VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/21(木) 21:50:56.67 ID:Ru5QN+hSO<>けいおん!で漫画:未来日記のパロディーをするSSです

よかったら見てください<>唯「未来日記!」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/21(木) 21:53:23.56 ID:Ru5QN+hSO<> 平沢唯は殺されようとしていた。

同じクラスメイトである立花姫子に。

ここまではなんとか逃げ延びてきたが殺されるのは時間の問題だろう。

立花姫子の手には巨大なナイフが握られていた。
どうしてそんなものを持っているのか、
そもそもなぜ、自分は彼女に殺されなければいけないのか。
唯にはわからなかった。

唯は廊下の角に息を潜めていた。
姫子とは目と鼻の先程度の距離。
彼女がこちらに向かって廊下の角を曲がれば一瞬で発見され、あっさり殺されるだろう。

唯は当たり前だが武器などもっていなかった。
そうでなくとも姫子はソフトボール部に入ってる。
運動能力や基礎体力が根本的に違いすぎる。素手でやりあったとしても生き延びるのは困難だろう。

震える手でスカートのポケットをまさぐる。
携帯電話を取り出して開いた。
画面に浮かんだのは二つの単語だった。



――DEAD END <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/21(木) 21:57:09.52 ID:Ru5QN+hSO<> 【2010/5/21/AM 7:53】


憂「お姉ちゃん、また日記つけてるの?」

唯「うん。憂の作った朝ごはんを写メして、日記に載せてるんだよ」

憂「日記もいいけど、早く食べないと学校に遅れちゃうよ?」

唯「それはいけないね」


唯が最近になってハマったのはケータイホームページの日記付けだった。

日記と言っても大したものではなく、ケータイで撮った写真を張り付けてそれに簡単なコメントをするというシンプルなものだった。
ちなみにこのホームページは唯と憂の姉妹共有のホームページで、憂の日記もある。


唯「いってきまーす」

憂「いってきます」


普段となんら変わらない朝だった。少なくとも唯にはそう思えた。

しかし、この時点ですでにどうしようもない変化が唯の携帯電話には起きていた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/21(木) 21:59:26.97 ID:Ru5QN+hSO<> 【2010/5/21/AM 8:15】


唯が異変に気づいたのはまもなく学校につこうとしたときだった。
唯は立ち止まってケータイの画面を凝視した。

唯「……あれ?」

憂「どうしたの?お姉ちゃん」

唯「ううん、つけた覚えのない日記があるから」

憂「ここ最近お姉ちゃん、なにかある度に日記つけてるから忘れちゃってるだけじゃない?」

唯「そうかな?」

ケータイのディスプレイに表示されている日記に覚えはない。
それに奇妙だ。日記をつけた時間の表示が現在の時間より二分ほどあとになっているのだ。

[りっちゃんと登校中にそーぐー。めずらしぃ]

内容はいたって普通だ。写真も張ってあった。律のきれいな額の写真だった。
唯は首を傾げて少し考えたが、答えは出なかった。

憂「お姉ちゃん、早く行かないと遅刻しちゃうよ」

唯「うん……」

律「おーい、唯ー」

律の声が聞こえて唯は思わず閉じようとしていたケータイの画面を見た。


[りっちゃんと登校中にそーぐー。めずらしぃ] <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 04:03:22.27 ID:mrpXbsNJo<> ほう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 08:43:09.70 ID:Hio9flSSO<> 律「おはよっ、唯と憂ちゃん」

憂「おはようございます、律さん」

唯「……おはよう」

律「どうしたんだよ、唯?元気ないぞ?」

唯「いやあ、ちょっとね」

律「んん?ケータイをさっきからじーっと見ちゃってなにやってんの?」

唯「日記見てたんだよ」

律「そういや最近ハマってるんだよな。どれどれ、せっかくだからりっちゃん隊員も撮ってけ」

唯「……あ」

律「どうしたんだよ?」

唯「ううん、なんでも。それじゃ、りっちゃん撮るよー」

律「はい、ピース!」


唯のケータイが律の額を撮った。
ちょうどそのときの時刻は、唯が書いた覚えのない日記に表示された時間と一致していた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 08:53:15.78 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/AM 8:34】

唯「みんな、おはよー」

教室に入り挨拶もそこそこに唯は、席についてすぐ携帯電話を開いた。
ホームページを開いて日記を確認する。


唯「また更新されてる……」

しかも今度はひとつだけじゃなかった。軽く二桁は更新されている。
更新された日記に目を通していく。やはり、日記には今よりも未来のことが書かれていた。

和「唯、おはよ……ってまた日記?」

とがめるような声が上から降ってくる。顔を上げると和の呆れた顔があった。

唯「あ、和ちゃん。おはよ」

和「おはよう、じゃないわよ。あんた、最近ケータイいじってばっかだけど勉強は大丈夫なの?」

唯「いやあ、そう言われると……」

和「してないのね。唯も受験生なのよ。そこらへん自覚して勉強しなきゃだめよ」

唯「がんばりまっす!」

そう言いながらも唯の視線はケータイの画面に注がれていた。

画面に表示された日記にはこう書かれていた。


[和ちゃんに勉強しないとダメ!って怒られちゃった]
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 08:58:40.84 ID:Hio9flSSO<>



唯が携帯電話に表示される未来の日記に戸惑ったのは最初だけだった。
奇妙な言い方だが、変化したのは、未来がわかるようになったということだけなのだ。
それ以外にはなにも変わっていない。いちいち深く考える必要はない。
今まで通り、普通に行動していればなんの問題もない。


唯(さてさて、この英語の時間は……)

授業中にも関わらず唯は机に入れておいた携帯電話を開いて日記を見た。

日記には自分が居眠りをするが、教師には見つからないという文が書いてあった。

唯(じゃあ寝ちゃおうかな?)

和の呆れ顔が唯の脳裏をよぎる。和が言った言葉を思い出した。


唯(勉強しなきゃダメだよね。でも昨日もギー太と一緒に夜遅くまで練習してたから眠いよー)


仮に、この日記の表示と違う行動をしたらどうなるのだろうという考えが浮かんだ。
しかし、やがて訪れた睡魔に唯は逆らえなかった。


唯は眠りに落ちた。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 09:04:29.64 ID:Hio9flSSO<>



誰かに呼ばれているような気がして唯は重いまぶたを開けた。
視界いっぱいに青空が広がっていた。


唯「……へ?」


状況が認識できなくて唯は間の抜けた声を漏らした。
固い感触。背中が痛い。自分が床に仰向けになって寝ていることだけは、なんとか理解できた。


唯「うぅ……ここどこ?」


 「ここは[第三十八因果律大聖堂じゃ]」


唯は身体を起こして、声のした方向を見た。
小柄な少女が唯から少し離れた位置でトウモロコシをかじっていた。


 「マヌケな面じゃの」

おそらく身長は唯の腰より少し高いだけ程度だろう少女は、幼い外見には不釣り合いな言葉遣いで言った。


唯「……どなたでしょうか?」

 「小魔使いのムルムルじゃ。デウスに仕えている」


ムルムルと名乗る少女が、その色黒い指で唯の背後を指す。


 「私がデウスだ」


遠雷のように低い声が大聖堂に響く。唯は後ろを振り返った。


唯は驚愕に目を見開いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 09:08:42.01 ID:Kx6Iswi/0<> 唯「だ、誰……?というか人間なの?」

唯は恐る恐るたずねた。


「……神だ」


低い声が答えた。

唯の眼前には恐ろしいほど巨大なナニかがいた。

一見人間に見えなくもないソレは、しかし、異様なほど巨大だった。
唯の三十倍はあるであろう巨体。そしてその巨体を包み隠す闇よりも深い黒衣。
そのてっぺんにある頭は、人間とは明らかに違う形をしていた。
唯の思いつくかぎりでは、それの頭、あるいは顔は鳥類を連想させた。


唯「か、み?」

 「そう。全ての時と空間を管理する――時空王デウス・エクス・マキナだ」


唯「デウス……」


にわかには信じられない光景だった。いや、これは夢だ。そうだ。そうに違いない。


デウス「言っておくがこれは夢ではない。現実だ」

唯「…………」

デウス「信じられないという顔をしているな」

唯「信じられないよ。こんなでっかい人、いるわけないもん」

デウス「人間ではない、神だ。……まあいい。いずれ、いやがおうでも思い知らされるだろうからな」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 09:11:19.70 ID:Kx6Iswi/0<> ムルムル「ところで唯よ、お前は朝から気になっていることがあるはずじゃが?」


ムルムルが聞いてきた。唯は少し考えてすぐに日記のことだと気づいた。


唯「日記のこと?」

ムルムル「そう。その日記について知りたくないか?」

唯「もしかしてこの日記は……デウスが関わってるの?」

ムルムル「そうじゃ」

デウス「それは[未来日記]だ。名前の通りお前の未来を知ることができる日記だ」

唯「未来を知ることができる日記?」

デウス「そうだ。それにはお前がこれから自分で見る、あるいは体験するであろう未来が書かれている」

唯「文章が私のとそっくりだけど、どうして?」

デウス「その日記はお前がこの先の未来で書くであろうことが書かれるからだ」

唯「つまりこれは私の文そのものなんだ。すごい便利な日記だね」


デウス「ただし、デメリットもある」


唯「デメリット?」

デウス「その日記を表示するメディアが壊れた場合、それは記述者の未来を壊すことと同義でな」


デウスの瞳が射るように唯を見下ろす。


デウス「日記が壊れた場合、その日記の所有者は――死ぬのだ。」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 09:17:41.08 ID:Kx6Iswi/0<> 【2011/5/21/AM 11:21】


唯「……ぁ」

チャイムの音で唯は目を覚ました。
二限目の授業は既に終わっており、まもなく次の授業が始まろうとしていた。


唯「変な夢だったなぁ……」


机に頭を預けて寝ていたせいか、ぼうっとする。
しかし、頭はぼーっとしていたが夢が本当に夢だったのかどうかは気になった。
唯はケータイを開いた。日記を見る。日記には目が覚めたということが書かれているだけだった。


唯(もう一個前の日記を見てみよう)


ひとつ前の日記を開いた。唯は息を飲んだ。

ディスプレイにははっきりと書かれていた。





[デウスとムルムルに会ったよ!
ムルムルはカワイかった。デウスは恐かったけど親切に日記について教えてくれたよ]
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 09:21:45.07 ID:Kx6Iswi/0<> 【2011/5/21/PM 6:03】


昼休みもそのあとにあった授業も、特に何事もなく終わった。


澪「今日はここまでだな」


澪のその言葉で部活も終了した。無事に一日、何事もなく終わった。


律「そんじゃ。今日は用事があるからおっ先い」

澪「私も楽器店に寄ってくから先に帰るよ」

紬「そう。それじゃまた明日ね」

梓「澪先輩、律先輩、さようなら」

唯「ばいばーい」


唯と紬と梓も部室を出た。


梓「唯先輩、なにしてるんですか?」

唯「ホムペの日記更新中」

紬「最近、唯ちゃんよくケータイ触ってるわね」

唯「ついついはまっちゃってね」


実際には未来日記の内容を確認しているだけで日記は更新していない。
というより、する必要がなくなってしまっていた。
唯が開いた日記にはこう書かれていた。


[校門の前で体操服の姫子ちゃんにそーぐー。ついでに体操服を教室に忘れていたことを思い出したよ。取りにもどらなきゃ!]


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 09:25:28.19 ID:Kx6Iswi/0<> 梓「どうしたんですか、唯先輩?」


急に立ち止まってしまった唯を、梓が訝しげに見た。


唯「うーん、ちょっとね……」


一回校門まで行ってまた教室に戻るのは面倒だった。


唯(日記に書いてあることと違う行動をしたらどうなるんだろ?)


日記を壊せば未来が壊れるため、所有者は死ぬとデウスは言っていた。
しかし、未来を変えることについては特になにも言ってない。


唯(考えてもよくわかんないし、めんどくさいから教室に体操服取りに戻っちゃお)


唯はケータイを閉じた。


唯「ごめん!私、教室に体操服置いてきちゃったから先帰ってて、あずにゃん、ムギちゃん」


紬がわずかに目を見開いて「え?」と声を漏らした。


梓「そうですか。じゃあお先に失礼します。さようなら唯先輩」

唯「うん、バイバーイ」


唯は一人で教室に向かった。
ケータイの入っているスカートの右ポケットからノイズのような音が聞こえたが、唯は気にしなかった。



ザザザザ……ザザザザザ…………




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/04/22(金) 10:28:56.34 ID:7rpooXAAO<> なんだ原作キャラ出ないのかよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/04/22(金) 10:37:33.05 ID:GQUyuaZ90<> おもしろいけど、書くの大変そうだな
がんばれ>>1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 11:42:17.10 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 6:06】



唯「ふぅー、疲れた疲れた」


唯は教室のドアを開けて中に入った。
室内はわずかながら熱気がこもっていた。


唯「体操服ー、体操服はどこかなー?」


一番後ろにある自分の机に向かう。


唯「……あれ?」


唯は首を傾げた。
机にかけておいた体操服袋がなかった。
机の周りや、近くの席も探してみたが体操服袋は見つからない。


唯(どこやっちゃったんだろ?たしかに机にかけておいたはずなんだけどな)


記憶を探ってみても、この机に体操服袋をかけておいたということまでしか思い出せない。


唯「体操服どこー?どこいったー?」


 「体操服ってこれのこと?」


唯は振り返った。

唯の体操服袋を持った立花姫子が、教室の入口の前で笑みを浮かべていた。

ポケットの中でまたノイズが鳴った。



ザザザザザザ……ザザザザザザザザザザ……………



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/04/22(金) 11:43:39.94 ID:IL9VlRWSo<> 前VIPで立てた人かな?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 13:31:49.11 ID:Hio9flSSO<> 唯「そうそれそれ!
  ……って、なんで姫子ちゃんが私の体操服持ってるの?」

姫子「ちょっとしたイタズラだよ。ごめんね、唯」

唯「姫子ちゃんもそういうことするんだね。いがーい」

姫子「そうかな?」


唯と姫子は顔を見合わせて笑った。
が、唯はそこである疑問が湧いて固まってしまう。


唯(あれれ?なんで姫子ちゃんが教室にいるの?)


日記には姫子は校門前にいると記されていたはず。


唯(私が校門前に行かなかったから姫子ちゃん、教室に来たのかな?)


しかし日記の続きには、姫子は唯と挨拶してすぐ学校を出ると書かれていた。
つまり唯が彼女と会おうが会うまいが、姫子は教室に寄らずにそのまま帰るはずではないのか。


姫子「……ふふふ……ふふ」


押し殺した笑声が唯の思考を掻き消した。


唯「姫子ちゃん……?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 13:35:52.62 ID:Hio9flSSO<> 姫子「どうして私がここにいるのか不思議でしかたがないみたいだね」


姫子の指摘は正しかった。
唯は思わず、目を丸くした。
姫子はそんな唯の様子がおかしかったらしく、今度は声を出して笑った。


姫子「なんで自分の考えてることがわかるんだろ、と思ったでしょ?」

唯「……うん。どうしてわかったの?」

姫子「これだよ、これ」


姫子は唯に自分の開いた携帯電話を見せた。


唯「ケータイ……もしかしてそれ、未来日記?」


姫子は唯の解答に満足げに頷いた。


姫子「そういうこと。
   そして未来日記って単語が出てくるってことは、唯も日記を持ってるんだよね?」

唯「うん!」

姫子「せっかくだから見せてくれない?ついでに日記の中身も」


唯はポケットからケータイを取り出して、姫子に見せる。


姫子「……ふうん、唯、自分で日記をもう一回見てみなよ」


姫子の唇の端がつりあがる。
唯は姫子にケータイを見せるのに夢中になって、日記に全く目を通していなかった。
ケータイの画面を確認してみる。
ケータイのディスプレイに浮かび上がった文字に唯は凍りついた。

ディスプレイに出た二つの単語。










――DEAD END
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 13:38:36.81 ID:Hio9flSSO<> 唯「な、なにこれ……!?」

姫子「どうしたの唯、顔色が悪いよ?」


姫子が顔を覗きこんできた。
しかし、唯はそれに気づく余裕すらない。
突然、日記から告げられた予言に唯の顔から血の気が引いていく。


姫子「唯、日記の続きを見てみなよ」


姫子が唯の耳元でささやく。
唯は震える指でカーソルを押した。



[姫子ちゃんにナイフでお腹を刺されて私は死ぬ]



壊れた人形のようにぎこちない動きで唯は、いつの間にか隣にいる姫子を見た。


姫子「意味わかった?」

唯「ど、どういうこと……ひ、姫子ちゃん?」


震える声への解答はどこまでも残酷だった。





姫子「これから私が、唯を[ピーーー]ってことだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 13:46:58.64 ID:Hio9flSSO<> 唯「ど、どうして私を[ピーーー]の?」


唯の背中を嫌な汗を伝う。


姫子「……もしかして、まだ「ゲーム」についての説明をデウスから聞いてないの?」


気づいたときには、姫子の顔が目の前にあった。
姫子の吐息が耳ににかかる。
背中に寒気が走る。
姫子と唯の顔の距離はほとんどなかった。


唯「げ、ゲーム?」

姫子「まあいいか……どうせ唯は、ここで死ぬわけだしね」


姫子がいかにも鬱陶しげに前髪をかきあげる。
姫子の手には巨大なナイフが握られていた。
どこから出したのだろう?


姫子「じゃあ、死んで」


鈍く光るナイフを唯の首筋に宛がう。


唯「……っ!!」


気づいたら、姫子を突き飛ばしていた。
鈍い音。姫子が背中を壁に、したたかに打ちつけた音だ。


姫子「ちっ……!」


後ろを振り返る暇はない。
唯は全力疾走で走り出していた。


姫子「待てっ!」


唯は教室を飛び出した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 13:54:56.02 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 6:22】


唯「どうしてどうしてどうしてどうして……意味わかんないよ!」


唯は廊下の一角に身を潜めていた。
もちろん逃げることは考えた。
しかし、日記の表示は唯が逃げ切ることができないことを示していた。


下に逃げようとすると――――姫子に先回りされて殺されると表示される。
上に上がろうとすると――――屋上にたどり着くが、最終的に追い詰められ殺されると表示される。


これから殺されるという恐怖に膝が笑っている。
これでは満足に走ることもままならないだろう。


唯(どうして姫子ちゃんに先回りされるの!?)


考えるまでもなく唯は理解した。
相手も未来日記を持っている。
つまり唯の動向を読むことが可能なのだ。


唯(私、死ぬの?)


激しすぎる動悸に目眩がする。気持ち悪い。涙が溢れて視界が滲む。


姫子「ゆーい。逃げたって死ぬんだし諦めたら?
   誰も唯を助けてなんてくれないよ」


姫子の声が廊下に響く。
悠然とした足音が、[ピーーー]側と殺される側をはっきりと告げる。


姫子「唯の日記にも書いてるあるんでしょ?
   用務員も先生も誰も来ないって。
   たとえ来たとしても、それは唯が死んだあとだろうね」


足音が近づいてくる。
唯はパニックに陥っていた。


気づいたら上に向かって走っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:02:35.06 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 6:25】


血のように真っ赤な夕日に混じって吹く風が、頬を突き刺した。
唯は未来日記の表示の通り屋上に来ていた。
屋上には金網があるだけで、なにもない。
隠れる場所も逃げる場所も。


[あはは……屋上に来ちゃった。あとは姫子ちゃんが来るのを待つだけだね]


ケータイの画面に雫が落ちた。
唯の頬を涙が伝う。


唯(死にたくないよ。死にたくないよ……)


なんとか助かる方法はないか、混乱している頭で考える。
しかし、そんな唯の思考を嘲笑うように背後の扉が悲鳴をあげて動いた。


姫子「たくっ……手間かけさせないでよ」


鎌の代わりにナイフを持った死神が扉から現れる。
立花姫子が余裕の表情で髪をかきあげる。


姫子「じゃあ、ちゃっちゃっと殺してあげるよ」



ザザザザザザザザザザ……ザザザザザザザザザ…………



吹きすさぶ風に混じってまたノイズがした。
今さらになって唯は、ノイズが未来が変わったときに起こるものだと知った。


唯(え……未来が変わる……?)


扉が再び悲鳴をあげる。
ここに来て初めて、立花姫子は焦りの表情を浮かべ、背後を振り返った。。
扉から現れたのは。



 「お姉ちゃん!」



唯の妹、平沢憂だった。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:09:14.81 ID:Hio9flSSO<> 姫子が左手に持っていたケータイを見た。


姫子「いつの間に……!」


姫子がナイフを振り上げる。
狙いの対象は今現れた憂だ。


唯「憂っ!!」


最悪の未来を想像して唯は叫んだ。


姫子「なっ……なんで?」


姫子の声には驚愕が滲み出ていた。
唯には姫子の背中が邪魔で、なにが起きているのかわからない。


憂「お姉ちゃん!今だよ!」


唯は弾かれたように地面を蹴っていた。
背中に背負っていたギターのネックを掴む。


唯(ギー太、ごめん!)


姫子との距離はもはや無いに等しい。
唯はギターを振り下ろした。


姫子「……痛っ!」


はっきりとした手応えを感じた。
右肩への一撃に姫子がよろめく。
怒りの形相が振り返る。
鈍い光を放つ凶器が振り上げられた。
が、その手を憂が背後から掴んだ。
できた一瞬の隙に、唯はそのままギターを振り上げた。


姫子のケータイを握っていた左手にギターが直撃する。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:24:16.75 ID:Hio9flSSO<> 姫子の手に握られていた携帯電話が吹っ飛ぶ。


姫子「しまっ……!」


姫子がとっさに手を伸ばすが、その手は虚空を虚しく掴むだけだった。
大きく弧を描いたケータイが金網を飛び越えた。
姫子が膝から崩れ落ちる。
彼女の顔が絶望に曇った。
ややあって、遠くから地面になにかがたたきつけられる音がした。


唯「姫子ちゃん……」


唯は肩で息をしていた。
気を抜けば数秒もせずに気絶してしまいそうだった。


姫子「あーあ、どうやら私のケータイは壊れちゃったみたいだね。
   ケータイが壊れたってことはさ。私、死ぬんだよ」

唯「死ぬって……どうやって……?」

姫子「さあ? そのまんまの意味なんじゃない?」


姫子が肩を竦める。
これから死ぬ人間とは、思えないほど彼女は飄々としていた。


不意に姫子が目を見開く。


唯「姫子ちゃ……」


唯の言葉は最後まで続かなかった。
姫子の腹部に穴が空いたからだ。
唯はぎょっとして、口許を抑える。


姫子「ふふふ、どうやらお別れみたいだね。
   バイバイ、唯。ひどいことして……ごめんね……」


姫子は申し訳なさそうに顔を伏せる。
それでも彼女の唇が微笑んでいるのだけは見ることができた。


姫子「唯……殺そうとした私が言うのもなんだけど、生き残れるように頑張りなよ」


やがて腹部の風穴が渦を巻いて、姫子の全身を飲み込んだ。


あまりにもあっけなく立花姫子は消滅した。


消滅して死んだ。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:30:42.67 ID:Hio9flSSO<> 唯「姫子ちゃん……うわあ!?」

憂「お姉ちゃん、大丈夫!?」


横に倒れそうになるのをなんとか堪えた。
憂が唯に抱き着いていた。


唯「だいじょーぶだよ、憂……」

憂「よかった……よかったぁ……」


憂が唯の首にしがみついて嗚咽を漏らした。


唯(そうだ……私、殺されようとしていたんだ)


憂の温もりを感じて、ようやく唯は安堵からため息をついた。
自分も憂も生きている。
今まで当たり前であったそのことに、唯は生まれて初めて感謝した。


憂「お、お姉ちゃん!?」


突然、足から力が抜けてへたりこんでしまった。
安心して緊張の糸が切れたせいだろう。
唯は唇を緩めた。


憂「お姉ちゃん、しっかりして」

唯「うん、だいじょーぶ。だいじょーぶだから」


唯は自分に言い聞かせるかのように、そう言った。
ふと見上げた夕日は、さっきよりもずっと赤く見えた。



[平沢唯。DEAD END――回避] <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:36:44.22 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 8:02】


唯は自分の部屋の椅子に腰をかけて、ため息をついた。


唯(私が姫子ちゃんを……殺した)


憂がわざわざ運んできてくれたコーヒーに口をつける。
苦い味が口内に広がった。


唯(さっきまでは全然実感が湧かなかったけど、私が姫子ちゃんを殺したんだよね……)


ミルクの入った小瓶を手に取って、コーヒーに注ぐ。


唯(人殺し……)


姫子の死の瞬間の光景が脳裏をかすめた。
ミルクが注がれたコーヒーをスプーンで掻き混ぜる。


唯(姫子ちゃんは死んだから、もうこの世にはいない)


カップの中で黒と白が渦を巻いて混じって、やがて褐色になった。


唯(たしかに姫子ちゃんは私を殺そうとした。でもだからって……)


スプーンをひたすら動かす。
カップの中の液体が渦を巻く。


唯(姫子ちゃん……姫子ちゃん、どうして……)


どんなにスプーンで掻き混ぜてもカップの中の液体は褐色のままだった。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:39:04.04 ID:Hio9flSSO<> どれくらい同じことを繰り返していたのだろうか。
ドアをノックする音でようやく唯は、動かしていたスプーンを止めた。


憂「お姉ちゃん、入るよ?」

唯「……うん。いいよー」


わずかに開いたドアから、憂は遠慮がちに顔を出した。


憂「大丈夫、お姉ちゃん?顔色があんまりよくないよ」


唯「うん……ところでどうしたの?」

憂「やっぱり。ケータイ見てないでしょ?」

唯「ケータイ?」

憂「見てみて。たぶん、メールがきてると思うから」

唯「……ホントだ」


メールを開いてみる。



差出人は時空王デウスだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:47:27.64 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 8:23】


ムルムル「待っておったぞ。平沢唯、平沢憂」


小魔使いムルムルが唯と憂を尊大な態度で出迎える。
唯は先ほど憂から聞いて初めて知ったのだが、彼女とデウスがいるこの[因果律大聖堂]は
意識を集中させることで、いつでも簡単に来ることができるらしい。
実際、唯も少し意識してみたら簡単にこの空間にたどり着くことができた。


デウス「なにか言いたそうだな、唯」


巨大な神が唯を見下ろす。
それだけで唯は身を竦めた。
ここに来るまでに考えていた言葉が一瞬で頭から消えてしまった。


デウス「そう構えるな。私はお前たちに[ゲーム]の説明をしたいだけだ」

唯「……ゲーム?」


姫子も同じようなことを言っていた。


デウス「そうだ。未来日記所有者たちによるサバイバルゲーム。
    生き残った一人に私の後継をやろう」

唯「後継……?」

デウス「つまり、このサバイバルゲームの最後の一人になったものは、神になれるということだ」

唯「……ゲームをやめることはできないの?」

デウス「やめたら、それは未来を放棄したということで死ぬだけだ」


つまり、このゲームから降りることはできない。
唯は無意識に隣にいる憂の手を握っていた。
遠雷のように低い声が言った。



デウス「なにを恐れる? 神になれるチャンスだぞ?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:53:50.96 ID:Hio9flSSO<> [未来日記サバイバルゲームのルール]



・未来日記所有者たちによる殺しあいのゲーム。参加人数は明かされない。


・最後まで勝ち残ったものが神に選ばれる。


・日記が破壊された場合、日記の所有者は死ぬ。


・日記の破壊だろうと直接殺そうとゲーム上、どちらでもよい。


・日記の所有権を他の者に譲渡することはできない。


・ゲームから降りた場合、未来を放棄したとしてその者は死ぬ。


・日記の所有権を移譲した場合、その日記のもともとの所有者はゲームを放棄したと見なされ、死ぬ。


・他の日記所有者の情報は一切明かされない。
未来日記などを頼りに自力で探さなければならない。


・日記を受けとってから一週間以内に一人も殺さなかった場合、ペナルティーを受ける。


・一人[ピーーー]ごとに一週間、ペナルティーを受ける期間が延びる。ペナルティーの内容は明かさない。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 14:57:56.73 ID:Hio9flSSO<> [未来日記とは]



・未来を見ることができる。

・ただし見える未来はその日、一日分だけ。

・00:00時に日記は一日分補充される。


・未来日記に書かれた通りの行動をしなかった場合、その事後にそれ以降の日記が書き換わる。

・他の所有者の行動による影響で書き換わることもある。


・所有者の誰かが他の所有者に殺されることが確定した場合、[DEAD END]として書き込まれる。


・基本的にこの[DEAD END]は回避することができないものとされている。


・しかし、日記所有者しだいではこの[DEAD END]フラグを回避することが可能。


・日記の能力は各々で違う。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:08:18.15 ID:Hio9flSSO<>

ええと、ここで作者から注意。

このSSは漫画・未来日記のパロディーSSなんだけど展開は一応オリジナル。

ついでにそれにあたって、原作の未来日記の日記ルールとか、ゲームルールとかもかなり改変しています。

よかったら原作とそこらへんの違いも楽しんでください


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:16:17.95 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 9:13】


唯「憂も未来日記の所有者なんだよね?」


唯は再び自室に戻ってきていた。
コーヒーカップの中のコーヒーは冷めきっていた。


憂「うん。そうだよ」


なにか言おうとしたが言葉が出てこなかった。


憂「私の日記はお姉ちゃんについて書かれた日記なんだよ」


少しだけ憂は頬を赤くした。


憂「お姉ちゃん、私の日記確認してなかったんだ」

唯「自分の日記に夢中で……どうして憂は私のことなんて日記につけてたの?」


憂は答えずに代わりに、はにかんだ。
そこで唯はもうひとつ気になっていたことを聞いた。


唯「そういえば私たちの日記ってホムペのものだからみんな見れるんだよね?
だから、もしホムペ見てる人の中に所有者がいたら未来日記のことがバレちゃうんじゃ……」

憂「実はそれなんだけど。これを見て」


憂は自分のケータイを開いて唯に見せた。
ケータイには唯のホームページの日記が映っていた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:25:19.84 ID:Hio9flSSO<>
唯「……あれ? 今日の日記が更新されてない?
  私のケータイは未来日記のせいでいっぱい更新されてるのに」

憂「たぶん、デウスさんの力だろうね。
  インターネットには未来日記は影響しないみたい。
  あとでお姉ちゃんのケータイでも、私の日記を見てみて。
  たぶん、普通の状態のはずだから」

唯「じゃあとりあえずは安心だね」


憂は頷かなかった。


憂「ううん。安心なんてしてられないよ」

唯「どうして?」

憂「まず他の日記所有者がいるってこと。
  そしてその人たちは絶対に私たちの命を狙ってくる」

唯「それは……たしかに神様になれるのはすごいけど……。
  みんながみんなゲームに参加して戦うなんて……」

憂「ちがうの、お姉ちゃん。
  神様になりたいと思わなくても、日にちの制限ルールがある」

唯「あ……七日以内に一人はやっつけないと、ペナルティーがあるんだよね」

憂「そう。どんなペナルティーかわからない以上、所有者たちはペナルティーを恐れて必ずゲームに参加すると思う」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:29:16.53 ID:Hio9flSSO<>
憂は安心して、と言うように唯に微笑みかける。


憂「でもお姉ちゃんは大丈夫だよ。
  さっき立花って人を倒してるから。プラス一週間の余裕がある」


唯は姫子が消滅した瞬間を思い出した。
鼻の奥がツンとして涙が出そうになる。


憂「それに」


憂が唯を抱きしめる。
憂の手が唯の頭を優しく撫でた。





憂「お姉ちゃんは私が守るから」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:38:02.27 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/AM 7:56】


次の日。
唯は晴天の下を憂と歩いていた。
唯はケータイをお守りのようにギュッと強く握る。


憂「お姉ちゃん、眠たそうだけど平気?」

唯「うん、平気」


昨夜は姫子の死に様とゲームのことが頭から離れずほとんど眠れなかった。
唯の目の下はうっすらと隈ができていた。


憂「どうしてもたえられなさそうなら言ってね」

唯「うん」


唯はケータイを開いた。日記がこれから先の未来を提示する。


[またもやりっちゃんとそーぐー。今度は澪ちゃんもいっしょだよ! 私たち気があうねっ!]


唯はケータイをもう一度強く握る。


唯「憂、このまま歩いてるとりっちゃんと遭遇するみたい。速く歩こう」

憂「わかったよ」


歩くペースをあげる。
ケータイから未来が変わったことを示すノイズがした。
なにかから逃げるように、あるいはより先へ進むために、唯は大きく前へ足を踏み出した。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:45:53.43 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/AM 8:26】


唯は憂と別れてすぐに教師に向かった。


[教室に行く前にプリントをいっぱいもったムギちゃんに会ったよ。
  今日は日直なんだって!]


日記を見ると、そう書いてあった。
唯は日記に書かれている『教室に行く』前にトイレに入る。



ザザザザザザ……ザザザ……ザザ…………



ノイズが聞こえる。
未来が変わった。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 15:57:15.67 ID:Hio9flSSO<> 別に用を足したいわけではなかった。
目的は日記に記された未来を変えることだ。
日記の表示では、本来なら紬ど遭遇するはずだった。
だが、唯が本来しないはずの行動をすることによって未来を変えた。


唯「……っ」


寝不足がたたったらしく頭痛がする。
鏡の中の唯は、精神的な疲労のせいなのか顔色があまりよくなかった。


唯(うひゃあ、ひどい顔だな……顔洗っとこ)


蛇口を捻って水を出した。それをすくって顔を洗う。


唯(よし、大丈夫。今日も頑張ろう!)


気合いを入れるために顔を両手ではたく。


唯(とにかく今は行動しなきゃね)


唯はこれからすべき行動を思い出すために、昨日の憂との会話を振り返った。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 16:08:00.09 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/AM 8:33】

純「おっはよ!憂……ってケータイいじってなにやってんの?」


遅刻ギリギリの時間で二年一組の教室に入ってきた純が、憂の背中をポンっと叩いた。


憂「うーんと、日記、かな?」

純「ああ、ホムペかブログか知らないけど、唯先輩とやってるやつ?」


純が憂の前の席に座る。
急いで来たのか頬が上気していた。


憂「うん、そうだよ。純ちゃん見にきてくれてないの?」

純「いやあ、ついつい忘れちゃってさ。今日は必ず見るよ」

憂「梓ちゃんは毎日コメントくれるんだよ」

純「梓は律儀だからねー」


憂は喋りながらさりげなく日記に目を通す。
先ほど、一回だけ日記に変化はあったがそれ以外は特にない。


純「あれ、梓は?」

憂「そういえば、まだ今日は一回も話してない」


憂は梓が座っているはずの席を見やった。
梓はじっと席に座ってケータイを見つめていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 16:20:25.70 ID:Hio9flSSO<>
純「そうそう。憂、知ってる?」

憂「なにが?」

純「三年生の先輩で、昨日から行方不明になってる人がいるって話」

憂「へえ……それは怖いね。その先輩、無事だといいけど……」


憂は純の顔を注意深く観察する。


純「ん?どした……あ、まさか私のほっぺのニキビを見てるのか?」

憂「ううん、そんなことじゃなくて……」

純「そんなこととはなによ。
  わたしなりにけっこう悩んでたのに」

憂「ごめんね、純ちゃん」

純「まあニキビで悩んででもしょうがないし、べつにいいんだけどさ。
  それで、憂はなにか気になることでもあるの?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 16:24:14.41 ID:Hio9flSSO<> 憂「うん、どこからその三年生の先輩の噂を聞いたのかなって思って」

純「ああ、そのことね。ジャズ研の先輩のmixiの日記に書いてあってさ。
  それだけじゃないよ。うちの学校のコミュニティーでもかなり話題になってるし」

憂「そうなんだ……本当に早く見つかるといいね」


純は「そうだね」と笑った。
少なくとも普段と変わらない笑顔だった。


その行方不明の先輩が誰かはもちろん、憂にはわかっていた。
昨日、姉を襲い、結果的に日記を唯に破壊されて死んだ未来日記の所有者――立花姫子。


不意に首筋に視線を感じて、憂は辺りを見回した。


純「どうしたの、憂?」

憂「ううん、なんでもだよ」


誰が自分に視線を送っているのか、憂はすでに判断をつけていた。
憂は梓に視線をやった。


梓がこちらを見ていたが、憂と目が合うと途端に目を逸らしてしまった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 16:27:39.94 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/AM 10:01】


一時間目の授業が終わると、憂はすぐに梓の席に行った。


憂「おはよう、梓ちゃん」


梓「あ、おはよう、憂」

憂「気のせいかもしれないけど、梓ちゃん体調でも悪い?元気がないような……」


梓はすぐには答えなかった。

憂「梓ちゃん?」

梓「ごめん、ちょっと昨日寝不足でさ」


嘘はついていないようだった。
梓の目の下はうっすらとではあったが黒ずんでいた。


憂「なにかあったら言ってね、梓ちゃん」

梓「うん、ありがとう」


そう言うと梓は机に顔を伏せてしまう。


純「梓、どうしちゃったの?」


憂が席に戻ると、純が質問してきた。

憂「寝不足で疲れているんだって。そっとしといてあげよ」

純「ちぇっ、つまんないのー」


純が唇を尖らせる。
彼女の視線は梓に向けられていた。
なんだかんだ言いつつ、心配しているのだろう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 16:53:52.82 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/AM 10:21】


唯(……眠い)


どうやら昨日の寝不足がここに来て、いよいよ猛威を振るいだしたらしい。
唯はあまりのまぶたの重さに、目を開くことができなかった。
それに頭に鉛でも仕込まれたかのように重い。

唯は内心、自分に呆れ果てていた。
平和な日常の中でならともかく、今は未来日記によるサバイバルゲームの真っ最中だ。
平然と寝ていられるような状況ではないはずだ。


唯(でも眠いし……それに頭痛いし……)


もはや、壇上で教鞭をとっている教師の声すら聞こえない。


唯は眠気に抗うこともできず、机に突っ伏した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:01:09.26 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/21/PM 9:34】


唯と憂は昨夜、未来日記サバイバルゲームのことについて話しあった。


憂「このゲームに勝つための方法を考えてたんだ」


憂は静かにそう言った。


唯「このゲームに勝つ方法……?
  なに言ってるの、憂? このゲームで人殺しをするつもりなの?」


唯は、気づいたら早口でまくし立てていた。


唯「私はそんなことしたくないし、憂にもしてほしくなぃ……」


言葉が尻窄まる。
嗚咽が漏れそうになる。


憂「ちがうよ、お姉ちゃん。
  このゲームに勝つ、ていうのはお姉ちゃんを守るためだよ」


唯「でも……」

憂「お姉ちゃん、私の話を聞いて。ね?」

唯「うん……」


頭の中は今なお、ぐちゃぐちゃに掻き乱されたかのように混乱していた。


それでも唯は耳を傾けた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:04:10.86 ID:Hio9flSSO<> 憂「そもそも、このゲームで一番難しいことはなんだと思う?」

唯「相手を……倒すこと?」

憂「たしかにそれもあるかもしれない。
  でも本当に難しいのは、対戦相手を見つけることだと思う」

唯「……ああ、そっか。私たちには、誰が日記をもってるかなんてわからないもんね」

憂「そういうこと。
  だからまずゲーム参加者を特定するところから始めなければいけない」

唯「でも、どうやって特定すればいいの?」

憂「さっき、七日ルールのこと言ったよね。覚えてる?」

唯「うん。七日以内に一人……倒さないとペナルティーを受けるんだよね」

憂「そう。それでね、このルールって実は、ペナルティー以上に大事なことを示してると思うんだ」

唯「どういうこと?」

憂「仮にだよ。もし、ゲーム参加者があちこちの国に散らばってたらどうする?」

唯「え、そんなの探せないよ……」

憂「そう、そうなんだよ。そんなふうに世界各地に日記所有者が、バラバラにいたら
  たとえ見つけれるとしても、七日の間に探し出すこっていう条件を満たすのは、ほぼ不可能でしょ?」

唯「うん、無理」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:08:35.92 ID:Hio9flSSO<> 憂「日記所有者のいる範囲が広すぎたら、このゲームはゲームとして始まらない」

唯「相手が見つからなかったら、勝負しようがないもんね」

憂「つまり、今言ったことと七日ルールから、日記所有者は私たちの近くにいる」


唯は今さらながら、自分の妹がいかに冷静かを知った。


憂「でね、ここからが本題。
  どうやって相手を見つけるかって話。もちろん、相手を探すのに使うのは未来日記」

唯「未来日記を使ってどうするの?」

憂「未来を変えちゃえばいいんだよ」

唯「未来を変える?」

憂「この日記に示されたことと違う行動をとった場合、その行動をとったあと、未来が変わって日記の内容も変わるでしょ?
  そして、未来が変わるのは自分が日記に示された行動と違う行動をしたときだけじゃない」


唯は「あっ」と声を漏らした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:09:52.10 ID:Hio9flSSO<> 憂「さっき、お姉ちゃんから立花って人のことを聞いてわかったんだ。
 、他の日記所有者の行動によっても、日記は書き変わるってことが」


そういえば、姫子は唯の未来日記の表示とは全く違う行動をとっていた。
日記には姫子とは、校門前で出会うと書かれたはずなのに実際には、教室で遭遇した。
あのときはどうして姫子が教室にいたのか理解できなかったが、今ならわかる。


唯と姫子が校門で鉢合わせすることが、姫子の未来日記にも書かれていたのだ。
しかし、唯が日記に反する行動をとって未来が変わり、姫子の日記にまで影響を及ぼしたのだ。
唯の行動により姫子の日記の内容は変わった。
その結果、姫子は唯が教室に行くことを知った。


そして、姫子は教室に先回りした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:15:10.24 ID:Hio9flSSO<>
憂「だから、こっちから日記に反する行動をなるべくして、未来をどんどん変えていく」

唯「そうすれば、日記を持ってる人なら、未来が変わって、ゲーム参加者は私たちが所有者だって気づく……」

憂「うん。こっちが日記をもっていることがバレやすくなるぶん、危険も十分にあるけど。
  この方法だったら対戦相手を釣れる可能性はかなり高いはずだよ」

唯「……」


ひどい違和感のようなものが唯の胸を襲った。
隣で語っている妹のことは、誰よりもよく知っている。
しかし、唯はまるで赤の他人が憂の皮を被って話しているかのような、そんな違和感を抱いた。


憂「そこで、お姉ちゃんにお願いしたいことがあるの。
  その未来を変える役をお姉ちゃんに頼みたいの」

唯「私に?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:16:44.49 ID:Hio9flSSO<> 憂「私の日記はお姉ちゃんのことしか書かれていないから、未来を変えることがほとんどできないの。
  逆にお姉ちゃんの日記は、お姉ちゃんの周囲をひたすら予知していくものだから、未来を変えるのもたやすいでしょ」

唯「私にしかできないってことだね」

憂「もちろん、対戦相手に日記をもってることがバレやすい分、危険。
  だからもし、お姉ちゃんになにかあったら必ず私の日記が察知する。
  大丈夫。お姉ちゃんは私が守るから」


憂の手が唯の手を優しく包む。


憂「頑張ろう、このゲームで生き残るためにも」



唯は小さく頷くことしかできなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:17:43.49 ID:Hio9flSSO<> すいません、離脱します



よかったらなんでもいいので感想くださいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 17:19:25.43 ID:1Dq4V1di0<> ほう、未来日記とな?


期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 17:43:45.99 ID:svBA8I8Io<> 最近完結したんだっけか、原作
期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sagesaga<>2011/04/22(金) 17:45:32.02 ID:svBA8I8Io<> あと死ねとか殺すとかいう台詞が入るときはメール欄にsagaいれてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/22(金) 17:45:55.20 ID:q1SC0E2/0<> 個人的には未来日記は‘好きだった’から期待する。
あと質問するけど原作の未来日記キャラは登場する?(モブでもいいから)カヲル君はホモだからムリかもしれないけど・・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 18:16:36.73 ID:1Dq4V1di0<> ユッキーが唯でユノが憂か? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 23:03:17.75 ID:Hio9flSSO<> >>54 サンクス

>>55今のところは、デウスとムルムル以外は考えてないけど
一人だけラストで出てくるのは決定してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:08:03.60 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/AM 10:58】



ザザザザザ…………ザザ……ザザザザザザザザ………………



携帯電話のノイズが授業中にも関わらず、まどろんでいた唯の意識を現実に引き戻した。
唯は机に伏せていた顔をあげた。


唯(……いけない、いけない。寝てる場合じゃ……って、え……?)


覚醒しきっていない脳が警告にも似たなにかを聞いた気がして、思考が数秒間止まった。
得体の知れない緊張が唯の頭を急速に回転させる。


唯(なんで……なんでノイズの音がしたの!?)


ようやく唯はその異常に気づいて焦る。
ノイズが発生するのは、日記所有者が未来を変えたときのみだ。
机の中に手を突っ込んで、ケータイを取り出す。
周りの視線や教師が自分を見ているかもしれないということに配慮する余裕はなかった。


唯は携帯電話を開いて、日記を確認する。


[また寝ちゃってたみたい。あれれ?机の端っこに紙切れが置いてあるよ]


たしかに机の端にそれはあった。
ケータイの日記で確認すればよかったのかもしれない。
が、唯は紙を手に取って直接中身に目を通した。


[唯ちゃん、授業中に居眠りはダメだよ]


最後に紙の送り主の名前が書いてあった。










琴吹紬より、と。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 23:11:40.37 ID:1Dq4V1di0<> 期待うんたん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:15:31.38 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/AM 11:00】



授業の終わりを知らせるチャイムが鳴るとともに、唯は教室を飛び出した。



ザザザザザザザ……ザザザザザザ…………………



また未来が変わった。
記された日記の内容とは、全く違う行動をとったのだから当前だった。


唯(まずは憂にメールしなきゃ。
  ……あ、でも、憂は未来日記で私がどうなってるかわかるから……ああ!ワケわかんないよ!)


トイレの個室に駆け込む。
ロックを閉める。
とにかく憂に連絡しなければ。
しかし、いざメールを打とうにも指が震えて上手くメールが打てない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:17:40.19 ID:Hio9flSSO<>
唯(落ち着いて、私……落ち着いて)


何度か深呼吸をして気持ちを落ち着けようと試みる。
もっとも、胸の中で暴れる心臓は一向に治まる気配はない。
唯の混乱する脳を支配するのは、姫子が浮かべた冷笑。
そして、彼女が手にしていたナイフが放つ鈍い輝き。


唯(でも、ムギちゃんだよ?ムギちゃんが私を傷つけるなんてしないよね…………?)


だが、あれほど親しかった姫子は自分に刃を向けた。
ノックの音が扉越しから聞こえて、唯の喉は「ひっ」と、みっともない声を絞り出す。


紬「唯ちゃん、私の話を聞いて」


パニックに陥りかけていた唯の耳にも、紬の落ち着いた声はたしかに届いた。

唯は数秒考え、結局個室のドアを開けた。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:23:19.61 ID:Hio9flSSO<> 【2011/5/22/PM 1:12】


紬「ここならいいかしら?」

唯「……うん」


昼休みの空は今にも一雨来そうな色だった。
もとから日の当たりにくい体育館裏ではあるが、曇り空のせいで一層暗かった。


紬「とりあえず先に唯ちゃんの疑問に答えておいてあげようか?」

唯「……ムギちゃんはいつ私が日記をもってるって気づいたの?」

紬「昨日、部活が終わってすぐ」


実にあっさりした口調だった。


唯「き、昨日?」


唯は紬の予想外の返答に動揺する。


紬「うん。覚えてない?
  昨日、唯ちゃんが部活が終わってからなにをしたのか」

唯「昨日は、部活が終わって……」


体操服を取りに教室に戻った。
日記を見て、自分が体操服を教室に忘れていることに気がついて。


そこまで思い出して、唯は声をあげた。


唯「あ、あのときにムギちゃんは私が日記所有者だって気づいたの?」

紬「そだよ。あのときは私も驚いたの。
  急に唯ちゃんが私の日記と違う行動をしだしたから」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:25:29.23 ID:Hio9flSSO<> いかに自分が軽率だったのか、今さらにして唯は思い知った。


紬「唯ちゃん、私からもひとつ質問していい?」


唯は頷いた。
憂に関わること以外なら正直に話すつもりだった。


紬「姫子ちゃんが昨日から行方不明になってるらしいけど、それって唯ちゃんが関係してる?」


質問の形をとっているがそれはどちらかと言えば、確認に近い。

姫子のことは朝のホームルームで、担任のさわ子からクラス全員に伝わっている。
紬の未来日記の能力がどのようなものかは唯にはわからない。
だが、紬が未来日記から、姫子の行方が不明なことと唯が関係していることに気づいた可能性はある。
いや、ないほうがおかしいだろう。
唯は無意識に紬から視線を逸らしていた。


紬「どうなの、唯ちゃん?」

唯「……」


重い沈黙が流れる。
ややあって唯は口を開いた。


唯「私が……私が殺した。姫子ちゃんの日記を壊して」


紬は一言、そう、と呟いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:29:33.86 ID:Hio9flSSO<> 紬「唯ちゃんが進んで姫子ちゃんを殺そうとしたの?」

唯「ちがう、ちがうよ!
  私が姫子ちゃんに殺されそうになって……」


言葉が喉の奥で詰まってそれ以上出てこない。
あのとき、自分は殺される側だった。
姫子は[ピーーー]側だった。
しかし、結果から言えば自分が殺した側で、彼女は殺された側だった。


紬「もちろん、唯ちゃんが自ら進んで、姫子ちゃんを殺そうとしたなんて思えないし、思いたくもない。
  唯ちゃんのその言葉、信じていい?」


唯は頷いた。信じてほしかくて必死に頷いた。



ザザザザザザ……ザザザザザザ…………



ノイズの音に真っ先に反応したのは紬だった。
紬はポケットから携帯電話を取り出し、日記に目を通す。


紬「……私の日記じゃない」


ノイズの音がしたのは唯のケータイのほうだった。
唯がケータイを取り出して、開こうとしたときだった。


 「二人ともなにしてるの?」


落ち着いた声が背後からして唯は振り返った。
振り返った先にいたのは和だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:32:59.83 ID:Hio9flSSO<>
和「どうしたのよ? こんな陰気くさい場所で。
  密会かなにか?」

唯「えーとまあ、そんなところかな。
  あはは……」


唯はごまかすように苦笑いをして頭をかいた。


和「澪と律の二人が、あんたたちが急にいなくなったから心配してたわよ」

唯「そういえばなにも言わずに来ちゃった……和ちゃんはこんなとこになにか用事?」

和「先生に頼まれたの。
  そこにある木材をもってきてくれって。
  なにに使うのかしらね、こんなもの」


和が指差した先にあったのは、積み上げられた角材だった。
未だに困惑する唯と紬を横切って、和は角材をためつすがめつ眺める。


唯(ノイズがしてから和ちゃんがここに来た。
  ということは和ちゃんも……?)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:34:00.27 ID:Hio9flSSO<> 日記を開いて確認する。
意外なことが書いてあった。


[憂が物陰に隠れてこっちを見てる。
  私を見守ってるのかな?]


唯はゆっくりと思考を回転させる。


唯(つまり、今、日記からノイズがしたのは憂がここに来たからってこと……?)


背後を振り返りさえすれば、憂の姿を確認できるかもしれないが、下手に行動をとると紬の日記が反応するかもしれない。
唯はこの場は傍観することにした。


和「話が済んだら早く、教室に戻ってご飯食べたほうがいいわよ。
  午後からは体育だし」


その言葉が自分に向けられているのだと、気づくのに数秒かかった。


唯「……うん、ありがと和ちゃん」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/22(金) 23:34:40.15 ID:rIS5s7kbo<> 追いついた

期待

憂ちゃんは唯の行動の未来日記が見えるってメチャクチャ合ってるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:37:36.38 ID:Hio9flSSO<>



平沢憂は物陰に隠れて姉と琴吹紬を観察していた。


憂(お姉ちゃん、大丈夫だよ。私がいるから)


憂はポケットに隠し持っていたナイフの柄を、なぞるように握った。
スカートの中に入っているポケットナイフは、いつでも取り出せるようになっている。
最悪のケースに備えて家にあったものをもち出してきたのだ。


和「じゃあ、私、職員室に行くね」

紬「またあとでね」


どうやら和の用事は済んだらしい。
足音がこちらに向かって近づいてくる。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:41:55.41 ID:Hio9flSSO<> 憂はその場から動こうとはしなかった。


和「憂、なにしてるの?」


体育館裏を抜ければすぐ見つかる位置にいた憂は、やんわりと微笑んだ。


憂「お姉ちゃんをこっそり観察してたの」


年上相手には基本的に敬語で話す憂が、タメ口で答えた。
幼なじみである和と二人きりで会話するときは、憂は敬語を使わない。


和「……そう。それはご苦労様」

和は呆れたようだったが、幼なじみである彼女からすれば珍しくもない光景なのかもしれない。
和は特に言及しようとはしなかった。


憂「和ちゃんこそ、なにをしていたの?」

和「私は生徒会の用事でちょっとね。
  ……っと、遅れるとまずいから、私行くね」

憂「引き止めてごめんね」


アンダーリムの眼鏡の下の双眸が一瞬、鋭く光ったのを憂は見逃さなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 23:43:42.08 ID:Hio9flSSO<> 今日はここまで


見てくれてる人、ありがとう


おやすみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/22(金) 23:56:18.88 ID:1Dq4V1di0<> 乙
明日も期待している <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/23(土) 00:12:32.67 ID:HFDdrEHko<> 乙


見てるから完結させてください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/23(土) 07:38:54.61 ID:lgYMr+LDO<> 憂「ちょろい」

頑張ってくださいねー
つ支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/23(土) 12:58:04.28 ID:Og0eh1fso<> こういうのはやっぱりオリジナル展開あってこそだな
支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 15:07:47.19 ID:N2iOwD6SO<> 【2011/5/22/PM 5:01】

律「梓はなに見てんだ?」

梓「ケータイのカタログです。そろそろ新しいのが欲しいなと思って」

澪「iPhoneとかいいんじゃないか?」

紬「みんな、紅茶のおかわりいらない?」

唯「あ、ムギちゃん。私欲しい」


軽音部の活動は普段となんら変わりなく、ティータイムから始まった。
唯にとって放課後の部活は心休まる場のひとつだった。
しかし、今はどうなのかと問われれば素直に肯定することができるだろうか。
この瞬間でさえも、軽音部のメンバーを、腹の内になにか隠していないかと絶えず観察している自分がいる。


唯(ムギちゃんは日記所有者だった……他のみんなは?
  他のみんなはどうなんだろ?)


確率的に考えて、軽音部メンバー全員が日記所有者であるなんて馬鹿げている。


唯(そうだよ、憂が言ってたもん。
  このゲームで一番難しいのは、ゲーム参加者を見つけることだって)


胸中でくすぶる暗い不安を掻き消すように、唯は紬がついでくれた紅茶を飲み干した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 15:22:31.26 ID:N2iOwD6SO<> 【2011/5/22/PM 6:14】


二人は向かい合うように椅子に座っていた。
部活が終わったにも関わらず唯と紬の二人は、部室に残っていた。
律と澪は、澪の家で宿題をやると言って帰っていた。
梓は新しい携帯電話を見に行くと告げ、早々に部室を出て行った。


紬「ごめんね、唯ちゃん。わざわざ残ってもらって」

唯「ううん、私もムギちゃんと話したかったから」


それで話ってなに、と唯は先を促した。
紬が少し間を置いてから口を開く。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 15:36:54.53 ID:N2iOwD6SO<> 紬「もちろん、ゲームのこと。唯ちゃんはこのゲームのルールを覚えてる?」


唯は首肯した。
昨日の時点でゲームのルールは勝手に頭に入っていた。


紬「私が日記を手に入れたのは……一週間前なの」


紬の視線が湯気を立てるティーカップに落ちる。


唯「一週間前……?
  私は昨日初めて日記を手に入れたよ」


紬が弾かれたように顔をあげた。


紬「む、六日も違う……どうして?」


無論、唯にもわかるわけがなかった。
しかし、唯はより重要なことに気づいて声をあげた。
紬が日記を手に入れて今日で一週間が経過したと言った。


つまり……。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 15:41:41.12 ID:N2iOwD6SO<> 唯「ムギちゃんは、今まで誰か殺してるの?」


唯の意図を汲み取ったのだろう。
紬は表情を曇らせた。
紬は首を横に振った。


紬「ううん。
  そもそも自分以外の日記所有者に会ったのは、唯ちゃんが初めてだから」


だとすればゲームのルールに則って、今日のうちに紬はペナルティーを受けることになる。
未だにペナルティーの内容は明かされていない。
ペナルティーは、課された者にしかわからないようになっているからだ。


紬「私の日記にはね、軽音部のみんなとの会話が書かれてるの」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 15:44:46.98 ID:N2iOwD6SO<> 真摯な目が唯を見つめる。


紬「最初、この日記に気づいたときは嬉しかったの。
  みんなとの会話がいっぱい書かれててね。
  見てるだけで……幸せだった。でも今は……」


その先は聞かなくてもわかった。
紬もそれ以上は続けなかった。


紬「ごめんなさい、唯ちゃん。
  一緒に帰りましょ?」

唯「でも、ムギちゃんはペナルティーは……」


紬「……」


紬はなにも答えようとはしない。
さらに尋ねようとした唯の言葉はそこで途切れた。


気づいたときには身体が浮いていた。
なにが起きたかを認識する間もなく、床に背中を打ち付ける。
背中の衝撃に息を詰まらせ、唯は激しく咳込んだ。


ようやく唯は、紬に胸倉を掴まれ投げ飛ばされたのだと理解した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 19:29:30.94 ID:N2iOwD6SO<> 背中を苛む痛みと痺れをこらえてなんとか身体を起こした。
その場で固まった。
唯の目に映ったのは無表情で自分を見下ろしている紬だった。


紬「唯ちゃん、ごめんね」


吸い込んだ息が喉の奥で音を立てた。
恐怖に足が凍りついてしまっている。
身体が動かない。
瞬きすらできない。
明確な殺意。
間違いなく自分は彼女に殺されるという確信。


紬「私、死にたくないの」


紬の唇がそう動いた。
ゆっくりと近づく足音。縮まっていく距離。



ザザザザザザザザ…………ザザザザザザザザ………………


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 19:31:34.03 ID:N2iOwD6SO<>
ノイズがケータイからした。
不意に金縛りが解ける。


唯「ど、どうして私を[ピーーー]の?
  さっきまで……さっきまでは…………」


みっともないほど声が震えている。
震えているのは声だけではなかった。
足も手も、吐く息さえも震えていた。


紬「だから、死にたくないの。
  まだまだ生きたいの。
  唯ちゃんだってそうだったから姫子ちゃんを手にかけたんでしょ?」


紬の白い顔が目の前にあった。
やはり表情はなかった。


白い指が唯の頬の線をなぞる。
丸みを帯びた顎を撫でるように滑り、そのまま唯の首に触れた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 19:37:40.60 ID:N2iOwD6SO<>
唯「……や、やめて」

紬「いや」


唯が知っている紬からは想像もできないそっけない声。
紬の両の手が唯の首を掴もうとする。
唯はその手を払いのけようとして、逆に腕を掴まれる。


紬「お願い、唯ちゃん。
  私に大人しく殺されて」


不意に唯は違和感を覚えて紬の顔を改めて見た。
以前にもどこかで感じた、まるで誰かがその人に乗り移って喋っているかのような、そんな違和感……。
しかし、それ以上思考は続かなかった。
紬の手が唯の首を絞め始めた。


唯「ぁ、がっ…………」


恐ろしいほどの力が首にかかる。
息ができない。
このまま首をへし折られてしまうのだろうか。
抵抗しようにも力が違いすぎる。

紬の腕を振りほどくことなど唯には不可能だった。

早くも意識がふらつきだした。
天井が迫って来る。


唯(あっ…………死ぬ……)



天井に伸びた唯の腕が力無く床に向かって落ちた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 19:39:32.49 ID:N2iOwD6SO<> 脳裏に浮かぶものなどなにひとつなかった。
ただこれから死ぬのだという実感だけがあった。



ザザザ゙ザザザザザザ…………ザザザザザザザザザザ…………



唯のケータイのノイズを掻き消すかのようにけたたましい音がした。
遅れて扉がが開け放たれる。


紬「誰!?」


豹変してから初めて、紬の表情に焦りにも似た驚きが浮かんだ。
唯の首を締めつけていた力が消える。



「こんばんは……平沢憂です」



唯の耳を打ったのは聞き慣れた声だった。
ただ、いつもよりずっとトーンが低い。


唯(憂…………)



薄れて行く唯の視界に映ったのは、怒りに顔を歪めた妹だった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 19:43:56.29 ID:N2iOwD6SO<> 【2011/5/22/PM 6:18】


すでに日が沈みつつあった。

そうでなくとも今日の空は雲が立ち込めており、日が暮れるのが普段より幾分か早い。
あと数十分もすれば傘が必要になるだろう。



憂「こんばんは……平沢憂です」



暗闇から現れた平沢憂の手にはナイフが握られていた。


紬「どうして憂ちゃんが……?」


紬は困惑に眉をひそめた。
が、すぐに彼女は正解なたどり着いた。


紬「……憂ちゃんも日記所有者ってことね」


紬の日記の未来予知の対象者は自分以外の軽音部メンバーのみ。
よって予知対象外の憂には当然反応しない。
先程の携帯電話のノイズは、おそらく唯のものだろう。


憂「正解です。
  でも、そんなことはどうだっていい」


もはや会話する気は毛の先ほどもないらしい。
鈍い輝きを放つナイフが、殺気とともに紬に向けられる。



憂「お姉ちゃんは返してもらいます」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/23(土) 19:45:31.65 ID:N2iOwD6SO<> 今日はここまでにします

見てくれてる人ありがとうございます

また明日 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/23(土) 22:39:28.19 ID:HFDdrEHko<> おい!

大事なとこだろおおおおお <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/24(日) 20:42:09.35 ID:6Y1PtGhDO<> 気になったんだがこれって殺した時のカウントは手伝った奴にも入るの?

それとも殺した本人だけ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/24(日) 23:35:54.03 ID:tJQGGB0Jo<> ちょっとこないじゃないの <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/25(月) 03:20:32.60 ID:16lvZufSO<> 憂が足を一歩踏み出す。


紬「いいのかしら、憂ちゃん?」


落ち着き払った紬の声が踏み出そうとしていた憂の足を止める。


紬「少しでも動いたら、唯ちゃんを[ピーーー]わ」


紬はスカートのポケットからナイフを取り出した。
鞘に収まったそれを引き抜き、すでに意識を失い、床に横たわっている唯の首筋に宛がう。


憂「……なにをすればお姉ちゃんに危害を加えないって約束してもらえますか?」


紬「憂ちゃんの日記を私に渡して。そうしたら唯ちゃんは助けてあげる」


憂は携帯電話を取り出し、開いて中身を見た。


紬「なにをしているの?早く渡して」

憂「渡せません」


紬が困惑に眉をひそめる。


紬「……なんで?唯ちゃんが殺されてもいいの?」


憂「私の日記に書いてあります。
  紬さんが、私がケータイを渡したらそれを壊して、そのあとお姉ちゃんも[ピーーー]ことを」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/25(月) 03:23:02.79 ID:MVy43ufOo<> きたーーー!!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/25(月) 03:27:42.18 ID:16lvZufSO<> 紬「…………」


やられた。
日記がある以上こちらのこれからの動きまで予知されてしまう。
彼女の日記がどのような能力をもっているかはわからない。
しかし、紬の行動を予知することができたということは、自分の周囲を予知するタイプの可能性が高い。
或いはそれに準ずるもの。


どちらにしよう、自分と軽音部メンバーにだけしか予知範囲がない紬の日記はほとんど約に立たない。
相手のほうが圧倒的に有利だ。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/25(月) 03:32:48.23 ID:16lvZufSO<> 憂「紬さん。
  ごめんなさい、約束はしません」


憂はナイフを再び構えた。
少女の影も同じようにナイフを構える。


紬「……憂ちゃんがケータイを渡さないのなら、唯ちゃんを殺すわ。
  そして憂ちゃんも」


構いません、と憂は紬の脅しを容赦なく切り捨てる。
やはり、憂はナイフを構えたままだ。
引く気はまるでないらしい。


憂「お姉ちゃんが紬さんに殺されたら、私が紬さんを殺します。
  そのあと、他のゲーム参加者も全員殺し、私が神になります」


はっきりとした殺意を憂から感じ、無意識のうちナイフを握る手が震える。
目の前の少女は本当に自分の知っている平沢憂なのだろうか?


ねっとりとした汗が紬の首筋をなめるようになぞる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/25(月) 03:41:20.91 ID:16lvZufSO<> 静寂と緊張が明かりひとつついていない部室に充満していた。
張り詰めた緊張が空気を媒介にして紬の頬を突き刺す。


紬「なら、私も遠慮するつもりはないわ」


憂相手に脅しは効果がない。
そうとわかった以上は実際に姉を殺して、妹の平静を失わせるしかない。
唯の首筋に宛がったナイフの先端が、ゆっくりと唯の肌に突き刺さる。血が滴る。
このままナイフを下ろせばこの少女は血を噴き出して死ぬ。


憂「あ」


紬は思わず手を止める。
声をあげた憂は紬のほうを見ていなかった。
憂の視線はケータイのディスプレイに注がれていた。


憂「フラグが立ちましたね」

紬「フラグ……?」


フラグ――聞き慣れない単語だった。
訝る紬に憂は自身のケータイを見せた。
あまりに緩慢な動作だっために紬は思わず、釣られてしまった。
紬は目を細め、ケータイのディスプレイを凝視する。


ディスプレイにはこう書かれていた。












[私は紬さんを殺し、お姉ちゃんを助けた] <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/25(月) 03:47:57.46 ID:16lvZufSO<> 目を凝らす。
紬には憂のケータイのディスプレイに映っている文字の意味が理解できなかった。
というよりも、するわけにはいかなかった。


紬「どういうこと……どうなっているの?」


紬の携帯電話にノイズの反応はなかった。
なのになぜ彼女のケータイには変わってしまった未来が予知されている?
急激に速くなった鼓動を気取られないよう、紬は毅然と憂を睨みつける。
手のひらに滲む汗で、握っているナイフを落としてしまわないように柄をきちんと握りなおす。


憂「そうですね、知らないんですよね、紬さん。DEAD ENDについて」


思わず聞き直してしまったのは、紬が『DEAD END』について知らなかったからだ。


紬「どういうこと?」

憂「DEAD ENDのフラグが立ったときはノイズがしないんですよ」


憂がまた一歩足を踏み出す。
ほとんど同時に憂の言葉を掻き消すように否定する。


紬「……嘘よ」

憂「だったら確かめてみればいいじゃないですか?本当か嘘か」


憂から目を離さず、ポケットからケータイを取り出す。


ディスプレイに文字が浮かぶ。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/25(月) 03:55:26.31 ID:16lvZufSO<> ……日記に変化はなかった。
つまり、DEAD ENDフラグとやらも立っていないということだ。


紬「ふふ………やっぱりハッタリね」


紬が安堵しかけたときだった。
隣でなにかが動く気配がした。


紬「!!」


顔を引きつらせた紬が反射的に隣を見る。


紙のように白い顔をした唯が身体を起こしていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 06:19:13.69 ID:oJgvoaMDO<> 続きはまだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/26(火) 15:07:26.63 ID:UxgmEIVSO<> すんません

ちょっとここ二日、三日大学手続きで忙しくて書けないかも……

ちなみに質問はいくらでもしてください


質問ありましたが

直接殺した(もしくは日記を壊した)場合のみにしかカウントされません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2011/04/26(火) 17:25:58.64 ID:9Om+ZgAA0<> 未来日記の最終巻見た?
>>1的にあの最終回はどうなの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/26(火) 22:01:04.64 ID:6rO3CRDw0<> なんとか帰れたので再開する

>>98もう最終巻出たのか・・・・
まだ見てないから明日買いに行く
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/26(火) 22:19:04.90 ID:6rO3CRDw0<> 唯「……ぁ」


自分の予想よりもはるかに早く意識を取り戻した唯に思わず、紬は呆然とした。
もっともそれとて一秒もないほどのことだったが、決定的な隙には違いなかった。



憂「ちょろいっ!」



間一髪だった。


紬「……っ!」


憂のナイフは一瞬前まで紬がいた空間を切り裂いていた。
紬はかろうじて、大勢を低くして憂のナイフを避けた。
憂の声がなければ間違いなく避けることなど不可能だっただろう。
汗が毛穴から噴き出していくのが自分でもわかった。

が、憂の攻撃はそれだけで終わらなかった。

ほとんどしゃがむような大勢になった紬の顔面目がけて、憂の蹴りが迫る。
反射的に腕で顔をふせぐ。
重い衝撃。手が痺れている。


紬「……!」


憂の攻撃をふさいだ。
紬は少なくともそう思っていたが、すぐにその考えが間違いだと気づいた。


もっていたはずのナイフがない。
憂の蹴りによって吹っ飛ばされたのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/26(火) 22:36:51.13 ID:6rO3CRDw0<> 憂「――っね!」


再びナイフが紬目がけて襲いかかる。
今度は上から。
横っ飛びに避けようとする。
それが不可能だと気づく。


紬「……痛っ」


頭部に突き刺すような鋭い痛み。
動けない。
憂の左手が紬の頭部の髪の毛を掴んでいた。

紬は諦めた。
戦うことを。
ゲームに勝つことを。
わずかに視線を上に向ける。
逆光のせいで憂の表情は窺えない。
ナイフの鈍い輝きだけが視界を埋めていた。


紬「ねえ、憂ちゃん――」


自分でもなにを言おうとしたのかはわからなかったが、無意識に言葉が口をついた。
が、紬の言葉は憂のナイフにあっけなく引き裂かれた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/26(火) 22:46:31.28 ID:6rO3CRDw0<> 痛みを感じたのはほんの一瞬だった、
切り裂かれた首筋から血が飛沫となって、自分の中から消えていくのは不思議と怖くなかった。
ただ、視界を真っ赤に染める血が自分のものだとは信じられなかった。
不思議だ。
景色がゆっくりと傾いてく。

鈍い音。
なにかが床に投げ出される音だ。
そして鈍い衝撃。


紬「――ひゅっ……ひゅ――」


喋ろうとしても出てくるのは、細い吐息だけだった。


憂「紬さん、ごめんなさい。
  でもこうするしかお姉ちゃんを守る方法なんてないんです。
  紬さんがこんなことをしなければ、私もこんなことをすることなんてなかった。
  紬さんがお姉ちゃんに手を出さなければ……ね」


本当に不思議だ。
これからどう足掻いても死ぬというのに、心がざわつかない。
まるでこれは――


それ以上はなにも考えられなかった。
目の前が暗くなっていく。
思考に暗幕がゆったりとかかりはじめる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/27(水) 00:06:19.51 ID:0JCSOJLt0<> 紬「……!」


脳裏で強い光が弾けた気がして、唐突に紬は閉じかけていた目を開いた。
身体が熱い。
あたかも全身をめぐる血が沸騰しているかのようだった。


 「ムギちゃん……?」


広がっていく血によく知っている顔が映る。
その顔は最初なにが起きているのか理解できていないようだった。
しかし、その表情が呆然としたそれから驚愕のそれに変わるのに時間はかからなかった。
紬は死にゆく自分のことではなくその少女のことを思った。


紬(よかった……)


唯が死んでいなくて。

なんとなくではあるが紬は、どうして自分が唯を殺そうとしたのか理解しつつある。
が、それを伝える声は既に失われている。


紬(……いいえ、手段は……まだ、ある)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/27(水) 00:12:33.72 ID:0JCSOJLt0<> 紬は消えつつある命を振り絞って、ナイフとは違い、決して離さなかった日記に最後の日記を記した。
日記……というより、これは彼女へのメッセージだ。
自分が彼女にできる最後の行いだった。

指が意識とは無関係に震えている。
普段なら造作もないことであるはずなのに、指を動かすのはひどく困難だった。
それでも、紬は打った。
彼女へのメッセージを。


紬(ああ……もしかしたら……彼女も…………)


紬はある考えに思い至った。
可能性としては、その考えは決して低くない。
だが、その考えをメッセージにするだけの力は紬には残っていなかった。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/27(水) 00:20:27.67 ID:0JCSOJLt0<>  「ムギちゃん……ムギちゃん!」


誰かが自分の名前を呼んでいる。
聞きなれた声。
耳にするだけで幸せになれるような、そんな明るくて好きだった声。

誰かが肩を掴んでいる。
ごめんなさい。
もう返事をすることすらできないの。


もはや自分にできることは一切ない。
ただ、祈ることしできない。
彼女がこのゲームで生き残ることを。

やっぱり死ぬのは怖くなかった。
ただ、彼女と――みんなと今まで過ごしてきた幸せな時間をもう二度と味わえないのだと思うと、
真っ暗なはずの景色が歪んでいくような気がした。


紬(――あなただけは生き残って、ゆ、いちゃん……)











琴吹紬――平沢憂によって刺殺され死亡。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/04/27(水) 00:21:37.93 ID:0JCSOJLt0<> 今日はここまえでします

見てくれてる人ほんとちょこっとずつしか更新できなくてすんません(汗

おやすみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/27(水) 00:23:01.84 ID:Qht1nOwEo<> おつおやすみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/27(水) 03:09:08.47 ID:BK5lJAqF0<> >>1乙

ムギ死んだんやね 題材的にこうなるとは思ってたけど
切ないわぁ 仲間内でやりあうのはねぇ


未来日記最終巻出てたのか
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/05/03(火) 07:19:39.74 ID:RSLu5tCSO<> >>1どうした
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<><>2011/05/09(月) 23:48:27.34 ID:B2fRie7AO<> 書くか書かないかくらいはいってほしいな〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<><>2011/05/17(火) 20:07:49.37 ID:oYlx6RA8o<> >>1はもう来ないのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/16(木) 22:35:13.92 ID:+N/d4fse0<>


ゼウス「……また一人、脱落者が出たな……」


ムルムル「ゲームの進行速度は意外と速いみたいじゃの」


ゼウス「そのようだな。
    まあ、そうでなくては何度も試行錯誤した意味がない」


ムルムル「今回こそは面白い結果になるといいのう……」


ゼウス「……そうだな」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<><>2011/06/19(日) 22:34:44.62 ID:A1fFuvRAO<> なんか来てたー(゜∇゜) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/06/19(日) 23:03:25.62 ID:WnEWhroXo<> ゼウス…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/24(金) 01:45:35.74 ID:px/VLYUz0<> 【2011/5/24/PM 1:09】



得体の知れない不吉な塊が喉の奥でつっかえている気がして、中野梓は唾を飲み込んだ。
いや、これは予感という範疇で収まるような、そんな生易しいものではない。
追ってくる影から逃げるように梓は早歩きで、横断歩道を渡るとそのまま普段から歩いている通りを抜ける。

焦燥と嫌悪、二つの感情が梓の小さな胸の内側でくすぶっていた。
もっともこれらをどうにかする術を彼女は持ち合わせなどいなかった。
あれこれ考えているうちに目的地が見えてきた。

目的地――平沢家。


梓「……」


先ほどよりもさらに歩くペースがあがる。
あっという間に平沢家の玄関ドアの前まで来てしまった。
いつもであれば、このままインターホンを押して、憂が迎えてくれて、そのまま家にお邪魔したことだろう。

しかし、今はいつもとは違う。

はたしてこのままインターホンを押していいのだろうか。
そんな考えが不意に脳裏をよぎった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/24(金) 01:53:25.95 ID:px/VLYUz0<> どれぐらいの間、考えただろうか。
本人が思っているよりも逡巡の時間は案外短かったかもしれない。
梓は思い切ってインターホンを押した。

短い音が鳴って、数秒後に「はーい」と聞きなれた声がした。
ややあって扉が開いた。
見慣れた顔が遠慮気味にドアからのぞいた。



憂「はーい……って、梓ちゃん?
  急にどうしちゃったの?」


梓「あ……突然押しかけちゃってごめんね。
  ちょっと唯先輩に用事があって」


憂「お姉ちゃんに?」


憂は一瞬だけ、思考するかのように目を細めて梓を眺めた。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/24(金) 02:15:07.55 ID:px/VLYUz0<> 梓「憂……?」


憂「ああ、ごめんごめん。
  ちょうどよかったね。お姉ちゃん、今日は家にいるからあがって」


梓「そう。よかった。ありがとう」


梓を息を呑んだことを必死に憂にばれないように祈った。
背中が汗をかいている。
なぜだろう。
毛穴からわずかに零れ落ちた汗が耳元を滑り落ちていく不快な感覚を覚えながらも、梓はそれ以上の緊張感を感じていた。


憂「今、お姉ちゃん呼んでくるから待ってて」


憂は梓をリビングに案内すると、そう言って姉を呼びに行った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/24(金) 02:36:31.31 ID:px/VLYUz0<> 【2011/5/24/PM 1:18】


唯「あずにゃ〜ん!」


梓「い、いきなり抱きつかないでください!」


普段通り、いきなり唯に抱きつかれて梓は顔を赤くした。
唯に抱きつかれるのには未だに慣れることはない。


憂「私、洗濯物干してくるから、てきとうになにか食べててね」


唯「はーい」


梓「……?」


思わず梓は首をかしげた。
なにか強烈な違和感に襲われて、不安が潮のように押し寄せる。
しかし、梓にはその違和感の正体がわからないのでどうすることもできない。


唯「どうしたの、あずにゃん?」

梓「なんにもです……」


せめて唯には心配をかけないように彼女は普段通りを装ってそう返した。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/06/24(金) 07:42:07.22 ID:iT5ULk6SO<> 続きがきてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/25(土) 01:17:04.92 ID:uiJhN58Oo<> 支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/25(土) 04:22:46.60 ID:nUmcWbIyo<> 続きktkr <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/02(土) 23:55:48.07 ID:gDlwZoT1o<> 原作知らないけど面白いな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/04(月) 23:18:22.36 ID:f7tmztaC0<> 唯「ふふふ、あずにゃんはやっぱりあったかいね」

梓「私があったかいのはいいんですけど、その……」

唯「どうしたの?」

梓「いえ、とりあえず離れてもらってもいいですか?」

唯「あずにゃんったら照れちゃって、かわいいんだから」

梓「はあ……」

梓は小さくため息を漏らした。
しかし、そのため息は鬱陶しさから来るそれというよりは、むしろ安堵のそれに近かったかもしれない。
自分が抱えている悩みが少しは和らいだ気がした。

梓(あれ? でも……)

梓はあることを思い出して、自分の首に回っている唯の腕をほどいて彼女の顔を見た。

梓「唯先輩、寝不足なんですか?」

唯「ほえ?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/04(月) 23:23:30.90 ID:f7tmztaC0<> 唯の間の抜けた顔。
なんのことかイマイチ理解していないらしい。

唯「寝不足? どうして?」

梓「だって、唯先輩の目の下のクマ……すごいですよ」

唯の下まぶたには黒い絵の具を垂らしたかのような、クマができていた。

唯「えへへ、最近勉強頑張ってるんだよ」

梓「唯先輩が!?」

唯「そうなんだよー。まあ、私も一応受験生だからね」

この先輩が勉強するなどにわかには信じがたいことだった。
梓は猫のように目を丸くして唯の顔を凝視した。
心なしか唯は痩せているように思えた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/04(月) 23:32:36.95 ID:f7tmztaC0<> 警告にも似た悪寒が背中を滑り落ちた気がした。
梓は言った。

梓「本当に大丈夫ですか?
  勉強だったらいいですけど……無理はよくないですよ?
  唯先輩は今までそんなに勉強してないんだから、身体がびっくりしちゃいますよ?」

自分の不安をごまかすかのように、梓は殊更茶化すように言ってやった。

唯「あ、ひどいよ〜あずにゃん」

梓「だって、そんな簡単にクマなんてできないでしょう?」

唯「あはは、たしかにね〜」

唯と適当に会話をしつつ、梓は頭の中で必死に考えていた。
唯に心配をかけたくはない。
しかし、誰かに頼らないととてもじゃないが、『この状況』を突破できるとは思えなかった。
梓の逡巡が間もなく眉に現れようとしたときだった。


 「――助けてくれっっ!」


ほとんど悲鳴と変わらない叫び声が梓の耳に届いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/04(月) 23:39:09.54 ID:f7tmztaC0<> 同時にインターホンがけたたましく何度も鳴った。
それだけで、その声の主がひどく焦っていることが想像できた。

唯「どうしたんだろ? なにかあったのかな?」

ちょっと様子見てくる、そう言って唯先輩が腰を浮かしかけたところで憂が二階から降りてきた。

憂「いいよ。私が見てくるから、お姉ちゃんはここで待っていて」

唯「いいの?」

憂「いいの。お姉ちゃんにはなにもさせたくないし、なにもされないでほしいから」

憂はそれだけ言うと、リビングから出て行った。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/04(月) 23:50:22.00 ID:f7tmztaC0<> 【2011/5/24/PM 1:29】


憂はリビングの扉を閉めると、ポケットに手を突っ込んで得物がきちんとそこにあることを確かめる。
ざらついた木の感触。
人を殺した死の感覚。
念のため、いつでも取り出せるように憂はそれを確かめると、ナイフの柄をギュッとつかんだ。

玄関の棚に置かれたアロマキャンドルの香りが、憂の鼻孔をわずかにくすぐる。
憂は扉に手をかけた。



憂「どなたですか?」

憂は扉の向こうに尋ねた。

 「扉をあけてくれっ……早くっ!」

扉を強く叩く音。遅れてわずかに玄関が揺れた。
しかし、この声には聞き覚えがある。
間違いなく、梓も姉も知っているはずの声。


憂「律さん?」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/04(月) 23:57:59.29 ID:f7tmztaC0<> 一瞬だけ憂は考えたが、すぐに鍵を開けて扉を開いた。

 「――っ!」

外から転がり込むように玄関に人が入ってくる。
なにかを言ったような気がしたが、憂には言葉とは認識できなかった。

必死の形相。
さらした額にはびっしりと汗が浮かんでいた。

憂「……律さん、大丈夫ですか?」

憂の予想した通りの人物が、とびかかるように憂の肩をつかんだ。
憂は思わず、ポケットに手を突っ込んでナイフに指をひっかけたが、すぐにポケットから手を引っこ抜いた。

憂「なにかあったんですか?}

律「あったよ! 大変なんだよ! 
  ……くそっ、なんだんだよいったい!?」

憂「落ち着いてください。いったいなにがあったんですか?」

律が息も絶え絶えに言った。
言葉が震えていたのは、息が整っていないせいだけではないだろう。

律「澪にさっきまで殺されそうだったんだよ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 00:11:03.55 ID:dvpy/Kvx0<> 憂「……え?」

憂は訝しげに律を見た。
嘘をついているようには見えないが、真実というにはいささか信じられない。

憂「えっと、どういう意味ですか?
  ケンカかなにかしたんですか?

律「そんなわけあるか! 本当に、本当に殺されそうだったんだよ!
  鉄パイプで本気で顔面殴ろうとしてきたんだぞ!」

唯「ちょっと、どうしたの……って、りっちゃん?」

梓「律先輩?」

いつの間にかリビングの扉から顔を出していた二人が声をあげた。
図らずも咎めるような視線を送ってしまったが、梓も唯も気づいていない。

唯「いったいどうしたの?」

律「知らない! っていうか私のほうが聞きたいくらいだ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 00:14:55.33 ID:dvpy/Kvx0<> 今日はここまで
不定期すぎてごめんなさい
そして未だに未来日記の最終話を見てないよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/05(火) 16:05:34.19 ID:O+3y4wnFo<> 乙ー
楽しみに待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 20:44:08.02 ID:dvpy/Kvx0<> 頭に血が上りきってしまっている律の話は、まるで容量を得なかった。

憂「……とにかく澪さんが律さんを襲おうとしているってことでいいですか?」

律「そうなんだよ! だから早くなんとかしないと、私が澪に殺される!」

唯「え? え? そ、そんなのどうすればいいの!?」

梓「ていうか、どうして澪先輩が律先輩を……?」

律「だからわからないんだって!」

やはり、みんなも信じられないようだった。
当たり前だった。
どうして澪がそんなことをするのか。

そもそも彼女は暴力や血なまぐさいことは極端に嫌う人間なのに。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 20:51:32.83 ID:dvpy/Kvx0<> どうしたらよいのか、考えがまとまらないまま十分が過ぎようとした頃だった。


ザザザザザザ……ザザザザザザザザザザ……………


ノイズの音。
未来日記に記されている未来が書き換えられた音。

唯「!!」

憂「!!」

唯と憂が同時にハッとして、顔を見合わせる。
姉の顔には普段はまずみることのできない緊張がにじみ出ていた。
同時に憂はある違和を感じたような気がした。
憂は、ふと唯の隣にいる梓を見た。


梓「……」


梓はケータイの画面を食い入るように見つめていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 21:18:40.44 ID:dvpy/Kvx0<> このタイミングで梓が携帯電話を取り出しているのは、単なる偶然だろうか。

憂(それとも……)

ある考えが憂の脳裏をよぎる。が、憂が思考の海に沈みかけるより先に唯が声をあげた。

唯「あっ」

憂「どうしたの?」

唯「え、えっと……」

唯がどうしたらよいのかわからない、という顔をする。
咄嗟に憂は姉の手から携帯電話をとって、日記を確認する。
内容は――



[澪ちゃんがリビングの窓ガラスを割って侵入してくる!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 21:26:51.21 ID:dvpy/Kvx0<> 日記に表示された時刻は五分後。
五分後にはここに来る。

憂「…………」

なるほど。姉が困惑してしまうのも無理はなかった。
あと五分もしないうちに自分たちは襲撃されてしまうのだ。

憂はすでに確信しつつあった。

秋山澪が未来日記所有者であるということを。

そして、この未来日記の表示が示す最悪の可能性にも気づいた。

憂(さて、どうしよう……?)

律「ケータイなんか見てる場合じゃないって! 早くなんとかしないとまた、澪がここに来るかもしれないぞ!」

憂は律の顔を見た。

憂「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 21:37:22.17 ID:dvpy/Kvx0<> 唯と梓は戸惑っているだけで、なにもできそうになかった。

憂「そうですね……とりあえず、一旦ここから離れましょう」

唯「でも、どこへ行くの?」

憂「それは……」

律「神社ならどうだ?」

梓「神社……? たしかにこの付近には神社はありますけど……」

律「あそこって冬を除いたらほとんど人来ないだろ?
  だから、たぶんあそこなら誰も来ないし、澪にもバレないはずだ」

憂はほんの一瞬逡巡して、しかしうなずく。

憂「……そうですね。そうしましょう」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 21:51:09.82 ID:dvpy/Kvx0<> 【2011/5/24/PM 1:46】


鈍色の雲の群れが間もなく太陽を覆い隠そうとしていた。
律の言ったとおり、その神社には人っ子一人いなく酷く閑散としていた。
神社を囲い込む針葉樹林が、風になびいてざわざわと音を立てる。
唯はその音がなんとなく未来日記から発せられるノイズの音に似ていると思った。


梓「でも、どうして澪先輩が……」

神社の祭壇の階段に腰かけた梓がぽつりと声を漏らした。

梓「あの、警察に相談するというのはダメなんですか?」

律「信用してもらえないもしれないだろ。それに……」

祭壇の柱に背中を預けた、律が言った。
一見リラックスしてるようにも見えなくもない。

律「警察沙汰にはできればしたくない。
  なんとかして、澪を説得したいんだ」

唯「りっちゃん……」





<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/05(火) 22:01:29.91 ID:dvpy/Kvx0<> 梓「でも、そんなこと言ったって律先輩が澪先輩に殺されそうになったっていう事実から考えるなら……」

確かに警察に言ったほうがいいはずだ。

唯「あれれ?」

不意に唯が場違いな声をあげた。
携帯電話を眺めて、唯は首を傾げた。

憂「どうしたの、お姉ちゃん?」

唯「それが……電話の電源が落ちちゃったみたい」

唯の顔が泣きそうになる。
唯が憂に見せた携帯電話の画面は真っ暗になっていて、なにも表示されていない。
これでは未来日記が使えない。

律「今はケータイなんてどうでもいいだろ」

律が吐き捨てるように言った。

その時だった。


 「ここにいたんだな、律」


凛とした声が風に乗って、唯たちの耳に届いた・
神社の階段を暗い陰が足音ともにゆっくりとのぼってくる。

 「もう逃がさないよ」

唯たちの目の前に現れたのは、秋山澪――彼女以外の誰でもなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/05(火) 22:02:00.19 ID:aNzXMlySO<> がんばれ

超がんばれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/05(火) 22:16:13.21 ID:dvpy/Kvx0<> 【【2011/5/24/PM 1:49】



唯は息を呑まずにはいられなかった。
澪の左手には鉄パイプが握られていた。
自分が知っているはずの澪であればあんなものを持とうとはしないはずだ。

風にさらされてなびく黒髪の下の顔は、唯も、そしておそらくこの場にいる誰も、見たことがないほどに殺気に満ちていた。
もともと釣り目がちだった澪の双眸はいつにもまして鋭かった。

律「澪……」

澪「律、まずはお前を殺す」

澪が鉄パイプを地面にたたきつけた。
石畳に本当にわずかな火花が弾けた刹那。

澪はすでに地面を蹴って、律にいっきに襲いかかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/05(火) 22:25:38.38 ID:dvpy/Kvx0<> 唯と梓はどうすることもできなかった。
まるで、テレビを見ている一視聴者のようだった。
なにもできなかったし、なにかできるとも思えなかった。

おそらく時間にして三秒あるかないかだろう。
もともと運動能力に関しては、かなりのものを持っている澪だ。
あっという間に、律との距離がゼロになる。

鉄パイプが振り上げられる。
唯はなにもできない。声をあげることすら叶わない。

律「――!!」

澪「死ねっ!」


唯は反射的に目をつぶった。
見たくなかった。律が、澪に暴力を振るわれるその瞬間を。


澪「……!」

だが、実際には唯が想像したような光景は訪れなかった。
その代わりに耳をつんざくような甲高い音が、神社の静寂を切り裂いた。

澪「……憂、ちゃん」

澪の鉄パイプを憂のナイフが間一髪で受け止めていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/05(火) 22:30:43.45 ID:dvpy/Kvx0<>



ゼウス「どうやらいよいよゲームが本格的に動き始めたみたいだな」

ムルムル「少しは面白くなってきたのう」

ゼウス「そうでなくては、困るが」

ムルムル「貴様の後釜を決める必要があるからの。
     いったい誰がすべての日記所有者を殺して、神の座を手にするのか……楽しみじゃのう。
     ワシの予想は『あいつ』じゃが……」






ゼウス「我々が投入した『アレ』か……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/05(火) 22:31:39.07 ID:dvpy/Kvx0<> 今日はここまで
明日はたぶん書けないと思います
すいません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/05(火) 23:01:53.27 ID:aNzXMlySO<> 乙!

続きが気になるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/07(木) 22:30:18.20 ID:R0NCsjfB0<> 【2011/5/24/PM 1:50】


澪「憂、ちゃん」

澪の瞳が一瞬だけ驚きに見開かれたのを憂は見逃さなかった。
澪が振り下ろした鉄パイプを受け止めることには成功したものの、腕は強烈な衝撃にしびれていた。

澪「憂ちゃん、邪魔しないでくれ」

パイプにかかる力が強くなる。

憂「澪さん、どうして律さんを襲うんですか……?」

澪「憂ちゃんには関係ない」

澪は吐き捨てるように言った。
澪の言うとおり、確かに関係ないのかもしれない。

憂「でも……どうして律さんを襲うのか理由は聞かないとどく気にはなりません」

澪「しつこいよ。いいから、どいて」

憂「どきません」

澪「……ったく」

澪が鬱陶しげにため息をつく。
一瞬、澪の力が抜けた、と思った瞬間だった。
体勢が前のめりになる。

澪の振り上げた蹴りが憂の腹に直撃した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/07(木) 22:36:19.77 ID:R0NCsjfB0<> 憂「……っ!」

重い衝撃と激痛。
背中が弾かれたように反り返った。
吐き気がこみ上げてくる。
足元がひどくおぼつかなくなる。

澪「どけって言ってるのにどかないからそういうことになるんだ」

憂「……っ」

澪が律に対して暴力を振るおうとしたのも驚きだったが、自分に対して蹴りを放ったことにも驚きだった。
本来、このような暴力的行為に対して極端なまでに恐怖心を抱いているはずの澪がなぜ?

いや、すでに答えは出つつある。

憂「澪さん」

出した声は予想以上に震えていた。
澪の蹴りは憂に確実に傷を与えていたのだ。

澪「……なんだ?」

憂「ひょっとして澪さんが律さんを襲う理由って……」

澪「……」





憂「未来日記ですか?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/07(木) 22:50:43.87 ID:R0NCsjfB0<> 本の数十秒前、憂が澪の鉄パイプを受け止めたとき以上に澪の目が見開かれる。
だが、その表情は驚きから来るというより、むしろ喜びから来ているように憂には思えた。
そう、獲物を見つけた狩人のように。

澪「その未来日記という単語を知っているってことはつまりはそういうことなんだな」

憂「……はい」

澪「なら、まずは律はあとだ!」

澪が再び鉄パイプを振り上げる。
風を切る音をともなってパイプが憂目がけて振り落とされる。

今度は憂は受け止めるという行為には出なかった。
咄嗟に横に跳ぶ。
間一髪。
甲高い音。地面を滑る憂の陰を砕くかのように、鉄パイプが地面を穿つ。

一瞬だけできたスキを狙って憂はこぶしを澪の顔面めがけて振るう。
ナイフで切るような真似はしない。
ここで澪に死なれては困るからだ。
この未来日記サバイバルゲームを勝ち抜くための情報を得るためにも、澪には生きていてもらわなければ困る。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/07(木) 23:03:42.12 ID:R0NCsjfB0<> だが、憂は自分の判断が大きく間違っていたことをすぐに知った。
確かな手ごたえを感じた。
だが、それは決して彼女の頬を捉えたわけではなかった。

憂の拳はあっさりと澪の右手に受け止められていた。


憂「……!」

澪「甘いよ。素手で私を倒すつもりか?
  ――馬鹿にするな!」

腕をひねりあげられる。
再びつんのめるように前のめりになる。

憂「しまっ……!」

澪「っらあっ!!」

鉄パイプが憂の顔面に迫る。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/07(木) 23:22:33.09 ID:R0NCsjfB0<> 骨が軋む音が確かに聞こえた。
憂の身体が地面を転がる。

澪「ぎりぎりのところで、腕でガードしたか」

憂「……痛っ」

三度目の攻撃が来るのかと、憂は反射的に身体を起こしたが、澪は悠然と眺めているだけだった。
一方の憂は肩で息をしているうえに、パイプの衝撃をもろに食らった腕が悲鳴をあげていた。

澪「あきらめたら?
  憂ちゃんじゃあ、私はたおせないよ」

憂「そう、かもしれませんね」

憂の背中を冷たい汗が滑り落ちていく。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/07(木) 23:55:08.94 ID:R0NCsjfB0<> 憂「でも……」

憂はナイフの柄を握っていう腕に力をこめる。
息を大きく吸う。
湿気を多分に含んだ葉の匂いがした。
憂は不敵に笑ってみせた。


憂「たおすことはできなくても、殺すことはできます」

宣言と同時に地面を蹴った。
もはや、手加減して屈服させられる相手ではないとわかった以上、本気でやるしかない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/08(金) 00:25:51.05 ID:LTvAahyA0<> 【2011/5/24/PM 1:54】

平沢憂が律をかばったときは驚いたが、だからと言って彼女が脅威的な存在だったのかと言えばそんなことはなかった。
それどころか、簡単に殺せる相手だとすら思えた。
実際、憂はかろうじて澪の攻撃を耐えていたが、どちらが優勢かは言うまでもなかった。

澪(憂ちゃんは私よりも弱い)

しかも、未来日記の所有者。
確実に殺してやる。

澪「――え?」

圧倒的優勢が澪から注意力を奪っていた。
気づいた時には憂の顔が目の前に迫っていた。

澪「……っ」

飛び退こうとしたが、すでに遅すぎた。
憂の額が、澪の鼻っ柱を容赦なく襲った。

激痛。

目の前で火花が散った気がした。
神経が密集する鼻頭に攻撃されたことにより、澪はたたらを踏んでしまう。

澪(なっ……なにが起きたんだ……!?)

澪の思考が絡まった糸のようにぐちゃぐちゃになる。
しかし、憂の追撃。

憂の振り上げた蹴りが、体勢のくずれた澪の顎をとらえた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/08(金) 01:13:06.18 ID:LTvAahyA0<> 顎への一撃は澪の脳髄を派手に揺さぶった。
景色がぐるりと一回転して立っていられなくなった。
そのまま、澪は背中から崩れ落ちた。

澪「かはっ……!」

未だに混乱する思考で必死に澪は考えた。

澪(なんで急にこんなにも強くなった……?)

意味がわからなかった。
先ほどまで圧倒的なまでに圧倒していたのは自分だったはずなのに。
気づけば立場は完璧に逆転していた。

憂の足音が近づいてくる。

このままでは確実に殺されてしまう。
澪はポケットに手を突っ込んだ。




澪(――未来日記を使うしかない) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/08(金) 01:24:40.28 ID:LTvAahyA0<> 【2011/5/24/PM 1:56】


憂は仰向けで倒れたままになっている澪を見下ろした。
はっきり言って澪は強かった。
だから、手加減をするのをやめた。
確かに澪は強かったが手加減しなければ殺すことは十分できる相手だった。
そうだ。
自分は死ぬわけにはいかないのだ。
自分が死んでしまったら誰が姉を守る?
自分が死んでしまったら誰が姉の世話をする?

約束したんだ。
お姉ちゃんは必ず守る、と。

憂はナイフを振り上げた。
あとはこのナイフを澪ののど元に向けて振り落とせばそれですべてが終わる。

ナイフを、振り下ろす。


澪「――!!」

不意に澪が勢いよく転がる。
ナイフはぎりぎりで澪を殺さなかった。

憂「っち……しぶとい……!」

憂は舌打ちする。
が、その間に澪は体勢を整えていた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/08(金) 01:41:23.57 ID:LTvAahyA0<> だが、ここで追撃の手を休める憂ではなかった。
まだ澪は顎に食らった一撃の衝撃でふらついている。
仕留めるなら今がチャンス。

憂は一気に距離をつめると、澪をナイフで切りつける。
が、あっさりとよけられる。
反撃は来ない。さらにナイフを下から上に振り上げる。
だが、これも避けられる。
下蹴りを繰り出すが、やはりこれも当らない。

憂(どうなってるの?)

澪の口元が滴るかのよう悪意をこめてゆがむ。

憂(こうなったら……)

一旦距離をおく。
しかし、すぐに地面を蹴り、憂は刺突の構えで澪に突進する。

意外にもこの突進という攻撃は避けにくい。

憂(これで決める――)


重たい衝撃。
鈍い痛み。
景色がぐらりとゆがむ。

憂「っつ……!」

顎に強烈な掌底を見舞いされ、憂はのけぞった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/08(金) 13:54:37.13 ID:+dqryd/7o<> 澪さんお疲れっした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/24(日) 23:28:27.21 ID:tMxeZ2X10<> 憂(どうなってるの……?)

再び形勢が逆転し始めている。
ぐらぐらと揺らぐ景色と頭の中。
何が急激にここまで状況を変えた?

澪が再び距離を詰める。
咄嗟に横っ飛び避ける。
が、動きが先ほどの澪の攻撃のせいで緩慢になっていた。
澪の掌が憂の耳元をわずかにかすめた。

憂「っ……!」

もはやどちらが優勢かは明らかだった。
憂は身を翻して――つまり、澪に背中を向けて距離を空ける。


憂(いったい何が……)

ここまで状況を変えたのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/24(日) 23:28:27.11 ID:tMxeZ2X10<> 憂(どうなってるの……?)

再び形勢が逆転し始めている。
ぐらぐらと揺らぐ景色と頭の中。
何が急激にここまで状況を変えた?

澪が再び距離を詰める。
咄嗟に横っ飛び避ける。
が、動きが先ほどの澪の攻撃のせいで緩慢になっていた。
澪の掌が憂の耳元をわずかにかすめた。

憂「っ……!」

もはやどちらが優勢かは明らかだった。
憂は身を翻して――つまり、澪に背中を向けて距離を空ける。


憂(いったい何が……)

ここまで状況を変えたのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/24(日) 23:39:30.99 ID:tMxeZ2X10<> 澪「逃がさない――」

澪は休む暇を与えるつもりはないらしい。
すぐさま憂のあとを追って『果敢』に攻めてくる。

憂はこのわずかな時間に微細な変化を読み取ろうと目を細めた。

憂(なにが変わったの……さっきとの違いは――)


憂は理解した。

さきほどの澪と今の澪の違いを。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/07/24(日) 23:57:40.51 ID:gslETSv4o<> 後の3人はなにやってんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 00:01:40.90 ID:JrRQlv+R0<> 憂(線のないイヤホン……いや、ちがう――)

憂はようやく澪が耳につけているものの正体に思い至った。


憂「ブルートゥース!」

近距離無線通信ができるアイテム――完璧に原理が理解できたわけではなかったが憂は、澪がそれを利用して未来日記を使用していることを悟った。
どのような未来日記を使用しているかは知らないが、日記の能力はバラバラだ。
ならば、その日記自体が違う可能性は十分ある。

澪「っち、バレたか……」

だが、と再び澪が距離をつめる。

澪「日記の使用がバレたところで形勢はゆるがない!」

澪の鋭い叫び。そして、振り落とされる拳。
これはかろうじて避けるが、反撃はできない。
完璧にペースを握っているのは澪だった。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 00:11:09.36 ID:JrRQlv+R0<> 憂(どっち……いや、どの攻撃――)

蹴りか?
拳か?
それとも別のなにかか――

攻撃が読めない。
憂の日記は唯に対する予知能力がない。
まして澪との戦闘力差を考えれば、戦闘中に使う余裕などない。

澪「っはあ――!」

澪の攻撃が来る。
それはわかっているのに反撃の手立てがまるで浮かばない。


唯「憂! 右から澪ちゃんのパンチが来る!」

憂「――!」

姉の声。
反射的に憂は掌で澪の左拳を受け止めた。

澪「なっ……!」

澪の教学に凍りついた顔面に向けて拳を振るう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 00:19:06.16 ID:JrRQlv+R0<> 直撃。
確かな重たい手ごたえ。
骨を通じて鈍い痛みが拳に来た。

澪「……っ!」

澪のからだがのけ反った。
ここぞとばかりに追撃しようと、憂はナイフを振り上げたがこれは寸でのところで交わされる。


澪「くそっ……」

澪が悪態をついている隙に憂は息を整えるために距離をとる。
一瞬だけ姉を盗み見た。
さっきのあの瞬間、唯が予知を教えてくれていなければ、もしかしたら澪に今度こそやられていたかもしれない。
憂は感謝の気持ちで姉に目くばせした。

唯「……」

唯も小さくうなずいた。
ここからは姉の指示に従って行動する。
それしか澪に勝つ手段はない。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 00:29:24.77 ID:JrRQlv+R0<> 澪「なるほどな……どうやら唯の日記は私の日記よりも優秀みたいだな」

唯「澪、ちゃん……?」

ここにきて、動きを止めて話し出した澪に唯は首を傾げた。

憂「澪さんの日記はどうやら相手の攻撃を予知するタイプのものみたいですね」

澪「……正解だ」

憂「えらくあっさりと正解を言うんですね」

澪「隠したところでもはや憂ちゃんにはバレてそうだから、隠さないよ」

澪はそう言って肩をすくめた。
もっとも憂は、澪が完璧に本当のことを言っているとは思っていない。

澪「せっかくだから紹介する。私の日記は『痛みからの逃亡日記』。
  私に訪れるありとあらゆる物理的痛みを伴う事象を予知する日記だ」

憂「……」

澪「さて、唯、憂ちゃんの日記はどんな能力なんだ?」
  
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 00:34:48.85 ID:JrRQlv+R0<> 澪は悠然と言ってのけた。

憂「教える義理はありません」

澪「まあ、それがふつうの反応か」

憂「当たり前です」

憂は澪との会話の中でも緊張を研ぎ澄まし、全神経を目に集中させる。
一瞬の隙が命取りになる。

澪「というか、今ひとつ思ったんだけど、二対一っていうのはいささか私が不利じゃないか?
  私のほうが明らかに条件的に不利だ」

澪が意味のわからないことを言い出した。

澪「せっかく戦うんだったら条件は同じであるべきだ――」

澪の口元がゆがむ。


澪「律――――!」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 00:49:24.51 ID:JrRQlv+R0<> 【2011/5/24/PM 2:01】

唯の首筋を氷にも似た硬質な感触が触れた。


唯「――!」


一瞬なにが起きたのか唯はまるで理解できなくて、目を白黒させた。

唯「――え?」

後ろから首をからめ捕るかのように腕が巻き付いて、ナイフを首筋にあてがわれていた。
この状況下でこんなことができる人物は二人しかいない。

憂と澪は言うまでもなく違う。
この二人は今だって唯の目の間で、刃を交えようとしている。
そして、梓。
彼女ももちろん違う。
身長的に若干厳しいものがあるし、やるなら背中にナイフを突きつけるべきだろう。

と、なればあとは一人しかいない。

唯「りっちゃん――?」

律「そうだよ、唯」

律の声が耳元でして、口元に震える吐息がかかった。
普段から聞いているその声は緊張に満ち満ちていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 01:00:49.61 ID:JrRQlv+R0<> ここでそれぞれのキャラクターの日記解説。


唯の日記『無差別なんでも日記』

ありとあらゆる唯の周りで起きる事象をひたすら予知していく日記。
情報量に関してはどの日記の追随も許さない。
どうでもいいことから重要なことまでなにかが起きる度に、なんでも日記化される。
ゆえに情報量が多すぎてきちんと日記の内容を確認できなかったりする場合がある。
また、対象は自分の周りであるため自身の情報は皆無。
その事象が自身に及ぶか、またはその内容は明らかにならない。
さらに彼女自身が間違って認識した事象もそのまま日記に文章化されるため、とんでもなく見当違いな予知をしてしまう場合もある。





憂の日記『お姉ちゃん日記』

あくまで姉のことだけを予知する日記。
姉のこと以外の情報はまるで入ってこないため平沢唯がいなくなった時点で日記は無意味になる。
しかし、平沢唯のことに関しては重要なことはすべて日記化されるため、憂にとっては非常に重宝する。
五分ごとに唯に関する情報が流れる。
唯の未来日記と組み合わせることで、完璧な予知を可能にする。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/25(月) 01:05:17.90 ID:JrRQlv+R0<> 今日はここまで

日記に関してはまたほかのキャラクターたちのものも増やしていきます



あと、いまさらですがようやく未来日記最終巻を購入しました。
なんていうか最終的には我妻様の大勝利っすね
勢いがあるから設定の矛盾とかあんまり気にならなかったですけど最終回はアレでよかったんですかね?
もうちょっと何とかできたんじゃないのかなあって気がしないけど……

まあいいや、おやすみなさい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/25(月) 01:08:36.19 ID:G+yHQZ4zo<> 乙。憂のポジションはやっぱりあの人なのかな・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/07/25(月) 01:27:05.43 ID:VcFE68YOo<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/25(月) 01:28:04.47 ID:0CQSPA7io<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 02:48:48.62 ID:HTCPmtRM0<> 急速に毛穴が開いていくのが自分でもわかった。
じっとりと汗が噴き出してくる。
鈍色の輝きに唯の蒼白の顔が映った。

律「……これでいいんだよな、澪」

澪「ああ」

律の問いかけに対して澪がうなずく。

憂「お姉ちゃん……!」

唯が危険に晒されたことにより、憂の動きも止まってしまう。
澪が長い髪を鬱陶しげにかきあげて、提案した。

澪「今すぐ憂ちゃんの日記を渡してくれるなら、唯の命は助けよう」

唯「憂! そんな話聞いちゃダメだよ!」

憂「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 20:22:12.12 ID:HTCPmtRM0<> 澪「いや――せっかくならひとつゲームでもするか」

律「澪?」

澪「お互いの日記をかけて勝負しよう」

憂「……」

澪「いや、違うな。
  私は、唯と――唯の日記を賭けてたたかう。
  そっちは憂ちゃんの日記と――憂ちゃん自身の命を賭けてゲームしよう」

憂「どういうゲームをするんですか?」

澪「コイントスゲーム。
  互いに交互にコインの裏表を当てるというシンプルなゲームだ。
  当たれば相手の賭けの品を奪うことができる。予想を外した場合も、相手の賭けの品を得ることができる」

憂「……いいでしょう。受けてたちます」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 21:01:59.32 ID:HTCPmtRM0<> 澪「先攻後攻、どっちにする?」
【2011/5/24/PM 2:02】



憂(……どうする?)

先攻をとれば、当然攻める権利を最初に得る以上アタリを引けばこちらが圧倒的に有利だ。
だが、ハズレを引けばこちらがかえって不利になる。
いや、唯の未来日記が敵の手にある以上後攻という選択肢はあまりに危険だった。

澪「律、唯の日記を私に渡してくれ」

律「あ、ああ……」

律が唯の手から、携帯電話を奪うと澪の手に渡した。
澪が興味深げに唯の携帯電話を観察する。

澪「……なるほど、唯の日記は周囲の予知をするものか」

憂「……決めました。先攻でおねがいします」

憂は宣言した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2011/07/30(土) 21:12:12.63 ID:kH1l30Txo<> そこで折ればええやん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)<>sage<>2011/07/30(土) 21:40:56.90 ID:Wsw9L6wDo<> だまってろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 21:48:26.24 ID:HTCPmtRM0<> 先攻で、とは言ったがこちらになにか戦略があるわけではない。
憂自身の未来日記はこの手のゲームでは点で威力を発揮しない。
姉のことしか予知しないこの日記は役にたた――


[お姉ちゃんが私に合図を送ってるよ]


憂「……!」

憂は唯のほうを見た。
両目を閉じている。ただひらすら目を閉じているだけだが、おそらくあれは合図だ。

憂「……」

少し考えてみる。なるほど。おそらくあれは――

憂(コインは裏だという合図――)

唯の首にナイフを回している律は当然、唯の背後に立つ形になる。
そして、澪は唯の前。
視力のいい唯ならあの程度の距離ならディスプレイの文字を読むことも可能なのだろう。


憂(これなら裏をかくこともできる……?)


ザザザザザ……

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 21:52:20.41 ID:HTCPmtRM0<> 耳の裏を猫の舌でなぞったかのような不快な雑音。
未来が未来日記所有者によって書き換えられた、合図。

ノイズ。


憂(しまった――)

澪が唯を振り返る。
黒髪に隠れてその表情は伺えないが、彼女がどんな顔をして姉を眺めているのかは想像がついた。

姉の日記は最強の日記だ。
この日記がある以上、こちらが勝つのは不可能。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 21:58:01.71 ID:HTCPmtRM0<> 万事休す。
このゲームで勝つのは無理。
そうなれば力ずくで澪から唯を――


 「コインは表です!」


不意にそんな叫び声が背後からして、憂は声の主を振り返った。

声の主は――


憂「梓、ちゃん?」

叫んだのは、そう、中野梓だった。 <> 唯イイネ!<><>2011/07/30(土) 22:15:36.23 ID:xYX9gc1SO<>
  ∩
  H
  ||
  ||
(゚д||)
(\|レ)
 \||/
 /ω\
// \\
 ̄    ̄
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 22:17:40.24 ID:HTCPmtRM0<> 【2011/5/24/PM 2:05】


秋山澪があえて、こんな茶番劇をしたのにはわけがある。
澪が知り得ているた未来日記所有者は、唯、紬、そして自分。
そして、今知っているメンバーはこの三人にプラスして憂。

だが、もう一人候補がいる。

ここ何日間がずっと様子がおかしかった中野梓。
このゲームでうまくいけばあぶりだせるかもしれないと思ったが……


梓「コインは表です!」


澪は思わず目をこぼれ落とさんばかりに見開いた。
唯の未来日記があるにも関わらず、なぜ梓に答えを当てられてしまった?


澪「……アタリだ」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2011/07/30(土) 22:19:15.16 ID:kH1l30Txo<> なるほど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/30(土) 22:21:05.07 ID:26gHdaxDo<> 澪が律を殺そうとしたのは演技で実は二人はグルだったってことか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 22:25:31.00 ID:HTCPmtRM0<> 決まっている。
中野梓もまた、未来日記所有者であるからにほかならない。
だが、どうしてコイントスの結果を当てられてしまった?


澪「どうして私のコインが表だってわかった?」

梓「……」

澪の問いに対して梓は反応を返さない。
そんな梓に対して、憂が困惑したように梓を観察する。

澪「……まさか、お前も日記所有者だったとはな」

梓「……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 22:36:28.02 ID:HTCPmtRM0<> 梓はやはり答えない。

澪「まあ、いい」

律とグルになって未来日記所有者抹殺という計画はほとんど成功している。
あまりにずさんな計画だったが、結果としては悪くない。
さっさとこの茶番を終わらせてやる。


梓「……どうして私が、澪先輩のコインの裏表を当てられたのかわかりますか?」

澪「?」

今度は質問をしかえしてきた。

澪「梓が日記所有者だからだろう。それでお前は――」

梓「違います。日記なんて、必要ない」

澪には梓の言っていることの意味がわからない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2011/07/30(土) 22:40:03.17 ID:kH1l30Txo<> まさか…そのポジションか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 22:43:40.59 ID:HTCPmtRM0<> 梓「簡単な話ですよ、こんなの小学生、いや、保育園児でもわかっちゃいますよ」

澪「どういう意味だ?」

梓「簡単な話です。
  最初、唯先輩が憂に合図を送ったときにはコインは裏側を向いていた」

澪「それがどうした?
  そんなことはすでにわかりきっている」

梓「このコインが裏側だとわかったのは唯先輩が憂に合図を送っていたからです。
  でも、それを見抜いた澪先輩はすぐにコインの裏表を変えた」

澪「……」

梓「そもそも澪先輩、この未来日記というのは日記所有者がその日記の表示と別の行動をすることで未来が変わる。
  ノイズの音ともに。
  ノイズの音がなければ澪先輩は、唯先輩が憂に合図を送っていると気づけなかったかもしれない」

澪「まさか……」

梓「そう。ノイズによって唯先輩の合図に気づいた澪先輩は日記の表示とは逆にコインを向けた。
  そして、再び未来が変わった。つまり――」

澪「!」





<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 22:46:50.65 ID:HTCPmtRM0<> すっかり未来日記の予知によって油断した澪は、自分によって変化した未来が鳴らすノイズに気づけなかった。
自分でコインの裏表を変化させたと告白していたという事実に。

梓が言った。
少しだけ得意げに鼻孔を膨らませて。


梓「ね? 簡単でしょ?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 22:56:37.21 ID:HTCPmtRM0<> 憂「……一回目のゲーム。勝ったのはこちらです。
  お姉ちゃんか、日記のどちらかを渡してください」

澪「なら、唯だ」

この唯の日記は存分に使える。
だが、唯は必要ない。

澪「律、唯を解放しろ」

律「あ、ああ……」

律がおどおどと唯を解放する。
唯は一目散に憂のもとへと駆けていった。

憂「お姉ちゃん、大丈夫?
  けがはない?」

唯「う、うん。
  大丈夫だよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 23:23:50.89 ID:HTCPmtRM0<> 澪「ゲーム続行だ。まだ、ゲームは終わってないからな」

憂「ええ」



【2011/5/24/PM 2:09】


澪「今度は憂ちゃんがコイントスをする番だ」

憂「……」

さっきは梓の機転によってなんとかコインを当てることに成功したが、今度こそはどうしようもない。
憂は目まぐるしく頭を回転させたが、唯の日記に勝つことなどできない。
もし、このゲームで表裏を当てるのが唯であれば、自分の日記で裏をかくこともできたが、相手が澪ではどうしようもない。
手も足も出ない。

澪「どうした? 早く決めてもらわないとゲームが始まらないぞ」

憂「……」

梓も今回ばかりはどうしようもないのか、或いは未だに思考を続けているのか沈黙を保ったままだった。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 23:33:45.24 ID:HTCPmtRM0<> せめて唯の日記を無効化できれば……そこまで考えたときだった。
脳裏にひらめくものがあった。
唯の日記を無効かする方法が、簡単に未来日記を使えなくしてしまう方法があった。

憂「コイントスをします」

憂はコインを指ではじいた。


【2011/5/24/PM 2:10】


澪は憂がコインを空中にむかって放ったのをはっきりと見た。
空中から憂の手の甲にむかって落ちてくる。
それを憂はしっかり手の甲を抑える形でキャッチした。


澪「無駄だな。ランダムになるようにしたところでこの唯の日記には答えが記されているんだよ」

憂「……そうでしょうね。これは私の最後の悪あがきです」

憂の口調は落ち着いていた。
澪は特にその様子を気にかけなかった。
唯の日記にははっきりと、憂のトスしたコインは裏であると記されている。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/30(土) 23:42:32.07 ID:HTCPmtRM0<> 憂「どうぞ。澪さんの答えを言ってください」

唯「う、憂、大丈夫なの?」

憂「梓ちゃん、お姉ちゃんの耳を塞いで」

梓「……?」

憂「いいから、早く」

梓「わ、わかった」

最後の最後で意味不明な行動をとる敵に澪は思わず笑ってしまった。

憂「さあ、澪さん。答えをどうぞ」



澪「ああ、答えは――――裏だ」







憂「ハ・ズ・レ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/31(日) 00:05:20.42 ID:3Wus9MuA0<> 憂の手のひらが開いていく光景が異様にゆっくり見えたのは、はたして錯覚なのだろうか。
彼女の手中にあったコインは表を向いて鈍い光を放っていた。
澪は最初、それがなにかを理解できなかった。いや、コインが表であるこてゃ理解はできたがそれがどうして表を向いているのかわからなかった。
なんで、という自分の声が遠くから聞こえてくるようだった。


憂「……賭けは私の勝ちですね」

澪「……んで?」

澪は言った。

澪「なんで未来日記が当たらない……?」

憂「簡単な話ですよ」

憂は踵を返すと、梓に向かって指示した。

憂「梓ちゃん、もうお姉ちゃんの耳を塞がなくていいよ」

唯「う、い……?」

唯が目を白黒させる。憂は大げさに、いかにも悲痛そうな顔で言った。





憂「あああああ! コインが裏だって澪さんにあてられて負けちゃった!!」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/31(日) 00:33:57.02 ID:3Wus9MuA0<> あまりにわざとらしい叫び方だったが、唯はそれを信じてしまったらしい。
唯は慌てふためいた。

唯「どどどどどど、どうするの!? わ、わたしたち負けっちゃったの!?」

憂「そうだよ、お姉ちゃん――」

次の瞬間、憂の手刀が唯の首筋に振り落とされた。

唯「う、い――」

唯は力なき呟きとともに、床にくずおれる。

澪「なにを、している?」

憂「お姉ちゃんの日記は言ってみれば、お姉ちゃんの認識したすべて」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/31(日) 00:43:49.44 ID:3Wus9MuA0<> 憂「お姉ちゃんの認識したことが日記に反映される。
  それは行ってしまえば誤情報さえ、お姉ちゃんがそうだと認識したら正常な情報として日記に書かれてしまう。
  今回のように」

澪「どういうことだ?」

憂「今回のは純粋なギャンブルだったんですよ。
  私は結果の云々にかかわらず、お姉ちゃんにゲームに負けたと告げるつもりでしたから。
  そして、気絶させることもね。全部ゲームが始まる前からの決定事項だったんですよ」

澪「……だから、唯に結果が聞こえないように耳を塞いだのか」

憂「ええ。そういうことです」

澪「……」

憂「さあ、お姉ちゃんの日記は返してもらいますよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/31(日) 00:44:37.48 ID:3Wus9MuA0<> 今日はここまで

次回あたりに今までの人の日記解説とか
作中のわかりづらいところとかの質問とかに答えたいと思います <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2011/07/31(日) 00:47:23.02 ID:gyjq+1aXo<> 乙
原作はこの頃が一番面白かった気がする <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/07/31(日) 00:50:58.54 ID:uy2X6oCCo<> おっつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/31(日) 00:57:30.15 ID:l3JF8GoSO<> 原作四巻の矛盾についても触れてあるんだな <>