◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 02:08:01.62 ID:SpQ/wWX60<>ここはとある操車場。
人気のないその場に一人佇む少女はミサカ10032号と呼ばれる個体だ。
彼女はとある実験で殺されるためだけに作られたクローンであり、
この場所は、本来その実験で彼女が命を落とすはずだった場所。
自分が殺されかけた場所に彼女がわざわざ足を運んだ理由……、
彼女自身、それがわからずにいた。

御坂妹「ミサカはなぜここにいるのでしょうか?とミサカは自分に問いかけます」

???「ククク……、知りたいかァ?」

御坂妹「!?」

振り向くとさっきまで誰もいなかったはずのそこに一人の少年が立っていた。

御坂妹「一方……通行……」

『一方通行』、その名は学園都市で最強の超能力者の能力名。
運動量、熱量、電気量などのあらゆるベクトルを観測し、変換する能力。
そして、『実験』で彼女を殺そうとした者の名でもある。<>???「ククク……、」 御坂妹「」 一方通行「」 上条「」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 02:33:23.82 ID:KJNzZNK5o<>ふむ<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 02:33:37.81 ID:yUqDQWWs0<>続けなさい<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/01/27(木) 02:37:18.95 ID:gZmEzTpf0<>どゆこと?<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 02:45:53.49 ID:SpQ/wWX60<>御坂妹「どうしてあなたがここに?とミサカは当然の疑問をぶつけます」

一方通行「簡単な話だァ。『実験が再開された』」

御坂妹「なっ!」

その一言で息が止まり、我が耳を疑った。
少年は確かに口にした。
『実験が再開された』と。
実験とはなんだ、実験が再開されるとどうなる、それが自分と"どう関係する"?
少年の言葉の意味がするところは―――。

ザッ

頭で理解するより先に身体が反応する。
即座に反転しその場から駆けだす。
何がどうなったかはわからないが、今この場から逃げなければ間違いなく死ぬことになる。
ミサカたちはもう一人だって死んでやることはできないのだから。

一方通行「愉快にケツ振って誘ってんのかァ!!」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 03:10:47.95 ID:SpQ/wWX60<>ところ変わってとある公園。
完全下校時刻を過ぎていることもあり辺りに人気はない。
唯一、無人の公演を闊歩するのは白髪の少年。
缶コーヒーが大量に入った袋をぶら下げ、杖を突きながらも悠々と歩いている。

???「ククク……、待てよ最強」

一方通行「あン?」

背後からの声に振り向くとツンツン頭の少年が立っていた。
その顔には見覚えがある。
無能力者でありながらかつて自分と対峙した男。
レベル0でありながらレベル5の自分を倒した男。

一方通行「三下ァ、俺になンか用でもあンのかァ?」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 03:38:22.95 ID:SpQ/wWX60<>上条「歯を食いしばれよ最強(さいじゃく)、俺の最弱(さいきょう)は、無茶苦茶響くぞオラァッ!」

一方通行「なっ、テメェ! いきなり何しやがる!」

振り上げられた拳が届くか否かというタイミングで
演算補助装置を能力使用モードへと操作すると
足元のベクトルを操作しバックステップで少年の攻撃を回避する。

一方通行「どういうつもりかァ知らねェが、身に覚えのないことで殴られてやるほど人間できちゃいねェぞ、おィ」

かつて自分を屠った相手を前に杖とコーヒーを投げ捨て臨戦態勢を取る。

上条「身に覚えが無いだと? まさかお前は改心したら今までのしたことが許されると思ってるんでせうか?
  お前はその力で何人の人間を傷つけてきた? 自分でもわかってるはずだ最強。
  この世でお前のことを許してくれる人間なんて一人だっていやしねえんだ。
  それでもお前が身に覚えが無いって言うのなら、まずは

  そ の ふ ざ け た 幻 想 を ぶ ち 殺 す ! 」

一方通行「上等だァ三下アァァァ!」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 04:02:23.69 ID:SpQ/wWX60<>再びところ変わってとある大通り。
少年上条当麻はタイムセールスという戦場での戦利品を片手に急ぎ帰路に就いていた。

上条「インデックスの奴、怒ってるだろうなぁ」

遅くなっちまったからなぁ、などと独りごちりながら思い浮かべるのは
現在同居中のはらぺこ少女のことである。
俺よりも小柄なくせに食べるのは俺の倍以上だし、
腹減ってたらなんだって、それこそ缶詰だって封も切らずに丸のみしかねない。
うー『怖い怖い』。

???「くくく、なんだよとうま」

上条「ヴぇ!? い、インデックス……」

どうしてこんなところにインデックスがいるんだ?
空腹に耐えきれず俺を迎えに来たのか?
っていうか今の独り言聞かれてなかったですよね?
突然現れた少女に身体が教師に悪戯が見つかった時のような緊張を覚える。

上条「インデックスさん、こんなところでどうしたんでせうか?」

禁書「ねえとうま、その手に持ってるのって何」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 04:15:49.47 ID:SpQ/wWX60<>上条「これか? これは一週間分の食料だ」

あぁ後今日のデザートのプリンも入ってるぞ、と。
少年がそう続けようとする前に少女は駆け出していた。
瞬きする程度の時間で少年が左手に持つスーパーの袋を奪い
その小さな身体に似つかわしくない大きな口へと袋の中身を盛大にぶちまけた。

上条「なっ! 馬鹿! いくら腹が減ってたからって! スチロールの容器やプラスチックやら
  それに缶詰だって入ってたのをそのまま丸呑みなんて!!!」

少年の制止も聞かずに気休めにもならない咀嚼をする少女。
『右手』に持つ残り半分の一週間分の食料を道へ置き捨て少女に駆け寄る。
そして少女に伸ばした『右手』が少女に触れた瞬間、
始めからそこには誰もいなかったかのように少女は霧のように消えてしまった。<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 06:29:36.64 ID:a5tkLqqWo<>期待<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/01/27(木) 07:19:10.62 ID:UKZI2YHDO<>朝か…>>1はさすがに寝たか<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/01/27(木) 07:38:45.64 ID:Wg+f2zqm0<>期待待機<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 08:35:21.73 ID:84wfqoW1o<>ククク…期待だ<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 10:28:34.11 ID:AbBVPv3AO<>フッ…おもしろそうじゃなイカ……<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 13:50:55.41 ID:X9Sr9cBlo<>スレタイの三人が主役かな?
なんとも不気味な導入だが流石にインデックスはギャグにしか見えないww<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 13:55:49.38 ID:zXkRU77Lo<>ワラキアの夜?を思い浮かべたのは俺だけで良い<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 15:20:20.89 ID:SpQ/wWX60<>上条「え? おい、インデックス? どこいっちまったんだよ」

禁書「何、とうま」

上条「ふぇ?」

さっきまで目の前にいたインデックスに後ろから話しかけられた?
なにがどうなってるのかわかんねえけど今はそれどころじゃない。

上条「インデックス! 今食ったもん吐き出せ! 背中さすってやるからほら早く!」

禁書「え、ちょっととうま! どうしたの、何言ってるのかわからないよ」

上条「だから今食ったビニールとか缶詰とか吐き出せって、いくら空腹だったからって」

がぶり。

禁書「ほうは〜!! いくらわはひへほふひふふはたたへないんだよ!」
 ※とうま、いくらわたしでも無機物は食べないんだよ

上条「ぎゃああああああ、痛い痛い痛いー、ごめんなさい謝りますので食べないでー!!?」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 15:37:04.24 ID:SpQ/wWX60<>禁書「とうま、少しは落ち着いてくれたかな」

上条「はい」

上条当麻はなぜか道の真ん中で正座させられ、お説教されている真っ最中です。
上条さんはただ心配だっただけなんですよ?
なのにこんな……、不幸だ。
っていうか背中に刺さる周囲の目が痛いです。

禁書「ねえとうま。とうまはさっきまでわたしと一緒にいたのかな」

上条「何言ってるんだインデックス、頭でも打って記憶喪失にでもなっちまったのか?」

禁書「真面目に答えてほしいんだよ。さっき私が『後ろから』話しかけるより前」

目の前の少女は確か記憶力だけが取り柄の大食漢だったと上条さんは記憶しているのですが、
上条さんはまたしても記憶喪失になってしまったんでせうか。

上条「後ろから? お前が話しかけてきたのは『前から』だったじゃないか。
  話しかけてきたと思ったらいきなり買い物袋を奪って容器までまるごと」

禁書「わたしはね、とうま。魔術の気配を感じてここまできたんだよ」

上条「なっ、魔術だと!?」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 15:41:58.62 ID:SpQ/wWX60<>書き溜めなしの思いつきで書いてるから視点飛びまくると思います
>>15
スレタイが主人公ってわけではないです、書き出しやすかっただけなんで
誰が主人公とは決めてないけど姫神を主人公にしたいと思ってる。思いつきだからどうなるかは・・・
>>16
カットカットカットカットオオオオーーー<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 15:47:42.85 ID:afcJ1IoVo<>まあ実は>>16思い浮かべてたけど<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 15:48:54.00 ID:X9Sr9cBlo<>>>19
なるほどー
そうなると天敵持ちキャラはいっぱいいるし色々出来そうですな
一方さんとか美琴とかにとってもトラウマだろうし<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 17:34:03.25 ID:bxXrpZR+0<>そして黒子に(性的な意味で)襲われる美琴<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 17:36:32.23 ID:NEQGPSeG0<>姫神だと・・・?俺得支援<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 20:12:53.00 ID:SpQ/wWX60<>少女は走っていた。
電気を操る自身の能力を活かし足に刺激を与え、筋肉を限界以上に酷使する。
背後から迫る恐怖からは、最初にレールが、次には巨大なコンテナが投げ飛ばされてくる。
直撃すれば間違いなく命を落とすであろうその攻撃は、寸でのところで脇に逸れていく。
これは決して運がいいのではない、奴は遊んでいる、少女は弄ばれているのだ。

一方通行「クカカカ、鬼さンこちらァ手の鳴る方へってかァ」

手近なコンテナの裏へと滑り込み追手の死角に入る。
ここで不意打ちを仕掛ける必要はない。
ただこの場から一刻も早く離れることだけを考える。
破裂しそうな心臓を押さえ息を殺し足音を忍ばせ、
万が一にも見つかるまいと操車場の外を目指す。
後ろでは、大きな――交通事故の時にでも聞くような――音が何度もしている。
奴が少女を探して手当たり次第に暴れているのだろう。
しかし、その轟音は遥か遠い。
どうやら見当違いの方へ行ってくれたようだ。
そこからはよく覚えていない。
とにかくその場から少しでも距離を置きたくてどこどう走ったか―――。
気付けば目の前には公園があった。<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/27(木) 20:13:12.74 ID:ymZpjKo3P<>そして俺得でもある。
全力で支援<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 21:07:41.54 ID:SpQ/wWX60<>それはいつか見た光景だ。
自分の価値を単価18万円の代替可能な実験材料として見ていなかった頃、
あの日、少女が殺されるはずだった日の出来事。
学園都市最強と呼ばれる超能力者に右手一本で立ち向かったヒーロー。
あの時の光景が再び目の前で繰り広げられている。

御坂妹「これは夢……白昼夢という奴でしょうか」

これが夢だとしたらとびっきりの悪夢だ。
わからないことだらけの現実に思わず吐き気を覚える。

御坂妹「情報があまりに不足しすぎています。ミサカはミサカネットワークを通じて上位個体に説明を……っ!?」

繋がらない。
クローンであるミサカたちは脳波リンクによってミサカネットワークを通じ、
他のクローンたちと意識を共有することができる。
クローンの数は1万人規模であり、その誰とも繋がらないというのはほぼありえない。

御坂妹「状況が何一つとして理解できませんが……」

少女は立ちあがる。
わからないことは数え上げればキリがないが、わかってることが一つだけある。

御坂妹「命の恩人が戦っているのを見過ごすわけにはいきません、とミサカは自身を鼓舞し奮い立たせます」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/27(木) 21:35:24.54 ID:SpQ/wWX60<>一方通行「確かに俺は悪党だァ。俺を恨んでる奴なンて星の数ほどいるだろうな。
  だけど、それとこれとテメェがどう関係するってンだ三下ァアアアー!!」

右足を振り上げベクトルを操作して地面に叩きつける。
コンクリートは捲れあがり破片が凄まじいスピードで発射される。
対峙した目の前の少年はその全てを横っ跳びでかわす。

上条「おぉっと、危ない危ない」

少年は額の汗をぬぐう動作をするが焦る様子はない。

一方通行「すかしてンじゃねェぞ三下風情があああ」

これ見よがしな挑発に頭に血を上らせた一方通行は少年との距離を一息で0にする。
狙うのは頭、血流操作ではなく脳波を乱し昏倒させるつもりだ。
しかしその行動は少年にとっては願ってもないもの。
半歩下がり一方通行の掌底をかわすと同時に自身の拳を顔面にカウンターとして叩きこむ。

一方通行「ガァッ!」

上条「なんだよ今の声、烏でももっと綺麗な声で鳴くぞ」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 00:00:46.55 ID:tTZfZ4S10<>一方通行「やめだやめだァ、気絶させてことを収めようなンざ俺の性格的にありえねェだろォ。
  テメェが本気ってのはよォくわかった、両手両脚引き千切ったうえで生かしてやる!
  後で殺してくれって頼んだって手遅れだァ!!」

そう言い放つと一方通行は高く大きく跳躍して薄暗い公園を照らす一本の電灯に着地する。

一方通行「この間は邪魔が入ったが今度は誰も助けちゃくれねェぞ三下ァ」

手の平を真上に掲げるとそこに小さな光が点る。
大気のベクトルを操作し圧縮された空気がプラズマを発生させる。
わずか数秒で光の玉は大きく膨れ上がり電灯の光が霞むほどの輝きを見せる。
が、ツンツン頭の少年は動かない。
一方通行を殴り倒した位置からニヤニヤと厭らしい笑いを浮かべ光の玉を観察している。
余裕ともとれるその行動に一方通行の頭を一抹の不安がよぎる。
あの右腕は一方通行にとってブラックボックスそのもの、何が起こるかは予想ができない。
その一瞬の気の迷いから周囲への警戒が薄れた瞬間、

カァン!

と背後から何かを弾くような高い音が聞こえてきた。
振り向けばそこにあったのは自身に向かい飛翔する、その音の通りの空き缶。
そしてその宙を舞う空き缶を結び延長線上に立つ一人の少女。
一方通行が相手の顔を視認した次の瞬間、
少女の手から放たれた青い電撃が一方通行に襲いかかる。

一方通行(プラズマの演算中に反射の演算までする余裕はねェ。何より……)

一方通行がプラズマの演算を中断し新たに電流のベクトル演算を終えたのと
空き缶を避雷針として電撃が一方通行に直撃したのはほぼ同時。
一方通行が行った演算は反射ではなく上方へのベクトル変換、
電撃は真上に飛び四散して消えた。

御坂妹「ミサカたちはもう一人だって死んでやれません。ですが、
  ミサカは恩人を襲うあなたを見過ごすこともできません!」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 01:00:11.24 ID:tTZfZ4S10<>一方通行「どんな厄日だよォこりゃァ」

ツンツン頭の少年を警戒しつつ電灯から飛び降りると、
ゆっくりと歩き自分で投げた杖を拾うと装置を通常モードへと操作する。
少年はその行動をつまらなそうに、少女は警戒した様子で見据えている。

一方通行「先に言っとくがなァ、いきなり殴りかかってきやがったのはあの三下の方だァ」

御坂妹「それは再開された実験を止めるためでしょう、とミサカは警戒を解かずに反論します」

一方通行「実験再開だァ? それは絶対能力進化計画のことォ言ってンのかァ? そンな話俺は聞いてねェぞ」

御坂妹「実験が再開されたと口にしたのはあなたですよ。とミサカはやはり警戒を解かずにさらに反論します」

一方通行「はァ、俺がァ一体いつゥどこでェ、何時何分何秒にそンなこと言ったってンですかァ」

御坂妹「つい先ほど、操車場で、ミサカを襲いながらあなたがそう言いました。とミサカはあなたの子供染みた発言に怒りという感情を強く感じながら答えます」

一方通行「俺だってコんビニでコォヒィ買ってその帰りに、ってお前よく見りゃァ傷だらけじゃねェか!」

御坂妹「近付かないで下さい、ミサカはあなたを信用していません。とミサカはあなたに警告します」

一方通行「チッ、すみませンー、お前がそう言うンなら近付かねェよォ」<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 01:18:21.47 ID:UguOiOgMP<>クククはオリジナルと同じ能力を使えるのか<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 02:10:27.95 ID:tTZfZ4S10<>一方通行「おい三下ァ、お前はなンか知ってンのかァ」

見た目から命に別状はないと判断しその矛先を先の少年へ戻す。

一方通行「実験だなンだってのォ、俺は聞かされてねェんだが」

殴りかかってきたということは相応の理由があるということ。
仮にもヒーローが顔見てムカついたなんて理由で殴りかかってくるとは考えにくい。
自分が知らないだけで、実験は本当に再開しているんではないか、
正直なところ、少年が口を開くのを待つ間、一方通行は気が気ではなかった。

上条「白髪のお爺さんが杖突いて重そうな荷物持ってたから
  優しい上条さんはとりあえず力いっぱい顔面ぶん殴らないと気が済まなかっただけのことですよ」

だから、こんなふざけた返答を頭で理解するのにたっぷり10秒もかかってしまった。
少女もその言葉を聞き、信じられないものを見た時のようなぽかんとした顔をしてしまっている。

上条「なんだ反応なしか? まぁどちらにしろ今日はもう限界だしな。
  じゃあそういうことで、またなサイジャク」

一方通行がふざけた内容(挑発)を理解しブチ切れるよりわずかに早く、
少年は歯切れの悪い捨て台詞を残して文字通り霧のように消えてしまった。
そして公園に残された男女二人に気まずい空気が流れる。<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 04:11:05.43 ID:tTZfZ4S10<>一方通行(おィおィ、こいつと二人きりで何話せって言うんですかァ)

一方通行が黙ってこのままいなくなろうかと考えた頃、口を開いたのは少女からだった。

御坂妹「……一方通行、あなたは本当にミサカに襲いかかっていないのですか?とミサカはもう一度確認します」

一方通行「あァ、俺はお前と同じ顔した奴に二度と手をあげたりしねェ、そう誓ったンだ。
  信用できねェ、今ここで殺すって言うンなら俺はァそれでもいいと思ってる」

心残りがあるとすりゃァ、10031回殺されてやれないことだァ。
そう付け加えた時の一方通行の顔は、ひどく哀愁が漂っているように見えた。

御坂妹「そうですか。では、ミサカはあなたのことを信用することにします。とミサカは最終的な決断を下します」

甘い奴だ。口にこそ出さなかったが口元が緩んでいたらしく、
実験に関してはミサカにも責任がありましたので、と気を使わせてしまった。

禁書「とうまー、気配はこっちの方からするんだよ、急いで」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 06:25:48.61 ID:tTZfZ4S10<>上条「先に行くなってインデックス、魔術なら上条さんが前の方が安全だろ」

公園に現れた二人の訪問者。
一人目は科学の街学園都市には似つかわしくない修道女の恰好をした、まだ幼さを感じる少女。
そして二人目は、

一方通行「三下アアアアアアアアアアア!!!?」

公園に入ると同時にいきなり三下呼ばわりされ、聞き覚えのある声に身体を強張らせる少年上条当麻。

上条「わっ、一方通行!?」

一方通行「テメェ、さっきはよくも俺のことォ散々馬鹿にしてくれたなァ。
  それだけじゃねェな、殴られた左頬の礼も」

上条「御坂妹も一緒なのか……ってその怪我どうしたんだ! まさか一方通行にやられたのか?」

御坂妹「ええ、まあ、確かにその通りなのですが、とミサカはどう答えていいものか迷い曖昧な回答を返します」

一方通行「おィ聞けよ三下ァ」

上条「実験は終わったんじゃなかったのかよ、ふざけんじゃねえぞ!
  どんな理由があったか知らねえけどなあ、どんな理由であっても御坂妹を傷付けていいなんてことにはならねえんだよ。
  一方通行、お前が御坂妹を苦しめるって言うのなら、まずは
  そ の ふ ざ け た 幻 想 を ぶ ち 殺 す ! 」

べちーん!

一方通行「ぐふゥ」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 06:28:57.57 ID:tTZfZ4S10<>この上条さん駄目だわ、完全にギャグ担当路線。
思いつきで始めたけどこれ完結すんのかな・・・<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 06:41:29.52 ID:UguOiOgMP<>完結させないと許さない。<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 09:26:56.67 ID:ll8d9bLDO<>この一方さんはキレていいと思うww<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 09:48:06.31 ID:mZRypav40<>あきらめるんならグダグダになる前にな。
面白い出だしだから、もったいない。<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 10:58:46.35 ID:FA6QghLIO<>これってなんか元ネタあるん?<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 15:30:00.17 ID:tTZfZ4S10<>スレ一つほっぽりだして始めたからなぁ
かなり不定期になると思うけど最後までやり遂げたいと思う
>>38
今んとこ黙秘、クロスなんだけど設定だけにするかキャラも出すか悩んでるとこ<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 16:18:12.56 ID:tTZfZ4S10<>御坂妹「かくかくしかじか、というわけです。とミサカは古典的な簡略説明をします」

一方通行「でェ、三下くンはァ、何か言うことがあるンじゃないンですかァ」

上条「あ、あははー。いやぁそのですねぇ、咄嗟のことで気が動転していたといいますか」

一方通行「ァン!?」

上条「すみませんでした、一方通行様ー!!」

上条当麻が勢い勇み一方通行にワンパン喰らわせた後、
すぐに御坂妹が仲介に入り状況の説明をし今に至る。

上条「一応弁解しておくけど、最初に殴りかかった俺は俺じゃないから」

一方通行「おゥ、それはなンとなくわかってるゥ。
  最初に殴りかかってきた奴もムカつく野郎だったがァ、テメェはその数倍ムカついた」

上条「すみませんでしたー!」

御坂妹「ですが、ミサカを襲った一方通行や、一方通行を襲った偽物のあなたは誰だったのでしょうか?
  もしや、ミサカのようなクローンだったりするのでしょうか?とミサカは自分の誕生理由を思い出し身震いします」

一方通行「さすがにィそれはないだろォ、俺はDNAマップを提供した覚えなんかねェしィ、
  さっきの偽の三下は霧のように消えちまったァ、科学的なクローンよりも
  オカルト的なドッペルゲンガーって言われた方がァしっくりくらァ」

ドッペルゲンガーとは、ドイツ語で「生きている人間の霊的な生き写し」を意味する。
その者の寿命が尽きる前触れだとか、本人が出会うと殺されて入れ替わられるなど
様々な伝承があるが、この場合「非科学的な存在」というニュアンスで言ったことだろう。

上条「それについてなんだが、一応の心当たりがある」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 17:24:56.01 ID:tTZfZ4S10<>禁書「ようやくわたしの出番なんだよ」

一方通行「そういやこのシスターさンはなンなンですかァ」

禁書「わたしの名前はいんでっくすって言うんだよ、よろしくねあくせられーた」

一方通行「はいよろしくゥー」

禁書「そっぽ向いてよろしくする気なんてこれっぽっちもないみたいなんだよ、とうま!?」

上条「そいつはそう言う奴だから。とりあえず話進めちゃって下さい」

禁書「むぅ、わかったんだよ。
  あくせられーたと妹の短髪が会ったのは魔術で作られた『噂』なんだよ」

一方通行「魔術だァ? いきなりわけわかンねェ単語が出てきたぞおィ」

禁書「うーん、詳しく説明すると長くなっちゃうから今はそういう世界があるってことで納得してほしいかも」

御坂妹「わかりました、続けて下さい。とミサカは話の続きを促します」<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 17:28:36.97 ID:2QzbPGYNo<>御坂妹に対するインデックスからの呼称は「クールビューティー」ね<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 17:54:06.36 ID:jpEm/WPbo<>インさんと一方さんは面識あるぞ
次の次あたりの放映回で来そうだから内容はいわないけど<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 18:14:02.23 ID:tTZfZ4S10<>一方通行は出だしから荒唐無稽な話だと感じていたが話の続きはさらにその上をいくものだった。
今この街全体が魔術の儀式場になっている、だとか
噂を媒介にして世界に顕現する御使堕しの術式に近いかも、だとか
挙句に詳しくはわからないからまだ推測だけどときたもんだ。

一方通行「つまり俺とこいつが出会ったのは噂が形になったものでェ、
  それぞれ苦手意識を持ってる相手が現れたって言うのかァ?
  馬鹿馬鹿しィにもほどがあンぞ、それならまだ立体映像とかのが信憑性あらァ」

禁書「科学のことはよくわからないけど、その立体映像っていうのは人を殴れるのかな」

一方通行「そりゃァ……無理だ、けどよォ」

御坂妹「一方通行、にわかには信じがたいですが、あなたの反射を無効化したのは事実です。
  ある程度は許容し歩み寄ることも大切です。とミサカは順応性の高さを見せつけます。
  それに……」

一方通行「それに、なんだよ?」

御坂妹「噂というのであれば心当たりがあります。正確には都市伝説なのですが……」

曰く、風力発電のプロペラが逆回転するとき、街に異変が起きる!
曰く、使うだけで能力が上がる道具レベルアッパー!
曰く、どんな能力も効かない能力を持つ男。

御坂妹「学園都市最強の第一位に関する噂は腐るほどあります。
  とミサカは復活したミサカネットワークを駆使しいくつかの都市伝説をピックアップします」

上条「その『どんな能力も効かない能力を持つ男』ってもしかして上条さんことでせうか」

御坂妹「恐らくですが」

禁書「少しは信じてくれたかな、あくせられーた」

一方通行「ちっ、少しだけな」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 18:16:07.00 ID:tTZfZ4S10<>>>42-43
マジかぁ・・・そういやスフィンクスのノミ取りとかやってたな
次から修正するんで上は脳内補完でお願いします<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 18:41:52.96 ID:tTZfZ4S10<>上条「俺も、その都市伝説って奴に会ってるんだけど」

一方通行「あン? 聞いてねえぞそンな話ィ」

上条「悪い、言いそびれてた」

一方通行「で、テメェはどんな都市伝説と出くわしたってンだ?」

上条「都市伝説かどうかわかんねえんだが、俺が会ったのはこのインデックスなんだ。
  つっても出会っていきなり3日分の食料を一口で食われただけなんだが」

禁書「失礼な話なんだよ。だいたい、わたしはここにきて日が浅いから都市伝説になんて」

御坂妹「ありました」

禁書「へ?」

曰く、学園都市全てのバイキング店を潰して回った白衣のブラックホール。

一方通行「何? こいつこの小さいなりで無茶苦茶食うンですかァ?」

上条「余裕で俺の倍以上、容器まで一緒に食べてなければ違和感なかったと思う」

禁書「くーるびゅーてぃーってばひどいんだよ!」

御坂妹「ミサカが流布したわけではありません。とミサカはミサカに否はないと言い張ります」

禁書「ゔ〜〜〜、とーうーまー!!!」

上条「え!? ちょっ、何で俺ー!!? ふ……不幸だああああああああ」


とある魔術のタタリの夜に。第一夜完。<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 18:45:53.66 ID:2QzbPGYNo<>メルブラか
学園都市だと都市伝説の溢れ具合酷いからなぁ・・・<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 18:47:27.54 ID:R1cqiPnIo<>これはいい、凄くいい組み合わせだ、期待sage<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/28(金) 18:49:00.68 ID:tTZfZ4S10<>というわけで、禁書×メルブラです。
時系列的には法の書と残骸編の間ぐらい、
オルソラと黒子を自由に動かそうと思うとこの時期しかないんで。
現在メルブラ勢を登場させるかどうか悩み中。<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/28(金) 19:49:27.45 ID:UguOiOgMP<>メルブラ読んでない俺はペルソナ2かと思ったぜ。<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/29(土) 03:55:39.01 ID:776mrtoT0<>その後、あらかたの情報交換を終えた4人は
インデックスがより詳しい人間に話を聞くということで
その日は解散することになった。

そして翌日、ファミレスにて――――。

禁書「『タタリ』、それがこの街で行われている魔術儀式の名前なんだよ」

インデックスが店に到着したときにはすでに一方通行、御坂妹が席についており、
補習で遅れていた上条当麻が今しがた到着しようやく話が始められた。

禁書「この魔術はとっても特殊なんだよ。
  タタリは限定された区画での強い不安感や一般性を持つ噂を具現化する呪い。
  これはね、専門用語になるんだけど固有結界って言ってとても高度な魔術なんだよ」

昨晩――――。

オルソラ『それは間違いなく“タタリ”でございましょう』

禁書「タタリ? わたしの頭の中の魔導書にも載ってないし聞いたこともないんだよ」

オルソラ『それもそのはず、元を辿ればアトラス院がからんでくるのでございます』

禁書「アトラスって錬金術で有名な?」

オルソラ『そうでございます。あそこの方々は何かと秘密主義なものですので、
  詳しいこととなりますと最大主教や一部の専門機関に属する者しか……』

禁書「それでも知ってることには知ってるんだよね?
  ならどんな小さなことでもいいから教えて欲しいんだよ、オルソラ」<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/29(土) 04:15:28.88 ID:776mrtoT0<>オルソラ『まず、タタリと言うのは限られた区画で行われる呪いなのでございます。
  そしてその区画に住まう人々の強い不安感や一般性を持つ噂に形を与え具現化する、
  それは一種の固有結界と考えてもらっても差し支えないものでありましょう』

禁書「ちょっと待ってほしいんだよ! 今、固有結界って」

オルソラ『はい。ご存じでしょうが固有結界は術者を中心とする心象世界を
  “現実と異なる現実”としてカタチを与える高度な術式でございます』

禁書「……」

オルソラ『インデックスさん』

禁書「大丈夫なんだよ、続けて欲しいかも」

オルソラ『わかりました。先ほど、噂を具現化すると申しましたが
  噂の大本が存在する場合がとても厄介だと伺っているのでございます。
  なぜならタタリは噂の元となった存在と同じ力を奮うのでございます。
  そして、観測者に影響され元となった存在以上の力を発揮することもあるそうなのでございます』

禁書「例えば当麻のタタリが現れたとして、その当麻が魔術を使うこともあるってこと?」

オルソラ『実際には、それを強く信じそのことに畏怖を覚えた場合と条件が付くのでございますが、
  逆を言えば、条件をクリアすれば容易に起こりえるとお考え下さいませ』<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/01/29(土) 04:31:05.89 ID:776mrtoT0<>オルソラ『シェリーさんがいらっしゃればもう少し詳しい話もお聞きできたのですが』

禁書「シェリーならタタリのこと詳しく知ってるの? 今どこにいるのかな」

オルソラ『今お話しした内容は全てシェリーさんにお聞きしたものなのでございますよ。
  ですが、シェリーさんはただいま外出中でして、明日には戻ると思うのですが』

禁書「そっかぁ、シェリーが帰ったらすぐに連絡欲しいかも」

オルソラ『承知いたしました。わたくしは少しはお役に立てたのでございましょうか」

禁書「うん、とっても。ありがとうなんだよオルソラ」

オルソラ『それはよかったのでございます。では、おやすみなさいインデックスさん』

禁書「おやすみなんだよオルソラ」

――――――――

禁書「今わかってるのはこのぐらいかも」

インデックスが昨晩電話でオルソラと話した内容をそのまま伝える。
異教の話を聞き終え最初に口を開いたのは一方通行だった。

一方通行「魔術なンてわけわかンねェこと言いやがって、
  要するにちょっと規模がでけェ自分だけの現実(パーソナルリアリティ)じゃねェかァ」<>
◆tVP11EVtkPKg<><>2011/01/29(土) 22:38:11.26 ID:776mrtoT0<> 禁書「む、わかったような口ぶりだけど魔術が軽く見られてるみたいでちょっと嫌かも」

一方通行「俺たちが使う超能力ってのはァ起こりえないことをォ起こりえると思いこむことで発現するんだァ。
  その固有結界ってのはまさに超能力そのものじゃねェかァ」

禁書「うーん、確かにあくせられーたの言うことも一理あるかも。
  でもこの場合、固有結界が超能力に似てるんじゃなくて超能力が固有結界に」

上条「その辺の原理的な話は置いといて、ぶっちゃけこの後どうするんだ?
  敵の目的もどこにいるかもわからないし、どう動くつもりなんだ」

一方通行「そもそも俺たちが動く必要なンてあンのかァ?
  こういうことはジャッジメントやアンチスキルに任せときゃいいンじゃねェのか?」

禁書「魔術に詳しくないこの街のたちじゃ対抗するのはかなり難しいと思うんだよ。
  それにもしわたしたちの噂が勝手に暴れて誰かを傷付けたりしたらとても困るんだよ」

一方通行「それはそうだがァ……」

インデックスの言葉に何か思うところがあるのか口ごもる一方通行。
しばらく視線が宙を泳いだ後隣の席に座る御坂妹の方でぴたりと止まる。

御坂妹「?」

一方通行「はァ、とりあえず俺たちでどうにかするしかないってことかァ。
  学園都市最強の俺がいるんだァ、どんな都市伝説が相手でも関係ねェ。
  もし俺の都市伝説が現れたとしてもテメェの右手ならなんとか、って
  三下は何ニヤニヤしてやがるんですかァ!?」

上条「一方通行もずいぶんと丸くなったなぁって思って」

一方通行「あァ? どォやら三下くンは愉快なオブジェにされてェよォだなァ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/29(土) 23:12:59.94 ID:ebH3Nzpto<> 期待してるぜい <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 00:09:00.31 ID:SkLWw42t0<> ???「ちょっとアンタたち!」

一触即発とまではいかないまでも、倦厭なムードが漂うファミレス店の隅の一角に
好んで近づき、なおかつ話しかけるような奇特な人間がどこにいるだろう。
ましてや、学園都市最強と謳われる一方通行がその中に含まれているわけで
彼を彼であると知りつつ話しかける者などごくごく限られている。

御坂妹「こんにちはお姉様、とミサカはごく自然な対応をします」

一方通行「なんだァ第三位か」

禁書「なんだ短髪か」

上条「なんだビリビリか」

美琴「なんだとはなんだああああ、あとビリビリって言うなぁッ!」

四者四様の反応(うち三人からぞんざいな扱い)に
ビリビリと全身から放電して怒りをあらわにする少女、
彼女の名前は御坂美琴、学園都市第三位の電撃使い(エレクトロマスター)である。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 01:49:52.98 ID:SkLWw42t0<> 美琴「っていうかこの面子はありえないから、なんかもういろいろと。
  ねぇあたしの話聞いてる?」

作戦会議なう――――。

上条(御坂に見つかっちまたったけどどうする?
  こいつもレベル5だし味方に居れば心強いと思うが)

御坂妹(今回の件にお姉様は無関係です。あまり心配させたくありませんし、
  できれば何事もなく日常を過ごしていてもらいたいです)

一方通行(戦力的には俺一人いりゃァ十分だ、無理に誘う必要はねェ)

禁書(あくせられーたがそう言うのなら、わたしはどっちでもいいんだよ)

誘う1票、誘わない2票、無効票1票


上条「というわけでだな御坂」

美琴「何が『というわけ』なのかわかんないんだけど」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 02:18:30.57 ID:SkLWw42t0<> 上条「俺たち、さっきそこで偶然ばったり遭遇してな」

御坂妹「そうです、偶然にも食パンを咥えて走っていたら曲がり角で一方通行にぶつかってしまって、
  とミサカはついさっきそこであったことを説明します」

一方通行「おィ、なんだァその超設定はァ」

上条「それで一方通行が腹減ってるなら飯奢るって言い出してな」

一方通行「オイィィィ、さりげなく何言っちゃってるンですか三下ァァ」

禁書「ごはん!!」

上条「インデックスは黙ってなさい。
  夏休みにいろいろあったしその罪滅ぼし的なー、だよな?」

美琴「……。本当なの? 一方通行」

一方通行「ちっ。……本当ですゥ。別に飯奢ったぐらいで罪滅ぼしになるなンて思ってねェし」

美琴「当たり前でしょっ! アンタがやったことは」

上条「御坂落ちつけ。気持ちはわかるがそれは御坂妹たちと一方通行の問題だ。
  俺たちが口を出すことじゃない。例えオリジナルのお前でも、な」

美琴「それは……そうだけど。その……悪かったわ」

一方通行「別にィ、気にしてませンー」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 02:36:08.44 ID:SkLWw42t0<> 上条「そうだ、せっかくだしお前も一緒にどうだ? いいだろ、一方通行」

一方通行「勝手にしろォー」

上条「いいってよ。ほら、隣座れよ」

美琴「え! ちょ、アンタの隣!?」

上条「もしかして門限か? 常盤台ってお嬢様学校だし厳しいか」

美琴「いや、別にそんなこと、ないんだけど。じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」

上条「ほら、インデックス。今日は一方通行の奢りだから好きなもの選んでいいぞ」

禁書「い、いいのかな、あくせられーた?」

一方通行「ガキが気ィ使うンじゃねェよ、好きなもン好きなだけ頼めェ」

この時、一方通行は忘れていた。
白衣のブラックホールの都市伝説を。
その都市伝説は確かに実在するものだったのだ。

禁書「ありがとうなんだよ。じゃあ、このページとこのページの料理全部持ってきてほしいんだよ」

一方通行「」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 02:42:26.21 ID:SkLWw42t0<> なんかもう一方通行さんが不憫で不憫で・・・書いてるの俺だけどさ
不定期更新よりある程度書き溜めてからの方がいいのかな
第二夜はずっとこの調子だけど意見あったら第三夜から変わるかも(ネムイ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/30(日) 02:43:26.19 ID:QvDt2Bj+o<> 噂が強化されるw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/30(日) 02:47:00.73 ID:QvDt2Bj+o<> 俺は不定期更新でも構わない
美琴は可愛いけど出たら出たでツンデレ台詞の分だけで相当話の進行が遅くなりがちだから用途をシッカリして欲しい乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/30(日) 02:50:43.16 ID:N8jPWNO3o<> シリアスモードになれば美琴の冷静さと調整力は進行にかなり有効になるんだけどな
排除方向ならギャグ要員でしかないから進行の邪魔になりがちなのは仕方ないぜよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/30(日) 12:05:33.78 ID:QwCXzMJHo<> インドッペルに食いつぶされる一方さんか…… <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 14:16:31.34 ID:SkLWw42t0<> 美琴は第一幕では出番少なめな予定、第二幕で頑張ってもらおう <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 14:55:14.69 ID:SkLWw42t0<> 一方通行「別によォ、金に困ってるわけじゃねェンだが」

上条「話の流れとはいえ、悪かったな一方通行」

禁書「ごちそうさまなんだよ、あくせられーた」

御坂妹「ありがとうございました。とミサカは素直にお礼を言われて頂きます」

一方通行「不幸だァ」

上条「ちょっ、それ俺のセリフ!」

御坂美琴を含めた五人での食事を終え、美琴に勘繰られないように一度別々に別れた後、
四人は改めて昨日の公園に集合していた。

上条「たしか、俺たちで何とかするってとこまで決まったんだったな」

御坂妹「はい。ですが、敵の居場所が分かりません。とミサカは一番の問題点を議題に挙げます」

禁書「一応、今日の午前中に街の中を見回ってみたんだけど、
  魔力は街中にまんべんなく滞っていて核みたいなものは見つからなかったんだよ」

一方通行「じゃァ、完全にお手上げってことかァ。なンか手はねェのかよ」

禁書「正直今は連絡待ちかも。せめて相手の目的とかわかってたらいんだけど」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/30(日) 15:23:36.52 ID:SkLWw42t0<> 上条「都市伝説を具現化する大規模魔術、そこにどんな意味があるのか」

一方通行「意味も何も、完全にテロ行為じゃねェか。ンなもん考えるまでもねェ」

上条「テロ……」

上条当麻が過去に戦った魔術師の中に、科学サイドと魔術サイドで戦争を引き起こそうとした者がいた。
『彼女』は友を失った悲しみから事件を起こしたが
上条当麻らの活躍により拿捕されイギリス協会に引き渡されたのだった。
そして今、インデックスが電話を待ちわびている相手こそ、
皮肉なことにも件の人物シェリー=クロムウェルである。

禁書「だから今のところは都市伝説が具現化しそうなところを周って
  被害者が出ないようにわたしたちで叩くことしかできないんだよ」

インデックスの発言により、今後の方針が決まりかけた、その時だ。

♪マヨラー、その手を引く者などいない♪

上条「おぉっと、悪い俺の携帯だ」

禁書「もしかしてシェリーから?」

上条「違う、非通知だ。とりあえず出てみる」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/30(日) 19:19:28.88 ID:TYvNIG6lo<> 続き楽しみ! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 01:09:39.32 ID:FqwtaHZr0<> 上条「もしもし、どちら様?」

携帯『私よ、シェリー=クロムウェル。連絡くれって言ってたのはそっちなんだろ』

上条「シェリーか、何で非通知で」

携帯『早速だけどさぁ、近くに鉄橋ってない?』

上条「ぇ、鉄橋? 鉄橋なら何でもいいのか? 少し歩くけど」

携帯『あるのね、じゃあとにかくそこに向かいな。
  こっちはまだ調べ物があるから、一時間後にまた電話するわ」

上条「お、おい、シェリー! どういう」

携帯『ツー、ツー、ツー……』

上条「……。話聞かねーやつだな」

一方通行「でェ、俺たちゃァ鉄橋に向かえばいいのかァ」

上条「ああ、聞いてたか。なんかわかんねーけどとにかく行けって。
  それと調べ物が残ってるらしくて一時間後にまた電話するってよ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 01:53:15.13 ID:FqwtaHZr0<> 上条たちがいた公園から一番近くの鉄橋まで徒歩でおよそ二十分程度の距離。
足を悪くする一方通行のことを考えるとバスでの移動が好ましいのだが、
生憎と完全下校時刻間際のため運行しているバスはなく、やはり歩いて向かうことになった。
どうせ、シェリーが次に連絡をくれるのは一時間後だ。
急げとは言われなかったし、次に電話がかかってくるまでに到着すればいいだろうということで
一方通行を気遣い、上条たちはゆっくり三十分かけて目的地に到着した。

鉄橋――――。

上条「やっと着いたな。シェリーとの電話からまだ三十分しか経ってないし休憩にするか」

御坂妹「できれば自動販売機でもあれば喉を潤せるですが、
  とミサカは周囲を見回しつつやっぱり無いなぁと気を落とします」

一方通行「うぜェ、その遠まわしな優しさが吐き気がするほどうぜェよクソッたれ」

上条「いえいえ、単純に上条さんが疲れたから休憩したいなーと思って」

御坂妹「そうです、ミサカもミサカが喉が渇いたから自動販売機を探しているわけであって、
  決して夕食をご馳走してくれたお返しとか昨晩泊めて頂いたお礼に優しくしてあげ」

一方通行「ワァァァ―! テメェ黙ってろっつったろォがァ」

上条「え、何? お前昨日、御坂妹を泊めたわけ?」

一方通行「ばっ、ちげェし、三下が思ってるようなことァ何もねェよ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 02:41:48.75 ID:FqwtaHZr0<> 御坂妹「ミサカネットワークの不調について上位個体に報告があったため
  一方通行の居候先に向かったのですが、夜も遅いということで帰り際に家人に引きとめられ、
  そのまま泊めて頂くことなったのです。とミサカは決して不純なことはなかったと
  誤解を解くと同時に一途なミサカをさりげなくアピールします」

上条「ミサカネットワークの不調?」

上位個体とか居候先とか気になる単語があった気もするのですが、
とりあえず重要そうな話を先でお願いします。
後も先もねェよ、テメェには関係ないことだァ。

御坂妹「詳しくは話していませんでしたが、一方通行と偽のあなたが戦っていた間のことです。
  状況の把握にミサカネットワークを通じて他のミサカと連絡を取ろうとしたのですが
  なぜかどのミサカとも連絡が取れなかったのです。とミサカは昨夜のことを克明に語ります」

禁書「なんだかよくわからないけど、みさかねっとわーくってのが使えないのは異常なことなの?」

御坂妹「はい、詳しい説明は省きますが学園都市内でそのような場所はほぼ皆無ですし、
  一時的だったとはいえ考えられない事態です。とミサカはいかに深刻かを熱弁を振います」

上条「それで、その上位個体ってのに会って原因はわかったのか」

御坂妹「残念なことに原因は不明なのですが、その時刻に上位個体や他のミサカは
  ミサカネットワークが繋がらないといったことにはなっていなかったようなのです」

上条「というと?」

御坂妹「憶測ですが偽物が現れている間、その辺りは電波などが遮断されるのではないかとミサカはそう考えています」

偽物が消えると同時にミサカネットワークが通じるようになったのもそう考える一因です、と付け加えた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 03:03:12.15 ID:FqwtaHZr0<> 御坂妹の憶測が正しいとすれば、敵の発見に役立つのではないだろうか。
少なくとも不意打ちを食らうようなことはないし、これは大きなアドバンテージになるのでは、
などと上条当麻がいろいろ考えていたところへその思考を中断する音が鳴り響く。

♪マヨラー、その手を引く者などいない♪

上条「電話だ。少し早い気がするがシェリーからか、な!?」

携帯を取り出し、着信相手にそれと時刻を確認して上条当麻は愕然とする。

禁書「どうしたのとうま、誰から?」

上条「また非通知だ……」

そんなことよりも。

上条「圏外ってどういうことだよ」

上条当麻の発言に皆が息を飲む。
圏外の携帯電話に電話がかかってくることなどあるわけがない。
考えられることがあるとすれば表示画面の故障。
もし、そうでないとすれば。
思考する間も上条当麻の携帯は緊張感のない着信音を垂れ流し続ける。

上条「御坂妹、今ミサカネットワークは繋がるか?」

御坂妹「!? いえ、繋がりません!」

それはつまり。

携帯『いい加減電話に出ろよ、クソやろー』

その電話は、通話ボタンを押してもいないのに繋がった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 03:39:21.15 ID:FqwtaHZr0<> 携帯『それにしてもこの街はいいわね、日が落ちて間もないっていうのにこんな簡単に具現化できちゃう。
  何より、開演まではまだ時間があるっていうのが素晴らしいわ」

携帯から聞こえてくる音声はシェリーのもの。
勝手に拡声ボタンが押されておりその声はその場にいる者全員が聞いていた。

上条「お前は誰だ」

携帯『誰ってさっき名乗ったじゃない、シェリー=クロムウェルだって』

上条「茶番はいい、姿を現わせ魔術師!!」

携帯『魔術師? くっくっく、あっはっはっはー!」

上条「何がおかしいってんだ!?」

携帯『そのような侮辱は初めてだよ、“人間”」

キラッ、どごおぉぉぉぉぉん……

視界の外で微かな光。そして次の瞬間に着弾し轟音が鳴り響く。
着弾地点は上条たちの約三十メートル前方、粉煙は未だ立ち昇っている。
正体不明の攻撃に上条たちは身構える。
こちらへ向かってくるゆっくりとした足音。
そして粉煙の中から現れた人物、それは『御坂美琴』その人だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<><>2011/01/31(月) 03:59:57.44 ID:FqwtaHZr0<> シェリーの口調がわかンねェ・・・
もしかするとしばらく書き込みないかも、多分ないと思うけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/31(月) 14:42:33.93 ID:jQutGWD/o<> シェリー「キラッ☆」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 23:07:02.70 ID:FqwtaHZr0<> 上条「げ、御坂!? ってことは今のはレールガンかよ。
  ハブにしたこと怒ってんのか! マテ、オチツケ、とりあえず話し合おう!」

御坂「うるさい! 死ね!」

御坂美琴は拒絶の言葉と右手を振り上げ強力な電撃を放ってくる。

上条「インデックス下がってろ!」

反射的に右手をかざし幻想殺しで攻撃を受け止める。

御坂「ほんとにうっとうしい右腕ね、やっぱり今後の障害にならないように切り落としといたほうがいいかな」

上条「何物騒なこと言ってるでせうか!?」

半ば涙ぐむように叫ぶ上条当麻をよそに御坂美琴はポケットから一枚のコインを取り出す。
それは、彼女の代名詞でもある必殺の一撃の予備動作に他ならない。
御坂と上条の距離は約二十五メートル。
コインが弾かれる前にそこまで到達できるかは一瞬躊躇するほど微妙な距離。
そして上条が躊躇したことでその可能性はゼロとなる。
御坂は指でコインを上に向かって弾き、上条はそれを幻想殺しで受け止める姿勢を取る。
しかしそのコインがレールガンになることはなく、そのまま地面に落下したコインは綺麗な金属音を鳴り響かせる。

上条「あれ?」

決死の覚悟で受け止めようとしていた上条当麻にとっては拍子抜けだった。
一瞬で緊張がとかれ全身の筋肉が弛緩するのを感じた。

その時だ。

一方通行「上だ三下ァ!!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/01/31(月) 23:56:07.80 ID:FqwtaHZr0<> 一方通行の声を聞き、上条当麻は反射的に上を見上げる。
そこにいたのは真っ黒い剣のようなものを振り上げ上条に襲いかかる人影。
幻想殺しは、異能であれば神の奇跡さえ打ち消す力を持つが、
反面何の変哲もない普通の武器には全くの耐性が無い。
よって正体不明の攻撃には回避以外の選択肢が存在しないのだが、
前方の超電磁砲へ意識を集中していたため反応が鈍い。

一方通行「飯ィ奢った分含めて貸し二つだ三下ァ!」

チョーカー型の装置を操作し、上条に襲いかかる影目掛け一気に跳躍する。
その影は一方通行の動きに即座に反応し、体勢を崩しながらも黒い剣を横薙ぎに振う。
しかしその反撃は一方通行の能力『反射』によって容易にはじかれる。

一方通行「こいつァ砂鉄かァ?」

影の主は弾かれた反動から着地と同時バックステップを二、三度繰り返し上条たちから距離を取る。

???「ミサカと同じ顔をした人には二度と手を挙げないと誓ったのではなかったのですか?
  とミサカは昨日の今日で早速誓いを破るあなたに幻滅します」

静止したことでようやくその姿を確認できたかとおもいきや、『まさか』と思う。
御坂美琴に瓜二つの顔に、同じ常盤台の制服、そして独特の喋り方。

妹達(シスターズ)。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 00:55:19.11 ID:o5L5mKpY0<> 上条「妹達!? 御坂はともかくどうしてお前らが!」

禁書「ふぇ!? くーるびゅーてぃーが二人いる!」

突然のことにインデックスは目を丸くし隣にいるミサカと攻撃してきたミサカを交互に見やる。
ミサカの攻撃を弾いた一方通行は呆然とし青ざめてしまっている。

御坂妹「ありえません……、ミサカたちのレベルで砂鉄を剣のように操るなど。
  ミサカの製造番号は10032号! そちらの製造番号を答えなさい!」

ミサカ「奇遇ですね、ミサカの製造番号も10032です。とミサカは同じ製造番号のミサカに親近感を抱きます」

御坂妹「ふざけないで下さい! 同じ製造番号の個体は存在しません!
  ミサカ10032号はミサカであってあなたではありません!」

御坂妹がここまで感情を表に出すところを上条当麻は初めて目にした。
また御坂妹自身も、他人に対してこれほどまで怒りが湧き上がるのは初めての経験だった。

ミサカ「困りましたね。……ではこうしましょうか。とミサカはたった今浮かんだ妙案を口にします」

感情の読みにくい表情がわずかに曇ったかと思うと、ぽつりとつぶやくように宣言する。

ミサカ「より強い方が本物のミサカ10032号です」

いつの間にか手に持っていたコインを真上に弾き、宙に向かってデコピンの構えを取る。
空中で再度弾かれたコインはまさしく超電磁砲そのものだった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 03:18:59.40 ID:o5L5mKpY0<> レールガンは弾丸となるコインを音速の約三倍の速度で打ち出す技だ。
上条当麻とて音速で腕を振り回せるわけではない。
受け止めるためには弾道を予測し、予め通過点に腕を配置しなければならない。
ほぼ何の前触れもなく放たれたその一撃はただ茫然と眺めることしかできなかった。

どごおぉぉぉぉぉん!!

上条「御坂妹ー!!」

一直線に伸びた光線と衝撃波に目を眩ませる。
ミサカと御坂妹の距離は約十五メートル、到底外す距離とは思えない。
御坂妹の命運は尽きたかに思われた。

一方通行「チッ、そういうことかよォ。胸糞悪いにもほどがあるぜェ」

レールガンの軌跡で眩んだ目が徐々に慣れようやくといった感じで視界が開けてくる。
視力が回復した上条当麻の目に映ったのは仁王立ちする一方通行と、その後ろで座り込んでしまっている御坂妹の姿だった。
辺りを見回せば、一方通行によってあらぬ方向へと反射され着弾したレールガンの傷跡が見受けられた。

一方通行「無事かァ?」

御坂妹「は、はい……」

か細い声ではあるがどうやら無事なようである。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 03:42:14.62 ID:o5L5mKpY0<> 一方通行「第三位に関係する都市伝説ってなンかあるンじゃねェか?」

御坂妹「ええ……、はい……。あります。とミサカは簡潔に答えます……」

曰く、常盤台の第三位のそっくりさんがいる

一方通行「つまりアレは、都市伝説の第三位とそのそっくりさン、そういうことだろォ」

御坂妹「で、ですが! ミサカのレベルではあのようなことはできません!
  あの力は間違いなくレベル5です。とミサカはあなたの推論に異を唱えます」

禁書「オルソラが言ってたんだよ。噂の内容によっては元となった本人より強い力が使えるって。
  きっと短髪のそっくりさんなら短髪と同じ力が使えてもおかしくないってそういうことなんだと思う」

そう、突然現れた御坂美琴と自称御坂妹はタタリが具現化したもの。
御坂妹がレールガンを使えたのもインデックスの憶測通り、大多数がそう考えたからに違いなかった。

ミサカ「外されましたか。ですが力の差は理解してもらえたと思います。
  とミサカはミサカの前で無様に座り込む『偽物』に優しく諭します」

御坂妹「っ!?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 03:59:52.25 ID:o5L5mKpY0<> 御坂妹「ミサカは……みさかは……ぅ、うあああああああああああああああ!!!!!!」

頭を抱え突然狂ったように叫び声を上げる御坂妹。
ミサカが口にした言葉が御坂妹を『破壊した』。
比喩でもなんでもなく、今の御坂妹はそうとしか説明できない状態に陥っていた。

一方通行「おィ、どォしたァ!? 落ちつけ! ……クソッ聞こえてねェのか!」

上条「一方通行! まずはこのタタリをぶっ倒さねえと」

一方通行「わかってるッッッ!!」

上条「!? ……インデックス、御坂妹を頼む」

禁書「任されたんだよ」

ミサカ「お姉様、どうしましょうか?とミサカはお姉様がどう答えるか知った上で尋ねます」

美琴「全員ぶっ殺す、それでいいでしょ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 04:05:18.86 ID:kNYyOcZJo<> これ楽しみにしてるから頑張って続き書いてくれ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 04:21:54.86 ID:o5L5mKpY0<> 一方通行「テメェは第三位、俺はあっちの『偽物』を潰す」

上条「なっ、てめえ勝手に!」

言うが早いか一方通行は凄まじい勢いでかっ飛んでいく。
上条当麻も後を追うようにして駆けだす。

ミサカ「先程は防衛でしたが、今度は好戦的に向かってくるのですか?
  やはり昨日の言葉は口だけだったのですね。とミサカは落胆の色を隠せません」

一方通行「あの言葉はテメェに向けた言葉じゃねェんだよ! 勝手に拡大解釈してンじゃねェぞ!」

ミサカ「『ミサカと同じ顔をした』、そう言ったのはあなたでしたよね?
  とミサカはあなたの単調な攻撃をヒョイとかわしながら反論します」

一方通行「例えテメェの面があいつらと同じでも、俺が守りてェもンにテメェは含まれてねェンだよォ。
  俺が守りてェもンを傷付けたァ、それだけでテメェは万死に価するッ!!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 04:45:25.49 ID:o5L5mKpY0<> 美琴「そろそろアンタとの勝負にも決着つけたかったとこなのよね」

上条「そろそろも何も、上条さんとあなたは初対面だと思うんですがね」

美琴「つれないこと言わないでよ、いつも追っかけっこしてたじゃない。
  そういえばアンタに初めてレールガンぶっ放したのもこの橋だったわね」

上条「御坂の顔して御坂の思い出話語ってんじゃねえぞ三下ぁ!
  その思い出は御坂『だけ』のもんだ、パチモン風情が穢していいもんじゃないんだよ!」

美琴「御坂、だけ、かあ。そこにどうしてアンタは含まれてないのかしら?
  無いもの強請りで逆ギレするなんて男が廃るわよ」

目の前の敵は知っている。知り過ぎている。
御坂美琴のこと。上条当麻のこと。記憶喪失だということも。
それは今の上条当麻にとって誰にも知られてはいけないことだ。絶対に。

上条「いいぜ、てめえがどうあっても御坂を騙るってんなら、まずは
  そ の ふ ざ け た 幻 想 を ぶ ち 殺 す ! 」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/01(火) 05:40:08.82 ID:o5L5mKpY0<> >>82
ありがとう、その応援で2レス進んだ
でも戦闘描写で頭抱えた、このあとどうすっかなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 09:45:02.47 ID:esGAUnFro<> 俺も読んでるぜい
インフルエンザで寝込んでるから今暇なんだわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 20:38:58.50 ID:5ZHMQcIJo<> 壊れた御坂妹萌え

救出前提の欝展開は大好きだぜぇぇえ <>
◆tVP11EVtkPKg<><>2011/02/01(火) 22:29:47.01 ID:o5L5mKpY0<> え?救出しなきゃだめ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 22:32:07.27 ID:5ZHMQcIJo<> マジですか、救出しないのは超大好きですが。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/01(火) 22:37:20.16 ID:+T/fjmPho<> 救出前提の鬱展開は好きです
でもどう足掻いても絶望な展開はもっと好きです <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/01(火) 22:57:42.09 ID:o5L5mKpY0<> 真っ先に駆け出した一方通行だが、その攻撃は一度も当たらずにいた。

一方通行「ちょこまか逃げンじゃねェよ、愉快に素敵にビビらせてくれよォ偽物さンよォ」

ミサカ「今あなたに攻撃したところで反射されるだけです。
  そのような安い挑発に乗せられるミサカではありません」

しかし能力によってミサカの攻撃は反射されてしまう以上、反撃は無意味というより自殺行為。
ならばどう攻略するか、ミサカの狙いに一方通行は気付いていた。
そう、これはただの時間稼ぎ。
今の一方通行は過去の無敵だった頃と違い、能力の使用に時間制限がついている。

夏休み最後の日、俺は全てを失った。
それでも今俺は生かされている。
ならばその力は、俺を生かす者のために振わなければならない。
振うと誓ったのだ!

一方通行「教えてやるよ、俺の演算補助装置のバッテリーは持って後八分だァ」

ミサカ「? ……あぁ、そういう宣言ですか。とミサカはあなたの遠回しな宣言の意図をようやく理解します」

一方通行の大振りな攻撃を蝶のようにかわし、磁力を発生させミサカは鉄柱に対し垂直に着地する。

ミサカ「八分以内にミサカを倒すとそう言いたいのですね。ならばミサカはこう返しましょう。
  『それはこちらの台詞です』。とミサカは定番の決め台詞を口にしかなりの満足感を得ます」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/01(火) 23:30:58.24 ID:o5L5mKpY0<> 一方通行「あァ? テメェこそ安い挑発してンじゃねェぞ。テメェの力は第三位と同等のレベル5だァ。
  だが、所詮は第三位だろォが。学園都市最強のレベル5の力舐めンじゃねェぞ!!」

口上を言い終わるが早いか、一方通行はミサカの立つ鉄柱の根元に強烈な拳を叩きこむ。
地面に垂直だった鉄柱は無残にも歪んでしまったが、ミサカは宙を舞い一方通行の真上を飛び越えていく。
その最中についでと言わんばかりに電撃を叩きこんでいく。
反射がある以上、元より狙いは一方通行には非ず。
電撃はコンクリートの地面に当たりレールガンによって砕かれた破片が
宙を舞散り一方通行の視界を一時的に奪うことになる。

一方通行「煙幕のつもりかァ? 何やったって反射で攻撃は当たんねェンだから無駄だっつーの」

即座に大気のベクトルを操り目障りな煙幕を取り払う。
やはりさっきのは挑発、冷静さを欠き時間を無駄に浪費すれば相手の思う壺だ。

ミサカ「ならばミサカのレールガンを反射できますか?とミサカは自信満々でコインを弾きます」

ミサカがコインを弾きレールガンを発射するのと、
視界の晴れた一方通行がミサカの後方にいる御坂妹とインデックスを視認したのはほぼ同時だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 00:17:05.23 ID:1DhUvtlG0<> もし一方通行がミサカのレールガンを反射していたら。
間違いなく発射したミサカを貫き、戦いに決着がついていたことだろう。
しかし、その威力は人一人を貫いた程度で衰えることはない。
結果、勝利の代償として御坂妹とインデックス、この二人を供物として捧げることになる。

一方通行(クソッタレ!)

反射的にそう考えてしまったがそのわずかなラグでさえ命取りになる。
反射を解き、新たに別方向へのベクトル変換の演算を行う。
コンマゼロ何秒で飛来する致死の一撃に恐怖する時間的余裕はない。
音速で襲いかかった光線は一方通行の額に直撃し、
次の瞬間に遥か上空へと花火のように打ち上げられていた。

ミサカ「驚きました。正直、絶対に間に合わないと思っていました。
  とミサカはあなたの無謀とも思える行動が実を結んだことに感嘆の声をあげます」

ぜェはァと息を吐く一方通行に声を返す余裕はない。
ギリギリで演算が間に合ったとはいえ、一方通行の額は赤く腫れている。

御坂妹「あくせら、れーた……?」

一方通行「ちっとは、落ちつい、た、みてェだなァ」

余裕はなくとも虚勢ぐらい張れる。
らしくねェ。だがァ、悪かねェ気分だァ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 00:45:43.01 ID:1DhUvtlG0<> 一方通行とミサカが戦っている間、上条当麻と御坂美琴の戦いも徐々に熱を帯び始めていた。

上条当麻と御坂美琴は一度だけ(途中まで)本気で戦ったことがある。
その時は抜群の演技力で負けた振りをしたが(なぜかさらに逆上させることになったが)、今度はその必要はない。
相手が女の子だからと言って気後れする上条さんではありませんのことよ。

美琴「その右腕だけはどうにかして切り落とさせてもらうわよ」

そう言って美琴が振り回すのは砂鉄で作られたチェーンソー。
御坂妹が手放して元の砂鉄に戻ったものを美琴が再び能力で操っているのだ。

上条「不幸じゃなくなるって言うんなら魅力的な提案ではあるけど、できれば遠慮したいところだな」

右腕を失う恐怖より知人を侮辱された怒りで、一歩また一歩と前進する。
こちらはこの右腕で、ただ触れるだけでいい。
ある程度なら相手の手の内も知っている。
上条当麻はその考えが慢心だった、驕りだったと思い知らされることになる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 03:50:42.83 ID:1DhUvtlG0<> 二人の戦いは御坂美琴の放った電撃によって火蓋が切って落とされた。
先制攻撃でありながらも十分な殺傷能力を持つ攻撃に、上条当麻は右腕をかざし防御する。
その対応を見て、美琴はすかさず距離を詰めチェーンソーを掛け声とともに大上段から振り下ろす。

美琴「ヤァアアアアアアアア!!」

上条はここで選択を迫られた。
その攻撃を身を引いてかわすか、右腕で受け止めるか、先に右腕で相手に触れるかの三択だ。
その中から上条が選んだのは右腕で受け止めるという選択、まず相手の武器を無効化しようというのだ。
しかし、結果的にその選択はまずかった。『読まれて』いたのだ。
美琴の持つ砂鉄のチェーンソーは上条の右腕に触れた途端に元の何の変哲もない砂鉄へと戻る。
上条はそのまま腕を振り下ろせば、幻想殺しで勝負は決するとそう考えていた。

上条「これで終わり、だ?」

最後の『だ』に疑問符がついたのは、美琴が左手で逆手に持つ二本目のチェーンソーが原因だ。
さっき上条が打ち消したもの比べればはるかに短いが
上条の腕を斬り落とすという唯一の用途を考えれば十分な長さを持つ。
上段からの振りおろしを受け止めるため、振り上げた右腕はすぐには振り下ろせない。

美琴「右腕にさよならのキスは必要?」

クスリと口元を歪めたまま、懐に飛び込ようにしてチェーンソーが振り抜かれる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 04:44:52.02 ID:1DhUvtlG0<> 上条「ぐぁッ!」

チェーンソーが二の腕を削る痛みに苦悶の声をあげる。
しかし、右腕は繋がったまま、辛うじてかわすことに成功し三ミリ程の傷に抑えることができた。

美琴「しぶといはね、というよりこの身体の性能が低いのかしら」

美琴が砂鉄のチェーンソーを振り下ろした時、すでに刃は二本あった。
右手で順手に持った一本目と、左手で逆手に持った二本目。
縦にそろえて構えることで、上条が一本のチェーンソーだと錯覚するように仕向けていたのだ。
一本目の陽動に見事に引っかかり、奇襲は完璧なものだった。
そこで明暗を分けたのは中学生女子と高校生男子という身体的な要素。

上条「勝手に他人の姿借りて今度は文句だ? ふざけるのも大概にしろ!
  お前なんかが他人の努力の結晶にケチつける権利がどこにあるってんだ!」

自分が傷つけられることより知人を傷つけられたことが許せない。
上条当麻とはそういう男なのである。
例え過去に遺恨があったとしても、今は共に闘う仲間であれば特に。

ミサカ「ならばミサカのレールガンを反射できますか?とミサカは自信満々でコインを弾きます」

辺りを照らす突然の光。
その光量は凄まじく、今この場で考え得るのは電撃使いの大技レールガン。
目の前の電撃使いでなければ消去法でもう一方。
反射という能力を持つ彼にそれが有効でないのは知っている。
しかし。それでも。上条当麻は振り向いてしまった。

美琴「デート中によそ見は厳禁よ、朴念仁」

バチン!
電流は上条の意識を一瞬にして刈り取っていった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 05:05:54.56 ID:1DhUvtlG0<> 一方通行「ずいぶんと舐めた真似してくれンじゃねェか」

ミサカ「なんのことかわかりませんね。とミサカはあなたの問いかけにシラをきります」

一方通行「キツネ狩りもここまでだ。もう容赦しねェ」

ミサカ「そんなものを頼んだ覚えはありませんが。そうですね、そろそろ終わりにしましょうか。
  とミサカは公演の幕引きを宣言します」

その言葉をもう挑発とは思わない。
ここまで手を抜いていたつもりはないが、どこかで気後れしていたのかもしれない。
やはり彼女らと同じ顔を持つというのは、自分にとって不安要素でしかないのだ。
だが、ここからは違う。
目の前の敵を『殺す』。殺す殺す殺すコロスころす……、ブチ殺す!!
頭のスイッチをしっかりと切り替えた、次の瞬間。

ゴン!

後頭部に鈍い衝撃を受け、一方通行はそのまま倒れ込んでしまった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 05:25:18.30 ID:1DhUvtlG0<> 一方通行は一瞬何が起こったかわからずにいた。
能力は再び反射に設定し直していたため、あらゆる攻撃が……
ましてや鈍器による物理攻撃を受けるなど想定もしていなかったからだ。
そして、首を動かし、今自分に覆いかぶさっているものの正体に気付く。

上条「」

右腕に幻想殺しを持つ少年、上条当麻が右腕を下にしてのしかかっていたのだ。

一方通行「三下ァ、テメェ何を」

していやがるゥ? その言葉は御坂美琴によって遮られる。

美琴「馬鹿な奴よ。よそ見した瞬間に電撃で気絶させてやったわ」

ミサカ「今のあなたは能力を使わなければまともに立つこともできない。
  よって、その右腕が触れている間、あなたは陸に打ち上げられた魚も同然です」

美琴「じゃあそろそろ」

ミサカ「終幕と」

美琴・ミサカ「「まいりましょう」」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 05:50:36.38 ID:1DhUvtlG0<> 不可思議な力に対して絶大な威力を発揮する幻想殺し。
あらゆる攻撃を無効化し存在そのものが脅威の一方通行。
その二人を持ってしてもタタリには敵わなかった。
組み合わせが悪かったのもあるかもしれない。
しかし、二人は完全に弄ばれていた。

禁書「とうまー! とうまー!!」

気を失っている上条にインデックスの声は届かない。
反射が使えない今の一方通行に身を守る術はない。
御坂美琴とミサカはともに一枚のコインを取り出し必殺の構えを取る。
学園都市序列第三位。その代名詞こと超電磁砲。

一方通行「万事休すってかァ、笑えねェぞ」

今まで能力に頼り切っていた貧弱な腕。脆弱な脚。
上条当麻の下から懸命に抜け出そうとするがどうあっても抜け出せる気配はない。
今この場に二人を助け出せる力を持つ者はいない。

美琴・ミサカ「「早い幕だったな、人間」」

二枚のコインが宙を舞う。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 06:29:42.33 ID:1DhUvtlG0<> その瞬間、一方通行は思わず硬く目を瞑っていた。
まさか自分が恐怖から目を逸らすようなことがあるなどとは夢にも思わなかった。
これが一万人以上の妹達を殺した報いなのだと、覚悟を決めるしかないのだろう。
だが、レールガンが飛来する気配はなく、気が抜けかけたところへチャリンチャリンと
まるでコインが落下した時のような音にビクと肩を震わせる。
やはりレールガンは飛来しない。
ゆっくりと目を開くと二人の御坂は手をだらりと下げどこか彼方を見つめている。
首を傾け二人の視線の先に目をやると一人の人間が立っているのが見えた。

赤と白のコントラストのきいた巫女服。
髪は黒く長い。女性のようだ。
そしてなぜか右手には十字架が握られている。

何がどうなって未だ自分が五体満足無事でいられるのかわからないが
とにかくこの場から抜け出すには今しかない。

一方通行「おィコラ、三下ァ。目ェ覚ませ」

上条当麻の頭を右手でバシバシと叩くが一向に目を覚ます気配はない。
とっととどいてもらわなければ自分たちの身も、間の悪いあの巫女も危ないというのに。
気絶とはいえこの火急の事態に自分の上で寝こけているというのは無性に腹が立つ。

キィーン。

突然響き渡ったその音に再び首を傾けると先の巫女さんが、
手にしていた十字架を地面に落とした音ということが分かった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 06:34:01.37 ID:UJrcMz91o<> キャー■■サーン <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 06:42:21.92 ID:1DhUvtlG0<> だからどうなることもないだろう、一方通行はそう考えていたが違った。
御坂美琴とミサカ、二人同時に巫女さん目掛けて駆けていく。

一方通行「そこのあンた、とっとと逃げろォ!」

一方通行の声が聞こえているのかいないのか、その巫女姿の女性はまったく動く気配が無い。
突然自分目掛けて駆けてくるようなことがあれば、たじろぐなり何なりの行動は起こしそうなものだが。
次の瞬間には同じ顔の少女に二人同時に飛びつかれ
左右の首筋に噛みつかれるという異様な光景が繰り広げられていた。
先ほどまで得意の能力で自分たちを翻弄していた二人がどうしたことだろうか。
しかし、わけのわからない光景はそこで終わらなかった。
噛みついた二人が一瞬にして灰と化してしまったのだ。
一方通行は言葉もなくただただ呆然と眺めていることしかできなかった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 07:00:38.68 ID:1DhUvtlG0<> 御坂美琴とミサカのタタリが灰となって消えた後、
巫女さんは着崩れを直し、落とした十字架を拾うと悠然とこちらへ歩いてくる。
敵か味方か判断が付かないが、敵意がないことを期待するしかないのが今の状況だ。

一方通行「アンタ何もンだァ、どうやってあいつらを倒した」

その問いかけに彼女は答えない。
巫女さんはゆっくりと近付き上条当麻の顔に手を添える。
可能性としての話。
彼女が敵だった場合、さっきの力が触れたものを灰に替える能力だった場合、
次の瞬間には上条当麻は灰となって消えてしまうのではないか。
得体の知れない恐怖が増長されるのをひしひしと感じる。

上条「ん……ぁあ? どうして、姫神が、ここに?」

一方通行「気が付いたか三下ァ! こいつァお前の知りあいなンか」

上条「一方通行? 何でお前、俺の下敷きになってんだ?」

一方通行「うるせェぞ三下ァ、今すぐどかねェと今度こそ愉快なオブジェにしちまうぞ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 07:10:40.68 ID:1DhUvtlG0<> 上条「あ、あぁ、悪い。すぐにどく……ってあれ?」

一方通行「何してやがる、早くどけって」

上条「なんか身体に力が入らないんですがどうしませうか」

姫神「そのままでいい。聞いて」

一方通行「よくねェよ、テメェがこいつ何とかしろォ」

姫神「上条くん。あなたも。この件から手を引いてほしい」

上条「この件? タタリのことか?」

姫神「そう。これは私の仕事。だからお願い」

上条「姫神は何か知ってるのか? なら協力して」

姫神「必要ない。じゃあ。伝えたから」

上条「おい! 姫神! 待てよ、待って……お願い待ってえええ、この状況何とかしてくれー」

一方通行「ふざけンな、テメェの知り合いじゃねェのか、この状況見て放置ってどういう性格だよ」

上条・一方通行「不幸だー!!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<><>2011/02/02(水) 07:19:41.53 ID:1DhUvtlG0<> はい。ようやく第二夜に終わりがきました。
みんなのヒロイン[ピーーー]ちゃんがついに登場です。あれ表示されない・・・だと?
今回は途中で調べ物が結構多かったんですが、いろいろまずい設定が・・・
なんていうか禁書のイベントスケジュールって過密すぎじゃね?って思った
たぶんその辺の都合の悪いことは全部第二幕にしわ寄せいくんだろうなー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 07:22:16.82 ID:jbXi5QbGo<> やべぇ、ガチで面白くなってきた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/02(水) 08:35:02.16 ID:v5fCl0cRP<> ここで[ピーーー]の登場とはなんという俺得SS <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 09:28:11.74 ID:u7F200du0<> 匿名希望さん無双……だと……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 13:03:34.86 ID:CAHqgteDO<> 面白いわ〜。期待
もし出せるなら路地裏同盟も出してあげてください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/02(水) 18:56:09.76 ID:rpuvU9WAO<> 伏せ字さんわろたwwww
■■さんもさることながら>>1は一方通行大好きだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 19:06:19.45 ID:6HCicZ6oo<> 「ククク…」と見た瞬間あの殺人鬼かと思いながら開いたが面白いからいいや <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/02(水) 19:21:37.78 ID:dlGe+eZ4o<> ていうかアカギだと思って開いた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/02(水) 19:25:16.39 ID:rpuvU9WAO<> スレタイで損してるとこあるよな <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 22:52:32.69 ID:1DhUvtlG0<> 喜んでいただけてるようで何より、期待に沿えるよう頑張りまふ
スレタイはメルブラのクロスってのを伏せときたかったからこんな感じに
スレタイで損してるかもだけど、得することもないと思って適当につけちゃった

この後の予定が定まってないから今日はサイドストーリーでお茶濁します <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 23:19:03.52 ID:1DhUvtlG0<> 夕刻某所――――。

御坂美琴の元へ一本の電話がかかってきていた。
相手は一つ下の後輩、白井黒子からである。

黒子「おねえええええええさまあああああああ!!」

通話ボタンを押すと同時に鈴のような声でありながらおどろおどろしい叫び声が聞こえてきた。

美琴「く、黒子? いきなり何よ、どうしたの」

黒子「どうしたもこうしたもございませんわ! 黒子というものがありながら殿方と逢引などと」

美琴「はぁ? 逢引ってどういうことよ」

黒子「とぼけても無駄ですのよ。ジャッジメントの巡回中に見かけましたの。
  ジュリアンで白髪の優男とご一緒していらっしゃいましたでしょう?」

白髪の優男……ですって?

黒子「その場で取り押さえたかったんですが、固法先輩に引きずられて泣く泣く巡回の続きを……。
  もしかしてお姉様、今もその殿方とご一緒ですの!?」

まさかとは思うけど。
どうせコンビニで立ち読みする予定だったし。

美琴「あんたの勘違いよ、ただ落し物を拾って届けたらお礼に甘いものご馳走になっただけよ」

黒子「ほ、本当ですの!? じゃあ、黒子のこと愛してるって100回言っ」

美琴「じゃ、切るわよ」

ジュリアン。確か○×学区のファミレス店だったわね。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 23:48:08.79 ID:1DhUvtlG0<> ファミレス(ジュリアン)――――。

まさかとは思ったけど。

美琴「いた。一方通行と妹達……、それと」

上条当麻。
っていうかなんなんだろうこの空間は。
あの実験で殺されかけた奴、殺そうとした奴、実験を阻止した奴。
ファミレスで同じ席に着いて何の話し合いよ。
後ちっこいシスターさんが一緒って、揃って宗教にでも入信する気?
わけわかんない。

美琴「ちょっとアンタたち!」

とりあえず文句言わなきゃ気が済まないわ。

御坂妹「こんにちはお姉様、とミサカはごく自然な対応をします」

一方通行「なんだァ第三位か」

禁書「なんだ短髪か」

上条「なんだビリビリか」

美琴「なんだとはなんだああああ、あとビリビリって言うなぁッ!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/02(水) 23:58:45.98 ID:1DhUvtlG0<> 美琴「っていうかこの面子はありえないから、なんかもういろいろと。
  ねぇあたしの話聞いてる?」

とりあえず声をかけてはみたけど、小声で作戦会議?
突然割り込んだあたしも悪いけど気分悪いわね。
っていうか文句言ったあとどうしようかな。
一応、実験は無期限凍結されたわけだし
さっきは喧嘩腰みたいだったけどこの子(妹達)に危害を加える様子はないし
あれ? この後ほんとどうしよう!
えーとえーと、全然考えまとまんないんだけどー
なんか四人とも頷いて、話まとまったのかな?

上条「というわけでだな御坂」

美琴「何が『というわけ』なのかわかんないんだけど」

上条「俺たち、さっきそこで偶然ばったり遭遇してな」

え? そういう流れ?
とりあえずなんでもないってことにして誤魔化そうって魂胆みえみえじゃない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 00:06:44.22 ID:XDvPqJWE0<> 御坂妹「そうです、偶然にも食パンを咥えて走っていたら曲がり角で一方通行にぶつかってしまって、
  とミサカはついさっきそこであったことを説明します」

あたしはそういう感じの少女漫画って読まないだけど
この子はそういうの読んだりしてるのかしら。

一方通行「おィ、なんだァその超設定はァ」

話まとまってないじゃない。
学園都市最強の男がツッコミってなんだかシュールね。

上条「それで一方通行が腹減ってるなら飯奢るって言い出してな」

あれ? 話飛んだ?

一方通行「オイィィィ、さりげなく何言っちゃってるンですか三下ァァ」

またツッコんだ。コントの練習かしら。

禁書「ごはん!!」

この子はボケ担当ね。
食欲旺盛なシスターさん、アリね。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 00:16:36.64 ID:XDvPqJWE0<> 上条「インデックスは黙ってなさい。
  夏休みにいろいろあったしその罪滅ぼし的なー、だよな?」

美琴「……。本当なの? 一方通行」

一方通行「ちっ。……本当ですゥ。別に飯奢ったぐらいで罪滅ぼしになるなンて思ってねェし」

美琴「当たり前でしょっ! アンタがやったことは」

許されるはずがない。
殺された10031人はどんなことがあっても戻ってこないのだから。

上条「御坂落ちつけ。気持ちはわかるがそれは御坂妹たちと一方通行の問題だ。
  俺たちが口を出すことじゃない。例えオリジナルのお前でも、な」

美琴「それは……そうだけど」

正論と、真っ直ぐな視線にそれ以上言葉が出てこない。
そういえば、一方通行に殺されに行こうとしてたあたしの前に立ちはだかったあの時も、
今みたいに真剣な目をしてたっけ。

美琴「その……悪かったわ」

一方通行「別にィ、気にしてませンー」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 00:19:03.54 ID:wlCJP1FBo<> >上条「御坂落ちつけ。気持ちはわかるがそれは御坂妹たちと一方通行の問題だ。
>  俺たちが口を出すことじゃない。例えオリジナルのお前でも、な」

これかなり残酷な事言ってるよな
あの実験の為に美琴がどれだけ抗って、それらが全て無駄になった事考えると <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 01:17:25.56 ID:XDvPqJWE0<> 上条「そうだ、せっかくだしお前も一緒にどうだ? いいだろ、一方通行」

はい? このツンツンウニ頭は何言ってるのかしら
なんであたしがこいつと一緒にご飯食べなきゃいけないのよ
だいたいこいつだって

一方通行「勝手にしろォー」

へー、オーケーしちゃうんだ
むしろやけくそっぽいわね

上条「いいってよ。ほら、隣座れよ」

って……、

美琴「え! ちょ、アンタの隣!?」

そういえばこいつも一緒じゃないの
走ってきたから髪も崩れてるかもだし、ああああ、汗とか

上条「もしかして門限か? 常盤台ってお嬢様学校だし厳しいか」

うわあああ、もうどうにでもなれよ

美琴「いや、別にそんなこと、ないんだけど。じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 01:35:21.97 ID:XDvPqJWE0<> カチャ、カチャ……

さっきまであたしは何を慌てたのかしら。
こいつと一緒って言ってもただ隣でごはん食べるだけじゃない。
二人きりならまだしも他に三人もいるんだし。

美琴「ちょっと」

御坂妹「? なんでしょう、お姉様。とミサカは返事をします」

美琴「ここ、ほっぺたにソースが付いてる。取ってあげるからじっとしてなさい」

ごしごし

御坂妹「むぐむぐ、すみませんお姉様」

上条「」

美琴「な、何よ。人の顔じっと見て」

上条「いや、いいお姉ちゃんだなと思って」

ちょっ、その笑顔は反則でしょっっっ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 01:58:52.19 ID:XDvPqJWE0<> お姉ちゃん、か。
言ってみればこの子は双子の妹みたいなものだけど、
周囲の目にはどう映ってるのかしら。

ちらっ。

ひそひそひそ……
双子だ、双子だ、Wデートだ、双子だ

だ、ダブルデート!?
誰と!誰が?
向こうの座席には一方通行と妹達の二人だけ。
なんか納得いかないけど、何も知らない人からすればこの二人で一組でしょうね。
問題はこっちの座席、あたしと、こいつと、大食いシスター。
っていうか、このシスターさん――インデックスだっけ?
そもそもこの子一体誰よ、こいつとどんな関係なのよ。
目録(インデックス)なんて本名じゃないだろうしニックネームかしら。
こいつのこと名前で呼んでたし結構仲良さそうだし……。
あ、あたしも名前で呼んでみようかしら。

美琴「と、とうま……」

上条「……な、なんでせうか?」

美琴「え、や、その。……何でもないわよっ!」

上条「?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 02:41:53.38 ID:XDvPqJWE0<> 食事を終えて――――。

一方通行「会計済ましとくからお前らは先ィ外出てろォ」

上条「ああ、わかった」

一方通行「ァー、やっぱいいわ。めんどくせェ、このまま解散ってことでェ」

御坂妹「わかりました」

店員「ありがとうございましたー」

一方通行「支払いはカードでェ」

――――――――――――

御坂妹「お二人と、お姉様も。今日は楽しかったです。とミサカはお先に失礼します」

上条「ああ、またな御坂妹」

禁書「ばいばい、くーるびゅーてぃー」

美琴「またね。じゃああたしもこれで」

上条「御坂、ちょっといいか? インデックス悪い、先行っててくれ」

禁書「わかったんだよとうま、短髪もまたね」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 03:24:53.87 ID:XDvPqJWE0<> 上条「呼びとめて悪かったな」

美琴「別にいいけど、なんか話でもあるの?」

上条「話ってほどのことでもないんだが。その、さっきは悪かった! スマン」

美琴「ちょっとちょっと、突然謝られてもなんのことしかわかんないし」

上条「『俺たちが口を出すことじゃない』。そう言ったことに対してだよ。
  俺があの実験のことを知るより前から、ずっとずっと前からお前は戦ってたんだよな。
  それを俺なんかが知ったような口を」

こいつは優しい。

美琴「気にしてないわよ。一方通行のことは許せないけど、あたしは自分がもっと許せないだけ。
  あたしが実験のことを知ったのも9981人の妹達が殺された後だった。
  もっと早く実験を止められていればとか」

とてもとても優しい。

美琴「そもそもあたしがDNAマップを提供しなければ、なんて考えたりもした。
  でもそれは今生きてるあの子たちを否定することになっちゃう。
  そんな弱い自分が悔しくて不甲斐なくて、あたしはあたしを許せない」

上条「御坂……」

美琴「アンタはさ、『俺なんかが』って言ったけどアンタは実験を止めてくれた。
  他の誰かならともかくアンタにはそのぐらいのこと言う権利あるわよ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 03:48:25.81 ID:XDvPqJWE0<> 上条「俺は一人っ子だからさ、兄弟とかどんな感じかわかんねえけど、
  お前は間違いなく『いいお姉ちゃん』だよ。俺が保証する。
  お前みたいな姉を持った妹は幸せだろうな。『20000人全員幸せもんだよ』」

優しいけどずるい。

美琴「う、うぅ……」

そんな言い方されたら、

美琴「うわああああ、とうまぁ……」

こいつに泣き顔を見られるのはこれで二度目だ。
馬鹿で鈍感でいっつも不幸だーって叫んでるくせに、
変なとこでカッコよくて自分のことそっちのけで人の心配してる
そんな優しいこいつが、 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage !orz_res<>2011/02/03(木) 03:51:39.96 ID:XDvPqJWE0<>


好き。


<>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/03(木) 04:06:58.32 ID:XDvPqJWE0<> 美琴「ぐす、アンタの胸借りて悪かったわね」

上条「上条さんの薄い胸板なんかでよければいつでも貸しますよ」

美琴「ばーか、中学生に抱きつかれて調子のんじゃないわよ」

上条「それを抱きついた本人が言いますか。……やっぱ御坂は笑ってる方がいいからな」

美琴「またアンタは、そういうことを軽々しく言うなーっ!」

上条「うおぉ、電撃はやめ、あれ?」

美琴「フェイントよ、今日だけは許してあげる。じゃあね」

手を振り一方的に別れを告げて走り始める。
むちゃくちゃ恥ずかしいことをやってる気がするけどそんあのは気にならない。
あたしはあたしだ。それ以上でもそれ以下でもない。
20000人の妹達のいいお姉ちゃんでいればそれでいい、今はそう考えることにしよう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/03(木) 04:10:19.13 ID:XDvPqJWE0<> わからない・・・気持ち的にはどうしてこうなった状態。
>>120は自分でも書きながら感じてたことだからフォローは入れようと思ってたんだけど
勢いで書き殴ったらこんなんなりました的な、ね
あと、美琴と御坂妹が一緒に食事してたのが第二夜のタタリに大きく影響を及ぼしたってことのアピール
そんなサイドストーリーでした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 14:11:48.04 ID:JlTm5fnvo<> いちいち矛盾点や指摘された点に手加えてたらごっちゃごちゃになんぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/03(木) 14:32:22.57 ID:DsvW14yAO<> そうね、作風のベクトルは一方通行でお願いしたいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 14:54:14.07 ID:2ELWqbvGP<> 矛盾や粗があっても、作者の中で一本筋が通ってれば、読めるSSになるものさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/02/03(木) 15:47:06.64 ID:wYVGadBC0<> >>127
28282828 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/03(木) 17:34:04.47 ID:gEX75eO70<> メイドガイかと思ったらワラキアだったでござる。
格ゲー苦手だからメルブラ良く解らないけど、とりあえず読むわ <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 00:39:18.88 ID:bPf41+5d0<> 朝、病院――――。

冥土帰し「今回は軽傷みたいだけど、君はもう少し身体を労わった方がいいよ。
  退院してまだ一週間も経ってないのに入院なんて」

上条「あははは……」

ベッドに横たわる上条当麻は、返す言葉もなく苦笑いを返すだけである。

冥土帰し「と言っても、昼過ぎには退院だけどね。
  一応、精密検査をするけどその様子だと異常はなさそうだ」

上条「いつもお世話をおかけします。……あの」

冥土帰し「なんだい?」

上条「御坂妹のことなんですが」

冥土帰し「ああ、彼女なら――」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 01:01:30.55 ID:bPf41+5d0<> 屋上――――。

上条「お、いたいた。おーい、一方通行」

一方通行「あン? 三下が何か用かァ」

上条「用ってほどのことじゃないんだが。御坂妹のこと」

一方通行「あいつは培養機の中だァ、元々あいつは絶対安静だったらしいからなァ」

――――――――――――

御坂妹「ミサカには、どれほどの価値があるというのでしょうか」

一方通行「突然なンだ」

御坂妹「ミサカは単価十八万円のクローンです。妹達はミサカを除いても9968人もいます。
  ミサカがいなくなったとして、誰か悲しんでくれるのでしょうか」

――気付いてくれるでしょうか、と。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 03:39:58.89 ID:bPf41+5d0<> 一方通行「クソガキも言ってたがお前らは『もう一人だって死んでやる事はできない』、
  それが妹達全員の意思なンじゃなかったのかァ」

御坂妹「わかっています!! ですが……。ミサカと同じ製造番号を名乗ったミサカは、
  ミサカを『偽物』と呼んだあのミサカは、ミサカよりも遥かに強い力を持っていました。
  あの時、『偽物』と呼ばれて頭の中が真っ白になって……」

一方通行「偽物はお前じゃねェよ、あいつの方だ。それにあの偽物は消えちまったンだ」

御坂妹「なぜあのミサカが偽物だと言いきれるのですか、ミサカが本物である必要はあるのですか。
  教えて下さい……。ミサカはミサカを殺そうとしたあなたに問いただします」

一方通行「……つまんねー答えでわりィが、今お前が言ったことじゃねェか。
  俺が殺そうとして今生きてる『ミサカ』はお前だけだ。世界にただ一人」

ケッ、唖然としてやがるぜ。
まァ、そのせいで培養機で静養する羽目になっちまったンだが。

一方通行「この答えで満足いかねェっつーンなら、テメェで見つけるしかねェンじゃねェか。
  劣ってるのが悔しけりゃ強くなりゃいい、個性がないと思うンなら身につけりゃいい。
  無理しなくても生きてりゃその内見つかるだろォけどな」

御坂妹「どこか釈然としませんが。今はその答えで納得しておきましょう。とミサカは妥協することにします」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 04:16:18.55 ID:bPf41+5d0<> 冥土帰し「培養機の設定が終わったけど、そろそろいいかい?」

御坂妹「はい。丁度話も終わったところです。とミサカはどうぞと返します」

一方通行「柄にもねェこと語っちまったな。じゃ行くわァ」

御坂妹「……『確かに俺は一万人もの妹達をぶっ殺した。だからってな、
  残り一万人を見殺しにして良いはずがねェンだ』」

一方通行「なっ!?」

御坂妹「そう言ったあなたなら、このミサカでも助けてくれるのでしょうね」

一方通行「覚えてねェよ、そんな臭い台詞」

――――――――――――

一方通行「はァ、柄にもねェこと言っちまったなァ」

上条「ん? そうなのか?」

一方通行「そうなンですゥ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 04:40:23.75 ID:bPf41+5d0<> 上条「ところで、その頭の包帯」

一方通行「これかァ? ちょっと火傷しただけだァ。薬も塗られたしベクトル操作ですぐ治っちまうよ」

上条「ベクトル操作ってそんなことまで出来んのかよ、すげえな」

一方通行「一昨日、テメェに殴られた所が何ともねェのがその証拠だァ。
  っていうか、なーンなーンですかァ、このどォでもいいつまンねー雑談は」

上条「精密検査まで時間あったし暇だったからな。お前がまだ院内にいるって聞いたから話でもしてみようかと」

一方通行「お前、俺に一度殺されかけてんだぞ? そこンとこわかってンのかァ?」

上条「わかってるよ。でも、これからもお前が悪くあり続けるわけじゃないんだろ?
  なら俺はそれでいいと思うわけですよ」

一方通行「フン、どいつもこいつも甘すぎンだろォ」

看護師「あぁ、ここにいたの。上条さーん、精密検査の時間ですよー」

上条「すいませーん、すぐ行きまーす」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 04:53:52.71 ID:bPf41+5d0<> 御坂妹、リタイアです。
設定確認でいろいろ読み返してたらカザキリ編でインデックスと美琴が遭遇してたことに気付いた、死にたい <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 11:14:24.81 ID:bPf41+5d0<> 昼過ぎ――――。

精密検査の結果にも問題はなく、上条当麻はすんなりと退院することができた。
実質、半日程度のことだから入退院と呼んでいいのかも微妙じゃないか、などと独り言をつぶやく。
昨夜は姫神が立ち去った後、上条は身体が痺れて動くことができず御坂妹に救急車を呼んで貰い病院へ。
御坂妹は病院を抜け出した(本人は記憶にないらしいが)うえに無断外泊だったため上条とともに強制送還。
インデックスを一人で帰らせるのは心配だったため、駄目元で一方通行に送って貰えないかと頼むと、
渋々といった様子ではあったが意外にも承諾され二人とはそこで別れた。
別れ際に昨日と同じ時間に同じファミレスで落ちあう約束だけしておいた。

上条「約束までにはまだ時間があるし、とりあえず先に会いに行ってみるか」

突然現れて去っていた姫神秋沙。
上条たちには手を引けと言っていたが彼女は何故そんなことを言ったのか。
彼女は何を知っているのか、わからないことだらけである。
その謎を解き明かすため、上条当麻は彼女の居候先である月詠小萌の家に向かう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 11:29:48.79 ID:bPf41+5d0<> 小萌宅――――。

ドンドン。

上条「小萌先生いますか、俺です上条です。小萌せんせー!」

小萌「上条ちゃんですか? はいはーい、すぐ開けますからねー」

がちゃり。

小萌「日曜日の昼間に先生に会いに来るなんてどうしたんですか上条ちゃん」

上条「ごめん小萌先生。今日は先生にじゃなくって姫神に用があって来たんです」

小萌「姫神、ちゃんですか……」

姫神の名前を出したとたんに小萌の顔に影が落ちるのを上条は見逃さなかった。

上条「もしかして、帰ってないんですか? 姫神の奴」

小萌「はいなのです……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 11:48:59.93 ID:bPf41+5d0<> 小萌「昨日の夜、御夕飯前に突然出かけていってそれっきりなのです。
  二、三日戻らないかも、とは言ってたんですが訳を聞いても答えてくれませんでしたし、
  先生やっぱり心配なのです」

完全に当てが外れた、上条当麻はそう考えていた。
ここにくれば話が聞けると思っていたがそうはいかないらしい。
しかも、二、三日は帰ってこないというのは決着がつくまで帰らないということではないだろうか。

小萌「上条ちゃん、姫神ちゃんのこと何か知ってるんですか? 知ってたら教えてほしいのです」

姫神がどういうつもりなのかはわからない。
しかし、小萌に要らぬ心配をかけるのもよくないだろう。

上条「いやぁ、ちょっと勉強を見てほしかったんですけど」

そこまで口にして上条当麻は気付く、目の前にいるのが教師であったことを。

小萌「勉強なら先生が見てあげますよ、幸い今日は先生暇ですし」

藪をつついて蛇を出すとはまさにこのことであろう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 12:08:57.14 ID:bPf41+5d0<> 小萌「ふふ、冗談ですよ。上条ちゃんは先生を心配させないように気を使ってくれたんですよね」

上条「ゔっ、すみません先生……。見つけたら必ず連れて帰ります」

小萌「そういえば黄泉川先生がおっしゃってたことなんですが、
  最近、都市伝説を装った変な事件が起きているそうなんです」

上条「変な事件?」

小萌「はい、誰かが襲われているって通報がくるんですが、アンチスキルが駆けつけるとそんな形跡はない。
  つまり誰も襲われてないので事件としては扱われない、変な事件なのです」

また都市伝説だ。
不安を掻き立てられる内容ではあるが、被害者はいないらしいということ。
タタリのことを考えるとそれだけが喜ばれた。

小萌「もし現場を見かけたりしても、首を突っ込んだりせずに走って逃げること」

上条(すみません先生、もう首突っ込んじゃってます。なんて言えないもんなぁ)

小萌「姫神ちゃんにあったら伝えて下さいね」

上条や姫神のことを信用していると、そういうことだろう。
どうしてもやらなければいけないことがあるなら仕方ないが、それでもできるだけ無茶はしないでほしい。
小萌の心遣いに感謝しつつ上条はその場を後にした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/04(金) 20:48:18.74 ID:bPf41+5d0<> 上条当麻は姫神秋沙を探し、街中を走り回っていた。
しかし、学園都市は広大だ。
姫神の目を惹く服装であればある程度聞き込みをすれば
何か手がかりくらいは掴めるかもと思っての捜索だったがかなり難航していた。
仮にコンビニを利用していたとして学園都市中のコンビニを一日で全て回りきることはできない。
一応、昨日姫神が現れた鉄橋を中心にあたってみたが収穫はゼロ、
コンビニで働く店員もシフトによって時間帯がばらばらでいろいろと穴の多い考えだったと痛感する。
元より運が良ければ会えるだろうと、そういう作戦なのだから
元より運の悪さに定評のある上条当麻には無理な作戦だったと言える。

そうこうするうちに日も傾き始め約束の集合時間が近付いてきていた。
上条はそろそろジュリアンへ向かおうかとそう考えていた時、

♪マヨラー、その手を引く者などいない♪

上条当麻の携帯の着信音だ。
すぐに取り出し携帯を確認すると『イギリス聖教』と表示されている。
オルソラからの電話だろうと思い上条は通話ボタンを押し携帯を耳に当てる。

携帯『死にたくなかったらすぐにそっから離れな!! 今すぐにだ!!』

つい昨日も聞いたその声に大声でまくし立てられる。
シェリー=クロムウェルだ。 <> ↑ごめん、酉忘れてた
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/04(金) 20:59:42.21 ID:bPf41+5d0<> 上条「シェリーか」

シェリー『あん? 誰だテメエ、これは禁書目録の携帯のはずだぞ』

上条「違います、これは上条さんの携帯です、そっちに連絡する時インデックスに貸してただけだ」

シェリー『上条? ああ、私をぶん殴ってくれた幻想殺しかよ。テメエでも構わねえよ、よく聞きな』

相変わらず口が悪い、上条当麻はそう思った。
一応明記しておくがシェリーは女である。

上条「その前にこっちからも話がある。大事な話だ」

語尾を強め相手の反論を許さない。

シェリー『言ってみなよ』

上条「お前は『昨日この携帯に電話をかけてきたか?』」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 02:05:39.61 ID:/PCEcZuB0<> シェリー『どういう意図で言ってんのかわかんねえが、私がこの番号にかけるのはこれが初めてだ』

上条「そうか。遮って悪かった、そっちの話も聞かせてくれ」

ほぼ間違いなく昨日の電話はタタリによるものだ。
だが、それでも一応きちんと確認だけはしておきたかった。

シェリー『ふん。私のは話じゃないわ、“警告”よ。今すぐ逃げないと全員死ぬことになる』

上条「さっきも言ってたな、死にたくなかったら〜って。タタリってのはそんなに危険な魔術なのか?」

シェリー『魔術? タタリは魔術なんて生易しいもんじゃないよ、あれは“災害”さ』

上条「災害!? 魔術じゃないって、あーもうどういうことかさっぱりだ! 詳しく説明してくれ」

シェリー『そのままの意味さ。魔術ってのは術者がいて意図的に発動するもんだ。
  だが、タタリは条件がそろった時、勝手に発動しちまう地震や竜巻なんかと同じだよ』

上条「術者がいない!? それじゃどうやって止めろっていうんだ!」

シェリー『馬鹿言うな! 地震や竜巻を人間の力でどうこうできるもんじゃない。
  だから逃げろって警告してやってんだよ』 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 02:20:24.70 ID:/PCEcZuB0<> 上条「待ってくれ、そもそもタタリってのはどういうものなんだよ?
  今のところ都市伝説が具現化するだけで逃げなきゃいけないほど危険なものには思えない」

シェリーは言った。地震や竜巻のようなものだと。
確かにレベル5超能力者の都市伝説が暴れたりすれば同様の被害が発生するだろう。
しかし、それは各個撃破でなんとかすることはできないのだろうかと。
昨日は非常に危ないところだったが、戦力を強化してアンチスキルにも協力を仰げばあるいは。

シェリー『……』

シェリーは答えない。
それでも上条は黙ってシェリーが答えてくれるのを待ちつづける。

シェリー『……わかったよ、全部教えてやる』

上条「シェリー!」

シェリー『その前に、今禁書目録は近くにいるか』

上条「インデックス? いや今はいないぞ。これから会う予定ではあるが」

シェリー『これから言うことは禁書目録には伝えるな、これは絶対だ』 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 03:48:45.46 ID:/PCEcZuB0<> ファミレス――――。

上条当麻がジュリアンに到着したのは約束の時間を少し過ぎた頃だった。

禁書「とうまー、遅いんだよー」

一方通行「三下は今日も遅刻かァ」

インデックスと一方通行はすでに着席しており、昨日に引き続き待たせてしまったようだ。

上条「……」

禁書「どうかしたのとうま、とりあえず座ろうよ。作戦会議が始められないんだよ」

上条「もう、やめにしないか」

禁書「ぇ?」

一方通行「あン?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 04:07:44.00 ID:/PCEcZuB0<> 上条「もう無理だろ、俺と一方通行の二人がかりでもあの有様だ。ここで引いた方が俺は懸命に思う」

一方通行「おィ三下ァ、そりゃァ本気で言ってんのかァ?」

上条「さっき本物のシェリーから電話があった。
  この魔術は噂に関わる人間の前に別の噂をぶつけて噂を成長させる魔術らしいんだ」

シェリーに言われた通りのことをそのまま伝える。

上条「だから俺たちがそもそも関わらなければ噂は成長しない。
  イギリス聖教から魔術師がきて犯人を捕まえる、噂に関係ない人間には影響がないからだ」

しかしこれは嘘だ。

上条「だからさ、もうやめようぜ。俺たちが頑張って空回りするのも馬鹿らしいじゃねえか」

禁書「とうまはそれでいいの?」

上条「当たり前だろ。上条さんは結局のところ自分が一番かわいいんですよー」

ガタン、がぶっ!

上条「いってー!!?」

禁書「とうまのばかああああ!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 04:07:57.97 ID:dovA+mqXo<> どうなるんだろ… <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 04:25:15.67 ID:/PCEcZuB0<> 上条「おーいてて、インデックスの奴噛みついてから走って行きやがったか」

インデックスに噛みつかれたこの右腕よりも、胸の痛みの方が強かった。

店員「店内であまり騒がれると他のお客様のご迷惑となりますので」

上条「あー、すみません。もう静かにしてるんで。あとアイスコーヒーをお願いします」

店員に適当に安い飲み物を注文し席に着く。
一方通行は席を立たず無言のまま。
少しして店員が注文したアイスコーヒーを持ってきて、ごゆっくりと一言残して去ったことで、
ようやく一方通行が口を開き、今日の『作戦会議』が始まった。

一方通行「でェ、シスターさン除け者にして俺らで何をしようってンだァ?」

上条「あいつは、あれでもあっちの世界じゃ結構有名らしくてな。
  事件にかかわると必然的に情報が流れちまうんだ」

つまりそれは他の誰にも知られてはいけないということ。

上条「それと」

一方通行「なんだよ、とっとと言えって」

上条「お前も、手を引くなら今のうちだぞ一方通行」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 04:46:45.65 ID:/PCEcZuB0<> 一方通行「昨日ので俺がビビっちまったとでも思ってるンですかァ、三下くンはァ」

上条「少なくとも、俺は無茶苦茶ビビってる。今すぐ逃げだしたいくらいだ」

一方通行「チッ。……とっとと話しやがれ、どんな相手だろうと立ち向かってやるよ」

一方通行は、上条当麻が発した正直な言葉の意味をどの程度察してくれたのだろう。
きっと勝算の無い相手なのだろうということ。
しかし、それでも逃げるわけにはいかない理由があるのだろう。

上条「まず、タタリについての訂正だ。あれは魔術じゃない」

一方通行「前提からして崩れたなァ、なら俺が言った通り超能力かなンかか?」

上条「タタリとは、ある条件が揃った時に自然発生する現象、シェリーは災害って言ってたな」

一方通行「はァ? 雨が降った後虹が見えンのと同じで、ただ条件がそろったからあれが現れたってのか?
  運が悪いにもほどがあンだろォが。……で、ンなもンどうやって止めるて言うンだ?」

一方通行は思わずため息を漏らす。
学園都市在住の皆様ご愁傷様です、運の悪いことにタタリが福引で当たりました。
がらんがらんがらーん、とつまりはそういうことなのだから。

上条「その前に、一方通行は『吸血鬼』って信じるか?」

このウニ頭は真面目な話の最中に何を言いだすんだ、と一方通行はそう思っていた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<><>2011/02/05(土) 05:12:23.72 ID:/PCEcZuB0<> ちっとばっか雑になってきたかなァなンて思ってる>>1です
インデックスもリタイア?してタタリの真相に迫ります
たぶン、型月知らない人の方が楽しめるンじゃないかなァこの展開 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 06:46:10.43 ID:dovA+mqXo<> 型月っての良く知らないけど、楽しみにしてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 10:06:47.66 ID:0WcWGjlH0<> 型月知ってるけど楽しめてるよ
ジュリアンで吸血鬼の話をするとは…
不幸な上条さんは供血されそうですな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 13:19:32.01 ID:pPZuqAQf0<> メルブラ懐かしい…最近ゲーセン行ってないなぁ
猫アルクの使いにくさは異常 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 13:22:15.73 ID:LH+OoqmDO<> >>155
機会があったら「月姫」だけにでも触れておくといい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 13:23:34.74 ID:mAyo3+PBo<> なおアニメ版は <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/02/05(土) 14:07:06.38 ID:6VRvWegk0<> >>159
その話をするなーーーっ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 15:01:47.79 ID:NOu27FjIO<> >>159
そんなものは無かった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/05(土) 18:17:50.07 ID:H3mPQxyWo<> >>159
不許可 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 19:59:07.42 ID:/PCEcZuB0<> >>159
「これがものを殺すってことだ」がないとか絶対に許さない <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 20:33:42.92 ID:/PCEcZuB0<> シェリー『あんたは吸血鬼って信じるか?』

突拍子のない話に上条当麻はどう答えていいかわからない。
ただ、その答えはイエスだ。
上条当麻は吸血鬼の存在を信じている。
とある少女の持つ能力がその超常の者の存在を肯定してしまっているからだ。

シェリー『今、あんたらの街に襲いかかろうとしてる災害の正体、
  それが――人の生き血を啜り、陽の光を浴びれば灰になる――吸血鬼だって言ったら』

上条「信じている」

シェリー『本気かよ? もしかして見たことあるとか知り合いって言うんじゃないだろうね』

上条「見たことなんてあるわけないだろ。それよりタタリの正体が吸血鬼って話、本当なのか?」

シェリー『残念ながら本当だ。魔術師としては喜ぶところなのかね、これは』

――――――――――――

姫神「上条くん。あなたも。この件から手を引いてほしい」

姫神「そう。これは私の仕事。だからお願い」

姫神「必要ない。じゃあ。伝えたから」

――――――――――――

上条(そういうことかよ……) <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 20:53:37.14 ID:/PCEcZuB0<> シェリー『タタリって吸血鬼は、吸血鬼の中でもかなり特殊な部類に入るらしい。
  特殊って言っても普通の吸血鬼がどういうもんかわかんなかったし
  教えてくれなかったわけだが……、っと話が逸れたな、悪い』

上条「続けてくれ」

シェリー『それでタタリってのは、“身体を捨てた”吸血鬼らしい』

上条「身体を捨てた? どういうことだよ」

シェリー『言葉通りさ。身体を捨て、条件を満たした街に現れる現象になっちまったんだよ。
  まだあんたがこうして話してるってことはタタリは完成しちゃいないみたいだが、タタリが完成したらその街は終わりだ。
  噂を模した姿で現れ一夜にして街中の人間全ての血液を飲み尽くす』

上条「なっ!!!」

頭を金槌で重いきり殴られたような、そんな気がした。

シェリー『だけどな、タタリってのは現象なんだ。条件を満たした場所にしか現れられない。
  だから今すぐにでもあんたらは逃げるしかないんだよ、命が惜しかったらね』 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 21:09:20.83 ID:/PCEcZuB0<> 逃げれば助かる。そう、自分は助かるのだ。
自分だけじゃない、インデックス、小萌先生、土御門兄妹、青髪ピアス、姫神、吹寄、
とりあえず学校の連中全員に声をかけて……。
あとは、そうだ……、ビリビリに妹達、一方通行……

ギリリ。

唇を噛みしめしっかりと現実を見直す。
仮に声をかけて皆は俺の話を聞いてその話を信じてくれるのか?
それにここは学園都市だ、街から出ようとしてすぐに出られるわけじゃない。
外出には申請が必要だし、学校単位での大規模な外出が認められるはずがない。

だが。

俺一人ならどうだ?
闇咲逢魔に連れられ学園都市から抜け出した時のあのルートなら
俺一人と、あともう一人ぐらいなら逃げ出せるはず。
これは悪魔の囁きでもなんでもない、ただの生存本能。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。

ならば見捨てろ。

できぬなら死ね。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/05(土) 21:53:51.01 ID:/PCEcZuB0<> 上条「できるわけ、ねえだろ!」

シェリー『正気か? 敵は吸血鬼だよ、わかってんの?』

まだだ、こっちにも切り札は残ってるんだ。
諦めるにはまだ早い。
不幸なのには慣れてるだろ、上条当麻。
こんな天災みたいなもので死ぬのは間違いなく不幸だ。
だが、俺一人生き残ったところでやっぱり不幸じゃねえか。
不幸なんて見下してんじゃねえ!
俺たちはまだ死んでねえ! 生きて、必ず幸せを掴んで見せる!

上条「こっちにも切り札はある。大事なもの見捨てて逃げるくらいなら死んだ方がましだ!」

シェリー『クレイジーな奴だな幻想殺し。けど』

オルソラ『あなた様なそういうと思っていたのでございますよ』

上条「その声、オルソラか!?」

オルソラ『はい。つい先日はありがとうございました』 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/02/06(日) 20:16:48.70 ID:r8vLc+5D0<> オルソラ『あなた様のお身体の方はもうよろしいのでございましょうか?』

上条「学園都市には凄腕の医者がいるからな。もうすっかりよくなって駆けまわってたとこだ」

オルソラ『それはよかったのでございます。私のほうも天草式のみなさんともども』

シェリー『人の電話に割り込んで身の上話してんじゃないよ、そういうことはまたの機会にしてくれ』

受話器から離れた所からの声なのか、小声でオルソラの謝る声が聞こえてきた。

シェリー『それより幻想殺し、さっき切り札があるとか言ってたけどそれはアンタの右手のことか?』

上条「ああ、一応俺の右手も切り札の一つだけど、もう一つ『吸血殺し(ディープブラッド)』がある」

シェリー『詳しく話な』

――――――――――――

上条「――っていう能力なんだ。さっきも言ったが昨日も姫神のこの能力に助けられた」

シェリー『吸血殺し、確かに吸血鬼相手にこれ以上ないジョーカーだね。……けど』

上条「何か問題があるのか?」

シェリー『問題って言うか、“不安”だね』 <> ↑畜生、また忘れた
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/06(日) 20:40:18.62 ID:r8vLc+5D0<> シェリー『吸血殺しには何の問題もないんだが、タタリの動きがどうも気になる』

上条「気になるって何のことだ?」

シェリー『タタリが噂を具現化するのは、本来タタリが完成する時なんだ。
  逆を言えばタタリが具現化したということはタタリは完成したと言ってもい。
  そしてタタリは“一夜限り”、なのに二日続けてだなんて』

上条「何かがおかしいってことか。タタリの正体がわからなかったから考えてなかったんだが
  昨日、タタリが姫神の血を吸ったことでタタリが死んだって可能性はないのか?」

シェリー『まずありえないだろうね。“直死の魔眼”でも殺しきれなかったらしいし』

上条「直死の、なんだって?」

シェリー『簡単に言うとあんたの幻想殺しや吸血殺しの上位互換みたいなもんなんだが』

オルソラ『シェリーさん、それは極秘の』

シェリー『あーっと、今の話は聞かなかったことにしてくれ、どちらにしろ無いもの強請りになっちまう』

上条「あ、あぁわかった」

うっかり外部に漏らすとまずいことを口走っていたらしい。
オルソラがあんな慌てた声を出すとは。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/06(日) 21:14:50.61 ID:r8vLc+5D0<> シェリー『じゃあ、これからについてだけど。幻想殺し、あんたは夜の巡回。
  タタリがいつ完成するかもわかんない以上、気を抜けないからね。
  完全に殺すことはできなくともその日一晩ぐらいは効果があるみたいだしね」

上条「わかった」

シェリー『それと吸血殺し、たぶん向こうも同じことをやってるはずだ。
  はち合わせたら必ず捕まえな、もしかしたら私らが知らない情報も握ってるかもしれない」

上条「姫神はタタリの正体が吸血鬼だって知ってたみたいだしな」

シェリー『そして、禁書目録。こいつはこの件に関わらせるな。
  禁書目録は他の魔術師に監視されてるから関われば必ず外の連中に勘付かれる。
  魔術師にとって吸血鬼の捕獲は悲願だ、分が悪かろうが何だろうが突っ込んでいく奴は必ずいる。
  そうなったら収拾がつかなくなって、最悪学園都市と魔術師の間で戦争が起きる」

上条「……わかった。インデックスには関わらせないようにする」

シェリー『“この魔術は噂に関わる人間の前に別の噂をぶつけて噂を成長させる魔術”だ。
  だから“あんたたちがそもそも関わらなければ噂は成長しない”、
  “噂に関係の無い外部の魔術師が処理に当たる”とでも言っとけ」

上条「魔術はわかんねえからな、そのまま伝えるよ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/06(日) 21:21:17.97 ID:r8vLc+5D0<> シェリー『長くなったけど、まとめるとだな』

・タタリの正体は吸血鬼だった
・タタリが完成すれば一夜で学園都市の住人全てが死に絶える
・吸血鬼に対して姫神の吸血殺しは強力な切り札
・タタリが具現化するのは本来一夜限り、二夜続けてはおかしい
・今後は夜の巡回をしながら姫神の確保
・インデックスをこの件に関わらせない

シェリー『こんなところだ』

上条「シェリー、ありがとな。いろいろ手を尽くしてくれたんだろ?」

シェリー『ばっ!? 改まって気持ち悪いこと言うんじゃねえ。
  たかだが一晩徹夜してデカ尻野郎にカレー奢る約束したぐらいだ、大したことしてねえよ』

上条「十分すぎる、お前がいなかったら相手の正体もわからってなかったんだから」

オルソラ『私もお手伝いしたのでございますよー』

上条「オルソラもありがとう」

必ず生き残る。
もう誰一人傷つけさせない。
タタリなんてふざけた幻想はこの右腕で絶対にぶち殺して見せる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/06(日) 22:38:02.02 ID:r8vLc+5D0<> 一方通行「長い長い回想をどォもありがとォ」

ぱちぱちぱち、とやる気なさげな態度で拍手する一方通行。

上条「どうした? やっぱり降りるか?」

一方通行「降りねェよ、テメェ一人じゃ不安だからなァ」

上条「そうか、正直心強い」

一方通行「勝手に言ってろ」

心底めんどくさそうに言い捨てると一呼吸置き、話題の転換を図る。

一方通行「でェ、お前は夜の巡回ってことらしいが俺はそのサポートに回ればいいのかァ」

上条「ああ、そうしてもらえると助かる」

一方通行「だがよォ、結局は一時的なその場しのぎなんだろう?」

これは勝つための闘いではない。
いつまで続くのかもわからない、ただの消耗戦でしかないのだから。

上条「シェリーとオルソラが引き続き情報を集めてくれてる。
  きっとすぐにでもタタリを止める方法を見つけてくれるさ」

その言葉に確信はない。
できることはただ信じることだけ。
不安に思えば思うほどタタリに付け込まれる隙が多くなる。

上条「じゃあ、解散してまた今夜二十時に昨日の公園に」

一方通行「おォ、わかった」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/06(日) 23:48:44.49 ID:r8vLc+5D0<> メルブラ軸で言うと、この話は志貴が「タタリ」をぶっ殺したあとの話
朱い月?何それ <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 02:37:52.16 ID:wMaaEAJG0<> 巡回中なう――――。

一方通行「そういやまだ言ってなかったなァ」

上条「ん? 何の話だ?」

一方通行「この杖の話だァ。つーか気にならないもンかァ?」

ピタッ

上条(ごくり)

一方通行「どうしたよォ、急に立ち止まってェ」

上条「すまん!」

一方通行「はァ? 本気でどうしちまったンですかァ三下ァ」

上条「上条さんも手加減する余裕なんてなくてですね、お前がやったことを許せないのは別として
  やっぱり、後遺症が残るような殴り方をしてしまったんだなとそう思うと」

一方通行「言っとくがァ、杖突いて歩いてンのはお前のせいじゃねェぞ?」

上条「へ?」

一方通行「お前、どンだけその右手に自信持ってンだよ……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 02:58:31.95 ID:wMaaEAJG0<> 一方通行「完全に別件ですゥ、俺が言おうとしたのは能力の制限のことだァ」

上条「制限って、三分間しか戦えないとか?」

一方通行「俺の服見ながらしゃべンのやめろォ! まァあながち間違ってねェけど。
  ……今の俺はァこのチョーカー型の補助演算装置で脳ミソを補ってる状態だァ」

慣れねェことやったせいでヘマやっちまってなァ。
そう口にした時の一方通行の顔に後悔の色は見られない。

一方通行「こいつァ充電式なンだが、日常生活で四十八時間、能力を使用すると十五分しかもたねェ。
  だから常に無敵で居られるわけじゃねェンだ」

上条「……その話、俺が聞いてもよかったのか?」

一方通行「いいわけねェだろ。だがそれで下手打つことになったらァ目も当てられねェ」

上条「一方通行、」

一方通行「そンだけだ、あンま俺を頼ンじゃねえぞ。あくまで俺はサポートだ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 03:23:54.09 ID:wMaaEAJG0<> ――――――
――――
――

一方通行「三十分ぐらい歩きまわってるが、全くしかけてこねェな」

上条「おかしいな。シェリーは『向こうから直接アクションがあったのなら主賓はお前らだ。
  適当にうろついてればタタリの方からすぐに仕掛けてくる』なんて言ってたのに」

一方通行「コーヒー買ってくるゥつって出かけてきたンだが」

上条「俺もインデックスに学校に忘れ物したからって言って出かけてきた」

互いにこんな面倒なことはとっとと終わらせてとっくに家に帰っている予定で動いていたのだ。
正直、一度帰ってまた別の用事でもう一度出かけた方がいいんじゃないか、
これ以上は打ち止め/インデックスが外に出てタタリに遭遇するんじゃないかと気が気じゃない。
一旦帰っていいかァ?/一度帰ってもいいか?とどちらからともなく口に出そうとした時だ、

ピンポーン!

ガコン!

一方通行「なンだァ今の音」

上条「向こうの方だ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 03:30:45.01 ID:wMaaEAJG0<> ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

ガコン!ガコン!ガコン!

一方通行「説明しろォ三下ァ、あれは……何だ」

上条「上条さんに聞かれても……なんなんだよ、あれ」

ピンポーン!ピンポーン!

ガコン!ガコン!

一方通行「インターホンを連打してるおっさンに、マンホールを開け閉めし続けるおっさン?」

上条「あれはタタリなのか……、それともただの変質者なのか?」

一方通行「どう考えても後者じゃねェか」

上条「そのようで、ゲッ! こっち見たぞ」

インターホンを連打してるおっさン「にやり」

マンホールを開け閉めし続けるおっさン「にやり」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/07(月) 03:38:38.04 ID:glUoerh4o<> 絶対遭遇したくない <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 03:45:22.56 ID:wMaaEAJG0<> 次の瞬間、マンホールを開け閉めし続けるおっさン(以下マンおじ)が開け閉めしていたマンホールの蓋を
円盤投げのフォームから上条当麻と一方通行目掛け投げつけてきたではないか。

ぶぅんっ!

上条「うわっぶねえええ!」

一方通行「フン!」

上条は横っ跳びで回避し、一方通行は演算補助装置を操作しベクトル操作で跳ね返す。
しかし、マンホールの蓋は重力に引かれマンおじに到達する前に地面に落下する。

ベキベキッ

突如聞こえた何かを破壊する音に、その音源の方に目を向けると
今度はインターホンを連打してるおっさン(以下インおじ)が
インターホンを力付くで剥ぎ取り振りかぶる体勢にいるのが見えた。

一方通行「テメェら一体なンなンですかァ! 舐めた真似してると愉快なオブジェにしちまうぞコラァッ!」

一方通行の叫びをよそにインおじはインターホンをスクリュー投法でぶん投げてくる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 03:58:37.41 ID:wMaaEAJG0<> 上条「思い出した! 昼間携帯で調べた都市伝説にこんなのがあった!」

曰く、インターホン連打おじさんとマンホールおじさん

一方通行「はァ!? じゃァこれがタタリだってェのか、ふざけたことぬかしてンじゃねェぞ!」

上条「間違いない! ……いや、半分ぐらい自信がない。
  とりあえず右手で触って消えればタタリで、消えなきゃ変質者だ!」

一方通行「どっちにしろ嫌なんですけどォ!」

昨日の悪夢のようなタタリは何だったのかと、怒りをぶつけるように飛翔する一方通行。
狙うは先ほどインターホンを剥ぎ取った家の隣の家から
またしてもインターホンを剥ぎ取ろうとするインおじ。

ベキベキッ

剥ぎ取ってから投球フォームまでわずか一秒足らず。
いまだ宙を舞う一方通行にすかさず投げつける。
そして驚愕のジャイロ回転が凄まじい破壊力を生みジャイロインターホンが一方通行を直撃、
するも反射で自分の投げたインターホンを顔面に食らい、インおじは悶絶し転げ回っている。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/07(月) 04:12:03.92 ID:wMaaEAJG0<> とりあえずで頭に脚を乗せ、ベクトル操作で全ての動きを真下に変換し動きを封じる一方通行。
振り返ると、上条当麻がマンホールの蓋の上に乗り、マンおじがそれを必死に持ち上げようとしていた。
そのまま腕を振り上げ、上条当麻の幻想殺しがマンおじの頭部を殴りつける。

上条「消えた……」

一方通行「マジかよ……」

上条当麻と一方通行を襲う謎の疲労感。徒労感と言ってもいい。
そのまま無言で一方通行の元まで歩き、インおじの背中を右手で殴りつける。
マンおじ同様に幻想殺しに触れた途端インおじも霧のように消え、今夜のタタリが終了する。

上条「帰るか」

一方通行「おォ」

どこか晴れやかな顔をした二人。
律儀にマンホールの蓋を元に戻し、インターホンは門の前に置き、
心にはどす黒いモヤモヤを残したまま、
何にぶつければいいのかわからない怒りを抱え去って行った。

とある魔術のタタリの夜に。第二夜完。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/07(月) 04:17:01.79 ID:wMaaEAJG0<> うっは、第二夜じゃねえし第三夜だし。間違えたうぼぁ
第三夜はタタリの説明メインで力使い果たした、正直すまんかった
だって、検索したらレールガン4話のまとめにこれがあったんだもの、仕方ないじゃない
別のSS書きたくなってきたけどまだ終わる気配ないお(^ω^) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/07(月) 04:24:38.40 ID:jfiN32B9o<> おつおつ
頑張って完結させてくれぃ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/07(月) 04:33:24.74 ID:exq3G3bJ0<> 乙!
なんだか自分もメルブラクロスで書いて帰宅なった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/07(月) 09:07:08.55 ID:7vs+g7sAO<> すごく面白いから完結頑張ってね〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/02/07(月) 15:51:17.45 ID:MTq4GyLe0<> 乙
だけど上条さんは吸血殺し使おうとするか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/07(月) 23:50:52.18 ID:QZkbZiGt0<> ところで既出だったらスマンが一方さん最新だと30分能力維持できる筈なんだが
もしどこかに書いてあったらスマソ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/08(火) 00:17:40.85 ID:A0KwPaK90<> ちょこっと書いたような書いてないようなでうろ覚えだからしっかり書いとくわ
時系列的には法の書と残骸の間、セロリがあわきんぶん殴るよりも前なので15分です
第三夜が13日の日曜ってことで書いてるから第一夜が11日で法の書からわずか三日という過密スケジュール
すでにいくつかおかしいのがあるけどそこは目を瞑ってもらえると助かります <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/02/11(金) 13:54:54.04 ID:zcTWcIcSO<> インターホンさんがジャイロ回転だと? <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/14(月) 00:09:16.99 ID:7V4/Y39R0<> 突然だが、上条当麻は学生である。
なので、どんな事件に巻き込まれていようと、
身体が動く限りは学校で勉学に励まなければならない。
加えて言うなら、インデックスには今回の事件から離れようと言った手前、
少なくとも自分から日常を崩すような行動をとることはできないのだ。

上条「ようやく終わりかー」

その日一日の授業全てをボーっとした頭で聞き流し、
帰りのホームルームの終わりと同時に一言だけ呟く。
『ボーっと』とはいえ一日中考えていたのはタタリのことだけ。
シェリーの話では、タタリが完成すれば学園都市が滅びてしまうとのことだが
昨日のタタリを思い出すと、内心ではどうにかなるのではないかとずっと考えていた。
仮に一方通行や一昨日の御坂のようなレベル5のタタリが現れたとしても
右手の幻想殺しや姫神の吸血殺しがある以上、都市が壊滅するなんてことは考えられない、
それが上条当麻が今日一日で出した結論だった。

上条「大体、わからないことが大すぎるんだよな」

もう一言だけ呟いて、溜息を吐きながら立ち上がる。
幸いにも予定していた補習は延期され今日はこのまま帰ることができる。
はずだったのだが、

土御門「カミやん、話があるんだが屋上まできてもらってもいいかにゃー」

胡散臭いのに捕まってしまったなぁ、とまた一つ溜息を吐いた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/14(月) 00:10:27.01 ID:7V4/Y39R0<> 屋上――――。

土御門「なぁ、カミやん。俺に話さなきゃならんことってないかにゃー」

上条「おい土御門、話があるって言ったのはお前の方だろ?」

その言葉に疑問を覚えるのは当然、『話がある』のは土御門の方だったはずだ。

土御門「話はある。けどその前にカミやんは俺に言うべきことがあるはずだぜい」

上条「特にないと思うぞ? 強いて言うなら昨日の夜にお前んちに行ったんだけど
  留守だったからどこ行ってたんだろう、くらいか」

その言葉は上条が思ったことをそのまま口にした嘘偽りないもの。
だからこそ、土御門元春はそんな上条が許せなかった。

土御門「今この街で起こっている魔術的な現象、カミやんは知ってるはずだよな」

上条「ッ!?」

土御門「都市伝説、タタリ、吸血鬼、今回もずいぶん厄介な相手らしいじゃないか」

上条「それは……」

土御門「手伝ってやるよ。禁書には秘密にしてんだろ、魔術に詳しい奴が必要だろう」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/14(月) 00:11:36.61 ID:7V4/Y39R0<> 上条「そういやお前も魔術師だったもんな、気付いてて当然か」

土御門「そうでもねえよ、上から依頼されて初めて気付いたんだ。
  禁書はすぐに気付いたらしいがそれは禁書がタタリとして現れたせいだろう。
  あいにくと俺は都市伝説になるほど有名でも何でもないからな」

上条「けど、お前は魔術を使うと」

土御門元春は超能力開発を受けた魔術師だ。
超能力開発を受けた者は魔術を使うと身体が崩壊してしまう。

土御門「使えなくとも知識があるだけましだろう。
  吸血鬼がいることを魔術サイドの連中に知られれば大変なことになる。
  だから禁書に手伝わせることもできないし、
  手伝ってくれてるイギリス聖教の奴らも大っぴらに情報収集できずに
  タタリに関する情報が少なくて困ってる、そんなとこだろ」

上条「そこまでわかってんのかよ!? はぁもうわかったよ。
  『お願いします土御門さん、手伝ってください。』これでいいか?」

土御門「おっけーだにゃー」

上条「ただし、絶対に魔術を使うんじゃねえぞ?」

土御門「おっけーだにゃー」

上条「ほんとにわかってんのかよ、お前の身体のことだぞ?」

土御門「俺はカミやんと違って自分が大事だからな、
  誰彼かまわず命を投げ捨てるようなまねしねえよ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/14(月) 00:13:02.94 ID:7V4/Y39R0<> 土御門「雑談はこの辺にして、今起こってることを教えてやるよ」

上条「頼む、土御門」

土御門「本来タタリが具現化するのは一夜限り、カミやんはそう聞いてるはずだな」

上条「ああ、シェリーが二日続けてなんておかしいって言ってたな」

土御門「そして、昨日もタタリは現れた。これにはAIM拡散力場が関係してるんだ」

上条「それって能力者が無意識に垂れ流してる微弱な力だったか?」

土御門「そうだ、超能力者の集まるこの街は、タタリが身体を持つためには
  非常に適した環境みたいでな、それでタタリの完成を待たずしてタタリが具現化してるんだ」

上条(AIM拡散力場……、風斬と関係あったりするのか?)

土御門「だがな、って聞いてるかカミやん?」

上条「おお悪い、続けてくれ」

土御門「で、AIM拡散力場の影響でタタリが具現化しやすくなってるって話だが、悪いことばかりじゃない。
  タタリの完成前に現れるタタリを倒せば、完成した時のタタリの能力を大幅に弱体化させることができる、らしい」

上条「らしい……って断言できないのかよ」

土御門「超能力者がこんなにいるのは世界中でここだけだからな。
  らしい、なんて言い方はしたが一応信用してもらって大丈夫だ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/14(月) 00:14:25.50 ID:7V4/Y39R0<> 上条「結局のところ、やることは変わらないわけか。
  タタリを探してこの右手でブン殴る、と」

土御門「タタリの完成は明日、今日を凌げば次がラスボスってわけだぜい。
  本来のタタリなら100%勝ち目はないが、弱体化したタタリなら余裕で勝てるはずだ」

上条「そうか、明日か……って明日!?」

土御門「何だカミやん、タタリがいつ完成するか知らなかったのか」

上条「初耳だぞ、まったく」

土御門「じゃあ、これもちゃんと言っといた方がいいな。『姫神秋沙は何がなんでも守り抜け』」

上条「姫神を? まぁ言われなくてもそうするけど」

土御門「姫神の吸血殺しは強力だ。完成前のタタリなら何かする前に吸血衝動に負けて
  自ら姫神の血を吸って自滅するだろうが、完成したタタリはそうはいかない。
  タタリは死徒27祖に数えられるほどの吸血鬼だ、吸血衝動を抑えるくらいは可能だ」

上条「吸血衝動? 死徒27祖? なんかまたしても知らない単語がちらほらと」

土御門「カミやん、話の腰を折らないでほしいにゃー。
  とりあえず、吸血鬼の世界の超能力者でいうレベル5みたいなもんだとでも思っててくれれば」

上条「はぁ!? 吸血鬼のレベル5って、そんなのに勝てんのかよ!?」

土御門「だから本来なら無理だって言っただろ、例えカミやんの幻想殺しが絶対的でも
  そもそも相手に触れることすらできない、そういう相手なんだよ吸血鬼ってのは。
  他の吸血鬼なら触れても消えねーし、弱体化させることもできなかったはずだから、
  そういう意味じゃずいぶんとラッキーな方だぜ、まだ生き残るチャンスが残ってるんだから」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/02/14(月) 00:16:34.14 ID:7V4/Y39R0<> 上条「吸血鬼コワイ吸血鬼コワイ吸血鬼コワイ」

土御門「えーっと、どこまで話したっけか……、そうそう吸血殺しじゃ吸血鬼は倒せないって話だ。
  でだな、カミやん。吸血鬼を倒せないまでもタタリは吸血衝動を抑えるために
  弱体化している力をさらに使わなければならないんだ。
  さっき余裕で勝てるって言ったのはそういう意味だ」

上条「コワイコワイコワイ……ん? ってことはもし姫神がいないと?」

土御門「勝率が70%から3%くらいに」

上条「……。姫神って今日学校来てなかったよな」

土御門「ここ数日は昼はホテルで身体を休めて、夜は歩きまわってるらしいぞ」

上条「姫神は今夜必ず見つけてやる!! 待ってろよ姫神!!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/16(水) 01:01:31.35 ID:k1vk57QT0<> 同じ頃――――。

一方通行は街中を歩き回っていた。
ただの散歩やコーヒーの買い出しが目的ではない。

一方通行「ちっ、見つからねェ。やっぱ夜じゃねェとダメかァ?」

探し物――確固たる目的。
一方通行はとあるベクトルを探っているのだ。

一方通行「つっても昨夜も、ンなもン見つからなかった。やっぱ胡散臭ェな、魔術ってのは」

魔術。より正確にはタタリの術式。
一方通行が探しているのは今この街で行われているとされる、タタリの術式だ。
発動者のいない自然現象のようなものと言っても、世界に干渉しているのだから、
タタリにベクトルが存在しないというのは考えにくい。
そう考えた一方通行は昨夜からタタリのベクトルを探索しているのだ。

一方通行「やっぱ、能力に制限があるからかァ?」

演算補助装置のバッテリーは平常時モードで四十八時間、
この設定でも紫外線を反射する程度は可能で、ある程度のベクトルを感じ取ることもできる。
しかし、能力使用モードでしか感じ取れないベクトルも多く、
タタリのベクトルも能力使用モードでしか感じ取れないものである可能性も高い。
そもそも、魔術ってものにいまだ疑念を持っている一方通行は
ベクトル自体が存在しないという可能性も考えていた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/16(水) 01:20:25.86 ID:k1vk57QT0<> 一方通行「一分だけ、試してみるかァ」

能力使用モードの場合、バッテリーを著しく消耗する。
今夜も上条との巡回を予定しているため、長時間の使用は控えなければならない。
そのことに対する言い訳のように呟いて、演算補助装置を操作する。

一方通行「くく、クカカカ……」

今この空間に存在し、自身の身体に触れているあらゆるベクトルを選別していく。
熱、電磁波、重力、風……、音……、光……、

一方通行(これも違う、これは……自転運動か)

果てには地球の公転運動のベクトルさえ認識したところで選別にキリを付け、再び装置を操作する。
魔術。タタリ。吸血鬼。どれもこれも眉唾ものばかりだ。

一方通行(これ以上は無駄だな)

タタリのベクトル探索に見切りをつけ帰路につく。
学園都市第一位の能力を持ってして見つけられないベクトルは存在しない。
それが一方通行が下した結論だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/17(木) 05:19:07.60 ID:TI+nfSO/0<> 夜、上条宅――――。

上条「じゃあ、ちょっと出てくるから」

食事とその片づけを終え、上条当麻は学生鞄片手に出かける準備を整える。
今夜こそどうにかして姫神と接触を図りたい上条は、
『同じ寮のクラスメイトと学校の課題をやる』という嘘を方便に、
一晩中使ってタタリの巡回と姫神探しを行うつもりなのだ。

禁書「ねぇとうま、タタリを追うのはもうやめたんだよね?」

上条「あたりまえだろ? 俺たちが関わらない方が都合がいいっていうんだから、そう説明しただろ?」

禁書「そうだよね、とうまは今から学校の課題をやるために友だちの部屋に行くんだもんね」

上条「管理人とかにはお前のこと秘密にしてるから向こうの部屋に行くしかないだろ」

禁書「うん。……うん、ごめんねとうま」

上条「おいおい、謝るようなことじゃないって」

悲しそうな、苦しそうな顔を見せるインデックスに上条はいたたまれない気分になってくる。
インデックスには何も伝えていないのに、何故そんな顔をするのだろうか。
だからと言って本当のことを話すわけにはいかない。
インデックスの頭に左手を乗せ、優しく撫でる。

上条「昨日一昨日と補習サボっちまったから量が多いんだ。
  もしかしたら今夜は帰ってこないかもしれないけど、ちゃんと朝ご飯は作りに来るからさ」

禁書「むぅー! 朝ごはんの心配してるわけじゃないんだよ、とうま!!」

今にもかぶりついてきそうなシスターさんに、「ごめんごめん」と一言謝ってから部屋を出た。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/17(木) 05:39:00.34 ID:TI+nfSO/0<> 上条は部屋を出た後、ベランダおよび玄関からは見えない死角を通り寮の外へ出る。
あくまで上条当麻は寮の中にいる設定なのだから、万が一でも寮外へ出るのを見られるわけにはいかない。
寮からかなり離れたところで、ここまでくれば安心だろうと考え携帯を取り出す。
電話をかける相手はイギリス聖教のシェリー。
タタリと関わらないことに決めた上条のところへシェリーから電話がかかってくるのはおかしいため、
向こうからではなく、こちらから電話をかけることにしていた。
ちなみにイギリスとの時差は約マイナス九時間、今向こうは昼前である。

――――――――

シェリー『はぁ? 人が二日連続徹夜でいろいろ調べてやったってのに
  なに漫然とこっちより情報多く仕入れてやがんだてめえ」

上条「えー!? いやまぁその、なんていうかごめんなさい」

シェリー『ケッ、こっちもほとんど手詰まりだったわけだし、てめえが謝ることじゃねえよ』

上条「いろいろ苦労かけたみたいだし、それなのに」

シェリー『いいっつってんだろ。わかったら返事しな!」

上条「……はい」

上条(なんで俺怒られてるみたいになってるんだろう) <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/17(木) 05:59:23.80 ID:TI+nfSO/0<> シェリー『まぁいい。とりあえず、今日と明日で決着がつくんだな?』

上条「ああ、そういうことらしい。だから安心して眠ってくれ」

シェリー『そうさせてもらうよ。あぁ、でもその前に』

上条「うん? なんだ?」

シェリー『一人そっちに“魔術師”が向かってる』

上条「なっ!?」

気付かれた?
吸血鬼が学園都市にいることを魔術師に知られてしまった?
ということは……。

シェリー『大丈夫だ、てめえが思ってるようなことにはならない』

上条「いや、でも今、魔術師って」

シェリー『魔術師は魔術師でも吸血鬼殺しの専門家だ。あんたらの邪魔する側の人間じゃないってこと。
  そんで到着は明日、タタリがいつ完成するか知ってるんだろうな奴さんは』

上条「もし遭遇しても味方だから安心しろってことか」

シェリー『味方ってわけじゃないんだが……、もし揉めるようなことがあったらカレーを奢る約束でもすれば大体のことはなんとかなるから』

上条「カレー? そいつはインドの魔術師なのか? 一応教えてくれてありがとうな」

シェリー『じゃあな、もう厄介事持ちこんでくんじゃねえぞ』

最後にそう言い捨ててぷつりと電話は切れてしまった。

上条「魔術師……吸血鬼殺しの専門家、ね」

上条は携帯をポケットにしまい、一方通行との待ち合わせ場所へ急ぐ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/17(木) 08:36:16.46 ID:TI+nfSO/0<> 同じ頃、一方通行の居候先――――。

黄泉川「もう遅いのにどこ行くじゃん、一方通行」

一方通行「チッ、ちょっとコーヒー買いに行くだけだァ」

黄泉川「コーヒーって昨日大量に買ってきたのが残ってるはずじゃん」

一方通行「違う銘柄のコーヒーが飲みたくなったンだよ。じゃァな」

黄泉川「おい、待つじゃん!?」

バタン。

打ち止め「言っちゃったね。ってミサカはミサカは最近のあの人の行動がとっても不安」

芳川「居候ってことで気を使ってるのかしら」

黄泉川「いや、あんたはもう少し遠慮って言葉覚えた方がいいじゃん」

※時系列にずれがありますがすでに黄泉川宅で居候中の設定です。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/02/17(木) 08:49:41.29 ID:TI+nfSO/0<> 打ち止め「あの人はそんなの気にする人じゃないよって、ミサカはミサカはあの人の無神経っぷりを説明してみたり」

黄泉川「コーヒー買いに行くって言ってたけど、どう考えても嘘にきまってるじゃん。
  一昨日も額に包帯巻いて帰ってきてたし」

芳川「そのくせ、私たちには夜は絶対に出歩くな、でしょ。何かあるのは確実でしょうね」

打ち止め「ミサカ10032号も倒れちゃったみたいだし、ミサカはミサカは心配でじっとしてられない」

黄泉川「あいつはもうちょっと大人を頼るってことを覚えた方がいいじゃん。
  今は一方通行が無事に帰ってくるのを信じて待つしかないか」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/18(金) 02:17:51.84 ID:qn/ycmGAO<> カレー先輩クルー? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/18(金) 02:40:42.90 ID:9kcdgLXgo<> カレーだけで特定か
分かりやすい御人だ… <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 05:05:01.68 ID:QUn7doHu0<> 待ち合わせ時刻五分前、公園――――。

一方通行「よォ、今夜は遅れずにきたな三下ァ」

上条「そういうお前はいつから待ってたんだ、時間に厳しい第一位なんてすごい意外性だな」

一方通行「その軽口塞がねェと血液逆流させんぞクソが」

上条「ああ、今日もいろいろと報告がある」

――――――――

上条「と、まぁこんなとこだ」

一方通行「お前の知り合いそっち系の奴ばっかですかァ、ったく。まァそれもあと二日の辛抱か」

上条「そうなるな。あと二日、頼りにしてるからな」

一方通行「障害者頼りにしてンじゃねェよ、とっとと行くぞおらァ」

上条「おい待てって」

♪マヨラー、その手を引く者などいない♪

上条「ん?」

一方通行「あァ?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 05:16:16.21 ID:QUn7doHu0<> 一方通行「確かテメェの携帯の着信音だったなァ」

上条「たぶん、さっき言ってた土御門だ」

そう言って携帯を取り出し、画面を確認すると『土御門元春』と表示されている。
思った通りだ、と一方通行に断りを入れて通話ボタンを押す。

上条「土御門か? 姫神が見つかったのか?」

土御門『おうカミやん、ハッキングが思ったよりスムーズにいってな。
  監視カメラの映像から丁度今、○×学区のメインストリートを北に歩いてるみたいだぜい』

上条「おっけー、サンキュー土御門」

土御門『しっかり頼むぜカミやん』

電話口の相手に一言だけ礼を言い、一方通行に向き直る。

上条「第一目標発見、○×学区のメインストリートを北に歩いてるらしい」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 05:35:07.34 ID:QUn7doHu0<> 全力で走ってもおよそ十五分はかかる目的の学区だが、
上条たちは土御門からの電話の約三分後にはそこへ到着していた。
その理由としては、『一方通行が能力を使用した』、とその事実だけで納得いただけるかと思う。
具体的には一方通行が上条の左手首を掴み、絶対に右腕で俺に触ンじゃねェぞ、と一言注意した後、
肩がはずれない程度の速度で跳躍し徐々に加速して一気にトップスピード(上条がギリギリ呼吸できる速度)へ。
そして徐々に減速し今に至る。

上条「ぜぇぜぇ……、上条さんしばらくジェットコースターには乗りたくありません」

一方通行「で、一昨日の巫女さンはどこなンですかァ?」

辺りを見回すが人っ子一人見当たらない。

上条「ここは学区の北端だからな、南に歩いていけば鉢合わせると思うが一応土御門に連絡してみるわ」

息を整え再び携帯を取り出すと、履歴から先ほどの通話相手に今度はこちらからかけ直す。

1コール、2コール……。
すぐに出ると思っていたのだが意に反して一向に繋がらない。
そして7度目のコール音が鳴りやんだ時、

一方通行「後ろだ、三下ァッ!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 06:09:36.45 ID:QUn7doHu0<> 上条「へ? ぶらはッッッ!!」

間抜けな声を挙げる上条に、一方通行の蹴りが炸裂し軽く二メートルくらい吹き飛ばされる。
それに対し、互いに文句を言う暇も言われる暇もない。
直後に飛来した街灯がさっきまで上条が立っていた場所に、ズガン!と突き刺さったからだ。

上条「げほっ、なんだってんだ畜生」

一方通行「決まってンだろ、第二目標だ馬鹿野郎ォ」

危険を察知してすぐさま立ち上がり、一方通行の目線の先にあるものを確認する。
そこにいたのは二人組の少年。
一人は、白髪にセンスの悪いTシャツ、その二つで十分すぎる特徴と言えるだろう。
もう一人は、ツンツン頭の黒髪にとある学校の指定の学生服に身を包んでいる。
馬鹿げた話だと思う。

上条「御坂の気持ちが少しだけわかった気がするぜ」

一方通行「あァ、こんな糞みたいな気分は、この間テメェに殴られた日以来だ」

二人の前に立っていたのは、学園都市最強のレベル5、序列1位の一方通行。
そして、あらゆる超能力を無効化する男、上条当麻。
それが今夜のタタリの名称だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 06:28:49.42 ID:QUn7doHu0<> 土御門「クソッ、カミやんに繋がらねえ!」

土御門の目の前にあるパソコンには二人の上条と二人の一方通行の姿が映っている。
ただ、携帯を片手に持つ上条はもう一人の上条に背を向け、それに気づく様子はない。
携帯を持つ上条の隣の一方通行も同じく、背後の一方通行に気付かない。
それぞれの距離はおよそ十メートルほどだろう。
自らの背を見つめる一方通行はおもむろに歩きだし、すぐ近くの街灯に手を添える。
何をするかと思えば、一瞬で引きちぎってしまったではないか。
それでも気付く気配がないというのは、音もなく引きちぎったとでもいうのだろうか。

土御門「おい、カミやん! 後ろだ、気付け!」

モニター越しの声が届くはずもなくむなしさだけが残る。
カメラの向こうで、携帯を持つ上条が首をかしげた時、街灯を片手に持つ一方通行が
その腕の凶器を振りかぶり投擲する。
同時に何か異変を察知したのだろうか、一方通行が振り向き直後に上条に蹴りを入れる。
まさに間一髪。
土御門はその様子を見てほっと息をつくが、苛立ちの余り手に持っていた携帯を投げつける。

土御門「眺めるだけは許してやる、邪魔するな。っとそういうことか」

モニターに映るのはカメラ目線でニヤケ顔を見せる街灯を投げつけた一方通行だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 09:45:41.13 ID:QUn7doHu0<> 偽上条「久しぶりだな、サイジャク。元気にしてたか」

偽一方「今度はこの前みたいにはいかねェぞ、三下ァ」

互いの上条と一方通行が向かい合うように立ち、タタリが挑発の言葉を投げかけてくる。
それに対し、青筋を立てチョーカー型の演算補助装置に手を伸ばす一方通行。

一方通行「三下ァ、お前は俺の偽物と遊んでろォ。すぐにテメェの偽物ブッ潰してそっちのも叩き潰してやる」

上条「落ちつけ一方通行、挑発に乗るのはまずい」

一方通行「俺に指図すンじゃねェ!」

上条「落ちつけって、言ってんだろうがっ!」

ばしっ。

一方通行「ぐふっ」

どなり声を上げ今にも飛びかかろうとする一方通行を上条がその拳で力付くで静止させる。

偽上条「おいおい、仲間割れか?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 10:08:44.73 ID:QUn7doHu0<> 一方通行「何しやがるッ! テメェ含めて三人まとめてブッ潰されてェのか!?」

上条「さっきの蹴りの礼だよ。俺の偽物は俺がやる、上条さんのことは上条さんが一番よくわかってるんだ。
  俺に出来るのは身体一つで突っ込んで右手でぶん殴ることだけだ、つまりそれは向こうも同じだろ。
  けど俺は何発殴られたって消えねえがあいつは一発でも食らえば消えちまうんだ」

上条のもっともらしい作戦に一方通行は虚をつかれしばし間を置いた後、舌打ちをする。

一方通行「正攻法過ぎてつまンねェよ」

上条「一方通行!」

一方通行「わかってるゥ。テメェの言うとおりにしてやる、今回だけだァ」

実際のところ、幻想殺しと相性が悪いの明白だ。
以前と異なり、十五分(すでに残り十分弱だが)しか戦えない制限があるため、
時間を稼がれるだけでも致命的となる。
故にこの作戦は賢明な選択であると言えた。

偽上条「チッ、挑発には乗ってこねえか」

偽一方「クカカカカカ、俺を殺せばレベル6になれンじゃねェのか?」

ついに今夜の戦いの火ぶたが切って落とされた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 22:47:45.17 ID:QUn7doHu0<> 偽上条「幻想殺しとはあんまりやりたくなかったんだけどなぁ、仕方ねえか。かかってこいよ」

タタリは上条に対し指をちょいちょいと動かし誘うような動作をする。

上条「言われなくても! その幻想、速攻でぶち殺してやるよ!」

上条は即座に駆け出し、一気に距離を詰めようとする。
それに対し、タタリはバックステップで距離を計ったあと、攻撃を受けるような構えを取る。
しかしそれが防御であるはずはない。
もし上条の右腕が触れれば、勢いがあるないに関係なく消滅するはずだからだ。
ゆえに上条は警戒を怠らない。
カウンターで顎を揺らされることを考えて左腕で顔をガードし、そのうえで右腕を突きだす。
これは攻撃ではなく、相手の出方をうかがうための牽制、そのはずだった。
だから右腕が相手に触れたことに驚きを示す。
そして、触れたにもかかわらず消滅しない敵に思わず目を見開き驚愕する。

偽上条「俺はお前だぜ? 俺のことをお前が知ってるように、お前のことも俺は知ってる」

上条の右手の一撃を、タタリは同じく自身の右手で受け止めていた。

偽上条「幻想殺しなんて幻想は、俺の幻想殺しでぶち殺せばいい、それだけだ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/18(金) 23:07:56.60 ID:QUn7doHu0<> 上条「くそっ、放しやがれ!」

偽上条「正直なところ、お前の存在は邪魔なんだよ」

タタリは上条の右手をしっかりと握り、放す気配はまったくない。
上条は過信していた。
この右手で触れれば、それだけで全てが終わると。
今まで上条は、その右手の力を秘匿したうえで、切り札として使用し戦いに勝利してきた。
例え触れれば勝てる相手だとしても、その能力を知り得る相手と言うだけで圧倒的なアウェー。
そして上条は自身を過小評価し過ぎていた。
自分はただの高校生に過ぎず、少し喧嘩慣れしている程度の無能力者。
それは相手も同じことであり、目の前の存在を大した障害と認識できていなかったのだ。

偽上条「速攻でぶち殺してくれるんじゃなかったのか? ひゃはは」

タタリは上条の顔で心底楽しそうに笑う。
笑いながら左足で蹴りを放つ。
右手は掴まれているため、上条がそれを受け止めることはできず、右わき腹にもろに食らってしまう。

上条「ごふっ。っんなろう!」

しかし、一方的にやられる上条ではない。
すぐさま同様に蹴りを見舞い、同じ場所に一撃を喰らわせてやる。

偽上条「ごほっ。やるねえ、さすが俺」

僅かに顔を歪めるが、それでもタタリは右手を放そうとしない。
作戦は失敗、最悪の泥仕合に発展しようとしていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/21(月) 00:17:31.47 ID:xdLIadBJo<> <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/22(火) 00:23:05.44 ID:xghkmaiC0<> 上条同士の泥沼の殴り合いを呆れ顔で眺めるのは杖を突いている一方通行。

一方通行「はァ、要するにお前らはどっちでも構わなかったわけじゃねェか」

もし上条とタタリの一方通行が戦えば、タタリは右手に触れぬよう遠距離から攻撃し、
一方通行とタタリの上条が戦い、決定力に欠ける一方通行は時間を稼がれる。
今の組み合わせであろうとなかろうと、めんどくさいことになるのは前提条件だったのだと、
冷静になった頭で一方通行は結論を出す。

一方通行「しかしよォ、テメェのソレはどういうことだァ?」

視線を移し、目の前の自分と同じ姿をしたタタリに問いかける。
同じ姿と言ったが、二人には一目でわかる明らかな違いがあった。
一方は二足の脚のみで大地に立っているのに対し、
もう一方は杖を突き、首元にチョーカー型の機械を装着している。

偽一方「クカカカ、簡単なことだ。この街の噂として挙げられる一方通行は未だ最強、それだけの話だァ」

タタリとは噂を媒介として現れる。
例えば、御坂妹がレベル5の電撃使いであったように、
噂の内容によってタタリの能力や強さまで、容易に変質しうるのだ。
つまり、今一方通行の目の前に立つのは8月31日以前の、
脳に障害を負う前の何の制限も持たないまさに無敵の頃の自分。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/22(火) 00:24:42.83 ID:xghkmaiC0<> 単純に考えて、能力の使用に15分の制限を持つ自分が不利なのは明白。
しかも、平常モードでの使用と公園からここまでの移動で能力を使った分で
おおよそのバッテリー残量は10分弱と言ったところか。

偽一方「学園都市最強の都市伝説を相手にビビっちまったのかァ?」

あからさまに見下すような笑みを浮かべる敵を前に、プライドの高い一方通行は
演算補助装置を操作し一直線に駆け出していく。

一方通行「都市伝説風情が俺様騙ってンじゃねェぞ!!?」

右腕を振りかぶり、目の前のムカつく野郎の顔面に全力の拳を叩きこむ。
それを目にするタタリも同時に右拳を振り上げ一方通行の顔にカウンターとなる一撃を放つ。
反射の能力に一方通行の攻撃は威力を倍にし、タタリの攻撃は跳ね返る、そのはずだった。

一方通行「ぐァァッ!?」

偽一方「ぐゥ!?」

タタリに直撃した右手と、タタリに殴られた左頬に鈍痛が走る。
驚愕に目が見開かれ、状況の把握に一度距離を取るため後方へ跳躍する。
それは相手も同じだったらしく、右手を抑え同じく後方へ跳躍していたタタリを目にし
一方通行は瞬時に現状を理解する。
殴られた瞬間はまさか相手の反射のみが適用されたのかとも思ったがそうではなかった。
反射の反射……、1を−1にする一方通行の能力をタタリが−1を1にしてしまい、
互いの能力が反映されたことで何の変哲もないただの攻撃と化したのだ。
殴られれば痛いし、殴っても痛い。
後者は攻撃時にも能力を使い続けていた一方通行にとって新鮮な経験だったと言えよう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/02/22(火) 00:25:54.00 ID:xghkmaiC0<> 状況を把握したところで一方通行は再び跳躍しタタリとの距離を詰める。
僅かに遅れてタタリもこちらに向かって走り出す。
おそらく、敵も先の現象の理由を理解したのだろう。
ならば狙いもこちらと同じであるということが容易に推測できる。

一方通行(奴の狙いは……)

偽一方(……血流操作!)

極端に脆弱な一方通行の腕力では打撃戦に勝機を見出すことは不可能、
投擲系の攻撃も手から離れてしまえば相手に一方的に操作されるだけ、
となれば必然的に直接攻撃でかつ打撃を除く攻撃方法、
つまりは血流操作による一撃必殺に持ち込むしかない。
より詳しく言えば、狙うのは大動脈。
末端の血管を破裂させたところでただの打撲による内出血と変わらない。
よって身体の表面に近く命に関わる首筋、両腕、心臓の三か所が狙いとなってくる。
その結果として、

一方通行「ッ!」

偽一方「ッ!」

右手でタタリの右腕を掴もうとすると、その右手を掴もうとタタリが左手を突きだし、
その左手を一方通行が左の手の平ではじき、タタリは右手を引き、一方通行の右手が宙を切る。
学園都市の最強同士の戦いはとてつもない地味なレベルで繰り広げられることになる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/22(火) 02:59:04.11 ID:s/LziUq6o<> うけるww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/22(火) 03:05:54.90 ID:vt8fe42ao<> なんか、にゃんこがネコパンチをピシッ…ピシッ…ってかんじで応酬してる絵が浮かんだww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/22(火) 04:17:34.77 ID:IeuTBf2AO<> 上条さんと一方通行がこんな地味なバトルすんのはこのSSくらいだろうなw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/26(土) 20:16:44.89 ID:6PjSEYxk0<> 面白いな、続きに期待 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/02(水) 19:15:10.15 ID:PF81//pJ0<> 二度三度と互いの攻撃(?)が空を切り、四度目――先にタタリが右腕を振う。
漫才師のツッコミの方がまだ痛そうに思える振りだが、その実は必殺の一撃。
当たれば絶命必至のその毒手を前に、一方通行は真正面に自らの左腕を差し出す。
それを目に、タタリは口には出さないが馬鹿な奴だと心の中で嘲笑う。
どういうつもりかは知らないが、それは失策以外の何物でもない。
これでチェックメイト、その左腕を掴み、一方通行を愉快なオブジェに変えるべく血流のベクトルを操作する。
しかし、

偽一方「あン!?」

一方通行の血管が破裂することはなく、タタリは異変に首をかしげる。

一方通行「どォかしたかァ? 偽物野郎ォ」

口の端を吊り上げ邪悪な笑みを浮かべた一方通行がタタリに語りかける。
何かしたのか?と目の前の脳なしを嘲るように。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/02(水) 22:48:54.14 ID:PF81//pJ0<> なぜ?どうして?その疑問が解消される前にタタリの首元に一方通行の右手が迫り寄る。
確かに一方通行の腕はタタリに掴まれている。
ベクトル操作によって血流を逆流させている。
なのに、

偽一方「ァ……、や、やめろォ」

まるで絞首刑を宣告された死刑囚が一段また一段と、死の十三階段を昇るかのごとく。
必殺の毒手がじわりじわりと首元に忍び寄ってくる。
逆流でダメなら上――、それもダメなら下――、右!・・・左!
あらゆる方向へベクトル変換を試みるが一方通行の右手が止まることはない。

一方通行「く、クカカキキクケカカクククコココオオォォォォ」

一方通行が意味不明な叫び声をあげているにもかかわらず、タタリの耳に届いている様子はない。
ヒタリ。反射の膜を越え首に触れられた感触。
それはつまり、

パーン。

偽一方「ガハッああァァァ……」

風船が破裂したのかと勘違いする者がいてもおかしくないほどの大きな音が響き渡り、
首から大量の血液を放出し後ろ向きに倒れ込む白髪の少年。
その最中、ようやくことの真実に辿り着く。

偽一方(テメェの左手に俺のベクトル操作と逆向きのベクトル操作を……)

一方通行「テメェのやることなンざお見通しなンだよ、クソッたれがァ」

一方通行が行ったのは、互いのベクトル操作が相殺されるように相手と真逆のベクトル操作、
口にすれば簡単に思えるかもしれないがタイミングや角度がわずかにでも狂えば自らの命は無い。
出鱈目というにも出鱈目の枠を超えたとんでもない出鱈目な行為だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/02(水) 23:00:38.55 ID:tBxPoqbeo<> 土御門視点から見たらものすごく地味そうだ・・・ <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/02(水) 23:07:44.33 ID:PF81//pJ0<> ドシャリ、と倒れ込む過去の自分を見つめ微動だにしないのを確認し演算補助装置を操作する。
能力を一時的に失ったことで一方通行はバランスを崩しその場に座り込んでしまう。

一方通行「けっ、最強(サイジャク)な頃の俺なンかにこンだけ苦労してる様じゃ、
  いよいよもって焼きが回ったかもしンねェなァ」

独りごちた後、すぐ横にあった杖を見つけ手を伸ばす。
杖に体重をかけ、どうにか立ちあがることに成功する。
結局のところ、一方通行がタタリに勝利できたのは演算補助装置のおかげだった。
演算補助装置によって取り戻した仮初の能力と、バッテリーと言う名の余裕。
バッテリーが切れれば無能力者をも下回る肉の塊になってしまうことに対する余裕の無さが
血流のベクトル操作をさらに操作し相殺するという出鱈目な作戦を生み出し、一方通行を勝利へと導いたのだ。
最強にはほど遠い、今の一方通行は必死でもがき生を勝ち取った一人の人間にすぎなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/03/03(木) 03:00:22.45 ID:SIvRTp/j0<> ドシャリ、と人間が倒れ込むような音を聞き、上条当麻は視線をわずかに横へやる。
視界の端に捉えたのは首から大量出血する白髪の少年。
出血のせいでチョーカーの有無がはっきりと見えず敵か味方かの判断はできそうにない。

偽上条「よそ見なんかしてていいのか?」

タタリは上条の見せた隙を見逃さない。
先ほどまでの一撃一撃の応酬とは比べ物にならない重い拳が上条の鳩尾に突き刺さる。

上条「ゴホッ!?」

偽上条「心配しなくてもあれは俺の陣営だよ。どうやら“第二目標”は果たせそうにない」

肺から無理やりに空気を追い出され、上条は片膝をつき苦悶の表情を浮かべる。
その様子を溜息混じりに見下ろし、タタリは事実のみを告げる。

偽上条「だが、“第一目標”だけは果たせそうだ」

第二目標、第一目標。
上条はその言葉にギョッとする。
それは上条と一方通行は公園での話し合いで口にしていた言葉。
第二目標とはタタリの殲滅、そして第一目標は姫神の保護。
タタリが口にしたのが上条たちと同じ意味でないのは当然だが、それはタタリ側にも優先順位があったということ。
自分たちにとって必要なものは、敵にとって不要なもの。
タタリの一方通行が敗れたことで第二目標は果たせなかったといった。
つまり第二目標とは上条たち――、もっと言えば上条の幻想殺しだろう。
ならば第一目標とはなんだ? <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/03(木) 03:19:12.17 ID:SIvRTp/j0<> 姫神「上条くんから離れて」

声は建物と建物の間の路地裏から響いてきた。
上条はその声にハッとする。
それは上条たちにとっての第一目標。そしてそれはタタリにとっても――。

上条「姫神っ! 逃げろ!」

偽上条「そうはいかねえっつーの!!」

叫ぶ上条にタタリは未だ掴んだままだった右手を放し、太ももへのローキックを叩きこむ。

上条「ぐぁっ!」

短い悲鳴をあげ上条は無様にも崩れおちる。
その隙にタタリが姫神を目指し一気に駆け出していく。

一方通行「あン? 何やってンだ三下ァ!」

無様に膝をつく上条に一方通行が怒号を浴びせる。
一方通行がさっき見せた出鱈目な演算の相殺は相応の負担となっていた。
例えるなら5ケタの掛け算を物凄い速さで一切の間違いを許さず解き続けるような、
超能力とは万能に見えて、使用者の脳に演算に見合った疲労を与える。
だからできることなら僅かばかりでも脳を休ませたいのだが
しかし、あのタタリを野放しにするわけにもいかないのも実情だ。
そしてそれは、首元のチョーカー型の演算補助装置に手をかけスイッチを入れた途端の出来事だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/03(木) 03:44:20.72 ID:SIvRTp/j0<> がくんと、足元を払われた感覚に襲われ一方通行は倒れ伏してしまう。
その感覚は錯覚ではなく、まぎれもない事実。
基本の演算である反射は機能していたはず、なのにだ。
反射を越え攻撃が可能な奴など幻想殺しだけのはず……、否。
その答えは、先ほどまでと立場が逆転し、倒れた一方通行の目の前で自身を見下ろす殺したはずのタタリだった。
なぜ?どうして?降って湧いた第二の疑問の答えを一方通行は知っている。
一方通行は、芳川という科学者が銃で撃たれた時、破れた血管から血管へと血液を流し込んで彼女の命を助けたことがある。
それと同じことを、破裂した首の動脈の血流を能力によって繋いでいたのだ。

そして倒れ伏す上条と一方通行をよそに上条のタタリは姫神の目の前まで迫っていた。
姫神の手には自身の能力を抑えるための十字架が握られている。
その十字架を手放すよりも僅かに早く、タタリが姫神の手首を捻りあげ後ろ手に拘束する。
姫神は痛みから十字架を手から落とし、キィーンと高い金属音を響かせる。
それでも姫神を後ろ手に拘束し続けるタタリに疑問を抱く。

姫神「なぜ。私の能力は」

吸血殺しは、吸血鬼に対し吸血衝動を促す効果がある。
その衝動に抗う術は無い、はずなのに。

偽上条「忘れてないか? 俺の右手は異能の力なら神の奇跡だって打ち消せるんだぜ?」

姫神の腕を押さえているのは上条当麻の右腕、幻想殺し。
その効力は吸血殺しも例外ではないらしい。

偽上条「やれ、相棒!」

タタリが声をかけたのはもう一方のタタリ。
首元を自らの血液で真っ赤に染めた一方通行だ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/03(木) 04:11:28.05 ID:SIvRTp/j0<> 上条は痛みからすぐには動けない。
一方通行も立ちあがるために若干の時間を要する。
一方通行のタタリは負傷を感じさせない動きで能力を行使した人外の跳躍を見せる。
一秒と経たず姫神の前に立ち、タタリは姫神の手首に軽く手を置いた。

姫神「――っ!」

上条「姫神ーっ!」

偽一方「キヒャヒャヒャヒャ、これでバッドエンドだァ!!」

姫神の声にならない声と、それを呼ぶ上条の叫び、そしてタタリの勝利宣告が入り混じった後、
姫神の腕が自身の鮮血によって真っ赤に染められた。
同時に、姫神の飛散した血を浴びた一方通行のタタリはすぐに消え、本物の一方通行が二人へと急接近する。
それを見て、残った上条のタタリは姫神を放り出し路地裏へと駆け出していく。
追えばすぐにでも追いつけるだろうが、一方通行は支えを失い倒れ込む姫神を受け止めていた。
姫神は痙攣しており、一種のショック状態に陥っているようにみえる。

上条「一方通行! 姫神は……」

一方通行「俺が何とかする! だが7分だァ! それ以上は持たねェ、すぐに片づけて戻って来い!」

上条「……っ、わかった、姫神を頼む!」

未だダメージの残る足を叩いて言うことを聞かせ上条は自身のタタリを追って路地裏にかけていく。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 04:22:11.12 ID:he76tN05o<> おもろくなってきたな <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/03/03(木) 04:48:38.69 ID:SIvRTp/j0<> 上条が路地裏に入って、異変はすぐに現れた。
異変とは彼方より飛来する光の柱。
光の柱は上条の進行方向遥か先へと降り注ぎ辺りの闇を払い除ける。
その光はいつか見た、クラスメイトである魔術師が行使した魔術に酷似していた。
おそらくは、そうなのだろう。
上条が未だ降り注ぐ光の柱の落下地点へと到着すると、そこにあったのは光の柱を右腕で受け止め動けずにいるタタリの姿だった。

偽上条「ちっ、俺もチェックメイトか。まぁ第一目標は潰せたわけだしよしとしよう」

自分がぼやく姿を目の当たりにして、特に声をあげることもなく上条は一歩一歩近づいていく。
そして、自分と同じ顔のタタリの顎を、下から右手でアッパーの要領で打ち抜き、
霧散したタタリの後を引き継ぐようにして光の柱を受け止める。
その様子を彼は見ていたのだろうか、光は少しして消えさり上条は解放される。
即座にUターンし、きた道を逆走する。
幸いにもここまでの道のりは1分もかからない。
光の柱を受け止めていた時間も合わせて3分ほどで元の場所へ戻ってくることができた。

一方通行「思ったよりはァ早かったなァ、テメェのことだからギリギリで戻ってくるかと思ってたが」

上条「それより姫神は大丈夫なのか?」

一方通行「血液逆流させられて無事な人間がいるわけねェだろォ、今は俺の能力でどうにか維持してる状態だァ。
  テメェにできるのは救急車を呼ぶことくらいだァ」

返す言葉も見当たらず、上条は携帯を取り出し119のダイヤルを押す。
土御門にかけた時と違い、すぐに繋がりオペレーターに現在の場所と姫神の容態を告げる。
患部を清潔な布で押さえ脇を縛って止血するなどの応急処置を指示されたあと電話を切った。
一方通行の能力行使の限界を待つ間、上条は自らの無力な右腕をじっと見つめていた。

とある魔術のタタリの夜に。第四夜完。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/03(木) 04:59:16.47 ID:SIvRTp/j0<> と、とりあえず四日目消化・・・。
作中で決戦は明日とか言ってますが、実は7日構成でした。
「七夜」って響きがいいなぁってそんだけの理由でそれ目標にしたけどやっぱ続かなくて5日構成にorz
っていうか、なんかもういろいろと辛い。読み返すのが心底辛い。舞台裏書きたくてうずうずしてる。

以下私信になるんだけどさ、SS書いてると事故るってジンクス、あれマジだね。
一昨日の話なんだけど、自転車のチェーン外れてバランス崩してこけちまったのよ。
運の悪いことに対向車がいて、あわや顔だけ車と正面衝突ってことになりそうだったんだけど、
まぁ、幸いにもこうして無事に続きかけてます。
自転車の整備しとかないとなぁ、ハァ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 05:50:10.95 ID:a6shtWoY0<> そ…そんなジンクスがあるのか…
何はともあれ乙、超乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 05:52:54.05 ID:WD81bKN3o<> なにそれこわい
でもどっちかというとタタリとか書いてるからじゃないかと思うww
何はともあれお大事に <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 16:12:56.83 ID:kyG97z440<> メルブラはほとんど知らないけど面白い。キャラの動かし方が丁寧だし続きが気になる
姫神は大覇星祭でも血まみれにされちゃうんだよな…。頑張れ姫神 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 18:43:09.10 ID:dlw38xql0<> カレー先輩ってネタにされがちだけどとんでもスペックだよな

通常の魔術師の100倍の魔翌力量に豊富な魔術知識
高すぎるほどの肉体ポテンシャル
黒鍵をはじめとした投剣技術に豊富な銃器
メガネ属性
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/03(木) 18:52:43.57 ID:0tZEHe3Yo<> 尻を忘れてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/04(金) 02:30:57.06 ID:6cOoE3/DO<> 一気に読んだ
面白かった
先輩の出番が楽しみ
ズェピアたんペロペロ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/13(日) 14:54:34.87 ID:Jp828vCAO<> 余り来ないが無事か? <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/03/15(火) 15:55:40.64 ID:dmVhVR5A0<> 二重の意味で生存報告。単に別のSS書いてただけなんだけどさ←
現在第五夜誠意製作中です、なかなか筆がのらないもので・・・申し訳ない <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/03/24(木) 21:50:50.74 ID:ZpZWTzHO0<> 九月十五日(火)――。

午前五時、その時刻上条当麻は自宅で朝食の用意をしていた。
トントンと包丁がリズムを奏で直に食欲をくすぐる香りが漂い始める。
いつもより1時間以上早いとはいえ、食べ物の匂いに釣られて
居候が起きだしてきそうなものだが(少なくとも上条当麻のイメージ内では)、
未だ彼女が目を覚ます様子は見られない。
昨夜、家を出る時に帰ってこないかもとは伝えておいたが、
それでも上条の帰宅を待って夜遅くまで起きていたのかもしれない。
いろいろと余所事を考えながらも朝食と昼食の準備は着々と進み、ほどなくして全ての工程が完了する。
最後に書置きをして、自身はサランラップに包んだ大きめのおにぎり一つを片手に持ち、
インデックスが目を覚ます前にと寮を出ることにした。



―――インデックスへ

日直の仕事があるから早めに家を出る
ご飯を食べたら食器は流し台へ頼む
それと今夜は遅くなるから小萌先生のとこで
食べさせてもらってくれ、すまん <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/24(木) 21:52:55.60 ID:ZpZWTzHO0<> 寮の近くの公園で大きめのおにぎりを黙々と食べる。
時刻はまだ六時前、『何の用事もない』上条はボーっと空を見上げ漫然と時間を潰していた。
日直でもなければ部活の朝連があるわけでもない。
ただ、インデックスと顔を合わせずらかった、それだけの話だ。
だから嘘の書置きをして家を出た。
今顔を合わせたりしたら、きっと勘付かれるから。
関与することを禁じられている彼女にとって、
何もできず悔しい思いをさせるくらいなら始めから知らなければいい。
優しい彼女のことだ、友人が傷ついたなんて聞けば胸を痛めることだろう。
できることなら彼女には知られずに事件を終えたい。
今願うのはそれだけ。

上条「そろそろいいか……」

丁度いい頃合いだろうと見切りをつけ、上条はベンチから立ち上る。
おにぎりを包んでいたサランラップを公園のゴミ箱に捨て携帯を取り出す。
アドレス帳から目的の名前を探して、通話ボタンを押す。
数回のコール音の後、相手の声を聞き電話が繋がったことを確認して口を開く。

上条「朝早くすみません、上条です。今から伺ってもいいですか?
  姫神のことで話があるんです」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/24(木) 21:54:32.57 ID:ZpZWTzHO0<> 小萌宅――――。

コンコン。

上条「おはようございます。上条です」

小萌「鍵は開いてますから、どうぞ入って欲しいのです」

家の主に了承を貰い、ドアノブを回し部屋に入る。
ざっと部屋を見回すと、以前突然押し掛けた時と比べ
ずいぶんと片付いた印象を受けた。

小萌「どうぞなのです」

そう言って差し出されたのは一枚の座布団。
しかし、上条は座布団の手前に両膝を突き深々と頭を下げた。

上条「すみません! 姫神を連れて帰るって約束したのに、俺……ッ!」

小萌「……上条ちゃん、頭を上げて欲しいのです。
  昨日の夜、病院から連絡は貰ってるのです。
  お医者さんは命に別状はないって言ってましたし、数日中に退院できると」

上条「死んでたかもしれなかったッ!!」

小萌「!?」

上条「俺と一緒にいた奴が超能力者で、そいつのおかげで助かったんです。
  もしそいつがいなかったら姫神は助からなかった、俺は何もできなかった」

小萌「……」

小萌は上条の強い口調に思わず言葉を失う。
短い間とはいえ、入院が必要になるほどの怪我だ、
かなり危険な目に会ったのだろうと予想はしていたが命を落とすほどとは想定していなかった。
未だ頭を下げ続ける少年は自分を許せないのだろう。
万能の力を持つわけでもない、ただの高校生がそれほどまでの責任感を負う必要があるのだろうか。

小萌「上条ちゃん、頭を上げてください。
  お話する時は相手の目を見てお話しましょうって小学校で習いませんでしたか?」

上条「小萌先生……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/24(木) 21:55:26.70 ID:ZpZWTzHO0<> 小萌は、ようやく頭を上げた上条の目をしっかりと見据える。
目に力はなく、よく見れば目の下に隈もできている。

小萌「上条ちゃんは先生との約束を守ろうと頑張ってくれたんですよね?」

上条「……はい」

小萌「なら先生は何も言いません。先生は頑張ってる生徒を叱ったりしないのです。
  今日、学校が終わったら一緒に姫神ちゃんのお見舞いに行きましょう」

上条「っ……はい」

小萌「上条ちゃんはきちんと朝ごはんは食べましたか?
  お腹空いてるなら先生ごちそうするのですよ」

上条「ありがとうございます。朝は食べてきました」

小萌「じゃあちょっと早いですけど学校に行きましょうか、
  今日は特別に先生が車で送迎してあげちゃうのですよ。
  上条ちゃん、あんまり寝てないみたいですし助手席で寝かせてあげちゃいます」

だから授業中に居眠りとかしちゃダメなのですよ?なんて、
優しい担任の言葉に思わず涙がこぼれそうになった。

上条「それじゃ、お言葉に甘えて」

どうしても伝えることができなかった。
事件がまだ終わってなどいないことを。
そして、なんとしても守りたいと思った。
もう誰も傷つけさせない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/03/25(金) 02:10:38.92 ID:3hYkeSth0<> 上条は小萌の車で学校へ向かっていた。
車の揺れは思いのほか心地よくすぐに睡魔が襲ってくる。
うつらうつらと舟を漕ぎながら、昨夜のことを思い出す。

上条は姫神と一方通行の付き添いとして、救急車に乗せられ病院へ搬送された。
姫神はともかく、一方通行の方は短時間でかなり脳を酷使する演算をした疲労から
演算補助装置のバッテリーが切れると同時に意識を失っただけなのだが、
タタリの一方通行を倒した時の返り血を浴びていたことで重症と勘違いされたのである。
病院に着いた後、上条も軽傷ではあるものの全身に打撲傷を負っていたため、
その治療を受けた後(実は今現在も、全身に湿布が貼られまくっていたりする)、
アンチスキルに『スキルアウトとの喧嘩』という説明と簡単な調書を書かされて解放された。
もし、一方通行と上条が姫神の血液を浴びていれば非常に面倒なことになっていたことだろう。
この時点で時刻は午後十時、夜も晩く喧嘩のあとということで一人で帰すのは好くないということになり
上条はアンチスキルの詰所の仮眠室で一夜を過ごすことになった。
インデックスと顔を合わせたくなかった上条にとっては都合は良かったと言える。
結局、夜通し自身の不甲斐なさを責め続けあまり眠ることはできず、
空が白み始める頃には起きだして帰宅したのだった。

小萌「上条ちゃん、着きましたよ。気持ち良さそうに眠ってますが起きて欲しいのです」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/03/25(金) 07:13:40.48 ID:3hYkeSth0<> 休み時間――――。

教室を出て人通りの少ない踊り場へと移動する。
携帯を取り出して数少ない親友へと電話をかける。

土御門『もしもし、カミやん? どうかしたのかにゃー?』

電話はすぐに繋がり、電話口からとぼけた声が聞こえてくる。

上条「土御門、お前身体は大丈夫なのか?」

土御門『心配して電話してくれたのか、ありがとうだにゃー。
  俺ならこの通り、どうにか生きてるぜい』

上条「“どうにか”って、結構ひどいのか?」

土御門『今回はちょっとばかし運が悪かったにゃー。
  内臓に穴が開いちまってさすがに今日はカミやんを助けてやれそうにないぜい』

上条「内臓に穴!? おい、お前ほんとに大丈夫なのかよ!」

土御門『冥土帰しの執刀してくれたおかげで大事ないぜよ。
  切れた腕くっつけるよりは簡単だと思うぜい、はっはっはぁっ痛ぅ、腹の傷がぁ』

上条「盲腸の手術した人みたいなボケやってんじゃねえよ!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/03/25(金) 07:14:07.34 ID:3hYkeSth0<> 土御門『ははは、すまんすまん。とりあえず昨日のタタリはきちんと始末できたんだよなカミやん?』

上条「ああ、お前のおかげでな。けど……」

土御門『姫神がやられたのはまずかったにゃー、向こうも姫神を狙ってくるとは……』

上条「すまない、俺が不甲斐ないばっかりに」

土御門『なんで謝るんだカミやん? カミやんはよくやってくれてる方だ。
  姫神が負傷したのも、俺が魔術使って怪我したのもカミやんのせいじゃないぜい。
  ちっとばっか運が悪かった、それだけのことだ』

上条「それでももっとうまくやれてたらって思っちまうんだ……。
  もしあの時ああしていれば、こうしていればって」

土御門『自惚れてんじゃねえぞ、カミやん!
  カミやんができることなんかほんの一握りのことだ。
  あれもこれもなんて何でもできる奴なんかいやしねえんだ。
  だったらカミやんは自分にしかできねえことをやれ。
  後悔すんのは今夜タタリをぶっ倒せなかった時だけだ。
  わかったらどうすればタタリに勝てるか作戦でも練ってろ』

土御門は一方的にまくしあげ、上条が口を開こうとした時には電話はすでに切られていた。
さっきの土御門の物言いはガツンときた。
不甲斐ないのはいつものことだ、いつまでも女々しく落ち込んでいても仕方ない。
誰かが帰らぬ人になったわけでもない、いい加減気持ちを切り替えるべきだぜ上条当麻。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/03/25(金) 12:03:40.86 ID:bsDhF3tZo<> 乙です
気長に待ってます <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/28(月) 10:16:51.22 ID:OQ7+1Pug0<> 放課後――――。

上条は登校時同様に小萌の車に揺られ、姫神たちが搬送された病院にきていた。
上条は、帰りは一人で帰るということで自身の荷物(学生鞄)を、
小萌は、学校からここまでの道程で購入したお見舞いの花束を手にしていた。

コンコン、ガラッ。

控えめなノックの後にドアを開ける。
病室の中は個室で、上条がよく世話になっている病室と同じつくりの様だ。

小萌「姫神ちゃ〜ん、お見舞いに……ってあららお休み中みたいですね」

ベッドで寝ている姫神の顔色は、色白ではあるもののそれは彼女の元々の特徴であり、
呼吸器などといった機材も見当たらないところから経過は良好なのだろうと、小萌はほっと胸をなでおろした。

小萌「じゃあ先生は持ってきたお花を花瓶に活けてきますから、
  上条ちゃんはちょっとだけ待ってて下さいね」

上条「わかりました」

一言断ってから小萌は病室にあった花瓶と花を持ち病室を出て行った。

上条「……」

姫神の顔をじっと見つめ、土御門に言われた言葉を思い出す。

上条「きっと姫神も俺は悪くないって言うだろうけど、
  やっぱ一言だけ謝らせてくれ。助けてやれなくてごめんな」

それはただの自己満足、または自惚れ。
わかってはいても自分を責めることがやめられない、上条の性分なのだ。
上条の一方的な謝罪に、目を閉じたままの彼女は答えない、
かと思いきや、

姫神「許さない」

上条「うわっ、姫神!? 起きてたのか?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/28(月) 10:18:14.36 ID:OQ7+1Pug0<> 姫神「今。起きたとこ」

上条「気分は悪くないか? 痛いところとかは? そうだ、看護師さん呼んだ方がいいのか?」

姫神「落ちついて。お昼頃に。一度目を覚ましてる。身体は平気」

上条「そ、そうか。よかった……」

姫神「上条くん。一人?」

上条「いや、小萌先生と一緒だ。ついさっき花瓶に花を活けてくるって出て行ったんだ」

姫神「そう。……上条くん。どうして。さっき謝ったの?」

上条「へ? “さっき”って聞いてたんじゃ? だから“許さない”って」

姫神「まだボーっとしてたから。“ごめんね”しか聞こえなかった」

上条「それなのに“許さない”なんて言ったのかよ……。
  さっきは、姫神のこと助けてやれなくてごめんなって言ったんだ」

姫神「絶対に許さない」

上条「あぁ、ちゃんと聞いててもそう答えるのね……」

脱力して肩を落とす上条を見て、姫神はくすりと笑みをこぼす。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/03/28(月) 10:18:57.80 ID:OQ7+1Pug0<> 上条「えーと、どうしたら許してもらえるんでせうか?」

姫神「私は。途中で脱落してしまったから。私の代わりに。吸血鬼を倒して」

上条「それなら言われなくても、」

姫神「本当は。私の役目なのに。……ごめんなさい」

上条「なんで姫神が謝るんだよ?」

姫神「私は“吸血殺し”だから。アレがどういうものかはよくわかる。
  放っておけば上条くんや。学校のみんなや。学園都市全部が危ない。
  できることなら。死ぬまで能力は封印しておきたかったけど。
  今回のは放っておけない。人類の敵」

姫神の持つ吸血殺しは、吸血鬼を殺すだけでなく吸血鬼を引き寄せる力もある。
姫神自身ではコントロールできず、姫神の力によって引き寄せられた吸血鬼が
昔、姫神が住んでいた村を襲い、住人全てを吸血鬼に変え、
最後には姫神の血を啜り、誰もいなくなってしまった。
そのことに姫神は深く傷つき、悩み苦しみ、能力を封じるためにとある錬金術師と取引をしたこともある。
今ではインデックスが作った十字架によって能力を封じているが、
それほどまでに忌み嫌った自身の力を、今度は自分の意思で行使しようと決心するのに
どれほどの葛藤があったことだろうか。

姫神「もう一度だけお願い。私は。途中で脱落してしまったから。
  私の代わりに。吸血鬼を倒して。“無事に戻ってきて”」

上条「ああ、わかった。約束するよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)<>sage<>2011/03/30(水) 04:03:33.49 ID:zgHRXvQAO<> >>1乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>!red_res<>2011/04/01(金) 20:19:46.20 ID:yWFc5/OAO<> さぁ、虚言の夜を始めよう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/11(月) 21:23:45.66 ID:nnD5ATiI0<> だが断る <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/12(火) 04:07:41.48 ID:VQ/UCIXf0<> ガチャリ。

小萌「話し声が聞こえましたが、姫神ちゃんが目を覚ましたのですか?」

丁度話の区切りがついたところで、小萌先生が花を生けた花瓶を手に戻ってきた。

姫神「小萌。おはよう」

小萌「姫神ちゃん、“おはよう”じゃないのですよ。身体の方は大丈夫なんですか?」

姫神「割と平気。ちょっと貧血気味なだけ。上条くんの友だちのおかげ」

小萌「よかったのです……。上条ちゃんが“死んでたかも知れなかった”って言ってたから、
  もしかしたらしばらく意識も戻らないじゃないかって心配、だったん……、ぐすっ」

姫神「ごめんね。小萌」

小萌「ふえーん、ほんと良かったのですー」

上条「小萌先生!? いい大人なんですからそんな大泣きしないで下さいよ」

生徒を心配して涙する教師の感動的な構図なのだが、
小萌の体躯では客観的にみると妹か何かにしか見えないのが輪をかけて微笑ましい。
きっと上条が怪我をすれば、この優しい担任は同じように涙するのだろう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/12(火) 04:33:29.65 ID:VQ/UCIXf0<> ――――――――

小萌「それじゃあ、入院中に必要そうなものは明日持ってきますのです」

姫神「明後日には。退院できると思う」

上条「じゃあ、また明日な」

姫神「うん。また明日」

小萌「また明日なのです」

そして『異変』が起きたのは三人が別れのあいさつをした直後だった。
ふっ、と辺りが暗くなったのだ。

上条「ん? 停電か?」

突然のことに天井を見上げると、蛍光灯が仄かな明かりを灯しており、
その明かりもほどなくして部屋中を照らす強い光へと変わる。
この病院では室内の明るさに合わせて丁度いい明るさへと光の強さが調節されるのだが、

姫神「上条くん。窓の外を見て」

上条「外がどうかしたか?」

姫神の声に上条は窓の方へと視線を向ける。
窓の外には特に変わった物は見つからない。
ただ、何の変哲もない『真夜中の』風景が映るばかり……。

上条「あれ?」

それは『おかしい』。
なぜならば今はまだ夕方の6時前、9月のこの時間でこの暗さは『ありえない』。

小萌「ふぇー、外が真っ暗なのです……」

上条「どういうことだ……?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/12(火) 04:58:50.93 ID:VQ/UCIXf0<> ♪マヨラー、その手を引く者などいない♪

信じられない状況を前に、なんとも緊張感のない音楽が鳴り響く。

上条「わわっ、俺の携帯!?」

同室の二人の女性のジト目に引け目を感じつつも携帯を取り出し、液晶に表示された着信相手を確認する。

上条「土御門……! ちょっとすいません!」

目の前の不可解な状況を説明してくれそうな相手からの電話に即座に通話ボタンを押す。
一応だが、この病棟は携帯使用可の病棟なので安心してほしい。

土御門『カミやん、外の異変には気付いてるか?』

上条「ああ、まだ6時前だってのに突然暗くなって何がどうなってるんだ?」

土御門『奴さん、日が沈むのが待ち切れなかったみたいだな』

上条「それじゃまさか……」

土御門『おそらくは。月の位置からして夜中の0時ってとこか。
  カミやんは今どこにいるんだ? 一方通行は一緒か?』

上条「今は病院だ、一方通行はいない」

土御門『正直、この後何が起こるか想像もつかない。
  戦力が分散しているのもまずい、一方通行と早めに合流するんだ』

上条「わかった。サンキュー土御門」

土御門『……カミやん、死ぬなよ』

上条「あたりまえだ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/12(火) 05:20:06.16 ID:VQ/UCIXf0<> 土御門の激励を受け、一度電話を切った後アドレス帳からつい最近登録した一方通行の名前を探す。

小萌「今の電話、土御門ちゃんだったのですか?」

上条「え、えぇ、あいつもびっくりして電話かけてきたみたいで」

タタリのことを説明するわけにもいかず、咄嗟に適当な対応をする。

♪マヨラー、そ♪

まだ一方通行の名前を探している最中だった携帯が、再び着信音を鳴らす。
ほぼ条件反射で通話ボタンを押してしまったが、
今は一方通行と連絡を取るのが先決である。
通話相手には悪いが一言謝って電話を切ろうと、携帯を律儀に耳に当てようとした時、

一方通行『おィ、三下ァ、テメェ今どこにいる』

上条「一方通行か? 俺は今病院に姫神の見舞いに来てる、そっちはどこだ?」

元より電話をかけようとしていた相手に若干面喰ってしまったが、努めて冷静な対応で返す。

一方通行『そりゃァ都合が良い、俺もまだ病院だ。玄関で待ってるから早くきやがれ。
  どういう理屈か知らねェが、“今夜”は“今夜”だろ。糞野郎と決着つけるぞ』

上条「わかった、すぐ行く」

用件のみの通話を終えて携帯をしまう。

上条「姫神、ちょっくら吸血鬼退治に行ってくるぜ。
  小萌先生は危ないんでここにいて下さい。じゃ!」

上条は捲し立てて喋ると、一目散に病室の外へ駆け出していく。
小萌先生が何か叫んでいた気がしたが、追いかけてくる様子はないようなので気にせず玄関へと急ぐことにした。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/13(水) 03:12:31.26 ID:zEOP6Yde0<> ――――――――

上条「一方通行!」

病院の廊下を走っているところを看護師に咎められたりしつつも、
上条はほどなくして病院の玄関前へと辿りつき、白髪の少年に声をかける。

一方通行「おせェ。……ったく、一応テメェの右手だけがジョーカーなンだからしっかりしやがれ」

上条「これでも全速力だったんですが……」

開口一番に叱責を受け、上条はぼやきを口にする。

一方通行「で、これからどうすンだ? この異常な事態でも脚使って探すンか?」

上条「確証はないんだが一応の目星はついてる。それは」

「こんばんは」

上条の言葉を遮るように、上条にとっては聞き覚えのある声が聞こえた。
だから、続きを口にすることよりも、その声のした方へと視界を向ける。

「しばらくぶりですね、上条さん」

上条「かざ、きり?」

風斬「はい」

満面の笑みを浮かべそこに立っていたのは、上条が約2週間前に知り合った少女、風斬氷華だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/13(水) 03:55:53.41 ID:zEOP6Yde0<> 一方通行「誰だァ、こいつ?」

切羽詰まった状況であるこんな時に、突然現れた人物に一方通行は眉をひそめる。

上条「えっと、風斬氷華って言って――」

風斬氷華。
上条が彼女と知り合ったのは2週間前のこと。
上条の学校の転校生として現れた彼女だったが、その正体はAIM拡散力場が集合して意思を持ってしまった少女。
またの名を虚数学区の鍵。
なのだが、今この場で説明するのはいささか時間がないうえに、説明そのものが難しい。
よってこの場は、

上条「――俺の友だちだよ」

もっとも簡素な説明で済ますことにした。

風斬「初めまして、風斬氷華です」

一方通行ににこやかな笑顔を向け、風斬は軽くお辞儀をするが、
一方通行は返事をするでもなくじっと見つめ、風斬のことを観察している。

上条「久しぶりに会えたのは嬉しいんだけど、今はちょっとごたついててさ」

一方通行の態度は気になったが、やはり今はのんびりと会話できるような状況ではない。

風斬「もしかして、また事件に巻き込まれてるんですか?」

風斬には悪いが今すぐにでもこの場から離れてもらいたい。

上条「またって言い方は気になるが、実際その通りだから返す言葉もないんだが」

そんな上条の心情を知ってか知らずか、風斬はゆったりとした口調で会話を続ける。

風斬「私、お手伝いできませんか?」

確かに、風斬の身体は人間とは異なっているため、肉体強化系の能力者に似た力を振うことができる。

上条「気持ちは嬉しいけど、今回のは結構シャレにならない相手だから」

上条の信条としてもそれは認められない。

風斬「でも、」

♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪

風斬の言葉を遮って、この場に似つかわしくない曲が流れる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/13(水) 04:11:27.53 ID:zEOP6Yde0<> 上条「俺の携帯……、メールか」

上条は反射的に携帯を取り出し、外部液晶を確認する。
内容までを確認するつもりはなかったのだが、液晶に表示されたメールの送信者の名前を見てその顔は驚愕に変わる。

風斬「メールですか?」

風斬は首をかしげ、上条の様子を窺うように足を一歩前に踏み出す。
上条は風斬の言葉を無視し携帯を開くと、慌てた様子でメールの本文を確認する。

風斬「上条さん?」

風斬は一歩、また一歩と上条の元へ歩を進める。が、

上条「“止まれ”」

上条のきつい口調に、身体をびくんと震わせて脚を止める風斬。

風斬「どうか、したんですか?」

不安そうな声を出す風斬に、上条は携帯に落としていた顔をあげ風斬をまっすぐと見据える。

上条『お前、本当に風斬氷華か?』

風斬「ど、どういう意味ですか?」

上条「今送られてきたメール……、“風斬氷華からのメール”だったんだよ」

一方通行「あン?」

風斬「え?」

上条の口にした言葉に、風斬だけでなくさっきまでイライラした様子で二人を睨んでいた一方通行も疑問の声をあげる。

上条「メールの本文には“その人は私じゃない”、そう書いてあった。
  今、俺たちが戦ってる相手って言うのは、他人の姿を真似られる奴なんだ。
  このメールが正しいのか、お前が正しいのかはわからない。
  だから、今は風斬にはこの場から立ち去ってほしい」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/13(水) 04:11:54.34 ID:zEOP6Yde0<> 一方通行「誰だァ、こいつ?」

切羽詰まった状況であるこんな時に、突然現れた人物に一方通行は眉をひそめる。

上条「えっと、風斬氷華って言って――」

風斬氷華。
上条が彼女と知り合ったのは2週間前のこと。
上条の学校の転校生として現れた彼女だったが、その正体はAIM拡散力場が集合して意思を持ってしまった少女。
またの名を虚数学区の鍵。
なのだが、今この場で説明するのはいささか時間がないうえに、説明そのものが難しい。
よってこの場は、

上条「――俺の友だちだよ」

もっとも簡素な説明で済ますことにした。

風斬「初めまして、風斬氷華です」

一方通行ににこやかな笑顔を向け、風斬は軽くお辞儀をするが、
一方通行は返事をするでもなくじっと見つめ、風斬のことを観察している。

上条「久しぶりに会えたのは嬉しいんだけど、今はちょっとごたついててさ」

一方通行の態度は気になったが、やはり今はのんびりと会話できるような状況ではない。

風斬「もしかして、また事件に巻き込まれてるんですか?」

風斬には悪いが今すぐにでもこの場から離れてもらいたい。

上条「またって言い方は気になるが、実際その通りだから返す言葉もないんだが」

そんな上条の心情を知ってか知らずか、風斬はゆったりとした口調で会話を続ける。

風斬「私、お手伝いできませんか?」

確かに、風斬の身体は人間とは異なっているため、肉体強化系の能力者に似た力を振うことができる。

上条「気持ちは嬉しいけど、今回のは結構シャレにならない相手だから」

上条の信条としてもそれは認められない。

風斬「でも、」

♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪

風斬の言葉を遮って、この場に似つかわしくない曲が流れる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/04/13(水) 04:13:54.48 ID:zEOP6Yde0<> >>262は無視して下さいorz
更新押したらなぜか一個前のレスが書き込まれた……これがタタリか <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/13(水) 04:37:04.92 ID:zEOP6Yde0<> >>261

一方通行「ならお前の右手で触れればいいだろォが」

目の前の女がタタリなら消滅して、そうでなければ本物と言うことになる。
だが、それは風斬氷華が普通の人間であればの話だ。

上条「それはできない。風斬はAIM拡散力場で身体ができてて」

一方通行「はァ? 言ってる意味がわかんねェよ、それは人間か?」

上条「説明が難しいんだよ、とにかく俺が触って確かめるってことはできないんだ」

風斬「……」

上条「そういうわけだから、風斬が本物か判別できる方法が思いつかないんだ。
  悪いけど今はこの場から離れてくれないか?」

風斬「そうですか。なら仕方ないですね」

そう言って困ったような笑顔を浮かべて苦笑いを返す風斬。

上条「……すまん」

居た堪れなくなった上条は思わず謝罪の言葉を口にする。

風斬「どうして謝るんですか?」

上条がなぜ謝る必要があるのだろうか。

風斬「だって私」

彼女は。

風斬「吸血鬼ですよ?」

今夜のタタリだったのだから。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/13(水) 23:34:04.10 ID:zEOP6Yde0<> 上条「なっ!?」

風斬の形をした別の何かは、口の端を歪めニタリと笑うと身を屈め上条に肉薄しようと疾走する。
衝撃的な告白に息も止まるような思いだが、目の前の敵は止まってはくれない。

一方通行「ぼさっとしてンじゃねェ!」

咄嗟のことで反応が遅れている上条の前に、一方通行が怒号を飛ばし立ちふさがる。
すでに演算補助装置のスイッチは能力使用モードへと切り替えられており、まだ手にしていた杖はその場で横合いへと投げ捨てる。

風斬「邪魔、しないで貰えますか?」

しかし、敵は臆することなく直進し続け、見るからに貧弱そうな細腕を振り上げる。
一方通行もまた構えを取ろうとするわけでもなく、ただ直立不動であり続ける。
絶対的な自信。風斬氷華がどんな能力者かは知らないがベクトル変換で反射してしまえばいい。
そして邂逅。低い体勢から振り下ろされた拳は一方通行の胸の中心に叩きこまれる。

ばきっ!ぐしゃっ!

……どさっ。

直後、とても嫌な音が響き渡り攻撃を仕掛けたはずの風斬氷華が逆に宙を舞い5mほど吹っ飛ばされ地面に叩きつけられていた。

一方通行「ごほっ、げほっ……!?」

わずかに遅れて、反射の膜によって攻撃を跳ね返したはずの一方通行が咳き込み膝を突いていた。

上条「一方通行!? 大丈夫か!」

一方通行「騒ぐなァ、ただちょっと“反射しきれなかった”だけだァ」

上条「反射しきれなかった、ってどういうことだ?」

一方通行「“反射”自体はきちンと機能してた。だが、ワケのわからねェベクトルが混じってやがって完全に反射しきれなかった。
  タタリってのは元となった人間とその噂に影響されンだろう? 三下ァ、あいつは一体なンなンだ?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/14(木) 01:57:18.78 ID:4HB74Xmd0<> 上条「AIM拡散力場って知ってるか?」

一方通行「そンくらい能力開発受けてる奴なら常識だろォ、能力者が無意識に発する力のフィールドで、」

のんびりと話をしているように見えるかもしれないが、二人は警戒を解いていない。

上条「そう、その無自覚で垂れ流されてる能力の一端で、体温は発火能力、生体電気は電撃能力……、
  って具合でより集まって出来たのが風斬氷華なんだ」

一方通行「はぁ? じゃあアレは人間じゃなく」

風斬「人間ですよ」

一方通行の言葉を遮るように発せられたその声に二人はハッとなり声の方を見やる。
視線の先では先ほどまで倒れ伏していた風斬氷華が何事もなかったかのように起き上がるところだった。
ただ、一方通行に叩きつけたその右腕だけはあらぬ方向へねじ曲がってしまっている。

風斬「私は、“人間”なんです。そうですよね、上条さん?」

風斬氷華はどこかおかしそうに笑い、ねじ曲がった右腕を左腕で元に戻しながら上条に語りかける。
それは上条が以前、風斬に言った言葉。
それを否定することもできず肯定することもできず、苦虫を噛み潰したような顔をする上条を、
風斬氷華はどうして何も答えてくれないのかと問いかけるように首をかしげている。
その間にも、気付けば風斬氷華の右腕はいつの間にか怪我ひとつない細腕へと戻っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/14(木) 03:50:20.18 ID:Sjhz3cJeo<> 今日は終わりかな?
乙です
楽しみにしてます <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/14(木) 05:18:07.82 ID:4HB74Xmd0<> 一方通行「この際、化物か人間かなンてことァどうでもいい。
  結局テメェは自分が暴れるのに邪魔な奴を消しに来ただけなンだろォ?」

そう、忘れてはならない現実。
目の前の風斬氷華の形をした敵は吸血鬼『タタリ』。
いかに殴りにくい相手であろうと野放しにすることはできないのだ。

一方通行「昨晩、仕留め損なった獲物がどうあっても殺してェみたいだが、
  そんなに目障りなのかァ? 吸血鬼にとって“吸血殺し”って奴は」

風斬「そうでもありませんよ? 吸血鬼の私が言うのもなんですけど生理的に受け付けないんですよ。
  視界に入らなければどうってことはありませんが、視界に入ったからには死んで頂きたい、そんな感じですね」

タタリがここに現れたのは偶然でも何でもない。
主賓扱いとされる上条や共に戦う一方通行が狙ってきたわけでもない。
標的は吸血殺し、姫神秋沙ただ一人なのだ。

風斬「最終的にはこの街の人間全ての血を飲み干すわけですから、別に気にするほどのことでもないんですけど」

私嫌いなものから先に食べるタイプなんです、とでも言わんばかりの悪意なんてこれっぽっちもない笑顔で、
さっきまで気押され気味だった男に、ようやく火が点る。

上条「ふざけんじゃねえぞ、偽物野郎! 絶対に姫神は傷つけさせやしねえ!
  姫神だけじゃない、この街の人間誰一人だって傷つけさせやしねえぞ!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/14(木) 18:23:13.78 ID:sko2DpfIO<> 待ってた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/15(金) 00:05:18.22 ID:RrublJrN0<> ↑に同じく! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/15(金) 01:49:53.14 ID:xz9qAYYc0<> 風斬「でしたら教えてあげましょうか。
  人間の身でありながら、吸血鬼に歯向かうことがいかに愚かなことであるか」

 『さぁ、虚言の夜を始めましょう』

風斬氷華は公演の開幕宣言のような一言から、わずか1秒後には6,7メートルほどの高さまで跳躍すると、
スカートを翻し右脚を真上に伸ばしそこから一方通行と上条との間へと踵落としを叩き込む。
その衝撃は凄まじくコンクリートの地面を砕き破片と粉煙を巻き上げる。

上条「ッう!」

上条は飛散する破片に思わず目を閉じる。
風斬氷華の落下位置との距離は約2メートル弱、攻撃を恐れ咄嗟にタタリにとって脅威である右腕を前に突きだす。
しかし、風斬氷華が狙ったのは一方通行。
一方通行は上条とは違い、破片は反射してしまえば問題ないため目を閉じることはない。
そんな一方通行の目に飛び込んできたのは、裂けたように曲がった右脚での回し蹴りだった。
戸惑いのない攻撃にさすがにぎょっとする一方通行だが、冷静にすぐさま攻撃を手の平で受け止める。

バチン!

乾いた音が響き、一方通行の手が弾かれる。
一方で風斬氷華は攻撃した反動とは思えない勢いで宙を舞っていた。

一方通行「ぐッ……、9割ってとこかァ?」

現状、一方通行が反射することができるのは全体の『攻撃エネルギー』の9割程度。
つまり、あらかじめ設定した肉体に害となるベクトルと異なるベクトルが、
あの攻撃に1割ほど含まれているということになる。
だが、ここで『たかが一割』と侮ってはならない。
たった今、風斬氷華は9割のエネルギーを自身に受けながらも
空中で体勢を立て直して華麗に着地を決め、なおかつ見るも無残だった右脚はすでに再生が終わっていた。
反動による肉体への負担を度外視で攻撃され続ければ例え1割と言えど積み重なればどうなるかは明白だろう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/04/15(金) 02:06:48.95 ID:sLl2LYV+o<> >>517
中見てくりゃいいじゃん <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/15(金) 04:46:34.89 ID:xz9qAYYc0<> 一方通行「おい、三下ァ! あの女に“コア”みてェなもンはねェのか?」

上条「こ、コア!? 突然そんなこと言われても……ぺっぺっ、まだ口ん中に砂利が」

巻き上げられたコンクリートの細かい欠片を吐き出しながら必死に記憶を探る。
そもそも、風斬と会ったのは一度きりだし、AIM拡散力場とかよくわからないしと
そう考えると上条は自分が風斬のことを何も知らないのだとようやく気付く。

一方通行「まさか、何も知らねェのか? おィおィおィ、テメェの友だちなンじゃねェのかよ!?」

上条「友だちだからって何でも知ってるわけじゃないんですのことよ!?」

風斬「ほらほら、おしゃべりしてないで私と遊んで下さいよ」

上条と一方通行が役に立たない作戦会議を開いているが、
風斬氷華に会議が収束するのを待つ義理などありはしない。
風斬氷華は右手で左手首を掴むと、バキリバキリ異様な音を立てて自身の左手を肘の先から力付くで引きちぎると、
満面の笑みで右手をぐるぐる回して遠心力を付ける。
断面は肉や骨が詰まっているわけではなく、空洞になっているのがちらりと見えたが
異様すぎる光景の前にはそんなことは霞んでしまっている。

風斬「音速の三倍ってのは無理ですけど、時速200キロぐらいならいけるかなー」

そして振りかぶって投擲された左手は一直線に上条の元へと向かう。
空洞の腕だとしてもAIM拡散力場によって一般的な腕と同じ質量を持つため、
それが推定時速200キロで直撃しようものならとんでもないことになる。

上条「無茶苦茶にもほどがあるだろ!!」

美琴の超電磁砲で慣れていたおかげで、反射的に右腕を前に出して飛来した左手を受け止める。
受け止めると言っても、触れた瞬間に幻想殺しによって霧散したため衝撃は皆無である。

一方通行「弱点がないンなら、テメェが何とかするしかねェぞ。わかってンのか?」

上条「始めからそのつもりだ! こんなふざけた幻想、すぐにでもぶち殺してやるよ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/15(金) 07:01:54.35 ID:k4V+ZX8IO<> おお更新きた <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/15(金) 17:55:43.47 ID:xz9qAYYc0<> 風斬「ふざけた幻想だなんて、現実逃避も甚だしいですね」

自身を鼓舞し意気込む上条を見て、風斬氷華はクスクスと笑う。
自ら引き千切った左手は、空気中から欠片が集まるように象られていき、
今まさに元通りになった左手を開いたり閉じたりして調子を確かめている。

風斬「もしも、簡単にぶち殺せるって言うのなら、それこそ“そんなふざけた幻想はぶち殺して”あげましょう」

風斬氷華は上条の決め台詞をさらった奪った後、軽やかなステップでゆっくりと上条との距離を詰める。
上条はその右腕で触れるだけで風斬氷華を消し去ることができる。
ならば、この不意な接近で逆に距離を取る必要はなく、相討ちであろうと必ず触れてみせると考えていた。
一方通行もそれを理解しているのか、下手に上条の前に出るよりも
風斬氷華の上条への攻撃を叩き落とせるように注意深く警戒している。

風斬「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?」

そんな上条たちの様子を見て風斬氷華は、上条の三歩手前で立ち止まり己が両手を広げる。

風斬「大好きな上条さんには大サービスで一回だけ殴らせてあげちゃいます。
  顔が良いですか? それともお腹? やっぱり男の子ですから胸とかかな?」

上条「は?」

一方通行「何言ってンだこいつ!?」

敵からの突然の申し出はまさに意表を突くものだった。
幻想殺しで触れることが勝利条件のこの戦いで、それは負けを認めたのと同義となる。

一方通行「どう考えても罠だろうがァ」

上条「願ってもないチャンス、見逃す必要がねぇ!」

無抵抗の相手に上条は勝利条件を必要以上に振りかぶり、風斬氷華に接近する。
一方通行も風斬氷華の不穏な動きに備えて背後へと回り抑え込む体勢へと入る。
しかし、風斬氷華は微動だにせず、二人を嘲笑うようにクスクスと笑い続けている。

上条「消えろ、この偽物野郎!!」

上条の渾身の一撃が今宵のタタリ風斬氷華の顔面へと突き刺さる! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/16(土) 06:33:49.61 ID:rnrtmm6u0<> 上条の放った右ストレートは奇麗に決まり、幻想殺しがタタリという存在を完膚なきまでにぶち殺す。
風斬氷華は瞬間的に霧散し、辺りは静寂に包まれていた。

上条「勝った、のか……?」

あまりのあっけなさに上条は口をぽかんと開け間抜け顔を晒してしまっている。

一方通行「攻撃は確かに当たった……」

一方通行は注意深く周囲を警戒しつつ、演算補助装置を通常モードへと操作する。
今上条たちが感じている不安は達成感の問題だろう。
ゲームのラスボスがバグか何かで勝手にやられて突然スタッフロールが流れ出したような
周りから難しいと予め宣言されていたのに簡単にクリアできてしまった、そんな感覚。
血反吐を吐くような死闘の末に掴んだ勝利であれば何の疑いもなく受け入れていたことだろう。

上条「俺たち勝ったんだよな? 学園都市を守れたんだよな?」

一方通行「俺に聞くンじゃねェよ、トドメ刺したのはテメェだろォが。手応えはあったのかァ?」

上条「手応えは、あった。確かに幻想殺しがタタリを殺した感触はあった」

一方通行「なら、勝ったンじゃねェか? ケッ、弱すぎて話にならなかったなァ」

二人は気付けばどちらからともなく、フフフ、クククと笑いだしていた。
達成感はなかったが五日間の苦労はようやく報われ、二人は確かな充足感を感じていた。
だが、

♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪

一方通行「クカカカ……、あン?」

上条「ふふふふ……、ん? またメールだ」

興奮冷めやらぬ様子ではあるが、上条は携帯を取り出して内容に目を通す。
瞬間、風呂上がりに冷水をぶっかけられた揚句に心臓を鷲掴みにされたような倒錯した錯覚に襲われる。
送信者は一つ前に送られてきたメールと同じ。
本文には一言、

 『まだ、終わっていません』 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/17(日) 04:53:09.21 ID:UDbF7V520<> 一方通行「おい、どうかしたかァ?」

上条「メール、風斬から……。まだ、終わってないって」

上条は凍りついた表情で送られてきたメールをそのまま一方通行へと見せる。

一方通行「終わってないだァ? さっきの奴は消えちまったじゃねェか」

何度も言うが、上条の幻想殺しは間違いなく当たり、タタリを消し去った。

上条「ああ。でもこのメールは」

「メールがどうかしたんですか?」

背後から声をかけられる。
その声には聞き覚えがあるとかないとかそういう話じゃなく、さっきまで聞いていた――。

上条「風、斬……」

一方通行「ッテメェ!」

上条はゆっくりと振り向き愕然とする。
また、一方通行は歯を噛みしめギリリと音を鳴らす。

風斬「劇はまだ始まったばかりですよ? 幕引きにはまだ早い、そう思いませんか?」


 今宵のタタリは、終わらない。

<>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/17(日) 05:20:35.51 ID:UDbF7V520<> 上条「ぅ、うわあああああああ!!?」

上条は反射的に右腕を降り回し、もはやパンチとは呼べない攻撃を繰り出す。
それでも、風斬氷華は現れた場所から動かずにいたおかげで、難なく当たり再びタタリは霧散する。

上条「はぁ……はぁ……」

一方通行「やった、のか?」

上条「当たった……、確かに当たった! この手で、幻想殺しで殺した!!」

泣き叫ばんが勢いで発せられた言葉は、一方通行に対して応えたわけではない。
そう自分に言い聞かせようと、恐怖に彩られ始めた現実を都合のいい幻想で塗り固めるが行為。

一方通行「落ちつけ! テメェの呼吸を意識してみろ、過呼吸寸前だぞ!」

上条「ァ!?」

上条は一瞬驚いたような顔をしてから、手の平を胸に置き一度息を止めてから大きく深呼吸をする。
息を整えたことでいかに自分が取り乱していたかをようやく把握する。

上条「す、すまん、一方通行」

一方通行「ケッ。……だが、さっきのォ」

再び現れ、再び幻想殺しによって霧散したタタリ風斬氷華。
タタリは幻想殺しさえ当たれば倒せるのではなかったのか。
頭の中で自問自答を繰り返し、状況把握に努めるが納得のいく答えは出てこない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/17(日) 05:53:05.86 ID:UDbF7V520<> 風斬「一回だけって言ったのに、二回も殴るなんてずるいですよ上条さん」

またしても二人の背後から聞こえてきた声は、振り向かなくてもわかる。
風斬氷華は、タタリは、倒せてなどいないのだと。

風斬「上条さんはご自分の右手をどう解釈してるのか知りませんけど、幻想殺しは吸血殺しとは本質が異なります。
  だから、完成したタタリの前では何の意味もなさないんですよ」

親が聞き分けのない子どもを諭すように、風斬氷華はゆっくりと説明する。
どんなにあがいても貴様らの命運はここで尽きるのだと。

一方通行「クッソタレがあァァァ!!」

一方通行は演算補助装置を操作し、風斬氷華までの距離約10メートルを一息で跳躍する。
空中でありながらベクトル操作によって加速したミサイルのような蹴りをダイレクトに見舞う。

ドン! バゴン!

ノーバウンドで十数メートル吹き飛んだ風斬氷華は、重力に引かれ地面に落ちる前に分厚い塀にぶつかり塀を人型に凹ませていた。
人間であれば、内臓が破裂し骨が砕け確実に即死している衝撃である。
だというのに、風斬氷華は何事もなかったかのように五体満足で地を歩いているのはどういうことなのか。

風斬「気は済みましたか? 物理攻撃なんて効きませんよ」

一方通行の前まで戻ってきた風斬氷華は、そのまま一方通行の横を素通りする。

風斬「もう諦めてくれましたか?」

上条の前で立ち止まり、風斬氷華は笑顔で上条に尋ねる。

上条「…………」

沈黙を回答として捉えたのか、風斬氷華は満足げに頷いて上条の横を通り抜ける。
風斬氷華の進む先には病院の入り口がある。
だが、上条も一方通行も釘で打ちつけられたかのようにその場から動けずにいた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/17(日) 05:57:28.94 ID:UDbF7V520<> どうしようか・・・?
タタリ強すぎて勝ち目ないんだけどwwww
しかも俺の頭の中ではまだ変身を一回残してるんだぜ、厨二病自重しろよ
早く終わらせたいんだけど、なかなか終わらないしもうこのままBADENDにしてやろうかしら

 ニア 諦める
   諦めない
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/17(日) 06:49:25.57 ID:QVyZyV+3o<>  諦める
ニア 諦めない
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/04/17(日) 07:48:09.61 ID:/SVy1JsYo<> 右腕切り落として中の人でも出しゃいいんじゃね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/04/17(日) 09:00:01.81 ID:HZBqFYdC0<> 今こそ上条さん最強の武器、主人公補正の出番だ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国)<>sage<>2011/04/17(日) 12:57:29.85 ID:LHBElyPAO<> そこでまさかの御坂妹と妹達と黒子と御坂さんに土御門と青ピとかクラスの面々
そしてイン何とかさんとイギリス更に天草式の面々と神の右席、最後には 遠野志貴とアルクエイドと衛宮士郎に遠坂凛を初めとする型月の面々

さぁくたばりやがれタタリ

1さんの次回作にご期待ください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<><>2011/04/20(水) 22:53:24.29 ID:rLwwQ2A50<> おれメルブラ漫画の方しかみてないんだけど
原作のタタリの倒し方って漫画と同じなの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2011/04/20(水) 22:59:11.28 ID:zwlCUPRM0<> >>285
強制ではないが、sageてくれ・・・
キタかと思っちまった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/23(土) 06:47:00.61 ID:17gym0DS0<> 「止まりなさい」

その声は上から聞こえてきた。
その場にいた全員が一斉に声の方へと視線を送る。
視線の先は暗闇でも明かりが点らず役目を果たしていない街灯、
その上に立つ黒衣に身を包んだ……人間?
月明かりに照らされたその姿は女性であることが確認できた。
上条が呆気にとられていると、その黒衣の女性はどこからともなく数本の剣を取り出し投擲する。
投擲された剣は風斬氷華に向け一直線に飛来し一瞬のうちに両腕両足に突き刺さっていた。

風斬「“また”、貴様か」

さっきまでの飄々とした感じと打って変わって、突き刺さった剣には目もくれずに
風斬氷華は黒衣の女性を心底目障りだと忌々しげな瞳で睨みつける。

「それはこちらの台詞です、タタリ」

女性は街灯の上から音もなく華麗な着地を決めて、タタリを一瞥する。

「そっちの白髪の君と、ウニみたいな頭した君たち、この場から立ち去りなさい」

一方通行「なンだとォ!? 突然現れたどこの誰とも知れねェババァが何言ってやがッ」

ガツン!

一方通行が宙を舞った。
一寸遅れて女性が投擲した黒い剣の柄の部分が額を直撃したのだとわかる。

「次にババァなんて言いやがりましたら、タタリより先にあなた方を斬り伏せますよ?」

顔は笑っていたが、もしNGワードを口にしようものなら本気で叩き斬られる、上条はそう感じた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/23(土) 10:12:39.81 ID:17gym0DS0<> 風斬「埋葬機関の第七位様にこんな短期間で二度も会うことになるなんてね」

風斬氷華は空洞の肉体に刺さった剣――黒鍵――を引きぬきながら黒衣の女性に語りかける。

「それもこちらの台詞です。ただ数年を短期間と言うのは同意しかねますが」

風斬「すみません、私が具現化するのは一夜限りなもので。私にとっては数日前の出来事でしかありませんから」

風斬氷華と女性は、向かい合い一言二言会話を交わす。
しかし、それきり互いに口を開かず対峙したまま緊迫した空気が流れる。
そして次の瞬間、何がきっかけだったのかわからないが二人は一瞬で加速する。
女性はどこからともなく黒鍵を何本も取り出し連続で投擲する。
一方、風斬氷華はその攻撃をかわすこともせず全て真正面から受け止め、
それらを一切意に介さずに突き進み拳を振り抜く。
轟ッと空気を切り振り抜かれた拳を、女性はこともなげに黒鍵で肘の上あたりをバッサリと切り落とす。
腕を失ったにも関わらず風斬氷華は逆手で掌底を狙う。
しかし、女性はそれも一瞬のうちに切り落としてしまう。
残ったのは脚だけだが、それも風斬氷華が蹴りを放つ前に同様の動作で切断し、風斬氷華は完全な達磨状態と化す。
女性は風斬氷華の真上に、生身の人間とは思えないような信じられない高さまで飛びあがり自身の黒衣に手をかける。
そのままなぜか女性はまとっていた黒衣を脱ぎ捨ててしまったが、その黒衣の下から現れたのは非常にごつい銃器のようなもの。
その銃器のような物の先端には太く尖った釘のような突き出た何かがあった。

「いきますよ、セブン!」

女性は四肢を失い身動きの取れない風斬氷華に向かって先端のとがった部分を突き立てると、その先端をゼロ距離で射出する。
それで風斬氷華は完全に消滅した。
だが、上条も一方通行も喜ぼうとは思わない。否、件の女性ですら気を抜く様子は見られない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/23(土) 22:09:08.71 ID:17gym0DS0<> 風斬「だから無駄だって何度も言ってるじゃないですか。ってあなたに言うのは初めてか」

先ほどの女性を真似てか、風斬氷華が五体満足で街灯の上に現れる。

風斬「この身体はタタリと同じ現象そのもの。例え第七聖典でも滅することはできませんよ」

「ですが、力そのものは大したことありません。どういった噂を具現化したのか知りませんが、
 ポテンシャルで私を下回っている以上、今宵のタタリもただ消え去るのみ」

無駄と言い放つ風斬氷華に対し、女性が怯む様子は全くない。
再び戦いの火ぶたが切って落とされ、人外の攻防戦が開始される。
投擲された黒鍵が風斬氷華に次々に突き刺さるが、やはりそれを意に介す様子はない。
ただ、今度は自身に突き刺さった黒鍵を2本抜き出すと、それを武器として振り下ろす。
ガキンガキンと金属がぶつかり合う音が響き渡り凄まじい速さの剣戟が繰り広げられる。

一方通行「おィ、あのば……、女は誰なンだよ」

杖を拾い上条の元まで戻ってきていた一方通行が語りかけてくる。

上条「上条さんが知るわけないじゃ……」

そこまで口にして、そういえばと思いだしたことがあった。

上条「魔術師……」

一方通行「あン?」

上条「昨日話しただろ、吸血鬼退治が専門の魔術師が来るって。それが」

ガキン!ガゴン!バキッ!

一方通行「あの白兵戦やってる女だってのかァ? 魔術師ってのはあンな肉体派なのかよ」

上条「……魔術師にもタイプがあるんだと思う。超能力者に炎を使う奴がいれば肉体を強化する奴がいるみたいに」

わずかに記憶を辿り、イギリス聖教の知人を思い浮かべて答える上条。

一方通行「まァ、あの女が投げた剣を反射しきれなかったのは事実だ。
  魔術か……、この世に俺が干渉できねェベクトルがあるとはなァ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/04/23(土) 22:09:44.08 ID:5UjPEo6Oo<> カレー先輩キタ―――――!! <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/24(日) 01:06:51.41 ID:IFXOAnmG0<> ガゴンッ!

地響きとともに聞こえてきたその音は、さっき風斬氷華を貫いたパイルバンカーが
再び風斬氷華を撃ち抜き貫通して地面にも穴を開けた音だった。
上条の幻想殺しも含めれば4度目となる消滅だが、風斬氷華はまたしてもどこからともなく現れる。

風斬「肉体のポテンシャルで上回られてはどうしようもありませんね。
  代行者相手ではこの身体のままでは勝ち目は薄そうです」

小さくお手上げのポーズを取る風斬氷華だが、その顔にはどことなく余裕が感じられる。

「まるでまだ奥の手を隠しているような口ぶりですね。ですが一度確定したタタリが姿を変えることはない。
 朝まで何度だって消滅させてあげますよ。ネロ・カオスになどと比べれば楽なものです」

女性は指と指の間に一本ずつ黒鍵を挟み、両手に六本の得物を構え不敵に笑う。

「そこの二人との戦いも拝見させて頂きましたが、今宵のタタリはずいぶんと脆弱。
 ちょっと強い力を持った人間すら殺せず“つまらない脅し”で押し通ろうとするなんて、鼻で笑っちゃいますよ」

その言葉で上条と一方通行は唯一の光明に気付く。
風斬氷華はわざと上条に殴らせ、何度でも復活できることを見せつけ無駄だと言っていたが、それは無駄でも何でもない。
敵は吸血鬼、ただひたすらに朝がくるまで戦い続ければいいだけのこと。
口で言うほど簡単なことではないが、それでも勝ち筋は見つかったのだ。
今は一人でも十分強いこの女性もいる。
絶望するにはまだ早すぎる! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(四国)<>sage<>2011/04/24(日) 02:19:07.68 ID:BZGa/r6AO<> 遠野君はやく〜 <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/24(日) 23:26:59.41 ID:IFXOAnmG0<> 風斬「じゃあ、お見せしましょうか。私の奥の手」

「ハッタリですか、虚言の王とはよく言ったものですね」

風斬「否。今宵のタタリは“風斬氷華”に非ず、この姿は力の一端です。
  選択肢があったから好んでこの姿をとっているだけに過ぎません」

「なん、ですって?」

風斬「その二人は私の眷属にするため、生かしておきたかったのですが
  代行者まで出てきたのではそうも言ってられませんね」

風斬氷華は今度こそ心の底から残念そうな顔をして微笑む。
その口ぶりは虚言か真か。

風斬「今宵のタタリの真の姿、それはAIM拡散力場そのもの。
  劇はまだまだ終わりません、第二幕の始まりです!」

風斬氷華は両手を広げると、片手で指を弾く。
パチンという音が辺りに響き渡る。
全員が息を呑み見守る中、風斬氷華の身体にジジジとノイズが混じり始める。
ノイズは徐々に拡がり全身を覆っていく。
そして次に起こった変化は、風斬氷華にではなく街そのものにだった。

〜♪

それは不協和音のようで何かの曲のような、気持ちの悪い音。
それが学園都市が設置した放送用スピーカーから飲食店の有線放送、
テレビに果ては携帯までとあらゆる音声出力機器から流れ始めたのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/24(日) 23:31:55.86 ID:IFXOAnmG0<> 上条「なんなんだこの音は……」

不快な音に思わず耳をふさぐ上条。

一方通行「騒音攻撃だァ? ずいぶんチャチな……あン?」

上条「どうかしたのか、一方通行」

一方通行「どうかしたっつうか、なンつうか……」

怪訝な声を上げた一方通行は、首を回したり片足を上げてみたりと
まるで身体の調子を確かめるような挙動をとる。

一方通行「演算補助装置も通常モード……、よくわかンねえが能力が戻ったみてェだ」

一方通行はそう言って手に持っていた杖を投げ捨て、地面を踏みつけるような動作をする。
するとバキリと音がなり、コンクリートの地面に罅が入りベクトル操作を行ったらしいことがわかった。

一方通行「クカカカ、どォいう理屈かはわかンねえがこれならいくらでも戦えるぜェ!」

奇妙な笑い声を上げ、ニタニタと悪魔のように笑う一方通行。
だがしかし、

一方通行「いくぞ三下ァ、何ならあのよくわかンねえ女も一緒にやっち……ァ?」

ノイズの混じる風斬氷華と対峙する女性に向かって足を踏み出した次の瞬間、
一方通行の身体がぐらりと揺れ転倒してしまったのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/25(月) 00:43:00.15 ID:HBlm1Ng50<> 上条「おい、どうした! 一方通行!」

地面に横たわる一方通行の元へ駆け寄る上条。
揺すっても反応はなく意識を失っているらしい。
転倒して頭を打ち意識を失ったというより意識を失ったことで転倒した、そんな印象を受けた。

♪〜…、

耳障りな音が消えた。
上条はそれを何かの予兆と捉え一方通行に寄り添った位置から風斬氷華へと視線を向ける。
しかしその視線にいたのは風斬氷華ではなかった。
そこにいたのは巨大な胎児。
全長は上条たちよりもはるかに大きく4〜5メートルぐらいある。
だがその姿は赤ん坊にすらなりえていない未成熟な胎児のもの。

「一体何が……!?」

さっきまで人型だったものがこんな化物に姿を変える、
女性にとってはそれほど見慣れない光景と言うわけでもないが
実際目の当たりにすれば思わず後ずさる。

アァアアアアアアァァァ……。

泣き声と言うより呻き声、そう表現した方がイメージとしては近い。

「くっ……、これでも食らいなさい!」

投擲される6本の黒鍵。
胎児に向け一直線に飛んだそれは、胎児に当たりそして『はじかれた』。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/25(月) 01:26:34.80 ID:HBlm1Ng50<> 「そんなっ! それならば……、セブン!」

そう言って女性が構えたのはあの無茶苦茶ごついパイルバンカー。
距離は離れているが構わずに狙いを定め射出する。
投擲槍の様に飛んでいったそれだが、黒鍵同様にはじかれてしまう。
わずかには衝撃があったのか胎児は若干だが仰け反っていた。

「馬鹿な、第七聖典まで!」

上条はその動きに見覚えがあった。
胎児の表面がどんな状態なのか、女性の武器がどういったものかはわからない。
だが、物理法則として異様だったその光景。

上条「まさか、……ベクトル操作、“反射”なのか……?」

唖然とする上条だが、胎児の力はそれだけではなかった。
胎児の顔前でキラリと何かが光り、次の瞬間に上条にめがけ光線が発射される。

ピキューン!

咄嗟に前に出した右手が幻想を打ち砕く。

上条「超電磁砲……いや、少し違うか」

冷や汗をかきながら攻撃の正体を見極めようとする上条。
先の光線の正体、それは原子崩し。
学園都市の誇るレベル5、第四位の超能力である。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/25(月) 01:43:00.40 ID:HBlm1Ng50<> アアァアァ……

またしても呻き声を上げる胎児の前に立つ女性は、
パイルバンカーを構えたまま胎児へと疾走する。
ゼロ距離で放つつもりなのだろうがきっとそれもまたはじかれる。
女性の武器の詳細は分からないが、物理的な衝撃は全て反射される。
魔術的な要素がどの程度含まれているかは分からないが、
上条にはそれが決定打になるとは到底思えなかった。
それ以前に、その胎児は女性の攻撃を待つよりも先に姿を『消して』しまったのだ。

「一体どこへ!?」

あの巨体が一瞬で姿を消すなんてことは考えにくい。
どこへ行ったのかと周囲を見回す女性だが、
胎児は女性の背後へと突如として現れる。

上条「後ろだ!」

「!?」

上条の声で背後に現れた胎児に気付くと前方への回避行動をとる。
僅かに遅れて、先ほどまで女性のいた場所へと胎児の腕が振り下ろされる。

ドゴン!!

腕はコンクリートを割り地面を陥没させる凄まじい破壊力を見せつける。

上条「さっきのはテレポート……、じゃあ今のも身体強化系の超能力か!?」

女性の背後へと現れた超能力、それは死角移動という移動系能力。
そして攻撃の破壊力は、窒素装甲という大気系の超能力である。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/25(月) 02:04:11.32 ID:HBlm1Ng50<> 今上条たちの目の前で起こっているのは学園都市で一度起きた事件、幻想御手事件に由来する。
使うだけで能力が上がる道具レベルアッパー、
まず先ほど学園都市中に流れた音声の正体がこれである。
この音声を聞くと実際に能力レベルが上昇するものの、
他人の脳波を強要されているため最終的に使用者は
脳波のネットワークに取りこまれ意識不明に陥るという副作用がある。
そしてこの副作用の状態が今の一方通行の状態となる。
さらにそのレベルアッパーのネットワークが暴走により現れたAIM拡散力場でできた化物――幻想猛獣、
その姿は胎児のような姿をしており、若干の差異は見られるが上条たちの前にいるものがそれである。
最後に幻想猛獣が使う様々な超能力、それは多才能力と呼ばれるもので
意識を失った能力者の能力を行使するものとなる。

今、学園都市で能力開発を受けた者のほとんどが意識を失っている。
それは学園都市中に流された音声を聞いたせいであり
つまりは、今意識を失っている超能力者全てが敵にまわったのと同義である。
そしてその中にはレベル5も含まれていることを忘れてはならない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/04/25(月) 02:07:44.50 ID:HBlm1Ng50<> これどうすんだよ・・・無理ゲー過ぎんだろ
誰かフィアンマ呼んでこいよほんとに <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/04/25(月) 15:55:16.93 ID:H9igOx6Co<> おつおつ

>これどうすんだよ・・・無理ゲー過ぎんだろ
まさにお前が言うなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<><>2011/04/25(月) 19:54:53.62 ID:t/ZyHWmuo<> しかも演算能力はハンパなく高い次元になってるはずだから、
レベル5も含めた全部の能力が超ランクアップしてんだよな・・・

マジ無理ゲー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<><>2011/04/25(月) 19:59:09.34 ID:t/ZyHWmuo<> 超・心理掌握
超・一方通行(解析能力含む)
超・未元物質
超・座標移動

もはや全能ワロタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 20:36:22.89 ID:7nWwoulEo<> はまづらさんのたーんなの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/26(火) 00:07:05.61 ID:F/Fj8ky2o<> 演算能力と強さが直結するなら、発狂するほど世界を計算し続けたワラキアさんはドえらい強さになっちゃうよな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<><>2011/04/26(火) 09:35:11.95 ID:fBbF4RuTo<> そこでレベル5殺しHAMADURAのご降臨です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)<>sage<>2011/04/26(火) 12:54:41.67 ID:ObG8AFK7o<> HAMADURAのご臨終に見えて納得した <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽)<>sage<>2011/04/26(火) 18:30:40.03 ID:i4qyweZAO<> こうなったら最終手段ロアの固有結界オーバーロードで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)<>sage<>2011/04/28(木) 00:27:21.59 ID:Z4ac5TiAO<> 幻想猛獣みたいなもんってことは能力の併用もできんのかね。
『透視能力』で『座標移動』の座標指定を補ってみたり、『未元物質』で壊れない弾作って『一方通行』で初速を調整して『絶対等速』にかけてみたり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<><>2011/04/28(木) 09:35:49.93 ID:/K3gBLsto<> 考えれば考えるほど無理ゲーだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国)<>sage<>2011/04/28(木) 10:19:37.30 ID:5N3ISXJAO<> やっぱ志貴と士郎と上やんと一通さんの出番でしょ、士郎が投影した刀や剣を志貴に持たせて上やんの幻想殺しでタタリの全てを防ぎながらubwwで弾幕を作りすきができた瞬間に、志貴が斬る
斬るときには上やんはぜったい志貴にべったりくっついて盾になる

一通さんはubwwの加速補助やベクトル操作でまわりのものを徹底てきに射出して援護にまわってもらえば
なんとかなるはず

ご都合だけどこれ以外思いつかない… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(広島県)<>sage<>2011/04/28(木) 20:03:14.97 ID:zARX2oOI0<> 固有結界で現実世界と隔離して倒してやり過ごすしかないんじゃないか?
もっとも固有結界出来るヤツもいなければならないが <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/01(日) 03:45:27.95 ID:eoiWJ4Em0<> 素早い動きで幻想猛獣と距離をとった女性は、
魔術師と言うよりマジシャンのようにどこからともなく黒鍵を取り出し、
何度目かになる投擲攻撃を仕掛ける。
しかし、その黒鍵は第一位の能力によって反射され無効化されてしまう。
女性とてそうなることは百も承知で、相手の能力を把握するための牽制の攻撃なのだが、
その実態は彼女の使う魔術とは対称の科学であるため非常に困難な道と言えよう。

「そこの黒髪の君! タタリが噂を具現化する吸血鬼ということは知っていますね?」

上条「へ? 俺、ですか?」

ほとんど茫然としていた上条は、突然投げかけられた言葉に思わず敬語で返事をする。

「知っていますね?」

上条「あぁ、知ってるけど」

「では、これがどんな噂を具現化したものかわかりますか?」

どこか事務的な口調は、御使堕しの時に居合わせたミーシャ=クロイツェフを彷彿とさせる。

上条「……わからない」

二日前、都市伝説について携帯で調べていた上条当麻だったが、
目の前で起きている現象と符合するようなものはなかったと記憶している。

上条「けど憶測なら」

「構いません」

即答。
先ほど立ち去るよう促した相手に情報を求めるほど、
今と言う状況が切迫しているということのあらわれなのだ。

上条「たぶんだが、そいつは学園都市の超能力者の能力をそのまま使ってるんだ」

「つまりこの学園にこの怪物の元となった人間がいると?」

上条「違う。いや、もしかしたら……」

「どっちですか!?」

上条「わかんねーよ! けど!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/01(日) 03:49:12.07 ID:eoiWJ4Em0<> 怒鳴りあうような会話を続ける二人だが、
決して幻想猛獣が停止しているわけではない。
女性は、新たに炎を現出させたり、電気を放出したりと攻撃の手数を増やす幻想猛獣を
今も黒鍵で牽制して戦いながら会話をしている。

上条「あんたが投げてる剣が弾かれてるのは、この白髪の超能力者『一方通行』のベクトル変換だ。
  さっき突然背中に現れたのも空間移動系の超能力、
  あの破壊力は肉体強化、炎は発火能力、電気は電撃使いの超能力だ」

幻想猛獣は再び虚空へと姿を消すと、女性の背後から現れる。
しかし、その超能力は二度目、前方へ疾走し背後からくるであろう攻撃を回避する。

上条「つまりそいつは、学園都市の超能力者の超能力を自由に使える、
  そういう存在なんだと思う」

幻想猛獣の使う発火能力により炎が現れ女性に向けて降り注ぐ。
女性は黒鍵を使って一薙ぎでかき消すとともにその武器を投擲するが、
やはりそれもベクトル変換によって弾かれてしまう。

「……今倒れている白髪の彼、私の攻撃が弾かれるのは彼の超能力でしたか。
 でしたら、そちらの彼が気を失っていることとこの怪物の能力との関係性、
 もっと言えば、彼が目を覚ませば奴がその超能力を失う可能性は?」

まさに冷静沈着。
今もまた、幻想猛獣の電撃を黒鍵を地面に突き刺し避雷針にみたてて回避しているというのに、
上条の憶測から即座に現状を打破する可能性を見出す女性は圧巻と言わざるを得ない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/01(日) 04:17:50.92 ID:eoiWJ4Em0<> 上条「可能性は、あるかもしれない」

「このままですと、この都市の人間全てが吸血鬼の餌になります。
 それを防ぐためとあらば、私はそちらの彼を躊躇なく、……殺します」

味方ではないと教えられていたが、
敵でもないと思っていた相手に突如として向けられたギラギラとした殺意。
思わず息をのみ上条の首筋を冷や汗が伝う。

「ですが、犠牲者は少ないに限ります。ですので」

それは暗に脅しだった。
お前が起こさなければ、私が二度と覚めぬ眠りに突き落としてやろうと。
今はこの怪物の相手で精一杯だが隙を見つけて殺してやると。
その言葉に上条が返す言葉はなく、ただ今やるべきことをやるしかない。
上条は冷たい地面に横たわる一方通行の両肩を掴むと大声で叫ぶ。

上条「起きろおおおぉおおおおおぉぉおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!」

がくがくと揺さぶりながら叫び続ける。
がんがんと後頭部を地面にぶつけているが一方通行が目を覚ます様子はない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/01(日) 04:18:27.43 ID:eoiWJ4Em0<> 上条「くそっ、こんだけやりゃあ普通目を覚ますだろ……。
  ってことは魔術による外的要因ってことか……?」

しばらく続けても目を覚まさなかったため肩から手を離し次の手を考える。
がんっ!とさっきより強い音が聞こえたがやはり目を覚ます様子はない。

上条「それなら」

上条は右手を僅かに見つめ、次にそれを一方通行の胸に押し当てる。
そこから上下にぺたぺたと右手を押しつけていく。
心臓、腹、首、顔。
股間に拳を叩きこんでやろうかと一瞬考えたが、先に頭に触れる。
瞬間、上条は何かが壊れる音と幻想殺しの確かな手応えを感じた。

一方通行「ァ……ン?」

一方通行の瞼がゆっくりと開かれ、赤い瞳で上条をぼーっと見つめ、

上条「よっしゃあ、目を覚ま、」

一方通行「っっってえええェェェェ!?」

後頭部を押さえて飛び起きた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/02(月) 02:32:21.63 ID:IviHI1lN0<> 一方通行の叫び声を聞いてからの、その女性の反応は早かった。
黒鍵を取り出し三本、六本、十二本と連続投擲、
一点には集中せず5メートルの巨体を等間隔に攻める。
うち八本が幻想猛獣の目の前で何かにぶつかったように阻まれ、三本が空中で溶断され弾け飛ぶ。
さっきまでは体表のどこを狙っても触れた瞬間に弾かれていたことを踏まえると、
それが一方通行のベクトル変換という超能力であり、それが今は失われたのだと知る。

「セブン、いきますよ!」

十二本中、到達しなかった数は十一本。
残りの一本、それは幻想猛獣へと深々と突き刺さっていた。
そこにめがけパイルバンカーを構えた女性は、
まるでその武器に意志でもあるかのように語りかけ引き金を引く。
ドン!という大きな音と、続けてバン!という何かがはじけた音。

アアアァァアアァァァア!!

次いで聞こえてきたのは幻想猛獣のあげた悲鳴のような声だった。

「直撃したというのにこの程度ですか……」

パイルバンカーから放たれた杭は狙い通りの場所に命中すると、
その瞬間に幻想猛獣の命中した部位が文字通り爆ぜたのだ。
しかし、全体として見れば1割にも満たない程度で
自身の武器に絶対的な自信を持っていたらしい女性は思わず落胆の声を上げる。

「これは帰ったらまた改造が必要ですね」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/02(月) 02:57:22.42 ID:IviHI1lN0<> 一方通行「おィおィ、一体どうなってんだ三下ァ!?」

意識を失う前に見た光景とはまったく異なる今の状況に
一方通行は竜宮城へ行った浦島太郎の気分なのだろう。

一方通行「なンか頭痛ェし、また能力使えなくなってるしィ、
  つうか俺の杖どこ行ったンだよ。後ついでにアレはなンだくそったれがァ」

上条「一番重要そうなのがついでかよ!? と・に・か・く、アレがタタリで
  杖は能力が戻って調子に乗ったお前が向こうに投げただろ。
  能力が使えないのは上条さんにはわかりませんのことよ!」

とりあえず、今必要そうなことを早口でまくしたてる。

一方通行「あの化けもンがタタリだァ? 何がどうなったってンだよ。あと頭痛ェのは、」

上条「俺にもわかんねぇよ。今わかってるのは
  お前が倒れた後にアレが現れて、アレは学園都市の超能力者の能力が丸々使えるらしい。
  お前が気を失ってた間は反射の超能力も使ってた。
  頭が痛いのもきっとそのせいだ」

若干の嘘が交じっているが気にしてはいけない。

上条「とりあえず、杖は俺がとってきてやるからちょっと待ってろ」

そう言って上条は駆け出して行く。
杖は一方通行から10メートルぐらい離れた位置に打ち捨てられている。
普通に投げるだけではここまでの飛距離は出まい。
能力が戻ったのがよほど嬉しかったのか、それだけ調子に乗っていたということだろう。

上条「ったく、思いっきり投げ飛ばしたやがって」

杖を拾おうと屈んだ上条の背後で幻想猛獣が姿を消していた。
目の前から敵が消えた女性は咄嗟に後ろを振り向き幻想猛獣の出現に備える。
しかし、幻想猛獣は現れない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/02(月) 07:35:42.75 ID:KLnTlkpBo<> 何さらっと嘘吐いてやがるww <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/02(月) 21:59:26.78 ID:IviHI1lN0<> 一方通行「三下ァッ! 後ろだァッ!」

上条「え?」

それは油断以外の何物でもなかった。
幻想猛獣はずっと女性と戦っていた。
一度だけ飛来した原子崩しによる攻撃も、
女性を狙ったもののはずれてしまい延直線上にいたがゆえのもの。
勝手な思い込みとはいえ、自分たちは標的から外れている、上条はそう思い込んでいた。

アアァアァァ……

上条が振り向いた時、視界に飛び込んできたのは幻想猛獣だった。

上条「んなっ!?」

手を伸ばせば届く距離だが、今上条の態勢は非常に不安定。
超能力者の塊みたいなものだというのなら幻想殺しは必勝の一手。
しかし、上条は咄嗟に殴りかかれるような状態ではなかった。
上条が幻想猛獣の存在に気付き対応を思考するその僅かな時間に、
上条の右前方で空気が燃焼し空中を炎が踊り始める。
さらに同時に左前方ではバチバチと青い光が弾け、電撃の兆しを感じ取る。

上条(挟み撃ちっっ!)

一方通行は演算補助装置を操作して飛翔する。
だが、演算補助装置を操作する、その時間が致命的。
女性も黒鍵を投擲するが窒素装甲に阻まれてしまう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/02(月) 22:20:22.75 ID:IviHI1lN0<> 残された手立ては皆無と思われたが、
上条に電撃と火炎が同時に襲いかかろうとした次の瞬間、
上条は自ら炎の中へと飛び込んだのだ。

上条「あつっ! あっちぃっ!」

上条が元いた場所に電撃が飛び、それは回避することはできたが
上条は炎に包まれてしまっている。
が、それも右手ではたき落とすように触れると幻想殺しによって消えてしまう。

一方通行「オラァァッ!!」

直後、幻想猛獣を襲ったのは一方通行の飛び蹴りだった。
しかし、その蹴りも幻想猛獣を目前にしてブレーキがかかる。

一方通行(コイツは窒素かァ? 窒素を固めて壁にしてるってことか……、なら!)

一方通行の蹴りは完全に停止したと思われたのだが、
どういうわけか幻想猛獣には凄まじい衝撃が襲いかかる。

アァアァアアアアァァ……

その衝撃は幻想猛獣の肉体の強度を上回り、どてっぱらにサッカーボールぐらいの風穴が開いていた。
今起こった謎の現象の正体は、一方通行が行った窒素のベクトル操作。
幻想猛獣が固めた窒素の壁をそのまま自転ベクトルを真逆に操作して『発射』したのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/02(月) 23:41:03.67 ID:IviHI1lN0<> 一方通行「油断してんじゃねェぞ三下ァ、ちゃんと生きてンのかァ?」

幻想猛獣が怯んだ隙に上条の首根っこを掴んで、
ベクトルを操作したジャンプで一気に距離をとる。
何気にしっかりと自分の杖も拾っていたりする。

上条「どうにかな。どの超能力者か知らねえけどレベル3ぐらいだな、おかげで助かったぜ。
  電撃使いにはレベル5のおっかない超能力者がいるからな」

上条が炎に自ら飛び込んだ理由、それは単に電撃が怖かったからに他ならない。
学園都市にいる七人の超能力者のうちの一人、電撃姫こと御坂美琴を
上条は知っている。
しかし、炎を使う超能力者を上条は知らなかった。
たったそれだけのことで、上条は死中に活路を見出し今に至るのだ。
それでも、自慢のウニの様な髪はちぢれて、皮膚も赤くなってしまっている。

アアアアァアァァ……

一方で一方通行が幻想猛獣に空けた風穴はすでに塞がりつつあった。
また、一方通行が攻撃する前に、女性が攻撃し爆ぜた箇所はすでに完全に元通りとなっている。
吸血鬼タタリとしての性質か、肉体を再生させる超能力かはわからない。
ただ、生半可な攻撃では効果が認められないのは確実と言える。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/03(火) 19:19:51.71 ID:GlnDi1LIO<> >>1おつー
楽しみにしてるぜ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/05(木) 10:00:21.28 ID:n7nE7RgY0<> 一方通行「三下。あの化物が、俺が気を失ってる間に使ってた超能力を教えろ」

上条「は? なんでそんなこと……、それより追撃した方が」

一方通行「どうせ無駄だ、お前がぶン殴ったところですぐ戻ってきちまう。
  ンなことより、今すぐ俺の質問に答えやがれ」

女性の方も一方通行と同じ判断なのだろう。
黒鍵を構えたまま動かずに相手の出方を窺っているようだ。

上条「確か、一方通行の反射にテレポート、身体強化系の何か……ぶん殴ってコンクリートを砕いてた、
  それとよくわかんねー光線? 幻想殺しで壊したから当たるとどうなるかはわからない。
  あとは炎と電撃だ。けど、それがどうかしたのか?」

一方通行(それに加えて空気中の窒素を固める能力か。なンかおかしくねェか……?
  学園都市中の超能力者の超能力が使えるってことは無茶苦茶な量の演算をしてることになる。
  しかもさっきは炎と電撃、異なる超能力を使ってたってことは理論上脳が二つねェと無理だ。
  そう考えりゃァあれは超能力者と同じ演算をしてるンじゃなく、
  超能力者に演算させてると考えた方が納得がいく。だが、それならそれで)

アアアアァァアァアァ!

「二人とも! きますよ!」

一方通行「チィッ、まだ考えてる途中だってのに……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/05(木) 10:05:05.97 ID:n7nE7RgY0<> たっぷり30秒ほどかけて完全に回復した幻想猛獣に臨戦態勢へと戻る。

「やっ! はぁっ!」

女性はすぐさまに用意していた黒鍵を投げつける。
しかし、幻想猛獣に向け一直線に飛んでいった黒鍵は空を斬る。
テレポートだ。
姿を消すと同時に上条と女性は自身の背後を警戒する。
そして今回現れたのは女性の背後、出現と同時に炎が放たれる。
予め警戒していたこともあり、女性は素早い動きで攻撃を回避する。
二度のバックステップから幻想猛獣の右側へと回り込むダッシュ。
だが、そこへまるでそれを見越していたかのように上条が幻想殺しで壊した光線が飛来する。
上条たちは思わず息をのむが、女性は光線を黒鍵で受け止める。
当然、原子崩しを受け止めることなど不可能であり、1秒とかからず黒鍵は焼き切られてしまったが、
その時にはすでに女性は身をよじり光線の射線上から回避済み。

一方通行「ありゃァ粒機波形高速砲みたいなもンか……、
  確かレベル5に電子を操る超能力者がいたはずだ」

一方通行は延々と思考し続ける。
吸血鬼だとかそんなことは知ったことではない。
あれは学園都市で発生した学園都市に依存した存在、
敵の特性、その存在原理、全てを学園都市を基準で考えて考察する。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/05(木) 10:11:27.10 ID:n7nE7RgY0<> 上条「この野郎!」

丸焼きにされかけたばかりでそれなりにフラストレーションの溜まっていた上条は
女性と交戦中の幻想猛獣に目掛け駆けていく。

アアァアアアァアァァア!!

上条「ぐぁっ!?」

しかしその勢いも上条自身とともに、5メートルほど手前で叩き伏せられてしまう。
第三者の視点から見れば転んだだけのように見えるかもしれないが、
上条は地面に這いつくばっている今も、まるで空気に押しつぶされるような重圧を受けている。

一方通行「念動力(テレキネシス)だ、右手を上に上げろォ」

上条「こ、こうか……?」

上条が一方通行の声に従い、右手を背中の上にかざすとようやく重圧から解放される。

上条「一方通行、助かったぜ!」

一方通行「お前は邪魔だァ、こっちに戻ってこい」

上条「けど!」

一方通行「いいから従いやがれ、お前にはやってもらうことがあるンだよ」

上条「やってもらうこと?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/05(木) 10:21:31.29 ID:n7nE7RgY0<> ――――――――

上条「って思いっきりパシリだな、それ」

一方通行「けどお前にしかできねェンだ。わかったらとっとと行きやがれ」

上条「じゃあ、その間頼んだぜ」

一方通行「急げよ、あの女も一人じゃもう限界のはずだァ。
  だからと言って俺が能力を使える時間も残り6分程度、
  豆に切り替えるとしても最悪10分で考えとけ」

上条「短っ!? あーもう、とにかく行ってくる!」

会話を切り上げて、上条は病院の中へと駆けていく。
一方通行は上条がちゃんと院内へ入れたことを見届けてから幻想猛獣と女性に向き直る。

一方通行「絶対に通さねェぞ、こっから先は一方通行だからなァ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/05(木) 17:17:40.48 ID:o7+pI5I8o<> こっから先は一方通行キター! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県)<>sage<>2011/05/05(木) 18:55:32.34 ID:xO6T0RIeo<> こっから先は一方通行だからなァ(キリッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/05/06(金) 02:14:34.76 ID:fw8IjkDCo<> せっかくのシリアスなのに笑ってしまうww <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/06(金) 20:25:36.90 ID:H50ZXCXk0<> 女性は焦っていた。
攻撃はまったく効かず、こちらの動きもだんだんと先読みされるようになってきて、
相手の攻撃のバリエーションはだんだんと増えてきているのだ。

固めた窒素で殴りかかってくるのは、その愚鈍さから何の問題もない。
炎や電撃などは視覚で捉えることができるため回避には困らない。
その回避を先読みされたうえでの高速高威力の原子崩しもまだ反応できる。
さらにそのうえで目に見えない念動力も迫ってくる風圧で感知し避けることができる。
いまだ幻想猛獣の攻撃を貰うようなこともなく、体力的にもまだまだ余裕がある。
ただ、問題点を上げるとすれば、以上の攻撃に反応するべく擦り減らされていく精神の方だ。

(今はまだ問題ありませんが、避けきれなくなったら火ダルマぐらいは覚悟しましょう。
 電撃は筋肉が麻痺するため絶対に回避、あの光線も喰らえば四肢が飛ぶでしょうね)

また新たな攻撃パターンが増える可能性も忘れてはいけない。
それに同時に襲いくる攻撃の数も増えてきている。
先ほどは、炎と念動力と原子崩しが全て別方向から同時に飛んできていた。

(次は水か氷でしょうか……できればこれ以上増えては欲しくないのですが。
 最悪今までの攻撃全てが全方向からくることも想定しておかないと。
 ……さすがに不老不死だった頃に戻りたいとは思いませんけど)

幻想猛獣の攻撃をただ避け続けるだけでもいけない。
幻想猛獣はこちらが敵意を、攻撃の意思を見せているから反撃してきているのだ。
例え無駄だとわかっていても攻撃の手を止めることもできない。

(どうやらどうしても先に殺しておきたい入院患者がいるみたいですね) <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/06(金) 20:29:04.55 ID:H50ZXCXk0<> 炎を黒鍵で斬り捨て、電撃を突き立てた黒鍵で防ぎ、隙を見て黒鍵を投擲する。
背後への空間転移に合わせ黒鍵を投擲し、カウンターで飛来する原子崩しを寸でで避ける。
そこへ、まるで避ける方向が分かっていたかのように念動力を合わせてくる。
しかしそれも飛び越えるようにしてかわして攻撃のための黒鍵を用意する。
さらなる攻撃パターンの増加に備えつつも、着地と同時に投擲してバックステップで距離をとる、

――予定だった。

ぐちゃり、と地面に足が埋まる感触。

「なっ!?」

表層融解(フラックスコート)――。
それはアスファルトの粘度を自在にコントロールすることができる超能力。

「っく、液状化ってこういうの言うんでしたっけー!?」

などと冗談めかしたことを言っているが正真正銘の危機的状況に他ならない。
右足を上げるために左足で踏ん張れば、左足がその分に沈んでいき逆もまたしかり、
そして今、一撃必殺の威力を持つ原子崩しが女性向けて放たれようとしている。

(魔力を練って抜け出す暇はありませんか。
 あの光線をまともに食らうと流石に死んじゃいますかね〜。
 ……左手一本の犠牲で直撃を免れられれば、御の字と言ったところでしょうね。
 最悪の場合、両手を捨てることも……)

バシュゥッ!

輝く星が流れ星になるように、点が線になり光線は女性へと襲いかかる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/06(金) 22:35:36.54 ID:H50ZXCXk0<> 女性は目の眩むような光を前にしても目を閉じようとはしなかった。
軌道をみきり、最小限の犠牲で済むように目を背けるわけにはいかなかった。
だから、原子崩しと自身の間に割って入る人影をしかと目にし驚きに目をむいた。

一方通行「反射ァ!」

そう、原子崩しは一方通行が口にした通り、真逆の方向へと反射されてしまった。
反射された原子崩しは、それを放射した幻想猛獣に向かい
窒素装甲の壁もろとも幻想猛獣自身も貫いていった。

アアアァァァァアァ……

幻想猛獣は原子崩しに貫かれ悲鳴のような声を上げるが身動ぎ一つせずに停止している。

一方通行「しっかり掴んでろよ」

「え、あ、はい」

突然のことにやや呆然気味の女性は、素直に一方通行の言うこと聞いてその腕を握る。
よっ、という掛け声とともに飛び上がると、一方通行は空中で粘度の変えられていないアスファルトへと女性を放り投げる。
さらに自身も風に流されるように女性の隣へと着地を果たすと、杖に身を預け演算補助装置を通常モードに操作する。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/06(金) 22:52:41.47 ID:H50ZXCXk0<> 一方通行「3分半、割りと持った方じゃねェか。ここからは俺が相手してやっからアンタは休んでな」

「助けていただいてありがとうございます。ですが、そういうわけにはまいりません。
 吸血鬼退治は私たち機関の仕事、一般の人間に関わらせるわけにはいきません」

一方通行「クカカカカ、……なら選ばせてやるよ、あれ一匹を相手にすンのと、
  あれと俺の二匹の化物を相手にするのと、好きな方を選びやがれェ」

「はぁ!? 君は一体何を……」

一方通行「くるぞォ!」

「ッ!!」

一方通行と女性が僅かばかりの会話をしている間に、幻想猛獣の肉体再生は終わっていた。
すぐさま演算補助装置を能力使用モードへと操作し攻撃の姿勢に移る。
女性は少々戸惑いを見せていたが仕方ないといった諦めの表情で黒鍵を握り幻想猛獣に向かい立つ。

「共闘に同意しましょう。ですが、死ぬようなことは勘弁して下さい。
 寝覚めが悪い上に、報告書の手間が増えますので」

一方通行「誰に向かって口聞いてンだ女ァ、俺は学園都市最強のレベル5……、
  アクセラレーター様だァ!!」

宣言とともに駆けだした一方通行は15メートルの距離を1秒足らずで幻想猛獣に肉薄し
勢いもそのままに蹴りを見舞う。

「私も女、女と呼ばれるのは不快です。
 シエルと、呼び捨てにされるのもどうかと思いますし、
 『シエルさん』もしくは『シエル先輩』とお呼び下さい」

シエルと名乗ったその女性も、一方通行の後を追って疾走する。
魔術師と超能力者の明確な共同戦線が開始された。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<><>2011/05/06(金) 23:43:12.63 ID:3QeG2TNm0<> ここでまさかのフラックスコートか.......盲点だった <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/07(土) 03:57:18.11 ID:pxPZ2GUn0<> ――――――――

アアァアァァァァアァァ……

これで何度目だろうか。
巨大な胎児の姿をした幻想猛獣は身体を千切られいくつもの穴を空けられ爆ぜて、
見るも無残な状態と化している。
しかし、それらは1分ほどで完全に再生してしまう。
だからと言って一定以上に細切れにしてしまえばそのまま消滅するものの、
数秒後に突然背後に空間移動で現れて不意打ちを食らう。
結果として、今の様な中途半端なダメージを与え回復させて時間を稼ぐのが最も効率がいいのだ。

一方通行「吸血鬼なンてもンがどういう存在かは知らねェ。
  けどこの化物の性質みたいなもンは大体見えてきた」

シエル「お聞きしましょう」

一方通行「恐らくだがァ、こいつは学園都市中のほとんどの超能力者の能力が使えるはずだ。
  発火能力、発電能力、空間移動、念動力と種類も強度も様々だ。
  なら、能力者の数だけ超能力が飛んできてもおかしくねェンだ。けどそれをしねェ」

シエル「学園都市の超能力者の数は何十万単位でしたか……、
  されたらされたで非常に困るわけですが」

一方通行「俺は全部反射できるけどなァ」

シエル「そうですか。で、それをしないのはどういうわけなんですか」

一方通行「理由まではわからねェよ。ただ原則として同じタイプの能力は一種類のみ。
  発火能力者なんてのは結構数がいるはずだがレベル3程度の炎を一つしか使わねェ。
  それがあいつの制限か何かなンだろうよ」

シエル「……では、今使ってきてる超能力がどのようなものかはわかりますか」

一方通行「念動力レベル3、発火能力レベル3、電撃使いレベル3、原子崩しレベル5、
  窒素装甲レベル4、空間移動……いやアレは死角移動レベル3だ、人の背後にしか現れねェし。
  空間移動ならもっと自在に移動できる上に物質を移動させたり、
  移動場所に対象を重ねればブッた斬ることも可能なはずだからなァ」

シエル「……」

一方通行「後は表層融解レベル3にレベルはわかンねェが予知能力も備えてるみたいだな。
  どういう法則で脳みそ使われてる能力者が選ばれてるかもさっぱりだが、
  レベル5が一人ってのは結構運がいいンじゃねェのか?
  この学園都市には俺を除けば6人のレベル5がいるンだからよォ」

シエル「なら系統が異なる、新たに行使される可能性がある超能力はどうですか」

一方通行「俺だって全て把握してるわけじゃねェからな。
  思い付く限りだと、念動力に近い水流操作や空力使い、透視能力や光学操作なんてのもある。
  だが、厄介なのは精神系の能力だ。洗脳能力や心理掌握なんて使われたらたまンねェぞ」

シエル「はぁ、まだまだ増える可能性は十分にあるということですか」

アアァアァァァア!

一方通行「ちっ、もう再生しやがったか」

シエル「あらら? もう疲れて動けませんか?」

一方通行「ンなわけねェだろ。無駄口叩いてねェでもっかいミンチにすンぞ!」

シエル「そうですね、いきますよセブン」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/05/08(日) 03:41:08.20 ID:RViIfq+ao<> シエル先輩きた!!
なんかもう、東映マンガまつり マジンガーZ対デビルマン だな。
胸熱! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/08(日) 05:16:20.62 ID:niit4uHh0<> 一方通行(とは言ったものの……、バッテリーの残りがやべェな。
  三下はまだ戻ってこねェし、そろそろ20分ぐらい経ってンだろォが)

上条が病院の中へ駆けだして行ってから正確には18分42秒。
必勝かどうかはわからないが事態を好転させるために動いているはずなのだが、
上条が戻ってくる気配は全くない。

一方通行「もォ一度死ンでろ、クソったれがァ!」

一方通行は幻想猛獣へ渾身の蹴りを叩きこむ。
当然、窒素装甲によって阻まれてしまうのだが、それもすぐさまベクトル変換で
自転エネルギーを乗せた窒素の銃弾に変えぶち込んでやる。

アアァアァアァァアァ!

シエル「もう一発!」

身体に風穴を空けられ怯んだ隙にシエルがパイルバンカーを突き立てる。
ガゴン!という音の後に幻想猛獣の半身が弾け飛ぶ。

シエル「これでまた少し休憩できますね」

所要時間約20秒。これでまた一息つけると僅かに気を許す。
が、それがまずかった。

アァアァアァァアァァァアァアアア!!

幻想猛獣が一際大きな叫び声をあげたかと思うと、
幻想猛獣の真上から空に向けて光の柱が立ち昇って行ったのだ。
刹那、「なんだ?」という声を発する暇もなく立ち昇った光が落下してくる。
落下地点には当然一方通行とシエルがいる。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/08(日) 05:53:31.22 ID:niit4uHh0<> シエル「このっ!」

まさに紙一重といったタイミングで、シエルは持ち前の身体能力の高さから光の柱を回避することに成功する。
しかし、一方通行は動こうとさえしなかった。
自分の能力ならどんな『超能力』もベクトル変換することができるのだから、
動く必要なんてあるはずがないという、第一位故の驕り。

一方通行「なンなンだこれはッ!! 解析できねェし、超能力じゃないってのかァっ!?」

その結果として、光の柱をまともに受けた一方通行は膝を突き身動きできず、
今もなお降り続く光の柱に押しつぶされるような形となってしまっている。

シエル「これはまさか魔術ッッ!?」

それは赤ノ式と呼ばれる陰陽道に属した魔術。
幻想猛獣は超能力を使う化物なのではなかったのか?
一方通行を押し潰さんとする魔術赤ノ式だが、
完全ではないものの能力による反射が効いているのか一方通行は膝立ちで耐えている。
しかし、

一方通行「冗談じゃねェぞ、バッテリーはあと10秒持たねェッッ!!」

反射を失えばどうなるかは明白。

シエル「すぐに第七聖典で奴を!」

そう言ってシエルはパイルバンカーを持ち出し幻想猛獣を狙うが、

パン!

まだパイルバンカーから杭は発射されていない。
なのに幻想猛獣は破裂し散り散りの肉片となってしまったのだ。
それでもまだ光の柱は消えていなかった。

一方通行(5……、4……、3……、ここまでだってのかァ……) <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/08(日) 08:29:27.43 ID:niit4uHh0<> パッキーン!

まるでガラスが砕けた時のような音が響きわたる。
それで一方通行は光の柱から解放され、ほぼ同時にバッテリー残量が0になり倒れこむ。

上条「悪い、遅くなった!」

颯爽と現れたのは我らが幻想殺し上条当麻、
到着と同時に光の柱を右手の一振りで完全でかき消したのだ。

一方通行「bfけhkふぁj;あklskd!」

上条「うぉっ、バッテリーが切れたのか。ほんとにギリギリだったんだな」

一方通行が何を言おうとしているのかは分からないが、
とりあえずすごい剣幕で怒鳴っている。

上条「10039号、一方通行を頼む」

10039「わかりました、とミサカはコンセントに繋いだ延長コードと充電器を用意します」

現れたのは上条だけではない。
妹達、上条が呼んだのは検体番号10039号という個体だ。
さらにその隣に二つの同じ顔が並んでいる。
同じく妹達の13577号と19090号である。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/08(日) 08:54:50.43 ID:JcKpPbmSO<> wktk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/08(日) 14:16:45.94 ID:QoZ0q9u1o<> もはや無理ゲーなんて言葉が霞むレベルだな <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/08(日) 23:58:18.23 ID:niit4uHh0<> シエル「戻ってきたんですか。……それにあの後ろの三つ子は一体」

上条「心強い後方支援組ってことで。っていうかさっきのは魔術じゃ……赤ノ式って言ったっけか」

シエル「赤ノ式、陰陽道に属する火属性の魔術ですが」

上条「あれもタタリが使ったのかよ、超能力者が魔術を使えば身体が崩壊するってのに
  なんでもありってことかよ。……ってあの化物はどこへ?」

シエル「あの化物なら魔術を使った後破裂しました。あれにはそういうわけがあったと……。
  ですが、すぐに戻ってくるでしょう。空間転移で現れるのは必ず背後です、警戒しておいてください」

上条「了解、……もう手を引けって言わないんだな」

シエル「言っても無駄でしょうし、好き勝手動かれて邪魔されるぐらいなら
  素直に手を借りる方を選びますよ」

上条「手を借りるって、俺らの街なわけだしどっちかと言えばこっちが借りてるような」

――――――――

13577「コンセントに挿してきました、とミサカは10039号に報告します」

10039「演算補助装置に充電器を接続して、と。
  聞こえてますか、一方通行、とミサカは一方通行に語りかけます」

一方通行「あァ、ちゃンと機能してる。……お前らは三下からどの程度話を聞いたンだ?」

19090「どの程度、というか、むちゃくちゃ強い敵が攻めてきたから加勢して欲しい、と
  ミサカはあの人に聞いたままを一方通行に伝えます」

一方通行「(三下の野郎、またずいぶんと適当な説明しやがって……)。
  加勢まで頼んだ覚えはねェよ……。お前らは中に入ってろォ」

10039「呼びつけるだけ呼びつけて追い払うってどういうことですか、と
  ミサカはミサカたちの扱いの雑さに憤慨します」

一方通行「お前らはもう死にたくねェンだろ。なら俺の言うことを聞け」

13577「それは言うことを聞かなければ殺すという脅しですか、と
  ミサカは一方通行の言葉の意図を探ります」

一方通行「……さァな」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:35:39.71 ID:8EwMGka/o<> 妹達は昏睡しなかったのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:36:29.44 ID:8EwMGka/o<> 妹達は昏睡しなかったのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/05/09(月) 00:38:52.07 ID:XlZP8c6Ko<> 大事なことなので <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/05/09(月) 00:40:55.56 ID:XlZP8c6Ko<> 大事なことなので <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/05/09(月) 00:49:18.96 ID:XlZP8c6Ko<> あれww <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/09(月) 01:23:05.31 ID:/NuMUdvC0<> 一方通行「三下ァ、なンで妹達連れてきてンだァ」

上条「かえる先生のとこに行ったら丁度先生が倒れた妹達を診察してたんだよ。
  で、俺の幻想殺しで起こして加勢にきてもらったんだが」

一方通行「俺がなンて言ったか覚えてないンですかァ?
  俺がお前に頼んだのはバッテリーの充電機とコンセントの延長コード、
  それと病院内に高位の能力者がいたら起こして連れてこいつっただろォ。
  妹達はレベル2〜3だぞ、知ってンだろクソが」

上条「ぇー、レベル0の上条さんからすれば2〜3は十分高位なのですが」

一方通行「そもそもテメェがレベル0ってのが意味わかンねェンだよッ!」

シエル「ちょっと落ちついて下さい、いつタタリが襲ってくるかわからないのに
  もう少し緊張感を持って下さいよ」

一方通行「デカ尻女は黙ってろォ!」

シエル「なっ!? 今のは聞き捨てなりませんよ!!
  っていうか、なんなんですかその首から下げてるケーブルは!
  まるで電化製品みたいじゃないですか?」

一方通行「なンだとクソババァ!?」

シエル「ッ! うふふふ、私、次は斬り伏せるって言いましたよね?」

上条「ちょちょちょ、二人とも落ちつけって!」

一方通行「テメェはッ!」

シエル「君はッ!」

「「黙って……!」」

アァアァァアァァアァァァァァ!!

上条「出たあああああああああ!!!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/09(月) 02:17:11.61 ID:/NuMUdvC0<> 19090「で、ミサカたちはもう用済みと言うことでいいのでしょうか」

10039「突然あり得ない早さで日が暮れたり、病院中の超能力者が意識を失ったり、
  何かが起こっているのは間違いないでしょう」

13577「確か10032号が祟りにあったとかなんとか言ってましたね」

10039「科学の街で祟りですか? なんとも胡散臭い話ですね」

19090「ところで喧嘩してるみたいですよ、あの人たち」

13577「っていうか、見知らぬ女の人がいますね」

19090「あの人に助けられたとかそういう感じでしょうか」

アァアァァアァァアァァァァァ!!

上条『出たあああああああああ!!!』

10039「……」

13577「……」

19090「……」

(((た、祟り神だあああああああああ!!?))) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/09(月) 03:21:26.34 ID:nNqnuAx+0<> 無理ゲーと言われつつもコントやる余裕があるなら
この状況はまだまだ温いってことだな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(四国)<>sage<>2011/05/09(月) 10:27:41.49 ID:5xKNBxlAO<> いや違う…まだ誰かくる、ていとうこ君フラグktkl <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/10(火) 04:13:01.66 ID:CK1kRgJF0<> 三人が顔を突き合わせた状態で、幻想猛獣が現れたのはシエルの後ろだった。
一人叫び声をあげる上条をよそに後の二人は超反応を見せていた。

シエル「ほらほら、こっちですよ」

一方通行「クカカキコカコキコ、死ねええええ!」

もはやパターンと化した動きとなりつつあるシエルが囮となり
一方通行が接近して窒素装甲をベクトル操作で銃弾と化す動き。
裏を言えばシエルでは窒素装甲を破ることができないため
そればかりは一方通行がなんとかするしかないというのが実情でもある。
また、幻想猛獣が執拗にシエルを狙うのも超能力による攻撃では
全ての超能力者の頂点に立つ第一位一方通行に傷一つ負わすことができないためであると予測される。

アアァアァアアァァ!

ベクトルを操作された窒素装甲を受け10mは軽く吹き飛ぶ幻想猛獣。

一方通行「ちっ、この向きじゃ自転エネルギーが活かし切れてねェ。
  おィ三下ァ、いつまでも呆けてねェであいつぶン殴ってきやがれ」

上条「なんかもう上条さんいらなくないですか?」

一方通行「延長コードが届かねェンだよ、クソッ」

上条「……了解」

微妙に情けないな、とか頭をよぎったが口には出さない上条だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/10(火) 04:13:33.05 ID:CK1kRgJF0<> 吹き飛んだ幻想猛獣を追いシエルとともに駆けていく上条。

一方通行(幻想殺しで触れた場合どうなるかはわかってねェ。
  もし直接触れた瞬間に完全消滅しちまうなら半殺しにするよか効率が悪ィが)

シエルは起き上がろうとする幻想猛獣へと黒鍵を投げつけ
未熟児の腕を虫の標本のように地面に縫い付ける。

シエル「今のうちに!」

幻想殺しを握りしめ倒れたままの幻想猛獣に肉薄する上条。

上条「おりゃあああ!」

幻想猛獣に振りかぶられた拳が直撃すると、全身が一瞬で霧の様に吹き飛んでしまう。

上条「いっちょあがりぃっ!」

一方通行「三下ァ、お前あれに直接攻撃すンの禁止だァ」

上条「へ!? なんでだよ?」

シエル「君が触れると完全に倒してしまうからですよ。
  完全消滅すると10秒と経たずに空間転移で戻ってきてしまいます。
  ですから、手足を千切って穴ぼこだらけにするぐらいで再生を待った方が効率がいいんです」

一方通行「倒せねェ以上、朝まで続くンだからなァ。張り切って速効ばてンじゃねェぞ」

上条「マジですか……?」

シエル「後ろ! 次きましたよ!」

アァァァアアァアア!

上条「んまっ、ちょぎ!?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/10(火) 04:35:10.26 ID:CK1kRgJF0<> 19090「一体あれはなんなんでしょうか」

10039「巨大な赤ん坊、ですね」

13577「見たままじゃないですか。それに赤ん坊よりも胎児の方が正確でしょう」

19090「4メートル30センチぐらいですか」

13577「それを軽々と蹴り飛ばす学園都市第一位」

10039「あの女性の身のこなし、ただものではないですね」

13577「あ。あの人が殴ったら消えましたね」

19090「ただの見かけ倒しですか」

アァァァアアァアア!

ビクッ!

(((!?)))

10039「……復活しましたね」

19090「加勢に向かうべきでしょうか」

10039「武器は持ってきていますし元々そのつもりでしたし」

13577「恩人が戦っているのを指を咥えて見ているわけにもいきません」

こくり。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/10(火) 07:58:01.73 ID:CK1kRgJF0<> ブゥン!

上条「どわっぶねぇっ! 攻撃パターン増えてるのかよ!」

シエル「電撃と炎は私が何とかします。君は原子崩しとか言う光線と、
  念動力による見えない攻撃と、窒素装甲とか言うバリアを何とかして下さい。
  それと地面を泥沼の様にしてくることがあるので気をつけて下さい」

上条「上条さんの右腕は一本しかないんですよ!?」

――――――――

一方通行「ちっ、もっと長ェコード持って来いってンだ……」

10039「一方通行、ミサカたちも加勢します。とミサカはこの戦闘に参加することを宣言します」

一方通行「なっ!? お前らは帰れつっただろォがァッ!!」

13577「ミサカたちもそれなりの訓練を積んでいます。
  ミサカには一方通行が激昂している理由がわかりません。とミサカは疑問を投げかけます」

一方通行「見てわかンねェのか! 邪魔にしかなンねェって言ってッッッ!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/10(火) 09:05:54.29 ID:CK1kRgJF0<> 恐らくは間が、もしくは運が悪かったのだろう。

上条「げっ、またテレポートか! 後ろに……、いない?」

あるいは彼女がそういう運命だったのか。

一方通行「あン? また消えた見てェだが……。どこ行きやがった」

気付けば奴はそこにいて、

10039「消えましたね、とミサカは見てそのままのことを改めて口にします」

彼女は気付いていなかっただけのこと。

アアァアアァアァァアアァ!!

その叫び声が妹達の後ろからしたものだと、気付いた時には遅すぎたのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中国・四国)<>sage<>2011/05/12(木) 21:09:49.76 ID:raivJG1AO<> 舞っている <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:04:26.45 ID:nKTV5vFb0<> 一方通行「とっとと逃げろォッ!」

13577「ッ!?」

一方通行の声で瞬間的に銃を構え振り向いた妹達だが、
幻想猛獣の巨体に思わず立ちすくみそうになる。
それでも元は軍用クローン、その戦術に逃走はなく即座に銃を構え引き金を引く。

ダダダダダダッ……

学園都市製のマシンガンが火を噴き、あらん限りの銃弾が排出されていく。
しかし、その無数の銃弾は一発すら幻想猛獣に届くことはなく
窒素装甲の壁に阻まれ辺りへ散らばるのみ。
また幻想猛獣もただ銃弾を受け続けるだけではない。
幻想猛獣の顔前中央に光源が発生し輝きを示す。
原子崩しの兆し――。

一方通行(第三位(レールガン)ならァともかく、あいつらじゃ……!!)

それを見て、一方通行はベクトルを操作してありえない加速で疾走する。
幻想猛獣までの距離10メートルを1秒とかからず肉薄し殴り飛ばせるだろう。
だが、原子崩しが発射されるのはそれよりもはるかに早く、
一方通行よりも遠くにいるシエル上条は言わずもがな――。

一方通行(あの化物を殴る必要なんかねェ、妹達まででいいンだ!)

妹達と幻想猛獣との間に指一本でも挟めれば反射することは可能なのだ。
全力で駆け抜け、全力で腕を、指を伸ばすッ……!

ビジュゥッ! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:11:44.60 ID:nKTV5vFb0<> 13577「ごほっ……!」

零れる血液。
原子崩しを腹部に受けた13577号が血を吐いて膝をつく。

10039「13577号!」

一方通行「ふざけてンじゃねェぞクソッたれがアアアァ!!!」

すぐさま10039号が駆けより、一方通行は倒れ伏した13577号と幻想猛獣の間に割って入る。

一方通行「ガアアアァァァァァッッ!!」

細腕を振り上げ力一杯に振り抜く。
一方通行は窒素装甲を無視してその拳を幻想猛獣にザクリと突き刺す。

一方通行「圧縮ゥゥゥゥゥ! 圧縮圧縮圧縮圧縮ゥッッ!!」

ミシミシリとまるでベニヤ板がへし割れる時にするような音がしたかと思うと
次の瞬間には幻想猛獣がその姿形を内側にへこませるように変型させていた。
変型は留まることを知らず、バキバキとより大きな音を立て押し潰されていく。
そしてほんの数秒で幻想猛獣だったものはサッカーボール大の球体と化していた。

一方通行「三下ァッ! こいつら今すぐ冥土帰しンとこ連れて行きやがれィ!」

上条「わ、わかった!」

19090「待って下さい。13577号はミサカたちで連れて行きま、」

一方通行「うるせェ! テメェは原子崩しが脚にかすっただろォが!
  足引きずってる奴がどうやって人間運ぶってンだァッ!」

19090「……っ!」

幻想猛獣の放った原子崩しは三本。
10039号はかろうじて回避することができたが、
13577号は腹部を貫かれ、19090号は直撃は避けたものの足に傷を負っていた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:15:03.05 ID:nKTV5vFb0<> 上条「少しだけ我慢してくれよ……っと」

すでに意識をなくしてしまっている13577号を上条が背負う。

10039「あなたの忠告に従うべきでした。すみませんでした、と
  ミサカは足手まといになってしまったことを一方通行に詫びます」

一言だけ残して10039号も19090号に肩を借して歩き出す。
一方通行は口を開かず、全員が病院内に入っていくのを見届けてから
手にしていた幻想猛獣だった球体を宙へ投げ捨てる。
どういうベクトル操作をしたのか球体は発火しそのまま塵となって消えてしまう。

シエル「……」

一方通行「出で来やがれタタリ、一方的な凌辱って奴を味あわせてやる」

直後、一方通行は自身の背後へと現れた幻想猛獣へと単騎で飛びかかっていく。
<>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:24:21.60 ID:nKTV5vFb0<> 上条は病院内を13577号に極力負担がかからないようゆっくりと、かつ急ぎ歩いていた。

上条「俺がお前らに頼んだばっかりに……」

10039「あなたが負い目に感じる必要はありません。ミサカたちはミサカたちの意思で戦いました。
  それよりも何の役にも立てなかったことが不甲斐なくて仕方ありません、とミサカは項垂れて話します」

上条(もう誰も傷つけさせないってそう誓ったのに……。まただ、また守れなかった)

――――――――

処置室前――。

上条「先生! 妹達が怪我を……、腹をレーザーみたいので貫かれて!」

上条たちが処置室に入ると、見知った顔が診察台に寝かされており冥土帰しは彼の診察をしていたようだった。

上条「……土御門」

土御門に意識はないらしく、レベルは低くとも超能力者の彼にもタタリの影響が出ているのだろう。

冥土帰し「どれ、見せてごらん?」

上条は背負っていた13577号を空いていた診察台へと下ろす。
冥土帰しは血の滲んでいる部分の服をめくり上げ患部の付近に触れたりライトを目に当て瞳孔反応などを見ている。

冥土帰し「背中にも孔があるね、貫通してしまっているのか。
  焼かれているため大量出血は免れているがこの位置だと内臓が損傷してる恐れがあるね。
  そっちの子は足を怪我したのかい?」

19090「ミサカのはかすり傷程度です、ミサカよりも13577号をお願いします」

冥土帰し「そうだね、君の怪我は別の先生に任せよう、隣の処置室に行って若槻先生に診てもらっておくれ。
  僕は今からこの子の緊急手術を行わなければならないからね」

19090「わかりました。とミサカは頷きます」

10039「では、行きましょう。とミサカは再び19090号に肩を貸します」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:29:20.06 ID:nKTV5vFb0<> 冥土帰しと妹達がそれぞれ出て行った後、上条はまだ処置室にいた。
上条は右手を土御門の額へ押し当てる。
すると、何かが壊れるような音が幻想殺しが機能したことを感じ取る。

土御門「……ぅにゃー」

上条「土御門、身体は平気か?」

土御門「にゃ? なんでカミやんがここに……、ってかここはどこだ」

上条「ここは処置室だ、土御門。お前はタタリが流した変な音楽のせいで気を失ったんだよ」

土御門「そうだ! タタリはどうなったんだカミやん! っ……!」

声を荒げたかもと思うと土御門は小さな呻き声を上げて腹部を押さえた。
昨晩、上条を助けるために使った魔術の後遺症で負った傷に響いたのだろう。

上条「安静にしてろって。……それで、タタリはまだ倒せてない。というか倒せないんだ」

土御門「どういうことだ」

上条「正直わからない。俺の幻想殺しで触れても一時的に消滅するだけですぐに復活しちまう。
  その上、学園都市中でお前みたいに意識を失ったやつがいるらしくって、そいつらの超能力が使えるんだ。
  挙句、さっきはお前の魔術まで使ってきやがった」

土御門「なんだと!? まさか、幻想猛獣か」

上条「AIMばー……なんだって?」

土御門「AIMバースト、一言で言えばAIM拡散力場でできた化け物だ。
  数ヶ月前に実際に起こった事件なんだがよりにもよって……、いやそんなことはどうでもいい」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:32:52.32 ID:nKTV5vFb0<> 土御門「おそらくは、タタリが復活する原因は姫神の怪我にあるだろう。
  本来、吸血殺しが万全の状態であればAIM拡散力場に影響して容易に倒せていたはずだ」

上条「今は一方通行と吸血鬼殺しの専門化とかいう外部の魔術師が戦ってる」

土御門「吸血鬼殺しの専門家、埋葬機関か。一緒に戦ってくれてるのなら問題ない。
  それより一方通行、あいつは能力を15分しか使えなかったはずだ、大丈夫なのか」

上条「一回バッテリー切れを起こしたが、今は延長コードで直接コンセントに繋いで戦ってる」

土御門「そうか、まずは一安心だが……。第一位といえど人間だ。演算は脳を使う、いつかは限界が来るはずだ。
  ……なぁ、カミやん。どうやってその化物を攻略するつもりでいるんだ?」

上条「ただひたすら戦い続ける……。吸血鬼ってのは太陽の光に弱いんだろ?
  だから朝日が昇るまでの間、」

土御門「ずっと戦い続けるってわけか。今の時刻は……時計はあてにならないか。
  カミやん、タタリが現れてからどれくらい経ってる?」

上条「正確な時間はわからないけど、1時間も経ってないと思う」

土御門「なら3時間以上ってわけか。埋葬機関の人間がどんな奴かは知らんが
  不死身となった幻想猛獣を相手にそんな長時間戦い続けるのは不可能だ」

上条「ぐっ……」

土御門「……こうなったら」

上条「!? 何か手があるのか、土御門!」

土御門「手がないわけじゃない。だが……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/05/14(土) 03:36:01.63 ID:7WvboOpAO<> ぐぬぬ…
王立国教騎士団じゃないのかorz <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 03:38:55.46 ID:nKTV5vFb0<> ――――――――

アァアァァァアァァァアア!!

幻想猛獣の悲鳴があたりにこだまする。
圧縮した空気によるプラズマで全身を焼き尽くされた幻想猛獣は瞬時に灰となり消え去っていく。

一方通行「ギヒャヒャヒャ、次はどンな殺され方が好みだよ、言ってみな叶えてやるからよォ?」

上条たちが去った後、一方通行の戦い方はずっとこんな調子だ。
全身を細切れにしたり、今みたいに一瞬で灰にしたりと朝まで耐えることを目的とした効率のいい戦いには程遠い、
速さでも競っているのかという勢いで幻想猛獣に復活と消滅を繰り返させている。

シエル「いい加減にしなさい、一度頭を冷やし冷静になってください」

無茶苦茶な戦い方を披露する一方通行に業を煮やしたシエルが苦言を呈する。

一方通行「楽させてもらっといて文句言ってンじゃねェよ。っていうか、もォお前要らないわ」

シエル「……は?」

一方通行「こンなもンに繋がれちゃいるがこれで能力の使用は無制限、
  こうなりゃもォお前の手を借りる必要もねェ、邪魔になンねェように隅の方へ引っ込ンでろ」

延長コードを手に持ち忌々しげな視線を向けた後、一方通行はシエルに対しシッシッと犬を追い払うような動作を取る。

シエル「……」

それを見たシエルは何も発せず諦めたような表情で一方通行から距離をとる。

シエル(今は何を言っても無駄ですか。摩擦を増やして逆上させるより冷静になるまで待つべきですね。
  ですが、超能力というのは緻密な計算によって成り立つと聞いている。
  あのコードがどういう意味を持つのかは知りませんが、いくら能力が無制限でも脳の疲労はどうにもならないはず)

それならば、とシエルは自身は体力と魔力の回復に努めて、
一方通行がピンチに陥ったときに万全の状態で助けに入れるようにしておくべきだと判断した。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:51:14.03 ID:nKTV5vFb0<> 10回、15回と次々に何度も何度も殺していく。
幻想猛獣は殺すたびに現れまた殺されていく。
一方通行自身も殺すたびに精神を高揚させ甲高い笑い声を上げて一方的な陵辱を続けていく。
傍から見ていればどちらが悪かもわからぬ状況で、一方通行の動きに衰えはまったく感じられず
本当に一人で朝まで戦い続けられるのではないだろうかと思えるほどだった。
しかしそれはあくまで比喩の話。
現実はそのように甘くなく、疲労は確実に溜まり続けていた。

一方通行「ヒャハハハハ、まだ殺されたりねェのかよ、生粋のマゾ野郎だなタタリって奴はよォ!」

17回目、今度は自転エネルギーより遥かに強い公転ベクトルを操作して空気摩擦によって一瞬にして塵

へと帰していく。
傍観に徹してからここまで幻想猛獣はシエルの背後には現れていない。
警戒は怠っていなかったが、やはり明確な敵意を見せたり不穏な動きを見せなければ襲ってこないらしい。

シエル(そろそろ疲れが見え始めましたね)

威勢は衰えてはいないものの、一方通行は肩で息をするようになり呼吸が荒くなってきていた。

アアァァァァアアァァアァ!

一方通行「今回はどうやって殺してやろうかァ? またプラズマで焼いとくかなァ、キヒッ」

悪魔のような笑顔を張り付かせ片手を掲げ空気を圧縮し始める。
だが、

一方通行「あン……?」

不安定に揺らめく光はそれ以上大きくなりそうにない。
疲労からの演算ミス。
計算が正しくなければ、正しい答えが導けないのは道理、
ここまで無茶な演算を繰り返し疲労しきった状態では膨大なベクトルを演算しなければならないプラズマの生成は困難。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:53:01.72 ID:nKTV5vFb0<> 一方通行「もォ一度ォッ!」

プラズマの再演算を行おうとした一方通行だったが幻想猛獣も黙って待っているわけではない。
念動力を真正面から一方通行にぶつけていく。
だがたかが念動力ごとき、一方通行の反射を前に髪の毛一本揺らすことはできはしない。
しかしそれも万全であればの話。

ドゴォッ!

一方通行「ガァアッ!?」

すでに疲労は限界にきていたのだ。
真正面から受けた念動力によって一方通行は盛大に弾き飛ばされてしまう。
幸運だったのは弾き飛ばされたのは病院側だったこと、
逆であれば演算補助装置を繋ぐ延長コードが伸びきり引き千切れていただろう。

シエル「ほら言わんこっちゃない、とっとと起きて下さい。攻撃がきますよ」

ようやく出番かとシエルは億劫そうに一方通行の前に立ち、牽制の黒鍵を投げつける。
黒鍵は窒素装甲を前に容易に弾かれる。
こんなことで稼げる時間は1秒や2秒程度のわずかな時間、
それでも今までの動きから一方通行なら簡単に起き上がってくるとシエルは考えていた。

一方通行「ァア?」

若干焦点の合っていない赤い目で頭を傾けたままで、一方通行は起き上がってはこない。
おそらくは当たり所が悪く脳を揺らされ身体が言うことをきかないのだろう。
一方通行の運動能力のほとんどはベクトル操作に依存している。
シエルは一方通行がこんなにも打たれ弱いとは考えていなかったのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:53:55.14 ID:nKTV5vFb0<> シエル「え? ちょ、ちょっと、早く起き上がらないと攻撃が、」

シエルが言い終わるより早く、二人を目掛け炎が振りかかってくる。

シエル「クぅっ!」

とっさの判断で黒鍵で炎を切り払う。
だが攻撃がそれでやむはずもなく次に控えるのは妹達を貫いた原子崩し。
一方通行が立ちあがれないのだとようやく気づいたシエルは急いで一方通行を抱きかかえると
横っ飛びで原子崩しをかわす。

シエル「いくらなんでも打たれ弱す、」

かわした先へと今度は電撃が襲いかかりシエルは文句一つ言い終わる暇がない。
黒鍵を突き立て避雷針にした後、一方通行を抱えたままその場からすぐに飛びのく。

シエル「こんのっ!」

タイミングはぎりぎり、またしても滑るような動きで攻撃を回避する。
しかし、華麗な回避もここまで。
シエルが足を踏み入れたのは異常なまでに柔らかいアスファルト。
フラックスコート。
ずぶりと足が埋まりすぐには抜け出せそうにない。

シエル「しまった……!」

身動きの取れない二人を狙うのは幻想猛獣の原子崩し。
一方通行の頭はまだぐるぐると回っている状態で意識もはっきりとしていない。
絶体絶命の中、放たれた原子崩しが二人を襲う。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:55:59.83 ID:nKTV5vFb0<> 上条「どっせえーい!!」

パッキーン!

万事休すのその場面に飛び込んできたのは幻想殺し上条当麻。
粘度を変えられたアスファルトに埋まりながらも右手を突き出して原子崩しを殺す。

上条「ま、間に合った……」

ほっと胸を撫で下ろすような動作の後、すぐに沼のようなアスファルトに右手で触れ元の普通のアスファルトに戻す。

上条「一方通行! まさかどこか怪我でも……」

シエル「脳を揺らされただけです。少し意識が混濁しているだけで十数秒で頭もはっきりしてくるはずです」

上条「そうか、よかった。……なら、その時間は俺が!」

三人に襲い掛かろうとしていた電撃を幻想殺しで受け止める。
続けざまに炎の塊が振りかかってくる。
上条はそれも幻想殺しで受け止めようと手を差し出そうとする。

シエル「炎は私に任せてください。君はその右手を右前方に突き出してください」

言うが早いかシエルは黒鍵を振り下ろし炎をなぎ払っていく。
シエルの指示の理由はわからないが無意味な指示であるとも思えず、上条は指示に従い右前方へと右手を突き出す。

パッキーン!

幻想殺しが何かを壊す音。
目に見えない何か、おそらくは念動力だったのだろう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:56:46.47 ID:nKTV5vFb0<> 一方通行「もォいいぞ」

はっきりとした声の後、突如として暴風が吹き荒れる。
暴風は炎も電撃も念動力さえもまとめて、挙句に巨体の幻想猛獣すらも吹き飛ばし空中へと巻き上げていく。

シエル「もういいんですか?」

一方通行「ちょっと油断しただけだ、次はねェよ」

ずしんっ!

空中に巻き上げられていた幻想猛獣は真っ逆さまに落下しアスファルトの地面に激しく叩きつけられる。

上条「やっぱりアレと朝まで戦い続けるってのは無理だと思う」

一方通行「チッ、じゃなにか? 諦めて死ねってのかァ? 冗談じゃねェぞ」

上条「倒すしかない」

一方通行「ハァ? ンな簡単に倒せりゃ苦労は、」

シエル「あるんですね、倒す方法が」

上条「ああ」

上条はシエルの問いに一言うなずいて、左のポケットからゴム栓で蓋をされた大きめの試験管を取り出す。
中に入っているは赤い液体。

上条「姫神の、吸血殺しの血液だ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:57:16.80 ID:nKTV5vFb0<> ――――――――

土御門「吸血殺しの吸血鬼を殺す効果は血液にある。
  血液自体がAIM拡散力場に干渉していると言って問題ない」

上条「まさか」

土御門「吸血殺しの血液を直接浴びせる。そうすれば復活することはなくなるはずだ」

上条「無理だ! 姫神は昨日大量の血を失ってるんだぞ。
  さらに血を抜けば命に関わる。……1滴や2適ってわけじゃないんだろ?」

土御門「200ml、最低でもそのぐらいは必要だ」

ギリッ……

上条はもう何も言わない。
何を言っても無駄だ、無理なものは無理なのだから。
上条はそのまま部屋を出て行こうとする。
そこへ――。

姫神「上条くん」

土御門「ッ!?」

上条「ひめが、み……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:58:51.38 ID:nKTV5vFb0<> 上条「お前、今の話……」

姫神「この耳で。しっかり聞いた」

上条「……心配するな、お前の血の力を借りなくても俺が何とか」

姫神「土御門くん。献血ってできる?」

上条「姫神ッ!」

土御門「……」

姫神「まだ私は戦える。戦いたい」

土御門「本気なんだな?」

上条「土御門、やめろ!」

土御門「カミやん、これは姫神の意思だ。それを俺らに止める術はない」

姫神「私はまだ死にたくない。だから上条くんに私の力を託す。
  心配しなくても。こんなことじゃ私は死なないから」

上条「土御門……、姫神……」

姫神「やるなら急いで。仲間が待ってるんでしょ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/14(土) 04:59:30.37 ID:nKTV5vFb0<> ――――――――

一方通行「その量、……あの女生きてンのか?」

上条「なんとか。けどかなり無理してた」

一方通行「……」

シエル「その、ディープブラッドというのは?」

一方通行「一言で言えば吸血鬼の天敵の超能力だ」

シエル「それを奴にかけることができれば」

上条「倒せる、はずだ。復活もしない」

シエル「非常に興味深いですね。というより眉唾と言った方が正直な感想ですが」

上条「一度だけ信じてくれ。頼む」

シエルに向かって上条は深々と頭を下げる。

シエル「構いませんよ。あんなのと朝までなんて勘弁して欲しかったところですから。
  吸血殺し、その力を信じましょう。っていうか他に選択肢がないんですけどね」

一方通行「話もまとまったところでェ、奴さンも再生終わったみてェだぞ」

一方通行の声で幻想猛獣に視線を移す。

アァアアァアアァァ!

上条「これ、頼む」

そう言ってシエルに上条が差し出したのは姫神の血が入った試験管。

上条「身体能力は俺のが劣ってるし、幻想殺しは俺の意思でコントロールできるわけじゃないから」

シエル「わかりました。この役目必ず果たします」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/14(土) 15:44:35.68 ID:VRy0vcKEo<> おつおつ
暫く見てなかったらだいぶ進んでた <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 07:49:42.94 ID:7Jg0a9BT0<> 一方通行「クカカカ、要は抵抗できねェよォに叩き潰せばいいってこったろォ?」

言うが早いか、真っ先に飛び出して行ったのは一方通行。
一時的にでもただの会話で脳を休ませることができたため、
今では反射の膜も万全、プラズマのような複雑な演算さえしなければ演算ミスもそうそうありはしない。

一方通行「遠いな。なら」

一方通行は右手を大きく振り、空中を斬るような動作をする。
すると、一方通行の目の前に小規模な竜巻が発生し幻想猛獣へと向かっていく。
炎や電撃は容易にかき消され竜巻を受けた幻想猛獣は巻き上げられ空中へと投げだされる。
そしてその落下地点には当然のように一方通行が立っている。

一方通行「一丁上がりってなァ!」

一方通行は延長コードが伸び切らないように軽く飛び上がると拳を真上に突き出す。
しかし、白い細腕から繰り出されるベクトルを操作された重い拳はあえなく空を切る。
死角移動――。

一方通行「チッ、そっち行ったぞォ!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 07:51:43.99 ID:7Jg0a9BT0<> 上条「よしっ、あの攻撃が決まれば!」

宙を舞う幻想猛獣目掛け一方通行が拳を振り上げるのを見て声をあげる上条。
だが、その攻撃は空を切ったためただのぬか喜びでしかなかった。

一方通行「チッ、そっち行ったぞォ!」

シエル「空間転移……、そこっ!」

上条の背後へと出現した幻想猛獣へと黒鍵を投げつける。
幻想猛獣が死角移動で現れる『背後』と言うのはある程度の幅がある。
手の届くような至近距離と言うこともあれば、今回のように5メートルほど離れた場所ということもだ。

シエル「やはりあの空気の壁が邪魔ですね。あれをその右手でなんとかできますか?」

黒鍵というのは魔術的にはそれなりに威力のあるものなのだが、
それを容易く弾かれてしまう様を恨めしそうに見つめている。

上条「ああ、そのぐらいはなんとかしてみせる」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 07:55:06.26 ID:7Jg0a9BT0<> たった5メートル。
普通なら一息で駆け抜けられる距離だが、向こうもそう簡単には近づかせてくれそうにない。
上条が一歩目を踏み出そうとした目先へ、足元めがけての原子崩しが発射される。
幻想殺しの効果範囲は右腕の肘から先で触れたもののみ。
到底、足元をカバーできるような能力ではないのだ。
上条はつんのめりそうになるのを抑えて咄嗟に右前方へと進路を変更する。

上条「くっ、こっちの作戦に気付いてるのか?」

今までは幻想猛獣からどこか余裕の様なものを感じられていたが
今回は上条に本気で近づいて欲しくないらしい。
真正面からの電撃に加え、左から炎が上条に襲いかかる。
電撃は右手で受け止め炎は一気に踏み込んでかわそうとするが
今まで何度も死線をくぐってきたことで磨かれてきた上条の第六感がそれを踏みとどまらせる。
次の瞬間、踏み込もうとしたその先を強い風が吹き抜けていく。
恐らくは視覚できない念動力の類だろう。

上条(炎は食らっても即死するわけじゃない。
  けど電撃はしびれて動けなくなっちまう……)

電撃は右手で受けて、炎は死ぬ気で耐える。
二度目となる苦肉の策だ。
電撃と同時に迫りくる炎に焼かれるために身構える。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 07:59:32.26 ID:7Jg0a9BT0<> パッキーン!

幻想殺しが電撃を打ち消す。
その直前、上条に迫る炎を一本の黒い剣が引き裂いてゆく。
シエルが投擲した黒鍵だ。

シエル「炎だけは何とかしてあげますよ」

上条「サンキュー!」

全ての攻撃をかわしきったことで安全に走りこめる空間が出来上がる。
幻想猛獣は飛来した黒鍵に気を取られてシエルに目掛け原子崩しを発射している。
シエルは原子崩しと身体の間に黒鍵を差し込みコンマ数秒の盾にすると
半身だけ身体をずらし射線上を回避する。
その隙にと上条は一気に加速して幻想猛獣との距離を詰める。
再び電撃が放たれるが上条は条件反射の様に右手を突き出して受け止めさらに近付く。
しかし、その僅か50センチ先の足場、そこのアスファルトは表層融解によって粘度が変えられている。
上条があと一歩を踏み出せば脚は沈み、確実に転倒してしまう。
そしてその次の一歩で上条は、

上条「そうはいきませんのことよー!」

跳躍した。
幻想猛獣までの距離約3メートルを一気に飛び越えたのだ。
正確には2メートル60センチ、空中で窒素装甲を殴りつけると幻想猛獣を眼前にブレーキをかける。
上条が直接殴れば幻想猛獣は消えてしまうからだ。

上条「今だ!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 08:05:48.12 ID:7Jg0a9BT0<> 上条「今だ!」

上条の合図でシエルは神速のスピードで幻想猛獣に接近する。
二歩目から先は宙を駆け表層融解など何の意味も成しはしない。

シエル「これで幕引きです!」

姫神の血の入った試験管を投げつけ、さらに黒鍵で試験管を縦に一刀両断する。
中の血液全てが幻想猛獣に向かって飛び散る。
これで勝利は確定したのだと、

皆がそう思った。

だが――。

飛び散った血液は幻想猛獣にかかってはいなかった。

空中で円を作るように回転して幻想猛獣の目の前で停滞している。

シエル「なっ!?」

上条「水流、操作……!?」

水流操作(ハイドロハンド)のレベル4――。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 08:13:11.70 ID:7Jg0a9BT0<> 一方通行「格下が調子に乗ってンじゃねェぞ!?」

次の瞬間、突風が吹き荒れ水流操作によって停滞していた血液を根こそぎかっさらっていく。
突風に飛ばされた血液はきれいな弧を描いて上空に巻き上げられていく。

一方通行「結局はどの能力も俺の足元にもおよ場ねェゴミばっか……」

上条「一方通行!」

一方通行「もォいい加減うんざりなンだよォ。これで終わっとけクソ野郎がああああ!!」

一方通行が掲げた手を真下に下ろすと再び突風が吹き荒れ
血液は風に乗って幻想猛獣へと降り注ぐ。
幻想猛獣は水流操作をより強い力で抑え込まれ、全ての血液をその身に浴びていく。

アァアアァァァアアァァァアアアア!!

幻想猛獣は今までで最も大きな叫び声をあげる。

アアァ、ァアアァ……、アァアアアァアア……

その声もやがて枯れ果てるように弱まっていきその容姿全体に霞がかかりはじめる。

上条「やった、やったんだ……」

シエル「悪夢の終わりですね」

一方通行「ったく、手間かけさせやがって」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 08:47:36.33 ID:7Jg0a9BT0<> 「こうもあっさりと負けてしまうなんて……。ほんとに規格外な街でしたね、ここは」

上条「っ!?」

その声は目の前の、今にも消えかかっている幻想猛獣の方から聞こえてきたものだ。

「邪魔です」

パチン。

恐らくは指を弾いた音だろう。
音の直後に幻想猛獣の巨体はばらばらに飛び散りそのまま空気に溶けていったかと思えば、
幻想猛獣のいた中心には風斬氷華が悠然と立っていた。

一方通行「テメェ……、マジで不死身かよ」

再び現れた風斬氷華を前に怯むことなど殺意を剥きだしで語りかける一方通行。

風斬「そうでもありません。もうこの身体も数分と経たずに消滅するでしょう」

シエル「では……」

風斬「あなた方の勝ちですよ、代行者」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 08:48:26.31 ID:7Jg0a9BT0<> 風斬「せっかく超能力者の街で具現化出来たんですから、
  何人かは配下にしておきたかったんですけどね……。
  吸血殺し、忌々しい能力です」

敗北宣言の後、誰に語りかけるでもなくタタリは淡々と独り言のように喋り続ける。

風斬「成り立ての死徒ごときでは、吸血殺しの甘い香りに誘われ吸血行為に走ってしまう。
  ですから、どうしても先に殺しておきたかったんですけど……、残念です」

ハァと溜息をつきいかにも残念そうな顔をする。

上条「なぁ、お前ら吸血鬼ってのはなんなんだ。なんで血を吸おうとする?」

シエル「君っ!」

風斬「止めるな代行者。エンドロールぐらい好きにやらせて下さいよ……。
  なぜ血を吸うか、でしたね。上条さん」

上条は無言でうなずく。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 08:49:22.76 ID:7Jg0a9BT0<> 風斬「私たち吸血鬼の吸血行為には大きく分けて三つの意味があります。
  一つ目は食事として。上条さんだってお腹すきますよね?
  単純に肉や草をかじるよりよっぽど効率的なんですから」

風斬「ふふっ、少し話がそれましたね。
  次に二つ目、快楽です。吸血行為って言うのはとっても気持ちがいいんです。
  人間のセックスなんて目じゃないくらい、気持ちよすぎて中毒になるくらいに」

風斬「三つ目、配下を作る。血を吸うことでその意志をコントロールできるんですよ。
  完全に吸血鬼になるわけじゃないので昼間でも平気だったりいいこともあります。
  親の意思を逃れてそのまま成長を続けると完全な吸血鬼になります。
  まぁ、そうなる前にお腹がすいた時にでも残りの血も吸っちゃうんですけどね、くすくす」

風斬「と、こんな感じです」

上条「じゃあ、お前も元は人間で他の吸血鬼に血を吸われて……」

そう考えればタタリという吸血鬼もまた吸血鬼の犠牲者である。
そう思うと上条は同情を禁じ得ない様子だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 08:49:58.91 ID:7Jg0a9BT0<> 風斬「あはははは、違いますよ上条さん。
  私は望んで、自ら吸血鬼になることを選んだんですから」

上条「え?」

一方通行「あン?」

シエル「……」

風斬「私の目的――大六法って言うんですけど――、
  それのためには人間の人生じゃ短すぎたんです。
  吸血鬼になれば血を吸い続ける限り永劫の時を生きられます。
  だから私は魔術を極め、その果てに吸血鬼となることを選んだ、それだけのことです」

風斬「私の身の上話はこんなところで。もう聞きたいことはないですか?
  後一分もしないうちに消えちゃいますよ、私」

上条「……もう、十分だ」

風斬「そうですか。
じゃあ、もしまたどこかで出遭う機会があったら
  今度こそ血を吸ってあげますから、期待してて下さいね。
  上条さんならきっと強い死徒になれますよ。
  そっちのあなたもレベル6だって目じゃないくらいに」

一方通行「けっ、あいにくともォその気はねェよ」

上条「また遭ったとしても何度でも身勝手なその幻想をぶち殺してやるよ」

風斬「フラれちゃいましたか、残念です。一応人類のためなのですが……、くすくす。
  そろそろエンドロールもお終いの様です。
  それでは人間の皆さま、あなた方のますますの繁栄を願っていますよ――」

タタリはスカートの裾を僅かに摘みあげると、一礼をしてそのまま姿を消してしまった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 09:28:13.73 ID:7Jg0a9BT0<> 上条「今度こそ、終わったんだな……」

シエル「はい。……今回はお手伝いさせちゃってすみません。
  本来、私一人で片付けるべきなのに」

上条「そもそも俺らの街なわけで、上条さんは自分の守りたいものを守っただけのことですよ」

シエル「ふーん(この子、どこか昔の遠野君に似てますね)」

一方通行「終わったンなら俺は帰るぞォ。じゃァなァ」

上条「お、おい、一方通行」

一方通行「それと俺の携帯には今後一切かけてくンじゃねェ、わかったな」

最後にそう言い残すと、一方通行は延長コードを取り外して
そのまま能力を使用して真夜中の学園都市を飛び去っていく。

上条「ったく、行っちまいやがった」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 09:28:40.00 ID:7Jg0a9BT0<> シエル「では、私もそろそろ帰るとします」

上条「そうか。お礼の一つもしたいとこだけど、
  上条さん、まだ火傷の治療を受けてないもので……イチチ」

シエル「構いませんよ。自分の怪我の方を優先して下さい」

上条「あぁそうだ。カレー好きって聞いたんだけどほんとか?」

シエル「え……、えぇ、まぁ。っていうか誰に聞いたんですか?」

上条「ちょっと知り合いの魔術師に。
  それならこの病院の裏手にある公園の自販機でカレーフェスタとかいうのやってたから
  よかったら行ってみてくれ。学園都市限定だから」

シエル「あ、ありがとうございます。行ってみますよ、それでは」

上条「あぁ、こっちこそ」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 09:30:40.28 ID:7Jg0a9BT0<> 夜が明けて――。
学園都市にはいくつかの新たな都市伝説が誕生していた。

曰く、学園都市全土で起きた昏睡事件。
曰く、朝起きたら学園都市全ての時計が狂っていた謎。
曰く、全ては新たに誕生したレベル5が原因である。

などなど。
上条たちの頑張りとは無縁と思われることばかり。
こうして、九月十一日に始まった吸血鬼事件に誰知ることもなく終止符がうたれたのだった。

――――――――

アレイスター「ククク、ズェピアのおかげで大幅なプラン短縮を行うことができた」

アレイスター「今日この時、奴が現れることもあらかじめわかっていたこと。
  唯一の想定外は姫神秋沙の生存のみ。幻想猛獣の姿を取ることも予想通りだったな」

アレイスター「未現物質は予め隔離しておいたのだから、あれが未現物質を使うことはなかった。
  ならば、死ぬこともなくもう少し成長が見込めるかと考えていたがそうそううまくはいかぬものだな」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 09:41:09.50 ID:7Jg0a9BT0<> 病院裏手の公園、自販機前――。

シエル「カレーおでん、ブラックカレージュース、カレー具沢山、カレーゼリー、
  カレーコーヒー微糖、彼のカレー(お米の粒々入り)、炭酸カレーサワー……。
  沢山ありますが、なんというかカレーに対する冒とく以外の何物でもありませんねこれは……」

シエル「まぁ、なんだかんだ言って全部2本ずつ買うんですけど」

シエル「っ! 五月蠅いですよセブン! 大体今回のことはあなたの力不足が否めません。
  帰ったらたっぷり改造してあげますから覚悟していなさい」

シエル「さて、お金を入れてと、……あれ? ランプが点きませんね。とりあえず一度返却を……」

シエル「!? あれ? で、出てきませんよ!? どういうことですか!?!?!? 私の一万円札!!」

シエル「ふふ、うふふふふふ……、セブン! やりなさい!」

数分後、警備員が駆け付けるとぐちゃぐちゃに壊された自販機が発見される。
犯人は未だ捕まってはいない。

   とある魔術のタタリの夜に――、これにて閉幕です。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 09:42:08.04 ID:7Jg0a9BT0<> 終わり。終了。これでお終い。寝る。起きたら後書き書く。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2011/05/15(日) 12:48:21.97 ID:xrg1aH8To<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/15(日) 14:06:43.94 ID:8AfFymoDO<> まだ寝てるのかな。待ってます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)<>sage<>2011/05/15(日) 15:05:18.77 ID:uwZ+xZ4AO<> 乙

できればワラキーとも戦ってほしかったな〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/05/15(日) 18:40:17.88 ID:XaqrWt/AO<> 乙
カレー先輩自由だなww
てか、どの商品も飲みたくない <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 19:59:33.06 ID:7Jg0a9BT0<> Extra1:

ゴゴゴゴゴゴ……

「な、なんだ! 何が起こっている……」

月の光に世界が赤く染められていく。

上条「月が……赤い?」

シエル「見てください、タタリの姿が……」

「ぐっ、どういうことだ……、この姿はまさか」

タタリは姿を変え、新たなその姿は金髪にマントを羽織った優男のようだった。

「この姿はズェピア・エルトナム・オベローンそのもの……。
 そうだ、あの赤い月……あれは遥か二千年後のものではないか!?」

一方通行「なンだ? 様子が変だぞ」

まるで望んでその姿を具現化したのではないと、そういう風にも取れる。

ズェピア「そもそも突然時が流れ夜が更けたことといい、どうなっているこの街は……。
  認めない……、このようなことは認めない……。
  カット、カット、カットカットカットカットカットカットカットカットカットーーー!!」

――――――――

シエル先輩がいるとはいえガチの吸血鬼相手はまじきついっす
メルブラ本編より何年か経過してる設定ですので先輩も年齢的にきついんです
あくまで存在が不確かであるワラキアの夜が相手だったから勝てた、と
相性的に良かったものと考えてください、少なくとも筆者脳内じゃ無理ゲーだと思ってる <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 20:00:13.88 ID:7Jg0a9BT0<> Extra2:

風斬「このままでは、どうやっても勝てそうにありませんね。仕方ありません」

上条(あの魔術師強い……、一方的に押してる。これなら勝てる!)

風斬「えいっ、静脈に秘密注射です♪」

シエル「な――――、え……?」

風斬「あぁ……、熱い、身体が熱いですぅ、上条さぁん……」

一方通行「お前、一体何を……」

熱を帯びた吐息を吐く風斬氷華から怪しい音が聞こえてきて――。

上条「なっ!?」

シエル「はい?」

一方通行「はあァァァ?」

三者三様に疑問の声をあげるのも無理はない。
なぜなら風斬氷華が目の前で巨大化してしまったのだから。

G風斬「あはははははは、みーんな踏み潰しちゃいますよ〜!」

――――――――

全長約70メートル、今宵の幻想ここに極まれり
無理です、真祖の姫君相手にするぐらい無理です
幻想殺しで触れれば一時的に消えますけど、家屋と掴んで叩きつけられたらどうしようもない
一方通行以外がマジで空気(最悪肉片)になるし、コンセントとか手当たり次第にぶっ壊されます <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 20:15:40.34 ID:7Jg0a9BT0<> いらぬおまけも書き終えてようやく終演と相成りました。
ストーリーが頭の中に出来たらそのまま書いて、書き溜めなんかほとんどしなかったらこんな作品ができあがりましたよと。
書きあげてから愚痴言うのもなんですがいくつか不満の残る仕上がりだったりします。
自分で言うのもなんですけど題材としては面白かったと思うんですよね。
それを私が引き出せてないっていうのが一番の問題であって。
一方さんの口調が安定しなかったりテンポがいまいち悪かったり
あと姫神にはもう少し出番あげたかったかなー、姫神ファンにはほんとすまん事をした。
没にしたけどVSミサカ姉妹編は殺された妹達1万31人を一方さんにぶつけるなんてのもあったりしました。
全編通してのストーリーは出来上がったわけだし、機会があれば書き直してみるのもいいかなと思ってたりするが絶対やらないだろうな。
こんな駄文を最後まで読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
ちなみに筆者はメルブラだと七夜が大好きだったりします。

。o0(はぁ、これでようやく他のSSを進められるぜ) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/05/15(日) 20:19:45.38 ID:9SM2TRF9o<> 乙乙
佐天さんの方も見てるぜ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/05/15(日) 20:25:22.83 ID:7Jg0a9BT0<> そうそう、微かに期待してる感想とか書いて下さるならついでにアンケートとか答えて頂けると幸いです。

・とある科学の一方通行 新訳絶対能力進化計画
上条さんとか美琴の邪魔が入らなかった場合の未来
きっと誰一人幸せになれない世界で一方通行とミサカの生き残りをかけた戦い

・魔法少女は魔法少女の夢を見るか?
見滝原に現れる別の魔法少女(イレギュラー)が現れる
やっぱああいう結末だと救いの手を差し伸べたくなるじゃないですか?
まぁ正確には魔法少女じゃなかったりしますが、「絶対大丈夫だよ」

モチベ的には下の方書きたい気分(ホソリ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/05/15(日) 20:29:10.37 ID:9SM2TRF9o<> じゃあ上の方が読みたいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/05/15(日) 20:34:38.22 ID:qDMqH5lzo<> 上で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/15(日) 20:38:24.06 ID:dOMRkKE90<> おいおい、上ってどんだけ鬱な世界だよ…

上で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/05/15(日) 20:42:23.88 ID:weaPEvfxo<> 上で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/05/15(日) 20:54:53.77 ID:92glg2Yw0<> 上で頼む <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2011/05/15(日) 20:59:58.64 ID:XaqrWt/AO<> イレギュラーってなんの魔法少女なの?
俺は下かな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/15(日) 21:50:59.36 ID:wv6RMhPho<> 乙でした


「絶対大丈夫だよ」でピンときた俺は>>1と同年代か?
時間かかってもいいから両方で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/15(日) 21:53:49.56 ID:3Euz9eQA0<> 下は黙ってても書いてくれそうなんで上で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/15(日) 23:54:08.84 ID:ZtoK4zRjo<> 下の作品を久しぶりに見ようと思って漁ってみたらDVDじゃなくてLDだったでござる(´・ω・`)

黙ってても書いてくれそうだけどやっぱり黙れないので下を希望してみます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/05/16(月) 00:57:30.74 ID:071PCFWAO<> 感想も書いてやれよお前らwwww
一つ気になるのは突然夜中になったのはタタリのせいじゃないの?
エクストラ1で予期してなかったみたいな口調だけど、もしかして元ネタある?

アンケは下で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)<>sage<>2011/05/16(月) 03:53:20.23 ID:ss3LySkAo<> ガブリエルが使った天体制御だっけ?
あれを☆辺りが使用したとか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<><>2011/05/16(月) 21:17:57.92 ID:071PCFWAO<> ☆ってそんなつえーの?ww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2011/05/16(月) 21:26:20.61 ID:071PCFWAO<> すまぬ、あげちまった <> !ninja<>sage<>2011/05/16(月) 23:34:49.68 ID:rKDh00hp0<> 上条さん全体的につかえねーなww活躍って言える活躍してないぞ <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/17(火) 01:48:50.11 ID:BgKe4gQB0<> >>404
CLAMPの名作
>>408-409
曰く、全ては新たに誕生したレベル5が原因である。

最終的には両方書くんだけども
極端にこっちがいいってことはないのね。まぁ気分で書く方決めるわ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/19(木) 21:27:56.24 ID:8VYCcX/J0<>    おやおや、皆さんもうお帰りですか?
      劇はもうしばらく続きます。
   裏方たちの繰り広げる喜劇の物語、
第二幕、とある科学のタタリの昼に、開幕です。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/19(木) 22:23:15.35 ID:8VYCcX/J0<> 九月十四日夕刻――。

とあるランジェリーショップの前で少女が空を眺めている。
少女の目線の先にはモニターが取り付けられた飛行船が浮かんでいた。
そのモニターはとあるニュース番組を映しているようだ。

TOPICS:米スペースシャトル打ち上げ成功

白井「お姉さま?」

店内から下着を手にしたまま出てきたのは少女の後輩だ。
白井はお姉さまと声をかけた人物、御坂の視線を追って同じく飛行船へと目を移す。

白井「……最近多いですわよね、確かフランスとロシア、スペインも打ち上げましたし」

宇宙に埋蔵金でも埋まってるんでしょうか、なんて茶化した言い方をする。

御坂「さぁね。それより、あんたは早く買い物済ませなさいよ。あんたの趣味に付き合うの結構恥ずかしいんだから」

白井「この際お姉さまも常盤台のエースとしてもっと大人びた下着を」

もう何度したかもわからない会話を繰り返そうとしたその時、
白井の携帯がピロピロと着信音を鳴らした。

白井「お姉さまと憩いの時間を邪魔するなんて、一体どこのどなたですの?」

心底めんどくさそうに携帯を取り出し通話ボタンを押す。

白井「もしもし? あぁ、初春ですの。……強盗? そんなものは警備員(アンチスキル)に任せておけば……。
  第二十三学区? あの航空宇宙関連の……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/19(木) 22:24:39.25 ID:8VYCcX/J0<> しばらくして電話を切った黒子は見るからに沈んで見えた。
白井は御坂に二、三度頭を下げた後、店内に戻り手に持っていた下着を元の場所に戻すとまた慌しく店から出てくる。

白井「申し訳ありません、お姉さま。折角付き合っていただいたのに」

御坂「もういいわよ。それより今日は早めに帰ってきなさい。夜になったら天気が崩れる“かも”知れないから」

白井「はい、ですの……」

白井はその何気ない言葉のやり取りにどこか違和感を覚えていた。
その違和感の正体はわからないままだったが、二人は別れ黒子は風紀委員(ジャッジメント)の詰所へと足を向ける。

――――――――
――――
――

白井が風紀委員の詰所に到着すると、同僚の初春が出迎えてくれた。
若干の無駄話を挟み、状況の確認。
強盗犯が奪っていったのは機密性が高く宇宙の苛酷な環境にも耐えられるアタッシュケースらしい。
いろいろと推測を巡らせてみたが、最終的に白井が初春のナビで強盗犯を追い取り返してみればいいということで落ち着いた。
途中、なぜか信号機のトラブルが発生するという、白井たちにとっては幸運な出来事により
ほどなくして強盗犯グループを発見した白井が路地裏に入ったところで奇襲を仕掛ける。

白井「どっせーい!!」

黒服A「うわ、なんだ!?」

白井は脚を折りたたんだ状態で空中にテレポートすると
アタッシュケースを持って一番後ろを走っていた黒服の男にドロップキックを放つ。
当然、そんなものを受けた男は勢い余って転倒してしまう。

黒服B「何ッ!?」

男の叫び声を聞き、他数名の黒服たちが一斉に振り返る。
だが、彼らが目視したときには白井の指はアタッシュケースに触れており、
次の瞬間にはアタッシュケースを持ったままテレポートで振り向いた黒服たちのそのまた後ろへと移動する。

黒服C「くそっ、テレポートか!」

白井「こっちですわよ」

白井の姿を見失った黒服たちに、白井は挑発するように声をかける。

黒服D「こいつ!」

何の躊躇もなく懐から拳銃を取り出した黒服たちは銃口を白井へと狙いを定めようとする。
しかし、テレポーター相手にそれでは遅すぎた。
黒服たちが狙いをつけるより早く、またしても空中へとテレポートし二度目のドロップキックを放つ。
二人ほどまとめて転倒させると、すかさず服の端へとテレポートさせた鉄心で地面へと縫い付けてしまう。
続けて、もう一人同様にして地面に縫い付けるが残った二人はその場から逃走してしまう。
その場に打ち捨てられた拳銃を見れば、その古臭さから外部の人間だろうということが推測できた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/19(木) 22:27:31.88 ID:8VYCcX/J0<> 黒子はハァ、と一つ溜め息をついてアタッシュケースへと腰掛ける。
とりあえず強盗犯の捕縛と奪われたものを取り返したことを初春に連絡しようと携帯を取り出す。
丁度その時、タイミングよくピロピロと着信音が鳴り響く。
そのタイミングのよさから初春が監視カメラでこちらの様子でも伺っていたのかと思い通話ボタンを押し携帯を耳に当てる。

白井「もしもし、初春ですの?」

御坂『あぁ、黒子? ちょっと頼みがあるんだけど』

白井「お姉さま? えーとそれが」

御坂『まだ仕事中だった? ごめんごめん、邪魔しちゃったわね』

白井「いえ、それで頼みごとというのは?」

御坂『なんか部屋の抜き打ち検査があるって後輩に聞いてさ、私の私物隠しといてくれないかなーって』

白井「……お姉さまもまだ外に?」

御坂『まぁいいわ、他の子にあたってみるから。
  あんたも早く帰ってきなさいよ、今夜から明日いっぱい雨“かも”って話だから。じゃあね』

白井「お、お姉さま!?」

心配するだけして電話は切られてしまった。
最後の問いかけには答えてもらえず、ランジェリーショップの前で分かれる時にした違和感をまたしても感じていた。
魚の骨がのどにつっかえたような気分の悪さだが、今はそんなことよりも――。

白井「キィーッ! お姉さまが私以外の子に頼みごとなんて許せませんのー!」

至極私的なことで悶え声を荒げる白井だったが、次の瞬間に突如として浮遊感を味わうことになる。
そしてその浮遊感の原因が腰掛けていたアタッシュケースが“消えた”ことによるものだと気付いたのは、
地面に倒れこんで硬く冷たいアスファルトで頭をぶつけた後だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/19(木) 22:28:37.75 ID:8VYCcX/J0<> 白井「イタタ……、一体何が。ッツ!?」

鈍い痛みを覚えた頭を片手で擦ろうと手を頭の上にやろうとした直後、
頭の鈍痛をはるかに上回る痛みが右肩を襲う。
肩に目をやれば痛みの原因が、いつの間にか突き刺さったコルク抜きの鉄部分だと言うことがわかる。
原因を確認したところでゆっくりと身を起こし、先ほどまではいなかったその人物へとしっかり目を据える。

白井「何者、ですの」

白井の前に立っていたのは『さらし』を巻いただけの上半身とその上からブレザーを羽織っただけという異様な格好をした少女だった。
その少女は、白井の問いには答えずただクスリと笑うだけ。
たったそれだけのことで直感的に彼女がどういった人物なのか思い当たる。

白井「テレポーター、ですのね」

「あら、もうお気付き? さすが同系統の能力者は理解が早いわね。
 私の能力は座標移動(ムーブポイント)、不出来な空間移動(アナタ)と違って物体に触れる必要がないのよ。
 どう? 素晴らしいでしょう、風紀委員活動第一七七支部の白井黒子さん」

まさに優越感に浸ってますといった感じの少女は、またクスリと笑って空中に腰を下ろす。
少女が腰を下ろそうとした場所には何もない。
であれば、当然のことながら後ろに倒れ先ほどの白井と同様に後頭部を打ち付けることになる。

「っっったあああ!?」

よほど想定外のことだったのか、少女は頭を抑え跳ねるように飛び起きる。
そして、自分が腰を下ろそうとした場所に目を向け何もないことを確認するとキョロキョロと辺りを見回し始める。
わけのわからない行動に白井はどう動いたものかと困惑気味だ。
そんな白井に少女は声をかける。

「ちょっとあんた! 残骸(レムナント)をどこへやったのよ!」

白井「は? れむ……なんですのそれは?」

聞き覚えのない単語に肩を抑えたまま可愛らしく頭を傾ける。

「とぼけてんじゃないわよ! さっきのアタッシュケースのことよ!」

どうやらレムナントとはさっきのアタッシュケースのことらしい。
しかし、どちらにしろ身に覚えのない話に白井は今度は逆側へと頭を傾ける。

白井「もしかして、転移座標を間違えたんですの?」

「!?!?!?」

白井の言葉に少女は目に見えてうろたえてみせる。
その様子に見ていて飽きが来ないな、などと思ってみたり。
しばらく目を閉じ熟考していたかと思うとカッと両の目を見開き、一言。

「覚えてらっしゃい!!」

そう言い残すと、手に持っていた軍用警棒を一度振り黒服たちをどこかへ座標移動させ、
もう一度軍用警棒を振り今度は少女自身が座標移動してそこには白井だけが残されることになる。

白井「いったいなんなんですの……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/19(木) 22:30:00.04 ID:8VYCcX/J0<> タタリの残骸編、ひっそりと始まりました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/21(土) 00:41:58.63 ID:2jAcEQCfo<> 続き来てるー!
ドジッ娘あわきん・・・良い <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 10:56:44.52 ID:4acUqOqH0<> 私、佐天涙子は本日絶好調である。
朝のテレビの占いに始まり、授業で当てられた時もちゃんと答えられたし、
ジュースを買えば当たりが出てでもう一本。
身体検査(システムスキャン)ではなんと能力が発現!
結構珍しい能力らしくって学校が終わった後木山先生のところで詳しく調べてもらって、今はその帰りなのだ。

佐天「しかもなんとレベル5! 私もびっくりしたなー」アハハ

レベルはまだわかってなかったけど、能力が発現したってことで初春が「お祝いしましょう!」って言いだして、
これから初春の寮でお泊りパーティ。

佐天「今日はほんと運がいいっていうかなんていうか。私を中心に世界が回ってるんじゃないか、って疑いたくなるよ。
  今なら私は世界の王にすらなれる!なんてねー」

これでもう一つ何かいいことでもあれば本気で世界征服考えちゃおっかなぁ。

ヒュン!

佐天「ん? なんか変な音が、」

ゴン!ゴトン!

佐天「ぃったあああ!?!? 何なのよもう……、ってアタッシュケース? これが落ちてきたの?」

見上げてみるが周囲に高い建物などは一切ない。
遥か上空からなら私の首が折れてるだろうし、一体どこから?

佐天「とりあえず、落し物ってことでいいのかな。蓋は……鍵が閉まってるのか。
  風紀委員にでも持ってくべきなんだろうけど、今日はもう遅いしなぁ。ってそうだ!」

そうそう、私ってば丁度風紀委員のところに向かってるところじゃない。

佐天「初春に渡しとけばいいよね。……でも、これ何が入ってるのかなぁ」

――――――――
――――
―― <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 10:58:23.78 ID:4acUqOqH0<> 佐天「初春ー、いるー?」ガチャリ

初春「はい、そうです。恐らくそっちかその隣の学区が怪しいでしょう――」

佐天「ありゃ? 電話中かぁ。とりあえず、玄関で待ってるとしますか」

相手は白井さんみたいだけど、風紀委員関係の電話かな?
家に帰っても仕事だなんて熱心だね初春は。

初春「――わかりました、絶対に生きて帰ってきて下さいね……」

佐天「初春ー? 電話終わったー?」オーイ

初春「ふぇ!? さ、佐天さんいつの間に……」

佐天「ついさっきだよ。さっきの電話って風紀委員の? 大変だね」

初春「はい。白井さんが無茶しなきゃいいんですけど……、とりあえず上がって下さい」スリッパドウゾ

佐天「白井さんが? なんか面倒な事件でも起きたの?」スリッパアリガト

ゴロゴロゴロ……

初春「機密情報なんで詳しくは言えませんけど、かなり危ないと思います」

佐天「そっかぁ、白井さんってば正義感強いからなぁ」

ゴロゴロゴロ……

初春「……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 10:59:38.50 ID:4acUqOqH0<> 初春「あの、佐天さん?」

佐天「何? 初春」

ゴロゴロ、ピタ。

初春「その大きな荷物は何ですか?」

佐天「へ? あ、これ? なんか上から突然落ちてきてさぁ。頭の上にゴンって。痛かったんだよー」

初春「あ、頭の上に!? 落し物ってことですか?」

佐天「わからない、周りには建物なんてなかったし、人もいなかったし。
  とりあえず、風紀委員の初春のところに持ってこうって思って」

初春「へー、不思議な話ですねぇ……、ってあれ!? これってもしかして?!」ガバッ

佐天「ど、どうしたの初春!?」ビクッ

初春「」ジー…

佐天「」ゴクリ

初春「二十三学区のエンブレム、やっぱり……」ボソッ

佐天「何かわかった?」

初春「はい、お手柄ですよ、佐天さん! とりあえず白井さんに連絡しないと!」カチャ

佐天「おー、なんか知らないけど、お手柄らしいぞ私!」ヤッタネ
  :
  :
  :
初春「うーん……出ませんねぇ、電源切ってるみたいです。留守伝にメッセージだけ残しときましょう」ア、ウイハルデス… <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 11:00:34.95 ID:4acUqOqH0<> 佐天「ねぇ、初春……。これって何が入ってるの?」

初春「えーと、それはちょっと……」

佐天「えー、いいじゃーん。私が拾ってきたんだから教えてよー」

初春「駄目ですよー、とてもじゃないですが口外出来ないことなんですから」

佐天「むー、初春の意地悪ー。いいもん、勝手に開けちゃうんだから」

初春「無理です。専用の鍵が必要ですし加えて10数桁のパスワードもあります。
  その上、宇宙でも耐えられるようなケースですからとっても頑丈で壊すこともできませんよ」

佐天「絶対?」

初春「絶対です!」

佐天「言ったなー。今日の私はとっても運がいいんだから、今日の私にできないことなんてない!」

初春は知らないんだ、私がレベル5になったこと。
今の私はレベル5、私の超能力を持ってすればこんなケースは……。

佐天「この鍵の部分に手を当てて〜」ムムムム…

初春「無理ですって、もう。……そういえば、佐天さん。
  木山先生のところで詳しい検査してもらったんですよね? 佐天さんの能力って、」

バキリッ!

初春「えっ!?」

佐天「ふぅ、こんなもんかなぁ」ガチャリ

初春「あ、開いてる……、いったいどうやって……」ポカーン

佐天「どうよ初春。これが私の能力、時間加速(タイムアクセル)の力だ!」チナミニレベル5ダヨ

初春「えぇええええええええええええぇぇぇ!?!?!?!?!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 11:01:20.54 ID:4acUqOqH0<> ――――――――

初春「つまり物の時間を進める力ですか、しかもレベル5の……。なんかもうどこから驚いていいやら……」

佐天「ちょっとこの鍵の部分の時間を100億倍ぐらい加速させて見ました」

初春「100億って簡単に言いますけど、一瞬で何世紀も経ってますよ!?」ソリャコワレル

佐天「で、この機械の部品っぽいのなんなの? 初春」

初春「今日の佐天さん、とことん自由ですね。わかりました、教えますよ」

佐天「やったー、初春愛してるー♪」

初春「調子いいんだから……。これはですね、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の中枢です」

佐天「へ? それってあのすんごいコンピューターだっけ? 人工衛星と一緒に打ち上げられた」

初春「そうです。けどそれがここにある、おかしいと思いません?」

佐天「そうだよね、宇宙にあるものが何でこんなところに。もしかしてまた新しい奴作ったってこと?」

初春「いいえ、違います。これは本来宇宙にあるはずのもの」

佐天「それってまさか」

初春「壊されていたんです。7月28日に何ものかに地上から迎撃されて」

佐天「いやいや、もしほんとならニュースにでもなってるはずでしょ!?」

初春「逆ですよ、こんなこと公表できるわけありません」

佐天「ぐっ、確かに」

初春「それに最近、天気予報がはずれることってよくあると思いませんか?」

佐天「うーん、そういえばこの前も雨って言ってたのに降らなかったことあったよね」

初春「樹形図の設計者は表向きは完全な天気予報を行うものです。それがはずれるなんてありえませんよ」

佐天「ってことはこれ、本物なんだ……」

初春「だからそう言ってるじゃないですか」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 11:02:37.30 ID:4acUqOqH0<> 初春「正直、こんなの知ってるってだけで裏の世界の人に狙われてもおかしくありませんよ」

佐天「そんな、裏の世界って厨二病くさいことを……」マダチュウイチダケド

初春「……」ムゴン

佐天「え、まじで?」

初春「……」コクリ

佐天「よ、よーし。聞かなかったことにしよう! そして初春も言わなかったことにしよう!」ネ?

初春「蓋開けちゃったじゃないですか……」

佐天「うわぁ、そうだよ、開けちゃったよ〜。どうすんのよ私〜!」アタマカカエ

初春「佐天さんはいつもいつも後先考えなさ過ぎなんですよ」

佐天「そんなこと今更言われたってー! あーもう、こうなったー!!」

初春「こうなったら?」

佐天「……してやる」ボソリ

初春「はい?」


佐天「学園都市を 征 服 してやるー!!!」ドーン!


初春「はい〜〜〜!?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 11:03:06.83 ID:4acUqOqH0<> 初春「佐天さん、落ち着いて下さい! そんな無茶苦茶なこと」

佐天「今日の私はとっても調子がいいのよ! 何だってできる! きっと学園都市の征服ぐらい簡単に!」

初春「できるわけありませんって! いくらレベル5になったからって一人でそんなこと!」

佐天「一人じゃないもん!」

初春「えっ?」

佐天「初春も共犯だもん! 私と一緒に征服するのよ!」

初春「状況的に共犯と言われても仕方ないですけど、私そんなこと」

佐天「いいの? 私言っちゃうよ? 初春が秘密にしてること」

初春「ちょちょ、ちょっと、一体なんのことですか!?」

佐天「木山先生に聞いちゃったんだからね、初春のこと」

初春「木山先生……まさか」

佐天「初春って巷じゃ守護神(ゲートキーパー)って呼ばれてるんだよね?」

初春「そ、そうですね、知られちゃいましたかー、困ったなー(棒読み)」

佐天「けどそれさえも仮の姿、本当は」

初春「」ゴクリ

佐天「――――なんだよね」ヒソヒソ

初春「ッ!!」

佐天「手伝ってくれるよね? 初春」

初春「……はい」

ああ、どうしてこうなってしまったのでしょうか。
佐天さんと一緒に学園都市を征服することになるなんて……。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/21(土) 11:09:42.58 ID:4acUqOqH0<> メルブラでいう遠野家地下ルートですね。
タタリの影響で佐天さんの思い通りに世界が動きます。
てか時間操作ってヤバくね?
これはスカラー操作になるのかな?時間をベクトルとして見てその量を操作する感じ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/21(土) 11:31:49.91 ID:WzzVlwgk0<> つまりあれか。
サテンさんはそげぶされてLv0に逆戻りというしょっぱいエンディングが約束されているのか

>てか時間操作ってヤバくね?
ドラの時門って、人類が持ってちゃダメな代物だよね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/05/22(日) 23:40:12.37 ID:ZZEO4G+I0<> 乙です

新たに誕生した都市伝説って佐天さんが関係してるのか
面白そう <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:24:02.49 ID:cHGjgLc00<> とある工事現場――。

御坂「出てきなさい、卑怯者!」

爆発音を聞きつけてそこへやってきた白井は、
どこにいるかわからない相手に、辺りに響く大きめの声で語りかけている御坂の姿を見つける。

結標「今日はずいぶんと焦っているようね。そんなに残骸を組みなおされるのが怖い?
  それとも実験を再開される方、かしらね」

御坂の呼びかけに応え、姿を現したのはレベル4の空間転移能力者、結標淡希こと座標移動。
このとき白井は、彼女のことを初春に調べさせ名前をはじめとしていくつかの情報を得ていた。

結標「あんなの放っておけばいいじゃない、元々そのために作られたんだし」

御坂「あんた、本気で言ってんの!?」

結標の物言いに怒りをあらわにする御坂は、八つ当たりのように空気中へ電撃を放出している。

結標「ただ、今私があなたに追われる理由はないと思うわ。だって私は残骸を持っていないもの」

御坂「そんな見え透いた嘘、誰が信じるものですか!」

結標「本当のことなんだけどねぇ。あなた、人の話を聞かないってよく言われるでしょ?」

御坂「黙りなさい!」

結標を一喝する声に呼応して、御坂から再び電撃が放出される。

御坂「私はムカついてる。頭の血管がブチ切れそうなくらいムカついてるわ!
  あの馬鹿、私が気づかないとでも思ったのかしら、ドア越しの声を聞いただけでもあんなに……、あんなにひどい」

白井(お姉さま……)

御坂は気づいていたのだ。
一度、怪我の応急処置をするために寮に戻ったとき、ドア越しに交わした会話。
たったそれだけのことで、白井の痛み、苦しみを察していた。
<>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:25:21.94 ID:cHGjgLc00<> 御坂「ええ、私はムカついてるわよ。完璧すぎて馬鹿馬鹿しい後輩と、目の前のクズと。
  何よりこの状況を作り出した私自身にねー!!」

結標「甘ったるいほどに優しいのね。自分も被害者だって嘆いていれば戦わないでも済んだのに。
  なんにせよ私はここで捕まるわけにはいかない。どんな手を使ってもでもね」

御坂「逃げ切れると思う。あんたの手の内は、もうお見通しなのよ!」

御坂は狙いをつけやすいよう右手を振り上げて電撃を放つ体勢をとる。
当たれば一瞬で意識を刈り取れるように調整されたその電撃だが、
それが放たれる前に結標は軍用警防を軽く振ると目の前に何人かの人間を座標移動させる。

御坂「そんなスッカスカな盾で!」

結標「さて、問題。この中に関係ない一般人は何人混じっているでしょうか?」

御坂「ッ!」

直前まで座標移動で現れた人間もまとめて電撃を叩き込むつもりだったが、
『関係ない一般人』が混じっている、そう可能性を示唆されただけで手が止まってしまう。
どさり、と壁にされた人間たちが地面に落ちる。
その時には結標はすでに自身を座標移動して姿をくらました後だった。
残されたのは、悔しそうに歯噛みする御坂美琴ただ一人だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:25:48.61 ID:cHGjgLc00<> 白井(どうやらここから先は私の出番のようです)

テレポーターを追えるのはテレポーターだけ。
能力が似通っているということは自分だけの現実(パーソナルリアリティ)、果ては思考パターンも似通っているということ。
もし自分が同じ立場であればどこへ移動するのか。

白井(さぁいきますわよ白井黒子。必ず帰ってくるために。戦場の一番奥へと)

おおよその当たりをつけそこへ移動するための演算を開始する。
ゆっくりと立ち上がり、今一度、自分を思ってくれる優しい姉の姿を目に焼き付けようとそっと覗き込む。

カランカラン。

白井「あら?」

その音は足元にあった空き缶が転がった音。
どうやら足をぶつけてしまったのが原因らしい。

御坂「そこかあああアアアァァ!!!」

空き缶の音に過敏に反応した御坂は振り向きざまに電撃を放つ。

白井「ぇ……」

白井が隠れていたのは薄い鉄製の壁一枚のみ。
鉄は電気を通すため……。

白井「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、お゙お゙お゙ね゙え゙さ ま゙あ゙あ゙あ゙!!」

見事通電。

御坂「ちょ、その声はまさか……、黒子おおぉ!?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:27:09.05 ID:cHGjgLc00<> デパートのレストランの窓から向かいの道路を覗き込む一つの影。

結標「どうやら見当違いの方へ向かったようね」

結標は座標移動で逃げ込んだその場所から、そっと周囲を伺っていたが御坂の姿は見当たらない。

結標「私自身はテレポートしないと考えてたみたいだけど、残念だったわね」

結標は二年前にカリキュラムにおいて演算ミスから大怪我を負ったことがある。
そのことがトラウマとなり今でも自分自身に能力を使うことを躊躇う傾向があった。
軍用警棒を振っているのも自分だけの現実をより強固なものにし、補うためなのだ。
しかしながら、自身を座標移動することができないわけではないため、このように逃げることも不可能ではない。
ただ、その弊害として軽い吐き気を覚え連続で使用すれば確実に嘔吐する自信があると、結標本人は自負している。

結標「とにもかくにも、残骸を見つけ出さないとね……」

結標は外部の協力者に対し、こう報告していた。
『私の存在に気づいた風紀委員のテレポーターが、私に能力で奪われる前にあらぬ所へ飛ばしてしまった』、と。
悪いのは元々残骸を運んでいた奴らで自身には非はないという言い訳に、協力者は若干訝しんでいたが
下っ端連中を使いどうにか見つけるからそれまでは身体を休めておけとの指示が受けていた。
結標はその指示に従い適当な仮宿を探して徒歩での移動を開始する。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:28:19.60 ID:cHGjgLc00<> 翌日、昼――。

初春と佐天の二人は、二人の通う中学校の屋上で昼食を食べていた。

初春「佐天さん、本気でやるんですか?」

佐天「もち!」

初春「うーん、やっぱりやめた方……」

佐天「だって、向こうはもう動き出してるんでしょ?」

初春「うっ、えぇ……はい」ショボン

佐天「昨日の今日だって言うのに見つかるの早すぎでしょ」ハァ

初春「猟犬部隊(ハウンドドッグ)とかいうのがすでに動いてるらしくて、今日の放課後にでも襲ってくるかと」

佐天「そう考えると、暢気に学校なんかきてていいのかなぁ、なんて思うよね」

初春「この日常も今日で終わりなんですねぇ」シミジミ

佐天「隙アリ! 初春のクリームパン一口もーらい」パクッ

初春「あー、一口って半分くらいなくなってるじゃないですかー、ひどいですよ佐天さーん」

佐天「お詫びと言っては何だけど、世界を征服した暁には世界の半分をくれてやろう」

初春「世界!? 学園都市で終わりじゃないんですか?!」エッ!?

佐天「やだなぁ、冗談じゃん初春。でも、学園都市の次は世界ってのも面白そうだよね」ウフフ

初春「そういうのなんていうか知ってますか? 取らぬ狸の皮算用って言うんですよ」シラー

キーンコーンカーン……

佐天「お昼も終わりかぁ。残り半日の学生生活、満喫するとしますかー」ヨッシ

初春「やっぱり不安ですー」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:29:01.61 ID:cHGjgLc00<> さてさて、昨晩とんでもない宣言をした佐天さんでしたが、
冗談でもなんでもなく本気で学園都市の征服を行うつもりみたいです。
かくいう私も共犯者として、すでにいろいろと準備をさせられて……、とほほ。
ただ、準備と言っても樹形図の設計者の残骸をパソコンと接続して、徹夜でプログラムを組んだだけ。
確かに佐天さんの言う方法なら学園都市を征服することも不可能じゃないと思います。
でも、都市征服って……厨二病は想像の中だから楽しいのであって現実でやるのはさすがに怖いです。
できるものなら残骸なんて郵送(代引き)で学園都市上層部に送りつけてなかったことにしたいんですが、
猟犬部隊さんは襲ってくるんでしょうねー、しくしく。
Dead or Conquer.
死ぬか、征服するかだなんて……、私ってば不幸ですうぅぅ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 06:40:37.29 ID:cHGjgLc00<> 御坂白井ペア、結標、猟犬部隊、初春佐天ペア
四者四様の戦いが間もなく始まる!かもね? <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/23(月) 07:07:06.90 ID:cHGjgLc00<> 四者四様ってなんだよ・・・四つどもえだろ普通orz <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/05/23(月) 15:59:13.02 ID:d7VGUqsSo<> 超おつ

佐天さんが絡むとかギャグにしか見えてこないww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/23(月) 18:10:56.56 ID:hAm7OKcn0<> メルブラ的にには佐天さんが琥珀の位置にいるんだろうけど
じゃあうぃーばるが翡翠の位置にいるのかというと、むしろもう一人の琥珀に見えて如何ともし難い。
そう思って>>436とか見ると、あら不思議ww
<>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 01:03:32.15 ID:ywbmnuto0<> 放課後、校門――。

佐天「この校門を出た瞬間から私たちの非日常が始まるのね……」ウフフ

初春「うー、佐天さん楽しんでませんか? 捕まったら殺されるかもしれないんですよ?」ワカッテマス?

佐天「うーん、確かにそうなんだけどさー。なんていうかまるでアニメや漫画の主人公みたいじゃない?」

初春「捕まったら物語冒頭に出てくるようなただの都市伝説の一説で終わっちゃいますよぅ」メソメソ

佐天「初春はネガティブだなぁ、もう後戻りできないんだし諦めてポジティブにいこうよ!」

初春「せめてもう少し緊張感持って下さいよ……」

佐天「わかったわかった、さぁ行くよ初春ー」テクテク

初春「ぜんぜんわかってないじゃないですかー」トテテ

ゴロゴロゴロ……

――――――――

デニス「こちらデニス、対象が校門を出た。残骸を持って風紀委員の詰所へ向かっている模様」

ナンシー『こちらナンシー、追跡して人通りの少ないA地点で路地裏へ追い込め』

デニス「了解」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 01:04:47.93 ID:ywbmnuto0<> ゴロゴロゴロ……

初春「……」カチャカチャ

佐天「……」カチャカチャ

――――――――

デニス「なぁマイク、あいつらずっと携帯いじっててまったく会話しねぇんだ」

マイク「今時の中学生なんてそんなもんじゃないのか。それよりもうすぐポイントに到達するぞ」

デニス「あぁ、わかってる」

――――――――

from: 初春飾利
to: 佐天涙子
sub: 絶対振り向かないで下さいね

追手が二人います。恐らく猟犬部隊です。


from: 佐天涙子
to: 初春飾利
sub: Re:絶対振り向かないで下さいね

んじゃそこの路地裏にでもはいろっか。
P.S.サブタイトルって前振り?


from: 初春飾利
to: 佐天涙子
sub: Re:Re:絶対振り向かないで下さいね

わかりました(/−T)シクシク
あと振りじゃありませんからね! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 01:06:54.58 ID:ywbmnuto0<> マイク「なっ!? こちらマイク、対象がA地点の一つ手前の路地裏へ入った」

ナンシー『予定とは異なるが用は一目につかなければいい。捕縛後D地点へ移動しろ。
  無能力者の中学生二人に手こずる事は許されないぞ』

マイク「了解した。ヒュー、JC相手とかお兄さんテンション上がっちゃうよー」フヒヒ

デニス「落ち着けよロリコン、もし逃がしたら木原さんにぶっ殺されるんだぞ」

マイク「大丈夫、問題ない」キリッ

デニス「ほんとかよ……。行くぞ」

――――――――

マイク「お嬢ちゃんたち、こんなとこ歩いてるとスキルアウトに狙われちゃうよ」

二人に声をかけたのは猟犬部隊のマイクと呼ばれていた男だ。
その手には小型の拳銃のようなものが握られていて照準はすでに初春に合わせられている。
その隣には同じく猟犬部隊のデニスと呼ばれていた男が、マイクと同じものを佐天に向けている。
声をかけられた佐天と初春は、ぴくっと肩を震わせそっと後ろを振り向く。
足が止まっているその隙に猟犬部隊の二人はトリガーを引く。
小型拳銃から勢いよく発射されたのは銀色に光る細い針、
これは対象に突き刺さると電撃が流れる拳銃型のスタンガンなのだ。
対象との距離は僅かに5メートル足らず、使い慣れたその武器が目標を逸れることはない。
発射された針は二人の首筋に目掛け真っ直ぐに飛んでいく。
しかし、その針は二人を目前にして何かに弾かれ落下する。

マイク「なっ!?」

思わぬ出来事に目を剥く二人。
マイクは何が起こったのか理解できず驚愕している。
同じく言葉もなく驚愕しているデニスだが、彼が驚いたのは針が弾かれたことにではない。

デニス(この状況で笑ってやがる、だと……?)

振り向いた無能力者の中学生二人――、
暗い路地裏で誰かもわからない相手に声をかけられたというのに彼女らは口元を歪め笑っていたのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 01:08:19.88 ID:ywbmnuto0<> デニス「くそっ!」

咄嗟に再びトリガーを引くが、先ほどと同じように発射された針は何かに弾かれた後重力に引かれ落下する。

マイク「無能力者じゃなかったのかよ!?」

事前に与えられていた情報と異なる今の状況に、怒りの声をあげる。
初春は右手を残骸の取っ手から手を離し呆然と立ち尽くす猟犬部隊に向けた後、左手で携帯のボタンを押す。
すると、初春の右手からは電撃が放出され猟犬部隊の二人を襲う。

マイク「ぐああぁぁ」

デニス「うぐおおぉ」

猟犬部隊は短い悲鳴をあげた後、どさりと倒れ完全に沈黙した。

佐天「初春、ちょっとやりすぎなんじゃないの?」ウヒョー

初春「電流は低めに抑えましたから、大丈夫ですよ」タブン

佐天「んー、まいっか。ふははは、無能力者をなめるからこうなるのだー」ヤー

初春「超能力者が何言ってるんですか、まったくもう。
  ……この先にスキルアウトが溜まり場にしてる廃工場がありますからそこへ行きましょう」トテテ

佐天「りょーかーい」テクテク

ゴロゴロゴロ…… <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 01:08:58.24 ID:ywbmnuto0<> ――――――――

結標淡希は人気もない暗がりの路地裏を足早に歩いていた。
彼女は協力者からの連絡を受けとある廃工場に向かっているのだ。
情報によれば風紀委員の中学生が残骸を拾ったらしく、友人とともにそれを持って風紀委員の詰所に移動する途中、
学園都市の暗部組織に襲われその中学生たちは件の廃工場へ逃げ込んだという。

結標「無能力者だっていうし、とっくに捕まって残骸も回収されてそうだけど……」

なんの力も持たないただの中学生が暗部組織に狙われて無事なはずがない。
その中学生たちがどれだけ時間稼ぎをできるかはわからないが、いまだ立てこもっているのが理想。
最悪のケースは残骸は持ちされれ何の痕跡も残されていないことだ。
いくつかの可能性を考慮しながら歩き続けると路地裏から抜けひらけた場所に出てくる。

結標「ハァ、手遅れだったみたいね」

同時に廃工場が目に飛び込んできたが思わず落胆の声をあげる。
その理由は廃工場の扉が大きく開かれていたからに他ならない。

結標「まだ暖かい死体でも残ってるといいんだけど」

廃工場の扉が開いていると言うことは、暗部組織が中へと進入してしまったと言うこと。
まともに対峙すればただの中学生など拳銃の一発で沈黙させられてしまっていることだろう。
できるだけ多くの情報が残されていることを期待してその工場の中へと足を運ぶ結標だったが、
目の前に広がっていた光景に思わず言葉を失う。

結標「……これは、一体?」

そこにあったのは、倒れた人、人、人……。
恐らくは暗部組織の一員と思われる彼らがなぜこんなところで倒れているのか。
予想外の出来事で硬直し、結標はその場に呆然と立ち尽くす。

初春「あれ? もしかして結標淡希さんですか?」

結標「ッ!?」

突如かけられた声に完全に脱力していた結標はハッとして我に返る。
咄嗟に手にしていた軍用警棒構えて声のした方へと意識を向けると同時に
周囲にある座標移動でテレポートさせられそうなものを視界の端へ押さえておく。

初春「お待ちしてました。けど、思ったより早かったですね」

廃棄された工場の中には何もない。
声の主はその工場の奥の方に友人と思われる黒髪の少女とともに立っていた。

結標(ぇ、何あの頭……)

彼女を見た瞬間、結標の脳裏には某国の鉢植えから人の頭が生えた某ゲームが過ぎったという。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 01:15:38.82 ID:ywbmnuto0<> 噛ませ犬部隊(ハウンドドッグ)、撃沈。
弱腰なように見せて結局ノリノリな黒春ちゃん。
っていうかこの子発電能力者でしたっけ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/05/25(水) 02:36:56.16 ID:LU/hBsvbo<> 初春の能力は「定温保存(サーマルハンド)」のレベル1
『持っているものの温度を一定に保つ』って設定だけどかまちー的に何があるか分からない件 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/25(水) 07:33:50.54 ID:ttvWmEYIO<> 地下ルートかw
という事はG的なのが出るのか、胸熱だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/05/25(水) 11:18:00.25 ID:m+pb+tq7o<> >>447
普通に考えれば分子運動関係なんだろうが
どんなとんでもサイエンスが飛び出すことやら <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/25(水) 17:27:47.41 ID:ywbmnuto0<> 終わった後にsage進行してるのに結構見てる人いるのね、嬉しい限り
今、上で言ってた絶対能力進化のプロットとまどかさくらの冒頭書いてます
んで、前者がR-18になりそうな感じで、それってどうなのかなって思ってるんだけど、ぶっちゃけどう思う?
それとCCさくらの設定をアニメにするか原作にするかで悩んでるのよ
漫画だとカードの総数が19枚、アニメだと映画含んで53枚でどっちのが馴染み易いだろう?
アニメ限定のカードでまどかに関係しそうなものっていうとタイムとかリターンなんかがある <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/25(水) 23:21:13.52 ID:PYTXXG3Z0<> 一時的とはいえ、ねじりゴムひもで戦闘ロボット運用できるような
トンデモ世界化しちゃってるんだろうしなあ
<>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:32:16.83 ID:2TFYHFVz0<> 結標(いやいや、そんなこと考えてる場合じゃないでしょ)

一瞬関係のないことに意識を奪われそうになったが自身が置かれている異様な状況を改めて把握しようとする。
工場の内部はおよそ20m×16mの敷地に天井までの距離が5mぐらい。
空間移動能力を持つ彼女にとって空間把握は呼吸をするぐらい簡単なこと。
両目でしかと目視さえできればこの程度の体積は10cmの誤差もないことだろう。
そしてその床に散らばるのは軍隊を連想させる特殊な服に身を包んだ、意識を失っているであろう人間たち。
ぴくりとも動かないそれらが生きているのかさえわからない。

結標(こいつらは暗部の人間でしょうけど……、それが17人も倒れてるなんて)

それにこちらの名前を知られているというは非常にまずい。
おそらくは名前だけでなく結標の能力や強度、下手をすればトラウマのことも知られていることだろう。

結標「無能力者が襲われてるって聞いて助けにきてあげたんだけど、襲われたのはこの人たちの方なのかしら?」

数を数えるついでにそれぞれの服の状態を確認しつつ、それについての答えを少女たちへ問いかける。
もちろん明確な回答を期待しているわけではない。
これは状況を分析するためのただの時間稼ぎだ。

初春「襲われたのは紛れもなく私たちの方ですよ、結標さん。
  そしてこの人たちに対して私たちは何の能力も使用していません」

結標「そうなの? じゃあこの人たちは仲間内で同士討ちでもしたのかしら?」

結標(焼け焦げたような跡、壁に何かを叩きつけたような人型の凹み、鋭利なもので切り裂いた様な跡もあるわね。
  何が、『何の能力も使用していない』よ。恐らくはどちらかが発火能力、もう一人は空力操作かしらね)

初春「さぁ? それはどうでしょうか?」

結標(何にせよ、真正面から戦う必要はないわね。残骸はあっちのガーデニング娘が持ってる。
  それを私の手元に座標移動して私自身も座標移動すればこの子たちは追ってこられない……)

佐天「それより、私たち結標さんに聞きたいことあるんですよ」

結標「残念だけど私急いでるのよ。悪いけど失礼させてもらうわ」

結標(残骸を、座標移動ッ!)クイッ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:33:30.41 ID:2TFYHFVz0<> 結標は軍用警棒をくるっと回して残骸を手元へ座標移動させようとする。
完了したら同時に続けて自身を座標移動するために予め気構えておく。

ヒュン

それは空間移動で現れたものが空気を切り裂く音。

結標(さぁ、掴んで……。ぇ?)

結標は残骸の入ったアタッシュケースの取っ手を掴もうとその手を伸ばしたがそこには何もありはしない。

結標(どういうこと……。演算をミスしたとでもいうの……?)

演算ミス。その単語が一瞬頭を過ぎっただけでトラウマが刺激され全身を嫌な汗が伝う。

初春「どうかしましたか? 『空気』なんか座標移動して」クスクス

結標の立つ位置とは対極の壁際に立つ少女はくすくすと笑う。

結標(空気? 私が今座標移動したのは空気だって言うの?)

今の状況に頭が追いついてこない。
だが、少女の含みのある口ぶりに結標は直感で何かがあることを感じ取っていた。
少女たちは依然としてくすくすと笑っているだけだが、気味が悪いと言ったらない。

結標(黒髪の方が耳打ちして……、爆笑!? こっち指差して二人で爆笑するってどういうことよ!?)

そこはかとない悪意も感じ取った結標は、爆笑する二人の少女に目を向けたまま自身のブレザーのポケットに意識を移す。
そこに入っているのは2本のダーツの矢。

結標(何かしたっていうのならまずはその元凶を絶ちましょうか。あと笑われたのも腹立つし)

ポケットには手を触れず目標へ向けてダーツの矢を座標移動する。

結標(その可愛い顔を苦痛に歪めなさい!) <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:34:59.83 ID:2TFYHFVz0<> ポケットの中からダーツの矢が1本消失し、次に初春の前方約2mほどの空中に現れカランと床を転がるダーツの矢。

結標「なっ!?」

思わず驚きが声に出る。
結標は自身を除く座標移動には絶対的な自信がある。
肩口を狙った今の攻撃が数cmずれて床を転がるならまだわかる。
だが、その誤差が2mは考えられない。
これは何かされていることの確定的な裏づけとも言える事象なのだ。

佐天「何ですか? プレゼントですか?」プププ

結標(あっちの黒髪の方ほんと腹立つわね……。それはそうとあの二人は発火能力と空力操作のはずよ。
  ならこれは発火能力の応用で蜃気楼のようなものと考えるのが妥当かしら)

怒りで一瞬我を忘れそうになるがギリギリで思いとどまって状況の分析を行う。
結標は焼け焦げた跡を発火能力と切り裂かれた跡からカマイタチのような空力操作、
壁の凹みは空力操作で叩きつけたか、発火能力で爆発でも起こしたものと考えている。
そこから、残骸とダーツの座標移動の失敗により目標をずらされているのだと断定し、推測を立てた。
だがそれは残念ながら間違いである。
加えて正しい解は敵対する少女の口から明かされることになる。

初春「偏光能力(トリックアート)っていうんですよ」

結標「……ハァ?」

偏光能力――、それは能力の名称なのだろう。
だがそれはおかしい。
この状況で考えうる能力からかけ離れているのだ。

結標「それがあなたの能力だっていうの? ならこいつらは誰にやられたって言うのかしら?
  外傷と辺りの様子から焼けた跡に切り裂かれた跡、それに強い力で叩きつけられたような跡もあるわね。
  もしあなたの能力が本当にその偏光能力だとしたら、もう一人のあなたがこれを全部やったっていうのかしらね?」

イライラを吐き出すように早口でまくし立てる。
そんなことは不可能なはずだと、そんな嘘に騙されはしないと確固たる意思を示す。

佐天「私? 私は手を出してないですよ。全部初春がやりましたー」

結標「な、にを言って……!」

まるで教師にいたずらを咎められた生徒が友人にその罪を擦り付けるような言い回しにさらなる苛立ちを覚える。
さっきから会話の内容にまったくと言っていいほど整合性が感じられないのだ。
もうこれ以上の会話は無駄だと感じ始めていた結標はこの少女たちをどう殺すかを考え始めていた。
偏光能力にしろ発火能力による蜃気楼にしろ、数mの誤差が関の山、
ならばその誤差の最大範囲にありったけの物量を座標移動させてやればいい。
残骸と移動させるものが重ならないように地面から1mほど離した場所に座標移動させれば何一つ障害にはなりえない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:37:12.49 ID:2TFYHFVz0<> 初春「その倒れてる人たちですけど、そっちの三人には発火能力を使いました」

結標は耳を貸そうとしない。
また何か言い始めたがそんなことより何をどの位置へ座標移動するかを考えている。

初春「そっちの四人は窒素爆槍(ボンバーランス)、そっちの六人はまとめて電撃能力でやっちゃいました」

偏光能力に加えて、これで4つ。
一人に一つの能力しか得ることができないことは大前提だというのに、馬鹿な話だ。
今この場にいるのはたった二人、辺りに三人目が隠れることができそうな場所はどこにもない。

初春「そっちの二人は空力操作ですね、こんな風に」

ガーデニング娘が携帯を突き出し、何か操作したかと思うと辺りに突風が吹き始める。
そこで結標の思考が停止した。
外と繋がる出入り口は結標が入ってきた大きなスライド式の扉だけだ。
そしてその扉は結標の背後、だというのにこの突風は少女の方から吹いているではないか。
だが、まだこれだけなら偏光能力というのが二人の少女のどちらかの能力で、もう一人が空力操作だと考えられたかもしれない。
実際に目にしたのはまだこの二つだけなのだから。

だがしかし、

初春「そして残りの二人は空間移動で3mぐらいの高さから落としてあげました。……こんな風に」

いつの間にかその少女の手に握られていたダーツの矢。
それが手の平から跡形も消えてしまう。
そして結標の右肩を襲う激痛。

結標「ああぁっ……!?」

思わず悲鳴を上げて肩膝をつく。
見れば先ほどまで少女が握っていたダーツの矢が右肩に突き刺さってるではないか。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:37:50.64 ID:2TFYHFVz0<> 結標「あなた一体……ッ!」

結標は突き刺さったダーツの矢を引き抜くと少女の方をキッとにらみつける。

初春「すごいでしょう? これ、『私の能力じゃない』んですよ?」

結標はその一言で完全にブチ切れた。

結標「っっいい加減にしなさいよアンタッ! 人にこんなもん突き刺しといて自分の力じゃないですって?
  冗談も休み休み言いなさいよ!」

佐天「先に突き刺そうとしたのは自分の方なのに、刺されたらブチ切れるってどうなのよ」プススー

結標「黙りなさい!」

初春「佐天さん、あんまり挑発しちゃダメですよ。私たちは結標さんに聞かなきゃいけないことがあるんですから」

佐天「あはは、ごめんごめん」

結標「くっ、……いいわ、聞きたいことあるんでしょう? 言ってみなさいよ」

それに答えるかどうかは別だけど、と付け加える。

初春「私たちが聞きたいのは一つだけ。……総括理事長のいらっしゃる場所への転移座標、
  もちろん知ってますよね? 『案内人』さん」

それを聞いたときの驚きはもはや言葉にすらならなかった。
ただの中学生が何故そのことを知っている? 何故そんなことを知りたがる?
何故、何故、何故何故何故……。

結標「あなたたち……、そんなこと聞いてどうしようって言うのよ」

佐天「もちろん決まってるじゃないですか。『学園都市をのっとる』んですよ!」

結標「……ぷっ、あははははは!! あなた本気で言ってるの?」

佐天「私たちには力がある! それを可能にするだけの力が!」

結標「このっ……」

突拍子もない発言に思わずこらえきれず噴出したが、黒髪の少女の言葉にカッとなる。
意識は再びポケットの中へ。
そこには残ったもう一本のダーツの矢。

結標「何が『力』よ、どういうカラクリか知らないけど、超能力なんかであの化物に立ち向かえるわけないでしょう!」

結標が実際にそのような行動を起こそうと思ったことなど一度もない。
ただ、一度だけ対峙し目を見たことがある。
多くは語らないが、その時に『超能力なんかでは勝ち目が微塵もない』と本能のようなものでそう感じ取った。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:39:53.00 ID:2TFYHFVz0<> 結標の怒りは限界に来ていた。
中学生なんかに小馬鹿にされ、大能力者としてプライドを傷つけられた。
全てをぶち壊してしまい衝動に駆られ、ダーツの矢を黒髪の少女の頭が重なる位置へと座標移動させる。
それに対し、その少女は唐突に半歩後ろへ下がったではないか。
直後、ダーツの矢がさっきまで少女の頭があった場所へ微塵の誤差もなく現れる。

結標「かわした……? そんなことできるはずが……」

結標が移動させたのは佐天からは見えないポケットの中のダーツの矢だ。
それをいつ移動させるかもわからないのにまるで見えていたかのようにかわされるなんて考えられなかった。

佐天「時が見えるよ、初春」フフフ

初春「なんていうか、ほんと反則ですねその能力」

目を背けたくなるような現実に両膝を突いて腰を落とす結標を前に、
二人の少女たちは自分たちの会話に花を咲かしている。

結標(もう、何も考えたくない……)

佐天「ねー、もう諦めたのなら転移座標教えてくれませんか?」

結標(元々学園都市を裏切るつもりだったんだし、教えたっていいじゃない……)

佐天「おーい、聞いてますかー?」

結標「いいわ、あなたたちの好きにしなさいよ。転移座標は……」

全てを諦めたような表情の結標が、総括理事長のいる窓のないビルへの転移座標を口にしようとした時だった。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:40:54.39 ID:2TFYHFVz0<> ドゴオオオオオン!!

御坂「佐天さん! 初春さん!」

三人(と倒れた猟犬部隊たち)のいた廃工場の壁に、轟音とともに大きな横穴が空けられる。
そしてその直後に聞こえてきた少女の声。

白井「お姉さま! もし初春と佐天さんがいらっしゃたらどうするおつもりで……」

さらに追って聞こえてくる鈴の音のような少女の声。
破壊によってもたらされた白煙が晴れて、横穴を抜けて姿を現す二人の影。
学園都市の誇る超能力者、超電磁砲こと御坂美琴とそのパートナーの風紀委員、白井黒子である。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/27(金) 14:47:58.67 ID:2TFYHFVz0<> ぺろっ、この味は多才能力!?初春つええええ
てか、迷走が激しくなってきた、着地点がわかんぬら
言い忘れてたけど、風紀委員の詰所があるのはアニメ設定でとあるビルの一室です
原作だと初春の中学校にありますです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/27(金) 15:00:57.95 ID:RzuQgJXxo<> あわきんが抱きしめたくなっちまうくらい哀れだわww <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 12:29:40.79 ID:mWF4Ej+f0<> とある科学の一方通行と完全同名のスレが立ってるんだが・・・
やっぱこれはうちの読者ってことなんだろうか
酷似してるとかならまだしも一字一句違わないっていうのはやっぱそういうことなんだろうなぁorz
ちゃんと書くんで「書いて」とかVIPのノリでスレ立てするのはほんと勘弁して下さい、お願いします <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:14:59.10 ID:mWF4Ej+f0<> 初春「……」

佐天「……」

御坂「よかった、二人とも無事みたいね」ホッ

白井「私が携帯をもっと早く確認していればよかったのですが……、申し訳ないですの」

結標「白井黒子に、第三位……」

白井「結標、淡希!?」

御坂「なんですって!?」

結標「私もとことんついてないわね」ハァ

御坂「あんた、佐天さんと初春さんに何もしてないでしょうね」

結標「見ればわかるでしょう。ご覧の有様よ」

左手で右肩を押さえ、覇気のない受け答えする様は何とも言えない哀愁が漂っている。

白井「この倒れている妙な格好をした方々は一体……」

御坂「残骸を狙う他の組織と争って共倒れってとこかしら?
  おかげで佐天さんも初春さんもなんともなかったみたいね」チラリ

初春「……」

佐天「……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:16:02.27 ID:mWF4Ej+f0<> 結標「ふふ、おめでたいわね、あなたたち」クス

白井「何にせよ、あなたは警備員に突き出させて頂きますの」

風紀委員で支給されている手錠を取り出し、結標に近づく白井。

結標「もう何もかもどうでもよくなっちゃた。好きになさ、ぇ?」

ゴオォッ!

御坂「キャッ、目が……。何なのよこの突風!?」

白井「お姉さま! 結標淡希が!」アレヲ!

御坂「と、飛んでる……」ポカーン

結標「この風……、どういうつもりかしら、お花畑のお嬢ちゃん?」 ←空中

初春「……」

結標が視線を向けた先で、初春は携帯を持った左手を結標に向けて
まるでこの風を操っているような、そんな手の動きをしていた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:17:16.21 ID:mWF4Ej+f0<> 御坂「初春さんって空力操作だったの……?」ホェー

白井「そんなはずは……。確か、初春の能力は定温保存(サーマルハンド)、
  手で持っているものの温度を一定に保つ能力のはずですの」

佐天「結標さんには聞かなきゃならないことが残ってるんです。邪魔しないで下さい」

白井「佐天さん、何を言ってるんですのっ!?
  初春も、これがあなたの仕業だと言うのなら早く結標淡希を下ろしてくださいまし!」

初春「それはできません。佐天さんが言ったとおり結標さんには聞かなきゃいけないことがあるんです」

白井「聞かなきゃならないこと……? それは、一体……」ギリ

初春「白井さんに答える必要はありません」

白井「初春っっ!」

初春「結標さんは私たちが警備員に連行しておきますからお二人は帰ってもらえませんか?
  あぁ、手柄がほしいのなら一七七支部に連れて行きますけど」

結標「人のこと、物扱いしてくれちゃって」ギリリ ←空中

白井「初春……、一体どうしてしまったんですの?」ガクリ

初春「……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:18:20.13 ID:mWF4Ej+f0<> 御坂「黒子、言っても無駄よ」

白井「お姉さままで!」

御坂「二人がどういうつもりなのかわからないけど、残骸が関わってる以上引くわけにはいかないの」

白井「まさか、お姉さま」

御坂「張っ倒してでも言うことを聞いてもらうわ」ビリビリ

佐天「ふーん、やっぱり高レベルの能力者って傲慢なんですね」

御坂「今回ばっかりはなんと言われても引かないって決めてるの。例え友だちが相手でも、ね」ビリビリ

佐天「それ本当に友だちって言えるんですか?」プススー

初春「御坂さんって私たち以外に友達いなさそうですもんねー」クスクス

御坂「なっ……! ふ、ふふふ、いいわ二人とも。きついお仕置きが必要みたいね……」ワナワナ、ビリビリ

佐天「アハハハ、お仕置きだってさ初春っ」ハハッ

初春「怖いですねー、佐天さん」アロハ

ぷちん

御坂「レベル5舐めてんじゃねえぞクソがあああアアアァァ!」ピシャーン! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:18:52.23 ID:mWF4Ej+f0<> 怒りのボルテージが最高潮に達した御坂は、加減を忘れて強力な電撃を放つ。

白井「おおお、お姉さまぁあっ!?」アワワ

御坂「ハッ! つい怒りに我を忘れて……。初春さん! 佐天さん!」

佐天「ひゃー、あんなの食らってたら黒コゲになっちゃうよ」

初春「ですねー、ヒステリックな女性って嫌ですよねー」

御坂「ぇ」

白井「ぶ、無事なんですの?」

初春「お返しです!」カチ

バチバチッ

初春が携帯を操作した直後、突き出した右手から電撃が放たれる。

御坂「そんなっ!?」

白井「馬鹿なことがっ!?」

ピシャーン! <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:19:57.66 ID:mWF4Ej+f0<> 御坂「こんなものぉっ!」ビリビリ

電撃使いの御坂は放電して軽く相殺してみせる。しかし、

白井「ですの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」

御坂「黒子おおおお!!」

電撃を視認してから回避するなどまず不可能。
そんなことが可能なのは電撃使いか一部の能力者ぐらいである。

御坂「黒子! しっかりして、黒子!」

白井「お、おねぇ……」ガクリ

初春「心配しなくていいですよ、私は『御坂さんと違って』ちゃんと手加減しましたから」

佐天「初春やっさしィー!」バシッバシッ

初春「ちょ、ちょっと、佐天さん痛いですって」ケホケホ

御坂「なんなのよ……、結標を浮かせてる風といい今の電撃といい、わけわかんないわよ!」

初春「知りたいですか? この力の正体が」ウフフ

御坂「……」コクリ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:21:28.71 ID:mWF4Ej+f0<> 初春「いいでしょう、実は誰かに言いたくてうずうずしてたんですよ。
  この力、電撃も風もですがこれは人工的に作り出した超能力なんです」

御坂「は? 人工的にって、超能力自体が元々……」

初春「残骸……、つまり樹形図の設計者に演算させて行使する超能力、こう言えばわかりやすいですか?」

結標「まさか、嘘でしょう……!?」 ←空中

初春「樹形図の統計者の演算速度、記憶領域は人間の脳を上回ります。
  それならAIM拡散力場の情報と演算パターンを書庫(バンク)から拝借すれば、なんというかこの通りなわけです」

佐天「実際、超能力使ってるのは初春って言うより樹形図の統計者みたいなものってことですよ」フフン

御坂「あ、ありえないわそんなこと……」

佐天「ありえないって言われても、その目で見たんですから信じてもいいんじゃないですか?」

初春「徹夜でプログラム組むの大変だったんですよ、まったく」

−−−−−−−−

昨夜のこと――。

佐天「ねぇ、この樹形図の統計者ってどのくらいのすごいものなの?」

初春「ぶっちゃけ人間の脳よりもすごいですよ」

佐天「へー……、じゃあ超能力とかも使えるかな?」ピコーン!

初春「そんな馬鹿なこと……、いや可能かもしれません、そんな気がしてきました!」

佐天「やれる! 初春ならやれるよ!」

初春「私もそんな気がしてきました! 偶然にもうちのパソコンに接続できますしやってみましょう!」

明け方――。

初春「できましたー!」

佐天「さすが初春ー!」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:22:23.00 ID:mWF4Ej+f0<> 結標「可能だったんだわ……、人間以外が超能力を使うこと……」 ←空中

初春「能力にもよりますが今のところレベルは3〜4が限界なんですよね。
  プログラム次第でもしかしたらレベル5クラスかそれ以上も可能かもしれませんけど」

御坂「そ……ない」

佐天「はい?」

御坂「そんなの、絶対に認めない!!」バチバチバチ!

初春「無駄です、そんなチャチな電撃じゃ窒素装甲(オフェンスアーマー)の壁は破れませんよ!」

御坂「プログラム次第でレベル5かそれ以上? 私の努力を何だと思ってるのよ!!」ピシャーン!


佐天「うわー、なんか変なとこでスイッチ入っちゃったみたいだよ、初春」ワーォ

初春「でも、もし御坂さんが超電磁砲(レールガン)撃ってきたら窒素装甲じゃ防げませんよ?
  窒素装甲の強度は4ですし同時に使える能力は二つまでですからね」

結標「」 ←空中 ←2つ目

佐天「じゃあその前に私が御坂さんを倒さないとってことね」

初春「お願いします」

佐天「あいよ。安心してよ、初春に力は絶対使わせないから」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 22:24:07.90 ID:mWF4Ej+f0<> 若干投げやり+キャラ崩壊
ちょろっと御坂さんヒステリックすぎやしませんか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/28(土) 22:38:46.68 ID:VmQJM2jqo<> 樹形図の設計者、だったはずだがオリ設定だっけ? <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/05/28(土) 23:44:03.60 ID:mWF4Ej+f0<> ミスです。死にたいです。
途中から樹形図の「統計者」に変わってますが、全部「設計者」で脳内変換してもらえると助かります。
統計取ってどうすんだよ、ちくせう・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/28(土) 23:51:26.38 ID:VmQJM2jqo<> >>472なんか揚げ足とったみたいで申し訳ない… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/29(日) 17:59:18.35 ID:/oW1M5DH0<> Gレールガン登場フラグ!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/29(日) 22:20:01.24 ID:CjIBaGIIO<> Gレールガン想像して笑った <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/03(金) 00:06:04.12 ID:LX3NBIR50<> 御坂「機械なんかに簡単にレベル5越えられたらこっちはたまんないのよ!」バチバチピシャーン!

佐天「……じゃあ機械なんかじゃなく私と勝負しませんか?」ズズイ

御坂「なんですって?」ピク

佐天「御坂さんたちにはまだ言ってませんでしたよね。私実はレベル5の超能力者なんですよ?
  って言っても昨日なったばっかりなんですけど」

御坂「へー、おめでとう。それで序列は何位なのかしら?」

佐天「さぁ? 結構珍しい能力みたいで他と比べるのが難しいらしいんですよ。
  けど……、そうですね。今ここで御坂さんを倒せたら、私は実質二位ですよね?」

御坂「ぷっ……、あはははははは。本気で言ってるの? それ」

佐天「もちろん本気ですよ」

御坂「いいわ、やってやろうじゃない。レベル5ってのが嘘か本当かは知らないけど
  佐天さんがそう言うんだったら私も本気でやらなきゃいけないわよね。何せ相手もレベル5なんだし」

佐天「ええ、手なんか抜いたら御坂さんボッコボコですよ」

御坂「(ぶちっ!)……どいつもこいつも、第三位のこの私をイラつかせてんじゃないわよぉ!!」ババリバリッシュ!


初春「佐天さん……」

初春(三位の人を倒したらその人が三位です、二位じゃありませんよ……) <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/03(金) 00:08:11.94 ID:LX3NBIR50<> 御坂「とりあえず、自称レベル5の佐天さんのお手並み拝見といきましょうか」

御坂はそう宣言してから得意の電撃を、佐天に向かってノーモーションで放つ。
怒りに我を忘れつつある御坂の攻撃は手加減なしの文字通り一撃必殺の高圧電流が佐天を襲う。

佐天「遅すぎて話になりませんね」ヒョイ

御坂「なっ!?」

視覚してから回避行動など取れるはずもないその一撃が佐天に直撃する直前、
信じられないスピードで動き回避してしまったのだ。
ありえない、考えられないことだと御坂は目を白黒させている。
しかし、実のところ佐天は右方向へ『歩いて』移動したに過ぎなかった。
たったの二歩、足を右、左と動かしただけ。
それこそありえない話だが、佐天の能力がそれを可能にしていた。

佐天「時間加速(タイムアクセル)、それが私の手に入れた力の名前です」

御坂「たいむ、あくせる……?」

佐天「周囲の時間を加速させる力です。私は今の御坂さんの攻撃を歩いてかわしただけです。
  ただし、御坂さん過ごしている時間の20倍の早さで、ですが」

御坂「時間を操る超能力なんて聞いたことが……」

佐天「今、その目で確認したじゃないですか。なのに信じられないと? なら……」

そこで一度区切り、佐天は御坂に向かって足を一歩踏み出す。
そして次の瞬間、御坂が気付いた時には佐天は御坂の真後ろに立っていた。
遅れてゴオォと突風が巻き起こる。

佐天「御坂さん自身で体感してみますか? 通常の100万倍ぐらいの時間加速を」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/03(金) 00:11:50.84 ID:LX3NBIR50<> 20倍とかノリが界王拳かと思ったら速攻で100万とかインフレしたでござる
どっち書こう?とか聞いてた奴、まどかの方で投下し始めました
予告通りのスレタイですので興味がありましたらどうぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/06/03(金) 00:15:22.18 ID:loKoSKp/o<> 乙乙
しかし他人に100万倍とかできたら、速攻老衰死させれそうだなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/03(金) 00:29:09.67 ID:2dTKN1QT0<> 相対論とか天文学とかようけ知らんので詳しいことわからんのだが、
そもそも通常の(地球上の)時間って加速してんのかな?
重力とか速度とかの影響で時間の早さは変わるようだが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/06/03(金) 13:46:49.74 ID:D+ugXMKko<> 乙!
美琴の体に触れようとして感電してしまう佐天さんはまだですかー <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/06/04(土) 22:49:42.69 ID:aHCYqHOn0<> 御坂の頬を伝う一筋の冷や汗。
100万という桁外れな数字に驚きよりも先に恐怖と言う感情が降って湧く。

御坂「ぅ、うわあああああ!!」バチバチ

咄嗟に触れさせまいと四方八方に手当たり次第の電撃を放つ。

佐天「あはははは、御坂さんビビリ過ぎでしょー」ハハハ

その声は真正面から。
さっきまで背後にいたのに佐天は再び御坂の正面に立ち対峙していた。

御坂「はぁはぁ……。当然よ、一瞬でおばあさんにされたらたまらないわ!」

佐天「大丈夫ですよ。私の能力、人間に使うには致命的な欠陥があるんです。
  仮に100倍の早さで時間を加速させたとすれば、その人は1秒で100秒分の行動が可能です。
  まぁ、要するに反抗する人には使えないってことです」

御坂「なっ!? さっきのはただの脅しってわけ……。私がビビる様はさぞ滑稽だったでしょうね」ギリリ

佐天「おかしすぎてお腹がよじれそうでしたよ」ハイ

御坂「けど、それならそのことは黙っておくべきだったわね。
  私自身に使えないんならそんな能力これっぽっちも怖くないわ」

佐天「“敵”に弱点を教えてもらって勝った気ですか?
  レベル5ってやっぱり傲慢ですね、私はこんな風にならないようにしないと」フフン

御坂「御託はいいからかかってこいって言ってんのよッ!!」ピシャーン!

度重なる挑発を受けて、御坂は怒りに任せた超高圧電流を放つ。

佐天「無駄無駄ー!」

佐天に向かって一直線に飛んでいった電撃だったが、目標を目前にして右へと逸れてしまう。

御坂「ッ! もう一度!」

演算ミスによる操作ミスかと思い、再び電撃を放つ御坂だがやはり同じように逸れていく。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/04(土) 22:50:48.80 ID:aHCYqHOn0<> 佐天「はいはずれー」クスクス

御坂「佐天さん、あなたなのね……。今度は何をしたって言うのかしら」

佐天「えー、少しは自分で考えて下さいよー。御坂さんも“自称”レベル5なんですよねー?」

御坂「こ、んのおおおおおおおおお!!」

三度放たれる電撃。
今度は一直線に伸びる一本の電撃ではなく上、右、左とカーブを描いた三本の電撃。
しかし、今度も佐天を目前にして電撃はあらぬ方向へと逸れてしまう。

佐天「第三位程度じゃわからないかもしれませんねー。めんどくさいし、答え教えてあげますよ。
  これはですね、私の周囲の時間を加速させてるんですよ。
  電撃に限らず全ての現象は時間の流れの速い方へと流れていくんです。それで、」

御坂「知ったことかあああああああああアアアアアァァァ!!」チャリーン

怒声とともに御坂が取り出したのは一枚のコイン。
もう何も聞きたくなかった。何も知りたくなかった。
目の前の全てを、破壊しつくしてしまいたくて、己が二つ名を全力で放つ。

御坂「超電磁砲(レールガン)!!!」

ローレンツ力をによって音速を超えてはじき出されたコインは凄まじい破壊力を見せる。
何よりも常人が音速の攻撃に反応などできるはずもない。
だが――。

ゴオオオォォン!!

その音は真上から聞こえてきたものだ。
見上げれば廃工場の天井に大きな穴が開いている。

佐天「人の話は聞きましょうよ。言ったでしょう、全ての現象は時の流れに逆らえないって」

時の流れの前に超電磁砲も平等に歪んでしまった。
さっきの電撃と同じように逸らされてしまったのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/04(土) 22:51:59.34 ID:aHCYqHOn0<> 御坂「そんな……、私の超電磁砲が……」ガクガク

佐天「なんか拍子抜けだなぁ。学園都市、女性最強の超能力者がこの程度だったなんて。
  私、まだ本気の半分も出してませんよ? その気になればこんなことだって……」

佐天は落胆の声を漏らした後、両手を宙に向かって掲げる。
御坂はただその姿を茫然自失といった状態で眺めているだけだ。

佐天『時よ、進め』

たった一言。
佐天が呟いただけで突如として工場内が暗闇に包まれた。

御坂「っ!?」ビクッ

御坂は突然の暗転に息を飲み暗闇に恐怖する子どものように肩を震わせる。
時刻は6時前、夏至は過ぎたといってもまだまだ日は長く、
工場にはいくつもの窓がありさっきまではそこから赤みがかった日差しが差し込んできていたはずだ。
しかし、今はそれがなく光源と呼べるものがまったくといってなくなってしまっていた。

佐天「空を見てください」

暗闇の中で響き渡る声に、また大きく肩を震わせる。
恐る恐るといった感じで御坂は言われたとおり空を見上げる。
そして思わず眼を剥く光景を目にする。

御坂「星……?」

超電磁砲によって空けられた天井の大穴。
そこから差し込んでくる仄かな明かりは夜空に輝く星々のものだった。

佐天「太陽系の星の時間を加速させました。今は深夜0時ぐらいです」

世界は佐天を中心に回っている。
比喩でも錯覚でもなく御坂にはそれがこの世の真理とさえ思えていた。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/04(土) 22:55:15.96 ID:aHCYqHOn0<> ここまでsage進行しといてうっかり上げちまうとかマジ死にたいorz
本編で突然夜になった理由が判明しましたよっと
美琴の煽り耐性のなさは異常ってか、佐天さん煽りすぎだろwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/06/05(日) 01:27:43.54 ID:Creh8r7go<> 乙
全部が解決した後に仲直りできる気配が微塵もしない…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/06/05(日) 02:21:50.93 ID:IG3tegzao<> おつ
これ本編の裏だったのか

佐天さんまじ鬼畜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/06/05(日) 02:22:37.64 ID:IG3tegzao<> おつ
これ本編の裏だったのか

佐天さんまじ鬼畜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/05(日) 03:01:21.70 ID:dNxbWhOco<> なるほど、あれは一応伏線だったのか
でもなんでわざわざ夜にしたのかがまだ分からないな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/06/06(月) 02:15:29.54 ID:EKz7GFzVo<> 対象を経過をすっ飛ばしてある時間後の状態にするのではなく、対象は通常通りの時間を過ごすことになるのなら
地球早回しして人間を対象外にしたら、横Gとか風とかにぶっ飛ばされるか、建物や山に衝突しちゃうんじゃない? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 13:29:18.07 ID:KcKyLfyIO<> 三位を抜いたら二位になると思ってる佐天が、現象は時間の速度が早い云々言ってるのは違和感ありありだけど、裏ルートだから全部許せる。

中学生って煽り耐性ないよな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 21:20:07.14 ID:adJW0pWqo<> まあ何だかんだタタリが関係してるんだろう
と、思ったけど何がどう関係してるのかサッパリだわ <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/06/06(月) 21:58:40.31 ID:5AiwRAyP0<> >>489
そこまで深くは考えてません
ただのパフォーマンス、力を誇示したいだけの厨房ですって、マジで
>>490
地球の自転が5分遅れても大丈夫みたいだし、数時間進んだって平気なはず!(キリッ
>>492
タタリは噂を具現化させるだけでなく依代を操ったり物事を依代に都合が良いよう運ばせる力もあります
原作設定を完全に反映させてるわけじゃないですが、要するにそういうことなわけです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/07(火) 01:52:13.27 ID:6heFq7Kno<> 所詮この世の全ての疑問には「熱膨張って知ってるか?」で答えられる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)<>saga sage<>2011/06/07(火) 17:24:17.09 ID:uLjDgvwlo<> >自転パンチ&熱膨張
もう許してやれよww言い出したらきりがないし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/07(火) 19:48:03.04 ID:qnr4EX00o<> 物書きで飯食ってる以上
ハッタリにしてももうちょい上手くやれんのかと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/11(土) 01:08:58.91 ID:/b2mfeJIO<> まぁゆで理論とか民明書房みたいなもんだ。かまちーだからで許してやれよ <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:45:44.69 ID:8zN+MrmJ0<> 佐天「その気になればこんな大掛かりなこともできますし……」

御坂「ぅ……あぁ……」ガタガタ

佐天「こうやって小さく円を描くように能力を使えば、手の平の上で竜巻を作ることもできます」ビュオオォ

御坂(無理! むりムリ、無理よこんな化物……、勝てっこない……)ガクガク

佐天「さっきまでの威勢はどうしたんですかー?」ビュゥン

佐天は小首をかしげながら手の平の竜巻を放り投げる。
小規模なそれは人を巻き上げるほどではないにしろ、辺りに強風を撒き散らせる。

御坂「きゃああっ」

かつて第一位の能力者に対して味わった絶望という感情。
同じレベル5でありながらなぜこんなにも差があるのか――。

佐天「あはははは。御坂さんはいつもこんな気持ちで能力を振るってたんですねー。
  楽しいです、とっても楽しいですよ、弱いものいじめって!」

天を仰ぎ笑いながらくるくると回る佐天。
もはや彼女を止めることができるものなどこの場には存在し得ないのか……。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:46:22.72 ID:8zN+MrmJ0<> 「お姉さまは、そんなこと、絶対にしたりしませんの……」

佐天「はい?」

擦れるような声に笑い声が中断される。

白井「お姉さまは、嬉々として弱いものいじめをするような方では、ございませんの!」

御坂「く、黒子……?」

佐天「白井さんてば、もう目が覚めたんですか?」

初春「御坂さんの電撃で電撃慣れしてたからでしょうかね、あの威力なら数時間は目覚めないと思ったんですけど」

白井「風紀委員として、道を踏み外そうとしている友人を放って寝てなんかいられませんもの」

佐天「そう言われてもですね、他に選択肢がなかったんですから仕方ないじゃないですか。
  正直、何の事情もわかってない白井さんに口出しされたくないですよ」

白井「なら事情を話してくださればいいじゃないですの!」

佐天「話せるわけないでしょう!」

白井「どうしてですの!」

佐天「話したら……! 白井さんたちが、危険な目に合うから……」

白井「!!」

御坂「佐天さん、あなた……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:47:41.71 ID:8zN+MrmJ0<> 佐天「私が馬鹿だったから……、パンドラの箱を開けてしまったから……、
  学園都市の暗部に狙われて初春も巻き込んじゃって……。
  学園都市を支配するなんて厨二臭い計画、失敗したら間違いなく死んじゃいますよ……。
  そんなことにこれ以上大事な友達を、巻き込めるわけないじゃないですかっ!」

白井「佐天さん……」

御坂「私たちのことを思って……」

佐天「……」

初春「……」

結標「はいはいはい、青臭い茶番をどうもありがとう、反吐が出るわ糞餓鬼ども」 ←空中

初春「結標さんでしたっけ? いい話の途中なんですからもう少し空気読んでもらえますか?」

結標「お断りよ。もううんざり、何もかも……。そう何もかもがうんざりなのよ!」 ←空中

白井「突然何を……」

結標「私の目的はね、その残骸を使って人間以外が超能力を行使できるかどうか調べること……。
  なのにあなたたちが一足飛びで答えを教えてくれちゃって、私の頭ん中ぐっちゃぐちゃよ!」 ←空中

御坂「それは空力操作で飛ばされてるからじゃ……」

結標「もういいわ……、皆殺しにしてあげる」ゴゴゴゴ ←空中

白井「なっ!?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:49:06.23 ID:8zN+MrmJ0<> 初春「何を言い出すかと思えば、能力が使えないあなたがどうやって私たちを殺すんですか?」

結標は初春によってただいま絶賛空中を舞っている最中である。

初春「空間移動ならともかく、こんな風に不規則に宙を舞わされている状態で座標移動の複雑な演算は不可能でしょう」

結標「ええ、そうね。O点の私が常時動いている状態じゃ『精確な』演算はできないわね。けど……」 ←空中

初春「?」

結標「もっと大きな空間から同じくらいの空間への、大雑把な座標移動なら可能なわけよ。
  例えば、この工場内の上半分の空気を下半分に座標移動する、なんてのはどうかしら?」 ←空中

初春「そ、そんなことしたらあなただって!!」

結標「言ったでしょう、『皆殺し』だって」 ←空中

御坂「はぁっ!?」

佐天「ちょっ、いくらなんでもそんな大規模なテレポートされたら!!」

白井「馬鹿な真似はおよしなさい!」

結標「みんな死ねええええええええええええええ!!!!!」 ←空中 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:49:36.65 ID:8zN+MrmJ0<> 初春(いけない……、佐天さんの能力は長距離の移動はできない……)

佐天自身の時間の流れと、能力対象外の時間の流れが異なる場合、
一時的に五感を失うのと等しい状況に陥る。
空気の流れが対比してゆっくりになれば匂いは感じ取れなくなるし、音も聞こえなくなる。
そして時間経過で移動しているのは空気だけでなく光も同じである。
空気同様に、自身を加速しすぎれば光さえ失ってしまうのだ。

おそらく結標の狂乱ぶりから残りわずか数秒で空気を座標移動するだろう。
その残り時間を佐天の能力で2倍に引き伸ばしたとすれば、
明るさに限って言えば今の半分の暗さの中を移動することになる。
4倍に引き伸ばせば明るさは四分の一になってしまう。

日中の明るさなら10倍、つまり十分の一の明るさでもうすぼんやりと周囲が見渡せた。
だが、今は深夜なのだ。
調子に乗った佐天が刻を夜まで加速させたため、今存在する光源はわずかばかりの星の明かりのみ。

ぎりぎり見えるかどうかの3倍に引き伸ばしたとして約10秒前後の時間がある。
その間に初春を連れ、御坂と白井を連れ、この廃工場から脱出することは不可能。
まさに絶望的な状況。

初春(こうなったら……) <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:50:11.81 ID:8zN+MrmJ0<> 結標「これが、触れていない物も移動できる空間移動と座標移動と絶対的な差よおおおおお!!」 ←空中

自棄を起こした結標が全てを自爆覚悟の座標移動を行おうとした次の瞬間!

初春「ロック!」

初春が一言呟いただけで、何も起こりはしなかった。

御坂「……え? え?」

白井「何も、起こりませんの?」

佐天「初春! あんたまさか!」

初春「……」

佐天「能力、……使ったの?」

御坂「初春さんの、能力……?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:50:56.08 ID:8zN+MrmJ0<> 結標を見上げれば口をパクパクと動かし、まるで壁を叩くパントマイムのように空中をバンバンと叩くような動作をしている。
さっきまでの違いは空力操作によってくるくると回されていたのが、今は何もない空中に立っているように見える。
そして初春はまるでお祈りでもするかのような両手を組んだ姿勢をとっている。
当然だがその手からは携帯が手放され地面に叩きつけられていた。

初春「他に方法が思いつかなくて……」

佐天「ごめん、私が調子に乗ったばっかりに……」

白井「初春の能力は定温保存(サーマルハンド)のレベル1のはず。ならこれは樹形図の設計者による能力では……」

初春「……」

初春は答えない。
ただ、その両手をそっと開き、落とした携帯を拾おうとする。

結標「……けんじゃなっ、わっ!? ひゃあああ」

同時に結標の声が聞こえ、空中にいた彼女は落下して尻餅をついた。

結標「いたた……、この能力、まさかあなた……第六位!?」

初春「ッ!!」ビクッ

がしゃん。

その言葉に目に見えてうろたえた初春はせっかく拾った携帯を再び落としてしまう。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:52:03.20 ID:8zN+MrmJ0<> 結標「その反応……、本当にあなたが第六位、密室殺人(デスルーム)なのね」ゴクリ

御坂「です、るーむ?」

初春「……」

佐天「……」

結標「空間と空間の間に壁を作り隔離する空間断絶能力……。
  都市伝説かと思ってたけど実在したなんて……」

御坂「能力を暴走させ窒息死したっていう、あの……?」

結標「間違いないわ。こんな特異な能力、該当する人間は他にはいないはず」

白井「初春がそんなすごい能力者だったなんて……」

初春「……すごくなんてないです」

佐天「初春……」

初春「こんな……人殺しの能力なんて……」

御坂「人、殺し……?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:52:40.81 ID:8zN+MrmJ0<> 初春「あれは一年前の出来事でした。能力調査の一環でテレポーターを私の能力で閉じ込める、ただそれだけ」

初春はぽつりぽつりと語り始める。

初春「結果、私の力は11次元にまで干渉し、テレポーターさえも出て来れないことが判明しました」

白井「なんと……」

初春「これは面白いと研究者たちは大喜びでしたが、そこで悲劇が起きました。――能力の暴走です」

御坂「暴走?」

初春「能力を解除しようと思っても解除できなかったんです。手を開いても閉じても能力は解除されず、
  テレポーターの人は私が隔離した空間の中で弱っていきました。
  隔離した空間は小さめでしたからすぐに空気がなくなり、彼女は絶命しました」

結標「……」ゴクリ

初春「私は貴重なレベル5ということでこれといったお咎めはなし、考えられないでしょう?
  レベル5は人殺しが許されるんってことですよ?
  自身の能力に恐怖した私は書庫をハッキングして自分の能力をレベル1に書き換え今日まで暮らしてきました」

定温保存――。
その実態は、保温対象を隔離し外界との温度差を生じさせないことで空間内の温度を変化させない
密室殺人の能力応用によって作り出された偽の能力だったのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:53:34.90 ID:8zN+MrmJ0<> 結標「超電磁砲(レールガン)に時間加速(タイムアクセル)、挙句の果てに密室殺人(デスルーム)ですって?
  冗談じゃないわよ、こんな化物ばかりの空間にいたら命がいくつあっても足りないわ。
  私は一足先に帰らせてもらうわ」

結標は軍用警棒を一振り、自身を座標移動させこの場から離れようとするが……。

結標「あら? ……もう一度っ!」

初春「逃がしませんよ? すでにこの工場全体を能力で囲いました。
  私が第六位だと知られた以上、皆さんにはここで死んでもらいます」

結標「なっ!? ちょっと、冗談でしょう!?」

白井「初春! やめるですの!」

御坂「何も殺さなくたって……!」

初春「白井さんに御坂さんも、これは他人事じゃないですよ?
  皆さんって言うのは結標さん、白井さん、御坂さんのことですから」

御坂「え?」

白井「はい?」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:54:26.47 ID:8zN+MrmJ0<> 佐天「初春! 白井さんや御坂さんはこのことを人に言ったりなんて……」

初春「信用できません。私が信用するのは世界でただ一人、佐天さんだけです」

佐天「う、初春」///

初春「他の人なんか何人死んだって構いません。白井さんや御坂さんも例外じゃありません。
  私の世界には佐天さん一人いればそれで満足なんです」

白井「や、やばいですの、初春の目が光を失って完全に病んでますの」ウググ

御坂「私たちの声、絶対聞こえてないわよ……」アワワ

初春「佐天さん、私が隔離できるのは一つの空間だけです。
  工場全体を囲ってテレポートでの逃走は封じてますから、佐天さんがぶっ殺しちゃって下さい」

佐天「……初春」

御坂「佐天さんこんなことやめて!」

白井「そうですの、さっきだって私たちを巻き込みたくなかったって」

佐天「ごめんなさい、白井さん、御坂さん。初春と約束なんで、死んで下さい」ニコッ <>
◆tVP11EVtkPKg<>sage saga<>2011/06/19(日) 19:58:06.25 ID:8zN+MrmJ0<> あっはっはっはっはー、これはひどいwww自分で書いといてなんだがひどいと思うww
ぶっちゃけ、佐天さんが時間加速で夜にするフラグ回収だけしてくれたストーリーどうでもいいと思ってるから←
茶番な感じで終わりそうに見えたがなんか謎の第六位設定とかヤンデレ化で惨劇必至
こういうSSは誰の目も届かぬ下の方で細々と更新してるのがお似合いなのさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/06/19(日) 23:57:28.44 ID:uLP3TMdko<> 見てるけどな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/20(月) 00:01:04.17 ID:9Fw5zwHU0<> <O><O> 見ているぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/06/20(月) 01:47:57.17 ID:Dm9FH0vKo<> 初春が6位設定とか初めてじゃね?

いつも見てるぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/20(月) 16:53:32.55 ID:raGGKIRIO<> 翡翠琥珀役をやるのならこれぐらい鬱になっても不思議じゃない不思議。
>>1乙 頑張ってくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/25(土) 17:36:15.34 ID:Sqeoe2zG0<> >>509
そんなネガティブな、>>1を応援している。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:23:54.81 ID:3WDZ9zM20<> 結標「冗談じゃないわよ、あんたらみたいなガキに殺されてたまるもんですか!
  直接動きを制限されないのなら、あなたの方から殺すまでよ。死になさい!」

結標は軍用警棒を振るう、振るう。
足元に転がっていた暗部の犬どもを初春と『重なる』ように座標移動させる。

初春「無駄ですよ」

だが、初春は事も無げに座標移動で送られてきた暗部をバックステップでかわす。

初春「この工場内は私の手の平も同じ、おかしな動きがあればすぐに察知できます」

結標「このっ!」

佐天「あと、余所見は厳禁ですよ?」

結標「がぁッ!?」

それは一瞬の出来事だった。
気付けば佐天が目の前に立っていて、腹部に蹴りが深々と突き刺さっている。

佐天「あなたには統括理事長のいる場所への転移座標を聞かないといけないから、まだ殺しません。
  だから、しばらく気絶しててください」

沈黙。
膝から崩れ落ちた結標はピクリとも動かず、完全に沈黙してしまった。

佐天「次は白井さんと御坂さんの番ですよ」ニコリ

御坂「ひっ!」タジ

白井「くっ、お姉さまが脅えて……」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:24:41.55 ID:3WDZ9zM20<> 白井「佐天さんを傷つけることになってしまいますが、仕方ありませんの……」

白井はそっと両の手をスカートの裾から中へと伸ばし、得物に触れる。
ヒュン、と空気を割くような音をさせ鉄心を転移させる。
狙うのは佐天の足首、アキレス腱だ。

佐天「はい、はずれー」

白井「!?」

鉄心が転移する瞬間、佐天は白井の狙った右足を横にずらす。
転移した鉄心は重力に引かれて床に落ち、金属の高い音を響かせる。

佐天「テレポートの瞬間って、時間ベクトルがわずかに『揺れる』んですよ。
  私にはそれがわかる、見える、感じるんです。下等なテレポーターごときが勝てるわけないんですよ。
  正直めんどくさいんで潔く死んでくれませんか?」

白井「ご冗談を。佐天さんこそ今なら友人のよしみで原稿用紙20枚分の反省文で許してあげてもよろしいですのよ?」

佐天「力の及ばない格上相手にする交渉とは思えませんね。もういい、死n」

途中から佐天の言葉がぶれて聞こえる。
言葉のぶれを感知したときには佐天が白井の目の前から姿を消していて、
コンマ数秒後には結標同様に意識を刈り取られていることだろう。

白井(ッ! 殺られる……!)

佐天(さようなら、白井さん。初春のために死んでくだ……、ッ!?)

バチバチッ!

空気との摩擦で何かが弾けるような音を立てて電撃が迸った。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:25:31.21 ID:3WDZ9zM20<> 白井「お姉さま!」

佐天「あっぶなー……、さっきまで子犬みたいに震えてたくせに、まだ戦うんですか? 御坂さん」

御坂「もう、何も失いたくないから……」

佐天「はい?」

御坂「黒子も、妹達も、佐天さんも初春さんも、誰も失いたくないのよもう!」

バチバチ、ピシャーン!

感情の高ぶりをそのまま攻撃に乗せた、超高電圧の電撃が佐天を襲う。

佐天「そんなの喰らったら一発で心臓止まりま、うぇぁっ!?」

時間加速で御坂の攻撃を回避した佐天を、再び電撃が襲う。
寸でのところではあったが同様に時間加速でどうにか回避に成功する。

御坂(今の佐天さん相手に手加減なんかしてたら勝てっこない……。
  当たったら心臓止まっちゃうだろうけど、電気ショックで蘇生すれば問題ないわ!)

佐天(動きが読まれてる? 御坂さんの能力を考えれば電磁波を使ったレーダーか何か。それなら……)

連続して電撃を放つ御坂から、大きく距離をとる佐天。

佐天「……」

御坂「……」

御坂と佐天、二人のレベル5はじっと互いを睨みあったままもう口を開こうとはしない。
喋ることすら隙に繋がる、僅かな隙が敗北に繋がる。
この戦いはそれほど高次元の戦いなのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:26:33.16 ID:3WDZ9zM20<> 次元の違いに白井が割って入る隙など存在しない。
白井にできるのは御坂の勝利を祈って見守ることだけ。
そして永遠に続くのではとさえ思われた長い、あるいは短い睨みあいの状態から先に動いたのは佐天だった。

こつこつと、ローファーを鳴らせて御坂に向かって直進する佐天。
まだ能力(タイムアクセル)は使わない。
一歩、二歩と近付くたびに緊張が走る。
そして5歩目、御坂が牽制の電撃を放とうかと考えた瞬間、佐天が姿を消す。

御坂(目では見えなくても、私のレーダーには映ってるわよ……、その右後方からの不意打ち!)

御坂「そこよっ!」

ばっ、と振り向き様に電撃を放つ。

御坂「!?」

しかしそこには誰もいない。
なぜ?という疑問が浮かぶ前に御坂の鳩尾に痛みが走る。

御坂「かはっ……」

佐天「残念でした、それは私が時間を意図的にゆがめて作ったダミーです。そしてとどめ!」

腹部の痛みに膝を突く御坂を前に、佐天はバックステップで軽く距離をとり両手を広げる。

佐天「まがれマガれ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ……」

御坂「ぐっ、何を……?」

御坂の周囲を回るように突風が吹き始める。
それは佐天の能力によって時間が歪められたことで発生したもの。
そしてどんどんと勢いを増していく突風は瞬時にして竜巻と化す。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:27:14.55 ID:3WDZ9zM20<> 佐天「フィニッシュ!」

佐天が両手を交差すると竜巻の直径が小さくなる。
さっきまでの大きさが竜巻の中心に人が一人入れるかどうかというもの、
それがさらに小さくなったとなれば吹き飛ばされまいとどうにか耐えていた中の人間は竜巻に巻き込まれ宙を舞う。

御坂「きゃああああああああぁぁ」

佐天「必殺、時の竜巻(タイムタイフーン)!」

ごしゃあぁぁっ!!

錐もみ状態で宙を舞っていた御坂が勢いよく地面に叩きつけられる。
ぐったりとした様子でピクリとも動かない。

佐天(決まった……!)

佐天「フッ、みねう、」

初春「佐天さん、後ろッ!」

佐天「え?」

佐天は憧れていた一つ年上の少女に完膚なきまでに勝利して自己陶酔に陥っていた。
隙だらけの佐天が振り向くよりも先に少女は佐天にしがみ付く。

佐天「なっ……し、白井さん!!」

白井「お姉さまが命がけで作ってくださったこのチャンス、無駄にはしませんわ……!」

佐天が御坂にとどめを刺し、完全に意識が逸れた隙に白井は佐天の約5m背後に空間移動していたのだ。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:27:57.18 ID:3WDZ9zM20<> 白井「こうやって密着してしまえば佐天さんの力は何一つ有効な手はない、そうでしょう?」ニヤリ

白井の言う通り佐天の力の弱点は相手に密着されること。

佐天「離れてくださいよ、このっ、このおおおお!」

白井「そんなに離して欲しいのでしたらお望み通りに」

暴れる佐天に白井は自身の力を行使する。

佐天「うぇっ!?」

気付けば天井近くの空中に、しかも上下逆さまという状態に佐天は目を丸くする。
そして後を追って白井自身も佐天の両脇に足を乗せ、両足を掴むように空間移動する。

初春「あ、あれはっ!」

白井「固法先輩直伝、疾風迅雷落とし! またの名を……」

ズガアアアアアン!!

白井「 キ ン 肉 ド ラ イ バ ー !!」

キャンバスに叩きつけられた佐天はぐったりとした様子でピクリとも動かない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:28:25.44 ID:3WDZ9zM20<> 佐天、御坂、結標、さらに猟犬部隊の17人が倒れ伏し死屍累々といった状況で
工場内に立っているのは白井と初春の二人だけ。

初春「そんな、佐天さんが負けるはず……!」

白井「驕りが過ぎたんですの。佐天さんも、初春も」

初春「ひっ!」

初春は咄嗟に祈るように握っていた両の手を開き工場全体にかけていた能力を解除する。
そしてすぐに白井の周囲に能力を再度行使しようとする。

白井「遅いですの」

初春の真後ろに空間移動した白井は初春の右手を掴み捻りあげる。

初春「うっ、ぐぁ……は、離して」

白井「初春、終わりにしましょう……」

そう呟いて白井は初春を空中に空間移動させる。
佐天に仕掛けたとき同様に、直後に自身も空間移動すると今度はパンツの中に初春の頭をねじ込みパイルドライバーを叩き込む。

ズガアアアアアン!!

白井「 パ ン ツ ド ラ イ バ ー !!」

キャンバスに叩きつけられた初春はぐったりとした様子でピクリとも動かない。 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:29:22.06 ID:3WDZ9zM20<> 今、工場内に立っているのは白井だけ。
白井は呆然とした様子で立ち尽くし空を見上げる。

白井「……虚しいですの」

視線を下に戻し、もう一度周囲を見渡す。
目当てのもの――残骸(レムナント)を見つけゆっくりとした歩調で近付く。
白井は残骸に触れると能力で外側のケースのみを空間移動させ中身を露呈させる。
パソコンの部品程度にしか思えないソレを見下ろし、白井は残骸のケースを振り下ろす。

白井「こんなもの! こんなものさえなければ誰も傷つかずに!
  壊れろ! 壊れてしまえですのッ!!」

がしゃん、がしゃん、ばきり、ぐしゃり

残骸が文字通りの残骸と化しても白井はケースを振り下ろすのをやめない。
力の続く限り何度も何度も振り下ろし続ける。

白井「このおおおおお!! ……あ」

感情に任せてケースを振り回していた白井にもついにそのときが訪れたのだ。
手に汗が滲み、取っ手が滑りケースが宙を舞う。
ケースの行き先を見届けようと見上げると、目の前にケースが落下してくるところだった。

がんっ!

頭を強く打った白井は倒れこみぐったりとした様子でピクリとも動かない。

そして、工場内に立っているものは誰もいなくなった。

――――――――
――――
―― <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:30:13.73 ID:3WDZ9zM20<> 夜明け――。

結標「ぅーん、ッイタタ……何これ、体中が痛いわ……」

死屍累々の工場内で最初に目を覚まし身体を起こす一人の少女。
全身の痛みに耐えながらぼーっとした頭で周囲を見渡す。

結標「何よ、これ……」

理解することを拒否しそうになるわけのわからない状況に苦悶の声を漏らす。
昨日あったことをゆっくりと反芻してどうにか状況を理解する。

結標「残骸も粉々で何も残ってない……笑っちゃうわね」

笑うといっても自嘲気味の乾いた笑いにしかならないのが情けない。

結標「それもこれもこいつらのせい……!」

何があったかはわからないがどうやら気絶しているだけらしい。
今のうちにと、落ちている残骸の破片を邪魔をしてくれて目障りな少女たちの脳みそ目掛けて座標移動させようとする。

結標「……うそ、でしょう?」

能力が使えない、能力を使おうとすると激しい動悸に襲われ演算に集中できなくなっていた。

結標「は、はは……、私にはほんとに何も残ってないのね……」

もう何も考えたくなかった。
危害を加える気力も失い、結標はそのまま工場を跡にした。

――――――――
――――
―― <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:30:42.92 ID:3WDZ9zM20<> ゆさゆさ、ゆさゆさ。

佐天「う〜ん、もう食べられないってば〜」

初春「何漫画みたいな寝言言ってるんですか、佐天さん。いい加減起きてくださいよもう!」ベチン

佐天「ふぇ? あれ、初春おはよ……ってなんで初春がいんの?」

御坂「初春さんだけじゃないわよ」

白井「私たちもおりますのよ」

佐天「いやいや、それこそなんでいるんですか? っていうかここどこ!? 何この状況!?!?」

初春「佐天さんもわからないんですか?」

佐天「私もってどういうこと?」

御坂「どうもこうも、目が覚めたらこの状況よ。結標を追いかけてるとこまでは覚えてるんだけど……」

白井「私もですの」

初春「私もここ二日くらいの記憶が曖昧で……、佐天さん何か覚えてませんか?」

佐天「うーん……、確か昨日学校帰りに初春と風紀委員一七七支部に向かってたような……。
  けどそこまでしか思い出せない……、ぅー身体もなんか痛いし……」

全員「「うーん……」」 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:31:11.83 ID:3WDZ9zM20<> 御坂「このままここで考えてても仕方ないし、病院にいきましょうか……」

白井「そうですわね、結標に付けられた傷が痛みますの……」

佐天「この変な格好で倒れてる人たちはどうします?」

初春「匿名で通報しときましょう。私たち記憶がないですし、関わり合いにならないほうがいいですよ」

御坂「じゃ、そういう感じで」

なんか私、特に首が痛いです

うん、私も首が……

私は頭ですの、瘤ができてて、イタタ……

ほんと何があったのかしらね……

あの工場でバトルロイヤルでもやってた、とか?

あはは、なんですかそれ〜、そんなわけないですよ

それなら全員倒れてる理由がわかりませんの、お姉さまは勝ち残っているはずですの

そうですよね、そんなことがあったらレベル5の御坂さんの優勝ですよねー

あはははは、くすくす、えーそんなー……


  とある科学のタタリの昼に――。 / 終 <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/22(金) 22:36:53.77 ID:3WDZ9zM20<> 全力で投げやりに終わらせたった!!
佐天さんの時間加速(タイムアクセル)、初春の第6位密室殺人(デスルーム)、黒子の48の殺人技
やりたいこと全部やれたんで満足です
なんか質問あったら全レスするんでどうぞ、三日後ぐらいにHTML化依頼出しときます <> 1<>sage<>2011/07/24(日) 02:06:54.36 ID:I7fUMX/AO<> 終わったか、乙
投げやり感も伝わってきたけど普通に面白かったよ

質問するなら、筋肉(パンツ)ドライバー食らってなんで生きてるの?とか
普通死ぬだろwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<><>2011/07/24(日) 02:07:39.25 ID:I7fUMX/AO<> 名前欄ミス、俺は1じゃないですごめんなさい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/07/24(日) 07:18:46.32 ID:WoLRG8Jf0<> >>1乙
クロスは好きなのである。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/07/25(月) 17:12:23.55 ID:+XNH0Nr40<> 一方通行とシエル先輩が思ったよりいいコンビでよかった、乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/07/25(月) 17:13:01.28 ID:+XNH0Nr40<> 一方通行とシエル先輩が思ったよりいいコンビでよかった、乙 <> ◆tVP11EVtkPKg<>saga<>2011/07/26(火) 00:10:04.63 ID:AkoJzH8e0<> >>527
Q.なぜキン肉ドライバーを生身で受けて生きている?
A.打ちどころが良かったから
>>528
どんまい
>>529
ありがとう
>>530
ありがとう!
>>531
そしてありがとう! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/26(火) 18:15:38.82 ID:wo+Mld8o0<> 貴様!見ているな!(T&B) <>
◆tVP11EVtkPKg<>saga sage<>2011/07/26(火) 19:41:25.53 ID:AkoJzH8e0<> >>533
見ているぜ!(T&B) <>