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★
暦「うそつきー!」 戦場ヶ原「あらあら仕方が無いわね」
1 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga sage]:2010/09/03(金) 19:20:15.91 ID:ZrJVikAo
ごめんなさい、八九寺さんは出て来ません。
では始めます。
プロローグ
土曜日朝、目覚めると何やら騒がしかった。
ベッドから抜け出し、階段を下りる。
「おはよう」
「あ、兄ちゃん良いところに来た!」
火憐が僕に話しかける。
「ん?どうしたんだ、朝っぱらから」
「聞いてよ、月火ちゃん今日デートなんだって!」
捲し立てる様に話す火憐。
「いいじゃないか」
「よくないよ!今日は私と映画に行くって言ってたのに!」
「あー、ダブルブッキングか」
「火憐ちゃんごめん、本当に蝋燭沢くんと先に約束してたんだよ」
「そんなの信じらーれーなーいー」
「とりあえず落ちつこうぜ、二人とも」
「この状況が落ちついていられる訳ないじゃん!」
火憐の怒りは収まらない。
2 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga sage]:2010/09/03(金) 19:22:21.50 ID:ZrJVikAo
一方、月火ちゃんは
「もう行かないと約束の時間に遅れちゃう」
と、時計を見ながらソワソワしている。
「駄目、今日は私と映画でしょ!」
「なら、お前も彼氏と映画に行けばいいじゃないか」
この時、僕は自分の犯した罪に気付かなかった。
僕の言葉を聞いた火憐が、真っ赤な顔で突進し胴に頭突きを入れる。
「ぐはぁ!」
某フラグメーカーの気分が少し分かった気がする。
「兄ちゃんの馬鹿!」
火憐はそう吐き捨てると、階段を猛ダッシュで上がって行った。
どうせなら「ごるぁ!」言って欲しかったなど、この状況では言えない。
それよりも、僕は何か間違った事を言ったのか?
「どうしたんだ火憐ちゃんは?」
玄関に向かう月火に聞く。
「あのね、お兄ちゃん。火憐ちゃん、彼氏と別れたんだ」
「え?マジで?」
今年一番のビックリニュースだった。
蟹とか猿とか蛇とか猫より。
それぐらい、妹達のニュースには疎かったので……
3 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:25:29.15 ID:ZrJVikAo
「うん……だから今日、私が―――」
「ああ、言わなくていい。とりあえず遅れると彼氏に悪いから早く行きなさい」
「あ、うん。火憐ちゃんの事お願いね。あと、母さん達今日遅くなるって」
「ああ、分かった」
「いってきまーす」
月火は元気いっぱいに表へ飛び出した。
直ぐに、車の急ブレーキ音と鈍い音がした。
月火?まさか、車に轢かれる様なドジはしないだろう。
万が一怪我したとしても直ぐに治っちまうから心配は要らない。
「さてと、お姫様のご機嫌でもとりますか」
僕は階段を上がり、妹達の部屋の前に立つ。
ドアをノックしようとしたら、中から声がした。
「いません」
おいおい、まだノックもしてないぞ。
「火憐ちゃん、入るよ」
「居ないって言ってるでしょ!」
「同じ家に住んでいるのに、居るとか居ないとかの問題じゃないだろ」
「じゃあ、入ってこないで」
「ごめん、もう入った」
「フンッ!」と不貞腐れる火憐。
「月火ちゃんに聞いたんだけど……」
「何さ、何を聞いたのよ?」
怒りはそうそう簡単に収まりそうにないと直感した。
4 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:26:58.59 ID:ZrJVikAo
とりあえず何か餌で釣ってみるか。
「あのさ、火憐ちゃん。なんなら僕と一緒に映画でも―――」
「見たくない」
「何か洋服でも買いに行かないか?」
「兄ちゃんの小遣いで買える服に興味なんて無い」
うわー、何このマジ怒りモード、いつもなら
「アレがみたい!」とか「新しいジャージが欲しいんだ」とか言うのに。
埒があかねぇ、こうなったら奥の手だ。
「単刀直入に聞くけど、彼氏と何故別れたんだ?」
我ながら凄い奥の手だと思う。
ジャブやフックが当らない相手に必殺パンチを見舞う、それも大振りで。
「理由なんて覚えてない!」
しかしながら、火憐にはその大振りパンチがヒットする。
「そんな事無いだろ、自分の事じゃないか?」
「思いだしたくない!」
「何か酷い事でもされたのか?彼氏に」
「酷い事したのは兄ちゃんじゃないか!」
「え?」
全く身に覚えが無い。
「兄ちゃんのせいで……」
「僕のせいで?」
5 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:28:34.19 ID:ZrJVikAo
「そうだよ。兄ちゃんが私のファーストキス奪ったから……」
たしかに、そんな事もあった。
火憐が囲い火蜂にやられた時の事だ。
「ああ、あれはおまじない。熱が下がっただろ?風邪は誰かに移すと治るって―――」
「別にそんな事を言ってるじゃないの!」
「じゃあ、なんだよ?言ってみろよ」
「あ、あの……」
急に火憐がモジモジと恥ずかしそうにする。
「あのさ、えっと……この間、彼氏にキスされそうになって―――」
「ほうほう、最近の中学生は進んでるな!」
「でも、急に気持ち悪くなって、突き放しちゃった」
「え?」
「なんか、目瞑って顔近づけられて、鼻息が聞こえたら……気持ち悪くて」
「で、突き飛ばしたと」
相手の男子、瑞鳥君は怪我しなかっただろうか?
「うん……」
「そっか。それで―――」
「『僕の事嫌いなの?』とかナヨい事言うから、別れた」
そこには、僕以上に単細胞な人間がいた。
「まぁ、気持ちは分かるけどさ」
「兄ちゃんが悪いんだよ!あんなカッコいいキスするから……するから」
「僕のせいかよ!そこで!」
「そうだよ!兄ちゃんがあんなカッコいいキスするから他の男となんて出来なくなったんだよ!」
「そうなんだ!!」
6 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:29:54.33 ID:ZrJVikAo
ここは男として喜ぶべきか?
まぁ、普通に考えれば―――
妹にキスし、トラウマを植え付け、恋をぶち壊した『変態鬼畜兄貴』と言う事で、悲しむべき状況だ。(変態は不要か?)
「『そうなんだ!!』じゃないよ!お陰で、休みの日も一人ぼっちじゃん!月火ちゃんも私が別れた途端に彼氏とばっか遊んでさ!」
「まぁまぁ落ちつけよ」
「この状況で落ち着いていられないよ!」
「ほら、考えてみろよ。いや、逆に考えるんだ。新しい恋のチャンスだろ?」
「はぁ?」
「女の数だけ男が居るんだぜ?もっと良い人が見つかるよ」
「あーなんか悔しい、その言い方。兄妹で彼氏彼女が居ないの私だけだし」
言うべきかどうか、一瞬悩んだが、これは言っておくべきである。
「あー、まぁ別に報告する程の事でも無かったんだけど―――僕も彼女と別れた」
「は?はい?ええー!マジ?」
「あ、うん」
「何?なんで?振られたのか?」
「いや、こっちから振った」
「おう兄ちゃん!」
「なんだよ」
「兄ちゃん、馬鹿だろ!」
「は?」
妹に馬鹿扱いされた!
7 :
VIPにかわりましてGEPPERがおおくりします
2010/09/03(金) 19:32:04.53 ID:b/n.PoAO
なんだこの俺得スレ
胸いっぱいに支援
8 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:32:42.15 ID:ZrJVikAo
「なんであんな美人振るんだよ!」
「えっと……キスする時の鼻息が荒くてキモかった」
「はぁ?兄ちゃん馬鹿?たったそれだけの理由?」
「おい、お前と同じ理由で何故僕は馬鹿と言われるんだ!」
「それネタだよね?」
「ああ、ネタだ。スマン」
「ていうか、どこまでネタ?」
「鼻息のところ」
「それ以外はマジなの?」
「ああ、マジだ。本気で」
「うそー!信じられない。次に兄ちゃんがあんな美人と付き合うチャンスが来る確率は、砂漠で落としたダイヤを探し当てるぐらいだろ?」
「そこまで無理難題じゃねーよ!現に今、付き合って欲しいという美人な女子が何人かいる」
「はいはい、妄想はそこまでで結構ですからぁ!」
「いや、これもマジなんだって」
「ホントかよ、兄ちゃん」
「ああ。自分でも疑うぐらいに」
「で、本命は居るの?」
「いや、居ない」
「なんで?」
「いや……まぁ、今ここで言うのは止めておく」
「ケチ」
この理由だけは言えない。
本当の理由は人様に言える事ではない。
9 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:35:55.52 ID:ZrJVikAo
「で、話は戻るけど本当は、なんで別れたの?」
「無表情で可愛くなかったから」
「な?なんと?」
「無表情で可愛くなかったから」
「大事な事なので2回言ったのか?兄ちゃんよ」
「お前が聞き返したんだろ!」
「無表情は分かるけど、可愛くないって……」
「人間ってのは、顔以外でも可愛さが決まるんだよ!」
「で、別れる時はなんて言ったんだよ?」
「別れよう」
「彼女、それで納得した?理由とか聞かなかった?」
「私の事嫌いになったの?ってナヨい事いうから、肯定した」
「兄ちゃんは私か!」
「まぁ、本当の理由は……」
「なんだよ教えろよ兄ちゃん」
「させてくれないし」
「……鬼畜」
「これって普通の理由だろ?」
「変態!スケベ!エロ爺!外道!鬼畜!馬鹿!」
なんか酷い言われようだ。
「まぁ、戦場ヶ原には戦場ヶ原の理由があるのは理解してたんだ。でも、僕も健康な男子だし……」
僕は本当の事が言えず、嘘八百でその場を取り繕った。
「けっ、何が健康な男子だ。男子なんて、みんなエロエロでやる事しか頭にないじゃん」
「そ、そんな事は無いぞ!女子にだってそんな奴はいるぞ」
「いるかぁ!居たら連れてきなよ!私が説教してやるよ」
10 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:37:41.01 ID:ZrJVikAo
「神原」
「え?今なんと?」
「神原駿河」
「マジ?」
火憐は結構この名前に弱い。というか憧れなのだ。前に逢わせた時は、緊張して酷い状態だったしな。
「ああ、本当だ。戦場ヶ原と別れたと聞いた途端、『戦場ヶ原先輩に殺されてもいい、私と付き合ってくれないか?そして今すぐ子作りしよう』と言われた」
「兄ちゃん、なんでそんな作り話するんだよ」
「作ってないって!話も子供も!おまけに勿論断った!」
僕は必死に釈明する。
「くー!マジかよ。よりによって神原先輩に言い寄られるなんて!おまけにそれを断るとか!何か腹立ってきた」
「まぁ、そう怒るな」
「他は誰が居るんだよ」
火憐の頭から湯気が立っているのは気のせいだろうか?
11 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:40:02.93 ID:ZrJVikAo
「羽川」
「ええー!」
「羽川にも告白された」
「嘘つけ!いくら兄ちゃんでもこれ以上私を愚弄したら―――」
この期に及んで嘘など吐く気はないが、やはり火憐はどれも信用できない名前らしい。
「羽川の場合は―――告白と言っても結構遠回しだった」
「どう遠回しか、全部説明しろ、詳細に!」
別れたあと、直ぐに羽川に言われたのが次の様な話。
『戦場ヶ原さん、落ち込んでたわよ。いいの?私は、これはこれで良かったと思うんだけどね。
阿良々木君の為には、この別れは間違ってないと思うの。
戦場ヶ原さんと阿良々木君だと、阿良々木君が委縮して阿良々木君の良いところを引き出せないじゃない。
そうね、阿良々木君の良さを引き出せる相手と言えば……
例えばメガネっ子で巨乳で面倒見のいい優しい子かな?
そんな子を探すと良い事あるかもね』
「って延々と一人演説を聞かされた」
「まんま自分を売り込んでる!」
「だろ?お前もそう思うだろ?ちょっと羽川って―――変ってしまったんだよな」
「で、兄ちゃんなんて言ったんだよ」
「あーちょっと待ってて、喉が渇いた。ジュース入れてくる」
僕は少し冷静さを取り戻す為に、話の腰を折る。
そして、キッチンでオレンジジュースを2杯入れ、戻った。
12 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:43:19.73 ID:ZrJVikAo
「ほら、飲めよ。お前の分も入れてきた」
「ありがと、兄ちゃん。で、なんて言ったんだ?」
「僕の好みは、細身ですらっとした、少しピーキーな女子が好きだ!と」
「言ったのか」
「言った、言い切った」
「それは宣戦布告だと思うよ、兄ちゃん」
火憐の頭の中では戦闘機がスクランブル準備しているんだろうな、きっと。
若しくは、銅鑼がジャーンジャーンか。
「それがさぁ、そうでもないんだ」
「どうなったんだよ」
『あまり細いのはどうだろうね?色々と出る所は出た方が、男性的には嬉しいんじゃないのかな?
年齢的なものはどうしようもないにしても、性格的特徴は頑張ったら調整出来ちゃうからね。
ピーキーってツンって事でしょ?その後のデレを期待しているのかな?
でも、一番大切なのは、どれだけ愛されているかって事だと思うよ?
それに、爛れた関係は良くないけど、お互いを欲する気持ちは大事にしないとね。
万が一、阿良々木君が彼氏だったら……受け入れちゃうかも知れないわ、私』
「と、追加演説で切り返された」
「うわー、アピール大盛りじゃん」
「でもまぁ、羽川の場合『付き合って』とか言わなかったから放置。保留じゃないぞ」
「やっぱ兄ちゃん鬼畜だな」
「なんでだよ?羽川の場合、僕にも断る理由があってだな……」
「他に誰か居るの?」
(きいちゃぁいねえ!!)
「あー、まぁ居るんだけど、それは僕の勘違いかも知れない」
13 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:45:22.59 ID:ZrJVikAo
「誰だよ?」
一瞬、躊躇したが僕はその名前を告げた。
「千石。千石撫子」
「月火ちゃんの友達の?」
「ああ。なんか知らないけど手紙とか良く貰う。というか戦場ヶ原と付き合っている時に家に誘われたりしたけどな」
「マジで!?」
「うん。でも、何の関係も持ってないぞ」
「当たり前じゃん!」
「でもなんて言うのかな、その接近の仕方が怖くてさ。ストーキングの一歩手前みたいな」
「あの子、ちょっと暗いもんな」
「まぁ最近は髪型も変えたりして、イメチェンしてたぜ」
「ふーん」
少し疑うかのように火憐は答えた。
「というか、撫子ちゃんの事は兄ちゃんの勘違いだよ、きっと」
「そうだな」
「しかし、神原さんにせよ、羽川さんにせよ、兄ちゃんには勿体ないだろ?」
「そうか?そうでもないだろ」
「どんだけ自分に自信があんだよ!」
「ぐはっ!」
火憐は僕に裏拳を入れた。
そういうのは、開いた手の甲で軽く「なんでやねん!」と言いながら入れるべきだろ!
14 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 19:46:35.84 ID:MIyqUTE0
>>7
俺得?
翔太郎、それを言うなら『俺達』得、だろ?
15 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:46:38.66 ID:ZrJVikAo
「まぁ、最近まで気が付かなかったけど、僕には人とは違う『魅了する力』があるようだ。全然知らない下級生からも手紙もらったりさ」
「あっそ……熱ないか?」
「ねえよ!」
「兄ちゃんが死んでる!」
「そんなベタな冗談はよせ」
「と言う事は、鬼畜兄ちゃんは言い寄られては断り、蹴り落として楽しんでるんだ?」
「そんな酷い事はしてない!」
「じゃあなんだよ、ハッキリ言えよ兄ちゃん」
「今は一人がいい」
「何それ?」
「色々と恋愛事は疲れるんだよ」
「つい最近まで、女子からハブられる様な人間がよく言うよ」
「ハブられてなんていないから!というか、女子とかもう沢山だし」
「ふーん、兄ちゃんも取り敢えずは苦労してるんだな」
苦労と言うか、苦悩なんだけど……
「だからさ、火憐ちゃん。彼氏彼女が居ない者同士、今日は僕と遊びに行こう」
「は?なんでそうなるんだよ?」
「でも暇だろ?僕も暇なんだよ」と涙目で訴えてみる。
16 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:49:19.45 ID:ZrJVikAo
「分かったよ。とりあえず準備するから下で待ってて」
「分かった。あと、ハンカチ忘れるなよ」
リビングで待っていると、火憐が降りてきた。いつものジャージ、ライン入りのジャージ姿で。
「なぁ、たまにはおしゃれしろよ」
「え?ご飯や買い物ならこれで充分だろ?」
「じゃ、兄として命令する。月火の服でもいいから、着替えてこい」
「なんでだよ!」
「さっきも言っただろ?チャンスだって。どこかに良い男がいるかも知れないぞ」
「そうか!分かった、着替えてくる」
そういって、火憐はまた階段をドタドタと上がって行った。
あまりにも簡単に人の話に乗り過ぎだ、そんな事だから蜂に刺されるんだよ。
良く言えば素直なんだけどな。
待つ事20分、降りてきた火憐を見て、久々に度肝を抜かれた。
「うわ!」
心臓が飛び出し、床を這いまわる。
「どう兄ちゃん?似あってるか?」
「お前の……久しぶりにそんな格好を見たぞ」
「可愛い?」
「ああ。すげー可愛い」
17 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:51:06.68 ID:ZrJVikAo
いつかの日の事を思い出す。
月火の服を勝手に着た火憐を。
今日の服装は……前にも増して可愛い。
淡い水色のワンピースが良く似あっている。
おまけに少し化粧を施している。
「じゃ、兄ちゃん行こうぜ!」
が、中身は変わらない。話し方もいつもと同じだった。
「どこに行きたい?」
「んー、兄ちゃんの行きたい所でいいや」
「了解。あと出掛けるのに高い靴は無し。一緒に歩くと僕が―――」
「兄ちゃん、今度の誕生日にはシークレットシューズ買ってやろうか?」
「イラねぇよ!」
「ところで兄ちゃん。私がこれだけ頑張ってるのに、兄ちゃんはパジャマで出掛けるのか?」
あ……うっかりしてた!
18 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 19:52:36.26 ID:6/3.w56P
火憐はもっとお馬鹿な気がするが良いね
19 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 19:54:53.95 ID:ZrJVikAo
黒
駒
作者・飯らしい
20 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:05:45.39 ID:oX1U9QAO
乙 期待してる
21 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 20:14:10.02 ID:MIyqUTE0
そもそも化物語自体が忍ルート確定後のおまけみたいなでありながら、
一番難易度の低い王道眼鏡委員長ルートを全力スルーして
あっちこっちで後一つイベントこなしたらルート確定するだろっていうぐらいフラグ建設しまくりながら
わざわざ一番難易度の高いメンヘル処女ルートに突入した挙句
それをかなぐり捨てて実妹NTR開始とか胸が熱くなるにも程があるだろJK
やっぱりマハラギダインさんの変態力は一線を画してるな
22 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:16:52.28 ID:ZrJVikAo
お出かけ
僕は直ぐに着替え、財布と携帯を確認し、玄関へ向かう。
「なんだ、またそんな格好?」
「僕の正装はパーカーなんだよ!」
「とりあえず、兄ちゃんの服買ってやるよ」
「気前がいいな」
「馬鹿、兄ちゃんの金で買うに決まってるじゃん」
「そういうのは、選んでやるっていうんだ」
朝からドタバタはあったものの、火憐の機嫌は多少良くなった。
僕は火憐を自転車の後ろに『座らせ』、街へ繰り出した。
いつもは立ち乗りをしたがるが、今日は僕が無理やり座らせた。
この格好で後ろに立たれると目立ち過ぎる。
それでなくとも、結構人目を集めるんだよ、うちの火憐は。
街についたら、まずはファーストフードで朝飯を摂る。
僕には朝飯だが、火憐には早い昼飯となる。
「なぁ兄ちゃん。またさっきの話なんだけどさ。本当のところ、兄ちゃん的にはどんな彼女が欲しいんだ?」
「ん?ああ、そうだなぁ―――あれ?どんなのかと聞かれたら良く分かんないや」
「なんだよ、それ」
「イメージというか、ドンピシャこの人ってのなら居るね」
23 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:19:56.04 ID:ZrJVikAo
「誰だよ」
「言わない」
「だから言えってば!」
「言わなきゃならない?」
「言わないと、ゲーセンのパンチングマシン代わりにして、蹴る」
「おい!あのゲームはパンチ用だ!まさか……」
「うん、しょっちゅう蹴ってる。凄いスコアが出るんだ」
「店員に怒られるぞ!」
「ほら、制服で蹴るとパンツがちらっと見えるじゃん。それ見たら店員も文句いわないよ」
「その店員を先に的にしろ!」
「で、そろそろ教えてくれよ、兄ちゃん」
「まぁ、可愛い服が似合う背の高い女の子だな」
「だから誰なんだよ!」
「火憐ちゃん」
「は?」
「火憐ちゃん。阿良々木火憐ちゃんが兄ちゃんの好みだ」
「……本格的に壊れてるね、兄ちゃん」
「何が?」
「どこの世界に自分の妹をタイプだなんて言う奴がいるんだよ!」
「ここに」
24 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:22:51.67 ID:ZrJVikAo
「約一名か?」
「なんで約なんだよ」
「もう人扱いしてあげない」
「うっ……何か知ってる?」
「何を?」
「いや、気にしないでくれ。というか、今のは冗談。好きになったら好みだろ。今、好きな子なんて居ないさ」
「ふーん。贅沢な悩みだな」
「とりあえず、この話はもうやめ!朝からこればっかでループしてるじゃん」
話の腰を折り、僕はテレビの話を火憐に振る。
サクッと食らいつく。
本当に簡単な妹で良かった。いや、素直で。
食事の後、買い物をし火憐に服を選んで貰った。
映画鑑賞は火憐のお勧めの映画。
B級ホラーだったが、正直自分の日常の方が怖い様な気がして・・・・・・途中で寝てしまった。
締めはゲーセンで火憐のハイキックを見せて貰った。
その破壊力は半端無い。
ちなみに、今回は誰にも下着を見られない様に僕がタイミングを教えた。
そろそろ帰ろうか?なんてゲーセンを出たあたりで話していたら、急に火憐が立ち止まったまま動かない。
25 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:24:44.05 ID:ZrJVikAo
「どうした?足でも痛いのか?」
「瑞鳥君」
「え?」
「あそこに瑞鳥くんがいるんだけどぉ」
「どの子?」
「あの青いシャツ」
駅前の噴水前にその男の子は座っていた。
「へー、仲直りして来たら?」
「あの状態のところに私に行けと?流石は鬼畜兄ちゃん」
良く見れば、女の子と話をしている。
「あれ、同じ学年の子だよ」
「そっか……」
「別れたのが十日前だよ?で、もう他の女とデートとか信じられない!二股かけてたんじゃないの!」
その件について、僕は何も言えない。
「男なんて、やれれば誰でもいいんだろ?」
火憐の言葉が僕の胸に突き刺さる。
「ま、そういう男なんだよ。振って良かったじゃないか。火憐ちゃんは見る目があったという事さ」
僕は都合のいい解釈をつらつらと並べ、火憐を落ちつかせる。
26 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:26:31.70 ID:ZrJVikAo
「兄ちゃん、手つなごうぜ」
「え?ああ、いいけど」
火憐は僕の手を掴み、半ば強引に腕を組む。
「手を繋ぐんじゃ?」
「いや、こっちの方がいい」
組んだかと思うと、歩き始める。
進行方向は―――さっきから目を離していない彼らの方向へ。
距離にして50mもない。
数十秒でその場に到達する。
「瑞鳥君、結構イケメンじゃないか」
火憐は何も言わない。
「火憐の好みはああいうのか?」
またシカトを食らう。
彼らの前を通り過ぎる手前、火憐が瑞鳥君の方をチラッと見る。
そんな火憐に気付いたか、瑞鳥君が驚く。
突然、別れた彼女が違う男と腕を組んで目の前に現れたからか?それとも私服の火憐を初めて見たのだろうか?
目線の動きからして、多分後者。
「挨拶しなくていいのか?」
僕は小声で話しかけた。
27 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:30:44.46 ID:ZrJVikAo
すると火憐は
「ねぇ、今日はこのまま家に遊びにいっていい?」
と、とち狂った事を言いだした。
相手が僕の事を兄だと知っていたら、その見栄張りはとても恥ずかしいぞ。
が、瑞鳥君は何かショックを受けたかのように放心状態に。
段々と僕の視界から消えてゆく。
「お前、なんて事いうの!」
「いいじゃん、お返し」
「なんの?」
「目には目、歯には歯っていうでしょ。見せつけられたから見せ返しただけ」
「お前、以前は『目には鉄拳、歯にも鉄拳』とか言ってなかったか?」
通り過ぎた後、角を曲がっても火憐は僕の腕から離れようとしない。
「兄ちゃん……」
「なんだ?」
「なんか悔しい」
火憐は目を真っ赤にし、口元を硬く結んでいた。
「そっか。でも泣くな。泣くのは帰ってからにしろ。これも兄としての命令な」
僕は自転車の後ろに火憐を乗せ、帰り道を急いだ。
自転車の荷台に横座りし、僕の腰のあたりに手を廻した火憐が呟く。
「なぁ兄ちゃん」
「なんだ?」
「兄ちゃんみたいな男は、この世に何人いるんだ?」
「ん?さぁどうだろ?星の数ほどいるんじゃないか?」
「星の数ほどいるのに、なんで私の前にそういう男が現れないんだ?」
「時期の問題だろ?というか、僕みたいな男は大した事無いぞ、鬼畜だし」
28 :
VIPにかわりましてGEPPERがおおくりします
[sage]:2010/09/03(金) 20:33:29.11 ID:b/n.PoAO
よくよく考えたら火憐がスイーツ脳
好きだから許す支援
29 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:34:16.32 ID:ZrJVikAo
「兄ちゃん、鬼畜って認めたな。それより時期って?」
僕は星座の話を織り交ぜながら火憐に話をする。
「オリオン座が見たいと思っても、今の季節じゃ見えないんだよ」
「なんで?」
「冬の星座だからさ。昼間に星は見えないだろ?」
「うん。で?」
「それと同じで、今の火憐には見えないんだよ」
「いつになったら見えるんだ?」
「それは、火憐が一定の時間を有意義に過ごしたらな」
「どういう意味だよ」
「ただ闇雲に時間を過ごすんじゃなく、色々経験するって事さ」
「経験なのか?兄ちゃん」
「そう、経験。経験を積みながら時を重ねれば、季節も変って見る目も養われる。オリオン座がどれか分からないうちは見てもただの星さ」
「ふーん、だから今は見えないんだ」
「そう言う事、居るんだろうけどさ」
「なんか兄ちゃん、知らない間に大人っぽくなったな」
「そ、そうか?」
「たった一回彼女が出来ただけで、そうも変るなんて凄いよ」
「あはは、別に色恋だけがあった訳じゃない」
「ふーん、色々あったんだ?」
「まぁ、それなりに」
「それなりか。じゃ、私もそれなりにしておくよ」
「そうだな、それがいい」
火憐がとても素直で僕はちょっと安心した。
30 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:36:49.55 ID:naAQYEDO
実
の
妹
な
ん
ざ
|
|
萌
え
る
だ
け
だ
ろ
う
が
あ
!
31 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:37:31.38 ID:ZrJVikAo
「とりあえず、兄ちゃんみたいな彼氏が見つかるまで、兄ちゃんで我慢するよ」
前言撤回。なんか凄く心配になった。
「当分、私の彼氏は兄ちゃんな」
「遊びに行くぐらい、いつでも付き合ってやるよ」
「遊びだけ?」
「寝る前に話でもするか?」
「話だけ?」
「それ以上何が事がある?」
「おやすみのキスは?」
「そんなもんねぇよ!」
「なんでだよ!」
「兄妹だから」
「アメリカじゃ親子でするのに」
「日本にそういう習慣は無い」
「じゃ、今日から阿良々木家の習慣にしよう!」
「誰もしてくれないぞ?」
「じゃあ、兄ちゃんがしてくれよ」
「あ?ああ、考えとく。というか考えても駄目だろ。それよりもいい人見つかると良いな」
馬鹿な会話が終わり、二人の間に沈黙が漂う。
それっきり無言になった火憐が僕のパーカーの裾をギュっと強く掴む。
僕は何も言えず、ただ黙々と自転車を走らせた。
夕暮れの中、自転車を漕ぎ家路を急ぐ。
ペダルを踏む音と、火憐のすすり泣く声がシンクロしていた。
32 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 20:38:55.14 ID:hofifgAO
変態木さんは妹の事は呼び捨てに出来ない。必ずちゃん付けで呼ぶ。
33 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 20:44:15.37 ID:ZrJVikAo
豫 告
全クケシカラン兄貴ダ
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_ .. -──- .._ ) 〉
「」'´ `ヽノ / _ .. -──- .. _
r‐(())/ `'´ | `ヽ. \ 〈 ( .ィ´ `ヽ.
/:_::ノ ./ i. | 、 丶 :.、__, ヽ'´ / `ヽ::. .ハ_
. / ::ヽ._ノ .:/ 、/| il: |\,. i 、:.__ノ .′/ ,' :|i |i ハ::( ())
/ <._,ノj/\|ノ|: |/_ヽト、._..> i :l |i :|i || |l i ::l:: |_」l
l /:.:/ { ハ| ━┳ ゛jノjノ'┳━ |r}′ | :|_」|_,ハ_,ハ__|l__l|_:|:: |
| i: ::| ヽ_l xxx , xxx jノ | :::ハ ━┳` ´┳━ l::. |
。 | 、|: ::| ノ,)_r_-─‐-_、_(.〈_ 。 | i: ::l_xxx , xxx. l_::: |
. | ヽ:.:l /´ r─'-─‐‐-`ーr `ヽ.o 。 | | ::ノ,)_r_-─.-_、_(.〈::::.. |
O |ノ :::::ノ .__ノ-‐'>r--r<ー-ゝ._ .ハ_ o| :/´ r─'-─‐‐-`ーr `ヽ:: |O
. 〈 /´二イ ヽ`ヽ \_/ / / }二二{、゜ |ノ __ノ::::_,>r--r<´_ゝ._ \ o
. ノ .// / ,.イ: \ l<::ィ:i::>l / ,〈 〉:〉 / / |::::l'´\\ // |::::|. \ \
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. 〈::〈 ̄ \__,ノ |::|" ノ:::... i...::| ゛|::|| |::| 〈_.ノ::::/|:::::>. // <:::::> |:::::||
ヽ:\ 〉} 〈:::: | :l ,/:/ヽ.__,ソ ||:::: :/ .∨l:..// j∨ |:::'/
.  ̄ 〈〈 ヽ:. | ノ 〈::{ |ヽ:/ ..:::| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |:.. |::/
DVD・BD「化物語」絶賛発売中
火憐だよ!月火だよ!
作者が今から飲みに行くらしいので、今日はここまでらしいよ!
というか火憐ちゃん、兄萌えなの?
今度、私の彼氏の友達紹介してあげようか?
お兄ちゃんよりカッコいいんだよ!
え?実の兄だから萌える?
妹萌えより酷いね
ではまたー!
34 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 20:59:44.80 ID:VuOYWWso
羽川って偽物語以降コンタクトにしてなかったけ?
まぁ火燐好きだし支援
つか火燐はもっとバカで兄の命令に服従キャラだよな、偽物下からはwww
35 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 21:20:50.33 ID:z.dcs.AO
この
>>1
何者…ほとんど違和感なく楽しめて読めるぞ
36 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 21:28:24.07 ID:MIyqUTE0
ところでスレタイの内容についてkwsk
37 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 22:45:08.99 ID:QYsPekSO
そういや今んとこスレタイと全く関係ねぇな
38 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 23:04:16.37 ID:EpnVftko
支援しちゃう
読んでないんだけど、ひたぎさんと別れたのって猫物語?orz
39 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 23:10:07.22 ID:MIyqUTE0
>>38
猫は委員長のゴールデンウィークの頃のお話
本編はひたぎさん一直線だから安心するのだわ
今後も各キャラのエピソードが連続で3ヶ月おきに出るらしいが、
つばさタイガー、まよいキョンシー、するがデビル、なでこメドゥーサ、しのぶタイムと続いて
最後は2011年12月発売予定の、その名も『 ひ た ぎ エ ン ド 』
で終わるらしいから安心していいのだわ
40 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 23:46:42.02 ID:ZrJVikAo
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「staple stable」
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i/ /:::::::::人|::::::::i. ´ ー' \://__|:/|::::::::: : : : : : : : : : 、
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/:. :. :. :. :. :. :. :ヽ :. :. :. ヽ::::::::::::::!:.:.:.: !', /:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:. :./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽ
/:. :. :. :. :. :. :. :. :. : ヽ :. :. :. ヽ:::::::::ヽ:.:.: | } /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:. / :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽ
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西尾維新・アニプレックス・シャフト
*この物語はフィクション(SS)であり、実在する書籍と設定や性格が多少異なる事があります
*作者には校正してくれる編集さんがいませんので、たまに敬が抜けたり等の誤植がありますが、お許しください
*スレタイは殆ど関係ないと言うか、一番最後です
OP終わり
何故飛ばしたし!
41 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 23:49:34.29 ID:ZrJVikAo
暦x火憐
家に戻り、いつもの調子に戻った火憐に急かされ着替える。
「ほら、すげー似あってる」
「そうか?」
「私の見立ては間違いないな」
初めてハイネックのセーターを買った。
「この冬はそのカッコ良さで彼女GETだな」
「格好に惑わされる女に興味はねぇよ」
「かっけー!兄ちゃんすげーかっけーよ」
「そ、そうか……」
「じゃ、私とデートな、兄ちゃん」
そのお誘いは少し嬉しかった。
そんな折、ポケットの中の携帯が鳴る。
「もしもし」
母さんだった。
今日は父さんと出掛けていたが、用事が長引き明日まで戻れないらしい。
と言う事は、今日は3人。
42 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 23:52:35.89 ID:ZrJVikAo
「火憐ちゃん、晩ごはんの準備出来る?」
「なんで?」
「母さん達、今日帰れないらしい」
「カップ麺で良ければ作るけど?」
「それは僕でも出来る」
「なぁ兄ちゃん、こういう時の為に料理の出来る彼女を作れよ」
「彼女は家政婦じゃないんだぞ。というか、火憐ちゃんが僕の彼女だと言い張るなら火憐ちゃんが作らなきゃ」
なんて話をしていたら、話の腰を折る様に今度は火憐の携帯が鳴る。
「あ、月火ちゃんだ」
「もしもし?あ、うん、うん」
朝の喧嘩の事なんかすっかり忘れて仲良く電話で話す二人。
とりあえずこれで一件落着だな。
「あー、そうなんだ。ちょっと兄ちゃんに代わる」
「兄ちゃん、月火ちゃんが代わってくれって」
僕は火憐の携帯を受け取り、耳元に当てる。
通話口の辺りから火憐の匂いがした。
少しだけ、大きく息をした。
43 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 23:54:48.26 ID:ZrJVikAo
「もしもし」
「あ、お兄ちゃん。今ね、蝋燭沢君と遊んでるけど、このままオールしよって話しになったんだ。
いいかな?それにお母さん達帰ってこないでしょ?」
「駄目。ちゃんと家に帰って来なさい。夜遊びなんて母さんが聞いたら悲しむぞ」
「えー、けち!」
「で、どこに誰といるんだ?」
「クラスの子たちだよ。男子2人女子3人。蝋燭沢君の家。ね、いいでしょ?」
甘い声で妹に強請られると僕は少し弱気になる。
「なら、蝋燭沢君のお母さんに代わりなさい」
「じゃあ、家にかけ直すね」
少しして、蝋燭沢の母と名乗る人から電話が入った。
一応、大人の声。
多分、本物のお母さんだろう。
「ええ、こちらこそ。すみません、大勢で押し掛けているみたいで。騒いだら叱ってやってください」
電話を切った。
これで何か起きれば、両親に叱られるのは僕。
大人の責任を感じた瞬間だった。
44 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/03(金) 23:57:27.92 ID:ZrJVikAo
「月火ちゃん泊まり?」
「ああ、蝋燭沢君の所で遊ぶらしい」
「そっか……いいなぁ」
火憐は少し寂しそうだった。
「じゃあ、晩飯はピザでも取るか?それとも食べに出るか?もしくは二人でコンビニ弁当+カップ麺」
「ピザでいいや」
「よし。好きなモノ頼めよ。食べた後、僕とDVD鑑賞でもしよう」
「どれにしようか?いつも迷うんだよ」
「この半分づつ入ったのは?」
「何となくそういうのって邪道な感じがするじゃん。二股かけてるみたいでさ」
余程、二股疑惑が拭えないらしい。
「じゃ、一番高いのを頼め」
「おー!兄ちゃん太っ腹だな」
「いや、あとで母さんに貰うから大丈夫だ」
「なんかセコいね」
頼んだピザが届く予定は、電話をしてから40分ほどしてから。
その間に、僕は風呂の準備、朝使ったコップを洗ったりする。
「兄ちゃん、家事も出来るんだな」
「おいおい、これぐらいの事、お前も出来なきゃダメなんだぞ」
「分かってるんだけど、手伝うと何故か皿とかグラスを割ってしまうんだ」
「ちゃんと持たないからだ」
「いやちゃんと持って拭いていると、半分に割れた」
どれだけ握力あんだよ!というか、前の喧嘩の時にその強さは身をもって知ったが。
でも、拭きながら割るのは漫画の世界だぞ、火憐。
暫くしてチャイムが鳴り、ピザが届いた。
45 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/04(土) 00:01:13.68 ID:MqTegvQo
ピザ屋の配達員は無愛想だった。
あれだけ無愛想なら、戦場ヶ原でも出来るんじゃないか。
あ、戦場ヶ原とか。
何を思いだしているんだ、僕は。
別に嫌いだった訳じゃない、どちらかと言うと好きだった。
いや、本気で心底好きだったんだけど、耐えられなかった。
『浮気には寛容だけど、本気になったら[
ピーーー
]わよ』ってセリフが僕を苦しめた。
だから別れた。
僕は―――いや、この話は思いだしたくない。
やめておこう。
僕らはリビングでピザの箱を開け、晩飯にする。
テレビからは、大して面白くもない関西芸人の声がする。
「なぁ兄ちゃん」
「ん?」
「なんでピザ屋のピザはメニューと本物の差がこんなにあるんだ?」
「ああ、それは大人の事情だ」
「どんな事情だよ」
「写真だけで美味そうに見せないと売れないだろ?」
「だからって、この差は酷いだろ」
「まぁ、多少の違いは認めてやれ。ここに小さく注意書きもあるだろ?」
「あ、本当だ。書いてある」
「一応、予防線は張ってあるんだよ」
「へー、お殿の情事って凄いな」
「大人の事情だ!どこの大奥の話してんだよ!」
46 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:02:27.17 ID:MqTegvQo
>>45
校正
ピザ屋の配達員は無愛想だった。
あれだけ無愛想なら、戦場ヶ原でも出来るんじゃないか。
あ、戦場ヶ原とか。
何を思いだしているんだ、僕は。
別に嫌いだった訳じゃない、どちらかと言うと好きだった。
いや、本気で好きだったんだけど、耐えられなかった。
『浮気には寛容だけど、本気になったら殺すわよ』ってセリフが僕を苦しめた。
だから別れた。
僕は―――いや、この話は思いだしたくない。
やめておこう。
僕らはリビングでピザの箱を開け、晩飯にする。
テレビからは、大して面白くもない関西芸人の声がする。
「なぁ兄ちゃん」
「ん?」
「なんでピザ屋のピザはメニューと本物の差がこんなにあるんだ?」
「ああ、それは大人の事情だ」
「どんな事情だよ」
「写真だけで美味そうに見せないと売れないだろ?」
「だからって、この差は酷いだろ」
「まぁ、多少の違いは認めてやれ。ここに小さく注意書きもあるだろ?」
「あ、本当だ。書いてある」
「一応、予防線は張ってあるんだよ」
「へー、お殿の情事って凄いな」
「大人の事情だ!どこの大奥の話してんだよ!」
47 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:04:04.89 ID:MqTegvQo
「しかし、大げさなのはJAROに電話だよな、兄ちゃん」
「そ、そうじゃろ」
滑った、思いっきりすべった。
話題を変えなきゃと、テレビに目をやる。
コーヒーの宣伝をしていた。
「このコーヒー、実は醤油とか塩入コーヒーなんだぜ?」
「えーマジで?」
「普通のコーヒーだと、綺麗にミルクが渦を描かないからさ。他に木工ボンドを流したり」
「へー、兄ちゃんは何でも知ってるんだな」
「何でもは知らないさ、知ってる事だけさ」
一度言ってみたかったんだ。
結構かっこいいセリフじゃないか。
羽川か……ああ、また軽く鬱になる。
「兄ちゃんどうした?気分悪いのか?」
「いや、なんでも無い」
「ふーん、ならいいけど)
48 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:06:19.27 ID:MqTegvQo
「それより兄ちゃん、これ何?」
「ピザだろ?」
「じゃあ、ピザって10回言ってみて」
10回クイズか。火憐もまだまだ子供だな。
「ピザ、ピザ―――ピザ!」
さぁ、ヒジを指させ!
「では問題です。これは?」
火憐の指は僕を指していた。
「え?……えっと、ピザ?」
答えた瞬間、火憐がニヤリと笑う。
「ブブー!正解はキザ」
「は?」
「大体、兄ちゃんがピザな訳ないじゃん。ピザってのは羽川さんが不摂生をしたら―――」
「おい、それ以上はいうな。というか、僕のどこがキザなんだよ!」
「ええー!気付いてないの?」
「ああ、自分をキザだなんて思った事は一度もない」
「兄ちゃんって凄いキザだぜ?」
「本当?」
「うん、そりゃもう―――」
「へー、自分では分からなかったよ」
「星座の話を織り交ぜて話すとか、キザ以外の何物でもないよ」
「そ、そうか……すまん」
「別にそんな兄ちゃんがダメだって言ってるんじゃないよ」
火憐は僕の横に座り直し、腕にしがみついてジャレてきた。
49 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:09:07.93 ID:MqTegvQo
「そんな兄ちゃんが、私は好きなんだよ」
一瞬、自分の心臓が止まったかと思った。
次の瞬間、蘇った心臓が高速で鼓動を始める。
火憐と僕の距離が少し詰まる。
火憐は物欲しそうな顔で僕を見つめる。
唇の距離が10センチまで来た時、僕は口を開いた。
「駄目だよ、火憐ちゃん」
「何で?」
「ほら、僕達兄妹だし」
「キスぐらいなら……前もしたじゃん」
「前は、ほらさっきも言ったけど、病気をだな―――」
「兄ちゃんは私とするのが嫌なの?」
「いや、そう言う訳ではないけど……」
ピザを食べながら飲んだのは―――間違いなくジュースで、酒ではない。
「それともまだ彼女の事が気になって?」
「あ、いや……そんな事も無いけど」
「分かった……」
火憐はそう言うと急に立ち上がりリビングから出て行ってしまった。
「ああ、怒らせたか。でもそれで良いんだ」
僕は自分に言い聞かせるよう、呟いた。
50 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:11:59.82 ID:MqTegvQo
ところが、火憐が右手に歯ブラシを握りしめ戻ってきた!
「兄ちゃん、口がチーズ臭いなら言ってくれよ!」
「あ、いや、そんな訳では―――」
「はい、お願い」
火憐は右手に握りしめていた歯ブラシを僕に渡す。
受け取った僕がうろたえていると、正面に座り口を大きく開けた。
「あーん」
「……」
「ほら、早く磨いてよ!ピザの匂いがしたんだろ?」
「あ、うん、いや……」」
違うんだ!!
なんだ!この状況は!どうすりゃいいんだよ!
自分がした事だが、人に要求されると躊躇する。
でもこの状況で磨かないと言うのは……悩んだ挙句、僕の理性が少し欠けた。
「ほら、もっと大きく開けろよ」
僕は火憐に命令していた。
51 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 00:13:03.27 ID:/RMOG3Y0
わっふるわっふる
52 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:13:54.81 ID:MqTegvQo
僕は手に持った歯ブラシを火憐の口にゆっくり挿入する。
「奥歯からな、ふふふ」
僕は奥歯と歯茎の境目を執拗に、そして緩やかに磨く。
ゆっくりと前に、そして反対に、奥へ上へ裏へと。
恍惚とした表情の火憐が堪らない。
大きく開けた口から少し唾液が零れる。
「ひ、ひいちゃん、ま、まら?」
「もう少し我慢だ!」
火憐の肩がプルプルと震えだす。
喉の奥に溜った唾液で咽そうになる火憐。
僕はそこで手を止め、火憐にうがいを勧める。
「はい終わり。うがいしておいで」
洗面台へ向かう火憐。
その足取りは少し重そうだった。
うがいを終わった火憐がリビングに戻ってくる。
また右手に歯ブラシを持ったまま。
が、よく見れば僕の歯ブラシだった。
一瞬、嫌な予感がした。
53 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:16:52.16 ID:MqTegvQo
「じゃーん!次は兄ちゃんの番な!」
「ぼ、僕は自分で磨く!」
「駄目だよ、はいアーンして。兄ちゃんはバジル臭いからな」
頭部にアイアンクローを決められ、僕は転ばされた。
正座した火憐に膝枕され、上から覗きこまれる。
「いくよ!」
ニヤニヤしながら僕の口の中を歯ブラシで弄る火憐。
さっきに増して、恍惚とした表情だった。
「ふふ、兄ちゃん。奥歯にベーコンが挟まってたぞ」
言葉攻め!
こんな上級攻撃をどこで覚えてきたんだ!。
歯間に挟まっていた物を実況されると言うのは、本当に恥ずかしい。
しかし、歯ブラシの気持ちよさと恥ずかしさの相乗効果だろうか、不覚にも少々股間が熱くなってしまった。
5分ぐらい頑張った所で、僕も唾液が喉に詰まり、咽そうになる。
「よし、兄ちゃん。うがいしてきて」
何とか解放される。
洗面所でうがいし、少し冷静さを取り戻す。
部屋に戻り、何食わぬ顔でソファーに座った。
54 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:18:07.67 ID:MqTegvQo
「あれ?何でそんな所に座るかな?兄ちゃん」
「ん?」
「何か忘れてないか?」
「さぁ?」
「15分前に記憶を戻せよ、兄ちゃん」
「15分前?何かあったか?それより、片づけを……」
不意に袖口を掴まれる。
「兄ちゃん、今日言った事忘れたのかな?」
「どの事?」
「当分、私の彼氏は兄ちゃんな、の件」
「ああ、いいよ、それで。じゃ、片づけを……」
「だーかーらー」
物凄く強い力で引き寄せられた。
「えっと、何をしたらいいのかな?火憐ちゃん」
「そういう事を女の子に言わせるの?だから兄ちゃんは―――」
55 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 00:30:40.78 ID:MqTegvQo
豫 告
全クケシカラン兄妹ダ
、
}ヽ
_ .. -──- .._ノ,ノ
,.'´ `ヽ /
r‐-:;ィ「l / ,' | ハ 〈 (
/ ::ノ(())/ /'| i |、 i 八 _, >-‐  ̄ ̄ ‐- .
/.:::∠ノ /,`メ、 | | | Χ| _.ノ i / `ヽ
/ .::<.._ ノ,/j/_、|ハ. /'´ヽト、_...> _人_ ′./ ヽ. ハ
/ .::::/ |' j/<弋zリ` j/'-=ニ /'l `Y´ l .' ,' / :l、 」
′ ,':::/ ヽ._、 xxx , xxx ,'_ノ 〃__. ミ ! | | i| l| i l| |i :i| .(())
/ /::/ ` 、 、─ァ ,.′ . |lヨ | L__||_,八__|」|_||_:|| ::|_」
. / l::/ ,r‐;:>:.. __ ..:<ーュ、_ ゞ.|| 彡 | ハ ニ=- '´ヒzリ〉| i: :|
. 〈 ヽ .::〈 ,r'´{ 〈 {::ノ l::} `l 〉`ヽr||、 | i:::.xxx , xxx..| |: :|
ヽ. \:::〉 〈::\ ヽ__\_∠__,.ィ(( ./´ ̄`> )) i. | |:人 、__, .イ| | 八
__ ノ::. / ヽ:::::..、 .____| ̄l´__,ノ′ _人._ | |:::i::;>:.. __ ...::<:::|:| |:: \
r‐、i::../ |:\:::::::::::::::::::::::::::::|_|´. \:ヽ、 `Y´ . | |:::|'::i:::i:;r;〉 j:〉 .ヽ| |::::.. \
l:::{ |:::|、  ̄| ̄l ̄| ̄ |::| \ 丶::\ 〃 ! /| ヾ | |:::|:::|/ |、 // | |`ヽ:::.. \
. ヽ.\ |:::|:::.. ...:|゛ :i. "|::.....:::|::| 〉 >::::〉 l :| ,ノ_ >'´ | |.// ノ > ハ::::.. ヽ.. `ー─┐
ヽ._.> 〉::〉 / | ヽ |::l ,/ /::/ | :| /∨ :,' |// ´ ̄V ,' l:::::. \ ̄ ̄
/::/ / :| .:〉 l:::<ヽ...イ::/ | :|/ l′/ / /´ |:::::::::lヽ::.\
〈::〈 ....::\ .:l ..ノ ,|/´ヽ >'´ ミ T |. 彡 |. / / ,'::l .. -─- 、:|  ̄`
}" ─- ヽ-/´-‐:厶 l (( l´ ̄`> )). .:|/ / .::| '´.://///;ハゝ
`r───‐┴──‐‐rフノリ ヽ._,ノノ ..::::| / .:::| { :{////////}
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DVD・BD「化物語」絶賛発売中
火憐だぜー!
月火だよ!
ねぇ火憐ちゃん、このあとどうなっちゃうの?
そ、そんな事私から言えない!兄ちゃんに聞いて!
兄ちゃんなら、さっき戦場ヶ原さんに連れていかれて退場したよ?
まっじでー!まぁ、みんなの期待に応えられる事は無いと思うんだけど……
作者がそろそろ限界なんだって!
というか、この先は同人ネタが織り込まれているとか、作者も馬鹿だね
そうだね!
では、次回!「一線を超えちゃう兄妹の行く末」お楽しみに!
いや、ちがうし、それ。
56 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 00:37:57.33 ID:m.HYFVc0
ん、今日の分は終わりってことか
乙
57 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 00:38:33.67 ID:kEm/2Rso
おつぱい
58 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 05:56:27.23 ID:BYkOCIDO
歯磨きプレイやってみたいな……
誰かしてくれないかなぁ……
口臭気になるなら事前に一回磨いとくから……
誰か俺の歯磨いてくれないかなぁ……
相手いないなぁ……
一人って寂しいなぁ……
59 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 06:20:09.36 ID:RU6Lg.SO
けしからんな
全く けしからん
60 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 07:43:59.56 ID:MqTegvQo
最前線
越えてはいけない一線がそこにはあった。
が、見えない線を軽々と越してきた妹がいた。
火憐に正面から抱きつかれ、僕が火憐にされた。
されてしまった。
深く、熱く、永く。
「なぁ兄ちゃん。前にも言ったけど、兄ちゃんとなら私―――」
虚ろな目で僕を見る火憐。
「待って火憐ちゃん。ほら彼氏彼女であったとしても、いきなり何でもする訳じゃないだろ?」
苦しい言い訳だった。
無駄な時間稼ぎだった。
というか、『バン!』とドアが開いて、『アイスピック買ってくる!』と月火が言ってくれる事を祈ったがそれは無かった。
影から忍が出てきて、「お前様、何をしておるのか?」と言ってくれてもいい。
しかし、影の中は静まり返ったまま。
ここ最近、ずっとそうだ。
「兄ちゃん。兄ちゃんは私の本気を受け止められないの?」
本気だから困ってるんだよ!
兄妹の荒廃、この一線にあり。
有名な司令官の言葉を真似て見た。
そうした所で、何も救われないのだけど。
「あー分かった!分かったからまずは風呂に入ろう、な?」
「あ、そうか!やっぱ綺麗にしてからじゃないと駄目だもんね」
61 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 07:48:46.91 ID:MqTegvQo
火憐は複雑なのか単純なのか、分からなくなってきた。
僕を解放し、火憐はバスルームへ向かう。
「兄ちゃん、一緒に入る?」と振り返りながら笑顔で声を掛ける火憐。
「いや、結構ですから。お先にどうぞ」
仰々しく答えた僕に笑顔を見せたのち、火憐はそのままバスルームへ消えた。
どうしよう?
誰かに助けを求めるべきか?
こんな時、他人に頼って良いのか?
何をすればいいのか?
家から逃げ出せばいいのか?
でもそれじゃ何の解決にもならないし、火憐一人になってしまう。
62 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 07:49:51.79 ID:MqTegvQo
悩んで出た答えが『説教』。
泣かせても、嫌われても、説教すれば解決する。
でも、それを望まない自分も居る。
『妹がやろうって言ってんだ、やっちまえよ暦』と放言するブラック阿良々木が居る。
それは僕が戦場ヶ原と別れた少し前から心の中にそれが居る。
いや、ずっと居たんだろうけど、『あの時』以来良く現れる。
言い寄られたら、『やっちまえよ!それでポイだ』と囁く。
それでも僕の理性がそいつを抑え込む。
なのに、今日は無理かもしれない。
戦場ヶ原と別れ、心が寂しくて火憐に優しくした。
お互いに心の隙間を埋め合おうと……
そんな事が間違っているのは百も承知、だが今日は……負けかもしれない。
火憐を可愛く思ったのは事実だ。
でも、こんな関係になりたいなんて願った訳じゃない。
なのに―――願ってない関係に堕ちる。
全ては、あの日が原因だ。
63 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 07:57:28.37 ID:MqTegvQo
それは、僕が戦場ヶ原と別れた少し前に遡る。
あの前日、夜遅くまで忍とドーナツ談義をして明け方に床に就いた。
ぼんやりした頭で学校に行くと、校門前でメールが着信。
『阿良々木君、体育倉庫で待っています』
羽川からのメールだった。
僕は教室に寄らず、そのまま体育館横の倉庫へ向かう。
中に入り、声を掛ける。
「羽川、居るのか?」
「阿良々木君?」
「ああ、そうだ。どうしたんだ?」
「阿良々木君、助けて」
僕は鞄を放り出し、羽川の元に駆け寄る。
制服姿の羽川がいた。
「どうしたんだ!」
よく見れば、頭に耳が出ていた。
『ブラック羽川』
そう思った刹那、羽川はブラック羽川に変った。
64 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 07:59:11.27 ID:MqTegvQo
「にゃはは、人間。久しぶりだな」
「お前!羽川に何をした!」
「何もしてないさ、ただご主人様に呼ばれただけにゃ」
「おまえ……」
次の瞬間、猫は僕に襲いかかってきた。
押し倒され、後頭部に激しい衝撃と痛みを感じた。
僕はそのまま、気絶してしまった。
暫くして、体に伝う振動に起こされた。
そして―――悲しい光景を見てしまった。
猫が、僕の身体の上で上下に動いていた。
「よぉ、人間。お目覚めか?どうかね?ご主人様の体は?」
僕はあろうことか、猫と性行為をしていた。
いや、この状況はレイプだと言っても過言ではない。
「なぁ、人間。これで俺は当分はゆっくり休めそうだ。恨むなよ、俺を」
そう言いながら、猫は僕の身体を弄ぶ。
エナジードレインのせいか、体が動かない。
そんな僕の上で猫は―――
血を流しながら、薄ら笑い、そして鋭い目で僕を睨みつけながら動く。
65 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 08:00:18.58 ID:MqTegvQo
忍はどうした?
(すまんな、一瞬の事で。寝こけていて動けんかった)
影から声が聞こえた。
「今すぐ猫を!」
「人間、また吸血鬼もどきを呼ぶのか?そいつが出てくるのと、俺がお前のエナジーを全部吸い取るのとどっちが早いと思う?考えろ人間!」
猫は僕を叱りつける。
(諦めてくれ、お前様)
こうなっては、忍も指を咥え見ている他ないのだろう。
猫はいっそう激しく動き、そして―――僕は猫を睨みながら射精してしまった。
「心配はするな。子供が出来るタイミングではない」
そういうと、猫は段々と影を薄くし、完全に羽川が戻ってきた。
「どうしよう……」
(とりあえず、この場から去れ。その前に―――)
僕は羽川の下腹部を濡らしてきたハンカチで綺麗に拭き下着をはかせ、そのまま倉庫を後にした。
勿論、学校はそのまま休んだ。
いや、逃げだした。
66 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 08:01:37.67 ID:MqTegvQo
家に逃げ戻り、忍と話す。
「お前様、今日の事は事故だ。そう思えばいい」
「でも僕は……」
「案ずるな。あの女の記憶には何も残らない。体の痛みは残るかも知れんがのぅ」
「でもそれじゃ……」
「急な生理が来たとでも思うだろう。それに、猫が静まれば彼女も楽であろう」
「でも―――」
「でも?では何か?お前様が犯ったと言えるのか?」
「それは……無理だ」
「だろうな。なら忘れろ。単なる事故だ」
忍に宥められたが、僕は僕が許せなかった。
「さてと、儂は寝る。お前様も休め。そうすれば少しは楽になる」
そう言うと忍は黙り込んでしまった。
多分、忍も悔しかったんだろう。
遣る瀬無さで胸が苦しかった。
色んな人との関係を全てぶち壊された気分、僕にはもう誰も要らないと決めた。
それから数日して、僕は戦場ヶ原に別れを切り出した。
67 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 08:03:05.66 ID:MqTegvQo
「阿良々木君、今なんて?」
「ごめん、僕と別れて」
「あら?高貴な私に何か問題でもあったのかしら?」
「いやそんな訳じゃないんだ」
戦場ヶ原は大きく首を逸らし、僕を一瞥する。
「と言う事は、下衆な阿良々木君に何か問題があったのかしら?」
「何も聞かず別れてくれ」
たとえ意識が別物だったとしても、羽川と交わった自分には戦場ヶ原と付き合う資格は無いと考えた結果が別れ話だった。
「ふーん……そう。分かったわ」
「ありがとう」
「お礼?何故お礼を言われなきゃならないのかしら?それとも何か言えない事情、いえ情事でもあったのかしら?」
「いや……」
「私は浮気には寛大よ。本気だったら殺すって前にも言わなかったかしら?」
本当に戦場ヶ原は鋭い。
こういう所が怖い部分でもあり、惹かれる部分でもある。
「あ、うん。言われた。でも―――」
「あら図星なの?相手は誰かしら?神原?それとも羽川さん?」
「いや……」
68 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 08:05:04.01 ID:MqTegvQo
「そう言えば、羽川さんこの間学校休んでたわね、阿良々木君も休んだ日。何かあったのかしら?阿良々木君知ってる?知っている筈よね?」
「いや……」
「ふーん、そう。分かった。あと、前にも言ったけど、怪異がらみの時はお互い話しましょうって言ったわよね、覚えているかしら?」
僕は心臓が止まるかと思った。
「ちなみに私、羽川さんの存在は『怪異』だと思ってるから。
あんなの人間だなんて思わないから。
一応、彼女の前では従順なフリをしているのだけれども、本心からの行動じゃないわ。
もし、羽川さんと何かあったのなら―――ちゃんと話して、阿良々木君」
そう僕に話しかけた戦場ヶ原の顔は、いつの日か星を見た日の顔だった。
でも、僕は自分自身が許せず、結局戦場ヶ原の最後の優しさまで踏みにじった。
完膚なきまでに、雑草を踏みつぶす様に。
そして今に至る。
69 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 08:06:38.15 ID:MqTegvQo
白
駒
自宅リビング回想ヲワリ
70 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/04(土) 08:07:54.86 ID:MqTegvQo
バスルームから火憐が出てきた。
濡れた髪をタオルで拭きつつ……何故かバスタオル一枚で。
「ちゃんと服着なさい」
「いいじゃん、今からまた裸になるんだし」
「決定事項なのか!」
「え?」
「え?」
「違うのか?兄ちゃん」
「もう一度ゆっくり考えた方がいいぞ、火憐ちゃん」
「女に、女にどこまで恥をかかすのかな?」
「もう一度冷静になろう、な?」
僕の言葉は火憐の耳に届いていない。
もう彼女の中では全ての事が決定事項の様だ。
火憐に引き千切られる様に上着を脱がされ、上半身が裸になった。
それを見つめる火憐。
「入ってくる?それともこのまま?」
このまま押し倒してもいいのかも知れない、いや駄目だろう。
どうすりゃいいんだ!
一歩、火憐が前に出た。
と、その時だった。
71 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:27:57.36 ID:MqTegvQo
リビングのドアが開き、そこに月火が居た。
「なんですか一体!ちょっと鉈買ってくる!」と月火が叫ぶ。
助かった!いや、これは助からない?
表に飛びだした月火を追う。
「まてよ!」
上半身裸で、中学生を追いかける図。
誰がどう見ても変態の仕業である。
次の瞬間、後ろから後頭部に飛び蹴りを喰らう。
僕はそのまま失神した。
最近、僕の中では失神がマイブームなのか?
目覚めると、そこは自宅、自分のベッドの中だった。
僕を囲むように、火憐と月火、そして神原と戦場ヶ原が居た。
「おお、目覚めた。阿良々木先輩、すまなかった。つい変質者かと思い本気で蹴ってしまった」
「お前か!」
確かに、僕の後頭部に飛び蹴り食らわせられるのは、この町じゃ神原ぐらいだろう。
それはいい、それよりも……何故、戦場ヶ原が居るのか?
何となくバツが悪くて、僕はそのまま布団の中に逃げる様に潜ってしまった。
「あらあら仕方が無いわね。神原、布団を剥ぎとりなさい」
戦場ヶ原に指示された神原は、僕の布団を盛大に捲り上げ、僕はベッドの上で晒し者となった。
72 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:30:48.07 ID:MqTegvQo
エピローグ
何故ここに居るのかという問いに、神原は答える。
「夕方、買い物に出かけたら、阿良々木先輩を見かけたんだ。自転車の後ろに可愛い女子を乗せていたので、驚き直ぐに戦場ヶ原先輩に電話したのだ」
「で?」
「勿論、そのまま追跡した」
「お前はストーカーか!」
「やっと追い付いたと思ったら、その女子を家に引き入れたので、これはもしや!と思いずっと表で張り込んでた」
「えー、なんで神原がそこまでする必要がある訳?」
「そ、それは。うん、その子がもしも朝まで出てこなければ諦めようかと……」
「何を諦めようだ!お前とは付き合わないって言っただろ!」
「謙遜するな、先輩」
「勘違いするな!」
「しかし、後ろに乗っていたのが火憐だったとは私も気が付かなかったよ」
「まぁ、見違えるからな私服だと」
そう僕が答えると少し恥ずかしそうにした火憐。
「で、月火は?」
「私は……何となくお兄ちゃんと火憐ちゃん二人だと心配で―――ほら、前の件とか。気になって帰ったらこの惨状だったの」
確かに、そんな事もありました。
「あっそ。でも戻ってきてくれて兄としての威厳は保たれたよ」
「お兄ちゃん、最初から威厳なんて無いよ?」
酷い、酷いよ月火ちゃん。
火憐と僕が過ちを犯しかけた事は二人して認めた。
未遂であり、何もなかった事を強調し。
73 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:33:26.21 ID:MqTegvQo
で、その後の戦場ヶ原の尋問。
「ふーん、阿良々木君は妹さんに本気だったの?下衆を通り越して鬼畜ね」
「いや、別に本気と言う訳では。何というか、雰囲気に流されて」
「あっそ。ところで妹さん、あなたはお兄様とどうなりたかった訳?」
「え、その……」
戦場ヶ原に詰問され、火憐は泣きだしそうだった。
「戦場ヶ原、悪いのは僕なんだ。だから火憐を責めないでやって欲しい」
「あら?別に責めてはいないわ。ただ、本気だったか、遊びだったか聞きたかっただけよ」
「ほんの出来心だよ、それに僕達は何もしていない」
「していないじゃなくて、出来なかったの間違いでしょ?どうしてこうも童貞は嘘を並べるのかしら」
「嘘なんて……」
僕の顔をじっと睨みつつ、戦場ヶ原は話を続ける。
「あら?いつもは童貞に反応するのに、今日は……もう捨ててしまったのかしら?ドブの中にでも」
ドブって・・・・・・
「あ、いや、まぁ妹達も居るし」
「まぁ、いいわ。その辺はじっくりと後で聞かせて貰うわ。中学生って色んな事に興味を持つ年頃だし、妹さんは遊びだったのよね?そうよね?」
肯定を要求する戦場ヶ原の質問に、火憐は小さく頷いた。
うん、それでいい。
「で、阿良々木君。今日の事はこれでお仕舞い。あとは……」
「別に話す事なんて何も無いよ」
「そう。では、今日はこの辺でお暇するわ。神原、帰るわよ」
「はい」
戦場ヶ原と神原が徐に立ち上がる。
74 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:37:48.58 ID:MqTegvQo
「あ、あのな」
僕は部屋から出ようとした戦場ヶ原を引きとめた。
「何?この期に及んで最後の言い訳?」
「いや、大事な話だ」
「何?」
「僕は……もう……」
意を決し、僕は何があったかを話そうと思った。
が……
「阿良々木君、言わなくても分かってる。貴方が辛い時って顔に書いてあるから直ぐに分かるの。だって、マジックの太字で書いてあるから」
「え?」
一瞬、鏡を探す僕。
「だから、あなたさえ良ければ―――いつでも帰ってきていいのよ。それと体育倉庫の件、怒ってないからね」
知っていた。
戦場ヶ原は全部知っていた。
「戦場ヶ原!」
「ねぇ阿良々木君、私も悔しいのだけれども、だからと言ってこの件で羽川さんを責めるべきかしら?そのウサギ並みの脳で考えても一目瞭然よね?」
「ど、どこまで知っているんだ?」
「全部。で、私に何ができるかしら?」
「出来ればそっとしていて欲しい」
「まぁ、この期に及んでまだ『欲しい』だなんて、なんて欲深い男なの!」
「じゃあ、なんて言えばいいんだよ!」
突然、言葉尻だけを取り豹変する戦場ヶ原には未だに慣れない僕。
75 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:40:16.98 ID:MqTegvQo
「そうね、―――
『今回の件は事故です。それも物損事故です。人身事故では無いので、示談で済ませます。
誰も怪我しなくて良かったです。どれもこれも戦場ヶ原さんのお陰です』
―――ぐらい言えないかしら?』
僕は素直に復唱した。
そんな僕を見て、火憐と月火がドン引きだった。
そりゃ、自分の兄貴が言葉で責められている訳で、それも激しく厳しく。
「ファイ―――妹さん達、ここからは大人の話をするから部屋から出て貰える?」
火憐と月火は「はい」と答えた後、素早く部屋から出て行ってしまった。
僕には「サーイエッサー」と言った様に見えたが?
「あと神原、あなたも」
「はい」
「その前に。阿良々木君の話だと、二人は付き合う付き合わない等と云う話をしていた訳?」
「あのそれは……」返事に困る神原。
「まぁ今回のお手柄と相殺したところで、私が完全放棄宣言していない所有物に手を出そうとした事は重大な過失よ」
「ご、ご、ごめんなさい」
「ちなみに神原も遊び?それとも本気?」
「あの、その、軽い冗談でした!」
神原は腰を90度に曲げ、戦場ヶ原に頭を下げた。
76 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:42:13.13 ID:MqTegvQo
「そう、なら仕方が無いわ。私、浮気には寛大なのよ。だから、阿良々木君が浮気したぐらいじゃ怒らないわ。ただ、本気だとね、分かるでしょ?」
「はい」と神原は小さく返事をした。
「阿良々木君を本気にさせたり、本気で取りにかかる相手は容赦しない。でも遊んでくれる相手には寛容なのよ、分かるでしょ?」
「はい、以後気をつけます」
「神原は物分かりが良くて助かるわ。これからも遊んであげてね。じゃ、出て行ってくれるかしら?」
「はい」
神原も退出し、部屋には僕と戦場ヶ原だけとなった。
「さてと……」
戦場ヶ原は僕が寝ているベッドに腰掛け、小さく頷く。
一体、何が始まるんだ!
77 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:46:01.15 ID:MqTegvQo
「阿良々木君」
「ひゃ、ひゃい!」
恐ろしさの余り、声が裏返ってしまった。
「本当に今回は御苦労さまでした。あれが怪異であったとしても私に言わないとした阿良々木君の男気に惚れなおしたわ」
「え?」
「惚れなおしたの」
「は、はい」
「はいじゃないでしょ?どうするの?戻ってくる?いいえ、戻ってきてくれる?」
デレた。戦場ヶ原がデレた。
初めてじゃないけど。
「でも本当にいいのか?僕は羽川と―――」
言い訳をする僕の唇を戦場ヶ原の唇が封印する。
「言ったでしょ、物損事故なの。壊れたのは彼女の膜だけ。他は何も壊れていないの。私達の関係も、兄妹の関係も、交友関係も」
「ありがとう」
僕は久しぶりに泣いてしまった。
泣きながら戦場ヶ原を抱きしめた。
抱きしめた戦場ヶ原も泣いていた。
「でも残念だわ」
「何が?」
「童貞って言って虐められないし」
「それか!」
「どうせ、私の事を処女だ処女だと馬鹿にするんでしょ?」
「しねぇよ!」
「そう。よかったわ。私は、変態鬼畜兄様って人前でも罵るわよ?」
「!!!」
78 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/04(土) 08:53:55.12 ID:MqTegvQo
今回のオチ
戦場ヶ原は校門前で登校して来た僕に気付き、膝カックンを入れようと背後に立ったら、メールが見えたらしい。
で、僕が走って行ったのを追いかけ、締め忘れたドアの隙間から全部見てしまった
だから全部知ってた訳。
その場で攻撃に移る事も出来たのだが、猫の姿を見て流石に怯んだとか何とか。
僕から事情を聞いた戦場ヶ原は怪異はどうしようもないにしても、その原因の羽川のストレスを解放する為に、戦場ヶ原は羽川に対し、戦略的宣言?なるものをした。
「羽川さんも阿良々木君を彼氏扱いしてもいいのよ?好きなんでしょ阿良々木君の事。
本当は譲っても良いんだけど、そうすると今度は私にストレスが溜まりそうなので、シェアしましょう。
話相手でも夜伽相手でも好きにしていいわ。
将来は、一夫多妻でもいいのよ?
だから、本気で私に挑みなさいよ」
戦場ヶ原に突拍子もない事を言われ、苦笑する羽川。
「なんだ、ばれてたのね。でも、私はそこまで野暮じゃないし、何となく、体の中が幸福感で満たされているから大丈夫。色々気を使わせてごめんね」
と、羽川は笑いながら一蹴した。
こうして、女の水面下?での戦いは終了し、平穏な日々が戻った。
以後、僕はブラック羽川を見る事は無くなった。
妹との関係も概ね良好、ただ僕と火憐が二人っきりで居る事は禁止されてしまった。
なので、休日は月火が一緒に遊びに連れ出している。
全て、元のまま。
ほんの物損事故程度だった……
1年後、僕達は各々の進路に進んだ。
宣言通り、羽川は進学せず―――シングルマザーになっていた!
「猫の嘘つきー!」
おわり
79 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:54:31.93 ID:kEm/2Rso
休日の朝から頑張るなwwwwwwwwwwww
支援
80 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:55:03.74 ID:1iqRFr6o
乙〜
81 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 08:59:58.53 ID:MqTegvQo
ここまで読んでいただき、有難うございました。
色々誤字脱字もあると思いますが、何卒平にお願いいたします。
AA板で化AAみて、C78で販売されていた「ホムンクルス・化猫騙」というを同人誌を読んで、書きなぐってしまいました。
今は反省しています。
また何か書く事があれば宜しくお願いいたします。
あと、基本的に全部書いてから投下というスタンス(途中で投下しながら書きなおしはあります)なので、先読校正してくれる読み手さんも大募集中です!
何か物足りない短編になりましたが、今回はこの辺で。
何か面白そうな組み合わせとかシチュがあれば教えてください。
書いてみたいと思います。
ではでは。
hanetsuba
82 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 09:03:17.56 ID:W3E6oSYo
何というスレタイ
乙乙
83 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 09:08:14.56 ID:MAtt/TAo
乙です
ちゃんと話がまとまってて面白かった
やっぱラララ木さんは天地がひっくり返ってもガハラさんを好きでいるんだな
84 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/04(土) 10:00:14.49 ID:aswXhjc0
乙乙!
投下スピードも速いし内容面白いし言う事無しです
ところでこのスレでまた何か書いてくれるのかな?
火憐ちゃんと神原が大好きだから、今度は神原主役のSS書いてほしいです
85 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 10:31:23.18 ID:MqTegvQo
>>84
神原の件、了解しました!
阿良々木でいいでしょうか?
八九寺を絡ませる案も浮かんでいます。
タイトルだけ仮で
神原「BダッシュのBはBLのBだ、先輩!」
書き終わるまでにスレがあればここで、無ければ立て直しで。
製作の良い所ですよ、スレが立てやすいってのは。
86 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 11:29:32.29 ID:89bJcmso
乙乙ー。楽しく読ませてもらいました!
87 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 17:43:10.46 ID:RU6Lg.SO
乙
神原は掘り下げると意外と面白そうなキャラだから期待してる
88 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 21:21:59.22 ID:ePZ4WCUo
これは期待
89 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/05(日) 00:40:22.63 ID:hU2cRgAO
忍に構ってばかりのアラララララギ君に対してひたぎさんが不器用に嫉妬するSSはまだなのか!!
90 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:07:04.17 ID:X44hR6Mo
>>84
阿良々木先輩、私のSSらしいが…
__,. -‐‐- ..
/.::::::::::::::::::::::`ヽ
/.::::::::::::::::::::::::::::::::ハ . -‐…‐-. .
-イ:::从::ゝ:::::::::::::::::::,>:'": : : : : : : : : : :`ヽ
从リヒハ:::::::::::::ー=彡. : : : : : : : : : : : : : : :ハ
く ノハノハ::// . : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
人- ///: !: : :从: : : : : i: : : : : : : :.}
ハー∠..ィ'/ 从: :/≧\: : ハ: : :i : : : ノ
/ {∧ハ/厶イヒV ´し'ヽ X: : : : ハ: : :ト
ノ V 〈 /ヽ/ iく ー‐ 厶ィノjノ ノ: :N
/ ヽ 〈,/ ∧ , }: :N、
く ∧ / ∧ ` イ ノ⌒7\
/ `ー一'' く /ー- .<\,/ // \
__/ / / \ / /} /`{トニ二.ィ∨ _ ヽ
/.::::/ /:: ‐-/ /ヽ/ / V 〃 V´ ̄ !
/.:::::::/ /.:::::/ /.:::::::::i / j 》 「 ̄ /
〉.::::/ /.::/ /.::::::::::::/ / 〈 {{ / /|
多分、酷い書かれようだと思うぞ
91 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:38:48.82 ID:X44hR6Mo
神原「阿良々木先輩!BダッシュのBはBLのBだ!」
ショートSSです。
誤字脱字は許してください。
では、始まります。
92 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:39:31.91 ID:X44hR6Mo
先日の騒動の後、戦場ヶ原から公認の公認をいただき、前にも増して気兼ねなく神原と遊ぶようになった。
戦場ヶ原に特に断りもせず、普通の友達同士が遊ぶように。
そんな元気溌剌と遊ぶ僕に、戦場ヶ原から話があるので家に来るようにと呼び出しがあった。
「どうしたんだ?」
「受験勉強はしているのかしら?」
「ああ、一応は」
「そう。遊んでばかりじゃ卒業も出来なくなるわよ?」
「ああ、その辺も大丈夫。それより、何の話?」
「ねぇ、最近何か変ったと思わない?」
「え?何?僕の事?戦場ヶ原の事?」
「神原の事よ。ウサギの脳からスズメの脳に格下げよ、阿良々木君」
「はいはい」
「はいはい?チュンチュンと返事をしなさい」
「スズメの脳で人間の言葉が話せるだけ凄いと思え!」
「あら?今日は逆切れ?何か良い事でもあったのかしら?」
「別に何にもないよ」
「そう。では、続きを」
「神原のどこが変ったんだ?」
「そうね。なんて言うか、阿良々木君と遊んでいる時の彼女って普通すぎるわ」
「普通?」
93 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:39:56.71 ID:baA0wV60
∧_∧
(0゚・∀・) ワクワク
oノ∧つ⊂)
(0゚(0゚・∀・) テカテカ
∪(0゚∪ ∪
と__)__)
94 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:41:45.06 ID:X44hR6Mo
「ええ、普通。普通の女子が男子と遊んでいて楽しそうにしている様で―――気持ち悪い」
「気持ち悪いってなぁお前。そりゃ神原だって女の子だし、ときめいたりもするだろ」
「ときめき……」
「ときめきと言っても、恋じゃないぞ!断じてそれは無い。遊ぶのが楽しいって言う意味だ」
もしかして、戦場ヶ原は僕と神原が遊ぶ事を快く思っていないのか?
「そんなに強力に言い訳しなくても良いわよ。別に疑っている訳ではないし。共に仲の良い兄妹みたいな感じよね」
「ああ、お前の言う白黒の話で言えば『浮気』の方。断じて、『本気』の方じゃない。勿論、遊び相手であってそれ以上ではないからな」
「そう。でもあの子、変だわ」
「だから、どう変なのか、僕には分からない」
「男子には分からないかも知れないけど、あの子から―――」
「神原から?」
「あの子から百合成分が欠落しているわ」
百合成分。
確かに、物事を成分比率で表現する事はある。
戦場ヶ原に関しては、悪意という成分が殆どだが。
「は?何その成分。全くよく分かりません。出来たらその成分の化学式でも書いて貰おうか」
「スズメの脳で化学式が理解できるとでも?」
「ごめん、普通に化学式が理解出来ません」
結局、なんて事は無い。
戦場ヶ原的主観で神原を見ると、以前とは違っていると云う事だった。
で、僕はその裏付けをするよう命じられる。
偶然と言うか、確定事項である月2回の神原部屋清掃日であった今日、その原因を僕は発見する。
僕は、戦場ヶ原の家を出て、その足で神原邸へ向かう。
95 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:43:16.54 ID:X44hR6Mo
「いつもすみませんね」と神原の祖母に挨拶され、神原の部屋に案内される。
案内される事も無いのだが、一応は他人の家なので形式的に。
神原の部屋の前で祖母と別れ、軽く扉をノックする。
「阿良々木先輩か?入ってます、何も入れてはいないが。というか、この部屋に鍵は無いのでどうぞ!」
相変わらず、端的に物が言えない奴だ。
「お邪魔するよ―――」
僕はそこで驚天動地というか震天動地というか、どっちも同じ意味だが非常に驚いた。
「なんだこの部屋は!」
僕がそこで見たのは、青々とした畳に整頓された本棚。
いつもBL本に囲まれた神原の寝床―――布団らしき物があった所にはベッドが置かれていた。
「こりゃ一体……何があった?」
神原は少し恥ずかしそうに話し始める。
前回の掃除の後、祖母が部屋に来て辛辣な一言を言ったらしい。
「いつまでも私達は生きていないし、かといって阿良々木さんも来るとは限らないよ」と。
まぁ、それは当たり前の事だし、誰が考えても分かる事。
ただ、そんな事で神原が気持ちを入れ替え、部屋を綺麗にするとは思えない。
「で?努力でもしたのか?」
「いやそうじゃないんだ、先輩」
「なんだ?」
「その……散らかすものが無い」
「無い?」
「ああ、ここにあった私の宝物は全部無くなった!」
96 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:43:53.78 ID:X44hR6Mo
「何で?」
「捨てられた」
「誰に」
「祖父に」
「いつ?」
「阿良々木先輩が掃除してくれた翌日。おまけにベッドまで来た」
「うーん……成程」
「一度読んだ本を、もう一度買うのは気が引ける。ここにあるなら読み返しもするのだが、態々買うのもどうだろうか?と思うのだ」
確かに、それは言える。
絶対に必要なものでない場合、無くしたりしても再び買う事などないのが普通。
で、読み物が無くなって成分が薄まったと云う事か!
「で、お前はこれでいいのか?」
「先輩的には?」
「そりゃ綺麗な部屋なら僕の労力も軽減されるし、問題は無い。ただ―――」
「ただ?」
「お前にストレスが溜ったりしていないかなと」
「先輩は本当に優しいな。あの時、死んでもいいから戦場ヶ原先輩から奪うべきだった」
「死んだら意味ねーよ!」
「まぁ、そういう事で最近は家に帰ってもする事が無いので、食う寝る以外は近寄らない様にしている」
「何か表現が違うような気がするが?」
「正直、あまり家に帰って来たくないのだ」
僕も大事にしていたポケモンカードを父親に捨てられ、プチ家出した事を思い出した。
97 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:45:40.18 ID:X44hR6Mo
「そうか」
「そうなんだ、阿良々木先輩」
「なら、新しい本を買えばいいんじゃないか?」
「それが……祖父から『次にこんな卑猥な本を買ったら小遣いはやらん』と言われた」
「おお!お前のところの爺さん婆さんも進歩したな。今までが甘すぎたんだよ」
「笑い事じゃない!このままじゃ私は死んでしまうかも知れない」
「それぐらいで死んだりするか!」
「唯一、気が紛れるのは阿良々木先輩と遊んでいる時だ」
「そうか。なら遊びに行けばいい。今からまた出掛けよう。その方がいい。だから―――」
「ん?」
「さっさと着替えろ」
「気がエロとは私に何を要求するのだ、阿良々木先輩!」
少々、神原の事が心配になった。
僕は一旦部屋から出て、縁側の廊下で神原が着替えるのを待つ。
いつものタンクトップ+パンツ一丁から着替えて出てきた。
「お、お前!何だよその格好!」
「え?駄目なのか?」
「駄目じゃないが、今日は晴れだぞ?それに、その合羽は僕のトラウマを刺激する!」
神原は僕を襲った時の雨合羽姿で登場した。
「あはは、ほんの冗談だ。直ぐに着替えてくる」
神原は部屋に戻り、2分後には着替えを完了して出てきた。
「は、早ぇ」
「そりゃそうだ阿良々木先輩。先程の合羽の下には何も着けていなかったからな」
神原から変態成分は微塵も失われていなかった。
98 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:46:50.67 ID:X44hR6Mo
というか、百合成分が薄まった分、その他の成分が増量しているのではないだろうか?
下手すると、今まで取れていたバランスが崩壊し、酷いキャラになるかもしれない。
「どうした?先輩」
「あ、いや。何でもない」
神原もまた、うちの火憐と同じく、私服を着れば可愛いのにジャージや制服を普段着にしたがる。
まぁ、火憐に比べれば私服を着ても……おっと、兄馬鹿だな。
今日の神原は、黒いタンクトップに白いシャツ、カーゴパンツにスニーカーという僕が着てもおかしくない井出達だった。
「今日は帽子を被らないのか?」
「先輩は帽子萌えなのか?」
「なんだ、その萌えは!最近、なんでも萌えを付ければいいって風潮はけしからん!」
「何を言う、先輩。帽子萌えは立派なジャンルを確立しているぞ」
僕の知らない所では、ちゃんと確立されていたのか。
「朝、小学生が黄色い帽子を被って登校する姿、萌え以外の何ものでもないだろ?」
全く意味が分からない。
というか、八九寺に黄色い帽子を……むふふ。
「どうした先輩、顔が変だぞ」
「あ、いや。すまん。帽子萌え、確かに確立されていそうだ」
「ああそうだろ。ちなみに今日のこの格好に合う帽子が無い。もし、合いそうな帽子があるならプレゼントしてくれたまえ」
神原の日本語は非常に丁寧だが、何故かムカつく時がある。
素直に甘えて「買って頂戴」と言えないのだろうか?
99 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:48:04.15 ID:X44hR6Mo
さて、今日はどこに行こうか?
「とりあえず、お茶でも行こうか?」
「いいですよ。お店は阿良々木先輩に任せます」
「なら、ファーストフードでいいか?マックに行こう」
ハンバーガーでも食べながら、今後の対策について考えるとしよう。
僕らが家を出て、マックに向かおうとした時、僕の足が止まる。
正確には止められる。
物凄い力で、その方向への歩みを阻止されている。
「ん?先輩どうした?」
「いや、なんでもない」
「行きますよ」
「ああ」
しかし、一向に足が地面から離れない。
「どうしたんですか?」
「どうも僕の足はそちら側に行くのを拒んでいるようだ」
「おかしな事をいう先輩だな」
神原は僕の手を取り、思いっきり引っ張る。
が、それでも足は動かない。
「あれ?どうしたんだ?何か……」
「いや心配するな神原、原因は分かっているから」
「どうすれば離れる?」
「とりあえず、神原。ハンバーガーはやめて、ドーナツにしないか?」
「え?別に構わないが。阿良々木先輩がそれで良いと言うなら」
「ああ、助かる。ドーナツ屋の方へ歩いてくれ」
神原がマックからミスタードーナツの方へ方向転換すると、僕の足は地面から離れた。
100 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:49:58.64 ID:X44hR6Mo
(そう言えば、最近忍にも構ってやってないな)
「おお、足が離れた!先輩、それは何と言うマジックだ?」
「マジックじゃねえよ。超常現象の類だ」
「ほー、凄いな。流石、阿良々木先輩だ」
「別に褒められても嬉しい事じゃない」
僕達はそんな話をしながらミスタードーナツを目指す。
神原は相変わらず馴れ馴れしく、僕の腕にしがみつく。
これが学校の中で、結構な噂となっている。
『2年の神原さんがバスケ部を辞めたのは男が出来たから』
『その男は、3年の戦場ヶ原さんとも二股を掛けている』
『その男に揉まれると乳が大きくなる―――らしい』
などなど。
ちなみに、一番最後の情報源だけは特定できている。
そんな事よりも、3年にもなって学校で噂の渦中に身を置くとは思いも寄らなかった。
店に到着し、適当に頼み、適当な席に座る。
「先輩、そのドーナツの量はなんだ?箱2つとは?」
「ああ、気にするな。一つは居候の分。一つは戦場ヶ原への土産だ」
「この後、戦場ヶ原先輩の所に行くのですか?」
「そのつもりなんだけど」
「私も御一緒していいか?」
「ん?ああ、問題は無いと思うが、一応聞いてみる」
僕は電話を取り出し、戦場ヶ原へ架ける。
「―――という事なんだが、いいか?」
101 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:51:34.32 ID:X44hR6Mo
答えは自由選択だった。
「別に来てもいいわよ。その代り、私の前でベタベタしない様に。それは本気と見做して―――」
本当に困った人だ。
鵜呑みにすると後で酷い目に逢う。
かと言って、疑って構えるとその事を責められる。
「とりあえずOKみたいだ。食ったらいくか?」
「はい!」
少しの時間、僕は神原と他愛もない世間話で時間を過ごす。
で、さっき買ったドーナツの箱を神原が見ていない隙に足元の影に落とす。
影の中に箱が吸い込まれ消えて行った。
(これこそマジックだな。これで一財産築けそうだ)
「さて、戦場ヶ原のところまで競争して行くか」
「何!先輩、私に走りで勝負を挑むのか?」
「まぁ、ハンディを貰うからな」
「まぁ、多少のハンディなら致し方ない。では、その条件を聞こうか」
僕はドーナツの箱を神原の頭の上に乗せる。
「先輩、これは何の冗談だ?」
「その箱に触ってはイケないぞ」
「何?」
「それは戦場ヶ原へのお土産だ。落とすなよ。落とすと戦場ヶ原に怒られるぞ、嫌われるぞ」
鬼畜的発想をする男がいた。
勿論、僕だった。
102 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:52:59.05 ID:X44hR6Mo
「これでは走れないじゃないか!阿良々木先輩」
「ああ、そうだ。だから競争になるんだよ」
「何?」
「走らなければ勝負になる、だから競争を挑めるって事だ」
「成程、阿良々木先輩は頭がいいな」
神原もまた、うちの火憐と同じで非常に素直で単細胞だった。
神原は頭の上の箱を落とさない様に、千鳥足で戦場ヶ原邸へ向かう。
その姿が余りにも可笑しく、人目を集め過ぎたので途中で競争は止めにした。
面白さも度が過ぎれば、ただの虐めだからな。
戦場ヶ原の家に到着し、そのまま上がり込む。
「あら?もうきたの。お帰りなさい」
「いつからここが僕の家になった?お帰りなさいだなんて、照れるじゃないか」
「勘違いしないで。高貴な私が下衆な阿良々木君と住むなんて有り得ないわ。今すぐ『お帰りなさい』阿良々木家に」
「そっちの意味でかよ!」
ツッコミながら僕はドーナツを戦場ヶ原に渡す。
「こんな物で、私の処女を得ようだなんて、卑劣ね」
「お前、本当に大丈夫か?」
「悔しいわ。以前なら『流石童貞、物で釣ろうとしているのね』と言えたのに」
「やっぱり、今でも怒ってる?というか、気にし過ぎだろ!」
「気になんてしていないわ」
「ふーん、そうか」
「ええ、そうよ。で、今日は何の用かしら?」
「ああ。報告に来た」
「何の報告かしら?」
「えっと……」
103 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:54:34.45 ID:X44hR6Mo
この時、僕に悪意が芽生えた。
「実はな、童貞を卒業した上に、複数の女性と関係をもった事を報告に来た」
「それはどういう事かしら?」
「いや、神原相手に頑張ったと―――」
その瞬間、僕の先頭部にコンパスが突き付けられた。
「それは浮気かしら、本気かしら?返答次第では貴方にもドーナツになって貰うわ」
目が本気だった。
少し調子に乗り過ぎた。
「ごめん、全部ウソです。許してください」
神原の方に目をやった途端、
「戦場ヶ原先輩、今のは阿良々木先輩が勝手に作った冗談です、私は関係ありません!」
保身に走る神原。
「そういう冗談は好きじゃないわ。まぁ、今回はこれぐらいで―――」
コンパスの針が軽くおでこに当る。
「コン」と音がして。
「いて!」
赤い点から少しだけ血が落ちた。
僕の影の上に。
その血は跡かたもなく、ドーナツと同じように吸い込まれ消えた。
「あら、ごめんなさい。引くつもりが押してしまったわ」
そう言いながら、戦場ヶ原はタンスの上の薬箱から絆創膏を取り出し、僕のおでこに貼ってくれた。
別にこのぐらいのキズ、絆創膏なんて要らないのに……
が、よく見たらテープの部分が眉に掛っている。
「剥がす時は―――私が剥がすから」
戦場ヶ原に勝負を挑む時があるなら、全身の毛を剃り挑まなければならないと、僕は確信した。
104 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:56:24.71 ID:X44hR6Mo
「で、本当の話は何?」
「ん、あのな……」
何かを察した戦場ヶ原は、神原にコーヒーを入れる様に指示する。
神原もそれにしたがい、台所へ向かった。
「成分の件だが」
「あの件ね」
「実は―――」
僕は今日、見聞きした事を全部話す。
「そう。それが原因だったの」
「どう思う?」
「どうもこうもないわ。理由さえ分かればそれでいいの。御苦労さま」
「おい、それは無いんじゃないか?本人も少し参っているみたいだし」
「別に何の問題もないわ。というか、そういう不埒な世界から足を洗うと言うのはいい事よ」
確かに、戦場ヶ原の言う事は一理ある。
女子として、普通に男女間の恋愛に興味を持ってほしいと言う、戦場ヶ原の先輩として、姉貴分としての願いだろう。
「そっか。それならこの件は終わり。また何かあれば報告するし、相談する」
「ええ、そうして頂戴。一応、釘を刺しておくけど、普通の恋愛に目覚めたからと言って、相手が貴方であった場合、双方共切り捨てるので」
「分かってる。僕はその……戦場ヶ原一途だから」
「ふーん。三途の川に何度も足を運んだ人がよく言うわ」
「そのうちの半分は、お前が行かせたんじゃないか?」
「あら?タダで旅行が出来てありがたいと思いなさい」
本当にこいつは恐ろしい。
あの世行きのフリーパスを無尽蔵に持っていそうだし。
話を終える頃、神原がコーヒーを入れ戻ってきた。
105 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 18:58:03.81 ID:X44hR6Mo
「どうぞ」
神原が淹れたコーヒーを僕と戦場ヶ原が口にする。
そして、二人して吹き出した。
塩味のコーヒーだった。
「ミルクが綺麗に渦を描いたろ!」
そんなツッコミも、苦虫を噛み潰した顔をする戦場ヶ原の前では何の意味もなかった。
「神原、砂糖と塩の違いが分からないだなんて―――少し修行が必要ね」
先に帰された僕は、その後神原がどんな修行をしたのか、知る由もなかった。
火憐&月火
(略)
106 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 19:05:17.39 ID:X44hR6Mo
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「ambivalent world」
∠;:'::::::|::i:::::::::::::::;/:::::/|:::::::::::/' |:::|ヽ:::::::ハ
/:::__::::|::|::::::::::j/'/::;/ |::::::::/ー/:/‐-|::::::i:|
'´ ̄/::::::|::|::::::::://;/- /::;/ /.'-‐ l::::::|::|
∠:;':::::|:;|/|:::/,_'__,,ノ '"´ ヽ、.__,, |::::::|::| ♪しゃーかーりーきなー今日でもー
|::::::〈 {|/ ´" 〉 ゛`ノ:::;ハ::|
|:::::::∧_,ハ _ '"/'´〉 `
j:;/|::::::::∧ / .ハ /_,ノ
'" ノ:;/|::::::ヽ、 `ー‐´ /::::|
'"´ |:::::::∧.ヽ、 ,.ィ:´:::∧:|
|:/ ,∧ ` ´ 八::::/ `
,.-‐─‐-.、__,/ {.ヽ. ,' /`\__,.-‐─‐-、
/ | |‐-゛ / / \
/ | | / / ∧
アニプレックス・西尾維新・シャフト
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107 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 19:06:41.07 ID:X44hR6Mo
翌日放課後
「阿良々木先輩。因幡の白ウサギって凄いな」、校門前で待ち構えていた神原が話しかけてきた。
「ん?どうした?」
「いやー、塩って凄い」
何が凄いのかその文からは把握できなかったが、昨日の事を思い出し何となく理解した。
「今日もどこかに行きましょう」
一応受験生な僕を遊びに誘う神原。
まぁ、息抜き程度なら構わないが……
「で、今日は何をしたい?」
「なんでも。阿良々木先輩と居られるなら」
その発言は本当に恐ろしい。
頼むから、一線は越えないでくれよ。
とりあえず、校門を出て街へ向かう。
相変わらず神原は僕に馴れ馴れしくし、他の学生の視線を集める。
少し離れてくれないと、僕が死線を彷徨うことになる。
若しくは神原が四川あたりに売り飛ばされるかもしれない。
と!その時だった。
視線の遥か先に、ツインテールの小学女子を発見する。
(八九寺!)
髪型、服装、リュック。
どれを取っても間違いなく八九寺。
が、いつものように背後から忍び寄り抱き付けない。
何せ、今僕の横には神原がいる。
100m程先を歩く八九寺に、僕達は少しづつ近づく。
手が届く距離まで来た時―――
108 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 19:08:18.30 ID:X44hR6Mo
「阿良々木先輩、この子の髪型可愛いね」と神原が言った。
「ああ、そうだな」
と言った所で、僕も振り向いた八九寺も驚く。
「え!」
「ええー!」
「阿良々木さんが褒めるなんて地球の終わりの始まりです!」
「いや、驚くのはそこじゃねぇ!」
「ああ、いきなり抱きつかなかった事にでした」
「違うだろ!」
「ん?阿良々木先輩はこの子と知り合いなのか?」
見えている。神原には八九寺が見えている。
何かを察したように八九寺の動きが変る。
少し身構えたように見えた。
「阿良々木先輩、この子は?」
「ああ、僕の知り合いで八九寺。八九寺真宵って言うんだ」
「へー。八九寺ちゃんか。宜しくな」
「私、あなたの事が嫌いです」
八九寺は自分の任務を忘れてはいなかった。
「嫌われていますね。私は何かしたか?阿良々木先輩」
「いや、こいつはこういう反応をするんだ。初対面の人には」
「阿良々木さんには30回以上遭遇していますが、今でも嫌いです」
109 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 19:09:40.80 ID:X44hR6Mo
少し落ち込んだ。
確かに嫌われてもおかしくない事を何度となくやっているからな、僕は。
「はは、しかし可愛い子だな。幾つなの?小5って書いてあるから11歳か」
神原は八九寺に構おうとする。
それ以上すると噛み切られるぞ……
「止めてください!」
頭を撫でようとした神原を拒む八九寺。
が、神原の動きは早く、既に右手が八九寺の頭を撫でていた。
「止めてください!」
が、神原は―――
僕以上の動きで八九寺を撫でまわす。
「ああ、可愛い。何故にこんなに可愛いのだろうか?持ち帰って家で色々分解してみたい」
危ない発言の神原に、珍しく僕に助けを請う八九寺。
「その辺で止めておいてやってくれ、神原」
僕に制止され、ようやく神原は手を止めた。
止めた手は既に八九寺の制服の中、胸のあたりにあった。
(僕でも生触りはしていないのに!)
少しショックだった。
110 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 19:11:37.76 ID:X44hR6Mo
「な、な、なんですか、この女装した変態は!」
八九寺は憤りを超えて、放心状態一歩手前で僕に質問する。
「えっと、僕と戦場ヶ原の後輩。神原駿河って言うんだ。一応女子だ」
「そ、そうですか」息を切らしながら、距離を取る八九寺。
「ごめんな、神原は百合でロリでBL嗜好なドMストーカーな上、露出狂でエロ奴隷で、最近まではゴミ屋敷住人でもあったので、お前みたいなのに弱いんだ」
「阿良々木さんの御友人はそんな人ばかりですね!」
「そうか?羽川なんて結構普通だと思うが?」
「え?」
八九寺が驚いた。
「あの人が普通だなんて!どう見ても委員長キャラを作り上げている淫乱妄想電波ドSでしょう!」
なんて事を言うんだ!
忍野ですら、委員長の中の委員長と太鼓判を押したのに!
「で、この痴女さんと阿良々木さんは何をされているのでしょうか?」
「放課後暇なので、ぶらぶらしていた」
「イヤラシイ。ブラブラさせるのを自慢するなんて!」
「おいおい、お前も大丈夫か?八九寺」
「どうせするなら、ラブラブしてください」
それは殺されるので無理だ。
「ちなみに私はブラはしていない。もちろん下もだ!」
神原は色々と間違ってるよな、やっぱり。
そんな馬鹿な話を延々とやって、小一時間過ごした。
まぁ、最後は八九寺と神原は結構仲良くなったけど……
お互い、話せば共通の話題があるようで、僕は少し蚊帳の外みたいな感じだった。
111 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/06(月) 19:12:17.67 ID:X44hR6Mo
八九寺と別れた後、神原邸経由で家に帰る。
「阿良々木先輩、今日は有難う。本当に気が紛れたよ」
「ああ、そりゃ良かった」
「特にあの八九寺ちゃんに会えたのは本当に良かった」
「お前ら、気が合いそうだな」
「女子同士、男子には言えない話も出来ました」
「お前、そんなに男女区別して話すか?」
「趣味の世界だけは別なのだ」
「そうですか、そうですか。ご自由にどうぞ」
今日付けで、僕の心の中の『可愛い女子ランキング』から八九寺の名前が消えた。
その代り『駄目な奴ランキング』にランクインした。
家に入る神原を見送る。
少し寂しそうだった。
帰っても自分の好きなモノが一つもない状況だから。
だから、八九寺に出会えたんだな。
まぁ、そのうち見えなくなればいいな。
112 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:16:35.10 ID:X44hR6Mo
豫 告
全クケシカラン猿ダ
__________________________
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| __ _ |
| `ヽ::ハ ,ィ':,'´ |
| }: } /: / |
|:─:‐:-:.、/:/ {: :{_,.:-:‐:─:─:-|
|: : : : : : : ::`ヽ、 ,、 ,>': : : : : : : : : : |
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| } / └─‐ヽ、 ヽ、__,.、 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
火憐だぜー!
月火だよ!
今回は兄ちゃんが結構まともで妹として安心だぜ
だよね、お兄ちゃんが暴走すると……ハラハラするもんね
だよな、兄妹とか思われるの嫌だもん
でも、火憐ちゃん今回も名前だけ出てるね
ああ、馬鹿にされてるけどな
いいじゃない、褒めれててるし
そ、そうか?
私なんか、予告だけだよ?いっぺん作者を鉈で(ry
あーもう時間!じゃまたー!
次回「するがモンキーその六」
113 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:18:36.58 ID:X44hR6Mo
数日後、教室で戦場ヶ原と羽川と話し込んでいると、見慣れない女子が教室の前で呼んでると、クラスメイトが報告に来た。
「あら、ハブラギ君にお客様だなんて」
「僕はそんなにハブられていますか!」
「誰だろ?見た事無いわね。下級生かしら?」
羽川の推察通り、その女子は1学年下の女子で、神原のクラスメイトであった。
話を聞くところによれば、ここ数日神原が学校を休んでいるらしい。
確かに、全然会わなかったし、校門で待ち伏せもされなかった。
とりあえず話を聞いた僕は、心当たりが無いとだけ伝えた。
「と、言うことらしい」
僕は席に戻り、一部始終を話す。
「てっきり新しい彼女かと思ったわ」
戦場ヶ原のコメントは返事がし辛い。
「神原さん、何かあったの?」
羽川が心配そうに聞く。
「いや、多分風邪じゃないか?理由は良く分からないけど、一応、学校には連絡して休んでいるそうだ」
「そう。神原が風邪ね。それは阿良々木君が東大に合格する様な物ね」
「は?」
「どっちも有り得ないって事」
「そうまで言ったら阿良々木君が可愛そうよ」と羽川が助け舟を出すが、戦場ヶ原は鼻で笑ってあしらった。
114 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:19:31.09 ID:X44hR6Mo
「今日、学校が終わったらちょっと見てくる」
「ふーん。最近、神原の事にえらく御執心ね」
「いや、そういう訳では……」
「私が学校を休みがちだった時にはそんな素振りも見せなかったのに」
「おい!その頃のお前は完全に他人を排斥してただろ?」
「そうかしら?私はずっと声を掛けてくれるのを待っていたのよ?阿良々木君」
「あー暑い暑い!もう好きにしちゃって!」
羽川は、僕と戦場ヶ原の夫婦漫才に飽きたのか、自分の席に戻ってしまった。
「とりあえずお前も来いよ」
「いやよ」
「なんで?」
「面倒だし」
「面倒って……」
「何かあったとしたら、それは神原自身の問題か、阿良々木君との問題でしょう。私がそこに割って入る余地なんて無いわ」
正論の様で正論でないような気もするが……とりあえず、僕だけでも行ってみる事にした。
115 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:21:29.84 ID:X44hR6Mo
神原邸
門をくぐり、玄関を開け、声を掛ける。
奥から、神原の祖母が出てきた。
「こんにちは。駿河さん、大丈夫ですか?」と尋ねると、祖母は少し俯き加減に答えた。
「それがね。いくら呼んでも返事をしないんです。かと言って、食事を取らない訳じゃない。いつもの倍は食べるんですよ。なのに、学校は休むと……」
「ちょっと上がらせて貰っていいですか?」
「ええ、どうぞ」
僕は、家に上がらせて貰い神原の部屋へ向かう。
いつものようにノックする。
が、今日は返事が無い。
「神原、居るんだろ?僕だよ、開けていいか?」
その問いかけに、何か慌てたかのような物音がした。
しかし、返事は無かった。
「おい、神原。いるんだろ?皆、心配してるぞ。顔ぐらい見せてくれよ」
少しの沈黙の後、神原が返事をした。
「阿良々木先輩、すまないが帰ってくれないか」
「なぁ、どうしたんだよ?健康優良児代表みたいなお前が学校を休むなんて」
「なんでも無い。少し体調が悪いだけだ」
「それなら医者に行ってみないか?それとも―――左手の調子が悪いのか?」
僕は、脳裏に神原の左手が何か起きているのではと訝った。
116 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:22:11.64 ID:X44hR6Mo
が、神原はその件に対しても
「腕はいつもと変わらない。ただ少し気分が優れないだけなんだ。だから先輩、帰ってくれ」
言い訳、のち沈黙。
また静まり返った部屋の前で、僕は禅問答の如く神原に話しかける。
が、その日はそれ以上の進展は無かった。
これ以上神原を責めても、本当に精神的な病の場合は追い込む事になるので、僕は諦めて帰る事にした。
ただ気になるのは……
鍵の無い神原の部屋の戸が開かなかった。
恐らく中から閂の様な物をしているのだろうか?
ちなみに祖母に聞いたように、食事だけは確実に食べている。
一つも残さず、ペロリと。
なので、体の心配はなさそうだ。
あとは……やはり本を捨てられた事で少し参っているのかもしれない。
僕は一つ閃いたので、明日実行する事にした。
117 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:23:39.65 ID:X44hR6Mo
翌日、学校帰りに戦場ヶ原に声を掛ける。
「どうしたの?阿良々木君から下校時に声を掛けるなんて何かあったのかしら?」
本当にこいつは白々しい。
何でもお見通しの癖に。
「言っとくけど、私は今回の件、全く関係ないので何も協力しないわよ」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないか?」
「神原が休んだぐらいで、阿良々木君が色々と気を揉むのもどうかと思うんだけどその辺はどうなのかしら?」
「お前、僕達みんな友達じゃないか!」
「友達?あら、私と阿良々木君もお友達に成り下がってしまったのね。やはり、私より若い神原がいいのかしら?」
僕はその時やっと気が付いた。
嫉妬。
戦場ヶ原は嫉妬している。
神原と遊んでもいいと言ったが、後悔しているという様な状況だろうか?
確かに、神原と遊び過ぎた感はある。
しかし、それは公認と言う形で―――
あっ……
僕が馬鹿だった。
鵜呑みにした僕が馬鹿だった。
公認だからといって、戦場ヶ原に断りもせず、報告もせず遊んだ事が原因だろう。
僕は素直に謝った。
118 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:25:21.85 ID:X44hR6Mo
が、結果はスルーされただけだった。
別に怒ってなどいないと言う。
今後も、一々報告などしなくて良いとまで言われた。
だからって、僕等の関係が壊れてしまう訳でもないらしい。
じゃあ、なんでそんなに拒むんだ?
「阿良々木君、今回の事は怪異でもなんでも無くて、神原自身の問題なのよ」
「それは分かってる」
「なら、彼女自身が自分で何とかしなきゃダメなんじゃないかしら?あまり甘やかすとあの子の為にならないわ」
「そ、そっか…」
確かに、言われてみればその通りだ。
僕達は、怪異がらみでは―――忍野の言葉を借りれば勝手に助かったが、その行動の中に少なからず誰かの力を借りた。
今回の神原の件は、誰かの力でどうにかできる物じゃないというのが戦場ヶ原の意見。
「でも、彼氏が困っているのに、それを放置するのは私の気が引けるし、阿良々木君を助けられるのなら、多少の尽力は惜しまないわよ?」
そこまで言うんだったら、最初から協力しろよ!
やっぱり、神原と遊び倒したのが癪に障ったようだ。絶対にそうだ!
謝って正解だったな。
119 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:27:30.45 ID:X44hR6Mo
「で、どうすれば神原の機嫌が良くなるのかしら?」
「それだけど―――」
「阿良々木君、本気?」
「ああ。一応真面目に考えた」
「ふーん……本当にその為だけなの?」
「ああ、そうさ」
「写真でも撮って、私を強請ろうと思ってるんでしょう」
「そんな事しねぇよ!」
「そう。分かったわ。では、一度家に帰って着替えましょう」
一旦、戦場ヶ原の家に行き、戦場ヶ原が着替えるのを待つ。
着替えて出てきた戦場ヶ原の姿は―――
髪を三つ編にし、かわいらしいブラウスに地味なロングスカートにショートブーツ。
何より、伊達メガネという格好で、正直どこかの委員長かと思った。
「一応、これは変装だからね。あと、私がそこに居る間、あなたの携帯は預かるから」
僕が戦場ヶ原にお願いしたのは、神原の好きなBL本を買って来て貰う事だった。
僕がお店に行って買えばいいことだが、流石に99%女性の店内に足を踏み入れるのは躊躇した。
そもそも店の名前が『乙女書店』の段階で、男子禁制だろう。
『早乙女書店』なら入店する事は出来ただろうが。
「ところで阿良々木君、何故お店の場所まで知っているのかしら?」
「ああ。何度と部屋の掃除をしている時にブックカバー見て覚えてたんだ」
「そう。てっきり阿良々木君もここで本を購入しているのかと思ったわ」
「購入出来るんなら、既に買ってるよ!」
「それもそうね」
「じゃ、買ってくるわ。ここで待って居て頂戴。間違っても出入りする私を写さないでね」
と念を押された。
120 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:28:48.33 ID:X44hR6Mo
携帯は預かって行くと言ってたが、
「店内で恐ろしい目に逢いそうになったら電話を鳴らすから直ぐにきて」
と言う事で、取られずに済んだ
本屋で危険もないだろう。
例え、特殊な趣味の人でも、一応は自制するだろう。
が、戦場ヶ原が入店して20分が過ぎた辺りから、少々心配になってきた。
一向に出てくる気配が無い。
かと言って、店の中は外から殆ど見えない。
心配になって、一度電話してみた。
「もしもし?」
「はい、何かしら?」
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。今、新刊とやらを販売しているコーナーに辿りついたので、今から選びます」
「了解」
僕は一安心して、電話を切った。
手持無沙汰なので、自販機で缶コーヒーを買い、それを啜りながら携帯のゲームで時間をつぶす。
で、さっき電話してから1時間が経った。
おかしい……
何かあったのだろうか?
もう一度戦場ヶ原に電話をする。
121 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:30:59.36 ID:X44hR6Mo
「もしもし、何かあった?」
「ええ、あり過ぎてどれを選べばいいか分からないわ」
「えっ……」
「今、いいところだから後でね」
切られた。
どうやら、戦場ヶ原は新刊コーナーの本を片っ端から読み漁っているようだ。
それから30分ほどして、紙袋を抱えた戦場ヶ原が出てきた。
「買ったわ」
「御苦労さま」
「ええ、本当に凄く苦労したわ」
「えっと……本が多くて?」
「いえ、内容が濃くて。つい読み耽ってしまったの」
「目覚めんなよ!」
「まぁ目覚めるのは別として、ああいうのも悪くないわね。神原には先見の明があったのかしら」
短時間の間に、戦場ヶ原が毒されている。
恐るべしBLの世界。
「阿良々木君も読んでみる?」
「いや、結構」
危うく、危ない世界に連れて行かれそうになった。
そこからバスに乗り、神原邸へ。
というか、このバスの距離をあいつは走って行ってたなんて、ある意味凄い。
122 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:32:05.37 ID:X44hR6Mo
家に到着し、いつものように上がり込む。
しかし、前日と同じように神原は殆ど話をしてくれない。
そんなやり取りの最中、僕より短気な戦場ヶ原が先に切れてしまう。
「神原。いい加減に開けなさい。貴方の為に変装までして本を買いに行った私を愚弄する気?開けないと―――」
戦場ヶ原が、扉に蹴りを入れる態勢を取った時だった、閂が外れる音がした。
「すみません」
神原は小さく謝りながら、扉を開けた。
部屋の中は相変わらず綺麗だった。
「で、どうしたんだよ?」
「いや、まぁ、色々と考える事があって―――」
「神原。貴女の猿並みの脳で何を考えたのかしら?」
おい!流石に猿は拙いだろ!
「はい、ごめんなさい。あの、私は、その、何が好きなのかなと」
「こういうのでしょ?」
戦場ヶ原が本を差し出す。
「いえ、もうそういうのは……」
BL本を渡されても全く反応しない神原。
何があったというのか!
123 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:33:39.48 ID:X44hR6Mo
「神原。あのね、貴女が何を好きになろうと私は構わないわ。
でもね、貴女が学校を休むと阿良々木君が心配して、うわの空で、
そんな阿良々木君を見るのが私には辛いのが分かる?」
うんうん。
え?
何今の?
「はぁ……」
「で、今は何にのめり込んでいる訳?」
「あ、いえ、別に」
「そんな事無い筈よ。何かに夢中になっているから学校に来ていないのでしょう?」
「そんな事はないです」
「そうかしら?あなたと私の付き合いは長いとは言えないけど、それなりよ。
だから貴女が何を考えているか多少なら分かるわ。
今は、新しい楽しみを見つけて耽っているんでしょ?違う?」
なんだか怖いやり取りだった。
124 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:35:08.10 ID:X44hR6Mo
戦場ヶ原が神原を詰問している時だった。
「コトッ」
何かが倒れる音がした。
「ん?」
「あ、なんでもないです、なんでも」
「神原?私に言えない事って何かしら?」
「べ、別に何も隠していません」
「隠しているのね」
「あ、いや……あの……」
僕は神原の部屋の中を歩きだした。
そんな僕を神原は目で追う。
「神原、こっちを見なさい」
と、戦場ヶ原のきつめの問いかけにも目を逸らさない神原。
「阿良々木君、押し入れを開けてみて」と戦場ヶ原に言われ、押し入れの取っ手に手を掛けた時だった。
神原がこっちに突っ込んできた!
鬼の様な形相で!
「そこは!駄目だ!」
が、次の瞬間、神原は青い畳に突っ伏し、動かなくなった。
戦場ヶ原が神原の足を引っ掛け、おまけに腕組みした状態で踏みつけていた。
「さぁ阿良々木君、今のうちに」
僕は恐る恐る押し入れの戸を開ける。
そこで見たのは―――
125 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:38:17.60 ID:X44hR6Mo
黒
駒
作者:入浴
126 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:40:29.77 ID:z.xZySQ0
>>125
そんなとこで中断するなよ、気になるじゃねーか
127 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:43:59.59 ID:XFSv01co
八九寺って地縛霊から幽霊になったんだよな
まだ迷い牛なのか?
128 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:48:08.89 ID:fO3CAO2o
気になる ツヅキマツ
129 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:56:14.71 ID:X44hR6Mo
赤
駒
まだパンツもはいてない
130 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 19:59:32.12 ID:X44hR6Mo
可愛い男の子だった。
猿ぐつわをされ、両手足を縛られた男の子。
いや、正確にはどこかで見た事のある子が男装していたと言うべきか。
猿ぐつわされていたその子の口元を解放してあげると、開口一番――
「阿良々木さん!阿良々木さんのお友達は変態だと思ってましたが、犯罪者でもあるんですね!死ぬかと思いました!」と激しい口調で捲し立てる。
「お前こそ、こんな所で何やってんだよ!八九寺!」
「うーうー」
怒りとベソを表現しながら、『八九寺』はその場にへたり込んでしまった。
「阿良々木君、その可愛い生き物は何かしら?どこかで聞いた事のある様な名前だけども、阿良々木君の仲間?」
「ああ、まぁ詳しい事は後にするとして、お前もよく知っている子だ。覚えてないか?」
「ん?八九寺?あー。あの子ね。あの子が何故ここに居るのかしら?」
「それは今から聞いてみるとする」
僕は突っ伏した神原の背中を軽くたたく。
「おい、神原!神原!起きろ!」
僕は神原を起こす。
「うわー!見つかった!見つかってしまった!これで私は犯罪者として警察に捕まる!」
神原は半狂乱で泣き叫ぶ。
「大丈夫だから!大丈夫だ。警察には言わないから、事情を説明しろ」
散々喚いた揚句、警察に言わないと言った途端、神原が冷静さを取り戻す。
「本当に?」
「ああ、言わないから」
そして、粗方の事情を説明しだした。
131 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:00:58.52 ID:fO3CAO2o
それはごほうびなのか先輩。 いいのか、ほんとうに優しいな先輩は。(投稿者 S.・K
132 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:01:43.48 ID:X44hR6Mo
「朝、学校に行こうとしたら八九寺ちゃんと逢ったので、そのまま家に連れてきてご飯を食べさせたら――」
「食べさせたら?」
「あまりにも可愛かったので、その……」
「その、なんだよ!」僕は強めに問いただす。
「あの、可愛かったので部屋で着せ替えしてしまいました」
「はぁ?」
「それだけ?」
「はい、それだけです」
「じゃあ、なんでこんな事になってるんだ?」
「あの、それは先輩達が来たので、慌てて隠そうとして……」
「猿ぐつわか」
「はい」
「馬鹿だろお前!」
「すみません」
「阿良々木君、よく話が見えないんだけど?」
「まぁ、悪く言えば誘拐や連れ去りの類。ただ、八九寺と神原が面識があって、なお且つ八九寺が餌に釣られてホイホイついてきただけの事だ」
「犯罪ね」
「いや、八九寺は怪異だから、犯罪にはならないだろ?」
「ああ、そうね。私とした事がうっかり」
「え?怪異?」その言葉に神原が反応する。
「ああ、そうさ。八九寺は怪異。迷い牛というカタツムリの怪異だ」
「そ、そんな……」
「だから、犯罪は成立しないが、これが普通の子供だったら、お前今頃大変だぞ」
「ううう……」
133 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:04:09.91 ID:X44hR6Mo
「それから、八九寺。お前もご飯ぐらいで釣られるな!この馬鹿!」
「ご、ごめんなさい。でも、神原さん、ずっと優しかったし」
「そりゃ危害は加えないだろうけどさ」
「まぁ、いいんじゃない?阿良々木君。誰も不幸にならなかった訳だし」
「ん、まぁ」
「それに、今回の件で私も楽しい思いが出来たから」
おい!本屋の思い出は忘れてください!
「それよりも……八九寺、お前のその男装、似あい過ぎて怖いぞ」
「褒められました!」
「褒めてない!」
結局、この数日間、神原と八九寺は部屋の中で着替えたり、サブかカルチャーについて話したりして遊んでいたらしい。
今日も男装して遊んでいたら僕達が来て、どうしても部屋を開けろと言うので隠したと言う訳。
やれやれ。
134 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:06:58.98 ID:X44hR6Mo
今回のオチ
結局、八九寺は神原家に居着く事に。
ご飯が食べられるのでとか。
仲の良い事だ。
但し、神原的にはそうすると、家に帰りたくなるので八九寺が見えなくなってしまう可能性はある。
それでもと言うので、僕はそれ以上何も言わなかったし、聞かない事にした。
あと、八九寺は男装に目覚め、神原はショタ要素が強くなった。
その他諸々、成分比率が変だと思い、心配になった僕は、神原の祖父に掛け合い、多少の購読については目を瞑って貰えるよう話をした。
ということで、今日は新刊を買いに行くらしい。
「阿良々木先輩、ちょっと行ってきます」
「ああ、気を付けてな!」
「大丈夫です。Bダッシュで行きますから!」
「前から思ってたんだけど、BダッシュのBって何?」
「阿良々木先輩!BダッシュのBはBLのBだ!」
はは、そうですか。
135 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:10:22.38 ID:X44hR6Mo
あと、僕にも問題が発生していた。
「なぁ、戦場ヶ原、一つ聞いていいか?」
「何?小汚い非童貞が綺麗な処女様のプライバシーに何か興味でも?」
やっぱりまだ気にしてる!
「あのなー。それより、お前、八九寺の事、見えたよな?前は見えなかったのに」
「ええ、サスペンダー付き短パン姿を見たわよ?」
「あいつさぁ、家に帰りたくないと思うと見えてしまう怪異なんだよ」
「……」
「お前、家でお父さんと何かあった?家に帰るのが辛いのか?」
「阿良々木君、父とは今でもいい関係よ」
「そっか。でも家に帰りたくないんだろ?」
「ええ」
「それが気になってさ」
少しの沈黙の後、戦場ヶ原が言った。
「だって、阿良々木君の居ない家に帰るのは嫌なのよ」
「え?」
「阿良々木君がいないとs寂しいのよ。出来たら一緒に住みたいのよ、処女にこんな事言わせないで!」
ドロッた!
戦場ヶ原がドロッた!
結局、この話が元となって、高校卒業後、僕達は一緒に住む事となった。
同棲ではなく、戦場ヶ原が僕の家に下宿という形で。
その話はもっともっと先の話だけど。
おわり
136 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:12:47.19 ID:X44hR6Mo
>>84
さん
ネタ案、有難うございました。
大した内容ではなかったですが、喜んでいただけたでしょうか?
嫉妬する戦場ヶ原さんへの布石は、少しだけ打ったので時間があればまた。
ここまでありがとうございました。
パンツ履いてきます。
137 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:28:01.27 ID:z.xZySQ0
\ _n /
\ ( l _、_ グッジョブ /
.\ \ \ ( <_,` ) /
\ ヽ___ ̄ ̄ ) /
_、_ グッジョブ \ / / / _、_ グッジョブ
( ,_ノ` ) n \∧∧∧∧/ ( <_,` ) n
 ̄ \ ( E) < . .す >  ̄ \ ( E)
フ /ヽ ヽ_// < 仕 ば > フ /ヽ ヽ_//
─────────────< 事 . ら >────────────────
∩ . < ! し >
( ⌒) ∩ good job! < .い >. |┃三
/,. ノ i .,,E /∨∨∨∨\. |┃ ガラッ 話は聞かせて
./ /" / /" / .\ |┃ ≡ _、_ もらった
./ / _、_ / ノ' / グッジョブ!! \__.|ミ\___( <_,` )<グッジョブ!
/ / ,_ノ` )/ / /| _、_ _、_ \ =___ \
( / /\ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/\≡ ) 人 \
ヽ | / \(uu / uu)/ \
138 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 20:35:25.23 ID:XFSv01co
乙です
おい人間、ラスボスの出番はないのかにゃ?
撫子が見たいです
139 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 21:18:25.22 ID:K/9OskDO
撫子は書き手としてもラスボス
140 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 21:43:47.90 ID:la9/tJoo
忍!忍!
141 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 21:57:53.18 ID:wlucwgAO
羽川さんだろ
142 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 22:02:54.62 ID:fO3CAO2o
楽しかった 乙!
143 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 22:36:39.40 ID:Q9Iu3xIo
乙
忍希望
144 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 23:36:20.76 ID:KBZLDUSO
乙
ちょいエロ希望
145 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 23:54:05.40 ID:StJ4DgIo
らすぼすきぼう
146 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/07(火) 00:00:08.21 ID:itcspsSO
ラスボス求ム
147 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 00:11:06.38 ID:vrJ8gwwo
忍のデレを見たいと思うのは俺だけなんでしょうか
148 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 00:41:07.73 ID:8H2rhL.o
>>147
俺もだ
149 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 01:24:46.69 ID:wwHNvp60
>>148
忍に関してはすでにデレにデレにデレまくってデレしか残ってなくてあの感じでも丁度いいくらいじゃなかろうか
自分の旦那があっちこっちの餌たちにコナかけてるのも、やがて変わらないまま最後に残るのは自分と旦那だけだと思えば
このお話でいうところの「本気じゃなくて浮気」にしか感じられないだろうし
150 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 01:41:09.27 ID:vW7TKISO
メメって言うのはナシ?
151 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 08:06:43.58 ID:uVDjU.YP
御声援ありがとうございます。
次回ネーム(仮)は
忍「お前さん、開いておるぞ?」
あらすじ
火憐や神原の騒ぎの後、日常を取り戻した暦。
しかし、神原の火憐の一件以後、殆ど会話をしてくれない忍。
さてさて、暦は忍の機嫌を取る事が出来るだろうか?
エロとラスボスは一度つまづいてるので、よく考えてやってみます。
メメは前作にて候。
152 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 08:08:01.53 ID:vEXfP42o
wktk
153 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 13:59:42.46 ID:lHiXBADO
前作?
154 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 18:21:18.79 ID:tH.lndoo
_ -‐'"´ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、
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|ニ□ニ|___,ノ ヽ、___,,ノ]
|____________|
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/| |ヽ|、弋:ソ ´"弋:ソ,〈::::| 。o O(Now Writing! coming soon!)
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`ー--‐'´: :.:{ .〈、 :::| |:: | 〉: : : :
: : : : : ::ヽ、__,>={._,,>、__`): : : : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
155 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 18:36:27.33 ID:eKpi5eko
>>154
ドーナツやるよ
つ◎
156 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:44:58.62 ID:tH.lndoo
プロローグ
先日の騒動の後、公認の取り消しをいただいた僕は、する事もなく家でゴロゴロとしていた。
本当なら、受験勉強をしなければいけないのだが。
どうやら僕に勉強をさせたくない人が居るらしい。
受験勉強では物語が進まないらしい。
規定事項―――既にそういう路線で原作は進んでいるのに、規定が捻じ曲げられ勉強をする必要が無い。
いいよな、人生の焼き直し。
出来たら、どこからやり直させて貰おうか?
バナナの皮を捨てた奴をとっ捕まえようか?
そうすれば……いや、意味が無いな。
どこまで遡っても意味が無い。
結局は、都合の良い様に直近のごく一部の事だけ修正され、僕は自堕落な休日の朝を過ごす。
まぁ、そういう日があってもいいじゃないか―――と、楽天的性格な僕はその設定を甘受する。
157 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:45:49.94 ID:tH.lndoo
001
「兄ちゃん!お布団干すから、布団から出なさいよ!」
火憐が僕を叩き起こしに来る。
勿論、月火も一緒だ。
(月火居なかったら押し倒してやるのに!)
「お兄ちゃん、私が居なかったら火憐ちゃんを布団の中に引き込んだりする心算でしょ?」
「ば、馬鹿な事いうなよ!僕がそんな事する訳ないだろ!」
(あぶねー!バレてる!)
「お兄ちゃんって―――私より火憐ちゃんの方が可愛い訳?」
「そんな事無いよ。妹はどっちも可愛いよ」
「ふーん。何か火憐ちゃんばかり可愛がっている様に思えるんだけど?」
「いや、それは月火ちゃんの考え過ぎ。まぁ、僕に対する接し方の違いで―――」
「ちょっとロープ買ってくる!」
「おーい月火ちゃん!色々と間違ってるよ、僕はそういうの趣味じゃないから!」
「じゃ、兄ちゃん布団は貰っていくぞ。あと、パジャマも洗いにだしてよ。今からママと出掛けるんだから」
「はいはい」
158 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:46:54.87 ID:tH.lndoo
僕はベッドから抜け出し、着替えてパジャマを洗濯機に投入し、リビングでコーヒーを貰う。
「暦、今日どこかに出掛けるの?」
「いや、今のところ予定なし。それより今日はどこへ?」
「二人の服を買いにね」
「ふーん、分かった」
「じゃあ、留守番宜しく。あと、出掛けるなら布団は取りこんでおいてよ?」
「うん、分かった」
母さん、会話で初登場。
誰得って話。
もし、僕の人生がアニメ化されたのなら、母の声は生天目という人がいい。
まちがっても、おとぎ話のナレーションや写真部部長の人は勘弁。
と、今日の僕は誰と何の話をしているんだ?
母さんとの会話を終えるや否や、火憐と月火が「待ってました」と言わんばかりに、母さんの脇に立ち、僕に手を振る。
「ちゃんと母さんの言う事聞くんだぞ」
いつの間にか、父さんのポジションを奪う僕。
「兄ちゃん、お土産はケーキでいい?」
「いや、出来たらドーナツがいいな」
「ん?ドーナツなら冷蔵庫に入ってるよ」
「そっか、ならドーナツで」
「どんだけドーナツ好きなのよ、太るよ?」
「お兄ちゃん、最近筋肉質だからって、糖分摂って緩める気じゃない?」
月火、そんな奴はあまりいないと思うぞ。
159 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:47:35.08 ID:tH.lndoo
台風一過。
妹達が出掛けた後、リビングに静寂が戻る。
「お前様、今日は機嫌がいいのか?さっきからツラツラと独り言をいいおって」
僕の影から声がした。
「忍!久しぶりだな!ここ最近―――あれから全然話してくれないから心配したじゃないか!」
「まぁ、儂もたまには反省するからな。それよりカーテンを閉めてくれないか?」
「ちょっとまてよ」
僕はリビングカーテンを2重に閉じ、部屋の電気を消す。
「何も電灯まで消す必要はないのじゃぞ?」
「ああ、一応。どのくらい太陽光が入るか分かるだろ?」
「親切な事だな」
忍が影からひょいと姿を出す。
「それよりお前様、冷蔵庫を開けるといい事があるぞ」
「いい事がありそうだな」
僕はキッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。
そこには、ミスタードーナツの箱があった。
手に取り、リビングへ戻る。
160 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:48:23.63 ID:tH.lndoo
「忍、これだろ?」
「おお!おお!それじゃ!」
「本当にお前はドーナツが好きだな」
「この世で―――人間界の食べ物ではこれが一番うまい」
「でも、本来は人間の血や怪異を食らうだろ?」
「まぁそうじゃが。例えるなら、儂が一番好きなトカゲの怪異の味に良く似ておる」
「ええー、トカゲの怪異ってのはドーナツの味がするのか!」
「うむ。甘い味がするのじゃ」
「へー、それ嘘だろ?」
「ふはは、なんならおまえ様も一度食うてみるか?」
「結構です」
本当のところは良く分からないが、忍の機嫌が良かったので僕はそれで納得した。
「ところで、お前様。最近、血を吸っていないので、そろそろお願いできるか?」
「ああ、僕も気になってたんだ」
「先日、一滴だけ飲んだが―――物足りんわ」
「そりゃそうだな」
僕は忍を抱きかかえる。
忍はゆっくりと僕の首筋に食らいつく。
161 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:49:43.55 ID:tH.lndoo
「今日は―――少し多めにいただくぞ」
「ん?何かあるのか?」
「いや、少し間隔が開いたのでな」
「あれだけドーナツ食った後にかよ!」
「甘いのは別腹じゃ」
「どっかのOLみたいな事いってんじゃねーよ」
まぁ、多少なら問題は無い、多少なら。
ただあまり飲みすぎると、育ち過ぎるので注意だ。
忍が僕の首に吸いついていると、リビングのドアが開く。
何故か僕の家のドアが不意に開くと、そこには月火が立っている。
「んあ?」
顎でも外したか?という擬態音と共に、月火はドアを閉める。
数秒後に金属バットを携え、リビングに戻ってきた。
が、忍は既に影の中。
「兄ちゃん、今金髪の女の子と抱き合ってなかった?」
「月火ちゃん、よくその話するけど……金髪コンプレックスか?」
「いや、マジで今居たし」
「いねぇよ」と僕は薄ら笑いで答える。
162 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:50:26.27 ID:tH.lndoo
「おかしいな」
「あれだろ、カーテンを閉めてたから光の関係でそう見えただけじゃないのか?」
「そんな筈は……」
「前は風呂場で湯気を見間違えるし」
「んあぁ」
「で、出掛けたんじゃなかったのか?」
「いや、ハンカチ忘れて……」
「女子はいつでも身だしなみが大事だぞ」
「うん……」
「じゃ、行ってくるね」
「ああ、こけるなよ」
玄関のドアが閉まる音がし、月火が出て行った。
直ぐに、車の急ブレーキ音と鈍い音がした。
月火?まさか、車に轢かれる様なドジはしないだろう。
万が一怪我したとしても直ぐに治っちまうから心配は要らない。
163 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:51:46.57 ID:tH.lndoo
「もう行ったみたいだぞ」
と、声を掛けたが忍が出てこない?
「おーい」
と、僕は自分の影を覗きこむ。
「お前様、ここじゃ」
背後から声がした。
「なんだ、もうそこに居たのか」
若干成長した忍、中学生ぐらいだろうか?
「もう少しだけ吸うぞ」
「え?」
僕の返答を待たず、忍が僕の首筋に吸いついた。
で、出来上がったのは余弦と手合わせをした時の忍。
「さて、今から服を作るか」
「服?」
「ああ、今日はお前様も暇そうなので、出掛ける」
「出掛けるって……まだ日が高いぞ」
「勿論、そんな事は分かっている」
「とりあえず目的地まではお前様一人で行けばよい」
「で、どこに行くんだ?」
「映画じゃ」
「ああ、成程。それなら何時でも問題ないな」
164 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:52:38.16 ID:tH.lndoo
「そういう事じゃ」
「で、映画に行くぐらいで大きくなる必要があったのか?」
「そこじゃ。先日、お前様の巨大な方の妹と映画に行った折、儂は前が見えにくかったのじゃ」
「なんだ、見てたのか」
「当たり前じゃ。あんな面白い物を見ずに居られるか」
B級ホラーで、どうしようもなかったのだが……
忍の魂を揺さぶるような内容だったらしい。
忍はいつものように服を作る。
が、僕がデザインに文句を付ける。
「何が気に入らんのじゃ!」
「派手すぎるんだよ!」
「これぐらいで丁度じゃ!」
「幾らなんでも映画に行く格好じゃねえよ!」
「誰が映画だけと言った!」
「え?」
165 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:53:40.16 ID:tH.lndoo
「映画が終わったら食事じゃ!」
「食事?」
「ああ、人間の食事じゃ。儂だってそういう事をしてみたい」
映画は良いとしよう。
が、食事となると、それなりに人目のある場所。
そんな所で金髪美人と歩けば、渦中の人から禍中の人になるのは必然。
こんな小さな町じゃ誰に逢うか分からない。
それでなくても、神原の一件で学校中の噂の人になったと言うのに!
「なんじゃ?何か不服か?お前様」
「いや、あまり目立つのは……」
「大丈夫じゃ。人前では結界を張る。伊達に小僧と数カ月過ごした訳じゃない」
結界を張るとか言う怪異、おかしいだろ!
「心配はいらん、そうそう人目には付かんからな」
なし崩し的に忍に丸めこまれた。
挙句、僕の服まで作りだす。
「これは着られないだろ?」
「着られないのではなく、着た事が無いだけじゃ」
「でも派手過ぎだろ?」
「今が地味すぎるだけじゃ。心配はいらん、結界を貼ればお前様も目立たん」
「なら、この服でも……」
「馬鹿者。儂の連れ添う相手がそんな地味では、儂のプライドが許さんわ」
「へーへーそうですか。そりゃあ、わるうござんす」
半ば諦め、半ば投げやりな返事をした僕。
「そうじゃ、今日は儂の言う事を聞けばいいのじゃ」
結局、忍の作った服に着替えた頃、時計の針は12時を少し越えた辺りになっていた。
166 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:54:24.64 ID:E9Eiq.SO
>>153
多分コレ↓
阿良々木「あれ?なんか忘れてる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1273658448/l50
阿良々木「何の真似だ」***「ふっ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1282212719/l50
167 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:55:13.32 ID:tH.lndoo
002
布団を取り入れ、戸締りを確認し、財布をポケットにねじ込み僕は外へ出る。
もう秋だと言うのに今年は残暑が酷く、直ぐに汗ばむ。
忍の作った服は、薄手のジャケットに少し大きめな襟のシャツ、下はやや細めのスラックス、靴は皮靴。
とても僕が着る様な服ではなかった。
「ところでお前様、少し髪型を―――」
「そこまでしなきゃならないか?」
「まぁ、強制はせんが、その髪は少々うざい」
「お前がウザいというな!と、いうか短くすると色々と不都合もあるだろ、首の辺りとか」
「ああ、それはカモフラージュであったか、失敬」
大事な事を忘れるな。
「しかし、セットぐらいはしてもいいと思うぞ」
「そんなの無駄金だよ。2000円も払うならお前にドーナツを買ってやるよ」
「おお、その心意気は嬉しいが―――金が無いなら儂が作ってやろう」
「え?」
「何が『え?』だ。服が作れて、金が作れない訳なかろう」
「ああ。まぁそうだな。そりゃそうだ」
「ほれ、これを今日の糧にせい」
足元を見ると、帯付きの1万円札の束が落ちていた。
168 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:56:16.47 ID:tH.lndoo
「おい、これは多過ぎるだろ!」
「なら、そこから必要な分だけ使え」
で、3万円頂きました。
ああ、これで僕も犯罪者か。
「言っておくが、それは本物ぞ。偽物ではないぞ」
本物と全く同じ偽物、どちらに値打ちがあるか―――貝木の問いか。
「でもお前が作ったんだよな?」
「そうじゃ、しかし、本物じゃ」
「でも番号は……」
「この世に存在しうる番号のコピーであるが、例え2枚並べたところで人間のもつ測定能力では違いは無い」
「うーん、しかしこんな事をすると日本中がインフレに―――」
「たかが100万でインフレなど起こるか!本気で日本銀行が100兆刷れば別じゃが」
また、なし崩し的に丸め込まれ、僕はありがたく使う事に。
「ではとりあえず、美容院だ」
忍に勧められるまま、近くの美容院へ。
で、人に逢いたくない時に限って、人に逢う。
169 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:57:57.24 ID:tH.lndoo
「やぁ、阿良々木先輩。こんにちは」
神原駿河。
凡そ、美容院とは縁もゆかりも無さそうな人物だが。
「最近、髪を伸ばし始めてから半月に1度は綺麗にして貰っているんだ」
ショタのお姉さまは綺麗に、が基本ですか?
「まぁ、身嗜みは乙女の基本だからな」
その男言葉をまず直せ。
「で、阿良々木先輩が美容院とはどうした?病院と間違えたのか?」
「そんなベタな間違いをするのは八九寺ぐらいだ!」
「あはは、八九寺ちゃんなら今頃部屋で執筆中だ」
「何の執筆だよ?」
「ああ、今度二人で本を出す事にしたんだ。薄い本だけど、年末に」
僕には何の事か全く分からなかった。
「出来上がったら先輩にも1冊贈呈しよう」
「あ、有難う」
絶対に見てはイケない気がした。
170 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 19:58:42.76 ID:tH.lndoo
で、僕の番。
切りはしないが、整えて貰う。
霧吹きで濡らされ、白い泡を塗りたくられ、櫛でとき、ドライヤーを当てられる。
トレードマークのアホ毛も抑えて貰い―――目元がハッキリと出る髪型。
「とてもよくお似合いですよ。いつもこの髪型にすれば如何ですか?」
と言われた髪型は、サイドを少し流した感じで爽やか系だった。
「おお、先輩。良く似あってますよ」と隣の席の神原に褒められる。
照れる。
プラチナヤバいぐらいに照れた。
「じゃ、神原お先に」
「ああ、しっかりとデート頑張ってください」
「いや、別に今日は……」
「ん?戦場ヶ原先輩とではないのか?」
「ああ、ちょっと私用で―――」
「そうなのか」
「じゃあな」
僕は店を後にし、映画館へ向かった。
ちなみに、美容院で神原が携帯電話を取り出した事には全く気付かなかった。
171 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:00:34.57 ID:tH.lndoo
003
映画館に着いたが、今日は何を見るか?
「さて、どれにする?」
「どれとはどういう意味だ?」
「ああ、最近の映画館はマルチプレックスシアターと言って、いくつかの映画が上映されてるんだ」
「ほう、TVのチャンネルの様なものか」
「ん。まぁそんな感じ。みたい物を選べばいい」
「ほう。ならば、まずは前回ちゃんと見られなかった映画を―――」
「また見るのかよ!」
「儂は全部見られなかったのだ」
「分かったよ」
が、次は16時半開始。
「時間があり過ぎる。他のを見るか?」
「お前様、この映画館は幾らで借りられるのだ?」
「おい!幾らなんでも僕が大金持って、貸し切ろうとしたら疑われる!」
「そうか。仕方が無いのう」
「とりあえず、違う映画でも見ておかないか?」
「他は何がある?」
「洋画が2本、アニメが2本、邦画は2本。お?邦画でホラーがあるぞ」
「おお、それにしようぞ」
172 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:02:17.87 ID:tH.lndoo
僕は窓口でチケットを2枚買った。
「お前様は馬鹿か?何故儂の分まで買う。中に入るまで影に居れば金は要らんだろうに」
ケチくせぇ!
というか、今の映画館は全席指定だ。
中に入って、また影から見るのかと忍に教えた。
「儂とした事が―――少々無知であった」
「まぁ気にするな」
僕は入場し、ドリンクとポップコーンを買い、席に着いた。
その暗がりの中で忍が現れる。
「ほら、これ」
僕は忍の分のチケットとジュースを渡す。
「おお、これが映画のチケットか!記念に大事にしておくぞ」
「ただの紙切れじゃないか」
「何を言う。儂の為にお前様が買ってくれたものだ、大事にするに決まっているであろう」
「金は忍のだけどな」
「金銭の問題ではないのだ」
「ちなみに、どこで保管するんだ?」
「影の中に決まっておる」
「あのさー、一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「僕が買ったドーナツも影の中で保管しているのか?」
「かかか!お前様は馬鹿か?そんな物、直ぐに食べるに決まっているであろう」
「そ、そうだよな」
「だが、箱は取ってあるぞ」
「ちょっとまて!僕の影の中はどれだけ広いんだよ!」
173 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:05:27.90 ID:tH.lndoo
「ん?それはほぼ無限大の広さじゃ。幾らでも物が置けるぞ」
まるで、猫型ロボットのポケットのようだ。
「しかし、だからと言って溜めこんだらゴミ屋敷みたいにならないか?」
「心配するでない。ゴミが出た時は、誰かの影に捨ておいておる」
「は?」
「お前様の影と誰かの影が交差する時、そちらに移しておるわ」
具体的に誰の影かと聞くのは止めにした。
何故か誰の影か、何となく分かってしまったから。
そんな他愛ない話をしているうちに上映時間となる。
映画は、まぁ楽しめる物だった。
ただ、忍が……
他のお客さんが悲鳴を上げる所で拳を握り「いけ!」と言ってみたり、
MOB的な小物妖怪に対し、「美味そうじゃ」と食いしんぼう万歳をやってみたり、
挙句、ボスキャラが倒されると「おのれ人間め!」と怒りを顕わにする。
僕にはそっちの方が楽しかった。
映画が終わると、一旦影に入りロビーへ出る。
直ぐに次の映画が始まる。
またチケットを買って入場し、席につく。
174 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:06:33.85 ID:tH.lndoo
「お前様、先程食った白いのは無いのか?」
「ああ、ポップコーンか?買ってこようか?」
「そうしてくれるとありがたい」
僕は塩味とキャラメル味を買いこみ、席につく。
「これはなんじゃ?」
「さっきのは塩味だったので、今度はこれが良いかと思って」
忍にキャラメル味のポップコーンを差し出す。
それを一口頬張った途端―――
「うはー、これは美味い。甘い、甘いのぅ!」とバクバク食べる。
金髪女子がキャラメル味のポップコーンを歓喜して食らう図。
映画より面白いかもしれない。
で、上映前に空になったので、もう一度買いに走る。
今度はLLサイズにした。
「おお!これはまたデカイ。幾らじゃ?3万で足りたのか?」
「こんなもん、数100円しかしねえよ」
「何!これが1000円でおつりが出ると?恐ろしいのぉ人間の世界は」
今度から怪異にであったら「このポップコーン800円!」で逃げてくれるといいな。
で、そこから15分。いつの間にか僕は眠っていた。
175 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:07:24.47 ID:tH.lndoo
「お前様、お前様」
「ん?」
「おわったぞ」
忍に起こされる。
「何故、これほど面白いのに眠るのじゃ?」
「あー、まぁ僕は2度目だしな」
「そうか。それは悪い事をしたな」
「いや、気にしなくていい。最近、お前に構ってやれなかったしな」
「そう言ってくれると、儂も嬉しいぞ」
今度は、そのままロビーに出た。
「時間は……あれ?」
「どうしたのじゃ?」
「いや、時間が気になって―――」
「時間は夜の7時じゃ」
「そうじゃなくて、携帯忘れた」
「どこに?」
「多分、家」
「なら、心配はいらんな」
「一応、家に電話しておくよ」
僕は公衆電話から家に電話する。
176 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:08:28.14 ID:tH.lndoo
「はい、阿良々木です」
電話口に火憐が出た。
「あ、火憐ちゃん。兄ちゃんだけど」
「おお、兄ちゃん。どうした?」
「いや、今日な、遊びに出てるんだけど、少し遅くなるんで母さんに言っておいて」
「ガッテン承知のスケだ!」
またどこかで変な言葉を覚えてきたようだ。
「あ、それから。兄ちゃん、携帯忘れてんぞ」
「うん、そうなんだ。うっかり忘れてさ」
「何度も何度も電話が鳴って五月蠅かったから、電源切ったよ」
「え?」
「心配すんな、誰から架かって来たとか見てないから安心しろ」
いや、逆に安心できない。
というか、執拗に鳴らしているのに取らないと恐ろしい人が1名いる。
どうしよう?
電話を切って、少しため息をつく。
「お前様、どうした?何か問題か?」
「あ、いや、なんでもない。ただちょっとね」
忍は察したのかそうでないのか分からないが、それ以上は何も言わなかった。
177 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:09:57.68 ID:tH.lndoo
映画館を出ると、外はもう真っ暗。
「さて、あとは食事だな。何が食べたいんだ?」
「うむ、店は決めてある」
「ん?そうなの?」
「儂も最近はインターネットとやらを始めたのでな。検索して調べた」
「待て。僕のパソコンを勝手に―――」
「心配するな。自作じゃ自作」
部品まで自作してそうだな。
忍が本気を出せば、地球上には存在しない速度のCPUまでも作れそうだ。
「しかし、マルチプレックスシアターを知らずに、ネットは知ってると謂うのも―――」
「何でもは知らん、知ってる事だけじゃ」
うん、カッコいい。
ちょっと忍に惚れた。
「儂も一度言ってみたかったのだ」
「まぁ、何かと便利だよな、その言葉」
「あのメス猫は最近元気か?」
「メス猫って……まぁ羽川なら元気だが」
「そうか。ならいい。儂的には殺めておきたいのだが」
「おいおい、物騒な事いうなよ」
「まぁ、1年もすれば―――」
「何?何かあるの?」
「まぁ、楽しみにすればいい」
僕には何の事か全く分からなかったのだが……
178 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:11:06.22 ID:tH.lndoo
「で、店の場所はどっちだ?」
「こっちじゃ」
今日の忍はドレスのように派手な服にハイヒール。
それで透き通るような白い肌、輝く金髪。
すれ違う人が振り向かない訳は無い。
その横に僕。
歩いているうちに、忍が僕の腕に絡んできた。
「お前様、こうやって歩くのが若者の基本じゃな?」
「あー、まぁ交際しているなら」
「なら、問題ない。儂とお前様は一蓮托生。交際より深い絆で結ばれておる」
「あはは」
「それに娶って貰わねばならんしな、かかか」
忍はじゃれる様に話す。
そんな二人を皆が見る。
「なぁ、結界というのは効果あるのか?」
179 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:12:00.96 ID:tH.lndoo
「なんじゃそれは?」
「は?」
「そんなもん張ったら、儂が動けんわ」
「お前、騙したな!」
が、後の祭り。
今更どうしようもない。
もう、メインストリートを500m近く歩いてしまった。
「さて、今日の店はここじゃ」
案内されたのは、高級そうなレストラン。
「イタリアンじゃ」
「待て。僕はこんな店で食事した事無いぞ?」
「なーに、イタリアンは気張らなくても大丈夫じゃ」
「そうなのか?」
「ああ、フランス料理のコースと違い、形式なんて無いに等しい」
少し安心した。
店に入り、席につく。
色々メニューにあるが、よく分からない。
「お前様、パスタは何でも大丈夫か?」
「ああ、一応好き嫌いは無い」
「そうか、なら大丈夫だ」
180 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:13:26.11 ID:tH.lndoo
忍は店員にオーダーを伝える。
少しして、ワインが運ばれる。
「酒?」
「食前酒みたいなものだ、お前様」
忍は何の問題も無かったかのように、グラスを取り軽く上げる。
「お前様と儂の人生、いや一生に乾杯」
僕も連なり、復唱する。
「なぁ、お前様。こういう生活に憧れるか?」
「ん?あー、あまり良く分からない」
「前にも話したが、お前様の一生はいつまで続くか分からん」
「まぁ、早くて人並み。長ければ―――」
「そうじゃ。でな、儂は思う。どうせ生きるならお前さんの好きなように生きて欲しい」
「あ、うん」
「毎日美味い物を食って、好きな事をする。何も日本に居る必要は無い。日本で遊ぶ事が無くなれば、どこか海外に行けばいい」
「まぁ、悪い生活では無いとは思うんだけど―――」
「思うが?なんだ?」
「今の生活を今すぐ捨てるのは、出来ないかも知れない。いや、出来ない」
181 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:15:43.29 ID:tH.lndoo
「はっはっ!流石、我があるじ様じゃ。本当にお前様は優しい。それに今の生活も自由に生きているとでも言いたいのであろう?」
「ああ、そうだな」
「では、こういう約束をしないか?」
アルコールが入った忍はいつも以上に饒舌だった。
「50年。50年だけ待とう。以後は儂と一緒に遊べ」
「50年?」
「ああ、50年じゃ。恐らくお前様は50年経っても今と殆ど変らぬ姿じゃろう」
「その頃迄にお前様の家族も周りも何かに気づく。勿論、お前様の妹の事も合わせてな」
「その時に打ち明けるのか?」
「打ち明ける必要は無い。死んでしまえと言う事だ。厳密には死んだと思わせればいい」
「小さな妹君の怪異も、その頃には妹君の身体から離れるであろうしな」
「え?」
「そもそも負荷が高いのじゃ、幾ら再生すると言っても、人間の身体に負荷を掛ける。
本来100年が関の山の身体を酷使すれば、その寿命も短くなる」
「月火はそんなに早く死ぬのか?」
「何を言う、長く生きて60数歳であるぞ。人間の寿命はそんなものであろう」
「確かに」
「儂らとは根本的に怪異としての成り立ちが違うのでな、奴の場合。故に眷族とは違うのだ」
「そっか」
182 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:17:07.15 ID:tH.lndoo
「だから50年待つ」
「分かった。50年経てば親も居ないだろうしな」
「物分かりがいいな、お前様。あともう一つ―――」
「あと一つ?」
「ああ、あと一つ。憂いをなくせ」
「憂い?」
「世に子孫は残すでない。故に人間は娶るな。娶ればその子らが心配になる」
「え?独身でないと駄目なの?」
「そうじゃ。だからあのツンデレかツンドロか知らぬが、あの女子とも深い関係になってはならん」
「深い関係……」
「性交渉ぐらい好きにすれば良い。ただ、絶対に娶るでないぞ」
「それは……」
「それは?出来ぬか?」
「約束できない」
「ふん、まぁ慌てる事も無い。よく考えていてくれ。料理も来た。話はここまで」
「ああ」
それからは、今日見た映画の話や服の話で盛り上がる。
ここ最近味わう事が出来なかった『楽しさ』がそこにはあった。
食前酒と言いながら飲んだワインが程良く、僕を良い気分にさせる。
183 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:18:04.95 ID:tH.lndoo
「お前様、この後はどこに連れて行ってくれるのじゃ?」
「ん?そうだなぁ、カラオケでもいくか?」
「おお、それは是非に。儂は行った事が無いでな」
500年生きても、日本の文化には疎い。
おまけに、若い世代の遊びなど知る筈も無いからな。
カラオケ店を目指し歩いていると、前からBLダッシュ(今はこう呼んでいる)で走ってきた神原に出会う。
「本日2回目だな」
「阿良々木先輩!探したぞ!」
「ん?何?」
「今、この一帯に阿良々木包囲網が敷かれている」
「何?どういう事だ!」
「戦場ヶ原先輩がお怒りだ」
「え?何で?」
「理由は知らない!でも探せと号令が下った」
「で、探していたのは神原だけだろ?」
「いや、今回は違う。私の後輩や人伝で探している」
「何それ。僕が何かしたか?」
「さぁ?その辺の事情は分からないんだ―――」
神原は携帯を取り出し電話を始めた。
その隙を見て僕は走り始めた。
184 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:19:00.58 ID:tH.lndoo
「あ!逃げた!」
神原の声が響く。
僕は何故だか、逃げた。
大凡の見当はつく。
昼間に携帯に電話して来たのは戦場ヶ原。
それを五月蠅いからと火憐が切った。
戦場ヶ原はシカトされたと思い、使える全ての人脈を使い捜査中。
捕まれば……僕の体中に文房具が刺さるのは目に見えている。
「走るぞ、忍!」
「なんだか知らぬが、楽しそうじゃ」
ハイヒールを脱ぎ、裸足で駆ける忍。
僕はいつの間にか、忍に手を引かれるように走る。
人混みのお陰で神原を撒く事は出来たが、次に見つかればアウトだろう。
どこかに隠れる所は無いか?
185 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:19:37.24 ID:tH.lndoo
「お前様、こっちじゃ」
忍に手を引かれ、どこかのビルに入った。
入った先はラブホテルだった。
「とりあえずここまでくれば大丈夫であろう」
「ああ、そうだな」
切れた息をしながら僕は返事をする。
「しかし、お前様にこんな所に連れ込まれるとは儂も驚いた」
「!!」
声にならなかった。
「嘘じゃ、冗談じゃ」
悪い冗談だ。
「ところでお前様、何故逃げた?ちゃんと事情を説明すれば良かったではないか?」
「お前の事、どう説明すんだよ!」
「ああ、儂か。儂の事は黙っていればよかろう。適当に影に隠れれば終わりじゃった」
「あ!」
確かに、忍がいなければ携帯を忘れたと言って終わりだった。
が、逃げてしまった今となってはもう遅い。
神原が今頃、全部報告しているだろう。
186 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:20:38.78 ID:tH.lndoo
「はぁ、僕も影に隠れたいよ」
「ん?なんなら入るか?」
「え?入れるの?」
「勿論入れる」
「どうやって?」
「儂がお前様の影に入り、その手を引けば―――」
「ならそうしてくれよ」
「本当にいいのか?」
「え?何?何かあるの?」
「お前様が、お前様の影に入ればその影は消える。と言う事は、二度と出れん。儂と二人ずっと影の中じゃ」
「出られないの?」
「そうじゃ」
……
あまりに怖い話でそれ以上何も言えなかった。
「さて、それでは明日まで時間を潰すか、ここで」
「ここで?」
「今から出て、捕まって、尋問と言う拷問に逢いたいか?」
「いや」
「なら今夜は儂とここで過ごせばいい」
「ああ……」
結局、忍とここで逃避行の続きとなった。
187 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:21:30.73 ID:tH.lndoo
黒
駒
エロは無い。作者風呂
188 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 20:38:49.08 ID:tH.lndoo
初めてのホテルで、何も出来ない僕。ウロウロする忍。
「お前様、この自販機はなんだ?」
「それは―――」
家族計画、最近じゃそんな呼び名は滅多に聞かないが。
「まぁ、娶り防止用の帽子を売ってる」
「ほう。コンドームか」
「知ってるなら聞くな!」
「使った事あるのか?」
「無い!」
「使うか?」
「どこで!」
「ここで」
「いつ!」
「今から」
「誰と!」
「儂と」
とんでもない会話だ。
少し前のドーナツ談義からは想像も出来ない。
「で、何もせず過ごすのも退屈じゃろ?TVでも見るか?」
忍は何気にTVのスイッチを入れる。
突然AVが流れる。
「ほう。人の性交渉もわれらの性交渉も殆ど変らぬな」
「だれもそんな事、聞いてない!」
「独り言じゃ」
189 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:39:50.42 ID:tH.lndoo
「このマイクはなんじゃ?」
「カラオケ」
「おお、ラブホテルにもカラオケがあるのか。お前様、始めるぞ」
僕は無理やりマイクを握らされる。
「ところで、どうやって歌うのじゃ?」
「まず、この本で歌いたい曲を探し、その番号を入れる。すると―――」
「なんじゃこの曲は?」
「my diaryっていう曲」
「知らんぞ」
「え?知らないの?」
「え?そんなに有名なのか?」
「オリコン初動1万枚越えたアルバムの表題曲なのに……」
「まぁ、知らぬ事もある。なにせ、何でもは知らぬからな」
「ああ。で、忍は何を歌いたい?」
「それがのう、知っている歌が無い」
そもそも忍自身、日本にずっといた訳でもなく、カルチャーに接し生きた訳でもない。
だから知っている歌が無くてもそれはおかしな事ではなかった。
英語表記のページをパラパラとめくり、指で曲名をなぞる。
すっと止まった所で、僕に番号を伝える。
「これなら歌えるぞ」
そう言って忍が歌ったのは、シューベルト第5曲『菩提樹』だった。
僕はその歌声に魅了され、聞き入る。
歌い終わった忍に拍手を送る。
190 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:41:00.97 ID:tH.lndoo
「は、恥ずかしいから拍手などするでない!」
「いや、素晴らしかった」
「まぁ、この歌曲が流行った頃、儂もまだ若かったからな」
リアルタイムかよ!200年も前だぞ!
「まぁ、シューベルトなら魔王がお勧めだがな」
分からない。分からないから生きて帰れたらyoutubeで探してみるよ。
「カラオケも飽きたぞ」
「はや!」
「今日は良く遊んだし、これでお仕舞いでも良いのだが―――」
忍は僕の背中の向こうを見る。
「お前様、風呂に入りたい」
「は?あ、うん。分かった。用意してくる」
僕はバスルームへ行き、バスタブに湯を貯める。
蛇口から出る湯を見つめながら―――明日以降の言い訳を考えた。
「はぁ〜」
小さくため息をつく。
「お前様、ため息は良くないぞ」
「うわ!」
突然背後から声を掛けられ驚く。
「何を驚いておる?ここには儂とお前様しか、いないではないか?」
191 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:43:08.72 ID:tH.lndoo
「そうだけど……」
「湯は溜ったのか?おお、これは大きな風呂だな」
「まぁ、何故か大きいね」
「何故じゃ?」
「さぁ?」
「まぁいいわ。お前様も疲れたであろう?先に入れ」
「いや、忍の為に入れたんだし」
「良いから先に入れ!」
忍は僕の服に手を掛けると、消し去ってしまった!
「わっ!明日帰れない!」
「心配するでない、もう明日の服は用意しておいた」
部屋のソファーの上に新しい服が用意されていた。
「さて、それでは儂も」
「まて!一緒に入るのか?」
「何を今更。この間も一緒に入ったではないか?」
「えっと、この間は……その、小さくて……」
確かに、全てを曝け出したから恥ずかしいとは思わなかったのだが……
「小さくなくとも、この風呂のサイズなら儂ら二人でも十分なサイズではないか?」
「いや、そういう事じゃなく」
「遠慮はいらん、さぁ入れ」
僕はそのままバスタブに押し込まれた。
192 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:45:04.94 ID:tH.lndoo
「はー、いい湯じゃ、なぁ我があるじ様よ」
「あ、うん」
「何を隅で小さくなっておるのじゃ?」
ええ小さくなっていますが、大きくもなっています。
「こっちに来て寛がんのか?」
「あ、うん」
「何をさっきから遠慮しておるのじゃ、あるじたるもの堂々とされよ」
忍は僕の手を引き、僕の身体を引き寄せる。
ちょうど足を伸ばした格好の忍に乗っかる形で。
「なぁ、お前様。今日の話は本気だぞ?」
「ん、うん。分かってる。分かってるから少し返事をするを待ってほしい」
「ああ、50年は待ってやるから心配するでない」
そういうと忍は僕の首筋を軽く噛んだ。
それは血を吸う為ではなく、ただ何かを伝える為に。
「50年待てないのであれば、今ここで全部吸えば良いだけの話だろ?」
「ほう。流石は我があるじ様。察しが良いのう」
「まぁ、最近まで鈍感な方だったが―――研ぎ澄まされてきたのかな?」
「魔王になる為にか?」
「さぁ、それはどうだろうか?」
「それより、お前様のお前様が魔王になっているのは気のせいか?」
「ぶっ!」
193 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:46:29.80 ID:tH.lndoo
「成程。儂と一緒に入るのを拒んだのはこういう事だったか」
「すまん」
「別に謝る事は無い。儂もこの姿まで戻れば男を虜に出来る事が分かっただけでも収穫はあった」
「……」
「なんなら、今宵の夜伽は儂に任せるか?」
僕は全力で首を横に振った。
「あるじ様は―――かわいいな」
僕の肩を撫でる忍の手と普通言葉の語尾に耐えられず、つい立ちあがってしまう。
「洗う」
僕は風呂椅子に座り、素数を数えながらボディソープを泡だて、無心に体を擦った。
黙々と洗う僕を、バスタブから眺める忍。
僕は忍を直視できない、幼児体型の時は見れたのにな。
一応、普通の男だったという事か!
「さて、儂も逆上せそうじゃ」
と言いながら、忍はバスタブからあがる。
また僕の背後に立ち、言った。
「今日は儂が頭を洗ってやろう。戯れも必要だろ?」
そういうと、忍は僕の頭にシャワーをかけ、シャンプーをドッと乗せる。
「多くない?」
「なぁに、全部流せばいい」
細くやわらかい手が僕の頭皮を撫でる。
まるで、ピアノでも弾いているかのように小刻みに動かしながら。
194 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:48:21.77 ID:tH.lndoo
「なぁ、お前様―――」
「いうな」
「察したか?」
「ああ。ちゃんと本気で考えてるから、もう今日はその話は無しだ」
「分かった、我があるじ様」
忍はシャワーを強くし、僕の頭を一気に流す。
頬を伝い、顎から流れ落ちる泡を僕は見つめていた。
「終わりじゃ」
「ああ、ありがとう。忍も洗ってやろうか?」
「いいのか?」
「いいぞ、遠慮するな」
「このシャンプーと言うのは本当に気持ちがいいのぉ」
「ああ、人が考え出した行為の中では至高だと僕は思うよ」
「至高か。それはまた大げさな」
「まぁ色々と精神的なリセットも出来るからな」
「リセットか……」
僕達は互いに逢わなければ……そんなリセットは要らない。
忍に逢えたという事が、今の僕には十分なぐらい有意義な毎日を送らせてくれる。
「はい、終わったぞ。今日は妹に覗かれる事がないが、僕は先に出る」
もう少し浸かりたいという忍を置いて、僕は先に出た。
195 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:50:42.02 ID:tH.lndoo
髪を乾かし、備え付けのバスローブを身につけ、冷蔵庫からコーラを取り出し、ベッドでそれを飲みつつ、TVのニュースを見る。
色んなニュースが流れているが、僕のこの半年をニュースにしたら……視聴率100%かもしれないな。
ま、そんな番組、世界に一つしかないけどさ。
ゴロゴロしていると、忍も風呂から上がり、髪を乾かし、バスローブを纏い、ベッドに入ってきた。
「寝る」
一言、そう言って目を瞑ってしまった。
僕はTVの音声を限りなく下げ、忍が寝られるようにと配慮をする。
が、次に耳を引っ張られた。
「のう、お前様。儂が寝たと言うのに、何故何もせんのだ?」
「は?」
「普通は襲うモノであろう」
「ごめん、忍は襲えないよ」
「何も性交渉までしろとは言わんぞ?」
「は?」
「何が研ぎ澄まされただ!この鈍感!」
「いや、意味わかんねぇよ」
「お前様、寝ている妹にした事忘れたのか?」
あ、ああ。あ?
「いや、鬼畜の称号を得た行為だし、忘れないよ」
「何が鬼畜じゃ、鬼を名乗るには100年早いぞ!」
「言ったな!」
「よし、忍にもしてやろう!」
僕は忍に抱きつく。
「どんと来い!あるじ様」
どんと来いなんて言われると、ドン引きしてしまうじゃないか!
196 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:52:53.37 ID:tH.lndoo
二人で笑ったあと、言葉が途切れた。
僕は忍にキスをし、言った。
「おやすみ、忍」
忍は僕の手を握り、そのまま深い眠りに就いた。
そんな忍を見た後、僕はゆっくりと一人で反省会を開いた。
で、そのまま夢の中に墜ちた。
197 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:54:30.40 ID:tH.lndoo
朝、目覚めると忍の姿は無かった。
既に影の中で眠っているのか?
と思いきや、ベッドの反対側に落ちて、床で寝ていた。
「おーい忍、そろそろ帰る時間だぞ」
「うぬ?もうそんな時間か?久しぶりに夜寝してしまったわ」
「まぁ、たまにはいいもんだろ?」
「まぁ、お前様が襲ってくるかと期待しておったんだが、空振りのようだな」
「何を言う。今まで爆睡してたのに」
僕は着替え、忍は影に潜み部屋を出る。
外は既に人通りがあり、結構な時間だった。
開店直後のミスタードーナツへ寄り、朝飯を取る。
それから、家に向かう。
が、ついに捕獲された。
「暦お兄ちゃん捕まえた!」
千石だった。
「あれ?千石何やってんの?」
「え?暦お兄ちゃんの捕獲」
「いつから?」
「朝から」
「へー」
「他の人は一晩中探してたみたいだよ?」
一気に背筋が凍った。
僕を左手で掴み、右手で携帯を操作する千石。
5分もしないうちに神原到着。
そしてその1分後、右手に携帯、左手に三角定規をもった戦場ヶ原が来た。
198 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:55:15.08 ID:tH.lndoo
「あら?阿良々木君でなくて?」
「はい!おはようございます」
「昨日、自宅に携帯忘れたそうね」
「はい!忘れました!」
「で、用があったので皆で探したんだけど」
「はい、有難うございます!」
「見つけた途端、逃げたわよね」
「はい、逃げました!」
「その理由、言いたい?」
「はい、説明させてくださ―――」
三角定規の角が頬に刺さった。
全部言う前に刺さった。
勿論、そのまま終わる事も無く、神原に抱えられ戦場ヶ原の家に連れて行かれ、夕方まで正座したまま、説教された。
「で、もう一度聞くけど、金髪女は誰なの?」
「しりません」
「知らない女とどこに行ってたのかしら?」
「しりません」
「自分の事でしょ?」
「覚えていません」
「阿良々木君、公認の取り消し忘れていないわよね?」
「はい。だから神原とは遊んでいません」
199 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 20:58:13.32 ID:tH.lndoo
「だから他の女と遊んだと言う事ね。ちなみに、私―――浮気には非常に厳しいから、覚悟しなさい!」
「へ?」
ボコボコだった。
あー逃げたい、本当にこの女から逃げたい。
ちょっと前までは寛容だとか言ってたくせに!
50年待たなくていい、50秒で答えが出るわ!
ふらふらになった頃、影から声がした。
「お前様、開いておるぞ?逃げ込むか?」
流石に、この状況では逃げ込みたかったが、その先にある恐ろしさと戦場ヶ原の恐怖を天秤に掛けたら……
「Incomparable」だったので、そのまま耐えた。
ありとあらゆる文房具で責められ、僕はズタボロになった。
というか、またしても失神してしまった。
200 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/07(火) 21:09:40.54 ID:tH.lndoo
で、今回のオチ
オチなんてねぇよ!って感じのオチ。
ほんの少し、遊んだだけで死線を彷徨った!
回復が間に合わないぐらいに!
前日に忍へ血をやっていなかったら確実に死んでた。
というか、戦場ヶ原が病んだ。
病的な攻撃をしやがった!
影の中の忍が飛び出す一歩手前まで。
翌日学校に行ったら、既に金髪外人女性の話でもちきり。
というか、町中の噂。
職員室にも呼び出されるし、休み時間ごとに教室の前には人集り。
羽川には「良い御身分ね。えっと英語の勉強でもしていたの?ネイティブに習うなんて、いい「ゴミ」分ね」と嫌味を言われる。
そして、人集りを利用した戦場ヶ原が僕にベタベタする。
「ねぇ、阿良々木君、放課後デートにカラオケ行きましょうね」と大声で言いながら、ベタベタする。
人前でデレて、彼女宣言。
病んだり、デレたり。
あれ?こういうのってなんとかって言うんだったよな?
昨日、脳が損傷するまで暴行受けたので思いだせないや。
で、忍が今日も言う。
「お前様、儂の予定は空いておるでな、来週も映画に行きたいぞ」と。
50秒だけ考えさせてくれ!
おわり
201 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 21:12:47.18 ID:iMHCBt60
ヘ⌒ヽフ
( ・ω・) 乙
/ ~つと)
202 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 21:13:38.25 ID:C6F/782o
アニメしか見てないチンカスだが面白いな
原作もこんな感じなの?
203 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 21:20:54.43 ID:cr.73wAO
乙 羽川さんはまだ?
204 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 21:23:07.85 ID:tH.lndoo
金髪美女話を聞いた千石ちゃんが暴走とかあってもいいよね?
205 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 21:28:51.57 ID:E9Eiq.SO
是非とも
つか途中に割り込んでごめんね
リロードし忘れてた
206 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 22:06:29.05 ID:lHiXBADO
GJ!次も期待してます。
>>205
わしのせいじゃすまない。ラクーンドックの方かと思ったけどそちらかな
207 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 00:51:17.20 ID:KsKNorYo
乙
アニメだとそうでもなかったのに
このSS読んで原作読みたくなったわ
208 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 01:00:35.29 ID:DUZsvAMo
乙
慣れてはいるだろうけど忍にも拷問のダメ行くよな…
209 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/08(水) 01:16:33.82 ID:Y5J4fkAO
乙
羽川は忍だって分かって無いの?
羽川なら分かりそうなもんだが
210 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 06:01:30.32 ID:suf7jwgo
忍とか俺得すぎる
話もうまいし、支援せざるを得ない
もっと書いてくれー
211 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 14:39:46.42 ID:tzKAI/Yo
早く起きてラスボスを書け
212 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/08(水) 16:01:30.79 ID:YGA593.o
/
//
/:.:/
〈:.:::{_,.-:‐::─::‐:-:.、_
_,.-‐ゝ::'::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ、
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/:.:;':.:.:.:;/ー-\:.::ヽ:.:、::.:.:\:.:.:.:.:.:.:\:::人
l:::/;/::;イ ‐-_、 ∨::|:.:.ヽ:‐-:ゝ:.:.:.λ:.:〉:ハ::\
|::'´:|:/::|,ィて:アゝ |:/\::.:ヽ.:.:.:.:.:.:/::∨:.:.:.|\::ヽ、
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|:ハ:.:.:.:.:ト:ゝ ・ ・ ` ∨::.:.:/
´{ .Vヘ::ゝ |:ハ:::/
ヽ、`ヽ、 / ノ
どうしてだろう?千石の話はむづかしい。
変換すら出来ないぐらいむづかしい。
Now thinking...
213 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 16:14:38.23 ID:m6xcb.DO
50年か……
この設定で忍を選んで避妊し続けたらガハラさんはコンパスでゴム刺しまくるな
ところで僕は深夜によくエロ本買いに行くのだけれど、深手を負った金髪美女と全然遭遇しない。なんで?
214 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/08(水) 16:41:46.88 ID:YGA593.o
>>213
娶るな=嫁にするななので、適当な歳でポイしろって忍が言ってたよ!
というか、ガハラさん捨てられる展開で今書いてるんだけど……
金髪美人に逢えないのはね、既に阿良々木君や忍野さんが回収した後だからだよ〜
どこか、廃ビルでも行けば、うずくまってるかもよ?
ドーナツ持って探検だ!
で、マジで話がまとまらない。
千石はどうなの?病んだらいいの?かよわい子羊のまま死ねば良いの?幸せにすればいいの?
215 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 18:38:29.00 ID:T6lyb7ko
>>214
病まして、幸せにして、最期に病気で殺せば解決じゃね?
216 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 19:23:50.44 ID:c29AG6AO
>>209
恋は盲目なんだぜ(キリッ
217 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 20:40:59.79 ID:yteD5QSO
>>214
ラスボス要素を敢えて排除した純情可憐な撫子も見てみたい気もする
前作みたいなヤンデレは忍がいるから無理だろうし
218 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 20:41:50.20 ID:hL7HEaQo
>>214
ボロボロにして欲しいんだが・・・
NTRでもOK
219 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:32:56.58 ID:YGA593.o
とりあえず途中まで出来たので投下始めます。
タイトルは相変わらず(仮)です。
暦「僕は、お前を選んだ!」
220 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:34:02.39 ID:VH1d8XYo
期待
221 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:35:11.22 ID:YGA593.o
先日の騒動の後、公認どころか推薦すらされなくなった僕は、常時監視状態で家から出るのも一苦労で、忍とグタグタと会話する休日が多くなった。
「あー、ドーナツ食いてぇ」
「ほぅ、お前様がそういうとは、かかか」
いつもなら忍がいうセリフを僕が言う。
「笑い事じゃない。放任主義の両親にまで説教されてさ」
「まぁ、仕方が無い。何せ目撃証言が多過ぎた、ホテルへの出入りまで噂されておるからの」
「火憐と月火のあのジト目は耐えられないよ」
「そうじゃな。以前は『兄ちゃん、非行し過ぎ』と優しい言葉をかけた妹共も『不潔』の一言だからな、かかか」
忍はまるで他人事のように笑い飛ばす。
「月火に至っては、『金髪は妄想じゃなかった!部屋や風呂に連れ込んでる!』と両親の前で言うし……」
「まぁ、事実だけに反論できんわな。お前様もこの際、開き直れば良かったのではないか?」
「どう開き直るんだ?」
「『僕は魔王だ!きんぱちゅは〜正義だ!風呂どころかあんな事もこんな事もしているぞ!』とな」
おい!噛んでる上に創作まで入ってるぞ!
それに、そんな事を言えば僕は病院送りになる。
「ま、人の噂も七拾五日。大人しくしていればよかろう」
「ああ」
「それに、ドーナツなら学校帰りでも良いではないか」
「そうなんだけど」
「お前様も一応は受験生であるから、勉強するのもいいと儂は思うぞ」
「へー、忍からそんな言葉が出るとは思わなかったよ」
「儂のあるじ様が『受験生』というのはカッコいいではないか?」
忍はまた勘違いしている。
受験生はそんなにカッコいい肩書でもステータスでもない。
222 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:38:38.31 ID:YGA593.o
「はぁ、しょうがない。寝る」
「さっき起きたのに、また寝るのか?」
「ああ、寝る」
「そうか、では―――」
忍が影から、ぬぅ、と出てきて僕の横で遊ぶ。
正確には、布団に包まった僕と同じように布団の中に現れ、布団に包まる。
「お前様、変な事をするでないぞ?」
「それはしろと言う意味か?」
「さぁ?どうかのう」
「残念だが、期待には応えられない。何せ、あと1分もしたら『剥がし屋』が来るからな」
「なんだ、もうそんな時間か。仕方が無い、では儂は帰るぞ、残念だが―――我があるじ様」
忍は軽く僕にキスし、スッと影の中に消えてしまった。
あれ以来、忍も結構大胆だ。
僕と忍の挨拶はキスだもんな。
で、20秒後にドアが開く。
「チッ」
いきなり舌打ちされた。
「お兄ちゃん、今日は金髪美人囲ってないの?」
「いや、今までいたけど、帰った」
開き直る僕。
「けっ、兄ちゃんの妄想なんて信じちゃダメだよ、月火ちゃん。アホがうつる」
223 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:40:27.22 ID:YGA593.o
アホ……
確かに、アホ毛は立っているが。
アホは無いだろ、せめて馬鹿と言ってくれ。
あ?アホ毛というが馬鹿毛とは言わないな。
何故だろ?
どちらも同じ意味なのに、馬鹿毛は無い。
もしかして僕は関西人なのか!
「何さっきからブツブツ独り言を言ってんのよ。布団干すから!」
そう言って、火憐は僕の布団を剥がす。
で、悲鳴。
家中に響き渡る二つの悲鳴。
「馬鹿!変態!」
「鬼畜!不潔!」
端的に今の僕を説明する火憐と月火。
そう、何故か僕は全裸だった。
どうせ、忍が遊ぶつもりで消し去ってしまったのだろうけど……
「別に僕が裸で寝てもいいじゃないか!」
なんて主張は認められず、僕の「お前様」を直視した火憐は涙目で剥がした布団を僕に投げつけた。
「兄ちゃんはそんな事だから―――」
「そんな事だからなんだ?」
「そんな事だから―――」
「だからなんだよ?言ってみろよ」
多分、火憐の中で何かがぶっ壊れたんだろう。
「大っ嫌い!」
224 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:43:28.15 ID:YGA593.o
ついに嫌われてしまった。
結構いい線まで妹を従順に育てた―――訳でもないが、それなりにフレンドリーな兄妹関係を構築していたが、ぶっ壊れた。
元の木阿弥。
以後、口を聞いて貰えなくなる。
まるで空気。
ま、致し方ない。
全部自分が起こした結果だからな。
「お前様、最近は諦めが良くなったな。この調子だと50年待つ必要も無かろうか?」
忍は嬉しそうに話す。
暫くして着替えてリビングに行き、コーヒーを貰うも室内は冷めた空気が支配する。
淹れたてのホットコーヒーがアイスコーヒーになるぐらい。
「暦も年頃だから色々とあると思うけど、妹はまだ幼いんだから……気を使ってね」
と、母さんに教育的指導される。
「ああ、気を付けるよ」
そんな僕と母さんの会話を聞きつつ、父さんは何も言わない。
この人はいつもそうだ。
僕と殆ど話さない。
225 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:45:30.58 ID:YGA593.o
原因?
前にも言ったけど、僕のポケモンカードを捨てられ、プチ家出して以来あまり話さなくなった。
そりゃ、僕が悪いんだけど、お互い歩み寄る事は無い。
互いに牽制し、互いの損得勘定だけで生きる。
だから、阿良々木家のもう一人の男性。
そんなポジション。
ただ、流石に今回の騒動では「一応世間体があるから」と一言だけ言った。
世間体ね、はいはい。
それでも、僕にとって守らなければならない家族である。
言えない事も沢山あるが……
この半年間の事を知れば―――月火の事を含めて、知った途端、この人たちの心は壊れる。
それぐらい、阿良々木家の住人は心が脆い。
よくよく考えれば、その中で僕だけ心臓に毛が生えるほど強靭なんだろう。
いつ死ぬか分からない恐怖より、いつ[
ピーーー
]るか分からない恐怖。
よくそんな状況で耐えてるな、僕。
と、家族や自分を分析したところで、この状況が改善される事も無いので、僕は出掛ける事にした。
226 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:45:51.42 ID:DUZsvAMo
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
227 :
>>225 校正
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:46:23.15 ID:YGA593.o
原因?
前にも言ったけど、僕のポケモンカードを捨てられ、プチ家出して以来あまり話さなくなった。
そりゃ、僕が悪いんだけど、お互い歩み寄る事は無い。
互いに牽制し、互いの損得勘定だけで生きる。
だから、阿良々木家のもう一人の男性。
そんなポジション。
ただ、流石に今回の騒動では「一応世間体があるから」と一言だけ言った。
世間体ね、はいはい。
それでも、僕にとって守らなければならない家族である。
言えない事も沢山あるが……
この半年間の事を知れば―――月火の事を含めて、知った途端、この人たちの心は壊れる。
それぐらい、阿良々木家の住人は心が脆い。
よくよく考えれば、その中で僕だけ心臓に毛が生えるほど強靭なんだろう。
いつ死ぬか分からない恐怖より、いつ[ピーーー]るか分からない恐怖。
よくそんな状況で耐えてるな、僕。
と、家族や自分を分析したところで、この状況が改善される事も無いので、僕は出掛ける事にした。
228 :
>>225 校正の校正、すみません
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:46:59.80 ID:YGA593.o
原因?
前にも言ったけど、僕のポケモンカードを捨てられ、プチ家出して以来あまり話さなくなった。
そりゃ、僕が悪いんだけど、お互い歩み寄る事は無い。
互いに牽制し、互いの損得勘定だけで生きる。
だから、阿良々木家のもう一人の男性。
そんなポジション。
ただ、流石に今回の騒動では「一応世間体があるから」と一言だけ言った。
世間体ね、はいはい。
それでも、僕にとって守らなければならない家族である。
言えない事も沢山あるが……
この半年間の事を知れば―――月火の事を含めて、知った途端、この人たちの心は壊れる。
それぐらい、阿良々木家の住人は心が脆い。
よくよく考えれば、その中で僕だけ心臓に毛が生えるほど強靭なんだろう。
いつ死ぬか分からない恐怖より、いつ死ねるか分からない恐怖。
よくそんな状況で耐えてるな、僕。
と、家族や自分を分析したところで、この状況が改善される事も無いので、僕は出掛ける事にした。
229 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 21:47:17.10 ID:DUZsvAMo
なぜに[ピーーー]のままwwww
230 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:49:34.33 ID:YGA593.o
「暦、どこに行くの?」
取り調べ開始。
「神原の家」
事情説明。
「本当に?」
疑われている。
「ああ、ちょっとな。呼ばれているんだ。何なら火憐連れて行こうか?」
無実を証明。
「いかなーい」
アリバイ消滅。
おやおや、神原と僕を天秤に掛けたら、僕との行動の方が重かったようだ。
早く帰って来なさいよと釘を刺され、出掛ける。
勿論、火憐と月火が携帯を取り出し、連絡網に情報を流しているのは百も承知。
『暦メーリングリスト』があるらしい。
ちなみに、購読者は姉妹や友人以外に、校内の学生の半数ぐらいとか。
ホストは勿論―――
どこで何をしていようと、僕は監視されている。
231 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:51:44.99 ID:YGA593.o
自転車を漕ぎ、神原邸へ向かう。
門の前では神原が待っていた。
「やぁ、阿良々木先輩。おはよう!」
流石はメーリングリスト、確実に情報は廻っているようだ。
「なぁ、阿良々木先輩。幾ら体に良いからと言ってマッパ睡眠後、年端もいかない妹達の前で曝け出すのは駄目だと思うぞ」
うわ……そんな事まで流されてるのかよ!
僕のプライバシーはどこに行った!
「ところで今日は何の用だ?」
「八九寺ちゃんと作った本の原稿が上がったので、読んで貰おうと思ったんだ」
「あー、前に言ってた薄い本か?」
「そうだ!原作は私、脚本は八九寺ちゃん、作画は私、アシスタントは八九寺ちゃん」
「へー、一応真面目に分担してやってるんだな」
「とりあえず、上がってくれたまえ」
そう言いながら、神原は携帯を弄る。
『先輩到着』
ちらっと覗き見た携帯の画面にはそうあった。
息する以外何も出来ないな、これでは。
232 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:53:03.67 ID:YGA593.o
神原の部屋に行くと、八九寺が居た。
そりゃまぁ、当たり前だが。
「八九寺〜会いたかったぞ、このやろう!」
と、飛び付こうとした僕に神原が回し蹴りを入れる。
「はう!」
「先輩!まだ反省してないんですか?」
「ごめん……」
「先輩がそんな事だから―――」
「そんな事だから?」
「戦場ヶ原先輩の事も考えてください!」
「ん、ああ」
確かに、かの一件以来、戦場ヶ原の調子が悪い。
調子と言っても、体調ではなく、精神的な意味で。
「ヤンデレな戦場ヶ原先輩など、私は見たくない!」
―――あーあ、言っちゃった。
分かってたけど、言わなかったのに、言っちゃった。
というか、僕は最初からヤンデレだと思ってた訳だが。
ツンでヤンでデレでドロ。
この4つを上手く言葉に出来るなら、今年の流行語大賞は確実に取れる筈。
『取れる』で思いだしたが、『蕩れ』は流行らなかった。
僕は応援してたんだけどさ。
萌え強しと言ったところか。
あ、さっきの4つ纏めて言えば「ガハラサン」だな―――
233 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:54:29.65 ID:YGA593.o
「まぁ、なるべく気を使うよ」
「なるべく?」
「全力で!」
「本当に、彼氏としての自覚はあるのでしょうか?」
額にスクリーントーンの切れ端を付けた八九寺が横やりを入れる。
「まぁ一応は……」
「一応?ダメダメですね、ダメラギさん」
もう弁解する元気がなかった。
「で、出来た本はどれだ?」
「はい!これ!」
八九寺が嬉しそうに原稿を差し出す。
『さるかにがっせん』
「なにこのタイトル」
「ああ、それは―――私と戦場ヶ原先輩の百合本だ!」
「堂々と言うな!」
「というか、こういう薄い本は漫画やアニメを弄るもんだろ?」
「え?」
と、八九寺と神原が声をそろえる。
「何?僕、何か変な事言った?」
「さぁ?」
(阿良々木さんもヤキが廻りましたね)
(戦場ヶ原先輩に嬲られ過ぎておかしくなったか?)
「お前ら!聞こえてるぞ!」
234 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:56:30.86 ID:YGA593.o
「それは失礼。そんな状況説明はこっちにおいて―――」
「こっちって、どっちだよ」
「細かい事を気にしすぎです、この小舅が!」
「いつ僕がお前達の義兄弟になったんだ!」
「まぁまぁ、細かい事は気にせず、読んでくれたまえ先輩」
僕は渡された原稿を捲る。
「うわぁ……」
「ええっ……」
「はー……」
感嘆詞と溜息しか書けないわ!
ところで、この絵は誰が書いたんだ?
「それは私が書いたんだ、阿良々木先輩」
「神原って……こんな才能あったんだ!」
「いや、才能と言うか。利き腕の右で書くとこれだ!」
見せられた絵は、小学生の落書きレベルだった。
「これがどうやったら、こんなリアルな絵になるんだよ!」
「こっちが左手で書いた絵です」
もう一枚の絵を見せられる。
ゴッホやゴーギャンの再来か?と言うぐらい素晴らしい。
って、左手?
「ええ。この左手で書くと凄く上手に絵が書けるんだ」
「これは素晴らしい腕ですよ、私驚きました」
八九寺が褒めるほどの左腕。
そっか、そういう事か!
235 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 21:58:17.57 ID:YGA593.o
「猿真似」
神原の猿の手のもう一つの能力「猿真似」、キャノン砲以外の使い方が見つかって良かった。
「書きたいキャラの絵を見て、左手で書くと上手に書けたんだ」
へー、そりゃ良かった。
あと3年は本物の画家として食っていけるんじゃない?
「ところで、この『KAU』って作者名?」
「ええ。私達二人でKAUです」
「なんて読むの?」
「『かに』に決まってるじゃないですか!」
かに?
KAで「か」、Uは数字の「に」でカニ。
蟹って……
「それ以外に、怪異はローマ字表記で『K A I I』なのでKAU。で、二人なのでUにも掛けてます」
本格的すぎて、少し驚いた。
というか、誰がそこまで上手く考えろと言った!
「ちなみに、今年の年末に販売するので、是非買いに来てください」
「1冊贈呈するっていう話じゃねーのか?」
「結構配布するまでにお金が掛かるんですよ。1冊500円なので10冊お願いします!」
本はイラネェ!こんな本、家に持ち帰ったら絶縁されるわ!
236 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:00:17.04 ID:YGA593.o
カンパと称して、僕は5000円をあげた。
「おお、先輩太っ腹だな」
「印刷代が賄えます!」
お前ら、本当に楽しそうだな。
「じゃ、僕はこれで帰るよ」
「奥付にカンパ感謝の名前入れておきますね」
「絶対に書くな!」
僕は念を押す。
昼飯を御馳走になった後、神原邸を出る事にした。
門を出る。
神原がカチカチとメールする。
「はぁ、今日はもう帰るか……」
どこに行こうと監視の目があり、逐一報告されるだけだろうし。
みんなメーリングリストに飽きるまで、ほとぼりが冷めるまで大人しくしよう。
237 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:01:58.33 ID:YGA593.o
神原の家を出て、角を曲がったところで僕はブレーキを握る。
「え?」
一瞬、忍が居た様に見えた。
が、次の瞬間それが見間違いである事に気付くと同時に、驚きが漏れた。
「ぬわ!」
「えへへ、暦お兄ちゃん確保」
千石だった。
確かに千石だが―――金髪だった。
「お前、その髪どうした!」
「えへ。暦お兄ちゃんが金髪好きって聞いたので、撫子も金髪にしてみた」
元々色白の千石が金髪に。
確かに、忍と少し似ているかも知れない。
外観だけだが。
「お前、そんな髪の色じゃ学校にも行けないだろ!」
「大丈夫だよ、帰る時はまた黒くするから」
「って、お金の無駄だろ!」
「心配しなくても大丈夫だよ、これがあるから」
238 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 22:01:59.75 ID:VH1d8XYo
こういうの見ると忍と駆け落ちエンドが見てみたくなる
239 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:02:49.13 ID:YGA593.o
千石は笑いながら靴墨を僕に見せる。
「え?千石、それで黒くなると?」
「大丈夫だよ、もう実験済みだから」
最近の中学生は馬鹿を通り越している。
墨汁で染めたり、靴墨で染めたり。
色々物の使い方を間違ってる。
「別に僕は金髪が好きって訳じゃない!」
「ふーん。おかしいな?撫子が得た情報だと、金髪にすると映画に行けたり、レストランに行けたり、ホテルに行けたりするって事だったけど?」
殆ど全部、筒抜けだった。
「いや、それが事実で有ったとしても、金髪だからって訳じゃない!」
「なんだ……」
「それに映画に行きたいなら言えば良いだろ?」
「だって、暦お兄ちゃん忙しそうだし」
「金髪にしたからって暇になる訳じゃない!」
そんな僕の説教もどこ吹く風、千石は僕の自転車の後ろにちょこんと座った。
「暦お兄ちゃん号、出発進行!」
240 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:04:40.80 ID:YGA593.o
「どこに行くんだよ」
「映画」
「映画はもういい」
「カラオケ」
「カラオケも僕の歌う歌はマイナーらしいので却下」
「ごはん」
「お腹は空いていない」
「ホテル」
「100%選択肢として間違ってる」
「じゃあ、どこでもいいからドライブ」
自転車でか?
それもタンデムで、ツーリング。
おまけにママチャリ。
「行ってくれないと。色々カチカチしちゃうぞっと」
笑顔で僕に話しかける千石。
しかし、目は恐ろしいほど怖かった。
まるで、メドゥーサの如く。
直視されたら石になるような視線だった。
蛇の怪異に、千の石……
ああ、成程。
241 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:07:08.04 ID:YGA593.o
強ち『メドゥーサ』であってもおかしくないな。
メドゥーサ、ゴルゴーン三姉妹の末っ子。
僕の妹達と一緒に遊んでいる時は、本当に3番目の妹みたいだった。
名前の意味は「女支配者」だったか。
以前読んだ神話の本にそんな事が書かれてたっけ。
女支配者、ラスボスってか。
忍野が言ってたのはこういう意味だったんだな。
「暦お兄ちゃん、どうしたの?」
「あ、いやなんでもない。なんでも」
「で、どこいく?」
「じゃあ、近所をひと廻りして、それから美容室な」
「なんで?」
「その金髪を元の黒髪に戻す」
「えー、大丈夫だって」
「駄目!」
僕は頑として許さなかった。
安易に染めた髪が、忍を冒涜しているなんて事は言わない。
心配というか、僕のせいで千石の人生が下げ方向に向かうのを阻止したかった。
中学生の毛染めは不良への第一歩だからな!
242 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 22:08:22.99 ID:5ytIQi.o
かんばるはひだりきき
そして忍とかけおち…超見てえ
243 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:08:44.08 ID:YGA593.o
自転車を漕ぎ、美容室に向かう。
途中、千石が携帯を取り出しメールチェック。
「暦お兄ちゃん、これ」
『ターゲット、本通りを自転車で南下中。後部金髪あり』
「なんじゃこりゃ!」
既に僕達は監視の網に掛かっている。
とりあえず、本通りから裏通りへ右折し、様子見。
またメール。
『本通りから右折し西進。裏通りへ向かった模様』
続けて、メール受信の嵐。
『ロックオン』
『金髪?噂より小さい』
『タゲの上着、赤色パーカー』
『目的地不明、網拡大した方がいい』
酷い状況だ。
とりあえず、千石だけでもどこかに置いて行かないと、金髪美女=千石という間違った認識が出来てしまう。
それだけは何としても避けたかった。
244 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:10:24.92 ID:YGA593.o
だって―――ホテルにまで行ってるんだぜ?
それが中学生の千石だったと誤認されると、色々拙い。
というか、千石の人生にキズがつく。
僕の人生なんてどうでもいいのだ。
千石もまた、僕が守らなければならない人の一人だと気付いた。
「しっかり捕まってろよ!」
僕は出来る限りの力で自転車を漕ぐ。
段々と市街地から離れ、隣町へ向かう。
やっとメールの量が減ってきた。
『タゲ、ロスト』
『隣町か?』
『青い服に着替え、ワンマンで逃走』
段々と偽情報と言うか、情報者が多いほどノイズも増える。
ノイズが増えれば、そのノイズが次のノイズを発生させる。
多分、これで僕は逃げられる。
奴の策に勝てた!
ザマアミロ!
そう思うだけで、僕は全身に力が漲り、ペダルを漕ぐ足にも力が入る。
が、敵もそう甘くは無かった。
245 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:11:39.24 ID:YGA593.o
地響きにも似た足音が後方から響く。
振り向くと。上下ジャージで、少し長めの髪の女子が走ってきた。
僕は直ぐにそいつが誰か分かった。
と、同時に諦め半分な状態に。
「おーい先輩!どこに行くんだ!」
声を掛けられた時点で完全ロックオン。
もうひと踏ん張り、僕は加速する。
荷台に座った千石の事も忘れ、段差も気にせず突っ走る。
「痛いっ」
「だ、大丈夫か?」
「う、うん……暦お兄ちゃん、このまま逃げ続けるの?」
「ああ、完全に撒くまで僕は逃げる」
「そう。撫子、暦お兄ちゃんとならどこまでも逃げてもいいよ」
そう言いながら、千石は僕の腰をきつく抱く。
「こ、漕げん……」
ほぼ、立ち漕ぎの状態だったのに、座席に縛りつけられたような状態。
この状態で、BLダッシュの神原には勝てない!
頼むから、その手を!
……
246 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:18:00.48 ID:YGA593.o
豫 告
全クケシカラン幼ナジミダ
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| `ヽ::ハ ,ィ':,'´ |
| }: } /: / |
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|: : : : : : : ::`ヽ、 ,、 ,>': : : : : : : : : : |
|: : : : : : : : :_: ::ヽ': :| /: : : : : : : : : : : : : |
|: : : : : / ̄/ ヽ:: :| /: : :;──'^ー-、:_: : |
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| } / └─‐ヽ、 ヽ、__,.、 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
火憐だぜ!
月火だよ!
なぁ、月火ちゃん、月火ちゃんのAAってじゃりん子チエのヒラメみたいだね
火憐ちゃん、酷いよ!ところで、みたんでしょ?
何をかな?
お兄ちゃんの……
言うなー!
で、どうだった?
何がどうなの?
え?ほら、形とかサイズとか
ば、馬鹿!そんなの覚えてない!
なんだ、残念!
自分で見ればいいじゃないか!
目が腐る!
次回、なでこスネーク99話「戦争」
おたのしみに!
247 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 22:21:15.10 ID:DUZsvAMo
乙
なでこメデューサはこういう話かwwww
248 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 22:25:53.68 ID:NKj7hFA0
続きが気になるな
乙乙
249 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 22:38:31.78 ID:yteD5QSO
乙
全ては撫子の計画通り! なのか?
250 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:52:14.64 ID:YGA593.o
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\__/,:へ、_x<7/ / ̄ |: : : : :i : : '
y': : ヘ.:|V __、 ハヽ/,イ: : : : : : : ',
/: : : : ヘ. / 、 // !: : : :|:.: : : :
. //!: : : ヽ:ヽ/ハヽ ' j : : : : : : : : :i
. // l: : : : :l\\ ´ イ{:|: : :!: : : :i i.i
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|: !: :l..:ヽ:\.\\ ,'∧ |: :_:! /:.:.:.:.:\
. ! |:.:./:.:iヽ \ ~~ i`ヽ} ! / /:.:.:.:.:.:,:.:-‐ヽ
. !/.:.',:.:.i. \\ .ト、 /| | /:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:ヽ
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西尾維新・アニプレックス・シャフト
251 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:53:55.16 ID:YGA593.o
詰んだ。
流石に、座り漕ぎで勝てる相手ではなかった。
僕の手の上から、その手はブレーキを握る。
自転車がこけない様、態勢を維持するのがやっとだった。
「先輩。あまり心配掛けるなよ」
神原は少し怒った顔をした。
「ごめん」
「なんで逃げるんですか?」
「いや、この状況だと誤解を生むし」
「誤解?」
「ほら」
僕は千石の方へ視線を配る。
「おお、金髪美……あれ?千石ちゃん?」
「そうだ」
「先輩!あなたって人は!中学生に手を出したのですか!」
「待て。というか、僕が中学生に手を出したからと言って、神原が怒れる立場じゃないだろ!」
「不純異性交遊とショタ・ロリは大きく違いますから!」
全く以て、意味不明な見解だ。
252 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:54:53.45 ID:YGA593.o
「あのな、神原。今から本当の事を言うから、それは信じてくれ」
「話にも依ります」
「まぁいい。あのな、僕が先日一緒に居た金髪女性は千石ではない」
神原は一瞬、僕の言葉を警戒したが、次第に自分の記憶と照らし合わせ何かを見つけたようだ。
「おお!確かに。あの日見た金髪女性はもっと髪も長かったし、身長も高かった!」
「うんうん、よく気が付いてくれました」
「じゃあ、この状況は何?」
僕は神原邸を出た後の事を話す。
神原は裏を取るように、千石に問いただす。
納得した神原は、
「うんうん、後輩思いの良い先輩だな」
と、僕を褒めた。
そこで全ては解決するはずだったが……
253 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 22:56:25.25 ID:YGA593.o
僕達が話している路肩に一台の四輪駆動車が停まる。
助手席から出てきたのは―――
戦場ヶ原。
「こ、こんいちは!ガハラさん!」
また噛んでしまった。
そんな僕をシカトし、戦場ヶ原は車の運転席側へ周り、窓から運転手に声を掛ける。
「ありがとう、お父さん。帰りは歩いて帰るので、もう行っていいわ」
おお、久しぶりに戦場ヶ原の父親を見た。
相変わらず寡黙でダンディだな。
チラッと僕の方を見て、声を掛ける。
「自慢の娘の彼氏君。あまり娘に寂しい思いをさせないでくれよ」
うわー、すげーショック。
一番言われたくない人に、一番辛辣な言葉をかけられた!
そのまま窓を閉め、車は走り去る。
「で、今日は全部確保できたのね」
戦場ヶ原はとても楽しそうに話す。
「先輩、これは!」
「神原、黙って。ノイズが多いと判断が鈍るわ」
「いや……」
「黙りなさい!」
辺りが静まり返った。
254 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:00:06.63 ID:YGA593.o
「あなたが―――そう。初めましてかしら?」
「えっと……」
千石は困ったのか、上手く喋れない。
「私、阿良々木君の彼女の戦場ヶ原。戦場ヶ原ひたぎ、以後宜しく」
「せ、千石、千石撫子です。えっと戦場ヶ原さん、はじめめままして・・・・・・」
「ふーん。千石撫子ね。今日からあだ名は泥棒猫でいいかしら?」
いつものように首を大きく反らしながら戦場ヶ原は話す。
「あの、私……」
突然、戦場ヶ原は千石の前髪を掴み、顎が上がる程に吊りあげる。
「何この汚い金髪は。ふざけているのかしら?切った方がいいんじゃない?」
左ポケットからハサミを取り出す戦場ヶ原。
「おい、戦場ヶ原止めろ!」
「止めてください…」
千石は怯えきっている。
「ふーん、小汚い猫なのに口答えは出来るのね?」
髪を離した戦場ヶ原が右手をポケットに入れる。
ヤバい、そっちは確実にカッターナイフが入ってる。
対峙したまま動かない二人。
いや、戦場ヶ原が千石を追い詰めている。
「おい、お前らやめろ」
「暦お兄ちゃん……」
「何が『暦お兄ちゃん』よ。阿良々木君に妹は二人しか居ないわ。妹の座まで奪うつもりなの?このドラ猫は!」
千石の肩が小刻みに震える。
そして、僕にこう言った。
255 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:04:10.93 ID:YGA593.o
「何この人?本当にこんな人が暦お兄ちゃんの彼女なの?撫子、こんな人なら負けないよ?」
千石が、あのか弱い千石が切れた?!
いつもとは違う表情で戦場ヶ原を睨みつける、
「あらあら、えらく強気ね。いつまでそんな事を言っていられるかしら?」
「負けません、絶対に」
戦場ヶ原のあおりで、より一層気を荒立てる千石。
その姿は―――まるで、メドゥーサの如くだった。
ピリピリとした空気が辺りを包む。
神原も不用意には動けず、顔に焦りが表れる。
千石は素手、戦場ヶ原は凶器持ち。
どう考えても千石に勝ちは無い。
それどころか、一生消えない傷を背負わなければならない。
頼む、千石。それ以上戦場ヶ原を刺激せず、隙があったら逃げろ!
僕はとりあえず、仲裁に入る。
「僕の話を聞いてくれないか?」
「もう阿良々木君に聞く話は無いわ。怪異ならいざ知らず、『普通』の人間に渡すなんてありえないわ」
戦場ヶ原は本気だ。
そして続けて言った。
「あの時も―――こうしていれば良かったのかもしれない」
やっぱり戦場ヶ原は気にしていた。
気にするなんて言葉で片すなんて出来ない、心に深い傷を負っていた。
そして、猫を―――千石にダブらせている。
256 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:05:50.27 ID:YGA593.o
「ねぇ、阿良々木君。もしかしたら、これでお別れかもよ?言ったわよね私」
「もういいから、止めろよ」
「本気の相手は殺すって」
「馬鹿な事を言うんじゃない!」
一瞬、僕の方を見た戦場ヶ原に隙が出来た。
神原が動く。
背後から羽交い絞めにし、両手を封じ、武器を出せなくした。
「戦場ヶ原先輩、これ以上は駄目だ!」
「よし!」
本当なら、ここで終わらなければならない筈だった。が……
「パンッ!」
千石が戦場ヶ原に平手打ちを入れた。
「わ、わたしも本気です!だ、だから、こ、暦お兄ちゃんは渡せません!」
ダメだ、全部ぶち壊し。
泥沼化決定。
どうせなら映画化決定にして欲しかった。
何より、虫も殺せなかった千石が、こうまで変ってしまった。
それは、戦場ヶ原が立腹している事より恐ろしい事だと直感した。
ラスボスが目覚めてしまった。
257 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:08:35.66 ID:YGA593.o
「へー、中学生だからって気を許したら、とんでもないわね」
「わ、私、負けませんから。暦お兄ちゃんの為なら何でも出来ます!」
「そう。なら私も本気で行かせて貰うわ、死になさいよ」
「戦場ヶ原も千石も、いい加減止めろよ」
僕の制止など聞く筈もない二人。
「少し場所を変えましょう。ここでは人通りが多過ぎるわ」
戦場ヶ原は突然歩き始める。
その間も僕が説得するが、両者とも全く聞く耳を持たない。
説得中の僕に神原が話しかける。
「なぁ阿良々木先輩。どうだろうか?この際だから素手で気が済むまでさせれば?」
「お前!幾らなんでもそれは駄目だろ」
「女同士の素手の喧嘩じゃ、人は死なない。良くて引っかき傷程度。それで収まるなら……」
「神原、僕は誰にも争って欲しくないんだ」
「あはは、それは無理だと思いますよ」
「何故?」
「だって、みんな阿良々木先輩の事が好きだから」
「は?」
「戦場ヶ原先輩も羽川先輩も千石ちゃんも、かく言う私もみんな阿良々木先輩が好きだ」
「だからって―――」
「真剣に好きだからみんな戦えるんですよ。覚えてませんか?私が忍野さんに頼まれて先輩とお札を貼りに言った時の事」
「えっと……?」
258 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:10:30.00 ID:YGA593.o
「あの二人、埋めてしまいましょうか?って話」
ああ、そんな話もあった。
たしか僕はこういった言った。
「もし、戦場ヶ原より先に神原に出会っていたら、付き合っていたかもしれない」と。
神原もまた然り。
そして冗談交じりに、戦場ヶ原と羽川を埋めると言った神原。
それらは、みんな本気だった。
冗談や笑顔の裏に隠された真実、それが「本気」
妹だって、火憐だって本気で言ったのかもしれない。
原因は全て僕。
なのに、僕には何も出来ない。
誰も守る事が出来ない。
みんなが選んだ一つ、その一つは何を選べるのだろうか?
何を選べば全て丸く収まるのだろう?
259 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:11:28.94 ID:YGA593.o
黒
駒
書き溜め終了、以後書き落とし
260 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/08(水) 23:13:19.38 ID:RDPVCQko
書くの早いから読みやすい
おもしろいよー
261 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:35:35.17 ID:YGA593.o
到着した先は、町外れの公園。
そろそろ日も暮れ、公園で遊ぶ子供はいなくなった。
「では、戦争を始めましょう」
戦場ヶ原は千石を睨みつける。
「分かりました」
そこには僕の知っている千石は居なかった。
千石も戦場ヶ原を見据える。
「二人とも気の済むまでご自由に。但し、平手のみ。自己責任でお願いします」と神原がレフリー役を買ってでる。
全部間違ってる。
何もかもだ!
僕はもう一度、止めに入った。
が、もう誰も聞いては居ない。
千石は戦場ヶ原を。
戦場ヶ原は千石を。
神原は戦場ヶ原のポケットを。
それぞれに凝視し、緊張感を伝える。
262 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:37:40.11 ID:YGA593.o
戦場ヶ原が動く。
千石の胸元を掴み、平手打ちを入れた。
その一発で、千石は出血。
しかし、そんな事を全く気にせず千石は戦場ヶ原の頬を叩く。
激しい平手打ち合戦。
止めようとした僕を、神原が制止する。
「私や羽川さんは、リングから降りた。でもこの二人はまだ降りていない。どちらかが降りるまで止めては駄目だ、阿良々木先輩」
「しかし―――」
「いいんじゃないの?気が済むまでやれば」
その声に驚き振り向くと、そこに羽川が居た。
「神原さんの言う様に、どちらかが降りるまでやればいいじゃない」
「でも……」
「阿良々木君は駄目ね。自分が愛されているって事に気付かないと」
「だからってこんなの間違ってる!」
「間違ってなんていないわ。女だって、時には争って何かを得る事があるの。今日は張り手合戦だけどね」
「だから―――黙って見ていてあげて」
羽川に説得され、僕はそれ以上何も言えなかった。
263 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:39:27.16 ID:YGA593.o
「ところで、なんで羽川がここに居るんだよ?」
「さぁ?何故でしょうか?メーリングリストは一つとは限らなくてよ?」
「……」
僕は二重に監視されていたのか!
もしかするとそれ以上かもしれない。
「それよりどっちが勝つかしら?」
「どっちでもいいよ」
「あら?勝って欲しい人がいるでしょ?」
僕は何も答えなかった。
すると羽川は
「と言う事は、意中の人は今リングに居ないって事かしら?」
「お前は何でも知ってるな」
「ええ、殆どの事は知っているわ。知らないのは少しだけ」
いつもと違うリアクションに僕は驚いた。
そして、羽川は二人の間に割って入り、制止した。
「これ以上戦ってももう無駄よ。勝者はここでは生まれないんだから」
そして、こっちを見て言った。
「そうよね。阿良々木君」
「ああ、いねぇよ」
「と言う事。だから、これ以上戦っても無駄よ」
264 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:43:49.66 ID:YGA593.o
僕の返事を聞いて、戦場ヶ原が僕の所にやってきた。
「阿良々木君、どういう事かしら?」
「ごめん。もうこれ以上戦場ヶ原とは付き合えない。付き合う自信も無けりゃ、そうしたいと思う気持ちも無い」
暫し沈黙。
「そう。なら仕方が無いわ。私は無理強いまでしてあなたを縛る気は無いわ、どうぞご自由に誰とでも好きにしてください。というか……彼氏クビ!」
千石もやってくる。
「暦お兄ちゃん……」
「千石。ごめんな。僕の為に戦わせてしまって」
僕はハンカチで、千石の鼻血を拭いてやる。
「べ、別に撫子、そんな事気にしないよ?」
「だからと言って、千石と付き合う事は出来ないんだ。千石の―――撫子ちゃんの気持ちはありがたいけど、やっぱ僕の中では火憐ちゃんや月火ちゃんと同列の、大事な妹の一人なんだ」
僕の話を聞き終えると、千石はそのままへたり込み、大きな声で泣き始めてしまった。
「さて、これで阿良々木君に惚れた人は全員振られちゃったね」
「ごめん」
「別に謝る事は無いと思うよ?みんな良い夢見たんじゃないかな?」
「誰かれ見境なく守ろうとする阿良々木君が悪いとは言わないけれど、守られると女性ってのはつい、勘違いしちゃうのよね」
僕の心が締め付けられる。
「それに何でもは守れないのよ。守れるのは―――1つだけ」
そういうと羽川は、戦場ヶ原と神原、千石に声をかけ、一つの場所に座らせた。
「さて、ここに敗者が全員揃いました。そろそろ勝者を紹介してくれてもいいんじゃないかな?阿良々木暦君」
全てを見透かした言葉だった。
265 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:55:59.43 ID:YGA593.o
僕が影に向かい、声をかける。
忍が少々不貞腐れた顔で出てきた。
「儂は見世物ではないぞ」
「ごめん」
「あ!この間の金髪美人さん!」
神原が指さす。
「って、あれ?もしかして―――」
「ああ、もしかしなくても忍だ」
「なにその巨大化!その身長にその胸!」
神原が驚く。
声には出さなかったが、戦場ヶ原も驚いていた。
勿論、千石も―――違う意味で驚愕し、腰を抜かす。
羽川だけ、全てを知っているかのように笑顔。
「阿良々木君が選んだのは忍ちゃんよね?」
「ああ」
266 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/08(水) 23:57:43.35 ID:YGA593.o
僕は全部話した。
自分の事、忍の事、二人の関係、影の事、これからの事。
ただ、自分の妹の話だけは出来なかったけど。
「まぁ、それなら仕方が無いわね。私達はいつまでもこのままで居られる訳も無く」と戦場ヶ原。
「老けた自分と対照的に、好きな人がいつまでも若々しいのは苦痛以外の何ものでもなく」と神原。
「だから、その歩みに近い人を選ぶのは必定だよね?」と羽川が言った。
「撫子も頑張って若いままで―――」
「それは無理なのよ、人はいつか―――そんな老い行く人間が阿良々木君に惚れてはイケないのよ。だからここに居る全員、敗者で正解なの。阿良々木君が忍ちゃんを選んだのは必然であり、必定であり、自然な事」
羽川は全てをまとめてドヤ顔をした。
嫌な奴だ。
本当に、嫌な奴だ、阿良々木暦ってのは。
267 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/09(木) 00:10:31.79 ID:K4Zxvf.o
で、今回のオチ。
落ち過ぎだろ!ってぐらい落した。
戦場ヶ原も千石も神原も羽川も、全部落選!
で、僕を監視するメーリングリストも閉鎖され、晴れて自由の身になる。
学校は真面目に行ってる。
ただ受験勉強はもう止めた。
そんな暇があるなら儂と話せと、忍が毎夜五月蠅くて勉強どころではない。
というか、出来のいい奴は既に特別推薦やAO入試で合格が決まる季節に参考書を買う奴
「駄目な受験生」と羽川に教えられ、その地位の低さを実感したらしい。
「我があるじ様が落ちこぼれなど認めぬわ」と。
ちなみに、忍は夜な夜な家の中を徘徊する。
一応、玄関から入って、深夜には帰ると言う設定で、親は納得。
放任もここまで来ると駄目だな。
それでも、忍の為にミスタードーナツを買ってきて、冷蔵庫にしまっておいてくれる母さんには感謝している。
たまに、父親が買ってくる事もあるそうだ。
ちなみに、進路は既に決めてある。
親にも伝えた。
金の心配は要らないとまで言った。
忍の実家が大金持ちで、婿養子にいくと。
「ああ、好きにすればいい。ただ、奥さんはカードとは違う。大事にしろ」と父さんに言われた。
少し泣いた。でもカードの事が気になってその日は眠れなかった。
あと少し、高校生を続けるが、なるべく平穏で有って欲しい。と願う。
「お前様、本当にこれで良かったのか?」
「ああ、いいんだ。僕は自分を守る。だから僕は、お前を選んだ!」
おわり
268 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 00:12:56.05 ID:YCLmpU6o
日本以外のらららぎが知らない土地で忍とのラブラブ生活が見てみたい・・・
269 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/09(木) 00:13:03.22 ID:K4Zxvf.o
いつも叱咤激励頂き、有難うございます。
一応、これでお話は終わりです。
多分これ以上は書けないような気もしますが、小ネタがあれば投下するので、30日間はそのままで。
以下、適当にレスとなります。
270 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 00:23:46.78 ID:K4Zxvf.o
ラスボス希望さん
さーせんwwあまり強くしませんでした。
ラスボスだけど、いつまでも可愛い撫子でいてほしかったのさ
忍希望さん
やっぱ鉄血にして最愛だよね、忍。忍かわいいよ忍。
羽川希望さん
今回もいいとこ取りさせておきました
ただ、忍が何か言ってなかったっけ?
すべての乙さま
ありがとうございます。
乙ほど嬉しい事はないです。
271 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 00:29:46.10 ID:pCdUSoDO
乙
ドヤ顔で妊娠した羽川の勝ちか
272 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 00:32:12.16 ID:K4Zxvf.o
>>202
原作は面白いですよ。高いのが少々残念ですが。あと、もう少し言い回しが難しい。でもそこがまた面白い。西尾先生は神ですわ。
>>207
売れるといいな。はい?化物語蕩れ
>>208
格闘派陰陽師に暦がボコボコにされても、平気だし大丈夫!忍は強いから!
>>209
巨大化忍を見たのは確か、へんな関西弁の人だけだったんとちゃいまっか?鬼畜兄やん。
>>213
だよねー、なので今回は落選させた。案ありがとう。
>>215
誰も死なないから化物語なの
>>217
参考にさせていただきました
>>218
撫子と忍を天秤に掛けられない僕には無理でしたー
じゃ、そろそろ薄い本の準備を・・・・・・
273 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/09(木) 00:41:00.19 ID:K4Zxvf.o
>>271
さぁ?どうなる事でしょうか?忍、芳しく思ってないからね
274 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 00:53:13.86 ID:U7P69d.o
乙ー
275 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 01:21:02.20 ID:d8Pj0YDO
1乙〜
後日談が見てみたい
276 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 01:40:54.41 ID:RrDj7oQo
原作読んでないんだけどマララ木さんは実際不老長寿みたいになってるの?
277 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 01:56:43.64 ID:W.pZlSgo
まだ曖昧だよ
ただ不老長寿になろうと思えばいつでも成れるのは確か
278 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/09(木) 03:22:14.98 ID:/ufoq.AO
>>272
傷の時点で最大見てるし小さくなるとこまで見てる気がする
まあこまけぇこたぁ(ryだが
279 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/09(木) 07:18:22.71 ID:K4Zxvf.o
寝ながら考えた
・忍リベンジャー
・メメの日記
・暦マジシャン
全然後日談にはなってないなが。
>>278
でしたか。
読み返しておけばよかったorz
280 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 08:22:08.91 ID:PJs8WYAO
>>275
同意
281 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 11:12:43.46 ID:K4Zxvf.o
>>278
やっぱ会ってるね。
エピソード戦の翌日、廃ビルにきて見てたわww
こまけぇ事かも知れないが、今度書く時はなるべく設定に気をつけます。
今回は傷より偽中心な書きだったので、うっかりだったわ。
指摘thx!
282 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/09(木) 16:11:54.43 ID:.dhVICY0
どうでもいいけど究極超人あ〜るのR・田中一郎とあららぎさんって似てるよね。
283 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:40:44.10 ID:K4Zxvf.o
お暇潰しにどうぞ。
昼休みに書きなぐったので、あまり面白くないかも知れませんが。
先日の騒動の後、推薦どころか立候補も出来なくなり、お気楽な生活をしていた。
「阿良々木先輩!大至急来てください!」
神原からの電話で叩き起こされる。
とはいっても、もう昼の12時。
最近は、『剥がし屋』が来なくなったので、ゆっくりと寝られる。
その代り、自分で布団を干さなければならないが……。
昨夜も、忍とドーナツ談義をし、夜更かしてしまった。
僕が子供の頃、街に『ダンキンドーナツ』ってのが有った話から、その店に行きたいと言いだした。
で、どこに店舗があるのかと検索したら、既に日本から撤退していた。
というか、海外最大のドーナツチェーンなら、僕より忍の方が行っていてもおかしくないんだが?
忍曰く、海外に居る時は殆どジャンクフードに手を出さなかったとか。
あ、そうか。
キスショットから忍になってからだな、ミスタードーナツを食べる様になったのは。
出来ればどちらが美味しいか食べ比べしたいらしい。
284 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:42:30.67 ID:K4Zxvf.o
ダンキンドーナツ VS ミスタードーナツ
母体会社の名前をそのまま付けていれば、良く似た名前だな。
ダスキンドーナツと
ダンキンドーナツ。
多分、商標で訴えられるかも。
忍は、リースモップの会社が運営している事が不思議で仕方なかったようで。
その関係について延々と推論を述べた。
が、僕が途中でリタイア。
すごすごと布団に潜ると、あとからついてくる。
ちなみに、一緒に寝ているが僕の貞操も忍の貞操も守られている。
(10歳だと守れなかったって事は無いぞ!)
おやすみ、おはよう。
それだけで僕達は十分だった。
まぁ……多少の行為はするんだけど、男女が一緒の床に居てそれだけってのも遠慮がちな方だろう。
で、叩き起こされた僕は、眠い目を擦りながら問う。
「どうした?」
本当に大変な事が起きているなら、神原は走ってくるからな。
電話で大至急なんてのは、神原にとって少し急ぎ程度しかない。
「とんでもない物を拾った」と。
285 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:43:11.55 ID:K4Zxvf.o
とんでもない物か。
「えっと、羽根は生えてないんだな?」
「はい」
「生きてる?」
「いいえ」
「動く?」
「いいえ」
「硬い?」
「いいえ」
何故か、イエスノークイズになってしまった。
「とりあえず来てください、凄いから」
それだけ言って、神原は電話を切ってしまった。
仕方がねぇ、とりあえず行くか。
僕は横で眠っている忍を起こす。
「ちょっと出掛けるから、戻る?それともここでそのまま寝る?」
忍は半目を開け、返事する。
「行く」
そういうと、布団から這い出し、ベットからずり落ち、僕の影に潜ってしまった。
やれやれ。
286 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:44:59.39 ID:K4Zxvf.o
ドアを開けると火憐と月火が居た。
「ん?どうした?何やってるの、僕の部屋の前で」
「いや、兄ちゃんをそろそろ起こそうかなと……」
「ねー」
二人で言い合わせたかのような事を言う。
「あー、火憐。暇なら僕の布団、干しておいて」
「やだよー!そんなエッチぃ布団干せるか!」
「ん?それを言うなら、昔の方が汚かったかもな」
「え?」
「嘘嘘、冗談」
いや、本当だった。
僕はリビングで両親に挨拶し、いつものようにコーヒーを飲み、出掛ける旨を伝える。
今更、伝える事も無いんだが、一応世間体。
子供がどこかで何かあった時、全く知りませんでしたじゃ親が可哀想なので。
僕は買ったばかりの自転車で神原邸へ向かう。
あの100万円の束の残りで買った。
実は、春先に「貨幣は作り出せぬ」と言った忍がどうやってお金を作ったか聞いた。
で、返った答えが「札は紙だからな、硬貨は金属なので無理なのじゃ」と。
殆どお金を使う事のない忍は、お金=硬貨というのが概念であり、その中でも金や銀そのものを作り出す事は出来ないらしい。
それを作れるのは、『錬金』らしい。
成程、ご都合主義か。
紙幣は紙なので、服を作るのと何ら変わらないとか。
それを教えてくれたのが忍野だったらしい。
ちなみに、忍野が去る時に幾ばくかの金を作ったのかと聞けば、忍は黙ったままであった。
言いたくないなら、別に言わなくていいけどさ。
287 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:46:34.37 ID:K4Zxvf.o
ママチャリと違い、変速機付きのマウンテンバイクは坂道も楽々で、いつもより早く神原邸に到着した。
「ごめんくださーい」と僕は玄関を開ける。
┣¨┣¨┣¨┣¨という効果音を言いながら、神原が走って出てきた。
「やぁ、阿良々木先輩!お待ちしておりました。どうぞどうぞ」
「こんちゃ。何かあったのか?」
玄関には神原家の住人のではない靴が何足か有った。
神原の部屋の扉を開ける前にその扉に吊るされた「漫画工房KAU」という看板に目が行く。
本格的すぎて何も言えんな。
部屋の扉を開けると、一斉に部屋の中の瞳が僕を見る。
1,2,3,4と背後に神原。
戦場ヶ原、羽川、千石、八九寺と錚々たる顔触れ。
僕は一旦開けた扉を閉めたが、すぐ神原に押し込まれた!
何が始まるのでしょうか?
「よぉ……」
何故か全員、いや、羽川を除いた3人がジト目。
というか、僕には使徒にしか見えません!
288 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:47:36.62 ID:K4Zxvf.o
「阿良々木君、こんにちは」と羽川が口火を切る。
「あ、ララちゃんお兄ちゃん……こんにちは」
おい、千石!何か間違ってるぞ!
「暦お兄ちゃんなんて言うのは抜け駆けよね?」と念を押すようにいう戦場ヶ原。
本当にどこまでも腹黒いというか、病んでるな。
「聞きましたよ、あらわざさん」
八九寺、ワザとだよな?ワザと!
「いえ、別に私は何も。あらすじさんが全員振ったなんて聞いていませんよ?」
「一通り聞いてるじゃないか!ていうか、また間違ってる!」
「で、怪異を選んだとかも聞いていません」
「じゃ、何を聞いたんだよ!」
「怪異は何も吸血鬼だけじゃありませんのよ?」
「え?」
「さぁ?選び間違ったかもしれませんね」
「えっとそれは……」
「私だけ立候補させてもらえませんでした!」
「おい!お前!お前は散々俺の事嫌いって言っただろ!」
「嫌よ嫌よも好きの内って日本語を知らないだなんて、あらびきさんはどこの国の人なんでこしょうか?」
「日本だよ!こはいらねぇよ」
早速、八九寺にいじめられた。いじられた。
289 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:48:38.00 ID:K4Zxvf.o
「で、阿良々木先輩は何しに来たんだ?」
「神原!お前の電話で叩き起こされて来たんだろうが!お前ら全員相手に戦争しろってか!」
「ああ、そうだった」と、神原は右手の拳で、左掌をぽんと叩き、話始めた。
「今日、朝から八九寺ちゃんと次の薄い本の為に、風景撮影に行ったんだ」
「どこに」
「廃ビルの学習塾」
「何を書くつもりなんだよ!」
「まぁまぁ、慌てず話を聞いて欲しい」
「ああ」
「で、その途中で千石ちゃんと出会ったので3人で仲良くビルに行ったんだ」
「ちょっと待ってくれ。千石、お前はこのチンチクリンが見えるのか?」
「チンチクリンとは何ですか!」
僕は八九寺をシカトした。
「はい、見えるよ……ララちゃんお兄ちゃん」
「あーーーーー!もう!今まで通りでいいから!ていうか、なんで見えるんだよ!」
神原が口を挟む。
「先日の一戦後、家に帰ったら凄く怒られて、それっきり家に帰るのが辛いらしい―――先輩のせいだ!」
「え、僕?」
「ちゃんと美容院に連れて行ってあげないからだ!」
「靴墨は?」
「靴墨で金髪が黒くなる訳ないじゃない」と、殆ど知ってる羽川。
「おまけに、戦場ヶ原先輩との戦いで顔中腫らして―――娘が金髪で顔腫らして帰ったら、親は驚きますよ!」
「そこに僕の責任はあるのか?」
「全部」とみんなが声をそろえて言う。
ああ、これは魔女裁判だ!いや、吸血鬼裁判か。
290 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:50:33.27 ID:K4Zxvf.o
なにはともあれ、千石もそうなってしまった事に少し後悔した。
「まぁ、そのお陰で千石ちゃんは八九寺ちゃんと出会えたんだ」
と神原がフォロー。
「そっか、災い転じて福となすって事か」
「ナス!うん、今度の武器はナスで行こう、八九寺ちゃん!」
「いいですね、それ」
きいちゃぁいねぇ……
ん?そうなると神原や戦場ヶ原はもうそろそろ家に帰りたくないって思うんじゃないのか?
「阿良々木君、本気で戦争をしましょうか?」
「何か失礼な事言いましたか?」
「いいわ、教えてあげる。あの後家に帰って泣いてたら、父が帰って来たわ」
「うわー『自慢の娘を泣かせやがって!』とか言ってなかった?」
「理由を説明したら『そうか……プッ、振られてやんのww』とあの顔で言ったので、30cmサシで叩きまくってやったわ」
「お前の父親は、僕と違うからそこまですんな!死んだらどうすんだよ!」
「それが……恍惚とした顔で『はぅ〜ん』と言ったわ、あのドM。娘にしばかれて喘ぐなんて……あんな家、帰りたい訳ないでしょ!」
「ごめん、笑った」
「ピキ!」
戦場ヶ原の血管が切れた音がした。
「あ、いや凄い創作だなと思って」
「事実よ」
291 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:52:01.61 ID:K4Zxvf.o
「そっか。で、神原は?神原は八九寺が居るから帰りたいだろ?」
「私?私は〆切りに追われている漫画家さ!」
「もう漫画家になったのかよ!」
「締め切りが近い、帰ったら編集さんが待ってる、でもネームが!あーもうかえりたくなー!と自分を追い込んでる」
ここにも御都合主義があった。
「もう何でもいいわ。いうか、八九寺に色塗っとけ。見えなくなっても塗料が見えるだろ!」
「おお!それは良い案だな。戦場ヶ原先輩の父の話と併せて、今度の本のネタにしよう」
神原がそこまで言い切った後、神原の頭は画鋲だらけだった。
「で、話戻せよ。前振り長すぎて苦情のレスがくるぞ!」
「すまん、先輩。話は戻りますが、学習塾で写真を撮っていたら、こんなノートを見つけたんだ」
「何そのノート?」
「多分、塾生の忘れものだと思ったのですが―――」
「ですが?」
「中をペラペラとめくると、白紙ページの後から日記が有ったのです」
「へー」
「それが……日記の主は恐らく忍野さんではないかと」
「なんだってー!」
その話を聞いて、神原と千石以外全員驚いた。
「とりあえず、最初から順番に読みますね」
292 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:52:44.38 ID:K4Zxvf.o
3/16
ホワイトデーのお返しをするのが面倒になったので、あの街を出て二日。
ヒッチハイクで500km移動した。
これで追手からは逃げられるだろう。
今度の街は何か辛気臭い。
街全体が古ぼけている。
道行く女子高生に華のある子が全然居ない。
3人ほどマトモなのは居たが、メメっちの好みじゃなかった。
とりあえず、廃ビル発見。結界貼って住処にした。
今日の収穫、寝場所とノート1冊
僕「何これ?」
神「日記」
僕「いや、このメメっちって」
羽「プッ」
戦「多分、忍野さんの事よ」
神「自分で自分の事をメメっちと呼ぶとは、流石風来坊だな」
僕「次読んでみろよ」
293 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:53:20.96 ID:K4Zxvf.o
3/17
コンビニと銭湯の場所を確認した。
セブンイレブンじゃなく、ファミマだった。
ローソンじゃなかっただけ、マシか。
情報屋に電話したら留守番電話だった。
仕事しやがれ!
とメメっちは、渋顔で言った。
羽「ププッ」
僕「あはは!渋顔って、そのままじゃん」
戦「仕事しろって無職がいうかしら?」
神「次行きますね」
294 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:54:06.68 ID:K4Zxvf.o
3/18
銭湯で変な3人組に会う。
風呂屋で何の話かと思えば、吸血鬼の話。
これは面白そうな話を聞いた。
ところで、3人で背中の流し合いはどうかと思う。
真ん中の奴、どっち向いても洗わなきゃならないだろ。
メメっちのお気に入りの場所でやってたので、外で会ったら蹴ってやろうと思う。
羽「プププッ」
僕「3人組ってあいつらか!」
戦「知り合いなの?」
僕「ああ、一応。一人はもう―――」
忍「儂が食った」
僕「影から喋んな!」
神「次行く」
295 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:54:50.32 ID:K4Zxvf.o
3/19
ぶらぶら歩いていたら、小学生発見。
大きなリュックを背負ってウロウロしてた。
んー、あれはなんだっけな?思い出せん?
メメっちも最近は物忘れが酷いな。
羽「ププププッ」
僕「これって八九寺の事じゃね?」
八「あ、そうかも。何か変なアロハのオッサンにつけまわされました!」
僕「ああ、間違いない。忍野だわ」
戦「あの人もロリコンだから」
僕「も、ってどういう意味?」
戦「さぁ?何かしら」
296 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:55:36.12 ID:K4Zxvf.o
3/20
晩飯を買いに、コンビニへ向かう。
コンビニの前に、このあいだの3人組が居た。
蹴ってやろうと思ったが、逆にガン付けられた。
この野郎と思ったが、腹が減っていたので今日は止めにした。
そいつらの話によれば(盗み聞きしてやった!)、どうやらこの町に吸血鬼が居るらしい。
羽「プププププッ」
僕「案外忍野って小心者?」
戦「さぁ?損得勘定だけで動いてるんじゃないかしら?」
神「次」
297 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:56:12.14 ID:K4Zxvf.o
3/21
今日こそは見つけたら蹴ってやろうと思ったら、逆に声をかけられた。
話してみれば結構いい奴らだった。
ただ、一応この街のルールを教えてやった。
ちなみに、メメっちの事を先輩と呼んでいた。
いい奴らじゃないか?
羽「ププププププッ」
僕「こいつ、街に来て1週間も経ってねえ!」
戦「やっぱり。詐欺師と同じ匂いがしたはずよ」
神「つぎいきまー」
298 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:57:07.40 ID:K4Zxvf.o
3/22
今日も奴らが居るかと思って行ったが、コンビニ前に居なかった。
その代り、すげー美人が居た。
雑誌コーナーでるるぶを立ち読みしてた。
が、よく見たらこいつ吸血鬼じゃん。
メメっちは、るるぶの横にある、じゃらんに手を伸ばすフリをして吸血鬼の心臓GET!
吸血鬼は全然気付いてない。
というか、そんなに京都に行きたいのかと。
コンビニの帰り、公園で野宿してた3人組を発見。
店に女吸血鬼が居たと言ったら、段ボールハウスを突き破って大男が発進した。
メメっちも宿なしだが、こいつらは本物だな。
羽「プププププププッ」
僕「おい、忍!」
忍「……」
戦「こんな馬鹿に負けたの?私」
忍「馬鹿とはなんだ?」
神「はい、この話題終了!家壊されるのは困る。次」
299 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:57:57.18 ID:K4Zxvf.o
3/23
暇〜
3/24
腹減った…
3/25
気の弱そうな高校生から金を借りようと思ったら、そいつ彼女持ちでやんの。
風で彼女のスカートがめくれて、パンチラGET!
まぁ、今日はこれがオカズになるからお腹いっぱい。
メメっち、この1週間で3キロぐらい痩せた気がする。
羽「ププ……プンプン!」
僕「これって僕の事だよね?ていうか、カツアゲ!?」
戦「あら、あなた達付き合ってたの?」
僕「忍野の勝手な認識だろ!そのナイフ仕舞え」
神「おちついてください!」
300 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 20:59:28.91 ID:K4Zxvf.o
3/26
昨夜は色々面白かった。
コンビニで見た女吸血鬼が3人組に追い回されていた。
心臓なしでも結構頑張るじゃん。
でも最後はフルボッコされて、逃げた。
昨日見かけた彼女持ちの高校生が噛まれた。
ちょっと驚いたが、全部食われなかったみたいだ。
ボロボロになっていたので、メメっちの住処を案内してやった。
一泊1000円位にはなるかな?
そのまま、朝になり腹が減ったので、なけなしの金で食パン購入。
6枚切りなので毎食1枚で二日はイケる。
公園のベンチで朝飯にしてたら、あの3人組が来てメメっちの食パンを勝手に食いやがった!
一人1枚ならいざ知らず、あの馬鹿でかい奴が3枚も食った!
そのまま逃げやがって!今度会ったら絶対に潰す!
羽「ププププププププッ」
僕「えっと……普通、見てたら止めない?」
忍「止めるぞ?儂が言うのも変だが」
戦「全部食われれば良かったのに」
僕「ええー!」
301 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:00:05.14 ID:K4Zxvf.o
3/27
宿泊費貰えず。
その代り、可愛い寝顔を見た。
これはロリ雑誌に投稿すれば金になる。
が、日本じゃもう絶滅したからな。
ちなみにガキの方は眷族になったみたいだ。
羽「ふう」
僕「おーい、羽川さん。賢者になる要素あった?」
忍「ヌッコロヌ」
302 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:00:59.79 ID:K4Zxvf.o
3/28
あの二人馬鹿だろ?
突然、太陽の下に出て焼けたり燃えたり。
久々にお笑いを見た気がする。
その晩、メメっちのパンを食った奴らを見つけた。
ちょっとだけ仕返しするつもりが、ついやり過ぎた。
あいつら、こそこそと逃げてやんの、ざまぁ!
ちなみに、眷族になった高校生に借金させてやった。
「ぷぷぷっぷうー、追加300万え〜ん」
羽川が壊れ気味だ。
303 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:03:54.98 ID:K4Zxvf.o
「なぁ、この日記いつまで続くんだ?」
「えっと、一応6月14日までありますが?」
「途中はもう面倒だし、最後読もうぜ」
「いや、結構途中に面白い事書いてありましたよ?戦場ヶ原先輩の事とか」
「貸しなさい」
そういうと、戦場ヶ原はノートを取りあげる。
そして、一人でその日記を読み、顔を真っ赤にしたと思ったら……
ビリビリとノートを破る。
というか、検閲。
自分の事を書かれているページを破り取ってしまった。
「おい!」
「何よ?」
「見せろよ」
「嫌よ」
「いいから」
「じゃあ、私と結婚してくれるなら見せるわ」
「ごめん、それ無理」
「あっそ」
僕達の関係は、雨降って地ぬかるむ。
もう修復なんて無理。
ま、それはそれで楽しかったりもする。
僕も人が変ったよな。
「阿良々木先輩、心配しなくても大丈夫です。内容は私の頭の中に全部入っていますから!この話で薄い本をつくりますから!買ってください」
次の瞬間、神原の口に消しゴム、鼻の穴に蛍光ペン、耳の穴にボールペン、瞼は瞬間接着剤が流し込まれ、頭頂部に分度器が刺さっていた。
304 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:08:21.78 ID:K4Zxvf.o
「酷いよ、戦場ヶ原先輩」
「神原、その本を出す時は奥付に遺言を書きなさいよ?」
「八九寺ちゃん、八九寺ちゃん名義で出して!」
「嫌です!死にたくありません!」
「もう死んでるじゃん」と僕はツッこみたかったが、自粛した。
なのに、羽川が「もう死んでるよ?」と素で行ってしまった。
で、残っているのは殆ど最後の方だけ。
「神原、残ったページ読んでくれよ」
「あ、はい」
体から色々出しつつ、神原は続きを読む。
6/13
そろそろこの街ともお別れだな。
結構、あの高校生は面白かった。
というか、本気で弟子にしたいと思った。
弱い様で、芯がしっかりしていて、そのうえ人助けが大好き。
メメっちそっくりじゃん。
まぁ、メメっちの場合、それで褒められたり感謝されるのが嫌だから適当な事言ってるんだけどね。
今日は、彼と彼女がデートらしい。
上手くいけばいいねぇ、ま、無理だろうけど。
早かれ遅かれ、彼は別の人を選ぶ。
そういう筋書きになってる。
というか、僕の仕込み。
彼は……おっと誰か来たようだ。
305 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:09:19.54 ID:K4Zxvf.o
羽「……笑えない」
戦「同じく」
僕「おい、最終日はどうなってんだ!」
神「あ、はい」
羽川と戦場ヶ原が額を突き合わせて何か話しあっていた。
忍野!逃げて!
306 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:10:31.74 ID:K4Zxvf.o
6/14
ついに旅立つ日が来た。
忍ちゃんに作って貰った500万があるから当分の間、路銀には困らない。
前からハワイに行ってみたかったんだよね。
学生時代を思い出して、可愛い女の子を数人侍らして遊び倒そう!
で、忍ちゃんには僕が作った偽のミスタードーナツのタダ券をやった。
今頃、嬉しそうな顔をして店員に渡して「これ何?お嬢ちゃん」とか言われてるだろうな。
ま、彼が見つけて回収してくれればそれで良いし、見つけられず死んでしまえば彼は人間に戻る。
全ては彼次第。
50/50のゲームを仕込んだところで、僕はこの街を出る。
このノートを見つけた人へ。
この建物は手抜き建築なので、いつ崩れてもおかしくないよ?
もう少し人生を楽しみたいなら、直ぐにここから立ち去りなさい。
もし、このノートを僕の親愛なる友が拾ったなら……
恥ずかしくて、さよならは言えなかった。
でも、また逢いに来るから要らないよね?
というか、500万円無くなったら戻ります。
メメ
307 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:12:06.43 ID:K4Zxvf.o
「以上です」
「あーあいつはやっぱあれだな」
「そうね、あれだわ」
「うんうん、あれよね」
「そうじゃ、あれじゃ」
「ですね、あれです、あれとしか思えません」
「良く分かりませんけど、あれです」
「ああ、あれです」
せーの
「お人よし」
「メメ日記」おわり
308 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:13:30.52 ID:K4Zxvf.o
本日ここまで。
後日譚はまだ形になっていません。
とりあえず、誰がどうなるか希望があれば書いていてくれると参考になったりもします。
書けるといいな。ん?「後日譚」
309 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:38:13.69 ID:ZJ/JB9go
乙です
>>284
ミスドってダンキンに吸収されたんじゃないのかな
310 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/09(木) 21:53:38.80 ID:cSJTtASO
乙
やっぱ忍はかわいい
311 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 21:58:54.42 ID:O98O9JQo
ほのぼのとするわ〜
312 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 08:18:08.82 ID:cJSmdcAO
乙!
妹達に変態扱いされるのが嫌になって、どうにかして普通の兄になろうとする暦お兄ちゃん
313 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/10(金) 18:34:51.93 ID:HhIjuGso
最終譚始めます。
暦「終わった……」
一連の騒動も終わり、僕の長い1年は終わろうとしていた。
明後日には卒業式。
出席日数はギリギリだったが、学期末試験で赤点も無く無事卒業決定。
卒業後は、忍と二人で旅をする。
先日、その打ち合わせをした。
まずは日本国内、全ミスタードーナツを制覇。
というか、ほぼ毎日ドーナツを食べなければならないという事に、僕は少し不満なのだが。
移動手段は車。
冬休みとその前後を活用し、運転免許を取得した。
車は中古だけど、小型の四輪駆動車を購入。
資金?もう今更、説明する事も無いだろう。
で、部屋で必要な荷物を詰め込み、準備中。
必要なモノと言っても最小限なので、特に時間はかからないのだが、思い出の整理までしているものだから、無駄な時間が掛かる。
314 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/10(金) 18:36:53.13 ID:HhIjuGso
「お前様、衣類は要らんぞ?」
「ああ、分かってる。ただ、何着かは持っていきたいんだ」
「何故じゃ?」
「忍のデザインが気に入らない時用に」
「何ぃ?まだそんな事を言っておるのかぁ?!」
「嘘だよ、このセーターは火憐が選んでくれたし、持っていきたい」
「相変わらず妹が好きじゃな」
「そりゃ兄妹だからさ」
「兄妹か。儂にもそう呼べるものが居ったな」
初耳だった。
「ふーん」
「ふーんとはなんじゃ?それだけか?」
「いや、別にその事を根掘り葉掘り聞いたところで、どうしようもないし」
「儂の過去を知りたいとは思わんのか?」
「過去か。まぁ、3人に追われ、ボロボロになったお前を助けたところ辺りからの過去だけで十分。それ以上の過去は僕には必要ないよ」
「我があるじ様はやさしいの」
忍は僕の背中にもたれかかり、膝を抱えて座る。
そして、小さな声で語り始めた。
315 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:39:01.43 ID:HhIjuGso
「儂は―――兄者を殺めておる」
一瞬、僕の身体が固まったのを忍は見逃さなかった。
「なぁ、お前様。そんな儂でも好きか?この先、一緒に居られるか?」
続け、畳みかける様に僕に質問を浴びせる。
「ああ。別に、そんな事気にもしない」
僕は忍に対して人間の常識を充てるつもりは無い。
忍―――キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの過去など、
それこそ本にすれば魔法使い少年の本を抜くベストセラーになるだろう。
『普通の』人間には、おとぎ話のような、伝説のような、空想物語。
見てもいない事実は、どれだけ信憑性があっても物語の域を出る事は無い。
それが常識を遥かに超える話であれば、あるほど。
「そうか」
「ああ」
「なら、儂から言う事はもう何も無いわ、かかか」
忍は快活に笑い、立ち上り、僕の机の前に立った。
「儂はこの本を1冊持っていこう」
野球入門の本だった。
「今度、キャッチボールとやらをしてみようぞ?」
笑った。
キャッチボールするのにそんな本を読む必要などない。
でも、本当の意味が分かったから、僕は何も言わなかった。
316 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:40:28.43 ID:HhIjuGso
「なぁ、我があるじ様、前々から思っておったのだが、この古い本に挟んでいるカードはなんじゃ?」
「ん?何?」
忍は僕に昆虫図鑑を見せる。
「どれ?」
本の中ほどに挟まる一枚のカード。
栞となったカードは少しだけその姿を覘かせる。
僕はそのカードをスッと引き抜く。
咄嗟、目頭が熱くなる。
時間が巻き戻される。
胸が苦しくなる。
「お前様、どうした?泣いておるのか?」
ずっと捨てられたと思ったカードが、そこにはあった。
僕が一番大事にしていたポケモンのカード。
ポタポタと床に涙が落ち、小さな池を作る。
「これは何をする物じゃ?」
「ずっと父さんに捨てられたと思ってたカード……」
忍はそのカードを手に取り、透かすように見る。
「ただの紙だが?」
「ああ、タダの紙さ。ただの紙に僕は……」
大事な時間、大事な関係を失ってしまった。
先日、両親に忍を紹介した時の事を思い出した。
『ただ、奥さんはカードとは違う。大事にしろ』
その言葉の意味がやっとわかった。
父さんは、捨てられたと思って責めた僕を、逆に責めはしなかった。
父親の懐の大きさを痛感した。
317 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:41:47.91 ID:HhIjuGso
僕は部屋を飛び出し、リビングへ向かう。
涙ぐみながら飛びこんできた僕を見て、両親は驚く。
「どうしたんだ?暦」
「父さん……ごめん」
「ん?何の話だ?」
「ずっと、ずっと父さんに捨てられたと思ってたカードが―――出てきた」
「そうか、良かったじゃないか」
「捨てられてなんかいなかったのに、僕は―――僕は―――」
「暦、人間誰しも間違いを犯す。その間違いに気付いた時に、謝れる人間か、そうでないか―――それが重要だ」
「でも―――」
「いいんだよ。もう。ほら、嫁さん貰うとかいう奴が親の前で泣くな」
「と、父さん……」
「なぁ暦。僕達はお前を自由奔放に育て過ぎたんじゃないかって心配してたんだが、どうやらそれは無駄な心配だったみたいだ」
「え?」
「妹達の事を含め、自慢の子供だよ、いやもう大人だな暦は。いい大人になった。僕達は間違っていなかった。よくそこまで立派な大人になった」
「父さん……」
「ありがとう」
親に謝ったら、感謝された。
数年間の蟠りが一気に消えた。
元の親子に戻った瞬間だった。
泣くなと言われて我慢していた涙が―――全部一気に出た。
「なぁ、暦。いつでも帰って来たくなったら遠慮しなくていい。ここがお前の家だからな」
318 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:43:16.30 ID:HhIjuGso
翌日、僕は戦場ヶ原に会いに行った。
「やぁ」
「久しぶりね」
「もうすぐ出発でしょ?」
「ああ、卒業式が終わったら、その足で」
「そう……」
「今まで色々有難う」
「何も感謝されるような事はしていないわ」
そう言いながら、戦場ヶ原は首を大きく反らす。
「そっか」
「ええ、そうよ。それに感謝しなきゃならないのは私の方よ」
「いや、そんな事は」
「あなたに受け止められ、思いを返して貰え、誰かに自慢したい秘密を全部見て貰った」
「あ―――」
「だから、それでいいの。ごめんね、色々今まで強い事言って」
「あ、うん」
319 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:44:46.60 ID:HhIjuGso
「それより、旅ってどこに行くの?」
「えっと、ミスタードーナツめぐり」
「はぁ?」
「全国のミスドを廻るんだ」
「そう。本当に阿良々木君は馬鹿ね。そんな馬鹿が選んだ吸血鬼もまた馬鹿ね」
馬鹿馬鹿と言いながらも、戦場ヶ原は楽しそうに話す。
「ねぇ阿良々木君、この街は好き?」
「ああ。忍野曰く辛気臭いらしいけど、僕は好きだ」
「そう、良かった。またいつでも戻って来なさい」
「ああ、そうするよ」
「ちなみに、今度阿良々木君が戻って来た時、この街の男性は全部私の物だから」
「ええー!逆ハーレムかよ!」
「だから、あの馬鹿の吸血鬼に言っておいてくれる?」
「えっと…なんて?」
「私の物に手を出したら承知しないから。だから貴女は阿良々木君だけで一生我慢しなさいと」
「分かった」
戦場ヶ原はベンチからひょいと立ちあがり、歩き始め、また立ち止まる。
「しかし、羽川さんに出し抜かれた上に、吸血鬼にも先を越されていたなんて悔しいわ」
「でも―――」
「そうね、それでも一度は手に入れたわ。忍野さんの50/50のゲームで負けたんだけどね」
「ああ」
「本当にあの人は、したたかだわ。今度会ったら仕返ししなくちゃね」
そういうと、戦場ヶ原は歩きだし、振り向きこういった。
「ありがとう」
僕は戦場ヶ原の姿が見えなくなるまで見送った。
320 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:45:52.58 ID:HhIjuGso
戦場ヶ原と別れた後、神原の家に寄る。
「やぁ、阿良々木先輩!ようこそいらっしゃった。上がって!」
神原のテンションは相変わらず高い。
「おじゃまします」
神原の部屋に入り驚いた。
「なんじゃこりゃ!」
また昔の様に本の山。
「ああ、参考資料をあつめたらこうなった」
「こうなったって…」
殆どが本で埋め尽くされ、空いているのはベッドと机のまえに座布団が2枚。
それ以外は殆ど足の踏み場が無い。
321 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:47:00.56 ID:HhIjuGso
「っと、今日は八九寺はいないのか?」
「え?やだな。幾ら本が多いからって、八九寺ちゃん埋めたりしませんよ、そこに居るじゃないですか?」
神原が指さす机の前に八九寺は居なかった。
が、よく見ると原稿用紙の上でトーンがひとりでに動いている。
見えない。
「どうしたんだ先輩?」
「あ、いや。何でもない」
「何か変だぞ?」
「あ、うん……」
「いつもなら『はちくじー』と抱きつこうとするのに、やっぱり嫁を貰うとなると自粛ですか?」
「いや、そういう訳ではないんだが……」
「何?八九寺ちゃん」
神原が机の方へ向かう。
何やら話し込んでいる様に見える。
「ええー!マジ?うんうん、分かった」
「先輩、もう八九寺ちゃんが見えてないんですね?」
八九寺にはバレていた。
322 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:47:38.63 ID:HhIjuGso
「あ、うん。そうなんだ」
「良かったじゃないですか。と八九寺ちゃんが言ってますよ?」
「そうか」
「あと、ありがとう。って、おうちに届けてくれて」
「うん……」
「あーなんか辛気臭いな。ほら、先輩元気出して」
「ああ」
「さてと……」
神原は足元の本を動かし、道を作る。
「先輩、こちらへ」
僕は神原に招かれ、机の前へ行く。
「ここに八九寺ちゃんがいますから」と僕の手を取り、引いてくれる。
僕には何も見えない。
その存在すら認識できない。
「先輩、今までありがとうって言ってますよ」
「ああ。八九寺、僕こそ今まで楽しい話をありがとう」
神原が僕の手をそっと空中で止める。
「あっ」
「にひー、阿良々木さん、お幸せに」
八九寺の声が聞こえ、手の温かさを僕に伝わる。
そして、消えた。
323 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:48:19.74 ID:HhIjuGso
「ありがとうな」
「いえ、感謝される事は何もしてませんよ、阿良々木先輩」
神原には半殺しにされた事もあった。
それでも僕が胸を張って自慢できる後輩だ。
「神原、頑張れよ」
「先輩こそ。また面白い話のネタを提供してくださいね!」
「なんだネタって!」
「あはは、阿良々木先輩の日常を本にしたら、結構売れてます」
「そうかい」
「印税要りますか?」
「そんなに売れてるの!?」
「ええ、結構、凄く。アニメ化されるかも」
「マジか!まぁ、程々に書いてくれよ」
「はい、程々にですね」
「じゃ、神原。いくわ」
「ええ、お気をつけて!」
324 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:49:21.82 ID:HhIjuGso
僕は家に戻り、夕食を済ませ自室でのんびりしていた。
「コンコン」と口でノックする月火。
「お兄ちゃん、入るねー」
「おお、どうした?」
「お客さん」
「ん?」
「千石ちゃんだよ」
「千石?」
「おじゃまします」
「千石、どうした?」
「うん、ララちゃんと偶然あったので……」
「そうか。で、何?」
「別に用は無いんだけど……」
「そうか、ゆっくりしてけよ」
「あ、あのね暦お兄ちゃん」
「ん?何?」
「もし……もしね―――」
「なんだよ?」
千石は言い辛そうにモジモジとする。
325 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:49:52.66 ID:HhIjuGso
「あの、予約って出来ますか?」
「予約?なんの?」
「暦お兄ちゃんの」
「僕の?」
「はい、暦お兄ちゃんを予約します」
「えーっと……意味が分からないんだけど?」
「あの、だから、その、もしも吸血鬼さんと別れたら……」
本当に千石は純粋だ。
その純粋さが、猪突猛進とさせる。
「ごめんな、千石。予約は受け付けていないんだ」
「そ、そうなんだ」
「ああ、予約は無い。完売した」
「そ、そうなんだ」
「だから、何か違うのを見つけろ」
「でも……」
「それに僕は千石の『お兄ちゃん』だろ?予約なんて要らない。妹として甘えるならいつでもOKだぜ?」
「うん……わかった」
への字口で、ぐっと堪える千石は、涙は見せなかったが、もう限界だった。
326 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:50:46.03 ID:HhIjuGso
「おーい月火、話は終わったから千石を玄関まで送ってやれ」
「ほーい」
「じゃ、千石。いい女になって、カッコいい彼氏を兄ちゃんに紹介してくれよ」
「う、うん」
「それじゃ」
「うん、それじゃ」
「あの、その……」
「ん?何?」
「吸血鬼さん、返品はいつでもお受けしますから!」
千石はそういうと部屋から走って出て行ってしまった。
返品ねぇ、ないだろうな。
返品するぐらいな、食料にされちまうよ。
ま、そうならない様にがんばろっと。
327 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:51:59.09 ID:HhIjuGso
月火が千石を送りに行った後、今度は火憐が来る。
本当にみんな、一斉だな。
「よぉ火憐、元気か?」
「あんまり……」
「なんで?」
「なんでって……」
「ほら、元気がお前の取り柄だろ?もっと元気になれよ」
「なぁ兄ちゃん、本当に行くのか?」
「ん?ああ、行くよ。行ってくるよ」
「どうしても?」
「ああ。これは僕と忍が決めた事だからな」
「そうか。なら仕方が無い」
「まぁ、たまには帰ってくるよ」
「兄ちゃん、なんかずるいよな」
「え?」
「先に大人になってさ」
「それは仕方が無いだろ。お前とは3歳も離れてるんだぜ?」
「でも……」
「いつか火憐も大人になる。何を以て大人になるかはその人それぞれ。僕の場合は親に認められたって事かな」
「……」
「だからって、認めた親を責め立てて、それを取り消しさせようなんて思っちゃいけない」
328 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:53:16.81 ID:HhIjuGso
「え?なんで?なんで分かったの?」
「そりゃ、僕と火憐ちゃんが兄妹だからさ。お前の考えている事ぐらい分かるって」
「なら、今どう思ってるか分かるでしょ?」
「ああ、痛いほど分かる。でも僕は行かなきゃならない。だから―――な?パパとママのの事、頼んだぞ」
火憐はシャツの袖で目を擦ると、大きな声で返事した。
「はい!」と。
「で、兄ちゃん。もう一個お願いがあるんですが……」
「お願いねぇ」
そのお願いも僕には何の事か分かっていた。
僕は立ち上り、火憐のとこへ行きそっと抱き締め、キスした。
火憐は何も言わず、ただ小さく頷いた。
で、いつものようにドアが開く。
「何やってんだー!お前ら!」
今日の月火は過激だ。
「ああ、キスしてた」
今日は開き直った僕。
「あ、あ、あ!」
「アイスピック買いに行くのか?」
「あー、火憐ちゃんだけズルイ!」
月火はドンッと僕に抱きつき、キスしてきた。
「火憐ちゃんだけのお兄ちゃんじゃないんだよ?」
と言いながら。
舌は絡め取られなかったけど、心は少し絡め取られた。
329 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:54:52.18 ID:HhIjuGso
というか、色々心配だな、この二人。
「なぁ、言っとくけどブラコンなんて流行らないぞ?」
二人は示し合わせた様にこう言った。
「実の兄なんて、萌えるだけだろうが!」
またどっかで変な言葉覚えちゃってるよ。
二人は僕に一礼し、部屋から出ていった。
なんだかんだ言いながら、僕はあいつらが好きだし、あいつらも僕の事が好きなんだな。
兄妹って、本当にいいもんだ。
330 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 18:56:46.32 ID:HhIjuGso
あと1日で、厳密には3月末までは高校生だけど、僕の高校生活は終わる。
やり残した事は無いだろうか?
ま、あったところで大した事じゃないんだろうけどね。
「風呂入って寝るか?」
忍に話しかけると返事が無い。
「おーい、忍?」
おかしい。
「忍、ドーナツでも買いに行くか?」
全く返事が無い。
あれ?忍どこ行ったんだろ?
ま、彼女もまた何か旅立つ前にやり残した事でも……
と、いうか妹達とのキスでヤキモチでも焼いたか?
モテル男は辛いな、僕はキメ顔でそういった。
なんてな。
「おーい、忍」
「…・・・・」
「はっ!」
一瞬、僕の背中に冷たい汗が流れた。
僕は、直ぐに携帯を取り出し、電話する。
が、相手は出なかった。
「羽川!」
331 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/10(金) 18:59:19.99 ID:HhIjuGso
出来上がりここまで。
ルート選択ができます。
1 みんな幸せルート
2 忍だけ幸せルート
3 みんな不幸ルート
ではでは、おやすみなさい。
332 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:02:21.21 ID:ogzmB6.o
1で
333 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/10(金) 19:02:29.26 ID:CAiF2oSO
乙
もちろん全部書いて下さいますよね?
334 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:03:13.83 ID:RPgkXMc0
>>331
え? 忍の幸せ以外に、この世に必要なものってあるの?
ということで2を強く推したい
まあここの
>>1
ならもれなく全部やってくれると確信してるんだっちゃよ
335 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:07:52.74 ID:IUbRQsAO
たのむ全部書いてくれ
336 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:16:55.67 ID:U6/RzWI0
全部気になる。
気持ち的には3は見たくないが、
>>1
の能力なら納得できるものを作ってくれそうだから。
というか、ここまで乙。
すげー楽しませてもらってるwwww
337 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:19:29.33 ID:zgc49Rco
忍だけ幸せってのはどういう状況か気になるが1
余力あるなら2も見たいです
338 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:37:08.87 ID:ZZc9UsSO
ハーレムとみんな幸せは別物だよな?
なら1で
339 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:41:03.10 ID:0pS6TZMP
3かな
340 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:53:11.47 ID:FzgsWc2o
みんなが幸せになるルート?
あるわけないじゃん、そんなの。都合がいいにも程がある。そういうのは小学生が道徳の時間にやる作文のテーマだよ。現実的じゃないね
341 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 19:56:57.89 ID:etFxWNwo
1
342 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 20:17:31.97 ID:slihAl20
1〜3の順でやってくれ
で、2まで投下されたら乙と言ってこのスレから去るから
343 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 20:18:49.74 ID:K/0gPoAO
決められないから期待だけする
wktk
344 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 20:23:38.01 ID:j/.uRnAo
1はいいから2と3が読みたい
3→2の順番でな!
345 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 20:43:24.23 ID:tlCU6OEo
3→1→2の順で行けばいいんじゃないかな?
346 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 20:47:39.60 ID:L6C4hC2o
2→1→3
347 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 21:31:31.65 ID:HhIjuGso
よし、決めた!
方向性は決まった。
が、何番にしたかは言わない。
もしかしたら、複合かもしれない。
でも、それは読み手さんが決めてくれれば良いと思います。
思いは人それぞれ、僕の幸せは、君の不幸せかもしれない。
と、作者はキメ顔で言った。
348 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 22:48:29.93 ID:RPgkXMc0
キメ顔で言われちゃあ、何も言わずにただwktkしながら結末を待つしかないな
349 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/10(金) 23:40:42.05 ID:HhIjuGso
よし、でけた。
1でも2でも3でも無いけれど。
では、始めます。
350 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:42:11.83 ID:HhIjuGso
僕はジャージのまま、財布と携帯をポケットにねじ込み、車のカギを握りしめ、階段を滑り落ちる。
「あ、兄ちゃん!どうしたの!」
「ちょっと出掛けてくる」
「もう遅いよ?」
「いや、まだ早い、今なら間に合う!」
「ん?何か知らないけど、楽しそうだし連れてけー」
「火憐ちゃん行くなら、私も!」
「お前ら、家に居ろ!」
「へへー、何か面白そうな事が起きそうだし」
「面白くも何ともねぇよ!」
車庫の車に乗り込み、深呼吸を一回し、僕はエンジンを掛ける。
妹達はちゃっかり、後部座席に座っている。
「シートベルトよし!出発!」
くそったれめ!遊びじゃねえんだ!
僕は車を羽川の自宅へ走らせる。
こんな辛気臭い片田舎の街、夜間の交通量は少ない。
351 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:42:47.56 ID:HhIjuGso
10分程度で、羽川の住むマンションに到着する。
「確か、この辺だったんだが」
「おう兄ちゃん、住所はどこだ?」
僕は携帯を取り出し、アドレス帳を見る。
羽川はご丁寧に、住所まで入れてあったからな。
「おお、これか。月火ちゃん分かる?」
「えっとね、多分向こうの棟だよ」
流石、街を徘徊するファイヤーシスターズ。
武闘派火憐に、頭脳派月火。
味方につければ、最強だった。
月火に案内された棟の部屋番号を目指す。
表札に「羽川」と有った。
352 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:43:31.66 ID:HhIjuGso
僕は深呼吸し、チャイムを鳴らす。
「はーい」と言う声と共に、その重たそうなドアが開く。
「どちらさま?」
うちの母さんぐらいの人が出てきた。
「すみません、夜分遅く。翼さんのクラスメイトの阿良々木と申しますが、翼さんは居られますか?」
「いえ、今は……先程、お友達と逢うと言って、出て行きましたが?」
「どこに行くとか言っていませんでしたか?」
「ええ、直ぐに戻るとだけ……何かありました?」
「いえ、別に。特には無いのですが」
迂闊だった。
僕じゃなく、火憐に行かせれば良かった。
下手な心配をさせたんじゃ?と僕は後悔しつつも、羽川を探す事に脳を切り替える。
「兄ちゃん、どうだった?」
「駄目、居ない」
「羽川の姉さんに何かあったの?」
「ん?ああ、まだ無いとは思うが、多分これからある」
「何がよ?」
「戦争」
「ええ!なにそれ、どういう事?」
「今は説明する暇が無い。とりあえず、掴まっとけ!」
僕は車を出し、あの場所へ向かう。
多分、あそこしかない。
353 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:44:45.34 ID:HhIjuGso
20分ほど車を走らせ、廃ビルに到着。
僕は外から声をかける。
「おい、忍いるか?羽川、いるか?」
廃ビルは、何も言わずただそこに佇む。
「おい、二人とも。ここは危険だから、絶対に車から出るなよ」
僕は、一人でビルの中へ。
しかし、誰の気配も感じない。
終わったのか?
いや、終わる筈が無い。
それに、あいつらが闘えばこんな安普請なビル、倒壊する筈。
くそっ!どこに行きやがった!
車に戻ると、車内が仄明るい。
ドアを開けると、火憐と月火がメールをしていた。
「なぁ兄ちゃん、あまり慌てるな。今、私達が探してやってるから」
火憐達は、自分達のネットワークを駆使し、二人を探す。
「お、きたきた!兄ちゃん、本通りへGO!だ」
「こっちも来たよ、金髪さんと黒髪さんが直江津高校付近で歩いてたって」
あ!あそこか!
僕は、また車を走らせる。
354 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:45:39.04 ID:HhIjuGso
「兄ちゃん、そろそろ説明してくれてもいいだろ?何が有った?」
「ああ。戦争だって」
「それは聞いた。忍さんと羽川さんが闘うのか?」
「正確には……忍の本性と羽川の魔性が闘うかも知れない」
「ん?」
「うーん?」
二人は声を揃え
「いみわからん」と。
意味なんて分からなくていいよ。
空想話みたいなもんだ。
車を学校の脇に止め、また二人に言いつける。
「いいか、何があっても車から出るな。いいな!」
「えー!なんか楽しそうじゃん?」
「つれてけつれてけ!」
「駄目だ。僕はお前達まで失いたくない。それと、もし車から出たら、二度とキスしてやらない」
「え!」
おまじないは効果的だった。
355 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:46:16.47 ID:zgc49Rco
羽川宅は一戸建てだったような…
まあどうでもいいんだが
356 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:46:29.79 ID:HhIjuGso
二人は外したシートベルトを締め直し、メールで捜査終了の合図を送る。
「もし、1時間経って僕が帰って来なければ、警察に電話な、いいな」
「サーイエッサー!」
僕は、車から離れ、学校の門をよじ登り、侵入する。
ドン!
足に大きな振動が伝わる。
「間違いない!もう始まってるし!」
僕は急いで校庭を横切り、体育館の方へ向かう。
居た!
そこには真っ白な髪の羽川、ブラック羽川と忍が居た。
「おい、お前ら止めろ!」
止めに入った僕に忍は言う。
「おお、我があるじ様、いいところに来た。今日こそは息の根を止めるので、もう少し血を分けて貰う」
忍はそのまま、僕に吸いつく。
やばい、これ以上は駄目だ!
忍は18歳から22歳ぐらいまで成長する。
「ほう、吸血鬼らしくなったにゃ」
ブラック羽川がニヤリと笑う。
357 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:46:59.65 ID:HhIjuGso
>>355
そうか、書き直すから待ってって
358 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 23:49:14.64 ID:zgc49Rco
細かいところ拘ってるみたいだから言っただけだし直さなくても
359 :
351 校正
[sage]:2010/09/10(金) 23:50:23.02 ID:HhIjuGso
10分程度で、羽川の住む辺りに到着する。
「確か、この辺だったんだが」
「おう兄ちゃん、住所はどこだ?」
僕は携帯を取り出し、アドレス帳を見る。
羽川はご丁寧に、住所まで入れてあったからな。
「おお、これか。月火ちゃん分かる?」
「えっとね、多分向こうの通りだよ」
流石、街を徘徊するファイヤーシスターズ。
武闘派火憐に、頭脳派月火。
味方につければ、最強だった。
月火に案内された通りで、番地を探しあてる。
表札に「羽川」と有った。
360 :
356 続き
[sage]:2010/09/10(金) 23:57:43.34 ID:HhIjuGso
>>356
「これで俺の勝ちだにゃん」
「何をいう!お前に勝ちなどありはせん」
「ほっほー、おい吸血鬼、今すぐ俺を殺してみやがれ。お前の最愛のあるじの前で、あるじの親友と『その子』をな!」
「止めろ、忍」
忍は、拳を握りそこで佇む。
「おい、早くしろ。俺は機嫌が悪いんでな、今日は」
倒置法で怒りを顕わにする猫。
「のぅ我があるじ様よ、儂は今、四面楚歌じゃ。このままでは儂が死んでしまうが?」
「別に闘う理由なんてないだろ!」
「理由?理由なら有るわい。あるじ様の子を宿すなど言語道断、儂は認めぬ」
「にゃら、俺にも理由が出来た。俺のご主人様の最愛にゃる人に手をだしやがって!」
一触即発の危機だった。
今、この二人を止められるのは……
多分僕。
しかし、生きて帰れる保証なんてどこにもない。
でも、止めなきゃならない。
「忍、止めろ!」
僕はそ忍の前に立ちはだかる。
361 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:00:03.13 ID:dO0fq0go
次の瞬間、忍ではなく猫が僕を襲う。
忍は「すまん、お前様」と僕を蹴り飛ばす。
「ぐはっ!」
内蔵が破裂し、骨が砕ける。
そのまま、僕は20m以上飛ばされ、体育館の扉に打ちつけられる。
徐々に出血は止まり、体が回復するのは分かる。
それでも、かなりボロボロで直ぐには動けない。
そして、僕の目の前で忍と猫が闘っている。
共にエナジードレインの怪異。
猫が忍の腕を取り、忍も猫に噛みつく。
ただ、二人が制止しているようだが、そこでは気が光の速さで交換されている。
「猫、そろそろ諦めたらどうだ?」
「にゃに・・をいうか、お前こそ諦めろ」
「五月蠅い、黙れ!」
猫の腹部に蹴りを入れる。
猫はそのまま、体育館の壁にクレーターを作る。
「お前、今日は絶対に[
ピーーー
]からにゃ!」
362 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:01:05.62 ID:dO0fq0go
猫も忍にパンチを浴びせる。
「ふん、そんな猫パンチ、儂に通用するか!」
追っかけ、猫の腕を掴み、地面に叩きつける。
終わりそうにない、壮絶な戦いが目の前で繰り広げられる。
が、猫が不利。
10歳の忍にすら勝てなかった猫。
幾ら頑張っても、20代の忍には勝てない。
少しずつ、形勢は不利になる。
多分、もう決着は付く。
でもそれじゃダメなんだ。
僕は誰も失わず、誰か一人を選ぶんだ。
選べたら、それでいい。
死んだら死んだで、いいじゃないか。
『いつ死ぬか分からない恐怖より、いつ[
ピーーー
]るか分からない恐怖』
「今なら、[
ピーーー
]る気がするわ」
少し回復した体を立ち上げ、二人の元へ歩く。
取っ組み合いの二人の間に、自分の身体を落とす。
「なぁ、お前ら。どうしても止めないなら、僕の屍を乗り越えてから行けよ」
僕はそのまま、猫を抱きしめた。
363 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:02:26.19 ID:dO0fq0go
背中に忍の視線を痛いほど受けながら。
「さぁ、全部吸ってしまえ。吸いつくせ、僕がいなければ、ストレスも溜らないだろ?」
が、猫は微動だにしない。
「くぅ、おい人間、何を今更いうかにゃ?そういう覚悟はもっと早くにするべきだろ」
「ん?意味わかんねえよ。もういいわ、好きにしろよ猫。いや、羽川」
猫の動きが完全に止まる。
「なぁ、羽川、まだ諦めがつかないか?」
「お、俺様は御主人ではにゃい!」
「違うだろ、お前は羽川なんだよ」
「にゃんでそんなこというかな?」
「僕は気付いたんだ。ストレスで猫がでるなんて嘘っぱちだって」
「お前様、それはどういう事だ?」
忍が僕に質問する。
「簡単な事さ、羽川は器用な人間でな。自分の感情なんてどうとでもコントロールする人間なんだ。その上、そんじょそこらの怪異が中に入ったところで、そいつごと飲み込むのが羽川なんだよ」
「何?なら、その猫は……」
「ああ、羽川の意思で呼び出す事も消す事も可能」
「なんと!」
364 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:04:59.06 ID:dO0fq0go
「今日だって、家を出た時は羽川で、ここで猫になったんだろ?お前を見て暴れるならその場で猫が出るよ」
「なるほどのぉ」
「僕が襲われた時、こいつは言った『何もしてないさ、ただご主人様に呼ばれただけにゃ』と」(
>>67
)
「ありえねぇよな。今までなら勝手に出てくるだけ。でも、最後に見た時こいつは言ったんだ。呼ばれたと。だから―――姿こそ猫だが、意識は羽川のまま。猫が羽川に飲まれたんだよ」
「うむ、どうりで気持ち悪い奴と思った訳だ」
「そうさ、本気になりゃ忍だって飲まれたかも知れないぜ?」
「なんだ、ばれてたのか。いつ気が付いた?」
「気付いたのはさっき、情報は色々」
「ふーん、そんなにヒントが有ったかしら?」
「有り過ぎた。戦場ヶ原はお前を、お前自身を怪異だと言ったし、忍は気持ち悪いと言った。
何より、体育倉庫でブラまで外して覚悟を決めたのに何もしなかった僕を、体育倉庫で襲っちゃうんだからな。
春先の残念無念を引き摺ってたんだろ?襲うなら、自宅で寝込みを襲えば良い。猫身でな。」
365 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:05:55.57 ID:dO0fq0go
「あーあ、本当に、阿良々木君は何でも知ってるのね?」
「何でもはしらねぇよ、知ってるのは忍と羽川の胸のサイズだけだ」
「あっそ、この期に及んで冗談まで言うなんて。私の負けだわ」
「じゃ、悪いけどこの喧嘩、終わりにしてくれるかな?」
「ええ、いいわ」
「それから、忍。一つお願いを聞いてくれ」
「なんじゃ?我があるじ様よ」
「僕はいつ[
ピーーー
]るか分からないけど、ずっとお前と居る。だから、羽川のお腹の子は、こっち側、人間世界への未練、忘れ形見だと思って、認めてくれ」
「……御意である」
「あと、お前普通の言葉もしゃべれるよな?」
「ああ、それがどうした」
「出来れば、普段はそっちの方がいいぞ」
「そ、そうか?」
「ああ、そっちの方が断然可愛い」
「う、お、ああ、わかたっよ」
「ああ、いいな、それ」
じゃ、撤収!
366 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:06:59.37 ID:dO0fq0go
後日談と言うか、これ後日譚だよね?のオチ。
羽川は猫の姿のまま、帰って行った。
忍は僕のそばで、僕が回復するのを待っていた。
が、体の回復に結構長い時間を掛けてしまった。
で、気付いたら、校門前にパトカーの大群。
きっかり1時間で警察に電話したうちの妹達。
警官が駆け付ければ、体育館の壁と扉が破壊され、校庭がひび割れ、僕が大の字で寝てた。
勿論、忍は影の中に隠れる。
誰が考えても、僕の仕業。
然しながら、人間が壊したと思えないと言う事で、一応僕は不問となったが……
伝説は残ったらしい。
「阿良々木が化け物と戦ったらしい」と言う伝説。
リーク元は分かったるけど、今回も不問。
ただ、卒業生はとんでもない体育館で卒業する事となった。
式も無事終わり、僕は忍と旅へ。
みんな、見送りに来てくれた。
僕の元彼女、元彼女の後輩、僕の妹1号2号3号、見えないけど迷子の子、そして―――
阿良々木暦の忘れ形見をいつまでも抱えなければならない人。
「みんな、今までありがとう」
ちなみに、これはあとで知ったのだが、忘れ形見の養育費はずっと忍が送っていた。
367 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:09:07.67 ID:dO0fq0go
「さて、全店制覇にいってくるね〜」と忍。
ちなみに、VUカットガラスだと体が焼けないから、車の中は安全らしい。
と、言いつつも長袖パーカーにサングラスを着用する忍。
もう何が何だか……ご都合主義の極みだな
街を出て、海岸線の国道を走り、一路大阪へ。
ミスド1号店があるらしい。
ふと、走りながら左手方向を見たら、ヒッチハイカーがいた。
サイケデリックなアロハシャツに無精ひげ。
停まった僕の顔も見ず、こう言った。
「悪いねぇ、どこか面白そうな話がある街まで乗せてよ」と。
いきなり僕と忍の二人旅は……「終わった!」
おわり。
368 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:09:52.06 ID:dO0fq0go
時間が無くて、ちょっと端折り過ぎた感が強過ぎる。
今回、sagaなしの理由は読み手解釈でお願いします。
369 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:11:29.70 ID:dO0fq0go
ま、気が向けばだけど、書き直す事もありけり
ちょい、沈んだので再掲
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「staple stable」
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i::/ / ::::::::/!::::::::lヽ.{:::い:リY ! ヽ::::::::::ム!,,__!:::::::::::::::: : : : : : : : :.、
i/ /:::::::::人|::::::::i. ´ ー' \://__|:/|::::::::: : : : : : : : : : 、
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/ :::::::::::::::: \::::l ', ゝ=シ, 、'" ':::: : :/|:::: : :, \
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/ :::::::::::::::::::::::::::: ヘ. マ_ー_、 <'::::.: /::::::::|:::ハ
―= ――|::::::::::::::::「 ̄:|.\ - .イ:/::::.∠-==|/ ̄`丶
/:. :. :. :. :. :. :. :. : !::::::::::::::::|:.:..λ ヽ _...:ァ'´:. /ィ":. :. :. :. :/ :. :. :. :. :. \
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/:. :. :. :. :. :. :. :ヽ :. :. :. ヽ::::::::::::::!:.:.:.: !', /:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:. :./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽ
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西尾維新・アニプレックス・シャフト
*この物語はフィクション(SS)であり、実在する書籍と設定や性格が多少異なる事があります
*作者には校正してくれる編集さんがいませんので、たまに敬が抜けたり等の誤植がありますが、お許しください
*スレタイは殆ど関係ないと言うか、一番最後です
370 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:14:29.89 ID:9kzNrKoo
乙
>>364
>>67
じゃなく
>>64
かな
371 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:16:15.71 ID:D5Xq8IDO
1乙華麗!
372 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:16:47.76 ID:VxGd0zso
乙
猫読んでなかったのか
373 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:19:29.34 ID:7J9Mwqo0
アララギダインさんのハーレムの中でも、メメだけは別格だったからな
アニメEDで三人で手をつないでたり、三人だけで天体観測してて他の面子はソレを見上げてるだけな絵は
上田大王わかってんじゃねぇか、と酷く感動した覚えがある
え、感想?
今更何を言っても無粋だろうけど
少なくともここに一人、ちょっとほんわかした気分で眠れそうなおっさんが一匹いることだけは確かなのだわ
374 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:45:18.32 ID:VO7UpEAO
激しく乙
なるほどこういう方向性のお話も好きだったんだな、俺
新しい自分に出会えたよ
>>372
ヒント
>>369
の最後の数行
375 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:51:21.83 ID:dO0fq0go
>>370
校正乙であります
>>371
ありがとう
>>372
猫はまだ1週目途中、埃かぶってるわ
>>373
いい夢みてください。夢に忍野が出てきたらいいな。
376 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 00:53:38.39 ID:dO0fq0go
>>374
逆にこういう話が書きやすかったりもします。エロは日常から乖離したり、キャラぶっ壊す原因で、結局失敗しますから。
時代はソフトエロ!だと思い込んだり
また何かでお会いしましょう
377 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 01:12:44.17 ID:VxGd0zso
>>374
???
単にSS書くほど化物語(の設定・世界観)が好きな人が猫までは読んでないのかと思って聞いただけ
他の巻で描写があったかは覚えていないけど猫黒の羽川の家の部分は既読者なら忘れないような気がして
378 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/11(土) 01:21:08.36 ID:dXJW0gSO
>>1
乙
楽しく読ませてもらった
379 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 01:39:31.10 ID:1tWXNEAO
子供は猫の子にゃららぎさん
乙でした
380 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 02:01:11.49 ID:wKXZeEDO
仔猫はヴァンパイアハンターにしようぜハーフだし! あれ? クォーターか?
VUカットって何だよ。新しいカットソーか?! 忍エロいな
381 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 02:06:59.48 ID:DjTYQy2o
乙!
382 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 07:11:20.53 ID:Xjndv6kP
面白かった!
乙!
こまけぇ事に気がついても、投下終わるまで待つべきだろうな。
特にこの作者は一気に投下する人だし、
383 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 19:17:58.40 ID:TITvGkAo
おつうぅうぅうぅぅぅぅぅうううううううう
384 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 19:50:31.10 ID:LERxYuoo
乙!
ガハラさんが振られたのに、結構すっきり読めた不思議
385 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 21:05:39.03 ID:QeXV/wDO
乙!
だがまだスレに余裕がありそうだな…
386 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 23:05:53.42 ID:8g.0xjAo
イバラキさんの嫁は絶対ガハラさんだと思ってたがこのSSで忍派になった
387 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/11(土) 23:53:33.04 ID:Dn40kkAO
時代を十数年進めて、羽川の子供(人間2/4、猫1/4、吸血鬼1/4)がアラハバキさん(姿形は当時のままで)に惚れる話が読みたいな
388 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/12(日) 01:45:15.25 ID:SS0aFigP
このスレの>>1は東尾維新と呼ばせてもらおうか
389 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 02:02:29.19 ID:jy.cElUo
東尾維新だと回文にならないから
higasioisagihとかにしないと
390 :
◆OBAKEMIHEQ
[sage]:2010/09/12(日) 02:50:37.38 ID:0TtpmFAo
>>380
UVだなww
さてさて、スレが余ってるとか言われると、何か考えようかとか思ってしまったww
羽川の子まで出しちゃうとSSから創作になり、キャラ崩壊とかしそうな気もする
どうせぶっ壊すなら
チャラい阿良々木
淫乱な羽川
小心者の戦場ヶ原
真面目な神原
堅物の忍野
不良な千石
極悪非道な阿良々木姉妹
大人な八九寺
本当に冷酷な忍
とか。
>>388
西尾先生の名前もじるなんて不届き過ぎて無理wwwwww
気持ちだけいただきます
391 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 03:00:17.45 ID:QFPkl.AO
キャラ崩壊と言えばアレだ、人格入れ替わりとかどうよ
とりあえず羽川の子供は将来産まれることにした忍の子供と脳内できゃっきゃうふふしていますので、気を使われなくても大丈夫です
392 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 03:04:15.87 ID:0TtpmFAo
一応、モチーフらしきものはあるんですけどね
このスレ内で立てたフラグを回収出来ていないので、それをどうしようかなと。
忍ファンには申し訳ないし、羽川ファンには残酷だし、戦場ヶ原ファンには誰得?だし
何かおもしろそうな事あるといいな
393 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 03:11:45.40 ID:OLOoBYoo
>>小心者の戦場ヶ原さん
これは是非見てみたい
394 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 06:26:49.46 ID:MvrC75ko
ラスボスでしょ
395 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 11:02:47.90 ID:DiAytQQo
そこまで激しく戦闘したら流産エンドかとおもった。
396 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 12:38:42.96 ID:f45L1mQo
今気づいたんだけど西尾維新って逆から読んでも西尾維新だね
NISIOISIN
397 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 13:52:11.01 ID:6.DJ84co
>>396
>>396
>>396
>>396
398 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 14:04:25.02 ID:/GzshzQo
鏡文字ェ…
399 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 15:20:32.51 ID:vanRzgAO
>>390
チャライ阿良々木=チャララギさん。
変態のチャララギさんとか…怖っ!!
400 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 21:24:34.75 ID:0TtpmFAo
>>395
それも有ったんですけど、一応半分阿良々木の血を引いているので怪我は胎内で回復という設定。
御都合です。
401 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 21:42:51.43 ID:h63sYWs0
流産とかどんだけ鬱展開だよ…
402 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 21:43:46.03 ID:cJOVAmko
忍的にはそれ狙いだったしそこまで鬱でもないんで無い
403 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 22:25:18.76 ID:63GBRxIo
らららららららら木さんの子供を全員孕めばよくね?
404 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 22:29:21.28 ID:MREpAcSO
妹達もか!?
405 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 22:44:13.99 ID:63GBRxIo
もちろん
406 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/13(月) 00:29:38.83 ID:oO2LuwAO
妹達がメインヒロインだろ?
407 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/13(月) 09:03:14.26 ID:E3ih1RQo
you are very fine !
_ -‐'"´ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、
/ r:r====ュ r:r====ュ
/ | l___l }ニ{ l___l ||
|ニ□ニ|___,ノ ヽ、___,,ノ]
|____________|
| | |::,/ ,ィ::: 〉:: ,〉
| | |/j:__,,/,ノ__,/|/|,/|
/| |ヽ|、弋:ソ ´"弋:ソ,〈::::| 。o O(ふふふ、信者が増えた)
,ノ ::|__,/:ゝ、⊂⊃ ⊂⊃:|
,>_:::| |: : : :;>:..、 _-__,,ノ::ヘ:|
´ ,ノ:/| |: ::/´ || \ / ,〃ハ:|
<:/ :| | : {、 \ ,ィ⌒Y⌒ヽ,/ 八__,/|
l`ー─‐/ : :| |: :::〉\__ ̄´勹:{ ̄ ,/:::::\, /
\ '": : ::|_j:::/ '´ / .| ̄ |:: 下、>、::_:ノ´
`ー--‐'´: :.:{ .〈、 :::| |:: | 〉: : : :
: : : : : ::ヽ、__,>={._,,>、__`): : : : : : タダイマセイサクチュウ
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
Did you have any good things ?
408 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/13(月) 15:16:01.14 ID:pqbzUEAO
もちろんメメも孕むんだよな?
wktkしながら待ってる
409 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/13(月) 15:37:31.84 ID:j0AGSSIo
むしろメメが暦を孕ませる
410 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/13(月) 15:50:42.60 ID:E3ih1RQo
今回ギャグパートになるかもしれない><
なるべく、物語になるように頑張るんで、少しお時間ください
あいつらも出したいし―――僕はキメ顔でそう言った
411 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[saga]:2010/09/13(月) 19:36:46.15 ID:eTAKzU2o
ギャグパート期待wktk
412 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:22:50.73 ID:VFWRRJEo
注意事項
今回も99%趣味で書きまみた!
誤字脱字もワザと書きまみた!
原作設定とか無視して書きまみた。
あと舞台は……直江津は上越市なんだけど、アニメ版では三鷹駅や千葉のモノレールが出るので、関東と言う事で書きまみた!
その辺の設定は賛否両論あると思いますが、生温かく批評してください―――と、僕はキメ顔でそう言った。
では、始めまみた。
413 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:23:34.74 ID:VFWRRJEo
「キナバルさん」
「おーい、八九寺ちゃん、私の名前を間違ってるぞ!いつの間に私はフィリピンの山になったんだ?」
「えへへ、かみまみた」
「かみまみた?」
「かみまみた」
「なんだそれは?」
「ちなみに、フィリピンではなく、マレーシアです。……はぁ、阿良々木さんが懐かしいです」
「うわ!何か私じゃ不満なのか?」
「いえ、そういう訳ではなく。その……噛んだときのツッコミ具合やノリ具合が違うと言うか……」
「まぁ、阿良々木先輩は凄かったからな」
「ええ、本当に。あれだけの人は稀ですよ」
「今頃、関西地方でドーナツ食べているのでしょう」
「だろうなぁ」
414 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:24:03.83 ID:VFWRRJEo
「関西ってどんなところなのでしょうか?」
「私が聞いた限りでは、大阪の何とかという街で石を投げると、3回中1回は芸人に当るらしい」
「ええ!そうなのですか!」
「ああ、何せ芸人の街だからな。なんとかカ月という所があってだな。何カ月なのかは知らないが」
「それって『なんば花月』じゃないですか?」
「え?そうなのか?なんだ八九寺ちゃん、知ってるんだ?」
「いえ、花月は関東にもありますから」
「花鳥風月を略して花月か、今度の薄い本のタイトルに使おうか?」
「いえ、花月は『花と咲くか、月と陰るか、全てを賭けて』って意味ですよ」
「私より詳しいではないか!」
「いえ、花月の事だけ知ってます。関西は行った事も無いので、よく分からないのです」
「ふーん。他に、お店の5軒に1軒はたこ焼き屋かお好み焼き屋らしい」
「なんか街の中がソース臭そうですね」
「阪神が優勝したらみんなが飛び込む何とかという川は、ソースが流れているらしい」
「え?それって水が汚いだけでは?」
「いや、ソースなんだって。それを汲んで使うらしい」
「神原さん、ソース提示して貰えます?」
「あ、それはネットで」
「ネットの情報なんて鵜呑みにしちゃダメですよ」
「そうなんだ」
「そうです」
「―――」
「……」
沈黙。
415 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:25:25.80 ID:VFWRRJEo
「なぁ、八九寺ちゃん。とりあえず、暇だし、関西に行かない?」
「え?」
「春休みだし。するが事ない!」
「何を言ってるんですか!この『こねこのひ○ぎ』がアップしていないじゃないですか!?」
「ああ、まぁそうなんだが。息抜きと言うか、そう!取材!取材に行こう」
「取材?」
「ああ、大阪には日本橋と言う所があってだな、そこに乙女ロードなるものがあるらしい」
「うは、それは興味深いですね」
「そうだ!にほんばしに行こう!」
「あ、ちなみに大阪の日本橋は「にっぽんばし」ですよ?」
「そうなの?」
「ええ」
「じゃあ、荷物詰めて行こう!」
「足はどうするんですか?」
「足はここにある!」
「いえ、そういう意味ではなく」
「走れば丸3日で行ける!」
「私は無理です!」
「冗談だ!心配するな、ちゃんと車を用意するから」
「そうなのですか?」
「ああ、大丈夫。ピポパっと」
416 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:26:33.13 ID:VFWRRJEo
『あ、神原です。実はですね、―――という訳なのですが?え?OK?では明日』
「OKだよ」
「誰に電話したのでしょうか?」
「え?私の最愛の人だ」
「それって……戦場ヶ原さん?」
「正解!八九寺ちゃん、鋭いね」
「いえ、それ以外に考えられませんから」
「酷いな。まるで友達が居ないみたいじゃないか、私に」
「え?」 「え?」
「まぁ、ここまでクラスメイトらしき人は出ましたが……」
「やだな、八九寺ちゃん。こう見えても直江津高校のスターだったんだぞ!」
「まだ過去の栄光に縋っているんですね」
「グサッ!死んだ!」
「死なないで〜お姉さま!」
「大丈夫!阿良々木先輩の精子を授かったから私は不死身だ!」
「!!ええ!何?今なんと?」
「やだな、冗談だよ。真に受けずにツッコミいれてよ」
「はぁ。笑えない冗談でしたよ?」
「そう?なかなか素晴らしい冗談だと思ったのだが?」
「では、明日。明日、戦場ヶ原さんの前で言ってみてください」
「すみません、私がわるぅございました。まだ死にたくないです」
「ですよね〜キャキャ」
「取り敢えず、明日に向かって寝よう!寝るのが一番だ!」
「ええ、そうしましょう!」
「今日もBL本の布団で爆睡だ!」 「爆睡だ!」 zzz…...
417 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:27:38.29 ID:VFWRRJEo
翌朝
「おはよう」
「おはようございます、戦場ヶ原先輩!」
「すみません、無理言って」
「いいのよ、別に。私も大学の入学式まで暇だったし」
「戦場ヶ原さん、お世話になります」
「ええ、御遠慮しないで。このチンチクリンの可愛い小動物さん」
「はっう!」
「戦場ヶ原先輩は八九寺ちゃんには優しいな」
「ええ、優しさ95%(当社比)で構成されている私には当たり前の事よ?」
(なんかまちがってますぅ!)
「それはそうと、神原。あなた、最近、前にも増して元気じゃない?何かいい事有った?」
「ええ、神原さんは阿良々木さんの精液飲んで元気だそうです」
「そう……それは良かったわね」
「八九寺ちゃん!なんて事を!殺されてしまうじゃないか!」
「も、勿論、今のは冗談ですからね?」
418 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:28:56.19 ID:VFWRRJEo
ガチャガチャ
「あの、戦場ヶ原先輩。何をされているのでしょうか?」
「ドライブって聞いたので、タイヤを外すのよ」
「え?パンクでもしたのですか?」
「神原。タイヤ外したら、あなたをここに括りつけて走るわ」
「ひー!勘弁してください!死んでしまいます」
「あら?そうなの?そんな事で死んでしまうの?私はあなたの冗談で心が殺されたわ」
「この通り!土下座してお詫びいたします」
「そう。なら、仕方が無いわ。今回は許すわ。その代り、そんな冗談、今後は、無しよ」
「アイアイサー!マム」
「うん、いい子ね。では行くわよ」
「レッツゴーです」
ちなみに私の車の中は土足厳禁。二人とも脱ぎなさい」
「え?全裸ですか?先輩?」
「別に全裸になりたければ、どうぞ」
「神原さん、普通は土足厳禁の場合、靴を脱ぎますよ?」
「神原はさっきの罰として全裸」
「勘弁してください」
「そう。仕方が無いわね。ちなみに車内で全裸でも捕まらないのよ?」
「え?本当に?」
「嘘よ。でもシートベルトをしていれば、道交法では捕まらないわ。公然わいせつ罪に問われるけど」
「へー、えへへ。今度の本のネタにさせていただきます」
419 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:30:22.13 ID:VFWRRJEo
「相変わらず本を作っているのね。売れてるの?」
「ええ、まぁ。私名義は商業誌で、八九寺ちゃん名義で薄い本を裏技的に出しています」
「ふーん。次回作は何かしら?」
「薄い方は『こねこのひ○ぎ』ですよ、えへへ」
「○には何が入るのかしら?」
「え?あの、それは……先輩、楽しみにしていてください!」
「もしその丸の中が『た』なら分かってるわね?神原」
「あはは、やだな。『た』なんて入りませんよ。丸の中は「つ」ですよ。な、八九寺ちゃん」
「あれ?今朝見たら『た』が入っていましたよ?」
「やっぱりタイヤ外すわ。今度は、あなたが外しなさい、神原」
「いや、やめて!ごめんなさい!没ネームにしますから!」
「ちなみに、内容はどんなのかしら?」
「えっと……」
「戦場ヶ原さんの性格変更して、小心者にする話です!」
「ふーん……」
「例えば?」
「クラスのある男子に助けられて、お友達になったのですが、実はその男が非常にチャラくて、戦場ヶ原さんにお礼の代わりに体を迫るという話です」
「あー!八九寺ちゃん!言っちゃダメ!って遅かった……」
「神原。その先はどうなるのかしら?」
「えっと……いえ、まだネームの段階で……」
「いいから、言いなさい!」
「あの、まぁその……毎日、家に連れ込まれてズッコンバッコンされちゃうという話ですよ」
「私がいいなりになると思って?」
「いえ、だからそこは……性格を改変して、従順な……漫画の世界だけの話と言うかなんというか」
「従順な奴隷ですよ、戦場ヶ原さん」
420 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:31:48.25 ID:VFWRRJEo
「はちくじゅちゃん!」
「噛みましたね?緊張しているのでしょうか?」
「あたりまえだ!」
「神原。脱ぎなさい」
「え?」
「あなた、全裸でサンルーフから上半身出して立っていなさい」
「あの、戦場ヶ原さん、それは私や運転手の戦場ヶ原さんも変な目で見られますよ?」
「それもそうね。じゃ、タイヤを外す刑ね」
「それも勘弁してください」
「私がいいと言うまで、タイヤローテーションしなさい」
「まるでロシアの拷問だ!」
「墓穴掘りましたね、神原さん!」
「冗談はさておき、関西に向かって何かいい事あるのかしら?」
「さぁ?とりあえず、阿良々木先輩に会いに行こうと」
「ふーん、そう。分かったわ。では、出発しましょう」
「ちなみに私は後ろで寝ていますので、到着したら起こしてください」
「ところで、戦場ヶ原先輩。関西って行った事有ります?」
「ええ、修学旅行で行ったわ、大阪・奈良・京都に。中学の時だけどね」
「ふーん、どうでした?」
「大阪の川がソースで吃驚したわ!」
421 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:33:08.33 ID:VFWRRJEo
「ですよね!……ちなみに車では?」
「今日が初めて。去年の7/7で18歳になったので、秋から教習所に通ったわ」
「ふーん、まだ若葉マークですね」
「ええ。車の運転も今日が初めてだし……」
「危険すぎます!」
「あら?チンチクリンの可愛い小動物さん、起きたの?関西はまだよ?」
「今寝たら、一生目覚められない気がしました!それと、私の名前は八九寺真宵です!」
「そう、真宵ちゃんね。車は大丈夫よ、教習所でも『君は天才的に上手いね』と言われたわ」
「先輩!それって、教官の頬に何か添えていたとか?」
「あら?神原、今日は察しがいいわね」
「何を添えたのか聞きたくない!」
「ところで、関西ってどっちかしら?」
「ナビに入れたらどうですか?」
「ごめんなさい。私、使い方知らないわ」
「私も無理です」
「八九寺ちゃんは……あら?ツッコミ入れてもう寝てる。やっぱり子供だね」
422 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:34:29.08 ID:VFWRRJEo
「あそこに道路標識、緑色だから高速道の案内ね」
「あれに乗ればいいのですか?」
「そうね」
「戦場ヶ原先輩は凄いな」
「コホン、これぐらいお茶の子さいさいよ。何せ、関西の『関』が入っていたわ」
「関東にも関西にも関は入ってますよ?先輩」
「本当に神原は馬鹿ね。江戸と大坂の行き来に関所を越えたから、どっちも関が付くのよ。関東と関西、関の東と西」
「ほう?」
「だから、関を越えれば大阪に行くに決まってるじゃない」
「おお、流石戦場ヶ原先輩だ!では、行きましょう!」
標識 【関越自動車道】
423 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:37:25.17 ID:VFWRRJEo
関西
「忍、次はどこに行く?」
「暦君、京都に行こう」
忍は、以前『普通言葉』と言った僕の話を了承し、堅苦しい言葉使いを止めた。
『お前様』が『暦君』に、『我があるじ様』が―――、そこは内緒にしておこう。
たまに戻る事もあるのだが……
「京都か。ミスド以外にも色々見られそうだな」
「そうだよね。とりあえず清水寺は外せないし」
「あと、東寺とか西尾なんとかさんが行ってた立命館大学なんてのもあるよな、近くに銀閣寺もあるし」
「へーそうなんだ。ちなみに、私の調べた情報では作者の出身校も京都なんだって」
「それ誰情報?」
「さぁ?一応、手元のカンペに書いてある通り言ってみた」
「いつ貰ったの!?」
「え?さぁ?気がついたら握ってた」
「握ってたからって読むのか?」
「握ってたから、上下に動かしました!っておい、なんじゃこりゃ!」
424 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:37:59.50 ID:VFWRRJEo
忍は訳のわからないメモを丸め、ゴミ袋に放り捨てた。
「しかし、関西って凄いよな」
「凄いよね」
「大阪の川がソース色だったよ」
「ていうか、あれソースちゃうん?」
「おい忍、関西弁になってるよ!」
「え?マジかいな!そら、あかんわ、こまるがなぁ」
「頼む、普通言葉で」
「くくく、戯言だよ、戯言。たまには戯れをしないとさ」
「びっくりするやんか、急に忍が関西弁で喋ったら僕はこまりまっせ?」
「おい、暦君。それも関西弁や!」
「そやなー」
425 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:38:52.32 ID:VFWRRJEo
本当に毎日が楽しかった。
何が楽しいって、好きな人とずっと一緒に居て、笑いながら過ごせる事が。
勿論、家を出てから喧嘩もした。
でも、そんな事を忍と出来る事が嬉しかった。
たぶん、忍もしかりかと。
「なぁ暦君、どこから行く?私はドーナツ食べたいんだけど」
「ああ、じゃあ、ちょっと検索してくれる?」
「オッケー!ちょっと待っててね」
そういうと、忍は僕の携帯を受け取り、検索開始。
忍にも1台携帯を買ってやろうかと言ったが、
「そんなもん要らんわ。一緒に行動するのに何故要る?逸れても直ぐに探せ出すわい」
と強気な発言をしていた。
「暦君、早速店が見つかったよ」
「ん?どこ?」
「寺町六角上ル ショップ」
「なんか、凄い名前だな」
「寺町筋と六角通りの交差を上ったところだって」
「ふーん。あ、あそこが六角通りだ」
僕は駐車場に車を入れ、歩いている人に道を尋ねる。
426 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:40:28.61 ID:VFWRRJEo
「すみません、ここから寺町筋ってのは、どっちにいけば?」
「ほんの少し歩きますけどぉ、なんてことおまへん距離どすえ。こっち向いて行きはったらよろしいかと」
僕は、あまりにベタベタな京都弁に少しふきだしかけた。
「あ、ありがとうございます」
「忍、こっちだって」
「暦君、さっき笑っただろ?」
「え?ばれた?」
「私も我慢してたのに!」
「笑えば良かったんじゃない?」
「失礼でしょ!」
「まぁ、確かに。しかし、凄いよな、京都弁」
「ああ、400年前と何ら変わっておらん。儂も驚いた」
本当に驚いたんだな。
忍が素に戻っていた。
427 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:41:42.15 ID:VFWRRJEo
「あらら、私とした事が失礼」
「別に気にしてないからいいよ」
「そう。本当に暦君は優しいね」
「普通じゃない?」
「普通かぁ。そんな風に普通だと思って、他の女に接するとやきもち焼くかもよ?」
「あーそれは怖いから、気を付ける」
「うん、よろしい」
「で、目的地が見つかったぞ」
「おお!あれかぁ!」
僕達は早速入店し、好きな物を頼む。
「しかし、忍も飽きないよな」
「何が?」
「ドーナツ」
「当り前よ、こんなに美味しいのに」
「でも毎日食べてたら飽きないか?」
「毎日、暦君の顔見ていたら飽きると言う事でしょうか?というか、私の顔を毎日見て飽きたんでしょうか?」
忍が僕を睨む。
428 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 09:42:40.89 ID:VFWRRJEo
「いや、そんな事は全くないよ、全く」
「そう。なら同じ事よ」
にこやかな顔に戻り、美味しそうにドーナツを頬張る忍。
至福の時ってこういう事を言うんだろうな。
でも、そんな幸せな時間をぶち壊すように―――
「お?やっぱ間違いあらへん、鬼畜兄やんに旧アンダーブレードちゃんやんけ」
その声に振り向くと―――
そこには
影縫余弦と斧乃木余接。
僕の脳裏に嫌な予感が走った。
いや、嫌な事が思い出された。
取り敢えずここまで候
429 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:54:07.89 ID:VFWRRJEo
「なんや、その驚いた顔は。鬼畜なお兄やん、こんな所迄なにしにきたんや?」
「去年の続きをする為か―――僕はキメ顔でそう言った」
「いやいや、ただの観光だし」
「観光?」
「そう。学校出てから忍と二人で旅行しているんだ」
「観光ねぇ。なんやそんな風には見えへんで?なんちゅーか、駆け落ちみたいな感じやな」
「……」
「きっと地元で人には言えない事をした―――僕はキメ顔でそう言った」
「なんもしてねぇよ!」
「ふーん、そうかいな。ま、鬼畜なお兄やんの言う事は信じたるわ」
「そら、おおきに」
「おおきにって……いつから京都におるねん?」
「んー、京都は今日から。昨日までは大阪に居たんだ」
「いつからや?」
「3月の上旬から」
「はぁ?その間、なにしとったんや?」
「ミスドめぐり」
「ぷっ。アホや、こいつら、ほんまもんのアホや」
「全国的にどこのミスドも味は変わらないと思うんだけど―――僕はキメ顔でそう言った」
「それを言われると困るんだけど、まぁ観光も兼ねてね」
「観光なぁ。京都に来た所で、ショボい映画村か寺社仏閣しかあらへんやろ?」
「鬼共が寺社仏閣とは笑える―――僕はキメ顔でそう言った」
「鬼って……まぁ、そうだけど。ただ、踏み入れたところで何も起こらないしな」
「そうか、ほな好きにしいや。その代り、ゆうとくけど、京都で悪さしたらうちらが許さんで?」
「あーそんなの無い無い。本当に観光だし」
430 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:55:00.97 ID:VFWRRJEo
「それより、旧アンダーブレードちゃんは、なんでさっきから黙ったままやねん?」
「え?別に何も話す事無いし。何か話した方がいいのかな?」
「なんやおどれ、その話かたは!熱でもあんのか?」
「無いよ」
「無かったら死んでいる!−――僕はキメ顔でそう言った」
「全然キメ顔じゃないし」
「ムカつく―――僕は本気でキメ顔をした」
「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないで」
「なぁ、鬼畜なお兄やん、これどういう事や?説明してくれや」
「えっとどこから説明したらいいのかな?」
「まず、なんで旧アンダーブレードちゃんが普通にしゃべっとんねん?」
「僕が勧めた」
「なぬ?鬼畜なお兄やんが勧めたら、普通に話すんか!」
「まぁ、そういう事」
「で、お前ら、どんな関係やねん」
「それはもうご存じでしょう?」
「吸血鬼と眷族、今は逆転しとるけどな」
「まぁ、そういう事」
431 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:55:42.10 ID:VFWRRJEo
「ほな、このサイズはなんや?」
「サイズ?」
「このサイズはうちらと戦った時のサイズやろうが?なんで今もそのサイズやねん」
「うーん、なんて言うか、僕が10歳の子連れてウロウロするのも拙いし」
「嘘や。そんなん嘘や。何か隠しとるやろ?」
「こいつら恋仲じゃないか―――僕はキメ顔でそう言った」
「何?恋仲?付きあっとんの?」
「んーまぁ、そういう事になるのかな?」
「おい、おどれ!ちょっとまちぃや!おかしいやろ?」
「ん?何が?」
「なんで、おどれが旧アンダーブレードと付きあっとんねん?彼女おったやろ?」
「あー、あれは別れた」
「何?!」
「それと、悪いんだけど、僕の事は暦、キスショットの事は忍って呼んでくれないかな?」
「何を偉そうに言っている―――僕はキメ顔でそう言った」
「まぁ、さっきから余弦さんが話すというか、驚くたびに他のお客さんが振り向くんで……」
「あ、そりゃすまんな。で、こ、暦よ、おどれと忍が付きあっとる理由は?」
432 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:56:34.00 ID:VFWRRJEo
「理由?好きだから」
「すー↑きー↓?」
「ああ、そうだよ。それが何か?」
「本気なんか?」
「そりゃ勿論。なぁ忍」
「う、うん///」
「あかん、旧アン―――忍が照れとる」
「世も末だ―――と僕はキメ顔でそう言った」
「おいおい、そこまでいう?」
「『例外のほうが多い規則』も驚きや!」
「例外って……」
「ほな、あれか!おどれは地元の女に興味なかったんか?」
「まぁ、元彼女も元彼女の後輩も、同級生も、妹の友人も―――妹Aも振った」
「妹振るって……ほんまにおどれは鬼畜やな」
「ちなみに、暦君の子供を身籠った怪異も一匹いますけどね」
「なんやて?」
「あなた達が帰った後、暦君が猫の怪異にやられてね」
「何やられてん?」
433 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:57:38.67 ID:VFWRRJEo
「まぁ、その……無理やり性行為」
「はぁ?マジで?」
「うん……で、妊娠してシングルマザー」
「おどれの鬼畜ぶりは知っとったけど、最悪やな。ほんで認知せんと忍とラブラブか?」
「本人の意思だし、仕方が無いよ。それに怪異に認知ってのも……産むのは人間だけど」
「というか、そんなヤバい怪異、始末せなあかんやろ?」
「いや、それは無理。怪異が憑いたと思ったら、怪異が飲まれてた」
「何?」
「だから―――怪異を取りこんで、自在に発現させるというか」
「おどれの妹と―――逆か」
「まぁそんな感じ。これって完全に『例外のほうが多い規則』適用だろ?」
「んー……まぁうちら人間には手出しでけんしな」
「まぁ、そう思うんだったら聞いていない事にしてよ」
僕は去年起こった事を説明した。
「まぁ大体の事情は分かった。そやけど……ほんま、驚きや。腹減ったし、軽くなんか食おか思って入ったら、おるし」
「錯覚を見たかと思った―――僕はキメ顔でそう言った」
「驚いたのは僕らの方だし」
「ちゅーか、昼間やぞ?忍は何ともないんか?」
「まぁ一応、ちょっと大きいから吸血鬼に近いんだけど、最近は日焼け止めもいいのがあるし、短時間なら外を歩いても平気なんだ」
「さよか。まぁ、ええわ。ほんで、いつまで京都おるねん?」
434 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:58:07.15 ID:VFWRRJEo
「多分、1週間ぐらいかな?1週間有ったら全店廻れそうだし」
「なんや?全店って」
「あ、ミスド全国全店舗廻るんだ。さっき言わなかったっけ?」
「京都には観光に来たんとちゃうんか?」
「いや、観光はおまけ。本来の目的は―――」
「いやーほんまに参った。おどれら素敵過ぎや。久々に呆れたわ」
「そりゃどうも」
僕の横で、忍は最後の1個に手を掛ける。
「暦君、半分食べる?」
「あ、いいよ、忍が食べなよ」
「暑い、春だと言うのに暑い―――僕はキメ顔で言った」
「うん、それがいい。クールな顔で涼しくしてくれよ」
「ま、そういう事で、僕らはこの後観光するから、そろそろ失礼し―――」
「まちぃ!おどれらこのまま帰して貰えると思っとんのか?」
その言葉に、食べかけのドーナツを置く忍。
余接もまた同じく。
「おい―――」
僕の言葉を遮るように、余弦が京都弁を捲し立てる。
435 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 10:58:48.51 ID:VFWRRJEo
「おどれら観光で来たんはよう分かったわ。京都に来た知人が観光する言うてんのにほっとかれへんな。うちが案内したるわ!」
「へ?」
「君達を京都案内してあげる―――と僕はキメ顔でそう言った」
「えっと…」
(忍、どうする?)
(いいんじゃない?戦争しようって言ってるんじゃないし)
「何をボソボソ話しとんや?」
「いえ、ではお言葉に甘えて」
「よっしゃ!ほな行こか!」
「どこに?」
「観光や。まずは新撰組の屯所跡やろ、それから本能寺な」
えらくまた、コアな場所だった。
「というか、ショボイ映画村と寺社仏閣だけと違うの?」
「それは、追い返したろ思ってゆうただけや。ええとこナンボでもあるで」
「あっと、その前に車を」
「何?車で来てんのか?」
「ええ、車で旅してます」
「ほな、今の時間やったら嵐山行こか!桜は2分咲きやけどな」
僕らはミスドを出て、駐車場へ向かう。
436 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:00:30.46 ID:VFWRRJEo
が、駐車場の場所が分からなくなってしまった。
「どこに置いたんや?」
「六角通り」
「ここもや。何筋や?」
「えっと……分からない」
「どっちから来てん?」
「それが……多分、こっちかな?」
「ほな、歩いたら分かるやろ」
15分歩いて、逆方向だったと分かった時、京都の二人から殺気が出ていた。
「あのー本当にすみません」
「しゃーない、京都はややこしいからな」
「ちなみに、余弦さんの話し方って京都弁というか、先日まで居た大阪の泉州弁にちかいですね」
「!!」
「それはふれてはイケない事―――僕はキメ顔でそう言った」
「すみません、聞いてない事にしてください」
「なんも聞こえてへんわ!」
やれやれ、先が思いやられそうだ。
437 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:01:36.20 ID:VFWRRJEo
某所
「あの……戦場ヶ原先輩、新潟は関西なのでしょうか?」
「さぁ?」
「というか、道を間違えていませんか?」
「間違い?この私が間違うなどありえないわ」
「す、すみません」
「ちなみに、ナビの使い方は分かったのかしら?」
「えっと、一応説明書は読みました」
「じゃあ、さっさと入力しなさい」
「どこの住所を入れましょう」
「大阪府って入れなさい」
「市は?」
「大阪」
「区は?」
「大阪」
「有りません」
「壊れているのかしら?」
「何区を入れればいいんだぁ!」
438 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:02:53.04 ID:VFWRRJEo
「えっと、お話中すみません」
「何、迷うちゃん」
「名前が残念賞です!」
「ごめん、噛んだ」
「わざとですね!」
「かめはめは!」
「わざとじゃないのかどうだかすら分かりません、というか戦場ヶ原さんって面白いですね」
「おもしろいですね?」
「……何か気に障る事を言いましたか?」
「逃げて、八九寺ちゃん!」
「こんな車内で逃げる場所なんてないです!」
「おもしろい、尾もしろい、尾も白い!あの猫、あの時〆ておくべきだったわ!」
「こ、こわれましたぁ!」
「先輩!と、とりあえず新大阪駅を場所の名前で入れました!行きましょう」
「おもしろい、おもしろい……」
「先輩!戦場ヶ原先輩!」
「はっ!何?神原?」
439 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:03:53.62 ID:VFWRRJEo
「よかった戻ってきた。新大阪までのナビ、はいりましたー」
「新大阪って新東京市と同じような物なのかしら?」
「さぁ?よく分からないのですが……」
「案外、地下から巨大ロボットが―――」
「またお話中すみません。ロボットとかいうと叩かれますよ?」
「誰に!誰がぁ!」
「戦場ヶ原先輩、落ちついて!」
「で、あとどれぐらいなのかしら?」
「えっと……555km、7時間です」
「7時間!」
「どうされました?」
「これは試練ね。何故600kmしか離れていない大阪に向かって300km走ったのに、残距離が555kmな訳?」
「それは、戦場ヶ原さんが道を―――」
440 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:04:24.62 ID:VFWRRJEo
「あーあーあー!今日はいい天気ね、そう思わない?神原」
「先輩、もう家に帰りましょうか?」
「駄目よ、帰らないわ。行くわよ」
「無理しなくていいですよ……」
「ちなみに、富山って標識が有るけど、大阪のそばに富山があるの?」
「さぁ?でも、一応ナビではこっちですよ?」
「神原、機械に頼りすぎじゃない?」
「え……?」
「大阪のそばに富山が有る訳ないじゃない。そのナビは私達に試練を与えているのよ」
「はぁ……」
「だから正解はこっちよ」
「多分、それ死亡フラグですよ?」
「真宵ちゃん、あなたまで!」
「いいから、ナビに従え!このツンバカ!」
「ツンバカ……ちょっと車から出て貰えるかしら?」
「出ちゃだめ!ここ高速道路上だし!」
大阪まで555km
現在地 新潟県長岡市【北陸自動車道上】
441 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:05:20.34 ID:VFWRRJEo
嵐山
「ここが嵐山や!デートスポットやで!」
「なんか、ただの田舎だね」
「忍、折角案内してもらったのにそういう言い方は……」
「旧―――忍は風情があらへんな。この侘び寂びを感じ取れんか?」
「というか、寂れてるって感じしかしないけど?」
「はぁ、これやから金髪近眼はアカンねん」
「誰がメガネっ子よ!」
「忍の眼鏡姿も案外似合うんとちゃうか?鬼畜―――彼氏もそういうの好きそうやし」
「いや、僕は眼鏡属性ないから」
「なんや、ないんか」
「ええ、全く」
「おかしいな、普通は眼鏡属性が有る方が本は売れるんやで?」
「あんたは、どこの神原だよ!」
「暦の周りにもおるやろ?メガネっ子」
「ああ、居たけど。居たけど、需要が無い事に気付いてコンタクトにしてたよ」
「わかってへんなぁ、その子」
「僕にはそこまで眼鏡に拘る方がわかんねぇよ!」
442 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:06:29.63 ID:VFWRRJEo
「なんや、ほな、うちが教え込んだろ」
「え?」
「余接、忍と散策しておいで」
「お姉さん、なんで私が鬼と一緒に行かなくては?―――と僕はキメ顔でそう言った」
「ええから、ええから。ここからは大人の話や」
「ほほー、大人の話とな?儂も参加できるであろう?」
「ええから、いってこいや!ちゅーか、ハク付けて儂ッ子に戻んなや!」
「儂ッ子……そんなのあるの!?」
「なんや、暦君。おどれ知らんのか?僕っ子を超える『儂ッ子』を」
「しりませんでした」
「一部では熱狂的なファンがおるんやで」
「へぇ……世の中色々あるんだな」
「せや、そやからうちが色々と教えたろってゆうてんねん」
「あー、なんか嫌な予感がした」
「だよねー。やっぱ暦君と一緒に居るから」
「チッ」
443 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:07:25.10 ID:VFWRRJEo
「あー!今舌打ちした!僕に何する気だったんだ!」
「まぁ、忍の彼氏、食うたろか思ってな」
「食うって……」
「あんたに暦君は渡さないしー」
「なんか、その言い方むかつくなぁ」
「そもそも、小僧―――忍野と同じ歳なのに暦君に手を出すなんて……無理があるでしょ?あの人と同世代は……」
「男女の中に年齢なんてあるかい!」
「そう思ってるのは、おばさんだけ」
「何!だれがおばはんじゃ!」
「ちなみに暦君、夜になると私の血を吸うのよね。『小さい方がいいから』って」
「!!!」
「おい、暦。お前やっぱり鬼畜やな。鬼畜なお兄やんに逆戻りじゃ、ぼけぇ!」
「ロリコンは怖い―――僕はキメ顔でそう言った」
「決めんな!」
で、なんだかんだと言われながらも、嵐山を見て廻る。
444 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:15:11.73 ID:VFWRRJEo
「ちなみに、この橋が渡月橋や。カップルで渡っている時に振り向いたら別れるというジンクスがあるんや」
「ふーん」
僕らは橋を渡り始める。
「おい、暦」
後ろから余弦が話しかける。
「はい?」
僕は振り向かず返事をした。
「なぁ、忍よ」
「何?」
「ちょー、お前らこっち向けよ!」
「やだ」
「なんでやねん!振り向けって!」
「さっきの橋の都市伝説聞いて振り向けるか!」
「鬼の分際で、ジンクス信じるなや」
「陰陽師がジンクス信じて行動すんな!」
「ちっ!」
「また舌打ちする……」
445 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:16:44.06 ID:VFWRRJEo
そんな馬鹿な事をしながら僕達は嵐山を廻る。
まぁ、一応観光地なので遊ぶ事は出来た。
「ほな帰ろか」
「市内まで送りますよ」
「あ、ええよ。うちら電車で帰るし。おどれらも行きたいとこ有るんやろ?」
「まぁ、特には」
「ないんか?」
「ほな、うち来いや。泊めたるわ」
「私達の寝ている所、覗く気でしょ?」
「そんな悪い趣味あるかいな!人の親切は素直に受けとき」
「はぁ……」
ということで、僕達はまた京都市内へ。
446 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:18:48.00 ID:VFWRRJEo
「ここがうちの家や」
雰囲気通りの家だった。
所謂「旧家」って感じで、蔵まであり、静かな佇まい。
「おどれらは、そっちの離れ使いや」
余接に案内された離れは、外観こそ古い建物だが、中は現代風の普通の部屋だった。
「ラブホ程のギャップはない―――僕はキメ顔でそう言った」
「何に例えてんだよ!」
「いつもはどこで泊まった?―――と僕はキメ顔でそう言った」
「まぁ、車の中かな。忍は影の中。まぁたまにはゆっくりベッドで寝る事もあるけど」
「ふふ、やっぱり、その日はやるんだろ?―――と僕はキメ顔でそう言った」
「そんな事、キメ顔で言われても返事出来ねぇよ!」
なんだかんだ言いながら、余弦も余接も親切だ。
「おどれら、晩飯どうすんねん?なんか食いに行くか?」
「あー、えっと、ここって住所はどこですか?」
「左京区やけど?」
「下鴨神社ってのは近いですか?」
「出町を少し上がったほうやな。歩いて20分ぐらいや」
「おお、じゃあ晩飯は結構です、行きたい所があって」
「なんや?なんかええ店でもあるんか?」
「ええ。前から行ってみたい店があって」
「何ちゅう店や?」
447 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:19:41.44 ID:VFWRRJEo
「猫ラーメン」
「!!!お前、なにもんや?」
「え?」
「あのラーメンを知ってるのは地元の人間でも少ないんやで?」
「そうなんですか」
「ほな、今晩の飯はうちがおどれらに奢ったるわ」
「いや、泊めて貰ってる上にそこまでされても……」
「あほ。据え膳食わぬは男の恥ゆうやろ?」
「はぁ」
僕達は歩いて、猫ラーメンを目指す。
448 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:20:39.18 ID:VFWRRJEo
「あのな、暦」
「なんですか?」
「玄関は直ったんか?」
「そりゃ直しますよ」
「親、驚いてへんかったか?」
「一応驚いては居ましたが―――当て逃げって事で保険で直ったみたいですが」
「さよか!そりゃよかった!これで枕高くして寝られるわ」
「ていうか、気にしてたんなら謝りに来いよ!」
「おどれの親に何ちゅうねん。『娘はん、怪物やから退治に来たったら玄関壊れたで』とでも言うんか?」
「まぁ、それでも良かったと、今では思うよ」
「なんでや?」
「うちの親、少々の事では動じないって分かったし」
「なんぞあったんか?」
「まぁ、その、忍と結婚するって言ったら『そうか』『お幸せに』って言われた」
「ははは!鬼畜の親はアホか!上手い事出来とんな」
「だから、別に言っても問題なかたっと思いますよ。というか、もしかしてあの人達も怪異かもって思う時があるんだ」
「ほぅ、おもろい話や。今度生八つ橋もって遊びに行くわ」
「僕が居る時なら問題ないよ」
「さよか」
そんな他愛も無い事もない話をしているうちに、猫ラーメンに到着。
449 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:21:39.24 ID:VFWRRJEo
先客が居た。
ボサボサ頭のおっさんに、僕が眼鏡を掛けたような人、どうみてもこいつ怪異だろ?って奴と、あと女性。
女性は何となく戦場ヶ原ぽい人だった。
先客の食事が終わり、僕達が座る。
メニューは、ラーメンかチャーシューメンのみ。
「忍は何にする?」
「チャーシューメン」
「ほな、うちらも」
「じゃ、チャーシューメン4つ」
店主は黙々と作業に掛かる。
数分後、4つのチャーシューメンが出される。
一口、スープを啜る。
「うま!」
僕より先に忍が感想を漏らす。
「ああ、これは凄いわ」
「せやろ?隠れた名店なんやで」
「へぇ……」
「店名に少し難があるけどー」と忍が呟く。
「猫か?猫の出汁使ってるからしゃーないわ」
450 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:22:43.94 ID:VFWRRJEo
「え?」
「うそや、うそ。上品なトリガラスープ、猫でこの味、出せるかいな」
「あの猫だと黒いスープが出そうだよね」
「―――飯が不味くなるから、その話は止めよう」
「ごめん」
しかし、本当に美味かった。
これだけの為に京都に来たと言っても損はしない味だった。
「ちなみに、ここ食った後、何とか一品とか行ってみ、スープとは何ぞ?という疑問が湧くぞ」
「何とか一品?」
「いわせんなや」
「すみません」
ラーメンを食べた後、鴨川を歩いて帰る。
451 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 11:23:30.31 ID:VFWRRJEo
「ちょっと遠回りだけど、気持ちええやろ?」
「ええ、本当に良いですね」
「本当は大学も京都にしたかったんやけど、神道系の大学は東京か三重にしかないからな」
「へぇ」
「そんで行った先に、忍野君がいたんや」
「そうなんだ」
「夏休みにはこっちへ来て、よく遊んだよ。あの離れも忍野君が寝泊まりしとったんやで」
「ふーん」
「ところで、忍野君は今、どこにおるんやろな?」
「えーっと……多分、静岡」
「なんでしっとんねん?」
「いや、こっちに来る途中、ヒッチハイクするサイケデリックなアロハを着たオッサンを拾ったら、忍野だった」
「ほんまか!そりゃ面白い事聞いた!暦、明日、静岡いこか!」
「え?」
「忍野君に会いに行くで」
「ええー!僕らまだ京都を廻ってないのに」
「無期限の旅やろ?遠回りせえや」
「は、はぁ」
旅は道連れとは言うが……酷い顔ぶれになってしまった。
車内で喧嘩が起きない様に祈るばかり。
運転中に喧嘩されたら、ガードレールにぶち当たって献花されるだろう。
翌朝、僕達は東に向かって走り出した。
452 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 13:51:43.11 ID:rWIeHsAO
きてれう、期待
453 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 14:54:49.56 ID:VFWRRJEo
某所
「はっ!眠っていた……すみません、戦場ヶ原先輩、つい眠ってしまいました」
「ええ、いいのよ。運転は一人でするものだから」
「えっと……今、どの辺でしょうか?」
「さぁ?」
「さぁ?…とは?」
「このナビ、何度も私に命令するから電源を切ったわ」
「……」
「ちょっと電源入れていいでしょうか?」
「いいけど」
ポチッ
「5kmサキ、ミギホウコウデス」
「ね、五月蠅いでしょ?」
「これは、ボイスナビゲーションと言いまして……」
「私は誰にも指示されないわ」
「いや、それだとナビの意味がぁ」
454 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 14:56:54.36 ID:VFWRRJEo
「ムニャムニャ―――もう着いたのですか?」
「おはよう、八九寺ちゃん」
「おや、まだ走行中ですか」
「うん……」
「ナビは……三ケ日?」
「うん……」
「質問していいですか?」
「ええ、いいわよ真宵ちゃん」
「どうして一晩中運転して、静岡に居るんですか!」
「疑問形になってないわよ?」
「いや、そういう問題じゃないと思われます」
「五月蠅いから―――ナビが五月蠅いから切ったらここに来てたのよ」
「はぁ……戦場ヶ原さんって本当に馬鹿ですね」
「ピキッ!」
「何今の音!飛び石?」
「神原さん、驚かなくても大丈夫です。戦場ヶ原さんがブチ切れた音ですから」
「いやいや、そっちの方が怖い!」
455 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 14:58:16.55 ID:VFWRRJEo
「もういいです、鰻食べて帰りましょう」
「いやよ、行くのよ大阪に」
「行ったところで、本当に阿良々木さんは居るんでしょうか?」
「え?」
「阿良々木さんは、全国を旅しているのですよ?もう岡山とか鹿児島とか、若しくは沖縄かも知れません」
「おお、成程。流石、八九寺ちゃん、頭いいな。ドライバーとは大違いだ」
ザクッ!
「はぅ!痛い!」
「それはそうよ、あなたの頭にボールペン刺したんだから」
「死ねます!あと5ミリ深かったら致命傷です!」
「あなた達に馬鹿にされた私は、既に死んでいるわ」
「ごめんなさい」
「ここで、大きくハンドルを切って道連れにしてやろうかしら?とも思ったわ」
「本当にごめんなさい」
456 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 14:59:05.00 ID:VFWRRJEo
「ところで、阿良々木君がどこに居るか調べなさい神原」
「はい……」
ピポパ
「もしもし、阿良々木先輩ですか?お久しぶりです。えっと今どのあたりを旅されていますか?―――ええ、ええ。ええ!マジですか……また電話します」
「どこって言ってた?」
「静岡……」
「神原、ここはどこかしら?」
「三ケ日です」
「真宵ちゃん、三ケ日は何県かしら?」
「静岡です……」
「ほらごらんなさい、私のする事に間違いは無いのよ!」
457 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 16:09:26.27 ID:VFWRRJEo
早朝、余弦に叩き起こされ、太陽が昇る前に出発したので、運転しながらも眠い。
「何故あんな早い時間に出たんですか?」
「あのな、京都は直ぐに道が混むんや。夜討朝駆けせんと渋滞に巻き込まれるやろ?」
「はぁ……」
「うちは渋滞が大嫌いなんや、なんかイライラするやろ?」
「まぁ、そうですね」
「そやから、ダッシュで出たんや」
「成程」
「そやから見てみぃ、8時の時点でもう静岡や!」
確かに、殆ど渋滞無くここまでやってきた。
忍と余接はまだ睡眠中。
余弦は運転する僕を気遣ってか、横で延々と話す。
少し五月蠅いぐらい。
運転中に電話がなった。
「もしもし?おお、神原!久しぶりだな。え?今?今は静岡だよ。丁度愛知から静岡に入ったところ。浜松に向かってるんだ、ん?ああ、またな」
「誰からだ?」
「後輩。今どこに居るかって聞かれた」
「あれやな、みんなおどれが居なくなってさみしなっとる頃やな」
「そうかな?何か企んでいるとしか思えないんだけど」
「それはそれでおもろいやんけ」
458 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 16:10:52.84 ID:VFWRRJEo
「まぁ、それはそれでいいんですけど、忍野がどこに居るか知ってるんですか?」
「しらん」
「ええ!」
「そやけど大丈夫、どうせどこぞの廃墟を塒にするからな、わはは」
余弦は大笑いしながら、携帯を取り出し何かを検索し始める。
「多分、ここやな……」
「分かるんですか?」
「まぁ、長い付き合いやしな。忍野君はああ見えて、寂しがり屋さんやから、人里離れたところには住まへん。コンビニとか風呂屋のある所を好む。かと言って、大通りに面した所も結界が張りにくいから、寄らん」
「へぇ、何か凄いですね。というか、余弦さんって結構忍野好きなんですね」
「ぼ、ぼけぇ!何寝ボケた事言うとんねん!///」
僕はその時、ああこの人は忍野が本当に好きなんだなと直感した。
「追いかけて20年ってところでしょうか?」
「アホ、まだ忍野君と知りおうて15年や!うちを何歳やおもっとんのや?」
(と言う事はこの人、33歳か……結構若く見えるな)
459 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 16:11:34.32 ID:VFWRRJEo
「若く見えるからといってときめくでないわ!」
目を覚ました忍がポソリと言う。
「あい、いや、そんなときめくなんて」
「お前様と儂は繋がっておる事を忘れるでないぞ」
「はい……」
忍が「儂ッ子」になった。
言いかえれば、怒ってるって事なんだよな……
「へぇ感覚の共有か。イク時は一緒に逝けていいね―――僕はキメ顔でそう言った」
「ぶっ!てめぇ!突然起き上って突然とんでもない事いうな!そんな姿で!」
「ひひひ―――僕はエロ顔で笑った」
このガキめ!本当に侮れんわ。
で、余弦に言われた所をナビに入れ、目的地に向かう。
460 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 16:37:51.50 ID:k7Awj3go
余接がいい具合にぶっ壊れてるなwwww
461 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 18:32:28.26 ID:sfjyTQSO
今日はこれで終いか?
お疲れ
462 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 18:46:39.73 ID:VFWRRJEo
三ケ日
「で、阿良々木君は浜松に向かうのね」
「はい、そう言っていました」
「では、私達も行くわよ」
「一応、ナビに場所を―――」
「不要よ。ここから先、私の勘だけで行くから」
「それは―――」
「戦場ヶ原さん、何度自殺するつもりですか!」
「あら、あなた達。私の勘を疑うの?」
「いえ、そういう訳ではないのですが―――」
「いい事神原。私が阿良々木君を見つけると念じれば、向こうから現れるわ」
「いや、去って行った人の事をそう力説されても……」
「危ない!神原さん!」
ブスッ!
「ひ、ひ、ひたいれす……」
「神原さん!口にシフトノブが刺さってます!というか、シフトノブに突っ込まされましたね」
「真宵ちゃんもあまり私を舐めない方がいいわよ?」
「は、はい……」
「では、念じます。阿良々木暦来い!」
―――沈黙。
463 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 18:48:42.26 ID:VFWRRJEo
「あはは、そう簡単に阿良々木先輩が現れる訳―――」
「あっ」
「どうした八九寺ちゃん」
「あの、その、右を見てください」
「あら!」
「うわー!」
「阿良々木さん!」「阿良々木先輩!」「阿良々木君!」
「うぉ!」
左の車に戦場ヶ原、神原、八九寺が見える。
八九寺が見えるのは久しぶりだな。
って事は、まだ帰りたくないって事なんだろうな。
そりゃそうだ、忍と楽しくやってるのにまた東に向いて走ってるんだからな。
なんて考えていると、忍はニコニコしている。
あー、本当にすっかり忘れてた。
感覚の共有、痛みだけじゃないもんな。
あながち、余接の云う所の……ま、それはいいか。
とりあえず、戦場ヶ原の車を追い抜き、走行車線へ入る。
バックミラーに映る戦場ヶ原の顔が怖い。
ピッタリ背後について―――もう少し車間距離を開けて欲しいぞ!
464 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 18:49:37.65 ID:VFWRRJEo
「戦場ヶ原先輩、もう少し車間距離を」
「誰かに割りこまれたらどうするの?」
「しかし、この状態はF1みたいになってます!」
「いいのよ、テールツーノーズで」
「私はツインテールです!ツーテールでは有りません!」
「何をお馬鹿なボケをしているの、このチンチクリン」
「!」
「驚いている暇があるなら、窓から箱乗りになって行き先を聞きなさい」
「無理です><」
「本当に役に立たないチンチクリンね。神原、サンフールが開いたわよ」
「わっかりました!」
「ん?うわぁ、神原の奴、サンルーフから上半身出してるぞ!」
「あはは、本当ね、暦君」
「何か言ってるのか?」
「さぁ?聞いてみようか?」
「おい、危ないって」
「大丈夫よ」
465 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 18:50:36.47 ID:VFWRRJEo
「なーにー?」
「どこいくのー?」
「なーにーきこえなーい?」
「だーからー、どこいくのー?」
「えー?なにー?ぜんぜんきこえないんだけどー」
「ど、こ、に、い、く、ん、で、す、か、?」
「あー。おしののところ」
「えー?なにー?わからなーい」
「お、し、の」
「はーあー?」
466 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 18:51:39.83 ID:VFWRRJEo
僕は携帯を取り出し、戦場ヶ原に電話する。
「はい」
「おい、そっちの五月蠅いのをひっこめろ、電話で用件言えばいいだろ?」
「あら、久々に電話してきたと思ったら、そんな事言うのね」
「何を言えば良いんだよ!」
「『僕を追って来てくれたのか』とか」
「何故そういわなければならない」
「別に」
「取り敢えず、次の出口で出るから付いてこい」
「わかりました」
「おい、忍。電話で話したから中に入れ」
「あー面白かった。久々に弾けたわ」
「弾け過ぎだ、事故でも起きたらどうする?」
「それぐらいで死にはしないわよ」
「そういう問題か?」
「どういう問題?」
「ったく。もういいよ」
「へへへ」
僕達は目的地付近の出口で降りる。
少し走り、コンビニの駐車場に車を止め、晴れて?旧友と再会する。
467 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/15(水) 18:52:33.52 ID:VFWRRJEo
本日ここまで。
空き時間が少なくて、あまり書き溜め出来ていません。
468 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 19:01:45.16 ID:k7Awj3go
いやむしろめっちゃ書いてるだろ
乙
469 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 20:32:01.15 ID:rWIeHsAO
おつおつ、日々の生きる糧です
続きも期待
470 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 21:53:03.21 ID:ypdFGxA0
乙
自分のペースで問題無し。
471 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/15(水) 23:40:48.33 ID:AQw/uk6o
>>1
よ、傷物語読了したぜ…
俺が阿良々木君だったら、キスショットと吸血鬼として一緒に生きるなぁと思ったわ
カニバ好きには堪らん、キスショット可愛いし
472 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 05:04:22.29 ID:8P1P8MSO
猫ラーメンの話あたりから全部あの絵で再生されましたよ……
まったく酷いお人だ
でも僕は最後まで読みつづけますよ?
それが僕なりの愛ですから
473 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:21:29.33 ID:MzG2xoAo
「やぁ、久しぶりだな」
僕は旧友に挨拶をする。
余接と余弦は、僕達を後目にコンビニに入り、買い物。
「で、神原。お前ら何やってんの?」
「実は、大阪に行こうと思ってたんですよ」
へぇ、大阪ってのは静岡を東向きに走らなきゃいけないのか?と僕は神原に聞く。
「いや、まぁ色々ありまして……」
何か非常に説明しにくそうだ。
「よぉ、八九寺。元気そうだな」
「阿良々木さん、お久しぶりです」
「本当に久しぶりだな。会いたかったぞこの野郎―――」
次の瞬間、忍のローリングソバットを食らい、コンビニの駐車場に突き刺さる僕。
額に伝わるジャリジャリ感が早朝からの眠気を払拭する。
「いってー!何すんだよ!」
「お前様こそ、何をしようとしたんじゃ!」
「あ、いや……挨拶を……」
「昔とは違う事を理解しておるか?」
「はい……」
また怒られた。
「あらあら、結局阿良々木君は『尻に敷かれる』のね」
戦場ヶ原。
474 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:22:39.89 ID:MzG2xoAo
「というか、なんでお前まで居るんだよ」
「私?私は二人の保護者よ」
「保護者ねぇ……差し詰め、春休みする事も無くて神原と八九寺の戯言に付き合ったんだろ?」
「違うわよ―――」
「で、お前が運転して、道に迷ったってところか?」
言い切ったところで、戦場ヶ原のひざ蹴りを食らい、後方に飛ばされ、後頭部で再びジャリジャリ感を堪能する。
「お前!酷いな!」
「酷いのは阿良々木君よ。私、車内でもこの二人に虐められていたのよ……」
半泣きの顔で僕に縋り、子ヤギの様な目で何かを訴える。
「はいはい、そこまで」
流石に、今度は僕に落ち度が無かったのか、僕と戦場ヶ原の間に忍が割って入る。
「人の彼氏に何をちょっかい掛けておるか」
「人?鬼でしょ」
「ほう。蟹女が言うのぅ」
「蟹……」
「蟹女、人の男を食らう気か?蟹だけに、カニバリズムか?」
「ふふふ、誰が面白く言えと言ったのよ」
戦場ヶ原が不気味な笑いを浮かべる。
冗談だと思うが、何か怖い。
というか、何か起こる!?
475 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:23:32.56 ID:MzG2xoAo
「先輩、それは何か新しいお祭りなのか?それとも音楽なのか?」
「多分、カーニバルで流す音楽の事なのですよ」
「へー、八九寺ちゃんは本当に何でも知ってるな」
「ええ、不詳八九寺真宵、知らない事は有りません。知ってる事が全てです」
色々間違ってるよ!フルネームなのに、どこの誰だか分からなくなってる!
「で、迷ったところで電話してきたのか?」
「まぁ、そんな所です、阿良々木先輩」
「どこに行くつもりだったんだ?」
「大阪です。阿良々木先輩が居るかと思って」
「はぁ?僕らは昨日まで京都に居たんだぞ?先に連絡ぐらいよこせや!」
「いやー、他に大阪の日本橋やソース川見ようって事で」
「ソース川か……」
「見られましたか?先輩」
「ああ、見たぞ。あれは本当にソースが流れてる」
「!!」
「ん?どうした八九寺?」
「川にソースなんて流れません」
「いや、本当にソースだって。なぁ、忍」
「うん、ソースだったよ」
「というか、何ですか、その話し方。変ですよ?もしかして阿良々木さんに調教されたんですか?」
八九寺、お前はそういう事を言わない方がいいぞ?
476 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:24:07.75 ID:MzG2xoAo
「このちっちゃい子、面白い事言うね」
忍は八九寺に近寄り、耳元で呟く。
「人間より、怪異の方が美味いと知っておるか?」
あー、やっちゃったよ。
で、言われた八九寺はベソをかきながら僕の所に逃げてくる。
「だーかーらー、なんでお前等は僕の所に来るんだよ!」
「え?そりゃ今でもみんな阿良々木さんが好きだからに決まってますよ」
「ええ、今でも阿良々木君の事が好きよ」
「うん、そうだ!あらららさんが好きなんです!」
八九寺、今ものすごく良いところなんだけど、なんで噛むかな?
「えへ、照れ隠しです」
「照れるぐらいなら、いうな!」
「まぁ、冗談はさておき、阿良々木君の事情もあるから忍ちゃんと一緒になったのは仕方無いけど、本当にみんな、あなたが好きなのよ。嬲っても死なないし」
こえーよ、戦場ヶ原。
そんな風に、久しぶり?に出会えた事を喜び騒いでいたら――買い物に来た人に注意されてしまった。
477 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:28:34.89 ID:MzG2xoAo
「なんだい君達?朝早くからコンビニの駐車場で騒いで、何かいい事でも……」
サイケデリックなアロハにボサボサの金髪と無精ひげ、首からクロスをぶら下げ、草履。
紛れも無く、忍野だった。
「あ!忍野!」
「はて?誰だい君は?」
「お前、もう僕の名前も顔も忘れたのかよ!」
「んー、ちょっと思い出すから待っていてくれるかな?」
「思いだすも何も……」
「いやー、僕は物忘れが酷い方でね。すぐに人の名前とか顔とか忘れちゃうんだよ」
「ほんの数週間前に会っただろ?」
「ああ、思いだした。信号待ちの車の中で彼女とチューしてた運転手君だな」
一同絶句。
「あの阿良々木さん、日中から何をされているのでしょうか?」
「阿良々木先輩、エロは夜だけにしろ」
「阿良々木君、私が教えたベロチューが役に立って良かったわね」
「暦君、それ誰としたのかな?ピキピキ!」
絶句の後にそれかよ!
ていうか、そんな事してねぇ!忍、お前が分かってるだろ!
478 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:38:04.80 ID:MzG2xoAo
「忍野、悪い冗談は止めろよ」
「いやー悪い悪い。阿良々木君、久しぶりだねぇ。何かいい事有ったかい?というか、状況見る限り、『男』ななったみたいだねぇ」
「―――朝から何の話してんだよ!」
「それより、忍野はこの辺に住んでるのか?」
「ああ、そこのインターの裏に廃校になった小学校があってね」
「お前、学校とか塾とか好きだな」
「ああ?まぁ、色々事情があるんだよ」
「そうか。ところで今日は忍野に用があって来た」
「僕に用事?何かまたややこしい事でも起こしたのかい?」
「いや、僕達は特に何も関係ないんだけど―――」
「関係ないのに来たのかい?」
「というか用がある人がいるようで」
「用がある人?」
バサッ
コンビニの袋が落ちる音で忍野が振り向く。
「あ―――」
忍野絶句。
479 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:38:51.70 ID:MzG2xoAo
「忍野君!」
余弦がコンビニのドアから走り、忍野に抱きつく。
「おいおい、みんな見てるのに、破廉恥だな君は」
「なにゆうてんの!ずっとほったらかして!」
「いやー悪いね、色々と毎日が面白過ぎて」
「そんなにおもろいんか?毎日が?」
「ああ、飽きないねぇ。バランスを取るのは」
「ほんまに……この人は」
「で、今日は用って何だい?」
「連れに来た」
「あはは、面白い事を言うねぇ、君は」
「いい加減、おちつかへんの?」
「うーん、なんていうか―――」
「それともうちの事、嫌いなんか?」
「いやぁ、今でも―――今日はギャラリーが多いからその話はまたにしよう」
「いやや、今日返事聞くまでうちは離さんで」
「おいおい……」
あんな困った顔の忍野を見るのは初めてだった。
480 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:40:32.51 ID:MzG2xoAo
というか、ギャラリーと呼ばれた僕らは駐車場の隅で一列になって座っていた。
「なぁ、余接。あの二人はどういう関係なの?」
「あの二人は、恋仲。婚約までしてた―――僕はキメ顔でそう言った」
「ふーん、忍野さんが婚約ねぇ。それって詐欺じゃないの?」
戦場ヶ原は本当に詐欺って言葉が好きだな。
「いや、相思相愛。しかし、職業に難がある―――僕はキメ顔でそう言った」
「職業?」
「お姉さんは陰陽師、それも始末する方の。片や忍野さんはネゴシエータ―――と僕はキメ顔でそう言った」
「ああ、そう言えば前にそんな事言ってたな」
「そう。だから一緒にいると辛い―――と忍野がキメ顔で言った事を僕がキメ顔で説明した」
「ふーん……で、あの二人に未来は?」
「さぁ?あの人は退治とか好まないから、お姉さんが辞めるか忍野が辞めるか―――僕はキメ顔でそう言った」
「まぁどっちも生甲斐みたいなものだしな」
「じゃ、あとは大人の二人に任せて帰るか」
と立ちあがると、僕の裾を掴む余接。
「ここで帰られたら、帰りの電車賃が無いので困る―――僕はキメ顔でそう言った」
「無賃で旅するな!」
481 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:41:33.19 ID:MzG2xoAo
とりあえず、忍野と余弦の話し合いが終わるまで待つとするか。
僕らはコンビニでジュースやお菓子を買い、また一列に並んで座り、ギャラリーに徹する。
で、3時間。
「まだやってるよ……」
「15年越しの関係なので、3時間で結論が出るとは思えない―――僕はキメ顔でそう言った」
「ま、それもそうだな」
忍は日差しが強くなって、影に逃げ込む。
八九寺と神原は車で昼寝。
戦場ヶ原に至っては、駐車場の隅で筋トレをしていた。
それ以上強くなって何と戦う気だ?
「このままじゃ埒が明かないだろうし、どうする?」
「お任せします―――僕はキメ顔でムニャムニャ……」
「寝てるのか!寝ながら返事すんなや!」
482 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:42:41.37 ID:MzG2xoAo
で、待つ事5時間。
結局、一日の大半をコンビニの駐車場で過ごす。
そろそろ空が陰りを見せる頃、二人の話が終わったようだ。
「でぇ、お前らどうすんの?」
「あー、阿良々木君、今回は僕の負けだよ」
「お?ついに観念して京都で大人しく暮らすのか?」
「どうして君はそう短絡的なのかねぇ」
「え?」
「別に結婚する訳じゃない。一緒に行動するだけさ」
「ふーん……それでお前はいいの?」
「仕方が無いさ。男たるもの、時には覚悟を決めないと―――」
と言いながらも忍野は何か嬉しそうだった。
「やれやれ、やっと元の鞘に戻ったか―――と僕はキメ顔でそう言った」
「なんだ、起きてたのか」
「ああ。あの二人、本当に世話が焼けて困る―――と僕はキメ顔で」
「何をさっきからブツクサゆーとんねん、ほな行くで」
余接の頭をグリグリと撫でながら余弦が声を掛ける。
「えっと、どこに?」
「みんなで、パーっと遊びに行くで」
「ええ!」
「いつも貧乏な忍野君が50万も持ってたから、みんなで遊びにいこ!」
というか、500万の金が1年足らずで50万かよ!
どんな生活してんだよ!
483 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:43:48.80 ID:MzG2xoAo
「で、どこに行くんですか?」
「せやなー、どこいこか?うなぎ三昧するか?浜松やし」
「蟹」
駐車場の片隅で筋トレをしていた戦場ヶ原が皆を見据えて言う。
「蟹を食べに行くわ」
「おお、蟹かぁそらええな。ここから北陸まで4時間でいけるやろ」
「おいおい、僕は蟹が嫌いだって知ってるだろ?ツンデレちゃん」
「だからよ、だから蟹なのよ」
「嫌がらせかい?」
「ええ、あなたの仕込んだ50/50のゲームの仕返しをしなくっちゃね」
「なんや、このお嬢ちゃんに恨みこうとんか?」
「あー、もしかしてそうかも」
「忍野さんのせいで、忍野さんのせいで……」
「ツンデレちゃん、あれはバランスを取っただけだよ。全てのバランスをね」
「ふん!」
「ほんまに忍野君はバランス派やな」
「一番楽しいんだよ見てて。均衡を保った状態が、ほんの少しの重みや動きででバランスを崩す瞬間がね」
僕はその時初めて、忍野の本性を垣間見た気がした。
ネゴするなんて嘘っぱちだと言う事が。
484 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:44:22.06 ID:MzG2xoAo
「じゃ、別れて車に乗って」
で、ここからまた大変。
僕と忍はセット。余弦と余接はセット、そこに忍野。
全部で8人(人でいいのか?)
僕と忍の車に神原と八九寺を乗せると、戦場ヶ原の車にあの3人。
が、戦場ヶ原がそれでは困るというので、神原と余接を交換しようとしたら、余接が拒否。
最初の乗員に忍野を足すと、僕の車が5人で窮屈。
で、結局この話し合いにまた4時間。
本当にこいつら馬鹿だ!
485 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:45:34.24 ID:MzG2xoAo
今回のオチというか、おとしまえ。
結果、忍野が僕の車に。
戦場ヶ原の車は、元の3人。
忍は残念がら10歳の状態に戻し、後部座席で忍野と余接と座らせる。
勿論、忍野が真ん中。
二人が喧嘩しないようにと云うか、忍野が逃げない様に。
僕はカーナビに目的地を入れる。
勿論、戦場ヶ原の車にも。
で、出発して4時間後。
「もしもし、阿良々木先輩?今どこですか?え?到着した?速いですね!」
「お前等はまだか?」
「それが……気付いたら家の前です」
「はぁ?」
「なんでだよ!」
「その……戦場ヶ原先輩が『眠い』そうです」
486 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:47:01.59 ID:MzG2xoAo
やれやれ……本当に勝手な奴だ。
というか、どいつもこいつも僕も自分勝手、自分中心。
自分中心の癖に他人が好き。
本当に馬鹿ばかりだ。
こんな愛される馬鹿は世間に知らしめた方がいいな。
僕も神原に倣って、本を書こうか?
今まで有った事を物語風に。
「ばかものがたり」
少しタイトルに難があるな。
「ばけものがたり」
うん、これがいい。
そうしよう。
ちなみに、メインは余弦と忍野の恋物語、売れるかな?
売れたら印税で何買おう?
家とか船とか車とか?
考えただけで笑いがこみ上げてきた。
「イヒ」
おわり
487 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 10:51:31.47 ID:GFdbD2DO
乙
32歳か……イメージはシロナっぽいんだよな余弦さん
488 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 10:55:13.93 ID:MzG2xoAo
あとがき
これまで沢山の声援や指摘、本当にありがとうございました。
読んで貰えて本当に嬉しいです。
私の化物語はこれで一旦おしまいです。
まだまだ容量はありますが、1000行くまでに500KB越えそうなので、次回作は新スレにて。
今回のお話とは全く違うシチュエーションで下書きに入りました。
少しエッチだけど純粋な、とある姉妹をモチーフに、兄物語なんてのもいいかなと。
他に四畳半SSなんかも考えていますので、また縁が有ればお読みください。
以下、レスへの返答にて候
489 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 11:03:57.01 ID:MzG2xoAo
>>408
メメが孕むとか誰得w
>>409
うほっ
>>411
期待を裏切ったかも
>>460
忍戦で泣きベソかいてたのが印象的で、多分ボケが楽しいんだと
>>461
さーせん、書ききれた
>>468
仕事だと平均して、一日50,000文字ぐらいです。ワードの下の数字が恨めしい。
>>469
美味しいご飯も食べてくださいね
>>470
あざーす!
>>471
カニバ、ネタに使わせて貰いました
>>472
さーせん。でもどうしても少しリンクさせたかったので。私なりの愛で書かせて貰いました。
>>487
まぁ空想年齢です。ただ、忍野が30代で同級生と云う事で。
490 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/16(木) 11:20:20.30 ID:9ZTSsA6P
何この駄作
491 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 12:46:10.62 ID:/Ce39Gso
蟹にカニバワロタが、忍お前が言うなwww
余弦さんは確か、二十代後半の見た目だったか
492 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 12:50:34.90 ID:ojLoAF2o
ここって普通に500kb突破できたと思うけど
1000kb↑いけたはず
493 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 13:42:59.57 ID:hl15ATIo
スクリプトが流行ったとき1500超えた所なかったっけ
494 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/09/16(木) 14:12:48.65 ID:MzG2xoAo
>>490
さーせん、ほんま反省してます。趣味で書きまして候
>>491
忍の場合は「食料」若しくは「食糧」なので許してあげて><
余弦、wikiにも20代後半くらいって有るんだけど、どうなの?
一応、メメや貝木の同級生ってなってるのに20代と言うのも……
忍野と貝木が5浪ぐらいしてたんなら分からない事も無いんですけどね
まぁ、気にせず設定変更しました
>>492-493
本当ですね、やる夫スレは1900越えてましたわ
やる夫達はタツマイリ村の住人なようです その5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1267966533/
でもまぁ、一応完結と言う事で。
次回作は当分先になりそうですから。
少ししたら、自分で完結報告出しておきます
495 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 15:28:33.97 ID:OjQy9t6o
面白かった!お疲れさん!
496 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 19:17:23.22 ID:cO/9YoSO
お疲れ様〜
次回作たのしみにしてる
497 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/16(木) 19:45:09.88 ID:r5e/CPAo
みんなで飯食ってるのも見たかったが乙
498 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/17(金) 06:33:38.22 ID:uKUMZMDO
やっぱさ、あの外面のいい化け猫の腹殴って、水子流した方が良いと思うんだ
499 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 07:53:27.93 ID:QrVFbEAO
大阪を馬鹿にされた―――僕はキメ顔でそう言った。
まぁ、新しく書いたらここにURL張ってね。
あと、道頓堀はソースじゃねぇ!
500 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/17(金) 09:06:08.45 ID:uKUMZMDO
え!? ソースじゃないのに飛び込んでるの?
ソースじゃなくて、川があの色だったら汚な過ぎない?
だから実はソースなんだろ?
501 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 09:22:38.49 ID:TBbYVnoo
腐ったソースなんだよ
食えたもんじゃない
502 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 14:58:24.94 ID:4akfxMAO
腐ったソースと言えば
大阪ではブルドックのソースは腐ったソース扱いされるってのは本当なの?
503 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 15:02:07.98 ID:BPG2Z8so
中濃ソースは邪道らしい
504 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
2010/09/17(金) 15:45:39.58 ID:zX.J0n.P
ソースと言えば、オリバーの「どろ」ソースだろ
505 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 19:03:51.83 ID:6Zd4IvIo
ソース大人気ですねww
今、4000字ぐらい。
なかなか先に進みませんが、ぼちぼち書いています。
506 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 20:57:30.41 ID:us2o7wAO
忍とアラハバキさんのソースプレイ希望
507 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/18(土) 00:04:19.93 ID:KTrtNMAO
むしろ血液プレイを希望
508 :
1です
[sage]:2010/09/19(日) 01:31:35.88 ID:wOk9yVMo
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11590623
これをみて、次々回作決めました!
いやー猫良いですね
509 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/19(日) 18:12:55.59 ID:o8vj9sSO
頑張れ〜
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