ぐに少女を呼び止める】

あの、ちょっと。お嬢さん。…コレのさ、カメラの向き、内向きになっちゃってんだけど、どうやればいいの?

【取り敢えずあれをとってくれと、携帯を渡して壁の謎の絵を指差した】

/離席していて遅れてしまいました
/もしいるようでしたらよろしくお願いします
972 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 00:34:55.58 ID:qWV1OXxW0
>>970
/申し訳ないです、時間がそろそろまずいので、凍結をお願いしたく……
/遅くまでできなくって申し訳ないです、明日は今日と同じ時間に再開できます
/難しいようでしたら置きに移動することも可能ですので、やりやすいようにしていただけたらと……!
/ひとまず今日はお疲れさまでしたっ
973 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 00:39:21.75 ID:dOGrszmA0
>>972
/了解しました、ひとまずお疲れ様でした
/午後8〜9時頃再開でよろしければ、置きでなくても大丈夫です
974 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 00:41:22.30 ID:qWV1OXxW0
>>/973
/了解です、その時間で大丈夫ですので、また明日よろしくおねがいします!
/帰宅次第返しておきますので、そちらが大丈夫になった時間にレスいただけたらと思いますー
975 : ◆mZU.GztUV. [sage saga]:2016/06/14(火) 04:28:13.70 ID:KxTL+hYp0
>>971

【ある意味で男の反応はセオリー通りと言える。路地裏を歩く少女なんて乞食か売女、殺人鬼といった人でなしである可能性が高い】
【そんな事も気にせず集中する少女に、道を尋ねるような男の声が飛び込んでくる。それで異様な集中状態が消えて無くなる】

ひあっ!?

【吃驚と悲鳴が芋づる式で飛び出し、反動で半歩跳ねるように後退る。警戒色を浮かべた顔でキョロキョロと周りを見る】
【そこまでならクロの反応。やがて正気に戻り始めたのか顔が青ざめ始める。眉がハの字に下がる、路地裏だこれ】
【そして目の前の男と漸く目線を合わせ始める。フリーズしたように動かなくなっている内に何を言われたかを思い出す】

え、えと
カメラのマークとリサイクルのマークが合わさったようなアイコンをタップしたら良いと思います

【カメラアプリ内で見つけた表示から自分の知識内で受け答えする。実際にそんなマークがあれば恐らくは上手くいくだろうか】
【声がガタガタで緊張しているらしい。半歩下がった姿勢から抜け出せていない。この距離が今の限界なのだろう】
【微かに少女の端末から周期的な警告音の鳴動。音量1のテレビ並みの静音であるが、それ以上に静かな路地裏では否応なく聞こえる】

や、やっぱりここって路地裏ですよね?

【確認を取りたいらしい。縋るような目付きで、胸に手を当てて不安そうに周囲に注意を向ける。口ぶりからして彷徨う事に関しては常習犯のようだ】
【さて、色々と変な少女についてツッコミを入れるのか、普通に答えるか、どちらも選ばないか……男が何をするかは神のみぞ知る】

/すみません、こちらも反応に遅れました
/こちらからもよろしくお願いします
/時間も遅いですので、朝起きてから空いている時間で良ければ
/続きをどうするか返信を頂けると有り難いです
/私は毎日21:00以降であればいつでもできます
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 19:29:37.97 ID:qWV1OXxW0
>>970

【か、と、音もなく光と花びらをぶちまけた靴は、どうやら例の酸性で溶かされていて、だから、こうも早く脱げたらしい】
【とはいえびしゃりと濡れる液体はすでにただの水となっていて、さもどうでもいい余談――ただ、かなり自由に操れる証明にもなるか】

【きしゃりと音もなく口を裂いた蛇たち、まるで子供がきゃらきゃらと笑いながら友達に跳びかかっていくよう、どこか無邪気にも見える、その様】
【しかして身体は明確にひとを――ものを、もしかしたらこの世にある万物すべてを、害する液体。となればそれは戯れよりもおぞましい、無邪気さ】
【けれど生え出た木に拒まれてただの飛沫になるほかない、――少女は生え出た木に驚いたように、「わ!」なんて、微かな声を上げていたが】

【――想定したよりも、目つぶしが効いているように思えた。それは彼の反応や仕草から、そう、感じた】
【生え出る木に相手の姿が隠される、けれど、それは、きっと相手からも見えないはず――まして、今なら特にそうだと、予感する】

――!

【近づこうとする、力はずうと相手の方が強いけれど、今なら、きっと、自分でも近づける】
【はだしの足では足音は薄い、木々に隠れながら移動しようとした、――その時だった。彼が再びの足技で、木の一つを粉砕して。向こうが見えない、不意打ち】
【ぎゅんと迫る木片、咄嗟に顔をかばった左手が服ごと裂かれる、顔を隠してしまったがために見えなかった特に大きな一つが、彼女の華奢な腹を捉え】
【がふ、と、体内の酸素が押し出される、鈍い声。よたと足がもつれて、吐き気すら催すほど、――げほと咳込んだ、苦しいように開けられた口から、つうと唾液が垂れて】

ぐぅ、うう、――っ、

【ねばついた唾液を無理やりに嚥下して、それでも、倒れはしない。細い足だけれど踏ん張って、歯を噛みしめて、なんとか歩き出す――というよりは、小走りで】
【ぐるりと木を迂回して彼の背後をとろうとするのだろう、けれどそれまでに彼が視野を取り戻していれば――まず、勝てやしない、タイミング】
【はだしとはいえ足音を殺す技術はなかなかのものだ、気配も、薄く――草むらの中で蛇が獲物を狙うように、目だけを爛とさせ】
【それでも直前の衝撃と痛みを引きずっている、わずかにふらつく足を精一杯に制御して、そっと後ろに回り込む――、その手で、きらと、またしても魔力が瞬く刹那】
【するりと伸びるのは銀色の刀身、そう、刀、だった。"薄桜色の水"を纏った、刀――、それを、右手にぐ、と、握りしめて】

――ッ、!

【もしも思惑通りに背後をとれているなら、彼女はそれを、大きく大きく振りかぶる。まずそのまま身体に食らえば、実験に使われたプラナリアみたいになりそうな一撃を予感させる、予備動作】
【頭をそのまま素直に狙った唐竹割り、ためらいは薄かった。それなら、どこか、ひとを殺すことに対する慣れのようなもの、――きんと冷えた瞳が、あどけなさを消して】
【けれどそれは戦いへの未熟さか、それとも、裂かれた腕か、強かに打たれた腹部か。きっと痛むのだろう、振り上げたその仕草、付随する呼吸音は、ひそめるには大きく】
【視界がいまだに濁っていたのだとしても、冷静であれば聞き逃しはできないくらいのもの。そして気付ければ、きっと対処もできるだろう】
【不意打ちであれば確かに脅威ではあるが、気付きさえすれば、華奢な少女の一撃だ。刀身をはじくことも、或いは少女そのものを攻撃することも、不可能ではないはずで】

/お返ししておきます、よろしくおねがいしますー
977 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 21:20:27.67 ID:dOGrszmA0
>>976
【木の壁が水蛇を防ぎ、蹴り飛ばした木片が少女の腕と腹に命中するが、壁の裏で顔を覆う怪人物にはその様子を見ることなどできようもなかった】
【その後、少女が足音を殺し背後へ回り込もうと動き出すのも、目で捉えることはできない】

【そう、『目』で捉えることはできなかった】

【怪人物は熊並みの力を持ち、猫並みの夜間視力を持ち――イルカ並みの聴力をも保持していた】
【目潰しを喰らった直後の水蛇攻撃を察知したのも、これによるもの】

【怪人物は苦し紛れに木片を放った後、少女の動きを探ろうと耳に神経を集中していた】
【それでも、もし床が板張りだったなら少女の足音はもっと小さく、怪人物はその位置を正確には把握できなかっただろう】
【もし少女が健康だったなら、一挙手一投足ごとに立てる音は遥かに抑えられ、怪人物は動きを察知できず防御に徹しただろう】
【しかし足元は公園の砂利混じりの土、少女は手負い……あまりにも不運】
【怪人物は敵の位置と、接近しての攻撃という意図をほぼ完全に掴んでしまった】

(強イガ……『青イ』)

【はすに構えるようにして木の壁に密着し、少女から発見されるのを少しでも遅らせる】
【そして、その少しの間に『影』が蠕動する――】

【回り込んだ少女は、無防備な背後を晒す怪人物の姿を目にしただろう】
【躊躇なく振り下ろされた刃は、何の障害もなくその頭頂部にめり込んで】
【――怪人物の体が、股間まで一気に割ける】
【あっという間に怪人物の皮膚が黒く染まり、小片となって剥落していく】
【最後に残ったのは、ささくれだった繊維が人の背丈ほどまで伸びる、先ほど蹴り砕いた木の残骸】
【要するに切り株であるそれは、かろうじて残っていた底部までも見事に『唐竹割』られて左右にたわみ、溶けるように『影』に戻っていった】
【――『囮』であった】

【その頃、木の壁の裏側から数メートルの地点の地面に、くびれた楕円形のような窪みが二つ生じていた】
【足型である】
【カメレオンのように皮膚を変色させ闇に溶け込んだ怪人物が、囮を用意したのち足音を殺して移動、逆に少女の背後に回り込もうとしていたのである】
【その位置は――もし少女が怪人物の予想を上回る速さで移動していなければの話だが――怪人物と木の壁が、少女を挟み撃ちにする位置】

(ソノ未熟サガ……命取リダ)

【囮が砕け散ると同時に、怪人物は鎖が巻き付いた右手を思い切り引く】
【先程まで死んだ大蛇のように転がっていた鎖が地面を激しく摩擦し、砂埃を上げて怪人物のほうへと引き寄せられて――】

ソコダ!小娘ェ――ッ!

【徐々に回復した目で狙いをつけて、一文字に振り抜かれる怪人物の右手】
【繰り出された鉄鎖は横に波打ちながら、唸りを上げて木の壁のほうへ飛んでいく】
【素早く繰り出すことに重点を置いたため威力は低く、まともに当たっても木の壁に叩きつけられる程度だろう】
【まだチカチカする目と、自ら立てた砂埃のせいで照準も甘い。外れるということも充分ありうる】

【怪人物の目的は、少女を木の壁に叩きつけるか多少なりとも怯ませて、少女を木の壁の近くに拘束することだった】
【そして少女の後退を封じ――インファイトまで接近し、格闘でカタをつけるつもりだった】

(ソロソロ決着ダ……オ前ノ全テヲ、イタダク!)

/よろしくお願いします
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 22:01:53.83 ID:dOGrszmA0
/一時間ほど離席しますので、返しが遅くなるかもしれません。申し訳ありません
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 22:18:22.35 ID:qWV1OXxW0
>>977

【お腹に気持ち悪さがこびりついている、もう少し油断すればえずいてしまいそう、ひくつく喉を必死に固めて、声の少しも漏れないように】
【それでも隠しきれなかったことがやはり未熟、足元の石がじゃらつく音に気付けなかったのも、また。――身体の中でどくどくと鼓動がうるさい】
【今更ひとを――ひとでもなさそうなものを殺すことに、ためらいは、薄い。だから、これは、ほとんどが腹部を思い切り圧迫されたことによる、動悸のような】

【――だん!と鋭い音、振りかぶった刃があっさりとその頭を捕らえる、そして、ずざりと直線上にある身体を、すべて切り裂いていく】
【強い酸性が付属する刀は生身であればそれこそ大きな威力を持つ、まして、こうも切り裂けば、だいたいの生き物は死ぬ――はずだった。だから、そう、思った】
【ふらりと微かに揺れる身体を動かして、ふわと小さな吐息を一つ、緩くつなげて。地面に突き刺さるようにして止まった切っ先を抜き取る、――気付き】

…………え、

【木。木。その事実が一瞬遅れて脳に届く、彼はもしかして木の精霊だったのかってきっとそんなことはない、だとしたら、――だまされた、と、】
【その思考にたどり着くまでに少女が要したのは、三秒、四秒、五秒くらいだろうか。ぎくりと固まってしまった身体を無理やりに動かす、咄嗟に振り向いた顔は】
【きっとひどい過ちに気付いた瞬間のものに似ていた、青ざめて、冷や汗を浮かべて、見失った相手の姿を探す。その手には刀が握られたままだが、それはいっそ縋るよう】
【多分、あせっている。それも、ものすごく。その身体のいたるところからじりじりと魔力が滲んでいた、少女の輪郭が淡く浮き立つくらいに。――見付けられない、】

【或いは冷静さを保てていれば、気付けたのかもしれない。けれど彼女は冷静ではなかった、あせってしまった】
【鎖が小石と擦れる不愉快な音、びくりと身体が跳ね上がって、音の方に振り返る、ぎゅっと刀を構えて――、結果として、そこでようやく彼の方を向く】
【けれど殴られるような点の攻撃ならばいざしらず、向けられたものは、線の攻撃、ぐねりと歪む軌道は、咄嗟に対処しろと言われて応じられるほど、易しくなくて】

あ、う、っ!?

【振るわれた鎖が少女の身体をあまりにも無慈悲に捉えた。ひどい衝撃に襲われて、ぎゅと握っていた刀は弾き飛ばされてしまう、――彼よりも後ろの後ろに、突き立って】
【華奢な身体は彼の目論見通り木へと叩きつけられて――胸部を鎖に打たれた衝撃と、背中を木にたたきつけた衝撃とで、息が詰まる。追い出された空気が、うまく吸い込めない】
【たたきつけられた木の根元に座り込んでしまうのだろう、というよりは――放っておけば、そのまま、地面に倒れるほどだ。その頃には、きっと、咳込むようにして】
【息を吸うばっかりが精いっぱいの様子ではなかろうか。勝った。――まずそう思えるような状況であるといえるだろう、もう戦えないように見えた、……けれど、】

【――彼女は刀を虚空から魔力で以って呼び出した。その刀は、いまだ彼の後方で、きらきらとした水を溢れさせながら、確かに存在している】
【ただもとのように虚空に仕舞い込むだけの余力がないのか、それとも、あきらめていないのか。――それは、まだ、分からないけれど】
980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 22:18:59.90 ID:qWV1OXxW0
>>978
/すいません、気付くのが少し遅れてしまいました……了解しました
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 23:33:08.02 ID:dOGrszmA0
>>979
【怪人物も驚く程クリーン・ヒットした鎖が、少女の刀を弾き飛ばし、体を木の壁に叩きつける】
【息も絶え絶えの少女を前にして、怪人物は闇に溶けたまま笑みを浮かべた】

【空中に舞った刀】
【暗闇の中でも、怪人物の目なら捉えられたはずだった】
【あるいは風を切る音が、怪人物の耳なら聞こえたはずだった】
【しかし――そのとき、風が吹いて】
【砂煙が巻き上がり、怪人物と刀の間を隔てる】
【建物の間を駆け抜ける響きが、怪人物の耳を塞ぐ】
【刀は――少女以外の誰にも気づかれぬまま、背後の地面に突き刺さった】

【怪人物が腕から鎖を解き地面に放り出すと、鎖は音もなく消えて――】

――デハ

【同時に怪人物は地を蹴り、半ば跳躍するかのようにして少女のほうへ急接近する】

コレデ……

【右手が、体の奥に引き込まれる――その構えは、戦いの最序盤で放たれたボディー・ブローのもの】

『でっどえんど』ダ!
シィイ――ッ!

【充分に接近できたなら、凶暴な拳が唸りを上げて繰り出されるだろう】
【すでに目は完全に慣れていて、狙いはこれ以上無いほど正確。少女の右胸を貫通する軌道】
【少女の命は、刈り取られてしまうのだろうか――?】


【上空でも、風が吹いたのだろうか】
【暗雲が空の隅へと掃き出されていき、赤い月が再び光を投げかけ始めて――】
【暗闇に溶け込んでいた怪人物の輪郭が、あらわになった】
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 23:59:01.87 ID:qWV1OXxW0
>>981

【ざぁと吹いた風に、少女の黒い髪が揺れる。綺麗に編まれていた髪はすっかりと乱れて、砂塵にまみれて、絡まりあっている】
【苦しいのか咳込んでは地面の雑草を握りつぶす手の仕草、乾いた地面には彼女の唾液の後が点点と落ちて】
【あえぐように身じろぎすれば唾液や涙で濡れた顔にびっしりと砂粒が付着する、かわいらしい服も、今となっては、砂にまみれ擦られ、すっかり襤褸のよう】
【靴はとうに投げ捨ててしまったし、その様は明らかに敗者のもの、これから殺される者の姿。涙に濡れたまつ毛に泥が絡まっていた、赤黒の瞳も、表面に砂粒を孕み】

――――、

【見えなかった。何も。涙と砂粒が邪魔して、呼吸が苦しくて、微塵を吸い込んでしまったのか咳が止まらなくて。えずくたびに胃ごと吐き出してしまいそうな錯覚】
【それでも遠くによく知った匂いを感じる、それなら、そこに、刀があることが分かる。手を伸ばしても届かない、震える指先がずりずりと伸ばされて、ただ、何にも触れない】
【どれだけ距離があるのかはわからない。目が見えさえすれば、常人は、あきらめる。届くはずもない刀があって何になるわけもない、意味がない、きっとそう言う、だろう】

ぇ゛、ほ……、えぅ、っ――、

【たくさん飲み込んだ砂粒のせいかじゃりじゃりになった声が小さく漏れる、ひゅうと喉を鳴らして呼吸音が一つ、その間に、彼の足音はいくつも重なる】

…………、おいで、へびさま。

【目に混入した砂粒が物理的に視界を遮る、涙と目やにで濁った目は、砂粒の隙間からぼやけた世界を見せるだけ。だから、何も見えない、わからないけど】
【紡いだ声は小さいけれど、確かだった。愛しいひとを呼ぶみたいに、最愛のひとを呼ぶみたいに、柔らかくて優しい、凛とした声。――ひたん、と、】
【聞こえただろうか、水が水面に落ちる時のような、清涼な音。同時に、この枯れ果てたような公園に、波紋が広がるかのように、清く水の魔力が満ちる――】
【――それが一転して、濁流のように変わる。その瞬間に気付ければ、あるいは、回避する手立てもあるだろう。何かが、彼の後ろから、空気を裂いて飛び迫る】

【刀、だった。地面に突き立ったままであった、刀。それが――まるで奇跡のようにふわと浮かびあがり、その刀身を核のようにして、大きな蛇の姿を模る】
【けれどそれは少女が使役した水蛇でも魔力蛇でもない、桜色を持たない――どこまでも白い青色をした、蛇の姿。音もなく、気配も薄く、ただ神聖を振りまいて】
【しゃんと空気を引き裂く音だけを引き連れて――ぐわと口を開け――とびかかる。一対あるはずの毒牙が一本しかない――だなんて、きっと、余談でしかないのだろうが】

【――きっと死角であろう背後から不意を打つ形での咬み付き攻撃。毒牙は一本が欠けるとは言え、件の刀そのものが牙であるのだから、白蛇の大きさは知れるよう】
【どこを狙う、とかではない。ただ漠然と彼を狙う。彼が少女を殺すよりも早くに、牙を届かせようとする。――叶わなければ、きっと、少女はその手にえぐられるのだろう】
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/14(火) 23:59:43.81 ID:qWV1OXxW0
>>981>>982
/そして申し訳ないです、本日も遅くて12時半ごろに凍結お願いすることになるかと思います……
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/15(水) 00:33:25.12 ID:Sq3mjuJw0
>>982
(勝ッタ!胸ヲブチ抜ク……ウッ!?)

【怪人物は、今まさに少女の体を貫通しようとしたとき、『音』を聞いて】
【人間でもなければ魔法使いでもないものの、それでも本能的に魔力の流れを感じると】
【怒涛のように変化したそれの迫力に、思わず手を止めて、振り返る――】

【飛びかかってくる巨大な白蛇】
【襲い来る刀の一本牙を光らせたのは、魔力か、月光か】

何ィ――ッ!?

【度肝を抜かれる怪人物に蛇の牙が容赦なく襲いかかった】
【それでも反射的にかざした右手が蛇の上顎を捉え牙を封じるが、白蛇の下顎は怪人物の体に激突して】
【怪人物は木の壁の上を越えて吹っ飛んでいった……】


【直後、公園の入口――轟音とともにコンクリートのタイルが裂けて粉塵が巻き上がる】
【収まったのを見れば、地面の亀裂から怪人物の右足が『生えていた』】
【それは囮でも何でもなく、地面にめり込んだ怪人物の体の一部である】

……ググ、グ……

【タイルの裂け目から呻き声が上がる】
【どうやら怪人物、ダメージを負いつつも生きてはいるようである……】
985 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/15(水) 00:35:31.56 ID:Sq3mjuJw0
>>983
/了解しました、では今日はここで凍結ということで。お疲れ様でした
986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/15(水) 00:50:10.53 ID:Z8HCh/jZ0
>>984

【顎を抑え込まれた蛇は、びた、びた、と、頭をつぶされた蚯蚓のようにのたくって暴れるだろう、こうも大きな蛇だから、それだけでも威力は大きい――と、思うのだけど】
【実際のところ、その蛇は実に軽く、まるで半紙を水糊で重ねてこさえた張りぼてかと疑うほどだ。それでいて水の魔力や神聖が本物であるから、いたっておかしく思え】
【やがてそれが刀の重みだけであると気付くだろうか、あくまで本体は刀――、刀を核に発現した、何者かの意思でしかない。なんなら、張りぼてと呼んで、差し支えないもの】

【それでもいくらそれが張りぼてであろうとも、それだけ大きなものがのたくり暴れる様というのは、邪魔だろうし、痛くない、とも言いきれないだろう】
【なぜだかいやに丈夫であるのも厄介だった。壊そうとしても壊れないのだ、その透き通る鱗は強固に艶めいて】
【まして意識があるように彼に絡みつこうとするのだ。蛇が獲物にそうするように、絞め殺すほどの威力は持ちえないけれど――その真似のように】

は、ぁ――、ぁ゛、あ……、

【がたがたと震える手を無理やりに地面に押しつけて、身体を起こす。ぼたぼたと流れる涙で、視界は少しずつだけれど、回復しつつある】
【呼吸もやっと落ち着きだしたのだろう。それでも、まだ、能力を使役するだけの精神的な余裕は生まれてこない。――まして、身体はぼろぼろとなっては】
【今の間に逃げるか、助けを呼ぶか、しないと不味いことには変わりないのだけど――きっと足は動かないし、喉は潰れている。ただ掠れた声でうめいて、それが精いっぱい】

【その白蛇を突破されてしまうのなら、結局状況は変わらなかった。放っておいても死なないが、放っておかれなければ、動くこともままならない】
【それでも目に異物の入った反射以外では泣かないし、一度も、助けてだなんて命乞いもしない。――それがあどけない容姿にはどこか、不釣り合いで】
【白蛇が時間を稼ぐ間、少しでも回復しようとじっとしている。――白蛇は、きっと、まだ、彼の妨害をせんとそこに居る。チャンスがあれば、咬み付こうともするだろう】

/お返ししておきます、明日も今日と同じ時間で再会できますので、よろしくおねがいしますっ。おつかれさまでしたー
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/15(水) 21:19:23.24 ID:Sq3mjuJw0
>>986

……ゴ、ギ……

【異物が混入した機械のような呻きを上げつつも、怪人物は右手を亀裂の外にかけて体を起こす】
【激突のショックで引き伸ばされた右足を、着地の衝撃で叩きつけられた左足を、足踏みして】
【土まみれになった左手をゆっくりと握り締め、解き、また握り締めて】
【体が軋む音を気のせいと断じて、立ちあがる】


【どろどろと溶けて影に戻る木の壁の向こうに、少女の姿が見えた】
【その距離――およそ十メートル】

(遠イ……)
(木ヲ作ッテイタ影ハマダ作リ替エラレナイシ、『心鉄鎖』デモ届カナイ)
(他ノカードハ……)

【右手で残る五枚のカードを取り出し、指先で情報を読み取る――】

(『ジャンケンで勝った相手から能力を奪う』)
(『相手をメガネ好きに変える』)
(『触れているものを保温する』)
(『かっこいいポーズをしている間空中に留まる』)
(『霊を捕える』)

【見事なまでに役に立たない能力ばかり】
【思わずカードを地面に叩きつけそうになるが、なんとかこらえた】

(クッ……ソウダッタ。最近集メタ能力ハコウイウモノバカリダッタンダ……!)
(一枚クライマトモナかーどヲ持ッテオクンダッタ!)


【そうしている間に白蛇が接近し襲いかかる――満身創痍の少女を守るため】
【カードを持ったままの怪人物に向けて、のたくった体が鞭のように襲いかかる】

チッ!クタバリ損ナイガ!

【ぶつかってくる体に向けて左手を振るい、裏拳を浴びせる】
【すっ飛んでくる蛇の体を防ぐため繰り出したもので、ややパワーには劣る】
【まともに当たっても蛇の体は傷つけられないけれど、拳が当たったなら、怪人物は必ず勘付く】

(――ムッ?手応エガオカシカッタ……マルデコノ蛇ガ、『トンデモナク軽イ』ヨウナ……)


【続いて、絡み付こうとして『線』で迫ってくる蛇の体をしゃがんで回避する】
【素早くカードをしまい、『何か』を掴む】
【怪人物がしゃがんだ瞬間――その機動力が殺されるタイミングを、白蛇は逃すだろうか。きっと咬み付いてくる】
【しかし怪人物もそれを予想し、逆に勢いよく空中に飛び出す……足のバネを最大限に活用して】

【白蛇の巨大な顔と、その眼前に飛び出した怪人物が空中で相対する】
【刀の牙がぎらりと光る】
【それが核だとわかっていればきっと攻撃したのだけれど、そう判断するにはあまりにも材料不足で】
【怪人物が取った行動は――】

【噛み付かれる前に、地割れの底から拾い上げておいたタイルの欠片を、白蛇の鼻っ面めがけて振り下ろした】
【体重の乗らない一撃であり、直撃したとしても白蛇を倒すにはやはり威力不足だろう。しかし怪人物の狙いは別にある】
【ぶつかって砂になった欠片が白蛇の目に入り、その視覚を奪うことである。序盤に連続で目潰しを受けたことが生んだ発想だった】
【白蛇の狙いが定まらなくなれば、空中であっても咬み付きを回避できる――避けるべき牙は一本しかないのだから】

【ただし目潰しがうまくいかなければ、白蛇の牙は怪人物の左腕を深く突き刺し、貫くだろう】
【先ほどの不意打ちのダメージに加えてここで大怪我を負えば、圧倒的だったはずの戦力差はぐんと縮まる……】
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/15(水) 22:12:43.52 ID:Z8HCh/jZ0
>>987

【泥だらけの顔を手で拭う、打ち付けられた時に口の中でも切ったか、うっすらと血の味が交じりこむけれど】
【それよりも砂の味と雑草の味が強くてよく分からない、げほと咳込んでみても、喉の奥にまで入り込んだ砂はとれるはずもなく、不快感ばかりがあり】
【弱った目が遠く相手と白蛇の姿を見やる、――けれど、同時に、微かな落胆。少女都合のことでしかないから、本当に、彼には関係ないのだけど】
【同じ匂いがするのは当然だった。そう鈍い回路で思考する、勘違いしたのだろう、と、薄らぼんやりと考える。それよりも身体中が痛くて、頭も打ったか、少しふらつく】

――、

【左手を地面について、右腕だけをそちらにゆるりと伸ばす、ちらりと魔力が瞬いて――けれど、はらりはらりと剥落するように、散り落ちていく】
【けほと小さく咳込んで、やはり、少女はまだ動けない。だけど、少しだけ、少しだけでいいから、と、言い聞かせるように。伸ばし向ける指先は、曖昧に二人を捉え】
【だからといって何ができるでもない。ただ一人味方であると言い切れる白蛇にすがるように、そのまま、じっとして――】

【――蛇は軽い。軽いが、いやに実体を感じられるだろう、それは纏う神聖のせいであるのか、それとも、性質であるのか。それは分かりはしないけれど】
【かつて氾濫と疫病を司った蛇神の牙を刀と具現化させたもの。それが彼女の扱う得物の正体であり、そしていま、蛇を模り彼女を護る力の塊であり】
【だけれどこれは模倣でしかない、牙に残留する神々しい力の残滓が、オリジナルである個体の真似をした、それが、この白蛇であったというだけの】
【だから――彼女を護るために動きはすれど、そこに知能などという高等なものは、ほとんどないと言っていい。だから――彼のしゃがみ込む仕草にも、反応はない】
【ただ今までと変わらず尾で地面を薙ぎ、場合によっては頭突きや咬み付きを狙う、制御の効かない機械のようなものとみるのが、きっといい】

【だからこそ蛇は彼の急な動きにも反応できない、というよりも、きっと。する必要性が、その脳内には存在しない】
【ただただ同じ目線に敵が飛び出してきたから大きく口を開ける、少女のために。――それが忠誠心であるのか、何であるのか、きっと誰にもわからないけど】
【振り下ろされたタイルは確かに蛇の顔面を捉えた。しかし、その動きは、止まらなかった。目に砂は降りかかった、けれど、蛇の目は鱗に覆われているのだから】
【少女の目にどろどろと砂粒が入って視界を奪っていたほどに視界を遮るものには、ならなくて。ぐわと迫る口は、殴られた衝撃でわずかに逸れながらも、彼の身体を捉えるはずだ】

【けれど――、この蛇は。もともとの種類で言えば山楝蛇、なんて呼ばれる種類。毒牙は口の奥にあり、めったに殺人沙汰にもならない、長らく無毒と信じられたほどに】
【捉えはする。けれど、そうもぐさりと牙が身体に刺さる、ということは、あまりないはずだ。とはいえ――口中には変わらず刀が鎮座しているのは確かで】
【また刀から溢れる酸性によく似た毒も絶えず溢れ続けている。咥えこんだ口の中にはその毒がたっぷりと含まれていて】
【咬み付いた場所がどこであるかは定かではない。或いは左腕か、それとも右腕なのか、それとも、それとも、足のどちらか、胴、もしかしたら頭であるのかも】
【言えることは――、少女が操っていた毒素よりも、それはずっと強い。長時間触れるのであれば、これは、命にもかかわる可能性が大きくなってくるよう】

/遅れました……すいません、よろしくお願いします
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/16(木) 00:00:52.73 ID:XRVzg5bu0
>>988
【白蛇の顔面にタイルが激突し、砕け、粉塵がその目へと降りかかる】
【怪人物は少女の唯一の反撃手段を封じたと確信するが――蛇は止まらない】
【ぐわと開けた口は、多少の軌道のずれはあるが変わらず怪人物のほうへと迫る】

(ハッ!?)

【そして、左腕の根元に食いついた】
【怪人物の体が白蛇の口からぶら下がる】

ク……顎ヲ、ブチ砕イテヤ――!?

【刹那、怪人物は左の拳に焼け付くような痛みを感じた】
【蛇の口中の毒が、左腕を焦がし、焼き切り、その内部を伝って怪人物の胴体へと――】

 ――シィッ!

【手刀】
【怪人物の右手が自分の左腕を肩口から切断し、体は落下する】
【着地――よろめいて、それでも倒れずに】

(白蛇ノ顎ガ閉ジキリ、スグニハ咬ミ付キニ移レナイ今ノウチニ、動ク……!)
(腕ナンテドウデモ良イ。マダ一本残ッテイル!)

【自分の腕を切り落としながらも敵に集中する怪人物の思考の速さよ!異様さよ!その姿はまさに殺人マシーン】
【そして――神はこのとき、たった一度、この殺人マシーンに味方をしてしまった!】

「てめえら!うるせえぞ、何やってんだ!」

【振り向く怪人物の後方、公園の入口に小柄な人影が現れた】
【白いTシャツとくたくたのジーンズを着た、若い男性――先ほどの、たった一つ明かりの点った部屋の住人】
【筍攻撃の騒音を聞きつけ公園の様子を見るべく部屋を出た彼が、ついに到着してしまったのだ!】

「人の酒盛りを邪魔しやがって、覚悟はできてん――!?」

【怪人物の風貌に異常を察知した彼が、ポケットから護身用の輪胴式拳銃を取り出す】
【怪人物の頭に一つの考えが浮かび、その顔を笑みに歪ませた】
【男性のほうへ突進して押し倒し、もろともに転がり、入り乱れてのたうち回り――銃声が一つ、響く】

【直後、白いTシャツの人物が、もう一方を振り払って走り出し】
【年下であるはずの少女のほうへ駆けて、喘ぎながらも、助けを求める】
【その手に拳銃はない】

ひぃい――っっ!だ、だ、だ、誰か、助け……


【その後方で、ゴムのような肌と黒いプロテクターの人影が立ち上がる。右手に輪胴式拳銃をぶら下げて】
【弾丸が食い込んだのが原因だろうか、右脇腹には血が滲んでいたが、それを感じないかのように悠然と立ち――】
【拳銃の照準を、逃げていく白いTシャツ姿に合わせる】
【そして少女のほうに目をやって、叫んだ】

「小娘!『最終試験』ダ!正シイ選択肢ヲ選べェ――ッ!」


【同時に、木の壁を構成していた影が蠕動して】
【四足の動物を――巨大な虎を、形作った】


【引き金が引かれるまで数秒】
【少女か白蛇が虎を攻撃すれば、少女は安全だが――拳銃は発射される!】
【それを阻止しようと怪人物を攻撃すれば、発射は阻止されるが――虎が喉笛を掻ききろうと少女に襲い掛かる!】
【民間人を利用した卑劣な作戦だった!】

【猶予は数秒】
【白蛇は、少女は、どう考え、どう動くのか――!?】

/すいませんが、今日はここで凍結させていただきたいです……
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/16(木) 00:03:54.20 ID:Bp1dRU8Y0
>>989
/了解です!返しておきますので、また明日よろしくお願いします
/それと、このレスで990になってしまうのですが、次スレは立てられそうでしょうか?
/難しいようでしたらこちらで立てますので、言っていただけたらと思います。お疲れさまでした!
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/16(木) 21:26:43.45 ID:Bp1dRU8Y0
>>989

【左手を口の中に取り残された白蛇はぐるると頭を揺らして、そのうちにそれを要らないと駄々こねる子供のように、ぷいと吐き出す】
【そうしている間に見失った彼の姿を探す、――見付けた彼の向こうで、しばらくを回復のために簡素ながらも休息できた少女が、立ち上がっている】
【だからと言って十全ではない、というより、これは立派に手負いだ。足はわずかにふらついてようやく砂粒を取り除いた目は真っ赤に腫れあがり】
【身体中泥と砂だらけ、身体はぼろぼろで、だけど、心までは折れていない顔。――向けた視線の向こうで、敵を、それから、だいすきな白色を見つけだし】

――――っ、え、

【何かをしようと動きかけた身体、一瞬安堵したように微かだけほころんだ顔が、けど、すぐに強張る。聞きなれない声、自分を殺そうとした人物の声ではない】
【もちろん知りあいの声でもなく、それなら――向けた顔の向こうには、知りもしない顔。さあ、と、血の気が引くような感覚があった】
【取り出した銃なんかでどうにかなるものじゃないと思う、気付けばその手にはぎゅっと紫色の鳥の羽――のようなものが握りしめられていて】
【寸前の動きでポケットから取り出したものだ。ぎゅっと握った右ではない左、現れてすぐにもみくちゃになった彼の方に淡く伸ばして――ただ、これは、】
【逃げ出す適期でもある、と、確かに思っていた。だからこそ紫色の羽を握りしめて、ぎゅと悩みこむ。――これがあれば、帰れる。自分だけは】

…………だったら、来なければよかったの。……げ、ほ、

【情けなく泣き助けを乞う存在は、少なくとも、今の少女にとっては邪魔であった。ちらと見た目はさっきまで明るかった部屋を見る、今はくらい、その場所】
【濁って掠れて霞んだ自分の声を聞いて眉を顰める、小さく咳払いして、ただ、向ける目は――正義組織に名を連ねる存在としては、いささか冷たく思える】
【自分から出て来て死にかけてるんじゃただの無駄死に、犬だってもっとましに死ぬだろう、猫だってもう少しましに死にそう、言う少女の目は、ほんの刹那しか彼を捉えない】
【興味がない――というよりは、優先度がない。視線はずっと敵の方を見ていた、その視線の端っこで白蛇が身じろぐ。まだ遠い、遠いけど、――届かせられる、確信して】

【敵の声に合わせて彼女の魔力が煌めき翻る、怪人物の視界には入っているだろうか、その瞬間、白蛇がはじけた。ぱんと弾けて、無数の水粒になって、辺りへ降り注ぐ】
【けれどそれは水でしかない。狙いは水ではない。――その飛沫の中に刀は含まれなかったのだから。刀はその場所から魔法のように消えて、刹那の間、瞬きよりも早い間】
【刀は――というよりも刀を核に作りだされた水蛇は、少女のすぐそばに居た。忠実な犬の従者のように寄り添って、――振り下ろした少女の手の動きに合わせて、】

【――ばぐ、と、助けを求めた男を、口に含もうとするのだろう。咬み付くのではない、その口内の毒性は、限りなく抑え込まれている。そう、口の中に保護する】
【それと同時に振るった尾で少女を虎の攻撃範囲から弾き飛ばす、分かり切った動きであるからか、くるりと空中で身体を返した彼女は、数メートルの位置に上手に着地し】
【少なくとも虎の攻撃範囲からは抜け出る。問題は男の方、事前説明は一切なし、けれどこれに従わなければ守れないから死ぬしか道はない、生きるか死ぬかの二択】
【もし口の中で刀に触れれば無傷で無事とも限らない。けれど――生身で放置されるより、きっと、よっぽど、希望のある場所が、唯一、蛇の口の中というのも不幸だが】

【蛇は少女が逃れた場所に取り残される。そして口は封じられ、尾はあるが、口の中に人間を含んだままで、ましてそれを守ったままで、暴れまわるのは難しいはずだ】
【それならば結局はその場限りの回避であるように見えて――ただ、】

【――逃げた先、少し心もとなく立つ少女の身体から絶えず溢れる魔力が、きらりきらりと煌めいていた。毛先などは魔力に揺らされ、不思議に翻り、踊るよう】
【タイミングは敵が銃を打ち出した、一秒か二秒か、とかくその直後。いつかそうしたように少女はため込んだ魔力を、地団駄するように地面にすべて流し込み、】
【その瞬間。水蛇がはじけた痕の水がしみ込んだ地面から、にるりにるりと、薄桜色の水蛇が、何匹も何匹も、這い出て来て――そのすべてが、ぎっと、敵を見据えた】

/申し訳ないです、帰宅遅れました……!
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/16(木) 23:43:15.67 ID:XRVzg5bu0
>>991
【少女の目はいささか冷酷だったかもしれないが】
【怪人物の『最終試験』――どちらを選んでもバッド・エンドの選択肢A、選択肢Bを前にして『選択肢C』を作り出す判断力と行動力は、少女がUTの一員にふさわしい証明といえるだろう】

【少女に助けを求めた人物は――】
【蛇が食らいついてくる光景に驚愕しつつ、情けない声を上げたきり蛇の口中に消える】

【一方、少女に襲いかかった虎】
【少女のとった自分を弾き飛ばすという回避に対応できず、繰り出した鋭い爪は空を切る】
【一瞬硬直したのち、近くに得体の知れない蛇が居るのに気づき飛び退く――実のところ水蛇はお荷物のせいでまともに動けなかったのかもしれないが】
【その後周囲を見回して少女を見つけ出すと、再度飛びかかる体勢を取った】


【その数メートル先――公園の入口】
【闇に溶ける黒い肌と、ごつごつしたプロテクターの人影の右手には、依然として銃が握られている】

「……」

【怪人物にとって予想外の展開となったことは間違いないのに、その顔に変化は微塵もない】
【先ほど絶叫したにも関わらず今になって黙りこくっているのが、動揺の現れなのだろうか?】
【滑るように銃が動き、照準を少女へと移す】
【その動作の無感情さ、確実さは、まるでプログラムに従う機械のよう】
【――既に引き金にかかっていた指が、唐突に引かれる】

【破裂音が一つ】
【拳銃から発射された弾丸は、少女の胴体を狙って一直線に飛んでいく】
【発砲直後に現れた水蛇がそれを防ぐのかもしれないが、小口径の弾丸だから、受けたところで死ぬことはないだろう】

【ただ――それとほぼ同時に、虎が再び跳躍する】
【少女から見て右斜め前方の方角から、少女の首に噛み付こうと襲いかかった】

【そのアクティブさに対して、なぜか入口の人影は追撃を加える様子もなく、拳銃を構えたまま硬直している……】


/全然大丈夫です
/新スレですが、当方初心者で見よう見まねの状態ですので、できればお任せしたいです……申し訳ありません
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 00:04:11.40 ID:HOFeJx1K0
>>992

【ざんらと並び生え出、目もないくせに相手を見やる蛇たちは、ぞっとするほど無機質なのに、ぞっとするほど、どこかいきものらしく見えた】
【すべてが粒ぞろいと思うのはきっと間違いで、よく見れば、同じく相手を見やる仕草の中にも、時折個性のような――或いは人格のようなものが、うかがえるときがある】
【けれどそれは特に関係ない、少女の敵に向かうのであれば、それは、すべて、もしかしたら殺意の寓意なのかもしれないし――】

【ぱん、と、三度の発砲音。それをきっかけに、蛇たちは見えない魔力によって指示を下された――らしい。各々が好き勝手に、彼へ襲い掛かろうとするのだ】
【やはり何かに触れれば壊れてしまう脆さは変わらず、そして、少女の消耗のせいか、毒性も弱い。それでも、大量に、長時間、触れることがあれば、結果は知れず】
【白蛇はやはり動かない、動けない。無数の水蛇たちは彼へ襲い掛かる、その一匹が彼の打ち出した銃弾によって弾け飛び、頭中の鈴が、砕け散る】
【風を切り裂き自らへ向かう銃弾を避けるすべなどなかった、それだけの体力や余裕はない、だから、できるのは、】

――ッッ、!

【悪あがきのような避ける仕草で、それをせいぜい右脇腹をえぐる程度でとどめることだけ。それでも真っ赤に噴き出す血が、かさついた地面に、赤い水玉模様を描きだす】
【よた、と、ふらつく足が何度も転びそうになりながら耐える、――そこに、虎が飛び掛かり。首を食いちぎられる――と思うような瞬間に、けど、彼女は笑っていた】
【痛みに滲む脂汗の中で、薄い、だけど、暴力的なまでの笑み。脳裏はすでに痛みで真っ赤に染まって思考は振り切れている、虎がぎゃんと跳びかかる瞬間、】
【彼女はわざと後ろに倒れ込む、まるで時間を稼ぐような一瞬……否、まさに時間稼ぎだった。引き付けて確実に壊すための、時間稼ぎ。ふらり倒れ込む、少女の】
【右の脇腹――寸前に銃弾が引き裂きえぐりとっていった傷から噴き出す血が、あるタイミングで、赤から桜色へ変わっていた。すなわち、魔力の奔流へと】
【それがばきりばきりと音を立てて、植物の成長を何十倍にも早送りしたかのように枝分かれしながら、伸びる】

【虎が咄嗟に避けでもしなければ、その身体はきっと串刺しにされてしまうだろう。鋭くとがった枝先、刃のように鋭い枝そのものも、相手を殺し壊すための暴力性】
【肉を抉らせて殺す、――本当の最後の手段。結果がどうあれどさりと倒れ込む未来は変わらず、血と魔力を失ったせいか、その顔は、すっかりと青ざめていて】

/了解です、ではこちらでスレ立てしてきます!
/そして時間が12時回ってしまったので、本当に再開したばかりなのですが、凍結お願いいたします……
/明日は遅くまでできますので、明日で終わらせられるかと思います。何度もお付き合いいただき申し訳ないです
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 00:22:06.75 ID:HOFeJx1K0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1466090455/
次スレ立ちましたっ
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 01:16:28.77 ID:avaGQ7OC0
>>993

【少女に飛びかかった虎は、最初の一撃牙をかわされたばかりか、形を得た魔力の流れに襲われる】
【良くも悪くも本物の虎と同等の力しかないその虎は、その思わぬ反撃を空中で躱せるはずもなく】
【胸部を魔力が貫き、軋るような声の断末魔――その体は痙攣したなり動かなくなって、早くも溶解し始めた】

【そして無数の水蛇は素早く地を這い、入口の人影へと殺到する】
【彼は動かない。右腕一本で拳銃を構えたまま、虚空を睨み続ける】
【やがて水蛇たちは彼に絡みつき、弱まってはいるが健在である毒を存分に振るうだろう】
【しかし彼は動かない。足が脱力し、地に崩れ落ちつつも、挑むべき何かに銃を向け続ける】

【やがて皮膚が溶けたかと思うと、それは黒く変色する】

【そして、毒の作用ではなくそれ自身が持つ性質によって、流動体に変わりあちこちに流れ去った】

【残されたのは】

【地面に横たわる、白いTシャツとジーンズを着た小柄な男の体】


正解ハ『解無シ』ダ、小娘……。

【倒れこむだろう少女のすぐ近くに、もう一つ人影が現れる】
【不可解。男は白蛇の口中に居て、怪人物も先ほど死んだはずである。第三者が現れるのも有り得ないのに】
【その人影は――白い肌、黒いプロテクター姿の怪人物】
【自ら切り落した右腕の根元から、得体の知れない液体がぼたぼたと垂れていた】

アノ男ハ……揉ミ合ッタトキ銃ガ暴発シテ、死ンダノダ。
私ハソノ死体ニ『影』ヲ被セ、私ノヨウニ見セカケテ操リ……
私自身ハアノ男ニ変身シ、オ前ニ接近シタ。

【一歩、少女のほうへ進む】

蛇ニ食ワレタ時ハ流石ニ焦ッタガ……
私ノ体ヲ一時的ニ影ニ戻セバ……蛇ノ口カラ脱出スルコトハ容易イ。
ソシテ今、ココニ居ル。

【暗に『自分も影から出来ている』と告白し、また一歩、進む】

例題ハ見テイタ筈ダ。木ノ壁ノ時ニ。
ソレデモオ前ハ、生命ノ情報ヲ司ル能力……『しゃどうず』ノ恐ロシサヲ、理解シテイナカッタ。
……『落第』ダ……!

【怪人物が、右手を足元に差し伸べる】
【すると、影が手まで伸びてきて、うねり、ぶるっと身震いして――白い剣に変わる】
【『骨で出来た剣』である】

【それを振りかざし、三度進む】


【少女が動かないのなら、傍から見れば絶望的な状況となるが、当人たちの胸中はそうではないかもしれない】
【怪人物がマジックのタネをぺらぺらと喋り始めたのは、少女に『敵わない』と思わせ、逃走させまいとしたから】
【余裕綽々を装ってはいるが、怪人物の体はダメージに蝕まれ、影の操作のため精神力をも使い果たし、素早く動くことなどとうにできなくなっていたのである】
【そして――白蛇が、フリーになった】

/凍結及び明日で完結、了解しました。スレ立てありがとうございます。
/お疲れ様でした
996 : ◆8R7odKA9zA [sage]:2016/06/17(金) 13:30:42.50 ID:zag5xGqYo
>>975
非常に申し訳ないです
リアルのほうが立て込んでてレスもできない状態でした。夕方以降に返信を書きます
だいぶ日にちが経ってしまったのでロールを続けるかどうか判断はお任せしたいと思います
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 20:54:43.14 ID:HOFeJx1K0
>>995

【血液と魔力が傷口から噴き出して、急速に少女の体力は奪われていく。直接的な痛みより、例えば骨を折るような痛みでさえ】
【彼女の身体では些事でしかない、と言い切るには言いきれないほどに大けがだけれど、それでも――魔力を失うことのほうが、その身体にはよほど恐ろしい】

…………、

【どす、と、地面に倒れこむ少女の腹からは魔力で形作られた木が茂る、とはいえ、葉のないそれでは枯れ木のようだったが――それよりも、よほど殺意にまみれ】
【けれど虎が蕩け落ちて来る頃には、その枝も腐ったように淀み、ぼたりぼたりと滴り落ちる。ただ唯一少女の腹部の傷口だけがばきばきと桜色で固まって】
【止血のつもりなのだろう。止血であり、同時に、魔力がこれ以上流れ出ないための処置。心なしかぼうと疲れ果てたような目の少女は、地面をごろりと転がり】

じゃあ……――、そんな、ずるの問題、もうしないの……、答えるひといないのに、問題なんて、意味ないでしょ――?
だあれもやってくれない問題だなんて意味ないの、そんなの、誰も知らない神様とおんなじ……、意味なんて、なんにも、ないの。

【今度こそ身体を動かすことさえできないほどに衰弱している様が見て取れた、もう問題なんてしない、そう宣言する仕草は、けれど、今にも意識を手放しそうなもの】
【視線がちらりと亡骸になった男へと向く、出てこなければよかったのに。――思っても、手を合わせてやるだけの気力も、もう、尽きている】
【明確に目減りした魔力のせいでひどい貧血や飢餓や眠気に似た症状が絶えず覆いかぶさってくる、――、力を振り絞り、ゆら、と、右手を持ち上げるなら】
【そこにはさっき取り出した紫色の羽根、――わざと相手に見せるみたいにゆらりと揺らす。……けれど、その実、手を上げた姿勢を保持できなかっただけ、だ】

【ぎゅと握りしめた紫の羽根、少女の手で握ってもなお大部分が見えるほどの大きな羽根、その形が歪んで、一度、ぎゅうと見えない手が握りつぶしたように】
【なって、だけど、すぐに、幾何学的な魔術式に変わり、また大きく広がる。紫色――少女を最後まで見えないところで守護し続けた、魔力の色】

…………さよなら。

【ぽつと低く掠れた声が呟いて、それが切っ掛けになったように、術式が起動する。きらりと瞬く光が一瞬辺りを照らし出し――】
【きっと少女の姿は、その次の瞬間にはすでに消えている。起動から発動までの刹那の間が最後のチャンスだが、それは本当に、間違いのような一瞬だけ】
【場には紫色の魔力残滓と白蛇だけが取り残されることになる。――蛇も、また、主たる少女が居なくなれば、はらり、はらり、鱗が剥落していく】
【やがては肉までも花びらのように剥落して、核である刀も残っていない。何も残さない――そんな、逃亡】

【出来事の答えを聞いたからこそ、少女は逃げるという手を選んだようだった。もう頑張れない、今の自分では、これ以上動けないから】
【手負いの敵よりも手負いの自分を選んだ、或いはとても冷静な思考回路、――行き先は、きっと、辿れなくて】
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 22:13:48.40 ID:avaGQ7OC0
>>997
【怪人物は、少女がどうと倒れ込み、逃走する様子がないのを見て心の底から安堵した】

フ、フ、フ……ソレモ不正解ダ、何ガ道理デアロウト……
オ前ガソコニ這イツクバリ、私ガココニ立ッテイル以上ハナ……!

【よろめきつつも、右手一本で骨の剣を振り上げる】

デハ、サラバダ……アノ世デユックリ、考エ直――

【紫色の羽根】
【少女の手の中に現れたそれを見たとき、無感情であったはずの怪人物の動きが、一瞬――ほんの一瞬だけ、止まった】

(アノ色ハ……)
(ソウダ、『読ミ取リ』ヲ阻ンダノハコノ色ダ)
(シカシ、コイツノ魔力ハ桃色デハ……?)

【しかし――その一瞬が】

ハッ!?

【魔術式の展開と】

(コノ魔術式ハ――何カワカランガ、オソラク――マズイ!)

【少女の逃亡の時間を】

喰ラエッ!

【生み出してしまった】


【鈍い音】
【振り下ろされた白い剣の先端は――】
【砂利混じりの土に埋まっただけだった】

――ク、ッ……

【『逃がした』】
【怪人物の胸に虚無感が襲うと同時に体が重くなり、たまらず膝をつく】
【左肩から『力』が抜けていったために、立ち上がることもままならなかった】
【数秒、あるいは数時間、そのまま居た】

……

【しかし、やがて怪人物は立ち上がる】
【白い剣を――少女にとどめを差し損ねたもの――を杖にして】

(次ダ……次、会ッタ時ダ。
オ前ノ情報ヲ全テ、頂クノハ……
――紫色ノ魔力ノコトモ例外ナク、ナ……!)

【よろめきつつも、足元に『影』を引きずりながら公園を出て】
【暗闇に包まれる路地に――彼の進むべき道に、消えていく】


【やがて、時計の短針は下方を指し始める】
【東の空が白み、たなびく雲の隙間から、摩天楼の谷間の公園に光線が差す――早朝の、その数分だけ】
【照らし出される、半壊した公園が物語る『戦い』と、転がる一つの『死』】
【しかしそのうちに陽の光は逸れていき、それらは朝の霧に霞んでいく】
【――谷間でそれぞれの『答え』を求めた彼らの中に残る、記憶を除いて……】

/こちらはこれで締めとなります。長引きましたが、お付き合いいただきありがとうございました
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2016/06/17(金) 22:39:05.35 ID:HOFeJx1K0
>>998

【遠い遠い夜の中、同じ色の中でも違った空気に吐き出された少女は、その直後に地面に投げ出されて】
【敷かれたぴんころ石で何度目か分からないけれど身体を打ち付けて、低く小さくうめく】
【なんとか視線を見渡してみれば見覚えのある場所にたどり着いていて、それなら、ぎりぎり生きているらしい、と遅れて実感が届く】
【地面をひっかくように力を込めても起き上がれない、それでもこの場所でさえあれば、すぐに気付くだろう。――本当の、"へびさま"が】

【――――実際、その数分後、家から出てきた人影によって、彼女は保護されることになる。自分の家の庭に転がり落ちたのだから、それは想定済みのこと】
【逃げ出した先は自分の家の庭、だった。確実に安全な場所――、それでも彼女を助け起こした真っ白い髪の青年は、明らかに狼狽えて、今にも倒れそうなほど】
【蒼褪めた顔は或いはけが人である彼女よりもひどい、けれど、とかく彼女はかろうじて家に逃げ込んで、手当てを受けることになるのだろう】

【――それから、日が明けた時間帯。けれど彼女の住む場所に朝日は差し込まない、なぜなら、その場所が夜の国であるから】
【日なんて永遠に昇らない場所。それから、時計がきっかりと四分の一を差した頃に、ふらりと家に現れる人物は、】

【「や、元気?」だなんて、知らないはずなのに分かりきった声でノックもなしに部屋に入ってくる、――鮮やかな紫色の髪を、翻して】

/おつかれさまでした、長くなってしまいましたが、ありがとうございました!
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2016/06/18(土) 17:45:55.18 ID:f/OKSdSp0
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1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

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ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
ロックオン「テイトク...いい響きじゃないか」【00×艦これ】 @ 2016/06/18(土) 17:11:09.67 ID:+nkW5GrW0
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日本の自殺率wwwwwwwwwwwwwwwwww @ 2016/06/18(土) 17:06:50.92 ID:iKI0+ndQ0
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【安価・コンマ】貴女で魔法科高校【オリキャラ】 その4 @ 2016/06/18(土) 16:07:10.18 ID:TauQ9ico0
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最近お酒のみ始めたんだが色々 @ 2016/06/18(土) 15:13:11.91 ID:o3XhuqYDO
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[安価]勇者「この"巻き戻り"の力を以て、果てなき絶望を終わらせる」 @ 2016/06/18(土) 15:08:05.61 ID:IZbOnMdQO
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これ何て書いてあるん? @ 2016/06/18(土) 15:03:51.65 ID:ug5W5zdxO
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月1くらいであちこち出掛けます @ 2016/06/18(土) 14:31:59.09 ID:tJTmgcCDO
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【艦これ】 鬼怒嫁日記 @ 2016/06/18(土) 14:15:18.23 ID:hzSLrA3no
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