翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/04/18(月) 19:05:46.64 ID:NHKglsXT0<>何回かリクエストしたんですが、誰も書いてくれないので自家発電してみました。
介旅×美琴という誰得?俺得!なカプ。
以下、注意書きなど。
・地の文あり
・矛盾などは脳内補完で。
・端末がPSPしか使えないので投下はゆっくりです。
・初スレ立てなので、つたない部分も多々ありますがご容赦を。
・投下中のレスは大歓迎
・雑談も大歓迎

時系列は幻想御手解決後。
紙にメモ程度の書き溜めはありますが、予定通りにいくかどうか。
そんなに長くはしないつもりです。
ではゆったりと投下していきますので、しばしお付き合い下さい。<>介旅「新しい世界が来る。僕が君を救う」美琴「……え?」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/04/18(月) 19:06:17.72 ID:dFjEulrvo<> とっとと書け太郎 <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 19:11:53.53 ID:NHKglsXT0<>  『こんなとこで苦しんでないで、とっとと帰んなさい』

 少女は、その一言を伝え、そしてーー

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/18(月) 19:16:08.97 ID:YQvGHZFf0<> これは俺得
レベル2からのスタートになるのかな

大期待!面白かったら
おれもずっとあたためていた鋼盾掬彦SSを書くよ! <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 19:18:40.31 ID:NHKglsXT0<>  「う……?ここ、は……?」

 白。
 目を開けた少年がまず感じたのは、その色。

 「……夢、だったのか?」

 少年ーー介旅初矢は、目を覚ます直前に自分の脳に届いた声を、そう表現した。
 すると、その呟きにピンポイントで合わせたかのように、

 「やぁ、調子はどうだい?」

 と。カエルに似た顔の医者が、扉を開けて介旅の病室に入ってきた。

  <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 19:24:36.89 ID:NHKglsXT0<>  「医者……だとするとここは、病院?」

 未だに目が覚めきっていないのか、ボンヤリとした思考で介旅は呟く。
 だが。

 「あぁ、そうだよ。病院だ。残念なことに、退院しても家には帰れないんだが、ね?」

 「ーーーーッ!」

カエル顔の医者の放ったその一言で、介旅の思考は強制的に現実に引き戻される。 <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 19:40:57.29 ID:NHKglsXT0<>  (そうだ……僕はなんてことを……!)

 介旅の記憶の底から、自らの行いが鮮明に浮かび上がる。

 「全く……連続虚空爆破事件、だったかな?君も派手なことをしでかしたね?」

 カエル顔の口に出した虚空爆破(グラビトン)事件というのは、アルミを基点に重力子の速度を増加させて周囲にまき散らす能力、量子変速(シンクロトン)によって引き起こされた爆破事件である。
 多くの施設を混乱に陥れ、九人もの風紀委員を負傷させた大事件。その犯人こそ、他でもない介旅なのだ。

 (僕を助けられなかった風紀委員への逆恨み、か。バカな事を考えたもんだ)

 介旅は、含みを持たせて笑った。
 とある少女に説教とキツイ一発をもらい、今では介旅も、自分のしたことが間違っていたと認められる。
 だが、しかし。
 反省しているからといって、過去の過ちが許されるわけではない。
  <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 19:48:29.60 ID:NHKglsXT0<>  人間は死ななければ、いくらでもやり直せる。
 しかし。 
 それとこれとは、話が別だ。
 罪とは罰によって征されるものであり、悔い改めればハイおしまい、とはいかないのだ。

 (いいさ。どんな罰でも、甘んじて受けてやる)

 そして介旅自身も、それは仕方のないことだと考えていた。
 だから、 

 「事情聴取に、負傷した人たちへの懺悔廻り。一日や二日では帰れないね?」

 というカエル顔の言葉に、

 「……へ?」

 という、間抜けな声を出してしまったのも、仕方のないことだろう。 <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 20:04:07.97 ID:NHKglsXT0<>  「え?……え!?何で……僕はあんなことをしでかしたのに……」

 「『今回の事件の加害者は、深く反省し、被害者に誠心誠意、謝罪の意を述べること。尚、加害者への罰則は第二学期の停学処分とする』」

 介旅の言葉を遮るように、カエル顔はゆっくりと言った。

 「幻想御手(レベルアッパー)、だったかな?あの事件の後、緊急の理事会議が開かれてね?親船最中くんの提案の元に、満場一致で決まったんだよ?」
 
 まがりなりにも12人しかいない統括理事会の一人に『くん』をつけられるのは、暗にこの医者の地位を表しているのか。
 ともあれ、介旅の方はしばし呆然とした顔でうつむき、

 「……ハァァァッ!?」

 ここが病院であることも気にかけず、懇親の叫び声を、あげた。 <> 翼厨<><>2011/04/18(月) 20:07:07.54 ID:NHKglsXT0<> 短いですが、今日はここまでということで。
指が疲れた……
期待してくださっている方々の気持ちに応えられるよう、若輩者ながら精一杯努めさせていただきます。
次回はできれば一週間以内に!
それでは、いい夜を。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/18(月) 20:36:08.47 ID:sCAMlp2DO<> 介旅が旅掛に見えた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/18(月) 20:40:46.72 ID:wyEFQXv+0<> なんというマニアックCPwwwwww



期待してます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage <>2011/04/18(月) 20:55:22.36 ID:4XiwZ99k0<> はいはいブクマブクマ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)<>sage<>2011/04/18(月) 21:06:30.66 ID:rAQrphiH0<> おまえPSPとか度胸あるんだな・・・。
まあ、俺もちょっと前にやって、書き手交代したけどな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/19(火) 00:14:18.06 ID:/aGoZ1sY0<> なんだお前らが主人公か
いや俺らか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/19(火) 02:48:34.16 ID:tQ50DaJIO<> なんという俺得ww
そして密かに>>4にも期待しよう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/21(木) 04:15:39.74 ID:jyxfKw1V0<> >>4よ!
スレをたてたら題名を教えるんだ!!
いいな  死亡間際の俺からのお願いだ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/04/23(土) 06:58:02.38 ID:x3Wict1F0<> >>17
立てよヒーロー!立てぇぇぇぇ!

ということで投下します。 <> 翼厨<>saga sage<>2011/04/23(土) 07:03:45.79 ID:x3Wict1F0<>  「え、それだけ!?ってか統括理事会!?幻想御手!?停学!?何がどう……」

 驚きが進みすぎて、最早一周回って落ち着いてしまうのではないかと思うほどパニックになる介旅。
 取り合えず、他の患者の迷惑でもある。
 そんな状況になった介旅を救い出すために、カエル顔は説き伏せるように、丁寧に語った。 <> 翼厨<>saga sage<>2011/04/23(土) 07:14:03.52 ID:x3Wict1F0<>  ーー幻想御手によって、多くの人間が昏睡状態に陥ったこと。

 ーーその犯人は木山春生という研究者で、彼女が共感覚性を刺激する音楽ソフト『レベルアッパー』により脳波を繋げ、一万人もの脳で構築された電子的ネットワークによる巨大な演算装置を作ろうとしていたこと。

ーーそのような『大人の事情』に子供が巻き込まれたことを考慮し、幻想御手の使用者の能力によって行われた死亡者を出していない犯罪については長期停学と補習、厳重な反省の確認によって埋め合わせを課す、と統括理事会(親船最中含む平和派の数人以外は流れに身を任せていたが)にて決定されたこと。 <> 翼厨<>saga sage<>2011/04/23(土) 07:25:47.69 ID:x3Wict1F0<>  そして、今日が介旅が昏睡に陥ってから数日が経過した七月二十五日であること、他の昏睡患者の大半は昨日の時点で退院していること、などだ。
 
 昏睡直前の記憶は曖昧で、自分が警備員による取り調べの最中に倒れたと聞いたときには驚いたが、それ以外のほとんどに関してはそもそも話のスケールが大きすぎて、介旅の思考では理解が追いつかない。
 
 カエル顔はそんな釈然としない介旅をよそに、

 「……ん?そろそろ時間だね?」

 と、スライド式のドアの方に視線を投げる。

 「……?」

 つられて、介旅もそちらに目を向ける。
 すると、数秒の間の後、

 「失礼するじゃん」

 がらりとドアを開け、一人の女が病室に入ってきた。 <> 翼厨<>saga sage<>2011/04/23(土) 07:44:13.83 ID:x3Wict1F0<>  女、と表現したが、それはあくまでも声から判断したに過ぎない。
 眼鏡をかけていない介旅には、その人物は緑色の何かーー恐らくは着ている服、ジャージの色だろうーーにしか見えていないのだ。

 「……誰?」

 介旅は、その怪人緑ジャージ(仮)を見て、呟く。

 「あぁ、自己紹介が遅れたな。お前の事情聴取その他もろもろ含めて担当する、警備員の黄泉川愛穂じゃん」

 警備員、と聞き、介旅は驚いてカエル顔の方を見る。

 (警備員を呼ぶなら、最低十分ぐらいは必要なはず。僕との会話中にそんな素振りは見せなかった……ってことはコイツ、僕の目覚める時間を正確に予測してたのか?)

 介旅が目を丸くしていると、カエル顔は軽く片目を瞑った。

 (ボクは医者だからね。患者の容態くらいは正確に把握しているよ?)

 介旅としてはもう少し詳しく話を聞きたかったのだが、その前に黄泉川と名乗った警備員が、

 「ほら、早く着替えて。書まで行くじゃんよ」

 と、介旅に促した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2011/04/23(土) 07:46:31.05 ID:n67IXJE90<> 介旅って確か漫画版じゃ幻想御手編の最後に変な学ランを着ていた記憶が・・・・・
すごいパーンチの人と出会って欲しいな・・・・ただのツッコミ役で終わりそうだけど・・・・ <> ×書 ○署 です。すみません<>sage saga<>2011/04/23(土) 08:06:10.31 ID:x3Wict1F0<>  (もう少しゆっくりしたかったけど……そんな虫のいい話はないか)

 黄泉川に言われるまま、介旅は手術衣を脱ぎ、サイドテーブルに乗っていた眼鏡と着替えを取る。
 ……一応言っておくが、黄泉川は介旅の要請により病室の外に出ている。断じて、黄泉川の前で着替えるなどという羞恥プレイではない。
 
 「OK、着替え終わったぞ」

 介旅は、ドアの方に声をかける。すると、

 「ったく、わざわざ私を外に出さなくてもいいじゃんよ」

 ぶつくさと文句を言いながら、黄泉川が病室に入ってきた。
 イヤあんたの問題じゃなくて僕が恥ずかしいんだけどね!?という心の声を、介旅はなんとか喉元で抑える。それを言うと、ますますややこしくなりそうだからだ。

 「おっと、もうこんな時間じゃん?ホラ急いで急いで」

 腕時計を見て、黄泉川が焦ったように言うが、そう言われても、今ベッドから立ち上がったばかりの介旅は、若干足元がおぼつかない。

 「あの、一応僕は病み上がりなんだが」

 と、介旅がいささかげんなりとした感じにいうと、

 「じゃあ引きずってくしかないか」

 「へ?」
<> 翼厨<>sage saga<>2011/04/23(土) 08:27:09.62 ID:x3Wict1F0<>  今、この巨乳緑ジャージじゃんじゃん女は何と言った?引きずる?そんなバカな、と介旅が思ったところで、

 「ヤバい!これ以上遅れると説教食らっちまう!というわけで行くじゃん愉快なバカ小僧!」

 黄泉川が意味不明な奇声を発した。
 誰が愉快なバカ小僧だ、と介旅は言い返そうとし、
 その途端、ガシィッ!と、万力のような握力で手首を掴まれた。

 「……ハイ!?」

 見れば、介旅の手首を掴んだ黄泉川はもう片方の手を床につけ、足を前後に開き、姿勢を低くしていた。
 一言で言おう。それはまさに、
 
 「クラウチングスタート!?」

 そう、それはまさに、陸上選手も顔負けの完成されたクラウチングスタートのフォーム。
 つまり、
 
 「な、なぁ、引きずるとか冗談だよな?」

 「……」

 黄泉川は、何も言わない。
 無視されている訳ではない。黄泉川が何も言わないのは、ただ、彼女が目を閉じて精神を統一しているからに過ぎない。
 介旅の顔から、サアッと血の気が引く。

 「3……2……」

 黄泉川の口から漏れるのは、カウントダウン。
 それは、発射前のジェットコースターに乗っているときのような緊張感を覚えさせた。 <> 翼厨<>sage saga<>2011/04/23(土) 08:50:16.45 ID:x3Wict1F0<>  実質、それは間違っていなかっただろう。
 黄泉川の唇が、さらに動く。

 「……1……」

 黄泉川の目が開かれ、そしてついにその時がやってくる。

 「……0、Go!」

 黄泉川の足が床を蹴り、ヒュゥ、と介旅の喉がおかしな音をたてる。あまりに強烈なGに、空気を吸い込むことが出来なくなったのだ。
 黄泉川の足が地を駆け、階段を一跳びで越え、数秒の内に外に飛び出す。
 その光景に誰もが息を呑み、唖然とし、挙げ句の果てにはソニックブームに薙払われる。
 その場に戦闘に詳しい者がいたなら、あるいはその衝撃波の正体が分かったかも知れない。
 そう、人はそれをこう呼ぶ。
 音すら置き去りにして足を運び、見る者の目に緑の残像を焼き付け、単なる移動手段であるにも関わらず衝撃波だけで全てを薙払う、彼女だけの必殺技。
 すなわち。

 「ーー『黄泉川ファントム』ッ!」 <> 翼厨<> saga<>2011/04/23(土) 08:56:23.54 ID:x3Wict1F0<> と、いうわけで今回はここまでです。 
……すみませんおふざけが過ぎましたね。書いてたら楽しくなってきちゃって(汗
できないのにノリノリになってしまう、苦手なギャグシーンなのでした。
あ、最後の技名の元ネタ分かる人いますかね?   
まぁ、取り合えず次回はまた一週間以内に。なんとか受験までには終わらせたいですが出来るかどうか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/23(土) 10:18:12.68 ID:N/BTA81a0<> めだかか

レベルは2のままなのかな?
介旅君が爆弾に替えた無数のスプーンを美琴が磁力で操る合体技を夢想した <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage saga<>2011/04/23(土) 10:37:06.36 ID:x3Wict1F0<> >>28
なるほど、そういう技もありですね。思いつきませんでした。
あと、レベルの方に関しては後々描写するかもしれませんが、2に戻っているという設定です。 
めだか分かってくれてよかった…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/04/23(土) 11:05:23.02 ID:tInlsPMV0<> 超乙です。介旅とは予想していた幾つものパターンの更に斜め上を行かれた。
氾濫する禁書SSの中を生き残っていくのは確固たる文章力を持つ者か、予想せぬカップリングによる新たな物語の展開を見せる者に限られていくのだろうな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)<>sage<>2011/04/23(土) 13:58:46.83 ID:Y/2eBij90<> 俺も旅掛×美琴と思って読んでたww
介旅×美琴ってマニアック過ぎる。いや、メガネを外して髪を切ったら海原みたいにはなれるかも・・
間違っても新八キャラにはなりませんように。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/23(土) 16:21:05.42 ID:iH2yryVNo<> 乙乙
最近じゃ奇抜なカップリングってだけのスレ乱立でマンネリなのと基本王道好きなので全く読んでないけど
流石にこの組み合わせは内容予測できなすぎて開いてしまったぜ・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中国地方)<>sage<>2011/04/24(日) 11:29:29.14 ID:WQXjxds90<> 乙!この組み合わせは面白いな

どうでもいいが、黒神ファントムは自身と周りがヤバイ事になるな
「テーマソング」ならまだいいが <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<> saga<>2011/04/27(水) 22:15:27.76 ID:2pG4mFn40<> 今から投下します。
風呂のために途中で中断入りますが、今日中には再投下します。
今回で、序章一を終わらせたいと思います。
では投下。 <> 翼厨<> saga<>2011/04/27(水) 22:22:48.16 ID:2pG4mFn40<>  「ーーーーっし、取りあえず今日の分はこれで終わりじゃん」

 「まだあるのかよ……」


 病院から半(?)強制的に警備員の詰め所まで連れてこられた介旅を待ち受けていたのは、
書類、書類、また書類。
 軽くノイローゼになれるんじゃないかと思うほどの、圧倒的大質量の書類の山だった。


 「反省文、ねえ……まぁ、少年院に行くよりはずっとマシだけどさ」


 被害者への、誠意溢れる謝罪文。
書類に要求されていたのは、簡単に言えばそんな内容だった。 <> 翼厨<> saga<>2011/04/27(水) 22:34:29.34 ID:2pG4mFn40<>  とはいえ、元々文章はパソコンで打つ派の介旅には、アナログな「直書き」という方法が、人一倍堪えた。
 そんな中で何十枚も書き上げたのだから、介旅の努力は評価に値すると言えよう。


 「じゃ、僕はコレで帰ることにするよ」


 心身共に疲れきった介旅は、ため息をつきながら言った。
 今日の連行のされかたといい、さっきから監視してるのか妨害してるのか分からないレベルに口を挟んできたり、色々と文句を言ってやりたいのだが、今の介旅にはそんな体力は残っていない。
 久しぶりにネトゲ友達の家に行こう、やっぱたまにはネットだけじゃなくてリアルの方でも熱いハック議論を繰り広げてみようかいいなそれうはははははー!と、軽くトリップしかけた介旅だったが、


 「何言ってるじゃん?反省文その他もろもろ、終わらせるまでは帰れないじゃんよ?」


 との黄泉川の言葉に、一瞬で現実に引き戻された。 <> 再開。<> saga<>2011/04/27(水) 23:01:15.80 ID:2pG4mFn40<>  「……は?」


 開口一番、介旅の口から漏れ出たのは間抜けな声。
 は行ア段、HA、破 の音。
 一方、黄泉川の方も訳が分からないといった調子の顔をしている。まるで、知っているはずの事をなぜ知らないのか、と問いかけるような。


 「えっと……」


 黄泉川はとても不思議そうに、


 「カエル先生から聞いてなかったじゃんか?」


 その言葉に、ぽかんと口を開けて固まっていた介旅は、何か引っかかるような感触を覚える。


 (カエル……?)


 その単語が指すのは、恐らくあの医者のことだろう。
 数秒考え込み、そして介旅は一つの言葉に思い当たった。 <> 翼厨<> saga<>2011/04/27(水) 23:10:14.48 ID:2pG4mFn40<>  『残念なことに、退院しても家には帰れないんだが、ね?』


 自分が起きて間もない頃、あの医者は確かにそう言っていた。
 聞いたときは少年院にぶちこまれるものだとばかり思っていて、さして気にしていなかったその言葉。
 だが、介旅は思い当たってしまった。
 その『帰れない』という言葉の意味が、
 『少年院に収容されて帰れない』
 ということではなかったとしたら。
 まさか。
 これがもしマンガだったなら、介旅の顔には大量の縦線が入っているはずだ。
冷や汗を垂らしながら、介旅は黄泉川の次の言葉、言い換えるならば死刑宣告を待つ。


 「全部済むまで、監視付きでココに泊まってくじゃんよ」

 「……orz」
 

 黄泉川の言葉に、介旅は膝から崩れ落ちた。 <> 番外編<> saga<>2011/04/27(水) 23:12:24.24 ID:2pG4mFn40<> 行間?

          
『とある上条サイドの爆発しろ』 <> 番外編<> saga<>2011/04/27(水) 23:27:14.49 ID:2pG4mFn40<> ーーとある安アパートーー

 「シスターちゃぁん!?それは上条ちゃんに食べさせてあげるお粥なのですよー!?」


 ここは、とあるオンボロ(死後)アパートのとある一室。
 家主、月詠小萌の叫び声が、部屋中に響きわたった。
 それもこれも、全ては彼女の可愛い(本人談)教え子、上条当麻が原因である。
 かいつまんで言うと、気絶した上条にやるはずのお粥を、同上条が拾ってきた欲望全開の暴食シスターが持っていってしまったことによる。
 このシスター、そこらの力士と大食い勝負をやっても圧勝できるであろう超神秘的胃袋を持っているので、あんなお粥じゃ一分と持たずに食べられちゃいますー!?、と心配というか恐怖の領域に達した小萌の心の叫びが一部出てしまったのが先ほどの叫び声にあたるのだが、当のシスター、インデックスは


 「違うんだよ!私が食べるんじゃなくて、とうまに食べさせてあげたいだけかも!」


 と、かなり平和な意見を出していた。 <> 番外編<> saga<>2011/04/27(水) 23:36:09.34 ID:2pG4mFn40<>  「そ、そうですか。それなら……」


 そういう自主性を出されてしまうと、教育熱心な小萌先生としては口を出せなくなってしまう。
 まぁ、上条ちゃんに食べさせてあげるだけみたいですし、別におーけーなのですよー、と若干不満げに小萌は言う。
 ちなみに、その傍らで。


 「はい、とーま、あーん」


 真っ白なシスターさんが、怪我人にお粥を食べさせてあげるという超平和的シーンが広がっていた。
 ただし。
 シスターさんの箸がグー握りで、なおかつ適当にガーッ!と口の中に突っ込んだせいで口からお粥が溢れているのも、果たして平和と言えるだろうか。 <> 番外編<> saga<>2011/04/27(水) 23:46:43.02 ID:2pG4mFn40<>  「上条ちゃんの顔のいたるところがお粥パラダイスにッ!?いや、というか鼻が塞がってますー!?呼吸が止まってしまいますよー!?」


 小萌の叫びに、インデックスは過敏に反応する。


 「呼吸が止まる!?大変かも!今すぐ人工呼吸をするんだよ!」
 「なぜそこまで話が飛ぶのですかー!?」


 人の話を全く聞いていない暴食シスター。しかも、よく耳を澄ますと、


 「禁書目録十万三千冊の中から該当図書検索……発見。命名、『蘇生の息吹(ナチュラルキッス)』発動準備完了。即実行します」


 すっ、と、十万三千冊に導かれ、インデックスの顔が上条に近づいていく。


 「シスターちゃん、それ以上はまずいというかその口と鼻のお粥をとってあげれば済む話なので頼むから聞いてくださ、あぁぁぁぁぁ!?」


※ご想像にお任せします <> 番外編<> saga<>2011/04/27(水) 23:51:10.88 ID:2pG4mFn40<>  「離せ神崎!僕は今からアイツを焼き殺しに行くんだぁぁぁぁぁ!」

 「落ち着いてくださいステイル!私が見ていない間に何を見たのですか!?」


 その頃、とあるビルの屋上では双眼鏡を握りつぶす不良神父とそれを羽交い締めにする露出狂女が目撃されたとかされてないとか。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<> saga<>2011/04/28(木) 00:01:25.58 ID:ff/2GSAQ0<> 今回はここまで。前回に引き続きカオスですみません……
次回は
『もげろ介旅さん』
『そろそろシリアスな雰囲気を出しとこう』
の二つのテーマでお送りします。

……と、いうか
介旅さん改心、黄泉川と会う←今、次回投下恐らくココ
       ↓
  介旅さん、美琴と再会 
       ↓ 
     シリアス 
       ↓
     バトル1
       ↓
     バトル2
       ↓
     ほのぼの?
       ↓ 
     エピローグ


ぜんぜん進んでねぇっ!?
当初は100ぐらいで終わらせるつもりが調子乗りすぎた……まぁ、完結まで長い道のり、精一杯がんばります。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<> saga<>2011/04/28(木) 00:04:02.74 ID:ff/2GSAQ0<> すみません>>40の『死後』は『死語』です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/04/28(木) 01:48:48.07 ID:akm0gm4yo<> 乙
期待してる

介旅か……
あの回は色々モヤモヤが残ったよなぁ
明らかに介旅の行動がオカシイし悪いんだけど、完璧に悪者扱いだけで終わっちゃったからなぁ
その所為であの後、絶対に幻想御手使った佐天さんが暴走して美琴が落ち込む展開になると思ってたもん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/28(木) 18:15:46.63 ID:wx+PqF1IO<> 神裂 <> 4<>sage<>2011/04/30(土) 16:31:53.41 ID:6y6jF+0c0<> 1レスお借りします。
>>4 で “おれもずっとあたためていた鋼盾掬彦SSを書くよ”
とか軽い気持ちで書いた馬鹿です。マイナーキャラに愛を注ぐ>>1を見て、私もがんばろうと決意しました。つーわけで勝手ながらご報告させていただきます。そして>>16応援ありがとう。あと>>17は生きてるだろうか、生きてたら読んで欲しい。死んでたら冥福を祈る

神裂「鋼盾―――鋼の盾ですか、よい真名です」

鋼盾掬彦を交え、禁書目録1巻を書くつもりです。
本日中には投下いたします。 長文失礼いたしました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/04/30(土) 16:37:06.25 ID:0se0ciiVo<> 禁書ってモブキャラがいい味出してるよね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/01(日) 10:49:35.54 ID:lN8CTtp2o<> そろそろ春上衿衣レベル6ssがでてもおかしくはない <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<><>2011/05/02(月) 23:33:33.44 ID:ws+iucqd0<> >>47
ご指摘有り難うございます、全く気づきませんでしたちょっと吊ってくる

あと、鋼盾ss読ませて頂きました、ホントに面白いです。読んでない人は今すぐいってらっしゃいませ。
ちなみに、僕は『はがだてますひこ』と読んでいました。

まぁそれはそうと、今日ものんびり投下していきます。

※多少の性描写?を含みます、ご注意ください。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/02(月) 23:36:23.37 ID:ws+iucqd0<>


ーー介旅がソファに寝転がっていると、隣の部屋から水音が聞こえた。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/02(月) 23:51:38.75 ID:ws+iucqd0<>  ……いや別に、卑猥な意味ではない。
 単純に、【☆警備員休憩室じゃん★】と書かれた札の下がっている部屋から、水の流れる音がするだけの話だ。
 グチョ、とかピチャ、とかいう感じではない。そんなもの書けないし。


 (黄泉川、かな?)


 結局あの後、「もう決まっちまったことはどうしようもないやもーいーやどーにでもなれよ」と、ネトゲ廃人とかにありがちな思考回路でソファに転がり、寝てしまった介旅。  
 寝る前はまだ空は夕焼け、明るさもそれなりだったのだが、
チラリと外を見ると、とっくに日は落ち、明かりのついている建物すらまばらになっていた。


 (シャワーでも浴びてんのか?)


 この時間にここに残っているのは、恐らく彼女も言っていた『監視』のためだろう。
 本人はやる必要もないと考えていたような雰囲気だったが、規則なので仕方無く、といったところだろうか。

 というか、警備員の詰め所に勝手にバスルームを増築する(本当のところは知らないが、明らかに増築されている。その周りだけ壁と床が新しい)
ような女が馬鹿正直に規則を守るとも思えないのだが。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 00:06:07.12 ID:0vvqGwr/0<>  (……あ、そういえば一週間近く風呂に入ってないことになるのか)

 
 入院中は看護士やら何かが体を拭いてくれていたのかも知れないが、それはなんとなく風呂に入るのとは違う気がする。


 (黄泉川が上がったら、僕も入らせてもらうかな)


 と、介旅はのんびりと考えていたのだが、


 「てっそぉ〜、もーちょっと入ってたいじゃんよぉ」

 「そ、そんなこと言われましても、もう十分長く入ったじゃないですか……」


 ドアの方から、二人分の声。
 一人は分かる。恐らく、というか確実に酔っている黄泉川の声だ。


 「おい黄泉川、他に誰かいるのか?」


 介旅は迷っていても仕方がないと判断し、黄泉川に声をかけた。


 「お?かいたびー?私の後輩に何か用じゃーん?」

 「あ、ホラ黄泉川先生、あの子も入りたいんじゃないですか?早く出てあげましょうよ」

 「あ、別にそこまで気を……」

 
 使わなくてもいいけど、と言おうとしたところで、介旅はふと思い当たる。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 00:19:11.95 ID:0vvqGwr/0<>  (酔っぱらった黄泉川は、相当タチが悪いだろう。声を聞いた感じでも分かるし)
 (で、そんなのと一緒に入ってるこの後輩さん(仮)は、無理矢理付き合わされてるのか)
 (なら……)

 
 とても寝起きとは思えないスピードで、介旅の思考が回転していき、やがて一つの答えを導き出した。
 

 「あぁ、早く出てくれるとありがたいな。僕も早く入りたいし」
 「……!」


 介旅が口にしたのは、一見自分勝手ともとれる発言だが、その実、酔っぱらいの魔王から後輩さんを救う、一筋の光明。
 後輩さんのものと思しき、安堵の色を含んだ息に、介旅は己の人生ベスト5に入るであろうファインプレイを実感する。

 だが、しかし。
 彼の計画に穴(別に卑猥な(ry)があったとすれば、それはすなわち。

        ・・・
 「はいはーい、今すぐ出るじゃんよー」


 ーー黄泉川の酒癖の悪さを、見くびっていたことだろうか。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 00:27:46.86 ID:0vvqGwr/0<>  
 「………………は?」


 あまりの爆弾発言に、介旅の思考が完璧にフリーズする。


 「え?ちょ、よ、黄泉川先生!?」

 「はいはーい、生徒のためならどこへでも、黄泉川愛穂先生じゃーん」


 そして、介旅が危機を察知し、具体的な行動に移すよりも早く。
 ドバーン!と勢いよくドアが開き。
 それによってドアの近くにいた介旅が派手に転び。
 そして、


 「ホラホラ出たよー、介旅早く入るじゃん」


 介旅の目の前に、なんか、その、言葉で表現してはならない感じの姿の爆乳女教師が。
<> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 00:38:18.42 ID:0vvqGwr/0<>  
 「ーーーーーー!?」


 幸か不幸か、湯気のおかげでギリッギリの、そのまた限界ぐらいのところまでは辛うじて隠れているのだが、仮にも健全な男子高校生である介旅にとっては刺激的すぎる。

 だが。
 介旅の不幸(幸せ)は、まだ止まらない。
 「おぅっ?」という間抜けな声を出し、
 黄泉川が、バランスを失ったのだろう、勢いよく倒れて、
 「あ、危なーー!?」
 と、黄泉川を支えようとした後輩さんの体がつられて倒れて。

 
 どんがらがっしゃーん☆


 と、漫画的な効果音をたてながら、一糸纏わぬ女教師×2が、同時に介旅の上に倒れ込んできた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/03(火) 00:43:01.51 ID:1vzYN48ho<> 介旅もげろ、すり潰されろ <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 00:55:36.63 ID:0vvqGwr/0<>
 「へぶッ!?」


 予想外の重量に、介旅の口からカエルが潰れたような声がもれる。


 (こ、呼吸がーー!?)


 割と本気で生命の危機を感じた介旅は、自分の口を塞いでいる何かをどけようとして、 


 ーーむにゅっ


 直後、彼の掌に、何やら柔らかい感触。

 おや。こんなところに特大の肉まんが。


 「ーーーーッ!」


 ズババババッ、と音速で首を横に向ける介旅。
 
 口の中、というか鼻の奥から鉄臭い味がするのは気のせいではないだろう。

 危ない、もう少しでトブところだった、と一安心し、
 そこで介旅は見た。


 黄泉川を何とか立ち上がらせようとする後輩さんを。
 
 一、両手は黄泉川を起こすために使われている。
 二、風呂場から出たために湯気バリアはオフ。


 さて問題。
 介旅君は、一体何を見たでしょうか?

 今日の介旅君予報。
 今日の介旅君は、紅い衝動のちダウンするでしょう。
 
 こうして、いろいろカオスなまま、詰め所生活の夜は更けていく。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 01:12:16.43 ID:0vvqGwr/0<> ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー

 深夜。
 学園都市、第十学区の路地裏に、小さな足音が木霊する。


 「はぁっ、ハッ、ヒッ、ヒュウッ、ハッ、フッ」


 耳を澄ませば、吐息も聞こえてくる。
 吐息と足音の主は、小柄な少女。
 汗を垂らしながらも、それを全く不潔に思わせない整った顔立ち。
 街灯の照り返しを受けて輝く、ツインテールの美しい金髪。
 小柄な体にぴったりとフィットしている、赤いランドセル。
 どれをとっても、学園都市で最も治安の悪い学区、更にその中でも特に寂れた路地裏には、その小学校高学年程度の少女は驚くほどに不釣り合いだった。


 「ゼッ、ガッ、ヒュゥッ、ヒッ、グッ」


 時折背後を確認しながらも、少女は全速力で細い路地裏を駆け抜けていく。

 少女がその足を止めたのは、幾多もの路地を抜け、隣の第七学区にたどり着いた時だった。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 01:31:32.61 ID:0vvqGwr/0<>
 「フウッ、ハッ、ま、撒けた、かな」


 路地を抜け、大通りに出ると、少女はようやく安堵の声を漏らした。

 スッ、と腕時計に視線を投げると、その針が指していたのは‘3’。
 少女が走り出した時間から、今に2時間が経過しようというところだった。


 「よく走ったな、私……」


 優に、フルマラソン程度の距離は走っただろう。陸上競技の大会だったら、間違いなく表彰台に立っているはずだ。


 「もう、追ってこないよね……」


 呟き、少女はその場に座り込む。
 まだまだ体力が足りないや、と少女はぼやくが、
 あれだけの速度で、これだけの時間走り続けたのだ。
 呼吸を取り戻せている事ですら、異常と呼べるかもしれない。


 (今日の計画は失敗、か……仕方ない、その辺のホテルにでも泊まって、また明日出直そう)


 そのまま、しばし『明日の計画』を練ってから、少女は軽いかけ声と共に立ち上がる。
 
 直後、だった。


 轟!!と。オレンジ色の閃光が、少女の身体を吹き飛ばした。 <> 翼厨<> saga<>2011/05/03(火) 01:42:12.99 ID:0vvqGwr/0<> 中途半端ですが、今回はここまでです。

少女の正体については、大体予想できると思いますが、‘あの子’です。

今回はつかみだけでしたが、次回からは本格的にシリアスも入れていこうかと。といっても、まだ『表と裏』で分かれた物語のままですが。

個人的なことで申し訳ないのですが、もうすぐテスト週間なので、更新は遅くなるかもしれません。
少なくとも今月二十日までには一度来ますので。

あと、>>58さん。できたらこれで復元してやってください。
つセメダイン

ではまたノシ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<><>2011/05/03(火) 10:54:07.96 ID:E0CaMgck0<> 那由多ちゃんか! <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:04:21.08 ID:ZDL+PJin0<> おっしゃテスト終わったぁぁぁぁ!
ってなことで前回の続きから投下します
待ってくださってる方がいるかどうか分かりませんが…… <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:05:06.63 ID:ZDL+PJin0<>  轟!!というオレンジ色の閃光は、
 その直撃を避けた少女の体さえも軽々と吹き飛ばした。


 「ぐッ……アガッ!?」


 数メートルも宙を舞った少女の体は、ビルの壁にぶつかり
 ようやくその動きを止める。

 ゴッ!という激突音が、路地中に響きわたった。


 「ーーッーー!」


 痛みによる声を押し殺しながらも、
 少女は閃光の出所を探す。

 否。正確に言えば、探す必要は無かった。


 「よぉ。ひっさしぶりだなぁ」


 攻撃の直後に姿を現したのは、
 紫色の駆動鎧(パワードスーツ)を身に纏った女。
 狂喜に満ちた表情を浮かべる女の駆動鎧の右腕からは、
 闇の中でも目立つ、白い硝煙が立ち上っている。

 女は、嘲笑をしながら言う。


 「ハッ、何だよその顔。まさかこの程度で私の追跡を
  振り切ったつもりだったのかぁ?欠陥品ごときが、生意気なんだよ」
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:05:41.41 ID:ZDL+PJin0<>  欠陥品、という言葉に少女は眉を潜めるが、
 それについてとやかく言うつもりもない。

 この話題についていくら話しても、
 意見が合うはずがないのが分かりきっているからだ。


 「……そんなこと言ってて、楽しいのかしら?テレスティーナ」


 返答の代わりに、少女は女の名を口にする。

 テレスティーナ=木原=ライフライン。

 少女の親類であると同時、
 永遠に分かり合うことの出来ない相手だ。


 「あ?テレスティーナ‘さん’だろ?
  テメェはいつから私のコトを呼び捨てに出来るほど偉くなったのかしら?
  なぁおい。一族の出来損ない、那由他ちゃん如きがよぉ」


 お返しと言わんばかりに、テレスティーナも少女の名前を呼ぶ。

 木原那由他。

 少女の名前は少々特殊ではあるものの、
 そんなありふれたものだった。

 ただし。

 その『ありふれた』名前も、ここ学園都市では別の意味を持つ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:32:30.20 ID:ZDL+PJin0<>  木原。

 彼女が持つその姓は、学園都市の闇に位置する。

 学園都市の上層部でさえも躊躇いを見せる実験を、
 『実験対象の犠牲と引き換えに』成功させる、
 狂科学者(マッドサイエンティスト)達の家系。
 
 上層部の間では、『木原一族』と呼称され、
 その研究を掘り起こすことは禁忌とされる。

 そんな一族において、那由他は齢十にも満たないうちから、
 研究対象を壊さないような実験をすることに秀でていた。

 しかしそのために研究の成果は低く、一族の一部、
 特にテレスティーナなどからは『欠陥品』と呼ばれ、忌み嫌われていた。

 これに対し、木原一族の性質を最も表しているのがテレスティーナ。

 研究のためならば自らを被検者とすることにすら躊躇しない、
 正真証明の‘狂’科学者。

 他人を使わないために自分を実験台にする那由他とは、
 水と油のように考えが合わない人間だ。

 だからこそ、だろうか。

 二人は、お互いの考えが手に取るように分かる。

 似て非なる者同士、相手が何を感じているかも分かるし、
 時には同じことを思考することもある。

 端的に言えば、彼女達は既に知っていたのだ。
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:32:58.96 ID:ZDL+PJin0<>





ーーお互いがお互いを、殺したいほど憎んでいることを。






<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/20(金) 21:40:02.92 ID:svQAtox90<> 戻ったか……! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:57:30.24 ID:ZDL+PJin0<>  テレスティーナの砲撃によって崩された瓦礫の山から、
 一つのコンクリート片が転がり落ちた。

 それが、戦闘の引き金。


 「「ッ!」」


 テレスティーナと那由他が、同時に動く。

 敵の元へと走って行く那由他に対し、
 テレスティーナの動きは実にシンプルだった。

 ジャギリ、と音をたて、テレスティーナが砲口をセットする。


 (マズッ……!?)


 先ほど、衝撃波だけで自分の体を吹き飛ばした一撃。
 駆動鎧の構成から見て、砲身はあの右腕だろう。

 そして更に。
 那由他の見立てが正しければ、あの攻撃は。


 (……フレミングの法則を利用して、金属性の弾丸を超音速で発射する、
  学園都市第三位をモデルにした最新兵器……ってことはまさか……!?)

 「なぁ」


 那由他の思考を読み取り、テレスティーナは満足げに口を歪め、


 「超電磁砲(レールガン)って知ってるか?」


 刹那。

 駆動鎧の右腕、正確にはそこに備え付けられた砲身から、
 銀色の弾丸が射出された。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:58:11.58 ID:ZDL+PJin0<>  発射と同時、銀の銃弾はオレンジ色の閃光へと変貌を遂げる。

 爆音は、遅れて鳴り響いた。

 最早、『弾丸』と形容することは出来ない一撃。

 那由他の目に捕らえられたのは、一筋の閃光、その残像。

 それは獰猛に、かつ正確に。

  <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 21:59:15.76 ID:ZDL+PJin0<>




ーー那由他の右肩を、喰い破って行った。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 22:19:55.83 ID:ZDL+PJin0<>  「あ、あぁあああぁぁあぁ!?」


 看過できない激痛に、反射的に足を止めてしまう那由他。

 テレスティーナは、それを読んでいたかのように
 地を蹴り、数メートルの距離を一瞬で詰める。


 「遅っせぇ!!」


 ーッ、ーーッ!と。
 放たれたのは、ショットガンにも匹敵する威力の足技。

 波の自動車程度なら軽々と粉砕するほどの絶望的な力を前に、
 那由他の華奢な体はなす術もなく砕け散る、


 



 はずだった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 22:20:42.55 ID:ZDL+PJin0<>  次の瞬間。

 ゴッーーギィィン!!と、人体が奏でる筈のない音と共に、
 那由他の左腕がその蹴りを受け止める。

 そして、那由他はそこだけに留まらない。

 左腕を防御に使った直後、那由他は体を浮かせ、独楽のように回転する。

 ギュォッッ!と、大気を切り裂き、那由他の蹴りがテレスティーナの顔面を狙う。


 「ッ!?」


 己の攻撃の威力を逆に利用された、必殺のカウンター。
 テレスティーナは、これを首を振ることによって寸前でかわす。

 攻撃自体には触れていないはずなのに、
 彼女の顔の皮膚が引きつって切れる。

 テレスティーナは瞬時に拳を振るうが、


 「チィッ!」


 見れば、那由他は既に自分から数メートル程距離を取っている。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 22:41:29.98 ID:ZDL+PJin0<>  「ナメやがって……殺す!絶対にテメェはぶっ殺してやる!」


 激昂するテレスティーナに対し、那由他は思考を巡らせていた。


 (超電磁砲……アレが厄介ね……。
  『五感強化(ハードセンス)』で細かい照準を定めてるみたい)


 考えながら、那由他は右肩を押さえる。


 (マズッた、かな。長期戦は、こっちに不利になるだけ)


 那由他の負ったダメージは、決して軽くはない。

        ・・・・・・・・・・・
 いかに彼女が『サイボーグ』という特徴を備えていても、
 それは変わらないことだ。

 しかし、幸か不幸か、テレスティーナは激怒している。
 那由他の危惧するような、長期戦に持ち込まれることはないはずだ。


 (やっぱり……『アレ』を使うしかない!)


 那由他は覚悟を決め、目を見開く。
 
 そして。
 ダンッッッッ!と、那由他は力強く足踏みをした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/20(金) 22:51:24.85 ID:fxViUnHr0<> 介旅ってレベルが高くなったどんなことが出来るんだろう?
あらゆる物質を爆弾にすることができるとか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/20(金) 22:59:29.14 ID:w+v9lCxOo<> >>76
虚空爆破事件を起こせるぐらいになる <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 23:02:36.97 ID:ZDL+PJin0<>  (何のつもりだ……?)


 テレスティーナは、那由他のその行動を不審に感じた。


 (威嚇、のつもりか……?)


 だとしたらお笑いだな、と考えた直後、それは覆されることになる。

 足踏みをした那由他の足元にあったのは、崩れ落ちたコンクリート片。
 彼女は、それを思い切り踏みつけたのだ。

 衝撃音と共に、コンクリート片が粉々に砕け散る。


 「しまった……目眩まし!?」


 舞い上がった欠片が、街灯の明かりを遮る。
 事前に準備をしていなかったテレスティーナには、
 那由他の位置を捕捉することが困難になったわけだ。

 しかし。

 忘れてはならない。

 彼女の能力が、『五感強化』であることを。


 「……とでも言うと思ったか!?
  バカが、テメェの位置くらい、聴力の強化で手に取るように分かんだよ!!」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 23:04:42.25 ID:ZDL+PJin0<>  聴力の強化により、那由他の心音、呼吸音をサーチしたテレスティーナは、
 迷わずそちらに右手を向ける。

 莫大な電力が右手に収束し、バチバチと音をならす。


 「これで……終わりだ!」


 叫び、テレスティーナは三度弾丸を装展する。


 「死ね!!!!」


 言葉と同時。
 またもや、音を置き去りにした弾丸が空を切り。

 グシャッ!!という音をたて、





 ・・・・・・・・・・
 路地にあったゴミ箱を消し飛ばした。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 23:28:45.37 ID:ZDL+PJin0<>  「な……!?」


 驚くテレスティーナの耳に、
 ガジャキッ!という金属音が届く。


 「!?しまっーー」


 そちらに目をやれば、粉塵の中からこちらを見る那由他の姿。
 無論、テレスティーナはそんなことに恐怖を覚えることはない。
 相手が十メートル以上離れたところにいるのでは、
 那由他がこちらに来るよりも自分が体勢を立て直すことの方が
 早いに決まっている。

 だから、テレスティーナが恐怖を覚えたのはそこではない。

 那由他の左手。
 厳密に言えば、その手に握られている黒光りする物体。

 「マ、ズ……!」


 慌てて逃げようとするテレスティーナだったが、
 もう既に遅い。

 ガァァァァン!!、と。
 小型の見た目にそぐわない大音量の銃声が、鳴り響いた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 23:32:04.72 ID:ZDL+PJin0<>  「ッ!?」


 那由他の体が、後ろに大きく転がる。


 「なっ……!?」


 二度、三度と地面を転がり、更に十メートルほど移動してから、
 ようやく那由他の体が停止する。


 「痛ッ……!」


 那由他は思わず身構えるが、どうやら今の衝撃は、
 テレスティーナの反撃というわけではないらしい。

 と、すると。


 「は、反動強すぎるでしょ……?」


 那由他は恨みがましく、己の左手にある銃器を見つめる。

 小型対戦車用拳銃、通称『暴れ馬(レスティブホース)』。
 二十二口径の拳銃で、対戦車用ライフル『鋼鉄破り(メタルイーター)』と
 同等の威力を出せることを目標に設計された、超怪物兵器である。

 分類は『護身用対戦車拳銃』という訳のわからないものだが、威力は折り紙付き。

 軍用兵器開発にて、『反動だけでも通常の護身用拳銃を食らうよりも
 ダメージが大きい』という理由で廃案となった、曰く付きの逸品でもある。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 23:49:39.19 ID:ZDL+PJin0<>  何はともあれ、戦車を爆砕するほどの高威力の弾丸を叩き付けたのだ。
 死んではいないだろうが、これで
 大きな障害となるテレスティーナは撃破できた。

 那由他はそのことに胸を撫で下ろし、
 青黒く変色した左手首と、刈り取られた右腕の治療をしながら呟く。


 「私はまだ、止まるわけにはいかない」


 思い浮かべるのは、一人の男の顔。
 笑顔などめったに見せなくて、いつも仏頂面で。
 ふとした拍子に、顔をほんのりと赤く染めながら見せてくれた、心の底から笑う顔。

 
 「待っててね、数多おじさん」


 顔に刺青を入れた、全く研究者らしくない男の顔。

 今は亡き男の、最期の顔。


 「おじさんの遺志は、必ず継いでみせる」


 その声が微かに震えていることに、気づく者はいない。

 決意を胸に、数滴の滴を後に。

 那由他は、再び歩み出す。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/05/20(金) 23:56:49.01 ID:ZDL+PJin0<> 今回はここまでです。

……すみません、未だにスレタイのヒロインが出てきませんね。次回こそは出せるかと。
ちなみに、ぶっちゃけますと那由他ちゃんは第二ヒロインになる予定ですのでお楽しみに。

待っててくださった方々、ホントにありがとう。
レスくれると、超テンション上がります。

では、また一週間後に。
……いや、修学旅行が控えている、だと……?
遅くても二週間後には来ます。
できれば気長に待っていてください。

それではあでゅー☆ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/21(土) 12:34:04.46 ID:wGdX62DAO<> なんというドアノッカー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 15:24:09.45 ID:vE3NxUY30<> お久しぶりです。修学旅行が終わってようやく一段落つ
きました。

>>84
言われてみれば……
まぁ、一つのアイテムということで大目に見て下さい。

ここまできて言うのも難ですが、オリジナル解釈、設定がありますので、苦手な人ごめんなさい。
オリキャラは出さない方向ですが、何分計画性のない>>1ですのでどうなるか……

まぁ、取り合えず投下します。
前回の続き、テレスティーナ視点からです。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 15:41:50.04 ID:vE3NxUY30<>  静寂。
 路地に流れるそれの中、テレスティーナは目を開けた。


 「痛ってぇ……クソが」


 呻くように言うが、その言葉を告げるべき相手は、ここにはもういない。


 「……チッ」


 那由他に、負けた。
 テレスティーナの脳内に渦巻いているのは、その事実だけだった。

 サイボーグだとか駆動鎧だとか、その性能差だとか。
 そういったところで負けていたのなら、まだマシだったのかも知れない。

 だが、違った。

 実際に戦って、分かったことがある。
 那由他の体の七割を形作る機会群は、自分の駆動鎧よりも旧式、かつ低性能だった。
 あの化け物銃器、暴れ馬を入れても、それは変わらぬ事実。

 にも関わらず、負けた。

 その現実は、テレスティーナの心に重くのしかかる。

 那由他の能力は、『能力障害(AIMブローカー)』。
 相手のAIM拡散力場を見て触り、能力を暴発させるその力で、
 彼女はテレスティーナの五感強化を騙したのだろう。

 そこまでは、分かる。

 だが、違うのだ。
 テレスティーナが負けた理由は、そんなに複雑なことではない。 <> >>86×機会○機械<>saga<>2011/06/01(水) 15:43:50.47 ID:vE3NxUY30<>  何故負けたのか、そう問われれば、答えはすぐに見つかる。

 ただ、彼女にとってそれは、絶対に認めたくないものだった。


 「な、んでだよ……」


 自らの祖父、木原幻生の声が蘇る。


 『お前には、才能がない』

 「イヤ、だ……」


 否定しても、拒絶しても。
 ‘答え’は、頭の中に響き出す。

 木原の姓。
 それに伴い、受け継がれてきた技術。
 それが。


 「私に、無いだって……?」


 認めたくない、『本当』。
 目を背けたい、『真実』。

 常に相手を見極め、自分の力を過信せず、相手の終わるときまで気を抜かない、
 その才を色濃く持った少女に勝とう、そう思って。
 才を持たず、才を追いかけ、才を補った末に辿り着いたこの体が、負けた。
 苦しくも、最後は『能力』という、才能の固まりによって。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 15:46:49.52 ID:vE3NxUY30<>  才能が無いから。
 有り体に言ってしまえば、理由なんてそんなものだった。

 認めたくなかったのに、認めざるを得ない。
 否定したかったのに、肯定せねばならない。


 「ち、く、しょう……」


 気づけば、声が出ていた。
 胸の装甲が突き破られ、コンピュータ部分が破壊され。
 動かなくなった駆動鎧を着たまま、テレスティーナの両眼から、液体が流れ落ちる。


 「ク、ソ」


 それは、紅くて。
 それは、どろどろとしていて。
 それは、悔しさからではなくて。


 「ちくしょう、チクショウ!あの野郎、殺す、コロス、絶対ぇにぶち殺してやる!!
 何が一族最高の才だ、何が木原の落ちこぼれだ!構うもんか、ドタマぶち抜いて、
 血の花ぁ咲かせて、確実にぶっ殺す!!!!ギャハハハハハハハハハーーーー!」


 怒りに身を震わせ、般若のような表情で、血の涙を流しながら、テレスティーナは叫ぶ。


 「暗部だ!もっと闇の奥の、最暗部と接触する!!開発中だろうが何だろうがどぉでもいい!
 兵器だ!力だ!手に入れるぞ、着いてこいMAR!!」


 路地裏に、叫びが木霊する。
 煌めく夜は明け、漆黒の朝が始まる。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 16:05:52.18 ID:vE3NxUY30<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー

 「すっげぇ……まさかこんなところに来るなんて思ってもみなかった」


 石造りの洋館のような建物を見上げ、介旅初矢は呆然と呟いた。
 といっても、介旅の目の前にある豪奢な建築物は、見た目の通りに、
 昔気質な大富豪の別荘とか、そんなものではなく、


 「すごいでしょ。これが、学園都市五本の指に入ると言われる超名門、常盤台中学の女子寮よ」


 応じたのは、介旅の斜め後ろに立つ、眼鏡をかけ、黒髪を後ろで縛った女性。

 彼女の名は、鉄装綴里。
 とある学校の教師であり、同時に学園都市の治安を司る『警備員(アンチスキル)』の一員である。
 の、だが、


 (む、無駄にテンション高い……やっぱこれはあれか、
  昨日のことを気にしてるってことか……!?)


 小刻みに震える介旅の頭に浮かぶのは、昨日のヴィジョン(発音注意)。

 立ち上る湯気、一面の肌色、そして―― <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 16:57:20.78 ID:vE3NxUY30<>  そんなことを考え出した途端。
 ツ……と、鼻の辺りに感じる違和感。


 (うぉ!?まさかの二度目!?)


 ババッ!と高速で鼻に手をやる介旅だったが、出血は無いようだ。


 「ふぅ……危なかった」


 安心のため息をつく介旅。
 別に賢者にジョブチェンジしてしまったわけではないのであしからず。


 「……てか、思えば今日も不幸な日だったなぁ」


 まだ朝八時であるにも関わらず、そんなことをぼやく介旅。
 何を言っている、と笑い飛ばす者もいるだろうが、
 歩いていたところを高速で走る女の子にぶつかられて吹き飛ばされたり、
 烏のフンを頭にピンポイント爆撃されたり、
 空き缶を踏んで、その辺を歩いていた二メートル位の神父にぶつかって睨まれたりしたのだから、
 全く笑えない。

 黄泉川が二日酔いでダウンして、代わりに鉄装が選ばれたのも不幸と言えるかも知れない。

 「だー……今日のアンラッキー星座はピンポイントで僕でしたー、とか言われても驚かねぇぞ」

 「?行くよ、介旅君」

 「……はぁ」


 怪訝な顔をする鉄装に促されるまま、介旅は女子寮のインターフォンを押した。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 16:58:13.17 ID:vE3NxUY30<>  「♪〜♪」


 常盤台中学女子寮、厨房にて。
 メイド服を着た小柄な少女、土御門舞夏は鼻歌を歌いながら皿洗いをしていた。

 彼女が上機嫌な理由は一つ。


 (うふふふー今日は『とある兄妹の淫乱目録』の発売日だからなー。
  早く研修終わらせてとっとと買いに行かないと)


 メイドとして、というか女子中学生としてダメだろ、つーかそれ明らかにR-18だよね!?
 という感じの少女マンガの表紙を思い浮かべながら、舞夏はクネクネクネーーッ!と腰を踊らせる。

 ちなみに、その傍らでもしっかりと皿洗いはしている。
 学園都市に十人しかいないと言われる超エリートメイドの称号は、伊達ではないのだ。

 と、そんなブラコン少女ことエリートブラコンメイド舞夏は皿を洗い終えると、
 その場でクルリと一回転する。

 さーいざコンビニ!と勇みよく一歩を踏み出したところで、


 「待て、土御門」


 刺すような冷気を帯びた言葉に、舞夏の足が縫い止められる。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 17:06:01.96 ID:vE3NxUY30<>  「りょ、りょりょりょりょーかん!?」


 舞夏は思わずマミってしまうが、それも無理ないこと。

 逆三角の眼鏡に、ビシッとしたスーツを着こなす、その女性の正体は、寮監。
 ただの寮監とあなどるなかれ、その本性は実に凶悪。

 拳銃をも軽々と相手取る常盤台のお嬢様達を、一糸も報いさせずに、
 返事のないただのしかばねに変貌させることの出来る、正真正銘この寮のBOSSなのだ。

 そんな寮監に全く良い思い出のない舞夏は、体を硬直させたまま首だけで振り向く。


 「な、何のことかね?私は別に官能小説とかマンガとか
  そんなものを買いに行くつもりは一切ないんだぞー?」

 「……ほう、そうかそんな者を買いに行こうとしていたのか」

 「いやだから違うんだぞー!アレは少女マンガであって別にそんなのじゃ……」


 自ら墓穴を掘っていることに気づかず、どんどん暴露していく舞夏。
 寮監は頭に手をやり、呆れた目で舞夏を見ると、


 「土御門。私は別に処罰に来たわけではないのだがな」

 「だからその……って、え?」

 「お客さんだよ。君に」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 17:06:29.85 ID:vE3NxUY30<>  「客……?」


 怪訝な顔をする舞夏。
 客など、呼んだ覚えはないのだが。


 「さぁ、どうぞ入って下さい」


 疑問符を頭に浮かべる舞夏をよそに、寮監は客とやらを呼ぶ。


 「……?」


 厨房に入ってきたのは、やはり見知らぬ、二人の人間だった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 17:31:38.50 ID:vE3NxUY30<>  ところで。
 常盤台中学には、二人の超能力者(レベル5)がいる。

 一人は、精神感応(テレパス)系能力者のなかでも最高の力を持つ、
 第五位『心理掌握(メンタルアウト)』こと食蜂操祈。
 そして、もう一人はというと……




 「うぅ……メンドクサイ」


 項垂れながら、トボトボと女子寮の廊下を歩く少女が一人。
 彼女こそ、超能力者第三位『超電磁砲(レールガン)』こと御坂美琴。
 常盤台のエースであり、お姉様と崇められる彼女がグッタリとしている理由は、至極簡単。


 「門限破りの罰則って……何なのよもう」


 本来ならば一緒に罰則を受けるべき後輩、白井黒子は
 『風紀委員(ジャッジメント)』の仕事で欠席し、結果的には美琴が一人で
 罰則を受けることになってしまったのだ。

 そんなこんなで、美琴のテンションは現在マイナス。
 与えるダメージは四分の一である。

 食事を終えた後部屋にて必要な物を用意し、現在は罰則を受けるために
 再び食堂に向かっているわけである。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 17:34:13.26 ID:vE3NxUY30<>  美琴に課せられた罰則は、食堂の片づけ。
 昨日はプール掃除であったため、大分楽になったとは言える。

 しかし、二百人を収容し、さらに一人一人に大テーブルを付けるような大食堂である。
 おそらく、相当時間がかかることだろう。


 「アレを一時間で終わらせちゃう土御門も、相当すごいわよね」


 今更ながらプロメイドの技術に愕然としながら、美琴は食堂に足を踏み入れ、





 「……え?」






 そこで、信じられない光景を目の当たりにする。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/01(水) 17:34:58.26 ID:vE3NxUY30<> 投下終了。
さて、美琴の見たものとは一体……?(笑)
ある程度伏線も張れて来ましたし、徐々に物語も進んで行きます。
では、また一週間以内に。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/01(水) 21:18:47.89 ID:wTGF+XZFo<> 乙カレーゴールド

再会か <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/02(木) 23:14:16.16 ID:tBoAv2cw0<> そういえば、きちんと説明してなかったので補足。
テレスティーナの能力について。

能力名……五感強化(ハードセンス)
レベル……3

文字どおり、自分の五感を強化する能力で、
肉体強化の亜種に分類される。
やろうと思えば、逆に音を聞こえなくしたりすることも可能。

適当な設定ですが、どうぞご容赦を。
それでは、また次回。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/03(金) 02:18:53.80 ID:1LQvvwEIO<> 修学旅行行ってたってことは>>1は中学生か高校生か…
文うまくて羨ましいわあ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中国地方)<>sage<>2011/06/03(金) 02:42:03.30 ID:/SOkX88X0<> >>100! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/07(火) 00:08:03.48 ID:rACR/kGWo<> 介旅かよ、冒険したな
鋼盾といい介旅といい、マイナーキャラで書ける人はすごいな <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 05:23:42.28 ID:gF1hpHof0<> >>99
中二病を未だに発症させている中三です


遅くなってすみません、リアルが忙しいわけではないんですが、部活の疲れで寝落ちしてました
そんなダメな>>1の身の上話はともかく、投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 05:31:19.09 ID:gF1hpHof0<>  今一度確認しておこう。

 御坂美琴は、非常に正義感の強い人物である。

 また、それと同時に友達思いでもある。

 そんな絵に描いたようなヒーロー性を備えた彼女には、
 しかし致命的な欠点があった。





 「な、んで」


 誰に言うでもなく、美琴はぽつりと呟く。

 その声に混じるのは、不安と恐怖。
 自分ではなく、自分の大切な人が傷つこうとしている時に感じる、
 得体の知れない悪寒。


 「何でよ……ッ!」


 声を震わせ、拳を握る。
 喉は干上がり、掌には汗が滲む。

 極度の緊張の中、美琴の口はようやく言葉を紡ぐ。

       ・・・
 「何で、あの爆弾魔がここにいるのよ!?」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 05:40:16.62 ID:gF1hpHof0<>  彼女の視線の先にいるのは、『連続虚空爆破事件』を起こし、
 その中で自分と自分の友人を殺そうとした、あの爆弾魔。

 迫り来る爆風の猛威が、今更になって美琴の脳にフラッシュバックしてくる。

 そんな危険人物が、何故かこの寮に侵入している。
 そう考えただけで、喉元から恐怖がせり上がってきた。

 それだけならばまだいい。
 大能力者程度、美琴なら数秒の内に倒すことが出来るのだから。

 問題なのは、その近くにいる、メイド服の小柄な少女の方だ。


 (土御門!?)


 爆弾魔の傍らにいたのは、土御門舞夏。

 美琴の、大切な友達の一人だった。

 彼女が爆弾魔などのそばにいる理由は、一つしか考えられない。


 (ま、さか……人質にされてる!?) <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 05:40:55.54 ID:gF1hpHof0<>  そう考え出した途端、不安はみるみる肥大化し、
 美琴の平らな胸を埋め尽くす。

 普段なら、人質を捕られようが美琴は困らない。
 怪我をさせない程度に弱めた電撃で、人質ごと撃ってしまえばよいからだ。

 だが、しかし。


 (ここで下手に電撃を撃ったら……!)


 そう、舞夏がいるのは厨房なのだ。
 万が一でもガス栓に電撃が当たれば、大変なことになってしまう。


 (どうすれば……?)


 美琴は考えるが、自らの大きな武器を封じられた今、
 使える選択使はほとんどない。

 よって、


 (突撃するしか、ない……ッ!)


 その手段を思いつくのに、大した時間はいらなかった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 06:32:56.84 ID:gF1hpHof0<>  さて。

 いつもの美琴なら、この辺りで気づいたかも知れない。

 この寮に入るためには、あの寮監を倒さねばならず、爆弾魔程度の実力では
 到底不可能であるということに。

 そこで気づけなくても、走っていく途中で、
 爆弾魔と舞夏が会話をしていることには気づけたであろう。


 『僕のせいで怪我をさせてしまったみたいで……ホント、ゴメン』

 『別にいいんだぞー?私は飛んできたガラス片で少し切っただけだからなー』


 二人の会話を聞き、その内容を考えれば、自ずと答えは出てくるはずだった。

 しかし悲しきかな、今の美琴にそれを判断する余裕はない。

 よって、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 06:33:51.75 ID:gF1hpHof0<>  何が起こったのか、分からなかった。

 介旅はついさっきまで、連続虚空爆破事件の
 被害者の一人である少女に謝罪していたはずだった。

 しかし、現在。

 彼の体は、フライアウェイしていた。


 (ちょっと待て、本気で何が起こってんだぁぁぁぁ!!)


 ノーバウンドで吹き飛びながら、介旅は今しがた起きたことを思い返す。

 〜以下、回想〜


 『人の友達に、何してんのよぉぉぉぉ!!』

 『ひでぶ!?』


 〜回想終了〜


 (分ッかんねぇぇぇぇ!何この回想!?何の意味もねぇ!!)


 ここまで考えるのに、僅か0,2秒。
 人間、窮地に陥ると思考速度が上がるってホントなんだなぁ、
 と現実逃避を始める介旅だったが、飛んでいるものはいつかは落ちる。

 と、いうことで。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 06:34:56.99 ID:gF1hpHof0<>  「ごふぁ!?」


 プライスレスの空の旅も終わりを迎え、介旅は床に叩きつけられる。

 運動不足が売りの彼に受け身など取れるはずもなく、思い切り背中から。
 ミシィ!と、背骨の辺りから嫌な音が響いたのは、気のせいではないだろう。


 「な、何が……」


 明滅する意識の中、介旅はとっさに、自分を突き飛ばした影の方を見る。

 そこにいたのは、


 「ゲッ……超電磁砲!?」

 「失礼ね!私にはちゃんと御坂美琴って名前があんのよ!」


 そこにいたのは、かつて爆弾魔となっていた自分を止めた、一人の少女だった。







 ――介旅初矢と御坂美琴が再び交差する時、物語はついに始まりを告げる――!




 「あれ?私はほったらかしなのかー?」


 一人置いてけぼりにされている舞夏は疑問を口にするが、
 そんな彼女に関係なく、物語は加速する。


 「え?ちょ、待」


 介旅初矢の受難の物語、始まり、始まり―%#8213; <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 06:37:38.60 ID:gF1hpHof0<> 投下終了。
最後のはやってみたかっただけです、はい。
ついに再会した二人、はてさてこの後どうなるのか?
それは>>1にも分からない。




……てか、介旅さん宣言するまでもなく相当な受難の日々だよね <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/11(土) 06:42:18.14 ID:gF1hpHof0<> やっちまったよ……

始まり、始まり――

です。
コード打ち間違えたorz

あと、>>106と>>107の間は場面転換が挟まってます。
分かりづらくてすみません

では、また次週……来れたらいいなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/11(土) 18:00:32.38 ID:TOa9e9Ngo<> ついに出会いか!
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/11(土) 19:26:10.26 ID:YqhGbzRIO<> >美琴の平らな胸を埋め尽くす

美琴「( #^ω^) 」ビキビキ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/06/13(月) 21:59:42.26 ID:X/g59mTS0<> >>112
wwwwww <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<><>2011/06/18(土) 21:24:46.89 ID:/xk+KHLN0<> ふと建宮禁書というのを思いついて書いてたら、
こっちの書き溜めが全然進んでませんでした
ということでまたもや短めですが、投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/18(土) 21:58:43.68 ID:/xk+KHLN0<>  「アンタ、私の友達に何をしようとしてるの?返答次第じゃただじゃおかないわよ」


 バヂリ、と。
 美琴の前髪から、紫色の火花が散る。

 この距離なら外さない、と。
 そう言って、美琴は介旅に掌を向ける。

 冷静な対応とは、思えない。
 明らかに誤解し、錯乱している。
 様子のおかしさから、その位は気づいてもよさそうなのだが、


 (ヤバい、ヤバいってバチバチいってる死ぬ絶対死んだよコレ)


 介旅本人も錯乱に近い状態に陥っているので、どうしようもない。

 口を閉ざす介旅に、美琴は電撃を放とうとし、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/18(土) 22:00:53.33 ID:/xk+KHLN0<>  「規則違反だ。罰を与える」


 直後、首に手刀を叩き込まれ、地面に倒れ伏した。


 「な……!?」


 介旅は驚愕する。
 なにせ、軍隊と渡り合えるとも言われる七人の超能力者、その一人が、
 たったの一撃で床に沈んだのだから。

 介旅は、改めて美琴の後ろに立っていた人物を見る。

 真夏にも関わらずビシリとスーツを着こなし、
 逆三角形の眼鏡は買ったばかりのような輝きを保っている。
 その腕は振り抜かれており、靴と共に煙をあげ――

 ……煙?


 (まさか空気摩擦で何かが焦げたとでもッ!?いやありえない、でも、そんな、まさか……!)

 「こちらの生徒が、大変迷惑をかけました。すみません」


 と、戦々恐々としている介旅に構わず、淡々と謝罪の言葉を述べる
 常盤台中学学生寮寮監。

 どうでもいいから、足元に転がっている生徒(半死体)をどけてもらいたい介旅なのだが、
 この寮監の言葉を遮る勇気は、彼には無かった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/18(土) 22:13:40.19 ID:/xk+KHLN0<>  「……では、意識が戻ったら謝罪に向かわせますので」


 それだけ告げると、寮監は美琴の首根っこを掴み、
 『寮監室』と書かれた部屋に引きずっていった。

 何か猫みたいだなー、と、安心感からかいまいち回らない頭で考えていると、

 『拷監室』
  §
 【寮】

 『寮監室』と書かれたプレートから、何かが剥がれ落ちた。


 (見なかった事にしよう)


 『監』の下に隠された文字が『問』でないことを祈りながら、
 介旅はひとまずイスに座り込む。


 (はぁ……今日は三割り増しで不幸な一日だな)


 そんなことを考えながら、うとうとと微睡み、


 「……って、あれ?介旅くぅん!?」


 女警備員、鉄装の声をバックに、介旅の意識は闇の中に落ちる。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/18(土) 22:16:07.27 ID:/xk+KHLN0<> ごめんなさい、眠いのでここまでにさせて下さい
見直してみると、文章に粗が目立ちますし
書けなくもないですが、寝落ちするのが嫌なのとクオリティが低すぎるので…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/06/18(土) 23:27:04.53 ID:YHaZymGQ0<>  面白い!!イケメン介旅を期待してる。

 ・・・PSPで投下って大変だよな。
 書き溜め出来ないし、長文モードが長文モードじゃないし。
  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/19(日) 00:21:52.71 ID:PbVnAGnco<> 鉄装さんめんこい <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 04:26:47.22 ID:FLum7BtP0<> すみません寝落ちして遅れましたorz
実を言うとテスト週間なのですが……
構わず投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 04:27:15.22 ID:FLum7BtP0<>  暗闇の中。
 少女が、俯いている。
 介旅よりも、少し幼い。
 中学生、といったところであろうか。


 「どうしたの?」


 その茶髪の少女に、介旅は優しく問いかけた。

 すると、少女は僅かに驚いたような素振りを見せ、俯いたまま口を開く。


 「ーーは、ミーー見えーーか」


 少女の声は、小さい上にはっきりとしておらず、とても聞き取りづらかった。


 「……?ごめん、聞き取れなかったな。もう一回言ってもらえない?」

 「……あなたは、ーーがーーですか」


 多少はクリアになったものの、未だに肝心の部分が聞き取れない。

 もう一度大きな声で、と介旅が言うよりも早く、少女は三度言葉を紡ぐ。


 「あなたは、何故」


 その、雑音混じりの小さな声に、介旅は意識を集中させる。


 「あなたは何故、ミサカが」

 「ーーきなさい」


 言いながら、少女は徐々に顔を上げていき、


 「あなたは何故、ミサカが見えるのですか、とミサカは再度問いかけます」

 「ッ!?」


 介旅が見たその顔は、血にまみれた、見覚えのあるーー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 04:28:32.94 ID:FLum7BtP0<>  「起きなさいって言ってんでしょうが」

 「ばみゃぁ!?」


 首筋に走る衝撃に、介旅は思わず奇声を上げる。


 「な、何を……!?」


 とっさに背後を振り返ると、そこには、


 「あ。ようやく起きたわね」


 指先から火花を散らす、どこか楽しげな顔の美琴が立っていた。

 どうやら先程の痛みの正体は、能力による簡易スタンガンだったようだ。


 「……って、超電磁砲!」

 「だから御坂美琴だっつってんでしょうが。人の名前ぐらい覚えなさいよね」


 慌てて後退る介旅に、美琴は面倒臭そうに言う。

 その軽い態度にふと違和感を覚え、介旅はピタリと動きを止めた。


 「……あれ、怒ってないの?」

 「あー……そのことなんだけどさ」

 「?」


 気まずそうに目をそらしながら、美琴は顔の前で手を合わせ、


 「ゴメンね、あれ私の勘違いだったみたい!」

 「……はぁ?」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 04:57:31.28 ID:FLum7BtP0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー


 「えーっと、つまり」


 介旅は苦い顔をして、こめかみのあたりを掻きながら言う。


 「友達……土御門だっけ?の近くに、元爆弾魔の僕がいて、
  友達が危険に晒されている思った……ってことか」

 「まぁ、そういうことね」


 なるほどな、と介旅は納得する。
 確かに、犯罪者が知り合いに近づいていれば、そのぐらいの勘違いをしてもおかしくない。
 犯罪者の肩書きの前に元・と付こうが付くまいが、被害者側には知ったこっちゃないのだ。

 もし自分が同じような状況に置かれたら、絶対に誤解するだろう。
 ……もっともそんな友達、介旅にはほとんどいないのだが。


 「いや、でもさ?確認もせずにいきなりアメフトばりのタックルはどうかと思うんだ」

 「だ、だからそれは謝ってるじゃない!」


 腰をさすりながら嫌みったらしく言う介旅。
 美琴の方も、自分が悪いのは分かっているようで、あまり強く言い返せない。

 介旅はそんな美琴を見てため息をつきつつ、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 04:58:33.38 ID:FLum7BtP0<>  「……まぁ、別にいいけどな。このくらいのケガ、日常茶飯事だし」

 吐き捨てるように、そう言った。


 「……?」


 どうやら、何を言っているのか分かっていない様子の美琴に、介旅は丁寧に説明する。


 「イジメられてんだよ。悪口から始まって、暴力、カツアゲ……分かるだろ?」

 「……!」


 何を当たり前のことを、といった調子で、介旅は更に言う。


 「ウチの学校、いわゆる底辺校、不良校ってやつでさ。みんな好き勝手やってるんだ」


 介旅は自嘲するように、苦笑しながら言葉を続ける。


 「そんな学校に通うのも親の都合。それで、その親が二人ともそこそこ名のある研究者でさ。
  使い道も無いのに金ばっかり貯まって、それが自然と僕に回ってくる。
  ひ弱で、金も持ってる。カツアゲの対象にされるのは、時間の問題だったよ」


 言っていて楽しいことでも無かろうに、介旅は笑いながら話を進める。
 もしかすると、彼は存外、こういった自分語りが好きなのかも知れない。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 05:11:06.01 ID:FLum7BtP0<>  「それに、友達もほとんどいなくてーー」

 「分かった。もういいわ」


 美琴は、自虐気味に続く介旅の話を遮り、そう言った。
 その適当な扱いに、もしや自分の話が華麗にスルーされていたのではないかと
 不安を感じなくもない介旅だったが、


 「早い話が、イジメられて、友達も、頼る人もいなくて。それが嫌だったんでしょ?」


 どうやら、その心配はいらなかったようだ。
 美琴は、介旅自身でも驚くほど簡潔に、要点を押さえて話を聞いていたのだ。

 ついでに、そのせいで介旅の心が少しずつ抉られていっているのだけれど。

 心ない、と言うか自分の言葉を改めて聞かされて若干ブルーになっていることなど
 気にも留めず、美琴は介旅の方を向いて片目を瞑り、


 「じゃあさ」

 「……?」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 05:11:57.06 ID:FLum7BtP0<>









 「私が、アンタの新しい友達になってあげる」

 「……え?」









<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/06/26(日) 05:16:13.13 ID:FLum7BtP0<> 投下終了。
冒頭の夢は、介旅自身覚えていません。
今後の展開のヒントになればな、と。
……なかなか日常パートが終わりません。
次回からも脇役にスポットライトを当ててみたりするので、時間がかかりそうです。

では、今回はこれで。
次回は一週間後までに←もう信用性ゼロ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/26(日) 05:31:31.27 ID:jr3GTn3Yo<> 乙!

介旅め!爆散しろ
そういや介旅って何歳の設定なんだっけ? <> 1<><>2011/06/26(日) 06:08:40.63 ID:FLum7BtP0<> >>129
超電磁砲では明らかでないようですが、このssでは今のところ、高校一年の設定です。


……都合が悪くなったら変更しますけどね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/26(日) 08:10:21.01 ID:u3ACEeT6o<> 美琴がぼっちな俺の友達になってくれると聞いて <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/26(日) 09:10:45.63 ID:Vc7A3kZIO<> ぼっち同盟か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/06/26(日) 12:32:38.48 ID:frhjN+/Ro<> 金がある親の都合で底辺校?
どんな都合だろう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/06/26(日) 22:31:52.78 ID:siE9ISGI0<> >>133
親の都合で底辺校に入れられ、だけど金はあるから虐められる
ってことじゃね? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 13:29:06.88 ID:W94jlQ7W0<> どうもこんにちは
間に合ってよかった……

ということで、過去編チックな話を投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 13:44:09.49 ID:W94jlQ7W0<> ---------------------------------------------------------------

 入学早々に決定した、両親の転勤と、それに伴う転居。
 その先から、簡単に通える距離にあった。

 自分につり合わない、レベルの低い高校に転校することになった理由は、そんなものだった。


 「すまない、初矢。研究の時間を増やすためなんだ」


 父は、すまなそうな顔でそう言った。

 別にいいよ、と自分は答えた。


 「ごめんなさいね、初矢。あの子のためなの」


 まだ小学校低学年の、年の離れた弟の方を指して、母は言った。

 大丈夫だよ、と自分は応じた。

 弟と、両親のためなんだ。仕方がないよ。
 自分に、そう言い聞かせた。

 両親の転勤先は、第十学区。
 学園都市でも最も治安が悪く、最も地価の安いエリア。

 そんなところに転勤した理由は、大声では言えない研究内容、すなわち
 『能力者の死体の調査』にあった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 13:45:23.04 ID:W94jlQ7W0<>  死体、と一口に言っても様々だが、二人が研究していたのは、死んだばかりの新鮮な死体。
 病院の霊安室は立ち入り禁止となっているため、それ以外で一番新鮮な状態を調べるためには、
 学園都市に数少ない死体処分所のある、第十学区に常駐している必要があったのだ。

 それだけならば、問題ではない。
 ここで重要になってくるのが、幼い弟の存在だ。

 まだ幼い弟に、両親と離れて暮らさせるのは余りにも酷だ。
 しかし、転居先についていくとしても、更に問題が発生する。

 小学生の弟と、研究者の両親では、帰る時間の差が大きすぎるのだ。
 そのため、その間の弟の世話をするために、介旅もついていかなければならない。

 こうして、介旅は底辺校への転校を余儀なくされたのである。
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 13:46:09.78 ID:W94jlQ7W0<>  もっといい方法だって、あったはずだ。

 例えば、少し無理をしてでも、引っ越し先から遠い高校に通うとか。

 あるいは、メイドやら何かを雇って貰って、自分は寮暮らしでもいい。

 そもそも、両親に頼み込んで、転居自体を取り止めてもらえば。


 だが、介旅はそうはしなかった。
 その選択支に、気づかなかったわけではない。
 そんなことをすれば、誰かが悲しんでしまうのが分かりきっていたからだ。

 自分が一緒にいられる時間が減れば、弟は悲しむだろう。
 転居を取り止め、研究時間を削ってしまうのは、あの研究者肌の二人へ、
 どんな悲しみを与えるか想像すらつかない。

 それでも、きっと彼らは笑顔で、こう言うだろう。

 「ありがとう」と。

 何もしてやれず、何も頑張れず。そんな惨めな自分に、感謝の言葉など向けられても虚しいだけだ。

 だから彼は、いいよ、と言った。

 自分が我慢することで、みんなを悲しませずにすむなら。
 出来ることなら、それで幸せになってくれれば。

 それでいい、と介旅は思った。

 努力なんか、出来ないけど。
 才能なんて、これっぽっちもないけれど。

 我慢するのは、得意だから。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 13:46:51.98 ID:W94jlQ7W0<> 眠いです、すみませんが一時中断で。
出来れば、今夜にもう少し投下します。

……部活帰りは辛い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/03(日) 19:44:37.58 ID:P2sdCOduo<> 楽しみにしてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/03(日) 20:07:23.53 ID:UwMZvviRo<> 弟とは!
どうなる弟!どうなる介旅! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 23:40:26.70 ID:lO1USvVV0<> 投下します
寝落ちったらゴメンなさい <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 23:43:19.18 ID:lO1USvVV0<> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 趣味はネット、特技は我慢。
 そんな介旅にも、もちろん我慢の限界というものがある。

 例えば、虚空爆破事件。
 引っ越し、悪化するイジメ、そして忙しい弟の世話。

 そのストレスが重なって、行き場を無くしたイライラを放出した結果だ。

 あのときほどではないものの、彼は現在、またしても我慢の限界を迎えようとしていた。

 介旅は、ピクピクと眉を動かしながら言う。


 「『友達だから手伝え』と。そうかそうか、つまり君はそんなやつだったんだな」

 「あっはっはー。一体何のことかしらねー(棒)」


 一切悪びれずに、しれっと肩をすくめる美琴。

 まぁそんなわけで。
 彼は現在、掃除の手伝いをさせられているのであった。

 『友達になってあげる』
 笑顔でそう言われたときは、不覚にも若干トキメいてしまったのだが……


 (そんなジャイアン的理論の友達だとは思わなかったよチクショウ)


 あのキラキラした感じの背景効果は、本気で何だったのか。
 改めて見てみると、キラキラどころかどす黒いオーラが見える。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/03(日) 23:50:42.09 ID:lO1USvVV0<>  百歩譲って、手伝うのはいいとしよう。

 そうしても、自分の担当が床というのにも納得がいかない。
 机を拭く美琴にその点を告げてみたところ、
 真顔で「レディーファーストだけど何か?」と返されたのだから笑えないものだ。


 「(自慢じゃないけど、体力なら絶対僕の方が少ないはずなのに……理不尽だ)」


 と、そんな口の中でぶつくさと文句を言っている介旅に、美琴は一言、


 「ホラ、手が止まってるわよ。口より手動かしなさいよね」

 (おぉぉう……待て、待つんだ僕。落ち着け。そう、それ。その握り拳を、そっと開け)


 あまりの言い草に反射的に出そうになった拳を、
 額に青筋を浮かべながらもすんでのところでセーブする介旅。
 こんなところで暴力事件なんて起こしたらどうなるか分かったもんじゃない。

 ……いや、まぁ、能力を使うまでもなく組伏せられるのがオチだろうが、気分の問題だ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/04(月) 00:04:15.37 ID:d4jNX7g60<>  やれやれ、と額を押さえながら、介旅は再び手を動かし始める。

 これ以上争っても、不毛なだけだ。

 口からは、自然とため息が漏れる。

 元々、掃除なんて好きではないのだ。
 面倒で、疲れる。
 ちゃんとやる義理なんてなければ、今すぐ放り出しても責める者などいない。

 止めてしまえ、と心の声は言っていた。
 人のことなんかほっとけ、と。

 それでも嫌々掃除を続ける介旅の顔には、どこか疲れたような色が浮かんでいた。

 けれども、


 (何か、楽しいな)


 その中に、どこか嬉しげな感情が存在するのも事実だった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/04(月) 00:11:43.40 ID:d4jNX7g60<>  こき使われているだけだとは分かっていても、
 『友達の手助けをしている』と思えば、どこか楽しい。
 介旅自身、気づかないうちに、顔に笑みを浮かべていた。


 「何よ、急に笑って?」

 「……だー」


 だがまぁ、無理矢理手伝わされているのにそれを伝えるのは、何だか癪だ。
 なので、介旅は適当に茶を濁した受け答えをしようとして、


 「……ッ!?」


 直後、ヒラリと舞ったスカートに視線を奪われる。


 「あー、いい風。って、アンタどうしたの?」

 「あ、ああ、別に何でもないけど」


 疑問顔の美琴に対し、介旅は愛想笑いをしながら適当に答える。

 その視線の先は、常盤台中学校制服、そのスカートの端に固定されている。

 そう。美琴は気づいていないようだが、介旅は床の雑巾掛けをしているために目線が低く、
 彼女のように短いスカートだと、もう少しでイロイロと見えてしまいそうなのだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/04(月) 00:17:13.92 ID:d4jNX7g60<>  そんな状況など露知らず、美琴は窓から入ってくる夏の風にあたって、
 気持ちよさそうに目を細める。
 
 その斜め後ろでは、介旅がヒラヒラ動くスカートを注視して目を細めているのだが、
 やはり気づいていない。
 ついでに言うなら、恐らく見ている本人も無意識だ。


 (惜しい、あと少し……って何考えてるんだ僕は!?
  相手はチューガクセーだというのにぃぃぃぃ!)


 と、そんな風に一人格闘するムッツリスケベの望みが、
 鉄壁の短パンにより打ち砕かれるのは、もう数分ほど先の話。

 相手の態度とかから先に気付よと思うかも知れないが、
 まず三次元のオンナノコと話す機会が乏しい介旅(オタメガ)には、厳しいことなのだ。

 そんなわけで、ちょっぴり苦い教訓を覚える介旅なのであった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/04(月) 00:19:52.44 ID:d4jNX7g60<> 投下終了

やっぱ、眠いときに無理すると文章が終わりますね
でも、この時間帯で頑張ります!

次回は、恐らく一週間以内で
それではノシ




……話、進まねぇぇぇぇ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/04(月) 00:46:42.34 ID:AC+51kiA0<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/04(月) 01:02:36.07 ID:8QyUEL1IO<> 乙です〜
まあ介旅くんくらいの年で普段女子と交流がなかったら美琴の無防備さは返って毒ですよねww
この二人が急接近する為にツンツン頭のあの男がどう絡んでくるのか楽しみにしとります! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/04(月) 01:36:00.30 ID:us3oJD0AO<> 乙なんだよ!悶々としちゃう介旅、いい感じだなあ
ってかエーミールwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/06(水) 10:34:48.62 ID:LJBa5Vkuo<> これって時系列は妹達の実験の前なん?
だとしたら一方vs介旅なんて展開もありだよね <>
◆Stw.e6Ocjg<>sage<>2011/07/10(日) 20:48:20.58 ID:IDrd1ebj0<> 諸事情により本日は投下できませんので、次の投下は明日、それでも音沙汰がなければ来週ということにさせていただきます
本当に申し訳ございません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/10(日) 21:03:00.18 ID:vCSN422Io<> 大丈夫待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/10(日) 21:26:10.21 ID:Oh55kFKeo<> ドンマイ! <> ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 00:42:49.95 ID:kghKsO620<> 先週はすみませんでした、ちょっくらテスト結果について説教食らってたもので……

まあ、そんなダメな>>1の私情はほっといて投下します <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 00:51:35.13 ID:kghKsO620<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (今日の成果は……こんなものかな)


 工山規範はハッカーである。
 どこかの企業に雇われて敵会社のデータを盗んだりなんかしなければ、
 何か巨大な陰謀の中心にいるような某国スパイでもない。
 簡単に言ってしまえば、ネット犯罪を興味本意で行う人間だ。


 「ふぅ……ちょっと疲れたな、休憩するか」


 工山は息を漏らしながら、ネットカフェの机に置いたパソコンの画面から目を離す。

 ネットというのは便利なものだが、長時間やっていると目の疲労感が大変なことになる。
 ましてや、ハッキングのような精密作業ともなればそれも一層だ。


 「……あー、目が乾く……ドライアイになりそうだよ」


 学園都市の最新の医療技術を使えば、そんなものは文字どおり瞬く間に解決するのだが、
 いかんせん料金が高い。
 別に払えないわけでもない額なのだが、そんなことに使うよりは電子部品につぎ込みたい。

 ……もっとも、そのせいでネット時間が長くなり、
 目の乾きも加速するという悪循環になっているわけなのだが。 <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 00:56:35.67 ID:kghKsO620<>  今度安い医者でも探してみるかなー、などと考えつつ、工山はウエイトレスを呼んだ。

 まさにそのテの人御用達です、といった感じ満載の制服を着た少女(恐らくは学生だろう)
 に適当に注文をすると、ふわふわとした(しかしところどころ綿がはみ出ている)座席に
 深く腰を下ろし、目を休めるために軽くまぶたを閉じる。

 ゆったりのんびりがウリのこの店の注文を待つ間に、工山は昔のことを思い出していた。 <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 01:03:19.84 ID:kghKsO620<>





 数年前。
 工山は、ハックそのものを楽しむ無差別な犯罪者だった。

 彼が、中学生にしてネット上の恐怖とされていたころの話だ。


 (っし、かかった!)


 仮装空間内にて友好的に近づいた上で、気づかれぬ内に相手のデータを破壊する。
 その手口と巧妙さから、ついた異名は『懐に巣食う病魔(フレンドシック)』。

 自己顕示欲の強い彼は、そのような畏怖の念によって余計に調子づいていたのだが、
 恐れている側としては知ったことでは無かったようだ。


 (コイツをヤれば、丁度千人……ボクの力は証明されたも同然だ!)


 チャット場でたまたま出会った一人に狙いを定め、工山はガチャガチャとキーを叩く。

 すさまじい速さで会話を続けながらも、その傍らで相手のシステムに侵入を試みているのだ。 <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 01:09:35.72 ID:kghKsO620<>
 (これで……終了!)


 カタン

 工山の指が、エンターキーを押し込む。
 これで、相手のパソコンのデータは完全に破壊され、
 見るも無惨な姿へと変貌を遂げている


 ーーはずだった。



 『ERROR!このコマンドは実行できません』

 「……は?」


 エラー。警告。
 画面に表示された文字に、工山の思考が寸断される。

 そして、凍り付いた脳が回転を始める前に、更なる異変が起きた。 <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 01:22:40.32 ID:kghKsO620<>
 (そんな、バカな)


 工山の両目が凝視しているのは、とあるメッセージ。


 『ID:firstarrowさんよりメールが届きました』

 (な、んで……!?)


 簡素なその文面。
 それが意味するのは、つまるところ、


 (ボクのハックに気づいて、なおかつそれをボクに気づかれず回避した……?)


 言ってしまえばそれだけだが、その道に深く入り込んだ工山には分かる。

 それが、果たしてどれだけの技術を要するのか。そして、それが自分にできないことも。


 (……ハ)


 だから、


 (ハ、はははあひひははひゃくきははっっっ!」


 工山は、笑う。
 ここが公衆の面前であることなど気にも留めず、思わず口に出してしまったというように。


 (面白い!やってやる!!そうだ、こんなヤツだよ!
  コイツに勝つ、そうすればボクの実力の証明にはもってこいだ!) <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 01:25:23.54 ID:kghKsO620<>
 相手が強ければ強いほど、燃える。
 ある程度の情熱を何かに捧ぐ人間ならば、経験したことのある現象だろう。

 そのような感情が、工山には特に顕著なのだ。 
 あるいは、彼の能力の系統にも起因しているのかも知れないが。


 (あひゃっ、グヒイッ、き、きゃあははははははは!)


 狂い、喜び。
 二つに支配され、工山は指を滑らす。

 周囲など気にせず、他人など見ず。

 工山規範は、まだ見ぬ相手に戦いを挑んだ。 <>
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/17(日) 01:26:57.70 ID:kghKsO620<> 今日はここまで。
脇役キャラの登場回なのでした。

おそらく次回も工山君回になるかと思います
あ、ちなみに工山君はういはr……ゴールキーパーとは戦ってませんのであしからず

独自妄想全開で突っ走っていきますので、どうぞ今後もよろしく

ではまたノシ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/17(日) 08:56:33.52 ID:j2QVR5pso<> 乙
firstarrow……一体、何者なんだ……!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/20(水) 14:14:35.17 ID:9GvJlJFG0<> 万能鍵()さん!スーパーハカー万能鍵()さんじゃないか!

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 21:37:29.00 ID:aoMGgqxZ0<> こんばんは
ちょっと間が空くかもしれませんが投下します


>>165
笑わないであげて!
工山君はあの守護神と渡り合うことが出来るほどの実力を持っているんだよ!?
え?こっちはフルチューニングPCで、相手は携帯ゲーム端末?しかも負けた?
そんなのは気にしちゃダメだよ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 21:46:04.06 ID:aoMGgqxZ0<> ーーーーーーーーーーーーーー

 (うっわ……気持ち悪いな当時のボク。しかもそれで負けたとか……)


 自作の対人ハッキング用ツール『トロイの木馬』を畳み、
 別の画面を立ち上げた工山は溜め息をつく。

 なんだろうか、コレは。
 一種の黒歴史とかいうヤツなんだろうか。


 「うーん……中二病をこじらせて、って感じかな?」


 あの時、具体的に何が起きたのかは思い出せない。
 何にせよ、数時間にも及ぶ激闘の末に自分が負けたのだけは確かだ。


 「だー。ダメだ駄目だ。リフレッシュしないと」


 自分の黒歴史を思い出しても、気が滅入るだけだ。
 そう考えた工山はブックマークを開き、お気に入りのサイトへと移動する。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 21:57:51.60 ID:aoMGgqxZ0<>  画面いっぱいに表示されたのは、『都市伝説〜学園都市壱百物語〜』の文字。
 いかにも怪しげ、というか普通に怪しいサイトだった。

 しかしながら、そんなサイトがブックマークされているという事実。

 そう。
 まさかとは思うかもしれないが、正真正銘、これこそが工山の趣味なのだ。


 (さて。オカルト系は読み飛ばして……)


 だからといって、別に工山はオカルトマニアとかではない。
 むしろ、そんなものは根本から否定するような人間だ。

 だから、工山が見ているのはそこではない。


 (『実際にありそうな都市伝説』)


 工山が見るのは、その項目。
 ありそうだけどないだろうと思わせておいて実はあるような、そんな噂話。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:16:04.54 ID:aoMGgqxZ0<>  都市伝説というものには、必ずと言っていいほど根拠がある。
 『あの店のハンバーガーからミミズみたいな臭いがした』というようなものから、
 『使うだけで実際に能力が上がった』というような実体験まで多岐に渡る。

 そんな、都市伝説の『元ネタ』を探る、それこそが工山の唯一にして至高の趣味なのである。


 (それに、この前の『音速で突っ走る女警備員』みたいな例もあるしね)


 そんなことばかりしていると、ごく稀にではあるが、
 都市伝説が真実であることを証明できる場合もある。

 工山の調べた『音速警備員』の真相は、
 駆動鎧の運動性能部のみを抜き取った軍用兵器
 『発条包帯(ハードテーピング)』強化バージョンの試験運用。

 もっとも、体への負担があまりにも大きすぎて、
 警備員の中でも使いこなせるのは数人のみとのことだったが。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:27:02.57 ID:aoMGgqxZ0<>  (ま、そんなことはいいさ)


 工山は何度か瞬きを繰り返し、やっと出されたカプチーノに口をつけながら画面に目をやった。

 片手で画面をスクロールさせて、気になったものだけを記憶に留めていく。


 〔学園都市の各地に、見つけると幸せになれる天使の羽が落ちている〕

 (落ちている……多分、最近話題のばらまかれたマネーカードのことかな)

 〔学園都市統括理事長は、実はホルマリン漬け〕

 (どういう……ことなんだ……?)

 〔空腹を訴え、食べ物をたかるシスターがいる〕

 (妹って意味のシスターなんじゃなかろうか)


 心の中でツッコミを入れたり、驚いたりしながら、工山は更に画面を動かしていく。

 程なくして、目的に合うものは見つかった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:38:05.33 ID:aoMGgqxZ0<>  〔店一軒分のファンシーグッズを大人買いする常盤台中学生〕

 (よし、これに決めた)


 証明しやすく、しかも面白味のある話題。
 ボクが調べるにふさわしい、と工山は呟いた。


 (そうと決まれば)


 工山はカップの残りをすべて口に含んで両手を自由にすると、
 再びハッキングツールを呼び出す。
 先ほどとは違い、対ファイアウォール用に特化した仕様のものだ。


 (こういう系統は、監視カメラのハックが最適。狙うは地下街)


 学園都市の監視カメラは、全て警備員によって掌握されている。
 ともすれば、相当ブッ飛んだことを考えているかのように見える工山だが、


 (クリア、クリア、クリア。OK、侵入成功)


 数回キーを叩いただけで、それを成し遂げてしまうのだから笑えない。

 工山は慣れたことのように、まずはとある場所の監視カメラの映像を見て、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:39:43.85 ID:aoMGgqxZ0<>






 「…………は?」






 あまりの衝撃に、一瞬我が目を疑った。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:49:27.69 ID:aoMGgqxZ0<>  映っていたのは、一組の男女。
 人工の明かりの下で、仲良く何かをしている。

 そこまでなら、別にいい。
 問題は、その後にある。

 まず、その内の女の方、中学生ぐらいの少女が、常盤台の『超電磁砲』のように見えること、
 その場所のイメージが、少女からあまりにもかけ離れていること、そして、




 「かい、たび?」




 その隣に立っている男子高校生が、紆余曲折の末に友人となった、firstarrowーー
 もとい、介旅初矢のように見えることだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:54:01.28 ID:aoMGgqxZ0<>  「何で……なんでアイツと常盤台のコが一緒にいるんだぁぁぁぁ!?」


 周りからの視線が工山に突き刺さるが、彼にそんなことを気にする余裕はない。

 おかしい。
 絶対におかしい。

 介旅が、女の子を連れてあんなところに?


 「チクショォォォ!何でなんだよぉぉぉぉ!?」


 工山の絶叫は、収まらない。

 店内に静けさが戻ったのは、ゴリラっぽい人が店の奥から出てきて、
 数分ほどたってからだった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/24(日) 22:55:16.08 ID:aoMGgqxZ0<> 投下終了です
毎回毎回、分量が少なくてすみません……

ではまた来週 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 23:20:11.63 ID:kSb+eXyXo<> 工山君、俺が君の心を代弁しよう

リア充爆発しろぉぉぉおおお!!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/25(月) 00:13:37.14 ID:oZrKTF8Ko<> 乙

くやまくんってルックスについての記述とかあったっけ? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:09:07.47 ID:Z4+OfJb20<> 部活が終わったため、時間に余裕が出来ました

……てなわけで、もしかしたら投下頻度を上げられるかもしれません
どうか、期待せずにお待ちを


では今回分投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:17:01.05 ID:Z4+OfJb20<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「はっ!ホラホラどうした、もう終わりなのか!?」

 「や、……ん!やめ、てぇ!!」


 ほのかな暗闇の中で、男女の声が響く。

 ここは地下街の、とある施設。
 学業の街である学園都市にとってはあまり好ましくない、
 けれども年頃の学生達の懇願によって実現した、光り輝く建物。

 その中で、介旅初矢は興奮に息を荒げつつ、乱暴な口調で叫ぶ。


 「これで終わりなら、早すぎる!僕はまだ、全然満足できてないぞ!!」

 「も、もう限か……や、そ、そ、こ、は……ダ、だメェェ!!!!」


 人の肉同士がぶつかり合う音が連続し、少女の叫びが空を斬った。


 その声の主は、御坂美琴。


 何故、彼女のような実力者がこうも一方的に攻められているのか。
 それこそ、誇り高き超能力者第三位ですら、
 介旅の前では全くの無力であること、その証明ですらあった。


 「へ、止めろって?ダメダメ。途中で止めるなんて、僕にはできない。
  ……イイ感じに溜まってるし、そろそろ吐き出すよ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:17:32.67 ID:Z4+OfJb20<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「はっ!ホラホラどうした、もう終わりなのか!?」

 「や、……ん!やめ、てぇ!!」


 ほのかな暗闇の中で、男女の声が響く。

 ここは地下街の、とある施設。
 学業の街である学園都市にとってはあまり好ましくない、
 けれども年頃の学生達の懇願によって実現した、光り輝く建物。

 その中で、介旅初矢は興奮に息を荒げつつ、乱暴な口調で叫ぶ。


 「これで終わりなら、早すぎる!僕はまだ、全然満足できてないぞ!!」

 「も、もう限か……や、そ、そ、こ、は……ダ、だメェェ!!!!」


 人の肉同士がぶつかり合う音が連続し、少女の叫びが空を斬った。


 その声の主は、御坂美琴。


 何故、彼女のような実力者がこうも一方的に攻められているのか。
 それこそ、誇り高き超能力者第三位ですら、
 介旅の前では全くの無力であること、その証明ですらあった。


 「へ、止めろって?ダメダメ。途中で止めるなんて、僕にはできない。
  ……イイ感じに溜まってるし、そろそろ吐き出すよ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:19:30.32 ID:Z4+OfJb20<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「はっ!ホラホラどうした、もう終わりなのか!?」

 「や、……ん!やめ、てぇ!!」


 ほのかな暗闇の中で、男女の声が響く。

 ここは地下街の、とある施設。
 学業の街である学園都市にとってはあまり好ましくない、
 けれども年頃の学生達の懇願によって実現した、光り輝く建物。

 その中で、介旅初矢は興奮に息を荒げつつ、乱暴な口調で叫ぶ。


 「これで終わりなら、早すぎる!僕はまだ、全然満足できてないぞ!!」

 「も、もう限か……や、そ、そ、こ、は……ダ、だメェェ!!!!」


 人の肉同士がぶつかり合う音が連続し、少女の叫びが空を斬った。


 その声の主は、御坂美琴。


 何故、彼女のような実力者がこうも一方的に攻められているのか。
 それこそ、誇り高き超能力者第三位ですら、
 介旅の前では全くの無力であること、その証明ですらあった。


 「へ、止めろって?ダメダメ。途中で止めるなんて、僕にはできない。
  ……イイ感じに溜まってるし、そろそろ吐き出すよ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:21:05.08 ID:Z4+OfJb20<> サーバーが重くて、長文が投下できませんでした

時間が悪いのか知りませんが、本日は諦めさせていただきます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:22:21.93 ID:Z4+OfJb20<> サーバーが重くて、長文が投下できませんでした

時間が悪いのか知りませんが、本日は諦めさせていただきます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:24:14.66 ID:Z4+OfJb20<> え、何やってんだ俺



やっぱり今日は諦めます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/07/31(日) 23:25:33.23 ID:Z4+OfJb20<> 取り合えず

連投は無かったことにしてください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/31(日) 23:28:44.71 ID:HcAOVvk60<> ちょwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/31(日) 23:32:25.58 ID:3eGXN/jho<> 乙!
連投はなかったことに! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/31(日) 23:36:42.73 ID:ITyV1Ajno<> おいここで切るンかい!!?

いや、どうせ何もないのは分かってるけどなんか…ねえ…? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/31(日) 23:43:33.77 ID:IOfnL1SUo<> なんだこれは

なんだこれは <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 01:25:07.20 ID:cs9PUVZyo<> ここで切るとかwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 01:40:11.39 ID:0DJDchbIO<> これ声だけ聞いたらエツァリが殺しにきそうだなw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/08/01(月) 02:00:34.15 ID:ajQtNzV80<> >>191
いや、その前に俺がぐちゃぐちゃの肉塊にしてやる

介旅め・・・・・・許すまじ!!



まぁ、実は裏があったりするんだろうけど <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/01(月) 11:19:35.12 ID:tyaX6E6Y0<> こんにちは

裏があるとか言われると
更にその裏をかいて真実にしてやりたくなってしまう>>1です

まぁ、さすがに今回は無理ですけどね


昨日の反省を活かして、サーバーの軽い今から投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/01(月) 11:22:04.77 ID:tyaX6E6Y0<>
 「な、なんでさっき出したばっかなのにそんなに溜まっ……や、やめ」

 「っ、ふっ……そろそろ、かな」


 冷房の効きすぎた屋内であるにも関わらず汗を垂らしながら、介旅は手に力を込める。
 ヌルヌルと滑りそうになる掌を使い、その中身の震えを押さえ込む。

 そして、ついにその時はやってきた。


 「一気に出すぞ……う、おあぁぁぁ!」

 「やだ、やめ、ヒッ、あ、あぁぁぁぁ!?」


 飛び散る鮮血、そして体液。
 足腰をやられたのか、少女の体が地面に倒れ込んだ。


 「そ、んな……嘘、こ、んな、初、めて」


 美琴は呆然と呟く。

 無理もない。

 この地下街、ネオン溢れるこの施設で。

 彼女は、初めて、本当に初めてーー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/01(月) 11:22:40.62 ID:tyaX6E6Y0<>







 1P WIN !

 2P LOSE……






 「おっしゃ完全勝利ぃぃぃぃ!!」

 「は、初めて負けた……ッ!?」







 ーー初めての敗北を、味わったのだから。






 そんなわけで、ゲームセンターに来ている二人なのであった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/01(月) 11:44:19.41 ID:tyaX6E6Y0<>
 「ふん、ゲーセンクイーンが笑わせるな」


 宇宙船で戦うゲームの画面に映る「Perfect」の文字を見ながら、鼻で笑う介旅。
 自らの船の中で地に伏す美琴の操作キャラを満足そうに眺めると、
 ゲームの[終了]ボタンを軽く押し込んだ。


 「な、何で私の十六方向レーザーを全部交わした挙げ句に
  出したばっかの極太溜めレーザーを連発できるのよぉ!?」

 「企業秘密でーす」


 結果に納得できないのか突っかかってくる美琴を軽くいなし、介旅は次のゲームへと向かう。


 「コントローラーに振動を与える特殊攻撃も通用しないし……ホント何なのよ」


 ブツクサと言いながらも、美琴は介旅に合わせ、次のゲーム機にメダルを入れた。


 (……それにしても)


 チャチな効果音と共に流れるオープニングを見ながら、美琴はぼんやりと考える。


 (『メダルゲームでガチンコ対決』、ね……何でこんなことしてるんだっけ)

 《three_two_one_Go!》


 ありきたりなかけ声で始まった戦闘に意識を向け、コントローラーをガチャガチャと叩きながら、
 美琴は頭の裏側辺りで、記憶の海へと潜り込む。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/01(月) 11:47:26.24 ID:tyaX6E6Y0<> ちょっと用事が出来たのでこの辺で終わっておきます

次回からは、投下頻度を増やす代わりに、一回一回の量は少なくしていこうと思います




なぜかって?そうした方が楽だからさ <>
◆U97mao9YztQW<>sage<>2011/08/01(月) 19:33:46.33 ID:tAYQZ6C2o<> 待ってるおっおっ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/08/01(月) 19:34:16.75 ID:tAYQZ6C2o<> コテハンゴメソ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 21:20:15.97 ID:nmTg5VXmo<> 松照代 <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/03(水) 20:13:18.67 ID:qzdS5KWD0<> ちょっとだけ投下します

これからの展開に関わる部分も、少しずつ出していきたいなと <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/03(水) 20:16:32.39 ID:qzdS5KWD0<>  何故、二人がこんなところに来ているのか。

 時は、数十分ほど前に遡る。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「お守り?」


 そんなことが話題に上ったのは、数時間にも及ぶ掃除を終えて、ようやく一息ついていた時だった。


 「あぁ、親がくれたんだ。綺麗だから携帯に付けてるんだけど」


 そう言うと、介旅は大きな鞄に手を伸ばした。

 慣れた動作でチャックを開けると、
 ゴチャゴチャとした小物の山に手を突っ込んで、自分の携帯を探す。


 「あれ?携帯、ポケットとかに入れとかないわけ?」

 「いや、さっき掃除おわった時にさ。汚れてたから、着替えただろ?
  そんときにどうやら、着替えといっしょに携帯まで入れちゃったみたいなんだ」

 「あー、そういや来客用トイレで何かコソコソやってたわよね。別にここで替えてもいいのに」


 僕が良くないんだよ!というツッコミを何とか飲み込んで、介旅は携帯探しを続行する。 <> ちょっと私用で抜けてました、すみません…… 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/03(水) 20:51:46.63 ID:qzdS5KWD0<>  しばらく探していると、指先に、プラスチック特有の硬い感触。


 「っと……コレかな」


 指先に当たった物を、掴み直して引っ張り出す。

 ズルズルと出てきたのは、探していた携帯。それから、


 「……うっわ。何そのジャラジャラしたストラップ。気持ち悪い」

 「べ、別にいいじゃねぇか!暇だからクレーンゲームで取りまくってただけなんだし!!」


 反論する介旅だが、ぶっちゃけ説得力は皆無である。

 というか、真ん中の方に何がついているか見えなくなるほどの量の小物をつけている時点で、
 よほど説得力のある弁解でもない限りは無意味なのだが。


 まぁそこはどうでもいいのだが、
 美琴にはもっと気になることが一つ。


 「てか、何でこんなに時間かかったのよ?確かにそのバッグは大きいけど、
  物が見つからなくなるほどじゃ……って何よそれ!?食器販売でも始めるの?」


 その理由を探ろうと横から鞄をのぞき込んだ美琴は、ほぼ反射的に絶句する。

 何故ならその中身は、


 「スプーンで一杯にして何がしたいのよ……」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/03(水) 21:14:05.76 ID:qzdS5KWD0<>  そう、その中身はまるで、食器の宝箱(オンリースプーン)。

 アルミの塊が、ギンギラギンにさりげなくもっさりと詰まっていたのだ。


 「いやまぁ……武器?」

 「ったく、そんなのいらないでしょ。使う度胸もないのに」

 「おい今の言葉地味に傷ついたぞ。僕の心の傷ヤバいぞ」


 文句を言いながらも、介旅は美琴に携帯を渡す。

 このままだと、本題から外れてしまいそうだ。


 「って、渡されても困るのよね。こんな山の中から見つけられるわけないじゃない」

 「あーっと……赤い紐でくっついてるヤツないか?小石みたいな形の、透明な」

 「えー?どれよ」


 と、美琴はストラップの海をかき分けていき、





 「……え?」





 そこで、まるで信じられないものでも見たかのように目を見開き、固まってしまった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/03(水) 21:14:31.67 ID:qzdS5KWD0<> 投下終了

短いと楽でいいなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/04(木) 00:10:15.94 ID:aw1TSFaIO<> 乙
このペースで投下してくれたら嬉しいです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/04(木) 01:49:19.98 ID:yfSSVVfFo<> 乙乙
確かに短いのをちょみちょみ投下してくれた方が覚えてられる <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 21:07:31.73 ID:KSzHykOb0<> >>205-206
好評いただけているようで何よりです

さすがに毎日投下とまではいけませんが、三日に一度は更新できるようにしようと思います


……言っときながら、連日投下行きます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 21:13:54.87 ID:KSzHykOb0<>  「そ、そんな……ウソ、なんで……」

 「お、おいどうしたんだよ!大丈夫か!?」


 急にガクガクと体を震わせ出した美琴に、介旅は慌てて近寄る。

 見れば、目は虚ろで、焦点が定まっていない。
 体中から、べっとりとした汗が吹き出ている。


 「おい、おい!何なんだ、一体どうしたってーー」

 「ーーーー」

 「御坂?……御坂!しっかりしろ!!」

 「ーーーー?」


 介旅は必死で呼びかけるが、それすらも無駄に終わったのか、美琴は一切の反応をしない。


 (ど、どうしたんだ……ッ!?ヤバい、もしかして何か病気とか……)


 あまりの反応の無さに危険を感じた介旅は、救急車を呼ぶために携帯を取り返そうとしーー


 「ーーーー、た?」

 「……ッ!」


 そこで、美琴の口が動いた。

 辿々しく、しかしハッキリと紡がれ行く言葉に、介旅は全神経を集中させる。


 「こ、た?」


 そして、発せられた言葉は、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 21:21:10.28 ID:KSzHykOb0<>
















 「ーーゲコ、太……?」




 「………………」









 ……どうやら、ストラップの中の一つ、ファンシーなカエルに向けてのようだった。









<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 21:29:07.12 ID:KSzHykOb0<>  「……はぁ」


 「ね、ねぇアンタこれどこにあったの?セブンスミスト?地下街のショップ?それともーー」

 「……たかがカエルに、何をそんな熱心な」

 「カエルじゃない!ゲコ太よゲ・コ・太!
  ねぇアンタこれどこで手に入れたのよ教えてお願い今度なんか奢るからぁ!」

 (うわぁ、真性だコイツ)


 とか思いつつも、根は親切な介旅は、美琴が持つ緑のカエルの出所を教えてあげる。


 「あ、それな。今じゃもう手に入らないよ」

 「ぶッ!?な、なななな何で!!」


 衝撃の事実を突きつけられて、何だか顔に縦線が入っているようにさえ見える美琴。

 介旅はちょっとほくそ笑みながら、容赦なく次の言葉を投げかける。


 「それ、僕が今使ってる携帯の購入特典だからな。どこにも売ってないよ」

 「そ、そんな……」


 ガクリ、と項垂れる美琴。

 そんな彼女を見て、介旅は少し可哀想にーー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 22:01:56.79 ID:KSzHykOb0<>  「ざーんねーんでしたー。よくあることだ、気にすんなよ(笑)」


 ーー思うはずなど、これっぽっちもなかった。


 「……(イラッ)」


 美琴の目付きが少々鋭くなるが、調子に乗っている介旅は全く気づかない。

 彼は命の危険も察知できず、散々人をバカにした笑顔を作ると、


 「ふん、まぁ今なら『初矢様、どうかこの哀れな私めにこのストラップをお譲りください』
  とでも言えばやらないこともないけど、どうすー」

 「……(ニコッ)」

 「……、る?(ビクッ)」


 何かしらの臨界点を越えたのか、急にニッコー!と笑顔になった美琴に、
 さすがの調子ライダー介旅も恐怖を覚え、数歩ほど後ずさる。

 そんなHETALE介旅に、美琴は笑顔のまま、


 「あら、くれるの?そうね、じゃあただで貰うのも悪いし、ここは公正に。
  何かで勝負して、私が勝ったら貰えるってことにしましょう」

 (……言えねぇぇぇ!ここで誰がタダでやるなんて言ったんだとか
  ツッこんだら殺されるぅぅぅう!!) <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 22:13:46.78 ID:KSzHykOb0<>  思わず周りを見渡すが、生憎と今日は夏休み。
 生徒なんかいるはずもなく、つまり誰も助けてなんかくれない。

 そもそも、悪いのは介旅の方であって、完全に自業自得なのである。


 「そうね、じゃあ野球なんかどう?」

 (なんか勝手に話進めてるし!俺の意志は完璧に無視!?)


 と、理不尽の塊を投げつけられて呆然とする介旅だったが、


 (待てよ。野球って平和的だよな)


 少なくとも、路上でガチンコファイトなんかするよりはよっぽど良い。

 スポーツなどとは縁がない生活を送ってはいるものの、介旅は男子高校生だ。
 風紀委員でもないただの女子中学生に、運動で負けるはずがない。


 「そ、そうだな。そうしようか。で、どういう勝負にするんだ?」


 そこまで考えた介旅は、現状で最も安全なその案を受け入れることにした。

 大丈夫。負けるわけがないし、負けたとしてもそんなに大きなデメリットはーー


 「勝負の仕方?そうね……」

 「ああ。できれば、一人でも出来るように……」

 「そうだ、私がバッターやるから、アンタはボール」

 「ごめん、やっぱり却下で」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 22:16:40.31 ID:KSzHykOb0<>  訂正。
 負けても勝っても、デメリットが大きすぎる。


 「しょうがないわね……じゃぁサッカー」

 「同じことじゃねえか!どうせ僕がボールなんだろ!?」

 「何言ってんの。そんなわけないじゃない」

 「え、ホント?良かっ……」

 「当たり前でしょ。アンタの役目は……ゴールに決まってるじゃない」

 「お願い!その後ろにキーパーって付けてくれ!それだけで平和になるから」


 まぁ、直接蹴られるのよりはマシといったところなのだろうが。





 そんなこんなで、介旅なりの必死の説得や、
 警備員の緊急召集に行ってしまった鉄装からのメールなども相まって
 美琴の機嫌も収まり、結局はゲーム勝負をすることで落ち着いたのだった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/04(木) 22:22:31.38 ID:KSzHykOb0<> 投下終了でーす


Q、舞夏どこ行った
A、今日はお休みをとって、愛しのお兄ちゃんのところに行きました


今回は、なんとなく筆?が乗ったので多めに書きましたが、
一回の目安は、この半分くらいと考えておいてください

それでは、よい夜を <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/04(木) 22:25:51.57 ID:yfSSVVfFo<> よい夜をよよいのよい
>>1乙
野球のくだりで吹いた <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:11:56.85 ID:5/Rtli2s0<> >>216
とあるラノベからパロってみました
成功してるようなら嬉しいです


では投下します
そろそろ話が進んだらいいなぁ…… <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:17:46.50 ID:5/Rtli2s0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そんなこんなで、再び現在。



 美琴と介旅はというと、





 『♪てーててててーてれててれてってって♪』



 「はははは15連勝ぉぉ!!」



 「何でよぉぉぉぉ!?」







 ……まだゲームをやっていた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:21:49.25 ID:5/Rtli2s0<>  もう昼時だというのにこの二人、ゲームに熱中するあまり時間すら見えていない様子。

 いや、周りが見えないほどまで、戦いが白熱していたーー訳でもない。

 そこで行われているのは、戦闘ではなく、一方的な虐殺。

 どちらがどちらを、というのは言うまでもない。


 「そらそらそらハメ技連打打ち上げからの溜め技でフィニィィィッシュ!」


 と、奇声をあげながら老若男女問わずに嫌われそうなコンボを繰り出しているのが介旅で、


 「えちょ、待、それはやめ……って死んだぁぁぁぁ!?」


 と、老若問わずオトコノコ(特に大きいお友達)に愛されそうな甘い声を出しつつ
   えげつないコンボのターゲットにされているのが美琴である。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:27:17.91 ID:5/Rtli2s0<>  華麗な(しかし美しくはない)16回目の勝利を収めた介旅は、
 満足そうな目で画面と美琴を交互に見ると、


 「ハァ、もういいだろ?16戦16連完全勝利。僕の勝ちだ」

 「……っ、わ、分かってるわよ!だからそのドヤ顔をやめなさいってこの!」

 「ドヤ顔とは失礼な。勝者の余韻を楽しんでるだけさ」


 本人はそう言っているが、誰がいつどこでどのようにどうやって見ても完璧なドヤ顔
 ……というよりは、明らかに相手を挑発している感じの顔である。

 美琴は反射的に電撃を使ってしまいそうになるが、さすがにそれは押さえつける。

 こんなところで電撃を出したら、その被害額がどんなものになるか想像もつかない。
 取り合えず、常盤台のお嬢様でも苦笑いを浮かべたくなるレベルであるのは間違いなかろう。


 八つ当たりするわけにもいかず、やり場のない怒りをどうしようかと考えながら、
 美琴は少しため息をついて、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:40:04.52 ID:5/Rtli2s0<>  「はいはい、確かに私の負けよ。で、罰ゲームは何?」

 「……は?」


 これに困惑したのは、介旅の方だ。

 罰ゲーム?何それ、聞いてないよ?

 ?で頭の中をいっぱいにしている介旅に、美琴は若干ムクれながら言う。


 「何驚いてんのよ?私が勝ったらソレを貰えるって話だったじゃない。
  じゃあ、私が負けたときにはデメリットが無いとダメでしょ?」


 介旅の携帯についているゲコ太(カエルではない、要注意)を指さし、
 さも当然のような顔をして、美琴は言った。


 なるほど、と介旅は思う。

 これは、彼女なりのスジの通し方なのだろう。

 彼女にとって、これは必然であり、当たり前であり、もっともなルールなのだ。


 (やれやれ……正義感が強いってのも、面倒くさいよなぁ)


 勿論、もとより介旅は罰ゲームなどさせるつもりは無い。
 ゲームで楽しめたんだから、別にいいじゃないか。
 そんなニュアンスの言葉を、乏しい語譲の中から探し、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:42:16.11 ID:5/Rtli2s0<>




 (……あれ?待てよこれってもしかしてチャンス?)





 結局はそんな思考に行き着いてしまうのが、ダメ男介旅なのだった。まる。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/07(日) 08:44:13.69 ID:5/Rtli2s0<> 投下終了です

うん、しかたないよね。介旅君も男の子なんだもん

てなわけで、次回は恥ずかしい罰ゲームを強要されて顔を真っ赤にする美琴


 ……という展開には、多分なりません、はい <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/09(火) 17:43:20.36 ID:z/4P5brx0<> 人いねぇぇ……

でもくじけない!
性懲りもなくダラダラと投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/09(火) 17:50:21.32 ID:z/4P5brx0<>  罰ゲーム、と聞いたとき。

 人は、何を思い浮かべるのだろうか。

 一発芸やピンポンダッシュ、パシリに加え、場合によっては告白、なんてものもある。

 しかし、こと介旅初矢の脳内において、その常識は通用しない。


 そう、その単語から彼が連想するのはーー





 (メイド服……いや、ナース?待てよバニーなんてのも……)




 すなわち、コスプレ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/09(火) 18:08:06.44 ID:z/4P5brx0<>  (あ、裸エプロンってのもいいかな?いやでもそれはなぁ)


 くれぐれも言っておくが、罰ゲームだからといって何でもするなんてわけではない。
おそらく、そんなことを口にした暁にはヤムチャよろしくズタズタにされてしまうであろう。


 (……ハッ!?何を考えてるんだ僕は!違う違うそうじゃねえだろ!)


 と、このあたりでようやく正気を取り戻す介旅。
 取り合えず、ボロ雑巾ルートは回避できたようだ。

 危ねー何かとんでもないコトを口走りそうになった気がする、と介旅が僅かに身震いしていると、


 「ねー早く決めなさいよ、こっちは覚悟出来てんだからさ」

 「はぅあッ!?」


 ここで、予想外の本人からの催促。

 さっきまでイロイロと妄想していて後ろめたさMAXの介旅にしてみれば、
 まさに心臓が止まりそうなほど驚くハメになってしまった。


 「な、なんだよ驚かすなって!」

 「いや、むしろアンタの変な声にビックリさせられたんだけどさ。
  それよりも、罰ゲーム早く決めなさいって」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/09(火) 18:19:06.73 ID:z/4P5brx0<>  「あ、あーはいはい罰ゲームね。もう考えてあるから。その、アレだよアレ、ほら」

 「アレって何よアレって」


 ついつい虚勢を張ってしまう介旅だったが、もちろん考えているはずもない。

 必死で脳から捻りだそうとするも、こういうときに限って思考は完全フリーズ。

 いや、フリーズというよりも、


 (どうすんだよやっぱ正直に考えてないって……ダメだ何か気にいらねぇ!
  となるとアレだ!裸エプロンで僕にかしずじゃなくてえっと……)


 どちらかというとフリーズではなくオーバーヒートしている脳に、
 思考能力など残されている筈もない。

 マジでどうするか、介旅は頭を悩みに悩ませ、




 グウ〜ッ




 突然鳴り響いた、腹の虫。

 無論、常盤台のお嬢様がそんな下品なことをするはずもなく。


 「んー?……お腹空いてんの?」

 「あ?あ、そうだな今朝ロクに食わなかったからなあっははは」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/09(火) 18:19:47.08 ID:z/4P5brx0<>  実際には、頭を使いすぎたためとかそんなものなのだろうが、
 バカ正直にそんなことを言えるはずがない。

 まぁ話もそれたし今のうちに考えるかな、と思ったところで、


 (……あ、いい方法あった)

 「?どうしたのよ、そんなアイデアの神が降りてきたみたいな顔して」


 不思議そうな顔をする美琴だが、介旅は気にもとめない。

 彼は自信満々に一言、






 「罰ゲーム決ーめた。昼飯奢れよ」





 「……?別にいいけど」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/09(火) 18:20:12.99 ID:z/4P5brx0<> 投下終わります

新刊発売が楽しみすぎて眠れないかもだぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga sage<>2011/08/09(火) 19:30:07.23 ID:WD9K1Ays0<> デートだなおい
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/09(火) 19:38:39.72 ID:mACzyl+so<> 乙です、コメントなくてもちゃんと読んでますよー

そして介旅のへタレめ…男の夢である裸エプロンをあっさり諦めんな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/09(火) 21:01:34.26 ID:3EG4qJ5bo<> 乙、いつも楽しみにしてますぜ
加速してきましたね、上条さんの登場はあるのだろうか……

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/10(水) 01:20:31.72 ID:GGkdapaJo<> 乙
介旅が可愛く思えてきた <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/11(木) 21:32:21.89 ID:/qWzpq0N0<> レスありがとうございます!
リアルの方でちょっとあったのでネガってましたスマソ

では投下します
今までのを見て貰えば分かるように、全く甘くもないダラダラ話になりそうですが <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/11(木) 21:38:49.26 ID:/qWzpq0N0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「〜♪〜♪」


 とある公園のベンチにて。

 介旅初矢は、音楽プレイヤーからイヤホンを通して流れる曲に合わせて、
 思わずといったような調子で鼻歌を歌っていた。

 再生しているのは、魔法を使う女子中学生達が絶望の運命に立ち向かっていく、
 鬱になる感じの深夜アニメのオープニング曲だ。

 余談ではあるが、彼の音楽プレイヤーの中身の九割九分はアニソンである。

 そんな自他共に認めるオタク介旅が、どうしてこんな健康的なところにいるかというと、




 「……遅いなぁ、御坂……」




 それだけ聞かれればどっかのツインテ風紀委員とかに串刺しにされそうな言葉を口にしながら、
 介旅は更に音楽プレイヤーを操作する。

 次に流れ出したのは、テンポのいい曲。

 今度は、バカがバカみたいにバカをやるhurt full(綴りに注意)学園コメディのエンディングだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/11(木) 21:46:32.90 ID:/qWzpq0N0<>  「〜♪〜〜♪」


 リズムに合わせて軽く足を動かしながら、介旅はニヤッと笑う。

 そう、状況だけ見れば彼は
 『待ち合わせ場所』に『女の子』を『呼び出して』いるのだ。

 ついつい顔が緩んでしまうのも、無理はないことである。

 もっとも、彼が気持ちの悪い笑い方をしているのはこの状況を喜んでいるからではなく、


 (この前は工山に『どうせお前女の子と二人で出かけたこととか無いんだろ』
  とか言われたからな……あの野郎見てろ、今にギャフンと言わせてやる)


 まぁ要するに、ネット中毒の癖にコミュニケーション能力があってそこそこ美形で
 成績も悪くなく更に大能力者であってつまりは大分モテる友人へ自慢がしたかったわけなのだ。

 あのリアル二次元両立するスケコマシ馬鹿であっても、
 名門常盤台中学生となれば文字どおり格が違う。

 そんな女の子とデート(みたいなもの)をしたと言ってしまえば、
 アイツの高い鼻を明かしてやることもできるだろう。


 (ははははは甘いぞ工山!ハックの技術と運だけは、僕の方が上なんだぜ!!) <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/11(木) 22:00:09.95 ID:/qWzpq0N0<>  自分で言っていて悲しくならないのだろうか、暗にそれ以外は負けてるぜイェーイと
 自ら宣言しながら、今もどこかでコンピュータを触っているであろう工山に勝利宣言をあげる介旅。

 ちなみに、その本人は現在ちょっとしたショックで
 寝込んでいるわけなのだが、介旅には知る由もない。



 と、そんな意味もない優越感に浸っている介旅の元に、少女の声がかけられる。


 「はい、買ってきたわよ。これでいいんでしょ」

 「お、サンキュって冷たぁっっ!?」

 「ぷっ、あはははは!まさかこんなイタズラに引っかかるとか思わなかったわよ」


 振り返った途端に頬に刺すような冷たさを感じ取った介旅がもう一度声の方に向き直ると、
 そこには氷菓子の入ったビニール袋を持ちながら、腹を抱えて笑う美琴が。


 「(……そういうのは、指でやってほしいもんなんだけどなぁ……)」

 「んー?何よう」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/11(木) 22:07:09.78 ID:/qWzpq0N0<>  何でもない、といった内容のことを伝えて、介旅は美琴から昼食の入った紙袋を受け取る。
 どうやら、中身はパンか何かのようだ。


 「……つか、コレ買った後にコンビニにも行ってたのか。そりゃ遅いわけだ」

 「あら待たせちゃった?ごめんごめん」

 「んーいやそこはいいんだけど何つーか……まあいいや。
  ところでこのパン、どこで買ってきたんだよ?紙袋には書いてないけど」

 「あー、その辺に新しく出来たのよ。『ベーカリーテッラ』だったかしら?
  特別な小麦を使用してます、とかいう触れ込みで……確か5000円くらいだったかしら」

 「高ッッか!え、何このふんわりとおいしそうなメロンパンはそんなに値が張るのか!?」


 衝撃のプライスに、動揺を隠せない介旅。
 同年代と比べても手持ちの多い彼にしても、流石にその額は有り得ないだろうと思う。

 やはり、少し金のあるだけの凡人と根っからのお嬢様では、
 どこかしらに次元の壁があるのだろうか。

 そんなことを考えながら、冷や汗と共に香ばしい匂いのする生地にかぶりつく。

 うん、悔しいけどおいしい。

 黙々と食べきってしまうのに、そう時間はいらなかった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/11(木) 22:12:25.53 ID:/qWzpq0N0<> 投下終了です

次回かその次ぐらいで、ようやくもう一人のメインキャラを出して新しいパートに入れそうです

今回は、介旅セレクションのアニソンと、お高いメロンパンだけしかない話なのでした

べ、別に、アニソン九割九分なんて想像だからな!
俺のPSPの中身を参考にしたとかじゃないからな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 14:16:17.71 ID:frzW7jYt0<> >中身はパン

パンじゃなくてパンツにみえたwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 16:14:33.67 ID:dxnPAaTEo<> PSPの中身なんて大体そんなもん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 20:31:07.16 ID:mmhhjs8V0<> 5000円!
500円でもためらうわ! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/13(土) 23:51:35.93 ID:UKLFw2KV0<> どうもこんばんは
投下しに来ましたよー

今回は設定話、上手く行けば次章に進めるかもです

では早速行きます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/13(土) 23:56:05.41 ID:UKLFw2KV0<>  量子変速。

 電撃使い(エレクトロマスター)や念動力(テレキネシス)、精神感応(テレパス)系などの
 メジャーな力に比べれば、幾分か珍しい部類に入る能力である。

 その効果は、『アルミを爆弾に変える』……と言ってしまえば簡単だが、正確には少し違う。

 使用者はまず、爆発させる物体(要・アルミ)に触れ、爆発させるための下準備をする必要がある。
 また、この『アルミに触って、爆発できる状態にする』作業は、
 専門用語で『基点設置(ポイントロック)』とも言う。

 基点設置の数に制限は無く、その限界は質量のみによって決まる、
 というのは意外に知られていない事実だ。

 次の操作は、アルミに含まれる重力子の加速。
 この加速に時間をかければかけるほど、爆弾の威力は上昇することとなる。
 逆に、威力を低く設定すれば、基点設置の直後に起爆するのも不可能ではないわけだ。

 なおこの操作を実行するには、基点となる物体にある程度
 近づいていないといけないという面倒な制限も存在する。

 そしてここまで来て、ようやくこの能力は発動するのだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/14(日) 00:09:01.44 ID:kneMsjM/0<> ーーーーーーーーーー

 「ちなみに、爆発の威力は加速時間と物体の体積、あとあんまり知られてないけど
  表面積によっても変わる。一番大事なのは加速時間だな。
  最大まで加速したのが、セブンスミストのワンフロアを爆破したときさ」


 少々誇らしげに自らの能力の解説を終えた介旅は、一息ついた後、暗い表情を見せて、


 「……まぁ、今はレベルも戻ってるし、あそこまでのことは出来ないだろうけど」

 「んー……ま、そりゃそうよね。所詮は借り物の力だったわけだし」


 介旅の話を聞いていた美琴は、そう相鎚を打った。

 続きを促すような美琴の語調に、介旅は少し逡巡しつつも口を開く。


 「はっ……情けない話だよな。そんな借り物の力でも……失ったのが、未だに悔しいんだ」


 暗い笑みを浮かべながら、介旅は言う。


 「あの力を手にしたとき、僕は思ったんだ。あぁ、これで僕は救われたんだなって。
  でも現実は、全く変わらなかった。アイツラは変わらず、僕を虐め続けた」


 沈んだ表情で、楽しくもない話をしていて。
 だけど彼は、どことなく憑き物が取れたような、気楽な声をしていて。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/14(日) 00:21:18.43 ID:kneMsjM/0<>  (何だかなぁ……ほっとけないじゃない)


 美琴が率直に思ったのは、そんなことだった。

 力が無くて。
 虐げられて。

 力を欲して。
 ようやく掴んだそれは、手の中からするりと抜け落ちていって。


 いくらその過程がねじ曲がっていても、結局はそれだけだったのだ。


 彼が本当に望んでいたのは、爆弾テロでも、風紀委員への復讐でもなくて。



 みんなが笑いあえる、そんな世界だったのだろう。


 そんな願いを持って、だけれど成し遂げられなかった彼を。

 自分に出来た、新しい一人の友達を。



 放っておくのも、見捨てるのも。

 出来るわけがなかった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/14(日) 00:24:49.20 ID:kneMsjM/0<>  「はは、何話してんだろうな僕は。悪いな、こんな暗い話を……」

 「悪くなんかない」

 「……え?」

 「だから悪くないって言ってんでしょ。
  少なくとも私は、嬉しかったわよ。また一つ、友達の悩みを聞けてさ」


 優しくて柔らかな、そんな笑顔で、美琴は言った。

 弱者を慰めるのでも、年上を敬うのでもなく。



 同じ目線の『友達』として、彼女は笑いかける。


 「私は、どんな力を持ってようと、その力だけを誇るようなヤツは大っ嫌い。
  でも、今のアンタは違う。これだけは言わせて。アンタはもう、力が無くても大丈夫よ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/14(日) 00:30:58.87 ID:kneMsjM/0<>  「……」


 何なんだろう、この少女は。
 介旅は、疑問に思わずにはいられなかった。


 凍った心すらも解かすような暖かい笑顔を浮かべたかと思えば、
 次の瞬間には何でも射抜くような強く、けれど優しい眼差しが、そこにはあって。



 そして、その顔は、何というか、その。



 (何か、アレだよなぁ……輝いてるってかさ、何つーか)



 認めたく、ないけど。

 ちょっとだけ、いや本当にそれだけなのかは分からないけど。


 可愛いなぁ、なんて。


 場違いなことを、思ってしまったのかもしれない。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/14(日) 00:31:40.05 ID:kneMsjM/0<> ……これはひどい

やっちまったよorz

深夜のテンションで一気に書くからこんな統制が取れてない上に
無駄に恥ずかしい文になるんだよ俺のバカ……

まぁ、文が崩れてるのは見逃してください
考えるな、感じろってのは無理な話ですよね

てか、結局話進んでねえよ
本来ならここでシリアス入り口に立ってないといけないのに(-_-;)

たぶん、相鎚を打った当たりから崩れました、ハイ

本当に、本当に次回からはシリアスパートに入るんで見逃してください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/14(日) 12:36:12.81 ID:geIuHOJIO<> 乙!まだこの美琴はツンもデレもないから結構恥ずかしいセリフがストレートに出てくるのね。こりゃ普通の男だったら惚れちゃうわな
まあ仮に美琴が介旅にデレたとして原作で上条さんにするみたいに照れ隠しで電撃なんてしたら介旅くん死んじゃうんだけどw
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/14(日) 14:54:14.99 ID:cR6Ne0lbo<> 介旅たんかわいいおハァハァ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/14(日) 23:38:43.72 ID:sfDrq6/v0<> ひーはー! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 20:18:51.57 ID:dsYyHLLD0<> >>250
そうなんですよねwwww
やっぱり、あの強力なツンデレ(ビリデレ?)を受け止められるのは
上条さんしかいませんので、介旅君ではあの魅力も再現できません

それ以外のところでも魅力出せたらいいな、なんて思いながら投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 20:24:10.96 ID:dsYyHLLD0<>  (……いやいやだから何を考えてるんだ僕、相手は中学生なんだってば!)


 なんだか、思考が変な方向にシフトしつつある。
 介旅は頭を振って、ちょっとピンク色になりかけていた想像を吹き飛ばした。

 ダメだ、本当にダメだ。
 せっかく友達が相談に乗ってくれているんだから、こちらもそれに応じなければ。


 「……つってもさ。やっぱ、力ってのは欲しいもんなんだよ。
  あの時みたいな、借り物の力でもさ、僕にとっては嬉しかったんだ」


 ポツリ、と。
 介旅は、本音を漏らす。

 我ながら情けないと思うけれど、結局はそれが全てだ。

 不良から逃げないですむような、力が欲しい。

 自分の意志を貫けるような、力を手にしたい。

 そして、誰かを守れるような……そんな優しい、力を誇りたい。

 力なんてなくていい、と言われた矢先にこれだ。

 今更になって己の貪欲さを再確認することになった介旅に、美琴はもう一度笑いかけて、




 「そう、ね。今じゃ第三位なんて地位にいる私も昔は、
  どこにでもいるような平凡な能力者だった。だから、その気持ちはよく分かるわ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 20:30:27.31 ID:dsYyHLLD0<>  アンタと同じ異能力者(レベル2)だったことだってあるのよ、と美琴は付け加える。

 返答が予想外だったのか、ポカンと口を開けた介旅に苦笑しつつ、美琴は続けて、


 「そりゃ、あんな手段にも縋りたくなるわよ」

 「……でも、」

 「ええ、分かってる。自分で言ったものね、そんなのはダメだって」


 介旅の言葉を遮った美琴はそこで、だから、と言葉を切って、





 「悔しいとか、欲しいとか思うんならさ。身につけてみなさいよ、本当の力を。
  あんな偽物じゃなくて、自分の努力で手に入れる、アンタだけの力を、さ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 20:38:43.24 ID:dsYyHLLD0<>  「……それは、」


 続く言葉を、介旅はなんとか飲み込む。

 努力が実ったお前だから、言えるんだろ。

 自分にその気はなくとも、その言葉はきっと、美琴を攻めるものになってしまう。

 努力が実った。

 それは、運が良かったのか、元々才能があったからだろう、と介旅は思う。

 努力する人間はごまんといるけれど、成功する人間は一握りしかいない。

 それは事実であり、真理であって真実だ。

 努力すれば救われるなんて甘いルールは、この世界には存在しない。

 どのみち最後に栄光を手に入れるのは、才能のある人間と、運の良い人間だけなのだ。 <> 書いてる途中でフリーズったorz……  翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 21:10:26.94 ID:dsYyHLLD0<>  「……、」


 肯定は出来ず、否定するわけにもいかず。

 介旅は、開きかけた口を再び閉ざす。

 しかし、その沈黙は最早、その内包する真意を隠し通せてはいない。

 一方で、その意味を汲み取った美琴は、


 「まぁ、アンタの考えなんて大体分かるけどさ」


 予想外に平然とした受け答えに呆然とする介旅に、美琴は歯を見せるように笑って、


 「努力をして失敗したくないってなら、いっそのことキッパリ諦めなさい。
  でも、失敗するかもしれなくても努力をするつもりなら、精一杯頑張りましょう」

 「……はは」


 そうか、とやっと介旅は気付く。

 この少女は、きっと才能があったのだろうし、運が良かったのかも知れない。

 でも、それでも。

 失敗を恐れずに努力をしたのは、確かだったはずなのだ。

 これだけ言われたのなら、せめてやれるだけやってやろう。

 その結果がどんなものだったとしても、誇れる過程を作り出すために。


 「あぁ、そうだな。やってやるさ」

 「うん、よろしい♪」


 その答えに、どうやら美琴は満足したようだった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 21:35:14.43 ID:dsYyHLLD0<>  「……ってあれ?なんか一緒にやる雰囲気になってね?」

 「え?ハナからそのつもりだったわよ?」

 「マジか」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「oh……マズイことになったわね」


 こんな真っ昼間っから、堂々と来るとは。

 内装も何もない雑居ビルの中で、白衣を着た少女、布束砥信は嘆息した。

 彼女の視線の先ーーより正確には部屋の出口の前にいるのは、数人の男達。

 不良グループのように見えるその集団の中から、
 リーダー格と思わしき痩身の男が出て、布束の方へと歩み寄って来た。


 「一応確認させて貰うけどよ……嬢ちゃん、このマネーカード、
  アンタがばら蒔いてるってことで合ってるよな?」


 男が差し出した一枚のカードに、布束はチラリと目を向け、


 「what?そんなもの、見覚えが無いけれど」

 「とぼけんじゃねぇよ。『路地裏のお宝』……『天使の羽』とも呼ばれてたか?
  とにかく、アンタがコイツを置いてったのを見たってヤツがいるんだよ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 21:54:04.80 ID:dsYyHLLD0<>  言い分だけ聞いてみれば、警察か何かのように思えなくもないが……
 まさか、『マネーカードのポイ捨ては禁止です』なんてことではないだろう。

 となれば当然、


 「may、捨てるぐらいなら寄越せ、と」

 「ま、そういうこった。否定するつもりはねぇらしいな、さっさと渡せば危害は加えねぇよ」


 別に捨てている訳でなく理由はあるのだが、こちらの事情など知ったことではないようだ。


 「trublesome……せめて夜に来てくれればいいものを」


 いざという時のために考えておいた戦法は、暗闇を利用したものだ。
 この時間帯にこの人数を相手取るのは正直キツイが、泣き言も言ってられない。

 と、布束が渋々戦う覚悟を決めたところで、


 「はいはい邪魔だよ邪魔じゃまー、おじさんたち早くどいてくれない?」


 何故か入り口の辺りから、第二次性徴期を迎える前の少女のような声がした。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 21:55:32.35 ID:dsYyHLLD0<>  「あん?」

 「あん、じゃなくてさ。のいてったら」


 布束が首を傾げていると、そんなやり取りが聞こえてきた。
 どうやら、ここに用のある少女がいるらしい。


「悪いがちっこい嬢ちゃん、こっちは取り込み中なんで、帰ってくんねぇか?」


 流石に無関係の少女を巻き込むのは気が引けたらしく、
 優しく追い返そうとする太めの男に、少女は一言、


 「うっせぇな早くどけっつってんだよデブ」

 「ッ!?」


 何だか一瞬化けの皮が剥がれた感じの少女の言葉に、
  ただでさえ低い不良の沸点は今すぐに限界を迎えようとして、


 「落ち着けバカ、何をガキ相手にマジになってんだ」


 そう諭したのは、中肉中背の不良B。
 小刻みに震えていた不良Aは、その言葉でようやく平静を取り戻して、


 「お、お嬢ちゃん?そういうことはあんまり人に向けて言うもんじゃないよ?」

 「あ、ご、ごめんなさい」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 22:14:50.76 ID:dsYyHLLD0<>  すごまれて怖気づいたのか、急にしおらしくなって謝る少女。
 その、なんだか今にも泣き出してしまいそうな声に、慌てる不良A。

 彼は大げさに身振り手振りを交えながら、


 「な、泣かなくていいよ!ほら、俺怒ってないからさ!」
               ・・・・・・・・・・・・・
 「ほ、本当にごめんなさい……ついつい、本音が出ちゃって」

 「ぬぁぁぁぁ!?」


 と、全く心のこもっていない(ていうかもう貶してる)謝罪に、
 今度は本気でキレそうになる不良A。

 そんなAを宥めるように、今度は不良C(ガタイが良い)が肩を叩いて、


 「やめろって。簡単にキレるのがおまえの悪い癖だ」

 「は、はぁ、チクショウ、そうだな、あぁ」

 「そうそう、ウドの大木さんの言うとおりだよ、ピッツァさん」

 「「ぬがぁぁぁぁ!?」」

 「!?denger!逃げて!!」


 何かこいつら面白いなー、などと人間観察をしていた布束は、そこでやっと思い出す。

 ここは恐喝の現場であって、決して何らかの交流会などではないのだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 22:23:18.72 ID:dsYyHLLD0<>  だが、気づいたときにはもう遅い。

 本気でキレた不良二人は、赤いランドセルを背負った少女につかみかかり、




 「うるさい」

 「「ごぶふぁ!?」」


 その二秒後には、二人仲良く壁に叩きつけられていた。


 「……は?」


 そしてその直後、少女の手が呆気に取られていた、近くの不良Bに伸びる。

 少女は男を引き寄せると同時、体を回しながら腰を屈めて、


 「は?ま、ちょ待て何それごっふぁぁ!?」


 ようやく事態を察知し始めたその男に、華麗な一本背負いを決めた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 22:40:39.70 ID:dsYyHLLD0<>  「な、何だこのガキ!?」

 「どういうことだよオイ!?」


 ここまで来れば、周りの不良達も何かが起こっていると理解できる。

 その畏怖の視線に晒されながら、少女は金髪のツインテールをポリポリと掻く。

 そうしてから、少女はやっと何かを思い出したように
 背中のランドセルに手を伸ばし、何かを取り出した。


 「あ、ごめんね腕章付けるの忘れてた」


 そう言ってから、のんびりとした動きで袖の辺りに何かを取り付けると、
 ビシィッ!と指先を男達に向けて、


 「えっと、先進教育局特殊学校法人RFO所属、木原那由他です。
  暴行未遂で拘束します。風紀委員(ジャッジメント)ですの!」

 「「は、はあァアァァ!?」」


 驚く不良達(いつの間にやら復活していたABC含む)に構わず、
 『あははは、このセリフ言ってみたかったんだよねー』
 などと訳の分からないことを呟く、那由他という少女。

 対して不良達は、なんか負けるオーラプンプンするけど逃げるわけにもいかないよね?
 といった感じで、取り合えず迎撃体制に入る。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 22:47:34.37 ID:dsYyHLLD0<>  「こ、こっちはこの人数なんだ、負けるはずがねぇ!……たぶん」

 「「そこはせめて自信持てよ!!」」

 「ジャッジメントですの!……違うなぁ、ですのー?でぇぇすのぉぉっ!!」

 「待てまだ覚悟できてなゴブ!?」

 「おいせめて一撃で終わらせグッハァァ!?」

 「てか俺まだ何も喋ってなひでぶぅっっ!!」





……不良部隊壊滅まで、残り45秒。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/15(月) 22:49:38.49 ID:dsYyHLLD0<> 投下終了です

……これのどこがシリアスなんだか
一応、パート的にはシリアス始めなのでOK……だよな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/15(月) 23:01:36.10 ID:Wn0hHP/AO<> 乙
ところで1のコテなんて読むん? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/15(月) 23:03:46.42 ID:zpKcTBaQo<> な・ゆ・たん!
な・ゆ・たん!!

あ、>>1乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/15(月) 23:53:20.02 ID:OnWrR+0Ho<> 投下乙
他のメインキャラはなゆたんで確定? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 22:33:18.10 ID:iwfOYouf0<> >>266
え……っと……つばさちゅう?
読み方とか特に決めずに付けたコテなのでノリで読んで下さい、はい

>>268
そんな感じです
全体を通して出番が多いキャラは那由他ちゃンで最後となります
あとは、もう一人二人主人公サイドにいたりしますが……お楽しみということで


こんばんは、未だに20日の出校日に提出分の課題が終わってない>>1です
しかし諦めない!二次元も三次元も両立してみせるッッ!!

ではでは、投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 22:37:09.71 ID:iwfOYouf0<>  「crazy……あの人数を、この短時間で薙ぎ倒してしまうだなんて。あなた何者?」

 「あれ、言いませんでしたっけ。風紀委員ですよ」

 「ウソおっしゃい。一介の風紀委員に、こんなこと出来るはずが無いでしょう」


 ゴミの山のように積み上げられた不良達を指さしながら、布束は嘆息する。

 丁寧に痛めつけられた肉体に、気絶するまで追いやられた精神。
 こんなことを出来るのが一般的な風紀委員だったのなら、
 この町に住む無能力者達は不良になる気を無くすだろう。

 もっとも、わざわざ腕章を付けたり不良達をキチンと拘束していたりと、
 本物の風紀委員であることも確かなようだが。


 「ひどいですね。普通の風紀委員なのにこんなことをしてる人だっているんですよ?」


 通称『腹黒パンダ先輩』ね、と意味不明なことを言う少女に布束は眉を潜め、


 「in short、あなたは『普通の』風紀委員じゃないって認めているのね」

 「……鋭い人ですね」

 「dear、今のはあなたがボロを出しただけでしょう。それと、その気持ち悪い敬語は何?」

 「あれ、年功序列に厳しいって聞いたから合わせてたんだけど失敗だった?」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 22:59:00.21 ID:iwfOYouf0<>  「as expected、そっちが素のようね。別に素に戻さなくてもいいのだけれど」

 「ううん、堅苦しいのは嫌いだし、こっちで話をさせて貰うわ」


 取り合えず、といった形だけの敬語を止めたせいか、少女の顔に余裕が増したようにも見える。

 普段なら、敬語を使わない人間にはローリングソバットを決めてやる布束なのだが、
 この少女には注意をする気にすらなれない。

 というより、そもそも敬語を使えるような人間ではないのだろう。
 明らかに不自然な敬語を聞いていると、逆に気分が悪くなる。


 「で?私についてそこまで調べてくるということは、must、何か理由があるのでしょう」

 「ええ、話が早くて助かるわ。
  精神医学関連において学園都市随一の研究成果を生み出す天才心理学者、布束砥信さん」

 「no、御託もお世辞もいらないわ。用件を言いなさい」

 「はぁ、冷たいなぁ。
  ……まぁ簡単に言うなら、協力の要請ってとこかな」

 「what、協力?」

 「そう。私とアナタが、共に抱えてる問題を解決するための、協力」

 「問題……?まさか」

 「えぇ、そうよ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 22:59:53.91 ID:iwfOYouf0<>














 「『絶対能力進化(レベル6シフト)実験』の凍結、もしくは中止。
  ……あなたと同じで、私もそれを望んでるの」











<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 23:13:47.30 ID:iwfOYouf0<>  「何、故、そのことを……ッ!?」


 布束は、戦慄する。

 少女の言ったその言葉の、その意味に。

 こんな小さな、自分の3分の2程度の人生しか歩んでいないはずの少女が、
 それを知っているという事実に。

 対して、少女は事も無さげにこう言った。


 「何を驚いてるの?もう一回名乗らないとダメかな。
  私の名前は、『木原』那由他っていうんだよ?」

 「『木原』……なるほど、ね。納得したくないけれど、納得したわ」


 布束は、冷や汗を流しながら応える。

 それは、この町の『闇』に、少なからず関わる布束ですら、ほんの少し聞いた程度の深い『闇』。

 なんでも、昼夜問わずに非人道的な実験が行われているとかいう研究所があって。
 そこの主任を任されているのが、木原の姓を持つ者達なのだとか。


 「but……何故その木原が、『実験』の邪魔立てをするのか、理解できないわね。
  あなたたちが噂通りの人間なら、むしろ好みそうな実験ではないかしら」


 身の毛もよだつような冷徹な『実験』の内容を思い出しながら、布束は言う。

 その問いに那由他は苦笑しながら、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 23:15:06.41 ID:iwfOYouf0<>  「違うの、木原一族はこの実験に協力的よ。『実験』側に雇われてる奴もいるぐらいだし」


 右肩の辺りを押さえながら、那由他は続けて、




 「だから私は今、一族を追われてる状態なの」

 「……ッ!?まさかあなた、そんな状態で『実験』を止めようと……?」

 「だから協力者が欲しかったの。お願い、出来るよね?」

 「……sure」


 布束がそう言うと同時、小さな右手が、目の前にずい、と突き出された。

 戸惑う布束に、那由他はにっこりと、年相応の子供らしく無邪気に笑って、




 「約束の握手。しよ?」

 「……allright」


 手のひらに、人肌の暖かさを感じながら、布束は思う。

 また、守りたいものが増えてしまったな、と。

 そして決心する。


 この温もりも、絶対に失わせはしない、と。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/18(木) 23:16:51.49 ID:iwfOYouf0<> 投下終了です

一応言っておきますが、別に布束さんはレズでもロリコンでもありません
母性本能に近い感じの認識でお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/19(金) 01:12:28.14 ID:vBul9awto<> 乙
いつも面白いね
続きが気になる

でも自分語りが少々うるさいから勘弁してほしい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/19(金) 10:44:51.16 ID:YwXczfCAO<> 布束ー!!!!俺だー!!!!
結婚してくれー!!!! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 22:02:37.57 ID:nGEPu8aM0<> >>276
助言有り難うございます
不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません
善処させていただきます


それでは投下します
介旅サイド、新展開序章 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 22:06:48.35 ID:nGEPu8aM0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 能力開発。
 そう言えば聞こえはいいが、簡単に言ってしまえばただのトレーニングだ。

 才能、種類など、別口の要素もあるが、筋トレと同じものだと思っても大した違いはないだろう。
 例えるなら、投薬や脳への電気刺激は蛋白質(プロテイン)の役割をなすわけだ。

 と、いうことで……








 ピィン、と。
 気味の良い音と共に、一枚のコインが宙を舞う。

 日の照らしを受けて銀色に光輝くそれは、しかし美しき放物線を描くには至らない。

 何故ならば。


 「おォオ、ラァッ!」


 という叫び声と同時に。


 ゴッ!と。
 唐突に、それ自体が爆ぜたからだ。


 通常の燃焼とは違う、上方向への指向性を持たぬ爆風は、
 コインを中心に半径30センチ程の鈍い光球を形作る。


 「……、」


 それを間近で見つめていた少女は、爆風の煽りと閃光に目を細めながら、ゆっくりと口を開いた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 22:18:17.16 ID:nGEPu8aM0<>





 「ーーダメね、全然ダメ。もう何がダメってダメなところが見つからないぐらいダメ」

 「言い過ぎだろ!?お前その短いセリフの中でどんだけダメを引用してんだよ!!」


 美琴センセーの(スパルタ)能力指導教室が始まってから、早一時間。
 介旅は、美琴によるダメ出し72回を記録しているところであった。


 「何よ、ダメなのが悪いんでしょ。
  その証拠に、最大出力がさっきから全く変わってないじゃない」

 「そりゃ一時間で変わるわけもないだろ!そんなんで能力が上がるんなら誰も苦労しねぇよ!!」

 「そんなことないわ。アンタが真面目にやってればもっと上がったはずなのよ」

 「え、マジで!?どのくらい?」

 「そうね、上手くいけば1ジュールくらいは」

 「目で見て分かんねぇ!
  比べるのもアレだけどダイナマイト火薬1ミリグラムの爆発力にも満たねぇじゃねぇか!」

 「何言ってんのよ、キャッチボールの50分の1ぐらいのエネルギーじゃない」

 「比べる対象がおかしいんだよ!しかもそれで50分の1って虚しくなるわ!!」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 22:41:26.68 ID:MwTEjGyt0<>  渾身のツッコミを入れるが、肝心の美琴は気にも止めていない様子。

 介旅は顔に流れる汗を手の甲で拭いながら、無駄な体力を使ってしまったことを後悔する。


 (そういえば、こんな風に汗を流したのなんて久しぶりかもな)


 中身のゴチャゴチャした鞄の中からハンカチを探しながら、介旅はそう思った。

 考えてみれば、最近かいた汗といえば冷や汗ばかりだったような気がする。
 たまには健康的な汗ってのもいいもんだな、なんて思いながら、ふと顔を上げると、


 「……あれ?」

 「?どうしたのよ、私の顔になんかついてる?」


 勿論、そんなわけではない。
 むしろその逆であって、顔に特に何も付いていないのが気になったのだ。

 つまり、


 「……お前、なんで汗かいてないの?」


 夏休み、ともなれば猛暑日の続く今日この頃。

 能力の使用で疲労している介旅はもちろん、この日差しの下に突っ立っているのだから
 美琴もそれなりに汗をかいていないとおかしいのだが、何故か涼しい顔をしている。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 22:57:10.99 ID:MwTEjGyt0<>  そのことを指摘すると、美琴はああコレのこと、とさも当然のように、


 「ほら、私の能力って発電系でしょ?
  だから、生体電流とか空気中や肌表面の水分とかに干渉して、
  動いてない間くらいなら快適な温度に保てるの」

 「……生体電流に干渉ってアレか?感覚神経をごまかして、涼しく感じさせるとか」

 「そんなことができたらいいんだけどね、私に出来るのは自分の痛覚の遮断ぐらいかしら。
  まぁ、そんなことしても体が危ないだけなんだけどさ、そうじゃなくて。
  発汗を抑えたり、逆に促進してすぐに蒸発させることで気化熱を奪ったりってだけよ」


 出来ない、というところが嫌だったのか苦笑いをする美琴だが、
 まぁ要するにコイツは人に散々指導した挙げ句自分はエアコン完備室内にいるような状態なのだ。

 協力して貰っておいて言うのも難だが、やはり理不尽さを感じずにはいられない介旅。

 自分のレベルが上がっても、どうせあんな便利なことは出来ないんだろうなー、と
 能力の種類自体に不満を覚えながら、介旅は取り合えず自販機に手を伸ばす。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 23:17:13.33 ID:MwTEjGyt0<>  その存在目的のほとんどが能力の練習である学園都市の公園に相応しく、頑丈かつハイテク
 (無論どこぞの金を飲み込むボロとは違い、斜め45度から蹴ったごときでタダで出てくるはずもない)
 な作りとなっているそれは、品ぞろえも豊富。

 定番のレモン牛乳にいちじくソーダ、さらにはなんと塩ココアまでってちょっと待て。


 「ま、まともなのがねぇ!レモン牛乳って確実に中で固まってんだろ!?
  塩ココアって何だ、想像もつかねぇけどマズイのは間違いない!」


 結局、迷った末に一番まともないちじくソーダを購入した。

 販売機の中のサラサラという音から察するに、原材料の粉末を
 その日その時の気温や湿度に合わせて自動調合してカップに入れてくれるタイプのものらしい。

 ぶっちゃけ、そんな無駄にハイテクな事するよりも商品のラインナップにこだわれよと思わなくもない。

 出てきたカップに口を付けると、以外と美味しかった。


 「……いや、これは機械の力なんじゃないだろうか」

 「別にいいんじゃない?てか、どっちかというとそっちのために作られたんだと思うけど」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 23:40:09.32 ID:MwTEjGyt0<>  いつの間にか隣にいた美琴が口を挟むが、介旅としては喉が潤せればいいので気にしない。

 口当たりが良くて、ものの数十秒で空にしてしまったカップを
 ちょうど近くを通った清掃ロボの方に投げ飛ばした介旅は、再び公園の真ん中あたりに戻る。


 「っし、じゃあやるかな。アドバイス頼んだ、先生」

 「わざわざ頼まなくても。乗りかかった船なんだし、最後まで付き合うわよ」


 呆れたように笑う美琴の前で、介旅はゲームセンターのコインを取り出し、能力を行使する。


 (始点設置……完了。加速、開始)


 コインを構成する重力子の加速を、ありありと感じる。

 後は、それが臨海点に達するまでひたすら待つだけーー


 「……ってあれ、ちょ、まさかごめんストォォォォッップ!!」


 ーーのはずだったのだが、そこに突然、美琴の大声が。


 「う、おぉぉぉぉ!?」


 驚き、コインを取り落としてしまった介旅は、そこで気づく。

 コインの表面に刻まれた、カエルの絵柄に。


 「おい、まさかこれかよぉぉぉぉッッ!?」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 23:49:45.03 ID:MwTEjGyt0<>  そう。
 介旅には知る由もないが、彼が今し方爆発させようとしたそれは、
 とあるゲームセンターでごく稀に手に入る、ゲコ太系統のレアメダルだったのだ。

 とはいえ、彼にそんなことを考えている余裕はない。

 何故ならば。


 「ヤバい……!」


 介旅の頬に、最近おなじみの冷や汗が伝う。


 「これだけ加速した重力子、止まるかどうか分かんねぇ!!」


 自分から引き離すべく、とっさにコインを蹴り飛ばすが、
 力加減を間違えたらしく、公園の外へと飛んで行ってしまった。

 それだけならいい、のだがしかし。


 「……?これは、コイン、ですか?」


 更に運の悪いことに、蹴り飛ばしたコインを誰かが拾ってしまったらしい。


 「クソ、間に合えーーッ!」


 介旅は、加速を止めることだけに全神経を集中させ、そして。















 爆発音は、しなかった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 23:54:37.27 ID:MwTEjGyt0<>  「……止まっ、た?」


 呟いたのは、どちらだったのか、あるいはどちらもか。

 数秒の沈黙を置いて、介旅が口を開く。


 「ふぅ、何とか大丈夫だったみたいだな」

 「ほ、ほら、きちんとコントロールできないとそんな風に焦るハメになんのよ!」

 「う、うるせぇな!だいたいそもそもの原因はお前だろ!?」

 「違うわよ!アンタがケロヨンのメダルに気づかないからでしょ!!」

 「ケロヨンだかゲロヨンだか知らねぇけど普通気づかねぇよ!!」

 「ゲロ……っ!?何てことを!!ケロヨンに謝りなさい!!」

 「何が楽しくてカエルごときに頭下げなきゃ……」

 「あの、お忙しいところすみませんが、これは貴方達の物ですか?」


 ヒートアップしていった口喧嘩に、割って入る声。

 その話し方からするに、どうやらコインを拾ってしまった被害者のようだ。

 介旅と美琴は、ばつの悪いように黙り込むと、謝りながらそちらへ振り向く。


 「ご、ごめんなさ」

 「すみませ……」


 そこには、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 23:57:15.39 ID:MwTEjGyt0<>



















 「いいえ、気にする必要はありません、とミサカは諭します」



















      ・・・・・・・・・・・・
 そこには、もう一人の御坂美琴がいた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/21(日) 23:57:31.88 ID:MwTEjGyt0<> 突っ込み所は多すぎるほどあるでしょうが、聖母のような慈悲で多目に見てやってください


さて、やっと入れたこのシーン。
介旅と美琴の反応や、いかに……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/08/22(月) 00:44:09.86 ID:FZQ+yFi40<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/22(月) 03:39:53.40 ID:UFlX25W6o<> かれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/22(月) 22:31:58.72 ID:ooAoihfco<> です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/23(火) 07:12:58.55 ID:pChDGNjIo<> の! <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 20:30:40.77 ID:XVmAHcxk0<> >>289-292
素晴らしい団結力ですの!

レス感謝、超励みになります!!


では投下します
前回の続きから <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 20:38:06.67 ID:XVmAHcxk0<>  「……は?あれ、えっと……?」


 その少女を見たとき、介旅が一番に感じたのは『戸惑い』だった。

 肩の辺りで切り揃えられた茶色の髪に整った顔立ち、その身に纏うは名門・常盤台中学の制服。

 それは、額の辺りに暗視ゴーグルらしきものを引っかけているのを除けば
 ーー否、そこを考慮したとしても、まさしく『御坂美琴』であって。


 (違う)


 だが、即座に介旅はその答えを否定した。

 振り返るまでもない、さっきから自分といっしょにいた『御坂美琴』の気配が、そこにある。

 ならば。

 目の前にいる、この『御坂美琴のような少女』は。


 (……一体、何者なんだ……?)


 そこまで考えて、介旅はゆっくり後ろに振り返る。

 元より、大して出来の良い頭でもないのだ。

 あれこれと考えるよりも、誰かに聞いてみるのが一番早いだろう。

 こんなにも瓜二つなのだ、美琴の関係者と見ても良さそうだ。

 常識的に考えれば双子、そうでなければ異様にそっくりな家族や親戚だろうか。

 そう考えながら背後を見た介旅の目に飛び込んできたのは、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 20:44:25.89 ID:XVmAHcxk0<>


 「あ、れ?わ、たし?」



 「ーーーーッ!?」


 目に映った美琴の表情に、介旅は再び戸惑いを覚える。

 その顔に浮かんでいたのは、間違いなく己と同じ『戸惑い』。

 そう、『己と同じ』。

 それが意味するものを理解するのに、数拍の時が必要だった。

 即ち、未知へ対する困惑。

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 言ってしまえば、美琴はこのもう一人の美琴について何一つ知らないという事実。

 自分と同じ顔の人間が実際に存在していて、にも関わらずその人間を全く知らない。

 普通ならば有り得ない。

 誰かは、ドッペルゲンガーとでも言うかもしれない。

 ある人は、白昼夢だと一笑に伏すだろう。

 またある人は、他人の空似だとでも言い放つだろうか。

 だが、違う。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 20:56:07.81 ID:XVmAHcxk0<>  普通ならば、有り得ない。

          ・・・・・・・・・・・
 だが、だからこそ、普通でなければ有り得る。


 この街の名は、学園都市。


 その少女の名は、御坂美琴。


 『普通ではない』この街の、


 その中でも飛び抜けて『普通を越えた』能力者。


 そして同時に介旅は、友人の言った『ある噂』を思い出す。


 『なぁ、こんな噂知ってるか、介旅?』


 そうだ、友人の、工山規範の口にしたそれは、









 『『学園都市第三位には、軍用に開発されたクローン体が存在する』』 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 21:10:40.80 ID:XVmAHcxk0<>  「……おい、まさか」

 「……ねぇ、もしかして」


 震える美琴の声と、自分の声が重なる。

 しかし、介旅は構わずに、そのまま言葉を紡ぐ。



 「お前は」「アンタは」






 またもや声が重なり、しかしまたも双方は譲らずに、口を動かす。














 「クローン人間、なのか?」「私のクローン、なの?」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 21:19:25.37 ID:XVmAHcxk0<>  二人の言葉を聞いた少女は、しばし黙り込む。

 自らの素性は隠し通す、ということか。
 それも、当然の反応だろう。

 しかし、これは禁則事項だと言われたところで、はいはいそうですかと引き下がる二人ではない。


 (どこかの研究機関が製造した?
  国際法に触れる人体のクローンを、本人の承認すらなく?一体何のために)


 と介旅は自分なりに様々な可能性を探し、


 (知らない間に、私のDNAマップが採取されていた?……まさか『あの時』ーー)


 と美琴が身に覚えがあることを一つ一つチェックしていると、





 「はい、そうですよ、とミサカは肯定します」




 意外にもあっさりと、本人の口からそれは暴露された。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 21:26:28.37 ID:XVmAHcxk0<>  「え、えぇぇぇぇ……?そんなにアッサリ」

 「ちょ、マジメにどう口を割らせようか考えてた私がバカみたいじゃない!?」


 想定外のカミングアウトに、思わず調子を崩されかける二人だったが、
 美琴はハッと頭を左右に振ると、気持ちを切り替えたように、更に質問を重ねる。


 「ねぇアンタ、どこのどいつに何のために造られたの?」


 その問いに少女はまた黙り込んで、


 「ZXC741ASD852QWE963'、とミサカは符丁の確認を取ります」

 「は?」

 「おい、それって暗号コード……?」

 「やはりあなた方は実験の関係者ではないのですね。先程の質問にはお答えできません」


 少女は納得したようにそう言うと、美琴の方へと手を伸ばし、


 「あぁ、そうそう。先程も伝えましたが、落とし物ですよ、お姉様」


 そう言って少女の突き出した掌の上には、安っぽいアルミ製のコイン。

 間違いなく、自分の不注意で飛ばしてしまった物だった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 21:36:08.70 ID:XVmAHcxk0<>  「あーはいはい、ありがとね。それでさっきの質問に戻るけど、何で言えないの?
  アンタが私のクローンなら、私はアンタの親なんでしょ?知る権利はあると思うけど」

 「機密事項だからです、とミサカは簡潔に答えます」

 (そのコインは一応僕のなんだけどなぁ……あ、コインケースに仕舞いやがった。
  ま、いっか。突っ込める雰囲気でもねぇし)


 一人場違いなことを考えている介旅など気にも留めずに、美琴の尋問は続く。


 「じゃあもういい、勝手に尾いていくわ。
  アンタが帰った場所まで行って、製造者に直接聞いてやる」

 「……そのような事態への対処はインプットされていません。
  お好きにどうぞ、とミサカは伝えます」


 強い語調の美琴に、飄々と答える少女。
 だがその様相とは裏腹に、交渉は美琴に有利に進んでいるようだった。


 「何を偉そうに……まぁいいわ、じゃあ遠慮なくそうさせてもらおうかしら」


 危ない感じの笑顔を浮かべる美琴に、介旅は少しげんなりしつつ、


 「えっとさ、一応聞くけど……帰っていい?」

 「何言ってんの、アンタも一緒に来るに決まってんでしょ」

 「ですよね……」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 21:39:59.69 ID:XVmAHcxk0<>  (まぁ、どうせ暇なんだしいいか)


 と、介旅は楽観的に考えて、


 (あれ?それってもしかして端から見るとストーカーじゃね?)


 美琴といっしょにいる分には構わないだろうが、もしかするともしかするかもしれない。

 また警備員さんにお世話にならないように気をつけよう、と心に決めた介旅であった。
















 「そうだ、ちなみにお前、名前なんてーの?」

 「ミサカの名前はミサカですよ、とミサカは返答します」

 「だー……御坂は御坂でミサカはミサカなんだな、分かった」

 「ちょっと、そんな紙に書かないと分からないような区別やめてよ」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/24(水) 21:42:08.27 ID:XVmAHcxk0<> 投下しゅーりょーです

このSSでは、原作と『実験』の進み具合が違ったりするかもしれませんのであしからず

段々と話が進むようになってきましたね、よかったよかった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/25(木) 09:05:45.76 ID:BnSABCsXo<> >>1乙
先が見えない
楽しみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/25(木) 10:02:57.12 ID:wivCUNUAO<> これは名前呼びフラグ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/25(木) 11:10:01.44 ID:yhMwSjmIO<> 投下乙
これで美琴と呼ぶようになったら周りの勘違いがさらに進むだろうなー
しかもその事情も話せないという <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/27(土) 09:17:33.47 ID:TVJjbFHY0<> いいぜ、テメェらがこれを名前呼びフラグだって言うなら……まずはそのふざけたフラグを(ry


どうもおはようございます
今日はもう少し早めに投下しようと思ったのですが……
『99.9% Noisy』を悶えながら何回も聞いてたらいつの間にかこんな時間でした

アレ、破壊力半端ねぇ

無駄口をすみません、では投下します <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/27(土) 09:20:57.72 ID:TVJjbFHY0<>  木々の葉の間から漏れる陽光が、乾いた地面を優しく照らす。

 風が吹き抜け、時折噴水の水飛沫のかけらがその中に混じり、より一層の涼しさを演出する。


 「むー……」


 そんな、真夏の一日とは思えないほど爽やかな環境の中、介旅初矢は悩んでいた。


 「……やっぱビリビリでよくね?」

 「あだ名だしムカつくから却下」

 「じゃあ、そっちを御坂妹って」

 「誰かに聞かれたら面倒なことになる。却下」

 「み、美琴」

 「気安く下の名前で呼ばないでよね」

 「ヒデェなオイ!?僕今結構勇気を振り絞ったんだよ!?」

 「ほらほら、いいからさっさと考えて」

 「クソ、お前らの呼び分けを何で僕が考えないといけないんだ……」


 そうは言うものの、やはり一度引き受け(させられ)た手前断りづらいのか、
 介旅は再び思考を始める。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/27(土) 09:33:34.31 ID:TVJjbFHY0<>  「あの、お言葉ですが」


 と、あまりにも真剣に悩む介旅を哀れんでか、ミサカがそこで口を挟み、


 「抑揚……イントネーションを変えればよいのではないでしょうか、とミサカは提案します。
  例えばお姉様は『御坂(↑)』ミサカは『ミサカ(↓)』といったように、とミサカは補足します」

 「「……」」


 介旅と美琴は、数秒ほどお互いに顔を見合わせてから、




 「「それだ!」」



 「えぇと……適当に言っただけなのにそんなにプッシュされると少々気まずいのですが、
  とミサカは本音をぶちまけます」

 「えー、でもいいじゃない。それなら知り合いに聞かれても平気だし」

 「呼び分けは混乱しそうだけど、見分けるのも混乱するんだし同じことだろ」


 とまぁ、二人してミサカの意見を押しまくっている訳なのだが、要するにアレである。
 会議が長引いたときに出された適当な案が適当に賛成され易いのと同じだ。

 後で面倒くさいことになるとか関係なしに、取り合えず今
 面倒なことを終わらせたいという心理が働いているのだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/27(土) 09:41:56.16 ID:TVJjbFHY0<>  とまぁ、よくある集団心理に引っかかっている二人だが、ミサカの方もそれに気づいていない。
 この時点で、彼女もある程度集団心理の中に取り込まれているのだろう。

 ともあれ、一度可決されてしまった案を今更変えるのも面倒だと
 思い直したミサカは二人の方に向き直って、


 「では、ミサカはこれで失礼させていただきます、とミサカは告げます。
  尾けてくるなら勝手にどうぞ」

 「はいはい、んじゃお言葉に甘えて」


 言うと同時に歩き出したミサカと美琴に、慌てて着いていく介旅。

 というか尾行を公認するのって間違いなくアウトじゃね?などと思いながらも、介旅は歩く。


 「つーか、クローンなんて聞いたからアレだな、本人を殺して成り代わる
  なんてのを想像してたのに、まさかこんな平和なやつだとはな」


 何気なしに介旅はそう言って、


 「いえ、ミサカ達は平和などとは程遠い存在ですよ、とミサカは訂正します」

 「?おい、それってどういうーー」

 「達!?達ってどういうことよ!まさかアンタみたいなのがまだいるわけ!?」

 「おや、あんなところに雀が」

 「聞けっての!」

 (……なんだかなぁ) <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/27(土) 09:44:04.02 ID:TVJjbFHY0<>  意味深な台詞に得体の知れない不安を覚えたのがバカみたいだ、と介旅は思った。


 どうせ、『軍用』クローンだから、とか
 そんな理由なんだろうな、と。


 そう思って、何故か震える体を抑えつけた。


















 彼がその真意を知り、後悔することになるのはーー






 もう少し、ほんの一寸だけ、先の話。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/27(土) 09:46:17.17 ID:TVJjbFHY0<> 短いですがここで終了

次回は顔芸さんサイドかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/08/28(日) 02:09:35.53 ID:4xcww1vE0<> >>1
おつおつ
あの歌は今までのキャラソンの中で三番目に好きな曲だ
一方さんマジでかっけぇよな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/28(日) 02:33:01.94 ID:Bk5Lphn+o<> >>1おつのいじー
ミサカたん可愛い
介旅たん可愛い <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 11:11:55.83 ID:HyEge9bB0<> こんにちはー
またもや短いですが投下します

珍しく予告通りで顔芸さんサイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 11:12:56.09 ID:HyEge9bB0<>  『定時連絡。南ゲート付近ブラウンマーブルよりマーブルリーダー。
  18時00分ジャスト。こちら異常ありません』



 『北ゲート付近イエローマーブル、同じく異常ありません』




 『こちら学区外巡回中レッドマーブル。予想よりも早く気づかれましたが、許容範囲です』




 己の部下達からの三件の報告。
 いずれも想定内だ。今からやることに影響は及ぼさない。

 テレスティーナ=木原=ライフラインは、笑みを噛み殺しながら指令を出す。


 「よし、時間だ。始めろ」




 言葉は、簡潔だった。



 直後。


 学園都市第23学区の一角を、轟音が包み込んだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 11:29:44.59 ID:HyEge9bB0<>  音の正体は、この学区にある、とある倉庫の扉を無理矢理こじ開けるため
 ーーではなく、扉そのものを吹き飛ばす為の大量の爆薬。

 あまりの音に、テレスティーナは顔をしかめる。

 もう少し薬量を少なくしておけばよかったか、と思うも、やはり無理だと考え直した。

 四十ミリグレネード砲程度ではびくともしない壁を破るには、
 どうしてもそれなりの量が必要になってしまうのだ。


 「……チッ、能力使って聴覚を遮断しとくべきだったか」

 「どうしました?」

 「何でもねぇよ、さっさと行くぞ」


 言うと、テレスティーナは駆動鎧を軋ませながら走り出した。

 慌てて着いてくるパープルマーブルの隊員達のことは特に気にかけず、
 一歩で数メートルの距離を移動しながら彼女は自らの状態を確認し、


 (……クソ、やっぱり昨日のダメージが残ってやがる。
  駆動鎧の姿勢制御コンピュータ部分を破壊されたんだから当然か。
  他の駆動鎧から移植しても上手く機能しやがらねぇ)

 『リーダー、作戦よりも若干の遅れが見られます。
  今後の活動にも影響を及ぼす可能性があるのではないでしょうか』 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 11:45:51.15 ID:HyEge9bB0<>  「分かってるっつの。『アレ』を手に入れた後で、改造ついでに修理しておくわ」


 慎重派過ぎる隊員の声に、通信をブツリと切る。

 と、そこでようやくおいついたパープルマーブルの一人が心配そうに、


 「リーダー、大丈夫なんですか?通信部隊との連絡を切ってしまって」

 「平気だよ。あっちは私の計画の補助程度だからな。
  大体、わざわざ緊急召集までして警備員の配置を変えたんだ。
  失敗するわけがねぇだろ」


 簡単に言い切った彼女の表の顔は、警備員特殊部署、先進状況救助隊(MAR)の所長。
 つまりは、警備員の中でも特別扱いされている人間なのだ。

 そんな彼女が緊急召集を要請したのだから、通らない方が不自然というものだ。

 案の定、召集の後に行った会議にて
 第23学区の警備員を全てMARに変更させることが成功、今に至るわけである。

 要するにこれは、戦艦で撃ち合うゲームで
 最初から相手の船の中が味方だけであるようなものなのだ。
 学区外の警備員が来る(タイムアップ)までに事を終わらせてしまえば、後は何の問題もない。

 自分達は、正体不明の侵入者に撃破されたと言っておけばいいわけだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 11:58:21.19 ID:HyEge9bB0<>  「……っと、ここかぁ?」

 「の、ようですね」


 辿り着いたのは、申し訳程度の明かりすらない闇の空間。
 倉庫の最深部からある一定のプロセスを踏むことによって発見できる、秘密の部屋。


 「しかし、何故『表側』の保管庫に?裏には裏の倉庫があるものではないですか?」

 「スペースの都合で間借りしたか、もしくは裏でも引き取りたくないような代物か
  ……今回の場合は、後者の可能性が高いがな。
  持ってるだけで抗争になるような兵器だ、裏側が手を出しにくい表側に保管したんだろ」

 「しかしそのおかげで、表にパイプを持つ私達には都合がいい、と」

 「そういうこった。ほら、分かったらお前等も探せ。時間がねぇんだ」


 駆動鎧に備え付けのライトと能力を使って、テレスティーナは
 ゴロゴロと置いてある兵器たちをかき分けながら目的の物を探していく。

 とはいっても、隊員の方にそんな能力はないので、完全なる手探りで探すことになる。

 リーダーとは違ってか弱い乙女なんですよ、というセリフをなんとか飲み込んで、
 チームの紅一点(自称)の隊員はライトを点けた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 12:10:48.17 ID:HyEge9bB0<>  「……あ、リーダー。これじゃないですか?」

 「あ?どいつだよ」

 「ほら、これ。えっと、FIVE……あとは暗くて読めませんね」

 「そいつだ!早くこっちに寄越せ!」

 「給料上乗せしておいてくださいね」

 「生憎とテメェラの顔なんざ覚えてねぇんでな。テメェの名前すら分かんねぇから無理」

 「えー、そんなー……」

 「フン、嘗めた口聞きやがって。普段ならモルモットにしてやるとこだが、
  今日は機嫌がいいんだ、勘弁してやる。次からは気いつけるんだな」

 「りょーかいです、リーダー」


 次は本気でモルモットにしてやろうかと思わなくもないテレスティーナだったが、
 取り合えずは目先にあることが最優先だと考え直し、手に入れた『兵器』を分解する。


 「あれ、壊しちゃうんですか?」

 「あぁ、私が欲しいのは発射部分だけだからな。コイツのコンピュータは未完成だし」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 12:14:21.20 ID:HyEge9bB0<>  いくつかの専用ツールを使って、分解を進めながらテレスティーナは思う。


 「……ッ、」


 これさえあれば。


 「ヒヒ、ひゃは」




 これさえあれば、あの少女に勝てる、と。




 「ハハ、アッハッハッハッヒャッハァッヒヒヒハクハはははははは!!!」




 木原那由他に、地獄を見せてやれる、と。





 「待ってろよ那由他ちゃぁーん!?ギッタンギッタンにしてやるからなぁぁぁぁ!!」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 12:14:48.85 ID:HyEge9bB0<>  「……うわぁ、リアルでギッタンギッタンって言葉使ってる人初めて見た」

 「よぉし、テメェのお望みはモルモットだな?」


 そうは言っても、ヤる気になれない。
 今日はなんだか調子の狂う日だ。

 情緒不安定予備軍であるテレスティーナは、今日一日をそう締めくくった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/29(月) 12:15:25.31 ID:HyEge9bB0<> 書いてるときの>>1のテンションによって行動が変わるので、
登場人物は基本情緒不安定っぽくなります、ごめんなさい

あと、ボス風格のテレスを期待してた人にもごめんなさい
部下M(仮)が暴走してしまうんです、はい

では、これにて投下終了です
学生さんは残り三日、いい夏休みを <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/29(月) 14:12:07.39 ID:4snHLOCAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/08/29(月) 16:07:17.22 ID:Sra4/A3r0<> >>322

なるほど、確かにアレを使えば「暴れ馬」とやらにも勝てるな
気になる展開でwktkしてきたぜい

ちなみに俺の住む北海道では、休みは二週間くらい前に終わってる
どうでもいい自分語りスマソ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/29(月) 20:39:00.97 ID:RpOy0YPDo<> >>1乙
テレスたんが相変わらずで安心した <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/31(水) 13:51:27.59 ID:j+x4xJn+0<> 翼厨てなに?
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 22:39:38.23 ID:SQfHFu320<> >>326
考えるな、感じろ
……とまではいきませんが、そんな感じでお願いします
意味とか無くもないんですが、ここで言うべきことではないので


さてこんばんは>>1です
↓の表示が多少気になりますが投下します
 介旅サイド、時間が飛んでます
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 22:52:12.16 ID:SQfHFu320<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「はぁ……何だかなぁ」


 夜、とは言ってもまだ地平線の向こうで夕焼けが薄く赤らんでいるような時間帯。

 最終下校時刻間近の道路を、介旅は歩いていた。

 今頃、夏期留学に出ている弟はどうしているだろうか。

 淡い朱色は、どこか感傷的な気分を誘った。


 「ガラじゃない……いや、一周回って逆にフィットしてるんじゃね?」


 それはない、と心の中でセルフツッコミ。

 はぁ、とまた溜め息をついて、介旅は今日一日を振り返る。




自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 23:02:38.41 ID:SQfHFu320<>  『そんなに必死で謝らなくても、別にいいんだぞー?』


 メイドの修行中だという、小柄な女の子に出会った。


 『人の友達に、何をする気よ!!』


 勘違いをした少女に、突き飛ばされた。

 その少女は、因縁のある相手だった。


 『私が、アンタの新しい友達になってあげる』


 笑顔の似合う、活発な少女だった。

 元気で、優しくて、……可愛かった。

 この笑顔を失わせたくないと、そう思った。


 『いいえ、気にする必要はありません、とミサカは諭します』


 今度は、少女のクローンときた。

 現実味を帯びないその存在は、確かにあそこにいた。
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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 23:09:16.45 ID:SQfHFu320<>  『ムム。お腹がすきました、とミサカは報告します』

 『何でアンタは、そんな期待した目でこっちを見るのよ』


 まるで本物の双子みたいだった二人と一緒に、いろんなところに行った。


 『食後はカフェでくつろぐものですよね、とミサカは確認を取ります』

 『この炎天下は、水分だけでは乗り切れません。
  ちょうどあんなところにアイス屋さんがありますよ、とミサカはさりげなく伝えます』

 『尾行を許したのですから対価はあってよいのでは、とミサカは報酬にぬいぐるみを要求します』


 ファストフードを食べた。
 喫茶店でのんびりした。

 ダブルのアイスを頼んで、片方落としていた。
 どうでもいいことを口実に、ファンシーグッズを買わされそうになった。

 そこにいたのは、普通の人間だった。
 自分と何も変わらない、たった一人の。




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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 23:12:46.90 ID:SQfHFu320<>  あぁ、そうそう。

 帰り際には、ちょっとガッカリさせられたんだった。


 『ミサカはこれから実験の手伝いに行かなければならないので、施設には戻りません』


 何だそりゃ、と。
 思わずツッコんでしまった。

 あの苦労は一体何だったのか。
 そう言ってやろうとも思ったが、よくよく思い返してみれば全く苦労なんてしていなかった。

 それならいいや、と。
 そこで、尾行は終わってしまった。

 帰り道が違ったから、そこで美琴とも分かれた。

 最終下校時刻のバスに乗れ無かったので、とぼとぼと歩いてここまできた。



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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 23:15:22.93 ID:SQfHFu320<>  「……ついた」


 思案を止めて、前を見る。

 無骨な外観に、ハイテクノロジーの素材。

 いつの間にか、警備員の詰め所に着いていたようだ。

 介旅は、ドアの取っ手に手をかけた。

 今は、ここが自分の居場所だから。

 一切躊躇わずに、介旅は言う。




 「ただいま」






 そして、ガチャリと開いたドアの先で待っていたのは、



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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 23:16:02.64 ID:SQfHFu320<>




 「うだー……。ダメじゃんよぅ」







 と机に突っ伏す黄泉川愛穂と、




 「うわ、何だコレ」




 大量の書道半紙にしたためられた『禁煙』の文字であった。



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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/08/31(水) 23:16:31.45 ID:SQfHFu320<> しゅーりょー
ほとんど意味の無い回です
心理描写の練習がてらやってみました


次回、黄泉川先生は一体どうなるのか

それは僕にも分かりません
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/01(木) 04:25:30.20 ID:KwpOpu1Eo<> シリアスかと思ったらヨミカワwwwwww


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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/01(木) 13:52:25.43 ID:QAKOw5e40<> 乙
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/09/01(木) 13:54:15.05 ID:HnDsmg7F0<> おつおつ
一方そのころ、美琴は実験の内容を知って一方通行と対決か
それを思うとなんか切ないな
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 05:52:33.70 ID:VpbN1VOR0<> おはようございます

何故か目が覚めたので投下します
介旅サイド続き+α
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 05:54:07.46 ID:VpbN1VOR0<>  「えっと……黄泉川さん、何してんの?」


 机の上に上半身を投げ出している黄泉川に、介旅は問いかけた。

 黄泉川は軽くこちらを見て、手に持っていた煙草の火を消してダストシュートに放り捨てると、


 「いやぁ……見ての通り、禁煙に失敗したじゃん」

 「いや見ても分かんねぇけどな」


 まぁ確かに『禁煙』と書かれた紙が散らばってはいるのだが、
 そこから禁煙失敗の意を読みとるのは困難というものだ。

 あるいは、精神感応系の能力者になら可能なのかもしれないが。 
 身近にいる精神感応系が特殊すぎてあまりそっち方面の知識がない介旅には、
 よく分からない分野のことだ。


 「……で、一応聞くけど。何日保ったんだよ?」

 「1/12日」

 「……それって禁煙なのか?」


 二時間というのは、どちらかといえば「吸わない」ではなく「吸えない」
 時間に該当したのではないか、と何となく介旅は思う。



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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 06:11:00.44 ID:VpbN1VOR0<>
 「失礼な。これでも頑張った方じゃんよ」

 「ちなみに最長記録は」

 「1/31ヵ月」

 「わざわざ分数にしなくてもよくね?」


 うん、コイツはただ単に我慢の足りない人だ、と納得した介旅は呆れたような目で黄泉川を見る。

 当の本人は別段気まずそうな顔もせずに、


 「ニコチンとタールの無い世界の名は地獄じゃん。禁煙なんて無理無理」

 「おいそれでいいのか生徒指導の教師」

 「駄目だから禁煙してんじゃんか。介旅、お前何かいい方法知らないか?」

 「え?んーっと……」


 聞き手に回っていたところに突然話を振られ、介旅はしばし考え込む。

 その間にも、黄泉川はどんどんニコチンを接種して、気力を回復させていた。

 というか、二時間でコレなら一日で干枯らびるんじゃなかろうか。


 「……じゃ、ちょっと荒療治だけどいいか?」


 そうこうしている間に考えがまとまった様子の介旅の顔に、黄泉川は期待の眼差しを送る。



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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 06:22:22.47 ID:VpbN1VOR0<>
 ちなみにそのキラッキラした視線には、
 これでもう『煙草を吸う女性ってちょっと……』とか言われなくてすむんだっっ!!!!
 という切実な思い(むしろ事実。五年ほど前)が上乗せされているのだが、介旅はそんなことは知らない。

 彼にしてみれば、禁煙ぐらいでそんなに期待されても困るのだ。

 介旅はちょっと苦笑いを浮かべつつ、


 「そうだな……ようは、吸えないようにすればいいんだろ?じゃあ僕が道具を預かっとくよ」

 「……えー?それは辛いというか別の方法はないじゃんか?」

 「辛いぐらいじゃないと駄目だろ。ホラ、ライターと煙草出して」

 「そんなぁ……」


 落胆した声を出してはいるものの、やはり禁煙は必要だと悟ったらしく
 黄泉川は涙目になりながらも喫煙用具たちを差し出す。


 「先に言っとくけど、絶対に吸っちゃ駄目じゃん?」

 「こんな間近で依存者を見せられて吸いたくなるわけ無いだろ」

 「あと、そのライターの燃料漏れると危険だから気をつけるじゃん」

 「危険?」

 「何か試供品らしいけど。どうも、爆薬みたいな燃料を使ってるらしいじゃん」


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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 06:37:42.57 ID:VpbN1VOR0<>
 「……確かに危険だな」


 もっともそれで通常のライターとして使えるあたり、さすがは学園都市の技術力。
 ミリグラム単位で燃料の出力を調整できたりするのだろう。


 「……ん?」


 と、ライターを受け取った介旅はそこで首を傾げ、


 「そういえば、今日は警備員の緊急召集があったんじゃねぇの?鉄装さんが言ってたけど」

 「体調不良で欠席じゃん」

 「……二日酔いは体調不良なのか?」

 「体調が良くなかったんだから嘘ではないじゃんよ」


 黄泉川は、さらりとそう言い放った。
 ここまですんなりと言われると、逆に正しいことのようにも思えてしまう。


 「……いや、やっぱダメだろ」


 介旅がそう口に出した、その時だった。

 黄泉川の携帯が、軽快な着信音を鳴らす。



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◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 06:48:52.45 ID:VpbN1VOR0<>  安っぽい液晶画面に表示されたのは、『警備員本部』の文字。

 黄泉川は纏う空気を一変させ、携帯を耳元まで持っていく。


 「はい、こちら黄泉川愛穂です」


 電話に出た瞬間、彼女の顔に先程までの面影は残っていなかった。
 いわば、仕事モードというやつだろうか。

 向こう側の声は聞こえないので、介旅にその内容は分からない。
 だが黄泉川の表情を見るに、深刻な事態が起きていることは容易に想像がついた。


 「……了解。すぐに向かうじゃん」


 そう言って通話を切った黄泉川は介旅の方に向き直り、


 「はぁ……どうやら、23学区の地下倉庫に侵入した奴等がいるらしいじゃん。
  あんな胡散臭い連中の言いなりになったって聞いたあたりから、想像はついたけどな。
  てなわけで悪いな介旅。しばらく現場に向かうから、留守は任せたじゃん」

 「分かってるっての。行って来いよ」


 介旅が言い終えたときには、既に黄泉川の姿は無い。

 さてとりま夕食でも作るかな、と介旅はキッチンへ向かおうとして、あるものを見つけた。



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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 06:58:02.95 ID:VpbN1VOR0<>
 「……ん?アレって」


 机の上のパソコンが、電源付けっぱなしになっている。
 しかも、ログアウトすらしていない状態で、だ。

 全く、不用心なこと極まり無い。
 誰かに勝手に使われたらどうするのだろうか。


 (……勝手に?)


 そこでそんなことを考えてしまうのは、彼の性か。

 今ならバレない。久しぶりにパソコンが使える。
 そう思った二秒後には、彼の手はキーボードの上にあった。


 「さて、何をするかな……」


 ネットサーフィン?ハック?それとも……、と挙げていった介旅は、ふと思い出した。


 (……パスワード解読)


 思い浮かべるのは、あの少女。

 思い出せ。
 あの時、ミサカは何と言っていた?



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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 07:07:55.64 ID:VpbN1VOR0<>  
 パスの確認を取る。
 そう、確かそう言っていたはずだ。

 学園都市に紙のデータはほとんどなく、ほぼ全てがデジタルに収められている。

 つまり。



 (パスワードを解読してハックをかければ、アイツの関わる実験のデータを入手できる!)



 カタカタカタカタ、と介旅の指がキーボード上を滑る。

 意外にもセキュリティが甘かったことと、このコンピュータの情報ランクが『B』
 つまり教職員用レベルであることが幸いとなったのだろう、データはすぐに見つかった。

 介旅はそれに目を通して、







 「……嘘だろおい」







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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 07:14:47.57 ID:VpbN1VOR0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「ウソでしょ……?」





 同時刻、とある電話ボックスの中で御坂美琴は震える声で呟く。

 手に持ったPDAに表示されたのは、とある実験のデータ。
 あのクローンの少女が使われる、その実験の内容は……、





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 そして同時刻、とある路地裏。


 「時間です。被験者は所定の位置へ、とミサカは伝えます」

 「あァ、分かってンよ」


 被験者と呼ばれた少年は、引き裂くように笑う。


 「ンじゃ、まァ……始めるか」


 白く、白く、白い。
 最凶の最強と歌われる少年は、笑いながらそう言った。



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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 07:16:39.81 ID:VpbN1VOR0<>


 物語の中心は、加速装置の少年と電撃使いの少女。


 役者は出揃った。

 観客は集まった。





 これより、惨劇の舞台が幕を開ける。





 舞台に立つ筈でなかった少年は、果たして何をすべきか。






 それは、誰にも知り得ない。





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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/02(金) 07:17:45.08 ID:VpbN1VOR0<> 投下終了

いよいよ、本格的な非日常です。

その中で、守るための力を持たぬ彼はどうしたらいいのでしょうか?


……多少気取ってみました
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/09/02(金) 08:47:08.07 ID:09VwIADO0<> 乙
スーパーハカー!
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/09/02(金) 13:10:55.91 ID:HlevzzlN0<> >>1
おつおつ
格好良い表現が場面の雰囲気にしっかりマッチしてるな
力が無くたって、人を救えるって証明してくれよ介旅!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2011/09/02(金) 19:15:58.56 ID:eOoTISx/0<> >「1/31ヵ月」

うちの親父とまったく同じ台詞でワロタw
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/03(土) 01:35:24.85 ID:HMSx07Vdo<> >>1乙
介旅たんがどうするのか非常に気になる
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:01:33.33 ID:GB9qa5I80<> 寝落ちったorz
本当なら昨夜投下する予定だったのですが……

というわけで、今から投下します
私用で消えるかも

少女サイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:09:01.94 ID:GB9qa5I80<>
 「これより第九九八二次実験を開始します、とミサカは告げます」


 言うと同時、少女は駆け出す。

 その手に握るのは、最新型低反動アサルトライフル『オモチャの兵隊(トイソルジャー)』。

 密林の猛獣程度なら一撃で仕留める威力を持つそれを、少女は少年へと向け、




 「ーーーーッ!」




 直後、轟音が発生した。


 少女の打った弾丸の炸裂音、ではない。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 少女の体が、鉄筋コンクリートの壁へと激突した音だ。




 「……がッ……ふ……?」



 訳が分からない、といったような表情を少女は浮かべた。


 少女の目には、少年が軽く足踏みしただけにしか見えなかった。

 ・・・・・・
 にも関わらず、少女の体は吹き飛ばされ、壁面に叩き付けられた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:24:11.13 ID:GB9qa5I80<>

 「あン?なァにを驚いたみてェな顔してやがンですかァ?
  そンなンで俺の相手をしよォなンざ片腹痛ェっつの……人形如きがよォ」



 少年は、笑っていた。


 警戒する必要など、無いと言うかのように。

 笑いながらでも、指一つ動かさずとも危険は無いと言わんばかりに。


 間違いなくこの現象を引き起こした張本人であろう彼にとって、
 少女とはつまりその程度の相手なのだ。



 「……油断していると、足下を掬われますよ、とミサカは忠告します」

 「あァ?」


 絞り出すような少女の声に、少年が反応した瞬間、

 プツン、と唐突に、路地裏を照らす街灯が一斉に機能を停止した。



 「ヘェ……成程ねェ」



 感心したような声を出す少年に、少女は迷わず銃口を向ける。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:29:09.49 ID:GB9qa5I80<>  月明かりは雲に隠され、街灯も消した。

 つまりこの暗闇の中で視界を確保できるのは、暗視ゴーグルを装備している少女のみ。

 少年には、この攻撃に反応することは不可能。



 「足下を掬われましたね、とミサカは勝ちどきを上げます」



 宣告と共に、弾丸が空を切る。


 各種センサーを利用し、標的に合わせ最も効率的な弾道を計算する
 『オモチャの兵隊』の弾丸から、逃れる術など無い。


 五・五六ミリ弾が、少年の体中に襲いかかった。

 その中の数発は、間違いなく急所に届いている。


 そして、



 「………………?」



 少女には、何が起こったのか分からなかった。



 自分が撃ったはずの弾丸が、少年の体に引き寄せられるように飛んでいった弾丸が。



 自らの体を、貫いていった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:34:08.22 ID:GB9qa5I80<>
 「…………がッ!?」



 激痛が、直後に襲いかかる。

 銃痕は肩に二カ所と、わき腹に一カ所。

 計三カ所の穴から、赤黒い血液が大量に流れ出す。



 「ハッ、何を痛がってンだ人形!ほら次の手はどォした、あァ!?
  早くしねェとぶっ殺しちまうぞ!」


 「ーーーーッッ!」



 痛む体に鞭打ち、少女はとっさに横に転がる。


 次の瞬間、先程まで少女の頭があったはずの地面を、少年の足が踏み砕いた。


 ギリギリのタイミングに冷や汗を流す少女だったが、
 少年の攻撃は未だ終わってはいない。


 砕かれたコンクリート片が突然、少女の方へと発射されたのだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:47:33.87 ID:GB9qa5I80<>
 どすどすどす、と鈍い音が連続した。



 「ひぎッ、……いぁ……!!」



 尖った破片が、とっさに顔を守った腕の中へ埋没している。

 ザラザラとした表面に、肉が削がれ、神経を抉り取られていく。



 「チッ……もォ終わりか?クソつまンねェなオイ」



 見上げれば、退屈そうな少年の顔。

 その手が、少女の体に迫ってくる。



 「ーーーーッッッ!!!」



 痛覚が麻痺し、ほとんど何も感じない腕を振り上げ、
 少女は役に立たない『オモチャの兵隊』を少年に投げつけた。


 突然のことに驚いたのか、少年が一瞬怯む。


 その隙に、少女は駆け出した。


 死の路地裏から、逃げ出すために。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:55:31.81 ID:GB9qa5I80<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 まさに体の限界を示すような、
 タッタッタタッタッッ、と不規則な足音を聞きながら、少年は笑った。



 「逃げンのか?イイねェ……食われるだけの豚じゃなくて、狩人を楽しませる狐ってワケか。
  ……つーか、狐狩りってなァ確かイギリスの伝統だっけか?」



 少年の能力なら、少女を逃がさずに止めを刺すことなど簡単だ。

 いやそもそも、最初の一撃で少女を殺すことも可能だっただろう。


 少年がそれをしなかった理由は、至極簡単。


 少年にとってこの実験は『人』を『殺す』ことではなく。

 逃げる『人形』を楽しみながら『壊す』ものなのだから。



 くつくつと笑いながら、少年は言う。



 「そォそォ、そォやってもっと俺を楽しませてくれよ。
  人形なら人形らしく、俺の玩具になれ」


 少年は、少女の走っていった方向へ体を向ける。


 さぁ、鬼ごっこのはじまりだ。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/06(火) 06:57:03.66 ID:GB9qa5I80<> 投下終了

今更ながら
『若干のグロ描写注意』
を忘れてました、すみません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 06:59:41.84 ID:9/zDkJxpo<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 08:09:47.80 ID:h8pn83ZIO<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 12:12:52.99 ID:F4BgyQN3o<> おつおつ
ミサカたんペロペロ… <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 16:30:50.61 ID:tkcS7crE0<> こんにちは

最近、忙しくて更新頻度が落ち気味ですみません……
なるべく、三日に一度ペースは守れるようにします

では投下 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 16:35:03.89 ID:tkcS7crE0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 『「妹達(シスターズ)」を運用した絶対能力者(レベル6)への進化法』

 学園都市には七人の超能力者が存在する。

 しかし、『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』を用いて予測演算した結果、
 まだ見ぬ絶対能力へ到達できる者は一名のみという事が判明。

 この被験者に通常の時間割り(カリキュラム)を施した場合、
 絶対能力に到達するには二五〇年もの歳月を要する。
 [参考資料:別紙『人体を二五〇年間活動させる方法』]

 我々はこの『二五〇年法』を保留とし、実戦による能力の成長促進を検討した。
 特定の戦場を用意し、シナリオ通りに戦闘を進めることで、
 能力の成長の方向性をこちらで操る、というものだ。

 予測演算の結果、一二八の戦場を用意し、超電磁砲を一二八回殺害することで
 被験者は絶対能力者へと進化(シフト)できる事が判明した。

 しかし、当然ながら一二八人もの超電磁砲を確保するのは不可能である。
 そこで我々は、同時期に進められていた超電磁砲の量産計画『妹達』に注目した。
 [参考資料:『超電磁砲量産計画「妹達」最終報告』(閲覧不可)] <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 16:51:44.79 ID:tkcS7crE0<>
 追記:『妹達』の報告書が抹消されたため、簡潔に概要を説明する。

    『妹達』計画とは、超能力者を生み出す遺伝子配列パターンを解明し、
    偶発的に生まれる超能力者を100%確実に発生させることを目的とした計画である。

    計画の素体には『超電磁砲』御坂美琴を使用。
    クローン体の仮名称(コードネーム)は『妹達』。

    交渉人(ネゴシエイター)を介して素体のDNAマップは確保完了。
    素体の毛髪より採取した体細胞を利用し受精卵を生成、
    投薬と『学習装置(テスタメント)』による肉体・精神の成長により、約十四日間で妹達は完成する。

 尚、生産費用は一体当たり十八万円と安価であるため、大量生産も可能。


    このようにして生産ラインが確立された『妹達』計画であったが、
    計画の終盤に思わぬ事態が発生した。

    『樹形図の設計者』によって予測演算を行ったところ、
    妹達は目標の超能力者に到達することはなく、強力な個体でも強能力者(レベル3)
    を越えることは不可能であるということが判明したのだ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 17:00:36.67 ID:tkcS7crE0<>
    無論、異能力者(レベル2)に商品価値は無い。
    これにより『妹達』計画は中止、及び永久凍結となった。


 当実験には、『妹達』計画の装置と研究チームを流用する。

 問題の性能(スペック)差を武装と大量投入により埋めることとして
 コストパフォーマンス・時間短縮の両点から再び『樹形図の設計者』に演算させた結果ーー






 「……『二万体の「妹達」と戦闘シナリオにより、
     絶対能力者へと進化可能であることが判明した』……?」



 馬鹿げている、美琴はそう思った。

 自分を殺す?
 代用にはクローン?

 そして……絶対能力者、だって?

 悪ふざけにも、程がある。
 そう笑い飛ばそうとしても、口から漏れるのは乾いた笑いだけだった。


 「有り得ない。そんなこと、あるはずないわ。そうよ、こんな計画、実現できるはず……」

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 17:12:55.03 ID:tkcS7crE0<>  いくら否定の言葉を並べても、流れ落ちる冷や汗は止まることはない。

 実験開始日時、という文字が目に焼き付く。

 そこに書かれていた日付は七月二十六日ーーつまり、今日。
 開始時刻は、数十分ほど前。


 「ーーッ……!」


 気づけば、美琴の足は動き出していた。

 止まらなかった、と言った方が正しいか。


 (これは『確認』……こんな実験、あるはずないんだから。
  そうよ、そうに決まってる。まずは『実験』なんて無いことを確認して、それからーー)


 否定する要素はいくつも見つかるのに、その全てからは確証が得られない。

 唇を噛みしめながら、ただひたすらに美琴は走る。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 17:26:38.62 ID:tkcS7crE0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「……は、はは。おいおい、どうしちゃったんだよ?
  『妹達』に『絶対能力』
  ……いつから、都市伝説ってのはこんなに具体的になってんだ?」


 無理矢理にでも楽観的に考えようとする介旅だったが、心の奥では気づいていた。

 こちらのセキュリティランクは『B』。対し、先ほどの侵入先はランク『A』。

 セキュリティ『A』と言えば、まさに研究者達の使用するランクである。

 ランクの詐称は可能ではあるが、侵入時の迎撃体制からしてもおそらく本物だったのだろう。


 「くそ、」


 つまり。
 この報告書に書かれていることは、


 「……全部、本当ってことかよーーッ」


 驚愕と同時に、生暖かい恐怖が身体を這う。


 「……はは、そういうことか」


 頭のどこかで、何かがつながった気がした。


 『ミサカは、平和などとは程遠い存在ですよ』 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 17:35:07.09 ID:tkcS7crE0<>

 そうだ、ミサカは確かに言っていた。

 それが何を指すのかは、もはや言うまでもない。


 「……チクショウ」


 あの時、その言葉を聞き流さずにミサカを問いただしていれば。

 何も変わらなかったかもしれない。
 実際、何も変わらなかっただろう。

 だが。
 それでも、それが悔やまれた。

 あるいは今、美琴も同じことを感じているかもしれない。

 だが、彼女と介旅とでは、大きな差があった。


 (くそ、くそ……何で。なんで僕は、そこに行こうとできない……?)


 介旅には、力が無かった。
 介旅には、勇気を持てなかった。

 そして、それなのに。

 介旅は、それを見過ごせるほど冷徹にはなれなかった。

 広い部屋の中で、彼は悩み続ける。

 その間も、時計の針はゆっくりと進んでいく。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 17:50:51.41 ID:tkcS7crE0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「ハッ、ハッ、ヒッ、ハッ、ーー」


 少女は走る。

 一瞬の隙を突き、少年の元から逃げ出した少女は、とある操車場へ続く階段に差し掛かっていた。

 とん、とん、とん。

 失った体力を回復せねばならない。
 そう考えた少女は、ひとまずの隠れ場所を探し、階段を駆け降りる。

 とん、とん、ととん。


 「……?」


 自らの足音に混じった、僅かな音。
 その違和感に気づいた少女が足元へ向いていた顔を上げた瞬間、








 「ひゃは、見ーィつーゥけたーァ」








 目の前には、狂笑する少年の顔があった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 18:04:10.62 ID:tkcS7crE0<>
 階段の上から、頭を下に落ちる。

 少年の、常人ならば自殺行為となるであろうその行動に、少女が気づくより前に。


 「あは、捕まえたァ!タァーーッチィ!!」


 さらり、と、少年の細い手が少女の頬を撫でた。
 ・・・・・
 そう見えた、次の瞬間。



 「かッーーはっ、あ!?」



 少女の頬に、平手打ちとは比べ物にもならない程の衝撃が走る。

 ぐらり、とバランスを失った体が揺れ、


 「ーー、しまっ……」


 気づいたときには、もう遅い。

 少女の体は古びた手すりを簡単に乗り越え、夜の闇に吸い込まれていった。


 「ひひゃ、あは、ぎひゃあははははあはははは!!」


 暗闇の中、少年の笑いだけが木霊する。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/09(金) 18:05:07.04 ID:tkcS7crE0<> 投下終了
途中眠かったせいか、文脈がおかしいところがありますがスルーで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/10(土) 09:39:18.06 ID:EQfHn46AO<> 乙 乙乙 乙乙乙乙 乙 乙乙 乙乙 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/12(月) 10:27:03.18 ID:b3Rj0D8Jo<> みーつけたとかタッチ!とか一方たん可愛いな、乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/09/12(月) 23:25:46.13 ID:mkddnD0E0<> おつおつ
☆実験しゅーりょォー☆ってか <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/12(月) 23:34:26.06 ID:HnKjDiZR0<> よし、滑り込みセーフ

てなわけで、毎度のことながら宣言ギリギリで投下します

少女サイド続き、他も入るかも <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/12(月) 23:35:16.53 ID:HnKjDiZR0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 着地の衝撃は、思いの外軽いものだった。

 落ちた高さは、精々五、六メートルといったところだろう。

 適当にそう推測した少女は、仰向けに寝転んだまま己の現状を確認する。

 左肩に二カ所の銃創、右腕の肘から先には大量のコンクリート片が埋まっている。

 視線をずらせば、わき腹にもう一カ所の銃創。

 頬はじんじんと痛み、強かに打った全身に鈍い痛み。


 「ッ……」


 ズキリ、と頭が痛む。

 体中からの痛みの信号が麻痺してしまったのか、その総計が脳の許容範囲を越えたのか。

 最早、上半身にまともな感覚を保つ部位はない。

 肉体的なダメージの影響か、思考は十分に回らなかった。

 少女は思わず意識を手放そうとし、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/12(月) 23:57:59.06 ID:HnKjDiZR0<>



 「あァ?オイオイ、もォ壊れちまったのか?」




 「ーーーーッ!」




 少年の声が耳に入った瞬間、少女の意識は急速に現実へと引き戻された。


 見上げれば、己を覗き込む少年の姿。


 油断していた、と少女は舌打ちする。

 少年は、上段から落ちていく途中で少女を引き落とした。

 つまり彼は、少女より先に着地していたはずなのだ。


 少女が状況を把握するまで待っていたのは、作戦なのか、あるいは只の余裕か。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/13(火) 00:08:41.14 ID:0KqC7z5e0<>
 ともあれ、とにかくこの位置関係は少女にとって圧倒的に不利だ。

 少年の足は、少女の頭のすぐ脇にある。

 軽く蹴られただけで、少女の頭蓋骨などいとも簡単に粉砕されてしまうであろう。

 突然の危機に、少女は身を転がすようにして起き上がろうとする。

 その無駄のない動きは、素人なら反応もできないほどの敏捷性を備えている。

 相手によっては、そのまま背後に回り込むことすら出来るかもしれない。


 だが。



 「遅っせェ!!」



 声と同時に少年のした動作は単純。軽く足踏みをする、ただそれだけ。

 たったそれだけの動作によって、敷き詰められた砂利が舞い上がり、
 少女の体を一気に吹き飛ばした。


 「ッがっ……!?」


 悲鳴を上げる、暇もなかった。 <> もうやだ……書いてる途中でフリーズorz
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/13(火) 00:26:19.80 ID:0KqC7z5e0<>  木の葉のように、少女の体が宙を舞う。


 その先にあるのはーー剥き出しになった、鉄骨。



 「ーーーーッ!!」



 通常ならば、激突は免れないコース。

 だが、少女は空中で身を捻り、尚克つ磁力を操作することによりすんでのところでこれを回避。

 更に、ボロボロになった右腕を鉄骨に引っかけることで無理矢理速度を緩め、受け身を取って着地する。

 腕に例えようもないほどの激痛が襲いかかるが、気にする余裕などない。



 「へェ、やるじゃねェか」


 「……ッ!?」



 感心したような言葉に振り返ると、いつの間にかそこに少年が立っていた。

 少女は瞬間的にバックステップで距離を取ろうとするが、やはり少年の方が速い。

 またしても、石の散弾が少女の体を浮かせる。


 「あっ……ぐ……!」


 漏れ出る声は、既に弱々しい。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/13(火) 00:38:26.54 ID:0KqC7z5e0<>  と、そこで少女は違和感に気づいた。


 (横方向への移動が……無い……?)


 それが意味するのはつまり、空中での無謀備な浮遊。


 「あひゃ、こンなンはどォだァ?」


 少年の声が、聞こえたと思った瞬間。

 その足が、少女の腹部へとめりこんでいた。


 「あッ……が、はぁ……!?」


 ミシミシメキメキメギ!!と凄まじい音が鳴り響き、遅れて体が動きを始める。






 少年の顔が、愉しげに歪んだ。






 直後、ズドン!!という轟音と共に、少女の体が鉄骨に直撃した。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/13(火) 00:52:35.90 ID:0KqC7z5e0<>
 「あっ……いぎああぁあぁぁあぁあ!?」


 激突と同時に、体中のセンサーが悲鳴をあげた。

 背骨が折れていないことが、奇跡だった。

 少女は、フラフラと揺れ動きながら立ち上がる。

 だが、そこまでだった。

 もう、彼女には少年から逃げるほどの体力も残されていない。


 「ハハっ!流石にもォ無理かァ?」


 じゃり、じゃりと、少年の足音が近づいてくる。

 少女にとってそれは、死に神の足音にも聞こえた。


 「ンだよ、マジで動けねェのか」


 嘲るように言う少年。

 だが、その通りだとしか言いようがない。

 そう、何故ならば。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/13(火) 01:28:03.75 ID:0KqC7z5e0<>
 「さァて、ンじゃ終わりにすっか」


 少年はそう言って、少女に近づく。

 そして、





















 ドッーーーーゴォォォォン!!と、爆発音が炸裂した。







<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/13(火) 01:28:30.08 ID:0KqC7z5e0<> 途中寝てました申し訳ない

投下終了です

話進まない&意味不明な部分多くてすみません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/13(火) 01:37:09.49 ID:1zKDN37zo<> >>1乙
体調には気をつけて
一方たん可愛いなぁ
このスレのおかげで介旅が好きになりました、ありがとうペロペロ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/13(火) 18:26:13.63 ID:rcZH6KWAO<> 乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/15(木) 23:58:30.08 ID:KprY6xYc0<> >>386
その勢いでもっと好きになってくだされば幸いです


投下します
最初は美琴サイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 00:00:06.04 ID:i+rqzeHM0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「な、なーんだ、ホラ。何もないじゃない。
  あはは、やっぱりあれは、タチの悪いただのイタズラよね」


 美琴は、路地裏で乾いた笑いを漏らした。

 あの『実験』のレポートによれば、
 今日行われるのは第九九八二次実験、座標が指すのはこの路地裏。

 だが、美琴の立つその場所ではもちろん、そんな狂気の実験など行われていない。


 (……何よ、もう。心配して損したわ)


 全ては、馬鹿な誰かの作り出した空想上の都市伝説にしか過ぎなかったのだ。

 即座にそう判断した美琴は、そのまま寮へ直行しようと踵を返し、


 その途端、その足が何か丸い物を踏みつけて、勢いよく滑った。

 そして当然ながら、足が滑れば体の方も同じ運命を辿るわけで。


 「……って、うわぁっ!?」


 思いっ切り変な方向に投げ出された足の反動で、美琴の体が後ろに倒れる。

 安心して脱力しきった矢先のことであったためか、上手くバランスを取ることもできず、




 どすん、と、美琴は尻餅をついてしまった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 00:10:12.70 ID:i+rqzeHM0<>
 「痛ったー……何なのよもう」


 美琴は腰の辺りをさすりながら、忌々しそうに足の下にあった物を見る。


 小綺麗に磨かれた革靴と、汚いアスファルトとの間に挟まれていたのは、






 「…………え?」







 細長い円筒形の、『何か』だった。






<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 00:13:22.13 ID:i+rqzeHM0<>
 「……何よ、これ」


 『それ』が何なのかは、美琴自身よく分かっていた。

 注意深く見れば、その辺りの地面にも幾つか同じ円筒が転がっている。

 美琴の指と同じくらいの太さのその物体の示す意味は。


 「嘘……でしょ……?」


 散乱するライフル弾の薬きょう。

 そこから答えを導き出せないほど、美琴の頭の回転は鈍くない。


 だが、認めたくなかった。

 これはイタズラなんだ。


 そう信じたかった。



 (違う。これは、ただのイタズラ。だから、何も心配することなんかーー)


 その時だった。


 どこからか、耳をつんざくような爆発音がした。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 00:24:27.12 ID:i+rqzeHM0<>
 「ーーーー、」


 何を呟いたのかは、本人にも分からなかった。

 ただ爆発音のした方向を見ながら、美琴は思う。



 どうか、何かの冗談であってほしいと。



 ギリリと奥歯を噛みしめる。

 痛いほどに、堅く手を握る。



 気がつけば、美琴は走り出していた。


 (お願い、お願い!どんな理由でもいい。
  だからお願い、バカみたいって笑い飛ばせるような、そんなくだらない嘘であって!!)


 焦燥を胸に抱きながら、美琴は走る。

 走って、走って、その先に待っていたものは、




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 00:46:09.82 ID:i+rqzeHM0<>  『絶対能力進化実験』の第九九八二次実験は、
 元々『路地裏から操車場まで』を範囲として行われる予定だった。

 しかし、被験者の少年にそれは知らされていない。
 少年側が下手に『実験』の内容を知れば、『実験』自体が失敗に終わる可能性があるからだ。

 対し、少女には最初からそれが知らされており、
 尚克つ彼女には戦場への細工が認められていた。


 つまりその『認識のズレ』を叩くことで、
 遥か格上の少年と対等に戦おうというのが、今回の実験の内容だった。




 「目標、完全に沈黙……?とミサカは確認をとります」


 満身創意の少女は、倒れ込みそうになる体の重心を取りながら呟く。


 爆発したのは、実験開始前に操車場の各地に仕掛けておいた地雷。

 衝撃ではなく、電流に反応して爆発するタイプのものだ。
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 00:58:36.40 ID:i+rqzeHM0<>
 (ミサカは、標的の能力を未だに把握できていません。
  ですがこれまでの実験結果を参照したところ、
  恐らくはバリアのような物を展開する系統の能力であるようです)


 晴れて行く爆煙を見ながら、少女は思考する。


 (しかしながら標的は地に足をつけて歩行している
  ーーつまり、足元にはバリアを展開していないということになります)


 少女が消した街灯が、今更になってようやく復旧を開始した。


 (結論、標的を仕留めるには足元からの奇襲が最有効です、とミサカは推測します)


 動く必要はなかった。

 ターゲットがタイミングを合わせられる程度の速度で歩いてくれれば、それで事足りる。

 とはいえ、地雷の設置地点付近に蹴り飛ばされたのは偶然ではあるのだが。


 「目標からの応答が無い場合、即救助、
  及び実験の一時凍結が求められますが、とミサカは問いかけます」


 無駄だと思いつつも、少女はマニュアル通り煙の中に話しかける。

 数秒の沈黙の後、少女は体の力を抜きながら、


 「それでは、これにて第九九八二次実験を終了とーー」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga !red_res<>2011/09/16(金) 01:05:35.29 ID:i+rqzeHM0<>














 「オイ、待 て よ」













<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 01:14:30.27 ID:i+rqzeHM0<>
 「ッ!?」


 有り得ない。

 煙の中から響いた声に、少女はそう思いながら振り返る。

 そこには、


 「残念、オマエの考えはてンで的外れなンだよなァ」

 「な……!?」


 少年は無傷だった。

 それどころか、髪の一本から爪の先まで、爆発前と何一つ変わっていない。


 特別何かをしたようにも見えない。

 つまりは、それが少年の『普通』ということなのか。


 「……、…………」


 それは余りにも遠すぎる、と少女は思った。

 少年はどれだけの攻撃を受けようと、傷どころか煤一つもつかない。


 地雷で駄目なら、その上には大砲、ミサイル、究極的には核爆弾がある。

 だが、少女から見た少年は、その全てを笑いながら受け流してしまいそうにすら見えた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga <>2011/09/16(金) 01:25:56.61 ID:i+rqzeHM0<>
 そして恐らく、それは正しい。

 そのぐらい出来なければおかしいと、そこまで思わせるほど少年の力は絶大だった。


 「……ッ!」


 考えを振り払うように、少女は少年に掌を向ける。

 だが、


 「はァ……飽きた」


 そこから電撃が放たれるよりも早く、少年は少女の懐に潜り込んでいた。

 少年は、まるで恋人にするかのように少女の背に手を回し、言う。


 「なァ」


 顔を青くする少女に、少年は引き裂くように笑いかけて、



 「人間の骨がさァ、どこまで曲がるか……試してみたくねェか?」


 瞬間。

 ゴギリ、という鈍い音とともに、少女の全身に激痛が走った。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/16(金) 01:26:50.20 ID:i+rqzeHM0<> 投下終了です

なぜだ……なぜただの一方的な勝負がこんなに長くなるんだ……
これからも戦闘描写がくどいことが多々あるかと思いますのでよろしゅう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/16(金) 02:59:31.82 ID:QYnr8PCLo<> >>1乙
こんな一方って的な状況なのに、
何処か可愛さのにじみ出る一方たんペロペロ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 21:44:58.69 ID:Aaa9vhig0<> セルフ>>400getッ!!
……中途半端ですねすみません

では投下
最初は介旅サイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 21:48:40.25 ID:Aaa9vhig0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 『それ』は、あまりにも唐突だった。

 素人目にも分かる、戦闘という定義に当てはめられるのか疑わしいほどの一方的な虐殺。

 その最中、『圧倒していた側の』少年が突然『圧倒されていた側の』少女に、優しく抱擁をした。


 ただ、それだけのはずだった。


 しかし、ただそれだけのことで、少女の体は見るも無惨な姿へと変貌を遂げてしまった。


 そこに、人としての面影はない。


 ぐにゃり、と曲がったシルエット。


 髪も、目も、鼻も口も手も足もーー

 それらのパーツは少女のもので間違いないのに、それは少女としての原型をとどめていない。
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 21:59:23.04 ID:Aaa9vhig0<>
 「……うっ、えぶ」


 まるで趣味の悪いオブジェみたいだ、と介旅は思った。


 込み上がる胃酸が、喉のあたりを焼いている。

 つん、とした刺激臭が、嫌でも鼻につく。


 吐くな、と理性は告げていた。

 あれはミサカなんだぞ、と。


 一方で、本能は急かしていた。

 吐け、吐いて楽になれ、と。


 介旅は操車場倉庫の陰で、詰め所から拝借してきた暗視スコープを目から外す。

 これ以上見ていたら、本当に気が触れてしまう。

 いや、知り合いを目の前で殺されたのにそんなことを考えられる時点で、
 あるいはもう、気が触れてしまっているのかもしれない。


 そんなネガティブな思考に捕らわれそうになった、その時だった。


 ピカソの絵画を現実世界で再現したような、不気味な空間に背を向ける白い少年へ。


 それを引き留めるように、か細い声が投げられた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 22:10:56.65 ID:Aaa9vhig0<>










 「待っ……て、くださ……い」



 それは、紛れもなく少女の声だった。

 全身の骨を限界以上に湾曲され、もう指先すら動かせないような少女の、弱い声。


 介旅は、とっさに暗視スコープを装着する。


 立ち去ろうとする少年に、少女は感情のこもっていない瞳で、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 22:17:26.69 ID:Aaa9vhig0<>









 「検体……番号……九九八二号……は……未だに……生命活動を、続けています。
  まだ、実験は……終わっていません……とミサ……カは報告します」











 それはあまりにも冷徹で、あまりにも無機質で、何よりも機械的な言葉だった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 22:23:13.32 ID:Aaa9vhig0<>  

 「……チッ、そォだったな。分ァったよ、すぐに終わらせる」


 少年の顔から、遊びが消えた。

 彼自身が言った通りに、『飽きた』のだろうか。

 少年は高く足を上げると、少女の頭上でぴたりと止める。


 「ンじゃ、サヨナラ」


 降り下ろされる足を止める術は、介旅には存在しない。


 悪魔の鉄槌は、少女の頭蓋骨へと吸い込まれていく。








 そして、







<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 22:36:00.59 ID:Aaa9vhig0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 美琴は、夜の街を疾走していた。


 街灯も消え、月明かりもない夜だったが、その足取りに危なげはない。


 彼女は学園都市最高位の電撃使いである。
 そしてその力故に、意識しなくても常に電磁波をまき散らしている。

 普段なら、動物を怖がらせてしまったり精密機器に悪影響を与えたりと
 迷惑極まり無い力だが、こと暗闇においてそれは一転する。

 電磁波の反射を観測することによって、物体の位置や大雑派な形などを知ることが出来るのだ。


 「はっ、はっ、はぁっ!」


 だが、いくら物の位置が分かっても躓かないという結果にはならない。

 できるだけタイムロスを無くすため、細心の注意を払いながら走ってきた彼女は
 精神的にも相当の疲労を蓄積させていた。 <> ×躓かない○絶対に躓かない
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 22:57:29.01 ID:Aaa9vhig0<>
 (……確か、爆発があったのはこっちの方……)


 美琴は、とある鉄橋の上に差し掛かっていた。


 その下には、確か操車場があったはずだ。


 美琴は、鉄橋から身を乗り出すと、周囲に向けて軽い電撃を放った。

 適度に調節された電流が、切れていた街灯を一時的に点灯させる。


 明るく照らし出された操車場。

 その中心にいるのは、



 「……うそ、そんなっ」




 足を振り上げる少年と、何の抵抗も見せない少女。


 これから何が起こるのかは、日を見るよりも明らかだ。


 「ダメよ、やめーー」



 制止の言葉も、少年には届かない。

 そして。










 少女の頭が割れ、砂利の地面に真っ赤な花が咲いた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 22:58:44.27 ID:Aaa9vhig0<>


 「…………、あ」




 気が付けば、美琴は鉄橋の欄干を掴んでいた。

 それからどうするのか、など考えてはいられなかった。


 当然のことのように、欄干を一気に飛び越える。




 「あぁあああああぁぁあああぁぁああぁあぁあああぁぁ!!!!」




 一〇億ボルトの電圧を身に纏い、下方向からの莫大な風圧を受けながら美琴は叫ぶ。




 怒りに任せ、ただ少年を攻撃するために。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/18(日) 23:01:33.13 ID:Aaa9vhig0<> 投下終了

しかしレス間隔が空きすぎですねごめんなさい
本気でノーパソ買おうかな…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 00:07:46.34 ID:xZ1zTGNio<> 乙
ノーパソ買っちゃいなYO <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 04:37:29.63 ID:YihfIwLIO<> 乙
中古の古ノートならPSPくらいの値段で買えるしね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/21(水) 11:51:11.80 ID:Fx4Ny58v0<> 乙乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/21(水) 23:20:02.13 ID:rmnEMTp80<> 親「買ってもいいけど、契約料とか通信料とか……払えるの?」

それはねーよwwww

……ねーよ……

買うだけで残金ほぼゼロなのに払える訳ないでしょぉがぁぁぁぁ!!
大体、使用料>>>>月々の小遣い だしね!?破産するしね!?
普通はそのあたりどうにかこう優しくしてくれるもんじゃないのかなぁぁぁぁ!!




……取り乱しました、失礼
てなわけで、ノーパソは無理だたです、すみません

まぁ、どうせタイピングの遅い>>1が書き溜めできる量なんてたかが知れてますし
結局、レス間隔だけの問題なんですが……やっぱりね

とにかく、今まで通り続けていくことになりそうです
情けない>>1ですが、できればこれからもお願いします


さて、では気持ちの悪い自分語りは終わりにして投下です
介旅視点から <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/21(水) 23:23:03.78 ID:rmnEMTp80<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 暗視スコープというものは、基本的に暗闇での使用を前提に作られている。

 特に高性能なものほどこれは顕著に現れ、学園都市に存在する中でも最新の型などは
 六等星程度の明かりを太陽光と同じレベルまで増幅することが可能である。

 介旅が(勝手に)借りてきた暗視ゴーグルも、警備員の装備用ということもあってか
 最新型とはいかないまでも相当の性能を誇っていた。

 月明かりは無ければ街灯も点いていない真っ暗闇ではあったが、
 ゴーグルを装着した彼の目にはまさに昼間と同じような明るい景色が映ったはずである。


 だが、当然ながら『暗闇』での使用を前提に作られたモデルでは、
 『明かり』の中での使用には耐えられない。

 正確に言うならば、『装着者が』耐えられない、といったところか。

 例えば、例に挙げた最新モデル。
 六等星が太陽光に見えるなら、六等星を直接見るだけで目に相当の負荷がかかる。

 星座を見るために視力を失う、といえば分かりやすいだろうか。

 それとは比べものにならないほどとはいえ、介旅がかけていたのも相当の高性能品。

 つまり……、
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/21(水) 23:45:26.07 ID:rmnEMTp80<>
 (あ、ぐぁ……?目が、目がぁっ!?)



 突然点いた街灯の光に目をやられ、介旅は思わず両手で顔を覆う。

 ゴーグルにはどうやら安全装置が付いていたようで失明することはなかったが、
 それでも介旅の視界に強烈な残光が焼き付く。


 (な、何でいきなり……?)


 目を堅く閉ざしながら、介旅は舌打ちする。

 これでは、ミサカがどうなったのか分からない。

 少しでも周りの様子を知ろうと介旅が耳を澄ました、

 ーーーーその時。







 「あぁああああぁぁぁぁあぁあぁああぁ!!!!!!」





 「……ッ!?(この声……!?)」





 耳に入ってきたのは、聞き覚えのある声とーー雷鳴、だった。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/22(木) 00:00:12.48 ID:6RbNO1j80<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 バッヂィィィィィィ!!という轟音の正体は、超高電圧の電撃が空気を引き裂く音。

 一〇億ボルトーー自然界の雷にも達する威力の電撃は、迷わず少年へと突き進んだ。


 だが。


 少年に当たると同時、雷撃は四方へと受け流される。



 「ッ!」

 「あン?」



 少年が虚空を睨むのと、美琴が磁力操作でゆるやかに着地したのが同時。

 しかし、美琴は既に相手へと照準を定めているのに対し、少年はこちらの位置すら把握出来ていない。

 どちらが有利かなんて、小学生にも分かることだった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/22(木) 00:12:01.48 ID:6RbNO1j80<>  (バリア系能力……なら、有効なのは多方向からの奇襲!!)


 思考に、時間はいらなかった。

 彼女の豊富な実戦経験が、直感にも似た早さで戦術を組み立てる。



 「は、ああぁあぁぁぁあぁぁ!!」



 叫び声と同時、操車場の地面が不気味に黒く蠢く。

 声に気づいた少年がこちらを見るが、もう遅い。


 地表を這った黒が、少年の足元から竜巻の如く噴出される。

 数メートルにも及ぶその渦は、磁力によって操られた地中の砂鉄。

 一粒一粒が細かく振動することでチェーンソーのような切れ味を持つそれを
 少年へと放つことに、美琴はためらいを覚えなかった。


 ガギャガゴギガギゴキガッ!!と、破壊の嵐は火花を飛ばしながら少年を包み込む。




 だが。




 「ふゥン、磁力で砂鉄を操ってンのか?面白ェ使い方だな」





 少年は何食わぬ顔で、ただ本当に感心しただけであるかのように笑いながら言った。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/22(木) 00:29:01.05 ID:6RbNO1j80<>
 「なっ……!?」


 紙片の一片すらも残さないはずの死の渦から聞こえたその声に、驚く暇もない。

 直後、磁力によって統制されているはずの砂鉄が、強制的に元の状態へと戻された。



 「まァ、タネが割れりゃどォってことねェけどなァ。
  おいおい、手品師ならタネを隠して観客を楽しませてみろよ」


 少年は退屈した風に髪を掻き毟りながら、



 「ンで、オマエは次の人形ってことでいいのか?」


 「ーーーーッ!」



 沈黙する美琴の周囲で、バチリ、と紫電が踊る。

 瞬間、操車場のあちこちから鉄骨が飛び出し、集まる。

 地上十メートルほどの高さまで延びるそれが形造ったのは、巨大な手。

 美琴は、『手』を多少引いて、


 ーー少年めがけて、一気に振り下ろした。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/22(木) 00:55:48.96 ID:6RbNO1j80<>  長さは十メートル、質量にして十数トン。
 下手な戦車程度ならその重さだけで破壊できるほどの鋼の塊が、轟ッ!とうなりをあげて襲いかかる。

 対し、少年は一歩も動かない。

 そして、少年の華奢な体が破壊の手の中に飲み込まれた。


 そう見えた、直後。


 ゴウン!!と鈍い音をたて、少年に突き刺さったはずの鉄骨が全て弾き飛ばされた。



 「ーーッ!?」



 自分の方へと飛んできた鉄骨を、辛うじて避ける美琴。

 だが、端が引っかかったのだろうか、髪が数本ブヂリと嫌な音を立てながらちぎれた。


 (な……)


 美琴は一歩後退し、体制を立て直しながら考える。


 (バリア系、だけじゃない?一体……)


 当然といえば当然の疑問。


 まもなく彼女は、その答えを嫌でも知ることになる。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/22(木) 00:57:25.66 ID:6RbNO1j80<> 短いですがここまで

眠い状態で書くと日本語として成り立たないです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/22(木) 03:18:08.82 ID:k/q3xX2ho<> このテンポ好き
介旅たんおめめ痛そうだお… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/22(木) 12:51:00.98 ID:y+L5dJ410<> otu <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>sage<>2011/09/22(木) 23:20:17.91 ID:6RbNO1j80<> すみません

明日からの三連休にて山奥へ行くので、暫くの間投下はおろか書き込みもできません

ですので、次の投下は月曜日以降とさせていただきます
それ以後は今まで通りに戻りますので、よろしくお願いします

という報告なのでした
投下はしませんのでsageです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/23(金) 00:31:44.89 ID:o9VumshEo<> 山とか気をつけろよ
待ってる <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:00:05.88 ID:4gxKlJAM0<> こんばんは、>>1です

遅くなりましたが、ただいまより投下いたします
『少年』サイドより <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:01:03.42 ID:4gxKlJAM0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (あァ?……何だ、コイツ?)


 様々な攻撃を次々と受け流す白い少年であったが、実のところ彼は困惑していた。

 少年は、突然目の前に現れた少女を訝しそうに見ると、


 (……オカシイな。確か今日の実験はさっきので終わりなンじゃなかったか?)


 確か、などと曖昧な表現を使ってはいるものの、彼の思考に迷いは無い。

 学園都市最高とさえ歌われる彼の頭脳にとって、
 たかが二万の『実験』の内容を記憶することなど造作もないのだから。

 彼の記憶の中のデータといくら照らし合わせても、
 今日この日、この時間に行われる実験など無いはずだった。

 だが、それならば、


 (だとしたら、コイツは一体どォいうことだ)


 少年が睨み付けるように見つめる少女は、『実験』に使われる『人形』たちのうちの一体のはずだ。

 実験が行われるわけでもないのに、何故少女は攻撃を仕掛けてきたのか。


 (可能性としちゃ、『向こう』が勝手に実験の日時を変えやがったってのもありえるが……)


 違ェな、と少年は即座に否定する。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:06:58.77 ID:4gxKlJAM0<>
 (元々が、俺の一存でどォとでもなっちまう実験だ。
  勝手なコトをして万が一俺の機嫌を損ねちまったら元も子もねェ)


 しかし、そうなるといよいよこの状況のわけが分からなくなってくる。

 まさか『妹達』が反乱をおこしたわけでもあるまい。


 (ったく……何だよなンだよ何なンですかァ?
  クローンのクセして、時間を間違えやがったとでも……)


 と、少年は心の中でぼやいて、どうしたものかと頭を悩ませ、



 (……あン?)



 直後、何かに気付いたように眉を潜めた。



 (待て。俺は何が気になってンだ?
  時間を間違える……違ェ、もっと前だ)


 少年は、考え込むように目を閉じ、


    ・・・・
 (……クローン)



 成程な、と少年は口を歪めた。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:14:32.34 ID:4gxKlJAM0<>
 (そォ考えてみりゃ、全て辻褄が合う)


 思えば、不可解なことは他にもあった。


 例えば、電圧は恐らく億に達していたであろうあの高圧電流。

 平均して異能力者程度の欠陥電気に、あんな電圧を扱えるはずがない。


 例えば、あの態度。

 感情という概念をインプットされていない妹達が取れるものではない。


 そして、尚克つ『実験』を行いに来たわけではないと仮定するならば。


 答えは、自ずと一つに絞られる。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:33:02.71 ID:4gxKlJAM0<>

 「……ハッ」



 少年は、溜め息をつくように薄く笑った。



 「そォか、そォか」



 口の中で、言葉を転がす。



 「予定と違うから何かと思ったら」



 そして、少年は解を告げる。


 まるで、紐解いた問題の答え合わせをするかのように。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:39:58.89 ID:4gxKlJAM0<>















      ・・・・・
 「オマエ、オリジナルか」















<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 22:53:30.15 ID:4gxKlJAM0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 瞬間。

 御坂美琴の首筋を、得体の知れない悪寒が走った。


 『オリジナル』というのが自分を指しているんだろう、
 とか、そんなことを考える余裕はなかった。


 ただ自らの第六感の告げる通りに、必死で身をかわす。


 直後。

 轟ッ!!と、その身体のすぐ横を何かが通過していった。



 「ーーーーッ!」



 その『何か』が一粒の砂利であったことを把握出来るほど、美琴の視力は常人離れしていない。


 彼女が見たのは、少年の足元から自分に向かって伸びる閃光の残像だけ。

 しかし、それは絶望するには充分すぎるほどの事柄だった。



 (な……私の超電磁砲並み……いや、下手したらそれ以上の速さーー)



 とはいえ、これだけ思考できる時点で彼女の思考能力は常人の遙か上にあることは間違いない。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 23:01:44.32 ID:4gxKlJAM0<>

 ゴッ!!と。

 直後に、衝撃があった。

 その正体は、物体が音速を越えて移動するときに発生する衝撃波、ソニックブーム。



 「がッ……!?」



 美琴の上半身全体を、均等に莫大な風圧が襲う。


 体の中で嫌な音が響いた。


 グラリと、体が一瞬バランスを失った。


 しかし、そこで終わりではない。



 「遅ェな、オイ」


 「ーーーーッ!?」



 いつの間に、どうやってだろうか。


 気づけば、少年が目の前にいた。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 23:27:43.54 ID:4gxKlJAM0<>
 「そンなンでホントに同じ超能力者なのか?シケたもンだな」



 冷たく言い、少年は腕を振り下ろす。


 とん、と。

 その指先が、美琴の肩に触れる。


 割れやすい陶器に触れるのと同じぐらいの繊細な動作だった。


 にも関わらず、それだけで脱臼しそうな程の衝撃が襲いかかる。



 「ッ……あああぁあぁ!?」



 反射的に肩に手を当て、前屈みになってしまう美琴。


 その隙を、少年は逃しはしなかった。


 足が振り上げられる。

 美琴の腹部に、少年の膝がめり込んだ。



 「あッ……ふ……!?」



 彼女の体が、数センチほど浮く。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 23:36:13.01 ID:4gxKlJAM0<>
 そのあたりが限界だった。


 蹴り上げられた体が、重力に従って砂利の上に落ちる。



 「……ぁッ」



 激痛が体中を駆け抜けるが、その痛みに叫ぶだけの力は残っていなかった。


 意識が朦朧とし、呼吸も上手くいかない。


 内蔵が潰れていないことが奇跡だと思った。


 うつ伏せに倒れた体は、ピクリとも動かない。



 「……これで、力の差ァ分かったな?」



 頭上からつまらなそうな声がするが、そちらに顔を向けることもできなかった。


 だが、少年は言葉を止めない。

 聞いていなくても構わないと思っているのか、面倒臭そうに彼は続ける。





 「この辺で勘弁しといてやる。だから、とっとと日常に帰れ。
  実験を止めに来たのかどォかは知らねェが、オマエじゃ俺には勝てねェよ」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 23:43:22.42 ID:4gxKlJAM0<>



















 「学園都市第一位、七人の超能力者の中でも飛び抜けた頂点。
  最強の能力者であるこの俺、一方通行(アクセラレータ)にはよ」

















<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/28(水) 23:54:04.50 ID:4gxKlJAM0<>

 少年は告げた。

 彼の能力名、そして彼自身の名を。


 一方通行。


 防御するということを考えず、ただ相手を切り裂く、ナイフの切っ先のような彼の名前。






 「、ーーーーっ」



 やっぱりか、と美琴は思った。

 最初の攻撃を無効化されたあたりから、薄々感づいてはいた。

 超能力者である彼女の一撃を受け止められるのは、同じ超能力者ぐらいのものなのだから。


 だが、可能性を考えることと実際に提示されることは別物だった。


 どうしようもない絶望感が、体全体を満たしていく。


 痛みで動かせなかった体が、鉛を流し込んだようにその重さを増す。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:04:51.94 ID:Ynijzgd70<>

 「ーーじゃあな」


 少年、もとい一方通行は美琴に背を向けると、コキコキと首を鳴らしながら歩きだした。

 どうやら、見逃すというのは本気だったらしい。

 単なる気まぐれなのか、それとも別の何かなのかは分からないが。


 何にせよ、彼が行ってくれるならそれはありがたいことだ。

 本来なら、彼の気が変わらないようにそっとしておくべきだ。


 だが、





 「ーー待って」




 思わず、美琴は口に出していた。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:08:01.17 ID:Ynijzgd70<>

 「あン?まだ何かあンのか?」



 美琴の声に、一方通行は不機嫌そうに立ち止まる。


 見つめただけで人を殺せそうな程の視線に、しかし美琴は臆しない。



 「お願い。一つだけ、聞かせて」




 どうしても、聞きたいことがあった。


 例え彼の気を損ねて殺される可能性があっても、絶対に聞いておきたかった。


 美琴は顔だけを動かし、一方通行を見る。


 先程のことを思い出しながら、強い眼差しを向け、口を開く。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:20:53.34 ID:Ynijzgd70<>


















 「アンタはなんで、こんな実験をしてるの?」



















<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:23:19.84 ID:Ynijzgd70<>


 「ハッ。理由、ねェ」



 問いに、一方通行は笑った。


 しばし考え込むと、彼は両手を広げ、空を見上げて口を開く。



 まるで小さい子供が夢を語るような、恍惚とした表情で、彼は言った。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:27:38.32 ID:Ynijzgd70<>



















 「『絶対』になるため。



  善も悪も、過去も未来も、生も死も。

  全てを超越し、全てを使役する存在。

  つまンねェ『最強』なンかじゃねェ。そンな『絶対』に、俺はなりてェンだ」



















<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:28:53.28 ID:Ynijzgd70<>




「……え……?」




 一方通行の言葉に、美琴が違和感を覚えた瞬間。


 一時的に光を取り戻していた街灯が消え、辺りは再び暗闇に包まれた。



 美琴は慌ててレーダーを展開するが、辺りに人間の形をしたものは一切ない。



 操車場には、美琴と、一人の死体だけが取り残された。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/09/29(木) 00:31:02.01 ID:Ynijzgd70<> 投下終了です

久しぶりの投下でしたので、分量は多めでした

次回からは元に戻るかと思います。何分怠惰な>>1ですので……

それではまた次回ノシ
最近冷えますが、体調にはお気を付けて <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/29(木) 01:01:59.74 ID:ClLwbklfo<> 乙乙
おめめイタイイタイしてるだけだった介旅たん… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/09/29(木) 01:20:58.52 ID:TRV9qdmr0<> おつおつ

>>444
吹いたwwwwwwwwwwww
お前のせいでキーボードにコーヒーぶち撒けちまったじゃねェかwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/29(木) 06:20:15.13 ID:D6NXSAKAO<> ふむ、絶対とは
期待 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:22:24.55 ID:bhPQzvQg0<> こんばんは
毎度毎度のことですが夜分遅くに投下します

外せない用事がありますので、投下は少なめです

>>444
今回はそんな介旅たん+αの話になります <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:24:23.32 ID:bhPQzvQg0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 息が上手く吸い込めない。
 ひゅうひゅうと、喉がおかしな音をたてる。

 日頃の運動不足が祟ったのか、少し走っただけで呼吸が乱れてしまったようだ。


 「な、何なんだよ、あれ……!?」


 目を開けた瞬間、飛び込んできた光景。
 それは真っ赤に染まった地面と、一方的にいたぶられる美琴の姿だった。

 それを見た瞬間に、介旅初矢は逃げ出していた。

 美琴を助けようとか、誰かを呼んでこようとか、そういうことを考える余裕は一切無かった。


 (何でだ、何でなんだよ!
  アイツは……御坂は、第三位の超能力者のハズだろ!?
  それが、何であんなことに……)


 思考する介旅だったが、彼は既に答えの見当をつけている。

 思い出すのは、あのふざけたレポート。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:28:29.34 ID:bhPQzvQg0<>

 『学園都市第一位』。

 その肩書きが示すのは、即ちこの街の頂点。

 二三〇万の中の、最高にして至高の存在。


 走っていたときの筋肉の疲れなのか、足が震え出す。

 介旅は、ゆっくりとその名を呟く。


 「あ、『一方通行』……ッ!」


 ぶるり、と。

 言葉にするだけで、体中に鳥肌が立った。

 真夏の熱帯夜だというのに、空気は肌を刺すように冷たい。

 許容量を越えてしまった恐怖の仕業なのだろうか。

 そんな思いを振り払うように、介旅は頭を左右に降って、


 「だ、大丈夫だよ。心配なんかしなくても。そうだ、アイツは第三位なんだ。
  あの血の海だって、タチの悪い冗談に決まってる。当たり前だろ」


 口を突いて出たのは、思ってもいない戯言だった。

 確信しているのでも、本当にそう思い込んでいるのでもない。

 そう思い込むことで、恐怖心を少しでも和らげようとしているに過ぎなかった。

 だから、

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:34:23.24 ID:bhPQzvQg0<>




 「うーん、残念だけど……
  悲しいことに、少なくとも後者は本物なんだよね」





 背後からそんな応えが返ってくるなど、思っても見なかった。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:47:28.81 ID:bhPQzvQg0<>
 「こんばんは、お兄さん。
  ちょっと話があるんだけど……いいかな?」


 幼い声だった。
 恐らくは、第二次性徴期の半ばといったところだろうか。

 少女が近づくにつれて浮き上がってくるシルエットも、介旅より頭一つ分近く低かった。


 「……、」


 しかし、だからこそ介旅は警戒する。

 最終下校時刻を過ぎたこの時間に、そんな少女が出歩いているという事自体が妙なのだ。

 一歩ずつ、慎重に後ろへと退がっていく。


 じり……、と素人なりに間合いを取ろうとする介旅を見て、少女はくすくすと笑った。


 「やだなぁ、そんなに警戒しないでよ」


 軽く言う少女に、介旅は言葉を選びながら言う。


 「……ごめんな。ちょっと色々あったからか、神経質になってるんだ。
  取り合えず名前を教えてくれると、少しは安心できるかもな」


 不躾な言葉だったが、どうやら少女は気にしていないようで、
 あぁ名前か、と軽く呟くと、 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:48:44.28 ID:bhPQzvQg0<>





 「オッケー、教えてあげる。木原よ。木原、那由他。

  お兄さんに協力して貰いたいことがあるんだけど……お願い、出来るかな?」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/01(土) 23:49:25.89 ID:bhPQzvQg0<> 宣言通り短く、ここまで

……ヤバい、もう始まってる…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/01(土) 23:50:28.06 ID:VdB0ZTroo<> >>1乙
介旅たんおめめイタイイタイどころか逃げてたのかよ!
なゆたんキター! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/01(土) 23:57:31.76 ID:QuzI2tsUo<> 乙
なゆたんかー、あの子ロケットパンチとかつかえたりしねーかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/02(日) 00:13:16.50 ID:Si6nQjq6o<> なゆたんならその内おっぱいミサイル使えるようになるよ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 21:53:30.01 ID:EuZga9ig0<> ……日数を間違えた……だと……

気づいたら四日たってました
>>1の記憶違いによるものですすみません


>>456
あの子の成長には期待ができます
つーかぶっちゃけ今のままでmうわやめろ何をする


それでは投下
美琴サイドでも色々あるようです <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 21:54:31.96 ID:EuZga9ig0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『ご安心ください、お姉様。死亡したミサカの検体番号は九九八二号。
  本日お姉様方と行動を共にした一〇〇三二号とは別の個体です、とミサカは補足します』


 あの後。

 『実験』の後始末にやってきた、『妹達』の中の一人はそう言った。

 同じ顔の人間が、次々と作業を終えてゆく横で。

 表情も声色も、何一つ変えずに。

 自分と同じはずのその瞳には、感情が欠落してしまったかのように一切の光が点らない。


 「………、」


 なんでなんだろう、と美琴はぼんやりと思った。

 クローンとはいえ、生きているはずなのに。命があるはずなのに。

 なんで、あんな残酷な運命を受け入れられるというのだろうか。


 「…………っ、」


 その姿は、まさに実験動物そのものだった。

 檻の中から出ることも叶わず、ただ悪戯に身体中を弄ばれ。
 用が済めば焼却炉に放り込まれ、足りなければ籠のなかで掛け合わされる。

 それは、彼女達の在り方とあまりにも酷似していた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 22:09:39.17 ID:EuZga9ig0<>

 あるいは、『死』そのものを成功とする分には、こちらの方が余程狂っているのかもしれない。


 非人道的、という言葉が頭に浮かんだ。

 倫理に反する。人間性を疑う。あってはならない。

 非難の言葉だけなら、いくらでも思いつく。
 彼女の頭には、一般の枠を越えたレベルの知識が集まっているのだから。

 だが、足りない。

 言葉では、この実験は止められない。
 試しても見ない内からではあるが、それぐらいは確信できた。

 ならば、必要なのは一つ。


 「…………ッ!」


 砂利を踏み締め、ゆっくりと、しかし力強く立ち上がる。

 じっとしているわけにはいかない。

 実力行使に出るのなら、それだけの準備が必要だ。

 ザリ……、と美琴が最初の一歩を踏み込む、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 22:13:22.21 ID:EuZga9ig0<>





 「Excuse me.ちょっと話があるのだけれど、いいかしら?」






 その瞬間に、声がした。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 22:29:16.04 ID:EuZga9ig0<>

 「なッ!?」

 「Don't worry.身構えなくても大丈夫よ。話があると言ったでしょう」


 暗闇から出てきたのは、ウェーブのかかった黒髪を肩の辺りまで伸ばした女。

 白衣の下に着ている制服は確か、名門高校・長点上機学園のものだったはずだ。

 混乱する美琴に、女は諭すように言う。




 「まずは自己紹介から始めましょうか。
  私の名前は布束砥信。この最低の『実験』を止めるために動いている、しがない一人の学生よ」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 22:36:09.70 ID:EuZga9ig0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 話を聞くと、どうやら那由他と名乗った少女は、
 あの『実験』を止めるために動いている人間らしい。

 そして、そのための協力者を探している、とも言った。


 「無理に、とは言わないけどね。アナタだって、あんなのは間違ってるって思うでしょ?」


 ツインテールにした綺麗な金髪を揺らして、那由他は小首を傾げる。
 同意を求める仕草なのだろうが、彼女がするとどこか媚びているように見えた。

 そういう見た目だもんな、と介旅は苦笑しつつ、


 「……で、そこで何で僕を選ぶんだ?むしろ僕じゃ足手まといだろ。
  選ぶんなら、御坂みたいな超能力者とか……」

 「美琴お姉さんのところには、別の人が行ってるもん。
  あ、あとその人によるとお姉さんは無事だったらしいから安心してね」


 無事、という言葉を聞いて胸を撫で下ろす介旅だったが、そこでふと気がつく。


 「その人によると、って……念話能力者か何かなのか?
  携帯で連絡を取り合ってるようには見えなかったけど……」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 22:49:55.86 ID:EuZga9ig0<>
 あぁそれはね、と那由他は言って、


 「うーん、そういうのじゃなくって……まぁ直接見せた方が早いかな?」


 彼女は左手で自分の右腕を掴むと、少々難しそうな顔をして、


 「えい」


 途端、ペキペキペキっという軽い音をたてて、彼女の右腕が外れた。

 関節が、とか筋肉が、とかではない。
 文字どおり、肩口のところから綺麗に右腕が抜けたのだ。


 「……はぁ!?」


 抜けた右腕が、左手の中でぶらぶらとだらしなく垂れ下がっている。

 介旅の予想通りのリアクションに、那由他は面白そうに右腕を見せつけながら、


 「びっくりしたでしょ。私ね、サイボーグなの。
  昔にちょっとやらかしちゃったせいで、体のほとんどは機械になっちゃってさ」


 あははドジだよねー、と明るく笑う那由他だったが、
 介旅としては死ぬほど驚かされたところである。

 というか、いきなりそんなことをされたら、誰でも驚くであろう。
 笑う奴がいたら間違いなく精神異常者だ。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 23:11:13.41 ID:EuZga9ig0<>

 「……はぁ、つーかまだ肝心のところ聞いてないんだけどな。
  一体、僕に何をさせようっていうんだ?」


 当然のような問い。

 しかし、那由他は何を言っているのかと言うように首を傾げて、






 「えっと……ハッキングでの私達のバックアップ以外に、何かやることがあるの?」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 23:14:50.19 ID:EuZga9ig0<>

 「ーーーーッ!!」


 那由他が言ったのは、大したことではない。

 にも関わらず、介旅の背筋に冷たいものが走った。


 その何気ない一言が示すのは、つまり、



 (な……僕がハッカーだってバレてる!?)


 しかもこの口ぶりだと、知ったのは結構前のようだ。

 ハッカーとしての介旅は、誰にも見つからないよう
 慎重に隠ぺいを重ねていた筈なのだが……、

 戦慄する介旅に、那由他は笑って、


 「ねぇ、協力してくれるよね?
  もしダメだったらそう言ってくれればいいよ。
  でもダメだったら悲しいなぁ。
  悲しさのあまり、警備員さんに連絡をいれちゃうけど気にしないでね」


 ニッコリ笑顔で強迫というのは予想以上に怖いものだな、と、この日介旅は新しく知った。



<> おまけ
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 23:19:21.54 ID:EuZga9ig0<> 前から考えてたけど没になった会話



介旅「ところで、なんでお前が僕のところに?」

那由他「え?あなたの家のパソコンの履歴を調べたら」

・画像掲示板←小学生画像
・動画サイト←金髪外人モノ

那由他「……ってなってたから、好みに近いであろう私が」

介旅「」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 23:19:58.47 ID:EuZga9ig0<> 投下終了です

前回から若干明るくなった感じですかね?

あと、おまけは今後もちょいちょい付けていきます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/05(水) 23:28:09.95 ID:EuZga9ig0<> ……書くの忘れてたので補足

那由他ちゃんは、耳に無線機をセットしています
布束さんの報告を聞けたのはそのためです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/06(木) 10:24:10.67 ID:pRX/fveAO<> 乙!

最近布束さんの活躍する作品が増えてうれしい! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/07(金) 23:11:10.11 ID:/3cL41mzo<> 乙乙
最初から追ってたけど、段々すごく面白くなってる

そして介旅たんと自分の好みが酷似してる件 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/08(土) 23:59:09.51 ID:YglObiFC0<> >>470
それも、ひとえに皆さんのレスのおかげですね
本当にありがとうございます

それでは投下
時は少々進みます
展開の都合で、セリフが多めかも <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/09(日) 00:04:07.24 ID:HH6iOubG0<>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「あれ?遅かったね、砥信お姉さん」

 「sorry.少々手間取ってしまってね」


 ここはとある廃ビルの、使われていない一室。

 布束は玄関先で溜め息をつくと、那由他のいる室内へと入っていった。

 ソファに深く腰掛け、手足をだらりと投げ出す姿を不思議に思ったのか、那由他は怪訝そうにして、


 「あー、もしかして美琴お姉さんにフラれちゃったのかな?」

 「……right.彼女、中々に強情でね。
  ひたすら『自分で止める。手を出すな』ばかりで聞かなかったのよ」

 「あっちゃー。ま、しょうがないよね。交渉って難しいし」

 「むしろ、あなたがどうやって交渉を成功させたのか疑問なところね」

 「そこはホラ、私独自の交渉術でなんとか」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/09(日) 00:17:20.07 ID:HH6iOubG0<>  ちなみに、実際には『交渉』ではなくただの脅迫であったのだが、
 那由他はその辺には一切触れず言葉を続ける。


 「まぁ別に砥信お姉さんの責任じゃないから、気にしないで
  ……って言いたいトコだけど、やっぱり美琴お姉さんがいないってのは残念かな。
  お姉さんがいるといないで、計画の成功率がまるで変わって来ちゃうし」


 那由他の言葉に、布束はばつの悪そうな顔をして、


 「あら。一応あの計画は、元々一人でやるために立てたのよ?」

 「うーん……一人であんな無茶なことをする気が起きるってのは凄いよね」

 「それは褒め言葉ととってもいいのかしら?」

 「ふふ。まぁいいんじゃない?もう少し安全にやってもらいたいのは事実だけどね」


 軽く笑いながら、那由他は夜の空を見上げつつ、


 (介旅お兄さんには、悪いことしちゃったかな)


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/09(日) 00:18:21.67 ID:HH6iOubG0<> 眠さの最高潮がきそうで多分起きてられないので
中途半端ですが終了します、すみません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/09(日) 14:21:40.43 ID:0p6/9roAo<> まだかなまだかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/10/10(月) 10:24:23.27 ID:R6gPdoZU0<> >>1おつおつ
那由他ン可愛いな
次も舞ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/10/10(月) 10:24:50.24 ID:R6gPdoZU0<> >>1おつおつ
那由他ン可愛いな
次も舞ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/11(火) 08:10:17.78 ID:JpBK/k+No<> 天高く馬肥ゆる乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 21:11:51.05 ID:b96lPZG+0<> どうもこんばんは>>1です

前回はどうもすみませんでした
あのようなことを少しでも減らせるように努力します

では前回の続きより投下
諸事情によりいつもよりも更にマイペースな投下になります <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 21:14:10.00 ID:b96lPZG+0<>

 「物思いに耽っているところ悪いけれど」


 とそこで、布束は部屋の隅の窓枠に腰掛ける那由他に声をかけて、


 「向こうの……Mr.介旅の連絡先は聞いてあるのかしら?」

 「……あ」


 やってしまった、という表情で固まる那由他に、布束は肩をすくめながらため息をつき、


 「言っておくけれど、顔や名前のようにハッキングして調べるのは不可能よ。
  元々あれは色々な学校から『学校内の要注意人物』のリストを拝借しただけなのだから」


 もちろん、学校内のリストにはわざわざ携帯番号まで書いていない。

 別の方法で探そうと思えば探せないこともないが、どれもこれも非効率だ。

 よって、


 「さ、やるべきことは分かるわね?」

 「はーい……」


 渋々と玄関を出ていく那由他を見送って、布束は椅子に深く腰掛けた。
 机の上にあるティーポットに、手を延ばす。

 コポコポ……、という音の後、脇にぽんと置かれた砂時計が、紅茶の蒸らし時間を計測し始めた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 21:22:50.48 ID:b96lPZG+0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 介旅初矢は、小心者で臆病でひ弱で力がなくてメガネでオタクである。
 見た感じからしても、そして実際にもそうなので救いようがない。

 その手の人からしたらヒーローともいえるステータスではあるが、
 逆に言えばこの世の大部分を占める『その手じゃない人』にとってはただの生ゴミである。


 ところで話は変わるが、『オタク狩り』という単語に心当たりはあるだろうか。

 簡単に言えばオヤジ狩りの発展で、
 リストラ間近で赤字続きのショボいリーマンよりは
 ソッチ系のグッズを買いあさるオタクの方がたくさん脅し取れるんじゃ?
 という考え方に基づいて行われるカツアゲである。


 さて。
 もちろん、この長ったらしい前置きにはきちんと意味がある。
 何故なら、この前置き自体がまさに介旅の現状であるからだ。


 「いいから早く金出せっつってんだろカネカネ」

 「何ならクレジットカードでも可だよー。ただし暗唱番号付きな」

 (わーなんかすっげぇ久しぶりの展開だなおい)


 端的に言おう。

 介旅は、ガラの悪い連中に絡まれていた。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 21:39:47.20 ID:b96lPZG+0<>

 (さーどうするよ僕。現金は持ってないしカードやるわけにはいかないし
  殴られるのもイヤだしでもそんな調子のいいことできるはずないし)


 見たところ相手は三人。
 だが、物陰に仲間が潜んでいたりといった可能性も十分にある。

 この人数を相手取って喧嘩するなど、介旅には到底不可能だ。
 というかそもそも、相手が一人だったところで勝率は一割にも満たない。

 逃げる、というのも不可。
 いくら相手がアルコールとニコチンで体を壊しているとはいえ、介旅は正真正銘の運動不足だ。
 走り出して二秒で捕まる自信がある。

 さてどうしたものかなー、と必死で頭を悩ませる介旅。
 その間にも不良達は着々と介旅包囲網を作っていく。

 気づけば、四方の路地出口全てに人員が配置されていた。
 どうやら、どうやっても逃がすつもりはないらしい。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 21:48:02.93 ID:b96lPZG+0<>

 (……やるしかないか)


 しかし、介旅の目に諦めは浮かばない。

 逃げられない、戦えないのなら第三の手を使うまでだ。

 即ち、攪乱。

 軽く爆発を起こしてそちらに意識を向けさせれば、その隙に路地の外に飛び出せる。
 四人がバラバラの配置なのだから、逆に言えば一カ所当たりの突破難度は低いのだ。


 (問題は‥…誰のところを通るか、か)


 手の中にあるスプーンを汗ばんだ手で握りしめながら、介旅はそれぞれの出口をこっそりと確認していく。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 21:56:23.59 ID:b96lPZG+0<>
 まずは正面。
 立っているのは、屈強な大男。


 (ムリムリ、明らかに怖いわ)


 次は右。
 腕を組んでいるのは、痩せぎす長身の男。


 (うーんと、足が早そうだよな……)


 焦りながら左を見る。

 つま先を地面に突きながら口笛を吹いているのは、金髪のチャラ男。


 (……お?行けそうじゃね?)


 確認程度に後ろを見る。

 つま先で倒れた男を突きながらウインクしているのは、金髪のロリ。


 「……へ?」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 22:03:41.84 ID:b96lPZG+0<>

 介旅が思わず口に出した、次の瞬間だった。

 ビュオッ!!と、辺りを一陣の風が吹き抜ける。

 常人には、そう感じることが精一杯だっただろう。

 だが違う。

 那由他の振るった『何か』が、不良三人の意識を纏めてさらっていったのだ。


 「やっほう、介旅お兄さん」


 那由他は、手に持っていた紐付きダンベルをランドセルにしまいこんで、


 「メアド交換しにきたんだけど。お願いね」


 意外にもファンシーな携帯電話を取り出して、輝くように笑った。

 その頬に返り血が付着しているのは、見なかったことにしておきたい。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/11(火) 22:07:29.43 ID:b96lPZG+0<> 投下終了

思ったよりスムーズに投下できました

今回もおまけを書こうかと思ったのですが、
どうやらおまけの分量には収まりそうにないので
本編として扱うことになりそうです

ということで、次回はちょっとテイストを変えた形でスタートします

……恐らくは、ですが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/11(火) 23:26:25.60 ID:JpBK/k+No<> ららーらーランドセルーはー


乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/11(火) 23:48:50.76 ID:sdQMT4L/o<> ててーんてん天使の羽 轟! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/10/13(木) 00:20:07.18 ID:0enKvsHC0<> おつおつ

>>488
轟wwwwww <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:10:12.42 ID:4sclTb2I0<> こんばんはなのですー
投下を開始するですー

それではいくですー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:12:11.10 ID:4sclTb2I0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 むかーし、むかし。
 とはいっても、今からほんの数年前のお話。

 あるところに、一人の男の子がいました。
 その男の子はちょっと気が弱いけれど、優しくて頭の良い子でした。

 だけれども、男の子には友達がいませんでした。

 なぜかと言えば、男の子の見た目が周りとは少しだけ、ほんのちょびっとだけ違ったからです。

 男の子が近づくと、子ども達はみんながみんな口を揃えて言います。


 「バケモノ」「ようかい」


 男の子は、それを聞いて悲しくなりました。

 しかし、男の子はずっと、友達がほしいと思い続けていました。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:22:30.66 ID:4sclTb2I0<>

 そんなある日のこと。

 男の子は、真っ赤な夕焼け空の下を歩いていました。
 いつも通り、学校から帰る途中でした。

 学校でも、男の子はひとりぼっちです。

 どれだけ難しい計算を解いても、褒めてくれるのは大人ばかりで、子供たちには見向きもされません。

 それでも男の子は、きっと自分のがんばりが足りないのだと思って一生懸命に勉強をしました。

 なのに、勉強をすればするほど、男の子は子供たちから避けられるようになっていきました。

 男の子ががんばればがんばるほど、その髪の毛は雪のように真っ白に、
 その目は夕焼けと同じ真っ赤に染まっていったのです。

 男の子は勉強はできたのに、そんな簡単なことにも気付くことができませんでした。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:28:02.93 ID:4sclTb2I0<>

 ですから男の子は、その日も熱心に勉強をしながら帰っていました。
 頭の中では、高校生にも解けないような難しい計算がぐるぐると回っています。

 と、そんな男の子の目の前に、一個のボールが飛んできました。

 白と黒の五角形が並んだ、柔らかめのサッカーボールでした。

 男の子はそれを見て、ふと思いつきました。

 これを飛ばしてしまった子は、きっと困っているはず。
 だからこれを届けてあげれば、その子は喜んで、もしかしたら自分となかよしになれるかもしれません。

 そんな子供らしい考え方で、男の子はボールを拾うと、飛んできた場所を探しました。

 そんなに広くもない場所でしたので、そこはすぐに見つかりました。
 小さな公園で、同い年ぐらいの子供たちがボールを探していました。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:37:51.81 ID:4sclTb2I0<>

 男の子はそっと公園にはいると、にっこり笑って言いました。


 「これ、だーれの?」


 子供たちは、一斉に男の子の方を見ると、途端にぎゃぁぎゃぁと騒ぎだして、


 「にげろー!おにがきたぞー!」

 「つかまったら食われちゃうぞー!みんなにげろー!」


 誰かがそう叫ぶと、子供たちはみんな走り去って行ってしまいました。

 一人だけ残ったのは、たぶんボールの持ち主なのでしょう、体の大きな少年でした。
 怒ったように顔は真っ赤で、拳をプルプルと握りしめています。

 男の子は、少年が何でそんな風になっているのか分からなかったので、不思議そうな顔をして、


 「これ、きみの?」

 「…………」


 少年は、下を向いて黙っています。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:43:18.20 ID:4sclTb2I0<>

 少年が返事をしないので、男の子は、違ったのかな、と思って話を変えることにしました。


 「なんで、みんないなくなっちゃったの?」

 「…………」


 少年は、なにもしゃべりません。

 どうしたのかな、と男の子は思って、そこでさっきの子供たちが「おに」と言っていたのを思い出しました。
 そういうことか、と男の子は納得して、少年に聞きました。


 「あ、わかった。みんなでおにごっこやってるんだね?」

 「…………」

 「ねぇねぇ、教えてよ。どこまで逃げていいの?ぼくも入っていい?ねぇってば」

 「…………う、」

 「ねぇねぇ聞いてる?ぼくもーー


    「う、うるさい!ばけもの!!」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:45:15.68 ID:4sclTb2I0<>

 突然、今まで黙りこくっていた少年が声をあげました。

 顔はますます真っ赤になって、拳は振り上げられています。

 男の子はびっくりして、思わずサッカーボールを強く抱きしめました。

 それを見ると、少年はさらに怒って、


 「返せよ!触るな、ばけもの!!」


 男の子は、怖くなってギュッと目を瞑りました。

 少年の手が、男の子の腕からボールを奪い取ろうとします。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:51:15.22 ID:4sclTb2I0<>





    ぼきり





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:57:58.15 ID:4sclTb2I0<>



 少年の腕が、真ん中の辺りから変な方向を向きました。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/14(金) 23:58:24.20 ID:4sclTb2I0<>

 「あ……ぇ……?」


 男の子には、訳がわかりませんでした。

 何が起こったのかも、自分が何をしたのかも、全く分からず、ただ呆然としていました。


 泣き叫ぶ少年をぼんやりと眺めていると、大人がやってきました。

 一目見て事態を把握した大人は、男の子を止めようと体に手を触れました。



 ぽきん



 大人の右の手首が、左の手首と同じ方向に曲がるようになりました。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/15(土) 00:00:42.87 ID:aaknkivG0<>

 そこから先は、同じことの繰り返しでした。


 竹刀を持ってきた大人は、自分で自分の頭を打ちました。


 恐ろしい銃を持ってきた警備員は、体中に新しい穴を作りました。


 戦車が来ました。
 こわれました。


 ヘリコプターが飛んできました。
 落ちて燃えて、周りの人を巻き込みました。


 男の子は、その間ずっと、目を瞑っていました。


 目を開けたときには、空はすっかり暗くなり、
 代わりに地面が夕焼けよりも、もっとずぅっと真っ赤な海になっていました。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/15(土) 00:01:11.09 ID:aaknkivG0<> 投下終了ですー

思ったより長くなったですー

でももう少しこの話は続くですー

下痢が辛いですー

それではまた次回ですー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/10/15(土) 00:31:54.62 ID:o4VDqyzm0<> 切ないな
ホントに切ないわ

おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/15(土) 01:04:13.59 ID:/dRenWv3o<> ぼきり

で心が折れそうになったぜ乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/15(土) 14:45:29.70 ID:+ELDFXs3o<> 乙乙
一方たん…
ねぇねぇ、のところでNDK思い出したのは自分だけでいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/15(土) 17:44:30.70 ID:8DN0cwAAO<> おつ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:10:03.33 ID:CIDrZXsw0<> こんばんは、レス感謝です
移転だ何だと騒がれていますが、>>1としてはできればこの板で続けていきたいところです

それでは投下します
前回の続きより <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:12:22.73 ID:CIDrZXsw0<>

 次に気付いたとき、男の子は教室にいました。

 いつもの学校の教室、ではありません。

 男の子の机は、広い教室の中でひとりぼっちでした。
 それはまるで、今の男の子を表しているようでした。

 先生は言いました。
 この教室は、男の子のためだけに作られた特別クラスなのだそうです。

 それを聞いて、男の子は知りました。
 彼には、他の子供たちとはあまりに違いすぎる力があったのです。

 たぶん、このクラスは男の子が力を使いこなすためにあるのでしょう。

 周りを巻き込まないために。
 もう誰も傷つけないように。

 そうなりたいと思って、男の子は頑張って力を操りました。

 その力が、まさにその逆の方向に使われることになる、などとは思いもせずに。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:23:12.71 ID:CIDrZXsw0<>  

 いつしか、男の子には名前が無くなりました。


 二文字の名字と、三文字の名前は、きれいさっぱり忘れ去られて行きました。


 そしていつしか、男の子の呼び名は能力の名前へと変わっていました。


 漢字で四文字、カタカナで七文字。


 それが、男の子の新しい名前でした。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:34:09.43 ID:CIDrZXsw0<>

 ある日、男の子は転校をしました。
 といっても、彼自身が望んだのではありません。

 大きくなりすぎた彼の力は、『特別クラス』でも手を焼くほどになっていたのです。

 それは、転校した先でも同じことでした。

 最初は扱い切れていた彼の力も、彼の成長とともに手の付けようが無くなっていったのです。

 そして転校の度に、学校での『授業』はひどいものになりました。
 成長していく男の子に合わせたのですから、当たり前のことでしょう。

 その先々で、男の子はこう呼ばれました。


 『化け物』『怪物』


 あぁ、何と言うことでしょう。
 ここまで来ても、彼はあの時と、なんら変わらない扱いを受けていたのです。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:47:08.72 ID:CIDrZXsw0<>

 そんな中で、彼は気付いてしまいました。

 彼はどこにいようが、何をしていようが、結局はそう呼ばれる存在だったのです。

 彼を受け入れてくれる大人たちは皆、
 彼の能力は受け入れても、彼自身を受け入れてはくれないのです。

 それを知ってしまった彼は、学校を飛び出していきました。
 大人達は必死で止めようとしましたが、その全員が彼の力に弾かれました。

 寒空の下で降りしきる雨の中、ひっそりと暗い路地裏で、彼はぼんやりと考えます。

 このままじっとしていたら、いつかは死ねるのかな、と。

 考えながら、ウトウトと目を閉じかけた、そのときでした。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:51:18.65 ID:CIDrZXsw0<>

 そんな中で、彼は気付いてしまいました。

 彼はどこにいようが、何をしていようが、結局はそう呼ばれる存在だったのです。

 彼を受け入れてくれる大人たちは皆、
 彼の能力は受け入れても、彼自身を受け入れてはくれないのです。

 それを知ってしまった彼は、学校を飛び出していきました。
 大人達は必死で止めようとしましたが、その全員が彼の力に弾かれました。

 寒空の下で降りしきる雨の中、ひっそりと暗い路地裏で、彼はぼんやりと考えます。

 このままじっとしていたら、いつかは死ねるのかな、と。

 考えながら、ウトウトと目を閉じかけた、そのときでした。


<> 連投申し訳ない……
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 22:55:10.88 ID:CIDrZXsw0<>


 「あーん?何だボウズ。こんなクソ寒いのに外で寝るなんざ、死にたがりかぁ?」


 頭の上から、ぶっきらぼうな声がかけられました。

 見上げれば、そこには白衣の男が立っていました。


 「……おっさんには、関係ないよ。もういいんだ。ほっといてくれ」


 男の子は言いましたが、白衣の男は聞く耳を持ちません。

 最初から、返事を聞く気なんて無いんでしょう。
 男の子の頭の上に傘を差し出しながら、面倒臭そうに言います。


 「まぁ関係はねーけどよぉ。ここで会ったのも何かの縁だ、お前俺に拾われてみねぇか?」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 23:03:11.55 ID:CIDrZXsw0<>

 突然の申し出に、男の子は目を丸くして聞き返しました。


 「拾う?僕を?」

 「あ?何でイチイチ聞き返すんだよ。
  やっぱあれか、こんなとこで寝るような奴は頭の中クルクルパーなのか?」

 「う、うるさいなぁ!僕は将来の第一位って期待される能力者なんだぞ!!」


 言ってしまってから、しまった、と男の子は思いました。

 この人は、自分のことをそんな大物だと思っていなかったから声をかけてくれたのでしょう。
 言ってしまえば、この人もきっと自分を恐れ、逃げ出してしまうに違いありません。

 ところが、白衣の男は興味なさげに、


 「ふぅん。その割にゃあお前、全然嬉しそうじゃねぇのな」

 「……え?」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 23:14:15.57 ID:CIDrZXsw0<>

 「そんなすごい能力者ならよぉ、もっと自信を持てよ。
  ハッキリ言うと今のお前、見た感じその辺のガキンチョと変わらねぇぞ?」

 「……うっさいな。誇れる訳ないだろ。


  ……人を傷つけるしか出来ない力なんて、さ」


 そうか、と白衣の男はニヤリと笑って、


 「じゃあ、俺に任せな」

 「は?それってどういう……」






 「俺といっしょに来いっつってんだよ。
  これでも俺、いっぱしの研究者だからな。
  お前が誇れるように、その力ぁ鍛え上げてやるよ」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 23:23:04.59 ID:CIDrZXsw0<>

 「ど、どうして?何で、僕なんかを 「うるせぇんだよ。理由なんてどーでもいいだろうが」


 白衣の男は、男の子を睨み付けながら言いました。

 その目付きは、今まで見たことも無いほどに鋭くて、
 ……けれど不思議と、全然怖くはありませんでした。

 呆気にとられる男の子に、男は続けて言います。


 「で、どうすんだボウズ。
  ここで野垂れ死ぬか、クソみてぇな研究所に戻るか


  ーーそれとも、俺の家に来るか」


 その問いに、始めから他の答えはありませんでした。

 男の子は、食いつくようにその選択をします。

 予想通りの答えに、男は満足そうに頷いて、優しく微笑みました。



 
 これが、男の子とその優しくてステキでカッコよくて頭のキレる養父との、最初の出会いでした。 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 23:24:18.13 ID:CIDrZXsw0<>

 「ーーおしまい、っと」


 ふぅ、とため息を吐きながら、男は絵本(自作)を畳み、目の前の部下へと尋ねる。


 「マイク、どうよ?これ結構イケてねぇか?」


 マイク、と呼ばれた男は呆れたような顔で、


 「……木原さん、一応聞きますけど……何ですか、それ?」

 「あぁん?『反抗期の息子との絆を修復するための絵本読み聞かせ計画』に決まってんだろうが。
  そんなことも分かんねぇなんざ、俺の部下失格だぞコラ」

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 23:38:27.64 ID:CIDrZXsw0<>

 余りにも理不尽な上司・木原数多の言葉に、マイクは失笑を通り越し
 『何言ってんだこの人?』という表情を隠せない。隠す気もないが。

 ため息を吐くと幸せが逃げるらしいけどなら俺の幸せってどのくらい減ってんだろうなー
 などと考えながら、マイクはまたもため息を吐き、


 「あのー……取り合えず何なんですか?その最後の意味もない詰め込み。
  大体、あんたらそんな出会いしてないでしょうに」

 「は?ここは俺の偉大さを示すために必要不可欠だろふざけんな。
  あとあれだよ。お前じゃあ『研究機関を回されてきた末、ここが居心地よかったので
  定住することに決めました』の方が良かったってのか?」

 「だから何でノンフィクションにするんですか……
  つーか今の話、向こうのトラウマをグリグリ抉ること間違いなしでしょう」

 「んなわけねぇだろ!アイツは絶対、これに感動して仲直りしてくれるね!!」 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/17(月) 23:54:49.63 ID:CIDrZXsw0<>

 もうダメだこの人。
 そう判断したマイクは、面倒なのでツッコむのをやめた。

 一方で木原は上機嫌に、


 「おし!んじゃ早速行ってくっか!」


 息子の部屋へとダッシュしていった木原を見送ると、マイクは操作していた携帯端末を見る。

 表示されていたページは、『ダメな上司のフォロー法』。

 今日もまた、フォローに徹する彼の日常が始まる。




 (つーか、わざわざ自宅に呼ぶ必要あるのか?電話でよくね?
  あと、読み聞かせ聞いてくれるんならそんなに仲悪くないだろ。
  更に言うと、今までツッコまなかったけど計画名長過ぎじゃね)




 そんなことを考えるマイクに、木原が泣きついてくるまであと十五分。


<> おまけ 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/18(火) 00:07:45.17 ID:x6rJt5iB0<>
マイク「ところで、ケンカの原因はなんだったんですか?」

木原「いや、アイツがやってるゲームが面白そうでよ。
   ストーリーをすこーしだけ勝手に進めたんだが……」

マイク「そこで何が?」

木原「いや、どうやら会話の選択肢をミスったらしくよ。
   『トゥルーエンドが見れなくなったじゃねェか!テティの花ァ欲しかったのに!』
    ……って怒られた」

マイク「あぁ、ファ●タシースターですか」

木原「ポータブル2インフ●ニティエピソード1だ。間違えんな」

マイク「メンドくさ……
    てか、俺持ってますけどあげましょうか?」

木原「『エンディングをきちンと楽しみたい』って言って聞かねぇんだ」

マイク「まぁそうでしょうね……」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/18(火) 00:09:48.61 ID:x6rJt5iB0<> 投下終了

エミリアは俺の嫁。異論は認めない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/18(火) 00:12:56.98 ID:Z7cs9Ww7o<> 乙
じゃあ木原たんは俺の嫁で
異論は認めない

最近ってかほとんど毎回リアタイ遭遇してるキガス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/10/18(火) 01:38:00.59 ID:yTgAWwdc0<> え?……え?
スレ間違えたかと思ったwww
そして一方通行……クリア後にストーリーミッションまたやれるからそれで好感度(?)操作すればトゥルー見れるぞ。というか一キャラだけで全エンド見れるぞこの方法で、称号ふくめwww <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/20(木) 23:49:26.19 ID:mExtAvgU0<> >>521
考えてみると、投下時間が長いだけでなく、三日目の日付変更直前に集中していますね
……自分で決めた〆切りギリギリ、というのは褒められたことではありませんが

>>522
『やりなおせる失敗なのに必要以上に怒る』というのには、実は理由があります
機会があれば本編で描写する……かも?


ではでは投下します
主人公なのに未だ見せ場のない介旅サイドより

……眠気に負けそうなので2レスだけ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/20(木) 23:50:16.56 ID:mExtAvgU0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……一応、もう一度だけ聞いておこうか」


 静かに言い放たれたその言葉が内包するのは、鋭い冷気。

 特に空調を使っているわけでもないのに、明らかに室内の空気が冷たい。

 震え上がる介旅に、声の主ーー黄泉川は更に言葉を続ける。


 「な・ん・でお前は!留守番を頼んでおいたにも関わらず平気で出歩き、
  挙げ句の果てにはこんな時間に帰ってきたじゃんか!?」


 ビシィッ!!と黄泉川が指さしたアナログ時計の針は、両方とも『12』を指していた。
 完全下校時刻などどこ吹く風の暴挙っぷりに、さすがの黄泉川も耐えきれなくなったのだ。

 そんな黄泉川の怒りに介旅は、


 (って言われても、バカ正直に『殺人実験の真相を確かめに行ってました』
  じゃ……マズイよなぁ……)


 ちなみに、こんな時間になった真の理由は那由他にある。

 介旅が渋々協力を決め(させられ)た後、彼女が「せっかくだし、私たちの隠れ家でお茶でもどう?」
などと誘ったりしなければ、少なくとも一時間は早く帰宅できていたはずなのだ。

 それをふまえた上で、介旅は口を開く。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/20(木) 23:51:01.75 ID:mExtAvgU0<>

 「いや、だから、お茶会に行っていたと」

 「んなわけないじゃん?
  ……つーかもう大変だったじゃんよー!
  勝手に使いやがったパソコンには意味のわかんないメールが入ってくるし……!」

 (一応は真実なのになぁ)


 とはいえ、100パーセント真実ですとも言い切れないこのジレンマ。

 うーんあーでもないこーでもない……、と上手い伝え方を悩む介旅。

 そんな様子を見て、黄泉川ははぁ、とため息をつくと、


 「……まぁそんなに言いたくないなら、深い詮索はしないでおくじゃん。
  ただし、次からはこんなことが無いようにな」


 それだけ言うと、黄泉川はさっさと仮眠室へと入っていった。

 意外にもすんなりといったことに疑問を覚えつつ、介旅はソファに身を沈め、目を閉じる。

 そうやって今日一日を振り返るうちに、彼の意識は夢の中へと飛んで行ってしまった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/20(木) 23:51:29.95 ID:mExtAvgU0<> 投下修理用
こんなとこばっかり宣言通り <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/21(金) 07:10:03.35 ID:d+RJs0Jdo<> 修理用乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/21(金) 14:44:11.54 ID:Bpl88pcno<> 修理乙
僕もお茶会参加したいれす <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 21:10:38.21 ID:Xg9vqRzd0<> >>527-528
むっぴゃぁぁぁぁ!?
まさか終了宣言でミスるとは……

いやまぁそんだけ眠かったんです、ハイ


それでは投下します
寝る子は育つな介旅サイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 21:18:50.90 ID:Xg9vqRzd0<>






 暗闇。

 静寂をBGMに、眼前に広がるのは真っ暗な空間。

 介旅は、いつの間にかその中心に立っていた。


 「……夢、だよな」


 ポツリと呟いたその言葉の宛先は、確認するまでもなく自分自身だ。

 響くその声に、彼は自分で肯定を返すつもりだった。

 しかし、



 「あぁ?人を勝手にテメーの妄想の産物にすんじゃねぇよ」



 暗闇の中から突然、否定の返答があった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 21:25:38.11 ID:Xg9vqRzd0<>

 そこにいたのは、気だるそうに立つ一人の男。
 余りにも暗すぎて、顔や服装は識別できなかった。

 男は、頭を掻きながら言う。


 「いい加減に現実を認めな。
  テメェはもう、     だよ」

 「……ハイ?」

 「だから    っつってんだよ、     。
  日本語ワカリマスカー?」


 男は何故分からないんだ、とでも言いたげに繰り返すが、むしろその意味が介旅には理解できない。

 男の言葉が、時折『飛んで』いるのだ。

 最初はふざけているのかと思ったが、違う。

 男の口は、絶えず動いている。
 だが、話が核心に差し掛かった瞬間に、言葉が聞こえなくなるのだ。

        ・・・・・・・・・・・・・
 まるで、それが知ってはならないことであるかのように。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 21:38:40.72 ID:Xg9vqRzd0<>

 いぶかしむ介旅の様子を見て男も異変に気がついたのか、顎に手をやって考え始める。
 その仕草から見るに、教師か何かをやっているのかもしれない。

 数秒ほど考え込んだ後、男は介旅に問いかける。


 「オイお前、まさか『そっち』の人間か?」

 「へ?『そっち』って……」

 「だーから、    ない……じゃなくて……
  そぉだな。お前は今、毎日を楽しんでるか?」

 「ま、まぁ大体は」

 「なるほどな」


 返答を聞くと、男は合点がいったかのように頷いた。
 そう思った瞬間には、既に別の考えに移っている。

 男の尋常ではない思考速度に付いて行けていない介旅は、ただ呆然としているしかなかった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 21:49:30.86 ID:Xg9vqRzd0<>

 男の方も、もう介旅に説明する気は無いらしく、一人でブツブツと
 「    と会話……?そういえば、前に    が    って    があったな」
 「待てよ?ってことは   を   て    っつーのも……いや、   ?」
 などと呟いている。

 さっきの会話よりも飛んでいる部分が多く、
 もはや日本語として正しいのか分からないレベルだった。

 考え続ける男をよそに、
 これ以上変な夢を見ていても仕方がないな、とふんだ介旅は、その場で寝転がった。

 自分だけなのかどうかは知らないが、夢から覚めるためには夢の中で寝ればよい。

 だんだんと白く消えていく空間の中で、介旅は一つの声を聞いた。


 「イイ体質を持ってんな、お前」


 褒め称えるような言葉を背に、彼の意識は現実へと戻っていく。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 21:56:17.16 ID:Xg9vqRzd0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「うー……どうしたらいいじゃんかー?」


 寝室にて、自分のパソコンのチェックを行っていた黄泉川は弱った声を出した。

 彼女は警備員内でも屈指の身体能力を誇るが、そのぶん他の分野に弱いところがある。

 例えば、電子機器関連。

 現在パソコンに表示されている乱雑な文字列が『何かおかしい』程度は分かっても、
 どうやったら止められるかまでは分からないのだ。

 そもそも、それがウイルスなのかハッキングなのかすら見当が着いていない。


 「だーくそ、やっぱり『To介旅』なんて件名からおかしいと思ったじゃんか。
  ウカツに開くんじゃなかった……」


 そうやって後悔している間にも、ウイルスの浸食はどんどん進んでいく。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 22:04:52.50 ID:Xg9vqRzd0<>

 「しょうがない、シャクだけどアイツに聞いてみるしかーー」


 と、彼女が決意し電話を持ったところで、

 ぴー、ぴー、プツン。

 安っぽい電子音の発生源は、もちろんパソコン。

 画面には、腹の立つAAと共にこんな文言が添えてあった。


 『色々と見せて頂きました。
  セキュリティをこんなに軽くして頂き、真に有り難うございました。
  292827867524263002010』


 最後の数字は暗号か何かなのだろう。
 果てしなくナメた態度のウイルスの制作者に、黄泉川は顔の色を青から赤へと変え、
 手に持つ受話器を握りつぶしそうな勢いで決心した。


 よろしい。


 全力でとっちめてやるじゃん。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/22(土) 22:05:21.38 ID:Xg9vqRzd0<>   ・・
投下終了です

ちなみに暗号の答えは次回
二種類ぐらいミックスしてるけど、解ける人はいるのだろうか

暇なら挑戦してみてください

あと腹の立つAAは適当に脳内補完で
思いついたものがあれば貼ってってください

それではあでゅー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/23(日) 03:12:38.50 ID:3dK5sOlgo<> あれだよ、あれpgrのAAが真っ先に思いついた
>>1乙
介旅たんなにしてるのww
口調は木原くンっぽいけど言ってることがよくわからないからなー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/25(火) 23:55:16.45 ID:LzoixFZM0<> こんばんは
毎回恒例のこの時間に投下します

今度は自宅警備員で有名な『あの人』サイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/26(水) 00:00:50.70 ID:3EEhgr6r0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……ふぅ、やっと終わった」


 深夜にも関わらずフル稼働中の研究所の中で、女性は小さく伸びをした。

 彼女の名は、芳川桔梗。
 とある実験の計画を担う研究施設の、そこそこ高い地位にいる職員である。

 彼女は大きく息を吐き出すと、だるそうに椅子の背もたれに身体を預け、


 「はあぁ……わたしも年かしらね。
  若い頃なら、こんな時間には遊び呆けてた筈なのに」


 いやいやそんなことはないわよまだまだピチピチよ、と思いつつも、
 実際問題、体に残る疲労感は消えない。

 もっとも、疲れの原因は『実験』そのものだけでは無いのだが。

 さて、この疲れをどう発散しようか。


 「……、薄情よね」


 取り合えずその辺のカラオケでも行くかな、と周囲を見渡すと、芳川は肩を落として言った。

 同僚たちは、既にノルマを達成して帰ってしまっていたのだ。

 要するに、残っているのは芳川ただ一人だけだった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/26(水) 00:22:30.58 ID:3EEhgr6r0<>

 「まったく。やっぱり優しさが足りてないわね、研究者ってのは」


 自分のことを棚に上げて……
 ではなく、自分を含めたすべての研究者に対して芳川は言った。

 ともすれば自嘲とも取れる発言ではあるが、
 彼女にはここの研究者の大半よりは良識があるという自信があった。

 別に、彼女自身の人格が特別優れているというわけではない。
 単純に、他の研究者たちの人間性が著しく破壊されているというだけの話だ。


 (人間をモルモットと同率に見られるなんて、一体どういう神経してるのかしら)


 そうは思うものの、その凶行を止められなかった責任は当然彼女にもある。
 だからこそ、彼女は自分と他の同僚をまとめて『研究者』と呼んだのだ。


 (文句は言うけど、止めはしない。
  可哀想だとは思うけど、ただそれだけ。
  ……わたし、やっぱり甘いのよね)


 結局は、それが彼女の全てだった。

 『優しい』のではなく『甘い』だけ。

 なまじ中途半端に助けようとするぶん、こちらの方が質が悪いか。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/26(水) 00:47:56.22 ID:3EEhgr6r0<>

 (それにしても)


 芳川はだらりと手を投げ出したまま、


 (『あの子』がこんな実験を受けるなんて、思いもしなかった。
  原因は……やっぱりあの事故かしら?)


 その辺りまで考えてようやく、彼女は自分の携帯が鳴っていることに気がついた。

 画面を確認すると、表示されたのは「黄泉川 愛穂」の文字。

 自分の持っていない『優しさ』を持つ旧友からの着信に、
 芳川は多少面倒くさそうな表情で応答した。


 「愛穂?こんな時間にどうしたの」

 『ああ桔梗!唐突で悪いが、頼みがあるじゃん』

 「頼み?私は面倒臭いことは嫌いよ」

 『そう言わずに!私のパソコンにウイルス流し込んだバカヤローを特定してほしいじゃん!』

 「どうやってよ」

 『うー……口で伝えるのは難しいじゃん。
  とりま画像送るから、そっから頼んだ』


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/26(水) 00:52:20.58 ID:3EEhgr6r0<>

 面倒くさい、という言葉を全力で押さえ込み、思い切り嫌そうな顔を作る芳川。
 だが悲しきかな、電話の向こうにはそんなものが通じるはずもない。

 それから数秒すると、ピロリン♪という受信音。
 添付は、シンプルなテキストファイルだった。

 芳川は画面を見て数十秒考え込むと、



 「……面倒くさい。
  いろんな方式が混ざってるせいで、解答者を苦しませて楽しむだけの問題になってるわ。
  時間さえあればなんとかなるかもしれないけど……」

 『はぁ!?桔梗でも分からないじゃん?』

 「そのようね。他をあたって頂戴」


 それだけ言うと、芳川はプツリと電話を切った。

 久しぶりの友人との会話は楽しかったが、予想通りに疲れた。

 人と話すというのは、いいことばかりじゃないな。

 芳川はそう結論づけると、寝る前の一杯を買いに夜の町へと出ていく。


<> こたえ
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/26(水) 01:05:23.55 ID:3EEhgr6r0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


???「さて、暗号の解き方を教えようか」

???「まずは、数字を右から順に0→1→2……と消していくんだ」

???「これで、残った数字は
    22287226000となるハズだ」

???「あとはこの数字を携帯で入力する」

???「2(カ行)が三回、8(ヤ行が一つ……)とやっていくと」

???「答えはズバリ『工山規範』……そう」

工山「このボクだ!」

工山「出来たか?出来なかっただろう!ははははははははッ!!」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/26(水) 01:07:05.44 ID:3EEhgr6r0<> 投下終了
眠気との戦いに打ち負けそうだったぜ……

あと、暗号(笑)は解けなくて当たり前です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/10/26(水) 06:45:42.20 ID:mKohWQvAO<> 久山ェ……

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/26(水) 20:45:11.68 ID:4indUXcVo<> 乙乙
携帯で打つとこまでは分かったんだけどなぁ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 17:00:16.40 ID:tgDAhGR60<> 日付間違えた……
もう何回目だorz

てなわけで今から投下します
なんか主人公オーラが全くない介旅サイドから <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 17:03:44.36 ID:tgDAhGR60<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ふぁ、ん。ふぁぁ……」


 日が昇って、しばらくした頃。
 大きな欠伸をしながら、介旅は目を覚ました。


 「ん……。今何時だ?」


 寝ぼけ眼で時計を見ると、デジタルの液晶画面に表示された時刻は六時半。
 いつも通りの生活なら考えられない時間だ。

 あるいは、ベッドではなく寝にくいソファで寝たから、というのもあるのかも知れない。
 ともあれいつもよりも相当早い時間に起床した介旅は、ベッドから降りて冷蔵庫の方に歩き出す。


 「んーと、コーヒーは……っと」


 探しているのは、某宇宙人のCMで有名な缶コーヒー。
 もちろんブラックではなく、甘ったるいカフェオレだ。

 昨夜の帰り道に買ってきたそれを、気持ちいい朝のための一杯にしようと介旅は冷蔵庫を開けて、


 「……あれ、無い?」


 ガサガサと掻き回すように探すが、昨日買ったはずの缶は一向に見つからない。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 17:40:51.74 ID:tgDAhGR60<>

 「おっかしいなー……黄泉川が飲んだとか?」


 まぁ気にするほどの事じゃないかな、と介旅は軽く考えて、
 それでもやはり飲みたいのでコンビニでもう一本買ってくることにした。

 仮にも拘束中の身なので、本来なら外出許可を貰わなければいけないのだが、
 こんな時間に起こすのも気の毒かと思い直し、勝手に出ていくことにする。


 (まぁどうせ昨日も破っちゃったようなルールだしもういいか)


 と、介旅が自分なりの気遣いをしてこっそり出ていこうとしたところで、


 「うー……待つじゃんよぉ……」

 「ひゃう!?」


 地獄の底から這い出るような声をかけたのは、
 目の下に大きな隈を作ったバイオハザード状態の黄泉川。

 ふらふらとした足取りで必死に職務を全うしようとしているらしく、介旅の方へと歩み寄ってくる。

<> 夕食のためまた後で 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 17:55:10.21 ID:tgDAhGR60<>

 介旅は黄泉川との距離を少し遠ざけながら、
 
 
 「な、なぜこの時間に起きているっ!?そして何だそのゾンビ状態!」

 「教員ナメんな。早いときはもっと早いじゃんよ。
  ……早く許可取るじゃん許可。ほら黄泉川センセーにお願いしてみ?」

 「そんな適当でいいのかよ……んじゃ、オネガイシマス」


 いや教員とバイハザは関係ないよな?と思いつつも、介旅はツッコミを諦めた。
 ここでツッコむと、何だか面倒なことになる気がする。

 具体的には、うっかり解いてしまった暗号のせいで悪友の一人が逮捕されるとかそんな感じの。


 というわけで、取り合えず外出許可を貰った介旅は、
 コーヒーの空き缶の山を持った黄泉川に見送られてコンビニへと向かう。


<> 再開 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 19:56:26.25 ID:kN0F0yQs0<>





 「わぁお、見事にブラックだけねぇや」


 コンビニの棚にすっぽりと空いた空間を見て、介旅は思わず呟いた。

 別にカフェオレを愛飲する彼には関係の無いことなのだが、
 大きな棚の一区画に空間が広がる絵面はリアクションせざるを得なかったのだ。

 横の棚を見てみると、こちらはストレートティーが一種類まるまる売り切れている。


 (何だよこれ……?アレか、最近のブームってやつなのか?)


 まさかこれを全部一人で買ったなんて訳は無かろう。
 そんなことをする人間など、学園都市に数えるほどもいるかどうか。

 どうかその魔の手がカフェオレに届きませんように、と切に思いながら、介旅はレジに商品を差し出すのであった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 20:00:42.81 ID:kN0F0yQs0<>

 かしこまりましたー、とやる気のない店員が
 レジを打ち終えるのを待つ間に、何気なく外に目を向ける。

 すると、


 (あれ……?みさ、か?)


 安っぽい自動ドアの向こう側に移った影は、疾走する美琴の姿。

 だが、様子がおかしい。

 まず服装からして変だった。
 義務づけられているはずの制服着用を無視した、黒っぽいシャツと短パン。

 そしてそんな格好をしておいて、誰かに会いに行くというような表情ではない。

 そう、あれはまるで、何かに焦らされているようなーー、


 (……一体、何だっていうんだ?
  昨日のことと何か関係が……?)


 いくら考えても、答えは出ない。

 代金を支払い、ありあとあっしたー、という店員の声を背中に受けながら、介旅は店を出る。

 美琴は既に、見える範囲にはいなかった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/10/29(土) 20:01:51.00 ID:kN0F0yQs0<> 投下終了

コーヒーを買い占めたのは当然あの人です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/29(土) 23:48:22.91 ID:CXdgdaNxo<> 乙乙
介旅たんはカフェオレ派か
ストレートティーは誰なんだー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/10/31(月) 22:33:11.31 ID:MXEKUmwD0<> 安定の一方さンですな
何というかゆがみねェwww <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/01(火) 23:25:10.34 ID:Uf1B/xnk0<> こんばんは

新サーバー移転だそうですね
言われてみればなんとなく軽くなった気もしなくもないです

それでは投下
主人公らしさを出すために他よりも多めに設定してあるにも関わらず
他キャラの方が主人公オーラ纏ってる介旅サイド

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/01(火) 23:30:38.36 ID:Uf1B/xnk0<>





 そんなこんなでカフェオレを買ってきた介旅はそれを飲み終えた後、
 寝間着代わりのジャージから制服へと着替えていた。

 何故夏休みにも関わらず制服なのかというと、これから第二回・懺悔の儀があるからである。

 それにしても何でこんな早くに……、と介旅が不満に思っていると、
 何やらスイッチが入ったらしくピシッと仕事モードの黄泉川(ただし目の下には隈)は察したように、


 「まぁそう面倒くさいって顔すんな。
  開店時間前に行った方が、向こうにとっては好都合じゃんよ」

 「そりゃそうなんだろうけどさ……」


 今日向かう予定の洋服店の開店時間は午前九時。
 今から向かった後に話が長引いたとしても八時には終わる筈なのだから、
 もう少しゆっくりしてから行けばいいのではなかろうか。

 黄泉川はそんな介旅の思いまで理解したかのようにふんふんと頷くと、
 玄人が素人にするように両手を広げてゆっくり首を振りつつ、


 「分かってないな。決まった時間よりも早く行くってのは向こうに好印象を与えるじゃんよ。
  こういうことから更正させていくのも、教師としての務めじゃん」





サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/01(火) 23:43:15.98 ID:Uf1B/xnk0<>

 「ふぅん……参考にしとくよ」

 「ん。素直でよろしい、じゃん♪」


 言うと、黄泉川は出入口から外に出て、警備員の物らしく特徴のない車の運転席に入った。
 介旅は慌ててそれを追いかけ、助手席のドアを開けて車内へと入る。

 それを確認すると、何やらリモコンの様な物を出した黄泉川は遠隔操作で詰め所の鍵を閉め、
 安全運転の速度で丁寧に車を発進させた。


 目的地は、第七学区の洋服店『セブンスミスト』。




サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/01(火) 23:51:37.25 ID:Uf1B/xnk0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 (参りましたネ……)


 とある研究所の中で、所長と呼ばれる男は思案した。

 男の周りでは、慌ただしい声の職員達が次々と被害の報告を飛び交わせている。


 「研究所で火災発生!磁気異常研ラボです!!」

 「品雨大学DNA解析ラボもです!!」

 「動研思考能力研究局からの通信途絶!?くそ、同時多発テロかッ!!」

 「落ち着きなさイ。それぞれから状況報告を優先。
  救助は後回シ。どうせ助かりはしないでしょウ。
  今はそれよりも、被害の拡大を押さえることに力を入れなさイ」

 「わ、分かりました!」


 全ての報告に冷静に的確な指示を出していく男だったが、内心では非常に焦っていた。


 (このままでハ……研究施設の全滅も有り得ル。なんとしても阻止しなけれバ)




サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(新潟・東北)<>sage<>2011/11/02(水) 06:09:31.42 ID:PWUmURNAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/02(水) 09:26:09.13 ID:VGg++U4co<> 乙だよな?
一瞬誰かと思ったら超電磁砲の奴か
そういえばこのスレもう七ヶ月近くやってるのか
初期と比べて本当文章うまくなってるよな、うやらましい <> 寝落ちってたorz  翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/02(水) 17:01:02.74 ID:7VEI4cOq0<>

 その時、一件の報告が男の耳に届いた。


 「テロリストの攻撃方法が判明!通信回線を通じて機材を破壊している模様です!!」

 「能力者カ。分かりましタ。
  ネットを介した情報伝達は禁止シ、連絡用スタッフで代わりとしなさイ」


 すぐさま指令を実行する職員達だったが、果たして間に合うかどうか。
 朝ということで職員が少ないために、予想以上の施設が破壊される危険も高いだろう。

    ・・
 (……また厄介事、カ。)

             ・・・・・・
 男は、数カ月前に起こったとある出来事を思い出しながら、


 「仕方がありませン。多少費用がかかりますガ、もう一度暗部を雇いましょウ。
  ここまでの能力者ならば、回線を封鎖したとしても実力公使でくるはずでス」


 「で、ではまた『彼ら』を?」

 「いいエ。彼らは優秀ですが、戦力にバラつきがあル。
  今回は別部隊を要請した方が良いでしょウ」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/02(水) 17:01:47.28 ID:7VEI4cOq0<>

 「は、はい、分かりました。ではそのように上に報告します」


 指示通りに電話器へと向かっていった部下を見送ると、男はリラックスした様子で椅子に腰掛けた。

 そんな男の様子を見ても、部下達は特に気にも止めず報告を続ける。
 男の下で働いてきた彼らは、それが男のスタイルなのだと知っている。


 「電気的通信回路の全遮断に成功!今後はどういたしましょうか」

 「犯人は恐らく、今度は直接襲撃にくるでしょウ。
  施設の一つや二つは諦めて、情報収集に専念しなさイ」

 「了解しました」


 従順な部下達に指示を飛ばしながら、男は口の端を歪める。
 そうして男は、歪に笑った。


 (ふ、フフ……面白イ。この仕事は、これだから止められませんネ)


 未だ知り得ぬ進入者に想いを馳せながら、男は笑みを深める。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/02(水) 17:02:12.65 ID:7VEI4cOq0<> 投下終了
昨夜はすみません、気づいたら朝でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/03(木) 18:26:34.61 ID:aXJAqQbNo<> 乙乙
どまどま <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)<>sage<>2011/11/05(土) 09:17:24.96 ID:EVFa+stAO<> おつ! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/05(土) 23:56:48.43 ID:vMKN01nG0<> >>561
言われて気づきました
ホントだ、もうそんなに経ってるのか……
これからも長くなると思いますが、どうぞお付き合いください

それでは投下します
のんびりとした介旅サイド <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 00:04:29.22 ID:c/XXy5Gg0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第七学区の大衆向け洋服店『セブンスミスト』は、
 つい先日爆発事件があったにも関わらず、通常通りの営業を再開している。
 大規模なバーゲンセールなどでは、開店前から入り口前に大きな行列を作ることもしばしばだ。

 とはいえ、流石に特に何もない日の開店数時間前にはその法則は当てはまらないようで。
 介旅はそんなガラガラの入り口から、職員の人に案内され店内へと入った。

 ちなみに、黄泉川は外で待機している。
 「謝るのは一人で。私がいても、邪魔なだけじゃんよ」とのことだった。

 だが、介旅は知っている。
 彼女が『店内禁煙』の文字を見てから、急に態度を改めたことを。

 喫煙道具は介旅が預かっているはずなのだが、
 恐らくもう条件反射になっているのだろう。
 喫煙者の性、というわけだ。


 「こちらへどうぞ」


 そんな職員の声に、介旅は思考を中断させ、改めて周りを見る。
 すると、何と目の前にあったのは簡素ながらも威圧感を持った金属のドア。

 介旅はその上に掛かっているプレートを見て、ひっそりと息を呑む。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 00:20:38.42 ID:c/XXy5Gg0<>

 店長室、と。
 口の中で呟き、介旅はうっすらと冷や汗を流した。

 この先では、自分の被害者が待っている。

 昨日の舞夏のように笑って飛ばしてくれるはずのない、本物の被害者が。

 その表情は、一体どんなものだろうか。

 先で待っているものが、例え憤怒だろうと悲哀だろうと。
 受け止めて見せよう、と介旅は一人誓った。

 緊張に震えの収まらない手で、ドアノブを掴む。

 数秒の逡巡の後、介旅はゆっくりとドアを押し開ける。


 「し、失礼します」


 震えは手だけでなく、声までも達していたようだ。

 自分の情けなさに呆れながら、俯く顔を上げた介旅の視線の先にいた店長は、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 00:37:03.94 ID:c/XXy5Gg0<>



 「やぁやぁやぁ、よく来てくれたね。まぁそこにかけてくれ」





 何故か笑顔で、予想外にフレンドリーだった。






<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 00:53:04.65 ID:c/XXy5Gg0<>


 「……ハイ?」

 「おや、座らないのかい?
  立ち話というのもなんだ、ゆっくり話をしようじゃないか」

 「は、はぁ……」


 眼鏡をかけた髪の薄い初老の男に促されるまま、介旅は取り合えず革椅子に座り込む。
 光沢のある黒のその椅子は、将来の介旅の給料の一ヶ月分くらいの値はしそうだった。

 天井の電灯から床の絨毯まで、『何かが違う』部屋の雰囲気にガチガチになりながらも、
 介旅はちょっと勇気を出して聞いてみる。


 「あ。えっと、その……ちょっといいですか?」

 「む、何かな?あぁ、飲み物かい?待っててくれ、すぐに出すから」

 「ち、違います!そうじゃなくて、えっと……」


 すぅ、っと介旅は一度息を吸って、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 00:58:47.58 ID:c/XXy5Gg0<>

 「その。えっと、店長、さんは……怒って、ないんですか?」


 まっとうともいえる質問に、
 ふむ、と店長は顎に手を当てて、


 「そうだね。少し、話をしようか」


 手を組んだ店長は、低めのテーブルを挟んで反対側に座る介旅の方に軽く背を曲げた。

 苦笑しながら、彼は言う。


 「正直なところ、私も最初は怒っていましたよ。
  そりゃあ、自分の大切な店ですからね。当たり前です」

 「……、」

 「ぶっちゃけ、憎んでいました。犯人は誰だ、ってね。」

 「っ、じゃあ、何でッ!」

 「人の話は、最後まで聞きなさい」


 店長の柔和な笑みに、介旅はう……、と言葉を詰まらせる。
 店長は満足そうに頷いて、言葉を続けた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 01:17:54.04 ID:c/XXy5Gg0<>

 「ところで話は変わるが、私は『終わりよければ全て良し』という言葉が好きでね。
  部下たちにも、日々言って聞かせているぐらいなんだよ」

 「それが、一体……?」

 「ふふ、まぁ聞いていなさい。
  それで、君を憎んでいた事件の翌日。あの事件がニュースで流れた直後のことだった。
  ……何が起きたと思う?」

 「え……店の信用を無くしたとか、ですか?」

 「いい線を行ってますがね、逆だよ逆。
  ウチの株価が、僅かだが上がったんだ」

 「……え?」

 「何で、と思うだろう?
  何と、あの事件で負傷者を出さなかったことが認められたらしいんだ!」

 「で、でもそれは……」

 「その後、私は閃いたよ。
  清掃と建物の修復をすぐに終わらせて、たった二日で営業を再開させたんだ。
  予想通り、業界の評判は高まって株価は更に上昇。君の出した被害額分は、すぐに元がとれたよ」

 「でも、それは結果論でしか……ッ!」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 02:13:16.01 ID:c/XXy5Gg0<>


 「だから言ったろう?終わりよければ全て良し。
  私は、結果以外は気にしない主義なんだ」

 「……そう、ですか」

 「さぁ、話はこのぐらいにして。どうだい、紅茶でも?」

 「……はい、お願いします」


 上機嫌でティーセットを取りに行った店長の背中を見ながら、介旅は今の会話を反趨する。

 終わりよければ、全て良し。

 本当に、そう片づけてしまってもよかったのだろうか。

 それで、自分は納得できたのだろうか。


 「さぁ飲んでください。
  実はこれ、私の趣味なんですよ。この茶葉はですね……、」


 考えている内に戻ってきた店長の蘊蓄を聞き流しながら、
 彼の持ってきた白地に金の装飾が付いた成金趣味のティーカップに口を付ける。

 ーー昨日飲んだものの方が、美味しかった気がするな。

 あまり紅茶に詳しくない介旅は、そんな感想を抱いた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/06(日) 02:15:18.83 ID:c/XXy5Gg0<> やっと書き込めた……
投下終了です

介旅クンはコーヒー紅茶どっちもいけるようです、うらやましい
せめてどちらかでも飲めないと人付き合いが辛いんですよね…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)<>sage<>2011/11/06(日) 12:36:16.22 ID:A8TGxAzSO<> 乙

介旅くんはジュースばっか飲んでそうなイメージ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/07(月) 15:22:48.35 ID:2MNe+zhAO<> マウンテンデューとか飲んでそうなイメージ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/08(火) 19:48:47.66 ID:OQh45lmQo<> 乙乙
謝るな、とか言われても気持ちの行き場が無くなって辛くなることってあるよね

出されたものは大抵食べたり飲んだりするけど普段は偏食家のイメージ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 20:44:08.14 ID:Q5ZwggeL0<> 面白いことに、飲食という一つのことだけをとっても
人それぞれで、いろんなイメージがあるんですね

意外なところで勉強になりました


そしてこの>>1、どうも三日に一度という頻度は守れない可能性が高いようです
今後は少しだけ引き延ばして、「週二回」を目安にしてください


では投下行きます
介旅続き <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 20:48:06.43 ID:Q5ZwggeL0<>







 店長の話は、ざっと一時間以上長引いた。


 「……なんか、時間の進み方がおかしい」


 開店時間になったことで店長も流石にマズイと感じたようで、
 ついさっきようやく話から解放された介旅は、心なしかゲッソリとしていた。

 明らかに無駄な時間を過ごしたな、と。
 頭で思うどころか、もう顔に表れている。

 客の流れを邪魔せずに店から出るために裏口へと向かう、彼の足取りは重い。
 原因としては、精神的なものの他に右手に提げた紙袋も挙げられる。

 『これは私の趣味の一つでね。つまらないものだが、お土産に持っていってくれ』
 とのことだったが、つまらないものなら渡すなよと思わなくもない。というか思う。


 「……つーか、謝りに来たのに感謝された挙げ句お土産貰うってどうよ」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 21:05:32.48 ID:Q5ZwggeL0<>

 キツく怒られなかっただけでも喜ぶべきところなのかもしれないが、
 その代わりにあったのが中年の長話では素直に嬉しくはなれない。

 というか、趣味や自慢話ならともかく
 過去の恋愛経験とか聞かされたのは辛かった。割と本気で。
 中年の恋愛トークはガチでナイ。


 「だーもう……本題を忘れそうじゃねぇかよ」


 はぁ、と溜め息を吐きながら、ようやく見えてきた出口の方へと歩く。

 右肩が痛くなってきたので、紙袋を右手から左手に持ち変えてから、ドアノブに手をかけた。






<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 21:19:15.41 ID:Q5ZwggeL0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「さて、と。『あの事故』の資料は……」


 彼女にしては珍しく早起きした芳川桔梗は、誰もいない研究所の一室にいた。

 部屋は、いわゆる資料室だ。
 デジタル化の顕著なこのご時世にも関わらず、紙の資料が山ほどある。

 学園都市においてこのようなアナログのデータ媒体が使われる理由は大きく二つある。

 まず一つは、万が一にも盗まれてはならない機密情報。
 アナログはネット上からのデータへの侵入に対抗する、最高で最大の手段なのだ。

 もう一つは単純に、『データとして保管するに値しない』と判断された資料。
 テラを単位に使うような大容量コンピュータでも、
 ゴミのようなデータが溜まっていけばそれだけ動作が遅くなる。
 それを防ぐために、かさばるアナログにしてまで無駄なデータを削除しているのだ。


 (……と、いうのが定説だけど。わたしには、もう一つ理由があるように思えるのよね)


 ガサガサと紙の束をかき分けつつ、芳川は考える。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 21:29:39.12 ID:Q5ZwggeL0<>


 もう一つの理由。
 彼女が思い当たったそれは、


 (情報の、意図的な制限)


 一つの段ボールの中身を調べ、そして順番を直してからもとの箱に戻し、次の箱を取る。
 もう、何時間費やした作業だろうか。

 だが、それを繰り返せば繰り返すほど疑念は強まる。

 情報としては、残しておかなければならない資料。
 しかし、もしそれが誰かにとって不都合なものだったら?

 答えは簡単、それを仕舞いこんでしまえばいい。

 探すのも億劫になるほどの紙の山の、その奥深くへと。

 ちょうど、今のように。


 「っ、これね」


 やっと発見した数枚の紙に、芳川は目を落とす。

 その資料の題は、こうある。
 『木原数多の研究所にて発生した事故と彼の死に対する考察』


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 21:42:02.64 ID:Q5ZwggeL0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ごくん、と。
 黒くて苦い液体を、喉から胃へと流し込む。

 今日でもう何本目だろうか。

 少年は飲み終わったコーヒーの缶を、その辺に投げ捨てる。

 足りない。
 喉の乾きは、いくら飲んでも消えない。

 仕方がない、と、右手に持った袋から同じ銘柄の缶コーヒーを引っ張り出す。

 そうしてから、慣れた手付きでプルタブに手をかけた、その時だった。


 「うーっす。今、帰りか?」

 「わざわざ徒歩でお出かけとはな。驚いたぜ」


 いかにも頭の悪そうな不良が、前方に二人。

 いや、違う。

 気配から察するに、恐らくは十人程度だろうか。
 少年のいる路地の外へとつながる道に、その仲間が配置されているようだ。

 取り囲まれている。
 このために、自分の通り道をチェックしていたのだろうか。

 ただの不良にしては周到すぎる計画性に、しかし少年は余裕を崩さない。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 21:54:25.91 ID:Q5ZwggeL0<>

 「なンだよ、オマエラ。俺はそこを通りてェンだが」


 あくまでも自然体で、好戦的な感じは一切見せずに、少年は言う。

 しかしどうもこの不良たち、その程度で引き下がる連中ではないようだ。


 「残念ながら、行かせねぇよ。
  この計画に何日かけたと思ってやがる」

 「テメェを殺せば、俺らの名声は確実だ。
  そんなわけだからな、まぁ死んでくれや」


 言うと同時、不良達は一斉に武器を構えた。
 ナイフやハンマーといった一般的なものから、ブラックジャック、さらには拳銃まである。

 ともあれ、そこに共通する意思は一つ。

 少年に対する、圧倒的な殺意だ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 22:06:54.59 ID:Q5ZwggeL0<>


 しかし、少年はそれらに脅ない。
 少年には、それらに脅える理由がない。

 だから少年は、こう告げる。




 「本気でやンのか?
  イイぜ、なら選ばせてやる。
  複雑骨折と大量出血、好きな方の四字熟語を選ぶンだな」



 「ハッ!上等ォォォォ!」


 数々の武器が、同時に襲いかかってくる。

 一撃でも貰えば致命傷になりそうな攻撃が、一斉に。

 だが、彼は気にも止めない。



 『最強』と『最狂』と『最凶』を冠する少年・一方通行は、残虐に笑った。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 22:08:56.91 ID:Q5ZwggeL0<> 投下終了

フリーズ連発して開始宣言三回ぐらい書き直したのは秘密

一方通行がちょくちょく主人公っぽくなってるのは否定できないです、ハイ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 22:11:07.33 ID:Q5ZwggeL0<> 脱字訂正
脅る→脅える <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/09(水) 22:12:46.86 ID:Q5ZwggeL0<> 間違えた
脅ない→脅えない

重ねてすみません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/10(木) 03:45:45.15 ID:m/LVeuiQo<> >>589
乙乙
一方たんも介旅たんもカッコカワイイ
特に介旅たんはまだカッコいい場面があまり無いのでこれからに期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) <>sage<>2011/11/13(日) 11:12:31.81 ID:vcy4L7/90<> うむ乙! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:15:26.94 ID:vfI5067z0<> >>589
カッコいい場面に、なかなかたどり着けないのが辛いです
展開が遅すぎるんだぜorz

でも、後100レスの間にはきっと……!


では始めるです
一方サイド続き <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:17:54.80 ID:vfI5067z0<>








 「ひ。い、あっ……バ、化けも、あぐっ」

 「人聞きの悪ィこと言うなよ。これでも今はまだ、人間の領域なンだぜ?」


 いつかはそれを越えなきゃならねェンだがな、と独りごちた一方通行は、
 その辺に転がった不良たちを軽く蹴飛ばし、目立つようにと道端に山積みにしておく。

 死んではいない、はずだ。
 出血の多い者もいるが、明日までに見つかれば恐らくは無事だろう。

 というか、無事で済むような手加減をしたのだから、死なれては困る。


 「……なンでこンな事しなくちゃならねェンだか」


 勝負は、ただひたすらに一方的だった。
 諸々の武器は彼の肌どころか、髪にも傷をつけることが出来なかった。

 実際問題、彼がその全てを不良たち自身に返していたならば、
 彼らは二分で挽き肉と化していただろう。

 全ての衝撃を致命傷を避ける形で跳ね返し、時には全く別の方向へ流すことで、
 彼らは辛うじて生かされているのだった。


 「……クソが。手加減なンざ、性に合わねェよ」


 吐き捨てて、彼は思う。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:32:55.39 ID:vfI5067z0<>


 いつから、だろうか。

 いつから自分は、人を殺すことに躊躇いを覚えるようになった?


 昔所属していた研究所では、そんなことはなかった。
 様々な実験で、彼はそれよりもずっと悲惨なモノを見ていたのだから。


 と、すれば。

 思い当たるのは、一つしかない。



 (……木原、数多)



 頭に描くのは、一人の男の名前。

 一方通行という能力の開発者にして、彼の養父だった男だ。


 だった、と過去形であることには、理由がある。




 彼が死亡したと聞かされたのは、つい数カ月前。





 風の生温い、春先のことだった。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:45:33.47 ID:vfI5067z0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「『AIM拡散力場の収束実験』、ね」


 芳川は手の中のレポートに目を通し終わると、軽く伸びをした。

 そうしてから、もう一度確認し直すように、レポートを再び読み始める。


 「『本実験の目的は、AIM拡散力場を人工的に操作し、
   今後の能力開発の新たな礎とすることである』」

 「『この実験の主導は、木原数多。他、とある科学者夫妻にも協力を要請している』」

 「『以下、簡潔に内容を記す。
   始めに、AIMの核となる物体ーー“天使の涙”を精製。
   そこにある一定の刺激を加えることで、周囲のAIMに干渉しーー、』
  ……ここは読み飛ばしても構わないわよね」


 以下に続く小難しい理論の説明を流し読みすると、芳川は結果の欄に目を止めた。


 「『このように進められるも、実験は失敗。
   その時に発生した爆発事故により、木原数多は死亡。
   夫妻は奇跡的に無傷であったが、管理責任を問われ
  “詳細研究”の名目で第一○学区の研究所へと転勤になった』
  ……第一○学区というと、死体・死因研究センターかしら」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:47:00.30 ID:vfI5067z0<>


 言ってから、芳川は眉を潜めて、


 「……おかしいわね。
  このレポート、その後の『天使の涙』の消息が書かれていない……?」


 となれば、消滅してしまったのか、あるいは誰かが持ち出したのか。

 持ち出したとなれば、それは恐らくこの『夫妻』だろう。

 だが、


 「……いや。あの二人は、そんなことをするはずが……、」


 偶然にもその『夫妻』と知り合いである芳川には、その可能性が信じられなかった。


 「もし。本当に、もしそうだったとしたら……」


 あの二人は、一体何を思ったのだろうか。

 友人であったはずの木原を死なせてしまったそれに、一体どんな思いを抱いたのだろうか。

 いや、それ以前に。
 あの二人は、本当に『失敗』したのかーー?


 考えるほどに、謎は深まる。

 もう少し詳しく読まなければ、見えるものも見えてこないかもしれない。

 気合いを入れ直して、芳川は再び数字に意識を浸からせる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:47:31.04 ID:vfI5067z0<> 短めの投下終了

あからさまな伏線話です
あと、前々から小出しにして来た分も含まれてたりします

それではまた次回ノシ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/13(日) 13:49:47.46 ID:vfI5067z0<> 安価ミスぅっ!

自分に安価してどうすんだ
>>590でしたすみません

なんか毎回のように投下後訂正してる気がするんだぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/13(日) 16:31:18.26 ID:p6tjrsbDo<> 乙
木原くン死んでまったん…? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 20:23:16.32 ID:bWmiOq4A0<> >>599
それについては、実は以前にも触れたことがあります
暇があれば探してみてください。オススメはしませんが

では投下します
まだまだダメンズな介旅サイドから <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 20:33:51.43 ID:WN+eZz2P0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 思春期の男、特に中学二年生辺りの子供は、現実には有り得ないようなことに憧れやすい。

 例えば、自らに宿る特別な力で世界を防衛するとか。

 もしくは、学校に侵入したテロリストを策を巡らせ壊滅させるとか。

 あるいは、敵地に潜入した味方のサポートとして、オペレーターをやるとか。


 そんなことを考えていた苦い時期も経験したことのある介旅は、路地裏で一人思う。


 全国の中二たち。
 やりたければ、代わりにやってくれよ、と。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 20:44:32.34 ID:WN+eZz2P0<>

 そんなことを考えていた矢先。

 ゴッ!!と、介旅のいる路地から大通りの反対側にある建物の一部が、派手に爆破された。


 (那由他ちゃん、だっけ。派手に暴れてんなぁ……)


 他人事のように思う介旅だったが、その流れで現実逃避には持っていけない。

 肩と顔の間に挟んだ携帯端末から、その那由他の声が響いてきたのだ。


 『ポイントC-4-3破壊完了!介旅お兄さん、次の移動先のセンサー類は?』

 「無問題(オールグリーン)。既に全部封じてあるよ」

 『おっけー。次のとこもお願いね』


 了解、と返す間もなく、一方的に通信が切られる。

 介旅は、ブツッという嫌な音に顔をしかめながら、


 「だーくそ。謝罪回り終わった直後に呼び出されるとか、マジツいてねぇ……」


 そう言いつつも顔が輝いているのは、布束から借りたハック用ノートパソコンの性能によるものか。

 夕闇に包まれた路地裏で、介旅は滑らかにキーボードに指を滑らせる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 20:53:05.15 ID:WN+eZz2P0<>

 呼び出されたときに介旅が聞いたところによると、布束の計画ではまず
 二十を超える実験の関連施設を、『実験を続けるのが困難である』
 と思わせるに足る状況に追い込まねばならないらしい。

 美琴も同じように施設を潰しにかかっているため、
 こちらの負担は予想よりも軽い、とのことだった。

 だが、


 (……こんなの、一人の女子中学生がやることじゃねぇよ)


 介旅は、思う。

 年齢の話で言えば、小学生である那由他の方が低い。

 しかし、そういうことではないのだ。


 那由他には、仲間がいる。

 布束砥信も、そして心許ないが自分もそうだ。


 だが、それが一人だったらどうだろう。


 辛いことを分かち合えず、成果を共有することも出来ない。


 そんな状態に、那由他は耐えられるだろうか?


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 21:15:19.48 ID:WN+eZz2P0<>

 答えを言うなら、それはイェスだ。

 共にいた時間が短い介旅にも分かるほど、
 那由他は強い意志を持っているし、折れない心を備えている。


 とはいえ、それが美琴にも当てはまるとは思えない。

 異性と話す機会の乏しい介旅にも、なんとなくは分かる。
 あぁいった感情表現豊かな人間ほど、逆境では折れやすいのだ。


 だから、介旅は思う。


 (……僕達が少しでも早く実験を止めることで、アイツの負担を減らす)


 どうせやるなら、早く終わらせたい。

 それで美琴の負担を減らせれば、何よりだ。


 ふと、那由他のサポートで各種センサー類を潰していた介旅の指の動きが止まる。

 センサー類との接続が、唐突に切れたのだ。

 パソコンと施設内機器との接続を担当している布束のミスではあるまい。

 と、なると、


 「……お疲れさま」

 『うん、疲れたよー。でも、設備系統は全部グレネードでふっ飛ばしたから安心してね』


 携帯から流れる那由他の声に、介旅はホッと胸を撫で下ろす。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 21:30:18.01 ID:WN+eZz2P0<>

 見れば、布束も役割を終えたという顔でこちらに向かって来ている。

 介旅はノートパソコンを畳むと、地面から立ち上がった。


 「お疲れさま……でした」

 「non.私は特別なことはしていないわよ。それよりも、あなたがgood jobね」

 「いや、それほどでもない、です」


 語尾が不自然に敬語になっているのは、布束が年功序列主義だからだ。
 ミスしたときのローリングソバットの痛みを、介旅は決して忘れない。


 「それで、今日はどうするの?『アレ』を細工しに行くって手もあるけど」


 と、気がつけば那由他も近くまで来ていた。

 お疲れ、と伝えてから、介旅は那由他の言葉を考える。


 『アレ』とは、学園都市が打ち上げた人工衛星に搭載された、
 超高性能スーパーコンピュータ……『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』のことだ。
 そして同時に、この実験の核となる予測データを打ち出した、全ての元凶でもある。

 それに細工を加え、『一方通行の絶対能力進化は不可能である』という偽の予言を吐かせ、
 研究者たちが混乱している間に関連施設を潰しきるというのが、布束の計画の保険プランだった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 21:38:43.39 ID:WN+eZz2P0<>

 それによって、通常ならどれだけ施設を潰そうが引き継がれていく実験は、
 混沌の内に沈んでしまうこととなる。

 予算のかかる引き継ぎの意志を、根本から揺るがしてしまう訳だ。


 しかし、


 「それなんだけど、さ。止めにしないか?」

 「?、何で?」


 学園都市が誇る最高の演算機器。
 ともすれば、その警備も一筋縄ではいかないだろう。

 何より、そんなことをすれば自分たちはテロリスト扱いだ。

 そして、そんなことよりももっと大切な理由がある。


 「あれってさ。学園都市中の技術者の、憧れだと思うんだ。
  それを壊しちゃうってのは、なんだかさ」


 そう。
 電脳世界が好きな介旅は、それが分かる。

 世界最高の頭脳。
 究極にして至高の、最先端の科学の結晶。

 その道の人間にとっては、挑まずにいられるものか。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 21:49:10.07 ID:WN+eZz2P0<>

 「……ダメ、かな?」


 ただの小細工、といっても、その結果がどうなるかは介旅にも予測がつかない。

 しかし、今までのような正確な演算が出来なくなる可能性も大きいだろう。

 そうなってしまったら、今までそこを目標としてきた人間はどうすればいいのか。


 ただのエゴだというのは、分かっている。

 そこには、一万の命が懸かっているのだ。

 けれど介旅には、どうしても納得ができなかった。


 「……」


 俯き、黙り込む介旅。

 そして、那由他はゆっくりと口を開き、




 「……うん。いいんじゃないかな」





 「……いいのか?」


 思わず聞き返してしまうほどあっさりと、那由他は軽く口にした。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 21:50:51.39 ID:WN+eZz2P0<>


 「ていうか、元々私でも突破は厳しそうな警備だしね。
  やらないならやらないで、本来の計画を達成すればいいんだから」


 「well……そうね。
  無理にやる必要は無いのだし、まぁ問題はないでしょう」


 「あ、ありがとう……」



 あまりにもあっさりと通ったことに疑問を覚えつつも、
 意見を聞き入れて貰った介旅は、特に気にしないことにした。



 「さて、と。じゃ、今日はこの辺で解散かな?
  あんまり無茶をすると後々辛いし」


 「Yeah、そうしましょうか。
  早く終わらせたいところだけど、無理は禁物ね」



 達成感のある笑みを、二人は同時に浮かべた。


 連られて、介旅も笑顔になる。



 笑い合って、そして彼は日常へと舞い戻る。


 計画の締めとなる明日までの、束の間の休息を満喫するために。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 21:56:06.67 ID:WN+eZz2P0<>






 その夜。





 一人の英雄が、一人の少女を救った。




 その代償として、彼は大切なものを失った。




 そして。




 その余波は、天空に位置する最高の頭脳を、貫いた。




 それが、もう一人の主人公がもう一人の少女を救うきっかけとなることは、未だ誰も知らない。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 22:01:10.15 ID:WN+eZz2P0<>




 真の主人公が、取りこぼしてしまった少女。


 与えることが出来なかった、救い。




 陰から持ち上げられただけの仮初めの主人公は、果たして少女を救うに至るのか。




 彼の選択は、未来を大きく変えることとなる。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/17(木) 22:01:59.69 ID:WN+eZz2P0<> 投下終了



……失恋って、辛いなぁ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/17(木) 22:12:10.08 ID:Z8Ss8Suoo<> 乙!
成長著しいな>>1!

失恋もいいものだ。
そのうち甘くなるさ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(新潟・東北)<>sage<>2011/11/18(金) 08:56:28.33 ID:yNg6NS1AO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/19(土) 20:32:28.48 ID:X9UWsbd4o<> 乙乙
wwktkしてくる展開 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 20:35:25.55 ID:9q1afKTA0<> なんか自由な時間が増えた気がするんだぜ

ってなわけで投下
ストロングガールズ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 20:40:14.63 ID:9q1afKTA0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「製薬会社からの依頼、ねぇ……メンドクサイな」

 『面倒くさいとか言わないの!……ったくこいつと来たら。
  侵入者から施設守るだけの簡単なお仕事だしギャラも良いんだから、ちゃんとやりなさいよね』

 「あーハイハイ。分かってますよーっと」


 スピーカフォンに設定した携帯端末から流れる女の声に、
 長身とふわふわした茶髪が特徴の少女・麦野沈利は言葉通り面倒臭そうな表情で返答する。


 「まぁ結局、依頼は断れない訳よね。
  ……それよりも、ギャラが良いってどのくらい☆?」

 「超落ち着いてください、フレンダ。
  ギャラが超良いということは、どうせ内容も超楽では無いはずです」


 横から口を挟んだのは、金髪碧眼の少女・フレンダ=セイヴェルンと、
 背が低く、茶髪でボブの女子中学生・絹旗最愛。

 麦野はそんな彼女達の意見などは特に聞かず、『電話の声』に向かって、


 「つっても、取り合えずは襲撃者の見た目と能力ぐらいは教えてもらわないと話になんないわよ。
  つーか、むしろその情報が無い時点で難易度は高いんじゃないの?」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 20:53:37.40 ID:9q1afKTA0<>

 麦野の言葉に、『電話の声』は資料に目を通しているのかしばらく黙り込み、


 『……恐らくは発電系能力者だってことぐらいしか言われてないわね。
  てか、向こうは目星が付いてるけど敢えて言ってない感じ?
  多分何かの事情があるんでしょうね』

 「……そりゃまた、面倒な話だ」

 『とにかく!そっちに資料送るから、キッチリやりなさいよね!以上さらば!』


 言うが早いか、『電話の声』は有無を言わさず通話を切ってしまった。

 あまりにも適当すぎる上司に、麦野はガリガリと頭を掻きながら、


 「ハァ……滝壺、資料来てる?」

 「うん、むぎの。今から送るね」


 応答したのは、肩で切り揃えられた黒髪にピンク色のジャージを着た少女・滝壺理后。

 彼女が携帯を操作すると、全員の携帯に資料が転送された。

 麦野はそれに一通り目を通すと、
 他のメンバーが読み終わったのを確認してから、締めくくるようにパンパンと手を叩く。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 21:00:39.66 ID:9q1afKTA0<>



 「さぁ、それじゃ明日までに各自準備して。

  ……出撃するわよ、『アイテム』」




 麦野沈利、絹旗最愛、フレンダ=セイヴェルン、滝壺理后。


 現在キャンピングカーの中にいる彼女達四人は、『アイテム』。



 学園都市を裏から支える、暗部の一角である。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 21:21:30.35 ID:9q1afKTA0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 非日常なんてすぐに慣れてしまうものなんだな、と介旅初矢は思った。

 そんな彼が今いるのは、とあるスーパー。


 「……まぁ、統括理事会から補助金も出たことだし。
  そんなに謝られちゃ、許さんわけにもいかんわなぁ」

 「あ、ありがとうございます!」


 何度も頭を下げる介旅に苦笑いで応えていた店長は、
 そこで黄泉川の方に話を向け、


 「えっと、あなたはこの子の保護者さんですかね?
  失礼ですが、そんなお年には見えませんが」

 「いやいや、ちょいと身柄を預かってる警備員じゃんよ」

 「へぇ、そうなんですか。お勤めご苦労様です。
  良かったらこれどうですかね、ウチの新商品なんですが」

 「た、タバコ!?」

 「おや、お吸いになりませんか。これは失礼」

 「いや、その……今禁煙中なんじゃんね……」

 「でしたら電子タバコなどいかがでしょう?お安くしときますよ」

 「え、で、でも……」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 21:22:07.57 ID:9q1afKTA0<>

 ……何か商売モードに入ってねぇか?と介旅が疑問に思っていると、
 黄泉川はばつの悪そうな顔をして、


 「介旅、お前先帰ってな。今日の分はここで終わりじゃんよ」

 「……それは禁煙になるのか?」

 「さぁ何のことやら。ほらさっさと帰りな。
  こっからなら歩いて帰れるじゃんよ」

 「……はぁ」


 やっぱ自分に甘い大人っているもんだなー、と思いながらも、
 介旅はもう一度店長に頭を下げてから店を出た。

 その瞬間ガラスに、財布を取り出す黄泉川の姿が映ったが、もう気にしない。


 と、そこで介旅は、路地裏の方から手招きする陰があるのに気が付いた。

 一瞬首を傾げるが、人影を見た途端、彼の顔色が変わる。

 あそこに立って、笑っているのはーー、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/19(土) 21:24:36.68 ID:9q1afKTA0<> 投下終了

意見を聞きたいのですが
原作名無しキャラに名前付けるのってアリですかね?
チョイ役なので無いなら無いでいいんですが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/19(土) 22:02:35.58 ID:X9UWsbd4o<> 乙乙
頭下げる介旅たんの巻

原作でもしかしたら出てくるかもしれないことを考慮しつつ>>1の自由でいいと思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(新潟・東北)<>sage<>2011/11/21(月) 12:18:25.48 ID:cCO8fAwAO<> 乙

好きにつけちゃいな! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:14:23.68 ID:zzV+AI6t0<> 意見どうもです
どうせただのモブの中のモブなので、適当に付けることにします

ということでモブサイドから投下〜
短めです <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:22:09.11 ID:zzV+AI6t0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……チックショウ。まさかゲーセンであんなにスるとは思わなかったぜ」


 無能力者・狭川史郎(さがわ しろう)は、緩いジーンズのポケットに手を突っ込みながら
 薄汚れた空を見上げてぼやいた。

 彼は現在、一人だった。
 日頃から彼と吊るんでいる二人の悪友は、補習授業を受けているところだ。

 かといって、彼も頭が悪い方であることに間違いはない。
 その三人の中では一番マシだったというだけの話だ。

 とはいえ、こんなに暇を持て余すのだったら補習を受けた方が良かったかも知れない。
 いや別に、真面目に受けるつもりは微塵もないが。


 「……だークソ。本気でムシャクシャするわー。
  その辺にイイカンジのサンドバッグとか落ちてねーかな」


 無論、そんな都合の良いことなど起こるはずもない。

 狭川はため息を吐き、家への道を帰ろうとしたところで、


 「……あ、」


 見つけた。
 イイカンジのサンドバッグ。

 しかも、殴るとお金が出てくるヤツ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:26:28.31 ID:zzV+AI6t0<>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……さ、がわ?」


 介旅は、自分に手招きするその人物に呆然とした。

 狭川史郎。
 恒久的に彼を虐め続けていた三人組の中の一人だ。
 その中でも、直接的な暴力を振るわれる回数が一番多かったような気がする。

 関われば、ロクなことにならない。
 そう考えて、無視して立ち去ろうとした介旅だったが、


 「介旅」

 「ーーッ!」


 特に荒くもないその言葉に、しかし条件反射的に体が硬直してしまう。

 蛇に睨まれたように動けなくなった介旅に、狭川は満足そうに笑いかけて、


 「ちょっとこっち来いよ。トモダチだろ?」

 「……、っ」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:30:56.01 ID:zzV+AI6t0<>

 理性は告げていた。

 逃げてしまえ、と。

 後で何を言われるか分かったものではないが、
 取り合えずこの場の危機は乗り越えられるのだ。
 それが、最も賢い選択だろう、と。

 だが、


 (……待てよ)


 別の思考が、彼の中で生まれる。
 かつての彼なら有り得なかったであろう思考が。


 (ここで逃げたら、何にも変わらねぇだろ!
  それじゃあ今までと同じ、ただの弱者じゃねぇか!)


 そう。
 短い間だったが、美琴と共に鍛えた能力。
 それを使わないでどうする、と。

 大して成長していないとか、そんなことは関係ない。
 要は、今まで虐げられてきた奴等を見返してやればいいのだ。

 二つの渦巻く思考に、介旅は数秒考え込む。

 そして、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:41:25.40 ID:zzV+AI6t0<>





 「……う、うるせぇんだ、よ……!
  散々殴っといて、何が友達、だ!

  も、もうお前なんか、の、思い通りには、ならねぇ、ぞ!」




 恐怖に震える体を抑え付けながら、
 同じく震える声で、介旅は宣言した。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:43:57.86 ID:zzV+AI6t0<>


 「……あん?」


 対し狭川は一瞬、訳が分からないといったように首を傾げ、




 「ぷ、はは。調子ノンなよキモオタ野郎!」




 ゴギリ、と。

 笑いながら、拳を鳴らした。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:54:59.69 ID:zzV+AI6t0<>


 「イイぜ、かかってこいよ!!」


 言うが早いか、狭川は拳を握り、介旅の元へと走ってくる。

 対抗するように、介旅はバッグの中のスプーンを取り出し、能力を行使する。

 が、


 「んな手が使えると思ってんのかテメェはよぉ!」

 「うぐっ、ぃ、あっ!?」


 能力の発動よりも早く、狭川の右拳が介旅の顔面に突き刺さる。

 痛みに、能力の制御を失う。
 その直後、左手首を掴まれて思い切り捻られた。


 「アッ……ッ!」


 握り込んだスプーンが、地面に落ちた。
 そう思った次の瞬間、鳩尾に膝がめり込んだ。

 フラリ、と体が揺れる。

 しかし、介旅の体が倒れるよりも早く、狭川の左手が彼の髪を掴んで強引に立たせる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:56:26.50 ID:zzV+AI6t0<>


 「オラどうした、もっと鳴けよ!
  さっきの威勢はドコ行ったんだ?」


 言葉と同時、介旅の左手を解放した右手がボディーブローを叩き込む。

 ズドン!!と鈍い音が炸裂した。


 「ぶっ……か、はぁっ……!」


 今度こそ、介旅の体から力が抜けきった。

 だが、そこで終わるほど狭川は甘くない。

 掴んだ髪を離し、崩れ落ちる介旅にタイミングを合わせる。

 そして、


 「ら、あぁっ!!」


 渾身の力を込めた蹴りが、介旅の側頭部を正確に捕らえた。

 ゴンッッ!!という音をたてて、彼の体が数十センチ程浮いてから地面に落ちる。


 狭川は笑って、嘲るように言う。


 「ハッ、チョーシ乗ってんじゃねぇぞ、クズが」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/21(月) 22:56:52.75 ID:zzV+AI6t0<> 投下終了

何か、書いてて可哀想になってきた…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/22(火) 05:10:17.69 ID:RAHzKPr1o<> 乙乙
トラウマが… トラウマが… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<><>2011/11/23(水) 21:46:49.32 ID:Z5aD95vS0<> トラウマウマウマ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/23(水) 22:39:32.08 ID:79dL4LEOo<> うまうま <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 19:03:55.13 ID:VQEnKdlg0<> 諸事情により、少々間が開いてしまいました
ただ今より投下を開始するのであります

前回の続きから <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 19:08:48.85 ID:VQEnKdlg0<>










 「…………」


 狭川との喧嘩によってボロボロになった介旅は、
 ビルの壁に背を預けて座り込んでいる。

 下手をするとまた誰かに絡まれそうな路地裏だが、彼は気にしない。
 そんな些細なことに気を配れるような精神状態ではなかった。


 「……今、何時、だ?」


 手を動かすのも億劫だったが、それでも何とかカバンから携帯を取り出す。

 大きな衝撃を受けたにも関わらずヒビ一つ入っていない液晶に表示されたのは、
 【PM4:30】を示す簡素な時計。

 どうやら、あれからもう3時間ほど経っているらしい。

 思ったよりも時間が過ぎていくのが速いな、と彼は思いながら、


 「……情けねぇよな、ホント」


 力が抜けたように、そう呟いた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 19:24:19.10 ID:VQEnKdlg0<>



 あの後。

 騒ぎに気がついて駆け寄ってきた黄泉川を見るなり、狭川は走り去っていった。
 まだ金は奪られていなかったが、警備員に捕まるのはマズイと判断したのだろう。

 黄泉川は追うかどうか迷ったようだが、逡巡した後に介旅の方へ近づいてきた。
 加害者の確保よりも、被害者の介抱を第一としたらしい。

 職務上の責任か、しつこく事情を聞いてきたが、介旅はその全てに無言で答えた。

 そして、困り顔になった黄泉川が救急箱を取りに行っている間に、ここまで走ってきたのだ。


 何故逃げたのかと問われれば、彼自身、明確な答えを出せる自信はない。

 周囲から向けられる好奇の目に耐えられなかったのもあるし、
 同情されるのが嫌でもあった。



 だが。


 それ以上に、虚しかった。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 19:54:54.87 ID:VQEnKdlg0<>


 虚勢を張って、あっさりと負けた自分が。


 無様に敗北したことそのものが。


 勇気が、勇気でなく、ただの無謀であったことが。


 正しさなど関係なく、強い者が勝つのだという事実が。


 無意識の内に、それらを悟ってしまったということが。




 本当にどうしようもなく、虚しかった。



 「…………、ーー」


 ようやく血の味が引いてきた口を、開ける。

 何を言おうとしているのかは、自分でもわからなかった。


 ただ、それを言えば今までの自分が崩れ去ってしまいそうな、そんな言葉を呟こうとして、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:08:47.92 ID:VQEnKdlg0<>


 『♪ーーーー♪』

 「っ、」


 彼の思考を遮るように、携帯の着信音が鳴り響いた。


 再び画面に目を向けると、表示されたのは『木原那由他』。

 介旅はしばし躊躇ってから、通話ボタンを押し込み、端末を耳元まで持ってくる。


 『もっしもーっし、介旅お兄さん?
  美琴お姉さんが予想以上に施設襲撃を進めてくれてるから、
  私たちも計画の最終段階に移行したいところなんだけど。

  今、時間開いてるよね?
  実は一つ気になることがあってーー』


 聞こえてきた明るい口調に、彼は一瞬、どうリアクションしていいか分からなくなった。
 開けた口が、言葉を紡ぐ前に再度閉じる。

 沈黙に多少の違和感は感じ取ったかもしれないが、それでも構わず、那由他は続けた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:16:52.49 ID:VQEnKdlg0<>


 『ーー私が信頼できる知り合いから聞いた話だと、どうやらとある組織が動いてるみたい。
  詳しいことは言えないけど、相当ヤバい連中よ。
  だから、介旅お兄さんは美琴お姉さんが危ない橋を渡らないか見ててくれない?
  その間に、私と砥信お姉さんで本来の計画を終わらせておくから』


 一方的な通達だった。

 危険な連中と言っておきながら、一般人である介旅をその危険に巻き込ませようとする。

 美琴を心配するあまりに、介旅が受ける危険性を全く考慮していない。

 理不尽だし、不公平だし、上から目線だ。


 だが、介旅は感覚的に理解した。

 それが那由他の、彼に対する信頼の表れなのだ。


 何故なのかは知らないが、那由他は出会って間もない介旅を買ってくれている。
 彼が確実に危険の中から戻ってくるのだと、無意識の内に思っている。

 だからこそ、彼に危険なことをさせようとするし、頼んでくるのだ。


 理由は分からないが、確証が持てた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:18:13.81 ID:VQEnKdlg0<>




 それはとても嬉しいことだな、と介旅は思う。


 身に余る期待だし、彼の矮小さには大きすぎる信用だった。
 しかし、その期待に応えて見せたいと、彼は確かに思った。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:32:02.16 ID:VQEnKdlg0<>






 ・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・
 だが、それでも介旅は、その信頼を裏切る。







<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:33:54.35 ID:VQEnKdlg0<>




    「……嫌だ」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:41:29.82 ID:VQEnKdlg0<>


 『……へ?』


 介旅の言葉を、理解できなかったのだろう。
 電話の向こうで、那由他は間の抜けた声を出した。

 まだ幼い少女の期待を裏切ることに罪悪感を覚えながらも、介旅は更に続ける。


 「ごめん。でも、もう嫌なんだ。
  何で僕みたいな弱い人間が、そんなことしなくちゃいけないんだよ。
  普通、逆だろ。御坂みたいな強い奴が、僕みたいな弱い奴を助けるべきだろ」

 「まして、超能力者のアイツでさえ解決できない問題を僕が解決なんて……おかしいよ。
  大体、僕にやらなくちゃいけない義務なんて無いじゃないか」


 正論だった。

 介旅の口から飛び出したのは、泣き言ながらも筋の通った、一般的な正論。


 『……』


 那由他は、何も言わない。

 介旅は全てを吐き出すように、言葉を紡ぐ。


 「出来るはずがない。やる義務もない。
  それなのに……何で僕が、そんな危ないことをしなくちゃいけないんだよッ!」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 20:52:29.07 ID:VQEnKdlg0<>


 ハァ、ハァ、と。

 全てを吐き出しきった介旅は、息を切らせながら次の言葉を待つ。


 数秒の沈黙。


 介旅の待っていた那由他の声が、それを破った。



 『……そっか』


 声色に含まれていたのは、落胆でも失望でもなかった。

 ただ、平淡。

 至極冷静な声で、那由他は言った。


 『こっちこそゴメンね、介旅お兄さん。
  私、ちょっと勘違いしちゃってたみたい。
  そうだよね。お兄さんは、数多おじさんじゃないんだもんね』


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:13:32.04 ID:VQEnKdlg0<>


 数多、というのは人の名前だろう。

 それこそ、彼女のヒーローだったのかも知れない。

 だとすれば彼女は、介旅とそのヒーローを重ね合わせていたのだろうか。


 もしそうなら、介旅はその幻想を、粉々に打ち砕いてしまったのか。


 『ねぇ、でもこれだけは聞かせて』


 そう言った那由他の声は、微かに震えていた。

 ぐらり、と、介旅の心が一瞬揺らぐ。


 だが、介旅は思い直す。

 それがどうした。


 ーー結局僕は、何よりも自分の身が大切なーー




 『介旅お兄さん。あなたは、大切な人(ともだち)を守りたいって……思わないの?』




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:23:04.64 ID:VQEnKdlg0<>

 「ッーーーー!」


 もう一度、先程よりも大きく、心が揺さぶられた。

 言葉は、止まらない。



 『助けたいって思うんだったら、私達と一緒に行動しようよ。
  逃げたいって思うんだったら、私はもう止めない。
  どちらにしても、私は責めない。だから、答えを教えて』



 口調は、普段となんら変わらない。

 にも関わらず、那由他の言葉は不思議と冷たく、介旅へと突き刺さった。


 『教えてよ、お兄さん。
  あなたにとって、友達ってどんな存在なの?』


 那由他は、容赦無く言葉を続ける。

 彼女自身も、自分の言っていることが理不尽だと自覚しながら。


 『力が無い。あなたは、そんな理由で友達を見捨てられるの?』


 「……、」



 介旅には、それ以上耐えられなかった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:32:58.43 ID:VQEnKdlg0<>


 「…………僕だって」



 絞り出すように、小さく呟いた。


 次の瞬間には、声は呟きでは収まらなくなる。




 「僕だって、助けたいよ!友達なんだ、当たり前だろうが!!
  でもどうしろって言うんだよッ!力が無いのにさぁ!!
  努力しろってか!?そんなことでどうにかなったら苦労しねぇよッ!!

  努力ってのはな、平気で人を裏切るモンなんだ!!!」



 いつの間にか、介旅は叫んでいた。

 それが、言葉が本心であることを、何よりも分かりやすく伝えていた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:38:08.19 ID:VQEnKdlg0<>



 『……うん、そうだね』



 対し、那由他は否定をしなかった。

 介旅の言葉を、気持ちを、心を。
 全て噛み砕き、受け止めているのだ。


 そしてその上で、那由他は言う。



 『そう。確かに、努力は人を裏切るよ』 
 『でもね』
 『それが、努力を止めていい理由になんか、ならないんじゃないかな』


 「ーーっ、そんなの、ただの綺麗事ーー」


 『綺麗事だと思うんなら、思い出してみて』
 『何度裏切られても努力を続けて、努力を実らせた人ーーいや、』
 『裏切った努力を振り向かせた人が、いるんだよ』
 『その人は今、必死で頑張ってーーそして、危ない目に合ってる』




 『今度は、あなたがその人を助けるために努力する番なんじゃない?』





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:42:25.61 ID:VQEnKdlg0<>


 『もう一回言うよ、介旅お兄さん』


 『助けたいって思うんだったら、力を貸して』


 『逃げ出したいって思うんだったら、賢い選択。私は止めない』


 『その上で、もう一回だけ聞くよ』





 『大切な人を守るために、努力してみる気は無いの?』





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:46:17.69 ID:VQEnKdlg0<>


 「……」



 本当に理不尽な子だな、と介旅は思った。


 結局は、介旅の安全なんて考えてくれてはいない。


 もしかしたら、本当に死んでしまうかもしれないのに。


 なのに、『努力しろ』ときたものだ。


 とっても勝手な、屁理屈だ。


 「……はッ」



 けれど、


 「やってやるよ。やれるだけ、な」


 『……!うん、その意気だよ、“初矢”お兄さんっ!』




 何故か、その言葉はすんなりと心に染み渡った。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/11/26(土) 21:47:22.25 ID:VQEnKdlg0<> 投下終了です


多少強引ですが、吹っ切れた介旅。
彼にとっては、ここまで全部がプロローグ。
ここが、主人公としてのスタート地点です


さて次回は、久しぶりの美琴視点 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/26(土) 22:48:59.29 ID:PB7F7QQOo<> 乙!

初矢お兄ちゃんかっけーです! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(東京都)<>sage<>2011/11/27(日) 00:35:19.44 ID:G7w56iluo<> 格好いいですねえ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/27(日) 10:41:21.17 ID:vmZO9h0AO<> いい感じだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/27(日) 20:00:02.54 ID:lSWxKRPIO<> 今北だが
このSSおもしろいのか問いたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/28(月) 03:01:04.97 ID:q9udA+FAo<> 乙乙
頑張れ介旅たん超かっこいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/11/28(月) 18:52:02.17 ID:03s0maN50<> 乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/01(木) 00:40:29.52 ID:7p2y8irT0<> 何かいつもよりレスが多いっ!

ありがとうございます、ものすごくやる気出ます


では短めの投下します
美琴サイドでございます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/01(木) 00:47:26.58 ID:7p2y8irT0<>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (水穂機構付属・第一製薬工場
  ……薬学的に筋ジストロフィーを治療するために作られた製薬工場、か)


 機械に埋もれた広大な空間で、薄手のTシャツを纏った御坂美琴は思考していた。


 警報装置を誤作動させたことで、研究者たちは既に追い払った。

 電気的なセキュリティは全て、物理的に破壊してある。

 後は侵入して研究の核となる機材をスクラップにしてしまえばいい。


 そのはず、なのだが、


 (ーーイヤな予感がする。ここまで、すんなりと突破できすぎてる。
  普通なら、自立型の耐電警備ロボぐらいは動員されててもいいぐらいなのに)


 そう考えた直後、美琴は目を閉じ、電磁波のレーダーに全意識を注ぐ。

 精密度と範囲を大幅に上昇させる。
 普段なら背後の人影を察知する程度のレーダーは、
 工場内を埋めつくし、その全貌を美琴へと伝えた。


 (……やっぱり。全フロア各地点に大量の不審物。それと……ッ!?)


 と、美琴は驚きで息を飲み、



 (……前方二十メートルの物陰に、人影ッ!)



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/01(木) 00:54:46.09 ID:7p2y8irT0<>


 一般人、のはずはない。

 ならば、答えは一つ。


 (雇われの用心棒、ね……)


 だとすれば、やることも一つしかない。

 美琴は、人影の方に掌を向ける。

 瞬間、死なない程度に加減された、雷の槍が射出された。


 バヂィッッ!!と唸りを上げ、雷光が遮蔽物ごと人影に襲いかかる。


 そして、


 「残念。結局、対策は万全って訳なのよね」

 「なッ!?」


 人影に当たる直前に、電撃が不自然に進行方向を変え、近くの金属片を撃ち抜いた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/01(木) 00:55:21.01 ID:7p2y8irT0<>


 電撃が無効化されたーー否、誘導された。

 その意味を、美琴は一瞬考えて、


 (……避雷針……?ハナから私が電撃を撃つと予想して、待機場所に仕掛けてたってこと?
  ……ってことは、まさか、マズーー)

 「いい判断だけど、結局遅いって訳よ!」


 相手の意図に気づいた美琴は急いで回避行動に出るが、
 物陰から飛び出した金髪の少女ーーフレンダの動きの方が速い。

 彼女は、壁に貼ってあるテープのようなものに手を伸ばした。


 そして、ゴバッ!という爆音が響くと同時、天井に亀裂が走り、砕け散った。

 その残骸が、美琴の立っている辺りめがけて大量に降り注ぐ。

 そう。
 一個一個が数百キロ単位の重さの、鉄の固まりが。


 「ーーーーッ、」


 叫ぶ暇もなかった。

 ドォン、という振動と煙が、工場内を埋め尽くす。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/01(木) 00:55:58.84 ID:7p2y8irT0<> しゅーりょー

眠いでつ
忙しくなるのであまり来れないかもです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/12/01(木) 09:04:36.06 ID:k94C1wTLo<> 乙乙
みこっちゃんつぶれてしまったん…?

待ってる待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/02(金) 22:04:20.59 ID:XIaHGuZM0<> ふむ乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(長屋)<>sage<>2011/12/03(土) 15:35:32.54 ID:6keB9XWko<> ここは原作オマージュか <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/03(土) 23:45:38.85 ID:H53xkZf00<> こんばんは、>>1です

原作新刊まで一週間、超電磁砲新刊まで二週間ですね
ついでに言うなら大晦日までは四週間
三週間後の二十四日を除けば、一週ごとにイベントがあるみたいです



それでは投下します
前回の続きから <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/03(土) 23:59:48.49 ID:H53xkZf00<>


 「ふふ。結局、こんなんで終わるなんてあっけなーい訳だけど」


 瓦礫が建材を破壊して巻き上げた粉塵の範囲外で、フレンダは軽く言う。

 彼女は、美琴の立っていた場所にもう一度目をやってから、


 「……やっぱり、そんな簡単にはいかない訳ねっ!」


 体を屈めると同時、紫色の電光が彼女を掠め、最寄りの避雷針へと吸い込まれる。

 その発生源は、当然ながら御坂美琴。
 どうやったのか全ての落下物から逃れた彼女は、
 照準を合わせるように、フレンダに掌を向けている。


 「チッ……外したッ!」

 「にゃっははーん♪結局、まだまだ甘いって訳よ!」


 茶化すフレンダに、美琴は電撃を数発撃ち込むが、どうしても当たらない。
 ギリギリのところで、事前に準備してあったであろう避雷針に妨害されてしまうのだ。


 (ッ……ただの金属片じゃ、ない……?
  空間内に電圧をかけて、『電流の流れやすい道筋』を作ってるわけか)


 ならば電圧を引き上げてしまえばいいようなものなのだが、そうもいかない。

 一つは出力が大きすぎることによる、相手への深刻なダメージ。
 そしてもう一つは、高出力による息切れだ。
<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/04(日) 00:31:37.12 ID:sX69QqWA0<>


 「なるほどね。磁力で落下物の軌道を逸らした……か」


 対し、フレンダはそのことに気づいたように笑みを浮かべ、


 「……でもそれ、相当の電力が必要なんじゃない?」

 「ッ!」


 意図に気づかれた美琴はフレンダの方へと駆けるが、
 フレンダは臆せず、懐から柄の付いた太い針のような物を取り出し、それを床に投げつける。


 次の瞬間、爆炎が上がり、一直線に美琴へと襲いかかっていく。



 (くっ……避雷針の効果範囲内に入ろうとしたのがバレたか……!)


 舌打ちをしつつも、美琴は走るのを止めて横に飛び退く。

 爆炎の速度は脅威だが、軌道自体は一直線だ。

 落ち着いて見れば、避けることは難しくない
 ……と、そこまで考えたところで、美琴は見た。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/04(日) 00:43:24.65 ID:sX69QqWA0<>


 爆炎の出所にある、テープのようなもの。


 その先にあるのはーー西洋風の、大きめの人形。


 なんて場違いな、と普段なら思うだろう。


 だがこのシチュエーションでなら、その中身を想像するのは難しいことではない。


 人形、という共通点が、嫌でもあの虚空爆破事件を想起させる。



 (んー、アイツの方がぬいぐるみの趣味は良かったかなー

  ……じゃなくって、ヤバーー)



 と、そんな暢気なことを思った直後。


 テープの爆炎がぬいぐるみに到達し、
 その中の火薬が爆発を引き起こした。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/04(日) 00:55:32.93 ID:sX69QqWA0<>


 ゴッ!!!!という爆音が炸裂する。


 美琴はとっさに、近場にあった建材を磁力で引き寄せ、盾にしていた。

 だが、


 カチリ、と、時計のような音。

 その正体は、時限爆弾。



 (ッ!?私が盾に使うことを予想して、ハナからこの中に……!)



 爆弾が炸裂する一歩手前で、建材を引き離す。

 ゴゥン!という鈍い爆発音は直接の衝撃波とはならないまでも、
 美琴の耳を狂わせるのには充分すぎた。



 (あ。ぐ……。平衡、感覚が……)



 判断ミスによって起きた、致命的な一瞬の隙。


 そしてそれを逃すほど、フレンダは甘くない。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/04(日) 00:57:18.84 ID:sX69QqWA0<>


 「結局、まだまだ甘いって訳よ!」


 叫び、フレンダは両手に四本ずつ、都合八本の針を取り出し、
 あらかじめ張り巡らされたテープへと投げる。


 針の正体は、爆薬を起爆するための電気を発する着火装置。

 そしてテープは、金属性の扉を破るために使われるツールの一種。
 直接攻撃に使うためのものではないが、使い方にさえ気をつければとても有用な導火線となる。



 そして。

 轟!!と、八方向からの爆炎が、美琴を襲う。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/04(日) 00:58:14.96 ID:sX69QqWA0<> 投下終了
この辺は原作と大して違いません

あと、クリスマスというのは二十五日です
二十四日なんて何にもありません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/12/05(月) 09:25:04.83 ID:jwLJvSDzo<> 乙乙
フレンダかわいいよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(新潟・東北)<>sage<>2011/12/07(水) 10:39:24.44 ID:xj0I6yMAO<> フレンドさんかっけえ <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 08:19:44.94 ID:DDUdbOa00<> こんばんは
少々遅くなりました、すみません

それでは投下します
今回は理論とかすっ飛ばして、感覚で読んで下さい

▼つづきからはじめる  <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 08:23:40.44 ID:DDUdbOa00<>


 (どうよ結局、このフレンダ様のスーパーコンビネーションは!)


 自らの計算通りに美琴に迫る炎を見て、フレンダは笑みを浮かべる。

 彼女の頭の中ではすでに、美琴の死体の片付けから
 仕事のギャラの使い道までの計画が進行されている。

 逆に言えば、それだけ余裕を持てるほどの完璧な攻撃。


 (床に三つ、前方一つに、天井に二つ、後方から二つ!
  結局この全方位攻撃から逃げられるハズないって訳よ!!)


 だから、爆破テープの先にある爆弾の配置位置など、わざわざ心配する必要もない。
 あくまでもこれは、ただの確認だった。

 そうしている間にも、最初の爆弾に炎が触れる。


 ゴッ!と人形が炸裂し、爆煙が視界を遮った。

 だが、それはただ単に、美琴の前方で爆発させて彼女の動きを止める誘導用爆破。

 その後一秒も経たない内に、本命の床からの爆発が巻き起こる。
 そしてさらに間髪入れず、追撃のために天井と後方からも爆発を引き起こす。


 連続した爆発は、全て合わせて一つとなり、轟!という音の渦を産んだ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 08:34:54.13 ID:DDUdbOa00<>

 計算し尽くされた、まさに達人業とも言うべき爆発。

 爆弾のスペシャリストであるフレンダにとっても、改心の一撃だった。


 だが。


 そこに、一つだけ計算違いがあったとすれば。



 「……ッ、ふっ!?」


 鳩尾に走る、鈍い衝撃。

 その正体を認識するのに、数瞬の間が必要だった。


 (なっ……!?)


 そして、フレンダは目の当たりにすることになる。


 前方の爆弾が爆発してから床の爆弾が炸裂するまでの
 僅かな誤差にタイミングを合わせて、
 爆煙の中から飛び出してきた、御坂美琴の姿を。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 08:45:45.14 ID:DDUdbOa00<>

 飛び出してきた、とは言っても、単純な脚力だけではない。

 磁力。

 彼女の驚異的な速さの正体は、彼女と壁とを繋ぐ強力な磁力の糸。

 そして、その壁というのは、


 「ナ、メんなぁぁァァ!」

 (マ、ズーー)


 フレンダの両足が、僅かに浮く。

 次の瞬間には、彼女は美琴の体に押され、背後の壁まで吹き飛ばされていた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 09:14:05.83 ID:DDUdbOa00<>

 ゴゥン!!と、鈍い音が響いた。

 金属性の壁と美琴の体とに挟まれた体から、ミシミシと嫌な音が聞こえる。


 「ーー、……ぁ、ッ!」


 口から、声にならない叫びが漏れる。

 だが、彼女はそこで倒れない。


 「ーーっ、け、っ局、ナメてんのはそっちだって訳よ!」


 美琴が磁力を解除し、フレンダを押す力が弱まったその瞬間。

 フレンダは無防備な美琴の頭に、思い切り肘を落とす。


 「あ、がッ!しまっーー」

 「結局、油断大敵って訳よね!」


 思わず身を丸めた美琴の腹を、フレンダは容赦無く蹴り上げた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 09:26:21.47 ID:DDUdbOa00<>

 「かッ……、はっ……!」

 (……っと。そういえばコイツは電撃使いだった訳よね。
  避雷針が使えない距離で戦うのは危険か……)


 そう判断したフレンダは、咳込む美琴を満足そうに眺めてから距離をとる。

 しかしそれは、逃げるためではない。


 (……結局、『コイツ』を使うのが一番だって訳ね)


 フレンダが取り出したのは、液体の入った小瓶。

 それを、美琴の方に軽く放り投げる。


 「ッ!」


 条件反射的に、美琴はそれを電撃で撃つ。


 だが、それこそが命取り。


 ドッッ!!と、小瓶が一気に弾け飛んだ。


 (しまった、爆薬か……!)


 爆風に目を細める美琴に、フレンダは歌うように告げる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 09:27:42.04 ID:DDUdbOa00<>

 「学園都市製の気体爆薬『イグニス』」


 気づけば、フレンダは施設を走るパイプのバルブを開けていた。

 端から見れば、隙だらけの状態。
 だが、だからこそ美琴には想像できてしまった。

 彼女が、一体何をしているのかを。


 「この気体は人体には害が無いけど、放出後一瞬で拡散して空間を満たす。
  香水瓶程度のサイズでさっきの威力なんだから……後は言わなくても分かるわね?」


 シュウー、という音と共に、煙のような物が広大な空間を埋め尽くしていく。

 それが分かっていても、美琴には止める術がない。


 フレンダの口元が、ニヤリと歪む。


 そして、一方的な攻撃が、始まった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/10(土) 09:28:44.97 ID:DDUdbOa00<> 投下終了

次回あたりで、やっとアイツが合流できそうです


それでは今から原作を買いに本屋まで走ってきます <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 13:39:03.09 ID:2h8y0HAX0<> ブレンダのくせに生意気だ乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/12/13(火) 06:23:54.04 ID:DjhdnBfbo<> 乙乙
フレンダのくせに可愛いんだ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 14:02:02.89 ID:CDOMwSbAO<> ブレンドのくせになまいきだ乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/13(火) 23:26:41.88 ID:PIHV5joX0<> Good evening.
>>1ですよっと

みなさん原作はもう買われましたでしょうか?

今回も全体的に楽しみながら読めたのですが
一方さんと美琴の絡みはもうちょっと濃い方が良かったなー、と思わなくもありません

……まぁ確かに当たり前なんですけどね?
  でも何というか、もうちょっとこう……

いや、これはSSで楽しまなければいけない分野だということですね
機会があれば電磁通行的なものも書いてみようかと思います


それでは行きましょう
VSフレンダ、クライマックス <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/13(火) 23:28:31.71 ID:PIHV5joX0<>




 第三位の超能力者であるということを除けば、美琴はごく普通の女子中学生だ。

 もちろん、常盤台中学という名門中の名門で学んでいるのだから、
 一般人のそれとは比べようもない知識を持っているし、各種武術も多少は習得している。


 だが、ただそれだけだ。

 肉体的に見れば、他人よりも運動が出来る、という程度でしかない。


 対しフレンダは、体格としては美琴と大きな差は無いまでも、
 長年の暗部としての活動で鍛え上げられた筋力や格闘センスを保持している。

 彼女自身も、路地裏の不良クラスなら5人までは体術で相手取れる自身があった。
 そして恐らく、その自信は事実となんら遜色がない。


 つまりは、だ。

 能力さえ封じられてしまえば、美琴はどう足掻こうがフレンダには勝てない。

 奇襲のような攻撃ならまだ可能性はあるが、
 少なくとも真正面から挑んだ場合の勝算はゼロだ。

    ・・・・・・・・・
 そう、ちょうど今のように。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/13(火) 23:54:31.30 ID:PIHV5joX0<>


 「まぁ精々……頑張ってちょーだいッ!」

 「!……、ッ!?」


 フレンダの蹴りが、ガードに使った腕ごと美琴を弾き飛ばす。

 右腕に走った激痛に顔を歪める美琴だったが、直後その顔は驚愕に染め上げられる。


 「ふっふふ〜ん♪」


 ジャキリ、という金属音。
 その音源は、フレンダの靴の踵の仕込み刃。


 「へぇ、上手いガードね……なら、コッチはどうよ?」

 (刃物!?ヤバ……)


 右方向から円を描くように飛んできた上段の回し蹴りを、
 美琴は体を反らすことでギリギリ避ける。

 だが、右足で着地したフレンダが、二撃目に放った左の蹴りは、
 交差させた腕の隙間から、まともに腹に入ってしまう。
 左足には刃が仕込まれていない様子なのが、唯一の救いか。


 「かっ……はっ、……!」


 短く息を吐き出す美琴の懐に、それを好機と見たフレンダは一気に潜り込む。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 00:12:32.74 ID:Icn0KKtP0<>

 「アハハハハ!結〜っ局、能力がなきゃタダのお子ちゃまって訳ね!」

 「ッ!」


 繰り出される左右のジャブを、美琴の手が次々と弾く。

 一見拮抗しているように見える勝負だが、実際は違う。
 攻撃の手を休めないフレンダと、防戦一方の美琴とでは、あまりにも前者に分があるのだ。


 「いいガードだけど……守るだけじゃ勝てないわよ?」

 「っ……!?」


 と、突然、攻撃の手が止む。

 相手の拳をさばくことだけに集中していた美琴の思考に、一瞬の空白が生まれる。

 次の瞬間。

 美琴の側頭部に、重い衝撃が加わった。


 「い、ぎぁ……!?」


 その原因が、渾身の力で振り抜かれた肘だと気づくのに数瞬。

 そしてそれを認識したときには、既にフレンダの右足は動いていた。


 「んじゃま、フレンダ先生のレクチャーも終わったところで……
  いっちょ終わりにするかにゃーんっ」

 (……、マズ……避けられな、)


 先程以上に、完全に完璧なタイミングでの攻撃。

 その一撃が、美琴の脇腹へと一直線に突き刺さる


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 00:20:49.47 ID:Icn0KKtP0<>




 「……え?」




 その直前で、美琴は見た。




 フレンダの背後。

 より正確には、彼女の背中から数十センチほどの空中。


       ・・・・・・・
 そこに飛ぶ、銀色のスプーンを。





 「ーーーー、ッ……」



 言葉が、口に出るよりも早く。



 それは、起爆した。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 00:32:48.33 ID:Icn0KKtP0<>


 爆発音が響く。


 「ッ、ぁ……!!」


 無防備な背中から爆発を受けたフレンダの体がよろめき、
 放っていた蹴りは美琴の服を掠めるにとどまった。


 「……あは」


 だが、それでも彼女は倒れない。


 「あッははハハハハッッ!!
  このフレンダ様に、爆弾で奇襲をかけた?
  結局、最高にムカついたって訳よォォォォ!!」


 先刻までの余裕の面影は、全く無い。
 その顔にあるのは、ただ怒り。

 自らの得意分野を使われたことへの、純粋で単純な激怒。

 襲撃者の姿が見えないと判断するや否や、その矛先は目の前の美琴へと向けられる。


 「……ハッ!姿見せないってんなら、まずはコイツからやってやんよォォォォ!!」


 このタイミングで割り込んで来たということは、恐らく襲撃者は美琴の仲間だ。

 まず美琴を確実に殺すことで、その襲撃者への見せしめにしようとして、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 00:59:53.12 ID:Icn0KKtP0<>


 「……ん?」


 そこでフレンダは、何やらその辺でバチバチと音がしているのに気が付いた。

 そう。まるで、どこかの誰かが電撃でも使っているような。


 (……ヤバい!?しまった、今のでハッタリがバレ……)

 「ぷっ……あはははは!
  こりゃまた私も、随分と簡単に騙されたわね。
  さっきから充満させてたのは、気体爆薬なんかじゃ無かった訳だ。
  ホント、笑っちゃうわよねぇ……うふふふふふふふ」

 「……あ、あはは、はははははは……」


 乾いた笑いが、喉に張り付く。

 どうしようマズイよこれ絶対殺される短い人生だったなイヤイヤまだ終わってない諦めるなこっからよこっからどう持ってくかで全ては決まるんだからーー!
 ……とひとしきりパニックになったフレンダは、取りあえず可愛らしいポーズをとってみて、



 「……テヘペロ☆」



 直後彼女は、感電の痛みを知ることとなる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 01:06:22.44 ID:Icn0KKtP0<>




 「……出てきなさいよ。アンタなんでしょ?」


 調子に乗ったバカを粛正したところで、美琴は物陰の方へと声をかける。


 「……この状況で僕じゃなかったらおかしいだろーよ。色々と」


 と、気を抜かれたような感じで出てきたのは、
 大きめのバッグを肩に掛けた介旅初矢だ。

 心なしか、緊張の糸が切れて疲れが出ているようにも見える。


 「アンタ、いつからいたのよ?」

 「この場所に来たのはついさっきだよ。
  ちなみに潜入は少し前。気づかなかったかもしれないけど、
  お前が正面突破するタイミングで裏口から入ってたんだよ」


 なるほどな、と美琴は納得する。

 フレンダは当然裏口側にも気を配っていた筈だが、
 こちらに現れた美琴に集中したおかげで介旅には気付けなかったのだろう。

 逆に言えば、少しでもタイミングが違えば介旅がフレンダに狙われた可能性もあるのだが。


 「……ったく、アンタも危ないことするわよね。
  知らなかったんだろうけどアイツ、気体爆薬を充満させたなんてハッタリをかましてたのよ?
  もしそれが本当だったら、私達今ごろ瓦礫の下じゃない」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 01:11:28.65 ID:Icn0KKtP0<>

 と、呆れたように言う美琴だったが、


 「……いや?お前の携帯に細工したから、そのハッタリも全部聞いてたけど」


 返答は予想外のものだった。主に二つの点が。


 「け、携帯に……?ってホントだ!?
  通話ボタン押してないのに通話状態になってるじゃない……!」

 「僕の腕なら、インターネットにつながるモノは大体なんでも好き勝手できるのさ」

 「うわ何それ怖い……じゃなくて!
  何!?じゃあアンタは爆薬が充満してるかもしれないのにあんなコトしたの!?」

 「いや?会話を聞いたときはコイツ正気じゃねーだろと思ったけど
  実際に来てみればただのハッタリだって分かったからな」

 「ど、どうやってよ……」


 美琴の質問に、介旅は得意そうに腕を組んで、


 「まぁこれは、爆発系で専攻取ってないと知らないようなことなんだけどさ。
  イグニスっていうのは、独特の刺激臭がするんだよ。
  そいつがしなかったってことは多分、窒素ガスか何かだったんじゃねぇかな」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 01:17:12.76 ID:Icn0KKtP0<>

 「……あぁ、そういえばアンタ爆発物にやけに詳しかったっけ」

 「ま、専門だからな」


 お互いに軽口を言い合い、ははは、と笑い、

 そこで、美琴の態度が変わる。


 「……で、アンタは何でここにいるの?」

 「……、」


 何の気無しに、といった表情で言われたその一言は、
 介旅が最も聞かれたくなかったことの一つだった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/14(水) 01:17:57.95 ID:Icn0KKtP0<> 投下終了

何やら不穏な空気ですが
ここからどっちに転ぶかはまだ分かりません
どうぞお楽しみに


※フレンダの現状
 感電+殴られた傷、放置プレイ


それではHave a nice dream. <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 05:37:53.94 ID:/B9EtIfAO<> 介旅さんマジクール <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 17:47:45.61 ID:VRWq4jVc0<> 介旅さんマジボマー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/12/14(水) 19:17:34.96 ID:mVmTg9AYo<> 乙乙
ボマーみつけた! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 16:51:40.36 ID:yYGzV1Nn0<> ※この投下開始宣言には超電磁砲7巻のネタバレが含まれています


こんにちはっス
超電磁砲の新刊読み終わりました
正直、あのゴーグルが上条さんに見えてビックリしたんだぜ
はいむらのモノクロ絵では白髪っぽく見えましたし

婚后さんの回想にあった『横須賀』の名前も気になるところですね
劣等生の兄と優等生の妹……原作で登場するのはいつになるのやら


それでは投下します
今度は布束サイドを少し <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 16:55:08.58 ID:yYGzV1Nn0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「はじめまして。あなたが……」

 「御社の『学習装置』の監修をしました布束です。よろしく」


 Sプロセッサ社、脳神経応用分析所。
 残り二つの『実験』の協力機関の片割れに、布束砥信は招かれていた。

 心の内では反吐を吐きながらも、顔には一切出さず無表情に握手をする。


 「それで、要件というのは?」

 「いえ、ちょっとしたトラブルが起きましてね。
  今夜中……いや、今から数時間で、ここの研究データを移さなくてはいけないんです」

 「では、私は何をすれば?」

 「なに、何もしていただかなくて結構ですよ。
  『量産型能力者計画』からの協力者がいてくださるだけで、私達の士気も変わります」


 体面を取り繕ってはいるものの、要はトカゲの尻尾になれということだった。
 心理学を究めた布束にとって、言葉に出さない相手の感情の機微を読みとることなど容易い。

 相も変わらず人間の醜いところを凝縮したような性根の研究者に、布束は嘆息する。


 「……どうされましたかな?
  お体の具合でも悪いのですか?」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:09:12.46 ID:yYGzV1Nn0<>

 体の具合よりも、お前の醜さに心の具合を悪くしたよ。
 ……などと口に出す訳もいかず、布束は軽く頭を押さえる演技をしてから、


 「……えぇ、少々頭痛が。
  どこかで休ませては頂けませんか?」

 「あぁ、それは好ましくありませんね。そのような時にお呼びして申し訳ない。
  応接室が空いておりますので、そちらでお休みください」


 心にも無いことを、と思いながらも、軽く頭を下げた布束は案内された部屋に入る。


 「しばらくしたらこちらに戻って来ます。
  それまではゆっくりとお休みください」


 そう言い残して、職員は扉を閉めて去っていく。
 それから一分ほど間を置いてから、布束は携帯電話を取り出し、番号をプッシュした。

 コール音はせず、プツンと軽い音ともに通話がつながる。


 『もしもし砥信お姉さん。
  状況報告だよね。そっちはどうなってるの?』

 「潜入には成功したわ。
  取り合えずは第一関門突破というところね」

 『了解。私の出番までは時間があるかな?』

 「まだしばらくはかかりそうだけど……何をするつもり?」

 『ん。ちょっと、新参ヒーローさんの手助けにね』


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:22:37.18 ID:yYGzV1Nn0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (どうする、僕……っ!)


 介旅初矢は、悩んでいた。
 原因は一つ、美琴の質問だ。

 何故ここにいるのか。
 つまりは、何故助けに来たのか。

 もちろん、その理由など分かりきっているし、一つしか無い。
 ……の、だが、


 (い、言えねぇぇぇぇ!
  大切な人を守りに来たんだとか絶対!!口が裂けても言えねぇよ!!)


 ……とまぁ要するに、あまりにもクサすぎるのだった。

 多少言い回しを工夫すればいいようなものなのだが、
 残念ながらそこは介旅。そんなアドリブに対応できる性能など無いのだ。

 と、そんな一人身悶えする挙動不審な介旅を見て美琴はおかしな物を見るような目で、


 「……どうしたっていうのよ?
  そんな答えにくい質問だった?」

 「ま、まぁ……、な。うん」

 「そっか。じゃあ、言い方を変えるけどさ」


 そう言って、美琴は笑いながら、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:25:04.89 ID:yYGzV1Nn0<>





 「アンタは、私が心配だと思ってくれたの?
  それとも、アイツらに協力するため?」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:34:21.82 ID:yYGzV1Nn0<>


 美琴は、カラカラと笑う。
 自分で言っていることがバカらしいかのように、空しく笑む。


 「……、っ」

 「あら?やっぱり答えにくかった?
  そりゃそうか、アンタは優しいから、私のためじゃないなんて答えるのは辛いんだ。
  バカだよね私。まるで子供みたいに、誰かが助けてくれるなんて少しでも思って……」


 虚勢だけの言葉だった。
 心を読むのが苦手な介旅にも、それだけは分かった。

 虚ろな瞳で、さらに言葉を続ける美琴に、介旅は思わず拳を握りしめる。


 「……、に……るだろ」

 「何?聞こえないわよ。
  私に現実を見せてくれる気になったんなら、早くーー」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:46:06.25 ID:yYGzV1Nn0<>




 「……心配したに、決まってるだろッ!!」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:54:41.50 ID:yYGzV1Nn0<>


 自分でも知らない内に、介旅は叫んでいた。

 呆気に取られる美琴へと、彼は更に言葉を叩き付ける。


 「……ふ、ふぅん、ありがと。お世辞でも、嬉しーー」


 「本気だってのが分かんねぇのか!
  あぁそうだよ、確かに僕は一度、お前を見捨てようとしたッ!
  でも今は違う!僕はお前が心配で、お前を守りたかったからここに来たんだ!!」

 「……ッ、な、んでーー」


 「理由なんて決まってる、友達だからだ!
  それ以外の理由が必要なのか!?」



<> ちょっと抜けます  翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 17:59:00.27 ID:yYGzV1Nn0<>

 はぁ、はぁ、と、介旅は息を荒げる。

 言いたいことは、言い尽くした。

 それが届いているかどうか、その確認に、彼は今一度美琴へと向き直り、


 (……って、うおぉぉぉぉあ!?)


 直後に、彼が高速で顔を反らしたのも仕方の無いことであった。



 「……ひっぐ、ぐす、うぇ、ぇぇぇん……」



 美琴は、泣いていた。

 ボロボロで浅い介旅の言葉なんかで、彼女は泣いていた。


 「…………」


 かける言葉が見つからず、介旅は硬直する。

 その間にも、美琴は涙を流し続ける。


 居心地の悪い沈黙が、場を支配していた。


<> 再開 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 18:54:07.70 ID:yYGzV1Nn0<>


 「……おーおーおーおー。
  女ぁ泣かせて、そのまま放置かい。アンタ結局、罪な男ねぇ」


 何やら空気を読まない発言に、介旅はイヤイヤ視線を移す。

 そこにいたのは、さっきから身動きが取れずジト目でこちらを見ていたフレンダだった。


 「……お前今の状況分かってんの?
  いつでも殺られる状態でよくそんなこと言えるよな」


 もっとも、殺す度胸なんてないのだけれど。

 とりあえずうるさい口を封じるのには役立つかな、と介旅が言ってみると、




 「……はぁ?結局、状況が分かってないのはアンタの方なんじゃね?」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 18:55:38.80 ID:yYGzV1Nn0<>



 そんな馬鹿な、と介旅は言おうとした。



 だが、彼は見てしまった。



 フレンダの視線の先には、施設の分厚い壁。



 そこに、融けるような光の波紋が広がっている。




 「ッ!?」




 身に迫る危機に気づいた彼が、慌てて美琴を突き飛ばし、自らも伏せたその時だった。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 18:56:06.45 ID:yYGzV1Nn0<>


 じゅ、と、金属が蒸発する音と共に、
 不健康な白色の光が、施設の中を突き抜ける。

 そう、ちょうどコンマ数秒前まで、介旅の頭があった位置を。



 「っッ〜〜!?!?」



 混乱する介旅の耳に、低い女の声が届く。



 「ったく……一人で勝手に突っ込んだ挙げ句、救難信号を送るとか……
  バカなのは見た目だけじゃなく頭の中身もかぁ?このクソ舶来野郎が」



 壁に開けた穴から、その女は堂々と入ってきた。

 縁には融解した金属の広がる穴の中を、何の躊躇いもなく。


 その後に続き、眠そうな眼の少女も施設の床を踏む。



 「さぁて」


 気楽そうに、女は口を開く。


 「自己紹介をしとこうか。
  麦野沈利だ。よろしくな、侵略者(インベーダー)さん」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/17(土) 18:56:48.90 ID:yYGzV1Nn0<> 投下終了

突発的に思いついたせいで台詞が無茶苦茶なのはご愛嬌 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 20:55:52.36 ID:x9iXMl4ao<> 乙!
介旅のくせにカッケー! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 17:55:56.97 ID:6oc6b0yZ0<> どーもっす

投下しまっす <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 18:00:05.13 ID:6oc6b0yZ0<>


 「「ッ!」」


 得体の知れない乱入者に対し、とっさに身構えることが出来たのは
 先刻の緊張感が未だに残っていたからだろうか。

 女が一言を終える頃には、介旅は鞄から取り出したスプーンを持ち、
 美琴は涙を拭った掌を女へと向けていた。


 「へぇ。素人にしちゃ中々の動きじゃない」


 麦野は感心したように漏らし、フレンダを睨みつけて、


 「……つっても、まだまだ隙だらけじゃねぇか。
  アンタはこんな雑魚どもに負けたって?」

 「ま、待ってよ!あのメガネはともかく、女の方は相当の高位能力者で……っ!」

 「大丈夫。私は相手の力量を読み間違えたふれんだを応援してる」

 「違っ、でもあのメガネの乱入が無けりゃ……」

 「どっちだよ使えねーー」


 麦野の言葉が途切れた理由は、実に明確。

 ゴッッ!!という音と共に。
 美琴が磁力で操った瓦礫が、恐ろしい勢いで彼女の元へと突っ込んだからだ。

 突然の行動に、介旅も思わず面を食らってしまう。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 18:14:39.04 ID:6oc6b0yZ0<>

 「い、いきなり何やってんだよ!?まだ敵かどうかも分かんねぇのにやり過ぎだ!
  あんなの当たったら即死じゃねぇかよ!!」

 「……その台詞、まずはあれを見てから言ってくんない?」


 言われなくても、と介旅は麦野の立っていた辺りに視線を投げて、


 「……マジかよ」


 愕然とする介旅が見つめるのは、何一つ変わらずそこに立つ麦野の姿。

 いや、正確に言うならば変化はあった。

 彼女の眼の前。
 飛来した瓦礫と彼女の、ちょうど間に挟まるように。

 濁った白色の『盾』が顕現していた。

 直径一メートルほどのそれからは、使用者を危害から守るといった防御性は感じられない。
 むしろ、危害を完全に粉砕するといった攻撃性を象徴する『盾』だ。


 「ったく……これだからガキは困る。早漏過ぎんだよ」


 言いながら、数百キロの瓦礫を塵一つ残さず破壊した盾を解き、介旅へ向き直る。

 彼が向けられた指先を避けるように首を振ったのは、ただのカンだった。


 瞬間。

 一筋の閃光に、揺れた髪の端が綺麗に消し飛ばされる。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 18:26:26.71 ID:6oc6b0yZ0<>

 「あれー?まさか外れるとは思ってなかったんだケドな。
  やっぱもうちょっと調整しないと当たるモンも当たらないか……?」


 ギリギリのタイミングに冷や汗をかく介旅だったが、
 麦野の方は外れたことに納得がいかない様子で、少し考えるような仕草をすると、


 「……あ、そーいやこんな諺があったっけ」


 ニヤリ、と笑う。

 見ようによっては美しくも見えるであろう笑顔。
 だがしかし今の状況では、死神の微笑みにしか見て取れない。

 彼女の周囲に、数個の光球が浮かぶ。


 「ーー下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる、だっけ?」

 「……ッ、させない!」


 不穏な響きに、美琴が電撃を放ってこれを阻止に出る。

 だが、それは麦野の元には届かず、またもや避雷針に妨害される。


 (……!しまった、それがあったか……!?)


 自分の誤算に舌打ちする美琴だったが、時は既に遅い。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 18:42:03.57 ID:6oc6b0yZ0<>

 光球が、まとめて炸裂する。

 その全てから溢れ出る閃光が、介旅へと殺到した。


 「が、ああぁあぁぁあぁッ!?」


 腕を、脇腹を、脚を。
 服ごと肉を抉り取られていく激痛に顔をしかめ、叫び、


 そこで、介旅は気付く。


 (……?生き、てる?)


 そう。

 あれだけの数の閃光を受けて、何故か一本も急所に直撃していないという事実に。

 単純に、運が良かったでは済まされない。

 となれば、考えられるのは二つ。

 わざと外したか、外から妨害が入ったか、だ。

 そして、あの状況で外す意味は皆無。

 ならば、後は一つしかない。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 18:43:55.50 ID:6oc6b0yZ0<>


 ガン!!と、施設の非常口の扉が蹴破られる。

 十メートル以上も吹き飛んだ扉がフレンダに向かうが、
 麦野はそちらに目をやることをしない。
 アルミ性の軽い扉程度なら命の危険は無いと踏んだのだろう。

 慌てて避けるフレンダを尻目に、麦野は非常口方向に目を向ける。


 「チッ……次から次へと鬱陶しい!」


 牽制に放たれた閃光が、その姿を照らし出す。
 
 そこにいたのは、




 「……ふぅ。ギリギリセーフって感じ、かな?
  初矢お兄さん、まだ生きてるよね?」


 「な……那由他、ちゃん!?」




 金髪のツインテールとオッドアイに、危険物の詰まった赤いランドセル。


 まさしく、もう一方の施設に向かった筈の木原那由他そのものであった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/20(火) 18:46:31.01 ID:6oc6b0yZ0<> 終わり

那由他ちゃんは何気にこのスレで一番バトルシーンが多くなる予定です
戦う女子小学生なのです


……あ、全く関係ありませんが
『小五』と『ロリ』を組み合わせると『悟リ』になりますね <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/20(火) 18:59:05.61 ID:jMQtrINTo<> 悟れ悟れよサトリナよ

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/12/23(金) 10:37:03.10 ID:VTEntYMyo<> 乙乙
介旅たんかっこ良くなっちゃって… <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/23(金) 12:50:21.91 ID:MPqVgzOjo<> 乙

なゆたんの能力がよくわからん俺だが、超期待 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 17:14:51.28 ID:uRHFrm7K0<> こんにちは

本日は『神の子』の誕生日です
家族と共にお祝いしましょう


それでは投下します
前回続きより <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 17:21:29.51 ID:uRHFrm7K0<>

 「誰だか知らないけど……私の邪魔をしたってことはブチ殺して構わないわね?」


 突然割って入ってきた那由他に、いち早く反応したのは麦野だった。
 相手の出方を伺うことさえもなく、いきなり光線を発射する。


 だが、それが那由他の細身な体を貫くことはない。

 本来の狙いから僅かに外れた光線が、彼女の頭上十数センチの位置を通過していく。


 「……あん?」


 まさか外れるとは思っていなかったのだろう、麦野が怪訝な顔をすると同時、那由他は動く。

 ダン!!と驚異的な脚力で床を蹴ったその体が、一直線に麦野へと駆ける。

 だが麦野とて、安易に接近を許すほど甘くはない。
 光線の乱射によって、那由他の接近を防ごうとする。

 が、


 「クソが!何で当たらねぇんだよ!?」


 恐らくは正確に狙いを付けているであろう光線は、
 那由他の皮膚を削ることはあっても、直撃することはない。


 「ッ……ハァッ!!」


 身を削っていく光線をものともせず、数秒で麦野の懐に入った那由他が、正拳を放つ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 17:39:34.62 ID:uRHFrm7K0<>

 「結局、んなことさせると思った?」

 「ッ!」


 だがそれが麦野の鳩尾に決まる直前、横から割り込んで来たフレンダの飛び蹴りが炸裂した。

 那由他の体が、数メートル弾き飛ばされる。


 「ナイスだ、フレンダ。ギャラ一割増してやるよ」

 「そんなに余裕持ってていいの?」

 「は?」


 麦野が眉を潜めた直後、美琴が操った瓦礫が彼女の元に飛来する。


 「チィッ!」

 「その子に気を取られて、私たちがいるのを忘れてんじゃないわよ」


 慌てて盾を作り、瓦礫から身を守る麦野。
 その顔からは、徐々に余裕が消えつつあった。


 「……滝壺ォ!『使え』!!」


 叫び、麦野は何かを投げる。

 シャープの芯のケースのような物を受け取ったのは、眠そうな瞳の少女だ。

 そのケースを見た那由他の表情が、途端に険しくなる。


<> 夕食のため中断 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 17:51:18.89 ID:uRHFrm7K0<>

 「『体晶』……ッ!」

 「!へぇ。やっぱり知ってたか。
  アンタも私らと同じ『闇』の匂いがするものねぇ」

 「……そんなモノを平気で使う人と、一緒にしないで貰えないかな」

 「言ってろ」


 言葉と同時、またもや閃光が炸裂する。

 先程まで何度もいなし、かわしてきた攻撃。
 それだけならば、何の驚異にもならないハズだった。

 だが、


 「ッ!!?」


 那由他が全力で首を振らざるを得なかった理由は単純。
 光線の太さが、先程とは比べものにならないほどに増していたからだ。


 「ハッ。アンタはどうやら、
  私の『原子崩し(メルトダウナー)』の軌道を逸らせるみたいだからね。
  逸らしても当たるサイズにすりゃ、避けるしかないでしょ?」

 「しょ、正気……!?そんな出力で能力を使い続けられる訳が無い、すぐに枯渇しちゃう!」


<> 遅くなりました再開 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 21:15:13.54 ID:uRHFrm7K0<>

 『AIM拡散力場』という、能力者が無意識に放出している力がある。

 発火能力者(パイロキネシスト)の周辺は気温が上がり、
 風力使い(エアロシューター)の周囲では風が吹きやすい、というように。

 これは能力者の『自分だけの現実』が外界に影響をもたらして発生するものであり、
 それに干渉することが出来れば、ゆくゆくは能力者の『自分だけの現実』を組み替えて、
 能力の強化・変更から多重能力(デュアルスキル)の可能性まで視野に入れることが可能になる。

 実際に、これを利用して能力者が安易に能力を使用できないようにする機械もある。

 那由他の『能力障害』は、このAIM拡散力場に『見て、触る』ことが出来る能力だ。
 これにより、能力の組み替えとまではいかずとも、相手の能力を簡単に暴発させることが出来る。

 しかし、実は彼女の本質はそこにはない。

 重要なのは、『触る』ではなく『見る』ことだ。

 力の流れを見ることで、相手の能力の種類や強度までを読みとることが出来る。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 21:21:39.25 ID:uRHFrm7K0<>

 その彼女が「枯渇する」と言ったのだから、麦野は相当無理をしているということになる。
 だが、彼女は自らの負担など全く見せず、悠々と口を開く。


 「つーかさ、何か勘違いしてるのかしら?」

 「……?」

 「別に私は、常にこの出力で戦おうって言ってるわけじゃないのよ?」

 「何、を……?」


 那由他が疑問を口にしきる前に。
 変化は、突然訪れた。

 薄手のシャツとピンクのジャージを纏った滝壺と呼ばれた少女が、
 麦野から投げ渡されたケースの中の粉末を口にした。

 それだけのはずだった。

 たったそれだけで、一つのアクションで。
 少女の雰囲気が、ガラリと変わる。


 「戦闘範囲である施設内の全能力者の検索を開始。
  電撃使い、強度5。推定能力名、『超電磁砲』。
  電子使い、強度5。推定能力名、『原子崩し』。
  AIM干渉系、強度3。推定能力名、『能力障害』。
  無能力者のピックアップは省略」

 「なッ!?」

 「……なるほどね、そっちのお姉さんが『能力追跡(AIMストーカー)』か」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 21:32:16.95 ID:uRHFrm7K0<>

 能力を言い当てられ、驚く美琴に対し、那由他は納得したように言う。
 まるで、最初からその可能性を予測していたかのように。


 「さーて、じゃあ麦野お姉さんから問題。
  ウチの大能力者・滝壺ちゃんと、たかが強能力者のテメェ。
  同系統の能力ならば、強いのはどーっちだ?」

 「……そういうこと、か」

 「わかったかにゃーん?
  つまりはこういうコト」


 と、麦野は一度言葉を切って、


 「テメェの妨害なんざ、もう効かねぇってなぁ!!」


 「「ッ!!」」


 直後だった。

 美琴と那由他、両名を狙って。
 何本もの光線が、発射された。

 美琴は壁に張り付いて避けるが、
 そのような便利な能力が無い那由他は、思い切り横に飛び退くしかない。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 21:49:25.27 ID:uRHFrm7K0<>

 「オラオラオラ!避けてんじゃねぇぞオォォォ!!」

 「ッ!固まっちゃダメ!
  美琴お姉さんはそっちから回り込んで!!」

 「アンタ、誰だか知らないけど敵では無いのよね!
  出来れば協力してくれる?」

 「最初っからそのつもり!」


 次々と撃たれる光線を避け、徐々に美琴とのコンタクトも取りながら、那由他は思考する。

 このままでは勝てない、と。

 元々、『原子崩し』は狙いを定めるのに時間が必要な能力だった。
 だからこそ、強能力者の那由他でも付け入る隙があったのだ。

 だが、その妨害作戦もより高度な能力に阻まれてしまった。

 頼みの綱は美琴だが、彼女はここ二日で相当の体力を消耗している。
 恐らく、発揮できるポテンシャルは本来の半分もあるかどうかといったところだ。

 では、どうすればいいのか。

 そこまで考えて、那由他はそっと微笑む。


 (……さて、初矢お兄さん。このピンチを凌いでこそ、本物のヒーローだよ)


 彼が、自分の乱入のドサクサに紛れて出ていったのを、那由他は見ていた。

 そして同時に、信じていた。


 (……絶対、助けに来てくれるよね!)


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 21:50:17.54 ID:uRHFrm7K0<>

 確証など無い。

 事前に打ち合わせた訳でもない。

 だが、那由他は確信していた。


 彼は逃げたのではなく、勝つための準備をしているのだと。


 そして彼はきっと那由他を信じて、時間稼ぎを任せているのだと。



 (おっけー。任せてよねお兄さん。
  ヒーローは遅れてやってくるんだもんね)



 激しい戦闘の中、いつ致命傷を負ってもおかしくない攻防の中で。

 しかし明確に笑みを浮かべる那由他は、自分の体内のとある機械を操作する。



 (さてさて、じゃあお兄さんに特別サービス。
  ヒーローの条件をもう一個持たせてあげるよっ!)



 義眼と耳に、軽度のノイズが走る。

 気にも留めず、那由他はランドセルから拳銃を取り出した。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/25(日) 21:51:20.19 ID:uRHFrm7K0<> 投下終了

一つ、大きなツッコミどころがあります
気付いた方は、モヤモヤするでしょうがスルーで
物語終盤には恐らくスッキリするかと

那由他ちゃんの異常な信頼度も、理由があったりなかったり <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/25(日) 22:31:34.56 ID:BlfFSE1oo<> 乙

これはいい伏線 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/12/26(月) 02:54:53.03 ID:ZYvoUJKxo<> 乙乙
介旅たんいつの間に… <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 21:02:49.15 ID:FYxTnv/v0<> こんばんは>>1でございます
最近、投下頻度が落ち気味で申し訳ないです

では投下します
介旅サイド+other <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 21:04:06.54 ID:FYxTnv/v0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……っ、はっ、はっ、ハァッ」


 製薬工場内、とある通路にて。

 介旅初矢は、傷ついた四肢を引きずりながら走っていた。

 それはもちろん、この危険極まりない戦場から早く抜け出すためーーではない。


 (……クソッ。こんなことなら、日頃から運動しときゃ良かった……!)


 息を切らしながらも、介旅は止まらない。
 無い体力を振り絞って、全速力で駆ける。

       ・・
 (……早く、アレのところに行かないと……)


 介旅の脳裏をよぎるのは、ハッキングで手に入れた施設の図面。
 その中にあった、逆転のきっかけとなる『とある機材』。

 上手く使えば、介旅初矢(レベル2)でも麦野沈利(レベル5)に勝てるかもしれない、
 最後の切り札(ジョーカー)となるべきそれの在処。

 驚くほど鮮明に動く思考に、介旅は苦笑いして、


 (これは……アレだよなぁ。
  非現実的すぎて、逆に恐怖感が湧いてこない、みたいな)


 ゲームの中か何かと、勘違いしているのだろうか。

 だとすれば、ストックは1機、セーブは無し、のかなりシビアなゲームだ。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 21:12:33.39 ID:FYxTnv/v0<>

 (その上、主人公の特殊能力は雑魚、敵キャラは全攻撃が一撃必殺、と。
  はは、チートでも使わないとくぐり抜けられないぞオイ)


 気楽に考えてみるが、現実世界に反則的な裏技(チート)なんて存在してはいない。
 あるのは、圧倒的な戦闘能力(ステータス)の差だけでしかないのだから。


 (まぁそこで、強化アイテムの出番って訳だよな)


 チートを使わずに、愕然とするレベル差を乗り越える。
 そのために必要なのは、ゲームバランス調整の鍵(アイテム)。

 だが残念なことに、この世界(さんじげん)は、
 クリアするために作られた世界(にじげん)とは違う。

 道の無い空中に隠しブロックは用意されていないし、
 不死身の魔王を封印する勇者の剣も無い。

 最善を尽くしても、何とかなるとは限らない。
 その事実を噛みしめながらも、介旅は思考を止めない。

 止める理由も、意味も、何一つ無いのだから。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 21:29:19.66 ID:FYxTnv/v0<>

 (……考えろ。『アレ』を使っても、勝てるとは限らない。
  むしろ、攻撃する前にこっちが撃ち抜かれる可能性の方が高いんだから)


 かといって、気付かれずに仕掛けられるような攻撃でもない。

 ひとまずは自分の武器を見直そうと、介旅は己の所有物を思い出す。


 (鞄の中には、財布・音楽プレーヤー・大量のスプーン・ライターと煙草……は黄泉川の。
  この硬いのは……セブンスミストのオッサンから貰った紙袋、か。
  ポケットに入ってるのが携帯withストラップ。後は眼鏡と身に着けてる服、と)


 やはりというか当然というか。
 武器になりそうなものは、一つたりとも入っていない。
 正確にはスプーンが武器になるとはいえ、少々心許ないような気はする。

 いや、例えマグナム拳銃が入っていたとしてもあの相手の前では頼りないが。


 (この中身を使って、出来るだけ隙を作る。
  その間に『アレ』を仕掛ければ……何とかクリア出来そうだな)


 何とか、とは言ったものの、成功率は相当低いだろう。
 確率論にしてしまえば、一撃必殺で三タテできるというのと同じぐらい。


  <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 21:57:31.90 ID:FYxTnv/v0<>

 (何かがないか。思い出せ。
  この中で、使えそうなモノはーー)


 酸欠で、徐々に思考が麻痺してくる。
 それでも介旅は、走り続ける。


 やがて、目的の物が見えてくる。
 ダン!と床を踏み鳴らし、そこで介旅はとある会話を思い出す。


 「……ッ!はっ、あっ……たっ!!、はっ、はぁっ……」


 走り終えるのと、思考がまとまるのがほぼ同時。


 さらにいうならば、それと同時に、彼の携帯が着信を示した。


 そこに表示されていたのはーー、





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 22:01:46.73 ID:FYxTnv/v0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (……おかしい。絶対に有り得ないわ。
  この条件でこの実験をやって、事故が起こるはずがない。
  未開拓のAIMに関するものとはいえ、単なる収束実験でこんな……)


 薄暗い資料室で、芳川桔梗は机に向かい、用紙にガリガリと難解な計算式を書いていた。

 その結果が、先程の思考の通り。

 木原数多の死亡事故には、不可解な点が多すぎるのだ。


 (……これは、一度『彼ら』に話を聞いてみた方が……
  いや、まずは『上』に掛け合って……?)


 と、その違和に対し、芳川が具体的な方針を決めようとしたところで、


 「……何をやっている、芳川桔梗」

 「……あら、天井亜雄。どうしてここに?」


 音もなく部屋のドアを開け、室内に入ってきたのは同僚の天井亜雄。
 ボサボサの黒髪以外に、特徴らしい特徴のない中年の男だ。

 天井は、面倒臭そうに口を開く。


 「そんなもの決まっている。いちいち言わないと分からないのか?」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 22:07:19.90 ID:FYxTnv/v0<>

 「あら。もしかしてデートのお誘い?
  嫌ではないけど、できたら紫外線は浴びたくないわね」


 冗談めかして返す芳川だったが、その手にはじっとりとした感触がある。

 分かっていた。
 こんなところに保管してある時点で。

 ・・・・・・・・・・・・・
 深入りしすぎればどうなるかなど、百も承知だった。

 言わずとも、最悪の結末を想像してしまう。


 天井は、バカバカしいとでも言わんばかりの表情を作り、


 「あぁまぁ、似たようなものだろうな。お前には、私に着いて来て貰うのだから」


 それに喜べ、と天井は一旦言葉を切ってから、



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 22:20:56.21 ID:FYxTnv/v0<>




 「お前が嫌いな紫外線に、以後一切出会わなくて済むぞ。
  魅力的なプランじゃあないか」




 言葉と共に、芳川の額に黒い金属が押し当てられた。



<> おまけ? 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 22:23:31.22 ID:FYxTnv/v0<>



 『芳川桔梗を拘束、か。君も大胆な手段に出たものだね』

 「この場合はしょうがないでしょウ。彼女は知り過ぎましタ」

 『しかし、一体どのような理由をでっちあげたんだね?
  あの資料は、閲覧フリーだったと記憶しているが』

 「でっちあげるとは人聞きの悪イ。
  なに、彼女が仕事で犯したちょっとしたミスを、わざと大きな事態に発展させ、
  そのミスが混乱を招くための悪質なものだったとしたまででス」

 『……強引すぎやしないかい?』

 「こうでもしないと危険だったんでス。
  例のあのことが、万が一ばれたら……」

 『むぅ……仕方がないことか。なんせーー』





 『木原数多が、事故死でなく他殺されたなどと。
  絶対に、知られてはならないのだからな』





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2011/12/30(金) 22:26:00.46 ID:FYxTnv/v0<> 投下終了ー

捕まっちゃいました芳川さん

裏では、けっこう不穏な空気が流れてます <> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/31(土) 08:41:25.91 ID:HnlJpERxo<> 芳川が働いてやがる……!

乙 <> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/31(土) 19:37:07.57 ID:XN3rPEBbo<> 乙ー <> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2012/01/02(月) 08:37:28.39 ID:uBfrHPsAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/02(月) 11:35:38.18 ID:mAzfTQ9yo<> 乙乙
芳川が調べ物をしているだって……? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 22:55:44.68 ID:gy4JhyD90<> 皆様あけましておめでとうございます!
……元旦は過ぎたけど三が日だからセーフ。うん


しかし、新約四巻の発売決定早いですね。さすがはかまちー
三人の木原の中に、那由他ちゃんがいたら嬉しいなーとか期待する日々です
……ただ、このssの那由他ちゃんの設定がおかしくなってしまう可能性も心配ではあったり


>>748、>>751
芳川さんがダメになったのは黄泉川せんせーに養って貰ってからなので
現時点ではまだニートではないです。まだ。現時点では。


それでは2012年初の投下です
美琴&那由他サイドからー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:00:50.12 ID:gy4JhyD90<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 介旅が急ぐ間にも、一方では戦局が動きつつあった。

 『アイテム』の三人対、美琴と那由他。
 その構図が、大きく揺らぐ。




 パパァン!!と、軽い炸裂音が連続した。

 那由他の手の中から。
 その中に握られた、小型の拳銃から。


 「ッ……!マズ、」


 歯噛みしたのは、起爆ツールを取り出していたフレンダ。
 ただし、その理由は被弾ではない。


 「美琴お姉さんの電撃を妨害してた避雷針。
  ただの金属片じゃない、精密機械なら……コレで壊せたハズだよね!!」

 「ッ!コッチ来い滝壺ォ!!」

 「食っっ……ら、えぇぇぇぇ!!」


 空になった二発入りの弾倉を投げ捨て、那由他が笑む。
 同時に、二人の超能力者の叫びが交差した。

 直後、億に達する電圧を伴った電流が、轟音と共に空を切る。


 「ちょっ!麦野、私も庇ってーーぎゃんっ!?」


 麦野とフレンダ、両名を狙って放たれた雷の槍。
 その片割れが、美琴の目測通りにフレンダの胸を貫いた。

 確かな手応えに、美琴の顔に僅かながら余裕が戻る。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:11:05.08 ID:gy4JhyD90<>

 だが、


 「チッ!早々にヤられやがってクソが!!」

 「なっ……!?」


 麦野の手の動きに合わせて、電撃が曲がる。
 強制的に、曲げられる。

 それを見た瞬間、美琴の表情は再び困惑に染め上げられる。

 カウンターに放たれた光線を辛うじて避け、美琴は那由他の近くまで跳び移る。


 「ちょっと、どういうこと!?ビームを撃つだけじゃなくて、電撃を曲げるなんて!
  一体どうなってんのよアイツの能力は!?」

 「アレは『原子崩し』!詳しい説明は省くけど、要はもの凄く特殊な電子線!!
  壊せない物体は無いって考えた方が良いと思うよ!
  さっきのは、電子で電流を誘導したんじゃないかな!!」

 「何でも壊せるって……さっきの盾も同じ原理なんでしょ!?
  だったら、最強の盾と矛を兼ね備えてるみたいなもんじゃない!!
  何か弱点みたいなものは無いの!?」

 「一応、照準が不正確な上に弾幕を張れないっていうのは弱点かな!!
  とはいえ、それをカバーする道具類も多分……っ!」

 「お喋りは……そこまでだガキ共ォォ!!」


 那由他の言葉を遮るように、その耳元を原子崩しが掠めていく。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:23:44.09 ID:gy4JhyD90<>

 「……ッ」


 痛みというよりは熱に近い感覚。
 生身の部位であったために、少量とはいえ流血は避けられなかった。

 更に。
 予期していた悪い事態が、那由他の視界に飛び込む。


 「……!それ、まさか!?」

 「おーおー。試作品らしいけど知ってんだ?」


 ピン、と軽い、ほとんど聞こえないような音。
 麦野が、トランプのカードのような板を上に弾き上げた。

 その次の瞬間。

 ゴッシャァァァァ!!と、何十もの光線が四方へと拡散する。


 「っ……やっぱり、『拡散支援半導体(シリコンバーン)』!」


 転がるようにして光線の雨から逃れた那由他は、冷や汗をかきながら呟く。

 学園都市の、得体の知れない新技術の塊。
 薄く堅いそれが、オリジナルの原子崩しを幾十もの光線の束に変化させたのだ。


 「ーー、これでもっっ!!」

 「鬱陶しいわね」


 美琴が磁力で操る鉄塊を、見やりもせずに消し飛ばす。

 そうしてから麦野は、今度は美琴の方にプレートを弾く。


 「ナメてんじゃないわよ甘ちゃんが」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:35:38.36 ID:gy4JhyD90<>

 言葉と共に、閃光の渦が美琴を襲う。

 しかし、


 「ナメてんのは……そっちなんじゃない?」

 「!?チィッ!」


 その中心に立っていたにも関わらず無傷の美琴が、返す刀で電撃を放つ。
 予想だにしていなかった反撃に、麦野の頬が軽く引き吊った。


 「テメェ、一体どういう理屈で……!」

 「あら、アンタが私の電撃を曲げたのと同じ要領よ?」

 「……ハッ!成程な。じゃあ出力を上げても受けきれるか?」

 「望むところ!」


 短い会話の応酬の後、超能力者が激突する。

 原子崩しが飛び、電撃が舞い、光線が反れ、電流は曲がる。

 それはさながら、大自然の激突にすら見えた。


 (っ……!悔しいけど、私の干渉限界を越えてる……!)


 歯軋りする那由他。

 だがその原因は、己の不甲斐なさだけではない。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:43:03.48 ID:gy4JhyD90<>

 白が蹂躙し、紫が受ける。
 蒼が引き裂き、白が止める。

 鮮やかな攻防を見つめ、いつでも反応できる準備をしながら、那由他は思考する。


 (マズイ、かも。このままだと……間違いなくスタミナ勝負になる)


 彼女が懸念しているのは、美琴の体力切れだ。

 全快の状態ならまだしも、食事も碌に摂っていないであろう状態で
 暗部の人間相手にスタミナ勝負を仕掛けたところで、結果は見えきっている。


 (……向こうのために体力は取っておかないとだけど……
  そうも言ってられないか……?)


 と、彼女がダメージ覚悟で銃器『暴れ馬』を取り出そうとしたところで、





 「(那由他ちゃん。悪いけどコレ、持っててくれ。後は……僕がやる)」





 ポン、と頭に置かれた手の感触に、思考が全て持って行かれた。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:43:58.58 ID:gy4JhyD90<> 投下終了〜

滝壺さんは疲労のため無口なだけです
決して絡ませることが出来なかったわけではありません
フレンダの扱いが雑なのは仕様です


次回からはアイテム編クライマックス。ちょいちょい伏線回収します

では皆様、今年もよろしくお願いします <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/03(火) 23:46:53.82 ID:gy4JhyD90<> 追記

冒頭で那由他ちゃんが使ってるのは、普通の拳銃です <> 以下、あけまして<>sage<>2012/01/03(火) 23:50:35.44 ID:cSPur0MTo<> うむ乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/06(金) 19:02:17.94 ID:6BHhBuO/o<> 乙乙
介旅お兄さんやっと来たか <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 00:27:15.09 ID:5tBUqVZa0<> すみません、少々間が空いてしまいましたね
ちょっと予定が込み合っていたもので


それでは投下です
VSアイテム後半、スタート <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 00:37:05.83 ID:5tBUqVZa0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 介旅は、迷わなかった。


 麦野の原子崩しが、徐々に美琴に迫るのを見て。

 美琴から迸る電流が、目に見て分かるほどに弱々しくなるのを見て。

 それ故に、彼は躊躇をしなかった。


 主人公(かいたび)は、魔女(むぎの)へと走り、飛びかかる。


 肩には重い鞄を引っ提げたままで。


 「おおォぉォォぉ!!」



 闇雲に、殴り付ける。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 00:42:28.90 ID:5tBUqVZa0<>


 グシャッッッ!!と、肉の潰れる音が響いた。


 ただし、それは介旅の握った拳の先から、ではない。


 介旅の腹。

 そこにめり込んだ、麦野の後廻し蹴りが。



 「がっ……はっ……!!」


 「……ったく、ドイツもコイツも見くびりやがって。
  私達『闇』が、その程度の不意討ちを食らうとでもおもってんのかにゃーん??」



 ミシ、ミシ……と己の肋骨がきしむ音を、介旅は確かに聞いた。

 だが、それも一瞬。


 体が浮き、数回のバウンドをしながら壁まで吹き飛ばされる。


 鞄が、肩から外れ、麦野の前方へ飛んでいく。

 財布に入れていたのだろう、小銭が一面に巻散らされた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 00:54:38.12 ID:5tBUqVZa0<>


 「ハッ!甘ぇんだーー」


 あまりにも情けなく蹴り飛ばされた介旅に、麦野は嘲笑を投げかける。
 想像だにしていなかった非力さが、滑稽でたまらないといったように。


 「……、よ?」


 だが次の瞬間、その表情は改められることとなった。


 原因は、大きく二つ。


 一つは、奇襲を失敗したにしては一ミリ足りとも悔しさを見せない彼の表情。


 そして、もう一つはーー、



 「……滝、壺?」



 横方向数十センチほどの位置でおきた、爆発音。

 同時に、どしゃりと何かが倒れるような音。


 その二つから状況を把握できないのなら、暗部組織の一員である資格は無い。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 01:00:23.15 ID:5tBUqVZa0<>


 「……まさか……!」


 不安を振り払うように、振り返る。


 そこにいたのは、



 「テ、メェ。何を、しやがった!!?」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 まるで何か大きな衝撃を受けたかのように、床に吸い込まれていく滝壺理后。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 01:12:22.79 ID:5tBUqVZa0<>


 麦野には知る由もない。


 介旅が、殴りかかると同時に上方に能力を行使したスプーンを放り投げていたことを。

 それが滝壺の無防備な背中に触れるのに合わせ、思い切り起爆させたことを。


 だが、

 彼女にとって、そんな細かい事象はどうでもいい。


 彼女に必要な情報は、ただ一点。



 「へぇ……やってくれんじゃないの、童貞野郎」



 こんな、何の力も無い人間が。

 自分の組織(プライド)に、大きな損害を与えたこと。

 その元凶を、迅速に処理する方法。



 「ーー本気で潰してやろうか」



 今一度、超能力者が殺意を剥き出しにする。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 01:26:19.99 ID:5tBUqVZa0<>


 「……望むところだ、オバサン」



 その殺意を、身体中で感じる介旅は。

 ともすれば恐怖に竦み上がってもおかしくないにも関わらず、冷静だった。


 恐れが無い、訳ではない。

 現に、足は震えているし、冷や汗もじっとりとかいている。


 しかし。


 それより先に、気付いてしまったから。



 (本気のコイツと戦って、勝てば。僕は御坂を救える)



 受けて立たぬ手はない。

 売られた喧嘩は買ってしまえ。


 布石は打った。

 残すは、詰みまで持って行くのみ。



 今ここより、介旅初矢の逆転劇が幕を開けるーー!


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 01:26:59.26 ID:5tBUqVZa0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……初矢、お兄さん」


 麦野沈利へ走る介旅を見、那由他は義眼のカメラと集音機の電源を切る。

 それぞれ、テレビ電話を利用し、介旅に現在の状況を逐一伝えていた機材だ。



 (……ふふ。ヒーローの絶対条件『タイミングのいい登場』はクリア。
  お兄さんがどんなヒーローになってくれるのか、楽しみだなぁ)



 期待に、目を細めながら。

 そこに、かつて彼女のヒーローであった男を当てはめて。

 那由他は、にっこりと笑った。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/09(月) 01:27:31.06 ID:5tBUqVZa0<> 投下終了

深夜帯は寝落ちしそうで怖い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/01/10(火) 09:53:40.59 ID:UlpoGn0AO<> 滝壺さんあっさりだったな…これも伏線か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/11(水) 17:20:42.83 ID:AUb9pLsAo<> 乙乙
介旅たんの能力が初めて役に立った気がする <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 22:15:00.54 ID:wIDpHJ5a0<> >>771
後々補足は入れるつもりですー
伏線というにはちと弱いかもですが

投下しますっ
続きからっ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 22:18:52.00 ID:wIDpHJ5a0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (オカシイ……AIM拡散力場を感知する滝壺が、よりによって能力で不意打ちを受けた?
  どんなカラクリを……いや、単に『体晶』の過剰摂取のせいか……?
  まぁどっちにせよ、ブチコロシ確定だにゃーん)


 滝壺の負傷に少なからず戸惑うも、麦野沈利は揺るがない。
                   さつい
 それこそ「いつも通り」の、ありふれた感覚で。

 標的(ターゲット)を、撃ち抜く。


 空間を、白光が一閃した。

 直後に、じゅう、と悪臭が立ちこめる。
 『原子崩し』に融かされた建材の臭いだ。


 「……チッ」


 己の能力の強度証明である筈のそれを嗅ぐも、しかし麦野の表情は優れない。

 顔をしかめざるを得ない異臭のため、ではない。


 確実に胸を貫く軌道で撃った『原子崩し』が。

 介旅に、掠りもしていなかったことに対して、だ。


 理由など、どう考えようが一つしかない。


 「やってくれんじゃねぇか、チビガキが!」


 言葉と同時、標的を変えた『原子崩し』が那由他に襲いかかる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 22:36:28.61 ID:wIDpHJ5a0<>


 「ッ!初矢お兄さん!」


 那由他は手に持つ紙袋を介旅の方に投げると、転がるようにしてその一撃を避ける。

 光線は那由他の柔肌ではなく、床に穴を穿つに留まった。


 「チョコマカと鬱陶しい……!
  テメェはゴキブリかってのッ!!」

 「生憎と、これが『木原流』なんでねっ!」


 距離を詰めようとする那由他に、当たらぬことは承知で
 牽制の『原子崩し』を撃ち込む。

 華麗なステップを踏むように閃光から逃れる那由他を見ながら、同時に麦野は思考する。


 (第三位はもう、スタミナ切れで使いものにはならないハズ。
  向こうのメガネは問題外。ある程度不意打ちを警戒しときゃ何の驚異にもなりゃしねぇ。
  ……となると、後はコイツだが……)


 自らの負担も省みず、徐々に連射のペースを上げていく。

 能力の流れを『視』られているためか、無駄のない動きで正確にかわされる。
 だがその姿に、麦野は一つの確信を得た。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 22:44:37.97 ID:wIDpHJ5a0<>

 (コイツも……体力の限界が近い!)


 表情はポーカーフェイスで誤魔化せても、額の脂汗はどうしようもない。

 加えて、先程からほとんど攻撃を反らしていないことを考慮すれば確実だ。

 美琴と同じく、那由他にも『電池切れ』が迫っている。


 「オラどうした、張り合いがねぇぞ!!」

 「っがっ!!」


 光線に気を取られた隙を突き、瞬時に接近した麦野の蹴りが那由他の鳩尾に炸裂する。
 多少なりとも体術の腕はあったようだが、不意を突かれて対処出来るような一撃ではない。

 ガハゴホと咳き込む那由他の首を、容赦なく鷲掴んで吊り上げる。


 「さぁーてゴキブリちゃんはどんな死に方がお好みでちゅかー?
  つっても、頭と体がサヨナラコースしかないんだけどさぁ!!」


 後は、そのまま『原子崩し』を行使すれば終わり。
 苦しみもなく一瞬であの世へ送ることが可能だ。

 麦野は首を握る手に力を込めて、




 「……あ?」




 そこで彼女の嗅覚は、奇妙な臭いを察知した。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 23:03:56.01 ID:wIDpHJ5a0<>

 今までに嗅いだことのない、という意味での『奇妙』ではない。


 だがそれはあまりにも、この場にそぐわない臭い。


 首を握る力は弱めぬまま、麦野は後ろを振り返り、




 「…………は?」




 そこで再び、困惑する羽目になる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 23:15:22.82 ID:wIDpHJ5a0<>


 彼女が感じたのは、煙の臭い。


 彼女自身は吸わないが、路地裏の不良からはよく漂うそれ。


 その出所は、




 「悪い、那由他ちゃん。二回も時間稼ぎを任せちゃって」




 介旅の手の中の、煙草だった。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 23:21:32.03 ID:wIDpHJ5a0<>


 「……、っっ余所見は、良くない、よっ!」

 「っ!しまっーー」


 思わぬ事態に、無意識に力が抜けてしまったのだろうか。
 体に力を取り戻した那由他の蹴りを避けるために、仕方無く手を放してしまう。

 形勢を取り戻そうと距離を取った瞬間、背後数メートルから声。


 「ほら、危ねぇぞ!」

 「ッ!?」


 見れば、空中二メートルの辺りには放り投げられた煙草。

 そして、介旅が持っているのはーー、


 「……ははっ、」

 「……なるほど、テメェの狙いは……っ!」

 「今時珍しいよな、竹製の水鉄砲なんてさぁ!」


 中身は勿論、液体。
 そして宙には、火の点いた煙草。

 ならば。

 そこから導き出される答えは、



 「爆発で吹き飛ばそうってかぁ!!」


 答えはなく、代わりに爆薬ーー正確には、ライターの燃料ーーが発射される。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 23:35:16.77 ID:wIDpHJ5a0<>


 液体が、空中の煙草に触れる。
 途端に、それは燃え上がり、紅蓮の爆炎となる。


 迫る朱の面。

 しかしその先にいながら、麦野は至極冷静だった。

 なぜなら、


 (……あらゆる物体を消し飛ばす盾。ならば炎で攻めればいい、とでも?
  おめでたいゲーム脳だな、燃焼だって結局は分子の運動だ。
  ならそれを『原子崩し』で吹き飛ばせない訳がねぇだろうが!!)


 思考とほぼ同時に、麦野は能力を行使する。

 ただし、守るための『盾』ではなく。
 貫くための、『矛』だ。


 (高出力で、私の体が通るサイズの穴を作りゃダメージは負わねぇ!
  テメェ如きの攻撃に、防御に移る必要なんざーー)


 ない、と、考えようとしたところで。
 麦野は、見た。

 介旅が背を付ける壁、そこから。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 天井まで続くテープのようなものに沿って、壁を駆け上がる炎を。


 (ーー!アイツ、ハナからこれをーー!)


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 23:36:27.40 ID:wIDpHJ5a0<>

 介旅は注射器のような要領で、片手で水鉄砲を使っていた。

 ならばその時、もう片方の手はーー?

                     ・・・
 煙草を投げた直後に、その手はポケットからある物を取り出し、壁に回されていた。

 そしてその物とは、ライターの着火部分に使われる装置。
 ・・・・・・・・
 電気式の着火装置。
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 それはつまり、フレンダの仕掛けたテープ爆薬を着火させることが可能であることを示す。



 (クソが!ふ、れんだぁぁぁぁ!!)



 テープの先など、見るまでもない。

 フレンダが美琴に攻撃した後にも、天井は一部を除いて健在だ。

 そして、麦野がいるのは当然、その『一部』の真下ではない。


 頭上からは瓦礫。
 前方からは炎の壁。

 どちらも致命傷には間違いなく、
 しかし『原子崩し』で防げるのはタイミング的に片方が限界。


 決断の間は無い。

 二つが同時に、麦野を襲う。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/11(水) 23:39:29.27 ID:wIDpHJ5a0<> 投下終了

なんだかんだでほとんど那由他ちゃんのおかげ

……『今の時点では』 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/12(木) 14:45:51.44 ID:TDMwdbT1o<> 乙乙
介旅お兄さんカッコいいぜ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 18:16:04.74 ID:PwN//HTC0<> 十日以上も放置すみません


では久し振りの投下です
続き、麦野視点 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 18:24:50.77 ID:PwN//HTC0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (炎を吹き飛ばせば瓦礫に飲まれる。
  かといって瓦礫に対処すりゃ火ダルマ、か……)


 炎と瓦礫が迫るコンマ数秒の間にも、麦野沈利の思考は冷静に回転していた。

 恐れることも、涙することも、慌てることもない。
 暗部に所属する彼女に、そんな感情など存在し得ない。


 (原子崩しは基本的に、一発につき一方向にしか撃てない。
  攻撃同士の角度が九十度近くもあれば、両方撃ち落とすなんて出来やしねぇな。
  オマケに速度は自然落下。二発も撃つ時間があるワケがねぇ)


 自分の明確な死を意識しながらも、麦野は顔色一つ変えない。
 今までに死を意識した回数なんて、とても数えられるものではないのだから。

 だがそれを考慮に入れても、と彼女は思う。


 (なるほど、確かにコイツはマズイ。今までで一番とは言わねぇが……
  警戒度との差で見れば間違いなくトップだろうな。
  ハッ、童貞クンだと油断してたら実はテクニシャンってか。見事にハメられちまったなオイ)


 惜しみもなく心中で介旅を称賛する。
 一方で、暗にこうも考える。

 所詮この程度、と。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 18:35:44.68 ID:PwN//HTC0<>

 迫る炎壁と降り注ぐ瓦礫の雨。
 到着の瞬間までに撃てる原子崩しは、連射性能的に一発が限界。

 どちらかを排除すればもう片方によって。
 直撃すれば死は免れず、しかし避けることはかなわない。

 絶体絶命であると同時に、絶対絶命。
 意地の悪い謎掛けのような、究極の選択。

 しかし、


 (確かに、悪くない戦法だ。合格点をやってもいいレベル。
  ……でもまぁ、私を逝かせるにゃ経験不足か。直前で萎えさせんじゃねぇよ)


    DEAD or DIE
 その、焼死と圧死の二択に。


 (逃れる方法はいくらでもある……例えば『こう』するとかなぁ!)


           A L I V E
 あろうことか麦野は、第三の答えを提示する。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 18:43:33.53 ID:PwN//HTC0<>


 コン、と軽い音。
 それと同時に、麦野の体が勢い良く倒れる。

 その軸は、足元。
 絡まった両足。

 一見すれば足がもつれたようにしか見えないが、
 実際は彼女が自らの足を払ったことによるものだ。

 何故、わざわざ隙を見せるような真似をするのか。
 答えは純粋に単純。


 「……ッ!」


 即座にそれを理解したのか、介旅の顔色が変わる。
 己の失策を悔いているのか。だがもう遅い。


 突然身を下げたことで、炎の海は彼女の目前を素通りしていく。
 その中の数滴が降り懸かる直前に、麦野は迷わず真上に『原子崩し』を照射する。


 「甘っっめぇんだよ雑魚がァアァァァ!!」


 ジュッッワァァァァ!!と激しい煙を出し、瓦礫と炎滴が消失した。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 18:57:02.49 ID:PwN//HTC0<>

 考えても見れば、簡単なことだったのだ。

 一度に破壊できるのは一直線。
 攻撃は二つで、別方向から。

 だがその二つは当然ながら『麦野沈利』を標的として放たれたもの。

 逆に言うならば確実に、麦野の近くで一直線に重なるはずなのだ。

 後は、一直線になるポイントを作り体勢を整えれば良い。

 ただそれだけで、二つは一瞬の内に消え失せる。



 (床に着いた瞬間に受け身をとる。
  そこからもう一度原子崩しを撃てば……終わりだ!)


 もはや彼女は、自分の勝利に何の疑問も抱かない。
 決死の一撃を避けて見せた時点で、彼女の勝ちは決まったようなものだ。


 だから、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 19:13:38.42 ID:PwN//HTC0<>

 「……、」


 (……なん、だ?)





 介旅の、その表情に。



 「……ハッ!」




 (なんでアイツはーー笑ってやがる!?)



 端の欠けた眼鏡の下に浮かぶ、その獰猛な笑みに。



 「はははははははははっ!!」



 その心情を、すぐには理解することが不可能だった。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 19:14:40.45 ID:PwN//HTC0<>


 (おかしい。この状況で笑う?自棄になった……いや違う。じゃあ何で……?)



 考える間にも、床は迫る。

 麦野はひとまず体勢を立て直すため、右手を使って衝撃を和らげようとし、


 直後、その掌に不自然な感触があった。


 「ッ!?」


 突然の事態に対応できず、受け身を取れぬまま倒れる麦野。
 その体が再び立つだけのバランスを取り戻すまでに、彼女は感触の正体を知る。


 それは、金属性の通貨だった。
 平たく言うならば、小銭。

 先程介旅が蹴り飛ばされたときに、落下したもの。


 その中にある、一円玉が。
 アルミで構成された、小さな円盤が。



 ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
 大きな内圧を受けたように、球状に膨らんでいた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 19:21:03.04 ID:PwN//HTC0<>

 (……、オイ、こりゃ一体何が……待てよ。聞いたことがある。

  例の『虚空爆破事件』で使われた能力ーー『量子変速』。

  そうだ、アレは確か、アルミを爆弾にするってーー!)



 「ハハヒッ!見事に引っかかってくれてアリガトウ!!
  僕の狙いは最初っからコレをすること!!
  生憎と威力不足だから、わざわざ爆心からの距離を縮めさせたのさ!!

  それじゃ行くぜーー」



 (ク、ソが!まさか最初の奇襲は滝壺を戦闘不能にするためだけじゃなかった!?
  あの野郎、ここまで想定してやがったってのか!!)



 麦野の体が、ようやく床に打ち衝けられる。
 全力で起きあがろうとするが、もう既に遅い。



 「ーーBOMB♪」



 パチン、と指を鳴らす音。




 そして。施設床の至るところで、半径30センチほどの爆風が炸裂した。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/23(月) 19:23:20.05 ID:PwN//HTC0<> 投下終了

引き延ばしといてコレです
しかしまだ続いちゃうのが怖いトコロ

次回は舞台裏というかそんな感じでしょうか
過去編か脇役サイドのどちらかになるかと思います



どうでもいいけど
作中時間が、一レスあたり0.1秒経ってるかどうかってぐらいですね
人が立った状態から倒れるまでにあれだけ言える介旅君、超早口。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/01/23(月) 19:53:58.64 ID:k8t/EsYw0<> 乙 

今の介旅がLEVEL5でもおかしくないwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/01/24(火) 00:04:06.30 ID:4qWhHrpn0<> 乙
介旅さん……かっこいい…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/24(火) 17:27:22.95 ID:VzeVt6t9o<> 乙乙
介旅たんかっこ良くなっちゃって… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/24(火) 23:14:58.45 ID:bDeER/P9o<> 異常な早口、思考速度はバトル物ではよくあることさ
乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:03:07.37 ID:XNWAq18D0<> こんばんはー

投下しますよー


過去編(>>518の続き) 余裕があれば前回からの続きも

一応書きますが、‘おまけ’が付いているのは『こんなこともありえた』程度ですので
必ずしも本編に沿っているわけではございません <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:08:55.88 ID:XNWAq18D0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「……読み聞かせ?フザけてンのか、木原クンよォ」


 一方通行の部屋を訪れた木原数多に、返ってきたのは不満の声だった。
 不満というには些か嘲りの色が濃いような気がするが、これが彼らの日常なのだから仕方ない。

 そんな小馬鹿にしたような態度の一方通行に、
 木原は特に気分を害した様子もなく、ただ肩をすくめる。


 「何言ってんだか。俺ぁマジメもマジメ、大真面目だぜ?」

 「そォかい。じゃあ今すぐ病院行くべきなンじゃねェか?
  オマエ、頭の大事なネジが外れちまったみてェだぜ。
  木原一族の専門医か、冥土帰しとかいう名医か。
  早く選べよ音速の三倍で投げて届けてやるから」

 「死ぬわ馬鹿。あと周りの迷惑も考えろクソガキ。
  ソニックブームで町並み全壊だぞ大惨事じゃねぇか」


 暴言にも顔をしかめることなく、慣れた様子で返す木原。
 暗にそれが、彼が一方通行を『子供扱い』していることの証明でもあった。

 ただし、それに更なる暴言で返すあたり精神年齢は同程度のようだが。

 その辺りの残念さ加減には気づかず、薄く息を吐きながら彼は続ける。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:24:30.44 ID:XNWAq18D0<>

 「……つーかよ。頭のネジが吹っ飛んでんのはお前の方だったりするんじゃねぇか?」

 「あン?オマエ謝りに来たンじゃねェのか何だそれは喧嘩売ってンのかよオイ。
  そりゃ一体どォいう意味で……」


 額に青筋、頭上に疑問符を浮かべる一方通行。

 そんな彼に、木原は呆れたように一言。


 「『絶対能力進化実験』」


 「ーーーーーーッ!!」



 平坦な声で告げられたその単語に、彼の顔色は焦燥へと変化する。

 やはりか、と頷く木原に、一方通行は噛み付くように反射的に問いかけた。


 「オマエ……なンで、それを?」

 「残念だったな。俺に隠し事なんざ10の60乗年早ぇんだよ」

 「宇宙の寿命そンなに保つのかよ……って、話を逸らすンじゃねェ。
  こっちは真剣に聞いてンだぞ。オマエはどォして……」

 「どうして、はこっちの台詞なんだがなぁ」

 「……あ?」


 どこまでも飄々とした話し方。
 だが、そこに僅かな怒りが混じるのを一方通行は見逃さなかった。

 わざと隠しているのか、自分でも気づいていないのか。
 木原はあくまでも冷静に口を開き、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:41:48.05 ID:XNWAq18D0<>



 「俺に隠して、あんなイカれた実験に参加しようとしてんのは
  どういうことだって聞いてんだよこのクソガキが」



 「ーーっ、」



 一瞬、呼吸が止まったかと思った。

 いや、実際に止まっていたのかもしれない。
 喉が引きつけを起こしたように震え、上手く息を吸えない。

 力の抜けた、どうでもいいような口調なのに。
 そこに僅かでも含まれた攻撃的な意思が、明確に一方通行へと突き刺さる。


 じり……、と、彼は思わず後退りしていた。
 床に手をついたまま、数センチではあるが後方へと移動した。

 それが木原に気圧されたということだと理解した瞬間に、彼の思考は悔しさで埋め尽くされる。


 悔しい。木原の目を見る。
 睨まれる。怖い。怖い?いや、怖くない。
 怖がってはいけない。俺は第一位。最強。頂点。だから怖くない。
 怖がる理由がない。俺にはある。反射。だから怖くない。はず。

 あまりにもずさんな自己暗示。
 だが、学園都市最高峰の『自分だけの現実』が、それを成立させる。


 「……俺は、」


 そして、恐怖を振り払った視線が木原のそれと交差する。
 明確な意思で、彼は言う。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:52:06.61 ID:XNWAq18D0<>




 「ーー俺は、『絶対』に、なるンだ」



 告げる。
 自分の本気の意志を、伝えてやった。

 見ろ。俺はオマエには負けない。どうせ答えられないとか思っていたんだろう。
 いつまでも父親面しやがって。自分の優位が永遠だと思ったら大間違いだ。
 さぁ、オマエはこれを否定できるのか。

 そんなことを考えながら、一方通行は不敵な笑みで木原を見やり、



 「お前さぁ、バッカじゃねぇの?」



 「は、?オイ何をーー、ぶはッ!?」


 直後に待っていたのは、握り締められた拳だった。

 水っぽい音と共に、胡座をかいていた体が仰け反り、後ろに倒れる。

 いくら血縁が無いといっても、自らの息子を殴る強さでは無かった。

 そこまで考え、感覚の無くなった鼻を押さえてから初めて、彼はとある異変に気付く。


 (……は、『反射』が、働いてねェ、だと?)


 「おーおーイイ感じに困惑してくれやがってあんがとよ。
  長年かけて編み出しただけあんな、『コレ』。『数多神拳』とでも名付けるか」

 「なっ……オマエ、何しやがっ……」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:53:45.97 ID:XNWAq18D0<>

 「くだらねぇ種明かしは後回しだ。それよりも話ィ聞かせてもらう。
  お前は、俺が繊細なチューニングを施した超能力者で、学園都市の頂点だ。
  俺を除けば、お前に勝てる奴なんざ存在しねぇんだよ。
  それ以上強さを求めて、一体何になる?」



 語尾こそ疑問系ではあるが、恐らく彼は答えを確信している。

 そしてだからこそ、彼は今日、ここにやって来たのだろう。



 「……悪ィのかよ」



 俯き、鼻を押さえ、歯を食いしばりながら。

 彼は、静かに呟く。


 木原からの返事がないのを確認すると、彼は言うかどうか迷ったように一瞬の硬直を見せ、

 それから頭を上げると、勢いに乗せて叫ぶ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:54:43.29 ID:XNWAq18D0<>




 「誰にも傷つけられねェ、誰も傷つけねェ!

  そンな『絶対』になることが、本当に悪ィことなのかよ!!」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 22:55:50.29 ID:XNWAq18D0<> 投下終了
やりたいとこまで終わらなかった……

ちなみに10^60は、万万進法を使わずに表すと……、


今更ですが木原クンがパパ原クンです注意 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/01/25(水) 23:01:30.41 ID:XNWAq18D0<> >>802
‘彼は、静かに呟く’は『彼』じゃなくて『一方通行』でした
文脈的にちょっとおかしくなっちゃうので訂正 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/27(金) 00:13:59.53 ID:U7XQ51rGo<> 乙乙
パパ原くんペロペロ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/01(水) 12:34:13.49 ID:fbC6DHfAO<> ペロペロ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/02(木) 20:01:07.17 ID:jYgQHkKp0<> みなさまお元気ですかー

>>1は昨日辺りまでぐったりしてましたですー
ダメだ気管支炎バカにできねぇわ

冷えてきましたのでくれぐれも体調にお気を付けてー

では投下ー
続きからー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/02(木) 20:02:16.90 ID:jYgQHkKp0<>

 怒声。

 部屋を震わせるほどの大声。
 心からの叫び。

 一方通行が放ったのは、そんな本気の言葉。


 「……フザけんなよ、クソガキ」


 だが、木原は動じない。

 当然といえば当然すぎる。
 息子の言葉に怯む父親など、あっていいはずがない。


 「その過程が問題だっつってんだろうが大馬鹿野郎!!
  お前だって、本当は気付いてんじゃねぇのか!!」


 吠えるような返答に、体を縮ませたのは一方通行の方だった。


 「……!か、勝手に決めつけンじゃ……」

 「決めつけじゃねぇ」

 「ッ……?な、にを根拠に……!」

 「じゃあコイツはどう説明すんだ!」

 「ッ!」


 木原が突きつけたのは、書類の束。
 それに見覚えのある一方通行の表情が、固まる。

 そこに、書かれていたのはーー、



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/02(木) 20:14:00.42 ID:jYgQHkKp0<>


 「『「絶対能力進化実験」第一次実験は、
   クローン体処分段階における被験者の体調不良により延期。
   被験者からの連絡があるまで、本実験は一時的な中断状態を保つものとする』」

 「……それ、は……」

 「はん、オカシイな。
  お前に体調不良?んなワケがねぇ。
  お前の能力は自分自身の体調管理程度、朝飯前だよなぁ?」

 「っ……!」

 「これだけじゃ何があったかなんて分かんねぇし、予測の域は出ねぇがよ。
  まぁこの俺の優秀な頭脳が導き出した推測だと……、

  恐らくお前は、実験の内容を詳しく知らされずに臨んじまった。
  ただの『戦闘実験』とでも言われたんだろうな。

  だがそこで待ってたのは、クローンの殺処分命令。
  慌てたお前は体調不良を装い離脱。

  このぐれぇが関の山なんじゃねぇか?」

 「……ただの、妄想じゃねェか。くだらねェ」

 「そう言われたら言い返せねぇんだけどな。
  でもまぁこう考えれば、お前が最近イライラしてたのにも説明がつくとは思えねぇか?」

 「……、……」


 沈黙は、即ち肯定だった。


 馬鹿が、と吐き捨て、木原は続ける。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/02(木) 20:16:31.40 ID:jYgQHkKp0<>

 「……はぁ。んなモンだろうと思って用意してきた紙芝居なんだが……もういいか」


 言いながら、木原は二十枚程度の紙の束を握力だけで二つに裂く。

 色とりどりの絵の切れ端が、嫌でも目についた。


 「『俺がお前を、一人前の能力者にしてやる』」

 「……っ、」

 「『あの日』の約束、忘れたとは言わせねぇぞ」


 木原の言葉に、一方通行は押し黙る。

 本当に忘れてしまった、のではない。
 覚えているからこそ、彼はその意味を噛み砕き、もう一度飲み込もうとしているのだ。


 一人前。

 それは果たして、二万の犠牲の上になんて成り立つのか。


 「俺、は」


 決断は速かった。

 父の言葉はスポンジに落とされた水滴のように、彼の心に染み渡る。


 「俺は、『実験』を……中止する。……それで、いいンだよな?」


 「……ハッ」



 是とも否ともせず、木原は立ち上がり、ドアに手をかける。

 だがその背中は、彼の満足をありありと息子に伝えていた。


  <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/02(木) 20:16:57.40 ID:jYgQHkKp0<>





 一方通行が木原を見たのは、それが最後。



 その数日後、彼はこの世を去ることとなる。






 その原因は、不慮の事故。

 少なくとも一方通行は、そう聞かされた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/02(木) 20:17:32.17 ID:jYgQHkKp0<> 登場人物みんな単純。

でもいいじゃない、人間だもの <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/02(木) 21:06:54.44 ID:1PsJxa0Go<> 乙だもの <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/03(金) 01:40:50.91 ID:87QpD3PJ0<> 木原クンかと思ったらパパだった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/03(金) 21:45:04.40 ID:c3+4d7wBo<> ひろしだった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/02/04(土) 01:37:47.51 ID:NUQ2EgAU0<> 木原くんかと思ったら野原くんだった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/04(土) 23:08:03.80 ID:qtpv1SkQo<> 乙乙
パパ原くン死んじゃったのん…? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 21:09:33.80 ID:QucpYPYH0<> >>818
残念なことにお亡くなりです

ただし過去編その他でまだまだ活躍して貰う予定です
パパ原クンは生き続けるさ。僕らの心に


では投下します
介旅サイド続きから




遙かな格上を代償ナシで倒すなんて、ちょっと虫が良すぎやしやせんか <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 21:17:45.05 ID:QucpYPYH0<>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 床一面で起きた爆発は、建材を砕き巻き上げ、宙に漂う粉塵を生み出していた。

 灰色のカーテンによって、視界が遮られる。

 その先では、麦野沈利が倒れている……筈だ。

 超能力者とはいえど、ベースは人間。
 零距離で爆発を受けて立てるわけがない……と信じたい。



 「勝っ……、た?」


 まだ信じられないといった様子で、介旅はぼんやりと呟いた。

 最初は夢から覚めたばかりのように、続いて現実味を帯びた表情で。

 初めて言葉を覚えた赤子の如く、確認するように繰り返す。



 「勝った、のか?僕が。レ、超能力者、に?」


 震える声で辿々しく呟き。

 そしてようやく、彼はその意味を理解する。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 21:22:54.82 ID:QucpYPYH0<>


 「……は。ははっ、勝った……勝った!
  ーー僕は勝ったんだ……、超能力者に!!
  は、ははは、アハハハハハハハっ!   ……っ、と?」



 介旅が疑問の声を発する前に、彼の体はバランスを崩す。

 緊張が解けた所為か、力が抜けてしまったのだろう。

 そもそも、とうに体力は限界を越えていたのだ。
 転ばないようにという気力すら浮かばず、ただ重力に引かれて体を投げ出す。

 これに反応したのは、粉塵の薄い部屋の隅を通り、介旅の近くに来ていた美琴だった。


 「……、と。危ないわよーー」


 言いながら、彼女は介旅に駆け寄ると、彼に向かって手を伸ばす。
 互いの手が触れ合ったところで、美琴は腕の力を使い介旅を支えようとする。

 となれば、当然ながら手を握るような形になるわけで。


 (……柔らかくって、暖ったかい…………って何考えてんだ僕は)


 強さを感じさせる、それでいて滑らかな感触に、思考が一瞬埋め尽くされる。

 それから慌てて、彼は支えて貰った腕に力を入れ、体勢を立て戻そうとし、



 「……って、あれ?」



 直後、美琴の身からも同じように力が抜けた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 21:46:42.39 ID:QucpYPYH0<>


 「……、はい?」


 一時的に立て直しかけた体勢を再び崩しながら、介旅は思う。

 おい待てよ、と。


 確かに。確かに、だ。

 美琴はついさっきまで、体力を切らしてぺたんと座っていた訳だし。
 そこから数分もたっていないのだから、もちろん体力なんて残っていないだろう。

 駆け寄ったりその辺のことが出来たのは、戦闘後でハイになってたからかも知れない。

 だからまぁ、力が抜けてしまったとしてもしょうがない、うん。

 だが。


 (……よりによって、何でこのタイミングでーー!?)


 なんとも間の悪いことに、美琴の力が抜けたのは、倒れゆく介旅が手を掴んだ直後。
 彼の持つ運動エネルギーが、すべて美琴の手に伝わる瞬間だったのだ。

 要するに、彼は美琴の手を思いっ切り引っ張ってるのと同義なのである。

 つまり、そこから想定される結果としては。



 「……あっ、」

 (待て待て待てこれはマズーー)



 介旅の手に引かれるように、美琴までもが倒れてしまうことーーなどが挙げられる。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 22:09:34.69 ID:QucpYPYH0<>


 ごつん、と後頭部に走る鈍い衝撃。
 それが床との衝突だと認識するまでもなく。

 ぼすん、と、やけに軽い第二の衝撃が襲いかかる。



 (ーーーーっcga何mk嬉gjm否penajp!?)


 言葉に……というかこの世界の言語になっていない叫びは、
 彼の口から漏れることはなくただ頭の中を走り抜ける。


 「あ、痛ったたた……アンタ、大丈夫ーー?」


 吐息が、耳をくすぐる。

 何事もなかったかのように言葉を発せられるのは、
 恐らく彼女が未だに現状を把握できていないからだろう。

 だが、倒れながらもその後の流れを考えていた介旅は、
 既にこの状況を把握してしまっている。


 握った右手は離され、右腋が介旅の左肩のあたりに。

 彼女の左肩は介旅の顎の辺りに当たっている。

 顔は、彼女から見て右方に寄せられていて、介旅は左頬に髪の感触を感じられた。

 胸は介旅のそれと重なっていて、薄い服と脂肪を通して心音が聞こえてきそうな程だ。

 お腹から下は、介旅の右脇腹の上を通って彼の右手側に。


 つまり有り体に言うと。


 何か密着してた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 22:28:45.50 ID:QucpYPYH0<>


 (……あーっと、右手に伝わるこのしっとりしたモノは……
    ふともも?短パン?だよなうん。セーフ。
    あれなんかちょっとがっかrじゃねぇよあと脚とはいえアウトだよバカヤロウ)


 以外と冷静に分析しているようにも思える介旅だが、
 明らかに普段の彼の思考パターンとは違う。

 パニックが240度ぐらい回って冷静っぽく見えるだけである。


 「っ……ってアンタ何で私の下にってかえ何まさかこれってーーきゃっ!?」


 バッ!と、腕立て伏せでもするように肩の力で身を起こし、
 体を反らすことで介旅の体から離れる美琴。

 本人は取り合えず距離を取りたかったのだろう。
 確かにその考えの通り、密着していた体は離れた。


 しかし、腕の長さや体勢などの関係だろう。
 膝を立てるべきだったのを、密着から離れることしか考えていなかったために。


 「んなっ!?」

 「あ……っ!」



 至近距離で、見つめ合うような感じになってしまっていた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 22:39:26.88 ID:QucpYPYH0<>

 顔と顔の距離は、僅か15センチもない。

 しかも支えているのが腕だけで、非常に不安定だ。

 ここで手が滑ったりすれば、ーー何が起こるかは想像に難くないだろう。


 「あ、こ、コレはその何かゴメン!す、すぐにどくから……」

 「あ、ああぁ、分かっ、分かった」


 ここで焦ってくんずほぐれつ、みたいな展開もありそうではあるが、
 実際にはそんなことにならず、美琴がゆっくりと立ち上がって事は収まった。


 仰向けで顔を赤くしたままぐったりしている介旅に、
 同じく顔を赤らめた美琴は苦笑いしながら手を差し出す。


 「ほ、ホラ!気を取り直して!立ちなさいよ」

 「あ、うん。ありがとな」



 今度こそ力を入れて腕を引き合い、介旅は緩やかに立ち上がる。


 (……そういえば、那由他ちゃんはどこに行ったんだろ)


 熱冷ましにふと考えてみるが、それらしき人影は見あたらない。

 粉塵に隠れてしまっている可能性も考えたが、そこで彼は思い出した。


 彼女は本来、布束の手助けに行く予定だったのだ。

 こちらのカタが付いたと感じてすぐに、『向こう』に向かったのだろう。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 22:54:27.81 ID:QucpYPYH0<>

 (……なーんか。忙しい子だなぁ)


 手伝いに向かおうとも思ったが、今の自分では足手まといだと思い直す。

 あの子ならどうせ、無事に帰ってくるだろう。


 そんなことを考えていると、横合いから声をかけられた。


 「なーに?何か考え事?」


 何もない場所を見つめていれば、なるほど確かにそう見えるだろう。

 介旅は返答をしようとそちらに顔を向け、


 「んあぁ、ちょっとーーうわっ!?」

 「っあ、!」


 顔を背けてしまったのは、彼女の顔が予想以上に近かったから。

 さっきの光景が一気にフラッシュバックし、瞬時に顔が真っ赤になってしまう。


 (だーもー、何だろ変に意識しすぎなんだよなーー、)


 ひとまず顔を冷やそうと、明後日の方に顔を向けた彼は、


 「あ」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 22:57:36.57 ID:QucpYPYH0<>




 どん、と。


 唐突に美琴の肩に触れ、思い切り突き飛ばした。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 23:01:47.31 ID:QucpYPYH0<>


 「……?」


 強く押された。

 気付いてすぐに感じたのは、困惑だった。


 続いて後ろに倒れるにつれ、美琴の中で徐々に苛立ちがこみ上げてくる。


 突き飛ばした?女の子を、理由もなく?


 不満を隠そうともせず、彼女は眉間に皺を寄せて介旅をにらみつけ、


 「……あれ?」


 そして、気付く。


 彼は、自分の方を見ていないのだ。


 なら一体、どこに注目して……?

 彼の視線を追い、その先を見て、



 「あ」



 そしてようやく、彼女は事態を理解する。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 23:09:48.21 ID:QucpYPYH0<>

 薄れた粉塵。


 その中にあるのは。

 その中にいるのは。


 「あ、あぁ……」


 服はボロボロになって、ところどころ下着のような物が皮膚に癒着していて。

 それでも立ち上がり、手の中に純白をたたえるそれは。


 「だめ、」


 介旅に視線を投げる。

 彼は、静かに笑っていた。


 『急に押して、ごめんな』


 言葉はなかった。

 息を吐く間もなかった。

 ただ彼の目が、確かにそう言った。


 「いやだ、そんな」


 次の瞬間。



 彼の姿は、不健康な白色の光線に隠された。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 23:20:03.02 ID:QucpYPYH0<>


 閃光の軌跡が、空気に溶けるように消え去る。

 それまでのコンマ数秒は、美琴にとっては永久よりも永いものだった。


 白が消え去り、汚れた空気が場を満たす。

 そして。

 その先を見て。



 「ーー、そん、な……」



 絶句。

 口から出たのは、それだけだった。



 「ーー、はは。そんな顔すんなよ、御坂」



 そこで、介旅は何も変わらずに笑っていた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga !red_res<>2012/02/07(火) 23:21:36.29 ID:QucpYPYH0<>




   ぼたり  、と





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 23:25:35.93 ID:QucpYPYH0<>



 消失した右腕の根本から、鮮血を滴らせながら。




<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/07(火) 23:26:07.56 ID:QucpYPYH0<> ここまでー



倒した後に高笑いって、兄ちゃんそいつぁ死亡フラグだよ

未来のターミネーターはやっぱりしぶとかったのですー


さてこっからが見せ場だぜ介旅クン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/07(火) 23:28:31.31 ID:d5sfGCs/o<> 乙

しぶといぜ、麦のん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/02/08(水) 00:03:22.54 ID:ptnFwkb/0<> 勝ってない、倒せてないフラグを立ておって……格上相手に直後に「勝った。ははは勝ったんだ」って完璧フラグじゃないっすかぁー
そしてこれはあれか、介旅さん義腕フラグですか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/08(水) 10:41:06.29 ID:4sBlJLwAO<> 義手フラグだな、なゆたんとお揃いのロケットパンチ撃てるヤツ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/09(木) 14:40:22.22 ID:/3H31eYuo<> 乙乙
介旅たんと美琴たんカワイイと思った矢先にコレだよ

>>836
ふたりはサイボーグ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/09(木) 18:51:45.23 ID:tjagYDSIO<> いやここは介旅たんの中の人覚醒フラグだろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/02/09(木) 19:43:48.40 ID:sJ1ZEVtAO<> 介旅の手を勝手に美琴が操作するんですねわかります

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/10(金) 13:19:18.75 ID:lJ+z+A5Wo<> おいおい、つまりこういうことだろ
全てが終わって鉄橋の上で、ふたり身を寄せ合って

美琴「も、もっと強く抱きしめなさいよ!」

介旅「う、うるさいよ!
    そそそそんな事言ったって!手が震えて!」

美琴「も、もう……しょうがないんだから///」 ビリビリッ!

介旅「うあああ!義手がっ!?勝手にぃ!?柔っ!?」


……介旅爆発しろ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 03:59:47.37 ID:gOkSiL+20<> >>840
なにそれおもしろそう

だがそげぶる



では投下開始です
続きからー <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:03:19.35 ID:gOkSiL+20<>


 「かっ、は、は。ザマァ見ろ、ガキが。
  『闇』を……『暗部(わたしたち)』を、ナメてっからだ」


 即座に起こったのは、嘲笑。

 粘つくように笑み、粉塵の中で立ち上がるのは麦野沈利。

 立ち居振舞は覚束ない。
 だが、灰のベールを通してもはっきりと分かるほどに、その体には妙な活力があった。

 彼女がそうまでして戦う理由は、もはや一つしかない。
 強者(むぎの)のステージに上がった弱者(かいたび)を叩き潰す、ただそれだけ。

 それだけのために彼女は、限界を迎えた体に鞭を打つ。


 「……あーあー。つーか、私が狙ったのは超電磁砲だってのによ。
  見事に身代わりになってくれやがって……何だ、ヒーロー気取りか?
  弱者がしゃしゃり出ると、早死にするわよ」


 かつ、かっかっかか、と。

 見るからに危なげに、体を揺らし足を鳴らし。
 しかし麦野は、ひたすらに笑う。

 自分が圧倒的な優位である。それを知る者の笑みだ。

 彼女は自分の仲間である筈の二人の無事すら確認せず、ただ介旅に言葉を投げる。


 「……じゃ、まぁ。予定は変わっちゃうけど。
    まずはテメェから、ね」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:11:21.70 ID:gOkSiL+20<>


 (……ッ、ヤバい……ッ!)


 膨れ上がる麦野の殺気に、美琴は思わず身震いした。

 それは、言わば死神の大鎌のようなものであろうか。
 介旅を確実な死に誘う、冷酷な死刑宣告。


 (……麦野沈利は、あの爆発で相当弱ってる。
    まだ足に力は入んないけど、それでも逃げきることができるくらいに。

  ……でも、)


 逃げようと思えば、逃げられる。
 しかしそれは、美琴一人ならば、の話だ。

 介旅を連れて逃げるとなれば、状況はまるで違ってくる。

 大怪我、という言葉では生温いほどの傷を負った介旅には、歩くことすらままならない。
 そんな彼に、後方からの追撃を避けながら逃げるなどという芸当は絶対に不可能だ。


 (ダメだ。どう逃げようとしても、アイツを置いていくことになっちゃう。
  体力が万全なら背負っていくこともできたけど……。
  ……あーもう、こんな時にあの那由他って子はいなくなっちゃうし……!)


 身体能力の高い那由他なら、あるいは介旅を背負って走れたかもしれない。
 そんな『もし』を考えてしまうほど、この状況は絶望的だった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:15:59.13 ID:gOkSiL+20<>


 あくまでも介旅の意志を汲むならば、美琴は彼を見捨てて逃げるべきなのだろう。

 彼は、己の危険も省みずに彼女を助けたのだから。
 下手を打って命を落とせば、それは彼の決意を無為にするも同じだ。

 そんなことが分かる程度には、美琴の思考は冷静だった。

 だが、


 (……理屈じゃない。アイツを残して逃げるなんて、そんなのイヤだ)


 ショック死したとしてもなんら疑問を覚えないほどの傷を負い。
 けれども、麦野を見据え立ち続ける彼を見て。

 その気力が、誰のため、何が為に沸き上がるのか考えて。

 そのような選択など、出来る訳がなかった。


 (やってやる。能力が使えなくても、できることはある。
  不意を突いて突っ込んで、大きな隙を作れば。
  撃たれる前に逃げられる……かも)


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:22:25.29 ID:gOkSiL+20<>

 勝率などゼロに等しい。

 勝算なんてまるでない。

 相手が弱っているとはいえ、それはこちらも同じ話。


 更に麦野の『原子崩し』は、まだ死んでいない。

 最悪、二人まとめて撃ち抜かれてしまうかもしれない。
 そうなるよりは、美琴だけでも逃げた方がマシなのかもしれない。


 だけれども、


 (成功するかどうかなんて分からない。けど、私はアイツを助けたい。
  ……だから、やってやる。絶対に、やり遂げてみせる!!)


 決意を固め、拳を堅め。

 そして、麦野へと走り出す、




 その直前に。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:25:25.21 ID:gOkSiL+20<>




 「ッハは、」





 美琴の足を床に縫い止めたのは、一つの笑い声。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:25:55.95 ID:gOkSiL+20<>

 「何、考えて、んだよ」


 「……え?」



 美琴の口から、思わず疑問が口に出る。


 その内容に対して、ではない。

 ・・・・・・・・・・・・・・
 そんなちっぽけなことではない。


 例え麦野に企みを看破されようが、美琴は構わず突き進んだだろう。


 「聞こえ、なかった、か?」


 だが、違う。

      ・・・・・・・・
 声の主は、麦野沈利ではない。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:33:15.27 ID:gOkSiL+20<>

 「何、バカなこと、考えて、んだって、言ったんだ、よ」



 その、これ以上ないほどに弱々しく。

 今にも倒れてしまいそうなほど掠れた。


 けれど、何処か力強い声の主は。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:39:46.29 ID:gOkSiL+20<>



    ・・
 「ーー御坂」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:42:28.26 ID:gOkSiL+20<>

 笑いながら、言ったのは。


 圧倒的劣勢にありながら、微笑むのは。


 未だ折れず、精神力だけで立ち続ける彼の名は。




 「……下手な横槍は、止めてくれ。
    ここはまだ、僕の見せ場、だからな」



 介旅初矢は、挑戦的な笑みとともに告げる。





 ここからが本番だ、と。




<> 投下終わり 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/14(火) 04:43:19.42 ID:gOkSiL+20<> 決意させといて行かせないっていうね。
だって美琴ちゃんが危ないからね。

しっかし短かったなーむぎのんのターン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/02/15(水) 17:42:03.25 ID:sulD0K/AO<> 乙 <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 20:34:50.33 ID:Xttyr6BX0<> やっと書き込めた……

(一応)連日投下です
むぎのん戦クライマックス2 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 20:38:57.29 ID:Xttyr6BX0<>

 「……ハァ?」


 諦めないーー否、それどころか勝利を確信してすらいるような言葉に、
 怪訝な顔をしたのは麦野だ。

 おかしい。例え素人だろうが、この状況で自分に勝算があるなどと考えられる筈がない。

 痛みでイカれてしまったのだろうか。実につまらない。
 そんなことを考えながら、麦野は鼻で笑って口を開く。


 「へぇ、言ってくれるじゃないの。
  アンタの見せ場、ねぇ。まぁ確かに、死に様は見せ場の一つではあるけどよぉ」

 「……、はっ、残念、ながら、死に花咲かせる、つもりなんて、毛頭ねぇよ」

 「あん?」

 「ここで、お前を、倒す。
  それが僕の、一番の見せ場だ」

 「……」


 麦野が押し黙ったのは、先程のような多重攻撃が仕込まれている可能性を考えたからだ。

 アレをもう一度食らえば、確かに危ない。
 ただでさえ意識の朦朧し出した体に、あんな連撃をくぐり抜けるのは、なるほど不可能だ。


 (……いや。アレはあくまでも、私が他のガキに気を取られてたところへの奇襲だ。
  真正面からやろうとしたところで、行動前に三回は殺せる、か)


 そう気を取り直すと、麦野は再び笑んで、

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 20:51:28.30 ID:Xttyr6BX0<>

 「あぁ、まーたさっきみてぇにコンボ叩き込むつもりか?
  まぁやりたいなら好きにしなさいよ。無駄な足掻きだけどね」

 「……、ハ。お前、今の状況、分かってんのか?」

 「そいつはこっちの台詞だ。
  私の気まぐれ次第で、アンタは一秒もせず死ぬのよ?」

 「じゃあ、その一秒が経つ前に、決めればいいだけだ」


 流血し続ける右肩を押さえ、左手を真っ赤に染めた介旅の足は、既にふらついている。
 失血により、意識を保つのが難しくなってきているのだろう。

 いっそのこと、このまま放置して倒れるまで待つのも一興だろうか。
 思考した直後、麦野は自らそれを振り払う。


 「そうか。じゃ、やってみな」


 言うと同時、麦野の左手に白の光が収束を始める。


 (さっきは油断して、足元を掬われた。同じ轍は踏まねぇよ)


 確実に、殺す。

 オーバーキルと言われるほどの威力でいい。
 大袈裟すぎるほどの規模で構わない。

 介旅初矢という敵を、今度こそ排除するために。
 最大の威力、かつ最高の精度の『原子崩し』を用意する。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 21:08:05.35 ID:Xttyr6BX0<>

 だが演算を始めた直後、麦野は眉根を寄せた。


 (チッ……上手く頭が回らねぇ。
  こりゃ時間がかかりそうだ……一秒以内ってな無理だったか)


 度重なる疲労のためか、欠伸が出るほどに発動が遅い。
 ゆっくりとしか成長しない光球に苛立ちを覚え、介旅に目を向ける。


 「どうした、?一秒で、殺すんじゃ、なかったのか」

 「口の減らねぇ野郎だな。猶予をやってんだよ、有り難く思え。
  本来ならテメェみてぇな弱者如き、指一本で1,000回は殺せんだからよ」

 「……ッハハ、」

 「……?何が可笑しい」


 今の発言のどこが琴線に触れたのか、突然介旅は笑いだした。

 何か滑稽なものでも見るような笑みに、純粋な疑問として麦野は問う。


 「いや、さ。お前、もしかして、勘違いしてないか?」

 「あ?何をだ」


 聞き返すと、介旅は一瞬笑みを止め、そしてまたもや口角を釣り上げて、




 「言っとく、けど。弱者イコール敗者、じゃ、ないぞ?」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 21:15:41.29 ID:Xttyr6BX0<>

 「…………はぁ?」


 浮かんだ感情は、怒りや憤りではなく、不可解だった。

 コイツは一体、何を言っている?


 「分かんねぇ、か?お前の、言う通り、確かに僕は、弱者、だけどさ。
  それが、僕が負ける、なんて、根拠には、ならない、んだよ」

 「……分かんねぇな、オイ。
  戦えば当然、強者は勝って弱者は負ける。当たり前のことじゃねぇか」

 「いや、むしろ、逆、なんだよ」

 「……あぁ?」


 疑問を口に出しながら、感じていた口中の苦みを吐き出す。
 塗装の剥げた床に飛び散ったのは、予想通りの赤。


 「弱者だから、準備を整えて、負けを防ぐ。
  臆病だから、負ける可能性を、根本から叩き、潰す。
  ほら、こう考えて、みれば、弱さは勝ちに、つながる、じゃねぇか」

 「ハッ。んなの、ただの詭弁じゃーー」


 言いかけて。


 麦野は、ピタリと口を止めた。


 会話の中で、嫌な感触に気付いたからだ。


 血は吐き出したはずなのに、口の中に、まだ苦い何かがある。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 21:27:43.71 ID:Xttyr6BX0<>


 「……あ……?」


 ジャリジャリと、舌に触れる砂粒のような何か。

 最初は、建材の破片を吸い込んでしまったのかと考えた。

 だが、明らかにそれだけではない。


 「……ッ!」


 思考の中で『ある可能性』に思い至った彼女は、慌てて己の右手に目をやる。

 付着しているのは灰色の、建材の粉。

 ・・・・・・
 だけではなく。


 銀色の、それよりもさらに小さな粒。

 砂のように軽く小さく、爆風によって空中を漂っていたそれは、まさか。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 21:41:08.55 ID:Xttyr6BX0<>
         ・・・・
 「ッ!?テメェ、こんな物どこで……!!」

 「あぁ、この工場、超高性能な製粉機が、用意してあったんだ。
  第五世代の、ウォーターカッターの原理で、大体何でも粉に出来るヤツ」


 何のためにあったのかは知らねぇけどな、と介旅は笑いながら付け加える。

 対照的に、麦野の焦りは加速していく。


 「クソが。テメェ、いつの間に……
  ……ッ!待て、まさか……!!」


 麦野は右手に向けた注意を、自らの後方に向ける。


 そこにあったのは、大きなスポーツバッグ。

 爆発に巻き込まれて、否、巻き込まされて、大きく裂けたそれから、

 ・・・・・
 銀色の粉が。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 まるでスプーンを小麦粉ほどの粒子に砕いたような、きめ細かい粉末が、漏れ出ていた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 21:51:28.17 ID:Xttyr6BX0<>

 『今の状況、分かってんのか?』


 つい先刻の言葉が、鮮明に頭を流れる。


 「ほら見ろ、気付いた時にはもう遅いのさ。

  ……弱者と戦う危険性を、臆病者を敵に回す恐ろしさを、身をもって知れ」


 途切れ途切れだった介旅の言葉は、ここに来て流れるように滑らかになっていた。

 しかし麦野には、そんなことに気を配る余裕はない。

 自分の身を守るために、それ以外の一切を考えられない。



         ・・・・・
 (フザけんなよ、アルミ粉末だと!?
  一刻も早くこの煙の中から出てーーいや、ダメだ!?
  私は既に、吸い込んじまってる!!)



 自身を覆う危機にようやく気付き、しかしそれはもう遅すぎる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 21:59:05.06 ID:Xttyr6BX0<>

 さぁ、と介旅は意地悪く笑い、


 「チェックメイトだ。僕の勝ちだよ、オバサン」


 「チ、クショウがぁァァァァァ!!」
 (殺す!能力発動前に殺せば、それでーー!!)



 麦野は、掌でループした『原子崩し』を介旅に放とうとする。


 だが、それよりも介旅の能力行使の方が圧倒的に速い。


 あるいは、彼女が自己を守ろうとせずに介旅を撃ち抜いていれば、そこで終わっただろう。

 だが彼女は第一に、身を守ることを考えてしまった。

 それが、彼女の敗因。


 直後。


 麦野沈利の体内。

 鼻と口から入り、気管や食道に付着したアルミニウム粉末が。


 ごく小規模の、爆発を起こした。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 22:00:04.27 ID:Xttyr6BX0<>


 ごふ、と、麦野の口から小さな声が漏れた。


 続き、濁った血が唇の端から垂れる。


 その体から全ての力が抜け、左手に溜まった白い光が空気に溶けて消えていく。



 それを見届けた介旅の全身も、同じように脱力した。



 広々とした工場内に、人が二人倒れる音が反響する。






 「……へ……?」




 一人ぽつりと残された美琴は、広がる血の海を見ながら、暫く惚けていた。




<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/15(水) 22:12:48.55 ID:Xttyr6BX0<> 今度こそ本当に決着。
長かった……。


ちなみに、介旅の攻撃方法をまとめてみますと


・スプーン(自分で調達)

・竹製爆薬水鉄砲(黄泉川のライター・タバコ、セブンスミスト店長の竹水鉄砲)

・瓦礫(フレンダの爆薬テープ)

・一円玉(自分で調達)

・粉末アルミ(工場の製粉機)


という感じです。
今後の方向性みたいなのも見えてくるかも?

次回は久々に那由他ちゃんと布束さん。
その次は芳川(大人サイド)もしくは過去編だと思います。

風呂敷はまだ広がるっていうね。キチンと畳めるだろうか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/15(水) 22:20:47.75 ID:lYgLpg8ho<> むぎのん脂肪? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/15(水) 22:39:11.56 ID:EBSUQmRKo<> 乙
内側からとはえげつないGJ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/17(金) 10:19:38.48 ID:qjJNusYGo<> 乙乙
えげつねー
個人的に一番投下が楽しみなSSである <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 20:38:17.89 ID:fydU1fkM0<> むぎのんは一応生きてる感じです。辛うじて。
大人サイドの一環で描写が入るかもです

ではちまちま投下します
布束さんから <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 20:38:56.03 ID:fydU1fkM0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 カツン、カツン、と金属音が壁に反響する。

 微かな音がここまで大きく聞こえるのは、静かな場所だからという以上に、
 自分が焦りを感じているからであろう、と布束砥信は冷静に自己分析をする。


 (……虚しいわね。自分の感情を、他人事のように認識できるというのは)


 彼女は現在、当てがわれた部屋を抜け出して、薄い明かりの下で梯子を降りていた。

 無論、このハイテクのご時世に意味もなく梯子なんてものがあるわけがない。
 にも関わらずそれが存在しているということは、そこに何かしらの意義がある訳だ。

 具体的には、一般の作業員などがエレベーターで迷い込むのを防止する必要がある、
 『そのテのモノ』を扱っている研究室へと続く裏口的な通路の一部である。

 機材などを搬入したりする通路ーーいわゆる表口も当然あるのだが、
 そんなヒミツの研究所においそれと立ち寄らせて貰える筈もない。

 よって、彼女は仕方無く(白衣があるとはいえ)スカートの制服には辛い、
 この道を使う羽目になってしまったのだ。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 20:53:46.40 ID:fydU1fkM0<>

 そのまましばらく金属音を鳴らし続けると、やがて右足の裏に平らな感触が伝わった。

 布束はあまり大きな音をたてないよう慎重に、梯子からもう片方の足を降ろす。


 (……さて、と。那由他ちゃんは遅れているようだけれど……。
  まぁ、最悪『コレ』さえ守り抜けば大丈夫でしょう)


 考えながら、白衣のポケットに入った『ある物』を握りしめ、彼女は足を運ぶ。


 やがてたどり着いたのは、やや小さめのスライド式のドア。

 布束は息を深く吸い、吐くといったことを数回繰り返し、
 気分を落ち着かせてから、その取っ手に手をかける。

 予想外にレールの滑りは良く、からりと小さな音がしただけだった。


 (……、トラップは……無いようね。
  やや拍子抜けなところはあるけれど、これなら私だけでも何とかなるかしら)


 暗部組織が雇われたという話だから多少は警戒していたのだが、
 今のところ妨害に入るような気配は見せていない。

 美琴が派手に暴れていて、その対処で精一杯、ということなのだろうか。


 ……実際、暴れていたのはむしろ介旅の方なのだが、
   彼女がそれを知るのはもう少し後の話である。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 21:07:23.81 ID:fydU1fkM0<>

 よく見ると部屋の一部はガラス張りになっていて、
 そこからは心身の調整中の妹達の姿を見られた。

 カプセルのような容器で、学習装置を装着したその姿に目を細めてから、
 布束は壁際に並ぶ機器へと近づく。


 (……とうとう、『コレ』を使うときが来たようね)


 左手で操作パネルを叩きながら、右手を使い、ポケットから直方体を取り出す。

 黒っぽい色をしたそれは、この施設のスパコンに対応した記録媒体。

 15センチほどの長さを持つそれに入力されているのは、
 彼女が今までに出会った人間達の感情のデータだ。


 (コレを、学習装置を利用して妹達の一人にインストールする。
  そうすれば、このデータは『ミサカネットワーク』を通じ、全妹達に送られる)


 もちろん、この程度のデータでは真の感情が芽生えることは期待できない。

    ・・・・・・・
 だが、それでいいのだ。


 (一時的で疑似的なものでもいい。自らの運命を嘆き、悲しんでくれれば。
  那由他ちゃんの言っていたことが本当なら……それが『彼』の心を動かせるなら。
  ……この『実験』は、止められる!)


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 21:22:00.12 ID:fydU1fkM0<>

 二つある操作パネルの内、片方でやるべき操作を終えた布束は、
 もう片方の前へと多少体をずらす。

 一呼吸の間を置くと、彼女は目にも止まらないような速さでパネルに触れ、
 次々とロックを解除していく。

 目の前に設置されたモニターの上には、やがて一つの文章が光り始めた。


 『入力する情報端末を挿入してください』


 (……、よし!)


 それを確認した瞬間、布束は右手の端末を素早くユニットに差し込む。


 (後はこれを押し込んで、パスワードを入れれば……!)


 焦りながらも、正確に手順を確認した布束は、最後の仕上げとなるその作業に取りかかり、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 21:28:32.20 ID:fydU1fkM0<>






 直後、ゴン、という衝撃が彼女を襲った。






<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 21:30:20.31 ID:fydU1fkM0<>

 「……あ、が……?」


 右肩が動かない。

 その原因が後ろから捻り上げられていることにあると気づくには、
 瞬間以上の時間が必要だった。


 「関係者であるかどうか、上に確認を取るのに超時間が必要でしたが……
  データ類の輸送が済むまでは超立ち入り禁止とのことでした。
  こちらはアナタを超侵入者として認識してます。構いませんね?」


 かけられた声は、幼かった。

 女子中学生……いや、下手をすると那由他と同じ年代かもしれない。

 それにしては力が強すぎるようだが、その辺りは少女の能力なのだろう。

 身体強化系の能力者なのかもしれない。が、そんなことはどうでもいい。


 (……っ、あと一歩だった、のに……!)


 ギリ、と歯を噛みしめる。

 何で、よりによってこのタイミングで。


 「ま、私達(わたしとフレンダ)の役割は超防衛でしたからね。
  遊撃隊(むぎのとたきつぼ)が動いても、自陣は離れないって計画でしたし。
  ですから、そんなに超悔しがらなくても。どのみち見つかってたんですから」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 21:44:38.96 ID:fydU1fkM0<>

 軽い調子で言った少女は、顔にかかったフードを取る。

 その下から現れたのは、予想通り幼い顔。


 少女は、つまらなそうに笑いながら言う。




 「あぁ、自己紹介が超遅れましたね。


  『アイテム』所属、絹旗最愛です。


  以後、超お見知りおきを」



<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/20(月) 21:47:39.27 ID:fydU1fkM0<> どうせ漫レーで描かれてるので
説明は特にテキトーです

次回からまたバトルだろうか?
今度はすぐに終わると思います

ではまた次回 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/22(水) 08:33:00.74 ID:597f9owGo<> お <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/22(水) 09:21:47.80 ID:cmfKIk71o<> 乙乙
絹旗ちゃんキター! <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/24(金) 23:05:33.77 ID:5Ejejadg0<> どーもです

さくっと投下します


前回の続きより <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/24(金) 23:06:12.52 ID:5Ejejadg0<>

 「っ……、離して……!」

 「……はぁ。そう言われて離す超バカがドコにいるっていうんですか。
    少なくとも私は超違いますからね、勘違いしないでください」


 絹旗と名乗った少女は、呆れたように受け答えすると、
 布束の右腕を更にキツく捻り上げる。

 痛みのためか、布束の体が小さく震えた。
 口からは、小さな呻き声が漏れ出す。


 「無駄な抵抗は超よして、大人しく捕まって下さい。でないと……、」


 と、ここで絹旗は言い淀むように言葉を切った。

 とはいえそれは、布束に対する同情とか、敵を哀れに思ったとかではないのだろう。

 演出しているのだ、恐怖を。

 それも、ただ単純に、抵抗される面倒を避けるためだけに。


 なるほどそれは、確かに有効だろう。
 力の入れ方を強くしたのも、恐らくはそのため。

 一般人なら、痛みから逃れるために降伏してしまうに違いない。
 例え、その後にどんな地獄が待っているか知っていたとしても、だ。


 (……無駄な、抵抗……?)


 だが、ここに来て布束の頭に響いたのは、恐怖でも痛みでもなかった。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/24(金) 23:09:48.07 ID:sp09sfIL0<> 待っていたぞ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/24(金) 23:14:43.42 ID:5Ejejadg0<>

 無駄な抵抗。

 絹旗が何気なしに放ったその言葉が、布束の心を大きく揺さぶる。


 確かに、そうなのかもしれない。

 仮にこの計画を止めたところで、クローンという特殊な出生の彼女たちには、
 問題はまだまだ大量にある。


 例えば、世間からの評価。

 科学の結晶である彼女たちに、悪い方向の興味を持つ者は少なくないだろう。

 そして逆に、クローン人間を法的に禁じている国際社会の中で、
 彼女たちは学園都市に対する不満をぶつける格好の的になってしまう。

 周囲から向けられるのは好奇の目。
 国際的に向けられるのは非難の声。

 そんな状況に、彼女たちは耐えられるのだろうか?


 例えば、寿命。

 特別な薬品で細胞分裂を促された彼女たちは、
 元々短いとされる体細胞クローンのそれよりもさらに短命だ。

 ペットとして飼われる犬や猫の方が長く生きられるほどに。

 いや、寿命で死ねたらまだ幸せかもしれない。

 下手をすれば、養う人間がいない故の餓死などをしてしまう可能性だってある。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/24(金) 23:33:51.24 ID:5Ejejadg0<>

 これらの問題は、布束では解決することができない。

 否、例えそれが美琴だろうと那由他だろうと、不可能だ。

 問題の大きさも、質も、まるで違う。
 超能力者だろうがサイボーグだろうが、たかが「個人」で解決できるものではない。

 一つだけ道があるとすれば、彼女たちを造った張本人である学園都市による協力。

 だがむしろ、それこそ無謀といっても差し支えない。

 利用価値の無い、そのくせ非難の対象になるようなモノを、
 彼等がわざわざ生かしてくれるとは限らない。

 リスクとリターンの天秤にかければ、その結果は「処分」となってしまうだろう。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/24(金) 23:41:48.76 ID:5Ejejadg0<>

 ならいっそ、このままでいいではないか。


 彼女たちは「実験動物」として、役目を果たし死んでいく。

 彼女たちの存在意義の、まさにそのままに。

 それが彼女たちの生まれた理由で、
 それが彼女たちの唯一の使命なのだから。


 ……そう、何度も思った。



 (……でも)



 そんな時、半ば諦めていた自分を、奮い起こすモノがあった。


 それは、ある男の遺志を継ぐと言った那由他で、

     口にはせず、妹を守ると誓った美琴で、

     大切な人を守ると告げた介旅だった。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/24(金) 23:53:15.22 ID:5Ejejadg0<>


 『頑張ろうね、砥信お姉さんっ!』


 無邪気に笑った少女の顔が浮かぶ。



 『私一人で十分よ。

  ……これは、私の問題だから』


 冷たく、寂しげに笑った顔を思い起こす。



 『僕でよければ、力になります。
  御坂を……僕の友達を助けることにつながるんですよね?』



 弱々しくも芯の通った、強ばる笑みを思い出せ。



<> 寝落ち…… 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/25(土) 06:43:05.11 ID:1tPi/bNg0<>


 フッと、そこまで考えてから布束は笑った。


 (……なんだ、簡単なことじゃない)


 彼女の様子を不審に思ったのか、絹旗はより強く腕を捻り上げる。

 だが、


 (私は、あの子たちを助ける。
  ……邪魔は、させないッ!!)

 「なっ!?」



 その拘束は、既に意味を為さない。

 痛みを利用した拘束は、逆に言えば。

 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・
 痛みを受け入れることで、抜け出せるのだから。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/25(土) 06:43:41.88 ID:1tPi/bNg0<>


 布束の取った行動は、至極単純だった。


 左手の方向に、無理矢理体を捻る。


 ただし、それを後ろ手に拘束された状態で行うとどうなるか。

 答えは、簡単。


 布束の腕の中で、ゴギメギミシギチ!!と破壊の音が連続する。



 「アナタ、超馬鹿ですか……!?
  そんな、自力で腕を折るなんて……」



 掴んでいた絹旗の方が、信じられないといったように目を見開く。


 構わず、布束は白衣から取り出した物を絹旗の眉間に突きつける。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/25(土) 06:44:38.12 ID:1tPi/bNg0<>


 黒く光る小さなそれ。


 小口径で、ライフルと同じ威力を生み出す怪物兵器。



 「那由他ちゃんから借りておいて、正解だったわ」


 「……っ!」



 左手だけで『暴れ馬』を構えた布束は、反動も気にせず一気に引き金を引く。



 ガァァァァン!!と、部屋を震わせるような音が響いた。


 そして……、


<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/25(土) 06:46:27.85 ID:1tPi/bNg0<> また寝てましたゴメンナサイ……
ぜんぜん成長してないなこの>>1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/25(土) 11:42:25.39 ID:iW5QZSkoo<> 乙乙
頑張れ砥信お姉さん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/25(土) 13:33:00.34 ID:mZ9qb6nro<> ふむ……義手フラグか

乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 21:04:01.61 ID:9wWRv3KM0<> ばんはー

投下始まりでっす

ちょっと寄り道で芳川から。
出そうか迷ってた人物も出てきます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 21:04:43.36 ID:9wWRv3KM0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「まったく……レディーは大切に扱いなさいって習わなかったのかしら?
  そんなことだから、あの年で未だに女性経験が皆無なのよ」


 天井亜雄に連行されてブチ込まれた牢の中で、芳川桔梗はひたすら愚痴っていた。

 本人は単に苛立ちや日頃の鬱憤を吐き出しているだけなのだが、
 後ろ手にかけられた手錠をガチガチ鳴らしながらというのはなかなかにシュールである。

 というか、天井に向けた愚痴の三割ぐらいは自分にも当てはまるブーメラン発言なのだが、
 そんなことは置いといてブツブツ言い続ける芳川なのであった。
 自分のことは棚に上げる、というヤツだ。

 そんな芳川は、腰が痛くなってきたなと石の床から立ち上がり、
 鉄格子とは反対側ーーといっても五メートルほどしか離れていないがーーにもたれかかる。


 彼女がこの監禁部屋に連れてこられたのは、つい一時間ほど前。

 拳銃、しかも軍用の大口径を持った天井に対して、抵抗の余地は無かった。
 そう悟った芳川は、大人しく無抵抗のままエスコートされてきたのだ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 21:15:13.87 ID:9wWRv3KM0<>


 (それにしても……まさかここまでのVIP待遇とは、ね。
  あの資料に、そんな重要な意図が隠されていたのかしら?)


 ふと口を止めた芳川は、彼女が拘束された原因でもあるあの資料を思い出しながら、


 (あそこから考えられるのは、木原数多の死因が人為的なものだということ。
  更に言うならば、それに介入したのは収束実験の関係者の可能性が高い)


 抱いたのは、素朴な疑問。

 能力開発とは別の分野においてその才能を認められた彼女の、
 優秀な頭脳がフル回転して答えを探っていく。


 (ここで不審に思えるのは、やはり『あの夫妻』。
  思えば、木原は死んだのに彼らが無傷という時点でおかしい。
  そこに何らかの細工があったと考えるのが妥当ね)


 と、そこまで考えてから芳川は目を細めた。

 彼女は、その『夫妻』とは旧知の仲である。
 友人を疑うということに、些かの抵抗を覚えたのだ。


 (こんなことは考えたくもない。
  でも、事故を起こしたのが二人だとすれば、色々な辻褄が合う。
  ……たとえば、一番分かりやすいのは動機)


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 21:19:41.07 ID:9wWRv3KM0<>


 疑うことしか出来ない自分に苛立ちを感じながらも、芳川は思考を止めない。


 (彼らが、木原の作った『天使の涙』を奪いたかったのだとすれば。
  こうやって事故を起こすのも、実験後『天使の涙』が見つからないのも説明できる)


 考えるにつれ、掌からは汗が滲み出す。

 焦り。自らの仮説に、驚くほど筋が通っている恐怖。


 (あるいは、少しでも関係のあった『絶対能力進化実験』に参加しない彼に、
  別の方面からアプローチをかけた結果だとも考えられる。
  現に、事故の直後に『実験』は再開されているのだし)


 だが何にせよ、このままではただの仮説にすぎない。

 これを断定するにも否定するにも、証拠となるものはまるでない。

 だからこそ彼女は、その『夫妻』に連絡を取ろうとしていたのだが。


 (……まさかあそこで横槍を入れてくるとは。
    ホンットに空気が読めないわねあのダメ中年……)


 ここまできて、天井亜雄への憤りに話がループ。

 またもや愚痴を言ってしまいそうになるが、気を取り直して芳川は考える。

 どうにかしてここから出て、彼らに会わなければ、と。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 21:34:12.71 ID:9wWRv3KM0<>


 (リスクやリターンの話じゃない。
  わたしは、ただ単に知りたい。彼を取り巻く環境の変化について)


 無駄だとは分かりつつも、両手を動かして何とか手錠を取ろうとする。

 しかし、当然ながら強い合金の鎖はビクともしない。

 彼女の行動は、無意味にガチャガチャとした音を立てるに留まる。

 と、そんな彼女に、かけられる声があった。


 「……何をしている?芳川」

 「?あらダメ中n……天井亜雄。わたしに何の用かしら?」

 「お前、今何か失礼なことを言いかけなかったか?……まぁいい。
  お前に客……いや、面会者、かな?とにかく会いたい人間がいるそうだ。今通す」


 客、という言葉に芳川は眉を潜める。

 彼女が捕らえられてから、まだ一時間。
 そんな短い時間で、情報を手に入れられるものなのだろうか?

 天井は疑わしげな顔の芳川に構わず、客とやらに声をかける。


 「面会の許可が出た。来るなら早くしろ」

 「……えぇ、どうもありがとう」


 そして、細い声とともに芳川の前に姿を現したのは、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 21:53:10.24 ID:9wWRv3KM0<>


 「あ……っ、」


 芳川は、思わず叫びそうになっていた。

 慌てて口を押さえ、何とか声を飲み込む。


 「?どうかしたのか」


 不審な目で芳川を見る天井に、


 「……いえ。私と会うのが久し振りなので、驚いているんでしょう」


 答えたのは、芳川ではない女の声だった。


 「ふん、そうか。では私は上階で待っている。
  10分以内に戻ってこなければ呼びに来るぞ」

 「……えぇ、ではまた後ほど」


 それだけ言うと、天井はさっさと階段を上って去っていった。
 彼の退席からたっぷり30秒ほどの間を置いてから、女は芳川に語りかける。


 「……おひさしぶり、ですね」


 肩よりも10センチほど下まで伸ばされた黒髪。
 化粧っ気の無い色白の顔には、赤色の眼鏡が乗っている。

 十人並みと呼ばれる程度の外見を持ったその女こそ、芳川が最も会いたかった人物。

 芳川は声が震えないように気を使いながら、柔らかな声で応える。


 「えぇ、久しぶりね。去年の合同実験以来かしら?」


 そして、彼女はその名を呼ぶ。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga !蒼_res<>2012/02/29(水) 22:04:31.34 ID:9wWRv3KM0<>



   ・ ・  ういの
 「 介 旅  初 野 」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 22:05:47.04 ID:9wWRv3KM0<>


 大人の世界に生きる者。


 子供の闘いに活きる者。


 過去を紐解き、未来を切り開く。


 それぞれの役割は、あるべきそれぞれが担う。

    おとな     おとな
 無力な親たちと、権力の科学者。

    こども       こども
 平凡な弱 者と、突き抜けた強 者。


 二つの道が交わることはない。


 ただ平行し、並行しながら。


 物語は進んでいく。


 全知の大人は語る。

 無知なる子供は踊る。


 学園都市という、広く矮小な舞台の上で。


<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/02/29(水) 22:15:51.86 ID:9wWRv3KM0<> 結局オリキャラ出てしまったわけですはい
以下ちょっと後書き的な何か

彼女……というか彼女達は、現在の時間軸におけるストーリーテラーとしての役割です。

出さなくてもなんとかなりそうではありますが、いた方が流れが良くなるので出演。

ついでに言うと、出したからにはそれ以外に重要な役割をもってもらいます。
木原クンがやる予定のあったものの肩代わりとかが多いかも。木原クン多忙なので。


以上、分かりづらい後書き兼解説


受験までに終わらせるとか言ったけど全然無理でしたorz
これまでよりも更にダラダラになるかもですが長く生暖かい目で見守ってやってください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/01(木) 01:30:11.74 ID:Z7fOrhZ2o<> 乙乙
お母様登場?
かっこよく活躍してる芳川さん少ないから嬉しい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/03/02(金) 18:52:15.23 ID:oQ+wNAyAO<> 乙
親父さんの名前を予想しながら待つぜ <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 08:14:24.01 ID:T558VNnn0<> どーもー

おとーさんの名前はパパッと浮かんだやつなので結構分かりやすいかもです
そんなに遠くない内に登場予定でございますです

では再び布束サイドから投下 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 08:17:23.07 ID:T558VNnn0<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (痛っ……ッ、)


 仰向けに倒れた布束砥信は、思わず顔をしかめる。

 両腕に、鋭い痛みが断続的に走っていた。


 (分かっていてやったことだけど……。これは辛いわね)


 拘束を振り解くために自ら折った右腕は、肩と肘の中間辺りから感覚がない。

 残った左腕も、『暴れ馬』の反動のためか動きがぎこちない。
 もしかすると、どこかで脱臼でもしているのだろうか。


 (……あの子、は?)


 倒れたまま、視線を横に動かす。

 数秒もしないうちに、探したものは見つかった。

 それほど離れたところではない。
 床に、血にまみれた茶色の髪が散らばっている。


 「……ごめんなさいね。威力が高すぎて、
  急所を外したとしても死なせてしまうって知っていたから」


 小さな声で謝り、激痛に耐えながらゆっくりと立ち上がる布束。

 彼女は寄りかかるように機械の前に立つと、ほとんど機能しない左手で、
 本来の何倍もの時間をかけてキーを押し、番号を入力していく。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 08:30:46.06 ID:T558VNnn0<>

 [UNLOCK_端末内のデータを確認中……]


 表示された文字列に、布束はピタリと指を止める。

 まるでそれを合図にしたかのように、画面は次々と表示を変化させる。


 [……確認完了

  同データを検体:Misaka19090thに入力中……完了
  続いて'Misaka-Network'に接続します……]


 流れるように移り変わるメッセージ。

 それらを見て、ようやく布束の顔が綻ぶ。


 (これで、全てが終わる。
  ……いいえ、違うわね。ここが、全ての始まり)


 彼女は笑みを見せながらも、
 これから起こるであろう困難、それに対する解決策を考えて、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 08:38:47.69 ID:T558VNnn0<>





 [接続がネットワーク側から中止されました]





 ブー、という警告音と共に表示されたメッセージに、彼女は目を見開くこととなる。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 08:47:57.84 ID:T558VNnn0<>


 それを皮切りに、画面は刻一刻と変化を重ねる。


 [Error]

 [WARNING!]

 [警告]

 [上位個体20001号のものでないコード]

 [検体名Last-Order以外からのコードは受付不可能です]

 [Misaka19090thへインストールされた同コードをデリートします]

 [……システムエラーによりデリートは不完全]

 [システムマスター:天井亜雄へ通達します]


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/03(土) 08:49:51.78 ID:GmzbBVvA0<>

篠田真理子のアイコラ
いけてるフル勃起w
http://6118.teacup.com/ryonogg/bbs/smartphone/thread/list/thread_id/52/thread_num/l50/?

西尾由加里アナ、緻密すぎ笑た
http://6118.teacup.com/ryonogg/bbs/smartphone/thread/list/thread_id/51/thread_num/l50/? <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 09:01:32.60 ID:T558VNnn0<>


 「何だ、これは……ッ!?

  上位個体?ラストオーダー?いつの間にこんなセキュリティが……!」


 驚愕する布束の背後に、さらにそれを加速させる声がかかる。



 「よく分かりませンが……あなたの目論見は超失敗したよォですねェ」


 「ッ!?バカな……っ!!」


 反射的に後ろに振り向く。


 そこにいたのは、




 「ごめンなさいね。
  能力が超強すぎて、急所に当たったところで致命傷にはならないンですよ。
  ……まァ、そこまでの威力だと超痛ェ訳なンですけど」




 額から血を流した、しかし明らかに撃たれたほどの傷を負ってはいない、絹旗最愛。



<> しばらく抜けます 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 09:14:03.33 ID:T558VNnn0<>


 (そんな……!ただの身体強化能力者に、そんなことができるハズがない!!)


 「あァ、その顔はひょっとして、私のことを超ただの身体強化系だと思ってたとかですか?
  だとしたら超ハズレですね。特別に教えてあげましょうか?私の能力は、」




 「『窒素装甲(オフェンスアーマー)』。違うかな?絹旗ちゃん」




 「ッ!」



 投げられた声に、絹旗はとっさに腕を交差させて回避行動に出る。

 その瞬間、



 ゴッ!!と、ガラスを破って飛び込んできた木原那由他の蹴りが絹旗を吹き飛ばした。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 12:38:45.30 ID:T558VNnn0<>

 突然やってきた那由他を見て、場違いとは思いつつも布束は頬を緩める。


 「あら、遅かったじゃない那由他ちゃん」

 「あはは、初矢お兄さんの手伝いに手間取っちゃって」


 対し、壁に叩き付けられた絹旗は、特に痛がる素振りも見せずに那由他を睨む。


 「……超何者ですか。私の能力をすぐに見抜くなンて」


 「見抜いた訳じゃなくて、知ってただけだよ。
  あーくんやおじさんが関係してる実験は、全部教えてもらったからね」


 「っ、というと。『暗闇の五月計画』も超知ってるンですね」


 「まぁね。……でも、やっぱりあーくんの『自分だけの現実』は凄いね。
  どうもあなたのチカラは、私の能力じゃ完全には乱せないみたい」


 気楽そうに言いながらも、那由他は冷や汗を流す。

 絹旗の能力『窒素装甲』は、体の周りに厚さ数センチほどの圧縮窒素を纏い、
 物理攻撃の大半を無効化してしまう能力だ。
 さらに、その鎧は攻撃においても相当の威力を発揮する。

 率直に言ってしまうと、接近戦では勝ち目がないのだ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 12:39:22.75 ID:T558VNnn0<>


 「どォしたンですか?超威勢が良かった割には、後退ってるよォに見えますが」


 「あ、バレちゃった?私、勝てない戦いをするほどバカじゃないからさ」

 「じゃあ、やっぱりバカなンじゃないですか?
  こンな逃げ道の少ない場所に入って来てしまった時点、で……?」


 語尾が疑問系になっているのは、彼女自身が気付いたからだ。

 自分の言ったことの、違和感に。


 「……待ってください。超オカシイですね。
    会社の中からここまでは、小さな通路の一本道。
    そこから私に気付かれず忍び込むなンて、超不可能に近い」


 と、なれば。

 考えられるのは。


 「……まさか、機材運搬用の入り口から入った……?
  内部からシャッターを操作しなければ超入れない、あの入り口から……!」


 そこで絹旗は、何かに気付いたように布束に向いて、


 「……そォか、あの時!そこの機材で、入り口を超開いたンですね?」

 「あら、今ごろ理解したの?
  そうよ、その通り。だから、まぁ……逃げ道は広いわよ」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 12:41:12.88 ID:T558VNnn0<>

 布束の言葉に、絹旗は壁を蹴って飛びかかる。

 同時に、那由他が取り出した発煙筒が炸裂した。


 「ッ!?超、煙幕……?」


 煙に目測を逸らされ、見当違いの場所に着地する絹旗。


 「逃げるよ、砥信お姉さん!」

 「えぇ、エスコートをお願い」

 「ッ……そこ、か!」


 足音と声を頼りに、絹旗は腕を振り回す。

 だが、



 「……チィ、超逃げられましたか」


 煙が晴れると、部屋には誰もいなくなっていた。


 ひとまず任務失敗の報をするか、と重い気持ちで出口に歩いたところで、



 「……ん?コレは……?」


 彼女は、床に落ちた分厚い書類の束を見つけた。

 恐らくは侵入者が落としたのであろうそれに軽く目を通し、


 「これはまた、麦野が超喜びそうですね」


 彼女は苦笑しながらそれを取り上げ、再び歩き出した。

<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/03(土) 12:41:59.76 ID:T558VNnn0<> 駆け足で終わってしまいましたこちら側
布束さんは何とか助かったようです
そして、那由他ちゃん痛恨のミス。重要な書類落としました

次回は麦野を倒した介旅のその後
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/03/03(土) 17:24:06.49 ID:W04JC4DAO<> アイコラ→なんだこれは
の流れで笑ってしまった

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/05(月) 12:39:55.59 ID:b7+/7ew0o<> 乙 <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:50:25.65 ID:RtKbKIgmo<> すみません、色々と忙しくて来れませんでした……

今日から更新再開です!
しかしさらにゆっくりになってしまうかも……

でも新しく別の端末をゲットしたんで投下はスムーズに……なるかなぁ


では投下
色んな人の視点から、過去編も含めて <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:52:06.67 ID:RtKbKIgmo<> ――――

――――――――
―――――


「砥信お姉さん、大丈夫?腕……」


夜中――とはいっても街灯の灯りにより読書すらできそうなほどの路地を、走る影が二つ。

そのうちの一人.木原那由他は、並走する布束砥信に気を遣うように声をかけた。

対し、当の布束は痛みに歯を食い縛るような様子すら見せず、
寧ろ何故そんなことを気にするのかといった表情で、

「ええ、大丈夫。問題ないわ。
少し痛むけど、走れない程ではないから」

「……無理しちゃダメだよ?」

「それをあなたが言う?一番ハードな動きをしてるでしょうに」

「う……そ、それはその……」

「言い訳しない。頑張ってくれるのは嬉しいけど、
何もあなたが全部やらないといけないわけじゃないのだから」

「は、はぁーい……って、いつの間にか論点がすり替わってるような……?」


何とも言えない違和感に首を傾げる那由他だったが、どうもその正体には気付けないでいる。

実際のところは、心配されるのを嫌に思った布束が強引に話題を切り替えただけなのだが、
流石そこは心理学者、得体の知れない呼吸法やらなんやかんやで上手いことやっているのだろう。

もっとも、両腕に深手を負い、精神を乱される状態でそんな芸当の出来る人間など、学園都市にも十人といないだろう。
というか、いたら怖すぎる。


「……なーんか釈然としないなー……まーいっか」

「ところで聞きたいのだけれど、私達は今からどこへ行けばいいのかしら?」


首を捻っているところに飛んできた質問に、那由他は若干呆れたような顔をして、


「……お姉さん、何言ってんの?病院に決まってるじゃん」

「いえ、それは分かるのだけどね。病院といっても色々あるでしょう。
こんな状態の患者を確実に受け入れてくれる確証なんてあるの?」

「なんだ、そんなこと?なら心配いらないよ」

「なぜ?」

「あそこの『カエルのお医者さん』なら、絶対だいじょーぶだから。
私の体の機械部分が壊れちゃった時、いっつもお世話になってるとこだもん」

「あぁ、あの『冥土帰し』の、ね」

「そ、そ。ほら、見えてきたよ」


那由他が指差す方向を見れば、なるほどそこには彼の有名な病院が。

ようやく落ち着ける、と顔には出さずとも疲労を蓄積させていた布束が一安心したところで、


「……?救急、車?」

「みたいだね」

横合いからのサイレンの音に、二人の注意が一気に引かれる。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:53:32.53 ID:RtKbKIgmo<>

別段、なんということはないはずの光景なのに。
そこからは何故か特別な、予感めいたものを感じて。


「君、大丈夫か!しっかりしろ!!」

「ひどく衰弱している模様!至急、集中治療室へ!」


杞憂であってくれと願いつつ。
病院前で、担架に乗せられ車から運び出されるその人物を見て。


「……そんな」

「……ウソ……」


彼女たちは、絶句することとなる。

二の句を継げぬ彼女たちに代わるかのように、一人の医師が呟いた。




「やれやれ。つい先日退院したばかりだというのにね?
君はそんなにこの場所を気に入ってしまったのかな?」




麦野沈利との戦いに辛勝し、そしてその代償として片腕を奪われた、介旅初矢を見て。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:54:18.36 ID:RtKbKIgmo<>
――――

――――――――
―――――


同時刻。

麦野沈利は、異様に揺れの少ない、重傷人輸送用の特別車で目を覚ました。


「あ、起きましたか。やっぱり超丈夫ですね。
見るからに一番重傷なのに、他の二人よりも早く目覚めるとは」

「絹旗、か……ッ!?」


見下ろす二つの瞳に鬱陶しそうに返答する。
途端、彼女は痛みに顔を顰めた。


「ダメですよ、超喋っちゃ。
肺とか気管支とか……傷付いてるんですから、イロイロと」


心配するような口調に、つい言い返しそうになる。
だが、大きく息を吸えばそれだけで激痛だ。

哀れみはいらねぇぞクソ、と言おうとして、しかし発音できない。

くそが!!とジレンマに身悶えしていると、絹旗はニヤニヤと笑って、


「ほらほら、たまには超素直になって」

「うるせ、……ゲホっ!!」

「ちょ、ちょっと!ホンキでダメですってば!
いつ血吐いてもおかしくないんですから大人しく!!」


麦野を宥めながらも、少々からかい過ぎたと感じたのか、
絹旗はちょっぴり縮こまって、


「……はぁ。じゃあ、状況報告といきますか」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:55:25.31 ID:RtKbKIgmo<>


「……」


無言で頷いたところをみると、気になって仕方なかったらしい。

あのメガネは?第三位は?きっちりブッ殺したんだろうな?
……とかいう感じで、目が語っている。

そんな威圧的な視線に、うわこれ言ったら怒るんだろうな、と思いつつも絹旗は一言、


「えー、超率直に言いますとですね。
あのヒトタチは、逃がしました。今頃は私が手配した救急車で移動中でしょうね」

「あぁ!?テメェ何を……ゴホッ!」

「お、落ち着いてください!
超ちゃんと理由ありますから!」

「……」


疑うような厳しい目付き。
これは紛うことなく『納得のいく説明はあんだろうな?』だ。
ここで一歩間違えると大変なことになる。
具体的には上半身と下半身がおさらばするとか。

そんな緊張感に、絹旗はうっすらと冷や汗をかきながら、


「見てもらった方が超早いと思いますよ。
ほら、コレです」

「……ァ?」


腕が使えるほどには回復していない麦野のために、絹旗は多少キツイ体勢で書類を広げる。

目の前に出された書類に、寝転がったまま目を通していった麦野は、


「……絹旗」

「ハイ?」

「ナァァァァイス判っ断♪確かにコレは泳がせた方が面白……ッがっ!!?」

「そうでしょやっぱr麦野ぉぉおぉォォォ!?」


あまりの興奮に再び吐血した麦野の元に、非常信号を聞いた乗組員が慌てて駆けつける。

騒ぎの中で床に落ちてしまった書類には、こんなことが書いてあった。





『絶対能力者進化実験について※Nayuta』






<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:56:12.91 ID:RtKbKIgmo<>


――――

――――――――
―――――


「うーん……あんまり非科学的なコトは言いたくないんだけど……、
コレは'運命'としか言いようがないよねぇ」

「まぁ、偶然にしては出来すぎているものね」


溜め息を吐きながら、那由他は自らの手の中にあるモノを見る。

小さな手に握られているのは、人間の腕……の『代用品』。
つまりは、義腕。

装着には体の方にジョイントが必要であるため、
正確にはサイボーグの部品といった方がいいが。

しかし、それは那由他の物ではない。

彼女の腕と比べても、明らかにサイズが大きい。
平均的な体格の高校生の腕、といったところだろうか。

規格が合わないのは、別に那由他が好き好んでそうしたわけではない。
とあるルートで手に入れた特別製のそれが、たまたま那由他に合わなかったまでだ。


「私の体には接続不可能。そしてちょうど『右腕』」

「何の巡り合わせかしらね、これは」

「妹達への感情入力は失敗して、『樹形図の設計者』は消息不明。だから、」

「となれば、最も避けたかったプランを実行しなければならない」

「プラン3……『一方通行を、力業で捻じ伏せる』、だっけ」

「そのために必要なソレを、アナタが使えないのなら」

「……それしか、ないよね」


腕を吊った布束と、機械の腕を持つ那由他。
二人は、諦めたように同時に嘆息する。

しばらくの沈黙の後、那由他は呟く。


「ごめんね、初矢お兄さん」


腰掛けたベッドに眠る、介旅に向かって。

寂しく笑って、語り掛ける。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:56:51.30 ID:RtKbKIgmo<>






「お願い。あーくんを、倒して」





死刑宣告としか捉えられない、その言葉を。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:57:26.85 ID:RtKbKIgmo<>


――――

――――――――
―――――

『……処分?そりゃ、つまり……』

『了解、しました。戦闘を、続行、します、とミサ、カは、告げ、ます』


何の気なしに臨んだ、『絶対能力者進化実験』の第一回。

そこで一方通行が伝えられたのは、『検体を処分しろ』――つまりは、『殺せ』の言葉。

彼の視界の端で、倒れた『ミサカ〇〇〇〇一号』が、取り落とした武器を拾い上げる。


『……ッ!』


放たれた弾丸が、音よりも速く一方通行の柔肌に触れ、


『……ク、ソがァァァァ!!』


直後、『反射』の設定を組み替えた彼の力で、あらぬ方向に弾き飛ばされる。

ギリギリのタイミングに冷や汗を流した一方通行は、備え付けのカメラに向かって何かを叫んだ。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:58:09.15 ID:RtKbKIgmo<>



「へぇ」


その様子を眺めていた男は、楽しそうに呟いた。

細身の体に、クシャクシャとした茶髪が印象的な男は、
一方通行の突然の要望に戸惑う職員の肩を叩き、


「おい、今の聞こえただろ?体調不良だから実験中止しろとよ」

「へ?し、しかしあと少しで……」

「白衣サンの悪ぃクセだねぇ。被験者がぶっ倒れたら元も子も無くすぞ?
まぁ俺は見学に来てるだけだし、この『計画』がどうなろうと知ったこっちゃねぇけど」

「……」

「お偉いさん方にとっちゃ、『計画』は重要なんだろ。
万が一にも頓挫なんかしたら……消されんじゃね?」

「……ッ!検体番号一!今すぐ戦闘を中断しろ!!」

「おーけぃ、それでいい」


飛び付くようにマイクを掴んだ研究者を見て、男は満足そうに頷いた。

保身に全力を尽くすその姿を、醜いとは思わない。
そんなこと、とうに分かりきったことなのだから。


「……さーて、と」


椅子から立ち上がり、軽く伸びをした男は気軽そうに、




「数多さんのトコの息子、か。一応挨拶に行っとくかな」




そう言うと、部屋の出口へ歩き出すのだった。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:58:45.90 ID:RtKbKIgmo<>


――――

――――――――
―――――


「クソが……二万のクローンを殺す実験だと?フザケやがって」


実験場から外に出た一方通行は、誰ともなしに悪態を吐く。

ともすれば、返事など期待していない独り言、
ないし自分に向けた言葉とも取れるようなものだったのだが、


「そーそー。科学者ってのはどっか頭が狂ってやがるよな。
……って、俺も科学者なんだよな……ハハ」

「……誰だ」


何気ない呟きに返事をした……言わばツイートに対しリツイートしたのは、
痩身に傷んだ茶髪、顔立ちに全く似合わない白衣という格好の男。

一方通行は突然現れた男に警戒しながらも、
暇潰しにはなるかと会話を切ろうとはしなかった。


「んー、そうだな。
さっきのキミの要望を、クソッタレな研究者に呑ませた人間だよ」

「あァ?……オマエが?いったい、なンのために」

「何の為、って言われてもなぁ。
今度『とある実験』でお世話になる、木原さんの息子だったから……ってトコかな」

「今度の実験……ってコトはオマエ、『AIM拡散力場収束実験』に参加する……」

「そうそう。……ありゃ、まだ名前言ってなかったっけ」


と、そこで男は一度言葉を切って、



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 11:59:40.62 ID:RtKbKIgmo<>






「申し遅れたね。俺は介旅破魔矢(はまや)。旅を介して魔を破る矢、と書く。

妻の名は初野で、長男は初矢、次男は継矢(つぐや)。

どこかで会ったら、その時はよろしく頼むよ」







<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/16(金) 12:04:40.09 ID:oiBegHA6o<> 投下終わり。


今度はお父さん登場ですよ。何なんだ介旅ファミリー。
まぁ木原一族には及ばないだろうけど。


どんどんテンポが速くなってく今日この頃。
さっさと完結させたいあまりに駆け足になってしまってるのかも。
ついてきてくださるみなさんありがとう

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/03/16(金) 16:06:30.45 ID:cAXEEreAO<> 学園都市には5000人の介旅がいる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/17(土) 15:36:46.82 ID:hC4oQC8F0<> 乙 楽しませってもらってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/03/17(土) 21:25:10.53 ID:r0AIWq9No<> おつー
新刊で木原の名前が一気に増えたがどう組み込むのか組み込まないのか
>>1の手腕に期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/18(日) 08:34:03.03 ID:TN9S2X3IO<> 乙
そのうち介旅妹とか出てきても不思議じゃないな <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:07:07.28 ID:vRZL+NBUo<>
どーもです

時系列表を作っていたら、一つ不自然な点を見つけたので訂正をば。

概要はこういうもの↓

@麦野戦にて、那由他ちゃんは『暴れ馬』を使おうとした(実際には取り出していない)
Aほぼ同時刻、布束さんは「那由他ちゃんから借りた」と言って『暴れ馬』を使用

端的に言うと、『暴れ馬』が二丁ある、というミスでして。
試作品なんだから一品ものだろという。

というわけで、麦野戦のときに那由他ちゃんが『暴れ馬』を取り出そうとしたのは、
布束さんに貸しているのを忘れてたってことで。
ドジっ娘属性ってことで。


そんな感じの適当な修正をしたところで、投下いきます

今回はやたら変則的。
一レスあたりが少なめ。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:07:58.89 ID:vRZL+NBUo<>




【木原那由他の日記――とあるコンピュータに納められていたデータより】




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:08:27.28 ID:vRZL+NBUo<>




・約7年前(抜粋)




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:09:34.22 ID:vRZL+NBUo<>



〇がつ×にち、はれ

きょうは、ひさしぶりにあまたおじさんにあった。

かみのけをわしゃわしゃーってなでてもらった。
らんぼうだけど、いたくなくってきもちいい。なんでかな?

きいてみたら「それがおれの『きはら』だ」だって。
うむむ、よくわかんない。

せかいには、わたしのしらないことがいっぱいある。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:11:02.94 ID:vRZL+NBUo<>



〇がつ△にち、くもり


げんせいおじいちゃんのところにいったら、てれすてぃーなおばさんにあった。
おばさんはいっつも「おばさんじゃねぇ、おねぇさんだ」っておこってくるからきらい。

おばさんはおばさんなのにねぇ。

えんしゅうちゃんは、「それが『おんなごころ』なんだよ」っていってた。

『おんなごころ』ってなんだろう。
えんしゅうちゃんにきいたら、しらないっていってた。

ぜんぜんかんけいないことだけど、えんしゅうちゃんはひらがなをまちがうことがある。
わたしよりおねえさんなのに、ふしぎ。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:11:38.17 ID:vRZL+NBUo<>



〇がつ□日、あめ


きのう、おじいちゃんのうちでねむっちゃったから、おとまりさせてもらってたみたい。
おきたらおじいちゃんのかおがめのまえにあって、ちょっとびっくりしちゃった。

おひるになったからおうちにかえろうとしたら、またてれすてぃーなおばさんにあった。
ふつかつづけてあうなんて、ついてない。

「こんにちは、おばさん」ってあいさつしたら、「おねぇさんだ!」ってげんこつされた。いたい。
ないてたら「うるせぇんだよ」ってもういっかいなぐられた。

たんこぶになっちゃうかも。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:12:09.26 ID:vRZL+NBUo<>


〇がつ◎にち、くもり


あまたおじさんにあった。いっしゅうかんぶり。
きのうなぐられたことをはなしたら、なんだかこわいかおになってた。

しんぱいして「おじさん、だいじょうぶ?」っていったら
「おじさんはだいじょうぶだけど、おばさんはだいじょばないかもな」って。

わらっていってたから、たぶんだいじょうぶだとおもう。
でもやっぱりしんぱい。わるいことするときのえがおだったから。

たんこぶにはなんなかった。よかった。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:13:09.04 ID:vRZL+NBUo<>


■がつ▽にち、あめ

てれすてぃーなおばさんがうちまでやってきた。
なんのようかとおもったら、あやまりにきたんだって。

おけしょうでごまかしてるけど、よくみるとかおにあざがあった。
なにがあったんだろ?



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:13:54.82 ID:vRZL+NBUo<>


・約三年前(抜粋)



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:15:22.46 ID:vRZL+NBUo<>



●月△日、くもり、のち晴れ

朝、数多おじさんから電話がきた。

「会わせたいヤツがいる」って。

そんな、お見合いみたいなコト言われてもねぇ……。
まぁ、おじさんが言うんだから面白い人がいるんだよね。

少なくとも、乱数おじさんの寒いシャレよりは。

今日はいそがしいから、明日行くことにした。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:15:52.03 ID:vRZL+NBUo<>



●月□日、快晴

おじさんの家にいたのは、見知らぬ男の子(最初は女の子に見えた)。

無口で、ぶあいそな子だった。私より四、五歳くらい年上かな?
どうやら、おじさんが今度あずかることになったんだって。

おじさんは、私が前「お兄ちゃんがほしい」って言ったのを覚えてたんだね。

……肌が真っ白で、キレイ。顔もカッコイイ……かな、うん。
足も長い。でも、体は細い。男の子なのに、私より細い。

その子の名前は、アクセラレータっていうらしい。
アクセラレータお兄さん、だと長いからあーくんって呼ぶことにした。

あーくん。……うん、いいひびき。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:16:29.80 ID:vRZL+NBUo<>



●月◎日、晴れ

昨日に引き続き、数多おじさんの家に行った。
……あーくんに会いに行った訳じゃないもん。ひまだったからだもん。

おじさんに聞いたんだけど、あーくんは超能力者のそしつを持ってるんだって。
すごいね、って言ったら、あーくんは少し恥ずかしそうだった。
白いから、顔が赤くなるのがすぐわかっちゃう。

能力名は『一方通行』……って、それ名前じゃなかったの?

名前をわすれちゃったから、しかたなく能力で名のってるんだとか。

なんだか、かわいそう。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:17:01.26 ID:vRZL+NBUo<>



・約一年前(抜粋)




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:18:35.81 ID:vRZL+NBUo<>


☆月×日、曇り

今日は面白いことがあった。

路地裏を抜けようとしたら、スキルアウトに絡まれた。結構いるもんだね、ロリコン。
まぁ当然、護身用紐付きダンベル(十キログラム)を振り回そうとしたんだけど……

そこで、その中の一人が誰かに吹き飛ばされた。

私も含めて騒然とする路地裏。
その空気をブチ壊すように、不良たちが次々と宙を舞う。

そして、私以外の全員が気絶したところで、ようやくそれが誰の仕業か分かった。

誰だと思う?

それはね、 あーくんだったの。

数多おじさんに言われて、私を迎えに来たんだそう。
……確かに、今日は数多おじさんの家に泊まりに行く予定だったけどさ。

迎えが必要だなんて、言った覚えはないけど。

でも、おじさんはそれだけ私のことを心配してくれたんだ。嬉しい。



<> ちょっと中断 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:19:39.80 ID:vRZL+NBUo<>


☆月★日、曇り

昨日書き忘れてた。

久し振りに会うあーくんは、随分と大きくなってた。
声も低くなってたし、顔もちょっと大人っぽかった。

でもまだまだ女の子みたいだし、細い。
ダイエットを気にし始めた私としては、うらやましかったり。

泊まりに来たのは、私に格闘を教えてくれたおじさんに、自主練の成果を見せるため。

……結果?ボロボロだよチクショウ。



<> 再開 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:40:14.89 ID:vRZL+NBUo<>





・数ヶ月前(抜粋)




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:40:55.86 ID:vRZL+NBUo<>



◆月☆日、雨

……嘘でしょ?

数多おじさんが、亡くなった?

病理おばさんの、嘘つき。

諦めなさい? それが現実だ?

私は認めない。何かの間違いだ。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:41:32.08 ID:vRZL+NBUo<>





◆月◇日、豪雨

お通夜に行った。


だめだ、もう何にも考えられない。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:42:07.21 ID:vRZL+NBUo<>



◆月〇日、霙

あーくんが『実験』を始めた。

私はとめた。でも聞かなかった。


……いやだ。イヤだよ、あーくん。

私のお兄ちゃんだった優しいあーくんは、どこに行っちゃったの?




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:42:43.83 ID:vRZL+NBUo<>



◆月■日、曇り

あのおじさんが、事故なんかで死ぬわけがない。

そういう可能性を、片っ端から叩き潰すのがおじさんだ。


となれば、考えられるのは人為的な……殺人。


私は、絶対に真実を見つけてみせる。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:46:09.60 ID:vRZL+NBUo<>




(日付不明)


ようやく見つけた。

とある場所に遺された、数多おじさんの遺志と遺品。

ここを隠し通してくれた『猟犬部隊』のみんな
ーーヴェーラおねえさん、ナンシーおばさん、ケインズおじさん、デニスおにいさん、その他にもみんな、ありがとう。

そして、見つけた真実は。



……あぁ、



(日記はここで途切れている)






<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/03/24(土) 12:52:45.85 ID:vRZL+NBUo<>

新刊に出てきた木原一族の皆さんは、名前だけ拝借。
でもやっぱり病理さんはこういう役回り。

時系列表は次スレあたりで貼るかも。
主に自分が分かりやすいように。


今回の投下は、那由他ちゃんの擬似一人称っぽい感じでした。
次回からはいつも通りに戻ります。
一夜明けた介旅サイドよりお送り。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/03/24(土) 14:23:11.55 ID:0io8pw6AO<> 乙。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/24(土) 14:48:11.59 ID:9yHhSDIN0<> もうすぐ一周年ですな。
乙。

熱いストーリーに期待します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/24(土) 17:54:39.46 ID:qd0FJrEio<> うん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/26(月) 12:13:09.34 ID:WQegTtnDo<> 第四の英雄か

全てに於いて中途半端な人間がどんな英雄になるか楽しみだ
最強じゃなく、かと言って無能力じゃない
全てを諦め不良に成れたかといえばそうじゃない
佐天の様に真っ直ぐ育ったわけではなく力を得て犯罪へ走った

第四の英雄は何とも泥臭い人間だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/03/31(土) 14:22:47.27 ID:zwaaiW+ao<> 乙だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/03(火) 13:43:54.77 ID:hn/ebIsAo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/04/09(月) 15:05:59.75 ID:1l2EWgOso<> 躊躇うな <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:33:51.75 ID:LAeILJJUo<> あわわわ……気付けば長いこと放置してたぁあぁ……

忙しくて更新できませんでしたゴメンなさい!


では久し振りの投下

いろんな視点からいきます <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:34:48.43 ID:1WcrGhSko<>

――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――


(……ここ、は……)


介旅初矢が目を開けると、その先にあったのは白い天井だった。
ほんの数日前と同じ光景に、タイムスリップしたかのような錯覚を感じる。

しかしよく見ると、隣に一メートルほど離れたところにはもう一つベッドが並んでいた。
カーテンで仕切られてはいるが、隙間から見える備品などを見るに女性のようだ。

同室に異性の患者同士を入れることなんかあるんだな、と納得しつつ、
彼は思考を現状の確認に回す。


(何でこんなところに……って、そうか、僕はあの後……)


ぼんやりとした頭で、昨夜の一戦を思い出す。

閃光。爆発。鮮血。激痛。

あまりにも非現実的すぎて、実感の湧かないビジョン。
そして、自分が確かにそこにいたのだという不思議な感覚。

そんなもやもやとした思いのまま、彼はふとその象徴である自分の右肩に視線をやると、




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:35:40.07 ID:09BViB2Ho<>





「………………は?」



・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そこには、まるで何事もなかったかのように右手がくっついていた。





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:37:37.87 ID:8dRHODDCo<>


「あら、お目覚め?」


混乱する介旅に、横のベッドから声がかかる。

カーテン越しにでも分かる、その大人びた声の主は、


「え……ぬ、布束さん!?」


言った途端、開閉ボタンのようなものを押したのだろう、機械音と共にカーテンが開く。

そこにいたのは、ゴスロリのようにあちこちにフリルをあしらった寝間着姿の布束砥信。
彼女は、吊られた両腕を示すように少し動かして、


「Yes、正解よ。昨日少しミスをしてしまってね。
……by the way,何か聞きたいことでもあるのではないの?」

「聞きたいこと……?」

「えぇ。for example,その右腕のこと、とか」

「……知ってるん、ですか?」

「Of course,それを用意したのは私達だからね」

「用意?」


人体に使うのは不適切と思われる言葉に、介旅は眉を潜める。

対し、布束は当然のように軽く頷いて、


「簡潔に言いましょうか。その腕はね、機械仕掛なの」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:41:05.91 ID:LmNulOJpo<>


「……義手――いや義腕、ってことですか?」


回りくどい説明を自分なりに噛み砕き、問いかける。
布束は、少し考えるような仕草をし、


「well……装着というよりは、接続に近い付け方だから……
どちらかというと、そうね。サイボーグと言った方が正しいかしら」

「………………………………はい?」

「おや、聞こえなかった? サイボーグよ、サイボーグ。
それとも言葉の意味が分からない?」


もちろん知っている。

小さいころ、語感に憧れたあのサイボーグだ。
機械の体で悪者を薙ぎ倒す、あのサイボーグだ。

しかし、単語の意味が分かるからといって言葉の意味が分かるわけではない。
自分が寝てる間にサイボーグになったと聞かされてはいそうですかと納得できるものか。


「えっと……、それはあれですか介旅初矢は改造人間である的な?」

「そんなところね」

「……」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:41:54.15 ID:LmNulOJpo<>


冗談混じりに言ったのに真顔で答えられて、ちょっぴり傷心気味の介旅である。

ショックでなんか固まってしまった介旅にフォローを入れようと、布束は珍しく慌てながら、


「ば、but,機械になっているのは右肩から先だけだから。
高性能な義腕だと考えてくれても問題はないわ」

「結局はそうなるんですか……」


呟いて、再び視線を右に向ける。

手術衣に隠れているため、継ぎ目になっているであろう右肩は見えない。
だが少なくとも、そこから伸びる骨格や筋肉など、
おおよそ人体の構成物であるものの再現は出来ているようだ。

下手な義手などよりは、確かに人間らしく見える。
いや、むしろ注意深く見なければ本物の腕と区別がつかないレベルだろう。

とはいってもまだまだ発展途上の技術であるため、
汗や日焼けなど、不自然さを出してしまう要素は多くあるのだが。


「……まぁ別に、いいんですけどね。便利そうですし」

「ふふ、良かった」


満足げに微笑む布束。

つられて介旅も笑おうとするが、ここで気になることがひとつ生まれた。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:43:02.62 ID:LmNulOJpo<>


「……あれ? なんで僕にこんなものを。
よくわかんないけど、値が張るんじゃないですか、こういうものって?」


それを言うと、布束は少し困ったような顔をして、


「hmm……そうね、強いて言うなら"ちょうど良かったから"、かしらね」

「ちょうど良かった?」

「そう。詳しくは、後で話しましょうか」

「後……って」


言葉の端に不穏な響きを感じ取った介旅が、繰り返すように聞き返す。

問いに、布束は口角を上げ、自嘲気味に笑んだ。





「那由他ちゃんが来たら、話し合いましょう。
私のしてしまった失敗と、あなたに託された未来のことを」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:43:46.01 ID:LmNulOJpo<>

――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――

「……さて。どうしたものかしら、ね」


学園都市某所、とある研究所の地下にある隠し部屋にて。

芳川桔梗は、何度目かの溜め息を吐いた。

彼女の頭を廻っているのは、昨夜、介旅初野から伝え聞いた『真実』。

数ヶ月前の事故――否、事件の。
当事者だからこそ知り得た、その実態。


『……まず話しておきましょう。
予想はついていたでしょうが、あの爆発事故は……私達が故意に起こしたものです』

『っ、ということは……!』

『……はい、その通り。

――木原さんの死因は、私達にあります』


あの女は、彼女の旧友は。

眉一つ動かさずに、言い切った。

木原数多の死。
ひいては、今なお続く『実験』の引き金。

それを引いたのが、己である、と。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:48:29.70 ID:ag3YHTqWo<>

(……ッ、)


初野の話したことが本当なら、と芳川は思う。
絶対に止めなければならない。この、負の連鎖を。

だが、具体的にどうやって?

滑らかに廻る思考が、そこで急に止まってしまう。

至極当然のことであろう。
彼女に、この牢から逃れる術はないのだから。


(彼女は、『あなたに伝えることに意味がある』と言っていたけれど……、
わたしにあの話をして、いったい何の意味が……?)


と、芳川が何度目かの思考の渦に浸ろうとしていた時だった。





ッ――ガァァァン!!と突然、部屋の奥、鉄格子の向かい側の壁で何かが炸裂した。




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:49:31.85 ID:+13+2J+9o<>


(なっ……爆弾!?)


突然の爆風と光。

慌てて身を屈めながら、芳川は即座にその正体を看破する。

そして正確に言うならば、それはC4爆弾。
たったの百グラムで、鉄筋コンクリートのビルを吹き飛ばせる代物だ。

至近距離にいた芳川が傷を負わなかったところを見ると、
爆発したのは微々たる量であるようだが……、


ゴゴゴガガガァン!!と、上階からも似たような音が連続する。

この様子では、外からも異常が丸分かりだろう。


(熱っつ……! なぜこんなところに爆薬が!?
……いや、どう考えても彼女が仕掛けておいたものに違いないわね。

……でも、何のために?わたしを助けるため?でもあの位置じゃ、この檻は破れないし……、)


疑問の答えは、すぐに出た。

というのは、彼女がその理由に思い当たったからではなく……、


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:51:29.69 ID:SOvuDBsQo<>


「な、何事だ!?」

「爆弾です!何者かの手によって、爆弾が仕掛けられていました!!」

「機材は無事です!火の燃え広がりもなく、実質的な被害はほぼゼロかと!」

「そ、そうか。なら良かっ……」



「警備員です!今の爆発は何ですか!?」

「そのような実験の許可は出されていないぞ! 調査させてもらう!!」

「コトと次第によっちゃ、テメェら全員危険物取り扱い条例違反で逮捕じゃん!!」



「「「っ!?」」」


「警備員だと!?いくらなんでも到着が早すぎるぞ!?」

「いやー、付近で凶悪事件の捜査してたもんで」

「チィッ、運が悪い……!」

「いやちょっと待て!捜査段階なのに完全武装してるわけねぇだろ!!」

「ッ!?まさか貴様等、最初からココを張って――!?」

「じゃあ、この爆発も仕組まれてたってのか!?」

「ゴチャゴチャゴチャゴチャうるせぇじゃんよ!
さっさと地下し……内部の捜査させな!!」

「おいテメェ今地下室って言いかけただろ!?」

「クソ!明らかにグルだチクショウ!!」

「さぁね。私はただ単に、『ここの連中が危ない実験してる』ってタレコミ受けただけだし?
グルだのなんだの、難しいことはわかんねーじゃーん」

「じゃあ何で地下室の存在を知ってんだよ!?」

「あぁ、そのタレコミしてくれた人と世間話しててさー、
たまたま地下室の話題になったから。……とかいう理由でどうじゃん?
つかどいてくんね、早く友達を助けたいんだけど」

「もはや隠す気ねぇだろオイこらアマァ!!」

「うるっせぇんだよ!黄泉川先輩のお通りだ道を開けろボンクラァァァァ!!」

「ぷぎぃ!?」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:52:24.03 ID:ai7lmqM3o<>


入り口の辺りから聞こえてくる喧騒に、芳川の頬が僅かに緩む。

学生時代の友人の、真剣で楽しそうな声。
その声に、昔のバカ騒ぎを重ね合わせながら。



(……介旅初野。これも、あなたの考えの内、ということかしら。
……だったら、お礼をしなくてはならないわね)



恐らくは数分後に再び目の当たりにすることとなる、『優しい』笑顔を思い出して。




「やってやろうじゃないの。

……わたしは伝える。真実を、あの子に!」



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:53:34.25 ID:09BViB2Ho<>

――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
――――――――――
――――――
【数ヶ月前】


「んじゃ、俺は仕事があっから」

「おォ、じゃあな木原クン」


子供らしく無邪気に笑い、手を振る。
そんな一方通行――自分の養子の姿を横目で見てから、木原数多は部屋のドアを閉める。



途端、その顔から洗い流すように笑顔が消え去った。



<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:54:59.68 ID:DXOOLTOEo<>


彼は、即座に白衣のポケットから携帯電話を取り出す。
すると直後に、まるで計ったかのようなタイミングで着信があった。


「何の用だ」


画面を確かめることもなく、木原は開口一番、殺気を込めて言い放つ。

一般人ならそれだけで失禁してしまうレベルの威圧。

だが、


『言わなければ分かりませんか?』


電話の相手は、それを何事もなかったかのように受け流した。

歴戦の戦士……というよりは、機械のような冷徹さで処理されている感覚。
苛立ちを隠そうともせず、木原は続ける。


「……俺の邪魔をする気か」

『邪魔とは心外です。大体、我々の邪魔をしようとしているのは貴方の方でしょう。
我々はただ、正当防衛をするまでですよ』

「お前らの、邪魔? オイオイ、俺がしようとしてんのは『実験』の妨害なんだが?
上層部のお偉いさん方にはなぁんの関係もねぇと思いますけどねえぇぇ?」


侮蔑を表すため、電話口に向かって思い切りバカにしたような表情を作る。

音声通話なので見えているはずもないのだが、
どうせ上層部専用の特殊回線でも使って映像を見ていることだろう。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:56:34.21 ID:z4dF4kzDo<>


『もう一度聞きますよ。わざわざ言わなければ分かりませんか』

「ハッ。大層ご立派な『プラン』だなぁ、オイ」

『そもそも何故、貴方は妨害などを?
一方通行本人が拒絶の意を示しているのなら、貴方が出張る必要は皆無かと』

「それこそ、わざわざ言わなきゃ分かんねぇか?」

「……」


悪趣味な意趣返しに、電話相手は言葉を失ったように黙り込む。

木原は相手からの返答が無いのを見ると、顔に意地の悪い笑みを浮かべ、



「まぁ、テメェが言わねぇってんなら俺は答えてやるけどよぉ。

……例えあのガキが断ったところで、テメェらクズ共は強制的に『実験』をさせる。
間違いなく、な。手段としては、街中で突然襲わせる……ぐれぇか?」

『……さぁ? 私は「実験」の担当ではありませんので』

「担当じゃなかろうと分かんだろ、そんぐらい」


まぁとにかくだ、と木原は言って、



「ウチのガキが絶望しちまう可能性が、ほんの少しでもあんなら。俺は全力で叩き潰すぞ。
主導者はあのエセ外人だな? 初期段階の今なら、アイツをブチ殺せばそれで終わるだろ」


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 17:59:03.38 ID:DXOOLTOEo<>


口を挟むことを許さない、一方的な通達。

有無を言わさぬ言葉に、説得は不可能と悟ったのだろう。
電話相手は、仕方ないですね、と溜め息を吐いて、


『そちらがその気ならば、こちらも対処させて頂きましょう。
貴方の管理するのは「猟犬部隊」でしたね。
ではこちらは「白鰐部隊(ホワイトアリゲーター)」あたりが無難でしょうか』

「……ッ、あのメスガキ共か」

『「尖った超能力者より、安定した大能力者」をコンセプトに作られた能力者達です。
単騎の戦闘能力は、第三位の超電磁砲と渡り合えるクラス。
……「猟犬部隊」程度では勝ち目がないかと。止めておいた方が賢明では?』


電話を握る手に、思わず力がこもる。

交渉でも説得でもない。
これは脅迫だ、と木原は考える。

『白鰐部隊』。
繊細な調整によって全く同じ能力を手にした、少女達の集団。

彼女達の能力『油性兵装(ミリタリーオイル)』は、石油の精製物を自在に分解・再構築する。
つまり、現代兵器を扱う『猟犬部隊』にとって最悪の相手なのだ。

どんな最新兵器を持ち出したところで、素材に分解されしまっては意味がない。
事実を淡々と確認し、木原は大きく舌打ちをする。


「……クソが」


『貴方ほどの人材を失うのは、こちらとしても手痛い。
ここは退いていただけませんか』



静かな言葉と共に、通話が切れる。





「…………」


携帯から流れる、平坦な音を聞きながら。

春先の肌寒い廊下、木原数多は拳を握り締めた。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 18:00:47.02 ID:0inxgUego<>

――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――





「へ……?」



正午。

清潔感溢れる病院の一室で、ベッドの上に身を起こした介旅初矢は自然と声を漏らしていた。

隣のベッドに腰掛ける布束砥信は、とても申し訳なさそうな顔をする。
一方、何故か介旅の横に座った木原那由他は、期待するような眼差しで口を開いた。


「だからね、初矢お兄さん」


再度確認するために、少女はもう一度口にする。

何気無いことのように。
しかしよく見れば、不安の混じった表情で。


「砥信お姉さんはね、計画を失敗しちゃったの。
……いや、情報不足のせいで、計画自体が破綻してたって方が正しいかな」


とにかくね、と那由他は呟く。

その視線が、介旅のそれと交差する。


「『実験』を止めるために、私達が出来ることは一つだけ。
そして、それが可能なのはお兄さんだけなの。だから、」


続く言葉を躊躇うように、那由他は俯く。

介旅はゴクリと喉を鳴らし、その先を待つ。

やがて意を決し、那由他は口を開いた。


「残酷な要望だっていうのも、無茶な要求だっていうのも分かってる。
――けど、これしかないの! だから、お願い!!」


今一度、那由他は顔を上げる。

介旅の眼を見つめ、ハッキリと口にする。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 18:01:30.14 ID:TrtnIa6zo<>






「あーくんを……一方通行を、力ずくで止めて欲しいの!!」





<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/09(月) 18:06:22.84 ID:VNc6v2i+o<> 一年か……一年経ってようやく一スレか……
何だか感慨深いですねぇ←感傷に浸ってないでさっさと書け


春は忙しいという大人の事情が漸く飲み込めてきた今日この頃。
しかしこれ以上ペースを落とすことはないように努めます



ではそんなこんなで、また次回


……あれ?投下中にIDがコロコロ変わってやがる
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チリ)<>sage<>2012/04/10(火) 16:18:51.87 ID:lumhIAQv0<> o
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/10(火) 23:24:59.95 ID:GzF9U6gro<> t <> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:23:16.65 ID:jkdF+gh6o<>
みなさん、レスどもどもです。
ちょっと早いけど次スレ立ててきました↓



介旅「救ってやるよ。お前も、お前の世界も」一方通行「……フザけンな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1334458865/

スレタイ回収してないけど変更。理由は特にありませぬ。
時系列表が貼ってあるのでよろしければ確認を。最初から読み直していただくよりは断然楽なハズ。


それでは今から投下。
前回の続きより。

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:24:11.68 ID:zFoOxCRjo<>

自分の眼を真っ直ぐに見つめる那由他の言葉に、
おいおい、と介旅は苦笑する。

何の冗談だよ、と。

一方通行と……学園都市で最強の能力者と、戦う?
こんな、どこにでもいるような、平凡な能力者の自分が?

聞き間違いか、もしくは幻聴の類ではないのか。
思考が、未だに現実を認めようとしない。



「……冗談……とかじゃ、ないんだよな?」

「冗談じゃあこんなこと、言えないよ」

「……そっか」

<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:25:00.99 ID:2dEcdcZuo<>

普段通りの無邪気さを装い、表情の強張りを隠そうとする那由他を見て、直感する。

この子は今、とても怖いんだろう。


今まで信じてきた相手に、無茶を頼むことが。
それが断られて当然だと思っているからこそ。

ここで介旅が断れば、那由他にはそれを引き留められない。

昨日のように、説教をすることも敵わない。
彼女自身が、断りたい気持ちを理解できてしまうのだから。

なまじ頭の良い利発な少女であるために、自分自身の無理を通そうと思えないのだ。


介旅は思う。

自分はやっぱり、この子を助けてあげたい。
それが美琴を助けることに繋がるのだから、尚更だ。


・・・
だけど。

・・・・
それでも。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:25:39.70 ID:JJpMEfylo<>

(無理なものは、無理……だよな)


だから、介旅は言う。

これ以上、無駄に少女を苦しめないために。

その意志を、はっきりと伝えるために。



「……悪いけど、無理だな」

「……っ、」


言うと同時、那由他の顔が、今にも泣き出しそうに歪む。

そこに追い討ちをかけるように、介旅は続ける。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:26:17.30 ID:0YFq6SSHo<>




・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
「そんな少ない情報じゃ、無理に決まってる。もっと詳しく聞かせてくれ」





<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:27:04.76 ID:jL26p4/Qo<>


「……へ?」


俯いた顔が、上がる。

日本人離れした色の両眼が、介旅を再度見つめる。


「ほら、僕って臆病だからさ?
作戦とか、そういうのをきちんと聞いておきたいんだよね」


介旅は気楽に言う。

自分の言っていることの意味を正しく理解しておきながら、それでも自然体で続ける。


「……初矢、お兄さん?」

「わざわざ三人集まったんだ。作戦会議でもするつもりだったんだろ。
だったら、早くしよう。時間が勿体無い」


消え入るような声を無視して、言う。

肩を竦めて、おちゃらけて。

何気無い会話をするように。
那由他が、少しでも責任を感じないようにするために。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:27:35.12 ID:0YFq6SSHo<>

「学園都市最強、か。ラスボスには打ってつけじゃねぇか。任せてくれよ。
汚い手だろうが策略だろうが、何だって使ってやる」

「お兄さん……? えっと……自分の言ってること、分かってる、の……?」

「もちろん、分かってるさ」


そして、告げる。

自分で決めた、己の道を。

静かな、けれど力強い芯の通った声で。


<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:28:02.01 ID:5W3TJ1KBo<>




「アイツは……一方通行は、僕が止める」




<> 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:29:49.27 ID:Z6WP9gtKo<>

「本当、に……?」

「嘘じゃあ、こんなことは言えないさ」


介旅は笑う。

重い左腕を動かし、那由他の頭に乗せる。
サラサラとした金の髪を、優しく撫でる。

いつの日か、泣いて帰ってきた弟にそうしたように。


「……ぁ…、…」


張り詰めていた気が抜けたのか、小さな口から小さな吐息が漏れた。

そうして那由他を落ち着かせてから、呑気な表情で介旅は口を開く。



「さぁ聞かせてくれ。あるんだろ、作戦?」

「……、うんっ!」


返事はとても元気で、思わずこちらも笑顔になってしまうようなものだった。



<> 投下終了 翼厨
◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/15(日) 12:33:06.05 ID:NlBvIhN9o<>
以上をもちまして、当スレでの投下を終了いたします。

みなさん、今までどうもありがとうございました。
そしてどうか、次スレでもよろしくお願い申し上げます。

向こうで投下始めるまでに埋まってなかったら、自分で埋めます。
それではまた次回、新たなスレで。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/15(日) 13:35:36.37 ID:O/eu4dTko<> おつでござる

おつでござる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/15(日) 23:02:14.88 ID:l88KMV6E0<> >>1乙

いつも投下楽しみにしてます


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/16(月) 02:42:23.29 ID:1FS7ALdDO<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/04/16(月) 09:04:05.90 ID:mgvtte5P0<> すぐおいしい

すごくおいしい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/20(金) 12:55:26.55 ID:ugvDBPLao<> 梅 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/04/22(日) 13:45:01.03 ID:vnFZA3bOo<> 鮭 <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/22(日) 19:28:54.03 ID:5UHQoRXio<> ツナマヨ <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/22(日) 19:29:22.64 ID:5UHQoRXio<> 昆布 <> 翼厨 ◆Stw.e6Ocjg<>saga<>2012/04/22(日) 19:29:43.24 ID:5UHQoRXio<> たこわさび <> 1001<><>Over 1000 Thread<>                     ___, - 、
                    /_____)
.                    | | /   ヽ || 父さんな、会社辞めて小説で食っていこうと思うんだ
                    |_|  ┃ ┃  ||  
                   (/   ⊂⊃  ヽ)        /  ̄ ̄ ̄ \
  \僕はSS!/           \_/  !        ( ( (ヽ     ヽ
                   ,\ _____ /、       | −、ヽ\     !  <私は二次創作
   ゝ/  ̄ ̄ ̄ \     /. \/ ̄\/   .\     | ・ |─ |__   /
   / _____ヽ    |  |  _┌l⊂⊃l  |  |    ┌ - ′  )   /
   | | /  ─ 、−、!    |  |  / ∋ |__|  |  |    ヽ  /   ヽ <
   |__|─ |   ・| ・ |    |  /`, ──── 、 |  |     ` ─┐  ?h ̄
   (   ` ─ o−i    ヽ /         \ .ノ_      .j ̄ ̄ |
    ヽ、  ┬─┬ノ / ̄ ./            ヽ- 、\    /   ̄ ヽ\
  // /ヽ─| | ♯|  /   i  ぼくオリジナル   | ..) ) \  i  ./   |\\
  | |  /  `i'lノ))┘/ , ─│             !-l⊂⊃l┐__ヽ__/\ / |   | |
  | |  | ̄| / /| / ( (... .ヽ              / |____|∈  __./ .|   | |
  |_|/ヽ、_/  ./   ` ─ /\           /ヽ      ̄ \-──| \|_|
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   |/ ヽ── |______\  l二|^|二二|^|二l 丿______ |_丿 \|
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   | ̄| ̄ ̄ ̄ ̄.| |────| |.  | |   | |  | |.──────| | ̄ ̄ ̄| ̄|
                                                       SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
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<> 最近建ったスレッドのご案内★<><>Powered By VIP Service<>棒人間で殺し合おうぜwwwww @ 2012/04/22(日) 19:04:08.76 ID:r1db/4Jio
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糞スレ立てんな @ 2012/04/22(日) 18:31:52.63 ID:cEWiOUP4o
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彼氏のサックス演奏聞いて「ジャスコで流れてそう」って言ったら振られた(´;ω;) @ 2012/04/22(日) 18:22:57.25 ID:oh/1wOJAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1335086577/

上条「幻想殺しが使えなくなった…だとッッ!!!?」 @ 2012/04/22(日) 18:09:49.60 ID:+2klNA8AO
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魔法少女まどか☆マギカ―運命を越える者達―75スレ目 @ 2012/04/22(日) 18:04:23.59 ID:75m+OqAvo
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女だけどある女に片想いして7年過ぎた @ 2012/04/22(日) 18:01:06.20 ID:k5VbDYgg0
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セックス @ 2012/04/22(日) 17:45:08.53 ID:kWxsEtUM0
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ここだけ魔王の城 コンマ00でライダーキック @ 2012/04/22(日) 17:35:04.49 ID:7SQeihvzo
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