VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/01/18(火) 03:15:21.91 ID:MS1/R1yAO<>
このSSは、くーちゃんを愛でるのが目的です。
ハルヒSSなのにハルヒの出番は皆無になるでしょう。
もしもしなんで、読みにくかったらスマン<>九曜「───だが────断る───」
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:17:54.30 ID:MS1/R1yAO<>
――とある休日の午後。
俺は珍しく団活が無く、それでいて意義も無い休みを、久しぶりに我が家で堪能できていた。
「キョンくん、チャンネル換えてもいーい?」
「おーぅ、かまわんぞ」
居間で妹とだらだらテレビを見る。実に平和だ。
だが、そんな平穏は、簡単に打ち壊されるのが俺の常だな。
テーブルに置いていた携帯がふいに震える。着信の様だ。
もしやハルヒかとも思い、訝し気に手に取るが、どうやら違うらしい。
しかし、表示されている登録者の名前に、余計に眉をひそめる羽目になった。
「……もしもし?」
『やぁ、キョン。急にすまないね』
電話口の向こうから聴こえる声は、謝ってはいても、どこかおかしさを含んでいた。
「お前から電話なんて珍しいな、佐々木」
『くつくつ、親友なんだから驚くこともないだろう?』
「ん、確かにな。それで、何か用か?」
『おや、用が無ければ電話してはダメかい?』
「早く用件を言わないと妹に代わるぞ」
『これはまた、変わった脅し文句だね』
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:19:32.57 ID:MS1/R1yAO<>
隣で耳をそばだてていた妹が、自分が話題に上がったと、目を輝やかせた。
……が、俺も佐々木も、そんなつもりは毛頭無いため、頭を撫でて適当にごまかしてやる。
『それも興味を惹かれるけど、今は遠慮しておくよ』
「だろうな。で、なんだ?」
佐々木は、こほん、と咳払いをすると、
『ちょっと頼みがあってね。明日、デートでもしないかな?』
「いいぞ」
『えっ?』
「えっ?」
『い、いや、予想外だったものでね』
想像していた回答と違ったようだ。そう仕向けたのは俺だがな。
慌てている姿が、上擦った声から伝わってくるようで、楽しいかぎりだね。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:21:31.46 ID:MS1/R1yAO<>
ふっ、愚かなり佐々木。俺がこの程度でうろたえるとでも思ったのか?
なんてな。
「あれだ、冗談の応酬をしたいなら、先に断っておくぞ? 長引かせても仕方ないだろ。
通話料なめんなよ」
『くつくつ、バレてたか。君にはかなわないな』
「俺にも、お前に勝てるものが見つかって喜ばしい限りだね」
『まったく……皮肉に磨きがかかっていないかい?』
呆れが混じってはいるが、褒め言葉として受け取っておくとしよう。
「ま、それは置いとくとしてだ」
『……うん、じゃあ、そろそろ本題に入るとしよう』
「ようやくだな」
『僕としては、もう少し生産性のない話をしていたかったんだけどね』
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:22:53.49 ID:MS1/R1yAO<>
そう前置きをすると、佐々木は元々の要件を告げに入る。
『――頼みというのは、とある人を君に預かってもらいたいんだ』
「また急だな。人をか? 誰だ?」
そこまで言って、コンマレベルで推理をし、人生において急展開すぎる答えをはじき出す。
「まさか―――隠し子か?」
『電話口を承知で言うけど、ぶっ飛ばすよ?』
声色は変わらないのに、佐々木からは聞いた事のない悪態に、少々ビビる。
正直スマンかった。
「ノリでつい、な。それで誰なんだ?」
『はぁ……。多分もうすぐ到着するはずだから、直接確かめてくれ』
到着って……。それ殆ど事後承諾じゃないか?
『それと、さっきの君の冗談は、あながち間違いじゃないんだ』
「ん?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:25:43.93 ID:MS1/R1yAO<>
どういう意味かと問いただす前に、ピンポーンと、軽快な音が耳に届いた。
『ああ、来たようだね。それじゃ、後はよろしく頼むよ』
「あっ、おいコラ!」
理由も、誰を預けるのかも言わず、一方的に切られた電話を見つめる俺。そして、
声量を上げた俺の顔を覗き込む妹。
そこへ再びチャイムが鳴らされ、呆けていた思考が戻される。
「やれやれ……」
身勝手にも程があるが、もう来てしまった以上仕方あるまい。
既にテレビへとシフトチェンジしている妹を一人残し、重い腰を上げて玄関に足を向ける。
向かう途中に三度鳴らされ、急かされてるようで腹立たしい。
ノブに手をかけると、苛立ち紛れに思い切り扉を開けてやった。
「―――は?」
こんな間の抜けた声が出たのは、仕方のない事だと言えるだろう。
参ったね。流石に思いがけなさすぎた。
「────?──」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:27:56.16 ID:MS1/R1yAO<>
そこに居たのは、烏の濡れ羽色の艶やかな髪と、それに反した透ける様に白い肌を携えた少女。
天蓋領域のインターフェース、周防 九曜だった。
精巧な日本人形にも似た彼女は、呆気に取られた俺の顔を、その感情の読み取れない瞳で、
じっと見つめてくる。
「あ……いや、すまん。少しばかり驚いただけだ」
「────そう───」
「あー……周防? 佐々木が送ってきたのはお前でいいのか?」
問いに、数秒の間があったが、わずかに首が縦に振れたことを確認した。
肯定でいいのだろう。
――と、いつまでも、玄関先で立たせている訳にもいかないな。
ひとまず上がらせ、俺の部屋にでも行くか。
(……確かに子供ではあるのか? 言ってみれば長門も3歳だしな)
音も立てずについてくる少女を見やり、佐々木の言った言葉を反復して、意味を考えてみた。
……ちょっとした詐欺だろ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:30:38.95 ID:MS1/R1yAO<>
――自室。周防を勉強机前の椅子に座らせ、俺はベッドに腰掛ける。
会った回数は片手で数えられる程度。会話らしい会話をした事もない。
そんな相手と二人きりだと、嫌な居心地の悪さに襲われる。
「……で、なんで家に?」
処遇を決める為にも、黙りをするわけにはいかず、まずは当然の疑問からぶつけてみる。
「────?──」
「いや、首かしげられても困るんだが」
「───彼女──に───言われた───」
「彼女? ……ああ、佐々木か。アイツになんて?」
周防は一瞬の逡巡の後、
「──社会───勉強──?──」
そう、宣った。
「なんで疑問系なんだよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:32:26.23 ID:MS1/R1yAO<>
俺の突っ込みに、これでは足りないと踏んだのか、姿勢も顔色も変えず、周防は言葉を紡ぐ。
「───コミュニケー──ション───」
なんだ、単語で会話がお前の中で流行りなのか? そうかそうか。
額に手を当て、僅かなヒントから頭をフル回転し、答えを導き出してみる。
「……つまり、人との接し方を教えろと?」
「────そう──」
正解、か。俺はホームズも真っ青の、名探偵にでもなれるんじゃなかろうか?
……などと、ふざけてる場合じゃないな。
「ちょっと待ってろ」
『――おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないのです。
伝言を残す方は……』
「佐々木め、留守電にしやがったな? ……なんで対応が橘ボイス? 地味にイラッとする」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:34:03.86 ID:MS1/R1yAO<>
電話しろ、の一言だけ留守電に残すと、もう一度周防に向き直す。
「やれやれ……。橘や佐々木自身じゃダメなのか?」
俺なんかより、よっぽど近い場所に居るだろうに。
そんな考えを否定するように、俺の質問に対し、意外な固有名詞が飛び出した。
「───情報──統合──思念体──」
「情報統合思念体?」
「──長門───有希───」
「長門がどうしたんだ?」
それまで単語を発する事に徹底していた周防は、はたと気づいたかの様に口を動かすのを止めた。
何事かと思っていると、微動だにしていなかった右手をゆっくりとあげ、人差し指をビシッと
突き出し、一言。
「───慣れてる────」
「おい、無口キャラに強いわけじゃないぞ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:37:58.65 ID:MS1/R1yAO<>
無表情であるにも関わらず、明らかに不思議そうな顔をしてる周防を、冷静に諭してやる。
「最近じゃ長門の分析力は一番だと自負してはいるが、それでも流暢に対話できてる
わけじゃないんだぞ?」
出来るだけ優しく間違いを指摘してやったが、
「───頑張──る──」
妙な気合いを入れただけになったようだ。
どちらかと言えば頑張るのは俺だろうよ。
肺から空気を吐き出し、対話のことは後回しにしようと考え、次に別の問題を槍玉に上げる事にした。
「というより、俺自身もあれだが、両親がなんと言うかだな」
「────?──」
「キョトンとされてもな……人を預かるってのは簡単じゃないんだぞ?」
犬や猫じゃないんだ。俺が世話をすると言って、はいそうですか、とはいかない。
親の許可無しでは、一泊させることすら難しい。
そんな俺の心配をよそに、やはり周防は淡々としていて、どこかで聞いた魔法の言葉を口にした。
「───情報操作──は───得意───」
「長門かっ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:40:49.42 ID:MS1/R1yAO<>
「―――力技で押し通されちまった……」
長門よろしく、人に解読させるつもりの無い呪文を唱え始めた周防。
終わったと呟いた周防の、そのドヤ顔にも見える気がする表情に、押され気味に部屋を出た。
俺の代わりに、居間で妹とテレビを見ていたおふくろに話を聞く。
どうやら、周防の立ち位置は遊びに来ている従妹なんだそうな。そんなバナナ。
「───やっ──た──?──」
「俺は喜べんがな」
部屋に戻った俺に、周防が伺いをたててきたが、馬鹿馬鹿し過ぎて脱力していた為、軽くあしらう。
「─────」
「……なんだ?」
無言で見つめてくるのは止めてくれ。俺にテレパシー的な能力は無いぞ。
そこから数十秒間、周防は目で訴えてきたが、分からんものは分からん。
観念したのか、ようやく言葉で疑問をぶつけてくれた。
「───何を──する───の──?──」
「それは俺が聞きたい。ほんと、どうしたもんだか……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:45:33.94 ID:MS1/R1yAO<>
俺も話が上手い方ではないし、普段関わりの無い人物相手に、ネタを絞り出すのは
容易じゃない。
何より、こいつに世間話の概念は無いだろう。
つまり、ほぼ沈黙で支配された空間の中、時間だけが経っていく状況だ。
だのに、何か期待した瞳で見つめてくるんだぜ? 軽い拷問だよちくしょう。
これと言って葛藤することもなく、早々に諦めて最終兵器IMOUTでも召集するかと思ったその時、
「くーちゃん、ご飯できたよー!」
ガチャーンと、ノックも無しに妹が部屋の扉から現れた。
「おおっ、グッドタイミングだ妹よ」
しかし、俺の部屋に来て最初に声をかけるのが周防ってどうだ?
いや、客だし設定上は身内だからおかしくはないのか?
「───ご飯──?───」
「おい、そこは首を捻っちゃいかんだろ」
「───食べなく───ても──平気───」
「そういうもんなのか? 長門はモリモリ食べるけどなぁ」
やはり、総括して宇宙人と言っても、組織が違えば生態も変わってくるのだろうか?
俺からの情報を吟味してるのか、何かを呟く周防。
そして、彼女の出した返事は、
「──なら───食べる───」
「お前の最終目標は長門か……?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:48:08.29 ID:MS1/R1yAO<>
周防を連れ立って妹の後を追うと、階下から良い匂いが登ってくる。
こんな現象が今まであっただろうか?
疑問を感じながら、ヒョイと食卓を覗いてみる。
「……いつもより品数が豊富じゃないか?」
普段なら多くても三品。メインとなるおかずに、小皿に分けられた付け合わせ。そして汁物。
だのに今日は、大皿に盛り付けられたおかず数種がテーブルを覆っている。
パーティー会場はここですか?
忙しなく食事の準備を進めているおふくろを眺めていると、どうやら俺の後ろにくっ付いている
周防を発見されたようだ。
「遠慮しないで、たくさん食べてね?」
「─────」
笑顔で周防を出迎えるおふくろと、僅かに首を動かす周防。
現時点で、俺の存在がこいつより下なのは確定的に明らか。
客人に良いもてなしをしたい気持ちは分かるが、張り切りすぎです母上。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:51:12.02 ID:MS1/R1yAO<>
(――本当に溶け込んでやがる。流石は宇宙パワーだ……)
家族四人に+α。
αは家族にとっては見知らぬ人物の筈だが、誰もが慣れ親しんだ顔だとでも言うように
笑いかけている。
「いや、九曜ちゃんも大きくなったもんだ」
知ってるか親父? 周防は誕生からこの姿なんだぜ?
「ふふっ、すっかり大人びたわねぇ」
知ってるかおふくろ? 体は大人、頭脳は子供なんだぜ?
……体もそうでもないか。
「くーちゃん、これおいしいよー」
妹よ。お前は普段からそんなんだから、全く違和感を感じられないな? ある意味助かる。
そして、件の周防だが――
「─────」
「どうした? 食べないのか?」
箸をグーで持ったまま、ただ減っていくおかず(主に妹の腹の中へ)を黙って見ているだけ。
たまりかねて話しかけてみたが、ガラス細工のような無垢な瞳を俺に向けて一言。
「───どうやって──食べる──の───?──」
「そこから!?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:54:59.57 ID:MS1/R1yAO<>
――結局、箸をフォークにチェンジさせ、形だけの食事を終わらせた後、再び俺の部屋へと
いそいそ舞い戻る羽目になった。
団欒を楽しみ、二人きりの無情な時間を回避したかった俺の思惑は、この間、妹が調理実習で
作ったクッキーより脆かったようだ。
「やれやれ……コミュニケーション以前の問題だな」
「───?──」
重い溜め息を吐く俺を、ただ眺めている周防。
悪気が無いだけ質が悪い。……いや、慰められても困るか。
「ったく、佐々木は何を教えてきたんだ……」
星空に良い笑顔で浮かぶ親友に、愚痴をこぼす。
その独り言を質問だと判断したのか、今度は腰かける位置をベッドに替えている
周防が応えた。
……ベッドに居るのは、硬い椅子に座らせっぱなしじゃ可哀想だと思ったからだからな?
変な理由は無いから誤解するなよ?
「──あなた──の───こと───」
「……俺?」
「───そう──」
「へぇ、興味あるな。知りえない所で悪口でも言ってるのか?」
「─────」
冗談に、周防はわずかにふるふると首を振る。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 03:57:20.84 ID:MS1/R1yAO<>
「──あなた──は───一番の──理解者───」
「俺がか? そいつは光栄だな」
「───優しい───人──」
「そんな時あったっけか?」
また過剰な評価だと、若干気恥ずかしい思いにかられる。
中学時分の思い出を、美化し過ぎなんじゃないだろうか?
目の前に居るのは周防だと言うのに、どうにも顔を見づらい。
「──そして───」
しかし、随分と饒舌だな。さっきまでとはえらく違う。
そう違和感を感じた矢先、
「───かっこ──いい────」
これまた俺に似つかわしくない言葉が飛んだもんだ。
佐々木が俺をそんな風に思っていたとは驚きだね。
いや、嬉しくないわけじゃないぞ? ただ、今後どんな顔して会えばいいのかとか俺を男として
見てくれていたのかもとか少々舞い上がってるだけであってだな、
「──そう───おだてれ──ば──優しくしてくれる────」
「…………あぁ」
そうか。うん、なるほど。いらん事しか教えてないわけだな。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 04:01:08.18 ID:MS1/R1yAO<>見直しとかしてたら案外投下が遅れるな…
とりあえずこんだけです
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 05:34:40.10 ID:yxqzaCbko<>期待
支援
待望<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 07:07:00.28 ID:Z4pnRJ46o<>待機<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/18(火) 20:26:29.68 ID:oyM7yWGIo<>くーちゃんSSとか超俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 17:35:45.19 ID:NMUb7dyAO<>なんだ、とっくに復活してたのか
ちょっと投下していきます<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 17:36:36.86 ID:NMUb7dyAO<>
「───ちが──う───?──」
ハメる対象に同意を求めるな。
次に佐々木と話す機会があったら、小一時間は説教をしなければならん。
余計な知識を与えてんじゃねぇ、と。
「……いや、世渡りって意味では正解なのか?」
「───?──」
いやいや、騙されるなキョン。
この場合、間違いなく俺をからかう為に伝授したネタだろう。
こいつに必要なのは、そんな小賢しい知恵じゃなく、単純に常識力なんだからよ。
「……まぁいい、この話は置いとこう」
「─────」
小さく頷く周防。
こうやって、俺の発言に反応は見せてくれるところを見ると、単に純粋なんだな。
だから、ちょっとした悪意も疑わないんだろう。
とまぁ、結局夕飯前の状況に逆戻りな訳で。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 17:38:27.55 ID:NMUb7dyAO<>
とにかく、何か間を保たせる方法はないか。
頭をガシガシと掻きながら脳内会議を開いてると、ふいに袖が引っ張られた。
「うん?」
引っ張ったのは当然周防なのだが、動いた気配を全く感じられなかった。
気配を絶つのはデフォなのか?
「───あなた──は───何を──する──?──」
ほとんど片言だな。
しかし、なんとなく質問の意図は分かる。慣れって怖い。
「えっと、普段か? そうだな……何してんだろ」
「──わから──ない───?──」
「惰性で過ごしてるからな。深く考えたこともない」
「───なら────」
「おっ、いい案でもあるのか?」
少しずつアグレッシブになってきてるな。打ち解けてきてくれてるのだろうか。
これなら、少しは気楽に過ごせるかもしれん。
そう思ったのだが―――
「───おしゃ──べり───」
「誰か俺に雑談の定義を教えてくれ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 17:40:01.34 ID:NMUb7dyAO<>
周防の無茶振りにうなだれると同時、再び奇跡は起きた。
「――キョンくーん?」
そう、妹の登場だ。現状で唯一の味方とも言えよう。
いつもならノックをしろと言いたいが、今日はお前が輝いて見える。
「お風呂わいたよー」
「おお、そうか。よし、周防」
「───?──」
向き直ると、そこには今から何をするのかピンときてない周防の姿があった。
まるで、初めて行った土地の方言が分からず、上手く会話が噛み合わないない顔のそれだ。
「……まさかとは思うが、風呂ぐらいは入るだろ?」
「─────」
「oh...」
合点はいったようだが、あっさり頭を振られる。
そこは横じゃなく、縦に振ってほしかった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 17:41:21.59 ID:NMUb7dyAO<>
「入ったことないのか?」
「──知識は───ある───」
入浴体験の有無を聞いてるのに、知識の有無を自信満々に誇示されてもな。
脱力を感じながらも、話を続ける。
「風呂の知識ってなんだよ……」
「───身体──の───洗浄──」
「単純明解で助かるね。分かってるなら入ろうと思うだろ?」
「──必要───ない───」
また言い切るもんだ。
流石に特別な理由があるのだろうと、少々考える。
「……ああ、宇宙人は汚れない為の不可視シールドでもあるのか?」
「─────」
長門が似たような物を使っていたのを思い出し、提示してみたが、首を振られる。
じゃあ何だと言うのか。
「───気を───つけてる────」
「よーし、入れ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 17:42:42.04 ID:NMUb7dyAO<>
「───?──」
キョトン顔で何でも済むと思うなよ?
こっちがびっくりだよ。
「気をつけてどうにかなるもんじゃないだろっ?」
「───匂わな───い──」
そう言って、周防はためらいなく頭頂部を俺の鼻先に近づける。
こんな時だけ積極的だなオイ。
「近い近い」
「─────」
顔を逸らすが、頭を下げたまま微動だにしない周防。
その体勢、辛くないのか?
「あー、もう……わかったわかった」
恐らく、指示された行動を取らねば解放する気は無いだろう。
仕方なしに、軽く匂いを嗅ぐ。
「───どう──?──」
「あー…確かに臭くないな。むしろ無臭だ。汗をかかないのか?」
「─────」
至近距離で頷きを確認。
これはどんな罰ゲームだ。
「便利な身体構造だな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/01/19(水) 17:43:53.56 ID:NMUb7dyAO<>また後で<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 18:18:28.87 ID:QmNExSybo<>まさに俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 18:28:24.61 ID:2GPYPwlSO<>そして俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 19:12:22.55 ID:CwnYrxnIO<>さらに俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 20:05:34.01 ID:CBjZ7FDQo<>それに俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 20:12:06.42 ID:C8UPN8qIO<>つまり俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 21:11:19.93 ID:nbuCokCa0<>やはり俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 22:53:54.02 ID:7/0wYa4Bo<>も一つ俺得<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/01/19(水) 22:58:50.42 ID:LP1A8wr+o<>そして九曜は俺の嫁<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 22:59:49.92 ID:/zCBF/1IO<>じゃあ佐々木はもらっておきますね<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:17:44.36 ID:NMUb7dyAO<>この無駄な団結力よ
またちょろっと投下する<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:19:49.56 ID:NMUb7dyAO<>
「──入らなくて───も──?───」
そのまま顔を上げるな。近いと言ってるだろうが。
そして、誰も臭わなければ入らなくていいとは言ってません。
「それでも、だ。匂いも対人関係に重要なファクターだからな」
「─────」
「何故睨まれてるのか分からないんだが。別に、お前の能力を否定したわけじゃないからな?」
この数時間で分かったことがある。
基本的に無表情なのは長門と変わらないが、周防の方が感情を読み取りやすいみたいだ。
表現方法を知らないだけで、しないわけじゃないんだろう。
つまり、ご機嫌を損ねたのも分かるってわけだ。
「ほら、行くぞ。風呂場まで案内するから」
「────」
「……」
「─────」
「……」
「────うん───」
「おい、今の間はなんだ? まだ抵抗するつもりだったのか?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:21:37.28 ID:NMUb7dyAO<>
――周防を連れ、風呂のある一階に到着。
脱衣場の引き戸をカラカラと開け、周防を中へと押し込んでやる。
この間、周防は何故か俺から目を離さない。まだ訴えかけるのか?
「脱いだ服はそこカゴに入れてくれりゃいい。タオルはここにあるからな」
「────」
「じゃ、ゆっくり浸かってこい」
やはり視線を外さない。
変な引っかかりを感じながらも、引き戸を閉めてやる。
さて、親父あたりが誤って突撃しないよう、使用中だと伝えに行くか。
その後、俺はさっさとその場を離れた事を、後悔する羽目になる―――
「────?──」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:23:26.13 ID:NMUb7dyAO<>
―――自室に戻った俺は、そのまま身をベッドに投げ出していた。
自覚していなかったが、どうにも緊張の糸が切れた状態らしい。
「はぁ……。なんだってこんな面倒な事に……」
うだうだと体を揺すり、仰向けになったところで、放ってある携帯に視線を移す。
「佐々木は相変わらず電話に出ないしよ」
部屋に入ってすぐさまリトライしてみたが、返ってくるのは橘ボイスの留守番電話サービス。
イライラが溜まっただけだった。
「あいつは常識人だと思っていたが……、国木田の言う通りか」
変人、とまではいかないが、ちょいとばかりズレはあるようだな。
フッと、無駄にニヒル感を出して笑った時、部屋のノブが回される音がした。
また妹かと思い、体を起こしつつ、声をかける。
「だからノックを――」
「────」
「……おう?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:24:56.54 ID:NMUb7dyAO<>
よし、時に落ち着け。まずは目を閉じよう。
「───?──」
こいつは今、風呂に入っているはずだ。なのに何故ここにいる?
いや、そんなことより突っ込むべきは……。
「……服はどうした?」
そう、服だ。ああ、服さ。
黒を基調とした光陽園学院の制服を身に纏い、黒一色だった筈が、白に近い肌色にすげ
替わっていた。
「───カゴ────」
「そうか、偉いな。でも、脱いでから家の中を闊歩しちゃダメだぞ?」
「───わかっ───た────」
「よし、わかったなら直ちに隠すべきところを隠せ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:27:59.25 ID:NMUb7dyAO<>
大丈夫、大丈夫だ。
長い髪のおかげで肝心な部分は見えなかった。
意外に膨らみがあったとか、ボリュームのある頭髪で華奢な体躯が浮き彫りになったとか、
そんな事はありはしなかったんだ。うん。
……がっつり見てるじゃないかって?
問題ない。後で頭を壁に打ちつけておく。
「─────」
「うおっ!? な、なんだっ?」
先ほどの光景が断続的に脳内で流れ、それを古泉の水着姿に差し替える作業を行っていると、
またもや音を立てずに近づいてきた周防が、服を引っ張る。
思わず、体ごと心臓が跳ね上がった。
「───お風呂──の───利用方法──」
「知識はどこいった!?」
「────」
焦る俺を気にもせず、もう一度服をくいくい引き、
「───あなた──も───一緒に───」
「ない、それはないぞ周防。佐々木にバレたらマジでKILLする五秒前!!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:31:06.22 ID:NMUb7dyAO<>
「───なぜ──?──」
「いや、それはだな……」
佐々木がそんな直接的暴力を振るうとは思えないが、奴のことだ。
攻撃ならぬ口撃で、俺を再起不能まで追い込むだろう。
蔑み、憐れんだ目で罵倒される。……情景がありありと浮かぶのは何故だろうか。
そっちの気のある人間にはご褒美になるだろうが、あいにく俺はマゾじゃない。
間違いなく精神が崩壊するレベルだ。
くそっ、なんだこの状況?
まさか、あのツインテ辺りが考えた俺を貶める計画か?
「と、とにかく、一緒はダメなんだ」
「──なら───入らなくても───?───」
ああ、こんな思いをするなら、もう諦めてもいいのかもしれない。
もう、ゴールしてもいいよな?
―――いや、まだだ。
まだ頼れる人間が、可能性が残ってるじゃないか!
「妹よーッ!! ヘーールプッ!!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/19(水) 23:32:44.96 ID:NMUb7dyAO<>ここまで
こんなに遅筆になるとは思いもしなんだ<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 00:32:37.53 ID:V3gWGaXIO<>遅れたが乙だ
まぁゆっくりでも、
エタなきゃいい、それだけさ。
おもしろいぜ?<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 12:35:25.24 ID:rfk5odPDO<>乙だ
くーちゃんSSは中々珍しいので期待<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 13:18:29.14 ID:PZxAVvemo<>乙です。
無責任だが頑張れ頑張れ、あんたが書くくーちゃんはとても良いぜ。<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:03:47.38 ID:B1HgfOnAO<>すまんね
そいじゃ投下してく<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:06:17.74 ID:B1HgfOnAO<>
目を閉じたまま部屋の外に向かって大声で叫び、自室の向かいにある妹の部屋まで響かせる。
周防が扉を閉めた気配は無かった。これなら聞こえるだろう。
すると、妹の部屋の扉が開く音ではなく、トタトタと階段を登ってくる足音が聞こえる。
どうやら下に居たようだ。
「なぁにー?」
「すまんが、こいつと一緒に風呂入ってやってくれ」
いまだに服を掴んだままの周防を、後ろ手に示してやる。
「────」
「くーちゃん、なんで裸なの?」
当然の疑問だな。
兄の部屋で年頃の女の子が素っ裸。
風呂だと言ってるのに、風呂からかけ離れた男の部屋でキャストオフ。
これで来たのが妹じゃなかったら、俺は終わってただろう。
「いいから、早く連れて行ってくれ……」
だからこそ、妹が来てくれた安堵感と必死さで、言葉を発するのも億劫になっている現実。
「わかったー。いこっ、くーちゃん!」
「───うん──」
返事をすると共に、周防はようやく手を服から離してくれた。
かくて、二つの足音が離れていくのを聞き届けると、仰向けに倒れ込み深く息を吐く。
「心臓に悪い…」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:07:34.95 ID:B1HgfOnAO<>
「―――ってな感じで押し付けられた」
思考回路が正常になった頃、俺は一人で抱え込むには辛い現状を、携帯を片手に吐露していた。
電話の相手は、勿論この非日常を理解出来る奴。ニヤけイエスマンだ。
『貴方はトラブルに巻き込まれるのが、よほどお好きなようですね?』
皮肉がかった台詞に、多少の文句も言ってやりたいが、口論をしてる場合じゃない。
「面倒はハルヒだけで十分だ」
『んっふ、確かに。それで、僕に頼みがあるんですよね?』
「理解が早くて助かる。橘が、おかしな画策をしてないか調べてもらえないか?」
ふと頭をよぎっただけだったが、だんだんと不安になってきていた。
その為に電話をかけたとも言える。
『承知しました。しかし、その可能性は低いかと』
「そりゃまた、どうしてだ?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:09:23.39 ID:B1HgfOnAO<>
『貴方に周防さんを預かるように頼んだのは、佐々木さんなんですよね?』
「その通りだ」
『どのような思惑があったとしても、佐々木さんが橘さんの企みを鵜呑みにするとは思えません』
聡明な彼女ならばね、と古泉は付け加える。
確かに、その通りだ。
俺が言うのもなんだが、あいつが俺の不利益になるような真似をするとは思えん。
橘がどんな理由付けをしても、素直に応じないだろう。
元より、あまり協力的ではないようだしな。
『深く考えずに、ありのままを受け止めてみてはどうですか?』
「他人事だと思って……」
『んっふ、すみません』
しかし、そうだな。
連絡が取れない以上、足掻きようもないし。
「わかった。いつまで世話をすりゃいいのか分からんが、お前の言う通り頑張ってみるさ」
『ええ』
「ただ、もしもの時は頼―――」
その時、デジャヴを感じた。圧倒的デジャヴを。
何故ならば、人の気配を感じなかったにも関わらず、扉がゆっくりと開き始めたからだ。
あれ? 嫌な予感しかしない。何これやだこれ。
「─────」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:10:37.47 ID:B1HgfOnAO<>
唖然。絶句。
今の俺の状態を表すに、相応しい言葉だろうな。
「───入って──きた───」
そろそろと近づいてくる少女は、その言葉通り、ちゃんと風呂に入ったようだ。
大きく広がっていた髪は水気を含み、まさに彼女の全身に纏わりついている。
通常時でも、膝裏辺りまであった超ロングだ。ふわふわ感が消え、足首近くまで伸びて
いるのも当然と言える。
『もしもし? どうかされたんですか?』
耳元から聞こえる筈の古泉の声が、はるか遠くに感じる。
ああ。気付けば、携帯を布団の上に落としていたのだ。
「───これで──いい──?───」
無邪気に、無遠慮に。周防が眼前まで迫る。
頬が軽く上気して赤みがかっているのを、間近で確認出来る距離まで。
その時、俺の中の何かが弾けた。
「―――ふ」
『ふ?』
「服を着ろおおおおおおッ!!」
『はっ、はいっ! すみません!!』
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:12:23.40 ID:B1HgfOnAO<>
「―――いいか? うら若き乙女が、そう何度も男に裸体を見せちゃいけません」
古泉に断り、電話は既に切ってある。
今は、この天然娘を説教するのに忙しい。
「───なぜ──?───」
「ダメなものはダメなんだ。なんの為に服があると思ってんだ?」
「────」
周防は答えない。
だが、俺もこの数時間で学習した。こいつは単に、質問の理由、解答を探しているだけなんだと。
応えないわけじゃない。
表情だけでも、僅かだが変化を見せる。短くとも、相づちは打つ。
黙秘なんて面倒な知恵は、持ってないのだから。
「───わかっ──た──」
ほらな?
俺が誇らしげになる必要も無いが、ちょいと優越感は感じてもいいだろ。
「いい返事だ。さぁ、早く着替えなさい」
とまぁ、この発言からも分かるように、冷静なふりして、俺は明らかに動揺していた。
とっとと脱衣場へ送り返せば良かったものを、怒鳴った勢いに任せて小言を言っていたのだ。
まさに全裸待機状態。
だからこそ、次の周防の発言に、頭を抱える羽目になる。
「───服──ない───」
「なん……だと……?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:14:14.05 ID:B1HgfOnAO<>
流石に、いつまでも背を向けたまま対話をするのが厳しくなった俺は、応急処置程度でしかないが、
手元にあったブランケットを周防に渡した。
ゆっくり振り返り、マントの様に羽織っているのを確認すると、ようやく真正面から向き合えた。
若干長さが足りないのか、かなり際どい格好だが。
「うかつだった……。持ってる服はあれだけだったのか?」
「────そう──」
言われてみれば、当たり前の事なのだ。
周防が家に来た時、荷物らしい荷物を持っていなかった。
何故、もっと深く考えなかったんだ俺よ。
「泊まりに来させといて着替えも用意しないのか、佐々木さん……」
もう、こうなってくると確信犯としか思えんな。
いや、俺の不注意が大半を占めているのもまた事実か。
「……そうだ! 脱いだ服を着ればいいじゃないか!」
こんな誰でも思いつく提案を、周防は顔を振って否定する。
「───あの子──が───」
「あの子? 妹か?」
そういや、周防は風呂から上がっているのに、あいつはどうしたんだ?
一緒に上がったなら、こんな事態にはなってなかった筈だが……。
「──あの──ね───」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:16:44.60 ID:B1HgfOnAO<>
ポツポツと語られた周防の話を要約すると、先に周防を洗い終えたが、妹自身の洗髪やらが
残っていた為、先に上がらせたんだそうな。
その時には、既にカゴの中から衣類は消え失せており、代わりに洗濯機が稼動していたんだと。
何故こんなタイミングで洗濯を始めたのか。
答えは単純。
冬場は外に干すと乾きが悪い為、基本的に室内で干すからだ。
室内なら昼夜を問わないから、夜に洗濯したら、朝には乾いてるでしょ? とは、お袋の弁。
だとしても、俺や親父は風呂に入ってなく、当然の事ながら今着ている俺達の衣類を、もう
一度洗濯機にかけねばならない。二度手間だ。
理由として挙げるなら、周防の衣類があったからかもな。
男の物と一緒に洗っては可哀想だと、お袋なりの気遣いだったのだろう。
まぁ、後半は俺の推測だが、十中八九当たっているだろうな。
推理でもなんでもなく、単に可能性を探し、自分の中で納得出来る理由を提示しただけだ。
消去法と言ってもいい。
「────」
眉間にシワを寄せている俺を、周防が覗き込む。
そうだな。うんうん唸る前に、現状をどうにかせねばなるまい。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:18:58.01 ID:B1HgfOnAO<>
とは言え、寝間着らしい物なんて無いしな。
……って、そうか。制服が残ってても、それで寝る訳にもいかないから、結局ダメだったん
じゃなかろうか?
まぁ、今日一日やり過ごせりゃいいんだ。
「とりあえずは、俺の服で我慢してくれ」
「────うん──」
「クローゼットにある服を、適当に着てくれりゃいいから」
「────」
周防はコクリと頷くと、目で示してやった両開きのクローゼットへ、ペタペタと歩いていく。
その途中で、マント代わりのブランケットを床に落とすのを視界に入れ、俺は静かに目を閉じる。
もう慣れた。もう狼狽えたりしてやるものか。
カタリと、ゆっくり戸が開けられた音がする。その後に続くのは、中に収められている
プラスチック製のタンスの一段が引き出される音。
目を瞑っているせいか、耳が研ぎ澄まされ、布の擦れる音すらよく聞こえる。変な気分だな。
全裸の異性が、自分の部屋にいる時点でおかしいか。なんだこの状況。
「────着た──」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:21:32.97 ID:B1HgfOnAO<>
簡素な台詞。なのに何故、こんなにドキドキするのか。
「もう目を開けても大丈夫か?」
「──だい──じょうぶ───」
「よし……」
太鼓判を貰い、パッと瞼を上げる。
そして、
「────」
すぐにまた瞼を下ろした。
ああ、うん。なんとなくわかってた。
こういった意味でのドキドキでもあったんだよな。
「───?──」
「全然大丈夫じゃない。下を履け」
もう、これわざとだ絶対。
Tシャツでもパーカーでも、なんならジャージだってある。
その中から周防が選んだのは、あろうことかYシャツだった。正確に言えば、俺が制服の下に
着るカッターシャツな。
装備がYシャツのみとか、どこのエロゲだって話だ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:23:31.60 ID:B1HgfOnAO<>
「生足魅惑のマーメイドかっ」
「───なま───?──」
「ああ、いや……妄言だ。忘れてくれ」
全裸より、シャツだけでギリギリ隠れてる方がなんかエロいな……、とか考えた自分をぶん
殴りたい。こいつの背が低くて助かった。
いや、凄いな。王道イベントを順調にこなしていってやがる。
しかし、いざ起こってみると、照れる以前に力が抜ける。相手が相手だからだろうか。
「あっ! くーちゃん見ーっけ」
全裸よりはマシだろうと言い聞かせ、薄目を開けて事態の収拾に入ろうとした時、我が家の
トラブルメイカーのご登場。
「おう、風呂いれてくれてありがとな」
「うん! ほら、髪乾かそ?」
「────」
そう言うと、妹は周防の手をとって騒がしく部屋を出ていく。
周防をあのままの姿にして。
「―――ぶっ!?」
去っていく後ろ姿を見送るその時、一瞬周防のシャツと髪が、風の抵抗を受けて浮き上がったのを
俺は見てしまった。
下着の問題は、解決していない。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:25:41.80 ID:B1HgfOnAO<>
「―――おやすみ……」
「おやすみなさーい」
「──おや───すみ───」
はたして、二人の後をすぐさま追いかけた俺は、自分がパジャマ代わりに使っているスウェット
上下セットを手渡したのだった。
だが、忘れないで欲しい。下着はどうしようもなかった事を。
部屋の前で妹と周防に挨拶を果たす。
ノブに手を掛けようとした時、ふいに尿意を催した俺は、自室に入らずそのままトイレへと向かった。
「ふぅー……。たった数時間で随分と疲労がたまったな」
狭いトイレの中で、一人ごちる。
事も終わり、手を洗っていざ部屋へ。
「明日もこの調子なんだろうか……」
やれやれだな。
部屋の前でまた足を止め、本日、何度目かも分からない溜め息。
扉を開ける。電気を消す。さぁ、安息の時だ。
ベッドに飛びこもうとする。妙な膨らみを見つけた。布団を捲ってみる。
「……でしょうね」
「────」
「なんで俺の布団で寝てんだ?」
「───?──」
もう突っ込むのも面倒だ。
無言で周防を抱き上げ、妹の部屋まで運ぶ。
これで今日の仕事は、本当の終わりを告げた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:34:56.30 ID:B1HgfOnAO<>おしまい
さて、これからは更にペースが落ちると思われます
実は台本形式という基盤があったんだけど、それすらも尽きてしまった状態だ
一応終わりまでの構想は出来ているので、のんびりやっていきます<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 22:37:59.79 ID:D8XFuBV+o<>月単位でしかかかないor投げ出す馬鹿野郎にならなければいくら遅くてもいい<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 23:00:20.23 ID:XFawcv6IO<>乙デーす<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/20(木) 23:35:18.44 ID:+MPdqhHIO<>乙!
ていうか古泉も裸で電話してたのかww<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/21(金) 02:33:59.67 ID:htyB4U6Fo<>>>64
レス見るまで気づかんかったwww<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/21(金) 02:39:10.70 ID:sFwzLFuIO<>古泉「キョンたんハァハァハァ……ウッ」<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:17:19.83 ID:D/zp34hAO<>コソーリ投下<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/01/23(日) 15:18:16.29 ID:D/zp34hAO<>
――締め切ったカーテンの隙間から、光が漏れ出ている。朝か。
ベッドに備え付けられた棚に置いてある時計を確認する。時刻は七時を少し回った辺り。
休みだと言うのに、随分と早く起きたもんだな。
「ぐぅ……、まったく疲れが取れた気がしないのはこれ如何に?」
身体的疲れはないが、妙に気が重い。
これは冬の寒さから来る、布団から出れない病とは別物だろうな。
どうせ長い一日になるんだ。もうしばらく怠惰を貪ってても、罰は当たらんだろ。
葛藤もなく結論を出し、布団を頭から被る。
だが、それを許されないのも俺という存在なんだと、即座に思い知らされた。
「キョンくーん! 朝だよー!」
バターン! と、恒例の掛け声と共に、部屋の扉が勢いよく開けられた。
その速度を保ったまま、必殺の一撃を習得した奴さんが飛び込んでくる。
遠慮なんぞ微塵も感じない。
「ちょっ、もう起きてぼぅっ!?」
布団の上からでも的確に鳩尾を狙ってくるこいつは、さながら暗殺者。
朝から呼吸困難に陥いらされ、毎日命の危機を感じていることから由来する。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:19:32.87 ID:D/zp34hAO<>
「おはよっ」
刺客はパターン通りに馬乗りになり、布団を剥がして無理やり挨拶を迫る。
兄としての贔屓無しに見ても可愛い部類に入る顔が、ちょっとした恐怖の対象になってきている
今日この頃。
「朝から見事なボディプレスだな……? ……どいてくれ」
「はぁい」
基本的に素直ではあるが、もはや日常の一部なのか、この起床方法だけは止めてくれん。
お陰で朝食を食いっぱぐれる事はないのがメリットではあるか。
「ったく……、周防は起きてるか?」
「うん、お部屋にいるよ」
「そっか。あいつは俺が連れていくから、先に下に行っててくれ……っと」
片腕を引っ張って伸びをする。
関節を鳴らすのは余計に軋む原因になるそうだが、ちょっとした快感があるよな。
「あっ、そういえばシャミ見なかったー?」
さて着替えるかと、ベッドから立ち上がったところに、部屋から出ようとしていた妹が振り返る。
「ん? 言われてみれば昨日から見てないな」
「どこ行ったんだろ…?」
「猫だってお泊まりするさ。ほら、着替えるからいったいった」
「わかったー」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:20:14.23 ID:D/zp34hAO<>
「―――周防、入るぞ?」
白のセーターにジーンズと、なんともラフな格好に着替えた俺は、ノックも適当に妹の
部屋の扉を開ける。
やんちゃな割に片付いた部屋。その中にある、ぬいぐるみがいくつか並べられたベッドの端に、
周防は腰かけていた。
「よう、よく眠れたか?」
問い掛けに、窓から外を眺めていた彼女は、スッと顔を向ける。
どこかあどけない、寝ぼけたようにも見える顔。
「──うん───」
「そりゃなによりだ。お前のことだから、睡眠も必要ないのかと思ったぞ」
軽口に、周防はわずかに唇を動かす。
「──セーフ───モード───」
「セーフ?」
「──異常を───調べるため──必要───」
言い終えない内に彼女は立ち上がり、ブレの無い歩みで近づいてくる。
「うん……? よく分からんが、とりあえず朝飯食うから着替えろ」
「───服──」
「って、無いんだったよな。ははっ」
「────」
「………」
忘れてた事を、咎めるような視線が突き刺さる。俺の勘違いだと願いたい。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:21:25.73 ID:D/zp34hAO<>
もう乾いている頃だろうか?
先に行って様子見てくるか。
「あー……服取ってくるから、そこで待ってろ」
周防の瞳から逃れる為、些か早足で部屋を出る。
何故、俺が逃げねばならんのか。
納得出来ぬまま階段を降りていくと、すぐさま異変を感じとる。
「おはよーさん。どうかしたのか、お袋?」
何やら、片手に持ったボロ切れを眺めているお袋に声を掛けると、無理に笑顔を作り、
挨拶は返してくれた。
「えっと、ね……」
しかし、歯切れが悪い。恐らく、原因であろう手の中の端切れを指摘してやる。
お袋は困り顔をしながら、
「はぁ……。和室にね、九曜ちゃんの服を干してたの」
「和室に? 畳が湿気るから干さないんじゃなかったのか?」
「干すスペースが無かったし、妙な匂いをつけたら可哀想でしょ?」
俺達の衣類は構わんのか。なら、大人しく外に干せば良いだろうに。
そんな俺の突っ込みに、お袋はむくれた。いい歳こいてむくれた。
「だって寒いんだもんっ」
本音言っちゃったよ。
俺が前に聞いたのは建前で、ただ寒いから必要最低限外に出たくないんだと。
なんという。間違いなく俺の母親だ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:22:05.91 ID:D/zp34hAO<>
いや、この際そんな事はどうでもいい。
問題は、和室にある周防の服だ。
「なんかあったのか?」
「見たらわかる」
ころころ表情を変えていたお袋は、最終的に呆れ顔で和室のある方向を示す。
余程、口頭で答えたくないのか、そのままキッチンに歩いていってしまった。
仕方なく、現場に歩を進める。元よりあいつの服を取りに来たわけだしな。
和室の引き戸をスライドさせ、中を見渡す。
「……んっ?」
目的の物は探すまでもなく、即座に見つかった。
ただ、本当にこれを取りにきたのかと自問自答する。
「えぇ……」
部屋の中央に広げて置いてあったのは、ズタボロになった光陽園学院のブレザー。そしてシャツ。
スカートは見当たらないが、先程お袋が握っていた布切れを思い出す。あれだけを残して
行方不明になったのか。
「どうしてこうなった……」
一息吐いて、しゃがみこみ、残骸を調べる。
犯人はどうやら、じゃれついていた様だ。
前にバスタオルにくるまっていた時も、こんな有り様だったっけか。
「なにしてくれてんだシャミセン……」
周防に何て言やいいんだ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:23:34.88 ID:D/zp34hAO<>
「―――待てよ?」
その周防の所に持っていけばいいんじゃないか?
そうだ、あいつが何者かをすっかり失念していた。
あいつはとんでも能力を持った、ヒューマノイド・インターフェース。呪文一つで、何でも
解決する事が可能じゃないか。
ハッとし、裂かれた服をひったくり、善は急げと周防の元へ向かう。
昨日の俺は、突然の来訪、巻き起こるイベントの嵐に精神的に追い詰められていた。
だからこそ、こんな簡単な結末に辿り着けなかったんだろう。
と言うより、あいつは何だってアクションを起こそうとしなかったんだ? これじゃ完全に
独り相撲じゃないか。
階段を駆け上がり、ノックも忘れて妹の部屋の中へ押し入る。
「周防!」
周防は、俺が部屋を立ち去った時の位置から動いておらず、言いつけ通り律儀に待っていた。
扉のすぐ目の前だった所為で、ぶつかりそうになり少々面食らう。
本人はと言うと、相変わらずの涼しい顔。
まぁいいさ。
「なぁ、周防。お前の力で、これを直せないか?」
「───やぶれ───てる──」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:25:09.44 ID:D/zp34hAO<>
「すまん、猫が粗相をしちまったみたいでな……」
周防はジッと、唯一の所持品を眺め、手を差し伸べる。
渡せって意味でいいのだろうか?
「本当にすまんな」
受け取ってくれた。だが、すぐには動作に移さない。
見慣れたラグ――の、筈だった。
「────」
口を微かに開いたが、例の倍速された音声の様な声は聞こえない。
どうしたのかと声を掛けようとした瞬間、
「───拒否────」
短い言葉が、はっきりと聞こえた。
「……は? ど、どういう意味だ?」
万事解決だと信じ切っていたせいか、発する声に動揺が混じる。
「───アクセス──できない───」
言葉と同時に、俺と目を合わせる周防。気のせいか、瞳に困惑が見える。
夏のとある日、長門が見せた、あの目の色がそこにあった。
「そりゃつまり……、情報操作ができないってことか?」
「────」
散々見た、無言の頷き。肯定の意志表示。
俺の気楽な考えが、打ち砕かれた瞬間だった。
……ん? つまり、つまりだ。
事情は分からんが、今のこいつは、ただの人間と変わらないのか?
「────」
「嘘だろ……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:26:32.17 ID:D/zp34hAO<>
―――数分後、俺達は食卓に着いていた。
妹は先に済ませたのか、この場には居ない。
悠長に食べてる場合じゃない気もするが、落ち着く為にも間が必要だ。
「ほんっとにごめんなさいねぇ?」
朝食を貪ってる横では、お袋が手を合わせて謝罪し続けている。
偽りの記憶で騙してる以上、本来謝るのはこっちだ。すまない、お袋。
許しを乞われてる周防はと言うと、頷きで返事をしながら、ミートボールと格闘している。
だから素直にフォークを使えと。
「ごっそさん。親父はどうしたんだ?」
最後の一口を放り込み、見かけない親父の所在を聞く。
お袋が恨めしそうな視線を向ける。黙々と食べやがって。と言う目だ。
「お父さんはゴルフ。下手くそのクセしてゴルフ」
こんな風に、たまにお袋は怖い。無条件で親父に厳しい。
付き合いと言うものがあるだろうに、理不尽だ、と感じるのは生意気だろうか?
視界の端に、箸でも物を刺せることを発見した周防が映る。微笑ましい。
お袋も見ていたのか、若干口元が緩んでいる。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:28:34.26 ID:D/zp34hAO<>
しばらくお袋と一緒に周防を眺めていたが、食器は放置したまま。
仕方なしに、流しに持っていき水に浸け、その場で観賞に勤しむことにした。
「───ごちそう──さま──」
「はい、お粗末さま」
俺の倍以上の時間をかけて、周防の食事が終了。
お袋が嬉々として、彼女の使っていた食器類を片付けに入る。
虚像の従妹とは言え、随分と愛されてるもんだ。幾ばくかの嫉妬を覚えるね。
「さて、部屋に戻るか」
服の問題をクリアする方法を考えねばならん。
周防を立ち上がらせたところで、洗い物に取り組んでるお袋から制止が入った。
「今日はお母さんも小学校の集まりですぐ出かけるから、後のことは頼むわね?」
「おう。そんなに時間はかからないんだろ?」
「それがねぇ? 終わったら美容院や買い物に行くから、帰るのは遅くなるのっ」
そりゃまた、予定を詰め込んだもんだ。
無駄に楽しそうなところ悪いんだが、妹はどうするんだ。流石に子供二人の相手は辛い。
「あいつの昼飯はどうすりゃいい?」
「あの子も、美代子ちゃんの家にお呼ばれされてるらしいから、あんたは九曜ちゃんの
ことだけ考えなさい」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:29:55.59 ID:D/zp34hAO<>
渡りに船。
お袋に厳命されなくとも、最初から俺にきた依頼だ。きっちり相手はするさ。
ただ、こうなると問題が出てくる。
先程のお袋の平身低頭な姿から、なんなら周防の服を買ってきてもらえるんじゃないかと思ってた。
無理なら無理で、妹に奴さんの相手をしておいてもらい、俺が服を調達する事も考えたが、
この計画も白紙に戻る。
あれ? これ強制的に引きこもらざるを得ないんじゃ?
「あっ、そう言えば」
どう過ごすべきかと、脳内で現状を整理しつつ悩んでいると、蛇口を閉めたお袋が、何かを
思い出したご様子。
お袋は周防に目を向けると、
「下着は無事だったわよ!」
ビッと、無意味なサムズアップ。
今の今まで忘れてた。また余計なイベントを引き起こさない為に、忘れちゃならないと、
頭に叩き込んだつもりだったが。
部屋に戻る前に回収しておくか。
「そんじゃ、行くか」
「───うん──」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:31:32.15 ID:D/zp34hAO<>
―――お袋の言った通り、下着は上下とも無傷で残っていたらしい。
らしいと言うのは、俺が現物を見てない事からきている。
俺が見てどうすんだって話だ。
下着を付けた後も、変わらずスウェットのままで、別段見た目に違いは無い。
結局、外に出すのを躊躇う格好であることにも、違いは無いのだ。
しかし、だ。
家で俺に出来る事にも限度がある。外に救いを求めるしかないだろう。
「──出かける───の──?──」
「家に居てもつまらんだろ? 誰も居ないようだしな」
「────」
間。すっかりお馴染みになりつつある、周防独特の静けさ。
このマイペースさに、ある種の安心感すら覚えるね。
「───一緒──?───」
溜めに溜めての単語。
だが、俺の読解力も向上しつつあることも事実。対話に支障は無いぜ。
「そりゃな。任された以上、俺はお前の面倒を見る義務がある」
「────」
ふと、表情に変化が見られた。
疑問を抱いた時の、小首を傾げる行為を伴って。
そして、実際に声にだって出す。少しずつ成長しているようだ。
「────お風呂──」
「あれは対象外です」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:33:04.03 ID:D/zp34hAO<>
「────」
そうジト目で見るんじゃありません。
あれは俺の守備範囲外なんだよ。
さて、外出で今日の方針が決まったのはいいが、どうしたもんかね。
周防が姿形を気にしないのは散々思い知らされたが、俺の地味なスウェットじゃあんまりだろ。
パンツに至っては、腰紐を限界まで絞ってから縛ってるにも関わらず、今にもずり落ちそうだ。
それにしても、信じられない程衣服の事しか考えてないな。自分の着る物でも、こうは悩まんぞ。
誰かに借りれりゃいいんだが、知り合いにこの状況をどう説明すりゃ―――
「おお、そうだ。こんな時こそあいつの出番じゃないか」
机の上の充電器に刺さっている携帯を手に取り、アドレスに乗っている番号から直接発信する。
コール音が二回聴こえてすぐ、奴は呼び出しに応じてくれた。
『どうかされましたか?』
言わずもがな、面倒事を押し付けられる相手。その名は古泉。
「服が欲しいんだが」
『なるほど、ショッピングのお誘いですね?』
「ははっ、冗談が上手いな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:34:19.92 ID:D/zp34hAO<>
『―――わかりました。では、すぐに届けます』
あまりの内容の下らなさに、俺なら即座に通話を切っているだろう。
だが、それでも冷静に対応してくれるこいつに、いつかは感謝の意を表明したいもんだ。
「悪いな」
『いえ、他の方達には黙っていたほうが宜しいですからね。なにより、頼られて悪い気はしないので』
なにやら寒気がするのは、気のせいでいいよな?
「そうかい。なぁ、橘はどうだ?」
『その件なら問題ありません。念の為に調べましたが、組織に動きは確認出来ませんでした』
ホッとしたような、残念なような、複雑な気分。
なにかしらの企みがあった方が、まだ気が楽だった。
「やれやれ……、つまり佐々木個人に難があるわけか」
『んっふ、貴方を信頼しているのでしょう』
「ありがたい限りだよ、まったく……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:36:28.80 ID:D/zp34hAO<>
『それでは』
「おう、頼むぜ」
電源ボタンを押し、通話を切る。液晶画面には、通話時間が表示されている。
ふいに、もう一度アドレス帳を開いた。さ行から、やっかい事を起こした元凶までスクロール。
「……やめとこう」
操作する指を止め、携帯を閉じた。
どうせ出ないんだろ? 分かってるさ。
「────」
周防が服の袖を引っ張り、ジッと見つめてくる。余程マヌケな顔をしていたのだろうか。
苦笑しながら、頭を撫でてやる。
「よかったな、これで気兼ねなく出歩けるぞ」
「──どこに行く───の──?───」
これと言った場所は決めていない。しかし、誰も居ないなら外食は確定だな。
その後は、どこがいいだろうか?
「そうだな……。行きたい場所はあるか?」
「───?──」
流石に、そこまで明確な主張を求めるには、時期尚早か。
なにかしら、興味がありゃ考えようもあるんだが。
「……まぁ、適当にぶらついてりゃいいか」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:38:42.16 ID:D/zp34hAO<>昨日の夜に投下しようと思ってたのに寝ちまったぜ
一回の更新が少なくてスマソ<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 15:42:54.94 ID:IKGYHSnto<>ダメダヨ<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 17:33:07.65 ID:7qTztmXDo<>イインダヨ<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 18:44:22.34 ID:ij/E2ecEo<>クーチャンカワイイヨ<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/23(日) 19:45:54.09 ID:P0mgtm6Mo<>ほ、欲しい…<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/24(月) 02:27:43.83 ID:+ixuYGKIO<>困った時の長門さん<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/24(月) 02:41:06.74 ID:ilHt6I0IO<>期待<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/25(火) 17:24:45.26 ID:GINbSZrLo<>そろそろお願いしやす<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 17:47:09.11 ID:e82FKGKr0<>まだですか尾にャかイィしまーすぅ??ぃぃぃぃぃ<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 08:05:14.06 ID:4kkNATva0<> くーちゃんとか俺得
続き期待
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 23:52:33.41 ID:gbbHpcrAO<> ごめんね、暇な時間をゲームに費やしちゃってごめんね
間を空けたからか調子が戻ってきたから、明日明後日には投下できると思う
とりあえず生存報告だけでも <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 00:11:29.41 ID:Ow2uksai0<> C <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:35:28.51 ID:53C099EAO<> また携帯の反応が悪くなってきやがった
投下します <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:36:22.75 ID:53C099EAO<>
―――古泉に依頼をしてから三十分後。
居間で周防と妹、三人固まってテレビを見ていると、玄関の呼び鈴が鳴った。
「早っ、もう来たのか?」
「はぁい」
「待て、俺が出る」
因みに、下に降りてきた頃には既にお袋は外出した後で、妹が一人でテレビを見ていた。
まだ出掛けなくていいのかと聞くと、俺達が出る時でいいと答えやがった。随分アバウトな
アポイントなもんだ。
インターホンで確認も取らず、小走りで直接出迎える。
適当に靴を履いて扉を開けると、
「―――あれ?」
そこに古泉の姿はなかった。
別に宅配便や、別件の客人という訳ではない。れっきとした、俺の客だ。
見れば分かる。が、それで目の前の事象を理解出来るのかと問われれば、それはまた別の話だ。
「お久しぶりですね」
だってよ、そこに居たのは、メイド服姿で微笑む美人さんだったんだぜ?
前に会った事件時には、私服と見られる格好でいた。
だのに、初対面と同じ服装に逆戻りだ。俺の意表を突く必然性を問いたい。
「えーっと……。古泉の奴、森さんを寄越したんですか?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:37:27.27 ID:53C099EAO<>
「機関の中で、女で貴方と顔見知りなのは私だけですから」
そう言って、メイドさんはやんわり笑う。
ただ、ちょっと待ってほしい。女性に限定する事が、重要な意味を持つとは思えん。
表情が訝し気に映ったのか、森さんは胸元に手を置き、そのハルヒにも劣らないバストを誇示する。
……いや、胸を強調した訳じゃないよな。何を言ってるんだ俺。
「見立ては同性の方がいいでしょう?」
「はあ……」
「それに、下着等も用意しているんです。見ますか?」
足下に置いてあったトランク。彼女はそれを片手で支え、悪戯っぽく笑って留め具を外そうとする。
「あー……いえ、遠慮しておきます」
冗談には冗談で返そうかとも思ったが、この人相手にふざけるのは度胸が必須。
大人しく手を振って行動を制するだけに留める。
「ふふっ、なら私に任せて。お邪魔しても?」
「ああ、気がつかなくってすみません」
体を捻って道を譲ると、しゃなりしゃなりと擬音が目に見えてきそうな程、優雅な歩み。
靴すら乱暴に脱ぐこともなく手を使い、音も立てずに床に置く。
徹底しているなぁ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:38:53.63 ID:53C099EAO<>
しゃがみ込み、片手で靴を揃える森さんの細い指に見とれていると、彼女がくすくす笑う。
そして苦笑のまま俺に顔を向けると、
「今、演じきってるなー、とか思ったでしょう?」
森園生。職業、超能力者。
……などとナレーションを加えてる場合じゃないな。
「あー……正直、あの時の森さんはワイルドの塊でしたから」
頬を掻いて答えると、やっぱりね、と彼女はごちる。
その後、口元を隠してひとしきり笑うと、笑みを絶やさぬまま姿勢を正し、
「あの際は余裕が無かったものですから」
「確かに、俺も血の気が引きましたよ」
今度は俺が軽く笑い、自然と話を切り上げる空気になった。
そうして、森さんの脇を抜けて奥に案内しようとすると、森さんから声がかかる。
「―――貴方は、どちらの私が好みですか?」
振り向くと、先ほどまでの少女じみたものではなく、妖艶にして、不敵な笑みを湛えた女性がそこに居た。
思わず言葉を失う程、そのギャップは激しい。
落ち着け。これは森さんだ。
恐れることはない。ただ返事をすりゃいいんだ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:40:08.88 ID:53C099EAO<>
「あっ、と……えっ?」
脆すぎる俺の精神。言葉が出てきやしない。
そんな状態の俺を嘲笑うかのごとく森さんが近づき、その白魚のような指を頬に這わせ、
細めた目で俺の様子を窺ってくる。
それだけで、健全な男子高校生である俺はもういっぱいいっぱいだった。
鼻孔をくすぐる色香に限界を感じ、あえなく叫び出しそうになった次の瞬間―――
「……ぶふぉっ!」
彼女が先に、盛大に吹きだした。
「くふっ、ふふっ……ご、ごめんなさい……っ」
口どころか顔を抑えて肩を震わせる森さん。
少しずつ冷静さを取り戻してきた俺は、こう思う。
ああ、まだ冗談を言う流れの中に身を投じていたのか、と。
「勘弁してくださいよ……」
「……っ! ふぅー……、ごめんね?」
どんだけ笑うのかとか、この人こんなキャラだったけとか。言いたい事は色々あるが、
これだけははっきりと言える。
女性不信に陥りそうです。
「ふふっ、やっぱりいいリアクションをしてくれると嬉しいものですね」
「そんなもんですか……?」
貴女はどこに向かっているんですか。
俺、女難の相でも出てんのか?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:41:18.83 ID:53C099EAO<>
「そうふてくされないで下さい」
森さんは、これまた可愛いと言える笑顔を作り、俺の鼻先にピッと指を突き出す。
そして、一言だけ宣ってくれた。
「これが女です」
裏表があると言いたいのか、演技力に長けていると暗に示したのか。
どちらにせよ、俺が弄ばれたことに違いはないです。
「周防さんはどちらに?」
何事もなかったように話す彼女に、些か憤りを感じるのは間違いだろうか。
とは言っても、俺に口答えする権利は与えられていない。
「そこの居間にいますよ」
居間にいま……、と森さんが口ずさんだのを確かに聞いた。
笑いの沸点が下がっているのか、小刻みに震えながら廊下から居間へと移動する。
この人は何をしに来たんだったっけか?
「――こんにちは」
先程までの態度は白昼夢だったのではないかと疑う程、柔らかい微笑と物腰に戻っている森さん。
恐ろしい人だ。
次いで俺が入ると、妹の目がまぁ輝いていた。
「メイドさんだぁ!」
森さん、な。
ソファーから降りると、妹は駆け足で近づいてきてメイドさんに抱きつく。
お前、そんなに懐いていたか?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:42:28.87 ID:53C099EAO<>
妹が抱き締めることで服が突っ張り、森さんの二つのふくらみが更に強調される。
真下から見上げる景色は絶景なのだろうな。
「……いや、違うだろ」
ボソッと自分に突っ込みを入れつつ、頭を振って思考を正常に戻す。
「はい、森さんが用があんのはお前じゃないからな」
「えぇー」
妹の後ろに回り、肩を掴んで引き離す。
優しい笑顔で妹の頭を撫でていた森さんは、名残惜しそうな表情に。やはり、母性を滲み
出させている女性が一番です。
一部始終を眺めていた周防は、ソファーから微動だにしていない。
どこか警戒している風にも見える。
「大丈夫だぞ周防。この人が服を持ってきてくれたんだ」
言って、ちょいちょい手招きをしてやる。
「────」
周防は音も無く立ち上がり、とことこと歩み寄ってきた。素直だ。
しかし、俺の服の裾を掴むと、森さんと目を合わせながらも近付こうとはしない。
借りてきた猫か。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:43:44.13 ID:53C099EAO<>
先に行動を起こしたのは森さんだ。
「森園生です。よろしくお願いしますね」
小さい子供に接するような面持ちで手を伸ばし、握手を求める。
差し出された手の意味が分からないのか、周防は俺の顔を見上げてきた。
「ほら」
俺を掴んでいた周防の手を取り、森さんと握手させてやる。
握られた手をマジマジと見ていたが、ふいに小さく口を開いた。
「────よろ──しく───」
「ふふっ」
偉いぞ周防。
そんな二人のやりとりにうんうん頷いていると、
「私もー」
俺の隙を突いて妹が森さんに突撃した。
が、襟に指をひっかけてそれを阻止する。
「お前はさっき体全体で挨拶しただろ」
「ブーブー!」
口を尖らせて不満を表にする子豚。鼻を押し上げといてやろう。
見かねた森さんが妹に手を差し出し、喜色に変わった妹が、その手を両手で挟んでぶんぶん振る。
微笑ましいんだが、森さんが手を痛めそうなので、手刀でカットしてやった。
「────」
周防もいい加減離そうか? 妹の真似しないでさ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:45:12.45 ID:53C099EAO<>
「なぁ、お前行かなくていいのか?」
時刻はもう十時を過ぎている。
一緒に出るとは言っていたが、朝早くからの約束じゃなかったのかと。
指摘に、当の妹はハテナ顔。こいつ、忘れてるぞ!
「ミヨキチの家に行くんだろ?」
「あっ!」
個人名が出たところで、どうにか思い出したらしい。
珍しい客人が来た為に、脳内の奥に追いやってしまっていたんだろう。
我が妹ながら大丈夫なのか。
妹はドタドタと階段を上って自分の部屋へ行くと、十数秒で身支度を終えたのか、即座に
ドタバタと床を鳴らして駆け下りてきた。某空賊も感心の速さだ。
「行ってきまぁす!」
先ほどまでのんびりしていたとは思えないな。
行きがけに居間を少し覗いて挨拶をすると、慌てて外へと走っていってしまった。
「極端な奴だ」
呆れていると、肩を叩かれた。
「よろしいですか?」
「あ、ええ。なんですか?」
「そろそろ、用事を果たしたいと思いまして」
森さんはそう言ってトランクを掲げる。
そろそろ、か。……色々脱線したのは貴女にも要因があると思います。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:46:28.60 ID:53C099EAO<>
「じゃ、お願いします」
「はい。お部屋をお借りしても?」
部屋と言うのは俺の部屋でいいのだろうか?
構わないと答えると、森さんは周防を手招きする。
「いきましょうか」
言って、両手で持っていたトランクを片手に持ち替え、空いた手を近づいてきた周防の前に出した。
周防は、今度はすんなり手を握る。
見事にメイド服を着こなした森さんに、ダボダボのスウェットを着させられている周防。
端から見れば、かなりシュールな絵面だ。
「────」
森さんに手を引かれ、足を進めた周防が一瞬こっちを振り返った気がしたが、そのまま壁の
向こうへと消えていった。
「……よっこいしょーいち」
一人残された俺。
点けっぱなしのテレビを消すと、ソファーに寝転んで目を閉じる。
どうにも寝足りなかったのか、今頃着せ替え人形と化しているのだろうかとか、どんな様相で
俺の前に立つのだろうかと思いを馳せていると、すぐさま思考がぼやけてきた。
「まっ、楽しみに待たせてもらいますかね……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:49:25.02 ID:53C099EAO<>
───気配がした。
どれだけ仮眠をとっていたのだろう?
まどろみの中、ズボンのポケットに入れていた携帯で時間を確認する。正午は過ぎてはいないよう
だが、一時間は経っていた。
「ふぁ〜あ……、意外と寝たな」
勢いをつけて上半身を起こし、正しく座り直す。どうにも肌寒い。
「……んぉ?」
暖房をつけようかと思った瞬間、視線を感じた。先程周防が見えなくなった辺りから。
視界を虚空からその場所へと移すと、
「────」
周防が立っていた。
「……へぇ」
思わず感嘆の声が漏れちまった。そこに居るのは周防なのだが、受ける印象が全く違う。
こう言っては申し訳ないが、今までの周防の姿には、陰鬱という言葉が当てはまっていた。
しかし、目の前の少女はそれが無い。
「馬子にも衣装だな」
ニット製の膝丈までしかない白いワンピース。その上には、肩掛けの白いカーディガンを
羽織っている。
相変わらずの黒いタイツを履いてはいるが、全身黒で統一していた時より、めりはりがついて
良いんじゃないか?
真っ白でもなんだしな。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:51:17.08 ID:53C099EAO<>
個人的に最も注目したいのは、あの長い黒髪だ。
全身を覆い隠せるのではないかと思える程広がっていた髪は、頭の後ろでひとくくりに纏められ、
俗に言うポニーテールになっていた。
ただ、ボリュームがあるだけに、馬の尻尾と言うよりも象の鼻レベルの存在感。ぶつけられたら
吹き飛びそうだな。
シーンを想像して思わず噴き出す。
「───?──」
「ああ、すまん。似合ってるぞ」
立ち尽くしている周防に近づき、ふと気づいた。化粧までもが施してある。
と言っても、唇に色が付いた程度だが。
変われば変わるものだと感心していると、スタイリストが居間の出入り口から顔を覗かせた。
「どうでしょう?」
「あー……俺は良いと思います」
「よかった、ポニーテールがお好きと聞いていたので」
そう言って森さんは微笑んだ。
今度あのニヤケマンに一発かましておこう。
「では、私はこれで。何着か似合いそうな衣服を残しておきましたから」
古泉をどう懲らしめようかと考えていると、清々しい、やり切った顔で玄関に向かって
立ち去る森さんが目に映った。
「……っと、礼がまだだった」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:53:30.13 ID:53C099EAO<>
慌てて追いかけると、森さんは既に靴を履き、待っていたかのようにこちらを振り返っていた。
その場で俺が礼を言おうとすると、彼女はこっちや来いと手で示す。
「あの、今日は本当にありがとうございました」
「いえ、私も楽しかったですよ」
にっこり笑うと、彼女は更に手招きする。
置き土産に、また何かするのではと不信に思いながらも、目の前まで足を進める。
至近距離まで近づいた俺に、何度目かの笑顔を向けると、彼女は手を差し伸べる。
握手でもするのだろうかと、俺も腕を上げた。
すると、
「おわ!?」
その腕をグイッと引っ張られ、彼女の顔が間近に迫る。
バランスを崩しながらも、なんとか踏みとどまる事に成功した。が、なんと、森さんの方から
顔を寄せてくるではないか。
ああ、またか……。
「―――気をつけて下さいね」
頬同士が触れるか触れないかの距離で、彼女は囁く。
「……え?」
拍子抜けした直後、胸板をトンッと押された。
聞き返そうとしたが、よろめいている隙に身を翻した彼女は、あっさり逃走を果たしたのである。
「な、なんだったんだ?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:55:33.58 ID:53C099EAO<>
無意味な胸の高鳴りと共に置き去りにされた俺。
居なくなってしまっては、言葉の真意も聞けないじゃないか。
「……まぁ、いいさ」
正味、この数時間であの人への評価が様変わりしている。
深く考えるだけ無駄というのが俺の判断。
気分を切り替え、周防の下へと戻る。やはり、身動き一つしていない。
にしても、強く握ったら折れそうな程細い首だな。髪を退かすとより浮き彫りになる。
背後から、左右から、スタイルチェンジを遂げた周防を値踏みするように眺める。
絹の様な頭髪が、風呂に入った為か、森さんが整えたせいかは分からないが、昨日より
格段に光沢を放っていた。ふとした瞬間に触りたくなる。
……いや、むしろ触ってみてもいいよな?
「───?─―」
束となった髪を軽く梳いてみた。
指がさらさらとした黒に沈んでいく。途中で引っかかることもなく、抵抗感をまるで感じない。
量は確かに凄いが、一本一本が細いからだろう。
「いや、良い触り心地だ」
「───そう──」
周防はされるがまま、動こうとはしない。
拒否反応を示さないのが心配になってくる。他人には気をつけろよ?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:57:36.72 ID:53C099EAO<>
父親紛いの心境に立てたところで、周防の髪を堪能し終え。
「ぼちぼち行くか?」
「───うん──」
呼びかけに呼応し、周防が振り向く。
昨日まではなんともなかった筈が、それだけで不覚にも心臓を掴まれそうになった。
宇宙生命体は、どうしてまた顔立ちを整えたインターフェースを創り上げるのか。
一生の疑問だな。
―――財布よし、携帯も持った。茶のコートとマフラーも着込んだ。
「よし、ようやく出発だな」
「────」
コクンと頷いた彼女は、更に装備品を増やしていた。
部屋に一旦戻って手荷物を回収していたところ、ドアノブに淡いピンクの手袋が掛けてあったからだ。
忘れていたのかわざとなのか、サイズが俺のものではない以上、周防用と見て間違いないだろう。
更に更に、机の上にはこれまたバンド部分が黒いピンクの耳当て。髪型を考慮した結果か。
カーディガンも含め、モコモコとファンシーさを醸し出していて、どうにも全体的に幼く見える。
簡単に言えば可愛らしい。
似合うっちゃ似合うから、あまり否定的にもなれんのが実情。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 12:59:07.85 ID:53C099EAO<>
学校指定のローファではなく、いつの間に置いていたのかも気づかなかった、白い
ロングブーツも装着済み。
これで周防完全形態の完成と、相成ったわけだ。
可憐さと愛らしさを纏った彼女とは対照的に、地味過ぎる出で立ちの俺。
隣に立って大丈夫だろうか……。
靴箱と一体になっている全身鏡を見て渋い顔をしていると、ふいに周防が手を引いた。
「──いこ──?───」
思いがけぬ積極的な言動に、口元が緩む。
服装だけでなく、昨日とは一変した雰囲気が、握られた小さな手から伝わってくる。
この面倒事の中での背徳を感じない役得は、しっかり堪能させてもらおうか。
「おうよ」
しっかと手を握り返し、玄関の扉を開け放つ。
風の冷たさと同時、太陽の暖かさを感じる。ああ、いい天気と声高に言えるな。
さて、まずはどこに行こうか。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 13:02:08.27 ID:53C099EAO<>
―――出来るだけ顔見知りに会わないよう、学区内から距離をとろうと、最寄りのバス停
から市外へと向かう道中。
思惑とは裏腹に、その大それた行動の無意味さを痛感していた。
窓際を陣取り、バスに揺られ、三カ所目の停留所に止まった時。
折角の僥倖を無為にする人物が現れたのだ。
「――よぅ、珍しい所で会ったな」
通称WAWAWA―――もとい。谷口が、乗降口から俺の姿を確認するや否や、ヘラヘラと
話しかけてきやがった。
一番見られてやっかいなのはハルヒだが、次いで知られたくない男。
だというのに、何故こんな場面で出てくるんだよお前は。
奴は席まで近づいてくると、俺の隣に座っている周防を見つけ、急に腕を組んで唸りだした。
「……真実はいつもひとつ!」
カッと目を見開き、唐突に叫ぶ。
今更紹介するまでもないが、こいつは馬鹿だ。本物のな。
だが、時に無駄な明晰さを発揮する事もある。
「これだけ座席が空いてんのに、どうしてお前の隣に美少女が座ってんのか……」
額を指先でトントンと叩きながら、谷口は語りだす。吹き飛べばいいのに。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 13:03:48.72 ID:53C099EAO<>
「それは、お前とその子が顔見知りだからだぁーっ!!」
ムカつくポーズをとりながら、俺を指差す馬鹿一人。その指をへし折ってやろうか。
他人の振りをしようかとも思ったが、指摘されたばかりでそれは無理があるよな。
「ああ、その通り。従妹の周防だよ」
「いとこ? お前にいとこがいたなんざ初耳だぜ、キョンよ」
当然の事らしきスムーズな動きで、俺達の前の席に位置取り、座席から顔を出す谷口。
面倒だ。ああ、面倒だ面倒だ。
「俺も会う機会は滅多にないしな。なにより紹介する義理がねぇだろ」
「一人占めしようたってそうはいかないぜ!」
「うるさいぞ。お前と分かち合う必要性が見いだせん」
「親友だろ? なっ?」
この間、周防は谷口の存在に気付いていないかの如く、流れる景色を追っていた。
これは興味が皆無と見ていいのだろう。俺も、こいつの戯れ言に興味は無いしな。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 13:05:45.61 ID:53C099EAO<>
「なぁ、その子とどこに行くんだ?」
いい加減、物理的手段で黙らせようかと思った時、ようやく建設的な前振りがきた。
ちょうど良い。利用させてもらおうか。
そう心の中で呟き、周防の頭をぽんぽんと抑えながら、嘘八百を並べる作業を開始。
「こいつ、地方から越して来たんでな。この辺りを案内がてら、昼飯を食おうかと思ってたんだよ」
「もう十三時過ぎる頃だぜ? まだ食ってなかったのかよ」
「外食なんぞそうそうしないからな。いまいち店を決めかねててよ」
「ふーん。なら、美味しい店を紹介してやるよ」
ほらな。俺は高校に入ってからというもの、団活で一定の喫茶店等にしか行かないが、
自由人であるこいつは違う。
無駄な努力と言えるデートコースの下見として、街中を徘徊しているからだ。
国木田が言っていた。谷口のポジティブな考えが羨ましい、と。
そう言うな国木田。今まさに役立つ日が来たのだから。
「ガイドマップ〜」
谷口は上着の内ポケットをまさぐると、某猫型ロボットの声真似をしながら、緑色の
手帳を取り出した。
一挙一動が腹立たしいのは仕様だろうか。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 13:07:24.94 ID:53C099EAO<>
奴は色とりどりの付箋が付いた手帳を捲り、何かを探すように指でなぞると、ずいっと
開いたページを見せつけてきた。
「このカフェなんてどうだ? メニューも豊富で、次の停留所の近くだ」
オープンカフェ、か。不安は残るが、店内でなら姿を晒す心配もないよな。
洋食なら、周防も気兼ねなくフォークやスプーンを扱う事が可能だろうし。
「んじゃ、そこにするか」
「よしっ、決まりだな! ボタンを押すのは任せろー!」
顔を合わせてからの、変わらぬテンションで停車ボタンを押す谷口。
神様……、今だけ俺の左手の力を右手の衝動より上回らせてくれ。
殴りかかりそうな心を鎮めると同時、車体がゆっくり減速していく。良いタイミングだ。
「ほら、降りるぜキョン」
良い笑顔で出口に向かう谷口に、とぼけ顔で問うてやる。
「お前はどこに行くんだ?」
「どこって……飯食いに行くんだろ?」
予想通りの返答だ。
無論、この馬鹿と共に食事をする道理はない。
だから俺は虚言を紡ぎ続ける。
「悪いな谷口。周防は男が苦手なんだ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 13:09:02.26 ID:53C099EAO<>
終始ボーっとしていた周防の手を引き、バスから降りながらそう告げた。
当然納得する筈もなく、谷口は食い下がってくる。
「馬鹿も休み休み言えよ。男が苦手ならお前だって……」
「顔を合わせる機会は少なくとも、俺は身内だからな。何より、最初に言っただろ?
紹介するつもりはないと」
鼻で笑って主張を弾いてやる。
谷口はチラッと周防の方に目を向け、何かを訴えかけている。恐らく、彼女から許しを
得られれば、大手を振ってついていけると踏んでいるのだろう。
だが、彼女にそれを理解する術は無い。もとより、谷口に目もくれてないしな。
「お疲れさん」
道に迷った子供のような瞳をした谷口の肩に手を置く。情報提供の労いは忘れちゃいけない。
うなだれる情報屋を背に、バスが走り出すのに合わせて、俺達もその場を立ち去った。
「────」
少し歩いたところで、今まで何も喋らなかった周防が、僅かに気を背後に回しながら
俺の手を引いた。
「───彼──は──?───」
「なんだ、ちゃんと聞いてたんだな? 大丈夫、あいつの扱いはあれでいいんだよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 13:13:13.96 ID:53C099EAO<> その通り
森さんも大好きだ
今日はここまで <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 15:51:13.71 ID:Fk42oBxIO<> まさにその通り
田丸さんも大好きだ
乙です <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 18:34:33.08 ID:sQcf0C/Io<> 新川さんマジナイスミドル
乙乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 20:52:31.06 ID:N3UFBKIgo<> くーちゃんかわいいよくーちゃん
あ
草野たんもかぁいいよー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/04(金) 02:38:55.74 ID:9w2DK/EIO<> キョンはそのうち友達をなくすんじゃないだろうかw
でも谷口だし別にいいかな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/04(金) 09:40:11.54 ID:tfJWYQ7AO<> お前らなんで男推しなんだよwwww <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/09(水) 19:25:01.60 ID:GBn2SStyo<> そろそろお願いしやす <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/12(土) 03:28:16.01 ID:5/UtQVfAO<> すまない、さっぱり妄想力が湧かなくなっちまった
流れやら映像やらは頭にあるのに文に出来ん
もうしばらく待ってくれ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/16(水) 17:03:19.89 ID:V2Dogwg40<> 待つから頑張れ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/16(水) 17:08:16.72 ID:dw6LAsXao<> くーちゃんSS書きが増えるのはいいことだよね!
昔は佐々木や橘(・∀・)ばっかりでくーちゃんSS書いてたの俺だけだったし <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/16(水) 20:08:36.26 ID:N8udFwLDO<> 橘はキャラスレとかVIPのお陰で、俺の中ではおバカさんキャラになってしまった
くーちゃんも可愛いよ!続き待ってる! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:36:55.99 ID:qG75gkwAO<> アホな橘SSなら
それは (^O^) わたしです
ちょっとだけ投下 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:39:12.11 ID:qG75gkwAO<>
―――手帳に書いてあった店名から、携帯のナビ機能を頼りに雑踏の中を進む。
思ったより自宅から距離は稼げなかったが、この人ごみだ。知り合いに見つかる可能性は低い。
バス停から離れて十数分。携帯の画面と石畳が視界を占める中、位置情報が店と重なった。
顔を上げると、そこにはこの寒い中テラス席で談笑している若い女性グループや、
カップル等がいる光景。
オープンと言っても、生け垣や柵で表通りと隔離してあり、立ち止まって覗かない限り
誰が居るのかまでは気にならない造りになっていた。
鉄柵と同じ材質であろう、ツタや花をあしらった外門をくぐり、店へと足を運ぶ。
ベルの付いた手押しのドアを開けた瞬間、香ばしい珈琲の香りが鼻をくすぐった。
「───いい──香り───」
「確かに、これは凄いな」
レジカウンターの後ろの壁掛けの棚。その三段の全てが瓶に詰められた珈琲豆で埋まっている。
なるほど、挽きたてが自由に楽しめますってところか。
銘柄を確かめていると、カウンターの陰からひょっこり女性が姿を現した。屈んでいたらしい。
「……ん?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:41:00.01 ID:qG75gkwAO<>
意外なエンカウントに声が出た。
台で死角になっている裏側の整理でもしていたのか、小さな箱を片手に携えた
女性に目を見張る。
「あら? いらっしゃいませ」
客の存在に気づいた彼女は、目に被さった薄い緑色の髪をかき上げ、優しい
眼差しを返してくれた。
黒を基調としたそのメイド服にも似た制服と、柔らかな笑みに、今朝の場景が浮かぶ。
「二名様でよろしかったでしょうか?」
あの茶目っ気たっぷりなメイドさんを思い出していると、マニュアルな対応が耳に届いた。
「あ、ええ。二人です」
「では、お席に案内しますね?」
カウンターから出て、しとしとと歩く彼女の後に続く。
一見、板についたウェートレス。だが、知り合いであることは間違いない。
店内最奥。角の二人掛けのテーブルに案内すると、ウェートレスさんは手に持っていたメニューを置く。
俺はそれに注目せず、その女性に視線を合わせたままだった。
「どうかなさいました?」
「いや、あの……ここでバイトしてるんですね」
「あら、してちゃいけませんか?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:43:40.87 ID:qG75gkwAO<>
さて、俺は今、出会いたくない人物が何人かいる。
先に述べたハルヒや谷口。
この二人は、間違うことなく周防との関係性について深く突っかかってくる。既に谷口には
バレてしまったが、今はどうでもいい。
そんな俺個人の問題ならささやかなもんだ。
しかし、ある特定の人物は違う。
―――長門。
ある日の雪山遭難事件が、俺が杞憂を感じている由縁だ。
あの時、長門は無力化されていた。そうしたのは、天蓋領域。周防の親玉。
だから、あいつに俺と行動を共にしている周防と鉢合わさせるのが恐ろしい。
報復など考える奴ではない。だが、妙に勘ぐって俺を守ろうと動く可能性は捨てきれない。
だからこそ警戒していた。
なのに、それがどうだ。
「いけないことはないですが……。バイトする必要があるんですか、喜緑さん?」
そう、長門と同じ。情報統合思念体から送りこまれたインターフェース。
喜緑さんと出会ってしまったのだ。
既に周防という存在は、長門から彼女にも伝わっている筈だ。
もし、今の状況が長門に同期と言う形で伝われば、俺はどうすればいいのだろう?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:45:31.79 ID:qG75gkwAO<>
俺の身勝手な疑心を知ってか知らずか、喜緑さんは、はにかんで答える。
「活動する上で必要最低限のものは情報結合が可能ですが、それ以外のものは許可が出ないんです」
「それ以外ってなんです?」
問いに、喜緑さんは側頭部の、ウェーブ気味の髪を自然な形で耳にかける。露わになった
耳たぶには、光る装飾品。
「あぁ、なるほど。化粧品なんかも?」
「そうなの。これでも女の子ですからね」
長門や周防とは大違いだな。
前にも悪態を吐いたことはあったが、親玉共は何を考えてんだか。
周防も今はお洒落さんらしい格好をしているが、それは言ってみれば俺が強制させた事。
人並の感覚を付加させてやれただろうに。
そう憤りを感じながら周防を見やると、
「─────」
ガン見。思わず二度見してしまうほど、喜緑さんをガン見。
そういや、長門の真似事をしていたな。
今度は、同種の存在である喜緑さんを見習おうってことなのか?
「でっ、ですよね! それが普通だと思いますよ、ええ」
焦りからか、無駄に声高になる。
止めろ周防。これ以上俺を追い詰めるな。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:48:24.96 ID:qG75gkwAO<>
祈りが届いたのか、俺の視線に気づいたのか。周防は俺の方を向いてくれた。
胸を撫で下ろし、テーブルに置いてあるメニューを手に取る。
「ご注文は?」
「ええっと……」
脊髄反射の如く喜緑さんから催促を受けるが、なんかもう食欲が無い。
手短に済みそうなサンドイッチのセットを指す。
「お前はどうする?」
メニューを周防に見えるように差し出し、伺う。
すると、一瞥しただけで品書きから目を離し、俺にむき直った。
「────」
「……ああ、どんなもんか分からないのか。じゃあ、同じものを」
喜緑さんは注文票を書きとめると、一礼してその場を去った。
「……はぁ」
緊張の糸が解ける。
しかし、喜緑さんは、どうして周防の事に突っ込まなかったんだ?
聞かれてもいないのに弁解するのもおかしな話。結局、不安は拭えちゃいない。
「……そろそろ取ろうか」
うだうだしていても仕様がないか。
ひとまず防寒具を付けたままの周防から、テーブル越しにそれを外してやる。
一つ一つ丁寧に取る様は、さながら召使いに見えなくもなかった。
「客の視線が痛いぜ……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:50:15.57 ID:qG75gkwAO<>
耳当てと手袋を預かると同時。喜緑さんではなく別のウェートレスさんが、盆に乗った
珈琲を届けに来た。
「あれ、頼んでませんよね?」
「セットメニューを頼まれたお客様にお出ししているんです」
二つのカップを置きながら、ウェートレスさんは答えた。
「ごゆっくりどうぞ」
どちらかと言えば、まず水を出すのではないだろうか?
まぁ、珈琲を売りにしたカフェならば、おかしくはないのかもしれん。
自己解決をし、目の前に置かれた珈琲に手をかけ、一口すする。
「……なるほど、苦いな」
ブラックだから当然か。
あいにく、背伸びして大人の味覚を受け入れるつもりはない。
共に置かれたシュガーポッドから、適量の砂糖を掬い投下。ティースプーンで簡単に回し、
もう一度口へ。
「……なるほど、正直強がった。周防、お前はミルクも一緒に入れたほうがいい」
俺の玉砕までの一部始終を眺めていた彼女は、おもむろにカップを両手で掴む。
そして、
「────」
グイッと、一気に飲み干したのだった。
「──おい──しい───」
……何だろうか。この敗北感。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:53:09.47 ID:qG75gkwAO<>
珍しく俺の意見に耳を傾けなかった事に怒るべきなのか。はたまた、子供扱いをしてきた
こいつに負けた事を恥ずべきなのか。
悩みながらも、大人しくミルクを注いでいると、今度は喜緑さんが注文の品を持って現れた。
「お待たせしました」
三種のサンドイッチにコーンスープ。意外とボリュームがあるな。
「ありがとうございます」
「いえ。ごゆっくりしていって下さい」
品を並べ終えると、喜緑さんは頭を下げる。
しかし、そこから離れる事はなく、腰を屈めたままの形で俺に顔を近づけた。
ちょっとしたトラウマになりかけていた行動に、思わず身構える。
彼女は、自分の唇と俺の耳の間に手で壁を作り、小さな声で、
「(すみません……、予想外の状況に驚いてしまって)」
「(どうかしたんですか?)」
周防に気を揉みながらも、俺も首を動かして対話に応じる。
「(お冷やお出しするのを忘れてました)」
「(あぁー……)」
どうやら、気が気でなかったのは俺だけじゃなかったご様子。
やはり、周防の正体には気づいていたらしい。そりゃそうだ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:56:20.20 ID:qG75gkwAO<>
「(いったい、何故彼女と一緒に?)」
当然の疑問だ。
しかし、置かれた食事に手をつけず、待機している周防が居るのが実状。
このまま密談を続けるには、厳しいものがある。
「(とにかく危険性は無いので、安心してください)」
「(貴方がそう言うのなら……)」
すくっと姿勢を正し、再び礼をしてから喜緑さんは踵を返した。
他の客の下へ向かったのを確認し、俺も周防に視線を戻す。
「───食べ──ない───の──?───」
「ああ、すまん。待っててくれてありがとな」
詫びと礼をし、どうぞと手の平を見せてみたが、彼女は俺の手元を見たまま動かない。
……ああ、食べ方か。
「これは手づかみでいいんだよ」
サンドイッチの一つを持ち、一口頬張る。
次に、スープにスプーンを沈みこませ、口に運んでみせた。
意識してやってみると、どうにもぎこちなくなるのは何故だろうか?
周防はそんな俺を余所に、スープの入った縁の厚いカップの持ち手に指を引っ掛け、
「────」
珈琲よろしくの勢いで、直接カップからスープを飲みにかかった。
なんだ、俺に反抗するのが今のブームなのか?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 22:58:27.94 ID:qG75gkwAO<>
―――唐突に男らしい食いっぷりとなった周防に習い、俺も体裁など気にせず食べた結果、
十分と経たずに昼食は終了となった。
預かっていた防寒着を周防に渡しながら、ズボンの後ろポケットから財布を取り出す。
テーブルに置かれている伝票共々片手に携え、周防の手を引いてレジで待つ喜緑さんの下へ。
「お会計、千四百円になります」
伝票を渡すと、事務的に作業を進める喜緑さんが金額を告げる。
割とリーズナブルで助かったぜ。谷口、よくやったな。
「……ふふっ」
二千円で払い、お釣りを貰ったところで、ふいに喜緑さんが笑みを零した。
何事かと様子を窺うと、細めた目が俺と周防の繋げた手に向かっている。
「仲がよろしいんですね?」
「あー……」
当たり前のように繋がれた手。確かに、勘違いされてもおかしくない状態だ。
だからと言ってここで離してしまうのも、意識したようで悔しいものがある。
「こうでもしないと、フラフラどっかに行きそうなんで」
「なら、そういうことにしておきますね」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 23:00:14.81 ID:qG75gkwAO<>
「いや、本当なんですって」
なんて虚勢を張ってはみたものの、指摘されたせいか妙に気恥ずかしい。ちくしょう。
「えっ、と……また機会があったら来ますね」
居心地の悪さもあるが、これ以上ここに留まる必要もない。
喜緑さんに軽く会釈し、カフェのドアを引いて開ける。
「――お気をつけて」
背に声が掛かった。
辛うじて視認出来る程度振り返ると、口角は上げているが、目が笑っていない喜緑さんの顔。
なんとなく。そう、なんとなくだが、立ち止まってはいけない気がした。
―――時刻は十五時を回っている。
当初の予定通り、と言っていいものか。
やはり目的も見つからず、ぶらぶらと路頭をさ迷う結果となっていた。
こんな事なら、谷口をもう少し活用しておくべきだったな。
全くと言っていい程、見知らぬ土地。
適当に歩み続け、救いを求めるようにキョロキョロと辺りを見渡す。
こんな状態のままでいるぐらいなら、素直に帰途についた方が良いのかもしれん。
「────」
エスコートの不出来っぷりに、不甲斐なさを噛みしめていると、周防が足を止めた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 23:03:52.88 ID:qG75gkwAO<>
「ん、どうした?」
「──あれ───」
そう言った周防の瞳に映っているのは、あらゆる商店が点在する中、男ならば少々入るのを
躊躇する異彩を放った店。
俗に言うファンシーショップがそこにあった。
「意外だな。あーいうのに興味あんのか?」
周防は答えない。が、目が釘付けになっている時点で、俺の行動は必然的に確定する。
「……わかったよ」
幅の広い、車線の無い道路を彼女を連れ立って横断。
店のショーウィンドウから中の様子を窺い、客の有無を確認する。
外観や看板がポップな割に、店内は壁も床もレンガ張りが施してあり、商品が置かれた
木製の棚も相まって、まさに茶一色だった。
これじゃ、アンティーク店の方がお似合いだな。
客も二人の女性が居るだけ。これなら気後れする必要もない。
OPENと書かれた、小さな掛け看板の付いたドアをゆっくり開ける。
すると、センサーでも取り付けてあったのか店内に響いたのは、ニャーと言う猫の鳴き声。
「どんな知らせ方だ」
理解し難いこだわりに脱力を感じながらも、奥に踏み込む。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 23:07:37.46 ID:qG75gkwAO<>
視野に広がる商品。
キーホルダーやストラップ等の小物類。フェルトで形作られた人形やぬいぐるみ。
想像通りの品の他にも、ソーイングセットやら花瓶、写真立て、果ては貼るタイプの
なんちゃってタトゥーなんぞもある。
……もう寄せ集めにも程があるな。
「おっ、茶葉まであんのか。朝比奈さんに買っていくか」
小袋に詰められた茶葉をいくつか手に取り、出入り口付近に置いてあったバスケットに放り込む。
これじゃ、あいつより俺の方が楽しんでいるみたいだな。
「……って、周防?」
片手にはバスケット。もう一方は商品を選び取っている最中。
自然と周防から手を離していたようだ。
品定めを中断し、それこそファンシーな恰好をしている連れを探す。
俺の身長より低い棚を挟んだ反対側に、そいつは居た。
しゃがみ込み、何かを手に取っている。
「────」
「なんかいい物でも見つけたか?」
彼女が手の中に握っている物体。どうやら砂の詰められた、何てことない小瓶のようだ。
それが置かれてあったであろう、歯抜けになっている木箱には、こんなポップが貼られていた。
「星の砂、ね……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 23:11:13.30 ID:qG75gkwAO<>
瓶の中身を食い入るように見つめていた周防が、顔だけ俺に向ける。
「───これは───なに──?───」
彼女の傍まで行き、彼女の目線に合わせて膝を曲げた。そして、脳内の引き出しを漁りだす。
「ここに書いてあるだろ? 星の砂だよ」
「───星──」
正確には、星の砂と銘打っていても、そこいらの岩石が風化した砂とは全くの別物だ。
星の形をしたこの粒子の正体は、ざっくりと言えば虫の殻。
ロマンチックな名前に沿ぐわない、なんとも形容し難い代物さ。
かいつまんで説明してやると、周防は砂に興味を戻し、さらに質問を飛ばす。
「──どういう───意味──が──?───」
その言葉の意味をまず教えてくれ。
「あー……、なんの為に売られてるのか、って解釈でいいか?」
経験則のフィルターを通して変換した問いに、周防は肯定を示す。
「まぁ、言わばインテリアだな。ただ鑑賞するためのもんだよ」
「───どうして──?───」
おや? 珍しく食い付いてくるもんだな。
先程と同じように頭の中で意図を理解し、返事を出してやる。
「理由なんてないさ。そこにあるだけで満足するもんなんだよ、人はな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 23:13:23.13 ID:qG75gkwAO<>
理由がない、と周防は反復する。
何かひっかかるものがあるのだろうか?
「で、そいつを買うのか?」
言いながら、既に幾つか商品の入ったバスケットを見せてやると、すんなり物を放り込んだ。
宇宙生命体として、星という単語に惹かれるもんでもあったのかね。
すっくと折り曲げていた足を伸ばすと、周防は手を差し伸べた。
「もういいのか?」
それが、行こうと言う合図だと受け、確認する。
「────」
「そうかい」
淀みのない瞳から了承の意を読み取り、慣れてきた感触を再度感じ入る。
「……やっぱ小さいな」
「───?──」
口から漏れ出た感想に、彼女は俺を不思議そうに仰ぎ見た。
それだけの動作に、とても安堵を感じている自分がいる。
いやはや、おかしな話だ。
「なんでもないさ。ほら、行こうぜ」
「──うん───」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/17(木) 23:18:30.98 ID:qG75gkwAO<> ここまで
もはや一日1レスペースだなしにたい
>>124
たぶんそのSSに感化されたのが俺だ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/18(金) 00:48:58.23 ID:P+un2BnEo<> 萌えた。乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/19(土) 01:26:10.15 ID:RT/vkUDw0<> ああ……いいなこれ、すごく癒される
あと、>>124について誰か詳しく <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/23(水) 20:35:15.96 ID:2AkDXXxt0<> >>124について <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/24(木) 02:11:21.79 ID:Ino5VxgAO<> スレタイが思い出せないんだ
キョンとくーちゃんがイチャコラするだけの良SSだったんだが…
魔界統一するからしばらく投下出来そうにないスマソ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/25(金) 21:59:33.66 ID:c2lr0+cPo<> 幽白が浮かんだ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/26(土) 03:34:41.77 ID:MgabKoBEo<> 魔界統一だと・・・
ならば私は、世界に来たるべき対話を示しながら待とう <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/26(土) 23:27:23.71 ID:88dylzFa0<> >>147
俺達が、支援だ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/26(土) 23:43:31.69 ID:ZS4Vr2pqo<> 魔界統一と聞いてKCしか思いつかねぇ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/27(日) 00:33:48.54 ID:tyOpSswXo<> 海馬コーポレーション? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/01(火) 23:17:55.47 ID:nhUu/YSu0<> K→声が
C→ちっちゃい <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/02(水) 01:09:28.57 ID:Vp2rP72Jo<> KCYだろ
Kこえが
Cちっちゃい
Yよん <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/02(水) 01:32:37.89 ID:0wmnoDzpo<> IKS <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 17:54:04.41 ID:tTRn4zoz0<> I→いい
K→かげんに
S→しなさい
おあとがよろしいようで <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/03/06(日) 00:36:28.12 ID:w7eVuDLu0<> >>151から>>154のセンスに嫉妬 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/06(日) 01:37:18.81 ID:BB40PmWDO<> こんぶだかは面白かったな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/06(日) 01:44:13.34 ID:w7eVuDLu0<> こんぶ・・・・・・? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/06(日) 02:43:34.04 ID:LfeRzjVAO<> オーマイこんぶ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/06(日) 10:02:45.97 ID:cV+LQO3eo<> こんぶジャム <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/06(日) 13:21:04.05 ID:92seyQw3o<> これぞまさに
こんぶレックス <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/07(月) 15:31:46.06 ID:dwii8d3q0<> 支援 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/08(火) 03:08:38.48 ID:C+rX4JJ40<> 支援 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/08(火) 23:43:58.59 ID:C+rX4JJ40<> 支――援―――― <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/09(水) 23:53:17.73 ID:Prm9jF0v0<> 支援 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/10(木) 18:17:33.33 ID:2BQvVaMT0<> 支援せずにはいられないな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/11(金) 16:20:01.07 ID:CMH9njxs0<> 保守 <>
最新情報<>sage<>2011/03/11(金) 19:18:35.33 ID:CMH9njxs0<> くーちゃんは地震のこと理解してるんだろうか
というか、避難行動を取れるのか