◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/05/30(月) 00:46:44.47 ID:0jP/KOvAO<>前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298121610/
の続きです。
2スレ目もよろしくお願いします。
<>インデックス「せんぱい?」一方通行「……ガラじゃねェな」
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/05/30(月) 00:47:58.61 ID:0jP/KOvAO<>




過去のある出来事がトラウマで、高校受験にも失敗してしまった少年、上条当麻。
そんな彼は今現在、高校にもマトモに行かずに自堕落に
家での引きこもり生活真っ最中であった。

夏休みも残り僅かとなったある日。
いつものように怠惰な日々を過ごす彼は、厨房へ入る。


(そういやアイツは、こんなに暑い日にもラーメンを食べてたっけ)

陰鬱な表情を振り払うことも無く、煮え立った湯を眺めて――。


「――とうま!」

「……」

「ねえ、とうま!」

声が、した。
それは聞き馴染みのある、いや、あったと言うべきか。

「……あー」

「ちょっと、とうま?

私のこと見えてる?」

「俺はついに…………狂ったのか」

「あっ、私はね、掻き卵がいいんだよ!」

幻覚だ、と思いつつも振り返る。

――そこには。

「かきたまー♪」



――あの日、確かに死んでしまったはずの少女――インデックスの姿があった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/05/30(月) 00:50:09.90 ID:0jP/KOvAO<>



「……私はね、多分、叶えたい願い事があるんだよ」

「願い事?」

「うん、自分でも忘れちゃったんだけどね」

「……なんじゃそりゃ」


茶化してはみる。
だけれどその鬱いだ笑みが、妙に心に引っかかった。


(あの日死んでしまった、インデックスの願い事……)

そもそも彼女は幽霊なのか、はたまた幻覚にすぎないのか。


「せいり!せいりなんだよ!」

「……ご丁寧に成長した姿でときたか……」

「上条?貴様、何言ってるのよ」

「……別に」


「……わざわざ届けてやったんだから、ちゃんとやりなさい」

「せいりってば、スッゴく可愛くなったんだよ!
ねえ、とうま?」

「…………あんな底辺、頼まれても行くかよ」

「とうま……?」

「……馬っ鹿じゃない」

「ちょっと、喧嘩はだめー!」


悩む彼を、まるで急かすかのように現れるかつての仲間たち。




「まま、ぱぱ、あっくん!」

「今日はお姉ちゃんの好みざりしカレーよー!」

「……ごちそォさま」

「あっくん、大きくなったかも!」

「――ローラ。
いい加減、意味も無いことは止めたらどうだ」


「……だってお姉ちゃん、自分が死にしことに……まだ気づきぬようで……

――いつでも鈍かったから」



「まま……、私は……。
自分が死んじゃったことぐらい気づいてるんだよ……」


置いていかれたままの彼女。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/05/30(月) 00:51:26.40 ID:0jP/KOvAO<>



「……上条当麻?」

「っすている!あいさ!」

「こんにちは。上条くん」


(俺が行くはずだった学校の……)

「で、君はそんな所で何を」

「いや、あ、その、インデックスが」

「――インデックス?」

「……いや、」

「うわー、すている大きくなったかも!
昔はそんなに変わ」

「――はっ、何を言ってるんだ。
インデックスは、死んでるじゃないか」

「……あ」


「聞いたけどさ、君、高校受験に失敗してここらでも低レベルな学校行って。
ずっと引きこもってるんだっけ。

その上、あの子の幻覚見て?
――頭、狂ってんじゃないのか?」

「すているっ!!」

「……俺は……」

ただただ、ひた走る。

「あの子のことになると。急に真剣になるのって。
……君も同じでしょ。マグヌス君?」


目的が無いのはあの日だって一緒の筈なのに、どうして道まで分からなくなってしまったのか。





「この秘密基地なら誰も……」

「……あれ、カミやん?
ひっさしぶりやなー! どないしたん?」

「……青ピ?」


止まっていた彼らの時間が、今動き出す。




『あの日見た本の題名【タイトル】を僕たちはまだ知らない』





<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/05/30(月) 00:53:44.20 ID:0jP/KOvAO<> 以上嘘あらすじでした。
すみません、そしてすみません!
一度やってみたかったんです。

本当は、インデックスと一方通行の白コンビがなんやかんやで仲良くなってく何となく薄明るい話です。



一応、あの花パロの配役(色々とかぶってすみませんでした)

めんま→インデックス
じんたん→上条さん
あなる→吹寄
ゆきあつ→ステイル
つるこ→姫神
ぽっぽ→青ピ
めんま父→アレイスター(笑うところです)
めんま母→ローラ(上に同じく)
めんま弟→一方通行(上に(略))


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/30(月) 00:57:33.36 ID:boqtpodP0<> びっくりした。ちょうびっくりした!

一家の配役が怖過ぎるわ。何この最凶家族 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/30(月) 00:58:01.12 ID:/TGl8sA6o<> 新スレ乙
これからも楽しみだ <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/05/30(月) 01:00:52.40 ID:0jP/KOvAO<> 書きためも無いので、続きは次回でお願いします。
TIGER&BUNNYの緑茶党の方、>>1でした! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/30(月) 01:03:02.45 ID:ty3tqbOio<> 乙
歩く協会を着たステイルか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/05/30(月) 01:03:38.92 ID:qAOy+DkF0<> 乙!スレ間違えたかとwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/05/30(月) 01:03:45.31 ID:/1OzWqiQo<> >>1乙です
めっちゃビックリしたww
続き楽しみにしてます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/30(月) 01:19:53.16 ID:kJ9kM+Dco<> >>1乙!

ってかそのネタでやってるスレ他にあるよww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/05/30(月) 01:27:37.12 ID:FciT/oPMo<> >>1乙

1000とっちまった……すまん、まじで <>
◆ObanGQEW7M<>sage<>2011/05/30(月) 01:36:24.68 ID:0jP/KOvAO<> >>13
気にしないで下さい!
オチはヴィクトリカちゃんとアスタロッテちゃんprpr(^ω^)だったんで!
埋めていただいてありがたかったッッ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)<>sage<>2011/05/30(月) 01:45:21.97 ID:NAPHJ8t+o<> じゃあめんまは俺がッ!

というか禁書読んだことあったら絶対あの花は一瞬重なって見えるよね
そしてそのままはまるよね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/30(月) 01:48:51.30 ID:ose/jmuvo<> スレ立て乙!

あービックリしたwww
マジで上条さんがその方向に行ったのかと焦ったわwww
禁書家マジチート <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<><>2011/05/30(月) 03:16:57.32 ID:zvXnjvjP0<> いちおつ!

台風のなか続き待ってるお(^ω^) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(沖縄県)<>sage<>2011/05/30(月) 08:30:16.75 ID:QhIS3dTBo<> 乙
いきなり脅ろかすな、バカヤロウwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/30(月) 21:38:30.43 ID:mNQ9EapDO<> どういうことだ…
前スレ970からずっとパロだったってこと? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/05/30(月) 22:06:27.32 ID:sdhe+nyto<> ぶっちゃけ前スレの最後らへんはネタバレにならない程度の解説欲しかったり… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)<>sage<>2011/05/30(月) 23:13:40.40 ID:Dq6B2SPAO<> >>19
多分別物だろう、残念なことにな…
もう嫌な予感しかしねえ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/05/30(月) 23:27:05.93 ID:XnJXBlKMo<> いきなり赤字使うから某スレの作者が本章剥き出しにしたのかと思っちまったよ
ID見たら違ったから安心したけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/31(火) 00:28:40.11 ID:Gh16OmdDO<> >>21
なんてこったい…
どうなるんだこれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/31(火) 21:21:14.53 ID:jwYsUORq0<> あれだな、話し方が初期の球磨川チックだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県)<>sage<>2011/06/02(木) 17:41:39.91 ID:/4xxFZsK0<> これ、もしかして風斬の話した内容も正しいのかな?
ってなると・・・あばばばb
<>
◆ObanGQEW7M<><>2011/06/02(木) 19:36:33.38 ID:a8QQ8lXAO<> 新スレほっぽといてすみません。
あと分かり難くて勿体ぶっててすみません、展開なのでご容赦下さいとしか言えないです。

>>19
前スレは正史です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/06/04(土) 00:31:33.77 ID:GXH9LMDp0<> わかっている
投下はまだかああああああ!!! <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/06/05(日) 19:01:08.43 ID:WjQ82JYAO<> こんばんは、梅雨時で嫌な天気ですね。
あと今晩投下するのでお願いします。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/05(日) 19:06:27.19 ID:rHi9x2dE0<> 待っていたのである。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/06/05(日) 19:36:00.01 ID:0kCsNB2p0<> うおおおおおおおおおおおおおおまってたぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/06/05(日) 19:46:53.49 ID:MJLwpQFFo<> 今から楽しみですねー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/05(日) 21:46:11.48 ID:JkFW9i/F0<> わくわくてかてか <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:14:00.78 ID:WjQ82JYAO<>
side index-1



――ガチャガチャ

先ほどから携帯と思われる操作音がする。
場所は斜め後ろだろうか。
見ると、可愛らしい風貌の女子が必死に機械を操作していた。

「……」

咎められないかとハラハラしながら、彼女はまた正面を向いた。


「8時2分に快速列車が通過いたします」


見渡す限り人、人、人だらけのプラットフォーム。
これが皆、第12学区へと向かうのか。
そしていざ入学したら、このラッシュに毎日襲われるのか。

モノレールを待つ列の先頭で、インデックスは嘆息した。


(眠いなあ……)


昨晩ろくに眠れなかったせいで、決戦当日の朝まで持ち込んでしまった。

今では立ったままでも旅立てそうだ。
というか、電車内で寝てしまおうかなと風に揺れる黒スカートを見て思う。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:18:45.02 ID:WjQ82JYAO<>


鞄の中の参考書類に今更手を伸ばすつもりもない。

意味もなく性能の良い脳に、平安時代の儚い悲恋も、未来永劫憎まれるべきいつかの大虐殺も押し込めてしまったから。
感慨もなく、感情を持たない数式と同じように。

そして正直なところを言ってしまえば
自分が落ちることは無いとインデックスは思っている。
どんなにらしくなくても完全記憶能力は偉大だ。
忘れたいことも忘れさせてくれない。

そして手回しだったり口添えを
あのトップ――自分によく似た女はしているだろうから。


何より、リフレインするのは少年の声。


『早くオマエもこっちに来い』


マフラーに唇を押し当て、微かに囁いた。
「……いきたいな」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:27:25.79 ID:WjQ82JYAO<>
side accelerator-1



――何やら薄ら寒い。
そしてガンガンと頭が痛む。


寒い、痛い。
それだけで、これは多分あの女の仕業に違いないと彼は確信した。


「……番外個体が……」


毛布を引っ付かんで、身を温めよう。
本能のまま彼は近くにあった布を弄る。
妙に薄っぺらい気もするが、とりあえず此方側へと。


ぴーひょろろろ


「……空調、変えやが……」

「ちょ、ちょっと」

あまりに薄く、滑らかだ。
更に嫌なことに、何やら甲高い女の声と小鳥のさえずりが聞こえるではないか。


「……て」


……ベッドとは、こんなに固かっただろうか。
……パジャマはこんなに厚かったろうか。


――彼は恐る恐る、目を開けた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:33:46.64 ID:WjQ82JYAO<>

「――どこだ、ここ」


視界に飛び込むのは四車線の道路。
そして、茶色にフリルがあしらわれた可愛らしい布。
面積が小さく、妙に生暖かい――?


「おはようございます、一方通行、とミサカは汚物を見るような目線を隠さずに挨拶します」

「……あァ?」


声の聞こえる方へと、まだ靄のかかった頭を動かすと
黒のタイツ越しに透ける、白地にリボンの着いた三角形が見える。

太ももはまだ細く、成長過程ということをまざまざと思い知らせる。


「上位個体のスカートから手を退かして下さい、性犯罪者とミサカは訴訟も辞さぬ方針です」


絶対零度の目線を向けてくる、白衣を着たミサカが1人。


「……まさかパンチラしないと死んじゃうような病に感染……。
もしやキャトラれた!?ってミサカはミサカはあなたを本格的に心配してみる!」

「電波っぷりもいい加減にして頂けますか、上位個体」


茶色いワンピースを身に纏い、一方通行に布をまくられたミサカが1人。


「電波なんかじゃない!
これはね、あったかもしれない一例を提案してるのってミサカはミサカは10039号に徹底解説してみたり!」

「単にカフェインを切らした彼が、連日の疲れにより眠りこけただけです。
プチニートとは違い、今日も今日とてミサカは白衣の天使として勤労しなくてはいけないのです。
正直言ってツッコミは勘弁願うのですが、とミサカは包み隠さずに真実を伝えてみます」

「四月からは転」

「……うるせェ、人の頭上でギャーギャー騒いでンじゃ」


頭を上げようとしたのだが、下から引っ張る形でスカートを掴んでいた。

配慮に欠けるとしか言いようが無いだろう。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:41:30.49 ID:WjQ82JYAO<>


そのまま気づかずに、力を込めてしまった。


「あわわ」

下からの衝撃を受けた打ち止めは、ベンチへ向かってよろめいた。

そして持ち上がるは一方通行の白い頭。


「――えっとですね、第1位はソフトSMがお好きというAVを製作しましょうか?」

「……」

あまりに運が無さ過ぎる、一方通行はドッキングしたことをしばし忘れ茫然自失としていた。

見事なことに、一方通行の頭はスカート内に潜り込んでしまっていた。


「あ、ちなみに何故かずっと接続を切ってる10032号以外の全ミサカに配信されたのでよろしくお願いしますとミサカは熱くなる胸を押さえつつ説明します」

「あ、そう言えば12月から10032号ってどうしたの?ってミサカはミサカは素朴な疑問を投げかけてみる」

「さあ、ミサカの預かり知ら」


「人を無視すンじゃねェェェ!!」


スカートがビリビリと震えるぐらいの大声だったと、後に打ち止めは語る。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:44:34.84 ID:WjQ82JYAO<>
side index-2


「……はあ」


大きな溜め息、果たして誰がしたのだろうか?

――自身であることに気付くまで、それほどの時間はかからなかった。


メランコリーなのは彼だけじゃなかったのか。

それにしても、胸でとぐろを巻くこの暗色は何なのか。
もしぱっくりと開けたとしたら、螺旋状にへばりついているに違いない。
きっと汚くて腐臭も放っている。


大半の受験生が緊張しながら会場に向かっている中で、一人他を心配しているのも妙な話だった。
だが、仕方がない。


(結局、昨日も)

彼女の同居人の帰りは遅かったのだから。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:46:39.42 ID:WjQ82JYAO<>

心苦しくて、でも無力な彼女には何も出来ない。
いい加減、誰かを食い物にして生きていくことも、依存していくことも止めたいのに。
誰かを、傷つけずに――?

ふと、空を仰ぐ。
プラットフォームの切り取られた視界からは曇天しか見えない。


(ちがう。“誰か”じゃないよ――私はそんなに強くない。

だったら、きっと誰にも迷惑をかけずに)

最低限、彼だけを守る。
何に変えても、必ずに。
自分のせいで傷んでしまった彼に、もう戦乱は必要ないのだから。

ヒーローは、もう居ない。
残ったのは不幸な少年だけ。



古いピアノが擬人化したような少女が、あの日尋ねてきた。

――だったら、単体では無力なお前に何ができる?


『プライドを捨てあの女狐【最大主教】と手を組むか?
背信を恐れずに学園都市に泣きつくか?
――ああ、自我を亡くしても良いならもう一つ。
現在の人類で唯一可能性を秘めたお前自身が、魔神に到達するって案もあるな』



でも、それには全部穴があったから。


(私は、どれか一つを選ばなかった)
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:54:09.63 ID:WjQ82JYAO<>

『世界から彼を守るために何が出来るか』

だなんて、あの狭い部屋に同棲していた2人を思うと、仰々しい言葉はやけにミスマッチに思えた。
だけれど、最近になって彼女はようやく認識を改めたのだ。
否、認めたというべきか。

地球規模の禍根の中心に楔で打ちつけられていて
彼女らがどんなにもがけども決して逃れられない。
だから見逃してくれない。
かといって、戦わせてもくれない。
ゆっくりと飼い殺しにされていく。



その時、中世の娘の伝奇を思い出した。

家の策略だったろうか、死なない程度の毒を食事に入れられ続けたその娘。
ほんの少しずつ増えていくせいで、猛毒にも耐えうる体を手に入れた。

結末はくだらない。

(ただのキスで恋人を殺しちゃった)



去年の夏から秋にかけて。
そうやって時を経るにつれて、じわじわと彼の傷は増えていった。
最初は掠り傷で、その次は湿布で、包帯で、骨折。

集中治療室にも入った。


そうやってインデックスの預かり知らぬ所での怪我が増えていく。

(だけど私は)

せめてもの慰めで、何も出来ずに待つことを美徳だと正当化していた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 22:58:00.75 ID:WjQ82JYAO<>


少しずつ、少しずつ、だけど着実に彼は壊されていく。
自分という不幸【カンタレラ】によって。
こんなことになるのなら、あの日――管に繋がれ辛うじて息をした日から、軟禁でもしておけば良かった。


(イギリスにも、私だけで)


――ガチャガチャ。


どこからともなく金属が擦れる音がした。
ふと気がつくと、また自己嫌悪に陥っている。
悪循環をどうにかできる対策を見つけていないインデックスは、ぎこちなさげに頬に手をやる。

じわりと伝わってくる生ぬるい体温。
末端は他と比べてやはり冷たく、思いっきり顔をしかめた。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:02:41.47 ID:WjQ82JYAO<>
side accelerator-2


「……あァー、体いてェ……」

背もたれに体を預け、髪の毛を無造作に上げる。
しばらくそうしていると、わざわざベンチを回りこんで顔を覗く打ち止めと目線があった。

「杖、近くにあったよってミサカはミサカは報告してみたり」

「もう無くさないで下さいね、とミサカは最後通牒を突きつけます」

「――わりィ」

すぐ隣、見慣れた杖が立てかけられた。



「それにしても、何故こんな所で寝てしまったのですかとミサカは誰しもが浮かべる疑問を敢えてぶつけます」

相変わらず平坦な声だった。
聞くと、いつまでも帰って来ない彼を心配した打ち止めの感情波が鬱陶しくて
早朝から一方通行探索に付き合ったのだという。

黄泉川はアンチスキルの夜番で不在、番外個体は風邪をひいているので家で留守を、元凶の芳川は車でめぼしい所を探しているらしい。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:03:28.71 ID:WjQ82JYAO<>
side accelerator-2


「……あァー、体いてェ……」

背もたれに体を預け、髪の毛を無造作に上げる。
しばらくそうしていると、わざわざベンチを回りこんで顔を覗く打ち止めと目線があった。

「杖、近くにあったよってミサカはミサカは報告してみたり」

「もう無くさないで下さいね、とミサカは最後通牒を突きつけます」

「――わりィ」

すぐ隣、見慣れた杖が立てかけられた。



「それにしても、何故こんな所で寝てしまったのですかとミサカは誰しもが浮かべる疑問を敢えてぶつけます」

相変わらず平坦な声だった。
聞くと、いつまでも帰って来ない彼を心配した打ち止めの感情波が鬱陶しくて
早朝から一方通行探索に付き合ったのだという。

黄泉川はアンチスキルの夜番で不在、番外個体は風邪をひいているので家で留守を、元凶の芳川は車でめぼしい所を探しているらしい。
<> 重複……だと……?
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:05:54.33 ID:WjQ82JYAO<>

「……ま、オマエらの思ってるどォりじゃねェの」

10039号の瞳は、一瞬だけ翳りを見せる。
まばたきをする間に戻ってしまったが。

「――ミサカの予想では、あなたはホームレスに憧憬の念を抱いていたことになるのですが」

「それは違ェ」

左手で杖を掴み、全体重をそちらにかけた。
妙な格好で寝ていたからか、首の筋が痛む。

「ヨシカワに連絡とってるから待ってってミサ、あ、もしもし?」

打ち止めの携帯のLEDが示すのは午前8時。

「――どこにも行かねェから、そこで待ってろ」

気だるさを飲み込み、歩きだした。
3月上旬の早朝にしては暖かい。
今まで起きなかったくらいだ。

(……頭いてェ)

近くにあった自販機に硬貨を飲ませ、彼女らが好みそうな飲み物を選んだ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:10:43.71 ID:WjQ82JYAO<>
side index-3


「3番線を快速列車が通過致します。
白線の内側までお下がりください」

まだ目的の車両が到達するまで5分以上もあった。
ポップな音楽と発音不明瞭な男性の声。
すぐアスファルトへ目を落とす。


――ガチャ、ガチャガチ、ガチ、ガガガ!!


白線内に彼女のローファーは無い。
危ないところだ、気づかなければどうなっていたかと、足を動かして



――とすっ。

気付いたのが不思議なくらい、軽い軽い音だった。


(え――?)


後ろからふいに押され、彼女はよろめく。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:12:37.89 ID:WjQ82JYAO<>



運悪くもつれ、転がり、回転して。
足が止まらないまま、インデックスは自分が先ほどまで居た方を向いた。


ガタンゴトン、ガタン、ガタン


(――妨害かな)


無表情で真っ直ぐに腕を伸ばすのは、知らない男子学生だった。


足に力を込め踏みとどまりたいのに、末端に命令が行き届かない。
寝不足と履き慣れない靴が祟ったのだ。


“止まれ”を意味する点字上で、ステップを踏む。

(――誰か)


インデックスは後ろに立つ人物を見る。

そしてその中に、ツンツンの黒髪を、無造作に縛られた一房を、――血の色をした瞳を探す。


勿論、誰だって居るはずはなく。

(あ――)

頼れる知人が助けてくれる筈もなく。
彼女は悟らざるを得ない。

(こうやって他力本願だから――)

孤独。

先ほどまで彼女の後ろに立っていた人物は、皆澱んだ目をしている。


精神汚染の術をかけられているのかもしれない。
――解く術の無い今では、関係の無いことだったのだが。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:19:22.68 ID:WjQ82JYAO<>


迫り来るモノレールが目の端に映り込む。
(だから)


足が地面から離れた。
そして舞い上がる銀髪。


(惨めな終わり方を――するんだ)


あてはないのに、手を差し出している。
誰も受け取ってくれはしないのに、生に固執する自分が怖かった。



そこまでして生きていたいのか。
死屍累々の上の玉座に腰掛けるなんてとんだ恥知らずが。


――何と罵られても良い、否定しない。

だからどうか、誰かお願い。
この手を受け取ってくれないか。



「――まだ、生きなきゃいけないんだよ」

ぽっかりと開いた闇に、本音は終ぞ消えていく。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:24:34.78 ID:WjQ82JYAO<>
side accelerator-3



ゴトン

紅茶、ココア、コーヒーが勢いよく降りてきた。
屈んで受け取ると、反射する自身の顔が見える。

「……ひでェ顔」

白に塗装された半金に映り込む自分の顔は、なんとも形容しがたい。
疲れと苛立ち。
猜疑心。


『――よお』


あれは本当に現実だったのか。
一夜明けてしまった今、ベンチで眠りこけながら見た夢じゃないかと思えてしまう。


棒立ちの少年を巻き込んで、確かに一方通行は衝突したはずだった。
なのに、凹んでしまったガードレールはどこにも無いのだ。

「……」

だけれど、幻とも言い切れはしない。

彼には、あそこで眠ってしまう理由がないのだ。
それこそ、薬を使われたとしか思えない。

(――まあ、睡眠薬を真夜中に持ち歩くっつゥのも)

だから、どう判断すべきか困るのだ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:26:44.36 ID:WjQ82JYAO<>

昨日は特段疲れていたわけでも、眠気がしたわけでもない。
それに、この街で迂闊に外で眠れるほど楽観主義者でもない。


大事なことを忘れていて、だけれど引っかかって思い出せない。


――何だったのか、夢か現か、はたまたどちらでもないのか。


「――幻想の類ってことで」


そう呟くと、手持ちの鞄に飲み物をしまった。


勿論、発せられた救助の声に彼は気付くこともなく。

(あいつはそろそろ乗ってンのかね)


疼く頭を抱え、来た道をのろのろと歩きだした。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:38:38.69 ID:WjQ82JYAO<>
side unknown



銀髪の少女が倒れていく様は、彼女からはやけにスローに見えた。


――ガチャ、ガチャ。

緊張で思うように手が動かない。
駄目だ、これでは少女を救えそうにない。
見切りをつけ、今まで手の中に持っていたリモコンを投げ捨てる。


――走る、走る。

たった数メートルを全速力で駆け抜けて。
――パシっ。



彼女は、銀髪の少女の手首を掴む。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/05(日) 23:47:10.02 ID:WjQ82JYAO<>
離さないように両手で握るも、ろくに運動したことのない彼女には堪える作業だ。

――こんな時ぐらい手袋じゃなくても良かったかもしれない。
一抹の後悔を覚えつつ、碧目を見て言った。




「――Can I help you?」



ああ、これは店員が使うセリフだったかもしれない。

唖然とする少女をずるずると引き上げる。
予想外に骨の折れる仕事だし、自身の能力行使のおかげでモノレールは一時的に停止した。


――ああ、悲しいけれども貧弱なのは否めない。



「って、もう助けちゃってるかしらぁ?」

だから彼女の出来る限りに強がって。



食蜂操祈は薄く笑った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/06/05(日) 23:49:12.69 ID:+yA2bRJCo<> みさおちゃん…だと? <> 終わり<><>2011/06/05(日) 23:50:15.12 ID:WjQ82JYAO<> ボルジア家の毒がカンタレラなのであって別に毒を総称して……まあ、中二ぱわーは偉大ですよねってことで!

うっすらと登場人物が増えて来ました、これからもよろしくお願いします!


それではありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/06/05(日) 23:50:30.31 ID:+yA2bRJCo<> 誰だよみさおってorz
みさき様だよ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/05(日) 23:53:41.90 ID:hzNPMem3o<> 乙
まさか食蜂さんが来るとは <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/05(日) 23:53:50.74 ID:h6/HW82q0<> 乙
このSS内の天気常には雨か曇りだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/05(日) 23:55:00.97 ID:MJLwpQFFo<> ギャグかと思いきやシリアスか……しかし食蜂さん出るとはwwww
姿が明らかになるまでは心理掌握(仮)扱いだったのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/06/05(日) 23:58:23.50 ID:RofhmzCL0<> おいおいインデックスの心読むなよ、絶対だぞ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)<>sage<>2011/06/06(月) 00:17:05.25 ID:lslDHIReo<> 乙
あかん、全く読めん。どうなるんだこれ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/06/06(月) 00:22:56.69 ID:oHYEDun00<> 灰村の公式サイトに行くと幸せになれるかも <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 00:23:24.03 ID:paz52P2s0<> しょしょしょしょくほうさん?!
次から次へと謎が増えて続き気になるぜ…

幼女の手のひらに踊らされてるでも気になっちゃうビクンビクン <>
◆ObanGQEW7M<>sage<>2011/06/06(月) 00:39:48.85 ID:WdSE3uHAO<> ちょっとごめんね、幼女高ぶりすぎたのではきださせてくだちい(><)






うおお、みさきぃぃぃぃ、うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!!!!!!!!め、、め、めんたるあうとぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅわぁぁぁぁんんん!!!!!
どっっっストライクじゃないかぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!ほんと妙ちくりんなオリジナル設定にしなくて良かったって心から思う瞬間んんんんん!!!!!!!!電撃大王出るまでの!!!!!!!苦難に耐え忍ぶ日々!!!!!!!ぶっちゃけ縦ロールだったら!!!!!!モチベ下がってた!!!!!ってか正史とのすりあわせできるか悩みましたけども!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



――いやマジ、可愛いって正義(開眼)



ほんっっと、レベル5の中で一番世俗感溢れる見た目(ていとくんもある意味居るか)っつーか、常盤台なのに染めてたとしたらおいしすぎるわ!
中学生であの乳ってか上条さんと同じ背…………!(ブワッ
上条さん=自分=みさきち=一方さんって方程式!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ありがとう168センチぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!らぶぅぅぅぅぅ!!!!!!!



ってか、中学生女子と同じ身長の上条さんと一方さんにも萌えて仕方がなかった夜でした
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/06/06(月) 00:42:55.65 ID:9x2/vphxo<> 精神操られてしまったか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 00:46:46.27 ID:6JMMwrbAo<> 食蜂さん長点もありえなくはないのか?
たのしみなんだぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/06/06(月) 02:46:17.29 ID:9A+ytEGAO<> 168cmの幼女…だと…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/06/06(月) 03:03:33.12 ID:gx81SR5w0<> でかい幼女がいるときいて <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/06/06(月) 03:03:35.87 ID:L47L4Tsto<> まさかの食蜂さんktkr
もしや親友って・・・? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/06(月) 04:19:16.23 ID:xuGzfohh0<> Are you all right? と聞けば良かったのだよ 食蜂さん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)<>sage<>2011/06/06(月) 09:53:17.38 ID:lF3wTacpo<> あー、操って助けようとしたけど、効かなかったのねww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2011/06/06(月) 10:58:02.84 ID:w28RyztAO<> ようじょwwwwwwwwwwwwおちけつwwwwwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)<>sage<>2011/06/06(月) 13:34:45.49 ID:VKqGY2sAO<> まさか食蜂さんとは予想外だった

>ちなみに何故かずっと接続を切ってる10032号
また嫌な予感が… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/06/06(月) 17:48:38.50 ID:Dq1gqPo8o<> 打ち止め、10039号、バードウェイ、みさきちと新キャラ女性ばっかでむねあつ
あと金髪巨乳と銀髪ひんぬーの参考画像が是非とも欲しいところ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/08(水) 20:59:18.44 ID:EMgxOIS+0<> 食蜂さんも受験するのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/06/10(金) 20:42:15.46 ID:M83UShnk0<> >>1 気長に待っているのである。
この話の何が楽しいか。
この話の先が見えないこと。 <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/06/12(日) 19:09:59.71 ID:jF3hrCbAO<> 考査[ピーーー]、氏ねじゃなく[ピーーー]
最近ペースが遅くなっていてすみません、今晩投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/12(日) 19:16:30.55 ID:Xp2EXB3l0<> >>1 幼女 俺も今来たとこだ、期待してるze。 (<--実は毎日watch してた。) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/06/12(日) 19:39:27.00 ID:kE+vbbZt0<> うおおおおおおおきたあああああああああああ!! <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:10:23.17 ID:jF3hrCbAO<>


停止したモノレールの傍らで。



ずり、ずるずる


「……ハァ……っ」

ろくに筋肉もついていなそうな細腕でインデックスを持ち上げた彼女――食蜂は肩で大きく息をついた。


「……とりあえず、ここをぉ……」

「あなた、助けてくれたの……?」


無言で頷く様を見て、インデックスは立ち上がる。
拳を開く。
異常ナシ。
両脚もちゃんと付いている。

(――私は、生きている)


「――あ、ありがとう――っ」


金髪の少女は、軽薄でいて、どこか優しい笑みを浮かべる。

「……出るわよぉ」

肩掛けの鞄が孤を描く。
横たわったせいで付いた塵を軽く払い、改札口へと向かって小走りの長身を追った。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:12:18.93 ID:jF3hrCbAO<>

騒然とするプラットフォームは、しかし何故か、当事者の彼女らには一切触れはしない。
モーゼの再来か。
まるで、2人のために道を開けることが心理で、世界の常識といった対応だった。
何の違和感も、疑問も持たずに。


前を行く中学生が能力者だとまだ知らないインデックスにとっては、それはどうしようもなく奇妙でいて。
同時にとてもありがたかった。


エスカレーターは人だかりを超えていかなければ到着できず、渋い顔をしつつも階段へ向かう。
食蜂は勢いよく駆け上が……ったのは最初だけで、真ん中を過ぎた辺りで徐々に減速し始める。



「……つか、れたぁ」

「――大丈夫?」

「イン、ドア……派なのっ」

吐き出すリズムと足音が重なる。


――たん。――たん。――たん。


やっとの思いで改札口まで辿り着く。
先ほどの光景再び。

即席で作られた専用の道を、2人は駆け抜けていった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:14:30.92 ID:jF3hrCbAO<>
「はぁ……、どれくらい……広範囲で……高、濃度だったら、気が済むの……」

「そんなに急がなくても、私は」

「お馬鹿さぁん……、まだ、はあ、色んなの、追ってきてるの……よ……っ」

ほら、と煌めく瞳が示すのは、群集が蠢き合う階下。

「……あ」

こちらに一番近い列――最前列が孤になって、わらわらとひしめいた。


「半径……30メートルぐらいには、近づけないようにしたけどぉ――」

ぎゅう

肩で息をついていたと思っていたら、いつの間にか布越しに手を握られていた。
溶けるほどに“あつい”。


「私の手は……っ、はあ、離さない、ことね……。

貴女、――ほんっとに危なっかしいし……けほっ」

「……うん」


電工掲示板が作動を止めた。
まともな精神状態の駅員は、この駅で起きる出来事に戸惑っているようで
暴徒化した客を止める素振りを見せない。

食蜂は強がって蠱惑的に微笑み、床を大きく踏みつけた。

そしてまた駆ける。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:16:43.13 ID:jF3hrCbAO<>

空間を裂くように少女らは進んでいく。
長い長い金髪が揺れる様が後続のインデックスからはよく見えた。
左へ右へ、しなやかで美しい。


(金の、長い髪――)


瞬間、脳内スクリーンが変更される。
鬱陶しいほどの青空の下。
日光を燦々と浴びた豊かな金色が、風になびき。

――覚えの無い場所なのに、妙にリアルな質感を持っていた。


(今のは何なのかな……)


然れども、まばたき1つで急転直下。
改めて見回すと、ここは科学の総本山の街の一角にすぎない。

(――既視感ってものなのかもね)

どこへ走って行くのか全く不明のままだったが、いつの間にやらターミナルに続く階段を下っていた。

たた、たたた

「だから……っ、答えなさいよぉ……っ」
「あ」

呆けていたインデックスに、怒声が向けられた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:18:44.71 ID:jF3hrCbAO<>


「あ、ごめんなさい!
ちょっとぼーっとしてたかも!」

「行き先はぁ……!」

「な、長点上機なんだよ」

「……ほん、と?」

「そうかも!」


激しい息切れを隠そうとする気は無いらしい。
階段を背にし、食蜂は躊躇わずに進み続ける。

「あなた、……能力者ぁ?」

「違うんだよ、私は完っ全に無能力者かも!」

「誇らしげに言わなくても……けほけほっ、じゃあ、私ってば……ライバル助けちゃったわけね?」

「へ」

言葉の指すところが分からず、どういうことなのか質問しようとした。


の、だが。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:19:56.89 ID:jF3hrCbAO<>


ぐいっ

「わ!」

下から手首が引っ張られ、思わずよろめいた。
正面には、白っぽい車内が見える。


「……あ゛ー、乗り、なさい。
受験したければ、ねぇ……」

「ああ、ああ乗る!乗るんだよ!
だから手、引っ張んないでぇぇえ!」

「……くっ、なんで、私がぁ、っ息切れを……」


バタン!


自動で閉まる勢いもプラスして、やや乱暴に扉が閉められる。


間もなく、運転手の居ないそのタクシーはゆっくりと動き始めた。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:22:47.13 ID:jF3hrCbAO<>

**



10039号と別れた一方通行と打ち止めは、まだ人もまばらな道をゆっくりと歩いていた。


「いっちねんせーになったーらー、ともだちひゃっくにん、でっきるっかなあ?」

最後は疑問風に。
繋ぐ手がぶんぶんと振り回されているので、少々肘が痛い。

「オマエが転入すンのは、よりにもよって6年だろ」

「まあ、そうなんだけどってミサカはミサカは肯定してみたり」

ならと、6年生になったぜーとの替え歌で盛り上がる打ち止め。

「まだなってはねェだろ」

「確かにねってミサカはミサカは4月が待ち遠しくてたまらない!」

笑顔の打ち止め。

そんな彼女の脇をテレビ局のロゴを付けた車が去っていく、明らかに法定違反だ。


「4月、ねェ」


そろそろ制服を筆頭に学園生活を送るにあたって必要な物を買いに行かねばならない。
色々と面倒だと思い、だけれどブレザーを着た自分を想像してみる。


……そもそも長点上機の制服を思い出せなかった。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:26:09.60 ID:jF3hrCbAO<>

あと1ヶ月もしないで、彼は“ちゃんと”学生になる。
今までのように、名目上ではなくて毎日通学するそんなありふれた学生に。


「……あまりに目まぐるしい、っつゥか、実感が湧かねェっつゥか」


去年の4月――というと、あの実験をしている最中で。
隣に歩く少女と同じ顔を、消して潰して壊して、殺していた。
無慈悲に、残虐に。



あ、ああ*あ**あああ****あ………。




「――恒例のアレ?ってミサカはミサカは空気を読まずに問いかけてみる」

「……さァな」


とは言うものの、これが償っても償いきれない罪に対する咎だということは存分に理解していた。
殺された方は物言わぬ屍となり果て、それなのに殺した方は呑気に学校ときた。

機械に即した人、あまりに都合の良い存在だ。
法を見事に掻い潜って、後ろに遺った亡骸はヒトのものではありません。
倫理上どうであれ、クローンがどこまでの存在かの定義は未だされていない。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:28:27.94 ID:jF3hrCbAO<>


狼は憂う。
あの少年の介入してくるタイミングが、生き死にの差に繋がったとしたら。
もしかしたら、命が救われた者も居たかもしれない。
逆に今を謳歌している者も、塵芥となって風に舞ったのかもしれない。

この少女だって、見境無く――。


ひらり

茶の布地が踊れば。




「――嗚呼、なんて不条理な世なのであろう、感嘆措く能わず!」




ギョッとする。
可笑しな、狂った、動作不良なサウンドが唐突に。


なんてわけもなく。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:32:06.57 ID:jF3hrCbAO<>


1回転をして少女は目を細めた。


「ってとこなのかなってミサカはミサカは推察してみる」

「っ、いきなり叫ぶンじゃねェよ!」

「だってあなた、変な顔をしてたからってミサカはミサカは可愛らしくはにかんでみたりっ」

「……別に俺は」

「人って奇怪だねって言っちゃうと、ミサカがそれ以外とかみたいだけれど」

そう思ってしまう、と半回転をした打ち止めの背中は告げる。

冬服を身に纏う背中は、気づかないうちに大きくなっていて。
確かに成長したのだと彼にまざまざと見せつける。

変化は止められない、痛みは伴って当然。いつの間にか2人の差は開いていた。


そういう時に限り、頭を冷やせと言わんばかりに風が吹き抜ける。

――こんなのいくらだって操作出来るのに。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:37:23.30 ID:jF3hrCbAO<>



「1位であっても、年端のいかない子を平気で利用するような凄惨で救いの無い場所がこの街だよね
ってミサカはミサカは再確認してみたり」
「……」


歌うように

「お姉様の寿命マイナスお姉様がDNAマップを提供したぐらいが、ミサカ達の推定の寿命」

滔々と

「それでなくても、無理に成長させられた下位個体達はどれくらい生きられるんだろうなあ」


少女は、ただひたすらに道化を演じるのみ。


湿り気の多い空気が肌に纏わりつく。

存在否定、不在証明。
それを自分でする心境は、いや、させているのは他でもない自身。


「だから、ミサカ達のことをあなたは生かそうとしてくれるんだよねってミサカはミサカは尋ねてみる、それも正攻法で」


覆水盆に還らず、なんて生易しい物ではないけれど。
傷を舐めているようで、ただ膿の味を堪能しているだけじゃないか。


「何年後には白衣着て仕事してるのかなあってミサカはミサカはちょっとしたときめきを隠せなかったり」


空に向かう毛が揺れる。
打ち止めは再度、一方通行に笑いかけた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:41:54.43 ID:jF3hrCbAO<>


「それにあなたもこのミサカも番外個体も、まだまだ学生の楽しみなんてなーんにも知らないでしょ?」

「……」

「――ちょっとぐらいは、許してくれると良いなってミサカはミサカは祈ってみる」


とてとててて

この許容力はどこから来るのだろう。
子供に慰められる自分も自分だけれど、そう、いつでも助けられる。
清濁併せ持った、この少女に。


比較的それが高めなのは、子供の体温だからか。

「……迷惑かけた」

「――うん」

「もォ、ネガンねェから」

「あは、あなたに限ってそれは無理だよって、ミサカはミサカは苦笑いを隠せなかったり」

「クソガキちゃァン?」

「げ、目が据わっている……?」

「お仕置きだなァ」


「い、今のは言葉の綾ってものでってミサカはミサカは必死に言い訳を試みて、アホ毛引っ張んないでぇぇえ!」
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:46:01.58 ID:jF3hrCbAO<>

黒に染まった打ち止めの髪を摘む。
上に向かって引っ張ると過剰に反応して、それが面白い。


(どンなに後ろ指差されよォと、俺は真っ当な手段でこいつ等を)

必死に両手で頭をガードする打ち止めを見下ろし、一方通行は溜め息を吐く。


「レポートやンなきゃならねェンだよなァ……」

「あ、あなたの数少ないお友達の生き字引さんに協力してもらえばってミサカはミサカは提案してみるっ!

あと、そりょしょりょはなひて……」

懇願する声に応え、右手を離す。

「あ、むしろ唯一?ってミサカはミサカは恐ろしい事実を」


打ち止めがそう呟いた時だった。




――ピリリリリ!


どこからともなく電子音が響いた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 22:56:31.23 ID:jF3hrCbAO<>
「あ、携帯の緊急速報オンにしちゃってた」


ピーポー、ピーポー。


心臓が早鐘を打ったように忙しく動き出す。
妙に嫌な予感がする。


「どォした」

「あー、第7学区の駅でモノレールが急停止したみたいだね
ってミサカはミサカは速報からの情報をかいつまんで説明してみたり」


第7学区の駅、というと。
――彼女と関係あるかもしれない――?

「理由は」


繋ぐ手からも、急速に温度が失われていくようで。



「事故が起きた、のかな?」

「事故――?」

「あ、さっきのテレビ局のって」


それまでの自然がモノクロアウト。


鞄からすぐさま携帯を取り出し、英数字の列から彼女の携帯へとかける。



耳に機器を当て、何分経っただろうか。

「どうしたの?」

「……繋がンねェ」

――彼女は、誰かと通話中のようで。


胸騒ぎを隠せないまま、一方通行は携帯を閉じた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 23:10:08.20 ID:jF3hrCbAO<>

あの少女は無能力者で、万一巻き込まれていたら。
助かる見込みは――。


「……わりィ、先帰ってろ」

駅へ行かないといけないから、と一方通行は打ち止めの手を離す。

チョーカーのスイッチを入れ、杖をコンパクトに折りたたむ。


「生き字引さん?」

やれやれ、とでも言いたげな顔をして打ち止めは彼を見る。

「遅くならないようにねってミサカはミサカは朝ご飯が早く食べたくて仕方が無いよ」

「先に食ってろ」

「えー」

口を窄める仕草も、それが本心ではないことは十二分に分かっていた。


一方通行は前を見据える。
そして打ち止めには何のことか分からないことを呟き、駆けていった。


「あと、奴は一冊どころの話じゃねェ。
自称図書館、が図書館に来てたっつゥのも妙な話だが」



「……変な一方通行」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 23:20:20.71 ID:jF3hrCbAO<>

インデックスはそれを耳に当てず、まるで拡声器を持つかのように会話を続ける。

「え、テロ組織!?
いやいや、私は線路に落ちそうな所をみさきに助けてもらっただけで、あ、みさきは可愛いから紹介はしてあげないかも!」

「犯罪のダブルブッキングなんて、学園都市も忙しいわねぇ……」


受話器の向こうの人物は声を荒げる。

「落ちそうなのは……その、ぼーっとしてたからかも、心配しなくても、うん。
え、今どこかって?」

「高速乗ったわよぉ」

「そう、あ、私たちタクシーで移動中なんだよって、え、何、もう遅い?」

高速で動く車内に、彼女の声がこだまする


「え、とうまってば駅に着いちゃったの?」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 23:35:00.09 ID:jF3hrCbAO<>

「ほんっとに、貴女の同居人って不幸なのねぇ」

「とうまはね……、むしろあっちの方が変な物に会わないか不安かも……」

「占ってあげる?」

「みさきの能力って、そんなに便利なの?」

「いえ、勘だけどぉ」

驚くインデックスをよそに、食蜂は目を閉じながら近くにある扉に手を離す。


「勘なら私でも!」

「黙ってなさい」

猫なで声で制止した。
彼女はしぶしぶながらも従う。


タイヤと地面が擦れる音が響く。
そして、耳を済ませばモーター音も、どこかで。



「みさき?寝てないよね?」

「――ええ」

後部座席に身を預けた食蜂は、間髪入れずに言ってのけた。




「――残念だけどぉ、変な物、出会すかもねぇ?」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/06/12(日) 23:39:05.88 ID:A0KJ4RDI0<> マナー違反を承知で割り込むけど、
>>92と>>93の間に何か抜けてないか?それともこういう演出? <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/12(日) 23:39:22.05 ID:jF3hrCbAO<>

4輪車は加速する。

それぞれの事情を知らずに、ただただ加速していく。


待ち受けるのがオアシスとも谷底とも知らずに、直向きに。








――だってもう、彼らは動き始めてしまったのだから! <> 終わり<><>2011/06/12(日) 23:42:32.42 ID:jF3hrCbAO<> 途中、あまりに打ち止めが電波だったのと大幅に設定ミスってたので直しながら投下しました、すみません。
次回、みさきちとインデックス、狭い車内でどっきどき!?
みたいな、そんなノリ。
それでは、お付き合いいただきありがとうございました!

>>95
それは次回分ですー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/06/12(日) 23:48:12.38 ID:A0KJ4RDI0<> わざとだったか…。
すみませんでした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/06/12(日) 23:54:08.66 ID:kE+vbbZt0<> 乙!素晴らしい!一方さんとみさきタンの絡みがみたいお <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/13(月) 00:18:20.90 ID:jRST/yLSO<> 乙!
ついに一方さんと上条さんきちんと出会っちゃうのか?
なんか怖いが楽しみだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/13(月) 04:57:20.52 ID:5KRCZC+70<> >>100
旦那?と情夫?の顔合わせか、>>1に期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(-長野)<>sage<>2011/06/13(月) 05:18:39.93 ID:+aHSNdgAO<> 上条さんがインさんの心配してくれていた事が、なんだろう凄くうれしい…
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/06/13(月) 05:57:57.70 ID:s+Qr7NiAO<> 正直上条さんよりも一通さんと食蜂さんのエンカウントに期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>sage<>2011/06/13(月) 08:49:28.24 ID:0W7k/nYe0<> 打ち止めがかわいいこわいやっぱかわいい

こころんと同級生か、いいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/15(水) 18:40:46.65 ID:/9bN5sdz0<> >>1 このSSの白シロ会話にあうBGMはショパンだろうか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/06/17(金) 20:01:01.28 ID:clvcxKE40<> 支援 <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:24:58.00 ID:8npNNERAO<>

8時6分

カーナビを操作するため、掴んでいた手を話す。
それと同時に手首も盗み見て、食蜂は安堵して腰を浮かせる。
隣に居るのは、自分よりよっぽど華奢で可愛らしい少女なのだ。
必要に駆られていたとは言え、痣が付いたら悲しむ男が居るかもしれない。
あとは精神的にはともかく、肉体的に加虐する趣味は無いと自身のことを考察しているつもりだ。


目的地を高校に設定し終え、再びシートに腰をうずめる。
そして、その瞬間を待っていたのか名も知らぬ彼女が口を開いた。

「さっきはほんっとにありがとね!
あなたが居なかったら私、どうなってたか!」

まあ、確実に死んでいただろうと思う。
あの状況下で、そして少女を助けられた可能性があるのは自分だけとも。

「勘違いして欲しくは無いけどぉ」


軽薄な声と嘲笑も強がりに過ぎないのは、他でもない食蜂自身が痛感していた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:26:46.93 ID:8npNNERAO<>

「私は、私の中のでっぷりとした自尊心と好奇心、それと特定の人物に対する自己顕示欲の為に動いたわ。
――まあ、この事例が“2%”だと思ったのよねぇ」


本当に最近のことだ。
初対面の第7位に叱咤された時の内容。

『だから俺にも出来ねえ……そうだな、2厘ぐらいのことでもお前に助けて欲しいんだ』



(……彼だったら、もっと人情溢れること言ってのけるんでしょうけど)

生憎こっちは、慣れない仕事を終えた1匹の女王蜂にしかすぎない。
何せ、自分でも突然の心境変化に戸惑うくらいなのだ。
いつもなら――、まあ、助けたかもしれないがもっと演出を施したことだろう。


(気紛れで精神操作されたなんて、運転手も浮かばれないわねぇ)

「別にねぇ、あそこで死にいく貴女に同情したわけでも世間に憤ったわけでもなくない。
流石に死なれたら精神衛生はどん底かもだけどぉ」

1拍置いて、それから。

「都合が良かったの?」


思わずたじろいでしまった。
それは、まさに今、言わんとしていたことで――。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:29:39.44 ID:8npNNERAO<>

「……ええ、そうよ」

体にかかる少しの重み、いつの間にか車は発進していたらしい。

咎めたいのか?
緊張が走る。

普通の人間が彼女に悪感情を抱いたとした。
だとしても、記憶を改竄してタクシーから捨ててしまえば良い。
心理掌握【メンタルアウト】の能力ならいとも容易い。
いたってシンプルな解答。


「だとしても、あなたが私を助けてくれたことに全然変わりは無いんだよ」

――なのに何故、食蜂操祈は感謝の意を述べられたことに安堵したのだろう。
矜持を持っていたはずの彼女が。


「……あら、そう」

「あ、そう言えばまだ名前言ってなかったかも!」

それは精神系の能力者には、自分を上回る使い手の存在よりも恐ろしいのかもしれない。


「私の名前はインデックス。
Index-Librorum-Prohibitorum――あ、結構疑われたりしちゃうけど、偽名じゃないんだよ!」

タクシーが静かに揺れる。

「食蜂操祈よ。ええと、ファミリーネームで呼ばない方が良いのかしら?」

「そうだね、出来れば私のことはインデックスって呼んで欲しいんだよ。まあ、呼ばれ慣れてないだけなんだけど」


ただの人懐っこそうな少女、インデックスの心理を彼女は支配できない。
耐性があるのか、はたまた屈強な精神の持ち主か、実は精神系能力者か。

明確な理由は知らない。
だけれど確かなことは一つ。






インデックスには操作も支配も改竄も傍受も何も出来ない。


――何故か出来ない。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:31:26.13 ID:8npNNERAO<>


「えっと、――良いのぉ?」

「何が?」


令嬢がそんな馴れ馴れしく呼ばれて――と言おうと思ったが、そうだ、彼女は常盤台の人間ではなかった。


(まあ、あそこの窮屈さが嫌で飛び出してきたわけだし。
下手にこの子の神経逆撫ででもしたら――)

ここまで来るのに息切れ1つしていなかったのだから、基礎体力も高いのだろう。
それと、自称無能力者で長点上機の特別進学科を受験できる頭脳。

と、なると道路で血塗れになって横たわる自身の姿が安易に予想できてしまう。


赤信号か、自動操縦により車が停止する。


「――インデックスね」

(面倒な子、助けちゃったわよねぇ)

密かに溜め息を吐いた。

「そうだよ、みさき」

「とりあえず、よろしくとでも言っておきましょうか」

「うん、こちらこそ!」


願わくば、何事も無く終わりますように。

そうやって祈る彼女を乗せ、車はまた加速し始めた。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:32:45.65 ID:8npNNERAO<>


タクシーが動き出してから、10分は経っただろうか。

「――総括すると、みさきは精神系の能力者でプラットフォームの異変に1人気付いた。
だから逆探査で術者を辿ろうとしたら、同じく異常ナシの私を見つけてしまった。
焦るあなた、何故かと言うと干渉を受けている人たちが私に向けての殺意を有していたからだよね」

「天然と養殖の違いなんて、私にしてみればすぐ分かっちゃうもの☆」

「だから、助けるために私を操作しようとしてくれた――だけど」

手袋を外し拳を開閉させる食蜂から、インデックスは目を背ける。

「――なんか調子悪かったのよ、そもそものAIMから丸ごと消されちゃって」

体はピンピンなのにと首を傾げる仕草をする食蜂を見つめ、インデックスは考え込む。

「あ」

「どうかしたの?」

「んーとね、多分これのせいなんだよ」



首もとのスカーフを捩らないように、慎重な手つきでインデックスはそれを取り出した。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:34:51.24 ID:8npNNERAO<>

鈍く重厚感のある光を放つそれは、一見しても科学に関係があるとは思いがたい。


「十字架?なあに、魔除け☆ミとか言う気?」

「まあ、ざっくり言っちゃうとそんな感じ」


「これにぃ?」

宝石のように煌めく彼女の瞳も疑念により微かに曇る。
弁護しようと慌てたのだが

「多分だけど!」

「ええ」

「……あなたの能力だけじゃ無くてね、このケルト十字は他の物理的攻撃も……うん、多分打ち消してしまえるはずなんだよ……?」

如何せん、彼女の理解の範疇からも越えてしまっている。


要はだ。
イギリス清教が彼女を守るために送った霊装、自営手段だ。
以前に姫神に渡したものよりも二周りほど大きく、効果も高い。
かといって、そんなことを食蜂に話せるわけもなし。

インデックスはあー……だの、うー……だの言い澱むしか出来ない。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:42:58.29 ID:8npNNERAO<>

「……うっわあ、ふしぎなことねぇ。わたし、おどろいちゃったわぁ(棒読み)」

「カッコ内も、ご丁寧に言わなくたってありありと伝わって来るんだから!」

「(^w^)」

「流石に顔文字は無理だって!」

「うふ、人を不愉快にさせる天才の異名はまだ衰えてないようねぇ」

「誰にそんなこと言われたの?」

「ん?ゲコ太好きの後輩によ?
あんまりゲコ太ゲコ太鬱陶しいから、語尾に『けろりーん♪』って付けるように操作したら、そう言われたわぁ。

いや『アンタって人を不快にさせる天才ゲコね!』……だったかしらぁ?」

さしものインデックスも乾いた笑いを浮かべるしか無かった。



微苦笑を浮かべながら、食蜂は少女の胸にかかる十字を見やる。

「まあ、そういうことにしてあげても良いかしら。此方としても、体調が悪くないならそれで良いのよねぇ」


気にしないと言いたげに、ひらひらと右手が揺れる。

反して、金髪に隠れがちの横顔を盗み見ると、何やら思うところが無いわけでは無さそうだったが。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:45:28.26 ID:8npNNERAO<>

何気なく窓を眺めた瞬間だった。

特徴的なサウンドエフェクトが聞こえ、食蜂は眉を潜めた。


「……カナミン?」

「むっ、とうまからだ!」

聞き覚えのある音楽に、インデックスの顔にはさっと緊張が走る。

「落ち着くべきかも……ふー」

そんなことをしているうちに切れてしまったらどうするのか。

「とうま?」

「私の同居人なんだよ!」

「あ、当麻さんってことぉ」


きっと学生寮か何かで同室の少女が居て、名字呼びをしているのだろうと彼女は考える。
勿論外れであることは言うまでもない。


そうして誤解の広がりを知るはずもないインデックスは、やっと携帯のディスプレイを開いた。



時刻は8時20分である。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:50:35.32 ID:8npNNERAO<>
**

一方通行がその駅に着いた8時25分には、もう各報道機関も到着しており、大混雑を極めていた。

どこを見回しても、全方位360°人の波。
この中から、特定1人を捜し当てるのは苦労するだろうと思いつつ彼は足を進めた。
(8番線にて無差別殺傷事件、被害者は10余名らしいが……、確かモノレールは3番線だった筈だ)

ここに来る途中の巨大モニターに表示されていた事件の概要である。
受験ノイローゼを起こした学生が錯乱したのではないかと一方通行は踏んでいる。

とりあえず3番線へと向かおうかと、券売機の方へ向いたところ。


転がり回っていくピアノの音色、愛らしいメロディー。
確かに彼の耳朶を踏む。
靴を高らかに鳴らし、その場で止まった。

そして即座に通話ボタンを押し、機器を耳に押し当てるとすぐに――。


ピッ

「――オマエ、今どこに居ンだよ!」

『ひゃっ、怒ってるのかな!?』


子犬のワルツ、インデックス専用の着信音だ。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:53:17.47 ID:8npNNERAO<>


「オマエにキレても仕方ねェだろォが!」

『えー、絶対怒ってるんだよー。何ならガリガリたん賭けても良いかも……ごめん、やっぱりナシ』


此方の気も知らずに、脳天気で居やがって。
ああ、じれったい。
怒髪、天を衝く、まででは無いが、今なら打ち止めのヘアスタイルも真似出来そうだった。


『良いから今どこか答えろっつってンだよ!!
何なら英語で聞いてやりましょォかァ!!?』

「た、タクシーなんだよ!」

余りの勢いに気圧されたのか、インデックスの声には怯えが混じっていて。


「――タクシー?」

予想もしなかった答えに、思わず猜疑心が湧くのも仕方の無いことだろう。



冷静になってみると通路の中央で止まりながら通話するのは悪目立ちをする。

一方通行は目的地も決めぬまま再び歩き始めた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:56:03.20 ID:8npNNERAO<>

『うん、今はね……えっと、コーソクドーローに乗ってるかも』

「12学区に向かってかァ?」

『そうなんだよ』

数10メートル先に、寄りかかるには最適な壁がある。

『さっきは電話に出れなくてごめんね。とうまも一緒にかけたみたいで、受け取れなかったかも』

「じゃあオマエは殺されてねェと」

『そもそも、今お話ししてる私の事を考えてみて欲しいけど……あと、その話も聞いたんだけど本当に危なかったんだよね!』

ギャーギャーと騒ぐインデックスの声を聞きつつ、一方通行は胸をなで下ろした。



刺されていたらどうするべきなのかと、僅か5分で駆けて来たが、それも杞憂らしい。

(つゥか、飛ばなくても良かったか)

足首を違えたのか、少しだけ鈍い痛みがする。

早くベクトル操作で直してしまいたい。



「じゃァオマエは、事件が有ったからわざわざタクシーで……」

いや、違うのか。
同居人から聞いたと言っていたのだし。


じゃあ、どうしてなのだろうかと一方通行は床にはめ込まれた発電パネルを見つめて。



トン


瞬間、肩と肩がぶつかった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/17(金) 23:57:37.29 ID:8npNNERAO<>


痛くもなく、よろめきもしない。
ただ当たったという感触がここにある。

この人の多さからして当たるのは不自然では無い。
現にさっきも何回も体が触れ合った。


「っ!」

だけれど、その数回とは違って彼は振り向く。


むせかえる程の湿布の匂いを漂わせた、その人物を探して。




右へ左へ視線を這わせる。

さほど離れていない位置に、やはり奇怪な格好をする者を見つけた。


(あの、頭に包帯巻いてる奴……!)

会って何をしようかとか、何を話すかなどは1つも考えにない。
ただ背中を追おうとして、彼は一歩を踏み出し


『……あはは、ちょっとモノレールに牽かれそうになっちゃったんだよー』


……たのだが。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/18(土) 00:01:00.77 ID:JxetOs/AO<>


すっぽりと意識から外れていたインデックスの声が、また不気味な質感を持って蘇ってくるではないか。
そのせいで、彼は2歩目を踏み出すことは無かった。


「牽かれかけた……?」

――いや、あ、ちょっとだけよろめいちゃったかも」

「嘘だろ、押されでもしたンじゃねェの」

「……あはは」

即答、やはり正解のようで。

インデックスがこんな風にどもるときは、大抵が嘘だと知っている。


「えっと、まあ、……うん。そうなんだけど……、あ、でも、ちゃんと助けてもらったから大丈夫なんだよ!」

「大丈夫じゃねェだろ、それ」

「うぐ……、まあね」

人混みの一角で溜め息を吐く。

「何かあったら即座に俺に電話しろ、オマエは常日頃からそそっかしいが、今日ばかりは何も出来ねェし」

「うん、分かったんだよ」


それから、と付け足して。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/18(土) 00:07:00.82 ID:JxetOs/AO<>

「……明日、連れてかねェといけない所と言わなきゃいけねェ話があるから」

『チョコ!?』

「1時にいつもンとこ」

『うん、分かった!!』


急にオクターブほども高くなる声を聞いて、やはり食べ物の力は偉大なのだと(インデックスにおいて)思い知らされる。



最後に何か言うとすれば、キャラではないがこれしか無いのだろう。


「必ず受かって来い」

『――うん、あくせられーたもわざわざありがとね』

「気にすンなら何か参考書とか見とけ」


返事は聞かずに電源ボタンを押した。


ツー、ツー


相変わらず、この駅は人が溢れていて騒々しい。
情報の錯綜とは、こんなにも大量の人間を転がしていくのか。



(俺も騙された1人か)
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/18(土) 00:08:14.06 ID:JxetOs/AO<>

握りしめたまま雑踏を見渡すも、先ほどの男の影は当然もう無い。
不健康な白を纏った彼は、昨日のあの者と同一なのか。
何1つも分からない。


そろそろ帰ろうと何気なく下を向いた。

「……あ?」

彼の靴先の近くに、文字が書かれた用紙が落ちている。

「……」

眉間には皺が。
険しい顔でそれを読んだ一方通行は、わざわざ屈んでまでそれを拾い上げる。
粘着力は、もう殆どなかった。


そうして無造作にポケットの中へと突っ込み、その場を後にする。


そのメモに書かれていたことはたった1つ。





“今日の2時からの検査忘れるな”


<> 終わり<><>2011/06/18(土) 00:12:15.95 ID:JxetOs/AO<> 食蜂さんが誰か後輩の女の子に操作出来たのは、能力じゃなく特技の催眠とかそんな裏設定。
日曜以外に投下出来るよう頑張ります、いつも感想ありがとうございます。

それでは、お付き合いいただきありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/06/18(土) 00:20:24.05 ID:Hfwv4h2R0<> 乙
アクセラレータの名前を堂々と言っちゃうあたりインさんはインさんなんだよね
しかし食蜂さんふつーの催眠暗示まで使えるのか…。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/18(土) 00:48:32.68 ID:mPkMGto10<> 乙

頭に包帯巻いてる彼は博士の愛した数式的なアレだろうか、と仄かに漂う不穏な空気に不謹慎wktk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)<>sage<>2011/06/18(土) 01:13:11.94 ID:FYVw8jZQo<> まじかよ、上条さん記憶障害的なやつか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/06/18(土) 05:45:04.37 ID:+66usFxN0<> >>1
この禁書通行のキャラ落ち着いていて癒される。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/06/18(土) 18:13:31.05 ID:qhwVoJujo<> おつー
みさきちとソギーの絡みも気になるところだぜ
それと危なげな上条さんとか

ってか違ったら申し訳ないけど>>1ってついったやってたりする? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/20(月) 20:53:54.64 ID:8OHxwafD0<>
>>120 『――うん、あくせられーたもわざわざありがとね』

なんと、第5位(食蜂さん)の前でインデックスさんは親しそうに呼んでるではないか! <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/06/20(月) 21:47:22.39 ID:iT6f4tHAO<> もうちょいしたら分量少ないですが投下いたします

>>127
低俗な日々を送ってるため、呟けることが皆無なんでやってないです、てか文明について行けないだけです
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/20(月) 21:58:19.85 ID:8OHxwafD0<> 了解した。 <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/20(月) 22:33:12.55 ID:iT6f4tHAO<>

激動の朝を経てからの受験も特に問題も無く終わりを迎えた。
あの後、命の恩人こと食蜂操祈には
『影響力のあるコミュニティーを形成しているようで』
と評されるものも微塵も理解していない。
携帯のアドレスも交換した、というのもいつかお礼をするためにとインデックスが押し付けた為ではある。

(赤外線送信はしないのかな)

送信孔も食蜂は把握しておらず、出逢ってから優雅な態度をとっていたというのに、どうしようもなく斬新だった。


そして、翌日の昼下がりの学園都市にて。

「……はっ、……はぁっ」

インデックスは今日もまた走っていた。
公道を駆ける少女の姿を道行く者らは不思議そうに眺める。
しかしてランニングやジョギングが目的というわけではない、それは昨日も今日も。現に今履いているブーツのせいで、カッカッと甲高い音が断続的に響いている。

あの服でチョコを食べたら、食べ癖の悪い自分のことだ。
悲惨な結末は想像に難くない。
と、あーだこーだと悩むうちに時間は来てしまっていた。
悩んだ末に着たのも、ブラウス地の白いワンピースだから救えない。


汚れたら嫌だなあと、風のせいで崩れてしまった丸襟をカーディガンに戻した。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/20(月) 22:36:47.21 ID:iT6f4tHAO<>

「あ、おーい!」

家からここまで小走りで来たけれど、やはり間に合わなかったようだ。
黒いコートを着た後ろ姿が見えてきた。

「俺を待たせるたァ、良い度胸してンじゃねェか」

後ろ向きで尚且つ叫んだわけでも無いのに、しっかり耳にまで届いた。
残りは30メートルくらい。


唐突に一方通行が振り向く。


「ごっめー……」

ん、とまでは続かない。

表情が固く足まで止めてしまった。
怪訝な顔をした一方通行は杖をつき、尋ねる。

「何か忘れたのか?」

「……っとぉ、あくせられーたさんですよね?」

「あァ?」

聞き慣れない彼女の敬語に、思わず返してしまった。

「――1つ言って良いかな?」

まるで、アイドルのプロモーションビデオのような憂いを帯びた笑み。

「何だよ」










「色の付いた服、持ってたんだね……」


最大風速測定不能。
声はか弱く震えていた。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/20(月) 22:43:09.40 ID:iT6f4tHAO<>


「……言うに事欠いてそれかオマエ」

しかも遅刻した後の謝罪も弁解もない、のだから。

「あくせられーたの中で、『黒・灰・白の超絶ミラクルトゥルートライアングル△』はヘビロテどころか生きがいだったのに……そこから脱却できたなんて……!」

「あァ分かった、店先で置いてってやろォじゃねェか」

「私服のレパートリーの少なさなんて人間性には関係しないけど――良かった、全部モノトーンって思ってたんだよ」

「万年修道服女に言われたかねェ、っつゥか生暖かい目向けンなボケ」

「うんうん、まさか青を着てくる日が来るとは思いもしなかったんだよ。
そうだ、こういう日に、日本ではお赤飯を炊くんだよね!?」

「炊きませンー、めでたくないですしィ」


珍しいお召し物でらっしゃいますねとばかりにまじまじと見つめるインデックスの視線は物ともしない。


ちらりと腕時計を見た。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/20(月) 22:49:19.62 ID:iT6f4tHAO<>

「似非シスター」

「まごうことなき名ばかり修道女だけどどうかしたの?」

「アレだ」

「ん?」

言い出したいことがあるのに出てこないのだと彼は眉根を寄せる。
こういう体験はしたことが無いなあと、インデックスは薄く笑って立っていた。

――想起出来ずに悩み。


「食い放題……チョコレートファ……ン……ファウン……ファ何ちゃら?」

「チョコレートファウンテン?」

「確か。もォすぐ予約の時間なンだが」


途端に、水を打ったかのような沈黙。

少年の表情も硬い方へと移ろいゆく。
一応、最高品質の店を予約した筈なのだがと首を傾げる。


カチ……カチ。


――やがて、訪れるライターを付けるような硬質な音。

何?
不審に思った一方通行は四方八方360°を見渡し。

「……」ガチガチガチガチ


……何と表現すべきか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/20(月) 22:52:52.73 ID:iT6f4tHAO<>

真白い歯が、ガチガチと互いに互いを叩き合っている。

「……1秒間に何回衝突してンだ、歯槽膿漏だかになンぞ」

「……WW」

「あァ?」

そう聞き返した瞬間だった。




「Whoopeeeeeeeeee!!Let's gooooo!!」

「……うるせェ」

「うっしゃぁぁあああああ!!!!神を!!!!垣間見たよ!!!!」

「お前の喜ぶ気持ちは分かったから、宗教家がンなことほざくな」


テンション最高潮の彼女とは反比例に。
春休み真っ盛りの学生が浴びせてくる視線を上手く交わせずに、フラストレーション。


「さあ行こう!今すぐ行こう!迷わずにっ!怖がることは無いんだよ!さあ!」

「だああァァ!しつけェンだよ!!分かったから黙ってろ!!」


駅は先日の事件で捜査中、タクシーを呼ぶのも面倒だ。

正直言って、この状態の少女を連れ歩くのは公衆の面前での陵辱(精神的)に他ならないのだが。


「……」


人と目を合わせぬように、下を向き杖をつく。
そんな後ろ姿を見守りながらインデックスも歩き出した。

<> 終わり<><>2011/06/20(月) 22:56:10.50 ID:iT6f4tHAO<> 今日は短いのでまた次回。
お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/20(月) 22:58:50.82 ID:Ze3fcWwQ0<> 乙です! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/21(火) 04:19:45.23 ID:b5NWtqMx0<> これって、どうみてもデ−トだよな。無自覚なところがすごい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2011/06/21(火) 06:27:43.75 ID:jVVBVqBAO<> 黒しか持ってない俺は確実に一方さん以下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(-長野)<>sage<>2011/06/21(火) 06:56:39.97 ID:AiJ+yqmAO<> 気づいたらお互いとっておきの服着てた感じの白白コンビ可愛い

ひさびさに不穏じゃない……かな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/21(火) 21:08:16.24 ID:b5NWtqMx0<> この日、三月十四日だよね。

レストラン混んでそうだけど、約束どおり貸切かな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/21(火) 21:24:00.26 ID:lDZ1Cm2uo<> インさんの発狂っぷりがヤバいwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/22(水) 08:38:09.49 ID:9+z3i5sDO<> このまま行けば根性とも知り合うだろうし
順調にレベル5のサインが集まっていくな…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/22(水) 20:46:34.99 ID:UgjoEnvy0<> まて、食蜂さんはlow levelの特別クラスを受験している。
level 5であることを、明かさないのではないかと危惧してみる。 <> 名無しNIPPER<>sage<>2011/06/22(水) 20:55:32.77 ID:Hf46Yqmbo<> 一方さんだってその科だったろ
同じように伸びしろないから特進なんじゃないの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/22(水) 20:57:19.18 ID:q0o1tRlJo<> >>145
巣に帰れ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/25(土) 04:59:43.68 ID:Sqeoe2zG0<> あまりに異分子な二人。

排他的な種の保存意思より、人間の友達はかなり難しくなる。

食蜂さんなら受け入れてくれるかな? <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/06/26(日) 22:07:37.78 ID:45nynrFAO<> 投下いきます <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:10:35.10 ID:45nynrFAO<>

どこかで聞いたようなピアノ曲が流れる店内は、まだホワイトデー数日前ということもあるのだろうが誰も客が居なかった。

柔らかな照明が彼らを照らす。


「ほへへへ!ほーはにはひっあら」

「……早く飲み込め」

ごきゅん!

「凄いんだよ!廊下にも小さいお掃除ろぼがいてお掃除してたの!!」

「……そォ」

チョコレートの噴水に、次は棒の先の苺を浸しながらインデックスは彼を見る。

「し、しかも、きゃたぴらー付きのタイプは階段一段ずつ移動しててね、ちょこちょこって動く仕草がたまんなくて……!
あ!私がおーいって手をふったら『オハヨウ!サワヤカナアサダナ!!』って暑苦しい男性の声が」

「……在校生の開発とかだろ」

「そ、そうなのかも?聞いてると数日前にぽんって爆発しちゃったみたいだし。
えっと……その時も『コンジョー!!』って叫びながら爆発してったみたいなんだよね!」

くるりと竹串を回す。

噴水の勢いはまだまだ止まらない。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:14:01.06 ID:45nynrFAO<>

でろりとした生暖かい茶色がかかったそれを、インデックスは器用に口元へと運ぶ。一方通行は相変わらず、どこか違う場所に目をやっていた。
思案にくれるのか沈んでいるのかは語らなかった。


「……」


ごきゅんと数回噛んで飲み込むと、インデックスは近くにあった紙ナプキンで口を拭った。
紙が予想外に茶色かったことに驚き慌ててそれを畳むと、また彼に問う。

「えっと……そう言えば、何で高校って三年生が一番下なのかな?
小学生日記とか見てると三年生は三階だったかも」

「……さァ」

「ご、ご老体に優しいシステム?」

「……じゃねェの?」


あまりに適当な返しに、インデックスはもう話し続けるのは無理だと判断した。
さしものインデックスにもきつすぎた、話す気の無い相手とは全然発展しない。

こんな時どうすれば正解なのか。
目を這わせるも高級感のある黒光りな壁は何も教えてくれはしない。


苦笑いを浮かべたまま、次はキウイに手を伸ばした。
目を伏せる少年は気づかないのだろう。

気まずい雰囲気をどうしたら打破出来るのだろう。


あなたが笑顔じゃないとどんなに高級だって、美味しくない!
と啖呵を切ってやろうかなんて思ってみた。


のだが、
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:20:41.44 ID:45nynrFAO<>


「……おいひい」



自然に呟いてしまったのは仕方の無いことだろうか。
体に巣くう食欲の執念深さ、自身のものながら呆れるしか無かった。

多分これも高級品なんだろう。
というか旬から外れているんじゃないか。

何と言っても今まで食べたことの無いような上品な風味がする。

いつもなら歯に挟まるだけの面倒な黒い種まで美味しいし。
何より果肉1つ、細胞の一片が瑞々しい。


ただのバレンタインのお返しにしては不当なぐらいの待遇だ。


「――――オマエ、本当に美味そうに食うよな」

突然降りかかってきた声。

「……」

いつの間にか見られていたらしい。
恐る恐る視線を戻せば、妙に鈍く光る赤い瞳がそこにはある。

「だって美味しいもん……」


クッキーを試しに1つ口に放ってみる。
サクッとして、それでいてしっとりと。
相反するはずの特徴を同時に備えるそれを、もう1個だけとインデックスは頬張った。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:25:46.73 ID:45nynrFAO<>

「――何でもオマエはそォ言うだろォが。
あの時のクソ不味い炒飯もケロッと食べ終えたし」


見透かしたように笑う。
店内のBGMはフェードアウトした後に女声のジャズへと変わった。


「そうだった……かな?」

「そォだよ、てか忘れるわけねェンだろ、オマエはさ」


珍しく純度の高くて、自嘲や軽蔑や照れ隠しのためじゃない笑み。
あまり見ない類だった。

それは、なのに何故か苛立ちじゃなく別感情を誘う。

――何か裏があるのだと邪推してしまう。


「……あ、具合」

「まァ、いつもは出来ないだろォし腹を満たすまで食え」

具合でも悪いのかと聞きたかったのだが、途中で遮られた。


「うん、そうだね」

こういう、全てを理解しているようなフリを見せておいて――勝手に離れていく。


それは笑えるくらいどこかの誰かの常套手段に酷似していた。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:30:57.84 ID:45nynrFAO<>

おもむろに携帯電話を取り出し、したり顔で言ってのけた。

「あと、残りは10分もねェから」

「えっ、もうそんななの!?」

「そンだけ食い散らかしといて言うのかよ」

「こんなにお上品に食べていると言うのに……っ!」

「ほざけ、串ごと食いそォな勢いじゃねェか」

「英国淑女によくそんなことい、言えるかもっ!」

「あァ、メシマズなところは顕著だよな」

「うぎぎぎぎ……」


どうかそんな顔は止めてと、半ば祈るように彼女は言葉を紡ぐのだが。

諦観の色は変わらず、着ているパーカーの深みのある青がよそよそしさを増長させるのみだった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:36:11.67 ID:45nynrFAO<>

クルックー、クルックー。

「ほーら、私が餌あげてるんだからしっかり食べなきゃめなんだよー!そりゃー!」
バサバサバサバサ!

「たーんとお食べー!」

つんつん、つん

「おっと、あなた達にもあげるから!」


十数の嘴で靴をつつかれたインデックスは慌てて豆を投げた。

羽を広げそちらへと群れて低空飛行する平和の象徴達。


「みんなで仲良く食べるんだよー」


鳥にそんな忠告聞き入れるだけの頭脳はあるはず無いのだが、思わず叫ばずにはいられなかった。

100円で買った専用の餌。
ビニール袋の中はもう残り僅かだった。


どこに配ろうかと目を光らせて。
広々としたとある公園内、その中央に位置する小高い丘の時計台は午後4時数分前を示していた。


「あー、なんか髪からもチョコの匂いするかも」

髪を手櫛で梳くと、ほんのり漂うのはカカオの香り。
流石に食べ過ぎたかなと胃袋がエラー信号を出してくる。


そしてまたぐるぐると目を光らせて、インデックスは群れから外れた1羽を見つけた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:37:00.04 ID:45nynrFAO<>
***


クルックー、クルックー。

「ほーら、私が餌あげてるんだからしっかり食べなきゃめなんだよー!そりゃー!」
バサバサバサバサ!

「たーんとお食べー!」

つんつん、つん

「おっと、あなた達にもあげるから!」


十数の嘴で靴をつつかれたインデックスは慌てて豆を投げた。

羽を広げそちらへと群れて低空飛行する平和の象徴達。


「みんなで仲良く食べるんだよー」


鳥にそんな忠告聞き入れるだけの頭脳はあるはず無いのだが、思わず叫ばずにはいられなかった。

100円で買った専用の餌。
ビニール袋の中はもう残り僅かだった。


どこに配ろうかと目を光らせて。
広々としたとある公園内、その中央に位置する小高い丘の時計台は午後4時数分前を示していた。


「あー、なんか髪からもチョコの匂いするかも」

髪を手櫛で梳くと、ほんのり漂うのはカカオの香り。
流石に食べ過ぎたかなと胃袋がエラー信号を出してくる。


そしてまたぐるぐると目を光らせて、インデックスは群れから外れた1羽を見つけた。
<> 二重投稿……
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:42:10.39 ID:45nynrFAO<>

なるべく怖がらせないよう、そーっとそーっと近づいた。



何故一匹だけ孤高に佇んでいるのか、しかも人間にすり寄りもしないし逃げもしない。
草を踏みしめ歩き、それの正面へと腰を下ろす。
それでも小刻みに頭を動かすだけで、こちらを気にしもしない。

いくら人に慣れているからとしても不可解だ。
インデックスは注意深くその鳩を見る。

その鳩はどこまでも真っ赤な目をしていた。

そうして彼女は初めて合点がいく。


「――鳩の目銭じゃないんだ」


特有の真四角の光彩は見受けられず、ただ赤いだけなのだ。
目が見えないのか、それとも異質だから省かれるのか。
理由は定かではないが、たった一匹だけで生きているのか。


「あなたは寂しくないの?」

鳩は鳴かない。


「私だったら寂しいよ」


ビードロの目をした偽物の兎は、やはり孤独には耐えられない。
たとえ本物じゃなくても。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:48:11.53 ID:45nynrFAO<>

丸々とした他とは違い、明らかに肉付きが悪い。
インデックスが豆を差し出すも食べようとはしなかった。

「別に、これは私が作ったわけじゃないんだよ」

苦笑するもその意味を理解する者は居ない。

「――まだ、とうまみたいに上手には作れないかもだけど」

口元に運んでいって、ようやくその嘴が挟んだ。
1つ、2つ、3つ。
彼女の手を伝い、少しずつ啄む。


「あは、ぶっきらぼうで赤目で細くて。

でも何だかんだで食べるって誰かそっくりかも」


「それは、ここら辺に居るからって言っておきながらァ?

ふと目を瞑った隙に、どこかへ行ってた某鳥頭のことなンだろォな?」


「……げ」

おかしな話なのだが、インデックスは後ろの足音に気付いていながらもそれは彼では無いのだと何故か思っていた。

いや、思いたく無かった。

杖の独特な金属音がしなかったからかもしれない。
だとしたら、何故チョーカーのスイッチを入れているのだろうか。


と、何故か自分から乖離した考える領域は更に切り離す。
首を始点として全身に及ぶ鳥肌。
予感は当たりかもしれない。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 22:53:45.53 ID:45nynrFAO<>

「――何となくね、ぼーっとさせておいてあげるべきかなって思ったんだよ」

嘘だ、何が起きるか分からないのが怖くて距離を置きたかった。


「お陰様で纏まった」

「それは……祝福するべきかな」

彼に背を向けたまま、インデックスは立ち上がる。
赤目の鳩は冷静に、そんな彼女を気にすることなくただどこか遠くを見つめている。
冷たい風が脇を通り抜けるも、耳を苛めるほどではない。

日本では三寒四温があって、そして春が来る。
春が来てしまえば、また一緒に居るのだから。





――だから、もう有耶無耶で良いのに。



<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 23:03:30.88 ID:45nynrFAO<>

「なァ、インデックス」

「どうしたのかな、一方通行」


エマージェンシー!
よりにもよって、こんなときに初めて名を呼ばれた。


ああ、彼は馬鹿だ。
救いようの無い馬鹿だ。
多分これから、全て台無しにする気だ。


――止めなきゃ。


そうだ、この集結して来た無数の鳩を襲わせてしまおう。
豆を投げてしまえば良いのか?

いや、全然こんなのじゃあ足りなくて、じゃあ、どうすれば。


「どっかの誰かが言ったよなァ。

『一人殺せば悪党で、百万人だと英雄だ。
数が殺人を正当化する』」

「……そうだね、かの喜劇王の劇中での台詞だったかも」


ゾッとするぐらい、いつもと変わらない声だった。
同居人がああなってしまってから、何が一番変わったかとの質問には嘘が上手になったと答えるべきかもしれない。

息を出し入れするように、嘘は今や必要不可欠となってしまっていて。







なんて、現実逃避はやめよう。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 23:07:01.14 ID:45nynrFAO<>


いつもと何ら変わらない節で、だけれども――こちらにはちゃんと分かるのだから。


恐ろしい愚直さだ。
潔癖願望にも程があるだろう。
ああ、自分との付き合いにそんな清廉さは要らないのに。
何せこっちは悪を正当化も駆逐もできず、ただ隣でうずくまって放置しているのだ。
あの、冬の日から何も変わらず。
周りに傷も罪もを押し付けて、自分はぬくぬくと日溜まりに執着している。


だから、お互い黙ったままでいよう。
それが暗黙の了解だったじゃないか。
咎は隠し持ったまま、知らないフリをし合っていけば。


「――なら、あれだ」


今なら間に合う、質の悪い冗談は止めてと一言。
そうだ、叫んでしまえ。
きっと彼なら察してくれる。
そうしたらまた、適度に浅く上辺だけに戻れるんだから。


息を吸って吐くだけの簡単な作業じゃないか。
とりあえずストップと言おう。
なるべく一方通行が怯むようにヒステリックに。

そうして彼女は、息を吸い――

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 23:23:00.72 ID:45nynrFAO<>


思えばあれは、一方通行と再会する前だ。
くーるびゅーてぃー=10032号が病院の屋上で漏らした彼女らの製造された理由。



『ミサカ達は彼の為に生まれ、彼の為に殺されました。
それが全てで変更余地のないプランですとミサカはあなたの目を見つめます』

『――それが、あなたの同居人の上条当麻に止められたのです』

『だからミサカ達はこうしてここにいる。
だから、このミサカに出来ることが、ミサカにしか出来ないことが増える度に、生存理由をまた一つと確立するのですよとミサカは失恋の痛みをこらえつつ笑ってみせます』


『でも、ミサカ個人の身勝手な感情としては――彼にも感謝せざるを得ないのです』




「10031人を殺した奴は、何て言うンだろォな」

「化け物、死体生成工場?」

「それも一理あるかもしれねェが」

インデックスは何も言えない。




『彼――第1位もここにミサカが居ることに寄与していますから』


――過去と今が、痛みを伴い肉薄する。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/06/26(日) 23:29:32.55 ID:45nynrFAO<>

チクリと痛みの走る足先を見ると、そこには先程の鳩が一羽。
彼女の足首をブーツ越しに刺していた。


だから耳を塞ぐことも出来ずにただ、


「生から死への速度すら操作可能――だから俺は、一方通行【アクセラレータ】なンだよ」

「ぁ、あ」

「――――化け物で、殺すしか能のねェ加速器だ」




そうして、一方通行は薄く笑った。

<> 終わり<><>2011/06/26(日) 23:37:53.52 ID:45nynrFAO<> あの花が終わってしまってしょんぼり……。
それと申し訳ないですが出来れば感想コメは1回につき1人1レスでお願いしたいなあと、あまり鯖の調子も良くないので。
それではまた次回。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/06/26(日) 23:59:02.37 ID:9bc7cCSp0<> おつー
一通さんのネガキャンはじまたwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/06/27(月) 02:01:22.38 ID:NMBhNHajo<> おい……何が起こってんだよ!
乙だぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北陸地方)<>sage<>2011/06/27(月) 08:51:13.91 ID:zTqP0pWAO<> 御坂妹の失恋発言に一方さんの突然のネガキャン……
一体どうなっていくんだwktk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/06/28(火) 01:39:47.18 ID:nhguh+Tl0<> ソギーww
開発者はだれだ?原谷とか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/28(火) 10:26:28.35 ID:ur0Gk6pIO<> >>167
布束さんじゃね? <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/06/30(木) 23:45:27.46 ID:xOvbTspAO<> こんばんは、今夜中に投下します <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 00:58:37.41 ID:s242rGCAO<>

――何と言おう、何から言おう、何まで言おう。


思考はぐるぐると拡散して、かと思えば自意識は1つ上へと昇華したような。
まるでこの悩みは他人のもので、自分は嘲笑を浮かべながら見ているそんな錯覚。
実際のところ、鉄製のベンチに座り俯くのは他の誰でもない一方通行だというのに。

あのまるで狢に騙されたような夜。
あの時には、もう潮時だと決心したはずなのだが、果たしてどうしてこんなに躊躇うのだろう。

自身の筋張った手がぴくんと動くのを見て小さく息を吐く。


吐露したら具体的にはどうなるのだろう。
嫌悪、軽蔑、驚愕、畏怖、憤慨。

ここら辺りの悪感情が本命か。

それは当然の事で、なら離れていくのだとしても最もだと彼だって断言できる。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:00:24.06 ID:s242rGCAO<>

ただ1つ懸念材料を挙げるならば。

(……風斬との約束は反故、若しくはそれでも見張れと言うのか)

そう。
かの天使に依頼されてしまったことが気がかりで、どうすればいいのかと――。

まただ、たった今また何かが心の柔い部分を差した。

その刺激から注意を外し、そして自明の結論へと再度至る。


どちらにせよ、息苦しさのせいでまともに彼女の目を見れないのは変わりが無かったということに。



そうしてやっと、ゆるゆると頭を上げた。
ぼんやりとした陽光さえも目に痛い。
目元を少し擦ってから辺りを見回す。

薄靄のかかった視界――。

学園都市には異質な自然の広がる公園、そこに来た意味の理解の為のタイムラグで少々とられてしまった。

「……つゥか居ねェし」

先ほどまで鳩に餌をあげていたはずじゃないかと思いこそすれ、やはりどこにも見つからない。
まあ、途中から明らかに声は絶えたが。
あの起伏の更に向こうだとすれば、200メートルは移動したのだろうか。



――人がやっと踏ん切りを付けたと思ったらコレだ。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:04:28.10 ID:s242rGCAO<>

「……意思砕けそォになンだろォよ……」

勿論彼女は知る由もない。
確かにないのだが、それでも故意に対応しているんじゃないかと思わせてくる。

――予防線とはやはり、考えすぎなのだろうけど。


お返しに驚かせたくなり、チョーカーのスイッチを入れ杖を片手で持ち上げる。
無音とはいかないが、あの独特の叩く音はもうしない。
そうして彼は歩き出した。


公園内はここが学園都市だとは信じがたいくらいに、内容物において独立性を有していた。
前時代的なアスレチック、人々が憩う噴水、そこらと植えられた花々と我が物顔で闊歩する動物たち。
彼女が行ってみたいと言ったから来ているのだが、喜んでいるだろうか。


前方にやっと鳩に囲まれる少女が見えた。
時計は、4時の10分前を示している。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:10:18.62 ID:s242rGCAO<>

――常日頃、科学に染まりきった街で彼女は疎外感は感じないのかと考えていた。
あんなに機械オンチで、しかも異邦人だ全身でアピールして。


「あは、ぶっきらぼうで赤目で細くて。

でも何だかんだで食べるって誰かそっくりかも」


やはり、こちらの方が性に合ってるように思える。
異国のどこかで、こうやってのどかな生活を過ごす方が――なんてお節介でも無いけれど。




「それは、ここら辺に居るからって言っておきながらァ?

ふと目を瞑った隙に、どこかへ行ってた某鳥頭のことなンだろォな?」

「……げ」

やっと見つけた、見つけてしまった。


「――何となくね、ぼーっとさせておいてあげるべきかなって思ったんだよ」

こちらを向かないままで彼女は答える。

「お陰様で纏まった」

これは嘘だ。
考えは四方八方、霧散して収斂にはほど遠い。

「それは……祝福するべきかな」

彼に背を向けたまま、インデックスは立ち上がる。
痩せた鳩が追従してつま先へと移動する。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:13:26.81 ID:s242rGCAO<>

まだ冷たい風が吹く、首元を徒に撫でていった。
三寒四温、春が来る前には4回温かくなるけれどやはり凍えなくてはいけない。

春が来てしまえば、もう一緒に居ないのだろうか。




――だとしても、もう有耶無耶ではいられない。


「なァ、インデックス」

「どうしたのかな、一方通行」

最後だから。
1回ぐらい、名を呼んでみたって良いだろう。

そう、自分は愚かだ。
それも救いようの無いぐらいに。
今まで絶妙に均衡を保っていた関係を、これから全て0にする。


「どっかの誰かが言ったよなァ。
『一人殺せば悪党で、百万人だと英雄だ。
数が殺人を正当化する』」

「……そうだね、かの喜劇王の劇中での台詞だったかも」

流石にただならぬ雰囲気を感じたのか、彼女の声も緊張を帯びている、気がした。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:18:01.52 ID:s242rGCAO<>

いつもと何ら変わらない節で、言えなかった。

視界の中の少女は妙に敏い。
押し付けがましいフリをしても、一線を見極めるバランス感覚は素晴らしくて。
そこに救われてきたというか、甘えてきてしまった。

本当は最初から脅しておけば良かったのだ。


だけれど、あの残酷な世界でそれでもあの少女に手を伸ばしてくれたから、ああ、それの礼もまだ言えていない。
だから、だから。
救いを求めた、わけじゃない。
そうじゃなく、あの冬の図書館で思ったことはもっと単純だった。

(認めるのは癪だが、優秀な奴と話しがしたかった)

期待の通り、彼女の話は面白かった。
知識量は話術に比例するとは到底思えないので、そこのセンスもあったのだろう。
客観的に考えて、自分と同じぐらい才に恵まれた者と初めて出会ったと思った。
そう、2位とも感じた溝が無く限りなく肉薄していて。
似ていたのかもしれない、罪人と聖職者と立場は真逆であれど。


「――なら、あれだ」

質の悪い冗談じゃなくて悪い、と小さく呟いた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:26:22.34 ID:s242rGCAO<>

さよなら。

「10031人を殺した奴は、何て言うンだろォな。
化け物、死体生成工場?」
――それも一理あるかもしれねェが」

こんな破綻した人間に付き合わせて申し訳なかった。

「生から死への速度すら操作可能――だから俺は、一方通行【アクセラレータ】なンだよ」

だけど、切り取られたほんの一瞬一瞬が楽しかったのは紛れもなく本当で。

「――――化け物で、殺すしか能のねェ加速器だ」



だから少し勘違いしてしまったのだ。
眩い彼女が慕ってくれるから、自分も後ろめたさなんて微塵もない人間だと。
夢想してしまった。

これはただの、一冬の過ちなのだけれど。

インデックスは、ただ俯いて黙っているように見えた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:48:01.06 ID:s242rGCAO<>

「そォやって、大量殺人犯で化け物の俺だが以前写真を見せたガキ――打ち止めと過ごすよォになった」

「それでまァ、あの日に色々な因縁がこんがらがって、……あのガキを救ったのはオマエだと冥土帰しが言っていた」

「――それと、オマエの名が書かれた羊皮紙、極寒のロシアで俺はあの妙な界に位置する歌を使った」

もしかして、一方通行が居なくてもインデックスだったなら正攻法で打ち止めを守ることが出来た――。
なんて、到底思いはしないけれど。


「不格好なやり方しかできねェ俺と違って、オマエはいとも鮮やかに救済したわけだ」

あのヒーローにはなれはしない。
だけれど、似ている彼女だからこそ妬みに近い感情でも、やはり憧れる。
小さな背中がいつまでも理想で、どこまでも眩しい。



「――有り難う、アイツと俺を守ってくれて」



やっと言えた。
たったこれだけの事を言うために回りくどい方法を取ったものだ。
いつだって機会はあったはずなのに。

ああ、本当に愚かだ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 01:59:41.34 ID:s242rGCAO<>

銀髪が風に靡く。
この至近距離で見るのも最後だと思うと、妙に感慨深かった。


「――とは言えシスターさンよォ。
そォやって呑気に後ろ向いちゃって?
どっかの殺人鬼は能力使えるンだからさァ?」

くつくつと喉の奥で笑う芝居をして。
情報量が多く、インデックスが処理出来ない内に逃げてしまおう。

だから、これが本当に最後の最後。

斜め横の時計台を見れば、間もなく4時。
日も大分傾いたものだ。


「この1ヶ月は悪い夢を見たとでも思え。


それとお幸せに、危険な奴には気を付けろよ」


どうぞ、今は憤っても良いからそうしたら忘れると良い。
白い悪魔に付きまとわれてしまったとでも良いから。



と続けようとして――。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/01(金) 02:11:36.86 ID:s242rGCAO<>


――リンゴーン――


どこかで鐘が鳴る。
時計台だろうか。
厳粛な響きだと他人ごとのような感想を持つと、やや遅れて複数もの羽音。

音につられて鳩が飛び立ったのだ。




「――ねえ、あくせられーた」


その飛翔する鳩の群れをバックに――二つのエメラルドがこちらを射る。



逆光を浴びるその様相は、この世界に存在してはいけないような静粛さを持ち


「今から私、本当に最低なことを言うね」

「――」

ただ、立ち竦むしかできない彼に――





「――ごめんね、それでも私は――あなたを咎めることも許すことも出来ないんだよ」


オレンジ色の目元はたわみ、そう、確かに笑いかけた。


鳩は空高くへと、ひたすらに舞い上がっていく <> 終わり<><>2011/07/01(金) 02:15:57.23 ID:s242rGCAO<> 即興いくない……、深夜だからって長々とすみません。
それとまあ余談ですが、初期のほのぼの〜とかよく言われたりなんですが、分類としては日常の皮を被ったサイコな群像劇()みたいな感じでお願いしたかったりです。
それではお付き合いいただきありがとうこざいました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/01(金) 05:18:25.78 ID:a0T6a5Va0<> >>1 乙
12時ならぬ、四時の鐘が鳴った。
シンデレラ階段はどこにあるのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/07/01(金) 06:12:32.29 ID:HQxStDSAO<> サイコか。インさんがノーマン・ベイツで上条さんはもうミイラなのか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2011/07/02(土) 01:44:15.60 ID:LoD/EnCAO<> 「日常の皮を被った〜」なんて明言されちゃうと、あれもこれも裏に狂気が見え隠れしてたような気がしてくるんだよ
完全に手のひらで踊らされて悔しいでも続きが気になっちゃう…ビクンビクン
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<><>2011/07/02(土) 07:52:21.02 ID:urBFcStAO<> おつー
やっぱり分かってたけどここは切ないなー……
一方さんがお礼言ったところで泣きそうになった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/02(土) 17:12:30.22 ID:6rhQcDKG0<> 追いついた!!
今日辺り来るかな1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/07(木) 20:34:55.94 ID:NBsgzYui0<> >>1 七夕支援 <> ◆ObanGQEW7M<><>2011/07/14(木) 17:17:47.51 ID:AKqwBAwAO<> せーーぞーんか↑ーーくにーーーん!!!!!
二週間も空けていてすみません……
学校祭とかあーだこーだしたのがやっと終わったので今晩投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/14(木) 17:49:43.31 ID:dfksdQG6o<> 待ってた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/07/14(木) 19:41:03.24 ID:yX8rjl3M0<> お、俺も待ってた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/14(木) 22:07:37.50 ID:hz5cbNXYo<> 学生だったということに驚愕 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2011/07/14(木) 23:12:41.50 ID:FllGYWwAO<> 幼女だって学校くらい行くさ <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:33:31.38 ID:AKqwBAwAO<>


鐘が鳴り、鳩が飛び立った。
数十羽ものが一斉に飛び立つことにより、空気に舞いながら数枚の羽根が落下する。
ひらひらと、ひらひらと。
一枚が地面へ着いたことを確認し、やっと一方通行の意識は平生へと戻りたがる。
だけれどそれは無理だった。
煮えたぎるような全身の血液、奔流をあげて血管を走り回る液体。

残響と共にあるのは、達観したそれでいて貼り付けたような笑みを浮かべる少女と

「……あァ?」

足を止めずにはいられない彼。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:36:19.68 ID:AKqwBAwAO<>


「意味分かンねェンだけど」

「だから、言葉通りなんだよ」

彼女の銀髪に乱反射してもう日暮れだというのに日光が目を焼いていくような。
耐えきれずに芝が敷き詰められた地面を見つめる。

気ままに揺れているようで、抵抗出来ない。
風という一大勢力に巻き込まれて、全体としては同じ方向へとそよいでいく。


「私は……その実験を止めなかった、止めようとしなかったでしょ」

しばらくの沈黙があって、やっと聞こえてきたのはそんな声だった。
幼子に言い聞かせるような語調で、淡々と。

「馬鹿かオマエ」

「そうだね、常識知らずとはよく言われるかも」


そういうことじゃなくて。
あの8月までを、彼女は

「……知らなかっただろ」

「うん」

機械的、と言う外のない。
関節が外れたように不自然な作動。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:37:35.65 ID:AKqwBAwAO<>


唇の乾きが腹立たしい、擦れるとかさかさと鳴るのも鬱陶しい。
でも全身そうだったらしく、擦れ合った親指と人差し指があまりにドライで。

ごくん

「あのね」

唾を飲み込んだ後の喉の不快感が尋常ではない。
口から指を差し入れてひと思いに抓りたい。


「ある事象に関係してないということは、それだけで一定の権利は主張出来ない――そんな思想を持ったキャラクターが、昔見た本にいたんだ」

英文をそのまま機械的に翻訳したような固い文だった。
寧ろ、視覚で聴覚で感じる目の前の少女の方が、英文学に登場していそうで気味が悪い。
認識のずれ、不一致に酔いそうだ。

「『観客は騒がずに指をくわえてショーを見てろ! そもそも低俗な貴様らには私を垣間見ることすら認められてはいないのだからな!』――なんてセリフを言ってたかな」

「横暴にも程があンだろ」

「あなたはそう思うの?」

1回だけ肯くと、「そうなんだ、賛同してくれると思ったのに」と不思議そうに返された。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:39:18.44 ID:AKqwBAwAO<>

「私はその時、否定的なこととか考えつかなくて……なんていうか、凄く納得できちゃったんだよね」


顔に貼り付けた笑みを剥がし、そして眉根を下げた。
真横から陽が差すせいで、鼻を境にして陰陽がくっきりとついている。
何か違和感を感じると思ったら、いつもとは逆向きに光が当たるのだ。

大概は自分の右側で、速くもなく遅くもなくきっちりと同じペースを刻む。
折節につけ右に目を向けると、少しだけ涙目の少女がそこにいて。
変わらない日常がその向きだとしたら、真逆の今は非日常なのか。

節目がちに見やると、――インデックスは何やら困っていた。

「……糾弾と赦免の資格なんて特にそうじゃないのかな。

……それに……だって……」

口の中でもごもごと転がす文たち、風音が邪魔をしたことで一方通行の耳には届かない。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:41:33.69 ID:AKqwBAwAO<>


肩が規則的に上下した。
これは泣く前兆じゃないかと嘆息せずには居られない。
意味が分からなくて戸惑うのはこちらも同じなのだが。

杖を一度突き直し、問う。





「で、本音は?」

「……よく分かったね」


いつの間にか肩からかけていたバックがあらぬ所へと移動している。
気怠げにそれを直した。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:44:25.52 ID:AKqwBAwAO<>


「オマエが嘘を吐くときは決まって禅問答みてェなことになる」

「そうなの?」

「推測だが」

やたら小難しいようなことを言って煙に巻く、気づいた時には既に遅い。
立ち入って聞くのを躊躇わせるような、そんな文運び。

「その話だけ聞くとロケモンに1匹ぐらい居そうだね」

そうやって笑うのも誤魔化すフリなのだろうか。
えもいわれぬ不気味さと、何故か親近感。
自身の顔筋の強ばりに気づきながらも、一方通行は崩そうとはしなかった。


「私ね……、友達のこと虐めたくは無いんだ」

「オマエのことが怖いってのは」


強いて言えば――スカートがひらりと揺れたから、気無しに言った。

後から思えば自虐的でいて、それでいて彼女を正確に刺し殺すような、毒のたっぷり付いたナイフを


「立派な正当防衛だろ」


――放ってしまった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:49:04.75 ID:AKqwBAwAO<>


「違うんだよ!!!」





怒号はあまりに突然だった。
反応した鳩がその身を翻す。

瞳はギラギラと、強烈な光を放ち彼を離そうとはしない。
ほんのりと赤付いた鼻から下の皮膚がひくひくと小刻みに揺れる。


「だって私は泣いちゃって……、ひょうかは死のうとしたもん……!」

地雷、という二文字が頭を過ぎ去っていく。
震える声で、全身もおなじように。
悲しいのだろうか、何かは分からないけれど。

「……誰が言うンだよ」

「みんな……だよ……っ」



トンッ

――今の顔を見られたら、目も口も中途半端に開いていてそれは滑稽だろう。

(知り合いには見られたくねェな――)

というのが、縋るように抱きつかれた感想だった。





インデックスは額を当て、胸元を両手で軽く握る。
首から伝わる体の熱さに、返しに手を回すべきか少し戸惑った。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:51:46.77 ID:AKqwBAwAO<>

「いかないで……ねぇ、あくせら……れーた……」

一応目元を拭ってみても液体はやはりというか、指には見受けられない。
温い柔らかい体に沈みそうにながら、彼は目を閉じる。

プラチナが風に煽られ、どこからともなく春を彷彿とさせる芳しい香り。

「泣くのも、……やだ」

「……それ、どっちのセリフなンだか」

「……私の…………だも、ん」

「嘘吐け」

耳朶を震わせ囁くと、浅くだが体が跳ねた。

「泣い……てなんか……」


「……何でそンなに固執すンだよ」

「……あなたも、誰も、やらないから」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:54:57.55 ID:AKqwBAwAO<>


そういう衝動にまで達しなくなって幾許か。
磨耗した精神をぶら下げて幾年か。

「……最低な返しでごめんね、……だけど、一緒に、居て……ね」

ゆるゆると頭が離れていき、そして一方通行を見上げる。
これが愛らしいと言うのなら、背筋が凍るような甘ったるさなのだと覚えておこう。
「本当に馬鹿だ」

足を汚泥にとられ、沈んでいく。
自分も、彼女も。

幸か不幸か、彼には後者に思えるが、妙なことに満足してしまった。


「……ありがとうね」


浄化と腐敗は背中合わせなのだろうか。
今の彼らには、酷似していて見分けがつかなかった。


だから勿論、ただの生産性のない傷の舐め合いであることにも悟れずに――。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/14(木) 23:58:43.15 ID:AKqwBAwAO<>


指一本ずつ、彼の服から離れていく。
体温も同時に消えていき、鈍い寒さに捉えられた。

「あくせられーた」

変わらない声と顔で、画一化されたように笑う。
――何を言うのも間違いな気がして、とりあえず息を吸った。
太陽は、その姿を間もなく隠す。

「どこ行くにしてもそォだ」

「んーと」

「知り合いに依存し過ぎンなよ」

久しぶりに額を小突く。
右手人差し指にじんわりとした刺激が。



「――今更遅いよ」


額を押さえながら、拗ねたような顔をしていた。 <> おわり<><>2011/07/15(金) 00:05:17.89 ID:jcDhLUdAO<> 1はがく生なんだからね!
ぞくに言うゆとり……?とかさっしちゃまけだよ!!


それと、溜まったアイデアがあるのでもしスレ立てしてたら鼻で笑ってやってね!
おつかれ!あでぃおす! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<>sage<>2011/07/15(金) 01:06:36.75 ID:udhoA4hfo<> はい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/15(金) 01:11:24.28 ID:z/ydp1Mx0<> >>1 乙
学校祭ってあれだろ、お遊戯会。
スモック着て白タイツ履いてみんなで音楽に合わせて
ドンドンパンパンドンパンパン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/07/15(金) 02:11:39.33 ID:g1eAKluAO<> 乙でした。
次スレたてるなら、このスレで教えてほしいです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/15(金) 05:09:18.46 ID:SkCTlDK00<> >>1乙

終わりって、
食蜂さんの一方いびり期待してたんだよ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/15(金) 06:26:42.66 ID:jcDhLUdAO<> あ、書き方に語弊があったんで言いますが別に最終回とかじゃないんで。
普通に続きます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/15(金) 09:22:32.26 ID:3FalEks+o<> 最終回かーってふいんき(ryになってたからちょっと寂しくなってたww乙 <> >>205<>sage<>2011/07/15(金) 16:38:56.44 ID:g1eAKluAO<> 終わりじゃないんですか、やったー\(^O^)/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/15(金) 21:24:31.69 ID:SkCTlDK00<> >>206 レス感謝

復学は良いが、一方さん制服無いのではないかな。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中国・四国)<>sage<>2011/07/16(土) 00:13:18.63 ID:K2zGfIcAO<> 乙です!!
終わったかと思ってすげー焦ったずぇ…
薄氷を踏むような平安にハラハラしつつ、とりあえずは白コンビの一歩近づいた関係に乾杯!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/16(土) 00:15:23.42 ID:V6DnZIKDO<> <●><●>
このスレは上条さんに監視されています <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/16(土) 01:36:34.74 ID:6EIbcoun0<> 上条さんは早く新約2巻の準備に取り掛かってください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/07/16(土) 09:29:44.08 ID:yB/3F7GAO<> 久しぶりにキテタ━━(゚∀゚)━━!
べ、べつに待ってなんかなかったんだから
泣きそうなインデックスさんの代わりに思わず目に汗が滲んだりしてなんかないんだから
あんたなんか勝手に充実した学校生活を謳歌して、思う存分書きためればいいんだわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/17(日) 21:52:05.43 ID:oI65IO+/o<> 来てたのに今気づいた乙
やっべぇ何の会話なのかぜんぜんわかんね <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/07/17(日) 23:19:59.78 ID:ZQzunZcAO<> あの、今回の話は一方さんが本当にアレなんで、途中突っ込んでいただいて結構なんで……
時系列は飛んで8月です <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/17(日) 23:43:23.48 ID:ZQzunZcAO<>

***

そう言えば今日は猛暑日だ。
天気予報で言っていたようなそんな気がする。


「……あつ、い」

「……」


日傘を差しても暑いものは暑いのだ。
しかも真夏の午後、貧弱と称されることの多い彼らの足取りは覚束ない。
加えて冷房の効いた建物から今さっき出てきたばかりで気温差に体が順応出来ない。
遠くに見えるアスファルト上の空気が揺らめく。


「……とけ……はがれる……」

「……」

「…………あいす……そふとくりーむ」

「……」

「……じぇらーと……かきごおり……ぱふぇ……けーき……しゃーべっと……あいすまんじゅう……ふろーずんよーぐると……ようかん……ぜりー……ばばろあ……ぷりん……しぇいく……ちゅーぺっと……………………あいす……そふとくりーむ……じぇらーと……かきごおり……ぱふぇ……けーき……しゃーべっと……あいすまんじゅう……ふろーずんよーぐると……ようかん……ぜりー……ばばろあ……ぷりん……しぇいく……ちゅーぺっと……………………あいす……そふとくりーむ……じぇらーと……かきごおり……ぱふぇ……けーき……しゃーべっと……あいすまんじゅう……ふろー」



「……うるせェ」

「……」
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/17(日) 23:45:01.66 ID:ZQzunZcAO<>

譫言のように冷たい菓子を羅列するインデックスの目は、やはり鈍った光を反射していた。
すぐ脇を駆け抜けていった風紀委員の校章を付けた中学生達は、今は38℃ぐらいはあるのだと言っていたような。


「……ひやし、ちゅうか」

「……食べ物も止めろ」

「……、……むぎち」

「……飲み物もだ」

「………………」

「……………」

「…………」

「………」

ザッ、ザッ
足音だけが高らかに響く。


今の一方通行がどこへ向かうのかと言えば、資材・工具量販店と答えるしかないが。

「……タクシー、どこにも居ねェし……」

「……そうだね」


汗、汗、汗。
目尻にまで溜まったそれを親指で拭ったインデックス。
彼女はまるで落ち武者のように縛った髪の束をふるふると揺らしながら、唐突に話始めた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/17(日) 23:48:08.98 ID:ZQzunZcAO<>


「……ねえ、ばんがいになるんだけど、明明後日って暇だと思う?」

「……」

妙なことが起こる前触れでは無いだろうか。
二の腕に歪な寒気が走る。
ので、彼の記憶が確かならばスケジュールはなかったはずなのだが無回答で留めておく。




「……遊園地とか、好き……かな」

「好いてると思うのか……」

「…………見るからに、だよね」


「……じゃあ、水族館でも良いんだよ……」

「……変わンねェから」

「やっぱりそうだよね……」

思案しているのか、普段よりも瞬きの回数が多いように思える。
相変わらず、日本女子泣かせの睫毛の量。
ばしばし、音も聞こえそうな質感。


「……最近は、すぐに寝ちゃうって言ったよね」

――先ほどの水槽の前で話していた、同居人のことか。
胸中知ってか知らずか、僅かに傘が傾いた。

「コマーシャル見てて……行きたそうだったんだ。 なんだけど、これから検査とかいっぱいあるみたいで。 私はその日、集会で」

「……だからってよォ、俺を選ばなくても……ま、仕方ねェとは思えねェが妥協してやらねェことも……」

彼の目の脇に指を添える仕草、きっと癖なのだろうとインデックスは推測している。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/17(日) 23:58:53.15 ID:ZQzunZcAO<>

状況を半ば知ってしまっているから断り難いが、彼だってよりにもよって自分と行くなんて堪ったものじゃ無いはずだ。
と言うか、男だけであんなメルヘンな所に行けと言うのか?

ああ、メルヘンと言えば。

「……それこそ、あの庶務野郎を」

「……うん? ……ああ、あくせられーたじゃなくて“ばんがい”」

肩の力が根こそぎ奪われるかと思った。

「…………ワーストかよ」

「わーすと……?」

合点がいかないと彼女が言うので、携帯のアドレス帳のとある欄を見せてやった。

「……じゃ、趣味はお菓子作りとヨガで苦手なものは虫」

「嘘っぱちだ、そのプロフィールは全部。 アイツはそンな可愛げのあるものなんてハマってねえしゴキブリは素手でも笑いながら殺せる」

間違った嗜好さえも、やはり彼女はキチンと覚えていた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:01:38.71 ID:naBLz9CAO<>

「おかしいなぁ、私が名前聞いたときは『ミサカァ? ……いひゃっ、あのね、ミサカの名前はばんがいこたいだよォォォォ、ギャハハハッッ!!!!』……って言ってたんだけど」

「……ビンタ決定だな」

あのつり上がった目でニタニタと笑う図が嫌でも想像出来てしまう。
肉体年齢1歳に騙されるこの少女の未来を少々憂えてしまった。

「そンなン本人らがやりゃ良いだろォよ……つゥかアイツら同級」

「そっかわーすと……ちょっとショックかも」

「気にすンな、奴は将来詐欺で生計立てると吹聴する女なンだよ……」

「……凄いね、それ」


自身が関係者じゃ無いならば即座に同意してやるのに。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:05:27.25 ID:naBLz9CAO<>

暑さなんて微塵も感じていないとばかりに、彼らの脇の車道を黄色いタクシーが走っていった。

「……タクシー……居るじゃねェか……!」

「……あ、思い出したんだけどね」

「クソがァァ……舐めやがって……!」

「あの、悪役のセリフそのものでしか無いかも」

打ちひしがれる隣の彼に日光が差さないように上手く調節。
インデックスは傘を一回クルリと回した。
「聞いて聞いて? 黄色い車を、三回見ればその日は良いことあるんだって」

「……」

「あ、でも間に黒い車は見ちゃ駄目かも」

「…………それに何の科学的根拠があンだよ……」

「それは分かんないけど、とうまが言ってたから」

またそれかと肩をすくめる。
馬鹿の一つ覚えじゃあるまいしと呟いて一方通行は

「…………あれは」

数秒後には街行く車の一つを指差していた。

「うーーーん…………黄緑だね!!」

彼女の名誉の為に言おう。
“とうま”の名前を出すと彼が言うことを聞いてくれるなんて、微塵も考えていない。


(あくせられーたってとうまの舎弟なのかな)


ただ、あながち間違ってはいない推察を展開しているだけなのだ。
舎弟イコール奴隷だと極道モノの映画で間違った等式を学んだだけなのだ。
<> ――厨二領域【ゾーン】展開――
◆ObanGQEW7M<>saga !red_res<>2011/07/18(月) 00:12:03.16 ID:naBLz9CAO<>





「―――さァ、始めよォか」


「―――哀すべき、二元論」






<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:13:43.24 ID:naBLz9CAO<>

「……漆黒【クロ】の車っつゥのは、あらゆる所に蔓延るイメージなンだが」

「前に一回見ただけで全然居ないかも……!」

かの後直ぐにリセットされたのだが、以降は奇跡的に目撃していない。
遂にはバスの停留所に止まって目を凝らす有り様でもある。

「……黄色、……黄色」

「……」

「……っ!」

その碧の目が射抜く先は――


「……橙かも」


禁書目録の声は悲哀さに満ち、陽光ノ探し人【ハローイエロー】(命名一方通行)の難しさを端的に示していた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:16:32.27 ID:naBLz9CAO<>

「兎に角、御前にも暫く黙るっつゥ選択を求めてェワケだが」

「御免なさい……」

「戯れ言吐いてンなよ」

唐傘を回し、兎が嘲う。
影に覆われた全身を自身の腕で舐め廻し。
「――嗚呼」

ただ耽る。


――索敵、迎撃、ヒダマリノ民ヲ捕獲セヨ――。
――今コソ、ソノ時――。


そして紅の双眸を開き、男は吠えた。

その日、音速は光速へと楔を打つ。




「ーーータクシヰ!!」


――ブロロロロ――


「―――お見事なんだよ、さすが師【ますたぁ】」

「ほざけ」


誰も乗っていない1台目と同社の其れを見送って、いよいよ王手である。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:21:42.63 ID:naBLz9CAO<>

自分は最も非効率的なことを率先して行ってるのでは――との声は零次元の極地へととうに棄てた。
今は、形のある幸福【しあわせ】が唯一欲す物で。



「遂に、残り一台か」

「斯くも早いものとはね」

「――気ィ抜くなよ」

「其方こそ」



而して彼らは気づかない。

――音も無く忍び寄る闇を。
永く暗い凍てつくように反射する黒を。




女王蜂は嘲笑う。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:34:05.29 ID:naBLz9CAO<>

「はぁい、貧弱なお二人様ぁ?」


「……」

「……」


ここでようやく、二人は正気へと否が応でも戻される。


「たまたまここに居合わせちゃった、めーた!いた…………んことぉ、心優しい副会長がぁ、ふっかふかでひっやひやのぉ、惚れ惚れしちゃうくらいに真っ黒な高級車……。
……いたくない……っ、そ、それに庶民な書記と会計を乗っけてあげましょうかぁ☆」

めーたん(心理掌握だかららしい、しかし誰も呼びはしない)の所で華麗に自分に指を指す予定がガラスにぶつけてしまい涙目な食蜂。

そして、澱んだ目を晒しながら歩を進める白と銀な2人。



「……クソ暑い……」

「…………うん」

「ちょ、ちょっとぉ。……聞こえてるのぉ……、私が乗せたげるって言って」

無視。

「……遠いね」

「……クソナルシスト死ね」

「……また言いがかり……」

「……あ、あーっ、リムジン涼しいわぁ」

排除。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/18(月) 00:49:33.38 ID:naBLz9CAO<>

「……インデックスぅ?」

「……さっきまで暑さで変なことやってたような」

「気のせいだ」

「……イーンデックスちゃあん……?」

「あくせられーた……、変な目してる」

「……何でもねェ」

「……プロヒビトールムさん……」

高級車から身を乗り出してまるで捨てられた子猫のような目で縋る。
食蜂操祈(15)天敵は能力がきかないものすべて。

「……どうしたの、みさき。 車から大声なんて選挙出るみたいだけど」

「だからぁ! 貴女も一方通行さんも乗せてくって言ってるのよぉ!」

「……生憎だがなァ」


一方通行は5メートル先、車道の右を顎でしゃくった。



「……着いたから」



その声とリムジンがウィンカーを出すタイミングは同時だった。
<> 終焉の縁に導かれて……<><>2011/07/18(月) 01:09:57.20 ID:naBLz9CAO<> ここでは一方通行さんはギリギリゲイじゃあ無いし(そげぶ教信者)ロリコンじゃあ無いけど確かなことは紛れもない厨二。
長点上機編入る前に下記の人達の番外編やろうと思ってます、一応全部消化予定。
が、順番決めかねてるので興味ある順を教えていただけると幸いです。


1.みさきち引っ越しに伴ってのみことちゃんとの舌戦

2.黒子&初春のスキルアウト暴行に関する戦い

3.吹寄さんと青ピのいちゃいちゃ

4.浜面と滝壺と時々絹旗のだべり

5.姫神とインデックス

6.打ち止めと10032号の真面目なお話

7.ほのぼの黄泉川家


それでは! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 01:58:30.75 ID:r5y+PTdu0<> 7かな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 02:56:13.06 ID:IL3N+O+io<> 8だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 05:21:40.71 ID:fB0hpJLFo<> 1か6かな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/07/18(月) 07:13:52.42 ID:IduVwwyAO<> おぉぅ、なにこれ全部気になるけどみさきちが可愛すぎるから>>1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 08:27:20.35 ID:UgB0YmoDO<> 1か4が気になるかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)<>sage<>2011/07/18(月) 08:51:41.49 ID:CUUcfomAO<> 1と6が気になるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 09:00:15.60 ID:X+zMcsduo<> ここの美琴さんだいじょうぶなのか不安なんだよ
つうわけで1 <> 名無しNIPPER<><>2011/07/18(月) 12:06:02.92 ID:1l2+6NUzo<> わーすとwwwwwwwwww厨二白コンビwwwwwwwwwwww
とか思ってたけど可哀相な子みさきち可愛すぎる
てか副会長とかまた伏線きてwktk

3がもの凄く気になる・・・青吹とかおれとく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 12:19:21.86 ID:wkwH7LIDO<> 1と6かな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/18(月) 12:57:43.34 ID:aSxt7SJ1o<> 1
もう何やってるのかわけわからん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/07/18(月) 14:29:02.92 ID:e5WElbXo0<> 7 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/07/18(月) 14:34:58.69 ID:FiXzacNO0<> お、俺は1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)<>sage<>2011/07/18(月) 14:45:02.47 ID:Xbr6N4XAO<> じゃあ3 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<><>2011/07/18(月) 15:27:25.68 ID:hZIKhAij0<> 何かこのスレくらいからよう分からん
1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/18(月) 15:34:11.21 ID:uwu4T7rAO<> 1と7が気になるね <> ◆ObanGQEW7M<><>2011/07/18(月) 18:23:44.75 ID:naBLz9CAO<> 沢山のご協力ありがとうございます!
とりあえず期日は今日までとさせていただきます

>>239 >>243
時系列的には前スレ>>635の後なんですけど、表記してなくてすみません
ありがとうございました <> 名無しNIPPER<><>2011/07/18(月) 18:54:15.45 ID:ihQvhw7AO<> おつ
普通に読解力あれば全然分かるし気にすんな
俺は2で、百合期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 19:12:19.88 ID:IgEG1rs4o<> 間をとって3にしとくぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/07/18(月) 19:26:14.89 ID:R3nVHpbe0<> 1か6だなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/19(火) 09:29:14.85 ID:OPnSMj9DO<> とまなたか一スレ目に張ってあった絵を持っている方はいませんでしょうか
よかったらお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/19(火) 10:12:34.62 ID:4dZzXVOIO<> さらっと人を馬鹿にする>>246には痺れるが憧れないな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/19(火) 19:45:15.51 ID:U6AqXwBDO<> >>246も>>250もわざわざ言うことじゃないな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/19(火) 19:50:10.80 ID:cnQbnRx1o<> >>249
雨降りセーラー服のやつ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/20(水) 08:03:26.66 ID:wTWJ8cgDO<> >>252
はい
あの淡い感じのインさんをもう一度見たいです
よろしくお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/07/21(木) 12:30:53.04 ID:UDXLllSoo<> 俺は時系列より描写のほうで混乱してます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/21(木) 22:52:36.52 ID:zKJBuieIO<> 話も描写も嫌いじゃ無いどころかむしろ良いと思うが、少しわかりにくくはあるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/22(金) 00:26:05.95 ID:KJbQLsqwo<> だがそれがいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 21:08:53.99 ID:T8dtfhSR0<> おまいらそんなに姫神に興味がないのか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 01:18:01.94 ID:tNDJP+E/o<> なんか2スレ目から加速度的に分りづらくなってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/07/24(日) 02:07:39.91 ID:hULn65vJo<> 投稿に間が空くようになって、内容忘れると新しいの投下されても全くわからんくなるよなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 02:55:32.18 ID:uF6vg0rDO<> >>259
せやな <> 名無しNIPPER<>sage<>2011/07/24(日) 15:47:15.80 ID:QpXFcyvRo<> 内容はともかく間隔開いたのは読み返せば済む話だろ・・・
夏厨なの?アンチなの? <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/07/24(日) 20:51:12.99 ID:9Emho2YAO<> こんばんは、10時頃に投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/07/24(日) 20:57:21.55 ID:WoLRG8Jf0<> >>1 予告乙と言わせてもらおう。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:12:18.51 ID:9Emho2YAO<>


3月中旬のある日、姫神宅にて。


プルルルルル、プルルルルル

(……)

黒電話に似せた携帯の着信音。
心地よい眠りについていたのに嫌でも意識が浮上してくる。

(……9時……)

プルルルルル、プルルルルル!!

携帯をかき寄せ光にしみる目をこすりながらディスプレイを覗く。
非通知だった。
それだけで寝過ごしてしまおうかと思ったが、しつこく響いて止むことはない。

(……春休みだから。……もっと寝たかった……。……のに)

いたずらだったら容赦はしない、そう心に決めた彼女の指が通話ボタンに触れ

ピッ!

「……はい。姫神で」




『あぁぁいさぁぁぁああああ!!!!!』



「…………」


何というか、あまりにもけたたましい。
脳が揺さぶられ、耳がじんじんと反響に耐えている。


もう一度、眠りにつきたいと心から思う。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:14:13.19 ID:9Emho2YAO<>

『今まさに結果見てきたわけなんだけどね!!!! なんとなんと合格してたー!!!』


「…………」


この声、このイントネーション、この内容から察するに、あのイギリス清教の彼女だろう。

『きゃーっ!!!!!!!!! これで私も高校生なんだよ!!!!』

面白いほどに舞い上がっている、まあ、それも当然だろう。

合格という大切な目標を達成した充足感は尋常では無いのだろう。
かく言う自分だってとまで考えた姫神は、自身がそんな経験の記憶が無いことを思い出す。

――今更気に病むことでもない。


「おめでとう」

『ありがとう!!! あいさにもとってもお世話になったよね、今まで勉強の仕方とか受験テクニックとか! 教えてくれて本当にありがとね!』

「どういたしまして」

『スッゴく緊張しちゃって、汗でびっしょりかもー!!』


言うことも、本当に年頃の少女のようじゃないか。
人とはいとも簡単に変わるもの、そう見せ付けられている気分である。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:18:05.28 ID:9Emho2YAO<>

「風邪。 ひかないで」

『うん、気をつけるかも!』

「…………そして貴女は」

『?』

「……インデックス。 正しい?」

『そうだよ? あ、これ公衆電話だったね』

あちゃーと言う彼女の声をよそに、姫神つしては学園都市でも公衆電話があることに驚きである。
地元にもあったのだろうか。
だめだ、起き抜けの覚醒し終えていない脳ではマトモに思い出せそうにない。


『それにしても、あいさは冷静だね。 当の私は取り乱しちゃって』

「どうして。 非通知なの?」

『……充電切れちゃったかも』

「……そのご立派な記憶力だから。 落ちるとは。 少しも思わなかったけれど」


少女は呻き声を漏らした。

『……あいさ怒ってる?』

「起き抜けに。 大声出されたぐらいで。 腹を立てはしない」

『……ごめん』

「怒ってない」

『えへ、ありがと』

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:20:36.74 ID:9Emho2YAO<>

「……」

いざ冷静になってみると不安が吹き上げるように生まれてくる。
このまま、彼女は本当に学生になってしまうんだろうか。
酷だけれど、止めるべきではないのか。
魔術師が科学に浸る、それは危ない道へと進んで向かうだけじゃないか。
あの錬金術師と同様に、彼女も終焉へと――


『あいさ? どうしたの?』

「……機械オンチな貴女でも。 高校生になれるんだと思って」

木材の擦れる音。
慌てて取り繕ってもぎこちなさは残る。

『真面目に勉強したもんねーだ』

「……よく頑張った」


嗚呼、本当に彼女は努力したのだ。
四則演算もままならなかった人間がトップ校に合格するとはどういうことか。
勿論、記憶力や彼女が一度だけ話した“新しい友達”あってのことだとは理解している。
それでも尋常ではない努力が無ければ、決してなし得なかったことで。


「………………」


――だからこそ姫神には、彼女が積極的に不幸になろうとしているようにしか思えない。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:24:15.87 ID:9Emho2YAO<>

「いつか貴女が『魔術サイドのレベル5みたいなものだ』と言ったこと。 ……覚えてる?」

受話器の向こうの女が忘れる筈は無いのだからこれも戯れ言でしかない、案の定肯定された。

「……こうなるのも。 貴女たちの上司の。 戦術のうちなの?」

『私が居るってことは、核兵器を都市に向けているのと同意だから。 あの人のことだから根回しはしてあるかも、でもそうとは思いたくないなあ』

頑張ってきたことも否定されてしまうと言う、しかし声色は驚くほどに軽薄だ。


「……大丈夫?」

『うん、大丈夫だよ』

「上条君のことなら。 その責任は貴女だけじゃなくて」


幻想殺し“だった”彼の今昔を思い、心境は暗色へと変わっていく。

姫神の知らないところで、彼の右腕はただの肉塊へと変わってしまった。
そして、彼女の愛した精神性も。
勇敢さも、快活さも、素直さも。
死に絶えてしまった。

張り付いた笑みを浮かべる彼に理由を聞くことは出来ない。
そして、銀髪の少女はそれは自分のせいだと言ってただ黙すのみだ。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:28:07.54 ID:9Emho2YAO<>

「……過去に彼に救われた。 私達全員にも」



『大丈夫だよ、全然心配要らないんだから』

普段通りの可愛らしくて、諭すような声。
視界の端の黒髪が踊る。

「……」

『友達ももう出来ちゃったし、助けてくれるせんぱい?も居るんだから』

「そうじゃなくて」

向こうから小銭が擦れる音がした。
チャリンと、硬貨が投入されたのが何故か耳に染み付く。
この話はもう終わり、とピリオドを打ちにかかる態度が寒々しい。


『そうだ、あいさ一緒に料理作ろ!! 私、毎日やってるのにちっとも上手にならなくて! 美味しく作れるのはおにぎりだけかも』

「……果たしてそれを料理と呼ぶのは正解か。 非常に疑わしいけれど」

『おにぎりは! りょーりっ!!』

「そう」

『淡泊すぎなんだよー!』


それは少女が言えることなのか、とはどうしても姫神には言えなかったけれど。
ベッドから這い出した彼女はカーテンを開ける。

ああ、今日も今日とて良い日なのにな。


「それで。 何を作りたいの?」

『そうだね――』



そうしてインデックスは注意深く考えて、きっとこう言うのだろう。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:29:43.78 ID:9Emho2YAO<>



「三種のチーズ煮込みハンバーグ」










「……え、まじで朝からそれ食うの」

「1人前でお願いします」

「かしこまりました」


ウェイトレスが去るのを持ち前の液体窒素のような目で見送って、彼女はやっと正面のチンピラに視線を戻す。


「――うん、昨日の夜にはまづらと運動したせいでお腹空いちゃったから」

某ファミレス四人掛けシート、テーブル番号14番に訪れる、何とも薄気味悪い空気。


「……えっとぉ、語弊があると思うんだケド……」

「…………さすが超超三流種馬の浜面と言わざるを得ませんね……」

「ちょっと待った! ウェイト!! 絹旗! お前の想定するような爛れたことは一切何も!!!!!!!」

「あ、うぇいと、って書ける?」

「……だぶりゅー……ゆー……いーとかはどうでも良いんだよ!!」

そのスペルは違うからね、との滝壺の指摘は華麗に受け流すことに決めた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/24(日) 22:32:28.16 ID:9Emho2YAO<>


ビシッ

勢い良く腕を伸ばして絹旗のもこもことしたニットワンピースに指を突きつけた。
対する彼女は心底不快そうな表情でココアを飲み干し

「……節操ない浜面ウイルスに超罹患しそうなので、お願いですから指差さないで下さい」

「頭下げんな!! 絵面最悪すぎんだよ!」

茶髪が重量に従って垂れ下がる。


「勿論です、目論んでいますし」

「な……ッ!」

「きぬはた、策士だね」

「そんな滝壺さんに誉められるほどでは……ありがとうございます」

「頬染めんな!」

「……フン、超下郎が」



「だから昨日はPii Fitやってただけだっつーの!!!!!!!」




その叫びが滝壺によって窘められるのは、彼が一枚岩でいかない女性陣に頭を抱えるのは、そう3分後くらいの話である。
<> おわり<><>2011/07/24(日) 22:36:08.81 ID:9Emho2YAO<> 姫神は作中ダントツの不幸キャラといっても過言じゃないので、誰か可及的速やかに幸せにしてあげて下さい。

次回のこのスレは、滝壺まじ俺の嫁・最愛ちゃんでれる・もげろ浜面!の三部でお送りします。
それでは! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/24(日) 22:39:10.89 ID:WP9Tw3Zqo<> 乙です!姫神可愛いよ姫神 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/25(月) 01:30:18.74 ID:JwVVC49P0<> 乙乙!
しかし上条さん…(´・ω・`)

あとあらかじめ言っておくわ
浜面爆発しろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)<>sage<>2011/07/25(月) 03:24:29.90 ID:le1z9BCco<> 乙
どええ、姫神かわいいけど上条さんどええええ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/25(月) 09:22:31.16 ID:bguZPfHIO<> あと一枚岩じゃなくて一筋縄な <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/26(火) 19:10:12.87 ID:iMWL65N+o<> アイテムきてたー

仕方ないから姫神は俺が幸せにしておこう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/27(水) 17:55:00.93 ID:EfGpOiCpo<> >>277
そげぶ <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/07/28(木) 00:24:47.80 ID:0e/bSj1AO<> こんばんはー、もう少ししたら番外編@アイテム投下しまーす <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:02:01.82 ID:0e/bSj1AO<>


「いただきます」

手を合わせる滝壺の目は密かに輝いていて実は嬉しそうだ

「そういや、麦野は?」

「インフルエンザらしいですよ」

「あいつがねー……ってか今更?」

「案外……はふ、むぎのって体弱かったと思う……」

「ああ、確かにそうですね。 初めて会ったときも超青い顔してたような」

「初めて……ねえ」

怪訝そうな視線を交わし窓の外を見る。
うざったい程の青空に浜面は欠伸を1つついてやる。


「シカト決めることにすんぞー、ってかお前らってどんぐらい一緒なわけ?」

「んー……分かんない」

「分かんないって」

「投薬実験の弊害だったり昼夜逆転生活だったり、精神病に罹って時間感覚狂うとか超よくある話ですから。
特に滝壺さんは体晶の副作用による記憶の混濁とか凄まじいでしょうし。

……まあ、1年弱くらいの付き合いじゃないですか?」

「そうだね」

「案外短いんだな」

「出入り激しかったんで」

これで一段落ついたとばかりに絹旗はテーブル上のパンに手を伸ばす。
細くて小さな指だ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:04:47.72 ID:0e/bSj1AO<>


(出入り激し“かった”……ねえ)


確かに平穏な今となっては、バタバタ人が死んでいくのだって過去の話として語れるのだろう。
第三次世界大戦を終えた浜面達が恐る恐る学園都市に戻ってきたのは11月初め。
真っ先に会いに行った絹旗から解散命令のことを聞いて早くも4ヶ月は経った。

そしてそれから現在に到るまで全く持って音沙汰ナシ。
素養格付も滝壺の学園個人説もあの女の妄言だったのかと思わせるほどに沈静している。

「……結局、私達って体の良いモルモットしかり競走馬だったんでしょうか」


独り言なのかそうではないのか。
反応するに困る。
というのも、競走馬と言うのは案外的を得ているのかもしれないと思ったからだった。
取り敢えず、コーヒーを一口ぶんだけ嚥下した。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:07:30.22 ID:0e/bSj1AO<>

一番近い距離で高位能力者の抗争を見て来た浜面には、端的に言えば傍観者であった彼には
今になって冷静に考察してみれば確かにそうして見えた気もする。
景品を知らされずに、ただ一等を目指して潰し合っていくチーム毎のレース。
高みから俯瞰すればどんなに刺激的で面白いのだろうか。
どちらにせよ「多分そうだろ」とは言えない。

「見せ物になるだけマシなんじゃねえの? 約6割の俺らにはその資格ないし」

「……」


意地の悪い言い方になってしまったせいか絹旗は俯き加減で唇を噛んだ。


「――そう言えばきぬはた、学校行く準備出来た?」

「あ、……いえ」

「そっか。 また手伝って欲しいことあったら言ってね」

「……そのことなんですが」


苦くて渋いコーヒーに浜面の顔は歪む。
間違えてエスプレッソを持ってきてしまったらしい、なんとか飲み込む。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:10:47.22 ID:0e/bSj1AO<>

「……お二人は」

「?」

「……本当に復学するんですか」

「そうだよ、私は転入になるけど」

「まさか高2から戻れるとは思わなかった、本当に黄泉川に感謝っつーか」


言葉の途中で視線を横に逸らした浜面は、絹旗の衝動を堪えきれないような怒り、そして笑い顔を決して見逃さなかった。
薄い唇が開く。


「一応確認しておきますけど、私達――以前人殺しでしたよね?」

「そうだろうな」

肉とコーヒー、そして小麦の匂いが充満する。
双眸が苦しいほどに開かれた。

「……何ですか、それ……。 いくら私でもそんなに倫理観は捨てて無いですよ……」

「生憎こっちもだよ」

カシャン

「光の方の人間を、……巻き込むかもしれないんですよ……!?」

絹旗が無造作に振るった手と皿が接触し甲高い音を立てた。


それにしても、彼女は今更何を言うのだろうか。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:14:55.89 ID:0e/bSj1AO<>


嘲りたくなるような愚かさというか直情さ、優秀な者は理想が高いのかもしれない。
実は滝壺が例外なだけなのだろうか。
まあ、確かに彼女の憤る気持ちも昔持っていたような気もするのだが、それは置いておいて。

後始末をしたからと言って、巻き込まれている人間が居ることには変わらない。
「無くなっても」忘れない。
罪は罪で、絶対に逃げ切れないなのは分かってる。


「だからって一生クズで居るわけにもいかねえだろ」


だからこそ、放つしか無かった。
どこまでも正論でいて皆が等しく傷つく言葉であるけれど。


「――今のまんまじゃ居場所無しのただの犯罪者で常識知らず、存在価値は能力だけ。 なりふり構ってる場合かよ」

犯罪者、常識知らず。
全部が返ってくる、「その通りだ」と思うだけなのだが。
自分に関しては能力すら無いのだが、よく生きているものだと感心しているくらいだ。
抜群に運が良いのか、はたまた生かされているのか。
しかし、これからは2人で生き残らなければならない。
穏やかな笑みの滝壺が居て、浜面もその隣で息を吸う。
そんな未来を実現するにはどうすれば良いのか、と腐心した結果が――復学。


「……」

「でもお前がそう思ってんなら、無理に誘って悪かったよ、謝る」

「……」

三点リーダの応酬。
沈黙がごろりと横たわる。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:25:00.66 ID:0e/bSj1AO<>

頭を下げる浜面を困り顔で見つめる彼女は、黙々と食事する滝壺に問い掛ける。

「滝壺さんは」

「私? 殆どはまづらと一緒だよ」

「どうして」


「――幸せになりたいからだよ」


今更かなあと眠たそうな目で首を傾げる彼女に浜面はただ笑いかけた。



「……幸せ、ですか」

「うん。 だって解散したんだよ、いつまでも能力だけが私の価値だってそうは考えたくない」

「……」

「今変わんなきゃずっと引きずるっつーか、ああ、俺はお前より馬鹿だからさ、理に適ったこととか言えねえけど」

命は張れない、所詮はその程度の説得力だ。
絹旗の葛藤は人間的で、2人が利己的すぎるのも重々承知している。
だけれど、彼の求める幸せには絹旗も麦野も居て欲しい。
1番穏やかな顔で笑っていて欲しい。


「俺はお前がこんな所でくすぶってるのは見たくないし、今までの分楽しむべきだと思う。
学生割で映画を見に行ったり、彼氏が出来たら冷やかして、大覇星祭ではお前の活躍を見に行きたい」

「……そんなに私は、求めて良いんですか」

「バカ、普通のことだ」

「……ふつう」

「だからさ、やっぱり学校行けよ。 今のまんまじゃ負けっぱなしで、悔しいだろ」

「……超なんですか、その例え……」

潤んだ瞳と震える声で、それでも確かに彼女は笑った。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:45:29.71 ID:0e/bSj1AO<>

「それで、きぬはたはどこの学校に行くことになるの? 常盤台?」

「いえ、血筋が良くないのでそれは無理かと……柵川中とか」

「ああ、あのセーラーの」

「……よく知ってるね」

「え!!! いや滝壺そうじゃなくって!!!」

「そう、って?」

「……あーあ、さすが安定の超浜面っぷりです」

「だから!」

あーだこーだと騒ぐ2人を後目に、「ご馳走さま」と手を合わせた滝壺。
ある意味元凶である彼女は、メール着信に気づき携帯を開く。


「スキルアウト暴行事件、起きたって」

タイプしたかのような単調な言葉に、ギョッとして止まらざるを得なかった。


「浜面……地味に良い奴でした」

「俺を殺すな!」

「……はまづら」

「あー滝壺、俺はそう死なないから」

大事な恋人が心配してくれた、それだけで大丈夫だと思える。
第一、最近は路地裏稼業も久しく行っていない。

「ええ、滝壺さん。 ゴキブリとどっちがしぶといか超意見割れてますし」

「そんなに!?」

「……」

不安そうに携帯を両手で握る滝壺が、それはもう臨界点を突破するほど愛らしく、浜面の口角は緩みっぱなしである。


「大丈夫だよ、ほらあれだろ、あいつには特徴あるじゃねーか、それだけ気をつけてりゃあ良いんだろ?」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/07/28(木) 01:56:44.37 ID:0e/bSj1AO<>


「灰色のフード付きパーカー」






「……やっぱりヒットしません」

「ご苦労様ですの」

「あー……またやり直しですね」

「はあ、本当に何者なんでしょうね」

世は春休み、勿論学生なら例外ナシに。

そんな中でも、深い溜め息に支配される第一七七支部。
職務を遂行する彼女ら2人の目には隈と充血が見られる。

「初春」

「何ですか白井さん」

「お休みなさいな、あなた殿方には見せられない顔を」

「そんなの白井さんだってそうですよ、御坂さん幻滅しちゃうんじゃないですか……」

「……」

「……」


そしてキーボード音が止むのと白井が席を立つのはほぼ同時であった。 <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/07/28(木) 02:00:27.83 ID:0e/bSj1AO<> 一代目のご冥福を祈りつつ、次回はういくろ編です。
それでは、お疲れ様でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/28(木) 02:31:59.31 ID:mX5gUtuDO<> ういくろとか俺得すぎワロタンゴwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/28(木) 12:19:02.29 ID:8t2SbLUAO<> パーカー…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/07/28(木) 14:34:44.47 ID:Mm1fsj4AO<> KJさん……? <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 11:52:39.96 ID:8D6rzWj0o<> こんにちは、少々早いですが今日の夕方に投下します
あと今回は前スレの>>918をご覧いただけると嬉しかったりです <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 16:50:00.60 ID:8D6rzWj0o<>


―――必死、余裕がない。

渇望、出所の分からぬ焦燥感。


「白井さん、さっきも言いましたが隈が酷すぎます」

「……そうですわね、コンシーラーでも買いにいかせましょうか」

「誰にですか」

「……貴女にですわよ、初春」

「えー、止めてくださいよー。テレポーターなんだからびゅんとひとっ飛びでですねー」

目を白井の方に向ける。
トレードマークのツインテールはない、結ぶのが面倒なのかそういう気分なのかは知らない。
彼女は心底疲れきったと言いたげに、背もたれに深くもたれ掛かって煌々としたLEDを見つめていた。
テーブルの上の手付かずの紅茶、乱雑に放られた常盤台のブレザー。

「お嬢様失格じゃないですか」

「――あら、貴女に言われるとは」

手を伸ばしてキャメル色のそれを掻き抱いた。
上質で地もしっかりしていそうで、値が張るのは明らかである。
袖を我流に折りたたみ、元あった位置に戻す。

鼻をくすぐってくる芳しさは、やはり白井のものなのだろうか。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 16:52:06.03 ID:8D6rzWj0o<>


「……そろそろ70件」

「初出が2月の初めですからね、一体いつまで続くんでしょう」

「…………いつになったら」


うわごとの様にブツブツと、独り言だとは理解しているので返す義理も無いのだがそういうわけには居られない。
仕事の最中はアドレナリン、脳内で興奮させる物質が分泌されているからか明朗に喋るのだが。
能力酷使による肉体的な疲れと睡眠不足と、他にもとある疑いが白井を苛む。

ある種、最も近い第三者ともいえる初春にはどうすれば良いのかよく分からない。


「ここでもう一回整理してみましょうよ」

「……そうですわね」

「一連の連続スキルアウト傷害事件、その名の通り被害者はスキルアウトたち150余名。
死亡者ナシ、大抵は全治一週間程度の怪我。
被害者らはいずれも記憶の混濁が見られ、経緯を記憶していません。
そして同一のグループに所属しているわけでもないので、スキルアウト間の抗争ということは考えにくいですね」


この文面も風紀委員あてにくるファックスの受け売りである。
もう何件も目にしているので覚えてしまった。
あの受信音、フルートの甲高いメロディも声帯模写できる自信がある。
不幸を知らせる悪しき音。


白井は微かに頷いた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 16:55:11.88 ID:8D6rzWj0o<>

「次は犯人の特徴を。

この少ない証拠では単独か複数犯かは不明、しかし5人以上に怪我を負わせたことや
目撃証言が殆ど無い事から高位能力者が関わっているのだと予想されます。

犯行に及ぶ時間帯は夕方から夜にかけて、場所は大抵が路地裏です。
灰色のフード付きパーカーにスラックス、身長は160センチ台。
防犯カメラを作動不能にできたり、軽い電気ショックを与えて気絶させる方法で襲っている」


「……わたくしが見た限りでは」

            
「体系は華奢――“女性”であっても違和感のないほどに。

光で白井さんの視界を眩ませて逃走、でしたっけ?」


話せば話すほど、脳裏のイメージがより鮮明になっていく。

やや遅めの雪が振った二月の終わりのある日。
瞬間移動で現場に駆けつけた彼女と偶然鉢合わせた犯人、フードのせいで顔は見えないと言っていた。
日も暮れかけてぼんやりと暗い路地裏で。
正義感の強い少女のことだから『観念しろ』とでも言ったのだろうか。

――そして、紫電が迸った。



憤る気持ちを押し殺して彼女は続ける。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 16:56:41.90 ID:8D6rzWj0o<>


「別に私は、御坂さんが犯人だと決めつけようとしてはいませんよ」

「……お姉さまはそのようなことをする方では」

「ええ、私もそう思います」

初春は袋詰めの菓子を口にした。
甘酸っぱくて、さくさくのチーズケーキ。
紅茶で溶かし飲み込んだ、食道を抜けていく甘い塊。


「だから白井さんが、1日だけでも御坂さんを学生寮に引き止めてくれれば良いんですよ。
そうすれば証明できるんですから、御坂さんは犯人じゃ無いって」

「……ですけれどお姉さまは」

「分かってますよ、最近留守にしがちなんですよね?」

「……絶対にあの方は……!!」


膝をきつく握り、声と体を震わせる。
痛々しくて哀れで、それなのに同時に何か気味の悪い感覚が彼女を襲ってずっと離さない。

得体の知れない何かがまだ潜んでいるような、9月30日の謎の人物の襲来のような。
単純に憂さ晴らしのための犯行では無いのだと彼女の第六感は告げていた。
そして確信していた、当ては無いのに。


気丈な彼女をここまで追い込む一連の犯人と、彼女の敬愛する超能力者に初春は内心唾を吐く。

(御坂さんも御坂さんだ。
余裕がないのかもしれないけど“可愛い後輩”のことだって気にするべきなのに)

それでも、自分が白井にとっての御坂に取って代われないことの苛立ちには気付かぬままだった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 17:01:10.47 ID:8D6rzWj0o<>


「……申し訳ありません、少々取り乱してしまいましたの」

「はは、そんなのいつものことじゃないですか」

「よくも言いましたわね……」

「おねぇっさまぁあ!」

「……」

「ふふふー、どうですか? 似てま」


「――ねぇ、初春」

いつの間にか真後ろから声が降りかかる。
慌てて振り返ろうとしたのだが、むぎゅ、と片頬を抓られた。
ほんの少しな力なので拘束されるわけではない。

「……どうしたんですか、白井さん」

泣き出しそうな声が、初春をその場に留めさせる。


「……信じていると言ったのに、わたくしは電流を見たことを……報告していないんですの。
……笑ってしまうくらいに矛盾してますわよね……」


矛盾、ああそうだ。
逆説、パラドックス、彼女の言っていることは筋が通っていない。
そんな胸中にも関わらず、気がつくと首を振っていた。

追い詰めたくなくて、嫌われたくなくて。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 17:07:51.39 ID:8D6rzWj0o<>


「でも、白井さんの証言だけじゃ精神操作の可能性も考えられますし。
スタンガンなどの可能性も無きにしも非ずですから。

――早計では無かったと思います」

負けじと腕を伸ばして、手探りで彼女の頬へと手を伸ばす。
つるり。
どこまでも柔い少女の頬、あの人も知っているのだろうか。

知っているのだったら、なんでもないのだと証明してくれないか。
一番近くでじわじわと弱っていく様を見るのは辛いのだ、痛いのだ。
自分の無力感に打ちひしがれるだけで、状況を打破なんてできない。


それで、知らないのだったら――。


「きっと、狂ってしまった能力者なんでしょう」

「…・・・ええ」

「そうに――、そうに決まってます」


それはまるで自分に言い聞かせるようでもあって。
人知れず失笑した。

ただ疲れているだけだから。
今は断罪者の役目を、少しだけ忘れて戯れても良いだろうか。

(こんなことも知らないのだったら、すぐに白井さんの心から離れてって下さいよ……)




珈琲と紅茶の香り、それからどうしようもない閉塞感。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/01(月) 17:09:51.19 ID:8D6rzWj0o<>


「春に当てられた――ねぇ」













「そー、まぁミサカ達ヘアスタイル変える約束したしー。
あのチビ姉貴はまじめくさって黒に染めたけど、黄泉川の学校はそういうの緩いみたいだし。

それに、これだったらぜってーお姉さまのクローンとは分かんないしょ?」

ショッキングピンクに染めてきたばかりの自身の髪を一房摘み上げて。
番外個体は悪童のように笑った。


「だからって……何もピンクに染めなくたって」

「えー、なんでそんなに保守的なワケ」

「違うの、わたしはキミのそのアバンギャルド極まりないセンスに絶句しているのよ」

「これだからだから芳川は行き遅れるじゃにゃいのー?」

椅子に座ってぶらぶらと足を揺らす。
その行為だけ抽出すると実年齢そのままである。
体は立派に高校生並というのに。


はぁ、と大きく嘆息して芳川は髪をかき上げる。
そして――




「――番外個体――?」





調子に乗った肉体年齢一桁に対して、それはそれは壮絶に笑った。

<> おわり<>saga<>2011/08/01(月) 17:14:58.86 ID:8D6rzWj0o<> ういくろはマジ真理、ジャスティス!
それにしてもスキルアウト襲っちゃうぐらいの身長160センチ台の強い女性
うーんいったい誰なんでしょうねえ(棒読み)
それでは、お付き合いいただきありがとうございました!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 17:36:23.15 ID:5UKgMyZE0<> 乙!
スキルアウト襲っちゃうぐらいの身長160センチ台の強い女性の目的が気になるぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 17:52:20.42 ID:nmTg5VXmo<> 乙
スキルアウト襲っちゃうぐらいの身長160センチ台の強い女性……一体、何者なんだ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北陸地方)<>sage<>2011/08/01(月) 18:34:58.02 ID:3QlZBGsAO<> 乙
スキルアウト襲っちゃうぐらいの身長160センチ台の強い女性 か……
誰なんだろーなー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 19:09:08.28 ID:Pl7utZiKo<> >>1乙!
スキルアウト襲っちゃうぐらいの身長160センチ台の強い女性…
寮監か! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/08/01(月) 19:57:42.79 ID:ur0jWUiLo<>  \                    /
   \  丶       i.   |      /     ./       /
    \  ヽ     i.   .|     /    /      /
      \  ヽ    i  |     /   /     /
   \
                                  -‐
  ー
 __          わ た し で す            --
     二          / ̄\           = 二
   ̄            | ^o^ |                 ̄
    -‐           \_/                ‐-

    /
            /               ヽ      \
    /                    丶     \
   /   /    /      |   i,      丶     \
 /    /    /       |    i,      丶     \  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 22:22:28.12 ID:1zlbrpCDO<> 風紀委員さんこいつです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/08/01(月) 22:26:41.06 ID:tT2JORjbo<> お前だったのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2011/08/01(月) 23:27:20.34 ID:L9TsxOTAO<> 結構ガチなういくろあざーす! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/02(火) 16:05:20.31 ID:RurFWV+m0<> ういはるかわいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/02(火) 17:46:36.14 ID:j7me6/gIO<> ああ、百合子の事が <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/02(火) 23:04:06.49 ID:m+mwleu50<> 160センチ台、強い女性、そして電流のようなもの

これが示すのは……






ま、まさかアイテムのリーダーの……!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/08/02(火) 23:05:14.45 ID:fI7X5a2Oo<> あ、そういえば、スタンガンを持ち歩いている奴がいたような……
名前なんだっけ……モブキャラだったかな…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/03(水) 00:01:41.85 ID:fPfp382/o<> ういくろいいよういくろ

しかし、スキルアウト襲っちゃうぐらいの身長160センチ台の強い女性 か……
いったい誰なんだー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(沖縄県)<>sage<>2011/08/03(水) 07:54:08.24 ID:lm/cw/q/o<> >>312
重福さんのことかー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/08/03(水) 15:52:49.48 ID:59ku9jero<> >>311
ガチくさくね?
むぎのんも音沙汰ないし・・・ <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/08/04(木) 23:14:03.00 ID:ku8jUwgAO<> こんばんはー、もうちょいで投下します
なんですが、ここでは番外→通行要素は全く無いので苦手な方は避けて下さい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/04(木) 23:59:39.01 ID:tQ6yfN+O0<> 待ってたお! <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:31:35.13 ID:LzFVrKJAO<>


「はあー、早く4月にならないかなあ」

「キミの待望の新生活スタート、だものね」

ホットコーヒーを啜るピンク髪の少女――番外個体の輝く瞳を見て芳川は苦笑するしか無かった。
砂糖を入れたその液体をスプーンでかき回し、渦を巻く水面を眺める。
天井の照明が反射をして、キラリキラリと眩い。


「そうそう、黄泉川んとこの高校に転入して、――あの人に会いたいし」

また、この熱のこもった口調である。
最近は1日に3回は聞くだろうか。
恋に恋する、とは正にこのことを言うのかもしれない。

(それもそうね、1万人弱の姉妹の好意と感謝が雪崩れ込んでいるわけなのだし)

「ヒーローってどんな顔してるのかなー、姉貴とか黄泉川は爽やか青年て言ってたけど」

そう、彼女は思い人の顔さえも知らない。


茶化してみると真っ赤な顔で逃げ去って、その時は年相応の少女なのだなと微笑ましい気持ちになれる。


(最近、恋なんてしてないわね……) <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:35:18.71 ID:LzFVrKJAO<>


「でも黄泉川は体育会系だし姉貴はクソモヤシ第1位好きだったり、趣味が変てこだから」

「本当にキミは彼が好きなのね」

「う、からかうな!

……み、ミサカはネットワークにそんな風に仕向けられてるから」

少しだけ悪戯心が湧いてくる。

「じゃあその気持ちは偽物なのね?」

「はぁ!? そんなわけ無いから!
ミサカは……本当に」

「ごめんなさいね、でもライバルばかりなのね」

「う……そうなんだよねー」

机に伏せた番外個体、彼女の髪がおびただしく広がる。

「……ミサカ、ヒーローの名前知らないし」

拗ねたような声だった。

「どうして?」

「姉貴はイタズラからか教えてくんないし、19090号とかはライバル増えるから嫌なんだって。
あ、第1位にいたっては知らないんだって、あひゃ、憧れてるクセにちょーうけるよね!」

なるほど、自分に跳ね返って来るとは微塵も意識していないようだ。
しかし、芳川も実験を止めた張本人の名は知らない。
そう言えば何故彼を知らないのだろう、深部から関与していた研究員だと言うのに。
黄泉川は実験のことも深くは聞いてこない。
――となると、全てを知ってるのは彼女だけなのか。



1番幼いはずの、彼女が。





ガチャ
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:40:36.79 ID:LzFVrKJAO<>

「たっだいまじゃーん」

「……クソ、だりィ」

制服採寸や書類提出を初めとする手続きに出かけていた2人が帰ってきた。

「お帰りなさい」

「おっつー……」

芳川は一旦深みに入った思考を取りやめ、コーヒーを入れるために席を立つ。






ギョッとする一方通行なんてなかなかに稀少だったと思いながら、芳川は菓子を選別していた。
先ほどは、居間に入ってきた彼らがピンク髪を見て騒ぎ、やはりひと騒動は起きる。
しかし、黄泉川の高校は比較的自由な校風と言うこともあり(青髪にピアスな少年が隣のクラスの委員長であるそうだ)結局は自己責任と言うことで落ち着いた。

(……こっちはわたしのヘソクリみたいなものだし)


何時もは、俗に言う誕生日席が番外個体の椅子の位置なのだが
用事があると言って打ち止めが出かけていたため、向かい合って腰かけていることになる。
時刻は午後3時前。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:45:06.78 ID:LzFVrKJAO<>


「いやあ、しっかし一方通行のブレザー姿もなかなかだったじゃん?」

「マジで? なんかミサカ的には服に着られてることしか想像出来ないんだけど」

「……言ってろ」

「てか第1位って地味に撫で肩じゃん? ストンって落ちるんじゃね?
いひゃひゃひゃ!」

「それがなー、私も危惧したんだがあらビックリ。
学園都市の技術で何ともなるじゃんね!」

「オイ、オマエら俺が相手だからって何でも言えると思ったら」

コト

激しかける彼の前に白いカップを置いた。急ブレーキをかけた車にシートベルトをして乗っていたかのように、彼の上半身は急停止をする。


「はい、キミの大好きなコーヒーよ」

こうすれば一方通行が大人しくなるのはこの半年程で嫌になるくらい学んだ。

案の定少年は黙って手を伸ばす。
粋がってもまだまだ子供だなとほくそ笑んで、彼女も席についた。


結局菓子は芳川の基準では二軍ぐらいのところで手を打ったのだが、誰も気にせずに談笑している。

またいつか独りで高級和菓子を食べようと芳川は企む。
最も、打ち止めの手により全て消えてしまっているのだが。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:47:24.99 ID:LzFVrKJAO<>


「そういや、長点上機どうだったの?」

「フツーだよ、評するところは特に」

「実験室がやたらめったらあったな、あ、そういや桔梗は卒業者じゃんか」

「ええ、彼と同じクラスのね」

それももう10年前ほどになる。
しかしプログラムも経営陣も変わったと言うのに何があったと言うのだろうか。


「当時から大音量で挨拶してくるロボットは居た?」

「……いえ、記憶には無いけれど」

「なになに、どうしたの?」

「うっせェぐらいに声かけてくる、生徒会が製作したっつーロボットが居たンだよ」

「ふうん、何それ」

「へえ、今の子は面白いことするのね」

「……根性根性連呼して鬱陶しかったが」

そう頬杖をつく目を盗んで、彼の分の菓子を取る番外個体。
見事に黄泉川に見つかって小突かれていた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:53:33.78 ID:LzFVrKJAO<>


手に持ったカップにコーヒーはすでになく、一方通行の眉根が寄せられた。


「あのクソガキはまだ帰ってきてねェのか?」

「そう言えばまだじゃんね」

「あれじゃね、上位個体としての大切なお仕事」


とは口々に言うものの、誰も彼女の用事の内容を知らないらしい。
顔を見回して――皆の視線が番外個体へと集中する。
視線に気づいた彼女は、面倒そうに目を閉じた。
ケチどもが、とぼやきながら。


「……あ、姉貴? 番外個体ちゃんだよ。
髪はねー、ピンクにした――え、何驚かないの……10098号は半分ずつ!?
そりゃ個性ですぎじゃね……ミサカも閉口しちゃう。


あっ、今どこさ――――え、カエル医者んとこ?
……あー、じゃナース服とか着せられないようにね、うん、それとあんま遅くなるなってモヤシが睨むから。
おっおー、じゃね」

ミサカネットワークを切断した番外個体は、左右に首を振りこきこきと鳴らした。


「料金かかんないけど……これって傍から見たらミサカ痛い子じゃね?」

「気にすンな」

「む。 そういやさ、姉貴って前からああだったの?」

「ああって?」


返した黄泉川に対し、番外個体は説明するのが難しいと一端口ごもる。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 00:57:11.76 ID:LzFVrKJAO<>


「なーんか妙に達観してるっていうか……飄々としてるような。
放浪癖あんじゃん?」

「それもネットワークがある分の経験値でしょう?」

「じゃあ、ミサカもいずれはああなるわけ?」

「……無理だろ、つーかなンな」

「そうなの?」

芳川から見た一方通行は、妙に居心地の悪そうな目をしていた。

確かに、彼を憎むために作られた番外個体が打ち止めのような精神性を持つことは不可能そうである。


しかし、その言葉には他意があるような。
打ち止めだけが一連の事実を全て把握していることと密接しているように思えた。



「打ち止めと言えば、あの子がさらわれた時があったろ?」

「ええ、9月の最終日だったかしら」

「……」


あの時は大変だった、と振り返れるのも時が経ち平和になったと言うことなのか。

そして、続く黄泉川の言葉は――。








「あの子助けたのって、私の教え子だったらしいんだ」
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 01:04:54.28 ID:LzFVrKJAO<>



「――はァ?」

「……えっ」

心底冷え切った一方通行の声と対象的に、オクターブほど上擦った番外個体の呟き。

「だから」

「なに言ってンだよ。
前も言った通り、クソガキ助けたのは俺の知り合いの完全記憶能力の女だろォが」

しかし黄泉川は薄く笑うのみで、間違いを訂正しない。

――何か根本的なズレが是正されるかもしれないと、そのとき芳川は確信した。
現に妙な緊張感がテーブルを支配している。

「ああ、彼女が助けたんであってそいつは一緒に行動してたとか何とか」

「まあ、あの状態であの子が1人逃げきれるとは到底思えないものね」

「……そォか、ああ、あの時の電話の」

「それで、愛穂はどうして知ってるの?」

「最近久しぶりにそいつと会って直接聞いたじゃん」


「――そいつの、名前は」


彼の赤の双眸も、テノールも震えに震えて。




「上条当麻、だけど」



その言葉に、彼らはまたもや正反対の態度を示す。

「それって……シスターの……あの事件でアイツを助けたのは」


そんな狼狽をかき消すように響き渡るのは、彼女の嬌声。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 01:06:21.36 ID:LzFVrKJAO<>







「ヒーローってば名前も格好いいんだから!」








<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 01:09:32.49 ID:LzFVrKJAO<>


「ヒーローって?」

「あれぇ、芳川ってば知らないのー?
あの実験止めた人だよ。

姉貴が言ってたんだ、『このミサカは2回もヒーローに救われたって』」

ガタッ

音がした方に目を向ける――。
いや予想はついていたのだが。


「……出かける」

「え、何だかお前フラフラしてるけど」

「……駄目なンだよ、今、やっと」

蒼白な顔をしている、と指摘するも一方通行は席に戻らなかった。
杖をついて――しかし、それも通常より早いテンポ。


そして彼は出かける前に一言漏らしたのだが、それの意味は芳川にはまだよく分からなかった。









「――やっと繋がった」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/05(金) 01:22:30.13 ID:LzFVrKJAO<>


「の、かなあってミサカはミサカは妹の送信信号から分析してみる」



「全く、あなたの考えることは本当によく分かりませんとミサカは鳥肌ものの腕を握ります」

「いや、ミサカはあの聖天使?に従っただけだからってミサカはミサカははにかんでみたり」

「ですから、そこで笑える神経が理解に及ばないのです」


第7学区のとある病院の中庭ベンチにて。


「しかし、この情報操作もよく成功したものですねとミサカはある意味の賛辞を上位個体に送ります」

「ミサカね、おっきくなったら情報屋やろうかなって」

「ああ、天職だと思いますよ」

よく似た顔の少女が2人。

「だからね、将来のための予行練習に付き合って欲しいのってミサカはミサカはお願いしてみる」

「ええ、何でしょうかとミサカは問い返します」

春の風にそよがれ――


「何故あなたは最近接続を切っていたの、10032号ってミサカはミサカは尋ねてみる」

「――ああ、やはり気付いてましたか」

「勿論だよ、下位個体?」



糊で張り付けたような笑みを浮かべ、それぞれお互いに向き合っていた。 <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/08/05(金) 01:27:35.99 ID:LzFVrKJAO<> 番外個体→打ち止めは姉貴で、→美琴はお姉さまと言う呼び名が裏設定
そして黄泉川家は姉:打ち止め、妹:番外個体の狭間に一方さんという精神年齢順が好きだったりです
次は、御坂姉妹が仲良くお話をします…かねえ
それではお付き合いいただきありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)<>sage<>2011/08/05(金) 02:05:21.46 ID:gKpctl/oo<> 乙。
番外個体が打ち止めを姉貴呼びとか、新鮮すぎだろ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 07:07:12.55 ID:DRg9WquDO<> おつおつ
もしや2スレ目にして初めて打ち止めが出てきたのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/08/05(金) 11:10:08.56 ID:XQzDrmWWo<> 結構核心まできたっぽい? 
それにしてもヒーロー大好きな番外個体が可愛かった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 11:50:25.67 ID:P1HglGMho<> 原作も番外個体は本気でヒーロー好きで一方さん嫉妬も空回りしてたらいいのにね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 11:52:50.20 ID:CrWCl4cDO<> >>333
新薬あらすじはそれっぽいぞ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 19:30:44.05 ID:BW/8OFrB0<> ピンク髪の番外個体想像したらけっこう似合ってた
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/08/05(金) 21:06:47.81 ID:0LI69xJG0<> >>328 この打ち止め、一方さんより賢いのでは。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 22:34:03.22 ID:eYoYawHjo<> わくわくしてきた <> ◆ObanGQEW7M<><>2011/08/11(木) 21:20:50.63 ID:MeZ32PzAO<> 打ち止めと10032号の言葉のジャブ編は今夜投下します
よろしくお願いします
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/11(木) 21:43:15.45 ID:b8Cl06NIO<> お待ちしております <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/11(木) 23:33:33.24 ID:MeZ32PzAO<>

「とりあえず、今まで接続切ってたわけってのを聞きたいなーってミサカはミサカは主張してみる」

「分かりました、その前にジュースを買って来ましょうとミサカは上位個体に提案します」

「……うーん」

全身を舐め回すような少女――否、管理者の視線。
ああ、これだから会いたくなかったのに。
ナースステーションまで乗り込んできて「お姉ちゃん、お弁当忘れてるんだから」と言われた日(ほんの20分前だが)には心臓が止まるかと思った。

しかもお弁当と称して持ってきていたのは高級菓子折りで、同居人のものを箱ごと奪ってきたらしい。
インテリヤクザよろしく先に食べさせてからこれは高級な物でしたと説明されたところで一体彼女はどうすれば良いのか。

ああ、消えてしまいたい。

「――瞬きの数が異常脈拍数増加、発汗とか見受けられるけど――まあ、10032号だし脱走しないよねってミサカはミサカはちゃっかり念押ししてみる」



願うことすら彼女は許してくれないのか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/11(木) 23:35:23.94 ID:MeZ32PzAO<>

「……それを、世は脅迫と呼称するのでしょうねとミサカはやれ溜め息をつきます」

「ミサカはミルクティーで!」

「はいはい」


自分がネットワークの一員である以上、この追及からは逃れられないと覚悟はしていた――が。

ゴトン、という音を立てジュースが落ちてきた、屈んで手を伸ばす。

(……堂々と話すようなことでも無いんですがね……。
はあ、だからデリカシーの無いちびっ子は)

ふと目に入った自販機の白。
それに写った自分の顔が存外に鬱々としていて、彼女は慌てて取り繕う。



「はい、ジュースをと言われ腹立たしくてでもコーヒーを頼めず見栄を張ってお茶にせざるを得なかった上位個体、どうぞ」

「この寒い中で期間限定につられて炭酸飲料買ってきた下位個体ありがとうね!」

「…………性格わる……とミサカはおもむろに呟きます」

「そりゃあ思春期の女の子のデータを10000人抱えてるからってミサカはミサカは反論してみたり」

「…………クソガキが」

少々の沈黙。


「不毛な姉妹喧嘩は止めようかってミサカはミサカは妹に譲歩してみる、ごめんね」

「分かれば良いですよ、そしてミサカが姉ですからとミサカは自分よりロットナンバーが大きいミサカに教授します」

プラスチックの蓋を外しペットボトルに口づける。

口内、主に軟口蓋に張り付く二酸化炭素。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/11(木) 23:38:21.25 ID:MeZ32PzAO<>

液も空気も一緒くたに飲み込んで、10032号は再度口を開く。



「ミサカは失恋したんです」

「失恋……?」

意外だったのだろうか。
だとしたら予定調和を崩せたようで少し心地良い。

「ええ、完膚なきまでにです。それも2人の女性にやられました」

「……」

この面食らった、そしていて居心地の悪そうな顔。

(ミサカはまた勝利してしまったようです……なんて虚しい!)

「まあしかし、その感情はこのミサカ単独のものであり、ネットワークを通じて媒介するのは些か他の個体に失礼でしょう。
よって独断で切断させていただいておりました。

わざわざご足労をおかけするなど、ご迷惑をおかけしてすみませんでした上位個体、とミサカは謝意を表します」

頭を下げると言うよりかは、背骨を丸めてベンチを見ると言うべきか。
首からかけたIDカードが揺れる。

別に自分が悪いとは微塵も思っていないし申し訳ないとも感じてはいないが、ここは通例的に謝っておくべきだろう。
そんな投げやりな態度であることに、打ち止めは気付きはしたが責めるような立場ではないと知っている。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/11(木) 23:41:17.70 ID:MeZ32PzAO<>

「……こっちこそってミサカはミサカは謝ってみる」

「それでは用事も果たしましたし、ミサカは職場に戻りますので」

「あ、――うん」


そのままベンチを立って、次は暖かいコーヒーを買うことにする。
ブラックは苦手だから、ミルクが入っていて甘い者にする。
それから手のひらに訪れる至福の温度。

はあ

そう息をついて10032号は先ほどのベンチに引き返した。

まだまだ小さい黒髪の少女はぼんやりとした顔で座っていたが、彼女が戻ってきたことを確認すると途端に慌てだした。
何か忘れ物をしたかと尋ねられたので否定しておく。


「だからあなたはガキなんですよ、上位個体」

「え」

「こうやって意味ありげに恋愛のことを仄めかしたら、浅ましくも食いつくのが女でしょうにとミサカは密かに嘲笑います」

「そ、うなの」

「そうですよとミサカは実のところ愚痴りたくてたまらないことを告白します」

今まで誰にも言えずに、同じ病院で働く少女らにも言えなかったあの初冬のことを思い出す。
結局、当事者で居た気がしていたのは自分だけで実際は体の良い傍観者にすぎなかったのだろう。

(ミサカが亡くしたのは、恋心ぐらいですみましたからね)

良心を殺した彼女と咎を背負った少女、そして理不尽に苦しめられる彼――。

何故、綺麗に終われないのか、今も苦しむ必要があるのか。

傍観者には不思議で仕方がない。
<> やべえ、先のデータ消えた――ってことでこっからはスローです
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/11(木) 23:46:28.96 ID:MeZ32PzAO<>


「じゃ、話せる範囲で良いから……聞かせて欲しいなってミサカはミサカはお願いしてみたり」


「分かりました。ミサカが話しても良い範囲で、あなたに伝えますとミサカは宣言します」

そうして、彼女は一旦口を噤んだ。

木々はあのときよりも茂っていて、春の到来を感じさせる。
確か彼はクリスマスの夜に“戻った”――しかし同時に地獄に足を踏み入れたのでもある。

あの綺麗な正三角形を描く彼女らは、世に置いていかれているのか、それかその場に固執するのか。

10032号には預かり知らぬところだ――。
しかし、3人の時間はこの病院で止まったままである。


それだけはたしかに断言できた。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 00:05:36.38 ID:3RIu08LAO<>

「上位個体、1つ質問をしても良いですか?
ミサカはですね、大真面目に彼――上条当麻のために死んでも良いと思っていたのです。
ええ、遜色はありません。

そしてそんな自分の感情は崇高で、多くの少女達と並列な物だと信じていました。
――ですがね、そうじゃなかったんです。
彼女達はミサカよりもずっとおかしい。


ミサカは、どうされたから負けを認めざるを得なかったかと考えますか?」


「……彼は、去年の秋に突然運ばれて来ました。そして、あの少女がいつでも連れ添っていました。
どうやらロシアで大変な事故にあったらしく――ええ、第三次との関連を疑ったのですが彼は何も語らず。

いえ、それどころか――意識が無かったのです。
状況を尋ねようにも、彼女も『高いところから落ちた』と言うばかりです」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 00:26:46.47 ID:3RIu08LAO<>

「俗に言う植物人間だったのでしょうか――物言わぬ肉塊です。
そんな中であの病院のミサカからはこのミサカだけが、彼を担当することになったのです。
理由は知りません、秘匿しなければいけないということもありませんでしたし。
ただ、最上階のだだっ広い個室で彼は隔離されました、毎日彼女も居ました。
――ええ、あなたが尋ねるように体の損傷は酷いものでしたが、例の右手だけは妙に綺麗でした。ああ、そこは端折ります」

「12月の始めでしょうか、違う女性――ミサカ達の存在の根幹に関係する人、が彼を訪れ始めました。
それと反比例するように、最初の少女は姿を消し同時にやつれていく。
理由を聞いても教えてはくれませんでしたが、彼女も彼女で治療法を模索していたかのように思います。
ああ、冥土返しですか。彼でも意識を浮上させることは出来ませんでしたよ。


相変わらず彼は治らず、そしてとうとう25日の真夜中――クリスマスです。」
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 00:56:49.71 ID:3RIu08LAO<>

「そのときミサカは夜番で廊下を見回っていました。患者が出ていないか。
足音が聞こえ向かうと、2番目――Bと呼びましょうか、彼女が1番目の少女、Aをおぶって廊下を歩いていました。
その日は完全にどの通路も遮断していたのに奇妙な話ですが、Bは切羽詰まった様子で『この子を見ていて!』と押し付けて彼の病室へと走っていきました」


「何が起きたのやら。
ミサカには分かりませんでしたが、預けられたAが全身に酷い怪我を負っていましたので治療していました。
そして終わりました。
――彼がベッドの中で座っていました。
Bがなにかしたのでしょうか、ただ彼女は笑顔でした。
彼の記憶は少々混濁があって、しかしそれは回復仕立てにはよくあることです。
十全にさえ見えました。
ミサカは久しぶりに彼の笑い声を聞き、歓喜に震えたのです。


――でも、それを聞いたAは死にそうな顔で泣くのです。

ミサカは意味が分からず、とりあえずBにも尋ねたところ『やっと踏ん切りがついた』と。
……ええ、あなたと同じ反応ですよ、ミサカにはわけが分かりませんでした」

「でもそれだけだったら、あなたが負けるわけには弱いよ?ってミサカはミサカは指摘してみる」

そうして、10032号はゆっくりとコーヒーを嚥下した。






「Aの力不足のせいで、Bは彼を殺した。


――生きるために殺す、なんてと思いますよね」

「比喩ではないの?」

「医師は大真面目に説明してました」 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 01:20:21.02 ID:3RIu08LAO<> 「さすがにミサカも冥土返しがトチ狂ったのかと思いましたが、しかし誰もが本気なのですよ。

だからミサカは、それが本当であったら、と仮定するのです」

「説明された通りに話しましょう。
上位個体は一方通行を自分のせいで電脳の世界に閉じ込めてしまいました。
自分でどうやろうとも現実の彼は意識不明で戻りません。
そのうち彼は全く別の人格で他のアバターと交流していきます、本当の自分を何もかも知らない善良な第一位として。

そのうち、アバターを殺せば彼は戻ってこれる……かもしれない、との結果にいきつきました。可能性は分かりません。
しかし干渉するには、電撃使いレベル4以上じゃないといけないということで番外個体が手をあげました
あなたは番外個体に『死ぬかもしれないけど彼を殺して』と言えます?
そして番外個体も冷酷非情に彼と言えど見目も今までの記憶も違う彼を殺せるのでしょうか、憎悪の受信塔を完全に壊し、今の幸せに浸りきった彼女にです。

結局あなたはお願いしないことに決めた、しかし番外個体は殺しました。
ねちねちと残忍に。
一方通行は結果戻ってきました。しかしあまりに情緒不安定で、誰かがついてなくてはいけない。
物音にさえ怯える彼に仕立て上げたのは他でもないあなたなのに、四六時中隣でニコニコと感情を抑えてそばに居れますか。

――彼女達は、いつも3人で居るのです。
殺した者と、そうされた者、大事な者を殺人者に仕立て上げてそして殺された者。



正直言って、…………あれは狂気の沙汰ですよ」


絞り出すような10032号の言葉。
おぞましいとしか表現できないが、果たしてあれを失恋と呼ぶのは許されるのか。

打ち止めは、ただ首を横に振った。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 01:53:57.33 ID:3RIu08LAO<>

「と、まあソフトに説明してみましたが」

「これでソフトなんだ……ってミサカはミサカはげんなりしてみたり」

「もう少しあるのですが、それはミサカからはお話しできませんとミサカは口を塞ぎます」

唇の上でバッテンを作り限りなく薄く笑む10032号。
打ち止めはその手を目一杯伸ばし、彼女の頭を撫でた。
慈愛をこめてゆっくりと。
ぱちり、と白衣の彼女は瞼を開閉する。


「大変だったね、……でも無事なんだねってミサカはミサカは安堵してみたり」

「……あ、はい」

「このミサカの夢に出てくる、自称聖天使――ミサカは何度かあの人と出会う前から見てるんだけど、それがね?
『君は主人公らの心配じゃなく、凡弱な君の身の回りを見た方が良い』って言うのってミサカはミサカは説明してみたり」

「……それがミサカですか」

「分からないけど、誰にもかかわらず何にも言わないで鬱ぎ込んでたから」

心配だったの、と呟いて打ち止めは彼女の両肩に手を回した。
触れてくる皮膚が、少女のシャンプーの匂いが、五感を全身でくすぐる。


「あなただもん、すぐに良い人見つかるよってミサカはミサカは断言してみる」

「……そう、ですかっ」

「顔も可愛いし、頭も良いし」

「……イコール、自分じゃ……っ、ない、ですかぁ……っ」

嗚咽混じりの声が辺りに響き、打ち止めはより一層強く抱きしめる。
御坂美琴のクローンであり、遺伝子的には全く同じ2人だが。
恋に破れた姉妹を慰める、そんな図はけして他のそれと代わり映えない。


「番外個体がね、あの人が飛び出してったって。 きっとね、きっと何とかしてくれるよってミサカはミサカは勝利のブイサイン!」

「……あんなモヤシに……ぃ」

「みんな本当のこと言い過ぎだよねってミサカはミサカは……」

涙でべっとりと濡れたシャツ越し。
10032号は、呟く彼女の姉妹の声を聞き漏らしはしなかった。













「ああ……嬉しいなあ」



<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 02:12:30.72 ID:3RIu08LAO<>

「…………」

「ああ、ほんま幸せやんボクって!!!!?? 吹寄さん超似合っとるから安心してーなー、んでこっちカメラやから目線」

「……死にさらせぇぇえ!!!!」

「ぐぼぇ!!!!」

「あ、あたしがこんな可愛い服似合うわけないでしょうが!!!!!!!」

「超キュート!!!!」

「るっさい!!」

とあるゲームセンターの一角で、それはそれは野太い男の断末魔が響いた。
それは鳩尾に重たいパンチを入れられたからであるのだが、それを放った方は更に愕然とすることとなる。

「き、貴様!! 横たわってこっちを」

「…………」

地面に倒れ伏す青髪の男は、いつもは細い目をやりすぎなくらいに開く。
フワリと広がるサーキュラースカートの中を覗くためじりじりと匍匐前進をする。
大音量のBGMに負けないくらい彼らの声も大きかったのだが。


「ボクのこと蹴ってもええけど!!!絶対下も見えるかんな!!!」

「くっ…………!!!」

「ちょっ、マジでくっ…………!!!っちゅー子おるんね!!!
あ、あかんボク興奮してきよった……」

「ド変態が!!!」

ゴスロリを着て詰る女子高生と、床に這いつくばって下着を覗こうとする男子高生。

そんな彼らの様子は薄暗い店内では明らかに目立つのか、店員を呼び出されるまでそう時間はかからなかった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/12(金) 02:19:21.49 ID:3RIu08LAO<> あまりに今回はダラダラとしすぎました、すみませんでした、以降は気を付けます……!
次回はただの少女漫画とセルフパロディです、そろそろ萌え系は来るべきよね……
それではお付き合いいただきありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/08/12(金) 07:16:12.33 ID:LyOj6yhAO<> おつー。
ようやく核心っぽいあたりが見えてきたけど、これだけだと
御坂の八つ当たりテロの理由がまだ見えないね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 11:13:01.34 ID:fNQszgV/0<> 乙!
とりあえず早く続きが見たい
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 14:09:43.47 ID:qZe5tU9so<> 黒打ち止め <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<><>2011/08/12(金) 16:16:20.18 ID:7HdbOmHeo<> お姉さん!って感じの打ち止めが可愛い
それにしてもほの暗さがはんぱないなぁ・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 23:20:23.41 ID:ZWOAgrrIO<> ごめん、さっぱり分からなくなってきた
なぁなぁでついてきてたけど、今回の話で完全に分からなくなった

>>1よ、あらすじ的な何かで時系列とか何処で何が起きたのか教えてくれないか

理解力が乏しい俺が悪いのは分かるが、どうしても最後まで付き合って行きたいんだ頼む <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/08/12(金) 23:40:34.14 ID:3RIu08LAO<>

第三次世界大戦(10月下旬)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【“彼”が搬送されてくる(秋)】

【“彼”が復活(クリスマス)】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
白銀コンビ再会(2月)

春休み(3月中旬)今はここ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時折入る夏休みパート(8月始め)


【】内の内容が御坂妹の独白パート
〜〜の部分はまだ描写してません <> >>356<>sage<>2011/08/13(土) 00:20:28.56 ID:P2m25FYIO<> >>357
ありがとう、本当にありがとう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)<>sage<>2011/08/13(土) 00:28:41.11 ID:5YuBt9Joo<> >>357
おお分かりやすい。
ありがとうです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/13(土) 02:33:35.01 ID:BbP1a1Xbo<> ようするに上条さんの記憶がまた消えたって事だろうか…? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/08/13(土) 04:00:07.92 ID:mNpr7FJ80<> >>358-360
その伏せカ−ドを楽しむのが、
このSS
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/08/13(土) 07:32:54.37 ID:VuF8Aem+o<> 御坂妹認識では右手のみ無傷、上条復活直後インちゃん傷だらけ
姫神認識では右手肉塊化
共通認識では失恋するほどに上条の精神性崩壊か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/13(土) 08:07:14.26 ID:zh/Ne75DO<> 乙 吹寄がプリティ過ぎて生きるのが辛い
インデックスに会う前の上条さんに戻ったのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/08/13(土) 08:14:27.54 ID:0KcRqvGIo<> 右手肉塊なら中の人がこんにちはしてる気がしないでもない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/15(月) 02:24:14.73 ID:d2BjVox40<> インちゃん受験の時上条さん心配してたから
精神崩壊してても上条さんはある程度の常識と思考能力はある…と思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/08/15(月) 03:55:02.01 ID:fta+G4VJo<> 精神が不安定とあるからDV夫みたいな有様かもしれんぞ <> ◆ObanGQEW7M<><>2011/08/16(火) 00:17:30.00 ID:MyuJQlXAO<> 真夜中にこんばんは
爆ぜろリア充パート、もう少ししたら投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/08/16(火) 00:18:04.99 ID:iNSFu1mto<> わたしまってたわ <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 00:48:39.09 ID:MyuJQlXAO<>


「……帰りたい……」

「あれー、ゴスロリよか良いかなと思ったんやけど」

「……大差ないわよ……」

今すぐにでも隅っこで体育座りをしたいのだがこの布の短さでは無理だ、と悟り吹寄の顔は更に渋くなる。
そしてさっきからもチラチラと視線を受けてはいたのだがそれもより一層増えた気がした。
とりあえず伸びろ、伸びろと腰回りの布を押し下げると「パチモンやし破れんようにね」と間延びした声で言われた。
慌てて手を離す。

「こういうのってどこで買うのよ、お得意の通販? オークション?」

「ま、そうやなぁ。 それはアダルト通販サイトで1760円」

「楽しそうに笑うなっ!」

ぺちんと腕を軽く叩くと、より一層向こうの男が笑う。
昔、本当に自分がドMなのかは疑わしいと真面目に言われたことがあったが真正だろうと返して正解だった。

「何でこんなに短いのよ……、あたしの身長把握してんの?」

「目測は160ちょっとぐらいやね」

「実際にもそれぐらいね」

「……」

じゃあ何故だろうと探る吹寄に対し、明らかに胸部が布をとってるんじゃとは流石の青髪も言えなかった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 00:50:35.39 ID:MyuJQlXAO<>


「まあ、コスプレ衣装やから」

「見んのは青髪、着るのはあたしなのよ!」


「いやでも、今ボクごっつ冷静に振る舞ってるけどほんとはめっちゃ興奮してる」

「……それとこれと何の関係が」

「関西弁が抜ける」

「アイデンティティの崩壊!」

大丈夫、と大きく深呼吸して。
極彩色のスニーカーを履いた右足が一歩を踏み出した。

「あー日本人の女の子で綺麗に着こなせてる人初めて見た気がする、ってか靴下ってサイハイと見せかけてガーターだよね、あー僕ほんと駄目なんだって、無理無理言っとくけどサイハイだけでも超たぎるんだってのにガーターとか欲望マジ現出1000%みたいな」

「わ、分かったから、じりじりと近づくな……」

「メタ的な発言を批判も覚悟ですると彼女は今チャイナ服を着ていましてね、ああそれも赤い奴超クール、あー何だろう戸惑う顔が目に浮かぶ、どうして青髪お前が……みたいな、いやしかしどんなに僕を妬んだところで三次元ホログラム説を信望する君たちには分かんないんでしょうね、実に残念だなぁ」

「トランスはやめなさいってばぁ……」

しかし駄目なのはもう分かっている。
妙なところでスイッチが入り、悶えて目に涙を並々と注いでどこかに語り掛けるというのはこの青髪の彼の癖であるのだ。

残念なことに矯正は不可。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 00:54:10.63 ID:MyuJQlXAO<>


――だから、彼女はこうするのだ。


「ストップ!」

「?」

両手を前に突き出した。

「それ以上ラリってるなら姫神さん呼んでかごめかごめ歌ってもらうわよ、もしくは日本古来の怪談」

「――おぉ、ボクは何をしとったのやら」

こうかはてきめんだ。

姫神の歌と語りには揃って痛い目にあったこともあり、既にあれは兵器の類だというのが彼らの共通認識である。
吹寄も携帯で録音しようかと考えたこともあったのだが夜に間違えて再生したら……と考えるとそれは霧散した。

何というか、自分の存在理由を疑いたくなるのだ、彼女の声は。


「……でもなあ、ほらコスプレで優勝するとアレもらえますやん」

指差した方を見ると最新鋭の携帯ゲーム機。
しかし外よりも娯楽品が高価な学園都市で、学生が手に入れるには色々と犠牲を払わないといけない。

真っ白いそれが輝くのを見て、う……と吹寄の喉が鳴る。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 00:59:08.82 ID:MyuJQlXAO<>

「分かってるわよ。 可愛い動物達とバーチャルでぐらい戯れたいし……」

「あのマンションペット禁止やもんねぇ」
「理不尽だわ……不純異性交遊禁止するならペットくらい……」

途中まで呟いてから言えた義理では無いことに気付く。
慌てて見上げても、心ここにあらずといった様子で突っかかってくることは無かった。

一応、不純ではないのだが、恋人が居る身だった、自身でも不思議だが彼女はよくそのことを忘れてしまう。


Tの字に設置されたステージを見てため息を吐く。

「どーしたん」

「……健全にナーバスなのよ」

それともメランコリックか、どちらにせよ複雑なのだ。

ゲームセンターの大イベントということもあって、どこにもどこまでも人がいる。
周りを見ると鮨詰め状態でとにかく狭そうなのだが、彼女たちから半径80センチ――丁度手を目一杯伸ばしたくらいは不自然に開いている。

(あたしもこいつも悪目立ちするのかしらね……)

奇抜な青の髪とピアスと長身、今思うと警戒させるためというか必要以上に人を近づけないためなのだろう。

しかしこのサークルは見事に喩えていた。能力的に仕方ないのだけれど相依存で寄りかかっているこの状態、美しいくらいに排他的な彼らを。


太いバリトンの声が降り注ぐ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 01:01:58.01 ID:MyuJQlXAO<>
「具合悪いんなら、ボクにうつしてもええよ?」

「……丁重にお断りしておくわ、ていうかそうなったら休むから」

それから、吹寄は上へと手を伸ばす。
ムギュ、と鼻を摘むと存外驚いた顔をしたのがおかしかった。

「この中、匂うの?」

「へ」

変な顔してたから、と言った。

「――吹寄さんはほんまに敏いなぁ」

「青髪が分かり易いのよ」

ソワソワと挙動不審に視線をさまよわせる。
自分の時もそうだったのかと思い、そして優しすぎる男に苦笑うだけしかできない。
彼はずぶすぶに優しい、馬鹿みたいに責任感が強い。
だから、排他的でも支えになるのならそれでも良いのかと思える。

鼻を解放してやった。

「行ってきたいならいつでも行ってきなさい」

「……ありがとさん」


「ああ、だけどその前に1つだけ」

相変わらずの細い目でどうしたのか、と尋ねてくる。

「ね、替えの服は無いわけ? あたしあんなとこ立つんだけど、これじゃ……絶対下着見えるでしょ」

先ほどコインロッカーに紙袋を入れてたのを見たが、あの中にはこれよりまともな服があると信じたい。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 01:05:37.14 ID:MyuJQlXAO<>

「それに決めポーズで一言……チャイナ服で何言えば良いのよ」

「シェイシェイ、とかあきまへんの?」

「却下」

というかゴスロリを拒否した後にミニスカアレンジチャイナ服を出してくる神経がよく分からない。

「うーん……黒セーラーは似合いそうやけど……インちゃんにあげてもうたから」

「貴様! あたしの命の恩人に何してんのよ!」

「ああ、そんな怒らんといて……いや、やっぱ良いや。

ん、あの人受験で使いたいとか言うてたんよ」


疑わしいところだが時間もそろそろおしてきている。
追及するのは後にしよう。

「超ミニブレザー幼なじみ風ならあることは」

「幼なじみ、って……」

ん、と傾いでもデータベースにはヒット無しである。
癪だけど妥協するしかない、割り切って尋ねてみた。

「早くー、あおくんちこくしちゃうよーみたいな……あかん、この声で言うのはダメージ大きいわ」

「……もっと他の」

何となくあれで妥協するのはなあ、といつの間にか問うてしまっていた。
仕方ない、ゲーム機のためなのだ。

下唇を噛みながら、その答えを待って――。

「んと、じゃあなー」




















「早く起きて!」
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/16(火) 01:16:06.67 ID:MyuJQlXAO<>

突如つけられた部屋の照明。
自分以外の人間の雰囲気に、食蜂は思わず呻いた。

「……るっさいわねぇ……」

「お言葉ですけど食蜂先輩、あなたが荷造り手伝いなさいって頼んできたんでしょうが」

「……だってぇ、手伝いたそうだったからぁ……」

それなりに整頓された部屋の中を歩き、彼女は掛け布団を手に取った。

「私も忙しいんですけど……まあ、とにかく起きて下さい」


バサッ!

女王の名前に相応しく、寮で一番大きい部屋に1人きりで眠る金髪の少女の丸まる姿が露わになった。
パジャマがはだけて、胸元のブラジャーを隠そうともしていない。
自分が男だったらこの扇情的な雰囲気に喜べるのだろうけど、と彼女は一瞬だけ考えた。

「今日は引っ越しの日でしょう」

「うぅ……イジワルぅ……」

何とでも言え、とぼそりと呟き、広々とした窓を覆うカーテンを勢いよく開けた。

快晴で見るからに良い日である。



御坂美琴は人知れず破顔した。 <> おわり<><>2011/08/16(火) 01:27:05.08 ID:MyuJQlXAO<> 今回の青髪&吹寄は彼らにしてみては後日談なので、下記のスレを読んでいただければ幸いです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311774070/ (スピンオフのようなものです)

次回は引っ張りに引っ張った美琴の話です、さてはて犯人も分からないのになーって方にはごめんなさい!

それではありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/16(火) 05:02:31.07 ID:nQYUOuCC0<> 美琴!
乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/16(火) 14:44:39.58 ID:L96dPwyDO<> なるほど匂いの意味はそういうことか <> 名無しNIPPER<>sage<>2011/08/16(火) 18:14:13.14 ID:D/nOrbtdo<> 赤チャイナ吹寄をみれる青ピほんと爆発しろし
もう1つのほうも楽しみにしてる! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/16(火) 19:38:48.01 ID:mJKh9rAu0<> 乙!
美琴の現状が気になる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/08/16(火) 19:47:51.56 ID:DLpgQQj+0<> >>1乙
本線復帰待っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage「!桜_res<>2011/08/16(火) 22:36:21.73 ID:SL/szh4F0<>                  /:/ : : : :/: : :/: :|: : : : : : |: : : : ヾ: : : : :彡
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<>
◆ObanGQEW7M<><>2011/08/18(木) 01:33:30.66 ID:ICVx4jfAO<> こんな時間で恐縮ですが、もう少ししたら投下します
今日はいつもより長めですがよろしくお願いします <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:14:12.74 ID:ICVx4jfAO<>


この寮に在校生という立場で居るのも今日が最後か。

ちょっとしたノスタルジィに襲われ、室内を意味もなくぐるりと一周する。
御坂は低血圧故のふらつきだと解釈したらしく、何気ない顔で毛布を畳んでいた。

――トン、トン

スリッパが地面を叩く。
廊下と部屋との境の扉に着き、食蜂は何気なさを装いつつ錠を閉めた。

――ガチャリ――


一見自然に見えるそれは、実は能力者用の刑務所にも使われる一品である。
乱暴に開けようとするとウォーターカッターで指が切れる仕組みらしい。
これで、万が一彼女が暴れたとしても大丈夫だ、封じ込めが出来る。



最近の第3位はよく部屋を留守にするらしい――と知ったのは、1年の白井に対し思念透写を試みたときか。

『無差別暴行事件の犯人は、御坂美琴しか有り得ないのではないか』

彼女の脳内は、ただそれだけだった。
気になって問いただしてみれば、自分が見たというその犯人の特徴をペラペラと話してくれた。

いや、彼女の記憶の中の人物を食蜂は直接“鑑賞”した。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:17:19.78 ID:ICVx4jfAO<>


確かに身長は160センチ台、だぼっとした灰のパーカーのせいで体系は分からないが肩や腰の細さは男ではまず有り得ない。

不審者は気配に振り返る
そして彼女の視界いっぱいに紫電が広がり、数秒後には消えていた。


高位能力者の女――というと、自身もカテゴライズされる。
そう大真面目にも食蜂は最初は自身を疑ったのだ。

知らぬ間に精神病に罹った自分は事件を起こした。
しかし記憶を弄ったせいで覚えてないのかもしれないと、もしくは他人を操ってはいないかと。
しかし食蜂にはいずれもアリバイがある。公平性のために能力を使えないように操作された入試のときと事件の時刻が被るのだ。


そして暗部関係者もナシだろう。
彼女らだとしたら、こんなに手荒でしかし能力を過信しない行動は不可能だ。
それにわざわざ見つからないように行動する意味もない。
並のレベル4ならば風紀委員として訓練を積んだ白井から逃げきれるとは思わない。

(疑って☆ってぐらいの証拠……、それが逆に引っ掛かるぐらいよぉ)


白井視点から御坂美琴を犯人だと設定したら、この血なまぐさいパズルは完璧にはまる。
襲う理由は分からない、何らかの憂さ晴らしだったら春にもやっていたそうなので残忍さが大幅に上がったぐらいか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:21:01.25 ID:ICVx4jfAO<>


それともう一つ。
精神系の十得ナイフとも揶揄される心理掌握には、“残留思念の読み取り”も含まれる。

だから白井の記憶を媒介に、犯人の思念を読み取ろうとした。
目的や方法を理解できないかと思って。
でも駄目だった、何度挑戦しても漏らすことなく彼女の干渉を拒んでくる。

不意打ちで現れた白井と対峙しても尚、心理掌握に完璧なバリアを張っていられた。

そんな芸等が出来るのは、ああ、自動に電磁バリアを掛けている彼女と他には数名だけじゃないか。


――だからもし、単独犯が確定なら、食蜂は御坂がやったのだと白井の代わりに突き出そうと思う。


だから御坂だけに荷造りの協力を求めたのも真偽を確認する意味と、もしも暴れたときの被害を最小に抑えるためだった。


食蜂は地面に座る御坂の顔を盗み見る
卒業式で式辞をしたときの御坂のクマはヒドいものだったが、それは今も変わらず。
コンシーラーの選択ミスなのか慣れていないのか特有の鬱血は全く消えていない、寝不足なのは明らかに分かる。


しかし、それに負けじ劣らじと白井の憔悴ぶりも酷かった。
髪に艶が無く顔色が悪く、反応が緩慢だ。

相当キていたように見えた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:22:47.07 ID:ICVx4jfAO<>


そして、寮内にも怯える女生徒がちらほらと。
犯人のターゲットには、スキルアウトでさえすれば何の躊躇いもなく女性も能力者も含まれる。

(レベル3の重力使いを楽チンに倒せるほどなんだからぁ……そりゃぁ明日は我が身よねぇ)


食蜂はパジャマを脱ぎ、ニーソックスに足を入れる。
ひやりとした妙な冷たさが煩わしい。

こうして渦中の人物と2人きりなわけだが彼女に直接尋ねてみる、という今日の計画を立案したのは食蜂ではない。

ある日婚后からその能力で痛覚遮断出来るか、と聞かれたのだ。
いとも簡単に出来るのだが、そうしたい理由が気になり逆に問うてみた。
すると、最近不在のわけを直接御坂に尋ねたいと言うわけだ。

(あくまで私が気にしているのは御坂さんであり無理やり聞き出せるくらい白井さんが元気のないことは関係ありませんのよ?
なんてぇ、テンプレ的百合ツンデレ乙よねぇ)

食蜂としては痛覚遮断した婚后――トンデモ発射場ガールと評される彼女だったら死なずに帰って来れるとは思う。

だが、こっちが操作ミスして万が一にも増幅してしまったらと思うと都合が悪い、断った。

その代替案として夏にやられた分を返したい、と食蜂が出てきたわけだ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:24:30.66 ID:ICVx4jfAO<>


――と、ここまで思い返して彼女が犯人だと決めつけている自分たちに気付く。
ああ、先入観で凝り固まっていたら真実が見えないと言うのに。

(キレられて雷落とされても怖いしぃ、婚后さんたち上手く外に連れ出してくれたわよねぇ?)


今は2人しか居ない寮の最上階はヒエラルキーの頂点なのか忌むべき隔離部屋なのか分からない、食蜂は静かに息をついた。



――気にしないように心がけていたのだが、御坂からの視線を感じずには居られない。

「……ボタンでも掛け違えてるぅ?」

御坂からの視線に気付き、ベスト下のブラウスを見返すふりをした。
もちろん一時も彼女から集中を外してはいない。

「あ……、何でもないです」

「そぉ? じゃ、とっととやっちゃいましょっか」

企みを看過したのだろうかと焦ったが、御坂は相変わらず疲れたような顔で否定した。

食蜂は何気なく、部屋に備え付けられた2つあるクローゼットを開けた。



――ガラガラガラガラ――


「……」

「そっちは適当な包装でよろしくぅ」

「な、なんなんなのよこれ!!!!」


御坂が突然素っ頓狂な声を出した。

強張るのは食蜂の全身である。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:25:54.91 ID:ICVx4jfAO<>


食蜂はブレザーのポケットに忍ばせたラジコンに手を伸ばしかけた。
白井を呼び出し、婚后に生徒の避難及び第7位に連絡させるスイッチの手触りを確認する。

「ん?」

そして準備を整えてから「どうしたのぉ?」と隣のクローゼット、御坂の正面の方を覗き込んだ。





バタン!!!!


勢いよく扉が閉ざされ、その速さといったら前髪が風圧で浮き上がるほどだ。
先程までの目を疑う光景は消え、真っ茶色の扉が重苦しくそびえ立っているだけ。

「…………」

気味の悪い沈黙が場を支配する。
数十秒経過して食蜂は口を開いた。

「御坂さん」

「はい」

「……今のは知らぬふりでお願いします……」

いつもの猫なで声を封印して誠心誠意で懇願する。
彼女は黙って頷いてくれた。
中では、ピンクや青の髪をした少女がシーツの絵で恥じらっていた。



「それにしても私物多いですねー、CDとか小説とかゲームとか漫画とか……」

本当はそれに先程のシーツカバーだの抱き枕だのが加わるわけだが、言わないでくれた御坂に感謝した。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 02:59:24.89 ID:ICVx4jfAO<>


「私ぃ、何て言うかぁ趣味人?なのよぉ」

「へぇ、そうなんですか……あ、ザンプ」

彼女の視線がこちらに無いことを確認し、食蜂はキャリーケースに薄く大きい本を詰め込む。
お気に入りのショップで買ったピンクの洒落たそれに入っているのがまさか同人誌だとは思うまい。

「毎週つつがなくアンケは出してるかしらねぇ」

「コアじゃないですか」

「そうねぇ、その通りだわぁ」


core――芯、重要点、核心。
どの意味でも自分には相応しいには違いないと思う。

「私達ぃ、友達少ないじゃなぁい?」

「達、って……まぁ否定はしないけど」

7人しか居ないレベル5――とは言え、その彼らの中でも系統は分割できる。
オンリーワンとナンバーワン。
書庫を見ずして研究員の記憶を覗いた知識によると第2位4位7位の能力は非常に特殊だ。
対して自分と御坂はありふれた能力のトップである。
第1位は両方で、第6位は知らない。

母体となる者が多い能力の頂点ということは、何がどう凄いのかということを悟られてしまう。


「精神系の能力ってことも、スッゴく風当たり強いのよねぇ。
『私が操祈ちゃんと仲良いのって、本当になんだよね?』『誰誰ちゃんと私が喧嘩したのは操祈ちゃんのせい』
なぁんてね、小学生にしては危機管理能力あるなぁって感心しちゃうわぁ


「こっちが電気系の軽犯罪の犯人候補にされやすい、みたいな」

「そぉそぉ、全く良い迷惑なんだけどぉ」
そんな経緯を辿った結果、食蜂はちょっとした人間不信、疑心暗鬼に陥った。
仲の良い友達なんて本当は居なくて、自分が操っているだけではないかと思っただけ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:04:17.49 ID:ICVx4jfAO<>


それに加え、自分だけの世界に浸ることが増えたせいで能力増強も止まることが無い。

「ま、だからぁ私でも干渉できないサブカル方面に逃げたわけ」

「……」

ここに入学してからは勝手に祭り上げてくる者や何が良いのか崇拝してくる者は居た。
けれど、隣で笑い合うような友が居たかと聞かれれば否定しないといけないだろう。
欲しくないわけはないが出来ないものは仕方ないだろう、そういう運命だ。


「んーと、まぁ不幸自慢【前置き】はさて置いてぇ」

くるり、とアタッシュケースを回す。
御坂の目がこちらを捉えたことを確認し、息を吸った。


「貴女に聞きたいことがあるのぉ」

「何ですか」

「最近、コソコソとネズミみたいに寮を抜け出してるわけ」

表情が堅くなったのを隠そうともしなかった、ああ聞かれたくないのか。
注意深く、口角を上げながらも決して油断はせずに。

「……バレてましたか」

「もっちろん」

「恥ずかしいから気付かれたくは無かったのに」と微かな呟き声が聞こえた。

「寝不足も関係あるのぉ? 酷い顔晒しちゃって」

こうやって煽るのは怒ってボロを出さないかと期待してのことで、一か八かでもあるのだが。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:05:35.26 ID:ICVx4jfAO<>


こちらのキツい物言いは気にもせずに、御坂は目を左右に泳がせる。

弁明か演算か――?


「――不全になってしまった彼を是正するため、それと私の行いの償いをするため――」

語尾は聞こえなかった、どうにも抽象的である。


不全に“なってしまった”?
昔はそうじゃなかったのか?
是正とは、御坂に出来る?
それに償い――彼女に贖わなければいけないことがあるのか?

しかし、何よりも気になるのが

「“彼”って」

「私が愛している存在です」

即座な返答だった。
心を読めない相手の感情は目で読むのが通例的である、彼女の相貌は情熱的に輝いているようだ。

「どうして是正するのよぉ?」

「彼に頼まれたから、ううん私が、あの日の彼に会いたいから」

段々と熱が籠もっていく口調。
食蜂は質問を続ける。

「どうして彼は、御坂さんが正さないといけなくなってしまったのぉ?」

「……可哀想なことに、理不尽にも壊されたからよ」

「どうして、誰に?」

「――分からない、だから探してるの」

ああ、駄目だ。

質問を変えよう。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:07:56.60 ID:ICVx4jfAO<>


「何で御坂さんはぁ、彼を愛してるの?」

御坂は食蜂の私物のTシャツを畳みながら言った。

「それこそさっき先輩が言ったような、私の核になっているのよ“彼”は」

「彼の方もそうなの?」

「違うわ、私は代替えがきくでしょうから」

呆けて手を止める彼女に対し、気まずそうな顔を隠さない第3位は唇を震わせる。

「――こんな年にもなって、馬鹿みたいで、だから黒子にも言えなくって」

スカートを直すふりをして、スカートのホックにつけたトランシーバーのスイッチをオンにした。
テストは出来なかったが、ちゃんと聞こえているだろうか。

「きっと呆れてるわ」

「あは、もう嫌ってるんじゃなぁい? 貴女が居ないせいで彼女ってば色々苦労してるのよぉ?」

反応でより一層苦い顔をした。
しかし笑みを浮かべる食蜂としては、冷静さを装った狂気にはっとしていた。
精神的に幼い彼女のイメージでいくと、激昂するか無視するかの2択だと予想されていたからだ。


――嗚呼、イライラする。



今の自分の顔を鏡で見たくないな、と頭のどこか隅で思った。
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◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:12:46.63 ID:ICVx4jfAO<>


「……ねぇ、もうまどろっこしいからぁ抽象的に言うのは止めて?」

「……それは」

わざと叩きつけるように、叱りつけてみた。

「貴女さぁ、自分を慕ってくれる後輩のコト蔑ろにしすぎよぉ?」

「……蔑ろに、確かに忙しそうな黒子を支えてあげれなかった」

切なそうな、しかし芯のないスカスカな声。
……まどろっこしい、ここまでして何故分からないのか。
反省しないのか。


「そうじゃなくてぇ……あぁ、ほんっとこの恋愛脳ったら死んでも直るのかしらねぇ?」

「……はぁ、恋愛脳?」

駄目だ、あまりの苛立ちのせいで冷静に座っているのも難しい。
食蜂はスカートが翻るのも厭わずに、バッと立ち上がる。

「だからぁ、貴女の潔白を証明するためにあの子はあんなにやつれてんでしょぉ?

そうやって慕ってくれる子の気持ち裏切って、貴女は何やってくれてんのって言ってるのよぉ?」

「……」

戸惑いを隠しきれない、と言ったように揺れる茶の瞳は非常に弱々しい。


自分もそうだが、馬鹿な子供が人を殺せる能力を持つのはおかしいに決まっている。
普通の人間の復讐というのは、自分の全てを投げ出して、それでも影響力の少なさに絶望して中途で捕まるのが筋だと言うのに。
自分たちは、あまりにもローリスクで人を憎めてしまう、殺せてしまう。

1人の脳内の情報量を全て受信するだけでも食蜂は頭痛がするのに、そんな大容量をいとも容易く消してしまうから人殺しは嫌いだ。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:16:19.60 ID:ICVx4jfAO<>



食蜂は派閥などと下らないことに固執していた自分を、心底呆れた目で見た御坂の瞳が好きだった。



「ハイジャックしてロシア行っちゃうぐらいの青さなら、近寄んな馬鹿が移る☆って感じでまだ許せるけどぉ」


生意気にも、権力者を全否定するあの直向きさ。
だからそんな彼女だから、自分のように変にひねくれず素直に真っ直ぐに生きてくれると思ったのに。
失望――とは少し違うのか。

だとしたら、諦観?
結局、能力に人格を歪まされないといけないというのはこの都市に屈した気がする。

「貴女は由緒ある常盤台生なわけでしょ……自覚持てっての。

……クソガキの初恋ぐらいで都市巻き込まないでよ。狂ってる自分に酔わないで、そんなの美徳だと思うな。
今の世界にあんたは良い迷惑、可哀想で愛らしいヒロインじゃなくただのキチガイよぉ。
しかも科学調味料臭いコテコテの踏襲されきったサイコきどりぃ、気持ち悪ぅ!!

……自分と好きな奴以外の命を下に見んのも大概にしなさいねぇ……“心理掌握”からすると、激しく不愉快よぉ?」


――そしてこの主観にまみれた罵倒のお蔭で、食蜂は気付く。

(……そっかぁ、私は御坂さんを理想像としてこの都市と代理戦争をしていたんだろうなぁ)


だから、正しくこの感情を呼ぶのならば敗北感なのだろうと。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:20:10.27 ID:ICVx4jfAO<>


そうしてスッキリとした気持ちでみる御坂の顔はぽかん、と口を楕円に開け、徐々に――激していく?
頬は赤く、目は潤みだし、薄い体はぷるぷると震えていて。

まるで今にも――。


「……わ、わた、私はぁ……!」


そう、まさにその時だった。


『食蜂先輩!!』

トランシーバーの受信口から聞こえる叫び声は婚后のものだった。
何か分からず、慌ててイヤホンの音量を調節した。

『わたくしの声、聞こえますか!?』

「え、えぇ」

同じ部屋内にも顔は真っ赤にさせた女子が居て、彼女はどっちを聞くべきなのか本格的に分からなかった。

『落ち着いて聞いて下さいませ』

「私はねぇ!!!!」


両者の息を吸う音が重なった気がした。








『たった今、第7学区にて事件が発生いたしました――!!』


「ゲコ太を探して、あと罰で学校の掃除してたのよぉぉぉおおお!!!!」


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:21:50.14 ID:ICVx4jfAO<>


時はそれから数時間後、視点は道路を翔る一方通行に移る。


何がどうなっているのかが、1つもよく分からず、しかし今逢わなくてはいけない人間が居ることを彼は確信していた。


あの実験を止めた人間=ロシアの無能力者=インデックスの同居人
やっと等式が完成したのだから。
だから彼は逢わなくてはいけない。

今はインデックスのアパートへと、彼への住居へと急いでいる所だが。


(クソ……このまま飛ぶにはバッテリー残量が無さ過ぎる)

今日の買い物などで無駄に使ってしまい、このまま急ぐには不安がありすぎる。
仕方無く、道路に着地した瞬間に能力使用モードをオフにする。
小脇に杖を抱えておいて正解だったと咄嗟の自分の判断に感謝する。


ブーン、ブーン

ジーンズに入れておいた携帯が震えた。
妙な胸騒ぎに襲われ画面を開くと、どうやらメールであるらしい。

差出人のアドレスは知らない英数字の羅列であり、題名も無題となっていた。
携帯を操作し下へとスクロールを急ぐ。

間もなくあらわれた、たった1文書かれた本文には


「いつもの図書館のベンチにて――待つ」
簡素にそれだけだった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:24:09.18 ID:ICVx4jfAO<>


イタズラメールだとは思えなかった。

“いつも”の図書館のベンチ、昼を食べていたあの木製のベンチで間違いないだろう。
これが全て偶然だとしたら、それは神が送りつけた以外の何物でもないとさえ思った。



――God only knows――




彼らが――インデックスと一方通行が昼食をとることを知る人物はそうは居ないだろう。
でも、例えば毎日昼ご飯を作る人物――彼女の同居人だとしたら。


そして、これは偶然でしか無いのだが一方通行が着地した道路の次の角を曲がれば、例の図書館である。

「……」


携帯を元の位置に戻し、靴のつま先で地面を叩く。
胴体の発汗と気化熱による冷たさを味わいながら、一方通行は杖をついた。


――カッ、カッ、カッ


人気の少ない道を曲がって、すぐの所の図書館のベンチに座る人物は何を言うのだろう。



――カッ、カッ、、カッ――。

そして、ほんの一瞬立ち止まって。





――――カッ、

一方通行はその門を左に曲がった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:40:45.14 ID:ICVx4jfAO<>


真っ先に探してしまうのは、いつも利用するあのベンチである。
彼女といつも居た場所に、今日はその同居人とだなんて運命の気味悪さを感じずにはいられない。


そこには、妙に黒い人がそこに腰掛けているように思った。

10メートルほどの距離だ、近づくにつれ杖の音が分かるようになるのだろう。



――カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッカッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、。




何度目だったろうか、音に合わせ自身の学生服に目を落としていた男が頭を上げた。
緩慢な動作で、右を、正面を、左を見て――そして一方通行と視線が合う。


彼は、もうそこで状態の奇妙さを全身で感じていた。
感じてしまった。



おかしい、おかしい。
何と彼は空疎な顔をするのだろうか!

接客業の人間でもそんな顔では笑わない。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:44:27.09 ID:ICVx4jfAO<>


――――カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、



少年は予想よりも早い到着に驚いたような素振りを見せ、はにかんだようだ。

――ようだ、というのも、彼の右目は医療用眼帯で覆われており顔にもでかでかとした湿布が何枚も張られている。
頭にも包帯が巻き付けられていて、特徴的なツンツン髪はすっかり影を潜めていた。
少年は左手で座席を押し、立ち上がる。
フラリ、と傾いでもなお笑顔だ。

学生服の下の身体は、随分細くなったのだろう。
太ももの部分の布が相当余っていた。


まるで、一方通行が普通に近づく分だけ彼が遠ざかるような。


そして2人の距離が残り3メートルのところで、手を上げた。


――例の右手ではなく、左手で。



そうして上条当麻は、何気ない笑顔で2人がまるで長年の友であったかのように話しかけるのだ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/08/18(木) 03:45:21.74 ID:ICVx4jfAO<>











「久しぶり」













<> 終わり<>saga<>2011/08/18(木) 03:48:59.68 ID:ICVx4jfAO<> 連載前から考えていたシーンにようやく到達できました。
ここまで書けたのも応援してくださった皆さんのお陰です、ありがとうございます!
それでは第一部ラストを飾る邂逅をお楽しみに! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/08/18(木) 04:32:51.62 ID:BdLtxsXTo<> 乙 ミサカァ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/08/18(木) 04:54:34.78 ID:D0m8tIbz0<> >>402乙
ラストを飾る、
旦那と情夫の修羅場来ましたね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/18(木) 08:05:29.48 ID:+0eMWU1DO<> 第一部ということは第五部くらいまであるんですね!やったー!

あと美琴ェ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/18(木) 13:13:09.47 ID:XZLDoqk00<> ふぉおおおおおお!>>1乙
上条さんェ…

完結するまでにあとどれくらいかかるの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/18(木) 14:56:23.71 ID:N3hXY6tLo<> 美琴ェ・・・ <> 名無しNIPPER<>sage<>2011/08/18(木) 15:28:29.28 ID:3vuqjo2lo<> 上条さんから溢れ出る不気味オーラ
てか美琴じゃないなら誰やったの・・・、やべぇ何か恐ろしくなってきた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/08/18(木) 19:04:15.25 ID:enOPhCgk0<> 食蜂さんオタクかwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/18(木) 20:56:55.85 ID:fz1JkHujo<> 乙!

このみさきちとは気があいそうなのでもらっていきますね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/19(金) 00:49:27.22 ID:ZoiKJIi80<> >>410
そげぶ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/19(金) 12:11:15.74 ID:YwXczfCAO<> GJ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(沖縄県)<>sage<>2011/08/20(土) 07:00:33.30 ID:cLuYQWSao<> ゲコ太どんだけ愛してんだ、美琴ww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/20(土) 15:05:42.80 ID:CRQ/BrEIO<> 御坂のゲコ太愛にワロタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/30(火) 21:53:05.54 ID:h3FcKDKDO<> まだか
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東日本)<>sage<>2011/09/02(金) 02:37:48.48 ID:31sDtSs7o<> マダー

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <>
◆ObanGQEW7M<>sage<>2011/09/03(土) 16:03:58.73 ID:lJUbK4Iio<> >>1です
今週で定期考査が終わるのでそうしたら更新できるかと思います
お待たせしてごめんなさい、もう少しだけ待ってて下さい
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/09/03(土) 21:12:33.36 ID:Jljjs2kV0<> >>1久しぶり
>>417了解した。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/09/07(水) 16:29:42.92 ID:NcXFZ4ZF0<> ぼくたちは、なかよく>>1乙してるよ 
                        ∧_∧
                   ===,=(´・ω・ ) >>1乙
                   ||___|_゚し-J゚||_
                ∧_∧/ //.___|^∧_∧
           >>1乙 (´・ω・ ) /||    |口|(´・ω・ ) >>1乙
                ./(^(^//|| ||    |口|⊂ _)      
  >>1乙      ∧_∧ /./  || ||    |口| ||    ∧_∧    
   ∧_∧     (´・ω・ ).>>1乙..|| ||    |口| ||  (´・ω・ ) >>1乙  
  (´・ω・ )  /(^(^/./     || ||    |口| ||    ゚し-J゚
 "" ゚し-J゚:::'' |/  |/ '' " :: ":::::⌒  :: ⌒⌒⌒ :: ""  `
 :: ,, ::::: ,, " ̄ ̄  "、 :::: " ,, , :::   " :: " ::::



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/12(月) 23:30:12.22 ID:EsxWjDgD0<> さて、変態ストーカーも更新されたことだし
そろそろwktkモードに入ろうかな <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/09/18(日) 20:50:09.60 ID:qZjHVtBAO<> このところバタバタとしててすみません
今晩?投下します、お願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/18(日) 21:15:08.63 ID:R2bQss6To<> 舞ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/18(日) 22:27:01.06 ID:z1B6fO4X0<> 全裸待機してたらお腹下した ショボン
服着て待ってる <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:19:39.14 ID:c3TwNFcAO<>

常盤台学生寮、大ホールにて。
辺りを見回すと人、人、人ばかりである。
学生主催の卒業生送別立食会というのに常盤台以外の人間――スーツや着物など身なりをキチンとした人間がたくさん見受けられる。
華やかで、見るからに上流階級の集会であり時折上を見るとキラキラとシャンデリアが光る。


「だから落ち着いてってばぁ!あ、ちょ過呼吸じゃないのぉ!?」

「……壮絶よね……」


なのでさっきから断続的に聞こえてくるそれだけが妙に場違いなのだ。


「女王……!!」

「うっ、ぐすっ食蜂さ、ま……」

「お別れなんて嫌ですわ……外部進学……など……」

「ふく、ぅ、うわあああ」


御坂が目をやった先には背の高い女が見えないくらいの集団が一角にまとまっていた。
肩を震わせる制服姿の少女ら。
啜り泣く声、悲鳴は耳を澄まさなくとも聞こえてくる。
御坂は人気の少ない窓の近くの壁に寄り添い、やれやれと言わんばかりにグラスを回していた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:21:08.85 ID:c3TwNFcAO<>
(私が引っ越しを手伝わされたのって、他の子じゃろくに助けにならないから――だと思ってたけど)

ガラスの縁に映りこむ膨らんだ自分。
溜息を吐く、全く滑稽にも程があった。

(よりにもよって……犯人と思われてたとはね……)

もう1人のガラスの中の下膨れの自分は寝不足で強張る目を細めた。
赤絨毯を眺めてもこれといってやることも見当たらない。

彼女は騒動のあとを回想することにした。




無線のスイッチを切り、何やらブツブツと独り言をする食蜂に御坂は「何が起きてるの?」と子供のように尋ねるしか無かった。

何か自分を取り残して周りが結託しているのだけは肌で感じていたのだが、それにしても見当がつかない。
彼女が珍しく真剣な顔で自分を注意したことも、今こうやって焦っていることも全てが全てよく分からない。

「……何なのよぉ……」

「それはこっちのセリフなんだけど」

「御坂さん……、あなたにはまぁ、攪乱させられたわよねぇ……」

心底疲れた、と言いたげな瞳に対し御坂はまたもや疑問符をぶつけるしかできない。
「だから」

「……犯人だと思ってたのよ、あなたをねぇ」

「犯人? 最近――何か事件って」

「呆れたぁ、何だか知らないけどどれだけのめり込んでることかしらぁ?」

糾弾され、思わず目を逸らす。
だからといって話すのも本意では無く、嫌みよりかは当然の指摘に押し黙るしか出来ない。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:22:36.89 ID:c3TwNFcAO<>


瞬間、手袋に包まれた食蜂の右手が御坂の顔を絡めとった。

「なっ……」

コツンと額が触れ合う。

「……あぁ、なに無断で出国したことの責任とってぇ……これは学校かしらねぇ」

「か、勝手に記憶を覗くんじゃ!」

時すでに遅し。
流れるような体さばきで押し退けようとする手から逃げ、御坂の腰を自分側に寄せる。
骨の発育は良いと自覚する彼女よりも更に高身長な3年生は、目を閉じたままふんと笑った。

「……ふーん、こうやって私に干渉受けちゃうぐらい、熱心にお掃除してるわけねぇ。
罰則なんだぁ、ああ可哀想☆」

「微塵もそんなこと思ってないくせに……」

「ええ、だって自業自得でしょぉ?これで済んじゃうのはやっぱり貴女が第3位だからでしょうねぇ。
良かったわねぇ、向こう見ずな恋愛脳でもお勉強出来るから助かったわよぉ?」

「……そんなの」

「まぁ良いわぁ、私は貴女のこと嫌いなだけで説教したいとは思わないものぉ。
それでぇ? その他にも何か探してるんでしょう?」

「……知り合いのストラップ、限定品のがいつの間にか無くなってたので」

「頼まれたんだぁ」

こちらの状況を透かして見てくる視線に、彼女は何も言えない。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:23:47.15 ID:c3TwNFcAO<>


そしてそれから2つ3つと言葉を交わしてここに来たはずだった。


(言えなかっただけなんだけど……)

どうにもやりきれなくて近くの壁にもたれる。

毎日遅く帰るのは、ペナルティーとして放課後の学校を清掃しているから。
なまじ誰かに言って手伝ってしまったら示しがつかない、だから黙していた。

そして夜に抜け出すのは、彼のストラップがまたもや無くなったから。

(ロシアで拾って、日本で渡したのに1日で無くすって……どういう了見かしら)

まだ縁は切れていない、そう信じたいだけなのは分かっている。
思いが完全に片道なこともだ。
現に彼は謝るだけで探そうとは、それどころか無くしたことさえ気にならないようだった。
放課後の用事の他にそんな気まずさもあって御坂はお見舞いへとなかなか行くことが出来なかった。
最早、自己犠牲の域に達するほどに献身的で彼から離れない“彼女”のことも心に刺さる。
彼も“彼女”に全幅の信頼をおいているのか明らかに目の色が違うのだ。

退院したというメールも一斉送信で送られてきた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:24:43.51 ID:c3TwNFcAO<>

(……諦めるべきなのかな)


だからもう御坂の入り込む場所はお揃いのあのカエルにしか無い、そんな妄執に捕らわれるのだ。

しばらくそう突っ立っていると食蜂がこちらへと歩いてきた、気怠そうな色を顔いっぱいに乗せている。

「……私ってぇ、一応送られる立場よねぇ?」

「お疲れ様です、“女王”」

「……バカにしてるぅ?」

「いいえ?」

さっきのおかえしとばかりに怨念を込めると、目の前の少女は退屈そうに欠伸をした。

「立つ鳥跡を濁さずとか言うじゃない? とっとと引っ越し終わらせたいんだけどぉ」

「まあまあ、最後のイベントですし」

とは言え、この有り様では卒業を祝うモードなどなく“どうしたら引き留められるか”の醜い心理戦であるのも否めない。
輪の中心どころかコミュニティーそのものである人間は大変だと思った。

「まぁとりあえずぅ、貴女はあとで白井さんとちゃんと話しなさいねぇ

揃って醜い顔晒されるこっちの気にもなって欲しいわ」

「……すみませんでした」

確かに白井も自分も真っ黒なクマが堂々と鎮座していて、見苦しいなあと苦笑するしかできない。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:26:07.90 ID:c3TwNFcAO<>

「それにしても……私だと思った決定的な証拠ってあるんですか?」


「……不在時刻の合致に、とある子が言うことには体格も似てるらしいわねぇ?」

「でもそれだけじゃ」

「いっぺんに伸しちゃうような強さとか、1回もカメラに写らないところとか……まあそれに貴女も似たようなことしてたじゃなぁい?」

困惑、そして急に襲い来る底冷えのするような不信感。
食蜂は御坂にしか聞こえないようその端正な顔を寄せた。


「それとぉ、電流、見えたらしいの」

「電流……」

「白井さんよりも強いらしいし、ね?」

詳しいことは彼女でも聞きなさいとだけ言って食蜂はどこかへと歩き出す。

ぐるぐると思考は渦を巻く。

紫電?
電気使い?
とは言え、御坂だって不可能だ。
遠隔で監視カメラの操作をするなんて、守護神のプログラムに引っかかるに決まっている。
それでは?
じゃあ、透明になれる能力だったら。
でも白井よりも強いなんてことあり得るのか?



では、自分より強い電気使いがこの街に?居るわけがない。


居るわけが、ない。



彼女はもう一度聞いた。

「何が起きてるの」

虚空は返事などしなかった。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:29:33.56 ID:c3TwNFcAO<>



「あ、お前も座って良いのに。スペースならほらたくさん」

「良い、立ってる」

病的な雰囲気の彼は、例の図書館のベンチに腰を降ろした。
太ももと木が接触して、その形がスラックス越しに分かるのだが、やはり健全な高校生と名乗ってはいけないほど細過ぎる。

「足が悪い奴にそんなことさせるのもなあ、まあ、座りたかったらいつでも」

そうして上条はニコニコと、何が面白いのか不思議なくらいに笑う。
顔は大部分が何かに覆われてしまっているのに確かに笑みなのだと分かるのは何故だろうか。

「……何がそンなにおかしいンだよ」

「うーん、嬉しいんだよ。やっと言えるなって」

ガーゼのような眼帯で隠されている方の片目も、きっと細められているのだと確信できた。

「つっても、愛の告白とかじゃねえよ?」

「……バカかオマエ」

「だってお前、すげーブスッとしてたから。
ただの依頼だよ、……あいつに関する、な」

「依頼?」

どうしようもなく引っかかって、反芻できない。
あいつに関する依頼、のあいつとは。

やはり <> 専ブラふっかつ
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:35:16.89 ID:KLuJXVWCo<> 「そう、仲良くしてくれてるみたいだし、学校も一緒なんだよな」

「バラしたのか」

「ううん、打ち止めに聞いたんだ」

「打ち止め? 何でアイツの名前が」

「あー、何だっけ、何ちゃらネットワーク」

ミサカネットワークと指摘する、左手で頬をかいた。

「そうそう、その影響で俺が入院してたこと知ってたみたいで。
ちょくちょく見舞いに来てくれたんだ、すげー高そうな菓子ばっか持って」

「芳川のだろォな」

「へー、そりゃどうも。
そんで、俺がたまたまインデックスの資料読んでたときに打ち止めが来て『あの人と一緒だ』って。
あの人って……まぁ、思い返すにお前のことなんだろうなと」

繋がりは隠そうと隠そうと努力していたのに、伏兵とは思わぬところに居るものだ。
膝をつきたい気分。
というか、打ち止めも打ち止めだ。
見舞いに行くのなら一言ぐらい伝えても良かっただろうに。

「ちょっと待て、シスターと俺との関連性を知るルートは」

「うん? ああ――風斬だよ」

言われてみればそんなこともあったのだと思い返し、彼は深く溜め息をつく。
ダメダメだった。
最低どころか最悪だ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:37:55.34 ID:KLuJXVWCo<>
「そんな感じで依頼あるんだけどさ」

「依頼つっても、……俺が何をしたのか忘れちまったンじゃねェよなァ?」

上条は相変わらず笑顔で首を振った。

「覚えてる――ああ、俺だって覚えてるよ」

「だったら尚更だ、いつ殺るか分かンねェンじゃねェの」

誰と会話し感化されたつもりでいても、常套手段は全く変わらない。
自分が守れないかもしれないのが怖いから、後ろめたいことを武器として使ってそして逃げる。逃げる。

早く直すべきだとあの少女なら言うだろうか。

「それでも、お前は俺よりも適任だよ。
そもそもあの乱入は正しいことだけど“俺”の後先考えない性格のせいであって……、
どちらにせよ糾弾する権利は俺には無いんだ。

それに“俺”はロシアのお前も見て、なんつーか……まあ、立ち入るべきことはねぇと思ったわけだ。



と言うか、みんな俺よりかは良いんだよ、
――こっちが2回も失敗するただの適性ゼロなだけもあるけどさ」


一息つき、「お前は最高の人材だよ」と無邪気に言った。
瞬間、風が吹き彼の頭に巻いた包帯が揺れる。

「おっと」

縛りが弱いのなら、直せば良いのに彼はやせ細った片腕でただ抑えるだけだ。


「依頼ってのは、アレだ。 お前が死なない程度にアイツと仲良くして欲しいんだ」

そうやって片手を頭に当てたまま一方通行へと微笑む。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:39:15.75 ID:KLuJXVWCo<> 「それくらい、オマエでも」

「ううん、俺じゃ全然ダメなんだよ、一番ダメだ」

「ハァ、死なないなンざ、そもそもアイツは人畜無害だろ」

何をそんなに自嘲することがあるものか、
抑えることを諦めたのか、上条は左手で包帯を丸めてギュッと握った。

「まぁ、アイツはその通りだけどさ」

「?」

「世間はそうもいかないっつーか、あ、俺んとこ見て、分かんなかった?

だとしたら僥倖なんだけど、」

かたん。

即座に音がした方向を見る。

「あ、やべ」

視線の先のベンチ、上条のすぐ右側のスペースに缶からこぼれた黒々とした液体が広がっていた。
上条はいそいそとポケットティッシュを取り出し、一枚と言わずにごそりと取った。
しかしティッシュも地面に落ちる。
そして強い強い風が吹く。

一方通行もそれに近い側の人間として至極当然に拾おうとして


気付いた。









やっと気付いた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:41:07.77 ID:KLuJXVWCo<> 「ああ、何やってんだか……」

「――オマエ、」

「ん?」

立ち上がってコーヒーを拭く。
その背に問い掛ける。問いつめる。問い質す。問い合わせる。

一度も使ってないその手。
大半の人間の利き手であるそれ。


「右腕、――どォした」



不可解なあの右腕は、
自分を倒したその右腕は、
1万もの少女を救った右腕は、


きっとあのシスターも救ったのだろうその右腕は


「ああ、なんつーか」

風にふかれ、まるでのれんか何かのように右に左にと吹かれ、動き。


「故障、してるんだ」


そこに彼の意識など全く介在していない。



胴体と繋がった、肉塊があるだけだ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:44:34.06 ID:KLuJXVWCo<> 「ああ、“俺”ロシアで死にかけてさ。
そん時に右腕切れたのか知らないが、目ぇ覚ましてたらただぶらーんと繋がってたんだ」

神経は繋がってないからただの重しでしか無いと呟く。
控え目に、それでも確かに微笑う顔を見ると、それはもうデフォルトなのだろうか。

「切れ、そしたらこの街の技術でいくらでも」

「無理なんだ。
おかしな話だろうけど、この手にメスを入れて貫通させても瞬く間に傷は無くなる。
板をいれて離そうとすると板が弾かれる」

「……」

そうして残された左手で慈しむように学生服の下の右腕を撫でる。


「そういうワケ分かんないのは殆どが魔術て言うんだ、コレは時間停止とか」

「……」

「何だ、驚かないのか」

ワケが分からない界となると、あの羊皮紙もそうだろうか。
銀色と関係していた、異界のベクトル―――


「入院してたのも、その手の処遇か」

「あー……それは、まあもうちょっとあるけど、そんな感じだな」

まだ入院してるべきだと断言できる様相だ。
その顔の傷や湿布は、やはり手に関係するのだろうか。

聞いてみると無抵抗なところをスキルアウトにやられたそうだ。
悪名高かったから、とまたも薄く笑った。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:49:06.85 ID:KLuJXVWCo<>
「……で、戻ンねェの?」

「術者しばけば、多分」

「……依頼つゥなら、普通そこ頼むモンじゃねェの」

「俺としては、戻んないのならそれはそれで罰というか、仕方ないんだろうって。
それならインデックスが楽しい学校生活過ごすほうがよっぽど」

罰なんてうけなくてはいけないのか、善良そのものの顔をして殴りかかってきた男が。

「善良なんかじゃねーよ、今の上条さんには偽善しか無いんだから」

左手で重力に従って垂れ下がるしかない右手を固定し、一方通行に向けてみせた。


「幻想殺しはもう死んだ」

「……」

「だから、アイツのことはお前に頼みたい――ってやっと言えた」

上条の左腕は右手首を固定し、そのまま一方通行に向ける。
純度せいぜい20%ほどの、苦い思いを飲み込むための笑み。


ああ、それは時折インデックスがするものと似ているのだ。
だから切り裂かれたような、痛みがするのだろうか。
大事なものを奪われたような。



一方通行は、右手を握った。
包帯の感触がする冷たい手だった。 <> 地震;;
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 00:50:06.99 ID:KLuJXVWCo<> カツン、カツン。
虚しく杖が地面を叩く。

「………」

上条とはあそこで別れた、何というかあまり正視して良いとは思えなかったのだ。

喪失感、自分でもこれほどのものなのだからあの少女、銀色の少女はどうなのだろうか。



痛かった、誰よりも実直だったはずの彼の堪えるような笑みが。
そして、何故――

「………」

携帯を取り出し、画面を操作する。
Iの行、見慣れた名前。


カチッ――、


そして耳を画面に押し当てる。


――ツッ、ツッ、ツッ

止まる一方通行の目の前を勇ましく過ぎ去っていく灰色パーカーにスラックスの人間。
妙な既視感を催しながらも、しかし一方通行は耳を押し当て目を閉じる。


世界で一番似た少女に、遠く離れた少女に。
例えるのなら点対象、180°違ってしかし重なり合う、もう一人の自分に。



――プルルルルル、プルルルルル

何と言おう、何から言おう。

――プルルルルル、プルルルルル










――プルルルルル、プルルルルル <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 01:12:51.06 ID:KLuJXVWCo<>















                                      ぷるるるるるるるる、ぷるるるるるるるるるるるるるるるるるる


















<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 01:20:56.42 ID:KLuJXVWCo<>



こねる、こねる。
私の手を触れた肉がこね混ざる。

今日はあの子も彼も私も好きな「ハンバーグ」なのだから、頑張らなくてはいけません。



こねる、こねる、こねる、こねる。
赤が、ぷにゅりと、にゅるりと、にゅっ、に゛ゅっ。
ぎゅぎゅー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぱぁん、ぱぁん。



粘度みたいだ、まぁ弄ったことはないけれど。


良いだろうか、ええ、これなら大丈夫。
居間を見るとあの子はすぅすぅ「眠っていた」。
可愛らしい寝顔に満足しつつ、私は手を洗う。

ざぁーざぁー、落ちていく赤、ああ、食べられるのに。
流れていく可食部を恨めしく見送って、そして着替えた。
この服は着にくい、彼に貰ったものだから大事にはしているけれど。
そうそう、真ん中が……うぃしょっと。

ようやく止め具が「繋がった」。
そして私はフードを被りました、うん、完璧。

丁度良い時間なのだ、陽はくれ彼は出かけあの子は寝ている。
適当にサランラップをかけた。
そして靴をひっかけ夕方の街へ出る。


行ってきます。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 01:30:18.39 ID:KLuJXVWCo<> 道を歩く、歩く。
勿論ステルス機能オン、伊達に人外ではない。

「春」になればもっと日暮れが遅くなるのだろうか、少し困る。
お目当てのものが探しにくくなってしまうのだから。
それは困る、実に困る。

目的はありません、私が良いなと思ったらそこに入るのだ。
道中、真白い彼を見たが彼は放心そのものだったからどうせこちらには気づくまい。
電話を持っていたので誰かにかけているのかもしれない。
ああ、彼が“お願い”しにいったのだっけ。
それはなぁ……。




そうこうしている間におあつらえ向きな路地裏を発見した。
いかにも『悪い奴が居るぜがはははh』とでも言いそうな人が居そうな。
なんてとっても曖昧だけれど。

私の勘は外れ知らずだし、さっそく入ってみることにしよう。

さくさく、さくさく


2歩で分かった。
ここは臭い、汚い、淀んでいる!! <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 01:33:44.31 ID:KLuJXVWCo<> 最高だ!!なんて素晴らしいんだろう!!
「嬉しい」なぁ、実に素晴らしいってこういうことだ!
今の私すっごく人間っぽい!!


すると、突然ボウガンの矢が飛んできた。
びっくりしながらも冷静に回避行動、だって時代遅れの武器なんかで怪我したくないのですから。

ひゅん、ひゅん、ひゅん。

前から飛んでくる矢には、すばやい前進で対処。
矢は私の後ろばかりを飛んでいく。

直に集団の集まる中広場へ着いた。
とはいえ20人ぐらい、そんなの敵じゃない。
とりあえずもうちょっと近寄りましょう。

一人のリーダーのような男は私に言った。


『お前の目的は!!』

目的ですか、うーん。

って悩むところじゃない。


そんなの決まってるじゃないですか。


そうして私は手を伸ばし――― <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/19(月) 01:47:47.79 ID:KLuJXVWCo<>

気分はハンバーグを作るのと変わりません、ちょっと赤が多いなーってぐらい。

こねる、こねる、こねる、こねる。

赤が、ぷにゅりと、にゅるりと、にゅっ、に゛ゅっ。

ぎゅぎゅー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぱぁん、ぱぁん。


そうすると動かなくなる。
だけど続けよう、私には目的があるのだから。



たたく、こがす、やく、うちつける、ひねる、ちぎる、まぜる。

『ぐえ』

こねる、こねる、こねる、こねる。

『あ゛』

ぷにゅりと、にゅるりと、にゅっ、に゛ゅっ。

『い、いやだ』

ぎゅぎゅー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぱぁん、ぱぁん。

『あ、あ』

じゅー、じゅー、じゅー、じゅー、

『ひぃ』



たたく、こがす、赤やく、うちつける、ひねる、ちぎる、まぜる。

『わるかった』

こねる、こねる、こねる、こねる。

ぷにゅりと、にゅるりと、にゅっ、に゛ゅっ。

『かふ』

ぎゅぎゅー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぱぁん、ぱぁん。

じゅー、じゅー、じゅー、じゅー、

たたく、こがす、やく、うちつける、ひねる、ちぎる、まぜる。

『いたいよお』

こねる、こねる、こねる、こねる。

赤が、ぷにゅりと、にゅるりと、にゅっ、に゛ゅっ。

ぎゅぎゅー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぱぁん、ぱぁん。

『…・・・ふ、』

じゅー、じゅー、じゅー、じゅー、赤

たたく、こがす、やく、うちつける、ひねる、ちぎる、まぜる。

こねる、こねる、こねる、赤こねる。

赤が、ぷにゅりと、にゅるりと、にゅっ、に赤゛ゅっ。

『た、ずげ』

ぎゅぎゅー、赤ぎゅっ、ぎゅ赤っ、ぱぁん、ぱぁん。

赤じゅー赤、じゅー、じゅ赤ー、じ赤ゅー、赤

<>
◆ObanGQEW7M<>saga !red_res<>2011/09/19(月) 02:01:29.41 ID:KLuJXVWCo<> 『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああ
ああああああああ
ああああ
ああ




a』





赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤

赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤

赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤


打つ撃つ討つ欝
駆逐撃破倒さなければ未来はない
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


叩く、舞う、そこらじゅうにさっき見たどこかで見たのに類似してるね!!!!!!!!!!!!!!!っそうだよ似てるんだそうなんだ!!!!!!!!!!!!!!
彼もそうやってやられたのかな!!!!骨を折るだけ折ったね!!!!!!!!!!!!!!!!肉は出てたそうだそうだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
目に入れられたのは硫酸だって!!!塩酸などとは異なり不揮発性であるため、濃度の低い硫酸であっても水分が蒸発すると濃縮されるので、衣服に付いた場合などは放置すると穴が開く危険性があり、また、皮膚に付いたものを放置すると、火傷をする恐れがある。

誰がやったんだろう!!!??!!?!?!?!?!?知りたいね!!?!?!?!????そうだね!!!!聞かせてあげたいね!!!!!!!!!!!!!
あの日の彼の最後のセリフ!!!!!!!!!!

ごしゃ、べき、にゅる、じゅるるる

報い報い憎い憎い!!!!!!


ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああ
あああああああああ
ああああああ
あああああ
ああ














嗚呼
<>
◆ObanGQEW7M<>saga !red_res<>2011/09/19(月) 02:15:06.33 ID:KLuJXVWCo<> …………ただいま。



あたりを見回すと、赤に時折ピンクや白。
そうして私はこの惨状から抜け出す。
なんて、作り出したのは私なんだけれど。

地面に転がったナイフを手に取り自分の腹に刺す。
どくどく、血は流れていないのになにか流出した気がする。
そうして、わたしのホームグラウンドに着いた。変幻する世界、虚数学区。
すぐまた同じようにナイフを指して、逆戻り。

私は何をやったのだろうかというと、証拠隠蔽にすぎない。
私はこちらで力を使いすぎたり失いすぎるとあちらへ飛ばされ、逆もまたしかり。
あの魔術師と戦ったときは分からなかったけど、今なら十全に理解している。
そして1回だけあちら側【虚数学区】に逃げ込んでしまえば、衣服も何もかも元通り。
血も肉も、何も無かったかのように歩く。

上条くんのくれた灰色のパーカーと、スラックスを着て。


これはあの日の服。
彼がスキルアウトに襲われた日の、服、そのまま。


よろよろ。


どうして彼だけが右手を失い、毎日死んでいかなければならないのかは分からない。
私のこの行動が合ってるとも思わない。
彼はあの日のことなんかきっと覚えてはいないし、インデックスもあの日の彼の言葉は聞いていない。
あの状態じゃ日記にも。
だから私だけが覚えている、全身血まみれの彼が泣きながら言ったあの言葉を。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga <>2011/09/19(月) 02:17:44.94 ID:KLuJXVWCo<>














                                                               死

                                                               に

                                                               た

                                                               い <>
◆ObanGQEW7M<>saga <>2011/09/19(月) 02:32:57.36 ID:KLuJXVWCo<>

なんで私は、私を救ってくれた彼にあんなことを言わせてしまったんだろう。
無理した笑顔のインデックスしか見ることが出来ないんだろう、
彼女が気に病むことなんて一分もありはしない。

―――数少ない友人たちは、幸せごっこがとても得意だ。


どうして、こうも私達だけは上手くいかないんだろう。
「繋がった」んじゃなかったんだろうか。綺麗な円を描いて。
どうして。


……やっと頭の中の真っ赤も消えた。
あの日から、ふとした拍子にぽんと箍が外れる。
それをやったスキルアウトをどうするべきかは分からない。
だけど、だけど絶対に「見つけてみせる」。
これは私のルール、目的。
どんなに糾弾されたとしても良い、もう駄目なのだから。


携帯を出し、彼に電話をかける。
ただ声が聞きたかったのだ、今日の彼の声が。
用件はそうだ、何か欲しいものある?こんなところでどうかな。


そうして私は、一介のヒューズでしかない私は歩く。
今日もまた1つ、誰かを傷つけて。






ぷるるるるるるるる、ぷるるるるるるるるるるるるるるるるるる






<> 終わり<>saga <>2011/09/19(月) 02:39:14.76 ID:KLuJXVWCo<> これで第一部は終わり第二部へ、です
薄暗いのはしばらくないような、ひた走れリア充ども!!そんな感じ
それと前スレで上条さんのお相手について話題になりましたが、まぁ生暖かく見てくれたら幸いです

以下レス返し

>>410
上条さんは絶対に許しませんけど、みさきちだって渡したくないんだからねっ><

>>423
つ百草丸 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/09/19(月) 02:43:57.44 ID:tiC7Yb8U0<> 風斬さん完全に病んでるな

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/19(月) 02:47:07.92 ID:9YPMar0D0<> ヒューズさんの切れてはイケないヒューズが弾け跳んでしまっているな。
コレと誤認されたうえにハブられてるビリビリさんが果てしなく憐れだ……
で、上条さんの記憶力はもっと憐れなことになっている、と。

この爛れきってドブ色の人間関係がこれから加速するのかと思うと
興奮せずにいられない! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/09/19(月) 02:50:50.86 ID:9JzV9kCmo<> 記憶力というよりは意識の混濁ぽい気がしないでもない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2011/09/19(月) 02:58:00.78 ID:IWLyy7BBo<> 風斬もう押してはいけないスイッチ全部入っちゃってるなぁ・・・
スキルアウト皆殺しにするまで止まりそうにない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<><>2011/09/19(月) 03:02:05.27 ID:2VmV9s6AO<> それにしても、あの2人って似てるな
騙された <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 03:10:15.30 ID:/agKYa4jo<> 乙
病んだ風斬さんは初めて見たな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 03:13:40.63 ID:xSaQjM4f0<> 乙
ドロドロの鬱鬱も大好きです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/09/19(月) 04:40:54.83 ID:l3xD5wfc0<> >>447乙

確かに、このSSでは風斬歪んでたな。

第2部投下開始待っている。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/09/19(月) 05:02:38.01 ID:UQRSG75AO<> あぁ、こりゃ風斬が病んでもしょうがないわ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 16:55:57.42 ID:Sq/YGCpV0<> おお風斬か
すげえ乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/21(水) 00:54:24.32 ID:sIGTRUnN0<> 風斬の持つ病み属性をここまで使いこなせる>>1すげえ。

スキルアウト、AIM拡散力場……
浜面滝壺ペアが、風斬に何らかの救いをもたらしてくれないだろうか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東日本)<>sage<>2011/09/21(水) 01:42:18.49 ID:p3zedWpyo<> 乙
上条さんに何があったんだ・・・ <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/09/25(日) 20:36:54.02 ID:bzdvJj+AO<> 某てんちょースレがあまりに可愛いのと俺のこころん復活でソウルジェムの濁りもどこかに消えたというか生存戦略できましたというか

とりあえず今晩投下します! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)<>sage<>2011/09/25(日) 20:38:50.48 ID:QWINzAhAO<> よっしゃキタアアアアアア!!!!!!

オレもてんちょースレ好きだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/25(日) 21:12:23.68 ID:3QVGZ/yRo<> きたー!ファビュラスマックスだぜー!!
てんちょースレいいよね
なにはともあれ舞ってる <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:36:23.54 ID:bzdvJj+AO<>

4月某日。



「ああ、番外個体はもう少し右、愛穂は左、一方通行はフレームに収まる努力しなさい」

「こら、もっとこっち来るじゃん」

「ったく……叩き起こされたと思ったらよォ……」

「ヨシカワー!ミサカの髪おかしくない?」

「ぎゃは、何コレ?」

「ええ、大丈夫よ打ち止め。
番外個体、とりあえず目元の力抜いて。


――はい、じゃあタイマー押すわ」


いつもの冴えない普段着は脱ぎ、コサージュが付属されたスーツを着た芳川は三脚の上のカメラのスイッチを押した。

カチリ

赤く点滅する銀色のデジタルカメラ、まだ肌に馴染まず固いカッターシャツ。

「桔梗はこっちじゃんか」

今日、そしてこれからを思い一方通行はぼんやりとただ耽る。

入学式は1年だけの参加で、だからまだ寝ている算段だったのにみんなで記念撮影をするからと叩き起こされた。
打ち止めは昨日が学期初めで今日から授業だという、それに合わせて早く撮る必要がある。
芳川のスーツのわけは“転入”という形の番外個体の付き添いである、姓も確か芳川のものを借りているのだったか。

どっちにしても、一方通行の都合などお構いなしである。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:38:52.01 ID:bzdvJj+AO<>

着慣れないブレザーからは新品の独特の匂いがする。


早く終わってくれないかとばかりにレンズを睨みつける。
それを知ったのか斜め後ろから手が伸びる、細い肩を通過し頬がなぞられた。

「キミもこんな時ぐらいは笑うことね」

「うっせェ」

そしてカメラのランプが点滅を止める。





同時刻、長点上機高校エントランスにて。

爽やかな朝と言うには、散ってしまった桜が道路にこびりついて見苦しい。
せめて掃除ぐらいはするべきではないか。
同じ制服を着た生徒が一角に集まり騒がしくしている横を素通りして、食蜂操祈は下足入れへと向かう。
きっと普通科のクラス分けだろう、特進の彼女にはあまり関係ないことだった。


「あっ、みさきーっ!!」

可愛らしいソプラノがする、ローファーを持って振り返った。

「あらぁお久しぶりぃ、無事に合格できたのねぇ」

緊張して昨日は全く眠れなかったのだが、いつもの笑顔は作れただろうか。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:44:04.71 ID:bzdvJj+AO<>

「む、説明会で会ったばっかしで、5日前には携帯で呼び出された挙げ句に荷解きのお手伝いしたような気がするんだよ?」

「だってぇ、私の城に無骨な男の人は入れたくないしぃ、貴女は私に借りがあったしぃ?」

「はいはい女王。 その節はありがとうなんだよ」

同じく紺色の、黒いタイツを履いたインデックスは小ばかにしたようだった。


ウィーン、ガシャ

ウィーン、ガシャ

如何にも、な音を立てこの学校の生徒作成の掃除用ロボットが向かってくる。

『キョウモコンジョー!!!!』

ロボの無機質な合成音と理に適わない暑苦しい文言。
彼女たちの膝くらいの高さで、もしカメラが付いていたら盗撮は容易に違いない。

「あ、入試のときも居たロボかも!! 元気だったー?」

勿論それは返事をしない。

この製作者は間違いなくあの男だろうと食蜂はなんとも言えない気持ちになる。
こんな陰謀でドロドロとしていそうな中でも彼はああなのか。

「……ふん」

学年も違うし今日は会うことも無いだろうと思いつつ辺りを見回してしまう。

まあ、当然のごとく居なかった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:51:15.70 ID:bzdvJj+AO<>

「どうしたの?」

「インデックス、身長伸びたわねぇ?」

「あ、やっぱりそうだよね! 最近私は絶賛成長期なんだよー!」

「そう、胸も育つと良いわねぇ」

生地のあまりを指摘すると必死な顔で反論してきた。

怒り顔。

非常に人間くさくて、芸術品のような彼女のビジュアルからは到底想像しがたい。
まあ、言えば日本語が達者の時点で妙なちぐはぐさを味わっているのだが。

(でも私の数少ない能力が効かない人なんだし、油断はしちゃだめなんだからぁ)

今までに彼女の能力が効かなかった数人の中に無能力者が居ること、それが心理掌握にしては気に入らない。
把握できないこと、それは彼女の一番危惧することだ。
人の感情を思いを祈りを握る、過去を習得し現在を改変することで未来を操る。

それが出来ないのは恐ろしいことだ。
子供に核発射スイッチを玩具として遊ばせる、彼女にとっては同意なのだ。


(私の能力が通じないのは三位とこの子と……それから)

『コンジョーーー!!!!』

よく聞けばこのロボット、彼の声と合成してあるではないか。

食蜂の脳内は一気にそちらへ戻される。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:53:55.25 ID:bzdvJj+AO<>

1つだけ懸念が生まれた。

彼に自分のことを追いかけてきた、とは思われないだろうか。

「……た、確かに人生観は変えられたかもしれないけどぉ、私は恋愛脳ってワケじゃないしぃ。
そもそも私みたいに理知的な人にとってああいう感情論振りかざすヤツとか脳筋とか苦手だしぃ」

「みさきー、もう行こうよー」

「ああ、分かったからぁ!!」


彼女の銀色のツインテールが歩く度に揺れる。
銀髪ツインテールなんて次元を1つ落としても見つからないなと思いつつ、食蜂は廊下を歩く。





「あなたのお家から誰か来るの?」

「お父様もお母様も総出でいらっしゃるんじゃないかしらぁ? そういう貴女は? 同室の当麻さん?」

「ううん、とうまはもう学校だから。

何ていうかな―――私としても不本意だけど上司が来る……かも」

「上司?」

両親でも親戚でも無く上司とはどういうことか気になった。
のだが、その話をするインデックスの顔は妙にどよんとしている。
聞くのは止めることにした、深入りは彼女の理想とする人間関係では得策でも無ければ楽でもない。

面倒なことは大嫌いだ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:55:29.24 ID:bzdvJj+AO<>

教室で全員集まったところで教師から入学を祝われ、名簿ごとに整列させられた。

同じ部屋に男性ばかりというのは、常盤台卒の食蜂にとっては慣れない経験でずっとインデックスのそばに居たかったのだがそうもいかない。
アルファベットの名簿順、自分はSでインデックスはP。
呆気なく離れ離れになってしまった。
言っても数メートルなのだが人見知りな者にとっては何よりも遠い数メートル。

(SYだからってぇ……何よぉ、変な髪型の男ばっかりだしぃ……。
術かけて思い通りに……いやいやダメってあの脳筋と約束しちゃったしぃ)


手に持った新入生代表挨拶用の紙がだんだんと萎びていくのがよく分かった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/25(日) 23:56:25.75 ID:bzdvJj+AO<>

ホールへ入場し、しばらく紙に目を通しているといつの間にか式は始まっていた。
常盤台と対して変わらず、小綺麗の木目調の会場で1000人以上が収容出来るそうだ。

渡されたプログラムでは確か、新入生挨拶は校長挨拶、保護者代表挨拶、生徒会長挨拶の後のはず。

心理掌握が出来ない久しぶりの状況。
大勢の人間を前にする重圧【プレッシャー】

噛まないだろうか、情緒不安定になって泣き出さないか、貧血で倒れないか。
ありとあらゆることが心配で仕方ない。
知らない者ばかりのところでミス出来ようものか。

自身に能力を使って安定させようか、しかしそれは一度崩れてしまったら立て直しが出来ない。
何故1位を取ってしまったのか、レベル5な時点で入学は確定的だというのに。

着物を着た中年女性が会場から降り、次は生徒会長挨拶だ。

キリキリと胃が痛む。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/26(月) 00:01:31.04 ID:GCmQeLxAO<>
(あああ、私ってバカぁ!?

もともととんでもないコミュ障だからこんな能力だってのにに使わない話があるかしら……!!)

自分だけの現実に望んだのは他者の悪感情を避けること。
元々はそう、ただ盾を欲しがっただけだった。

挨拶文を落としてしまった、いよいよ手と膝の震えが笑えない。


(もう……!!)

自分にだけならドーピングでも無いだろう、下を向き紙を取る体でスカートのポケットに隠したリモコンへと手を伸ばす。
いつまでも成長出来ないだけだ。そうだ、今だけだから。

誰だって、とんでもないお人好しでない限り怒らない。


手が鉄板に触れた。
スイッチを押す指に力を込める。


キーン!!






「――諸君、ご入学おめでとう!!」


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/26(月) 00:05:35.73 ID:GCmQeLxAO<>

大音量のテノールとゾクッとさせるハウリング音。

「いやあ、どいつもこいつも根性ある奴ばっかだな!! おぉ、誇らしいぞ!」


違うのか、体を震わせるのはハウリング音じゃない。

ああ、そうじゃない。
慌てて上体を起こした。

「そんな模範生達にサボりがちな俺としては特に言えるようなことはねぇが……ああ、校歌は訳わかんねえことに英語だから頑張って覚えて欲しい!

俺も頑張って一番までは歌えるようになったぞ!」

スポットライトを当てられ、それでも堂々と壇上に立つのは。

「あとはアレだ!
掃除用ロボットに気をつけろ、ごくまれに爆発するぞ!

敷地も広いからな、迷子になったら生徒会呼べ!!……つっても役員は俺だけだがな!!

そうだ!!生徒会役員は随時募集だ! 興味が無くても来い!」


隣も前も後ろも騒然としている。
無理もない、そう自分だってワケが分からなかった。

今だって十全か、と言われれば少し怪しい。
彼は、どうしたってどうやったって理解できない。

するべき存在では無い。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/26(月) 00:09:21.92 ID:GCmQeLxAO<>

唯一斜め前のインデックスが清聴するだけで、あとはこの破天荒すぎる会長に驚きを隠せないようだ。

「ん、どうも時間押してるみたいだな。
よし!以上で終わりにしよう!
入学おめでとう!!」

(……会長ねぇ……、ああ、どうしようもないほどに適役じゃない。

おせっかいで正義感は湯水のように溢れ出て……ああ、もう……)


「次は――おお、書類見る限りちゃんとした奴が一所懸命頑張るだろう挨拶だから、真面目に聞くように」

(ちゃんとなんかしてないわよぉ、何でハードル上げるのかしら、もう……)

有象無象を気にしない壇上の彼に目眩のようなものを感じ食蜂は静かに深呼吸をした。
これは、もしかしたら憧れと言うのかもしれない。
あまりにも破綻して馬鹿みたいだけれど。


「以上、生徒会長削板軍覇だ!!」


そして彼女は前を見据える。

もう手も足も震えていなかった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/26(月) 00:11:55.43 ID:GCmQeLxAO<>


案外午前中というのは早く過ぎてしまうもので、一方通行も二度寝する間もなく出発することになった。
昼間なこともありがら空きのモノレールに乗り第18学区へと移動する。

白髪に赤目の男がブレザーを着て欠伸をしては目を閉じる、それが珍しいのか好奇に満ちた視線が向けられる。
それに全く気付かずに一方通行は駅から高校の道をのんびり杖をついて歩いていた。

桜が咲いている。
今はもう式は終わって、それで彼女は何をしているのだろう。

自分は何をするのだろう。

学校生活など一度も体験したことが無いのだが、上手くなりきれるだろうか。
ちゃんと卒業する、それだけで良いが平穏に行くだろうか。

上条や風斬との約束を守って、


「……はァ」

「そこの白髪! 聞きたしことがありけりー!!!」

そうだ教室は何階だろうか。

「エレベーターあンのかね、無けりゃァ……」

「貴様ーこの私を無視とは命知らずなりよー!!!」

「……だりィ、高校まで鉄道通せ」

「だーかーらー!!!」


聞かないように努めていたと言うのに、いつの間にか女の声はすぐ後ろからするではないか。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/09/26(月) 00:13:29.18 ID:GCmQeLxAO<>


「ただ道案内と言いし物を求めるのみなのに、何故無視するー!?」

「オマエの日本語が不可思議だからだろォが……」

そうして一方通行は足を止める。
気怠げな表情を隠さずに振り返る、何の気概も予感も持たずに。

「このローラ・スチュワートが聞きたいのだから、白髪!!!

貴様は? ん、恐ろしげなる顔をして」

「……オマエ……アイツの……!?」


日傘を差し、風に髪を遊ばせる金髪の女。
どうしようもなく見覚えがあった、そしてどうしようもなく嫌な予感がした。

何故ならその女は、インデックスが数コ年を重ねたようにしか見えない女は、

「アイツ?

そう――アレと知り合いか」


睨む一方通行に対して微笑うのだ。
ふんわりと、それでいて賢しく。


「そうか」 <> 終わり<>saga<>2011/09/26(月) 00:20:47.67 ID:GCmQeLxAO<> そぎみさ?って言うべきなんでしょうか、ていうか電撃大王さんありがとう!本当にありがとう!!!
ローラはアレすぎて武家の奥方みたいですよねーふふ
何スレと呼べば良いの?という質問に対し「自分は白銀【プラチナ】コンビと呼んでるよ」と言うと苦笑されますがまあ元気です

今回もお付き合いいただきありがとうございました!次回もよろしくお願いします
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/26(月) 00:40:29.59 ID:tKKsEOwF0<> いっつーさんはそれがつっちーの上司でもあることに
気付いちゃったりするんだろうか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/09/26(月) 00:45:43.78 ID:G+51MP0AO<> すごい掌握……だと? <> 名無しNIPPER<>sage<>2011/09/26(月) 00:52:07.45 ID:CCXtXz8AO<> プラチナwwwwwwwwそれは逆にアリだ
そぎみさとか青吹とかマイナーの宣教師幼女△ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/26(月) 08:41:23.40 ID:zWWVSN8AO<> アク禁なんてのもあるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/09/26(月) 08:59:01.94 ID:G+51MP0AO<> プラチナは白金なんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/26(月) 17:15:42.50 ID:gCJ8e+VIO<> すごい掌握吹いたw
>>1乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/09/26(月) 20:52:47.57 ID:xYD015MJ0<> >>474乙
最大通行? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/26(月) 20:55:01.20 ID:hRNuOoUIo<> >>467
それだと追っかけで入学したことは否定できているかもしれんが
恋愛感情を持っていることは否定できていないというかむしろ自爆してるぞ

そういうアレなことを指して恋愛脳というんじゃねーのと突っ込まれたら
きっと顔から火を噴いて能力による洗脳どころじゃなくなるんだろうな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/27(火) 03:51:44.22 ID:pCjUQw150<> このみさきち本編より好みだ
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/11(火) 21:34:19.44 ID:9LYBxgZto<> そろそろ白もやしと白い天然ポリバケツのキャッキャウフフが見たいです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/12(水) 18:20:20.02 ID:51CMgnuy0<> なんかしら報告がほしいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/17(月) 20:58:16.69 ID:xrZkFSZOo<> 生きてるんだろうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/10/17(月) 21:33:32.85 ID:f7Uvz09Ho<> 別スレでは、先週の金曜夜に投下予告があったけど
そっちもまだなんでちと心配
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/26(水) 19:21:28.93 ID:v/xBEXmIO<> 綺麗だろ……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/27(木) 12:22:18.68 ID:AtnJ0FJIO<> これ…… <>
◆ObanGQEW7M<>sage<>2011/10/27(木) 23:03:39.01 ID:rNnae0yAO<> 死んで…………ねーーーよ!!!!!

ってワケであっちこっちに迷惑かけて申し訳ないです、旅行だの原稿だので年取っただの家庭のゴタゴタだの上条さんフィグマの誘惑だのでまたドタバタしてました
とりあえず今週を目処ぐらいに進めて行きたいのでよろしくお願いします!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/28(金) 03:59:38.67 ID:s/FSWt+f0<> 報告乙

待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/28(金) 10:34:44.70 ID:OVkUa1KOo<> おお、生きてたか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/28(金) 22:14:06.03 ID:0Psufdgdo<> 貴重な幼女は守られたか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2011/10/30(日) 06:35:44.45 ID:kHlzeSs40<> >>491生きいることに、感謝

最大通行楽しみにしているのです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)<>sage<>2011/11/02(水) 23:07:26.63 ID:OzeocDcE0<> 幼女は!生きてたんだ!
待ってるよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/12(土) 16:08:10.07 ID:7LDWcoNb0<> 忙しいのだろうし完結させてくれるのなら何の文句もないな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(栃木県)<>sage<>2011/11/13(日) 09:31:12.06 ID:5Spc5LzJo<> スピンアウトの青ピ−吹寄の方は更新あったし待つわ <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:00:23.40 ID:ch9s1pwAO<>


衝撃的な邂逅を経て

「聞きてェなら貴様は止めろ。 人に頼む態度かソレ」

一方通行が真っ先にしたのは「お前が言えるのか」との指摘である。

「ふん、この英国淑女のコミュニケーションの方法を理解できぬとは。
あの男の計画性の無かることにはほとほと失笑したるわ」

「……」

「なあ白髪。 長点上機だの、何だのへ私を連れて行きたることね」

ふふんと笑うその顔もなるほど見覚えがあるような。
一方通行はその女の様子にやれやれとため息をついて、



かつん、かつん

「……ねみィ……」

大きく欠伸をした。

「え、あ、待ちたるのよ! いや、聞け!」

そういえばあの少女、最近見ないと思っていたが海外に行っていたと言っていた。
出身国に帰ったのだろうか。

それと桜のせいか何なのか、妙に鼻がむずむずする。
これが花粉症なのか?
だったら反射でどうにでもなるのだろう、
大ざっぱに演算をしながら彼はチョーカーに指をかけた。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:05:49.37 ID:ch9s1pwAO<>
「ま、ちたまえー!」

素っ頓狂な声。
尊敬語が聞こえてようやく、一方通行は歩みを止めた。

「あァ?」

ビシッ!

スーツを着たその女は片手に持った傘で彼の方を差した。

「道案内、この私にしたまえ!」

「高圧的なのが気に食わねェ」

「え、み、案内、した」

やれやれと嘆息せざるを得ない。
全く、この女に妙なものを感じ取ったなど恥でしかないのだから。

「お手数かけてすみませン。 どォか案内していただけませンか、このわたくしめに。
リトライ」

「お手数かけてすみません。どうか案内していただけませんか、このわたくしめに!! どうかしら!」

さっきの圧迫感は何だったのだ。
頭が少し弱そうなこの女はまたもや誇らしげな顔でこちらを見る。

胃が重くなるほど鬱陶しいので、仕方ない、案内してやることにした。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:07:11.37 ID:ch9s1pwAO<>

ついて来い、と声をかけられたローラは小走りで一方通行に追いつく。

「で、何の用だ」

「入学式とやらに行きたしなのよー」

「長点上機のかァ?」

「そのとおりたるわね、全く、聞き出すこといと苦しかりけりってやつかしら?
アレったら、全然言わざりけるものだから」


改めて時計を見た。
13時を10分ほど過ぎている。

「もォ終わってンぞ」

「嘘言え」

彼女の手に巻きつく腕時計から時刻を確認しズレがないことも知った。

「入学式は10時からじゃねェの」

「……だってあの子、2時からと……」

「………」

強張った表情でその場にただ固まる。
その姿があまりに哀れに見え、何も言わないことにした。


「…………言いたいことは山ほどあるが、………殺す………」

「……止めろ」

ふしゃー!と爬虫類のような鳴き声を上げる。
ギラギラと鈍く獰猛に光る黒目。
心なしか彼女の金髪もよりいっそう輝きを増したような、目に痛いのは事実である。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:11:17.07 ID:ch9s1pwAO<>

「だってぇ! このギチギチのスケジュールを日本観光のために1日だけ開けたると言うの……くしゅん!」

春霞と言うか黄砂が舞うと言うか、靄がかかった景色の中くしゃみをする音が響く。

「観光なのかよ」

「いくら私を嫌いとはいいしも、まさかここまでとは思わざるけりよ!」

「その日本語力も嫌われる要因なンじゃねェの?」

「うるさし!うるさし! あのクソ陰陽師め……インチキばかり教えやがってぇ!」

陰陽師、とのワードが21世紀のこの学園都市で聞こえるとは。
どうにも疑わしい。
平安で滅び終わってしまったはずの職業とばかり思っていたのだが違うのか。

このインチキ臭い女と話していて問題無いわけなさそうだが、如何せん知識欲というのは止められない。
自分でいてこれなのだからあの少女は、知識欲の塊のような銀色のシスターは大変だろう。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:13:53.21 ID:ch9s1pwAO<>

「オイ、ババァ」

「……完全に呼称を間違えけるわよ」

「ハァ? そのスーツと香水付けといて、若いと言い逃れ出来ると思ったのかァ?」


ローラの服を纏うのはどれも一着で車を買えてしまうものばかり。
イタリア製の最高級スーツ、フランスの老舗メーカーの香水。
長く伸びた髪を留める宝石付きのバレッタは、陽光を浴びてキラキラと乱反射する。
それを指摘すると合点のいかないような表情が驚いたそれへと変わる。

「こ、これは、世界的大企業の社長である父が買い与えしものよ!」

「若い令嬢だとしたら、そいつら向けの商品あるのぐらい知ってるだろ。
そんないかにも、な組み合わせもしねェだろォし」

「ぐぬぬ……」

「異論はねェな、ババァ」

「……そう言えばこの小僧どうして女物のブランドを……」


何か聞こえた気がしたが、目的地までそう距離もない、スルー推奨。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:15:20.29 ID:ch9s1pwAO<>

日差しは緩く明るく、空気もまだ冷たさが残る春の日。

「――で、オマエはアイツの何なンだ」

何事も無いような響きを装った。
コクリという嚥下の音に苦々しい顔を一瞬だけして、一方通行は彼女を見やる。

「アイツ? さぁな」

「しらばっくれンな」

小馬鹿にしたような声色、そよぐ髪の毛。
鋭い剣を指すように、重石を海に沈めるように、何よりも自身に確認させるように口を開いた。

「アイツだよ、インデックス」

「それは――この1年の“アイツ”との意味で言いけるのね?」

「あァ?」

「もう分かりたるのよ」

得心したとばかりに優越と軽薄を振りまく姿は顔は嫌に似ているのに、あの少女のそれとは似つかない。

「公的に言うのであれば、アレと私は部下と上司――でありたるけれど」

歌うような柔いソプラノ。

「お前はそんな回答、気に入らぬと言うでしょうね。
全く、そのふてぶてしき態度は賛辞に十分値するわ」

杖がコツンと響き、角を曲がる。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:15:59.08 ID:ch9s1pwAO<>

同じ制服を着た見知らぬ顔がちらほらと見え始めた。

ローラはそんな生徒を、視界の中の科学を、彼が創造した全てを見つめる。

「……そうね、隠蔽し続けたるのもアンフェアよ」

誰が誰に対してだとか、一方通行に話を理解させるつもりは微塵も無い。

後になってみればそれが宣戦布告だったのだ、最重要の秘匿を喋るという何よりの形での。


「アレと私は――叔母と姪と言うべきなのかしらね」


今更吹いてきた風に、ざまあみろと蔑んでローラは空を仰ぐ。
そんな姿は、やはりあの少女の叔母にしてはいささか攻撃だった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:19:12.02 ID:ch9s1pwAO<>

***

所変わって入学式終了後の1年特進クラス。

「みさきお疲れ!」

机に突っ伏し顔を隠した食蜂にインデックスは労いの言葉をかけた。
金髪はもそもそと動き、しかし顔を上げることはない。

「もぉやんないぃ……、絶対にやんなぁい……!」

沼の底から浮き上がったと形容したいなあと彼女は思い、苦笑しながら机に手を置いた。

「えー、とっても良かったんだよ?」

「貴女以外のほぼ全員、精巧な蝋人形だと思うことにしたのよぉ……」

「そんなに? 緊張しちゃうタイプなのかも?」

「かもじゃないのぉ、現代日本を生きる小心者なのよぉ」

「なるほど、あ、そう言えば」

上半身が起き上がり、心底疲れきった顔が露わになる。
頬杖を付いて、自分の右隣に立つインデックスを見た。

「みさきってせいとかいちょーと知り合いなんだね」

随分豪気で熱血そうな男。
それがこの高飛車で実は陰気のお嬢と知り合う機会がどこであったのだろうか。

この都市の申し子と生きる異端と言っても差し支え無いだろうに。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:21:53.15 ID:ch9s1pwAO<>

「えぇ、まぁ……、うん……」

「どこで知り合ったの?」

彼女には珍しく追及してきた。
これが漫画だったらインデックスが彼に一目惚れするところだが、まぁ無いだろう。

(インデックスは同室の当麻さんが好きなみたいだしぃ)

食蜂が想像する当麻さんは料理が上手で格好良くてたまにお茶目な“女性”である。

「最初は大覇星祭、の選手宣誓、次は一緒に協力要請されたのよぉ」

「ああ、新聞で第5位&第7居お手柄!みたいな見出し見たんだよ」

「そう、小学校立てこもり事件。
一応レベル5には全員来て、引き受けたのはこの正義感のつよぉい私と、あれだったのよぉ☆」

茶化して言ってみたのだが、何やら神妙な面持ちで頷かれてしまった。

「みさきが実は良い人って、私は知ってるんだよ」

「止めなさい! そんなの私のキャラじゃないからぁ!」

「少なくともあくせられーたよりは良い人なんだよ……、何をしていたのやら」

やれやれとばかりに肩をすくめる。
だが別に要請を蹴ったわけでも何でもなく、行こうとして仮眠を取ったら次の日まで寝てしまっただけだ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:23:42.65 ID:ch9s1pwAO<>
「さぁねぇ、それで私たちが問題解決して今回も縁があっただけよぉ、大した仲じゃないわ」

「大した、ふぅん」

「何をニヤニヤ……」

「いや、何でも無いんだよ?」


入学初日の教室は、彼女たちの他に中学が同じである人間がコソコソと寄り集まるぐらいしか話し声がしない。
しかも男子9割のこのクラスでは食蜂の一挙一動に注目がいってしまう。

いたたまれない、何か話を変えなくては。

「え、えっとぉー、そんなことばっか言ってて良いのかしらぁ?」

「どういうこと?」

「だって貴女、レベル5のサイン集めてるんでしょぉ?」

「まさか剥奪されちゃうの!?」

目を見開いて抗議されるが、そんな自分のサインなどゴミに等しいものを奪ったところで何になるのか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:25:31.91 ID:ch9s1pwAO<>

「違うわよぉ。 あのねぇ、生徒会長もレベル5なのよぉ?」

「え、じゃあ、えっと」

「第7位は彼よ、私の前座の、ねぇ」


しばしの沈黙。

急に会話が途絶えたことで、クラス全員の目が集中するだけの時間を与え。

「すごーーいっ!!! みさきぃ!!! 後でサイン貰いに行くんだよ!」

案の定けたたましい声で騒ぎ出した。

「案内してあげるからぁ、分かったわよねぇ」

「おっけー! かいちょーの前でみさきをからかわないことにするんだよ!」

「今もよぉ!!!」

ぐるりと教室を見回すと苦笑いの目ばかりで、早速誤解されたのは気のせいではなかった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/14(月) 01:27:27.93 ID:ch9s1pwAO<> ***

それからも話し続けて数分。
一方通行が質問してはのらりくらりとかわされてを繰り返して数題。

「……着いたぞ」

正直、とても疲れた。
疲れた。

鬱陶しいと形容するのが可愛らしいものと思えるレベルなのだ。
疲れた。

「ふん、ここがアレの行くガッコーとやらか」

「テンプレ的浮き世離れした奴なセリフをどォも」

入学式が終わってもこれから父母説明会があるだろうと言うことで、ローラはずかずかと中へ入ってゆく。


追いかけるように一方通行も入ろうとして

「……」

フラッシュバックとはこのことを言うのか。
何万もの殺戮をしたその記憶が、呼びかけてくるようだった。
ここで安穏と過ごしていいのか。

長点上機学園、と掘られた石の看板をじっと見る。

「早く来たれー」

「あァ、分かってる」

こうして悩むのもこれから何度も何度もあるのだろう。
その度嫌になって、忘れたくて、壊したくて歪みも生じるのだろう。


かつん、かつん。

門を追い越して追い去って、彼は足を前に進める。

躊躇するのは決して今この時では無いのだから。
<> 終わり<>saga<>2011/11/14(月) 01:29:35.01 ID:ch9s1pwAO<> ≡┏(^o^)┛→樹海

ごめんなさいいい、かなりゴタゴタしておりましたあああ!
これからも不定期になると思われるのですが頑張って完結までは進めますのでよろしくお願いします。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/14(月) 01:40:34.82 ID:Diprve2DO<> 乙乙
次も全裸で待ってるわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/14(月) 03:37:57.20 ID:FV55P4gGo<> 乙ー
ここのみさきちは相変わらずかわいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(神奈川県)<>sage<>2011/11/14(月) 04:10:57.76 ID:6miM1cNC0<> >>1乙そして久しぶり

gateで足が止まるとは登校拒否児…
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/14(月) 18:45:46.18 ID:ZePq4GXI0<> 乙
叔母ですか…
良い感じに先が読めないな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(関東)<>sage<>2011/11/14(月) 18:54:57.51 ID:ajvH2b3AO<> おつょうじょ <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:39:09.23 ID:BRgDPIlAO<> こんばんはー、投下しますー <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:41:33.85 ID:BRgDPIlAO<>


「ええと、特進科保護者の待機室といいたるのは」

「貸せ」

半ば引ったくるようにプリントを手にした一方通行は、2人から見て斜め右の建物を指差した。

「521教室ならそこの南棟だ」

「時間まであそこで待機したらば良きなのよね?」

白髪と金髪と日本の高校には異質な2人組に興味を持ち目を向ける生徒は少なくない。
更にコレが変な日本語を使う妙な女と知れたらどうなることか。
怪しさ満点、胡散臭さ花丸、警備員を呼ばれても文句を言える立場ではないのである。

「……オマエ、絶対に英語で喋れよ。
人の目とか些事な事だから気にすンな、お前の所属集団が哀れすぎる」

「ふん、散々馬鹿にされたるし分かっとるわ!」

「バカなモンにバカっつーことの何が悪い、ありがたい指摘とでも言うべきだろォが」

「お前ほんとマジイギリス来たとき覚悟しろ」

べーっと舌を突き出すローラはどう見ても20前後、叔母と姪と言うよりかは姉妹である。
格好が格好なら高校生とも見れるのではないか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:44:16.80 ID:BRgDPIlAO<>

「………」

さっきから妙に胸騒ぎがする。


銀色と金色、髪型、声。
こんなに、そうだこんなにも相違点を見つけ出せると言うのに。
体のパーツの比率、仕草、骨格、動作の一挙一動が否定する。
気味が悪いくらいに合致していて、それに気付く度不快感が襲いかかる。


嫌な予感を消したくて無理やりに思考の先は一回転換させる。
自分、上条当麻、風斬氷華、黄泉川愛穂、芳川桔梗。
ぐるり、半回転。

インデックス、ローラ。

―――打ち止め、番外個体、妹達、御坂美琴。

ああ駄目だ。
彼女たちこそ考えないようにしたのに。



「ンで、もう一つ」

杖がアスファルトを叩き、カツンと響く。

「オマエがどンな立場であっても、確立された個人をアレと俺の前で呼ぶな」

「何故なのかしら? お前に迷惑をかけし覚えはこれっぽっちも」

「ちゃンと実害被ってンだよ」

物扱いされることの嫌悪感は覚えがあるし、鏡の自分を見せられたようで気分が良くない。
似ているから、彼女の嫌なことは同じく嫌で逆もまたそうなのだろう。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:48:59.21 ID:BRgDPIlAO<>

「お前はアレを、道具の一種でも無く何の代用品でも無しと言いたるの?
面妖な話もあるものね」

「分かンねェのか」

食い気味な反応、怒気が滲み出る様子にローラは少し肩をすくめる。
こうやって彼女の処遇に噛みついてくるのはきっとあの少年でしかない。
と考えていた彼女にとって、今の状況は驚きであり、面倒であり――

「……なら良い、美しい友情に免じて聞き入れてやるわ」

「どォも」

「……そうね、お前が居たるのね。
ああ、本当に人狂いで……」

「とっとと行け」

まだ何か言いたげにしていたので時間もないのだしと手で追い払う素振りをした。
ローラは微かに笑って、唇を動かした。

「私が言える立場には無きことだけれど、……あの子を見ていてあげて」

何度目の頼まれごとだろうと嘆息しつつも確かに一方通行は頷いた。

「言われなくても分かってる」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:53:28.83 ID:BRgDPIlAO<>

ローラと別れて、さて自分もホームルーム教室へと向かう必要がある。
確か中央棟の2階の最奥であるとか、そのことについてやたらと教師が謝って来たが別に気にする必要は無いのに、と思う。

少し早めに来たらしい、教室棟には思っていたよりも生徒たちが少ない。
ちらほらと感じる視線は束ねて無視し、ゆっくりと廊下を歩いていく。
ブレザーの違和感は段々気にならなくなってきた。

そんな時、やたらと活動的な清掃用ロボットが彼の脚に纏わりついた。

「コンジョーダイイチ! センリノミチモイッポカラ!」

「これがアイツの言ってた……」

可愛いおそうじろぼ!との説明はあながち間違いではなく、円錐形でその姿はワンピースを着た女を意識しているのかもしれない。

「オマエの主張は分かったが、俺をゴミ扱いたァ、良い度胸してやがンじゃねェの」

杖を支えにして屈み、つるりとした表面を撫でる。
キュッ
洗った後の皿を乾布でこすったように小気味の良い音だ。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:57:01.28 ID:BRgDPIlAO<>

そのロボットが爆発しやすいと知る周りの生徒たちは恐る恐る脇を通り過ぎていく。
気の毒とは思うが声をかけてみて白髪赤目のアバンギャルド極まりない男を不機嫌にさせることや機械の暴発、それと自分の命を天秤にかけたら断然後者の方がウェイトが大きくて当然だろう。
誰もが戯れる一方通行とロボットを素通りしていく。

そう“普通”の生徒は。









「おおー、早いじゃねーか一方通行! おはよう!
それに触れるたぁなかなかどうして根性があるな!」





「……あァ?」

声のした方に顔を向ける。
ボタンもネクタイもラフに止めた男子生徒、黒髪、身長は自分よりやや高いような。

「だ」

「ただなぁ、まあ扱いによっては怪我しかねん物体で。
触らぬ神に祟りなしってところか、お前のように気骨溢れる人間なら関係ない気もするが」

誰だお前、と言わせる間も与えてはくれなかった。
それはバカみたいに大きい声で話を降られていることもあるのだがそれだけではない。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 00:58:54.19 ID:BRgDPIlAO<>


「全く、科学技術ってのは恐ろしいもんだよな。
こいつらが一斉に反旗を翻したら主従構造逆転、俺たちの人生は大きく変わっちまう。
機械的に管理されて生きてく自信なんて俺にはねえな」


確証は無いがこの声の主なら絶対に生き残れるだろうし負けもしないのだろう。

言われたとおりにロボットから体を離し、しゃんと立った。
体温が無くなったことを感知した円錐はカメラをがしゃがしゃ半回転させた後に、また何事も無かったかのように業務へと戻っていく。

「………」

話しかけてきた男は5メートルほどから歩いてくる。

「ああ、それでオールグリーンだ、一方通行」

満面の笑みだ、これなら太陽のようなと形容しても差し支えがない。

「何だお前静かな奴だなー。
あ、お前の名前を知っていたのは俺がストーカーだからってわけじゃ無いぞ。
だからそう固まることも」

「……ちげェよ」

一挙一動に注目を集めてしまう人間には度々合ってきたが、注目したいと思わせる者となると数は大きく減る。
ずば抜けて顔が美しいわけでも綺麗な体躯でも上品な声でも無い、だけれども見ていないといけないと思わせるのだ。
彼の意見には耳をそばだて目を凝らすべきだと感じてしまう。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 01:01:35.46 ID:BRgDPIlAO<>

「そうか、それなら良かった!」

少年は一方通行の隣まで来ると、長年の友人がするように軽く彼の肩を叩いた。

「さあ、行こう! まだ道も分からんだろう」

正直迷うほどの距離ではないし、彼もちゃんと覚えていたのだが大人しく着いていく。
この時点で番外個体であったら盛大に茶化すのだろうが、もちろんここに彼女は居ない。

「どこの高校もご老体に優しいシステムは変わらないらしいな、病み上がりじゃきつくねーか? 何なら担いでくが」

「オマエは俺を何だと思っていやがる、生憎そンなにヤワには出来てねェンだよ」

「そーかそーか、まあ何かあったら言ってくれ」

と笑いつつも鞄をかすめ取られる。そして先導され、手すりを握らされる。
ここまで尽くされることに軽い屈辱を覚えるのだがやる方は恥ずかしく無いのだろうか。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 01:03:37.56 ID:BRgDPIlAO<>

トン、トン、トン
階段を登り終え、水道の横をすり抜ける。

「今日はうちのクラスが初めて全員揃うか、と楽しみにしてたんだがなあ、生憎1人傷病で休んでるんだ。
まあ、見舞いに行けるくらいに回復したし来るのも遠くねえだろう」

ここで彼が初めてクラスメートだということを知る、そう言えばまだ紹介を受けていないのだ。

少年が扉を開ける、まだ誰も到着していなく空っぽの教室が現れる。
木と日向の独特な、新鮮で吸ったことのない匂いが胸に広がる。

「お前はAで先頭だから、左端っと」

テレビの中でしか見たことの無かった黒板、木材の椅子と机。
その中の一つに彼は一方通行の鞄を置いた、どうやらそこが席らしい。


椅子に座る、そして壁に体を寄せ正面に立ったままの男に尋ねる。

「ンで、オマエは誰だ」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/11/24(木) 01:04:55.51 ID:BRgDPIlAO<>

自分でも尊大だったかもと感じたのだが彼は一切気を悪くした様子はない。

「わりぃわりぃ、名乗って無かったか」

「人の名前は連呼するくせに、なァ?」

嫌味が分からないのか屈しないのか、いっそう笑顔を濃くする。
後光が指してもおかしくはない、高校生とはみなこんなに徳の高い人間だとは思わなかった。
別の意味で順応できるか心配である。

「俺は削板軍覇、この高校の生徒会長もやらせてもらってるしがない高校生だ」

そんなわけあるものか、まずしがない高校生は同級生を公衆の面前で俵担ぎしようとはしない。
とは言わずに黙っておいた。

「仲良くしてくれたら嬉しいぞ、よろしく!」

「一方通行だ、オマエが思うよりも病弱じゃねェ」

「体よえー奴はみんなそう言うんだがなあ」

「俺は例外だ」

差し出された手を軽く握り一方通行はため息を吐く。


「……よろしく」 <> おわり<><>2011/11/24(木) 01:07:45.72 ID:BRgDPIlAO<>
個人的禁書の三大イケメンが1人削板さんでした。
いつになったら彼の活躍を拝めるのか、そんなことを考え生活しています、ほんとにもう!
今回もお付き合いいただきありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(神奈川県)<>sage<>2011/11/24(木) 04:28:54.14 ID:e/LkjnyJ0<> >>1久しぶり、そして最大通行乙

舞っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(新潟・東北)<>sage<>2011/11/24(木) 09:57:43.34 ID:FiYlm5aAO<> 最高! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/24(木) 11:12:34.70 ID:IfQZWYrDO<> 乙!
待望の軍覇さんktkr <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/11/24(木) 13:12:57.98 ID:fAnShH3bo<> 選手宣誓のシーンでこのスレを思い返してニヤニヤしてた俺きめえ

そぎーマジそぎー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/24(木) 20:41:36.23 ID:ml8IDzjM0<> おつんつん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/11/28(月) 18:59:05.39 ID:03s0maN50<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/02(金) 18:09:16.10 ID:M5etNA++0<> おつおつん <>
◆ObanGQEW7M<><>2011/12/04(日) 21:32:52.95 ID:F7S38SUAO<> こんばんはー、今年のクリスマスは3日あるそうですね
1日ぐらい仏教サイドに譲ってあげても良いと思いますってな感じで今晩投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(長屋)<>sage<>2011/12/04(日) 23:06:55.63 ID:Uc+XWmS+0<> 待ってたんだよ!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(埼玉県)<>sage<>2011/12/05(月) 00:05:18.77 ID:/inS4JDz0<> まだかー <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:36:54.68 ID:nryI8b1AO<>

「あ、そうだ。
お前、何か部に入る予定あるか?」

「特にねェ、つーかこの体で出来ることはたかが知れてる」

「文化部だってかなりあるし――例えば、茶道部や手芸部は部員不足に喘いでたな」

「俺に刺繍や茶を淹れろと……?」

彼の鋭い三白眼に睨まれたにも関わらず、削板は臆する様子もなく笑いかける。

「アリだろ全然、女子も喜ぶと思うぞ」

「俺は何ら嬉しくねェが」

正座をしたことなど今までの人生でも思い出せないし、自分で何か物を作り出すくらいなら既製品を買った方がよっぽど効率的では無いのか。


消費することに長けているからこそ、そういう生み出す苦しみは理解できそうにも無い。

「じゃあそれは追々考えるとして、なら生徒会でも手伝ってくれねえか?」

「もっと適役が居ンだろ」

「いや、卒業だったり留学でみんな抜けちまったんだ。
第1位の演算力を生かして会計とかすげえ助かるがなあ」

会計、そうは言ったって高校の生徒会だなんて規模が知れてるだろうに。
そういった正義感溢れる行動に出る自分なんて想像しただけで寒気がする。

開いた窓から吹き込む春の風。
2階からでは桜の木の全貌を伺い知ることは出来ないが、きっと素晴らしい咲き様なのだろう。
そしてしばらくの沈黙。

静かに口を開いた。




「オイ、何で俺が1位だってこと―――知ってやがンだ?」

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:41:13.29 ID:nryI8b1AO<>

張り詰めた空気が場を支配するだろう。
と思ったのは一方通行だけのようである

「ん、生徒名簿に載ってたぞ? それに第1位は白髪に赤目の男って噂も聞いたことがある」

「個人情報の保護って何だよ……」

課題だなと呟き手帳にメモする。
この彼に他意は有るはず無いだろう、小さくため息をつく。



「……で、早速お前に1つ聞きたいことがあるんだが」

ガタッ、ガガガカ
隣の椅子に腰掛けた削板は切り出した。

「何だ」

「あの清掃用ロボット、どうすりゃ止められると思う?」

何であんな危険なものを野晒しに、と思っていたが制御不可なのらしい。
聞くところによると、使い始めから回路がそもそも不全。
なのに防衛動作は完璧で、下手に人間が押さえると爆発する。
盗難防止の機能が仇になったというらしい。

一方通行はゆるゆると頭を降る。

「ンなのは製作者に聞け」

「はははは……今は居なくて、俺ってことにしておいてくれ」

「マジかよ……」

「おお、割と真剣だ」

開発者の不在。
まさか開発中途に死んでしまった、なんてことは無いだろうな。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:43:23.29 ID:nryI8b1AO<>

「追い詰めたりして、学園敷地から出せねェのか?
もしくは水ぶっかけるとか」

「メイン製作者が凄くてな、あいつら水陸空地中どこでも動けるんだ」

「最早軍事力だろ……」

そこまでいくとあとは宇宙空間だけだなと考えながら、あの白い体躯に思い馳せる。
滑らかな高級感漂う円柱は見たものに撫でたいと思わせてやまない。
あのままだと在校生はともかく自分と同じ立場の新入生などは触れたくて仕方ないはずだ。

「耐久性はどれくらいなンだ?」

「地上100メートルから襲われても傷がつかない特殊合金を採用、そのくせして回路の周囲は絶縁体で保護してある」

「どこぞの誰かは、何でこンな高スペで作ったンだよ。ギャグかこれ」

「何事も根性論で誠心誠意やんねーとなと思ったら……って感じだな、ほんとにわりぃ」

「詰めが甘いンだよ……ったく」

「先生方もお手上げでな、俺も万事休すといったところなんだ」

ここで話を聞いても埒が明かない。
とりあえず今日のHRが終わったら、再度ロボットのところへ向かうということにした。


<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:45:25.25 ID:nryI8b1AO<>
***

初日のHRも無事終わり、放課後の廊下にて。

「かいちょ−も、それからあくせられーたも見ないかも」

渡したいものがあるのに、と呟き紙袋を握る少女を視界の端で捕らえる。
赤っぽい光が差し込む廊下は教師達がせわしなく行き交いしていた。
入学式の片付けをしているようで少し居心地が悪い。

「教室にも生徒会室にも居ないんじゃぁ、
私のこの探索力を総動員しなきゃ駄目なようねぇ……」

「私のせいでごめんね、嫌だったら帰っても」

「い、いえ、こっちにも予定はあるからぁ」


どちらかというと行きたがっていたのは食蜂であり、
連れていくという口実が無いと困るのも彼女のほうである。

(この子……実はとてつもなく策士なんじゃぁ)

と疑問が生まれるのだが真偽を確かめるつもりはさらさらない。
何より面倒だ。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:47:35.25 ID:nryI8b1AO<>

手持ちのスクールバックからリモコンを取り出し、幾度かキーを操作した。

「ええと、広域探査はスリー・オー・スリーと」

「すっごく科学だね……!!」

「私なんてどっちかと言うとオカルトの領域に近い気もするけれどぉ……。
ええと、ここから南西50メートルらしいわよぉ」

「お、結構近いんだよ」

大学規模に広いこの学校の敷地。
なので自転車で移動しないと追いつけないか、
と思ったのだが歩行で対応できそうだ。
インデックスと並んで示された方へと歩いていくことにする。

「その紙袋はどうしたのぉ?」

「春休みのお土産なんだよ」

「なるほど、あ、あの石鹸良かったわぁ」

「ほんと? これから頻繁に行くかもだから買って来るんだよ」

観光にしても短期間に何度も行く場所では無いのだが、何か違った用事があるのだろうか。
2人分の足音が絶え間なく響く。


廊下の突き当たりに到着した。
右に行くか、左か、それとも戻るか。

「とりあえずこっち行ってみるんだよ!」
特に断る理由も無いので右に曲がる。
数歩してから気がついた、数メートル先の怪しげな2人組。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:48:55.20 ID:nryI8b1AO<>

「………」

「………」

間違いなく彼らだ。
動向が不自然でなければ今でも声をかけたいのだが少し様子を見ることにする。

「……あの男ぉ……」

「あくせられーた……何を……」

清掃用ロボットの蛇行にあわせてふらふらとその後ろをついて行く彼らは正直不気味だ。
顔を突き合わせて何かを相談しているようだが内容は伺い知れない。

「あの真っ白が一方通行?」

「そうだよ」

ふぅん、と鼻を鳴らして食蜂は目を凝らす。
髪が白くてやたら細いことを除くと、まあまあ普通の人間であるようだ。
第1位と言うのだからもっと実験動物臭を漂わせる存在だと思っていたのだが予想は外れた。

「取り込み中の用だけどぉ、まぁ深刻な雰囲気ではないしぃ?」

「ええ、あ、ちょっと」

実のところは全校生徒の命運をかけた話し合いを散々にこき下ろして食蜂は奥へと歩み出す。
空気を読むが下手というか、これはむしろあえてなのだろうか。

危険と警告されたロボットを見つめながら真剣な会話をする2人。

(どこからどう見てもお取り込み中じゃ……)

インデックスは嘆息を隠せなかった。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:53:10.60 ID:nryI8b1AO<>

「見る限り、排気口から異物混入ってのも期待できそうにねェ」

「直接的制裁しか方法が無いなら、それはそれで腹をくくるだけか」

腹をくくってどうにかするには些かこの機体は危険なんじゃないだろうか。
自爆機能も無駄に広範囲に及ぶのだし。
柄にも無く進言しようとした彼は

(………?)

モーター音に紛れながら近づいてくる足音に気付く。

―――きゅ、きゅ、きゅ
リズミカルなゴムの擦れる音だった。

ゴォン、ゴオン、ゴォン

「―――こんにちはぁ、第7位サン」

聞きなれない低めの女声が後ろからする。
第7位?
しゃがんだまま後ろに目をやると、眩しい金髪の女が一人。

「む、その声は食蜂か」

「ごきげんいかかがぁ?」

「そうそうってところだな」

蠱惑的な喋り方だ。
言葉に合わせて白い布に覆われた指が動くのも妙に艶めかしい。

「ふうん、それであのスピーチなのねぇ?」

「根性があれば大半のことはどうにかなるっつー好例を示したくてな。
まあノープランだったんだ」

「それは行き当たりばったりと言うんじゃなくてぇ?」

「違いねぇ」

含み笑いにも顔をしかめることなく、削板は監視の目を緩めようとはしない。
目を半月状に細めた彼女は、そのまま水平に視線を動かす。
冷たい顔がよく似合う美しい女だ。そして2人の目が合う。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:54:56.49 ID:nryI8b1AO<>

「ああ、始めまして、第1位」

「なんでオマエまで……」

片目を閉じ、人差し指は唇の上へ。
靴の色からするに彼女は1個下であるはずなのに、この妙な威圧感は何なのだろう。

妙に甘ったるい香りがする。

「ふふ、私の情報把握力を見くびって欲しくはないわねぇ。
この街で私に掴めない情報なんてありはしないのよぉ☆ アクセラレータ?」

「クッ……!」

この女は何者なのか、ぐるぐる回る思考に整理が追いつかない。
削板の知り合いか? だったらもしや2人揃って自分を陥れようとしていたのか。
どういうことだ、何故こんなに混乱するのかも分からない。

一方通行の指がチョーカーに伸び――





「みさき! ちゅーにおつ!!!」






変な発音と妙なアクセント。
可愛らしいソプラノに、2人の行動は一時停止する。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 00:58:21.53 ID:nryI8b1AO<>


女の向こう側から歩いてくるのは、銀髪碧眼の少女。
十字架を片手にしたインデックスは彼女の手とそれを接触させる。

カチン。

爪と十字が触れ合い硬質な音が生じる。

「ちょっとぉ! べ、別にこれは!」

「何か変な技かけようとしたでしょ!? あくせられーたの目、何か変だったかも!」

「少しだけだけど、第1位もめんたる☆あうとできないかなぁってぇ……てへ」

「てへ、じゃないんだよ! 心理を掌握ってまた物騒な言葉をぉお!
ほら、あくせられーたもこのクロス握るんだよ!」

言われたままに右手を伸ばす。
インデックスは一方通行の手首を握りその手のひらの上に乗せる。

「これはどォいうことだ」

「そこにいるみさきは心理掌握って能力者で、
すっごく緊張しぃだから初対面の人の心を操りたがるんだよ」

精神感応系能力者は一挙一動からこちらの無意識に干渉しているという。
胸のつかえと妙な匂いが急速に去っていく。
心拍数も急速に落ち着いて、ああなるほどこのクロスは宗教的要素があるらしい。

「……オマエは下がってろ」

「あ、大丈夫大丈夫! 友達なんだよ!」

「オマエもちったァ人付き合いに気をつけろ」

どうもこの少女は変人ばかり引き寄せる天才らしい。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 01:01:47.02 ID:nryI8b1AO<>
「だってぇ、私の友達の話を聞く限りぃ貴方は度し難いほどに横暴だったんですものぉ?」

「友達っつゥのは双方からのベクトルがあってよォやく成り立つンじゃないですかァ?」

ああ非常に醜い。
良い意味でも悪い意味でも口喧嘩の強い2人だったのだ、会わせない方が良かったか。
紙袋を両手でもう一度握る。

「……ん、お前は新入生か」

下から聞こえた声。
少し寄ってみる。

「そう、です」

確か彼は自分より年上だった。
慣れない敬語は不自然なくらいたどたどしかった。

「俺は削板軍覇、ここの会長をやらせてもらっている」

返して名乗ると、削板は顔を機械に向けたまま立ち上がった。
後ろでは相変わらずワーワーという口論の声が飛び交っていて騒々しい。

「インデックス!
お前の日本語の向上に役立てんのは残念だが、俺は敬語を使われるのがむず痒いタチでな。
一方通行と同じように話しかけてきてくれ」

「うん、分かったかも、かいちょー!」

気の良さそうな人物であることにインデックスは少々安堵した。
何だかんだ仲良くなれるとしても、やっぱり常識人の友人に飢えている。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2011/12/05(月) 01:05:11.22 ID:nryI8b1AO<>


「で、かいちょーは何やってるの?」

「この清掃用ロボットの破壊法の模索だ、如何せん不良品のくせに防御に優れてやがって」

「誰か学校外に連れ去ることは出来ないの?」

「飛べるんだよコイツ」

「えーっ、すっごいね!」

「制作者が天才だからな」

その滑らかな表面に手をついて、しばらく物思いにふけた彼は、それから手を離した。
妙に名残惜しそうに見えた。

どくん

「止めないと大変なの?」

「まあ、良くはねえよな。
誰かが傷ついてからじゃあ遅いんだ」

正義感溢れるセリフ。
それだけではなく何の違和感もさせずに言ってのけるのが凄い。
きっと本心からの言葉なのだろう。

どくん

「そっか……、私も出来ることがあったら手伝うんだよ」


「ありがとよ、一緒に頑張ろうぜ」

「うん」

そう無邪気に返事をしながら、裏で彼女の小さい心臓は早鐘を打っていた。
痛いくらいに早くなる脈拍、その理由を知らないはずはない。
かといって許されるわけもない。

「何よぉ! このアルビノもやしぃ!!!」

「性格悪いのが目に見えてンぜ? 常盤台の女王様(笑)?」

「うがー、お前らも喧嘩する根性あるなら打開策を考えてくれー!」


その顔に、声に、精神に。


在りし日の彼を思い出すのは、きっとこの上ない罪悪なのだろう。

<> 終わり<><>2011/12/05(月) 01:07:49.90 ID:nryI8b1AO<> 遅くなっちゃってすみませんでした
まさか12thがあんなに早く脱落するとは……ショック激しい
それではお付き合いいただきありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(長崎県)<>sage<>2011/12/05(月) 04:14:14.26 ID:m8nQCuJB0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)<>sage<>2011/12/05(月) 05:02:13.71 ID:/A/vDbJU0<> >>1乙

第一掌握は最悪から… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/05(月) 07:54:08.69 ID:9h+zZ58h0<> 乙です。
何か文章が綺麗なんだけど、あっちこちとっちらかってるからよくわからないところが多いな。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/05(月) 15:46:15.46 ID:dRhqfidoo<> 削さんかっけえな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/05(月) 20:51:28.18 ID:QM5Jj8xZo<> >>547
かいちょうー、どうしてインデックスの名前知ってるんですかー?
入学生含めて学生全員把握してるのか
それとも正義の味方兼ストーカー的な何かだったりするのか。
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 19:17:43.06 ID:K8jkwFnxo<> 乙
この4人いいな
先が楽しみだ

>>554
返して名乗ると、って地の文にあるから
インデックスが自分で言ったんだと思う <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 23:21:11.78 ID:wzD+p5tOo<> 未来日記か <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 02:45:56.74 ID:ys/UQoauo<> >>555
ん? これってそぎーが返して名乗ったってことじゃないの?


これは解釈をめぐって読者があーだこーだ言っても結論は出ないから
ようじょを問い詰めねばならぬな! <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 04:37:00.38 ID:4VV9j5Cv0<> >「俺は削板軍覇、ここの会長をやらせてもらっている」

>返して名乗ると、削板は顔を機械に向けたまま立ち上がった。
>後ろでは相変わらずワーワーという口論の声が飛び交っていて騒々しい。

この辺の地の文はインデックス視点みたいだし
「俺は削板軍覇、〜」に対して、
(インデックスが)返して名乗ると、削板は顔を機械に向けたまま立ち上がった。
という風に取れるのではないだろうか
俺も分かりにくいとは思ったが <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/25(日) 20:37:53.63 ID:adg1MuZI0<> >>1に遅ればせながらメリ−クリスマス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/10(火) 18:23:09.52 ID:TqMw7dLdo<> >>1あけおめ!
早く続きを投下してくれたら嬉しいな!ニコッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/01/15(日) 15:43:35.59 ID:nONg5s+0o<> 昨日受けたセンターの国語より文章が難しいんだが…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/16(月) 22:13:37.69 ID:UzeCyHSdo<> もう一つが来たということはそろそろか。
期待してるよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/01/18(水) 01:37:29.05 ID:y/CMyRJo0<> まってます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/01/18(水) 08:09:53.15 ID:FpYHUOiAO<> センターってそんなにレベル低いの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/18(水) 09:16:47.46 ID:oYgbiwvDO<> 難しいかは知らんが、調べれば問題出てくるから見てみたら?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/18(水) 10:41:18.75 ID:vQAZaV5Po<> >>564
センター受けたこと無いのか
あれは基礎レベルしか出題されない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/18(水) 22:40:29.81 ID:PEQUM3Vo0<> キターー!と思ったのに……思ったのにッッ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/28(土) 02:54:06.37 ID:JOWGVTaO0<> まだかー! <>
◆ObanGQEW7M<><>2012/02/05(日) 23:30:00.71 ID:3iE460CAO<> 2ヶ月ルールに抵触するところでした、すみません
もうちょいしたら投下します

>>554
>>555さんが書いてくれるとおりですー、分かりにくくてすみません <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 01:52:11.81 ID:NudAFFxAO<>


第1位と第5位による舌戦も勝敗がつかぬまま収束を迎え、改めてそれぞれの存在を見やる。

「……で、オマエは何の用があったンだ」

「あくせられーたにお土産と、こっちのかいちょーに頼みごとがあったんだよ」

「俺にか?」

「そう、あなたに!」

そう言うとインデックスは鞄を地面に下ろし、中からペンと色紙を取り出した。
脇で眺める2人にも何やら見覚えのあるそれを手に取り
ボールペンと一緒に削板へと渡す。

「サイン下さい!」

「全然構わねえが、何つーか俺ので良いのか?」

「もちろんかも、あなたがいなきゃ完成しないもん」

そこで声を上げるのは、ただ1人状況を把握できない一方通行だった。

「ちょっと待て、それはレベル5にさせてるサインじゃねェのか」

「ふーん、そうなのか」

「そのとおりなんだよ……おお、達筆なんだね」

ペンが走るさまを嬉しそうに見つめるインデックスには悪いが、今はそんな場合ではない。
何だろうか、重大なことがさらりと流れていったような………。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 01:53:59.79 ID:NudAFFxAO<>

「あれ、貴方も書かされたのねぇ?」

確かメモ帳だったがと心中で返答する。
ペンと色紙を返した削板は、満足げに腕を組んでいた。

「オイ削板」

「ん、どうしたよ」

希有なことに、一方通行の瞳は動転の色を隠しきれていない

「―――オマエ、レベル5なンじゃねェの」

視線が絡む。
しばしの逡巡、無言。
その姿は必死で思いだそうとするようにも見れる。

「あー、うん、そうらしいな! 言うの忘れてた」

両手を合わせ謝罪するのだが、それは何となく拳法を彷彿とさせる動きだ。

一方通行は呆ける。
この学校は学園都市で最高教育機関の1つだ。
が、230万分の7のうちの3人がこうして一堂に会するものなのか。

レベル5の安売りというフレーズが脳裏を掠める。

「ちょっとぉ、何でそんなこと忘れて平気でいられるのよぉ」

「強さのバロメータならまだしも、金になるならないの指標のことなんざなあ。
ま、いちいち覚えてらんねぇよな」

「そう言うものなの?」

「俺にはあんま関係ねぇんだよ」

一方通行が1位だから、と言うのもあるかもしれない。
だが超能力者であることに人生を振り回されてきた一方通行とは違い、
削板の自分が先で能力は随するだけだという態度には驚き呆れるべきなのか。

もしくは敬意を払うべきなのか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 01:54:49.63 ID:NudAFFxAO<>


彼と同じく苦笑している食蜂は、片目を閉じ人差し指を自身の唇に乗せる。

「傑物にほど近い阿呆の方だと忠言はしておくわぁ?」

「それを早く言えってンだよ」

このペースだとこれからも面倒ごとに巻き込まれるのだろうな。
既定してしまった厄介な未来に対し溜め息をつくしか出来ない。


「そういやインデックス、それは何個貰えたんだ」

「あなたので3個めかも」

「そうか、ここに居る3人だな。
俺のダチにもう1人居るが貰ってきてやろうか?」

「ううん、自分で頑張るんだよ」

「そうかそうか、なら根性出して頑張れよ!」

「うん!」

削板の友人とは第3位だろう、気質的に合いそうだ。
床に置いていた鞄を持ち上げ杖をつき直す。
日暮れには時間はあるが初日から長居する必要も無いだろう。

思惑通り目敏く気付いたインデックスは、そろそろ帰ろうかと切り出した。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 01:56:12.80 ID:NudAFFxAO<>
「そうだな、三人とも俺に付き合ってくれてありがとう。
初日だし、遅くならねえうちにそろそろ帰るべきだな」

「貴方はどうするのかしらぁ?」

「生徒会選挙関係の告知の用意してかねえと」

「みさきは電車なのかな?」

「いえ、送迎待ちよ」

「そうなんだ、じゃあ私とあくせられーたは帰るね」

「とりあえず爆発させンな、くれぐれも信管なンざ弄ろォとすンなよ?」

「おお、また明日」

「ばいばーい」

踵を返し、明度を下げた廊下を真っ直ぐに進んで行く。
インデックスが半歩ほど先を行くため、この学校にしては複雑で分かりにくい道を迷うこともない。
空間いっぱいに靴の音が響く。


踊り場に張られてある部活勧誘のポスターを見て彼女は呟いた。

「学校て―――こういう所なんだね」

「不服か?」

「ううん、そんなことは無いんだよ。
賑やかなとこで面白い人がいっぱいで、とっても楽しいかも」

「そォか」

この人懐っこい少女ならどこへ行こうと順応出来るとは思っていた。
むしろ心配するべきは彼のほうであり、
しかしそう言いつつ、携帯のアドレス帳は2件増えているのだが。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 01:58:51.41 ID:NudAFFxAO<>
「クラスの女の子が私とみさきだけなんだけど、あなたたちもなの?」

「いや、10人前後は居るはずだ」

どの者もこっちを見ると不思議そうな目を向けていた。
あの中にも能力開発研究者は居るのかもしれない。
注意しなければ。


「あなたはこの春休み、どこかへ行ったりした?」

「ンな暇ねェし、だりィし」

「私は春になると堪らなく外に出たくなっちゃうかも
深夜徘徊も何とか思いとどまったりして」

「そォかい、じゃ、わりィがこれを持て」

階段の前で立ち止まり電極のスイッチを入れる。
エレベーターがあれば良いのだが、些か杖をついて降るのは昇るのよりも面倒だ。

「りょーかいかも」

インデックスはいつものように杖を受け取ると階段を一気に降った。
新品のスニーカーで木造の廊下を踏み、数秒宙を舞う。

ダン!

「毎回思うんだけど、もっとアクロバティックに………
そうだ、前宙とかするべきなんだよ!」

「そンなのはニチアサで補給しろ」

杖を手元に寄せ電極をオフにした。

踊場が無い一直線の階段は一番上から下まで飛び降りる。
そうやって時間短縮するのが習慣になっていた。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 01:59:41.67 ID:NudAFFxAO<>
「あくせられーたがやるから異常で面白いんだよ?」

「面白いつったな?」

「えへへ」

下駄箱で靴を脱ぎ、これも卸したてのローファーに履き替えた。
日が落ちてきたせいで冷たくなった春風が、髪を乱してやまない。

「こんなに強いと花びらとかならまだしも、砂とかまで巻き込んじゃうんだよね」

「縛れば良いだろ」

「もうちょっと暖かくなったらそうするかも、日本は春も寒いんだもの」

「イギリスと比べてるのなら大差ねェと思うが」

「あ、違うんだよ。 出張先が暖かくて」

幼い見た目のインデックスが“出張”したというのは違和感しか生じ得ない。
彼女は自身の職を全うしているだけなので、間違いなどどこにもないのだが。

「ぽかぽかーって感じ? 暑さまで感じちゃったんだよ」

「そォか」

「私は観光も楽しみたかったけど、また何度でも行くからって」

1度きりじゃ済まない出張を強いられるとは、なかなか難儀だ。
フランスに行かされたことを思い出す、
自分も凱旋門やエッフェル塔など観光しに行けば良かったのだろうか。

「でもなー、泳ぎたかったなー」

「で、どこに行ったンだ?」

「水着も買う気満々だったのに……あの年増め……」

「………」

呪詛のような言葉が聞こえた気がしたが、きっと空耳だと一方通行は思うことにした。
禍々しい顔も空目だろう、全く春だから寝ぼけているのだろう。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 02:02:44.31 ID:NudAFFxAO<>
「ご飯はとっても美味しかったし、ホテルもふかふかで気持ちよかったなー」

「俺の質問にも答えろよ」


「ふふふふ、恒例のインデックスクイズの時間かも!」

「覚えが無いぞ」

「商品はお土産だから頑張るんだよ!」

さっき渡しに来ただのと言っていたのは何なのかと激しい脱力感に見舞われる。

「さあ、当ててみて!」

「ヒントの1つも無しか」

「んーとじゃあ、あなたへのお土産はお香です」

「世界各地どこでも売ってンじゃねェか」

悪態をつきつつも、することがあるわけでもないので自動的に思考はそちらへと向かっていく。
この時期に暑くて? 聖職者が出張で行く?

「これは国名で答えるのか?」

「何でも良いんだよ」

暖かくて宗教家が行く場所。
思考。

「……南欧」

バツ印を出された。

「曖昧すぎるかも」

「そんな情報量で分かる訳がねェンだよ」

その後はヨーロッパでは無いとヒントを出されたが、
のらりくらりと質問から逃れられてしまい全く分からない。

南欧でも南米でもアフリカでもない、それでは少女は何をしにどこへ行ったのか。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 02:04:26.89 ID:NudAFFxAO<>


駅に着き、丁度良く出発する電車に乗り込む。
ここから発車するため車内に人は居たが、席に座ることが出来た。
これも長点上機生の特権なのだろうか。

「じゃあもう渡しちゃうね、はい」

「どォも」

日本でもありそうな普遍的な包装紙だった。
いよいよ分からないぞと思い袋を一回転する。

――脱力。

「あァ……こんな所に………」

「どうしたの?」

覗き込んできたインデックスの銀髪が輝く。
彼は袋を止めるテープ――Hawaiiと書いてあるそれを指差した。

「あ……、答えが」

苦笑いする彼女に一方通行は労いの言葉を寄せる。

「ハワイまであの化け物じみた飛行機で?」

「オール失神だったかも……、あんなの飛行機じゃ……」

日本―ハワイ間など30分で往復できると豪語しているCMを見るが、
あれは人間用ではないというのがこの街の生徒の総意に近い。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/06(月) 02:06:09.66 ID:NudAFFxAO<>

「ほんとはもうちょっと楽しみたかったけど」

「目的は知らねェがまた行くンだろ?」

右隣から空気の抜ける音がして、モノレールの扉が閉まる。

「そうそう、これからもまたいっぱい行くんだもんね」

「大丈夫か」

「うん、とっても」

夕焼けの空を切るように走り出したモノレール。
彼ら2人を乗せた車両はゆるりとその速度を増していく。


徐々に、皆が気づかないくらいゆっくりと。

<> 終わり<><>2012/02/06(月) 02:07:17.78 ID:NudAFFxAO<> それではお付き合いいただきありがとうございましたー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/02/06(月) 04:55:31.89 ID:9POUJtw70<> >>1乙 作中は春ですか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/06(月) 05:21:34.63 ID:Mh28CQlDO<> 1乙!!
>>あの年増め
神裂さんじゅうはっさいのことかー!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/02/06(月) 09:50:26.47 ID:9pHfEo3Mo<> >>581
いや最大主教じゃね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/02/06(月) 19:03:06.74 ID:313Elrkuo<> >>1乙
白白コンビは相変わらず和むわー
図らずも?ソギーと二人きりになったみさきちがどんな会話をするか気になるな

ラストの一文がなんとなく不穏な感じがしてちょっと怖いぜ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/02/09(木) 19:51:45.65 ID:sJ1ZEVtAO<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/02/15(水) 17:41:51.75 ID:EgHP9quAO<> この2人かわいいな
続きが楽しみ <>
◆ObanGQEW7M<><>2012/02/19(日) 23:23:40.35 ID:0CqfalOAO<> こんばんは、もうちょいしたら投下しまーす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/19(日) 23:31:16.94 ID:coZE4FY4o<> わーい <> ◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/19(日) 23:41:59.83 ID:0CqfalOAO<>

インデックスと分かれ、マンションへ向かう一方通行。
彼は気付いているのだろうか。
10メートルぐらいでつかず離れず忍び寄る、1つの影のことを。


「ハワイか……」

観光というものに縁が無い生活で考えたこともなかった。
年中暖かく、人々の生活もゆったりとしていると聞くと一方通行の心は大きく揺れる。
常夏の島で、クーラーで適度に冷えた部屋で惰眠を貪る。
何という贅沢なのだろう、今この瞬間にも飛び去りたい。


遥か彼方に思いを馳せる彼に、影は出来る限りの大声を叩きつける。

「止まれ!!!」

「……」

言われたままに一方通行は足を止めた。


「ふははッ! 貴様の命は今、ミサカの手の中にある!大人しくするんだな!

……って、天の邪鬼なあなたが本当に止まるとは思わなかったんだけど」

声の主は明らかに自然には有り得ない色の髪の毛を振り乱す。
ここで止まらないと後々面倒そうだったので従ったのだが不本意だったらしい。

「……ハァ」

「あ、置いてかないでよ白モヤシー!」

一方通行も勿論気付いていた影の正体とは、同居人が1人
体以外は打ち止めよりも幼いと噂の番外個体である。
調整で大分柔らかな性格へとシフトしたらしいが
むしろこれはただの幼稚化じゃないだろうか。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/19(日) 23:44:48.08 ID:0CqfalOAO<>

黒いセーラー服を着た彼女はどんなに言っても白線の上を歩きたがる。
理由を聞くと、譲れないものがそこにあるらしい。

「オマエは何キャラ目指してンだよ」

「ハードボイルド……かな」

「一生無理だ」

「うっせえ」

歩道と車道を分けるブロックに乗り換えた番外個体は器用にもスキップで進んでみせる。
怒っても聞かないので黄泉川に言いつけるしか無さそうだ。
全く、この0歳児には手が焼ける。

それにしてもこの女、今までの人生でも一・二を争うほど上機嫌じゃないだろうか。

「何何? 第一位ってばミサカの一挙動が気になっちゃうのかにゃー?」

「ひかれても自分で何とかしろよ」

「相変わらず冗談通じねー奴。
けっ、仕方ないから高圧的なあなたのために話してあげる」

誰も頼んではいないし寧ろ言いたげにしてただろうにとは指摘しなかった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/19(日) 23:47:55.50 ID:0CqfalOAO<>

「ミサカはロシアからの帰国子女って設定転入じゃん?
で、学校の方もクラス替えがあるみたいで。
MNWで知ったあの人のクラスとヨミカワに教えられてたミサカのは違ってた。

だけど、今日行ったら同じクラスにあの人が居たの!」

「それは、まァ……めでてェな」

憎悪とは真逆の感情でも抽出する番外個体。
彼女の最近の関心事は例のヒーローである。
直接助けられて無いとは言え、共有する記憶の中に勇姿は残っているらしい。

そこで少し表情を和らげ、番外個体は続けた。

「見てた画像とは違って、イケメンてよりかは美少年なのかな。
熱血さはあんまり感じられなかったけど、ある意味凄みみたいなのがあったかも。

ああ、そういや目撃談どおり怪我しまくりだったね」

分からなくもないどころか、一言一句共感してしまえる。

春休みのあの日、彼は明らかに雰囲気がおかしかった。
包帯、湿布、眼帯、痩せた体。
酷い怪我を負ったということしか推察できなかった。
加えて本人に大丈夫かと聞いても、儚げに笑うだけだ。
決して、ああいう表情をする人間では無かったろうに。
精神だって大きく変わっていそうだが、それにしては同居の少女は落ち着いている。
学校にも行くようだし、一方通行の感じた不信感は杞憂なのだろうか。


それならそれで問題はないのだが。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/19(日) 23:54:54.22 ID:0CqfalOAO<>
「クラスメートとまだ話はしなかったけど、リアルツンデレ巨乳委員長とか
青い髪の毛のハイな男とか隣のクラスも金髪グラサンだの金髪鼻ピアスだの。
なんかミサカがショッキングピンクにしたところで普通なんじゃね?みたいな」

一方通行も自身のクラスメートを思いだそうとするのだが
削板の印象が強すぎて後はまともに出て来てはくれない。
とりあえず番外個体の転入先がアバンギャルド極まりないということはよく分かった。

「先生はすっげえ小さくて、どう見たって小学生。
なんだけど職員室の机には灰皿三個もあって、めちゃくちゃシュールだった。
そっちは? なんかあった?」

「レベル5が俺を入れて3人も居ることと、殺人ロボが闊歩してたぐらいだ」

「何それ!? え、気になるんだけど!!」

まだ1日目だというのに、内容が濃かったのはどちらも変わらないらしい。
鞄に入れた土産品のことも伝えるべきか、思案しながら道を歩く。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/19(日) 23:58:04.71 ID:0CqfalOAO<>

翌日



「おはよう、あくせられーた」

「あァ……」

「眠そうなんだよ、昨日何時に寝たのかな?」

「10時……」

「予想以上に長くてとってもびっくりしてるんだよ!?」

体力が絶望的に足りないのか、ある程度眠らないと使い物にならない。
脳が必要以上に働きすぎるのが悪いのだ。

未だに緊張した面持ちでインデックスは改札を通る。
ぎこちない足取りとロボットのような腕の角度に、不覚にも笑みが零れる。
これは儀式だと思うことにしたそうだが、まだまだ不慣れな点が多いようだ。

快速のモノレールに乗って最寄り駅へ。
車内も席に座れるくらいに空いていた。
横一列に設置された座席に隣り合って座った。

「昨日ね、みさきからこんなめーるが来たんだよ」

インデックスが持つ携帯を片目で見る。
車体が揺れるせいですらすらとは読めなかった。

「したは? たの……みにし……」

「明日は良いことがあるから楽しみにしておいてって」

「それはあの女にとっての良いことか、それともオマエにとってなのか」

銀髪が小刻みに揺れる。
苦笑しながら少女は、あの子は破天荒だからと笑う。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/20(月) 00:02:50.31 ID:Pr5IU2FAO<>

「オマエがそれを言うのか」

「でもみさきは結構おか……おもしろいんだよ、破天荒なのにチキンで」

言い直したのはインデックスの自分の友人への精一杯の優しさである。
引っ越しの時に駆り出されたときに、食蜂の趣味や人間性は理解したつもりだ。

「良いか、レベル5に真っ当な人間性を求めるな」

「あくせられーたが言うと説得力が異常かも」

インデックスの額を軽く小突く。

自分で言ったことだが、思いのほか納得してしまった。
自分だけの現実が大いに平均から異なるからレベル5なのだ。

「平凡で小心者で野心のない普通に幸せな超能力者なンざ居てたまるか」

――そんなの、狡すぎる。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/20(月) 00:03:47.77 ID:Pr5IU2FAO<> 数十分ほど揺られ、目的駅に着いた。
桜咲き乱れる並木通りを、同じ制服を着た少年少女に紛れて歩く。
紛れて、というのは彼らの主観であり実際のところ
注目を得なかったわけではないのだが。

「1時限まで20分もあるじゃねェか……もっと寝てられるだろ」

時計を見て一方通行はぼやく。
上空の太陽もまだまだ東に振り切れている。

「いや、次のだとほんとギリギリなんだよ」

「どこを脅せば都合の良い時刻表になるンだろォなァ?」

「何て言うか、あなたが言うと冗談に聞こえないかも」

「確かに割と本気かもなァ」

「や、止めて!?」

ふと下を見ると、散った桜の花びらがアスファルトにべっとりと付いている。
あまりに見苦しいので風で散らそうとも思うのだが、ここでは人目に付きすぎる。
これこそあのロボで掃除するべきなのではないか。


学校に着き、2人は食蜂の言う“良いこと”の意味をまざまざと思い知らされる。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/20(月) 00:09:22.46 ID:Pr5IU2FAO<>


靴を履き替え教室棟へ向かう途中に、イベントが催せそうなスペースがある。
昨日は入学式によせての華美な装飾と電報が張られていたはずだが
今日の主役は金髪の少女のようである、ご丁寧にステージまで用意してある。
到着した生徒・教室の多くが彼女の動向を気にして立ち止まっていた。

「みさきだ……」

インデックスの呟きは妙な緊張に包まれている。
彼もこの事態を飲み込めない。
ただ間違いなくこれがメールの内容なのだろうと理解出来る。
少し離れたところに、何故か削板が立っていて満足そうに頷いている。

5分ほど笑顔で様子を窺っていた食蜂は
スペースいっぱいに人が集まったことを確認するとマイクの電源を入れた。


「――えっと、朝のお忙しいときにお時間とらせてごめんなさぁい」


それだけでざわついていた生徒たちが一瞬にして静まり返る。
それも一言一句逃さないように、身を乗り出す者さえ見える始末だ。
さすがは心理掌握の名を冠するだけある、内心唸ってしまった。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/02/20(月) 00:15:33.50 ID:Pr5IU2FAO<>

「突然のことですが昨日付けで副会長になりましたぁ、食蜂操祈です。
まだ1年の身ですが、削板会長のサポートを精一杯勤めたいと思ってます。

精一杯頑張るのでご協力よろしくお願いします」

幽かなどよめきの後に湧いたのは空間いっぱいに響き渡る盛大な拍手。
それに何度も礼をして、食蜂はステージを降りた。

インデックスは考える。
人見知りだと言っていた彼女が嘘であるようには思えない。
だけれど、自分に精神操作をしてるようにも見えない。
マイクを持つ手は震えていて、両目は宙をさ迷っていたと思うのだ。


と、なると――。


「……あくせられーた」

杖を付くため拍手に加わらない隣の一方通行に声をかけた。

「……どォした」

「――恋ってさ、凄いよね」

「あァ……そォいうことか」

「うん、そういうことなんだよね。
引っ越しのときとか、ずーっとかいちょーがいかに素晴らしいか話されたもん」

どんなに否定してみせたところで、食蜂は削板に心酔している。
そんな彼は生徒会長で、副会長以下のポストは不在。

あの後、勇気を振り絞って可愛い企みを実行にうつしたのだろうか。
それを思うと、自然と口角が上がってしまう。
目一杯茶化して、そのあとよく頑張ったと言ってあげよう。


そして本職も頑張れと付け加えて。 <> おわり<><>2012/02/20(月) 00:22:44.40 ID:Pr5IU2FAO<>
玉虫色のコートの女は抜粋部分より後も出たのでしょうか、なら読みたいなと思っています
そんな感じで今回もお疲れ様でしたー!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/20(月) 01:59:08.28 ID:4omWDpaOo<> >>597
乙なんだよ!

みさき達には是非とも健全にいちゃいちゃして皆がうらやむ円満カップルにでもなってもらいたいものである。
そして白色コンビにはどこまでも刹那的で痛々しい、傷を甞めあうように互いを求め合うドロドロのカップルになってもらいたいものである。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2012/02/20(月) 21:30:15.72 ID:EvOfuarj0<> 乙であります
私がそぎみさに目覚めたのはあなたのせいだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/02/20(月) 23:24:13.70 ID:nusu9AhLo<> 乙!
精神系能力者のトップなのに無自覚に惚気るみさきちか…胸が熱くなるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/23(木) 13:33:01.39 ID:KYT/caAbo<> みさきちのくせにかわいいじゃねえか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/03(土) 00:12:28.93 ID:PctuIQD5o<> ソギ―さんマジいい男
結婚してくれ <>
◆ObanGQEW7M<><>2012/03/18(日) 21:50:17.02 ID:ujZlC7WAO<>
みさきちがもしかしたら13歳の可能性あるとか、何か心理掌握されてる感が否めないっすね……
ってなわけでもうちょいしたら投下しますー <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:26:28.58 ID:ujZlC7WAO<>

「みさき、ねえみさきってばー」

早速得た副会長専用の机に突っ伏し、身動ぎ1つもしない食蜂に声をかける。
が、聞き入れる様子はない。

「……」

「……どうしよう、あくせられーた」

彼は煩雑な部屋の中をぐるりと、
それから放心した副会長と脇で困っている彼女の友人を順に見る。

「その前に、ここに俺を連れてきたわけを話せ」

「そんなの、このみさきの対処は私1人じゃ無理そうだったからだよぉ」

「俺が居た方が駄目だろ」

「でも、昨日楽しくお喋りしてたかも」

「決して楽しくはねェよ」

初対面なのにあの罵り合い、どこが面白そうに感じたのだろう。

「みさきね、1時限目からずーっとこうなんだよ。
人見知りなのに頑張ったから疲れちゃったんだとは思うんだけどね」

「あの生き恥晒しっぷりで人見知りとはよく言うな」

「い、きはじさらし……」

金髪がごそごそと音を立てる。
自販機で買ってきた缶コーヒーのプルタブに指をかけ一思いに飲み干した。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:28:05.96 ID:ujZlC7WAO<>

「ああ、みさきってば自分も人にえげつないこと言うんだから、被害受けちゃ駄目かも」

「ごめんなさいねぇ……」

彼女は頬杖をつき溜め息を漏らす。
埃っぽい部屋の中、やけにその声は響くのだ。

「で、副会長様はあンなご立派な所信表明しておいて何が憂鬱なンだよ?」

「引っ越しサービスの人たち相手に指示どころか挨拶も出来ない子なのに。
うんうん、よく頑張ったんだよ」

と彼女を見ると、早速弁当を広げ食事に取りかかっていた。
相変わらず女子が食べるとは思えない、凄まじく重そうな弁当箱だ。

「……何て言うか、迷惑じゃなかったのかなぁ……」

「茶番を見せられた俺は、そォ思う権利があるだろォな」

「貴方なんかどうでもいいのよぉ……問題は……あの人がぁぁああ!!!」

両手で顔を被い、じたばたとスカートの翻ることも気にせずその場で悶える。
どうしようもなく情緒不安定なのは分かっているのだが
しかし急速に不安になってきてしまった。

「でもみさきが副会長になることも認めたんだよね? なら」

「実は嫌だけど調子に乗った1年の面目潰さないために、とかぁ! 私の馬鹿ぁ!」

まあ有り得ない話では無いが、それをこちらにぶつけたところでどうしてほしいのか。
ぬるいコーヒーをすする。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:29:53.26 ID:ujZlC7WAO<>

「うっせェな、そンなに不安なら削板に聞けば良いだろォが」

そんなことが出来るかと、食蜂が息を吸い込んだ時だった。

ガラガラと音を立て、扉が開く。
両手がふさがっているせいで足で開けられた向こうにやはりというべき人影。

「おーっす」

「かいちょー、お邪魔してるんだよ」

「つゥか邪魔なら出て行くが」

「おう、ここは陰気くせえが良かったらゆっくりしていってくれ。
ああ気にしないでくれ、俺も静かなのは苦手でな」

トレイに学食で買ったと思われる昼食を乗せ、削板は自分の席につく。

「な、なんで貴方がここに」

「片付けねえとならん仕事があるからだが、ん、不都合だったりするのか?」

「そんなことないわぁ、いつだって居れば良いじゃないのよぉ……」

何というタイミング、そしてメンバーなんだろう。
食蜂が危惧することは1つ。
先ほどの会話を白コンビが蒸し返さないかどうか、ということだ。
横目で見る限り耳打ちし合っているのがどうにも恐ろしい。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:30:40.39 ID:ujZlC7WAO<>

「それで食蜂、外で聞こえたが何か質問があるのなら遠慮なくしてくれ」

「いえ、特に大したことじゃ無いのよぉ。ほんとに、ねぇ」

「そうか?」

なら良いが、と呟いて削板は食事を始めた。
自分がまだ何も食べていないことを思い出しゼリーの封を開けた。

つるんとしたそれが喉を通るのだが、今の微妙な心境もあり快いとは言えなかった。

「食蜂、お前それだけなのか?」

「ええ、元々少食だしぃ」

「どう考えてもお腹空いちゃうんだよ!」

「そうねぇ……でも食堂行くほどじゃないしぃ」

「オイ、第五位」

声の主、一方通行を見ると何故だか振りかぶっているではないか。

「わ、わわ」

急に投げられた細長い何かを、危なげながら両手で掴んだ。
見ると棒状のフルーツケーキである、何故これを彼が持っているのだろう。
訝しげな顔に気付き、大したことは無いと言う。

「コイツを黙らせる用で持ってンだよ、うるせェから食え」

「あくせられーたのそれ凄く美味しいんだよー、いいなー私も欲しいかもー」

「弁当あンだろォが」

言われた通りにかじってみるとふんわりとした甘さとドライフルーツの酸っぱさがクセになりそうだ。

「まあ、礼はしておくわぁ」

パッケージも高級そうであるし、これを機嫌取りでもらえるだなんて過保護というか甘々だ。
羨ましいとも思わない。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:31:34.67 ID:ujZlC7WAO<>


***

放課後

部活勧誘に励む2・3年生の声を後ろに聞きながら
夕暮れの中、食蜂は箒を手にアスファルトを掃いていた。
今日は風が強いのでせっかくセットした髪も荒れてしまうのが悔しい。

「……きったなぁい」

落下し薄汚れた花びらを地面からこそいでゆく。
桜は好きではないのだが、こうするといっそう憎さが募る気がした。

あんなに開花を待たれても、散ってしまえば労れることもなく靴裏で擦られるのがオチだ。
そうやって手のひらを返されることも知らず呑気に咲き誇るのが彼女には馬鹿馬鹿しくて仕方ない。

汚くて見苦しい、落ちてしまったら引き上がることはもうないのに。

「こっちが嫌いとも知らずに、……本当にお節介よねぇ」

お節介で、直視できないくらいの眩しさだった。

誘蛾灯に誘われると同じく、醜い心根の自分なのに心を寄せている。
焦がれているのは彼そのものか、能力者なのに純粋に慕われている彼の立場か。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:34:17.16 ID:ujZlC7WAO<>

「……あぁ」

――いつの間にか手が止まっていた。
これ以上考えても答えは出ないのなら作業をして忘れるべきだ。

箒を再度握り掃除を再開する。
慣れてしまえばピンク色が捌ける様が案外楽しい。

「おー、やってんなあ」

唐突な声。

「!?」

驚き肩を震わせる。
やましいことをしているわけではないのだが、それでも妙な気恥ずかしさがある。

「ど……独断と美意識に基づき動いてるけど、……何かいけなかったかしらぁ」

やはり皮肉げになってしまう、直したいのにいつもこうだ。
出過ぎた真似ではなかったかとも心配になったのだが、晴れ晴れとする笑顔を返された。

「そんなこたぁねえ、気に入った! 俺にも手伝わせてくれ」

「別に良いけれどぉ……な、何で身構えるのよぉ!?」

武術には詳しくないので彼の体制が何かの型かは知らないが
このポーズを取った後は必ず謎の爆発と七色の煙が辺りを襲うのである。

白昼堂々殺す気か、慌てて止めに入る。

「いや、この煙でこいつらをどどーんとまとめてだな」

「何でもかんでも変な衝撃波出してばぁーん☆ じゃ済んでくれないってばぁ!
花びらは千切れちゃうし砂が舞い上がっちゃうでしょぉ!?」

全く、何を考えると思いきや。
気に入らないから殴られるのかとさえ思った。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:35:41.63 ID:ujZlC7WAO<>

「む、そうか」

「何で変に疎いのよぉ!」

先人の編み出したことは大抵が最善だ。
それを独創的な立場で……
別に嫌いでは無いが冒険し過ぎでは無いのだろうか。


「なるほど、じゃ箒を」

「……そこに置いてあるわぁ」

「おお……! 気がきくな、流石は心理掌握」

「いえ、どうせ私に言いくるめられて手伝うと思っただけよ。
貴方の行動は読みやすいし推理力を働かせるにも値しないわぁ」

やはり、ここでこうやって掃除をしていても手伝ってくれたのは削板だけだった。
インデックスは用事があると申し訳無さそうにしていたし
杖を付いた人間に箒を扱わせるわけにもいかない。

「しっかし、もう大分綺麗になったな。いつからやってたんだ?」

「授業終わってすぐかしらねぇ」

「そろそろ2時間になるってところか、お疲れさん」

「だってあまりに見苦しくてぇ、しかも夕焼けってことは明日は雨だし。
全く……新入生にこんなことさせていいのかしらぁ?」

違う、手伝ってくれることの感謝を言うのが先じゃなきゃいけないのに。
何故悪態はこんなにすらすらとでてくるのだろう。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:37:03.70 ID:ujZlC7WAO<>

「はは、違いねえ。そうだそうだ、アイス食わせてやるから許してくれねえか」

「あの時も連れてかれたけど特別好きってわけじゃないのよぉ?
それに寒いしぃ……仕方ないわ、ワッフルにしても良いわよねぇ」

「ああ、許してやろう」

なら、と呟き掃除に戻る。

残っていた花びらを一ヶ所に纏め、庭掃除用のちりとりで残さず取った。
ゴミ集積場へ二度往復し鞄を取りに行き、全てが終わる頃には辺りは真っ暗になってしまっていた。

「随分と暗くなっちまったが、菓子を夕飯にするのもな……」

「アイスは良いってばぁ。
それよりどこか食べに行くなら付いていくわよぉ
もちろん奢って下さるわよねぇ、センパイ☆」

「残念だな、俺の財布はどうしようもなく軽い!
……と言いてえところだが、しかしだ。
後輩を寒い中長時間拘束した挙げ句、ポイ捨てというのも義理が通らねえよなあ。

……良いだろう、付いて来い!」

「うふふ、遠慮なくいただくわぁ」

正直なところ嬉しすぎて舞ってしまいそうな気持ちを押し込めている。
押し込めて、押し込めて、それでも心の多くを占める。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:38:20.59 ID:ujZlC7WAO<>

暗く人通りの少ない道を並んで歩く。
女子にしては高い身長は数あるコンプレックスの1つだった。
今だけは感謝しようと思える。
隣の早歩きにも付いていけるし、何より表情がよく見えるのだ。

「なあ、副会長さんよ」

「改まってどうしたのよぉ」


ぽつぽつと街灯が光り出す以外は
清濁併せ持つ学園都市に似つかわしくない静かな夜。

「お前の冷静で気が回ることってのは、それはそれは得難い長所だと思うわけだ」

「急に……どうしたのよぉ」

目を閉じ首を横に振る。

「俺は行動してから思考する性格だから後で首回んねえって展開も頻繁にあるのさ。
馬鹿なことにいつまでたっても学習しねぇ、毎回思うのにな。思慮深くいけって。

お前にはきっと俺の短所を補ってもらえる、そう思って副会長に任命したわけだ。
現にこれだって1人じゃ気付かなかっただろうしな」

「……」

「お前は俺に借りがあると思っているのかもしれねえが、それはこっちだって変わらねえ。
あの時のお前の行動は最良で最善で最高だった。
衝突もしたが俺たちは正反対で持ちつ持たれつなんだろうよ。

……だから義理を感じて提案したのなら、それは取り消してくれていい」


そんなこと、あるはずが――。

生唾を嚥下する。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:40:41.11 ID:ujZlC7WAO<>

あの冬の一件は、自分と彼の人間性の差をくっきりと分けたあの事件は
自分が一方的に救われ、彼には何も出来なかった。
納得がいかないのに折れてもらい、いざ立てた作戦は成功しなかった。

そんな醜態を晒したのに、助けてもらった。
なのに、感謝している――?

「あれは……私のミスだけで、何も……」

「要請に応えた超能力者はお前だけ
それに初めての対テロ組織で良く立ち回ったと思う。
それに俺だって勉強になったんだ。
救いたくても、どちらかの重りを捨てなければいけない日が来るかもしれないって」

それだって興味があったから、この件と早く手を切りたかったから。
不純でしかない、目も当てられない。

それなのにどうしてここまで言ってくれるのだろう。
嬉しさと恥ずかしさで、彼女の視界はぼやけ瞳は涙により覆われる。

「でもな、もし義理じゃなくて善意や興味から来るのなら両手を上げて歓迎する。
お前は俺に必要で協力して欲しいと思うからだ。

――だから考え込むな、卑下すんな。
俺にとってお前の提案は喜ばしく、納得のいくもんだったんだぜ?」

隠していたつもりなのにどうして気付いてしまったんだろう。
優しく暖かみのある声を聞く度、涙腺が緩む。悟られまいと上を見た。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:43:07.33 ID:ujZlC7WAO<>

「……私は、貴方を傀儡に学園を乗っ取ろうとしているのかもしれないわぁ。
それでも良いのかしら、ねぇ」

「まあ、そうかもしれんが。
お前が能力を使う時はしょっちゅう髪を弄るって癖に気が付いてるしなぁ」

「えっ、そうなの」

「嘘だ」

「ううううううう!!!」

睨んでから、こんな目を向けると嫌われるかもしれないと慌てて眉間の力を抜く。
そのせいで百面相のように表情が定まらない、嬉しいのか悲しいのか悔しいのか。

「俺なんかに騙されてるうちは大丈夫だろうし、何より下克上は大歓迎だ。
はは、立ち向かってこい!」

「精神操作系の私がどうして貴方に勝とうとするのよぉ!?
馬鹿じゃないのぉ!? そういうところが脳筋なところが嫌い!」

また心にも無いことを言ってしまった、今日は大人しく寝れるだろうか。
ともかく大きく深呼吸をし、瞳を真っ直ぐに見据えた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/03/18(日) 22:48:14.66 ID:ujZlC7WAO<>

「いつか私が貴方を掌握するまで……首根っこ洗って待ってるといいわぁ。
だってそう言ったのだもの、許可したものねぇ」

「まあそうなんだが、何だ食蜂、急に元気になったじゃねえか。
腹でも空いてたのか?流石にゼリー1つは、なあ」

「良いの、ダイエットしてるのよぉ!

まあ、それまではせめて従順にしていようかしらねぇ」

「ああ、寝首掻かれる日を楽しみにしとこうじゃねえか」

「会長の腕章、無くさないようにしておくことねぇ」

いつかこの優しさに報えるのだろうか。
自分の行動を見透かしているその余裕さも、越えることが出来るだろうか。

この気持ちすら悟られてしまっていたらと思うと叫びたくなるのだけど
今はぐっと我慢し先へと歩こう。


「……ほんとにぃ、大嫌いなんだから」

朧に光る月が夜空で存在を主張する。

小さな小さな呟きにも笑みが送られた、そんな気がした。
<> 終わり<><>2012/03/18(日) 22:51:56.78 ID:ujZlC7WAO<>
そんな感じの会長と副会長のアレコレでした、白コンビはまた次回

それではお付き合いいただきありがとうございました! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/03/19(月) 06:24:31.65 ID:5FybyACto<> 乙!

素直になれなかったり、情緒不安定だったりとみさきちマジ恋する乙女
ソギーにあっさり騙されるみさきちとか、そんな食蜂さんを見守るソギーとか
会長副会長コンビ最高すぎる!

白白コンビを楽しみにしながら
”庶務野郎”の参戦も楽しみにしてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/19(月) 15:11:47.39 ID:4hHJdG2Xo<> 次回は白コンか、待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/19(月) 16:50:09.24 ID:UdsD+Fa90<> なんと、乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/19(月) 17:05:09.69 ID:cp53vdA2P<> 乙
それにしても過去編が語られるのはいつになるんだろうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/03/20(火) 05:53:48.67 ID:1rCoduu50<> 目録さんは問題ないと思うが、

第1位はクラスに溶け込めているのか?  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<><>2012/03/22(木) 20:42:43.75 ID:Mh4Lqaxv0<> みさきちかわいいよみさきち <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/23(金) 02:21:58.65 ID:ll4J3zFZ0<> そぎみさ可愛すぎわろた…

白白にも幸せになって欲しい俺に
希望をよこせくださいお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/04/02(月) 08:34:13.05 ID:zron/mwzo<> >>623 桃白白に幸せになって欲しいとは……変わってるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/04/03(火) 09:29:01.73 ID:+/Z1IJiH0<> 追いついた
乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/04/03(火) 11:20:57.34 ID:+/Z1IJiH0<> 追いついた
乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/04/03(火) 13:30:37.85 ID:hn/ebIsAo<> 追いついた!乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/10(火) 07:19:02.06 ID:/gDqXfU3o<> そろそろ続きが読みたいでござる
白白コンビの一見健全な交際風味の何かや
乙女心200%全力全壊な食蜂さんの願望駄々漏れライフや
ヒューズが飛んじゃってる風斬さんや
黒子以上にレズ道に邁進してそうな初春さんや
黒子の負担絡みで何気に友達失ってそうな御坂さんや
恋人が出来てうはうはな変態青ピの青春ライフや
コンシーラー代を稼ぐのに余念の無い上条さんや
そんなアレコレが読みたいでござる!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/11(水) 19:56:38.35 ID:v9bzq6Lv0<> ずっと舞ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/14(土) 00:04:46.53 ID:GrOsrtKA0<> 白白の会話劇をもう随分読んでない気がするんだよ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/02(水) 00:59:40.01 ID:EWCiH5kDO<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/05/03(木) 22:51:39.88 ID:fyEk9huF0<> 頑張れ応援してるぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/05(土) 11:12:52.43 ID:RntpFbboo<> まだかなまだかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<><>2012/05/05(土) 16:30:55.70 ID:tGYc5awX0<> 学研の <> ◆ObanGQEW7M<><>2012/05/07(月) 02:25:50.22 ID:rD/g4EBAO<> 気付けば5月……だと

遅くなってすみません、投下しますー! <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:26:28.70 ID:rD/g4EBAO<>

前の授業は棟が違ったため、一方通行には移動するのも面倒である。
おまけに体中にまとわりつく眠気、授業中熟睡してもまだ体は重い。
風は麗らかで、どこであっても花の匂いがついてくる。
4月の中旬は昼寝に限ると、カフェテリアで人を待ちながらそう思った。

「いやっほうあくせられーた! 今日はたのしっいがっくしょくー!」

お腹が空きすぎてハイなのだろうか。
一方通行に彼女の活力のわけは分からない。

「どうしよー、うふふAランチかBランチかなんて選べないかも!
あっ、ここはいっそ両方で……!」

10の指をもぞもぞと動かすインデックスの目は煌々と輝いていた。
我慢が出来ないのか口の端からちらり、犬歯がのぞく。

「……オマエは元気だな」

「いつも通りだと思うけど、あくせられーたはお疲れなの?」

「夜まで……クソガキ二匹の相手させられたンだよ……ねみィ。
見れねェならスプラッタなンざ借りるンじゃねェっつゥ」

「スプラッタ……! それは気力も削られそうな……」

「まァ仕方ねェ……食券買いにいくか」

席を立ち学生がひしめきあう食券売り場へと向かう。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:27:15.53 ID:rD/g4EBAO<>
ここの学校の生徒層は割と裕福なためか、学食にしては値段は安くない。
その分味は折り紙付きといったようで、生徒や教師のみならず
近所の住民や関連施設の職員も来ているようであった。

購入した券を出し、待つこと数分。

「結局何にしたンだ」

「Aランチと特上御膳なんだよ?」

それがものの数分で出てくるこの学食のシステムも凄いし収まる少女の胃も凄い。

苦戦しながらも持ち帰り、いざ食べようと箸を持ったときだった。

「すみません、インデックスさん。お隣よろしいですか」

それは新緑を具現化したような声だった。
見上げた顔は涼やかで、嫌味を感じさせるほど甘いマスク。

「わたしの隣は誰も居ないからね、どうぞー」

「ありがとうございます」

「それにしてもそんな量で足りるのかな?」

「ご心配ありがとうございます。ですが」

切り取ってしまえばただの和やかな談笑である。
制服のボタンを見るに新入生のようだ
もしかしたら彼女とは同じクラスなのかもしれない。

「――なァ」

「ん、どうかしたの?」

少女ではない、と首を振る。
一方通行の瞳は正面より右、茶髪の少年の方へと向いていた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:27:42.31 ID:rD/g4EBAO<>
「えっと、僕でしょうか? 何の御用で」

「知らばっくれンじゃねェ」

皆まで言わせなかった。

この顔に声に名前に、気がつかないとは言わせない。
彼らは望んでいないと言いつつも、一蓮托生の仲では無かったのか。

「……俺達に何の用だ、海原」

場を沈黙が駆け巡る。
海原の形の良い目は不可解という光をたたえ、微笑を浮かべつつも強張っている。

「あれ、みつきとあくせられーたは知り合いなの?」

「いえ、僕は初めてお会いしたと思うんですが……」

「そォいう指令なンだろォな……チッ、何が目的だ」

“グループ”のメンバーが1人、海原という彼のことを一方通行はよく知らない。
同じチームであるのだが、向こうに興味など持たなかったしあちらもそうだろう。

「目的と言われましても。僕はここで昼食をとろうとしただけで」

「あァ?」

「まあまあ2人とも、早く食べないと冷めちゃうんだよ?」

「生憎だが俺は冷そばだ」

「でもみつきはカルボナーラかも。いただきます! ほらあなたたちも!」

「い、いただきます」

「……いただきます」

インデックスの気迫に押されとりあえず箸をとることにした。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:28:22.20 ID:rD/g4EBAO<>
ずるずるとそばをすする一方通行とは対照的に、海原はスプーンを使いパスタを食している。
それが妙に腹立つので、これでもかと唐辛子を器に振り入れた。

「ははははひ、ふぃりはいはんはほへ」

「俺はそう思ってるが」

「あの、今なんと」

「『あなたたち、知り合いなんだよね』だと」

「ですから僕は全く見に覚えがな……ああ、またあれですかね」

憂いを帯びる海原の瞳。
インデックスはエビフライを平らげ、彼に尋ねた

「あれって?」

「ドッペルゲンガー、もしくは他人の空似とも言いますか。
僕に瓜二つの何者かがこの街を闊歩していたとの目撃情報がありまして、それも数件ではなく」

「じゃあさ、あくせられーたもそれを見ていたんじゃないのかな?
だってこのみつきはさ、高校に入学手続できたんだよ?」

そうだ、確かに入学前に行った健康診断により誰かになりすますことなど不可能だ。
仮に肉体変化出来るものが細胞レベルで変身したといえど
遺伝子まで操作することは不可能だ。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:29:11.88 ID:rD/g4EBAO<>

「そのドッペルゲンガーには何かと良い噂を聞かなくて。
同時刻にアリバイが成立していたから良かったもの、犯罪の濡れ衣を着せられそうになったこともあり……」


思い当たる節が有りすぎる。
グループにおける海原の役割は諜報員、確か皮を使った肉体変化だったか。

「露出狂のピンクのさらし女に覚えはねェか」

「ありませんね」

「シスコン金髪グラサン男は」

「……ありませんよ」

「何者かに皮膚を剥がされた、何てことは」

「それは……」

途端に翳りを見せる顔から、そういうことらしかった。
はあ、と溜め息をつきテーブル上に置いてあるグラスを取る。

「オマエも災難だな」

「全くですよ」

「ふーん、じゃあみつきはあくせられーたと珍走してたわけじゃないんだね」

「元よりしてねェよ」

「え、あなたが族のヘッドだったんじゃないの?」

「オマエ俺の名前から判断してるだろ」

どうでもいいがこの少女の口から
族のヘッドと発せられるのは不条理にもほどがあった。

「じゃあ音楽性の違いで解散なのかな」

「あいつらと奏でるハーモニーは不協和音だろォな……」

「そうそう、最強なんてくれてやるって歌ってそうだなって思ったんだよ」

「生憎最強じゃねェし、俺が睡眠欲に抗えるものか」

インデックスはかき揚げを一口で飲み込みうふふふと笑ってみせた。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:30:12.95 ID:rD/g4EBAO<>
よほど美味しかったらしく、目はとろりと溶け落ちそうだ。

「美味かったのか」

無言のまま鷹揚に頷いた。
天かすを口につけたまま焼き魚を食べるようだったので
ポケットに入っていたウェットティッシュを差し出した。

「いつもすまないねぇ……かも」

「だったら持って来い」

「違うよあくせられーた!
そこは『それは言わない約束でしょ』なんだよ」

「そンな老人ごっこ誰がやるか、こいつとでもやってろ」

何のためにインデックスの隣に座ったのか分からない。
気を利かせたつもりで我関せずとばりにパスタを食べる少年を指差した。

「え、あ、僕ですか」

「みつきにやらせたら可哀想かも」

「ほォ……言ったな」

親指と人差し指を擦り合わせ、なるべく残忍に笑ってみせる。
青くなったインデックスは縋るように海原を見た。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:31:18.71 ID:rD/g4EBAO<>
「ううう、すぐデコピンなんてあくせられーたってば凶暴なんだよ……」

「お言葉ですが、デコピンならお優しいなあとしか」

「全くだ、どこぞのお子様はこれだからいけねェ」

どこぞのお子様はふんと鼻を鳴らし、春の七草粥を飲み込んだ。
粥はいつ飲み物になったのか、と男性陣は口には出さない。

「それにしてもお二人は入学前から知り合いだったんですか?」

「そうだね! 路頭に迷う彼を私が助けてあげたのが始まり」

「虚言癖め。違うだろォが、俺がオマエに奢らされたんだよ」

「む、あの時人探ししてたよね!」

言い争う二人を見て海原はフォークをそっと置いた。

かたや第一位、かたや特待生。
肩書きは立派なものだが本人達を見てしまえばそれも無粋だと思える。
自分も意中の少女とこんなに和やかな会話が出来れば良いのだが。

また今日もゲコ太DVDで研究するしかないな、と海原は息を吐いた。
まあそれも嫌いではないのだけれど。 <>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:32:57.64 ID:rD/g4EBAO<>

放課後

インデックスの首にかかるロザリオが西日を受けてキラキラと輝く

「今日はね体育でバスケットボールをやったんだよ。
みさきのガードの仕方が機械的で凄く笑っちゃったかも」

「そォか、あいつ運動出来そォだが」

「バスケは人に触っちゃうかもだから苦手なんだって」

「なるほどな、オマエはどうだったんだ?」

「私はドリブルからの練習だったね!」

まあ、そうだろう。
ルールは完璧であろうと、理論を知っていようと
そのデータを自身の体であっても完璧に出力出来る者は居ないのだから。

閑散とした箱の中は何とも閉まらない空気に満たされている。
緩くて生暖かい、その雰囲気は眠気を醸成してきた。
がたんごとんという縦揺れも瞼を重くする要因だ。

「あの後みつきが、相席させてくださりありがとうございましたって」

「慇懃だな、人生辛くないのかとすら思うが」

「良い人なんだよ? 美味しい飴くれるし、クラス長もやってくれたし」

「まァ……悪意は感じなかった」

しかし眠い、瞬きの都度に旅立ちそうになる。
ちゃんと日本語で会話出来ているのだろうか。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:33:48.96 ID:rD/g4EBAO<>

そんな一方通行を見てインデックスはくすりと笑った。

「ふふ、寝ても良いよ」

「……悪ィな、そォする」

「らすとおーだーとみさかわーすとだっけ、あなたの同居人」

「あァ」

「わーすとはとうまのクラスメートで、結構話しかけてきてくれるんだって。
ケガしてて何かと不便なところに気を回してくれるって言ってたんだよ。
2人にもいつか会ってみたいなって」

「ゴールデンウイークにでも来れば良い……アイツ等暇だろォし」

「時間があったらお邪魔しちゃうんだよ、どんな人たちなのかな」

「姦しい奴らだがオマエとは仲良くなれるだろォよ……」

「そっか、なら嬉しいな」

ふわりとした沈黙。
つかず離れずの距離にある少女の温もりのせいで尚のこと温まる。

眠ってしまおう、そう目を閉じるも最近あることが引っかかる。
この精神状態なら話しても良いかもしれない、後で言い訳出来るのだし。

それだけ指摘して寝てしまおうと彼は口を開いた。

「……オマエってよォ」

「どうしたの、とってもおねむなあくせられーた」

「……自分のこと喋らないな」

人、人、人。
少女が語る『誰か』は愉快で、彼女からの愛を感じる。
だからこそ、語り手が埋没しているような気が最近少ししていたのだ。

他でもない彼の友人はインデックスであるのに。

「ただの感想だが……まァ、駅に着いたら起こせ」

うん、と小さな返事の声が聞こえた。
<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:36:01.58 ID:rD/g4EBAO<>


「話さない……か」

上手にごまかしてきたつもりなのに、彼は本当に敏い。

話したいこと、話したくないこと、話さなくてはいけないこと、話してはいけないこと。
ぐるぐると少女の頭を回り、縛る。

情報の取捨選択に自信が無いから、不用意なことは喋らないことにしたのだ。
不用意なことには――やはり自分も含まれる。

この不器用で優しい友人と話していると、まるであの頃に戻れた気がするから。

がたごとと電車は進む、帰りたくないというインデックスの気持ちを知らぬまま。
安住の地はもうあそこにはない、必死に幸せを繕う。
優しさの膜で覆った痛々しい場所だ。
家族ごっこをしていたあの夏や秋を思う。
今は家族ごっこのままごとをしているようなものだ。
あまりにも救えない。


2人でいると骨の髄から寂しくて、3人でいると身が切られるように辛くて。

――1人でいると死にたくなる。

あの部屋に、戻りたくはなかった。


(それでも、私は私を恨める分マシなんだ。
当麻と氷華はそれすら出来ない、私のせいで……ううん私のためだったから)

車窓から覗ける景色はのどかで美しく、インデックスの心情を逆撫でする。

<>
◆ObanGQEW7M<>saga<>2012/05/07(月) 02:49:52.84 ID:rD/g4EBAO<>

(ねえ、一方通行。
いつか私が君に話すときが来たら、その時はさ……)

この賢く優しい友人は、ぶっきらぼうにも自分を気にかけてくれるから。
彼の力を使えば全てを知るだろうから。


例えば――彼女が上条当麻を取り返すために、或る少女を再起不能にしたことであるとか。

例えば――上条当麻のために魔術を科学を、生命をも冒涜したことであるとか。

例えば――自分の願いで風斬氷華に上条当麻を殺めさせたことであるとか。

例えば――そうやって強引に取り戻した彼の精神は肉体は、磨耗しきっていることであるとか。

例えば――風斬氷華の暴走を知りながらも止められないことだとか。

例えば――先日、ハワイで戦争の火種を巻いてきたことだとか。


薄氷の上でうずくまるインデックスに、手を差し伸べてはいけない。
踏み出したらきっと誰もが沈んでしまう。

「私のこと、ちゃんと、軽蔑してね」


情けないこの話のあらましを。
所詮幸せになれなかった道化を。
のうのうと生きている極悪人を。

せせら笑ってね、とうそぶいた。

<> 終わり<>saga<>2012/05/07(月) 02:53:20.76 ID:rD/g4EBAO<> 海原(真)の不憫さは禁書でもトップクラスかなあと
現実で言ったら自分の顔でヤのつく職業で働かれているみたいなものですしね

そんな感じで今日は終わります、お付き合いいただきありがとうございましたっ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/05/07(月) 05:17:41.90 ID:6jNr4+Ds0<> >>1乙

「所詮幸せになれなかった道化を。」

さすが白白、病んで来た… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/05/07(月) 18:59:12.92 ID:V3gh5h3L0<> >>1乙
久々に覗きにきて良かったぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/08(火) 08:30:34.82 ID:o2Z8BgTVo<> 不穏な空気… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/05/08(火) 08:51:57.17 ID:U7t1BWJ+0<> 念動力使いの海原(本物)さんじゃないですか!
ラブラブだけどなんか病んでる……イイ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>sage<>2012/05/08(火) 19:14:24.89 ID:UfNORV/M0<> なんだかこのインさんグレムリンなんじゃねえの?って思ってしまう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/05/22(火) 23:33:19.33 ID:4PPMJwU6o<> もうすぐ一年だね
毎度楽しく見させてもらってます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/27(日) 12:23:54.06 ID:q86qJ9/Qo<> 海原さん……! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/28(月) 00:22:48.88 ID:N7fdRvQNo<> マダカ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/30(水) 23:57:01.07 ID:xKxHdn+So<> 一年たったったね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/16(土) 10:49:12.68 ID:O6BZpSxao<> たったったな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/06/21(木) 22:44:07.14 ID:2tlPSCxto<> 舞ってます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/09(月) 02:35:37.11 ID:d/0DB/PDO<> このままエターナってしまうのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/21(土) 16:01:45.59 ID:P+yEiJjDO<> 白白コンビ大好きです

まってますー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/25(水) 21:18:13.39 ID:jgyuagzUo<> まってまーす
エターならないでね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/07(火) 23:16:37.58 ID:k+fgHqTz0<> わたしまーつーわ♪ いつまでもまーつーわ♪ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)<>sage<>2012/08/13(月) 04:44:32.26 ID:Zp9D1osPo<> 埋まってます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/08/30(木) 05:00:59.06 ID:mMtDwQ8H0<> すげえ下がってるな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/09/10(月) 06:38:38.32 ID:E82RyWz30<> 頼む!もう禁書通行成分が足りないッ!
あの甘くはなってないけど、でも互いを意識し始めているあの酸っぱさが欲しい!あの酸っぱさを所望するッッ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/09/10(月) 06:40:05.36 ID:E82RyWz30<> そして余裕のキリ番get <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/19(水) 17:02:18.57 ID:GuSmB+fIO<> キリ番(失笑) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/09/23(日) 22:51:48.69 ID:/VwPIX6No<> 舞ってるお <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/27(木) 18:36:16.59 ID:gsoq3nPIO<> まだー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/30(日) 22:14:37.39 ID:orgEGgin0<> まってるー <>