VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>saga<>2011/04/24(日) 22:42:49.69 ID:UoK4+8VG0<>        ____ __    ___ __      __   __   _ __
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     // ヽ |:/__l:::::::|_|__┬::::l_/::::7___//_/:::/ / ヽ |l__// 人/
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 このスレッドは、美少女キャラクターアニメとスーパーロボット大戦のクロスオーバーSSの第二段です。

 前スレ
 唯「まじーん、ごー!」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1287900930/

 Wiki
 http://ss.vip2ch.com/ss/%E5%94%AF%E3%80%8C%E3%81%BE%E3%81%98%E3%83%BC%E3%82%93%E3%80%81%E3%81%94%E3%83%BC%EF%BC%81%E3%80%8D

 参戦作品
 けいおん!×マジンガーZ
 魔法少女リリカルなのは×灼眼のシャナ×機動戦士ガンダム
 魔法先生ネギま!×ゲッターロボ
 生徒会役員共×涼宮ハルヒの憂鬱×機甲戦記ドラグナー
 BUMBOO BLADE×聖戦士ダンバイン
 Rozen Maiden×超電磁ロボ コン・バトラーV
 かみちゅ!×勇者ライディーン
 らき☆すた×銀河旋風ブライガー
 ミルキィホームズ×破邪大星ダンガイオー
 Baby Princess×バンプレストオリジナル



<>唯「だいにじ!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/04/24(日) 23:29:03.18 ID:UoK4+8VG0<>  これまでのあらすじ

 宇宙世紀0079――人口爆発した地球人類はその大半が幾多のスペースコロニーに移住して幾十年が経過していた。
 地球の日本の桜ヶ丘高校に通うけいおん部員の平沢唯は隣り突如侵略してきたドクター・ヘルの野望を打ち砕くスーパーロボット・マジンガーZを譲られ、戦いに身を投じることになる。
 同時期――スペースコロニー、サイド7で連邦軍のV作戦が始動した。
 サイド3で独立宣言したジオン公国・月でクーデターを起こしたギガノス帝国に対して、モビルスーツ・ガンダムとメタルアーマー・ドラグナーを開発していた。
 しかし、無数の偶然が重なり、ガンダムには11歳の少女、月村すずかが乗り、三機のドラグナーには、天草シノ以下、桜才学園の生徒会がパイロットとして登録されてしまった。
 異世界の遺失物<ロスト・ロギア>ジュエルシードを集める高町なのはは、ジオン公国の赤い彗星、炎髪灼眼フレイムヘイズのシャナに好敵手と狙われ、黒衣の魔導師フェイト・テスタロッサとジュエルシードを奪い合っている。
 地球を狙う侵略者はそれだけではない。
 キャンベル星人、バイストン・ウェルのドレイク・ルフト、妖魔帝国……
 それらの侵攻はローゼンメイデンが乗るコン・バトラーV、ゴラオン艦隊に所属する聖戦士・川添珠姫、勇者ライディーンに選ばれた中学生神様・一橋ゆりえによって食い止められている。

 だが、奴らがこのまま引き下がるはずはない……

 ギガノス帝国の蒼き鷹・涼宮ハルヒは息を潜め、宇宙海賊バンカーのギル・バーグはダンガイオーを駆るミルキィホームズを執拗に追い続ける。
 姿を見せない二体のローゼンメイデンのうち、水銀燈は人間の憎悪を煽り、バーン・バニングスを黒騎士に堕としてしまった。
 ジオン公国はコロニー・学園都市の科学力を利用して着々と戦力を増強して、ドクター・ヘルは新たな作戦を立てている。

 地球連邦には、新型パーソナルトルーパーの開発者、天使美夜の娘達、早乙女研究所のスーパーロボット・ゲッターロボ、アステロイドベルトのJ9、銀河旋風ブライガーが協力しているが、戦いは厳しいものに変わりはない。

 今、香月シノンが艦長を務めるホワイトベースがジャブローから宇宙へ飛び立った。

 全ては、この地球<ほし>の、明日のために――

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/04/24(日) 23:43:26.80 ID:UoK4+8VG0<>  このスレッドのいろいろ

 このSS内では個人的な解釈が多数に存在しています。
 それら全てご容赦くださいますよう、お願い申し上げます。

 また、スレッド内での雑談、質問などはいつでも歓迎しております。
 下のような人気投票も行っていますので、気軽に書き込みしていただけると励みになります。

 撃墜女王決定人気投票
 レスをいただける際にキャラ又はユニット名を入れていただければ、それが撃墜数として換算されます。
 撃墜数が多いエースはシナリオ上で何らかの形で優遇されることでしょう。
 登場したキャラクターについては>>4にだいたい載っています。敵キャラクターに投票していただいてもいいです。
 当たり前ですが、死亡したキャラクターやスポット参戦を復活させることはできません。
 ガルーダ魂覚えてるから使いたいけど……とか、是非もう一度当麻お兄さんの雄姿を! とかナシです。

 天使ヒカルの宇宙、地上の選択
 バンプレストオリジナルで参戦している天使ヒカルは時折、宇宙で戦うか、地上かという選択肢を用意します。
 選択は単純なレスの数で決定し、選ばれたほうに向かう全ての仲間に撃墜数が加算されます。
 選ばれなかったほうの仲間たちも、個人的に撃墜数を加算させることで隠しユニットなどが手に入ります。

 他にも、下のような安価スレッドをやっていますので、よろしくおねがいします。
 むぎのん「安価でアイテム運営する」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303653854/
 
 第三部の投稿は明日以降から再開します。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/04/24(日) 23:44:28.36 ID:UoK4+8VG0<> けいおん!                ネギま!
平沢唯    豊崎愛生         綾瀬夕映     桑谷夏子
秋山澪    日笠陽子         早乙女ハルナ   石毛佐和
田井中律   佐藤聡美         宮崎のどか    能登麻美子
琴吹紬    寿美菜子
中野梓    竹達彩奈         生徒会役員共
山中さわ子  真田アサミ        天草シノ      日笠陽子
平沢憂    米沢円          七条アリア     佐藤聡美
真鍋和    藤東知夏         萩村スズ       矢作紗友里
                       畑ランコ        新井里美

リリカルなのは              Rozen Maiden
高町なのは       田村ゆかり    真紅    沢城みゆき
フェイト・テスタロッサ 水樹奈々     翠星石   桑谷夏子
アルフ          桑谷夏子    蒼星石   森永理科
月村すずか      清水愛      雛苺     野川さくら
アリサ・バニングス  釘宮理恵    金糸雀   志村由美
                       水銀燈   田中理恵
灼眼のシャナ               JUM    真田アサミ
シャナ         釘宮理恵

涼宮ハルヒの憂鬱            らきすた
涼宮ハルヒ     平野綾       泉こなた    平野綾
キョン         杉田智和      柊かがみ    加藤英美里
古泉一樹      小野大輔        柊つかさ     福原香織
朝比奈みくる     後藤邑子       高翌良みゆき  遠藤綾
長門有希      茅原実里
                       各原作作品登場キャラ
かみちゅ!                リュウ・ホセイ       飯塚昭三
一橋ゆりえ     MAKO        アムロ・レイ        古屋徹
四条光恵       峯香織       シャア・アズナブル    池田秀一
三枝祀       森永理科      ドルチェノフ        飯塚昭三
                       ギルトール         大木正司
BAMBOO BLADE            ドクター・ヘル        富田耕生
千葉紀梨乃    豊口めぐみ     あしゅら男爵       柴田秀和 北浜晴子
川添珠姫      広橋涼        プリンス・シャーキン    市川治
宮崎都       桑島法子      ガルーダ         市川治
桑原鞘子      小島幸子      トッド・ギネス       逢坂秀実
東聡莉       佐藤利奈      バーン・バニングス   速水奨
                       アレン・ブレディ      若本規夫
ミルキィホームズ             ドレイク・ルフト       大木正司
シャロ     三森すずこ        ショット・ウェポン     田中正彦
ネロ      徳井青空          ミュージィ・ボー      横尾まり
エリー     佐々木未来       エレ・ハンム        佐々木るん
コーデリア 橘田いずみ          チャム・ファウ       川村万梨阿
                        ギル・バーグ       千葉繁 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/04/24(日) 23:54:08.99 ID:UoK4+8VG0<>  これまでの投票まとめ

唯 5
シノ 2
なのは 2
すずか 1
あしゅら 1
らきすた 1
珠姫 1
ミルキィ 1
ハルヒ 1
朝倉 1
立夏 1

宇宙 5
地上 2

 宇宙、地上の投票は一応、まだ継続しておきます。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 17:17:32.47 ID:+rpMixo0o<> おお>>1乙
ミルキィに投票したいそして宇宙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/25(月) 20:35:54.91 ID:k/yY23L70<>  
 第二十話

 ゴラオン 医務室

 ここには、ジャブローの決戦で人質にとられていた真鍋和が運ばれてようやく起きたところだった。

和「そう……私はミネルバXに乗せられて……ありがとう、唯」

唯「うぅん。私は何もしてないよ。助けてくれたのはヒーローのお兄さんだから」

和「それじゃあ、その人にもいつかお礼を言わなくちゃね」

律「だけどさ、何で和がミネルバXに乗せられていたんだ?」

和「簡単な話よ。私がミネルバXのテストパイロットをしていたからよ」

唯「和ちゃんが!?」

和「えぇ、琴吹さんにお願いされてね」

澪「ムギが……?」

紬「ごめんなさい、和ちゃん……私……」

和「いいのよ、唯ががんばっているのに、私も何かしたいと思っていたから」

唯「和ちゃん……」

和「いきさつを説明するとね。唯たちがジャブローに向かう前に、琴吹さんと澪のお父さんから相談されたの」

澪「パパ……お父さんが?」

和「ドクター・ヘルの機械獣と戦うわけではなく、壊されてしまった街の復興に完成したばかりのミネルバXのテストを兼ねて使っていた

のよ」

律「そこをあしゅら男爵に捕まったって訳か」

和「不幸中の幸いはまだミネルバXに武器が搭載されていなかったことね」

唯「そういえば、がしがし叩いてくるしかなかったね」

紬「本当はマジンガーZみたいにロケットパンチやブレストファイヤーを使えるようにする予定なの」

唯「おぉ〜」

澪「なるほど、だからマジンガーZのパートナーロボットなんだな」

律「ま、ヒーローの兄ちゃんのおかげでどてっ腹に穴空いちゃったけどな」

紬「それは光子力研究所で修理するから、大丈夫よ」

和「私も、唯を助けることができるわ」

唯「ありがとうっ、和ちゃん!」

和「ところで、憂と……あと、梓ちゃんは? 確か一緒にいたはずだと思うけど……」

律「あ、梓なら、なんか腹が痛いとか言って、部屋にいるぜ!」

澪「そうだな、大変そうだったけど、呼んでくるか?」

和「いや、それならいいけど……憂はどうしたの?」

紬「憂ちゃんは……」

唯「憂はね、レビル将軍と一緒に宇宙に行ったよ」

和「宇宙に……? どうして? 憂は光子力研究所に戻る予定じゃ……」

紬「ジオンとの和平交渉での、親善大使に選ばれたの……」

和「憂が……そう、わかったわ……お別れは言ったの、唯?」

唯「やだなー、和ちゃん。ずっと会えないって訳じゃないんだから。戦争が終われば、ちゃんと帰ってこれるって、憂も言ってたもん」

和「そうね……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/25(月) 20:38:06.51 ID:k/yY23L70<>  
 第二十話

 ゴラオン 医務室

 ここには、ジャブローの決戦で人質にとられていた真鍋和が運ばれてようやく起きたところだった。

和「そう……私はミネルバXに乗せられて……ありがとう、唯」

唯「うぅん。私は何もしてないよ。助けてくれたのはヒーローのお兄さんだから」

和「それじゃあ、その人にもいつかお礼を言わなくちゃね」

律「だけどさ、何で和がミネルバXに乗せられていたんだ?」

和「簡単な話よ。私がミネルバXのテストパイロットをしていたからよ」

唯「和ちゃんが!?」

和「えぇ、琴吹さんにお願いされてね」

澪「ムギが……?」

紬「ごめんなさい、和ちゃん……私……」

和「いいのよ、唯ががんばっているのに、私も何かしたいと思っていたから」

唯「和ちゃん……」

和「いきさつを説明するとね。唯たちがジャブローに向かう前に、琴吹さんと澪のお父さんから相談されたの」

澪「パパ……お父さんが?」

和「ドクター・ヘルの機械獣と戦うわけではなく、壊されてしまった街の復興に完成したばかりのミネルバXのテストを兼ねて使っていたのよ」

律「そこをあしゅら男爵に捕まったって訳か」

和「不幸中の幸いはまだミネルバXに武器が搭載されていなかったことね」

唯「そういえば、がしがし叩いてくるしかなかったね」

紬「本当はマジンガーZみたいにロケットパンチやブレストファイヤーを使えるようにする予定なの」

唯「おぉ〜」

澪「なるほど、だからマジンガーZのパートナーロボットなんだな」

律「ま、ヒーローの兄ちゃんのおかげでどてっ腹に穴空いちゃったけどな」

紬「それは光子力研究所で修理するから、大丈夫よ」

和「私も、唯を助けることができるわ」

唯「ありがとうっ、和ちゃん!」

和「ところで、憂と……あと、梓ちゃんは? 確か一緒にいたはずだと思うけど……」

律「あ、梓なら、なんか腹が痛いとか言って、部屋にいるぜ!」

澪「そうだな、大変そうだったけど、呼んでくるか?」

和「いや、それならいいけど……憂はどうしたの?」

紬「憂ちゃんは……」

唯「憂はね、レビル将軍と一緒に宇宙に行ったよ」

和「宇宙に……? どうして? 憂は光子力研究所に戻る予定じゃ……」

紬「ジオンとの和平交渉での、親善大使に選ばれたの……」

和「憂が……そう、わかったわ……お別れは言ったの、唯?」

唯「やだなー、和ちゃん。ずっと会えないって訳じゃないんだから。戦争が終われば、ちゃんと帰ってこれるって、憂も言ってたもん」

和「そうね……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/25(月) 20:40:10.06 ID:k/yY23L70<>
氷柱「へぇ、ゲッターロボってすごいのね。ロボットなのに自己再生ができるなんて」

夕映「正確には、ゲッターロボ自体が再生機能を持っているのではなく、ゲッター合金にゲッター線を照射することにより、金属の構成分子が増殖して柔軟に伸縮するゲッター合金同士が融合して繋ぎあうのです」

 赤い彗星に切断されたゲットマシンを補修用の小型ゲッター光線銃を当てている夕映が対放射線マスクを外して補足する。

夕映「ゲッターロボの動力でもあるゲッター線は宇宙から無限に降り注ぐ一種の放射線で、人類には無害で、むしろ成長を促す効果を持っていると早乙女博士は推測され、その研究に半生を費やしてきたのです。近年になってようやくゲッター線を採取、貯蓄してゲッターエネルギーに変換することに成功して博士は宇宙開発用ロボットのゲッターロボを開発されたのです」

翠星石「ゲッターゲッターうるせーですぅ! デコチビ人間はとんだゲッター馬鹿ですぅ!」

夕映「ふふ、わかりますか? 宇宙から飛来し、我々人間を進化させたゲッター線は存在そのものがとても哲学的で興味深いのですよ」

ハルナ「夕映は学校の勉強は全然しないけど、神仏ものとかにはやたらのめりこむもんね」

のどか「うんうん」

夕映「陰陽道や魔術といったもののいくつかは、ゲッター線が関わっている可能性もあります。私は早乙女博士の後を継いでゲッター線を研究するつもりですよ」

ハルナ「アタシから見たら、ただの変態でマッドなクソオヤジなんだけどねぇ……」

のどか「そ、それは言い過ぎじゃー……」

夕映「ふむ、そうなるとやはりハルナは早乙女博士の立派な娘ということになるですね」

ハルナ「それ、どういう意味かな?」

氷柱「あら? 梓さん……?」

 ふと眼を他へやった氷柱が中野梓を見つけ、その様子がおかしいことに気付いた。

梓「……くぅっ」

 苦しそうな表情で腹を抱える梓に、氷柱は駆け寄って訊ねた。

氷柱「どうしたんですか、梓さん? 何か、悪いものでも食べたんですか?」

梓「そんな……唯先輩みたいなことしませんよ……うっ」

氷柱「梓さん!?」

 互いにしっかりもので奔放な仲間に手を焼いている者同士で気が合う先輩が膝を折って倒れそうになるのを慌てて支える。

氷柱「……!」

 梓が抱えている腹に置いた手のひらの感触に、氷柱の面持ちが硬くなった。

氷柱「梓さん……まさか……」

梓「おねがい……唯先輩達には……まだないしょにしていて……」

氷柱「つ、紬さんにもですか……?」

梓「そうだね……たぶん、知らないはずだから……」

氷柱「どうしてこんなことに……いえ、いつから……」

梓「それは……よく覚えてないかな……少なくとも、生まれつきじゃ、ないはずだけど……」

 ごごぉっ……梓を助け起こす氷柱の後ろで、早乙女研究所に向かうゲッターチームを乗せた小型シャトルが発射される音が聞こえた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/25(月) 20:41:17.97 ID:k/yY23L70<>
 ゲッターチームが出た後で、マジンガーチーム、バトルチームに霙と氷柱も一つにシャトルで光子力研究所に向かう。

紬「それでは、エレ様、ここまでありがとうございます」

エレ「本当はわたくしたちも日本までお送りしたいのですが……」

紬「ドレイク軍のこともありますから、エレ様はエレ様のなずべきことをお願いします」

エレ「えぇ、ありがとうございます。ツムギさん」

 二人は握手をして、紬はシャトルへ入っていく。
 シャトルには既に全員そろっていて、すぐに出発した。

唯「あずにゃん、おなかは大丈夫になったの?」

梓「はい、ご心配をおかけしてすみません」

律「しっかし、梓に常備薬があるなんて始めて知ったぜ」

澪「律は常備薬って言葉もつい今まで知らなかったけどな」

律「ぶすー」

唯「あずにゃんって、おなか弱かったんだね」

梓「唯先輩がおちゃらけだから、私の胃に穴が空いちゃったんですよ」

唯「えぇぇっ、ホントに!?」

梓「ウソです」

唯「和ちゃ〜ん、あずにゃんがいぢめるよ〜」」

和「はいはい」

紬「ふふ……和ちゃんも梓ちゃんもすっかり本調子ね」

翠星石「まったく、ジュンも暇人ヤローですぅ。光子力研究所に来てるなんてねぇ」

蒼星石「翠星石が電話で怒鳴るからでしょ」

翠星石「そ、そんなことはねーですぅ」

真紅「あれはもはや脅迫といっても言い内容だったわ」

雛苺「なのー」

金糸雀「かしらー」

翠星石「う、うるせーですぅ!」

霙「やれやれ……シャトルが壊れなければいいがな……」

氷柱「…………」

霙「どうした、氷柱? 本が逆さまだぞ」

氷柱「へっ!? えっ、え……?」

霙「ウソだ。だが妙に慌てているな、何かあったか?」

氷柱「別に……何にもないわよ、霙姉様……」

霙「そうか」

 特に霙は追求しなかった。
 姉妹同士で隠し事はよくないと天使家のルールがあるが、秘密はオッケーである。
 氷柱は、自分が知ってしまったことを持ち前の回転の速い頭脳で、引き出しの奥にしまうことにした。

 そんな彼女の秘密も、光子力研究所に到着した時には吹き飛んでしまった。

梓「そ、そんな……あれは……」

唯「ドクター・ヘルの機械獣!?」

 光子力研究所は、四体の新たな機械獣に包囲されていたのだ。
<> 今日はここまでです。<>saga <>2011/04/25(月) 20:49:25.83 ID:k/yY23L70<>
明日から免許の筆記試験に向けて猛勉強するので、とりあえず第三部の最初だけ。
第二次Zはすごかった。シオニーちゃんかわいいだけだった。
ヅラキラに合体があるのにシンとルナにはないなんて
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 21:01:04.83 ID:+rpMixo0o<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 21:01:39.51 ID:KahDU7lOo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 21:24:15.19 ID:QbqRUL+SO<> 乙

だが、キャラ多くて収拾つくんかい? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/04/25(月) 22:43:24.37 ID:8TdVzQxLo<> 乙
>>5
ミルキィ・宇宙に投票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/25(月) 23:49:39.92 ID:T7QLzz3DO<> 乙、宇宙でなのはに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/26(火) 00:12:47.40 ID:Tb2srYqDO<> そういや今憂がアレなんだよな、よって唯に一票。 <> ギリシャ文字のテストです<>saga sage<>2011/04/28(木) 03:14:41.15 ID:y5Z+yjCx0<> Δοκιμής <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:31:53.93 ID:y5Z+yjCx0<>
 光子力研究所を包囲している機械獣はトロスD7、キングタンX10、ゴーストファイヤーV9、バルガスV5であった。

 そして、それらを率いる飛行要塞グールに乗っている司令官は自らの首を脇に抱えるドイツ軍人ブロッケン伯爵だ。

ブロッケン「くくく……我輩をあしゅらごときとみくびってくれるなよ……平沢唯」

 彼の周囲で飛行要塞グールを動かすのは鉄十字軍団、その規模は一個師団に匹敵し、一人一人が一騎当千の力を持つ精鋭達である。

ブロッケン「さぁ、やれぃ! ドクター・ヘル様の機械獣達よ! 光子力研究所を叩き潰すのだ!!」

トロスD7「ぎゅおぉぉぉぉぉぉぉん!」

 頭部に巨大な角を持つ機械獣トロスD7が突進を始め、

キングタンX10「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 大きな剣を持つ機械獣キングタンX10が大地を踏み鳴らし、

ゴーストファイヤーV9「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 両手が鉄球になっている機械獣ゴーストファイアーV9が両腕を振り上げ、

バルガスV5「がおぉぉぉぉぉぉん!」

 巨大な鉄甲冑に似たバルガスV5が大空に吼え猛った!

唯「マジィィィィン・ゴーッ!」

 グォォーン……! ジェットスクランダーを噴かして唯の乗るマジンガーZがトロスD7に体当たりした!

トロスD7「ぎゅぁぁぁぁぁっ!」

ブロッケン「現れおったな、マジンガーZ! 平沢唯!」

 マジンガーZの姿を確認して、ブロッケン伯爵はグールの高度を下げ、自ら甲板に姿を曝した。

ブロッケン「なるほど! その雄姿、まさに鉄の城と呼ぶに相応しい!!」

唯「いったい誰!? 光子力研究所を壊そうとするなんて!!」

ブロッケン「よくぞ訊いた! 我輩はブロッケン伯爵!! 偉大なるドクター・ヘル様の忠実なる僕!!」

唯「やっぱりドクター・ヘルの仲間だったんだね。目的は何!?」

ブロッケン「決まっておろう! 光子力研究所を我らが手に収め、光子力と超合金Zの全てを偉大なるドクター・ヘル様の世界征服に役立てるのだ!」

氷柱「相変わらず自分勝手な連中ね――」

 シャトルの上からゲシュペンストの中で聞いていた氷柱は嫌悪感を露わにして、スナイパーライフルの狙いを定めた。

氷柱<狙撃>「大ッ嫌いよ!!」

 バシュゥンッ! 長距離から実弾が飛ぶ。直撃すれば脚と胸が二つに分かれるはずだが――

鉄十字兵「ぐぅっ!!」

氷柱「えっ!?」

唯「伯爵を……かばった?」

 ブロッケン伯爵はその場を動かず、代わりに後ろに控えていた鉄十字兜の兵士が射線上に割り込んでライフル弾を喰らっていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:33:27.47 ID:y5Z+yjCx0<>
鉄十字兵「ご無事でしたか、ブロッケン伯爵」

 胴をふっ飛ばされながら鉄十字兵は呼吸一つ変えずに主の安否を訊ねている。

ブロッケン「うむ、キサマの階級を一つ特進させよう。安心して治療を受けるが良い」

鉄十字兵「ありがとうございます、ブロッケン伯爵!」

ブロッケン「うむ、全ては我らがドクター・ヘル様の為に! 我らを復活していただいたドクター・ヘル様のために! ハイル・ドクター・ヘル!!」

鉄十字兵「「「「ハイル・ドクター・ヘル!!」」」」

 両腕を広げるブロッケン伯爵の号令で、鉄十字兵が一斉に唱和した。
 その熱狂に唯たちは驚いて言葉を失っていた。

律「な、なんなんだ、こいつら……」

澪「まるで、全員が熱い火の玉みたいだ……」

霙「ジオンのザビ家崇拝と似たようなものだ。厄介だぞ、奴らは信念から主のために戦う。あしゅら男爵の鉄兜で操られている兵士とは根本から違う」

ブロッケン「その通り! あしゅらが如き軟弱な奴と我輩を同列に扱ってくれるな! 我らはかつてアドルフ・ヒットラーと共に第二次世界大戦を戦い抜いた本物の鋭士達だ!!」

紬「ひ、ヒットラーですって……」

律「誰だ、それ?」

真紅「西暦時代の独裁者よ」

蒼星石「問題は何故、その彼らがここにいるか、だ」

ブロッケン「全てはドクター・ヘル様の御力! 最強無敵の頭脳によって生み出された科学力で、バルト海に沈んだ我々を救い出してくださったのだ!!」

霙「文字通りの英雄、という訳だな」

翠星石「単純な奴らですぅ」

梓「ですけど、それ故に強くもあります」

ブロッケン「この世に最強の頭脳は一人で充分! ドクター・ヘル様がライバルと認めた兜十蔵のマジンガーZを破壊し、光子力の全てを奪ってやるわ!!」

唯「何おう! そんなことのためにマジンガーZはやらせないぞ!」

ブロッケン「やれぃ! トロスD7、自慢の角でマジンガーZを串刺しにしてしまえ!」

トロスD7「ぎゅおぉぉぉぉぉっ!!」

 ドドドドドドドドドドド……! 唸り声をあげてトロスD7は突進を再開した。

唯「やるぞ、マジンガーZ!」

トロスD7「ぎゅおぉぉぉぉぉぉぉん!!」

 バガーンッ!! 巨大な角がマジンガーZの腹に突っ込んだ!

唯「うわぁっ!」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:34:06.92 ID:y5Z+yjCx0<>
トロスD7「ぎゅぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 びゅぅっ! ドスーン……! 持ち上げられて投げ飛ばされたマジンガーZの腹には大きな穴が空いていた。

唯「ま、マジンガーのおなかが!」

紬「そんな……超合金Zを破るなんて……」

ブロッケン「さすがはドクター・ヘル様だ! 超合金Zに劣る金属でも、その力を一点に集中すれば、何百倍もの威力を発揮する!! マジンガーZ恐るるに足らず!!」

霙「くっ……平沢君を援護するぞ!」

澪「はい!」

翠星石「了解ですぅ!」

 戦域に到達したシャトルからアルトアイゼン、ダイアナンA、バトルマシンの五機が発進した。

「「「「「レェェェッツ・コンバイィィィィン!!」」」」」

 バトルマシンが超電磁の力で合体し、コン・バトラーVになる!

翠星石「コン・バトラーV! ですぅ!!」

ブロッケン「来たか……キングタンX10、ゴーストファイヤーV9、バルガスV5、やれぃ!」

 号令で三体の機械獣がアルトアイゼンの前に立ちはだかった。

霙「氷柱!」

氷柱「わかってるわ! 海晴姉様とのコンビネーション……私が代わりに!」

 バシュゥッ、バシュゥンッ! スナイパーライフルから放たれる弾丸が先頭で剣を持つキングタンX10に当たって動きを止めさせた。

霙「打ち貫く……!」

 ズゴォッ! リボルビングステークを突き刺し、そのまま殴り飛ばす。

キングタン「ぐおぉぉぉぉぉっ!」

霙「道を開けろ……スクエア・クレイモア!」

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドッ!! 視界一杯に鉄球が乱れ飛び、接近していた三体の機械獣を叩き伏せた!

ブロッケン「ぬぅぅ!」

霙「駆け抜けるぞ、アルト!」

 ドォンッ! 爆発的な瞬発力をフル稼働してアルトアイゼンがマジンガーZへと近づいていく。

ブロッケン「やらせるな! ショックビーム発射!」

 ギュビィンッ! ギュビィンッ! ギュビィンッ……! 飛行要塞グールから波動光線がアルトアイゼンを襲う。

霙「くっ……! 私とアルトを止めるとは……」

ブロッケン「さぁ、やれぃ! トロスD7、マジンガーZにとどめを刺せ!」

トロスD7「ぎゅおぉぉぉぉぉん!」

 ドドッ、ドドッ! トロスD7が角の先を正面に向けてマジンガーZへ走り始める。

唯「くぅぅっ、ブレストファイヤー!」

 まだ立ち上がれない状態でも胸部を前に出せた唯が反撃を開始した。

ブロッケン「馬鹿めが! 同じような手が何度も通用すると思うな!」

 ひゅぅぅぅ……ずどん! 

唯「えぇっ!」

 ゴバァァァァァァァァァァァァッ!! なんと、マジンガーZの30000度の熱線が全てトロスD7の前に落ちてきた鉄板に遮られてしまった。
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:35:16.11 ID:y5Z+yjCx0<>
ブロッケン「ドクター・ヘル様の立てた戦略は完璧だ! 今度こそマジンガーZに風穴を開けてやれ、トロスD7!」

トロスD7「ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ドガガァッ! 熱に溶けていく鉄板を盾にトロスD7がマジンガーZに角を根元までぶち込んだ!

唯「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!! マジンガーゼットォ!」

トロスD7「ぎゅおぉぉぉぉっ!!」

 ドドッ! ドドッ! トロスD7は頭にマジンガーZを乗せたまま更に突進して光子力研究所に激突した!

 ドガガァッン……!

唯「う、うぅぅ……」

澪「唯ーっ!」

律「ちくしょう! 機械獣が邪魔だぜ!」

氷柱「あんなに組み合ってちゃ下手に狙撃もできない……!」

翠星石「さっさとこいつら片付けるですよぅ! Vレーザー!」

 ドカァンッ! 至近距離からコン・バトラーV頭部のVの字からレーザー光線が手近なゴーストファイヤーV9に直撃して、よろめかせた。

ブロッケン「ふん、その程度でゴーストファイアーがやられるものか」

ゴーストファイアー「ごぁぁぁぁぁ!!」

ブロッケン「お前の本気を見せてやれ! ゴーストファイアーV9!!」

ゴーストファイアー「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!」

 ぶぉんぶぉん……! 右腕を高く振り上げたゴーストファイアーV9の鉄球が手首から落ちたと思うと、鎖で繋がった鉄球を頭上で回して勢いをつけていく。

翠星石「や、やばげですぅ!」

ゴーストファイアーV9「ごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 どがぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! 途轍もない威力の鉄球がコン・バトラーVの肩にぶつかる!

ブロッケン「まだだ、ゴーストファイアーV9!」

ゴーストファイアーV9「ぐごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ずごぉっ!! 

雛苺「やー!」

金糸雀「かしらー!」

 ずずぅん……! 左手の鉄球が撃ち出されてコン・バトラーVを倒した。
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:36:00.56 ID:y5Z+yjCx0<>
ブロッケン「お前達も気張れぃ! キングタンX10、バルガスV5!」

キングタンX10「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

バルガスV5「がおぉぉぉぉぉぉん!」

 二体の機械獣がそれぞれダイアナンAとボスボロットを標的にしている。

澪「スカーレットビーム!」

キングタンX10「ぐおぉぉぉぉ!」

 ぶぉんっ! ダイアナンAの眼から発せられた光線はキングタンX10の剣で堰き止められてしまう。

律「ちっくしょーっ! このままやらせるか、光子力爆弾だ!」

 どたどたどた……! ボスボロットが両手でバレルを持ってバルガスV5に突撃していく。

ブロッケン「くくく、お前の真の姿を見せてみろ、バルガスV5!」

バルガスV5「がおぉぉぉぉぉぉっ!」

 バカッ! ブロッケン伯爵の指示でバルガスV5のボディがバラバラに分離してボスボロットの体当たりを避けた!

律「げぇぇ〜っ!」

バルガスV5「がおぉぉぉぉぉんっ!」

 首についたブースターでバルガスV5の頭部がボスボロットの背中に頭突きをしてすっ転ばせた。

律「や、やばっ!」

 転んだ拍子に光子力爆弾のスイッチが起動してしまった。

律「ひぇぇぇぇぇぇぇ〜っ!」

 どたどたがしゃがしゃ! 遮二無二なって爆弾を投げ捨ててボスボロットが機体のあちこちでスクラップという楽器を鳴らしながら逃げる。

 チュドォォォォォォォォォォォォォォンッ!! TNT火薬300トンにも値する超威力爆弾が大きな火柱をあげ、周囲の機体をまとめて吹き飛ばした。

ブロッケン「あっ! バルガスV5!」

バルガスV5「……!?」

 バラバラになっていたのが仇となっていたバルガスV5の各部位が爆風でそれぞれ見当違いな方向へ飛んでいく。

律「ひぃー、ひぃー」

 ボスボロットもバラバラのボロボロになってほうほうのていで律が光子力研究所へ駆けこんでいく。

 その近くで唯とマジンガーZは腹に突き刺さっているトロスD7の角を掴んで睨みあいをしていた。

唯「う、うぅ……この距離なら、ルストハリケーンだぁ!」

 ぶおぉぉぉぉぉぉぉ……! マジンガーZの口から猛烈な風が吹き出し、トロスD7に当たっていくが――

トロスD7「ぎゅおぉぉぉぉぉっ!」

唯「こ、効果がないっ!? 何で!?」

 マジンガーZから発せられる強風に酸が乗っていない。
 その原因は胴体にあるルストハリケーン用の強酸貯蔵タンクとのパイプがトロスD7の角によって抉られていたからだ。
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:37:01.58 ID:y5Z+yjCx0<>
ブロッケン「くくく、この隙にとどめを刺してやるぞマジンガーZ!」

 飛行要塞グールのショックビーム発射口がマジンガーZへと向けられる。

ブロッケン「さぁ! これがキサマの最後だ! 平沢唯!!」

鉄十字兵「ブ、ブロッケン伯爵! 何者かが急速に接近してきます!」

ブロッケン「何だと!?」

 今しもショックビームのスイッチを押そうとしていたブロッケン伯爵の手が止まり、鉄十字兵の報告に耳を傾ける。

鉄十字兵「と、途轍もないスピードです! 二時の方向! マッハ4を計測!!」

ブロッケン「どういうことだ!」

 伝えられた方角へ顔を向けたブロッケン伯爵の目には既にその真っ赤な機影が飛び込んできていた。

ブロッケン「あ、あれはまさか……ゲッターロボか!?」

夕映「ゲッターロボGです!!」

ブロッケン「何ぃ! 新たなゲッターロボだというのか!?」

夕映<熱血直撃>「ゲッタァァァァァァァァァビィィィィィィィィィィム!!」

 ズギャァァァァァァァァァッ!! 旧型よりシャープで流線型の形状になったゲッターロボの空戦形態ゲッタードラゴンの額から超威力のゲッター線が照射され、ショックビームの発射口がどろどろに溶けて潰されてしまった!


 トーリノーコサレー オイーテーカレー ユクアテナドナクシーテシーマエ
 アーイソーワーライー シテールーヨリー ヒトリキリガイイトキモーアル
 オーチコムーホドー イヤーナコトー ヤメテシマエカワリーハイールサ
 ゼーンブステテー オリールナラー ダレモジャマヲスルハズナーイシ
 チュウトハンパデー オワリニシタクーナイ!
 ウラギラレテェ! キズツイテモォ! ツーヨークナレル change your heart!
 ココマデキタンダ I can't stop!
 カタナキャクヤシイ no way out!
 ワカレミチ モドリミチ フリムケバ ヨルノアメデミエナイーィー!
 ナニカガタリナイ I can't stop!
 モヤモヤカカエチャ no way out!
 ススマナキャ ミエテクル コタエマデ
 Never never mind!
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:37:37.81 ID:y5Z+yjCx0<>
のどか「チェェンジ・ライガー! スイッチ・オーン!」

 空中で三機の新型ゲットマシンが分離、再合体して青く細いフォルムのゲッターライガーにチェンジした瞬間、それは地中へ消えていった。

のどか「ゲッタードリール!」

キングタンX10「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 ギュルリィィィィィィィッ!! キングタンX10の股間から頭頂部までが、ライガーの左手のドリルに貫かれて破壊された!

ブロッケン「うぉぉ! キングタンX10の仇を取れ、バルガスV5!」

バルガスV5「がおぉぉぉぉ!」

 バカッ! ビビュンッ! 分離して各部位に分かれたバルガスV5が一斉にゲッターライガーへ飛んでいく。

ハルナ「チェェンジ・ポセイドン! スイッチ・オーン!」

 バシュッ! ガシュンッ! 今度はゲッター3にあたるゲッターポセイドンに変形し、大砲のような頭部をバルガスV5に向ける。

ハルナ「ゲッター・サイクロン!」

 ぶぉぉぉぉぉぉぉぉ……! ルストハリケーンよりも強烈な突風がポセイドン頭部から発生し、竜巻となってバルガスV5をまとめて巻き込んでいく。

バルガスV5「がおぉぉぉぉぉぉぉ……」

ブロッケン「何ということだ! バルガスV5のハイテクエンジンがまるで歯が立たぬ!」

氷柱「よし、やるわよ、スラッシュリッパー、行きなさい!」

 ビシュッ! ギュイィィィィ! 二基の回転刃がバルガスV5の連結部位を攻め立て、引き裂いていく!

ブロッケン「おのれ! あいつをやれ! 殺せ!」

 ドシューッ! ドドッ! 大量のミサイルがゲシュペンストに襲い掛かる!

翠星石「やらせねーですぅ!」

 ドドドォン! ゲシュペンストの前に出たコン・バトラーVがミサイルを全て叩き落とした!

真紅「大丈夫かしら?」

氷柱「はい、いけます!」

霙「撃ち洩らしは私が貰おうか」

 ズドドドドドドドドドドドドドドドッ!! 炸裂弾をばら撒いてバルガスVの残った部位が破砕して落下していった。

ブロッケン「くっ……ゴーストファイヤーV9! フルパワーで奴らをやれぃ!」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:38:27.90 ID:y5Z+yjCx0<>
ゴーストファイヤーV9「ぐごぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ぶぉんぶぉんぶぉん……! 二つの鉄球を同時に振り回すゴーストファイヤーV9。

 ひゅぼぉっ! ゴーストファイヤーV9の頭部で燃えている炎に鉄球が触れると、炎が移り、炎の鉄球と変わった。

霙「これは……近寄りがたいな」

夕映「新しいゲッターには、こんな装備もあるですよ!」

 ゲッタードラゴンにチェンジしていた夕映が、その巨大な手に機関砲を構えた。

夕映「バァァァルカンッ!!」

 ガガガガガガガガガガガガガッ!! 

ゴーストファイヤーV9「ぐごぉぉぉぉぉ!」

 弾丸はほとんどゴーストファイヤーV9に傷をつけることなく弾かれていた。

ハルナ「効果はいまひとつのようね」

夕映「ま、そんなに期待はしていなかったですよ」

 がらん、と機関砲を投げ捨て、夕映はドラゴンを高く飛翔させた。

ブロッケン「ふざけおってぇ! ゴーストファイヤーV9、ぶちのめせぇ!」

ゴーストファイヤーV9「ぐごぉぉぉぉぉぉん!!」

夕映「こっちが本番ですよ、ダブルトマホゥゥゥゥク・ブゥメランッ!!」

 炎の鉄球を同時に投げたゴーストファイヤーV9に対し、ゲッタードラゴンは両刃の手斧をそれぞれの手に持って、投げつけた!

 ズバンッ! ズザッ! 手斧は鉄球を繋ぐ鎖を切り裂き、鉄球は更に高く舞い上がるドラゴンの下を通り過ぎていった。

澪「よし、今だ、スカーレットビーム!」

 ビィィィィィィィィィ!! ダイアナンAから発射された光線がゴーストファイヤーV9の腰に命中し、下半身を溶かして倒す。

翠星石「とどめですよぅ、超電磁スパーク!」

 ズババババババババババババッ!! コン・バトラーVの頭部の磁極から放たれた電磁波に追い討ちをかけられ、ゴーストファイヤーV9は爆発した!

ブロッケン「ぐぐぐ……おのれスーパーロボットどもめ……」

 作戦の要である機械獣を三体も失ってしまったブロッケン伯爵は歯軋りした。

ブロッケン「だが、トロスD7がマジンガーZを倒すことまでは、邪魔をさせんぞ!」

 ぐぉぉぉぉ……! 飛行要塞グールを一挙に降下させ、ブロッケン伯爵は光子力研究所とマジンガーZを、アルトアイゼンたちから隠してしまった。

氷柱「くっ……大回りしていかないと……!」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:39:04.05 ID:y5Z+yjCx0<>
ブロッケン「させんぞ! いざ出でよ鉄十字軍団!!」

鉄十字兵「「「「おぉ!」」」」

 グールから一斉に鉄十字兵と戦車が飛び出し、氷柱たちを塞ぐ防衛網を形成した。

鉄十字兵「撃てーっ!!」

 ドォンッ! ドドォンッ! 無数の大砲や銃が火を噴き、進路を砂塵で包んだ。

夕映「うっ、これでは……」

ハルナ「のどか! ゲッターライガーよ!」

のどか「うん! チェンジ・ライガー! スイッチ・オーンッ!」

 ゲッターライガーが地中を潜り進む間、唯とマジンガーZはトロスD7の猛進に耐えていた。

トロスD7「ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!」

唯「うぅっ……ここでやられちゃったら……光子力研究所が……!」

 背中を突き破られた状態で角を握る手が徐々にパワーダウンしているのがわかる。

唯「こうなったら……いちかばちか……ブレスト……ファイヤー!」

 ゴァァァァァァァァァァァ!! 胸のVマークから熱線が放出され、トロスD7を覆っていく――が、

唯「しゅ、出力がぜんぜんちがう! 落ちてる!」

 ブレストファイヤーまでパワーダウンしていた。
 光子力エネルギーを熱光線に変える機関まで故障しているのだ。

唯「何を……何を使えばいいの!? どうすれば倒せるの! おじいちゃん!?」

 光子力エンジンと直結している機関と繋がっているボタンを唯はめったやたらに押している。
 エネルギー自体は下がっていない。光子力エネルギーをそのまま攻撃力に替える武器を探し続ける。

唯「こ、光子力ビーム……これだけ……でも、パワーが全然足りないよ……おじいちゃん……」

 操縦桿をぐっと握りしめる。少しだけ前に押されてマジンガーZも前に傾く。

唯「いいや、そんな訳ない……! おじいちゃんの造ったマジンガーZがドクター・ヘルなんかに負けるはずないんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ぐぉん……! 唯の声に呼応したかの如く、マジンガーZの眼が光子力の光りを発した。

唯「マジンガーZ……?」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:39:31.41 ID:y5Z+yjCx0<>
 そしてモニターに赤い文字が浮かび上がった。

 Ισχύς του Δία

 次に、唯の足の間に円筒状の台座がせり上がってきた。

唯「な、なにこれ……おじいちゃん……」

 台座にあるのはダイヤルのようだった。
 赤いダイヤルを指で掴むと、それはすごく重かった。

唯「こ、これを上げればいいのかな……」

 力を込めてカチリとダイヤルの目盛りを変えた瞬間、コクピット内の熱気が上昇した。

唯「ふおゎっ!」

 カチカチ……ダイヤルを上げていくごとにマジンガーZのボディの熱がパイルダーにまで伝わってきていた。

唯「すごい……! すごいエネルギーだよ!!」

 グオォォォォォォォ……!

唯「いけるね、マジンガーZ! 光子力ビィィィィィィィィィム!!」

 キィン――全身を駆け巡る光子力エネルギーで金色に光るマジンガーZの眼からエネルギー波動のリングが生まれた。

 ズドォォォォォォォォォォォォォォォ!! その中心から通常とは比べ物にならない光線が射出され、トロスD7に正面から直撃した!

トロスD7「ぎゅぉぉぉぉぉぉ……っ!!」

ブロッケン「トロスD7!? どうした! 耐えるんだ!!」

唯<熱血/マジンパワー>「これが……マジンガーのフルパワーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!! トロスD7を乗せたまま、光子力ビームは地平線に向かって進み、飛行要塞グールにまで到達した。

ブロッケン「ぬ、ぬおぉぉ!!」

 規格外の衝撃に巨大な要塞も揺らぎ、地面を抉っていく。

ブロッケン「うぐぐ、マジンガーZにこれほどのパワーがあったとは! あしゅらめ、役立たずのデータを送りおって! 撤退するぞ!!」

 ずぉぉ……飛行要塞グールが浮上を開始し、光子力ビームから逃れていく。

ブロッケン「全速で離脱せよ! マジンガーZ、平沢唯! 次は覚えておれ!!」

 飛行要塞グールが大空の向こうへ逃げていく下で鉄十字軍団もまたそれぞれに散って姿を消していった。

唯「おじいちゃん……マジンガーZは……本当に無敵なんだね……!」

 光子力ビームが突き抜けていった地平線を見つめて、唯はぽろりと涙をこぼしていた。
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:40:03.59 ID:y5Z+yjCx0<>
 光子力研究所

唯「えぇーっ、すぐに宇宙に上がれないの!?」

紬「そうねぇ……ロケットの用意は既にできているんだけど、マジンガーZがちょっとね……」

唯「マジンガーZがどうしたの?」

紬「今回、マジンガーZの一時的なパワーアップ能力が発見できたのはいいんだけど、今の超合金Zだと疲労しすぎていてオーバーパワーに耐えられなくなったことがわかったの」

梓「つまり、大々的なメンテナンスが必要だということです」

唯「そっかぁ、マジンガーZも休憩しなくちゃいけないんだね」

梓「あと、さきほど唯先輩が音がおかしいって言って預けてくれたギターなんですけど」

唯「あっ、そうだよ、それも何か音が歪むというか変なんだよ」

梓「唯先輩がこれを全然手入れしていないことが発覚しました」

唯「へっ? ギターってお手入れするものなの?」

澪「そこからかよ!」

唯「りっちゃんはドラムのお手入れなんかしてないよね?」

律「してるわい! なんでアタシはしてなくて当たり前みたいに訊くんだよ!」

梓「ちょうどいい機会ですし、私がメンテナンスの仕方を教えます」

唯「ふぇぇ〜……あずにゃん、自分のついででいいから私のもお手入れしてよ〜」

梓「ダメです! こうなったらギターの扱い方というものをイチから説明してやるです!」

唯「あ〜う〜……」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:40:35.69 ID:y5Z+yjCx0<>
紬「それで、こちらの新しいゲッターロボですけど……」

夕映「はい、宇宙開発用ロボットであった旧型ゲッターロボと違い、最初から戦闘用として開発されたゲッターロボGと言います」

ハルナ「エネルギー出力はゲッター線増幅装置を搭載したことにより、従来のなんと10倍よ!」

のどか「乗っている私たちの負荷も大変なんですけど……」

紬「装甲は新開発されたゲッター合成鋼G……これは大きな戦力になりますね」

律「オヤジのケチーッ!」

紬「りっちゃん?」

律「ムギー、聞いてくれよー、オヤジもおじさんもひどいんだよー!」

紬「あらあら、どうしたの?」

澪「まともに聞かなくていいぞ、ムギ。ボロットで宇宙に出たいなんてバカな話だから」

紬「ボロットで……宇宙に……? ぷっ」

律「あー! 笑いやがった、ムギも澪もみんなひでぇよー!」

紬「だ、だっていくらなんでも……ふふふ……」

澪「はあ……和からも言ってやってくれ」

和「見れば見るほど驚くわねボスボロット……だって内部に畳が敷いてあってちゃぶ台に電気ポットとカップラーメンがあるんだもの……」

澪「マンガとテレビもな。っていうか律の部屋とほぼ変わらなくなってるぞ」

和「まあ、でも律の普段のめちゃくちゃな操縦があれば、ノーマルスーツとバーニアをつけるだけでいけそうな気がしないでもないわ」

律「うわーん!!」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:41:04.21 ID:y5Z+yjCx0<>
 バードス島

ドクター・ヘル「もうよい……顔を上げよ、あしゅら男爵、ブロッケン伯爵」

あしゅら「は、ははぁーっ!」

ブロッケン「申し訳ありませぬ、ドクター・ヘル様!」

ドクター・ヘル「お主たちは貴重なワシの部下だ……それを失わずに済んだことをまずは喜ぼう」

あしゅら「ど、ドクター・ヘル様……ありがたき御心……あしゅら、とことんまで感服いたしましたーっ!」

ブロッケン「わたくしも! この失態は必ずや次の機会に……!」

ドクター・ヘル「マジンガーZの真の力……天空神ゼウスの力……今の機械獣では足りぬか……」

あしゅら「ま、まさか、ドクター・ヘル様!」

ドクター・ヘル「これまで、危険だと判断し、開かずにおいた地獄の扉を、開く時が来たようだ……」

ブロッケン「い、いかにドクター・ヘル様といえども! あの扉の向こうに行くことは!」

ドクター・ヘル「そのために、貴様たちがいるのだ、あしゅら! ブロッケン!」

あしゅら・ブロッケン「「!!」」

ドクター・ヘル「これからの戦いにはあれの力が必要なのだ! なればこそ、貴様たちと共に、このバードスの奥深くへゆくぞ!」

あしゅら「ははぁーっ!」

ブロッケン「必ずや、ドクター・ヘル様をお守り致します!!」

ドクター・ヘル「くくく……平沢唯よ……その時まで、命は預けておいてやるわ……」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:41:52.43 ID:y5Z+yjCx0<>
 日本 南部のとあるビルの屋上

 黒衣を纏った少女フェイト・テスタロッサは、手に有名なケーキショップのファミリーパックを持ってヘリポートに立っている。

アルフ「甘いお菓子ねぇ……あの人が、それで喜ぶとは思えないけど……」

 風になびく金髪についてきたアルフが不安を隠さずに言うと、フェイトは控えめな微笑を作った。

フェイト「こういうのは、気持ちだから……」

アルフ「そうだよね、ちょっと邪魔が入ったけど、こんな短い間にジュエルシードを四つも集めたんだから、褒められることはなくても怒られることはないよね」

フェイト「うん……いくよ、アルフ」

 ヘリポートの中央に立ってフェイトは目を瞑り、愛機のバルディッシュに魔方陣を形成させた。

フェイト「――次元転移 次元座標 876C 4419 3312 E699 3583 A 1413 779 F 3125――開け誘いの扉 時の庭園 テッサロッサの主の下へ」
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(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:42:30.13 ID:y5Z+yjCx0<>
 天使家の夜は早い。
 小さい子どもたちはみんな八時までには眠ってしまうし、その子たちを起こさないように年長の姉たちも九時までには自分の部屋に入ってしまう。

 ただ、最近の夜だけは弱い明かりでダイニングに二人のお姉さんが教科書を広げていた。

蛍「えぇっと、慣性に対してバーニアの向きをこうすることで……」

春風「そうよ。うん、無重力での軌道法則にも慣れてきたみたいね」

蛍「でも、本当に宇宙に出て、こんなこと考えてる余裕ないような……」

春風「それでも、全く勉強しないよりはちょっとでも頭の片隅に入れておくほうがいいのよ」

蛍「でも、この教本だけでこんなに分厚いのよ。読み終わるだけで一日終わっちゃいそう」

春風「これでも、吹雪ちゃんが編集してくれたんだけどね」

 その時、パッとダイニングの明るくなった。

春風・蛍「「!」」

氷柱「何してんのよ?」

蛍「つ、氷柱ちゃん……?」

氷柱「ホタ姉は、PTの講習なんて受けてないでしょ」

蛍「こ、これはね……」

氷柱「何のために私が乗ったと思ってるの!?」

 バンッ! 鋭い怒りと共に振り下ろされた手が教本を強く叩いた。

氷柱「やめてよ! この家の中でこんなもの広げないで! ホタ姉までママの言いなりになることなんかないのよ!」

 あぁ、またやってしまった――氷柱は回転の速い頭ですぐに反省した。
 こんなことを言うために帰ってきたわけではないのに……廊下の方でカチャカチャとドアが開く音がする。

春風「氷柱ちゃん、落ち着いて……みんな起きてきちゃう……」

氷柱「春風姉様だってそうよ! どうして教えてくれなかったの!?」

春風「つ、氷柱ちゃん……」

氷柱「吹雪から聞いたわよ……春風姉様の事故のこと……」

綿雪「氷柱お姉ちゃん……?」

氷柱「――ユキッ!?」

 背中からかけられた声に弾けたように氷柱の顔が青褪める。

氷柱「ダメよ、ユキ! こんな時間に起きてきちゃ……」

青空「あー! つららおねーちゃんだー!」

 綿雪の後ろからぴょんと跳んできたのは一歳の青空だ。
 わんぱくでお昼寝もたくさんする青空はたまに夜中に目が覚めてお姉ちゃんたちの部屋に来たりするのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:43:13.52 ID:y5Z+yjCx0<>
青空「おかえりなさーい!」

氷柱「わっ! ちょっと青空!」

 青空に抱きつかれて氷柱がたじろいでいると夜中の天使家がにわかに騒がしくなってくる。

虹子「つららちゃんおかえりなさーい!」

真璃「つららお姉ちゃま。よく無事で帰ってきた。マリーが癒してあげる」

さくら「氷柱お姉ちゃんにあえてクマちゃんも嬉しいって言ってるの」

夕凪「にしし、ゆうなのマホウの力だよー」

星花「ホントに夕凪ちゃんの占いどおりだったね」

麗「なんてことないわよ、今日夕凪がママと電話していただけなんだから」

あさひ「ばっぶー! だぁだー!」

小雨「あぁぁ……あさひちゃんまで起きてきちゃってる……せっかくだから、ミルクの用意しますね」

春風「そうね、お帰りなさいのミッドナイト・パーティーでもしましょうか」

氷柱「……はあ、さっきまでのどっかいっちゃった……」

蛍「ごめんね、氷柱ちゃん……」

 機動兵器の操作手引きの教本をしまった蛍が起き抜けでぽわぽわしてるさくらを撫でるが、氷柱の目はきつく尖がっていた。

氷柱「許したわけじゃないからね」

蛍「えっ……?」

氷柱「ホタ姉が乗るなんて、ママが許しても私が許さないわよ」

蛍「…………」

氷柱「そりゃ、立夏をあのままにしても仕方ないし、誰かがあれに乗らなくちゃいけない訳だけど……」

観月「やぁ、今宵はお月さまがとんがっておるの。まるで氷柱姉じゃそっくりじゃ」

 いつの間にかお茶と団子を用意して落ち着いていた観月がほぅっと四歳児とは思えないため息を吐いた。

観月「蛍姉じゃのことは心配おらぬぞ、氷柱姉じゃ」

氷柱「み、観月……あなた……」

 キュウビの狐が守護霊で見えざるものが見えるという謎めいた十五女の訳知った物言いに氷柱だけでなく蛍も驚く。

観月「蛍姉じゃだけでない。海晴姉じゃも、霙姉じゃも、ヒカル姉じゃも、立夏姉じゃも……みんなわらわとキュウビのご加護がついておる。もちろん、氷柱姉じゃもじゃ……心配など何もいらぬぞ」

氷柱「ねぇ、観月……それじゃあ春風姉様はどうして……」

観月「…………」

 今ごろキッチンでホットミルクやお菓子の用意をしている三女の話題で観月は一度お茶をすすった。
 それから、思いつめた表情で呟いていった。

観月「春風姉じゃを襲ったものは……この世ならざる者がもたらしたものじゃ……それを用いてしまったママさまにも責はある。せめて、わらわがきちんと祈祷しておればあれほどのことはおこらなんだ……」

氷柱「観月……」

春風「はーい、みんなクッキーとミルクですよー! 氷柱ちゃんおかえりなさいミッドナイト・パーティーの始まりですよー」

 朗らかな笑顔でダイニングに戻ってきた春風にチビたちがわめき立つ。

 その母性溢れる姿はとても悲惨な事故を受けたとは思えないもので、氷柱はもう何を思えばいいのかわからなくなっていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/04/28(木) 21:49:03.48 ID:y5Z+yjCx0<>
青空「おかえりなさーい!」

氷柱「わっ! ちょっと青空!」

 青空に抱きつかれて氷柱がたじろいでいると夜中の天使家がにわかに騒がしくなってくる。

虹子「つららちゃんおかえりなさーい!」

真璃「つららお姉ちゃま。よく無事で帰ってきた。マリーが癒してあげる」

さくら「氷柱お姉ちゃんにあえてクマちゃんも嬉しいって言ってるの」

夕凪「にしし、ゆうなのマホウの力だよー」

星花「ホントに夕凪ちゃんの占いどおりだったね」

麗「なんてことないわよ、今日夕凪がママと電話していただけなんだから」

あさひ「ばっぶー! だぁだー!」

小雨「あぁぁ……あさひちゃんまで起きてきちゃってる……せっかくだから、ミルクの用意しますね」

春風「そうね、お帰りなさいのミッドナイト・パーティーでもしましょうか」

氷柱「……はあ、さっきまでのどっかいっちゃった……」

蛍「ごめんね、氷柱ちゃん……」

 機動兵器の操作手引きの教本をしまった蛍が起き抜けでぽわぽわしてるさくらを撫でるが、氷柱の目はきつく尖がっていた。

氷柱「許したわけじゃないからね」

蛍「えっ……?」

氷柱「ホタ姉が乗るなんて、ママが許しても私が許さないわよ」

蛍「…………」

氷柱「そりゃ、立夏をあのままにしても仕方ないし、誰かがあれに乗らなくちゃいけない訳だけど……」

観月「やぁ、今宵はお月さまがとんがっておるの。まるで氷柱姉じゃそっくりじゃ」

 いつの間にかお茶と団子を用意して落ち着いていた観月がほぅっと四歳児とは思えないため息を吐いた。

観月「蛍姉じゃのことは心配おらぬぞ、氷柱姉じゃ」

氷柱「み、観月……あなた……」

 キュウビの狐が守護霊で見えざるものが見えるという謎めいた十五女の訳知った物言いに氷柱だけでなく蛍も驚く。

観月「蛍姉じゃだけでない。海晴姉じゃも、霙姉じゃも、ヒカル姉じゃも、立夏姉じゃも……みんなわらわとキュウビのご加護がついておる。もちろん、氷柱姉じゃもじゃ……心配など何もいらぬぞ」

氷柱「ねぇ、観月……それじゃあ春風姉様はどうして……」

観月「…………」

 今ごろキッチンでホットミルクやお菓子の用意をしている三女の話題で観月は一度お茶をすすった。
 それから、思いつめた表情で呟いていった。

観月「春風姉じゃを襲ったものは……この世ならざる者がもたらしたものじゃ……それを用いてしまったママさまにも責はある。せめて、わらわがきちんと祈祷しておればあれほどのことはおこらなんだ……」

氷柱「観月……」

春風「はーい、みんなクッキーとミルクですよー! 氷柱ちゃんおかえりなさいミッドナイト・パーティーの始まりですよー」

 朗らかな笑顔でダイニングに戻ってきた春風にチビたちがわめき立つ。

 その母性溢れる姿はとても悲惨な事故を受けたとは思えないもので、氷柱はもう何を思えばいいのかわからなくなっていた。


 第二十話 出撃! ゲッターとマジンガー、新たな力 完

<> 今日はここまでです。<>saga <>2011/04/28(木) 22:01:29.48 ID:y5Z+yjCx0<> サブタイトル付け忘れた……

こちらSS保存場所(けいおん!)
http://sshozonbasho.blog90.fc2.com/blog-entry-692.html
でいつもまとめていただいています。感謝のコメントしています。
原作の歌まで用意していただいてとてもありがたい限りです。
他にもいくつかまとめていただいている場所もあって嬉しいです。

>>14
少なくともストーリーは完結まで出来ています。
ただ、当然、喋り捲るキャラと喋りにくいキャラなんかもでてきます(雛苺とか金糸雀とか)
なるべく、各話で登場しているキャラ全てに一言だけでも出番があるようにしてはいます。
俺はこいつが大好きだから活躍させろよ! とかあれば書いていただければ検討しますので。

ヒカルは既に宇宙に上がっていますので、一時的に分岐投票は打ち切りとさせていただきます。
人気投票は継続していますので、お気軽に。

運転免許の問題っていくつあるんだ……?
20回以上模擬テストやってるのに考えたことない問題が出てくる……

次回は宇宙に分岐した仲間とギガノスの話をやって、その後、地上組みと合流です。
つまり、別にヒカルは地上に残ってから宇宙に上がってもデータ的にはほとんどロスはなかったわけですね。
まあ、分岐のためだけに用意したイベントだったし、どっちを選んでもヒカルが乗る機体に変更はないわけです

これ以上余計なこと喋ると魔王剣とか出てきそうなのでこんなところで。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/28(木) 22:16:11.58 ID:UQXrp5Kvo<> 乙
ついにマジンパワーきたか!
らき☆すたチームに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/29(金) 07:04:35.29 ID:9OFOIjbDO<> 乙、いよいよ乗り換え、新武器ラッシュの始まりだな、なのはに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<><>2011/04/29(金) 12:39:58.81 ID:DSrIMf7AO<> 軟弱なゲッターチームをブラック竜馬さんがフルボッコするに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 20:10:49.75 ID:xyTeWmMO0<>
 第二十一話

 月面のクレーターを強度と透明度を併せ持つアクリルガラスでドームの形に覆い、底面の中央に統括庁舎などの公共施設を建設。
 その後、螺旋状に都市を敷いていき傾斜でせりあがっていくクレーターという地形に合わせて中央の庁舎も高く背を伸ばしていく。
 底面から庁舎が二十メートルに達する毎に新たな地面≠作り、その上にまた建物を乗せていく。
 宇宙世紀0079――人類は第一号のフォン・ブラウン市からずっと、この手法で月面に幾つかの都市を建設していった。

 そのうちの一つ、開発都市三号ギガノス市の駐留軍将校であったメサイア・ギルトールがマスドライバーの完成を機に周辺基地の駐留軍を纏め上げて決起したのがギガノス帝国≠フ始まりであった。

 今、民間輸送船が港に着いたことなど、ドルチェノフ中佐の耳に入るはずはなかった。

「閣下ぁ!」

 玉座を前に大きく腕を広げて見せたドルチェノフは以前よりも更に圧力を増して獅子吼した。

「プラート大尉は死に! ジオンとのジャブロー攻略作戦も失敗に終わった今! 我らギガノス帝国に勝機があるとすれば、マスドライバーによる地球連邦軍基地への全面攻撃しかありませぬ!!」

「やめよ、ドルチェノフ」

 あくまで穏やかに進言を退けたメサイア・ギルトールは窪んだ目で頭上のガラス越しに宇宙を仰ぎ見る。

「今一度、地球を見るがいい。ドルチェノフ中佐」

 ギルトールの視線の先にはいくつもの星明かりの中、青く輝く惑星がある。

「美しい……なんと美しい星なのだ……その星にお前はマスドライバーを仕掛けろと言っておるのだぞ」

「はっ! 全ては我らギガノスの勝利のために!」

「そんなことをしてみろ、ドルチェノフ!」

 皺の刻まれた顔を苦痛に歪め、ギルトールは肘掛けを拳で打った。
 決して強い力ではないものの、自身が地球そのものであるかのような眼差しにドルチェノフはたじろいだ。

「我らは連邦ともジオンとも違うのだ! あの美しい星を汚してはならんのだ……! それだけは断じてならんのだ!!」

「お言葉ですが、閣下! 既に若手将校の反乱の謀議が連邦政府にまで洩れている可能性があるのですぞ!」

 一歩後ろ足を踏みながらもドルチェノフは引き下がらなかった。
 二歩、三歩とギルトールへ進み寄り、額に熱を込めていった。

「連邦軍が彼奴らの反乱を煽れば我がギガノス帝国は一挙に転覆する恐れがあるのですぞ! かくなる上は速やかに反乱軍を処罰し、連邦軍を殲滅することです!」

「それがアンタのシナリオなのね、ドルチェノフ中佐」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 20:11:39.11 ID:xyTeWmMO0<>
「何ッ!? キ、キサマは!」

 高くはないが朗々と響き渡る声音が玉座に迫っていた革新派の表情を慄かせていた。

「アンタのくだらない謀であたしがくたばると信じていたのなら、それはとんでもない思い上がりよ」

「キサマ、生きておったのか! プラート大尉!」

 黒と藍色のパイロットスーツに身を包んだまま現れたハルヒ・スズミヤ・プラートは何ら臆することなくドルチェノフへと詰め寄っていく。

「アンタが朝倉涼子を使ってあたしを始末しようとしていたことは判明しているわ。全てはアンタが軍部を掌握するためだってこともね」

「ぐぐ……う、動くな、プラート大尉!」

 大胆不敵に近づいてくるハルヒに計略を暴露され、狼狽したドルチェノフは腰から銃を抜き、静観していたギルトールのこめかみに突きつけた。

「ドルチェノフ!」

「お前という男は……」

「黙れ! 反乱軍の即時殲滅、マスドライバーによる全面攻撃! この二つがお聞き入れ無きときは、我々にも覚悟というものがありますぞ!」

「馬鹿者が……!」

「閣下ぁ!」

 苦く唸った元帥にドルチェノフの唾が飛んだ瞬間、ハルヒは銃を持つ腕に飛びかかった。

「どけなさい、ドルチェノフ!」

「プラート! キサマ……!」

 二人は組み合って足を崩し、玉座から転がり落ちていった。

 だが、ハルヒが肘を取った拍子にドルチェノフの指が引き金を引いてしまった。

「!」

 銃声の先からくぐもった悲鳴が聞こえた。
 もつれあっていたハルヒとドルチェノフが振り返った時には、玉座のメサイア・ギルトールは口腔から血を吐き出している。

「閣下!」

 ほとんど泣きそうな声でハルヒはギルトールの傍へ跳んだ。
 胸を赤黒く染めたギガノス帝国元帥の瞳は既に光りを失い始めていた。

「閣下! 死んでは……! 死なないで、小父様!」

 没前の体温にすがりつくハルヒの耳に、血に混じった声が届いてくる。

「プラート大尉……マスドライバーを……地球を……破壊させてはならん……」

「わかってる! わかってるから! もう喋らないで!」

「我等の理想に……すまない……ハルヒ……くん……朝比奈くんは……三層の……C7区画に……」

「お、小父様……? 小父様!」

 力を失くした身体を揺すり続けるハルヒの後ろで、ドルチェノフは銃を落とした手を震わせていた。

「閣下……閣下がいけないのですぞ……」

「いかが致しましたか、元帥殿!」

 騒ぎを聞きつけて衛兵が駆け込んできた。彼らは玉座に惨状に気付くやすぐにその銃口を掲げる。

 そして、ドルチェノフは正気に戻り、重声を轟かせた。

「反乱だ! ギルトール元帥が撃たれたぞ! 親衛隊のプラート大尉に撃たれたぞ!」

「!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 20:12:17.46 ID:xyTeWmMO0<>
 悲嘆に埋もれている暇もなく、ハルヒは大粒の涙と共に立ち上がった。

「動くな、プラート大尉! キサマを元帥殺害容疑で逮捕する!」

「ドルチェノフ……! くっ!」

 今しも掴みかかろうとした寸前にハルヒは亡き理想家の遺言を思い出し、横に跳躍した。

「動くなと言っているだろうが反逆者! キサマはワシが直々に取調べを行ってやるぞ、うはははははは!」

 ドルチェノフは発砲するが、ハルヒは素早く踵を返して玉座の後ろ――幕に隠された隠し通路に身を投じた。

「閣下の……閣下の遺言を果たすまで、あたしは生きてみせる!」

 ギルトールの私有邸を走り、ハルヒは専用エレベーターで下降していった。

「先にみくるちゃんを助けないと……!」

 最上層である第一層から第三層まではこのエレベーターで直結である。
 そこからはエアバイクでも奪取してみくるを保護する。

 ここは既にギガノス帝国ではない。

 ハルヒの愛した理想国家ではない。

 エレベーターが止まったのと、警備隊が乗降口に到着したのはほぼ同時のようだった。

「プラート大尉! 貴官を反逆容疑で逮捕する!」

「そんな濡れ衣信じる馬鹿がどこにいんのよ!」

 銃口から逃れるように前転してハルヒはエレベーターを出て、手近な所にいた兵を殴り倒してエアバイクのハンドルを握った。

「止まれ! さもなければ撃つぞ!」

「こっちには時間がないのよ!」

 すぐに全速で発進すると、銃声も響き始める。
 左右に避けて整理された居住区画を走り抜ける。蒼き鷹と呼ばれた女だこれぐらいは容易い。

 だが、メタルアーマーに乗っているならばまだしも、せいぜいが地上二、三メートルが上昇限界のエアバイクでは、統制された警備部隊を振り切ることなどできるはずがない。

「来たぞ! 発砲用意!」

「チッ、腐っても軍隊ね……!」

 体と一緒にエアバイクを傾けて角を曲がる。こちらが向かう場所も既に相手には知られていることだろう。

「ごめんね、みくるちゃん……」

「こっちだよ、涼宮さん」

 不意に横からかけられた声に反応すると、狭い路地で手を振っている朝倉涼子が目に入った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 20:12:48.87 ID:xyTeWmMO0<>
「朝倉! アンタ何のつもりで――」

「静かにして! あなたを朝比奈さんのところまで案内してあげる」

「えっ!」

 自分を殺そうとしていた相手の誘いにハルヒの頭は警鐘を鳴らしたが、他に手段が見当たらない彼女は罠だとしても、乗るしかなかった。

「こっちだよ」

 朝倉が示したのは路地を抜けた先にひっそりと建てられていた兵器工場であった。

「ここにみくるちゃんがいるの?」

「いいえ、朝比奈さんはドルチェノフの私邸よ。そこに行くためのものをまずはここで調達するの」

「調達って何が……ッ!」

 こんな奴のことなどほうっておいてエアバイクを発進させるべきだと思い立っていたハルヒだが、シャッターが上がると手を止め、シートを下りていた。

「これは……ファルゲン!?」

 そびえ立っている暗褐色の機体を見て、ハルヒは身を乗り出していた。

「ファルゲン機の量産型の試作機よ。ギルガザムネの生産化でお蔵入りになっちゃったけどね」

 リフトでコクピットへ上がっていくハルヒに朝倉はさらに補足していった。

「あなたの専用機ではないから、カラーリングも性能も違うけど、涼宮さんの腕なら脱出くらいは出来るでしょ?」

「今さらだけど、何でここまでしてくれるのよ?」

 上から睨み付けてもまるで意に介することなく朝倉は後ろ手を組んで鼻歌でも唄うように明かし始める。

「私はね、ヒトの希望とか理想っていったものが、失われていく過程と瞬間を見ているのが好きなの」

 うっとりとファルゲンのコクピットが閉じてから、メインエンジンが起動するまでを待って朝倉はマイクに声を送り届けた。

「元帥が撃たれた瞬間のあなたたちの顔は、とっても良かったよ」

「……まさか、アンタが!」

「うぅん、それは誤解だよ。私は本当に見ていただけだから」

「どちらにしても、今すぐアンタをこの場で踏み潰してやりたいわ」

「ダメだよ。そんなことしようとしたら、本気で朝比奈さんを殺しちゃうよ」

 冗談ではないことがマイク越しからでも伝わってきた。
 元々、優等生面していて謎の多い女だったが、おぞましい本性を露わにしている今、何をしてもおかしくはない。

「だから、もうしばらくの間はドルチェノフに付き合ってあげるつもりだから、よろしくね。蒼き鷹さん」
<> 続きは二十二時以降からまた投下します。<>saga <>2011/05/01(日) 20:16:01.68 ID:xyTeWmMO0<> シリアスなのでいつもとは違う趣で書きました。

スパロボはキャラが多いので地の文メインの書き方をすると書いてる側も誰が喋っているのかわからない状況になるので、普段はしません。

という訳で二十二時以降に。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/01(日) 20:59:13.55 ID:IOy6TX4to<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 22:49:09.81 ID:xyTeWmMO0<>
 メタルアーマーに乗ってしまえば、もうこちらの思うままだった。
 武器は二本のレーザーソードしかなかったが、屋内の月面都市の最下層ではメタルアーマーは出てこられない。
 装甲車輌や鉄騎兵と呼ばれる大型装甲バイクでは蒼き鷹を止めるなど敵わない。

「あそこがドルチェノフの私邸ね……!」

 途中に砲口を向けてきた戦車をレーザーソードの切っ先だけで破壊し、一つ頭の抜けている邸宅を前に降り立った。

「なっ! あ、あれは……!」

 使用人らしき男が恐れて家の中へ入ろうとするのをハルヒはファルゲンの手を出して制した。

「待ちなさい! この家に捕らえられている朝比奈みくるを出しなさい!」

「そ、そのような者はこの家には……」

「だったら今すぐこの家をお前もろとも破壊するわよ」

「ひっ!」

 ハルヒがその男を捕らえてしばらく待っていると、家の中から別の使用人に連れられて朝比奈みくるが出てきた。

「みくるちゃん!」

 コクピットを開けて呼びかけると、みくるは今にも泣きそうな顔を上げた。

「す、すずみやさん……」

「止まれ、反逆者!」

 ファルゲンの手にみくるが乗るのと機体の後方に十数台の装甲車輌が停まるのはほぼ同時であった。

「くっ、みくるちゃん、早く!」

「は、はいぃ!」

 ファルゲンの手に警備兵が発砲したライフルの弾が当たって弾ける。
 ハルヒはみくるの手を取るとすぐ引っ張って一緒にコクピットの中に転がり込んだ。

 直後、強い衝撃がファルゲンを襲った。

「きゃあぁぁぁ!」

「くっ……ミサイルまで持ち出してきたのね……」

 ハッチを閉じてダメージを計上する。左背部が損傷したが問題ないレベルだ。

「行くわよ、みくるちゃん! 舌噛まないでね!」

「はいぃ!」

 ファルゲンのバーニアに火を入れてハルヒは大きく跳躍した。
 両手にはそれぞれレーザーソードを握り、照明を浴びながら落下してくる姿はまさに鷹≠ナあった。

「凡百に鷹を捉えられる訳ないのよ!」

 腕を振るって飛んでくる砲弾をレーザー熱で焼き払う。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 22:50:02.88 ID:xyTeWmMO0<>
「道を開けなさい!」

 区画を駆け抜け、港への上昇用ゲートへ入り込み、本来はコンテナが通るレールを滑るように昇っていく。

「怪我はない、みくるちゃん?」

「は、はい。だいじょうぶです」

「アイツに変なことされなかった?」

「そ、それも……でもお掃除とか……お酌とか……」

「ま、その辺がアイツのせいぜいよね」

 一気に最上層まで来る。
 コンテナが来ると思い込んでいた係員が驚いて飛び上がっているのを横目で確認して宇宙港の発着点に着地する。

「親衛隊のプラート大尉よ! すぐにゲートを開けなさい!」

 命令調に叫んでもゲートが開く気配はなかった。
 既に上位の命令が入っているらしい。彼らが当惑しているのはよく伝わってくる。

「なら、全員、何かに掴まっていなさい! 無理にでも開けるわよ!」

 やおらハルヒはレーザーソードをゲートに突き刺した。
 そこから大きくメタルアーマーが通れる大きさの円を描いてゲートに穴を開け、宇宙空間へ飛び出していった。

「マスドライバーを破壊しないと……うっ!」

 無重力化に泳がされる感覚にハルヒは自分のパイロットスーツにのしかかるみくるの体に、思考を整えた。

「みくるちゃん、つらい……?」

「へ、平気です……」

 しかし、言葉とは裏腹にみくるの顔は青白くなっている。

 ハルヒは現状でのマスドライバーの破壊を断念した。

 パイロット訓練など何も受けていない少女では重力ブロックでの移動にも耐えられない。
 無重力地帯ではそれに加えて神経まで疲弊する。
 失神して体の筋力が弛緩すれば、それなりに悲惨なことになる。

 何より、みくるの格好はただのブラウスとスカートなのだ。
 しかも、このファルゲンはまるで調整されていないいわば暴れ馬のようなものだ。
 戦闘行動をすればハルヒもただではすまないだろう。

「逃げるしかないわね……さしずめ連邦基地にでも……」

『逃がさんぞ、裏切り者プラート!』

 加速を始めたファルゲンの後ろから怒声が飛び、レーダーが危険を報せた。

「新型――えぇい!」

 ブルーグレーの鎧武者を思わせるギルガザムネが右肩部を開いて100連装ミサイルポッドを一斉発射した。

「閣下の仇……今は預けてあげるわ! ドルチェノフ!」

 ミサイルをぎりぎりまで引き込んで大きく星空へ跳躍した。

 バーニアを最大に噴かして一息に月の重力を振り切ると、足元で爆発したミサイルの爆風を受けて更に加速する。

「私は戻ってくるわよ、ドルチェノフ!」

 長い航跡を残しながらファルゲンを螺旋回転させレーザーソードを一本投げた。

 それはブロードソードを持って追撃しかかっていたギルガザムネの右腕に突き刺さる。

『ぬうぅ……! プラートめ! なにをしておるか! さっさと撃て! 撃ち落とせ!』

 だが、躍るように飛ぶギガノスの蒼き鷹に銃口をまともに向けるものはいなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga <>2011/05/01(日) 22:50:35.49 ID:xyTeWmMO0<>
「う……うぷっ――」

「大丈夫よ、みくるちゃん。こっちに出しなさい」

 処理袋にみくるの口をあてさせてハルヒは丸い背中をさすった。

「ご、ごめんなさい、すずみやさん……」

「いいのよ。こっちに水があるから」

 チューブの洗浄水を手渡す。

 操縦はオートにしているが、救難信号は出していない。

 ギガノスはおろかジオンに拿捕されるのも避けたいため、連邦の制宙権に入るまでは信号は出さない。

(連邦なら、既にギガノス対抗作戦を開始しているはず……)

 ふと思いついたのは、D兵器に乗る少女だった。

 確か名前はシノ――一緒にいた士官にそう呼ばれていた。

 何人もの機動兵器のパイロットと干戈を交えてきたが、あのD−1と打ち合った感覚が忘れられない。

 心躍ったのだ。自らの未熟さを受け止めてなお、D兵器を駆る彼女の戦闘に――

「ギガノスの理想はもう潰えた……まずはキョンたちを探さなくちゃね……」

 そう呟いていた彼女の手の下でレーダーが反応していた。

 戦略宙域ギリギリ――やはり連邦はギガノスへの侵攻準備を整えていたのだ。

 ハルヒは救難信号を発信した。

 程なくして返信が来る。ハルヒは回線を開いた。

「こちら、ギガノス帝国軍親衛機甲団隊長ハルヒ・スズミヤ・プラートよ。貴艦への亡命を申請するわ」

『――こちら地球連邦軍第13独立遊撃部隊ホワイトベース。貴方の申請を了承します』

 聞き覚えのある声だった。
<> 今日はここまでです。いい意味で<>saga <>2011/05/01(日) 22:57:22.05 ID:xyTeWmMO0<> 二十一話のAパートです。

初登場でいきなり<禁則事項です☆>しちゃった朝比奈さん。
いや、民間人がいきなり機動兵器乗ったらこうなるわ。
じゃあ、すずかさんは? すずか「ガンダムです」

次回からはまたお気楽名前つきモードで書いていきます。
これからも戦闘の少ないパートでは名前なしで書くかもしれません。

今日はミキティの衣装がすごすぎた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/01(日) 23:16:13.46 ID:AKPiRj9DO<> 乙、ファルゲン復活を願いハルヒに投票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<><>2011/05/01(日) 23:18:02.28 ID:CanJl5Ri0<> 乙
>>39のネタを支持したいが現実的に可能なのか?
ブラックゲッター… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/05/02(月) 01:03:30.13 ID:zK/uN36AO<> 出たら勝負にならないだろwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/02(月) 21:05:27.47 ID:8apn/9lbo<> 乙
ファルゲン・マッフを駆るハルヒが主人公になるのを願って一票 <> 突然ですが携帯からスレ主です。<><>2011/05/03(火) 10:41:23.12 ID:+F9SOg9AO<> ブックオフで半額やってましたので、購入報告をしてみます

ガサラキ1
スターシップオペレーターズ2
フルメタル・パニック!踊る〜
だぶるじぇい1
CROWN1
C.D.A若き彗星の肖像1、2
リーンの翼1
ガンダムSEEDアストレイ1、2
交響詩篇エウレカセブン1、2

また、以下の新刊も購入予定です

半熟作家と文学少女な編集者=野村美月
葵 ヒカルが地球にいたころ=野村美月
Baby-princess7=公野櫻子
涼宮ハルヒの驚愕=谷川流

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(埼玉県)<>saga<>2011/05/06(金) 18:18:25.61 ID:OTQOyuPL0<>
 第二十一話 Bパート


 ファルゲンを着艦させてハッチを開いたハルヒは何故こんなにも簡単に許可が下りたのか判った。

キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「キョン……! それに、古泉君も有希も!?」

 ファルゲンの足元にいたのは彼女の友人にして元・部下であった。
 反逆者として出奔した彼女はもうギガノスの軍人ではない。

キョン「俺たちはジャブロー戦の後、この艦に投降したんだ」

ハルヒ「どうせアンタじゃなくて有希か小泉君が言ったんでしょ?」

キョン「う……」

 一緒に下ろしたみくるを担ぐ長門と古泉が苦笑する。

シノン「ギガノスの蒼き鷹、ハルヒ・スズミヤ・プラートさんですね」

 離れたところから歩み寄ってきた香月シノンの流麗な所作で差し出される手に、ハルヒは敬礼で応えた。

ハルヒ「今のあたしはもうギガノスの蒼き鷹≠ナはないわ。ドルチェノフに暗殺されたギルトール元帥の遺志を継ぐ一兵士よ」

キョン「ドルチェノフが……! やはりあのオヤジ、嘘の放送してやがったな!」

ハルヒ「放送?」

シノン「先ほど、ギガノス軍の中佐ドルチェノフがギルトール元帥の殺害容疑を貴女にかけた上で総統の地位に就きました」

ハルヒ「……予想はしていたわ。あの小悪党の考えそうなことね」

シノン「更に、地球連邦に対し全ての武装解除を通達、応じられない場合はマスドライバーキャノンによる全面攻撃を勧告しました」

ハルヒ「マスドライバー……やはりあれは破壊しなければならないわ。それが元帥の遺志よ」

 ギガノス帝国の切り札――マスドライバーキャノンは星の地表から輸送物資を宇宙空間に射出する装置を軍事的に改造し、質量のある岩石を砲弾代わりに発射する設備である。

 地球連邦が宇宙での勢力圏に乏しい現在、マスドライバーによる攻撃は非常に有効的な戦術なのだが、地球環境の保全を理想とするギルトールは第一次戦闘以外では使用していない。

ハルヒ「あれがある限りギガノスは戦い続けるわ。同時に、一時間に5回、地球に巨大隕石が落下することになる」

シノン「連邦政府は当然、要求を受け入れる気はありません。当艦はこれより独立遊撃隊として本隊が敵主力部隊を引き付けている隙にマスドライバーの破壊作戦を行います」

キョン「ハルヒ、俺たちは既に作戦に参加する事を決めた。一緒に来てくれないか」

 本人としてはあくまでホワイトベース乗員として誘ったことだが、直進的な気質にインテリジェンスな性格に育てられた少女は天と地が逆転するほどの驚きを見せていた。

 古泉とみくるが肩をすくめて苦笑いしている。
 あくまで無表情な長門も見て、ハルヒはこそばゆさを隠すように指を立てた。

ハルヒ「ふふっ、まあいいわ。あたしにものを頼む態度としては一応の合格点にしてあげる」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/06(金) 18:19:10.82 ID:OTQOyuPL0<>
 ギガノス軍 マスドライバー施設軍事拠点

ギガノス兵「連邦からの返答は依然としてありません、総統閣下」

ドルチェノフ「グフフフ……我等の決意を示してやろうではないか。マスドライバー砲の用意はできておるな!?」

ギガノス兵「はっ! いつでも発射できます、総統閣下!」

 総統閣下――なんとすばらしい響きであろうか。いつまでもそう呼ばれていたい。
 座り心地のいい椅子。うまい葉巻。今では全て自分のものだ。

ドルチェノフ「そうなのだ、ワシは総統なのだ……このワシが、地球連邦を地に平伏せさせるのだ」

 歯茎を見せて笑うドルチェノフの面には驕慢が満ちていた。
 やがて立ち上がると大仰に腕を振るい、号令を出す。

ドルチェノフ「マスドライバー砲、発射せい! 地球を穴だらけにしてやるのだ!」

ギガノス兵「了解、マスドライバー砲、射出カウントダウン! 5、4、3、2、1、発射!」

 ドォンッ!! レールに乗せられたコンテナが真っ黒い空間に投げ出されていく。

 月面金属を加工して作られたコンテナは二重になっていて、一層は大気圏突破と同時に燃え尽き、二層目は落下中の大気との摩擦熱で空中分解する。
 そして最終的に残った直径5メートルほどの岩石が地表に衝突する。
 この岩石が持つ威力は戦術核兵器に匹敵し、周囲10キロまでを完全に焼き払ってしまうのだ。
 
ドルチェノフ「ぐはははははは! ジャブローのモグラどもを、巣穴ごと滅ぼしてくれるわ!」

ギガノス兵「第二射、用意まで後600秒です」

ドルチェノフ「さっさとせんか! どんどん撃て! がははははははははは!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/06(金) 18:20:04.05 ID:OTQOyuPL0<>
 地上 北米大陸

 連邦軍は漫然とギガノスのマスドライバーキャノンを眺めていたわけではない。

 例え直径100メートルの隕石が落下してきたとしても、空中で破砕させて爆発させれば地表に到達する前に燃焼させることもできる。
 マスドライバー砲は二重コンテナがあるからこその威力だ。

ジャック「オーケェーイ! ツマリ、ミーたちの出番ってワケデスネー!」

メリー「ハイパワーライフル、スタンバイ!」

 アメリカの大地に立つテキサスマックが地面に手を突っ込み、送電ケーブルとは若干離れて埋め込まれている黒い鎖を引っ張ると、アメリカ領事館の敷地に隠してある馬鹿でかい棺桶がテキサスマックの手元に飛んでくる。

ジャック「コイツは地上の敵にはToo Muchネ!」

 棺桶から取り出したのはテキサスマックよりも大きいライフルであった。

メリー「装填完了!」

ジャック<狙撃>「HAHAHA! ミーにマカセナサーイ!」

 ズドゴォンッ!! たった一発、座り撃ちしただけで周囲の建物に亀裂が入っていた。

メリー「グレイト!」

 ハットマシンに乗っているメリーが歓声をあげると、上空で炎を纏っている落下物に弾丸とは思えない弾丸が吸い込まれるように当たった。

ジャック「オーケェーイ! ベリグーッ!」

メリー「第二射が来るわよ、兄さん!」

ジャック<幸運>「こんなに楽しいシューティングは久しぶりだぜ! いくぜぇ!!」

 ドゴォンッ! ハイパワーライフルが撃鉄を落とす度に地面が大きく抉れていた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/06(金) 18:22:26.80 ID:OTQOyuPL0<>
 宇宙 ホワイトベース 格納庫

ハルヒ「こんな形で再会するとは思わなかったわ、天草シノ准尉」

シノ「それはこちらも同じだが……准尉というのはやめてほしいな」

ハルヒ「そうかしら?」

シノ「あぁ、私たちは深く突き合った仲ではないか」

ハルヒ「それならシノと呼ばせていただくわ」

スズ(さすが蒼き鷹、スルースキルも高い)

ハルヒ「それで、相談なのだけど……」

シノ「わかっている。メタルアーマーのパーツは既に用意してある」

ハルヒ「驚きね、ずいぶんと気前がいいじゃない」

古泉「ドラグーン以外のメタルアーマー関連の部品は全て積み込んであるんです」

アリア「いつ、誰が艦に来てもいいようにね」

 これを聞いてついハルヒは笑ってしまった。
 ホワイトベースのクルーは全て最初から彼女を探して保護するつもりでいたのだ。

キョン「っていうか、お前のファルゲンのパーツだって用意しているんだからな、長門が」

ハルヒ「さすが有希ね」

長門「別に、置いてあったから持ってきただけ」

みくる「も、持ってきたって……メタルアーマーのパーツをですかぁ……」

長門「そう」

ハルヒ「ねぇ、作戦開始まであとどれぐらいかしら?」

アリア「んー……あと二、三十分ってところですね」

ハルヒ「よぉーっし! そんじゃあソッコーでファルゲンを組み立てるわよ! キョン、手伝いなさい!」

キョン「へいへい、まったく、やれやれだぜ。お前も手伝え、古泉」

古泉「んっふ、了解です」

シノ「よし、私も手伝おう」

スズ「私はマスドライバー基地の情報を調べないといけないので、しばらくD−3にこもりますから」

長門「私も手伝う」

 遭遇するたびに電子戦を展開していた二人も、何か言い表せない友情が芽生えていたようだった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/06(金) 18:22:57.11 ID:OTQOyuPL0<>
ヒカル「ハッ!」

珠姫「ヤァッ!」

ヒカル「ハァーッ!」

珠姫「――ッ! 胴っ!」

 パシンッ! 面打ちをかいくぐった珠姫の払い手がヒカルの胴を叩いた。

紀梨乃「胴あり! タマちゃん!」

 ピッと小気味よく白旗が上がり、稽古場を歓声が包んだ。

チャム「やったぁ! タマキ、えらいっ!」

立夏「うわーん! オネーチャン負けちゃったー!」

 まさに天と地のサポーター以外は素直に両者の健闘を讃えて拍手を送っている。

つかさ「ねぇ、お姉ちゃん、この人たちホントに私たちと同い年……?」

 ひそひそ話で訊ねるつかさにはおそらく、ほとんどの動作は目に止まっていなかっただろう。

かがみ「ま、二人とも地区選抜になるぐらいの腕らしいからね」

みゆき「現実の使い手が機動兵器でも同じように扱える好例ですね」

かがみ「でも、こなたならあの二人にもついていけるんじゃない?」

こなた「ダーメだねー、畑がちがーうかんねー」

コーデリア「いえいえ、そんなことありませんわ。土壌が違くてもお手入れすればそこはおはなばたもぐふぁ!」

ネロ「コーデリアは戦闘中以外で口を開くとすぐそれだね」

こなた「じーつは狙ーってわーざとネタをふーってみたーりしたのでしたー」

エリー「さ、策士……」

シャロ「おせんべがおいしいですねー」

ゆりえ「そうだねー」

 輪から少し離れた壁際の重力調整装置ですずかが目を輝かせていた。

すずか「すごいですね。これも美夜さんが造ったんですか?」

海晴「んー、どうなんでしょ? ぶっちゃけちゃうと、今のママの発明ってだいぶ吹雪ちゃんの知恵も混ざってるからね」

なのは「吹雪ちゃんって、まだ二年生なんですよね?」

海晴「そうよ。ホント、あのおつむの中で脳細胞がどれだけ灰色なのか気になるわ」

アリサ「まあ、五年生のすずかがハロ造ってるから、アタシは特に驚かないケド」

 そう言ってアリサは足元にいた丸い自律ペットロボを持ち上げた。

ハロ「ハロハロ、フブキ、ハロハロ」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/06(金) 18:24:12.65 ID:OTQOyuPL0<>
 作戦名・星光<オペレーション・スターライト>

 連邦軍によるギガノス帝国軍への第一次反攻作戦である。
 概要は新型量産機のドラグーンとジムの無重力での実戦テストともいえる宇宙デブリの少ない広域帯による大規模且つ派手な陣取り戦だ。

 しかし、それは表向きに軍内部及び潜んでいるスパイに向けられている作戦内容に過ぎない。
 真の目的は、独立遊撃隊ホワイトベースによるマスドライバー施設への潜行、制圧し、更にギガノス首都へ攻勢を仕掛けることだ。

シノン「ホワイトベース部隊は、この上で更に隠密部隊を形成し、マスドライバーへの直接攻撃を敢行します」

 全員が集結した作戦室で艦長、香月シノンはプロジェクターで映し出したマスドライバー基地の航宙写真に三角形を配置していった。

シノン「本隊は基地正面へ進攻、敵部隊を誘引して基地の警備が薄くなったところへブライサンダーで高町さんを移送して魔導砲撃でマスドライバーを物理破壊します」

立夏「しっつもーん、ブライサンダーって何ー?」

かがみ「ブライスターは私たちJ9のブライガーが車輌形態に変形させたものよ」

みゆき「実際には変異と言ったほうが正しいかもしれませんね。32.4メートルのブライガーが4.89メートルのスーパーカーに変形するのですから」

シャロ「そ、そんなにちっちゃくなっちゃうんですか?」

つかさ「元々はそっちのほうが本来の形態なんだけどね。ホワイトベースにもその状態で収容してるし」

すずか「いったいどんな方法でちっちゃくしてるんですか……?」

こなた「こーれ説明するーのけーっこうたーいへんなんだけどねー」

みゆき「簡単に説明しますと、宇宙の別の場所から質量を融通しあうことで物体を拡大、縮小しているんです」

シノ「うむ、さっぱりわからんな」

スズ「えらそうにしないでください」

アリア「お願い、スズ先生」

スズ「要するに、プラズマ化したパーツをワープさせてブライサンダーにくっつけてるんです」

こなた「わーぉ、はしょりーすぎー」

かがみ「木星圏の高技術の一つというところね」

シノン「尚、高町さんのマスドライバー破壊後の帰還を考え、ブライサンダーにコア・ファイターを積載してもらいます」

アリサ「やっぱり、大事なところはアリサちゃんの出番よね」

なのは「よろしくね、アリサちゃん」

シノン「そして、敵を誘き出す部隊に注意ですが、基地にはドルチェノフ総統が率いる親衛隊がいる可能性が高いとのことです」

海晴「確かに進行中の大部隊にはいないらしいけど、本拠地にいるものじゃないの?」

ハルヒ「単純よ。アイツはそういう性格だから」

古泉「戦争主義の彼は武力によって権力を維持しています。彼にとってマスドライバーは自分の命そのものと言えましょう」

シノン「だからこそ、必死に迎撃してくるでしょう」

ハルヒ「ドルチェノフの相手はあたしがするわ。アイツは一応、メタルアーマーの操縦も一流よ」

キョン「奴はハルヒを目の敵にしているから、ファルゲンを見つければすぐに乗り出してくるだろう」

シノン「私たちはそれを逆に利用させていただきましょう。各部隊の詳細な配置を通達しますので、よく聞いてください。作戦開始は一時間半後です」
<> 今日はここまでです。<>saga<>2011/05/06(金) 18:29:01.30 ID:OTQOyuPL0<> Cパートが書ければまた投下します。
できれば今日中に。

作戦名になのはさんは関係ありません。
ドラグナーの後期OP「スターライト・セレナーデ」から。

運転免許の模擬テスト、ようやく90点超えるようになりました。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/06(金) 20:11:20.68 ID:PyFEjk82o<> 乙
免許頑張ってくれ
そしてJ9に一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/07(土) 00:14:20.74 ID:rN1B0UvDO<> 乙、実地より学科の引っかけ問題が山だからな、そこさえ越えれば行けるはずだ。

敢えてなのはさんに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<><>2011/05/08(日) 19:06:46.22 ID:wQxaJVAAO<> 22時くらいに投下します。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:39:10.86 ID:LkbQgq/h0<>
 第二十一話 Cパート


 マスドライバー基地から出てきた迎撃部隊はメタルアーマー10小隊、40機と戦車数十輌だった。

 対してホワイトベースから出撃したのはゲシュペンストTYPE−SとR−1を先頭にヴァイスリッター、ダンバイン、ボチューン、ライディーンであった。

シノン「敵部隊を引きつけます。各自、指示通りに行動開始、誘き出してください」

ヒカル「了解! いくぞ、立夏!」

立夏「リョウカーイ! チャオ!」

 シュゴォォォォ……! ゲシュペンストとR−1が加速をつけて敵編隊へ飛び込んでいく。

 その後方でヴァイスリッターが砲身を掲げ、ライディーンが矢を番えていた。

海晴「二人の道を教えるのよ、ゆりえちゃん」

ゆりえ『はいっ! ゴォォォォォッド・ゴォォォォォォガンンン!』

 ビューン! ライディーンの巨大な矢と後を追うようにオクスタンランチャーのビーム砲が編隊から僅かに突出した部位を狙い撃った。

ヒカル「そこだ!」

立夏「チャオ!」

 シュボォッ! ズギュン! スプリットミサイルとR−1・Gリボルバーが爆発した一隊に追撃し、生じた綻びに両機は突っ込んでいく。

ギガノス兵「パーソナルトルーパー! くそっ!」

ヒカル「恨みはないが……」

 ハンドレールガンを構えたダインだが、既に間合いは近づきすぎていた。

ヒカル「道をあけてもらう!」

 ジャインッ! ゲシュペンストが手に握り換えた円筒から放出されたプラズマが刃状に形作り、ダインに迫っていく。

ギガノス兵「う、うぉぉぉぉ!」

ヒカル「そこだっ!」

 ズバァッ! 両足を切断されたダインは月面に落下していき、ヒカルは編隊を超えた所で180度転回し、同じように突破してきた立夏と合流し、大きく上へ飛んだ。

ギガノス兵「逃がすな! 追え!」

 すかさず、何機かのゲバイとダインが二人を追いかけて加速する。
 ヒカルと立夏の任務は彼らを本隊から引き剥がしつつ、ホワイトベースまで誘導する事である。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:39:47.46 ID:LkbQgq/h0<>
 残ったメタルアーマーと戦車隊は海晴たちが引きつけていく。

チャム「やっちゃえ、タマキ! オーラ斬りだぁ!」

珠姫「ヤァーッ!」

 下方から潜り込むように繰り出した突きにダインの頭部が破砕され、ダンバインは素早く離脱する。

ギガノス兵「あの虫野朗を捕まえろ!」

 大きさでは半分以下のオーラバトラーはレーダーに捉えても照準に合わせづらい。
 しかし、速度ではメタルアーマーのほうが速い。大勢で取り囲めば何とでもなる。

ギガノス兵「取ったぞ!」

珠姫「部長!」

紀梨乃「あいよっ!」

 ガガガガッ! レーザーソードを振りかざしてダンバインの上に出たゲバイのスラスターが衝撃を受けて破壊された。

ギガノス兵「なっ……! うおぉっ!」

珠姫「はあぁっ!」

 ズバンッ! 落下を始めたゲバイと水平になった瞬間に珠姫は剣を横に走らせて腕を斬り落とした!

ゆりえ『ゴォォォッド・ミサイィィィル!!』

 チュドォンッ! ドドォンッ! 月面を走る戦車隊にライディーンの腹部から飛ぶミサイルが追突して、吹き飛ばしていく。

海晴「みんな、いい調子よ。それじゃ、2ライン下がって」

 前線部隊長の海晴の指示で各機が後退していく。
 基本的に突出している小隊を海晴が発見して狙撃し、その混乱に紛れていくため、機体の損傷は驚くほど少なかった。

珠姫「感じる……宇宙の、オーラ力……!」

 兵士が発する敵意のオーラを感じ取る珠姫は右後方から発射された戦車の砲弾を刃の腹で受け流し、左上方にいたゲバイにぶつけることに成功する。

ギガノス兵「ば、馬鹿なぁぁぁぁ!」

 ドォォォォン……! 爆炎に紛れてダンバインはホワイトベースへ帰還していく。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:40:26.61 ID:LkbQgq/h0<>
秋里ミユリ「敵メタルアーマー部隊、予定ラインに到達したよ、シノン!」

 ジャブロー出発の際に観測員として再会した士官学校での親友の報告に艦長シノンは頷いた。

シノン「作戦を第二段階に移項。メタルアーマー各機、発進してください」

ハルヒ・シノ『了解!』

 ホワイトベースの二つあるカタパルトからそれぞれDチーム、プラクティーズが左右に分かれて発進する。

キョン「ハルヒ、ファルゲンの調子はどうだ?」

ハルヒ「良好よ、もっと速くてもよかったわね」

 ギガノス軍から奪取してきたファルゲンはホワイトベースに運び込まれたMAパーツをファルゲンの特色である速度を殺さずに取り付け、カスタム化されていた。
 カラーリングも蒼き鷹の異名を敵軍に呼び起こさせるために濃紺に塗り替え、頭部も以前のファルゲンの頭部に替えた。

 それでもこの機体がファルゲンとは違うのは、両肩に設置した二門のレールキャノンと背部に装備した電子戦用レドームだ。
 これらの装備は地上戦闘で使用するマッフユニットから重力感知制御システムを取り除いた箇所に取り付けたものだ。

 左舷から大きく戦域を旋回して、ファルゲンカスタムは敵部隊の側面に突撃していく。

ギガノス兵「隊長! て、敵が右から!」

ギガノス兵「慌てるな! 我らの数の前では大した差にはならん!」

ギガノス兵「こ、コイツは……うわぁぁぁ!」

ギガノス兵「どうした!? なっ!」

 途絶えた交信に、新しい反応のほうへ機体の向きを変えた伍長は、接近してくる機影に戦慄した。

ギガノス兵「あ、蒼き鷹……!」

ハルヒ「進歩のない軍隊ね、密集しすぎだって注意したでしょう!」

 ズギャァァァァッ!! 緩慢な動きの一振りが狩りをする猛禽類の速度に乗って三機のメタルアーマーを同時に屠った。

 即座にレールキャノンが火を噴き、月面の戦車を殲滅していく。

ハルヒ「派手にやってやるわ――出てきなさい、ドルチェノフ!」


 コドクナヨフケハ ホシノテラス リョウテヲヒロゲ
 ヤワラカイー Starlight カラダジュウニアビルー
 アイシアッテー キーズツーケルー
 ギンガケーイノー タービビートターチハー
 オロカーダケドー マヨイナガラ...
 カナシミヲー Fly Away
 サメタユメノツーヅキヲーサガスー


 右舷から出たドラグナー1型カスタムでシノは遠くの煙に舌を巻いた。

シノ「凄い勢いだな……重量は同じはずなのに」

 こちらはようやく敵機をハンドレールガンの射程に捉えたところだ。

アリア「私たちは私たちのペースでやりましょう、シノちゃん」

シノ「あぁ、スズ!」

スズ「もうハッキング完了してます!」

シノ「よし! 一斉射撃だ!」

 ギュゥゥゥゥゥ……ババババババババババッ! 陣形を整えて三機並んでハンドレールガンを発砲する。

シノ「来い……! ドラグナーはここにいるぞ!!」


 エイエンノー Cosmic Love
 キリノナカノミーライヲーシンジー
 ギンイロノー Cosmic Love
 ムネニヒカルトーキマデーテラシテー...
 Starlight...
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:41:04.57 ID:LkbQgq/h0<>
 マスドライバー基地

ドルチェノフ「ぬぅぅ! 迎撃部隊は何をしておるか!」

 罠に嵌められたと気付いたドルチェノフは椅子の上で憤慨していた。

ドルチェノフ「馬鹿者どもが! 敵はたかだか十数機ではないか! 嵩にかかって踏み潰せぃ!」

朝倉「ダメだよ。そんなにカッカしちゃあ」

ドルチェノフ「あ、朝倉涼子!?」

 いるはずのない人間に遭った。ドルチェノフの表情はまさにそれであった。

ドルチェノフ「き、キサマはハイデルネッケンの隊で連邦軍と戦っているはずだろうが!」

朝倉「こっちのほうが面白そうだから来ちゃった。ねぇ、彼女が来てるんだよ」

ドルチェノフ「なにぃ?」

朝倉「そろそろ、確認できると思うよ」

ギガノス兵「そ、総統閣下!」

 怪訝そうに眉をひそめていたドルチェノフに通信兵が声をひきつらせていた。

ドルチェノフ「何事か!?」

ギガノス兵「て、敵部隊の増援ですが……し、識別が、蒼き鷹です!」

ドルチェノフ「な、何だと! キサマ、知っていたのか!?」

朝倉「そんなことはどうでもいいじゃない。どうするの?」

ドルチェノフ「ふん、小うるさい雀がピーピー鳴いたところで……よかろう、ワシが叩き潰してくれるわ!」

 椅子を下りたドルチェノフは居丈高にドスドスと踏み鳴らして司令室を出て行く。
 それを見届けて朝倉涼子は、通信兵に伝える。

朝倉「迎撃部隊を全て後退させて、補給の後、パターンをDに変更させてね」

ギガノス兵「はっ? しかしそれでは総統閣下が……」

朝倉「お願いね」

 軍部の女神とも言われる朝倉涼子の物腰は柔らかいものだったが、見下ろされている彼は何故か底知れぬ恐怖を腹に感じていた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:42:40.76 ID:LkbQgq/h0<>
ネロ「ダンガイッビィィィム!」

 ズギィィィィィッ! ホワイトベースから飛び出したダンガイオーの額から虹色の光線が発射され、戦車部隊を一掃した。

すずか「たぁっ!」

 ビューンッ! ガンダムが投げたビームジャベリンがドバイの肩を貫く。

有希「――来る」

キョン「長門!?」

スズ「会長、親衛隊が来ます!」

シノ「わかった! アリア、ホワイトベースに!」

アリア「うん!」

 ドンッ! 合図を受けたアリアのドラグナー2型カスタムが頭上へ信号弾を撃った。

氷坂アレイ「D−2より信号だ。親衛隊が出てくる」

 卒業後の実地訓練で同期になった主任通信士の彼女はシノンよりも凛々しい立ち姿で明瞭に報告する。

シノン「ここからが正念場よ。ホワイトベースを前進! 味方機を援護するわ!」

 ギガノス軍の親衛隊はマイヨ・プラートを隊長とする若手エリート部隊だったが、ドルチェノフが総統になると、彼の子飼いの部隊と総入れ替えされた。
 その数は三十二機。全員が専用にチューンされたゲバイに乗り、先頭二機のギルガザムネに率いられている。

ドルチェノフ「ワシはプラートをやる! 朝倉涼子、キサマはD兵器どもをやれぃ!」

朝倉「フフ、了解しました」

 ギルガザムネが二手に分かれ、親衛隊は三隊に列を変えて八機ずつがギルガザムネにつき、残りの十六機は正面へ進行していった。

海晴「大物が来るわよ、ゆりえちゃん、気をつけてね」

ゆりえ「は、はい!」

 近づいてきたホワイトベースに戦列を合わせるように後ろに跳躍する。
 着地と同じタイミングでマスドライバー基地から母艦へ半円を描くように敵を引きつけていたゲシュペンストとR−1も帰還してきた。

ヒカル「作戦は順調のようだな……私たちも反撃に出るぞ!」

立夏「チャオッ!」

 ヒカルがゲシュペンストを転回させ、立夏は脚部スラスターを器用に使ってR−1を宙返りさせてGリボルバーを撃った。

ギガノス兵「がぁっ! 柔軟性が違いすぎる!」

 頭部と腹部に銃弾を受けたゲルフの隣りでダインの二機がゲシュペンストの照準に入っていた。

ヒカル<必中>「メガブラスタァァァキャノン!」

ギガノス兵「うぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ズドォォォォッ! あっという間に指揮官を失った小隊員はホワイトベースの機銃に撃ち落されていく。

 迎撃部隊は撤退を始め、親衛隊が前線を換わっていった。

ドルチェノフ「ハルヒ・スズミヤ・プラート! こしゃくにもマスドライバーを破壊しに来たか!!」

ハルヒ「アンタを始末して、閣下の遺志を成し遂げてみせるわ!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:44:18.18 ID:LkbQgq/h0<>
ドルチェノフ「馬鹿を言いおる! 今はワシが総統閣下であるぞ!」

ハルヒ「自分で閣下とか言うんじゃないわよ、無能者!」

ドルチェノフ「こざかしい青二才めが……この世の名残にワシが相手をしてやるわ!」

 ブルーグレーのカラーリングのギルガザムネが西洋風のブロードソードを抜き、両手に構えてファルゲンカスタムの頭上から落下してくる。

ハルヒ「そんな動きで鷹を捉えるつもり!?」

 クンッと僅かな挙動でファルゲンは水平に移動し、腰だめにレーザーソードを構えた。

ドルチェノフ「馬鹿めが!」

 ぶぉんっ! 月の重力を拉ぐかのようにギルガザムネの手首が曲がり、ブロードソードも真横に滑る!

ハルヒ「――ッ!」

 ガチィンッ! レーザーソードを抜き放つのが遅れていたらファルゲンの腰はなくなっていただろう。

 瞬時に後方へダッシュしてギルガザムネの重量を避ける。

ドルチェノフ「グフフフ……鷹などとおだてられてもしょせんは知恵のついた鳥よ。叩いて丸焼きにしてやるわ!」

キョン「させるかっ、ドルチェノフ!」

 D−1のようにレーザーソードを両手に持ったゲルフがギルガザムネの後ろから斬りかかる――が、ぐるりと振り返った巨腕に弾き飛ばされてしまった。

キョン「何だ!? 今の動きは!」

ドルチェノフ「グフフフ……ギルガザムネにはバイオフィードバックシステムが搭載されておるのだ! キサマらの旧式と一緒にするでないわ!」

 ぐぉぉん! ブロードソードの一撃でレーザーソードが手元から離れていった。

キョン「くっ……!」

ハルヒ「どきなさい! キョン!」

 バシュゥゥゥーッ! ゲルフの突入で距離を取ったファルゲンカスタムが八連装に拡張したディスチャージャーからミサイルを射出する!

ドルチェノフ「その程度でギルガザムネが落ちると思ったか!!」

 シュゴォォッ――ババババババババババババッ!! 腰元のデュアルミサイルポッドと胸部装甲を開放して見せた十六門機関砲が弾幕を張り、前方を煙幕で包んだ。

ハルヒ「かかったわね……」

ドルチェノフ「むっ! 何だこの表示は!?」

 白煙の中でシステムの一部がダウンし、計器類がでたらめになっているのを見てドルチェノフは狼狽した。

 ハルヒは発煙弾を盾にしてECMチャフグレネードを放ち、更にギルガザムネの機器にハッキングを仕掛けたのだ。
 実際にハッキングを行っているのは後方でレビ・ゲルフに乗っている長門だが、ファルゲンカスタム背部のレドームを介することでより遠くから効果的にハッキングすることができる。

ハルヒ「バイオセンサーだか何だか知らないけど、止めちゃえばこっちのもんよ!」

 ドォンッ! ドドォンッ! 動きの鈍くなったギルガザムネに二門のレールキャノンをハルヒはありったけぶつけた。

ドルチェノフ「ぐおぉっ! も、者ども! ワシを助けんかぁ!」

 親衛隊を呼び出そうとするドルチェノフだが、それらは古泉とキョン、更に後方にいる海晴と長門に堰き止められている。

ギガノス兵「こ、こいつら……うぉぉぉ!」

 ドガァンッ! ヤクト・ゲルフのレールキャノンを喰らったゲバイが爆発して、ギルガザムネを煽る。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:44:47.54 ID:LkbQgq/h0<>
ドルチェノフ「役立たずどもが……ワシは総統なるぞ!」

 バイオフィードバックシステムを物理的に遮断してドルチェノフは包囲網から脱出し、右肩の100連装ミサイルポッドを展開した。

ドルチェノフ「ねずみどもが……まとめて吹き飛べい!」

ハルヒ「散開!」

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!! 辺り一面が爆炎に呑み込まれ、今度はハルヒたちがドルチェノフを見失う。

ドルチェノフ<熱血>「ここがキサマの死に場所だ、プラートォォォォォ!」

ハルヒ<直感>「やはり来たわね!」

 ギャリィィィィィィィッ! レーザーソードとブロードソードが激しくせめぎ合う。

ドルチェノフ「ぬぅぅぅぅ!」

ハルヒ「タアァーッ!」

 ズジャァァッ! 独楽のように回旋したファルゲンカスタムのレーザーソードがギルガザムネの左腕を焼き切った!

ドルチェノフ「くっ、くぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ドンッ!! バーニアを全開にしてギルガザムネは離脱を図った。

ドルチェノフ「プラートめ……! まあいい! マスドライバーとあれが残っておれば……!」

 親衛隊も見捨てて彼はマスドライバー基地へ飛んでいく。
 それを眺めていた朝倉涼子は本当につまらなそうに唇を尖らせた。

朝倉「いやになっちゃう」

スズ「余所見をしてる余裕がっ!」

 ズドォーッ! そっぽを向いた金色のギルガザムネにすかさずD−3が光子力バスーカを放った。

 しかし、それは盾代わりにした青龍刀を溶かすだけで終わった。

朝倉「いけない、いけない」

シノ「アリア!」

アリア「うん、シノちゃん!」

 ハンドレールガンに換装する間にD−2カスタムが重ミサイルがギルガザムネを狙い、その反対方向からD−1カスタムが重力落下を利用して襲い掛かる。

朝倉「これは……!」

 逃げ場所がないことに気付いて朝倉はイメージフィードバックシステムを起動した。

シノ「なっ――!?」

 直後、蜃気楼のようにギルガザムネが二つに映っていた。
 そうではない。
 重ミサイルを極限まで引き寄せた上で素早く横移動、ミサイルの後ろに鋭角の軌道で滑ったのだ。

朝倉「――へぇ」

 雑誌の表紙にもなれるくらい上機嫌な笑みを浮かべて、朝倉は重ミサイルを避けるD−1から逃げた。

朝倉「また今度ね」

シノ「くっ……! まずい、まだ作戦時間に――!」

 ギュォォッ――! ドルチェノフを追う朝倉の目的を視認したシノはすぐにドラグナーを動かす。

朝倉「ま、目的はわかってるんだけどね」

 ガシュン――デュアルミサイルポッドを落としてギルガザムネとドラグナーの距離を稼ぐ。

朝倉「マスドライバーにはもう少し頑張ってほしいの」

 だが、その輪郭を捉えた瞬間、一条の白い光りが宇宙へ伸びていった。

朝倉「……あら?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:45:47.45 ID:LkbQgq/h0<>
 マスドライバー基地

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission Compleat. Have a Nice Operation.」

なのは「ありがとう、レイジングハート」

 愛機からの慰労の言葉に微笑みを返して、なのははフラッシュムーブで弧を描いた。

ギガノス兵「おのれ、魔女め!」

 バババババババ! 機銃座から白い明滅に乱射するが、虚空を穿つだけだ。

アリサ「なのは! さっさと戻ってきなさい!」

なのは「うん!」

かがみ「さぁて、退路を開くわよ!」

こなた・つかさ・みゆき「「「イェーイッ!」」」

 ブライサンダーが眩いエメラルド色の光りに包まれ、その輪郭を大きくしていった。

かがみ「ブライ・シンクロン・アルファ! ブライスター!」

 宇宙を走るスーパーカーが宇宙船に変異し、更に形を歪ませていく。

つかさ「ブライ・シンクロン・マキシム! ブライガー!」

 ギルガザムネにも匹敵する意匠の赤い鎧武者が登場し、ギガノス軍は明らかに浮き足立った。

こなた「イッエーイッ!」

みゆき「ブライソードを出します!」

 シュバッ! 背中から両刃の剣が飛び出し、ブライガーの手が握る。

こなた「ブライソード・ビーム! イェイ!」

 ズガガガガガガガガガガッ! 発射口から煙を吐いているマスドライバーのレールの上をビームが走り、更に防御柵を撃ち砕いて月面を削っていく!

かがみ「二人とも、逃げるわよ!」

なのは・アリサ「「はいっ!」」

 コア・ファイターの上になのはを乗せてアリサは一気に発進した。
 
アリサ<突撃>「うりゃうりゃうりゃーっ! アリサちゃんの道を開けなさーい!!」

 バルカン、ミサイルを撃ちまくる。
 なのはが失敗したときのための保険である大型爆雷も落っことす。

ギガノス兵「総員、退避ーっ!」

 ドドォンッ! この一撃でマスドライバーは完全に破壊されてしまった。

ドルチェノフ「そんな……馬鹿な……マスドライバーが……」

 岩盤のような顔を青褪めさせて、ドルチェノフは黒煙を噴く最重要拠点を眺めていた。

 追いついてきた朝倉涼子は、基地を離れていく二機を追尾して、大型ミサイルを撃つが、当たり前のように落とされる。

朝倉「フフ、次が最後になるわね」

 本当に、楽しくて仕方がないという風に彼女は笑った。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:46:49.44 ID:LkbQgq/h0<>
 ホワイトベース

 格納庫で、整備の終わったメタルアーマーを前に、シノはばつ悪げに問い質した。

シノ「やはり、行ってしまうのか?」

ハルヒ「当然よ。協力には感謝するけれど、私はギガノスに戻ってドルチェノフを失脚させるために働きかけるわ」

キョン「ま、一応は俺たちの国だからな。連邦に破壊される前に全面降伏させられれば、また別の形で理想を再生できる」

アリア「地球の環境保全を理念といた紳士的な革命――今度こそ遂行できるといいね」

長門「ギガノスは連邦政府に隷属させられるだろうから、あえて自ら解体する方法を採る」

みくる「仕方ないですね……このままじゃ反政府国家扱いですから……」

スズ「だいたい、最初からやり方が無粋なんですよ。いきなり地球に隕石を落とすなんて、規模が違ってもコロニー落としと変わりません」

古泉「痛いところを突かれてしまいますね。まあ、今回のドルチェノフの攻撃は防がれたみたいですし、マスドライバーは破壊されたのですから、穏便にお願いしますよ」

アリサ「アメリカのテキサスマック……アレに地球が救われたってのもなんかシャクだわ」

なのは「あはは……」

すずか「はあ……」

アリサ「? どうしたのよ、すずか?」

すずか「えっ?」

なのは「どこか具合でも悪いの?」

すずか「う、うぅん……何でもないの……あ、そういえば立夏ちゃんが水道壊れたって言ってたから直すの手伝いにいかなくちゃ……」

 慌てて取り繕ってすずかは足早に走っていってしまった。

なのは「すずかちゃん……」

アリサ「うーん……ありゃなんか悩んでるわね。アタシが言えたクチじゃないけどさ」

ハロ「ハロハロ、ゲンキダセ、アリサ」

アリサ「アンタはノーテンキ、ねっ!」

 げしっ! アリサに蹴られたハロが飛んでいって壁に反射して、ガンダムの整備をしているアムロの頭に直撃した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:47:22.19 ID:LkbQgq/h0<>
 ホワイトベース ブリッジ

シノン「これで、マスドライバー破壊作戦の全容の報告を終了します」

レビル『よくやってくれた。香月君』

シノン「ありがとうございます」

レビル『新任の者も多い中、よく艦をまとめてくれている』

シノン「いえ、以前からのクルーに比べればずいぶん協力的です」

レビル『ははは……そこに、氷坂アレイ君はいるかな?』

シノン「いいえ……今は休憩中です。お呼びしますか?」

レビル『いや、彼女はどんな調子か聞きたくてな』

シノン「そうですね、ややとっつきにくいところはありますが、うまくやれていると思います」

レビル『そうか……それならいい』

シノン「あの、失礼ですが、彼女とはお知り合いなのですか?」

レビル『うむ……彼女の父親はルウム戦役時に共に艦長であった』

シノン「まさか……」

レビル『ジオンは、彼女にとって直接の仇のはずだが、ジオンに向かう本隊ではなく、ギガノスへの派遣……あの通りの性格だから、うまくとりなしてほしいと思う』

シノン「わかりました。幸い、全くの初対面という事でもありませんし、彼女は優秀なオペレーターです」

レビル『その言葉、ありがたいと思う』

シノン「はいっ」

レビル『すまない、少し話が過ぎてしまった。作戦名・星光<オペレーション・スターライト>の次の指令だが……』

シノン「はい、補給が済み次第、ギガノス首都へ向かいます」

レビル『その前に、地球を出たスーパーロボット部隊と合流してほしい』

シノン「わかりました。地球はよろしいのですか?」

レビル『陸上の機動兵器もあらかた整った。まずは宇宙軍の総力を挙げてギガノスを叩く。そのためにやはりスーパーロボットは君に一任したい』

シノン「光栄です」

レビル『ポイントは後で暗号電文で送る。そちらを見てくれ。それにしても、香月艦長の声は聞いていて気持ちがいいな』

シノン「はっ……恐縮です」

レビル『その声を銀河中に流して作戦を展開すれば、士気も高まるだろう。今回の作戦も見事なものだった。案外、最高の艦長になるかもしれない』

シノン「そう……ですか……?」

レビル『ただし……』

シノン「は、はい……」

レビル『秘書としては最低だ。私が君の上司なら、そう思うだろう』
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:47:50.35 ID:LkbQgq/h0<>
 広い玉座で風を切る鞭の音。
 即座にか細い悲鳴が響く。

「ひぃっ! あぁっ!」

 宇宙に浮かぶ時の庭園で、その二つの音だけが聞こえる。

「うあっ! うっ! あぁっ! あぁぁーっ!」

「ひどいわ……フェイト……」

 襟から胸にかけて大きな痣を植え付けた女魔導師――プレシア・テスタロッサは紫色のルージュの唇をわななかせた。

「こんなに時間がかかってジュエルシードがたったの四つ……これではあまりにひどすぎるわ……」

「……ごめんなさい……母さん……」

 力なく呟く少女の顎を持ち上げて、プレシアは一つ一つ釘で打つように言う。

「貴女は大魔導師プレシアの娘……この程度の遺失物は集められなければならないわ……お願いだから……母さんを失望させないでちょうだい……」

「はい……母さん……」

「貴女はやさしい子だから……もしかしたらためらってしまうことがあるかもしれない……でも、それに対抗する力を貴女は持っている……邪魔をするものは、実力で排除しなさい……」

「うん……わかったよ……母さん」

 無理やりに見せる少女の笑顔をプレシア・テスタロッサは直視せず、背中を向けて拘束を解いた。

「お願いね……フェイト……ジュエルシードは……母さんの夢を叶えるために大切なものなの……」

「はい……母さん……」

 それきり、プレシアはフェイトに振り返ることなく、奥へ消えていってしまった。

「フェイトぉ!」

 入れ替わるように扉を開いて飛び込んできたのは、アルフだった。

 フェイトの使い魔である彼女は精神内でリンクしている。フェイトの辛さはアルフの哀しみである。

「なんだよ……アイツは……! フェイトはこんなにもがんばっているのに……!」

「だめだよ、アルフ……母さんを悪く言っちゃ……」

 抱きかかえた薄い肩が鳴動して、アルフの目から零れる涙を拭う。
 アルフはやさしい子だ――私の代わり、私の分まで泣こうとしてくれる。
 でも、甘えちゃいけない……私は……

「私は母さんの娘だから……私にはわかる……母さんは、少し不器用なだけだよ……」

 弱々しい瞳の焦点は落とされたケーキのパックにあった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:48:19.23 ID:LkbQgq/h0<>
 玉座の裏を造り直した研究室に辿りついたプレシアはよろめいて咳き込んだ。

「早く……私を待たせないで……フェイト……」

「なるほど、雷刃の襲撃者はここでは随分と役割が違うみたいだね」

 闇の中から声が聞こえた。中性的なアルト。

 少年と青年の境目の声はくずおれるプレシアに手を貸すこともせずに続けた。

「僕が知っている以上に力不足のようだ。逆に言えば、それほど伸びしろがあるということかな」

「あなたをここに招いた覚えはないわ……」

 口にハンカチをあてたままプレシアは毒づいた。

 一歩でも動けば彼女の殺気はそのまま攻撃力に変わるだろう。

「僕の目的はあなたと同じだ。だけどあれは僕一人で扱えるものじゃない。僕はあなたのおこぼれを貰う代わりに、あの子を手伝ってあげるよ」

「余計な事はしないでちょうだい……」

「しかし、あの子に立ちはだかる子には、余計な力が集まっているようだよ。そっちを僕が相手してあげようというんだよ」

「フフフ……結局はすべて自分のものにするつもりでしょう……暗雲の大罪人が……」

 ルージュごと拭ったハンカチを手の中で燃やして、プレシアは嘲った。

「あなたのしようとする事に比べれば、僕は公園から家に帰るくらい当然の事をするだけですよ」

 闇の中で真紅の瞳が大仰に肩をすくめてみせた。


 第二十一話 僥倖! 復活の蒼き鷹! 完!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:52:14.73 ID:LkbQgq/h0<>
 ロボット列伝

 隠しユニットのミネルバX、ファルゲンカスタムの出現条件と機体性能紹介。
 ついでに基準として主役格の三機の性能も紹介します。

 マジンガーZ

 移動力/5 運動性/50 装甲/1500 照準値/120
 特殊能力:超合金Z 毎ターン、エネルギーが回復。
      マジンパワー 気力130以上で最終与ダメージが1.1倍、最終被ダメージが0.9倍。

 ガンダム RX-78-2
 
 移動力/6 運動性/100 装甲/1000 照準値/140
 特殊能力:学習型コンピュータ 毎EPに運動性、照準値が+3される。

 ドラグナー1型カスタム

 移動力/8 運動性/120 装甲/900 照準値/140
 特殊能力:対話型コンピュータ・クララ 気力120以上でクリティカル率+20。

 隠しユニット

 ミネルバX 入手条件:ジャブロー時、唯の撃墜ポイントがトップ。

 移動力/6 運動性60 装甲/1400 照準値/140
 特殊能力:パートナー回路 マジンガーZへの援護攻撃時に必ずクリティカル。

 ファルゲンカスタム 入手条件:シノとハルヒの撃墜ポイントが5以上。もしくは宇宙を選択。

 移動力/8 運動性/125 装甲1200 照準値/155
 特殊能力:EWAC 自機から2マス以内の味方ユニットの命中・回避+15%
      ハッキング 精神コマンド『分析』が使える。使用後、行動終了扱い。
      ジャマー 射程1以外の攻撃に対して回避+10%


 本来の御三家、ゲッターはGになっちゃったので見送り。
 こういうデータを載せると『ぼくのかんがえたすーぱーろぼっとたいせん』化していきます。
 ですが、こういうの考えるだけで楽しいですよね!

 スパロボの公式ファンサイト(登録無料)に精神コマンドの案を送れたりできますが、あれも結構やってます。
 ムゲフロに出た信念を不屈+突撃でガトーにつけてほしいとか。

 でも、やっぱり個人的には奇襲を復活させてほしいですね!
 効果云々よりも、語感がいいですし、使ったときの爽快感は奇跡や愛以上だと思います。

 この後にクソ長い補講を入れてますが、必ず暇な時に読んでください。

 それでは、次回は再合流と同時になのはさんの話。

 ついでに、部隊名も募集してみます。
 脳内デフォはSpace Guardian Girl's ProjectからとってG's部隊。
 電撃G'sマガジンともかけてます<ドヤ>。
 ただし、結局はホワイトベース部隊に落ち着くと思います。
 皆さん、ドヤ顔で部隊名を出してくださいww
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/08(日) 22:54:14.29 ID:LkbQgq/h0<>  補講 ブライガーとゲッターの変形システムについて

 スズたちが解説してくれましたが、補足します。

 ただし、私はJ9シリーズをきちんと見ていないので、作中での考証がどのようになっているか本編でどうなっているのかはわかりません。
 蒼天航路並みの妄想ゴッチャなので、話半分程度にしてください。


 ゲッターロボとブライガーは共に大きさから重量まで変化するありえないロボット≠ナす。

 まず、その二つのシステムの根幹は前者はゲッター線、後者はシンクロン原理です。


 宇宙には『質量保存の法則』があり、要約すると『世界の容量は永久に100/100のままであり、分子は減ることも増えることもない』ということです。

 つまり、物を大きくするには他のものを小さくしなければならない訳です。
 それは飲み込んだコーラの炭酸がゲップになって出てくるぐらいあたりまえの事です。

 ゲッターとブライガーは世界の法則そのものに対してケンカを売っていたんですね。


 とはいえ、ゲッターはまだ簡単に説明できます。

 ゲッターロボはゲッター線を利用することで金属を異常なスピードで進化(退化)させ、それ以上に退化(進化)させることで質量を変えています。

 問題は、何もない空間から手品のように金属を引っ張ってきて巨大化するブライガーはどこから質量を持ってくるのか――

 建前上の答えが『平行世界の容量を借りる』ことです。

 シンクロン原理は、この宇宙の質量やエネルギーを他の宇宙空間と融通しあうことです。

 現行世界Aと平行世界Bを同調させることで、(100/100)と(100/100)を101/100+99/100にするのです。

 原作でのブライガーは別次元の宇宙、いわゆる平行世界からエネルギーと質量を借りてくることで物体を一時的に大きくしたりすることができます。

 引っ張ってきた質量をどうブライサンダーと融合させるのかとなると、空母アストロガイガーに搭載された物質増大プラズマシステムによって変形させるらしいです。

 何が問題かって、誰もこのシステムについて説明してくれないんです。

 実際の変形シーンはプリキュアのデュアルオーロラウェーブみたいな空間でブライサンダーが質量らしきものを受け取って変形します。

 あくまで仮説ですが、アストロガイガーのプラズマシステムによって世界間を繋ぐワープ空間のようなものを形成し、プラズマ化したブライサンダーに同じようにプラズマ化した平行世界の質量を融合させているのだと思います。

 ただ、キッドたちを乗せたまま変形しているし、コクピット内は変わらないようなので、コクピット周りはプラズマ化させてないようです。

 ブライガーでいられる時間は24時間と説明されています。
 その理由は二つ考えられます。

 一つは、プラズマシステムが二つの世界を繋げていられるのは一瞬から数十秒程度である場合。
 この場合は、変形が完了した後、現行世界Aは101/100+99/100の関係が(101/100)と(99/100)になります。
 つまり、質量保存の法則が乱れ、宇宙が崩壊します。
 この崩壊が始まるのが変形後24時間後なので、それまでに平行世界Bに質量をお返しします。

 二つ目は、プラズマシステムが二つの世界を繋げていられるのが24時間である場合。
 特に説明は不要でしょう。24時間が経てば質量保存の法則が乱れて宇宙が崩壊します。
 なので、プラズマシステムの電池が切れる前に質量をお返しします。

 考えると面倒な事が『ブライガーがダメージを受けて腕がふっ飛んだりしたら?』です。

 もげたパーツは宇宙空間をさまよって回収不可能でしょう。
 それでは借りた質量を返却できません。

 まあ、第一というか、これしかないという方法は『こちらの宇宙に元々あった質量で代償する』ことです。

 そもそも、ブライソードビームとかでエネルギーを発散してますし、もう考えるだけ無駄と言うものです。


 それならどうしてこんな話をしたかというと、このSSにて原作との設定上の矛盾点があるからです。

 このSSにおけるスーパーロボット大戦の世界は私自身の独自設定が働いています。

 その上でブライガーのシンクロン原理が使えなくなったので、『宇宙の別の場所から質量を融通しあう』という技術に変更しました。
 つまり、現行世界Aの中で50/100+50/100の質量を51/100+49/100にする技術です。

 そうなってしまった独自設定については、ストーリーの終盤のほうで明かしますが、ぶっちゃけSS本編とは何の関係もありません。
 ただ、この設定によって、本来起こるはずだった事やいるはずの人物がなかったことにされたり逆もあったりしています。
 手を抜いたわけではありません。本当です。

 この設定の正体に気付いた人なんかいたら書き込んでみてください。
 当たった方がいたりしたら、ボーナスとかあるかもしれません。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/05/08(日) 23:32:05.10 ID:mahAJhf60<> 乙
ゲッターは真ゲッターで金属チップを増殖させて変形してるから、質量も変わるという映像表現にしてなかった? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:20:52.20 ID:94Bbz0QDO<> 乙です、今日はすずかに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:21:21.66 ID:94Bbz0QDO<> 乙です、今日はすずかに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:23:02.68 ID:94Bbz0QDO<> 乙です、今日はすずかに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:23:54.99 ID:94Bbz0QDO<> 乙です、今日はすずかに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:31:02.02 ID:94Bbz0QDO<> 申し訳ない、ミスって連投してしまった、一票でカウントして下さい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/09(月) 00:34:20.06 ID:94Bbz0QDO<> 申し訳ない、ミスって連投してしまった、一票でカウントして下さい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/05/09(月) 00:47:26.98 ID:G11VAC9Go<> 乙ー
数値を含めたデータが1つあると全部データが欲しくなるなぁ

ブライガーを見たことないから設定が無くても違和感が無いかも
できればビデオとかで見といた方が面白いのだろうけど
<> 携帯から>>1です<>sage<>2011/05/09(月) 01:28:07.53 ID:tosQiczAO<> なんかいっぱいレスついててビックリしたwwwwww

>>79
進化髄攝Bと捉えていただければと思います
ゲッター線に関しては前話の夕映が詳しく述べてますので

>>80ー
経験上、製速はエラーが出ても書き込みは成功してるみたいです
それに、流れも心配もないですから時間を置いてから確かめるのがいいかもですね

>>86
終了報告時のネタになるのでちょっとずつやっていこうと思います <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/05/09(月) 01:44:29.98 ID:G11VAC9Go<> そう言えば真ゲッターの質量は知らないけど、重量は1、2、3全部一緒みたいだぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県)<>sage<>2011/05/09(月) 19:44:07.83 ID:KW3xuXQJo<> >>88
通常ゲッターは3だけ質量が大きいんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:12:35.54 ID:8leTD5UA0<>
 第二十二話

 ホワイトベース 格納庫

 無重力の海を泳いでヒカルはゲシュペンストのコクピットスペースに潜っている小さな影に声をかけた。

ヒカル「おい、吹雪……本当に終わるのか、その作業は……?」

吹雪「はい、全て順調です」

 頭部のアンテナヘアを漂わせて吹雪はコクピットから顔だけ出して答える。

吹雪「ヒカル姉のゲシュペンストは二時間三十三分後にSCCSに換装完了します」

ヒカル「シンプル・カスタマイズ・コクピットブロック・システムだっけ……?」

 質問しながらヒカルは気恥ずかしげにチラチラと吹雪を見たり見なかったりする。

吹雪「はい。合わせて、接近武装が大好きなヒカル姉は私がフルオーダーメイドでカスタマイズします」

ヒカル「別に好きという訳じゃ……だがな、その……」

吹雪「何でしょうか?」

ヒカル「その格好は……何だ?」

吹雪「オーダーメイドをするならメイド服と海晴姉に言われました」

ヒカル「そうか……」

吹雪「予定では、三時間十二分後に霙姉たちと合流ですね」

ヒカル「あぁ、そうだ」

吹雪「全て順調です。イレギュラーが起きない限りは」

ヒカル「まったく……たまに思うよ。吹雪は世界のスケジュールをみんな知ってるんじゃないかって」

吹雪「そんな事はありません。私にもわからない事はたくさんあります」

ヒカル「たとえば?」

吹雪「人間の感情……とかでしょうか」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:14:56.19 ID:8leTD5UA0<>
 琴吹家私有シャフト 司令部

 地上のスーパーロボットを詰め込んだシャフトは一足早く合流地点に到着していた。
 残り数分でホワイトベースが見えるはずなので、スーパーロボット総出で出迎えることとなった。

紬「そうね、無重力での運転練習にもなるから」

 唯たちがいるシャフト本体に接続されている指令ブロックで紬はほう、と紅茶で一息ついた。

紬「みんなには内緒で、ちょっと早めのティータイム……ふふ」

 執事の斉藤が運んできたケーキに舌鼓を打つ。

紬「和ちゃんも、ミネルバXのテストに復帰したそうね」

斉藤「はい。今ごろは復興活動に携わっているかと思います」

紬「私たちが戻る頃には、ミネルバXの改修も終わっているはずね」

通信士「つ、紬お嬢様!」

 和やかな雰囲気が、通信士の切羽詰った声で中断された。

斉藤「何事か?」

通信士「凄まじい速度で、識別不明の機体が接近してきます!」

紬「何ですって!?」

通信士「だ、駄目です! もうこちらに……!」

 大地震のような衝撃が、シャフトを襲った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:15:24.55 ID:8leTD5UA0<>
 翡翠色の輝きを消して、黒翼の戦士が爆発するシャフトを見据えていた。

アサキム「これで君の道を阻むものは半分になったよ、雷刃の襲撃者」

フェイト「こ、こんな……」

アルフ「アンタって奴は……!」

 牙を剥いて拳を震わせるアルフには一瞥もせずに、黒衣の放浪者――シュロウガに乗るアサキム・ドーウィンは随伴者の背を押した。

アサキム「君がやれないから、僕が代わりにやってあげたんだ。早く嘱望の種を封印しなよ」

フェイト「……バルディッシュ」

 息を詰まらせながらもフェイトは自分の斧を手にして、呪文を唱えはじめる。

アルフ「――ッ! フェイト!」

 微妙な煙の揺れを捉えたアルフが飛びかかっていなければ、無防備であったフェイトに光子力の矢が刺さっていただろう。
 これには、アサキムも驚いているようだった。

アサキム「驚いた。彼女たちの中に幸運の女神でもいたのかな」

 次の瞬間、煙を飛び出してゲシュペンストとアルトアイゼンがシュロウガに仕掛けた。

氷柱「よくも……よくもシャフトのみんなをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

アサキム<直感>「魔王剣……!」

 ニュートロンビームを全て避け、ネオ・プラズマカッターに対してシュロウガは暗い赤紫色の光りを放つ剣を手にして切り裂く。

氷柱「――ッ!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:16:16.83 ID:8leTD5UA0<>
アサキム「黒き霞となりて散れ!」

 ズシャァァッ――! 黒の二機は交錯し、首を落とされたのは氷柱であった。

氷柱「そんな……!」

 頭部を失ったゲシュペンストがコクピットを吐き出す。
 シュロウガの後ろに回ったアルトアイゼンが肩のボックスを開いた。

霙<突撃>「貴様は……」

 静かだが、確たる意志で霙は引き金を引いた。
 重装甲から近距離指向性・近接戦闘用炸裂弾M180A3が黒翼を包囲する。

アサキム「悪い夢を見せてあげるよ」

 チタン弾が貫いたのはシュロウガの影だけだ。
 霙が声を聞いた時には、既にアルトアイゼンの腕は消失していた。

アサキム「何か荷物を背負っているね。見せてもらおうか」

 アルトアイゼンの背中にコンテナがあるのを見て、アサキムは腕を伸ばしたが、それは届くことはなかった。

唯「ロケットパーンチ!」

翠星石「超電磁ヨーヨー!」

夕映「ダブルトマホゥゥゥクブゥメラン!」

 六つの武器がシュロウガの横を叩き、アサキムは更に奥でボスボロットとダイアナンAが分離した指令ブロックを眺める。

アサキム「状況は良く傾いている」

 視界の端で幾つかの明かりが灯っていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:16:54.53 ID:8leTD5UA0<>
シノン「各機、散開して正体不明機を捕縛。氷柱さんと紬さんたちの回収も同時に行って」

 ジャブロー防衛やマスドライバー作戦以上に緊迫した表情でシノンは指示を出す。

シノン「こんなことが……何が起こっているの……」

 報告に驚愕しているのは、シノンだけではない。
 出撃した少女たちも半信半疑であったが、現場に着いて、その惨憺たる有様に絶句した。

ヒカル「そんな……霙姉、氷柱……」

珠姫「平沢先輩……」

シノ「ゲッターとコンバトラーまで……」

 黒翼の不明機が悠然と佇んでいる宇宙に味方機は四肢を切断されている。
 その近くで金色の魔方陣が広がった。

なのは「あれは、フェイトちゃん!?」

アリサ「なに!? じゃアイツはフェイトの仲間ってこと!?」

すずか「……っ!」

 一番前に出たのはガンダムだった。
 吹雪が持ってきた新しいブースターで速度は充分で、シュロウガを射程に捉えた。

すずか「当たれ!」

アサキム「この世界はまだ遅い!」

 シュロウガの額が翡翠色に光り、紫色の光線がビームを打ち消す。

すずか「それなら……!」

アリア「すずかちゃん、ダメよ!」

 制止の声を聞かず、すずかはビームジャベリンでシュロウガを突いた。
 ただ、影だけを――

アサキム<覚醒>「君たちに用はない」

 ガンダムの遥か上に移動していたシュロウガ闇を纏う。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:19:38.05 ID:8leTD5UA0<>
アサキム<直撃手加減>「獄炎の抱擁……エンブラス・ジ・インフェルノ!」

 黒翼を中心に闇が広がり、まずガンダムを飲み込んだ。

アリサ「すずかっ!」

海晴「各機――!」

 後方からの叫び声が届かないうちに、闇は更に広がり、マジンガーたちも侵していく。
 ただ一機、赤い機体だけが爆発したようにこちらに向かってくる。

霙「ヒカル!」

ヒカル「霙姉!?」

 腕をもがれたアルトアイゼンを暗幕が追いかける。
 直前に転回してコンテナをゲシュペンストにぶつけると、シュロウガの闇が全ての機体を胸中に収めた。

ヒカル「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 全ての反応が途絶え、コクピット内で焦熱がヒカルの身を焼く。
 おそらく、周りの仲間たちもこの業火に巻き込まれているのだろう。

霙「ぐぅっ……! ヒカル……!」

 接触回線で姉の声が聞こえた。

ヒカル「み、霙姉……」

 苦悶に紛れてアルトアイゼンの背中に積まれていたコンテナが開く。

霙「受け取れ……お前の魂だ……!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:20:06.84 ID:8leTD5UA0<>  
 敵機を焼いたシュロウガを呆然と見つめているフェイトにアサキムは言う。

アサキム「出ているよ、嘱望の種。封印しないのかい?」

フェイト「えっ……」

 青白い光りが走り、バルディッシュが反応している。

アルフ「フェイト……」

フェイト「う、うん……ジュエルシード、シリアル]U……」

バルディッシュ「Seeling mode.」

フェイト「封印――」

バルディッシュ「Seeling.」

 ジュエルシードがバルディッシュに吸い込まれる。
 アルフも胸を撫で下ろす。
 邪魔が入らなければこんなにも簡単なのに、胸はざわざわが止まらない。

アサキム「さぁ、ここを離れようか」

フェイト「はい……」

アルフ「待って! 何か来る!」

 力なく頷くフェイトを抱きかかえてアルフが跳んだ後ろを黒い影が抜けていく。

アサキム「亡霊……!」

ヒカル「ハァァァァァァァァァァァァッ!」

 紅の瞳孔を開くアサキムの耳に喊声が直撃した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:20:33.92 ID:8leTD5UA0<>
 眼光はゲシュペンストだ。
 機体の駆動限界を超越しているのか、関節が赤く燈っている腕には金縁の鞘の刀が握られている。

ヒカル<ド根性>「感じるぞ……この手触り、気の波動……オマエは金獅子丸だな!」

 アルトアイゼンのコンテナから受け取った武器にヒカルは自身の怒りを重ねた。

ヒカル<努力>「霙姉が護ってくれた私とオマエで、暗雲を振り払う!」

 自分を中心にレールを円形に敷いた操縦桿を強く握り締める。
 プラズマカッターによる格闘戦を多用するヒカルに吹雪が用意したシステムだ。
 ヒカルの腕の動きをダイレクトに機体に伝え、武道で鍛えた彼女の上半身をゲシュペンストと同化させる。

 今、左手に鞘を握り、右手でその柄を握る。
 レールの中で操縦桿同士がぶつかる。

アサキム「速い! 魔王剣……!」

ヒカル<熱血>「必殺! 獅子王! 疾風怒濤ォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 軋む機体の摩擦熱で出た煙を引いて、ヒカルは居合い切りを抜き放った!!

アサキム「――ッ!!」

 稲妻のような火花が散り、シュロウガの剣が砕ける。

アサキム「僕の魔王剣が――!」

ヒカル「お前が何者かは知らないが、よく覚えておけ!」

 抜いた刀を返し、ゲシュペンストは再び跳躍した。

ヒカル<魂>「我が名は天使ヒカル! 皆の家族を守る剣だ!!」

 ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!! 真っ直ぐに振り下ろされた黄金色の刃がシュロウガを一刀両断した!!

 露出したコクピットで赤い眼光の青年は薄く笑っている。

アサキム「フッ、この世界に価値はないと思っていたけれど……」

 ノーマルスーツも無しに宇宙に肌を曝しているアサキムは自身から溢れる闇でシュロウガを包んでいく。

アサキム「相当、特殊なようだ」

ヒカル「待てっ!」

 刀を構え直して制止を呼びかけるが、アサキムには届いていない。
 捕まえようとするが、駆動系の組織が崩壊して言うことを聞いてくれない。
 シュロウガを包み込んだ闇は一点に凝縮していき、破裂したかと思えばもうシュロウガの気配は消えていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:21:01.05 ID:8leTD5UA0<>
 ホワイトベース 格納庫

吹雪「ヒカル姉が感じたように、シシオウブレードのモデルはヒカル姉が愛用している木刀、金獅子丸です」

 データブックを弄りながら吹雪は淡々と解説していく。

吹雪「コクピットブロックもヒカル姉がシシオウブレードを使うことが前提で改造しました」

ヒカル「あぁ、操縦桿に金獅子丸を持った感覚が直接伝わってきた。すごいな、吹雪は本当に」

 頭を撫でられて吹雪は相変わらず無感動だが、すぐに唇を尖らせた。

吹雪「ただ、ヒカル姉はゲシュペンストを乱暴に扱いすぎです。見ればわかると思いますが」

 不意に痛いところを突かれてヒカルもたじろいだ。
 見上げたパーソナルトルーパーはバラバラに解体されて一から建て直しているようである。

吹雪「解析したところ、ゲシュペンストにかけられている駆動限界のリミッターがヒカル姉のT−LINKに反応して弾き飛ばされているようです」

ヒカル「つまり……どういうことだ?」

吹雪「ヒカル姉の闘争心――熱血、努力、ド根性にゲシュペンストが頑張りすぎているということです」
ヒカル「……褒められている気がしない」

吹雪「マラソンで前を突っ走りすぎているヒカル姉の後ろに一生懸命ゲシュペンストが追いかけているんです」

ヒカル「私がゲシュペンストに無理をさせているということか?」

吹雪「そうです。対策としてT−LINKシステムにもリミッターをかけておきました。これでヒカル姉が本当に必要な時にだけ、駆動限界突破を行うことができるようになります」

ヒカル「つまり、一度きりということか」

吹雪「はい。使用後はオーバーワークでほとんど動けなくなりますから、注意してください」

ヒカル「あぁ、わかった。しかし、酷い状態なのはゲシュペンストだけじゃないからな……」

 見渡せば、格納庫のあちこちで火花の音がしている。
 フェイト・テスタロッサと一緒にいた黒翼の機体が出した闇の炎を浴びた機体は装甲のほとんどが剥離してしまった。

吹雪「クルー総出で修復作業に当たっています。ギガノスへ到着するまでには七割は完了するはずです」

ヒカル「あぁ、頼む……だが、他にも問題はあるが……」

 正直、自分の事でも手一杯だが、それでも格納庫の端にいる小さな二つの影が気になってしまうのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:21:28.12 ID:8leTD5UA0<>
シノン「あなたの行動は褒められたものではないわ、すずかさん」

 厳しい表情でシノンは座ってうなだれている少女にしゃがんで目線を合わせた。

シノン「あの黒い機体があなただけを狙っていたら、あなたは帰ってこられなくなっていたのかもしれないのよ」

すずか「はい……」

シノン「それに、いきなり飛び込んでいくなんてあなたらしくないわ。どうしてか、教えてくれる?」

すずか「私は……役に立てていないんじゃないかって、不安になって……」

シノン「役に立ってないなんて……」

 そんなことはないと言おうとしたシノンの頭上から鋭い言葉が落ちてきた。

アレイ「役立たずならガンダムから降りろ。お前だけにしか乗れない訳じゃない」

すずか「――っ!」

シノン「アレイ!」

 二十二歳でクールな性格でメインクルーの中でも大人だと言われている氷坂アレイが鼻筋を立たせてすずかの肩を掴んだ。

アレイ「私だって訓練は受けている。私じゃなくても実戦の勘のあるパイロット候補だっていくらでもいる。お前がガンダムを降りたところで何の問題もないんだ」

シノン「アレイ――」

アリサ「ちょっとアンタ!」

 氷の鏨で心に刻むように喉を前後させる主任通信士に怒鳴り散らしたのはやはりアリサだった。

アリサ「いきなり入ってきて何言っちゃってんのよ! ガンダムにはずっとすずかが乗っていたんだからね!」

アレイ「お前たちみたいな子どもに任せて安心していられるほど私は情けなくない!」

 仲裁に立とうとした艦長を突き飛ばして、アレイも声を荒げた。

アレイ「ガンダムはお前たちのものじゃない、連邦のものだ! ジオンと戦うための兵器であって子どものおもちゃじゃないんだ!」

アリサ「お、おもちゃですって、おもちゃで戦争が出来るもんですか!」

 びしっ! 背伸びしたアリサの平手打ちがアレイの頬を叩いた。

なのは「アリサちゃん!」

アレイ「くっ……子どもに戦争が出来るものか!」

シノン「アレイ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/10(火) 19:21:56.16 ID:8leTD5UA0<>
 赤みが増した頬を引きつらせたアレイが振り上げた腕はさすがにシノンが掴んだ。

シノン「やめなさい、アレイ! あなたまで手を出してどうするの!?」

アレイ「くっ、香月艦長……!」

シノン「この子たちだって、不真面目な気持ちで戦っている訳じゃないわ。それはあなただってわかっているでしょう?」

アレイ「だが、このまま月村が乗っていても……!」

すずか「――わかりました!」

シノン「!」

 内気な彼女にしては大きな声だった。
 張り詰められた空気を引き裂くようにすずかは立ち上がる。

すずか「私が……ガンダムを、降ります……」

アリサ「すずか!」

なのは「すずかちゃん!」

 うつむいた顔を上げない少女に、アレイも腕を下ろし、シノンも顎を引いた。

シノン「……わかりました」

 いがむアリサとうろたえているなのは、きゅっと唇を結んでいるアレイを順番に見て、シノンは姿勢を正して伝えた。

シノン「今日付けで、月村すずかさんからガンダムの専任から除外します。以後、ガンダムは候補者から選抜して運用していきます」

すずか「はい……お願いします」

 こくりとうなずいてすずかは格納庫から出て行った。
 当然、アリサとなのは、ハロもその後を追っていき、残ったアレイとシノンは小さくため息を吐いた。

シノン「……あなたの気持ちはよくわかるわ」

アレイ「別に……艦長が思っているような感情で言ったんじゃない」

シノン「それでも、小さい子が戦争に関わるのはよくないわ」

アレイ「今、関心を持つべきなのは、誰がガンダムを動かすかだ」

シノン「この状況じゃ、手を挙げるのは二人しかいないわね」


 第二十二話 暗雲! 呪われし放浪者! 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/10(火) 19:58:52.07 ID:OAMELx1oo<> 乙
すずかの復帰そして覚醒に期待 <> 携帯からスレ主が今日はここまでをお知らせします。<>sage<>2011/05/10(火) 19:59:22.46 ID:ke7XPD7AO<> うまく回線が繋がらなくてなんとか最後まで投下できましたが、机バンッ!したらシオニーちゃんがひっ!してパソコンがブルーバーックな訳なのですよーとリュウコさんは報告しちゃいます。
リュウシやっちゅーねん

電波女も初出から購読してましたが、何巻まで買ったのか出先で思い出せなくてエロ本買ったくらいから放置してます。


今回、鬼畜マサキとタメ張ったゲシュペンストを紹介


 ゲシュペンスト TYPEーS 試験型TーLINKシステム搭載機

  移動力/6 運動性/90 装甲/1200 照準値/130
 特殊能力:駆動限界突破 気力130以上で一度だけ使用可能。移動力と武器攻撃翌力が上昇。次EP行動不能。以降全性能がダウンし格闘武器が使用不能になる。

 ゲシュペンスト TYPEーR 試験型TーLINKシステム搭載機

  移動力/7 運動性/110 装甲/800 照準値/145
 特殊能力:TーLINKコンタクト 気力110以上で発動。TーLINK武器が使用可能になる。


 アサキム・ドーウィン

 特殊技能:鬼畜 女性パイロットに対して予ダメージ1.2倍


回線の調子が悪くなければ、SCCSについて語ろうとしていたのですが、次回に持ち越し。
こういった独自設定が嫌いな方には申し訳ないですが、思いつくとやりたくなっちゃうので


 明日は運転試験ですので、ダブルオー見たらさっさと寝ましょう。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/11(水) 02:27:38.83 ID:9y4owOtDO<> 乙です、マサキムの鬼畜ってシステム的に鬼畜って事ですね、投票はタマちゃんに一票で、それではご武運を。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/05/11(水) 03:06:07.72 ID:q+kdcs9oo<> 独自設定が嫌いなら、そもそもスパロボはアウトな気がするな。
色んな設定を楽しめるからこそ、良いんだと思う。

今回のスパロボZはどこのスレ見てもシオニーちゃん押しだな。
買うその日まで楽しみにしておこう。

りっちゃんに1票。ボスボロットは進化するのか…いや、変わらないよな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/11(水) 11:43:23.17 ID:wzjuYp570<> 鬼畜マサキと言われるとメイオウの方が浮かぶ罠 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/05/12(木) 03:10:51.09 ID:gSDTs88AO<> 乙、まさか厨二スフィアハンターが出るとはww
記念にアサキムに一票 <> 教習所からスレ主です<>sage<>2011/05/13(金) 11:13:12.93 ID:2KUqrE3AO<> 合格なう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/05/13(金) 13:01:00.25 ID:UZuh4o5eo<> おめでとう!何点だった? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/13(金) 22:52:06.89 ID:C2/7O9/DO<> おめ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:06:45.78 ID:1b1hdwhT0<>
 第二十三話

 ジオン軍ザンジバル級機動巡洋艦ラグナレク

 ジャブロー陥落に失敗したジオン軍の一部は地球を離脱してソロモン、ア・バオア・クー、本国など、各本部長がいる区域へ撤退している。
 その中で赤い彗星≠フシャナは独立部隊としての地位を利用して独自にホワイトベースを追っていた。

ララァ「まあ、それで中尉はガルマ様に計算のヒントを差し上げたのですね」

 専用の個室でソファに腰掛けてララァは楽しげに話しかけている。
 その視線の先には誰もいない。
 しかし、ララァ・スンの目は確かに何かを見つめて笑い声をあげている。

ララァ「ガルマ様はプライドの高いお方でしょう? 中尉はガルマ様とどのようにお話ししてらしたのですか――あら?」

シャナ「ララァ」

 不意に瞳が小さくなるララァはほぞのくすぐったさに視線を下ろした。
 やわらかな香りを抱いていたシャナはララァのももから上半身を起こして緑深い目を見つめる。

シャナ「また話をしていたのね」

ララァ「はい、大佐」

シャナ「記憶なら私も持っているわ。わざわざ本人に訊くこともないでしょ」

ララァ「それでも、感じ方は人によって異なりますわ」

シャナ「どちらにしても、もう少し静かに話してほしいわ。まだ二十分も時間が余ってる」

 ソファから立ち上がってバスローブを脱ぐ。
 小柄だが、均整の取れた肢体にララァの薄い手が乗った。

ララァ「何かお飲みになりますか?」

シャナ「自分で取るからいい」

 備え付けの冷蔵庫から瓶ジュースを取り出す。
 ザンジバルにも後付だが重力ブロックが設置されている。
 実際には、地球の重力に適応した身体が宇宙に酔わないための措置だが、無重力用のチューブ食事が嫌いなシャナは居住区では常に作動させていた。

ララァ「大佐、近づいています」

シャナ「……本当に?」

 休憩時間はあと十数分残っている。
 木馬との接触はそれからまた十六分先のはずであるが、ララァは確かに感じ取っているようだった。

 シャナはすぐに艦橋と回線を繋いで戦闘態勢を命令した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:07:16.31 ID:1b1hdwhT0<>
 ホワイトベース 居住ブロック

アリサ「――ッ! シャアが来る」

 すずかの部屋の前で体育座りで眠っていたアリサが急に起き上がった。

なのは「シャア?」

 起きていたなのはが首を傾げると、アリサは慌てて口を手で塞いだ。

アリサ「えっ? あっ、いや、間違えっ! 間違えた! シャナよ! あのいけすかない赤い彗星が来るのよ!」

なのは「へっ、へっ? どうして?」

アリサ「な、なんとなく……」

なのは「それよりアリサちゃん、Gパーツの整備の時間だよ」

アリサ「あ、ホントだわ。それじゃあ、行ってくるからね、すずか」

 インターフォンを通して言うと、中からはハロの声が返ってきた。
 あれから閉じこもったかと思うと、泣きつかれて寝てしまったようだ。

 アリサとなのはは居住ブロックを走っていく。
 途中からムービング・グリップで移動する。
 重力があるのはベッドルームや食堂、レクリエーションルームなどがある居住ブロックだけだ。

アムロ「あっ、アリサさん、お疲れ様です」

アリサ「うん、Gパーツは?」

アムロ「良好です。あの、すずかさんは……?」

 マチルダが籍に入ったことを機に補給部隊は編成が変わった。
 そこにいたアムロ・レイは整備の腕を見込まれてホワイトベースの勤務となっている。
 彼はガンダムの専任ということもあり、何かとすずかを気にかけているようだった。

アリサ「今は眠っちゃってるだけよ。起きてきたらきっと出てくるわ」

アムロ「そ、そうですか」

 アリサはGアーマーに乗り込んだ。
 この手のことは当人同士でやらせるべきだと考えているし、なによりもアリサはすずかの乗らなくなったガンダムのことで頭をいっぱいにしなければならないのだ。

 あの黒翼の機体の炎でほとんどの機体は装甲が剥離してしまい、大々的な修理が必要となっているのだ。
 ガンダムも損傷が激しいが、Gパーツを使えば重爆撃機として使用できる。
 GアーマーはGパーツを全て使ってガンダムを覆い、露出している腰部も盾を備え付けることで強度を増す。

アリサ「あっちには負けてられないわね」

 隣りのスペースでは、コア・ファイターに大型ブースターを装着したコア・ブースターが待機している。
 こちらには、二時間前に喧嘩した氷坂アレイが乗る予定だ。 
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:07:47.05 ID:1b1hdwhT0<>
 ホワイトベース ブリッジ

シノン「修理は順調なようね」

ミユリ「航行もね。作戦時間にはギリギリになっちゃうけど」

シノン「そこはレビル将軍に取り成してもらいましょう」

 一貫校からの親友と相槌を打ち合いながらシノンは自分の椅子<キャプテン・シート>に座った。
 便宜上、ホワイトベースは機動兵器の運用を前提に設計された強襲揚陸艦だが、第一艦橋は必要以上に広い。
 設置されている機材は常時十人程度で動かせる配備だが、余剰電源差込口から推測するに、三十人以上での運用も考えられているはずだ。
 艦橋でそれだけの人員を必要とするのは艦隊旗艦の規模になる。

 だが火力は戦艦以下、速力は高速艇以下、物資輸送能力は輸送機以下≠ニ全領域型万能艦と名乗らざるを得なかったホワイトベースの使い道は前線司令塔以外に無いのかもしれない。

シノン「あるいは、単艦任務かしらね……」

ミユリ「どうしたの、シノン?」

 暗黙的に艦長の独り言に反応していいのは、その副官程度である。
 宇宙が、人の独り言を増やしたからだ。

シノン「どうして私が、艦長任務を続けることになったのかしらね」

 副官など就いていないシノンの話し相手をするのは中学校からの親友である秋里ミユリの役割になっている。

シノン「昇進したからって、私は成り行きで乗り続けていただけなのに」

ミユリ「でも、あの子たちをまとめられるなんてシノンくらいしかいないんじゃないかな」

シノン「あはは……まあ、現場は海晴さんに任せてるしね……ミユリ?」

 自分のシートを下げてシノンの近くに来ていた主任観測員の気配がなくなって振り返る。

シノン「どうしたの、ミユリ?」

ミユリ「うん……ペガサスが何か見つけたみたい」

 ペガサス≠ヘメインコンピューターにつけられた名称<あだ名>だ。
 とはいえ、連邦内にもペガサス級という艦級の分類はあるし、どちらが先に名称されたのかは技術屋以外には謎である。

 ミユリの主な任務はペガサスが観測している宇宙空間で敵を見つけることである。
 実際には、敵を見つけて報告するところまでペガサス自身がやってくれるので、ミユリの仕事はそれをシノンに口頭で伝えるだけである。

ミユリ「うん……ジオンのザンジバル級。まっすぐこっちに向かってる」

シノン「さっきの戦闘の痕跡を見つけられたのかもしれないわね」

 小さく舌打ちをした。
 あるいはもっと早くから追跡されていたのかもしれない。
 このタイミングを取られたのは、おそらく敵艦がこちらを墜とせると踏んだからだろう。

シノン「時間はどれくらいある?」

ミユリ「あと二十分で射程内に入る」

シノン「第一種戦闘配置。格納庫と回線を繋いで」

ミユリ「了解。モニタに映します」

 訓練どおりのしっかりした口調で会話する。
 まだ若い親友同士だからこそ、公私のケジメをつけようと約束した。

 本来、通信はアレイの役目だが、今は代わりにミユリが担当している。

海晴『はいは〜い。こちら格納庫の海晴中尉で〜す』

 頭上のメインモニタには、正規軍でありながら公私ぐっちゃぐちゃな人が首に角度をつけた敬礼をしていた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:08:14.81 ID:1b1hdwhT0<>
 ホワイトベース 格納庫

シノン『使える機体はどれだけありますか?』

海晴「う〜ん、万全なのはダイアナンA、コア・ブースター、Gアーマー、D−3の四機になのはちゃんってとこかしらね」

律「コラーッ! ボスボロットだって出られるぜー!」

澪「数に入れんなそんなもん!」

シノン『一応、五機ということにしましょう。ホワイトベースはこのままE4地点の暗礁空域にまぎれるように前進して、その後に回頭して敵艦を迎え撃ちます』

海晴「出せる子は全部出しちゃって、回頭の間の防御を任せるってことでいいかしら?」

シノン『はい。接触まであと十六分と見ましょう。修理はその間に終わるものを最優先して、出せるようになったら出してください。それ以外の人は機銃をお願いします』

海晴「了解よん。ところで、すずかちゃんはどうするの?」

 まじめくさった顔をしてモニタ越しに向かい合っていた香月艦長は海晴が使っていた以上の営業スマイルをした。

シノン『あの子にも、やってもらうことはありますので、A5は空けておいてください』

海晴「はぁい、了解よ」

 一瞬だけ見せた真剣な目つきは隊長としての海晴を信頼させてくれるものだということをシノンは学んでいた。

シノン『それでは、よろしくお願いします』

 それで通信モニタとの接続は切れた。
 警鐘がなってからすぐに集まってきた少女たちに振り返ると、海晴は唇の裏側を舐めてしまう。

海晴(本当に良い子たちね)

 不安と使命感がないまぜになって緊張した表情に海晴はパンパンと手を叩いた。

海晴「みんな、ダンスのお相手はジオンのザンジバルさんよ。出られない人は機銃についてもらうわ」

唯「きじゅうって、ホワイトベースからばばばば〜って撃つやつ?」

 銃座から撃つ真似をした唯に海晴はお天気お姉さん時代に見せていた正解ポーズで応える。

海晴「そうよ。使い方は銃座ごとにマニュアルが置いてあるからよく読んでね」

アレイ「アタシらはホワイトベースの直掩でいいのかい?」

海晴「えぇ、ホワイトベースが回頭するまでの時間稼ぎをお願いしますね」

アレイ「了解した」

 一七二センチと隊員の中でも頭一つ抜け出ているアレイの敬礼は無重力帯でもぴたりと止まって見える。
 その彼女に刺すように注がれている視線はまろぶような金髪をヘルメットにしまって、Gアーマーに向かっていった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:08:50.60 ID:1b1hdwhT0<>
 宇宙 ジオン軍ザンジバル周辺

シャナ「頼むから、出てこないでよ……」

 敵がいると思われる宙域を睨みつけて呟くと、ザンジバルからの発進の合図を見る。
 ザンジバルからザクの頭をひし形に広げて二つのカニのようなハサミをつけた兵器が出てきた。

シャナ「ビグロ……ね……」

アラストール『モビルアーマーだな。使用は限定的な条件下だが、出力、性能はモビルスーツ以上だ』

 ビグロに遅れてドムを宇宙戦仕様にしたリック・ドムが二機出てくる。

シャナ「各機、全速で木馬に接近。ザンジバルは五秒後からビーム砲撃開始」

ザンジバル兵『了解!』

シャナ「攻撃開始! 逃がしちゃダメよ!」

 赤い彗星、ビグロ、リック・ドム二機が一斉に発進する。
 その後ろから黄色のビーム砲が間を抜いていってデブリを蒸発させる。

 露わになった戦艦と周囲に浮かぶ機影にシャナは勝利を確信した。

シャナ「やはり木馬は相当に疲弊しているわね」

 ドシューッ! ミサイルが一斉に発射されるが、シャナはひらりとかわして先頭にいる二つの戦闘機に突っ込んでいく。

シャナ「まずはお前からよ!」

アレイ「くっ!」

 ひゅおっ! 肉迫し、刀を頭上から振り下ろすが、その間に桜色の光りが割り込む。

なのは「シャナちゃん!」

 ガキィッ! 展開される魔法障壁が砕けて、シャナは舌打ちした。

シャナ「またお前! いつも邪魔ばっかりして!」

アレイ「――ふっ!」

 ぐぉっ――! 通り越していく寸前にアレイは機体を捻らせ、翼をシャナにぶつけようとする。

シャナ「こいつ!」

 逃げていくコア・ブースターを捕まえようとするが、目前で二つの光球がちらついて前へ進めなかった。

シャナ「お前……そんなに死にたいか!」

なのは「そんな考え方間違ってるよ! だから――きゃっ!」

レイジングハート『Flash move.』

シャナ「うるさいうるさいうるさい! お前はしつこいんだよ! ここで墜ちろ!」

 ひゅん、びゅおっ! 斬撃と回避――紅の刃と桜色の翼がかすめ合って、なのはは破壊されたボールの陰に隠れる。

シャナ「逃げたつもりか!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:09:18.31 ID:1b1hdwhT0<>
 ごぉっ! 刀身が炎を纏い、作業用ポッドにキャノン砲とワイヤーをつけただけのような丸い塊りを斬りつけた。

なのは「――ッ!」

レイジングハート『Protection.』

 ドゴォンッ! 作業用ポッドが爆発し、煽られたなのはが吹き飛んでいく。

なのは「きゃぁぁーっ!」

シャナ「はぁぁーっ!」

 ぎゅぉっ――! まるで瞬間移動でもしたかのようにシャナはなのはの背中に現れた。

 バリンッ! またもやレイジングハートが展開した障壁で刃を逸らされてしまう。

 しかし、フレイムヘイズと呼ばれた女がこれほどの優位に立って同じ失態を繰りかえすはずもないのだ。

シャナ「せぇぇい!」

 ひゅっ――炎の力場を踏む右足を軸にシャナは左の足を白の衣装に引き寄せていった。

なのは「っあ!」

 どがっ! 秀麗なミドルキックをまともに受けてなのはは呻き、また無重力の海に沈んでいく。

シャナ「これで……!」

 柄を逆手に握りなおし、シャナは腕を振りかぶる。

シャナ「終わりよ!」

 ぎゅんっ! 投槍のように投げられた贄殿遮那がバリアジャケットの脇を貫き、その奥で漂っていたマゼラン級戦艦の残骸に磔にした。

なのは「うくっ……」

シャナ「いいザマね。終わらせてあげるから往生なさい!」

なのは「させない! レイジングハート!」

レイジングハート『Alllight my muster.』

 杖の赤い宝石が光りの文字を映し出した。

 鋭敏なシャナの勘が突発的に上へ跳ばせなければ、彼女の背中にはディバイン・シューターが直撃していただろう。

シャナ「いつの間に――!」

 握り直した贄殿遮那で光球を叩き落しながら、シャナはいつ相手がそれを飛ばしたのか、考え――

シャナ「さっきの爆発の隙ね……やってくれるわね」

 高機動試験型ザクの頭に降りると、魔導師は既に収束リングを発動させていた。

なのは「ディバイーン……」

レイジングハート『Divine buster.』

なのは「バスターッ!」

シャナ「ふっ!」

 ドシューッ! 収束砲がザクの頭を消し飛ばし、炎髪が揺れて落下していく。

シャナ「たぁぁーっ!」

なのは「えぇーいっ!」

 ギャリィィィィィッ!! レイジングハートの柄と贄殿遮那の鍔が火花を散らした。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:09:55.55 ID:1b1hdwhT0<>
 ジオン軍で初めて実戦投入となるモビルアーマー・ビグロのパイロットは大尉のトクワンである。

トクワン「こいつなら、連邦の奴らが相手でもやれるぜ」

 ビグロは腕をクローアームに換え、クチバシに似た先端にメガ粒子砲を備えている。

トクワン「ちっ、モビルスーツじゃねぇのか」

 Gアーマーと接近してトクワンは舌打ちした。
 ただ、Gアーマーはガンダムを内部に搭載しての重戦闘機形態である。

アリサ「なんでこうジオンってのはビックリドッキリメカばっかり作るのかしらね!」

 ビシューン! ビシューッ! 射程に捉えるやすぐにアリサはビームキャノンを撃ちまくった。

トクワン「へへっ、このビグロのスピードをよけられるか!」

 ビグロは熱核エンジンを二基採用し、戦闘機以上の推力を発揮する。

 ブォビューッ! Gアーマーのビームをかいくぐり、ビグロがメガ粒子砲を返す。

アリサ「くぉんの! こっちだってやられっぱなしじゃないのよ!」

 ドシュドシュゥッ! Aパーツの機首が折れ曲がり、大型ミサイルが二基射出される。

トクワン「当たるかよ、それっ!」

アリサ「きゃぁっ!」

 ガシッ! ミサイルもよけたビグロがクローアームをGアーマーのビームキャノンにひっかけた。

トクワン「このままパワーで気絶させてやるぜ!」

アリサ「ああーっ!」

 仰向けで引きずられる形になったアリサはビグロの強力なGを身体に浴びて、目の前が暗くなっていく。

アリサ「す、すずか……うっ」

 ドガァッ! 胴体下部がデブリにぶつかり、アリサは気絶してしまった。

トクワン「へっ、まずはこいつをザンジバルに連れてってやるぜ」

 動かなくなったGアーマーを二本のクローアームでしっかりと持ち上げたビグロだが、すぐに新しい反応に備えなければならなかった。

澪「スカーレットビーム!」

 スラスターモジュールを背負ったダイアナンAがスケートリンクを滑るようにビグロに迫り、赤いビームで牽制すると拳を固めて殴りかかる。

澪「倒れろーっ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:10:23.08 ID:1b1hdwhT0<>
 ドドォンッ! ダイアナンAのパンチを受けてビグロが離れていく。

トクワン「ちっ!」

澪「無事か、アリサちゃん!?」

 接触回線で呼びかけるが、反応がない。
 サブモニターを介してアリサが気絶しているだけだと確認して、澪はひとまず安堵の息を吐いた。

澪「ホワイトベース! アリサちゃんを収容するぞ」

 了解の返信が来ると、すぐに澪はGアーマーを抱きかかえてデブリから跳ぶ。

トクワン「そうはさせるかよ!」

 体勢を立て直したビグロがダイアナンAを狙って突進してくる。

シノン「澪さんの帰還を援護してください」

唯「よいしょぉ!」

 ババッ! ババババッ! ホワイトベースから機銃が一斉にビグロへ集中する。

トクワン「クソッ、ドムは援護に回れないのか!」

 通信で怒鳴るが、返事がない。

トクワン「クソォ、ジャミングされているのか!」

 二機のリック・ドムはビグロから離れたところで、ドラグナー3型と戦っているのだ。

ドム兵A「このぉ!」

スズ「射撃ってのは、正確にやるから意味があるの!」

 ガガガガガガガガッ! ジャイアント・バズーカを降下してよけたスズは敵機の股下にハンドレールガンを連射していった。

ドム兵B「こいつ!」

 姿勢を崩されてさかさまになった味方機の背後から滑るように横へ出てきた別のリック・ドムがヒートサーベルを振り下ろす。

スズ「マギー、冷チャフ!」

 相対距離を詰められないように独楽のように回りながらスズは会話型コンピュータに命令を下した。

 ドラグナー3型の特徴的なレドーム型頭部から白い粒子が散布されていく。

ドム兵B「なんだ!? えぇい!」

 ガツン! 粒子に構わずヒートホークを振り下ろしたが、受け止めたドラグナー3型の前腕を引き裂いただけであった。

 D−3がばらまいたのは簡単に言えば粉状にした接着剤である。
 モビルスーツに付着すると熱で一気に溶け、それ以上に冷たい宇宙の冷気で再凝固する。
 そしてすぐに剥がれてなくなるが、D−3が苦手な接近戦で0.3秒程度のタイムラグを発生させることができるのだ。

スズ「そこっ!」

 ガガガガッ! 至近まで寄ってきたリック・ドムのカメラアイに弾丸をぶち込む。

 ビューンッ! 後方からのメガ粒子砲がドラグナー3型をかすめていった。

スズ「ザンジバルが来たのね!」

 二機のリック・ドムはビームが飛んできた方向へ後退していく。

 スズもホワイトベースへ退避していった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:10:51.33 ID:1b1hdwhT0<>
ミユリ「敵艦接近! 距離、230!」

シノン「本格的な艦対戦は始めてね……まずはアリサちゃんの収容を最優先にして」

 簡単な指示だけを出すとシノンは艦長席から降りて、ブリッジを出て行く。

ミユリ「艦長、どこに行くの!?」

シノン「戦況はなるべく不利なように、それでいて派手に運んでね」

ミユリ「わ、わかった、了解!」

 ホワイトベースには既にスズを追いかけて二機のリック・ドムが来ている。

スズ「律先輩、お願いします!」

律「よぉーし、まっかせろーっ!」

 カタパルトにドラグナー3型が着地し、その隣りにボスボロットが立っている。

律「よっしゃー! ゲッターチームに借りたマシンガンの出番だぜー!」

 馬鹿でかいノーマルスーツのようなものを着ているボスボロットが持ち上げたのは、ゲッタードラゴンが使っている巨大な機関砲だった。
律「バァァァァルカンッ!」

 ガガガガガガッ! 弾丸の雨がリック・ドムに襲い掛かる。

ドム兵A「う、うぉぉぉっ!」

ドム兵B「そ、そんなっ!」

 機械獣には歯が立たなかった武器だが、モビルスーツ相手なら不足はなかった。
 瞬く間に二機のリック・ドムは胴体を残してばらばらになった。

律「へっへーんだ! アタシだってやるときゃやるんだぜー!」」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:11:25.46 ID:1b1hdwhT0<>
 一方で、なのはとシャナの戦闘は廃艦の中に舞台を移していた。

シャナ「そこだ!」

 シュバッ! 贄殿遮那がドアを切り裂き、溶け落ちる隙間から白いバリアジャケットが飛び出す。

レイジングハート『Divine shouter.』

なのは「シュートッ!」

 ドドォンッ! シャナのいた場所で光球が爆発した。

 シャナは跳び、なのはが降りて、射線を平行にする。

なのは「いくよ!」

レイジングハート『Protection.』

 魔法障壁を盾にしてなのはがシャナへ突っ込んでいく。

シャナ「あまいっ!」

 手首を立てて、柄頭をぶつけ、シャナは肩からぶつかった。

なのは「きゃっ!」

シャナ「とどめ!」

 床を蹴って加速し、贄殿遮那をぶつけるが、寸前にくるりと回ったレイジングハートに阻まれてしまう。

シャナ「こんのぉぉぉぉ!」

なのは「くぅぅぅぅ!」

 二人は鍔迫り合い、視線で火花を散らした。

シャナ「お前がいなければジャブローは落とせたのに!」

なのは「戦争なんて方法は間違ってるから私は……!」

シャナ「なら今すぐジオンと交渉のテーブルを用意してみなさいよ!」

なのは「レビル将軍が動いているの! 和平の交渉をするために!」

シャナ「そしてギガノスを潰すのか! ジオンも同じように滅ぼすのだろ!」

なのは「それは……!」

シャナ「ギガノスの勧告を無視しているのは誰だ! 一方的に弾圧をしているのはどっちか! 答えてみろ!」

 返せる言葉がなのはには浮かばなかった。
 彼女の言うことが真実であることはなのはだって理解しているのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:12:06.71 ID:1b1hdwhT0<>
なのは「だからって……! 戦争を起こしてコロニーを落としていいはずなんかないんだよ!」

レイジングハート『Lestrict rock.』

シャナ「!?」

 バシッ! シャナの両手両足が魔法の輪で拘束された。

シャナ「くっ!」

 身動きが取れなくなって身体を震わせるシャナになのははゆっくり近づいていく。

なのは「おとなしくしててね……」

レイジングハート『Caution.』

なのは「えっ――ッ!」

 ズバァァッ! 警告は一歩遅く、なのはの脇に鋭い衝撃が走った。

なのは「こ、これって……!」

 砕かれた魔法障壁を再構築している間に、シャナはバインドを解いて大きく距離を取っていた。

 雷光の矢が飛来してきた方から現れる目の醒めるような金髪になのはの声も上ずった。

なのは「フェイトちゃん!」

 思わず駆け寄ろうとしたなのはだが、相手の隣りに立つ背の高い娘にストップさせられる。
 同時に更に注意深く周囲を探る。
 あの黒翼の機体がいたとしたら、また恐ろしいことが起きてしまう――

アルフ「安心しなよ。アイツはいない。アタシたちだけさ」

 背の高い娘――アルフに言われてなのははひとまず胸を撫で下ろした。
 だが、なのはとフェイトから結んで三角形の頂点に移動したシャナは警戒をあらわにして叫んだ。

シャナ「何だお前は!? こいつの味方か!?」

フェイト「――ッ!?」

アルフ「そんな訳ないに決まってんだろ! アタシたちはアンタたちには用はないんだよ!」

なのは「もしかして、この近くにジュエルシードが――!」

フェイト「バルディッシュ……!」

 魔方陣を展開したなのはに対してフェイトも手の甲に収めている斧型のデバイスを召喚した。

バルディッシュ『Yes sir.』

アルフ「アイツらはアタシが抑えるよ!」

 無重力の床に手をつけてアルフはうなりをあげる。

 体毛と同じ色の魔力が溢れると、その姿は巨大な狼に変わっていた。

なのは「変身した!?」

シャナ「チッ、これ以上は時間の無駄ね」

 おそらく、連邦の白い魔女はこの第三の勢力に妨害されるだろう。
 そう判断したシャナは素早く身を翻す。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:12:34.35 ID:1b1hdwhT0<>
なのは「シャナちゃん――ッ!」

アルフ「余所見をしているヒマがあるのかい!」

 天井を切り抜いて脱出したシャナを追いかけようとしたなのはに獣化したアルフが突撃してくる。

 どがっ! 障壁で頭突きの直撃は免れたが、ふっ飛んで壁に激突した。

なのは「あぅっ!」

アルフ「アンタはそこでおとなしくしてなよ!」

 ジャァァァァッ! アルフの裂けた口から魔方陣が展開し、鎖がなのはの身体を壁に縫いつけた。

なのは「うぅっ……!」

 今度は自分が身を繋がれて、為す術がないままジュエルシードにデバイスを向ける少女を見るしかない。

なのは「どうして……フェイトちゃん!?」

 唯一動かせる口で呼び止める。
 封印による大量の情報処理で発した熱を放出するデバイスを撫でて、フェイト・テスタロッサは視線を泳がせた。

なのは「理由だけでも……お話だけでも聞かせて! どうしてジュエルシードを集めるの!?」

アルフ「そんなの決まってるじゃないか。必要だからさ」

 狼の姿のまま、警戒を解くことなくアルフは主の代わりに応えた。

なのは「でも、それはとっても危険なものだって……使い方を間違えちゃうと、大変なことが起きるって言うんだよ!」

フェイト「心配しないで」

 目を閉じて金色の魔力を放つ少女が小さくうなずく。

フェイト「私たちは、間違った使い方はしないから……母さんは立派な魔導師だから……」

なのは「おかあ、さん……?」

フェイト「私も……君と戦いたい訳じゃない」

なのは「それなら……それなら教えて! ジュエルシードを使って、フェイトちゃんのお母さんは何をするの!?」

フェイト「……っ!」

 名前を呼ばれるたびに僅かに上下するまぶたが、何かを振り払うように固く閉じられ、フェイトはまた背中を向ける。

なのは「フェイトちゃん!」

アルフ「うるさいよっ!」

 再び呼ぶなのはに狼が牙を剥いた。
 全身の毛を逆立たせて威嚇して身をすくめた敵に吼える。

アルフ「フェイトが邪魔するなって言ってんだ! アンタもアタシらのことなんか諦めりゃいいんだよ! またさっきみたいな目に遭いたいのかい!!」

 数時間前の黒い炎を想起させて哀しげに眉を下げた。

なのは「あの人は、フェイトちゃんたちの仲間の人なの……?」

アルフ「知らないよ、知ったことじゃない。アンタたちはただアタシらを忘れてくれりゃいいのさ」

 鼻息を立てて、アルフもなのはに背を向けてフェイトの隣に歩み寄った。
 フェイトは使い魔の頭を撫でてあげると、すぐにその場から離れていった。

なのは「フェイトちゃん……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:13:05.71 ID:1b1hdwhT0<>
 ホワイトベース ベッドルーム

 また艦が揺れた――使用できる機動兵器が少ない今、艦を主力として迎撃しているのだろう。

 すずかが目を覚ましたのはほんの数分前だ。
 戦闘の衝撃で叩き起こされたというのが正しい。
 夢の中で警報を聞いて、本当ならそこでパッと起きられるはずが、ずるずると夢にいることを望んだが、身体が先に覚醒してしまってはどうしようもない。

ハロ「スズカ、テキダ、テキダ」

 ベッドの傍でハロが転がる。
 重力が働いているので、床に脚をつけて止まると、飛び跳ねてすずかのベッドに飛び乗る。

ハロ「スズカ、スズカ」

すずか「うん……」

 耳を開閉させるペットロボを小さな胸元に抱き寄せてすずかはモニターをつけた。
 通信兵とミユリの応酬が聞こえてきて、すずかは不思議に思った。

すずか「シノンさんは……」

 いつも聞こえてくる落ち着いた声がなくて、体を起こす。
 映っている艦橋で本来艦長席に座っているはずの香月シノンがいない。
 ボタンを操作して艦内カメラを切り替えていると、ノック音が部屋に響いた。

すずか「し、シノンさん……?」

 思わずすずかは飛び起きて寝るときにひっかけるだけの簡単な服しか着ていないので、開けられる前にインターフォンに応える。

シノン「よかった。起きていたわね」

 モニターに移ったのはやはり艦長の香月シノンだった。
 どんなときでも冷静で今も絵に描いたような微笑みを整った顔立ちに浮かべている。

シノン「気分はどうかしら、出てこられる?」

すずか「えっと……」

 言い淀んでしまうのも無理はない。
 命令を無視した挙句にごねて閉じこもっているのだ。
 立夏みたいにぱっと出て行けるほど前向きな性格はしていない。

シノン「今は戦闘中なのはわかっているわね」

 口調はやさしいが言葉遣いはすずかも戦力として考えている風だった。
 きゅっと胸の辺りを掴んで喉を震わせる。

すずか「はい……ごめんなさい……」

 何に対して謝っているのか自分でもわからない。
 だがシノンはしっかりと聞き流して必要なことだけを告げた。

シノン「あなたにもやってほしいことがあるの、お願いできるかしら?」

すずか「で、でも、私なんて……」

 何もできない。何の役にも立てない。
 ただちょっと姉の影響で機械の扱いがうまいだけで、ホワイトベースに乗っているだけの自分にできることなんて……

シノン「あなたにしかできないことなの」

 やはりシノンの声は機械的で、飾ることをしないが、はっきりとすずかの胸に雫を落としていった。

シノン「一番、ガンダムに乗ってきたあなただからお願いしたいの。ホワイトベースを預かる艦長として、一任したいの」

すずか「わたしが……?」

 モニターに顔を上げると、たおやかな笑顔が浅く揺れて決めの言葉を打った。

シノン「ちゃんとみんなわかっているのよ。すずかちゃんが一番、ガンダムを上手に扱えるんだって」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:13:50.90 ID:1b1hdwhT0<>
アレイ「これで止める!」

 ズドォンッ! 死角から接近することに成功したアレイがビームを撃ち、ビグロの右腕に命中させた。

トクワン「ぐぉっ! やろぉ……!」

 モビルアーマーは構造上、素早く向きを変えることができない。
 コア・ブースターはぴったりとビグロの真後ろについている。

トクワン「それなら振り切ってやるぜ!」

 ギューン……! 最大戦速を出して逃げ切りを図るが、ブースターユニットで推力の上がっているコア・ブースターも追いすがってくる。

アレイ「逃がさない、ジオンは……!」

トクワン「ちっ、やるな。だがな、戦ってのはやり方があんだよ!」

 ぐんっ! 大きく左回りをするビグロを追いかけるアレイはレーダーの音など聞いてはいなかった。

アレイ「!」

 気がついたときには、彼女はザンジバルの前に曝されていたのだ。

トクワン「よし、撃て!」

 ビシューッ! ドシューッ! ドドドド……! メガ粒子砲、ミサイルが一斉にコア・ブースターへ発射される!

アレイ「ぐっ、うっ……あぁーっ!」

 もてる限りの技術を加速に絡み合わせて回避するが、ついに弾頭の一つがブースターユニットで爆発した。

アレイ「畜生ッ!」

 ブースターユニットを切り離してコア・ファイターで発進する。
 元々は単体での航続力に難がある戦闘機の予備燃料とメガ粒子砲を搭載する為の追加パーツだったため、速度が落ちることはない。
 ザンジバルからの追撃からは逃れられるはずだ。

トクワン「ビグロから逃げられると思うなよ!」

 だが、既に体勢を立て直していたビグロは違かった。
 一つだけになったクローアームを伸ばし、メガ粒子砲を撃ってくる。

アレイ「ホワイトベースまでもつか……!?」

 オートパイロットで帰還するが、ビグロもしつこい。

トクワン「落ちろってんだよ!」

 ズジャァァァァァッ! ついにメガ粒子砲がコア・ファイターの上部をかすめていって、尾翼とコクピットの天井を奪ってしまった。

 途端、コア・ファイターはバランスを崩してあらぬ方向に旋回していく。

アレイ「きゃぁぁーっ!」

 真空に引っ張られるのをシートベルトで強烈に押さえつけられ、アレイは生来のクールさには似つかない悲鳴をあげて意識を手離した。

トクワン「へへっ……」

 傷のついた顔を歪ませてトクワンは制御を失ったコア・ファイターにとどめを刺そうと近づいていく。

 だが、そのために彼は前に出すぎてしまったようだ。
 さきほど、アレイが誘い込まれたように、ホワイトベースがビグロの前に現れていた。

トクワン「ちっ、深追いしすぎたか……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:14:26.61 ID:1b1hdwhT0<>
 無数の機銃がビグロに向けられるが、まるでビグロの動きを追いきれていない。

トクワン「この程度なら、ザンジバルを待つまでもねぇな」

 艦からの砲撃は届いているが、まあ当たることはない。

 ならばここでビグロのメガ粒子砲で落としたほうが手っ取り早い。
 トクワンはビグロの機首を返して木馬に向かっていったが、主砲の動きにまでは注意を払っていなかった。

すずか「おなじだ……ガンダムのビームライフルと……」

 本来、艦対戦に用いられる主砲の操縦桿を握ってすずかは呟く。

すずか「アリサちゃん……アレイさん……」

 動き続ける照準線を追いかけて、すずかは機敏に走るモビルアーマーを見つめる。
 あの機体がアリサとアレイを落とした。

 もしかしたら、それは自分だったのかもしれない。
 そう思うと身震いがして、照準線がブレた。

 だいたいが、戦艦の主砲を機動兵器に向けることは誤りなのだ。
 シノンが与えた役割も威嚇射撃をしているザンジバルに向けて撃つことのはずなのに、すずかはビグロを円に捉え続けている。

 だが、すずかは既にビグロとそれを追う照準線を見ていなかった。
 鋭いモノアイの目の光りだけがすずかの網膜に焼きつき、そこに全く別の――すずかだけの十字線があった。

 トリガーが汗ばむ。だが、決して心は揺れていなかった。

すずか「……――そこっ!」

 祈るように握っている手に力を込め、次の瞬間にはビームライフルより二回りもある光線がビグロを覆い尽くしている。

トクワン「うわぁぁぁぁーっ!」

すずか「――ッ!?」

 聞こえるはずのない叫喚がすずかの三半規管を突き抜けた。

ハロ「スズカ、メイチュウ、ヤッタナ、スズカ」

 ハロが飛び跳ねて勝利を告げる。
 だが、すずかは倒れるようにトリガーから手を離して無重力を泳ぎ、背中をぶつけた。

ハロ「スズカ、ドウシタ、スズカ」

すずか「な、なに……いまの……」

ハロ「スズカ、ミャクハク、バイタル、ミダレテル、スズカ、スズカ」

 呆然としているすずかの耳には、かろうじて敵艦が撤退したと言うことだけが認識できた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:14:54.80 ID:1b1hdwhT0<>
 ホワイトベース 医務室

アレイ「くっ……」

 簡素なベッドに寝かされているアレイが目を覚ます。

シノン「あっ、起きたかしら?」

 傍で声をかけた女性士官に自分がどうなっていたのか思い出す。

アレイ「ホワイトベースは……無事なようだな」

 艦長がここにいることが何よりの証拠だ。

シノン「代わりに、ブースターユニットが回収できなくなっちゃったけれどね」

アレイ「……すまない、艦長」

シノン「いいわ、あなたが生きていたんだから」

 そこに必要以上の感情がないことは、視線がクリップボードとアレイを行き来していることからもわかる。
 宇宙世紀でもデータメモリではない紙の資料もバックアップとして多く使われている。
 たとえば、カルテなどがそうだ。

アレイ「艦長、それは……!」

 めくられて裏返しになっているカルテから透けてみえた自分の名前にアレイは血相を変えて立ち上がった。

アレイ「!?」

 その瞬間、アレイはめまいに似た何かを感じた。
 気分が悪くなったわけではない。
 ただ、視界という額縁に黒い枠が乗っかっているような不機嫌な症状――

シノン「アレイ、あなたは当然、このことは自覚していたわよね?」

アレイ「…………」

シノン「報告義務を怠ったことを今さら咎めるつもりはないわ。だけど、あなたをこのまま戦闘に出すことはできない」

 アレイは言葉を返さなかった。
 クリップボードを裏返して見せ付けられるアレイの医療パーソナルデータについている大きな赤いサインは――

シノン「先天性遺伝子欠陥――あなたは宇宙線で傷ついた細胞を修復する遺伝子が正常に機能しない可能性が高いわ」

アレイ「それだけじゃない。本来ならば人間に無害な宇宙線があたしの目を痛めつける」

シノン「それによってあなたは視野狭窄に似た症状に陥ることになる――あなたは船外に出ないことを条件にホワイトベースに乗艦した。もちろん、事前に把握していなかった私にも責任はあるけれど……」

アレイ「もう、わかっている――あたしはこれからは通信士に専念するよ」

 話すことはもう無い――アレイは沈み込む自分を叱咤して長い足をベッドから下ろした。

アレイ「切れ者らしい香月艦長のことだ。もう月村を説得したんだろう?」

シノン「えぇ、たぶん、彼女はまたガンダムに乗るわ……だけど」

 一緒に立ち上がったシノンの背はアレイよりやや低い。
 だが、見上げる形になっても胸を張るシノンの唇はまるでいたずらを思いついた子どものみたいに笑っている。

シノン「あなたをこのまま通信士に埋もれさせておくつもりも私にはないわよ」

アレイ「艦長……?」

 その微笑が何を考えているのか、氷坂アレイには見当がつかなかった。


 第二十三話 接近! 信頼への限界時間 完
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(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:15:24.26 ID:1b1hdwhT0<>
 今日はここまでです。

 アレイの設定は原作通りです。
 スタオペはいわゆるエヴァ枠の放送でしたが鳴かず飛ばずで残念に思っていました。
 まあ、当時はエヴァなんて全く知らず、スターオーシャンあたりからの6時アニメ習慣で観ていましたが、初めて観た本格的なSF作品で妙に思いいれがあります。
 原作ラノベも図書館にあったので全部読みましたが、初心者向けでかなりおもしろいですよ〜。

 あと、コアブとGパーツが同居してますが、こまけぇことは(ry

 また、今回のステージは見覚えのある方もいる思います。ヒントはサブタイトル。

 今回、三つ巴したサイズSSSの三人を紹介。

 共通技能
  魔法障壁(贄殿遮那) 受けるダメージをゼロにする。ENを20消費。
  地形移動コスト低下無視 名称はそれぞれフラッシュムーブ、赤い彗星、ブリッツアクション。

 高町なのは
  移動力/8 運動性/130 装甲/100 照準値/150
  特殊技能:Eセーブ 武器消費ENが80%になる。

 シャナ
  移動力/9 運動性/140 装甲/100 照準値/145
  特殊技能:フレイムヘイズ サイズ差補正無視+戦意高揚
        再攻撃 攻撃時、相手との技量差が20以上で自分に援護攻撃。
        連続行動 気力120以上で敵機撃墜時、もう一度行動できる。

 フェイト・テスタロッサ
  移動力/9 運動性/145 装甲/100 照準値/150
  特殊技能:疾風 加速使用時、移動力+1
        迅雷 毎EP、加速を使用する。


 ただし、今回のエースはドム二機を落としたりっちゃん。
 ボスボロットだって平和を守れるんだ!
 

 運転免許は合格して本格的に就活を再開していきます。
 点数は94点でした。本番の直前までボーダーは95かと思っていました。

 この後は前回搭乗したSCCSの補講。
 要は、組み立て式コクピットブロックです。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:17:03.32 ID:1b1hdwhT0<>  シンプル・カスタマイズ・コクピットブロック・システム=SCCS

 吹雪が開発したコクピット構造。
 コア・ブロック・システムを参考に発展させたコクピット。
 コクピットを本体から独立して作り、脱出、通信機能を格段に飛躍させた。

 外壁は僅かに傾斜させた鉄板を何重にも乗せて実弾攻撃の衝撃を減らす。
 吹雪曰く「直角三角形からヒントを得た」
 鉄板は層ごとに凹凸があったり、様々な兵器への効果を実施する。

 外壁の第一層は中が空洞になっており、高濃度のミノフスキー粒子が充満してIフィールドを展開する。
 この対ビーム層は脱出後、内部から剥離させることが可能。

 機体とはケーブルやソケットでつなげて制御する(第一層は上下がビーム層ではない)
 この装置には機体損傷時に破損する欠点があるが、むしろ被弾する練度の低い兵士の戦意を喪失させる役割がある。
 
 コクピットの上下には熱切断機能があり、万一、脱出機能が働かない場合に物理的に切り離すことができる。

 他にも兵士の生存確率を格段に上昇させる要素が満載。
 食料、水、酸素も豊富で海晴言うには「一ヶ月くらいはこの中で暮らせる」

 以上が南極条約の際に美夜がジオン・ギガノスに提供したコクピットブロック・システム。

 これを改良したものがシンプル・カスタマイズ・コクピットブロック・システム。

 要約すると、コクピットを個人の戦闘思考ごとに扱いやすくカスタマイズできるようにする設計思想。

 例えば、敵の攻撃に対して防御か回避かの選択は個人で大きく異なる。
 また利き腕でも技量そのものに差が出ることもあり、機能装置の配置には不満が出続けている。

 それらを解消したのが内部を部品ごと入れ替えられるようにしたSCCSである。

 簡単な例としては右利き用に配置されている部品を鏡写しのように左利き用にゴッソリ入れ替えることができるのだ。

 入れ替えの過を外部メモリにバックアップさせる事で別機に異動してもメカニック知識のない兵士でもカスタムすることが出来る。

 尚、SCCS技術は連邦が占有し、ジオン、ギガノスに渡る事はなかった。
 ただし、パイロットの操縦パターンに合わせて部品さえ入れ替えてしまう操縦システムは作業効率を下げてしまう。
 そのため、管理受けせずエースパイロット以外に実装される事は少なかった。


 しかも吹雪自身がフルオーダーメイドしたヒカルのコクピットはもはや別物である。
 ゲシュペンストとヒカルの腕の動きを直結させる為、シートを球状に包むように回転する円形レールを二つ付け、その上を二本のアーム

レバーが走るようにする。

 また、円形レールは床にある前後レールとも繋がって直線的な動きも可能。

 ただし、この装置だと、円形レールがヒカルの下――つまりシート部分にぶつかる。
 それを回避するために床とシートを繋ぐ部分を8×8マスのシャッターで開閉するようにして円形レールの軌道を確保。

 ペダルパーツもヒカルが踏ん張りやすいように位置をスライドできるように変更。

 言葉じゃ絶対に伝わらない。しかし絵心もクラフト技術もありません。
 どうにかイメージしていただくために試行錯誤した結果ですが、とりあえず輪ゴムを二つ用意してください。

 その輪ゴムで球を作ってください。一つをつまんで持ち上げてその上にもう一つを重ねるような形がラクです。
 それが円形レールです。その中にシートがあってヒカルが座っています。

 その円形レールの内側に操縦桿があって、腕の動きと直結します。

 こうやって説明している間にもどんどんボロが出てきますが、それら全ての回答は一つです。


 吹雪ががんばりました。


 このように、座っているのに立っているような感覚で立ち回りができるように吹雪ががんばりました。

 他にもおバカな立夏でも扱いやすいようにR−1の操作構造を簡単にしたり、吹雪ががんばしました。

 全部、吹雪のおかげです。
 ありがとう吹雪! 茅原補正は伊達じゃない!

 なんで素直にモビルトレースシステムにしなかったのか理解に苦しみます。
 映像作品ではモビルト(ryは安易に使用すると逃げ≠ニ言われたりますが、そうする義理はどこにもない訳だし……
 ぶっちゃけた話、ヒカルのコクピットをこの形にするのに免許の勉強以上に時間をかけてしまってしかも収拾ついてないとかいう……

 ただ、このコクピットを実現させられたら、映像的には相当映えると思います。やたらギミックあるし。

 以上です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/18(水) 17:42:12.39 ID:1b1hdwhT0<> 補講の補足

 一応、パイロットというのは両利きが条件(というかそうなる)です。
 コクピットももちろん、それを考慮して作られているはず。
 それでもやっぱり使い勝手は千差万別でしょう、きっと。

 教官クラスから言わせれば配置が云々なんてのは甘ったれだ!
 だけどそんな教官こそカスタムコクピットというオチ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/05/18(水) 21:50:54.09 ID:zjecFsqDO<> 乙、なんとなくわかった気がします、今日はりっちゃんに一票で、ところで非戦闘員への投票はアリですか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<><>2011/05/19(木) 02:07:16.78 ID:XrAXqg1AO<> 乙
第二次OG発売決定したね、OGsが一次扱いか
二次OGの主役格はイング、アリエル、ヒューゴが妥当か
イングが乗るのは予想通りだがまさか大破して生まれ変わるとはねエクスww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/05/20(金) 01:10:34.71 ID:5sc71gASO<> 一橋ゆりえ様に一票
ライディーンとゆりえ様の活躍はありますか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<><>2011/05/20(金) 10:25:38.39 ID:Vt5QircAO<> ついにニャーゴさんが主人公のスパロボが出るのか……胸がイグニションだな

すずかに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 22:53:43.73 ID:o3WbIFfK0<>
 第二十四話 Aパート

 地球連邦のギガノス軍攻撃艦隊は艦艇数一五〇〇からなる大規模な戦力である。
 各コロニーには数十から一〇〇隻。
 地球の各防衛ラインにそれぞれ数百隻。
 そしてギガノス侵攻の陰に隠されてジオンへ向けて発進されたレビル将軍率いる七〇〇艦隊。

 宇宙世紀0079――地球連邦軍は年百隻単位で大小多くの戦艦を投入し、その総数は一万を超える。

キョン「ハルヒ、都市はもう近い。速度を落とせ」

 連邦艦隊を遥か後方に捉えつつ、ギガノス軍元親衛隊の四機が月面を滑るように飛んでいる。

ハルヒ「連邦の総攻撃までもう八時間もないわ」

キョン「そうは言うが、ここまで近づけばもう何分かしか変わらない。むしろこれだけ速いと捕まるぞ」

ハルヒ「……わかったわよ」

 ゲルフ三機を大きく引き離していたファルゲン・カスタムが減速する。
 月面都市のドームが頭頂部から見え始めて四機が編隊の形を取り戻す。

古泉「おかしいですね」

 ふと口を開いたのは砲撃戦仕様のヤクト・ゲルフに乗る古泉一樹だった。
 戦場でまずこういうカンが働くのは古泉である。
 博学で常に周囲に目を配っているからだろう。

古泉「もう警戒ラインに入るというのに、帝国軍の動きが見受けられません」

キョン「連邦軍に集中しているからじゃないのか? 俺たちはそこをついてきた訳だしな」

古泉「それでも、ここまで近づいて無反応というのは妙ですよ」

キョン「……罠だって言いたいのか?」

 長門は相変わらず無反応だが、ハルヒのほうからはそれとなく緊張が伝わってきた。

古泉「わかりません。ただ、妙ではあります。まるで蛇に睨まれているような気分です」

ハルヒ「蛇ね、良い例えだわ、古泉くん」

 さらに速度を下げてキョンと古泉の間に並んだハルヒがぐっと下唇を噛んだ。

ハルヒ「ギガノスで、蛇なんて呼ばれるのは一人しかいないわ」

キョン「――朝倉か!?」

 親衛隊のエースとして若手将校に名を馳せる涼宮ハルヒに対して朝倉涼子は軍部のお気に入りであった。
 いかなる命令も確実に遂行し、表沙汰に出来ない事案も容易に解決する彼女を毒蛇∞毒蝮≠ニいう異名がはびこっていたのだ。

キョン「どうする、ハルヒ?」

 軍の指揮をドルチェノフではなく、朝倉が執っているとなれば、どのような手を使ってくるかはわからない。

キョン「いっそ、ここは連邦に先に踏み込ませたほうがいいんじゃないか?」

ハルヒ「あたしたちは戦争に行くんじゃないわよ、バカキョン」

 部下の提案をぴしゃりとはねつけてハルヒは再びファルゲンの速度を上げた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 22:54:12.06 ID:o3WbIFfK0<>
ハルヒ「目的はギガノスの降伏を呼びかけることよ」

 呼びかけるとは言っているが、それが失敗することは目に見えている。
 ドルチェノフがハルヒの言葉を聞いて降伏するはずがない。
 よって、ハルヒがすることはただひとつ――左遷された親衛隊を起点にクーデターを起こすことだ。

 そして、ドルチェノフのギルトール殺害を告発し、元老院の主導を奪回する。

 ドルチェノフが行ったことをそっくりそのまま返してやるのだ。

古泉「やはりおかしいですよ、涼宮さん」

 既に防衛ラインに侵入しているというのに、敵機はおろか警報一つ出てこない。

ハルヒ「有希、状況は!?」

 さすがに異変を嗅ぎ取ったのか、フォーメーションの後ろにいるレビ・ゲルフに訊く。

長門「機体、レーダー、反応無し。警備システムが稼動していない模様」

キョン「迎撃を放棄しているってのか?」

 状況解析を反芻している間にギガノス帝国というドームは眼前に迫っていた。
 普通ならば、既にミサイルの雨が降り注いでいるはずだが、長門の言うとおり、運用すらされていないようだ。

長門「それだけじゃない」

 珍しく長門が二の句を継いだ。
 必要以上のことをしゃべらない彼女の言うことは、逆に言えば全て重要な事である。

長門「帝国内は既にもぬけの殻、市民さえ確認できない」

 もはや、完全に異常である。
 月面都市まで200メートルまで距離を詰めてファルゲンが停まった。

ハルヒ「どういうこと……? 軍はおろか、市民まで含めて都市を放棄したの?」

キョン「だとしたら、どこに逃げたって言うんだ?」

古泉「人口三百万近い市民を全て連れて……とにかく、都市は既に空き城です。踏み込むのは危険でしょう」

ハルヒ「いったい何をするつもりなの、ドルチェノフ……」

 気持ちの悪い予感に逆らえず、ハルヒは機首を返すしかなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 22:55:26.56 ID:o3WbIFfK0<>
 ギガノス都市から400メートルばかり離れたクレーターに造られた資材基地にハルヒたちは身を隠して様子を窺うことにした。

ハルヒ「それじゃあ、古泉くん、有希、お願いね」

長門「了解した」

古泉「では、言ってまいります」

 ノーマルスーツにバーニアユニットを装着した古泉と長門が基地を出て行く。
 待っているだけは性に合わないハルヒは連邦軍がやってくる数時間を利用して都市を諜報することにしたのだ。

 当然、本人が出て行こうとしたが、止められて古泉、長門のグループと入れ替えになることになった。

キョン「ハルヒ、こっちを手伝ってくれ」

 基地と宇宙を仕切る扉を閉めたハルヒにキョンが声をかける。
 振り返ると、キョンはコンテナを運んできていた。

キョン「この間に補給を済ませておこう。交換したい部品もあるしな」

 コンテナをファルゲンとゲルフの間に置く。
 ロックを外してコントロールユニットに立って頭上の作業用アームを操作し始める。

ハルヒ「ここまでもぬけの殻とはね。本当にどこにいったのかしら?」

 キョンの横に移動して愚痴るように言った。

 この資材基地もギガノスが開国時に奪取したものだが、都市同様に放棄されていた。
 それも、殆どの機械、資材は放置したまま、人員だけがまるごと消えてしまっている。

 普通ならば、一グラムも資源を渡さないようにと移動させるものだが、手を付けられた跡がないのだ。

ハルヒ「考えられるのは二つね、運ぶ時間がないと判断したのか――」

キョン「その必要がないということか……だが、こうまで完璧に放置するのはおかしいぞ」

ハルヒ「おそらく、ドルチェノフはもうギガノスに戻る気はないんじゃないかしら」

キョン「何だと、そりゃどういうことだ?」

 オート操作で弾薬の詰め替え作業を命令したキョンがハルヒを見る。
 彼女は脚部の装甲版を外しながら呟くように述べる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 22:56:06.70 ID:o3WbIFfK0<>
ハルヒ「ギガノスを捨てて、新たな土地を求めるのよ……」

キョン「地球かジオンか!?」

ハルヒ「ドルチェノフの性格から逃げることはないわ。たぶん、地球への降下作戦を強行するつもりよ」

キョン「だが、市民を連れて大気圏を突破するか、普通?」

 第一、連れて行く艦がないはずだ。
 三百万の市民が乗り込むなど、ギガノスの全戦艦を動員しても不可能だ。

 そんな風に敵の行動を推察しながらの作業が一時間を越えて古泉、長門が戻ってきた。

古泉「やはり都市内部に人はいません。公共施設には施錠がされていました」

ハルヒ「そう、やはりドルチェノフはギガノスを放棄したと見て正しいようね」

古泉「合わせて報告します。連邦軍は既にギガノスの制宙圏に侵入してきています」

ハルヒ「思っていたより速いわね、あと数十分で到着といったところかしら」

キョン「は、ハルヒ!」

 レビ・ゲルフを通してレーダー探索をしている長門についていたキョンが大声を出した。

ハルヒ「どうしたのよ、キョン?」

キョン「もう見える……二時の方向だ!」

 呼びかけに応じてハルヒたちはその方向へ走っていく。
 二時方向といえば、ギガノス都市がある方向だ。
 そして、連邦軍の進軍ルートの側面でもある。

ハルヒ「な、何、あれ……?」

古泉「小惑星……いや、あれは……」

 都市のドームを覆いつくすように巨大なものが浮かび上がってきていた。
 古泉の言う通り、一つの資源衛星ほどのサイズだが、どう見てもそれは人工物であった。

 表面に敷き詰められた無数の砲台、それを取り囲む戦艦――さながら要塞と呼ぶべきだろう。

長門「ギガノス機動要塞。開国時から設計されていた圧倒的火力による殲滅戦用巨大戦艦」

キョン「三百万市民の居所もハッキリしたな」

 それほど、機動要塞は大きかった。
 ドームを覆い尽くすほどの物量、まさにギガノスの総力といったところだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 22:57:01.13 ID:o3WbIFfK0<>
 ギガノス機動要塞 司令部

ドルチェノフ「グフフフフ……この機動要塞の前では、連邦の艦隊など赤子も同然よ……」

 眼下のモニターからは巨大要塞の出現に泡を食っている連邦軍の様子が手に取るようにわかった。

ドルチェノフ「さぁ、さっさと攻撃を開始せい!」

ギガノス通信兵「はっ!」

ドルチェノフ「連邦の奴らをこの月面のクレーターに沈めてしまえい!」

 全身にハリネズミのごとく張り巡らされた砲台が一斉に連邦軍に向けられる。

ドルチェノフ「攻撃開始!」

 シュドォッ! ズドドッ! ドゴォッ! 怒涛の勢いで砲弾が煙幕をつくり、艦隊を覆い尽くしていく。

ドルチェノフ「ガハハハハハハハ! このギガノス無敵要塞があれば、連邦軍はおろかジオンも異星人も敵ではないわ!」

 モニター上で次々と撃沈していく戦艦を見て、ドルチェノフは高笑いを止められない。

ドルチェノフ「クク、グフフフフ……こうなれば止まらんぞ……地球圏をワシの勢力下に置き、ワシは地球連邦の総督となるのだ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 22:58:03.73 ID:o3WbIFfK0<>
 ギガノス 資材基地

ハルヒ「まさかあんなものを本当に完成させていたとはね」

 ノーマルスーツのヘルメットを装着してハルヒは呆れ半分の褒め言葉を吐いた。

古泉「なんだかんだと言っても、ドルチェノフは戦争に関しては才覚があるということでしょう」

ハルヒ「ふん、あんなのに従う国民も国民ね。帝国にはほとほと愛想が尽きたわ」

キョン「ハルヒ……」

ハルヒ「ギガノスの理想はこの月に朽ちたのよ。あの日、小父様が倒れられた瞬間に……」

 バイザーを下ろし、コクピットへ泳いでいく。
 足をかけ、手で掴まり、彼女は部下を、友人を見下ろした。

ハルヒ「さぁ、幕を下ろすわよ。主役のいない舞台を続けても、醜い滑稽劇が出来上がるだけよ」

 コクピットに滑り込み、ハッチを閉じる。
 電源が点いて、モニターが明るみを増していく。

 サブモニターに友軍機の情報が映し出されていく。

 ヤクト・ゲルフ――細やかさと図太さを併せ持った古泉一樹は、政治的パイプも持っていて、ハルヒを応援してくれた。

 レビ・ゲルフ――常に精細な情報を収集して、的確に支援を行ってくれた長門有希がいなければ、重慶の基地に倒れ臥していただろう。

 ゲルフ・マッフ――ぶつくさと文句を言いながら、いつも助けてくれた――

ハルヒ「さようなら、小父様……あたしはこれから、あたしのやり方で、理想を追い求めるわ!」

 基地から、蒼き鷹が飛び立った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/05/23(月) 23:54:12.25 ID:o3WbIFfK0<>
 ストーリーの大体の流れは同じですが、細部では全く異なっています。
 ハルヒはギガノスに見切りをつけていますが、原作のマイヨはそんなことありません。
 原作ならここでD−1がある事情でギガノス側に寝返ったりします。

 このように、ストーリーの本筋は踏襲していますが、内容は別物になっています。

 理由は単純、キャラクターが違うから、それぞれの考えていることも変わってくるのです。

 このSSで一番性格が違っているのはやはりハルヒでしょう。

 ただし、これを原作改悪と言われると弁解の機会が欲しくなります。

 原作でのハルヒがあのような性格になったのは、環境に不満があったからだと思っています。
 彼女にはのめりこむものがなかったというべきでしょうか。
 逆に言えば、ハルヒの性格は周囲の環境に依存するものだと思われます。
 
 原作ハルヒの実家がどのようなものかは不明ですが、ギガノス版ハルヒは技術エリートの家に理想家の小父という環境でした。

 結果として彼女の性格は革命主義のエリート体質になった訳です。

 とはいえ、彼女ほどに育った環境の違うキャラもいないでしょうから、それほどギャップが出る人もいないと思いますが。


 次回のBパート、もしくはCパートでドラグナー編は終了です。

 そしたらシノたちが空気になる?
 そんなことは(多分)ないので安心してください。

 もちろん、ゆりえ様も活躍します。
 後半の地上は殆ど妖魔が相手ですからね。
 しばらく我慢してください、三ヶ月くらい。

 非戦闘員への投票もアリですが、反映させられるかは不明です。
 誰に投票されるか見当もつきませんから。

 第二次OGですが、MX大好きな身ですが、PS3ないので買いません。

 基本的に買う条件は1.プルツーが出てる 2.PSPのどちらかなので。

 そういう訳でMXPは最高でした。

 以上です。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/24(火) 00:00:45.01 ID:MGxKHeylo<> 乙
別にキャラにそこまで違和感は感じないな
ミルキィチームに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/05/24(火) 02:14:57.10 ID:hDc+kxtAO<> 乙、そういえばMXではここらでやり込み派か、てメタ発言あったなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<><>2011/05/30(月) 15:54:03.93 ID:kIzyiENAO<> ハルヒ期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:30:02.78 ID:Ueu5zhrT0<>
 第二十四話 Bパート

 ホワイトベース

ミユリ「敵、巨大要塞からの攻撃で、連邦軍の損害10%を既に超えました!」

シノン「凄まじい制圧力ね……これがギガノスの切り札だったのね」

アレイ「要塞の進路は地球に向けられている。このまま降下するつもりのようだ」

シノン「あれが地球に降りたら途轍もない被害が予想されるわ。何としてでもここで食い止めます!」

 凛とした声に艦橋がピシッと締まる。
 それはモニター越しの格納庫にも伝わったらしく、発進の合図が続々と届く。

霙『天使霙、アルトアイゼン、スタンバイ』

海晴『天使海晴、ヴァイスリッター、いつでもOKよん』

珠姫『川添珠姫、ダンバイン、いけます』

紀梨乃『千葉紀梨乃、ボチューン、いけるよ!』

 ホワイトベースのカタパルトは前後二機一組が左右で二基だ。
 そこから、経験豊富な正規軍人の二人と機動力に優れたオーラバトラーがまず出るのは決定された基本戦略になっていた。

唯『マジィィィィン・ゴー!』

夕映『チェェェンジ・ゲッタードラゴン! スイッチ・オーンッ!』

 射出装置が牽引される間に牽引を必要としないスーパーロボットが発進される。

 ジェットスクランダーを噴かすマジンガーZの上で三機のゲットマシンが合体してゲッタードラゴンが宇宙に立つ。

シノ『天草シノ、ドラグナー1、行くぞ!』

アリア『七条アリア、ドラグナー2、出ます』

スズ『萩村スズ、ドラグナー3、いきます!』

ヒカル『天使ヒカル、ゲシュペンストTYRE−S、出るぞ!』

 三機のドラグナー、ヒカルのゲシュペンストが続き、次に五機のバトルマシンが一斉に飛び出す。

「「「「「レェェェェッツ・コンバイィィィィィン!!」」」」」

 五体のローゼンメイデンがバトルマシンを介して、コン・バトラーVに合体する。

翠星石『コン・バトラーV! ですぅ!』

ゆりえ『ラァァァァァイディィィィィィィィィィン!!』

氷柱『いいわね、立夏!』

立夏『チャオ!』

 ライディーンの後に氷柱のゲシュペンストTYPE−R、立夏のR−WINGが出撃する。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:30:28.84 ID:Ueu5zhrT0<>
「「「「クロォォォォス・ファイッ! ダン! ガイ! オー!」」」」

 白金のロボット、ダンガイオーにミルキィホームズが乗って出る。

こなた『ブライガー、いっくよー』

 シンクロトロンでブライサンダー、ブライスターから変異したブライガー。

 残りは二機となったところで、カタパルトのスタンバイランプが点灯しなかった。

シノン「すずかさん、どうかしましたか?」

すずか『えっ?』

 呼ばれてモニターに映されたすずかは自分の番が来たことに気付いていなかったようだ。

すずか『す、すみません、すぐに出ます』

アリサ『すずか、ホントに大丈夫なの?』

 Gアーマーで待機中のアリサが気にかかって訊くが、すずかはぐーっと小さく拳を握る。

すずか『うん、大丈夫だよ、アリサちゃん』

アリサ『そう……じゃ、先に行くわよ!』

 Gアーマーが発進する。
 それを見送ってからすずかは表情を落ち着かせた。

すずか『月村すずか、ガンダム、いきまーすっ!』

 勢いよくガンダムが飛び立っていく。
 それを不安げに見ていたのはシノンだけではなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:31:41.37 ID:Ueu5zhrT0<>
 一番最初に出た四機はギガノス機動要塞から出撃してきたメタルアーマーとすぐに交戦に入っていた。

海晴「いくわよ、霙ちゃん」

霙「速く撃て」

海晴「もうっ!」

 速度を抑えたヴァイスリッターの長い砲身が敵部隊に向けられる。

海晴「始まりの朝はこれいっぽん、オクスタンランチャーのEモ〜ド〜」

 ビュォォーッ! ガンダムのライフルと同威力だったヴァイスリッターのビームも今では調整されて高威力のキャノンと同等になっている。

ギガノス兵「うおぉっ!」

 ズガガァッ! 二機のダインの腕や脚をかすめていく。

 そこに肉迫するアルトアイゼンの角が赤く光る。

霙「ヒートホーン……!」

 ズジャァ! 一機を一突きで仕留める。もう一機にもダンバインが両刃の剣を構える。

チャム「やっちゃぇぇぇ!」

珠姫「はぁぁっ!」

 ガシュッ! 唐竹割りに振り下ろした刃がダインの頭頂部にめりこみ、それを支えに棒高跳びのように高く舞い上がり、前へ宙返りをして更に一機に体当たりする。

ギガノス兵「うあっ!」

珠姫「そこっ!」

 逆さまになる視界で珠姫は正確に剣を払ってダインの首を切った。

紀梨乃「たぁーっ!」

 ザシュッ! ボチューンに乗る紀梨乃も突出してきた一機を倒す。

 その後ろから、重厚なスーパーロボットが抜けていった。

唯「ロケットパーンチ!」

夕映「ダブルトマホゥゥゥク・ブゥメラン!」

 ズドォッ! ギャリィィッ! 鉄拳と戦斧がそれぞれギガノス兵を撃墜する。

 ホワイトベース部隊の破壊力に敵兵が怯むのが判る。
 その隙を突いて後ろから来る第二、第三部隊が左右に分かれていった。

シノ「敵を引き付けるぞ、スズ、アリア!」

スズ「了解!」

アリア「大きい花火をあげるわよ〜!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:32:33.62 ID:Ueu5zhrT0<>
シノ「ゆくぞ――ドラグナーはここにいるぞ!」

 ガガガガガガガガッ! 第二部隊の尖兵のシノがハンドレールガンをばら撒く。

ギガノス兵「D兵器だ! 奴には一等の勲章が懸けられているぞ!」

 開発前から辛酸を舐めさせられていたギガノス兵がドラグナーへ集中して追いかけていく。
 後ろにダンガイオーとコン・バトラーVがつくが、音速を出すメタルアーマーには敵わない。

ネロ「えぇい、とにかく撃つよ!」

翠星石「がってんですぅ!」

コーデリア「ショルダーカッター!」

真紅「ロックファイター!」

 シュボボボッ! ダンガイオーの肩から十字刃が、コン・バトラーVの指先からは小型ミサイルが飛んでいく。

 彼女らに敵が向かっていくおかげで、第三部隊は比較的たやすく目標地点へ急ぐことが出来た。

氷柱「いいわね、立夏!」

立夏「オッケー、ぎゅっぎゅ〜ん!」

 第三部隊の先頭はR−1が変形した戦闘機R−WINGだ。
 二機のゲシュペンストはその影を守るように並んでいる。

ヒカル「氷柱、来るぞ!」

氷柱「わかってるわ、ヒカル姉様!」

 ギュオッ――追跡してくるダインに向かっていき、二人は同タイミングでミサイルポッドを発射した。

ギガノス兵「このっ! 舐めるな!」

 ズドドドドドッ! ダインが発砲してミサイルが全て誘爆する。

 出来た煙に飛び込んでいくのがヒカル、立ち止まるのが氷柱だった。

ヒカル「斬り抜ける!」

氷柱「いきなさいっ!」

 ジャァァァッ! シュパァッ! ネオ・プラズマカッターとスラッシュリッパーが各々、刃に敵を捉えていく。

氷柱「右、左――左が速いッ!」

 煙の機微を見分けると、氷柱は素早く機体ほどの長さを持つビームランチャーを脇に抱えた。

氷柱「当たれぇっ!」

 ギュボォッ! ヴァイスリッターのオクスタンランチャーから実弾倉を抜いて携行しやすくした銃の口から鋭くビームが走り、敵機を貫く。

ギガノス兵「うおぉぉっ!」

 右手の方からダインが迫る。
 TYPE−Rの長い砲身に、レーザーソードで接近戦を挑むが――

氷柱「この私が――!」

 左手レバーのフィンガースイッチを1,3,4から2,4へ変更する。
 同時に右手レバーをいっぱいに引き、90度右へ動いたカメラの十字戦にダインを捉える。

氷柱「取り回しの利かない武器を作るわけないでしょうが!」

 親指でロックオンが完了する。
 すると、ビームランチャーの側面が燈色に発光してダインの肩口へ食い込んでいった。

ギガノス兵「馬鹿な……うわぁぁぁっ!」

 ドゴォォォンッ! メタルアーマーの爆発をバックにゲシュペンストはヒートサーベルを仕込んだビームランチャーをくるりと回す。

氷柱「さぁ、さっさとかかっていらっしゃい!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:33:14.89 ID:Ueu5zhrT0<>
 立夏が向かう目的は廃棄衛星ES−5だ。
 機動要塞は正攻法での攻撃方法では被害が大きい。
 そのため、ラング・プラート博士が立案した作戦をホワイトベース隊が遂行するのだ。

立夏「わふーっ!」

 廃棄衛星に到達した立夏はR−1に変形して取り付いた。

立夏「んーっと、どれカナー……?」

 へばりついてペタペタと撫で回していくと、リンクケーブルソケットを見つけ出す。

立夏「めっけ!」

 星が出そうなくらい目をパチパチさせてR−1の手首からケーブルを出して接続する。

立夏「任務カンリョーッ! チャオ!」

 ピースサインを作ると、サブモニターに氷坂アレイのクールな顔が映る。

アレイ『確認した。作業を開始するから大人しくしていろ』

立夏「ハーイッ!」

 作業とは、要するにハッキングのことだ。
 R−1を介してホワイトベースのメインコンピュータペガサス≠ゥら生きてる$юi装置を探して起動する。
 廃棄衛星ES−5は宇宙世紀0050年代に打ち上げられた太陽光発電の実験機だったが、新設計の有用性が確保できなかったために捨てられたものだ。
 その大きさは直径140メートル。
 これを盾にしてハリネズミのようなギガノス機動要塞へ接近するのが作戦だ。

立夏「あーぁ、ヒマだーっ!」

 コクピット内で器用に手足を伸ばして立夏はだらけはじめた。
 ハッキング中はR−1は動くことが出来ない。
 ここに来るまでのR−WING飛行は楽しかったが、その分今がヒマである。
 隠し持ってきたクリームソーダのチューブを口につける。
 と、サブモニターが点いて一層クールになったアレイが映った。

アレイ『コクピット内の持込は禁止だ』

立夏「エェーッ! そんなこと言ったって、霙オネーチャンだってあんこ持ち込んでるヨーッ!」

シノン『それはいいことを聞いたわ』

立夏「アッ、ヤバッ……!」
 ピーッ、ピーッ 口を塞ぐ立夏に合図の音が響いた。

シノン「終わったわね」

 本当の作戦開始の合図だった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:33:40.71 ID:Ueu5zhrT0<>
 ギガノス機動要塞 司令部

通信兵「敵部隊、廃棄衛星に集結しています」

ドルチェノフ「グフフフ……盾にしようというのだろう。無駄だと言うことを思い知らせてやるわ……」

朝倉「……気になるわ」

 いちいち様になる仕草で相手の動向を探ろうとする朝倉はすぐに床を蹴って司令部を出て行く。

ドルチェノフ「どこに行くか?」

朝倉「用意をしておくだけよ。例の部隊も、いきなり実戦だからね」

ドルチェノフ「ウム、そうであるな。任せたぞ」

朝倉「それと、そうね……T6のポイントを注意したほうがいいわよ」

ドルチェノフ「T6か? 南極点ではないか」

朝倉「ホワイトベース隊の動きに乗じてこそこそしたネズミ……いえ、小鳥さんが来るかもね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:34:28.10 ID:Ueu5zhrT0<>
 廃棄衛星ES−5を盾にR−1と二機のゲシュペンスト、ブライガーが機動要塞へ迫る。

かがみ「いいわね、こなた? 攻撃は大型口径の武器に集中するのよ」

こなた「わーかってーるよー」」

 ブライガーのコズモワインダービームが銃口を向けるのは大型レールキャノンを二門肩に設置したドーラだ。

こなた「そーぉれっとー!」

 ズギュゥンッ! プラズマ光線が正確にドーラを撃ち抜く。

ヒカル「氷柱、立夏、私たちもやるぞ!」

立夏「オッケー!」

氷柱「狙い撃つわよ!」

 携行ビームガン、Gリボルバー、ビームランチャーが同じようにドーラを撃ち落とす。

 ズドォッ! ガカァンッ! ドドドドド……!

 ギガノス機動要塞から砲火が集中し、廃棄衛星といえども全てを受け止めきれない。
 まるで精密射撃をしているかのごとく端から削り落とされていく。

立夏「ひゃわぁぁっ!」

 ガズッ! 一発がR−1のすぐ右を破壊して立夏が悲鳴をあげた。

ヒカル「頑張れ、立夏! あともう十秒ちょっとだ!」

立夏「ムッキャーッ!」

 なかばやけっぱちで乱射する立夏。
 廃棄衛星はだんだんと落下していって、もう眼前に機動要塞が迫っている。

つかさ「いまだよ!」

みゆき「皆さん、退避してください!」

 相対距離を観測していた二人の声で、四機は弾けたように衛星の外壁を蹴った。
 このまま廃棄衛星ES−5は要塞に衝突し、波及効果で27%余りの機能が停止する計算だ。

 そのはずだったが――

 グゥン……!

ヒカル「なっ――!?」

シノン「えっ!?」

 その有様はホワイトベースからの目視でも確認できるものだった。
 間近で目撃したヒカルたちの驚愕は推して知るべきであろう。

 激突の直前、ギガノス機動要塞は廃棄衛星の通過軌道上からいなくなっていたのだ。

 どこへ消えたかと言えば、真横に300メートルばかり移動しただけ――

氷柱「ウッソでしょ!? そんなバカな話が――」

ドルチェノフ『グフフフ……見たかね、連邦の諸君。これがギガノス無敵機動要塞の真の力だ』

 氷柱の驚きに割り込んだのはドルチェノフの全方向回線だった。

ドルチェノフ『何をたくらんでいたかは知らぬが、この程度の小細工では機動要塞はびくともせんわ……ぬわぁっはっはっはっは!!』

かがみ「まずいわ、あれが当たらないとなると作戦が……」

氷柱「いいえ、まだよ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:35:18.77 ID:Ueu5zhrT0<>
 機動要塞からの弾幕を潜り抜けていた氷柱のゲシュペンストがR−1を引っ張って前に突撃した。

立夏「ひょぇぇっ! 何ナニオネーチャン!?」

ヒカル「氷柱、何をするつもりだ!」

氷柱「立夏! 私とアンタで衛星を押し出すのよ!」

 ナニが何だかわからないまま引っ張られていた立夏も、それを聞いてギンと目を光らせた。

立夏「リョウカイィーッ! チャオ!」

 ぎゅん――! ゲシュペンストから手を離して自律機動に戻ったR−1は手にしていたGリボルバーを投げ捨てる。

 機体と要塞を繋ぐ線上に衛星を捉えて、両機は挙動を揃えた。

氷柱「行くわよ、立夏! コード・VGP!」

立夏「ドライブ・オンッ!」

氷柱「アタッカー・フルドライブ!」

 ガシュゥッ! 同時に拳を構え、胸を張る。

氷柱「必殺!」立夏「ひっさつぅ!」

立夏<幸運>「T−LINK――!」

氷柱<努力>「ゲシュペンストォ――!」

立夏・氷柱<熱血>「「ナッコォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」」

 ズギャァン! ガァァァァァァァァ――ッ!!

 廃棄衛星に赤く燃える拳を打ち込み、そのまま加速して機動要塞へぶつかっていく!

ドルチェノフ『な、何だと!?』

 マヌケにも回線をつなぎっぱなしにしているドルチェノフの狼狽が届く。

立夏・氷柱「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」

ドルチェノフ『えぇい、落とせ! 撃ち落とせぃ!』

 ドゴォォォォン!! 命令が届く間もなく、廃棄衛星は要塞に激突した。

ヒカル「よくやったぞ! 立夏、氷柱!」

 ズドォン……ドゴォッ! ドドドォ……!

 接着したようにめりこんだ廃棄衛星が自壊機能を発動する。
 まるで、一人でいなくなるのは淋しいとばかりに衛星の爆発が要塞を巻き添えにしていく。

 ヒカルは結集してくるメタルアーマーから姉妹を庇うようにゲシュペンストを動かし、近づく敵には剣を叩き込んだ。

ギガノス兵「おのれ! 近づくな、包囲して殲滅しろ!」

ヒカル「そうやすやすとさせるものか!」

 離れたところから銃口を掲げる敵兵に対して、ヒカルのゲシュペンストがエネルギーを胸部に集中する。

ヒカル<必中>「メガブラスタァァァァァキャノン!!」

 ズギャァァァッ! 高収束のエネルギー砲が指揮官機のダインを撃ち落とし、そこを突破口にして包囲網から抜け出した。

ヒカル「氷柱、立夏、大丈夫か?」

立夏「イヤ〜、ちょっとクラクラするよ〜」

氷柱「ホントにこの攻撃、叫ばなくちゃいけないのかしら……?」

ヒカル「フフッ、なかなかいい叫びっぷりだったぞ」

 からかうように微笑む姉から赤みを帯びる顔を隠すようにして氷柱は話題を切り替える。

氷柱「私たちの任務はこれで終わりよね?」

ヒカル「あぁ、後は海晴姉たちの仕事だ」

 透過モニターで見る宇宙空間の遠いところでは真っ赤な航跡がチカッと光った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:35:48.15 ID:Ueu5zhrT0<>
 廃棄衛星の衝突のおかげで、機動要塞の下半分は大部分が動かなくなっていた。

霙「さぁ、踏ん張りどころの後はチャンス目だ」

 リボルビング・ステークの弾倉を取り換えて、霙は後方の三機に通信した。

霙「緩んだ地盤に私たちが突破口を開く」

唯「うしっ!」

夕映「いいですか、のどか?」

のどか「うん……! チェェェンジ・ライガー!」

 バシュッ! ゲッタードラゴンが分離してゲッターライガーにチェンジする。

海晴「準備はよろしくて?」

 芝居がかった風に海晴が促すと、アルトアイゼン、マジンガーZ、ゲッターライガーが進撃した。

海晴「さぁて、パーリィの始まりよん!」

 ビシュゥーッ! 光彩が強くて射程のあるオクスタンランチャーのEモードは戦力の薄い箇所への道しるべには最適になるのだ。

 だが、逐次変化を続ける三次元の戦場でそれを探し出すのは結構な精神統一が必要なのだ。

ギガノス兵「このぉぉーっ!」

海晴「あらっ……」

 そのために、ヴァイスリッターは隙だらけになるが――

珠姫「たぁーっ!」

 ドシュッ! それを護衛する勇敢な聖戦士がいるのだ。

海晴「ウフフッ、ありがとね、タマちゃん」

珠姫「はぁ」

チャム「なんだか二人って息ぴったしね」

海晴「フフッ、私たち、魂が幼なじみだったりするのかもね」

珠姫「えっ?」

海晴「でも、別の世界じゃもしかしたら私がタマちゃんを守ってあげちゃうかもね」

珠姫「???」

 年齢も性格も離れている相手の言葉の意味がわからない。
 ただ、近くにいるとなんとなくほうっておけなかったりすることは珠姫も感じていた。

紀梨乃「びぇーん! タマちゃんたっけてーっ!」

珠姫「あっ、部長……!」

 ほうっておけない人は一人じゃなかった。

チャム「タマキ!」

珠姫「うん! いっけぇぇーっ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:36:28.34 ID:Ueu5zhrT0<>
唯「スクランダーカッター!」

 ズギャギャッ! 紅の翼でゲバイを斬り裂き、折れた肘の照準は別のダインに向く。

唯「ドリルミサーイル!」

 シュボッ! ドドォンッ!

ギガノス兵「く、くそぉぉぉぉぉっ!」

のどか「チェーンアタック!」

 ジャァァァァーッ! ザシュッ! ゲッターライガーのチェーンで繋がれた左手が伸びてゲバイに突き刺さる。

ギガノス兵「ぐおぉぉーっ!」

のどか「てぇーいっ!」

 グォン……ドドォッ! チェーンを引き戻し、勢いで別のメタルアーマーにぶつける。

ギガノス兵「まだだ! 敵はたかが三機だ!」

 不思議なもので、機動要塞からの攻撃は依然として続いているのに、敵メタルアーマーにはかすりもしない。
 ギガノス軍もそれを解っているのか、まるで障害物のない空間で戦っているかのように仕掛けてくる。

霙「えぇい、面倒だ!」

 ガシュッ! 杭を打ち込んで一体を吹き飛ばしたアルトアイゼンがぐっと肩をいからせた。

霙「当たり所など知ったことか! どうせ死なんだろ!」

 ズドドドドドドドドドドドドドッ!! アルトアイゼンの両肩から吐き出された鉄球の投網が前方に展開していたメタルアーマーを飲み込んでいく。

 次女の霙も、ヒカルに負けず劣らずのオトコマエっぷりである。

霙「さっさと行け!」

のどか「はいっ! ライガーミサーイル!」

 ドシュゥッ! ゲッターライガーから発射された大きなミサイルをギガノス兵は避ける。

ハルナ「うしっ! 行けるわよ、のどか!」

のどか「うん! ライガー、ゴー!」

 霙が広げ、ライガーミサイルが開けたコースにゲッターライガーが突っ込む。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:37:05.21 ID:Ueu5zhrT0<>
 狙いは機動要塞下部からライガーでの侵入だ。

のどか「ドリルアームッ!」

 ギャルルリィィィィィィィィィィィッ!! まるで泥を進むかのようにライガーは突き抜けていく!

夕映「動力炉はどこにっ!?」

 ズゴォッ! 狭く敷き詰められた場所から急に広い空間に出た。

夕映「こ、ここは……!?」

 制止して三人は驚愕した。

 ゲッターの眼下には月面都市をそのまま持ってきたかのような都市が形成されていたのだ。
 しかも、この都市には人が暮らしている。
 多くの人が突如現れたゲッターを見上げては逃走から抵抗までの対応を迫られている。

ハルナ「アタシたちは帝国そのものと戦っていたってワケね……!」

のどか「もしも私たちが動力炉を破壊したらー……」

夕映「この人たちまで巻き添えになってしまうです……っ!」

 ガコォン……! 夕映が反応した先にあったのは要塞内都市の天井だ。

 そこが今、ゆっくりと開いている。
 円形の出入り口から降りてきたのは、鎧武者を思わせる意匠のメタルアーマー、ギルガザムネだった。

のどか「ゆ、ゆえ……!」

 仲間の驚きと恐れが伝わってくる。
 動揺に夕映も冷や汗を垂らしていた。

夕映「りょ、量産……!」

 先に出てきた金色のギルガザムネの後に、全く同じ威容でカラーリングはより武者のようになったギルガザムネが五機も追随していた。

朝倉「ふふ、先手って打ってみるものね」

夕映「くっ……のどか、チェンジするです!」

のどか「うん! オープン・ゲット!」

 バシュッ! 三機のゲット・マシンに分離する。

夕映「チェェェェェンジ・ドラゴンッ! スイッチ・オォーンッ!!」

 ガシュゥッ! イーグル、ライガー、ベアーの順に合体し、真紅のマシン、ゲッタードラゴンにチェンジした。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 22:37:31.63 ID:Ueu5zhrT0<>
夕映「いくですよ、ゲッタァァァァァビィィィィィィィィム!!」

 ビシュッ! ビシュビシュッ! 出力調整でゲッタービームを拡散させて飛ばす。

 ズバシュゥッ! 朝倉のギルガザムネが青龍刀を振ってビームをかき消す。

朝倉「散開、適度に包囲しなさい」

 ぐぉぉっ……! 六機のギルガザムネが散らばってゲッタードラゴンを囲んでいく。

のどか「ゆえ、ここで暴れたら……」

夕映「大丈夫です、時間通りならもうすぐ……!」

唯「とぉーっ!」

 ズバンッ! ライガーが空けた穴からマジンガーZが出てきた!

ハルナ「まだ、アタシたちにもツキはあるわね」

 ニッと笑うハルナ。

夕映「さぁ、やるですよ! ゲッタァァァトマホゥゥゥゥゥク!!」

 ずぉぉんっ! 二本の手斧を合成して一本の長柄の斧に変えた。

ギガノス兵「ギルガザムネのパワーを甘く見るな!」

 ジャキッ! 幅広の剣を手にしたギルガザムネがドラゴンに攻めかかってくる。

夕映「あなたたちも知るです! ゲッターの恐ろしさを!!」

 ぶぉぉっ! 両手で斧を掲げてドラゴンもぶつかっていく!

夕映「ロォング・トマホーゥクッ!!」

 ずばぁっ!! 鬩ぎ合う必要もなく斧は剣の刃を折ってギルガザムネを袈裟切りにした!

ギガノス兵「うおぉっ!」

唯「なんだかわかんないけど、やるよ!」

 見上げる形になっているマジンガーZが胸を張った。

唯「ブレストファイヤーッ!!」

 ゴォォォォォォッ! 最大30000度のブレストファイヤーだが、有人兵器に対しては大幅に威力を下げて使う。

 そのため、連射が可能となって分散しているギルガザムネを追いかけていく。

朝倉「この二体が相手じゃギルガザムネでも不利ね……」

 既に一機が落とされている。
 判断力の高さはギガノス軍でも随一の朝倉涼子は素早く機体を翻した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 23:10:22.87 ID:Ueu5zhrT0<>
 今日はここまでです。

 Cパートが完成したらまた投下します。

 もしかしたらDパートまでもつれこむかもしれません。
 あるいはもう一話引き伸ばすかもしれません。

 さすがに機動要塞陥落とドルチェノフ決闘を同時にやるのは厳しいです。

 おまけに朝倉さんがプロットを潰しに掛かってきます。

 また、勝手なオリ武器でビームランチャーが出てます。
 ヒカルのが強化されたのに氷柱のがないなんてと思って出しました。
 ていうか、二人とももはやMk-2化してます。

 下にまた補講があります。
 いつもどおり話半分で読んでいただけるとありがたいです。
 つうか、ほぼWikiの転用です。


 そしてWikiで一件。

 プレイヤーなら『スーパーロボット大戦Wiki』はご存知かと思います。

 私もこのSSを書き始める以前からお世話になっていました。

 ただ、第二次Zの発表の後、過負荷がかかりサーバがダウンした状態でした。

 そして近日、ttp://geocities.yahoo.co.jp/gl/hikari8707の日刊SRWブログさまの情報にて、事態を把握しました。

 詳細はttp://wiki.fdiary.net/SRW/にて。

 これが震災の影響なのかはわかりませんが、私しても無念の至りです。

 Wikiはあくまで非公式な立場でありますが、スパロボWikiの知識量はまさに膨大でいながら見やすく、ファンの間ではなくてはならないものだったと思います。

 これからは新しいスパロボWikiを応援していきたいと思います。

 このSSも絶対に完結させるので、よろしくお願いします。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/04(土) 23:11:16.99 ID:Ueu5zhrT0<>
 『熱』について

 自然界の熱

 太陽の中心 1500万度

 核兵器 1000万度

 地球の中心 6000度(太陽の表面とほぼ同等)

 大気圏再突入 1000度から3000度

 火山のマグマ 1000度から1200度

 宇宙空間 マイナス270度(ほぼ絶対零度)

 月の表面 マイナス18度(前後100度差あり)


 リアル系の耐熱装甲

 ガンダム 盾を使えば大気圏突破可能

 ダンバイン 強獣のなめし皮程度

 オーラバリア 核兵器以上

 ゲシュペンスト 単独での大気圏突破は不可能

 ドラグナー 描写なし


 スーパー系の耐熱装甲

 マジンガーZ 核兵器以上

 ゲッターロボ マグマぐらいは余裕

 コン・バトラーV 4200度くらいまで

 ダンガイオー 大気圏は余裕

 ライディーン マグマは余裕

 ブライガー 太陽系最強レベル
 

  補足
 基本的に原作での劇中描写設定。
 ゲシュは同等の装甲を持つR−2の描写から。
 コンVは特急指令ソルブレインを参考。
 ブライガーは続編のバクシンガー準拠。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/05(日) 09:47:08.52 ID:G1lMyTDDo<> 乙
シノに朝倉をぶちのめしてもらいたいですな
というわけでシノに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/06/05(日) 21:05:22.94 ID:uKvnWpiAO<> 乙、wikiのこと知ったときはショックだったわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<><>2011/06/08(水) 03:09:20.16 ID:QgpFiUNAO<> 氷柱ちゃんペロペロしてランチャーでぶん殴られたいよぉ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:06:28.64 ID:SG2VffW00<>
 第二十四話 Cパート


 ギガノス機動要塞 都市ブロック

 朝倉涼子が撤退し、残された二機は退くも進むも出来なくなっていた。

夕映「どうしましょうか……我々の任務は動力炉の破壊ですが……」

唯「あのメタルアーマーをそのままにしたらまずいよねぇ……」

のどか「それにー……動力炉を破壊しちゃったらここに住んでる人がー……」

 敵の要塞内では外部との通信も不可能だ。
 ここにいる四人で行動を決定しなければならない。

ハルナ「やれやれ、何も動力炉の破壊だけが作戦じゃないでしょう」

 肩をすくませたのはベアー号のハルナだ。
 もともとは頭のいい(唯以外)二人はその意図をすぐに読む。

夕映「そうですね、少なくとも要塞としての攻撃力を奪えれば……」

のどか「一番は司令部の制圧だけどー……」

唯「どちらにしても場所がわからないと行きようがないよ」

夕映「いえ、とどのつまり行き先は一つです」

唯「ほえ?」

 ゲッタードラゴンが目線を上げた。
 ギルガザムネが出てきた穴が再び空き、そこから多くのメタルアーマーが降りてくる。

ハルナ「ま、そりゃそうね」

唯「あそこに入って進んでいけば見つかるんだね!」

夕映「そうと決まれば行きますよ!」

 ギュオォッ――! トマホークを分離させてドラゴンが接近していく。

夕映「ゲッタァァァァ・トマホゥゥゥゥゥゥク!」

ギガノス兵「させんぞっ!」

 ぐんっ! 先頭のダインがドラゴンの斧を避けたが――

ギガノス兵「ま、待てっ、うわぁぁ!」

 ドラゴンは後ろにいたゲバイに目を光らせていた。

夕映「ゲッタァァァァァァ・レザァァァァァァァァァッ!!」

 ギリィィィィィッ! 空振った手から剃刀刃を繰り出してゲバイの首を削り切る!

唯「冷凍ビーム!」

ギガノス兵「ぐおぉ!」

 避けたダインもマジンガーZの耳から出る光線で動けなくなって落ちていく。

夕映「マッハウィィィイング!」

唯「スクランダー、ゴー!」

 シュゴォォォォォ! 両機は一気に加速して出入り口を破壊して飛び込んでいった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:07:20.52 ID:SG2VffW00<>
 機動要塞に取り付こうとする部隊は開いた射出口から出てきた機体に慄いた。

連邦兵「あれは、新型メタルアーマーか!?」

 30機以上のギルガザムネが金色の朝倉涼子機に率いられている。

朝倉「徹底して潰しなさい」

ギガノス突撃兵「「「「ハッ!!」」」」

 ぐんっ――ギュオッ! 明解な命令一つでギルガザムネは散開してそれぞれに狙いを定めた。

連邦兵「敵は少ない! 囲め!」

 対する連邦の主力機はメタルアーマー・ドラグーンとモビルスーツ・ジムだ。

朝倉「無駄だよ」

 四機の編隊で囲もうとする連邦兵たちに朝倉は両手で巨大なレールキャノンを構えた。

朝倉「生きていられるかしら?」

 シュバァァァァァァァァッ!! 砲口から発せられたのは色彩が変容し続けるほどのプラズマだ。

連邦兵「こっ、この……なんだ!?」

 辛うじて避けることに成功したジムだが、プラズマの通過によってセンサーが異変を起こした。

朝倉「はい、さようなら」

 ゴシュッ……! レールキャノンを下げた朝倉は接近しながらミサイルポッドを落とす。

連邦兵「動け、うごっ――!」

 シュボボボボォッ! 金色のギルガザムネは既に加速して編隊を飛び越している。

 その後ろから迫り来るミサイルから逃げることは出来なかった。

朝倉「とりあえず、一隻沈めちゃおっか」

 ギルガザムネはレールキャノンを腰に戻してハンドレールガンを持って、最も先行していたサラミス級巡洋艦へ射撃を行う。

 ビシューッ! ドドドドッ!

 メガ粒子砲とミサイルで反攻されるが、朝倉はたやすく避けてブリッジに肉迫した。

朝倉「おしまいだね」

 ガガガガガガガガッ! 容赦なく銃弾の雨を浴びせて、ブリッジの中をミキサーでかき混ぜたみたいにする。

 さらに下りながら撃ち続けると赤く膨れ上がって爆発した。

朝倉「うん」

 自身の出来に満足して機首を返す。
 ただ、連邦もいつまでもやられっぱなしではなく、量産型ギルガザムネが三機落とされていた。

朝倉「へぇ、なるほどね」

 また一つ落とされたギルガザムネの映像を見て、朝倉はまるでスズメバチとミツバチみたいだと思った。

 通常のメタルアーマーの三倍以上の大きさを持つギルガザムネに対して、連邦は部隊を密集させて数で圧倒しているのだ。
 一機の巨大機に十数機が取り付いている。
 
 数で圧倒している連邦ならではの作戦だ。

朝倉「ていうか、これぐらいしかやり方ないよね」

 くすりと笑って朝倉はギルガザムネに青龍刀を握らせた。

 まずは一番近い僚機の援護――いいや、違う。

朝倉「あれだねっ!」

 通り越して一直線に向かっていく先にいるのは白金の機体だ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:09:21.51 ID:SG2VffW00<>
コーデリア「ッ! ネロ、来てるわ!」

ネロ「えーいっ!」

 シュバッ! 相対していたギルガザムネにダンガイオーは破邪の剣を振って牽制し、体を下方へ向けた。

朝倉「反応が速い――」

ネロ「ショルダーカッター!」

 バシュッ! バシュッ! 両肩から十字剣を発射するが、朝倉はなんなく弾く。

ネロ「こいつ、強いぞ!」

エリー「金ぴかです〜!」

 ギャキィンッ! 破邪の剣と青龍刀が火花を打ち合い、火花を散らす。

朝倉「それっ!」

 ガツッ! 押し込んでいた刀を上げて剣を逸らし、刃の腹で顔を殴ってよろめかせた。

ネロ「くっ、シャロ!」

シャロ「やってます!」

 機体の装置だけでは止めきれない時、シャロの念動力がダンガイオーの動きを止める。
 素早く復帰したダンガイオーの拳がギルガザムネの肩に当たる。

朝倉「堅い、援護して!」

ギガノス突撃兵「ハッ!」

 先ほどまでダンガイオーと戦っていた一機がハンドレールガンを手に背中を取った。

ギガノス兵「喰らえ!」

 ババババババッ! 統制の取れた弾丸がダンガイオーの足を穿つ。

ネロ「うぅっ!」

朝倉「ここまでよ」

 ギラリ――高く振り上げられた青龍刀が太陽の光りを反射した。

シャロ<不屈>「まだですっ!」

朝倉「なっ!?」

 ガキンッ! 明らかに崩れていた姿勢から剣を出し、青龍刀を受け止め、朝倉は目を見開いた。

 いや、ただ受け止めただけなら彼女もこれほど驚かなかっただろう。
 圧倒的不利な状態からダンガイオーはギルガザムネのパワーを跳ね返したのだ。

エリー「ブーストナックルっ!」

 ドドゥッ! 半ばやけくそ気味な告知の瞬間、ダンガイオーの両手が本体から離れて正面を貫く!

朝倉「くっ――!」

 足首のスラスターのみを器用に噴かして上半身を機体を後ろに傾けなければ、金色のギルガザムネの頭部はどこかへ行っていたはずだ。

朝倉「ただのスーパーロボットでもないのね……ッ!」

 笑顔の能面に確かな動揺が見られた。
 ダンガイオーの後ろを取っていたギルガザムネの更に後ろから五つの戦闘機が集結していたのだ。

朝倉「YG−07、避けなさい!」

ギガノス突撃兵「えっ!?」

「「「「「レェェェッツ・コンバイィィィィィン!!」」」」」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:11:02.48 ID:SG2VffW00<>
 ガシィィィィッ! 戦闘機が合体して巨大ロボットになった。

 バトルマシンのデータが採取されにくい故の奇襲攻撃だ。

翠星石<奇襲>「コン・バトラーVですぅ! Vレーザー!」

 シュビィィィィィィ! 完全にギルガザムネの隙を突いたコン・バトラーVの頭部からVの字型の熱光線が放たれる。

ギガノス突撃兵「あ、アサクラ様ァァァァァ!!」

 チュドォォォッ! 量産型ギルガザムネは爆散した。

朝倉「くっ……!」

 ドカッ! 気を取られた金色のギルガザムネがダンガイオーのキックで吹き飛ばされる。

 追い討ちをかけようとネロは破邪の剣を振る。

ネロ「やぁぁーっ!」

朝倉「――調子に乗らないで」

 バシッ――! ぞっとするような声音と共に軽く上がった手がまるで布でも払うようにダンガイオーの手首を弾いた。

朝倉<気迫>「あんまり、コケにされるのは好きじゃないの」

 ざっ――ざざ――……

コーデリア「なに!? レーダーが……!」

 ヴンッ――!

蒼星石「消えたっ!?」

ネロ「コーデリア!」

コーデリア「そんな、わたくしにもまったく――」

真紅「後ろよっ!」

 警告は遅かった。

朝倉<ハイパージャマー>「さぁ、誰が死ぬかしら?」

 ダンガイオーの頭上で青龍刀が掲げられている。

翠星石「どぉりゃーっ! ですぅ!」

雛苺「なのー!」

金糸雀「かしらー!」

 そうはさせるかとコン・バトラーVが57メートルの巨体でぶつかろうとするが――

朝倉「人形に死≠ヘあるのかしら?」 

 グォン……! ギルガザムネが90度左を向いた。

翠星石「げっ――!」

 真空を切り裂いて豪腕が青龍刀をコン・バトラーVの頭上に振り下ろされる!

蒼星石「くっ!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:11:31.89 ID:SG2VffW00<>
 バリッ! 接触の寸前に蒼星石が自ら合体を解除した。

翠星石「蒼星石!?」

 急に掛かるGに驚きながら翠星石は青龍刀の真下にいるバトルクラッシャーに悲鳴をあげた。

 バギィィ! 切られたというより叩き折おられたと言うほうがいい。

翠星石「蒼星石ぃーっ!」

蒼星石「僕は大丈夫だ、翠星石……でもっ!」

 ドドォン! 蒼星石が脱出し、バトルクラッシャーが爆発した。

真紅「一度戻りましょう。雛苺、金糸雀、バトルクラッシャーをお願い」

雛苺「うゆ!」

金糸雀「了解かしら!」

ネロ「このぉーっ!」

 ガキンッ! ガカッ! キィンッ! 

 激昂したダンガイオーの剣がギルガザムネにぶつかっていく。

朝倉「これ以上は構っていられないわ」

 ぶんっ!! 強い水平斬りがダンガイオーの胸部を引き裂いた!

シャロ「きゃぁぁっ!」

 軽症だが、朝倉が逃げるには充分な隙だった。

朝倉「プレゼントよ」

 ごしゅぉっ……! 距離を取った金色のギルガザムネの腹部が開き、大型巡航ミサイルが射出された。

 それだけではない。
 戦場に残存していたギルガザムネが撤退を開始し、全てが同じ巡航ミサイルを撃っている。

コーデリア「ネロ、落として!」

ネロ「わかってる! ダンガイビームッ!」

 ドドォッ……! 朝倉の撃ったミサイルは破壊したが、まだ二十発以上が残っている。

 ただし、地上で低空を飛ぶならばともかく、三次元空間である宇宙ではステルス性に長けた巡航ミサイルも容易に発見し、撃ち落すことはできる。

 恐ろしいのは、量産型ギルガザムネが放ったミサイルの矛先がホワイトベースに集中していたことだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:12:02.06 ID:SG2VffW00<>
ミユリ「ミサイル、こちらに来てます! あと二十秒!」

シノン「AMM<アンチ・ミサイル・ミサイル>、とにかくありったけ用意して!」

アレイ「船員で回れるものは全員、ミサイル倉へ! 何でもいいからミサイル迎撃を手伝え!」

 ホワイトベースの艦橋はこの異常な集中攻撃に蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

シノン「なのはちゃん、すずかちゃん、準備はできてる?」

なのは『は、はい!』

すずか『大丈夫です!』

 なのはとすずかは艦の直掩になっている。

 広すぎる戦場でなのはは小さすぎて陽動としての効果が低いと見られて、強力な魔法障壁を利用して艦を守る役割をしている。

 すずかはそのなのはの援護役だ。

シノン「とにかくこっちは迎撃ミサイルを撃つけど、撃ち洩らしが来るかもしれないから、お願いね」

なのは「わかりました!」

アレイ「艦長、C3、発射できる!」

シノン「許可なんていらないから撃って! 一秒たりとも無駄にしないで!」

アレイ「了解した。聞いたとおりだ、撃て!」

 伝達するよりも早くミサイルは発射されていた。
 数秒後にパッと赤い光りと煙が見えて、ミユリが報告した。

ミユリ「一基、破壊。さらに四基、来ます!」

シノン「操舵士はなるべく位置を固定させるようにして。これだけの数よ、回避行動なんて意味がないわ」

 次々と宇宙空間に爆発が生まれる。

 だが、その煙を二基のミサイルが抜けてきた。

アレイ「来るぞ、月村、高町!」

なのは『はい!』

すずか『いきます!』

 ガンダムとなのはが前に出て行く。
 二基のミサイルにハイパーバズーカとディバインバスターが並ぶ。

なのは『ディバイーン――』

すずか『照準――そこっ!』

なのは『バスターッ!』

 ズドドドォーッ……! 見事直撃して、ミサイルは破壊された。

ミユリ「やったぁ……」

 全員が冷や汗を拭う。
 ただ、シノンだけは別の予測に眉をしかめていた。

シノン(オトリとはいえ、これだけ集中的に狙われるなんて……敵は旗艦部隊よりもこちらを優先している……)
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:12:30.67 ID:SG2VffW00<>
 ホワイトベース 格納庫

翠星石「蒼星石、蒼星石!」

 運びこまれたバトルクラッシャーに速攻で翠星石がくっつく。
 彼女たちは酸素がいらないどころか真空でもボディに異常が出ない。

 これはさすがに人形だからという理由ではないはずだ。
 ローザミスティカの力かもしれないが、ドール本人たちにもわからないだろう。

翠星石「そーせいせきぃ……」

蒼星石「平気だよ……まったく、君は泣き虫なんだから……」

翠星石「だって、だって……」

蒼星石「僕を大好きな君のその顔が大好きだから……こうするのもたまにはいいかな……」

翠星石「いいわけねぇですよぅ……ばかそうせいせきぃ……」

律「おぉ〜い、早く次を入れさせてくれねぇかなぁ……」

 ボスボロットで回収作業を手伝っている律が気まずそうにバトルクラッシャーを押して運ぶ。

翠星石「でこすけ空気読むですぅ!」

律「ちくしょ〜! 今戦争してんだぞ〜!」

 バトルクラッシャーをどかすと、二機のゲシュペンストとR−1が回収されてきた。
 ただ、TYPE−Sはビームガンを外してエネルギーを補給するだけなので、船外作業だ。

ヒカル「氷柱、立夏、焦って来なくていいからな」

立夏「ハーイッ!」

氷柱「ヒカル姉様も気をつけてね」

ヒカル「あぁ」

 あっという間にヒカルは踵を返してホワイトベースを離れていく。
 その頼もしい背中は同時に物足りなさを年下の二人に募らせていることにヒカルは気付いていない。

立夏「ねーね、氷柱オネーチャン……立夏たちってやっぱりあんま信用ないのかなぁ……」

氷柱「どうかしらね」

 曖昧にはぐらかすが、氷柱にも確信はあった。

 燃料である。
 二人の機体にはそれぞれ姉たちに比べて半分程度の燃料しか入っていないのである。

 なお、脱出用の燃料はコクピットブロックに用意されている。
 半分程度の燃料ということは、他の人員に比べて戦闘時間は半分程度と見込まれているのだ。

 つまり――

氷柱「私たちはまだ半人前ってことね……」

立夏「うゆ……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:13:15.12 ID:SG2VffW00<>
 最新鋭機を駆る少女たちの活躍は内外に知れ渡っている。

 十ヶ月以上も戦争が続くことで若い女性が兵士となることも珍しいことではない。
 そして、数多いる兵士の中で彼女たちが選ばれた存在となったその理由は神のみぞ知るといったところか。

 だが、決して忘れてはならないのは、選ばれなかった兵士の数だ――

 機動要塞破壊作戦開始から二十七分で連邦は五百隻の艦艇、全兵士のおよそ40%以上を損失していた。

 だが、それでも連邦は撤退することをしなかった。

 連邦のパイロットは機動兵器の練度が低いために、精緻な作戦を有効的に進められないと示唆された。
 結果として、連邦が取るべき作戦は物量差で攻め続けて敵を疲労させ、その間に特殊工作部隊を展開することだった。

 陽動に陽動を重ねて本命となるべき作戦が無数に画策されている。

 その中でスーパーロボットはやはり最大の効果を持っているだろう。

ゆりえ『ゴォォォッド・ミサィィィィル!』

ギガノス突撃兵「このっ!」

 ババッ! ババババッ! ライディーンの腹部から発射されるミサイルがギルガザムネの銃で相殺されていく。

 一度は撤退したギルガザムネ部隊はインターバルを挟んで再び出撃した。
 要塞正面に展開していた連邦軍の包囲網を崩した後で、今度は手薄になっていた東ブロックに現れた。

ギガノス突撃兵「うおぉっ!」

ゆりえ『わわっ!』

 ガキンッ! 降りかかる実体剣にぎりぎりで楯を出して受け止める。

ゆりえ『ゴォォォッド・プレッシャァァァァァ!』

 ズゴゴォッ! 楯から振動波が発生し、剣を砕く!

ギガノス突撃兵「なんだと!?」

ゆりえ『ゴォォォッド・ブレィカァァァァ!』

 ザシュァッ! 楯から伸びた刃でギルガザムネの頭部を破壊する。

ゆりえ『ゴッド・バード! チェーンジ!』

 自律機動を失った敵に体当たりをして突き放してから、ゆりえはライディーンを巨鳥形態に変化させた。

 飛び立ち、向かう先にいるのは半分以下の大きさのGファイターだ。

ゆりえ『サンダー・バーン!』

 ズバァァァッ! ライディーンから放たれた稲妻がGファイターを追う敵機を撃ち落とした。

ギガノス兵「うぐぐっ!」

アリサ「やった、サンキューよ!」

ゆりえ『はい!』

つかさ「新型メタルアーマーの効果で、反撃が厳しいよ!」

 遅れてアリサの援護にやってきたブライガーが追跡してくるギルガザムネを牽制しつつ言う。

かがみ「これ以上の攻め込みは困難になるわね、ラインを二つ下げましょう」

アリサ「やっぱり、あのデカブツが邪魔ね……」

 Gファイターのアリサが見上げるギガノス機動要塞は今も無数の砲火を撃ち続けている。
 その圧倒的制圧力を奪えない限り、連邦はいたずらに兵力を削がれていく。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:13:50.96 ID:SG2VffW00<>
 メタルアーマー専用の通路を逆走しながらマジンガーZとゲッタードラゴンは、目に付いた区画を片っ端から調べていった。

 そして、その途中で思わぬ人物と再会したのだ。

のどか「メタルアーマーの反応。これ、ファルゲン!?」

唯「ハルヒちゃん!?」

 迷わずに両機は反応の方へ距離を変える。
 ファルゲンにはさらに三機が追随している。親衛隊だろう。

 広い空間へ出た。
 どうやらメタルアーマーの整備工場のようだ。
 そこで涼宮ハルヒを筆頭にした四人が交戦していた。

夕映「助けるですよ!」

 すぐにトマホークを出して投げつける。
 一発でダインに突き刺さって落とす。

唯「ロケットパーンチ!」

 鉄拳を飛ばし、二体を同時に倒す。

キョン「マジンガーとゲッターか!」

 やや押され気味であった元・親衛隊はこの援軍で士気が高まったのか、一挙に盛り返して敵機を全て撃墜した。

ハルヒ「さっきから要塞を賑わせていたのはアンタたちだったのね」

 以前の投降時に強化されたファルゲンでマジンガー、ゲッターの前に立ってハルヒは不敵に笑った。

ハルヒ「ありがとう、礼を言うわ」

ハルナ「目的は同じと考えていいのかしら?」

古泉「機動要塞の無力化でしょう。お力添えをいただけるのならば是非」

夕映「当然です」

ハルヒ「制御室の場所は有希が探しているわ」

有希「もう終わった」

 抑揚のない言葉にその場の全員が相槌を打った。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:14:21.78 ID:SG2VffW00<>
 戦況が変わった、とシノは肌で感じることができた。

シノ「唯君たちが成功したか」

 巨体に似合わぬ俊敏さで恐怖を振り撒いていたギガノス機動要塞がピタリと動きを止めている。
 ただ、動かなくなっただけで、ハリネズミのように伸びた砲口はまだ火を噴き続けていた。

 それらも待ちわびていたように前に出てきた連邦艦隊の集中攻撃で次々と沈黙していく。

スズ「要塞表面の損害、18%から一気に47%まで達しました」

シノ「よし、我々の作戦を開始するぞ、スズ、アリア!」

アリア「はい!」

スズ「了解!」

 近づいてきたゲバイを切り払って、三機のドラグナーが機動要塞の頭頂部へ加速する。
 これまで要塞を前後左右360度から観察して得た情報からD−3が導き出した答えの場所――司令部へ。

 ぐんぐんと最大戦速で突っ切るシノたちを防ごうとメタルアーマーが寄ってくるが、より後方からの射撃で撃破される。
 幻惑的なエネルギー光はヴァイスリッターだ。

 さらに真っ直ぐで細いビームランチャーが一発、二発とダインにぶつかって爆散させた。

 勝利までの道を駆け抜けながら、三機のドラグナーは肩に光子力バズーカを担いだ。

シノ「スズ、照準を頼むぞ!」

スズ「はい!」

シノ「アリア、エネルギーのチャージを!」

アリア「もうやってるよ」

 高性能な三つのAIがリンクして照準線がピタリと合い、パワーの充填が完了した。

シノ「一斉射撃だ! いけぇーっ!」

 最後にシノがトリガーを引くと、D−1、D−2、D−3のバズーカが同時に光りを放ち、要塞の一点に降り注いだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:15:07.56 ID:SG2VffW00<>  
 機動要塞 司令部

 こんなはずがない。
 ギガノス帝国総統ドルチェノフは揺れる総統専用椅子にしがみつきながら怒鳴った。

ドルチェノフ「こ、こらぁ! 何だこの揺れは!? 何が起こっておるかぁ!」

ギガノス通信兵「て、敵スーパーロボット及び蒼き鷹の一味が思考コントロール室を制圧しました!」

ドルチェノフ「ば、馬鹿なぁ! 何故あの場所がわかったのだ!!」

 彼の狼狽も仕方ないことだ。
 ギガノス機動要塞の要である思考コントロールシステムは完全に独立したダミー区画で発覚される可能性などありえないはずだ。
 例え裏切り者のハルヒ・スズミヤ・プラートが絡んでいるとしても、この要塞のことを彼女が知っているはずがない。
 
 しかし、何もハルヒは機動要塞のことを知る必要はなかった。

 彼女の配下には太陽系最強レベルのハッカーがいるのだから――

ギガノス通信兵「か、閣下! 連邦軍の艦隊が急速接近してきます!」

ドルチェノフ「う、撃て! 撃ち落とせぃ!」

ギガノス通信兵「駄目です! もう攻撃が――」

 兵の報告を遮って轟音が司令部を揺らし、緊急警報が響き渡った。

ギガノス通信兵「か、火器管制システムがダウンしてます! 通信も取れません!」

ドルチェノフ「どういうことだ!? いったい何が起きている!」

 こんなはずがない。
 ドルチェノフは再び念じた。
 それで全てが元に戻るなら、誰も苦労などしない。

ギガノス通信兵「敵艦隊、迎撃中のメタルアーマーを殲滅しつつ接近! このままでは470秒で接触します!」

ドルチェノフ「ま、守れ! 守るのだ! ネズミ一匹たりとも要塞に入れるな!」

 実際には、既に6機も要塞内にいるが、ドルチェノフはひたすらわめく。

ギガノス通信兵「閣下! 機動要塞北極部から侵入する機影あり! ディ、D兵器です!」

ドルチェノフ「な、なんだと!」

 転がりそうになりながら椅子から立ち上がると、ドルチェノフは側近の肩を掴んだ。

ドルチェノフ「お、おい、キサマ! キサマにワシのSP部隊を貸してやる。D兵器を見事討ち取って来い!」

側近「ほ、本官がでありますか!?」

ドルチェノフ「こんなときこそ、側近であるキサマがワシのために楯にならねばならんのだ!」

側近「そ、総統閣下ぁ!」

 あろうことかドルチェノフは側近のこめかみに銃を押し付けて司令部を出ていった。

 その場にいる誰もが逃げた≠フだと理解していた。


 第二十四話 Cパート 了

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/12(日) 18:33:16.85 ID:5pMSPB6zo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/12(日) 18:34:31.62 ID:SG2VffW00<>
 今日はここまでです。

 やっぱりDパートまでもつれこみました。
 それでも次回の更新でギガノス帝国編は終わります。

 ここまでの投票のまとめです。

 唯   6
 なのは 5
 らき 4
 ミル 4
 ハルヒ 4
 すずか 4
 シノ 3
 ゲタ 3
 律   2
 鬼畜 2
 珠姫 2
 朝倉 1
 立夏 1
 男爵 1
 ゆりえ 1
 氷柱 1

 意外と人気ならきすたとミルキィチーム。
 そして意外と不人気なべびプリとローゼンチーム。

 登場人物が増えるとやはりゴチャゴチャして難しいです。
 前回からの煽りか一言しか台詞がないアリサとか。

 おまけに、ギガノスはバリエーション不足なので書いてても辛いです。
 名前有りは2人、機体は3種類。
 仕方ないからギルガザムネ搭乗は突撃兵にしています。

 あと、第二十四話終了後は再び分岐が出ます。
 なので、地上、宇宙の選択をしますので、投票をお願いします。

 次回はやはり一週間後くらいになるでしょう。

 それでは。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/06/12(日) 20:39:01.57 ID:EMX6KLIAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<><>2011/06/15(水) 16:12:03.31 ID:YyrT5yZ30<> 宇宙とヒカルに一票
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/15(水) 20:38:35.85 ID:0evQ4kiDO<> すずかに一票。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:28:38.94 ID:fxGJ799C0<>
 第二十四話 Dパート


 制御室を破壊され、自慢の機動力を失った機動要塞は連邦の大規模艦隊を前に攻撃能力の79%を失っていた。

 その上、総督であるドルチェノフは司令部から逃げ出す始末――

ハルヒ「抵抗は許さないわ」

 ファルゲンで乗り込まれては、どうすることも出来ない。
 司令部にいる全員は諸手を挙げて投降せざるを得なかった。

ハルヒ「結構よ。ドルチェノフはどこ?」

 ドルチェノフがいなくなった後の指示に追われていた側近は銃口を向けられて泡を吹き出さんばかりであった。

側近「か、閣下は前線指揮を執られる為に――」

ハルヒ「逃げたのね。ま、そんなもんよね」

側近「閣下を侮辱するなど!」

ハルヒ「アイツは薄汚い盗人よ」

 ばっさりと切り捨ててハルヒは銃を掲げなおした。

ハルヒ「ギルトール元帥を暗殺し、ギガノスを掠め取った鼠賊。それだけよ」

 ガシュゥッ――振り返り、数歩距離を確保してからファルゲンは発進する。

ギガノス通信兵「元帥を暗殺……どういうことだ?」

 命拾いをして、冷静になった兵士達が囁きあった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:30:07.73 ID:fxGJ799C0<>
ドルチェノフ「どいつもこいつも馬鹿者めらが! ワシは総督なるぞ!」

 軍靴を響かせてドルチェノフ総督は再召集した親衛隊を前に自らギルガザムネに乗り込んだ。

ドルチェノフ「くそ! くそくそぉ! 百機以上いたギルガザムネが今や二十二機だと!?」

 起動するギルガザムネ。
 ドルチェノフ専用機は藍色のカラーリングが施されている。

ドルチェノフ「えぇい、アサクラはおらんのかぁ!?」

親衛隊「そ、それがまだ戻られていません」

ドルチェノフ「ぬうぅ、役立たずめが……よいか、お前たち!」

 元々は宇宙方面軍の最前線に立つ苛烈な将である。
 例え退路を失ったとしてもその声には迫力が籠もっていた。

ドルチェノフ「ワシはこれから起死回生の作戦を敢行する。キサマらはなんとしてでもワシを守れぃ!」

親衛隊「「「「ははっ!!」」」」

 哀れな彼らはその作戦がジオンへの亡命だとは知るよしもない。

ドルチェノフ「出るぞ、重力を切れい!」

 居丈高な号令で重力装置の電源が切られ、ギルガザムネは宙に浮く。

 自分を含め二十三機が発進体勢に入ったのを確認して、頭上のゲートが開いてゆく。

ドルチェノフ「ゆくぞ、ワシに続けぃ!」

 シュゴォォォ……! 浮上してゆくギルガザムネ。

 円筒形のルートに四基つけられているハンガーに背部をひっかける。
 そこからはハンガーが繋がっているレールに引っ張られて上へ昇っていく。

 ちょうど中間地点を通ったところで、警報が響いた。

ドルチェノフ「何事か!?」

ギガノス通信兵『そ、それが、D兵器の攻撃で上昇装置に異常が出ました!』

ドルチェノフ「何だと!」

 幸い、無重力地帯になっているので慣性に従い上昇は続く。

 ドドォン……! 突如、ギルガザムネの頭上で爆発が起こり、ルートに大穴が開いた!

ドルチェノフ「今度は何だ!?」

ギガノス通信兵『ディ、D兵器です! D兵器の三機が侵入してきました!』
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:31:12.84 ID:fxGJ799C0<>
 報告に頼るまでのもなく、レーダーがD兵器だと告げている。

ドルチェノフ「ぬうぅぅぅ! このワシに……総督の頭上に立つとは無礼者どもが!!」

 脚部のバーニアで機体を水平にし、ドルチェノフはハンドレールガンを構えた。

シノ「敵機か、仕掛けるぞ!」

アリア・スズ「了解!」

 ガガァッン! 煙の中から砲撃が放たれるが、ギルガザムネの肩当てで弾かれた。

ドルチェノフ「このギルガザムネには効かぬわ!」

 ガガガガガガガガッ!! 照準も合わせずに徹甲弾をばらまく。

 どうせ煙の中にいるのだから、所構わず蜂の巣にする。

ドルチェノフ「どうだ? むっ――」

シノ「はぁぁぁぁっ!」

 ぶわっ――! 煙を突き破り、ルナ・チタニウム合金の楯を構えたドラグナー1型カスタムが突っ込んでくる!

ドルチェノフ「おのれ!」

シノ「カラーが違う、指揮官機か!」

 ドカァッ! 楯を構えたままギルガザムネに体当たりし、右手にはアサルトナイフを握った。

ドルチェノフ「ぬぅぅ!」

 ザシッ! 首を狙った一撃だが、ぎりぎりで逸らされ、肩当てに突き刺さるに終わった。

ドルチェノフ「忌々しいD兵器めが!」

シノ「その声――まさか!」

 交錯の瞬間に流れ込んできた声にD−1の対話型コンピュータ・クララも同じ解を出している。

シノ「ドルチェノフ中佐か!」

ドルチェノフ「中佐ではない、総督だ!」

 ドラグナーで取り付こうとするが身じろぎして振りほどかれてしまう。

ドルチェノフ「ワシに逆らうとどうなるか思い知らせてくれる!」

 ガカカカカカンッ! 至近距離で銃弾を見舞うが、全てシールドで跳ね返されてしまう。

シノ「信頼性の高いガンダムシールドだ! ビーム兵器にさえ耐えられる!」

 基板に超鋼スチール、緩衝材に高分子素材による特殊樹脂を挟んで最表層をルナ・チタニウム合金を用いたシールドである。
 その対弾性と衝撃緩和力はガンダムによって証明され、ルナ・チタニウムを使用しないドラグーン、ジムにもこのシールドだけが採用されている。
 更に、常に被弾を避ける月村すずかの戦闘データからオートで防御行動を行う為、未熟なパイロットでも致命的なダメージを貰わずに済むようになっていた。

親衛隊「総督閣下!」

 爆発の衝撃から体勢を整えた量産型ギルガザムネがD−1へ両刃の実体剣を持って迫り来る。

アリア「それっ!」

 ドォンッ! D−2からの支援砲撃を受けてシノは後退する。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:33:23.69 ID:fxGJ799C0<>

ドルチェノフ「えぇい、逃がすな! 奴らを捕らえたものは将軍にしてやるぞ!」

 どうせ捨てる国だ。
 
親衛隊「「「「おぉっ!」」」」

 色めきたった親衛隊の半数がドルチェノフを抜いてドラグナーへ飛び込んでいく。
 しかし、侵入者は背後にもいたことをドルチェノフは忘れていた。

親衛隊「総督! 後ろから――うわぁぁっ!」

 ゴォォォォォッ! 真っ赤な光線が下方に残ったギルガザムネを飲み込んだ。

ドルチェノフ「今度はなんだぁ!?」

唯「マジーン・ゴーッ!」

夕映「マッハウィィィング!」

 ドゴォォンッ……! 十機のギルガザムネを瞬殺したマジンガーZとゲッタードラゴンが一挙にドルチェノフに迫る。

ドルチェノフ「役立たずどもが!」

 ギルガザムネが手に手榴弾を持った。

ハルナ「ちゃちな爆弾じゃ傷一つつかないわよ」

 ニヤリと笑うハルナだが、ドルチェノフは手榴弾を真上に投げた。

のどか「えっ!?」

 バシューッ! 手榴弾が爆発すると、強烈な光りがメタルアーマーたちを襲った。

シノ「ぐっ!」

親衛隊「センサーが!? 総統閣下ぁ!」

 ドルチェノフが投げたのは閃光と特殊な粒子で視界と通信領域をゼロにする光熱弾だ。
 自機には及ばぬように計算して投げたギルガザムネが混乱するメタルアーマーの中を突っ切っていく。

ドルチェノフ「わはははは! 見事だ! キサマたちはワシの楯となったのだ。戦死しても二階級、いや三階級も四階級も昇進させてやるぞ!」

 親衛隊にその声は届くことはない。
 D兵器も追い越してゲートから宇宙に出ると、ドルチェノフは更に非道の策をとった。

ドルチェノフ「ぐふふふ……憎きD兵器もスーパーロボットどもも、まとめて沈めてくれるわ!」

 シュボォォッ……! 赤い肩当てを開き、100連装デュアルミサイルポッドをゲートに向けて発射する!

 ドドッ……ドドォォォォォッ!! 

 ゲートがミサイルと爆煙に覆われて崩壊していく。
 ギガノスの威信をかけて建造したものを自らが逃げるために何のためらいもなく破壊しているドルチェノフはやはり国家の事など考えていないのだろう。

キョン「ドル……チェノォォォォォォフ!!」

ドルチェノフ「!?」

 ドスッ! 突然、横合いからゲルフ・マッフがギルガザムネにレーザーソードを突き刺した!

ドルチェノフ「ぬぅっ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:33:50.93 ID:fxGJ799C0<>
キョン「覚悟しろ、この豚野郎!」

 しかし、レーザーソードが刺したのは脇の装甲だけで、本体にはさしたるダメージはない。

ドルチェノフ「プラートの金魚のフンが、ワシに盾突こうとは愚か者め!」

 ばきっ! 唸りをあげた拳がゲルフの頬げたを叩き、蹴り飛ばす。

キョン「ぐっ――古泉!」

古泉「わかっています……!」

 ドォン! 取っ組み合っている隙に背後を取った古泉のヤクト・ゲルフが背中の大砲を撃ち、ギルガザムネに当てた。

ドルチェノフ「ぬぅぅ……木っ端どもが!」

 ぶぉんっ! 両刃の直剣を持ってゲルフに斬りかかるが、ヤクト・ゲルフの射撃に邪魔される。

ドルチェノフ「ぐぬぬ……!」

キョン「ドルチェノフ、ぶっ倒す前に聞かせてもらおうか!」

ドルチェノフ「何をだ!?」

キョン「ギルトール元帥暗殺の真犯人だ!」

ドルチェノフ「な、なんのことだ、ワシは知らんぞ!?」

キョン「とぼけるな! さっさと吐け! 元帥殺しはハルヒ・スズミヤ・プラート大尉ではなく、ドルチェノフ自らやったと!!」

ドルチェノフ「何の根拠があってそんな戯れ言を! 元帥殺しはプラート大尉だ、ワシではないっ!」

古泉「それがどうも、そうでは無さそうなさそうでしてね」

キョン「お前がやったんだろ、ドルチェノフ!」

ドルチェノフ「ワシではないっ! ワシではないぞ! 貴様は死刑だ、死刑にしてやるっ!!」

 ギルガザムネが激しく掴みかかる。
 ヤクト・ゲルフの援護を受けながらキョンは糾弾を続けた。

キョン「ハルヒは銃を持たずに玉座へ行き、お前は銃を所持していた。誰が銃を撃つつもりだったか、子どもでもわかることだ!」

ドルチェノフ「貴様は何者だ、ワシはギガノスの総統だぞ!」

キョン「その総統の名が欲しくて元帥を殺したのか!?」

 この時、この場を早く離れることばかりに意識がいっていなければ、周囲にレビ・ゲルフがいないことに気付けていただろう。

「うるさいっ! 貴様には関係ない、貴様は死刑だ、死刑だ死刑だ!」

 子供が駄々をこねるようにギルガザムネはめったやたらに剣を振るう。

ドルチェノフ「ワシは統一帝国ギガノスの総統だぞぉっ! 元帥殺しはワシではない、プラートがやったんだ! 断じてワシではない、ワシではないぞぉぉぉ……!」

 カキンッ! 剣がレーザーソードを弾き飛ばした!

キョン「うおぉっっ!」

 ドカッ! さらに蹴りが当たり、ヤクト・ゲルフを巻き込んで基地の壁面にぶつかった。

ドルチェノフ「ぐふ、ぐふふふ……そうだ、ワシが総統なのだ。総統に逆らったキサマは死刑なのだ!」

キョン「ぐっ……ならば、死刑になる前に真実を聞かせてくれ……」

ドルチェノフ「フフフ……いかなる死刑囚であろうとも最後の望みは叶えてやらねばならんな、聞かせてやろう。ハルヒ・スズミヤ・プラートは現場に居ただけだ、ヤツは犯人ではない。ただヤツは、一言も弁明せず国家に対する重罪人に自ら成り下がった……」

キョン「や、やはり貴様が……!」


ドルチェノフ「そうだ、元帥を射殺したのは貴様の言うとおり、ズバリこのワシだ!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:34:29.66 ID:fxGJ799C0<>
 まるで宇宙の権力者になったかのような大仰な所作でギルガザムネの腕を広げ、ドルチェノフは高笑いした。

ドルチェノフ「しかしワシは元帥射殺を後悔しとらんぞ……全ては国家のためにやったことだ。ギルトール元帥は間違っておった。ヤツは統一帝国ギガノスの長としてふさわしくない男だった。地球を壊してはならん! ヤツは口を開くとそればかりホザいておったわ。それが甘いというのだ! 戦に勝つためにはあらゆる手段を講じなければならんのだ……!」

古泉「ふ、ふふふ……」

 演説の後、最初に笑ったのは古泉一樹であった。

キョン「は、ははは……あっはははははは!」

 続いて、キョンが馬鹿笑いする。

ドルチェノフ「な、何だ! 何がおかしい!」

キョン「まだわからないのか、ドルチェノフ?」

 たった今まで死体のようだったゲルフの二機がすらりと立ち上がった。
 直後、回線に割り込んできた声にドルチェノフは目を剥くことになる。

『そうだ、元帥を射殺したのは貴様の言うとおり、ズバリこのワシだ!』

ドルチェノフ「!?」

 声と台詞はまぎれもなくつい今しがたドルチェノフが叫んだものだった。

ドルチェノフ「ど、どういうことだ……」

キョン「お前は俺たちだけに回線を開いているつもりだったようだが、ここにいるのは俺たちだけじゃなかったのさ」

 ゲルフがギルガザムネの後ろを指す。
 そちらを向くと、モノアイを光らせるレビ・ゲルフがいた。

ドルチェノフ「な、なな……何じゃ、あいつは!?」

キョン「お前も聞いたことがあるだろ、ハルヒの数少ない部下で、友達の……スーパーハッカーを」

長門「録音したデータを複製、ギガノス、連邦、ジオンを含めて全宇宙に伝播した」

ドルチェノフ「な、なな、なななな……」

 言葉にならない総統は強制的に再生する自らの高笑いを聞かされ続ける。

ドルチェノフ「う、ウソじゃ! ワシが今言ったことは全て嘘じゃ! ヤツに冥土の土産話を聞かせてやろうとしたことじゃ! お、おいそこのキサマたち! こやつらを召し捕れぃ! 階級も褒美も思いのままじゃぞ!」

 歯を鳴らしながら近くを滞宙していたメタルアーマーに命令するが、それらはギルガザムネに背を向けるや、投降のコールサインを出して連邦軍へ向かっていく。

ドルチェノフ「何故じゃ! 何故逃げる! ワシの命令が聞けんのか! ワシは総統なるぞ! ワシの命令を聞けぬものは全員死刑じゃ!」

 全ての部屋に通じているドルチェノフの声は、ギガノス兵の戦意を無くさせるのにじゅうぶんだったのだ。
 機動要塞も一切の攻撃行動を停止し、投降の構えを見せている。

ドルチェノフ「こらぁ! 勝手に、連邦に……敵前逃亡は死刑じゃぞ! 全員、この場で処刑してくれるわ!」

 ギルガザムネが腹部に装填していた大型巡航ミサイルを機動要塞に向けて射出した――が、それは要塞に当たる直前にへろへろと酒に酔ったようにふらついて、やがて全く無関係のほうへ飛んでいってしまった。

ドルチェノフ「な、何じゃ! き、機械にまでワシをバカにしくさりおって!」


『ハダカの王様気分はたっぷり味わえたかしら、ドルチェノフ元¢酷搖t下?』

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:35:14.80 ID:fxGJ799C0<>
 割り込み回線で嘲笑した声のほうを見ると、ドルチェノフは顔一杯に脂汗を浮かべた。

ドルチェノフ「き、キサマ! ハルヒ・スズミヤ・プラート!?」

ハルヒ「ドルチェノフ! アンタの所業もこれまでよ!」

 背負ったレドームの回転を止めたファルゲン・カスタム――蒼き鷹≠ェレーザーソードを抜く。

ハルヒ「亡き元帥に成り代わり、あたしが貴様を討つ!」

ドルチェノフ「ま、待て……早まるなプラート大尉! 全てはギガノスのため、帝国を勝利に導くためだ!」

ハルヒ「問答無用よっ!」

 ギュオォォォーッ! 大義≠ニいう名の疾風に代わったメタルアーマーがドルチェノフに襲い掛かる!

ドルチェノフ「くぉ、小娘がぁ!」

 ガキィッ! 後一歩のところでギルガザムネが素早く動き、直剣でレーザーソードを受け止めた!

ハルヒ「アンタをやらなきゃ、全人類が根こそぎ滅亡するのは必至の理!」

ドルチェノフ「黙れぃっ! かくいうギルトールも、劣性なる地球人類を抹殺しようとしていたではないかぁっ!」

ハルヒ「元帥はただ、宇宙世紀にふさわしい人類を求めていただけよ! アンタのような醜悪な奴こそ葬ろうとしていた相手なのよ!」

ドルチェノフ「ほざけっ! この機動要塞を貴様の墓場にしてやる! そして醜い屍を晒すがいいっ……!」
 
 ガンッ! ズシャッ! 鷹と武者が得物を振るい合い、鷹の爪が武者の膝を裂く!

 ガシュッ! 武者も負けじと剣を払い、鷹の翼をもぎる!

ハルヒ「くっ!」

 平衡感覚を一つ失ってファルゲンのバランスが崩れ、ぎらりとギルガザムネの目が光る。

ドルチェノフ「終わりだ、プラート!」

シノ「させるものかっ!」

 ズドドォッ! 下方から飛んできたミサイルに足を掬われてギルガザムネがよろめいた。

ドルチェノフ「ど、ドラグナー!? 何故だぁっ!」

シノ「お前のような者がいるから、私は戦争などという余計なことをしなければならなくなった」

 装甲をくすぶらせながら、白いメタルアーマーは二本のレーザーソードを接続した。

シノ「その上で味方さえ巻き込む非道、私も怒りを禁じえん」

ドルチェノフ「それがどうしたぁ! 戦は非情だ! 総統を守るが兵の務めではないか!」


シノ「知らないだろうから教えてやる……今日のドラグナーは、死ぬほど痛いぞ!」

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(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:36:36.19 ID:fxGJ799C0<>
 シュゴォォォッ――! D−1が一気に加速してギルガザムネへ接近する!

ハルヒ「待ちなさい! そいつはあたしのエモノよ!」

 争うようにファルゲンもレーザーソードを構えて飛ぶ!

ドルチェノフ「どいつもこいつも愚か者ばかりめ! まとめて打ち砕いてやるわぁ!」

 追い詰められて、ドルチェノフはあがいた。

 下からのD−1は軌道から避け、ファルゲンのソードを弾いた。
 投げつけられたハンドグレネードを叩き落し、左手の自動砲を返してやる。
 鷹がレールキャノンを撃つが、堅牢な装甲を頼りに防御し、ミサイルを撃つ。
 突っ込んでくるD−1を重量差で押し返し、直剣の柄で殴りつけた。

シノ「くっ……!」

ハルヒ「しぶといわね!」

ドルチェノフ「キサマらの首を刎ね、連邦に突きつけてやるわ!」

朝倉「それであなたは満足なのかしら?」

 いきなり降りてきたのは、金色のギルガザムネだった。

ハルヒ「朝倉!?」

ドルチェノフ「キサマぁ! 今さら現れおって!」

朝倉「やぁね、せっかく助けに来てあげたのに」

ドルチェノフ「うるさい! ならばさっさとこやつらを片付けぬか!」

朝倉「そんな乱暴じゃ、助かる命も助からなくなっちゃうよ」

ドルチェノフ「何だと!?」

朝倉「簡単だよ。もう、助かるには連邦に降伏するしかないんだよ」

ドルチェノフ「な、なんだと……!?」

朝倉「残念だけど、ギガノスはもう負けちゃったんだよ。周りはすっかり包囲されちゃってるし」

 その指摘の通り、四機の周囲はまずマジンガー、ゲッターを初めとしたスーパーロボット部隊に囲まれていた。

ドルチェノフ「わ、ワシが……連邦に、降るじゃとぉ……!」

朝倉「気持ちはわかるけど、あなたがここを脱出する方法はないわ」

ドルチェノフ「…………いいや、まだあるぞ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:37:24.68 ID:fxGJ799C0<>
 うなだれて、絶望している風だったドルチェノフが哄笑と同時に歯の間からよだれを垂らし、腕を伸ばした。

朝倉「きゃっ!」

 ガシッ! ドルチェノフのギルガザムネが、朝倉のギルガザムネの首に腕を回して捕まえていた。

ハルヒ「何をする気、ドルチェノフ!?」

ドルチェノフ「ぐふふ……こやつを楯に連邦の脱出するのだ……!」

シノ「なんだと……!」

ドルチェノフ「キサマらとて、無為にパイロットを殺すことはできまい! ぐはははははは!」

ハルヒ「こ、コイツ……」

シノ「本物の……」

ハルヒ・シノ「「卑怯者!!」」

 二人の声は重なるが、ドルチェノフは笑って吹き飛ばす。

ドルチェノフ「さぁ、武器を捨てぃ。ワシの道を空けるのじゃ」

シノ「くっ……」

ハルヒ「…………」

 腹が立つ相手でも、やはり無下にできない二人がレーザーソードの電源を切ろうとしたとき――


朝倉「あーぁ、せっかく死なないで済むところだったのに」


 心の底から呆れ、軽蔑しきった声調で朝倉涼子がため息を吐き出した。

ドルチェノフ「こ、こらぁ、キサマは喋るな!」

 制止しようとするが、彼女はもうドルチェノフに一切の興味を抱かない様子で唇を動かした。

朝倉「涼宮さん、天草さん、いいこと教えてあげる」

ハルヒ「いいこと?」

 訝しげに眉をひそめるハルヒにも朝倉は動じない。

朝倉「そ、いいこと。ギルガザムネはセンサーに欠陥があるの」

ドルチェノフ「な、何じゃと!?」

 一番に驚いていたのはドルチェノフであった。

朝倉「ギルガザムネのセンサーは二機以上の機体が重なると、異常が起きて機能が停止するの」

ハルヒ「本当にいいことを聞いたわ」

シノ「同感だ」

 そう言って二人は同時にギルガザムネから距離を取り、武器を構え直す。

ドルチェノフ「き、キサマら! 本当にいいのか!? こやつの命がどうなっても……!」

 うろたえている間に、センサーがラグを出していた。

ドルチェノフ「な、何故じゃ! まだ奴らは――っ!」

 重なっていない――そう言おうとしたドルチェノフの目が深い衝撃に窪んでいく。

 ギルガザムネとD−1を結ぶ直線上に捕まえられている朝倉涼子の機体が識別信号を連邦に――敵側のそれに変えていたのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:37:59.52 ID:fxGJ799C0<>
朝倉「じゃあね」

 全力で締め上げていたはずが、あっさりと振り解かれてしまい、金色のギルガザムネが離れていった。

ドルチェノフ「ま、待て、待ってくれ!」

 手を伸ばし懇願する間に、既に白と蒼のメタルアーマーが懐に飛び込んできていた。

シノ「また手を組むことになるとはな」

ハルヒ「前より、腕を上げたようね」

 ザシュッ! 棒立ちになっているギルガザムネに、レーザーソードが前後から袈裟切りにする。

ハルヒ「あたしの動きについてこられるかしら!?」

シノ「やってみるさ!」

 立ち位置を後退した二人は振り向きざまにもう一太刀、さらに返す手を逆袈裟に交錯させた!

ドルチェノフ「ぬぅぅ、おのれ小娘ごもが! 許さん、許さんぞぉぉぉッ!!」

 叫んでも機体は動かなかった。
 何度もぶつかってきた二体のメタルアーマーはまるでつがいの鳥のように鎧武者の周囲を飛びまわり、刃を浴びせていく。

ドルチェノフ「ぐぅぅっ! やめろ、やめてくれぇぇ!」

シノ<覚醒>「これが引導だ、受け取れ!」

ハルヒ<夢>「帝国の崩壊と共に滅びなさい、ドルチェノフ!」

 斬り伏せられ、ほとんどの関節が焼け爛れたギルガザムネの左右で、二人は腰だめにレーザーソードを構え――


シノ・ハルヒ<魂>「「覚悟ぉーっ!!」」


 ザンッ!! ツイン・レーザーソードが胴体と首を直撃した!

 胸部と腕だけになりながら、まだ醜い声は止まない。

ドルチェノフ「ワシは……ワシはまだ死ねん……死んでなるものかぁぁぁぁっ!!」

 僅かに残ったバーニアとミサイルを撒き散らし、ギルガザムネは連邦の包囲を飛び込んでいく。

 政治的意味の失くした敗戦の将に、もはやその価値がないと悟っているのか、誰も捕まえようとはしない。

ドルチェノフ「ワシはまだ死なんぞぉ……ワシが居る限り統一帝国は存続するのだ……! そうとも、帝国は永遠に不滅なのだ!」

 腕の生えた棺桶に抱かれたまま、ドルチェノフは地球に向かっていき、見えなくなった。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:38:28.26 ID:fxGJ799C0<>
 宇宙世紀0079 12月16日――

 崩壊してゆく地球環境保全のために起ち上がった統一帝国ギガノスは切り札であったマスドライバー・キャノンと機動要塞を失い、全面的敗北を喫した。

 ギガノスは、地球連邦軍が機動要塞へ踏み込む直前に、国家解体を宣言する。

 ハルヒ・スズミヤ・プラートは愛機ファルゲンから自らの口で革命の終結を明白にし、帝国民を宇宙難民とすることで、捕虜としての非人道的扱いを回避させた。

 それでも、まともな生活は送れないだろうとは予測するが、少なくとも隷従させられる事はないだろうと考えての事である。

 ただし、その宣言の後、ハルヒ・スズミヤ・プラートは三人の部下と共に戦域を脱出、連邦の追跡から逃れた。

 連邦で最後に彼女と言葉を交わしたのは、天草シノであった。


ハルヒ「……ふぅ」

 演説を終えた彼女にシノは寄り添っていく。

シノ「見事だったよ。あれなら、連邦も乱暴な扱いは出来ないと思う」

ハルヒ「どうかしらね……結局、政治を牛耳っているのはジャブローのモグラたちよ」

シノ「だが、君がいれば――」

ハルヒ「ダメよ、あたしがいたら、それこそ連中の思う壷だわ」

シノ「どうしてだ、君ほどの力があれば……」

ハルヒ「力があるからいけないのよ、今のギガノスは徹底的に弱者にならなくちゃいけないの。なまじ影響力があるあたしを連邦はていのいい人形に仕立て上げるでしょうね」

シノ「そうか……」

ハルヒ「そういう訳だから、あたしたちはしばらく姿を隠すわ」

シノ「止める権利はないさ、本音は違うが」

ハルヒ「わかってるわ。あたしだって、今の地球をほうっておくことはできない」

シノ「そうか、それじゃあ……」

ハルヒ「そうね、また、会いましょう」


 宇宙世紀0079――

 突如として地球に襲い掛かった暗い影から、ようやく一本の爪が落とされた。


 第二十四話 決着! 亡国の凱歌  完

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/16(木) 17:39:40.45 ID:fxGJ799C0<>
 今日はここまでです。

 ドラグナーのシナリオはこれで終了です。
 ここからはまたしばらく調整という名の小さな話を2、3本出して、また地上、宇宙に分岐します。

 だいたいは地上=スーパー、宇宙=リアルですが、例外もいくつかあるので書いておきます。

 地上=ダンバイン組、天使霙、氷柱
 宇宙=コンV、ミルキィ、天使海晴、立夏
 離脱=ブライガー


 訃報が続いています。

 川上とも子さんの冥福をお祈りします。

 若輩の私に一番印象に残っているのは、ARIAのアテナ先輩です。

 この人と遠藤正明さんのおかげでオレンジ色を服装に使うのが好きになりました。

 正確には天野こずえさんのセンスだし、オレンジというよりはレモンに近かったりしてますが、アリスとの掛け合いが楽しみでした。

 一度手離したコミックを買い直そうと思います。

 それでは。

 やろうと思っていた補講『桑谷夏子特集』は次回に回します。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/16(木) 17:50:49.35 ID:L4VstLZfo<> 乙
ミルキィに一票で今度は地上がいいな

アテナ先輩可愛かったよね・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/16(木) 20:09:08.46 ID:nE0raYcDO<> 乙、唯に一票、宇宙は再度6か… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/06/17(金) 00:25:01.61 ID:kTPMDPsAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<><>2011/06/19(日) 08:14:46.82 ID:bikOSU0AO<> ともちゃんありがとう

宇宙に一票
アテナ先輩繋がりでタマちゃんに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/06/19(日) 20:21:43.28 ID:ObQvC4OS0<> 乙、宇宙とスズカに一票です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:27:37.80 ID:290dlkr60<>
 第二十五話


 ホワイトベース 食堂

シノ「…………」

 小難しい顔をしてクッキーをつまんでいるのはドラグナー1型のパイロット、天草シノだ。

アリア「やっぱり、気になっちゃうの、シノちゃん?」

シノ「あ、あぁ、アリア……」

 要領を得ない回答をするシノに、珍しく七条アリアも卑猥な発言は控える。
 普段なら唇を噛むだけでアレの日を疑うが、やはり環境は性格に深く影響を与えるのだと萩村スズは肯いた。

スズ「たしかに、追跡は逃れたといっても、反乱軍の実質的な首魁ですからね。連邦軍もこのまま見過ごすことはないはずですね」

 話題はやはりギガノス帝国の蒼き鷹<nルヒ・スズミヤ・プラートとその仲間達である。

シノ「逃走ルートから計算するとサイド6に向かっているらしい」

スズ「私たちの行き先とは逆方向ですね」

 ホワイトベースは月から発進し、サイド4テキサスを通ってからジオン公国の攻撃拠点ソロモンへ向かう。

 ギガノス殲滅の作戦名・星光と同時且つ極秘に発動されたチェンバロ作戦の概要は以下の通りだ。

 1.対ギガノス艦隊から分離した突撃部隊がキシリア・ザビが指揮する月面基地グラナダを攻撃。

 2.レビルの影武者がグラナダ接収宣言と同時に名称をF.S<ファースト・ステップ>と変更する式を行い、注意をひきつける。

 3.これら主力の三分の二を使った陽動の間にティアンム指令率いる第二艦隊を密かにサイド1に集結。

 4.レビル将軍は自ら第一艦隊でサイド2に駐留してソロモンに対して陽動作戦を展開する。

 5.作戦名・星光の終了後、第三、第四艦隊はテキサスゾーンを抜け、サイド4からソロモンへ出発、更なる陽動をかける。

 6.徹底的な陽動作戦に隠れた第二艦隊はサイド1からソーラ・システムによる攻撃を行い、ソロモン防衛網を突破する。

 ハルヒたちが逃げたとされるサイド6はサイド1と近接している為、追撃の手はそう長くは及ばないだろう。
 下手をすればジオンに第二艦隊の存在を気取られてしまう。

 おそらく、サイド6から先、ハルヒたちの居所は全く分からなくなってしまうだろう。

スズ「まさかとは思いますけど、追いかけるつもりじゃないですよね?」

シノ「そんなことはしないさ。見てくれ」

 顎を上げたシノの襟には青地に白い一本線に加え、金色のひし形がついている。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:28:04.88 ID:290dlkr60<>
シノ「私は少尉になったんだ。これで退役するには二ヶ月の申請期間が必要になった」

アリア「向こうからは早いのに、こっちからは遅いのね」

 この昇進はドルチェノフ打倒を評価されての事だが、ハルヒと懇意していると見られたシノを足止めする為であることは明白であった。

スズ「勝手に飛び出せば命令違反で軍法会議ですからね」

シノ「あぁ、だから少尉であることを利用することにした」

アリア「利用?」

シノ「うむ、民間協力者とそう変わらない准尉から正式な士官になったことで、月ぎめの給料が貰える様になった。私はこれで人を雇おうと思う」

スズ「なるほど、それでその人たちに涼宮さんたちを追いかけてもらうんですね」

シノ「その通りだ」

スズ「でも、誰を雇うんですか?」

こなた「そーれはわたしたちだーにゃー」

スズ「こなたさん!? ってことは、J9を?」

シノ「そうだ」

かがみ「あたしたちも動向は気になるからね。格安で引き受けたわ」

シノ「それでも、給料二年分の前借りだが」

スズ「二年って……会長、二年間、軍にいるつもりですか?」

シノ「えっ?」

スズ「いや、だって、そういうことじゃないですか……」

シノ「しまった……そういえばそうだったな……」

かがみ「まあ、ウチとしてはお金を払ってもらえれば、軍の給料じゃなくてもいいんですけど」

シノ「それなら、終戦したらアリアの会社で働かせてもらおうか」

アリア「でも……それだったら最初からウチに言ってくれればよかったのに」

シノ「…………」

 七條家は大金持ちだった。

シノ「生徒会長には……自腹を切らねばならん時があるんだ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:28:51.60 ID:290dlkr60<>
 ホワイトベース 艦長室

シノン「秘密の話とは何かしら?」

 この部屋にシノンが来ることは稀だった。
 いつでも人手不足のホワイトベースで一番、数が足りないのが隊長で、シノンは海晴と交代でブリッジと格納庫を見ている。

アムロ「は、はい、ガンダムの戦闘データで相談に乗ってほしいんです」

 がちがちに緊張してアムロがシノンの前に立つ。
 始めは椅子に座ったシノンだが、座り慣れていないので、すぐに立ってコーヒーを注ぎ始める。

シノン「あなたもいかがかしら?」

アムロ「い、いえ、いいです」

 大戦初期に戦力の大部分を失った今の連邦では、女性士官<ウェーブ>の占める割り合いは三分の一以上である。
 制服はピンクの色で短いスカートにタイツのようなパンツ――ナイーブな十五歳にはむしろ辛いものだ。

アムロ「ガンダムにはこれまで三人の人が乗りました。他にも、ギガノスとの対決でモビルスーツ・ジムの戦闘データもたくさん手に入りました」

 最初にアムロが見せたのはすずか、アリサ、アレイのデータとジム・パイロットのデータの平均データだった。

シノン「やっぱり、すずかちゃんが抜きん出ているわね」

アムロ「は、はい、そうです。サイド7脱出時のデータから見ていくと、物凄いスピードで成長しています」

シノン「でも、これはモビルスーツ同士の戦闘が少なかったからこそのものだと思うけれど?」

アムロ「それが……見てほしいのはこっちなんです」

 次に表示されたものを見るのは初めてだった。
 モビルスーツの模擬戦<シミュレーター>のソフトデータである。

アムロ「これは、ジャブローまでのすずかさんの戦闘データを元に作られたものなんです。今の連邦軍では、戦闘の基準が全てこのすずかさんのデータに集約されています」

シノン「連邦兵の目標といったところね」

アムロ「そうなんです。それで、さっきはジム・パイロットの平均を見せましたけど、今度は全パイロットから計測された数値で最高のものを見てください」

 推力調整、操作技術、判断力、把握力、適応力、実行力――機動兵器パイロットの要素がラインナップされている。
 平均から大幅に上回っているものもあれば、それほど推移のないものもある。

シノン「7:3でシミュレーター<すずかちゃん>の勝ちね」

 例えば、自分はおろか相手との安全性まで図るために、実行力や判断力ではやはりベテランの兵士が勝るが、それ以外ではすずかが圧倒的であった。
 ただ、これらの要素ならばエースの海晴や霙も充分にあるので、取り立てるようなことではないはずだ。

アムロ「先ほども言いましたけど、それはジャブロー……つまり地上での戦闘データが中心になって出来たデータです。そして、これが宇宙に再び上がってからのデータになるんです」

シノン「これは……」

 今度こそ、シノンは目の色を変えた。
 宇宙に出てからの戦闘――地球を起ってからすずかは三度の出撃があった。

 その時から、戦闘データの伸びが地上にいたときよりも遥かに上昇している。
 特に、空間把握能力と環境適応力は以前のものとは比べ物にはならないものになっている。

シノン「たしか、新たな模擬戦データ構築の為に、宇宙戦のデータ提出を要求されていたわね」

アムロ「はい、それで、テストタイプを作ったんですけど……」

 すっかり技術者の顔つきになってアムロが大型モニターにシミュレーションを展開した。

アムロ「相手はジム・パイロットの最高データから構築したプログラムです。互いの行動開始時間は全てデータに残ります」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:29:39.15 ID:290dlkr60<>
シノン「……マイナス、ね」

アムロ「そうなんです。ジムが攻撃に移ってからすずかさんへ照準を移動していく間――すずかさんはセンサーがそれを認識する前に回避行動を開始しているんです」

シノン「つまり、すずかちゃんは敵を見る前に発見しているということ、かしら?」

アムロ「あ、あと、これは……すずかさんから内緒で聞いたんですけど……」

シノン「あら、もうそんな仲なのね」

アムロ「か、からかわないでください……」

シノン「そうかしら? それで、報告したい内緒ごとって何かしら?」

アムロ「はぁ……すずかさんがホワイトベースの主砲を撃ったときのことです」

シノン「敵のモビルアーマー、だったっけ? それを撃墜したときのことよね」

アムロ「はい、すずかさん、その時、聞いたそうなんです……」

シノン「なにを?」

アムロ「て、敵の声、です……」

 沈黙の時間はシノンが目をつむり、コーヒーを飲む数秒分だった。

シノン「技術者とは思えない、非現実的な話ね」

アムロ「あ、あの時のすずかさんは嘘なんてつける状態じゃないです……」

シノン「妄想、ということもあるわ」

アムロ「は、はい……」

シノン「あなたが何かを私に伝えたいのはわかるわ。すずかちゃんの能力に、性能や技術では片付けられない場面があることは艦長の私が一番よく知っているから」

アムロ「そ、そうですか……」

シノン「例えば、ギルガザムネから発射された巡航ミサイルの迎撃――ホワイトベースのAMMはペガサスの演算能力を利用して狙いをつけるのだけど、ガンダムにはそんな精密射撃の能力はないの」

アムロ「だけど、すずかさんは全弾、命中させていたんですよね」

シノン「そうよ、八回も」

 まるで狙撃兵のような射撃を重いだけのハイパーバズーカでやってのけたのだ。

シノン「聞こえるはずのない敵の声を聞いて、当たる確率の低い射撃を全て当てた――まるで超能力者ね」

 そして今、地球圏に住む人はそんな人物に対する言葉を用意していた。

シノン「――ニュータイプ……か」

 その呟きに少年アムロは屹立した。

アムロ「す、すずかさんがそうだとしたら、上層部の人たちが……」

シノン「いえ、たぶん、あなたが心配しているようなことにはならないと思うわ」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:30:05.61 ID:290dlkr60<>
アムロ「そ、そうですか」

シノン「このホワイトベースは、とっくの昔からニュータイプの実験場になっているのだからね」

 それはおそらく、ホワイトベースがジャブローを起ってから――いや、サイド7でガンダムとドラグナーが起動したときから決定していたことだ。

 少女ばかり、新鋭機ばかりの部隊。
 それが地球連邦第四艦隊第十三独立遊撃部隊ホワイトベース。

 出立前、部隊編成に尽力した一人、天使美夜はシノンに言った。

美夜『ペガサスって、オトメの象徴なのよ。たくましい真っ白いノアの方舟が選ばれたSpace Guardian Girl's Projectのかわいい私の娘達を守ってくれるの――きゅん』

シノン「――……ところで、次の偵察はすずかちゃんたちだったわよね?」

アムロ「はい、キリノさんとタマキさんの後です」

シノン「とりあえず、模擬戦のデータは送らなくていいわ。私のほうでごまかしておくから――代わりに、偵察の記録はあらゆる方向から観測しておいて、それを全部私に提出して」

アムロ「りょ、了解しました」

 さぁ、また忙しくなる――アムロが振り返った途端、艦長室が開いて甲高い声が響いた。

立夏「うわーん! ヤダヤダーッ! 絶対イヤーッ!」

アレイ「こら! 暴れるな!」

霙「いい加減、観念しろ、立夏」

立夏「イヤーッ! 三日間オヤツ抜きだけでも耐えられないのに一週間なんて絶対イヤーッ!」

霙「仕方ないだろ、それがイヤなら独房に入れられるんだぞ」

立夏「アンナトコもっとイヤーッ!!」

シノン「……また、勝手におやつ食べたのね」

 さぁ、また忙しくなる――シノンはこめかみを押さえて頭痛を堪える仕草をした。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:31:19.10 ID:290dlkr60<>
 ホワイトベース 周辺宙域

 直径二キロほどの岩を潜り抜けながら、ダンバインはホワイトベースの進路予定コースを確認していく。
 行きで確認したものをもう一度見るだけなので、変わり映えのしようのないものに、安堵する。

紀梨乃「タマちゃーん、そろそろホワイトベースに到着だよー」

 岩を飛び越えてさらに一キロ離れた場所にいるボチューンからの通信。
 この辺りはミノフスキー粒子が濃い上に、ルウム戦役で破壊されたコロニーの残骸があって、通信が撹乱されやすい。

珠姫「……いる」

 通常のレーダーとは別物のオーラのアンテナを張っていた珠姫が呟き、ダンバインを下に向けた。

チャム「いるって、敵?」

珠姫「うん……」

 同乗しているチャム・ファウに頷き返して珠姫は別の岩に取り付く。
 人が通った痕跡――機動兵器の操縦には人体の観測できないオーラ力が発散される。

 特に、宇宙に出てから、それを敏感に察知することが珠姫には出来るようになっていた。

 もちろん、誰にも出来るようなことではなく、ダンバインに積まれている試作型オーラコンバータにオーラ力を増幅する作用があるから発揮できる能力であった。

 左のほうにテキサスコロニーが遠望できる。
 そして、自転する岩陰から、哨戒しているザクを三機発見した。

珠姫「この距離じゃ、通信は気付かれる……」

チャム「待ってよ! 一人で行くつもり!?」

珠姫「先制攻撃で、オーラの光りを出す。それで気付いてくれる!」

チャム「ザクはおっきいのよ! 捕まったら――きゃあっ!」

 忠告の途中で珠姫はダンバインを発進させた。

珠姫「一つめ……そこっ!」

 奇襲は成功だ。
 敵のザクはダンバインを認識しないうちに、オーラソードで頭部を切り離される。

珠姫「右ッ! 二つめ!」

 残った二機が左右からダンバインをターゲットにする。
 だが、それよりも早く動いていた珠姫はオーラショットでザクの胴体を貫いていた。

 ドドォンッ……! ザクが爆破し、体重の軽いダンバインが煽られて最後のザクの前に運ばれる。

ジオン兵「やったぜ!」

チャム「いやぁっ!」

珠姫「わかってる!」

 三者はほぼ同時の声だった。
 ヒートホークを振り下ろすザクの右腕に逆さまになったダンバインの怪鳥のような足のかぎ爪に掴まえられて、腰をひねった横薙ぎの一撃で胴体を輪切りにされる。

ジオン兵「う、うおぉぉ!?」

チャム「爆発しちゃうよ、タマキぃ!」

珠姫「南無三!」

 ザクの下半身を蹴って核融合エンジンの爆発に距離を取ろうとしたが、間に合わなかった。
 オーラバリアーを展開して直撃は免れるがダンバインはふっ飛んでいく。

チャム「きゃぁぁぁぁっ!」

珠姫「コントロールが……っ!?」

 何キロも飛んでいって、ダンバインがようやく止まると、そこは三隻もの戦艦の前だった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:31:45.63 ID:290dlkr60<>
 すぐにビームとミサイルが飛んでくる。

チャム「いやぁぁぁ! 死んじゃうぅぅぅぅぅぅ!」

珠姫「うるさい! 集中できない!」

 オーラ力を背中に集めてエアバックのようにして無理やり挙動を整える。
 大急ぎで船底へ移動する。
 敵の攻撃が散発になるが、代わりにモビルスーツの発進が急がれる。

 珠姫はうるさいミ・フェラリオをつまんで後ろに投げると、冷静になった。
 ムサイが二隻とさらに大きいチベが一隻ある。
 中央のチベは手前にいるムサイが邪魔でこちらを捉えきれない。

 ダンバインはさらに位置を調整して、手前のムサイにオーラショットを撃った。

珠姫「やった!」

 ゴドォォッ……! うまく片方の舷を破壊することに成功する。

 これでチベは舵の利き難くなったムサイに気を取られるはずだ。

チャム「タマキ、早く逃げないと!」

珠姫「うん!」

 ジオン軍の動きは思っていたより性急で、十機のザクと十二機のリック・ドムがすでに発進していた。

珠姫「これはホワイトベースを倒す部隊なんだ!」

 ダンバインを加速させて珠姫は逃げ出す。
 同時に、この敵をこのままホワイトベースに遭遇させてはならないと直感する。

 しかし、思惑は外れてホワイトベースは珠姫を探しに近くに来ていた。

 誤算は良い意味でもあって、艦長のシノンは既に臨戦態勢を整えている。

シノン「珠姫さんの援護を最優先にして、モビルスーツの動きにも注意して」

 出撃していたのは、偵察の交代要員であったすずかとアリサ、そしてゆりえだ。

紀梨乃「タマちゃん、だいじょぶ!?」

珠姫「はい、ありがとうございます」

 手配したのはボチューンに乗っていた紀梨乃だろう。
 突然、ダンバインがルートを外れたのでホワイトベースを呼んだのだ。

シノン「珠姫さん、叱るのは後です。戦闘が継続できるなら、このまま合流してください」

珠姫「はい、いけます!」

 ダンバインを切り返す。
 隣りにガンダムとGファイター、ボチューン、ライディーンが並ぶ。

アリサ「さぁ、さっさと追っ払っちゃうわよ!」

すずか「すごい数だよ!」

ゆりえ「前に出ます!」

 スーパーロボット、ライディーンが楯を構えて敵部隊へ近づいていく。

 先頭のリック・ドムが三機、バズーカを撃つ。

ゆりえ『ゴォォォッド・ブロォォォォォック!』

 大きな手でバズーカの弾を殴り、爆発させる。
 その隙にリック・ドムはライディーンの脇を抜けてガンダムに近づいていく。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:32:16.16 ID:290dlkr60<>
すずか「この動き、知ってる!」

 そう、この三機は地上で戦ったドム・パイロット、黒い三連星なのだった。

ガイア「白いヤツめぇ……!」

オルテガ「地上では後れを取ったが、今度はそうはいかねぇぜ」

マッシュ「宇宙が俺たちの戦場なんだよ!」

 シュンッ、シュンとリック・ドムがスラスターを噴かせて滑るように移動してくる。

アリサ「やってやるってのよ!」

 Gファイターがビームを撃つが避けられる。
 そうしているうちに三機が縦に並ぶ。

ガイア「いくぞ、ジェット・ストリーム・アタックだ!」

すずか「その攻撃はもうわかってる!」

 学習型コンピュータが対応策を呼び出すと、警戒予報も一緒に出た。

すずか「そうか、三次元攻撃――ッ!」

 先頭のリック・ドムがバズーカを撃つ。
 その隙に二機目が左下に、三機目が右上に現れた。

オルテガ「喰らえ!」

マッシュ「落ちろ!」

 オルテガが上へ逃げるガンダムの足首をヒートサーベルで切断した。
 そしてマッシュのバズーカがガンダムの正面で放たれるが、運良くシールドに当たった。

すずか「きゃぁぁぁっ!」

 ガンダムがぐらつき、駆け抜けていったリック・ドムは大きく旋回して再びガンダムをロック・オンする。

すずか「ど、どう――上ッ!?」

 接近してくる黒い三連星の攻撃の気配にすずかはビームサーベルに手を伸ばした。

 リック・ドム三機はバズーカを構え、縦に並びながら順に上昇し、ガンダムの頭上を取ろうとしていた。

ガイア「何ぃ!?」

 慌ててガイアはリック・ドムを更に上昇させた。
 ビームがまだ伸びきっていなかったためにガイアは助かったが、その後ろにいる二機は――

オルテガ「うおぉ!」

マッシュ「わぁぁぁ!」

 被害者はオルテガであった。
 十メートルで固定されたビームサーベルに股間から両断され、Iフィールドに守られたシンプル・コクピットを押し出した。

 マッシュは危ないところで上昇に成功し、サーベルからは逃れた。

オルテガ「畜生! バカなーっ!」

ガイア「お、オルテガぁっ!」

 リック・ドムが爆発する。
 そして、ガイアの前にはボチューンがいた。

紀梨乃「たぁーっ!」

 ドスッ! 十字のスコープに剣が突き刺さり、ガイアもまた、武器を失った。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:33:02.36 ID:290dlkr60<>
ガイア「ち、畜生! マッシュ? マッシューッ!」

マッシュ「う、うわぁぁーっ!」

 ホワイトベースから発射されたミサイルの四発がマッシュ機を包んだ。

すずか「ひっ!」

 どどぉっ! 爆発の光りに乗って何かがすずかにのしかかった気がした。

 でも、それを認識するよりも早く次の敵が来ていた。

ジオン兵「うおぉーっ!」

すずか「ダメっ!」

 正面にきていたリック・ドムに撃ったバルカンが発射直前のバズーカに吸い込まれて暴発させた。

すずか「左、二!」

 持ち替えたライフルを五回、撃つ。

 一機に二発ずつ当たって倒した。

すずか「――ッ!」

 戦慄にスティックを振り回すが、背中に回ってきていたドムから回避をとりきれない。

アリサ「すずかーっ!」

 シュドォッ! 投げるように放たれたミサイルがそれを直撃した。

すずか「前に――!」

 言うより早く動かしている。
 ペダルを踏み込み、バルカンを撃ちまくりながら、ライフルの弾を全部使うつもりで撃ち続ける。

 閃光が三つ見えた。
 もう二機、リック・ドムがいて、ビームライフルを捨ててビームジャベリンを取った。

すずか「前に出てくるからっ!」

 どぅっ! バズーカを楯で受けきって、ジャベリンで頭部を突き刺し、抜くと今度は右に投げて当たった。

ジオン兵「センサーがぁ!」

すずか「おとなしくしててください!」

 言い捨てて、最後のリック・ドムに肉迫していった。

ジオン兵「来るなぁ! 連邦の悪魔!」

 バズーカを構える。
 こんな距離で、とすずかはなじりたかった。

 ガンダムのパンチでバズーカを殴り飛ばし、二本目のビームサーベルで肩と頭部を破壊した。

ジオン兵「うわぁぁ! 脱出する!」

 十機のザクもまた、ライディーンとダンバインに歯が立たなかった。

コンスコン「さ、三分だぞ……! 十三機のザクと十二機のリック・ドムが三分ともたずに全滅か!?」

ジオン通信兵「は、はい」

 重巡洋艦チベに乗っていたコンスコン少将は勇猛果敢なひとかどの司令官だったが、この惨状に椅子から腰を浮かして戦慄いた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:33:31.24 ID:290dlkr60<>
コンスコン「補給も受けていない戦艦一隻に、二十五機のモビルスーツが……ば、化け物か……!」

ジオン通信兵「後方からザンジバルが来ています!」

コンスコン「しゃ、シャナ大佐か!?」

シャナ『手ひどくやられたみたいね』

コンスコン「わ、わたしを笑いに来たのか!?」

シャナ『退くなら今のうちよ』

 その言葉は確かなもので、もはや攻撃の手立てを失ったコンスコンは急いで艦隊を転進させる。

すずか「逃げていく……? あっ!」

 方向を変えるチベの後ろにザンジバルを見たとき、すずかは飛び立つ何かを見た。

すずか「と、鳥だ……白鳥……?」

 白い鳥で、幻影にしか見えないのに、確かにそこにあるかのようにすずかは見ていた。

すずか「な、何が……あぁっ、何かがいる……」

 鳥の形が変わる。
 ひらひらした形――服だ、そして、人だ――

すずか「だ、だれ……あ、あなたは……!」


『美しいものが嫌いな人がいるのかしら?それが年老いて死んでいくのを見るのは悲しいことじゃなくって?』


 それは声などでは決してなかった。
 でも、すずかは確かにそれを認識して、会話をしようとした。

すずか「な、なんで、あなたはジオンの戦艦から出てきて、わ、わたしに話しかけるんですか……」

『私はあなたを感じることができるけど、あなたがどこにいて、何をしているのかわからないの』

すずか「そ、それなら、どうしてわたしに見せるんですか……あ、あなたがいたら……」

『そう、私がいるから……そして、あなたがいるから……』

 それ以上は何も聞けなかった。

 なのに、ジオンの戦艦はようやく転進を終えて全速力で逃げるところだった。

 そして、二人が飛ばしあった思惟が、戦場の片隅を震えさせた。

なのは「あきらめたのかな……」

 ホワイトベースの近くで艦対戦に備えて待機していたなのはが肩を下ろしていると、手元が光った。

レイジングハート『Please prepare it.』

なのは「えっ!?」

 キィン――

なのは「これ、この反応は!?」

レイジングハート『Juwel seed.』

 青白く、魔力が小さな銀河のように渦巻いている。

 途端、なのはは飛んだ。

シノン「なのはさん!?」

なのは「ジュエルシードです! 封印してきます!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:34:00.28 ID:290dlkr60<>
 返事が届くよりも速く、なのははデブリの海を泳いでジュエルシードの場所に飛び込んでいく。

 そして見つけた。
 目的のものと、もう二人――

フェイト「あ……」

 会いたかったか、会いたくなかったか――

 たぶん、会えたらいいな、という気持ち。

アルフ「また……アンタかい!」

バルディッシュ『Seeling form get set.』

レイジングハート『Seeling mode stand by ready.』

 互いのデバイスが変形し、魔力砲の先行波を飛ばす。

アルフ「このっ――ッ!」

アリサ「邪魔すんじゃないわよ!」

 飛びかかろうとしたアルフにGアーマーのバルカンが飛んだ。

 バシンッ! 先行波は同時にジュエルシードを捉えた!

なのは「リリカル・マジカル――!」

フェイト「ジュエルシード・シリアル]W!」


なのは・フェイト「「封印!」」


 ズドォッ――!! なのはのディバインバスターが、フェイトのサンダースマッシャーがジュエルシードに降り注ぐ!

 ギュゥッ……シュキィンッ――

 ジュエルシードは、その動作を止め、魔力に捕縛された状態でなのはとフェイトの間に留まった。

 フェイト・テスタロッサは喋らなかった。

 僅かに見つめ合った時間、なのははいろんなことを考えた。

なのは(たぶん、目的があって、それで目的がある同士だから、ぶつかりあうのは仕方がないことかもしれない――だけど……)

 一歩、前に進むと、バルディッシュの宝石が前に出てくる。

なのは「知りたいんだ。私は」

バルディッシュ『Size form.』

 ジュアッ……! 黒い槍に、金色の刃が生まれ、レイジングハートが警戒する。

 だが、なのはは止まらなかった。

なのは「どうして、そんなに――」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:34:28.58 ID:290dlkr60<>
 さみしい目をしているの――そう、訊きたかったなのはの願いは届かない。

 フェイトは疾く身を翻し、バルディッシュを構えた。

なのは「っ!」

フェイト「ふっ――!」

 長い柄を振り下ろし、金色の鎌が襲い掛かりレイジングハートがフライアーフィンで回避した。

なのは「フェイトちゃん!」

 呼びかけに応えてはくれなかった。

 距離を稼ごうとするなのはの真後ろにフェイトがブリッツアクションで現れ、またレイジングハートが助けた。

レイジングハート『Please you have attack sequense.』

なのは「でも……でもっ!」

 首を振るなのはにフォトンランサーが飛び、障壁が弾き返す。

なのは「――ッ! フェイトちゃん!」

 奥歯を噛んで、なのはは自分の動きを制御した。

レイジングハート『Divine buster.』

 杖を突き立て、魔力砲を撃つ。
 フェイトは障壁で消し飛ばした衝撃で落ちていきつつ、バルディッシュを構え直す。

 ド、クン――ジュエルシードが息を吹き返すように鼓動するが、だれも気付けない。

なのは「フェイトちゃん!」

フェイト「!?」

 宇宙中に響くんじゃないかと思えるような大きな声がフェイトの鼓膜に飛び込んできた。

なのは「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないかもしれないけど……」

 絶対零度に近い場所で、声は驚くほど澄むけれど――それ以上の何かが、この子にはある……

なのは「だけど! 話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」

フェイト「ッ――!」

 声にならない驚きが、瞳に表れて揺れる――

なのは「ぶつかりあったり、競い合うことになるのは、仕方ないことかもしれないけど……」

 どうして、まっすぐ――こんなにまっすぐな瞳で、私を……

なのは「このまま、何もわかりあえないままぶつかりあうのは、いやだ!」

 一生懸命、伝えようとしてくれて、ぶつかってこようとしてる子がいて……


『いつか……フェイトにも、できるかもしれませんね――……』


フェイト「私は……」

 それを教えてくれようとした人が――

アルフ「そいつの話を聞いてちゃダメだ! フェイト!!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:35:18.12 ID:290dlkr60<>
フェイト「ッ!」

 血を吐くような叫び声が、フェイトを呼び戻した。

アルフ「アタシたちの最優先事項は、ジュエルシードの捕獲だよ!」

フェイト「……くっ!」

バルディッシュ『Size form.』

 再び、金色の鎌が形成され、なのはを脅かす。

なのは「きゃっ!」

 ばさぁっ! 目をつむった隙にフェイトは身を翻し、ジュエルシードに一直線で飛び込んでいった。

なのは「しまった!」

フェイト「……――ッ!」

 慌ててなのはが追いかけるが、フェイトのほうが速い。

なのは「もっと! もっと! レイジングハート!!」

レイジングハート『Acceleration.』

 応えようとするレイジングハート。

 だが、フェイトが一瞬速く、ジュエルシードにバルディッシュをぶつける!

フェイト「とっ――」

なのは「た――!」

 レイジングハートが交差して、ジュエルシードを掴む!

 ド、クン――ドッ、ドクンッ! 

なのは・フェイト「「ッ!?」」

 ビキッ――! そして――

 バキィィィィィィィンッ!!

 ジュエルシードが青白い光りを爆発させ――

なのは「っきゃぁぁー!」

フェイト「ッ……くうぅっ!」

 ドォォォォォッ!!

 二人は正反対の方向に弾き飛ばされてしまった。

 そして、二人はお互いがしてしまったことを知る。

なのは「レイジングハート!?」

レイジングハート『A……llligh……t……my……mus……ter……』

フェイト「バルディッシュ!」

バルディッシュ『Ye――s……sir……』

 ジュエルシードから放出された強大な魔力をもろに喰らってインテリジェント・デバイスが砕けてしまったのだ。

フェイト「だいじょうぶ、ごめんね、バルディッシュ……」

バルディッシュ『Yes sir……』
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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:36:26.13 ID:290dlkr60<>
 主を弱気にさせまいと、力強く光りを発し、バルディッシュは金色の宝石に戻ってフェイトの手の甲に収まった。

フェイト「おやすみ……」

 やさしく指で撫でると、フェイト・テスタロッサは力強く駆け出した。

アルフ「フェイト!?」

 なのはが傷ついたデバイスに気を取られている隙に、フェイトは手を伸ばしてジュエルシードを掴まえた!

アルフ「そんな……無茶だよ、フェイト!」

 キィィィ……! 手の中に握りしめたジュエルシードが暴走する。

フェイト「と、止まれ……! 止まれ!」

 熱い。炎で熱した石のように熱い。
 手が焼け焦げ、穴が空くかと思うほどに、痛い。

アルフ「フェイトぉ!!」

フェイト「止まれ……止まれ……止まって、止まって!」

 ばしゅぅっ! 何枚もの剃刀で切り付けられたように、手から血が噴き出し、真空に漂って砕けていく。

フェイト「止まって! お願い、いい子だから……止まって!!」

 駄々をこねる赤子をあやすように、願う少女の心を知るのか――

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(埼玉県)<>saga<>2011/06/22(水) 16:37:20.07 ID:290dlkr60<>
 リィ――リン……

アルフ「フェイト……」

フェイト「……ありがとう」

 発光をやめたジュエルシードを抱きしめ、微笑むフェイトの体がくずおれる。

アルフ「フェイトぉ!」

 急ぎ、小さな体を抱きとめる。

 なんて、軽くて、薄い体なのか……

アルフ「フェイト、フェイトぉ……」

なのは「ぁ……」

アルフ「来るなぁ!!」

 身を削られても、こんな声は出せないような悲鳴に似た声音に、なのはもアリサも動けなくなった。

アルフ「楽しいかい……」

なのは「え……」

アルフ「良い子ぶって! 自分の考えだけ押し通そうとして! 人をこんなに傷つけて、楽しいかって訊いてんだよ、この悪魔!!」

なのは「そんな、つもりじゃ……」

アルフ「だから始末が悪いってんだよ、アンタみたいなガキが! 善人面して……!」

アリサ「何よ! そんなの――」

アルフ「ほっといてくれって言ってるだろ! ずっと前から! もう、やめておくれよ……!」

 小さな粒がこぼれていた。
 小さな主を胸の中に抱きしめて牙を剥き、涙のたまる目で睨みつける狼はただ、希う。

アルフ「これ以上、フェイトを苦しめないでよ……!」

なのは「アルフさん……」

アルフ「アタシたちの問題なんだよ……ややこしくしないでよ……!」

 橙色の魔方陣が生まれ、アルフとフェイトを包んだ。

なのは「あっ……」

アリサ「くっ……」

 二人が反応しようとしたときにはもう遅くて、そこには誰もいなくなっていた。

なのは「……ごめんね、レイジングハート」

 謝る言葉は、自分に向けられるべきものではないと知りながら、宝石は赤く輝く。

レイジングハート『Let's do one's best at the next chance. 』


 第二十五話 思惑! それは、わかりあえない気持ちなの? 完
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(埼玉県)<><>2011/06/22(水) 16:37:47.40 ID:290dlkr60<>

 今日はここまでです。

 いきなり暑くなって半袖で過ごしてたら風邪引いた。
 明日はものまねのオーディションに行く予定なのに。

 あ、こんな安価スレ立てました。
 浜面「安価尽きるまで俺は戦う」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308328037/

 補講『桑谷夏子』は下に。

 それでは。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<><>2011/06/22(水) 16:38:15.99 ID:290dlkr60<>
 桑谷夏子とは―― 


「なッつッこッ! ちゃんッ! 大好き! なっちゃん!! 大好きなっちゃんッッッ!!」
  〜 桑谷夏子 について、堀江由衣

 主な配役

 可憐→お兄ちゃん×12人の妹

 綾瀬夕映→ネギ先生×31人の生徒

 千草恋→あの人×六組の双子達

 朝倉涼子→長門×[禁則事項です]

 翠星石→JUM×真紅

 翠星石→蒼星石×水銀燈&雪華綺晶

 南都夜々→光莉×天音

 アルフ→フェイト×なのは

 ルーテシア→エリオ×シャロ

 かすが→上杉謙信×[アタタタタタタタタタタタタタタタタタ]

 夢吉→前田慶次×まつ

 などなど、配役がことごとく寝取られ前提の被害者である。
 それゆえにキャラの人気が上がり、必然的に作品も名作扱いされるあげまん声優である。

 正確には寝取ろうとして奪い返されて『こんなに○○の事を想ってるのに報われないなんて!』という同情票である。

 そのため、意外とアンチが少なくて女性ファンもいたりする。

 そして何気にファイブスター物語の大ファンである。

 カラオケが趣味だけど歌唱力は微妙。
 同期が田村ゆかり、水樹奈々、堀江由衣、釘宮理恵とアイドル声優全盛期の煽りを一番喰ってる人である。

 148センチでピンク好き。
 なのに胸が大きくておしりもきゅっとしてる。
 だというのに毒舌。なんだこの萌えキャラ。

 「男の人になって[ピーーー]をしてみたい、男の人ってどんな感じなのか知りたい」とhydeみたいなことを言っていた。
 ちなみに本人は熱狂的なGacktファン。
 だけど共演したのは西川貴教。

 現在は藤田咲とコンビを組んでBaby-Princessにママ役で出演。
 泣きの千和こと斉藤千和と共に若手女性声優の支配をもくろむ。

 純真の桑谷 腹黒なっちゃん 叫びの夏子と言われればこの人である。


 ブログが面白い。
 ていうか家族が面白い。
 なっちゃんの両親はなっちゃん以上の萌えキャラ。

 そしてブログによると近々大きな作品に出るらしい。
 ガンダムか! ガンダムなんだよね!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/22(水) 16:55:26.73 ID:t+G4fAKoo<> 乙
これはなのはに一票だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/06/23(木) 00:09:14.48 ID:pzs+wybAO<> 乙、色々書いてたんだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<><>2011/06/28(火) 17:50:44.08 ID:6Bwc1wXAO<> アリサに一票!
そしてage <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 19:58:02.36 ID:hHP3Y7P70<>
 第二十六話


 テキサスコロニーに駐留している第三艦隊と合流したホワイトベースはようやく本格的な補給を受けることが出来た。
 艦隊司令官のワッケイン少将が前線に立つ少女たちに好意的だからだ。
 香月シノンの勘からすれば、それは同情でしかなかったが、それでもその厚意はありがたい。

 しかし、戦艦生活の不満点を回収すると伝えた途端の思春期の少女たちの爆発は凄いものだった。

唯「もっとおいしいものが食べたい」

シャロ「部屋がせまいです!」

海晴「ソープの泡立ちが悪いし、髪が痛んじゃう」

氷柱「トイレが不潔」

ヒカル・珠姫「「畳が剥がれた」」

 など、生理的嫌悪を催すものはともかく――

立夏「おやつを増やして☆」

真紅「紅茶が足りないわ」

律「暇だからゲームくれ」

ハルナ「アシスタントがほしいわね」

 といった個人的欲求でしかないものでも、いちいち審査せねばならない。

 当然、シノンだってお気に入りの整髪ジェルがなくなりそうで悩んでいる。 
 そういった不快感がもたらす憂鬱に共感できるから、面談までして検討するのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 19:58:37.79 ID:hHP3Y7P70<>
ゆりえ「ライディーンの様子が変なんです。ここにいたくないみたいで……」

 傍若無人な要求にマンネリ気味だったシノンはこの話題に興味をひかれた。

シノン「たしか、ライディーンは自分の意思を持っているんだったわね」

ゆりえ「そうです。乗ったときの感じでなんとなくわかったりするんですけど……」

シノン「それは前回の哨戒任務の時かしら?」

ゆりえ「えっと……実はそのぅ……もっと前からなんですけど……」

シノン「もっと前? それじゃあ、ギガノスの機動要塞の時から……とか?」

ゆりえ「ごめんなさい、宇宙に上がったときから……です」

シノン「え、えぇ?」

 これには沈着なシノンも胆を冷やした。
 ただの機動兵器とパイロットだったら戯言で済まされる。

 しかし、一橋ゆりえは正式(?)に選ばれた神さまで、ライディーンはその神器とも言える兵器なのだ。

 例えば八百万の神を祀る大和神話では、神が持つ道具もまた一人の神であるという説もある。
 ライディーンが意志を持ち、望まぬ宇宙に出たとあれば、何らかの罰が下る可能性があるのだ。

 科学が発展した宇宙でも霊的な感性は人類から消えてはいない。
 現実主義者のシノンは幽霊なんて信じていなかったが、いたらいたでそれも現実だと受け入れる要領もある。

シノン「ここにいたくないというのは、ホワイトベースのことかしら? それとも、宇宙?」

ゆりえ「なんというか……宇宙で、えっとぉ、誰かと会うのを怖がってるみたいです……」

シノン「怖がる? ライディーンが?」

 あの図体と面構えで、何を怖がるのだろうか?
 いや、恐れていると考えるべきか――

シノン「会うって、誰に?」

ゆりえ「ごめんなさい……わかんないです……」

シノン「……そう」

 さほど落胆はしない。
 解決は割りと簡単そうだから。

シノン「ライディーンが宇宙にいる事を望まないというのは、やはり妖魔帝国が気になるんじゃないかしら」

ゆりえ「やっぱり……そうでしょうか……」

シノン「ちょうどいいわね。何人かは地球に戻ることにしましょう」

 ゆりえが驚いた顔をするが、シノンは元から考えていたことだ。
 ホワイトベース隊の注目度と実績が上層部に動揺を与えているのは天草シノの昇進から見ても明らかだ。

 さらに前日は二十五機のモビルスーツをわずか数分で撃破してしまった。
 これ以上の活躍は強硬派を煽り、部隊の縮小化を図られる可能性がある。

 ならばあえてこちらから融通の利く民間協力者たちを地球に返すことで、沈静させようという判断だ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 19:59:07.52 ID:hHP3Y7P70<>
 宇宙。
 テキサスゾーンのある宙域に彼女はいた。

 惑星ラテシアの怪盗帝国の首魁――怪盗アルセーヌ。

 変幻自在、解析不能と言われる正体不明のトイズを操り、無数の宝物を手中に収めてきた。
 その彼女が今、無骨な揚陸戦車に乗って直進している。

ラット「アルセーヌさまぁ、ほんとにそいつでいいんですかー?」

 揚陸戦車を後ろから追っかけてきている三機の戦闘機に乗っているのは彼女に付き従うスリーカード。
 歩く火薬庫のラット、変装工作のトゥエンティ、探偵狩りのストーンリバーだ。

トゥエンティ「Nn〜! 僕よりも美しいアルセーヌ様がそんな美しくない物に乗っているNanTeぇぇ〜っ!」

ストーンリバー「黙れ、トゥエンティ、ラット。アルセーヌ様の計画は知っているだろう。ならば我々はそれに従うのみ」

ラット「何だと! 何偉そうにぶってるんだてめぇ!」

トゥエンティ「SouだSouだ! この美しい僕を差し置いTeお前が前に出るNa!」

 騒がしくなり始めた三機の戦闘機から通信を切った。

アルセーヌ「……ふぅ」

 惑星ラテシアで世紀の怪盗と言われたアルセーヌの肢体は今、とてつもない倦怠感に悩まされていた。
 だが、それはすぐに激しい情熱へと移り変わる。

アルセーヌ「もうすぐ……もうすぐ会えますわよ。ミルキィホームズ」

 熱く震える身体の芯に身をよじらせる。

 長かった。本当にここまで長かった――

 ミルキィホームズがラテシアから消え、バンカーからも脱出した後、再びラテシアにやってきたターザンを捕まえて全ての事情を吐かせた。
 そしてアルセーヌはターザンの宇宙船を奪い、自身の持つ幻惑のトイズでもってバンカーに入り込んだ。

アルセーヌ「ここまでして、別の星系に来てまで追いかけたのですよ……この宇宙という最高の舞台でわたくしと勝負なさい!」

 テキサスゾーンにアルセーヌの高笑いが鳴り響いたまさにその時、ホワイトベースは目の前にあった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 19:59:40.96 ID:hHP3Y7P70<>
連邦士官『そこの認識不明の戦闘機、止まれ! ここは地球連邦軍の制宙圏内だ!』

 コロニーに駐留している艦隊から勧告が届く。

連邦士官『ただちに停止して所属と階級を言え! な、何をしている!?』

アルセーヌ「あなたがたに用はないわ。わたくしの用事は一つ」

 突如として揚陸戦車のハッチを開けてアルセーヌは機首に立って言ったのだった。

アルセーヌ「わたくしは怪盗アルセーヌ。そちらにお世話になっているミルキィホームズを引き渡していただきたいのです」

 艦隊が沈黙してから十数分――四機の戦闘機が戦艦を引き連れてアルセーヌの前に現れた。

ネロ「ホントにアルセーヌだよ!」

 聞き覚えのある声に女怪盗はゾクリと背筋に駆り立てるものを感じた。

コーデリア「どうやってきたのかしら、こんな場所まで……」

エリー「す、ストーカーです〜!」

 畏れと勇気がブレンドされていて身体の尖った場所に血が滾る。

シャロ「何が目的か知りませんが、あなたの思い通りにはさせませんよ、怪盗アルセーヌ!」

アルセーヌ「そうよ! それでこそわたくしのミルキィホームズ!! わたくしが全力を出すにふさわしい好敵手!!」

 半ば狂気の混じった笑みを浮かべてアルセーヌは揚陸戦車を前進させた。

ネロ「とにかく合体するよ、みんな!」

エリー「はいっ!」


「「「「クロォォォス・ファイト! ダン! ガイ! オーッ!!」」」」


 ガシュッ! ガシィンッ!

 降臨した白金の巨体、ダンガイオーにアルセーヌは身悶えした。

アルセーヌ「感じる……感じますわ! そのロボットに乗って更に強化されたあなたがたのトイズの波動が!!」

ラット「俺たちも合体するぞ!」

トゥエンティ「アァァルセェェェェヌさまぁぁぁぁぁぁっぁ!」

ストーンリバー「参る!」

 スリーカードの三機も合体し、ダンガイオーと同じ背丈のアイザム・ザ・サードへ変形した!

シノン「本当に加勢しなくていいのですか?」

 ホワイトベースから事の成り行きを見守るシノンにネロが親指を立てた。

ネロ「こいつはボクたちの敵だよ。まあそこで見てなよ!」

コーデリア「来るわよ!」

ストーンリバー「うおぉぉっ!!」

 ガシンッ!! ダンガイオーとアイザム・ザ・サードの巨大な手が掴み合い、互いに譲らない格好になる。

エリー「く、うぅぅ……!」

 トイズを全開にしてアイザム・ザ・サードを押し返そうとするが、押し合いへしあいである。
 その両機の間に降りてきてアルセーヌは笑った。

アルセーヌ「さぁ、邪魔者はいなくなったわよ、シャーロック・シェリンフォード!!」

シャロ「アルセーヌ!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:00:59.48 ID:hHP3Y7P70<>
 アルセーヌの瞳が煌めき、次の瞬間、シャロの身体は宇宙に投げ出されていた。

シャロ「わっ! げっ! う、息! 息が! ……できてます」

 極限状態においてトイズは最も強く輝くという。
 シャロは自分自身の中にある力の源泉が湧き出してくるのを体感した。

アルセーヌ「さぁ、いきますわよ、シャーロック!」

 ぼっ、ぼっ――壷惑的な胸を揺らし、アルセーヌは自分の指先から炎を出した。

シャロ「えぇーいっ!」

アルセーヌ「ファイアッ!」

 キュインッ! アルセーヌが投じた火球はシャロがかざす手の前で弾け飛ぶ。

アルセーヌ「まだよ、まだまだ!」

シャロ「たぁっ!」

 シュボッ! カキィンッ! 二人のトイズがぶつかり合い、ダンガイオーはアイザム・ザ・サードと離れて剣を取った。

ネロ「破邪の剣! やぁぁーっ!」

ストーンリバー「おおぉっ!」

 ダンガイオーの剣をアイザム・ザ・サードの拳が迎え撃つと――

ラット「今だ! 爆雷を喰らえ!」

 シュボボッ――ドドォン!! アイザム・ザ・サードの胸部から爆雷が撃ち出され、ダンガイオーに直撃した!

コーデリア「きゃあぁ!」

ストーンリバー「そこだ!」

 アイザム・ザ・サードの右手が変形し、ダンガイオーの顔面を掴む。

ストーンリバー「アイアンクラッシャァァァァァァァ!!」

 ズガァァァァッ!! 手のひらから発射された炸裂弾をまともに喰らう。

シャロ「ネロ、エリー! コーデリアさん!」

アルセーヌ「よそ見をしている暇があるのかしら、シャーロック!?」

 バキッ! 僅かな隙を突いてアルセーヌはシャロの脇に膝蹴りを当て、さらに一回転すると踵を脳天に振り下ろした!

シャロ「うくぅっ!」

 ガカッ! これは辛うじて受け止めるが、アルセーヌは既に身を翻して両の手の間に稲妻を溜めていた。

アルセーヌ「これで終わりかしら、シャーロック!」

 だが、稲妻の一撃が放たれることはなかった。


 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 雄叫びが空間を引き裂き、紅色の光球がアルセーヌとシャロの前に飛来してきた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:02:07.68 ID:hHP3Y7P70<>
アルセーヌ「なに!?」

シャロ「きゃぁぁ!」

トゥエンティ「アルセェェェヌさまぁぁぁ!」

 対処すらも不可能な二人とプラズマの間に割り込んだのはアイザム・ザ・サードだった。

 ズジャァァァァァッ!!

ストーンリバー「うぉぉぉっ!」

ラット「ぐぁぁぁ!」

トゥエンティ「ンヌマァァァァ!!」

アルセーヌ「ラット! ストーンリバー! トゥエンティ!」

 怪盗帝国の首魁らしくもない動揺を前に、アイザム・ザ・サードが爆発していく。

 アイザム・ザ・サードを破壊した相手は更に咆哮した。

ギル・バーグ「ダンガイオォォォォォォォォォォォォォッ!!」

コーデリア「ブ、ブラッディU!?」

 赤黒い塊りが突っ込んでくる。
 五感強化のトイズでその正体をコーデリアが見抜いた時にはダンガイオーは体当たりを喰らってもんどりうっていた。

ネロ「うわぁぁぁ!」

エリー「きゃあぁぁ!」

シャロ「ネロ! エリー!」

 凶悪な乱入者にシャロはダンガイオーの中に戻った。

ギル「ダンガイオー……! 貴様等を殺すぞ! ミルキィホームズゥゥゥゥゥ!!」

 吼え猛るギル・バーグとブラッディUはその形状を半分も保ってはいなかった。
 あんな状態でどうやって大気圏を越えてきたというのか――それを可能にしたギル・バーグの執念は驚嘆に値する。

シノン「各機、発進して!」

 一騎打ちを台無しにした異常事態に艦長シノンは素早く動いた。

夕映「チェェェンジ・ドラゴン! スイッチ・オォーン!」

「「「「「レェェェェェッツ・コンバイィィィィン!!」」」」」

 ゲッタードラゴンとコン・バトラーVがダンガイオーとブラッディUの間に入る。

ギル「どけぇ! 雑魚どもォ!」

翠星石「ヘンテコ魔人にむざむざやらせねーですよぅ!」

夕映「今のうちに逃げるなら見逃してあげますよ」

ギル「ならば貴様等ごと皆殺しにしてやるわぁぁぁぁ!!」

 ギュパァッ! プラズマキャノンが乱れ飛ぶ。

翠星石「超電磁スパーク!」

夕映「ゲッタァァァァビィィィィム!」

 ズギャァァッ! 二体の必殺技でプラズマ球をようやく押さえ込む。

 ズズゥン……! とめられなかったプラズマが連邦戦艦にぶつかり、溶かしていく。

ネロ「シャロ! サイキックウェーブだ!」

シャロ「うん!」

 暴れるブラッディUの動きを止めようと身構えるシャロ。

シャロ「サーイキック……」

 ギュオッ! 動きに合わせるダンガイオーの脇を何かが駆け抜けた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:02:40.30 ID:hHP3Y7P70<>
コーデリア「えっ!?」

 ドドォン! 爆弾らしいそれはコン・バトラーVに直撃した!

蒼星石「うわぁぁっ!」

雛苺「びえぇぇ!」

真紅「いったい、何が……?」

 振り返ったコン・バトラーVのドールズたちは驚く。
 いや、その場にいる全員が同じ心境であっただろう。

 連邦軍が警戒しているこの宙域にいつの間にか巨大な四つ首の亀のような戦艦が浮かんでいたのである。

翠星石「な、なんなんですかこいつはぁ!?」

 まるで代弁したかのような翠星石の疑問には戦艦そのものが答えた。


 『地球の愚か者どもよ、よく聞くがよい! 我が名は女帝ジャネラ! キャンベル星人の首領である!』


翠星石「きゃ、キャンベル星人ですってぇ!?」

ジャネラ『コン・バトラーV! 貴様らのおかげでわらわがこうして出向いてきたのじゃ!』

翠星石「なんですってぇ!」

ジャネラ『貴様らがわらわたちが送り込んだオレアナを破壊してくれたのじゃろう!』

翠星石「何言ってるですか! オレアナをやっつけたのは翠星石たちじゃねーですよぅ!」

ジャネラ『知っておるわ! 裏切り者のアンドロイドがやったのであろう!』

翠星石「裏切り者!? ガルーダを侮辱するやつは許さねぇですよ!」

ジャネラ『ふん! 所詮はキャンベル星の反逆者の記憶を改造したアンドロイドよ! それをコントロールできなかったオレアナの失態じゃ!』

翠星石「おめぇ、人間をなんだと思ってやがるですか! 勝負ですよ! 翠星石と勝負するですぅ!」

蒼星石「す、翠星石、ダメだ! 一人で先走ると……!」

 警告は遅く、コクピットががたがたと揺さぶられた。

翠星石「うひゃっ! なんです!?」

真紅「合体が解けるのだわ!」

 バカッ! 言うがいなや五機のバトルマシンは波長を崩し、合体が解けてしまった。

翠星石「えぇい! なんですこのポンコツ!」

 ぼかぼかと制御盤を叩くがコン・バトラーVの合体に必要な波長はますます乱れて動きがバラバラになる。

ジャネラ『ホホホ! なんじゃそのあやふやな動きは! これが我らの侵略を邪魔した宿敵かと思うと情けなくなってくるわ!』

翠星石「なんですってぇ!?」

 嘲笑と挑発に翠星石が歯噛みするとさらに女帝は声を高くした。

ジャネラ『貴様らのような不様な輩を相手にするほどわらわはヒマではないのじゃ! 早く地球へ降下して地球植民地化計画を進めるのじゃ!』

真紅「地球の植民地化!? それがキャンベル星人の目的なの?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:03:10.51 ID:hHP3Y7P70<>
ジャネラ『ホホホホ! 我らがキャンベル星はこの辺境から34万光年も離れた星団を支配しておるのじゃ! 地球人どもよ! 我らが科学力を前にして、降参するならば今のうちじゃぞ!』

 高飛車な物言いだが、ジャネラが乗艦しているセント・マグマは地球のどの戦艦よりも大きく、まともに戦っても勝ち目はない。

ジャネラ『ホホホ! 恐れて言葉も出ぬか!? 臆病者を相手にすることはない! 地球へ急ぐのじゃ!』

 号令を発し、セント・マグマが地球へ突き進んでいく。
 連邦の戦艦がいっさい動かないことに翠星石は腹を立てた。

翠星石「何で追いかけねーですか! あいつが地球に降りたら大変なことになるですよ!」

シノン「それでも、今ここを動いたらソロモン攻略の作戦が台無しになってしまうわ」

 しかも、すぐ傍ではダンガイオーとゲッターライガーがブラッディUとの交戦を継続していた。

ギル「死ねぇ! 死ねぇ、ミルキィホームズ!」

ネロ「うわぁぁ!」

のどか「ライガーのスピードなら負けません!」

 ギュンッ――シュン、シュン!

 高速移動したゲッターライガーのドリルが背後を取った。

のどか「ライガードリル!」

 ギュイィィンッ! だが、それは僅かにブラッディUの肩をかすめるにとどまった。

ギル「雑魚が! 攻撃とはこうして当てるのだ!」

 ジャギィィィィッ! 振り向きざまにゲッターライガーを捕まえたブラッディUの剣が突き刺さる!

のどか「きゃぁぁぁっ!」

 悲鳴が届く。
 ダンガイオーの超反応とゲッターライガーの素早さをもってしても捉えきれない敵に、連邦艦隊が乗り込めば巻き添えを喰らうだけだ。

翠星石「で、でも、あいつらをそのままにする訳にはいかねーですよぅ!」

シノン「わかっています!」

 ほとんど涙声の訴えにシノンはあくまでも沈着に対応した。

シノン「私たち第13独立遊撃隊ホワイトベースはこれより部隊を二つに分けます!」

 ――!? 動揺は本艦隊からの方が大きいとシノンは感じられた。

 だけど、もう止まることはできない。
 地球を守るのが地球連邦軍――そのために出来ることは何でもする。
 何でも使うのがシノンの戦略だ。

シノン「マジンガーチーム、バトルチーム、ライディーン、オーラバトラーはただちに地球へ戻り、キャンベル星人を初めとする侵略軍に対抗してください! 部隊長には天使霙少尉を選出します!」

霙「了解した。立夏も連れて行かせてもらう」

氷柱「ちょっと! 地球に行くなら私も!」

海晴「ダメよ、氷柱ちゃんは大事なお役目があるんだから」

氷柱「うっ……」

海晴「ヒカルちゃんも宇宙ね」

ヒカル「あ、うん、わかった」

シノン「降下部隊はすぐにシャトルで出発してください」

立夏「ハーイッ!」

 編成の基本は前もって準備していたため、すぐにシャトルが発射された。
 艦隊司令部は今ごろ蜂の巣をつついたような騒ぎになっているだろう。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:03:40.10 ID:hHP3Y7P70<>
シノン「バトラーチームもすぐにシャトルを追いかけて合流してください」

翠星石「合点承知ですぅ!」

 ぎゅん――まるで水を得た魚のようにバトルマシンが飛んでいった。

 一方で、ブラッディUは元々が半壊した物であるため、スタミナ切れに陥っている。

ギル「ぐぅぅ!」

のどか「チェーンアターック!」

 ジャラァァァッ! ゲッターライガーの腕が飛び、鎖がブラッディUを絡め取った!

ギル「おのれぇぇ! パワーが出ん!! ぐぉぉぉぉ!!」

コーデリア「シャロ、いけるわ!」

シャロ「はいっ! サイキックウェィィィィィィィブ!!」

 ギュオォォォシィィィィンン!!

 ダンガイオーの右腕から放たれたシャロの念動波がブラッディUを捕縛し、ネロは破邪の剣を召喚した。

ネロ「いくよっ、みんな!」

 バッ! ダンガイオーが宇宙で蹴り跳び、破邪の剣を両手で頭上に振りかぶる!

「「「「サイキック・斬ぁーんっ!!」」」」

 ズバァァッ!! 既に不恰好な団子のようになっていたブラッディUを真っ二つに叩き斬った!

ギル「ぐぉぁぁああああっ!!」

 ズンッ! ドォッ! 三度までもミルキィホームズの前に立ち塞がったブラッディだが、ついにその全身が破裂していく。

ギル「き、貴様等を……! 貴様等を殺すまではぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ネロ「いい加減、諦めろってんだ!」

シャロ「しつこいのは、アルセーヌだけで充分です!」

ギル「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ズドォォッ――! 大きな爆発が起こり、ブラッディUは粉々になって宇宙の塵に消えていった……

エリー「や、やっつけたんでしょうか……」

コーデリア「あれでは、無事では済まないでしょうけど……」

ハルナ「その前に来てたロボットも、いつの間にかいなくなっているわね」

 アイザム・ザ・サードのことだ。
 周辺を索敵しても、それらしき反応がまったくなくなっている。

シャロ「あれ? でも、あそこ」

ネロ「アルセーヌが乗ってた戦車だよ!」

 シャロが指差した方向にダンガイオーが進んでいき、無人と思われる揚陸戦車を確保すると――

コーデリア「中に誰かいますわ!」

エリー「こ、この人は……!」


シャロ「アンリエットさん!?」
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:04:09.58 ID:hHP3Y7P70<>
 ホワイトベース 艦橋

ワッケイン『やってくれたな、香月シノン中尉』

シノン「処罰は覚悟の上です」

 靴底の磁石で床上にぴしりと立ちながら、シノンは怖れを見せなかった。
 自分のやったことは絶対的に正しい。
 敵前逃亡ではない、追撃作戦だ。

ワッケイン『処罰は出来んよ。今の連邦軍に奴等を抑える力がない事も確かだ』

シノン「お心遣い、感謝します」

ワッケイン『ただし、部隊の配置編成、シャトルの使用許可、大気圏突入許可――その他諸々の申請は全て君の仕事だ』

シノン「……覚悟の上です」

ワッケイン『なるほど、余計なことは言わない。レビル将軍が肩入れする理由がわかるな』

シノン「は、光栄です」

ワッケイン『だが、気をつけたほうがいいな。君のように従順なふりをして、全く別の行動を取る者は厄介者と言うのだ』

シノン「……気をつけます」

ワッケイン『うむ、それではまず、新部隊の編成から後で報告してもらおう。失礼する』

シノン「は、失礼します」

 通信が終了する。
 カメラに映らないところにいたミユリがため息を吐いた。

ミユリ「もう、シノン、見てるこっちがヒヤヒヤするよ」

シノン「ごめん、ミユリ。また忙しくなるわね……まずは、保護した人の事情聴取かしら」

 ぐっと力強く床を踏んで磁石を剥がし、シノンは艦橋から去っていった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:04:41.51 ID:hHP3Y7P70<>
 ホワイトベース 作戦室

シャロ「えっと、つまりアンリエットさんは私たちの星で生徒会長で、素敵な人なんです!」

アンリエット「シャーロック、もういいわ」

 自ら紹介役を交代してアンリエット・ミステールはスカートの端を持ち上げて礼をした。

アンリエット「はじめまして、惑星ラテシアのホームズ探偵学園の生徒会長、アンリエット・ミステールと申します」

シノ「ということは、ミルキィホームズたちと同じ、探偵ということなのか?」

アンリエット「はい、実はシャーロックたちの失踪を調査している時に何者かに襲われ、気がついたらここに……」

氷柱「それは多分、バンカーの仕業ね。あの怪盗アルセーヌとかいうのも、バンカーの手先になっていたみたいじゃない」

ネロ「でもさ、あのプライドの高いアルセーヌがそんなことするのは考えられないなー」

氷柱「怪盗も海賊も同じよ、要するに人の物を勝手に持ってくんだから」

アンリエット「怪盗アルセーヌは、ミルキィホームズに並々ならぬ執着を持っているようでしたから、その海賊を利用してやってきたと考えるべきでしょう」

シノン「もしかしたら、まだこの近辺に潜んでいるのかもしれませんね」

 作戦室に集まっている面々は何一つ疑う素振りすら見せず、アンリエットは内心でほくそえんだ。

 近辺どころか、目の前に怪盗アルセーヌがいるというのに――

アンリエット「ところで、シャーロックたちが帰れない以上、わたくしもすぐにラテシアに戻ることはできないのですね」

シノン「そうですね……申し訳ありませんが、しばらくは連邦軍の保護と監視がつくことになります」

アンリエット「それは、この艦の皆さんという解釈でよろしいのでしょうか?」

シノン「……もちろん、希望があればもっと安全な場所にご案内することも出来ますが」

アンリエット「それはたぶん、あなた自身は気の進まない事だと見受けますが」

シノン「正直に言うと、そうなります」

アンリエット「わたくしはこの艦にいる事に異論はありません。知り合いがいるのも心強いですしね」

シャロ「それじゃあ、アンリエットさんは一緒にいられるんですか!?」

アンリエット「あなたたちさえよろしければ」

シノ「我々に異存はない」

海晴「ミルキィのみんなもいることだしね」

シャロ「わーっ! よかったですね、アンリエットさん!」

アンリエット「えぇ、とても嬉しいことです……とても」


 第二十六話 潜伏! ボヨヨンの女? 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:06:17.24 ID:hHP3Y7P70<>
 今日はここまでです。

 完全なオリジナルシナリオとかやるとボロがどんどん出てきます。
 一番顕著なのがコンVで、原作の視聴が困難で、脚本はスパロボのシナリオ頼みです。
 それでもいざニコ動などで見返しても、ろくな会話をしてません、こいつら。
 ていうか、コンVがいないのに出てきたり意味不明です。
 以下、キャンベル後編の敵(主にダンゲル)の初登場の抜粋

 F:キャンベル勢はガルーダで打ち止め
 AP:第二話に暗黒大将軍、ヒドラー元帥と一緒に登場(コンV未登場)
 IM:第二部でナデシコ勢と衝突(コンVは一部の地上)
 α:星間連合でまとめて登場

 その上さらにシナリオ不足(OVA全四話)なダンガイオーと絡ませてしまって最悪です。
 全く触れてませんが、スリーカードは生存、道中にギルを確保してバンカーに撤退してます。

 前々回での予定通り、宇宙と地上で分岐します。

 地上:マジンガー、コンV、ラーイ、オーラバトラー、霙、立夏
 宇宙:なのは、Dチーム、ミルキィ、ゲッター、海晴、氷柱、ヒカル

 人気投票 まとめ

 唯+律 7+2
 なのは 6
 すずか+アリサ 6+1
 ミル 5
 らき 4
 ハルヒ 4
 珠姫 3
 べびぷり 3
 シノ 3
 ゲタ 3
 鬼畜 2
 朝倉 1
 男爵 1
 ゆりえ 1
 
 シナリオは後半に移行し、更にめんど……苛烈になります。

 下にまた補講を用意しました。
 たまには実用的なものをと思いまして「マジンガーZの動かし方」です。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/02(土) 20:06:46.12 ID:hHP3Y7P70<>
 補講 マジンガーZの動かし方

 『元祖スーパーロボット』と名高いマジンガーZ
 こう書くと『鉄人28号』が出てきますが、あっちは『始祖』でこっちが『元祖』

 その操縦方法は実は非情に複雑です。

 車の操縦席程度のパイルダーの中には4本のレバーと20〜30のボタン
 バイクの物と同じハンドルには4つのボタンと足元には4つのペダルがついてます。

 パイルダーの起動にはハンドルで右から2つ目のボタン。
 自動操縦でパイルダーオンします。

 問題はマジンガーZとなった後です。

 レバー1つでアクセルですが、同時に『目の前の障害物を強制的に排除』します。
 この状態でハンドルを切ったりペダルで加速したりすれば、無尽蔵に破壊の限りを尽くします。
 漫画版マジンガーZで甲児は操縦を全く知らないまま乗ったために、街を破壊してました。

 照準は目の視界内でオートロック・オン。
 レバー、ペダル、ボタン、音声(ここ重要)の組み合わせで内蔵された無数の武器を発射。

 使用頻度の高い武器は大抵、ハンドルのボタンか音声入力で使用可能。

 操縦のために必要なスキル

 自動二輪2年以上(大型が望ましい)
 軽飛行機1年以上(パイルダー操縦のため)
 音響効果装置もしくは鍵盤楽器、料理経験1年以上(複雑な計器操作)
 格闘技5年以上(頑丈な体と戦闘センス)
 ロボット整備士(メンテナンスの技量)
 正義の心(プライスレス)

 注意点(国内のマジンガーZの使用)

 マジンガーZを所有したら、野球場などの広い場所で試運転を行いましょう。
 公道を走る際には制限速度を守り、信号などの道路標識にも注意。
 日本国内では銃刀法により、内蔵武器には全て地元警察署からの許可証が必要です。
 必要な場合以外は内蔵武器は警察署で預かってもらったほうが良いでしょう。
 ブレストファイヤー等は誤射しないように電源コードを切っておきましょう。
 保管場所は自宅から2キロ以内の地下が適切。パイルダーは盗難対策を忘れずに。
 輸送の際は危険物として扱います。空輸は原則禁止ですが、適切な申請をすれば許可されます。
 外国ではその国に応じて適切な保管、利用を心がけてください。
 エンジンオイルは光子力エネルギー以外は使用しないでください。故障の原因になります。
 故障の際は光子力研究所に連絡をしてください。決して自分で修理しようとはしないでください。

 以上
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/02(土) 20:53:01.03 ID:twponn4wo<> 乙!
コンバトラーチームに見せ場が来そうだから一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/07/03(日) 05:52:18.31 ID:GFZzIieAO<> 乙
破界篇でマジンガー殴り飛ばせるあしゅらが乗りこなせないから、かなりピーキーみたいだなパイルダー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<><>2011/07/09(土) 03:42:53.48 ID:2OSvIJbAO<> 携帯から>>1ですが明日からついにBaby-princess3Dパラダイス0<ラブ>が新宿バルト及び梅田バルトにて公開されます。

明日公開はおそらくもうチケット完売でしょうが、一週間くらいはやるので興味のある方は是非

出演者曰わく「最高にかわいくて笑える30分」だそうです


やったー魔法騎士レイアースのコミックがいっぺんに3つ買えたよー

と、思って家で開けたらレイアース2でした

ここ一週間は短期で働いてたので、全く書いてません。忙しければそんなものです

毎回終業後にパチスロ「残機尽きるまで私は戦う」打ってましたが、合計で一万増えてウハウハです――きゅん♪

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/07/10(日) 16:53:31.55 ID:wUYVxVQyo<> レイアースって……だいぶ昔に姉が買ってた少女漫画で読んだ以来だな

残機尽きるまで私は戦うってなんぞ?と思って調べたら
見た目は結構面白そうだが、置いてるところが少なかった
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:51:25.78 ID:s5Gq2ULN0<>
 第二十七話

 ホワイトベースを出立した唯たちは途中で琴吹家の高速輸送艦に移って地球へ急行していた。
 それでも、キャンベル星系からものの数日で現れたセント・マグマに追いつけず、ゴッドバードにアンカーを繋ぎ、引っ張ってもらっている。
 また、連邦軍はミノフスキー粒子による撹乱を行い、セント・マグマは若干の足止めを喰らった。

 それらの甲斐あって、輸送艦は地球に降下する前のセント・マグマに接触することができた。

紬「キャンベル星人が地球に降下するのを阻止します。各機、発進してください!」

 限定条件下で特機小隊隊長に任命された琴吹紬の号令で、まずシャトルとゴッドバードを繋ぐアンカーが切り離され、ゆりえがセント・マグマに接敵する。

ゆりえ『ゴォォォォォォッド・サンダー!』

 ビシャァァッ! 牙から電撃を放ち、セント・マグマの東西南北についている竜の頭を砕いた!

ジャネラ「むっ! きゃつらか! ダンゲル、ワルキメデス、応戦せぬか!」

ワルキメデス「かしこまりました、ジャネラ様」

 女帝ジャネラの指図に長身で細身の身体を折り曲げたのが総統ワルキメデス。
 ジャネラをも上回るという頭脳で戦力開発や作戦の立案をする補佐役だ。

ダンゲル「おぉっ! やっと戦わせていただけるのですな、ジャネラ様!」

 筋肉質の短躯を奮わせてハサミ状の義手を掲げて見せたのはダンゲル将軍。
 ワルキメデスの弟だが、頭が悪い。代わりにキャンベル星人随一の武闘派である。

ワルキメデス「ゆくぞ、ダンゲル! 新マグマ獣の恐ろしさを思い知らせてやるのだ!」

ダンゲル「おぉぉっ!」

 両陣営が兵器を展開したのはほぼ同時だった。

 輸送艦からはマジンガーZ、ライディーン、ダンバイン、ボチューン、アルトアイゼン、R−1、そしてコン・バトラーVだ。

 対してセント・マグマからはマグマ獣ガルムスとデモンが各十体ずつ、様子見といった戦力だ。

真紅「翠星石、わかっているわね」

 前回の勝負で翠星石は逸る気持ちを先走らせて合体が解除されてしまった。

翠星石「わかってるですよ、みんなと力を合わせるですぅ!」

 近くに寄ってきたガルムスに向かって、コン・バトラーVは構える。

翠星石「いくですよ、Vレーザー!」

 ズドォォォッ! 赤い光線がコン・バトラーVの頭部から発射され、ガルムスを爆発させた。

蒼星石「やった!」

金糸雀「次がくるかしら!」

翠星石「バトルリターン!」

 ガツンッ! 振った左腕から円盤が飛び、接近していたデモンを叩くと、右手に肩から射出した手槍を握る。

翠星石「ツインランサーですぅ!」

 ズギャァッ! デモンの首が飛び、すぐに爆発する。

 元々、一度倒した敵なので、他の仲間も二十体のマグマ獣を順調に倒していく。

立夏「T−LINKナックルーッ!」

珠姫「たぁぁぁっ!」

 ドゴォッ! ザシィッ! ダンバインがガルムスを両断し、R−1が燈色に光る拳を叩きつけ、デモンを粉砕する。

 R−1の必殺武器T−LINKナックルは関節部に限定して使われている結晶化記憶液体金属ゾル・オリハルコニウムと核融合エンジンのサブに併設されている超電磁エネルギーから生まれた副産物である。

 ゾル・オリハルコニウムは、アステロイドベルトの小惑星ゾルで発見された超希少な金属で、パターン化された電波を通電することで記憶された配列に従って形態を変えることができる。
 これに超電磁エネルギーを与えるとアメ状になり、超電磁エネルギーの莫大なパワーを直接送り込むことができる。

 ゾル・オリハルコニウムは本来、エメラルドのような鮮やかな薄緑色をしているが、超電磁エネルギーと反応することで燈色になる。
 この燈色の光りを立夏はたいへん気に入っている。
 オレンジは真夏の太陽そのもののような立夏の大好きな明るいイメージカラーだからだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:52:24.67 ID:s5Gq2ULN0<>
唯「ブレストファイヤー!」

霙「クレイモアでまとめて落とす」

 ズドドドドドドドッ! 広い範囲で放射された熱線で柔らかくなった多くのマグマ獣に炸裂弾がめり込み、粉砕していく。

ゆりえ「いきます! ゴォォォッド・ゴォォォォォガンンン!』

 ビュンッ! ゴッドバードから変形したライディーンが大きな弓から矢を射る。

 狙いはセント・マグマの龍だが、矢は直前で吹き飛ばされてしまう。

ゆりえ「そんなぁ!」

 強力な風はまさに龍の口から発せられていた。

ダンゲル「まったく! 兄貴がもたもたしているから、せっかくのマグマ獣がやられてしまったではないか!」

 口から出てきたのは真っ赤な二足歩行のマグマ獣だ。
 キャンベル星人の将軍ダンゲル専用決戦用マグマ獣グレート・マグマだ。

ダンゲル「よぉーし! コン・バトラーVはどこだ! いざ尋常に俺と勝負しろっ!」

 グレート・マグマがゴリラのように両腕で胸を叩く。

翠星石「やってやるですよぅ!」

 応じてコン・バトラーVがグレート・マグマの前でツインランサーを持つ。

ダンゲル「うおぉぉっ!」

翠星石「どりゃぁぁぁぁぁっ!」

 ガギンッ! 手首の剃刀と手槍の刃が打ち合う。

ダンゲル「ぬぐぅ、凄いパワーだ!」

蒼星石「気を抜いたらやられてしまう、気をつけて、翠星石!」

霙「…………」

 グレート・マグマとコン・バトラーVが互角の攻防を繰り広げる脇でアルトアイゼンが静かに、だが速い挙動で射程を計る。

 だが、それはセント・マグマから飛んでくるビームに遮られてしまった。

ワルキメデス「他の者は手出し無用だ。さもなくばこのダークロンがひと暴れするぞ!」

 グレート・マグマに続いてセント・マグマの龍の口から出てきたのはまた龍に似たマグマ獣だった。

霙「そう脅して、地球に降下する時間を稼ぐつもりだろう?」

ワルキメデス「その通りだが、これは脅しではない。命令だ。脅迫は互いの力が同等かそれ以上の時の手段だ。このダークロンはまだ試作型だが、惑星一つはたやすく貫くほどの力を持っているぞ」

霙「そんな馬鹿馬鹿しいほどの力を持つオマエたちが何故今さら地球を占領するんだ?」

ワルキメデス「我々は常に新たな土地を必要としているのだ」

唯「新たな土地……?」

 難しい会話に頭をひねる唯を置き、霙はリボルビング・ステークを立てた。

霙「一つわかった。オマエたちは私たちと同じ等しく価値のない宇宙の塵だが、その中でも特にろくでもない塵だ」

立夏「オネーチャン……リッカはよくワカリマセン」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:53:16.60 ID:s5Gq2ULN0<>
 唯以上にオツムの弱い妹に霙はフッと笑う。

霙「簡単な話だ、立夏」

立夏「うん?」

霙「奴らはただの侵略者だ。遠慮することなく蹴っ飛ばしてやれ」

 頭痛を消すツボを押したみたいに立夏の表情が晴れた。

立夏「リョウカーイッ! チャオ!」

 ぎゅん――! 戦闘機に変形したR−1がダークロンへ飛び込む。

ワルキメデス「愚か者どもが! ツメミサイルを喰らえ!」

 ドシュッ! ドシュゥッ! ダークロンの爪が発射され、R−1を捉える。

霙「射撃は苦手だがな、四の五の言ってられん」

 ガガッ! ガガガッ! 左腕のマシンキャノンを撃つ。

 弾はR−1に当たる直前のツメミサイルに接触し、読み通り誘爆させることに成功するが――

 ドゴォォッ!!

霙「ッ!?」

 珍しく霙の表情が狼狽の色を見せた。

立夏「ひやぁぁぁっ!」

 続く立夏の悲鳴で息を呑む。
 霙が撃ち抜いたミサイルの爆発が予想より何倍も強く、R−1を巻き込んだのだ。

ワルキメデス「馬鹿めが! 火薬が違うのだ、火薬が!」

立夏「ひぇぇぇぇぇぇぇぇーっ!」

霙「くっ、立夏!」

 左翼に異変が起きたのか、逆時計回りにぐるぐると回転しながらR−1が無重力の海で溺れているのをどうにか掴まえる。

ワルキメデス「ククク、とどめを刺してやるわ!」

 重なり合う二機を捉えているダークロンの口が開き、巨大なドリルに変わった。

ワルキメデス「地球の貧弱な科学力など、我が頭脳の前にはデクノボウだ!」

 ギュルリィィィィィィ――!

 ダークロンが突っ込んでくる。
 パーソナルトルーパーの装甲では防ぎきれないだろう。

唯「ちょえぇーっ!」

ワルキメデス「なにっ!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:53:47.97 ID:s5Gq2ULN0<>
霙「唯君!?」

 玉砕覚悟でリボルビングステークとヒートホーンを稼動させた直後、黒い影が視界を覆っていた。

唯「ふんす!」

 ガシュイィッ! マジンガーZの手のひらが真正面からダークロンのドリルを掴む。

ワルキメデス「えぇい! このまま突き刺してやるわ!」

唯<鉄壁>「超合金Zと光子力エネルギーが負けるもんかー!」

 ビシュッ! ビギキッ! ジェットスクランダーを噴かすマジンガーZ。

ワルキメデス「な、なんだこやつのパワーは!?」

 バカァン!! ダークロンのドリルは力任せに握り潰されてしまった。

唯「ブレストファイヤー!」

ワルキメデス「い、いかん!」

 ゴォォォォォッ! 赤い胸板から放射される熱線からはかろうじて逃れるが――

珠姫「逃がさない!」

チャム「やっちゃぇぇぇぇ!」

 ザシュッ! 突如現れたダンバインの剣がダークロンの眉間に突き刺さった!

ワルキメデス「しまった!」

 操作に自由が利かなくなり、揺れる視界の端に赤い閃光が映った。

霙「礼をさせてもらうぞ」

 ドスッ――戦慄する間もなく、衝撃がダークロンの喉元からワルキメデスに届いた。

 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! 立て続けに六発の杭が打ち込まれ、最後の一発は貫通した。

ワルキメデス「う、うぉぉぉっ!」

 ごぉぉんっ……! ダークロンの長い首から黒い煙が噴出し、たまらずワルキメデスは脱出する。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:54:18.86 ID:s5Gq2ULN0<>
ダンゲル「うおぉぉっ!」

 グレート・マグマに乗るダンゲルは両腕を振り回す。

翠星石「うりゃあ!」

澪「うわっ!」

 左右から攻めかかろうとしていたコン・バトラーVとダイアナンAが危うく避ける。

澪「スカーレットビーム!」

 ビィィィッ! ダイアナンAの赤い光線がグレート・マグマの右肩と胸に当たったが、

ダンゲル<不屈>「うぐぅ、効かぬわ!」

 機体以上にパイロットが我慢強いのか、患部を膨らませながらタックルをかましてきた。

 どがぁっ!

澪「い、痛ぁっ!」

 姿勢制御バーニアが緊急作動して胸が締め付けられ、苦しくなる。
 さらに追撃しようとするダンゲルの後ろにコン・バトラーVが迫っていた。

翠星石「超電磁ヨーヨーですぅ!」

 ギュアァァァッ! コン・バトラーVのヨーヨーがグレート・マグマの脆くなった右肩にめり込んで破壊した!

ダンゲル「ぬうぅ、卑怯だぞ、コン・バトラーV!」

真紅「侵略者に言われると心外だわ」

金糸雀「同感かしら」

ダンゲル「こうなったら奥の手を使ってやる!」

 グレート・マグマが両腕を振り上げた。
 新たな構えにどんな攻撃が来るかと身構える翠星石。

ダンゲル「喰らえーっ! 煙幕攻撃!」

 もわっ――グレート・マグマの口から黄色やら紫色やらの煙が吐き出され、周囲を隠した。

翠星石「げぇっ!」

蒼星石「気をつけて! 攻撃されるかもしれない!」

 わかってるとばかりにコン・バトラーVは警戒を崩さなかった。
 しかし、いくら待っても攻撃の気配はない。

 煙幕が晴れるまで待っても何も起きない。

翠星石「に、逃げやがったですぅ!」

 グレート・マグマは如才のない動きでセント・マグマへと走っていた。

ダンゲル「わーっはっはっはっは! 俺の任務は時間を稼ぐことだ!」

翠星石「こんにゃろーっ! 待ちやがれですぅーっ!」

蒼星石「ダメだよ、翠星石! コン・バトラーじゃ大気圏に入れない!」

 既にセント・マグマは青と赤の混じった摩擦熱に包まれ、ダンゲルのグレート・マグマは回収寸前だった。

ダンゲル「次こそは決着をつけてやるぞ、コン・バトラーV!」

翠星石「えぇーい! ビッグブラストですぅ!」

 しゅぼぉっ! コン・バトラーVのみぞおちから巨大なミサイルを撃つが、当たる前に爆発してしまった。

翠星石「きーっ!」

 悔しさを隠せない翠星石のバトルジェットが合体を解除してシャトルへ戻っていく。
 あと少し、蒼星石がオートパイロットへ切り替えるのが遅かったら、今ごろバトルジェットは大気圏に飛び込んでいただろう。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:54:55.35 ID:s5Gq2ULN0<>
 着艦するとすぐに霙はR−1へ跳んでハッチを開けた。

霙「立夏、生きてるか、無事か?」

立夏「ウ、ウン、ナントカ……」

 かすかな鼻を刺す匂いと湿気に吐いたか? と訊ねる。

立夏「ちょ、チョコーットダケ……えへへ、チョコパイ食べスギちゃったカナ……」

 表情は笑っているが顔色は悪い。

霙「……悪かったな」

 頬を撫でてから額をくっつけ合わせた。

霙「うん、熱はないな、脈拍も、ちょっと弱いか?」

立夏「ヘーキだよ、ちょっとクラクラするけど」

 眩いブロンド・ツインテールをポンポンとやさしく叩くと、立夏がクフフッと笑った。

霙「何だ?」

立夏「えへへ、霙オネーチャンのポンポン久しぶりダナって」

 意表を突かれて目をぱちぱちとさせる。
 霙と立夏は五歳違い――何故か立夏は困ったときは霙に頼るクセがあった。

 後になって分析してみると、長女の海晴は蛍にくっつく氷柱をまとめて見てたし、三女の春風はヒカルとべったりだった。

 立夏がワガママを言うようになって氷柱に怒られ始めると、立夏は氷柱と一緒にいた海晴と蛍を避けて霙に頼った。
 自分を怒る氷柱と一緒にいた蛍と海晴は立夏の本能的には敵だったのかもしれない。

 しかし、その頃には霙の興味は既に大宇宙に向けられており、小雨、麗、夕凪、星花、吹雪、綿雪まで生まれていたため、立夏の泣き言などまさしく灰塵に等しきものだった。
 ついでに言えば、立夏はひとしきりわんわん泣いた後はすぐに寝てしまう。

 という訳で、霙のポンポン攻撃は泣き虫ミサイル迎撃アイテムだったのだ。

 フフン、と今度は霙が笑った。

霙「あぁ、そうだな。私はこの姿勢でオマエが氷柱にしてきたとても言えないようなことを何度も聞かされている」

立夏「ゲッ……!」

霙「まあ、今さら氷柱に言いつけるつもりも毛頭ないが、オマエが隠れて盗んだ氷柱のおやつをあげていこうか?」

 見る見るうちに色を変えていく七女の顔が霙の宇宙の数少ない楽しみであるとは口には出さないのだった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:55:45.65 ID:s5Gq2ULN0<>
 セント・マグマ

ジャネラ「失態じゃったな、ワルキメデス」

ワルキメデス「面目ありません、ジャネラ様。ダークロンさえ完成しておれば……」

ジャネラ「言い訳は聞きとうないわ!」

ワルキメデス「申し訳ありません!」

 平身低頭する総統ワルキメデスの横で任務を全うしたダンゲルは得意顔をしている。

ダンゲル「ところでジャネラ様、何故に俺を呼び戻したので? 俺はあと少しでコン・バトラーを倒せたのですぞ」

 これみよがしに言うと、ワルキメデスが肩をいからせているのがわかる。
 普段から頭が出来が違うことを馬鹿にされていたので、こういう時は気分がいい。

ジャネラ「実はな、星系外に待機させておる軍隊から通信が入ったのじゃ」

ダンゲル「ほう」

 いつもなら受け答えはワルキメデスがするが、頭を垂れている。
 本当に気分がいい。

ジャネラ「宇宙海賊めらと接触してしまったのじゃ、しかも彼奴らの目的も地球らしい」

ダンゲル「なるほど、それは由々しき事態でありますな」

 心の中で舌なめずりをした。
 こういうとき、兄貴ならこうするだろう。

ダンゲル「ならば、我が兄、ワルキメデスに宇宙海賊の相手をしてもらってはいかがでしょう」

ワルキメデス「ダンゲル! 貴様……っ!」

 思わず顔を上げてワルキメデスがダンゲルを睨みつける。
 銀河に名を轟かせる宇宙海賊と辺境の星の制圧――どちらが楽で手柄が大きいかは明白だ。
 小ざかしい兄貴は手柄を独り占めするために必ず俺を宇宙海賊へ当てるだろう。
 しかし、今の立場は任務を遂行したほうが上だ。
 この機会を逃してジャネラ様の寵愛を受けることはもうできないだろう。

 だが、結局はダンゲルの思い通りにもならないのだった。

ジャネラ「いや、わらわはここは地球制圧は延期しようと思う」

ダンゲル「な、なんですと!?」

ワルキメデス「……なるほど、良いお考えだと存じます、ジャネラ様」

 神妙な顔つきになったワルキメデスが頷く。
 それだけで一度は傾きかけたジャネラの天秤はダンゲルからワルキメデスへ傾いた。

 だというのに、どれだけ頭を捻ってもジャネラの考えはダンゲルにはわからないのだった。

ワルキメデス「地球制圧などいつでも出来ます。それよりも、宇宙海賊を先に潰して、後顧の憂いを絶とうという訳ですな」

ジャネラ「その通りじゃ。ここはひとまず降下をし、我等が地球にいるという恐怖を植え付けておきながら、密かに外の軍隊と合流して海賊たちを殲滅するのじゃ!」

ワルキメデス「はっ! 早速作業に取り掛かりますれば!」

ジャネラ「うむ、頼りにしておるぞ!」

ワルキメデス「ははっ!」

 不敵に兄貴が笑うのを見て、ダンゲルは歯軋りして地団駄踏むのをこらえるしかなかった。


 そして、セント・マグマの幻影を追いかけてシャトルは地球に降下した。

 降下ポイントは予定していた日本から大幅にずれた欧州――ヨーロッパである。

 そこでは、地球から撤退したジオンとギガノスの兵士を集めて吸収したドレイク・ルフトと、ゴラオンのエレ・ハンムの両軍隊が戦線を膠着させていた。


 第二十七話 阻止! セント・マグマ降下作戦 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/17(日) 19:56:36.51 ID:s5Gq2ULN0<>
 今日はここまでです。

 相変わらずシナリオの主役機(コンV)と実質的な主役キャラ(霙と立夏)が違っています。
 雛苺なんて台詞ありません。律とか紀梨乃とか。

 今は地上と宇宙に分岐した部隊を追うルート分岐中ですが、今回は地上ルートを終わらせた後に宇宙ルートの話をやります。

 地上1→2→3→4→宇宙1→2→3→4→合流という流れです。

 各4話ずつを想定していますが、増えるかもしれません。
 
 人間、お金があるといけません。

 劇場3DBaby-Princess×3

 ガンダム エコール・デュ・シエル5〜9
 クロスボーンガンダム1
 種死小説1
 ポケ戦小説版
 バンブーブレード1〜6
 永井豪版ダンテ『神曲』上下巻
 フルメタ 燃える〜、二死満塁、極北
 ガサラキ2
 小説版パトレイバー
 イリヤの空2〜4
 ミナミノミナミ
 まんがの作り方5←おすすめ

 定職ないのに10,000円近く使って残り5,000円。

 残機尽きるまで私は戦うにつぎ込みました。

 負けました。

 そういえば、R-1などの設定が原作と異なってきてますので、ご容赦願います。
 ていうか、調べるとOG機体ってかなりヤヴァイです。

 一粒で原子力潜水艦の核燃料棒30基分のパワーの鉱石って何やねん。

 あと、T-LINK=念動力ではないので、ナックルも違ってます。
 ていうか念動エネルギーで殴るって何やねん。

 という訳で、このSSの理論ならば、R−1全体をナックル化して突撃することもできます。
 ただし、R−1はバラバラになるか関節が動かなくなるです。
 シャイニングフィンガーよりも輻射波動に近いです。

 それでは。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/17(日) 20:10:57.90 ID:7VYVd/72o<> 乙
唯に一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:51:46.01 ID:3gqmiXT10<>
 第二十八話


 シャトルはラウの国の女王エレ・ハンムが率いるゴラオン艦隊とアの国の王ドレイク・ルフトのウィル・ウィプス艦隊が鉢合わせている真っ只中に落ちてきた。

紬「オーラシップが睨み合ってる……」

律「いつの間にかキャンベル星の艦がいなくなったと思ったら、今度はバイストン・ウェルの戦いかよ!」

唯「地球に帰ってきたんだ……」

澪「どうした、唯?」

唯「早くあずにゃんに会いたいねぇ」

澪「あ、あぁ、そうだな」

律「そのためには、ここを切り抜けないとな!」

 宇宙と比べれば、ヨーロッパと日本の距離なんて近所のように感じる。
 実際、地上に降下したらすぐに会いに行く予定だったのだ。

紬「それじゃあ、唯ちゃんと澪ちゃんは機体で待機しててね」

唯「うん!」

澪「あぁ、わかった」

律「がんばれよーっ!」

 走っていく部員の背中を叩いて送り出す律。
 さすがに重力下の空中でボスボロットに乗る気はないらしい。
 空中に出られないという点ではダイアナンAも同じだが、カタパルトでシャトルの直掩になる。

律「しっかし、澪もやるようになったなー」

紬「そうね……でも、やっぱり……」

 指令用のコンソールに手のひらを乗せて、紬はうつむく。
 そんな紬の背中も律は叩いた。

律「アイツだって理解してるよ。ムギを恨むようなことはしないって」

紬「ありがとう、りっちゃん……」

律「さっさとゴラオンに合流して、梓を迎えに行こうぜ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:52:21.44 ID:3gqmiXT10<>
 ゴラオンには、前方のウィル・ウィプスとは別にギリシア方面から北上し、駐留している連邦軍を取り込んで戦力を増強したジェリル・クチビの部隊が迫っていた。

ジェリル「いいかい? アンタたちは連中を驚かす程度でいいんだ。危ないことはアタシらがやるよ」

 編隊を組んだオーラバトラーの先頭にいるジェリルが言うと、惚れ惚れした返信が来る。

連邦兵「は、それにしてもジェリル様、こうして一緒に飛行してみますと、オーラバトラーの素晴らしさがよくわかります」

 ジェリルのレプラカーンは連邦兵が乗る戦闘機と同じ速度に並んで飛んでいる。
 地上に出たばかりの頃は最大速度でようやく音速に到達するかというオーラバトラーだったが、地上の機械を大幅に取り入れたことで性能――特に速度は段違いに向上していた。

連邦兵「バイストン・ウェルに行けたあなたを、大変うらやましく思います」

ジェリル「フフ、地上の軍隊だってなかなかのものじゃないか」

連邦兵「しかし、我々にはない力をあなたは持っているのです。まさに宇宙世紀にジャンヌ・ダルクと言うべきでしょう」

 違いないという別の兵士の声が聞こえる。

ジェリル「……こそばゆいね。ダブリンの鼻つまみが、ジャンヌ・ダルクとはね」

 もちろん、悪い気はしない。
 カエルの子はカエルという生き方を送ってきた人間からすれば、他者に崇められることは味わったことのない快感だ。
 オーラ力の昂ぶりを覚える。
 オーラ力の成長は人格的魅力も引き出すらしい。
 いずれは、自分が惹きつけた男どもで新たな軍を起こし、女王にもなれるだろう。

バストール兵「ジェリル様! 上空から何かが落ちてきます!」

ジェリル「何だって!? チッ、レーダーはどうだ!?」

連邦兵「確認しています! ……これは!」

ジェリル「早く教えな!」

連邦兵「シャトルです! 識別はコトブキ・グループです!」

ジェリル「民間かい! ならほっときな!」

連邦兵「ち、違います、ジェリル様! このシャトルは、機動兵器を乗せています!」

ジェリル「何だって!?」

 だが、まだこの世界には邪魔者が多い。
 そいつらを全てねじ伏せて、真の英雄になる道はまだ始まったばかりだろう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:52:58.52 ID:3gqmiXT10<>
 バイストン・ウェルの軍の戦いということで、最初に出たのは珠姫とチャムのダンバインだった。

チャム「タマキ……お願いだから、自分を見失わないでね」

珠姫「うん……だいじょうぶだよ。体が軽い。宇宙にいたからかな」

 エレが言っていた通り、宇宙に出たのは珠姫にとって良い経験になったらしい。
 空が、こんなにも青いことすらも珠姫は忘れていた。

 赤いオーラバトラー、レプラカーンが接近してくる。

珠姫「地上人が乗ってる」

 この舐めてくるようなオーラは身に覚えがある。

ジェリル「幸先がいいよ! ダンバインとはね!」

珠姫「たぁっ!」

 ガキンッ! ダンバインとレプラカーンの剣がぶつかり合う。

珠姫「――!?」

 違和感があった。
 刃が擦れ合う感触が違う。

珠姫「地上の金属を使ってるんだ!」

ジェリル「よくわかったじゃないか! さぁさ、なまくらでいつまで耐えられるかい!?」

 ギィン! キンッ! ダンバインの剣は珠姫のオーラ力で守られているが、レプラカーンの剣はジェリルの力に地球の鋭い刃が使われている。

 ギッ! ギリィッン! ジェリルの剣の鋭さが珠姫の剣に食い込み、音が引きずられていく。

珠姫「くっ!」

チャム「タマキ、押されてるわぁ!」

ジェリル「如何ともしがたいねぇ、性能差ってやつがさぁ!」

タマキ<気合>「そんなこと、ないッ!」

 交錯し、距離が空いた一瞬に珠姫はオーラショットを撃った。

ジェリル「無駄だって言ってるだろ!」

 レプラカーンのバルカンでオーラショットを弾く。
 その爆煙から鉤針が伸びてきた。

ジェリル「なにっ!?」

珠姫「ヤァァーッ!」

 ザシィッ! オーラショットの煙に紛れて放たれたワイヤークローがレプラカーンの大腿部を掴み、そこをダンバインの剣が一閃した!

ジェリル「ぐっ……この、クソガキがぁ!」

連邦兵「ジェリル様を助けろ!」

 シュゴォッ――! 追撃しようとするダンバインの前に戦闘機が飛び込んでくる。

珠姫「連邦軍がドレイク軍の味方をしている!?」

チャム「あいつだよ! あいつのオーラ力が纏わりついてる!」

 ジェリルのレプラカーンを指差してチャムが言う。
 前後して、エレの声が珠姫に聞こえた。

エレ『チャム・ファウの言うとおりです。聖戦士タマキ』

珠姫「エレ様!?」
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:53:58.60 ID:3gqmiXT10<>
エレ『よくぞご無事で戻ってくれました』

珠姫「エレ様も……」

ジェリル「無駄口を叩いているヒマがあるのかい!」

 オーラの波動を感じ取ったジェリルが敵愾心を露わにして飛び込んでくる。

エレ『タマキ様、気をつけてください。その赤い髪の女からは巨大な悪意を感じます』

珠姫「オーラ力が、人を操っている!?」

 シャイィィィ! ソードが擦れ合い、火花が散る。

エレ『赤い髪の女の力を封じます』

 鍔迫り合いを続ける二機に向かって、ゴラオンから霊力が放たれた。

ジェリル「うっ! 何だ、機体が!?」

 エレの霊力がレプラカーンに取り付き、その動きを封じ込める。
 逆に、ダンバインの操縦は軽くなり、珠姫はオーラ力の負担が軽減された。

珠姫<熱血>「ハァァァァァッ!」

 シャィン――ッ! 珠姫の剣が青白く煌めいた。

チャム<激励>「いっけぇぇぇぇぇぇ!」

ジェリル「うぉあぁぁぁぁぁぁっ!」

 ズギィィィィィィィィィッ!! オーラソードがレプラカーンの装甲を抉り、胸元を引き裂いた!

ジェリル「ぐ、ぐぅぅ……!」

 よろめくレプラカーンのコクピットでジェリルが呻く。

チャム「やっちゃえ、タマキ!」

珠姫「これでっ!」

 素早く身を翻し、右上手に剣を構え、振り下ろそうとする。


ジェリル<ド根性>「なめるなぁぁぁぁぁーっ!!」


 木霊がオーラの波動に乗って響き渡る。

 エレの艦隊に合流し、ウィル・ウィプスを牽制していた唯たちにまではっきりと聞こえるほどのジェリルの怒りがレプラカーンに凝縮されていく。

チャム「なに!? このオーラ力は!?」

珠姫「レプラカーンが……大きくなってる!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:54:38.49 ID:3gqmiXT10<>
 身長6、7メートル程度のオーラバトラーが、今では57メートルのコン・バトラーVよりも膨れ上がっていた。

ジェリル「アッハハハハハハハ!」

 夢か幻か判断もつかぬままの珠姫の前で、ジェリル・クチビは狂気にも似た歓声をあげた。


ジェリル「敵が小さく見えるということは、アタシが勝つということだ!」


 それを見て、ゴラオンのエレ・ハンムは怖れに喉を震わせた。

エレ「ジェリルは……オーラ力は……人を歪めさせ、戦いの中に取り込もうというのか……」

珠姫「こんな……こんな力が!」

ジェリル「もう終わりだぞ、ダンバイン!」

 ぶぉぉっ! 巨大な剣の風圧が珠姫の頬を叩いた。

 レプラカーンの頭上に雷雲が生まれていた。
 黒い雲が稲妻を落とし、その度にレプラカーンの剣と手と足が珠姫を砕こうと大気を揺らす。

珠姫「オーラ力が世界を歪ませる……!」

チャム「気持ち悪い……気持ち悪いよ、タマキぃ!」

 悲鳴に近いチャム・ファウの泣き言。

ジェリル「目障りだよ、ダンバイン!」

珠姫「くあぁっ!」

 ギャギィィッ! 巨大なレプラカーンの巨大な剣が珠姫の剣を叩き、紙細工のように折り曲げてしまった。

 どす黒い雲は勢力を拡大していた。

ジェリル「わかるぞ! この力の漲りよう! もう誰もアタシを止められないのさ!」

 龍のような大きさの足の爪がダンバインを掴まえ、ジェリルは雷雲に飛び込んでいく。

チャム「いやぁぁっ! タマキ、何とかしてよぉ!」

珠姫「でも、動かせない!」

ジェリル「アハハッ! アハッ、アハハハハハハッ!」

 木の枝を折る音の何億倍も不快な音が何億と降り注ぐ。
 その現象の源がオーラ力であると珠姫が気付いたとき、異変はもう起きていた。

 カチン、と冴えた音が聞こえた。
 この音を聞き逃すはずはない。人生でまだ二度しか聞いていない音。

 一度目はバイストン・ウェルに落ちるとき、そして二度目は地上に戻るときだ。

珠姫「オーラロードが開く!」

 黒雲は一斉に払われた。

 海上に巨大な建造物が二つ増えていた。
 一つは三角錐の頂点から中心に向けて結ぶように造られたブロックとブリッジ。

チャム「グラン・ガランだぁ!」

 ラウの国の同盟国、ナの国のシーラ・ラパーナ女王が乗る移動要塞グラン・ガランが、もう一つのクの国の戦艦ゲア・ガリングと対峙している構図で出現していた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:55:27.37 ID:3gqmiXT10<>
 ナの国の女王シーラ・ラパーナは己らの辿りついた場所が地上であることをすぐに察した。

シーラ「地上とバイストン・ウェルの戦いがオーラロードを繋いだか」

カワッセ「シーラ女王、ゴラオンとウィル・ウィプスを確認しました!」

シーラ「エレ女王と交信を。そして、ビルバインの発進準備を」

カワッセ「ビルバインを、ですか?」

シーラ「オーラロードが開くには、高いオーラ力の素養が必要です。それが可能なのはエレ女王か聖戦士カワゾエ・タマキしかありません」

カワッセ「はっ!」

シーラ「輸送にはユウジ様とフォウで」

カワッセ「かしこまりました」

 シーラの指示をカワッセが伝令に伝える。
 聖戦士タマキを初めとする室江高校剣道部のメンバーがバイストン・ウェルに落ちたのは、二ヶ月ほど前だ。
 地上とバイストン・ウェルでは時間の流れに差があり、珠姫は捕われていたシーラを赤い嵐の中から救い出した。

シーラ「タマキには、我がナの国で建造したオーラバトラー・ビルバインに乗っていただかなくてはなりません」

 バイストン・ウェルとは違う青い海を見下ろして、シーラは独りごちた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:57:23.55 ID:3gqmiXT10<>
 バイストン・ウェルの戦艦が浮上してきたことなど、ジェリル・クチビにはどうでもいいことだった。

ジェリル「このままぶっ潰してやるよ!」

 溢れる憎しみの感情の正体をジェリルは自覚していた。

 嫉妬である。

 自分よりも若く、優れた顔立ちの小娘が英雄のように扱われている事実が許せないのだ。
 ダブリンの片隅で固いベッドに生まれ、満足に食うものも与えられなかった自分が周りのものと一緒に盗みを働くのはほとんど人生の一部で義務のような事だ。
 留置場でジェリルは自分の価値が母親と同程度だとようやく知った。
 母親が看守に金を渡し、その上に跨り金を突っ込まれた時、ジェリルは娘から商品になった。

 文句は出なかった。。
 これがこの世界なのだと教育されたからだ。

 異世界に落ちて、ジェリルは自分のいた場所こそが異世界だと解った。
 バイストン・ウェルにだって似たようなところはあるが、今度はジェリルがそれを見下す側になった。

 気分がよかった。
 それもすぐに切り刻まれた。

 世界で、生まれた時から正しい場所にいた娘が、ジェリルの価値を奪った。

ジェリル「アンタはオトコがどんな形かも知らないだろう!」

珠姫「何を――う、うあぁ!」

 ジェリルの女という部分が憎しみのオーラ力を増幅し、レプラカーンを膨張させている。

 オーラがハイパー化しているのだ。
 仕事をしている時にそういう男はいた。

 女は嫉妬に狂うが、男は嫉妬に怒るのである。

ジェリル「レプラカーンはいいイロだよ! アンタを掻き回してやるのさ!」

 獣のように、レプラカーンがダンバインに覆い被さり、背中に噛み付いた。

珠姫「あぁぁぁっ!!」

チャム「タマキぃ!」

ジェリル「アハハハハハハッ! 生娘のままで死なせはしないよ!」

 自身の女の部分に熱を集める。
 レプラカーンの股間のオーラ・キャノンが肥大化していく。

 赤黒く怒張したそれをダンバインに突き刺し、放出して悲鳴を聞けば、ジェリルは本物の英雄になるのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 17:58:34.61 ID:3gqmiXT10<>
 女からの憎悪は真っ向から受けていた珠姫の思考を凌駕していた。

珠姫(この人が持っているのは悪の心じゃない……!)

 狡いとか、あくどいとかいうものではない。
 ジェリルは自身の女を賭けて珠姫を潰そうとしている。

 ただ、未だ女子という自覚の珠姫はそこまで明瞭と察してはいない。

 好意的に捉えれば、全身全霊で勝負に来ていると受け取れる。

珠姫「でも……っ! この人に渦巻くオーラは!」

 決して、珠姫に向けられるジェリルの感情は好意などではない。
 気持ちの悪い、ざらつく感じ――珠姫の心臓を裏からすくい上げて握り潰そうとしているのだ。

珠姫「オーラ力は……世界に悪意を生み出してしまう……!」

 その力の証が、ハイパー・ジェリルである。

 ずごぉっ――

珠姫「――!?」

チャム「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 下半身を痺れさせる震動にチャムが悲鳴をあげる。

 レプラカーンのオーラ・キャノンがダンバインを貫き、コクピットに来たのだ。

 掴まれた箇所はもう砕けて動かせない。
 コクピットから脱出しようにも、下は海で目の前にはレプラカーンがある。

チャム「死んじゃう! 死んじゃうよ、タマキぃ!」

 叫ぶチャム・ファウの声で、珠姫はむしろ冷静になり、悟っていた。

珠姫「地上で死ねるのは、せめてもの幸せかな……」

チャム「じゃあ私は……不幸な女じゃない!」

 判りやすい死の形があって、珠姫は自分のオーラ力が多方向に拡散していくのを感じていく。

 オーラ力が拡がり、珠姫はオーラロードを落ちていくような感覚に満ちていった。

 しかし、次に訪れたのはジェリルの欲の噴出ではなかった。

シーラ『聖戦士タマキ――!』

珠姫「――シーラ女王!?」

 チャム・ファウの悲鳴とジェリル・クチビの高笑いしか聞こえないはずのコクピットに珠姫は確かにナの国の女王シーラ・ラパーナの声を聞いた。

シーラ『ダンバインを降りてください。あなたに新たなオーラバトラーを与えます』

珠姫「オーラバトラー……――ッ!?」

ジェリル「終わりだよ! ダンバイン!!」

チャム「いやぁぁぁぁぁぁ!」

珠姫「――チャムッ!」

 半狂乱になっているミ・フェラリオを胴から掴んで珠姫はハッチを開けた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:00:17.68 ID:3gqmiXT10<>
チャム「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 空と海との間に身を投げるのと、ジェリルが噴出の解放感に包まれるのはほぼ同時であった。

珠姫「……気持ち、いい」

 スカイダイビングのように全身を広げて空を落ちていきながら、珠姫はまず戦争を忘れた。
 自分のオーラ力が溢れて空と一体化している。

珠姫「私、空になっている……!」

 シュパァァッ――と、オーラの流れを感じて、珠姫はそちらを見た。

 そこには、二人乗りの飛行艇のようなオーラマシン・フォウがこちらに向かって飛んでいる。

勇次「タマちゃん!」

珠姫「あ、ユージくん」

チャム「ユージぃ! たすけてぇ!」

 落下しているのにのんきにしている珠姫の指先で泣きじゃくるチャム・ファウ。
 二人を見て勇次はほっとしながらため息を吐いた。

勇次「なんだ、全然いつもの調子じゃないか」

 フォウを珠姫の真下に停めて、その体を受け止める。

珠姫「ありがと、ユージくん」

チャム「死ぬかと思ったわよ!」

 ぷりぷりと怒るチャムをよそに珠姫はフォウから身を乗り出して繋がれているものを見た。

珠姫「新型の、オーラバトラー……」

勇次「うん、シーラ女王からの贈り物――ビルバインだよ」

珠姫「これが……?」

 フォウにくくりつけられているのは、単純にフォウを一回り小さくしたような赤色のウィングキャリバーだった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:00:44.07 ID:3gqmiXT10<>
勇次「乗ればわかるよ」

珠姫「うん」

チャム「あーっ! おいてかないでよぅ!」

 チャムと一緒にウィングキャリバーの中に降りて、珠姫は驚いた。

珠姫「コクピットはオーラバトラーと同じだ」

 ハッチを閉めると同時にフォウが離れる。
 オーラコンバータを始動させて、操縦桿とペダルを握ると、珠姫は呻いた。

珠姫「操縦が重い……!」

 これは ビルバインが必要オーラ係数を低く造らせたかわりに、操縦がパイロットのオーラ力に依存してしまうオーラバトラーの欠点が浮き彫りとなっているのだ。

チャム「タマキ! レプラカーンが来てるよぉ!」
 一時はダンバインを落としたことで有頂天になっていたジェリルがウィングキャリバーの後ろを追ってきていた。

ジェリル「何で生きてるんだよ、アンタは!」

 ハイパー化は続いている。
 むしろ、殺したはずの相手が生きていたことに腹を立て、更に巨大化しているのではないか――

ジェリル「もういい加減に落ちなよ!」

 ドシュゥ、ドシュゥッ! オーラ・キャノンがウィングキャリバーを狙って撃たれる。

チャム「タマキぃ! はやくぅぅぅぅ!」

 いったい何をはやくしろと言うのか――チャム自身もよくわかってない文句に聞く耳持たず、珠姫は自分のオーラ力をビルバインに乗せることに集中した。

ジェリル「喰らいなッ!」

チャム「タマキぃーっ!」


珠姫「変形、ビルバイン!」


 オーラキャノンを掻い潜りながら上昇したウィングキャリバーの艦首が前に折れて胸に収容され、ロケット・ノズルになっていた脚部が関節を繋いで西洋兜のような頭部が持ち上がると、ビルバインはその本来の形態を青空の下にさらけ出した。

ジェリル「なにっ!? 変形した!」

 横に寝かせていたウィングキャリバーから人型へ変わったことで縦の推進力を増したビルバインはたちまちハイパーレプラカーンよりも高いところへ飛び上がり、右手にオーラソードライフルを構えた。

珠姫「そこっ!」

 バシッ、バシュゥッ! 珠姫が持つオーラ力そのものをエネルギーに転換するソードジェネレータからオーラの弾を撃ち、レプラカーンの目に当てる。

ジェリル「うぅっ!」

 ソードジェネレータを全開にして、ビームサーベルのようにオーラの刃をライフル口から形成し、頭上で構えた。

チャム「やっちゃぇぇぇぇぇ! オーラビームソードだぁーっ!」

珠姫「たぁぁーっ!」

 ギャシィィィィィンッ! 黄色の光りを散らしながらオーラの閃光で作られたビルバインの刃がハイパーレプラカーンの手首を切り落とした!


 デデデデッデデデデッ デーデーデ
 テーレーレーレーレーレーテーレレー テーレーレーレーレーレーレレー ォーラー
 オーォラロードーヲー ツラヌーイテー カゼニマギレテクールーヤーツガー
 オーォラノーチーカラーワスレーテカー ニクシミモヤシヒーヲーハーナツー
 イソグナラーオレガヤールサァー イキルタメーオレガハーシルゥー
 コーロシーアウノガー セーイギーデーナーイトー
 シッテタータカウーセンジョウダカラー ォォォーォォー
 フタツノウーデヲー フリアゲテヨブーゥー
 オーラバトラー! ダンバイン!
 オーラシュートー! ダンバイン! 
 アタック!アタック!アタック! オレハセンシー!
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:03:40.93 ID:3gqmiXT10<>
ジェリル「う、ぎゃ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 オーラのハイパー化とは、憎しみで増幅したオーラ力がオーラバトラーを纏わせているオーラバリアを広げて実体化させる現象である。
 そのため、機体そのものは大きくなっておらず、ハイパー化したボディが受けた傷はジェリルの精神にダメージを与える。

珠姫「まだ抵抗するのなら!」

 レプラカーンに向き直って珠姫は赤色のオーラバトラー・ビルバインの左手に両刃の実体剣を持って斬りかかった。

 ザシュッ! ビシッ! 二本のソードでハイパーレプラカーンの背中を攻撃する。

ジェリル「ぎああぁぁぁっ!」

 おぞましい声は憎しみの象徴であった。
 ぶん、と振り回される腕をかいくぐり、両肩に一門ずつつけたオーラキャノンを撃ちながら後方へ下がる。

ジェリル「うぇはぁっ! そうかい……そんなに死にたいのかい!」

 ショット、グレネイド、キャノン、バルカン、ボムを当たり一面に撒き散らす。
 火器もハイパー化しているため、威力と範囲が大きくなってハイパーレプラカーンは敵味方の区別がない。

珠姫「悪意のオーラ力が……!」

 これ以上、ハイパー化を長引かせてはいけない。
 珠姫はオーラソードライフルを腰部に収納すると、両手で剣の柄を握った。
 高まっていくオーラ力に気付いたジェリルはレプラカーンをビルバインに向けた。

ジェリル「最期だよ、ダンバイン!」

 憎悪に囚われているジェリルはオーラバトラーの区別がついていないようだ。
 ハイパー化した巨大な剣を持ってハイパーレプラカーンがビルバインに仕掛けてくる。

ジェリル<必中>「今日こそはってやつさ!」

チャム「タマキ、負けるなーっ!」

珠姫「はぁぁぁっ!!」

 屹立から自然体に構えたまま、珠姫は気を吐いた。
 肥大化したオーラ力がビルバインを突き抜けて珠姫自身を圧迫するが、宇宙という未知の空間を飛んだ珠姫は負けない。

ジェリル<熱血必中>「ヒロインは、アタシ一人でいいのさぁっ!!」

 怒涛の滝を思わせる重みでオーラソードを振り下ろす。

珠姫<閃き>「ジェリル・クチビッ!」

 チッ――! オーラソードが触れた瞬間、珠姫はビルバインを真横に向かせ、斬撃を受け流し、壁のような刃を蹴ってさらに高い空へ飛んだ。

ジェリル<再攻必中>「アタシが勝つと言った!」

珠姫「――ッ!!」

 避けたと思った一瞬、目の前が赤黒く覆い尽くされた。
 レプラカーンの手と指がビルバインを握りつぶそうとしている。

チャム「やらせないよぉっ!」

珠姫「チャム!?」

 ジェリルの手が珠姫を抑えつける寸前、その前にチャム・ファウが躍り出た。

 チャム・ファウの体からオーラの光りが輪郭になって放たれ、ジェリルの手がすくめられた。

ジェリル「うわぁぁっ!」

チャム<再動>「お前なんか、いっちゃぇぇぇーっ!」

 カァッ――と、オーラの光りが珠姫を自由にした。

珠姫「――見えたッ!」

 ジェリルの手がレプラカーンの手に戻り、ハイパー化したオーラを超えて、本来のレプラカーンの更に奥にいるジェリルを珠姫は捉えた。

珠姫<魂>「ハァァァーッ!!」

 ビルバインのソードはレプラカーンの腕をすり抜け、交錯の刹那、コクピットを確実に貫いた。

 ジェリル・クチビは断末魔をあげる間もなく、自らのオーラに呑み込まれていった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:05:07.66 ID:3gqmiXT10<>
 混乱を極めた大西洋での交戦は、ハイパー化したジェリル・クチビの死で収束した。

フェイ「……どうする、アレン?」

 ウィル・ウィプスに帰投したフェイ・チェンカは先にビランビーを降りていたアレン・ブレディに問いかけた。

アレン「俺は、やつほど歪んだ欲は持ち合わせていないさ」

 そのもっともとするところはフェイも同じであった。
 聖戦士を落とせば大金星。
 しかし、命を張るまでの必要はない。

フェイ「そろそろ、潮時かもしれねぇな」


 ゲア・ガリングと再会したドレイク・ルフトはさっそくクの国の王ビショット・ハッタと連絡を取った。

ビショット「手ひどくやられているようですな、ドレイク王」

ドレイク『それは貴公とて同じであろう』

ビショット「グラン・ガランとゴラオン、それぞれに分かれていた地上人が集まりました。逃がしてしまったのはまずかったですな」

ドレイク『今、再戦を挑むには兵の士気は下がっている。地上の領土に戻り、戦線を立て直そう』

ビショット「かしこまりました、ドレイク王」

ドレイク『時に、ビショット・ハッタ殿』

ビショット「はい」

ドレイク『ワシが地上に落ちてから、妻と娘はいかようであったか』

ビショット「は、我が城で身をお預かりしておりましたが、地上へは出ていないようです」

ドレイク『左様か』

 それから、いくつか言葉を交わして、ドレイクから交信は切られた。
 ビショットの後ろの暗幕から一人の女が姿を現した。

 バイストン・ウェルに留まっているとビショットが言ったドレイク・ルフトの妻ルーザ・ルフトであった。

ルーザ「夫は疑ってはおらぬようですな」

ビショット「さようでございますな、どうもドレイク王は女性を理解してはおらぬ様子」

ルーザ「地上か……この地も我らがものとなりますでしょう」

ビショット「フフ……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:05:49.43 ID:3gqmiXT10<>
 シャトルはイギリスに駐留することになったゴラオンとグラン・ガランにまずは荷を下ろした。

シーラ「お初にお目にかかります。バイストン・ウェル、ナの国の女王シーラ・ラパーナと申します」

紬「地上を代表して御挨拶させて頂きます」

エレ「ツムギ様を始めとして、地上の方々のご協力は可能な限りえられています。このイギリスの地も、女王と懇意を結ばせていただきました」

 グラン・ガランのとても空中要塞の中とは思えない貴賓室での会話。
 ついていけない唯たちはひたすら出されるお菓子を食べまくる。

律「つうか、女王二人についていけるムギがおかしいんだよ」

 ひそひそ声で言うと、澪がうんうんと同意する。

澪「エレ様はまだ話せるけど、シーラ様はオーラありすぎだよ」

唯「このお菓子も、シーラ様がいつも食べてるものなのかな」

律「やめろよ、食えなくなるだろ」

立夏「アレ? 霙オネーチャン、もういいの?」

 テーブルの端でマフィンを食べ終えた霙が立ち上がっていた。

霙「キャンベル星人からの連戦で、多くの機体にガタが出ている。私も修理に参加する」

 ナプキンで口を拭く霙の発言にエレと紬も頷いた。

紬「そうねぇ、ダイアナンやバトルマシンも傷が隠せなくなってるものね」

霙「健全なのはマジンガーくらいだ。他は本格的な修理が必要だろう」

律「宇宙に上がる前にメンテしたのに、帰ってきてまたすぐするのか……」

シーラ「それだけ、戦いが激しくなっているのでしょう」

 熱いミルクティーを息で冷ましながら飲み、シーラはふと辺りを見回す。

シーラ「聖戦士たちはいかがなされました?」
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:06:17.53 ID:3gqmiXT10<>
 バイストン・ウェルに落ちたのは室江高校剣道部の七人だった。

紀梨乃「みんな無事だったんだねぇー! ホントよかったよー!」

桑原鞘子「いやー、なんつーか、アタシらあんま役に立ってねーだったけど!」

 紀梨乃と抱き合って再会を喜び合う鞘子と同じように東聡里が丸眼鏡から涙を溢れさせて珠姫にしがみついていた。

聡里「うぇぇぇぇ! 川添さん生きててよかったぁぁぁぁぁぁ!」

珠姫「あ、うん……」

勇次「まあ、言っちゃえば、タマちゃんたちが地上に言ってからは戦争らしいことは起こらなかったんだけどね」

ダン「おー、ミヤミヤがさらわれそうになった時は大変だったけどなー」

都「あの時のダンくん、とってもかっこよかったぁ……」

チャム「あー、熱い熱い……」

エル・フィノ「こら、チャム・ファウ! みっともないわよ!」

 異世界でもラブラブだったことを見せられて冷やかすチャムに厳しい蹴りが飛ぶ。

チャム「きゃっ! 何すんのよ、エル・フィノ!」

 シーラにくっついているミ・フェラリオのエル・フィノに言い返す。
 その下にまだ幼いフェラリオのベル・アールがでんぐり返しをしている。

珠姫(よかった……みんな、変わらない……)

 集まったメンバーを眺めながら、珠姫は思い返す。
 オーラ力を憎しみに委ね、暴走させたジェリル・クチビの事を。

 実体でもない、幻でもないオーラのハイパー化。

 ジェリルはオーラ力を制御できなくて死んでいった。自分ひとりで。

珠姫(私たちも、自分のオーラ力の制御をしそこなえば、自滅が待ってる……)

 憎しみと怒りと驕りの心が、オーラ力を以上に増大させてしまうのだ。

珠姫(私もきっと、例外じゃない……)

 万が一の時、道連れになるのはシーラ・ラパーナから贈られた新型のオーラバトラー・ビルバインだ。

珠姫(ビルバイン……シーラ様が私を信頼して預けてくれたマシン)

 ハイパー化するということは、バイストン・ウェルだけでなく、地上との平和を志すシーラの期待に裏切ることになる。

珠姫(そんなことはしない……私は……聖戦士だ)


 第二十八話 浮上! 最強のオーラバトラー 完
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(埼玉県)<>saga<>2011/07/22(金) 18:10:03.20 ID:3gqmiXT10<>
 今日はここまでです。

 2つか3つばかりのブログでまとめていただいて感謝の限りです。
 まとめるだけでなく、カタカナ書きしてる主題歌の動画まで引っ張っていて、感動します。

 今回分をまとめていただく際に、厚かましくもこちらから注文がございます。

 今回のダンバイン、とぶの動画をひっぱる際は是非、ビルバイン乗り換え後の動画をお願いします。

 ダンバインを見ていない方は是非、ダンバインを1話から見てほしいです。

 劇中でダンバインからビルバインへの乗り換え、その圧倒的な強さ。
 そしてその直後に変わる新規OPアニメーション。

 自分がアニメを見てきた中でトップ3に入るほど興奮しました。
 並ぶものといえばパイルドラモンとリニスぐらいのものです。

 そういえば、後期OPを二番に張り替えたMADがあったと思いますが、探していただけたら探してください。

 そんなヤツはいないと思いますが、このSSでダンバインを知った気になってはいけません。
 私の都合のいいようにストーリーやセリフなんかをいじくっているからです。

 そして、本物の聖戦士ダンバインはこの二億倍くらい面白いです。

 CSの有料チャンネルでダンバインが始まって悔しいです。
 フジTWOを見られる方は是非とも観て下さい。

 あ、ちなみにコジローは自衛軍の予備役に招集されてたので無事です。
 ていうか、珠姫たちがバイストン・ウェルに落ちてたことすら知りません。
 実際、兵士の戦意を削ぐような通信は検閲される事もあるみたいです。
 たぶん、メシ喰って風呂入ってるでしょう。

 毎回、書き終わってから、投下し終わってから、書くべき事を思い出して困ります。

 以上です。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/07/22(金) 19:16:58.02 ID:RJg2suIAO<> 乙
前回の更新気付かなかったわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 23:18:12.05 ID:14xspck9o<> 乙
珠姫の活躍を祝して1票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/23(土) 17:55:10.32 ID:S5j6xAUAO<> ビルバインキタ!
これで勝つる! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 22:58:13.69 ID:8ybwpwHC0<>
 第二十九話


 シャトルはゴラオンに乗り入って日本を目指した。
 各ロボットの修理を行うためである。
 シャトルやゴラオンにも設備は整っているが、ほとんどがワンオフのユニットであるため、研究所に行かなければ応急処置程度にしかならないのである。
 一方で、室江高剣道部はビルバインの調整があるため、グラン・ガランに残ってアメリカ方面へ撤退するドレイク・ビショット連合を警戒している。

澪「そういうことを考えると、やっぱり超合金Zはすごいな」

 紬から出発の説明を受けて澪は頷いた。
 その手にはフォークが握られてチェリーパイを切り分けている。

蒼星石「宇宙では最前線でビームを受け止めていたのに損耗がまるでなかったものね」

唯「ミサイルもへっちゃらでした!」

真紅「へこみはあるけれど」

唯「うっ……」

律「一度傷がつくとまるで修理できないしな」

唯「あぅ!」

紬「その点ではライディーンもすごいわねぇ」

霙「あぁ、損傷を自己修復してしまうからな」

立夏「あれって、ゆりえちゃんの神さまの力で治してるんだよね?」

ゆりえ「うん、わたしもよくわかってないんだけど……」

律「よくわからないものを無理して使うのか……」

ゆりえ「はぅ……」

律「あぁ、あぁ、気にすんな、お約束みたいなもんだから」

ゆりえ「は、はぁ……」

紬「ライディーンも専門の研究スタッフをつけたいんだけれどねぇ」

律「近づくと攻撃してくるんだよな、あれ」

ゆりえ「ごめんなさい……」

霙「まあ、元が何だっけか、一万年と二千年前の愛の結晶だとかいうものだからな。わからなくて当然だ」

ゆりえ「あ、愛かどうかはちょっと……」

霙「フッ、お約束だ。業界は何故か一万とんで二千年が好きらしい」

翠星石「何業界ですかぁ……」

唯「あ、ちょっとトイレな〜う」

澪「黙って行け」

律「そもそもなうじゃないだろ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 22:59:20.89 ID:8ybwpwHC0<>
 ジャァー……

唯「ふぅ……危ないところだったよぉ」

 トイレから出て唯はゴラオンの中を歩いていく。

唯「あれ……? みんなの部屋ってどこだったっけ……」

 迷子になったと気付いたのは、最初に曲がるべき場所を通り過ぎてから二十分後のことだった。

唯「え、え〜っと、こっちかな?」

 よりおかしなほうへ進んでいく。

唯「わぁ〜っ! 全然わかんなくなっちゃったよ〜!」

 千単位で人が居住しているゴラオンだが、唯たちがいるのは特別層なので人通りが少ない。
 さらに唯が向かっているのは第四艦橋という清掃員ぐらいしか来ない外れ区画である。

唯「あぅぅ……でも、ここから誰かに通信できればぁ……」

 がらんとした第四艦橋の通信席にべそかいてよりかかる。
 その時、ほこりまみれの室内に突風が起こった。

唯「わぷっ! けほけほっ」

 ほこりで咳き込んでいると、後ろに誰かがいる気配を感じて振り返る。

唯「えっ……だ、誰……?」

『私は神の意志を伝える預言者である』

 古代ギリシャ人が着ていたようなぼろぼろの白いローブで顔まで隠した人物は手にした杖を唯に向けた。

『今、バードス島で世界の危機が進行しているのだ』

唯「せ、世界の危機!?」

『ドクター・ヘルがバードス島の地下深くに眠っていた古代ミケーネ人の暗黒大将軍を目覚めさせたのだ!』

唯「あんこくだいしょうぐん!?」

『ドクター・ヘルと暗黒大将軍――地獄の科学者と古代の魔将軍が手を組んだとき、世界は滅びてしまうであろう!』

唯「そんな!」

『それを止めることができるのは唯一つ、マジンガーZに他ならない!』

唯「マジンガーZが!?」

『最強の金属――超合金Zに身を固めた神々の化身マジンガーZにしか、強大な暗黒大将軍の軍団にはかなわぬであろう』 

 伝えるべきことを伝えたという風に預言者が杖を床に突くとまた突風が起こった。

唯「わぷっ! ……あれ?」

 舞い上がるほこりから庇った目を再び開けると、もうそこには誰もいない。

 しかし、その後には、確かに誰かがいた証として、ほこりがかききえていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:00:14.13 ID:8ybwpwHC0<>
 ゴ、ゴゥン……

律「おい、早まるなってば、唯!」

 ゴラオンは周囲をオーラバリアで覆って外風を退けている。
 そのため、格納庫は基本的に解放してあり、いざ発進となれば誰も止めることができない。

律「そいつの言ってたことがホントかどうかもわかんないだろ!」

唯「でも、もしホントだったら、間に合わないかもしれないんだよ!」

 既にマジンガーZにはパイルダーがドッキングされて、光子力エンジンが火を噴き始めている。

紬「唯ちゃん! せめてライディーンが修復するのを待って……きゃっ!」

 スクランダーに火が点いて、発進を止めようと身を乗り出していた紬が突風に煽られて澪に支えられる。

唯「ごめんね、ムギちゃん! でも、行かなくちゃ!」

 歩いて飛行甲板まで出ると、下にはオーストリアのウィーンの街並みが見える。

唯「マジーン、ゴーッ!」

 シュゴォォーッ! ジェットスクランダーの翼を立てて、マジンガーZが飛び出した。


 ドゥルルルンッ!
 ドゥーンドゥーンドゥーンドゥーンドゥーンドゥーンドゥーンドゥーン
 スリー!トゥー!ワン!ゼローッ! ハッシャーッ!
 オオゾラハバタククレナイノツーバサー
 ソーノーナーハジェェット・スクラーンダー!
 アラタナイノチガモエールー マジンガーゼットー
 スクランダァークロォースデェー ドッキングー
 <コーノーヒローイソラーハー オォォダーレーノモーノー>
 キーミノモノー! <キーミノモノー!>
 ボークノモノー! <ボークノモノー!>
 ミンナノモノーォダァーッ!
 ヘーイワーノイノーリーソラトブスーパーロボットー
 マジンガァァーゼェェットォー!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:00:56.87 ID:8ybwpwHC0<>
 バードス島は地中海の東部――エーゲ海に沈んでいたものをが浮上させた地図に載らない島である。

唯「ここが、バードス島……」

 あの預言者がやったのか、マジンガーZにはあらかじめバードス島へのチャートが入力されていた。

 絵に描いたような古代ギリシャ式の遺跡がある。
 そこに立つマジンガーZはエーゲ海に散見される巨人伝説の一部を切り取ってきたかのように映る。

あしゅら「マジンガーZめ! 何故このバードス島がわかった!?」

唯「この声は!」

 男と女の声が同時に聞こえて、そのほうへマジンガーZを向けると、あしゅら男爵が杖を握って遺跡の屋根に立っていた。

あしゅら「バードス島はドクター・ヘル様が開発した特殊電磁波装置で衛星カメラにも捉えられないというのに!」

唯「親切なおじさんが教えてくれたんだい!」

あしゅら「むむっ、何者かは知らぬが余計なことをしてくれた奴がいるものだ!」

ブロッケン「だが、この島にやってきたからには、ただで返してもらえるとは思うなよ、マジンガーZ!」

唯「ブロッケン伯爵!」

 あしゅら男爵とは反対方向、マジンガーZを挟むようブロッケン伯爵が現れ、両手を振り上げた。

ブロッケン「いでよ! 機械獣軍団!」

あしゅら「マジンガーZを破壊しろ!」


 がぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!


 遺跡の床を割って機械獣があしゅらとブロッケンの足元に出現し、マジンガーZに突進してくる。

唯「マジンガー、パワー全開!」

 ぐぉぉぉ……! マジンガーZの目が光り、唯がペダルをぐっ、と踏み込む。

唯「スクランダー・カッター!」

 ずがぁぁっ! 地面と平行に飛んだマジンガーZの紅の翼が一番速い機械獣トロスD7を引き裂いて宙に舞う。

唯「ドリルミサーイル!」

 ギュゥン! ぎゅぉんっ! 振り返って肘を折り、先端がドリルになっているミサイルをアブドラU2に撃ち、更に高く上昇した。

唯「ブレストファイヤーッ!」

 ごぉぉぉぉぉぉっ!

 宇宙では抑えていたエネルギーを完全に解放したマジンガーZの熱線はあっという間に三体の機械獣ガラダK7、ダブラスM2、ゴーストファイヤーV9をどろどろに溶かした!

ブロッケン「おおっ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:01:42.89 ID:8ybwpwHC0<>
あしゅら「マジンガーZめ、パワーアップしておる!」

ブロッケン「平沢唯も、操縦に慣れているぞ!」

 浮遊しながらマジンガーZが両手を前に突き出す。

唯「ロケットパーンチ!」

 ずどぉんっ! 鉄拳がキングタンX10の顔面を左右から潰す!

バルガス「おぉぉぉん!」

 最後に残った機械獣バルガスV5がバラバラになってマジンガーZに突撃してくるが――

唯「ルストハリケーン!」

 ぶぉぉぉぉぉぉ――……!

 マジンガーZの口から出る酸の風を浴びて錆びて落ちてしまった。

あしゅら「なんということだ! 機械獣軍団がまるで歯が立たん!」

唯「こんな島、また沈めちゃうぞ!」

ブロッケン「ぬぅぅ! 我等には時間稼ぎもできんのか!」


 「いいや! お前たちは存分に役立ってくれたぞ!」


 地団駄を踏んで悔しがるブロッケンの周囲のどこからか、しわがれた――それでいて覇気のある声が轟いた。

唯「こ、この声は!」

あしゅら「おぉ! 我等が主!」

ブロッケン「ドクター・ヘル様!」

 ずどぉぉぉぉぉぉぉっ!!

唯「わぁぁぁ!」

 突然、遺跡の石畳が盛り上がり、巨大な影がマジンガーZを太陽から隠した。

ドクター・ヘル「久しぶりだな! 平沢唯!」

唯「出たな、ドクター・ヘル!」

 ドクター・ヘルは唯の遥か頭上にいる。
 その科学者の体を支えているのは鎧兜を纏った巨大な石像である。

ドクター・ヘル「平沢唯よ、お前は既に籠の中の鳥だ。おとなしくマジンガーZを渡すというのならばその命は保証しよう」

唯「へんだ! 新しい機械獣を出してきたって、負けるもんか! ブレストファイヤーッ!」

 ごぉぉぉぉぉぉぉっ! マジンガーZの胸部から30000度の熱線を撃つが――

 ぐぉぉぉぉぉ!! 石像は表面を僅かに溶かしただけだった。

唯「えぇっ! ブレストファイヤーが効かない!?」

ドクター・ヘル「やれ! 戦闘獣<Aルソス!」

 ぐぉぉぉぉぉぉぉ!! 気合満面の雄叫びをあげて石像が肩から体当たりをぶちかましてきた!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:03:19.15 ID:8ybwpwHC0<>
唯「わぁぁぁっ!」

 ずずぅん……っ! とてつもないパワーに圧倒されてマジンガーZは背中から倒れてしまう。

ブロッケン「おぉ!」

あしゅら「さすがはドクター・ヘル様!」

唯「う、うぅ……」

ドクター・ヘル「どうかね、平沢唯君? ワシがバードス島の奥底から復活させた古代ミケーネ帝国の戦闘獣の威力は!」

唯「せ、せんとうじゅう……?」

 がぉぉぉぉぉぉぉぉ……!

 人型戦闘獣アルソスがまた胸を張って雄叫びをあげる。

唯「うぅっ……そんなのに……」

 ぐぐ……仰向けのマジンガーZが片膝から立ち上がる姿勢を取ろうとした時――


 「ぬぅぅぅおおおおおおおっ!!」


唯「!?」

 黒い風が吹いたと思った瞬間、唯の視界はおかしくなった。

 次に感じたのは頭を叩くような衝撃、そして平衡感覚を失ったこと。

唯「あっ……う、うぅ……」

 悲鳴もあがらなかったとだろう。

 気がついたときにはマジンガーZごと唯の体は横たわっていて、全身のあちこちが痛くなっていた。

???「脆い! なんという脆さか、マジンガーZ!」

ドクター・ヘル「ふふふ……言ってやるな、もはやローテクなのだぞ。暗黒大将軍よ」

唯「え……あ、あんこく……」

 脳裏に蘇ったのは、ゴラオンで預言者に聞いた言葉だった。


『ドクター・ヘルと暗黒大将軍――地獄の科学者と古代の魔将軍が手を組んだとき、世界は滅びてしまうであろう!』

『それを止めることができるのは唯一つ、マジンガーZに他ならない!』

『最強の金属――超合金Zに身を固めた神々の化身マジンガーZにしか、強大な暗黒大将軍の軍団にはかなわぬであろう』 
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:05:00.34 ID:8ybwpwHC0<>
唯「ま、マジンガーZが……」

暗黒大将軍「おぉ、立ち上がるか、ぐはははは!」

 警戒音のなる機内で力の限りレバーを倒してマジンガーZを立たせると、暗黒大将軍の全貌が明らかにされた。

 大きい。

 これは人間の大きさではない。

 いったいどこに身長が30メートルを超える人間がいるのか。

 だが、暗黒大将軍は確かにマジンガーZの遥か上の高さに頭があるのだ。

 そして、肥満した腹に白髪の顔がもう一つあり、そいつが唯と視線を合わせると、実際に動いていたのがこちらだと判る。

 例え肌の質感でさえ人間と全く同じに見せる巨大ロボットの技術があったとしても、ギラリと光る眼球や猛々しい体毛まで再現する必要性はないだろう。

 それ以上に、この圧倒的存在感は機械のものではない。

 魂を持った人間の剛気が屹立する暗黒大将軍の全身から発せられているのだ。

暗黒大将軍「どうした、立たんのか?」

 搭乗者の恐怖を反映して、肩膝の姿勢から身動きできなくなってしまったマジンガーZに暗黒大将軍はどすん、どすんと近づいてくる。

暗黒大将軍「立てんのなら、手伝ってやるぞ!」

唯「ぅわぁぁっ!」

 暗黒大将軍が太い腕をぶるんと奮わせてマジンガーZの手首を掴むと、勢いよく上に放り投げた!

唯「きゃあぁぁぁーっ!」

 どすん……っ!! 為す術もなく地面に叩きつけられたマジンガーZを見て、また暗黒大将軍は豪快に笑った。

暗黒大将軍「ぐわーはははははっ!! コイツが我等を封じ込めたゼウスの化身とは、片腹痛いわ!!」

ドクター・ヘル「くくく、もはや兜十蔵などワシの敵ではない! この暗黒大将軍とドクター・ヘル――いや、地獄大元帥が古代ミケーネ帝国の戦闘獣を操り、世界を我が物としてくれるわ!」

唯「そ、そんなこと……」

 ようやく立ち上がるマジンガーZを指差し、暗黒大将軍がふんぞり返る。

暗黒大将軍「貴様ごときに費やしている無駄な時間は俺たちにはない! ゆけぃ、獣魔将軍!」


 おぉぉぉぉぉぉぉっ!!


 暗黒大将軍が腰の剣を抜いて遺跡に突き刺すと、その奥から現れたのは四本の足に血のような翼に鎧の上半身を持つ怪物が現れた。

獣魔将軍「おぉっ! 暗黒大将軍様! 幾千年ぶりにございましょうか!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:05:27.28 ID:8ybwpwHC0<>
 恐ろしいことに、この獣魔将軍には四つの顔がある。
 上半身の首から上は鬼の面、右手には悪霊の形相、腹には蜻蛉の顔、そして四本足の胸部に恐竜の首が伸びていた。

暗黒大将軍「とうとう俺たちのミケーネ帝国が世界を手に入れる時が来たのだ! まずその手始めに、世界最強の兵士だという、このマジンガーZを八つ裂きにしてしまえぃ!」

獣魔将軍「かしこまりました、暗黒大将軍様!」

 ぶぉん、ぶぉん……! 獣魔将軍が左手に持った槍を振り回す。

暗黒大将軍「さぁ、やれぃ! マジンガーZを葬り、世界全ての種族を根絶やしにして、再びミケーネ帝国の頭上に太陽を輝かせるのだ!」

獣魔将軍「うおぉぉぉぉぉっ!」

 びゅーん! 三叉の槍が真っ直ぐ投げられる!

唯「こ、このーっ!」

 ズギャーッ! 不屈の闘志で起ち上がったマジンガーZだったが、その腹部は既に槍で貫かれていた。

唯「あ、あぁぁ……」
 ドクドク、と血のような潤滑油を流してまたマジンガーZが膝をつく。
 更に恐竜の首から炎が吐き出される。

唯「わぁぁっ!」

 ひゅぼぉっ! 炎ぐらいはたやすく耐える超合金Zだが、潤滑油に引火し、その内部を侵略していく。

 危険を感じたマジンガーZが自動で防護幕を張るが、あちこちに支障が出始めている。

唯「ロ、ロケットパーンチ!」

獣魔将軍「なんだそのおもちゃは!」

 必死になって打ち出した鉄拳も悪霊の口が食いちぎってしまう。

唯「ドリルミサーイル! ミサイルパーンチ!」

 しゅぼぉっ、どどどどっ! 躍起になって全身の火器を射出させていくが、獣魔将軍は蚊に刺されたとでもばかりに足場を固めて走り始めた。

獣魔将軍「そろそろとどめをさしてやるわ!」

唯「うわぁーっ! マジンパ――」

 ズガァァァァァッ!! 奥の手を出す間もなく、獣魔将軍の体当たりを喰らい、岩壁に叩きつけられると槍が深く刺さって磔にされてしまう。

唯「う、ぅ……」

 いかに超合金Zが硬いといっても、受ける衝撃はトラックに撥ねられたようなものだ。
 唯は意識が朦朧として、目の前が暗くなる。

獣魔将軍「ふはははははっ! 我等ミケーネ帝国に立ち向かおうとは愚かな人間がいたものだ!」

暗黒大将軍「さっさととどめを刺してしまえぃ!」

獣魔将軍「ははっ! 暗黒大将軍様!」

 高笑いをやめて獣魔将軍は左手に鞭を構えて振り回した。

 バシッ! 伸びた鞭がマジンガーZの首に絡みつく。

獣魔将軍「電撃地獄に落ちろ、マジンガーZ!」

 ズババババババババッ!!

唯「うぁぁっ、あっ! あぁぁーっ!」

 気絶することも許されないまま、唯は電撃を浴びる。
 本来ならば即死のはずだが、超合金Zがそれをやわらげてくれている。

 それでも、確実に死に神が唯の体を喰らい尽くそうとしていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:05:58.44 ID:8ybwpwHC0<>
唯(体じゅうが痛い……)

 強制的に覚醒される意識でさえ、靄がかかって何も映らない。

唯(せっかく、おじいちゃんがマジンガーZをくれたのに……)

 無敵の力、黒金の城なのに――

唯(やっぱり、私じゃダメなのかな……)

 そんなことはない――聞こえた気がした。

唯(おじいちゃん……)

 マジンガーZは神にも悪魔にもなれる。

 その力を、平和のために使えると思ったからこそ、ワシは唯にマジンガーZを託した。

唯(ごめんなさい、おじいちゃん……)

 お前は、こんなところで死んでしまうのか――

唯(そんなのイヤだよ……でも……)

 死んでしまうのかもしれない。

 そう思うと、僅かに手に力が戻った気がした。

唯(まだ、できること……あるのかな……?)

 手を握り、緩め、また握って、緩める。

 まるで、心臓に鼓動を打たせるように手から手首、肘、腕、肩、少しずつ力を取り戻し、目を開いた。

唯(おじいちゃん……マジンガーZ……)

 終われない。

 右手から始めた自己再生を左手に伝える。

唯(そうだよ……何か……やらなくちゃいけないんだ……)

 ここで立ち上がれなければ全てが終わってしまう。

 世界じゃない。

 部活――

唯(私、まだ……ギー太に弾かせてあげてない歌がたくさんあるんだ)

 音が聞こえる――

 あれは、何の曲だろう……

唯(そうだ、マチルダさんのけっこんしきで……)

 歌はいいねぇ――

唯(そうだよ……歌いたいんだ……また、みんなで……)

 りっちゃんのスティックがリズムを刻んで、

唯(澪ちゃんのベースがあって)

 ムギちゃんのキーボードがメロディーを作って、

唯(あずにゃんが――)


 「何をまた怠けているんですか、唯先輩!」


唯「……えっ?」

 その声は現実を叩き起こした。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:07:33.99 ID:8ybwpwHC0<>
ドクター・ヘル「ぬうぅ、何者だ、貴様は!」

 しわがれた声はマジンガーZが磔にされている岩壁の上に向けられていた。

獣魔将軍「おのれ、邪魔をしおって!」

 拳銃弾の一発で鞭をちぎられてしまった獣魔将軍が恐竜の首から火を噴くが、白いローブを纏った人物はひらりと隣りの岩壁に飛び移った。

あしゅら「なんと!」

ブロッケン「貴様、人間ではないな!」

 その人物は応えなかった。
 代わりにローブから手を出し、上を指差した。

 桜ヶ丘高校の制服が曝されるが、ドクター・ヘルをはじめ、全ての人物が真上を見ていて気付かれることがない。

暗黒大将軍「むっ!」

 青空に集い始めた暗雲を不自然に思った瞬間、暗黒大将軍は跳躍した。

 ズガァァァァァァンッ!!

ドクター・ヘル「おぉ!」

 突如落ちた雷でドクター・ヘルが驚いている合間に、ローブの小柄は人物が再び声をあげた。


 「ブレーン・コンドル・ゴーッ!!」


 雷雲を割いて赤い戦闘機が旋回しつつローブの背中へ向かっていく。

「スクランブル・ダァーッシュ!!」

 小柄な少女の声が甲高く響き渡り、高く跳んでローブを脱ぎ捨てると、吸い込まれるように真下を通る操縦席に乗り込んだ。

 同時に、雷雲を吹き飛ばすように黒い影が舞い降りてきた。

あしゅら「な、なんだあれは!?」

ブロッケン「あのロボットは!」

ドクター・ヘル「マジンガーZ!?」

 巨体はマジンガーZによく似ていた。

 しかし、見ればやはりマジンガーZとは違う形をしている。

 兜のような頭部がこちらはまるで角のようになっている。

 胸のVの字は底がくっついて鋭さを増している。

 黒金の城というよりは、伝説の勇者である。

 赤い戦闘機ブレーン・コンドルに乗り込んだ小柄なツインテールの少女は最後により大きな声で叫んだ。


中野梓「ファイヤー・オォーン! グレートマジンガー・ゴーッ!!」


 ガシィィーンッ!

 ブレーン・コンドルがロボットの頭部に嵌りこみ、グレートマジンガーの目が光子力の光りを放った。


 ダダン!
 ダァーッシュ!ダァーッシュ!ダンダンダダン!
 ダァーッシュ!ダァーッシュ!ダンダンダダン!
 ダァーッシュ!ダァーッシュ!ダンダンダダン!
 スクランブルー ダァッシュ! <ダーラダダダダダダッダ>
 オーレハ ナッミーダヲナガサナイー ダダッダー!
 ロボットダカラ マッシンダーカラー ダダッダー!
 ダーケドワカルゼー モエルユウジョウー
 キミトイッショニー アクーヲウツー
 ヒッサツパワーァー サンダーブレェークー
 ワールイヤツラヲブットバスー グレェトタイフゥーン
 アラシヲヨブーゼー
 オレハーグレートー グレートマジンガー!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/02(火) 23:11:34.29 ID:8ybwpwHC0<>
 だいぶ水をあけてしまったので、第二十九話の前半のみ先にあげました。

 こんなスレ立てました
 QB「ボクとけいやk」シャア「ようj」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312044441/

 逆シャアとキュウべぇのクロスものです。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/02(火) 23:55:15.40 ID:gnH7Sfyoo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/08/03(水) 00:20:44.51 ID:umsjvnDAO<> 乙、遂にグレート参戦か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:17:53.52 ID:tiISrdZI0<>
 第二十九話 Bパート


 ミケーネ帝国の戦闘獣を前に大ピンチのマジンガーZと平沢唯だったが、あわやというところで危機を脱した。

 マジンガーZを助けたのは、強力無比の力を持つ勇者グレートマジンガーと中野梓であった!

ドクター・ヘル「おのれ、グレートマジンガーだと!?」

梓「覚悟しなさい、ドクター・ヘル! これから私と唯先輩があなたの野望を打ち砕きます!」

暗黒大将軍「馬鹿め、マジンガーZはここで滅びるのだ! やれ、獣魔将軍!」

獣魔将軍「かしこまりました、暗黒大将軍!」

 新たに斧を手にした獣魔将軍が四本足をいからせてマジンガーZに突進していく!

梓「させません!」

 ジャキッ――グレートマジンガーが胸のV字の端を外して掲げ、

梓「グレートブーメランッ!!」

 ぶぉんっ! 岩壁の上から投げて獣魔将軍の斧を弾き落とした!

獣魔将軍「うぉっ!」

 隙を突いて梓は岩壁を下りてマジンガーZと獣魔将軍の間に立ち塞がる。

梓「バックスピンキック!」

 バキッ! グレートマジンガーが脛部から刃を出し、後ろ回し蹴りで獣魔将軍の腕を切り裂いた!

獣魔将軍「ぐっ! うぉぉ!」

梓「ニーインパルスキック!」

 ドシュゥッ! 折り曲げた膝に隠された円錐の杭が恐竜の顔を潰す!

獣魔将軍「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ! 小ン娘がぁぁぁぁっ!!」

 ガチンッ! 怒り狂う右手がグレートマジンガーの首に噛み付くが、マジンガーZの腕を食い破った歯がまるで立たない。

獣魔将軍「な、なに……!?」

梓「超合金ニューZのボディに、そんな攻撃は通用しませんよ!」

 ジャッ――大腿部から両刃の剣が飛び出す。

梓「マジンガーブレード!」

 ズバッ! 垂直に振り下ろされた刃が獣魔将軍の右肩に食い込み、腕ごと落とした!

獣魔将軍「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

梓「これで終わりです! ブレストバーン!!」

 シュゴォォォォォォォォォッ!!

 投擲したグレートブーメランが自動で胸に戻ると同時に熱線が放たれ、獣魔将軍に襲い掛かる!

獣魔将軍「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 既に血まみれの恐竜の面がまず蒸発を始め、右肩から徐々に上半身が焼けていく。

獣魔将軍「ぎゃあぁぁぁぁぁ! お助けください、暗黒大将軍様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 だが、暗黒大将軍は身じろぎ一つしない。
 じっくりとグレートマジンガーを値踏みしているようだ。

獣魔将軍「うギャあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 恐竜の喉から奥に繋がる火道をつたうナパーム液に40000度の熱線が引火し、獣魔将軍は内側から獄炎に焼かれ、体中の穴から煙を噴いて倒れた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:18:23.67 ID:tiISrdZI0<>
暗黒大将軍「なるほど、グレートマジンガーか」

 大きな股下で近づいていてくるを見て、梓はすかさず後ろへ下がり、マジンガーZを肩に抱くと、高く跳んで岩壁の上に戻った。
 驚くべきパワーだ。

梓「唯先輩! 起きてますか、唯先輩!」

唯「う、うん、あずにゃん……」

 まだはっきりと喋れないようだが、頭はきちんと働いているようで、梓はほっとする。

唯「ごめんねぇ、あずにゃん……また怒られちゃった……」

梓「ホントですよ! 一人で飛び出してくるなんてバカですか!?」

唯「あずにゃん、また海に行ってたの……? そんなにたくさん日焼けしちゃってぇ……」

梓「特訓してたんです! 私は何年も前からグレートマジンガーに乗るために専門のトレーニングを受けた戦闘のプロなんです!」

唯「ギターだけじゃなくてそんなこともしてたなんて、あずにゃんは頑張り屋さんだねぇ……」


 ドドォンッ!!


 再会の会話は長くは続かなかった。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 ドゴォンッ! ドガァンッ!!

 暗黒大将軍が獣魔将軍の亡骸を前にして咆哮し、何度も拳を地面に叩きつけ始めた。

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 ゴゴォンッ!! ガゴォンッ!!

 石畳が破壊され、大きな穴が空くと暗黒大将軍はそこに獣魔将軍を埋めた。

暗黒大将軍「俺は戦うぞ!! ミケーネが、太陽を取り戻すその時まで!!」

 ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!

 雄叫びにバードス島全体が震動している。
 暗黒大将軍の全身から汗が噴出し、沸騰せんばかりの体の熱で蒸発する。

ドクター・ヘル「その意気だ! 暗黒大将軍!!」

 あしゅら男爵とブロッケン伯爵、その二人の軍団の頂点に立つドクター・ヘルが両手を振り上げて同調した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:18:52.96 ID:tiISrdZI0<>
ドクター・ヘル「ミケーネの無念が如何ばかりか、それはこの地上でワシだけが知っている! ミケーネの戦闘獣の力、このワシの、ドクター・ヘルの頭脳でもって究極の進化を遂げさせ、地獄の軍団に作り上げてみせよう!!」

 ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ……!

 再度、地震が起き、梓だけが重力に逆らう感覚に気付いた。

梓「まさか、バードス島が浮上している!?」

唯「え、えぇ!?」

ドクター・ヘル「ついてくるか、グレートマジンガーよ!? ぼろぼろのマジンガーZと共に、地獄城へ!」

梓「くっ……」

 言うまでもなかった。
 マジンガーZに肩を貸したまま、既に海面から数十メートルは離れたバードス島から飛び降りる。

唯「あずにゃん、もしかして私のために……」

梓「ち、違います! その、マジンガーZを壊されてしまうわけにはいかないだけですっ!」

唯「帰るだけならだいじょうぶだよぉ、それより、今逃がしちゃったら……」

梓「じゅ、充電時間切れです!」

唯「私もあずにゃん分が足りなくて大変だったよぉ」

梓「違いますってば! あぁもう、一人で飛んで下さい!」

唯「あぁん! あずにゃんのいけずぅ」

 手を離して蹴り飛ばしたグレートにZがスクランダーを噴かしてすり寄る。

ドクター・ヘル「ククク……賢明な判断だ。中野梓とやら」

 どつきあっていた両機の頭上にドクター・ヘルのしわがれた顔が巨大化して映った。

ドクター・ヘル「だが、ただでは帰さんぞ。ゆけぃ! 戦闘獣オベリウス! ジャラガ!」

 ぐぉぉぉぉぉぉ……!

 始祖鳥のような戦闘獣オベリウス、腹の皮が羽のように発達した蛇の形の戦闘獣ジャラガが唯たちを囲むように飛ぶ。

梓「唯先輩、これを使ってください!」

 マジンガーZに握らされたのはグレートの大腿部に収納されている剣だった。

梓「その剣は超合金Zの4倍の硬度を持つ超合金ニューZで出来ています!」

唯「わかったよ、あずにゃん!」

 ビューン……! 受け取った剣を逆手に替えて唯はオベリウスに投げつけた。

オベリウス「おぉぉん!」

 剣はちょっと横に逸れたオベリウスの頭上を越えて――

 ボチャン――海に落ちた。

梓「なに投げちゃってんですかーッ!?」

唯「え、えぇ、な、なんか、ついノリで……」

ジャラガ「きしゃぁぁぁぁぁ!」

 げびょっ! 爬虫類型戦闘獣ジャラガの口から紫色の液体が飛び出し、マジンガーZの腹部にこびりついた。

唯「わぁっ! 装甲が溶け出した!?」

梓「あぁ、もう! おとなしくしていてください!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:19:21.61 ID:tiISrdZI0<>
 グレートマジンガーはマジンガーZはおろか、連邦のドラグーンよりも身軽で速かった。

梓「アトミックパァンチ!」

 ドカァッ! 左手が射出され、ジャラガの横面を叩く。

梓「サマーソルト・インパルスキック!」

 しゅびぃっ! 後方に宙返りしながらキックが後ろにいたオベリウスのくちばしを折った!

梓「ネーブルミサイル!」

 どどっ! どどぉんっ!

 逆さの姿勢のまま腹部から放たれた弾頭がオベリウスに直撃する!

オベリウス「げぇっ! げぇぇっ!」

 胸の悪くなるような鳴き声の戦闘獣にとどめを刺そうとするが、すぐに梓は行動を回避に移した。

ジャラガ「ぎしゃぁぁぁぁ!」

 グレートマジンガーがあった場所に毒液が降り注ぐ。

梓「グレートタイフーン!」

 ぶぉぉぉぉぉ……! 口から噴き出される酸の風がジャラガの口に入り込み、ジャラガは苦しみ出した。

ジャラガ「ぎしゅっ! ぶじゅ!」

オベリウス「げじぇ! げっ!」

 二体の戦闘獣が悶えている間にグレートマジンガーは高く飛翔する。

梓「ミケーネ帝国、思い知るがいいです! これが勇者の雷!」

 ゴゴゴォ……!

 グレートマジンガーが指先を天に向けた時、たちまち空が暗くなり、稲妻が指に落ちた。

梓「サンダーブレーク!!」

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!

 蓄積された電気が両の手のひらから落下し、戦闘獣を同時に撃墜した!

唯「ふぉぉーふ! あずにゃんすごいよー!」

梓「当たり前です! 私は戦闘のプロですから!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:20:30.11 ID:tiISrdZI0<>
 ゴラオン 格納庫

律「すっげぇーっ! なんじゃこりゃーっ!?」

 マジンガーZを抱いて降り立ったグレートマジンガーを見た律は眼球が飛び出そうなくらい驚いた。

紬「これが……超合金ニューZを利用した新しいマジンガーなのね」

澪「マジンガーより大きいのに、なんというか……スリム? だな……」

梓「その通りですよ、澪先輩。全長は22メートルで重量32トンですが、胴回りはむしろ短くなっているんです」

紬「それが超合金Zの1/4の厚みで4倍の硬度を持つ超合金ニューZ……すごいわ、さすが剣博士ね」

唯「その人がグレートマジンガーを造った人なの?」

梓「はい。また、私の育ての人でもあるんです」

律「育ての人って、本当の親じゃないのか?」

梓「はい。私の本当の両親は昔、事故で亡くなっていますので……」

唯「あ、あずにゃんにそんな過去が……うぅぅ〜……ごめんねぇ、気付いてあげられなくてぇぇぇ」

梓「ゆ、唯先輩! お気持ちはありがたいですがめっちゃ鼻水が私の服に着きますから!」

紬「梓ちゃんのご両親とお友達だった剣博士が梓ちゃんを引き取ってくださっていたのね」

梓「はい。それが七歳の時で、私は両親からはギターを、博士からはグレートマジンガーをいただきました」

律「すげー、ギターだけじゃなくてロボットもベテランじゃん!」

澪「どうすんだ、唯? このままじゃ梓に出番取られちゃうぞ」

唯「問題ないですぞ!」

律「えらい自信だな」

唯「だって、マジンガーが二体もあるんだよぉ、すごいじゃない〜」

澪「そのマジンガーがこんなにぼろぼろになっちゃ乗れないだろ……」

唯「うっ……そうでした……」

紬「これじゃあ、一度解体しなくちゃいけないかもねぇ」

唯「えぇぇ〜!」

律「いやぁ、戦闘のプロがいるから、いっそのことご引退あそばされては……」

唯「いやぁぁ〜!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:21:12.64 ID:tiISrdZI0<>
梓「あの、それなんですけど……日本に戻ればなんとかなりますよ」

唯「ホント!? あずにゃん!」

梓「既に光子力研究所にマジンガーZ用の装甲が運び込まれているんです。もちろん、超合金ニューZのものです」

唯「あ、あずにゃん……アンタは神様だよぉぉぉぉぉ〜」

梓「だぁから鼻水くっつけないでください!」

律「んでさ、気になってたんだけど」

澪「なんだ?」

律「なんで梓は変な格好して唯の前に現れたんだ?」

梓「あれは……あの戦闘獣は、世界中の主要都市に放たれる予定だったんです。でも、それまでにグレートマジンガーの到着が間に合わなくて、だからゴラオンに先に行ってもらおうと思ったんですけど……」

律「違う違う、そっちの理由じゃなくて、変な格好をした意味」

梓「そっ、それわぁ……」

律「うん、それは?」

梓「そ、それっぽい格好したほうが、信じてもらえるからって、博士が……」

「「「「…………」」」」

梓「げっ! 現に唯先輩はあっさり信じたじゃないですか!」

唯「そんなぁ、あずにゃんの言うことなら何でも信じるよう」

梓「それも問題ありです! もしも敵が私そっくりのニセモノを用意したらどうするんですか!?」

唯「そのニセモノをあずにゃん二号と名付けます!」

梓「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁう!」


 第二十九話 颯爽! 大空の勇者グレート・マジンガー! 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:22:20.25 ID:tiISrdZI0<>
 全国60万人のあずにゃんファンとグレート・マジンガーファンの皆様お待たせしました。

 プロ+あずにゃんでプロ梓と勝手に呼んでます。

 超合金Zの1/4の厚みで4倍の硬度のニューZ。
 つまり、Zと同サイズに加工すれば16倍の硬度です。

 最終兵器ってレベルじゃねぇぞ。

 そりゃZを紙切れ同然にした戦闘獣も歯が立たんわ。

 ちなみに、グレート・マジンガーと中黒を入れるのが正しい表記らしいですが、めんどいのでくっつけます。

 毎週、試行錯誤して武器を使って破壊を思うが侭にしていたマジンガーZに対して、
 グレートマジンガーは自己の価値観と戦いの宿命に耐えて乗り越える人間ドラマがメインらしく、制作サイドすら面白くないと言っていたそうです。

 永井豪先生も漫画版などでリメイクするまで鉄也はあまり好きじゃなかったそうで、
 現在のプロ人気はやはりスパロボや桜田版の影響が強いみたいです。

 あと、コンV並みに武装があるように言われていますが、実際はZよりも少なかったりします。
 代わりにグレートタイフーンが3種類ぐらいあったり、ZとVが無駄に多すぎるだけですが。

 何より一番気になるのはグレートブーメランとブレストバーンの関係でしょう。

 ほんと、どうなってんだ、あれ?

 サンダーブレークはたしか指先からの放電で上空の水と静電気を誘導して雷雲に換えて、それを指先に落としてグレートに帯電させ、放出するという諸葛亮もビックリの技だったりします。

 次回はライディーンが主役。
 そんで宇宙ルートをやります。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/12(金) 18:26:31.67 ID:tiISrdZI0<>
 世代的にチート機体のグレートを紹介

 グレートマジンガー/中野梓(プロ)

 移動力/7 運動性/90 装甲/2000 照準値/150
 特殊能力:超合金ニューZ 毎ターン、エネルギーが回復。
       マジンパワー 気力130以上で最終与ダメージが1.1倍、最終被ダメージが0.9倍。

 比較用にボスボロット

 ボスボロット/田井中律

 移動力/4 運動性/40 装甲/800 照準値/70
 特殊能力:修理費が10

 前回登場のビルバインも一緒に

 ビルバイン/川添珠姫
 
 移動力/7 運動性/125 装甲/900 照準値/150
 特殊能力:チャム・ファウ 気力130以上で聖戦士レベルが1上がる。
       オーラコンバータ 気力130以上で敵の攻撃を50%の確率で分身回避する。
       オーラバリア 聖戦士レベルに応じて敵の攻撃を軽減する。

 そして次回の主役ライディーン

 ライディーン/一橋ゆりえ

 移動力/6 運動性/80 装甲/1400 照準値/130
 特殊能力:ムートロンエネルギー ???
        かみちゅ 行動回数を消費してランダム効果を起こす。


 そういえば、次回でマジンガー系のユニットがやたら増えることになります。

 その中でZと唯、グレートと梓、ボスと律は固定ですが、澪、ムギ、和は何に乗せようとなります。

 安価で決めます。

 >>277澪
 >>278ムギ
 >>279和

 候補はアフロダイ、ダイアナン、ビューナス、ミネルバ。

 撃墜投票と一緒にどうぞ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 19:24:00.05 ID:U4OyR0sFo<> >>277被ってる・・・安価下か?
一応紬はビューナスで
そして遂に登場したプロ梓に1票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/08/12(金) 20:24:24.40 ID:9GxPfbFAO<> 乙、和かダイアナンかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2011/08/13(土) 00:12:10.81 ID:dg0ZDn9/o<> >>277が被ってるのがいけるなら
澪はミネルバで
投票は唯で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/13(土) 21:23:07.50 ID:RhyVmB+SO<> 乙です
百鬼帝国でてこないの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:25:35.44 ID:sdEE7EEt0<>
 第三十話


 光子力研究所、超電磁研究所にけいおん部員とドールズを預けて、ゴラオンは九州地方へ進路をとっていた。

美夜『そ〜いう訳だから、ごめんなさいねぇ、霙ちゃん』

 映像の向こうの天使美夜は本当に申し訳なさそうにしている。

霙「いや、もともとはそのための私たちだ」

 特殊区域強襲部隊――それが本来の天使霙の所属チームだ。
 もっとも、所属は海晴とあわせて二人で、主な任務は連邦の表沙汰にしたくない事件の物理的処理である。

霙「すぐに行こう。立夏も連れていこうか?」

美夜『う〜ん……立夏ちゃん行きたがるかしら、北極なんて』

霙「興味が向けばだが、まあ立夏次第だろう」

 今回の事件も例に洩れず連邦軍の不手際であった。
 完全に秘匿していたはずの工場が内通でジオン軍に発見されたのだ。
 幸い、工場作業は完了していたため既に撤収していたのだが、その打ち上げ施設が北極にあることまでは隠せず、現在進行形でジオンの特殊部隊が向かっているのだ。

美夜『北極なんて寒いところに行ったら、お肌もお腹も冷えて大変になっちゃうわ……』

霙「まあ、アルトから外に出るわけじゃないし、スーツもあるから」

美夜『本当なら、おうちに帰るはずだったのに……霙ちゃん、本当にごめんね』

霙「帰るなら終わってからでもできる」

美夜『霙ちゃんったら……だめよ、家族よりも仕事が大事って姿勢は、めっ』

霙「……わかった。すぐに帰ってくる」

 その回答である程度は満足したのか、美夜は腰に手をあてて頷き、通信は終わった。

立夏「霙オネーチャンって、なんかサラリーマンのパパみたいダネ」

 いきなり声をかけられて肩をびくつかせた。

霙「立夏!? 聞いてたのか?」

立夏「だって、気になるジャン!」

 下着を隠すのでせいいっぱいなくらいのミニスカートで跳ね回る立夏。
 冬場でも毎日ミニスカの立夏だが、さすがにヘソ出しまではしない。

立夏「霙オネーチャン、さっきのってトクシュニンムってヤツ? ワオ! 立夏もいきたーい!」

霙「まったく……オマエというやつは」

 行きたいというなら連れて行くしかない。
 霙も、一人よりは二人のほうがいいのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:26:20.78 ID:sdEE7EEt0<>
 机の上にはダンボール箱に便箋が山となって積まれていた。

ゆりえ「なにこれぇ……」

 便箋は多くがパステルカラーのもので、端にある名前は女生徒ばかりだ。

光恵「お願い事よ」

 アップにした前髪と眼鏡で優等生風な四条光恵がやれやれと首を振る。

ゆりえ「えぇ、だっていつもは郵便で運んできてくれてるじゃない」

 神託された願い事は手紙という形で出向しているゆりえの許に届けられていた。
 それらを一枚ずつ読んだゆりえの感想そのものが願い事に対する応えになるので、特別なことをする必要なないのだが、多いときには一日に何百枚も読まなければならない。

祀「ゆりえちゃんが帰ってくるって聞いて、ウチの神社に送られてきたのよ」

 手紙は軍部の検閲を受けてから輸送されるため、時間がかかるのである。

ゆりえ「神様って大変だよぉ」

 うんしょとダンボール箱を机から下ろす。

光恵「勉強は大丈夫なの?」

ゆりえ「うん、澪さんとかに教えてもらったりしてるから」

祀「そうそう、来年ね。放課後ティータイムにも来てもらえないかなーって思うの。お願いできない、ゆりえちゃん?」

ゆりえ「わかんないけど、お願いしてみる」

 カバンをかけて祀の言葉にうなずきながら、きょろきょろと見回すと、

光恵「二宮君なら、いつもどおり屋上よ」

ゆりえ「え、う、うん……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:26:47.67 ID:sdEE7EEt0<>
 書道部の部室は屋上の貯水槽の隣りである。
 その時点でもはや部室≠ナはないのだが、二宮健児以外に部員はいないので、部室が必要であることもないのである。

ゆりえ「あ、あのぅ、二宮……君?」

 はしごを上っていくと、見慣れた背中があって、ほっとする反面、心臓が自分のものじゃないかのようにどきどきする。

 対して二宮のほうはまるでゆりえに気付いていないらしい。
 わずかに背を丸めたまま磨った墨を置いて筆を持つ。
 ゆりえは邪魔をしてはいけないと思ってはしごの途中で止まる。

 わずかに筆の先を見つめてから、二宮は背筋を正し、腕を水平にした。

 その時、強い浜風が吹いた。

二宮「あっ」

 文鎮を乗せ忘れていた半紙が巻き上げられ、ゆりえの顔面に張り付く。

ゆりえ「へっ? あ、わっ」

 はしごに手足を囚われて半紙が取れない。
 顔の筋肉をめちゃくちゃに動かすが、無意味で、結局二宮が取った。

ゆりえ「あ、あの……ありがとう」

二宮「えーっと……そうだ、一橋さん」

 普段をうすらぼんやりと生きている二宮健児は幼なじみである三枝祀と妹のみこ以外の名前をほとんど覚えていない。
 ゆりえのことも、同じクラスになって、毎日話しかけられて、ようやく名前と顔が一致するようになったのだ。

 それが、突然ホワイトベースで宇宙に上がって帰ってこなくなった。

 ゆりえからすれば、忘れられているかもしれないという不安でいっぱいだったのだ。

 なので、名前を言ってもらえて、それだけでゆりえは大満足して、はしごから落ちた。

 そして、それ以外のことは何もないのである。
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(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:29:18.40 ID:sdEE7EEt0<>
 来福神社

祀「はい、これが昨日集まった分」

 目の前のダンボール箱にはやはり大量の手紙。

ゆりえ「えぇぇぇ〜……」

光恵「ホント、よくあれこれ願うものね、みんな」

祀「でも、きちんと叶えてあげれば、みんながゆりえちゃんのことを信じる気持ちになって、ゆりえちゃんの神様の格が上がるってもんよ!」

ゆりえ「ホントかなぁ〜……」


シャーキン「まったくだ、人間は愚かで度し難い生き物だ」


 その張りのある声はある種の風格を持ってゆりえたちに降り注いだ。

祀「ゲッ、妖魔帝国!?」

光恵「ゆりえが帰ってくると同時に出てくるのね」

 露骨に嫌な顔をする祀と光恵をシャーキンは一瞥する。

シャーキン「ライディーンは、我ら妖魔帝国の邪魔となる存在だ。それを倒すためならば――」

 プリンス・シャーキンが長い手を水平に振るう。

祀「うっ!?」

光恵「なに!?」

 シャーキンの念力が二人の体を拘束し、来福神社の屋根の上まで連れて行ってしまった。

ゆりえ「光恵ちゃん、祀ちゃん!」

シャーキン「ククク、さぁ一橋ゆりえよ。ライディーンを呼べ、さもなくばお前の友達を殺してしまうぞ」
ゆりえ「ぅ、ぅぅ……」

 下頬を膨らませてせいいっぱいの抗議をしたが、効果はなく、ゆりえは両手を握る。

ゆりえ「か〜み〜ちゅ〜〜〜〜〜っ!」



『ラァァァァァァイディィィィィィィィィィィィン!!』

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(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:32:59.45 ID:sdEE7EEt0<>

『ラァァァァァァイディィィィィィィィィィィィン!!』


 ライディーンにフェード・インしたゆりえはまず卒倒しそうになった。

 まるで鏡に映したかのようにライディーンが眼前にいたからだ。

ゆりえ『わぁぁっ!』

シャーキン「フフフ、驚いたかね、これぞ我ら妖魔の化石獣ギルディーンだ」

光恵「ギルディーン……?」

祀「要するに、バッタもんでしょ。よくあることじゃない」

シャーキン「ライディーンよ、これから貴様にはギルディーンのギルアローの試射実験に付き合ってもらう!」

 ギルディーンが背中に担いでいた弓を手に持ち、矢を番える。

ゆりえ『そんなぁ、いやだよぅ』

シャーキン「一歩でも動いたら、友達がどうなるかわかっているな、クククク……」

祀「わっかりやすいぐらい卑怯もんだわ」

ゆりえ『祀ちゃん、光恵ちゃん、なんとか逃げられない?』

光恵「無茶言わないでよ……」

祀「やれるもんならとっくにやってるわよ」

 いちおう、二人は念力に抗ってみたが、結果は言うまでもない。

シャーキン「やれ! ギルディーン!」

ギルディーン「ぐぉぉぉぉぉ……!」

 ビュン! 巨大な矢がライディーンに襲い掛かる!

ゆりえ『いやぁっ!』

 がんっ! 怖さについ手で顔を覆い、左手の盾が矢を弾いた。

シャーキン「動くなと言ったはずだ、ライディーン!」

ゆりえ『だってぇ、怖いんだもん』

祀「無理に決まってるじゃない、そんなの」

光恵「あの子にそんな堪え性ある訳ないもんね」

ゆりえ『祀ちゃんも光恵ちゃんも、さっきからひどいよぅ』
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(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:35:01.39 ID:sdEE7EEt0<>
 次々と矢が降ってくる。

ゆりえ『やめてぇ〜』

 ライディーンの装甲が固いのか、矢が弱いのか、さほどダメージはない。
 むしろ被害が出ているのは、弾かれた矢が下に落ちることだった。

光恵「あっ、岩永さん家に当たったわ」

 来福神社は山の中腹に建てられているため、落っこちる矢は大抵が森の一部となるが、二、三本は町に落ちている。

光恵「災害保険おりるのかしら?」

祀「さぁ? 軍が保証してくれるんじゃない?」

光恵「それならいっそのことウチに降らしてくれないかしら? 私の部屋せまいから」

ゆりえ『勝手なこと言ってるぅ〜!』

 二人が捕まっているおかげでゆりえはこんな目に遭っているのだ。
 もちろん、それは祀たちからも同じことで、はやくギルディーンを倒さないと二人はもっとひどいことされるかもしれない。

ゆりえ「うぅ〜」

 人間、頼りたいときはとりあえず後ろを見たりするもので、ゆりえは特にそんな人間である。
 そしてゆりえが見つけたのは学校の屋上だった。

ゆりえ『二宮君!?』

 屋上の貯水槽の隣りに立ってこちらを見ていた人物は二宮健児だった。
 ライディーンの千里眼で見たのだから間違いない。

祀「うっそ! アイツまだ逃げてなかったの!?」

 半ば呆れたような祀の声。

ゆりえ「に、二宮君、どうしよう〜っ」

 ぱしっ――動転したゆりえはギルアローの矢を手で取る。

シャーキン「貴様! よほど友達を死なせたいらしいな!」

ゆりえ『そ、そうじゃなくて、あっちにもこっちにもいるんだよ! ねぇ、場所を変えてくれないかな?』

光恵「敵にお願いしてるわよ、あの子……」

祀「わたしらも危機感抱いたほうがいいわよね、あの子、どっちを選ぶか全く予想できないもの」

光恵「はあ、潤いの足りない人生だったわ……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:36:54.11 ID:sdEE7EEt0<>
祀「だいたいねぇ、ゆりえちゃん今は攻撃できないんだから、それで倒せない敵にも問題あるわよねぇ」

光恵「ゆりえー、演技でいいからやられてあげたらぁ?」

ゆりえ『そんなことできないよぅ』

シャーキン「ならば大人しく滅びるがいい、ライディーン!」

 ぎゅりぃっ――ギルディーンが四本の矢を番えた。

シャーキン「この矢は腐敗妖液を染み込ませている。さぁ、往生しろ!」

ゆりえ「うぅぅ……二宮くぅん……」

 子犬みたいな声で振り返ると、当の男子は貯水槽の横で身を屈めていた。
 あれは、筆を手にしているのだ。

ゆりえ「二宮君……?」

 時間が切り取られたようだった。

 二宮健児の筆が乱暴に動いたかと思うと、再び立った彼は胸の前にそれを掲げる。


 ――一念――


 ぶるっ、と全身が震えた。

 二宮健児の目はライディーンの目を通して、たしかにゆりえを見ている。

 そして、神は吼えた。


『ラァァァァァイディィィィィィィィィィィィィィン!!』

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:41:45.70 ID:sdEE7EEt0<>

『ラァァァァァイディィィィィィィィィィィィィィン!!』


シャーキン「な、何だ!?」

 ライディーンの全身が翡翠色の発光をしている。

ゆりえ<集中>『念動光線……!』

シャーキン「貴様、人質がどうなってもいいのか!?」

 既に、ゆりえの網膜にはその現像<ヴィジョン>は焼きついていて、彼女はそれを投影するだけでよかった。

 左腕を突き出し、人差し指を立て、右腕をゆっくりと逆時計回りの軌道で上げていく。


ゆりえ『ゴォォォッド・アルファァァァァァァ!!』


 キュパァァッ! ライディーンの背中から眩い光りが拡散し、巨大な竜巻へ変わっていく!

シャーキン「な、なに!?」

 その竜巻の目にすっぽりと来福神社が収まり、ギルディーンの体を渦に巻きこむ。

ギルディーン「……!!?」


ゆりえ<熱血祝福>『ラァァァァァァァイ!!』


 ズドォォォォォォッ!! 

ギルディーン「おぉぉぉぉぉぉぉん!」

 遙か上空へ押し上げられたところで、竜巻が爆発し、ギルディーンは跡形も残らなかった。

シャーキン「バ、バカな……くっ、こうなれば人質を――ッ!」

 神社の屋根には祀も光恵もいない。
 彼女たちはライディーンの光りに包まれて石畳に足を下ろしている。

シャーキン「なんだと! どうやって私の念力を打ち破った!?」

 あの竜巻光線の力だろう。

シャーキン「ライディーン……今さらながら、なんと恐ろしい巨神だ」

 さすがは12000年もの長きにわたって妖魔帝国を封じ込めていただけある。
 その力が弱くなったからこそ、彼らは復活したが、新たな力を得て立ちはだかるのだ。

シャーキン「このままでは我ら妖魔の夢が潰える……」

 うつむき、歯軋りをして血をしたたらせた後、プリンス・シャーキンはマントを翻して消えた。

ゆりえ「ふぇぇ、よかったぁぁぁ……」

 ライディーンの中でへたりこんで、ゆりえは学校へ目を戻した。

 半紙が飛び交っているだけで、人の姿はなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:42:28.22 ID:sdEE7EEt0<>
 翌日――

 朝早く、本当に珍しい時間帯にゆりえは家を出て、学校へ急いだ。

 書道部にも朝練がある。

 屋上に駆け上がる。
 今朝は浜風も弱い。
 はしごに足をかけてしっかり握り、上っていく。

ゆりえ「あの、二宮君……」

 校門からも確認した朴訥な背中におそるおそる声をかける。

 鳥≠ニいう字が見えた。

二宮「あっ、一橋さん、だよね」

ゆりえ「うん……えっと……」

二宮「昨日、放課後で……ここから一橋さんが見えたんだ」

 ゆりえは頭をひねった。
 あれだけ大きなライディーンに乗っていて、気付かないはずがない。

二宮「一橋さんって、神様なんだっけ?」

ゆりえ「う、うん」

 さんざん、宣伝されているだろうに――

二宮「そっか、神様なんだから、空に浮いていてもおかしくないんだ」

 そ、それだけ……?

 何か他にあると思うが、ゆりえは口に出す勇気がない。

 結局、すごすごとはしごを下りて教室に戻って祀に話す。

祀「ほら、アイツ、興味のないものは目に映らないから」

 ゆりえは卒倒した。


 第三十話 烈風! 化石獣ギルディーン! 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/08/22(月) 17:43:36.12 ID:sdEE7EEt0<>
 今日はここまでです。

 ライディーンじゃなくて、かみちゅ!メインにするとこんなもんです。
 だったら敵だけでもトライダー風にしときゃよかった……

 かみちゅ!を見て驚いたことは、か〜み〜ちゅ〜っは3、4回くらいしか使わなかったこと。
 てっきり毎週やるもんだと思ってたんで、まさか最終回までとは……

 次回から宇宙ルートの話をやりますが、これまた露骨に遅くなるとおもいます。

 だって、ソロモン戦だし。

 用意的なもので地上ルートは相当手をぬいてしまいました。
 クロスオーバーどころか、ほとんど単機決闘シナリオだったし。、

 まあ、実際のスパロボも部隊行動は完全についでになってますしね。

 >>281
 ゲッターの恐竜百鬼は出てきませんが、グレートの話が劇場版なので絡みます。
 ぶっちゃけ、レンタルにグレート置いてないので。

 乗り換え安価のミスは申し訳ありません。
 ムギナス、和ナン、澪ルバでいきます。
 活躍するかはあなたがた次第。

 唯と梓のどっちがグレート乗り換えもと思ったんですが、真!版の話なので、固定になりました。
 こんなことなら、ゼウス出すんじゃなかった<あーっ、言ったー! ネタバレー!<そんなん誰でも知ってますって

 それでは。はやくマジハロ3と怪盗天使3が打ちたい。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/22(月) 18:23:40.63 ID:1gF3zeY/o<> 乙
これはゆりえに一票
ていうかもうソロモンなのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/22(月) 19:55:21.86 ID:9umhCFjDO<> 乙、アレックスのパイロットに機体、投票はプロにゃんで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/08/25(木) 01:38:52.51 ID:rdUDtGrAO<> 乙 <> 携帯から>>1です。<>age<>2011/09/08(木) 20:26:10.20 ID:lmreetrAO<> いつも数ある作品の中から拙作を味読していただいている数人の皆さまに嬉しくも申し訳ない話です。

私事で恐縮ですが、この度9月より就職致しまして、某社の末席をいただきました。

ただ、週六日10時間超の激務下において、私のような遅筆者ではこれまで通りの更新頻度は維持できなくなりました。

おそらくは月二以下の回数になるでしょう。

お待たせして申し訳ありませんが、見捨てることなくお待ちしていただけましたら幸いです。

初給にてフルキーボードタイプのスマートフォン購入を検討しています。

往復の電車内で書ければ少しは早くなるかもしれませんが、今しばらくはお待ちください。

まだまだやりたいこと書きたいことはたくさんあって妄想尽きない状態ですので、やめるといったことはないと思います。

毎週木曜日休みの予定なので、チェックするとしたら金曜日がいいと思います。

それでは、この地球の未来のために。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/09(金) 00:19:12.30 ID:KecMU37Fo<> 待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/09/09(金) 00:28:59.18 ID:W1JRokzio<> とりあえず就職おめでとう!
思った以上に激務で、悪いが笑ってしまったwwwwwwwwwwww
最初は余裕が無いだろうけど頑張れ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/09/20(火) 01:09:48.83 ID:5Wr0UCaz0<>
こんなの立てました。

唯「レトリック?」梓「文章の書き方みたいなものです」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316448006/

シャアと違ってこっちは終わりを用意しているので、終わらせられると思います。











<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/28(水) 10:15:26.98 ID:wkBVsWndo<> SS書く人の助けになればとか偉そうな事言ってたからどんなSS書いてるのかと思ったら
文章もへったくそだし内容もクロスさせまっくってるわりに面白さのかけらもねえな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/28(水) 14:44:51.35 ID:jxaCi3NN0<> 声優かぶりネタや和とのどかみたいに名前かぶりネタはやらねーの?

ということで和ちゃんに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:01:49.00 ID:6Ouhzrfa0<>

 第三十一話


 ドズル・ザビ中将はジオン軍の突撃機動軍の司令である。
 その呼称の通り宇宙空域での突撃隊的性格を持っているのはドズルの性格そのものである。

 異母兄妹であるギレン、キシリアらとは全く性格を異にして、豪放粗野。
 若き頃のデギンに似た強面と巨躯と合わせて軍人として生まれてきただけの男に見える。

 本人は悪人面を気にしており、その反動か妻子には極度にやさしい。
 叱咤される部下たちもその性質を知っているからか、よくなじみ従ってくれる。

 そのドズルが今怒りを露わにするのは、兄ギレンがソロモンに寄越した援軍が原因であった。

「戦は数だよ。それを俺は兄貴に伝えた。そして送られてきたのがお前一人か! ランバ・ラル!」

「数の上では不測かもしれませぬが、お役に立ってはごらんにいれましょう」

 ドズルの妻、ゼナ自らが淹れた紅茶のカップを胸の前でとどめながらランバ・ラルは視線で敬意を表した。

「お前一人が戦果を挙げたとて、ソロモンが陥ちては意味のないことだ」

「それについて、ギレン総帥から言付けがあります」

「何だ?」

「戦局をよく見極め、ソロモンからア・バオア・クーへと撤退せよ、とのことです」

「撤退! 撤退だと!」

 今度こそドズルは吼えた。
 年はランバ・ラルが上だが、生まれ持った天性の差が彼の肩をいからせた。

「兄貴は何を考えている! ソロモンは地球降下には不可欠だ! それを撤退するということはこの戦争そのものを唾棄することに等しいのだぞ!」

「あなた、落ち着きくださいまし……!」

 210センチの巨体にゼナが手を添え、その憤りを抑える。ランバ・ラルも微動だにしないことでドズルの興奮を冷まさせようとする。

「……待てよ。兄貴の立案にあれがあったが……」

 冷めた頭でドズルは電子パネルを操作し、いくつかのファイルを開いて眺めていく。

「あったぞ! これか、こいつを使うのか、兄貴は!」

 発見の大声はどちらかというと怖れを秘めていた。

「システム≠完成させたのだな、兄貴は」

 ドズルはランバ・ラルへ問い質したが、彼は曖昧に首を振るだけだった。

「自分は何も聞いてはおりませぬ」

「だがな、ソロモンを捨てた上で連邦に勝つには、これしかない」

「閣下がそう仰られるのならば、そうなのでしょう」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:04:09.08 ID:6Ouhzrfa0<>
「しかし、兄貴はやはり戦を、いや、兵士というものを理解しておらん」

 昂然とドズルは肉親を批判する。
 その挙動もやはり堂々としたもので、卑屈さを感じさせない。

「ソロモンは攻撃拠点だ。それを失っては我が軍の兵士は前進する意志を挫かれ、また連邦は図に乗る」

「もともと数で勝る連邦は意気が上がれば怒涛の如く押し寄せますな」

「そうだ、ギガノスはそれで敗れた。いかにシステムが優秀な兵器であろうと、三十倍の兵力差が十五倍になるだけだ」

 ドズルは僅かの間、黙り込んで大きく角ばった頭を捻らせて、ウムと頷いた。

「やはりソロモンは捨てられん。撤退するにしても、一度でも連邦の攻撃を退けてからだ」

「かしこまりました」

 ランバ・ラルは闊達な敬礼する。
 年齢も階級も違うが、共に兵士に近い武将として、気質はよく似ているのだ。

「連邦軍の動きだが、レビルの第一艦隊とワッケインの第三艦隊がでしゃばってきているが――」

「ティアンムの第二艦隊の動きが知れなくなったのですな」

「そうだ。計略があるだろう。全力で捜索にあたらせている」

「ならば我らも捜索に加わりましょうか?」

「いや、お前には別に働いてもらおう」

「何でしょう?」

「ホワイトベースだ」

 ドズルの一言が耳に届いた時、ランバ・ラルの眉が確かにぴくりと動いた。

「あの部隊はこのソロモンにおいても厄介な存在になる。あれ一部隊のためにギガノスが滅んだといっても過言ではない」

「同感であります」

「お前は奴等と交戦したな」

「確かに」

「率直な意見を聞かせてくれ。奴等はこのソロモンを陥とすか?」

「自分が交戦したとき、連中は機体に乗せられているひよっこでした――しかし」

 ランバ・ラルは紅茶で唇と舌を湿らしてから続ける。

「しかし、伝え聞く部隊の戦果が本物であるならば――」

「もうよい」

 ランバ・ラルが何かしらの期待を口調に含ませていたことがドズルに伝わっていた。

(ラルが見込む奴が少なくともホワイトベースにはいるのか)

 その時、通信音が部屋に響いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:05:23.07 ID:6Ouhzrfa0<>
「しかし、兄貴はやはり戦を、いや、兵士というものを理解しておらん」

 昂然とドズルは肉親を批判する。
 その挙動もやはり堂々としたもので、卑屈さを感じさせない。

「ソロモンは攻撃拠点だ。それを失っては我が軍の兵士は前進する意志を挫かれ、また連邦は図に乗る」

「もともと数で勝る連邦は意気が上がれば怒涛の如く押し寄せますな」

「そうだ、ギガノスはそれで敗れた。いかにシステムが優秀な兵器であろうと、三十倍の兵力差が十五倍になるだけだ」

 ドズルは僅かの間、黙り込んで大きく角ばった頭を捻らせて、ウムと頷いた。

「やはりソロモンは捨てられん。撤退するにしても、一度でも連邦の攻撃を退けてからだ」

「かしこまりました」

 ランバ・ラルは闊達な敬礼する。
 年齢も階級も違うが、共に兵士に近い武将として、気質はよく似ているのだ。

「連邦軍の動きだが、レビルの第一艦隊とワッケインの第三艦隊がでしゃばってきているが――」

「ティアンムの第二艦隊の動きが知れなくなったのですな」

「そうだ。計略があるだろう。全力で捜索にあたらせている」

「ならば我らも捜索に加わりましょうか?」

「いや、お前には別に働いてもらおう」

「何でしょう?」

「ホワイトベースだ」

 ドズルの一言が耳に届いた時、ランバ・ラルの眉が確かにぴくりと動いた。

「あの部隊はこのソロモンにおいても厄介な存在になる。あれ一部隊のためにギガノスが滅んだといっても過言ではない」

「同感であります」

「お前は奴等と交戦したな」

「確かに」

「率直な意見を聞かせてくれ。奴等はこのソロモンを陥とすか?」

「自分が交戦したとき、連中は機体に乗せられているひよっこでした――しかし」

 ランバ・ラルは紅茶で唇と舌を湿らしてから続ける。

「しかし、伝え聞く部隊の戦果が本物であるならば――」

「もうよい」

 ランバ・ラルが何かしらの期待を口調に含ませていたことがドズルに伝わっていた。

(ラルが見込む奴が少なくともホワイトベースにはいるのか)

 その時、通信音が部屋に響いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:05:53.97 ID:6Ouhzrfa0<>

 第三十一話


 ドズル・ザビ中将はジオン軍の突撃機動軍の司令である。
 その呼称の通り宇宙空域での突撃隊的性格を持っているのはドズルの性格そのものである。

 異母兄妹であるギレン、キシリアらとは全く性格を異にして、豪放粗野。
 若き頃のデギンに似た強面と巨躯と合わせて軍人として生まれてきただけの男に見える。

 本人は悪人面を気にしており、その反動か妻子には極度にやさしい。
 叱咤される部下たちもその性質を知っているからか、よくなじみ従ってくれる。

 そのドズルが今怒りを露わにするのは、兄ギレンがソロモンに寄越した援軍が原因であった。

「戦は数だよ。それを俺は兄貴に伝えた。そして送られてきたのがお前一人か! ランバ・ラル!」

「数の上では不測かもしれませぬが、お役に立ってはごらんにいれましょう」

 ドズルの妻、ゼナ自らが淹れた紅茶のカップを胸の前でとどめながらランバ・ラルは視線で敬意を表した。

「お前一人が戦果を挙げたとて、ソロモンが陥ちては意味のないことだ」

「それについて、ギレン総帥から言付けがあります」

「何だ?」

「戦局をよく見極め、ソロモンからア・バオア・クーへと撤退せよ、とのことです」

「撤退! 撤退だと!」

 今度こそドズルは吼えた。
 年はランバ・ラルが上だが、生まれ持った天性の差が彼の肩をいからせた。

「兄貴は何を考えている! ソロモンは地球降下には不可欠だ! それを撤退するということはこの戦争そのものを唾棄することに等しいのだぞ!」

「あなた、落ち着きくださいまし……!」

 210センチの巨体にゼナが手を添え、その憤りを抑える。ランバ・ラルも微動だにしないことでドズルの興奮を冷まさせようとする。

「……待てよ。兄貴の立案にあれがあったが……」

 冷めた頭でドズルは電子パネルを操作し、いくつかのファイルを開いて眺めていく。

「あったぞ! これか、こいつを使うのか、兄貴は!」

 発見の大声はどちらかというと怖れを秘めていた。

「システム≠完成させたのだな、兄貴は」

 ドズルはランバ・ラルへ問い質したが、彼は曖昧に首を振るだけだった。

「自分は何も聞いてはおりませぬ」

「だがな、ソロモンを捨てた上で連邦に勝つには、これしかない」

「閣下がそう仰られるのならば、そうなのでしょう」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:06:46.08 ID:6Ouhzrfa0<>
「しかし、兄貴はやはり戦を、いや、兵士というものを理解しておらん」

 昂然とドズルは肉親を批判する。
 その挙動もやはり堂々としたもので、卑屈さを感じさせない。

「ソロモンは攻撃拠点だ。それを失っては我が軍の兵士は前進する意志を挫かれ、また連邦は図に乗る」

「もともと数で勝る連邦は意気が上がれば怒涛の如く押し寄せますな」

「そうだ、ギガノスはそれで敗れた。いかにシステムが優秀な兵器であろうと、三十倍の兵力差が十五倍になるだけだ」

 ドズルは僅かの間、黙り込んで大きく角ばった頭を捻らせて、ウムと頷いた。

「やはりソロモンは捨てられん。撤退するにしても、一度でも連邦の攻撃を退けてからだ」

「かしこまりました」

 ランバ・ラルは闊達な敬礼する。
 年齢も階級も違うが、共に兵士に近い武将として、気質はよく似ているのだ。

「連邦軍の動きだが、レビルの第一艦隊とワッケインの第三艦隊がでしゃばってきているが――」

「ティアンムの第二艦隊の動きが知れなくなったのですな」

「そうだ。計略があるだろう。全力で捜索にあたらせている」

「ならば我らも捜索に加わりましょうか?」

「いや、お前には別に働いてもらおう」

「何でしょう?」

「ホワイトベースだ」

 ドズルの一言が耳に届いた時、ランバ・ラルの眉が確かにぴくりと動いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:07:38.06 ID:6Ouhzrfa0<>
「あの部隊はこのソロモンにおいても厄介な存在になる。あれ一部隊のためにギガノスが滅んだといっても過言ではない」

「同感であります」

「お前は奴等と交戦したな」

「確かに」

「率直な意見を聞かせてくれ。奴等はこのソロモンを陥とすか?」

「自分が交戦したとき、連中は機体に乗せられているひよっこでした――しかし」

 ランバ・ラルは紅茶で唇と舌を湿らしてから続ける。

「しかし、伝え聞く部隊の戦果が本物であるならば――」

「もうよい」

 ランバ・ラルが何かしらの期待を口調に含ませていたことがドズルに伝わっていた。

(ラルが見込む奴が少なくともホワイトベースにはいるのか)

 その時、通信音が部屋に響いた。

「あなた、司令部よりです」

 ゼナが取ったマイクを受け取り、ヴィジョンをつける。

「何事か?」

「は、ドズル閣下、ア・バオア・クーより入電です!」

 兄貴かキシリアだろう。
 今さら何の用だというのか。

「読み上げろ」

「学園都市≠フ一期生の養成が完了、援軍に送るとのことです」

「えぇい! そんな間に合うかわからぬものを待てるか! もう攻撃は始まっているのだぞ!」

 ランバ・ラルに当てたような怒声を思いっきりマイクに飛ばした。
 その時、パッ、と光りが瞬いた。

「そんなことよりビグ・ザムはどうなっている!」

 試作モビルアーマーのビグ・ザムがランバ・ラルと共に補給で送られてきていた。
 ジャブロー攻撃用として開発されていたのだが、ギレンに地球降下の意志が薄れたために、未完成のままソロモンに送られてきたのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:08:17.68 ID:6Ouhzrfa0<>
「じ、実は」

「なんだ?」

「今回のビグ・ザムも試作段階でして、開発は急いでいるのですが、なにぶん各方面からの要請が、その……」

「もうよい、さっさとビグ・ザムを完成させろ!」

「は、はっ」

「それにだ、ティアンム艦隊の動きは掴めんのか?」

「申し訳ありません。ミノフスキー粒子の極度に濃い所を索敵中でありますが、ダミーが多くて」

「それが戦争というものだろうが!」

 その時、パッ、と光りが瞬いた。

「見ろ! えぇい、ザクレロは完成していたな!?」

「し、しかしあれはまだ慣熟飛行も……」

「出せない訳ではあるまい! あやつがいたであろう、異星人のサイボーグが!」

「は、はっ」

「奴にザクレロを与えてやればいい。さっさとやれ!」

「り、了解!」

「ワシもすぐにそっちへ上がる! ビグ・ザムはすぐに組み上げろ!」

 叱咤する意味も込めて、強い口調のままドズルは通信を切った。

「閣下、ガイアのことですが……」

 上官が落ち着くのを待ってから、ランバ・ラルは厳かに切り出した。

「ガイア、ガイアか……」

 二人とも、その話題には触れたくなかったが、話さずにはいられないのが、武将というものである。

「奴にあてがわれているあれは……」

「姉上がやっているニュータイプ実験の流用だ……奴がそれを望んだ」

「マッシュとオルテガが……」

「レビルを捕えたあの三人には、もっとやってもらわなければならぬことがあったはずだ。しかし奴は――」

「私も、部下やハモンを失えば、ああなったかもしれません。ハモンたちもそうでしょう」

 後ろ手に指を組み、ランバ・ラルは痛みに耐える風に首を垂れた。
 ドズルは頷き、ゼナが抱いてきた赤子を見て、顔に似合わぬ繊細な所作で笑った。

「我らはジオンの系譜を引いてしまった。せめてミネバが目を覚ます前に、全てを終わらせたい」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:09:41.86 ID:6Ouhzrfa0<>
 ソロモン宙域


「ガンダムめぇ、どこにいる……!」

 ミントとアーモンドを擦り合わせたような匂いの息を吐いて、ガイアは操縦桿を握りしめた。

 彼の乗るリック・ドムの後ろにはザクUが二機ついている。

「どこだぁ……ガンダムぅぅ……」

 えずきがヘルメットに響く。

 主戦場からはやや離れているが、目の前にジムがやってくる。

「きたかぁ、ガンダムゥゥ!」

 ぐりん、と首を回してガイアはペダルを踏み込んだ。

 リック・ドムと同時にザクUが左右に展開し、二体のジムを捉える。

「俺たちはおめぇをやらねぇと眠れなくなっちまったんだよぉ!」

 ドゥッ! パパパパッ!

 ジャイアント・バズと撃つと、ザクUがマシンガンで続く。

 左のジムが避けてマシンガンを受ける。

「続けぇ、オルテガぁ!」

 シュッ――もう一つのザクUがクラッカーを投げ、動きの止まっていたジムを爆発させた。

「ハハハッ! マッシュ、もう一機にもジェット・ストリーム・アタックだ!」

 シュガァァー……!

 縦に並んだザクUのさらに後ろにリック・ドムが走る。

「ひっ、く、来るな、うわああ!」

 想像の中より2オクターブも低い悲鳴が耳障りだ。

「ちくしょうが! ガンダムもどきか!」

 ドスッ! ビームサーベルを振ってザクUから逃げたジムの首にガイアのヒートサーベルが突き刺さった。

「マッシュ……オルテガぁ……待ってろよぉ、白い悪魔をやりに行くぞぉ……!」

 やせ細った舌を前歯の抜けた歯茎に沿わせて、ガイアは無人のザクU2機をリック・ドムと一緒に動かした。


 第三十一話 緊迫! ソロモン攻略作戦 Aパート 完

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/16(日) 22:10:29.96 ID:uv6GNbdzo<>               )
     (        (
         ,,        )      )
         ゙ミ;;;;;,_           (
          ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
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           .¨.、,_,,、_,,r_,ノ′
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        ゙{y、、;:...:,:.:.、;:..:,:.:. ._  、}
        ".¨ー=v ''‐ .:v、,,、_,r_,ノ′
       /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ
       ゙{y、、;:...:,:.:.、;、;:.:,:.:. ._  .、)  、}
       ".¨ー=v ''‐ .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′
      /i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′.ソ.ヽ
      ゙{y、、;:..ゞ.:,:.:.、;:.ミ.:,:.:. ._υ゚o,,'.、)  、}
      ヾ,,..;::;;;::,;,::;):;:;:; .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/16(日) 22:14:15.96 ID:6Ouhzrfa0<> 相当あけてしまった上にこの量の少なさ、申し訳ありません。

しかも投下に失敗して始めからになっていますし。

声優ネタなんかは入れているつもりですが、少ないと感じられるようでしたら努力いたします。
だれだれとかはこの作品で共演してたよ、などがあればどんどん教えてほしいです。

それでは


手塚治おもしれーwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/16(日) 23:02:37.66 ID:ZVMA+cJxo<> 久々やー!
ガイアさん・・・
じゃあすずかちゃんに1票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:17:08.76 ID:htUkjnMM0<>

 第三十一話


 ドズル・ザビ中将はジオン軍の突撃機動軍の司令である。
 その呼称の通り宇宙空域での突撃隊的性格を持っているのはドズルの性格そのものである。

 異母兄妹であるギレン、キシリアらとは全く性格を異にして、豪放粗野。
 若き頃のデギンに似た強面と巨躯と合わせて軍人として生まれてきただけの男に見える。

 本人は悪人面を気にしており、その反動か妻子には極度にやさしい。
 叱咤される部下たちもその性質を知っているからか、よくなじみ従ってくれる。

 そのドズルが今怒りを露わにするのは、兄ギレンがソロモンに寄越した援軍が原因であった。

「戦は数だよ。それを俺は兄貴に伝えた。そして送られてきたのがお前一人か! ランバ・ラル!」

「数の上では不測かもしれませぬが、お役に立ってはごらんにいれましょう」

 ドズルの妻、ゼナ自らが淹れた紅茶のカップを胸の前でとどめながらランバ・ラルは視線で敬意を表した。

「お前一人が戦果を挙げたとて、ソロモンが陥ちては意味のないことだ」

「それについて、ギレン総帥から言付けがあります」

「何だ?」

「戦局をよく見極め、ソロモンからア・バオア・クーへと撤退せよ、とのことです」

「撤退! 撤退だと!」

 今度こそドズルは吼えた。
 年はランバ・ラルが上だが、生まれ持った天性の差が彼の肩をいからせた。

「兄貴は何を考えている! ソロモンは地球降下には不可欠だ! それを撤退するということはこの戦争そのものを唾棄することに等しいのだぞ!」

「あなた、落ち着きくださいまし……!」

 210センチの巨体にゼナが手を添え、その憤りを抑える。ランバ・ラルも微動だにしないことでドズルの興奮を冷まさせようとする。

「……待てよ。兄貴の立案にあれがあったが……」

 冷めた頭でドズルは電子パネルを操作し、いくつかのファイルを開いて眺めていく。

「あったぞ! これか、こいつを使うのか、兄貴は!」

 発見の大声はどちらかというと怖れを秘めていた。

「システム≠完成させたのだな、兄貴は」

 ドズルはランバ・ラルへ問い質したが、彼は曖昧に首を振るだけだった。

「自分は何も聞いてはおりませぬ」

「だがな、ソロモンを捨てた上で連邦に勝つには、これしかない」

「閣下がそう仰られるのならば、そうなのでしょう」
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:17:48.66 ID:htUkjnMM0<>
「しかし、兄貴はやはり戦を、いや、兵士というものを理解しておらん」

 昂然とドズルは肉親を批判する。
 その挙動もやはり堂々としたもので、卑屈さを感じさせない。

「ソロモンは攻撃拠点だ。それを失っては我が軍の兵士は前進する意志を挫かれ、また連邦は図に乗る」

「もともと数で勝る連邦は意気が上がれば怒涛の如く押し寄せますな」

「そうだ、ギガノスはそれで敗れた。いかにシステムが優秀な兵器であろうと、三十倍の兵力差が十五倍になるだけだ」

 ドズルは僅かの間、黙り込んで大きく角ばった頭を捻らせて、ウムと頷いた。

「やはりソロモンは捨てられん。撤退するにしても、一度でも連邦の攻撃を退けてからだ」

「かしこまりました」

 ランバ・ラルは闊達な敬礼する。
 年齢も階級も違うが、共に兵士に近い武将として、気質はよく似ているのだ。

「連邦軍の動きだが、レビルの第一艦隊とワッケインの第三艦隊がでしゃばってきているが――」

「ティアンムの第二艦隊の動きが知れなくなったのですな」

「そうだ。計略があるだろう。全力で捜索にあたらせている」

「ならば我らも捜索に加わりましょうか?」

「いや、お前には別に働いてもらおう」

「何でしょう?」

「モクバだ」

 ドズルの一言が耳に届いた時、ランバ・ラルの眉が確かにぴくりと動いた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:18:24.49 ID:htUkjnMM0<>
「あの部隊はこのソロモンにおいても厄介な存在になる。あれ一部隊のためにギガノスが滅んだといっても過言ではない」

「同感であります」

「お前は奴等と交戦したな」

「確かに」

「率直な意見を聞かせてくれ。奴等はこのソロモンを陥とすか?」

「自分が交戦したとき、連中は機体に乗せられているひよっこでした――しかし」

 ランバ・ラルは紅茶で唇と舌を湿らしてから続ける。

「しかし、伝え聞く部隊の戦果が本物であるならば――」

「もうよい」

 ランバ・ラルが何かしらの期待を口調に含ませていたことがドズルに伝わっていた。

(ラルが見込む奴が少なくともモクバにはいるのか)

 その時、通信音が部屋に響いた。

「あなた、司令部よりです」

 ゼナが取ったマイクを受け取り、ヴィジョンをつける。

「何事か?」

「は、ドズル閣下、ア・バオア・クーより入電です!」

 兄貴かキシリアだろう。
 今さら何の用だというのか。

「読み上げろ」

「学園都市≠フ一期生の養成が完了、援軍に送るとのことです」

「えぇい! そんな間に合うかわからぬものを待てるか! もう攻撃は始まっているのだぞ!」

 ランバ・ラルに当てたような怒声を思いっきりマイクに飛ばした。
 その時、パッ、と光りが瞬いた。

「そんなことよりビグ・ザムはどうなっている!」

 試作モビルアーマーのビグ・ザムがランバ・ラルと共に補給で送られてきていた。
 ジャブロー攻撃用として開発されていたのだが、ギレンに地球降下の意志が薄れたために、未完成のままソロモンに送られてきたのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:19:05.26 ID:htUkjnMM0<>
「じ、実は」

「なんだ?」

「今回のビグ・ザムも試作段階でして、開発は急いでいるのですが、なにぶん各方面からの要請が、その……」

「もうよい、さっさとビグ・ザムを完成させろ!」

「は、はっ」

「それにだ、ティアンム艦隊の動きは掴めんのか?」

「申し訳ありません。ミノフスキー粒子の極度に濃い所を索敵中でありますが、ダミーが多くて」

「それが戦争というものだろうが!」

 その時、パッ、と光りが瞬いた。

「見ろ! えぇい、ザクレロは完成していたな!?」

「し、しかしあれはまだ試験飛行も……」

「出せない訳ではあるまい! あやつがいたであろう、異星人のサイボーグが!」

「は、はっ」

「奴にザクレロを与えてやればいい。さっさとやれ!」

「り、了解!」

「ワシもすぐにそっちへ上がる! ビグ・ザムはすぐに組み上げろ!」

 叱咤する意味も込めて、強い口調のままドズルは通信を切った。

「閣下、ガイアのことですが……」

 上官が落ち着くのを待ってから、ランバ・ラルは厳かに切り出した。

「ガイア、ガイアか……」

 二人とも、その話題には触れたくなかったが、話さずにはいられないのが、武将というものである。

「奴にあてがわれているあれは……」

「姉上がやっているニュータイプ実験の流用だ……奴がそれを望んだ」

「マッシュとオルテガが……」

「レビルを捕えたあの三人には、もっとやってもらわなければならぬことがあったはずだ。しかし奴は――」

「私も、部下やハモンを失えば、ああなったかもしれません。ハモンたちもそうでしょう」

 後ろ手に指を組み、ランバ・ラルは痛みに耐える風に首を垂れた。
 ドズルは頷き、ゼナが抱いてきた赤子を見て、顔に似合わぬ繊細な所作で笑った。

「我らはジオンの系譜を引いてしまった。せめてミネバが目を覚ます前に、全てを終わらせたい」
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:19:57.24 ID:htUkjnMM0<>
 ソロモン宙域


「ガンダムめぇ、どこにいる……!」

 ミントとアーモンドを擦り合わせたような匂いの息を吐いて、ガイアは操縦桿を握りしめた。

 彼の乗るリック・ドムの後ろにはザクUが二機ついている。

「どこだぁ……ガンダムぅぅ……」

 えずきがヘルメットに響く。

 主戦場からはやや離れているが、目の前にジムがやってくる。

「きたかぁ、ガンダムゥゥ!」

 ぐりん、と首を回してガイアはペダルを踏み込んだ。

 リック・ドムと同時にザクUが左右に展開し、二体のジムを捉える。

「俺たちはおめぇをやらねぇと眠れなくなっちまったんだよぉ!」

 ドゥッ! パパパパッ!

 ジャイアント・バズと撃つと、ザクUがマシンガンで続く。

 左のジムが避けてマシンガンを受ける。

「続けぇ、オルテガぁ!」

 シュッ――もう一つのザクUがクラッカーを投げ、動きの止まっていたジムを爆発させた。

「ハハハッ! マッシュ、もう一機にもジェット・ストリーム・アタックだ!」

 シュガァァー……!

 縦に並んだザクUのさらに後ろにリック・ドムが走る。

「ひっ、く、来るな、うわああ!」

 想像の中より2オクターブも低い悲鳴が耳障りだ。

「ちくしょうが! ガンダムもどきか!」

 ドスッ! ビームサーベルを振ってザクUから逃げたジムの首にガイアのヒートサーベルが突き刺さった。

「マッシュ……オルテガぁ……待ってろよぉ、白い悪魔をやりに行くぞぉ……!」

 やせ細った舌を前歯の抜けた歯茎に沿わせて、ガイアは無人のザクU2機をリック・ドムと一緒に動かした。


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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:21:21.95 ID:htUkjnMM0<>
 ホワイトベース
 

「すずかさん、お食事です」

 船の積荷に何故か押し込まれていた粗末なメイド服も白皙の美貌のアンリエット・ミステールが着ればクラシック・スタイルの趣に彩られる。
しかし、いくつもに重ねたトレーに乗ったサンドウィッチとアップルジュースのチューブを持って近づいても、すずかは顔を上げなかった。

「何をしていらっしゃるんですの?」

「関節の滋気圧が上がらないんです」

 モビルスーツの関節の稼動は関節同士を繋いでいる部品が上下することで行われている。
 その上下運動は核融合エンジンのエネルギーで増減させたミノフスキー粒子の磁力によって完遂されているのだ。

「つまり、関節の磁気圧が正常に作用しないために、ガンダムが思ったとおりに動いてくれないんですね」

「そうです」

 ぞんざいになる返事もウィンドウに集中しているからだと思えば、アンリエットは気にしない。

「人間は常に機械に合わせていかないといけませんものね」

このままじゃ、関節同士が磨耗しちゃう……やっぱり、根本的な改良が必要かなぁ」

 応急処置だけしようと呟いてすずかはマニピュレーターを操作しているアムロのほうへ一跳びで行く。

「わたくしたちの星ではようやく蒸気機関から脱却しようという頃合いだけれど……」

 トレーを持ちながら一人ごちてアンリエットは格納庫内を歩く。
 まだ無重力環境に慣れていないので、靴の裏にマグネットテープを貼っている。
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:21:52.41 ID:htUkjnMM0<>
「食事をお持ちしました」

 次に止まったのは深い青色で流線型のシルエット、ゲシュペンストTYPE−Rの前にいる少女の傍だった。

「ありがとうございます」

 浮遊しながらもまっすぐな姿勢と笑顔で受け取る天使ヒカルはトレーを四つ受け取ると、コクピットへ跳んでいく。
 アンリエットもそれを追う。

「ご飯だ」

 仕草がいちいち女らしくないヒカルが声をかけると、コクピット内の三人のうち二人が顔をあげる。

「ありがとう、ヒカル姉様」

「吹雪ちゃん、ご飯にしましょ」

 天使家の六女氷柱がトレーを受け取るのを見て、長女の海晴が顔を上げなかった十二女の吹雪に声をかける。
 彼女は操縦席に潜りこむように座ってノートパッドを動かしている。

「私はまだそれほどおなかがすいていないので、皆で食べてください」

 クールな返答に海晴はすこしふくれて見せ、偏食気味な妹のためにサンドウィッチを手に取る。

「だぁめ、じゃあお姉ちゃんが食べさせてア・ゲ・ル♪ ハイ、アーンして♪」

 顔こそあげないが、突き出されたサンドウィッチにしっかり口を開けて受け入れる。

「どう? おいしい? 吹雪ちゃん?」

「はい。サンドウィッチは口が汚れる心配もなく、食べやすいので、私でも簡単に食べられます」

 キーを叩く吹雪の指は目に止まらぬ速さで動いているが、実際、吹雪は日常の動作というものに不得手である。

「どんどん食べてね。ハイ、もう一つ、アーン♪」

 二つ目のサンドウィッチを飲み込んで、けぷ、と息を吐く妹にまた海晴は食べさせようとして――

「もうおなかいっぱいになってしまいます」

「イヤン、お姉ちゃんは吹雪ちゃんにもっと大きくなってほしいの」

「満腹は思考を鈍らせてしまいます。氷柱姉のシステムを早く完成させないといけません」

「ずいぶんと狭いコクピットですのね」

 ヒカルに並んで見物するアンリエットが小さく洩らす。

 TYPE−Rのコクピットは、ヒカルのTYPE−Sとは違う方向性でまた独特であった。
 
 まず、狭い。
 窮屈とさえ言ってもいい。
 両腕を振り回すために造られたヒカルと比べれば三分の一程度になるだろう。

 そして、特徴的なのは両手両足をすっぽりと包み込む筒状のもの。
 あわせて、氷柱が乗るときは腰と肩にケーブルを繋ぐ。

 上半身を振り回すヒカルと正反対の用法を行う主従追随式機甲システム<マスター・スレイブ>である。

 人間の皮膚表面の生体電気を読み取り、人間が動くとおりに機体が動く。
 ただ、実際にコクピット内で動くとヒカルのように余分なスペースが増えるので、こちらは工夫したセミ・マスター・スレイブが採用されている。

 操縦者の身体の動きを倍数以上で解釈して動作を行う。
 つまり、肘を30度曲げれば機体は90度曲げる。
 操縦者がちょこっ≠ニ動くだけで機体の方はずばっ!≠ニ動いてくれるのだ。

 ヒカルや立夏のように直感で動くタイプではない性質のシステムである。
 しかし、このシステムが普及すればコクピットはより小型になり、つまり他の機能を増やすことにも繋がる。

 天使美夜はそれら新技術を意欲的に取り入れる人物である。
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:22:33.70 ID:htUkjnMM0<>
「いつも思うけれど、あの人はどこからこんな新技術を持ってくるのかしら……」

 吹雪が説明して、指先を頬下にあててため息を吐く海晴の疑問には誰にも答えられない。

「ですが、僅かでも機能が増やせるのでしたら、保証のあるシステムの採用は不可欠です。ママの本当にすごいところはそれを通すことの出来るパフォーマンス力でしょう」

 興味のあることとサンドウィッチのチリソースで若干汗のかいた吹雪はテンションが高くなったのかいつもより饒舌だ。

「私たちもつい慣れてしまっているが、あの人がもつコネクションは少々常軌を逸しているな」

 既に五つ目のサンドウィッチを飲み込んでいたヒカルの呟きにアンリエットが水を向ける。

「ヒカルさんたちのお母様とは、どのような方なのでしょうか?」

 四人が一斉に顔を上げた。

「「「「すぐ人をアイドルにしようとする」」」」

 吹雪まで声をそろえたのは吃驚した。

「そ、そうですの……」

「アンリエットちゃんも、なりたければすぐになれるわよ。きっと一発合格だから♪」

 メイド姿のアンリエットに海晴の食指が伸びてくる。

「え、遠慮しておきます……」 

「そうかしら? スタイルいいからヒカルちゃんと並んでも見劣りしないから、ユニットでも組んじゃいそうだけど……」

「わ、私はそんなにいいものでもないだろう」

「うぅーん……放課後ティータイムの子たちみたいに、五人ぐらいでテニスでもすればファンがついてくれるかもしれないわね」

「ファンなんてほしくないんだが……」

「そうねぇ、ヒカルちゃんのテニスウェアのグラビアは特に大人気だものね」

「どこに大人気なんだ!」

「ウフフ、ヒ・ミ・ツ♪」

 これ以上、ここにいると危険と感じたたので、アンリエットはゲシュペンストから離れる(氷柱は既にいなかった)
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:24:04.59 ID:htUkjnMM0<>
 アンリエットはトレーを配り歩いて艦橋まで来た。

 艦橋では香月シノンが艦長席に座って、その周囲でDチームとゲッターチームが戦略宙図を眺めていた。

「ジオン軍の前線基地ソロモンは同時に最大の攻撃拠点でもあります。その自衛力を破るのは連邦の第一、第三、第四の三艦隊でも用意ではありません」

 議題はソロモン攻略作戦である。
 作戦内容自体は司令部から伝わって決定しているものなので、船員に通達する前の確認程度のものだ。

「そこで出てくるのが、対宇宙要塞戦用の新兵器ってワケね」

 早乙女ハルナが暗礁宙域に一点の光りをつけると、シノンが首肯する。

「実体がどんなものかはわかりませんが、ギガノス機動要塞に投入されなかったことから、自在に移動させられるようなものではないことはわかるわ」

 天草シノと萩村スズが並んで相槌を打つ。

「我々の役目はその新兵器使用までの時間稼ぎか」

「およそ15分です」

「戦闘は突撃部隊のパブリクでソロモン周辺にミノフスキー粒子を高濃度に散布で開始」

「ビーム撹乱幕で要塞艦隊の砲撃を無効化するのね」

 曲線で簡単に撹乱幕を描く七条アリア。

「そこで、私たちの出撃は二回に分けられます」

「二回ですかー……?」

 間延びした言い方だが、大きな作戦に宮崎のどかが緊張しているのはよくわかる。

「えぇ、パブリク突撃艇の護衛役と新兵器使用までの時間稼ぎの二回です」

「突撃艇か、嫌な言い方だ」

「護衛役のアルファチームは天使中尉のヴァイスリッターをリーダーにして、ゲッターロボ、ダンガイオー、D−3となのはさんに担当してもらいます」

「了解です」

 共に出撃する背の低いものどうしの夕映とスズの敬礼が合わさる。

「陽動のベータチームはガンダム、D−1、D−2、Gアーマー、ゲシュペンスト二機に、リーダーは天草少尉にお願いします」

シノが「任された」と頷く。

「なお、Gアーマーのパイロットですが、現在選別中です」

「選別中?」

 ようやく自分が喋るタイミングを掴むことができて、アンリエットはほっとした。

「あぁ、すみません。手伝わせてしまって」

 受け取りながらシノンが謝る。

「いえ、人手が不足しているようでしたので、わたくしにできることがあるのならば何でもいたします」

「感謝するわ」

「ところで、さきほどの話は?」

 アンリエットの問いにシノンがため息がちに答えようとした時、アンリエットが通った自動扉が再び開いた。

「きったないのよ、大人げないのよ!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:24:47.45 ID:htUkjnMM0<>
 大声で文句を言いながら入ってきたのはアリサ・バニングスと高町なのは。
 そしてふふん、と得意げに鼻を鳴らす氷坂アレイであった。

「勝負に乗ったのはお前だろう」

「オマエダロウ、オマエダロウ」

「うっさいわよ!」

 ピコピコ言うハロをアリサが蹴っ飛ばす。

「ランボウスンナ、ランボウスンナ」

「くぅぅ〜! リベンジよ! リベンジ!」

「もう無理だよアリサちゃん、やめときなって〜、大食い対決なんて勝てるわけないんだから……」

「……決定したようですね」

 こめかみを押さえながらシノンが訊ねるとアレイが敬礼で返す。

「氷坂アレイ上等兵、選別により、Gアーマーのパイロットを拝命します」

「やっぱりダメー! ダメよだめーっ!」

「あ、アリサちゃん、おちついて!」

「アイツっからは、なんかこう、すずかをとって食おうって感じがすんのよ!」

「人聞きの悪い事を言うな!」

「アイツの前世はきっとオトナに騙されたイジワルババアで鍵を持ったオヒメサマなすずかを食べようとすんのよ!」

「アリサちゃんおちついてー! そんな話だれもわかんないよー!」

「シャーネーナ、シャーネーナ」

 ぴょんぴょん跳ねるハロをのどかが受け取る。

「あ、あのこれはー……」

 ゲッターに乗るとき以外は臆病なのどかが腕の中のハロを持て余していると、アリサが指差して言う。

「アンタも気をつけなさいよ! コイツは気の弱いような子を見るとお酒持って近づいてもがっ――!」

「ごめんなさい、失礼しますーっ!」

 ぴゅーっ、と音が出そうな速さで無重力を飛んでいくなのはに引っ張られてアリサが退出させられる。

 しばしの沈黙があった後、コホンとシノンが咳払いする。

「Gアーマーのパイロットは氷坂アレイ上等兵が担当しますので、コールサインに注意してください」

 通達は作戦室で船員を集めてから再び行うが、シノンはピシリと背筋を立て、全員もそれに倣った。

「時間通り、要塞攻撃が完了した後は総攻撃で、要塞へ侵入。最終的な目標は司令官ドズル・ザビの確保になります」

「ドズル・ザビ……ジオンのザビ家の一人で、モビルスーツの腕前もエースクラスと聞く」

「他にもー……ソロモンにはルウム戦役からの宇宙戦エースがたくさんいますー……」

「決戦は短い時間になるでしょうが、ギガノス軍とは練度が違うわ。各員の活躍と生還を期待します」


 第三十一話 緊迫! ソロモン攻略作戦 A・Bパート 完

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 22:26:07.17 ID:htUkjnMM0<>
 休みがやや不定期です。

 ガンダムageのために日曜休みをとっていますが、動かされまくってます。

 まだ2話しか見てません。
 1話は5時30分だと思ってて泣きました。
 明日は出勤です。

 そしてエイジシステムは製作シーンを毎回武器ごとに描いてくれるなら大歓迎です。

 あとは敵がかっこいいです。

 前回投下したAパートでしたが、間違いがあったので直して一緒に投下しました。

 声優ネタもがんばって入れてみました。

 次回、ソロモン攻略作戦。

 私が、それまで過労にならずに生き延びることが出来るか――

 それでは。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 23:10:18.76 ID:htUkjnMM0<>
「あの部隊はこのソロモンにおいても厄介な存在になる。あれ一部隊のためにギガノスが滅んだといっても過言ではない」

「同感であります」

「お前は奴等と交戦したな」

「確かに」

「率直な意見を聞かせてくれ。奴等はこのソロモンを陥とすか?」

「自分が交戦したとき、連中は機体に乗せられているひよっこでした――しかし」

 ランバ・ラルは紅茶で唇と舌を湿らしてから続ける。

「しかし、伝え聞く部隊の戦果が本物であるならば――」

「もうよい」

 ランバ・ラルが何かしらの期待を口調に含ませていたことがドズルに伝わっていた。

(ラルが見込む奴が少なくともモクバにはいるのか)

 その時、通信音が部屋に響いた。

「あなた、司令部よりです」

 ゼナが取ったマイクを受け取り、ヴィジョンをつける。

「何事か?」

「は、ドズル閣下、ア・バオア・クーより入電です!」

 兄貴かキシリアだろう。
 今さら何の用だというのか。

「読み上げろ」

「学園都市≠フ一期生の養成が完了、援軍に送るとのことです」

「えぇい! そんな間に合うかわからぬものを待てるか! もう攻撃は始まっているのだぞ!」

 ランバ・ラルに当てたような怒声を思いっきりマイクに飛ばした。

「そんなことよりビグ・ザムはどうなっている!」

 試作モビルアーマーのビグ・ザムがランバ・ラルと共に補給で送られてきていた。
 ジャブロー攻撃用として開発されていたのだが、ギレンに地球降下の意志が薄れたために、未完成のままソロモンに送られてきたのだ。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2011/10/23(日) 23:15:03.96 ID:htUkjnMM0<> 直したのにまだ間違いがあった。
しかも最初に見つけた箇所でした。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/24(月) 00:28:42.24 ID:7cTnbZC7o<> 仕事頑張ってくれー
今日なのはやってたからなのはに一票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<><>2011/10/27(木) 06:36:27.64 ID:gBA/ghUAO<> セミ・マスター・スレイブってフルメタの伏線か
ハルヒに1票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:19:05.78 ID:wP4cZhaT0<>
 第三十一話 Cパート


スズ「パブリク突撃艇7から13まで、ミノフスキー粒子の散布を完了。ビーム撹乱幕の展開は順調です」

 ソロモン宙域の全てを見通せるD−3の報告を受けて、海晴が頷く。

海晴「うんうん、それじゃあ次、いってみましょうか〜」

 ドラグナーとヴァイスリッター――二つの白い機体が上昇して、ミサイルを避ける。

スズ「味方全体の後退を確認。ライン5まで下がりました」

 目立つ二機を発見したザクUが接近してくる。

海晴「イヤン、邪魔しちゃダメよ」

 バズーカ砲をひらりとかわすと、ヴァイスリッターがプラズマカッターを抜いた。

海晴「ヴァイスちゃんは、こういうこともできるのよ♪」

 ヴァイスリッターがまるでワルツでも踊っているかのようにザクのヒートホークを避けながらその首を刎ねた。

海晴「オクスタンランチャーっと」

 背中にマウントしていた長い砲身が続く小隊に向けられる。

海晴「おかえりなさいなっ」

 ギュボォッ――!

 回避まで予測した射撃は二機のザクUの半身をビーム熱で削り取った。

 しかし、巣に帰るような小鳥とは違う。

ジオン兵「これだけ近いんだ! 当たりさえすれば薄羽は――!」

 ザクUの声はそこで途切れた。
 ミスター・ボールの名前で知られているモビルポッドのキャノン砲が直撃し、爆散したのだ。

海晴「スズちゃん……」

 口数をためらう海晴の耳に小さな声が届く。

スズ「手柄取り……」

海晴「……」

 操縦桿が重くなった。

海晴「やっぱり、よくないわね、戦場って……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:21:50.60 ID:wP4cZhaT0<>
ハルナ「ヒマだわ……」

 ギュォォン――!

 ライガードリルがリック・ドムを貫いたところで、早乙女ハルナが愚痴る。

ハルナ「大決戦だというのに、アタシはぽちぽちしかできないなんて」

夕映「仕方ないです、ハルナ」

 抑揚のない口調で夕映は説得を続ける。

夕映「ゲッターポセイドンはまだ調整不足で宇宙では使えないのですから」

ハルナ「のどかも意外とケチよねぇ……アタシをライガーに乗せてくれてもいいじゃない」

のどか「あぅぅー……」

 シュドドォッ! 三発のミサイルがザクUへ飛び込んでいく。

夕映「それなら、ベータの再出撃の時に入れ替わっては?」

ハルナ「あっ、それいいわね」

 脇からパブリクがソロモンへ突っ込んでいき、直角に曲がる。
 その後を金色のオーロラのようなものがついていく。
 それがビーム撹乱幕である。

夕映「帰還を援護するですよ! チェンジです、のどか!」

のどか「うん! オープンゲット!」

 バシュッ! ゲッターライガーが三機のゲットマシンに分離しする。

夕映「チェーンジ・ドラゴン! スィッチ・オォーンッ!」

 ガシィンッ! 赤いゲッタードラゴンがパブリクの前に出て手斧を握る。

夕映「トマホゥゥゥク・ブゥメラン!」

ジオン兵「う、うあぁぁっ!」

 ズドォンッ!

 ジャイアント・バズの弾頭を切り裂いてその奥にいたリック・ドムを撃墜した。

ハルナ「という訳でのどか、後で交換してね」

のどか「う、うん、わかったー……」

夕映「ゲッタァァァァビィィィィィム!!」

 ズギュォォォォン!

 拡散する光線に曝されてムサイの後部が爆発する。

夕映「これで航続不可です。次ですよ」

 ムサイのあちこちが開き、脱出艇が出るのがわかる。
 近くに直俺のザクUがいて、真後ろに連邦の量産型モビルスーツ・ジムが二機現れた。

 ジムは二機がかりでザクを捕まえると、抵抗をよそにムサイへと投げ込み、ビームスプレーガンを連続で撃った。
 核融合エンジンを搭載しているモビルスーツは高機動の兵器であると同時に、超威力の爆弾だ。

 これで、ジムに乗るパイロットは金的℃揩ソとして讃えられることになる。

 夕映、のどか、ハルナの三人は誘爆し続けるムサイに何も言葉が出なかった。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:22:26.19 ID:wP4cZhaT0<>
ネロ「ショルダーカッター!」

 シュバァンッ!

ジオン兵「うわぁぁっ!」

 ビーム攪乱膜を展開するための突撃艇パブリク。
 それを護衛するダンガイオーの両肩から発射される刃がバズーカを担いだザクUの四肢をもいだ。

シャロ「サイキック・ウェェェイブ!」

 ガシュゥンッ……!

 開いた右手から放たれる念動力が他方のザクを捉え、小隊を組んでいるドムにぶつける。

コーネリア「上よ、エリー!」

エリー「はいぃ! ブーストナックルーッ!」

 ドシュウゥ! 五感強化のトイズで周囲の敵を探るコーネリアの指示にエリーが応じる。

エリー「ひぃぃ〜っ!」

 ズギャギャァン!

ジオン兵「がぁぁーっ!」

 パワーのトイズを纏った鉄拳がリック・ドムをスカートの下から砕く。

 パブリクが飛び、ミノフスキー粒子を散布していった。

ネロ「コーネリア! あとどんくらい!?」

コーネリア「67%よ! あと二機残ってるわ!」

ネロ「時間で!」

コーネリア「37秒!」

シャロ「余裕でしょう!?」

ネロ「よっゆうだね!」

エリー「よゆうです〜」

 ソロモンを前に剣を振るダンガイオーをパブリクが追い越していく。
 阻止しようとするモビルスーツへ進み出ると、コーネリアが感づいた。

コーネリア「声が……っ!」


 宇宙<そら>が吼えた。

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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:22:58.21 ID:wP4cZhaT0<>
ギル「ダンガイォォォォォォォォォォォオ!!」

 八本のミサイルがダンガイオーへ飛んでくる。

コーネリア「み、右! あぁっ! 下がって――」

 強化された感覚も人間や機体が追いつけなければ意味を為さない。

 ドォォン!

 避けきれなかった一発が左足にぶつかり、爆発した。

シャロ「きゃぁぁっ!」

ネロ「このーっ!」

 体勢を立て直せないダンガイオーから見たものは、黄色い果物の怪物に見えた。

ギル「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ゴズォォッ!

 ジオン軍の新型モビルアーマー・ザクレロのヒートナタが白金の脇を抉り取っていった。

ネロ「こいつっ」

エリー「はやい……!」

 旋回したザクレロが大きな複眼式のメインカメラの顔で迫ってくる。

ネロ「やぁーっ!」

 ギャキィン!

 すんでのところで振れた剣がヒートナタを弾き返した。

ギル「ダンガイオー!!」

 ザクレロが頭上を通り越す際に爆雷を落としていく。

コーネリア「避けられない!?」

シャロ「ぅく――っ!」

氷柱「まだよ!」

 チュンッ――ドドォッ!

 細い一条のビームが爆雷を貫き、ダンガイオーを助けた。

ギル「ぬぅぅ!?」

氷柱「結構、危なかったみたいね……」

 離れた位置から痩身のビームランチャーを抱えているのは、天使家の六女・氷柱が乗るゲシュペンストTYPE−Rだ。
 本来はベータチームでの出撃だが、シノンが指示を変えて出したのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:23:43.21 ID:wP4cZhaT0<>
 ホワイトベース 艦橋


アンリエット「綻び?」

 急遽命令を変更した艦長シノンの呟きをアンリエットが繰りかえした。

シノン「そうね。綿密な作戦ほど、小さな綻びであっさりと崩れていくわ」

アンリエット「その綻びが、15秒の遅延ということですか」

シノン「ただの指令ならそれだけと受け取るけれど、第二艦隊からの要請なのが問題なのよ」

アンリエット「なるほど……」

 覚えたての情報を整理しなおして、アンリエットも得心がいったようだった。

シノン「第二艦隊は現状、ソロモン攻撃用の兵器の運用を行っているのだから、遅延することはつまり、作戦時間全体の遅れに繋がるわ」

アンリエット「一秒が一時間……いえ、それ以上――永劫にも感じられる戦場で、たしかに致命的ですわね」

シノン「鋭いのね」

 ふっと微笑するシノンの眼差しに、アンリエット・ミステールは肩が固まり、かろうじて首を傾けるだけだった。

シノン「まるで、戦場の経験があるように語るから」

アンリエット「探偵は時に、身を危険にさらしてでも怪盗と対峙するものですから」

シノン「そう」

 淡白な相槌は黄点に追われる白点を見つめている。

シノン「人の命って、盗めるのかしらね」

アンリエット「…………」

 やや長い沈黙の間にビーム撹乱幕の散布が完了した。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:24:34.10 ID:wP4cZhaT0<>
アレイ「Gアーマー、先行する!」

すずか「ガンダム、いきまーす!」

 ビーム撹乱幕の散布が完了し、ホワイトベースはチームの入れ替えを行う。

 氷坂アレイは先天性遺伝子欠陥であるために、艦外活動は制限される。
 それを、ガンダリウム合金のGアーマーと高濃度ミノフスキー粒子で囲って宇宙線を遮断することでクリアーしたのだ。

 先に出たアレイは減速してガンダムの下に潜る。
 すずかはガンダムを前傾させて膝をすこし折り、無重力に沈んでGアーマーに掴まった。

アレイ「用意はいいか?」

すずか「はい!」

 大きな返事をするとGアーマーが加速する。
 毎秒キロ単位で移動する戦場の光景は一見のたびに花火のような明かりが瞬くが、それは命の火なのだとすずかの神経――こめかみの辺りの何かが訴えた。

アレイ「平気か?」

すずか「――はいっ!」

 また大きな返事をする。
 整った声音だが、気の強さはアリサと並ぶものがあって、すずかは居心地のよさを感じた。

アレイ「ジオン……」

 シュン、シュンとスラスターでランダム軌道を見せるリック・ドムを二機見つけて、アレイが呟き、接触回線ですずかに聞こえる。

すずか(ここに……やっぱり、いるのか、な……)

 何日も前、ジオン軍のザンジバルから出てきた白鳥の女を思い返す。

 あの交感はいったいなんだったのか――……
 すずかの意識はそこにばかり向いてしまい、それから逃れようとして、ガンダムに向かった。

アレイ「月村、来るぞ!」

すずか「はい!」

 言われる前に動き出していた。
 ビーム撹乱幕でビームライフルは使えないため、ハイパーバズーカを二本持ってリック・ドムに近づいていく。

 リック・ドムもジャイアント・バズを構える。
 ガンダムは互いの相対距離が充分近づく前にGアーマーを蹴った。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:25:30.53 ID:wP4cZhaT0<>
すずか「見えるっ!」

 どどぉっ!

 ハイパーバズーカが命中し、リック・ドムが半壊した。

 もう一機のリック・ドムが別の角度から距離を詰めてくる。
 すずかは今撃ったバズーカを腰にマウントしてビームジャベリンを取った。

 ミノフスキー粒子下での戦闘はレーダーが効かない。
 そのため、チカッと敵機体が発する友軍信号を目視してメモリに登録する必要がある。

 さらに、攻撃の際にはカメラで正確に捉え、照準線にロック・オンした上で武器の距離、角度、発射のタイミングを合わせなければならない。

 これらの動作の後者は機動兵器が自動で行ってくれるが、前半部と引き金は自分でする。

 つまり、ロック・オンしてから僅かな時間、パイロットは待たされるのだ。

 実際には0.1秒以下の時間だが、そのタイム・ラグはたしかに存在し、通常青色の照準線がロック・オンを示す緑色から攻撃可能の黄色に変わった瞬間、パイロットは「やれる」という感覚に取り付かれる。

 例えば、今のリック・ドムのパイロットのように――

ジオン兵「喰らえ――ッ!?」

 引き金を引く寸前、黄色い照準線から白いモビルスーツの姿は消えていた。

 そして、左のわき腹に衝撃を感じて、彼は何かが突き刺さったのだと知る。

ジオン兵「ば、ばかな……! うおぉ……!」

 機動兵器同士の戦闘は目視に限られた非常に近接的な白兵戦が主である。
 攻撃するに目視が必要なのと同時に、回避にも目視が必要なのだ。

 それを、ガンダムのパイロットは完全な視界外からやってのけ、むしろリック・ドムの死角に回り込んでビームジャベリンの投擲を行っていた。

 人間が発する思惟を敏感に洞察するニュータイプという人種に、月村すずかが到達している証拠であった。

 こちらを照準に捉えた敵パイロットの焦燥と攻撃の意思がはっきりと伝わってきて、身体はセンサーよりも先に動く。

 機械という性質上、一度ロック・オンするとすぐに視界を別へ動かすことはできない。
 つまり、一度ロック・オンの外に出れば、どこにいても死角になる。

 そしてすずかは敵が攻撃動作をしてから攻撃する。

 その瞬間は確実に敵機が静止する時間だからだ。

 兵士としてではない。
 技術者の家系が為せる機動兵器戦闘の手法だった。

 そもそも機動兵器同士の戦闘は始まってからまだ数ヶ月も経っていない。
 セオリーなどないのが常なのである。

 その中で前線に立ち続けた少女たちのカンは、圧倒的優位の立場から戦艦を攻撃していた要塞兵士にとっては全てが常識の範囲外になる。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:26:28.25 ID:wP4cZhaT0<>
シノ「いくぞ、アリア!」

アリア「うん、シノちゃん!」

 パパパパパパパパッ!

 ハンドレールガンの音が擬似音声で響く。
 十字砲火であっという間にザクとドムが沈黙する。

シノ「早いところ、スズと合流しなくてはな」

 二人の現状の目的はアルファチームの司令塔だった海晴とスズをホワイトベースへ誘導することだ。

 しかし、こうも広い戦場では、地図上の位置でも数百キロにも及ぶ範囲になる。

 屈指の電子戦装備を持つD−3なら、こちらを見つけてくれるかもしれないが、シノたちはそれまであたりをつけていくしかない。

ジオン兵「D兵器を発見した!」

 のんびり機械をいじくっている時間はない。

シノ「くっ……!」

 ザクUの投げたクラッカーにショルダーボムをぶつける。

 爆風に煽られてドラグナー1型は別のザクUに背中を見せてしまう。

アリア「シノちゃん!」

シノ「しまった……!」

 ここで離脱させられてはチームに迷惑がかかる。
 しかし対話型コンピュータのクララは諦めろとばかりにアラートを鳴らすしかしない。

ジオン兵「もらったぞ!」

 ヒートホークが振りかぶられる。
 回避は間に合わない。

 ――が、その手斧は永久に振り下ろされることはなかった。

 ガカカッ! パパッ! ガカカカカカッ!

ジオン兵「う、うわ……! わぁぁーっ!」

 全く予想だにしなかった角度から無数の弾丸を浴びて、ザクUは踊るようにドラグナー1型の後ろから弾き出された。

 追撃でミサイルが飛び、測ったようにザクUに直撃した。

シノ「たすかった、のか……?」

アリア「シノちゃん、だいじょうぶ!?」

シノ「あ、あぁ、しかし誰が……もしかして、スズか?」

 実体弾とミサイルを組み合わせたあの正確な攻撃はD−3以外に考えられないが、違った。

長門「違う」

シノ「――ッ!?」
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:27:09.35 ID:wP4cZhaT0<>
アリア「有希ちゃん!?」

 二機のドラグナーの傍で止まったのは、レビ・ゲルフ――ギガノス帝国の蒼き鷹、ハルヒ・スズミヤ・プラートの友人、長門有希だった。

シノ「どうして、君が……まさか――」

長門「いない。ここには私一人できた」

 シノの考えを先読みしたかのように長門が事実だけを述べる。

長門「貴女は今、私たちの行方を捜している。でもそれは必要ないことだと伝えにきた」

 レビ・ゲルフで強力なジャミングを仕掛けているからか、敵の邪魔を受けることなく、長門が訥々と話す。

長門「涼宮ハルヒが本当に見つかりたくないと考えている以上、誰にも見つけることはできない」

シノ「確かに、彼女ならそう簡単に見つかりはしないと思うが……」

 長門は沈黙した。
 この世界でも無意識下で願望を実現させる能力を涼宮ハルヒが持っていることを彼女は解っている。
 メサイア・ギルトールも、ハルヒが望めば生き返っていただろう。

 しかし、現実にそんなはずはないという常識と、これでよかったのかもしれないというハルヒの想いがそれをさせなかった。

 そして今、ハルヒは誰にも存在を知られたくないと思う以上、J9であっても姿を捉えることはできない。

長門「時が来れば、涼宮ハルヒはもう一度動く」

 それまでは、いくら捜索しても無駄だと長門は伝えにきたのだ。

長門「貴女たちは、自分の意志ですることを先にするべき」

 ピッ、とクララがレビ・ゲルフから受信した。
 それはスズたちのいる位置だった。

シノ「……わかった」

 返事を聞いてレビ・ゲルフは静かに踵を返した。

シノ「待っていると、彼女に……ハルヒに伝えてほしい」

 また少しだけ沈黙があった。

長門「了解」

 ひどく安心できる一言だった。


 第三十一話 緊迫! ソロモン攻略作戦! Cパート 完!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/11/14(月) 23:35:41.90 ID:wP4cZhaT0<>
 今日はここまでです。

 前半戦なのにDパートにもつれこむ始末。

 単純に作業時間が少なくてこれ以上遅らせるのはまずいと思って投下したまでです。

 このソロモンでかつて地上でいろいろと因縁のあった人同士が再会したりします。

 ソロモンはアラジンのランプ的なおとぎ話、スレイマンの指輪が有名ですね。

 ルーツは旧約聖書まで遡りますが、ガンダムの設定には多くの神話的要素が意外にあります。

 そういえばマジンガーも神話世界がモチーフだった。

 神話には巨人伝説がつきもので、そこが多くの制作者のヒントになっているのかもしれません。

 と、いう訳で、ケルト神話をメインに用いた第二回角川スニーカー文庫大賞受賞作『ジェノサイド・エンジェル』は面白いですよ。

 という宣伝でした。

 それでは。
 

 クロスバレットは最高の萌糞台最高!

 この一撃が、漆黒の闇を照らす!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/14(月) 23:53:10.68 ID:HrDP6+xSo<> 乙
ハルヒはやっぱりハルヒなのか
でも唯に1票 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(関東・甲信越)<>sage<>2011/11/19(土) 07:55:30.00 ID:Jvf0aHMAO<> もう自分と一人しか支援がないな……もともと多いほうでもなかったけど

すずかに一票か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:54:28.45 ID:SIatU2cx0<>
 第三十一話 Dパート


ギル「死ねぇぇぇ! ダンガイオー!!」

 ドゴォォッ!

 ヒートナタを避けたが、体当たりを喰らってもんどりうった。

ネロ「うわぁぁ!」

コーネリア「くぅぅっ……!」

夕映「ハルナ!」

ハルナ「いくわよっ!」

 ダンガイオーの後ろから青い機影が飛び出し、ギル・バーグのザクレロを射角に捉える。

ハルナ「ドリルミサーイル!」

 ドシュンッ! ドドゥッ!

ギル「ぐぉぉ!」

 早乙女ハルナが操るゲッターライガーの放ったミサイルが左腕部のヒートナタを破壊した。

ハルナ「チェーンアタック!」

 ジャーッ!

 鎖に繋がれたライガーの腕が飛ぶが、ザクレロは上昇して逃れる。

ギル「なめるな、小娘が!」

 ズギャン!

 片腕を失ったザクレロの残ったヒートナタがライガーにぶつかった!

のどか「ふわぁ!」

夕映「くっ……! ハルナ!」

ハルナ「わかってらいわよ!」

 非難めいた夕映の叫びに大声で返す。

ハルナ「ちょこぉーっと! 速すぎるだけよ! ライガーが!」

のどか「や、やっぱりわたしが――……」

ハルナ「だぁーまらっしゃい! 出番をとるな!」

 体勢を立て直す間に、ギル・バーグは本来の目的へと走っていた。

ネロ「ダンガイビーム!」

ギル「遅いわぁっ!」

 胴長のザクレロの腹部を真横に向けて光線を回避し、逆に口腔部の拡散ビーム砲を発射する。

 ババッ! バッ、ババッ!

エリー「ひやぁぁっ!」

シャロ「このっ……!」

 仲間の悲鳴にシャロがトイズを発動させる。

 キィンッ――

 念動力がザクレロを捕まえる。

ギル「ぐっ――バカがっ!」
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:55:09.04 ID:SIatU2cx0<>
 ガゴン――

 機体が止められる直前にギルの入れたスイッチで、ザクレロの後部に固定されていた装置が落下する。

コーネリア「なに!?」

 装置はダンガイオーの頭上をとると、ひし形の振り子のような物体が降りる。

ギル「灼熱リーダーを喰らえ!」

 ズバンッ!

 振り子を中心に発生させられる高周波が散布されたミノフスキー粒子に蓄積、反射して高熱でダンガイオーを包んだ!

ネロ「わぁぁぁぁっ!」

エリー「あぁぁぁ!」

コーネリア「う、うぅぅ……あぁ!」

シャロ「ひゃぁぁぁぁ!」

 痺れるような熱にミルキィホームズが苦鳴をあげ、シャロのトイズが解除された。

ギル「貴様らの攻撃などもはや効かぬわ!」

 ヴヴン……!

 ヒートナタが赤銅色に光り、ダンガイオーと正対した。

ギル<熱血>「遂に……俺の復讐をォォォォォォ!!」

 ギュォォォーッ!

 ザクレロが猛スピードで突っ込んでいく。

 ダンガイオーはやはり身動きがとれない。

 ヒートナタが迫る。

 ズジャァァァッ――!

ギル「――違うッ!」

 手に伝わる震動がそう判断していた。

なのは「やぁぁぁっ!」

 一喝の下にヒートナタが逸らされた。
 白い服で宇宙空間に浮く少女が赤い宝石の杖を前方へ構える。

レイジングハート『Divine buster.』

なのは「シュートッ!」

 ドォンッ――!

 白光の巨砲がザクレロを掠めた。

ギル「ぐっ……――ッ!?」

ハルナ「ゲッタァードリールゥッ!」

 ギャシュゥッ!

 複眼式カメラの片方をゲッターライガーが抉る!

ギル「オォォッ! ぐぅおぉぉぉぉぉぉ!!」

 怒りの咆哮が宇宙に轟いた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:56:30.66 ID:SIatU2cx0<>
ガイア「マッシュよ、オルテガよ、二人の魂よ、宇宙に飛んで永遠によろこびの中に漂いたまえ」

 ザクUを二機引き連れたリック・ドムがガンダムと接触した。

ガイア<気迫>「ガンダムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

すずか「――凄い気が来るッ!?」

ガイア「マッシュ! オルテガァ!!」

 ドォッ!

 ビームバズーカをガンダムは避けるが、そこにザクUのマシンガンが照準を合わせていた。

 ガガガガガッ!

すずか「うっ!」

ガイア「いいぞ、マッシュ!」

 シュゥゥー……!

 滑るようにリック・ドムがヒートサーベルを手に突っ込む。

すずか「そこっ!」

 ビュンッ!

 ビームライフルを撃つが、リック・ドムは予定していたように攻撃を中断して離れた。

ガイア「オルテガ、やれぇ!」

 『応!』

すずか「――ッ!?」

 ガゴォンッ!

 回り込んでいた別のザクUがクラッカーを投げ、シールドを破壊した。
 ガンダムのシールドは二枚重ねになっているため、壊れた一枚目を破棄すればよい。

 それよりも、すずかの耳朶を打った声だ。

すずか「一人!? ふた、り……!? じゃない……!?」

 動揺が確かにガンダムの動きを鈍らせていた。

ガイア「オルテガ、マッシュ! ジェットストリームアタックだ!!」

 シュッ――

 三機が縦に並び、ガンダムへ突進する。

すずか「人!? 意志? 違う……像!? 木!?」

 混乱するパイロットをよそにガンダムのマニピュレーターがオートで動いてライフルを正面のリック・ドムに構える。

 その瞬間、三機はバラバラに拡散してガンダムを十字砲火に捉えた。

ガイア<熱血>「とったぞ!」

アレイ「月村!」

 ガツッ! ギューンッ……!

 Gアーマーがガンダムにぶつかって、射線から逃がした。

アレイ「馬鹿! 何をしている!?」

 僚機からの叱咤ですずかは我に返ったが、まだ混乱していた。

すずか「ち、違うんです……ひ、ひとの意志が……あの機体を動かして……さ、三機なのに、一人で……なのに一人に三人がいて……」
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:57:12.58 ID:SIatU2cx0<>
アレイ「どうした! しっかりしろ!」

すずか「で、でも、わたしに触れるのが、感触がちがくて……固くてざらついてて……き、木なんです……」

 アレイは出撃前にシノンからすずかは月村すずかはニュータイプかもしれないと聞かされていた。
 自分たちの感じ取れないことに敏感に反応しているようだが、彼女の発言はうわ言のようで、アレイには理解できない。

アレイ「くっ……帰投するぞ!」

 Gアーマーがアンカーを出してガンダムを抱え、リック・ドムに背を向けて後退する。

ガイア「逃がさねぇぞガンダムゥゥゥ!!」
 
 喚声に応えるようにザクUがバズーカ砲を担いだ。

すずか「……――ッ! ダメっ!!」

アレイ「月村!?」

 突如覚醒したすずかがガンダムの体を揺すってアンカーをちぎり、ビームライフルを構えた。

すずか<直感>「そんなものは使っちゃ――!」

 ビシュッ――ドゥッ――

 ライフルとバズーカの引き金はほぼ同時だった。

 ザクUが撃ったのは核弾頭であった。

 直進してくる弾頭にビームが直撃し、両者のちょうど中間で巨大な光芒を放つ。

アレイ「月村……」

 神業の如き射的をした少女にアレイが唖然としながら声をかけると、はっきりした応えがあった。

すずか「ごめんなさい、アレイさん」

アレイ「あ、あぁ」

すずか「わかりました。あのザクに、人は乗っていない」

アレイ「なに?」

すずか「人の形をした木の人形が……人の魂の寄り代になってる……」

アレイ「そんな馬鹿な話が……」

すずか「でも、動かしてるのは一人……!」

 グン! と、ガンダムが前進した。

アレイ「月村!」

すずか「アレイさんは下がって! 私が止めます!」

 リック・ドムとザクUが編隊を組みなおしていた。

ガイア「来るのか? 来いよ、ガンダム……! 俺たちの仇めがぁ!」

 数条のビームが光芒を描き、クラッカーが爆発した。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:57:40.27 ID:SIatU2cx0<>

 ソロモン 司令部


 ビーム撹乱幕が張られたことで、ドズル・ザビもさすがに焦燥が出たようだった。

ドズル「万一の事がある、女どもは退避カプセルに移れ」

ゼナ「戦局はそんなに悪いんですか?」

 美しい妻の表情を不安にさせている。
 それは俺の責任だと、ドズルは自身に悔恨する。

ドズル「このソロモンが落ちるものか。万一だ、万一の事を考えての事よ。ようやくにも手に入れたミネバの為だ」

 あえて笑ってみせたが、子どもというものは本質を鋭く見抜く。
 小さな小さな娘は、差し出されたドズルの指を小さな手で掴んでぐずる。

ゼナ「あなた……」

ドズル「ふ、ははははは……急げよ。ラル、頼んだぞ」

 無理に背中を押してランバ・ラルに預ける。

ラル「は、命に替えても」

ドズル「死ぬな。お前が死んだら誰がゼナとミネバを守る」

ラル「失礼しました」

 敬礼したランバ・ラルが妻子を連れて出て行ったすぐ後に、報告があった。

ラコック「ドズル中将! サイド1の残骸郡です!」

ドズル「ティアンムか!?」

 すぐに将の面構えになる。
 立体映像にされた宙図に連邦艦隊と思しきものが表示される。

ドズル「広範囲だな」

ラコック「何か大質量を展開しているようです」

ドズル「えぇい、衛星ミサイルを飛ばせ!」

 即断即決。
 指令の気性は命令系統にまで浸透していた。

 すぐに衛星ミサイルの発射シークエンスが完了していく。

通信兵「中将! 発射できません!」

ドズル「なんだと!?」

 ものの数秒で出た返答にドズルは身を乗り出した。

通信兵「れ、連邦軍のパーソナルトルーパーがミサイルの軌道上に複数展開しております!」

ドズル「くっ……! えぇい、とにかく撃て!」

 発射されるミサイルの噴出に紛れて、黒い影が宇宙を縫っていた。
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:58:43.75 ID:SIatU2cx0<>

海晴「ヒカルちゃん、ソロモンが第二艦隊に気付いたみたい」

 近くにいるヴァイスリッターから通信がある。
 さらにもう一機、氷柱のゲシュペンストがビームランチャーを構える。

氷柱「衛星ミサイルが発射されたわ。ヒカル姉様、予定通りよ」

 ヴァイスリッターもオクスタンランチャーを長い尾に向けた。

ヒカル「あぁ、二人は、私が守ってみせる!」

 シシオウブレードを腰だめに握りなおして、ヒカルは前に出る。
 第二艦隊に気づいたソロモンが長距離弾道兵器を使用するだろう事を読んだシノンが狙撃武器を持つ二機に迎撃を命じた。

 オクスタンランチャーとビームランチャーが斉射され、それに近づく敵機にヒカルは踏み込んでいった。

ヒカル<必中>「はぁぁっ!!」

 ザシュッ!

 身を沈めたゲシュペンストが獰猛な獣のように飛びかかり、刀で一閃する。

ジオン兵「う、うわぁぁ!」

ヒカル「逃げるくらいなら出てくるな!」

 愛用の木刀、金獅子丸を模して作られたシシオウブレードを鞘に仕舞い込むと、ヒカルは背中を見せるザクUをアルトアイゼンのパイロット、霙に仕込まれた瞬発力で捕まえる。

ジオン兵「や、やめてくれ……殺さないでくれぇ!」

ヒカル「情けないな! それでも男か!」

 ガンッ!

 顔面をジェットマグナムでぶん殴り、ふっ飛ばす。

 ふと、ヒカルは思う。
 なぜ、こいつらは兵士になったのだろう――

 ヒカルは単純だ。
 家族を守りたいから――

 大切な家族を脅かす敵を自らの手で打ち砕く力が欲しかった。

ヒカル「そうか――」

 気付く。

 家族がいるのは、自分だけではない。

 彼らもまた、大切な家族を守りたかったのかもしれない。

 その為に、ジオン公国に従い、独立戦争を仕掛けてきているのだ。

 つまり、彼らの家族を虐げている地球連邦こそが――

 そこに所属する自分達こそが――
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:59:14.60 ID:SIatU2cx0<>
ヒカル「いや、そんなはずはない……」

 だけど、あの赤い彗星と呼ばれる少女は――

 蒼き鷹として名を馳せた少女は――

ヒカル「そんなことはない……!」

 ドォンッ!

 ソロモン要塞からマスドライバーキャノンの岩石がゲシュペンスト目掛けて発射される。

ヒカル「そうじゃないはずだ!」


 ――斬ッ!!


 気迫の一太刀が岩石を一刀両断にした。

ヒカル「全ては、戦いを起こした奴こそが、諸悪の根源だ!」

 どんな人間も、己の身を守り、家族を守りたいはずだ。

 そんな人達を戦いに巻き込む奴こそを、この刃で断ってみせる。

 天使ヒカルという少女は、常に単純で明快だ。

 次々と爆光が広がる。
 氷柱と海晴が衛星ミサイルを撃ち落としているのだ。

 この調子ならば、作戦は完遂されるはずだが――

ヒカル「なんだ、あの速度は……!」

 家族を守るために常に警戒しているヒカルの視野に翡翠色の輝きが止まった。

 いや、止まったのは一瞬だけで、むしろヒカルにわざと存在を誇示したかのようにすら見えた。

 完全に戦闘宙域から掻い潜る動きで第二艦隊に向かっている!

ヒカル「くっ――!」

海晴「ヒカルちゃん!?」

氷柱「ヒカル姉様!?」

 推進剤を全開に使用して、ゲシュペンストを飛ばす。
 姉妹はヒカルの行動に驚くが、瞬発力の差と目前の任務に追うことが出来ない。

 黒い影、翡翠色の輝き――ヒカルの目に焼きついていた。

ヒカル「やはり、また――」

 カメラで確認すると、形状が戦闘機か鳥のようだが、間違いなかった。

 ギガノスとの決戦前に、仲間たちを乗せたシャトルを撃った奴!

ヒカル「またお前か!!」

アサキム「来たね」
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(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 22:59:50.62 ID:SIatU2cx0<>
 叫び声に、黒翼のシュロウガを馳せらせるアサキム・ドーウィンが僅かに口を歪めたようだった。

ヒカル「何が目的でいるかは知らないが――」

 鞘から剣を抜いて、シュロウガの真上に重なるように突進していく。

ヒカル「お前だけは野放しにはしない!!」

アサキム「シュロウガ、レイコーティング」

 シュゴォン――

 鳥形のシュロウガから紫色の炎が沸き出し、ゲシュペンストは剣が触れる直前に弾かれた。

ヒカル「うあっ!」

アサキム「今日は君と遊ぶ時間はないからね」

ヒカル「なら、何故呼んだ!?」

 追いかける、が、シュロウガにはとても追いつけない。

ヒカル「お前は今、私を呼んだはずだ!」

アサキム「君に見せるためさ。可能な限りの絶望を」

 シュロウガは既に戦闘宙域から抜けようとしていた。

 ヒカルは一瞬、眩しいと思った。

 それは、サイド1にある廃棄コロニーの残骸郡の方向からで、第二艦隊がいるはずだった。

 奴の狙いがわかった。

ヒカル「させるものか!」

 想起される獄炎の闇。

 あれは、全てを根絶やしにする力だ。

 かーっと頭に血が上った。

 バチン、とゲシュペンストがアラームを出した。
 過剰反応――ヒカルの強いT−LINKに吹雪のかけたリミッターが発動したのだ。

『ゲシュペンストにかけられている駆動限界のリミッターがヒカル姉のT−LINKに反応して弾き飛ばされているようです』
 
『ヒカル姉の闘争心――熱血、努力、ド根性にゲシュペンストが頑張りすぎているということです』

『対策としてT−LINKシステムにもリミッターをかけておきました。これでヒカル姉が本当に必要な時にだけ、駆動限界突破を行うことができるようになります』

『使用後はオーバーワークでほとんど動けなくなりますから、注意してください』

 瞬時に思い出す言葉。

ヒカル<覚醒>「後先の事など考えるな!!」

 バキンッ!

 警告を出しているリミッター解除のスイッチに拳を叩きつける。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 23:00:28.99 ID:SIatU2cx0<>
 グォォ――……!

ヒカル「オマエがやってくれ! ゲシュペンスト!!」

 ビッ――バキィンッ!!

 ゲシュペンストの関節から溶剤が弾け、熱を発した。

アサキム「この力の波動――やはり」

 速度を上げて迫るゲシュペンストに、アサキムもまた速度を上げた。
 また距離が開く二機、アサキムは嘲る。

アサキム「でも、そこで大人しく見ているといい――」

 そんな言葉などヒカルは聞いちゃいなかった。

ヒカル<熱血>「獅子王! 大車輪ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんッ!!」

 牙を剥く猛虎の如く両腕を振り上げ、虚空へ唐竹割りに投げ#ばした。

アサキム「シュロウガ――ッ!?」

 ズギギィィッ!!

 縦に円を描くシシオウブレードが牙としてアサキム・ドーウィンに突き刺さる!

アサキム「くっ――! 本当に君は……」

 翼を折られたシュロウガが大きく右に傾く。

ヒカル「ジェットマグナム!」

 バキィッ!

 鳥面の頭部に右腕をぶち込む!

アサキム「この痛みが――ッ!」

 ドゴォッ!

 同じ拳が胸部を打つ!

アサキム「僕を目覚めさせる!」

 ゲシュペンストがシュロウガに突き刺さったシシオウブレードを掴み、脚の底で蹴り飛ばす。

ヒカル<魂>「お前は――家族の敵だ!」

 ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!

 真っ直ぐに振り下ろされた黄金色の刃が再びシュロウガを一刀両断した!!


 その時、視界が真っ白に染まった。


ヒカル「――ッ!?」

 突然のホワイト・アウトが機体の故障ではないと判ったのは、眼前のシュロウガが焼き消されていくのを目撃したからだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 23:01:00.98 ID:SIatU2cx0<>

 連邦軍、ティアンム率いる第二艦隊が展開した新兵器ソーラ・システム――太陽光を無数の鏡で反射させて焦点にしたソロモンを焼き尽くす攻撃が発動していた。


ギル「ダン、……ガイ――オ……ッ!」

 発動の直前に送られた退避エリアに辛うじて離脱したダンガイオーとゲッターロボを追ってきたザクレロもまた、光りに呑みこまれていった。

夕映「これが、連邦の秘密兵器……?」

シャロ「す、すごいです……」

なのは「あ、熱い……」



 ソーラ・システムはソロモン宙域に滞在するジオン軍の半数以上を焼いた。

すずか「あ、だめ、なのに……あ、あぁ……」

 ソーラ・システムの圧力がすずかには解っていた。

 逃れることができず、目の前でリック・ドムが泳いでいた。

ガイア「お、おぉぉ! マッシュ! オルテガーッ!」

 二機のザクUは先に光りに吸い込まれていた。

ガイア「マッシュ、オルテガ……すまん!」

 リック・ドムが赤く膨れ上がっていく。

ガイア「ガンダム……おめぇらが……俺たちを……っ!」

すずか「う、あ、あぁぁ……」

 呆然といっぱいの光りを見つめていたすずかに、その声は確かに届いた。


『ガンダムよぉ、おめえは居ちゃいけねえんだ。例えみんなが忘れちまっても……俺の頭ん中にはちゃーんと残るんだ。お前は『白い悪魔』だってなあ』




すずか「ひ、ひどい……みんな……自分たちがしたことなのに……」


 第三十一話 緊迫! ソロモン攻略作戦! 完!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/11/27(日) 23:01:36.05 ID:SIatU2cx0<>

 今日はここまでです。

 鬼畜がマゾになってるとかはさておき、次回からソロモン編後半です。

 やはり駆け足気味です。

 激務ゆえに人が辞めていき、チームリーダーになってしまいました。
 おかげで休みを週2に出来たので、もうちょっとだけ更新頻度上がるかな?

 単にスロット打つ時間が増えるだけかもしれない。

 最近はなのポのマテ娘たちへの愛が再燃しています。

 レヴィかわいいよレヴィ。

 それでは。

 次回は『恐怖! 機動ビグ・ザム!』

 これほど戦慄するタイトルはないです。
 ガンダムで一番好きな話かな。

 やらせはせん! やらせはせんぞー!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/27(日) 23:19:29.30 ID:dX1L731ho<> 乙
なのは見てきたからすずかちゃんに1票だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(関西地方)<>sage<>2011/11/28(月) 18:37:26.91 ID:gsSRU/Ivo<> 乙

あれ?リーダーになるの早くないか?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/12/04(日) 23:05:30.67 ID:XEcn0y5M0<>
 第三十二話 Aパート


 ソロモン 司令室

ドズル「敵の本隊が出てくるぞ! 衛星ミサイルで軌道上にあるものはすべて発射しろ!」

ラコック「閣下、どちらへ!?」

ドズル「ビグ・ザムで出る! これ以上、連邦の好きにはさせん!」

ラコック「し、しかし閣下が出て行かれては!」

ドズル「取り付いた奴らを追い返すだけだ。いいな、退路を確保して、ソロモンから脱出しろ」

ラコック「は、はっ!」

 ドズル・ザビ中将は靴底のマグネットを高く鳴らして走った。
 その姿は高貴な将軍というよりも、傭兵と言ったほうがしっくりくる。

ドズル「ゼナ、ミネバ、無事に逃げ延びてくれよ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/12/04(日) 23:06:49.02 ID:XEcn0y5M0<>

 ソーラ・システムによってソロモンはその四分の一近くを機能停止に追い込まれていた。
 展開していた艦隊の被害はより甚大で、ジオン軍はその半数以上を失っている。

 撤退の構えを見せる敵機の中を、三機のドラグナーが疾駆していった。

シノ「いいな、私たちの任務はソロモンから撤退するドズル・ザビ中将らの確保だ!」

アリア「了解っ」

スズ「開放されたゲート、位置情報を送ります」

 長門有希のナビで萩村スズと再会した天草シノと七条アリアは通常通りの三機の編隊に戻り、ソロモンへ乗り込んでいく。

 そこで待ち受けていたのは、ゼナとミネバ脱出艇を護る青いモビルスーツだった。

シノ「グフ!?」

ラル「D兵器!? シノ君か!」

 ミノフスキー粒子が密度を増しているため、互いに音声が届いていない状況であるが、両者は互いに喋る言葉を持っていた。

ラル「相見えることを待っていたぞ、シノ君!」

 以前のものよりも改修され、重装甲となったグフがヒートサーベルを抜いて発進直前の脱出艇の前に出る。

シノ「借りた命……今日、ここで!」

 レーザーソードを構えてシノは突撃した。

ラル「ほぅ、やるようになった!」

 瞬発の挙動一つでランバ・ラルは賞賛を送り、ヒートサーベルを振った。

 ――シュパァン!

シノ「うっ!?」

 熱量を持った刃同士が触れ合った瞬間、イメージよりも強烈な光りがシノの目を打った。
 このサーベルはダミーであったのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/12/04(日) 23:07:47.67 ID:XEcn0y5M0<>
ラル「したたかなのもランバ・ラルよ!」

 ドガァッ!

 ショルダータックルでD−1が転倒する。

ラル「艦の発進を急げ! アコーズ、コズン、他の二機は任せたぞ!」

「「はっ!!」」

 リック・ドムに乗った二兵士がD−2、D−3に向かっていく。

シノ「くっ……!」

ラル「また味わうかね、ヒートロッドを!」

 ビュオッ――

 真空を切り裂いて唸る鞭を辛うじてかわした。

ラル「よけたか! それも良い方に!」

 左手を壁につける形のドラグナー1型。
 右手のヒートロッドはこれでは振れない。

 ドラグナーは二本目のレーザーソードを持ち、盾を上げた。

ラル「ふふ、この懐に飛び込む時の身体の熱……良いぞ、シノ君!」

 グフもヒートロッドをしまい、またサーベルを持つ。

 ぴたりと止まった時が再び動くのは、脱出艇が発進の火を噴いた時だった。

 ゴゴォン……!

シノ「はぁぁっ!」

 ドラグナーが振ったのはレーザーソードではなく、シールドを持った腕だった。
 隠し持っていたショルダーボムがグフに飛んでいく。

ラル「この程度か!」

 アームガードでショルダーボムを殴り、ランバ・ラルは踏み込んで必殺の刺突を放った!

シノ「くっ――!」

 ドスッ!

 シールドをサーベルが貫通する。
 すぐにレーザーソードで切りかかるが、グフの手が上がり、指が直列に繋がった。

 ガガガガガガガッ!

 フィンガーバルカンがD−1の手を叩き、レーザーソードを落とした!

シノ「まずいっ!」

ラル「終わりかッ!?」

 期待外れとばかりの声音でランバ・ラルはヒートロッドを射出してD−1を捕まえる。

ラル「ならば落ちろ! D兵器と共に!」

シノ「いいや、あなたの負けだ! ランバ・ラル!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/12/04(日) 23:08:23.34 ID:XEcn0y5M0<>
ラル「なにっ!?」

 負け惜しみか、罠か――?
 答えはヒートロッドのスイッチを入れれば解る。
 だがもしそのスイッチが罠の起動条件であったのならば――

 刹那の思考が、ラルの寿命を削った。

 ボゴォンッ――!!

ラル「うおぉっ!?」

 左肩で何かが爆発し、グフが倒される。

ラル「そうか! 先の爆弾か!!」

 弾いた時に爆発しなかったのは、起爆をタイマーにしていたからだろうか。

 それ以上に驚くべきは、その後のラルの動きから立ち位置まで読みきり、撃墜覚悟で完遂したシノの実行力である。

ラル「今の言葉も、ワシをとどめる為か!」

 無重力に体勢を泳がさせられるグフの前で、レーザーソードが発光した。

シノ<熱血>「あなたを倒す! 今日、ここでーッ!!」

 ――シュガァッ!!

ラル<不屈>「ぬぅぅ!」

 バーニアの噴かし一つでも、操縦技術が現れる。
 背部の左側、膝裏のさじ加減で頭部を穿つはずの閃刃が左肩に吸い込まれていった。

ラル「あっぱれだ! シノ君!」

 煙の立つ左腕をパージして、残った右腕でグフがドラグナーにしがみついた。

 接触回線でラルが言う。

ラル「ワシは今! 一つの神話を見ている!」

シノ「な、何を……!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/12/04(日) 23:08:57.17 ID:XEcn0y5M0<>
ラル「時代はもはや、ワシ等の世代ではないということだ!」

 グフが熱を上昇をさせているのが、ドラグナーにも伝わってきている。
 自爆する気か。

ラル「ワシがいち兵士を貫くならば、連邦の神話づくりなぞこの身を賭してでも潰して見せるが――!」

 彼が思い返していたのは、ドズル・ザビの命令だった。

ラル「ワシには使命がある! それを果たすのが、軍人としての生き様よ!」

 バシュッ――!

 脱出ブロックがグフの背中から飛び出て、脱出艇へ向かっていった。

シノ「くっ――!」

 動きのなくなったグフを蹴ってどかし、ランバ・ラルの脱出ブロックを捕まえようとするが、もう間に合わない。

 ドドォンッ!!

 グフが自爆し、ドラグナーは爆風に煽られて壁に叩きつけられた。

シノ「うあぁっ!」

スズ「会長!」

アリア「シノちゃん!」

 ランバ・ラルと同じように、アコーズとコズンに逃げられた二人がシノを助け起こす。

シノ「また……してやられてしまった……」

 ランバ・ラルの目的は脱出艇の確保であり、それを達成すると早々に引き上げた。

 しかも、グフの自爆でこのデッキからはもうソロモン内部への侵入はできない。

 ランバ・ラルの含み笑いが聞こえた気がした。

シノ「なんて、恐ろしい人だ……」


 第三十二話 恐怖! 機動ビグ・ザム! Aパート 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>saga<>2011/12/04(日) 23:11:05.49 ID:XEcn0y5M0<>
 分量が少なくて、上げようか迷いましたが、結局上げます。

 たぶん、投下した後にまた間違いを見つけて修正するんだろうなぁと思いながらです。

 間違いで一つ。

 前回、長門がハルヒの能力云々といいましたが、それよりも前の回で、ハルヒの能力がほとんどなくなっているとか書いてました。
 どうしようもならない矛盾です。
 ただ、ハルヒの願望達成能力は今後発揮されることはないでしょうから、使わないという方針でいきます。

 それに、ハルヒが願うことなんて戦争がはやく終わりますようにとか、キョンが死にませんようにとかです。
 戦争がなくなりますようにって考え出すと、どうしたら戦争がなくなるのか考えてエヴァのラストみたいになるかと思います。

 なお、今回、ラルが搭乗したグフは重装型グフをモデルに宇宙戦仕様となったオリ機体です。
 スパロボ的には、グフカスタムにスラスターモジュールをつけただけみたいな感じです。

 正しい性格的には、グフにこだわりがある訳でもなく、ドムに乗ればグフをけなして、ゲルググに乗ればドムをけなします。

 ただ、やっぱりラルにはグフが似合うので、グフってもらいました。

 今日は残機ちゃんに賭けて3万失いました。

 スロットなんてやらないほうがいいですね。

 来週には真逆のこと言ってると思います。

 マテ娘の同人誌を買いあさってるお金がそろそろなのポGoD初回版かえるぐらいになります。

 >>351様
 人が辞めて私が一番長い期間の人になったからです。
 まるっきり中間管理職です。
 基本ヒマなのに部下の責任を取らなくてはなりません。
 最初から私がやったほうが早いのに、と常に思っています。


 PCとは別に携帯で番外編を書いています。
 出来次第載せたいと思います。
 あの人が何故、あんなことになったのか――って感じです。
 


 とことで!

 グゥフフフwwwww
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/05(月) 00:04:21.41 ID:Jj4BrUjfo<> 乙乙
ラル強いなあ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:50:30.46 ID:OeBrETBe0<>
 第三十二話 Bパート


 ビグ・ザムは全高59.3メートルの大型モビルアーマーである。
 モビルスーツが歩兵ならば、ビグ・ザムは戦車に相当する。
 手はなく、飾りのような脚と巨大な頭部は獰猛な種の梟を思わせる。

 その火力は三百六十度斉射できる十六門のメガ粒子砲で充分と言えよう。
 更に無数の爆薬、頭部の口にあたる部位の大型ビーム砲は戦艦も一撃で鎮めることが出来る代物だ。

ドズル「このビグ・ザムが量産に成功した暁には、ジャブローなど跡形もなく焼き尽くしてくれるわ」

 ビグ・ザムの周囲は既にジムとドラグーンの屍に溢れていた。
 搭載しているメガ・ジェネレーターはまだ基地内の電源ユニットと直結している。

ドズル「いいか、まずはソロモンにとりつく連邦兵どもを叩き潰す!」

 同乗している二人のパイロットに檄を飛ばし、ビグ・ザムを前進させた。

ドズル「我等がジオンの兵どもよ! ドズル・ザビの命令をよく聞け!!」

 小惑星ソロモンのごつごつした表面に二本の脚を乗せて、ドズルは将兵に叫ぶ。

ドズル「これからビグ・ザムが殿軍を務める! 貴様等はソロモンを撤退し、ア・バオア・クーへ向かえ!」

 幾つかの光芒がやみ、すぐにまた復活する。

 何機かはビグ・ザムの許へ寄ろうとして、ある者は落ちて、ある者は別の光りに引っ張られていく。
 ジオンの艦艇は二十あまりになっている。
 いったい何人の兵士が生きて戦域を脱出できるか――ドズルは膝元から湧き上がってくる衝動を抑えなければならなかった。

ドズル「すまんな、お前達、ワシにつき合わせて」

ラコック「味方を逃がすためです。閣下お一人にやらせるわけにはいかんでしょう」

マイヤー「閣下も、御自らの御武運をお大事に考えください」

 索敵役のラコックと操縦役のマイヤーがビグ・ザムを動かしている。
 ドズルが見ているのは照準線と引き金、巨大なビグ・ザムは一人で操縦できるものではない。

ラコック「閣下! 敵艦隊を捕捉!」

マイヤー「ビグ・ザム、浮上します!」

ドズル「応!」

 ズオォ……!

 ビグ・ザムがソロモンから離れていく。
 ソーラ・システムで圧倒的優勢に立ったはずの連邦軍だが、大型モビルアーマーの出現で編隊が乱れた。

ドスル「雑魚には目もくれるなよ! 真っ直ぐに敵艦に向かえぃ!!」

ラコック・マイヤー「「了解!」」

 機動兵器に乗る連邦兵の多くはビグ・ザムから距離をとるが、中には逸って前に出てくるものもいる。

ドズル「これ以上、ソロモンをやらせはせんぞ! 木っ端どもが!!」

 ビビューッ!

 ビグ・ザムのビーム砲が一斉に噴き、辺り一帯を火の海にした。

 その無数の爆光を抜けていくと、連邦の艦サラミスがビグ・ザムに照準を合わせていた。

サラミス艦長「近づかせるな! 撃てっ、撃てーっ!」

 ズギュゥ! ギュギュゥッ!

 サラミスがメガ粒子砲を連射する。

 しかし、いかなる機体や艦も一瞬で宇宙の塵に変えるメガ粒子砲を、ビグ・ザムは避けずに受け止め、弾いてしまった。

すずか「あ、アレイさん!」

アレイ「あぁ、見た! ヤツは今、ビームを跳ね返した!」

 別の角度から観察していたガンダムとGファイターの前で、ビグ・ザムはサラミスに突っ込んでいく。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:52:35.10 ID:OeBrETBe0<>
ドズル「大型メガ粒子砲、撃てーっ!!」

 ドギュゥーッ!

 ズドッ、ボボボボッ!

 ビグ・ザムの口にも見える最前の砲門から、極太のビームが発射されてサラミスをはじめ多くの艦隊を粉砕した。

すずか「あ、圧倒的じゃないですか……!」

アレイ「……チッ!」

 グンッ……!

 Gファイターがガンダムの前に躍り出て、ビグ・ザムへ突進していく。

すずか「アレイさん、ダメです!」

アレイ「たった一機のモビルスーツのために、やられてたまるか!」

 強い激情にすずかも前に出て行った。
 あの敵は強大な力を秘めている。
 Gファイター一機では相手にならないとすずかは察知していた。

ドズル「ハァッハッハッハ!」

 高笑いするが、すぐに顔を引き締める。

ドズル「ビグ・ザムは主力艦隊に突撃する。戦力をズタズタにされすぎた。味方の撤退が完了するまで威力を見せつけてやるぞ!」

マイヤー「はっ!」

ドズル「フフフ、まさかこうも簡単にソロモンが陥ちることになるとはな」

ラコック「閣下! 後方から急速接近!」

 Gファイターがビームキャノンを撃ちながら迫る。

アレイ「ジオンが!」

 ビキューン!

 通常のビームライフルよりも威力の高いビームキャノンも、ビグ・ザムのIフィールド――ミノフスキー粒子に電磁波を流すことで生じるメガ粒子を偏光する磁場――に跳ね返されてしまう。

ドズル「えぇい、対空防御!」

 ビグ・ザムの脚の爪が放出され、Gファイターを迎撃する。

アレイ「くっ――!」

 ギュンッ――

 辛うじて捻らせた機首を爪が掠め、アレイはミサイルを放つ。

ドズル「上昇しろ!」

マイヤー「はっ!」

 上昇したビグ・ザムを誘導ミサイルが追うが、ドズルがビームで狙撃した。

ドズル「ハッハッハッ! 舐めるなよ! このビグザムには長距離ビームなどどうということはない! 道連れに一人でも多く地獄に引きずり込んでやるわ!」

アレイ「――ッ!」

 慣性飛行のGファイターにビグ・ザムのビーム砲が向く。

すずか「アレイさん!」

 バパァッ!
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:53:05.18 ID:OeBrETBe0<>
 間に滑り込んだガンダムのシールドでビグ・ザムのビームが遮られる。

アレイ「す、すまない、月村……」

 死の一瞬で力を放逐してしまい、Gファイターは動きが鈍る。

ドズル「ガンダムか! 貴様等がガルマをやった白い奴か!」

 ググォッ……!

 ビグ・ザムがガンダムを狙って機動する。

ドズル「ガルマだけではない! ガイアも! マッシュも、オルテガも! ワシの部下を……! 貴様がぁーっ!」

すずか「強い意志がぶつかってくる!? くぅっ!」

 ガンダムはよく避けた。
 その過程でGファイターからも引き剥がし、すずかはビグ・ザムを連れてソロモンまで飛んだ。

ドズル「貴様を落とせば、いや、落とさねばガルマが報われぬどころか、ジオンの存亡に関わる! ラコック! マイヤー! 絶対に奴を逃すな!」

ラコック「はっ!」

マイヤー「了解!」

すずか「ついてきてる!」

ドズル「喰らえぇーい!」

すずか「……今!」

 ビグ・ザムの攻撃の直前、すずかは突如反転、停止した。

ドズル「なにっ!?」

 相対速度を計算しつくしたガンダムはビグ・ザムと交錯の瞬間、ビームライフルで砲門を狙った。

マイヤー「やらせるかっ!」

 グンッ――!

 操縦がドズル一人であったならビグ・ザムは暴発して散っていたはずだ。
 ビームは急速転進したビグ・ザムの右足を撃っただけだった。

ドズル「えぇいっ! なんという反応だ!」

 ニュータイプ――ソロモンでも騒ぎ始めた単語がドズルによぎる。

ドズル「えぇい! 人間は人間だ! 連中がニュータイプだから蹂躙されるという話は聞けんぞ!」

 怒りはもっともである。
 ドズルは指揮官である以上に戦士であった。
 過去には一度だけ式典用に作られた専用モビルスーツに乗って戦場に躍り出たこともある。
 ルウム戦役≠フことである。
 幕僚達は慌てふためいたが、ザビ家の一族といえども同じ戦場に出てくれる――その共感が将兵の信頼を絶大的に勝ち取った。

ドズル「人間が戦争の道具のようにうまくやれる訳はない! ニュータイプが実在するなどという戯言も聞けん! 戦争を決めるのは数と兵器の質だ! それの為にソロモンの一族は苦しい生活に耐えてきたのだ!」

 思い起こす。ソロモンでの日々。
 ドズルでさえ、ズム・シティにいた頃に比べれば、よほど質素な生活をしていた。
 合成肉はモビルスーツパイロットに全て与えてしまった。
 天然物は女子供のものだ。
 ドズルは常に腹をすかせていた。
 しかし、椅子にふんぞり返るだけの一日は、食欲が湧かない。

 ビグ・ザムの試験日だけ、飯を食うことができた。

ドズル「ガンダムではなく、たった一人のパイロットのために、ビグ・ザムがやられるというのか! パイロットなぞ、パイロットスーツに小便を撒き散らすのが仕事だ!」

 ガンダムは背中を見せていた。
 それを覆うとしたが、マイヤーは機体を転回させていた。

ドズル「どうしたか!?」

ラコック「敵がいます! スーパーロボット!」

 瞬時にビグ・ザムが左に移動する。
 元いた場所を巨大な手斧が通り過ぎる。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:54:22.78 ID:OeBrETBe0<>
夕映「ゲッタァァァァァァビィィィィィィム!!」

マイヤー「よ、避けっ――」

ドズル「遅いわ馬鹿者ォッ!」

 操縦権を奪ったドズルはIフィールドで無力化できぬゲッタービームに正面をとり、大型メガ粒子砲で迎え撃った。

 ギュゴォォォォォォォッ!!

 毛色の違うビームは衝撃波で干渉し、相殺される。

夕映「これ以上、好きにはやらせないですよ!」

 ジャッ!

 手に戻ったトマホークを構えてゲッタードラゴンがビグ・ザムに体当たりしてくる。

夕映「ゲッタートマホーク!」

ドズル「くおぉっ!」

 ぶんっ!

 急上昇したビグ・ザムの下で斧が空振りし、ビグ・ザムの爪が赤い肩を穿つ!

夕映「くっ!」

のどか「ゆえっ!」

夕映「平気ですよ、のどか!」

 ゲッタードラゴンはすぐに姿勢を立て直して、ビグ・ザムに直進する。

ドズル「えぇい、近づけさせるな!」

夕映「ドマホゥゥク・ブゥメランッ!」

 ビシュッ!

 かろうじて避けることに成功する。
 が、ビグ・ザムのセンサーがまた警告する。

氷柱「いきなさい! スラッシュリッパー!」

 ギュシンッ!

海晴「オクスタンランチャー、Bモードっ!」

 ズドォンッ!

 またいつの間にか接近していた敵機の実体兵器に曝される。

ドズル「ぬうぅぅ! やられはせんぞーっ!」

 バシューッ!

 全砲門を覚醒させて弾丸、刃を焼き尽くす。

氷柱「いくわよ」

 スプリットミサイルを放ち、自身もビームランチャーに熱を持たせて突っ込む。

氷柱「タァァーッ!」

 ドズルは息を呑んだ。
 ビグ・ザムのビームの雨を敵のゲシュペンストが華麗にすり抜けながらやってくる。

 だが、氷柱の刃がビグ・ザムに届くことはなかった。

 一本のヒートサーベルがビームランチャーの熱刃を受け止めたからだ。

「はぁぁぁっ!」

 弾き返されて、氷柱は割り込んだ敵がリック・ドムだと気付いた。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:56:19.71 ID:OeBrETBe0<>
氷柱「このっ!」

 ビューン……!

 ビームを撃つが、リック・ドムは的確に避けて近づいてくる。

「落としてみせる!」

氷柱「は、速いっ!」

海晴「えーいっ!」

 ガシュンッ!

 鍔迫り合いはゲシュペンストに取って代わったヴァイスリッターが受ける。
 ――が、高機動を得るために馬力を捨てた薄羽の白天使はじりじりと押される。

氷柱「このっ!」

「むっ!」

 反撃しようと身構えた氷柱を察して、リック・ドムは離れて、ビグ・ザムに張り付く。

「ドズル閣下! ご無事でありますか!?」

 接触回線にドズルは聞き覚えがあった。

ドズル「ラカン・ダカラン伍長だな!」

ラカン「はっ!」

 リック・ドムのパイロット、ラカン・ダカランは中期卒輩では格闘技能に長けた男だった。

ドズル「撤退命令が出ていたはずだぞ!」

ラカン「お言葉ですが! 閣下をお守りせずして自分だけが逃げることは出来ません!」

 階級が伍長なのは、実直な性格と勝ちすぎる胆力で上官と衝突してしまうことが原因であり、それはドズルにとっては好感に値する性格であった。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:56:55.13 ID:OeBrETBe0<>
ドズル「えぇい、馬鹿者めが!」

ラカン「馬鹿は自分だけではありません!」

 リック・ドムは既に携行していた武器をほとんど捨てていて、ヒートサーベル一本になっている。
 それでもラカン・ダカランには覇気があった。
 ラカンの言葉であたりを注意すると、何機かの味方機がゲッタードラゴンにとりついていた。

 その先頭は新モビルスーツ・ゲルググに乗るアナベル・ガトー少尉である。

ガトー「連邦が如きに!」

 ビュオンッ!

 ビームライフルと共に新開発されたビームナギナタを振るってゲッタードラゴンへ飛び込む。

夕映「ゲッタートマホーク!」

 ガツッ!

 ゲッター線とメガ粒子が相殺して、弾け飛ぶ。
 互いに得物を失った時、モビルスーツのほうが動きが速いのだ。

ガトー「撃ち貫いてみせる!」

 ビームライフルを抜いて連射する。
 ゲッター合金の装甲は貫けるものではないが、頭部に執拗にダメージを与え続けた。

夕映「ゲッターはまだ! こんなものでは!」

ガトー「悪魔の兵器が!」

 ガギィィィッ!

 ゲッタードラゴンの手首の鋸を左腕で受け止めたゲルググは手榴弾を投げつける。

 ドゴォンッ!

のどか「きゃぁぁっ!」

ハルナ「やってくれるじゃないの!」

ガトー<信念>「おぉぉぉっ!」

夕映<熱血>「でぁぁぁっ!」

 ガガガガッ!!

 拾い直したトマホークとビームナギナタが再び閃光を放つ。


ドズル「馬鹿者が! 馬鹿者どもめが!」

 熱く怒鳴り散らすドズル・ザビは、昂揚を抑え切れなかった。

 ジオン軍のソロモン撤退作戦は、まだ始まったばかりである。

 白い光芒が戦列に再起してくるのを、ドズルは感じていた。


 第三十二話 恐怖! 機動ビグ・ザム! Bパート 完
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 22:59:04.17 ID:OeBrETBe0<>
 ファーストでは、ドズルが一番好きです。
 次点でカイとミハルのコンビ。

 ドズルはかっこいい。
 ビグ・ザムから出るときにライフル持った時「嘘ぉ!」って思いました。

 なんていうか、ランバ・ラルの最後よりも印象的になります。

 ラルばっかりがよく持ち上がりますが、ファーストって、話が進むに連れてだんだん死に方が印象的になっていくんですよね。

 最初がデニムとジーンで、ガルマ、ラルといって、ミハル、トクワン、ドズル、マ・クベといって、ララァになります。

 死に方じたいは地味でも、シャアがぽつりと言うことで印象深くなる。
 これも富野節の一つですね。

 そういえば、ラコックとマイヤーはガンダム本編ではビグ・ザムのパイロットではなく、単なるドズルの副官的ポジションです。
 ただ、ドズルを除いて二人いるビグ・ザムのパイロットには名前がついてなかったので、この二人の名前を借りました。


 とことで!
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 16:44:18.37 ID:Wgz8Coq5o<> 更新間隔が短くなってきたな
いい調子だ乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 13:29:51.88 ID:YC+FyatAO<> 5対1とかドズル胸熱

夕映に一票 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 13:46:40.27 ID:oS6OtmPco<> ビグ・ザムってあのフォルムにロマンを感じる
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:32:03.59 ID:zpwqrQke0<>
 第三十二話 Cパート


すずか「あれが……ドズル・ザビ……」

 確証はなかったが、すずかはそう感じていた。

 ビグ・ザムはソロモンの周辺を飛びながらゲッタードラゴンの攻撃を避け、反撃している。
 その影から、圧倒的な気≠感じる。
 すずかは急ぐべきだと判断した。
 あの戦場を支配しつつある気≠ヘ敵を思うがままに呼び込んでいる。

ドズル<気合>「撃てーッ!!」

 ズドドォォッ――……!

 ビグ・ザムの全砲門が幾多のモビルスーツと戦艦を爆発させた。

ガトー「ヅォリャァァーッ!」

ラカン「ゥオオオッ!」

 ザザシュッ!

 取り巻くジオン兵たちも意気が上がっているのか、ビグ・ザムから逃れた連邦兵を落としていく。

すずか「アレイさん、大丈夫ですか!?」

 傍らのGファイターに声をかける。
 Gファイターの中の氷坂アレイはやっと自分を取り戻したようだった。

アレイ「くっ……あいつのバリアーはビームにしか効果がないようだ……」

 この指摘にすずかは驚嘆した。
 アレイが実戦に出たのは二回目――それでビグ・ザムの攻撃を避けるだけではなく、装備の分析までしていたのだ。
 彼女は始めからすずかをフォローするつもりで出撃しているのだから、当然である。
 それを実行し続けられるかが、問題なのだ。

アレイ「奴の懐中に飛び込めば、やれるかもしれない」

 Gファイターがガンダムの下に潜り込んだ。
 指示燈を受けてその上に乗ると、Gファイターが発進する。

すずか「あ、アレイさん、どうするんです!?」

アレイ「言っただろ、奴の懐中で直接攻撃する!」

 彼女の強い語気は静かな声音からもはっきり伝わった。

すずか「そんな無茶な! Gファイターじゃもたないですよ!」

アレイ「だが、誰かがあいつを止めないと――見ろ!」

 ビュシィィ!

 ゲッタードラゴンの右腕にメガ粒子砲が直撃し、丸く膨れて爆発した。

のどか「きゃぁぁぁっ!」

ハルナ「マズイ……!」

 合体が解除され、三機のゲットマシンが退避を始める。

ドズル「見たか! スーパーロボットといえども、ビグ・ザムの敵ではない! 者ども、押し返せぃ!」

ラカン「ははっ!」

ガトー「承知!」

 ギュオォー……!

 勢いに乗ったジオン軍が手当たり次第に味方機に攻勢を仕掛ける。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:32:57.38 ID:zpwqrQke0<>
氷柱「このぉぉ!」

 ズギュン、ギュンッ――!

 ジオン軍はもはや不利ではなかった。
 ビームランチャーの命中率が如実に物語っており、ムキになりやすい氷柱は武器を取捨するタイミングを完全に見失っていた。

ガトー「遅いっ!」

氷柱「当たれぇ!」

 精神的に不器用な氷柱の射撃をガトーは読みきり、ゲシュペンストにゲルググの強固な肩をぶつけた!

氷柱「あぁぁっ!」

ガトー「何と他愛もない。鎧袖一触とはこのことか!」

 ドォッ!

 蹴りが飛び出し、ゲシュペンストの挙動を押さえつけると、ビームナギナタを手に再度突っ込む!

ガトー「沈めぇーっ!」

 ズバァッ!

 ゲシュペンストの頭部と左肩がビームナギナタの餌食になった。
 本来ならば、胴まで真っ二つになるはずだが、それを為しえなかったのはガトーの力量ではない。

ガトー「また貴様か! 連邦の魔女めが!」

 高町なのはが、氷柱のいるコクピットブロックを護っていた。
 ビーム刃を旋回させるが、あえなく回避される。

なのは「私が魔女なら、シャナちゃんだって!」

ガトー「大佐を貴様のような俗塵と同等にするか!!」

 ガガガガッ!

 手首に収納されたバルカンを撃つが、全て魔法障壁に逸らされる。

ガトー「貴様を野放しにしてはならぬ!」

なのは「この新型……速くて軽い!」

 ゲルググの推進力はリック・ドムの比ではなかった。
 自在に動く開放的なスラスターが接近戦での運動性を格段に向上させているのだ。

レイジングハート『Divine buster.』

なのは「いけぇーっ!」

 ドシューッ!

ガトー「舐めるなァ!」

 ビシュゥゥッ!

 魔法砲撃がゲルググの掲げたシールドで遮られる。
 更にシールドの手が外向きに払われ、なのはを叩いた!

なのは「きゃぁぁっ!」

すずか「なのはちゃん!」

アレイ「集中しろ、月村!」
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:34:26.01 ID:zpwqrQke0<>
 防御障壁に丸く包まれながら宇宙を彷徨う友達への悲鳴を叱咤され、すずかは操縦桿を強く握りなおした。

アレイ「アタシたちの狙いはあいつだけだ、それ以外には構うな! 私情は捨てろ! 戦争だ、これが!」

 ガンダムを乗せたGファイターはビグ・ザムの真下を取って急上昇した。

ドズル「性懲りもなくやってきたか!」

 ビッ! ビグ・ザムの爪が襲い掛かる!

 が、今度はガンダムが上に乗っている!

すずか「やっ!」

 シュボッ!

 ビームライフルが爪を掻き消し、Gファイターはビグ・ザムに接近していく!

アレイ「ありったけを喰らえ!」

 シュドドォッ――!

 機首が折れてミサイルを放出する。

マイヤー「やらせるか!」

 グォッ……!

 ビグ・ザムが回避する。

アレイ「いけっ、月村!」

すずか「はい!」

 ガンダムが跳躍し、その股下を縫ってビームキャノンが飛ぶ。

 ビームはIフィールドに拡散されるが、磁場が乱れてビグ・ザムの機内が一瞬不明瞭になる。

ドズル「えぇい、近づけるな!」

ラコック「やっています!」

 ババッ、ババババッ!

 半数以上の砲門がガンダムに向けられて、ビームの雨を降らす。

すずか「わぁー!」

 閃光に気が触れたような声を出し、すずかは突っ込んでいく。

 通常、モビルスーツからのビームは見えない。
 センサーが感知し得ないものはモニタに映らないからだ。
 敵機が銃口から発するロックオンのレーザー光を感知して、警告を鳴らすのである。

 しかし、すずかの網膜には確かに、これからやってくるビームが光芒を描いて鮮明であった。

 右に、左に、瞬時に制動して、ビグ・ザムのビームを避ける。

 一発、直撃するが、シールドで支えた。
 半秒後にまたもう一発、二発。

 すずかはシールドを捨てた。幾多の経験から、これが限界だと彼女は知っている。

ドズル「落ちんのか! 奴がニュータイプだというのか!」

 バババババッ!

 ガンダムがバルカンを撃つ。
 Iフィールドの影響を受けずにビグ・ザムへ流れていった。

すずか「当たるっ!」
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:35:14.04 ID:zpwqrQke0<>
ドズル<必中>「ぬぅぅぅぅぅ!」

 ぐぉっ!

 ビグ・ザムの脚がガンダムを蹴り飛ばそうとする。

すずか<閃き>「そんなもの!」

 ズシャッ!

 ビームサーベルで切り落とす。
 代わりに手首のパワーが落ちるが、すずかはペダルを全開に踏み込んだ。

すずか<熱血>「うわぁぁーっ!」

 最後に感じたビームを掻い潜って、すずかは最も気≠ェ集中しているビグ・ザムのコクピット部にビームサーベルを突き刺した!

ドズル<鉄壁>「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

すずか「――ッ!!?」

 ビグ・ザムに侵入したビームサーベルが黒い霧に覆われて動かなくなるのを、すずかのイメージの中で鮮烈に描かれた。
 ぐぐっ、と固定されたメガ粒子の刃がしなり=Aガンダムの破損したマニピュレーターに過大な負荷を与えて、ゴギッ! と不快

な音があがった。

 『パパをいじめる!』

すずか「な、なに!?」

 金切り声が耳朶を打ち、すずかの意識がガンダムの操縦から離れた。

ドズル「ミネバ!」

 『パパぁ!』

すずか「う、うぁっ!」

 宇宙を飛翔する思惟がすずかを通り過ぎ、ガンダムの機体が金色の磁界に張られて返されてしまった!

ドズル「ミネバが! 俺をミネバが助けてくれたのか!!」

 声はもう聞こえなかった。
 しかし、ドズルは一〇〇万力を得たような肉体の高潮を確信していた。

 振り仰いでいた視線をビグ・ザムのコクピット内に戻すと、コンソール・パネルの前でぐったりとしている部下を発見した。

ドズル「ラコック! マイヤー! どうしたか!!」

 返事はおろか、パイロットスーツの背中が揺れることさえなかった。
 ガンダム対ビグ・ザムの急激過ぎる加速が、スーツの吸収力を超え、人間の体の臨界まで達してしまったのだ。

ドズル「俺はお前達と時同じくして死ななかったのは、ミネバがいたからなのか!」

 赤子一人の力では、ドズル一人を助けるのが精一杯だったのか。
 頭の悪いドズルには何も悟れない。

 解るのは、ここでガンダムを倒せとミネバが教えてくれたことだけだ。

ドズル「うおぉぉぉ! やらせはせん! やらせはせんぞーっ!!」

 操縦桿を強く握りしめ、ドズル・ザビはビグ・ザムを機動させた。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:36:09.10 ID:zpwqrQke0<>
すずか「あ、赤ちゃん……!? 私を排除しようとしたの!?」

 覚醒する自我を鋭敏に感じ取って、すずかはガンダムの体勢を立て直そうとする――が、ガンダムは動かなかった。

すずか「あ、あぁっ! 関節の磁界が狂ってる! ミノフスキー粒子が反発しあっているんだ!」

 それはビグ・ザムからガンダムをはじき出したIフィールドが原因なのだが、究明できても、機体が動かないことに変わりはない。

 どれだけ揺すっても動かない。
 代わって、ビグ・ザムがせり上がっていた。

すずか「く、来る! う、動いて、ガンダム!」

ドズル「やはりモクバが! そのモビルスーツこそが、ジオン百年を滅ぼすというのか!」

 バパァッ!

 大型メガ粒子砲は潰されてしまった。
 四つにまで減らされたビーム砲を動かないガンダムに放つ。

ドズル「ぬぅぅ! 照準がずれたか! えぇい、どうだ!」

 ビシューッ!

 何度か放つうちに、少しずつガンダムに近づく。

 ビシッ!

 一発がガンダムの脚を掠めた。

ドズル「これで終わりだ!」

 とどめのビームが放たれる!

アレイ「まだァァァァァァァァッ!!」

 ゴォォォーッ!

 ガンダムの背後からGファイターが乗り出し、ビームキャノンを撃った!

ドズル「ぬおぉ!」

 ビシィィッ!

 放たれたビグ・ザムのビームと威力を殺し合い、強いミノフスキー粒子の干渉が起こり、強烈な磁場が形成された。

 グオォッ……!

すずか「が、ガンダム……動けるの!?」

 アレイとドズルのビーム相殺が再びガンダムの関節を蘇らせのだ。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:36:57.21 ID:zpwqrQke0<>
ドズル「やらせはせんぞーっ!」

 ビシューッ!

 再度、ビグ・ザムのビームがガンダムを襲う!

アレイ「お前らジオンに――!」

 バシュゥゥッ!

すずか「アレイさん!」

 ガンダムの前に身を出したGファイターのAパーツにビームが直撃する!

アレイ<熱血>「失せろ! 道連れになどさせるかぁぁ!」

 シュバッ!

 螺旋軌道を描き、GファイターからAパーツが射出された!

ドズル「な、なにぃ!?」

 パイロットを二人失い、機能が半減していたビグ・ザムには避けられなかった。

 ズガァァァァッ!!

アレイ「まだだ! まだぁーっ!!」

 ガガガガッ! シュドドォッ……!

 ビグ・ザムに突っ込んだAパーツに、Bパーツから露出したコア・ファイターのバルカンとミサイルをぶつける。

 バツッ! ブッ――

 視界に砂嵐が入るのは、カメラの故障のはずだと、アレイの中の愚かな部分が忘れさせた。

ドズル「お、おぉぉぉぉぉっ!」

アレイ「消えろぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 遂に、Aパーツの火線に火が点いた。

 ドゴォォォォォォッ!!

 ビグ・ザムの下半分が大きく膨れ上がり、Aパーツの爆発に触れて――

アレイ「……なんだ…………?」

 おかしかった。
 ビグ・ザムは赤く熱を発するだけで、爆発しなかった。
 Aパーツだけでは奴を爆破させるには至らなかったのか――ならばもう一発ミサイルを浴びせてやれば……

アレイ「ウッ……!」

 網膜に訴えかける虹色の光りがアレイの目を閉じさせた。
 同時に、カンカンカンカン! と、鉄同士がぶつかり合う音をコア・ファイター内に響いた。

すずか「アレイさん! 逃げてぇぇ!」

 叫び声が濃いミノフスキー粒子でノイズとなってわからなかった。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:37:28.16 ID:zpwqrQke0<>
 すずかには、このビグ・ザムのおかしさの正体がわかっている。
 暴発寸前で静止しているビグ・ザムの機体に仁王立ちになっている人影がある。

ドズル「やられはせん! やられはせんぞ! 貴様等如きにやられはせん!」

 ノーマルスーツ一つ、ライフル一つでガンダムとコア・ファイターに立ち向かおうとする人物が全身から黒い霧を発していた。

すずか「だ、だめぇ!」

 霧がコア・ファイターへ向かっていく。
 宇宙で霧が形を示すはずがない。
 機体から出る爆煙とか、そういうもののはずだろう。

 しかし、霧は人物から発せられているようにしか、すずかには見えない。

すずか「逃げて! 来ちゃだめぇぇ!」

 必死の叫びの前で、霧が一つの形となってすずかの視野を支配した。

 物の怪の形があるとすれば、このような形であろうと思える。
 ガンダムを、Gファイターを見据えるような黒い霧の形に双眼が輝いて、拡散したのだ。

 すずかの全身は震えていた。

 双眼が怨念をもって自分を見たと感じたのだ。

すずか「だ、だって……! 私たちは……あぁっ! みんな、みんななのに!」

ドズル「やらせはせん! やらせはせん!」

 ノーマルスーツが跳躍した。
 コア・ファイターの上に回りこむと、再びライフルを連射する。

アレイ「こ、こいつ!」

 ビッ! ビキッ!

 弾丸がコア・ファイターのパイロットが望めるガラス面にヒビを入れていった。

アレイ「いい加減にしろ!」

 コア・ファイターを直進させると、そのノーマルスーツを機首にめりこませた。

 接触回線がその人物の声を拾った。

 
ドズル『やらせはせん! やらせはせん! ジオンの栄光! この俺のプライド! その全てを懸けて! やらせはせんぞーっ!』


 それが、ドズル・ザビの最期の喚きであった。
 待っていたかのように真下のビグ・ザムが爆発し、炎と風に飲み込まれて消えていった。

<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:38:09.51 ID:zpwqrQke0<>

アレイ「あ、あいつは、あいつが、ドズル・ザビだったのか……?」

 父親の仇を倒した手に実感はなかった。
 ドズルが戦場に出たルウム戦役で、彼女の父親は戦死したのだ。

アレイ「そうか……」

 自嘲気味に笑みをこぼす。
 なるほど、復讐など、やってみたところで何の役にも立たない。
 嘘ばかりのドラマも、真実を教えることがあるのだ。

アレイ「うっ……!」

 目に痛みが走った気がした。
 違う。これは痛みじゃない。
 ノイズだ。目のノイズ。砂嵐。

アレイ「そ、そうか……!」

 コア・ファイターのコクピットは透明なガラス面だ。
 ガンダリウム合金に護られたGファイターだから、アレイは戦場に出ることができた。
 アレイの目は本来は人類に無害な放射線の影響を強く受けてしまう。

 手を伸ばしてシャッターのスイッチを探す。
 指先が触れた瞬間だった――ビグ・ザムの破片がヒビの入ったコクピットハッチに当たった。

 パリン――

 それは、ガラスの割れる音だけではなかった。


アレイ「あ、あぁっ……くっ……」


 暗い……これが、戦場の闇なのか……



 第三十二話 恐怖! 機動ビグ・ザム! 完

<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/11(日) 22:39:15.38 ID:zpwqrQke0<>
 
 みは姉はラカンと戦ってました。
 もしかしたらみは姉(19)のほうが年上かもしれない。

 ドズル大好きですが、別にジオン好きというワケではないです。
 強いて言えばみんな大好きです。

 だからAGEも大好きです。

 UE側の作画に気合入りすぎてても。
 ラーガンのカットインがなくても。
 ディケがカツ以下かもしれなくても。
 タイタスが乗り捨てでも!

 当SSでは女の子ばっかり活躍しているので、その分、敵勢力の野郎どもがこれでもかと張り切ってくれるんです。
 
 まあ、張り切るほど悲惨な目に合うだけかもしれないんですが……

 次回も、そんな話。

  次回『陽光! ファースト・コンタクト』

 サイド6で君を待っている――


 とことで!
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 22:25:10.80 ID:kXg97uUno<> 乙
アレイは暗闇を彷徨うのか <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 23:57:49.46 ID:q5CQeuQAO<> バーニィを助けてやってくれ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:39:13.43 ID:FCdnE6/x0<>
 第三十三話 Aパート


 ばーちゃんが、死んだ。

 十二月十四日の午後二時。
 音もなく閉じられる大きなハンドルの付いた重そうな銀色の扉を見つめながら――ああ、これで血のつながった人間はこの世に一人もいなくなったんだなと、陽太郎は思った。
 コロニーにも冬はある。
 あくまでも自分達は地球の民だと主張したい宇宙移民が可能な限り地球の天候をなぞるようにしたのだ。
 昨夜の雪はもう乾燥して冷たい外気に変わっている。

 新しくてキレイで広々とした斎場の中には柔らかな暖房がいきわたっていて、厚手の義務教育制服の下はうっすらと汗ばんでいた。

 映画で見た銀行の金庫室みたいな銀色の扉に、さらに重ねて、駄目押しみたいに黒と金のいかにも火葬場風の大きな扉が閉められる。

 まるで、もう絶対にその向こうから出てこられなくしてやる、とでも言うみたいに。

 一瞬、びくっと手が震えた。

 本当にこれで最後なんだ――。

 やめて――扉を開けてください。ばーちゃんを連れて行かないで! とどこかで叫ぶ子どもの声が遠くから聞こえたような気がした。

 でも。

 もちろんそんなことを言ったって、どうにもならないのはよくわかってる。
 泣いたってわめいたって、死んだ人間は生き返らない。
 まして、ばーちゃんは年の順。
 脳溢血で突然のことではあったけど、年に不足はなく、苦しむこともなく、ほぼ天寿を全うして死んだんだ。

 オレには、そんなばーちゃんをちゃんと見送る義務がある。

 ばーちゃん、今までありがとう。

 こんな年で天涯孤独の身になるなんて、なんてついていないんだろうって思うけど――それもオレの運命。
 仕方ないよな。
 とりあえず今は、父親も母親もとっくに失くしたオレにせめてばーちゃんがいてくれて、ここまで育ててくれたことに感謝するよ。

 ありがとう、ばーちゃん。


 後ろを振り返った。

 ばーちゃんが仲良くしていた近所の人たちが両手を合わせてなんまんだぶなんまんだぶと唱えながら、あの黒と金の大きな扉に向かって、何度も頭を下げている。

「みそらさん、あたしらもスグに行くから待っててよぉ――」

 やりきれなくなって外に出た。
 十二月のコロニーの空は意外にも青く高く晴れていて――すがすがしい。
 ばーちゃんが燃やされる煙を見ようと思って、煙突を探したけど、そんなものはなかった。
 密閉されたコロニーでは、近所の住民に迷惑なるからと、そういうのはナシになるらしい。
 広い駐車場のまわりは森に囲まれている。
 そっか、テレビで見たみたいに――灰と煙になって空に上るとか、そういうのはもうないのか。
 火葬っていっても、目の前で火をつけて燃やすワケじゃない、ただ――ポンとひとつスイッチを入れるだけだもんな。

 一人で見上げた空はどこまでもからっぽだった。

<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:40:32.88 ID:FCdnE6/x0<>
 それから十日後の十二月二十四日。
 陽太郎はサイド6のリボー・コロニーにいた。

 義務教育九年生になっていた陽太郎は兵役課程は既に終えている。
 身寄りのなくなった陽太郎にジオン公国軍からの通達が来るのはそう遅くなかった。

 どちらかといえば、待っていた。

 ばーちゃんと二人暮しだった公営住宅は既に荷物を片付けて引き払う準備もしていた。
 課程修了で頂戴した記念品みたいな装備も一応出しておいた。
 もちろん、実際に軍に入ればきちんと作られた本物があって、着替えると即座に輸送艇に貨物みたいに載せられ、特務部隊サイクロプス隊≠ノ合流したのは、ばーちゃんの葬式からわずか二日後のことだった。

 サイクロプス隊の任務――作戦名ルビコン計画≠ヘ結果から言えば失敗に終わった。

 陽太郎ともう一人の補充兵バーナード・ワイズマンは何も出来ることもないまま、熟練兵ミーシャが乗るケンプファーが連邦軍の新型モビルスーツ(ジオン側のコード・ネームではできそこない≠セった)に完膚なきまでに破壊されるのを眺めていた。

 ミーシャは死に、隊長のシュタイナーとガルシアも戦死した。

 ジオンの軍本部で、ルビコン計画には保険がかけてあり、サイクロプス隊が失敗した場合には核兵器によってコロニーごと破壊することになっている。
 条約違反兵器の開発を中立コロニーで行っている、ということが大義名分らしい。

 陽太郎とバーニィは本来ならばそのままリボー・コロニーを脱出する予定だった。

 しかし、彼らはコロニーに残っている。
 学校を出たてのヒヨッコの二人は、新型のモビルスーツ・ガンダムの破壊作戦を再度計画したのだ。

 二人を動かしたのはアルフレッド・イズルハ――コロニーに住む少年だった。

 少年アルがいかにして若兵の心を焚き付けたかは、周知の通りであろうから省略する。

 とにかく陽太郎とバーニィと小さなジオン兵アルは三人で半壊したザクを改修し、ガンダム破壊作戦を開始した。

 ザクに乗るのは少しでも長く訓練を受けたバーニィだ。
 陽太郎は余った爆薬を利用して連邦基地を撹乱する役目を引き受けた。

 今、サイクロプス隊の隠れ家であったダミー会社の事務室で陽太郎はウィスキーに一口だけつけてむせていた。

陽太郎「……っ! 隊長たちはこんなのをがぶ飲みしてたのか……」
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:41:37.32 ID:FCdnE6/x0<>
 事務室にバーニィとアルはいない。
 今朝早く、どこかに行ってしまったらしい。
 一人ルビコン計画≠フ事前資料に囲まれて数少ない武器を整理する。

 拳銃と手榴弾――宇宙世紀以前であってもこんな軽装で基地は落とせない。
 ましてや、近代兵器の花形モビルスーツを破壊することなどできはしないであろう。
 それでも何もないよりはマシと陽太郎は訓練校で叩き込まれたとおりに銃弾を込めていった。

 当たり前だが、人殺しをしたことはない。
 誰でも思うだろう。出来ることなら殺したくはない。

陽太郎「だけど、やらなくちゃ、みんな死んじまうんだ……」

 ばーちゃんは何と言うだろうか――

 もう、考えないことにした。

 この作戦――アルがクリスマス作戦と名付けた――でバーニィと陽太郎が生き残れる確率はほとんどゼロだ。

陽太郎「ちょっと、予定より早く、ばーちゃんに逢うかもしれないだけだよ……」

 準備はできた。もうあと何時間で作戦開始になる――はずだった。

 ずずぅん……!

 震動が事務室を襲い、陽太郎は机にしがみついた。

陽太郎「な、なんだ!?」

 コロニーに地震はない。
 ならば、今の揺れは――陽太郎は事務室から飛び出して清浄な空気が循環する空を仰ぎ、目を剥いた。

陽太郎「ザクが……! まだ時間には早いはずだろ!」

 そこでバーニィに欺かれたと気付いた。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:42:56.28 ID:FCdnE6/x0<>
 濃緑の巨体がバーニアを噴かして跳躍する。

 陽太郎はどうすればいいのかわからなくなった。
 それでも足は勝手に走り出していた。

 ザクを追いかけるように走っていく。行動経路は把握している。
 なるべく先回りになるように全速力を出す。
 モビルスーツの跳躍力に人間が追いつけるはずがないが、工場区画を必死で走りぬける。

 その途上で一つの工場に目をとめた。
 連邦が民間から裏で買い上げたダミー会社の一つ。
 新型ガンダムの情報を漏らさないための細工だが、毎日確認していた陽太郎は大きな搬入物が追加されていることに気付いた。

陽太郎「モビルスーツ……?」

 瞬間、弾けるように陽太郎は工場へ突入した。

衛兵「な、なんだお前は――ぎゃっ!」

 突然のモビルスーツの出現に慌てて工場の門を閉めようと出ていた衛兵を殴りつけ、陽太郎は敷地内に侵入した。
 まっしぐらに大型のトレーラーへ走っていく。

陽太郎「当たるなよ!」

 自分の後ろにピンを抜いた手榴弾を投げる。
 爆風に煽られて走る速度を上げて兵士と整備のない交ぜになったトレーラーへ辿りつく。

陽太郎「動くな! 全員、止まれ!」

 適当な決まり文句を叫びながら銃を天に向けて発砲した。
 それで大抵の人間は怯む。

 巨大な人型の足裏がはっきりと見えた。
 どうやら運び出す手配中だったらしい、僥倖と陽太郎は突っ込んだ。

 横たわる巨体に小さな人影が立っていた。
 パイロットスーツを身に着けており、この非常時に乗り込んで使おうとしていたのがうかがえる。

 一歩を踏む間に陽太郎は判定できた。
 目の前にある機体は今すぐにでも動かせる状態にあるということ。

 陽太郎は一気に機体に近づいていった。
 銃を構えて、威嚇射撃を行う。
 パイロットらしい人影がしゃがみ、もう一発撃って降ろさせようと陽太郎が再度照準を確かめた時、思いも寄らない行動を相手がとった。

 たん、とパイロットが機動兵器の装甲板を蹴って宙に躍り出たのだ。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:43:58.31 ID:FCdnE6/x0<>
陽太郎「なっ――!?」

 バカな――としか思えなかった。
 横になっていても機動兵器は人間の十倍の大きさ――台車にも載せられていて、下の床とは五、六メートルは離れている。
 事によっては骨折――命の危険さえある行為だが、パイロットはヘルメットから長い髪を引きながら降下し、猫のようなしなやかさで着地に成功すると、一挙に陽太郎へ向かってきた!

陽太郎(天使ヒカルだ――!)

 バイザー越しの直感でしかないが、断定した。
 連邦の虎の子部隊――モクバに所属するエースパイロット。
 その映像資料の一部が一定層の需要に従って流出し、陽太郎もピンナップを見たことがある。

 陽太郎とほぼ同い年でほとんど素人同然からゲシュペンストを操って活躍している美少女パイロット――アイドルみたいで学徒兵の陽太郎にとってはほとんど関係のあることとは思っていなかった。

 いったい、何の巡り合わせか、その天使ヒカルが自分と敵対している。

 どうしてだろう――陽太郎は鈍い脳で考えた。

 陽太郎は強くなりたかったのだ。
 自分を強くしなければいけなかった。

 ジオン国民で、ばーちゃんが死んで、一人で生きていかなくちゃいけなくなったオレには、兵士くらいしか出来ることがない。

 もう先なんか真っ暗だけれど、前を見なくちゃいけないんだって決意したから、陽太郎の前にヒカルは現れたのだ。

 パイロットスーツなんて着ていてもわかる華やかで強い、陽太郎から見たら手の届きっこない高嶺の花――


 勝ちたかった。


陽太郎「どけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 狙う――絶対に当たるな!

 ぱぁん!

 念じた弾丸は陽太郎の望みどおり、ヒカルのヘルメットの隅に当たり、均整に締まった女子の体を揺らした。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:45:31.58 ID:FCdnE6/x0<>
陽太郎「オレには! ソイツが必要なんだ!!」

 が――気合いの声も虚しく、陽太郎の足はひっかけられて地につかなかった。

陽太郎「――ッ!?」

 宙を回る視界に体勢を崩されながら足払いを繰り出したヒカルが見えた。

 やっぱり――ただのやけくそだったのかな。

 だが、陽太郎の左手は床に掌をつけて、不恰好な受け身をとって再び地に足をつけさせた。

陽太郎「うぁぁぁぁぁぁっ!!」

 もう、自分がどうなっているか、これからどうなるか考えられない。
 ただガムシャラになって梯子を上がり、適当な出っ張りを掴むと、無理やりに機体によじ登ることに成功した。

 ぜーぜーと荒い息を吐きながら、開きはなしのコクピットハッチを視認してまた駆け出す。

 バン! と短い音が連続して、トレーラー内の電源が次々と落とされていく。

 機体の電源が落とされるのも時間の問題――陽太郎がコクピットに辿りついて転がり込んだ時、機体は停止シークエンスの真っ最中だった。

陽太郎「くっ……! 止まるな! 動け!」

 コクピットは全く知らない構造で、陽太郎はペダルとレバーを目茶苦茶に動かす。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 23:46:36.53 ID:FCdnE6/x0<>
 しかし、停止作業が止まる気配はない。
 起動に使えそうなスイッチやレバーをとにかく動かす。

陽太郎「動け、動けよ! 何のためにいるんだよ、お前は!」

 動かなければ、ザクが倒され、バーニィは死に、コロニーに核兵器が打ち込まれる。

陽太郎「オレがジオン兵だからとかじゃないだろ! コロニーが、人が死ぬんだ! お前が動かなきゃ、みんな死ぬんだ!」

 右手で握ったレバーを思いっきり引くと、ガチン、と引っかかった。
 何かを感じた陽太郎は一度前に出して、今度は力の限りレバーを引くと、タガが外れたみたいな音がして、レバーが重くなった。

 瞬間、天使ヒカルが頭に浮かんだ。

 ヘルメットのバイザー越しに見た大きな輝く目――。

 ピンアップで見た綺麗だけど済ました表情とは違う、燃えたつ瞳――。

 本来ならば、この機体には彼女が乗るはずだったのだ。

陽太郎「そうだよな……オレみたいな奴に動かされるより、天使ヒカルみたいな奴のほうがいいよな」

 でも、すこしぐらい、最後くらい、いいじゃないか――。

 こんな、ぱっとしないオレでも、一回くらいは!

陽太郎「オレに何かをさせてくれよ! 守らせてくれよ!」

 例えそれが、敵であっても、天使ヒカルであっても――

陽太郎「オレにだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 直面する現実の壁を殴るように、陽太郎は重い右手を前に突き出した。

 途端、ぶぉっ、とコクピット内が熱い空気で満たされた。

陽太郎「えっ……」

 明るくなっていくコクピットを呆然と眺めている陽太郎の前で、メインディスプレイが白い文字を打ち出した。


 『What's your Style?』

 
 これは機体のプログラムの一部だろうか――パスコードの入力かと陽太郎が希望を打ち砕かれる寸前に、ディスプレイは新たな文字列を連ねた。


 『I'm Vanishing Style.』


 ギュグゥォォ! ドゥールドゥドゥッドゥ!
 ドゥールドゥドゥッドゥ! Black Hole!!
 ギュゥゥオォン!
 ブラックホール! ヤーケツクジュウコウーショウエンノニーオイー!
 ブラックホール! ツーメタイモニタァーテーキノシールエェット!
 リアルナセンジョウーアーセバムトリガーニギリシメー
 リアルナセンジョウージュウジニーカサネルタァゲットー!
 チールカーチーラスカーフタツニーヒトツー
 ノコスコトーバーモーナイオレハソルジャー!
 Huckebein!パーソナルトルーパーハガネノーヘイシー!
 オマエニーカケタコーノイノチー!
 ナガレターチシオノーソォノーサーキニー
 ヤスラギーマツトォシンジテェイィルカラァー!
 イマハーマダァー!トービカウカセンノナァカデェー!
 ナクシターモノニーオモイハセェーェエー!
 ナミダワースレテェテキヲウツーゥウー!
 ブラックホール! ニーゲラレナイー!
 ブラックホール! コーノゲンジツニー!
 イマハソットメヲトージルー
 Huckebein!オマエトトーモニィ!
 イキテイキテイキノビテ...アイスルモノノフトコロニ!
 イツカカーエルゥソノヒマァデェェー!


 第三十三話 Aパート バニシングトルーパー
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/30(金) 00:00:44.27 ID:Mkt79Weh0<>
 名作OVA『ポケットの中の戦争』が観たい方はDVDでご覧ください。
 ビデオテープで見ることができれば、涙で前が見えなくなるでしょう。

 バーニィ生存ルートが見たい方は小説版を読むかスパロボXOをやるといいでしょう。
 ザクだっていい機体じゃないかと言っているバーニィが見たい方にはスパロボFがオススメです。

 既に完成されている話に余計な要素を入れるよりは、全く同時刻同現場で起きた別のドラマを、と思いました。

 ちなみに内容はロボが出てくる以外、小説版べびプリとほぼ同じ内容です。

 べびプリが面白いところは、主人公は決して陽太郎ではないということ。

 長男という異分子を受け入れたトゥルー家族の成長を描く物語です。

 言ってしまえば、このSSにおけるべびプリは始まってすらいなかったのです。

 そして、何かを始めるには、何かを消さなくてはいけません。

 その宿命を超イケメンパーソナルトルーパー・ヒュッケバインに背負っていただきました。

 本当はクリスマスにあげたかったけど、TMRevolutionとすごしていました。

 なのはのGodボックス買いました。
 前作よりいろいろと敏感になっていて大変です。

 それではみなさん、よいお年を。

 あけおめとことで!
<> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/31(土) 19:22:16.22 ID:9SSCH3nGo<> そういや最初にやったスパロボはFだったなぁ
バーニィ?友達に最強のキャラだって教えられて使ってたぜ

今年はお疲れさん。来年で完結できるのだろうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:29:55.35 ID:7RdWoCwi0<>

 第三十三話 Bパート


 『Congratulation.』

「な、なにが……?」

 『My destiny was Vanishment.』

 『Because I makes an accident,and that to the extent that many people are wounded 』

 『Boot up a my system is very very hard.』

 『I must have been shut out into history of darkness as it is.』

 『You woke me. 』

「オレが……?」

 『You needed me.』

 『I did not want to sleep.』

 『I was born for people,and any more.』

 『It is the meaning by which I was born to the machine.』

 『I would like to stay as me.』

 『It is my only best style.』

 『Those disappearing pride for Vanishing trooper Huckebein.』

「ヒュッケバイン……?」

 『It is my name.』

「そうか……ヒュッケバイン、オレに力を貸してくれるか?」

 『Alllight.Allways full voice』

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:31:19.80 ID:7RdWoCwi0<>
 リボー・コロニー内の人工の空へ躍り出たヒュッケバインを始めに捉えたのはコロニー警察隊<CMP>だった。

「三機か……いけるか、ヒュッケバイン?」

 『No probrem.』

 連邦の駐留軍は先のサイクロプス隊¥P撃の際にケンプファーにあらかた破損させられていて、即時出動ができず、コロニーが独自で構えている治安維持の警察隊が代行している。

「そこの機動兵器、止まれ!」

 旧型のゲシュペンストから警告が発せられる。

 だが、そこで止まるのでは、陽太郎がヒュッケバインに乗った意味がない。

「コロニーを助けるためなんだ、どいてくれ!」

「ジオン兵が何を馬鹿なことを! 貴様等はこのコロニーを破壊する目的だろう!」

「くっ、信じてもらえないだろうとは思っていたけど……」

 『Enemy attack.』

「翔ぶぞ、ヒュッケバイン!」

 『Wing sraster.』

 細身の背中から突き出た鋭角の翼状アーマー・ウィングパックが開き、スラスターを噴かして上昇した。

「使える武器は、プラズマカッターだけか」

 ヒュッケバインの飛行持続力は低く、ゲシュペンストを飛び越えたところで着地する。
 プラズマカッターの柄を握り、今度は直進してザクUとガンダムが戦うポイントに急ぐ。

「逃がすな、囲え!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:33:07.79 ID:7RdWoCwi0<>
 よく訓練をしているのか、別の小隊がヒュッケバインの横を狙って接近してくる。

「やれるか、ヒュッケバイン!?」

 『For your expectation.』

 ヒュッケバインの動きは非常に軽快であった。

 プログラムされている自動動作だけで隊長機の頭部をプラズマカッターで貫く。

「う、うぉぉ!」

「は、速い!?」

 コクピットから見ていた陽太郎でも、何が起こったかについていくだけで精一杯だった。

 もしもエースパイロット――天使ヒカルが乗っていたら、ジオンには勝ち目がないとさえ思える。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:34:56.85 ID:7RdWoCwi0<>
「こいつなら、新型だって!」

 実のところ、この実力はヒュッケバインだけのものだ。
 陽太郎はほとんど何もしていない。

 しかし、ヒュッケバインは陽太郎を乗り手として認めてその力を奮っている。

「どうして、オレなんかに――?」

 ザクUと新型ガンダムの反応が近づいている。

 『Only you were.』

 両者は規定ポイントに到達している。
 作戦通りなら、新型ガンダムも既にぼろぼろのはずだ。

 『Probably,I will choose you,even if it meets where.』

「そんなことないだろう。第一、キミの本来の乗り手はあの天使ヒカルじゃないか」

 『Still,I have only you.』

「オレはそんなにいいものじゃないよ。どこにでもいるただの兵隊なんだから」


 『――You are my prince.』


「……え? それって、いったい――」

 ディスプレイの文字は陽太郎の問いに応えることなく、上書きされた。

 『Sorry,We was late.』

「えっ……?」

 視線をあげた陽太郎が画面越しに見たのは、ザクUがヒートホークを、新型ガンダムNT-1ALEXがビームサーベルを構える光景だった。

「そんな……!」

 ザクが、だっと地を蹴った。
 アレックスも飛び込んでいく。
 ヒートホークと、ビームサーベルが、互いの機体に交差し、激しい閃光を放った。

「そんな……」

 同じセリフ、今度は力がなかった。

 ザクとアレックスは、抱き合うように重なり、動かなくなっている。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:37:03.19 ID:7RdWoCwi0<>
 ――これで、コロニーは救われる。

 バーニィも陽太郎も、覚悟はしていたはずだが、

「でも、こんなこと……っ!」

 唇を噛み、うつむく少年の前で、ディスプレイはまだ明滅していた。

 『Situation has not been avoided yet.』

「えっ!? でも、ガンダムは倒したんだから――」

 『It is a dangerous object reaction out of a colony.』

「コロニーの外!? まさか――」

 新型が破壊できなかった場合の参謀部の保険策――核ミサイル。

 それが、発射されたというのか。

「ヒュッケバイン、いけるか!?」

 『Please leave all.』

 目の前ではザクUとガンダムが寄り添いあっている。
 陽太郎は機体を翻して二度と踏むことのないであろうコロニーの大地を震動から味わった。

 ヒュッケバインが翔ぶ。
 前にゲシュペンストが現れた。

「ヒュッケバイン!」

 『Attack.』

 短い会話でヒュッケバインがプラズマの刃を伸ばしてゲシュペンストに滑り込む。

 しかし、完璧に捉えたと思ったはずの敵機が触れる直前、霞と消えてしまった。

「えっ――!?」

「ハァァァッ!!」

 ぶんっ!

 ヒュッケバインが回避しなければ、側面からの攻撃に吹き飛ばされていただろう。
 こちらをひきつけて反撃した、よほどの乗り手だ。

「ヒュッケバインを返せ!」

 凛とした声が接近で開かれた回線で届いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<><>2012/01/07(土) 20:40:11.72 ID:7RdWoCwi0<>
 その一声だけで、ゲシュペンストに乗っている人物がわかった。

「天使ヒカル――!」

「お前の目的は、ガンダムは倒せただろう!」

 ゲシュペンストが距離を詰めて鋭い蹴りを放つ。
 ヒュッケバインはコロニーの港口に駆けながら、ヒカルの攻撃を寸で受け止める。

「ヒュッケバインは私たちの――春風のなんだ!」

 拳が唸りをあげる――ヒュッケバインのウィングパックの端が砕けた!

「今は、それどころじゃないんだ!」

 進路を封鎖するシャッターを破壊し、港へ突っ込んだ。
 ゲシュペンストもついてくる。

 周囲に人の気配はない。
 既に脱出しているらしかった。

 ゲートを破壊するのと、ヒカルが追いつき、ゲシュペンストでヒュッケバインの胴を抱えて押さえつけるのはほぼ同時だった。

「うあぁっ! くっ、もう、このコロニーに核が撃ち込まれるんだ! それが終わったら、こいつは返すから!」

 先ほどと同じに、信じてもらえないだろうと思う。
 それでも、天使ヒカルという少女に賭けたい。
 その思いでまくしたてると、ゲシュペンストの力が弱まった。

「……そうか、お前は核を止めようとしたのか」

「そうだよ、だから――」

「待ってくれ」

 もう振り払ってでもいこうとした陽太郎に安堵の息がかかった。

「その必要はないんだ、核ミサイルはこっちでも確認してもう無力化している」

「えっ……?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<><>2012/01/07(土) 20:43:18.45 ID:7RdWoCwi0<>
 しかし、ちょっと考えれば当たり前のことだった。
 ヒュッケバインはもともと連邦軍のものなのだから、同じ情報が連邦軍にキャッチされていて当然だろう。

「ほら、あそこに艦隊がいる。あれが核を撃った艦隊をもう降伏させているし、核も止めたんだ」

 誘導されたセンサーには確かに連邦艦隊があって、その中にジオンの艦もある。
 核ミサイルと思わしき反応はどこにもなかった。
 
「お前の仲間の、ザクのパイロットも……重傷だけど生きてはいるよ」

「そう、なのか……?」

 結局、オレは何の役にも立たなかったんだな……
 シートにもたれかかってため息を吐く。

 ヒカルが、また声をかけた。

「だけどお前、どうしてヒュッケバインを動かせたんだ?」

 それは陽太郎にもよくわからない。
 ただ、動いてくれたとしか言えない。

 あ、でも、よくわからないことをヒュッケバインが――

「王子様……とか」

「は!? 王子様!? って、え、ぇ……えぇぇ!?」

 ヒカルの驚き方は陽太郎が想定していたものとはまるで別物だった。

「い、いや、でも、春風のことだから……あ、あれ……?」

 考えることが苦手なヒカルらしく、何度も頭を捻る。
 もちろん、わからないのは陽太郎も一緒で、慌てている天使ヒカルにとりあえず落ちついてもらおうと思う。

「えっと……と、とりあえず、さ」

「あ、あぁ、すまない」

 どちらからともなく、二人はハッチを開けて見合った。
 パイロットスーツとバイザー越しに陽太郎はヒカルの目を見た。

 なんだか、珍しいものを見た、というような興味津々の目つき。
 王子様発言がそれほど響くものなのだろうか――陽太郎はゆっくりとヒカルに流れていく。

 ヒカルもまた、陽太郎に近づいて、指先が触れる――直前、
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:44:05.24 ID:7RdWoCwi0<>
 紫色の光りが宇宙を支配し、暴風が吹き荒れた。

「――ッ!?」

「ヒカルッ!!」

 思わず勝手に名前を呼んで、陽太郎は竦むヒカルの手首を握ってヒュッケバインに掴まることが出来た。

 人の意思を根こそぎ奪うような強大な力に翻弄されながらも、陽太郎は両手の力を絶対に緩めなかった。

 ヒカルの片方の手が陽太郎の袖を掴む。

 宇宙に風はない。

 では、この横殴りの力は何か――全ては衝撃波だ。

 太陽の表面のコロナの運動や、デブリがぶつかったりする時――あるいは、爆発が起こった時――

「そんな……」

 三度目は、充分すぎるほどの悲しみが込められていた。

 目視できるほどの爆発――それは連邦艦隊が焼滅した事実だけを伝えている。

「いったい、誰が……」

「――アサキム・ドーウィンだ」

 答えようのない呟きに即答したのは、肩にすがりついていた天使ヒカルだった。

「こんなことをする奴は、アイツしかいない――!」

 ヒカルの体が熱かった。
 パイロットスーツ越しなのに、陽太郎が掴んでいる天使ヒカルは間違いなく熱くなっている。

 そして、次の瞬間には、ヒカルは陽太郎を蹴ってゲシュペンストに舞い戻っていた。

「何をするんだ!?」

「アイツだけは、絶対に倒さなくちゃいけないんだ!」

 起動するゲシュペンストを改めて見ると、相当に傷ついている機体だった。
 いや、こんな機体でよく追いかけてきたというべきか。

「何度甦ってきても、私が何度だって、地獄に送り返してやるんだ!!」

「ヒカルッ!」

 ゲートからゲシュペンストが飛び出していった。

 陽太郎は何も考えず、ただ再びヒュッケバインのコクピットに戻り、立ち上がらせた。


 『True Link Sytem,Full Drive,Burst up.』


 第三十三話 Bパート ボーイ・ミーツ――
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>saga<>2012/01/07(土) 20:54:21.92 ID:7RdWoCwi0<>  
 初めてスマホからの投下です。

 本文自投下体はあらかじめpcで用意していましたが23時に投下しても誰も気づかないのは実証済みですので、スマホにデータを移して帰宅中の投下です

 ssを書き始めて2回目の年越し
 まさか職に就いていたとは思いませんでした。
 これから先どうなるかわかりませんが、これだけは続けていきたいと思います。

 ゲッターロボっていいですよね。

 ちなみに、このssは「唯って、マジンガーが似合いそうだよね」がコンセプトで作り始めました。
 どうしてこうなった…っていうかこうしたのか…

 それでは、うまくいけばまた明日の投下になります。
 とことで!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2012/01/07(土) 21:22:57.79 ID:dEw4Ra0/o<> 違う、気付いても寒くて寝てしまうんだよ
マジ極寒

そういやSSスレは数年越しはあまりないんだっけか?
やる夫スレ見てたら、
『今年こそは完結します』→『来年こs(ry』
が結構多いからな
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:24:21.78 ID:oH8Y7cCp0<>

 第三十三話 Cパート


 天使ヒカルはぼろぼろのゲシュペンスト一つでまだ炎が残る宙域へ加速していった。

 その背中を陽太郎とヒュッケバインが追いかけている。

陽太郎「無茶だ、あんな壊れかけのゲシュペンストで……」

 あの炎の中で何が待っているのかは知らない。
 現実に、艦隊一つを丸ごと焼滅させてしまう兵器は数えるぐらいしかない。

 天使ヒカルは、今からその敵と戦おうとしているのだ。

 陽太郎は歯噛みする。
 何故、ヒュッケバインに乗っているが自分なのか――

 本当なら、天使ヒカルが乗っていたはずの機体。
 だが、ヒュッケバイン自身は消滅する運命にあった≠ニ言っていた。

 気にならないことはない。
 ヒュッケバインの過ち≠――

 ヒカルが言ったヒュッケバインは春風のものだ≠ニ――

 実際に触れた天使ヒカルの手は、想像よりも華奢で、でも力強かった。

 それは、前を走るゲシュペンストも同じだ。

 最後まで、主の無事を支えようとする名馬のようで、頼もしく見える。

 陽太郎は自分の貧相な体を確かめる。

 こんな自分が天使ヒカルを助けることが出来るのだろうか――

 なんだか空しい気持ちになった陽太郎に通信が入った。

「お前、ついてきたのか!?」

 その、天使ヒカルだった。
 今ごろ陽太郎に気付いたらしい。

「バカ! どうして来たんだ!」

 大声で罵られてさすがに陽太郎もむっときた。

「バカとはなんだよ! お前だって、そんなぼろぼろの機体で何をするつもりだよ!」

「私は……!」

 答えようとしたヒカルの口が止まった。
 どうしたと訊ねようとした時、ゲシュペンストの動きも止まった。

「避けろ!」

「えっ? うわぁぁっ!」

 ヒカルに押されて急転した視界の端で紫色の炎が通り過ぎた気がした。

 その軌跡をメインカメラが追い、漆黒の機体を発見した。

「な、なんだアイツは……」

 全身が禍々しい黒に塗りたくられた怪鳥の如き駿影――陽太郎の知らない機体がそこにいた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:25:18.93 ID:oH8Y7cCp0<>
「お前は下がっていろ」

 陽太郎を制してヒカルが前に出る。

 しかし、ゲシュペンストの状態に黙っていられなかった。

「待てよ、そんな状態でアイツと戦うのか?」

 無茶だ――そう言おうとしたが、先にヒカルが喋る。

「奴だけは、ほうっておいちゃいけないんだ」

「だからって――!」

 「おしゃべりは、そのくらいでいいかい?」

 全く別の声が回線に割り込んだ。

 中性的なアルトだが、鈍い陽太郎でさえ奥底にある悪意を計り知れた。

「お前はいつまで、こんなことを続けるんだ!」

 陽太郎を無視するように、ヒカルは攻撃的な声音を前の黒い機体にぶつける。

「ボクもできればこんなことはしたくないんだけどね、でも、止むを得ない事情があって、こんなボランティアを行っているんだ」

「貴様という奴はぁぁぁ!!」

 激昂したヒカルの声がスピーカーを割った。

 ジャァッ! とプラズマカッターを抜き、敵機へと突進していく。

「ハァァァァッ!!」

「いいね、本当に」

 ジャィィィッ!

 敵機が手にした剣とプラズマカッターが激しく鍔ぜりあう。

 瞬間、互いに離れたと思いきや、すぐに回り込みあい、刃を重ねる。

「アイツが……っ!」

 打ち合う二機を眺めながら、陽太郎は確信していた。

 陽太郎たちが破壊すべきだったのは、モビルスーツでも、パーソナルトルーパーでも、核ミサイルでもない。

 今、天使ヒカルと戦っている奴こそが敵≠ネんだと。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:26:07.96 ID:oH8Y7cCp0<>
「……」

 陽太郎は静かに息を整えた。

 汗ばむ手で操縦桿を握りなおす。
 実戦でまともに機動兵器を操るのは初めてだった。

 だから陽太郎はヒュッケバインを信じることにする。

 ここまで、短い時間でも陽太郎を導いてくれたヒュッケバインを――

「いくぞ……」

 持ちっぱなしだったプラズマカッターはすぐに刀身が伸ばせるようにする。

 ヒカルと敵≠ェ切り結ぶ光景を、その全てを洞察する。

 ロックオンはできない。
 奴がヒカルにだけ集中していなければいけないんだ。

 自動追尾を切った十字線と敵≠凝視する。

 こめかみの辺りが疼いた。


 大丈夫、オマエなら出来る

 ヒカルの声が聞こえた気がした。


「いけぇぇぇーっ!」

 ヒュッケバインが飛び出すのと、十字線に敵機≠ェ重なるのはほぼ同時だった。

 0.01秒もないタイムラグ――ほんの僅かに遅れた十字線が敵機=\―シュロウガとアサキム・ドーウィンの隙を突くことに成功したのだ。

「――ッ!?」

 ザシュッ!

 殆ど体当たりといっても間違いじゃない陽太郎の攻撃は、接触の寸前にプラズマカッターの刀身を伸ばして、シュロウガを貫き、

「ジェットマグナム! ハァァァァッ!!」

 バキィィッ!

 あらかじめ打ち合わせをしていたかのような時間差でゲシュペンストがヒュッケバインの横に現れ、拳をシュロウガの顔面にぶち当てる!

「今度こそ!」

 ゲシュペンストがプラズマカッターを構える。

「レイ……っ!」

 斬りかかるゲシュペンストの前でシュロウガが翡翠色の双眸を瞬かせて、かと思えば霧のように消えた。

「上だッ!」

 即座にヒカルが頭上に打ち上げたプラズマがシュロウガの脚を焼いた!

「シュロウガの絶対防御鱗が破られる!?」

「ハァッ!」

 シュバッ!

 間隙を突いたヒュッケバインのプラズマカッターが金色の肩を抉り取る!

「僕に……触れるな!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:26:48.50 ID:oH8Y7cCp0<>
 アサキムが怒りを押し殺し、シュロウガの肩から二つの影を飛ばす。

 シュビィッ、シュドッ!

「うくっ――!」

「何だ――!?」

 影は紫色の炎を発して爆ぜてヒュッケバインとゲシュペンストの二機をよろけさせた。

「僕は、この次元の歪みを、より混沌とさせなければならない」

 アサキムはシュロウガを戦艦へ向けた。
 エンブラス・ジ・インフェルノによって巨大なデブリと化した戦艦に再び紫色の炎が宿る。

「このコロニーはここで落とさせてもらうよ」

 戦艦が動き出す。
 コロニーに直接ぶつけて破壊しようというのか。

「させるか!」

「そうはいかないよ」

 メガブラスターキャノンを撃とうとするヒカルにアサキムが攻めかかる。

「君を魔堰に導こう」

 黒い剣・ディスキャリバーがゲシュペンストを左右から切り刻み、その軌跡が六角形を象った。

「ランブリング・ディスキャリバー!」

 グォォォッ……!

 ギャァァァァァーッ!!

 シュロウガが描いた魔方陣が色を灯し、黒い焔の鳥が召喚されてゲシュペンストを包み込んだ!

「うあぁぁっ!」

「ヒカルーッ!」

「痴れ鳥は黙っていろ!」

 身を焼かれる悲鳴に駆けつけようとした陽太郎のヒュッケバインが、瞬時に移動したシュロウガに蹴られて弾かれた。

「ぐっ! う……」

「何の因果で君のような凡百が乗っているのかは知らないけど、それは君如きが乗れるような代物じゃないんだよ」

「そんなことは……わかってるさ!」

 シュガッ!

 プラズマカッターで突く、が、シュロウガがひらりと避け、翼で殴りつける。

「うあっ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:29:02.88 ID:oH8Y7cCp0<>
「震えるよ、この手でまた凶鳥を落とせるなんて!」

 ズガッ!

 ディスキャリバーがヒュッケバインを切りつける。

「ヒュッケバイン、どうしたんだ!」

 陽太郎は手を動かしても機体が動かないことに焦った。
 ヒュッケバインが沈黙し、アサキムは狂喜して剣を乱れ打ちしてくる。

「わざわざ直してもらえるとは思わなかった! それもここまで完璧な形で!」

 アサキムの笑い声が癇に障る。
 陽太郎はヒュッケバインに何度も呼びかけるが、さっきまであれほどおしゃべりだったディスプレイがすっかり黙ってしまっている。

 視界が揺れるので、震えるディスプレイがまるで何かに怯えているようにも見えた。

「そいつが動かない理由は僕にはよくわかる」

 アサキムが嬉しそうに、ごく近い親しみを込めて語りかけてきた。

「そいつが犯した罪を君は知っているのかい? そいつに比べれば、僕なんて子どもの悪戯だよ」

 嘲りが陽太郎の耳に響く。
 それが凄く不快だった。

「ふざけんなよ……!」

 耳の裏の辺りから、首筋に血が巡るのが掌握できた。
 その瞬間、操縦桿が軽くなり、ヒュッケバインはあっさりなほど素直に稼動し、ディスキャリバーを払いのけた。

「えっ……?」

「お前、ヒュッケバインがどんな気持ちでいたと思ってるんだ!?」

 ガシィッ!

 持ち直したプラズマカッターがシュロウガの腹を切り裂く!

 両肘に固定されていた弾倉が手首まで降り、正面に突き出されると、四発のミサイルが発射される。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:29:42.50 ID:oH8Y7cCp0<>
 ドドォン!

「ぐっ……! 僕の前で動くのか……ヒュッケバイン!」

「うあぁぁぁぁぁっ!」

 ドガァッ!

「ぐっ! 君まで……っ!」

 焔から抜け出し、体当たりしたヒカルが陽太郎に叫ぶ。

「コイツは私が押さえる! オマエは艦を止めてくれ!」

 ズドォォンッ!

 メガブラスターキャノンが直撃し、シュロウガが大きく傾いた。

「止めるったって、どうすれば!」

「わからん!」

 透き通った声だった。

「はぁ!?」

「だけど、オマエなら出来る!」

「なんだよ、それ!」

「オマエとヒュッケバインなら、きっと出来る!」

「なんだよ、それ……」

 そんなバカな、と思いながら、陽太郎はヒカルの根拠のない自信に思わず笑みをこぼした。

「頼んだぞ」

 ヒカルの中の、確信に近い直感が――陽太郎にも自信を与えてくれた。

 そうだよな――きっと、天使ヒカルが言うのなら、そうなんだろう。

 『Yes,that light.』

 突然に、ディスプレイの文字が復活して陽太郎を驚かせた。

「ヒュッケバイン! どうしたんだいったい……」

 『――I wish you.』

 『You released the lock of My Heart.』 


 『Re:start―Black holl Engine―For my True Family.』


 ギュォォォォォ!!

「ヒュッケバイン!?」

 明らかに今までのものとは違う駆動音に陽太郎はただならぬ気配を感じ、その挙動を抑えこもうとしたが、

「う、動かない! ヒュッケバイン、何をしているんだ!?」

 全てのコントロールユニットが微動だにしなくなっていた。
 ディスプレイが映す全身のシルエットが何らかのシークエンスを引き出しているのを伝えている。


 『We were drawn to the fate.』

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:30:16.02 ID:oH8Y7cCp0<>  

 『We wish you to be the sun which shines gently at our heart to heart.And――』

 カシィンッ――……!

 ヒュッケバインの腹部が静かに展開し、両の手のひらが暗く変色していく。


 『Please protect for my Princess of spring.』


「やめろよ! そんな、死んじまうようなこと言うな!」

 『I'm so Happy――Black holl canon.』


 開いた腹部の前に翳された手の中で、暗褐色の球体が生じ、その周囲の空間を歪ませていった。


 『Even if I break, my heart cannot escape history.』

「なんのために……なんのためにオレはお前に乗ったんだよ、ヒュッケバイン!」

 『For promise――』

 抑えこまれていた暗褐色の球体――ヒュッケバインの体内で生成される縮退エネルギーから僅かに取り出されたマイクロブラックホールがミノフスキー粒子でコーティングされた手のひらから離れた。

 マイクロブラックホールは羽化したばかりの蝶の如く緩やかにコロニーに落下しようとする戦艦に吸い込まれていく。

 陽太郎は、ヒュッケバインが崩壊していくのを呆然と見送っていた。

「お前は……どうして……」

 コクピット・ブロックが緊急作動し、ヒュッケバインから分離し始める。

 ヒュッケバインは単体ではブラックホールを制御することはできても、強力な対消滅運動に耐え得る装甲を有してはいなかったのだ。

 消滅する戦艦――

 陽太郎は灰のようになって散っていくヒュッケバインをただ眺めていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:31:42.38 ID:oH8Y7cCp0<>
 シュロウガの中で、アサキム・ドーウィンは歯を軋ませた。

「どうして、君たちは僕の邪魔をするんだ……!」

 ヒカルは答えなかった。
 シュロウガが全身から紫色のエネルギーを発し、ゲシュペンストの拘束を解いた。

「仕方ない、あまり直接介入することはしたくなかったけど……僕が破壊する」

 ギラリとディスカッターに光りが走る。

「させると思うか」

 ゲシュペンストが眼光を輝かせるが、アサキムは鼻を鳴らして嘲った。

「無理をするのはよくないよ。そのゴーストも君自身も、とうに限界を超えているはずだろ」

「限界など、気合いと根性でどうとでもなる!」

「それなら、試させてもらうよ! 君が何を持っているのか!」

 グォォ……

 ディスキャリバーがシュロウガの発する闇を宿し、新たな魔法陣を描いた。

「シュロウガよ、闇を抱き、光りを砕け……!」

 ドォンッ!

 シュロウガが高く飛ぶ。

「転神! レイバスター!!」

 ガシュゥンッ!

 黒衣の装甲が翼と変わり、悪鬼は怪鳥へと変貌する!

「コイツは……!」

 ただならない悪意に戦慄するヒカルを前に、怪鳥は自ら魔法陣に飛び込み、全身を闇色の稲妻で覆った!

「頼む、ゲシュペンスト!」

 ヒカルは防御の姿勢を取る。

「私たちが退いたら、コロニーも、アイツもやられてしまうんだ!」

 ゲシュペンストが応えるように眼光を灯す。


 「堕落しろ! 無限獄へ!!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:32:31.14 ID:oH8Y7cCp0<>

 シュロウガの闇に真紅が混じり、速度を超えてゲシュペンストの胴に嘴を突き刺した!!


 「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」


 両機は完全に闇に取り込まれ、血としか見えない飛沫が辺りに弾けては消えていく。


 「罪魂を欲し! 貪り! そして、自らの魂まで喰らい尽くせ!!」


 堕墜を確信したアサキムの喜悦が絶頂に達し、闇が中心へと凝縮する!

 バシュゥッ!

 先に抜け出してきたのは、シュロウガであった。

 突き出た痕から闇にひびが入る。


 ズギャァァァァァァッ!!


 闇が爆砕し、そこに何があったのかどうかさえ、定かでなくなった。


 アサキムは愉悦に笑う。

 「フフフ……堕ちてみれば、心地いいものだよ」


 「なら、其処に還してやる」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:33:14.40 ID:oH8Y7cCp0<>
 ――!!?

 シュロウガが、アサキムが振り返った。

「馬鹿、な……」

 耐えた? シュロウガのレイバスター――破壊の一撃に?
 いや、耐えたどころか、何もなかったかのようではないか!?

「お前の闇、混沌は、この程度だったのか」

 ゲシュペンストは始めから在ったかのように、アサキムの前に立っていた。

「そうか……これが、君が――」

 戯言だとヒカルは受け付けなかった。
 
 鉄拳がシュロウガにめり込み、殴り飛ばした。

「君だけが持っている……!」

 ドゴォッ!

 肩からぶつかっていき、シュロウガはみっともなく転がる。

「全次元唯一にして主義も主張も待たぬ純然たる高潔の意志! 純なる人間の力! 唯一無二の聖杯=I」

 バシュッ!

 高く、高く跳躍したゲシュペンストが挙動を整え、右脚に強い熱を宿した!


 「鋼の魂=I!」


 「究極!! ゲシュペンストキィィィィィィィィィィィィィィィック!!!!」 


 ズガァァァァァァァァァァンッ!!

 激震の一撃がシュロウガを直撃した!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:34:38.43 ID:oH8Y7cCp0<>

 ビシィッ! ビキ、メキ……!

「ゲシュペンスト! そうか……」

 広いコクピットの中で、打ち鳴らされる警告にヒカルは穏やかに微笑んだ。

「よく、やってくれたな、オマエ……」

 幾多もヒカルと共に駆け抜け、限界を突破してきたゲシュペンストが遂に、本当の限界に達したのである。

「ありがとう」

 バカァァァンッ――……!

 ゲシュペンストが割れるように分解し、ヒカルのコクピットブロックだけを宇宙に放出した。

 その先には、もう一つ、コクピットブロックが漂っていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:35:05.94 ID:oH8Y7cCp0<>
「ク、ククククク……」

 アサキム・ドーウィンは笑っていた。

 シュロウガは完全に破壊され、闇色の宝玉だけを手に持っていた。

「僕には時間がある……そうさ、いくらでも、いくらでも……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:35:51.20 ID:oH8Y7cCp0<>
「大丈夫か?」

 ヒカルはようやく目を覚ました陽太郎に気づくと、そっと近づいて声をかけた。

 うん、と答えようとして、その顔の動きに――

「ってて――!」

 左のこめかみにひどい痛みが走る。

「すまない」

 そう言いながらヒカルはおでこと左目をおおったタオルをそっと持ち上げた。
 タオルに挟まれていた冷却材がごろりと落ちる。

「うっ――」

 それだけでピリッときた。

「あまり、動かないほうがいい」

 ヒカルが顔をしかめて、陽太郎はようやくここがコクピットブロックの中だと気づいた。

 地球圏共通の設計で作られているシンプル・コクピット・ブロック・システム――SCCSは向かい合わせに二つくっつけることができる。
 これも、天使吹雪が考案した生存性の向上である。

 SCCSの気密性は完璧で、ヒカルはパイロットスーツを脱いで白く繊細な顔を惜しげもなくさらしていた。

「何か、飲むか?」

 そう言ってジュースのチューブのを差し出すヒカルの大きく吸い込まれそうな力強い瞳。
 陽太郎はオレンジジュースを受け取って飲む。

「それにしても、オマエ、弱いな――」

 さも感心したように顔も見ずにヒカルが言うので、さすがに陽太郎は憮然とした。

「キミが強すぎるんだろ、きっと」

 その言葉にヒカルが振り向く。

「じゃあ、なんでわざわざヒュッケバインに乗ろうなんて思ったんだよ?」

 陽太郎が黙る。

「兵隊のくせに、走り方からしてなっちゃいないし、機体の操縦だって全然だし――なのに、オマエは私に銃を当てようとはしなかった」

 そりゃあ、そうだよ。そう思ってたんだから。

「あの瞬間、オマエは私を撃つことができたのに、わざと外して……しかも、ヒュッケバインまで動かすし……それに……王子様、なんて」

 それは、オレにだって意味がわからないよ。

「オマエは――本当に本気だった。本当に本気でヒュッケバインに乗ろうとして、私を撃とうとはしなかった。だって、コロニーに核が来るって知ってたなら、逃げることだってできたはずだろ。不思議なんだ、オマエは。いったいなんで――」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:36:41.79 ID:oH8Y7cCp0<>
 陽太郎は、続きを聞きたくなくて、ヒカルの質問には答えずに逆に聞いた。

「じゃあ、キミはなんでパイロットなんてやってるんだ? 人口が減ったからって、女の子がやるようなものじゃないだろ」

「私――?」

 ヒカルが一瞬止まる。
 もう一度、チューブに口をつけてから、

「私は、私が強くならなくちゃいけないから。もっともっと――」

 オレンジジュースの粒が無重力に浮く。

「だから、パイロットもそうだし、剣道や薙刀、ボクシングとか空手なんかもやってる」

「何でそんなに?」

 陽太郎が聞く。もう十分に強いじゃないか。

「守ってやらなくちゃならない人たちがいるんだ。きっと男みたいに。いや、男以上に強くならなきゃ守れない」

 ヒカルがぶっきらぼうに言う。

「守ってあげなくちゃいけない人って?」

 まさか彼氏――?

「妹。いや――姉もいるから、姉妹かな、うーん姉妹っていうか、家族っていうか――」

 陽太郎は納得する。
 きっとこのヒカルの姉妹ならさぞ美人なんだろうな
 ヒカルみたいに強くない限り、誰かが守ってあげる必要はあるかもしれない。

「父親がいないんだ。これでアニキでもいたらいいんだろうけど、男がいないから。うちには。だから私が――もっともっと強くなりたいって思って――」

 そして笑う。
 その笑顔が――とてもかわいい。

「じゃあ、オレも一緒だ。オレもただ強くなりたいって思ったんだ。オレは別に今まで何かしてたわけじゃないけど。それに家族も一人もいなくなっちゃったけど。ただ、いよいよのっぴきならないハメになって、やっとそれに気がついて――強くなりたかった。これから自分一人で生きていくために。だからキミみたいな高嶺の花を倒して自分に自信をつけたくて――」

 後半は独り言のようになった。

「自分一人で――? 家族がいない――?」

 ヒカルが首を傾げる。


 何となく。
 話してもいいかなと思った。
 ヒカルの笑顔がかわいかったから――?
 いや、きっと。
 ヒカルが真剣に――陽太郎のことを思っているのが何となくわかったから。
 このめちゃくちゃに強い美少女はきっと何事にも真剣で、いつも誠実に相手のことを考えちゃうタイプなのだ。


 第三十三話 陽光! ファーストコンタクト 完
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:37:07.21 ID:oH8Y7cCp0<>

 相変わらず、陽太郎とヒカルの会話は、ロボ以外は原作からです。

 この話、やる必要があるのか、というより、やらないほうがよかったかもしれないと、猛省してます。
 ただでさえ話し切り詰めていかなくちゃいけない状況なのに。

 でも、せっかく作った話だし、そんなに時間喰わないだろ思って始めたらこんなことに――

 そんなことは、最初にスレ立てた時からずっと言ってますけど。

 ソロモンやって、息継ぎのつもりだったのに、ソロモンより大変だった。

 ただ、一応、このシナリオで隠しユニットとパイロットがありましたので、紹介だけします。

 もう、僅かな方たちしか読んでいない話ですが、お願いします。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:37:44.90 ID:oH8Y7cCp0<>
 隠しユニット(取りこぼし)

 ヒュッケバイン
 入手条件:ソロモン時、べびプリの合計撃墜数が全作品中トップ

 移動力/8 運動性/120 装甲/1100 照準値/140
 特殊能力:分身:気力130以上で敵の攻撃を50%の確率で分身回避する。
       ビームコート:ビーム攻撃の威力を軽減する。
       T-LINKコンタクト:気力110以上でT-LINK武器が使用可能になる。

 EZ-8
 入手条件:地上を選択

 移動力/6 運動性/75 装甲/700 照準値/100
 特殊能力:修理費が10
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/15(日) 21:40:39.32 ID:oH8Y7cCp0<>

 パイロット紹介

 天使ヒカル 十五歳
 CV:戸松 遙

 性格1:まじめでやさしい熱血漢
 性格2:超強気
 ド根性 熱血 必中 努力 覚醒 愛
 特殊技能:TL5(8) 底力3(9)
 熱血漢:女性として扱われない

 AB 底力9が鋼の魂≠ノ変更
 ※鋼の魂:底力9+熱血が魂に変更

 全次元唯一にして主義も主張も待たぬ純然たる高潔の意志=鋼の魂を胸に抱く最強少女。
 もはや主人公。


 隠しパイロット

 陽太郎 十五歳
 CV:梶

 性格1:自信はないが芯は通っている。
 性格2:普通
 根性 熱血 集中 応援 必中 勇気
 特殊技能:TL3(6) 底力2(7)

 AB 恋愛補正が重複する。
 ※姉妹全員から恋愛補正

 祖母・美空と共にジオン公国で生きていたが、祖母の死により、徴募に応じて兵士になる。
 小説はヘタレ、コミックはイケメン、映画はナチュラル変態紳士とメディアミックスのたびに度肝を抜いてくる。

 条件:宇宙ルートでヒュッケバインを入手。


 天使春風 十六歳
 CV:後藤 邑子

 性格1:ちょっとヘンな性格
 性格2:乙女
 TL8(9) 見切り SP回復
 加速 集中 突撃 直撃 身代わり 愛

 AB 命中・回避10%

 ヒュッケバインのテストパイロットとして搭乗していたが、ブラックホール・エンジンの起動に失敗して以来、コクピット恐怖症となっている。
 新ヒュッケバインの最終調整に同席していたが、ヒカルのピンチを前に恐怖症など関係ない風で乗り込み、見事起動に成功する。
 きゅん!

 条件:地上ルートでヒュッケバインを入手。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:52:59.29 ID:gGdScdlK0<>
 第三十四話

 ホワイトベース


海晴「ハァイ、氷柱ちゃん♪」

氷柱「み、海晴姉様!?」

 予期せぬ来客に氷柱は自分の下着だけのみっともない姿を慌てて隠した。

氷柱「ど、どうしたのよ、もう哨戒任務の時間でしょ!」

海晴「その前に、氷柱ちゃんのお・み・ま・い♪ ハイ、海晴おねーちゃんの特製おかゆよ♪」

 重力ブロックでほかほかの湯気をたてる小さな鍋をさしだされて、氷柱は恥ずかしさと嬉しさがないまぜになってそっぽ向いた。

氷柱「もう! 私の体はなんともないって何回も言ってるでしょ!」

海晴「そうね、でも、やっぱり大事な妹だもん。お姉ちゃんは心配で仕方ないのよ」

 着替えるのを手伝いながら氷柱の小さな頭をぎゅーっと抱きしめる。
 十九人姉妹の長女だけあって、その姉力は有無を言わせないぬくもりがあった。

氷柱「ほんとに、なんでもないんだから……」

海晴「そうね、氷柱ちゃんを守ってくれたゲシュちゃんに、ありがとうを言わないと……」

 これからホワイトベースは地球に戻る。
 ソロモン海戦で氷柱のゲシュペンストTYPE−Rは頸部を切断されて修理さえ出来なくなってしまったからだ。

氷柱「私、勘違いしてた……」

 妹の深いため息に海晴は口を挟まなかった。

氷柱「戦争なんて、頭の悪い男が訳のわからないちゃちなプライドを振りかざしてするものだって思ってた」

 なんともないと言っていたが、実は背中を強く打っている。
 その鈍い痛みが心情を後押ししている。

氷柱「そんなものに巻き込まれて、ユキが苦しい思いをするなら、さっさと引導渡して終わらせてやるって……でも、違った」

 普段、あまり自分の気持ちを言葉にすることをしたがらない妹の声に海晴が真剣に耳を傾けている。

氷柱「ヒカルお姉様の声を聞いたから……私にユキがいるみたいに、ジオンだって、ギガノスだって、みんな家族がいる。その人たちを守るために、みんな戦ってるんだって……」

海晴「そうね……家族がいるのは私たちだけじゃないわ」

氷柱「人が死なない戦争なんてないのに……私は……ゲシュペンストが壊されたって解ったとき……」

 ――すごく、悔しかった。

氷柱「ゲシュペンストなんて、戦争のための道具で、機械でしかないのに……もう駄目なんだって解ったとき……私……私……」

海晴「機械だって、人と同じよ……生まれれば、やがて消えていく……全部、そうなのだから」

 泣き声は出さなかった。
 それは、氷柱の最後のプライドが許さなかったのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:54:10.82 ID:gGdScdlK0<>
海晴「おかゆ、冷めちゃったね」

氷柱「平気よ、海晴姉様のおかゆは、冷めてもおいしいんだから」

 言いながら氷柱はスプーンですくって食べる。

氷柱「ちょうどいいわ、熱すぎるのは苦手だから」

海晴「うふふ♪ 氷柱ちゃん、アーン♪」

 かわいらしく開いた口に氷柱はぎょっとした。
 しかし逆らっても文句を言っても姉力マックスな海晴にはのれんに腕押しなので、大人しくスプーンを口に押し込む。

海晴「もぐもぐ、ウーン、おいしい♪ でも、春風ちゃんのはもーっとおいしいのよね」

 いったい何が違うのかしらと悩む海晴。

氷柱「ねぇ、海晴姉様、哨戒は……?」

海晴「あっ! いっけない! もう危ないわ! 立夏ちゃん風に言うとヤヴァイ!」

氷柱「ぷっ、あはは、声色までそっくりよ」

海晴「うふふ、お天気おねーさんはなんでもできるのよ」

 最後に軽くハグして、海晴は身を翻した。

海晴「それじゃあ、氷柱ちゃん、みんなによろしくね」

 振り向きざまに投げキッスをして、海晴は部屋を出た。

海晴「……やっぱり、痛い、わね」

 壁に手をついて、海晴はこめかみの疼きに堪えた。

海晴「まだ、月の日には早いのにね……」

アンリエット「海晴さん、どうかしましたか?」

 通りがかったアンリエットが近寄り、肩を貸す。

アンリエット「調子が悪いようですが……」

海晴「ごめんなさい、ちょっと……」

アンリエット「確か、哨戒に出るはずでしたが、無理はしないほうが……」

海晴「だけど、ウチで今、動ける子は少ないからね……」

 この痛みはいったいなんだろうか?
 単なる頭痛ではない。
 まるで、何かに呼び寄せられているような気がする。

 いや、気がするではなく、行かなくてはならない。
 脅迫めいた力を感じるのだ。
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(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:54:46.87 ID:gGdScdlK0<>
海晴「アナタも、あの子たちの傍にいてあげてなくていいの?」

アンリエット「……シャーロックたちはぐっすり眠っています。アレイさんやすずかさんたちも……」

海晴「そう……大変だったものね」

アンリエット「大変……という言葉で片付けてしまってよいものでしょうか」

海晴「大変は大変よ。たくさんのことが起きて、たくさんの気持ちが溢れて、押し潰されそうになっちゃうから、一つでも片付けられるものはちゃっちゃと片付けられるのが、気持ちの整理になるんだから」

アンリエット「……あの子たちはこれから多くのことを悩んでいくんですね」

海晴「私たちも、ね」

アンリエット「え……?」

海晴「だって私たちも、悩めるオンナノコ♪ だもの♪」

 くるりとターンしてウィンク。
 そこには、先ほどとは違う健康な血色が浮かんでいる。

アンリエット「――そうですね。悩みの種は尽きないものです」

海晴「宇宙の暮らしは、オンナの敵が多くて困るのよね」

アンリエット「そう、ですね……」

海晴「アンリエットちゃんも、おなかが気になるでしょう?」

アンリエット「……重力の差が、身体の重みの感覚を狂わせますね」

海晴「よかったら、後でストレッチに付き合ってくれないかしら?」

アンリエット「わかりました」

 ヘルメットを被る海晴。
 その内側にあるスピーカーがいきなり警音を発し、目に星が飛んだ。

海晴「な、なんなのよもう!」

アンリエット「敵襲のようです」

 非常警報は艦内全域で鳴り響いている。

『各員に通達。ジオン軍の巡洋艦と見られる戦艦を認識しました。至急、各員は――』

 秋里ミユリの声が警報に乗って響く。

海晴「不自然ね。ソロモンはもう陥ちているし、このあたりはもう地球に向かう連邦の制宙圏内よ。ジオンの戦艦がいまさら一隻で入り込めるはずがないのに……」

アンリエット「コーデリアのトイズのような能力を持つ人が先導していたのではないでしょうか?」

海晴「一番いいのは、救難船とか、そういうのなんだけれど……」

 残念ながら、アンリエットが正解なのであった。
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(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:55:12.28 ID:gGdScdlK0<>

 ジオン軍 高速巡洋艦 ファルメル

ララァ「大佐、敵が出てきます」

 黄色のパイロットスーツを着込んだ少女ララァ・スンが言うと、先を歩いているより背の低い少女が振り返る。

シャナ「いけるわね?」

ララァ「はい、大佐」

シャナ「初めての実戦よ。前に出なくていいからね」

ララァ「大丈夫です」

 ヘルメットのバイザーを降ろして、ララァは床板を一つ外した。
 ニュータイプ、ララァ・スン専用モビルアーマー・エルメスは、47.7メートルと巨大なため、艦の外腹に吊り下ろして運んでいる。
 ララァとシャナは床に作られた出入り口に落ちる。

ララァ「それでは、大佐、御武運を」

シャナ「ララァも」

 互いの薄い胸に寄り合い、ララァはシャナとの間に二重ドアのシャッターを降ろした。

シャナ「初めての敵が、あの子のいる艦か……」

アラストール『平気なのか、シャナ?』

 胸に提げた赤い宝玉が語りかけ、シャナは頷いた。

シャナ「私がフレイムヘイズなのか、赤い彗星なのか――今日、はっきりさせる」

 ばさぁっ――

 シャナの全身を黒いマントが包み、赤く燃える火の翼が伸びた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:55:56.37 ID:gGdScdlK0<>
海晴「ら、ら――?」

 それは、確かに聞いた声だった。

 ヴァイスリッターに乗り、ジオン艦とホワイトベースの射程境界まで出て海晴はざらつくものを感じた。

スズ「中尉、どうしたんですか?」

海晴「ねぇ、スズちゃん、今聞こえなかった? ら、ら――って」

スズ「いえ、聞こえませんでした。けど……」

海晴「何かしら?」

スズ「ソロモン周辺に駐留している戦艦が立て続けに五隻、落とされたのは聞いてますよね?」

海晴「えぇ、二日前ね」

スズ「その時、何人かの人が、ら、ら――という声を聞いたそうなんです」

海晴「まぁ……」

スズ「この現象が結びつくとしたら……」

海晴「ホワイトベースは危ない、ということね……」

 ヴァイスリッターの砲身を持ち直す。
 先のソロモン海戦を終えて、無事と言える機体はヴァイスリッターとドラグナー3型だけであった。

 よって、一度地球に戻る必要があると判断されて、前線を退いているのだ。

 連邦の制宙圏内に入れば敵艦はやってこられないはずだが、一隻の艦――それも一夜にして五隻の戦艦を落とした敵が乗っている艦が近づいてきているかもしれない。

 最悪、次の瞬間にはホワイトベースが爆散する可能性もあるのだ。

スズ「……! 海晴さん、来ます!」

海晴「見えているわっ」

 警告よりも早く腕は動いていた。
 T−LINKコンタクトにより、格段に上昇している海晴の空間把握能力は数百キロ離れた敵の頭部だけを撃ち抜く。

 長い砲身――オクスタンランチャーをEモードで構え、海晴は躊躇なく第一射を撃った。
 今、ホワイトベースに敵を近づけるわけにはいかない。
 この一射で片が付けばと願うが、そうはいかないらしい。

海晴「外した! いえ、かき消された……?」

 その時には、カメラで捉えられるほどに敵は近づいてきていた。
 濃緑色の、まるでとんがり帽子のような形状の機動兵器――モビルアーマーの一種だろうか。

 そして、空間を走る僅かな閃光に気づけなければ、D−3と共に宇宙の塵になっていただろう。

海晴「――ッ! そこっ!」

 左腕部のビームガンを連射して、D−3の死角に回り込んでいた何物かを破壊した。

スズ「な、なんですか……!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:56:23.59 ID:gGdScdlK0<>
海晴「まだ、来るわよ」

スズ「えっ……あぁっ!」

 海晴の言うとおりに、D−3の足に直撃があった。

スズ「メ、メガ粒子砲!?」

海晴「あの、とんがり帽子から飛んでくる何かが、ビームを搭載しているのね……」

スズ「ミノフスキー粒子が濃くて、反応を追いきれないです!」

海晴「スズちゃん、突っ込むわよ」

スズ「えっ!?」

 この狙われた状況で前に――?

海晴「遠くから攻撃してくるなら、近づけばいいのよ」

 ぐん――メガ粒子砲を避けて、ヴァイスリッターが突進し、スズも後を追った。

 ら、ら――

 また、声が聞こえた。
 ただし、頭痛は消えていた。

海晴「とんがり帽子――接近戦で!」

 拡大化される敵機にはビーム砲が二門ついているだけと見るや、海晴はさらに加速してプラズマカッターを抜いた。

スズ「撃ちます!」

 D−3がハンドレールガンを撃ち、とんがり帽子を牽制し、反撃のビームをかわすと、ヴァイスリッターがさらに踏み込んでプラズマカッターを振り下ろした。

ララァ「そこね」

 穏やかだが、確かな敵意で応じたとんがり帽子がその巨体には見合わぬ俊敏さで逃げた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:57:35.40 ID:gGdScdlK0<>
 その影で刃を立てて待っていたのは、炎の討ち手であった。

シャナ「はぁぁっ!」

 びしぃっ!

 灼熱の突きがヴァイスリッターの手首を貫き、焼く!

海晴「きゃぁっ!」

ララァ「――そこっ!」

 ビシューンッ!

スズ「ひっ!」

海晴「あぁっ! スズちゃん――!」

 とんがり帽子――エルメスから放出されていた七つのビット兵器からメガ粒子砲が一斉射された。

 ヴァイスリッターは、左腕を失うだけで済んだ。
 だが、D−3は生命線であるレドームに大きな穴をあけられてしまった。

シャナ「とどめっ!」

 贄殿遮那が炎を纏い、シャナが構える。

 だが、それを抜くことは出来なかった。
 今更センチメンタルな感情に襲われた訳ではなく、新たな敵影を発見したからだ。

シャナ「来たな……」

 近づいてきたのは三人――高町なのは、月村すずか、アリサ・バニングスだった。

 白いモビルスーツ・ガンダムに追随して、コア・ファイターとその上の白い服の少女が接近してくる。

なのは「ディバイーン……」

レイジングハート『Divin buster.』

なのは「バスターッ!」

 ドシューッ!

 魔力砲がビットを破壊し、シャナを動かす。

シャナ「ちぃっ! アルテイシアが来る!?」

アリサ「アンタはぁーっ!」

 ババババッ!

 コア・ファイターがバルカンを連射し、シャナに突っ込む。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:58:40.00 ID:gGdScdlK0<>
ララァ「大佐!」

 ヴァイスリッターに集中していたララァのエルメスがシャナに向く。

 キューン!

ララァ「――なに!?」

 耳から入る音ではなかった。
 脳を直撃するような冴えた響きがララァをうった。

 いや、ララァだけではない。
 シャナにも、海晴にも、スズにも、アリサにも、なのはにも、その周辺部にいるすべての人々の脳をうつ冴えた共振音!

 キューン!

 高くはない。低くもない。
 が、人を怯えさせるのに充分なふるえをともなった音。

すずか「――……」

 ララァにはその息遣いだけが聞こえた。

 他の音――エルメスのコンピュータや、ビームの発射音など、戦場の音は聞こえなくなっていた。

ララァ「あぁ、あなたは……」

すずか「あなたたちが……」

 それは、会話ではなかった。

 人の会話は、武器を出し合って行われるものではない。

 メガ粒子砲を放つ直前のビットがビームライフルの一撃で破壊された。

 続く二連射が、跳ねたエルメスの下を通る。

 投げたシールドがビーム砲を潰し、代わりに握られたビームサーベルにビットが照準を合わせる。

 キューン!

 その間、互いにあったものは、会話ではなく認識≠ナあった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 20:59:11.04 ID:gGdScdlK0<>
すずか『あなたは、理由がないのに戦っている』

ララァ『それが、あなたを激しくさせているのね』

すずか『戦う人が多いから、リュウさんやアレイさんが傷ついていった!』

ララァ『哀しいこと……でも、わかっているでしょう?』

すずか『人は永遠には生きられない!』

ララァ『だから、人は争ってしまう』

すずか『どうして、止めようとしないの! あなたは――!』

ララァ『わかっているくせに! 私は、背負ってしまったから――!』

すずか『そんなのは――』


シャナ「ララァ! 奴とのざれごとはやめろ!」

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 21:00:48.10 ID:gGdScdlK0<>
 その強い物言いが、アリサに反応させた。

アリサ「あなたは、姉さんじゃなかった!」

シャナ「アルテイシア!?」


アリサ「うるさい! アンタはシャナなんかじゃない! 私にいたのは姉さんじゃない! 兄さんだ! シャア・アズナブルだ!」


 ――!!?

 空間を支配したのは、衝撃と困惑だ。

シャナ「やめろ、アルテイシア! 私は――」

アリサ「兄さんがいるから、リュウが!」

 ギュォォォォ――!

 コア・ファイターがミサイルを撃ちながら赤い翼を追いかけていく。

シャナ「ちぃぃっ!」

アリサ「そうよ! アンタたちが!」

ララァ「中尉をやらせはしない!」

 キューン!

 共振し、メガ粒子砲がコア・ファイターを狙う。

すずか「アリサちゃん!」

シャナ「やめろ、ララァ!」

ララァ「中尉!」

なのは「えぇーいっ!」

 ガ、カァンッ!

 少女たちの干戈が複雑に絡み合った。

 すべては、中心であらゆる干渉にクッションの役割を果たした高町なのはの魔法障壁に吸収されていった。

なのは「う、うぅっ……くぅっ……!」

アリサ「なのは!」

 バキィンッ!

 魔法障壁が砕け散り、なのはの体がぐらりと揺らいで力を失った。

すずか「なのはちゃん!」

 危ういところでガンダムの手がなのはを助ける。

 レイジングハートに蓄積されていた余剰魔力が辛うじてなのはを守っている。
 すぐにすずかはガンダムのコクピットになのはを受け入れた。

すずか「なのはちゃん……っ」

なのは「にゃはは……ごめんね、すずかちゃん」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 21:02:11.43 ID:gGdScdlK0<>
ララァ「くっ……今の衝撃でビットが……」

シャナ「ララァ、無事か?」

ララァ「中尉……」

シャナ「ガンダムはソロモンでの傷が修理しきっていないようだ。ゆくぞ」

ララァ「中尉、待って!」

シャナ「なぜだ?」

ララァ「中尉の目的は、ガンダムを倒すことではないでしょう?」

シャナ「たしかに、ガンダムが我らのものとなるのであれば、望ましい……が、それは出来ないであろう」

ララァ「いいえ、あの子は、中尉のお志を理解できる子です」

シャナ「……ララァがそういうのならば、そうなのだろう」

ララァ「今は、時間をおきましょう。あの子はまだ、覚醒めの時を待っているだけなのです」

シャナ「そうか……」

 バッ――マントを翻し、赤い彗星はエルメスの額に着いた。

シャナ「ララァ、後の事はよろしく頼む。いよいよ、私のことが知られてしまっただろうからな」

ララァ「はい……」

シャナ「フレイムヘイズとやらの使命は、私のそれよりは遥かに重いのだろうが……私とて意地がある」

ララァ「その為には、あの子たちの力を……」

シャナ「わかった。ララァの言うとおりにしよう」

 二人は後退していった。

ララァ(私はシャナ大佐の心も、シャア中尉の心にも触れることができる――けど、二人は私に対してそれができない。それが私が、あの子に唯一何かをしてあげられる手段……)

 エルメスに入り込み、眠りに就いたシャナを膝に抱き、ララァも目を瞑った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 21:03:45.48 ID:gGdScdlK0<>
アリサ「……あたしと、ジオンの赤い彗星シャア・アズナブルは兄妹だった」

 ガンダムのコクピットに三人で座り、アリサはぽつぽつと語った。

すずか「でも、赤い彗星はシャナって名前じゃ……」

アリサ「何をどうしたのかはわからないけど、あの炎髪妁眼の女は、私の兄さんの体を……いや、体だけじゃなく、存在自体を乗っ取ったのよ。そう、まるで最初からシャアじゃなく、シャナとして生まれたかのように仕立て上げたのよ」

なのは「もしかして、魔法の力なのかな……わかる? レイジングハート?」

レイジングハート『Probably, it is a kind of hypnotism.』

すずか「でも、全世界の人にそう思わせるなんて、魔法でもできるのかな……?」

アリサ「それはわからないわ。でも、確実なのは、今シャナって呼ばれている女は、元は私の兄……キャスバル・レム・ダイクンだということ」

なのは「ダイクン……って、もしかして」

アリサ「そうよ、ジオンの創設者ジオン・ズム・ダイクンの子どもなのよ」

すずか「じゃ、じゃあ、アリサちゃんも……」

アリサ「……本当の名前は、アルテイシア・ソム・ダイクン。アリサ・バニングスはジオンから地球に逃げてきた時からの偽名なのよ」

なのは「そ、そんな……だって、アリサちゃんはずっとおね、お兄さんと……!」

アリサ「いいのよ、なのは。私は、はっきりと言えるもの。兄さんの考えていることは間違えてるって」

すずか「お兄さんの考えてることって……?」

アリサ「今のシャナのことは知らないけど、シャア・アズナブルが考えてることはわかる。ザビ家を倒すことよ」

なのは「ザビ家を!?」

アリサ「ジオン・ズム・ダイクンはザビ家の、ギレンに暗殺されたって、兄さんは聞かされ続けていたから……だから兄さんは復讐のためにジオンに行った」

 三人でつなぎあう手にぎゅっと力を込めた。

アリサ「そんなのは、父の、ジオンの理想なんかじゃないのよ! 復讐なんかに人生を掲げるなんて、そんなの古い人間と全然! これっぽっちも変わってないじゃないの! そんな人間を、ニュータイプだなんて呼べる訳がない!!」

すずか「アリサちゃん……」
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(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 21:05:03.89 ID:gGdScdlK0<>
 ぐっと堪えた涙の目で、アリサはすずかを見つめる。

アリサ「すずか……」

すずか「なに、アリサちゃん……?」

アリサ「あたしと、ニュータイプになって」

すずか「……!」

アリサ「だめ……?」

すずか「なりたくてなれるなら、人はみんな、ニュータイプになれるんだよ」

アリサ「それでも、すずかはニュータイプになれる。あたしも、あのララァって人との会話を聞いた。ニュータイプの発現は、必ずこの戦争を終わらせてくれる。兄さんの復讐を、終わらせられる」

すずか「イヤ!」

アリサ「すずか!?」

なのは「すずかちゃん!?」

 はっきりとした拒絶に、アリサもなのはも驚いた。

すずか「ニュータイプは万能じゃない! 戦争を終わらせるなんて出来ないの!」

アリサ「それでも、あたしは――!」

すずか「そんなの! 友達とすることじゃない!」

 ぱしぃん!

 その音は、何かをたたく物理的な音ではなかった。
 すずかの溢れた思惟がアリサとなのはの脳の五感を刺激した音なのだ。

アリサ「あ、あぁ……」

なのは「う、うぅっ……」

 まず、二人を取り囲んだのは、怨嗟の悲鳴だった。
 そして、悲哀、嘱望、悔恨……人の死の殆どは、マイナスの感情で出来ているという事実が、すずかを通して流れ込んできたのだ。

すずか「アリサちゃんが言ったとおりだよ……ニュータイプは、戦争をする道具じゃないの……人の気持ちを、隠している部分も受け止めるしかないの……」

 塞いだ耳を解いて、すずかは細く涙を流した。

すずか「そんなのなくたって、私となのはちゃんと、アリサちゃんは、友だちになれたんだよ……それはきっと……宇宙とか、ニュータイプとか関係ない……きっと、どこにいたって、私たちは友だちなのに……」

なのは「すずかちゃん……ごめんね……ごめんね……」

アリサ「すずか……すずかぁ……!」

すずか「だから……ニュータイプなんかに、なる必要なんてないんだよ……」

 アリサはすずかにしがみついて泣いた。
 すずかは、アリサの手を握り締めた。
 その二人の手を、なのはがそっと温めている。

 やっぱり、こういうとき、二人の間には入れないな……と、感じる。

なのは(もう一度、会いたいな……フェイトちゃん……)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 21:05:41.11 ID:gGdScdlK0<>
スズ「海晴さん……すみません……」

 ヴァイスリッターに牽かれるD−3の中でスズが頭を垂れる。

海晴「いいのよ、スズちゃん。それにしても、これで本当に、機体がなくなっちゃったわね」

 もう地球はすぐそこなので、降下は安全だろうが、その後で乗ることができる機体はあるのだろうか?

海晴「いいえ、乗らないのが、本当は一番なのよね……」

 ガンダム、ドラグナー、ゲシュペンスト、ゲッターロボ、ダンガイオー……
 ソロモンの海戦で失ったのはただの機械ではなく、彼女たちの半身となっていたものたちであった。

海晴「それでも、戦争は終わらない……でも、クライマックスは近づいているはず、よね」

 きん、とスラスター光を放出して、ヴァイスリッターは帰投する。

 その後姿を、見られているのを、海晴は無意識下で感じていた。

海晴「デートは、お互いめいっぱいおめかししてから、ね」


 第三十四話 胎動! ニュータイプたち 完!


 ――廻る……廻る……

 運命の糸車が……廻る……――

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/01/29(日) 21:06:21.83 ID:gGdScdlK0<>
 やべぇ、クソアニメ見つけた、買わなきゃ

 魔装機神サイバスター C


 次回から、地上組と合流します。

 とことで!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2012/02/12(日) 21:01:46.65 ID:HCPjS9yEo<> 乙
最近マジンガー出ているっけ?と思ったら29話くらいから出てないのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 19:54:57.60 ID:DsYENeT90<>
 第三十五話


 地球の重力が心地よいと思う。

 ホワイトベースは今、地球連邦軍極東支部・佐世保基地に到着した。

すずか(やっぱり、人のふるさとなんだ、地球って)

 窓から眺めて月村すずかはほぅっと息を吐いた。

すずか(もう、あの人に会うことはないよね……戦争は続けるかもしれないけど、宇宙は広いんだから……)

 最終微速をかけてホワイトベースは停止する。
 それを待ち受けるかのように平服の兵士たちが走り回っている。
 その奥で並んでいる巨大な影に、すずかは自然と目を大きくした。

すずか「マジンガーZ!? コン・バトラーV! ライディーンにダンバイン! それにあの二つは、新型!?」

 新型――グレートマジンガーと ビルバインの雄姿に歓声は止まらなかった。
 すずかは駆け足で部屋を出た。

なのは「すずかちゃん!」

アリサ「すずか!」

 すぐのところでなのはとアリサと合流した。ハロもいる。
 一緒に走って表情には笑顔があった。

アリサ「唯さん、澪さん、律さん!」

なのは「紬さん、ゆりえさんに珠姫さん!」

すずか「紀梨乃さん、霙さん、立夏さん!」

ハロ『ハロ、ハロハロ、スイセイセキ、シンク、ソウセイセキ、ヒナイチゴ、カナリア、ハロハロ』

 なかまたち!

 この安堵感はいったい何なのだろう。
 ホワイトベースを出て、向こうも同じようにこちらに走ってきてくれるのがわかると、ドズル・ザビのことや、ララァ・スンのことなど一瞬でふきとんでいた。

 時間にすればほんの数日なのに、全身の皮膚が弛緩するような無防備感にとりこまれてゆく。が、これがいい。

唯「すずかちゃーん! なのはちゃーん、アリサちゃーん!」

律「よく帰ってきたなー!」

 唯と律に抱きとめられる。
 すずかの足が宙に浮いて、唯を中心にくるくると回った。

澪「ハロちゃんも元気そうだな」

ハロ『ハロハロ』

翠星石「デコちび人間も達者でなによりですぅ」

夕映「地球も大変だったようですね」

立夏「うわぁーん!! ぢゅららおねえぢゃーん!!」

氷柱「ちょ、ちょっと立夏!? 痛ったぁぁ!!」

珠姫「おかえり、スズ」

スズ「うん、久しぶり」

シャロ「ゆりえちゃーん!」

ゆりえ「シャロちゃーん!」

 笑う者も泣く者も、これでいいんだとすずかは確信した。
 戦争が繋いだ関係だが、ここにある仲間、クルーという、運命を共有することができるスタッフたちに囲まれている安堵感が、すずかの戦える理由なのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 19:56:14.10 ID:DsYENeT90<>
霙「顔色がよくないようだが?」

海晴「うん、ヴァイスちゃんがね……」

霙「……そうか」

 珍しくしおらしい姉にただ同意だけを示した時、

美夜「みーはーるーちゃぁーん!! ママが迎えに来たわよぉ〜っ!!」

 遠くから大きな声があって、ぐんぐん大きくなった。
 それは、さっきまで同じような大声を出して氷柱をわんわん泣きながら抱きしめていた海晴たち天使十九人姉妹の母親――天使美夜だった。

海晴「ま、ママ――むぐっ!?」

 逃げる間もない。
 十九人の娘を産んだとは思えないバイタリティ溢れる身体で美夜は海晴を氷柱と同じように抱きしめた。

美夜「ごめんね、ごめんなさいね、海晴ちゃん……寂しい思いをさせちゃって……」

 あぁ、この人は本当にママなんだなぁ……
 爽やかな薔薇の香りを嗅いで、海晴はホッとする。
 抱きしめられるたびに、色んな香りがする母。

 だけど、本当の匂い――やさしくて甘い芳香はずっと変わらないで海晴を守ってくれているのだ。

ヒカル「あ、あの……ママ……?」

 どこか二の足を踏む声にも、美夜はすばやく反応する。

美夜「ヒカルちゃんっ!!」

ヒカル「んぐっ!?」

美夜「あぁ、ヒカルちゃん……よく、ヒュッケバインを助けてくれたわ……」

ヒカル「ま、ママ……?」

美夜「あの子の悲しい宿命<さだめ>……連鎖を私は断ち切ってあげることができなかった……どうにかして、封印しただけ……それを、貴女が断ち切ってくれたのね……」

ヒカル「ママ……その……」

 美夜を自分の胸から離して、ヒカルはなおも言いにくいことをそのままの気持ちで言った。

ヒカル「そのこと……なんだけどさ……あれ、私じゃないんだ……」

美夜「えぇっ!?」

海晴「でも、ヒカルちゃんが……」

ヒカル「ごめん、海晴姉、うそついた……どうしても、ママに最初に言わなくちゃって思って……」

 ついてきて、とヒカルは再度ホワイトベースに戻り、美夜と海晴、霙を連れていく。

ヒカル「頼むから、大きな声は出さないでくれよ」

 念を押してヒカルは扉のパスを入力する。

海晴「ここ、ヒカルちゃんの個室じゃない?」

美夜「いったい、どうしたの?」

ヒカル「あぁ、うん……」

 空気の抜ける音がして、扉が開く。

陽太郎「あ、ヒカル、もう出てもいい――」

 ヒカルの部屋≠ノ一人だけいた陽太郎は、ヒカルの顔に安心したかと思いきや、その向こうにいる女性三人にぴたりと静止した。

海晴「へ、ぇ……? ひ、ヒカルちゃんの部屋にオトコノコ……」

美夜「まあっ」

霙「ほぉ」

 海晴は固まり、美夜は両手を頬にあて、霙が楽しげに薄ら笑いをするのを見て――

 ヒカルは、もう引き返せないと決心した。
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(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 19:56:55.80 ID:DsYENeT90<>
ヒカル「――って、ことなんだけど……」

 狭い個室に女四人が自分を見ていて、陽太郎はひたすら恐縮するしかなかった。

美夜「まあ、それじゃあ、この子がヒュッケバインを……」

海晴「ねぇ、ヒカルちゃん……ひょっとして、それからずっと、この部屋で……一緒だったの?」

ヒカル「あぁ、そうだけど」

 それがどうした? というヒカルのまじめな顔。
 海晴は少しだけ、名前を知ったばかりの男の子に同情する。

霙「それで、ヒカルはいったいどうしようっていうんだ?」

 母娘の応酬に陽太郎が入るスキはみじんもない。
 ただおろおろと四人の表情を伺うだけで、それを見てヒカルは再度決心を固めた。

ヒカル「ウチに来てもらおうと思って」

陽太郎「は?」

海晴「え!?」

 陽太郎と海晴が同時に驚く。
 それも心底――
 これって、どっからどうつながった話?

海晴「それって、もしかして――ウチに住んでもらうって意味?」

ヒカル「だって、海晴姉、住む家がないっていうのに、知らない顔できないだろう?」

 ひどくまじめな顔でヒカルは答える。

美夜「わぁーお、それって最高にいい考え! ヒカルちゃんってばやっぱり最高ね! もう何で本物の男に生まれてこなかったのかしら――残念すぎ!」

 くるりとターンして、美夜はヒカルに抱きつく。

海晴「ママ、本当にいいの!?」

美夜「だってぇ、ママだってずーっと男の子がほしかったんだもん! もちろん、娘は何人いてもすばらしいけど、やっぱりセンターには強力なイケメンがいてくれないとどうしようもないのよ!」

霙「まあ、宇宙の塵よりもちっぽけではあるがな」

美夜「それに、ヒカルちゃんが男の子を気に入るなんてめったにないことじゃない! なにせ、一夜も二夜も共にした仲ですものね。うん、それならママの息子として合格!」

 完全に一人の世界に入っているママ。
 同情して、という海晴の目線。
 当事者の陽太郎はあ、とも、い、とも言えない。

美夜「おりしも今日はクリスマス・イブ! キミは聖なる夜にやってきた私たちへのクリスマスプレゼントっていうわけね? わぁ〜まじめに働いてるとイイコトってあるものなのね、うれしいわ。これからよろしくね、私の息子。大事にするわ」

 ママが陽太郎に抱きつく。
 それは、家族の証――硬直する陽太郎は刺激的な香りにドキドキしながら、肩越しにヒカルの顔を見た。

ヒカル「ごめん、勝手に決めちゃったみたいで……オマエは、それでいいのか?」

 真剣なヒカルの問い。
 海晴のやれやれという感じの優しい微笑み。
 無表情だけど穏やかにうなずく霙。

 ヒカルの手がぎゅっと握りこぶしを作って、緊張して震えているのを見た瞬間に。

陽太郎「は、はい」

 気づくと、自分でも意識しないうちに声が漏れていた。

 家族――ヒカルはまた一人、守らなくちゃいけない家族ができたとうれしくなった。

ヒカル(こんな風に、世界中の人たちが、家族になれたらな――)
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(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 19:58:51.45 ID:DsYENeT90<>
 佐世保基地 機動兵器工廠

美夜「ガンダムにゲシュペンスト2機……本当におあえつらえ向きだわ」

 ソロモン海戦を含む一連の事件で破棄せざるを得なかった機体はその三機であった。

美夜「ドラグナーとヴァイスちゃんは……うん、これなら大丈夫ね!」

海晴「ホント、ママ!?」

美夜「えぇ、二つともメイン回路は無事だったから、新規のパーツを取り替えるだけでオーケーよ」

ヒカル「だけどママ……私のゲシュペンストは……」

美夜「あれは仕方ないのよ、むしろよく今日まで頑張ってくれたって思ってるわ」

 ヒカルと氷柱の戦闘記録を見ながら、美夜は瞳を輝かせていく。

美夜「やっぱり! 二人にゲシュちゃんを預けて正解だったわぁ〜! ホント、最初に立夏ちゃんがTYPE-Rに乗った時はどうしようってハラハラしてたけど――」

立夏「エェッ!? だって初めはリッカが乗れって霙オネーチャンが――」

霙「フッ、あれは氷柱が動けなかったからだ。まあ、おかげで立夏がR−1に乗る構想が生まれたから、結果的には良かったんじゃないか?」

美夜「ガンダムのデータも……ホントに、人間業じゃないわね……さすが忍ちゃんの妹ね、フフ……」

すずか「あ、あの、お姉ちゃんがどうしたんですか……?」

 母娘の会話に入りきれず、居心地の悪かったすずかたち三人に美夜がウィンクする。

美夜「そ・れ・は、知る日とぞ知る超極秘情報☆ ま、あえて言うなら月面Sってとこね」

すずか「は、はぁ……?」

アリサ「データなんていいから、早くガンダムを直してよ!」

なのは「あ、アリサちゃん……!」

美夜「ふふ、せっかちなのは良くないわよ。うーん、でも、ま、いっか、話は早いほうがいいもんね」

アリサ「ホント!?」

美夜「と、いう訳であちらをご覧くださーい♪」

 高いテンションで手を上げて、美夜が示したのは格納庫であった。そこには大きな布で隠されたものが4つ並んでいる。

アリサ「何、あれ?」

美夜「ウフフ、言ったじゃない。ガンダムとゲシュちゃんは破棄するしかないって」

すずか「も、もしかして……」

美夜「さぁ、目ン玉ひん剥いてよぉーく見なさい! これがあなたたちへのクリスマスプレゼントよ!!」

 バッ! 布がはずされる。
 現れたのは、モビルスーツ、戦闘機、パーソナルトルーパー、そして風格漂うスーパーロボットであった!

すずか「こ、これ、ガンダムですか!?」

美夜「そうよ、順番にRX-78-2ReMaster ガンダムマスターグレード、FXM-02 Gディフェンサー、RPT-TYRE2 R−2、SRG-01 スーパーロボット・グルンガストよ!」

すずか「ガンダムマスターグレード……」

美夜「ガンダムはもちろん、すずかちゃんに。Gディフェンサーはアリサちゃん。そしてR−2は氷柱ちゃん、グルンガストはヒカルちゃんよ!」

ヒカル「わ、私がスーパーロボットに!?」

美夜「えぇ、TYPE−Sは元々スーパーロボット、特機訓練用に調整した機体だもん」

 それに、と付け加えて、

美夜「ヒカルちゃんはどう見てもスーパー系! 今さらリアル系に乗せようなんてそうは問屋が卸さないってもんよ!」

海晴「こんなものを作る予算、どっから下りたのよ……?」

美夜「ウフフ、連邦の偉い人の大半が宇宙に行っちゃったから、結構やりたい放題なのよね。後は、新しいスポンサーがついたりとかね」

 新しい専用機に目を奪われる少女たちの背中を美夜が押す。

美夜「さぁ、さぁさぁ! 早いところテストして、最終調整に入るわよ。もー、久しぶりだっていうのに今回はこれで終わりなんだからね!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 19:59:48.33 ID:DsYENeT90<>
 太陽系外


 ここで光る無数の爆発は、キャンベル星人と宇宙海賊バンカーが起こす大戦争の炎であった。

 バンカーはこの宙域に待機していたキャンベル星侵略軍の本隊に奇襲攻撃を仕掛け、その報せを受けた女帝ジャネラが地球侵攻作戦を中断して帰投。

 それから地球時間にしておよそ36時間――しかしこの宙域ではまだ2時間も経過していいない――双方は全戦力の大半を失っていた。

ジャネラ「何故じゃ!? 何故押し破れぬ!? 宇宙海賊ごときに我らキャンベル星人が劣勢じゃと!?」

ワルキメデス「彼奴らの攻撃性、武装は我が船団を凌駕しております。数では圧しておりますが、局所で――」

ジャネラ「報告はいらぬ! ならば貴様も戦線に加わり、蹴散らしてまいれ!」

ワルキメデス「ははっ!」

 自軍が滅びては計略も無に帰す。
 ワルキメデスは嫌いな前線へ出て行った。

 キャンベル星の超大型攻撃要塞セント・マグマの真横にプラズマ砲が走る。

ジャネラ「お、おぉぉ……! 何をしておるのか! 撃て、撃ち返せ! 我らキャンベル星人に歯向かう愚かしさを、奴等に教えてやるのじゃ!!」

 反撃の熱光線が飛ぶ。

 さすがのジャネラも苛立っていた。
 地球圏侵略計画は念入りに練られた計画だったのだが、それは大いに崩れているのだ。

 四千年以上も前から司令官オレアナを送り込み、ジャネラ自らも軍を率いて出陣した。
 地球人がオレアナへの反抗手段を有するまでにジャネラが地球に到着するはずだったのだ。

 それが、地球人は驚異的な速度で発展し、技術を進歩させてコン・バトラーVを始めとするスーパーロボットを造り上げてオレアナを撃破してしまった。

 仕方なしにジャネラが急いで地球に到達すれば、野蛮な宇宙海賊に背後を取られた。

ジャネラ「くっ、このまま時間を取られていては、本星のほうで穏健派どもが……」

 キャンベル星は古来、世論が大きく分けて2つ――革新派と穏健派に分かれて長く対立している。
 ジャネラたち革新派はおよそ二千年ぶりに政権を獲得して、外宇宙への侵攻作戦を開始した。

 その手始めが地球だったのだが、現状のつまづきは本星に届いており、穏健派支持の声が高まっている。
 これを封じるためにも、地球を制圧して再び政争に戻る必要があるのだ。

ジャネラ「えぇい! こうなれば玉砕覚悟よ! セント・マグマを押し出し、味方の盾となって海賊どもを黙らせぃ!」

 過激派とも呼ばれるだけあって、ジャネラの決断は勇ましかった。
 事実、女帝自ら最前線に出ることで味方は奮起し、セント・マグマの圧倒的自衛力と相まって敵軍を一掃していった。

ジャネラ「よぅし、良いぞ! そのまま押し潰してしまえぃ!」

 宇宙海賊とキャンベル星軍では結束力が違う。
 そこにつけ込んだジャネラは間違っていなかった。

 しかし、世界――いや、この宇宙には、個人の思惑などを遥かに超越した何か≠ェあることを、彼女は知らなかった。

 そう、彼女――いや、キャンベル星人も、宇宙海賊バンカーも、ただそこにいたというだけ不幸なのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 20:00:43.13 ID:DsYENeT90<>
 目の前で剣が一閃された――と、思った次の瞬間には、ジャネラはセント・マグマと共に爆発していた。

ダンゲル「ジャッ、ジャネラ様!?」

 突如、要塞と司令官を同時に失ったキャンベル星軍の将軍は混乱の最中、羽虫のような小さな影を捉えた。

 そいつが何かを追いかけているようで、その先には白い閃光が飛んでいた。

ダンゲル「あ、あいつらがジャネラ様を!」

 専用マグマ獣で白い奴を追いかけた。
 それが将軍ダンゲルの最後だった。

 白い奴を追いかけていたと思ったら、既に視界にはいない。
 真横から放たれたエネルギーの波に呑まれてダンゲルは消えていった。

ワルキメデス「いかん……! 逃げろ、逃げろーっ!」

 弟の死に様を見ていたワルキメデスが乗機であるダークロンで一目散に逃げ出す。
 恐ろしいことが起きている。

 キャンベル星人の目に止まらぬ速さで白い奴は動いて、ビームでもプラズマでもレーザーでもないエネルギー砲を撃っている。
 見境なく、キャンベル星人もバンカーも平等に殺戮していた。

ワルキメデス「と、とにかくこの宙域から離れねば!」

 ジャネラとダンゲルが死んだ今、キャンベル星侵略軍の司令官はワルキメデスとなったが、そんなことはどうでもよかった。

 まず、生きてこの戦域から脱出せねばならない。
 母艦が沈んだのならば、地球侵攻も諦める。
 元々、ワルキメデスは革新派でも穏健派でもなく、ただ長いものに巻かれるだけの男なのだ。
 穏健派が政権を取り戻したとしてもワルキメデスが生きられないことはない。

「――邪魔よぉ」

 龍型マグマ獣ダークロンは、その一言だけを拾って、口から裂けた。

 黒い影が手にしていた剣はワルキメデスの血を吸って、白い閃光にぶつかる。

水銀燈「追いかけっこはもうおしまい。悪い妹ねぇ、周りみぃんな壊しちゃって」

 黒いオーラバトラーらしきものの剣が、白い四枚羽のロボットの腕とせめぎ合っている。

雪華綺晶「人聞きの悪いことを、お姉さま……あなたがここまで連れてきたというのに」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 20:01:18.63 ID:DsYENeT90<>
 既にキャンベル星人にも、宇宙海賊バンカーにも息のある者はいなかった。

 たった二体のローゼンメイデンと機体――水銀燈が操るダンバインより生き物に近いオーラバトラー、雪華綺晶がヴァイスリッターのデータを基に構成し一体化しているライン・ヴァイスリッター――により、二つの勢力は殲滅させられたのだ。

水銀燈「バラバラになる前に、さっきの質問に答えてくれないかしら?」

雪華綺晶「この世界には、私が連れてきたのか――ですか? 答えはNo≠ナす。この世界は、あのマスターの選択で開かれた幾つかの扉の一つです」

水銀燈「へぇ、ならここでアリスゲームを終わらせても、問題はないということね」

 暗く澱んだ色のオーラバトラーが翼を柄に模した剣を鋭く走らせ、ライン・ヴァイスリッターの手を切り裂いた。

雪華綺晶「お姉さまの仰るとおり、ここもアリスゲームの舞台であることに変わりはありません。ただ――」

 離れた中指と薬指の間に白薔薇の蔓が生え、繋いでいく。

水銀燈「ただ、なに?」

 修復した手の甲から砲口が向き、水銀燈が剣を構える。

雪華綺晶「この世界では、ローザミスティカを集めてもお父様には逢えず、アリスにもなれません」

水銀燈「……!?」

 雪華綺晶の言ったことは、水銀燈に重い衝撃を与えた――が、彼女はすぐに薄く笑った。

水銀燈「それは……感じていたわ。いえ、この世界では、お父様を感じられない」

雪華綺晶「そう、ここは切り離された運命――鳥籠の中――小窓の外を見ることもできない――」

水銀燈「それでも、無意味ではないのよねぇ」

雪華綺晶「――!?」

 銀光の煌めきに雪華綺晶が気づくのは一瞬遅かった。
 ライン・ヴァイスリッターの片方の二枚羽が断ち切られ、切り口から黒い炎を焚いた。

水銀燈「あなたたちを眠らせておけば、少なくともローザ・ミスティカを手に入れておくことに、意味がないことはないんじゃなぁい?」

 炎は瞬時に燃え盛り、羽の付け根まで侵している。

 ライン・ヴァイスリッターは蔓を伸ばして火を閉じ、新たに羽を伸ばす。

水銀燈「ほらぁ! よそ見をしている場合かしらぁ!」

雪華綺晶「――ッ!」

 音速で突き出された切っ先を辛うじてかわし、左手のエネルギー砲を撃ちながら距離をとろうとするが、水銀燈は更に速く突進してきた。

水銀燈「ふふ、わかるわよ……あなた、マスターがいないこの世界じゃ、ろくに力が出せないんでしょう!?」

 腹部に体当たりして、怯んだライン・ヴァイスリッターの肩に水銀燈の剣が刺さる!

水銀燈「それに比べて私が吸い上げた人間のオーラ力を得たサーバイン! あはははは! ジャンクにしてあげるぅ!!」

 まるでチーズでも切るかのように剣はライン・ヴァイスリッターの装甲へ沈んでいく。

 だが、雪華綺晶は歯を並べて薄く笑っていた。

雪華綺晶「素敵なお姉さま――だから私は――あなたと戦うことを選んだのです」

水銀燈「ッ!?」

 急に剣が動かなくなった。
 ライン・ヴァイスリッターの装甲の中で、蔓と糸が刃に絡み付いているのだ。

雪華綺晶「あなたが一人で戦うのは弱いから――弱さを隠し切れないから――」

 長大なエネルギー砲――ハウリングランチャーの砲口が三つに展開し、エネルギーを集めている。

水銀燈「……弱い? これでも、同じことが言えるかしらぁ!?」

 胸部にハウリングランチャーをあてられながら、掴まえられている剣先から真っ黒い炎を燃え滾らせる。

 サーバインは光りに呑み込まれ、ライン・ヴァイスリッターは炎に包まれて、互いに消失していった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 20:01:55.99 ID:DsYENeT90<>
 ――おやおや、どうしました?

 ――ご安心ください、まだ薔薇の乙女たちは一人として欠けてはいません。

 ――草木も炎も、種が残っていれば新たに咲き誇ることができます。

 ――舞台はまだまだ途中、複雑に散っていた欠片がようやく形となったところ。

 ――異星の侵略者は絶えましたが、まだまだ少女たちは戦わなければなりません。

 ――魂の故郷、幻の大陸、古の文明、刻の鼓動……ククク。

 ――さてさて、新たな力を得た少女たちは無事、運命を勝ち取ることが出来るのでしょうか?

 ――ワタクシのような兎風情が教えられることはひとつ。

 ――次回、スーパーロボット大戦『聖戦! 海と大地』
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/04/13(金) 20:06:01.68 ID:DsYENeT90<>
仕事場が摘発されたので再び無職になりました。

 もう興味ある人なんていないと思うので、これからは更新のコメントもなしで投下していきます。

 

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/13(金) 20:23:17.99 ID:1za+FNH6o<> 乙
摘発される仕事場・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:13:07.85 ID:/iusA19D0<>
 第三十六話 聖戦! 海よ大地よ


 ――バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである

 心豊かであろうから

 私たちはその記憶を印されてこの地上に生まれてきたにもかかわらず思い出すことの出来ない性をもたされたのだから

 それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:13:38.60 ID:/iusA19D0<>
 ヨーロッパを解放したシーラ・エレ艦隊は、イングランドへ侵略したドレイク軍と交戦を開始した。

 ビショット・ハッタの軍はその側面を突こうと動いていた。

黒騎士「ビショット殿! 何故に待機を命じられますか!?」

ルーザ「機を見よ、黒騎士。反逆者どもとウィル・ウィプスの戦は五分。拮抗しておる」

黒騎士「は! なればこそ我々が加勢することで戦況は一挙にドレイク王の利に傾くはず!」

ビショット「いいや、奴等は常に二枚腰だ。我らが横を突けば必ず更にその背後を突く」

 仮の主の戦術は黒騎士――バーン・バニングスにも理解できる。

 が、騎士として納得できるはずはなかった。

 あの戦場の中心には、ビルバインが、カワゾエ・タマキがいるのだ。

黒騎士「ならば、私一人で救援に向かう。よろしいですな?」

ビショット「ン……そなたは客将だ。止められはせん」

黒騎士「恩情、頂戴仕る!」

 靴音高くバーンは玉座を去っていく。

ルーザ「ビショット殿、三騎士も失った今、バーンは必要な手駒。やらせてはなりませんでしたな」

ビショット「だが、奴がいてはドレイク王への妨げになる可能性がある。駒としては必要だが、手放すには今しかありますまい……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:14:13.65 ID:/iusA19D0<>
 玉座を出たバーンは真っ先にドレイクとルーザの娘リムルの許へ走った。

黒騎士「姫様、お逃げくだされ」

リムル「人を捕らえておいていきなり逃げろと」

 王女の身でありながらリムルはこの一室に監禁されている。
 全て母のルーザの仕業であった。
 彼女は安全の為と言ってリムルを狭い部屋に押し込めたのだ。

黒騎士「ルーザ様はドレイク王を弑逆奉らんとしておるのです」

リムル「お母様が!? 馬鹿を申すなバーン・バニングス! どうしてお母様が、妻が夫に刃を向けるというのです!」

 投げつけられたカップがバーンの脇で割れる。
 しかしバーンは片膝をつき、尚も誠意に努めた。

黒騎士「まこと申し上げがたきことですが、ルーザ様はビショット殿と通じておられます」

リムル「つ、通じておるとは……?」

 聞き返さなくても、察しはついている。
 ドレイクがバイストン・ウェルから消えた時、ゲア・ガリングが地上へ現れた時から、あってはならぬ、有り得ないことだと否定し続けていた。

黒騎士「ルーザ様のお心は、既にドレイク王の許にはない、ということです」

リムル「あ、あぁっ! お母様……! お母様……っ!」

 誰も口にしなかったことだが、ビショットに近い者なら誰もが知っていることだった。
 直接伝えられて泣き崩れたリムルの体をバーンは立ち上がらせようとした。

黒騎士「姫様、ドーメを用意してございます。ここにいてはルーザ様が姫様を害される恐れがあります。ドーメからドレイク王のウィル・ウィスプへお逃げくださいませ」

リムル「バーン。バーンはタマキと戦うのですか?」

 顔を上げたリムルからの問いにバーンは肯いた。

リムル「何故です!? わからないのですか! タマキこそ真の聖戦士なのです。お父様もビショット王も間違っているのが何故わからないのですか、バーン!」

黒騎士「しかし、地上に出た我らに生きる場所がないのも事実なのです!」

リムル「そんなことはない! シーラ様もエレ様も、地上の人たちに受け入れられております!」

黒騎士「地上人との和平は一方的なものであることはご存知でしょう! 我等は糾合され、尊厳を剥奪されるのです!」

リムル「その尊厳が傲慢だと気づかないのですか!」

黒騎士「姫様!」

リムル「お父様の下へ行けというのなら私はそう致しましょう。しかし傲慢の上に立つ王の傍に私はいたくない。すぐにグラン・ガランへ往かせていただきます」

黒騎士「そんな勝手が許されるとでも思っているのですか!」

リムル「貴方に私の尊厳を奪う自由があるというのですか!」

 ざわっとバーンの胸にどす黒いオーラが溜まった。
 彼は衝動のままに右手を突き出していた。

リムル「――ッ!? バーン……!?」

黒騎士「申し訳ございません、姫様」

 腹を打たれて気を失ったリムルをバーンは抱えあげる。

黒騎士「少なくとも、ここにいることは姫様の為になりませぬ。まずはウィル・ウィプスに。それから先はお父上とお話しくださいませ」

 かつては許婚であった。
 いや、バーン自身は今もそうありあたいと思っている。
 そのためには、リムルはドレイク王の庇護下にあったほうが良い。

 そして、再びドレイク王に認められなければならぬ。

黒騎士「私の屈辱は、晴らさねばならぬ」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:14:46.17 ID:/iusA19D0<>
 攻撃、回避。

 攻撃、飛翔。

 防御、射撃。

珠姫「まだ、来るっ!」

チャム「タマキ!」

 僚機の位置確認をしている暇さえない。

 左から背後へ回ろうとしていたレプラカーンをビルバインの左肩に背負ったオーラキャノンで落とす。

 珠姫は振り向きざまに右手のオーラソードライフルを連射し、近づいていた二機に直撃させた。

チャム「タマキ! 頑張りすぎは良くないって言ったでしょ!」

珠姫「でもっ! 次から次に……!」

 左手に剣を持ち、右手のオーラソードライフルからビーム状の刀身を伸ばして敵の小隊に突っ込んでいく。

 珠姫の強大になっていくオーラ力が敵を引き寄せているのだ。

 そして迎え撃つ珠姫は更にオーラ力を強くさせ、また新たな敵を引き寄せる。

 悪循環であった。

チャム「タマキィ! あぁっ! あたっちゃぅぅ〜!!」

珠姫「耳元で怒鳴らないで!」

 ざしっ! ざしゅぅっ!

 独楽のように回りながらレプラカーンを撃破する。

珠姫「――ッ!」

チャム「――タマキ! 嫌なのが来るよぉ!」

珠姫「わかってる!」

 感じているだけで苛立ちが募るオーラ力は以前も遭ったものだ。

黒騎士「カワゾエ・タマキ! いざ尋常に勝負!」

 鴉のような濡れ羽色のオーラバトラー・ズワァースが曲剣を手に珠姫へ猛進してくる!

珠姫「バーン・バニングス!」

 ガキィンッ! オーラソードが絡み合う。

 ビルバインが空いているオーラビームソードで突くが盾に弾かれる。

珠姫「貫けない!?」

黒騎士「感じるぞ! 貴様と戦うことで私のオーラ力が高まるのを!」

珠姫「くっ……! それでも、その根源は憎しみだからっ!!」

黒騎士「人を憎むことこそが戦いの源泉! オーラというものは人間の性格に強く根付いているのだ!」

 曲剣が襲い掛かるが、それを珠姫は払いのける。

黒騎士「その程度で私を凌げるか!!」

 バババ! ズワァースのオーラバルカンがビルバインの頸部を掠めていく!

珠姫「くうぅっ!」

 体勢を崩して落ちかかるビルバインにズワァースが迫る!

チャム「いやぁぁぁっ!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:15:30.30 ID:/iusA19D0<>
 ウィル・ウィプス

リムル「お父様!」

ドレイク「……リムル、か?」

 突如、玉座の前に現れた息女にドレイクは思わず現実を疑った。

ドレイク「何故にリムルがここにいる?」

 それは二つの意味を持っていた。
 このウィル・ウィプスにいること、そもそもこの地上にいるはずがないということ。

 ビショット・ハッタは当初、リムルとルーザは地上に現れていないと言っていたのだ。

リムル「お父様、今すぐにこの無意味な戦闘を止めてください」

ドレイク「無意味……確かに、無意味なのかもしれんな……」

 腰を落ち着けたドレイクが禿頭を玉座に沈め、深く息を吐いた。

ドレイク「リムル……ここにいるお前が本物かまやかしか……もしくはビショットめの謀かはわからぬが、戦を終わらせることは出来ぬな」

リムル「何故です!? 無意味とわかっていながら、何故!?」

ドレイク「我々は、地上にあっては、粛清されなければならぬ存在なのだ……」

リムル「粛、せい……?」

ドレイク「バイストン・ウェルはオーラマシンを地上に持ち込んだ。そして地上の戦火を不必要に拡散させた。この咎は我らバイストン・ウェルの者が負わねばならぬ」

リムル「お、お父様は、自らを人柱になさろうと言うのですか……?」

ドレイク「人柱、か……なるほど、かもしれぬな。だがな、リムル」

 居住まいを正したドレイクがずぃ、と身を乗り出した。

ドレイク「ワシが人柱になるとは、言ってはおらん。バイストン・ウェルの争いごとの主導権を地上人にやることはない、と言っただけだ」

リムル「お、お父様……!?」

ドレイク「シーラ、エレを捕らえ、彼奴等のオーラ力でもってバイストン・ウェルに戻るのだ」

リムル「お父様は……本当の愚か者です!」

 言い捨て、リムルは父親に背を向けた。

ドレイク「ビショットのところへ帰るのか?」

リムル「わたくしは……グラン・ガランへ投降します!」

ドレイク「そうか……達者で生きるがよい」

リムル「――!?」

 生きる?

 敵へ投降する自分に今、ドレイクは生きろと言った?

リムル「お父様……やはりあなたは……」

 ドレイク・ルフトは既に玉座であるべき姿に戻っていた。

 厳然たる王の姿。
 何者にも屈さず、歯向かう者は断罪する苛烈な為政者。

ドレイク「ワシもまた、道化に過ぎなかったということだ」

 父娘の会話はそれで終わりだった。
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:16:31.03 ID:/iusA19D0<>
「……っ!!」

 珠姫の首を落とすはずだった曲剣は眉間の数メートル手前で止まっていた。

紀梨乃「タマちゃん……っ! 早く逃げて……!」

珠姫「ぶ、部長!?」

 ぎりぎりと鍔迫り合いを演じているのはダンバイン――千葉紀梨乃だった。

黒騎士「邪魔をするな! ダンバインに乗っているのであれば貴様も殺すぞ!」

 ズズォ……!

 ズワァースを覆っている黒いオーラ力が増幅されていく。

チャム「やだぁ! 紀梨乃がやられちゃうよぉ!」

珠姫「くっ!」

 ビルバインが体勢を立て直すのと、ほぼ同時に、黒いオーラ力はダンバインに接していた。

紀梨乃「あっ! にゃっ!? なに!?」

 黒騎士のオーラ力に囚われた箇所が動かなくなっていた。
 始めに指、手、そして今、肘まで――

 珠姫と互角に打ち合うほどの憎しみのオーラはもはや紀梨乃でもどうしようもなくなっていたのだ。

黒騎士「死ね、ダンバイン!」

 ビルバインは間に合わなかった。

 ズワァースの曲剣はダンバインの首を刈り取り、虚空へと蹴り落とした。

珠姫「…………ッッ!!!?」

 チャムの喚き声が聞こえない。

 首のないダンバインが紀梨乃と被った。

珠姫「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:16:59.73 ID:/iusA19D0<>
 紅色の鋭機が吼えた。
 無機のはずの瞳孔が開き、光る粒を散らばせている。

シーラ「タ、タマキ……?」

 遠く離れたグラン・ガランから見ていたシーラ・ラパーナは、洋上に響き渡る獣声に倒れそうになった。

カワッセ「シーラ様!」

 副官のカワッセに支えられ、シーラはあらためて肥大化したビルバインを見た。

シーラ「まさか……タマキまでがハイパー化を……」

 ビルバインが長大に伸びた剣を振るった。

 それだけで、敵味方を問わず五十機以上が破壊される。

カワッセ「なんという力だ……!」

シーラ「……グラン・ガランを前に出しなさい」

カワッセ「何ですと、シーラ様!?」

 席の手すりに寄りかかって、シーラは号令を下した。

シーラ「グラン・ガランでタマキを止めるのです。今、タマキを失っては地上は悪しきオーラ力で塗り潰されてしまいます」

カワッセ「しかし、もしも万が一のことがあれば!」

シーラ「それしか方法はないでしょう!」

エレ『シーラ様、僭越ですがお供いたします』

 ゴラオンがグラン・ガランの隣りに並び出た。

シーラ「エレ女王……」

エレ『タマキはまだ、ハイパー化した訳ではありません。まだ、己を取り戻すことができます』

シーラ「ありがとう、エレ女王」

エイブ『エ、エレ様! 敵のズワァースが!』

 エレの後ろのひきつった声にシーラもまた巨大化したビルバインを見やった。

黒騎士『ふふふ……はははははははは!! カワゾエ・タマキ! いざ尋常に勝負!』

 ズワァースもまた、ビルバインと同じ大きさまで肥大化していた。

シーラ「そんな……」

エレ『自らの意志でハイパー化を……!』

 珠姫の声がまた響く。

 剣と剣がぶつかり合い、拡散するオーラ力で津波が起こった。
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:17:47.27 ID:/iusA19D0<>
珠姫「お前が! お前なんかがーっ!!」

チャム「タマキィ! やめてぇぇぇ!」

 大振りの剣が曲剣で受け止められる。

黒騎士「その力だ、タマキ! 憎しみのオーラ力こそが、闘争本能を呼び覚ます! 私を活性化させる!」

 手首の捻りで火花を散らしあってから、ズワァースとビルバインが離れる。

 互いに50メートルを超えている。
 ハイパー化した機体はその大きさを十数倍に膨れ上がらせるのだ。

珠姫「落とす! 絶対に倒す!!」

チャム「キリノォ! タマキを止めてぇぇ!!」

 オーラソードライフルからオーラショットを拡散して飛ばす。
 海に落ちて飛沫を上げ、霧になると、そこにオーラ力を紛れ込ませた。

黒騎士「考えることは一緒だな、戦士タマキ!」

 オーラ力を黒騎士もまた霧に潜ませていた。
 二人は空中で剣を打ち、霧中でオーラ力を絡ませている。

 剣が弾かれ、オーラが揺れる。
 その度にオーラ力が拡散されていく。

珠姫「こんな……! こんなヤツにっ!!」

 押し切れない。
 バーン・バニングスもやはり達人なのだ。

 何よりもバーンは今、戦うことを何よりも楽しみにしている。

 珠姫と戦うことだけが、それが戦う理由。

珠姫「認めない! 戦うために戦う人なんて!!」

 足に力が入り、前傾が過ぎて腰が浮く。

 踏ん張る力を全て上半身に沸き上がらせ、肩と手首に集中させる。

 眉間とズワァースの喉が重なった時――

珠姫<熱血>「突きィィィィィィィィィィィッ!!」

 全霊で押し出した切っ先がズワァースを貫き、

黒騎士「遅い!!」

 刹那の見切り――左右の曲剣がオーラソードに噛みつく。

珠姫「――ッ!?」

 見切られた――突きが。

 ブレードブレイバーの正義の一突き――アトミックファイヤーブレード。

 呆然としながら、珠姫は倒さなければ、という思いだけを膨れ上がらせる。

 倒せるなら、

 憎むことで、倒せるなら――

チャム「タマキ!」

 オーラ力を吸い取った珠姫の剣が、膨張する。

 この力の使い方を――

チャム「タマキィィィィ!!」

 「サンダーブレーク!!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:18:24.44 ID:/iusA19D0<>
 ガガガガッ!!

 稲妻が走り、三本の剣を打った!

黒騎士「何奴!?」

梓「グレートマジンガーです!」

 遥か空、雷雲を背負って鉄の巨人が立っている。

梓「これ以上、この星を荒らすことは勇者グレートマジンガーが許しません!」

 グレートマジンガーが両の腕を水平に上げる。

梓「ドリルプレッシャーパァンチ! アトミックパンチ!」

 ドシュゥゥッ!

 螺旋を出した左手がズワァースへ向かい、もう一方の手がビルバインに向かう!

黒騎士「味方を!? 血迷ったか!」

梓「この程度で狂わされるオーラ力なら、ないほうがマシです」

黒騎士「な、なに!?」

 両腕を戻し、グレートマジンガーがファイティングポーズをとる。

梓「珠姫、聞こえていますよね……あなたのその姿が、真の聖戦士なのですか?」

珠姫「……!?」

梓「珠姫のそれは、正義ではなく暴力……もしもまだ暴力を振りかざすというのなら、グレートマジンガーが相手になるです」

チャム「そうだよ、タマキ! アズサと戦うの!?」

珠姫「そ、それでも……!」

 痙攣するビルバイン。
 オーラ力の動揺だ。

黒騎士「これ以上、決闘の邪魔をするというのなら、貴様から潰してやろう!」

 ぶぉん!

 ズワァースがグレートマジンガーに曲剣を投じる。
 数十メートル級のオーラバトラーのパワーはグレートマジンガーなど斬り、砕くだろう。

ヒカル「チェストォォォォォォッ!!」

 ぎゅぉぉっ――がぎぃんっ!!

黒騎士「なんだと!?」

 曲剣を弾いたのは巨大な手裏剣であった。

 打たれた方向――見たことない蒼い巨体がそこにいた。

 長大な剣を握り、大きさはハイパー化したオーラバトラーとも同格であった。

黒騎士「いや、それ以上に感じる……この生命の波動はなんだ!?」

ヒカル「ならば聞け! 我が親愛なる家族より託されし正義の超闘士!」

 剣が燈色に輝く。

ヒカル「我が名は天使ヒカル! 戦友を護る一振りの剣――グルンガストと共に巨悪を討つ!!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:19:01.47 ID:/iusA19D0<>
 グルンガストとグレートマジンガーがズワァースと打ち合った。

 より大きく作られたシシオウブレードが曲剣を弾き、マジンガーブレードがオーラバルカンを砕く。

チャム「タマキ! タマキ! しっかりして!」

珠姫「くっ……! うぅっ……」

 まただ、と珠姫は思う。

 あの、ダンバインの操縦桿を離せなかった時と同じだ。

 オーラ力を暴走させて、戦闘そのものに昂揚しきった自分。

 敵を倒すことしか考えられなかった。

 もしも、あのままズワァースを倒したことが出来たとしても、その後は?

 戻れただろうか――自信がない。

 いや、許されるだろうか……敵も味方も一瞬で多くを奪ってしまった自分が……

 あの人は、許すかもしれない――

珠姫「部長!」

 弾けたように珠姫は自責から顔を上げた。

 墜落したダンバインはどこへ――

 まさか、海に――

 『お探しのものは、こちらかしら?』

 水のようにかかる明朗な声。

 やや拗ねたような、でもとてもやさしい声。

アリサ「やれやれ、生まれ変わったガンダムの初仕事が、こんな地味な仕事とはね」

すずか「またそんなこと行って、一番に出てきたくせに」

 くすくすと笑う月村すずか――視界の端に映る、蒼い肩のモビルスーツ。

アリサ「タマキ! さっさとキリノを運んでやんなさい! 仲間の尻拭いは、この超天才美少女アリサちゃんが乗るスーパーガンダムにまっかせなさい!」

 新型ガンダムマスターグレードとGディフェンサーの合体したMGディフェンサー・スーパーガンダムがダンバインのコックピットブロックをビルバインの大きな手に預ける。

珠姫「あ、あの……!」

アリサ「なぁによ?」

珠姫「……ごめんなさい」

アリサ「はぁ!? そんなもん聞いちゃいないわよ! さっさとグラン・ガランに帰りなさいっての!」

すずか「ア、アリサちゃん……」

 いつの間にか、ビルバインは小さく、元の大きさに戻っていた。
 手の中に感じられる温かい光りが珠姫をぎゅっと抱きしめてくれているようだった。

珠姫「任務、了解」

 ビルバインは紀梨乃を収容するとウィングキャリバーに変形し、グラン・ガランへ戻った。
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:19:47.38 ID:/iusA19D0<>
唯<必中>「マジーン、ゴォォーッ!」

 出会い頭にマジンガーZはズワァースに全身でぶつかった。

黒騎士「ぬっ! 貴様!」

夕映「ダブルトマホゥゥゥゥク・ブゥメラン!」

 がきぃんっ!

 二本の手斧が曲剣を一本ずつ打ち落とす。

黒騎士「小癪な!」

 ズワァースが直刀を取り出し、威嚇する。

黒騎士「私のオーラ力に屈するがいい!」

 その時、閃光が走る。

黒騎士「ぐぉっ!」

 遠くから狙撃され、ズワァースの腕が落ちた。

アリサ「Gディフェンサーのロング・ライフル、いいじゃない」

梓「ブレストバーン!」

 ドドォォンッ!

 もう片方の腕も40000度の熱光線で破壊されてしまった。

黒騎士「お、おのれ……! おのれぇぇぇぃ!」

 憤怒の声にズワァースが更に膨張を始めた。

のどか「ま、まだ大きくなるの〜!?」

黒騎士「この憎しみの力が……! 我が騎士道を全うするというのなら!!」

 ボンッ!

 ズワァースは二まわりも大きくなった。

ヒカル「みんな、離れろ!」

黒騎士<気合>「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ぶぅんっ!!

 一振りでオーラ力の波がロボットたちに襲い掛かり、吹き飛ばしていく。

唯「わぁぁぁっ!」

梓「力が強すぎる……!」

黒騎士「ハァッ、ハァッ……この力……我がオーラ力によって、貴様らを倒す!」


ヒカル<ド根性>「黙れェッ!!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:20:18.60 ID:/iusA19D0<>
 動き出そうとしたズワァースにグルンガストが立ちはだかった。

ヒカル「貴様のその捻じ曲がった真理! 我が刃で叩き伏せる!」

黒騎士「小娘如きが! オーラ力もない人間が勝てるとでも!」

ヒカル「ならば見ろ!! 金獅子丸の真の姿!」

 手のひらを合わせて深く握る剣がまた燈色に光った。

 いや、光りではない、とろりと刀身を這うそれは液体であった。

 液体金属――リズム的に電流を与えることで形状を記憶したナノマシンが金属分子を活性化させて姿を変えるVG合金がシシオウブレードを覆い、更に巨大な、グルンガストの身長ほどもある大剣へと進化させた!

ヒカル「悪を断つ剣! 計都羅喉剣!!」

黒騎士「まやかしの剣など、我がオーラ力で!」

ヒカル「ならば首ごと彼方へ消え去れ!」

 ドンッ!!

 グルンガストの瞬発力はアルトアイゼンのそれより遥かに勝っていた。

 発達したT−LINK、ゲシュペンストの駆動限界を突破した強靭な精神力。

 思い出す、受け取った時の母の言葉――

美夜『圧倒的パワーで問答無用に直球勝負!』

ヒカル<必中>「それがグルンガストの全て!」

美夜『最ッ高に素敵なウチのヒカルちゃんにぴったり!』

 爆発するかのような突撃。

黒騎士「な――!? これは――!?」

 聖戦士のオーラ領域に踏み込んだにも関わらず、グルンガストを認識できなかった。

ヒカル<熱血>「計都羅喉剣! 暗剣殺!!」

 水平に空と大地を割るかのように、グルンガストの――ヒカルの剣はズワァースのはらわたを斬り裂き、


 ヒカル「――斬ッ!!」


 交錯の一瞬で取り残されたVG合金のエネルギー粒子が、ヒカルのT−LINKに反応して活性化し、繊維のように細く、鋼よりも硬い刃となってズワァースを縦一文字に斬り裂いた!!

黒騎士「ばっ……!!!!??」

ヒカル「我に、立てぬもの無し――!」

 ズガァァァァァァァンッ!!

 計都羅喉剣が元のシシオウブレードに戻ると同時に、ハイパー化したズワァースは爆散し、粉々に砕け散った。
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:20:45.26 ID:/iusA19D0<>
 グラン・ガラン

海晴「大西洋を横断するドレイク軍はどうやらアメリカ大陸へ戻るようです」

シーラ「部隊の多くを失ったとはいえ、彼の地はまだドレイク王の支配下にありますから」

シノン『それでも、今回の戦いでアレン・ブレディとフェイ・チェンカを倒すことが出来ましたし、黒騎士も封じることができました』

エレ『戦局はわたくしたちに傾いています』

シーラ「このまま追撃を仕掛け、バイストン・ウェルの争いごとに終止符を打ちましょう」

 一同が頷いた折に、カワッセから通信が入った。

シーラ「どうしましたか?」

カワッセ「リ、リムルさまが! ウィル・ウィプスより参られました!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/05/27(日) 19:22:27.34 ID:/iusA19D0<>

 ――戦乱は終結に向かっている。

 ――加速する物語の輪は少女たちを、男たちをどこへ連れて行くのか。

 ――次回、スーパーロボット大戦『戦士! 魂の故郷』

 ――ビヨン・ザ・トッド

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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 19:58:07.04 ID:stzkqaFE0<>
 第三十七話 戦士! 魂の故郷


 ――バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである

 心豊かであろうから

 私たちはその記憶を印されてこの地上に生まれてきたにもかかわらず思い出すことの出来

ない性をもたされたのだから

 それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 19:58:52.28 ID:stzkqaFE0<>
 第三十七話 戦士! 魂の故郷


 ――バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである

 心豊かであろうから

 私たちはその記憶を印されてこの地上に生まれてきたにもかかわらず思い出すことの出来ない性をもたされたのだから

 それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 19:59:20.61 ID:stzkqaFE0<>
 ゴラオン


チャム「タマキー! タマキー!」

珠姫「なに、チャム?」

 食堂にいた珠姫の袖をチャム・ファウが引っ張った。

 ゴラオンほかグラン・ガランとホワイトベースの混成艦隊はドレイク軍を追って大西洋を横断中であった。
 今頃ブリッジでは緻密な作戦が練られ、パイロットは少しでも疲労を癒そうとしている。

 珠姫はあまり自室にこもって超剣戦隊ブレードブレイバーのDVDを見ていたのだが、軽食をもらおうと食堂まで出てきたところをチャムに捕まえられた。

 チャム・ファウはとてもご機嫌だった。
 最近、戦闘のたびに激昂してしまう珠姫に脅えながらも励ましてくれる頼りないミ・フェラリオ。

 その彼女に格納庫まで連れて行かれて、珠姫は仰天した。

珠姫「な、なにこれ……?」

チャム「えへへぇ、すごいでしょう? ナノハたちも手伝ってくれたのよ!」

 なんと、ビルバインの装甲が深い緑色に染まっていたのだ。

珠姫「な、なんでこんな色に?」

 なのは、アリサ、すずかが三人並んで、困りながらも達成感に満ちた顔をしている。

すずか「あの、チャムちゃんが、タマキばっかり敵に見つかって大変だからって、敵に見つかりにくくするにはどうしたらいいって相談してきて……」

珠姫「チャムが……?」

アリサ「配色や、テストはなのはがやって、アタシたちが一晩かけて塗装してやったのよ!」

なのは「大事なところはみんなレイジングハートのおかげなんだけどね」

 むん、と袖まくりしてちからこぶを見せるアリサ。
 そのほっぺにはビルバインと同じ色のペンキがくっついている。
 たしかに赤い配色だった頃に比べればビルバインは地味な色になった。

珠姫「でも、だからって、勝手にこんなことしちゃ……」

チャム「だってタマキ、最近いっつも危ないんだもん……」

珠姫「チャム……?」

チャム「ドレイク軍からは、嫌なオーラがいっぱいよ……きっと、タマキ苦しいと思うの……」

珠姫「……うん、わかった。ありがとう」
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 20:00:21.92 ID:stzkqaFE0<>
 北米大陸 ボストン


トッド「どういうことだ……これは……?」

 次世代主力オーラバトラーの先行試作機ライネックへの道すがら、トッド・ギネスは降り注ぐ火球に戦慄していた。

 トッドの領地ボストンがドレイク・ルフトのウィル・ウィプスによって攻撃を受けているのだ。

トッド「ドレイクめ、契約を破るつもりか!?」

 騎士として認められたトッドは『アメリカを戦場にはしない』という契約を自ら破ったドレイクの許へライネックで詰め寄った。

トッド「ドレイク王! これはどういうことです!?」

ドレイク「トッド・ギネスか……? 見ての通りだ。ジャブロー侵攻のために北米大陸から物資を徴用する」

トッド「ならば、議会に掛け合い、供出させればいいはずだ!」

ドレイク「所詮、我らは異邦人。素直に応じるとは思えぬ。だからこそこうして力の差を見せているのだ」

トッド「しかし!!」

ドレイク「口出しは無用だ! トッド・ギネス! 地上人の貴様を騎士とし、この地を統治させた恩を忘れたとは言わせぬぞ!」

トッド「やりようはあったはずだ!」

ドレイク「トッド、もはや我らに後はないのだ……ここで補給を済ませ、ジャブローを落とさねば、我らバイストン・ウェルのコモンは全てこの知らぬ土地で朽ち果てることとなるのだ」

トッド「くっ……だがな、このボストンは俺の故郷だ! このまま戦火が広がればおふくろだって危ない! 続けるって言うなら、俺が相手になってやるぜ!!」

ドレイク「ふ……たった一騎のオーラバトラーで何が出来るというのか、痴れ者めが」

 ライネックの周囲をレプラカーンとビアレスが囲った。

トッド<気迫>「やってみせるさ! 俺は聖戦士なんだぜ!!」

 ボストンの街が夕焼けよりも赤い炎に染められていく。

 珠姫と戦う時とは別種の、もっと心の奥底から湧き上がってくるオーラ力が光りとなってライネックから放出された。

トッド「てめえら雑魚どもが、地上で地上人に楯突こうとするんじゃねぇよ!!」

 ザザッ! ズシャァッ!

 たちどころにトッドは迫っていた三機のビアレスを斬り伏せた。

 さらに遠巻きにしていたレプラカーンの小隊に突っ込み、オーラボムを撃つ。

トッド「コソコソしやがるなよ!」

 背後の気配に振り返り、剣先でコックピットを潰すと、後ろに控えていたやつにもオーラボムをお見舞いしてやった。

トッド「――ッ! 地上人のオーラ力!?」
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 20:01:21.46 ID:stzkqaFE0<>
 頭上に剣を掲げ、受け止めたのはビランビーの剣だった。
 レプラカーン、ビアレスが標準配備されている中、ビランビーは既に旧世代の機体だった。
 そんなオーラバトラーに好んで乗る地上人は一人しかいない。

アレン「トッド、ついに泥臭い本性をさらけ出したな!」

トッド「アラン! てめぇ、死んだんじゃなかったのか!?」

アレン「俺があの程度で死ぬかよ。今から死ぬのはてめぇさ」

トッド「チッ、てめぇはアメリカが燃えちまってもいいのかよ!」

アレン「だがな、てめぇを殺りゃ、アメリカは俺のもんにもなるのさ!」

トッド「……この野郎ッ!!」

アレン「ハイエナの分際が」

トッド「そうかよ……! そんなに死にたいのかよ! ならば望みどおりにしてやるぜ!」

 ライネックが閃光を放った。

 オーラ力でライトの色を変え、夕日に反射させて目くらましにしたのだ。

アレン「ぐっ……! てめぇ!!」

トッド<魂>「貴様にも地獄をみせてやるぜ!!」

 ライネックのオーラソードが雷を伴ってビランビーの頭上に振り下ろされる!

 ズガァァッ!!

アレン「おぉぉっ!!」

トッド「死ねよアレン!!」

 ドォォンッ!!
 ビランビーが爆発した。

ドレイク「トッド・ギネス……そのオーラ力は衰えてはおらぬようだな」

トッド「ドレイク、次は貴様の番だぜ!?」

ドレイク「……よかろう、攻撃をやめぃ」

トッド「ドレイク……?」

ドレイク「トッド・ギネス、その力、今一度ワシに貸してくれ。そうすれば、今すぐにこの地の略奪をやめよう」

トッド「けっ、最初からそうしていりゃいいんだ」

 攻撃が止むのを待って、ライネックは武装解除した。
 直後、センサーが強力なオーラ反応を感知した。

トッド「何だ!?」

 ズドォォォォォッ!!
 ゲア・ガリングのハイパーオーラキャノンがウィル・ウィプスに直撃していた。

トッド「な、何が起こってやがる!?」

 幸い、ライネックはウィル・ウィプスのオーラバリアに護られて助かったが、展開していたドレイク軍は次々と落とされ、壊滅していく。

ドレイク「くっ、おのれビショットめ……」

トッド「ドレイク!」

ドレイク「オーラバトラー、本隊を展開せい。奴らは急ぎすぎだ。耐えればシーラ・エレの艦隊が来る……さすれば奴らは挟み撃ちだ……トッド」

トッド「はっ!」

ドレイク「……この地上でついに、ワシは貴様しか頼れる者はいなくなった」

トッド「ドレイク王……」

ドレイク「……任せた」

トッド「はッ!!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 20:01:59.32 ID:stzkqaFE0<>
 地連邦軍第十三独立遊撃軍はゲア・ガリングとウィル・ウィプスの衝突から十数分後に到着した。

シノン「これは……」

紬「ボストンが……」

海晴「バイストン・ウェル同士で争って、地上に戦火が……」

エレ『止めなくてはなりません』

シーラ『えぇ、これ以上、悪しきオーラ力を地上に拡めてはいけません』

ミユリ「どうするの、シノン?」

シノン「……まずは、このままウィル・ウィプスと共にゲア・ガリングを挟撃します」

 タッチで戦略図を操作してユニットを割り当てていく。

シノン「ゲア・ガリングは左右に広がってドレイク軍を包囲していくつもりのようです。対してドレイク軍は中央突破を図っているようですから、私たちは部隊を三つに分けます」

 艦隊を護る本隊以外はそれぞれゲア・ガリングの両翼に攻撃するようだ。

海晴「なるほどねぇ、十字砲火でドレイク軍の突破を手助けしちゃうのね、それでいいのかしら?」

シノン「ドレイク・ルフトが包囲を脱出したら、停戦を持ちかけます。もしもそれを拒否すれば、今度はゲア・ガリングと共に彼らを再度包囲します」

海晴「けっこう、えげつないこと考えるようになったのね」

シノン「部隊にもっとも被害の少ない戦略です。指揮は任せましたよ、海晴さん」

海晴「ふふ、了解」
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 20:02:41.23 ID:stzkqaFE0<>
 ゲア・ガリングの左翼を突く一隊にRシリーズの三機があった。

氷柱「ホタ姉様、だいじょうぶ?」

蛍「うん、だいじょうぶ。氷柱ちゃん、ありがとう」

氷柱「そう……でも、ゼッタイに前に出ちゃダメよ。ホタ姉様は私が守るから」

立夏「リッカもいるヨーッ!」

蛍「ふふ、立夏ちゃんもありがとう」

氷柱「はぁ……とにかく、ママが何と言おうと、ホタ姉様を戦わせたりなんかしないんだからね」

 R−1、R−2、R−3。
 三機には順番に立夏、氷柱、蛍が乗っている。

 新投入されたR−2は背負ったハイゾルランチャーが特徴的な砲撃戦主体のユニットだ。
 ゲシュペンストTYPE−Rに比べればやや機動性が落ちるが、膨大なエンジン出力を利用した長距離砲撃で先行機であるR−1の支援をより効果的に行えるようになっている。

 さらに新しいパイロット、蛍と共に投入されたR−3はT−LINKフライトシステムで戦闘機に近い形を持ったユニットだが、主な役割は指揮管制の中継――D−3と似たものだ。
 武装は頭部バルカンと各種アンチミサイル、そして遠隔誘導兵器であるストライクシールド。
 テールユニットを用いることで重爆撃機としても使用できるが、それは断固として氷柱が阻止した。

海晴「ハイハイ、三人とも、そろそろおしゃべりは終わりよ」

 R−3の隣りにいるヴァイスリッターからの声。
 左翼を襲うR部隊には他にライディーンの一橋ゆりえ、ダンガイオーのミルキィホームズがいる。

海晴「さぁて、おねぇちゃんが道を作ってあげるからね」

 同年代ばかりのグループでまるで引率気分だ。

海晴「オクスタンランチャーのBモード……パワーシュート!」

 R−3のハイパワーエネルギーユニットと連結したオクスタンランチャーから以前の倍以上の射程を持つ長大な砲撃がゲア・ガリング艦隊のオーラシップに突き刺さった!

立夏「イックヨーッ! GO! GO!!」

 ぎゅぅん――!
 R−WINGが得意のスピードでオーラバトラー部隊に突撃していく。

ゆりえ『撃ちます! ゴォォッド・ゴォォォガン!!』

ネロ「ショルダーカッター! ブーストナックル!!」

 ドドォンッ! 大きな矢と手裏剣、エリーの乗った腕がオーラバトラーを粉砕する!

 コックピットにいてもビリビリくる戦場の雰囲気に蛍は圧倒された。

蛍「え、えぇっと……敵機の展開把握と……ホワイトベースとの連携が……」

氷柱「ホタ姉様、焦らなくていいから」

蛍「つ、氷柱ちゃん……」
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 20:03:40.24 ID:stzkqaFE0<>
氷柱「ホタ姉様は、こんなことしなくていいの。それを、ママに教えてやるんだから!」

 ドンッ! 大きく踏み込んだ氷柱のR−2がハイゾルランチャーで切り崩し、そこにR−1に変形した立夏がどんどん敵を落としていった。

蛍(あぁ、それでも……)

 蛍は二人のことが心配で心配で仕方ないのだ。
 氷柱は蛍がママに無理やりやらせていると思っているようだけど、本当は違う。
 いや、無理やりやらせていると思い込みたいということも蛍はわかっている。
 だからこそ、蛍はもういてもたってもいられないのだ。

 R−3のポテンシャルをフルに引き出せるのは蛍しかいないと知ったから。

 個性豊かな19人姉妹の食生活を春風と共に立てている蛍は姉妹の中でも特に家族想いだ。
 T−LINK適正テストにもその結果がはっきりと出ている。
 Rシリーズの根幹となるR−3に必要な要素である平均値でヒカルや氷柱以上――いや、計測上では誰よりも高い数値。

蛍(本当なら、春風ちゃんだったんだもんね……)

 決め手は、ちょっぴり聞かされたおにいちゃん≠フこと――

 ヒカルが見つけた男の人≠R−3に乗せることが出来るかもしれない、とママが言ったこと。

 そして何より、生き別れてジオンに言ってしまったおにいちゃん≠ゥもしれないということ。

蛍(でも、そんなこと言ったら、きっとすごく氷柱ちゃんは怒るわ)

 ヒカルお姉ちゃんが連れてきた人ならきっと悪い人じゃないはずだから、立夏ちゃんはきっとヤッター!って喜びそうだけど……氷柱ちゃんは違う。

 聞けば、ジオンの人らしい。
 そうしたらきっと氷柱ちゃんはコロニー落としのことやいっぱい、色んなひどい言葉をぶつけると思う。
 その人に言っても仕方ないことだとわかっていても、言ってしまう。
 氷柱ちゃんはそういう子だから。

蛍(それに、せっかく見つかったおにいちゃんだもん!)

 はやく会いたいと思う。
 どんな人なんだろう。
 どんな料理が好きなんだろう。
 どんなコスプレが好きなんだろう。

 安心して、みんな笑顔でおにいちゃんに会うために――

蛍「――!」

 家族のことを考えて緊張していた心が落ち着くと、蛍は自然とT−LINKを発動させていた。

蛍「R−3……みんなを守ってね……ストライクシールド!」

 バシャッ!
 フライトユニットに取り付けられている六つの小さな盾が射出される!

 それぞれが真っ直ぐに飛んで味方機の陰を狙っていた敵機に直撃した!

海晴「蛍ちゃん……スゴイ……」
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(埼玉県)<>saga<>2012/06/10(日) 20:04:16.33 ID:stzkqaFE0<>
 天使立夏
 十二歳 TL4 連続行動 戦意高揚
 加速 直感 突撃 熱血 幸運 愛
 AB 消費精神ポイント10%減

 天使氷柱
 十三歳 TL6 援護攻撃 再攻撃 Bセーブ
 鉄壁 努力 熱血 狙撃 友情 愛
 AB 援護攻撃時ダメージ10%

 天使蛍
 十四歳 TL7 援護防御 援護攻撃
 てかげん みがわり 激励 脱力 応援 愛
 AB 2マス目のユニットまで援護行動可

 天使吹雪
 七歳 TL5
 偵察 分析 再動 補給 集中 愛

 天使観月
 四歳 TL9
 直感 覚醒 復活 夢 愛 奇跡
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(埼玉県)<><>2012/08/14(火) 22:35:53.45 ID:6YlZ6Js+0<>

 珠姫「リムル様……本当にだいじょうぶですか……?」

 リムル「ありがとう。平気です、タマキ」

 ビルバインはリムルを乗せてゲア・ガリングに来ていた。

 ドレイクを包囲し、優位性を保った状態の今が同時に停戦を持ち込む機会なのだ。

 ルーザ「リムル! 親不孝な娘め! 何をしに敵のオーラバトラーでやってきたか!」

 格納庫までルーザは出迎えてきた。

 リムル「お母様! わたくしはこの愚かな戦争をやめさせるために参りました。どうか今一度お考え直しください!」

 ルーザ「馬鹿な娘が! 地上人に感化されましたね!」

 リムル「いいえ! わたくしはただ、命ある者たちが無為に死ぬのを止めたいのです!」

 ルーザ「しかし我らが戦わねば、我らバイストン・ウェルのコモンはこの地上で奴隷のごとく扱われるでしょう! そんなこともわからないのですか!」

 リムル「そんなことはありません! 地上人もバイストン・ウェルのコモンも同じ人間です! 少なくとも、この戦場にいる兵士の皆さんはそう思っているはずです!」

 ルーザ「そう、同じ人間よ! だからこそ争うのだ! 故郷の違いでな! それが本能というものであろう!」

 リムル「故郷の違いで争うというのならば、何故お父様と……ドレイク・ルフトと争うのですか! せめてバイストン・ウェルの人間としてまとまり、バイストン・ウェルへ帰還することを考えるべきなのです!」

 ルーザ「戻れる保証がどこにある! たとえオーラロードを開いたとて、そこを超えなければ我らはオーラロードを永久にさまようことになるのですよ!」

 リムル「いいえ、戻れましょう!」

 ルーザ「何故か!?」

 リムル「バイストン・ウェルは魂の故郷です。わたくしたちの魂が真に帰ることを望めば、必ずやオーラ力はわたくしたちをバイストン・ウェルへ連れて行ってくれることでしょう」

 ルーザ「リムル……?」

 リムル「お母様……わたくしたちは帰りましょう……バイストン・ウェルへ……」

 やわらかな微笑みを向けられて、ルーザは僅かな時間、瞳を揺らし、そして――

 ルーザ「愚かな娘よ……」

 珠姫「――!?」

 女王の袖から覗いた不吉な輝きを珠姫は気づけなかった。 


 パァーン!


 乾いた音が響いた。


 リムル「おか……ぁ……」

 がくりと膝が折れたリムルの後姿――珠姫は、その首筋に赤い線が下りてくるのを確かに見た。
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(埼玉県)<>saga<>2012/08/14(火) 22:37:04.84 ID:6YlZ6Js+0<>
 魂を磨り潰されたかのような胸の苦痛。

 川添珠姫は、ただ叫ぶしかなかった。

 珠姫「うあああああああああああああああっ!!」


 オーラバトラー、ビルバインの反応は早かった。

 既に高いオーラ力のレベルで珠姫と繋がり、半身となっていたビルバインはオーラバリアで珠姫を銃撃から救い、浮上した。

 ルーザ「や、奴を仕留めよ! オーラバトラー隊!」

 珠姫「どうして、どうしてそんな簡単に……!」

 チャム「タマキ……! タマキィ!」

 珠姫「チャム! それでも私は! 私は……っ!」

 チャム「ダメ……! だめぇ、タマキ……! 憎しみの力は……!」

 珠姫「この痛みと怒りを……! 憎しみに変えずに済むなんて……っ!」

 チャム「タマキは……! タマキは正義の味方でしょう!?」

 珠姫「う、うぅぅぅ……!」

 浮上を続けるビルバインはゲア・ガリングの艦橋も超えて剣を掲げた。

 一瞬、ビルバインの全身が膨れ上がった。

 チャム「ダメぇ! ハイパー化しちゃだめぇ!!」

 珠姫「こんな……こんな物があるから……!」

 ビショット「お、落とせ! 奴に火力を集中せよ!」

 ゲア・ガリングの砲口の全てがビルバインに向けられる。

 チャム「だめよ、タマキ! 怒りと憎しみの力に飲み込まれちゃだめぇ!」

 珠姫「ぐっ……うぅぅ……!」

 一斉射が珠姫を包囲し、ビルバインが爆発に飲み込まれていく。

 だが、もはや実態さえ伴う珠姫のオーラバリアを前にして全て無力であった。

 しかし、そのオーラ力の膨張は珠姫自身にもコントロールできないほぼのものである。

 珠姫「あぁっ! うぐっ! うぐぁぁ……っ!」

 チャム「タマキぃ! いやぁ! ハイパー化なんてしないでぇ!」

 珠姫「にっ! 憎しみの! オーラ力が……!」

 自覚できるほどに強い感情。

 それでも抑えきれない感情。

 自分の中のいっとう激しい感情がむくむくとビルバインを肥大化させていく。

 ルーザ「撃てぇ! 撃ち落とすのじゃぁ!」

 ゲア・ガリングからの砲撃は止まず、オーラバリアで防ぐも受けた衝撃がより一層大きな憎しみを珠姫に与え続ける。

 珠姫「それでも……っ! それでもっ!」

 がくん、とビルバインの全身が身を竦める。

 珠姫「私は……! 私は聖戦士に……!」

 チャム「タマキ!」
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(埼玉県)<>saga<>2012/08/14(火) 22:38:30.47 ID:6YlZ6Js+0<>
 珠姫「私は……! 聖戦士だ!!」

 鼓動が、ビルバインと繋がった。

 その瞬間、眩しい光りがゲア・ガリングに降り注いだ。

 ビショット「な、何事か!?」

 光りはゲア・ガリングだけに降り注いだのではなかった。

 オーラバトラーにも、周囲の艦艇にも、海の波にも平等に降り注ぐ珠姫のオーラ力なのだ。

 覚醒したのだ。

 珠姫<正義>「私の中の怒りも! 憎しみも! この身体に巡る全ての悪しき心! ぜんぶ出て行け! 凶暴すぎるオーラ力はこの剣先に宿れ!!」

 光りの中は無数のオーラ力で満ちていた。

 珠姫はその全ての感情を掌握している。

 戦争をする喜びに打ち震える者。

 仲間を奪われた怒りに叫ぶ者。

 帰る故郷を失った寂しさを抱く者。

 蔑まれた過去を捨てきれずにいる者。

 珠姫はその全てを識り、ビルバインの剣だけをハイパー化させた。

 チャム「タマキ! タマキの悪いオーラ力が無くなっていく!」

 珠姫「ゲア・ガリング! ゲア・ガリングの兵士! 生き残りたければ動くな! 動けばオーラ力の報いを受けるぞ!」

 肥大化したオーラ力がオーラソードへと収束し、ひたすらに刀身を伸ばしていく。

 珠姫<魂>「オーラ力よ! 人々の戦う意志を削げ!」

 チャム<祝福>「やっちゃぇぇぇぇ! ハイパーオーラ斬りだぁぁぁぁ!」


 ギューンッ!!


 ビルバインの体長の何倍にも伸びたオーラソードがゲア・ガリングを真っ向から唐竹割りにした!


 ゲア・ガリングは真っ二つに割れた。

 だが、内部にいる人間は一人として傷つけられてはいなかった。

 イメージを実体化したオーラソードにとって、人間を避けることなど容易いことである。

 それでもゲア・ガリングは沈んだ。
 人々が生きるか死ぬかは、大海原へと珠姫は委ねた。

 しかし、悪しきオーラ力で世界を呑み込もうとする者はゲア・ガリングの者だけではなかった。
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