◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:01:57.49 ID:vI5sckLy0<>

当スレは

ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305391028/

の2スレ目、そしておそらく最後のスレとなります


お読みになる際は以下の点にご注意ください

※ステイル×インデックスが主役 
※未来設定
※全体的に誰得
※つまんないギャグとなんちゃってシリアスが交差しきれてない
 =地の文と台本形式が入り乱れて読みにくい 
※勝手なカップリング多数
※稀にキャラ崩壊
※俺得

それでもいいなら↓へどうぞ

<>インデックス「――――あなたのために、生きて死ぬ」 >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:03:54.47 ID:vI5sckLy0<>

学園都市第二三学区。

宇宙開発施設が立ち並ぶこの学区では、常時はおろか一般客来場のため

警備が緩められる大覇星祭期間中ですら、その警戒が解かれる事は無い。



その二三学区をいま現在、かつてない喧騒が支配していた。

国際空港の連絡通路からエントランスホールに至るまでを埋め尽くすのは全て人。

興奮して隣の友人に何事かまくしたてる男子学生。

真っ白な修道服に身を包むコスプレ女子学生。

『Welcome To Japan』の幟を掲げている電子街特有の雰囲気をまとう集団。

それら野次馬とはスペースを区切られて、テレビカメラやマイクを準備するマスコミ。



あまねく熱気の矛先は、空港内の随所に特別に設けられたモニターである。

画面に映し出される滑走路にコンパクトな旅客機が姿を見せた瞬間、おお、と歓声が上がった。

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:06:12.44 ID:vI5sckLy0<>


無事着陸を終えたジェットが停止して十五分ほどは、

滑走路を取り囲んでいた黒服の男たちが周囲を神経質に固めていた。

指揮を執っているのは前時代的なデザインの杖をつく白髪の男だ。

お預けを喰らった形の群衆が不満な空気を醸し出し始めた事を察知したわけではないだろうが、

警備主任がカメラに取り囲まれる己が上司に向けて、一つ大きく頷く。

すると、遂に機体側面のハッチが音を立てて開門された。


先刻とはうって変わって大空港全体を束の間の閑静が取り巻いた。

扉の隙間から陽光が差していると錯覚した者は、果たして幾人居たのであろうか。

輝きの正体は、溢れんばかりの笑顔から放たれる光であった。





十字教三宗派の一角、イギリス清教が最大主教。

インデックス=ライブロラム=プロヒビットラムが、正式に日本の地を踏んだ瞬間だった。




<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:07:00.71 ID:vI5sckLy0<>


はあ、とそこかしこから恍惚とした吐息が漏れる。

報道マイクを握って現況を報告しなければならない筈の

プロのテレビマン達でさえ、呆然として阿呆面をお茶の間に垂れ流していた。

それほどの、俗世の穢れとは無縁の光景であった。



故に、なのであろうか。

聖女のすぐ後ろに影の如く寄り添う大柄の男など、誰一人として気に留めない。

最大主教の純白の聖衣と見事なコントラストを形成する、

漆黒の牧師服に身を包んでいるにも関わらず、である。



民衆の注目を一身に集める女性はにこやかにカメラに手を振りながら、

階段を一歩、また一歩とゆるやかに下っていく。

その正面でこれまた温和な笑みを浮かべて待つのは、学園都市統括理事長、親船最中。

階下へ辿りついたインデックスと親船が手を取り合った瞬間、この日最大の喝采が渦を巻いた。


<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:07:29.58 ID:vI5sckLy0<>





あの第三次大戦からおよそ十年の歳月が流れた、七月十日。



学生のみならず数多の群衆が見守る喧騒の最中で。



歴史が痛みを教訓に前進し続ける証左としての。








かがく    まじゅつ    こうさ
学園都市とイギリス清教の、対面の瞬間であった。





<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:08:46.99 ID:vI5sckLy0<>


果てしないように思われた歓喜の声が徐々に徐々に静まってくると、

インデックスがそのふっくらとした唇を動かそうとした。

当然の如く、航空機脇での撮影を許可された運の良い放送局の集音機が一斉に向けられる。



『統括理事長さま自らのお出迎え、大変身の縮む思いです。
 お身体の具合はその後、いかがでいらっしゃいますか?』



流暢な日本語がマイクを通して響き渡ると、今度は驚愕の色が辺りを包む。

最大主教が常人離れした記憶力の持ち主であるのは周知の事実だが、語学まで完璧にこなすとは。

親船はその顔をはっきりと綻ばせると、孫に接するかのように無邪気に聖女に感謝を述べた。


『まあ、ありがとうございます! 最大主教様の労り、老骨に温かく染みますわ』


その光景を直ぐ後ろから見守っていた神父の、真一文字に結ばれた線が微かに上弦の弧を描く。

誰にも認知されていないつもりなのだろうが――

この場で唯一男の魔術が通用しない白髪黒服が、肩を軽く竦めた。


<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:10:13.13 ID:vI5sckLy0<>

んが。


『ようこそ、学園都市へ。つきましてはこの感謝の気持ちをパネルに籠めましたので』


怪しくなる雲行きと不吉なフレーズに、二人の魔術師の面持ちが途端にこわばる。

同時に遥か彼方の管制塔屋上に、特大のボードがババーン! と空だった筈の座標に跳躍してきた。


『どうぞご覧くださいね』


おぞましい悪寒が背筋を走るのを感じた神父が、即座に最大主教の前方にその身を滑り込ませる。

が、時既に時間切れ。

そこに切り取られているのは、ことさら馬鹿でかく引き伸ばされた例の百万再生映像









――――ではなく、元気な姿の親船最中であった。




<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:11:32.81 ID:vI5sckLy0<>



















                   ┌─―─────────―――――┐
                   |                       .|
                   |                       .|
                   |   ヘ(^o^)ヘ おかげさまで元気です。.|
                   |     |∧                 |
                   |     /                  |
                   |                       .|
                   |                       .|
                   └─―――――――────────┘



<> グダグダ編<>saga<>2011/07/03(日) 01:12:17.47 ID:vI5sckLy0<>






デデーン




インデックス、ステイル、アウトー






<> グダグダ編@<>saga<>2011/07/03(日) 01:13:42.47 ID:vI5sckLy0<>


拡声器越しの淡々とした処刑宣告は、二人にとって聞き覚えの無いわけがない声で告げられた。

今この瞬間だけは『幻想殺し』から『空気殺し』へとジョブチェンジしたヒーローを呪いつつ、

赤髪バーコードことステイル=マグヌスは腹の底から一発、乾坤一擲の怒号を放った。





「そんなん反則だろうがあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっっっ!!!!!!!!」










                   ┌─―─────────―――――┐
                   |                       .|
                   |             / .|
                   |          (^o^)/ |
                   |         /(  )        |
                   |      / / >    |
                   |         まあまあ(笑)   .|
                   |                       .|
                   └─―――――――────────┘



「動くなあああああ!!!!!!!!!!!!!」




<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 01:17:26.07 ID:vI5sckLy0<>
申し訳ありません、このようなスレで なんかAAずれてますし

というわけで今日はここまで
どんなスレかと聞かれたらこういうスレだと答えるのに丁度いい部分だけ抜き出しました

見切るならはやくしろっ!!間にあわなくなってもしらんぞーーーーっっ!!!!
ではまた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)<>sage<>2011/07/03(日) 02:50:06.00 ID:LcO7CMwU0<> 1乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/07/03(日) 02:54:16.28 ID:rILog1qAo<> 乙です!!
楽しみにしてますwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/03(日) 14:12:23.82 ID:rFzY11ZKo<> デデーン、俺、アウトー

おかげさまで元気ですは反則だwwwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/03(日) 14:15:19.95 ID:W94jlQ7W0<> >>1乙、そして前スレ>>1000グッジョブ! <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 20:48:16.37 ID:vI5sckLy0<>
前スレ>>1000の状況を今スレが終わるまでに達成するのが目標の>>1です

みなさん今スレでもよろしくお願いいたしませう

では今日の分↓ <> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:49:34.44 ID:vI5sckLy0<>
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六時間後


ワイワイ ヤイノヤイノ


打止「カラオケのメニューって高いよね、
   ってミサカはミサカはそれでも気にせずガンガン注文!」

美琴「あ、打ち止め。そのポテトも頼みましょ」

一方「ドリンクは全員持ったな」

当麻「よし、それじゃあ科学と魔術の公式会談が無事に終了した事を祝って!」




「「「「カンパ「待たんかあああーーーーーー!!!!」




ステ「貴様らぁぁ…………!! 特に男二人ぃっ!! 僕に何か言うべき事はないか!?」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:51:10.10 ID:vI5sckLy0<>


一方「護衛のお仕事お疲れさまでしたァ」

当麻「身を挺してインデックスを守るお前の姿、最後まで見届けさせてもらったぜ。
   でもな、お前だって知ってるだろう! 大切な誰かに死なれることの痛みを……
                       (中略)
   ……そんなに重たい衝撃は、誰かに押し付けちゃいけないものなんだ!」

ステ「黙れ黙れ黙れ黙れーーーーーーっ!!!!」



美琴「結局何発やられたの、『アレ』?」

打止「MNW調べではステイルさんの分が二十三回、
   インデックスさんの代わりに受けたのが六十五回だったよ!」

ステ「またネットワークに垂れ流したのか!?」ヒリヒリヒリヒリ



イン「どうしてなの、すている…………? 
   どうして、私の身代わりなんて馬鹿な事したの!?」

ステ「……決まっている。僕は貴女を護るためにこの世に居るからだ」

イン「それであなたが傷ついたら、私の心も傷つくの! もう、こんな事しな、いで…………」

ステ「…………最大主教」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:51:46.95 ID:vI5sckLy0<>


一方「急に昼メロが始まったぞ」

美琴「ウチでもときどきやってるわよ。
   チャンネル争いしてたらいつの間にかいちゃいちゃ、みたいな」

打止「文脈が全然繋がってないんだけど、ってミサカはミサカは(ry」

当麻「ははは。……おや!? インデックスの様子が…………!」



イン「うっ、うう……………………」シーン

ステ「頼む、泣かないでくれ…………ん?」



一方「ゴンベからカビゴンにでも進化するンですかァ?」

打止「BBBBBBBBBB」

美琴「まだ進化を残していたというの…………!?」

当麻「ようやくなつき度MAXになったのかよ」


ステ「外野ぁ!! 少し黙ってろ!!!」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:52:33.21 ID:vI5sckLy0<>


イン「うう、ひっく……………………ぷ」

ステ「…………ぷ?」


外野(((( ? ))))



イン「ぷっ、ぷぷ、あはは! あーっはっはっはっはは!!!!!」

ステ「」



イン「だ、ダメじゃん! 思い出すだけで腹がよじれてくるンだよォ!!!」ヒーヒー

ステ「おいぃぃぃぃいいい!!!???」ガビーン!

イン「せ、せりあとみさきが、真顔でリンボーダンス始めた時なんて、
   ぷっ、あはははは!!! ひーっ、ひーっ!」バンバン!

美琴「アレは笑ったわねー。あの女王サマがひっくり返って」ププ

イン「や、やめてぇみことぉ! こ、呼吸、こんなんに、なる、よぉ!」ゼーゼー

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:53:36.02 ID:vI5sckLy0<>


ステ「…………」ドン! ドン! ドン!

当麻「隣に迷惑だからあんまりイラ壁するなよ」

一方「マグヌスくンじゅうよンさいはリアルに中二かそういや」

ステ「二十四だ!! くそがっ!」

打止(本格的に邪気眼が疼いてきたかも、
   ってミサカはミサカは自分の中学時代を回想してみたり)トオイメ


ステ「だ!」ドン!

ステ「れ!」ドン!

ステ「が!」ドン!



ステ「『絶対に笑ってはいけない公式会談IN学園都市』なんて企画したああ!!!」ドオン!



当麻「つちm」

ステ「ですよねえええええええ!!!!!」

一方(雲川も親船もノリノリだったけどな)

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:54:42.14 ID:vI5sckLy0<>



美琴「それにしてもアンタたち、どうしてわざわざ飛行機から降りて来たの?」

イン「公式には最大主教は今日、イギリスから学園都市に来た事になってるの」

打止「……それってつまり」

一方「一ヶ月間学園都市で遊び呆けてた事実を隠そうってのか?」

ステ「聞こえが悪いね。仕事の準備をしつつ休暇を取ってただけだよ」ハア

当麻「なんだよ準備って……あちこち観光してただけだろお前ら」

イン「そんなことよりクワガタの話しよーじゃん!」

美琴「全然誤魔化せてないから!」

当麻(建宮のことじゃないよな)



ステ「おい、僕にはまだ疑問が残っているぞ上条当麻」

当麻「なんだよ? まだ何か文句あんのかサボり神父」

ステ「…………どうして僕らはこんな所にいる?」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:55:24.27 ID:vI5sckLy0<>

一方「あァン? バーコードくンはカラオケ来たこと無いンですかァ?」

ステ「いや、そう言う事じゃなくて」

当麻「今日の仕事でたまった鬱憤をマイクに吐き出してみようぜ!」

ステ「鬱憤どころか憤懣が弾けそうなんだよ今にも! 
   溜めさせるぐらいなら初めからあんな企画止めさせろ!!!」

美琴「じゃ、まずはステイルからね」

打止「日本語の歌わかる? 洋楽もたくさんあるけど」

イン「じゃあ次はわたし!」



ステ「…………最大主教!」

イン「じょ、冗談なんだよ……」

当麻「どうしたんだよ二人とも」

ステ「いいか、僕らの仕事はまだ終わっ」


prrrrrrr!

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:56:07.90 ID:vI5sckLy0<>


ステ「…………(ピ) 何の用だ! 今こっちは……なに?」

イン(もとはる?)ゴフ

ステ「(ああ)………………………………しかしだな」

当麻「?」

ステ「………………わかった、お言葉に甘えよう」ピ



一方「さっきから忙しねェけどよ、結局どうなンだ?」

イン「どうも、予定が空いちゃったみたいじゃン」

打止「おお! それじゃあ心おきなくカラオケ大会できるね!」

ステ「そもそも此方の予定を確かめてから引っ張ってくるものだろう普通!」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:56:36.04 ID:vI5sckLy0<>

美琴「ノリ悪いわねー。もしかしてアレ? 音痴だったりするわけ?」ニシシ

ステ「」

イン「……あ」

当麻「?」

ステ「………………誰が」

打止(なんか火が付いたような)



ステ「 誰 が 聞 く に 堪 え な い デ ス ボ イ ス だ と ? 」



美琴「!?」

一方「言ってねェよ」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:57:12.07 ID:vI5sckLy0<>


ステ「OK。お望み通り先陣を切らせてもらうよ」ピピピピピ

当麻「て、手慣れてやがる……!?」

打止「カラオケって日本特有の文化じゃなかったっけ?」

イン「十年経てば大抵の事はどうにでもなりますの」

美琴「それ言えば何でも許されると思ってないでしょうね!?」


ピピピ


ステ「さて、まずは軽く喉鳴らしだ」

一方「曲名は……ンだこれ?」



「なんとなく消したストーリー」
http://www.youtube.com/watch?v=20_fDhFJMoU
※なんか色々注意



「「「「 ! ? 」」」」


<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:58:05.07 ID:vI5sckLy0<>


六分三十二秒後



ダラダラダラダラダラ(ドラムロール音)



「 1 0 0 点 ! ! ! 」



当麻「当たり前だろコレええええ!?」

一方「中の人補正マジパネェわ」

美琴「いまひどい自作自演を見た」

イン「いきなり持ち歌なんて珍しいなぁ…………」ポー

打止「わ、私ですらちょっとクラリと来ちゃった…………
   ってミサカはミサカは多感なお年頃を気取ってみたり……」

一方「ンだとおォォっ! 打ち止めァっ!!!」ガタッ

打止「お、落ち着いてあなた!」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 20:58:51.63 ID:vI5sckLy0<>



ステ「フン、次は誰だったかな?」ドヤ


当麻(この後どうするんだよ…………)

美琴(カラオケでああもプロい真似されるとしらけるわー)

一方(続けねェ……この空気の中歌うとか勘弁)

打止「え、えーっと…………そうだ! インデックスさんだったよね次!」


イン「ボー…………え? あ、そうだったね。ステイル、まいくまいく」

打止「え」

ステ「はいどうぞ」

イン「よぉし、負けないよステイルー! 
   ってインデックスはインデックスはウォーミングアップ!」


ピピピ


当麻「いやアイツ満点だから」

美琴「どうやっても勝てないから」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:00:59.78 ID:vI5sckLy0<>

http://www.youtube.com/watch?v=AQ-fM5LKTbU

〜〜〜〜〜♪


一方「コイツァ……」

イン「『必要悪の教会』でカラオケに行くと大体私とステイルで満点の取り合いになるンだよぉ」

打止「何その異次元カラオケ!?」

ステ「他の連中も軒並み九十点台を叩きだすよ。
   神裂とかシェリーとかアニェーゼとか土御門とか建宮とか」

当麻「俺らの中じゃ美琴ぐらいだよなそんなの」

美琴「な、なにハードル上げてんのよ!」



イン「……When I am down and, oh my soul, so weary.」


当麻(う、上手い事は知ってたが……!)


イン「When troubles come and my heart burdened be……」


打止(もはやこの勝負、ミサカたちの入れる領域じゃあ(ry)


<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:01:39.72 ID:vI5sckLy0<>

You raise me up, so I can stand on mountains.

You raise me up, to walk on stormy seas.

I am strong, when I am on your shoulders.

You raise me up…… to more than I can be.



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ダラダラダラダラダラ




「 9 9 点 ! ! ! 」



当麻&打止「」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:02:44.47 ID:vI5sckLy0<>


イン「ああああ!! 惜しかったかも!」

ステ「ラストのサビでヘッドボイスの効きが後一歩だったね」ハハ

イン「やっぱりぃ? っていうか慣らしでパーフェクトなステイルがおかしいじゃぁん」アハハ

当麻「おかしいのはお前らだよ」

打止「ますます歌いづらくなった…………」

ステ「僕をコケにしてくれたそっちの超能力者二人、何か言う事はあるかな?」

イン「まあまあ。みこともあくせられーたも点数なンて気にせず楽しくやろォ?(笑)」

当麻「感じ悪っ!」



一方「……………………だ」


ステイン「え?(笑)」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:03:34.26 ID:vI5sckLy0<>



美琴「いい度胸だって言ってんのよ!! 超電磁砲舐めんじゃねー!」

一方「良く言ったァァァ!! それでこそ学園都市の頂点だよなァ!?」

美琴「出してやろうじゃない百点満点!!」

一方「第一位はな、歌唱力も第一位だから第一位なんだよ三下どもォォォ!!!」

打止「えぇぇ…………」

当麻「そんなシステムスキャン受けるぐらいだったら音楽都市に行くわ」

ステ(それはそれでそそられるものがあるな)


美琴「じゃあ私からいくわよ!」


ピピピ



「only my railgun」


<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:04:34.26 ID:vI5sckLy0<>


当麻「なりふり構ってねーなオイ!?」

イン「あはは、意外性が足りないねぇみこと? だから第三位なんですの」

打止「さっきからキャラ違うよねインデックスさん」

ステ「どうだか……」

一方「やっちまいな超電磁砲ンン!!」




美琴「放て! 心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして 限界など知らない 意味無い!
   
   この能力(チカラ)が光散らす その先に遥かな想いを…………」



当麻(さすがにテーマ曲だけあって映えるなぁ……)



美琴「歩いてきた この道を振り返ることしか 出来ないなら…今ここで全てを壊せる」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:05:37.84 ID:vI5sckLy0<>


打止「おおお! さっすがお姉様! ってミサカはミサカは興奮してみたり!」

イン「ふ、ふふん! ってインデックスはインデックスは(ry」

当麻「これならインデックスの99点に勝てるかも!」

ステ「次回、『超電磁砲』死す!」

一方「デュエルスタ…………ンばるわきゃねェだろォが!! なに不吉な次回予告してやがる!?」



美琴「狙え! 凛と煌く視線は狂い無く闇を切り裂く! 迷いなんて吹き飛ばせばいい

   この心が叫ぶ限り 誰ひとり邪魔などさせない……」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ダラダラダラダラダラ



「 9 5 点 ! ! 」


<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:06:32.85 ID:vI5sckLy0<>


美琴「んあーーーっっ!!」ダンダン!

当麻「いや、悔しがるような点数じゃないからね?」

ステ「まあまあだったね」パチパチ

イン「高得点おめでとうなんだよ」パチパチ

美琴「最っ高にムカつくわよ今のアンタら!」

ステ(そもそも本人(?)が歌ったから満点が出るとは限らないんだけどね)

イン(スローテンポの曲の方が高得点出やすいんですの)



一方「チッ、第三位に期待した俺が間違いだったか」

美琴「んですってぇ!!」

打止「落ち着いてお姉様! アナタも言い方きつすぎ!」

一方「へーへーすいませンでしたァ。じゃあ次は俺だな」



ピピピ



<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:07:39.52 ID:vI5sckLy0<>

美琴「大口叩いといて私より点数低かったらわかってるでしょうね」

一方「どうして俺とお前が一位と三位に分けられてると(ry」

打止(少なくとも歌の上手さは関係ないよね)



http://www.youtube.com/watch?v=7liIs5AO-kU



一方「Just cry 閉じ込めた記憶を辿る Why 罪を引きずる足音
   今はもう空は滲む涙と 厚い雲に閉ざされた心」



当麻(コイツもうめぇ……)



一方「ああ 誰も彼も 一つや二つは触れられたくないことも
   もう自分以外の人を傷つけたくないよ 弱ささえ受け入れて」



打止(驚き役に定着してきた、ってミサカはミサカはヤムチャ顔をしてみたり)


<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:08:26.87 ID:vI5sckLy0<>

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


一方「つらい時は泣けばいい 言葉じゃきっと満たせないから 
   君の痛みに触れて 僕も泣くから
   壊れ行くもの 確かになおせないこともあった 明日へ向かうために」


打止「激しい曲なのになんかウルってきちゃった……」

ステ「言うだけの事はあるね」

イン「さあ、肝心の点数は!? ってインデックスはインデックスはちょっとハラハラ!」



ダラダラダラダラダラ



「 9 5 点 ! ! 」



一方&美琴「ええェェ…………」

打止「そ、そんな落ち込むことないよ二人とも、すっごく上手で私感動したよ!」

ステ「科学にしては良くやった、と褒めてあげるよ」HAHA

イン「まあでも95点、これが限界だってハッキリしたかも」AHAHA

打止「水掛けてるところに油注がないでーーーっ!?」

<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:10:15.21 ID:vI5sckLy0<>

美琴「も、もう一曲! 今のは単なる前座よ!」

ステ「ふ、三流の逃げ口上だね」

一方「ああああァァァァ!?」

イン「どうどう」

美琴「やっぱ馬鹿にしてるでしょアンタ!」



打止「こ、こうなったら演算補助を解除するしか…………」

当麻「………………」

打止「あれお義兄様? さっきから静かだね」



イン「ふふ、ちゃんと順番は守らないとダメじゃん?」

ステ「その通り、次はどっちが…………おい、上条当麻?」

一方「ン?」

美琴「と、当麻…………? どうかし」


<> グダグダ編A<>saga<>2011/07/03(日) 21:11:29.05 ID:vI5sckLy0<>



「 お 前 ら 、 い い 加 減 に し ろ っ ! ! 」



「情けねえと思わねえのかよ!? 

 大の大人が寄ってたかって、こんな鉄の塊が吐き出す数字に踊らされやがって!

 カラオケってのは皆が和気藹々と交流するため、その為に作られた日本の至高の発明品だろうが!

 それがこのザマはいったい何だってんだ!? 下らねえ点数に一喜一憂して、お互いいがみ合って!

 違うだろ、そうじゃないだろ!! 思い出せよ、初めてカラオケに行った時を!

 歌の上手い下手じゃあない、純粋にマイクに魂をぶつけて、皆に拍手されたあの日を!

 一方通行! てめえの言う学園都市最強ってのは、

 大事な人を困らせてまで守らなきゃならないプライドなのか!?

 美琴! 俺はお前の歌ならいつだって百点満点で採点してやる!!!

 ステイル! ちょっとてめえ上手すぎてKYなんだよ!

 そして耳の穴かっぽじって良く聞きやがれインデックス! 

 もしもお前が得点なんてモンに縛られて、カラオケの本質を見失っちまってるって言うなら!

 まずは――――!!」




         てんすうしじょうしゅぎ
「そのふざけた  幻      想  をぶち殺す!!!!」



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/07/03(日) 21:13:25.31 ID:5nP/B2Too<> 上条さんが正論をwwww
カラオケの点数=上手さじゃないからね <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/03(日) 21:18:12.67 ID:vI5sckLy0<>
いい台詞だ 感動的だな だが無(ry

>>1のやりたかったこと
・ステイルに歌わせる
・上条さんに説教させる

ご指摘などあればどうぞ罵ってください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/03(日) 21:23:03.47 ID:UwMZvviR0<> 乙!
インデックスにケツハリセンかますかと思ったら流石のステイルだった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/03(日) 21:56:24.41 ID:qV2ZNhVAO<> 乙です
上条さんステイルに対してはちょっとひでえww
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/03(日) 22:02:45.63 ID:rFzY11ZKo<> 世紀の瞬間さえバラエティー化とか
つちmなんとかさんパネェっす・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/03(日) 22:13:07.43 ID:3DufWz8Po<> つまり勝負から逃げたって事かwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/03(日) 23:22:17.94 ID:z9jZglfV0<> 久しぶりに前スレ開いたら次スレができてたとは思いもしなかったぜ
次スレでも期待します!
乙です! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/03(日) 23:24:20.88 ID:z9jZglfV0<> あれ?下げたはずだったのだが...
勘違いして開いた人達に謝罪する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/03(日) 23:40:03.24 ID:uw7aZGwAO<> 乙!!

>>47
よくあるこった、気にすんな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/03(日) 23:46:54.87 ID:xpkZQ9wJ0<> クワガタの話wwwwジャッキーwwww
いや、前スレからそっち方面のネタはちらほらあったけどさ。新作待ち遠しいっスよねぇ。
しかし、このネタって分かる人そんなにいるのだろうか?
いまいちあの界隈のネタの普及度ってのは掴めん。 <> >>1
◆weh0ormOQI<>sage<>2011/07/04(月) 17:39:35.51 ID:2rZuTTta0<>
>>47
あーっと、前スレの最初に冗談交じりで言ったんですが、
誤ってageてしまった場合でも気になさることはありません。

もちろんレスしてくださる場合sageてもらうに越したことはないんですが、
いわゆるagesage論争みたいなものは招きたくないので。

こういうのは>>1に明記しておくべきだったんでしょうが失念していました。
他の皆様もご了承くださると幸いです。


>>49
快く思わない方もいらっしゃるでしょうから控えめにはしてます
が、拾ってくださる方がいるのも嬉しいことです
最低限の空気だけ読みつつ反応してくれると>>1が悶えます


他の皆さんもレスありがとうございました
ではエサの時間を終えたころにまた来ます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/04(月) 19:58:43.13 ID:gpwZapPAO<> エサ言うなww <> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:48:36.87 ID:2rZuTTta0<>








打止「生で見るのは何気に初めてかも、ってミサカはミサカは呆然としてみたり」

一方「説教だけで一スレ……もとい一レス使いやがった」

ステ「濃厚な説教スレか…………悪夢だなそれは」

イン「しかも途中でさりげなく惚気たんだよ」

美琴「もーとうまったらぁ」ニヘヘ



当麻「おい、俺の言いたい事はわかったか!?」

ステ「わかったわかった」

一方「高得点出す自信ねェから点数つけンのやめろって言いてェンだろ?」

当麻「え」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:49:17.31 ID:2rZuTTta0<>

イン「なーんだ、とうまは自分の歌がアレだから説教で誤魔化したんだぁ」

美琴「大丈夫、そんな当麻でも私にとっては百万点だから……」ポッ

当麻「え、ちょ、上条さんはそういう思惑があったとかじゃ」



打止「お義兄様は犠牲になったのだ……そういうことだから次は私の番!」

一方「ンじゃ、こっから採点無しだな」

イン「んー、あまりこだわっても良い事ないかも」

ステ「そこの説教魔の顔も一応立ててやらないとね」

当麻「とっくに面目丸潰れだっつーの!! ちくしょう…………」イジイジ

美琴「元気出して? 私が居るから……ね?」

当麻「美琴…………」

美琴「当麻ぁ…………」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:50:09.69 ID:2rZuTTta0<>

イチャイチャ



一方「パターン入りましたァ」

ステ「次はどういうチョイスでいくかな……やはりロックで…………メタリカあたりを」ウーム

イン「らすとおーだーはどんな曲歌うの? ってインデックスは(ry」

打止「(慣れてるなぁ)……よーし、決定!」


ピピピ



「メモリーズ・ラスト」



打止「誰にも負けないなんて誇大妄想だってこと 傷だらけの掌(てのひら)から溢れた孤独」


一方(コイツ…………)


打止「過ぎ去った時間(とき)は 戻せないから 一秒ずつ塗り替えてくその笑顔で」




<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:51:13.54 ID:2rZuTTta0<>

打止「忘れないよ 季節が巻き戻されても もし君が今日の事 忘れていっても」


ステ「………………」

イン「あ…………」


打止「今でも小さなガラクタだけど この胸に刻んだ 記憶があれば」



「ゆっくり針は進んでく もう逃げないよ」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


打止「お粗末さまでした!」

当麻「いやいや、よかったぜ。やっぱカラオケはこうあるべきだよな」

イン「……良い歌だったね、ステイル」

ステ「…………ああ」

美琴(この子なりのエールなのかしらね。まったく自分の事で手一杯でしょうに)クス

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:51:49.42 ID:2rZuTTta0<>

一方「クソガキにしちゃまあまあだったじゃねェか」

イン「ハイハイツンデレ乙」

一方「ちげェよ!!」

美琴「ちょっと涙ぐんでたくせに」

ステ「父親か君は…………」

一方「誰がだよ…………ったく」

当麻「よっしゃ、ようやく上条さんの出番だな」


ピピピ




「ラフ・メイカー」


一方「おォ……!」

イン「これはとうまっぽいなぁ」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:52:45.20 ID:2rZuTTta0<>

当麻「涙で濡れた部屋に ノックの音が転がった
   誰にも会えない顔なのに もうなんだよどちら様?」


打止(上位個体だけど今お姉様のテンションがやばい)ビビビ


当麻「『名乗る程たいした名じゃないが 誰かがこう呼ぶ“ラフ・メイカー”
   アンタに笑顔を持って来た 寒いから入れてくれ』」


ステ(独善者の歌、か。コイツらしい)


当麻「ラフ・メイカー? 冗談じゃない! そんなモン呼んだ覚えはない
   構わず消えてくれ そこに居られたら泣けないだろう」


美琴(ああもうダメだわ私…………思い出しちゃうじゃない)グス


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


当麻「小さな鏡を取り出して 俺に突き付けてこう言った 『アンタの泣き顔笑えるぞ』」



「呆れたが なるほど 笑えた」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:54:02.90 ID:2rZuTTta0<>

ガバッ!


当麻「んなあっ!?」ウケトメ

美琴「とうまぁ…………」エグエグ

打止「完全に感極まっちゃったね」

一方「素人くせェ歌い方が逆にくンだよな」

イン「あはは、ちゃんと責任取らなきゃダメなんだよとうま?」

ステ「君が何とかしろよ、ラフ・メイカー」クク



当麻「んな事わかってるって。コイツの涙を止めるのは俺の役目さ。
   …………本当は、泣かせたくもないけどな」ナデナデ



イン&打止「………………」チラッ

一方「なに見てンだ」

打止「べっつにー?」

イン「ああいうの憧れるなー、なンて別に思ってないンだよ」

ステ「………………さて、二巡目だね」

イン「ちぇっ」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:54:56.74 ID:2rZuTTta0<>


ステ「…………だがその前に、少し手洗いに」

美琴「わ、私もちょっと顔洗ってくるわ」


バタン


一方「…………ドリンクが切れたな」

打止「え? 私のはまだ」

一方「いいから補充手伝え、打ち止め」

打止「…………うん、わかった」


バタン


イン「え、あ?」

当麻「ちょっと休憩だな。はあ、しかし疲れたよな今日は」

イン「……うん、あんなサプライズするから笑い疲れちゃったよ、あはは」



当麻「………………」

イン「………………」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:56:36.49 ID:2rZuTTta0<>


当麻「なあ、インデックス」

イン「! ど、どうしたの?」

当麻「お前の仕事もとうとう終わっちまったな」

イン「まだ、らすとおーだーの結婚式までは日本に居るよ」

当麻「そういや、そうだったな…………でも、十日なんてあっという間だ」

イン「……そうだね」



当麻「この一ヶ月はさ、昔に戻ったみたいだったよ。
   朝起きたらお前が居て、一緒に朝飯食ってドタバタしてさ。
   さすがに風呂場に寝泊まり、とまではいかないけどな」

イン「…………」

当麻「美琴や真理とも仲良くしてくれてありがとな。
   ステイルの奴も俺にはああだけど女には結構優しいし」

イン「………………とうま」



当麻「――――どうした、インデックス」


<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:57:16.44 ID:2rZuTTta0<>

イン「私ね、とうまに言わなきゃいけない事があるの。その為に、日本に来たの」

当麻「…………なんだ?」

イン「え、っと」

当麻「………………」

イン「その…………」

当麻「うん」

イン「………………」



当麻「そういや、二人っきりになる機会なんて今までなかったな」

イン「!」

当麻「ステイルが四六時中張り付いてるからなぁ。そのせいか」

イン「ち、ちがうの! …………私が」





<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:57:56.78 ID:2rZuTTta0<>

「私に、勇気がないから」


「そうなのか?」


「そう、勇気が、ないから…………」


「大丈夫か」


「…………大丈夫じゃ、ないかも」


「俺は、お前の為に何が出来る?」


「……………………待ってて」


「待つ?」




「私が、あなたに、この想いの全てをぶつける決心がつくまで」




<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 20:59:08.00 ID:2rZuTTta0<>

「いつまででも待っててやる…………って言いたいけどな」


「うん」


「あと十日だけ、だな。きっと、あっという間だ」


「わかってる」




「その時が来たら、お前の想いに向かい合う。そう約束するよ」


「――――ありがとう、とうま」




「十年前とは変わったな、俺たち」


「私の見る限り、とうまはあんまり変わってないと思うな」


「ひでえな。成長が無いってことかよ?」


「ふふ。違うよ、もちろん」


「ホントだろうな…………」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:00:09.32 ID:2rZuTTta0<>


「…………線がね、変わったと思うの」


「線?」


「私たち人間っていう『点』を結ぶ『線』。
 とうまの点が動かなくても、私が動いたのかもしれないね。それとも…………」


「線の形そのものが、別物になったってことか」


「…………昔は、たとえ歪でも、あんなに近かったのに」


「そうなのかな。…………そう、なのかもな」


「きっと、そうだよ」


「十年か。意外と、あっという間だったな」


「たった十年だもん。当たり前かも」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:02:07.29 ID:2rZuTTta0<>




           なみだ  とめる
(それでも、お前の 幻 想 を 壊 す のはもう)




(俺の役目じゃないんだろうな)




(アイツに、渡さなきゃならないものなんだ)





<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:03:04.80 ID:2rZuTTta0<>

ガチャ


ステ「待たせたね」

イン「おかえり、ステイル」

当麻「随分遅かったな」

ステ「混んでたんだ。もう少し遅い方が良かったのかな?」

当麻「さあな…………丁度良かったんじゃねえの?」

ステ「それはなによりだよ」ハン



当麻「他の皆はどうしてる?」

ステ「さあ? 別々に出たんだから僕が知るはずもない」

当麻「そーかよ」

イン「……ありがと」

ステ「何の話だかさっぱりだね」ヤレヤレ

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:04:43.87 ID:2rZuTTta0<>

ガチャ


一方「ドリンクバーが切れてて時間掛かっちまったぜェ」

打止「…………うわあ、わざとらしイテッ!!」ゴツン!

美琴「さ、続きよ続き! 今度こそはアンタらを唸らせてやるわ!」

当麻「点数は出さねえぞー」

イン「ま、客観的な評価よりは主観にうったえる方が楽かもしれませんの」フフン

ステ「では僕からだね」


ピピピ




「Reckless fire」


美琴&打止「「………………」」

イン「また持ち歌? 頑張ってねステイル!」

当麻&一方((こいつ本当にイギリス人か?))


<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:06:29.60 ID:2rZuTTta0<>
---------------------------------------------------------


『はあ………………不幸なんだけど』


『くく、心中お察しするぜい。素晴らしいリンボーダンスを見せてもらったにゃー』


『やかましいんだけど』




『結局、オレたちの当初の目論見は外れたわけだ』


『予想を遥かに越えて慎重だった、と見るべきか。
 それとも単純に私たちの頭脳が劣っているのか』


『さあな。さておき二人を留めておくのは七月いっぱいがリミットだ。
 それ以上は本人たちが何と言おうと帰国してもらわなければならん。
 議会のジジイどもがまたぞろ騒ぎ出しかねないんでな……あとねーちんも』


『おやおや、心中お察しするけど』


『やかましいぜよ』


<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:07:59.71 ID:2rZuTTta0<>



『実は、一方通行が外出許可を求めてきてるんだけど』


『ふうむ……………………危険な賭けだな、それは』


『いつも通り話が早すぎて助かるけど』


『期待値は相手の質、量いかんに大きく左右される事になるぞ』


『だから、その辺りの情報が欲しいんじゃないか。最大主教の身にも響くぞ?』


『ちっ…………お見通しか。確かに昨日、仲介人を探しあてた。
 数日中にはどんな手を使ってでも口を割らせる』


『一方通行は五日後に「外」に出る。出来れば間に合わせてくれよ』


『…………おい、決定済みなのかそれは』

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:10:25.72 ID:2rZuTTta0<>

『分の悪い賭けは嫌いじゃないけど。そっちは違うのかな?』


『オレは、嫌いじゃないが苦手だな。己の心臓部をチップにしてるとなれば尚更だ』


『私は気楽なゲームマスターさ。別に大したものを賭けては』





『ほーう、旦那の命は「大したもの」じゃないのかにゃー?』





『……何の話かわからないんだけど』


『くくく、くっくっく………………』


『なぜ笑う、だいたい私は結婚などしていn』


『くははははは!! これが笑わずにいられるか! 
 遂にアンタの弱みを握ってやったぜよー!!!』


『!? 待て、なにを』

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:11:49.75 ID:2rZuTTta0<>

『満天下に向けて吠えたい気分だぜい、雲川芹亜の』


『よせっ!!! さもなくば貴様の家庭での痴態を飛行船で学園都市中に流してやるけど!!』


『人を呪わば穴三つ。そしてオレはアンタより遥かに呪術に精通している……後はわかるな?』


『わかるか!!』


『それならそれで構わないぜい。ハハハ、テンション上がってキター!!!』ブツッ


『だから待て…………クソッ!! 早急に対策を…………!」




「ん、さっきから喧しいがどうかしたのか?」


「お前が言うな! いま私は忙しいんだ!! 放っておいて欲しいんだけど!!!」


「ふーん、良くわかんねえ」


「ああもう、不幸なんだけどーーーーっっ!!」

<> グダグダ編B<>saga<>2011/07/04(月) 21:12:32.45 ID:2rZuTTta0<>
--------------------------


OUT

エセ関西弁(賞味期限切れ)


-------------------------

<> グダグダ編B<><>2011/07/04(月) 21:14:32.43 ID:2rZuTTta0<>

続くんじゃん


科学と魔術のブレーン対決は得るものの無い痛み分けに終わったようです

二期後期EDは言わずと知れた通行止め曲ですが
ステイル&神裂→インデックスと思って聞いてもなかなかこみ上げます
という[田島「チ○コ破裂するっ!」]回でした

さあ罵ってください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/04(月) 21:33:49.51 ID:/Whvb2Zbo<> ここのステイルがインデックスの前でケンゼンな本能を歌うのはいつですか?www
乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/05(火) 10:49:57.24 ID:RzcCZBh+0<> ↓の画像をここに張れという電波が・・・・。
ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201106251931560002.jpg
個人的には、この三人で仲良くお買い物とか見たいゲソ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage saga<>2011/07/05(火) 12:22:54.31 ID:J510IcU00<> つ、つまり雲川の旦那は…


アッー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/05(火) 21:22:07.29 ID:/I5M36aa0<> ステイルが under the cry 歌うかと思ったがそんなことは無かったぜ <> >>1 ◆ECRmZv/7RGf1<>saga<>2011/07/05(火) 21:24:22.31 ID:yNr4V3Qe0<>
I'll be right これは健全な本能〜♪

I'll be right なんて健全な本能ぉぉおおおおお

ああああぁぁあぁあああああぁああぁぁああーーーっ!!!!




ステ「ふっ、どうかな?」←七巡目


打止「……うん、上手いよ?」

美琴「上手いけどさぁ」

一方「一曲目はしっとりしてた分聞けたンだがよ」

当麻「コレはちょっと激しすぎるっつうか」



イン「正直ひく」

ステ「!?」




<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/05(火) 21:27:35.19 ID:yNr4V3Qe0<> コテ間違えました(笑)
歌った結果がコレだよ!


>>75
即保存しますた 未来設定でしか書けませんが了解でーす

では今日は美琴とインデックスのいちゃつく小ネタです↓ <> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:29:47.33 ID:yNr4V3Qe0<>


とある日 上条家



イン「…………そういうわけで、電話したんだよ」


13857『お姉様に「お姉様」と呼ばせたい…………なかなか背徳的な響きですね、フフ』


イン(いきなり相談相手を間違えたかも)


13857『そういうことならやはり力づくでにTEGOMEにして
    姉妹SMプレイに持ち込むのが手っ取り早いでしょう』


イン「いや、あっちは超能力者だから。全然手っ取り早くないんだよ」


13857『我らが主から授かりし愛の力を持ってすればどうということはありません』ハァハァ


イン(この子破門すべきなのかな……)


13857『さあ最大主教! ご決断くだされば今すぐにでも必要な物資は手配します! 
    だから早くお姉様の屈服する姿を全ミサカに布教s』



ガッ



イン「……ぬるぽ?」


<> >>79 コテじゃなくて酉じゃね? とセルフツッコミ<>saga<>2011/07/05(火) 21:31:08.99 ID:yNr4V3Qe0<>

17000『お耳汚しをして大変失礼しました、インデックスさん』


イン「あ、管理人さん」


17000『害虫は駆除しておきましたのでどうかご安心を』


イン「鈍器で頭を殴ったような音がしたんだけど」


17000『話は聞かせていただきましたよ。どうか私にも協力させてください』


イン(わーお、スルー)


17000『やはりここはインデックスさんの武器をフルに活用すべきです』


イン「私の武器? 『魔滅の声』でみことの中学時代を糾弾すればいいのかな?」


17000『それでは立ち直れなくなる可能性がありますよ』


イン「ですよねー」

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:32:11.62 ID:yNr4V3Qe0<>


17000『あなたの長所、それはごくごく稀に表に出る「聖母」属性です』


イン「『聖母』だなんてそんな畏れ多い……」


17000『この場合の「聖母」とは私の持つ「寮母」属性をつきつめた先にある境地を指します』


イン「ダーウィンも爆笑ものの進化論だね」


17000『お姉様はその立場上、常に誰かに頼られる人生を送ってきています。
    学び舎の後輩然り、模範生徒として扱う大人たち然り、私たち然り』


イン(聞いてないし)


17000『男性ならお義兄様が不動のポジションを築いていますが、
    女性という観点に立てばあまり一緒に過ごす機会の無いお母様ぐらいのものなのですよ』


イン「じゃあ、そこにつけこめば?」


17000『お姉様を攻略できる確率はMNWの試算によれば78%です』

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:32:58.05 ID:yNr4V3Qe0<>

イン「攻略…………とうまになった気分だなぁ」


17000『まあお義兄様が意図して攻略した相手は当のお姉様ただ一人ですが』


イン「むむ、じゃあとうまのやり方を参考にすればいいのかな」


17000『あなたはそういえば二人がくっつく過程を目の当たりにしているのですね』


イン「……………………うん。いやー、あれは見ててホントに面白かったかも!」


17000『…………しかしあの方の場合は少々…………いや結構………………
   いやいやすこぶる、特殊な状況だったと聞きますが。主に不幸のせいで』


イン「…………良く考えなくても再現は無理だね、あんなの」


17000『ですから私の提言に従って頂ければ』


イン「そうする。ありがとね!」


17000『いえ、お役に立てて幸いですよ、インデックスさん。では失礼します』


イン「じゃあね!」ピ

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:33:49.13 ID:yNr4V3Qe0<>

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


イン「かくかくしかじかで、みことと姉妹(スール)の契りを結ぶ算段が付いたんだよ!」


ステ「はあ」


真理「はー」


イン「みことが仕事から帰ってきたら実行に移すけど、その前に二人の意見を聞きたいかも」


真理「すーるってなーに?」


ステ「…………真理には無理だろう」


イン「じゃあステイルは?」


ステ「ああ、凄く良いと思うよ………………………………………………………………どうでも」


イン「だよねだよね!」


ステ(やれやれだ)

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:34:40.53 ID:yNr4V3Qe0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ガチャ


美琴「真理ちゃんただいまー!」


真理「おかえりなさい、まま!」


ステ「僕らもいるんだがね。おかえり」


美琴「ごめんごめーん。ただいまステイル、インデ…………」




イン「お帰りなさい、『美琴』」キラキラキラ


美琴「!?!?!?」


ステ(まあ、そういう反応になるよね)リョクチャズズズ 


美琴「ちょ、ちょっと! 何でアンタ私立リ○アン女学院の制服なんて着てんのよ!!」


ステ(読んでたんかい)

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:35:17.02 ID:yNr4V3Qe0<>

イン「まあ美琴ったら、アンタなんて。いつも通り『お姉さま』と呼んでちょうだい?」ウフフ


美琴「」ゾワゾワゾワッ!!


ステ(美琴がノンケのようで何よりだ)ズズズ


イン「さあ美琴、こっちに来て姉妹の絆を深めましょう?」クスクス


美琴「ちょっとステイルー! アンタこの状況に何か言う事ないわけ!?」


ステ「Something」スッ


美琴「ふざけんなあああ!!! ってどこ行くのよ!?」


ステ「真理とベランダに行っているよ。ああ煙草は吸わないからご安心を」ガラガラ


美琴「逃げんな、いや、逃げないで下さいおねが、ああもう!」パチ


イン「まあそんなに照れないの、美琴ったら…………へ?」ベタベタ


美琴「ひっつくんじゃないわよぉぉぉ!!!」バチバチッ!

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:36:17.21 ID:yNr4V3Qe0<>


バリバリバリッ! ドオンッ!



ステ「アーメン」スッスッ ジュウジキル


真理「しゅている、あーめんってなーに?」


ステ「電化製品の冥福を祈る言霊さ。君は使う機会が多そうだから覚えておくといい」


真理「あーめん!」キャキャ


------------------------------------------------------


美琴「言う事はある?」バチバチ


イン「うう…………ありません(かかっててよかったギャグ補正)」プスプス


美琴「だ、だいたいさ。どうしてそんなに私なんかを妹にしたいわけ?
   私なんか生意気で、年上に敬意払わないし、昔は短パンだったし」


イン「みことが可愛いからに決まってるんだよ。あと、一生懸命なところも好きかな」ニコ


美琴「………………い、一生懸命?」カァ

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:37:07.46 ID:yNr4V3Qe0<>

イン「まことが生まれてから今まで、みことはずっと走ってるでしょ」


美琴「……そりゃそうでしょ。子供の教育には妥協したくないもん」


イン「(その割には甘やかしてるけど)疲れた時、ちゃんととうまに寄りかかってる?」


美琴「…………ツンケンしてた頃の私じゃないんだから、大丈夫、よ……」


イン「うんうん、とうまはここ一番では頼りになるもんね。でも」


美琴「!」


イン「とうまに言えない事だって、あるよね? 男と女、なんだから」


美琴「な………………無い、とは言わないけどさ」


イン「そういうのを聴きたいから、みことのお姉さんになって私も頼られたいんだよ」


美琴「…………………………いんでっくす」


イン「なあに?」ニッコリ

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:38:11.88 ID:yNr4V3Qe0<>

美琴「いいの? だって、だってそんな酷い事」


イン「いいよ。だって私は、とうまもみことも大好きだから」


美琴「…………いんでっくすぅっ……!」ガバッ!


イン「よしよし。お姉ちゃん呼びはまだ早いかな?」ダキッ ナデナデ




美琴「…………………………………………………………………………聞いてくれる、お姉ちゃん?」


イン(………………キ、)


美琴「私ね、会心のゲコ太コレクションを真理ちゃんに『ハン!』って鼻で笑われちゃってね」




イン(キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(。  )━(∀。 )━(。∀。)━━ !!!!)




美琴「当麻に言っても『( ´_ゝ`)フーン 』だし、もう私どうしたらいいのか」

<> 小ネタ「シスター」<>saga<>2011/07/05(火) 21:39:15.50 ID:yNr4V3Qe0<>
-----------------------------------------------------------------


真理「いんでっくしゅ、くるくる!」キャッキャッ


ステ「仲良き事は美しき哉、だったっけな…………日本とは、おかしな国だ」


真理「あんなのを日本代表だと思って欲しくないなぁ」


ステ「!?」





美琴「それでね、劇場版の試写会には結局私一人で、仕事の合間を縫ってね」ハグハグ


イン「キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!」ナデナデ


美琴「書斎をゲコ太部屋に改装しようと思ったら二人に失笑されて頭に血が上っちゃって
   ついつい机をバン!! って叩いたら腕折れちゃって」


イン「腕もろっ!」


真理「カエルとかないわ(笑)」


イン「!?」



オワリ

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/05(火) 21:40:18.16 ID:yNr4V3Qe0<>

天丼とかないわ(笑)

まだこのネタは膨らむ予感がします

ではまた明日 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/05(火) 21:53:15.20 ID:N7iRmA02o<> 引かれちゃったかステイルwww
お前の〜〜ごと、身に纏い〜〜たい
辺りをインデックスは素面で聴けたのか……
乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/05(火) 22:21:20.40 ID:62GrQYtu0<> だから真理ちゃんは何者なんだよwww
そしてインデックス…ギャグ補正という名の歩く教会を手に入れたんだね

しかし、上条さんと美琴がくっついたときどんな不幸があったんだ
見てて面白くてすこぶる特殊な状況ってなんだろう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/05(火) 22:36:13.44 ID:LDBLCgHAO<> あくまでステインがメインだし上琴の話を書いてほしいってのも変な話だよな書いてほしいけど

あと日和ネタに吹いた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/05(火) 23:47:17.66 ID:ZOMOyIeAO<> 乙
真理ちゃんが後に学園都市のドンと呼ばれるようになるのを知るものはまだ誰もいなかった…… <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/06(水) 20:04:06.82 ID:DP8T5YLe0<>
どうも>>1です

>>94
ギャグの一環ではいちゃつかせてますが真剣には書いてませんでしたね
気長にお待ちくださいな

みなさんレスありがとうございました
真理ちゃんもオチに便利なので安易に使いすぎた感
ほどほどにしないとね!

<> 冥土返し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:05:24.34 ID:DP8T5YLe0<>

七月十一日

第七学区 とある病院 待合ロビー



ステ「げほっ、かほ! 調子に乗って歌い過ぎたか……?」

イン「受付済ませてきたよ、ステイル」

ステ「ああ、ありがとう。もしかして、あの医者に掛かる事になるのかな」

イン「お尻と、喉と、胃に肺の検査をいっぺんにやってくれるのなんてあの先生ぐらいじゃん」

ステ「それもそうか。彼に診察してもらうのは初めてだね」

イン「え、そうなの? 結構意外ですの」

ステ「…………どういう意味かな」



イン「だってちょくちょく学園都市に来てたんでしょ?」

ステ「上条当麻じゃあるまいし、仕事の度に大怪我してられないよ」

イン「……そう、だよね。良かった」ニコ

ステ(………………まあ、だからこそ僕はヒーロー足り得ないんだろうな)

<> 冥土返し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:06:04.56 ID:DP8T5YLe0<>


イン「ステイル、バカな事考えてるでしょ」

ステ「ば、馬鹿とは何だい」

イン「それはみさきでもないと分からないけど。
   でも、きっと自分を傷つけるような事を考えてたに決まってるよ」

ステ「……勝手に決め付けないでくれ。心理掌握でもなければ無理なんだろう」

イン「わかるもん」

ステ「なぜ?」



イン「ずっとあなたの顔を見てたから」



ステ「…………貴女は」

イン「私がこの五年いちばん一緒に過ごしたのは、あなたなの。それは、事実だよね?」

ステ「……最大主教」

イン「すている……」

<> 冥土返し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:07:23.10 ID:DP8T5YLe0<>


ミサカ19090号「……………………あのー」

イン「きゃわわわわわっ!!!」

ステ「ぬおおおおおおっ!!! な、何だいきなり!」

19090「いえ、先ほどから三回程お呼びしていますよ。ステイル=マグヌスさん?」

ステイン「へ」

 
ワカイッテイイデスネトミサカハ マッタクチカゴロノコイツラトキタラ

ヘッダガタリナイ コウキョウノバダトイウコトヲカンガエテホシイデストミサカハ

サッソクネットワークハイシンヲ ニャー ヒトリモノニハメノドクデストミサカハ


       ザワ ザワ ザワ ザワ


19090「お二人の世界にダイヴされてたようですね、
    とミサカはこんな公衆の面前で見つめ合うおバカさん達に嘆息します」

ステ「ぐぐ……ちょっと待て、『妹達』が多すぎるんじゃないのか?」

イン「そ、そういえばざっと見まわしただけでも五人は居るかも」

19090「まあ私たちはこの病院の看板ナースですから」フフフ

ステ「今すぐ帰りたい……」ゲンナリ

イン「そういうわけにはいかないじゃん!」


<> 冥土返し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:08:33.85 ID:DP8T5YLe0<>

19090「いい加減に行きましょう。先生もお待ちですよ」

イン「あ、ごめんなさい。ほら行こ、ステイル」

ステ「貴女はここで待っててくれてもいいんだよ」

イン「だーめ。悪い診断されたのに黙ってるとかやりそうだもん」

ステ「そんな事はしやしないし、仮にしたところで僕の自由だね」

イン「あなただけの身体じゃないの! もしもの事があったら、私…………」グス



ステ「……ごめん」ナデ

イン「一緒に連れてってくれたら、許してあげるかも」イチャイチャ

19090(この二人の間にどんな障害があるのか全く推測が立ちません、とミサカは(ry)

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:09:49.71 ID:DP8T5YLe0<>

診察室


コンコン


冥土帰し「どうぞ?」


ガチャ


19090「お連れしました、先生」

冥土「ご苦労だったね?」

19090「いえ、それでは私は仕事に戻ります」

冥土「君、前々から言ってるが無理なダイエットは禁物だよ?」

19090「ケフッ!! ……失礼します」ソソクサ


バタン


冥土「さて…………ご無沙汰だったね?」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:10:52.44 ID:DP8T5YLe0<>

イン「お久しぶりです、先生」ペコリ

冥土「はっはっは、ずいぶん礼儀正しくなったね?」

イン「う。子供扱いしないで欲しいかも」

ステ「僕の事も覚えておいでで?」

冥土「患者の顔なら大抵記憶しているんだが、君は特別だね? 
   まあ、爆発する手紙の配達人にされればそりゃあ忘れないさ」

ステ「う」

冥土「まあ若いころを思い出して身を捩るのは大人になった証拠だね?
   …………そう言えば、『彼女』はロンドンではどうなのかな?」

イン「その人なら『愛しのお兄ちゃん』と仲良くやってるんだよ」

ステ「仲が良すぎて困るがね」ハァ

冥土「それは良かったね? 僕のやり残した仕事を完遂してもらったんだ、礼の言葉も無いよ」

イン「そんな…………大それたことじゃ」

冥土「謙遜の必要はないと思うけどね?」

ステ「………………」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:11:56.30 ID:DP8T5YLe0<>



冥土「しかし君たち、明日の便で帰国すると聞いたんだがね?
   こちらで病院にかかっている暇などあるのかい?」

イン「あ、それは……」

ステ「多少予定を詰めてでも診てもらう価値がありますよ、貴方にならね」

冥土「おだてても無駄だよ? 僕は常に最高の治療を心がけているからね?」

ステ「はは、頼もしい」

イン「みっちり隅々まで診て欲しいんだよ、先生!」



冥土「ではそろそろ、医者として仕事をさせてもらおうかな。 
   …………えーっと、ステイル=マグヌス君と」

ステ「……と?」




冥土「付き添いはインデックス=マグヌス君で間違いないね?」




ドンガラガッシャーン!!


<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:12:47.28 ID:DP8T5YLe0<>



冥土「おいおい、デリケートな機器や薬品もあるんだ。気を付けてくれないかね?」

ステ「最大主教ゥゥーーーッ!! こ・れ・はどういう事なんだ!?」

イン「だ、だって付き添いは家族じゃないとダメだ、って受付で言われたからしょうがなく」

ステ「なぜそんな摩訶不思議なルールがまかり通っているんだ…………!」

冥土「僕が制定したんだよ。君たちから今朝電話で予約があった時点で急遽ね?」

ステ「くそっ、貴方もか! どいつもこいつも!!」



冥土「待合ロビーでも三回ぐらい呼んだと思うんだけどね?
   『イギリスよりお越しのステイル=マグヌスさん、
   付き添いのインデックス=マグヌスさん。診察室へお入り下さい』って」

ステ「ちょっと待てえええ!! 昨日(テレビ中継)の今日でそんな事をされたら……!」

冥土「今ごろは『最大主教既婚者説』が院内で流布してるかもしれないね?」

イン「あ、あわわ(でもそれはそれで……)」

ステ「どうしてこうなったあああああ!!!!!!!!」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:13:44.65 ID:DP8T5YLe0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


冥土「喉の痛み、カラオケで熱唱しすぎ……とりあえず口の中を見せてもらうよ?」

ステ「」チーン

イン「ステイル、ガンバ!」

ステ「十年前でも古いわ! くそっ」アーン

冥土「………………ふむ、ただの炎症だね? トローチで充分かな。では次」

ステ(早いな…………)



冥土「臀部を九十発ほどひっぱたかれる……昨日のアレか。
   僕は仕事中で見ていないんだが、テレビのあるロビーは爆笑の渦だったね?」

ステ「…………Son oF A bitch!」

イン「言葉づかいが悪いですの」

冥土「じゃ、下を脱いで」

イン「!」カァ

ステ「…………出て行ってくれ」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:14:27.96 ID:DP8T5YLe0<>
イン「えー? それじゃあ付き添い人としての役目が」

ステ「いいかい、三度は言わない。出て行くんだ」

イン「はーい」シブシブ

ステ「渋らないでくれ…………なにやら切ない気分になる」



バタン



冥土「それじゃ脱ごうか」

ステ「お断りする。尻が云々は彼女が勝手に言ってるだけで、実際は大した痛みじゃないんです」

冥土「そんなものは素人の浅い判断だよ? 
   まあ確かに歩き方や筋肉の張りに異常は見られないから、
   脱ぐのは止してレントゲンを撮るに留めておこうかな?」

ステ「服の上からでもおわかりになるんですか」

冥土「僕ぐらいになると脱がずともね。
   それにしても脱ぐ気がないならどうして彼女を外に追い出したんだね?」

ステ「『脱ぐ』を連呼するのは止めてください! …………実は、少し頼みが」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:15:23.35 ID:DP8T5YLe0<>






診察室前



イン「冷静になるとあの場に残りたがるなんてもの凄くはしたないんだよ……」ハァ


イン「でも、すているの事考えてると最近…………」

番外「最近?」

イン「胸の痛みが前より大きくなってて…………って!」



番外「どうもー、お久しぶり」ピチピチナースフク

イン「わーすと……! その格好って」

番外「聞く必要ないでしょ? ミサカは当院の看板娘なんだから」

イン「…………わーすとの治療はなんとなく受けたくないじゃん」

番外「(ヨミカワ?)ひっどーい。言いたい事はわかるけどさ?」

イン「ちなみに担当の科は?」

番外「心療内科」

イン「この病院危ないかもーーーーっっ!?」


<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:16:11.50 ID:DP8T5YLe0<>

番外「早めの休憩時間もらったからぶらついてたんだけど。アナタを見つけたからさ」

イン「私はこの部屋にいるステイルの付き添いで来たんだよ」

番外「……ああ、昨日散々叩かれてたもんねぇ。ミサカもテレビ見て興奮しちゃった☆」

イン(ミサカDNAの汎用性がヤバイ)


番外「ステイルさんか…………ねぇ、恋人なの?」

イン「…………違うよ。みさかねっとわーくで知ってるんじゃないの?」

番外「私、あんまネットワークには接続しないの。コレといった理由はもう無いんだけどね」

イン「聞かない方が良い話かな?」

番外「その方がありがたいかな。いや、でも……」


イン「大丈夫? 言いたい事があるなら遠慮しないでね」ニコ

番外「…………アナタって、結構聞き上手なの?」

イン「シスターだから当然じゃん!」

番外「そういう職業的技能を超越してると思うんだけど。
   でも考えてみれば、アナタはミサカの先輩に当たるんだよね」



イン「……………………失恋の、ね」


<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:17:01.35 ID:DP8T5YLe0<>



イン「この間は、ロクにさよならも言えなくてごめんね」

番外「頭下げないでよ、悪いのはミサカなんだからさ」

イン「あの後はどうしてた?」

番外「んっと、アナタが『くーるびゅーてぃー』って呼ぶ子のアパートで、
   一晩中飲んで泣いてた…………アナタはどうだった?」

イン「結婚が決まった後って意味なら…………人生で初めて、ヤケ酒ってヤツをしたんだよ」

番外「………………私たちってさ」

イン「うん」



番外「アナタはお義兄様が好きだったけど、お姉様に勝てなかった」

イン「でもあなたは、らすとおーだーを決して嫌ってなんかいない」

番外「だって、可愛い妹で、頼りになる姉なんだから」

イン「好きになりこそすれ、嫌いになんてなれるはずないよね」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:17:57.27 ID:DP8T5YLe0<>



番外「アハハハ! 何これ、ミサカたちってビックリする程そっくりさんだね!」

イン「いまだにその男性(ひと)を愛してるって点まで含めてね」

番外「! アナタ…………」

イン「おかしいよね? 本来なら、五年前に諦めてるべきなのにね」

番外「……諦めるとか、そう言う話じゃないじゃん」

イン「…………」



番外「私はこの世に生み出された時から、あの人の為だけに存在してたんだ。
   たとえそれがどんな腐った理由で、どんな汚らわしい目的だったとしても」




「私の生きる道は――――あの人なくしては在り得ないのに」





<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:19:10.07 ID:DP8T5YLe0<>


「……私も。私の人生は、あの人が救ってくれたから始まったの」



――――私と一緒に、地獄の底までついてきてくれる?――――



「あの人の、とうまの為に生きるのが、この上ない幸せだった」




番外「そんなに好きなのにさ。振られたからって他の男を好きになれるもんなの?」

イン「……正直に言っちゃえば、私自身も意外だったんだよ。
   とうま以外の人を愛するっていう感覚が、自分の心じゃないみたいだった」

番外「………………良いなぁ」

イン「決して、良いとは思えないけど?」

番外「一般論ではだよ? 恋なんて破れるのが普通、また次のを探すのが女の常じゃない」

イン「…………私の周りにも沢山いるかも、そういえば」

番外「でしょ? 一人の男しか眼中に無いミサカって異常なのかな、とか思っちゃうわけよ」

イン「そんなことない、って言ったら自己弁護になっちゃうかな」クス

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:20:24.68 ID:DP8T5YLe0<>


ガチャ



ステ「待たせたね…………おや」

イン「あ、ステイル!」

番外「ちぇー、いいところだったのに」

ステ「? お邪魔をしてしまったかい?」

イン「だいじょぶかも。中に戻ってもいいんだよね?」

ステ「ああ、もういいよ」

番外「短い間だけど話せて楽しかったよ。じゃあ……」



イン「ちょっと待って」

番外「え、なに?」

イン「番号とアドレス、交換しよう?」

番外「! い、いいの? 宗教家のお偉いさんの番号なんて」チラ

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:21:17.87 ID:DP8T5YLe0<>

ステ「プライベートを制限するほど、イギリス清教は閉鎖的ではないよ」

イン「わーすとが嫌じゃないなら。どう?」

番外「よ、喜んで! いやー、何かミサカすごい番号ゲットしちゃったな」イソイソ

イン「『妹達』も二十人ぐらい登録してあるよ、私」ポチポチ

番外「(案外レアでもなかった)……完了! 今夜電話していい?」

イン「いつでもOKなんだよ」

ステ「イギリスに帰った後は、時差を気にしてくれるとありがたいね」

番外「あっは、神父さんって石頭かと思ったら意外に話せるじゃん」

ステ「……油を売ってていいのかい、看護士さん?」

番外「ざんねーん、まだ休憩時間で…………アレ?」



ミサカ13577号「油売りから本職へ復帰する時間は、とっくに過ぎていますよ番外個体」

番外「ひっ!?」

イン「あーあ」

ステ「だから言ったろう」ハン

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:22:16.53 ID:DP8T5YLe0<>


13577「三十分オーバーですので三百分ほど余計に働いてもらいましょうか」

番外「ち、巷で節電が叫ばれるこのご時勢に残業を推進する様な発言は如何なものかと」

13577「なるほど、では明日の朝は五時間早く出勤してもらいましょうか」

番外「わ、わかった! ミサカが悪かったからせめて睡眠を二時間は確保させてええ!」



ヘルプミー!! ユーキャンノットエスケープフロムミー トミサカハ



イン「またねー」フリフリ

ステ「さて、次は貴女がうるさかった肺の検査結果だ」

イン「うるさいなんて言い方は無いと思うよ! ロリコン疑惑の原因でしょ!」

ステ「それは貴女が吹っかけてきた言い掛かりだろうが! 疑惑もクソもあるかッ!」

イン「いーや、アニメで年齢に言及されなかった理由はもはや誰もが知ってるんだよ。
   そのせいで私や小萌に絡むのを見たアニメからの人が誤解するんですの!!」

ステ「やめんか! この際どい話をこれ以上続けるつもりはない!! 僕は診察室に戻るぞ!」

イン「ハイハイ死亡フラグ死亡フラグ」

ステ「やかましい!」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:23:25.64 ID:DP8T5YLe0<>


診察室



冥土「病院なんだから君たち、少し静かにしてくれないかね?」

ステ「…………し、失礼した」ペコ

イン「ごめんなさい……」ペコリ

冥土「さて、奥さんが最も心配していた煙草の吸い過ぎについてだね?」

ステ(反応したら負けかな、と思ってる)ピクピク

イン(しっかりこめかみが震えてるかも)



冥土「一日平均四十本、これはヘビースモーカー一歩手前の数字だね」

イン「え!? そ、そんな程度だったの!?」

ステ「僕を何だと思ってたのかな」

イン「ガチガチのヘビースモーカー」

ステ「はぁ…………否定はしないがね。最近減らしたんだ」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:24:41.51 ID:DP8T5YLe0<>

冥土「検査の結果も今のところ正常。あまり煙を深く吸わないようにしてるのかな?」

ステ「ここ五、六年は、そう心がけていますよ」

イン「じゃ、じゃあ何も心配要らないの?」

冥土「エックス線検査は決して万全じゃないんだけどね? 
   まあそこは学園都市製という事で一つ」

イン「さすが学園都市製じゃん!」

ステ(言い訳じみて聞こえるのは、僕が穿った物の見方をしているからだろうか……)



冥土「とは言えやはり健康の為には禁煙すべきだ、と医者としては言わざるを得ないよ?
   減煙はいつから、どのくらいの本数から始めたのかな?」

ステ「それは、言わなければいけないのですか?」

冥土「もちろん強制はしないよ? ただ今後の事を考えればね?」

イン「ステイル」ジトー

ステ「…………はあ。およそ四カ月前に始めました。だいたい月百本から七十本に」

冥土「それはそれは。よく減らせたね?」

ステ「………………別に」

イン(あれ? 四か月前?)

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:25:46.08 ID:DP8T5YLe0<>

冥土「今の本数にしてからはどのくらいかな?」

ステ「だいたい一月です」

イン(………………)

冥土「ふむ。減煙と言うのは普通、禁断症状を増幅させるばかりで良い事無いんだがね?」

ステ「ストレスがどうこうする世界はもう通り過ぎましたよ……」トオイメ

冥土「……むしろ胃の方が深刻そうなんだね? 禁煙するだけの精神力はあるようだから」



イン「あの、ステイル。聞いていい?」

ステ「なにかな」

イン「タバコ減らした切っ掛けなんだけど。私の自惚れじゃなかったら……」

ステ「遠慮する事はないよ」

イン「その。私がダイエットしてるから?」

ステ「…………ああ」

イン「じゃ、じゃあ…………私のご飯の量が普通になったら?」

ステ「禁煙するよ、貴女の望み通りに」

イン「!」

ステ「十字の前で誓ってもいいさ」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:27:35.49 ID:DP8T5YLe0<>

イン「……ニコチンとタールの無い世界は地獄だって言ってたよね?」

ステ「…………貴女と一緒なら、地獄も悪くはない」

イン「え?」

ステ「あまり積極的に、というのはゴメンだがね。
   無力な僕に出来るとしたら、これが限界さ」

イン「………………やっぱりばかだよ、すている」ギュ

ステ「かもしれないね」ス



冥土「ご両人、申し訳ないがこの後も診察はあるんだがね?」

ステイン「!!!」ガバッ!

冥土「磁石みたいな反応だねぇ、くっついたと思ったら離れて」

ステ「そ、そこまで密着してはいない!!」アセアセ

イン「そーだよね、すているハグは絶対してくれないし」ボソボソ

冥土「…………はぁ、最後は胃カメラを飲んでもらうよ?」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:29:06.84 ID:DP8T5YLe0<>

十分後


ステ「もう少し苦しいものだとばかり思っていたよ」

イン「さすが学園都(ry」

冥土「それを抜きにしても胃カメラ技術は進歩しているからね。世間一般のイメージも今は昔、さ」

ステ「それで、結果は……?」オソルオソル



冥土「僕を誰だと思っている?」キリッ

イン「……先生、名台詞を使うのがワンテンポ早いんだよ」

冥土「おや?」

ステ「いやだから、とりあえず結論をお願いします」

冥土「まあよくもここまで荒れてるものだね?」

ステ「やっぱりか…………」ズーン

イン「先生でもどうしようもないの?」

冥土「ふっ、僕を誰だと思ってる? 特製の特効薬を投与するから安心したまえ」

イン「感動も半減なんだよ」

ステ「さっきの今だからな…………」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:29:54.54 ID:DP8T5YLe0<>



冥土「これで診察は終了だよ。後はロビーで待っててくれ」

ステ「その前に、少しだけいいだろうか」

冥土「……あまり言いたくはないが、手短にしてくれると嬉しいね?」

ステ「一つ、質問するだけですよ」

冥土「なら構わないかな」







ステ「貴方はアレイスター=クロウリーの生死をご存知ですか?」







<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:32:02.76 ID:DP8T5YLe0<>
冥土「………………なぜ、僕にそんな事を?」

ステ「貴方の患者なんでしょう、奴は」

イン「イギリス清教には、彼専用に組み上げられた探知術式があるの」

ステ「三年前。アレイスターが上条当麻に敗北したその日以来、反応は皆無ですが」

冥土「ならばきっと、彼は今この世に居ないんだろうね?」

ステ「知らない、と言う事でよろしいですか」



冥土「……認めたくはないね。自分の患者が、己のあずかり知らぬ処で死んだなどとは」

ステ「! だが奴はこの箱庭を創り、数多の悲劇を産んだ男だ。それでも貴方は……」

冥土「誤解を恐れずに言おう。僕は彼を救った事を後悔などしていない」



イン「………………そっか。先生はお医者さんだもんね」

冥土「その通り。医者は目の前の命を救うのが使命。
   更に言うなら、結果として現れるモノは宿業なんだよ。
   そこから目を背けるつもりは、ないさ」

ステ「…………思いの外、長引いてしまいましたね。最後にあと一つだけ」

冥土「どうぞ?」

<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:32:50.85 ID:DP8T5YLe0<>





ステ「もしも今、彼が貴方の眼前で倒れ伏していたら?」




冥土「助けるよ、もちろん」




ステ「――――わかりました。では今度こそ、失礼します」

イン「さようなら。お世話になりました、先生」

冥土「………………お大事に」


ガチャ パタン






「僕の仕事はどこまで行こうと治す事のみさ。なあ、アレイスター?」






<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:36:27.64 ID:DP8T5YLe0<>

生徒の身に降りかかっていた悲劇を知り、心を痛めた女がいた。


悪魔の目から家族を守るため、多くを失った男がいた。


深い深い電子の闇から、いまも抜け出せない男がいた。

    じっけん
狂気の沙 汰の後遺症を、振り払おうともがく人々がいた。


暴かれた裏側に、世界の在り様を見つめ直した女がいた。


決して消えない爪痕と共に散った、一〇〇三一の命があった。



「私たちの問題なんて、ちっぽけなものに思えてしょうがないね」

「…………実は僕も、そうじゃないのかと自問してしまった」


男女の心の機敏など霞む、血で記された脚本がそこかしこに存在していた。

陳腐なラブ・ストーリーの登場人物が、場違いを知覚しても無理からぬ事であった。


「その中で強く生きている人達に比べて、私は

<> 冥土帰し編<>saga !美鳥_res<>2011/07/06(水) 20:37:39.19 ID:DP8T5YLe0<>








                        そんな事はないだろう








<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:38:15.09 ID:DP8T5YLe0<>



 ……………………え?」



<> 冥土帰し編<>saga !美鳥_res<>2011/07/06(水) 20:38:55.53 ID:DP8T5YLe0<>




            少なくとも私は、君たちが演出し、出演するこの舞台を





                 とても楽しく拝見させてもらっているよ





<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:39:52.19 ID:DP8T5YLe0<>




「どうかしたのかい、最大主教?」





<> 冥土帰し編<>saga !美鳥_res<>2011/07/06(水) 20:40:23.84 ID:DP8T5YLe0<>




                いま
                現在の私にとって、ただ一つの愉しみなんだ






                     どうか、失望させないでくれよ






<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:41:00.01 ID:DP8T5YLe0<>






「――――――――――――――――――」






<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:42:11.57 ID:DP8T5YLe0<>

「最大主教、おい! 聞こえているかい!?」



聞きなれた声で、瞬きすら忘れていたインデックスの瞳に光が戻ってきた。

何者かの声に聴き入っているようだった、とステイルは根拠も無く直感した。

周囲ではこれまでと変わらず、生温かい活気がBGMを務めている。



「ごめんなさい、ステイル。ちょっとお花摘みに行ってくるね」



何事も無かったのように微笑み、女はやおら立ち上がった。

ステイルは続けて質そうとするが、一瞬早く彼女は小走りで去ってしまった。

呼気の行き場を失った神父の視線の先で、その手が修道服の内側をまさぐる。





腕が伸びた先には、携帯電話が仕舞ってあったはずだ、とステイルは思い出した。






<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:42:57.04 ID:DP8T5YLe0<>
------------------------------------------------------------------


とある日、とある時、とある場所。

明りの灯らない静謐な、広々としたスペースに四つの影が在った。


「……なぜ、計画を変更した?」


沈んだような低い声。


「怖気づいたの? いつもの強気はどこに消えたのかしら」


弾むような高い声。


「いけませんね、喧嘩腰では。まずは言い分を聞こうではありませんか」


張り付けたような明るい声。


「完璧な遂行のため、だ」


――そして燃えるような、しかし昏い声。


<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:45:39.42 ID:DP8T5YLe0<>


「日取りを変えただけだ。単純極まりない内容に変更点は無い」

「ま、そりゃそうよね」

「予定通り、第一一学区のゲートから私が先駆けすればいいんですね?」

「おのおの、過ぎた相互干渉は不要という点も変わりないな」


連帯感をまるで感じさせない好き勝手な言い草が飛び交った。

しかしリーダー格らしい男はまるで気にも留めず、一つ大きく頷いた。


「決行は、七月十五日未明」


幽かな月明りの差し込むステンドグラスの瞬きに向けて、

己に酔いしれるかのようにその両の腕が空に伸ばされる。

他の三人の視線が、思い思いの色を帯びて自然と一点に集中した。





  かがく
「学園都市に、立ち直れない痕を刻んでやろうではないか」






<> 冥土帰し編<>saga<>2011/07/06(水) 20:46:23.57 ID:DP8T5YLe0<>
--------------------------------


OUT

心理掌握
粒子加速器
最終信号    ⇒冥土返しが胃カメラの片手間に十分でやってくれました
警備員ですの!
警備員じゃん      

IN

冥土返し ←New!


--------------------------------
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/06(水) 20:48:20.63 ID:DP8T5YLe0<>

続くんだね?


前スレラストのアンケート結果はまだ反映されていないのでご安心を
まだまだこの程度のいちゃいちゃでは済まさんよ

次回より伏線回収タイム…………のはずでしたが
>>1がそろそろ修羅場に入るので投下頻度を週一ぐらいに下げようと思います
七月いっぱいはそんな感じやもしれますん
とか言っといて調子に乗って明日来るかも

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/06(水) 21:03:52.13 ID:A2n5RosIO<> >>1乙
やっぱ冥土返しかっこイイわ <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/06(水) 21:08:21.48 ID:DP8T5YLe0<> なんかおかしいと思ったらひとつ飛ばしてました

>>122 と >>123
の間に以下のレスが入ります <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/06(水) 21:08:54.67 ID:DP8T5YLe0<>
-------------------------------------------------------------


控え目な賑やかさの雑居する待合ロビーに戻ってきた二人は、疲労感と共に着座した。

先ほどの騒動にも関わらず患者たちの注目が良くも悪くも目立つこの男女に集まらないのは、

ステイルがいつもより念入りに『神隠し』の術を行使しているからである。

処方箋の発行を待つあいだ、二人の口数はやや少なかった。



「この街に来て、いろんな人に会ったね」



インデックスがそう呟いたのは、冥土返しと別れて十分ほどの事だった。

ちょうどその時ステイルは、窓を通して梅雨明けの青空を眺めていた。



「そうだね。本当に、多くの希望と絶望に触れた」



一人の『人間』が播いた、夥しい数の絶望の種子。

そして、抗った『人間たち』から際限なく溢れた、希望と言う名の水。

二人がこの街で目撃したのは、二つの望みがない交ぜになった、科学と言う名の庭園だった。

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/06(水) 21:09:54.60 ID:DP8T5YLe0<> 大変お見苦しいものをお見せしました。
脳内保管をお願い致します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/06(水) 22:05:23.54 ID:FQ+WOZos0<> >>138
よろしい、脳内で十年ほど保管しておこう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/07(木) 21:17:43.25 ID:s2JhGPVE0<> 乙乙。
番外個体と打ち止めは、確かに一方さんとあらゆる意味で不可分な関係だからなぁ。
一方さん以外のキャラと番外個体のカップリングって、そういえば見たことない気がするな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/07(木) 21:47:12.64 ID:lGazmRHto<> 随分と大幅に修正されたな・・・>口癖
流石冥土帰し・・・というべきかなんなのかww <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/09(土) 18:13:23.39 ID:kyZzhmVc0<>
 〇∧〃 週一ペースだぁ!? 関係ねえよ!!
 / >   小ネタにはそんなことカァンケイねェェんだよォォォ!!
 < \  ←>>1


>>139
やめて恥ずかしい///

>>140
>>1個人的にはインさんと上条さんもそういう関係です
だからこのSSのステイルとインさんは散々苦労させられてます


他の方もありぎゃとうございました
本日は皆さんを「!?」状態にしたまことちゃんの正体に迫ります↓

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:15:13.05 ID:kyZzhmVc0<>


とある日 とある託児所



幼児A「まことちゃん、おれとプリンたべよ!」


幼児B「あー! ぼくがさきにあそぶやくそくしたのにー!」


幼児C「ね、まことちゃん。わたしとおままごとしよ?」


真理「えー? みんないっしょにあしょべばいいじゃん!」


絹旗「真理ちゃんは超いつも通りですね……さすがフラグ夫婦の子です」



ヒョコヒョコ   スタスタ



イン「こんにちは!」


ステ「失礼するよ」

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:16:12.24 ID:kyZzhmVc0<>

絹旗「これはこれは。今日はお宅のお子さんのお迎えですか?」シシ


ステ「アホぬかせ」


イン「まことのお迎えに来たんだよ」


絹旗「ええ、上条さんからお電話頂いてますよ」


ステ「じゃあ今の無駄なやり取りはなんだ!」


絹旗「超挨拶がわりですよ…………あれ、裏篤じゃないですか」


裏篤「……こんにちは、きぬはたさん」


イン「りこうからも幼稚園へのお迎え頼まれたの」


絹旗「むむむ、超信頼されてますね」


ステ「日ごろの行いのおかげでね。ところでこの子は大人しいな……」


裏篤「………………」ボー

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:17:03.82 ID:kyZzhmVc0<>

イン「私たちみたいな何回も会ってない人の前だからなんだよ、きっと」


絹旗「いえいえ、裏篤はいつもこんな感じですよ。ね?」


裏篤「………………ん」コクリ


ステ「母親似なのかな」


絹旗「私もそう思うんですけど、超馬鹿面は名前がどうとか言ってましたね」


イン「名前?」


絹旗「私も詳しくは超知りません」



トテトテ



真理「あー! いんでっくしゅ、しゅている………………あ」


ステ「迎えに来たよ。…………?」


イン「どうかしたの、まこと?」


絹旗「ああ…………お二人はまだ知らなかったんですね」

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:17:58.87 ID:kyZzhmVc0<>

ステ「何の話だい?」


絹旗「真理ちゃんと裏篤の事ですよ」


イン「え? いわゆる一つの、幼馴染でしょ?」


絹旗「超すぐにわかりますよ」


ステイン「?」




裏篤「……まこと、いっしょにかえろう」


真理「は…………はぁ!? にゃにいっちゃってるわけ!?」



ステイン「!?」



裏篤「……おまえ、いつもそればっかだよな」


真理「うっしゃい!! しゃんしゃいとしうえだからっていばんにゃいでよ!!!」

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:18:43.53 ID:kyZzhmVc0<>



ステ「これは」


イン「まさか」


絹旗「おわかりだろうか? そう、真理ちゃんは裏篤に対して…………!」





真理「かんちがいしにゃいでよね! うまづらのことにゃんてぜんぜんすきじゃにゃいもん!!」





ステ「ツン…………ッ!」


イン「デレ………………ッ!?」


絹旗「父親からはフラグブレイカー、母親からはツンデレールガンを継承したサラブレッド。
   それが、上条真理ちゃんの超正体なのですッ!!!」


イン「末恐ろしい子ッ…………なんだよ!」


ステ(常時よりボキャブラリーが増えてないかあの子)


<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:19:41.78 ID:kyZzhmVc0<>

イン「馬面っていうのは…………」


絹旗「ああ、白髪のオジサンと遊んでたらうつっちゃったみたいで」


ステ「oh…………」


絹旗「しかししかし超しかし! 我らが真理ちゃんのポテンシャルはこの程度ではありません!
   神父さん、あの二人を一時的に二人っきりに出来ますか?」


ステ「出来るか出来ないかと聞かれれば、出来るがね」カードスッ


イン「するとどうなるのかな?」


絹旗「もちろん見てからの超お楽しみです」


イン「ステイル、GO!」


ステ(悪趣味な大人どもに囲まれて可哀想に……まあ、僕も見たいんだけどね)バラマキ



カミカクシー




<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:20:44.03 ID:kyZzhmVc0<>


裏篤「…………!」スッ


真理「ちょっ、いきにゃりちかづかにゃいで…………あれ、せんせーは?」


裏篤(しんぷさんがなにかしたのかな)


真理「み、みんなどこー?」


裏篤「……おちつけ、まこと」


真理「………………みんな、いないの?」


裏篤「……たぶん」


真理「………………ふたりっきり…………」




ステ「異変を感じてとっさに真理を庇ったね」←すぐ近くで見てる


絹旗「ふふふ、ウチの裏篤はなかなかの紳士でしょう?」フンス


イン「この後何が起こるのかな?」ワクワク

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:21:59.11 ID:kyZzhmVc0<>




裏篤「……しんぱいすんな、おれがいる」


真理「……………………りとくん」ボソッ



ステ「おっ」


イン「これは?」



裏篤「……なんだ、まこと?」


真理「りとくん……えっと…………こわいから、なでなでして?」ウワメヅカイ



ステイン「……………………!!!!」デンリュウハシル



裏篤「……ん」ナデナデ


真理「んにゃあ…………りとくぅん……」ゴロゴロ

<> 小ネタ「サラブレッド」<>saga<>2011/07/09(土) 18:23:07.05 ID:kyZzhmVc0<>



イン「あ、あの歳で………………ッ!!」


ステ「デレを極めている……………………だとおッ!!!」


絹旗「二人の時だけ超素直になる、お母さんとはまた一味違うツンデレですね」


イン「みことは『時間経過型』あるいは『フラグ回収後型』だったからね」


ステ(ツンデレってのは奥が深いな……)




真理「えへへ〜…………りとくん、ちゅ、ちゅーして?」


裏篤「………………やれやれ」




絹旗「老若男女問わずの全方位旗立てに加えて、本命へのデレデレスキンシップ。
   …………この超スペック、如何思われますか?」


ステ「ああ、これは確かに」


イン「サラブレッド、かも」



オワリ

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/09(土) 18:26:32.07 ID:kyZzhmVc0<>
幼児としてキャラがぶれている
二歳児にしては喋り過ぎ? 本編より語彙多すぎ?
カァンケイねェ(ry

ロリコンまたはショタコンの方は悶え度を
「あ」の数でカミングアウトしていって下さいね^^
ちなみに>>1は「ああああああああああああああ」ぐらいです 軽症ですね

ではまた明日か明後日、本編の投下に来ます

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/09(土) 18:47:45.50 ID:mvqrCBgTo<> 「あ!「ああ!「あああ!「ああああ!「あああああ!「あああああああああああああ――!」



原義の意味でのツンデレ……!
これが御坂遺伝子の集大成、か…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/07/09(土) 23:15:57.85 ID:AHpDfqxWo<> サラブレッドってレベルじゃねェ…

神隠しは人払いかね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/10(日) 03:58:08.77 ID:wWK/e7sg0<> 2歳児でこれって、なんかもうサラブレッドってレベルじゃねえ。
そしてこれは、りとくん次第でヤンデレ化する気質も大いに秘めていると見た。
まありとくんのご両親は上条さんのような強烈なフラグメイカーではないから大丈夫、か? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/10(日) 08:58:04.37 ID:USX44WqAO<> 乙
あれ、でもこれたまに突然流暢に喋り出す謎が解けてな…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/10(日) 09:36:16.90 ID:sUj3hKe1o<> おっつ

>>142
むぎのんが小島で再生される様になったらどうすんだwwww <> 小ネタ「表紙」<>saga<>2011/07/10(日) 12:44:32.83 ID:yisU3/0j0<>

イン「ステイルステイル! 新訳二巻の表紙絵が公開されたんだよ!」


ステ「…………ああ、それは良かったじゃないか」


イン「あれ、何そのリアクション」


ステ「もう何回目かもわからない表紙登場おめでとう」


イン「そんな子供みたいな事で拗ねてるの!? 私だって十七巻以来の登場かも!」


ステ「ああ、神裂と仲良さそうにしてたアレね……」


イン「べ、別に良いでしょ、設定上は親友なんだから」


ステ「ちなみに僕は十巻の端に登場したのが最初で最後だ」シュボ


イン「…………い、一応あの絵で私と一緒だったよね!」


ステ「間に年増と歩く18禁を挟んでだったがね」フー


イン「(どんどん傷口が広がってくんだよ)…………あれ?」


ステ「どうかしたかい?」プカー


イン「……よく見たら『SP』の表紙絵も公開されてるんだよ」

<> 小ネタ「表紙」<>saga<>2011/07/10(日) 12:46:03.90 ID:yisU3/0j0<>

ステ「なにっ!? という事は」


イン「良かったね、表紙はステイルとイノケンティウスだよ」


ステ「なん…………だと? いや待て、これは夢だ、夢に違いないね」


イン「現実だよ、ちゃんと向き合って」


ステ「……………………………っしゃああああああああ!!!!
   一巻から出続けている僕にもようやく日の目が当たる日が来たのか!
   神裂なんて四巻でとっくに一人で表紙を飾っているっていうのに、
   僕と来たら苦節――――何年だっけ? まあいいや、この扱いだった!」

   
イン「………………」


ステ「それが、それが遂に! …………おっと失礼、取り乱したね、HAHAHA!」


イン「…………じゃあステイル、もう一つの現実もお目に掛けようね」


ステ「? さ、さっきからなんなんだい?」


イン「簡単な事なんだよ。私の質問に一つ答えるだけだから」


ステ「はあ」


イン「……………………ねえステイル?」

<> 小ネタ「表紙」<>saga<>2011/07/10(日) 12:46:42.05 ID:yisU3/0j0<>


「この可愛い女の子、誰?」


「!? あ、いやその、彼女は別に」


「 だ れ な の ? 」


「単なる、そう、仕事上のアレ、あ、ちょま」




「  す  ー  て  い  る  ぅ  ?  」




 | | ‖ | || ‖ │ | | ‖ |
 | | ‖ | || ‖ │ | | ‖,//
 | | ‖ | || ‖_,,r--、-,. -"/ ,," ;;
 | | ‖.,,. -''" '';;:::;) ゙ 、 ''"",, ゙\
 | | .r'"/;;'' i / \; ;;  i '''ヽ、 ;;:ヾ
 | | .i ,, i '' ! /") )/ ./ヾ' ' 'ヽ  ';i
 | | { ;;::: i | .i//;;i/_,,ソ) , |!ヾ;: |   僕の側に
 | |i.!   | |ノY".'>ミ;;"《_;,ノリノ ! ;;:} /    近寄るなああ
 | ! ヾ  ! ! /゙"..::" 、゙;〉u./ |./ //"''::    ―――――――――ッ!!
 |.i;;::  ::;; ヽ ヽ u  ,- ‐ヘ u// /'  '';:
 | .ノ;  ヽ;;;\i.  〈""" .{ //! _,,,.....,
-''"ノ ,,  ;'ヽ\v ヽ、_)ノ'-―=ニ''''
;;:,  :;;''i  ノ; \、 u ゙'''/<、>< ヽヽ
_,,.,,="-'",,( \ \ -/,/,,,_ /''\,.へヽ
;'"! | ' ,... .,, \";;ヽi_」  へ /\/ヽ
. ! !/ iヽ.\''  )ヽ!゙'''ト-''!\ /i 〉
 '';; { ;" i  ヽ \ ./-i"|::;;;,, /\ >'"r
ヽ;;: / : :'  i " >,゙''‐''ヽ、>::::''"::<>゚。!
ヽ! / / , :./{ ゙),,r-(,_/ !:::::::::> <! ヘ
 Y /= .i , i;;::^'"!  :::i:i i
. ゙〈_ /!  |    !    ! !
   ヽ,,)! i
     ゙-'


終わりがないのがオワリ

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/10(日) 12:48:30.33 ID:yisU3/0j0<>
ゴメン興奮して書き殴ってしもた

と言う訳でどうも、ステイルがバードウェイ妹に
フラグを立てている事実をすっかり失念していた>>1です
皆ちゃんと「SP」も買うんだぞ!


>>154
正確には
「神隠しで自分達の気配を消して、人払いでその他大勢を追い払う」
ですがまあこまけぇこたぁ(ry

>>156
それ以上いけない


他の方もレスTHANKS
>>1はなんだかんだで十巻の表紙絵も好きですが皆さんはどうですか?

では夜九時頃にまた

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/10(日) 13:02:24.65 ID:BvfKyjgAO<> ステボロさんww

イノケンもステイルもかっこよく表紙に出れて良かったね!

乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/10(日) 17:55:56.06 ID:axiZJwu3o<> http://2d.moe.hm/index/img/index4335.jpg

イノケンェ… <> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:00:59.46 ID:yisU3/0j0<>

七月十五日 午前六時
 
上条家 ベランダ


「それは、本当なのか?」


『ああ、間違いない。たった今、「吐かせたて」ほやほやのネタだ』


「科学サイドにはこのことは?」


『もう別口で伝えてある。対策は向こうの頭脳が立てるさ。…………問題はお前達だ』


「何の問題があると言うんだい」


『お前は連中の恐ろしさを目の当たりにした事が無いんだ! 今すぐにでも援軍を……!』


「それでは全てが台無しだ。らしくないぞ」


『…………すまん。この件に関しては、オレの失策だ』


「己が身は、自分で守れるさ。僕も…………彼女も」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:02:22.98 ID:yisU3/0j0<>

『……お前こそ、なんぞ心境の変化でもあったか?』


「彼女は強い。そして、天才だ。それを思い出しただけだよ」


『…………そうか。カミやん”も”いないそうだな?』


「一昨日からアメリカに出張中だ。相当に渋ってたがね」


『あのアマ…………っ!! くそ、お前達はどう動く?』


「決まってるだろう、現場だ」


『確認するまでもないが、最優先事項はわかってるな』


「愚問だ」



ブツッ



「…………長い一日になるな」


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:03:18.46 ID:yisU3/0j0<>

ガラガラ


美琴「あら、こんな朝早くから電話?」

ステ「……ああ、仕事の関係でね」

美琴「仕事ねぇ」

ステ「最大主教は? もう起きてるかい?」

美琴「ええ、まだ寝室だけど。さっきに起こしに行ったら誰かと電話してたわよ」

ステ「電話……そうか、ありがとう」

美琴「何のお礼よ、変なの。今日は出かけるの?」

ステ「ああ。今日は一日忙しいかもしれないね」

美琴「そっちもなの? 実は私も母校で講演しなきゃいけないのよ。
   浜面さんもお出かけらしいし、真理は絹旗さんのところかな」

ステ「……そもそも今日は」

美琴「いいのよ、今回だけはね。私も他の妹達も、行かないって決めてるの」

ステ「………………そうかい」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:04:11.35 ID:yisU3/0j0<>

美琴「それより我慢できないのはね」

ステ「?」

美琴「今日で六連チャンって事なのよおおぉぉぉぉ!」

ステ「……世の社会人には珍しくもなんともないよ」

美琴「真理ちゃんの相手をロクに出来ずに六日! もう嫌だわ……夜しか寝れてないもん」

ステ「ツッコまないぞ? ツッコまないからな?」

美琴「不幸だわ…………講演会なんて抜け出そうかしら」

ステ「ちゃんと責務を果たせ! いい大人だろうが!!」

美琴「はあああ………………あ、新聞取ってきてちょうだい」

ステ「やれやれ」



スタスタ

ガチャ

ガサゴソ


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:04:46.08 ID:yisU3/0j0<>

ステ「………………これは」ピラ

美琴「どうかしたー? はぁ」

ステ「……いや、今日の予定が決まってね」

美琴「なんか面白いチラシでもあったの?」







ステ「ああ、ちょっとメイド喫茶に行ってくるよ」







美琴「は?」


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:05:36.53 ID:yisU3/0j0<>


午前八時 第七学区 警備員第七三活動支部


ガチャ


佐天「おはようございます!」

削板「おはよう佐天! 朝の挨拶はこうじゃなくちゃな!!」

白井「朝っぱらから頭に響くので遠慮して欲しいですの……」

削板「そりゃあいかん! 軽くランニングしてスッキリしねえと」

白井「隊長の『軽く』は天元突破しすぎですの!」

佐天「あのー、それで何で招集されたんですか? 私これから研修に行くんですけど」

白井「コホン! それでは事態を説明させていただきます。まずはコチラのモニターを」


ブゥン


佐天「これ…………第一一学区の物資搬入ゲート?」

削板「まあ、もう見る影もないけどな」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:06:49.99 ID:yisU3/0j0<>

白井「今日未明、何者かが警備の最も手薄になる時間帯を狙って正面突破してきたようです」

佐天「正面突破、って! こんなの戦車でも持って来なきゃ不可能ですよ!」

削板「………………あるいは、魔術師か」

佐天「!!」



白井「本部でもその見方が強まっております。もしかすると、『あの二人』が手引きを」

佐天「白井さんっ!!」

白井「……冗談ですの、九割ほどは。彼らの奇妙な動きは上層部も黙認していたようですし」

佐天「ほっ…………それで、私たちはどうすれば?」

削板「皆は警戒だけは怠らず、普段通りの職務に当たってくれ。有事の際には俺が出る」

白井「た、隊長? そのような独断専行はお止しになった方がよろしいかと思うのですが」

削板「むむ、俺の頭ではどうにも上手く説明できねえんだが…………。
   何かあったら、とにかく俺に知らせろ! 責任は俺がとる! ってえ事だ!!」

佐天「…………なんかモーレツに納得いかないんですけど」

白井「とは言え隊長ですし。これ以上訊いてもきっと無駄ですわ」

佐天「それで済むのが七三支部クオリティーなんだよね…………」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:07:33.14 ID:yisU3/0j0<>


午前九時 第十二学区


イン「…………凄まじい『場違い』を感じずにはいられないんだね?」

ステ「辺りには神学校が割拠しているというのに、まったく」



「お客様は神様〜右席に失礼しますご主人様〜ベツレヘムの星へようこそ!」



ステ「……………………はあ」

イン「居るのかな、あの人は」

ステ「土御門の情報と照らし合わせるなら、可能性は高い」スタスタ

イン「え、ちょっと。まだ『CLOSE』って」

ステ「貴女がメイド喫茶を満喫したいなら一時間後に一人で来るんだね」

イン「二人で行かないの?」

ステ「男女でこんな独り身御用達の店に来て何が楽しいんだ!」ガチャ

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:09:03.11 ID:yisU3/0j0<>

カランカラン


??「あらお客様、開店時間まではまだありm」ピシ

ステ「すまないが、CEOに話があってきたんだ。今この店に居るんだろう?」

イン「…………聞こえてないよ、固まっちゃってる(かなりの美人メイドかも)」

ステ「おやレディー、どこかお具合でも?」

イン(このフェミニストっぷりが時々憎い…………あれ、私の方見てる?)



??「な、な、『禁書目録』!?」



イン「! 最大主教としてじゃなく、魔道図書館としての私を知ってるって事は……!」

ステ「なるほど、魔術師かい。それなら話が早いな」

??「何の目的で此処に来た!?」




ステ「既に言っただろう。君たちのボス――――フィアンマを出せ、とね」




<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:10:43.68 ID:yisU3/0j0<>



同時刻 第七学区

常盤台中学校 講堂


ザワザワ ガヤガヤ


美琴「ふう…………真理ちゃああんん…………」


キビキビ


寮監「おお、御坂……いや上条か。久しぶりだな」

美琴「あ、教官、じゃなかった寮監! お久しぶりです」ペコリ

寮監「誰が教官だ…………しかし感慨深いな。
   あのじゃじゃ馬がこうして壇上で生徒を見下ろす立場になったとは」

美琴「そんな言い方はないですよー。 私だってもう一児の母…………まことちゃぁん」オヨヨ

寮監「生徒の成長を見守るのがこの身の喜びとはいえ、自分が歳をくった事は実感せざるを」

美琴「まこちゃん、ママは一刻も早くあなたに…………ハッ!」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:11:30.45 ID:yisU3/0j0<>

美琴「あの、すいません!」

寮監「いつまでも行き後れと呼ばれるのは耐えがた……おっとすまない、どうした?」

美琴「私、自分の講演だけ済ませたら帰る、というわけにはいかないでしょうか?」

寮監「…………はあ」



美琴「い、いやだなー。そんなこれ見よがしな溜め息つかなくても」アハハ

寮監「お前は結局のところ相変わらずなわけだ、と思ってな。無理に決まってるだろう」

美琴「ですよね……」

寮監「今日の主賓なんだぞお前は。もっと常盤台OGとしての自覚を持て!」

美琴「はい………………はぁ」チラッ

寮監「今度はどうした」ヤレヤレ

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:12:25.50 ID:yisU3/0j0<>


屈強な黒服達「「「………………」」」



美琴「いえ、今日の警備は昔よりも物々しいな、と思いまして」

寮監「ああ……いつもはもちろんここまででは無いが。
   今日は特別だろう。なにせ巷間で屈指の人気を誇る『超電磁砲』の講演会だからな」

美琴「…………そうなんでしょうか」

寮監「おいおい、九年も経つと性格も変わってしまうのか? もっと自分に自信をだな」クドクド

美琴(……本当に、それだけなのかしら)


(今朝のステイルの様子も少しおかしかったし)


(それにいま、当麻は学園都市には居ない)


(真理に何かあった時――――あの子を守るのは、私の役目だ)

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:13:22.49 ID:yisU3/0j0<>


「…………………………い!」



美琴「ん?」

寮監「……………………いてるのか、上条!!」

美琴「んにゃ、ひゃい!? な、何でしょうマム!!」ビシッ

寮監「誰が鬼上官だっ!! 出番だぞ、早く行け!」

美琴「へ!? も、もうそんな時間!? い、イエスマム!!!」ソソクサ



オ、オマタセシマシター

ワーワーワー ザワザワザワ オオオッ!!!

ミコトサマ! レールガン! ツンデレールガン!

ツンデレッツッタヤツチョットマエデナサイ!



寮監「…………不安だ……いや、こういう時はいま流行りのアレだな」



寮監「不幸の予感だ………………」ハァ


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:14:23.06 ID:yisU3/0j0<>



午前九時半 メイド喫茶『ベツレヘムの星』


スタ スタ スタ


ステ「…………久しぶりだね」

イン「私の昇叙以来だから、もう九ヶ月になるのかな。『右方のフィアンマ』」



フィアンマ「ふっ、遂に俺様の城に足を踏み入れる気になったか。歓迎するぞ」



フィ「それから一つ訂正を求めよう。俺様の事は、ただの『フィアンマ』と呼べ」

ステ「僕らの話はわかってるだろうな、『ただのフィアンマ』」

イン「学園都市に出店したのもこの時の為だったんだね? 『ただのフィアンマ』」

フィ「ん、何をそんなに怒ってる?」

ステ「当然だろうがこのチラシを見ろ!!(ピラ)
   いまだに最大主教の写真を無許可で掲載しやがって!!」

イン(別に私はいいんだけどなぁ、メイド服可愛いし)

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:15:20.49 ID:yisU3/0j0<>

ステ「この一年、会ったら一言くれてやろうと思ってたんだよこっちは!
   なんだこの異様に完成度の高いコラ画像はあああ!!!」

フィ「知っているか? 肖像権侵害は親告罪なのだから本人の訴えが無ければ成立しない」

ステ「……!! そ、そういえば」

フィ「世界を股に掛けるチェーン店の経営者である俺様が、
   その程度の法務知識も備えていないと思ったのか? 底が知れるぞ、ステイル=マグヌス」

ステ「グググググッ!」

イン(華麗に論点をずらされてるんだよステイル……まあ私は別に(ry)



フィ「それで? そんなクレームを付けにわざわざ当店にお越し下さったのか?」

ステ「……Holy Shit! 本題に、入ろう」ギリギリ

イン「(聖職者がその表現はまずいんじゃ)それより私は口調の事が気になるんだね?」

ステ「なぜ僕のトラウマを抉る方向に舵を切るんだ!?」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:16:27.85 ID:yisU3/0j0<>

フィ「口調?」

イン「最後に別れた時はローラとさいじの喋り方がハイブリッド状態だったね?」

ステ「その組み合わせで何らかの文化的発展が得られるとは思わないけどね」

フィ「ああ…………周りがとやかくうるさかったからな。
   ビジネスに相応しい話し方がどうとか、矯正には苦労したよまったく」



??「ちょっと待て! さも自分の苦労話のように吹聴してんじゃないわよ!!」

フィ「む」

ステ「誰だ!」



??「苦労したのはアンタじゃなくて私でしょうがこのおかっぱ頭!」

イン「あ、さっきのメイドさん」

フィ「なんだ、開店間近だというのにどうして着替えたんだヴェント?」

ヴェント「名前で呼ぶなあああああ!!!!!」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:17:27.95 ID:yisU3/0j0<>


ステ「ヴェ、ヴェント…………?」

ヴェ「あ、ち、違うのコレは」

イン「えーっと、天罰術式で『0930事件』を起こした、あのヴェントさん?」

ヴェ「いやだから」

フィ「今日は指名予約が三名様入ってるぞチーフメイド」

ヴェ「ちょっとアンタ黙ってなさいよおおおおお!?」

フィ「まあどっちみち今日は開店しないけどな」

ヴェ「がああああ!!! アンタ一発殴らせて頼むから!」グイッ カラン

フィ「どうどう」



ステ「濃厚な同一属性の魔力を感じる……!」

イン「…………別に『前方』は火属性じゃないから、
   ヴェントとすているに属性的な共通点なんて無いよーだ」フン

ステ(そんな意味のわからない機嫌の損ね方をされてもな……(コツン)ん、何だコレ)

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:18:30.99 ID:yisU3/0j0<>





午前十一時 第一学区 統括理事会本部



雲川「………………そうか、その……くれぐれも無茶は」


コンコン


雲川「どうぞ」ピ

親船「あら、芹亜さん。もしかしてお邪魔だったのかしら?」ウフフ

雲川「何か御用で?」

親船「あらあら」

雲川「…………御用をどうぞ、統括理事長……!」

親船「うふふ」


ドン!


雲川「貴女、私をからかいに来ただけだな!?」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:19:25.18 ID:yisU3/0j0<>

親船「からかうだなんてそんな。芹亜さんも人の子だもの、
   心配で胸が張り裂けそうになっても無理はないわ」

雲川「捏造だけど! それは捏造以外の何物でもな」


prrrrrrr!


親船「どうぞ、出てくださって構わないわ?」ニコニコ

雲川「…………もしもし! まだ何か話が………………へ?」



雲川「ま、間違えたんだ、気にするな!! ……コホン、報告を聞くけど」

親船(あら?)

雲川「!! 付近の捜索は! 検問の設置はどうなっている!!」

親船「……………………あらまあ、もしかして」

雲川「クソッ!」ピ

親船「いけないわ芹亜さん、淑女らしい物言いを心掛けないと」

雲川「それどころじゃあないんだけど」ハァ

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:21:14.58 ID:yisU3/0j0<>

親船「常盤台からの連絡かしら?」

雲川「いかにも。『超電磁砲』が自分の講演時間を終えた途端に消えたらしい」

親船「…………攫われた、という可能性は万が一にも在り得ないのかしら?」

雲川「書置きが控室に残されていたそうだけど」

親船「どのような?」



雲川「『我真理を愛す故に我在り』」



親船「……………………錬金術の極意に辿りついた、とかじゃあなさそうねえ」

雲川「あの親馬鹿娘がぁ……! アイツの性格のどの辺りが『破綻してない』んだ!」ピピピ

親船「あら、今度こそ愛しの旦那様に?」

雲川「やかましいんだけど! ……もしもし、例の番号はしっかり登録してあるな?
   今後はその相手からの指示に従って移動して欲しいんだけど」

親船(お茶でも淹れましょうか。親船最中はまだ動かない)

雲川「……ああ、『超電磁砲』の位置を把握するのもいいんだけど。
   やり方としてはこの手の方が確実だ。じゃ、あ…………」

親船「」コポポポポポ

雲川「た、『大したこと』じゃないけど! ああっと…………ええっと」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:22:49.13 ID:yisU3/0j0<>





雲川「し、死なないで………………無事で帰ってきてね?」






親船「そろそろ出来たかしら」ツツツ



雲川「うん、うん…………わかった、信じてる」ピ


親船「」ズズズ



雲川「はあ………………」ポー


親船「あらあらまあまあうふふ」



雲川「………………!? ってうわあああああああ!!!!
   い、いま見て聞いて触ったありとあらゆる一切合財を忘れて欲しいんだけど!!!」

親船「若さって、振り返らない事よねえ」ズズ

雲川「振り返りたくないんだけどおおおおおお!!!!!!」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:24:19.79 ID:yisU3/0j0<>




再び『ベツレヘムの星』



ステ「…………はあ、了承した」ピ

ヴェ「そっちのアンタ! 私の話聞いてたの!?」

イン「ま、まあまあ。私がちゃんと覚えてるから安心して?」

フィ「一時間以上も言い訳めいた身の上話をせずともいいだろう」



ステ「コレは失礼。いまいち要領を得なかったが、話をまとめてもらっていいかな」

イン「ヴェントは三年ぐらい前から、フィアンマの監視をしてたんだね?」

フィ「俺様に言わせれば、勝手に着いてきただけなんだけどな」

ヴェ「私は前教皇にアンタから目を離すな、って言われてるのよ! 誰が好き好んで!」

ステ(ほう)

イン(まさかコレは…………?)

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:25:51.35 ID:yisU3/0j0<>


フィ「その割には喜んで俺様の覇道に手を貸しているじゃないか」

ヴェ「誰がっ!! 生活の糧を得るために仕方なくやってんのよ!」

イン「でも、イギリスに来た時はフィアンマ一人だったよね?」

ヴェ「そ、それは…………」

ステ「最も監視を緩めてはいけないタイミングだと思うけどね」

フィ「万が一、億が一にも自分を知る相手には出くわしたくなかったそうだ」

ヴェ「ん、ぐ………………」

イン「え、ロンドンに知り合いなんて居るの?」

ステ「あるとすれば元ローマ正教のオルソラやアニェーゼ部隊か。
   …………いやいや、『後方のアックア』が居たな」

ヴェ「たとえどこの馬の骨ともわからない魔術師の一人にでも、
   元『神の右席』がメイドやってるなんて知られたら舌噛むわよ!」

ステ「いま僕らが知ってしまったがね。そんなに嫌なら辞めればいいだろう」

ヴェ「……………………」



イン「ねえねえヴェント」コソコソ

ヴェ「……なによ」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:26:42.15 ID:yisU3/0j0<>


イン「フィアンマってニブい?」ゴニョ

ヴェ「!!!!!!」パクパク

ステ「奴もまた上条当麻の犠牲になったんだ……犠牲の犠牲にね…………」

ヴェ「ど、どどどっど、どういう」カァァァァァ

イン「そっか、ローマは結婚に関してはイギリスより厳しいもんね?」



ヴェ「………………よーし。私に敵意があると見なしたよアンタらぁぁぁ!!!」

ステ(天罰術式はもう使えないだろう……)

フィ「よさんかバカもーん」バチカーン

ヴェ「ごっ、があああああああ!?」ドガッシャーン!



ステ「おい待て…………どういうことだ今のは?」

イン「え? あれ?」

フィ「お前達の用事は、『コレ』に関係しているんだろう?」クク

ステ「…………わかっててやってたなクソ野郎。素晴らしい寄り道の供出どうもありがとう」

イン「琵琶湖を回らずに突っ切るぐらいのタイムロスはしたんだね? …………はぁ」


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:27:35.13 ID:yisU3/0j0<>






「それでは戦争と洒落こもうじゃないか――――『ただの魔術師』どもよ」


















「わ、私を置いてきぼりに、してんじゃないわよ……不幸だ、わ…………」ピクピク


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:28:32.28 ID:yisU3/0j0<>




同時刻 第一三学区 とある託児所



黒夜「いないいない…………」

幼児たち「………………」ゴクリ


バサモサドサッ!


黒夜「おててがいっぱぁーーい!」

幼児「きゃあーーーーー!!」キャッキャッ

黒夜「よっしゃウケたーーーーっ!!!」グッ!



絹旗「海鳥ぃぃ! 超無垢な子供たちになにしでかしてくれてんですか!?」

黒夜「かてぇ事言うなよ最愛ちゃん、こんなに喜んでくれてんだ。今度こそ真理にも!」

絹旗「私の超仕事を増やすなっつってんですよ!!
   何度見せようが真理ちゃんにアレは生理的に無理なんです!
   ちなみに私も見てると吐き気が超こみ上げます」

黒夜「ひでぇ…………」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:29:22.11 ID:yisU3/0j0<>

絹旗「だいたいあなた、何こんなところで油売ってるんですか」

黒夜「いやそれがさ、今朝から浜面や麦野と連絡つかないんだって。
   ……………………今日は『あの日』だってのにさ」

絹旗「…………麦野はまだわからなくもないですが、超浜面や理后さんまで?」


トテトテトテ


真理「もあいせんせー」

黒夜「おっ真理、ちょうどいいところに」

絹旗「やめろって言ってンでしょうが人の話聞いてンのかァこの田ゴ作がァ!!」



真理「せんせー、まことね。ままに会いたい」

絹旗「え、ええ!?」

真理「さいきんね、ままとおねんねしてないの」グス

黒夜「真理…………」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:30:15.05 ID:yisU3/0j0<>

絹旗「うーん…………真理ちゃん、ママはお仕事中なんですよ?」

真理「…………うん、おしごと」

黒夜「良いじゃんかよ、講演会ぐらい連れてってやろうぜ」

絹旗「無責任な事言わないで下さい!
   だいたいあの超講演は一般公開されてないはずです」

真理「やっぱり、だめ?」ウルウル

絹旗「んぐ」

黒夜「……どうするよ」



絹旗「…………お散歩行きましょ、真理ちゃん?」

真理「ままのところ!?」

絹旗「それはダメです。だけど、ちょっとでもママの近くに行きましょう?」

真理「んー…………」

絹旗「嫌ですか?」

真理「ううん、おさんぽいく」

<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:31:46.03 ID:yisU3/0j0<>

黒夜「おお……最愛ちゃんがちゃんと保母さんしてる」

絹旗「おててを全部切断されたいんですか?」

黒夜「こわいこわーい」

真理「もあいせんせーとおさんぽ!」

絹旗「海鳥も来ますか?」

黒夜「いや、もう少し麦野たちと連絡とれないか試してみるわ」

絹旗「そうですか。じゃあ超準備しましょう、真理ちゃん」

真理「うみどりちゃん、ばいばい!」フリフリ

黒夜「おう、最愛ちゃんをくれぐれもよろしくな」フリフリ

絹旗(…………超愉オブカ・ク・テ・イですね)





<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:32:43.27 ID:yisU3/0j0<>

とある路上


ジジジジジ ミーンミーン


絹旗「あっついですねー、お水はちゃんと持ってきてますか?」

真理「カエルのすいとう、あるよ」

絹旗「(美琴さんの趣味ですかね)か、可愛いですね!」

真理「いやぁ微妙」

絹旗「!?」



ジジジジジジジジ ミーンミーンミーン



真理「ままはどっちかな?」

絹旗「そうですねー、超第七学区はここからだと――――」





ジジジジ シ ゙ ミ  ーン   ミーンミ      -ン





<> 神の右席編@<>saga !red_res<>2011/07/10(日) 21:35:31.33 ID:yisU3/0j0<>

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<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:36:37.26 ID:yisU3/0j0<>




「――――――!」


絹旗最愛の視界が、にわかに紅く染まった。


「せんせー?」


いや、違った。

彼女の脳内でアドレナリンが急速に、劇的に分泌された為に生じた錯覚だ。

盛夏も近い日本特有の熱気は、生々しい絵の具になど彩られてはいない。


(……肌を刺す、喉が涸れる、呼吸が乱れる……!)


しかし、女の全身を貫くこの寒気が幻などであるはずがない。

錆ついて幾年経ったかもわからない警鐘が、耳の奥で轟音をあげ続けている。


(『懐かしい』、この感覚――――ッ!)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/10(日) 21:37:01.79 ID:Oh55kFKeo<> 何事ッ!? <> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:37:25.69 ID:yisU3/0j0<>






「おい、女」







<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:39:25.87 ID:yisU3/0j0<>

「…………は? 何ですかあなた、超いきなり」


背後から話しかけてきた人物を、顧みる事が出来ない。


「その子供について少し聞きたいんだが」


血みどろのダンスホールから離れて久しい女は、口の動きとは裏腹に慄いていた。

何かが、この声の持ち主は自分とは『何か』が本源的に違う。

拙い、不味い、マズイまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい




「えー? わたしのなーに?」

「まこ…………」


折れそうな膝を無自覚に支えたのは、小さな命の邪気ない呼吸だった。

そうだ、この幼い娘一人を守れずして、何が『第一位の防護性』か。

                  オフェンスアーマー
手足に、心臓に、瞳に、脳に、『窒素装甲』絹旗最愛が蘇る。


          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――――否。蘇ってしまった。


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:40:30.94 ID:yisU3/0j0<>

「どうやら異国の方のよォですが、日本の礼儀というものを弁えてませンね。
 とっとと失せてくださいませンか、超クソ野郎」


結論から言ってしまうならば。


「…………どうやら『上条』という名に相違ないな、『窒素装甲』?」


絹旗は大能力者になど戻らず、無力な保母として遁走を選択すべきだったのだ。


「答える義理は、ありませン」


先刻彼女が嗅ぎ取ったのは、かつて『未元物質』に相対した際と同質の。


「そうか、ならば仕方ない」


いや、それ以上の。


比喩表現などでは決してない。


<> 神の右席編@<>saga<>2011/07/10(日) 21:41:32.76 ID:yisU3/0j0<>






「死ぬしかないな、能力者」







――――――死臭であったのだから。








<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/10(日) 21:43:02.74 ID:yisU3/0j0<>

続くんだけど


さようならほのぼの展開、こんにちは地の文
という感じで次回より台本形式完全排除です
>>1の作文力では決して読みやすい代物にはならないでしょうがどうぞよしなに


今回の最重要ポイント=雲川さんとヴェントさんを可愛く書けたかどうか


ではまた一週間以内にお会いしましょう

<> KUJVG<>sage_saga<>2011/07/10(日) 21:44:59.91 ID:83UGBAI70<> 乙!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/11(月) 07:02:31.38 ID:20+3Jrve0<> 乙なんだけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/11(月) 18:16:52.75 ID:+HRk8eV7o<> またもやって参りましたシリアス・・・緊迫感やべえええ
まことちゃんにげてー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/11(月) 20:45:14.13 ID:cYhfreJZo<> ヴェントたんのメイド姿だと…ゴクリ
ちょっと想像できないな
念のため参考画像を要求する
あくまで念のためだぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/11(月) 21:20:15.44 ID:AusDfDuz0<> 久々に来たらヴェントさん登場してたし!!
ヴェントたんかわいいじゃないか
個人的には露出控え目なメイド服がいいな
乙!! <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/14(木) 20:39:49.28 ID:NE2xUwVE0<>
どうも>>1です


>>204
ここまでお気楽な馬鹿ばかり書いてきた>>1としては
緊迫感を上手く出せているか不安だっただけに嬉しいです

>>205
絵心は無いッ!!

>>206
ナカーマ

他の方もありがとうごぜーました
灰村氏の描いた素顔ヴェントに
クラシックスタイルのメイド服を組み合わせてご妄想ください
皆さんにもフィアンマに無理やり着せられて恥ずかしがるヴェントさんが見えるはず!

では本日の投下です↓
<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:40:50.77 ID:NE2xUwVE0<>


「あれ? まこちゃん?」



佐天涙子は研修のため普段教鞭を執る中学ではなく、児童施設が多く存在する第一三学区にいた。

午前中で研修を終えた佐天が所属する学び舎に戻るべく駅に向かって歩いていると、

車道を挟んだ向かいの歩道に、見覚えのある小さな影が。

それは敬意と友愛を彼女に抱かせるとある夫婦の愛の結晶、上条真理であった。



「ひっく…………るいこー?」

「まこちゃん! どうしたの? パパとママは一緒じゃないの?」



慌てていたため横断歩道を捜す事もなく、

軽く左右確認を行って佐天は泣き叫ぶ真理の元に駆けつけた。

周囲に人影はあるが、みな一様に関わらないのが一番、とそそくさ過ぎ去ってしまう。

彼女は憤慨に鼻息を荒くしながらも、まずは目の前の子どもが大事だと気を取り直した。


<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:42:08.16 ID:NE2xUwVE0<>


「もあい、せんせーとね、おさんぽしてたんだけろ…………」



しかし二歳児が嗚咽しながら事情を説明しようとしたところで、要領を得るわけもない。

ただ、佐天は最初に飛び出したキーワードの重要性に食いついた。



「最愛ちゃん……絹旗先生と一緒だったの?」



友人のそのまた友人を通しての知人である絹旗最愛が、

夫婦が愛娘をよく預ける託児所の職員であることは佐天も承知していた。

時刻もそろそろ正午三十分前になる。お昼寝前の散歩にでも出ていたのだろうか。



「…………!! まこちゃん、背中! もしかして怪我してる!?」


<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:43:18.37 ID:NE2xUwVE0<>


そこまで思案を巡らせたところで、佐天は真理の背の異常に気がついた。

粘着質で、それでいて鮮やかな真紅の液体。



手のひら大の血漿による染みが、愛らしい衣服の腰上に付着していた。



「大変! すぐ手当…………」



顔を蒼くした佐天はすぐさま真理の上着を捲って傷の具合を確かめる。

しかしそこには服の上から浸透したであろう僅かな朱色があるのみで、

それ以外は健康的な肌色と、餅のような柔らかい感触しか認められなかった。



「この子の血じゃ、ない……?」

<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:44:00.85 ID:NE2xUwVE0<>

血液はいまだ目に痛いほど鮮烈な赤を放って佐天の視覚に訴えかける。

警備員としてのキャリアは浅いとはいえ、『コレ』が持ち主の肉体から流れ出て

そう時間が過ぎたものではない事は彼女の目にも明らかであった。



(だったらまさか、この血は――――ッ!!!)



――――異常。



瞬間、佐天は真理を抱えて力の限り横に跳ねた。







<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:44:41.63 ID:NE2xUwVE0<>


「……こんな雌犬を一撃で『倒し』損ねていては、
 俺様もいよいよもって廃業かもしれんな」


腕の中の泣き声が一層大きくなった。

真理に怪我が無いことだけ真っ先に確認した佐天は、

先ほどまで自分がかがんでいた座標を振り返って戦慄した。



――――無い。そうとしか表現できなかった。

すぐ後ろに立っていた街路樹、歩道を覆うガードレール、

ウインドウとその向こうに立ち並ぶディスプレイ品の数々。



先程まで別段視界にも入らないほど、

その存在が当たり前すぎる日常の数々が綺麗さっぱり、失せていた。



「……我ながら情けない結果だ。
 あの時代遅れのロートルが介入さえしてこなければ……!」



<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:45:38.57 ID:NE2xUwVE0<>

そしてその向こう側に、赤髪の――決して長身ではない――男が在った。

鍛練とは無縁に思える痩躯とは結びつかぬ圧力が、全身から迸っている。


「あなたは、何者ですか」


声と体の震えを必死に殺し、佐天涙子は警備員(アンチスキル)として誰何を行った。

しかし、歳と性別に合わぬ修羅場をくぐった経験と、本能が告げている。


「俺様は機嫌のありかが不安定なのだが……そうだな、『宣戦布告』ぐらいはしなければな」



コイツは、能力者ではない。――――魔術師だ。



「ようく聞け、科学の狗たる雌よ」


異様な事態に気付いた通行人が、悲鳴を上げて我先にと逃げ出し始めた。

そのような俗事には目もくれず、赤い異能者は『両腕』を天に掲げた。

自らに酔いしれたように空を仰ぐ。


<> 神の右席編A<>saga !red_res<>2011/07/14(木) 20:46:29.96 ID:NE2xUwVE0<>










――――同時にその右肩から、三本目の『腕』が顕れた。










<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:47:44.76 ID:NE2xUwVE0<>

あまりの異形に完全に声を失った佐天を尻目に宣言は続く。

ただしく、天上から衆愚を見下ろすが如き音吐だった。



「目あらば見よ、耳あらば聴け。我が名は『神の右席』が頂点」



道端の虫けらを眺めるように下々を睥睨する。

そして、『腕』が禍々しい輝きを放ちながら振りかぶられた。







「――――『右方のフィアンマ』だ」






<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:49:42.81 ID:NE2xUwVE0<>
---------------------------------------------------------------


同時刻、第六学区。



アミューズメント施設が集合するこの学区の中央通りに、

派手な街並みに劣らぬパンクな風体の女が一人、肩で風を切るように歩いていた。

言及するまでもなくイカレたファッションとメイクだが、

後ろに負った巨大な、布に覆われた棒状の物体がその特異性を際立たせている。



しかしその女の真の異常性は、別の点にあった。



「…………あなた。この人たちに『なに』をしたの?」


そこに、茫洋とした眼差しのジャージ姿が声を掛けた。

良く見るまでもなく、二人の女の周りには――倒れ伏す、人、人、人。


「んー? ああ、こりゃ大変だよね。で、私が何かしたって?」

「対象のAIM拡散力場を確認できず。…………あなた、魔術師だね」


面倒そうに鼻の頭を掻きながら、黄色いパンク女が空とぼける。

しかしピンクのジャージ女の口から出た文言を聞いた瞬間、黄色はニタリと笑んだ。

<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:50:36.71 ID:NE2xUwVE0<>


  AIMルーラー
「『能力剥奪』、浜面理后よね?」

「だったらなに?」


二人の女が初めて、真正面から対峙する。

魔術師が一層凶悪かつ、吐き気のするような笑みを浮かべ、

更には舌――ピアスが通っている――を出して相手の『敵意』を誘った。


「なんていうか、とりあえず? アンタ気に入らないから殺していい?」

「ダメ」


しかし理后の、良く言えば深淵のような、悪く言えばぼーっとした瞳の色は変わらない。

小さく舌打ちした黄色い女は、それでも支障は無いとばかりに――


「どんなに澄ました面をしてようがねぇ」


――背負ったハンマーで、有無を言わさぬ実力行使に切り替えた。





「私の『天罰』からは逃れられないわよ」




<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:51:22.34 ID:NE2xUwVE0<>
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同時刻、第二学区。



「ちょっとそこの方、よろしいですか?」


警備員らの訓練施設など、特殊設備一色に染まっている学区の一角。

濃紺のスーツに身を包んだ女性が、深緑のローブを纏う男の前に立ち塞がった。

夏だと言うのに奇妙な厚着で闊歩する不審者に『職務質問』をかけたのだ。



「おやぁ? 私に何か用ですかね?」



緑の男は間延びした口調で平静のまま答える。

何を聞かれようと時間を割いてやる気は無いと、言外にその表情は語っていた。

しかし、女の目的はその回答いかんに関係なく遂行される。





「アンチスキルですの!」




<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:52:38.23 ID:NE2xUwVE0<>

「第十一学区の監視カメラに、ゲートを破壊した不審人物の姿が捉えられておりました。
 …………これ以上の説明は、必要がありますの?」

「……おっかしいですね。カメラは全て壊したつもりだったんですが」


失態があった事が信じられない、と肩を竦めて依然おどけた態度を男はとる。

よくよく見ればその手には鼠色の小さな袋が掛かっている。

苛立ちを感じながらも、白井黒子は彼の疑念をあっさり晴らしてやった。


「ええ、あなたの仰る通り。生き残った監視カメラなどありませんわ。
 私はただ、不審人物に職質をかけただけですもの」

「………………やられましたね」


先ほどより幾分か余裕を失った姿を見て、白井の溜飲がいくらか下がる。

本当に直感のみでのカマかけだったのだから、内心ヒヤヒヤもしていた。

<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:53:53.89 ID:NE2xUwVE0<>


「では、拘束させていただきます。今度は答えは聞きませんわよ!」


まあ、結果として正しかったからそれでいいのだ。


往年の相棒(花)が聞いたら溜め息をつきそうな言い訳を浮かべながら白井は、

腿に仕込んだ愛用の金属矢に手をかけ、複雑極まりない空間移動の演算を始める。







「第一優先。――三次元を上位に。十一次元を下位に」






その時、手の内で右に左に弄んでいた袋を男が唐突に投げ出した。


静かな声が響き――――白井黒子のただ一つの能力が封じられた。


<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:54:48.12 ID:NE2xUwVE0<>
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同時刻、第七学区。



講演会を我が子可愛さにサッサと抜け出した上条美琴はちらほら現れる黒服たちを

レーダーを駆使して避けながら、絹旗の勤める託児所に向かうべく猛チャージをかけていた。

強烈な美人が競走馬もかくやという凄まじいスピードで駈け抜け、

それを目撃した通行人が物珍しさにパシャパシャとフラッシュを焚く。



そんな周囲からの視線を気にも留めていなかった彼女だが、

とある公園に差し掛かると、珍妙な品の並ぶ自販機の前で何故かその脚を休ませた。




「なにか御用ですか?」




「……気付かれていたか」


美琴の背後の空間。

何も存在しなかったはずの場所から、青い着衣の大男が現れた。

<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:55:48.77 ID:NE2xUwVE0<>

「『超電磁砲』だな?」

「上条美琴、って呼ばれる方がずっと好きですけど」


男はもはや誤魔化すつもりもないのか、堂々たる態度である。

ただならぬ雰囲気を感じ取っている美琴は、警戒心を隠さず応えた。


「で? 私は今急いでるんですが」

「頼みがあるのだが」


彼女の態度を歯牙にもかけぬ落ち着き払った低い声。

既に心理戦で負けてるようでダウナーな気分になりながら、投げやりに美琴は返す。


「はあ。私で力になれる事ならなんなりと」







「そうか、では頼むのだが――――死んでくれ」






<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:57:12.07 ID:NE2xUwVE0<>

目の前の失礼な男を完全に『敵』と認識した彼女は、帯電しながら質問した。

特に意味のある問いかけでもない。


「アンタ、何者? ……いや、何が目的?」


ただ上条美琴という女は闘う目的が明確であれば、

そしてその目的が大事な誰かの為であれば、巨大な戦闘能力を更に増す。

            パーソナルリアリティ
良くも悪くも感情に『 自分だけ の 現実 』が左右される、それが上条美琴だった。

しかし女の思惑などお構いなく、男は簡潔に――凄絶な目的を語った。










       レベル5
「――――超能力者の抹殺」









<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 20:58:47.90 ID:NE2xUwVE0<>

「…………『全ての』超能力者を?」

「そうだ、全員……プラス、もう一人」

「OK、もういいわ。十分よ」


悲しいかな、最後の一人がどこの『不幸』者なのか、美琴には察しが付いてしまった。

よしんばそうでなくとも、この男の標的の中には死なせたくない相手が、少なくとも二人いる。



優しいご近所さんと、愛想の悪い近い将来の義弟。



まあそれに加えて、ご近所さんのおっかない友人と、

後輩の暑苦しい上司と、いけ好かない女王サマと――





「…………ぷっ、あははははは!!」

「なにがおかしい?」


突如笑いだした彼女に、律儀に戦闘開始を待っていた男が首をかしげる。

その貌には純粋な疑問の色が浮かんでいた。

<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 21:01:03.11 ID:NE2xUwVE0<>

然程の悪人でも無さそうだ、と頭を過ぎったものの彼女の闘う決意は鈍らない。

なぜなら。


「いやぁ、私ね…………どうやら、誰にも死んで欲しくないみたいなのよ」





いつかどこかで聞いた、ある男の夢。


――何一つ失うことなく、みんなで笑って帰る――





それを、必ず守って見せる。

彼女の闘う理由は、それだけでも十分だった。


「…………成程。甘いが、良い覚悟だ」

「どうも、じゃあさっさと始めましょ。子供が待ってるの」


戦場らしからぬ好意的な笑みが、男女の間で交わされた。

男は『影から』巨大なメイスを掲げ、女はポケットからコインを取り出す。

<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 21:02:11.33 ID:NE2xUwVE0<>







             レールガン
「学園都市第三位、『超電磁砲』の上条美琴よ。短い間だろうけどよろしく」







「ご丁寧に痛み入る。『神の右席』が一人、『後方のアックア』――――参る!!」









<> 神の右席編A<>saga<>2011/07/14(木) 21:06:28.95 ID:NE2xUwVE0<>
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こうして七月十五日、後に「0715」の名で世に広まるこの日。



多くの学生が異常に気付かぬ普段通りの喧騒の最中で。



歴史が繰り返される事を証明するかの如く。









           かがく まじゅつ こうさ
――――再び、能力者と魔術師が激突した。









<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/14(木) 21:08:14.41 ID:NE2xUwVE0<>

つづくのー、まま?


総合で被ってるネタを見つけた時には悔しいような申し訳ないような気分になりました
>>1のバトル描写の残念加減は一部で避けたことからお察し下さい

>>1のスピード次第では週末にまた来られるかもしれますん <> OGHTP2;C<>sage<>2011/07/14(木) 21:10:42.96 ID:JEaGVoo60<> 乙!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/14(木) 21:51:13.42 ID:dfksdQG6o<> この間までメイド喫茶開いてたはずなのに
どうしてこうなった(AA略 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/14(木) 23:01:14.49 ID:3V97esNAO<> 帝督参戦したら胸熱すぎる

でもあいつ今冷蔵庫だからなぁ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/15(金) 04:37:46.87 ID:AKHGCCvV0<> えっえっえっ!?
とにかく乙!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/16(土) 07:54:49.47 ID:OcQATEyIO<> >>231
俺に常識は通用しねぇぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/16(土) 08:49:45.14 ID:7TR4UgKUo<> なにがwwktkってテッラの術式が完成してそうな雰囲気がwwktk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/16(土) 22:23:10.74 ID:DoL/r7H60<> >>234
何せ『第一』優先だからな
一つだけなら、テレポ封じ+貧弱+鈍器 の残念なエリマキトカゲだけど、
これは超強くなってる予感


しかし、テッラヴェントアックアはともかく、フィアンマは能力者だけじゃどうしようもないよな…… <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/17(日) 17:38:58.69 ID:DblQWgBF0<>
みんな気を付けて!
ここは所詮>>1の誰得スレなのよ!


皆さんレスありがとうございました
カッコイイバトル展開などこの>>1には無理でしょうが
力の限り精進させていただく所存であります


では行きますね↓
<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:40:29.30 ID:DblQWgBF0<>

第六学区。


浜面理后に向けて獲物を振るいながら、『前方のヴェント』は現状に違和感を感じていた。


(…………この女が此処に来たのは、偶然か?)


学園都市への襲撃が事前に漏れている可能性は否定できない、と彼女のリーダーは語った。

事実であるなら、目の前の『能力剥奪』は自分を阻止するために現れた事になる。

しかし、この女の能力では魔術師相手には意味が薄いことは事前に調べが付いていた。

能力者の位置特定を行い、あまつさえ力場の『剥奪』さえ可能なこの超能力者は、

確かに対能力者なら矛として、盾として、目として桁外れの汎用性を誇るだろう。


「……ッ!」


理后は無様に逃げ回るのみで、なかなかどうして敵に対する悪意を見せない。

その事実を不気味に感じた『前方のヴェント』は、

スマートではないが手っ取り早く目の前の女を始末する策をとる。

一瞬でも、僅かでも。『ソレ』を感じてしまえば終わりだ。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:41:48.17 ID:DblQWgBF0<>


「アンタの息子……浜面裏篤だっけ? 第十三学区の幼稚園に通ってるよね」


敵手の目的を察知した理后が慌てて耳を塞ぐ。

その挙動を見た『前方のヴェント』は自らの術式が分析されている事を確信するが。



もう遅い。



「今頃私の部下が向かってるところだ。もうグチャグチャだろうね」

「…………っ!」


ごくごく微小なモノであろうと、『天罰』には戦闘能力を奪うには十分にすぎる効果がある。

『前方』の口の動きからその内容を察知、そして想像してしまったのだろう。

理后の鋭くなった眼差しが刹那、『敵意』に染まる。




――次の瞬間、ゆっくりとその身体がアスファルトに吸いこまれていった。



<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:42:47.27 ID:DblQWgBF0<>

---------------------------------------------------


第二学区。


白井黒子は突然使用できなくなった己の能力に戸惑いながらも、撤退を意識する事は無かった。

『左方のテッラ』の投げ放った袋からばら撒かれたのは、白い粉。

何かの攻撃の前兆である、と直感した白井が己の脚で距離を空けた。


「第二優先。――小麦粉を上位に、人体を下位に!」


前兆では、無かった。


「っ、あああっ!?」


『小麦粉』が男の武器そのものであることに彼女が気付いたのは、

かすかに触れた飛沫が肉体に激痛をもたらした後の事であった。




「あなた程度に時間をかけていられないんですがね。さっさと終わらせましょうか」


男は、白井の事など敵とも認識していなかった。

発言の主旨を悟った彼女の脳が瞬間沸騰するが、それは同時に好都合でもある。


(侮ってくれるのなら、やりやすい……いや!)

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:44:24.74 ID:DblQWgBF0<>

しかし現実には、男は女が能力を発動する前から、これをあっさり封じてきた。

キャパシティダウンを使っている様子が微塵も見られない以上、

彼女の顔と能力を予め知っていた、と考えるのが妥当となる。


確かに空間移動能力には極めて高度な演算が要求され、

能力者の精神状況が安定していなければ能力行使は困難である。

何らかの外的要因で発動を阻害する事は、白井にとっては遺憾だが容易い事だ。


だが、この状況は違う。

三次元から十一次元への座標変換そのものは脳の中で確りなされているにも拘らず、

空間移動が全くと言っていいほど発動しないのだ。


(先ほどあの男が呟いた……いわゆる『詠唱』? というヤツでしょうか。
 あれが鍵を握っているのは間違いありませんわ)





『第一優先。――三次元を上位に。十一次元を下位に』





<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:47:12.99 ID:DblQWgBF0<>

(だとしたら、随分科学に詳しい魔術師さんですこと)


身を捩って次なる攻撃をかわしながら、白井は微かな糸口を掴む。

力強く身構えて、魔術師に啖呵を切った。


「……上等ですわ。能力を封じたぐらいで挫ける白井黒子ではありませんわよ!」

「威勢が良くて結構ですねぇ」


舐めた態度の変わらない男を睨みつけてから、まずは距離を取ることに彼女は専念する。

幼いころから鍛え続けてきた女豹のごとき肉体もまた、紛れもない白井黒子の武器であった。


(ああ、隊長の地獄の扱きに感謝する日が来るなんて……!)


などと場違いに遠い目で明後日の方向を見つめたその時。


「第三優先。革を上位に、コンクリートを下位に」


冷静に一声。

履いていた『革』靴が地にめり込み、体勢を崩しながら彼女は絶叫した。



「わたくしは馬鹿ですのーーーーーーっ!!??」

「馬鹿ですねぇ」


<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:49:07.48 ID:DblQWgBF0<>

---------------------------------------------------------


第七学区。


砂鉄剣と棍棒が交差し、耳障りな金切り声を上げる。

『後方のアックア』と『超電磁砲』は真正面から力と力の鍔迫り合いを演じていた。


(『コレ』は違う……!)


互いの獲物が激しく弾き合って、使い手も同時に後方へ跳ね跳ぶ。

超能力者に拮抗するほどの怪物を相手取りながら、しかし上条美琴はそんなことを考えていた。


(この男が当麻からチラリと聞いた『後方のアックア』なら……)


――悔しいことだが、美琴程度がまかり間違っても伍せる相手ではない。


「ぬんっ!!」


男が手近にあった噴水から水を巻き上げ、巨大な水塊を生みだす。

一直線に己に飛んでくるそれを、彼女は惜しげも無く『超電磁砲』を放って蒸発させた。


(確かに、そこらの水を片っ端から掌握するこいつの魔術は厄介だけど……)


蒸気で曇る視界に乗じて迫る巨躯をに対し、牽制気味に軽い雷撃を放つ。

しかしそれは男の金属棍棒によって防がれ、再び二人の間に間合いが生まれた。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:50:23.84 ID:DblQWgBF0<>

「……やっぱりこっちを聞いとくべきだったわね。アンタ、何者?」

「…………そのような問いに、意味など無い」


晴れた視界に精悍な顔を捉えて、美琴は確信する。

夫のアルバムの中に一枚、英国第三王女の挙式に出席した際の写真を彼女は見た事があった。


「そんなこと言わずに答えなさいよ。ウィリアム=オルウェル」


金髪青目の浅黒い風貌が、その名を聞いた途端にハッキリと歪む。

苦悶か、憤怒か、屈辱か。

そこまでは遠目には判別し難い。

勿論電撃姫は敵の虫の居所などお構いなしに真実を問うた。












「――――じゃあないわね、アンタ」




<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:52:13.00 ID:DblQWgBF0<>

「…………『幻想殺し』か」

「彼はイギリスでお姫様とヨロシクやってるはずだわ。で? アンタは結局なんなの?」


男の顔が俯いて、その表情が美琴の視線から隠れる。

美琴はこの戦闘の帰結に勝敗以外のポッシビリティを見出し、

それを追求すべく『後方のアックア』に迫った。


「もし、アンタが…………」




「甘いと、言った筈なのだが」


しかし、彼女の僅かな気の緩みを男は見逃さなかった。

ここ迄の激闘の中では一度たりとも披露しなかった超スピード。


(靴裏に水――摩擦を減らして!)


巨体の疾風のごとき突撃は、もはや美琴には不可避のものであった。

腹を括って、本格的な激突への準備体勢を取る。



(……覚悟決めるしか、ないわねッ!)



<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:53:50.77 ID:DblQWgBF0<>
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そして、何処とも知れぬ路地裏。


佐天は幼い真理を抱えて、鍛えた自慢の足をフルに活用して細い路地を逃げ回っていた。

携帯電話を尻ポケットから抜いて助けを呼ぶ暇もない。

彼女は自分が現在、極めて細いロープの上を渡っているという自覚があった。



――■■■■■■■■■■■■■■■!!!――



追跡者は、先刻の赤い男ではない。気味の悪い紫色と黒い鎧で覆われた別の異形。

かつて初春に借りたホラーアクションにあんなクリーチャーが居た、と佐天は頭の隅で思い出した。



そもそもあの『腕』を目にした瞬間、彼女は自らの死さえ予感した。

『アレ』はこの街の超人達をも凌駕するモノだ、という認識が佐天にはあった。

しかし現実に彼女は、振られた『腕』から脇目も振らず逃げ出した結果として、生きている。

何か、奇跡とはまた違う何かがあの男の邪魔をした。

そうとしか思えないほどに計り知れない力だったのだ。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:55:20.70 ID:DblQWgBF0<>


(――っ!! そんなこと考えてる場合じゃないでしょ、涙子!)



『腕』は追っては来なかったとは言え、

現在の脅威はやはり佐天に太刀打ちできる代物ではない。

まずは何をおいても、この身に抱えた小さな命の安寧を獲得する事だ。

後ろの奇怪な化物の狙いは、どうやら真理にあるようだった。



(白井さんか、隊長に連絡出来れば…………!!)



だが残酷な事に彼女の両腕は、その守るべき鼓動によって現在塞がっている。

そして真理を抱え直す時間が惜しいほど、追跡者の迫撃はすぐ後ろにある。

最寄りの警備員支部にこの足で駆け込む以外の方法を、焦燥の中では考え付かなかった。



(っはあ、はぁ、第一〇学区の二二支部までは、あと、五百メートルぐらい……!)


<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:57:27.64 ID:DblQWgBF0<>

楽勝だ、体力にだけは自身がある。

挫けそうな己を励ましながら駆け続ける佐天の脚はしかし――遂に限界を迎えた。



「ああっ!!!」



角を曲がった先の死角に、空き缶がばら撒かれていた。

近頃はその絶対数を大きく減らしたスキルアウトが、このあたりに屯していたのであろうか。

避けようと交差させた脚がもつれ、彼女の身体が前方へと投げ出された。

咄嗟に真理だけは守ろうと身を反転し、背中からアスファルトに落下する。



「つう…………ッ!!」



――そして、異形と視線が交錯した。



――■■■■■■■■■■■■■■■!!!――



肉薄していた追跡者が醜悪に嗤ったように、彼女には映った。



<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:58:11.09 ID:DblQWgBF0<>
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黄が大鎚を無防備な理后に振り下ろす。



緑は白井の頭上にばら撒くべく、二つ目の袋を取り出す。



青が美琴の迎撃をものともせず、クロスレンジで術式を構築し終える。








「子の方は生かしてやるさ」



そして赤は哀れな女の末路を見届け、無感動に呟いた。





<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 17:59:40.28 ID:DblQWgBF0<>













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「――――――なあっ!?」





<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:02:09.90 ID:DblQWgBF0<>

『前方のヴェント』の目前で、起こり得る筈の無い現象が起こった。

『天罰』に完全に意識を断たれたはずの浜面理后が

あろうことか踏みとどまって、頭部を狙った一撃を躱したのだ。



「ごめんねぇ、浜面さぁん。ちょっと遅刻しちゃった」



場違いにキャピキャピした声が、女の戦場に介入する。

鼻につく高い声に、女魔術師のこめかみに血管が浮き出た。


「神様の罰って怖いのねぇ。こんな集団仮死状態を引き起こせるなんて。
 ああそうそう、そこのオバサン部下なんていないぼっちだから、お子さんは無事よぉ」


姿を現したのはプロのファッションモデルと言っても通用しそうな着こなしの美人。

スタイル良し、顔良し、性格――――は本人の名誉の為にもノーコメントとさせて頂く。


「うん、私もわかってはいたんだけど。とにかく、助けてくれてありがとう」


知己であるのか、呆然とする敵を差し置いて理后が呑気に声を掛ける。

そう、目の前の魔術師が単独犯である事は彼女とて承知していた。

ただ家族への愛しさが、冷徹であるべしという戦場の鉄則を上回ってしまった。

女は謝礼に手を振って鷹揚な態度を見せるが、

形の良い顎は軽く持ちあがって自慢げな内心を代弁している。


「気にすることないわよぉ。だってこんな魔術如き――」

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:03:07.53 ID:DblQWgBF0<>









「――――私の改竄力で、どうとでもなっちゃうものねぇ」










<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:04:22.92 ID:DblQWgBF0<>
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白井黒子は、せめてもの抵抗を見せようと矢に手を伸ばし、直接投擲すべく男へ振りかぶった。

が、すでに『左方のテッラ』は彼女から距離を取り、その背後に向かってニコニコしている。

背後――――経験豊富な警備員の女は気配を感じ取っておそるおそる振り返った。



「あら、白井さんじゃない。さっきのお間抜けボイスはあなただったわけ?」



そして白井の耳を、神経を逆撫でする『天敵』の声が打った。

パク、パクと二、三度口を開け閉めする彼女だが、あと少しで言葉にならない。

その間に声の主は白井の返答を待たず、『左方』との前哨戦を開始してしまった。


「……どうやってこの場所を掴んだんですかねぇ。
 滞空回線はとっくにあなた達の手を離れた技術だと思ってましたが」

「確かにタネの割れてる今の御時世に使用したら人権問題ね。
 だから使ってないわよ? …………今回は」

「んきーっ! まったくあなたという人はーーっ!!」


完全に舞台の中心からはじき出された格好となった白井が、

ようやく甲高い声を上げて主座をまんまと簒奪してくれた相手を糾弾する。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:05:21.07 ID:DblQWgBF0<>



「私を無視してシリアスに会話を進めないで下さいませ!!







 ――――結標さん!!!」







「あら、まだ居たの? もうお家帰っていいわよ」



「むきぃーーーーーーっっ!!!!!」



<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:08:41.70 ID:DblQWgBF0<>
-----------------------------------------------------


上条美琴は咄嗟に現出させた雷槍を振り抜くが、

もとより接近させないために中距離を保っていたのだ。

当然この近距離では体格的に遥かに不利となるが、その瞳に諦観の色が浮かぶ事は無い。

絶体絶命の状況に陥ってなお敵を射抜く女の意志の強さに、『後方のアックア』は瞠目した。



(せめて、苦しまずに逝くがよい)



五トン近い質量で圧殺する水属性の大魔術を、男が今まさに零距離で発動しようとした、



その時。






「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


上条美琴の背後に、夥しい土埃が上がっているのを『後方のアックア』は目撃した。

するとピョーン、と逆巻く砂塵の中から白い物体が飛翔する。

そして異様に暑くるしい雄叫びを、二人は同時に聞いた。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:09:40.10 ID:DblQWgBF0<>




「『すごすごの…………















 ――――――バズーカァーーーーーッ!!!!!!!』」




<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:11:28.60 ID:DblQWgBF0<>


ドッカーン。



それ以外に擬音を付けようのない怪音を立て、魔術師の巨躯が三十メートルは跳ね飛んだ。


「ぬぐおおっ!!!」




ついでに美琴も五メートルぐらいぶっ飛んだ。


「ええええええっ!!!!?」




辛うじて受け身を取った二人が色々なモノを無視した衝撃の発生源を睨んだ。

敵味方の視線が交わる一点でスタッ、と軽やかな着地音が鳴るが、

どう見ても二十メートル以上の高さから降ってきた様にしか見えない。

何事も無かったかのように降り立った元凶は、腹の底からやかましい声を張り上げた。


<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:12:02.21 ID:DblQWgBF0<>










「良く持ちこたえたぁっ!! 素晴らしい根性だったぞ、第三位っっっ!!!!!」











<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:14:09.39 ID:DblQWgBF0<>
----------------------------------------------------------


佐天涙子は迫りくる死から、せめて腕の中の幼い命だけでもと決めて背を向けた。

真理が彼女の悲壮な決意を本能で感じ取ったのか、泣き声を一層強める。

それが、生命を賭した鬼ごっこの終焉だった。



(ごめんなさい、上条さん、美琴さん)


(ごめんね、最愛ちゃん、白井さん、初春…………)



現れては消える、親しく愛しい顔、顔、顔。

そして、なぜか最後に過ぎったのは。



(……………………ル)


(…………もう一回、会いたかったなぁ)



最後に許された行いは、目を瞑って死神の鎌音を待つ事のみ。







<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:15:07.33 ID:DblQWgBF0<>












「レディーはもっと丁重にエスコートするものだ、下種が」



ゴオオオオオウッ!!!!



しかし次の瞬間聞こえたのは、異形ではなく焔の猛る声だった。



「大丈夫かい? よくここまで逃げてきた」


「あ…………」


「ん、効き目が薄いな…………あの鎧か」



唖然とする佐天の耳に、たったいま回想した声が飛び込んできた。

だが炎剣の直撃を受けておいて僅かに後ずさるのみの肉塊が、再び迫る。

その間に体勢を立て直した彼女が後ろに跳ね起きようとした時。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:18:47.02 ID:DblQWgBF0<>








 T T T  R      B  B  F   T T N A T W I T O D
「右方へ歪曲! 両足を交差、首と腰を逆方向へ回転!」









<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:21:31.46 ID:DblQWgBF0<>

右方へ吹き飛び、脚がもつれ、嫌な音を立ててその関節が軋む。

クリーチャーが披露した異様なステップは、

清廉な音色が奏でる舞曲に導かれたものだった。

佐天は背後をふり返り、霞む視界に二人の救世主を捉えた。




「いんでっくしゅ、いんでっくしゅ!」




稚い声が呼んだのはまさしく、白い聖女と、黒い守護神。


「いいよ、『右方のフィアンマ』」


そして白衣の聖女は力強く右手を前に掲げ、敵対者に向けて裁きを告げる。


「あなたが私の大切な人たちを巻き込むって言うのなら」


聖なる声に邪悪な怪物が呻くその様は、正しく神話の一節の様な崇高さを――

<> 神の右席編B<><>2011/07/17(日) 18:22:09.57 ID:DblQWgBF0<>










「まずは、そのふざけた幻想をぶち[ピーーー]!!」










<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/17(日) 18:23:14.20 ID:j2QVR5pso<> ああww <> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:23:53.98 ID:DblQWgBF0<>


「…………」


「………………」


「……………………んー? るいこー? しゅているー?」










「決まったッ! 第二部完なんだよッ!! 一度でいいからやってみたかったかも!!!」








<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:25:38.67 ID:DblQWgBF0<>

「ほーおそれで誰があのゾンビにトドメを刺すんだい?」

「その前に、インデックス? ちょっと↑見てみた方が…………」

「へ? ってあああああああぁぁぁっっ!!!!??」

「今頃気付いたのか」



「ちょっと! このsaga忘れはあまりに酷すぎると思うんだよ!?」

「別に忘れたわけじゃあないよ。
 仮にも一宗教のトップがする発言ではなかったからフィルタリングしたまでさ」

「すっ、ステイル! まさかステイルの差し金なの!?」

「馬鹿を言え、イギリス清教の総意だよこれは。いつかやるんじゃないかとは思ってたからね」

「そういうアレは事前に最大主教たる私を通すべきかも!!」


状況を弁えずにギャーギャー騒ぎ始めた二人に、

佐天涙子二十三歳独身は肺の奥から呼気以外のもろもろが体外に洩れ出るのを感じた。


「とりあえず、こんな時のための『アレ』だよね……」


学園都市で今年度流行語大賞の候補にノミネートされた例の台詞を

悲しい実感とともに彼女は吐き出す。



「不幸だ……………………」



<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:26:43.26 ID:DblQWgBF0<>



――■■■■■■???――


「って、ちょっと! まだ動いてるよアレ!!」


すっかり存在感を失った悲しい異形がそれでも立ち上がり、

邪魔者を排除すべく濁った眼をぎらつかせた。


「灰は灰に、塵は塵に」


それを一瞥した神父は静かに詠唱を始め、十字を切った。


「吸血殺しの紅十字」




――■■■■■■■■■■!!!???――




辺り一帯を火の海に変えるほどの熱量を一点に集中され、地の底から響くような濁声が上がった。

佐天は思わず息を呑んだ。

大能力者の発火能力もかくや、というその威力にではない。

炎の十字架に拘束された怪物に向ける男の視線が、ゾッとするほど無温であったからだ。

<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:27:44.05 ID:DblQWgBF0<>



「喚くな。……すまないが、君ごとき木偶に名乗る魔法名の持ち合わせがなくてね」



ステイルは油断なく庇護すべき者たちを背後に庇いながら、一歩、また一歩と歩を刻む。

その瞳は人形の向こう側の真の敵を見据えていた。



「まあ、『貴様』の方にも教えてやる気はないが。僕らはただの――」



投げ捨てた煙草が地に届く前に灰と化す。

コンクリートまで融けるような灼熱に満たされた路地裏の気温が、更に一段と燃え上がった。

其処に、マグマを血肉とする焔の魔人が顕現した為だ。



そして黒衣の守護神は、『神の右席』への宣戦布告を行った。



<> 神の右席編B<>saga<>2011/07/17(日) 18:29:00.19 ID:DblQWgBF0<>












「――――通りすがりの、魔術師だからね」














<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/17(日) 18:31:26.09 ID:DblQWgBF0<>

これが、私に求められてる『続き』なのよ


こういうスレだとはブリーフィングで言っておいた筈だ
いやごめんなさい石投げないで あ、やっぱ投げて!

キーボードをカタカタしてた時のBGM
ttp://www.youtube.com/watch?v=DEVJ9eUG5TM
>>258辺りから掛けながら読むといいかもしれません?


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/07/17(日) 18:36:08.86 ID:7D76HiVso<> 乙

へんにもじらなくても十分おもしろいのに。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/17(日) 18:37:22.69 ID:2tHhK4rAO<> 乙
自分は>>1のそういう所もひっくるめて大好きだぜ!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/17(日) 21:42:21.40 ID:/4PExNQAO<> これはずるいww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 07:42:27.21 ID:tr5ft/amo<> 期待通りっつーか期待以上っつーかやっぱりなっつーかwwww
流石>>1だぜぇ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 09:23:16.00 ID:2yHUU6MS0<> 規制ww
まあ一宗派のトップがぶっ[ピーーー]はダメだよね。

しかし、この右席は本物ではないのか?
まあメイド喫茶の社長やら英国王子やらがいきなり攻めてくるのもおかしな話だけど。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/18(月) 14:45:06.46 ID:wQ8sL9XAO<> 誰もつっこんでないけど
ソギーさんがルフィになっとるwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 15:46:28.54 ID:MRYZsji3o<> すごすご13 【▼悄▼悄】
(副)
気落ちして元気なく、しょんぼりしているさまを表す語。また、元気なくその場を立ち去るさま。しおしお。(-_-;)スゴスゴ


ソギーから一番遠い言葉だなw

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 17:57:23.04 ID:0I5PI0PJ0<> インさんwwwwww
テッラはいったい…… <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/20(水) 17:38:11.54 ID:TnT9aaYr0<> どうも>>1です

皆さんレスをありがとうございました
今日は>>75の方が貼ってくださった三人組の小ネタです
本編の流れ? カァン(ry

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:39:13.40 ID:TnT9aaYr0<>

とある日 ロンドン市街



老人「おお、最大主教様。おはようございます」


イン「おはようございます、おじいちゃん」


子供「インデックス、おはよう!」


母親「コラ!! 申し訳ございません、息子が失礼を……」


イン「全然気にしてませんよ。ねえボウヤ、これからもインデックスって呼んでね?」


子供「うん!」



ワイワイガヤガヤ アリガタヤ 



神裂「ものすごい人だかりになってしまいましたね」クスクス


ステ「だからカモフラージュを怠るべきじゃないのに……」ハァ

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:40:16.24 ID:TnT9aaYr0<>

イン「んっしょ、よいしょ、ぷはぁ!! やっと抜けられたんだよ」


ステ「困るくらいならやはり術式を解除すべきではなかったと思うよ」


イン「でもたまにはステイルとかおりと、三人で散歩してるって実感したかったんだもん」


火織「インデックス…………」


ステ「………………まあ、偶にならいいかな」


イン「ふふ、ありがとねすている」ギュ


ステ「…………」ギュ


火織(この辺りは昔とは少し違いますね)クス

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:40:44.93 ID:TnT9aaYr0<>


スタスタ ヒョコヒョコ スタスタ



イン「あ、ホットドッグの屋台だ」


火織「珍しいですね、ロンドンに」


ステ「最大主教」


イン「い、一個だけ!」


火織「いけません、一個だけなどという安易な気持ちが堕落を」



ぐー



イン「…………」


火織「………………」


ステ「神裂…………」

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:41:18.50 ID:TnT9aaYr0<>

火織「一つだけなら良いと思いませんか、ステイル?」


イン「お願いステイル!」


ステ「…………はあ。お代は君が持ってくれよ、神裂」


火織「任されました」フンス


イン「やった! どれにしよっか、かおり!」


火織「このスペシャルホットドッグは美味しそうで……一つ十五ポンド!?」


イン「三つくださいな」


火織「あっ、ちょっ、ま」


ステ(やはり、僕らは彼女に甘いな)ヤレヤレ


<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:42:05.44 ID:TnT9aaYr0<>


購入後 オープンテラス



ステ「へえ、これはなかなか」モグ


火織(今夜はあの人の為に奮発しようと思ってたのですが……)シクシク


イン「よく見たら学園都市に出てた屋台と同じなんだよ」ジロジロ


火織「そうですか、かの街は食文化も侮れませんね……はぁ」



トテトテ



幼女「シスターのお姉ちゃん!」


イン「あ、こんにちはなんだよ!」


ステ「おや。君はよくミサに来てる子だね」


火織「ほう、まだ幼い身空だというのに感心ですね」


ステ「何の御用かな、小さなレディー?」


イン「」イラッ

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:42:44.36 ID:TnT9aaYr0<>


幼女「あのね、あっちの木にね、私のフーセン引っかかっちゃったの」


イン「え、大変」ホットドッグオク


ステ「おい、最大主教……」


火織「あなたが行って取ってあげたらどうです?」


イン「このお兄ちゃんがノッポを生かして取ってくれるって!」


幼女「ありがとう、おじさん!」


ステ「」


火織「相手は子供ですよ」


ステ「ええい、わかってるよそんな事! ……どれ、どの木だい?」ホットドッグオク


火織(む…………『これ』は)


<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:43:51.51 ID:TnT9aaYr0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


幼女「おねえちゃん、『おにいちゃん』、ありがとう!」フリフリ


イン「またねー」フリフリ


ステ「やれやれ」チャクセキ




イン「ふふ、カッコよかったよステイル。
   …………あれ、どっちが私のだったっけ?」


ステ「な、なにを言ってるんだ。その記憶力で覚えてないわけが」アセ


イン「ステイルが私より後に置いたシーンは見てないもん」アセアセ


ステ「ぐ。おい神裂、君ならわからないか?」


火織「いえ、全然」ニッコリ


ステ「そのツラは知っているな!」


火織「聖人ウソツカナイヨ」


ステ「誰からそんなボケを仕込まれた!?」


イン(…………こ、このシチュエーションはみことの惚気話の中に出てきた……!)

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:44:52.12 ID:TnT9aaYr0<>

ステ「もういい、こんな俗っぽい聖人をあてに出来るか!」


火織(聖人って割とそんなものですけどね)


ステ「最大主教、よく考えたら貴女の能力で『食べ口の形』を覚えてる筈じゃないか」


イン「!!!」


ステ「それで見分ければ一発さ。頼むよ」


イン「………………えっと…………」


ステ「? どうしたんだい、早く」




イン「こ……………………こっちかも」


ステ「いや『かも』じゃなくて。断言できるだろう?」


イン「〜〜〜〜〜〜!! こっちが私ので、そっちがステイルのなんだよ!」


ステ「な、なぜ怒ってるんだい……?」


イン「怒ってない!!! ん、やっぱり、スペシャルな、味なんだよ!」バクバクモグモグ

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:45:55.88 ID:TnT9aaYr0<>

ステ「…………?」ハテ


火織「…………ほらインデックス、そんなに急いで食べるから」


イン「んぐんぐんぐ、え?」


火織「マスタードが頬に付いてますよ、こっちを向いてください」つハンケチ


イン「ん…………」フキフキ


ステ(…………昔を思い出すな)シミジミ


イン「……あ、ありがとなんだよ、かお」






火織「ステイル味のホットドッグはスペシャルでしたか?」ゴニョゴニョ


イン「っっっ!!??」シュー

<> 小ネタ「スペシャル」<>saga<>2011/07/20(水) 17:46:50.66 ID:TnT9aaYr0<>




ステ「どうした!?」ガタッ


イン「こ、来ないで! お願いだからいま私の顔を見ないで欲しいかもぉ!!」マッカ


ステ「そういう訳にはいかな」


イン「後生だから!」


ステ「はあ……そこまで言うなら」チャクセキ


イン「ほっ」





火織「個人的にはやはり煙草の味がするのかな、と思うのですが」ニヤニヤ


イン「かおりぃーーーーーーーーっっっ!!!!!」ンキーッ!


ステ「?」パク



オワリ

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/20(水) 17:48:25.24 ID:TnT9aaYr0<>

かんざきさんは妹分をからかう面白さを覚えてしまったようです
もう一本、上琴夫婦の小ネタをやったら本編に戻りますねー
ではまた <> KIOYH+OIG<>saga<>2011/07/20(水) 17:55:05.37 ID:14+Bw6E30<> 乙!!
小ネタおもしろいよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/20(水) 18:00:50.91 ID:9GvJlJFGo<> このねーちんは土御門さんの薫陶だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/21(木) 01:59:42.49 ID:MRgFQrtyo<> 最高過ぎる・・・
鼻から感動の血涙がとまらねぇ・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/07/21(木) 14:12:28.99 ID:FQpVc+kAO<> ねーちん! <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/22(金) 18:08:11.16 ID:7bmJ/CHi0<> みなさん毎度どうも、>>1です

今日は>>94の方のご要望で上琴夫婦のグダグダです
夜中に総合でものっくそ重たいのを投下した反動か、
マジでグダグダなのであんま期待しないでね!

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:09:27.89 ID:7bmJ/CHi0<>


とある夜 上条家 一家の寝室



真理「zzzzzz」


当麻「…………寝たな」


美琴「もう夜中にぐずり出すような歳でもないしね」


当麻「大変だったよなぁ、ほんの一年前までは」


美琴「でも、私のパパもママも、お義父様もお義母様も」


当麻「ああ。こうやって、俺たちのこと育ててくれたんだよな」


美琴「うん。そのおかげで、私たちはこうして出逢えたんだから」


当麻(………………俺は、何にも覚えてねえけど)

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:10:33.95 ID:7bmJ/CHi0<>

美琴「私だって覚えてないわよ、そんな小さい時の事なんて」


当麻「へ? 口に出てたか?」


美琴「ふふん。インデックスはステイルの考えてる事、
   だいたいわかるなんて自慢してたけどね。
   私は当麻の考えてる事なんて、全部お見通しよ」


当麻「……良い嫁さん貰ったなぁ、俺」


美琴「今ごろ気付いたの?」


当麻「いいや、ずっと前から知ってるさ。
   俺の奥さんは、痺れるぐらいイイ女だってな」


美琴「………………とうまぁ」モゾモゾ

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:11:15.35 ID:7bmJ/CHi0<>

当麻「……おいおい、二人目はまだ早いって話し合ったろ?」


美琴「そんなの関係ないもん」ブー


当麻「はぁぁ。まだあったっけなアレ」


美琴「ね、とうま」


当麻「?」




「――――はやく、しよ?」




当麻(………………鉄壁と自負していた上条さんの理性も、脆くなったなぁ)


美琴「とうま、とうま? って、ふにゃああ!?」


当麻「……久しぶりだからな、覚悟しろよ美琴?」


美琴「んっ、やあっ!? い、いきなりそんにゃ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:11:43.36 ID:7bmJ/CHi0<>


         _,、=:ニ;‐、、--――‐y、,_     ,,r;;;;''''=―--、、,_
       /´  ヽ,ヽ,.゙'l,.゙Y;--',r'゙'ヾ;'V.j   /∠,,.r_;'゙-‐-,<゙゙ヽ,'i、'‐、,
      ./_   .,,_j ゙l l,. Y/゙'ヾ、;、ノ,r;'|  /jフ,r-、ヽ、  _,,>.゙'ー;゙' ーi,. |'i,
      j.ヾ!  ト‐! | .| .|,_ ./,.〈. 〉| ./ .(゙   _>゙'゙ r''゙´'i,゙l, ,j レ! .|:|
      .|il,  __  j .j゙ .l  ト,゙',/ j.゙ r;| .レ'゙''‐ニ'''゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ
      .|.l,゙l, ゙ー゙.ノノ  / / ゙l ゙l,ヽr',r'l ゙;| .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ  .,Y';V
      | l,.゙ヽ--'゙ ,ノ  /  l, ゙'゙,,.l, ,j ゙| l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l   / li,;)
      l,. ゙'i,  /  ,rシ-、,ィ) l,゙i,V/゙j゙ /゙,,、、、,_  ゙\!.レ゙  .| Y゙
       ゙l゙i,・ヾi, ,/ィl、・_ノ ,;:: ゙シ'i.l,ノ ./゙    \  ゙Y:   .l /
       | `ラ´゙'''´ ''"'´  .|  |:.r'`V'''" ̄`゙ヽ、 ゙'i,  |.   ' /
       ゙'i,         .j  |./ ∧、, ゙̄ヽ、. \ ゙l. |\ ./
        ゙i,. r、,,,.、,_   / ノメ、 .j |ヾヽ,゙'ー---‐'''''ヾ-、,‐'
         .゙i,ヾ'-'ニワ.  / ./ノ .V j゙ |'i,. ヽ;-‐-、,_::::__ ::..>
        /:::l,〈`   //‐'´ ./.ヽ/ .j.ノ  .:ヾ、;:) ゙'i    `ヽ、
       /::::::::|ヾ‐;<;/__,、r'´ ./ .)='゙  ..::  ,ソ  .(:: _,,r‐''゙⌒`゙ヽ、,
      / l;::::::::::Y゙人゙l;:.    .,/,r'ニ゙   _,、r''´  ..:: ゙ヾ、     ::  ヽ,
     l  /,r:| j‐゙''l; ゙ニー‐'゙ (`l.(_,r‐'''゙´__,, ....:::::   .`ヽ、,....:::::..  ゙l,
     .!. .l゙l゙レ'>‐゙ | ト;゙i,l、ノ,r;;'ニ゙/´゙Y .,r'゙ ̄    .....::::::::::::::::::::::::.゙ヽ、:::    l,
     | 'ー;l.'i,.l゙  ,j 'シ'‐-ヘ;'V゙./  ゙l, ヽ, ......:::            ::::..ヽ,   ゙l
     .|._,rラl,.|  / ,i l,   .ノ , ゙i,   .゙ィ,.レ'                :.゙l,  .|
     / / ゙l l,゙l,/./ .l, l, ././ .゙l,゙l、  /.,ィ´ ,.r''ニ'' ヾ,            .:l, j゙
   .,rl´.'-‐ニ, .,、 L,,,,,゙l, V /   ヽ,゙'´/.|  .l゙/;=iミ;゙'i,. [        .:::::::::::::::Y゙
  .,r',、 「゙´  | .| jヾ、--、ヾl,    /,、 ゙l,.゙l、-';j;ノ::::::゙レ゙lj゙   ........::::::::::::::::::::::::::|
 / ./.| .レ-‐' 'ソ::l,゙l, ./.∧、ヽ、,,/,/,,゙'i,,゙L、‐'゙::/::://     :::::::::::::::::::::::::::::j゙
 レ:'二i .i''゙゙´| .|:::::::)、V.l゙  ゙l,.゙'V /   ゙'i, ゙V゙ /ノ゙ /゙L,___,,,_   : : :: :::::l
..゙T´ .| |  ,.| .|::::::/ ゙'i,゙l,  `i , l,    〉,,.〈/  .ヽ、,,,,,、、-―‐-、ヽ、  ..:: .:/

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:12:28.88 ID:7bmJ/CHi0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


真理「zzzzzz」


美琴「ステイルってさあ」


当麻「ん?」


美琴「当麻の事嫌いよね」


当麻「…………あれでもかなりマシになったぜ?
   初対面の時なんて開幕炎剣ぶっぱされたからな」


美琴「やっぱりインデックスを間に挟んでるから?」


当麻「それは…………なんつーか、違うんじゃねえかな」


美琴「そうなの?」


当麻「アイツは多分さ、もっと根本的に俺を嫌ってるんだと思うんだよ」


美琴「うーん…………生理的嫌悪、って事かしら」

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:13:17.33 ID:7bmJ/CHi0<>

当麻「インデックスの事が無かったとして、なんて言い方は悪いけどさ」


美琴「確かに悪いわね」


当麻「話の腰を折るなよな……」


美琴「折れそうなポイント提示してきて何言ってんのよ」


当麻「とにかく! それで俺とステイルが仲良しこよしになれるのかって言われたら」


美琴「あー……想像つかないわね」


当麻「だろ?」


美琴「じゃあ当麻はステイルを好きじゃないって事?」


当麻「…………その質問にどう答えりゃ満足なんだお前?」


美琴「まあまあ照れないで正直に言ってみましょうよ」


当麻「照れてませんよ? 上条さん別にそういうキャラじゃないからね?」


美琴「じゃあどうぞ」

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:14:54.51 ID:7bmJ/CHi0<>

当麻「…………ただ一点を除けば、気にくわねー野郎だよ」


美琴「うーん。やっぱり」


当麻「やっぱりって何だよ」


美琴「当麻の口から、そういうマイナスの人物評が出るのって珍しいと思うのよ」


当麻「そうかぁ? 結構他人の行動にケチつけてると思うけどな」


美琴「(いや結構っていうか……)性善説論者でしょ、当麻」


当麻「そんな大仰なものじゃあありませんことよ」


美琴「大仰も大仰よ。当麻の『性善説』にどれだけの人が助けられたと思ってるの?」


当麻「結果論だろ、そんなの」


美琴「終わりよければ、大いに結構じゃない。今日の当麻、なんか弱気よ?」


当麻「………………」

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:15:44.41 ID:7bmJ/CHi0<>



美琴「でも俺は、ステイルとインデックスには何もしてやれてない」


当麻「!!」


美琴「…………言って? 思いのままにぶちまけて? 
   私だって、私の全部を当麻に打ち明けてる訳じゃあないけど」


当麻「……美琴」


美琴「わがままだよね。自分の汚い部分は知って欲しくないのに。
   当麻の事ならどんなに暗くて、狭くて、孤独な場所でも知りたいの」


当麻「美琴」


美琴「当麻の苦しみを分けて貰うのは、私の特権。そうでしょ?」


当麻「…………っ! 美琴、みことぉ!」


美琴「も、もう! 別にっ、そういう事しろって、わけ、ひゃあん
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:16:25.30 ID:7bmJ/CHi0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

美琴「じゃ、次行きましょ」


当麻「え、まだ続けんの? いい加減上条さんも眠くて」


美琴「…………だ、誰が寝かせてくんないと思ってるのよ」


当麻「………………スイマセンデシタ」


美琴「よろしい。インデックスの事、どう思ってる?」


当麻「決まってるだろ、家族だよ」


美琴「便利な言葉よね、それ」


当麻「ぐ」


美琴「そこをハッキリさせるのが、当麻に出来る『何か』だと思うわけよ」


当麻(静かに淡々と説教されるのって、意外とくるなぁ)


美琴「だからってもっと暑苦しく説教されてもアレよね」


当麻「ぐはっ」

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:17:38.58 ID:7bmJ/CHi0<>

当麻「そろそろ丑三つ時だぞ、おい」


美琴「いいじゃん、明日休みだし」


当麻(……考えてみりゃ夜更かしは学生時代から慣れっこだったな)


美琴「一方通行とか、残骸の時とかね……それじゃあ、次でラストの質問にするね」


当麻「やっとかよ」


美琴「んん………………」


当麻「おい、どうした?」


美琴「あのね、当麻」モジモジ


当麻「だからいったい」

<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:18:35.51 ID:7bmJ/CHi0<>




美琴「私の事、好き?」





当麻「」


美琴「ねえ、当麻」


当麻「…………おい待て。まさか今までの全部この為の前フリだったのか?」


美琴「答えてよ、私だけの当麻」





当麻「…………愛してるよ、俺だけの美琴」





<> 小ネタ「ピロートーク」<>saga<>2011/07/22(金) 18:19:20.53 ID:7bmJ/CHi0<>

リビング



ステ(…………)ウイスキーチビチビ


ガチャ


イン(…………)ネレナイ



「「あ」」バッタリ


「「………………」」



イン「…………真剣に、遷るホテルの検討をしたいんだよ」


ステ「…………土御門に、掛けあってみよう」



オワリ

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/22(金) 18:21:26.10 ID:7bmJ/CHi0<>

やっ、やらなかったッ! さすがボス! 俺たちがやりたい事を平然と(ry
本番の描写は百%無理とは言いませんが相当精神力使いそうです
何よりオチが弱い(ここ重要)

次回以降の小ネタの主役について
@インデックスとデレ美琴
A通行止め
B雲川さんと内縁の夫
Cフィアンマとヴェント
からお好きなものを一つお選びください
上位二組にしようかなーと思ってますが予定は所詮未定

他にご要望などあれば可能な範囲でお応えしまーす

<> kihtrdehl<> saga<>2011/07/22(金) 18:23:31.69 ID:HuwgXhBe0<> 乙
Cがいいかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/07/22(金) 18:26:48.35 ID:ZCHdcS6V0<> 2がいいですよっと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)<>sage<>2011/07/22(金) 18:42:57.21 ID:jKV+N3ARo<> ここは気になる3を・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 18:51:54.50 ID:Q5u04iVZo<> これはB
めくるめくB <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 19:19:37.11 ID:ipMGiVLDO<> は、浜滝は無いのですか…(チラッ

Cが気になる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 19:59:27.00 ID:78Jm2qjp0<> 4と3だな
どちらか一択なら4で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北陸地方)<>sage<>2011/07/22(金) 20:02:59.92 ID:joRGLKhAO<> 3かなー

さて、壁殴ってくるかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/22(金) 20:07:44.39 ID:As9Oge2AO<> 3ですかねー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 20:08:18.66 ID:ZZzwEKQAO<> 防音工事がいるな。

1で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 20:09:11.82 ID:esgkZ+Q4o<> ネタ以外のCが見たいのでCで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/22(金) 22:22:51.91 ID:LsyCX51AO<> >>94とか俺じゃねマジで感謝の極み

3と4で割れてんな……3で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/22(金) 23:03:04.82 ID:77n2qS+DO<> 2か3…3かな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/23(土) 03:20:10.58 ID:pr+rcMXKo<> B <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/23(土) 03:22:35.37 ID:CK3Pfo9v0<> 3以外にありえねえ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/07/23(土) 03:36:42.39 ID:UZLbUQfi0<> 2だろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 04:25:41.51 ID:YHvWn+0m0<> 4 <> >>1 ◆weh0ormOQI<>sage<>2011/07/23(土) 08:46:45.70 ID:NSPp6HZt0<>
皆さんどうもありがとうございました>>1です
細かい集計はしてませんがどう見ても3と4が優勢なのでこれらに決定です

一個ぐらい無票もあると思ったんですがねー
ありがたいことなので残り二つと浜滝もいつかは書きたいです

ではまた今夜本編(笑)でお会いしましょう
<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:03:32.16 ID:NSPp6HZt0<>

路地裏に、ドロドロとした巨躯に抱かれた哀れなマリオネットの断末魔が響く。

目を逸らした佐天やすっかり泣き止んでしまった真理を尻目に、魔術師二人は淡々としていた。


「最大主教。解析は?」

「――基本理論はブードゥー。主要用途は敵性の排除。抽出年代は一九世紀。
 元魔術(オリジナル)に正教魔術の混合を確認。
 言語体系はフォン語からラテン語に変換。遠隔精密操作と構成より判断――だよ」

「…………ブードゥーの死霊崇拝か。ならば、これは死体を使っているんだな」


日ごろの温かみが極限まで排除されたインデックスの詳説にステイルは小さく舌を打つ。

イノケンティウス
『魔女狩りの王』に長々とその身を焼かれながらも、異形はいまだに原型を留めている。

摂氏三千度を軽く超える炎を間近に受けながら、恐るべき生命力――命などないが――であった。


「す、ステイル、インデックス! どうしてまだ日本に居るの!?」


専門家として眼前の事象を分析し続ける二人に、我に返った佐天が声を掛ける。

彼女の疑問は尤もであった。





イギリスから来訪した最大主教は七月十二日。

往路と同様に大勢のカメラに囲まれて、確かに日本を飛び立っているのだから。




<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:05:15.37 ID:NSPp6HZt0<>

インデックスは困り顔で傍らの長身と顔を見合わせる。

神父は真面目くさった表情で巻き込まれてしまった女に警告した。


「悪い事は言わない。ここから先は聞かない方が良い」


ここまで来て無力な部外者扱いか。

そんな文言が浮かぶと、彼女の口は勝手に声を張り上げていた。


「いやだ!!」


ところが、寸刻も待たずに返った応えを聞いて二人は諦めたように笑った。

その反応は読めていた、と言わんばかりである。


「ごめんね、私たちの力不足でこんな目に遭わせちゃって」

「君には知る権利がある。今のは念のため意思を確認しただけさ」


こうなると慌てるのは佐天の方である。

二度まで命を助けられた恩人を感情のままに怒鳴りつけるなど、子供の癇癪そのものだ。

顔に血がのぼってくるのを自覚し、その重さに引かれたのか頭が自然に下がった。


「ご、ごめん! せっかく助けてくれたのに」

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:06:55.72 ID:NSPp6HZt0<>

場のムードは穏やかなものになったが、鼻をつく異臭に女性陣が顔をしかめる。

消し炭すら残さず焼き尽くされたのか、クリーチャーも魔人も既に姿を消していた。

その身に装着していた黒い鎧のような物体だけが、大地をも溶かす高温に耐えて残るのみ。

眉をひそめたステイルは、しかしかぶりを振って佐天に向き直った。


「礼だの詫びだのは全て終わってからでいいさ。まずは場所を移そう」


屍に残されていた脂肪分が飛散し、周囲の大気は嫌なべた付きを彼らの肌に伝える。

先導してこの場を去ろうとしたステイルだったが、


「…………失礼するよ」


一瞬歩みを遅らせて懐で震えた端末に即座に反応した。


「……ステイルは少し忙しいから、私から説明するね」


長くも短い逃走劇を終えた女性と幼子をいたわりながら、シスターが代わりに先頭に立つ。

彼女は真理を抱きかかえると血液の付着した部位を撫でながら、今回の一件の発端を語り始めた。



「――――事の起こりはね、三月にロンドンで起きた紛争まで遡るの」




<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:08:16.45 ID:NSPp6HZt0<>






そもそもの端緒は、三月初めに倫敦を舞台にして起こった『戦争』の後始末にあった。

戦後交渉を担当したのは言わずもがな、土御門元春である。

味方の犠牲を最小限に抑えて、尚且つ敵を殲滅し尽くしたというわけでもない。

戦略的にも最上の結果をカードとして、土御門は第三世界をテーブル上で手玉に取った。

しかし一次大戦後の某体制でもあるまいし、

経済的根拠を持たない敗者に巨額の賠償金など求めるわけにもいかない。

とくれば、彼が欲したのは更なる優位性を確保するための戦略情報であった。


「土御門…………?」

「知ってるの?」

「あ、いや。話続けて」

「? そのもとはるが手に入れた情報の中に、学園都市への襲撃計画があったの」


元々第三世界の結社の標的はイギリスと学園都市であった。

三月の事件でイギリス清教は中南米のゲリラグループに対し壊滅的損害を与えたが、

それとはまた別の勢力による学園都市強襲計画の輪郭が、おぼろげながら明らかになったのである。

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:09:30.71 ID:NSPp6HZt0<>

土御門にしても多数の友人が今も在住する科学の街に

関わる問題だけに、無碍に政争の具にするつもりはなかったのだろう。

だがこの計画を知った彼の上司の学園都市に関する思いは殊に強く、

あまつさえ自らが赴いて支援するなどと言いだしたのだ。



上司とは勿論、インデックス=ライブロラム=プロヒビットラムその人であった。



過保護な聖人をはじめとする周囲は当然強く反対したが、

なんと清教派が誇る頭脳は最大主教の提案を作戦の一部に組み込む事でこれを了承してしまった。

更に聖ジョージ大聖堂のみならずロンドン全体を震撼させたのは、

君のために生きて死ぬの名フレーズでお馴染み、

筆頭護衛官ステイル=マグヌスが彼女の日本行きに賛成してしまった事であった。


「だけどこの情報のネックはね、相手がいつ頃『来る』のかが不明瞭だった事なんだよ」

「判明したのは五月の終わりぐらいだったんだがね」

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:11:22.92 ID:NSPp6HZt0<>

連絡を終えたらしいステイルが、インデックスの説明に補足する。

その後は二人がかわるがわる口を開いたが、佐天の理解は不思議とより明快に進んだ。


「そこで我らが今孔明の得意技、『釣り針』を張ったってわけさ」

「私の公式訪問を大々的に宣伝して、相手の決行時期を誘導しようとしたんだよ」


友好関係にある二つの大勢力の結びつきが強まるとなれば敵対勢力は黙っていないだろう。

しかも当日の第二三学区は学園都市始まって以来の一般への大開放を行い、

下らないバラエティー企画まで組んで付け入る隙をこれでもかと晒したのだが。


「でも、何も起こらなかった…………?」

「その通り。露骨に過ぎた、ということかな」


目論見を外された迎撃側は、雲川芹亜の献策で『餌』の攻略難度を引き下げる事に決めた。

それが科学サイド最強の超能力者、学園都市第一位『一方通行』と、

魔術サイドでは彼以上に恐れられる『幻想殺し』の戦線離脱である。


「細かい情報戦は僕らが担当したわけではないんだが…………。
 この事実をそれとなく流して、再び誘いを掛けたってわけだ」

「彼らの目的からすれば、千載一遇の好機に映ったはずだよ」

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:12:45.02 ID:NSPp6HZt0<>


「ちょっと待って。その…………テロリスト? の目標って一体なんなの?」


流れるようなプロのレクチャーに、初めて佐天が口を挟んだ。

失念していた、とインデックスとステイルが同時に額を叩く。

その息の合った仕草に、彼女は真理と一緒になって思わず吹き出してしまった。


「なぜ笑うんだい……まあ、重要なポイントを忘れていた事には違いないけど」

「……『それ』を聞いちゃったから、私も居ても経ってもいられなくなっちゃったんだよ」



--------------------------------------------------



学園都市の行政機能が集中する第一学区でも、ひと際重要な施設である統括理事会本部。

その一室で雲川芹亜は、同盟相手への状況報告の最中だった。


『「アイテム」の大能力者が一人、重傷か』

「……第四位の怒り様といったらない。並の魔術師ならご愁傷様、なんだろうけど」

『止めただろうな。他の三人ならまだしも、「右方」には「原子崩し」では勝てん』

「正直言って、助かったよ。危うく無為に犠牲者を増やすところだったけど」

『薄気味悪いな』

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:15:43.90 ID:NSPp6HZt0<>

「感謝の気持ちぐらい素直に受け取って欲しいけど。
 『レーダー』の事も含めて……あれが無ければ救助は間に合わず、
 絹旗最愛は命を落としていただろうよ」

『…………それにしても、よく超能力者を統率なんてできたな。
 オレの知ってる「奴ら」は、第三位を除いて人格破綻者の見本市だったんだが』


その最たる例として元同僚の第一位を思い浮かべながら、土御門は話題を逸らした。

珍しい相手からの珍しい感謝の言葉に、彼も多少は照れを感じたのだろうか。


「それは間違ってると思うけど」

『アイツらの人格擁護か? あぁ悪い、アンタのダーリンは』

「そういう事じゃないんだけど」


雲川はつい先刻、その第三位に苦汁を嘗めさせられたばかりである。


『じゃあアレか、指揮官の人望ってやつか』

「皮肉はよしてくれ。まあ実際、最後には人徳が物を言った、という気がするけど」

『親船最中に、貝積継敏か。腐った大人ばかり見てきた実験体達には、
 彼らみたいな存在が眩しかったのかもな』

「特に貝積さんはな。あの人は、甘い上に優しすぎる」


かつて雲川が雇われブレーンを務めていた元理事、

貝積継敏は既に老齢を理由に政治の第一線からは退いていた。

助力を求められていた当時は厳しさの足りない姿勢に度々苦言を呈した彼女だが、

その性質が闇に浸かった高位能力者たちの心を解すに一役買った事は間違いなかった。

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:17:24.17 ID:NSPp6HZt0<>

元を糾せば雲川と『彼』が今の関係にあるのも、

貝積がその能力を解明すべく躍起になっていたことが切っ掛けで――――


『………………おい、聞いてるか?』

「……もちろん聞いているけど。続きをどうぞ」

『やれやれ、どこまで話したんだったかにゃー。そうそう、アンタの戸籍を改竄して「そぎい』

「貴様がアステカの女魔術師に『お兄ちゃん』と呼ばせた時の映像がこちらにはあるんだけど」

『…………マーヴェラスだぜい、雲川芹亜』

「もう止めようか、土御門元春。不毛なんだけど」


土御門が親船顔負けの『平和的侵略』で獲得した情報は大まかに分けて三つである。

一つ、襲撃計画の存在。

一つ、その目的とするところ。

一つ、襲撃者の規模。

彼がこの三ヶ月間追い続けてきたのは、三点目に関する詳報であった。

なにしろ概略では、十人以下の超少数精鋭で学園都市の心胆を寒からしめようという魂胆だったのだ。


「にわかには信じられなかったけど。『そんな目的』を、そんな人数で達成しようなんて」

『気持ちはわかるさ。だが「0930」の様な前例がある』


土御門にしてみれば、ロンドンでの一件のように大勢押し掛けてきてくれた方が都合が良かった。

少数であるという事は、それだけ己の力に自信を持っているに違いない。

魔術の世界には尚尚存在するであろう『怪物』級が混じる可能性は極めて高かった。

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:18:34.75 ID:NSPp6HZt0<>

なればこそ、敵に関するデータは鮮明にしておかねばならない。

地下に巡らせた諜報網を蟻の如く這いまわり続けて苦節三ヶ月。

遂に彼は先日、第三世界が外部の魔術師集団に協力を依頼した事実を突き止めた。




――――『神の右席』を名乗る四人の魔術師による、超能力者殲滅計画。

それが、事件の全貌だった。




「……示威行為としてはこの上ない効果があるんだろうけど」

「奴らの実力を持ってすれば、効率面から見ても悪くは無い」


現在の世界趨勢における科学と魔術の天秤は、

緩やかとはいえ成長を止めない科学側にやや傾いているとの見解が大方を占める。

そこに楔を打ち込むために、象徴たる超能力者を消し去る。

実現性は兎も角として、見事成った場合の科学側のダメージは計り知れないだろう。



そして土御門の知る『神の右席』には、絵空事を現実に変えるだけの力があった。



<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:19:59.27 ID:NSPp6HZt0<>
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「そ、それじゃあ、美琴さんや隊長も狙われてるの?」

「…………うん。とうまとみことには、何も知らせてなかったんだけど」

「まこちゃんの事は?」

「あんまり考えたくは無いけど…………とうまに対する、人質のつもりなんだろうね」


インデックスに抱かれた真理は、泣き疲れたのかスヤスヤと眠ってしまっている。

その姿に目を細めてから、ステイルは彼女の問いに事務的に答えた。


「残念ながら、美琴も既に戦闘に入ってしまっている。彼女と削板は現在共闘中だ」

「それは一体どこで?」


聞いた佐天の目の色が変わるが、


「やめるんだ、勇気と無謀を吐き違えるんじゃあない。
 …………そんな馬鹿は、アイツ一人で間に合ってるよ」


すぐにステイルがそれを強く窘める。

忌々しい男の背中が脳裏に浮かんで、思わず煙草とライターに手が伸びかけた。

すると今度は神父がシスターのありがたい説教を受ける番だ。

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:20:58.82 ID:NSPp6HZt0<>

「………………すーているぅ?」

「!!! ち、違う!」

「没収だからね、コレ」

「Jesus…………」


肩を落としたステイルにつられて、佐天も張り詰めていた息を吐き出す。


「じゃあ次は、あなた達がこの街で何をしてたか聞きたいんだけど」

「はぁ…………いいよ、続けよう」


滞空回線という最強の目を手放した学園都市にとって、

少数でのゲリラ作戦に出られるのは最も忌避すべき事態であった。

能力者ならば第九位の力で銀河の果てであろうと位置を特定できるが、相手は魔術師だ。

そこで雲川らが欲したのが対魔術の精緻なレーダー、ステイル=マグヌスだった。

彼は計画の実行される一月も前に秘密裏に日本入りし、

地道に地道に、学園都市を己が知覚の行き届く陣地として再構築していった。





ステイルが三十五日掛けてばら撒いたルーンの枚数――――――実に五十万。





<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:23:55.03 ID:NSPp6HZt0<>
ロンドンのように『天罰術式』の形成までは至らなかったものの、

彼は迎え撃つ能力者達の管制官として十二分にその役割を全うしていた。


「専門用語が多くてなかなかわかりづらいなぁ。
 私が会った時二人がIDを持ってなかったのは…………」

「僕らが学園都市をチマチマ造り替えているのを連中に察知させないためさ」


そもそも入国時の無茶苦茶(穴三)からして敵の目を欺くためのものだったのだ。

斯様な奇跡体験の果てに秘密入国しておいて、

内部に入り込んでからの隠蔽工作がお粗末だったら目も当てられない。


(と言うか、仮にそうだったら土御門のアホを生かしておくものか…………!)

「入国を会談当日だって公言したのもその一環なんだよ」

「…………でもさ、十字教のトップが一ヶ月も行方知れずだったら流石に不自然じゃない?」


詳細を知れば知るほど、疑念は後ろから湧いてくるだろう。

そんな佐天が重ねた質問に、赤毛の神父は苦り切っていた表情を一変、ニヤリと笑った。


「居るとも、最大主教なら…………ずっとイギリスに」

「へ?」

「さっきも言っただろう? ここに居るのはただの通りすがり、フリーの魔術師さ。
 イギリス清教の最大主教とその護衛は七月十日に来日し、七月十二日に帰国したんだよ」

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:25:13.90 ID:NSPp6HZt0<>
----------------------------------------------------------



ロンドン、聖ジョージ大聖堂。



荘厳に、厳粛にミサが執り行われている広間の最前列で、

『日本から帰ったばかりの』最大主教その人が常より幾分固い笑みを浮かべていた。


(ああああああ、何度やっても慣れない!!)


儀式を終えた彼女が疲労困憊で壇上から降りると、

脇に控えていた赤髪の神父が極力靴音を鳴らさずに寄り添った。


(お疲れ様でしたね、ショチトル)

(エツァリぃぃ、たまには変わってくれ……)

(無理です。その為にはもう一度彼らの皮膚を剥がないといけませんよ?)

(うう、そうも正論で諭されると)

(では、感情に身を任せて慰めてあげますよ。自分の部屋に行きましょう)

(お兄ちゃぁん………………)


今やイギリスでも一、二を争う話題のカップルの抱擁シーンに、

会衆のヒソヒソ話はもはやまったくヒソヒソしていない。

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:25:55.29 ID:NSPp6HZt0<>


「やっぱよう○べに流出した映像はモノホンだったんだ……」

「まあワシゃ五年前からこうなるんじゃないかと思ってたけどな」

「私のステイル様がぁ!」

「俺たちのインデックスちゃんがあああ!!」


『愛しのお兄ちゃん』の腕の中で恍惚としている最大主教は野次馬などアウトオブ眼中だが、

その『お兄ちゃん』の方は可愛い義妹を撫ぜながらしっかりほくそ笑んでいた。








(  計  画  通  り  )









<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:27:54.43 ID:NSPp6HZt0<>
------------------------------------------------------


「そういう訳だから、僕らをイギリス清教の人間としては扱わないでくれ。
 少なくとも、今回の一件が無事に終息を見るまではね」


自分達の外堀がもはや堀として機能しないほどに埋められてしまっている

危機的状況など露知らず、ヘタレの代名詞としてその名を轟かせる神父はしたり顔である。

そうこうしている内に四人はほの暗い路地裏を抜け、光溢れる世界に帰還した。

少年院や墓地など特殊施設の多い第一〇学区には、人影は殆ど見当たらなかった。


「っつ…………」


と、その時だった。ステイルが突然苦悶の声を上げると、額を抑えて蹲った。


「ステイル!?」

「ああ、気にしなくていい……わかってたことだろう?」


『魔女狩りの王』はステイルの行使する魔術の中で一、二を争う魔力消費を誇る。

ましてや今回の発動は学園都市中に張り巡らせたルーンのうち十万枚ほどをパワーソースとした。

それほどの火力で無ければ消滅させられない相手と踏んでの判断だったが

ステイルが払った代償は相当量に達し、軽い頭痛に一瞬平衡感覚を失うほどであった。

しかし彼はインデックスの気遣いにもおざなりに答え、再び立ち上がって歩き出した。




ドオオオオンッ!!!




<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:29:22.52 ID:NSPp6HZt0<>
轟音と共に手近な施設の壁がガラガラと崩落した。


「しまった…………っ!! こんな近くまで一瞬で!」

「今度はなに!?」


度重なる異常事態に、佐天が顔色を失って轟音と粉塵の上がった地点を見た。

ステイルは咄嗟に二人を後ろ手に庇い、魔力の発生源を探る。

ついさっきまで二キロは離れていた反応が、

突如としてこの位置に『飛んで』来た事に彼も焦りを隠せなかった。

真理をその腕に護るインデックスは、もしもに備えて小さな身体を強く抱きしめた。



やがて砂煙が晴れると――――その場所には誰もいなかった。


「…………へ?」







「そう間抜け面をしなくてもいいだろう、警備員の女?」







――――三人の背後に、全身赤尽くめの痩身がにやにやと笑いながら現れていた。

その鮮やかな赤を目に入れた瞬間、佐天はインデックスの手を引いて一目散に駆け出した。

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:31:04.63 ID:NSPp6HZt0<>


「お、おい。ちょっと」

「…………自分の格好と彼女の現況を把握しているのか貴様。逃げられて当然だろう」

「ショボーン」

「黙らっしゃい!」



「ま、待ってるいこ! あの人は、違うの!」

「……………………………………へ?」


短い間に二度も間抜けな声を洩らしてしまった女性が、

百メートルほど走った先でようやく止まる。

思い切り引っ張ってしまったシスターの指摘に耳を良く傾けようとふり返ると、


「俺様は一応は命の恩人なんだぞ。そう脱兎のごとく逃げられては流石に傷付く」

「きゃああああああああああああああ!!!!!!」


またしても視界いっぱいに広がる赤。


「フィアンマ! あんまりからかわないで!」

「そのおかっぱ頭に脳味噌は詰まっているのかぁ!!!」

<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:32:45.49 ID:NSPp6HZt0<>

一人だけ百メートルの彼方に置いて行かれたステイルが合流すると、

混乱が頂点に達している佐天を落ち着かせるため手短に事情の説明が為された。


「べ、別人?」

「まったく失礼な話じゃないか。この甘いマスクとあんな凶悪な魔術師を見間違えるとはな。
 誰が路地裏に逃げ込むお前達の助けになってやったと思ってる?」

「え、そ、その節はどうも?」

「雑談に耽ってる暇は無い。あと突っ込んでる暇も無い!! 『右方』はどうした!?」

「それはお前の役目だろう……と言いたいが、今は魔力精製を行っていないのだな」

「ああそうだとも、だから探知できない。貴様ならわかるんだろう、早く吐け!」

「す、ステイル…………ちょっと落ち着くべきかも」


凄まじい剣幕で詰め寄るステイルに対して、『フィアンマ』は飄々と受け答えた。

だが良く見ればその満身は、戦場を抜けてきたかのように傷と埃に塗れている。

インデックスが手当のために負傷の具合を訊こうとすると――



「そこに居る」



――フィアンマが殺気を纏った。


「―――――――――ッッ!!」


<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:34:05.36 ID:NSPp6HZt0<>

急激に表情を変貌させた男につられて、全員が弾かれたように振り向く。

その先には確かに、『フィアンマ』と瓜二つの装束に身を包む男がいた。

今度こそ、佐天が恐怖に膝を折った。


(『アレ』だ…………!)


先刻感じた『死』は、間違いなく遠方に在るあの赤が齎したものだ。

佐天は自らの脳のどこかが麻痺し続けていた、と今更ながらに自覚し慄然とした。


「涙子、立てるかい? いいか、今すぐこの場から逃げろ」

「ごめんなさい。あなたとまことを、同時に護る自信が無いの」

「全員逃げてもいいんだぞ。『アレ』の相手は俺様にしか務まらない」


次々に、彼女の身を案ずる声が掛けられる。

しかし、立てない。怖い。恐い。こわい。

佐天涙子の反応は、認識し難い鬼胎に出逢ってしまった、正常な人間のそれに相違なかった。


ユラリ、と立ち上るような怒気を渙発させながら赤が一歩一歩とにじり寄って来る。

最悪の場合、おぶってでも佐天たちを逃がさねば。

ステイルがそう腹を括った時、遂に男が言葉を発した。


「ロートルが。どこまで俺様をコケにする気だ?」


<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:35:31.51 ID:NSPp6HZt0<>

「ロートル、ロートル……はは、これはご挨拶だな若造。俺様はまだまだ現役の三十代だ」


男の暴言を二度、三度と噛み砕き、フィアンマは不敵に笑う。

二人の『赤』の間に射殺すような視線と口撃が飛び交った。

その場に居る他の誰一人として、口を挟めない。

ただポツリと、無力に震える女から独語が漏れ出したのみだ。


「なんなの、あなた…………?」

「科学の狗が。その心臓を動かす事を許可した覚えは無いぞ」

「よく言うなぁ、『右方のフィアンマ』? 主の許しも得ずにその椅子を手中にした罪人が」

「黙れ…………!」

「黙らん。何度でも言ってやる。
 お前は、自らの身勝手な判断で、神の領域を侵した――――盗人だ」

「…………死ね」


ストン、と一切の表情が抜け落ちた男の右肩から、『第三の腕』が顕れる。

佐天の口から音にならない悲鳴が上がった。


「逃げて!」


彼女はそう発音したつもりだったが、誰にも聞こえてはいない。

ステイルにもインデックスにも余裕がないのか、あるいは声が掠れているのか。

しかしただ一人、『フィアンマ』だけがくつ、と応じるように喉を鳴らした。

<> 神の右席編C<>saga !red_res<>2011/07/23(土) 22:36:02.73 ID:NSPp6HZt0<>










――――同時にその右肩から、三本目の『腕』が顕れた。











<> 神の右席編C<>saga<>2011/07/23(土) 22:37:11.26 ID:NSPp6HZt0<>

それは実像か虚像か、はたまた神の御業か。

科学の街に、天上から降りてきたと謳われても頷ける神々しい造形物が一対。


「……………………え?」


理解のまったく追いつかない女など目にもくれず――――




「では仕切り直しだ、『右方のフィアンマ』」




「神に祈る間など与えると思うなよ、『ただのフィアンマ』」








――――二つの『腕』が、ミシリと空間を軋ませながら交差した。









<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/23(土) 22:39:31.78 ID:ODYn7QWWo<> そういや土の属性の天罰再現するとかステイルさん半分人間やめてそうだな… <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/23(土) 22:40:57.44 ID:NSPp6HZt0<>

続きに足りないものはなーんだ?


正直フィアンマに勝てそうなキャラが見当たらないのでこうなりました
……ってわけではないんですけどカッコイイフィアンマをお見せできたらいいですね


スーパー解説タイムすぎてもうね、前半読み飛ばしてくれても別に(ry
わからない事があったらご質問を、
というのは物書きとしてやっちゃあいけないのかもしれませんが
何かあったら遠慮なくどうぞ

次回は三日以内、独自理論、独自解釈連発になるのでお気を付け下さい

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 23:11:24.11 ID:iyPbCvX2o<> >>続きに足りないものはなーんだ?

それは乙!あふれんばかりの乙
次回も楽しみにしてます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/07/24(日) 00:01:34.88 ID:CfGkcTzAO<> 乙

>>345
佐天さんがドイツ語喋り出したのかと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 10:54:50.46 ID:sLLGDfB20<> 乙乙。フィマンマかっこよす。
まあ確かに、まともにやるとフィマンマに勝てそうなキャラってあんまりいないよね。
しかし、第3の腕はどれくらい回復してるんだろう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 15:02:19.07 ID:HJ3+RfN00<> 乙
フィアンマかっこおちゃめ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 15:02:47.11 ID:HJ3+RfN00<> 乙
フィアンマかっこおちゃめ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/24(日) 22:11:19.74 ID:OtIF2B+AO<> 乙
そしてさりげにアステカ組がやってくれましたww
イギリス帰った時が楽しみだねお二人さん! <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/25(月) 20:56:01.34 ID:FB/zXp6x0<>
どうも>>1です


>>348
そこはまさしく>>1の一番の急所です
まあ神の『火』だからいけるんじゃね? 曲解したルーン魔術がどうちゃらで
みたいな安易な考えでしたゴメンナサイ

他の皆様もレスありがとさん
今日もくどくど説明タイムの上にちょっと長いです
気長にお付き合い下さいな↓ <> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 20:57:09.96 ID:FB/zXp6x0<>

およそ、三年ほど前の事になる。

ローマはバチカンの聖ピエトロ大聖堂に驚愕の来訪者があった。

第三次世界大戦を糸引いた大罪人、『神の右席』のリーダー格。

かつて教皇にさえ牙を剥いた『右方のフィアンマ』が、バチカンへ帰還したのである。


厳重かつ複雑な魔術防衛網を事もなげに潜りぬけたフィアンマは、

ローマ教皇ペテロ=ヨグディスに半ば強引に面会。

更に彼はペテロに対して前教皇マタイ=リースへの引き合わせを求めた。

退任後も全ローマ正教徒からの求心力に衰えは無く、

自らも敬愛するマタイの身に何かあってはと、ペテロは命懸けでこれを拒んだ。



しかしフィアンマは意外にも一切魔術に訴えることなく、

請願が聞き届けられるまで聖堂の一角に座り込むのみであった。



ローマ正教にとっての爆薬になりかねない危険物に頭を抱えたペテロは、

二人の魔術師に水面下で連絡を取った。

一人は英国王室に婿入りしたかつての『後方のアックア』。

そしていま一人は、隠棲するマタイの介助を買って出ていた『前方のヴェント』だった。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 20:58:29.09 ID:FB/zXp6x0<>

『何のつもりでこの国に戻ってきた、フィアンマ?』

『前教皇に危害を加えようって腹なら、一戦交えても良いわよ』

『なんだお前、介護中もそんな堅苦しい呼び方なのか?』

『真面目に答えなさい!』

『いや、確かヴェントは「おじいちゃん」と照れながら呼んでいたのである』

『アックアーーーーーーッッ!!! 余計な事言ってんじゃないわよ!』

『おじいちゃんwwいやなかなか良いではないか。俺様も出来ればそう呼びたい』

『ふざけんじゃないわよ! 死んでも会わせるもんですか!!』


二人の説得(?)にも関わらずフィアンマは翻意せず、

やがて事の次第はマタイにまで伝播してしまった。

必死で押し留めるペテロとヴェントをやんわり振り払い、

マタイは聖ピエトロの大礼拝堂にてフィアンマと一対一で向かい合った。

最後まで渋って礼拝堂を出ようとしなかったヴェントが去り際に見たものは――



『な………………?』



――――マタイの正面で膝を付く、フィアンマの祈るような姿態であった。



<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:00:04.42 ID:FB/zXp6x0<>
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第六学区、『前方のヴェント』と食蜂操祈、浜面理后の交戦地点。


「しょくほう、気絶した人たちを起こせないの?」


『心理掌握』で『天罰術式』を抑え込んで尚、戦局は侵略者に有利であった。

直接戦闘に適応できない食蜂と理后の能力では、

牽制用にと振るわれる『風の術式』でさえ致命傷になりかねない。


「…………ダメ、倒れてる人たちは科学的にはただの酸欠状態だもの、私の管轄外だわぁ。
 もう少し遅れてたら、浜面さんだって助けられなかったかも」


結果、二人は手近な大型アミューズメント施設に逃げ込んで

立ち並ぶアトラクションを盾に逃げ回る他なかった。

施設内は使役される暴風に切り刻まれ床はズタズタ、壁の配線が剥き出しという有様。

不幸中の幸いは、『前方』が正面からの対峙を避ける女達以外には眼もくれない事だった。


「ああもう、荒事は第六位が片付けてくれる予定だったのに!」


視界に入った一般人を片っ端から『操作』して無事に戦場を離脱させていた食蜂が、

苛立ちを紛らわすために艶やかなハニーブロンドを弄くる。

同時に彼女が身を隠すクレーンキャッチャー台が嫌な音を立てて軋んだ。


「…………それってつまり、二人で何とかするしかないって事?」


『能力剥奪』で『心理掌握』の有効範囲を補正していた理后が、呆れ顔でひとりごちた。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:01:30.29 ID:FB/zXp6x0<>

「定かでない戦力を当てにしちゃ、やっぱり駄目よね……不幸だなぁ。
 それにしてもあの厚化粧、やっぱり私の操作力が届いてないみたい」


食蜂操祈が超能力者たる所以は、十徳ナイフに例えられる精神感応系能力の幅広さにある。

そもそも彼女にはごく一部の例外を除いて『敵』など

この世に居ないのだから、戦闘能力など身に付ける必要性もない。

しかし数年前に彼女の世界に新たに加わった魔術師という存在は、その原則の外にあった。

思い返せば数週間前、統括理事会ビルで会った二人の客人もそうだった。

そして今、理后によって強度の補正を受けた『心理掌握』でさえ、

精々『前方のヴェント』の思考を朧に読み取るのが限界なのだ。


(ちょ――かちょこま―と逃――って、大した――いわね、超能力―ってのも)


「っ、危ないなぁもう」


脳内をリードされている事を悟っているのか否か、敵は思考の内でさえ挑発を繰り返している。

自らの心理を騙しながらの防戦一方は荒事に慣れない食蜂にとっては全く未知の体験だ。

次なるバリケードを求めて視線を彷徨わせると、何やら携帯を耳に当てる理后が目に付いた。


(余裕あるわねぇ、浜面さん…………)

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:02:51.66 ID:FB/zXp6x0<>

自分とは違って血腥い事態にも慣れっこの理后を

羨ましいなどと思った事は無い食蜂だが、この時ばかりは話が別だ。

飛来した空気弾が後頭部を掠めた事に悲鳴を飲み込みながら、

通話を終えたらしいジャージの女性に彼女は問い掛けた。


「何の電話だったの浜面さん、ひゃっ!?」


先ほどより精度を増して放たれた一撃を避けられたのはひとえに神のきまぐれだった。

キャラに似合わぬ――いや、これはこれで――情けなくも可愛らしい悲鳴を上げて

飛び退いた先で、食蜂は理后の受けた『業務連絡』を汗だくになりながら聞いた。


「ほ、本当なのかしらぁ?」

「キャラを必死になって立て直さなくても。もうすぐそこまで来てるって」

「前半部分は心に仕舞っておいてもらえると嬉しいんだけどぉ!?」


まあ仕舞われたところで『心理掌握』には聞こえてしまうのだが。

言わぬが花、というヤツである。

などと緊迫した空気を無視して漫才などに興じている間に、

気が付けば二人が使える盾は、現在背にしているパンチングマシーンのみとなっていた。

その防護壁に集中して叩きつけられる風、嵐、暴風、突風、烈風。


「ちょこまかちょこまかと逃げ回っちゃって。大したことないわね、超能力者ってのも」

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:04:13.70 ID:FB/zXp6x0<>


「考えと言葉に大差の無い厚化粧さんに言われたくないわ」

「どこのファンデーション使ってるの? 変えた方が良いと思うよ」


障壁がその役目を果たさなくなる直前に、遂に理后と食蜂はその身を敵に晒した。

余計な一言で『前方のヴェント』のお株を奪う余裕を見せながら、であった。


「はん、観念したってわけじゃあなさそうね」


感情を煽りたてる物言いに対し過剰な反応を期待した二人だが、

『前方のヴェント』は目前の非戦闘員に対して油断している様子は無かった。

一方の超能力者たちはと言えば、態度に出したほどの楽観は持てていない。

ただ、事がここに及んだ以上は最後の博打を打たねばならなかった。


       メンタルアウト
「第五位、 『心 理 掌 握』こと食蜂操祈さまの掌握力、舐めないでもらえる?」

「観念するのは、あなたの方だよ」


第五位と第九位が能力を全開で行使し始める。

それを鼻で笑った『神の右席』は、トドメを刺そうと風切る大槌を頭上に掲げた。


女の闘いが決着を迎えようとしていた。

それ故に。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:04:59.02 ID:FB/zXp6x0<>









「…………科学の狗にしちゃあ、いいわねぇ。女は諦めの悪さが肝心よ」










<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:06:25.47 ID:FB/zXp6x0<>

横合いから第三者の声が掛かった事は『前方』にとっては予想外、そして。


「ああもう、折角やる気出したのにぃ」

「しょくほうにしては珍しかったね」

「あの浜面さん? 私が居なかったらとっくに
 昏睡状態にされてるって事実、憶えてらっしゃるぅ?」


即座に身と言を翻してその方向に逃げ出した二人にとっては、仰望していたものだった。

『前方のヴェント』の貌が戦闘開始以来、最も不格好に崩れた。





「――――何で此処に居るっ、ババア!!」





鏡を間に立てたように、同配色の黄色い女が空間の彼方と此方に陣取る。


「誰がババアよ小娘!! 私はまだ三十前半だあああ!!!」


口汚く罵り合いながら、二人の『ヴェント』がここ第六学区で睨みあった。


「まあピッチピチの私たちから見ればどっちも、ねぇ?」

(私もそろそろ三十路…………)




<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:07:36.70 ID:FB/zXp6x0<>

「何故!? アンタはそこの能力者による『敵意』の抑制なんて受けられない筈!
 なのにどうして、私の『天罰術式』の影響を受けていない!」


ヴェントが『前方』との闘いに魔術師として臨む以上、

魔力精製によって食蜂のマインドコントロールは阻害されるはずだ。

だからこそ『前方』自身も『心理掌握』の支配下に置かれずに済んでいるのだから。


「はーあ、所詮勝手に『席』に収まったヒヨッコなんてたかが知れてるわね。
 あ、それともアンタが名前負けしてるのかしら? 
 『右方』はちゃーんと気付いてるみたいだし」

「…………ちいっ!!」


最大出力で振るわれた『風の術式』がヴェントに襲いかかる。

しかし同型のハンマーをどこからともなく取り出した女が

スラッガー顔負けのスイングを披露すると、両者を結ぶ中間地点で二つの風塊が弾けた。

爆発的な風圧に、そこらに散らばる遊具の成れの果てが全て店舗の壁際に吹き飛ぶ。


「……おわかりかしら? 今のと同じ事が起こってるってわけ」

「なんで、なんでアンタが『風の術式』を………………っ!?」


狼狽をはっきりと表に出した敵手を嘲笑い、素顔のヴェントが口角を持ち上げる。

その笑みは十年前より遥かに美しく――――その分だけ、酷薄であった。




「やっと気付いたの? 『右席』としての特性に干渉されてるのよ、アンタ。」




<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:09:26.84 ID:FB/zXp6x0<>
--------------------------------------------------------


マタイとの対話を終えたフィアンマは、憑き物の落ちたような晴れやかな風貌だった。

その表情を一目見たヴェントがゴクリと息を飲んでしまった事は、

彼女が主の元に召される日まで絶対に口外するつもりのない最重要機密であった。

……フィアンマを除く全員に気付かれていた事などは、やはり知らぬが花である。

そして彼は一つの提言をペテロに向けた。



『ローマ正教秘密諮問機関、「神の右席」――――今代で廃するべきではないだろうか』



三年前の時点で、もはや『神の右席』というかつてのローマの影の象徴は形骸化していた。

それもその筈、『左方』は粛清され、『後方』は離脱、『右方』に至っては反逆者の身。

三次大戦以降新たにその座に就く者もペテロの指導下で居りはせず、

聖ピエトロの地下聖堂に調整用の儀式場が不気味に佇むのみとなっていた。

フィアンマの提案する所とは即ち、その禍々しい儀式場の封印、あるいは破壊だった。



元より教皇専門の相談役である『右席』の存在を知る者はローマ正教内にもごく少数だ。

先代と当代、二人の教皇に『後方』と『前方』の賛同があれば決断には十二分であった。

三人は影に刻まれた歴史に終止符を打つべくいま一度だけ儀式を行い、正式に『性質』を返上。

そして『右方』と『前方』は、自らが最後の『神の右席』である徴となるべく――



『俺様の事は、ただの「フィアンマ」と呼べ』



――今後の生涯を通じて、ただの『フィアンマ』、『ヴェント』と名乗ろうと定めたのであった。



<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:11:11.62 ID:FB/zXp6x0<>

続いてフィアンマはヴェントと共に、彼女にとっての因縁の地、日本に渡ろうと決めた。

儀式場の完全なる破壊に必要なピースとして、あの上条当麻の力を借りようとしたのだ。

『神の右席』はかつて悉く彼と敵対関係にあったが、

故にそのパーソナリティについては(説教されたし)熟知していた。

目的を明らかにした上で真摯に頼みこめば、周囲は兎も角として上条自身は

協力を申し出てくれるだろう、というのが彼を知る者の一致した見解だった。



この旅程はもともとフィアンマの一人旅になる予定であったが、

なぜかニヤニヤ顔のマタイに『前教皇命令(権力的裏付け一切なし)』を

理不尽に下されてしまったヴェントも同行する羽目になった。

現在に至るまでの彼女の受難はここから始まったと言って過言ではない。合掌。



それはさておきローマから日本に向けて飛ぶ

航空機――搭乗に際してヴェントが散々駄々をこねた――上で、

二人は歴史に名を残す衝撃の事件の遭遇者となる。




第四次世界大戦――世に言う上条戦争の勃発である。



<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:12:27.47 ID:FB/zXp6x0<>

彼らの乗る便は洋上で謎の対空砲撃によって破損、インド洋に不時着。

乗客を助けるため奔走したフィアンマとヴェントに吊り橋効果が――特に発生するでもなく、

結局彼らは一般人を救いこそしたものの上条当麻への対面は果たせなかった。



なんやかんやでバチカンに帰国した彼らを泣きっ面に蜂、更なるバッドニュースが襲う。

封印された地下聖堂に大戦の混乱を突いた何者かが侵入し、

儀式に必要な霊装や魔道書の類を全て持ち去ってしまったのだ。

バチカンに残っているはずだったアックアは折悪く

イギリスで起こった魔術師の暴動鎮圧のため帰国しており、

彼はその後の顛末を知らぬままロンドンを離れられない状態に陥ってしまっていた。








こうして十字教の歴史の闇を闊歩してきた『神の右席』の系譜は、


ローマ正教ですら杳として把握できない更なる深みにその姿を消したのであった。






<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:14:19.73 ID:FB/zXp6x0<>
------------------------------------------------------


現在、第一〇学区。


だがフィアンマは消えた『神の右席』を執念深く追い続けた。

世界各地に店舗にカムフラージュした拠点を築き、独自の情報網をゼロから形成し。

三年後の七月十五日、遂に彼自らが『後始末』せねばならないカルマを視界に捉えた。


「ふん」


次元が捻れる、歪む、軋む。

音を立てて空が崩れてくるとさえ錯覚させる『腕』と『腕』の衝突。

趨勢は、明らかに『右方のフィアンマ』に有利に運んでいた。


「はぁ…………はぁ……」


新たに『神の右席』の座に収まった魔術師たちを追う中、

その目的を知ったフィアンマとヴェントは彼らとの対決が不可避であると悟った。

いくら優秀とは言え回路を特殊術式専用に調整された自分達の通常魔術では、

『性質』を身に付けた彼らに勝利する事はかなわないだろう。


「笑わせるなよ、ロートル」


そこでフィアンマらが取った方策は、『右席』の座の再奪取であった。

新参者どもは正規の手順を踏んでその位置を手にした訳ではない。

記憶における儀式の様子や霊装を、バチカンの支援を受けて可能な限り再現。

その結果、『神上』に達するため各々一つしかない位置に干渉して

一部ながらその『性質』を奪い取るという快挙が、皮肉にもこの学園都市で実現したのだ。


<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:16:11.42 ID:FB/zXp6x0<>

「今に吠え面を、かかせてやるさッ!!」


しかし足りない。まだ完璧ではない。つまるところフィアンマの行いは、

『右方』が既にどっかり腰かけている椅子に後から座ろうとするようなものである。

敵の『第三の腕』の出力を本来からすれば見る影もない程に減衰させる事には成功したが、

彼自身の『腕』はその半分にも満たない威力でしか振るわれない。

かつては数振りで空中分解の憂き目に遭うなど不完全だらけだった代物だが、

フィアンマ自身が四大属性の歪みを正した事でいくつかの弱点が解消されてしまっている。

勝負の帰結は誰の目にも明らかである――――はずだった。




-----------------



 T I A F I M H  I H T S O T S A I H T R O T C
「我が手には炎、 その形は剣、 その役は断罪!」


火炎が息吹き、二つの赤の狭間により一層煌々と盛る紅を躍りこませる。

『聖なる右』の押し合いに勝利した『右方のフィアンマ』は憎き邪魔者に

追撃を掛けようとするが、その度に取るに足らない炎の魔術師に時間を稼がれてしまう。


「鬱陶しい雑魚が……!」


炎剣の迎撃に適した出力調整が自動的に為され、『腕』が蠅を払うように一振りされた。

続けてもう一撃放てば、ステイルは無様に吹き飛ばされて戦闘不能だ。


<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:18:03.15 ID:FB/zXp6x0<>

「余所見をするとは余裕綽々だな」


しかしまたしても妨害が入る。

『右方』とステイルを結ぶ破滅の射線上に、『フィアンマ』の姿。

今度は決して生身で受けるわけにはいかない『腕』による攻撃だ。


「寝ていろ、年寄りが!」


そして、膠着。

一度感情の消えた『右方』は激闘の中、見る間に色をなしていた。

それもそうだろう。魔術世界でも文字通り右に出る者のいない力を手に入れながら、

敵になるはずもない前任者と凡才相手に、こうも拮抗状態を作られているのだ。

その屈辱感たるや、ステイルに果たして想像がつくであろうか。


(知りたくもないな、そんな事)


恥を忍んで言ってしまえば、この敵はステイルの遥か格上であった。

『第三の腕』には敵対者の打倒に必要な分だけの威力を自動的に生み出す機能がある。

有史上『腕』のぶつかり合いなどというふざけた事象が

他に存在するのかどうかはステイルの関知するところではないが、

要するに現在目の前で繰り広げられている未曽有の血戦では、

少なくともフィアンマの『腕』はその最大出力を発揮していることになる。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:19:34.83 ID:FB/zXp6x0<>

(何が完全状態の十%未満だ、『竜王の殺息』と比較してもなんら遜色ないぞ…………!)


喫茶店で事前に受けた説明を苦い顔で振り返りながら

ステイルが座標のサーチを欠かさないのは『歩く教会』の位置であった。

その近くには魔力こそ持たないので探知は出来ないが、佐天と真理も居るはずだ。


(彼女らの身の安全だけは、せめて僕が)


次元の違う攻防に直截に割って入るのは彼の実力では到底不可能であり、

出来る事と言えばフィアンマの援護に過ぎない。

元より人影の殆ど無いことだけが不幸中の幸いだったが、

第一〇学区の街並みはもはや紛争地域の如く荒れ果ててしまっている。


(…………勝てればいいんだ、それで。
 それで彼女を、最大主教を守れるなら何だって構わない)


少しでも気を抜けば鎌首をもたげる弱気に必死に抗いながら

しかしステイルは、いずれ必ず勝機が齎されると“信じて”いた。


「か、はあっ!!」


僅かにステイルが思索に耽った間に、十二度目の激突をやはり『右方』が制した。

その躰が跳ね飛ばされた先と『彼女』の位置を照合して――――心臓が止まりかけた。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:20:56.40 ID:FB/zXp6x0<>



「最大主教ッッ!!!」




フィアンマが蹲るすぐ傍らに、インデックスの聖衣が揺らめいていた。

あの位置ではフィアンマが庇ったとしても、『腕』同士の激突の余波に巻き込まれかねない。


(いくら『歩く教会』と言えど――――!)


叫ぶ、駆ける、ルーンを翳す。

どの行動を初めに取ったのかはステイル自身にも知れなかった。

ただ、大切な人の身が危うい。その一心が身体を、脳を突き動かした。






「揺らいだな、虫けら」


見誤った。戦況を読み違えた。自分がすべきは、敵への牽制のはずだ。

そうステイルが認識した時には、『右方のフィアンマ』は哄笑しながら彼を標的に定めていた。

見上げれば、天高く『聖なる右』が掲げられていた。


――――死んでたまるか。


眼光で自らを殺そうとする相手にそう伝えるだけで、死にゆく男には精一杯だった。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:22:51.15 ID:FB/zXp6x0<>


















刹那、澄み切った声が大気を震わせた。


 C T O O H R A T T R     A T T M P O
「『聖なる右』の軌道を右に! 出力を最低に調整!!」






『腕』が、不可視の衝撃に弾かれたようにその軌道と輝きを大きく変じさせる。


「!?」


――――ロンドンからその名を世界に知られる『魔道図書館』が、

とうとうローマ正教最大の秘術、『神の右席』の特殊術式を解析しきった瞬間だった。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:24:43.55 ID:FB/zXp6x0<>

必中必殺である筈の『腕』が虚しく空を切り、『右方』が体幹を大きく崩す。


「ああああああっっ!!!!!」


好機を逃さずフィアンマが荒々しい雄叫びを上げ、

最強の矛のコントロールを失った『右方』に満身創痍の躰で迫った。



この一撃が決まれば、疑いようもなく決着だ。








「 舐 め る な あ っ ! ! 」
 




だが、だがである。

修羅の如き形相で『右方のフィアンマ』もまた、獣の如く吠えた。

『強制詠唱』の支配下に置かれ、右方に弾かれたはずの『第三の腕』が再起動する。

二人の『フィアンマ』は正面から十三度目の交錯をし。


      ・ ・
――――双方が、力の均衡点から弾き飛ばされた。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:26:45.54 ID:FB/zXp6x0<>



「まだ、まだぁ、………………!?」


背中から強かに打ちつけられた『右方』が身を起こそうとする。

 T O F F
「原初の炎」


そこに、炎天下というだけでは説明のつかない熱気が渦巻く。

  T  M  I L
「その意味は光」


日輪にしては明らかに近すぎる灼光が瞬く。


「塵芥が、図に」


瓦解寸前の『聖なる右』がなお足掻こうとするが、

  F
「動くな!!」


怨念を浄化すべく聖歌の一小節が紡がれ、





「く、そおおおおおォォォォっ!!」


アスファルトに縫いつけられたかの様に、その動きは再び停止した。
<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:28:02.98 ID:FB/zXp6x0<>






  D D A G G W  A  T S T D A S P T M
「優しき温もりを守り、厳しき罰を与える剣を――――ッ!!!」





「――――――――――――ぁぁっっ!!!?」






耳を、いや全身を劈く爆音が、上がるはずの悲鳴を掻き消した。










<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:29:44.38 ID:FB/zXp6x0<>












天高く立ち上る火柱を見るともなく見ながら、フィアンマは地べたに身を委ねていた。


「おい、生きているかい?」


ステイルが、着火点から注意を逸らさず歩み寄る。

その足取りは失った魔力の割には、存外堅調であった。


「…………はは、心配してくれるのか、ステイル=マグヌス?」

「教科書通りのツンデレをやる気分じゃあないんだ。その様子なら心配ないな」


十年来の戦友のように軽口をたたき合うと、神父は止血に忙しいシスターに声を掛けた。

しゃがみ込んで黙々と作業に没頭する彼女の表情は、長身の彼には窺えなかった。


「あー、最大主教。その………………済まない。貴女に助けて貰っているようではね」


頭を下げるステイルの脳内天気予報では、土砂降りマークが全国的に点灯中だ。

己が為すべき役割を見失って護衛対象に救われるなど、全くもって笑えない話だった。


(情けないな、くそ…………)

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:31:21.93 ID:FB/zXp6x0<>

目元を掌で覆い隠し、どうしようもない無力感に浸るステイル。


「…………………………るよね?」

「え?」


その時、自己嫌悪の深みに沈み切っていた彼の耳に微かな声が届いた。

声量が小さすぎた為に内容は聞き取れなかったが。


「……生きてるよね、ステイル?」

「…………見ればわかるだろう、五体満足さ。
 僕の不甲斐なさについてはいくらでも謝るよ。だから顔を上げてくれないか?」


きょとんとした顔で返すステイルの言い草がまるで見当違いなのは、

脇で伸びてインデックスの手当を受けていたフィアンマにも、

物陰で行く末を見守っていた佐天にも、明白極まりなかった。

二箇所から同時にはあ、と吐息が空に逃げた。


「なあ、最大主教…………?」

「〜〜〜〜〜っ!」


俯かせていた美貌が振り上げられると、勢いで白地に金刺繍の入ったベールが外れる。

白布を慌てて掴んだステイルの全機能が、それを彼女に返そうとした瞬間停止した。




――――聖女は滂沱の如く涙を流して、かんばせを濡れそぼらせていた。




<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:32:10.81 ID:FB/zXp6x0<>


「………………へ、あ、え?」

「わ、私があんな所にいたから、すているが、あぶ、危ない目に遭って」



泣いている。自分の目の前で彼女が泣いている。

誰だ、誰が泣かせた? そんな奴は万死に値する。

地の果てまでも追いかけて、必ず消し炭にしてやる。

磔にして、串刺しにして、火炙りにして、屍体になろうが骨も残さず


「わた、しのせい、で? すているが……すているが! 
 後ちょっと、えい、しょうがお、お、遅かったらぁ……!」


そこまで考えたところで、ステイルはようやく大罪人の正体に辿りついた。


(――――僕か)


「いき、てるよ……ね? すているがし、し、しんじゃったら!! わ、わたしぃ…………」



僕が、泣かせたのか。彼女は、僕の為に涙を零しているのか。

参ったな。どうすればいい? 何をすべきなんだ?

この身体を力の限り引き裂けば、許してくれるのか? 無理だろうか?

いやそれ以前に、僕は僕自身を赦せるのか? 無理だろうな。

こんな罪深い――――

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:33:22.65 ID:FB/zXp6x0<>

「おい、ステイル=マグヌス……お前ちょっと、かふっ、げほっ!」


危険な方向にふらつき始めたステイルの脳内行程を見てとったのか、

フィアンマがお節介にも目的地の修正を図ろうと試みる。

が、肺をやられたのか上手く言葉を吐き出せない。

ポン、と自失状態の神父の肩に手を置いたのは、別の人物だった。


「あのさあステイル。まず、何よりも最初にやること、あるよね?」


震える四肢に鞭打って、こちらも何故か泣きそうな笑顔の佐天が叱咤を引き継いだ。

そして、彼女に抱かれる稚い体温も続いた。


「いんでっくしゅ、ないてるよ?」

「あ…………」


吸い寄せられるように長躯が屈んで、泣きじゃくる女にそろそろと右手を伸ばす。

すると柔らかな純白がたおやかな腕を強く強く胴に回し、男の衣服をしとしとと濡らした。

空中をしばし彷徨ったステイルの腕はおそるおそる角度を急にしていくが――


「ごめん」

「すている…………」

「本当に、ごめん」

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:34:47.51 ID:FB/zXp6x0<>

最終的には、流れるような銀髪の上に着地するに留まった。

そのまま、銀糸の上を慣れた手つきで滑る。


「すている」

「………………ごめん」

「謝らないで、すている」

「でも」

「悪いの、私だよ? …………それに」

「…………それに?」

「生きててくれたら、それでいいもん」

「……僕も、君さえ生きていてくれれば」


地固まった白黒コンビを妙な虚脱感と共に見届け、傍観者二人はまた溜め息をついた。


「はぁぁぁあぁぁ」

「心持ちは痛いほどわかるがな、警備員の女。
 …………やれやれ、いま一歩という所であのヘタレっぷりか」

「まあ、私はそれだけじゃあないんですけど…………あれ?」

「どうした? ………………ッ!! おい!!!」


あそこまで行っても尚先の長そうな二人に同情していた佐天が、ふとある地点を見やる。

フィアンマがその視線の先に何があるのか察して声を絞り上げた。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:35:52.04 ID:FB/zXp6x0<>

「――――――――――」


寄り添い合っていたステイルとインデックスが事態に気が付く。

それは微かな幽かな、暗い昏い言霊だった。



「――――――――――――――」



息苦しい地の獄から、あるいは生の存在しない死体置き場から、這いずるような音吐。

多種多様な言語が代わる代わる、即席の火葬場から紡がれていた。



「――――――――――――――――――」



ルーン文字を極めた赤毛の神父でさえ聞き取れない言詞が幾つも混じった。

その全容はなんと、彼に身を寄せていた魔道図書館ですら把握しきれなかった。


フォン語。ワロン語。ブルガリア語。ア■ンブ■言語。グルジア語。カンナダ語。

ポルトガル語。フランス語。アルバニア語。蒙古語。トルコ語。トラキア語。

■■タプリ■■語。ラテン語。コプト語。ガ語。西フラマン語。ソト語。日本語。

広東語。チベット語。バルーチー語。ヒンディー語。C■語。イタリア語。


ステイルがルーンから炎を生み、阻止すべく走り出したのと同時に。

<> 神の右席編D<>saga<>2011/07/25(月) 21:38:12.43 ID:FB/zXp6x0<>

最後の一節は、誰もが馴染み深いブリテンの言語で締めくくられた。






















                       D  C  A  T  E
                ――――死が最後にやってくる――――
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/25(月) 21:40:39.09 ID:FB/zXp6x0<>

続く。かも。


な・が・い 次からはもう少し短く切っていきますね
それにしてもいっちゃん最初にフィアンマ戦がほぼ終わってしまう
この計画性のなさ! 救いはないんですか!?

まあ最後のいちゃいちゃ部分だけ読んで下さればあとは別に、ねぇ? 刺身の大根部分です
ではまた、三日以内にお会いしましょう <> kihtrdehl<> saga<>2011/07/25(月) 21:45:22.38 ID:2iYgbxis0<> あれ・・・・・右方のフィアンマはどうなったの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/25(月) 21:48:07.40 ID:+yAzHxYl0<> ただのフィアンマと相打ちになった直後に動き封じられて火葬されたと思う <> kihtrdehl<> saga<>2011/07/25(月) 21:52:45.37 ID:2iYgbxis0<> >>386
そうなんですか
教えてくれてありがとうございます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/25(月) 23:09:03.52 ID:ghSkPEaFo<> ノタリコン解読しようとして俺の学生時代の英語の成績の低さを思い出して泣いた
乙ー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/26(火) 13:40:16.77 ID:gR+9l+3AO<> 味噌じカツ弁当 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/26(火) 16:58:12.61 ID:ovmxfJ+M0<> gjなんだぜ、おじいちゃん
乙 

>>353の連投サーセン <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/27(水) 20:47:24.44 ID:UA9AXkCa0<>
どうも皆さんのレスが励みの>>1です
お決まりの文句だけど本当に軽く一言、それだけでも元気を貰えるのですよー

では今日も失笑モノの投下と行きましょう↓


<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:48:27.05 ID:UA9AXkCa0<>

第七学区のとある公園。


『後方のアックア』と上条美琴、削板軍覇の激闘が
「だらっしゃああああああ!!!!」



……超能力者の中でも戦闘向きの能力者二人の共闘である。

第三位と一対一で互角だった『後方』に対してなら優勢であってもおかしくはな
「ドララララララァーーーーーッッッ!!!!!!」



…………しかし実際には削板の到着後、魔術師の動作は遥かに鋭さを増した。

美琴が手を抜かれていたと感じても無理からぬ事だろう。

女の不機嫌そうな態度に、『後方のアックア』は律儀に弁解を始めた。


「手加減していた、というわけではないぞ『超電磁砲』。
 この力は一度解放すると制御が困難、自爆の危険性も孕むのだ」

「いや別に、それで怒ってるわけじゃあ…………やっぱり手ェ抜いてたんじゃないのよ!」

「手加減ではなくて、温存と言うのだこれは」

「どっちにしろ同じこ「ワッショオオオオオーーーーーーーーーーイ!!!!!!!!!」



「ああもう、削板さん!! お願いだからちょっと静かにしてくれる!?」



<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:49:17.28 ID:UA9AXkCa0<>

超能力者と言うこれ以上望むべくもない援軍を

手に入れられたのは、間違いなく美琴にとっては僥倖であった。

目に見えて動きの変わった筋骨隆々の大男に対して決定打となるような攻撃は、

彼女の反射スピードでは容易には放てなくなってしまったからだ。


そこに来るとこの第七位は常識の通用しないスピード、パワーの相手に

劣勢を強いられながらも真正面から拮抗しているではないか。

彼の到着しない内に『スティグマ』とやらを解放されていたらと思うと背筋が凍る。


「んぜぇ、はぁ、なんだ上条、俺に闘うなって言いたいのか?」

「叫ばなくても闘えるでしょうが! 
 どうして戦闘=咆哮に直結エレベーターが開通してんのよ!?」


だがこの男、兎にも角にもうるさい。

一にうるさく二に喧しく、三四が熱くて五にけたたましい。

美琴の鼓膜が破れるのが先か、敵を打倒するのが先かという残念な勝負に既になりつつあった。


「我吠える故に我在り!! 意味はよく知らん!!!」

「ちょっとアンタ脳神経いっぺんスキャンさせなさい!」

「…………もう良いか?」

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:50:30.72 ID:UA9AXkCa0<>

手持無沙汰に巨大なメイスを手入れしていた『後方』の問いに、

慌てて両足を肩幅に開き臨戦態勢を取り直す美琴。

一方の削板と言えば腕を組み、呑気にクエスチョンマークなど頭上に浮かべていた。


「しっかし上条! あいつが使ってる魔術ってのは水なんだろ?
 だったら電気とは相性が良いはずじゃないか?」

「……ちなみにそのありがたーい情報、参考資料は?」

「ポ○モン」

(んなことだろうと思ったわよ……)


何とも幼稚な相性論ではあるが、言っていることは尤もらしい。

水に濡れれば感電しやすいとは子供でも知っている初歩の物理だ。

しかし最大十億Vの雷撃を従える美琴ほどの『電撃使い』ともなれば、

濡れているどうこうなど関係なく相手は黒子げもとい黒焦げである――――本来ならば。


「……いい加減に、再開したいのだが」

「おお悪いな、いつでもいいぞ」

「私の台詞なのだが、それは」


聞いていて気の抜ける会話が交わされた次の瞬間には、


ブオンッ!!!


二人はマッハ三近い速度で再び一合、二合と打ち合っていた。

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:51:23.05 ID:UA9AXkCa0<>

バンッ、ガッ、キン!!


「――――――――――――――ダ――――ラァッ!!」

「――――――――――――――――――ヌンッ!!!」


木々が揺れ、地面が抉られ、高低様々の快打音が跳ねた。

それにワンテンポ遅れて裂帛の気合いがあちらこちらから反響してくる。


取り残された美琴は軽く目を瞑り、電子の領域で超人二人の激闘を追い続けていた。

邂逅時に美琴が察知した電磁波はいつの間にやら微弱なものになっていて追い辛いが、

最初から『第三位』を標的に定めていたのなら、レーダー対策を取ってきても不思議はなかった。

よって正確には削板が放つ、これまたおかしな波形で美琴は戦局を把握する。

頬を流れる汗を拭うための寸暇も今の彼女には惜しかった。


「―――――――――――――――――無駄、無駄、無駄ァァッ!!!!」

「―――――――――――――――――――――――」


ひとしずく、ぽたりと小粒が顎を伝って地表に滲んだ瞬間。



(喰らいなさい、一億Vッ!)



敵が標的を削板から己に変えた事を瞬時に察知した美琴が、

溜めていた電圧を真正面二メートル地点と肉薄していた『後方』に解放した。


ギギギギギギギギギッ、ガアンッッ!!!!


<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:52:43.87 ID:UA9AXkCa0<>

直撃。

しかし美琴はすぐさま横に身を投げた。


(人体に電流が流れたような音じゃないっ! 何か強い抵抗に邪魔されてる!!)


凄まじい白煙が同時に上がり、霧中を青い影が突っ切る。

棍棒が大気と、霞む世界に倒れ伏す人物を切り裂いた。


「む…………」


それは、砂鉄をひと固めにして模られた人形だった。

本物の第三位は自らの身体を電磁石の様にして、

ペンキのはげかけた電灯に吸い寄せられるように宙を舞う。

それを視界に捉えた『後方』が跳躍して追撃しようとするが、


「超ウルトラグレートすごーい!」

「!!」


緊迫感皆無だが危機感をあおる口上が、茹だるような暑苦しい声で唱えられる。

男が早急に防御術式を組み上げる間に、美琴は無事地面に降り立っていた。





「大車輪パアアアアアアンチ!!!!!!!」





<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:54:40.84 ID:UA9AXkCa0<>


轟音をよそに、今得た情報を学園都市ナンバースリーの演算機が反芻する。



『幻想殺し』相手でもあるまいし、決して人間に向けて良い強さの雷ではなかった。

だがその殺人的な攻撃が相手にダメージを通していない事は美琴にはよく解っていた。

何をもって一億Vという桁外れの電圧を防いでいるのか、理解できないのはそこだ。


「やっぱり、『超電磁砲』を当てるしかないのかしらね」


御坂美琴時代から代名詞とする技に、実の所彼女はそう強い拘りが有るわけではない。

『超電磁砲』は美琴の真骨頂である戦術的多角性から目を逸らす為の、謂わば隠れ蓑なのだ。

しかし電撃というわかりやすい攻撃手段が防がれた今、やはり火力ではこれが一番だ。


(でも、どうやって?)


当たらなければどんな切り札だろうと持ち腐れである。

いくら『超電磁砲』の弾速が一千メートル毎秒に達した所で、狙いを付けるのは美琴自身だ。

先ほど『後方』が突貫して来たのも手中に弾丸が無い事を確認した上でのものだろう。

あんな好機がもう一度、最高の環境で到来すると思えるほど、美琴は楽観主義者ではなかった。


(待てよ? だったら、逆に考えれば)


                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――当てられないのならば、当てなければいいのでは?





<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:56:25.67 ID:UA9AXkCa0<>

脳の一方で勝利への方程式を組み上げながら、

もう片方で同時に回転していた索敵レーダーが状況の変化を告げた。

緩まる点の移動速度。そして、停止。

魔術師と超能力者は、申し合わせたように闘争を中断していた。


「……………………ぶはああああっ!!!」


小休止中でさえ常人の五倍は喧しい削板軍覇。

一方の『後方』は距離を詰めて来ないところから見ると、一応消耗はしているようである。

ピリピリと圧迫して来た存在感が薄まったのは、『聖痕』の解放を止めた為だろう。


「やっぱりキツイわけ? そのナントカってのを使うのは」

「まあな。これ以上は危険なので一旦封印だ」

「その割には涼しい顔して、腹立つわね……」


苛立ち以上に危機意識で顔が歪む。

然程動き回っていない美琴が肩で息をしていると言うのに、

削板と音速の領域で激闘を繰り広げていたこの男は平常そのままの顔色だ。

ややもするとうっすら汗を掻いているのかもしれないが、

隆々とした体格さえ熱気に揺らめいて見える今の美琴では、どうにも把握しようがなかった。


(私だって、当麻と一晩中激しくやりあった事あるのに……歳なのかしら)


芳紀二十と四の女は聞き様によればどうとでも取れる呟きを脳内に留めながら、

『後方』とは対照的に滝に打たれたかのような男を気遣った。

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:57:21.16 ID:UA9AXkCa0<>

「大丈夫、削板さん?」

「…………はああああっ、ふううう、ぜええっ…………!
 モウ・マン・タイ!! 一分で元通りになってみせるぜ!!!」

「いや声の方は今ぐらいでいいです」

「えっ」


叫ぶためではなく回復の為に酸素を取り入れる削板の全身はびっしょりと濡れている。

気が付けば、美琴のベビーピンクのYシャツも首筋から胸元、脇腹まで汗だくになっていた。


(ああもう、真理ちゃんと一緒に早くお風呂入りたい…………!
 夏とはいえこんなぐしょぐしょになるほど汗掻くなんて初めて、――――――!!)





走った電流――能力の産物ではない――に息を呑む美琴。

天啓。

と言うほどのものでもなかった。

環境を読む、探る、分析して、計算する。

わかってみれば、実に呆気ないものだった。


(――――読めた、アイツの使用してる『抵抗』の正体!)


学園都市第三位の頭脳は、演算の果てに遂に一つの勝機を弾き出した。

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:58:28.63 ID:UA9AXkCa0<>

だがその時、どういうわけか『後方のアックア』がくるりと敵に背を向け、


「興が醒めた」

「…………は?」


平然とのたまって、激戦の中一つだけ運良く原型を保っていたベンチに腰掛けた。

当然、戦闘狂の気があると言われれば否定しきれない美琴と削板は納得しない。


「おいおいおいおいおい!! ここまで来てそりゃあねえだろう!!!!
 根性足りてるのか? そうか、足りてねぇのか!!!」

「ちょ、ちょっと静かにしてて。アンタ!!
 折角人が勝ちの算段付けたってのに逃げるワケ!?」


救いようの無いバトルマニアを同類を哀れむ眼で見つめたのち、

男は死合った相手に晒すにはあまりに“違う”穏やかな表情を形作った。


「そうではないのだが。これはコチラの問題でだな。
 そんな腐れた戦友を持つ気にならん、というだけの話だ」

「……………………は、はぁ? 指示語多すぎよ、何言ってんのかサッパ」

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 20:59:19.99 ID:UA9AXkCa0<>




――――そして『ソレ』は、前触れもなくやってきた。




「『ソレ』に殺されるようなら、特段惜しい相手とも思わんのだが」



誰に対してのものかは美琴と削板には知れないが、

魔術師の声色には明らかに侮蔑という名の画材が混ぜられていた。

残りの色は、期待か、それとも諦めか。



「頼むから、生き残ってくれよ」




<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 21:00:39.43 ID:UA9AXkCa0<>
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第六学区。


白井黒子は旧敵かつ仇敵である結標淡希の助けを得て、

ひとまずは救援を求めるべく端末に手を伸ばしていた。


「無駄よ白井さん。あなた達の隊長なら、
 このエリマキトカゲ以上の化物と一戦交えてる最中だわ」

「いろいろと物申したいですねぇ、今の発言には」

「ああもう!」


やはり彼女とは相性が悪いなと考えながら、白井は携帯電話を胸ポケットに戻す。

気に食わないのは何もかもお見通し的な上から目線だけではなかった。


「お次はこれよ?」


上空四十メートルほどから、手榴弾のような物体が降ってくる。

敵の魔術の効果範囲をある程度把握したうえで

その射程外から射程外に向けて能力を発動、

重力に任せて武器をお取り寄せ、と言うのが白井の見立てである。

直接触れた物以外は転移させられない彼女の『空間移動』では真似しようのない芸当だ。


「やれやれ。第三優先、コンクリを上位に、手榴弾を下位に…………おや?」

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 21:01:41.51 ID:UA9AXkCa0<>

ところが物体の着地点から上がったのは、炎ではなく大量の白煙であった。

警備員が制圧に用いる煙幕弾。

『左方』の認識のズレが、『光の処刑』の有用性をゼロに変えてしまった。


(一言ぐらい相談してからやって欲しいですの、そういう事は!)


ブチブチ愚痴を口内で噛み殺しながら、白井は今度こそ金属矢を的中させるべく構えた。

いかに能力自体が発動せずとも、座標の把握はテレポーターにとってはお手の物だ。

緻密な計算に基づいて煙に消える直前の敵の位置を割り出す。

弓の達人がそうであるように人体の急所を知りつくす彼女は

命は奪わず戦闘能力を喪失させられる部位に狙いを定め、

名門女子校の卒業生らしく優雅に手首のスナップを効かせた。



「喰らいやがれですの、おおおおっ!?」


スッテーン。


結果は、全く優雅なものとはならなかったが。

突如何者かの足払いを受けた白井の必殺の一矢は、

明々後日辺りの方向に全力ですっ飛んで行くはめに相成った。

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 21:03:11.60 ID:UA9AXkCa0<>

「むぅぅぅすじぃぃぃめさぁぁぁぁんん!?
 何なんですの、アナタわたくしに恨みでもあるんですの!?」


淑女が披露してはいけないような鬼の形相で足払いの主の名を呪う白井。

どうにか後頭部だけは守るよう受け身をとった彼女は、

勢いよくブリッジ状態から腹筋をフル活用して跳ね起き。



ズガンッ!



その直後、彼女の頭蓋が一秒前まであった地点でアスファルトが破砕された。


「!?!?!?」

「あのね白井さん、あなたが私に対して真っ先に述べるべきはお礼なの。
 そのへんおわかり? ドゥーユーアンダスタン?」

「…………全く、醜い。美意識の欠片も感じませんねぇ」


パニック状態の白井がようやく現状を理解し始めた。

徐々に徐々に戦場を覆っていた白がフェードアウトしていく。

透明な空気と強い日差しが三人の前に戻ってくると。





――――そこには地獄があった。



<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 21:04:31.56 ID:UA9AXkCa0<>

ぐちゃりと音の聞こえてきそうな荒れ果てた表皮。

両腕は重力に従って伸ばされ、指先から紫色の粘液がビチャ、と落ちた。

ハイライトの存在しない眼球は中空を彷徨ってその機能を果たしておらず、

顔面に開いた穴と表現した方がしっくりくる口腔からは、

声と呼ぶのも憚られる異音が漏れるのみだった。

そして胴体部には、時代考証を誤ったかのような黒光りする西洋鎧。


「これは酷いわね、イロイロと」


極限までグロテスクにリメイクされた人体模型が五、六、七体。

某保母さんが目の当たりにすれば黄色い悲鳴の上がりそうな

B級テイスト漂う光景が、二人の能力者を取り巻いていた。

その光なき眼はやがて、温度無き悪意を伴って一斉に結標と白井を捉えた。


「一大事ですねぇ。しかし私はあなた達に容赦するつもりはありませんのでご安心を」


ただ一人クリーチャーにターゲッティングされていない

魔術師は他人事のように絶体絶命の女性たちに笑いかける。


「そんな訳ですから、殺しますね。第二優先……」


すると二人のテレポーターは、ふてぶてしい笑みでもってそれに応じた。

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 21:06:08.99 ID:UA9AXkCa0<>

「白井さん、提案があるわ」

「多分わたくしも同じ事を考えてますの、結標さん」

「ほほぉ、何か手があるんですか?」


興味があるのか、『左方のテッラ』が行使しようとした優先権を一時保留した。

『後方』といいこの男といい、溢れる余裕と引き換えに緊張感が欠如し過ぎる嫌いがある。

それが学園都市側にとって珠となるか瓦となるかは、神のみぞ知る事だった。


「ええ、起死回生の策よ」

「とっておきの中のとっておきですの」

「凛々しいですねぇ。惚れ惚れしてしまいますよ、お嬢さん方」


結標と白井が前傾姿勢を見せると、流石に『左方』も口許を引き締めた。

術式の性質上チェスのような読み合いを得意とする魔術師は、

既にこれから起こり得る数十のパターンを構築、その全てで『詰み』に辿りついていた。


「嫌だ、照れちゃうわね」

「それでは行きますので、お覚悟を」


視線がぶつかり合って生まれる火花に熱されて、緊張が高まっていく。

先に待ちきれなくなったのは、能力者と魔術師の狭間の空間を埋める異形の群れだった。

それまでの緩慢な動作が一変、短距離スプリンターと見紛う突進。

白井と結標、二人の空間移動能力者の不敵な笑みは最高潮に達し――――

<> 神の右席編E<>saga<>2011/07/27(水) 21:07:07.31 ID:UA9AXkCa0<>













次の瞬間、身を反転して全力疾走した。





「「逃げるんだよォォォーーーーーーッ!!!!」」





思考能力など皆無のはずのゾンビたちがあんぐりと口を開けて見事な爆走を見送った。

やや遅れて彼らも――彼女も混じっているかもしれないが、ともかく駆け出した。

その背にコミックテイストの汗模様を幻視した『左方のテッラ』が一言。



「………………ですよねぇ」



そうは言うものの、パターンには無い展開らしかった。

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/27(水) 21:08:49.10 ID:UA9AXkCa0<>

続くってネットの書きこみで発見しました!
って言うか、むしろ書きこみました!


盛り上がりに欠ける繋ぎ回となりました
黒子ェ…………ギャグ要員でごめんなさいね

<> kihtrdehl <>saga<>2011/07/27(水) 21:10:45.45 ID:Y9Mb32x90<> 乙!!
今回もおもしろかったよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/27(水) 21:49:57.39 ID:sdoqsu/uo<> >>410
何でコテつけてるの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/27(水) 22:16:14.24 ID:iqHjE+xSo<> おつおつ
根性さんのワッショイワロタ

「後方」はみんな紳士属性でも持ってるのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/29(金) 17:28:14.67 ID:wSC0Mh5AO<> 乙乙

情報源ポケモンにワロタww <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/29(金) 20:30:18.98 ID:OyzbZpPg0<>
どうも>>1です

根性さんが活躍したところで今日は小ネタイム↓ <> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:32:05.86 ID:OyzbZpPg0<>


とある日 午後五時 統括理事会本部ビル



雲川「では、私はお先に上がらせてもらうけど」スッ


職員A「お疲れ様です、雲川理事」


職員B「あれ、いつもよりお早いですね。もしかしてデートとか?」


雲川「いけないなぁ、上司のプライベートを探ろうなんて。脅迫の材料でも掴みたいのか?」フフ


B「め、滅相もございません! 単なる興味本位ですよ」


雲川「よせよせ、こんな女に深く踏み込むと…………戻れなくなるぞ?」


B「……………………」ゴクリ


雲川「ははは。では諸君、また明日」



ツカツカツカ



B「………………ぶはぁっ!」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:33:17.16 ID:OyzbZpPg0<>

A「お前も命知らずだよなー。雲川理事はそりゃあ美人だけどさ」


B「いいじゃんかよ、高嶺の花。フリーなんだろあの人?」


A「男の影がまったくチラつかないからな。まあ、何かしらの手段で揉み消してるのかも」


B「くうーっ! そのデンジャラスな香りがたまらねぇ!」


A「へいへい、一生やってろ。職場に厄介事持ち込まなきゃなんでもいいよ」


B「実はさ、いっぺん帰り際に尾けたことあるんだよ」


A「うわぁ…………マジないわぁ。お前そろそろ死ぬんじゃね?」


B「いやいや、ストーカーとかじゃなくて!
  そもそも途中で捲かれたって言うか、あの人の帰宅ルートわけわかんないんだよ!」


A「はあ? なんだそりゃ」


B「例えばだな…………」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:33:58.14 ID:OyzbZpPg0<>

統括理事会本部ビル前



タクシー運転手「はいよ、どちらまで?」


雲川「このルート通りに行って欲しいんだけど」ピラ


運ちゃん「は? えーっと…………(なんじゃこりゃ)」


雲川「文句でも?」


運ちゃん「いや、お客さんの頼みならやりますよっと。
      …………まずは、第二三学区ですかい」


雲川「悪いが、読み上げないでくれ」


運ちゃん「え? あ、いやすいません。じゃあ出します」


雲川「正確に頼むけど」


運ちゃん「そりゃあ勿論、任せといて下さいよ」



ブロロロロロ


<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:34:54.27 ID:OyzbZpPg0<>

運ちゃん(第二三学区から、ぐるりと…………十個も学区回んのかよ)


運ちゃん「途中で降りたりは」


雲川「ない」


運ちゃん「…………」


雲川「…………」


運ちゃん「は、はは。お客さんあのでっかいビルから出てきましたよね。
      スーツも上等だし、お若いのに結構なお偉いさんだったり?」


雲川「だったら何か」


運ちゃん「やっぱり? でもそんな人なら普通黒塗りで帰りません? 不思議だなぁ、と思って」


雲川「………………運転手、そこ右なんだけど」


運ちゃん「お、おおっと!」





A「ふーん、そりゃわかんねぇわ」


B「ミステリアスだよなぁ。どんな裏の顔があるのか、いつか暴きてぇなー!」
<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:35:34.97 ID:OyzbZpPg0<>


午後八時 ??学区 ????



ツカツカ


雲川「…………ふう」


雲川(開いてる。今日は私が後か)


雲川「………………た、ただいま」ガチャ




??「お帰りいいいいい!!!!」ズギャアアアアン




雲川「」バタン


雲川「…………スーッ、ハーッ」


雲川「ただいま」ガチャ


??「おっかえ」


雲川「やかましいいい!!!!」イソイソ バタン! ガチャガチャ
<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:36:28.34 ID:OyzbZpPg0<>

??「どうした、なんで一回閉めたんだ雲川?」


雲川「そのアブラヨタカも裸足で逃げ出すクソ喧しい声が
   どれだけ防音しようとドアから漏れるからなんだけど!!
   私がどうしてこういう暮らしを送ってるのか忘れたのか削板!!」


削板「忘れた」


雲川「このやり取り何回目だと思ってる!?」


削板「三二回目だな!」


雲川「何故そっちは覚えてるんだあっ!」




雲川「…………私は、人の恨みを買うのが仕事だ。
   学園都市の後ろ暗い部分を一手に引き受けると決めた以上、
   あらゆる弱みは隠しておかなければならないんだけど。そういうわけだから、いいか?
   私がこの『削板軍覇の家』で暮らしている、という事実はなんとしても」


削板「あと、恥ずかしいからだな!」


雲川「何でこの流れでそうなるのか意味不明なんだけど!」アタフタ


削板「お前がくどくどと言い訳始めたらこう言えって親船の婆さんが」


雲川「くうううっ、また統括理事長か!」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:37:34.69 ID:OyzbZpPg0<>
削板「うーん。正直、俺はお前の言い分に未だに納得ができないぞ」


雲川「なんだと?」


削板「俺とこうやって向かい合って、飯食って、
   一緒に寝て、おやすみとおはようを言って。
   そういう生活が、雲川にとっては誰かに知られたくないほどみっともないモノなのか?」


雲川「そういう話じゃないんだけど。
   私が一つ“仕事”をしくじれば、お前や……………………その。
   いつか私たちに、こ、子供が出来た時、その子にまで危険が及ぶかもしれない」


削板「ふーん、やっぱりわかんねえ」


雲川「おい!」


削板「あのなあ、この際だからはっきり言っておくぞ」グイ


雲川「か、顔が近いんだけど…………じゃなくて、なんだ!」





削板「俺はなあ…………………… 強 お お お お お い ! ! ! 」





雲川「は?」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:38:37.64 ID:OyzbZpPg0<>

削板「お前の心配はだな、あれだ、堀越ジローってやつだ!」


雲川「誰だ!? それを言うなら取り越し苦労なんだけど!」


削板「おお、良くわかったな!」


雲川(哀しい経験則なんだけど)


削板「俺はお前がやってる仕事に守られなきゃならない程弱い男じゃあない!
   っていうか逆だ逆! 俺が、お前やマイベビー(仮)を守って守って守り抜く!!
   ………………それを信用してもらえないなら、何処まででも強くなるのみ!!!」


雲川「そ、そんな単純に、簡単にいってたまるか」


削板「無理が通れば道理が引っ込む! 俺の座右の銘だ!」


雲川「……本当に、馬鹿な男なんだけど。こんな厄介な女のどこが良いんだか」グス


削板「ん、そうだな。まず第一に…………」







ギュルルルルルルルル ドッカーン! ギャアアアア メディーック!

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:40:10.58 ID:OyzbZpPg0<>

雲川(…………西部戦線の塹壕内で聞けそうな異音だったんだけど)


削板「おお、腹の虫が大合唱だな!」ハハハ!


雲川「合唱って言うか合掌した方がよさげな音だったんだけど!?
   …………あれお前、夕飯はまだ食べてないのか?」


削板「お前の手料理を一緒に食いたかったからな! 
   それまで筋トレして腹を空かしてた!」


雲川「ん、な………………」パクパク


削板「ああいや、疲れてるなら無理しなくていいんだぞ! 
   男の夜食、カップ麺の買い置きはまだまだ大量に」



ガタッ



雲川「つ、作るんだけど! だからちょっと待ってて、軍覇!」イソイソ


削板「はっはっは、そうかそうか流石の根性だ! 楽しみに待ってるぞ、芹亜!」


雲川「…………当然だ、軍覇の飯を用意するのは私の役目と決まってるんだけど」


削板(軍覇って呼ばれた後じゃないと芹亜って呼べない謎ルール、そろそろ解消してーなー)

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:41:07.50 ID:OyzbZpPg0<>

食事中



削板「そうだ、んぐ、俺が、べねっと、芹亜が良い、めいとりっくす、理由だったな」ガツガツ


雲川「咀嚼音に無理がありすぎなんだけど。で、なに?」


削板「っく、ぶはぁ! 一緒に飯食ってると、最高に美味いからだな!」


雲川「ふ、ふん。結局、原始的な欲求に基づいてるだけなんだけど」プイ


削板「ん? 駄目か、そんな男は嫌いか?」シュン




雲川「……………………きだ」


削板「え? 聞こえんなあ」


雲川(素か、それは…………!)


削板「もっかい、大きな声で言ってくれ。俺を見習って! プリーズワンスモア!」


雲川「あーもう、一回だけだぞ、良く聞け!」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:41:53.46 ID:OyzbZpPg0<>






「軍覇あああ!! だ、大好きだーーーーーーっっ!!!!」







削板「…………」


雲川「はーっ、はあ、な、何か言ってくれないと凄く居た堪れないんだけど」


削板「………………」ダキッ


雲川「ひゃあっ!?」オヒメサマダッコ


削板「良く考えたら、芹亜と食うメシより好きなものがあった」


雲川「そ、それとこれと何の関係があるって」




削板「所謂一つの、『プロレスごっこ』だ!」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:42:55.29 ID:OyzbZpPg0<>

雲川「なななななな、まだお夕飯の途中なんだけど!」


削板「思い立ったが吉日! 俺の座右の銘だ!」


雲川「もう…………まったく何個あるんだか、お前の座右の銘は」


削板「何個だ?」


雲川「私の知ってる限りじゃ、二七二個だな」ハァ


削板「つまり、それで全部だな!」


雲川「軍覇の言う事は八割方理解不能なんだけど」ボソボソ


削板「またまた、解ってるんだろう! お前は頭がトンデモ良いんだからな!
   俺の事で芹亜が知らない事なんてあるのか?」


雲川「…………………………な、ない。絶対に無い。軍覇の全ては私のモノで」


削板「芹亜の髪の毛から爪先まで俺のモノ、だな!」


雲川「どこでそんな艶っぽい言い回しを……いや親船さんだな、こういうのは」ハァ


削板「いや、貝積の爺さんが」


雲川「まさかの伏兵!?」

<> 小ネタ「飛龍乗雲」<>saga<>2011/07/29(金) 20:44:17.91 ID:OyzbZpPg0<>

寝室


ポフン


削板「っしゃ、おっぱじめるか」


雲川「ううぅ」


削板「…………本音を言うとだな、俺もいい加減、
   職場に『愛妻弁当』ってヤツを持ってって自慢したいんだ」


雲川「うっ」グサ


削板「きせいじじつってのを作っちまえば、大手を振ってお前と歩けるんだよな」


雲川「!? あ、ちょ、今日はマズイんだけど」アセアセ


削板「好きだ、芹亜」ボソ


雲川「〜〜〜〜〜〜っ!!!!」


削板「まぁ、そんな訳だから。ここはちょっと根性出して……」







「本気で、やるぞ」



オワリ
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/29(金) 20:45:54.30 ID:OyzbZpPg0<>
Yシャツをはだけさせてベッドに押し倒されて涙目の雲川さんをご想像下さい
もれなくすごパが飛んできます なんてご褒美!

修羅場終了なので投下ペースを少し早めようと思います
ではまた明日 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/29(金) 21:23:06.03 ID:Wea9qndAO<> 甘酸っぺえ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/07/29(金) 21:26:02.17 ID:8JNaFYCC0<> やべー軍覇さんかっこいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/07/29(金) 21:31:26.50 ID:dRUUbiTPo<> 孕ませる気マンマンとかわっふるわっふる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/30(土) 09:22:14.32 ID:HXVhUw7fo<> わっふるわっふるわっふるわっふわhるわhh <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/30(土) 10:39:41.94 ID:7cA87xH8o<> ああっ <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/30(土) 20:05:26.08 ID:pX12BUB10<>
            ヾヽ'::::::::::::::::::::::::::'',    / 時 .あ ま ヽ
             ヾゝ:::::::::::::::::::::::::::::{     |  間 .わ だ  |
             ヽ::r----―‐;:::::|    | じ て    |
             ィ:f_、 、_,..,ヽrリ    .|  ゃ る     |
              L|` "'  ' " ´bノ     |  な よ     |
              ',  、,..   ,イ    ヽ い う    /
             _ト, ‐;:-  / トr-、_   \  な   /
       ,  __. ィイ´ |:|: ヽ-- '.: 〃   `i,r-- 、_  ̄ ̄
      〃/ '" !:!  |:| :、 . .: 〃  i // `   ヽヾ
     / /     |:|  ヾ,、`  ´// ヽ !:!     '、`←>>1
      !      |:| // ヾ==' '  i  i' |:|        ',
     |   ...://   l      / __ ,   |:|::..       |
  とニとヾ_-‐'  ∨ i l  '     l |< 天  ヾ,-、_: : : .ヽ
 と二ヽ`  ヽ、_::{:! l l         ! |' 夂__ -'_,ド ヽ、_}-、_:ヽ


何だか最近レスが混沌としてますね
もっとやってくださいお願いします
でも本番はステイン以外ではやりません(キリッ

では本日分ナギッ↓
<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:07:01.93 ID:pX12BUB10<>
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『神の右席』同士の対峙が続くここ第六学区でも状況は概ね変わらなかった。

違いを挙げるとすれば、二人の『ヴェント』の競り合いにアンデッドが介入してこない点だ。


「んっ、のっ、年増ああっ!!!」

「んで、すってっ、ケバ女ああああっっ!!!!!」



ドギャギャギャギャ、ズガッ、メキメキメキッ!!!




…………いや別に、恐ろしいから割って入れないわけではない。


「………………おっかなぁい」


歓楽街全体を巻き込みつつあるたった二人の災害源を食蜂がそう評した。

トルネード、サイクロン、ダウンバースト、塵旋風。

およそ『風』と分類されるありとあらゆる現象が、

十年前とは違い『虚数学区』の下方修正抜きにフルパワーで荒れ狂っていた。


「お化粧がのってない日のむぎのはだいたいあんな感じだよ」

「やっぱり民間企業は怖いわぁ。学会で派閥争いしてた方がマシね」


異形の獲物にめでたく認定された食蜂と理后は暢気なものである。

『前方』ほどには魔力を身に纏っていないゾンビ共の動きを、

今度こそ妨害されることなく掌握した食蜂はあらゆる手を試した。

ヴェント達への『敵意』の移植は成功したが、『天罰』による酸欠状態など不死者には無意味。

一か所に集めて同士討ちするようにも仕向けるが、謎の黒鎧に邪魔をされた。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:08:38.13 ID:pX12BUB10<>

「私たちってば今日、あんまり役に立ってなくなぁい?」

「一般の人を助けるのも大事な役目だよ」

「登場シーンがクライマックスだったなぁ…………」

「最初だけクライマックス」


結局十体程湧いて出た怪物撃破への決定打は得られず、

絶えずその異常な精神状態に干渉して木偶の坊を生産するので精一杯であった。

その一方で『天罰術式』の被害者を戦闘開始以降一人も

出していないだろう事を考慮すれば、彼女らの功績は決して小さくはないのだが。



ブオオオオオオンッ!!!



「甘い、のよ! 風遣いが荒いッ!!」


こうせき
美味しい所を掻っ攫っていった女は、無傷で『前方のヴェント』を追い詰めつつあった。

舌のピアスで変幻自在の擬態を見せる『前方』の風を、常に最適な術式で迎え撃つ。

魔術を知らぬ能力者たちからすれば了知は不可能だろうが、

それは拳銃の弾丸を弾丸で、しかもあからさまな後出しで撃ち落とすが如き神業だった。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:10:07.55 ID:pX12BUB10<>

「なん、でっ?」

「次の行動が読まれてるのか、ですって? 自分で、考え、なさいよ!」


ヴェントは現在、『前方』と同じ椅子に座って性質を得ているのだ。

すぐ隣に腰かけている相手の風向きを読むなど、彼女ほどの術者であれば朝飯前であった。


(フィアンマには悪いけど、ラッキーな相手に当たったわね)


『前方のヴェント』は魔術師として少なくとも自分より下だ。

ヴェントがそう確信できるのは、再現版の儀式で掠め取ったに過ぎない自らの

『天罰術式』が敵のそれと相殺しあっている、という根拠がある為だった。

本来ならば先に坐していた方が有利なはずの椅子取りゲームを彼女が制しているのは、

『フィアンマ』達の奪い合いと違って『ヴェント』達の間に明確な実力差がある証拠だ。

遠からず、この対決はヴェントが制する。

それは一観衆に身をやつした二人の超能力者の目にも明らかだった。




「くうっ………………!!」

「降参するなら命だけは、ってね。常套の文句だけどウソは吐かないわよ」


遂に『前方のヴェント』が、身を切り裂く無数の裂傷に堪えかねて膝をついた。

ゆっくりと歩み寄って大槌をその首筋に突きつけたヴェントが降伏勧告を行うが、


「…………地獄に堕ちろ」


見上げた面から放たれたのは、受諾宣言ではなく呪いの言葉と唾だった。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:11:44.95 ID:pX12BUB10<>

「ああまったくもう。じゃあ、痛い目見なさ、…………?」


処置なし、と言わんばかりに頬を拭ったヴェントの視界の隅で青白い火花が散る。

店中に張り巡らされた電線がショートしたのか、と彼女が認識した瞬間、黒い影。


――■■■■■■■!――


吐き気を催す風貌を持つ例のモンスターが、何かに向けて一直線に突進していた。

食蜂が動きを封じている連中の方向からやって来たものではない。

それは即ち、『心理掌握』の軍門に未だ下っていない兵隊である証明だった。



「…………え?」



瓦礫の隙間に埋もれて、意識の無い少年の姿をヴェントは見つけてしまった。

魂なき兵隊はその命を奪う使命を帯びていたが、少年は迫りくる死にも目を覚まさない。



――――死んだ弟も、あのくらいの年頃だった。



無意識に過去を重ねてしまった、その矢先。


「んっ、ああああああっ!?」


ヴェントの肉体が、唐突に宙を舞った。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:13:10.66 ID:pX12BUB10<>



ようやく決着がついたのか、と緊張を微かに解いたのは

二十メートルほど離れた位置で不死者の群れを監視していた食蜂だった。

だが終曲にはいま少し早く、魔術師たちを挟んだ更に先に新たな亡者の影が。


「あらぁ? …………いけない!」


突然意識を敵対者から逸らしたヴェントを見て、食蜂が事態を察した。

コントロール下に置き損ねた守るべき命と打倒すべき敵が一組。

失態を自責する暇も惜しく即座に能力を発動しようとしたが、



ブオンッ!!



「えっ、ちょ」


直撃コースで吹っ飛ばされてきた黄色い女に、慌てて身を捩るも時すでに遅し。

咄嗟に痛覚を遮断して小柄な身体を受け止めるが、

人一人を飛ばす強烈な運動エネルギーを御しきるなど食蜂に出来るはずもなかった。



ドンッ!!




<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:14:09.02 ID:pX12BUB10<>

「っ、あの子は!」

「くそ、しまった!」


壁に強かに叩きつけられてやっとのことで止まった二人は、

揺れる視界で彼方の惨劇を防ぐべく早急に行動を開始した。

油断を突かれて浅くはない傷を負ったヴェントが、風圧の後押しを受けて走り出す。

『心理掌握』もこの場の全異形の制圧権を再度確保しようと、演算機を回転させた。


「って、あれ? こんちくしょう!」


その時、地面を強く蹴って疾走していた女魔術師が呆気にとられた。


――■■■■■■■■■■■■■■■!!!――


少年に肉薄していたはずの人形は、既にその矛先を変えていた。

哀れにも生贄とされるはずだった少年は、勿論のこと無事であった。


「まだ私は負けてないわよ!」


しぶとく横槍を入れてきた『前方』に応戦するべく一旦静止。

同型の槌がガン! と鈍い音を立てて交差し、一瞬遅れて旋風が逆巻く。


「痛っ、まだやられ足りないってのかしら!?」


損害状況を脳に教えようと悲鳴を上げる全身を無視して、

ヴェントは殺意と風刃の渦巻く決闘に再び挑んだ。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:15:45.87 ID:pX12BUB10<>





「…………あら? 私、間に合ったのかしらぁ?」


己に一直線、ロケットの如く突っ込んできたクリーチャーを

さっくり下僕にして跪かせた女王は釈然としない表情だった。

先ほどの『心理掌握』の発動は宙を舞ったヴェントを避けるために

意識を割かれて一瞬間に合わず、現在土下座中のしもべには届かなかった筈だ。


「違うよ、しょくほう。私がやったの」

「ひゃあ!? ちょっと、わざとやってな…………あ、その子」


彼女の疑問に答えたのは、すっかり存在感が薄まっていた浜面理后だった。

口元に手を運んで解を得るべく頭脳を働かせていた食蜂の耳元で、こっそりとウィスパーボイス。

どう考えても確信犯だろう。

涙目を生温かく見やってくる理后に憤慨したが、

その背には食蜂が存在を失念していた少年が負ぶわれていた為強く出られない。

逃げ口を塞がれた怒りが噴出する寸前、


「……待って、浜面さんが『やった』って事はもしかして」


第五位はその言葉の意味するところを瞬時に理解した。

我が意を得たと頷く理后が携帯電話をジャージの脇から取り出す。


「そう。このゾンビたちの探知目標は――――」

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:16:43.02 ID:pX12BUB10<>
------------------------------------------------------



少し時を遡って、第十学区。



この世の暗がりを全て飲み込んだような呪詛が終わったと同時に、

ステイルが燃え盛る剣を倒れ伏す『右方のフィアンマ』に炸裂させようとした。


「くっ!?」


が、届かない。

赤熱する炎の鞭を防いだのは、足元からホラー映画のワンシーンのように這い出た異形だった。

路地裏で仕留めた筈のアンデッドが爆発の衝撃で吹き飛ぶが、

それ以上にステイルを驚愕させたのは彼の張る探知網の反応だった。

学園都市全域をとり囲む『陣地』の内部に、たった今掃除したものと同じ魔力が次々と現れる。

異常なのは、その数であった。


(バカな! 二百、三百、まだ増える…………!?)


不安げに黒衣の神父を見守っていたインデックスも、同様に焦燥していた。


「じゅ、術式が解析しきれないよ!?」


『禁書目録』の叫びは換言すれば、眼前の現象が全くの未知の魔術である事を表していた。

滅多に遭遇しない窮地にある彼女の焦りを鎮めようと、フィアンマが声をかけた。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:19:02.75 ID:pX12BUB10<>

「バチカンの、結界のようなものか?」

「違う、単純に構成が複雑で、膨大すぎるの。こんなの一時間あっても読み切れない!」


ローマ正教の本拠地バチカンの魔術防衛網は、

多種多様の術式が複雑に絡み合って常時変化し続けると言う侵入者泣かせの代物である。

今回の事象はそれとは違い、単純に理論の構成パターンのみで彼女の解析処理を遅らせていた。

あえて類似したケースを挙げるとするなら、アウレオルスの『黄金錬成』が近かった。


「ど、どんどん増えてくよ!」


佐天の悲鳴に頭を抱えていたインデックスが周囲を見回す。

一つ、また一つと赤紫色の紋様が大地に刻まれ、怪異が湧き出てきた。

数は五十に達し、そのどれもが形成を逆転された彼らを睨んでいた。

立ち塞がる腐肉の壁に遮られ、術者である『右方』の姿は完全に隠れてしまった。


「クソッ!!」


強く歯噛みしながらステイルも後退して彼女らと合流した。

最初になぎ払った一体も例の鎧にダメージを逃がされたのか既に立ち上がっている。


「『魔女狩りの王』でなくては仕留められないか……しかし、この数は!」

「ここにいるので全部じゃないの!?」

「この街で学生がいるだろう、全ての学区に出没している」

「…………!!」

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:21:12.29 ID:pX12BUB10<>

佐天が街全体でこれから吹き荒れる悲劇を予見して、息を呑んだ。

しかし瞼を下ろしたステイルの検索結果は、更なる危機を告げていた。


「ようやく増加が止まった。…………総計、六六六体だ」

「ろっ…………!?」


インデックスもまた、喉から出かけた慄きを抑えて必死に対抗策を探った。

『魔女狩りの王』で一体一体駆逐していたのでは時間が掛かり過ぎる。

その前に現状で限界の近いステイルの魔力が枯渇するのは目に見えていた。

『右方』の特性、『第三の腕』であれば一掃は可能だろうが、それは――――



重苦しい沈黙が場を包む。

その時、フィアンマがよろめきながら起き上がった。


「お前達は逃げていろ。順番から言って、奴はまず俺様を殺しにかかるはずだ」

「待ってフィアンマ! その身体じゃ無理だよ!」

「最後の激突で『第三の腕』が崩れたように僕には見えたがね。死にに行く気か?」


ステイルとインデックスが、異口同音に彼の無謀を制止した。

二人の洞察通り、フィアンマの『聖なる右』は既に崩壊している。

それでも、己の血で着衣をさらに紅く濡らした男の執念は深かった。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:22:42.03 ID:pX12BUB10<>

「俺様は、いや『右方のフィアンマ』もそうだろうがな、
 『知恵の実』を僅かに残しているのだ。
 つまり、ある程度の通常魔術なら行使可能だ」

「“ある程度”か、それはさぞかし大層な魔術なんだろうな?
 …………そんなモノで『神の右席』に勝てるのなら苦労はしない」


ステイルの冷静な判断も、


「問答の暇はない。俺様が『右方のフィアンマ』を殺せば」

「この術式が停止する、そんな保証は無いよ」


インデックスの理に適った反論も、


「…………お前達の御高説は、尤もだよ。だがな、これは“俺”の業だ」


フィアンマを止める事は出来ない。

彼の肉体を凌駕する信念を断ち切るには、明確な『力』が必要だった。


「どうやら、時間だな」



――■■■■■■■■■■■■■!!!――

      ――■■■■■■■■■■■!!!――

            ――■■■■■■■■■■■■■■■!!!――



そして、血肉を求めた『暴力』が遂にその進軍を開始した。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:23:34.79 ID:pX12BUB10<>

「最大主教!」

「るいこ、まこと、こっち!」


ステイルが短く吠えた。

意を汲み取ったインデックスが真理を抱く佐天の手を引く。

哮び狂う怪異の荒波に正対して、男たちが防波堤となって立ちはだかった。

ステイルがルーンを眼前に構え、フィアンマは死に体で不敵に笑った。




(――――なんだ、これは)


だがその時、修羅場を幾度となく踏んだステイルの直感が囁いた。


(『熱』が無い。感情が有るとか無いとかそういう問題じゃない。
 この木偶ども、僕らに『向いて』いない…………まさか!)


耳奥で聞こえた声は、正鵠を射ていた。



――■■■■■■■■■■■■■■■!!!――



「こいつら……!?」


フィアンマも感付き、小さく呻く。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:24:25.86 ID:pX12BUB10<>




全ての怪物が、彼らを素通りして背後のインデックス達を狙っていた。





「――――――――っっ!!!」


魔力の消費など露ほども考慮に入れず魔術師が渾身の爆炎を巻き起こす。

敵の八割はそれで足止めされるが、残りの二割はそのまま駆け抜けていった。

フィアンマも分厚い獄炎の壁を形成して迎え撃ったが、結果は大差ない。


「行かせるかァ!!!」


前方で持ち直した敵の事など頭から吹き飛んだステイルが、

壁を潜り抜けた波の後を追って地を蹴った。

見れば、先頭を行く人形は今にも彼の守護すべき光に手を伸ばさんとしている。




「――――――ァァァッッ!!!!!」




<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:25:47.11 ID:pX12BUB10<>
-----------------------------


背中で想い人の悲痛な叫びを受け止めたインデックスは、

迫る悪意の気流を十年前の逃亡生活で垣間見た『死線』の記録から分析していた。

におい、温度、呼吸、足音、呻き、そして魔力。

天地に飛散しては消えゆくエントロピーを丁寧に手繰り寄せて導いた結論。



敵の狙いは、『無能力者』佐天涙子であった。



「るいこ、行って! 私は大丈夫!!」


決意した聖女が温かい手のひらを離して、身を軽やかに翻した。

そんな、とつられて立ち止まってしまった佐天の肩を、力いっぱい突き飛ばす。

身を挺して二人の盾となったインデックスの視線が、束の間ステイルと重なった。



――心配しないで、ステイル。私には『歩く教会』があるんだよ?


――そんな事は、わかっている! それでもッ!!



交差する、思いと想い。

女の眼に宿る灯火は亡びることなく燃え続け、男にその覚悟の固さを報せる。

怪物は、佐天と真理を守るべく両腕を広げて待つインデックスへ殺到し――――

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:27:38.97 ID:pX12BUB10<>



「……………………え?」




――――襲いかかりは、しなかった。

なんと彼女たちさえ通り越して、更に先へ先へ。

唖然としながら神父とシスターは、

確かに異形の軍隊の『向き』が別のなにがしかに遷った事実を感知していた。

その間にも濁流は第一〇学区の街並みを洗い流して進み続ける。


「あ、あれ…………!」


インデックスが五十メートル程の彼方に人影を発見した。

行軍の最終目標は、人気などある筈ない大通りを、何故か独り歩いていた女性だった。

死神に追い越されて初めて命拾いした事を悟った佐天も、その存在に気が付く。



――■■■■■■■■■■■■■■■!!!――



「逃げてぇぇっ!!」


彼女の必死の叫びも虚しく、瞬く間に女は蟻に群がられた餌のように姿を消す。

インデックスが顔色を失い、膝を地に落としそうになってステイルに抱きとめられた。

惨劇に顔を覆った二人の女性が、己が無力を嘆いた。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:28:40.43 ID:pX12BUB10<>





カッ!!!






――■■■■■■■■■■■■■■■■■!!??――



その時、閃光。


「おい神父、インデックス」


醜悪な肉塊が集うその中心から、激しい閃光が無数に拡散した。

 ・ ・ ・ ・
「どいつだ?」


一体残らず滑稽な仰向け姿にされたアンデッドが、次々に聳立して唸る。

女はそれを一顧だにせず、地獄の釜を煮る魔女のような声を漏らした。


「絹旗をやったのはどいつなんだ?」


学習能力もなく突貫をかけた敵が、造作も無く光の奔流に飲み込まれた。

ようやく魔術師たちの視界に捉えられた片眼のみの妖しい赤光は、

目に入る万象を破壊し尽くさねば収まらない狂気を帯びていた。

<> 神の右席編F<>saga<>2011/07/30(土) 20:31:29.40 ID:pX12BUB10<>






そして、激昂そのままに開け放たれた口腔から、美しい顔立ちに似合わぬ蛮声が爆発した。






「私にこれからブチコロされるのは、どこの腐れトマトかって聞いてんだよぉぉぉぉ!!!」







                        メルトダウナー
――――新たな局面を迎えた戦場に、『原 子 崩 し』麦野沈利が参着した。











<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/07/30(土) 20:33:18.93 ID:pX12BUB10<>
>>1に続きを書かせる能力かぁ……


マクシムスIN神王の塔、と言ってわかる方はどれほどいらっしゃるでしょうか
残る援軍はあと二人の予定です

今回の>>1的メインディッシュはヘタレ食蜂さんでした
決めるシーンではちゃんと決めてもらいますけどね
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/07/30(土) 20:37:05.01 ID:85bSebIq0<> 乙乙むぎのんキター
>>452
ロマサガ3なつい
はぐれた仲間が戦闘中にどんどん合流するあれか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/30(土) 22:06:07.00 ID:xle/7N920<> 乙〜
麦のんキター!

ところで・・・

でも本番はステイン以外ではやりません(キリッ

ってことはステインでの本番はあるってことかね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/31(日) 07:27:01.22 ID:UFSsUzvAO<> >>1に乙を言う能力かぁ……乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/31(日) 09:05:52.06 ID:GQZSE+r7o<> 乙!
新王の塔とか懐かしいなw

あのシステムの所為で補欠の6人目(大体ハーマン)が出しゃばった挙げ句二番目に居座ったのは良い思い出 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2011/07/31(日) 10:31:11.92 ID:+qJGevxY0<> >>1乙〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/07/31(日) 11:47:19.55 ID:GMKXo2lAO<> 乙 <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/01(月) 20:31:00.77 ID:DDT05GK20<> 真ビューネイ様ハァハァ……どうも>>1です

>>454
やるとは言ってな(ry
まあどう転ぶにせよまだまだ先の話です

他の皆様もレスありがちょうございました
では行きますわん↓
<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:32:02.80 ID:DDT05GK20<>

陽光が人類憎しとばかりにぎらつく学園都市第一〇学区。

しかし荒れ狂う麦野沈利の憎悪の対象は手の届かない太陽などではなく、


――■■■■■■!――


「笑わせんな出来そこないどもぉ!!!
 金玉どっかに落としてきたんじゃねえだろうなァ!!!!!」


先刻から幾度となく地べたを舐めさせられている肉塊どもだ。

彼女は辺り一面を覆う腐肉の海の猛攻を、一手に引き受けている真っ最中だった。


「うぜえうぜえうぜえうぜえうぜえうぜえ!!
 とっととママの腹ん中でも帰れよビチグソがァッ!!!」


いや正確には、一方的に群がられている、というのが正しい。

三人の魔術師にも、佐天にも真理にも反応する事なく、

意思なき兵隊はただ只管に『原子崩し』に飛びかかっては返り討ちに遭う、

そのワンシーンを焼き直しし続けていた。


「自動制御…………! それしか考えられない!
 きっと世界中の魔術体系から、優れた部分だけを抜き出して組み合わせてるんだよ」

「それなら納得だな。いかに奴が秀でた魔術師だろうと
 六百を超える傀儡を、あの性能で手繰る事など不可能だ」


魔術世界の誇る『禁書目録』が現況から最適解を導き出した。

ローマ正教最高の魔術師、フィアンマも同意見のようだ。

自然、彼らの視線は混乱の中で意識を外してしまった術者に注がれた。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:33:38.09 ID:DDT05GK20<>

「フン、尻尾を巻いたか。おい、ステイル=マグヌス」


『右方』が伏していた地点には煤と少量の赤黒い固形が残るのみ。

其処を苦い顔で睨みつけたフィアンマがステイルの名を呼んだ。

『右席』の座へのリンクを切断された今の彼では、術者が何処に逃亡したのかはもはや知れなかった。


「聞いているのか、ステイル=マグヌス?」

「ステイル?」

「大丈夫? …………どこか怪我したの!?」


ところがその神父はと言えば、俯いていて呼びかけに応じようとしない。

怪訝顔の佐天も続けて名前を口にし、

負傷したのかと憂慮したインデックスが駆け寄った。




ガシッ!


「ひゃい!?」




するとその肩が、痛いほどの力で正面から鷲掴みにされた。


「最大主教…………っ!」

「す、すている…………?」

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:34:58.57 ID:DDT05GK20<>

彼女の額に触れんばかりの位置に、護衛の魔術師の真摯な表情がある。

インデックスの頬が紅潮し、目が左右に泳いだ。

余談だがフィアンマと佐天、ついでに真理は男が動き始めた瞬間から空気に徹していた。


「心臓が、止まるかと、思った」

「だ、だから大袈裟なんだよ? あんなの『歩く教会』なら」


理屈の上ではそうなる。

理はインデックスの側にある、それはステイルにも解っていた。

彼女を一年間追いまわして傷つけた男に、その勇気を咎める資格が無い事も。

必然的に、彼は胸の裡から溢れる感情に身を任せて口を動かすしかない。


「恐ろしくは、なかったのか?」

「怖くないわけないよ。でも、あの時はあれが正解だったって、私は信じてる」

「…………君も大概、頑固者だな」


勝てない。

優しくしなやかな彼女の決断を、自分が謗る事など不可能だ。

ステイルは悟り、全身で、そして心で項垂れた。


「……………………それなら、すている」

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:36:48.55 ID:DDT05GK20<>

慈しむ、聖女の音声。

神父が欲しいのは、そんなものではなかった。


「なんだい」


それでも、聞き返す。

ステイルは彼女の声になら、いつまででも耳を打たれていたかった。


「ぎゅって、して。私を離さないで、すている?」

「っ…………」


男がなぜか、小刻みに震える自らの手掌を虚ろな目で、しかし凝視した。

女はその挙動を、もの言いたげに見据える。

やがて男の腕がゆっくり、ゆっくりと愛しい女性を抱こうと












「い・ちゃ・つ・い・て・ん・じゃ・ねえええええ!!!!」








<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:38:27.46 ID:DDT05GK20<>

カカッ、という擬音と共に、男女が勢いよくバックステップして身を離した。

隣接するホールで静かなラブ・ストーリーが三人の観客に上映される中、

ただ一人バイオレンスアクションに興じていた麦野の堪忍袋の尾がとうとう切れたのだ。

KYと責めるなかれ、現在■■歳独身の彼女にしては大変辛抱したと、

麦野沈利という女を良く知る『アイテム』の面々なら高評価する筈だ。


「おいおい、もう少しだったというのに」

「えーっと、麦野さんでしたっけ? 後十秒で良いから黙っててくれません?」

「しずりん、けーわい!」

「オーケイ、コイツら始末したらアンタらの番だかんなコラァ!!!」


しかし当然、初対面のフィアンマや名を知っている程度の佐天は白い目である。

現状で最大の功労者は口から泡を飛ばして不遇を嘆き、もとい喚いた。


「始末、なぁ? 一向にその兆候は見えないがな」

「忌々しい『Equ.DarkMatter』のせいだッ!!!
 まさか第二位が絡んでるんじゃねえだろうなあ!?」

「ご、ゴホンッ!! …………やはりあの鎧は『未元物質』なのか?」


我に返ったステイルが咳払いをして会話に加わる。

路地裏で燻る黒塊を見た時から、彼の胸には確信に近い疑念があった。

片手間で五十に達するアンデッドを圧倒する制圧力を存分に見せつけながら、

頭に上った血が多少は引いたらしい麦野が受け答える。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:41:07.16 ID:DDT05GK20<>

カアッ!!!


          ――■■■■■■■■■■■■!!!!――


――■■■■――


                    ――■■■■■■!?――



「…………超能力の物質への付与ってやつよ。
 私が昔遭遇したのとは外見も性能もかなり違うけど、な!!」


開放された『原子崩し』がまたも『Equ.DarkMatter』に叩きつけられた。

よく観察すれば、電子を強制操作して生み出される粒機波形高速砲を、

黒い鎧からのうっすら発生している膜が受け流しているのが確認できた。


「科学と魔術の融合か、下らん」


侮蔑の念を隠さず、フィアンマが吐き捨てた。

それにつけても恐るべきは、

怒れる『原子崩し』の直撃を受け続けて尚活動を続行できるその防御性能とタフネスである。

第四位が致命傷を与えられないとなれば、現状学園都市に不死軍を打倒する術は無い。


「ちょっと待って、そう言えば」


発言したのは、自らの場違いに少々縮こまっていた佐天涙子であった。

彼女に抱えられる真理は、激動の都市の行く末など気にせず健やかに眠っている。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:43:30.15 ID:DDT05GK20<>

(彼女と真理もいい加減、安全な場所に逃がさなければな)


ステイルは思案するが、この敵の攻撃目標がハッキリしないうちは危険だ。

それならば、この場に留まった方が幾らかマシな可能性さえあった。

すると佐天は魔術師たちに、思いもよらぬヒントを齎した。


「さっき聞こえたアレ、『詠唱』、でいいのかな? 
 あの中に、プログラミング言語が混ざってた気がするんだよね」

「プロ…………るいこ、詳しく聞かせて!」


聞きなれぬ単語に飛び付いたのは、

先ほどの詠唱を完全に解析する事のかなわなかったインデックスだった。

自らの図書館に蓄えられていない知識の存在は、

こんな時に不謹慎ではあるが彼女のプライドを擽っていた。

何より、この未知の魔術を攻略する糸口になるかもしれない。


「い、いや、そんな期待しないでね? 
 私はそういうのに詳しい友達からちらーっと聞いただけだし」

「それでもいいよ! ほら早く!」


インデックスの気迫に押されて、佐天が自信なさげに説明を始めようとする。

それを慌ててステイルが遮った。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:44:34.12 ID:DDT05GK20<>

「ダメだ、忘れたのか最大主教!
 能力開発に準ずる行為を受ければ、魔術の行使にリスクが出るかもしれない!」

「…………私は、魔術なんて使えないよ」

「っ!! 僕や、フィアンマの話をしているんだ!」


ほんの五分前までの甘い空気はどこへやら、男女は諍いを起こしてしまった。

特にステイルの剣幕はフィアンマや佐天から見ても少々不自然なほどである。

おそるおそる、能力開発の経験者が二人の間に入った。


「あのー…………」

「なに?」

「なんだ!?」


同時に、その首が闖入者に向けて勢いよく振られた。

こんな時まで相も変わらず息ぴったりな二人である。

はは、と苦笑した佐天がステイルの杞憂について言及した。


「えーっと、プログラミング言語はコンピュータの用語なの。
 能力開発とは全然、一切関係ないからね? (…………多分)」

「え」

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:45:52.72 ID:DDT05GK20<>

色をなして喧々諤々だった男の動作が凍った。

専門的にはフリーズと言う。

カクカク、と再起動したステイルの表情はばつの悪さで赤くなっていた。

専門的にはオーバーヒートと


「やかましい!!」





たどたどしい佐天の解説を、砂が水を吸うように取り込むインデックス。

横で膝を抱えるステイルの肩を、ニヤニヤしながらフィアンマがポン、と叩いた。

忘れそうになるが、麦野沈利はいまだバヒュンバヒュンと光線を撒き散らして交戦中である。


「C言語、アセンブリ言語、インタプリタ言語…………」

「人間が喋ってるのなんて初めて聞いたから、いまいち自信ないけど」

「十分だよ、るいこ。ありがとね」


佐天が最後までまごつきながら締めくくる。

些少だが理論の構築を前進させたインデックスが、一定の結論に至った。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:46:50.43 ID:DDT05GK20<>

「科学的記号を取り入れた魔術……前代未聞かも、そんなの」

「確かに。だがそれなら、一つ仮説が立てられるね」


自分で言っておいて不可解そうな彼女だが、復活したステイルが補足する。

愚直に超能力者へ突撃を繰り返すのみの怪異に対する仮定だ。

魔術師よりも佐天を、佐天よりも麦野を優先して追跡しているという事は。


「こいつらの探知目標は――――」



prrrrr!!



全員の視線が一点に集中する。

電子音の発生源は、ステイルの懐だった。

話の腰を折られたが、管制官の役割もこなす神父は無論応答せざるをえない。


「もしもし。…………そうか、了解した」


短い通信を終えたステイルに、インデックスが視線で問うた。

頷きが返る。



「ミセス浜面が確認した。奴らは、『AIM拡散力場』を自動的に追撃している」


<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:48:11.35 ID:DDT05GK20<>
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第二学区のビル陰で、二つのキンキン声が木霊する。


「結標さん? あの見るに堪えないお人形さん達、
 どちらかというとあなたを追ってらっしゃるようにわたくしには映るのですが」

「気のせいじゃない? 仮にそうだとしたら、私の美貌も罪よね」

「御同類だと思われて親近感溢れるスキンシップを求められているのではありませんことぉ?」

「私の身内にあんな可愛げのないショ…………子はいないわよ」

「ショ? その先なんと? ほら今なんと仰られようとしたんですの?」

「さらさらショートヘアーが私のタイプだってだけの話よ?」

「んまー度し難い! これだからショタコンは」

「だだだだ誰がショタコンやねん!!! 口を慎みなさいよこのレズビアン!」

「己の嗜好を公言できずに何が特殊性癖か! ですの!」

「無い胸自慢げに張ってんじゃないわよ!」

「ちょっと屋上来いやワレ」


『左方のテッラ』と対峙していた時から好調ではあったが、

『光の処刑』の射程範囲から外れて益々緊張感を失ったが故の醜い争いであった。

ただし此度は、幸か不幸か仲裁役が到来していた。


「ヒャッハァー! なってて良かったレベル0!
 いや好きでなった訳じゃないけどってアレェェェェ!?
 どこ行っちゃったのお二人さん!? 俺を置いてかないでカムバーーーーック!!」

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:49:55.59 ID:DDT05GK20<>

表通りからの情けないSOSが、低レベルにいがみ合っていた女たちの耳に届く。

直後にビルとビルの隙間の空間に、金髪のチンピラが駆け込んできた。

すぐ後ろには件の人形がダース単位で連なっている。


――■■■■■■■■■■■■!!!!――


「いやんなっちゃうわね」

「それ俺の台詞ううう!!」


能力の封印が解けた今なら、応戦は存分に出来る。

しかし彼女らの真のターゲットはあのニヤケ面の魔術師ただ一人である。

無駄な体力の消耗を避けたい二人の空間移動能力者は、

男を伴って林立するビルの屋上までヒュン、と跳躍した。


ドサリ。


「んぎゃっ!」


音とくぐもった悲鳴を立てて投げ出されたのはチンピラ一人で、能力者二人は華麗に地を踏んだ。

白井がビルの縁から下界を覗き込むと、遠く二十メートルは離れた異形と一斉に目が合う。

生きた心地のしないままに顔を引っ込めた。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:52:48.77 ID:DDT05GK20<>

「……本当にレベルの強い能力者に引き寄せられて来るんですのね」

「確かめる為に俺を置き去りにした訳ですか!?」

「この目でしかと裏付け取らなきゃなきゃ気の済まない性分なのよ」

「この一大ニュースを届けてやったの俺よ!? 
 ちくしょうだから理后の方に行きたかったのに!」


統括理事会からの指令を不本意だと嘆くチンピラ風の男――――浜面仕上。

不死者から逃げ回る彼女たちの前に現れて、妻が暴いたカラクリを伝えたのは彼であった。

理不尽な女どもの言い草に浜面はガァンガァンガァン! と右の義手を思い切り

強固なコンクリートに叩きつけて、金属音を鳴らしながら人権侵害を訴える。

視線はあくまで『左方のテッラ』の現在地と思われる方角に固定して、

その座標を逃走距離から概算しつつ、結標は無慈悲にも男の訴訟請求を無視した。


「理事会……っていうか雲川さんに文句を言いたいのは私だって一緒よ。
 『光の処刑』とやらの性能が事前情報と食い違ってるじゃないの!」


正しくは結標の元同僚、土御門から提供された情報ではあるのだが。

さておき『左方』によって振るわれる『光の処刑』の猛威が、

十年前に土御門の味わったそれと異なっているのは事実だった。


「モノとモノの間の優先順位を変えられる魔術なんだってな?」


うってかわって真面目顔になった浜面が頭を切り替えて、唸りながら質問する。

憤りを誰でもいいからとにかくぶちまけたい結標が即座に噛みついた。


「聞くところでは『優先』は一個のはずなのよ?
 だってのにあのムカつくニヤケ面、『第三優先』まで晒してきて。
 …………でも、おかげで一つ掴めたかもしれないわね」

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:54:59.50 ID:DDT05GK20<>

首を捻った浜面が口を開こうとすると、もう一人の女が割り込んだ。


「『事前情報』だの『理事会』だの、
  何やらわたくしの存ぜぬ所で色々動きがあるようですが」


どうやら全てを承知の上でこの紛争に臨んでいるらしい二人に

不満げな声を横から挟み込んだのは、純粋に正義感から魔術師に挑んだ白井黒子である。

会話から無意識に彼女を締め出していた事に気が付いた浜面が苦笑した。


「ああ悪いな、嬢ちゃん。今は詳しい事情は省かせてくれや。
 ここまで首突っ込んじまった以上何かしら説明があるとは思うけどな」

「じょ、嬢ちゃん…………!? ま、まあいいでしょう。
 わたくしが体感したのもまさにあなたが先ほど仰ったそれですの」


三次元と十一次元。

革とコンクリート。

コンクリートと手榴弾。

そしてなにより白井と結標が逃げ出す直前の――――


「っと、もうちょっと詳しい話を聞かせてくれ。奴の戦闘ぶりについてだ」


滔々と流れる二人のストーリーテーリングを、一段と表情を引き締めた浜面が制止した。

ズブの素人――いや、そこらのスキルアウトだろうと出来る顔つきではない。

白井は自らの凶悪犯との対峙経験からそう感得した。

そして彼女には知る由もないが、

“これ”こそ浜面仕上が統括理事会に戦力として数えられる所以であった。

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:57:16.54 ID:DDT05GK20<>

「…………私はそういうチームプレーは苦手だわ。白井さん、お願い」

「え!?」

「あなたの方が先に交戦してたでしょ? だったらあなたが説明すべきよ。
 私はあのエリマキトカゲの位置を見張るわ」


どこからともなく――などという文句はアポート能力者には失笑モノだが――

双眼鏡を取り出した結標が首を振って白井にバトンを渡した。

そのまま彼女は、返事も聞かずに『左方のテッラ』が居るであろう座標を監視する。

結標が戦闘中に収集したデータでは『光の処刑』の有効範囲は三二・二メートル。

彼らの目的から考えればそうそう市民を手にかけるとも思えないが、

万が一の為につかず離れずの距離を保つ事が肝要だった。


「は、はあ。まあ、そうですわね。
 では、わたくしの記憶の限りをお話すればよろしいんですの?」

「ああ、どんな些細な事でも頼むぜ」

「ただし手短にね。この場所もいずれゾンビさん達が殺到するわよ」


結標の注釈に二人して顔を顰める。

そもそもあの連中との邂逅は精神衛生上よろしくなかった。


「…………一度、場所を変えましょうか」

「だな」

<> 神の右席編G<>saga<>2011/08/01(月) 20:59:40.07 ID:DDT05GK20<>

そして僅かに五分ののち。



「これで、イケる筈だ」

「……しかし、その仮説が間違っていたら?」

「三人仲良く御陀仏、ってとこかしらね」



偶然も奇跡も望まず、ただただ残酷に現実だけを見据えて。



「まあ安心してろ、超能力者サマに大能力者サマよ」




                     イレギュラー
『左方のテッラ』攻略のプランが、『無能力者』の手で組み上げられた。





「底辺のそのまた底床を舐め尽くした負け犬の意地、見せてやるよ」

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/01(月) 21:00:44.47 ID:DDT05GK20<>
つ づ き の せ い だ


HAMADURA△なるか?
その辺はどうかお察し下さい

あと最低一回はこの切羽詰まった状況下でステインをいちゃつかせる予定です
ではまた明日
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 21:05:06.70 ID:96iC91L+0<> HAMADURAかっこよす。
戦闘経験だけなら異常なレベルですもんねぇ。
プログラミング言語の魔術ときいて、デモンベインでネクロノミコン機械語版なんてのがちょろっと出てたのを思い出した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/08/01(月) 21:29:21.73 ID:BvJuDVDDo<> てす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 22:25:46.09 ID:hBODHfDK0<> 乙でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/08/02(火) 00:31:05.17 ID:x4VHH62AO<> 乙 <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/02(火) 21:12:23.01 ID:7j680ZQF0<> どうも>>1ですよ皆さん

>>477
「科学的記号を取り入れた魔術……前代未聞かも、そんなの」
この辺りを書いてる時原作と食い違ってないかビクビクしてました
面白い情報をありがとうございます

他の方も毎度おおきに
では今日も行きます↓ <> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:14:02.02 ID:7j680ZQF0<>
---------------------------------------------------------


「もういいだろう。今度こそ、俺様は奴を仕留めに行くぞ」


亡者の怨嗟が学園都市で最も色濃く蔓延る第一〇学区。

自らに最低限の治療魔術を施したフィアンマが一人、神父の探り当てた座標へと踏み出した。

『右方』は匍匐前進のようなスピードで『目的地』に進んでいる。

水平方向限定の瞬間移動も出来ないほどに『第三の腕』が瓦解している事は間違いなかった。


「待てよ……赤アスパラ。私も、行くに、決まってんだろ。
 って言うかな、ハァ、この手で、八つ裂きにしなきゃあ収まらねぇんだよ!」


その肩を掴んで強引に引き止めたのは麦野沈利だった。

彼女が息を弾ませているのは、興奮と痛憤のせいだけではない。



            ――■■■■■■!?――


――■■■■■■■■■■!!――



四方八方に散らばる腐臭の源を、単独で戦闘不能に追い込んだ疲労ゆえであった。


「……第四位を侮ってたね、正直」


仮想敵として『原子崩し』との対決もシミュレート済みのステイルが呟いた。

激昂に任せて狙いを付けなかった初撃以外、彼女の攻撃は全て怪物の脚部に集中していた。

いかに『未元物質』の防御が鉄壁とはいえ、全力で、それも一点集束された

『原子崩し』の照射を十回どころではなく浴び続ければ劣化は免れない。

結果、下半身を失った異形の軍団は還るべき大地の上で不格好に這うのみの木偶と化した。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:14:39.84 ID:7j680ZQF0<>

「戦果と実力は認めよう、麦野沈利。
 しかし、ここから先は天上――――いや、『神上』の領域だ」

「ほざいてんじゃねえ、くたばりぞこないが。
 上条だか神浄だか知らないけど、私がやるっつった以上はやるんだよ」

「…………お前達、見ていないでこの女を止めたらどうなんだ」


実際の所立っているのもやっとのフィアンマが、

女とは思えぬ膂力の麦野に詰め寄られて微かに額に皺を寄せた。

苛立ちを押し殺して、拱手傍観する三人にあくまで高飛車に救いを求める。


「あ、あはは、私にはちょっと。おっかないし…………」

「私たちだって散々あなたを止めたのに、聞かなかったよね」

「連れて行かなければ君を殺してでも、彼女は進むだろうよ。
 ここで無駄に摩り切れるぐらいなら共闘を選択すべきだ、と僕は思うね」


しかし三者三様の発言はどれ一つとして、フィアンマを擁護するものではなかった。

特にステイルのそれは寒々しい程の現実味を帯びている。

最後に物を言ったのは結局、超能力者という明快な『暴力』であった。


「………………いいだろう、まったく。愚者、愚者なる故を知らず、だな」

「そりゃあそうだろうよ、ぐしゃぐしゃの魔術師野郎?」


下品な女だ、と呆れ果てたフィアンマは冷笑して今度こそ踵を返した。

もはやインデックスたちを顧みる事も無い男だったが一つだけ、懸念について確かめる。

『右方のフィアンマ』が魔術の檻から科学という名の庭に放った猛獣たち。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:16:33.67 ID:7j680ZQF0<>

「残りの六一六体は、お前が何とかするんだな?」

「ああ、一計、と言う程のものでもないが…………考えがある」


フィアンマが希望を託すのは魔神に達する可能性を秘めた者、

『禁書目録』ではなく、一介の魔術師に過ぎない神父だった。

多くを語りはしないが、ステイルの双眸には毅然たる意志と自信が宿っている。


「そうか。では武運を祈らせてもらう、ステイル=マグヌス」


誰の目にも入らず、彼自身自覚してはいなかったが、

フィアンマは僅かに唇の端を持ち上げて信頼に満ち満ちた笑みを零していた。

その後ろ姿に、捻くれた激励が投げかけられる。


「僕は祈らないよ。精々無様に生き残れ、『ただのフィアンマ』」




世界を救いそこねた男と、ただ一人を救いそこねた男。

しかし彼らの物語に、一度や二度の失敗でピリオドが打たれたわけではない。

いま再び、ヒーローが播いた希望の種を絶望の嵐から護り抜くためにも。



二人の失敗者は背を向けあい、視線も交わさず――――各々の戦場に身を投げた。


<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:17:27.93 ID:7j680ZQF0<>

言葉以外の何かで語り合った二人の男を切なげに見やってのち、

インデックスも死地に赴こうとする麦野に一歩近づいた。


「気をつけてね、しずり」

「誰に向かってモノ言ってんのか考えなさいよ。
 アンタも無事で帰らないと…………理后とか、第三位とかが泣くわよ」


男とは逆に脚を止めて受け答えた科学の申し子は居丈高に鼻で笑った……かと思えば、

後半部分でデレる流石のツンデレベル5ぶりであった。

その様子に顔を綻ばせたインデックスが、慈愛溢れる眼差しを向ける。


「しずりは泣いてくれないのー?」


口ぶりはお世辞にも慈母のそれではなかったが。


「シャラップ!! ねえ、そっちのアンタ。警備員なんでしょ?」

「へ!? な、なんでしょう?」


火照った麦野が怒鳴り散らすが、シスターは破顔一笑取り合わない。

業を煮やしたツンデレが、袂で悠然と真理のおしめなど変えていた警備員に牙を剥く。

近年の学園都市のコンビニは実にコンビニエンスであった。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:18:04.77 ID:7j680ZQF0<>

「………………そのシスター、一応さ。その……私の、アレなのよ。だから」

「! 任せてください! 御友人は必ずこの佐天涙子が守って見せます!
 っていうか、私にとっても大事な大事な友達ですから!」

「言ってねえ!! 誰が友達だってええええ!?」


女三人姦しい。

先人の言葉は実に偉大で、明敏だった。


「こんな時でも賑やかだな、女という生き物は」

「まったくだね…………はぁ」











フィアンマと麦野、魔術と科学の超人二人を見送ったステイルたちもまた、

己が為すべきを為そうと行動を開始する。

まずは、一連の殺劇にその身を絡め取られた佐天と真理を解放する事であった。


「僕らも行こうか。案内してくれ、涙子」

「うんうん、佐天さんにまっかせなさい! 
 第ニニ支部には知り合いもいるから、多少なら融通きかせてくれると思うよ」

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:19:09.56 ID:7j680ZQF0<>

気丈に胸を叩いて請け負う佐天だが、

今日一日で彼女の世界観はまたしても劇的に変貌してしまった筈だ。

死神が幾度となく吹きかけてきた吐息、垣間見た天上の力。

何もかもが未知で、人知を超えた現象に触れながら、尚も佐天涙子は快活に笑う。

地に在って太陽の如く人々を勇気づける、蒲公英の逞しさだな、とインデックスは感じた。


「それでステイル、どんな手があるの?」

「問題は、『未元物質』の鎧だね」


颯爽と前を行く佐天に目を細め、インデックスは問題提起を行う。

『禁書目録』をもってしても陥落せしめる事のかなわなかった術式を

如何にして破ろうというのか、未だ聞かされていない彼女にも興味があった。


「『原子崩し』でさえ一撃必殺とはならないあの守備力。
 『幻想殺し』も『一方通行』も、そして『未元物質』本人も不在の現状、
 この街にあれを完全に貫く事が可能な『要因』は存在しない」


ステイルの列挙した要素の一つ一つが、悲観的な結末を匂わせるスパイスでしかない。

垣根ではないが、打破の為には常識にとらわれない発想が必要だった。





「ならば、破壊という『結果』を先に持ってくればいい」



<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:20:09.81 ID:7j680ZQF0<>

ステイル=マグヌスが“この着想”に到達したのは

ひとえに十二年間力を追求し続けた、自己研鑽の賜物。

魔術の本分である、持たざる者への恩情ゆえであった。


「あ!」


因果律の逆転という大規模魔術。

瞬時に思い至ったらしいインデックスに、男はさすがだ、と頷いた。

彼女は記録から引き出したデータを局勢と照らし合わせ、しかし否定する。


「無理だよ。確かに私は昔、実物を見たけど…………」

「僕もかつて、使用者本人に尋問した事がある」

「だったらわかるでしょ! あれを本当の意味で行使するには『鍵』が必要で」


ジャラ、と鎖の音。

ステイルが懐から取り出したのは、魔道図書館の蔵書には記されていない霊装だった。

二つのエメラルドが束の間、その輝度を落とす。


「これなら、どうだい」

「…………そ、そんな、どこで?」


男の眼が得意げな表情とは裏腹に鋭く尖った。

その棘に気付かないインデックスの翠玉に、やがて光が帰ってくる。

女が声に詰まった。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:21:42.54 ID:7j680ZQF0<>

「拾ったんだよ」


事もなげにのたまったステイルの様子に、瞬刻インデックスが絶句した。

だがその首は未だ、縦には振られない。


「…………ダメ。それでも、もし構築に失敗したら…………!」


術式の発動のために封入された魔力が行き場を失う。

そうなれば甚大なリバウンドが術者を襲って、ほぼ確実に死出の旅へと誘うだろう。

『禁書目録』、いや一人の女として肯んじられないインデックス。

今この瞬間科学の街の人々に齎されている悲劇の存在よりも、

彼女は目の前の愛しい人の喪失を恐れてやまない。



それはインデックスという聖女の本源の、緩やかな変質を意味していた。


「“無理”ではないんだね?」

「それ、は……………………」


ステイルは初志を貫くと定めてしまっている。

フィアンマと立てた、十字架と言う名の誓いも彼の背を押しているようだ。


「君の一〇万三〇〇〇冊と、僕の持つルーン文字三八種。そして、『これ』」


頭を垂れた女の苦悩を振り払って、神父は解放への道筋を示す。


「聖書に語られる炎の雨を、再現しようじゃないか」

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:22:52.92 ID:7j680ZQF0<>
----------------------------------------------------------------


嵐の止まぬ学園都市第六学区で、食蜂操祈が突如頭を抑えて膝を付いた。


「しょくほう、大丈夫?」


気遣った理后にヒラヒラ手を左右させて、煌びやかに食蜂は笑う。

それは二十五年の人生で脆弱を余人に曝け出したことのない、女王の虚勢だった。

『天罰術式』から自分と理后の意識を保護する為、

そして円環状にズラリと跪かせた下僕どもの制御の為に、

『心理掌握』の連続使用時間はとうに一刻を超過している。

第五位という叙階に足を乗せて以来、未知未踏の領域に食蜂は倒れ込んでいた。


「他人の心配してないで、お仕事ちゃんとしてねぇ?」


理后は学園都市を覆う暗雲を払うという大役を担っている。

それとて、『心理掌握』による『敵意』の抑制が失われるか、




「動きが鈍くなってるわよ、『ただのヴェント』さん!」

「囀ってなさい、ヒヨッコ!!」




激しさを増すばかりの台風の目で、ヴェントが斃されれば露と消える。

誰一人欠けても、この戦争を制する事は不可能であった。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:23:22.10 ID:7j680ZQF0<>
--------------------------------------------------------------


「辛そうじゃない、介護は御入り用?」


『前方』の操る突風がうねり、形をスピア状に変えた。

右脚に力を込めて跳ねとんだ敵手へ、穂先が曲がって更なる追撃。

ヴェントは一瞥して唾を吐くと、十年ぶりに通したピアスで己の疾風に意志を伝えて迎え撃つ。

包み込むように広がった大気の塊が、槍をのみ込んで自らもはじけ飛んだ。


「私は介助する方よ、この厚化粧!」


傲岸不遜にヴェントは格下の魔術師を嘲笑うが戦況は伯仲していた。

先手を取っても劣勢だった一度目の対決とは明らかに、『前方』の術式の精度が違う。


(『座』へのリンク……こんな小細工で散々嘗めた態度とりやがって!)


この思考も伝わっているのだろう、と同じ土俵に漸く上った『前方』が臍を噛む。

するとヴェントが無駄の削ぎ落とされた風捌きを分析しつつ、ハンマーを二度振った。

ゴオン! と金属音を立てて地に激突した暴風が、剥がれかけた床板を巻き上げる。

ワンテンポ遅れて、二撃目が堅固なパネルを弾丸に変えて射出した。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:24:05.14 ID:7j680ZQF0<>

「そんなのが効くと思ってんの!?」


『前方』が迎撃に選択したのは単純明快な巨大空気弾。

ビリ、と大気が悲鳴を上げて、その風船に吹き込まれた衝撃の凄まじさを予感させる。


グシャアアアアッ!!!


交わった攻撃と迎撃の結末を碌に見届けもせず、

『前方』は攻守交代とばかりに鋭利な刃を無数に投げ込もうと構えて――俄かに目を見開いた。

忌々しい先達の姿が、忽然と消えている。


「どこに…………!?」


瞬きと変らぬほどの一瞬の瞑目。

『前方』が一再瞼を持ち上げると、風圧の均衡する点に向き直った。


バリバリィッ!!!!


風化したかのように粉微塵にされた床板のすぐ背面にヴェントの姿。

身を隠して肉薄した女が風塊を避けるべく宙を舞い、

華麗に身を捻りながら直接命中させるべく大槌を一閃した。


「らあっ!!」

「ちいっ!!」

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:26:09.09 ID:7j680ZQF0<>

雄叫び二つ。

本格的な鍔迫り合いを制したのは不意を突き、上方を取ったヴェント、


「っ、ああ!」


ではなく、『前方のヴェント』の烈風であった。

押し飛ばされ地に吸いこまれるヴェントの小柄な身体。

墜落の寸前に風に乗って、どうにか二本足で着地した女の左手が一瞬横腹に伸びた。


「内臓、イッちゃった? それとも骨ェ?」


バッと勢いよく引かれ、左腕は大槌に添えられるが後の祭りである。


(わかる、読める、筒抜けだ、お見通しだよぉ!)


肺臓に火掻き棒を突っ込まれたような激痛に、ヴェントは正気を保つのでいっぱいだ。

彼女の艱苦と焦燥が、『前方のヴェント』には手に取るようだった。

クロスレンジ。

最も目の前の女を苦しめて殺す手段を侵攻者は選ぶ。

後方で空気圧を爆発させ、突貫。


「調子に、っつ!」


ヴェントの迎撃行動が初めて、且つ明確に、一手遅れた。

踏ん張り切れずに跪いた敵を見て、『前方』が喜悦を膨らませた。

精神を支配する残虐そのままに兇器を左腹部へスイング。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:27:42.36 ID:7j680ZQF0<>

「があああああああああああっ、あああ、っつがあっ!!!!」


獣の叫びが谺した。


「かっ、が、あああ、くうううう!!!!!」


怒りでも憎しみでもなく、ただただ苦痛に悶える山彦が無機質な機械の里を吹き抜ける。


「んっ、んがああ!!! っの、カハッ!?」


性欲にも似た愉悦に脳を犯されながら、殺戮者が振る、振る、鈍器を振り下ろす。


「か…………」


咆哮が、止まった。

ヴェントはもう動かない。

『右席の座』へのリンクを確認。

魔力反応無し。

死んだ。



死。




「死んだ、死んじまった、殺してやった!」




狂ったように笑いながら、死者を更に辱しめるべく槌を構え、

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:28:16.87 ID:7j680ZQF0<>


バァンッ!!!!



「あ?」


銃声。

魔術の世界には存在しない殺しの産声。

食蜂操祈が、ヴェントに震える銃口を向けていた。



















「…………アンタに、注意を払ってないとでも思った?」


オイル缶に詰められて腐ったような、停滞した風が空気を伝う。


「そんな鉛玉、逸らすのに指一本要らないんだよ」


表情を彩る殺意の色だけは塗り替えず、『前方のヴェント』は冷静に冷徹に健在だった。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:31:31.13 ID:7j680ZQF0<>

『前方』の目に映る範囲には、拳銃を取り落とした第五位のみ。

しかし彼女は空気の淀みから第九位の位置をあっさり把握した。

食蜂の後方、百メートル以上。

戦場となったゲームセンターを出て別の施設でしゃがみ込んでいる。


(仲間を見捨てた? それともまだ足掻く? だが、動きが無い)


どのみち、次の犠牲者は膝をガクガク言わせて大量の脂汗を流す『心理掌握』だ。

絶望に武器を握っていられなくなったのだろう、その顔には笑みが――――笑み?





「別にあなたにプレゼントしたわけじゃあないのよ。
 ところで、電気伝導率の一番高い金属って何か知ってるぅ?」


突然余裕の、しかし意味不明の講釈を垂れる女。

嫌悪感以上の何かが『前方のヴェント』の背筋を昇って消えた。


「いま撃ったのは鉛玉じゃなくて、いわゆる『銀の弾丸』よぉ。
 とぉっても良く『電気』を通すの」


バチリ。

間違いなく後背から鳴った、雷の弾ける耳障りな音。


「どうしても、『彼女』が欲しいって言うからパスしたの…………ねえ」


金属、弾丸、電気。

連想ゲームの正答に、『前方』は辿りついた。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:32:33.25 ID:7j680ZQF0<>













『「『超電磁砲』って言葉、知ってる?」』








振り返った先に第三位、上条美琴がいた。








<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:36:05.18 ID:7j680ZQF0<>

「馬鹿な、アックアは…………!?」


親指に紛れもない『銀の弾丸』を乗せ準備万端の第三位に向かって、狼狽して構えをとる。

マズイ、撃たれる、今すぐにでも発射される。

『後方のアックア』はとうの昔に敗れ去ったというのか。

戦場に生き、戦場に死ぬあの男が。






あり得ない。





思ったと同時に、凛々しく佇む『超電磁砲』の輪郭が薄れた。




(――――――――やられたッ!!!)




徐々に消えゆく第三位の体を通して見えた、銃弾を撃ち込まれて中破し、放電する配電盤。

言い聞かせるような口調、丁寧に与えられたヒント。

何より彼女の能力『心理掌握』と、魔力の壁を潜るほどにその強度を補正する『能力剥奪』。

全ては脳内に、ありもしない上条美琴の幻を産む布石。




連想ゲームは、解かせる為に出題されていた。




<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:37:17.72 ID:7j680ZQF0<>

そこまで悟った『前方のヴェント』のすぐ背後に気配が一つ。


(第五位が、接近戦だと?)


違和感が肌を這うように撫ぜるが、今度こそ他の解は導出し得ない。

『超電磁砲』の幻影に怯え上がって、隙だらけになると甘く見られたのか。


「人をおちょくるのもいい加減にしな、『心理掌握』ッ!!」


再び百八十度回転。

怒りに吠えてその華奢な身体から血の花を咲かせてやろうと――――







「御存じなかったかしらぁ?」


癪に障る猫撫で声の発信元は先刻と変らぬ位置、およそ十メートル。


「ん、な」


唸る豪風は、眼前一メートル未満。

<> 神の右席編H<>saga<>2011/08/02(火) 21:38:37.44 ID:7j680ZQF0<>










「女王蜂はね、自分では働かないものなのよ」











驚愕する『前方のヴェント』の五体を、蘇った『ヴェント』の風撃が派手に吹き飛ばした。











<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/02(火) 21:41:31.46 ID:7j680ZQF0<>
続く

やや長くなったのでこの決着シーンで一旦切ります
解説(笑)は次回に持ち越しですがなんかおかしくね? みたいな点があればぜひ罵ってください
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/02(火) 23:09:33.75 ID:xHx5BC5C0<> 乙です。
前方さんのやられ役臭が凄いな。他の面々はそれなりに凄みを見せてるのに。
というか、右席のどれ相手にも、超能力者複数か魔術師との連合軍で互角ってあたり、魔術サイドの方がチートっぷりが激しいのか。その分前準備とかが大変そうだけど。 <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/04(木) 00:07:24.08 ID:UJbio0VK0<>
どうも>>1です

>>502
原作からして魔術>科学は決定的みたいな空気があったので
別格の一方さんもていとくんも魔術側に行くと上の下ぐらいの扱いかな、と個人的には思ってます

では超短いですが投下していきますね↓ <> 「前方のヴェント」<>saga<>2011/08/04(木) 00:08:41.91 ID:UJbio0VK0<>

十年前、少女はロシアという国に暮らしていた。

極寒の大地は自然の厳しさを幼い少女に刻み込んだが、それは同時に家族の温もりを際立たせた。

父と母、三人だけの寒くても暖かい日々。


しかし穏やかな日常はある時、日記のページを破り捨てたかのように切り裂かれた。

第三次世界大戦。

いつも通り幾重にも毛布をかけてベッドに潜る少女は、轟音に呼び覚まされた。

鉄と硫黄と――――血の匂い。

一つ夜を越えて陽が昇る間に、少女は何もわからぬまま全てを失った。

ただ、己の命だけを除いて。


戦争が終わって少女は、親戚の伝手を頼ってイタリアへ渡った。

遠縁の新しい家族は優しく接してくれたが、少女は夜毎に魘された。

救いを求めた少女はやがて、世界最大の宗教にのめり込んでいく。


科学が憎い、わけではなかった。

ただ、恐ろしかった。

忘れられなかった。

家族の鼓動を、絆を、暖かい暮らしを断ち切ったにおいが、焼き付いて消えなかった。

抑圧された恐怖は、いつしか裏返って破壊への衝動に変わり。



そうして少女は、『前方のヴェント』になった。



<> 「前方のヴェント」<>saga<>2011/08/04(木) 00:10:50.99 ID:UJbio0VK0<>
--------------------------------------------------------------


「………………なんで」


重なるように倒れ込んだ二つの黄色。

下敷きにされた方の女が、心底不思議そうに呟いた。


「どうして、科学を、受け入れられた……?」


勝利しながら指一本動かせないヴェントは、すぐには口を開かなかった。

瞼を閉じてその裏側に何を――――誰の顔を、描いたのか。


「こ、たえ、なさいよ」


屍に身を偽装した際、魔力精製を止めたからこそ彼女は『前方』を欺けた。

その状況で『天罰術式』を回避する方法はただ一つ。


「さあ、ね」

                      かがく
ヴェントは、憎んでやまない筈の『心理掌握』に己の生命を委ねたのだ。

『敵意』を鎮めると同時に、骨という骨を粉砕されて湧き上がる痛覚を一時的にカット。

疾走し、『前方のヴェント』に最後の一撃を加える直前、『風の術式』を再発動したのだった。


「しあわせ、そうなツラしやがって。ほんと、むか、つく…………ぁ」


言葉に乗らない返事を聞いた『前方』は悔しげに唇を尖らせ。

その貌が、重力に従ってカクンと落ちた。

<> 「前方のヴェント」<>saga<>2011/08/04(木) 00:11:49.89 ID:UJbio0VK0<>



「お疲れさまぁ」

「アンタもね」


二人の『ヴェント』のすぐ脇に、食蜂がふらふら歩み寄ったかと思うとへたり込んだ。

女魔術師が苦境に立たされた最大の原因であった、白壁への凄まじい激突。

本来、より大きなダメージを身体に遺しているのは

彼女と障壁のサンドイッチにされた食蜂のはずだ。

ゆとり溢れる物腰を崩さない女の口元から、ツ、と一筋赤が伝った。


「お互いさまよねぇ。ところであなた、さっき厚化粧さんに訊かれた事だけど」

「…………マジでえげつないわね、『心理掌握』って」


鉄の匂いがする紅を妖艶にしなを作って塗りながら、突如ガールズトークを切り出す女。

ヴェントは勝利への報奨として、心理を掌握されるというこの上ない大金を支払う事と相成った。

居なくなれ、と願えば願うほど精密に脳内で焦点を結ぶ『アイツ』の像。

繕っても第五位相手では無駄だ、と開き直った女はおバカな雇い主の声を耳奥で再生した。




『なんだヴェント、意外と似合うじゃないか』




<> 「前方のヴェント」<>saga<>2011/08/04(木) 00:12:52.67 ID:UJbio0VK0<>

声をリードしたのか、食蜂がしめやかなムードなど気に掛けず豊かな肢体を揺さぶる。


「惚れた弱み、ってヤツぅ? いいないいなぁ」

「そんなんじゃないわよ」


そう、そんなものではない。


『見ろ、ヴェント。俺様の知らん事が世界にはまだまだ満ちているな』


恋だの愛だのでは、間違ってもない。

ただ、世界を救うなどと豪語する阿呆の生き様を、見届けたくなっただけなのだ。

自分が居なければ、妙に世間知らずのアイツは長生き出来そうもなかった。


『おい、俺様は何も諦めたつもりなどないんだぞ』


もしもアイツが世界を救ったら、自分の憎しみも消えるのだろうか。





『いつか、お前も救ってみせるさ。上条当麻が、誰かにそうしたようにな』





<> 「前方のヴェント」<>saga<>2011/08/04(木) 00:13:44.49 ID:UJbio0VK0<>

誰に『敵意』を向ける事も、向けられる事もない。


そんな優しい世界が、アイツとの日々の先に待っているのだろうか。



(…………なーんて、ね。馬鹿みたい)



下らない妄想に自嘲して、意識を手放す直前。



「ふふ、そうねぇ。馬鹿だとは思うけど」



食蜂が心理を読んで放ったであろう弾むような一声が、妙にヴェントの耳に残った。








「だけど、すっごく羨ましいなぁ」







<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/04(木) 00:14:37.69 ID:UJbio0VK0<>
続きに否定形はない


超超短いですが決着後の一幕、ということでどうか
ヴェントさん可愛いよヴェントたん
そう思わせる事が出来たなら>>1の勝ちです
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/08/04(木) 00:25:56.66 ID:LG3x3SG7o<> 乙
いや、これは食蜂もかなり可愛いだろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/04(木) 23:57:30.65 ID:r4HjPm7+0<> ヴェントさんも食蜂さんもかわゆす。
もう結構いい歳のはずだけどね! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 02:23:44.28 ID:99BjaT/Mo<> 描くキャラがみんな魅力的だ・・・
食蜂さんかわいいよ <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/05(金) 23:03:51.27 ID:dHE4AjcI0<> ヴェントさんよりた……食蜂さんの方に注目が行ってるっぽいので敗者になった>>1ですどうも
もっとヴェントさんの魅力をわかってもらわなきゃならないので今日は小ネタです↓ <> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:07:42.32 ID:dHE4AjcI0<>

とある休業日 メイド喫茶『ベツレヘムの星』 従業員控室



ガラッ


フィ「おお、居たな」


ヴェ「そりゃ居るわよ、明日の営業チェックもあるし」


フィ「メイドさんがかなり板に着いてきたじゃないか」


ヴェ「うるさいわよ! 好きでやってんじゃないっつってんでしょ!?」


フィ「そうは言うが、お前のご奉仕ぶりは素人のそれではないと思うけどな」


ヴェ「当然でしょ、介護士の資格持ってんだから。こちとらプロよ」


フィ「冗談は顔と厚化粧だけにしておけ」


ヴェ「ウソじゃないわよ! あの化粧は術式の為だって言ったでしょうが!
   っていうか全体的にどういう意味よ今のはぁ!!!」


フィ「それより聞け、ヴェント」


ヴェ「アンタが私の話を聞け! そっちが振ったんでしょうが!」

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:12:59.98 ID:dHE4AjcI0<>

フィ「ん? 今日はやけに喧嘩腰だな」


ヴェ「アンタがそういう顔してる時にね、ロクな目に遭った試しがないのよ」


フィ「そういう顔? どういう顔だ」


ヴェ「いい歳こいてガキみたいに目ェキラキラさせてるそのアホ面よ!」


フィ「男は常に少年を胸に抱いてなければ革新を起こせないんだ、ヴェント」


ヴェ「したり顔で良い台詞吐いてんじゃねーよ。
   言っとくけどアンタの口から出た時点で胡散臭さが五次関数で右肩上がりだからね?」


フィ「と、言う訳でだな」ゴソゴソ


ヴェ(希望溢れるヴィジョンを幻視できない自分が、幾分悲しいわね…………)






フィ「この『神にご奉仕☆メイド風あーくびしょっぷ』のプロトタイプを試着しろ」


ヴェ「少年は少年でも思春期真っ盛りの中学生だろうがそれはああああ!!!!
   露出度ヤバすぎでしょイメクラにでも方針転換する気なのかァァーーーーッッ!!!!!」


フィ「ッ! 天啓………………ッ!!」


ヴィ「天罰ゥゥゥゥーーーーーッッッッ!!!!!!!」ドグシャアッ!

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:19:05.40 ID:dHE4AjcI0<>

フ※■■※「」※残酷描写につきお見せできません


ヴェ「なんなの!? アンタの生甲斐って私を弄る事なの!?」


フィ「人の嫌がる事は積極的にやれっておじいちゃんが」ケロッ


ヴェ「それただの嫌がらせぇぇぇぇぇ!!!!
   私が嫌がってる事わかってたんかいアンタあああ!
   そのおじいちゃんいま何処にいるのか教えなさいしばいて来るから!!」


フィ「バチカン」


ヴェ「前教皇ォォォーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!」





フィ「他人行儀な言い方だな、お前にとってもおじいちゃ」


ヴェ「ちっがああああう!! そのそれは、ええっと、罰ゲームとかそういうアレで負けたアレであって」


フィ「もしもし、おじいちゃん? おじいちゃんの可愛い可愛いヴェントが実はこんな事を言って」ピポパ


ヴェ「やめて私が悪かったああ誤解しないでおじいちゃんこれは違うの!」


フィ(なるほど、前教皇の言うとおりだ。結構可愛いな)ホノボノ

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:25:27.46 ID:dHE4AjcI0<>

ヴェ「ゼェ、ハァ…………くそ、アンタのせいよ!」ピ


フィ「何が」


ヴェ「今度帰った時に、メイド服で介護するって約束させられたのよ!」


フィ(あの古狸は全部計算の上だろうがな)


ヴェ「はぁ………………そういえばアンタ、さ」


フィ「なんだ?」


ヴェ「メイド喫茶なんて営んでおきながら、自分では侍らせないわよね、メイド」


フィ「ほう、良い心がけだな。ご褒美に思う存分俺様に跪く権利をやろう」


ヴェ「気持ち悪い勘違いしてんじゃないわよこのノータリン!!」


フィ「とりあえず、紅茶を一杯もらおうか」


ヴェ「誰が!」


フィ「だったら棚の空けられた茶葉はなんだ? あれは確か昨日買った新品だ」

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:30:37.81 ID:dHE4AjcI0<>

ヴェ「わ・た・し・が一人で飲むのよ! 自分の分は自分でどうにかしなさい」


フィ「CEO命令だ。メイド、茶を一杯よこせ」


ヴェ「………………少々、お待ち、下さいませ!」


フィ「よろしい」



コポポポポ



ヴェ(雑巾の絞り汁でも入れてやろうかしら)


フィ「あまり俗な『天罰』を行使すると格が知れるぞ」


ヴェ「ああもう! お熱いのでご注意ください!!」


フィ「おお、なんという偶然だろうな? 俺様の愛するダージリンではないか」


ヴェ「〜〜〜〜〜っ!! 神にでも感謝してなさい!」


フィ「まずは淹れた相手を労うのが礼儀だろう。頂くぞ」ズズズ

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:35:13.64 ID:dHE4AjcI0<>

ヴェ「どこで礼儀なんて言葉覚えてきたのよ世間知らずが……」ズズズ


フィ「………………」ズズ


ヴェ「………………」ズズ



カチャ



「……美味かった。ありがとう、ヴェント」



「…………どういたしまして」



<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:39:36.29 ID:dHE4AjcI0<>

ヴェ「で? 私に茶を淹れさせるためだけに来たわけ?」


フィ「だからこの新作を試着してだな」


ヴェ「全メイド率いてストされたいのね」


フィ「遂に我が社にも労使対立問題が……」


ヴェ「主に私とアンタの対立よ!!」





フィ「なに、今度行く学園都市店で現地のスカウトを担当してもらおうと思ってな」


ヴェ「……………………本気で殺されたいの?」


フィ「ははは。やれるものか、お前にそんな事」


ヴェ「どうかしらねぇ? 私の役目は危険分子の監視だもの、
   いっそ消しちまえばお役御免、晴れて自由の身だわ」

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:41:43.78 ID:dHE4AjcI0<>

フィ「そうか、じゃあ好きにしろ」


ヴェ「!」


フィ「驚く事は無いだろう、お前が言いだしたんだ。
   今の生活に堪えられなくなったらいつでも俺を殺してバチカンに帰っていいぞ」


ヴェ「………………わざわざアンタに促されなくたって、その気になればやるわよ」


フィ「なら、構わないさ。じゃあ俺様は仮眠をとるから、一時間したら起こせ」ヨッコイセ


ヴェ「人を、おちょくってんの…………!」


フィ「zzzzzz」


ヴィ「警戒感を少しは持て! の○太か!」


フィ「zzzwww」


ヴィ「起きてるわねアンタァーーーーッッ!!!!」


フィ「………………zzzzzz」


ヴェ「クソッ!」


フィ「zzz」


ヴェ「……………………」

<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:43:10.19 ID:dHE4AjcI0<>

スタ スタ スタ



「…………私は、アンタの監視役よ、フィアンマ」

「世界を救うなんて誇大妄想に浸ってる大うつけの死に顔は、絶対私が鼻で笑ってやるわ」



「だから」



「馬鹿みたいに何年も何十年も足掻いてもがいて、その挙句に」

「そうね例えば、ベッドの上とかで」







「私の見てる前で、死になさいよ」







<> 小ネタ「メイドオブメイド」<>saga<>2011/08/05(金) 23:44:26.61 ID:dHE4AjcI0<>

ガチャ バタン



「…………己の死を厭うには、屍を踏み越え過ぎた。そう思ってたんだがな」

「誰か一人がそう言ってくれるなら、俺の人生もまだまだ捨てたものじゃないらしい」



ゴロリ



(任せておけ、ヴェント)

(だったらお前は、俺より先に、下らん罪悪感などで死ぬなよ)

(まあ、死なせるつもりもないが)

(見てて飽きないその慌てふためく面を)








「いつまででも、目に焼き付けていたいからな」



オワリ

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/05(金) 23:45:53.71 ID:dHE4AjcI0<> 何か気が付いたら普通に夫婦してました
ステインをこの先こんな感じの熟年夫婦かベッタベタの新婚夫婦にしようか迷ってます
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/06(土) 01:48:36.26 ID:m91CAuCJ0<> おつううううううう!!!
お前らもう結婚しちまえよおおおおおお!!!
ヴェントかわゆすぎだろおおおおおおおおおおお!!!
>>1、お前がナンバーNO.1だ!!!

ベッタベタの新婚夫婦に一票いたす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/08/06(土) 07:59:49.08 ID:a/mz1e2p0<> もうこの戦いが終わったら結婚しちまえよ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ)<>sage<>2011/08/06(土) 21:24:54.67 ID:OZXX8b4l0<> やっぱヴェントはいい
いい <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/07(日) 20:22:33.96 ID:9RV1vt1d0<>
どうも>>1です

無駄にヴェントさんをプッシュしてしまいましたがここから先の出番はほぼ皆無ですゴメンナサイ
今回はある意味山場かもしれません↓
<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:24:34.64 ID:9RV1vt1d0<>

第一〇学区の警備員活動支部に無事到着したインデックスとステイルは、

佐天の協力でスペースを空けた装甲車両の駐車場に巨大な魔法陣を組もうとしていた。


「…………解釈の歪曲を完了」

「元がローマの術式で助かったね、ラテン文字からなら転写は容易い。
 じゃあ土台部分から、位置と一緒に読み上げてくれ」


全長にしておよそ七、八十メートルに及んだ“オリジナル”には

比肩すべくもないが、スペースは十分確保できている。

後はインデックスの記録に収められた術式をステイルのルーンで十全に再現すれば。


(…………出来ないわけがない。僕一人ならまだしも、彼女がいてくれるなら)


彼がフィアンマにも披見した自恃の根源は、まさにそこにあった。

完全コピーのみならず、環境に合わせた応用まで自由自在にこなすインデックス。

ステイルに言わせれば、彼女の真価は莫大かつ迅速な記憶力ではなく、

柔軟で創造性に富む処理能力にこそあった。


「さあ、最大主教」

「………………Laguを足元に置いて起点に。
 南に四センチ刻みでEolh、Is、Yr、Nyd、Cen、これを七セット」


清廉な鈴の音を強張らせて、インデックスが構築の指示を始める。

失敗は術者の、即ちステイルの死に繋がる。

だから震えているのだろうか、と彼女の笑顔を曇らせた自分を呪いつつも、

一方でステイルは不所存と知りながら喜びも感じていた。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:25:45.02 ID:9RV1vt1d0<>

(彼女を安心させたければ、やり遂げればいいんだ)


インデックスが自分の身を案じて一喜一憂している。

その苦くも幸福な事実はステイルの自制心を微かにだが緩めた。

さりとて現在の作業は一瞬たりとも気を抜けない。


「次は起点に戻って、北に二、三、一、三の間隔でGeofu、Is、Is、Eolh…………」


ただでさえ得意属性の大いに異なる、特殊霊装が不可欠の魔術を空手で再構築しようというのだ。

世の魔術師一般からしたら正気の沙汰ではない。

精緻に精密、厳格な配置が歪めば彼女を悲しませることになる。

ステイルにとってそれは、自らの命が失われる以上に許容しがたい事であった。


-----------------------------------------


「鉄装先生、無理言ってすいません!」


頭を下げて支部に詰めていた顔なじみに礼を述べたのは、

防護服に身を包んで警備員らしい装いとなった佐天涙子である。

大事な愛娘を行きがかり上とはいえ保護した上条夫妻への責任感、

そして麦野と交わした違える事の出来ない約定を胸に、彼女は駐車場の入り口に陣取っていた。


「まあ、それは別にいいんだけど…………あの二人って、この間テレビに出てた」

「ど、どうかその点については触れないでもらえるとありがたいかなー、なんて、はは……」

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:27:45.91 ID:9RV1vt1d0<>

人の良さそうな顔にタラリと汗を流した第二二支部の隊長、

鉄装綴里は本部からの指示で解禁された実弾ライフルを点検していた。

高位能力者が狙われているという情報は既に警備員各支部にも降りてきており、

彼女を除く二二支部の隊員は出払って街を埋め尽くすゾンビ軍団の対処に向かっている。

AIM拡散力場に反応する以上、能力に依存しない武力を持つ警備員と不死者の相性は抜群であった。


「美琴さん…………ダメだ、繋がんないか。旦那さんの番号は知らないし……」


一息ついた所で、支部内にて頑是なく眠りこける真理の現状を

両親に伝えようと連絡を取るも、そう上手くはいかない。

やはり美琴はこの騒動の首魁と直接対決しているのだろう。

上条当麻に至っては日本国内にさえいないのだが、佐天が知る筈もない。


「鉄装先生、人的被害はどれくらいになってるんでしょうか?」

「いまの所死者は出てないみたい。でも、重傷者は十や二十じゃ利かない数に上ってるって……」


心優しい女教師の一面を覗かせた鉄装が沈痛に言葉を絞り出す。

被害の中心は比較的高い強度(レベル)でありながら、

自衛に足りるだけの能力を持たない強能力者(レベル3)だという。


「でもね、ついさっきから被害報告がパタリと止まったの。
 何でも敵勢力が、問題のレベル3以下を狙わなくなったんだって」

「そ、そうなんですか?」

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:29:12.93 ID:9RV1vt1d0<>

暗いニュースばかりが続く学園都市にも、一縷の救いは残されていたのだろうか。

そういえばステイル達の話では、魔術師の目的はあくまでレベル5狩りのはずだ。


(まあ、『かみのうせき』? の目標からすればおかしくはない…………かな?)


そもそも魂なき兵隊が振るう暴虐こそが、彼らの目的と微妙に合致しない。

高レベル能力者の犠牲は少なく抑えられているのだから、戦略目標は達成されていないのだ。


「私が考えても、仕方がない事かなぁ」

「どうかしたの?」

「な、何でもありません!」


何にせよ根本的解決への最も重要な鍵を握るのは、

恐ろしいほど真剣な眼差しで次々に地にカードを投げていく二人の魔術師だ。


(あの二人の邪魔さえさせなければ、それで私たちの勝ち、だよね)


相身互いに強く深く、複雑に想い合っていることが

短い付き合いの彼女にも理解できてしまうほど結び付いた男女。

もはや錯覚などと誤魔化せないほど狂おしくなった胸の痛みを押し殺しながら、

意気込みを新たに特殊装備を構え直す佐天。



その時彼女の背後に、黒い影が忍び寄った。



<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:31:03.96 ID:9RV1vt1d0<>
---------------------------------------------------


「順調かしら、浜面さん?」


科学と魔術の異色タッグが死闘を制した第六学区は、未だ亡者の巣窟であった。

しかし現在彼女らを取り巻く魔窟は、意図的に作り出されたものだ。


「学園都市の全レベル0からレベル3のAIM拡散力場を剥奪完了。
 …………しょくほう、もっと“上げ”ても大丈夫?」

「もっちろぉん」


学園都市を襲う悪意の嵐を防ぐのは、『学園個人』こと浜面理后。

彼女は被害が甚大になりつつあった強能力者から優先的に力場を抑制、剥奪し、

更に目の前の超能力者の強度を上方補正して撒き餌とした。

“レベル5.5”とでも称すべき現在の食蜂を越えるアトラクションなどこの街には無く、

後は飛んで火に居る夏の虫、女王の御前に跪く奴隷ピラミッドの一丁上がりである。


「他の皆はどうなのかしらねぇ」

「まぐぬすにさっき確認したよ。
 むすじめとしらい、みこととそぎいた、それにむぎのはまだ闘ってるって」


瑕疵を敢えてあげつらうとするなら、

超能力者からターゲットを強制変更させる程の引力は供給できなかった事か。

残る三人の『神の右席』と尚も対峙しているだろう彼らへの援護は、事実上の失敗に終わっていた。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:33:57.16 ID:9RV1vt1d0<>

「あの人は大丈夫なの?」

「痛みがぶり返す前に安らかにおねんねしてもらったわ。
 それに学園都市には世界一のお医者様がいるしぃ?」


決着後間もなく『前方』同様に限界を迎えたヴェントは救急車に運ばれて既にこの場を去った。

搬送先は論ずるまでもなく、第七学区のとある病院である。

あそこでは今日も、黄泉路を行く旅人を現世に送り返すべく、生涯を医に捧げた戦士が闘っている筈だ。


「うん、そうだね。あの先生なら安心。
 私たちの仕事は、ここで囮になって皆の負担を減らすことだね」

「…………不安じゃないの? 私が管理を少しでもミスれば、それでジ・エンドよぉ?」


理后の泰然たる態度に、呼吸の荒さを隠しきれないほどの能力行使の疲労から棘を含ませる食蜂。

そんな彼女に、母としての強さを知る女性が固くなった気を解すように笑いかけた。


「大丈夫、そんなしょくほうを私が応援するから」

「う………………もう、知らない!」


第五位にもどうやら、ツンデレベル5の素質が開花しつつあるようだった。

耳をそれとなく赤くして金髪を梳かし始めた食蜂を慈しんでのち、

浜面理后は大切な人と明日を生きる為に戦地にある仲間たちに、愛する夫に想いを馳せた。



そして、遥かな魔術の地から肩を並べに訪れてくれた二人の同盟者――――いや、友人。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:35:07.57 ID:9RV1vt1d0<>

「あとはまぐぬすといんでっくすが、この火を必ず消してくれるよ」


お節介で、お人好しで、頼まれてもいないのに駆け付ける。

能力者たちの参謀、雲川芹亜が苦笑交じりにそう評定した彼ら、と言うより彼女の人となりは、

学園都市はおろか今や世界でもその名を知らぬ者などない、とあるヒーローにとてもよく似ていた。


「御信任が厚いのね…………浜面さん、どうかした?」


ほんの二度、公の場で対面しただけの魔術師たちの姿を思い返したのか、食蜂が首を捻る。

するとその脇で理后が目を細めて、いきなり真夏のぎらつく太陽を見上げた。


「何だろう、強い? ううん、多いんだ。束ねてる」


疑問を口にしてあっという間に自己解決してしまった彼女を胡乱気に見やって、

付いていけるはずもない食蜂が電波発言の真意を尋ねた。


「えっと、説明はしていただけるのかしら」

「たった今、上空四十メートルを飛行した物体があった」


四十メートル。

ヘリコプターなどより遥かに低い高度である。

何かが通過すれば陽の光が遮られて、その存在は自ずと認識される筈だ。

しかし理后の感知した未確認飛行物体は、音を立てなければ、影も産まなかった。




「…………これは、AIM拡散力場の集合体?」




<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:36:33.75 ID:9RV1vt1d0<>
-------------------------------------------------------------


「配置完了、間違いない」


枚数にして三万を超えるルーンを配置する事二十分。

場所が場所なら激賞されて然るべき驚異的な早業で描かれた陣が薄蒼く輝き始めた。

二、三度と目を瞬かせて確認してのち、ステイルは次なる行程に突入する。

インデックスが祈るように、無言で両の手を胸前で組む。

彼女の不安を晴らそうと男は首だけを回して笑いかけようとして、







「後ろだっ!!」


言うが早いか、駆け出した。


――■■――


『それ』の肩越しに、額から血を流す佐天ともう一人の警備員の姿を認めたステイルは

よろめき、地に伏したがる肉体を精神の支配下に置いて、呆然とするインデックスに飛びついた。

ざらざらしたコンクリート上を横転する間も、自身が下敷きになる事は忘れない。


「怪我は?」

「だ、大丈夫」

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:37:46.10 ID:9RV1vt1d0<>

構築に集中するあまり探知術式が疎かになっていた。

悔みながら三度遭遇してしまった異形を睨みつけるステイル。

アサシンと呼ぶに相応しい細くもしまった躰つきは、他の亡者とは一線を画していた。


「また構成が違う! 多分、今度は遠隔操作なんだけど」

「だから、僕らを、正確に狙ってくるんだな…………ルーンの痕跡を辿られた、か!」


情報交換の暇を与えず、腐敗した葡萄色が俊敏に毒々しい鉤爪をかざす。

陣が乱れるのも止むを得まい、とステイルが炎剣を抜こうと構える。

が、鞘を出る直前にその刃は止まった。



バッ!!



――■■、■■?――

「な、なに?」

「るいこ!」


遠隔操作ゆえの弊害か、強靭なネット弾を避けられずまともに浴びた暗殺者。


「へへ、ざまーみろ……無能力者を甘く見ないでよね」


死角から息も絶え絶えの佐天が放ったのは女の、レベル0の意地、という名の弾丸。

彼女もまた、誓いを胸に使命を果たそうとする立派な戦士だった。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:39:45.11 ID:9RV1vt1d0<>

「二人とも、今のうち…………ステイル!?」


しかし、好機を生んでくれた佐天の声が、ステイルには異常に遠い。

瞼が落ちてもいないのに視界が闇に染まり、脳髄が内側から殴られたように痛む。


(さい、あくだ…………! よりにもよって、今!)


ステイルの全身を襲った虚脱感の正体は、魔力枯渇を訴える脳からのシグナルだった。

足に力を籠めるが、立てない。

隣の大事な人の気配さえ朧だ。

どうにか拘束を抜けだしたらしいアサシンの怒号だけが、腹の立つことに実によく聴こえた。


――■■!!――


幻聴だろうか、それに重なる、人を人とも思わぬ無感動な音吐。


――――滅しろ、非力な虫けらが――――


路地裏で掛けた宣戦布告は、処刑宣告になって跳ね返って来た。

異形が浮かべた嘲笑は、『右方』の傲然たる相貌そのものだった。




「安心して、すている。私が必ず守るから」




そして、ステイルの全身が、脳が、心臓が。

急激に、冷えた。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:41:32.88 ID:9RV1vt1d0<>

解析している時間が無いと判断したのだろうか、聖女が咄嗟に守護神の前面に回った。

無謀な献身ではなく、『歩く教会』の防護力を計算に入れた上での冷静で、勇気ある決断だ。

ステイルも客席に立てば、合理的な行動だと納得するだろう。


(………………ふざけるな)


理屈の上ではそうなる。

彼女が傷つくのが嫌だったなら、上条家に閉じ籠っていればよかったのだ。

そもそも、彼が日本行きに反対していれば今回の作戦が実行に移されることはなかった。

ステイルの理性がインデックスの強さを認め、頷いたからこそ現状がある。

理屈の上では、彼も納得しているはずだったのだ。


だが、衝動は、本能は、心は。


(ふざけるなよ)


賢しい理などに説き伏せられるはずがない。




(ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなァッ!!!)




<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:43:15.32 ID:9RV1vt1d0<>

合理的な、正しく賢いやり方などクソくらえである。

ステイル=マグヌスは護るべき女性を己の盾とする事など、決して是とは出来ない。

これはどこまでもくだらない、男の意地の問題だった。


(何だ、動くじゃないか。このポンコツめ)


腕をやわらかで無垢な躰にそっと、壊れものを扱うように回す。

背後から抱きすくめられた彼女が肩を強張らせたことを

肌越しに感じながら、ステイルは身をくるりと反転させた。

その目的を数瞬遅れて理解したインデックスが何事か短く叫ぶが、関係ない。


(…………君さえ)


腕の中の世界一愛しい女性さえ、無事ならば。

男の脳裏を原始的な喜びと使命感だけが埋め尽くす。

              かくご
背に走るだろう激痛を計算に含めて、止まらない腕の震えを押し殺した。












「ごめんなさい」

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:44:54.06 ID:9RV1vt1d0<>

覚悟した痛みは、微塵も生じはしなかった。

ステイルの視界に黄金色の、無機質な羽がひらりと舞入ってくるのと。


「バカッ!!!」


頬に、華奢な手のひらが聖女の悲しみを刻んだのは、ほぼ同時であった。







「ごめんなさい、『あなた』を助けてあげられなくて」


光の刃を携え凛然と立つ人工の天使。


「でも、私の大切な友達を傷つけるのならば」


インデックスが、科学の街で得たかけがえのない親友。


「容赦はしません」


降臨したヒューズ=カザキリ――――風斬氷華の一刀が、

哀しきマリオを『未元物質』ごと両断した。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:46:40.30 ID:9RV1vt1d0<>
---------------------------------------------------------------


麦野や美琴のように、膂力のない己が恨めしい。

いくらその胸板に縋りついて、血液が逆流したかのような怒りを叩きつけようと収まらなかった。


「バカバカバカ、ばかあっ!!!!」


気障で、ヘタレで、短気で、微妙に鈍感で。

感情のまま、命を自分の為に投げ出してしまうこの救い難く愚かな男を。

それでもインデックスは。


「私は本気で怒ってるんだよ!?」



愛してしまっていた。



愛しい、愛しい、こんなにも愛おしい!

いなくなって欲しくない。

永遠に、傍にいて欲しい。

その喪失に堪えられるだけの心のしなやかさは、もう彼女の裡の何処にも無い。


「……僕は、謝らないよ」


ああもう、絶対に■■になど■■■ないのに!

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:48:39.38 ID:9RV1vt1d0<>

「僕は君の命を預かっている。
 君を護らなければならない。
 同じ目に遭えば、何度でも同じ事を繰り返すだろうね」


まだ言うか。

この想いはまるで伝わっていないのか。

こんなにも近くに、心臓の鼓動が聴こえるというのに。


「もうやめて、やめようよステイル!
 軽々しく自分の命を放りだしちゃうような人に、絶対にこの魔術は使わせられない!!
 魔力だってもう、立てないぐらいギリギリなんでしょ?
 やめよう、後はしずりやフィアンマ達に任せて、ロンドンに帰ろう?」


崩れる、崩れる、音を立てて崩れ落ちる。

彼女はこの五年大事に温めてきたパーソナリティを、己が手で粉々に砕いた事を自覚しない。

目の前の男に死なないで欲しいから、この街の友人を見捨てて逃げ出そう、そう言ったのだ。

もはや、インデックスは聖女でも何でもない、ただの女だった。


「お願い、死なないで。私は、あなたが生きててくれればもう」

「だったら」


なおも懇願を重ねようとすると、ステイルの腕が抱かれた時と同様にそっと解かれた。

そういえば、彼に初めて抱きしめられたな、とインデックスはぼんやり思った。


「だったら今日は、君が僕の命を護ってくれ」


代わりに十指に指輪の嵌められたごつごつとした手が、滑らかな曲線を描く両肩に置かれた。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:50:14.59 ID:9RV1vt1d0<>

「え?」


仄暗くも誠実な焔色が、眼球同士が触れ合うほどの間近にある。


「僕を死なせたくないなら、君の持てる全てで僕を支えてくれ」


耳元で囁かれるよりずっと熱を帯びた吐息が頬を撫ぜる。


「魔力が足りないのならば、君のそれを貸してくれ」


そして、物理的距離を離したはずの心と心が不可視の糸で繋がる。


「僕の命を、君に預けさせてくれ」


ステイル=マグヌスは、魂の最も深く澄んだ部分からインデックスを欲している。


「僕たちで、行き場の無いあの魂を、解放しよう」


根源からの叫びを満身で受け止めて、彼女は歓喜に震えた。


「今、この瞬間だけでいいんだ」


叶う事なら、この人のためだけに。

<> 神の右席編10<>saga<>2011/08/07(日) 20:51:14.14 ID:9RV1vt1d0<>






「僕のために生きてくれ」







あなたのためだけに、生きたい。
























ああ。


叶う事なら、そうでありたいのに。


<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/07(日) 20:52:24.85 ID:9RV1vt1d0<>
続くのでしょうか、とミサカは(ry

二人ともなんかデレすぎてヤンデレっぽくなってきました
ヤンデレ×ヤンデレって業界初だったりしません? しませんねハイ
とりあえずインさんは早くご友人にお礼を言ってあげてください
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/07(日) 22:10:30.42 ID:XjU12DV2o<> マリオにクスッときた <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/09(火) 00:10:31.17 ID:dL59mA310<>
どもども>>1です

>>547
あかん、そこ笑うとこちゃうんや

夜も更けましたが本日の投下ですん↓ <> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:12:58.15 ID:dL59mA310<>

浜面の練った作戦遂行に必要な『材料』を探し求め、

結標淡希は一人第二学区のとある実験場周辺を走り回っていた。


「いける! これで第一段階はクリアね」


目に映る範囲全てに注意を払いながら、

結標は額に玉のように浮かぶ汗を拭って実験施設を取り囲む壁に背を預けた。

その時。


「っ!?」


滴を拭き取り終わって下ろそうとした腕の動きが、突如として鈍った。

まるで大気が筋肉の伸縮を妨害するほどに重くなったかのような。


「しま、った…………!」


『座標移動』を発動させようとするが、始点にある己の身体がもう『入って』しまっている。

辛うじて動く口唇がひとりでに毒づいた。

誰にも届かず消える筈の呪詛に、



「やあやあ、ようやく捕まえましたよ第八位さん?」


               ラファエル
全身に『神の肉』を纏う『神の薬』の象徴がいらえを返した。

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:14:19.55 ID:dL59mA310<>

「もう一人のテレポーターは逃げ帰りましたか?
 まあ、無理もありませんがねぇ。
 私だってあなた達と同じ状況に置かれたら震えあがってしまいますよ」


張り付けたような笑みがかつての同僚の一人に似ているな、

などと呑気な事を考えながら、結標は白井の現在地に目線をやらないよう努めた。

同時に『光の処刑』を受けないよう四十メートルは距離を空けながら、

二人はお互いの位置情報は逐一共有していた。

結標から見て『左方のテッラ』を挟んだ四十八メートル先のビルの角。

そこに白井は隠れて、隙を窺っているはず――――


「なんだ、いるじゃないですか」

「っ!?」


結標が、混じりっ気なしに声にならない声を上げた。

『左方』は眼前に佇んでいるというのに、その視線は全くこちらに向いていない。


(違うッ! こいつ、『此処』にはいない!!)


眼球さえ碌に回せない結標の不自由な視界の中で、

白井黒子の四肢もまた見えない十字へ磔にされていた。

再び彼女が魔術師を睨むと、予想通りその姿が陽炎の如く揺らいだ。



彼女の前に安置されていた白井にとっての墓標とは即ち、透き通った水のスクリーンだった。

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:16:08.70 ID:dL59mA310<>

「そこの実験場にあったモノをお借りしたんですよ。
 あなた達テレポーターはこれが苦手らしいですねぇ」


                           偏光能力
水面というキャンバスに描かれた、即席のトリックアート。

『光』の名を冠するこの術式の応用性は『超電磁砲』にさえ匹敵する、と結標は評価せざるを得なかった。

目視によって『左方のテッラ』の座標を掴んでいた白井は、

知らず知らずのうちに有効範囲に足を踏み入れてしまっていたのだ。


(それよりも、こいつ今…………!)

(一体いくつ、『優先』させてるんですの!?)


「三次元と十一次元、小麦粉と窒素、空気と人体、水と可視光。
 優先権四つ。それが私の手の全てですよ」


“四”。

あっさりと暴かれた手品のタネの、その“数”に女たちがピクと肩を震わせた。

テレポート殺しと光学迷彩に加えて、『空気』で敵対『者』を拘束。

しかしそのままでは己の動きも封じてしまうが故、

『自身』を『小麦粉』でコーティングする合わせ技で自身の移動経路と適量の酸素を確保。


(完全無欠、ってのはこの事かしらね)


悔しいが、賞賛に値すべき汎用性と活用力であった。

だが結標も白井も薄氷を踏む思いなら何度も経験してきた。

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:17:32.52 ID:dL59mA310<>

(浜面さんのプラン、今すぐ実行に移せれば……!)

(しょうがないわね。不完全だけど、一か八か…………、っ!?)



「おやおや、まだ足掻くんですか。しかしあなた、何のために私が
 わざわざ指し手の解説などしたのかおわかりでないようですねぇ」



――■■■■■■■■■■■■!!!!――



「私が手を下すまでも無く、チェック・メイトだからですよ」


十歩先に、冥府への案内人。

術式の考察に囚われて、接近を見逃してしまった。

表情の欠落した筈の貌が、結標には『左方』同様喜悦を堪えているように見えて仕方がなかった。

首筋に冷やりと当たった死の感触が、勝利へ踏み出す第一歩にまとわりつく。

『武器』を呼びよせる為に必要な精密演算を、環境の全てが阻害していた。


「終わりですねぇ、『座標移動』。どうやら私が一番手となったようです」




(ああ、ちくしょう。そんなニヤケ面見ながら死ぬなんて、絶対イヤだったのになぁ)




<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:18:23.61 ID:dL59mA310<>
-----------------------------------------------------------


「す、すいません…………一般の方に助けてもらうなんて警備員失格ですぅ……」


全身の輝きをどうやってか収めた風斬は、

支部に常備されていた担架に佐天と鉄装を寝かせて応急治療を施していた。

その彼女に、目線だけは黒衣の魔術師から一時も離さず、インデックスが親愛に満ちた謝辞を贈る。


「助けてくれてありがとうね、ひょうか…………怪我、してない?」

「ちょっと噛み付かれただけだよ、今日一日で慣れちゃった。
 それよりこっちこそごめんね、インデックス。私は、ここまでで精一杯みたい」


彼女が言うには全学園都市のAIM拡散力場の出力が何故か落ちて、

『ヒューズ=カザキリ』にまで影響を及ぼしているのだという。

その肉体の性質上数多くの亡者に強襲されて力を削がれながらも、

風斬は自分に出来る事は無いかと縦横無尽に都市中を飛び回って、親友の窮地に出くわしたのだった。


「………………終わり、だな」


インデックスが見つめる先で、神父が一言、小さく呟く。

同時に、巨大な楕円形を描くよう配置された数万のルーンが青白く赫った。

この鮮烈な光芒から放たれる魔力を察知して、『右方』も刺客を送って来たのだろう。


「涙子、ミズ鉄装、ミズ風斬。貴女達の協力なくして、
 この術は完成をみる事はなかっただろう。改めて、感謝を」

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:19:31.80 ID:dL59mA310<>

「ちょっとは、役に立てたのかな……? これで、麦野さんや美琴さんに顔向けできるよ」

「私、特に何もしてないような、あううう」

「い、いえ! 私も別にそんなあの、大した事をした訳じゃ」


インデックスが佐天の頭部に痛々しく巻きつけられた包帯を優しく撫でる。

眼鏡二人の謙遜が過ぎる態度に苦笑して、ステイルは仕上げに十字架型の霊装を掲げた。

直径二メートル強の氷球が前触れもなく五人の前に現れる。

そして、鍵となる補助術式の発動に使用されるのは“普通ではない”魔力だ。


――――■■、■■?――


「…………Amen」


十字を切った神父が神秘的な球体に閉じ込めたのは、

風斬によって頭頂部から兜割にされた暗殺者の成れの果て。

このような有様になって尚主の意向に沿うよう繰られるマリオネットを、

ステイルは無表情で、そしてインデックスは悲しげに眉を顰めて見送った。


――■■■■――


「ごめんね、救ってあげられなくて」


魔術師の掌中で十字架が強く握られ、中の骸もろとも氷の棺が砕かれる。



そして二度と、元には戻らなかった。



<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:21:32.06 ID:dL59mA310<>

「最大主教」


感傷に浸っている暇は無い。

今この時にも、どこかで誰かが命を懸けて闘っている。

ステイルは大魔法陣の中心に佇立し、インデックスを手招いた。


「すている」


しずしずとルーンの海に足を踏み入れた女は、沖合で待つ男に寄り添った。


「僕は何も心配していない。君が一緒だからね」


屈んだ男の右肩と、微笑む女の左肩が触れ合い、手が重なる。


「うん。いま、あなたと一つになってるって感じる。不思議なぐらい、落ち着いてるんだよ」


魔力が重なり、命が重なり、心が重なり。


「終わらせよう、僕たちで」


最後に燠火のような静かなバリトンと、蒼穹の如く澄んだソプラノが唱和した。




      O T   F O T R
――――開け、解放への戦火!――――




<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:22:36.01 ID:dL59mA310<> --------------------------------------------------


七月十五日、午後二時〇三分。


学園都市に配備された対空防衛システムが、

超高密度熱エネルギーの“内部からの飛来”を感知した。

第一〇学区から上空二千メートルに向けて打ち上げられたのは、太陽。

そう錯視しても不思議のない程の強烈な光源。

日輪はやがて輝きを赤く紅く転じさせて、無数の火の矢にその姿を装った。

降りそそぐ天よりの硫火は迎撃に当たった科学の粋を難なく避ける、逃げる、躱わす。

そして二三〇万の溢れかえる人々の営みを容赦なく蹂躙――――



          ――■■■■■■■■■■!!!!――


――■■!!!!!――


                    ――■■■■■■■■!?――

  ――■■■■■■■■■■■■!!――


                             ――■■■■!――
 

          ――■■■■■■!?――



――――しようとする亡者を、ただただ正確に、冷徹に、焼いて焼いて焼き尽したのであった。

聖書を僅かにでも齧った事のある者が目撃したなら、口を揃えてこう言っただろう。




退廃の街ソドムとゴモラを滅ぼした、硫黄の雨の再来だ、と。




<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:24:13.38 ID:dL59mA310<>
-------------------------------------------------------------------

第一〇学区のとある路地裏。

『右方のフィアンマ』を追跡しようとして亡者どもに行く手を阻まれていた

麦野とフィアンマは、荘厳な終曲を目の当たりにしていた。


「くっくっくっく、ははははははは!!!」

「なによ、気でも違った?」


フィアンマが全身のヒリヒリとした疼きを気にも留めず、高々と笑いさざめく。

呆気にとられる麦野を無視して、世界でも五指に入るであろう魔術師は喝采した。


「全くもって優秀な解答だよ、ステイル=マグヌス。まさか、まさかだ」

「自分では決して認めないだろうがな、俺様は認めてやる」

「お前は間違いなく、天才だ!」


散々彼らを苦しめた『Equ.DarkMatter』を容易く掻い潜って炎雨は異形を殲滅する。

そう、“掻い潜って”だ。

鈍く黒煌する鎧はその中身を失って一つ、また一つ虚しく地にカラン、と落ちる。

その表層には、熱に焼かれた形跡の片鱗も有りはしなかった。


「見事な再現だ、完璧だよ! まさしくこれはローマ正教聖霊十式が一つ――――」


熱に浮かされたようにフィアンマが興奮冷めやらぬ声音で遠方の神父を賞賛し続ける。

大開きにされた口腔はやがて、ステイルの成し遂げた偉業の名を高らかに告げた。

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:24:54.15 ID:dL59mA310<>












「『アドリア海の女王』だ!!」













<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:26:34.75 ID:dL59mA310<>

『アドリア海の女王』。

対象都市によって齎されたあらゆる文明を破壊する、まさに世界地図を塗り替えるための大魔術。

ステイルは嘗ての行使者であるビアージオ=ブゾーニからの尋問で

その存在の一端を耳にして、大切な少女を守るための力にしようと研究した経験があった。

勿論のことインデックスは十年前、ヴェネツィアで『女王艦隊』そのものを目の当たりにしている。

ステイルにとって僥倖だったのは本来対象がヴェネツィアのみに固定されている

照準のロック解除キーを、作成者本人から偶然とはいえ入手していた事だった。


-----------------------


『がああああ!!! アンタ一発殴らせて頼むから!』

『どうどう』


――カラン――


(ん、何だコレ)


-----------------------


「ヴェントの奴め、俺様に詰め寄った時によりにもよって
 『刻限のロザリオ』を落としたんだな。はは、これは傑作だ!」

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:28:22.86 ID:dL59mA310<>

『刻限のロザリオ』の発動条件たる、

“異常な精神状態に追いやられた”『資格者』の選定も現在の学園都市では然程の難題ではない。

ロックが外れれば後は、対象を複数置いてアンド条件で結んでしまえば良いのだ。

いずれも『禁書目録』の知識をフル回転させれば造作もないだろう。


「世界がまだまだ広いとは言っても、なるほど他には存在し得ないな」




『違う、単純に構成が複雑で、膨大すぎるの』




佐天涙子に教授された科学知識が、インデックスの解析をより精密なものに変えた。

『AIM拡散力場の自動追跡』などという前代未聞の魔術を構築するために、

探知に長けた英国式、侵略に秀でたローマ式、死霊崇拝のブードゥー式、

そして力場の探索と追跡を行わせるプログラミング言語(かがくしき)など、

世界のあらゆる文明から理論を拝借した点を実に鮮やかにステイルは突いた。




「『右方』のこの術式以外に、五十を超える都市が習合した『文明』など!」




<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:30:06.27 ID:dL59mA310<>
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「な、っ………………!!」


勝利を確定させ、白井に矛先を変えようとした『左方のテッラ』の眼前を、劫火の矢嵐が通過した。

狼狽して振り返ると、結標に飛びかかったクリーチャーが空中で幾条もの光球に貫かれていた。


          ――■■■■■■■■■■!!!!――


『左方』の美意識からしても存在を許し難い醜悪ではあるが、

逃げに徹したテレポーターどもを追い詰める際、効果のほどは認めざるを得なかった。

それが、あっさりと打ち破られていく。

硫黄の雨粒は亡者の防具をスルリと通り抜けて、内容物だけをものの見事にくり抜いて消滅させた。

邪魔な『過程』は存在しないかのように無視し、対象の破壊という『結果』だけがこの世に残る。

それは即ち、男がチェックメイトに用いた下品な騎士(ナイト)が失われた事を意味していた。


「…………良かったですねぇ。死が一手だけ、遠のきましたよ?」


だから、どうしたというのだ。
                                 ムーブポイント
『左方のテッラ』は己が優勢の不変を信じて第八位、 『座標移動』 へ慇懃に笑いかける。

自在にその形状を変える小麦粉の刃を地に伏す女に射出しようとした時、声。



「一手あれば、十分だわ」


<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:31:21.38 ID:dL59mA310<>

掠れた声は、しかし舞台の上のプリマドンナのように堂々たるものであった。


「それでは御開帳。“プロ”の能力者による」


何かを仕掛けてくる。

結標淡希との距離は約二〇メートル、こちらから攻撃するには距離を取り過ぎた。

瞬刻で判断した魔術師が上空九〇度を振り仰ぐ。




「奇抜な一発芸の時間よ」




『座標移動』の手品の大道具は、『左方』も利用した

直近の――とはいっても百メートルは先の――実験場に鎮座していた物質。




「――――――――――――な、」




頭上三二・三メートルの高さより加速度を得て高速落下するは、

全長十五メートルに及ぼうかというの氷の巨塊であった。




<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:32:27.81 ID:dL59mA310<>

更に『左方のテッラ』の視界の端に、手投げ弾のピンを抜く白井の姿が。

動作を『空気』に遮断させられる直前、彼女は密かにポーチに手を伸ばしていた。

『光の処刑』の射程距離ギリギリに居る分だけ、彼女には『優先』の効力が薄い。

手榴弾か、それともまた煙幕弾か。

あの形状は――――手榴弾。

刹那の間に思索を巡らせて、『左方』は矢継ぎ早に手を打っていく。


「第四優先! 人体を上位に、氷を下位に!」


用済みの偏光マジックを解除、さしあたっての脅威に対処する。



「続けて第五優先!」



白井が息を呑む音が辺りに響くかのようだった。

『神の肉』の象徴たる物質こそ、『左方』最大の矛であり盾だ。


「小麦粉を上位に、爆発物を下位に、っ!?」



ガッシャアアアアアアン!!!



<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:34:22.34 ID:dL59mA310<>

衝撃、いや、物理的なものではない。

テッラに激突して僅かばかりのダメージも与えられずに砕け散った巨塊に、違和感。

氷塊そのものからではない。

巨塊の死角。

つまり、真上。



(誰かが“乗って”いる!?)




「――――――――――!!!」


粉々になった欠片の間を、金髪の冴えない男が重力に任せて急降下して来た。

その全身は濡れ鼠のごとき有様で、何事か叫んでいるが空気中までは伝わってこない。

『人体』を『水』で固めて、より上位の『空気』を無視、呼吸は止める。

魔術師自身がとった方策の劣化模倣で、『第三優先』は既に突破されていた。


ドオンッ!


同時に、すぐ横から爆音。しかし二人の男は一切気を割かない。


(こんな能力者のデータは無い……!)


何者だ、そう『左方』が記憶を探った時には男は既に目と鼻の先だった。


(最初から、これが狙い。見事な作戦ですね――――しかし)

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:36:08.13 ID:dL59mA310<>











「――――第六、および第七優先」




最後の二枚の優先権。

『左方のテッラ』の手駒は未だ全て開示されてはいなかった。

この一連の連携攻撃が、能力者たちの最後のあがきと見て間違いないだろう。

故にここさえ凌いでしまえば、『左方のテッラ』の勝利は揺るぎない。


「小麦粉を上位に、人体と水を下位に!」


『水』を『空気』宙に固定して動きを止めてもいいが、一手遅れる。

振り上げた右腕のせいで目立たないが、

男の左手に小型拳銃が隠れているのを『左方』は見逃さなかった。


(これで、詰みです)


コンマ三秒で練られた魔術師の一手は、攻防一体の最善手。

白井の放った――今度こそ本物の――爆炎を防ぎ続けていた鎧が、

謎の男が振り抜く拳をチーズのように切り刻むギロチンと化す。

無謀にも処刑台に向かって飛び降りてくる男を魔術師が憐れんだ。

<> 神の右席編11<>saga<>2011/08/09(火) 00:39:33.27 ID:dL59mA310<>










      まじゅつし
「楽勝だ、『神の右席』」











勝ち鬨が、裁かれる立場であるはずの科人から何故か上がった。

『左方のテッラ』の脳裏に疑問符が浮かび、消える前に。






                  イレギュラー
その細身の躰を、浜面仕上の『鋼の右手』が打ち砕いた。







<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/09(火) 00:42:14.48 ID:dL59mA310<>
続く


以上、HAMADURAさんに言わせたかった台詞ナンバーワンでした
バトル描写がイマイチなんじゃないかと悩んでいるのですがぶっちゃけ如何でしたかね?
忌憚なきご意見を頂けたら、ついでに罵って頂けたらうれしいでせう

では次回は11日夕〜夜の予定です、おやすみなさいませ皆さん
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/09(火) 00:57:30.00 ID:tvmnkI8DO<> 乙
浜面△ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/08/09(火) 11:05:16.35 ID:4ORoT0iSo<> さすが浜面さん、爆発しなくて良いです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/08/09(火) 17:23:26.78 ID:XQF+n+rg0<> 乙
浜面かっこいいよ浜面

でもこれで浜面の義手が闇のイージスのクロムウェルばりのチート義手だったら、テッラ死亡だなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/09(火) 21:24:25.15 ID:3EG4qJ5bo<> すげえ乙
強いて言えば新右席のみなさんのルックスがイマイチ想像できないのが惜しい
どうしても旧右席の顔で再生されるんだけど、>>1的にはそんな感じでいいのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/08/09(火) 22:05:04.15 ID:a5zA62rDo<> 姫神が繁殖したっ!? <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/09(火) 23:52:29.82 ID:dL59mA310<>
どうも>>1です
ご質問が来てたので久々にレス返し


>>571
出始めの方は展開の都合上意識的に描写を避けてたんですが、その後はすっかり忘れてました
作品内で描写せずにこの場で語ってしまうのはSSとしては反則かもしれませんが

・服装については術式の都合により全員旧右席とほぼ一致
・更に新ヴェントは化粧もしてるので皆さんご存じの13巻ヴェントそのまんま
・原作テッラは年齢不詳ですが新テッラは偽海原的な胡散臭い20代イケメン

新アックアと新フィアンマは今後の都合により詳しい描写を避けますが、旧面子とそれなりに似てます
髪型や髪の色なんかも術式の一部かもしれませんし
それにしても術式って便利な言葉…………いやすいません


>>570
奥さんと息子さんを失って復讐の旅に出る世紀末帝王とな

>>572
姫神さんがマジカルステッキの素振りを始めたようです


他の方もレスありがとうございました
本日はこれだけで失礼します、おやすみなさいまし
<> >>1
◆weh0ormOQI<>sage<>2011/08/09(火) 23:53:32.90 ID:dL59mA310<> な ぜ a g e た し

すいません、半年ROMってきますね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/10(水) 08:18:44.02 ID:7oL0VUPWo<> どんまい
半日でいいよHTML化の対象になっちゃうよ!

テッラさんイケメンかあ…… <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/11(木) 18:25:10.48 ID:IxQL+pbK0<>
先日はとんだ茶番をお見せしてお恥ずかしい限りの>>1です

新訳二巻がとうとう発売されましたが、当スレは新訳一巻までをベースにしています
基本的に展開に支障はありませんが、少なくともある一点においては二巻の描写と大きく食い違う事をご了承ください
まあもう少し先の話なんですけど二巻を読んだ方には違和感バリバリだと思いますので
当該部分を投下する前にも一応警告はさせていただきます

前置きが長いのに投下は短いっていうね、もうね↓
<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:26:57.78 ID:IxQL+pbK0<>

青年は、イタリア人と日本人のハーフである。

両親は彼が生まれてすぐに離婚し、父親と二人、イタリアの片隅の小さな漁村で育った。

成長した彼は絵画に目覚め、その道を志すと告げると父は喜んで支援してくれた。



ある日、優しい父が何でもない夏風邪をこじらせて死んだ。

芸術の世界には何かと金が必要だ。

民衆に訴えかける才能があったところで、伝手を作らなければ埋もれるのみ。

息子に天賦を感じていたのだろうか、父は身体を壊すまで朝から晩まで汗だくになって、死んだ。

男手一つで己を支えてくれた偉大な存在を失って、青年は東洋の島国に帰った母を頼る事になる。

彼の記憶のどのページにも姿を刻まれていない母は、

初対面と言っても過言ではない息子を最初に自らの職場に連れて行った。

母の職業は、学園都市という科学の最先端を行く街の研究者だった。



そして青年は、科学という大地の下に広がる深い深い獄を目の当たりにした。

人の尊厳という尊厳を踏み躙る悪魔の所業の数々、薬液に浸された“生きた”人体標本。

彼の美意識からは、決して許容できる代物ではなかった。

一族の端くれとして、などとわけの解らない理屈で地獄に引きずり込まれそうになって。



気が付けば、青年は母を縊り殺してしまっていた。



<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:28:20.58 ID:IxQL+pbK0<>

なぜ、どうしてこうなったのだろう。

自分はただ、世界の美しさを、光を、キャンバスに切り取れればそれで良かったのに。

あの掃き溜めのような悪臭のする街が、彼の世界を何回転もさせて歪曲させてしまった。

逃げるように、否、実際にイタリアに逃げ帰った青年はもう、絵筆を握る事など出来なかった。



心の芯を徐々に腐らせ、父の遺産を食い潰すだけの宿主なき寄生虫に成り下がった青年は、

いつしか科学の洞の存在を本能的に、微塵たりとも認められなくなっていた。

身体にこびりついた腐臭を清めるためにも、目の前で上がった実験体の断末魔を振り払うためにも。



学園都市を、地図から消してしまわねばならない。



そうだ、それで救われる命もある。

堕落していく己と、犠牲になる誰かを同時にあの奈落から引きずり上げる。

なんて甘美な大義名分だろう。



故に青年は、『左方のテッラ』になった。











青年の母方の姓は、木原と言った。

<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:29:43.56 ID:IxQL+pbK0<>
----------------------------------------------------------------------


「ぐっ、つうう!!」


『左方のテッラ』に会心の一撃をブチ込んだ浜面は、

その反動で魔術師とは逆方向に、意図的に跳ねた。

小麦粉製処刑具が健在である事を視認してしまったが故の苦肉の策だったが、

どうにか上半身と下半身がオサラバ、という惨事だけは避けられた。


「か、はっ」


サクリと右肩を裂かれた浜面が呻きの上がった方向を即座に睨むと、

自らのギロチンに身を切り刻まれた『左方』の姿が。

傷ましい形貌だが、もとより現況はこの無能力者の予定調和に織り込まれていた。

主の血で刀身を真っ赤に染めた刃がサラサラと元の形を取り戻す。

術者の命が風前の灯火である事の、何よりの表れだった。


「本当に、上手くいったわね」


浜面の後方三十メートル程の地点から、女の声。

結標と白井が晴れて自由を奪還したのだと、男は振り返らずに悟った。


「確かにその男、常に具体的な対象を『優先』させていましたの」

「はあ、もう。仕入れたネタが全く役に立ってないじゃない。
 『攻撃』とか『防御』みたいな抽象的な指定も出来るって話だったんだけど」

<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:30:39.12 ID:IxQL+pbK0<>

仮にその情報が真実であったなら今ごろ自分は“はま/づら”だっただろうな。

考えながら男は左手のデリンジャーを瀕死の敵手に向けたまま、痛む右手で無精髭を擦った。


「どうして、そんな博打が打てたんですの?」


パン、と埃に塗れたスーツの裾を軽くはたいて、白井がチンピラ顔に対して疑問を呈した。

忙しなくデニムパンツのポッケなど弄りながら、結標も同意見のようだった。


「お前らは二人とも、『優先』が幾つあるのかに気を取られてただろ?
 それはこいつの思う壺だったんじゃねえのかな」

「どういう事よ?」

「ぶっちゃけた話、こいつが何枚手札を握ってたのかなんて
 俺らにはどう頑張ってもわかりっこねえ事だろ。
 なのにお前らが最初の勝負で逃げ出す直前……」



『そんな訳ですから、殺しますね。第二優先』



これ以上優先権が無いと思わせるかのような、突如の『第二優先』宣言。

優秀な頭脳を持つ能力者たちに、“数”に関する考究を進めさせるには十分なクルーだった。


「そうやって『左方のテッラ』は、抽象的な優先指定をしない不自然さから目を背けさせたのさ」


そもそも三つ『優先』させられるのなら、空間移動を封じて、

小麦粉を武器にして、『敵の攻撃』を『自身』より下位にしてしまえばそれで済むだろう、

というのが戦闘の経緯を聞いた浜面の第一印象であった。

<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:32:08.33 ID:IxQL+pbK0<>

この着想を土台に白井の詳説を噛み砕いて、自説の正しさに確信を持った無能力者。

こうして『左方のテッラ』撃破は、レベル5でもレベル4でもなく――――




「な? 無能力者も捨てたもんじゃないだろ」


学園都市の最底辺、レベル0によって成し遂げられたのであった。




「なんとまあ…………規格外のレベル0というのは、案外ありふれて……。
 いえ、レベルがどうのという括りは下らないお話ですわね。
 それよりそちらの魔術師さん、早く病院に運ばなければ命が」


呆れと感嘆のない交ぜになった白井が自らの職分を思い出す。

どのような思惑が『左方』にあったにせよ、死なせてしまっては意味が無い。

今度こそ役目を全うさせるべく携帯電話を胸ポケットから取り出す女警備員。





「…………ゴメンね、白井さん」

「え? なにをなさっ、ぁ…………」


その背を、いきなり結標が羽交い絞めにした。

反射的に投げ飛ばそうとした白井の口元に、薬品臭濃い薄布が当てられた。

トサ、と固いコンクリートに吸いこまれそうになった身を結標が支える。

闇に生きた経験を持つ男女の視線が刹那交錯し、直ぐに分かたれた。

<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:33:22.65 ID:IxQL+pbK0<>

「…………後は、任せたわ」

「ああ」


意識を落とした白井に肩を回し、『座標移動』がブン、と残響を置いて消え去る。




薄暗いビル陰には、浜面仕上と『左方のテッラ』だけが残された。




「…………おみ、ごとで……した」


一歩、浜面が漆黒の意志を瞳に宿して半死人に歩み寄る。


「あな、たが何者な、のか…………? 聞いて、も、いいですかねぇ」


一歩。小銃がガチャリと鳴る。


「名乗るほどのもんじゃねえよ。ただの無能力者だ」


一歩。魔術師の口から鮮血。


「れ、べるぜろ…………なる、ほどね」


一歩。残り三メートル。

<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:34:58.42 ID:IxQL+pbK0<>


「もう……ひとつ、いいで、すか」



止まる。外しようのない、完全な射程距離内。




「なんだ」




銃口がゆっくりと、確実に額を狙う。





「あなたは、この街で………………生きて、いますか?」





引き鉄に指が掛かる。






「ああ。俺の生も死も、希望も絶望も、この肥溜にこそある」






力が篭る。

<> 「左方のテッラ」<>saga<>2011/08/11(木) 18:35:51.03 ID:IxQL+pbK0<>







「――――――――そうですか、それは良かった」








銃声。






「――――――」





死。





そして一つの闘いと、一人の青年の人生が終わった。


<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/11(木) 18:38:50.20 ID:IxQL+pbK0<>
これが『続き』だ。地獄へ落ちても忘れるな。

というわけで『光の処刑』は完成しているようで弱点ありでした
いやだってあんまり完璧すぎると倒せな(ry
以下チラ裏、読み飛ばしてくださっても結構です↓



さて、>>1は今日よりお盆で実家へ旅立ちます。
しばらく投下も書き溜めも不可能な環境に身を置くので、その間当スレは完全放置プレイ状態です。
つきましては終了への道筋もボチボチ立ってきたので、アンケートなど置いていこうかと。
今後の展開には然程影響しませんが、お付き合いくださる慈悲深い方がいらっしゃれば幸いです。

-----------------------------------------------------

Q1:当スレはジャンルに関しては節操無しですが、仮に今後絞るなら、あるいは>>1に向いているのはどのジャンルだと思いますか?
1.ギャグ
2.ほのぼの
3.いちゃいちゃ
4.バトル
5.その他シリアスラブ・鬱など
6.ぶっちゃけどれもイマイチなんだよサル

Q2:>>1が脳内で温めている以下のネタについて、ビビビと来るものはありますか?(タイトル(笑)は全て仮称)

A.ステイル「『禁書目録』?」神裂「はい」
かまちーがいつまで経っても書いてくれないステイルと神裂さんとインデックスの過去話(ほのぼの?)

B.とある児童の禁書目録
もしインデックスが学園都市にやってくるのが二年早かったら(上条さん主役なのにステイン再構成)

C.ステイル「おめでとう、インデックス」
原作をステイル視点でなぞる(鬱気味、ステイル→インデックス?)

D.このスレの世界観でそのまま続行(いちゃいちゃ)

E.どうでもいいから現行をしっかり完結させろよ豚が

-----------------------------------------------------

どちらの設問でも一番下のエサを選ぶと>>1が喜んでしまうので、細心の注意を払った上で自己責任のもとよろしくお願いします。
でも>>1は放置プレイもイケる口です。
どちらか片方あるいは両方未回答な焦らしプレイもモーマンタイ。



……チラ裏長いですねー
ではまたいつか
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/08/11(木) 19:04:50.66 ID:5MTuFVIAO<> 1
仮に、であってこの右席編をシリアスじゃなくするというわけじゃないのなら
>>1のギャグパートが好きだと言っておく

d
ステインもそうだしそれ以外にも色々見たい人たちがいる
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/08/11(木) 19:20:23.92 ID:l/P2K1wAO<> 乙

1、3
べ、別にこのスレのようなジャンルごった煮なやつ好きだなんて全然思ってないんだからね!!
後多分>>1が総合でやってただろう甘苦いやつも良かったよ

A

い、一番下のエサなんて死んでも選んでやんないからなこの犬が!
ぶっちゃけ何でも追てきますよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/08/11(木) 19:29:06.94 ID:THvwsA3f0<> Q1は、いちゃいちゃがいいと思う。
Q2は、Dがいいと思います <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/08/11(木) 19:59:37.65 ID:DfhR7nGv0<> 5とD。



そういえば浜面ってなんで義手なんだっけ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/08/11(木) 20:02:01.47 ID:nns/XfSz0<> 1
いちゃいちゃ

2
D

個人的には、サラブレッドの続きがあるといいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/11(木) 20:16:35.88 ID:iAKSZ6Apo<> ここの>>1と言えば5のシリアスからの1・3が鉄板だろD <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北陸地方)<>sage<>2011/08/11(木) 20:29:30.56 ID:kE5nX/wAO<> 1

そしてd
だけどbも見たい
多分前に>>1が総合スレで投下したやつだよね?面白かった
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/08/11(木) 22:13:18.48 ID:V8rTu2TAO<> イチャイチャ・D
Bも見たいです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 01:44:54.10 ID:mICocX/a0<> とりあえず、テレポーター同士はテレポできないんじゃなかったっけ?

3のdで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 02:26:44.50 ID:Ew/yv0SGo<> ぶっちゃけ今のままで楽しいので7
そしてDという完全無欠の保守派 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)<>sage<>2011/08/12(金) 06:44:15.20 ID:9F4jabkj0<> 3、D
Aも見たいれす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<><>2011/08/12(金) 09:58:00.50 ID:S7o7tHe40<> 1、Dで

まあ最終的に3、Dが圧倒的多数を占めるのは目に見えているがねフフフ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/12(金) 10:15:17.89 ID:S7o7tHe40<> 上げてしまい申し訳ない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/08/12(金) 17:00:38.45 ID:dnW6W8boo<> >>598
許す

1、Aでお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 20:34:52.98 ID:mmhhjs8V0<> たまには餌もやらんとな・・・ほれE、Eだ
いや、やめておこう・・・ふふ・・3、Dだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/08/13(土) 20:50:34.81 ID:4yRGC4220<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/14(日) 03:00:13.96 ID:MzecJmld0<> 乙です
ジャンルに関してはこのままが一番かと
Bも捨てがたいですが…やはりDで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/15(月) 00:52:02.19 ID:8pNSE6kz0<> >>594
気絶してるからって解釈でいいんじゃね?

1とDだが、できれば別の作品を手がけたいというならばBかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/08/17(水) 15:45:54.54 ID:faYnlyOB0<> あ〜、今更だけど個人的には外伝で第四次世界大戦の話が見てみたいな。
<> >>1
◆weh0ormOQI<>sage<>2011/08/17(水) 18:14:59.75 ID:ix1gQ5n60<>
保守政党が大きく票を伸ばした盛夏の休日、皆さまいかがお過ごしでしたでしょうか?
どうもどうも>>1です。
夜通し高速道を飛ばしては実家でゴロ寝するだけのお盆はなかなかに青春の無駄遣いだったような気もします。
そんな事はさておきアンケートにご協力いただきありがとうございました。
今後>>1が目指すべき方向性もなんとなーく見えてきました。


>>587 >>592
大きな声で言われると恥ずかしい///
総合で珍しくステイルがしゃしゃってる作品は大体が>>1のです
文の特徴とかは意識的に変えてるつもりだったんですが

>>589
前スレ>>730にさらりと書いてあります
読み直していただけると有難いですが、ぶっちゃけそこまでして頂く程のアレでもないです

>>590
( ゚ω゚ ) 任せろー バリバリ
>>312さんにチラ見された浜滝と合体で書いております
遅筆なのはすまぬ

>>594 >>603
あわきん周辺はミスが多くて本当にゴメンナサイ
べ、別に嫌いじゃないんだからね!

>>598
どうかお気になさらず

>>600
ありがとうございますってああ! そんな殺生な!

>>604
意外にシリアスな話になっちゃうんで難しいかもしれないですねー
まずはゴールインしてから、のお話になりますが一応考えてみます


もう一度になりますが、皆さまアンケートにご協力ありがとうございました。
なにはともあれプロット上のラストまではこのまま突っ走るので今後ともよろしくお願いいたします。
9月中には、おわ…………る……はず?

投下再開は明日か明後日の夜からの予定です
それではまた

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:00:12.18 ID:uqhDWJHf0<>
------------------------------------------------------------


「………………見事なものだな」


殺戮の宴の終焉を見てとった『後方のアックア』が、ゆるりとベンチから立ち上がった。

ブン、と愛用のメイスに風を切らせて好敵手たちに切先を向ける。

その表情は抑えきれない闘争への喜びに沸いていた。


「どうだ、一息入れるか? 私は構わないのだが」


冗談交じりに、どんな呪いが掛かっているのか

あの混乱の最中で生き残っている謎の自販機を顎で指す。


「冗談。アンタはどうやら闘いに“公正さ”を求めてるみたいだけど、
 そんなもの私たち相手には無用よ」


二十余のアンデッド軍団との抗争に水を差された形の上条美琴が獰猛に笑う。

高圧電流と『超電磁砲』の乱発にもしぶとく喰らいつき続けた異形を、

安々と滅した火の矢が彼女とて気にならない訳ではないだろう。

しかしそんなものは大事の前の小事である、と言わんばかりに美琴の辺縁を青光が渦巻いた。


「お前との熱い勝負に較べりゃ、いいクールダウンになったな!」


削板軍覇が屈伸しながら言った。

こちらは強がりでも何でもない、『後方』はそう思った。

この男に小賢しい腹芸や駆け引きは似合わないと、

僅か半刻に満たない拳と拳の会話で魔術師は清々しく悟っていた。


「ふ、ふふ…………失礼に当たったな、今のは」


血が熱い。

今、確かに己は生きている。

この一時を与えてくれた神に、生涯で初めて『後方のアックア』は感謝した。
<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:02:05.53 ID:uqhDWJHf0<>

T H M  I M    S  S  P
「聖母の慈悲は厳罰を和らげる」


頷き、『後方』の性質を発動。







そして次の瞬間、消失。


「「ああああああああっ!!!!」」


咆哮が重なった。

ような、気がした。

男の世界から、音が消えていた。


「――――――!!!」


叫んだ。

しかし、何も聞こえはしない。

次いで匂いが、光が、身体の感覚が、消えていく。



「――――――――――――」



熱。

燃え上がるような、体温。

ぶつかり合う眼前の超能力者の魂と、己の根幹を成す“誇り”の摩擦によって生まれた熱。

男は心の底の底から笑った。

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:03:46.44 ID:uqhDWJHf0<>

獲物を大上段から振り下ろす。

右に一回転して削板が躱し、そのまま後ろ回し蹴り。

神速の袈裟切りで返す。

当たれば脚が千切れ飛ぶはずの一閃が、生身の人間の脚部とどうしてか拮抗する。

何故、などとは『後方』にとっては瑣事でさえないが。


「っあ!」


競り勝ったのは、魔術師。

“熱”が離れて押し合いの勝利を知った男は追撃をかけず、メイスを地に突き立てる。


バッシャアアアアアアアッ!


出来あがったのは即席の噴水。

地下を走る上水道を貫いた『後方』はもう一人の強敵に対処する。

肉食獣のように身を丸め、左斜め前方に低空で跳躍。





ヒュッ―――――――ドオオオオオオン!!!



『超電磁砲』。

余波でさえ強靭な体幹を崩しかけるその威力に男の口角がますます吊り上がった。



これこそ、闘争である。


<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:05:12.19 ID:uqhDWJHf0<>

跳んだ先で角度を修正、再び地を蹴って大砲の発射口を潰しにかかる魔術師。

疎らな電撃の雨。

しゃらくさい、突っ切った。

第三位が、今度こそ砂鉄の塊などでない上条美琴が、『後方』の制空圏に入る。


「――――ァァ!!!」


しかしその攻撃は中断。

巻き上がった水流が巨大な破城槌を模して固まり、猪突してきた第七位を迎撃する。

またも、力と力の衝突。

密な水塊の向こう側で美琴が素早く魔術師と超能力者を結ぶ直線の延長上に移動。

コインを取り出すのが視界に入る。

するとハンマーの勢いが緩み、削板がこれを突破した。

下手に構えられていた金属棍棒が、真上に薙がれて能力者の体を意思なき肉へと帰さんとする。

空を切る。

前方への運動エネルギーを無理やり四五度押し上げ己を跳び超えた削板と、一瞬眼が合った。


バチッ!


魔術師の世界に光が戻って来る。

熱情と併せられた冷静が一連の攻防の勝利を告げた。





『後方のアックア』の巨躯に隠れて、蒼の巨大弓。



<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:06:48.78 ID:uqhDWJHf0<>

「ちいっ!!」

「削板さ――――」


『超電磁砲』を自身もろとも魔術師に直撃させる為、

背後に回り込んだのであろう削板をバリスタが捉える。


「ふんぎぎぎぎっ!!!!」


堪えられた。

顔面を貫くはずであった槍は両拳に挟まれて辛うじて止まっている。

だが、空中で無防備になった削板の胴体を――――刈り取る。




「か、 」




獲物を振り上げた勢いで飛び上がった戦士の一撃が胴にめり込んだ。

メキャリ。

幾百の死体を作ってきた経験を持つ『後方』の手。

伝わる感触が、内臓を一つ破裂させたと教えてくれた。

空を舞った足元を科学の砲撃が通過する。




ドッ、ドオン!!!!!



<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:09:02.90 ID:uqhDWJHf0<>

轟音二つ。

削板が受け身なしで地面に叩きつけられ、『超電磁砲』はやはり的中しなかった。

第七位は悲鳴すら上げず、ピクリと指先を震わせるが四肢は動かない。

残るは、第三位。

迫る決着を予感して昂る血潮が、今にも狭い管を破って躍り出しそうだった。


「参った、わね」


『後方のアックア』は答えなかった。

言葉は不要の筈。

眼だけで意図を察知できる相手ではあると、魔術師は女を評価していた。


「まあまあ。次の勝負でケリつくんだから、語らせてちょうだいよ。
 ………………宣言するわ、最後の『超電磁砲』よ。これがラス1のコインだもの」


絶体絶命の好敵手の姿が、いやに大きく見える。

それでこそ、殺し甲斐があるというものだった。

美琴の口上は続く。


「背水の陣って、東洋では言うんだけどね。
 生物が持つ生存本能を極限まで引き出す為に、自分を追い詰める一種の自己暗示よ」


彼我の距離は、いつの間にか三〇メートルほどに。

面白い、と男は思った。

正面から突貫し、必殺の一撃を避けられるかどうか、伸るか反るか。

身を切るようなギリギリの一瞬を演出してくれるこの間合い。

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:11:02.22 ID:uqhDWJHf0<>

「…………行くわよ、『後方のアックア』」

「来い」


短く答えた瞬間、弾かれる安物の硬貨。

くるりくるりと表裏を見せて、上がる、上がる、陽光を反射してキラリと舞い上がる。

上昇のエネルギーがやがて大地からの引力とつりあって失われる。

降下を開始。

爪の先まで丁寧に整えられた美琴の指とコインが重なり。






男の五感が、再び消えた。






軋む筋肉。

身を低く屈め、空気抵抗を減らす。

知覚を置き去りにする視界。

躰が戦場の一部と化す。

吼える。

何も聞こえない。

耳元で熱。





――――――――――――掠った光輝。

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:13:52.05 ID:uqhDWJHf0<>

決闘を制した。

左耳を失って、衝撃に体勢をぐらつかされて尚、そう認識出来た。

さりとて慢心はせず、敗れた超能力者に迫る、あと一秒で終わる。



「私の『ベクトル計算』も、なかなかのもんだと思わない?」



『超電磁砲』の変わらぬ笑み。

音速の攻防の中で、いやに静かに、悠々と、頭に響く女の自画自賛。

先ほどの砲撃は射角がやや“下”を向いていた、と『後方』は思い出した。


ゴオン!


鈍い音、まるで鉄くずが跳ねとばされたような。

地表を抉った砲弾が、直近に存在した“何か”を衝撃で弾いたのだ、と気が付く。

背から迫る無機質な気配。

迅い。






――――しかし。


(下らん)


第七位との死闘を耐え抜いたこの肉体に、今さらそんな小細工が何だというのだ。

その重量が一トン近いものであろうと、聖人の致命傷にはなり得ない。

美琴の『二次砲弾』を顧みもせず、後ろ手にメイスを――――――
<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:15:56.86 ID:uqhDWJHf0<>

(………………ぬっ!!)


男の動きが、止まった。

肉薄する鉄塊の正体を、紙一重で悟る。


(後方にあったのは、『アレ』か!)


撃ち落とすのは拙い。

即座に切り替わる対応策、即ち回避。


「な」


前方に這うように飛ぶと、その先に驚愕を隠せない美琴の姿。

脳に染み付いた闘いの記憶が、瀬戸際で男に更なる攻撃を選ばせた。

勢いそのままに頭蓋を粉砕するのも容易い距離。

棍棒が快音を唸らせ――――――上!







「やはり貴様は、まだ死なんかぁっ!!!」



「アアアアアアアアアアッッッッ!!!!!」



空を仰いだ『後方』の上空に、削板軍覇。

左腕が千切れかけ、白骨は肘から剥き出し、顔面は血塗れ。

その死に体で尚も闘争を選択した強敵に報いるならば、もはや“解放”をもって当たる他ない。

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:18:18.08 ID:uqhDWJHf0<>

右の武器に『聖痕』からの爆発的なテレズマを上乗せして、第七位を迎え撃つ。

同時に左の徒手で術式を組んで第三位を牽制。

放散する水の弾丸。

ショットガンの数百倍の水勢が電熱の壁を潜って三発命中。

たったそれだけで、美琴の身体がダンプに跳ねられたように宙を舞った。

この間0.2秒。


ズガアンッ!!


直後飛来した鉄屑が、標的を仕留める事叶わず地面と強烈に接吻する。

そんな情報を取得するのに割く脳の容量が惜しい。

今この瞬間は、意識が残っているかも定かではない眼前の男との勝負が全て。

三度、男の世界が消滅。

肉体を突き動かすのは体内に流れる血潮の熱さのみ。







「「――――――――――――――――――」」







<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:19:17.26 ID:uqhDWJHf0<>





“説明できない力”と『神の力』の、最大出力同士での、最後の激突。







「――――――――――――」



勝者は。



「――――――――――――」







いなかった。





<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:20:45.54 ID:uqhDWJHf0<>

「ぐは、くっ」


余りの圧力に基盤さえ歪んだ地に伏して、『後方のアックア』は呻いた。

ドサ、と大の字になって魔術師から遠く離れた位置に落下した削板。

呆れた事に、未だ存命であるようだ。


「…………終止」


呟き、テレズマを制御しきれなかったゆえの高負荷で弾けそうな巨体を起こす。

相討ちにはなったが、癒し難きを癒す、男にとっては清水を飲み干したような一瞬だった。

根元からへし折れてしまったメイスを打ち捨て、中空に複雑怪奇な水の紋様を描こうとする。




その時、全身に纏わりつく異様な感触。




「水も滴るイイ男じゃない」



女の凛とした声と同時に、バチリと火花。



「…………ジュース、だけどさ」



<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:22:15.96 ID:uqhDWJHf0<>
-------------------------------------------------------


理論純水、という言葉を上条美琴は思い浮かべていた。



これは電気抵抗率にして18×10^6Ω/pに及ぶという事実上の絶縁体を指している。

万から億に達する印加電圧に耐えられる絶縁体が仮に存在したとして、

シャットアウトされた電気エネルギーが熱エネルギーに変換される以上は

摂氏二〇〇度以上の高熱を帯びて融解、あるいは蒸発してしまう筈だ。



蒸発。

そう、上条美琴の雷撃を再三に渡って阻害した『後方のアックア』の鎧はその度に蒸発していた。



電撃を防いだ直後に巻き起こった濃霧。

夏の熱気をまるで無視した涼しげな顔色。

蜃気楼に映されたような巨躯の揺らめき。

微弱にしか捉えられなくなった電磁波。



そして闘いの最中で美琴と削板の全身に飛散した、発汗作用にしては異常な水分。



魔術師が身に纏っていた見えない『抵抗』とは、

幾度となく攻撃術式に使用されては彼らの前に曝け出されていた『後方』の象徴たる水。

――――そこから魔術で精製されていた理論純水であった。

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:27:01.44 ID:uqhDWJHf0<>

雷を浴びて蒸発してしまったなら、精製し直せば済む。

水ならばそれこそ、学園都市中で蛇口を捻ればすぐに手に入るのだから。

体表面の温度を一定に保ちながら美琴のレーダーを妨害し、

電撃に対する防御まで、まさしく一石三鳥の恐るべき鎧であった。

科学のセオリーがまるで通用しない魔術という世界において、

理論純水やそれ以上の電気抵抗を生む苛性ソーダ溶液をポンと精製する方法があった所で驚くには値しなかった。

『後方』の打った妙手の正体を悟った美琴は返し手を、思わぬ物体に見出す。



(今まで散々蹴っ飛ばしてゴメンね)



それこそが。

美琴の『超電磁砲』の着弾衝撃によって滑空し、

魔術師が間一髪でメイスによる破砕を思い留まり、

『後方のアックア』と削板の最後の闘争による余燼でその内容物を爆発させた――――





      ファンファーレ
(最高の、存 在 証 明 だったわ)





御坂美琴が中学時代からお世話になってきた、“あの”自動販売機であった。

<> 神の右席編12<>saga<>2011/08/18(木) 21:30:16.13 ID:uqhDWJHf0<>

魔術師の四肢に絡みつく温冷多様な液体は“純水”を“不純水”に変質させた。



「『超電磁砲』…………っ!」



激痛をこらえながら美琴が溜めに溜めた雷光を防ぎとめる盾は、もう存在しない。



「最初に言ったでしょ」



今にも暴れ出さんとする『龍』のリードを握りながら、

女は男の苦悶と雀躍が混じり合った唸り声に訂正を求める。



「私には『上条』美琴っていう、誰にも」



そう、誰にも。

たとえあの大好きな親友が、姉貴分のシスターが相手だろうと。





               ほこり
「絶対誰にも譲れない、名前があんのよ」





稲光を全身から迸らせる蒼い龍が、顎を開いた。




<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/18(木) 21:33:32.82 ID:uqhDWJHf0<>
まぁ、そんな訳だから……本気で続けるぞ

>>1はバリバリ文系なんでツッコミはお手柔らかに
かまちー世界の物理法則に則れば多分大丈夫だよね!
でも罵倒は大歓迎です

次回は日曜夜の予定でーす
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/18(木) 23:57:35.48 ID:KOqUXAes0<> 追いついた >>1乙
ところで>>359で食蜂が「第六位」って言ってるのはミスか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/19(金) 12:05:10.05 ID:YwXczfCAO<> かっけえ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 02:00:42.37 ID:A/8ypwaDO<> 自動販売機……。

これまでよく頑張ってくれたな……。
安らかに眠ってくれ……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 02:01:46.83 ID:A/8ypwaDO<> 自動販売機……。

いままでよく頑張ってくれたな……。
安らかに眠ってくれ……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 18:23:51.50 ID:0uBUelUIO<> 乙

これはきっと禁書SS最高にカッコイイ自販機 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 19:08:36.37 ID:wHGrGMPk0<> かまちー世界の物理法則は、その場のノリや勢いに合わせてくれる空気読める物理法則だから全然OKっス。
それにしてもなんという格好いい自販機。
しかし、最終的に吹っ飛ばされてぶっ壊されてと、あまり報われてはいないなぁ自販機。
物を大事にしたいともったいないおばけが出るぞ。 <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/21(日) 20:52:14.60 ID:mwnwyujs0<>
自販機△は一から十までもちろん計算通りだったどうも>>1です

>>622
こんなもんを一から読んでくださってお疲れありがとうございました
統括理事会は第六位を戦闘要員として割り振ったのにボイコットされた、的な意味です
まあ特に深い意味も伏線もないんですが
当スレでは今後も正体不明の第六位さんの登場予定は残念ながらございません

他の方もレスありがとうございました
皆さんのレス一つ一つが強烈な興奮剤となっておりますハァハァ
では本日も参りましょうか↓ <> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 20:53:36.85 ID:mwnwyujs0<>

男は、イギリスの片田舎で生まれついた瞬間から特別な存在として扱われた。

聖人。



貴方は神の子としての特徴をその身に宿す、人を越えた人なのです。



手近な教会の牧師に教わったところで何一つ実感は湧かなかった。

ただ、男は子供の頃からかけっこで負けた事は無かったし、

人生の節目節目で何かと幸運に見舞われては周囲の尊敬を集めた。



しかし、男は飢えていた。



人々が口煩く語りかけてくる聖人としての特異性など、彼には心底どうでもよかった。

誰もが敬ってくる、誰にでも容易く勝利できてしまう。

見えざる手に糸を付けられたような生き様に、己の意思を、生を感じられなくなった。



だから男は、誰よりも『生』の反対側にある『死』に触れてみたくなった。

だから男は、傭兵となった。

そして男は戦場で、ウィリアム=オルウェルに出逢った。

<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 20:55:00.14 ID:mwnwyujs0<>

彼と闘わずに済んだのは、“不運”にも味方同士であったからだ。

そうでなければ、間違いなく勝負を挑んでいた。

酒を酌み交わしながら男が告げると、ウィリアムは面白くもなさそうに答えた。



惜しいな。

貴様は、ただ強いだけだ。

ただ勝てるだけだ。

敗北と勝利の先に何があるのか、考えた事もないのだろう?

貴様には、志が無い。



確かに無かった、解らなかった。

そんなものを持っていたところで、死を知ることが可能になるのか。

そんな感傷を抱いたところで、生のシャワーを、体いっぱいに浴びられるのか。

理解はできなかった。

男はただ、闘えれば、死に触れて生を実感できればそれで良かった。

渇いた心の中に芽生えた“誇り”を一つ、守れればそれで良かった。







だから男は、『後方のアックア』になった。


<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 20:56:34.81 ID:mwnwyujs0<>
------------------------------------------------------------


左手に転がる自販機だったものを何の気なしに二、三度、手の甲で叩いていた。

普段は優しい喧騒に包まれているであろう公園を、

塗りつぶすように覆い尽していた隔絶感が消えた、と削板軍覇は感じた。

『火と祓い』だったか、なんだったか。

雲川の忠言を朧気に回想したところで、彼は黒煙に向かって語りかける声を聞いた。


「終わりよ、『後方のアックア』。これ以上は」


途方もない雷を放ち終えた上条美琴が、臥した魔術師に降参を迫っていた。


「待て、上条」


削板は尋常ではない厳しい声色で女を制止した。

ビク、とその脚が止まる。


「なによ」

「それ以上、不用意に近づくな」

「あまり人を舐めないでもらえるかしら?」


確かに左半身に並々ならぬ負傷を受けた自分よりは、第三位は比較的軽傷である。

しかし、そういう問題ではないのだ。





「お前、その手で人を殺した事があるのか?」





美琴が、虚を突かれたように押し黙った。

<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 20:57:47.84 ID:mwnwyujs0<>

対する削板は仁王の如く雄々しく聳えて、静かに吠えた。


「だったら、退がっていろ。ここから先は俺がやる」

「どうして殺さなくちゃならないの」

「この闘いは、どちらかが死なねば終わらない。そうだな?」


唇を強く噛んだ美琴の問いかけに、削板は瞳を『後方のアックア』へと向けながら応じた。

く、と低い笑い。


「そうだ。闘いとは、須らくそうあるべきだ」


女が肩までかかる生命力に満ちた長髪を振り乱す。

残酷なまでに優しい女だ、と削板は思った。


「俺には、帰りたい場所がある。泣かせたくない奴がいる。だから死ねない」


削板は、最初からそのつもりで決闘に臨んでいた。

だからこそ。


「だから、殺す」


美琴が鋭く、納得できないと此方を睨んでくる。

その視線が背中に注がれる位置まで、既に削板はゆっくりと進んでいた。

目的地からまたも、愉悦を帯びた音。


「誇りを語ったな、上条美琴。誇りとは何かわかるか?」


やけに楽しそうだ、と削板は思ったが、尋ねられた美琴はと言えばそれどころではなかった。

<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 21:01:24.90 ID:mwnwyujs0<>

「わかってるの、死にかけてるのよアンタ」

「質問に答える気は無し、か」


ふふ、と魔術師が吐いた死臭濃い溜め息に、自然と言葉が口をついた。


「根性よりも…………命よりも重いものだ」

「削板さんッッ!!」


美琴がたまらず爆発させたのは怒号か、それとも悲鳴か。


「そう、その通りだ。私と貴様は価値観が合うな」

「誇りの為に、命を捨てるって言うの……わかって、たまるもんですか」


悲痛な訴えを無視して、魔術師の巨躯がじわりと起動する。

右腕が最初に地面に立てられ、次いで右脚が曲がる。

男が右半身をこの期に及んで力強く、ゆるりと起こす様を二人の超能力者は何故か止められなかった。


「違うな、逆だ」


そしてとうとう、『後方のアックア』が聳え立った。


「私の世界では、命より軽いものを誇りとは呼ばない」


全身の肉が焼け焦げて赤黒く変色している。


「死んでも譲れないものなのだ」


顔面の左半分など炭化し、損傷は脳髄に達しているのではないだろうか。

<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 21:02:59.61 ID:mwnwyujs0<>

「アンタたちは間違ってる。
 命を守るために誇りを捨てるとか、そういうものじゃないでしょ?
 生きていればこそ、意味のあるものでしょ?
 それは、天秤にかけちゃあいけないものよ」

「ならば、仕方がないな。価値観の相違だ」


恐怖ではなく憤慨に喉を震わせ、美琴が自死に歩んでいるとしか見えない敵を咎める。

二、三度顔を合わせただけだが、夫に良く似た真っすぐで、曇りの無い眼差しだと削板は笑う。

つられて、『後方のアックア』まで豪快に破顔した。

男たちは笑いを揃え、唖然とした女は長く長く嘆いて天を仰いだ。


「良く考えたら、俺はお前からまだ、名前を聞いてないな」


悪いな、と胸中でひとりごちて削板は、中天を過ぎた太陽を挟んで好敵手と向かい合った。

美琴はもう口を挟まず、動きもしない。

彼女の反射速度ではどう足掻いても男達の決着に先んじられない。

達観した顔で、しかしその視線は愚直にも、二人の男からは逸らされなかった。


「む、そうだったか? それは失礼した」


半面が失われた凄絶な相貌で、『後方』が穏やかに笑む。

削板は右腕を引いて、半壊状態の左拳を固く握った。

鏡のように『後方のアックア』もまた、空の拳をはち切れんばかりに引き絞る。

ぽつり、頬に一雫。

天気雨が降ってきた。

<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 21:05:25.92 ID:mwnwyujs0<>

ぽつ、ぽつ。

血に染まった戦場が洗い流されていく。

昂騰した体温を急激に奪っていく、異様に冷たい大粒。


               なまえ
「最後に聞こう。お前の、 誇 り は?」



だが沸き立った魂と誇りは冷めない、覚めない、醒めない、褪めない。

黄土色の土壌が、焦げたように色濃く染まる。



        Victoria198
「――――『敗れざること』」



ぽつぽつぽつぽつ。

染まる、染め上げられていく。



「いい名前だ」



次の瞬間、二つの影が交差し――――男の闘いが、終わった。







<> 「後方のアックア」<>saga<>2011/08/21(日) 21:08:14.33 ID:mwnwyujs0<>

通り雨は、二人の全身を心地よく濡らしてすぐに去った。


「見る必要なんて、ないんだぞ」


物言わぬ敗者を前に、勝者が決闘の見届け人を気遣う。


「逃げるもんですか。私に力が無かったから、この人は死んだんだもの」

「………………そうか」


削板軍覇は死の先にあるものを捜そうとした事が無かった。

こんな時に、生と死の狭間にある何かの存在を、痛い程に感じるだけだ。

その何かを乗り越えてしまった眼前の骸からは、答えはもう返ってこない。


「ねえ、削板さん」

「ん?」

「人を殺すのって、難しい?」

「簡単だ」


短く、極めて簡潔に返答した。

汗と血と、涙雨で濡れに濡れた鉢巻を脱いで高く放り投げると、一つだけ付け加えた。



「嫌になるほど、な」



舞い上がった向こうの青空に、七色の弓が架かっていた。

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/21(日) 21:09:44.64 ID:mwnwyujs0<>
『続き』って言葉、知ってる?


知らんなぁ…………いやすいません頑張って書いてます
>>1が一番好きな作家は北方謙三で愛読書は北方版三国志です
もし趣味が合う方がいたらぜひ一杯やりましょう
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/08/21(日) 21:15:06.85 ID:qJ4MvLKgo<> 乙。

酒の友は無論、豚の内臓に米を詰めて香草で焼いたもので。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2011/08/21(日) 21:20:45.58 ID:1IaAqleR0<> 私は>>1が好きです。いい>>1を持てて、幸福だと思います。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)<>sage<>2011/08/21(日) 21:23:32.76 ID:0iQMES8Xo<> 乙。
張飛の野戦料理喰いたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 21:26:04.69 ID:YOZrMHUQo<> 「行こうか、読手たち。
 とりあえず、>>1はSS書きとして功名を立てよう。
 少しずつだ。行く道は天下に通じる。
 そう信じて進もうではないか」

ついていくぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/21(日) 21:31:45.42 ID:0PRSdgSto<> 乙!

北方三国志も良いが水滸伝、楊齢伝も面白いよな〜。>>1は好きかな?

…楊齢伝が一番すきと言うと北方好きな友人達から胡乱な顔されるのはなぜなんだろう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/08/21(日) 22:13:26.01 ID:9t5WtgoAO<> 出身校は北方謙三と同じだがどちらかと言えば大沢在昌派だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)<>sage<>2011/08/22(月) 00:08:54.99 ID:baJ1hYoL0<> >>1 乙!

北方は南北朝三部作が好きだ。
三国志なら、安能版が好きだ。 <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/23(火) 21:17:38.39 ID:DsTYZ2Vy0<>
「俺は、いい友を持った。幸福なのだ、みなのようなレスを貰えた俺は。
 友など持てぬまま、死んでいくやつはいくらでもいる」By呂布

どうも、予想外の『男』の多さに杯を用意しきれなかった>>1です
北方三国志で最高の『男』は呂布、この一点だけは絶対に譲れません
矢でも馬止めの柵でも持ってこいやぁ!
ちなみに他の北方作品なら『楊家将』シリーズも好きです
日本人の好きな滅ぶ者の美しさを描いた、最高峰の逸品だと個人的には思ってます

では本日は>>312 >>590 両氏のリクエストを合わせた小ネタをお届けしてまいります↓
<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:20:11.13 ID:DsTYZ2Vy0<>


とある休日 浜面家



仕上「うーっ、おはよーさん…………」


理后「もう十二時だから全然『おはよう』じゃないよ、しあげ? 
   もっと早起きしないとりとくが真似してお寝坊さんになっちゃう」


仕上「いいじゃんかよ、日曜ぐらいさ…………」


理后「典型的な日本のお父さんだね」


仕上「父親が板についてきたって事で、な。多目に見てくれよぉ」


理后「……許して欲しかったら、いつもの」


仕上「おう、いつものな」


チュ


仕上「…………」


理后「んっ…………はぁ、や、まだ」


仕上「満足して……ないな」


理后「しあげぇ、もっと」


仕上「おいおい、こっちは寝起きだぜ…………我慢しろ、な、理后?」アタマポンポン

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:21:22.64 ID:DsTYZ2Vy0<>
理后「はぁぁ」


仕上(理后は各種パラメータの管理をミスるとすぐヤンデレるからな。
   いついかなる時も油断は禁物なんですよテレビの前の奥さん!)ズバッ


理后「お昼はラーメンだよ」ゴト


仕上「寝起きだっちゅーとんのに」


理后「何か言った?」ゴゴゴ


仕上「イエス、マム! ありがたく頂戴します!!」ワリバシパキッ


理后「召し上がれ」ニコニコ


仕上「ほういや、裏篤ふぁ?」ズルズル


理后「まことと向こうの部屋で遊んでるよ」


仕上「何だ、今日は居候たちまで揃って不在か?」


理后「第二一学区の公園でダブルデートだって」


仕上「子供をほっぽって何考えてんだアイツら……」


理后「それがどうも、まことの発案らしいの」


仕上「………………パードゥン?」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:23:11.89 ID:DsTYZ2Vy0<>
理后「両親と煮え切らないバカップルを口八丁手八丁で丸めこんで送り出し、
   見事浜面家に転がり込むことに成功したまことは彼らに背を向けてほくそ笑みました」


仕上「いやいやいやいや」


理后「 計 画 通 り 」


仕上「二歳児があのドヤ顔披露するとか歴史に残る名シーンだなオイ!」


理后「そしてまことはりとくと二人きりになるというミッションを成し遂げたのでした、まる」


仕上「天才ゲームメーカーか! 末恐ろしいっていうか現段階で完成しきってるよねあの子!?」


理后「伊達にサラブレッドはやってない」


仕上「つうか両親より一歩も二歩も進んでねえか……」


理后「まぐぬすたちもかみじょう夫婦も恋の駆け引きを楽しむタイプじゃないもんね」


仕上「特に魔術師二人はあの歳で中学生みたいな恋愛してるからな」


理后「手を繋いで歩くだけで心の底から満たされた顔してるよ」


仕上「微笑ましさだけならあっちのお子様たちと良い勝負かもな。
   俺らにもあんな頃が…………あるようで、あんまりないな」


理后「色々あって、お互いの気持ちを確かめた頃にはとっくにキス済ませてたね」


仕上「三次大戦の後もあちこち飛び回ったしなぁ。
   もしかして俺ら、デートとかあんまりしてないのか?」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:24:59.00 ID:DsTYZ2Vy0<>
理后「んーっと、十回ぐらい?」


仕上「世間一般のカップルがどうかは知らねえけど……多分、少ないな」


理后「そっか」シュン


仕上「…………今度、麦野に頼んで休暇取ろうぜ」ゴッソーサン


理后「え?」


仕上「裏篤も上条たちに預けて、夫婦水入らずさ。
   偶にはこっちが世話になったって文句は言わせねえよ」スッ


理后「しあげ?」



ギュ



理后「…………んぁ」


仕上「だから、今日はこれで我慢しろ。な、理后?」ポンポン


理后「……うん、満足満足」ギュ


仕上「世のお母さんにも、こういう時間は必要だよな」


理后「月々のお小遣いと引き換えにハグタイムを要求しようかな」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:26:08.27 ID:DsTYZ2Vy0<>
仕上「時給はおいくらほどになりますかね?」


理后「1,000円になります」


仕上「おいおい、昼飯代の確保だけで何時間ひっついてなきゃならねえんだよ」クツクツ


理后「…………プラス、インセンティブ契約付き」


仕上「おっ、ボーナスも出んのか?」




「キス一回、500円」




仕上「…………」


理后「………………」ドキドキ


仕上「とりあえず、二〇回ぐらいいっとくか」


理后「…………しあげは現金だね」


仕上「はっはっは、卑しくて結構! それが浜面仕上様の生き方よ!!」


理后「うん、よく知ってる」


仕上「あっさり頷かれると複雑なもんがあるぞ…………とにかく」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:27:06.40 ID:DsTYZ2Vy0<>






「いつも家事と子育てお疲れさん、お母さん」







「お父さんこそ。私たちの為のお仕事、ご苦労様」








<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:28:25.92 ID:DsTYZ2Vy0<>
--------------------------------------------------------------------


裏篤(…………たまーにあんなことしてるからゆだんできないよな)ドアノスキマジー


真理「りとくーん、どうしたのー?」スリスリ


裏篤「……父さんも母さんもたのしそうだなって」


真理「こ、こっちこない?」


裏篤「……きてほしくないのか」


真理「りとくんともっといちゃいちゃしたいもん」


裏篤「……べつにいいじゃんか、父さんたちがいたって」


真理「むり!」


裏篤「……まことさ、いちどカエルせんせいにみてもらったほうがいいんじゃないのか」


真理「うー…………」


裏篤「『遺伝子レベルのツンデレ』らしいぞ、おまえ」


真理「わかんないもん……そんなの」


裏篤「………………おれは、もっとすなおなまことのほうが好きだな」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:29:38.45 ID:DsTYZ2Vy0<>

真理「!!!」ボン!


裏篤「…………………………」ポリポリ


真理「あう……」カァ


裏篤「……ちょっとずつでいいから治せば、いっしょにさんぽできるぞ」ナデナデ


真理「りとくんと、おさんぽ……」ウットリ


裏篤「……じゃあ、早速リハビリするぞ」


真理「へ?」



ガラッ



仕上「んおっ!?」


理后「!?」


真理「」


裏篤「………………」ナデナデ

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:30:36.65 ID:DsTYZ2Vy0<>


真理「にゃにゃにゃにゃにしてんのよキモヅラ!!
   にゃれにゃれしくあたまにゃでてんじゃにゃいわよ!!!!!」バシッ!



ドアトジル



真理「り、り、りとくん? なにして」


裏篤「……『でこちゅー』、してほしいか?」


真理「よろしくおねがいします!」


裏篤「……すなおでよろしい」



チュッ ガラッ



仕上「また!?」


理后「昔のお笑い番組みたいだね」


真理「ええええええええええええ!!!!!?」


裏篤「……ほら、いやなのか?」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:31:55.87 ID:DsTYZ2Vy0<>

真理「あほぬかしてんじゃにゃいわよ!!!
   だだだだだれがすきであんたにゃんかと!!!!!」バックステップ!


トジル


真理「」パクパク


裏篤「……こっちこい、だっこしてやるから」


真理「あ…………あ……」フラフラ


ガラッ


真理「ちょうしにのるのもいいかげんに」


トジル


真理「えへへ、だっこー」


ガラッ


真理「だっこしなさいよねってあれええええ!?」


トジル


真理「ちょま、りと、くん、すとっぷ、すとっぷ!」


裏篤「だがことわる」


真理「いつまでやるのー!?」

<> 小ネタ「交配種」<>saga<>2011/08/23(火) 21:33:30.91 ID:DsTYZ2Vy0<>

裏篤「……ツンデレが治るまでつづけようか」ニヤリ


真理「ひっ」ゾクゾクッ!


裏篤「……やになったらいつでも言えよ」ボソッ


真理「や、や、やじゃないもん! …………はっ!」


裏篤「……そっか、まことはいい子だもんな」ナデナデ


真理「りとくぅん…………」デレデレ




仕上「………………」コッソリ


理后「………………」ノゾキミ


仕上「…………絶妙なアメとムチで調教してやがる」ゾワゾワ


理后「あの二人の将来が楽しみだね」フフフ


仕上「………………」




「ある意味、な」




オワレ
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/23(火) 21:35:18.75 ID:DsTYZ2Vy0<>
「片手で北方賛美をし、もう一方の手で戯けた投下をする。
 >>1という男は、見下げ果てたやつだ」By関羽

新ジャンル:ムッツリドS
ちょっとアレな手段でも厭わない父親と、ちょっとアレな愛情表現をする母親
こっちもこっちでとんでもないサラブレッドだったようです

次回は木曜夜の予定ですよん
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/08/23(火) 21:40:56.50 ID:+cQtd6iQo<> 真理はサラブレットだからって理由でなんとなく納得できるけど
裏篤のこのやり手感はなんだ?両親のどこを引き継いだんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/08/23(火) 21:41:43.82 ID:Fftyw5w00<> >>590だけど予想を上回っています。いい意味で
真理もサラブレッドだけど裏篤もサラブレッドなんだな。父親はハーレム体質(フラグ体質)がありそうだし、母親の遺伝でヤンデレに近い制御能力はほぼ確定。
末恐ろしい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/08/24(水) 10:05:02.49 ID:LiXQXYLg0<> >>1乙
裏篤は父親の使えるものは何でも使う性質と、母親の制御能力引き継いだサラブレットなのかww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/24(水) 23:28:50.21 ID:gobWGn8DO<> 超乙!
浜滝にニヤニヤした
いいお父さんとお母さんになってるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/08/25(木) 08:59:52.30 ID:thWH3iQAO<> 滝壺(旧姓)がかわいい奥さんすぎてはまづら爆発しろ、と思っていたら息子が全部持っていきやがった…
おのれ魔術師 <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/25(木) 20:53:25.35 ID:EoIsPDjW0<>
どうも>>1です

>>658
いま>>659と>>660が良いこと言った!
気に入ったものを一度つかんだらガッシリ離さず(父)
多少ヤンデレ気味のアタックで落とす(母)
>>1的にはこんな感じですかね、まあでも小ネタなんでこまけぇ事は考えてな(ry

他の皆様もレスありがとうございました
ではやや短いですが今日も参ります↓ <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/25(木) 20:57:00.37 ID:EoIsPDjW0<> 一つ忘れていました

注意事項追加
※新約二巻とやや食い違う描写あり

一応頭に入れて読んで頂けると幸いです
では今度こそいきます <> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 20:58:15.08 ID:EoIsPDjW0<>

「ああ、ったくもう!」


苛立たしげに水気を含んだ茶髪を後頭部で一まとめにする麦野沈利。

彼女を一瞥もせず、フィアンマが寂れた街並みの端に屈んで静かに呟く。


「近いな」

「これが偽装って可能性もあるでしょうが」


二人が囲んでいるのは急な雨で流されかけたらしい、色褪せた血痕であった。

道端に大量にこびり付いていた事が幸いして、完全に消失してはいない。

ステイルによって荼毘に付された際、焼き塞がった傷痕が強行軍で開いたのであろう。


「無い」

「断言したわね。根拠ぐらいは聞いてやるわよ」

「逃走などというカードを掴まされた時点で、奴の脳髄は焦げに焦げ付いているはずだ」


一時とは言え座を通して思考の一端さえ共有した相手だ。

フィアンマは『右方』の人格を深い所まで洞察していた。


「一心に目的地へ向かっているのみ。
 この上つまらん小細工などしてみろ、奴の下らん自尊心が剥げ落ちるだけだ」


そして、目的地は間近に迫っている。

到達する前に何としても、『右方のフィアンマ』を捕捉せねばならなかった。

揃って我先にと走り出す。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:00:07.83 ID:EoIsPDjW0<>

それにしても、ダッシュしながら喧々囂々する必然性は那辺にあるのか。


「その、ご立派な、脳味噌で理解は出来ているな、麦野沈利? フゥ」

「アンタの懇切、丁寧なご説明が単純極まりなかったおかげでねぇ、魔術師野郎、ゼェ」


息の合った連携など期待しようがない殺伐としたミーティング。

故に二人は、互いの戦闘に不干渉を貫くと既に合意していた。

フィアンマの提示した基本方針さえ守ればそれで良い、というスタンスだ。


「協調性が欠落した女のせいで、このザマだ。まあ俺様一人でも十分すぎるが」

「お生憎様、これでも企業のトップ張ってまーす」

「ほう、奇遇だな。何を隠そう俺様も年商一千万ドルの大企業でCEOを務めていてな」

「あ? ガキみてーなホラ吹いてんじゃないわよ」

「くくく、そう囀っていられるのも我が社の麗しき名を聞くまでだぞ」

「すごいでちゅねー、年商一億ジンバブエドルなんて。あーびっくりしたわこりゃー」


口の減らない下品な女の相手が自分の宿命なのだろうか、

とフィアンマは冷え冷えとした視線を受け流しながら考えた。

高慢ちきな超能力者がこれからぽっかり口を開いて晒すであろう、ペリカンのような阿呆面を想像する。

男がB級映画の悪役のような薄ら笑いを堪え切れないでいると、


『………………どうしてコントをやっているんだい、君たちは?』


フィアンマの掌中からふにゃりとふぬけきった声色。

思わずお前がどうしたツッコミ返したくなるようなツッコミが入った。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:01:07.61 ID:EoIsPDjW0<>
-------------------------------------------------------------


『お前がどうした、ステイル=マグヌス』

「緊張感の無い連中だな、全く」

「もう、動いちゃ駄目なんだよステイル!」

「ああ、ごめんよ。あまりに心地よくて痛みを忘れてしまった」

「ば、ばか…………」

『聞けよ』


こちらは警備員第二二活動支部。

大仕事を終えた魔術師が、通信護符を片手にシスターの膝上で至福の一時を過ごしていた。


「すいません鉄装先生、『お前らが言うな』って突っ込んできてもらえます?」

「じ、自分でやったらいいじゃない佐天さん!」

「インデックスがあの写真より一歩進んでる……何だか遠い世界のヒトみたい…………」

「けっ、バカップルが」

「あれ、今の誰? まこちゃん…………のわけないよね、あはは!」


ボロソファーでいちゃつくロンドンからの客人を遠巻きにして、

独り身の女四人(うち一人は幼女)が思い思いに愚痴をこぼす。

体を寝かせながら真上に伸ばされた男の腕が、女の頬に軽く触れて薄紅を散らした。

そのままの体勢で、声を潜めて状況報告が行われる。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:02:26.31 ID:EoIsPDjW0<>

「『前方』は辛うじて生き残って治療中、警戒には第八位、結標淡希が当たっている。
 『左方』と『後方』は…………死亡が確認された」

『そうか、では残るはあの若造ひとりだな』

「科学サイドもダメージが大きい。援軍は期待しないでくれ」


死闘を越えた五人の超能力者のうち最も深手を負ったのは第七位、削板軍覇。

ついで第三位、上条美琴と第五位、食蜂操祈、そして白井黒子も例の病院に搬送されていた。

第九位、浜面理后には夫である浜面仕上が付き添っているが、能力の大規模行使の反動が色濃い。


『端から何も期待などしていないよ。俺様一人でも、と何度言わせる気だ』

「その意味不明の自信はいったいどこの生産工場出なのやら。
 ………………『ヴェント』の事は聞かないのかい?」


ステイルが一層小さく、インデックスを撫でていない方の掌に収めたカードに囁いた。

間を置かず、平然とフィアンマが返す。


『生きているなら、必ず俺様の元に怒鳴りこんでくる。そういう女だ』

「なら…………いいん、だがね」


ヴェントの負傷は削板にも劣らず深刻なものであったが、

インデックスを通じて情報を提供してくれた番外個体曰く、命に別状ないという事だった。


『…………さあ、いよいよ捉えたようだ。切るぞ』

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:03:44.95 ID:EoIsPDjW0<>

返事を待たず、護符から魔力光が絶える。

僅かに呼吸を乱し始めていたステイルが苦い顔をした。

通信用の魔術でさえ精一杯のコンディションだと見抜かれていたのかもしれない。


「はぁ……………………」


肺の奥からの長い吐息を聞いて、インデックスが赤髪の下の額に手を当てた。

体温を測りながら、不意にその表情が歪む。


「…………とうまが帰ってきたら、謝らなくちゃね」

「そうだね。今回ばかりは、何発だろうと甘んじて受けざるを得ない」


統括理事会が上条当麻を学園都市外に出すと決定した際、二人は異を唱えなかった。

上条一家を今回の一件に巻き込みたくはない、その一心だった。

しかし現実はどうだ。

美琴を常盤台に軟禁状態で保護する計画は早々に破れ、

真理は真っ先に『右方のフィアンマ』に狙われて命を落としかけた。

一言、上条にそれとなくでも示唆すれば、

あの男は海外出張を力づくでも拒んで家族を守るべく闘いに身を投じた筈だ。


「それが嫌だったのに、なのに、みことは大怪我して、まことだって」

「…………君一人が責めを負う必要は無い」

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:04:57.05 ID:EoIsPDjW0<>

IFについて考えても仕方がない事だった。

ステイル達は美琴が戦火に飛び込むのを止められなかったし、

真理の身に降りかかる火の粉を、事前に十分予測していなかった。

それが事実だ。

作戦の根幹に関与した身として、頭を下げる程度で済むとはステイルも思ってはいない。


(…………どうあれ、アイツが帰ってくるまでに学園都市が平穏を取り戻せるかは)


『ただのフィアンマ』と、麦野沈利の力に懸かっている事は間違いなかった。


prrrrr!


「ん?」

「電話だよ」


その時、ステイルの端末が着信を知らせた。

表示は非通知。

インデックスと一瞬顔を見合わせ、ボタンを押して耳に当てた。



「…………誰だい?」



<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:09:22.66 ID:EoIsPDjW0<>
-----------------------------------------------------------


麦野沈利は己を、図太い神経の持ち主だと常々自評していた。

それは十年前に麦野自身の不始末から壊滅した筈の『アイテム』のリーダーを、

今なお皮の分厚い面で務めている事からも明白だった。


※週に十食は注文するシャケ弁に関しては特例とする


「いやだって昨日のなんて国産だって表示されてるくせにどう考えても
 養殖もののアトランティック・サーモンでちょっと原子崩しっちゃっても仕方な」

「どうした、化粧崩し(アンチエイジング)?」

「いや何でも…………今なんつったんだ赤マルコちゃんよおおお!!!」


さておき、性分である以上は如何ともしがたい。

更に言えば、いつ何時でもその性質が彼女の人生を順風満帆にしてくれたわけではない。

むしろ麦野沈利のそう長くはない大河において

最も濁っていた“あの流れ”を生み出した主因と言っても過言ではなかった。


「静かにしろ、五十メートル程先に魔力の流れだ。紙一重のところで追いついたらしいな」

「…………ああ、確かに。『目的地』はあの塀の向こう側よ」


肌を刺す、喉が涸れる、呼吸が乱れる。

生殺が争われるこの感覚を脳がキャッチしておきながら、

その命令を無視して肉体をコントロール出来るのが麦野の長所であり――――欠点だった。

十年前、忌むべきホスト崩れのような男に対峙した際もそうだった。

泥の底で培った鼠の糞のような経験則はあの時、確かにアラートを最大音量で鳴らしていた。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:10:49.10 ID:EoIsPDjW0<>

だというのに、意地か、傲慢か、それとも生理的嫌悪感か。

兎にも角にも理性の拘束を振り切った結果として。


「アンタが右、私が左。他の打ち合わせは要らないわね」

「俺様が前、お前は一八〇度後方に反転。でもいいぞ」

「…………はっ」


麦野沈利は、全てを一度失った。


「一発で、それで終わりにしてやるわよ」

「ほう、人間身の程を弁えんとここまで傲慢になれるものなのだな」


今にも互いを撃ち合いそうな剣呑な空気の中、男女が二手に別れる。

麦野にも既に、鮮血より赤い敵魔術師の着衣が視認できていた。

『目的地』入口を目前に覚束ない足取りで、残り十メートル。

麦野は走る。

『原子崩し』の発動シークエンスは完了している。

『右方のフィアンマ』が振り返った。

死人だ、そう思った。

生気の失せ切った、腐った土壌のような顔色。

構わず、光を三条瞬かせる。


(先手は取った!)


先手必勝。

二人の超人の間で取り交わされた条約の中身は、その四文字で事足りた。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:12:59.78 ID:EoIsPDjW0<>



『言っておくべき事はただ一つだ。奴に「第三の腕」を使わせるな』




麦野に魔術の講釈など垂れてもしょうがないと判じたのだろう、

フィアンマの事前説明はそれで全てだった。

彼女としても、能力的にも性格的にも、シンプルな短期決戦こそ望むところだ。


「欠伸が出るようなスットロイ動きしてんじゃねえぞ!」


故に、躊躇いもせず初弾から急所を狙った。

頭を、心臓を、首を、殆どタイムラグ無しで『原子崩し』が貫く。


「――――っ!」


しかしおかしい、鮮血が一滴たりとも噴き出ない。

これは――――


「中だ、麦野沈利!」

「わかってんだよんなコトォ!!」


逆サイドから肉薄していたフィアンマが、肩口から炎の腕を出現させながら叫んだ。

一瞬早く、麦野は『目的地』内部へと駆け出していた。

途端に俊敏な挙動を開始した『右方のフィアンマ』――――

いや、それによく似た『死体』が彼女の背後を襲おうとして、逆にフィアンマに阻まれた。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:14:26.42 ID:EoIsPDjW0<>

魔術師に囮人形を任せた麦野は、石造りのアーチを潜って眼を血走らせた。


(どこだ、どこにいる?)


トレーシングペーパーで写したような風景が延々と続く“この場所”ではそうそう身を隠せはしない。

忙しなく首を動かし、三六〇度余すことなく地平線を見回す。

足下の地面に赤い跡、点々と奥へ続いている。

再び走り出す、同時に胃が裏返ったような痛みを覚えた。


(なんで…………)


辿る、辿って疾走する。

麦野は終着点がどこなのか知っていた。


(なんで、なんで!)


毎年のように、というより毎年必ず一度、この道を通って“そこ”に行くのだ。

今日とて、この乱痴気騒ぎが収まれば夜半過ぎにだろうと訪れるつもりだった。


(なんで、アイツが“あそこ”に向かってる……!?)


桁外れの自分から見ても、更にもう一つ二つ、桁を踏み外した怪物の気配。

だけではなく、ベクトルの違う、得体のしれない危機感が麦野の心臓を不規則に掻き鳴らす。

血痕がぐねりと曲がって進路を報せる。

全速力を出すと、後ろで束ねたウェーブがかった髪が解けて、バサリと空に投げ出された。

眼球にかかる毛髪をかき分ける時間も惜しく、走る、走る。


「はあっ、はぁ!」


遂に、“その場所”に辿り着いた。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:16:03.49 ID:EoIsPDjW0<>

「――――――――――――――――――」


上半身裸の無残に爛れた黒い背中が、“それ”を前に膝を折って囁くように唱っている。

日中伊仏、トルコにポルトガル、ヒンディーとブルガリアの言語。

麦野に聞き取れたのはそこまでだが、何故“そこ”にいるのかも含めて、取るに足らない瑣事だ。

今この場で、必殺以外は求められていない。

跡形も残さず消し飛ばすつもりで、全身全霊の『原子崩し』。

破壊の光芒が一帯を包もうとした、その時。



「ん…………」



『右方のフィアンマ』の陰に隠れる位置に、何か横たえられている。

人だ。

麦野は認識した瞬間、尻もちをついてわなわなと震え出した。









「………………ふ、れ、」









<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:17:31.79 ID:EoIsPDjW0<>

すっきりしたブレザータイプの私服にかかるほど長い地毛の金髪。

色白の肌に目立った外傷は見られないが、ところどころ泥が付着して汚れている。

脇には紺色の帽子、昔は同じデザインの色違いだった。

そしてスカートからすらりと伸びる、赤タイツに包まれた脚線美。



「なにして、ん、だ、おい」


「――――――――――――――――――」



途切れ途切れに詰問する。

そうではないだろう、一刻も早く始末しなければ。

しかしそれでは彼女を巻き込んで、傷付けてしま


「麦野沈利! 口を塞ぐだけで構わん、早くやれ!!」

「っ、あ、あ」


誰かが、後ろから何かを言ってくる。

だがわからない、一体どうすればいいのかわからない。


「ちいっ!! 『右方』、貴様そこまで堕したか!」


死体と見紛う不気味な腕が彼女の首筋にかかって、背後の誰かの動きも止まる。

<> 神の右席編13<>saga<>2011/08/25(木) 21:20:01.69 ID:EoIsPDjW0<>

纏わりつく恐怖を無理やりに排除して、眼前の大敵に勇敢にも挑む。


嘗て麦野沈利はその決断で、全てを失った。


自ら打ち捨てたガラクタのような輝きの中には、どうしても取り戻せないものが一つだけあった。












「フレ、メアあああああァァァァッッッ!!!!!」












それはこの場所に、学園都市で唯一つの『墓地』に、寂しく葬られていた。





<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/25(木) 21:23:38.49 ID:EoIsPDjW0<>
続くんだにゃあ

今年のお盆も暑かったですね
学園都市は東京なので多分七月かなーと思ってこうしました

新訳一巻時点では『推し測れない』的な描写だったと思うので初めからこうするつもりでしたが
今思えばむぎのんの人格に対する読み込みが甘かったのかな、と反省しきりです
ともあれ当スレでの麦フレは大体こんな感じだにゃあ

では次回は週末、多分土曜夜にお会いしましょう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/08/25(木) 22:37:04.23 ID:+eUJ+17AO<> にゃあとか軽く言ってるけどもこれちょっとこの展開……

やたらむぎのんプッシュしてるなぁとか思ってたらこの為か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/25(木) 22:42:18.29 ID:FFmwY0Tbo<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/08/26(金) 10:02:29.80 ID:+c9nv5jAO<> 乙 <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/27(土) 18:21:05.99 ID:NbwiN1nB0<>
どうも>>1です

>>679
好きな人には申し訳ないんですが>>1は鬱展開が得意ではありません
どういう展開が得意かって言われたら言葉に詰まりますが

他の方もどうもでした
少し早いですが本日分の投下です↓ <> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:22:30.76 ID:NbwiN1nB0<>


「Death Comes As The End」



詠唱の完了を、フィアンマは指を咥えて聞き届ける他なかった。

ここまでプライドを、自我を捨ててまで『右方』が事を成し遂げようとするとは。

大地があちらこちらで隆起して、割れ目からあの世帰りの旅人が現れる。

ざっと一〇〇体、みすみす兵力の補充を許してしまった。

魔術師と人質の目前に依然変わらず佇む十字を初めとして、

全ての棺から黄泉帰りが現れたわけではなさそうだが、何の救いにもなりはしない。


(何故あの女はここにいて、麦野沈利は慄いている?)


七月十五日。

東京や横浜の一部地域で故人と交流する風習が存在する事を、

そして数年ぶりに亡き姉と恩人の墓参りのため訪日した女性が

彼らの眠る死者の園に命からがら逃げ込んだ事を、フィアンマが知る筈もなかった。


「…………去ね」

「な…………?」

「あ、ふ、フレメアっ!!」

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:23:32.26 ID:NbwiN1nB0<>

『右方のフィアンマ』が、およそ人間のそれとは思えない声を喉から吐いた。

緩慢な動作からは想像もつかない膂力でもって、女性を肉の壁越しに投げて寄こす。

麦野がおっとり刀で彼女の肢体をキャッチした。

息は、ある。

どのような策を講じて取引材料を奪取すべきか、

攻めあぐねていたフィアンマには急転直下の事態だった。

目下最大の障害があまりにもあっさり、しかも敵自身の手で排除されたのだ。

激しく回転を続ける戦況に、いい加減脳神経が焼き切れないか心配になってきた。

しかしそれでもフィアンマは思考を止めはしない。


「いまさら愚を恥じたところで、脳に刻印された“折り目”は消えんぞ」

「黙、れ」


人質を取ってしまったた事で自ら抉った自尊心に対する

涙ぐましい代償行為か、とフィアンマは分析から一定の結論を出した。


(すぐに突き返す質(しち)ならば初めから取らなければいいものを、クソガキが)


内心で強烈に悪態をつく。

下卑た手段に走らざるを得なかった『右方』の揺らぎは、麦野に負けず劣らず激しい。

そのような精神状態と頭脳を切り離して術式を完遂できるのは、男が優秀な魔術師である証だ。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:24:14.45 ID:NbwiN1nB0<>

「あの節操の無い鎧は品切れか。これでは時間稼ぎ程度にしかならないな」


揺さぶりをかける。

異形の胴に、厄介極まりない『未元物質』は影も形もない。

僅かでも動揺を誘えれば、術の維持を阻害できるかもしれない。

打算的な男になってしまったなと自嘲しながらもう一つ、フィアンマは着目する。


(『腕』を出さない、という事は)


矛の役割を果たさないほどに弱体化したか、行使者のダメージが深刻に過ぎるのか。

あるいは――――完全に崩壊したか。


「二十分……いや、十五分でそこまで行ってやる。首を洗う清め水は自分で探しておけよ」


いずれにせよ、勝機は失われてはいない。

問題はむしろこっちだ、と目線を横に流した。


「フレメア、生きてる!? 答えなさい、起きろ、フレメアッ!」


魔術で昏睡させられたらしい元人質、現お荷物に麦野が必死で名を呼び掛けている。


「いつまで足手纏いになっているつもりだ、麦野沈利。邪魔な荷物を抱えてさっさと失せろ」

「なん、だと………………っ、悪い」


漸く現実を認識したのか、今にも『原子崩し』をかましそうな殺気が瞬時に薄れる。

命より優先したいらしい“荷物”を横抱きにしようとして、麦野が首を横に振った。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:25:08.50 ID:NbwiN1nB0<>

「駄目だ、逆だ。私が突っ込むから、フレメアを頼む」

「…………そう、だったな」


敵が大挙して執拗に狙うのは、超能力者のAIM拡散力場だ。

フレメアという名らしい女性を守りながらでは、彼女の能力は存分に発揮しきれない。

麦野を囮にして自分が突撃しようにも、フィアンマにはちらほら感知出来てしまうのだ。


「直衛も居る、油断はできんな」


麦野ではなく己を、主同様に怨念がましく睨みつけてくる遠隔操作型の存在が。


「頼む、お願いだ。どうか、フレメアだけは護ってくれ」

「俺様にとっては路傍の石だ、そんな女」


見苦しい懇願。

プライドを犬に食わせてでも貫きたいものがあるのは、『右方』も麦野も同様だった。

フィアンマには、それが奇妙に羨ましかった。


「そんな、おねが」

「いいか覚えておけ、俺の夢はな」


フィアンマの暴言にも女の平身低頭は変わらない。

遮って、いつも通りに大胆不敵に大言壮語を高らかに謳う。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:25:35.20 ID:NbwiN1nB0<>









「石ころ一つとて取りこぼさず、世界を救う事だ」










<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:26:20.82 ID:NbwiN1nB0<>

「………………ぷっ、ははは!! なに、ガキみたいなホラ吹いてんのよ!」


ぽかん、と口を大開きにしてペリカンのような阿呆面を晒してのち、女が笑い出した。

手足に、心臓に、瞳に、脳に、『原子崩し』麦野沈利が蘇る。

一度崩された精神がこの程度の叱咤で完璧に再起動するものなのか。

そんな微かな疑念は、フィアンマにとっては路傍の石そのものだった。


「わかったら行け、武運を祈る」


返事は無い。





     ――■■■■■■■■、■■■■!!??――


背を向けた女が放った無数の光条が、何よりの応えだった。


「十分でそこまで行ってやるよ!
 しっかり水洗い済ませとけ腐れトマトおおおおおっ!!!!」





「…………下品な女だ」


光精をしもべに引き連れて亡者を屠る後ろ姿。

口さえ悪くなければ、正に北欧神話の戦乙女だったんだがな、とフィアンマは惜しがった。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:27:11.99 ID:NbwiN1nB0<>
-----------------------------------------------------------------

脆い、脆い。

面白いように群がる怪物を千切っては投げ、はせず、只管に千切り破っては肉片を撒き散らす。


            ――■■■■■■■■■■!!!!――


「けっ、冷蔵庫野郎の板切れがなきゃこんなもんかぁ!?」


     ――■■■■■■!?――


『Equ.DarkMatter』が無ければ楽勝だ。

声を大にして叫びたいが、それは第二位の能力を認めるようで業腹だった。

どうあれ、予告通り十分あれば殲滅は終了する。

後はやってはならない事をしたあのクソッタレ魔術師を、文字通り微塵に引き裂くのみだ。


                             ――■■■■!――
 

「おらおらおらおらおらぁっ!!!! 噛み応えが無さ過ぎんだよぉ!!!」


――■■!!!!!――


弾け飛んだ脳漿がこびり付く。


                    ――■■■■■■■■!?――


飛びかかってきた一体の腹部を素手で穿って、内部で電子の弾頭を爆裂させた。


    ――■■■■■■■■■■■■!!――


三体同時。

全身からの一斉掃射で顎から上を、胴体の中心を、右半身を削り取って、まとめて土くれに還す。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:27:59.78 ID:NbwiN1nB0<>

そして、遂に視界に捉えた憎き赤髪の男。

アンデッド兵は十体近く残存しているが、麦野の意識はそれらをシャットアウトする。


(義眼がチリチリする)


『右方』の掌中に剣と秤を携えた、天使を模った像が視認できる。


(髪筋の先の先が尖ってる)


魔術の道具?

知るか、殺すだけだ。


(喉の奥が焼けたみたいに熱い)


今度こそ己と怨敵を結ぶ殺意の交錯を阻むものは何一つ無い。


(考えるな、その前に殺せ!)


殺った。










<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:28:30.90 ID:NbwiN1nB0<>






















「ロートル」


男の口唇が、三日月を描く。


(――――――――――――ぁ)


毛穴から噴き出た脂汗が、顔面を逆さに上った。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:29:39.30 ID:NbwiN1nB0<>


「そのちっぽけな無能力者を庇い立てして、
 “超能力者ごとき”に俺様の首を取らせようと高みの見物を決め込んだのが」



ビビるな、麦野沈利、震えるな。

魔術師がこの期に及んでどう足掻こうと、自分の光撃に二歩、遅れを取る事は決定事項である。

演算開始、電子を固定、『壁』状に停止、高速で操作、叩きつけられる電子線、演算終了。

既に『右方のフィアンマ』は終わっている。



「民の屍で固められた王道を歩めなかったのが」



刹那、麦野の秀逸過ぎる演算機が状況をシミュレートする。


《一射目、脳天を貫ぬく。頭蓋から血反吐が噴き出し『右方』が真後ろに倒れ込m“エラー”》

《二射目、右肩を消し飛ばす。『右方』が苦悶の唸りをけだものの如k“エラー”》

《三射目、どてっ腹に風穴を空ける。孔を通して向こう側g“エラー”》

《四射目、首を落とす。汚いスイカがゴロリt“エラー”》

《五射目、心臓を抉r“エラー”》

《六射目、“エラー”》

《“エラー”》

《“エラー”》

《“エラー”》


結論。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:30:23.00 ID:NbwiN1nB0<>




「貴様の敗因だ」





《黄泉帰った『聖なる右』が麦野沈利の生命ごと、その肉体を薙ぎ払って粉々にする》





ドオン、耳のすぐ近くで爆音。





(あ、死んだ)





麦野の躰が、骸になる音だった。






<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:31:11.51 ID:NbwiN1nB0<>




――――そんな気がした。


「……………………あれ?」


そんな気がした、だけだった。

肉体は、五体全て揃って健在である。


「王道、良識、通念、コモンセンス、合意、暗黙知」


幻聴を聴いているわけではないらしい。

実際に現れた結果は、『腕』が突如として麦野を捉えていた筈の軌道を変更し、

『原子崩し』と別の飛来物を一緒くたに薙ぎ払うという全くのシミュレート外のもの。


「格好いい演説だな。OK、OK」


幻聴であったなら、どれほど良かっただろうか。

十年前、麦野沈利が破滅する端緒となった声を、よりにもよって今。


「大いに良しとしようじゃねえか」


高級スーツともすんなりマッチしそうな上質のスラックス。

ダークレッドの上着は軽く着崩され、第三ボタンまで開けられたワイシャツから胸元が覗く。

アイドルもどきの長い金髪は、麦野の胸のムカツキを最高潮まで押し上げる対視覚兵器である。


「だがもちろん」


背に負うは『神が住む天界の片鱗』として顕現した――――六枚の白翼。

<> 神の右席編14<>saga<>2011/08/27(土) 18:32:19.60 ID:NbwiN1nB0<>














「この俺、垣根帝督にそんな常識は通用しねえ」















<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/27(土) 18:33:33.14 ID:NbwiN1nB0<>
俺の続きに常識は通用しねえ

どいつもこいつも不自然に良い所で助けに入ってきますね!
多分何人かはタイミング計ってます、例えば今回のていとくんとか
次回は三日以内、>>1の調子次第となります <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/08/27(土) 18:43:26.58 ID:oy9scgvro<> 助けるタイミングに常識は通用しねえ

それが主人公サイドってもんでしょ。

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/08/27(土) 19:56:41.20 ID:NdgJqoSAO<> 乙
かっきー格好いいぜ
たとえそれが確信犯だったとしてもな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/08/27(土) 19:57:46.15 ID:9Bbpb6SY0<> 熱い展開だな。
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/08/27(土) 20:00:51.79 ID:CZ/XORcAO<> 乙

このセリフドヤ顔で吐きながら体は冷蔵庫とかならよかったのに <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/28(日) 16:06:11.72 ID:wVjbLB57o<> 垣根さんが格好良すぎてつらいです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2011/08/29(月) 10:54:36.29 ID:SIwaoLoN0<> 垣根が格好良すぎて生きてるのがつらい <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/29(月) 21:28:46.21 ID:yka2i8xk0<>
どうも垣根さんをカッコ良く登場させすぎたと悩んでる>>1です

>>700
そこに気がつくとはな………大した奴だ

他の方もレスどうも
では今日も張り切って行きましょう↓
<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:30:17.95 ID:yka2i8xk0<>

「くそ、フィアンマめ。応答しない」


起き上がれる程度には回復したステイルが、悪態をついて護符を神父服の内ポケットに戻す。

再び発生した一〇〇を越える魔力反応。

しかし驚愕に目を剥く暇もなく反応は次々に消失、解っているのは第二位の参戦と――――


「『第三の腕』だ、先ほどより出力が増してるかもしれない……!」

「ダメ!」


続けて携帯端末を操作しようとすると、縋りつく腕がその動作を制止した。

統括理事会から通知された結標の番号をプッシュし終えるまで、あと数字二つだった。


「向こうの状況が上手く探知できないんだ。垣根からも返信が無い、直接行かなければ」

「行くなら私だけでいい! 『強制詠唱』があるんだから、私の方が役に立つよ!」

「僕がそんな愚行を本気で許すと思ってるのか!?
 君は現状、『右方』にとっての最大の脅威だ! 即刻命を狙われる!!」

「お、落ち着いて二人とも!」


互いに互いの身を慮って衝突する男女を、風斬が仲裁した。

基本がおっとりした彼女だけに、間に身を滑り込ませて縮まるのでいっぱいいっぱいである。

しかしこの場合は、その無害な草食動物のような姿勢が功を奏した。


「ひょうか…………」

「……申し訳ない、頭に血が上ってたみたいだ」

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:31:22.01 ID:yka2i8xk0<>

瞳を潤ませた親友の、命の恩人の表情にステイルとインデックスがボルテージを下げた。

二人の主張は結局、レールのように平行線を形作ったままだった。

止まない頭痛のせいもあって額を抱えこんだステイルが、暫くしておずおずと口を開く。


「…………ミズ風斬」

「は、はい! なんですか?」


真剣な眼差しで見つめられた風斬の頬が紅潮する。

インデックスがガチガチと歯を鳴らしたが、緊急事態につき最低限のアピールに留まった。

ジェラシーの発露に気付いてはいたが、ステイルはお構いなしで論を進める。


「図々しいお願いだとは思うんだが。
 第一〇学区の墓地で行われている戦闘に、加勢してもらえないか?」

「ステイル!」

「先刻の貴女はそれこそ、天使級の存在感を有していた。貴女の実力ならば」

「ご、ごめんなさい。私も出来るならそうしたいんですけど」


風斬がますます身体を小さくして頭を下げた。

ステイルが怪訝そうな顔で更に追究しようとすると、

今度はインデックスが厳しい目つきで二人の隙間に割って入った。


「りこうの能力で皆を助けるのと引き換えに、ひょうかは辛い目に遭ってるんだよ!
 いくらステイルでもそんな酷い事させるっていうなら」

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:32:48.60 ID:yka2i8xk0<>

「待ってくれ。ミセス浜面の『能力剥奪』はとっくに行使を終了しているはずだ。
 力場の干渉はもう元に戻っているだろう?」

「え? そういえば……でも、駄目です。ほら」


風斬が手近にあった湯呑をとって握り締める。

んぐぐ、と可愛らしい唸り声を上げて、拝むように両手を掲げた。

しかし何も起こらない。


「いや、ほらと言われても。それがどうしたと?」

「いつもならちょっと力を籠めればこのぐらい、粉々なんですけど」


ステイルは英国紳士らしく、『大丈夫かこの子』という面を寸でのところで皮の下に隠した。

考えてもみれば彼女に関して、インデックスからは友人だという以上の情報をまるで得ていない。

AIM拡散力場に関する能力者らしいので、それらしく話を合わせていただけである。

本人が語らない限りは、ずけずけと立ち入って良い事情とは思えなかったからだ。


「………………そ、そうか。それは不思議だね…………………………貴女が」

「いったい何が起きてるんでしょう? ゾンビさんに咬まれた痕がなんだか疼くし……」

「大変! るいこ、救急セット貸して欲しいんだよ!」

「ベ、別に出血とかしてるわけじゃ、ん、あ」

「どうかし、な!?」


突如として蹲った風斬が件の傷痕を起点に強く光を放ち始めた。

ステイルが咄嗟にルーンを翳し、インデックスが心配顔で駆け寄った矢先。




「ん、こ、これってまさか…………ダメ、離れてくださいっ!!!!!!」




<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:34:15.34 ID:yka2i8xk0<>
--------------------------------------------------------------------


全ての役者が上がりきり、決戦の舞台と化した学園都市唯一の墓地。

最強の『神の右席』と対峙した垣根帝督は、麦野沈利と並び立って情報を交換していた。


「おでましになるとは思わなかったにゃーん、『ていとうこくん』」

「次にその名前で呼んだらミロのヴィーナスみたいに腕もぎ取るぞコラ!
 俺だってな、テメエをはじめ他の超能力者が何人くたばったって知った事じゃねえんだよ。
 …………ただ、青頭と花頭が、助けに行ってやれってうるせえから」

「おえ、気持ち悪っ」

「それ結構傷付くんだからな! キモイよりグサッとくるんだからな!
 ちゃんと他に理由もあるんだよ、おい魔術師!
 てめえか、ウチの製品をかっぱらって好き勝手やってくれたのは」


崩れた緊張感をニヒルな笑みで必死に繕う。

だが瞳の奥の炎は、激怒という油を注がれて轟と燃え盛っていた。



「こちとら社員の生活背負ってんだ。全くもってふざけたネガキャンしてくれたな、クソが」



垣根帝督の闘う理由は、“そこ”に集約されていると言って過言ではない。


「ああ!? オマエが手を回してたんじゃねえのか第二位ィ!!」

「ありゃ夏の商戦で目玉として売り出す予定だった防弾チョッキだ。
 一か月前に研究施設からサンプルが盗まれたって報告があってよ、
 どこの命知らずな産業スパイかと思ってたら、魔術師とは予想外だったぜ」

「ふざけんな、魔術師野郎にあんな高度な化学処理ができるわけあるか。
 オマエが裏で手を貸したんじゃなきゃ」

「確かにな、それは俺も気になってた所だ。魔術師、てめえ…………いったい何者だ?」

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:35:40.92 ID:yka2i8xk0<>

次第に二人の会話は、敵に向けるより余程熾烈な殺意を帯びていく。

当然だ、と垣根は冷笑した。

一度殺し合った者同士、そう安々と共同戦線など張れるものか。


「その男が何者なのか、興味深い議題だがな。やってる場合ではないぞ、能力者ども」


第三者の冷えた声色。

慣れない新ボディに果てしないムカツキを喚起する類の人種。


「どうした、何故『腕』を振り下ろさない、若造?
 今の漫談の間に叩きこめば、晴れて俺様との一騎討ちだったのにな」


その上矛先は自分を素通りと来ている。

社員に慕われる寛大な会長像を実践しようと常に心がけている垣根とはいえ、

流石に一言物申さねば気が済まなかった。


「てめえこそ誰だよ、あっちの薄汚え野郎の仲間か?」

「貴様らの敵ではない。今はそれで十分だ」


男が二人、同時に鼻を鳴らして二重奏と洒落こむ。

ともあれ必要最低限の情報は取得した。

だが垣根も麦野も味方らしい魔術師も、誰一人攻勢に出ようとしない。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:36:37.94 ID:yka2i8xk0<>

「第四位」

「序列で呼ぶんじゃないわよ」

「どうしろってんだ…………なあ、お前もなのか?」

「……っ、そうよ。文句ある?」


やはりそうか、垣根は心中で呟いた。

自分と麦野が敵を前にして剣呑なお喋りを中断しないのには共通した理由がある。


(拭えねえ)


イメージが湧く。

直感できてしまう。

あの『腕』に挑みかかった瞬間、前衛的な冷蔵庫ボディに逆戻り。

どころか、今度こそ脳味噌ごと塵になるかもしれない。

ただでさえ急ごしらえのボディと『自分だけの現実』が

上手く噛み合っていないのに加えて、十年前第一位に敗れた時以上の、隔絶した彼我の戦力差。

だが、それでも。


「やるっきゃねえな。こんな貧弱なモヤシに舐められたら、超能力者の名が廃るぜ」

「…………! くっそが、当てつけてんじゃねえぞ!!」


愉快なモニュメントを空に飾って沈黙するのみの相手に、惧れを成して手を拱いている。

自嘲気味に放った現状確認は第四位の心根をも大きく抉ったようだ。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:38:26.15 ID:yka2i8xk0<>

気位の高い人格破綻者らしく、まずは麦野が先陣を切った。


「おう、やっちまえ。骨が残ってたら屑籠に放りこんどいてやるから安心しな」

「発射角度変えたくなるからやめろぉ!!」


激励と呼ぶには暴力的なエールが、『原子崩し』の出力を上方修正する。

からかい混じりに罵りながら垣根もその実、あらゆる角度から援護できるように翼をはためかせる。


カッ!!!


『右方』へ一直線に射出された光の奔流。

迎撃のために『第三の腕』が――――――動かない。

動いたのは、否、“動かされた”のは。






「んだ、と」






麦野がみっともなく呻いたが、彼女が醜態を晒さなければ垣根がそうしていただろう。

光の軌跡が魔術師の手前で、ものの見事にひん曲がった。

歪曲という言い方は正確ではない。

あれは。
<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:39:29.38 ID:yka2i8xk0<>












「反、射?」






微かに肌を濡らす慣れ親しんだ“力”と、脳を焦がすいつかの屈辱。

“正体不明”のエネルギーが、手袋を被せるように『腕』を包みこんでいた。




<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:40:37.79 ID:yka2i8xk0<>

白翼が躍り込み、反射された『原子崩し』を麦野に直撃する前に容易く掻き消す。

垣根の脳内で、第一位の憎たらしい顔が像を結んだ。

今の現象は、ベクトル操作――――


(いや、違うな)


沸騰しかけた脳漿を瞬時に冷やして、学園都市第二位の頭脳が超高速演算を開始する。


《進入角に対する反射角は?》

《反射前と反射後の熱量の変化を観測》

《被膜の発生位置、皮膚から五九ミリメートル》


経過報告。

何一つ、十年前の『一方通行』と一致しない。


(ならば、この現象をどう説明する?)


《類似するパターンを検索》

《該当、一件》


結論。



AIMバースト
《幻想猛獣》

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:42:18.14 ID:yka2i8xk0<>

暗部の一員として、学園都市内で発生した事件は概ね把握している垣根である。

木山、とかいう研究者が主犯となったその事件は垣根の印象にも強く残っていた。

なにせ、事件の経緯が経緯である。


(アホくせえ感傷に浸ってる場合か。だが俺の能力は問題なく使用可能だし、
 第一アレにはバカでかい演算機(のうみそ)が――――まさか、あの『腕』か?
 …………わからねえ事ばかりだが、これ以上考えても仕方がねえな)


HOWもWHYも理解不能だが“WHATDUNIT”を解明できたなら他の些末な要素に興味は無い。

詰る所、何万人、何十万人のAIM拡散力場を“束ねた”結果が眼前のコレ。

『右方のフィアンマ』の右肩から顕れている赤い『腕』に凝集する力。

その片鱗は、肉眼でさえ視認可能なまでに膨れ上がってきていた。


「くく」


押し殺した笑いに乗って、抑えがたい衝動が、激情が発露する。

命を二度まで救われておいて礼の一つも述べない第四位が眉を顰める。


「くくくくくっ」


よりにもよってあの男の模倣で自分を仕留めよう、などとは。

矢先、ねじ曲げられた通常物理法則を感知。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:44:21.61 ID:yka2i8xk0<>


「っはは、ははははは!」


『右方のフィアンマ』が指一本動かさずに、火炎を、電撃を、水流を、爆風を巻き起こした。

                  ケルビム
対する垣根は凄絶に哄笑して、智天使の如く舞い上がってこれを迎え撃つ。

今度ははっきりとわかった。

魔術などという理解不能のオカルトではない。

      かがく
これは、『超能力』だ。







「やってみろやコラ。そんな猿真似のお遊戯じゃあ、俺は絶望させられねえよ」







<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:47:30.25 ID:yka2i8xk0<>
-------------------------------------------------------------


人質をとったのは死者の大群を召喚する為の時間稼ぎだった。

そしてそれすらも、徐に輪郭を変えていく『聖なる右』の発動を隠す目晦ましでしかなかった。

魔術師が抱えていた『右方』の特殊霊装を、遠目に目撃したフィアンマは確信した。

道中で儀式を行わなずにこの霊園まで遥々這いずったのも、

発動までの“一〇分”を一〇〇%、不動で不可侵の領域とする為だったのだろう。

更に『右方』は、未だ切り札を隠し持っている節がある――――――自分と同じように。


「さてどうしたものか、これは」

「ん…………え、と、あなたは?」


冷や汗を垂らしながらフィアンマは、フレメアに掛けられた催眠魔術を解いていた。

目元を幾度も擦って上半身を起こした女性に、悪戯にかかずらっている余裕はない。


「二本の脚で立てるなら、何も聞かずにこの場を離れろ」

「え、え? 麦野、さん?」

「お前が居るとあの女も戦闘に集中できん。下手を打てば死ぬ」

「え…………」


業炎が『未元物質』を透過した太陽光線と激突して鎮火され、

かと思えば次の瞬間には紫電が瞬いて消える。

圧縮された空気とぶつかった白翼が、混入された不可視のベクトルに弾かれる。

垣根の体勢が崩れ――――

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:48:42.78 ID:yka2i8xk0<>

「おらあっ!!」


そこを狙って襲いかかる水塊を、横合いから乱入した『原子崩し』が蒸散せしめた。


「借り一つ、返したわよ」

「ツケはまだまだあるぜ」


世界のまるで違う超能力大戦の間隙を縫って、麦野は果敢に闘っている。

しかし無謀だ、長くは持たないだろう。


「理解できたか? ならさっさと行け」

「わ、わかった! あの、その前に大体少しだけ、麦野さんに伝えたい事が」

「…………手短にしてくれよ」


流れ弾に注意を払いつつフィアンマは顔を背けた。

フレメアはミッドナイトブルーの小洒落た帽子を被り直し、

その下の相貌を憂慮と葛藤の綯い交ぜになった色に塗り替える。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:50:04.91 ID:yka2i8xk0<>

「ありがとう………………麦野さぁん!!」


辺り一面に漂う血と肉の臭いにそぐわぬ、朗らかな声が響き渡った。

二〇メートル先の戦地で麦野が大きく肩を揺らす。

女は振り返らず、天使と死をパートナーに狂った舞踏に興じ続ける。

その背中に、心臓の揺れと共鳴した、絞り出された叫び。









「お願い、死なないで! 言いたい事が沢山あるから、生きて!!」









瞬間、麦野の戦闘機動が目に見えて鋭く研ぎ澄まされた。

そうしてフレメア=セイヴェルンは涙を浮かべながら、亡き姉フレンダの墓前を後にした。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:51:21.84 ID:yka2i8xk0<>

「………………いつかの金髪に似てたな、あの女」

「アンタには関係ないわよ」

「余力があるじゃないか、お前達」


フィアンマが加わった戦線は激化の一途を辿る。

『聖なる右』――――もはやそう呼称して良いかも定かではない『腕』が、

一つの生命体のように蠢いては超能力を乱射してくる。


「おっ、と、畜生め! 魔術師には、能力は使えねえんじゃねえのかよ!
 さっき神父とインデックスが言ってたわよね!」


眩く光る空。

降り注ぐ雷撃と粒子砲が相殺する。

麦野の疑問は誰に宛てるともなく発された。


「俺様は科学については碌に知らん。よってわからん。以上」


微動だにしない魔術師本体とは裏腹に活発な『腕』。

人間で言えば中指にあたる部位に焔が灯る。


「『硫黄の雨は大地を焼く』――――俺様の炎も存分に味わっていけ」


フィアンマが呼び起した五〇近い火の矢が一点集中。

二つの猛火が正面衝突して小規模の爆発が無数に発生する。

突き抜けた硫黄の雨粒が『腕』を灰燼に帰そうと迫るが、反射膜に防がれた。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:52:42.09 ID:yka2i8xk0<>

「コイツ…………能力者に“なった”のか、まさか?
 しっかし魔術まで跳ね返すのかよ、反則だろうがそんなもん。
 クソッたれの第一位にそんな事ができるなんざ初耳だ」


三対の天鱗が垣根の意思のままに荒れ狂った。

回折した殺人光線が四方八方を跳ねて敵を破滅せんとする。

しかし、やはりその全てが美しいまでに整然と来た道を戻った。


「ちっ、反射膜の構成を追い切れねえ!」


垂直に上昇して回避した垣根が何事か吐き捨てる。

優雅に蒼穹を舞う天使を地べたから見上げながら、フィアンマは間合いを離す。

積極的な攻撃は――――――来ない。

思索を巡らせる。


(最初から、この男の取った行動は何もかもがおかしかった)


他の三人の『神の右席』は当初から定められた目標、超能力者狩りを実行していた。

だというのに『右方』はといえば上条当麻への牽制目的で幼子を追い回し、

フィアンマとステイルらに敗れた後は時間稼ぎに終始している。

一切合財が『神の右席』の目的と噛み合わないのだ、それでは。

だがもしも全てが、眼前の悪趣味なオブジェを生み出す為の下地だったとしたら?


「『右方のフィアンマ』、これが貴様の求めたものか?」


今はこの街に居ない『幻想殺し』と何処かに存在する『科学の力場』を手中に収め、

鬱陶しく『座』に干渉を施してきた先代を始末し、

『聖なる右』を彼の理想の形に昇華させようとしているのでは?

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:54:47.71 ID:yka2i8xk0<>

それは当に十年前、フィアンマが三次大戦を引き起こしてまで成し遂げようとした目的だった。

                       まじゅつ        かがく
違いは唯一つ、補強に用いた理論が『禁書目録』なのか『AIM拡散力場』なのか、それだけ。


「科学と魔術の交差。これが貴様の目指すものなんだな」


ならば目的の先にある願いはどうなのか。

やはり、別物なのだろうか?

それとも――――




「邪魔なんだ、境目が」




濁りきった底なし沼から沸いたと錯誤しかねない音吐。

生存が不思議なほどの負傷には違いない。




「全ての、境界線を、消し去ってやる」




生と死の境目を流離う男の台詞ではないな、とフィアンマは笑う。

ぼんやりと、この魔術師が死を賭してでも為したい“何か”が、


「成程。漸く貴様の本音が聞けた気がするよ」


――――“WHYDUNIT”が見えてきた。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:56:32.60 ID:yka2i8xk0<>

「麦野沈利。それから……『ていとうこくん』だったか」

「か・き・ね・て・い・と・く・だ!! 解った上でやってんだろゴラァ!」

「キンタマ小せえなぁ童貞メルヘン野郎。で、何よ?
 こっちはいつ『腕』がズガン! って来るのか気が気じゃないんだけど」

「その点はひとまず、心配しなくてもいい。
 おそらく、『第三の腕』は時間が来るまでは振り下ろされないだろう」


と言うより、可能ならとうの昔にやっている筈だ。

フィアンマの察する所、魔術師が待っている

“何か”が『腕』の行使によって崩れ去ってしまうのだ。

ならば策は二つ。

一つ、押しに押して『右方のフィアンマ』を追い詰め、『腕』を使わせてしまう。

堅実ではあるが、こちらの手を選べば――――


「誰が童貞だ腐れた膜ブチ抜くぞ売女ァァッ!!!」

「上等だ粗末なブツ綺麗サッパリ去勢して、あ、ゴメーン! 本体は冷蔵庫の方だったわねーん」



(確実に一人は死ぬ、な)


敵が受動気味であるのを良い事に足を止めて、

節約したエネルギーを口に回す超能力者たちを一歩引いて眺める。

嘗ての、十年前の『右方のフィアンマ』ならばどうしただろうか。

本懐を遂げるべく迷いなく屍の山を築いた、あの愚か者ならば。

しかしこの瞬間、此処に立っているのは『ただのフィアンマ』だ。

<> 神の右席編15<>saga<>2011/08/29(月) 21:57:56.35 ID:yka2i8xk0<>

ヒートアップの止まらない二人を冷ややかに窘める事すらせず、

フィアンマは勝利への第一歩を火花弾ける熱視線の狭間に割り込ませる。


「お前達。一度でいい、俺様を奴の懐へと飛び込ませろ」

「…………勝算があんのね?」


いち早く反応したのは麦野沈利だ。

目が合う。

互いの瞳の内に『信頼』の二文字は欠片もありはしない。

在るのは経験に裏打ちされた、己の力に対する自恃のみ。


「おいおい『原子崩し』、こんな馬の骨に賭ける気か?」

「言っとくけど命はチップに替えられないわよ。生きて帰るって約束したからね」


『信用』とは即ち、相手をどこまで疑うかだ、と言い換えてもいい。

垣根を半ば無視する形で麦野は、フィアンマの博打に乗った。


「ギャンブルで賭けていいのは自分の命までだ。
 さて垣根帝督、お前はこの尻馬に如何ばかり乗る?」

「………………ま、いいぜ」


フィアンマの顔つきに並々ならぬ自負を見た垣根も、肩を竦めて大張りに乗った。

魔術師一人、そこらにばら撒かれた屍の仲間入りをしようと痛手にもならない、といったところか。


「『壁』の向こう側まで見事、鉄砲玉を配達してやる。帰り道はナビしねえから勝手に死ね」
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/29(月) 22:02:41.16 ID:yka2i8xk0<>
続きますねー


(言えない…………垣根無双じゃないなんて言い出しにくい……)

麦野と垣根が万一再会したらむぎのんが問答無用でブチコロしにかかりそうな気もしますが
まあそこは十年経って二人とも丸くなったということで

木山せんせーも出したかったですが如何せん科学側はキャラが多すぎて無理でした
出てないヤツで好きなキャラとか皆さんいますか?
>>1はやはり木原くンですが死んだと思われるキャラは
出さないことにしてるので泣く泣く見送りました

次回は二日後の夜でーす
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/08/29(月) 22:31:14.39 ID:wfpBD19AO<> 好きなキャラといったら原作じゃ死んだと思われてた垣根くンかなやっぱ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/29(月) 22:42:05.94 ID:k4TtD/1Xo<> アウレオルス=イザード…死んでないけどね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)<>sage<>2011/08/30(火) 00:19:12.24 ID:xvazyD8AO<> >>722にゴドーのセリフがwwww <> >>1 ◆weh0ormOQI<>saga<>2011/08/31(水) 18:18:22.61 ID:SvY5VHKG0<> 申し訳ありません、予定の日時となりましたが今回は投下ではありません。
最近話題の↓表示について皆さんの意見を伺いたいのです。
自治スレの流れについて、私としては何の文句もないんですけどね。

小ネタとかなら↓表示があろうと特に気にすることなく投下できるんですが、
現在の展開がシリアス(笑)だけに、読んでる側としてどう思うか教えて頂きたいです。

1:別に気にしないから投下してほしい
2:表示が消えるまで待ってから投下再開、その後のペースは今まで通り
3:表示が消えるまで待ってから投下再開、停止中の分を取り戻せるよう何日か連続投下

↓表示がいつ消えるのか私はまったくわからないので、どこか関係する情報を目にしたら併せて教えていただけると幸いです。
投下間隔についても○日おきぐらいがいい、みたいな意見ももらえると助かります。
では失礼します。
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> >>1
◆weh0ormOQI<>sage<>2011/08/31(水) 18:37:40.41 ID:SvY5VHKG0<> 追記
特にご意見がなければBでいきまーす
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(神奈川県)<>sage<>2011/08/31(水) 19:01:18.26 ID:okQSGsgpo<> まぁ普通は3だろうなぁ



しかし俺は1を選ぶッ!
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(栃木県)<>sage<>2011/08/31(水) 19:56:37.09 ID:p3G/aZ/a0<> 俺も1を選ぶ!!
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 20:03:37.22 ID:/Wybkw8Yo<> 笑止。↓など気にする者は真理には届かず。故に選択は1ッ!
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/31(水) 20:08:33.16 ID:RuugMJ4Ao<> 1か3で迷ったけど1多いから敢えて3でww
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(埼玉県)<>sage<>2011/08/31(水) 20:12:41.40 ID:G72rgGJ30<> >>1に気持ち良く投下してほしいので3で


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(関西・北陸)<>sage<>2011/08/31(水) 20:22:07.86 ID:tvPwW+aAO<> 結局、何だろうと>>1の選択に従いついていくって訳よ
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 20:33:04.07 ID:/Wybkw8Yo<> >>734
当然。>>1の選択に従うのみ。>>731はあくまでも希望。
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(関東・甲信越)<>sage<>2011/08/31(水) 20:48:14.79 ID:5V5T8IDAO<> 1で
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/31(水) 21:33:31.95 ID:Y42xXBYL0<> 3で  ↓あるとスレが汚れるような気がするので


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◆weh0ormOQI<>sage<>2011/08/31(水) 22:17:10.38 ID:SvY5VHKG0<> どうも野暮ったいことを聞いてしまったかな、と今にして思いました
数は拮抗しているようですがここで区切ってしまいます
1を選んでくださった皆さんには申し訳ありませんが、3の方針をとらせていただこうかと
とりあえず一週間ほど経って解除されていないようなら、その時また考えますね
その間は軽い小ネタくらいなら落としにくるかもしれません
では本日二度目の失礼します

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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:22:15.07 ID:/Wybkw8Yo<> >>738
了解。次回の再開楽しみにしている。期待待機。
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◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/04(日) 22:15:19.29 ID:xTT7JjrH0<>
>>1復活! >>1復活!! >>1復活!!!

と別段騒ぎ立てるようなことでもありませんねー
では本日より四日連続での投下となります

>>739
ヘタ錬さんチーッス! 出番なくてゴメンナサイ
どうもお気遣いありがとうございました

>>741
どうもお疲れ様でした
まずは一息入れるために一杯どうぞ つセンブリ茶

他の皆様もご意見ありがとうございました
では行くべさ↓ <> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:18:08.78 ID:xTT7JjrH0<>

五歩後退したフィアンマの盾となる位置に、第二位と第四位が仁王立ちする。

垣根は前触れも相談も無しに翼を大きく広げて、


「おらよッ!」


ズガガガガアアアアンッ!!!!


「……麦野、三分持たせろ。その間に『逆算』する」


『右方のフィアンマ』に対して数十万に及ぶベクトルを、流星さながらの速度で叩きつけた。

無論『反射』が音も無く働くが、帰還ポイントの解り切ったピッチャー返しなど回避は易い。


「繋ぎだぁ? この麦野様につまんないワンポイントリリーフさせようってワケ?
 …………失敗したら夏季商戦で潰すからね、垣根」

「くく、あのシスターにも出来たんだろうが。だったらこの俺に出来ない道理はねえ」


憤慨は口調に染みさせるに留めた麦野は、フィアンマ同様に下がった垣根に向けてニヤリとした。

良い顔をするじゃないか、と垣根も破顔する。

それ以上の言葉は交わされず、『原子崩し』は敗北必死のマウンドに一人立ち塞がった。

格下の女に守られる屈辱も意外に悪くない、などと考えている自分を垣根は発見した。


(第一位のパチモンごときを破るのに、第四位と協力か。ヤツが聞いたら何て)




『あくせられーたは、そんなあなたを決して哂ったりしない』



                   ブルペン入り
「………………はは。さあて、逆演算開始だ」

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:19:23.23 ID:xTT7JjrH0<>

《『腕』が無意識に受け入れているベクトルを抽出開始》


呆れたことに、というより呆れるほかない、というべきか。

『第三の腕』の反射に関する並列演算処理能力は、

少なくとも垣根の知る時点での本家『一方通行』を数段上回っていた。


《サンプル数――二八四六六三、統計数値は》

(んなことやってる場合か、カットだカット)


だからといって、魔術師が操る超能力が学園都市最強を凌駕する事などあり得るのか。


《処理開始》

(ありねえよ、んな事)


現に麦野は、此方の意図を悟ったらしい魔術師の猛攻を断崖の淵で凌いでいる。

時に地べたを這い、時に長髪を振り乱し、時に敵前で背を見せる。

プライドも糞もあったものではない闘いぶりと泥塗れの容姿は、実に眩しく輝いているではないか。


「どうしたどうしたああっ! “超能力者風情”に手こずってんじゃねえよビチグソ!」


(下品なアマだ、絶対嫁には欲しくねえ)

《15%――――20%――――25%》


垣根は苦笑するが、後ろからも同様の意味を含む声が耳に入ってきて顔を露骨に顰める。


「っ、と」


その時、麦野が雨と血と、死者の執念染み込む大地に足を取られた。

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:20:53.83 ID:xTT7JjrH0<>

『原子崩し』の射出がコンマ五秒遅れる。

大小、寒熱、可視不可視、ありとあらゆる科学の咆哮が麦野に届こうとしている。



『お願い、死なないで!』



不意に垣根の瞼裏に、先刻この場を去った外人女の面と声音がぶつかって消えた。

時が凍る。


《55%――――60%――――6“エラー”》

「上を見ろ、麦」


逆算シークエンス中断。

間に合わない?

いや、間に合わせ





ゾオッ


「『ペクスヂャルヴァの深紅石』――――集中を切るな、垣根帝督」


垣根の頬を、身の毛のよだつエネルギー体が掠めた。

今日の自分は感傷に囚われ過ぎている。

思った時には垣根を除く戦場の全てが元の血腥さを取り戻していた。


「足りねえぞ、それで私を殺せるとでも思ってんのか!!」

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:21:58.19 ID:xTT7JjrH0<>

麦野は何事も無かったかのように蛮声を上げて殺劇を演じている。

被弾した墓石がそこかしこに散らばって、死者の嘆きを立ち昇らせているかのようだ。


「恥じる必要はないぞ。麦野沈利も今でこそあの調子だが、
 つい半刻前までは見るに堪えない醜態だった」

「!! 精神感応系能力っ…………!」

「なに?」


失念していた。

膨らみ続ける『腕』が超能力の塊だと言うのなら、

物理的破壊を伴わない攻撃など幾らでも行使可能である。

隣の魔術師がどこ吹く風、というムカつく面なのが良い証拠だ。


(心理定規がそんな事いってたな、そういや)

《再開。55%――――60%――――65%》


タネさえ割れてしまえば何ほどの事も無い。

垣根が素粒子を捻じ曲げて生み出せる三千世界の中には、

あの悪趣味な心理定規(おんな)専用の法則もある。


《80%――――85%――――90%――――95%》


後は、フィアンマ次第だ。



《100%》



<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:22:57.28 ID:xTT7JjrH0<>

「死ぬ準備はいいな」


息も絶え絶えの麦野を襞かげに庇い、プライドをかなぐり捨てた二人の男が並び立った。


「最高のウイニングショットを頼むぞ、クローザー」


ポタリ、赤い魔術師の袖口から紅い小雨が降る。


「口の減らねえボールだ、精々しっかりキャッチャーミットに収まってこいや」


瀕死の共闘者への気遣いを微塵も見せず、垣根が白翼を巨大化させる。

全長、三十メートルには及ぶだろう『未元物質』が、世界の法則を塗り替えていく。

反射の絶峯を突き抜ける『あり得ないベクトル』に、フィアンマ自身が組み込まれ、




「行けっ、魔術師ィ!!!」




奔った。

迎え撃つ『右方のフィアンマ』から、トーチカ数十台分の機銃掃射。

並走する数千の『この世界とは異なる法則』が援護する。


ズギャギャギャギャギャギャギャギャギャンッ!!!!!!!!


「擬音にするとどうなるんだ、これは? 奇怪な歓迎クラッカーだな」

「余裕こいてねえで前見ろタコ!!」

「む」

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:25:06.84 ID:xTT7JjrH0<>

フィアンマの駆ける車線の辿りつく先に、稲妻迸る検問所。

弾丸に何を用いたのかは窺えないが、直撃を喰らっては目も当てられない。

フィアンマは疾走を緩めずに身を低く屈めると、後ろに向けて囁くように唄った。


「任せようか、麦野沈利」


その直後に追走していた麦野が、前方で砲口を構える戦術兵器を認めて獰猛に吠える。


「『超電磁砲』だぁ? 相手にとって不足……するに決まってんだろうが!」



ドオオオオオオオンッ!!!!

カッ!!!



フィアンマの頭上を、『原子崩し』が尾を引きながらスレスレで通過する。

無茶をする野郎だ、と垣根は後方から直掩行動を重ねながら鳥肌を立てた。

閃光と雷光が轟、と音を立てて大気に割れ目を入れる。

夥しい土煙が上がり、フィアンマが激突の衝撃にも躊躇う事なく内部に突入した。

麦野は急ブレーキを踏んでから後方に飛び跳ね、臨界点に達したのか膝を折って呼吸を荒げている。

次に二人の前に魔術師が姿を現すのは、何らかの決着がついてからだ。


「ど…………だ……かき、ね?」


ジェット機のエンジン音より喧しい静寂が、束の間流れた。


「待て…………接触、やりやがった!」


感じた、察知できた。

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:26:50.49 ID:xTT7JjrH0<>











                            ヒュン








                             ドン












<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:28:40.37 ID:xTT7JjrH0<>

『存在し得ないベクトル』そのものとなった男が、反射の壁を突き抜け――――?


「…………んだ、今のは」


絶対不可侵の防御壁をフィアンマが通過した、垣根がそう感知したと同時。


「惜しかった――――わけでもないな」


“何か”が、亜音速で、“いまだ『腕』が健在”している方角から、垣根と麦野の中間を、飛び抜けた。


「頼みの綱のロートルなら、俺様に指一本、爪の先端すら触れられずに」


高飛車な声色は、上から能力者たちを小馬鹿にしていた『ただのフィアンマ』のそれではない。


「あのザマだ」


前方から、地の底より生を謳歌するもの全てを祟る声。

『聖なる右』は煌めきを虹色に転じて、視界に入れるのも畏れ多い神々しさを醸し始めていた。

直視しかねた垣根と麦野は、狼のように徐に首だけで振り返る。


「次は貴様らが“ああ”なるんだ、哀れな虫けらども」






毒々しく咲いた赤い大輪が、広い広い花壇の上で生死の何たるかを誇示していた。




<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:30:28.44 ID:xTT7JjrH0<>

「がっ」


吹き飛んだ。

麦野沈利が、ボロ雑巾のように宙を舞って、墓石に引っかかって止まった。

攻撃の直前、本能的にだろうか掲げられた片腕が失せている。

断面が鈍く太陽光を照り返した、義手だ。

麦野はどうやらしぶとく生きながらえたようだが、戦線離脱は火を見るより明らかだった。


「それが、能力の『完成』か?」


戦場に独り立つ恐怖などより、純粋な疑問が上回った。


“動いていない”。


垣根は『第三の腕』とやらが振り下ろされる当にその瞬間を、

フィアンマの時も麦野の時もまるで視認できていない。


「貴様ごときが理解する必要は全く、毛の一筋ほどもない。
 鶏を捌くのに斬馬刀を用いてやるんだ、感謝しろ」

「“振らないで”使えるんだな、その腕?」


淡々と、無感動に言葉を垂れ流しては只管に真実を問う垣根。

重苦しく嘲笑って、晴れゆく土埃から姿を見せた『右方のフィアンマ』。

西部劇の銃士よろしく、死地で一対一、誇りを賭けた撃ち合いの末に残った二人の超人。

血しぶきに煙る大気を舞台効果に、魔術師と能力者は決闘の荒野に立ち尽くしていた。

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:32:06.62 ID:xTT7JjrH0<>

「“完成”? “使う”? 貴様に何が解ると言うのだ。
 『腕』はもはや科学や魔術など超越した、遥かな世界に昇った」

「…………そうかい。いよいよ俺一人じゃ限界らしいな」


しかし、ガンマンの片割れが突如銃口を下ろしてしまう。

男の美学など持ち合わせない魔術師は、鷹揚に頷いて死を宣告した。


「潔し。喜べ、贄として捧げられる至運を」

「ダアホ」

「…………なに?」


勝利演説を口汚く妨害されて、『右方のフィアンマ』の貌が酷く歪む。

対照的に、垣根帝督は笑いながら雄々しく哮った。

下げられた筈の銃は、容赦なく敵手の命を奪おうと魔弾の籠った口を開けていた。


「誰が諦めたなんて言った?」


垣根帝督の後ろには、指先をすり抜けて消えた一万の命がある。

そして前には、まとめて面倒を見ると己が内で定めてしまった六千の命があるのだ。

超能力者、『未元物質』としての名など惜しがっている場合ではない。

仮に勝ち目がゼロだったところで、不退転の決意は微動だにしないだろう。

ましてや――――



「その通りだ、勝手に終わらせないでくれよ」



勝算は、ゼロなどではないのだから。



<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:34:19.33 ID:xTT7JjrH0<>
---------------------------------------------------------------------


「使用枚数はマックス、五〇万枚」


湿度が急激に低下した、そう『右方のフィアンマ』は敏感に察した。

粘った水気さえ帯び始めていた濁った風が、腐った土が、原初の炎によって浄化されていく。

これほどの炎の使い手など『フィアンマ』が肉塊と成り果てた今、学園都市には一人しか残っていない。


「『魔女狩りの王』、意味は『必ず殺す』だ。覚えなくとも構わないよ」


垣根の存在など無かったかのように、無防備に背を向けて反転した視界の遼遠。

ステイル=マグヌス。

魔力尽き果てた筈の男が、一衣帯水、寄り添う銀髪碧眼の修道女に支えられて其処に居た。

大地が融け、大気が焼け、空の大海に黒と白の斑模様を克明に描き出す。

蒼に滲む黒煙の源は、重油の塊を連想させる焔の魔人。

凡俗の魔術師が千人束になろうと及ばないであろう、世界法則を歪めかねない強大無比な煉炎。


「ゴミが、何をしにきた?」

「名乗ってないから仕方がないがね、少し礼を失してやいないかい君。
 見た目の感じじゃ僕の方が年上だと思うよ、後輩魔術師クン」

「――――――――さっさと死ね」


だが、不毛。

射殺すように眼光を投げる、ただそれだけで偉大なる熱壁、『魔女狩りの王』は呆気なく四散した。

一瞬開けた射線の先に在る魔術師の、シスターの闘志は萎えていない。

間髪いれずに魔人がリブートして、獣さながらに敵対者を蒸発させかねない怪腕を振るう。

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:38:01.61 ID:xTT7JjrH0<>

「無駄だ、『禁書目録』。貴様らの行為などもはや何事でもない。
 貴様に科学と魔術を越えた、この『腕』の解析など不可能だと知れ」


“何もしない”。

その行動とも呼べぬ行動唯一つで、ステイルの奥義は虚しく破れては出力を降下させていく。

『腕』の余りの威力に、術式本体から逆走した破壊が都市中に散らばったカードまで届いた。

イノケンティウスは徐々に徐々に命の素であるルーンを削られていくが、

主らの守護という至上目的だけは違えまいと立ち往生する。

意外な相性の良さが、『魔女狩りの王』と『腕』の間に成り立っていた。


「そうかな? 私は諦めないよ。1%でも希望があるなら、私は祈る」

「無力なる塵芥の祈りが、なんだと言うのだ? 見よ」


背後から鋭い殺気を伴って、『未元物質』の巻き起こした烈風が迫る。

見る必要性すら『右方』は感じなかった。

“振り下ろされない”『腕』が弱者の足掻きを無に帰す。

隙をついたつもりなのだろうか、『魔女狩りの王』が熱波を振り撒いて挟撃を仕掛けるが、


「余裕でございって面しやがって。死にくされや、胸糞ワリィ」

「どうも威力が使用枚数に見合わないね。厄介だな、『虚数学区』ってのは」


魔人の突撃は完全に、一分の曇りも無く、容易く弾かれた。

教皇級の『魔術』ですら、最高峰の『超能力』ですら、もはや今の己に通じはしない。

圧倒、完全、絶対、最強、無敵。



しかしそんな世俗的な付加価値など、男の求める世界ではない。



<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:42:30.10 ID:xTT7JjrH0<>


「物思いに耽ってる暇なんてないわよ、あなたの相手は学園都市オールスターなんだから」



今度は別の女の芝居がかった声。

同時に異様な量の白煙が朦々と立ち込めて、墓地をあっという間にホワイトアウトさせた。

己を取り囲みつつあった下衆どもは愚か、直近の自分の肉体さえ朧に映る。


「どう? 煙幕弾って単純なだけにどうしようも」


テレポーター、『座標移動』。

ロンドンからの邪魔者を戦場に招き入れたのもこの女の仕業らしい。

手品の出来栄えに得意になったマジシャンの鼻を明かすべく、『右方』は“何もしない”。

雲散霧消、消えていた赤毛の超能力者が顔を引き攣らせて慌ただしくテレポートした。



ガアアアンッ!!



「昔殺しかけた女に泣きつかれたと思ったら、これかよ」



まだ居るのか。

無色透明の長柄物を打ち払って、『右方のフィアンマ』はうんざりした。

節操無く群がってくる蟻がこれほどまでに煩わしいとは思わなかった。

更にもう一人、記憶に新しい姿が満身創痍で呻く『原子崩し』の側にしゃがみ込んでいる。


「麦野さん、じっとしてて」

「なん、で、戻ってきた、フレメア! 黒夜、アンタまで」

「うっせェ!!!」


黒夜海鳥。

      ボンバーランス
レベル4、『窒素爆槍』にして男が事の手始めに一蹴した能力者、絹旗最愛の戸籍上の妹である。

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:44:13.03 ID:xTT7JjrH0<>

「私のはらわたが煮えくり返ってンのがそこからじゃ見えねェのか?
 浜面も理后さンもあンたも、私と最愛を除け者にして、勝手に死にかけて。
 私はいい、でも最愛はな、そのせいでくたばるところだったンだぞ!
 嫁にいけねえ身体になあ、半歩間違ったらなってたンだぞ!!」


家族を傷つけられた痛み、仲間に頼りにされなかった疎外感。

麦野を黙らせた獅子吼そのままに、怒りに任せて掃射される『第一位の攻撃性』。


「下らん」


魔術師にとっては何もかもが取るに足らない瑣事だ。

『窒素爆槍』は他でもない『一方通行』によって弾き返され、行使者自身を襲う。

見えない獲物がどう防がれたか解せない黒夜は違和感を感じつつも動けない。

彼女が自らの能力に踏み潰されて泉下の住人の仲間入りを果たす目前――――



ブオオオオオオオオオオオオンッッッッ!!!!!!!



「お前らには掴み損ねた青春を謳歌して欲しかったんだけどな。
 こうなった以上は俺らの責任だ、ごめんな」



蒸気の排出される爆発音と共に、四度目の乱入者。

微かに残された煙幕を吹き飛ばす暴風、跳ねあげられる大量の泥土。

漆黒のアイアンホースが、棒立ちの黒夜の身体を攫って駈け抜けた。

抱えられたズタ袋が年齢の割には小さな肢体を暴れさせる。


「懐かしいだろー、黒夜? ドラゴンライダーの後継機、HsSSV-09こと『バハムートラグーン』だ!」

「サラマンダーよりはやーい、って何言わせンだおら! 下ろせェ!!」

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:45:31.56 ID:xTT7JjrH0<>

「浜面、アンタまで」

「ちなみに理后は病院で絹旗の側に付いてるぜ。…………なあ麦野。
 勝って皆で、『アイテム』全員でフレンダの墓参りするんだ、そうだろ?」

「ったく、後でてめェら私と最愛にも土下座すンだぞ!」

「…………バッカだねぇアンタら、揃いも揃って」

「ハハッ、残念ながら社長に似ちまって、な。もう一人、訪ねる相手も居る事だし」


浜面仕上がフレメアと目を一瞬合わせてから、白い歯を見せた。

麦野沈利が瞑目し、からりとした溜め息をマーブルがかった青空に逃がす。

その表情を垣間見てしまった『右方』は、思わず奥歯をギリと噛みしめた。


「日本の羽虫どもは殊勝だな。そちらから死に場所を求めて遥々やって来るのだから」


限度を知らぬ度重なる邪魔立てに、苛立ちを通り越して感動すらこみ上げてくる。

右方には科学に与した魔術師と『禁書目録』。

その背後に死にかけの『原子崩し』と、虫けらの中でも飛びぬけて無力なシビリアン。

左方に位置するはモンスターバイクに跨る脳味噌の軽そうな男と、担がれてがなる女。

後ろで密かに様子を窺っているらしい『座標移動』を頭数に入れる事も忘れない。


「この状況でまだイキがってられるとは大した肝だぜ、魔術師野郎」


そして真正面に陣取ったのは第二位、垣根帝督。

『右方』が“何もせず”とも矮小な命を摘みとれる事実を、この男こそ未だ理解してないらしい。


「……………………もういい、沢山だ」

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:46:45.93 ID:xTT7JjrH0<>

多勢を如何に揃えた所で無駄だと言うのに。

塵が積もった所で、しょせん本物の大山の前では吹けば飛ぶ虚構に過ぎない。

一思いに、カスどもを纏めて神の御許へ旅立たせてやろう。

決断し、『腕』を――――




「…………?」




虚脱感。

“動かさない”のではない、“動かない”。


「こ、これは…………」


薄まった。

その表現が最も適切だろう。

『腕』から供給される、『Equ.DarkMatter』は勿論、『一方通行』さえ超克した絶対守護領域が。

科学と言う名の絵の具が、抜けていく、色褪せていく。

何が起こっているというのか。


「知らない筈は無いだろう、こんなに科学に詳しくていらっしゃるんだからね」


『魔女狩りの王』でフレメア達を守護しつつ、ステイルがインデックスを伴ってにじり寄る。

何故だ、この男もまた、死を恐れていないのか。

<> 神の右席編16<>saga<>2011/09/04(日) 22:48:08.32 ID:xTT7JjrH0<>







             ゴールキーパー
「この街には――――『守護神』って名前の神様がいるのさ」









<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/04(日) 22:50:12.39 ID:xTT7JjrH0<>
……続く(コピー用紙をそのまま吐き出したかのように)

いよいよ冗長だったエセバトルにも終わりが見えてきました
至高のラストバトル展開といえばWA2もしくは大神
あえて一つに絞るならアマ公もふもふ、これは譲れません

それではまた明日
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/05(月) 21:21:35.83 ID:mjk+E3/d0<>
>>1>ベ、別に寂しくなんかないんだからねっ!

…………気持ち悪いことやってないでサクサクいきましょうか↓ <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/05(月) 21:22:41.81 ID:mjk+E3/d0<>

「大丈夫ですか? …………ええっと」

「風斬さんだよ、初春」

「わ、わかってますよ! 別に名前忘れてたとかじゃないんですよ佐天さん!」

「ほら初春さん、集中して! もうちょっとですからね、風斬さん」

「は、はあ…………ご迷惑おかけします」

「御自分が療養中の身だと言うのに、わたくしを足代わりに使ってまで人助けとは。
 いやはやまったく、お姉さまらしいお話ですの」


第一〇学区、警備員第二二活動支部――――その跡地。

十年前のあの日の再現、『0930』のリバイバル上映の為に“とあるシステム”が起動したこの場所で、

戦地の友人たちを援護すべく四人の女性が耀く大樹を取り囲んでいた。


「バグデータ削除、AからEサット領域にかけて進行中……初春さん、そっちはどう?」


光の大樹――――風斬氷華の体中に刻まれた痛々しい傷口に触れながら、

『電撃使い』上条美琴が魔術師の謀略によって流し込まれたウイルスコードと格闘していた。

右手で風斬の身体を構成するAIM拡散力場のソースコードを走査しながら、

左に握った端末で“もう一人のハッカー”と情報共有を行う。


「うわぁ…………高位能力の演算時ディレクトリってこんな風になってるんですねぇ……」


彼女こそが知る人ぞ知る科学の街の『守護神』、初春飾利。

無駄口を叩きながら美琴に提示された端末を覗きこみ、

凄まじい速度で某林檎社製ブックをベースにした自作マシンを、手足のように操っていく。

垣根を送り出してのち居ても経ってもられなくなった彼女に、


『第一〇学区に行ってみたら? そこでなら初春さんの能力が生かせるかもしれないわ』


それとなく助言をくれたのは上司であり…………いや、上司である『心理定規』だった。

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:23:44.12 ID:mjk+E3/d0<>

『…………社長はどうするんですか?』

『待つわ。私にできる事は、少なくともこのビルの外には無さそうだから。
 ………………正直に言うと、あなたがちょっとだけ羨ましいかな』


本社ビルを解放して逃げ惑う民衆の避難所とした『心理定規』は、

青髪ピアスを従えて統括理事会との連携の下、忙しなく動き回っている筈だ。

彼女も己の能力を駆使して、適材適所、難民の心労を和らげるのに一役買っている。


「いいですこと、お姉様! 事が済んだらすぐに病院に戻って頂きますの!」


初春が女同士の何とも言えずほろ苦い対話を回想していると、キンキン声が響いた。

二十三という年齢の割には、多分に場末の酒場ママ的要素を内包した叫び。


「えー。あの女王サマと病室一緒なんて、アンタが私の立場でも御免でしょ? 
 大した怪我じゃないし真理ちゃんだけ連れて帰させてよ、ねえ黒子ぉ」

「な・り・ま・せ・ん! 上条さんに言いつけますわよ!!」


美琴にお説教を垂れている声の主は初春の十年来の戦友、白井黒子だ。

今でこそ民間企業と公務員で進む道を違えたが、共に胸に誓った正義の志は健在だった。


「まあまあ。だったら白井さんが食蜂さんと一緒の病室になって
 くんずほぐれつすれば万事解決じゃないですかね」

「おお、流石は初春! 美琴さんが助かって第五位さんも満足、
 ちょっと御無沙汰してる入院患者さん達にもいいネタの提供に」

「下ネタはやめてくださいな! お姉様からもこの淑女らしからぬお嬢さん方に何か一言」

「美琴さん全然聞いてませんよ、具体的には『な・り・ま・せ・ん』の辺りから」

「んきーーーーっっ!!!」

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:24:46.33 ID:mjk+E3/d0<>

正義を為すべく奔走した日々(笑)をしみじみ思い出しつつ懐かしいやり取りに興じる。

すると横合いの強烈な発光源からこの上無く申し訳なさそうな腰の低い声。


「あ、あの…………ごめんなさい、私なんかを助けるために、そんな…………」


都市伝説『虚数学区・五行機関』の正体にしてイギリス清教最大主教の親友、

風斬氷華が意に反して身動きの取れない体で、それでもしとしとと濡れた瞳を向けてきた。


「あなたが逃げて、って言わなかったら全員このガレキの山みたいになってたんですよ?
 風斬さんは十分私たちを助けてくれたじゃないですか。今度はこっちの番です!」


肉体、精神の両面から憔悴する彼女を励ましたのは、こちらも初春の十年来の親友、佐天涙子。

防護服を装着して周囲を警戒する佐天は、能力者としては確かに『無』という冠を戴いている。

しかし初春たちが彼女の数字に表れない強さに救われた経験は、一再に留まらない。

今だってその何気ない一言が、己の力を悪用されて自責する風斬の支えになっている筈だ。


「インデックスとステイルは、もう行っちゃったのね」


その佐天に対して、作業に没頭していると思われた美琴が目を細めて語りかけた。

話の中身は、初春も一か月前に出会っている十字教からの客人についてらしい。


「直前まで『君は行くな』だの『私が行く』だので喧嘩してましたけど。
 最終的にはお互いにお互いを護ればいい、でケリついたみたいでしたよ」

「そう…………ねえ、佐天さん」

「はい?」

「本当にありがとう」

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:26:46.63 ID:mjk+E3/d0<>

と思うと突然、画面に映し出される処理スピードが緩んだ。

考えてみれば美琴は、この場に到着して以来どこか佐天にぎこちなく接していた。

風斬や白井と一寸顔を見合わせた初春は示し合わせたように息を殺す。

瓦礫集積場と化してしまった元支部に落としていた視線を上げた美琴は、

あくまでバグ排除へは手を抜かずに佐天へ涙交じりの感謝を告げた。


「ありがとう、真理を護ってくれて、ありが、とう」

「み、美琴さん?」


上条夫妻が紡いだ絆の結晶である上条真理は、白井が鉄装と連れだって“あの”病院へ移送した。

外傷は一切ないが、今ごろは美琴の頼れる妹達によっていのち溢れる笑顔をも取り戻しているだろう。

だからと言って、止めどない感謝と後悔が美琴の胸中から涸れる事は無い。


「あなたが、真理を助けるために頑張ってくれたのに、私は目の前の敵を倒す事ばかり考えて。
 あの子の身に危機が迫ってる可能性を、頭から追い払ってた! こんなんじゃ私、母親しっか」

「ストップ! 今回の事は、不可抗力以外の何物でもないですよ。
 まこちゃんの件も勿論、私の事だって謝ってもらう必要なんてないです。
 美琴さんにお礼言われるぐらいに成長できたのかな、って今後の自信にも繋がりますし!」


向日葵の大輪が、初夏の強い日差しに向かって溌溂と咲き誇った。

自分達が少女だった夏はもう遠いが、彼女の笑顔だけは変わらないな、と初春は思った。

美琴も同じ感慨を抱いたのだろうか、クスリと泣き笑いで応える。


「………………ああもう、みっともないなあ、年上なのに。
 これだからインデックスに妹扱いされるのかしら…………」

「ほうほう、興味深い話ですねえ、美琴さんがインデックスの妹とな」

「あっ、いや、その! 今のナシ!! 忘れてちょうだい!」

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:27:57.07 ID:mjk+E3/d0<>

「『みことがお姉ちゃんって呼んでくれた』って、この間インデックスが喜んでましたよ」

「風斬さんんんん!!!?」

「お姉様のお姉様!? そんなお姉様属性の持ち主だったとは……侮ってましたの!」

「アンタが乗っかって来ると話がややこしくなんのよ! 帰れ!」

「ネットでも絶賛話題沸騰中ですよ!
 『学園都市の某第三位とイギリス清教の美人最大主教、禁断の姉妹愛!?』
 みたいな感じで。ま、私が仕事中に書き込んだんですけどねー」

「!?」

「流石は初春、やはり天才か…………ちゃんとパンツ穿いてるかい?」

「穿いてますよ佐天さん。そろそろセクハラで訴えていいですよね?」 

「え」

「友情って素晴らしいとつくづく痛感するわコンニャロー!!」


微笑ましい先輩後輩の会話をBGMに手を休める事なくプロセスは進み――――


「えへへ、一度言ってみたかったんですよね」


初春ははにかみながら、青春時代の大半を共に過ごした仲間たちに胸を張った。

白井が、佐天が、美琴が、破顔して頷きを返してくれた。

軽快にボード上を踊り回っていた指が、最後にエンターキーを弾くように叩いた。


「逆算、終わります」

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:29:50.94 ID:mjk+E3/d0<>
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科学と魔術は、果たして相容れるのか。



思い起こせばそれは三月の『ロンドン事変』からこっち、

粘度の高い蜘蛛の糸のように自分達に絡みついていたキーワードであった。


(彼ら『第三世界』が敗れたのは、土御門が皮肉った通り……まさしく『半端者』だったからだ)


ゼンマイの切れたブリキ細工が動作を停止していると言うのに、

攻撃を仕掛けるでもなくステイルは思索を巡らせていた。

『右方のフィアンマ』の真の目的――超能力者狩りという

尤もらしい名分に隠された、その裏側について。


(『半端者』は、科学を取り入れたとは名ばかり。
 三流魔術師に毛が生えた程度のテロリスト止まり…………しかし、この男は)


『虚数学区』を掌握するべく、風斬氷華を探し出す為の壮大なオリジナル術式を練り上げた。

手に入れたAIM拡散力場から、膨大な科学知識を引き出して自らの『腕』と融合させた。

聞くところによれば、『虚数学区』の完成には『幻想殺し』が不可欠だと言う未確定情報もある。

遠くアメリカの地を踏んでいる上条当麻を、娘を餌に誘き出す算段だったのか。


(全てが、あの『腕』を昇華させる材料だった)


全ての線が、一か所に集約して一つの複雑怪奇な幾何学模様を生み出した。

そこまでは理解が追いついた。

しかし。


(――――どうやって?)

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:31:17.71 ID:mjk+E3/d0<>

“HOWDUNIT”。

ステイルが理解しかねるのはその点に尽きる。

どのような帆布に如何様な画材を重ねれば、魔術と科学が混合した絵画など描けるのか。


(魔術師、能力者…………待てよ、土御門は確か)


土御門元春は元来、日本の陰陽道の名門の出である。

その稀代の天才陰陽博士は、学園都市へ潜り込む際に能力開発を受けた結果として、

辛うじて薬の一滴に足る程度の“能力”と引き換えに甚大なリスクを被る事となった。

だが彼が負ったハンデはあくまで、“能力者”として“魔術”を行使した場合に限定される。


(ならば、逆は)


“魔術師”が“能力”を行使するケースでは何ら問題が無い。

土御門の『肉体再生』とは次元が違い過ぎるため即座に考えが及ばなかったが、

目の前の『腕』が振るう超能力の暴虐とて問題の性質は同等、かつ平等だ。


(いや、大体にして前提条件からどうなんだ?)


何故“能力者”には“魔術”が使えないのか。

宗教防壁なくして魔術知識と言う名の毒には抗えないから?

脳回路を開発された結果としての、拒絶反応?

通り一遍の知見ならステイルも有している。

しかしそれは、“誰か”が意図的に設計した、恣意的な理論ではないのか。


(“能力”という異能のフレームワークを定めて、科学と魔術を切り離したのは――――)


<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:33:02.40 ID:mjk+E3/d0<>

「だんまり決め込んでねえで、なんとか言いな。殺すにしても悲鳴が上がらなきゃ興醒めだぜ」


ステイルの止め処ない思案を中断したのは、並んで『右方』の正面で対峙した垣根だった。

威勢の良い言葉と裏腹の慎重な姿勢は、体表面を圧迫してくる危機感と無関係ではないだろう。

勝利した、と確信しきれないままに初春たちの援護射撃の成果を見届けようと、

ステイルも長身を垣根の隣に滑り込ませて問答を行う。

『腕』は本来の紅い輝きを放つ事で、“ただの”『聖なる右』に回帰した事実を知らしめていた。


「虎の子だった『虚数学区』は、この街の『守護神』が解放した。
 君の目的が何かは知らないが、既に失われた手段に固執してどうなる?
 投降しろ、命だけは僕と最大主教の名に賭けて保証しよう」

「なにヌルくせえ事ぬかしてやがる。この場で八つ裂き、それで終いだろうが」

「ていとく、お願い。一度だけでいいからチャンスをちょうだい?」

「……………………ちっ」


インデックスの上目遣いに、ここ数年で角が温泉豆腐なみにとれた垣根が折れた。

半歩下がって、踏み出したステイルとインデックスを顎で促す。

結標が、浜面が、黒夜が、フレメアが、麦野が、固唾を飲んで最後の和平交渉を見守った。

戦闘が始まってから何度目だろうか、俯いて表情を隠す魔術師に二人が迫る。

口を開いて厳粛な勧告文を叩きつけたのはインデックスだった。

死者の楽園が、俄かに裁きの庭と化した事をその場の誰もが実感した。


「『右方のフィアンマ』、イギリス清教最大主教として警告します。
 ただちに矛を収めてのち、当教会に身柄を預けなさい。さすれば」



ドクン



「無用。つまらんお喋りに時間を浪費したな」

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:34:30.12 ID:mjk+E3/d0<>

「地獄に落ちろ――――いや、この手で落としてやる」



清廉な声を遮る低い嘲りが聞こえた瞬間、最初に動いたのは結標だった。

フレメアらの近くまで密かに移動していた彼女がテレポートを発動して二人を逃がそうとする。

僅かに遅れて、浜面が“とある方向”に機首を向けてアクセルを思い切り回した。

垣根が間髪入れずに巨大な白翼を展開して殺気を放つ。

最後は互いに互いを庇って縺れ合ったステイルとインデックス。


「着想は悪くなかったがな、今度こそこの言葉を贈ろう」


そんな下々の懸命の抵抗は、いとも容易く『神の如き者』が引き裂く。


「惜しかったな」



ドクン ドクン



「貴様らはこの『腕』を、俺様を、何も理解してなどいない」


天を突く塔のような五指が燦然と輝く七色の脈動を打った。



ドクン ドクン ドクン



巨人の『腕』が蠢いて、逃げ惑う小人を喰らい尽そうと――――“振り下ろされた”

<> 神の右席編17<>saga !orz_res<>2011/09/05(月) 21:36:17.47 ID:mjk+E3/d0<>









   A T T W N
「『そして誰もいなくなった』」










そして世界が姿を変え









<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:37:36.78 ID:mjk+E3/d0<>
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終わった。

数多の障害を乗り越える必要はあったが、遂に成し遂げた。

寧ろ、不滅の偉業を歴史に刻むならば試練は付き物だ、という考え方もできる。

聖書の文脈に入り込んだような高揚感を覚えて、『右方のフィアンマ』は軽く絶頂に達した。

『腕』の役目は攻撃などではない。


「これで、これでいい」


変革である。

能力者どもは『虚数学区』さえ剥ぎ取れば『腕』を崩せると踏んだらしいが、

あんなものは一時的に己と“科学”を、“超能力”を繋いだ仮初の砂橋に過ぎない。

AIM拡散力場を探知するほどの術式を創造して尚辿りつけなかった“科学”の深奥を、

ほんの一時垣間見ることが可能になればそれで良かった。

ヒューズ=カザキリを不死者に襲わせて強引に結んだラインを、

すんなりと切断された事には確かに驚かされた。

しかし『右方』が求めたのは無尽蔵に湧き上がる科学のエナジーではなく、あくまで知識なのだ。

いわば、辞書。

翻訳困難な言語解読を的確に補助する、外注のソフト。

顔を突き合わせていた作業の供を突如として取り上げられてしまったならばどうすれば良いか。


「ふ、はは」


単純明快だ、思い出してしまえば良い。

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:39:08.18 ID:mjk+E3/d0<>

チラと流し読みしただけの辞書を脳裏に再現して『腕』を再構築するのは容易ではなかった。

時間にして一分は掛かった筈である。

『禁書目録』が降伏を促していなければ、敗者は自分だったかもしれない。

敵によってかけられた情けが決定的な勝因に結び付いた事は忸怩たる思いである。

だが勝利に至るまでの過程に焦がれていて、この先の覇道は歩めない。


「此処まで、来たんだ」


残るピースは『幻想殺し』のみとなったが、愚劣な先達の二の轍は踏むまい。

自分は、あの右腕の、いや上条当麻の本質に到達――否、“教示”されている。

変えて見せる。

己が手で、世界から『線』を消し去ってやる。

あんなものがあるから世界は変われないのだ。

手始めに、巨大な『円線』に囲まれて“科学”と銘打たれた、この学園都市を変革する。

橋頭保は既に、この墓地に集った能力者たちの骨肉で築かれている。

彼らは『腕』の一振りで飛び越えたのだ。


「俺は、壊してやった」


生と死の、狭間に介在する境界『線』を。

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:40:20.67 ID:mjk+E3/d0<>







「だというのに」


筈だった。


「なぜ」


疎らに散って臥す死体たち――――本当に、死んでいるのか?――――の遥か後方。

巨大なマシンに跨った無能力者が死に物狂いで目指した方向。

浜面、というらしい男が派手に全壊したバイクと並ぶように転がる、その後ろ。

とうに意識の外に追いやった敗者の肉体が目に痛い血華を咲かせていた地点。


「なぜ、なぜだ」


微かに傾いてきた太陽を背負う影一つ。





「なぜ貴様が立ち上がっている、『フィアンマ』ぁぁっ!!!!」





<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:41:43.55 ID:mjk+E3/d0<>

「悪いね、時間稼ぎは十八番なんだよ」


横合いから、修道服を身の内に閉じ込めた神父の声――――生きている。


「ちょっと遅かったかもだね、ヒーロー?」


生きている、生きている?

考えれば、無能力者のマシンが破壊されている時点でおかしい。

自分の追求した『腕』の能力ではあんな結果は起こり得ない。

まるで、“ただの”『聖なる右』に薙ぎ払われたかのようではないか。



「境界線を消す。それが、お前の求めていた『腕』の本質らしいな」



見抜かれていた。

歯を砕かんばかりに強く強く噛みしめて沸き立つ屈辱を堪える。








だが。


「それが、どうした?」


この男は、どうやら自分を“理解”してしまっているようだ。

だが、それがどうしたというのだ?

死にかけの魔術師が一人、不屈の精神で立ち向かってきたから、いったい何になる?

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:43:09.45 ID:mjk+E3/d0<>

『腕』を“振る”。




「俺様と貴様の間にある、『敵味方』の境界を消した」




『腕』はどんな能力だろうと、パワーだろうと破れない。

文字通り、『敵』など地球上のどこにもいないのだ。

『ただのフィアンマ』はもはや、自分に敵意すら抱く事ができな――――


「そんな事は知っている。俺はもう、お前を倒す必要“は”ない」

「――――なに?」

「お前の『腕』は、なかなかに無敵だ。それは認めてやる。だがな、もうそんな事は関係が無い」

「なにを、なにをなにをなにを!!」


本当は、解っていた。

『ただのフィアンマ』が自分を理解しているように自分もたった今、この男を理解してしまった。

震えるほどに情動を突き動かすのは、能力の正体を悟られた故の絶望ではない。

“座を通して”流れ込んでくる、憐れみの情。


「能力者たちの足掻きは単なる時間稼ぎ兼、目晦まし。本命は此方――――」


止めろ。


「ほらね、祈りは届いた」


そんな目で見るな。


「これで、僕らの勝ちだ」

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:44:24.07 ID:mjk+E3/d0<>

だが、如何に殺意を籠めて睨み返そうと彼らの意志は揺るがない。

初めからそうだった。

己よりも弱い誰かを守るため――――その姿勢は一貫していた。

そんな下らない、安っぽい、子供じみた正義を為すヒーロー相手だから、

悪役の自分は敗れるさだめだとでも言うのか?


「待たせたな、ジャスト“一〇分”だ」


その手に、天使を模ったローマ正教秘蔵の霊装。

『ただのフィアンマ』が天を仰いでふてぶてしく唄うと。











――――同時にその右肩から、三本目の『腕』が顕れた。











<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:45:49.96 ID:mjk+E3/d0<>

「お前の欲しかったものは、喩え俺を殺したところでもう手に入らない」


ピシリ、と肩の上から罅割れの様な音が走った。

きわどいバランスを保持し続けていた『腕』の、

土台に注がれる天上の力が半ば以上失われていた。

『フィアンマ』の手に握られている儀式霊装――名を『カシノ山の燃剣』。

三年前、聖ピエトロの地下聖堂で手に入れた、『神上』へと至る道。

あれがあの男の手に渡るチャンスがあったとすれば、ただの一度きりだ。




『お前達。一度でいい、俺様を奴の懐へと飛び込ませろ』




「消したかった『線』は、消えはしない」


思考の先で導き出された答えが、どうでも良いものに思えてならなかった。

圧し掛かるように、諭すように、囁くような『フィアンマ』の声が脳髄まで響く。

二人が接続している『右方』の席を通して、互いの願いが、過去が交差する。

惨めな失敗者。

『右方』は最後に立ちはだかった前任者に対して、それ以上の感慨を抱いた事は無かった。


「お前に世界は変えられない」

「よせ」


それだけは認められない。

盗人の真似事までして、稚い娘と無能力者を執拗に追い回して、人質まで取った。

全部が全部、己の自尊心を著しく捻じ曲げる愚行だとは理解していた。

それでも、果たしたい願いが、夢があったからここまで闘えたというのに。

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:47:21.95 ID:mjk+E3/d0<>

「俺は、常に大局を見据えて動いた、その筈だ。
 それに対して貴様らが犯したミスを数え連ねてやろうか?
 根底にあるのは大事の前では疎かになって然るべき小事――――ちっぽけな命だ!
 何回、俺を殺すチャンスをみすみすふいにしたと思っている?
 貴様らは眼前の石ころに拘るばかりで至上目的を幾度となく違えている」


『腕』を維持する魔力以外の何かが、プツリと切れた気がした。


「……………なのに、どうして! どうして貴様らが勝者になどなっているッ!?」


右方に顕現する『聖なる右』がゆっくりと、音も無く輪郭を失っていく。

たった一度の行使にも、能力者たちの前で無防備を晒さなければならないほどの、

極めて慎重な地脈や天球配置との関係性を箍めるバランス計算を要したのだ。

基層部分を構成する『第三の腕』は『虚数学区』から修得した科学知識とは違い、

必要不可欠なエッセンス――――いわばソフトに対するハードだ。

マシンに200%のスペックを発揮させる為には尋常でない量の電力が欠かせない。

そのエネルギーを横から掠め取られる危険性があったが故に、この先達は殺しておかねばならなかった。

だからこそ確りと、念入りに、懐に飛び込んでくるのを待って至近距離で、『振らない腕』を浴びせた。


「何故、貴様は生きている!?」


解せないのはそこだった。

万が一『腕』の威力を僅かでも減衰させられる防御術式を『フィアンマ』が開発していたとして、

それほど強靭な魔術の発動を自分が察知できないわけがないのだ。

しかしあの男は、生きながらえて儀式を成功させてしまった。

一度目の対峙とはまるで性質が異なる。

『フィアンマ』は、正規の手順を踏んで、『右方』の座をとうとう完全奪取したのである。
<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:49:00.39 ID:mjk+E3/d0<>

「ふむ…………長々とした説法を説くのは嫌いではないが。一言だけ贈らせてもらおう」


疑念には答えず『フィアンマ』は一歩、半死半生の躰で大地に跡を刻んだ。


「ちっぽけだからこそ、守るんだ」


消えゆく『腕』を振っての最後の一撃は、呆気なく『腕』に掻き消される。

必然だ、自分はもはや『神の右席』を追い落とされたのだから。


「まあこれは、俺様とてこの十年でようやく学んだ事なんだがな。
 勝ち負けなど勝手に拘っていろ。そんな事は別の誰かが決めてくれる」


脇腹から、ドロドロとした醜い赤が噴き出す。


「変わらない世界があれば、変われない人間もいる。それは間違いない」


『聖なる右』は『神の右席』が誇る特殊な“魔術”だ。

『右方』が求めた、“科学でも魔術でもない”『腕』とは違う。


「だがな。誰か一人でも人間が変われば、それは世界が変わったという事と同義だ」


『虚数学区』から引き出した知識で、脳回路の開発を終えてしまった今の自分には致命傷となる。

仮にこれから『フィアンマ』を破って儀式霊装を奪取しても、もはや儀式(まじゅつ)は行えない。


「身体一つ、知識一つ、願い一つ。それだけで世界は変えられると、お前はまだ知らない」


頭の片隅で廻っていたのはそのような理論ではなかった。

間近に迫ってくる『フィアンマ』を呆然と見やって、彼の言葉の意味する所を反芻する。

その右肩から、いつの間にか『第三の腕』は姿を消していた。

<> 神の右席編17<>saga<>2011/09/05(月) 21:50:17.93 ID:mjk+E3/d0<>




「だから」





代わりに生身の右拳が、弓を引き絞るように肉体を軋ませながら振りかぶられる。





     ゆめ
「お前の幻想は、一度ここで終わるべきだ、『右方のフィアンマ』」






顔面に向けて容赦なく叩きこまれた鉄槌が、優しく差し伸べられた手のように思えてならなかった。







<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/05(月) 21:52:26.12 ID:mjk+E3/d0<>
この続きは歪んでるよ

なんというか、自分で読み返してみてもちょっとアレですね
皆さんを何が何だかわからなくなった某名探偵L状態にしてしまったらごめんなさい

それではまた明日
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)<><>2011/09/05(月) 21:58:05.37 ID:XqvsjThW0<> 書き込み来てる!
1乙でした。明日も期待してる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/05(月) 22:01:00.06 ID:V+KP4EVAO<> 乙
ちゃんと読んでるよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 22:31:47.75 ID:c7mJrHMSo<> フィアンマさんも軽い説教属性付きになっておられる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/05(月) 22:51:19.61 ID:7gJMA6Uho<> 乙〜

嫁と娘が危険にさらされたし、流石の上条さんでもぶち切れそうで怖いな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/09/05(月) 23:32:56.20 ID:uVxdBJXzo<> かっこいい事言ってるけどメイド喫茶開いてた事は忘れないからな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:51:52.22 ID:55mzt9/Yo<> あれ、そういえば、科学の魔術の半端者って…?
ああなんだ「グレムリン」のことか

おのれかまちーこんなとこで遊んでないで仕事しろください
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/06(火) 04:57:55.57 ID:pozQnDaAO<> 遅ればせながら乙!
初春がかっこいい…だと…? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/09/06(火) 08:32:37.06 ID:YFge2GUAo<> 乙
ちょっとメイド喫茶開いてくる <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/06(火) 21:07:51.59 ID:D2dxTa3t0<>
>>1>べ、別に嬉しくなんか(ry
めんどくさい奴でなんかスイマセン

どうも皆様たくさんのレスをありがとうございました
長かった神の右席編もいよいよ今日でラストです↓ <> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:10:02.37 ID:D2dxTa3t0<>

彼は、アフリカ大陸はベナン共和国に生を受けた、どこにでもいる少年だった。

周囲の人々と変わらない浅黒い肌、石炭の様な黒髪。

開発途上国では珍しくもない、行き届かない教育、幼いままに駆り出される労働。

生活が苦しいなりに家族と支え合い、友人と馬鹿をやり、恋人と愛し合った。

何の変哲もない人生に疑問を感じた事も無かった。

それでもあえて何か余人との差異を挙げるとするなら。


『来なさい、■■■■。次はお前の番だ』


生まれついた民族の特異性だったのだろうか。


『父さん、これはいったい』


ベナンをはじめ西アフリカで広く信仰されるブードゥー教の死霊崇拝は、

世に言うネクロマンシーと誤解されがちであるが実態は違う。

死は彼らにとって神聖なものであり、悪霊を憑依させる祭事は決して黒魔術ではない。


『この娘“だったもの”で間違いないな』

『え?』


しかしどこの世界にも異端は存在するものだ。

目指すべきものを吐き違えた、唾棄すべき隠された文化。




『それが今日から、お前の愛すべき 屍 だ』




“正常”だった少年は、吐き気を催す“異常”に接触し、そして
<> ??????<>saga !美鳥_res<>2011/09/06(火) 21:10:53.45 ID:D2dxTa3t0<>









もういいだろう











<> ??????<>saga !美鳥_res<>2011/09/06(火) 21:11:31.86 ID:D2dxTa3t0<>



それなりに興味深い悲劇ではあるが




知ったところでどうなるものでもない




私は他の観劇に忙しい身なのでね




幕の降りた舞台にばかり、かかずらっているわけにもいかないんだよ




<> ??????<>saga !美鳥_res<>2011/09/06(火) 21:12:08.09 ID:D2dxTa3t0<>












たとえそれが、嘗て監修した脚本だろうとね













<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:13:19.37 ID:D2dxTa3t0<> ------------------------------------------------------------

「全くお前達ときたら。揃いも揃って死にたがりばかりなのか?
 『貴様らの助けなど借りずとも俺一人で十分だ』。
 …………教本通りのツンツンぶりだと自賛していたんだが」

「セル戦の超ベジ○タみたいで良かったと思うんだよ! その後の展開まで含めて」


何度目の正直だろうか、遂に完全に意識を失った『右方のフィアンマ』を

念入りに魔術で拘束しながら、ステイル=マグヌスは長々嫌味(?)を浴びせられていた。

嘆息しながらアンティークの懐中時計を取り出して時刻を確認する。

昨年の誕生日にインデックスから贈られたステイルの宝物は、

戦闘開始からおよそ四時間が経過していると教えてくれた。


「あのな、僕らだって考えなしに大挙して押しかけた訳じゃない。
 第一、“一〇分”を稼いだのは君の為だろうが」

「そーそー。ジャガイモみたいに転がってるアンタの身体を誰が庇ってやったと思ってんだよ」


寝そべってインデックスから二度目の応急手当を受けているフィアンマに苛立たしげに反論すると、

黄土で汚れたブリーチカラーをガシガシ掻きながら浜面仕上も追随してきた。

通信用の護符を介して通達された――強引に聞き出したとも言う――最終作戦の遂行。

最重要人物が密かに取り行っていた儀式を邪魔させない為に浜面は最後の瞬間、

咄嗟に『腕』とフィアンマを結ぶ直線上に巨大なモンスターバイクを躍り込ませていた。


「む。お前は…………今年の淀の坂は例年にもまして激戦だったな」

「春の天皇賞に出走とかしてねーから! 何その遠回しな『馬面』呼ばわり!?」

「どうどう、これでも感謝しているんだ。
 照れ隠しという事でどうか一つ、許してやってはくれないかどうどう」

「だったら接頭辞と接尾辞に余計な一言採用してんじゃねええええ!!!」

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:15:10.92 ID:D2dxTa3t0<>

タチの悪いボケに捕まってしまった浜面に心中で合掌しながら、

『右方』の確保を終えたステイルは首を一回転させて固くなった筋肉を解した。

回った視界に激戦を闘い抜いた能力者たちの姿が次々に映る。


「…………姉さんが、助けてくれたのかな」


北欧人の女性が、清潔な布で麦野沈利の患部を覆いながら呟いていた。

彼女のそれと頑として交わろうとしない麦野の視線は、粉々になった墓石に向いている。

本来の役目からは程遠く、二人の命を救う防波堤として機能してしまったのだろう。

どことなく近寄りがたい雰囲気で、事実黒夜も浜面も声すら掛けていない。


「アンタなら兎も角、私を助けたりするわけないでしょ、フレメア」


消え入るようにそう絞り出した麦野の表情は、ステイルの位置からは窺い知れなかった。

だが、治療の手を休めようとはしないフレメア=セイヴェルンには明白らしい。


「そうなのかにゃあ」

「そうに決まってるにゃーん」

「麦野さんが言うなら大体、納得した」

「あっさり納得するんかい」


どうにも見ていて旋毛の辺りがむず痒くなるやり取りである。

年に数回しか会わない従姉妹と夕食を共に囲んだような遣る瀬無さというか。


「もしくは、十年ぶりに再会した生き別れの姉妹とか」


世迷言を吐きながら、ステイルは更に首を回した。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:15:49.30 ID:D2dxTa3t0<>

「おい、浜面!」


携帯電話を片手に黒夜海鳥が弾むように駆け寄ってきた。

彼女も『バハムートラグーン』なる巨大バイクを盾にしたおかげか比較的軽傷である。


「理后さんから電話だ。最愛のやつ、目ぇ覚ましたってよ!」

「本当か!?」


フィアンマとの果てしないボケツッコミ戦争に終止符を打ち、

浜面は黒夜の端末を受け取ってにへらと鼻の下を伸ばした。

何度も頷いて時折笑い声まで上げている会話の相手は夫人と見て間違いないだろう。

わかりやすくテンションを変えた愛妻家に苦笑しながら、

ステイルはどこか憮然としている黒夜に向き直った。


「ミス黒夜だったね、少しお小言を垂れさせて貰うよ。
 僕らの役目は時間稼ぎだったと前もって口をすっぱくしたつもりだったんだが」

「あぁ? だから良いタイミングで割りこんで、注意を引きつけてやっただろ」

「薄々感づいていたとは思うが、敵はどうやら『一方通行』を模倣していたらしい。
 浜面が居なければ君は君自身の能力を跳ね返されて死んでいたんだよ。
 そもそも相手の能力が未知数だから、ヘタな攻撃は仕掛けないという取り決めだった筈だ」

「アーアーキコエナーイ。アンタ私の兄貴かよ、浜面と一方通行で間に合ってるっつーの」

「………………むぅー」


打てば響く鹿おどしを相手にしている気分だ、とステイルがある意味感心していると唸り声。

真後ろで浜面に放っておかれたフィアンマの構ってちゃんボイス――――ではない。

例によって女の子とごくごく自然によろしくやり始めたステイルを指弾する女の嫉妬である。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:17:37.63 ID:D2dxTa3t0<>

毒気を抜かれてステイルとの口喧嘩を中断した黒夜が、

ちょっとばかり怯えたように首をすくめてジェラシーシスターに歩み寄る。


「…………あー、シスターさん? 心配しなくても、私一応彼氏持ちだから」


そして、自覚も無く急降下爆撃を開始した。


「!?」

「!?」

「!?」

「よっしゃあああ!! どんなサイズのハチの巣にされてえか各自申告しろおらぁ!!!」


上から順にインデックス、ステイル、フィアンマの失礼極まりないリアクションを受けて

腹に溜めこんだ爆薬に火を付けようとすると、横からこれまた驚愕を隠そうともしない兄貴分が、


「り、理后、今の聞こえたか! 今夜は赤飯…………いや待て。
 その前にどこの馬の骨が相手なんだ!? 
 お前の事だからどうせとんでもないロクデナシ捕まえてんだろ!
 お兄ちゃんはそんなの許しませんよおおおおお!!!」


などと錯乱状態でのたまっては地面を転がり始めた。

もう一人の妹分、絹旗最愛でなくとも声を大にしたくなる光景である。


「誰がお兄ちゃんだよキメエな。心配しなくてもロクデナシ揃いのスキルアウトじゃあねえよ。
 お前もしっかりばっちり知ってる顔だっつーの」

「んだとおおおおおおっ!!!?? まさか、まさかとは思うがアクセラレー」

「だァァァァァれがあンな貧弱マリッジブルーモヤシとだって!?
 言っちゃいけねえ事ってのがこの世にはあるンだよキモ面ァァーーーーーッッ!!!」

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:19:59.47 ID:D2dxTa3t0<>

黒夜の雄叫びを合図に始まった小戦争から目を逸らして、ステイルはもう一度顔をぐるりと回した。

ほぼ無傷でこの戦乱を切り抜けた結標は、いつの間にか影も形も失せている。

『上』に報告に行ったのだろうとステイルは当たりを付けたが、

せめて重傷者を病院に運ぶぐらいはして欲しかった、と短く嘆息する。

とは言え、たらたらした不満を余所へ当てつければそれで済んだ少年時代はとっくに終えている。

…………手近に『幻想殺し』でもあれば話は別なのだが。


「垣根」

「…………なんだ、神父か」


残るは、罰当たりにも適当な墓碑に腰掛けているホストじみた風体の男一人だ。

垣根帝督は時々首や膝の関節をコキャリと鳴らしながら、慣れないボディの感触を確かめていた。

寛いだ様子の男に、まずは一つ質問を投げかける。


「その身体は?」


第二二支部で連絡を受けた際はそれどころではなかったが、腑に落ちない点ではあった。


「本来はこの戦争に参加する予定なんてなかったからよ。
 未完成の試験体を無理くり急速調整した不完全の塊みたいなもんだ。
 もってあと二時間ってところだろうな……ま、久々の生身を満喫したらさっさと帰るぜ」


口調は軽やかだが、それなりに思う所があるのだろう。

なにせ十年ぶりの肉体なのだ。

新大陸を発見したコロンブスさながらの眼差しで空を仰ぎながら、

垣根は未踏未知の大地でも踏むかのように、湿った土を踵で慎重に慎重に抉っていた。

そっとしておくべきかと気遣ったステイルが黙って背を向けると、

ガスライターに火の灯る実に心地の良い音が耳朶を打った。


「桁違いすぎて、なんつーか対抗心も湧かなかったぜ、実際」

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:23:48.51 ID:D2dxTa3t0<>

独白かとも思えた台詞を幾度か咀嚼して再び一八〇度振り返ると、

マイルドセブンを咥えて明後日の方角に向ける垣根の後ろ姿。

「煙草買ってこい」とでも夫に頼まれた主婦が、

テキトーに買い物袋に放りこみそうな銘柄だ、とステイルは思った。


「君は魔術を見るのは初めてだったかい?」


言いながら、ステイルも今日一日で新たに獲得した経験を振り返った。

十年前の三次大戦とその直前期、ステイルは直接『神の右席』と対峙したわけではない。

イギリス清教内でいち早くその情報を掴んだのは自分だったが、

実際に死闘を繰り広げたのは土御門や神裂に天草式、そして上条当麻らである。

となれば、ステイルの魔術師人生でピラミッドの頂点を成す魔とは――――


「今日君が目にした“アレ”はこちらの世界でも疑いようなく一頂点だった。
 あんなのが世に蔓延っていたら僕程度の魔術師に出る幕などなくなってしまうよ」

「“一”頂点ねぇ。まるで、同列以上が存在する様な言い草だな」

「…………少なくとも僕は二度、身震いするような『可能性』を目の当たりにしてるんでね」


世界には十字教の尺度を一足飛びに越えて、『ホルス』なる領域を目指した者がいた。

ステイルは嘗て『彼』と、そうとは知らぬまま一度だけ対面している。

『右方のフィアンマ』は果たして、『ホルス』に到達していたのだろうか?

あるいは斯様な力を手に入れて尚、彼はまだ『オシリス』の住人だったのか?


(あまりにも雲の上、天上の物語だな)


凡百の魔術師に過ぎないステイルには、とてもではないが解せる事象ではない。


(………………だが)
<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:25:24.94 ID:D2dxTa3t0<>

物思いに耽りながら垣根に意識を戻すと、彼もまた黄昏ていた。

途切れ途切れに噴き出す白煙の不揃いな動きが、その心情を顕著に物語っている。

しかし垣根はステイルの洞察など露知らず、唇の端を鋭く吊り上げて強がった。


「…………考えたってしょうのねえことだな。
 今俺がいる戦場の主役は科学でも魔術でもなく、資本っていう魔物なんだからよ」


ファンタジー世界の絵空事にかまけてばかりもいられない。

そう言うわりにはもう一つパッとしない顔で煙草をふかす垣根を

羨ましげに見つめながら、ステイルは核心を無遠慮に突いた。


「君は間違いなく人間を見ているさ、垣根帝督」

「は?」


あんぐりと口を開けてシガレットを取り落とした所を見ると、図星らしかった。

おそらく、重ね合わせてしまったのだろう、とステイルは思った。

地の底から『死者』を蘇らせて手足の如く使役した魔術師と、

電子の海に沈められた『脳』を生き返らせている今の自分を。


「心配しないで、ていとく」


ステイルの隣に愛しい人の鼓動が寄り添って言葉を継いだ。

フィアンマに一通りの治療を施し終えたインデックスが儚げに微笑む。

その表情にステイルは微妙な、しかし決定的な違和感を覚えた。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:26:43.37 ID:D2dxTa3t0<>

「…………軽々しい事は言えないけど。でも、一つだけ確かなのは」



『ようやく八十%、一万六千“人”に接触した』



一か月前、彼の『家』で交わしたやり取りの中の、ほんの一小節。

インデックスが引用したのは、あの日垣根が洩らした些細な数詞の選択だった。


「あなたの救うべき命を、あなたが迷いなく『人間』って言いきった事。私は忘れてないよ」

「………………心底シスターだな、お前」


心の底から忌々しそうに顔を歪ませて煙草を一際強くふかすと、

垣根は完全に背中を二人に晒してヒラヒラと手を振る。

先ほどまで燦々と白翼がはためいていたそこは、羽がある時より寧ろ一回り大きく見えた。


「どう、いたしまして」


彼を見つめるインデックスの物憂げな瞳にこそ、ステイルは違和感を強めたが、


「最大主教、君は大丈夫か?」

「私? 私は怪我なんてしてないってば! 
 あんまり蔑ろにされると『歩く教会』がそろそろ枕元に立つかも」

「おお、こわいこわい」

「真面目に聞いて! さっきだってステイルは私を庇って……」


終ぞ、その素顔までは暴けなかった。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:28:12.19 ID:D2dxTa3t0<>

どうにも、歯に肉片でも挟まった気分である。

こんな時にこそ一服して気分を平静へと落ち着けたいものだが、

生憎と彼の愛する天国行きチケットは、より愛しい女性の憂慮によって取り上げられていた。

そうなってくると、ステイルが胸の曇天を紛らす為の行動は自然と限られてくるのであった。


「フィアンマ。君は彼の目的について思い当たる節があるようだったね」

「それを聞いて何になる?」

「情状酌量というものが“一応”、英国清教の宗教裁判では認められている」


即ち、お仕事。

特筆してそうだという自覚は無いのだが、インデックスをはじめロンドンの同僚たち曰く、

どうやら自分にはワーカーホリックの気があるらしかった。

暇になったから取り敢えず仕事しとくか。

声には出さずに上体だけ起こしているフィアンマに向き合って事情聴取を開始すると、


「はぁぁぁぁ……………………」


左肘の辺りからこれ見よがしな溜め息をながーく、吐き出された。


(いや、別に僕は何も悪くないよな…………?)


「やれやれ…………俺様は十年前、奴と同じく『聖なる右』を
 完全なる姿へと進化させて、世界の『悪意』を討とうとした」

「はーぁ…………とうまから、聞いた事があるんだよ」

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:29:03.52 ID:D2dxTa3t0<>

ステイルも、後から経緯に関する裏付け捜査を行っておおよそは把握している。

聞いた当時は耳掃除を怠って垢でも溜まり過ぎたのかと綿棒を探し回ったものだ。

耳の方に異常が生じたと考えても無理のない、

なかなかに馬鹿げた目的だと呆れた記憶が鮮明に残っている。


「そうか。ここからは、ある程度推測が入り混じることになるが」

「構わない、言うだけ言ってみてくれ」


一呼吸、小さな間を置く。




「奴の『腕』が有した力とは、『境界線』を消去する能力だ」




「『境界』…………科学と、魔術…………?」


インデックスが眉間を抑えながら呪文を唱えるようにキーワードを口にした。

科学と魔術、第三世界、能力者と魔術師。

察するに彼女も、ステイルと同じロジックを手繰っているようだった。


「辿った過程は俺様にもほぼ理解不能だ。
 だが、科学と魔術が交差した結果の力、そういう捉え方は悪くないかもな」

「じゃああの人は、科学と魔術の垣根…………あ、ていとくの事じゃないよ。
 …………コホン! それを取り払おうとしたのかな?」


突拍子もない話ではある。

しかし、人と人、国と国、科学と魔術。

『線』で二つに隔てられた世界などそれこそ無数に存在する。

そして『線』の上では、ぶつかり合う欲望が遥かな昔から何万リットルもの血を流してきた。

脳裏を金髪の女狐の胡散臭い顔が過ぎる。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 21:29:48.49 ID:N8cC+pUW0<> フィアンマがかっこいいことは認める! <> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:30:49.42 ID:D2dxTa3t0<>

「それが概念と概念の境目だったとしても、可能だったのだろうな。
 『右方のフィアンマ』が最後に振るった『腕』は、
 お前達全員の『生』と『死』の境界を破壊せんとするものだった、と俺様は見ている」

「……そ、それが成功してたら、どうなってたのかな?」

「生者が黄泉路を行くか…………“死者が帰ってくる”のか?
 あるいは更に想像を絶する事態となるのか、それだけは全くもって計り知れんな」


結果としてはフィアンマが『神の右席』に復帰する事で、

ただの――ただの、とは馬鹿げた言い草だが―――『第三の腕』が行使されただけであった。

自分とインデックスは、寸前で『魔女狩りの王』を壁にして事なきを得ている。

まったくもってイノケンティウス先生に頭の上がらない一日だった。


「結局、明確な答えにはなっていないね。
 十年前、世界を救おうとした君は、『座』の接続で奴の中身を覗いた。
 彼も、『右方のフィアンマ』も、また君のように」

「さあ、知らんな」

「………………僕もつくづく、不幸な男だ。
 君みたいなスカポンタンの相手を真面目くさって引き受けなければならないんだからね。
 散々話を引っ張っておいてそれか!」

「俺様と奴は別の人間なんだ、当然だろう」


それは、そうだ。

たとえ他人の人生を誕生から逝去までつぶさに映像として見せつけられたところで

感じ得るのは『共感』までであって、決してその誰かに取って変われる訳ではない。

しかしステイルには、フィアンマが全てを悟った上で口を噤んでいるように思えてならなかった。


「奴が何故、あれほどまでに豊富な科学知識を持っていたのかについては?」


疑念を宿した視線を感じたのか、フィアンマが一瞬沈黙する。

が、すぐに首を軽く振るとステイルを鼻で笑いとばす始末である。

こちらの要請に応じるつもりはないという意志を表示した、雄弁な無言だった。
<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:32:18.00 ID:D2dxTa3t0<>

「ふん……後日、改めて尋問させてもらおうか。
 どのみち君は、数日はベッドの上に磔だろうからね」

「そう急がなくとも、俺様の店に遊びに来ればいいだろう?
 今回の件は借りになってしまったからな、選りすぐりのメイドに歓待させてやってもいいぞ」

「…………君の『城』か。考えてみればそっちにも用がある」

「おや、思いの外乗り気だな。この男やはり奉仕させる方が好みらしいぞ、最大主教?」

「んがっ!! こ、これは違うんだ最大主教!!
 あくまで仕事上の都合であって、っていうかやはりって何だ貴様ァァッ!!!」

「八か月ほど前にロンドン店の無料招待券を送ったではないか。
 土御門から、お前が是非行きたいと駄々をこねている、と聞いて二枚も恵んでやったんだぞ」

「土御門ォォォォーーーーーーーーッッッ!!!!!」


流石は安心と安定のアベレージヒッター土御門だった。

久々にその名を絶叫してちょっぴりほっとした自分を焼き尽くしたい。

赤髪を掻き毟りながらステイルは、おそるおそるインデックスの表情を窺った。

以前この話題で揉めた時には二週間ほど口を聞いてもらえなかったのだ、恐ろしくもなる。

しかし。


「…………あ、え、ごめんね。何の話だったっけ?」


男たちは束の間、素で言葉を失った。

フィアンマが珍しく慌てたように咳払いを一つ入れ、


「『右方のフィアンマ』について、俺様から言う事はもはや何も無い。
 そういう話だ、後はバチカンにでも問い合わせてくれ」


バッサリと話題を打ち切る。

明らかに精神的変調をきたしているインデックスを彼なりに案じたのかもしれない。
<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:34:21.88 ID:D2dxTa3t0<>

だがステイルにとっては到底見過ごすことのできない事態である。

いったい彼女はいつから――“どの話題が出た時点”から様変わりした?


「最大主教」

「お、怒らないでよステイルったら! ちょっと喉が渇いて、ボーッとしてただけかも」

「…………気付いてないのかい?」

「え?」



いったい何故、インデックスはその双眸に溢れそうなほどの雫をたたえている?



「ひゃ……す、す、すて」

「いいから」


自然に右腕が彼女の後頭部に伸びた。

ステイルとインデックスには五〇センチ近い身長差がある。

互いに直立して抱き寄せれば、女の頭は必然的に男の胸より少し下に来る。

左腕をだらりと遊ばせながら、己の内側に閉じ込めた頭髪を右手でふわりと撫でる。


「水分が、勿体ない。喉が渇いたんだろう?」


世界中の誰が聞こうと中身が透けて見えるだろう建前。

ステイルは彼女の泣き顔など見たくはない。

しかしそれ以上に、彼女の息を呑むほどに美しいくしゃくしゃ顔を

間違っても他の男に、いや世界中の誰にも見せたくはないという、

利己的な独占欲が働いた事をステイルははっきりと自覚した。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:35:19.47 ID:D2dxTa3t0<>

「あ………………うん」


相も変わらず、ステイルは愛しい人の背に腕を回す事ができない。

その掌を染める醜い赤が、彼女の真っ白な身体にうつってしまわないか恐れているからだ。

ただでさえ既に今日、一度彼女を抱きしめてしまっている。

五年間、いや“十二年間”自制し続けてきたダムの決壊だけは何としても――――








「一つだけ付け加えるなら、これは単なる勘なんだが…………」

「ひゃああああっ!?」

「ままま、まだ居たのか!?」


横から声が掛かって慌てて身を離す。

学園都市に来てから何回繰り返した行為なのか、数えるのも阿呆らしくなってきた。


「当たり前田のクラッカー。見ろ、この重傷を。
 貴様らが微動だにせず抱擁を交わしているというのに
 自力で動けない俺様をどうして居ないものとして扱えるんだ。
 結界でも張ったか、ステイル=マグヌス? 世に言う桃色時空(ラブラブゾーン)だな」

「いちいち言い回しのセンスが無駄に古いんだよ!! 
 確かに今のは僕らの方に非があったけれども!
 …………で、なんだ? 余程重要な情報なんだろうな?」

「いや、別に? 目の前に交尾中の鬱陶しい蚊が二匹居たから蚊取り線香を付けただけだ」

「蚊が交尾なんてするわけあるかぁぁっ!!!!」

「ステイル、そこじゃないよ」

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:36:21.96 ID:D2dxTa3t0<>

活火山のように声を荒げるステイルとやんわり宥めるインデックス。

一年前に聖ジョージ大聖堂で面会した時と変わらぬ日常通りの二人に戻ると、

フィアンマは怒れるステイルを無視して穏やかに語り始めた。


「世界がどう、などと自分をも誤魔化していたようだが、そんな大層な野望ではなかった」


その表情に、沸き立っていたステイルも思わず気勢を削がれる。

インデックスも真剣な顔で聞き入っていた。

『右方のフィアンマ』。

唐突な独白は、死んだように眠る青年についてだった。


「奴の目的は、夢は。もっと“ちっぽけ”なものだった。
 にも拘わらず奴は焦点をあまりにも遠くに置き過ぎた。
 そこから意図的に目を逸らして、ないものとして扱った。
 故に、敗れたのではないだろうか」


推測で吐けるような人格考察ではない。

やはりフィアンマは、かの魔術師の奥の奥まで目撃したとしか考えられない。

だがそれを口に出す事は何故だかステイルには躊躇われた。

二人の『フィアンマ』にしか理解できない心の問題、なのかもしれなかった。



「何となく、そう思うよ」



それきり、フィアンマは目を瞑って一切の言葉を紡ぐ事を止めた。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:37:26.61 ID:D2dxTa3t0<>

「………………はぁ。兎に角、『前方』と『右方』の身柄はこちらで預からせてもらうよ」

「納得いかないわね」


完全黙秘体勢に入ったフィアンマに軽く嘆息すると、ヒュンと空を裂いたような物音。

結標淡希が帰還して、突如としてステイルの発言に異議を申し立ててきたのだ。

赤毛のツインテールが彼女の肩や呼吸とシンクロして上下している。


「『上』に確認してきたんじゃないのか、ミス結標? 最初からそういう約定だったんだよ。
 イギリス清教は戦力と情報を提供する代価として、敵魔術師の身柄を要求する。
 其方のトップとの間でとうの昔に合意は成されている」

「支払いに滞りありよ。前提が果たされてなければ無効よね、そんな合意」

「僕らでは戦力として不足だったと? 
 申し訳ないね、これでもロンドンではそこそこの腕利きと自負していたんだが」

「ステイルは、すごくすごく頑張ってた。その…………カッコよかった、よ」

「ありがとう。だが、君が居てくれるからこそ僕は闘えるんだ」

「もう…………すているってばぁ」

(軍用懐中電灯で思いっきり目潰ししてやりたい………………っ!!!)


結標が押し殺すように何事か呟いた気がするが、ステイルにはわりとどうでもよかった。

彼女の可憐な微笑の前では、他の万象は彼にとって厠に吐き出された痰滓同然である。


「スーッ、ハーッ……私がクレーム付けたいのは情報の方よ、じょ・う・ほ・う!!
 『左方のテッラ』だったっけ? 何よあのエリマキトカゲ!
 こっちサイドの情報は蓮根みたいに綺麗サッパリ筒抜けで
 与えられたデータはまるで使いものになんなかったわよ!!」

「その辺りは僕の領域じゃないんでね、文句はコチラへどうぞ」


お得意の皮肉気な嘲笑を浮かべるとステイルは、ある番号に繋いだ端末を差し出す。

一層口を尖らせようとした結標はそれを引っ手繰ると、気色ばんで耳に押し付けた。

<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:39:01.54 ID:D2dxTa3t0<>

「霧が丘の結標よ、アンタが情報戦の責任者? ちょっと一言、言わせてもら」

『やっほーあわきん、久しぶりだにゃー。元気にショタコンやってるかい?』

「………………………………やっぱもういい、返すわ」


すこぶる耳にしたくない類の声であったらしい。

意気消沈した結標は携帯電話を突き返すと、肩を落として思いっきり項垂れた。


「それは重畳。君たちがどういう考え方かは存じ上げないが、
 イギリス清教は助ける義理も無いのに協力してやった、善意の第三者なんだよ。
 相応の見返りを貰ってしかるべきじゃないか、と愚考する次第だ」

「んだと? 調子乗ってんじゃねえぞ」

「人をへこましといて、更に喧嘩売ろうっての? 良い根性してるわ」


慇懃無礼な語り口調が能力者たちの顔面を逆さに撫でる。

さすがに人格に難ありと満天下に知られる高位能力者どもである、実に短気だ。


「そうだね、さしあたってまずは…………」


黒夜と結標の威嚇を流して、小馬鹿にしたように肩を竦めたステイル。

そのうちに神父の視線が傍らの修道女と打ち当たる。

二人が同時にニッコリとニタリ、異なる擬音を伴って、しかし一様に朗らかな笑みを浮かべた。



ぎゅるるるるるるる。



「お腹いっぱい、ごはんを食べさせてくれると嬉しいな!」


「腹がくちくなるまで、ご馳走して貰えると嬉しいね」


<> 「右方のフィアンマ」<>saga<>2011/09/06(火) 21:40:45.99 ID:D2dxTa3t0<>

大食いシスターの腹の虫が盛大に半鐘を鳴らして危機的状況を告げた。

唖然として口をぽっかり開けた科学の街の住人たちのうち、

最初に再起動して意外な行動に出たのは――――――垣根帝督だった。


「ぷっ………………くくく、はははははは!!!
 クソッたれな事ほざいたらぶっ殺してやろうと思ったが、こいつは参った!
 だったらウチのビルに来な。たらふく、胃が破裂するまで食わせてやるからよ」


麦野が、フレメアが、浜面が、苦笑いして後に続いた。

陰気な墓地に温かな声音がゆっくりと広がり、さざめいていく。


「あーあ、なんていうか気が抜けたわ」

「私も大体、お腹が空いてきたなあ」

「DM社の飯ねえ。未元ご飯(マターライス)とか出ないよな?」

「お望みとあらば。俺の『未元物質』に」


「「「「「「常識は通用しねえ」」」」」」


「………………チクショウ」


もう一丁、どっと笑いが巻き起こる。

超能力者も、大能力者も、無能力者も、魔術師も、程度の差はあれど皆相好を崩している。

こうして激動の「0715」は、科学も魔術も、『線』の有無も関係ない――――


「やれやれだな、まったく。俺様も招待するんだぞ」

「フィアンマは先に病院に行くの!」

「君に死なれると後始末が面倒なんだ。聴取をしっかり終えてからくたばってくれよ」


――――少々物騒、かつ多々賑やかな喧騒の中で、静かに終わりを迎えたのであった。

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/06(火) 21:43:54.43 ID:D2dxTa3t0<>
あの男が命を懸けて救った続きを、これ以上踏み躙らせる訳にはいかない

数えたら400レスぐらい使ってたシリアス(笑)長編(笑)もこれにてようやく終了です
出来栄えはともかくとして今後に向けて>>1には良い糧となりました
本SSは>>1的にここまでが前座のつもりで組み立てております
まずは次回、第二部のクライマックスから入っていきます

それではまた明日
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 21:46:36.54 ID:9/zDkJxpo<> 連日更新乙!
乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)<>sage<>2011/09/06(火) 21:47:47.18 ID:1k6h9f4S0<> ここまでが「前座」!?
乙でした。まだまだ待ってる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 21:51:28.24 ID:LFRK+DVM0<> 乙なのでございますよ
最初フィアンマかと思った>「………………むぅー」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/09/06(火) 22:20:58.46 ID:xIeBW6ZS0<> 乙乙!

今までが前座…だと…
どこまでもついてくぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/06(火) 22:32:18.15 ID:g22NlVEDO<> 乙!ここまで前座とか凄いな

>>818
やだ…フィアンマ可愛い… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/06(火) 23:10:18.44 ID:FKPvvLeAO<> 乙
大変読みごたえがあって面白かったよ……って前座……だと……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/07(水) 00:08:12.71 ID:YKd23NgNo<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/09/07(水) 07:34:58.64 ID:B9aJhoS5o<> なあ、このSSってインデックスさんとステイルさんがいちゃこらするだけのほのぼのほろ苦ラブコメじゃなかったの?
いつの間にこんな本編顔負けジャンプテコ入れ級のガチバトルになっちゃったの?
おもしろいじゃないかちくしょう
おのれ魔術師 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北陸地方)<>sage<>2011/09/07(水) 11:35:42.10 ID:NVUyO7HAO<> 乙

ここまで壮大な話が前座だと……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/07(水) 12:29:52.94 ID:A5k5R3tAO<> 乙 乙乙 乙乙乙乙 乙 乙乙 乙乙 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/09/07(水) 16:21:14.68 ID:NcXFZ4ZF0<> ぼくたちは、なかよく>>1乙してるよ 
                        ∧_∧
                   ===,=(´・ω・ ) >>1乙
                   ||___|_゚し-J゚||_
                ∧_∧/ //.___|^∧_∧
           >>1乙 (´・ω・ ) /||    |口|(´・ω・ ) >>1乙
                ./(^(^//|| ||    |口|⊂ _)      
  >>1乙      ∧_∧ /./  || ||    |口| ||    ∧_∧    
   ∧_∧     (´・ω・ ).>>1乙..|| ||    |口| ||  (´・ω・ ) >>1乙  
  (´・ω・ )  /(^(^/./     || ||    |口| ||    ゚し-J゚
 "" ゚し-J゚:::'' |/  |/ '' " :: ":::::⌒  :: ⌒⌒⌒ :: ""  `
 :: ,, ::::: ,, " ̄ ̄  "、 :::: " ,, , :::   " :: " ::::



<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/07(水) 20:51:16.74 ID:k/UA3l4t0<>
やっベ不用意な「前座」発言で無駄にハードル上げちまったァァーーッ!!
なんて焦ったりしてませんよどうも>>1です
まあ一応嘘はついていないので大丈夫でしょう

ただ期待をさせ過ぎて肩すかしさせるのも申し訳ないので言ってしまいますが、
エンディングまでの進行度としては既に70%台の位置にいます
残り30%は密度で魅せられれば…………いいなぁ……

では四連投下のラストと参る↓ <> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 20:53:25.58 ID:k/UA3l4t0<>


七月十九日 午後六時 第四学区 路上



ステ「…………以上が、事の顛末だ」スタ スタ

当麻「………………」スタスタ

一方「ま、俺にとっちゃどうでもいい事だけどよ」コツ コツ

ステ「おや、意外な反応だね。同様に除け者にされたミス黒夜は大層ご立腹だったが」

一方「あいつは微妙に厨二病抜けきってねえからなァ。
   気心の知れた仲間に頼りにされなかったのが悔しいだけだろ」

ステ「ふむ」

当麻「それ以上に、一方通行は家族が無傷だってのが大きいんだろうな。
   妹達は一人も戦場には出てないし、黄泉川先生もこのあいだの芳川さんだって」

一方「言ってろ三下が。てめえの方こそどうなンだよ?
   嫁も娘も最前線で危険に晒されてたって話だろうが。
   おまけにオリジナルは一時入院する程の大怪我ときてやがる。
   この秘密主義者に思うところがあって然るべきじゃねェか」

ステ「………………」



当麻「みんな無事だったんだ、それで良しとしようぜ。美琴の負った傷は……本人の責任だ。
   なにせ自分から危険に向かってったんだからな。アイツ自身の口から出た言葉さ」

ステ「ふん。僕は偽善者でもマゾヒストでもないんでね。
   君の方から何もないのなら、僕からも特段、言う事はないよ」



当麻「……俺は」

ステ「言いたい事があるなら言えって意味だよ、わかってるのか?
   ちなみに、もし逆の立場だったら僕は君を許さないがね」

上条「!」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 20:54:45.40 ID:k/UA3l4t0<>

ステ「十年前、『追跡封じ』を追っていた最中の会話を覚えているかい?
   『どうして君は彼女の側にいない? 君が彼女の笑顔を曇らせるのなら八つ裂きだ』。
   かつてのこの言葉に照らし合わせれば、僕の言わんとする所は明白だろう」

当麻「…………俺は守りたいものの傍から遠ざけられて、一人安全な異国に隔離された。
   何が起こっていたのかも知らされず、帰ってきたら全てが終わってた。
   俺がそれに怒りを感じてたとして、だったらなんだってんだ?」

ステ「決まっているだろう」

当麻「わかんねぇよ」

ステ「こういう事だ」

当麻「!」

一方「…………へえ」




ステ「――――――すまなかった」




当麻「お、おい!」

ステ「御夫人と御息女を見舞った脅威は、作戦の一翼を担った僕にも責任がある。
   彼女らの身の安全を万全なものと出来なかった事、深くお詫び申し上げます」

当麻「やめろ、こんな往来で! …………いや、これって」

一方「気付いてなかったのか、オマエ。
   さっきから周りには猫の子一匹いやしねェってのによ」

ステ「話の機密性に問題がなければ、『人払い』など無しで詫びたかったんだが。
   上条理事、いや上条当麻さん。謝罪は、受け取って頂けますか」

当麻「………………」

一方「応えてやれよ、上条」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 20:56:10.68 ID:k/UA3l4t0<>

当麻「とりあえず頭を上げてくれ、ステイル」

ステ「望みとあらば」

当麻「正直に言うぜ。俺は、そう簡単にお前達を許せそうにない。
   雲川先輩も、親船さんも、お前も――――インデックスも」

ステ「…………そうか、当然だろうね。
   彼女だけでも許してやって欲しいなんてのは、虫が良すぎるか」

当麻「話は最後まで聞けよ」

ステ「なに?」



当麻「五年前の事、覚えてるか?」

ステ「五年前、か。彼女がロンドンに“渡って”きた」

当麻「インデックスがイギリスに“帰る”なんて言い出した時、俺は最初止めたんだ。
   『図書館』とか、そういう事情をすっ飛ばしてでもあいつには俺の側に居て欲しかった」

ステ「…………それは残酷だな」

当麻「でも、結局は引き止めきれなかった。どうしてだか、喋った事は無かったよな?」

ステ「ああ、初耳だね」

当麻「ずっと昔から考えてたんだ。俺はインデックスを守りたい。
   絶対に、他の誰にも渡したくない役目だった。それは間違いない」

ステ「………………」

当麻「でも、もし。仮に万が一、俺がインデックスの全てを託せる相手がいるのなら」



「それはこの世でお前一人だけだろうなって、そう思ったんだ」



当麻「だからありがとうな、ステイル。俺の大切な人を守ってくれて」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 20:59:27.92 ID:k/UA3l4t0<>

一方「くくくく。だとよ、マグヌスくン」

当麻「そういう感謝の気持ちが同居してるのも、やっぱり事実なんだ。
   だからそれで貸し借り無し、って事にしようぜ。お前、そういうの気にするだろ」

ステ「…………まったく受ける謂れのない感謝を貰ったところで、
   僕個人としては何一つチャラになってないと思うんだが。
   僕が彼女を守る事はあらゆる意味で自然、かつ必然だ」

当麻「俺の気持ちの問題だってわかってるだろ? 真理の事も、インデックスに礼言わなきゃな。
   しっかし鳥肌もんの光景だったぜ、ステイルの謝罪会見。サイコホラーの方がまだマシだ」

ステ「僕ももうガキじゃあないってことだよ。望む望まざるに関わらず、ね」

当麻「…………だな。気がつきゃ俺も二十代半ば、立派な社会人だ」



ステ「君はどこに出しても恥ずかしい素人理事だろう」ハン

当麻「いつも通りのステイルくんのようで、なんだろう、すんげえ複雑だ」ハァ

一方「言い分は極めて正確に的を射てるけどな」

当麻「お前もいつも通り辛辣すぎんだろ! 温厚な上条さんでも流石にキレますよ!?
   アメリカでだってちゃんと仕事してきたんだからな!
   ホワイトハウスに入ったんだぞ、ホワイトハウス!!」

ステ「君に何ができるっていうんだ? 最大主教の母国語である英語すらまともに操れない君に」

当麻「そういう時の為に通訳さんってのがいるんだろうが」

一方「所詮は三下だ、細部はまるっきり通訳任せだろうぜ。
   雲川もコイツにつける秘書の人選には苦労してるからなァ」

当麻「ぐ」グサ

ステ「それじゃガキのつかいも良い所じゃないか。
   君の存在価値はいったい那辺に置き忘れてきたんだい?」

当麻「ぐぐ」グサグサ

一方「元からあるのかも怪しいな、ぶっちゃけ。
   ああ待て、『四次大戦の英雄』っつう広告塔として使えンだったな」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:00:21.37 ID:k/UA3l4t0<>

当麻「ふ、ふ、」

ステ&一方「「不幸だァ」」

当麻「………………」




「I'm unhappyyyyyyyy!!!!!」ダッ




チクショオオオオオオオオオ!!

ドタドタドタ



一方「精一杯の抵抗は見せてったな」コツ コツ

ステ「どうでもいいよ。それより道はわかってるのかい、アイツ」スタスタ

一方「いや、教えてねェ。あいつは目出度く迷子だろうな…………なあ神父」

ステ「ん?」

一方「これで、戦争も一区切り付いたのか」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:01:49.01 ID:k/UA3l4t0<>

ステ「…………おそらくは、ね。学園都市とイギリス清教の間で友好条約が結ばれ、
   さらに先の一件の鎮静に最大主教自らが秘密裏に関わった、
   という噂がネット上で“まことしやかに”囁かれている」

一方「いけしゃあしゃあと。いかにも土御門のクソ野郎が好きそうな手口だ」

ステ「清教内にはまだまだ科学との交友に否定的な強硬派もいてね。
   あまり表立った援助をしてしまうと内の敵を活性化させかねないんだ。
   僕らは人畜無害な聖人(かくへいき)という切り札も抱えてはいるんだが
   同様の理由でリタイアしてもらった。…………他にも理由はあるがね」

一方「ともかく、だ。一年以上続いた『第三世界』の散発的なテロもこれで」

ステ「『神の右席』の目的は、やや依頼主のそれからは逸脱していたようだったけどね。
   どうあれアレらが使い捨ての駒に過ぎなかった、という可能性は低いだろう。
   今後の調査で詳細も明かされるだろうが、僕の職掌ではない」

一方「…………そうか」

ステ「君ほどの能力者でも、やはり戦争なんてのはゴメンかい?」

一方「無い方が良いに決まってンだろうが、ンなもン。一般論でな」

ステ「…………一方通行。実は、どうしても聞きたい事がある」

一方「あ? 今しなきゃなンねェのかよ、それ」

ステ「ああ、できれば余人を交えたくは」





当麻「おお、いたいた! あぶねえあぶねえ」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:02:58.83 ID:k/UA3l4t0<>

ステ「………………貴様は相ッッッ変わらずだな、上条当麻」

一方「今ごろ気付いてンのかよ」

当麻「いやー、二〇〇メートルぐらい走ったところでやっと気付いたよ。
   そういえば俺、店の場所知らねえ!! ってな!
   はっはっは…………アレ、どうかしたのかステイル?」

ステ「別に。さっさと行こう」スタスタ

当麻「えーっと、一方通行さん?」

一方「どうでもいいらしいぜ、興醒めの三下」コツコツ

当麻「そんな二つ名持ってねえよ! え、ちょっと、ホントに俺なんかしたの!?」




同時刻 第四学区 レストラン『虚数学区』




イン「はいみこと、まこと。スプーンにフォークにナイフにお箸に」

美琴「ま、待ちなさいよ。そんな世話焼かなくてもいいってば」

真理「いっぱーい!」キャッキャッ

イン「うう…………でもでも、みことに無理させて傷口でも開いたら、
   とうまに合わせる顔がますます無くなっちゃうんだよ」

打止「お姉様、内臓に損傷があったって聞いたけど大丈夫?」

美琴「あの先生の腕前はアンタだってよーく知ってるでしょ。みんな大袈裟すぎるのよ」

打止「まあ、確かにそうだけど、ってミサカはミサカは内心の不安を押し殺してみたり」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:04:24.86 ID:k/UA3l4t0<>

美琴「アンタにそんな顔されたら本末転倒じゃない。
   明日は………………めでたい日、なんだからさ」

イン「そうそう、主役はらすとおーだーなんだよ?
   女同士なんだから遠慮なくじゃんじゃんやって欲しいかも!」ガツガツガツガツ

美琴「だったらアンタちょっとは慎みなさい」

イン「今日は無礼講だって言ったのはみことかも!」バクバク

真理「ぶれいこー?」パクリ

美琴「最低限の淑やかさを保ちなさいっつってんの! ほらもう、口の周り!!」ゴシゴシ

打止「む……お姉様、インデックスさんの相手ばっかしてないで!
   お姉様はミサカのお姉様なんだからね!!」

イン「私はそのみことのさらにお姉さん、シスターオブシスターなんだよ」フフン

美琴「誰が上手い事を言えと」

打止「むむむ、それなら!」

イン「それなら? どうするのかなぁ?」ニヤニヤ



打止「………………インデックスお姉様ぁ」



イン「はうううっっっ!!!?」モンゼツ

打止「お姉様のお姉様なんだからこう呼ぶのが自然かも、
   ってミサカはミサカは大姉様の真似をしてみたり」

イン「Please once more say at any cost!! For God's sake!!!」バンバン!

打止「大姉様ぁ」ネコナデゴエ

イン「FUUUUUU!!!!!」

美琴(なにやってんだか)シラー

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:06:16.37 ID:k/UA3l4t0<>

風斬「お待たせしました、イカスミスパゲッティのお客様」

真理「あ、りょうりのおねーちゃん! ごはんおいしーよ」

風斬「ありがとう、沢山食べてってね」

美琴「風斬さん、言ってくれれば運んだのに」

風斬「そ、そんな。お客様にウエイターをしていただくなんて」アセアセ

美琴「今日は無理言って貸し切らせてもらったんですから。
   御迷惑おかけしたお詫びだと思ってここは一つ、ね?」

風斬「でも、他のお客様の手前…………」

美琴「他の客ったって、アレですよ?」クイ



婚后「ほーっほっほっほ! わたくしを婚后航空の婚后光子と知ってますの!?」グビグビ

白井「はー? 知るわけありませんの、そんなちっぽけな企業の取締役ごとき」ヘベレケ

佐天「あは、あはははははは!!! ほらほら鉄装先生もういっぱーい!!」ベロンベロン

鉄装「な、なんで私はここに呼ばれたんだろう…………?」オドオド



心理定規「“あっち”で大丈夫かしらね、あの人は」チョビチョビ

麦野「フレメアももう、酒の飲める歳なのねぇ……。
   私も危機感持たないと行き遅れるわこりゃ」シミジミ

フレメア「麦野さんいくつだっムガ!!」

麦野「それ以上聞いたら姉貴と同じ末路辿らせるわよ」

フレ「」コクコク

心理(洒落になってないわね……むしろ、洒落で済むぐらいの仲だって事かしら?
   なんか腑に落ちないわね、この二人の単位距離)

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:07:56.87 ID:k/UA3l4t0<>

真理「しずりんこわい」

美琴(婚后さんなんて本当にどこから嗅ぎ付けてここに来たのかしら)

風斬「あ、あはは…………」

美琴「主役(はなよめ)そっちのけのあんな連中ばっかりなんだから、
   風斬さんも遠慮しないで一緒に楽しみましょうよ」

風斬「いいのかなぁ……?」

美琴「インデックスの友達なんだから、良いに決まってますって。それに」

風斬「それに?」

美琴「私たちだって、もう友達ですよね?」ニッコリ

風斬「う」ドキ

美琴「…………ダメ、ですか?」ウワメヅカイ

風斬「だだだ、駄目じゃありませんよ!? 
   今日から私と上条さん、じゃなかった、美琴はお友達です!」

美琴「ふふ、氷華さんみたいな人が当麻とインデックスと共通の友人だなんて嬉しい」ニコ

風斬「」マッカ



イン「さすがはフラグ夫婦の片翼、性別なんて小さき事なんだよ」ゴクゴク

打止「それ、インデックスさんにだけは言われたくないと思うなぁ」

イン「………………へ、なんで?」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:09:27.63 ID:k/UA3l4t0<>

風斬「と、とりあえず作れるだけのお料理は作ってきちゃいま……きちゃうね」イソイソ

美琴「プロの料理人に対してさすがにその領域までは踏み込めないわよねー。
   出来たら呼んでくださいね、あっちの呑んだくれども動員しますから」

風斬「(それはそれで不安なんだけど……)ではお客様、失礼します」ペコリ


パタパタ


イン「ひょうかもしっかり落とされちゃったなあ」

美琴「落とす? そういえば空飛べるんだっけあの人」

打止「空を舞ってるのはお姉様の思考回路じゃないかな…………ん?」


ドォン!


イン「い、一升瓶?」

麦野「よう、インデックス、第三位。それから……第一位の嫁だっけ? まあ飲みなさいよ」ツツツ

美琴「あら、麦野さんじゃない。飲み過ぎて浜面さんに怒られないようにね」ドウモ グイッ

真理「しずりんだ!」

麦野「その呼び方止めなさい」

イン「二人とも知り合いだったの?」



美琴「…………あー、まあ、その。同じ超能力者の誼で」

麦野「…………えー、ほら、あれだ。浜面ん家で時々お茶するから、その縁で」

イン「? まるでW勇者とピサ○が一緒のパーティで旅してるみたいなぎこちなさなんだよ」

美琴「それはどっちかっていうと私と一方通行だけどね」

麦野「あの辺の心情的なしこりさえ除けばPS版は名リメイクよね」

打止「私がロ○リーポジション? ってミサカはミサカは悲劇のヒロインぶってみたり!」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:11:05.15 ID:k/UA3l4t0<>

心理「………………あなた達、何の話してるの?」

フレ「んあー、大体、名作と言ったらXに決まってるんだにゃあ」

麦野「いやVだろJK。そんなところまでフレンダにそっくりね…………。
   アイツはスーファミ時代のス○ウェア&エニ○クス信奉者だったわ」



美琴「そっちの二人は本格的に誰だかわからないんだけど……」

打止「みんなインデックスさんが呼んだの?」

イン「しずりとフレメアは結婚前夜祭をやるっていったら二つ返事で来たんだよ」

美琴「アンタ酒飲みたかっただけでしょ」

麦野「だってさ、ズルくない? 『アイテム』で招待状貰ってないの私だけなのよ?」

打止「ご、ごめんなさい」

フレ「ハブられたんですか(笑)」

麦野「ふーれめあぁ?」

フレ「結局大体、『フレ/メア』だけは勘弁してほしいって訳よ!」

麦野「ぐっ、のヤロ……!」グサグサ

心理(ああなるほど。トラウマを抉る方向でチクチクやってるのね、結構性格悪いわこの子)

フレ「さっきのお返しだにゃあ」

麦野「冗談で紛らわされて、アイツも浮かばれないわね」ハァ

フレ「遠慮せずに言いたい事は言う、って決めたでしょ?」

心理(お互いの傷に触れようとお構いなしの単位距離。
   これってなんて呼ぶのが相応しいのかしらね、ふふ)

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:12:29.60 ID:k/UA3l4t0<>

美琴「その件についてはしょうがないわよねぇ。
   浜面夫婦は新郎の友人で、絹旗さんと黒夜さんは家族だもん」

打止「あの人はメトロノーム並みに首振って否定してたけどね」

麦野「それ映像で残してたりしてない?」

打止「ふふふ、抜かりはありませんぜ親分。
   あの人のちょっと恥ずかしい姿だけをピックアップして
   編集したスペシャルビデオを二次会で公開予定だったり!」

フレ「一方通行の? あーん、何それ見たかったなあ」

麦野「ちっ、せっかく第一位の痴態を観賞できるチャンスだったのに。
   この店カラオケ用のモニターとかないの? ……ないなぁ」

イン「それでもみことなら……みことなら、きっとなんとかしてくれる……!」

美琴「なにこのまったく嬉しくない絶大な信頼感」

真理「zzz」オネム

心理「ツッコミ不在って場のコントロールが大変ね。男衆の方に偏りすぎてるのかしら」チビチビ



打止「えーっと、それであなたは?」

心理「私は“向こう”の会場に上司が居るから、何かあった時の為に待機してるだけよ」

イン(なんか奥さんみたい)

美琴「それでも主賓に向けて一言あるべきでしょうに」

心理「…………確かにそうね」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:14:20.59 ID:k/UA3l4t0<>

ペコリ


心理「申し遅れました。私、DM社(株)の代表取締役を務めております、
   メジャー定規という者です。この度はご結婚おめでとうございます」

打止「は、はぁ(メジャーって定規の事だよね……定規定規?)」

心理「お子様がお生まれになった際には是非、当社に御一報を下さいませ。
   DMが自信を持ってお薦めするおもちゃで情操教育の手助けをさせていただきたく」

打止「え、ちょ」

心理「こちらのカタログをどうぞお持ち帰りください。ちなみにこの夏の目玉商品は
   『暗闇の五月(バーニング・ダーク・フレイム・オブ・メイ)チョッキ』
   となっておりますのでどうぞよしなに」ペラペラ

美琴「名前長っ! 読み仮名酷っ!! それ絶対おもちゃじゃないわよね!」

イン「その思春期特有のネーミング、対象年齢十五歳ぐらいだと思うんだけど」

麦野「どっかで聞いた事あるような……っつーかあの冷蔵庫野郎、結局アレを売り出すの!?」

フレ「情操形成に大体、何の貢献もしそうにないし」

打止「結局ミサカは祝福してもらったのか、それとも押し売りされただけなのか」

心理「さあね、それは歴史が決める事よ」フッ

打止(………………意味がわからない)



イン「こういうときステイルなら、バシッと良いのを一発を入れてくれるんだよ」

美琴「一方通行でもいいんだけど、どっちにしろ偉大な存在だって痛感させられたわね」

打止(本人たちが聞いたら涙流すだろうなぁ…………血の)

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:15:54.89 ID:k/UA3l4t0<>

心理「ほら、あなたたちも明日のヒロインに一言申し上げなさいな」

麦野「ん、ああ…………第一位とは知らない仲じゃないんだけどさ、アンタとは初めてね」

打止「そういえばそっちの外人さん、昔顔を見た事があるような、
   ってミサカはミサカは頭を捻ってみたり」

フレ「へ? 私は全然覚えてないよ」

打止「気のせいかな…………」



麦野「とにかく。血腥い人生なんざ綺麗サッパリおさらばして、幸せにやんなさいよ」

打止「ど、どうもありがとうございます」ペコ

フレ「よくわかんないけど結婚おめでとう! 私も彼氏欲しいなぁ」

麦野「…………もし男ができたら、『アイテム』の誰でもいいから紹介すんのよ」

フレ「あはは。真っ先に麦野さんに電話するから、大体心配しないでいいよ」

麦野「………………フン」ソッポムク



美琴(良くわかんないけど、複雑そうね麦野さん)コソコソ

イン(基本サバサバしてるしずりには珍しいかも)ボソボソ



打止「ありがとう。ミサカは必ず幸せになります、って宣言してみたり」テレテレ

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:18:09.58 ID:k/UA3l4t0<>

風斬「上条さーん、お料理が出来ましたよー」チューボーカラデスヨ!

美琴「待ってました。ほら、そっちの酔っぱらいども!」

イン「るいこー、くろこー、手伝って欲しいんだよ。それから…………うっ」



白井「お姉様とお姉様のお姉様のお呼びですの!?
   お姉様パラダイスへの入場を許可されてもう、
   もう黒子は…………お姉様ヘブゥゥン!」ビクンビクン

佐天「ひゃひゃひゃ、白井さんってばお姉様がゲシュタルト崩壊してるよ!」ゲラゲラ

鉄装「あ、はい、えっと、何をすればいいんでしょう、うぷ」

美琴「ご、ごめんなさい、鉄装先生は無理しないで座っててください」

鉄装「申し訳ありません……………私っていつもこう、肝心な時に役立たずで」イジイジ

美琴「ああもう! 黒子、佐天さん!! 厨房に行って氷華さんを手伝ってきなさい!」

白井「了解ですの! アンチスキルですの!!」ヒュン

佐天「もはははは、イミフだよ白井さーん」タッタッタッ

美琴「…………はあ、それから」



婚后「あら御坂さん、お久しぶりですわー。いつぞやのテストパイロットの方も」ポワポワ

イン「ぅぅぅぅぅ」ビクビクビク

美琴「い、インデックス? 重度の本態性振戦みたいな震え方してるわよ」

打止「まるで某大作RPGの奥義の名前みたいだけど
   大変な目に遭ってる方もたくさんいる怖い病気なんだよ、
   って豆は豆はミサカ知識を披露してみたり」フラフラ

鉄装(突っ込んどくべきなのかな……)

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:19:32.66 ID:k/UA3l4t0<>

美琴「こ、婚后さん。久しぶりで積もる話もあるけど
   インデックスがこの調子だから、また後にしましょうね」スタスタ

イン「」ガクガクブルブル

婚后「あらあら、残念ですわね」オホホノホ

美琴「ほら、歩ける? テーブルに座って大人しくしてたほうが」

イン「あ、あの人から離れさえすれば収まると思うんだよ。
   私だってひょうかのお手伝いしたいかも」ブルブル

打止「じゃあ私も!」

美琴「主賓は座ってふんぞり返ってなさい」

打止「ちぇー、つまみ食いしたかったのに」

美琴「だと思ったわよ……」



厨房



イン「………………」キラキラ

美琴「………………わぁお」

風斬「あ、インデックス、上条さ……み、美琴」テレ

美琴「す、凄い…………コレ全部、さっき別れてから今までの間に、しかも一人で?」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:20:44.35 ID:k/UA3l4t0<>

佐天「いやーすごいですよね風斬さん! 思わず酔いが醒めちゃいましたよ!」

白井「中華・トルコ・フランス・イタリア・インド・そしてもちろん日本。
   王侯貴族によって研鑽された歴史ある宮廷料理から、民間に広く親しまれる郷土料理まで。
   この白井黒子、名門常盤台の卒業生として多少は食への造詣に
   自信があったのですが…………感服いたしましたの、風斬さん!」

風斬「そ、そこまで仰々しいものじゃあないですよ」

美琴「いやほんと、これは綾乱のメイドも真っ青よ。氷華さん、どこで修業したんですか?」

白井「さぞ高名な料理家のお弟子さんとお見受けしましたの!」

風斬「あー、えー、その………………か、神様みたいな人……人? で、ですかね」アハハ

佐天「そりゃま、弟子にとっては師匠ってそういう存在ですよね」

イン(ひょうかの先生……?)ハテ

美琴「ま、別に誰でもいっか。それより黒子、佐天さん、テーブルまで運びましょ」


ヤイノヤイノデスノ

ツマミグイシナイノサテンサン!

タハー バレマシタ?


風斬「………………ふふ」

イン「ひょうか、身体の方は問題ない?」

風斬「心配しないで。だって私は――――『天使』なんだよ?」

イン「………………」

風斬「あれ、インデックス?」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:22:14.80 ID:k/UA3l4t0<>

イン「今のはひょうかだから許せるけど、仮にみことのドヤ顔で
   発言されてたらと思うと引っぱたきたくなる事請け合いかも」

風斬「ええぇぇぇ!? わ、私そんなにアレな事言ってた?」

美琴「ちょっと聞こえてンわよバカシスターァァァ!!」

イン「ほらほらお皿落としちゃうよみことぉ(苦笑)」

美琴「んぬっ、おっ、おっとと! あ、後で覚えてなさい!!
   っていうか誰よ満漢全席なんて頼んだヤツーーーーっっ!!!」フラ フラ

イン(メニューに載ってる時点でどうなんだろう、それ)


オマールエビトアワビノフリカッセデスノー

トムヤムクンイッチョウ!

チョットアンタラショウジキニハクジョウナサイ!


風斬「いい人だね、みんな」

イン「みことの昔からの友達で、これからはひょうかの友達なんだよ? 当然の事かも」フフン

風斬「インデックスの友達だからいい人、って見方もできるよね」フフ

イン「…………ひょうかも言うようになったんだよ」カァ



配膳中…………



美琴「そういえば初春さんは?」

佐天「そりゃあもう、中の人も花粉撒き散らすぐらい来たがってたんですけどね」

白井「上司に仕事をしこたま押しつけられたとかで
   会社に缶詰らしいですわ。ザマアミロ、ですの」ケケケ

美琴(上司って、麦野さんと一緒のテーブルに座ってたあの人の事よね)

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:23:52.56 ID:k/UA3l4t0<>

佐天「初春といえば、この間の事件では久々に四人揃って動きましたよね」

白井「昔から色々無茶な事に首を突っ込んでは来ましたが、先日の件は次元がまるで違いましたの」

佐天「統括理事会の指揮下で一位と六位を除く超能力者が揃い踏み、だもんね。
   当事者じゃなかったら、聞いただけでワクワクするシチュエーションなんだけどなぁ」

美琴「理事会は私をあてにするつもりはなかったみたいよ? 
   生き残れたのはひとえに運が味方してくれたから。
   そう思えるぐらいの怪物が敵じゃあ……大事をとっても仕方がないのかもしれないけど」

佐天「納得してない、って顔ですね」

白井「そう気を揉まなくとも、単純に強さを基準とした選抜でない事は
   第一位様が同様に戦力外とされている点から明白だと思いますが」

美琴「いや、実はね。第一位……一方通行が戦力から外された理由は、何となくわかってるの」

佐天「そ、そうなんですか?」



美琴「アイツはここ一月ばかり、目に見えて情緒不安定だったわ。
   確かにアイツは私が“一万人”束になろうが敵わないほどに“能力は”強い。
   でも心身の不均衡と、打ち止め(だいじなひと)っていう弱点を同時に突かれたら?
   ある意味一方通行は、現在学園都市で最も弱い超能力者だった、ともとれるの」

白井「なるほど、それでいて『第一位』のネームバリューは健在ですものね。
   警戒心の強い魚を呼び込むため、釣り針から外す餌としては正に最適。
   メンタルに不安のある第一位さんを戦場から遠ざけることもできて、一石二鳥ですの」

佐天「は、はぁー…………そんな深い意味があったんですか」

美琴「そこにくると、私や当麻が戦線から外されて
   何も知らされなかった理由ってのが、どうにもわからないのよ」

佐天「旦那さん、アメリカに行ってたんですって?」

美琴「うん。公式会談の翌日から急に(例の“アレ”で)飛ばされて、昨日帰ってきたわ。
   私も突然常盤台で講演会の予定を入れられて、変だとは思ったの」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:25:31.82 ID:k/UA3l4t0<>

白井「…………お姉様、これは黒子の当て推量なのですが」

美琴「なにか思い当たる事があるの?」

白井「理事会が戦力として数えた方々は、ある種の覚悟を持った方だったと思いますの。
   かつて学園都市に隠されていた『闇』に深く身を沈めた経験ある御仁。
   少なくともわたくしが共闘した結標さんと浜面さんはそうでした。
   そしてわたくしは、彼らの“覚悟”を止められなかった」

佐天「覚悟っていうのは…………」

美琴「“殺す覚悟”、ね」

佐天「……!」

白井「彼らの覚悟や決意、そういった『暗さ』を目の当たりにして。
   その後でお姉様にお会いした時、わたくしは、途轍もない『眩しさ』を感じました。
   トンネルから出るとしばらく視界が白く染まるアレですわね。
   ちょっと潜っただけのわたくしがそうなのですから、
   トンネルの中の住人さんたちは尚更だったのではないでしょうか?」

美琴「………………そんな」



美琴(私は胸を張れるような、明るい場所だけを歩いてきた女じゃあ……)

佐天「美琴さん自身がどう思ってたとしても、やっぱりあなたは眩しい人だと思いますよ」

美琴「! さ、佐天さんほどじゃないと思うけど」ゴニョゴニョ

佐天「やだもー、お世辞はいいですって! まあそれはさておき。
   ステイルやインデックスも、多分統括理事会の人も、
   上条一家には危ない目に遭って欲しくなかったんじゃないですかね?」

美琴「あの二人、というかインデックスがそういう考えに至るのは納得できるけどさ。
   学園都市の上層部にまで配慮してもらうようないわれはないわ」

<> 天使編@<>saga<>2011/09/07(水) 21:27:39.83 ID:k/UA3l4t0<>

佐天「そこで白井さんのあてずっぽうですよ!」

白井「当て『推量』ですの! 悪意ありありの間違え方はやめてくださいまし!」



佐天「学園都市にとって『上条当麻』と『御坂美琴』の
   名前が持つ意味は、二人が考える以上のものなんです。
   かたや世界に名を轟かせた『ヒーロー』で、かたや科学の最前線に立ち続ける『ヒロイン』。
   誰もが二人の乗った気球を尊敬と、羨望と、ちょっぴりの嫉妬を籠めて見上げてます。
   上で実際にどんな強い風が吹いてても、下から見る人たちには関係の無い事です。
   陳腐な言葉を選ばせてもらえば――――希望そのものなんですよ、二人は。
   だからこそ親船さんは、あまり多くの荷物を背負わせたくなかったんじゃないでしょうか」



白井「むむ、やりますわね佐天さん。私も概ね同意見ですの、お姉様」

美琴「…………ふふ。まあ、結局はあてずっぽうの空想よね」

白井「その言い方とタイミングだとわたくしがテキトーに妄想をぶちまけた、
   みたいに聞こえるので勘弁してほしいですの」ハァ

佐天「そこに麦野さんがいるんだから、聞いてみたらどうです?」

美琴「事実がどうであれ、絶対答えてくれないわよ。素直じゃないもんあの人」ヤレヤレ

白井「…………ブーメランはお得意ですか、お姉様?」

美琴「普通に、投げればちゃんと返ってくる程度には出来るけど」キョトン

白井「それはよござんした」

美琴「?」

佐天「ははは。さ、言ってるうちにこれでラストですよ」ヨッコイセ

美琴(…………はぁ、私も誰かに諭されてるばかりじゃ駄目だわ)



(あの子の背中、もう一度押してあげないとね)



<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/07(水) 21:29:37.96 ID:k/UA3l4t0<>
私の体は、沢山の人の『続き』で出来てるんだよ?



.          /::::::::/             ` 、::::::::::`:.、ヘ
        ':::::::::::/ __________ \_::::_} ∨ヽ
       /::::::::::::レ'´::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::>ヽヽ}> ヽf} 八_
       .:::::::::::::::{:::::::/::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::> <7´⌒ヽ  /
      ':::::::::::::::::::::,イ:::::::::::::ハ::::::::、::::::::::::::i::::::::!:::::::/人人  人ノ
      '::::::::::::::::::::ハ:斗―匕ハ:::::ハ::::::::、:i!::::::i!::::::::::::イ ヾrくソ }
     '::::::::::::::::::::斗 ´ ̄ ̄    ̄   ̄ ̄`_ハ::::::::::::{  人〈_ノ
.     |:i!:::::::::::::::::|    ___           `ヾ::::::::::7´  i{ ヽ、
.     {ハ::::::::::::::::i|              ̄    \::::ヽ_人ノ ヽ
     〉ヽ::::::::::::::ト,ィ≠==、        __    |::::::::::::::::人_}
.    人::::..、::::::::::{              ´ ̄ ̄`ヽ  i!:::::::::::::::::{
     人:::人:::::::ヽ .::::::..               j} /::/::::::::人::ヽ_
      /人( iヽ! ̄        '         ..::::::. /ノi!::::人::ヽ ̄
.      ´   `ヾ       r      ァ      ´ ノ}/!/  ̄
          ヘ       !´    /      人_,イ'
           }:..、    ` ― ´     イ:::::::::/
           ∨::>            <::::::::::::::/
             ハ:::::く 、i    ̄   l!>、:::::::::::ハ:::{
            }::::::::〉:`..――‐..´.::〈:::::::::::{ ヾ!
            ,ノ-‐.´、: : : : : : : : : : :ヽ、::::::j!
     _ -=´ { : : : : : : `: : : : : ノ: : : : : : ̄`: . 、
    <: : : :{   {: : : : : : : : : : : :´: : : : : : : : : : : : :  ̄> 、


前章でおいしいところ持ってったからワリ食ったとかじゃないですよ(笑)
気楽なドンチャン騒ぎかと思ったら小難しい説明回だったでござるの巻
次回は長文の少ない真のお気楽展開ですから安心してくださいな

では次は金曜日夜にお会いしましょー
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/07(水) 21:57:10.87 ID:YKd23NgNo<> 乙です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/09/08(木) 00:00:44.42 ID:yNLJMlOAO<> >>1乙
ステイルかっこよすぎわろた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/08(木) 00:14:02.53 ID:Bh9jHZfKo<> あなたの「お気楽展開」は信用できないんだよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/08(木) 00:19:35.49 ID:YeO69HN0o<> 乙
上条さん今回の騒動随分あっさりと流したな、上条さんらしいと言えばらしいが……
一般的な妻子がいる立場の人間として「それでいいのか?」って思いが強いわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/08(木) 06:48:09.15 ID:k5MVLc0+0<> >神様みたいな人
どこぞの聖守護天使ですね分かります <> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:13:28.02 ID:FRgvonin0<>
どうも>>1でごじゃいます

>>854
こういう批評を貰えると大変励みになります。
確かにこの辺りの描写は少々迷いました。
しかしインデックスを挟まないステイルと上条さんの関係を表現するに当たって、
感謝だの謝罪だのをうじうじ引きずらせるのは何か違うかな、という個人的な解釈からこうなりました。
上条さんの怒りの矛先はかなり分散してますし、ステイルに突然頭を下げられて気勢を削がれた感もあります。
まあ一番の理由は、メタ的にここで穏便に決着させとかないと後の展開に響くからなんですが。

……あんまり嬉しくてキモイ長文になってしまいました
今後も御批評を頂ければこの>>1はわりと本気で喜びます
え、Mだからじゃないよ! >>1はSだよ!

>>853
ギクッ

>>855
ドキッ

では本日はやや長くなりますのでお気をつけください↓ <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/09(金) 20:14:53.01 ID:FRgvonin0<>


第四学区 とあるビルの前



ステ「このビルかい?」

一方「三階だ、そっちの階段登れ」


タン タン  コツ コツ  タン タン


当麻「一階も同じ看板かかってたぞ?」

一方「店舗が三・四・五階、下は厨房やら倉庫やら、上は事務所だな」

当麻「学園都市第一位プロデュースの店だもんなぁ、そんぐらいは普通か」

一方「オレァ出資しただけだぞ……いや、出資させられたっつうンだよなありゃ」ゴニョゴニョ

ステ「? 何にせよスケールの大きい話で羨ましい事だ。
   おや、ここからミス風斬のレストランが見えるね」

当麻「打ち止めたちは今ごろ楽しんでるだろうな……“独身最後の夜”を、さ」

一方「ちっ、頼ンでもねェのにお節介野郎が。で、どっちの演出なンだ?」

ステ「ん?」

当麻「え?」

一方「は?」




「「「…………」」」




<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:15:35.91 ID:FRgvonin0<>

ステ「…………まずは、各々の認識を突き合わせようか」

一方「テメエがこの店に連れてけってメール寄こしたンだろうが、三下」

当麻「い、いやいや! お前がちょっとブルーな夜を酒で紛らわしたいからってメールで」

一方「誰がコバルトへと消える真夜中のマリッジブルーだァァァ!?」

当麻「そこが琴線なのかよ!? お前のツボがよくわかんねーよ!」

ステ「僕も状況はこいつと同じだ。まあどのみち、君たちには「0715事件」について
   僕の口から説明するつもりだったからね。渡りに船だ、と思って来たんだ」

当麻「だいたいお前の店なんだから、本人の企画だって思うのはごく自然な事だろ」

一方「くそがッ! じゃあ誰だ、こンな舐めた真似しやがるのは……!」



ステ「第一候補:土御門」

当麻「納得した」

一方「すンげえ納得した」

ステ(土御門ブランドの説得力ときたら他の追随を許さないな……)

当麻「どうする、帰るか?」

一方「はン、ふざけンな。ここまでコケにされておめおめと帰れるかよ」

当麻(俺ら何かバカにされたっけ?)ボソ

ステ(メールの“マリッジブルーな夜”のくだりだろう。完全に図星だったと見える)ボソ

当麻(ああ、そういう…………)ウンウン

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:17:15.53 ID:FRgvonin0<>

一方「誰が相手だろうと知った事か、人を謀ったオトシマエ付けさせてやらァ!!」

ステ(イヤな予感がプンプンだ。しかもこういう時に限って
   外れた試しがないんだよなこの手の第六感は…………ん? この看板)




                      『居酒屋 神の力』




ステ「帰る」

当麻「おい、どうしたお前まで!?」

ステ「黙れ鳥頭! この店名を見て何とも思わないのなら
   『四次大戦の英雄』なんて肩書は今すぐ捨てろ!!」

当麻「ああ、別にアックアが店主務めてるとかじゃないぜ? 
   ただもうちっとアレなのが居るけどさ」

ステ「覚えてた上で僕を連れてきたという事は…………!
   まさか何が起こるか承知の上で罠にかけたんじゃないだろうなぁ!?」

当麻「いやそんな事はねえけど」

一方「モタモタしてンじゃねえよ三下ども、行くぞ」

ステ「待て、せめて心の準備をさせてk」


ガラッ


ステ「聞けええっ! くそ、落ち着けステイル=マグヌス!
   魔術師だろうが超能力者だろうが、この期に及んで何が出てきたところで」
<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:18:28.10 ID:FRgvonin0<>














ガブリエル「nciwe歓迎mapkzisお久effop」イェーイ




ステ「予想飛び越えすぎて天界まで行ったァァーーーーッッッ!!!??」




当麻「よう久しぶり。店に来るのは初めてだな、楽しみにしてるぜ」ヒダリデポンポン

一方「おい大天使、この件の首謀者はどこにいやがンだ?」

ガブ「nogwq照euqwoimzuwaf客yeg和室bcils」




ステ「馴染むなぁぁぁ!!! 僕を置いてきぼりにしないでくれ頼むからああああ!!!!」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:19:43.52 ID:FRgvonin0<>

五分後


ステ「とにかく、説明をしてくれ。この…………えっと、レディーはまさか……」

ガブ「giuwgexo淑女uoafveh嬉bozsoia」

一方「“これ”見てレディーなンつう台詞が出るたァマグヌスくンのフェミっぷりも本物だな」

当麻「ステイルってそんな紳士キャラだったっけ? 
   インデックス以外の女には容赦なかったと思うけどな。アニェーゼ部隊とかオリアナとか」

ステ「彼女らは敵だっただろう。…………ここ数年で前最大主教にみっちりしこまれてね。
   曲がりなりにも女性の姿をとっているのなら、相応の扱いをさせていただくよ」

当麻「ま、コイツは大天使ガブリエルだから性別なんて有って無きが如し、だけどな」

ステ「またあっさりと暴露してくれたな……薄々そうだとは思ってたけど。
   天使を直接見るのはミス風斬以外では初めてだが…………なんていうか」

当麻「テレズマだっけ、アレが空っぽになってるらしいんだよ。
   だから今のガブリエルは普通の人間と変わらず食う寝る働くの生活してるんだ」

ステ「んなアホな。いやしかし一ヶ月彼女の存在を感知できなかったのは事実だしな……」ブツブツ



当麻「こいつは三次大戦が終わってしばらくした後、
   風斬の前にひょっこり現れたらしくてさ」

一方「その後いろいろあって料理の道に進ンだ二人を俺が金銭的に支援しましたァ、以上」チャンチャン

ステ「『いろいろ』の部分に何があったのかを聞きたいんだよ!
   君にいったいどんな義理があったっていうんだ一方通行!!」

一方「強いて言えば、殺し合った仲?」

ガブ「iucgre激闘adng氷華igire三人仲良h」

ステ「ああもうダメだ、胃が痛くなってきた。
   ついでにいろいろどうでも良くなってきた。料理の腕は確かなのかい?」

一方「この世とは異なる世界の料理とかは出ねえから安心しろ。
   つうかそうじゃなかったら店なンざ開けねえだろ」

ステ「もっと根本的に納得できない部分が山盛りなんだが……もういいや、どうでも」トオイメ

当麻(ステイルが投げた…………)

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:20:29.05 ID:FRgvonin0<>

当麻「で、パーティ会場はどこだ?」

一方「上の和室でもうおっぱじめてるらしいぜ」

ステ「なにサラッと天使言語理解してるんだ!?」

当麻「落ち着けよ、まずは一杯やって気を静めようぜ」

ステ「だったら今すぐこの店から帰らせてくれ! それが一番の鎮静剤だ!!」



居酒屋『神の力』 四階 和室前



一方「さあて、この襖の向こうに居る筈だぜ」

当麻「中から『ど根性ガエル』の主題歌が聞こえてくんだけど」

ステ「誰がいるのか早速一人確定したな…………」

一方「大人しく出てきやがれ、土御門ォォッ!!!」



モイチドガラッ








??「よく来たな、一方通行」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:21:24.59 ID:FRgvonin0<>

??「この俺の事を、忘れたとは言わせねえぜ」


??「なにせ俺はテメエを史上最も窮地に追い込み、そして“殺された”男なんだからなぁ」


??「もうわかったな? 株式会社DMの公式マスコットとは世を忍ぶ仮の姿」


??「その正体は泣く子も笑わせるDMホールディングスの会長にして」


??「『常識の通用しない』でお馴染み」









         (\\                    //)
           \\\                ///
           (\\\\            ////)
           (\\\\\         /////)
            \\\┌――――――‐─┐ ///
                 |________________|  
    ( ̄ ̄//// ̄\|=========|/ ̄\\\\ ̄ ̄) 
      ̄(//// ̄\/|     -、__,      ..||\ / ̄\\\\)
        (/(// ̄/ l   rデミー'  'ー'  .|ト、 \  ̄\\)\)
           ////〕  ゛`ー′ /でン  .|| \\\\ 
          ( / ̄// |     、   .ゝ ゛   || \ \\ ̄)
         (////'''' |    `ヾニァ'     .|| \\\) ̄
                       |__________j|     
                 |´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`i|
                       |〕            ||
                 |___________j|




「『未元物質』こと、垣根帝督だッ!!!」



<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:22:16.27 ID:FRgvonin0<>

垣根「久しぶりだな、第一位ィィィ!!!!」

当麻「…………」

ステ「………………」

一方「……………………?」

垣根「!?」



垣根「おいおいおい待て待て待て!」バサッ バサッ

一方「うるせえ冷蔵庫だな、なンだよ」

垣根「今の『?』は、どういう了見だコラ!!」バサバサバサ

一方「そのまンまだよ。お前誰だ? どっかでお会いしましたっけェ?」

垣根「はああああああああ!?」バサササササアッ!

一方「鬱陶しいからそのキショイ羽引っ込めろ。風圧でニューヨークが大迷惑被ンだろ」

垣根「どんなバタフライ現象だぁぁぁ!!」

当麻「一方通行、知り合いか?」

一方「オレのアドレス帳に『空飛ぶ産業廃棄物』フォルダなンざねェよ」

ステ「僕のにはあるがね」

垣根「神父テメエ俺のプライベートアドレスそんな扱いにしてやがったのか!?」

ステ「他にどう分類しろっていうんだ」

垣根「どうとでもやりようあるだろが!」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:23:31.02 ID:FRgvonin0<>

一方「で? 結局誰なンだよ」

垣根「肩書と本名に能力名まで付けて声高に叫んでやっただろうが!!」

一方「DM社の会長さンだァ? 冷蔵庫の癖にICチップ焦げついてンじゃねえのかこのポンコツ」

当麻「今更だけどさ、DM(Delight Measure)とDark Matterって掛けてあんのかな?」

垣根「ほんとに今更だなっていうか解説されると何か恥ずかしいから止めてぇぇっ!!!?」



小萌「自分のシンボルを大事な物にさりげなく混ぜ込むという行為は心理学上
   『大事なあの人にわかって欲しいけどあからさまだとちょっと恥ずかしい』
   的な複雑な乙女の自己顕示欲を象徴するのですよー」

当麻「小萌先生!?」

ステ「…………いたのか」

小萌「ひどいですね二人とも!」

ステ「すまない、素で気が付かなかった」

小萌「うう、やっぱりステイルちゃんはインデックスちゃん
   一筋ですから他の女の子など目に入らないのでしょうか?」ショボーン

当麻(女…………の子…………?)



小萌「し、しかし決定的なアドバンテージを奪われようとも決着がついた訳ではないのです!
   これから先生が持つ大人の女特有の魅力で少しでも存在感をアピールして」

ステ「いや、単純に身長差の問題だろう。物理的に考えて」

小萌「ますます救いようがなくなってるのですよ!?」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:24:36.75 ID:FRgvonin0<>

姫神「……………………私も。いる」

ステ「ぬわあああっ!?」

当麻「ひ、姫神いたのか! それに、そっちは吹寄じゃんか」

吹寄「失礼な男ね、上条。成長がまったく見られないわ」

当麻「密かに気にしてる事をズバリ突いてくんなよなお前! でもどうしてこの店に?」

吹寄「私が社会人野球でピッチャーやってるのは知ってるでしょ?
   次の大会に向けて英気を養うって名目で、社長が友人同伴可の酒席を設けてくれたのよ。
   …………肝心の社長は不在で、何故か会長がギャーギャー騒いでるけど」

ステ「垣根の事情を知ってるのかい?」

吹寄「どちら様? このアンポンタンの御友人?
   だったら人付き合いを考え直す事をお勧めするわね」

当麻「おい」

ステ「おっと失礼、僕はイギリスから来たステイル=マグヌスといいます。
   そこのスカポンタンとは単なる腐れ縁ですのでご心配なく」

当麻「おいってば」

吹寄「そう、それは一安心だわ。申し遅れたけど、DM社野球部の吹寄制理です。
   そういえば先生や秋沙からあなたの話を聞いた事があったわ」

ステ「素性を信用してもらえたようで何より。それで先ほどの質問なんだが」



当麻「いくらなんでもひどくね…………?」イジイジ

姫神「元気出して。上条くん。私なんて悲鳴を上げられたっきり触れてもらえてないから」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:25:56.21 ID:FRgvonin0<>

吹寄「あの人野球好きでよく練習を見学しに来るのよ。
   配球論やら変化球論やらで話が弾むうちに、ポロッと口が滑ったらしくて」

ステ「馬鹿か、あの男は…………」

吹寄「それからというもの社長命令で、会長が外出する場合には大抵付き合わされるわ」

ステ(ああ成程、お目付役なのかこの人)チラリ



ギャーギャーギャー



一方「いい加減にしねえと羽毟りとンぞクソメルヘン!」

垣根「テメエやっぱ俺の事覚えてんじゃねえか!」

当麻「さっき“殺された”とか物騒な言葉が聞こえたんですが……」

垣根「ん? ああ、お前が噂の『幻想殺し』か。文字どおりの意味さ。
   俺はコイツに生命活動を止めるほどの重傷を負わされて、戸籍上死亡してんだ。
   殺しても殺したりねえ相手だ、このクソ第一位サマはよぉ!」

ステ「和解してるわけじゃあなさそうだね」

垣根「当たり前だろうが。どこのモノ好きが自分をブッ殺してくれた野郎と仲良くすんだ」

一方「………………花飾りの女はテメエを許してるみたいだけどな」

垣根「はっ、だから俺も過ぎた事は水に流せってか?
   ふざけんじゃねえよ。アイツはアイツ、俺は俺だ」

一方「あァそうかいそうかい、じゃあやろうってンだな?
   いつでもイイぜ、今からでもかかって来なァ!
   一つだけ言っとくが、また打ち止めや妹達に手ェ出したら」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:27:20.32 ID:FRgvonin0<>

垣根「………………問題はそこなんだよなぁ」

一方「ただじゃすまさ、ってアレ?」



垣根「ぶっちゃけた話、彼我の戦力差って十年前から開く一方なんだよな。
   残念なことに勝ちのビジョンがまるで見えてこねえし、大体俺はこの身体だ」

一方「ん、あ、あァ…………そうかもな」ヒョウシヌケ

当麻「じゃあアンタ、もう一方通行と闘うつもりはないのか?」

垣根「諦めちゃいねえよ。ただ全ては肉体を完璧に取り戻して、それからだ。
   だからこの場では殺さずにおいてやるよ、感謝しろ第一位?」ククク

一方「…………テメエなンざ、俺にとっちゃどうでもいい存在なンだよ。
   そっちこそ今スクラップにされない幸運に土下座して涙流せ」

垣根「せいぜい嫁との腐れ甘い新婚生活を楽しんで腑抜けろよ。
   いつ俺に殺されても悔いなくオネンネできるようにな」

一方「ケッ、いちいち台詞が浅いンだよ小悪党が」



姫神(この会話がもしツンデレ同士の愛情の裏返しに見えてしまったら。
   あなたもめでたく腐った女子の仲間入り。私は。違う)

当麻「姫神、いま何か言ったか?」

姫神「別に。なにも」

ステ「それで、結局この茶番の目的はなんだったんだい?」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:28:48.97 ID:FRgvonin0<>

垣根「雲川とか言うアマに、『幻想殺し』と第一位への
   事後報告を押し付けられたんだよ。良い御身分だぜまったく」

ステ「…………一部始終の説明なら、道中で僕が済ませてしまったんだが」

垣根「はぁ? な、なに余計なことしてくれてんだテメエ!!」

一方「くく、くきゃきゃ!! 自分の仕事が無くなった事も知らずに
   『よく来たな、一方通行』とか気取ってたのかよ?
   カカカ、ホントおめでたいメルヘン脳してやがンな垣根くゥン!!」

垣根「ああああ!? やっぱ気が変わった、今すぐにぶっ殺してやr」





??「そぉぉぉこぉぉぉまぁぁぁでぇぇぇだぁぁぁぁ!!!!」





垣根「邪魔すんじゃねえよ熱血アホ! 今は俺とコイツの問題で」

??「喧嘩は止せ! 警備員として見過ごしてはおけんな、喰らえ正義の鉄槌!!」

垣根「!? オイ馬鹿止めろおおおおお!!!
   テメエの鉄槌は洒落にならねえっていうか喧嘩売ったのはあっち、あ、ちょ」



削板「真・ばぁぁぁくねぇぇつ!! ゴォォォォォッドすごいパーンチ!」

垣根「ごっ、があああああああああああああ!!!??」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:30:16.19 ID:FRgvonin0<>


バガン!! ヒューーーー チュドーン



一方「おー、飛ンだ飛ンだ。壁に大穴空いちまった」ククク

当麻「轟! と音を立ててノーバウンドで13kmは飛んだなぁ」

ステ(なぜ距離までわかる…………?)

削板「お前ら来てたのか!! 水くせえな、一声掛けてくれればいいのによ!」

ステ「いやまあ、君の存在は部屋に入る前からその暑苦しいオーラでハッキリしてたんだが」

一方「お前がずっと一人でマイク握って熱唱してたからタイミング見失ったンだよ」



削板「おお、第一位じゃないか!! 結婚おめでとう!!!」

一方「今日初めて祝われた気がするンですけどォ…………ま、ありがとよ」

当麻「あ、どうもお久しぶりです。この間は美琴が世話になったみたいで」

ステ(年上に敬語を使っている上条当麻には異常なほど違和感があるな……。
   っていうかこの男、かなりの重傷だった筈じゃ…………)

削板「よう上条! お前の嫁さんはイイ女だな!! まあ俺の程じゃあないが!!!」

当麻「へ? 削板さんって結婚してたっけ?」

削板「おっといけねえ。今のは言い間違いだから気にするな、ははは!!」

ステ「そんな豪快な言い間違いがあってたまるか! 誤魔化す気ないだろ!?」

削板「むむむ、大した洞察根性力だなお前。実はな……ベビーが出来たんだ!」

一方「出来婚かよ、イメージに合わねェな」

当麻「へえ、それはおめでとう! で、相手は?」

ステ(今耳にした謎のパワーはツッコミどころじゃあ……僕が間違ってるのか…………?)モンモン

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:31:07.97 ID:FRgvonin0<>

削板「はは、それは時が来るまで秘密だ!!
   上条家には招待状を送るから、首を洗って待っててくれ!」

当麻「いや首は洗いませんよ!?」

ステ「あまり自信はないが……もしかして、『首を長く』の間違いだろうか」

削板「おお、芹亜以外に理解してもらえたのは初めてだぞ!
   だけど悪いな、俺の運命の相手はアイツ一人と決まってるんだ!」

ステ「意味不明な上に悪寒のする勘違いは止めろっ!!」

一方(…………『せりあ』?)ハテ

当麻(………………どっかで聞いたような……いや、まさかな)ハハハ



削板「では役者も揃ったところで『0715事件』について説明しよう!」ババーン!

当麻「冷蔵庫が一台、空の彼方に消えたまんまだけどな」

一方「理事会の総括と見解には確かに興味があるがよ。
   よりにもよってお前の口から語られたらこンがらがるに決まってるぜ」

ステ「っていうか、向こうにバリバリの一般人もいるんだが」

削板「その点についてはモーマンタイ!
   俺の仕事はこの書類の収められたディスクを渡す事だけだからな!」ホイ

ステ「じゃあ何のために呼びつけたんだ…………郵送で十分だろうがこんな小さなディスク」

当麻「いや、機密保持の観点からするとあまり望ましくはないぜ」

ステ(上条当麻に正論で諭された……死にたい)ズーン

当麻「すげー失礼な事考えてるってだいたいわかるからな!?」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:32:11.75 ID:FRgvonin0<>

削板「以上! 俺の用件は終わりだ」

当麻「すげーあっさり!」

一方「仕方ねェ、後は当初の予定通り酒でも飲むかァ。おいメニュー寄こせ」



ステ(ふう…………取り越し苦労、だったかな。僕自身にこれといった被害はないし)ゴソゴソ



当麻「………………一方通行」コソコソ



ステ(煙草、は彼女に取り上げられてるんだった)ズーン



一方「………………おう、始めるか」コソコソ



ステ「僕も飲むか…………おいそこの二人、何やってるんだい?」

当麻「なあステイル」

ステ「?」

当麻「お前、インデックスのどういうところに惚れたんだ?」

ステ「…………………………頭に蛆でもわいたかい、上条当麻」シラー

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:33:15.37 ID:FRgvonin0<>

一方「ああ、そういう反応だとは当然読めてたぜ」

ステ「なに?」

当麻「ステイルステイル、ちょっとこの電話受けてくれ」クイクイ

ステ「………………なんなんだいったい、誰から」

当麻「インデックス」

ステ「もしもし? どうしたんだい最大主教」ニッコリ

当麻(チョロイ)



イン『すているー。私もね、すているから見た私の事聞きたいんだよー、へへー』

ステ「!? よ、酔っているのか最大主教!!」

削板「どうしたどうした、何が起こったんだ」

ステ「それは僕の台詞だ!」

一方「さーて、神父くンはシスターさンの頼みを無碍に断るンですかねェ?」ニヤニヤ

当麻「そろそろ状況が掴めてきたんじゃないのか、ステイル?」ニヤニヤ

ステ「」プルプルプル



「き、貴様らぁぁぁぁっっ!!! まさか向こうの女どもとグルかっ!?」



<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:34:03.27 ID:FRgvonin0<>

時間を少し遡って レストラン『虚数学区』


ドンチャンドンチャン


打止「そーいうわけでー、ミサカはー、あの人と
   ラブラブちゅっちゅな毎日を今までもこれからも送るわけでー」ベロンベロン

フレ「もげろ!」←彼氏なし

佐天「このリア充!」←恋愛の暇なし

鉄装「爆発しろ!」←行かず後家正規軍



美琴「あっちは楽しそうねー」←既婚

イン「私は楽しくて美味しくて嬉しくて美味で至れり尽くせりなんだよ」←男持ち

美琴「いや別にアンタをVIP待遇した覚えはないんだけど」ショウチュウチビチビ

イン「私も別段もてなされてる意識はないかも。これが自然体なんだよ」モグモグモグモグ

美琴「余計にタチ悪いわ!」



イン「うーむむ、さすがにお腹が膨れてきたかも。わしも年かのう」

美琴「とってつけたように『わし』とか言ってんじゃないわよ。
   それより佐天さんや麦野さんから聞いたんだけどさ」

イン「?」モグモグ

美琴「死線を乗り越えてより仲が深まったらしいじゃない」ニヤニヤ

イン「!」ピタリ

美琴「当麻の件さえ片付けば、もう問題なんて無いんじゃない?
   んー、このシャーベットおいし、安定のいちごおでん味ね」

イン「それは…………」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:36:38.52 ID:FRgvonin0<>

美琴「……確かに一朝一夕ってわけにはいかないけどさ。
   このままで終わって良いわけがないでしょ?
   ただ、日本に来て最初の、『あの夜』に言った事に一つだけ付け加えておくわよ。
   ――――たとえインデックスが相手でも、私は当麻だけは譲らない」

イン「っ、当たり前だよそんなの! とうまのお嫁さんはみことなんだから!」



美琴「そうやって、歯切れ良く聞こえる言葉で済ませようとする」

イン「え?」

美琴「…………あなたは憎い恋敵である筈の私を指して、妹だって言ってくれた。
   微笑んでくれた。真理とも仲良くしてくれた。それで私がどれほど救われてるかわかる?
   星の数ほどいるだろう女の子たちから『上条当麻』を奪っちゃった私が、
   どれだけあなたに感謝して…………ときに謝りたくなってるか、わかる?」

イン「み、みこと、それは」

美琴「あなたに対する、とんでもない侮辱よね。それはわかってるつもりよ。
   でもインデックスっていう私の頼れる姉貴分は、
   多分それでもギリギリのところで抑えて、怒らないんでしょうね」

イン「………………」

美琴「ほら、やっぱりね。今だって私に遠慮して我慢してる。ねえインデックス」

イン「…………なに?」

美琴「あなたが幸せになっちゃいけないなんて事が、あるわけがない」

イン「!」



「私の幸せを心からの笑顔で祝福してくれた、あなたの幸せを私も見てみたい」


「その為にはどうするべきか。私の考えは、『あの日』言った通りよ」


「全てはあなたの心次第だけど、これだけは覚えておいて」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:37:37.74 ID:FRgvonin0<>






「みこ、と?」







「あなたみたいな家族を持てて、私は“幸せ”者よ――――大好きなお姉ちゃん」








<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:38:52.99 ID:FRgvonin0<>



「…………っあーーーーっ!!! 酒の勢いに任せないと、やっぱ無理!
 顔が超熱くなってきた! 水、水ください氷華さん! もしくは酒!!」




バタバタ ワーワー




「あ、あはは…………ほんと、もう…………似た者家族なんだよ」グス




『インデックスという慈愛深く、優しい娘を持てた事は、私の誇りだ』




(とうや。とうまの選んだお嫁さんは、間違いなく世界一の“当たり”だったんだよ)




<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:40:01.27 ID:FRgvonin0<>












美琴「さーさお集まりの寂しい独身女性の皆さん!」ドオオン



イン「あれ、みこと…………?」



麦野「ああん!? とうとう真正面から喧嘩の押し売りか第三位ぃぃ!?」

美琴「いやいや落ち着いて。実は今日この場には打ち止めと私以外に、
   もう一人決まったお相手のいる羨ましい女がいまーす!!」



イン「!?」



心理「それってもちろん?」ニヤリ

美琴「そう! そこで澄ました顔してる童顔ボインシスター、
   インデックス=ライブロロロラライくぁwせdrftgyふじこlp」オロロロ

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:41:48.11 ID:FRgvonin0<>

白井「お姉様の貴重な嘔吐シーンですのおおおお!! 
   ビデオを持ってきた甲斐がありましたの! ジャッジメントですの!」

佐天「ぶひゃひゃひゃ! いつまで中学生のつもりなの白井さーん!」ゲラゲラ

美琴「うぷ、おぷ…………相思相愛の男がいながら彼氏イナイ歴を
   更新し続けるこのシスターの態度、皆さんもご存じですね!」

イン「いや、別に私とステイルはそんな」



風斬「またまたインデックスったら、こんな写真まで送ってきておいてそんな♪」



イン「ひょうかぁぁぁぁぁぁぁ!!!? そ、それはもとはるが私の誕生日に撮った…………!」

婚后「あら、とっても親密そうに抱き合ってますわね」

イン「ちが、違うんだよ! ステイルは私の肩に手を置いてるだけで」

鉄装「どっからどう見ても恋人同士の抱擁ですぅー!」

イン「いや、だから」

フレ「これで付き合ってないなんてほざくなら大体、一生結婚なんてできないって訳よ!」

イン「人の話を」



佐天「そーだそーだ! い、要らないんなら私に寄こせー!」


イン「………………ッッ!!」プチッ


<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:42:40.88 ID:FRgvonin0<>










「 そ れ は ダ メ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」











<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:44:07.76 ID:FRgvonin0<>

佐天「お、おぉ…………」ポカン

イン「ダメダメ絶対ダメッ!! フーッ、フーッ……………………アレ?」



                  シーーーーーーーーーーーーン



イン「……………………………………ああああああああああああああっ!?
   ちちちがっ、これは違うんだよ!! ノーカウント、ノーカンノーカン!!」

麦野「さぁインデックスちゃーん? まずは飲みねい、そして洗いざらいブチまけな」ガシッ

イン「げえっ、しずり!」

美琴「と、いうわけでこれからイギリス清教最大主教による
   『第一回チキチキ! 酔わせて聞き出せ! 本気と書いてマジと読むお惚気大会』
   を満を持して開催しまーーーーーっす!!!!」

イン「前門の『超電磁砲』、後門の『原子崩し』!? ひょ、ひょうか、助け」

風斬「やっぱりインデックスのお友達は素敵な人ばっかりだね(微笑)」

イン「ひょうかの笑顔が黒いんだよおおおおっ!?
   もしかして独り身なの地味に気にしてる!?
   そんなひょうか見たくなかったかもおおおお!!」


「のーめ、のーめ!」

「はーけ、はーけ!!」

「ばくはつ、ばくはつ!!!」


打止「いやぁ、これは詰みなんじゃないのかなー、
   ってミサカはミサカは降参を促してみたり」ニヤニヤ

イン「……………………あ……あ、あ、」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:44:46.66 ID:FRgvonin0<>









「I'm unfortunaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaate!!!!!!!!!!!!」










<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:46:24.48 ID:FRgvonin0<>


現在 居酒屋『神の力』



イン『あのねーすているー、私ねーこれから「おのろけ大会」するんだけどー、
   一人じゃ恥ずかしいんだよー。だからすているもそっちで一緒に「のろけ」て?
   すているは私のお願い、聞いてくれるよね?』

ステ「あ、ああ、君の願いなら僕は…………ハッ!!!」

美琴『オッケーオッケーお電話変わりましたー。と、いうわけで状況は理解した?』

ステ「上条美琴、貴様ぁぁぁ…………っっ!!」ブルブル

美琴『いざ始まったら通話は一応切ってあげるから安心なさい』

ステ「何の慰めにもなってないわああああああっ!!!!」

小萌「ステイルちゃんの弱点をこの上なく正確に残虐に抉ってますねー」

姫神「なんだか。そら恐ろしいものがある」

吹寄「どことなく、記憶に残ってる手口だわ…………」

ステ(ま、まさかこれは…………ッ!)



垣根「作戦名『馬を射んと欲すればまず将を射よ』が見事にハマったな。
   さすがは元『グループ』の頭脳が授けた策だけあるぜ」ヒョッコリ

ステ「やっぱりかあああああああああ!!!!!!」

削板「せっかくだから思いの丈をあの夕陽に向けてぶちまけようぜ!!
   女が根性見せたんだ、男はその三倍の根性で立ち向かわなきゃなあ!!」

ステ「と、とりあえず今は夜だ!」

一方「キレがイマイチだなァ、やっぱ酒が入ンねえと。おい大天使!」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:47:08.85 ID:FRgvonin0<>

ガブ「mreg大量huvmo酒sopsjrepwktkojgszoj」ゴトゴトゴト

ステ「くそ、くそ、くそおおおおおっ!!!」



当麻「じゃあステイル、観念していってみるか」ポンポン

ステ「ま、まさか首謀者は貴様なのか…………?」

当麻「あいつが選んだ相手の本音、一度くらいガチで聞いてみたいだろ」



ステ「……………………ちっ。美琴、通話を切るよ」

美琴『ん、素直になったわね』

ステ「彼女にはいつか直接言葉にしたい。
   それに…………今から響く絶叫は、絶対に聞かせたくない」

美琴『へ? ちょ、どうい』プツッ



ステ「日本に来てからは口に出すまいと努めていたから、本家の前では初めてかな」

当麻「?」

ステ「これを生涯最後にしたいものだね………………すうっ」

一方「…………おい、全員耳ふさ」

<> 天使編A<>saga<>2011/09/09(金) 20:48:19.18 ID:FRgvonin0<>










「不幸だああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!!」











<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/09(金) 20:49:24.68 ID:FRgvonin0<>
bukwganoi続iwくuegfd

お涙頂戴かと思ったか!? 罠だよ!! 
というわけで次回は主役二人による強制惚気タイムです
期待せずに日曜夜を待っててね!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/09(金) 21:10:49.99 ID:AcXpjYdAO<> >>1乙!
ガwwwwwwブwwwwwwリwwwwwwエwwwwwwルwwwwww
声出して笑ったわwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/09(金) 21:20:39.56 ID:9mqjBnbAO<> >>1乙
相変わらずな予想の斜め上っぷりだwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/09/09(金) 22:36:18.49 ID:yStCX8tzo<> >>1乙です
予想の遥か斜め上っぷりに爆笑してしまったww

>>854を書き込んだの自分なんだけど、愚痴にも見えるような感想なのに丁寧な回答ありがとうございます。
この作品凄く面白くて毎回楽しませてもらってますww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/09(金) 22:36:49.38 ID:yStCX8tzo<> 上げてしまった、申し訳ない…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2011/09/09(金) 23:00:10.93 ID:vVQyR7nco<> ガブリエル便利すぎるわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/09(金) 23:40:17.89 ID:ysU8s/hAO<> ガブちゃんはウンコしますか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/10(土) 08:27:10.20 ID:/kaQPL0IO<> 聖汚物 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)<>sage<>2011/09/10(土) 15:46:29.70 ID:1ITQv1gT0<> ガブリエルwwwwwwwwwwww
ここでもかwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2011/09/11(日) 14:55:44.43 ID:ExiFYEjo0<> まさかのガブリエル。
てっきりエイワスが出てくるとばかり思っていた。
なんか、便利すぎだろガブリエル。
こんな気さくなキャラでいいのか? ちなみに禁書のガブリエルは身長2メートルらしい。 <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/11(日) 20:22:53.23 ID:S9t1RThW0<>
どうもどうも>>1です
やだ…………ガブリエル人気すごい…………冷蔵庫がかすんで見えるね!

>>892
こんな質問まで来る始末だよもうやだ!
あ、ちなみにうんこは出ます

久々にコテコテのギャグ回だったんで内心不安でしたが、
皆さん楽しんで頂けたようで何よりです
では投下、の前に注意事項(今回限り)


※発言者が誰だかわかりにくいのは仕様です
※ちょっと長い(約30KB)のでお時間のある時にどうぞ


諸事情により切れ目を入れたくなかったので一気にいきます
ステイルとインデックスの発言さえ捉えられれば大筋に問題ありません
そこすらダメダメならフライング土下座しかありませんね足蹴にしてくださいお願いします↓
<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:23:39.59 ID:S9t1RThW0<>

なかまができました。


ともだちができました。


かぞくができました。


すきなひとができました。











それでもかれのあたまから、“ころして”しまったひとのかおは。





いつまでもいつまでも、きえませんでした。


<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:25:00.28 ID:S9t1RThW0<>
-----------------------------------------------------------------------

目の前に置かれたグラスを両手で持って煽る。

一杯目をチビチビやっているだけで、

私の頭は十六世紀のロンドンさながらの濃霧に覆われはじめた。


「うぉっ、こいつ一口目から赤くなり始めたわよ。酔いつぶれたりしないワケ、第三位?」

「あー大丈夫、その子酒癖悪いけど簡単には潰れないから」


しずりとみことが失礼な事を言っている気がするが、

いま現在私の脳みそは耳が取得した情報を上手く処理できていない。


「それでー? 何から話せばいいのかなー?」

「そうね、差し支えなければ第一印象からいきましょうか」

「…………りょーかーい」


脳どころか全身を支配していた羞恥心は、

酒精に追い立てられたのか綺麗サッパリ消え失せていた。

代わりにひょっこり頭を出してきたのは――――

すているの、私以外には滅多に向けられない柔らかな笑顔。

そして、名状しがたい高揚感だった。


「初めて会った瞬間はね、背が高い割には幼い顔だなぁって思ったんだよ」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:26:11.18 ID:S9t1RThW0<>

思い起こせば十一年前。

いや、そろそろ十二年前になろうとしてるんだ。

『私』の最初の記憶は頭上で電球の光を遮る、赤髪の魔術師の苦悶に満ちた貌だった。


「出会って最初の一年間は苦手だったの。
 …………ううん違う、き………………嫌い、だった」


当然といえば当然だ。

悪気なく聞いてくるみことやしずりには口が裂けても言えないが、

自分の命を狙ってくる――少なくとも当時の私はそう信じて疑わなかった――

“魔術師”に、いったいどうやって好感など抱けというのか。

しかし今、たった三文字の言葉を絞り出した私の心は千々に乱れていた。


「あー…………どうにも、悪い事聞いちゃったみたいね」

「そんなことないよ、みこと」


嫌な思い出に向きあう事も、時には必要だ。

今にしてあの頃を回想すれば、私を延々と追跡しては

適度なタイミングで襲撃する彼やかおりの胸中は察するに余りある。

それにすているを否定した舌に残るほとばしるような苦みは、

現在の私がどれほど彼を好ましく思っているかを教えてくれる格好の試験紙だった。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:26:53.04 ID:S9t1RThW0<>

「じゃあ、好きになった切っ掛けは?」

「ぶっきらぼうだけど、すているは私をいつでも守ってくれてた。
 その事に、もっと早くに気が付いておくべきだったその事実に、
 漸く真正面からぶつかって…………ちょっとずつちょっとずつ、好きになったの」


キャー! と甲高い奇声があちらこちらから上がる。

そんなにおかしなことを言ったのだろうか、私は。


「ぶっきらぼうってのはちょっと想像がつかないんだけど」

「私とあの人のリスタートは、仕事仲間から始まったから。
 魔術の絡んだ事件解決に一緒に駆り出されて、事務的な話をちょっと。
 時々は他の友達も交えてごはん食べたけど、そういうのが二年ぐらい続いたなぁ」

「それって大体照れ隠しだったりするの?」

「うーん、どうだろ。その、いろいろ複雑な事情があって」

「まずいわね、どんどん空気が重くなるわ……」


みことがボソボソと呟いたけど、私にはよく聴こえなかった。

隣のひょうかやくろこと話してたと思ったら、ポンと手を叩いて笑みを取り戻した。


「よし! 前置きはここまでにして本題に入りましょうか。
 んー、どっちからにしようかな…………」

「どっち?」


選択肢を用意しているのだろうか。

首を傾げてみことの顔を下から覗き込むと、凛とした綺麗な顔がちょっとだけ赤くなった。


「あぅ…………い、インデックスにはステイルの嫌いな所ってある?」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:28:39.27 ID:S9t1RThW0<>
--------------------------------------------------


「あるわけないだろう、そんなもの」

「やっぱそうか、そうだよなぁ」


予定調和の微笑が部屋全体に広がった。

上条当麻が僕に宛てた最初の質問は、『彼女の気に入らない点』だった。

ヤツの予想通りの答えを返してやった後、一呼吸置いた僕はフン、と鼻を鳴らした。


「…………と言いたいところだけど」

「「「「「!?」」」」」

「おい、なんだその失礼極まりないリアクションは。
 僕が彼女の言う事なら何でもホイホイ従うイエスマンにでも見えるのか?」

「見えるぜ」

「ステイルちゃんのイメージそのままなのです」

「正直。インデックス至上主義だとしか思えない」

「あのね、彼女はああ見えて一宗教を束ねる最高権力者なんだ。
 権力者に付和雷同するだけの側近など、得てして害悪にしかならない」


ましてや彼女ほどの若さともなれば、直言できる者がストッパーをこなさなければならない。

筆頭の護衛官に任命されてからというもの、

僕は彼女に対して相応に厳しくあろうと心掛けてきた。

大体、先代の頃からズケズケとした物言いで不本意ながら名が売れていたのだ。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:29:42.00 ID:S9t1RThW0<>

「じゃあ、遠慮なく語ってもらおうじゃねえか」

「その前に、酒をくれ」

「おっ、良い根性だ!! お酌させてもらうぞ」

「どうも」


根性はおそらく関係ない。

素面でペラペラ喋れるか、こんな憤死ものの馬鹿話。

蒼く透き通った美しい意匠のグラスを手にとって、軽く半分は一気に飲んだ。


「ぷはぁっ。まあ、大抵の面は良く見えてしまうのは事実だよ。
 頻繁に浴びせるお小言も『最大主教』というフレームを捉えたものであって、
 『彼女自身』の一挙手一投足は、僕にとって主の言葉以上の価値を持つものだ」


二口目で杯をすっかり乾かす。

いつの間にか隣に来ていた秋沙が、二杯目を注いでくれた。

目礼して、またグラスに口を付ける。


「まず最初は…………あの大食、かな」

「ああ………………」


共感のため息は上条当麻からだけではなく、何重かになって聞こえてきた。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:31:38.22 ID:S9t1RThW0<>

「イギリス清教の財政逼迫に貢献してるンだよなァ?」

「……まあそれを抜きにしても、ね。ただ、彼女が非常な健啖家であること自体は構わないんだ。
 フォークを握っている彼女はとても幸せそうで、見てる僕まで心があたたかくなってくる」

「き、気持ちはわかるのです。清々しい食べっぷりですからねー」

「もう少し、英国淑女らしく優雅に振る舞って欲しいけどね。
 料理が美味であればあるほど彼女はテーブルマナーを見失いがちになる。
 これも最近は神裂や美琴の指導でだいぶマシになってきたとは思う」


一息入れて、グラスを軽くあおる。


「…………しかし、しかしだッ!!
 食料を恵んでくれた相手に無条件で懐く、あの癖はどうにかならないのか!?」


数人が一斉に顔を逸らした。

そんなにも鬼の形相をしているのだろうか、僕は。


「彼女も修羅場を潜っているんだ、普段はしっかり警戒心を持って行動している。
 しかし食べ物で釣られた瞬間、条件反射のように涎を垂らすのは幼児の行いだッ!!
 ほいほい付いていくんじゃない! 子犬の様な瞳をするな!
 誰彼構わず安心しきった笑顔を晒すな!! それは、僕の……僕のッ!!!」


ドンッ!! とテーブルが揺れた。

無意識のうちに杯を叩きつけていたらしい。

幸い中身は既に空だったので、定まらない視界で右腕を伸ばして三杯目を要求した。


「それから、彼女は少々軽率だ!
 魔術界でも右に出る者のない明晰な記憶力と解析力を有しておきながら、
 出した結論に対する行動の粗忽さ故に危機に陥った事が何度もある!
 有り体に言えば、自信過剰なんだ彼女は!!」


誰かが精神的にも肉体的にも“ヒキ”ながら酒を注いできたが関係ない。

今度は一気飲みした。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:33:05.21 ID:S9t1RThW0<>

「…………ねえ秋沙。あの人、文句をぶちぶち垂れてるわりには」

「うん。結局。インデックスが心配で心配でしょうがない。って言ってるようなもの」


女性二人の話し声、だが内容はよく聞き取れない。


「だが一番気に入らないのは……………………溜め込む事、かな」

「『溜め込む』………………何となく、わかるな」


声で判断できないほどに酩酊してきたが、今のが上条当麻である事だけはわかった。

この場で僕の次、あるいは僕と同等に彼女を知悉しているのはこの男をおいて他にあり得ない。


「彼女は事が深刻であればあるほど、相手が親密であればあるほど、
 相手が彼女を心配すればするほど、自らの胸に悩みを仕舞いこんでしまう」


彼女がようやく相談してくれるのは、ある程度自分の中でその問題を消化してからだ。

誰かの心の負担になりたくない、と言えば聞こえはいいが換言すれば、

彼女の根本には――――他者への無自覚な不信が在住している。


「食い物に釣られて無条件で、とかいう話と矛盾してねえか?」

「最後の一線の直前で、彼女は無意識にブレーキをかけている。
 僕の知る限り、そのブレーキを完全に取り払うことに成功した人間はこの世に居ない」


彼女からの絶対の信頼感を、僕は勝ちとれていない。

畢竟、この苛立ちの原因はそこなのだろうな、と自己分析した。

いつかの上条刀夜のように半ば強引に線を踏み越えるという手もある。

だが、あと一歩が臆病者の僕にとっては途方もなく遠いのだった。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:34:19.03 ID:S9t1RThW0<>
-----------------------------------------------------------------


「キザで、短気で、フラグメイカー(感染患者)で、ヘタレ神父で、ちょっぴり鈍感で、それから」

「あ、あのー。インデックスさーん?」

「なに?」

「なんでもありません!!」


ギロリと睨みつけると、声の主――るいこだった――が顔を引き攣らせて下がった。


「ふーん? まだまだいっぱいあるんだよ、煙草で、ロン毛で、赤くて黒くて」

「もはや悪口ですらねえよ」

「でも、やっぱり、一番嫌なのは………………ッ!」

「嫌なのは…………?」


皆が一様に息を呑んだ。

私はスゥと深呼吸して最も腹に据えかねる点をぶちまけてやった。





「私を、命懸けで守っちゃうところ!」





「………………は? アンタ、さっき守ってもらって好きになったって」

「限度ってものがあるの!!」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:35:21.54 ID:S9t1RThW0<>

視界に霧ではなく、雨が降りてきて滲んだ。

七月十五日の、彼の数々の無謀を思い返すだけで胸が締め付けられる。


「だ、だって! わた、私の為に、簡単に命を投げ出しちゃうんだもん!!
 ばかばかばか、ホンットにばか!! すているのそういうとこ大嫌い!!!
 自分の命を大事にできない人が誰かを守ろうなんてお笑いなんだよ!」

「さ、さっきから言おうと思ってたけど、ちょっと落ち着きなさい?」


ふわりと身が包まれる。

私より十センチ以上背の高い、みことのスタイルのいい身体に抱かれると、

安心感より先にドキドキが湧きあがってきて困る。

あ、いや、私は百合の園に興味なんてないんだよ!

私が好きなのは――――



「………………でも、そんなとこが好きなんだもん」



みことの胸に顔を埋めながら囁くと、

くろこのいた筈の方向から粘性の液体が噴き出たような音。

ひょうかがチョコフォンデュでも始めたのだろうか。


「ねえみことぉ、私、おかしいのかな? 嫌いな所が好きだなんて、変だよね?」


愛する食べ物のビジョンと匂いを思い浮かべてなお、

すているの話題から離れられないとは我ながら重症だな、と思った。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:36:11.22 ID:S9t1RThW0<>

「や、やば、ちょっとクラっときたわ。この魔性の聖女め…………」

「第三位、アンタそういう趣味があったわけ?」

「違わい! えと、そうね、何て言ったらいいのかしら」


うろたえ始めたみことを、しずりがニヤニヤしながらからかう。

冷静さをどこかに落としてきてしまったらしい

彼女に代わって口を挟んできたのは、めじゃーはーとだった。


「ちっとも変な事じゃあないわ。
 『可愛さ余って憎さ百倍』、日本にはこういう言葉があるの。
 その逆が起きたってちーっとも、不思議でもなんでもないわ」

「…………『憎さ余って可愛さ百倍』?
 ものすごく奇妙な言い回しだけど…………しっくりくるんだよ。
 そっかあ、私『嫌い』の百倍も、すているが『好き』なんだぁ、へへー」


にへらと頬が緩むのを止められない。

天にも昇る気分とはこの事か。


「ま、丸めこまれてますね……」

「お酒入るとこの子、可愛さ50%増しになるわね」

「笑い上戸になって男前度が200%増し増しのお姉様から見たら羨ましいお話ですわね?」

「やかましい!! オッホンエッヘン!」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:37:16.16 ID:S9t1RThW0<>

永田町の老人の様なわざとらしい咳ばらいが一つ二つ。

気を取り直したみことが私の身体を離し、高らかに宣言した。


「ではここからがガールズトークの本番!」

「この場で『ガール』って歳の女性はおねむ中のまこちゃんだけですけど」

「シャラップ! それではステイル=マグヌスくんのどこが好きなのか、
 インデックスちゃんに根掘り葉掘り聞いてみましょおー!!」


------------------------------------------------------------------


「僕から見た、彼女の美点か」

「もっとストレートに『好きな所』でいいじゃねえか!!」

「鼓膜が割れそうになるから大声は止めてくれ。ただでさえフラフラしてきてるんだ」


削板の剛速球を見送った僕は、何杯目か数えるのもあほらしくなってきた酒杯を一旦下ろした。

脳裏に、彼女の可憐な笑顔を浮かべて一時の至福に浸る。

彼女の無数に存在する魅力を、こんな矮小なグラスに吐き出しきれるわけもなかった。


「ベタな、いやベターな選択で容姿から言及しようか」

(上手い事言う程度には脳みそ働くのな)


上条当麻が生温かい視線を向けてきたが、無視だ無視。


「まずは、指かな」

「これはこれは。いきなり。マニアックなところを攻めてきた」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:38:22.54 ID:S9t1RThW0<>

「幼い頃から何万冊もの本の頁を捲ってきた彼女の指は、
 貴重な古書を傷つけないよう繊細な作業をいとも容易くこなし、
 それでいて自身も触れれば折れてしまいそうなほど華奢だ」

「手を握った事はあるのですか?」

「ある。その、この学園都市に来てから何度か…………」

「感触。そして感想をどうぞ」


やけに女性陣がぐいぐい押してくるな。


「思ったより力強かった。軽く握るとそれ以上の力で、
 自らの存在を主張するように握り返してくれる。
 とても…………とても嬉しかった。彼女の命と意志を、どんな方法よりも間近に感じられて」


しかし先日の事件からどうも態度がおかしい。

あれから手も握らせてくれない。

あ、いや、別に彼女の白磁の肌に思う様触れたいとかそういう即物的な欲望に飢えてる訳じゃあ


「胸はどうだ? いやはや顔に似合わずかなりのもんだよなぁ、あのシスター」

「…………っ」


垣根の下卑た質問に、僕は思わず唾を呑みこんだ。


「会長、今日の一挙一動は社長に仔細報告する事になってますから」

「えっ」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:39:50.08 ID:S9t1RThW0<>

ミズ吹寄の冷えきった視線が男衆全体を貫いてなければ、

危うくボロを出して阿鼻叫喚の地獄に叩き落とされるところだった。

肩を竦めてアメリカナイズなジェスチャーをとると、なるたけ自然に聞こえるよう嘆息する。


「やれやれ。確かに欧州女性の平均値よりも彼女の水準は上だね。
 僕も男だからそりゃ大きいに越した事はないが、これといった拘りもないよ」

「かーっ、優等生の答えだな。つまンねェつまンねェ」

「黙れロリコン」

「そうか今日の愉快なオブジェ立候補者はテメエかァ!
 満票で当選させてやるから死亡前演説始めろやァァァ!!」


一方通行に向けて話題を逸らす事で何とか凌ぐ。

便利な第一位の矛先は手近な『幻想殺し』を引っ掴んで防いだ。


「うおおおおおいいいい!? ステイルくん、止めてえええ!?」

「三下、テメエもコイツに与するってンなら容赦はしねえ」

「気を確かに持て、あと俺のいのちをだいじにしてくれ一方通行!
 …………いやでも、ぶっちゃけお前と打ち止めを語る際には
 避けて通れない重要なファクターなんじゃねえかな。
 実際お前らっていくつ歳離れてっギャアアアアアアアッ!!!!!」

「あースッキリした、飲み直すかァ」


夏の夜空を『幻想殺し』が転じた流れ星が彩る。

これっぽっちも幻想的な光景ではなかったな。

さて、何の話をしてたんだっけ?

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:41:04.97 ID:S9t1RThW0<>

「uibi外面urla終noiuw内面euwph何処好?rnjuabi」

「内面か…………それこそ、一晩では語り尽くせそうにないね。
 なるべく絞って絞って、百個ぐらいにしておこうか」

「お前がシスターにイカレてんのはよく解ったから勘弁してくれ!
 っていうか今あの人外と話通じてなかったか!?」

「ん? ああすまないね、生中一つ」

「はーいただいま、じゃねぇぇーーーーっ!!!
 俺の腹の中はビールキンキンに冷やす場所じゃねえんだよコラ!!」


バサバサうるさい直方体だな。

これから僕が思う存分彼女を褒めちぎるお待ちかねのターンだというのに。


「何をおいても、まずは彼女の『愛』に言及しない訳にはいかないね。
 目に付いた病身を片の端から慈しみ、そして癒す。
 無償の、そして無限の『愛』だと僕は思ってる。それは上辺だけのものでは決してない。
 イギリス清教のトップという立場を良く鑑み、時に利用し、
 しかし縛られずにいつでも誰かを助けようとしている」


良いか悪いかは、別にして。

喉の奥で留めた言葉がどうであれ、そんな彼女が僕には愛おしい。


「最大主教の人となりがビシビシ伝わってくるわ……。
 でもその言い方だと、敬愛する女神様を讃える宣教師って感じね。
 もっとこう、女の子として可愛いなって思う部分は無いの?」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:43:29.93 ID:S9t1RThW0<>

「………………本人にこれを言うと実演してくれるんだろうが、拗ねた顔かな。
 僕はよく覚えのない理不尽なジェラシーを浴びては嘆いているんだが、
 その時の子供っぽい、頬に桃を詰めたリスのような表情ときたら!」

「実年齢より随分幼く見えるのは。間違いない」

「いやだがね。ああ見えて意外と、学者肌とでも言うんだろうか。
 あの頭脳だから当然だが自説には自信があるからなかなか曲げようとしない。
 得意げな顔をする彼女と理知的な議論を交わすのは、普段とのギャップもあって楽しいよ。
 …………ごく稀に激しい論戦のすえ論破に成功すると、
 顔を真っ赤にしてゴニョゴニョ言いだすんだが、そこもまた…………いい」

「わ、わお。先生ってばステイルちゃんはてっきり
 M寄りなんじゃないかと思ってましたが、Sっ気もたっぷりですねー」

「SとM? ………………ああ、sadistとmasochistの事を、日本ではそういうんだったね。
 僕らは特筆してそう生々しいやり取りをするわけじゃあないんだけど……。
 ただそうだな、彼女は時折、思い出したように年上のお姉さんぶってくるんだ。
 そのくせ、くく、ちょっとからかってやるとすぐに余裕の態度を崩してあたふたし始める」

「…………ぉう、マジだなこりゃ。コイツ真性だぜ」

「? まあいいや。たった今お姉さんぶるとは言ったが、
 自然体でそれを為す際の彼女からは母性を感じるんだ。
 散歩に出ては近所の子供たちと遊んでるし、真理……上条家の長女を
 抱いている時の彼女は優しくて、しかし生命力に満ちてて、聖女マルタのような……」

「丸太のような一本芯の通った女か! そりゃあさぞかし気概があるだろうな!!」

「いやいやいや彼女の法衣に隠れたほっそりとした脚線美はだね」


流れる流れる。

彼女を語る言葉が僕の泉から涸れる事など永劫あり得ないと錯覚しそうだった。

時間の感覚さえ失って滔々と、時に熱烈に言の葉を紡いでいると突如横槍を入れられた。

僕が世界で二番目に気に食わない、彼女の愛する男の声だった。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:44:16.63 ID:S9t1RThW0<>

「そっか。お前の本心、よーく聞かせてもらったぜ、ステイル」

「なんだ、生きてたのかい上条当麻」

「なんか不思議と生きてた」


極寒の北極海からあっさり生還するような男だ。

今更驚いたりはしないがね。


「そんだけ語れるなら、もう問題ない――――いや、逃げ場はないと思うけどな」


ああ、君に諭されると死にたくなるが、もはや言い逃れはできそうにない。

それ以前に、もう自分の心が声高く叫んでいるのだ。


「言葉に出すってのも、案外馬鹿にできねェもンだ」


まったくその通りだ。

ステイル=マグヌスはインデックス=ライブロラム=プロヒビットラムを愛している。

世界などという木偶の坊の球体よりずっとずっと、遥かに大事に想っている。

現在(いま)僕の隣に居てくれる彼女に恋焦がれている。





ならば残る問題は、唯一つだ。





<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:45:57.45 ID:S9t1RThW0<>
--------------------------------------------------------------


「しゅているくんと言ったらあの特徴的な赤髪よねー。
 染めてるんでしょアレ? うっぷおっぷ、ちょっとトイレ」

「魔術の為にね。『火』と『赤』ってすごいわかりやすい符丁でしょ?
 地毛は金髪らしいけど、一度も見た事ないなぁ……新鮮でいいかも」

「後はあの二メートル越えの長身! さすがは外人だよねぇあっはっは!!
 ねえねえインデックス、ぶっちゃけステイルってさ、モテる?」


いよいよ酒乱の気を帯びてきたみことやるいこと、

すているの外見についてあーだこーだ言い合う。

一時テンションだだ下がりだったるいこが目をキラキラさせながら問い掛けてくるが、

私はその瞳の奥に油断のできない不可視光が潜んでいるのを感じた。

ある意味当然だろう、だってるいこも――――――


「…………本人にはまっっっっったく自覚ないけど、アレでもルーン魔術っていう
 由緒ある魔術体系の中で年表に名前が載るぐらいの偉業は成し遂げてるんだよ。
 ミドルスクールとかの女の子が遊び半分で作る魔術結社予備軍の中には、
 実質ただのステイルファンクラブだってあるくらいだもん」

「…………そんなレベルだとはさすがに思わなかったよ……はぁ」


二人揃って溜め息をつく。

そう、実はそうなのだ。

ロンドンに帰れば、ライバルなどそれこそ星の数ほどいる。

件の結社予備軍とは彼と仕事をしてる最中に出くわした経験もあるのだけど、

呆れて鼻で笑うすているとは裏腹の、女の子たちの熱視線が私には忘れられない。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:46:47.64 ID:S9t1RThW0<>

「さ、本格的に惚気てもらいましょーか! やっぱり男の甲斐性は外身よりも中身よね!」


スッキリした顔で戻ってきたみことが一升瓶をブンブン振り回しながら半ば叫ぶように言った。

背景と化して此方をウキウキ顔で窺ってくるその他大勢も「オー!」と囃し立ててくる。

ああ頭にネクタイなんて巻いちゃってひょうか、アナタだけは私の味方でいて欲しかったんだよ。

そんな感傷は、酒の悪魔が齎す昂りがあっという間に吹っ飛ばしちゃったけど。


「んー、そうだなぁ………………。
 私が言うのもアレなんだけど、ステイルって、一途だよね」

「少なくとも一途に愛されてる女の台詞じゃないわね」

「ぐぬぅ。わ、私を大事に思ってくれてる事は痛いほど伝わってくるの。
 ただ、あそこまで他の女の子に興味ナシみたいな姿勢だと、
 私にも義務感だけで接してるんじゃないかって不安になったりもして……。
 い、今はそんな事ないよ? 私たちは…………お互いに男と女だって意識してるもん」

「ほほう? で、その男女はどこまで進んでるワケ?
 ベッドインぐらいはとっくに済ませてんだろうなぁ、ギャハハ!」

「ぶふううううっ!? そそそそそ、そんな!
 た、確かに一緒のベッドで寝た事はあるけど、服は一度も脱いでな」

「着エロですかァァーーーーーッ!? くうっ、羨ましい!!
 私も黄泉川先生みたいに素敵な旦那さんが欲しいですぅ!!!」

「違うもん違うもん違うもん!! キスだってまだしてないもん!
 手を繋いだのだって一か月前が初めてだもん!!!」



「「「「えっ」」」」



勢いに任せて甘酸っぱい青春(?)の一ページを暴露すると、場の空気が死んだ。

具体的に言うと「え、マジ? こいつら中学生かよ?」みたいな。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:48:09.87 ID:S9t1RThW0<>

「…………い、インデックスとステイルさんって今いくつだったっけ?」


凍った時間を解凍すべく果敢に立ち上がったのは、

健気な学園都市の人工天使風斬氷華ちゃん(年齢不詳)だった。


「私が二十六歳で、ステイルはもうすぐ二十五になるんだよ」

「二十代半ばのいい大人が、大体十年遅れた恋愛してるとかないわー。
 結局、これもきっと魔術師の仕業ってわけだにゃあ!!」

「ほ、ほっといて欲しいんだよ! 私たちはこれで満足してるかも!」

「本当ですのー?」

「ウソなんてつかな…………あ、でも私の方が年上のお姉さんなのに
 時々口煩いガンコ親父みたいな態度とられるのは納得いかないなぁ」

「そういう意味じゃありませんの」

「そっか、一歳差とはいえ何気に姐さん女房なのよね。
 じゃあ年下として見たステイルくんにじゅうよんさいはどうよ?」


フレメアとくろこが茶々を入れてきたけど、みことの質問で流れが変わった。

少し考えた私は、コップの中身を飲み干してからポツリと切り出した。


「……あんまり年下だって意識した事はないかも。ほら、外見年齢だと完全に逆だから。
 それにすているは子供の頃から背が高くて大人びてたから、
 昔から本物の大人に交じって色んな経験を積んで来てて、精神的にも成熟してる。
 仕事面ではいわゆる『できる男』ってやつで、ものすごく頼りがいがあるの」

「ベタ褒めですわね……なんだか悔しくなってきましたわ。
 しかし殿方は常に少年の心を残しているものと、取引先の社長からお伺いした事があります。
 ステイルさんにそういう子供っぽさはないのですか?」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:49:26.78 ID:S9t1RThW0<>

あくまで公私の『公』の部分を語っただけであって、

『私』に関するステイルとのエピソードだって勿論たっぷりある。


「よく魔術談義とかするんだけど、九割九分すているは私に黙らされるんだよ。
 『まあ、君の記憶力にかかれば当然の結果だね』みたいな澄まし顔の裏に、
 ありありと悔しさが滲んでるのがもうおかしいったらないんだよ!
 あはは、いっつも同じセリフで負け惜しみ言ってるなんて事、
 それこそ私の記憶力にかかれば一目瞭然かも! ふふん!!」

「男ってそういうところが子供じみてるわよねー」

「あと、寝てる時はいつも眉間に寄せてる皺が消えて、ちょっと幼く見えるの。
 でもでもそこを除くと、やっぱり成熟……むしろ老成してるんだよ。
 よーく考えると、そういうギャップがいいな、って思っちゃってるのかも。
 完璧でちょっと冷たい『公』の顔と、感情的で時々ヘタれる『私』の顔。
 裏表を余すことなく、安心して私にさらしてくれるから……………………」






そこで、言葉に、詰まった。

胸に重しが圧し掛かってきたような心地がした。


「どうかした?」


すているは、私を信頼してくれている。

散歩コースの木陰で、親子連れで賑わう公園で、聖堂の長椅子で。

“プロ”の魔術師である彼が、私の膝上で無防備に見せる寝顔がいい証拠だ。


「ちょ、ちょっと、そのは…………吐き気が」


なら、私は?

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:50:54.83 ID:S9t1RThW0<>

彼に打ち明けるべき、彼と一緒に解決すべき悩みを、

『電話相手』に吐き出している私の行いは、彼の信頼に背いているのではないか?


「大丈夫かよ、トイレ行く?」

「…………あ、おさまってきたかも。心配かけてゴメンね、しずり」

「心配なんざしてねえ!」

「ちょっと麦野さんツンデレは私の芸風なんだから横取りしないでよ!!」

「自覚があったとしたら相当あざといぞテメエ! ファン減るわよ!」


落ち着け、インデックス。

彼の事を思い浮かべれば、いくらでも言葉は湧いてくる。


「えっと、続き続き。す、ステイルはとーっても努力家なの。
 周りからは天才魔術師だって持て囃されてるけど、
 ステイル本人は自分は凡才だって言い張って譲らないんだよ。
 魔術っていうのは才能の無い人の為の技術だから、
 積み重ねる事でどこまででも行けるんだって、ちょっとだけ自慢げに笑ってた。
 あの時のステイルの表情を思い出すと、この人に惹かれて良かった、って思えるの」

「仕事ができて頼りがいあって、真摯な努力家だけど適度に隙があってダメ押しに奥さん一筋。
 …………あーもう、理想の男性像すぎて腹立つ! 憎いよこのこのぉ!」

「絶対あげないからね、るいこ。それからそれから…………」


必死に表情を取り繕って“おのろけ”する私の頭の中で

いくつかの言葉がぐるぐるぐるぐる、止まることなく延々と回り続けていた。



どうしよう。

どうすればいいんだろう。

お願いだから教えて、■■■■■■?

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:52:28.47 ID:S9t1RThW0<>
-----------------------------------------------------------------


「………………ン? っつ、あったまいてェなクソ野郎が」


瞼の上から月明りが染みて、一方通行は目を覚ました。

語尾にお気に入りの悪態をくっつけたのは無意識だった。

いつの間にやらコンクリートに上に寝かされていた五体は、すっかり冷えてしまっている。

なぜこのような場所で飲み会後のリーマンの如く寝そべっているのか、まるで記憶になかった。


「……起きたか。店の階段下だ、ドンチャン騒ぎが過ぎて女性陣に追い出されたらしい」


ふらついた長身の赤髪――――ステイル=マグヌスが一方通行にいらえを返した。

この男も同じ憂き目に合って店外に転がされていたらしい。

すぐ脇に落ちていた杖を引き寄せながら、一方通行はもう片方の手でチョーカーをまさぐった。


「そういえば、酔い醒ましにも使えるんだったね。どれ、僕も…………」

「魔術ってのも大概、便利な代物だな。アルコール分解酵素の活性化までできンのか」

「『水』のルーンに『収穫』と『豊穣』を組み合わせて酒に見立て、
 『空白』と『氷』でアルコールを取り除く。それだけだよ」

「こじつけくせえ……」

「魔術とは得てしてそういうものさ」


言いながらステイルは、懐から取り出したルーンを仕舞わずにじっと見つめていた。

辺りに人気はまるでない。

二人を照らしていた月の光でさえ、薄い雲の陰に隠れてしまっていた。


「なあ、一方通行」

「あン?」

<> 天使編B<>saga !red_res<>2011/09/11(日) 20:53:14.33 ID:S9t1RThW0<>











「君は、人殺しか?」












<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:54:47.78 ID:S9t1RThW0<>

「ああそうだ。間違いなく、俺は人殺しだ」


答えは、ごく自然な間だけを置いて返った。


「そうか、奇遇だね。実は僕もなんだよ。
 十二になるかならないかという時分に初めて人を殺して以来、数千人は殺してきた。
 この間の三月なんて、半日で四千人は殺した。所謂、大量虐殺だ」


対するステイルも平常通りの調子である。

常と変わらぬ二人の男を尻目に、会話の内容だけが異常な臭気を醸し出していた。


「それで? 全身血塗れだから自分にはインデックスを
 抱きしめる資格がねえだとか、思春期くせえ言い訳ほざきてェのか? 下らねえ」


一方通行は、魔術師の自分語りを受けて機械的に嘲笑を選択した。

大方そんなところだろう、とはかねがね思っていた。

ステイル=マグヌスという男の性質と己への態度だけで、材料は十二分だった。

彼にとってここまでの流れは、科学最高峰の頭脳が導いた

設計図をなぞるだけの簡単なペーパーテストだった。


「まさか、そんなわけないだろう。僕はね、とうの昔に決めてしまってるんだよ。
 あの子の、彼女の為なら誰でも殺す。何でも焼く。骨になろうと焼き尽す、ってね」

「………………だったら、何が言いてェンだよ」


僅かに一方通行は眉を顰める。

前提条件に誤りがあったのか、設計図はあっさりと役立たずの紙切れと化した。

想定外の答えに、低い声に初めて疑念の色が混じる。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:57:04.77 ID:S9t1RThW0<>

「何千人と殺してきた中で、どうしても忘れられない『死』が、二つだけあるんだ。
 君には、そういう『死』の記憶はないのかな」


二人を包む闇よりなお濃い静寂。

沈黙は是を意味していた。


「なあ、一方通行」


口火を切った呼びかけの焼き直し。

超能力者は動かない。








                       モルモット
「君の愛する女性は、君が使い捨てた実験動物と、実によく似た顔をしてるね」










<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:58:05.64 ID:S9t1RThW0<>
------------------------------------------------------------------------

闇の中で対峙する最強の超能力者が、いまどんな顔をしているのか。

ステイルには、それがまるでわからなかった。

確実なのは、世の女性が羨む最高級陶磁器のような白い肌が、

憤怒の赤には染まっていない事だけである。


「君が今、最も触れられたくない点を不躾に抉った事は後で幾重にも謝罪する」


一方通行は七月十五日、神奈川の御坂本家を訪っている。


「だが、僕もそうなんだよ」


かつて殺した『妹達』の墓参り以外に、目的などあり得ない。


「僕の海馬にこびり付いて消えてくれない」


愛する人を生涯守るという誓いは、“生きている”家族の前では済ませているのだから。


「“たった二度”の『殺人の記憶』は」


ステイルには想像もできない決意を秘めて、彼の地を踏んだに違いない。


「僕がいま現在愛している『彼女』と」


愛する人とまったく同じ顔をした、“殺した”家族の前に、一方通行は何故立つ事ができたのか。


「まったく同じ顔をしてるんだ」


ステイルには、それがまるでわからなかった。
<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 20:59:22.00 ID:S9t1RThW0<>

『だから、そういう隙間が見れて嬉しい、と言ってるんだ』

『ふふ、別に今からでも一杯、いいですよ?』


土御門や神裂たち『必要悪の教会』と、真の意味で同志となった。


『だからありがとうな、ステイル。俺の大切な人を守ってくれて』


上条当麻は、認めたくはないが戦友だ。


『なに言ってんのよ、アンタ達だって私の家族よ』


御坂美琴は、家族だと言ってくれた。


『お願い、死なないで。私は、あなたが生きててくれればもう』


インデックスという女性を、いまなお愛している。






それでも、ステイル=マグヌスの脳裏から。


――――お別れだね。すている、かおり――――


――――安心して眠るといい。君はたとえ全てを忘れてしまうとしても――――



<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 21:00:32.06 ID:S9t1RThW0<>

「なあ。教えてくれないか、一方通行」





「マグヌス、テメエ」





「かつてその手で殺した相手と」


「同じ姿」


「同じ声」

         ひと
「同じ顔をした女性を」





「――――――――――――」





「いったいどうやったら、なんの翳りもなく愛せると言うんだ?」





<> 天使編B<>saga<>2011/09/11(日) 21:01:52.25 ID:S9t1RThW0<>






それでも、ステイル=マグヌスの脳裏から。







かつて“殺した”少女の貌は。















いつまでもいつまでも、消える事はなかった。







<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/11(日) 21:03:31.57 ID:S9t1RThW0<>

続くンだよ、クソ野郎


第二部の50%はこの場面の為にあったと言って過言ではありません
今回一気に投下しすぎたので次回更新は最長で一週間後となりまーす
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/11(日) 21:04:42.19 ID:G5/39DmAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/09/11(日) 21:53:32.46 ID:5qb4gBiAO<> 乙……!圧倒的乙……!
このスレのステイルが格好いいせいでステインに目覚めちまったぞちくしょう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/11(日) 23:43:24.83 ID:Cihb5NWjo<> 乙〜
一方通行は何と答えるのか……ステイルはそれをどう受け止めるのか……
とにかく続きが気になって仕方ないですな、次も楽しみに待ってます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/11(日) 23:58:53.43 ID:trGlF54y0<> 乙

このスレを読みながらメールしてたせいで
メールの文体が妙に甘くなってしまって
何か女友達と変な空気になったじゃんかどうしてくれるんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)<>sage<>2011/09/12(月) 22:55:36.66 ID:HMCXBxA50<> >>931
旗建て乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/14(水) 04:16:50.70 ID:r64DuwfRo<> >>931
あれ、御坂さん、その女友達って初春さんですか佐天さんですか、それとも大穴で麦野さんですか? <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/15(木) 20:04:28.66 ID:HTqgO4n60<>
>>929
ステインはもっと流行ればいいのに(*´ω`*)

>>931
恋な空気になればいいじゃない(キリッ

というわけでどうも>>1です
皆さんレスありがとーござました
今日は明日の夜に投下にくるよー、って予告だけです
それではまた明日 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/15(木) 20:50:43.41 ID:3YLdvk9AO<> 予告きたぁぁぁ!楽しみすぐる! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2011/09/15(木) 23:26:50.53 ID:FZqGFkyAO<> >>934
ステインは流行ればいいがその顔文字は流行らないし流行らせない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/09/16(金) 09:43:43.83 ID:UCe01DW90<> 話の裏でステインになってるSSはそれなりにあるがメインだと少ないからなぁ
もっとステイン流行ればいいのに! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/09/16(金) 21:25:33.77 ID:SQi/WzOn0<>

上条当麻は揺れる世界に対してどうにか身体を垂直に保とうと四苦八苦しながら、

薄暗く陰気な非常階段を一段、また一段と覚束ない足取りで昇っていた。


(このメール………………)


無限ループ状態にハマったステイルの惚気話を聞くうち

眠りこけてしまったらしい上条を覚醒させたのは、

胸ポケットに収納した携帯電話の強烈なバイブレータだった。

差出人不明の手紙に眉を顰めながらも目を通した上条は、

爆睡するその他大勢を起こさないようにそっと和室を抜け出て現在に至る。


(ステイルと一方通行は帰ったんだっけな……? 思い出せねえや。
 だいたい、酔い潰れた上にいびきをかく冷蔵庫ってどんなメルヘン世界の工場出荷物だよ)


益体も無い事を考えながら急な階段を昇り抜けると、屋上へ通じるドア。

鍵のかかっていないそれを徐に押し開くと、日本の夏特有のねっとりした夜気が肌に纏わりついてきた。




「久しぶりだな、上条当麻」




屋上の手すりに、男が一人寄りかかっていた。


「やっぱりか。お前でもメールなんて打つんだな」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:26:51.51 ID:SQi/WzOn0<>

上条は端末をパカリと開くと、階段を昇りながら繰り返し眺めた画面を男に向けた。


「『世界を見渡せる場所で、五分だけ待つ』。
 …………相変わらず、微妙にロマンチストだな」

「正直、辿りつけない可能性と五分五分だと推理してたんだがな」

「ちぇっ、どいつもこいつも上条さんをバカにしやがって」


機嫌を損ねたように携帯を閉じる。

しかし上条はすぐに微笑を浮かべて男に問い掛けた。


                           せかい
「ビルの五階っていう“高所”から見下ろした学園都市は、」


手紙の文面をもじった言葉遊びを一旦区切る。

十年前にした説教――上条自身に説教などという高尚な意識はないが――の『確認』だった。






「どういう風に映った、フィアンマ?」





<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:27:38.61 ID:SQi/WzOn0<>

男――――フィアンマは上条に向けていた身体を一回転させて、

夜に融ける科学の街を眺めながら、悪戯を成功させた子供のようにほくそ笑んだ。


「見通しだけはいいのだが、下に降りないとマーケティングもできなくて困る」


それこそ、フィアンマが十年をかけて上条の言葉を実践し続けた成果だった。



――お前、「世界中」なんていうものを、本当にくまなく見て回った事なんてあるのか?――



「この場所では高すぎて、彼らの笑顔がよく見えん」



――そこでどれだけの人が笑っているのか、見たことはあるのか?――



上条の言葉を胸に、地べたを歩み続けた何よりの証だった。


「はは、そっか。それはよかった。ヴェントも日本に来てるんだって?」

「今は病院のベッドの上だ。見舞いに行ってやれば顔を赤くして恥ず……喜ぶだろうよ」

「ひでえ奴だな、お前」



十年ぶりの再会を果たした独善者と偽善者は、向かい合って閑やかに笑った。



<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:31:26.29 ID:SQi/WzOn0<>
---------------------------------------------------------------


月光が半透明の雲間から抜けて漏れだしてくる。

闇夜に哭く楕円はどちらの男の代弁者なのだろうか。

ステイルは束の間、日本に来て最初の夜もこんな月が上っていたな、と思い耽った。


『殺した? お前が、インデックスを?』


上条当麻の、訳が解らないと言わんばかりの顔が思い起こされる。


『いかにも。僕は、僕が守ると誓った少女を、その手で二度までも殺したんだ』

『違う。お前は「記憶を消した」んだ、「殺して」なんかいない』

『君の“前”の「上条当麻」がもう戻ってこないように、
 僕の目の前で消えていった「あの子たち」も永遠に帰っては来ない。
 もう、世界中どこを探しても、いない。「死」と、何が違うって言うんだ?』


ステイルは、密かに期待を寄せていた。


『魔術という大枠に囚われて、少し考えれば解る脳科学の初歩を二年も見落とし続け、
 みすみす彼女を死なせ……いや、この手で、直接、灯を、躙って…………消した。
 そして度重なる失敗に「次」が恐ろしくなって、「敵」に回るなどという逃げに走った。
 そんな男に彼女を愛する資格など無いと、僕の中の誰かがこの十年、ずっとそう囁いてくるんだよ』


この男なら、見苦しく煩悶する己を、あの喧しい大喝で論駁してくれるのではないかと。






『――――――そうか。悪い、ステイル。俺“には”無理だ』


しかし、なぜか。

上条当麻は目を伏せて、力なく首を横に振るのみだった。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:34:27.69 ID:SQi/WzOn0<>

彼は直後、同様の苦しみを抱えている男がこの街に居る、と告げてきた。

その男の名を上条は決して語ろうとはしなかったが、

ある事情で『超能力者』の戦闘能力からパーソナルデータに至るまで

収集していたステイルが『男』の正体を悟るのに、そう時間はかからなかった。


「“殺した”ってのは、どういう意味だ」


意識が、現在に戻ってくる。

一方通行は、少なくとも現時点では怒り狂っているわけではなさそうだった。

ステイルは赤の他人が踏み込んではいけない彼の聖域を、土足で、無造作に荒らした。

一方通行の性格を鑑みた最悪のケースでは、血を見る可能性まで想定していた。

そしてそうなった場合のステイルの勝率は、雀が同情して泣き出す程度の数値である。

だがその危険を冒してでも、ステイルは長年の懊悩の解を彼に求めたかった。


「悪い。事前説明がどう考えても不十分だったね」


それから暫くステイルは、ピエロが愚かに踊る喜劇の、語り部に徹した。



あるところに一人の少年がいた。

少年は過酷な運命を背負った少女に恋をした。

しかし少女は呆気なく死んでしまった。

他でもない少年が、その手で殺したからだった。

少女は一年ごとに“殺され”て新しい『少女』に生まれ変わらないと、

本当に死んでしまう呪いに掛かっていたからだった。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:36:11.50 ID:SQi/WzOn0<>

少年は今度こそ、『少女』を守ると決意した。

決意して、力を求めた。

様々な代償を払い続けて、天才と世に呼ばれるようになった。



しかし一年後、またも『少女』は呆気なく死んでしまった。

少年の力はそれでも呪いを越えられなかった。

そして心折れた少年は、新しく生まれた『ヒロイン』を追い回す『道化』となった。




「更に一年後、『ヒロイン』は『道化』が思いつきもしなかった
 方法で『ヒーロー』に救われてめでたしめでたし。
 『ヒーロー』と『ヒロイン』のスピン・オフもあるんだが……
 いや、どう考えても『道化』の方がスピン・オフだね、これは」

「『ヒロイン』もなかなかのピエロだとは思うがな。
 なにせ、『ヒーロー』を他の女に掻っ攫われてやがる」


的を射た指摘に、ステイルは顎を撫でて唸った。

三文芝居に付き合わされた観客の感想としては、驚くほど的を射ている。

やけに投げやりな態度が、いかにも気楽な第三者という風情だ。


「ま、それは彼女の問題であって、今はあまり関係が無いけどね」


雲間を抜け出た月明りに映し出された、一方通行の顔を眺める。

ステイルも良く知るやる気なさげで眠そうな面だった。

ただ、重そうな瞼の奥の眼。

鷲のように研ぎ澄まされた眼光だけが鮮烈な“赤”を宿して、ステイルの忌々しい記憶を抉った。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:39:04.71 ID:SQi/WzOn0<>

「お前が殺したのは、“少女”と『少女』の二人ってわけだ」


ここからが本題だ。

『道化』の物語は、困った事に“めでたしめでたし”の後もしつこく続くのである。

『ヒーロー』を射止め損ねた『ヒロイン』は、やがて『道化』との間に愛を育んでいく。

しかし二人の前に、シェークスピアも真っ青の心理的障壁がこれでもかと立ち塞がった。

『道化』にとって最も乗り越え難い絶壁とはすなわち、

かつて殺した『少女たち』の残像が、いつまでも瞼裏に焼き付いて消えない事だった。


「この事は、シスターには?」

「『僕は「君」を昔殺してしまったから謝りたいんだ』、とか? 冗談じゃない。
 彼女に迷惑であるとかそれ以前に、そもそも彼女にはどうしようもない問題だ。
 僕が殺したのは『あの子たち』であって、彼女ではないんだから」


たとえばそれで彼女が、この哀れなピエロを赦してくれたとする。

あるいは糾弾してくれたとする。

どちらが望みなのか、ステイル自身にすら杳として知れない。

いや、おそらくどちらでもないのだ。

数多の弱者を救済してきた聖女の手は、ステイルには決して届かないのだろう。


「だったらアレだな。死者の霊魂とやらを呼び出して、
 『殺してちゃってゴメンナサァイ』とでも土下座しろよ。
 そういうのは“そっち”の得意分野だろォが」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:40:05.23 ID:SQi/WzOn0<>

背筋を冷たいものが走り抜けた。

一方通行の口から“死者への謝罪”などというワードが飛び出すとは、

まかり間違ってもあり得ない事だとステイルは思っていた。


「『あの子たち』には埋葬されるべき肉体も無ければ、此岸に戻ってくる魂も無い」


喉の震えを必死で押し殺しながら、一方通行が適当にふった『オカルト話』を否定した。

しかし次の瞬間、ステイルは大きく肩を跳ねさせざるを得なくなる。


「俺にはわかるぜ、そいつらの行き先」

「な、にを言ってるんだい、君は?」


今夜は驚かされてばかりだ。

科学の申し子が非科学的な与太話を土台に、更に乱暴な推論を積み上げるなど。

この先一生お目にかかれない光景かもしれなかった。


「お前の後ろだよ。そいつらはな、お前の背中にとり憑いてやがンだ」

「――――――――ッ!!」


上下の歯が勢いよく噛み合って、飛び出しかけた叫喚を寸でのところで食い止めた。

肺腑を鈍器で直接狙い澄ましたような衝撃が、ステイルの全身を揺らした。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:41:12.44 ID:SQi/WzOn0<>

「よくお涙頂戴の三文劇で言うじゃねえか、『心の中で生き続ける』とかなンとかよ。
 強ち馬鹿にもできねェと思うぜ? お前の背中を見なきゃ、
 俺にはその『女ども』を知る機会すらなかったンだからよ。
 だから、そうだな。でけェ鏡の前に立って、自分の肩の辺りに呼び掛けて、
 みっともなく謝っちまえ。それで少しは、気がラクになるかもな」


理は、まるでない。

だが言わんとするところを一切理解できないわけでもない。

これはステイルの心の、内側の問題なのだから。


「…………そりゃ、そうか。悪い」


しかしステイルは、俯いて首を振った。

一方通行のいやに親身な態度が底気味悪いと誰かが囁いてきたが、それどころではなかった。

口腔の内で、堤防が決壊しかかっている。

一度堰が切られればもう後には戻れない。


「こんな洒落の利かねェレトリックでどうにかなるほど
 ラクな問題じゃあねえよな。あーあー、どうするかねェ」


そしてやはり、一方通行の軽い口調が蟻の一穴となって、その堰は崩壊した。


「どうにかしようがあってたまるか、という心持ちだよ。
 ああいや、だったら相談なんてするな、という非難は御尤もだ。
 だがね、君なら少しはわかってくれるだろう?」

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:42:32.48 ID:SQi/WzOn0<>

要するに、ステイルは恐ろしかったのだ。

一方通行の返答を待たずに、整理されていない感情が次々と溢れ出る。


「これは理屈じゃないんだ。本能なんだよ。
 僕の魂に刻みついた『あの子たち』の死に際が、
 彼女を抱きしめようとする度にこの腕を震わせて、思い留まらせる」


自分の懊悩は、上条当麻にも、浜面仕上にも、そしてインデックスにも解放できなかった。

これでもし、自分とよく似たこの男にも無理だったら。

取り返しのつかないことを取り戻そうともがく、目の前の罪人の手にすらあまったら。

ステイル=マグヌスは一生、この懊悩を抱えて歩まなければならない。

根拠のない確信に足が動かなくなって、あと一歩のところで踏み止まってしまった。

しかしもう止まれない。

ステイルは溢れ出た感情という名の濁流に足下を掬われ、

望む望まざるにかかわらず流されていくのみの流木と化した。



「一方で、理屈に頼ってる自分もいる」



――禁書目録があるから――


――最大主教になったのだから――



「そんな言い訳を殊更並べ立てなければ」



<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:43:46.78 ID:SQi/WzOn0<>



――――殺してしまった、償いだから――――




「彼女を守れなくなっていた自分が、途方もなく醜く思えてしょうがない!」



恋した『少女たち』と愛する『彼女』が別人であることは、とうに割り切った。

ステイルは間違いなく、自分に追い立てられ、上条当麻に救われ、

今この世界で“生”を勝ちとったインデックスその人を愛している。



「どれだけ大事にしても、薄っぺらで、継ぎ接ぎで、その場凌ぎの」



しかしステイルは、『少女たち』の死に顔を通してしか『彼女』を見られない。

それは、許されざる不実ではないか。

誰も責めてこない過日の罪の意識に怯えて、インデックスを抱きしめてやれない。

そんな臆病な自分の心が、愛が、ステイルには。






「穢らわしい贋物に思えて、しょうがないんだよッ!!!!」






<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:45:58.29 ID:SQi/WzOn0<>
---------------------------------------------------------------------


この神父が自分を選んだ理由はよくわかる。

間違ってはいない、必要な事だと自分さえ騙して人を殺した。

その“人間”と同じ顔をした女を愛して、血反吐を吐くような思いを幾度もした。

果てなき闘いの末にやっとの思いで掴んだ平穏。

しかしその中で、己が裡の最悪の記憶が、最後の敵として立ち塞がる。

残酷なまでにステイルと一方通行のカルマは似通っていた。

そして一方通行は七月十五日、この懊悩に対する結論を、物言わぬ『妹達』の前で既に出していた。


(俺にはどうも、ヒーローみてェな垢ぬけた救いの言葉は掛けられそうにねえ)


ステイルが帰結まで同じ道程を辿るのかは、彼次第だ。

とにかくここまでは引き出せた、一方通行はそう思った。



「穢らわしい贋物に思えて、しょうがないんだよッ!!!!」



激情に任せた咆哮は、一方通行からみれば支離滅裂で穴だらけだ。

論理の穴をつつき、膿を掻き出し、縫合するだけの余地は十分にある。

しかしそれだけでは通用しないだろう。

舌先三寸だけではこの男の懊悩の中枢までは至れない。

ならば強引に、乱暴に、非論理的に、言葉の槌を叩きつける事も必要だ。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:47:06.28 ID:SQi/WzOn0<>


「簡単じゃねェか、今お前が自分で言っただろ」



一先ずは、孔を広げてやる事だ。

理性的な思考力を一時的に鈍らせているとはいえ、

基本的にステイルという人間が理詰めで動くのはここまでのやり取りで明白だ。

インデックスが絡めばまた別なのだろうが、今は関わりの無い事である。



「贋物だろうと本当なンだろ?」



彼の様な人間が自分の発言に潜む論理的矛盾を突きつけられれば、

必然的に自己を顧みざるを得ない。



「大事だってことはよ」



そして人間は、自らの過ちに気が付いた瞬間最も弱くなる。

一方通行自身が、身を持って体験した事だった。

そうなれば、後は思うがままに心理誘導が可能になる。

激情という名のハンマーの出番は、それからだ。



「それがどンだけ薄っぺらで、汚くて、重さのないものだとお前が思ってようと」



<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:48:38.52 ID:SQi/WzOn0<>



そうするつもりだったのに。




「失いたくねェってのは、本当だろうが!!」



『ああそォだ!! 守りてェンだ! 失いたくねェンだ!!
 そんな事を想像したくもねェンだ!! あのたった一つの幻想を守り抜くためなら――』




脳の指令を完全に無視して、いつかの、心底からの吐露が、気が付けば再現されていた。





「贋物だろうが本物だろうが関係なンざあるか!!!
 それだけは誤魔化しちゃならねェ、紛れもない真実だろうがッ!!!!」





思いの外、一方通行という男は感傷に満ちた人格だったらしい。

やってしまったものは仕方がない。

予定されたコースはもはや遥か遠くの稜線に霞んでいる。

だったらこのまま、最後まで突っ走るまでだ。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:50:49.20 ID:SQi/WzOn0<>

「だったらどうしろっていうんだ!! 腕の震えはおさまってくれないんだよ!
 この掌に染み付いた二人の血が、彼女を穢してしまわないか恐ろしいんだ!!
 『あの子たち』の表情は、永遠に消えず、振り払う事もできない!!」


「震えるなら抑えつけろ! 汚れたなら拭え! 振り払えねェなら引き摺れッ!!
 みっともなく足掻いてもがいて、それでいいだろうが!
 もう一度『道化』に戻って後悔してェのかよ、テメエは!
 もう一度アイツを、悲劇の『ヒロイン』に仕立て上げてェのかよッ!!」


「それだけはさせない! 僕が、僕の全存在を懸けてでも、許すものか!」


「――――――笑わせンじゃねえよッッ!!!
 テメエが、今ここで這いつくばることしかできねェテメエが、
 全身全霊なンざ張ったところで結果は見えてンだよ…………!
 失敗だ!! 断言してやってもいい! 
 今のままじゃあ、テメエはまた惨めな失敗を繰り返すッ!!」


「――――――――――――ァァッ!!!!!」


泥沼の底で組み合うような、ドロドロとした負の感情のぶつかり合い。

それでいて身を焦がすような、赤々と盛る生(なま)の情動のせめぎ合い。

真剣同士の鍔迫り合いの最中、ついにステイルが体勢を崩し、口を噤んだ。


「ここまで言われてその腕がまだふざけた事ぬかすようなら、もう降りちまえ」


一方通行は他でもない『実験』の頃の己を回想し、酷薄にステイルを見下した。

膝から崩れ、アスファルトに拳を叩きつけて、言葉を失って項垂れている惨めな男。

ステイルは、再び『失敗者』となる自分を想像してしまったのだろう。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:51:45.67 ID:SQi/WzOn0<>





失望を隠さず、一方通行は最後通牒を叩きつけた。








「他に誰かアイツを託せる男を捜して、『道化』ですらねえ『観客』に成り下がれッッ!!!」








そして、心折れた男は――――――――――――







<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:52:38.49 ID:SQi/WzOn0<>




























「 嫌 だ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」





――――――――絶対に譲れない一線に、火を灯して導火線とした。



<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:53:44.99 ID:SQi/WzOn0<>
-------------------------------------------------------------


ステイルの体内で、何かが爆ぜた。

凄まじい勢いで広がった炎は、あっという間に脳髄まで飛び火した。



「“他の男”だと、ふざけるなッ!」



仮定にすぎないはずの“男”の存在が、

十年前の上条当麻など比べ物にならないほどステイルの心臓を滾らせる。

“男”が、自分を差し置いてインデックスを幸せに、笑顔にする――――?



「彼女が幸せならそれでいい、なんて綺麗事で我慢できるか!!」



哮る爆音に、他でもないステイル自身が驚愕して目を見開いた。

瞬刻ののち振り仰いで、超能力者の顔を見据える。

一方通行は深く瞑目して、ステイルの雄叫びに聞き入っているかのようだった。



「彼女を幸せに“したい”!」



――――そうだったのか。

ステイル=マグヌスはもう、十二年前無力に頽れた少年ではない。

インデックスさえ幸福なら、そんな背伸びをしていた子供ではもうない。

青臭くとも欲望に対して忠実に、そして誠実に向き合える、気高く渇いた男へと生長したのだ。

男の望みは、“夢”は、ただ一つ。

<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:54:17.46 ID:SQi/WzOn0<>















「彼女と一緒に、幸せになりたいッ!!!!」

















<> 天使編B<>saga<>2011/09/16(金) 21:55:42.58 ID:SQi/WzOn0<>



「じゃあ、それが答えだろ」




『少女』たちの声なき声が鼓膜の奥に残って自分を苛み続けようと変わらない真実。

ステイルはこの世の全ての理不尽から、無慈悲から、暴虐から、インデックスの笑顔を守りたい。

どんな艱難辛苦がこの身に降りかかろうと関係ない。

彼女には幸せでいて欲しい。

ここまでは、十二年前の“誓い”と何も変わらない。


「僕は、僕は」

「“大人じみた”、いかにも賢そうな、誰も傷つかない答えなンて探すな。
 言ってみろよ、さらけ出せよ。テメエの欲を、欲しいもンを、口に出してみろよ」


少年が立てた“誓い”と、男の抱く“夢”の相違点は、たった一つ。








「彼女を、僕の手で、幸せにしたい」








――――それが、答えだった。

<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/16(金) 21:56:33.69 ID:SQi/WzOn0<>

続きのために生きて死ぬ


>>1が一番意識的にキャラ崩壊させてるのは実はステイルです
原作より数段メンタルが弱くなってるっていうか
じゅうよんさいの癖に達観ぶりが神の域に達してるっていうか
いつか原作の彼にもこんな感じで上条さんに挑んで欲しいですが無理なんでしょうねー
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/16(金) 21:57:03.64 ID:SQi/WzOn0<> おっとと、次回は日曜夜の予定でーす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/09/16(金) 22:03:59.11 ID:aLib+cwAO<> 乙
原作ステイルのメンタルが強すぎるんだよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)<>sage<>2011/09/16(金) 22:13:38.73 ID:39FVAmQb0<> 乙!

でも大人になって、いろいろ知ってしまうと、達観なんて出来なくなるですね。
むしろ「自分が」という欲が出る方が、本当に強くなると先生は思うんですよー。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/16(金) 22:15:50.77 ID:nGEl0Uv70<> おっつっつー!ついに言った!!
上条さんは早くヴェントのお見舞いに行こうか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/18(日) 01:56:30.24 ID:JjrO5mNno<> 原作のステイルは我慢する事に自分を押し[ピーーー]ことに慣れ過ぎてる感
いずれこのSSみたいにとまでは言わずとも秘めた内心を吐露するようなシーンが来るといいなぁ
ステイル頑張れステイル <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/18(日) 11:33:16.00 ID:nYHScvbNo<> まあ良く言えば人間らしくなったんだよなあ
悪く言えばおっさんになったってやつだ <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/18(日) 22:26:21.95 ID:wAKGpq7A0<>
どうも>>1です

皆さんレスどうもー
>>1的に何が辛いって今後の原作でステイルの活躍がはたしてあるのかという点ですね
主要キャラがほぼ全員出番貰ってる二巻でアレとかちょっと……
<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/18(日) 22:28:29.69 ID:wAKGpq7A0<> ああ、細かい上にどうでもいいことですが前回の↑のナンバリングがBになってるのはミスでした
前回がC、今回がDですの <> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:28:58.37 ID:wAKGpq7A0<>

「彼女を、僕の手で、幸せに、したい」


一言一句を、噛み砕くようにゆっくりと根源に刻みつけていく。

暫く呆けてから、ステイルは漸くその事実を受け入れて全身の力を抜いた。


「こンな大サービスは一回こっきりだ。
 二度目があったら問答無用で輪切りにしてやる。
 精々無様にのた打て、ステイル=マグヌス。俺から見えない場所でな」


血の臭いがする笑みを浮かべながら、苦しめ、と一方通行は手を差し伸べた。

やはり目の前の悪魔は、何の救いも与えてはくれなかった。

それでもステイルは。


「ありがとう、一方通行」


その手をとって、精一杯の気持ちを掌に籠めた。


「礼を言われる筋合いはねェ」


同じ絶望を知る男たちの、血塗れの含み笑いが交差――――



<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:30:37.23 ID:wAKGpq7A0<>















しようとした瞬間。


「なァァァァにいい話で終わらせようとしてンだ?」

「え?」


片方の形相が、鬼も裸足で逃げ出す鬼神のそれへと変貌した。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:31:09.24 ID:wAKGpq7A0<>

触れた手に、腕の細さからは信じられない握力が加わった。

そう思うが早いか、ステイルは轟音を上げて店のシャッターに突っ込んでいた。


「がはっ…………!?」

「取り敢えず立ち直るまでは我慢してやったンだぜ?
 まったく丸くなったもンだ、学園都市第一位のバケモノがよォ」


なんだかんだでやっっっっぱり怒っていたらしい。

まあ、当然と言えば当然の結果であった。

結婚前夜の鬱屈としたオトコゴコロを、最悪の形で掻き回したのだから。

問答無用で開幕ブチコロされなかっただけ僥倖だった、

という楽観はもはやステイルの脳裏からは吹き飛んでいたが。


「シスターの顔を立てて半殺しで済ませてやるつもりじゃあいるが、
 保証はこれっぽっちもしてやれねえ」


ついでにもう一つ合点がいった。

何故一方通行がここまで辛抱強く、ステイルの愚痴に付き合ったのか。

それは彼が、自分ではなくインデックスに、ひとかたならぬ恩義を感じているからだった。

それにしても生存率は果たして如何ほどだろうか。

危うく脳震盪を起こすところだった頭でシミュレートしてみる。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:31:58.60 ID:wAKGpq7A0<>

「さあて、半スクラップの時間だァァ!!! 神様にお祈りは済ませたかァ!?」


(……………………駄目かもわからんね、これは)











「マァァァァァァァグヌゥゥスくゥゥゥゥゥンンンンン!!!!」











雀の“鳴き”声ではなく“泣き”声が聞こえた気がして、ステイルは大きく溜め息をついた。


<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:33:02.09 ID:wAKGpq7A0<>
--------------------------------------------------------------------


月が灰雲に隠れては現れるのを何回見送ったのだろうか。

上条たちがひとしきり互いの近況を報告し合っていると、フィアンマがふと呟いた。


「静かな夜だな」


上条は小洒落たレストランの立ち並ぶ街並みに目を落とした。

確かに夜の十時ともなると、歓楽街からは外れる第四学区は静かなものだった。


「ああ、完全下校時刻もとっくに過ぎたしな」

「…………ふむ、そうか、静かか。なら良かった」


何かを確認するような響きに、上条の第六感が疼いた。

しかしフィアンマはニヤケ面で上条の疑問を封殺し、話題を切り替える。


「何でもないさ。それより今度、俺様の城に来るといい。
 お前なら一回だけタダで飲み食いさせてやろう」

「…………その感謝を示してるようでいて妙な上から目線、
 人間がそう簡単には変わらないんだって実感させられるぜ」

「人間は変わらない、か」

「最近懐かしい顔に会う機会が多いんだけどさ、どいつもこいつも俺は成長が無い、
 って決めつけるんだぜ? 失礼しちゃうよな」



間。



<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:34:00.72 ID:wAKGpq7A0<>

「………………俺様は、変われたのだろうか」

「シリアスな話題にシフトしたように見せかけて答えにくい質問スルーしてんじゃねえよ!!」

「ばれたか。コメントしづらいアレだという自覚はあったんだな」

「ああチクショウ! 変わりまくりだよ! お前相当お茶目なキャラに方向転換してるよ!!」


呵々大笑するフィアンマに、上条はげんなりと頭を垂れて鉄柵に体重を預けた。

土御門から彼の事情は断片的に聞かされていたが、ここまでのキャラ崩壊をどう予想しろというのか。

『ベツレヘムの星』での死闘を経て世界を見つめ直してくれたのだという感動を、

賠償請求つきで返してもらいたい気分だった。


「俺様も不本意ながらその他大勢の有象無象どもに賛成だ。
 上条当麻、お前は十年前とまるで変わっていない」

「…………一応、褒め言葉として受け取っとくよ。
 それで? 世間話するためだけに呼んだ訳じゃあないんだろ?」

「ああ。ステイル=マグヌスから聞いていると思うが」


フィアンマがどこからともなく、手品のように古びた彫像を取り出した。

右手に剣を、左手に秤を携えた天使の偶像。

特筆して芸術性に満ちているわけでもない骨董品。

しかしそこに上条は、深い歴史の闇の一端を垣間見た気がした。


「これが」

「そうだ。これこそが『右方のフィアンマ』を産むための霊装、
 『カシノ山の燃剣』だ。これを、お前の右手で破壊してもらいたい」

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:34:41.42 ID:wAKGpq7A0<>

上条は、十年前の騒乱で自分を幾度となく窮地に追いやった

『神の右席』の系譜については詳しくない。

土御門あたりからもしかしたら説明を受けているかもしれないが、

上条の記憶媒体に余剰データを詰めこんでおくだけの余裕など、今も昔も皆無であった。


「他の三つの行方についてはイギリス清教が尋問で吐かせる手筈になっている。
 それらの事も、そしてバチカンの地下深くに眠る儀式場についても、お前の力を借りたい」


学園都市統括理事会の一員としては、慎重に検討しなければならない依頼である。

歴史の裏側に隠れていたとはいえ、三次大戦や「0715事件」の引き金を引いた

『神の右席』という極彩色が、斑に塗り分けられた世界に与える影響は計り知れない。





「ああ、任せとけ」





しかし、答えなど決まりきっている。

上条当麻は、己が信念に従ってひたすら愚直に突き進む。

およそ十秒ほど、沈黙が場を支配した。


「どうした?」

「………………いや、わかってはいた。前もって予測は付いていたのだ。
 お前はややもすれば、二つ返事でこの仕事を引き受けてくれるのではないかとな」

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:35:43.49 ID:wAKGpq7A0<>

嘆息しながら苦笑するフィアンマの態度に、上条は頬を掻いた。

憎しみの連鎖を止める手助けができるのなら、

上条当麻は世界中どこへでも、当然の如く飛ぶ。

家族や親しい友人はおろか、各国の首脳にさえ周知の事実だった。


「いずれローマ正教は正式外交の一環としてお前達一家を招待するだろう。
 歓待の準備を今から整えておくから、楽しみにしていてくれ」

「美琴と真理まで? なんか悪いな」

「…………悪い気がするのはこちらだ。
 ただでさえ俺様は、十年前の借りを返していないというのに」

「いいよ、貸し借りなんて。ステイルの奴もその辺拘ってたけどさ」


上条は右手を、その心の在り様を映し出したように真っ直ぐ差し出した。

フィアンマもまた右手の霊装を前に掲げる。


キン。


ローマの闇の象徴が、小さな破砕音を伴って瞬く間に風化し、夜空に溶けていく。


「俺は、俺がやりたいと思った事を全力でやるだけだ」


空になったフィアンマの右手は、しっかりと上条当麻の右手と交わっていた。

フィアンマは嘗て己の野望を砕いた『幻想殺し』の力強さに目を細め、フッと笑うと――

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:36:38.14 ID:wAKGpq7A0<>

「そうか。つまり俺様は、お前に借りたものを悉く踏み倒して、
 その上なんの気兼ねもなくお前に新たな頼みができる訳だ」


――――実に“イイ笑顔”を浮かべた。


「へ?」

「いやなに、お前と違って貸し借りを気にする男に借りを作ってしまってな。
 巨額の返済を迫られているから、今この場で返せる分は返しておこうと思うんだ」

「? ? ふぃ、フィアンマさん? どことなーく嫌な予感がするのですが」


別段目立った動きを見せるでもない相手に気押されて、

というか得体の知れない危機感を感じて、握手を解いた上条はじりじりと後ずさった。

長年培った『不幸センサー』が、ツンツン頭を殊更尖らせる形でエマージェンシーを告げている。


「そう身構えるな……おい、その辺りは手すりが老朽化していて危険だ、止まれ」


ふいにフィアンマが素の表情に戻って親切にも忠言をくれた。

考え過ぎか。

ホッとして足を止めるとおかしな事に気が付いた。


「っ、と。ワリィ助かった………………ってちょっと待て!
 どうしてお前がこのビルの劣化状況なんて知ってるんだ!?」

「ふふふ、良い勘だな上条当麻。――――だがもう手遅れだ」


ああやっぱ、こいつ悪役がお似合いだわ。

蘇ったフィアンマの“イイ笑顔”を目の当たりにして、上条は現実逃避気味にそんな事を考えた。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:37:31.78 ID:wAKGpq7A0<>
------------------------------------------------------------------

ステイル=マグヌスはイギリス清教最大主教の護衛である。

それは『必要悪の教会』所属の魔術師として果たすべき義務であると同時に、

一人の男として守るべき意地でもあった。

故にステイルは凡そ考え得るあらゆる敵手との交戦を視野に入れて、

その全てからインデックスを守り通さなければならない。

研鑽に研鑽を重ね、古今東西の魔術から使えそうな要素や記号を習得する傍ら、

ステイルは『仮想敵』を置いてのシミュレートを怠らなかった。

『仮想敵』とは――本命は別にいるが――つまり

心を許すべからざる英国清教の隣人、学園都市の象徴。

現在は十五にまでその席次を増やした『超能力者』たちである。

もちろん今回のトップ会談で双方の信頼関係は盤石のものとなり

今後ステイルが彼らレベル5と死を賭して争う可能性はほぼゼロとなったし、

あくまでこのシミュレートは戦術兵器に匹敵する強敵にどこまで

己の力が通じるのかを確かめるための仮想演武の域を出ない。

実際に役に立つ時がくるなど、“ある日”より以前のステイルが聞けば鼻で笑い飛ばすだろう。





「はぁ……………………ごふっ、はぁ。コイツは効くね…………」

「意外と丈夫じゃねェか、ヤニ神父。
 安全圏に閉じ籠るだけがテメエの能だと踏ンでたンだがよ」


己の最大の苦悩を学園都市最凶の悪魔に打ち明けると決めた、その日以前だったなら。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:38:14.71 ID:wAKGpq7A0<>

「東洋の『風水』にヒントを得てね。人間の身体にも方位はある。
 とすれば、僕は世界で一番小さな『陣地』を自分の身体に築く事ができる」


天草式の協力を得て全身の八か所に刻んだ、防御を意味する『yr』のタトゥー。

その他にも正道で積み上げたルーン魔術の強化から奇手奇策の類まで、

この十年でステイルの手札は溢れんばかりに蓄積されている。


「そりゃあ大層な努力だ、ご苦労さン。で?
 そこまでやって、俺に対する勝率は何%なンでしたっけェ?」

「台詞回しが絶妙に小物臭いよ」

「うっせェほっとけ」


結論から言おう。

美琴や麦野の耳にまかり間違って入れば目も当てられない事態を招きかねないが、

ステイルは第三位までの超能力者になら七割超の確率で勝利をおさめる自信がある。

一日以上の準備期間を設けて築いた自陣の中でなら、という条件を満たす必要はあったが。

しかしその上の位階の、一段といわず数段飛ばしの、怪物を越えた怪物が相手となると――


「――――2%ってところかな。悪い数字じゃあないだろう?」

「クッ、ハハ! ヒャハハハハハハハハハッッ! 
 ああ、悪くないぜお前ェ。真顔でそンな寝言が言えンだからよ」


一方通行の嘲笑、というか爆笑も尤もであった。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:39:13.90 ID:wAKGpq7A0<>

シミュレーションもクソもあったものではない。

最初に手を握られた時点で右腕は『毒手』の餌食となり、

投げ飛ばされた際に一瞬左脚にも触れられた。

激突のダメージは自動防御術式で軽減したものの、

戦闘開始時点でステイルは既に立ち上がれなくなっていたのだから。


「またあの医者の世話になるのか…………明日の式には間に合うかな」

「心配しねェでもシスターの方がいりゃクソガキも満足だろ。
 それよりよ、後学のために『2%』の中身を聞いときてェんだが」


地に伏した被害者と地に伏させた加害者の会話としては暢気なものであった。

からかいや嗜虐心からではなく、一方通行は真剣に己の敗北因子を潰そうとしている。

陽が昇れば永遠を誓う事になる、愛する女性を悲しませないためだろう。

ステイルをノーバウンドで跳ね飛ばした際の激怒は喉元を過ぎて忘れてしまったらしい。

熱しやすく冷めやすい、鉛のような男だった。


「君の『反射』、いや『ベクトル操作』には四通りの突破口がある」

「………………ほォ」


一つ、能力そのものを無効化する。

一つ、『操作』を逆に利用する。

一つ、『操作』対象を見極める。

一つ、圧倒的な、異質な、異次元の力でごり押しする。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:40:06.43 ID:wAKGpq7A0<>

「…………………………ほンの少しブルっちまったぜ。いくらなンでも詳しすぎンだろテメエ」

「君の元同僚は現在僕の同僚なんでね」

「シスコン軍曹と皮被りストーカーかッ…………!」

「加えてミス結標と」

「『グループ』全員に売られてンじゃねえか俺ェェェ!?」

「ついでに上条当麻と君の恋人からも情報をもらったよ」

「揃い踏みにも程があンだろロイヤルストレートフラッシュかァァァァァァァ!!!」


ステイルにとっては親近感たっぷりの絶叫が深夜の学園都市に木霊する。

一方通行の呼吸が落ち着くのを澄まし顔で待って神父はニヒルに笑った。

いくら気取ったところで無様な大の字姿に変わりはないのだが。


「どう考えても僕に三番は実行不可能だから、これはまず除外しよう。
 同様に二番、これも難しそうだ。僕はベクトルがどうのという話にはとんと疎いからね。
 さあ、残るは二択だ。一の最たる例である『キャパシティ・ダウン』とやらは
 僕みたいな公務員には少々敷居が高いし、君が対策を取ってない筈がない。
 四は荒唐無稽というか、おいそれと出来るなら苦労はしない。いやはや困ったものだ」

「うだうだ言ってねェで結論から先ず述べてくださァい。
 論文の考査してるわけじゃねェンだぞ? それとも降参すンのか?」

「イギリス清教の沽券に関わりかねないので、
 ある程度の戦果を上げてから和平交渉に入りたいものだね。
 っていうか降参したら許してくれるのかい、君?」

「朝のニュースに『意識不明の重体で病院に〜』テロップが出るくらいで勘弁してやンよ」

「そんなテロップが出た時点で君は犯罪者だよ。それでいいのか花婿…………つっ!!」


調子に乗ってお喋りが過ぎたようだ。

ステイルの負傷部位は血管がズタズタにされ、激しい内出血で蒼く膨れ始めていた。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:42:18.29 ID:wAKGpq7A0<>

一方通行は静かにステイルを見下ろしている。

ああ言ってはいたが、ここで命乞いをすれば救急車ぐらいは呼んでくれるだろう。

此方を見下ろす――――いや見下している眼差しの奥の憐憫から、ステイルは感得した。

つまりステイルは一方通行に、敵として認識されていないのだ。


「…………しょうがない。『プランI(アイ)』でいこう」

「あァ? あンのかよ、ンなもン」


我慢がならない、というほどの事ではなかった。

ただここで膝を屈したら、インデックスを護るための智慧も力も意志も

自分には無いと、この超能力者に宣言するようなものではないか。

付き合わされる一方通行には悪いが、これはこの上なく幼稚な――


「いいぜ、来な」

「悪いね」


――――男のプライドの問題だった。





  I
「起爆!」


左の掌で配置したステルス化ルーンを、小規模に爆発させる。

その反動を利用して飛び起きたステイルは、生き残った右脚一本で跳躍して手近な壁に背中を預けた。

杖を捨てた一方通行が高速で距離を詰め終わる前に、

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:43:22.19 ID:wAKGpq7A0<>

“予め無数に配置しておいた”ルーンのうち、背の白壁にセットした一枚に魔力を籠めた。


 T I A F I M T  I H T S O T A A I H T R O T C
「我が陣には炎、 その形は矢、 その役は封印!」


連鎖起動した数百枚のルーンが火の雨を敵の頭上に降らせる。

急所は一切狙わず、右腕と左脚を標的に定めているのはちょっとしたご愛敬である。


「ちっ、何時の間に…………!?」


ステイルは千枚程度のルーンならばステルス処理を施した上で、

隣にいる人物にも悟られぬよう配置可能な小細工(マジック)を習得している。

上条当麻を含めた三人で店に入る直前、雑談に耽るふりをしながら仕掛けておいた物だった。


(一方通行は、初見の魔術を完全には反射できない!)


故に、一度足を止めて解析に時間を割いている筈だ。

炎の壁を遮二無二突っ切る事はできない。

その間にステイルも、次のレベルへと戦術を進める。


「んっ!?」


そんな暇はなかった。

もう一度ロケット方式で飛び跳ね、カードを“配置していない”座標まで逃げる。

なぜわざわざ、溜めこんでおいた武器の存在しない方向へ逃げてしまったのか。


「………………馬鹿、な。魔術まで!?」

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:44:14.66 ID:wAKGpq7A0<>

一方通行を貫こうとした火矢が一本残らず元の軌道を辿って、カードを直撃したからだ。

この現象が意味するところとはすなわち。


「ああいや、初見からの看破が無理っつうのは間違っちゃいねェぜ。
 ただよ、俺は二回、テメエの『人払い』を間近で見せてもらったじゃねェか。
 その根源が比較的一般にも知られるルーン文字に起因するっていうなら、
 普遍性を抽出して法則に結び付けることは、“不可能じゃねえ”」


ステイルは絶句した。

想像を完膚なきまでに絶していた。

たった二度見せただけの非戦闘用魔術から見てもいない

実戦用魔術の解析までされるとは、正に『魔道図書館』に匹敵する神業である。


「とは言え、全く解読不可能のルーンが何文字かあったから手こずったぜ。
 あれがなきゃカウンター直撃でトドメまで刺せてたンだがよ…………。
 だが、ここまでくりゃテメエの次の手も大体読める。
 大方俺が無意識に受け入れるベクトルのうち、
 酸素を利用した人体破壊でも狙ってたンだろ?」


手の内は見切られきっている。

空気中の酸素濃度を変える、などの策では容易くベクトル操作に防がれる。

そこでステイルは『火』のルーンの逆位置を付与した、

生命力を減衰させる酸素を生み出して一方通行に浴びせるつもりだった。

勿論異常を察知される可能性は十分にあったが、

いくら一方通行とて魔力と結合した酸素を正常にデバッグするには時間がかかる。

その間好気呼吸が満足に行えなければ、彼の数少ない弱点である体力の乏しさを突ける。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:45:36.51 ID:wAKGpq7A0<>

しかし、現実は。


(これが学園都市第一位、一方通行………………っ!)


支えを失った身体は、ごつごつしたコンクリートに吸い込まれるほかない。

頬を擦りむき、芋虫のような姿態でステイルは這いつくばった。


「潔く諦めちまえよ。プランIの『I』ってのはよ、『Impossible』の『I』だろォ?」

「く…………」


『一流の悪党』を自負することはとうに止めたらしいが、

やはりこの悪役面には敗北寸前の敵をネチネチ追い詰める姿がよく映える。

その『やられる寸前の雑魚敵』が自分でさえなければ

ステイルも素直に感嘆の声を上げられたのだが、それどころではなかった。





「く………………くく、ふふふふ」


微かな笑い声が炎の息吹を断ち切られた魔術師の陣地に響く。


「自分の不甲斐なさに自嘲……ってわけでもなさそうだな」


ステイルは戦術の段階を、絶対に進めたくなかったレベルまで進めると決心した。



黒衣の神父は愉快そうに、しかし同時に不愉快そうに、そして不敵に笑っていた。



<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:46:40.10 ID:wAKGpq7A0<>

次の瞬間、その姿が大気に滲んで溶けた。

気温の局地的な変化による光の異常屈折、いわゆる蜃気楼。

同時に、ステイルが先ほどから移動に使用しているものより、やや大きな爆発音。

もうと立ち込める白煙が一方通行の視界を著しく奪った。


「…………『氷』で冷やした空気を急激に温めれば、そりゃ霧になるわな」


『氷』のルーンは確か十一番目だったか。

一方通行は瞬時に眼前の事象を把握し、上方に向かって身構えた。


「手品ならもう少し上手くやンな」


ステイルの長身が消える直前と全く同質の大気の揺らぎを、

通常物理法則を支配するこの男が察知できない筈はない。

目晦ましにステイルが降らせた霧雨の外側、角度85.2、

距離14.6メートルの座標に蜃気楼が発生している。


「――――あ――――あっ!!」


正にその位置から雄叫び。

何故かノイズが混じったかのように途切れ途切れで聞き取りにくいが、

最後の特攻をかけるべくステイルが急降下爆撃してきたとしか考えられない。


「ったく、熱くなりやがって。マジで二、三週間入院生活になンぞアホが!」


腕と足を血液逆流させた男のものとは思えぬ台詞を吐きながら、

一方通行は両膝に力を籠めてステイルを迎え撃つべく跳躍する。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:48:27.51 ID:wAKGpq7A0<>

ブオオオオオオオオンンッッ!!!!


気流操作で宙を舞った一方通行。

副次物の爆風で濃霧を払う。

次いで、密かに信奉しているヒーローよろしく右拳を思い切り振りかぶった。




「歯ァくいしばれ魔術師ッ! 俺の最強はちっとどころじゃなく――――――!?」




そこでようやく、一方通行は異変に気が付いた。




「ざぁんねん。正解は『T番』の『I』」




“下から”嫌みったらしいニコチン野郎の楽しくて仕方がない、という声が昇って来た。

そして上の蜃気楼からは。


「ぬわああああああああっっっ!!?」

「ンなあああああああああっっ!!!!?? あ、ヤベ、」




「――――プラス、『Imagine Breaker』の『I』だよ」



他でもない、我らがヒーローが情けない悲鳴を上げて急降下してきた。

<> 天使編D<>saga<>2011/09/18(日) 22:50:05.16 ID:wAKGpq7A0<>

天から舞い降りた――――というか降って来た男が

救いを求めるように開いた“右手”が、一方通行の白い頭髪に触れた。

ただそれだけで、途端に“異能”の頂点、『一方通行』が消滅する。

飛行石を持ってなければ落下型ヒロインでも勿論ない。

ヒーローの全体重を掛けられ、一方通行は派手な音を立てて大転倒した。


「かふっ、げほげほっ!! さ、三下ァァァァ!? どけ、降りろォ!!
 テメエ、なにいい年こいてシータごっこなンざやってンだあああ!!」


折り重なる形で倒れた男を払いのけようと必死でもがくが、無駄な努力だった。

伊達に十年『妹達』にもやし野郎と呼ばれ続けてはいない。

一方通行の誤算は、ステイルが『インデックスを守る』という仮想の下で闘う時、

どこまでだろうと残虐にも――――卑劣にもなれる事であった。


「ふぃ、フィアンマの野郎…………! 『安心しろ、手加減はする』とか言っといて!
 っていうか『第三の腕』に手加減とかできるわけねえだろおおおお!!!」

「ぐだぐだ言ってねェで離れろォ!!」





「もう遅いよ」





刹那、焔の矢が一方通行の首筋を――――チョーカーを掠めた。





<> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/18(日) 22:59:45.97 ID:wAKGpq7A0<>

その続きをぶち殺す!


すごいドヤ顔してると思われるすているくんですが全然カッコイイ勝ち方じゃないですからね?
まあ普通に考えてステイルごときが一方さんに勝てる筈もないんですが
互いに殺す気ゼロの勝負なので結果もかなーり歪んでしまいました


さて、>>1でラストスレ宣言したにも関わらずちっとも終わらなかった当SS、
もちろん放り投げる気はないので予定外の3スレ目突入となります
更に今後は私的事情により更新頻度を落として、週最大二回程度の投下となる予定です
当然九月中になんて終わりそうにないですねー
そういうわけですのでこれからも気長にお付き合い頂けると幸いです

では新スレを立てたら誘導に来ますので、皆さんその日までお元気で
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)<>sage<>2011/09/18(日) 23:14:54.84 ID:OQCkhZjX0<> 乙!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/09/19(月) 00:04:21.46 ID:UZOsPSfZ0<> ステイルww
一番大事なとこ人任せかよwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 00:04:48.29 ID:xZ1zTGNio<> 乙
次スレにもついて行くぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 15:02:57.25 ID:JvW+jDJ70<> 乙
感謝を込めて↓を張っておく
ttp://r0.prcm.jp/gazo/i/9J4aib <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/19(月) 17:25:33.17 ID:ybAjm1YA0<> 乙!
>>979 シリアスだったのにロイヤルストレートフラッシュに笑ってしまったwwww <> >>1
◆weh0ormOQI<>saga<>2011/09/23(金) 20:52:32.72 ID:dKFA4VgA0<>
新スレ立てましたー↓

ステイル「まずはその、ふざけた幻想を――――――」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316778674/

埋めついでに意味の無いアンケートというかそんな感じのものにお答えくださると幸いです

Q:今後の禁書原作でステイルとインデックスの関係はどうなると思いますか?

@放置プレイ
Aお友だち程度に進展
BNTR

ちなみに>>1は@だと思うんだよ!
では向こうのスレでもよろしくお願いいたします
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/23(金) 20:58:15.84 ID:vBGAxEmFo<> やべえ、向こうのスレ見つけて乙と書き込んだら>>1に割りこんじゃった、許して!
あと三秒早ければ! マジすまんです

かなしいけど@ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/09/23(金) 21:10:14.03 ID:werReOZlo<> まあ@だろうね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)<>sage<>2011/09/23(金) 21:31:13.71 ID:fhyvCSvb0<> @だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/09/23(金) 21:38:30.05 ID:+I7RDhd8o<> まぁ@だろうな
良くてAにいけるかどうか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りしま<>sage<>2011/09/23(金) 21:47:21.83 ID:cprQQY4f0<> @なんだろうね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/23(金) 21:49:24.95 ID:Ho65/VAAO<> @だろうな…
>>1000ならみんな幸せ大団円 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/23(金) 21:53:56.77 ID:xRz0ydpg0<> @だろうね
>>1000なら、なにも起こらない <> 1001<><>Over 1000 Thread<>                  ヽ人人人人人人人人人人人人人人人ノ
         / ̄(S)~\  <                      >
       / / ∧ ∧\ \<  嫌なら見るな! 嫌なら見るな!  >
       \ \( ゚Д,゚ ) / /<                      >
         \⌒  ⌒ /  ノ Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Yヽ
          )_人_ ノ  
          /    /
      ∧_∧ ■□ (    ))
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   γ⌒   ⌒ヽ  ̄ ̄ノ  ノ       SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|        http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

<> 最近建ったスレッドのご案内★<><>Powered By VIP Service<>フェ●ラまでした元カレが隣の席で気まずい。 @ 2011/09/23(金) 21:52:11.72 ID:t885h0mAO
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御坂「……?(誰よアイツ……見ない顔ね……)」 @ 2011/09/23(金) 21:35:04.89 ID:YbJzLaBJ0
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浜面「安価で行動していこう」 @ 2011/09/23(金) 21:03:15.50 ID:BsnzKPDA0
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ステイル「まずはその、ふざけた幻想を――――――」 @ 2011/09/23(金) 20:51:14.46 ID:dKFA4VgA0
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ここだけ魔王の城 ただしコンマ00で魔王様がっ… @ 2011/09/23(金) 20:35:43.20 ID:dHQ+ZtgDO
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キングオブコントマジつまんねえわ、俺が今から貴様らを爆笑させるギャグ言ってやるよ @ 2011/09/23(金) 20:33:30.86 ID:iXDKH93Go
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返信ありがとう @ 2011/09/23(金) 20:33:03.48 ID:YJIQhsIZ0
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アンwwアンwwそこはだめぇよwww大事なwwwとwwこwwろwww @ 2011/09/23(金) 20:24:07.05
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1316777047/


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