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HTML化した人:lain.
和「ポケオン!」
1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:05:37.97 ID:psV/Tteb0

初スレ立て・初SS

久しぶりに 唯「ポケモンマスターになるよ!」を読み直して影響を受けてしまった。

初めて書いたから多少わけがわからん部分があるかもしれない。
それでも我慢して読んでくれりゃありがたいよ。
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:08:29.75 ID:psV/Tteb0

今からだいたい一年前、その日も私はウツギ研究所へやって来ていた――。


ウツギ「唯ちゃん遅いねー」

和「全く、何やってるのかしら」


私たちはここの近所に住んでいることもあって、昔からウツギ博士の所に遊びに行っている。

昨日は私たち二人は博士からある『お願い』を頼まれていた。今日はその関係で研究所に二人で集合する予定だ。

それで唯はまだ到着してなくて、博士と私は待ちぼうけをくらっているというわけだ。。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:09:57.68 ID:psV/Tteb0

ウツギ「どうしようか、先に受け取っておく?待ってるのも退屈でしょう?」

和「いえ、唯のこと、待ちます」

ウツギ「ふふ、そうですか。ちなみに和ちゃんはもうどのポケモンにするか決めた?」


その『お願い』というのは、私たちがポケモンを育てる、というもの。

別に大した話じゃないと思うかもしれないけれど、これも博士たちの歴とした研究の一環なのだという。

なんでも、ポケモンをモンスターボールに収納せずに育てた場合の記録を取りたいらしい。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:11:15.83 ID:psV/Tteb0

和「はい。一応は決めたんですけど、もし被っちゃたら可愛そうだから、唯が来てから一緒に決めようと思ってます」


もちろんそのお願いに私たちは了解した。特に唯は本当に嬉しそうな顔してたっけ。


ウツギ「ははは、和ちゃんは優しいねー。じゃあもうちょっと待っていようか」

和「そうします」

ウツギ「じゃあその間僕は仕事しているから、研究所の中好きに回ってていいよ。と言ってもあんまり面白いものもないけどね」

和「いえ、大丈夫です。別に退屈じゃありませんから」


私がそう告げると、博士はそうですか、と一言だけ漏らして少し微笑んだ。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:14:09.68 ID:psV/Tteb0
それから唯がやってきたら放送を使って連絡するとだけ伝えると、博士は研究に戻っていった。

それを見送って、私は例の場所へと足を運ぶ。

その場所というのは、書庫だ。

最近私はここがお気に入りの場所となっている。

頻繁に来るというわけではないのだけど、時たま研究所で今のような待ちぼうけの状態になった時はこうやってこの場所へ足を運んだ。

実を言うと、私はポケモンの研究については関心(というか興味ぐらいかもしれないけど)がある。

びっしりと並んでいる分厚い本の中から適当に一冊を取りだし、それに目を通す。

勿論、書いてある内容はさっぱりわからない。

しかし、そのわからないこと――未知の世界を覗くたびに研究に対しての興味が強くなっていく。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:17:34.89 ID:psV/Tteb0
研究者というのはそんなに楽なものじゃないだろう。

ずっと研究所に引きこもり、へとへとになりながらも仕事をこなす人も私は見たことがある。

もちろん、望んで重労働に努めたいとは思わない。

でも、懸命に知らないことを探求し続ける姿勢に、私は淡い憧れを抱いていた。

自分で言うのもなんだけど、私は学校での成績は良い方だ。

そのためか、友達から将来は博士か先生か、と冷やかされたことがあった。

その場は謙虚な顔をしてやり過ごしていたけど、本当は満更でもない、と思う…。

まあ、そんな大そうな夢を他人に面と向かって言えるはずもなく、私はこの場所へはできるだけ人の目を忍んでやってきているわけである。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:18:47.95 ID:psV/Tteb0
今日は比較的新しそうな群青色の背表紙が目にとまった。

引っ張り出してみると、どうやらポケモンの遺伝に関する著書のようだった。

何となく著者を確認してみると、なんとウツギ博士が執筆したものだった。

私だって何年もここへ遊びに来ているんだ。いつもは途中で諦めるけど、今日こそは読破するしかないわね。

少し胸が高鳴る。意気込み、その硬い表紙を開く。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 15:20:41.63 ID:psV/Tteb0
数十分間、私はその未知の世界と格闘を続けた。だけどやっぱり内容はさっぱりだ。

結局遊びに来ているくらいじゃ何もわかりやしないのだ。

今日も諦めて元の位置に本を戻す。




机に突っ伏して、頭を切り替えて幼馴染のことを考えてみる。

唯は一体今ごろ何をしているのかしらん。

そう思いつつも、たぶん面倒見の良い憂のことをそっちのけにしてぐっすりと眠りこけているのだろう、と自分の中で予想はついていた。

彼女はいつもマイペースだ。

その天然っぷりにも何度も自分は振り回されてきた。

でも、不思議とそれが憎めない。

その彼女の笑顔を見ていると、自然とこちらの心もほころんでしまうのだからすごいものだと思う。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)[sage]:2011/07/08(金) 18:13:31.29 ID:hxiV+2Yp0
ポケオンってなんぞ
って思ったらポケモンでした 
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:40:11.37 ID:psV/Tteb0
開始早々所要が入ってしまった。
見てる人いたらスマソ。

再開
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:41:37.47 ID:psV/Tteb0
昨日も彼女はその笑顔を振りまいていた。

いつものように研究所へ遊びに行くと、博士があのお願いを持ちかけてきた。

博士は三つのモンスターボールを用意し、その中からそれぞれポケモンを繰り出した。


ウツギ「この子たちの中から一匹を君たちに育ててほしいんだ」


いきなりのことだったので、私は少しぽかんとふぬけてしまった。

それはたぶん、自分がポケモンを育てるということにピンとこなかったから。

だけど、目の前の可愛らしいポケモンと生活を共にするのだと考えると、正直楽しみで仕方がなかった。

隣にいる幼馴染を見てみると、予想通り歓喜のご様子だった。目が異常なほどキラキラしている。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:42:26.92 ID:psV/Tteb0
しかし、三匹のポケモンの中から一匹を選ばなければならない。

唯は案の定その一匹がなかなか決められなかった。

だからその最終決定が今日に持ち越された、というわけだ。

それなのに、あれだけ喜んでいたのに、寝坊。


和「本当、唯らしいわ」


小さく漏らした後、顔が自然とほころんだ。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:43:55.83 ID:psV/Tteb0
しばらくすると所内のスピーカーがジジジと小さな電子音を立てた。

程なくして呼び出しのアナウンスが入る。

どうやらやっと唯が到着したようだ。

唯に会ったらまずいつも通り叱りつけてやろう。そんなことを考えながら、博士の元へ戻ることにした。




和「失礼します」


元いた所長室へ入ると、思わぬ事態に私は少々戸惑った。

そこに幼馴染の姿はなくて、代わりに同年代くらいの二人の少女がそこに立っていたからだ。


?@「あ…こんにちは」


先に目があった長髪の女の子がどこかしり込みした表情で話しかけてきた。


?A「お、あなたがさっき博士が言ってた『和ちゃん』か?」


その隣のカチューシャを付けた女の子は対称的に明るくて気さくだった。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:45:07.92 ID:psV/Tteb0
和「ええ、そうよ。真鍋和っていうの」

律「おおそうか!私は律、田井中律だ。よろしくな」

和「そう、よろしくね」

律「で、こっちは…ってほら澪、いつまでそんなオドオドしてるんだよ。自己紹介しろ」

澪「あ…ああ、わかってるよ。秋山澪、です。よ、よろしくね」

和「ええ、よろしく」

和「…えっと、それで――」

ウツギ「ああ、和ちゃん来たね」


状況が未だ理解できない所に部屋の奥からひょこっと顔を出した博士。

この様子だと結局唯はまだ来ていないみたいだ。


ウツギ「和ちゃん、ちょっと、ちょっといいかな?」

ウツギ「二人はもうちょっと待っててね」


そう言いながら博士はばつの悪そうな顔をして私を手招いて部屋の奥へと通した。

一体何事だろうか。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:46:41.64 ID:psV/Tteb0
和「どうしたんですか、博士?」

ウツギ「いやぁ、困ったことになってね…」

和「どういうことですか?」

ウツギ「さっきの女の子二人、どうやら僕にポケモンを貰おうとここまで来たらしいんだ」

和「え…?博士、あの子たちにも育成をお願いしてたんですか?」

ウツギ「い、いや、お願いしたのは君と唯ちゃんだけだったんだけどね…」

ウツギ「僕らがポケモンの育成を子供にお願いしてるって噂を聞いたらしくて、それでわざわざヨシノシティから来たらしい」

和「えっと、ちなみに用意してあるポケモンは何匹なんですか?」

ウツギ「一応用意してるのは昨日遊んだ三匹だけ、です」

和「ええ!?じゃあどうするんですか?」


ポケモンが三匹しかいないということは、あの二人か私か唯、誰かがあぶれてしまうということだ。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 18:49:05.69 ID:psV/Tteb0
ウツギ「う〜ん、僕も最初は先客がいるからって断ろうとしたんだけど、見てると素直な子たちだし、なにより育てたいっていう熱意も凄かった。もし可能ならあの二人にもポケモンを育ててほしいって思うんだよね」

和「で、でも、唯もあんなに楽しみにしてましたよ?」

ウツギ「そうだよねぇ。…でも四人のうち誰かが貰えないっていうのは非常に勿体ないと、僕は思うんだ」

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)[sage]:2011/07/08(金) 18:49:20.62 ID:3xyr5XbAO
面白いな。期待。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:03:15.55 ID:psV/Tteb0
>>17
ありがとう。
だがあまり期待してくれるな。あと短いからな
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:04:44.81 ID:psV/Tteb0
正直、私はこの事態に気が気でなかった。

確かに唯はまだ自分のポケモンを決めていない状態で、今日もまだここに来ていない。

だけど、だからって唯があぶれるというのはおかしい。

でも、博士があの二人を断れない気持ちもわからないわけではない。

博士の話を聞く限り、あの二人は純粋にポケモンを育てたいという一心でここまで来たのだ。

そんな人を前にして残りのポケモンを渡さない、というのも可愛そうだろう。

それは、勿論唯も同じだ。

ポケモンは、三匹しかいない。だったら――。


和「博士…私が――」

ウツギ「いや、それはやめておこうよ」


ゆっくりとした口調で、博士は私の言葉を制した。


和「え…?」

ウツギ「君は優しいし、面倒見がいいからね。しょうがないからここは自分が諦めようと、思ったのかもしれないけど」

和「…」

ウツギ「和ちゃん、昨日はすごい楽しそうにしてたよ。君だってポケモン育ててみたいんでしょ?」


自分の思っていたことをずばり言い当てられて、私は何も言えなかった。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:06:15.02 ID:psV/Tteb0
少しの間の後、博士は続ける。

ウツギ「それで何だけど。この困った状況を解決する方法が…実はないってわけじゃないんだ」

和「ほ、本当ですか?」

ウツギ「うん。実は昨日の他に、ポケモンはまだ一匹いるんだ。あの三匹と違って初心者向けじゃないから扱いが難しいかもしれないけど」

ウツギ「それで昨日のことを思い出してみたんだけど、唯ちゃんはポケモンと仲良くなるのが、本当に早かったね」


言われた通り昨日のことを思い返してみると、確かに博士の言うとおりだった。

唯は本当にすぐさまあの三匹と打ち解けていた。

外に出て、博士が三つのボールを取りだし、そこから三匹のポケモンが現れた。

初めて見るそのポケモンたちを前に、自分はどうしただろうか。

最終的にはそれなりに仲良くなっていたけれど、始めは少し戸惑いがあったんじゃないだろうか。

それはたぶん恐怖心とか、そんな類のもの。

しかし唯はどうだろう。

彼女は違った。

恐らく唯は本当に、ポケモンと触れ合える、という喜びしか持ち合わせていなかった。

だから、真っ先にポケモンたちを抱きしめ、撫でまわし、すぐに友達になってみせたのだ。

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:07:22.39 ID:psV/Tteb0
和「確かに、そうでしたね」

ウツギ「うん、だから唯ちゃんにはその最後の一匹を任せようと思う。たぶんこれは唯ちゃんだったからこそできる選択なんだろうけど」

和「…」

ウツギ「僕は、君たち四人は皆上手くやっていけると確信してるよ。良い飼い主っていうのは、良い目をしてる。澄んで輝いてるって言えばいいのかな?」

ウツギ「とにかくそういう目を君たちはしているよ。そういう子には是非ポケモンを育ててみてほしい」

ウツギ「だから唯ちゃんには少し申し訳ないけど、最後の一匹を託す。これがベストな選択だと僕は思ってる」

ウツギ「……っていう策なんだけど、どう?」


今まで凛とした表情で自分の策を説明していた博士の顔が、いつもの穏やかな顔へ戻る。


和「うん…」


正直、唯が納得するかはよくわからなかった。だってあんなに嬉しそうに迷ってたんだもの。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:08:40.89 ID:psV/Tteb0
だけど頭をかきながら尋ねる博士の発言はどことなく頼もしくも見える。

なんとなくそれで大丈夫だと、直感的に思える気がする。


和「ちょっとかっこつけてたのが気になりますけど…誰かが諦めるよりは良いと思います」

ウツギ「え?あれ…僕かっこつけてた?」

和「まあそこは置いておいて、皆がポケモンを貰えるのなら安心しました」

ウツギ「本当?よかったー。和ちゃんが承諾してくれればこっちも安心だよ。じゃあ、唯ちゃんのフォローもお願いね…?」


最後にはにかんだ表情を見せ、じゃあ戻ろう、と私に告げた。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:09:46.70 ID:psV/Tteb0
律と澪の元へ戻ってみると、既に三つのモンスターボールが所長室に運ばれていた。


ウツギ「待たせたね」

律「博士!お願いします!私たちにもポケモンくだちゃい!この通りでごぜぇます」


律は是が非でもポケモンを貰いたいのだろう。機敏に土下座の姿勢を取っていた。


律「澪!何やってんだよ。お前も博士にお願いしろ、ポケモン欲しくないのか!?」

澪「う、うん。あ…あのいきなり来て、すいません。私たちもポケモン育ててみたいんです!」


続くようにして澪も懸命に頭を下げた。


ウツギ「ははは、大丈夫大丈夫。ちょっと君たちのパートナーの準備していただけだから。だから心配いらないよ」

律澪「ほ、本当ですか!?」


二人は手を取り合い、互いの視線を合わせると、一緒になって歓声をあげた。

それを微笑ましく見ていた博士と目が合う。

どこか申し訳なさそうなアイコンタクト。

恐らく、余計な事情は二人に言ってほしくない、ということなんだろう。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:25:02.85 ID:psV/Tteb0
ウツギ「それじゃあ早速だけど三人にポケモンを託すことにします」

ウツギ「僕たちが用意したのポケモンは三匹います。律ちゃんと澪ちゃんは初めて見ると思うから少し触れ合う時間を設けるよ」


そういうと、博士はボールから三匹を繰り出し、紹介を始める。


ウツギ「ええと、まず頭に葉っぱが生えているのが草タイプのチコリータ、そしてこのネズミのようなポケモンが炎タイプのヒノアラシ、最後に大きな顎が特徴的な水タイプのワニノコ。この中から好きなポケモンを選んでもらうよ」


律と澪は三匹を見て目を輝かせていた。

昨日の唯もあんな顔をしていた。ひょっとすると私も同じだったかもしれないけど。


ウツギ「皆好みや性格も違うだろうし、そこは実際に触れ合って決めるといいよ。まぁどのポケモンでも良い子ばかりだから心配いらないけどね」

律澪「…」


既に律と澪の視線は博士に向いていないようだ。

意識は完全に目の前の三匹に集まっているのだろう。


ウツギ「ふふ、じゃあ僕は席を外すから、和ちゃん、どのポケモンにするか決まったら呼びに来てください」

和「はい、わかりました」


笑顔で博士は所長室を後にする。先ほどの不安はほとんどなくなったように見えた。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:27:12.52 ID:psV/Tteb0
早速、どのポケモンを選ぶか決めなくてはならない。

しかし、律と澪を見てみると、さっきから何もしゃべらないばかりか、動いてもいない。

ここは私がリードするしかないようね。


和「あのー」

律澪「え?」


私の声を受けて、ようやく我に返ったみたいだ。


和「えっと、律と澪、でいいかしら?」

律「あ、あはは、ごめんごめん。うん。よろしくなー、和!」

澪「私も、改めてよろしく。の、和。」

和「こちらこそよろしくね。律、澪。」

律「それでー、誰がどのポケモンを貰うか決めなきゃいけないんだったよな」

澪「うう、そんなこといっても中々決められないよ」

和「そうね。だからこそ博士はこういう時間を設けたんだと思うわ」

律「相性は実際に触れ合ってみないとわからないってことか」

澪「き、嫌われたらどうしよう…」


そうこうしている間にポケモンたちは三人の元へとことことやってくる。

そしてあいさつ代わりに鳴いて見せた。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:30:38.18 ID:psV/Tteb0
律「うおっ!な、なんだーこいつは!?か、かわいいな!?///」

チコリータ「チコー」


チコリータは早速律の足もとに近寄っていき、上目遣いで頬ずりをしている。律は動揺していた。


和「(律は一見強気そうなのに意外だわ。逆の一面もあるのかしら)」

澪「うう、り、律ずるいぞ!わ、私も頬ずりされたい!」

和「(澪はおとなしそうに見えて意外と積極的ね)」

律「ずるいって、あたしゃ何もしてないっつーの」

律「あれ?澪の所にもポケモンがいるじゃん」

澪「へ?」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:31:50.38 ID:psV/Tteb0
ワニノコ「ワニワニ!」


澪の元へやってきたのはワニノコだった。


澪「うえっ!?な、なんだ…?この子じっと私のこと見てる…?」

律「早速澪さんと仲良くなりたいんじゃありませんこと?ほら、抱っこしてやれよ」

澪「そ、そうなのか?うう、ちょっと怖そうだけど…ほら、こ、こっちおいで?」

和「あ、澪。気をつけて、その子は――」

ワニノコ「ワニッ」

澪「うわあああああああっ!?」

和「噛みつき癖があるみたいなの」

澪「そ、っそういうことは、早く言ってくれよぉ…!」


半べそを掻きながら腰を抜かして後ろに倒れこむ澪。

それをしり目にワニノコは面白がって飛び跳ねている。

昨日からやんちゃな子だとは思ってたけどしつけが必要ね、この子には。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:35:20.03 ID:psV/Tteb0
律「ワニノコはいたずら好きそうだな。ビビりの澪ちゅわんには手に負えないかもなー」

和「そうね、この子たちの中では一番活発な子だと思うわ」

澪「うう…」

和「反対にヒノアラシはおとなしい性格だったわね」

ヒノアラシ「ヒノ」

和「どう、澪?この子なら大丈夫そうじゃない?」

そう言うとおとなしくしていたヒノアラシを抱えて、澪の胸元へ差し出す。

澪「ほ、本当に大丈夫…?」

和「大丈夫よ。あんな悪戯するのはワニノコぐらいだって博士も言ってたわ」

澪「うん、そ、それじゃあ…」


先ほどよりも慎重にゆっくりとヒノアラシを受け取り、抱き上げる。


澪「あ…本当だ。この子はおとなしい」

律「へぇー、本当にポケモンによって性格って違ってくるんだな」

和「そうみたい。ちなみにこっちのチコリータは意外とさびしがり屋だって博士が言っていたわ。ほら、おいでチコリータ」

チコリータ「チコー」

律「なるほどなー。さびしがり屋ゆえに、かなり人懐こいわけだ」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:36:49.42 ID:psV/Tteb0
和「そうね。ちなみに律はどんな性格の子が好みなの?」

律「私か?うーん、特にそんなのないけど、なんかこう、スカーッとするやつがいいよな!」

澪「また漠然としてるな」

和「あら、だったら――」

ワニノコ「ワニッ」

律「いってえええええええええええええええええええ!!!?」

和「ワニノコがいいんじゃないかしら」


律「お前は自己主張が強すぎだあああ!」

ワニノコ「ハニハニ」

律「痛い痛い痛い!離せ離せ!」


律はぶんぶんと腕を振り回すが、噛みついたワニノコは一向に離す気配がない。

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:47:45.96 ID:psV/Tteb0
澪「うわ…私も危ないところだったな…」

和「こら!そろそろ離れなさい」


ワニノコを叱りつけて体を引っ張り、腕から顎を引きはがす。

これもワニノコなりのスキンシップなんだって博士は教えてくれたけど、正直困ったものだわ。


律「まーったく、元気すぎるのも考えものだなー」

和「なんか、この子はあんまり初心者向けじゃないんじゃないかと思ってきたわ」

律「おいおい、みんな良い子じゃなかったのかよ…」


律「あっ澪。私にもヒノアラシ貸してくれよ」

澪「ああ、いいよ。ほら」


今度は律がヒノアラシを抱き上げる。

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:48:36.38 ID:psV/Tteb0
律「よいしょっと…。んー?」

律「なんだお前?本当おとなしいなー」

ヒノアラシ「ヒノ」

律「なんか目も細いし、典型的な控えめ君でちゅか〜?」

ヒノアラシ「ヒノ…」

律「なんだなんだー?辛気臭いぞー?そんなやつにはこいつをお見舞いしてやるー!」

澪「おい、無茶するなよ?」

律「大丈夫大丈夫!ほら、これでどうだ?」

ヒノアラシ「ヒ、ヒノッ!?」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:49:19.81 ID:psV/Tteb0
律「こ〜ちょこちょこちょこちょ〜」

ヒノアラシ「ヒ、ヒーノヒノヒノッ」

ヒノアラシはバタバタと抵抗しながら笑い声をあげる。

和「ちょっと律、乱暴はだめよ」

律「和はお固いなー。こんぐらいのスキンシップが丁度いいんだって」


そう言いながらくすぐり攻撃をさらに激しくする。それに比例してヒノアラシの抵抗も大きくなり、笑い声もあっという間に悲鳴のようなものになっていく。


律「おー良い声がでるじゃありませんか〜ヒノアラシちゃん。それではラストスパート行っときますか!」


律の指の動きがまた一段と加速した、その瞬間だった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:50:19.93 ID:psV/Tteb0
ヒノアラシ「ヒノ――!!!!」

律「うへえっ!?」


ヒノアラシの背中から激しい炎が立ち込め、それと同時に口から吐き出された火炎が律の顔面に直撃した。律の顔面は煤だらけだ。


澪「ヒノアラシが…」

和「怒った…?」


律「な、なかなか良いもの持ってるじゃないですか…」

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:52:19.79 ID:psV/Tteb0



* * * * * * * * * * * * * * *



和「これで一通りポケモンたちとは触れ合ってみたけど、二人ともどう?」

澪「うーん、私はまだ迷ってるかな」

和「律はどうかしら」

律「私も、澪と同じかな」

澪「そういう和はどうなんだ?」

和「私も、まだね」

律「ううむ、まだ皆迷ってるかー」

和「どうやって決めようかしら」

律「もう面倒くさいしジャンケンとかでいいんじゃないか?」

澪「もっと自覚を持て!パートナー決めるんだぞ!?」

律「えー、だって話し合って決めるとかいって、被っちゃったらどうすんのさー?」

澪「う…それは…」

律「ほらなー?」

和「私は別にそれでいいと思うわ。別に適当に選ぶわけでもないだろうし」

澪「うう、仕方ないな」

律「じゃあジャンケンに決まりー!勝った人から順にポケモンを選んでいくこと!これでいいか?」

和「ええ」

澪「うん」

律「よーし、じゃあいっくぜええ!」

律「最初はグー!ジャンケン――」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:54:01.18 ID:psV/Tteb0
澪「あ、ちょっと待った」

律「ん?なんだよ澪〜」

澪「今さらだけど、和は昨日この子たちに会ってるわけだろ?」

和「ええ、そうよ?」

澪「だったらさっきはまだだって言ってたけど、本当は決まってたりするんじゃないのか?」

律「何ー!?そうなのか?」

和「うーん、…実は、一応決めてるわ」

澪「やっぱりな。だったら和が一番に決めてくれよ」

律「なんだよー、そんなの遠慮しなくていいのに」

澪「律の言うとおりだ。和は元々ウツギ博士からポケモンを貰う予定だったんだから当然だ」

和「(別に遠慮してるってわけじゃないんだけど…)」

和「別にいいわよ。それに、私はジャンケンがいいと思うわわ。そっちの方が公平だと思うし、気兼ねも残らないしね」

律「い、いいのか?」

和「ええ、折角友達になったんだし、一緒に決めましょう?」

澪「(と、友達…)」

律「よし!じゃあ和がそう言うならジャンケン仕切り直しだ!行くぞ」

澪「ああ」

和「ええ」

和律澪「最初はグー!ジャンケン、ポン!」

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:56:08.22 ID:psV/Tteb0
これもうちょっとで終わるんだけど、どれくらい見てるやついるんだ…?

投下しててすげー不安・・・
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:57:12.05 ID:psV/Tteb0
和「勝っちゃった」

律「なーんだ、結局心配はいらなかったってことだな」

澪「そうだな」

律「じゃあ早速和、決めてくれよ」

和「わかったわ」


和「……私は――」

律澪御三家「(ドキドキ)」

和「この子にするわ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:58:12.36 ID:psV/Tteb0


ワニノコ「ワニッ!ワニワニ!」


律澪「え!?」

和「え?何かおかしい?」

律澪「い、いや別に…(その選択は考えてなかった)」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 19:58:58.90 ID:psV/Tteb0


律「次は澪の番だな」

澪「ああ」

澪「……私は――」

チコヒノ「(ドキドキ)」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 20:00:14.67 ID:psV/Tteb0


澪「チコリータにするよ」

チコリータ「チコチコー!」

律「やっぱり澪っぽいな。そんな気がしてたぜ」

澪「そういう律だって、その子選ぶつもりだったろ?」

律「んー?まぁ私は誰でも良かったんだけどね」

ヒノアラシ「ヒノッ!?」

律「嘘だよ嘘。さっきはごめんなーヒノアラシ」

ヒノアラシ「ヒノヒノ」

律「おう!これからよろしくな!」

和「あら?律はポケモンの言葉がわかるの?」

澪「律も可愛いとこあるじゃないか」

律「……うっ、うるしぇえ!///あたし達はそれだけ相性がいいんだあっ!」

和「まぁ何はともあれ」

澪「これでパートナー決定だな」

律「ああ!」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 20:02:32.63 ID:psV/Tteb0

和「よろしくね、ワニノコ」


先ほど決まったパートナーを見てみると、足をばたつかせ飛び跳ねている。

その元気な姿を見ていると、これからの新しい生活に胸が高鳴った。

澪と律は、各々のポケモンとスキンシップを取っている。唯のことが頭をよぎる。

どんなポケモンかわからないけどあの子はちゃんと育成をしていけるだろうか。

いや、その前にちゃんと私が今日のことをフォローしなくちゃ駄目よね。

これからワニノコのためにもしっかりしなくちゃいけないんだから。


そんなことを考えながら私は博士を呼ぶべく、所長室を後にする――。

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 20:05:14.85 ID:psV/Tteb0

かくして私はワニノコのパートナーとなった。

あの後、澪と律とは小一時間程度おしゃべりをして益々親しくなった。

今では用事でヨシノシティに出掛ける時には二人のもとを訪れ、近況を報告しあったりして、良好な関係が続いている。



パートナーのワニノコは本当にしつけが大変だった。

まずは噛みつき癖、これを直すのには苦労したっけか。

それとこの子、実はものすごい食いしん坊だった。

だからやたら木の実なんかを拾い食いするのよね。

たまに勝手に木の実を取りにどこかへ行っちゃったりするし。

でも、新しい家族が増えて、生活は楽しいし本当に充実した日々を過ごせていると思う。

そんなことを博士に伝えたら、あの時の判断が正しくて良かったよ、と言っていた。

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 20:06:42.22 ID:psV/Tteb0

もちろん唯もあの後事情を説明してポケモンを手にした。

唯にも育成の面で色々困難があったけど、今はそれを乗り越えてパートナーと上手くやっている。

まぁ唯の性格は相変わらずだけど。



そして、今日も私は研究所へ出掛ける。もちろん唯も一緒。

どうせまた彼女は寝坊するんだろうし今日は家まで迎えに行こう。

準備が整い、ワニノコへ視線を送るとちょうど朝食のポケモンフーズを平らげていた。

こちらを見て、元気よく鳴いた。いつものように頭を撫でてやる。


和「それじゃ行くわよ。ワニノコ」


ドアノブに手をかけて、私たちは外へと繰り出す。

天気は晴れ。今日はどんなお願いを頼まれるのかしら――。


44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 20:10:17.72 ID:psV/Tteb0

とりあえず終了。

いいんだいいんだ、今日は魔女宅見よう、そうしよう。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)[sage]:2011/07/08(金) 20:11:09.46 ID:3xyr5XbAO
連続で投稿してるとコメントしにくいと言うのはある。それとNIPはROM専が多いからあまり気にする事はないよ。
なんか終わりっぽい雰囲気だけどかなり上手いからポケモンマスターでもポケモンレンジャーでも目指してくれると嬉しいな|д゚)チラッ
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 23:15:21.70 ID:psV/Tteb0

オソノさんって良い人ねっ!

つーか、もしかしたらこの続き書くかもしれないんだけど
そしたらhtml化申請しないほうがいいの?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/08(金) 23:20:20.46 ID:D4vpo1iSO
>>46
HTML化の依頼を出すということは

「完結したのでもう書きません」

という意思表示。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)[sage]:2011/07/08(金) 23:20:22.29 ID:3xyr5XbAO
まだまだスレは余ってるからそのまま長編にしちゃえば良いと思うよ!
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/07/08(金) 23:47:20.72 ID:psV/Tteb0
>>47>>48

新スレ立ててやるか、現行でやるか迷ったけど、

まぁどっちでもいいか。間が空くなら依頼だそう。どうも
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/09(土) 04:28:04.92 ID:YyKCnQpSo
面白かった
ぜひ続編読みたい
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/09(土) 19:50:26.08 ID:Dc/DycTqo
おつ!唯のポケモンが気になるな!
続き期待してる
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 06:54:23.06 ID:YghPWBWS0
>>1です。
ちょっとだけ続きを考えたので投下する。

>>2の通り、以降は一年後の話で進めていきますよ。
あと、時間が経ってしまったせいで視点や作風が色々と変わってしまった…。
そこはご勘弁。

では投下開始。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 06:56:12.95 ID:YghPWBWS0
朝――。


憂「もう、お姉ちゃん起きて!」


カーテンが開く音がする。同時に日差しが瞼の隙間から入り込む。


眩しい――。たまらず体を起こす。


唯「ん〜むぅ、ねむーい」


憂「早く朝ご飯食べて?和ちゃんもう来てるよ」


唯「うぃ…大丈夫だよ、今日日曜だから…zzz」


憂「あっお姉ちゃん!?」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 06:57:06.43 ID:YghPWBWS0
憂「もう。ピチュー、お願いね」


ピチュー「ピチュピチュ!」


憂の足元から小柄のポケモン――ピチューが飛び出す。


そのままの勢いで唯のベッドにダイブし、ぴょんぴょんと跳ねる。これがいつもの目覚めのパターンだ。


たまらず目を覚ます。


唯「あ…憂、ピチュー、おはようごぜーます」


ピチュー「ピチュ!」


唯「うーん、今日のピチュー分補給〜」


ピチュー「ピチュ〜」


頬をくっつけてぐりぐりとこねくり回す。これも毎度の事。

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 06:57:58.74 ID:YghPWBWS0

和「ちょっと唯、早くしなさい。博士が待ってるわよ」


憂「あっ和ちゃん」


和「悪いわね、上がらせてもらっちゃったわ。どうせ唯は寝坊だと思ったから」


唯「おはよー和ちゃん」


ピチュー「ピチュピ!」


和「唯、いつもの補給はそのぐらいにして早く準備しなさいよ。今日は博士との約束があったでしょ?」


唯「あれ、そうだっけ?」


ピチュー「ピチュ?」


和「はぁ……しょうがないわね」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 06:58:53.17 ID:YghPWBWS0
憂「あっ!そうだ和ちゃん。和ちゃんもついでに朝ご飯食べていってよ」


和「え?あ、でも私はもう食べてきちゃったから」


憂「そっかー何か残念」


憂「んーでも朝ごはんとお弁当作りすぎちゃったのに、どうしよっか?」


そういって憂は和の足元に視線を落とす。


ワニノコ「ワニワニ!」


和のパートナー――ワニノコが跳びはね、はしゃぐ。


和「こら、ワニノコ。あんたさっきご飯食べたでしょ」


ワニノコ「ワニ…」


自分を叱る主人の顔を見てワニノコは俯く。


憂「ちょっとぐらいなら大丈夫だよ。ね、ワニノコ?」


ワニノコ「ワニ!ワニワニ!」


憂「最近新しいポケモンフーズを考えたの。ワニノコも味見だと思って食べてみて?」


そう笑顔で告げると憂は朝食の準備にパタパタと1階へ降りていってしまう。

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:00:06.69 ID:YghPWBWS0

和「もう、しょうがないんだから。ワニノコ、少しだけよ?」


ワニノコ「ワニワニワー!」


和「で、唯!さっさと着替えて…」


唯「ほぎゅうううう!」グリグリ


ピチュー「ピヂュウウウウ!」グリグリ


和「……」


58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:00:46.80 ID:YghPWBWS0



憂の作った朝食を食べた二人と二匹は、今日の要件のため、街の外れに位置するポケモン研究所へと出発した。


和「やっぱり憂って、料理すごい上手ね」


唯「自慢の妹ですから!」


和「ポケモンフーズまで作れて、味も上等」


ワニノコ「ゲェップ……ワニ」


和「それに留まらず、家事全般も完璧にこなせて、成績も優秀」


唯「えへぇ〜照れますな〜和ちゃん」


和「……あんたもポケモンを持ってから何年も経つんだから少しは自立したらどう?」


唯「え〜大丈夫だよ〜憂がいれば何の問題もないから」


和「別に家事とかをしろって言ってるんじゃないのよ。何か、やろうって思うことないの?」


唯「どういうこと?」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:02:35.79 ID:YghPWBWS0
和「だって唯って特に何もしないで過ごしてるでしょ?それって駄目だと思うの」


唯「今はピチューと皆がいるから楽しいよ?」


ピチュー「ピチュ〜」


唯「えへへ、かわいいな〜」


和「楽しいのはいいかもしれないけど、それだけじゃいけない日が、いつかきっと来ると思うの」


唯「うーん、そう言われても。…和ちゃんは何かあるの?」


和「えっと……」


和「私たち、昔からウツギ博士の所にちょくちょく遊びに行くじゃない?」


唯「うん」


和「実は私、最近そこで博士の仕事を手伝ったりしてるの」


唯「え!そうだったの!?」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:03:17.52 ID:YghPWBWS0


和「といっても、掃除とか誰でもできるようなことだけど」


和「それでね、まだ全然なんだけど、将来はその・・・・・・そういうポケモン研究の学者さんになりたい、なんて思ってたりするのよ」


唯「す、すごいね和ちゃん!?」


唯「そっかー和ちゃんが博士か〜。何かキラキラしてるよ!まぶしいよ!」


唯「そしたらまた自由に遊びに行けるね」


和「私の話は置いといてよ。それで唯、あなたもそうゆう夢、みたいなのが必要だと思ったわけよ。ニートにならないためにも」


唯「ニート!?」


唯「(私がニート…考えたこともなかったよ)」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:04:10.63 ID:YghPWBWS0

和「ニートは怖いわね?」


唯「う、うん」


和「だったら何か見つけた方がいいわよ」


唯「うーん、そう言われてもなー」


和「別に今すぐじゃなくてもいいのよ。唯のペースで考えていればね」


唯「うむむむ……」


唯「……あっ!」


和「早っ。もう何か思い浮かんだの?」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:05:02.89 ID:YghPWBWS0

唯「今日ってなんで博士のとこにいくんだっけ?」


和「……」


和「唯らしいわ。まぁ気長にね」


唯「えへへ、すいやせん」


和「今日はお使いでしょ?博士が忙しいって言うから代わりに私たちが買い物に行くって話だったじゃない」


唯「ああそうでしたそうでしたー」


和「と、そんなこと言ってる間に」


唯「到着です!」


二人の目の前にはウツギポケモン研究所が建っている。


外観は白い壁と大きな窓で埋め尽くされ、その上部を赤い屋根で覆っている。


その姿は病棟のようで一見暖かみの無い建造物に見えるが、二人には大切なパートナーと出会った思い出深い場所であった。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:05:51.16 ID:YghPWBWS0

唯「おじゃましまーす!」


ピチュー「ピーチュ!」


唯とピチューを先頭に研究所のドアを開ける。


屋内はいつも通り研究機材や資料であふれている。


ドアの閉まる音が聞こえた後、近くにいた助手が唯たちに気がつき、博士を呼んでくることを告げて研究所の奥へ向かって行った。


和「今日はいつもより忙しそうね」


唯「へーそうなんだ」


和「そうね、なんかいつもより部屋が散らかっている気がするもの。それってやっぱり忙しいって証拠よ」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:08:08.43 ID:YghPWBWS0

幼馴染の言葉が耳を通る。


心が揺らぐ。


それは本当にわずかなものだったが、はっきりと感じたことだった。


特に何の変哲もない台詞。何の感情も持たない日常の会話だ。


その会話に対して頭が働きかけている。


リフレインする言葉――。


この気持ちは何だろうか――。


よくわからない。仕方なく、ふーんと適当な相槌をうち、そのまま立ちつくす。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:08:52.20 ID:YghPWBWS0


そのまま数分待っていると、奥からウツギがのんびりとやってくるのが見えた。


唯「あっ博士、おはよー」


ウツギ「やあ、和ちゃん、唯ちゃん、よく来たね」


和「おはようございます、博士。来て早速ですけど、今日のお使いはどこへ行けばいいんですか?」


ウツギ「ああ、そうだったね。最近色々と忙しくてね。碌にワカバタウンから出れないよ」


唯「博士も大変だねー」


ウツギ「それで、今日のお使いは買い出しじゃないんだよね。ちょっと僕の代わりに会ってきてほしい人がいるんだ」


唯「へぇー、それって誰なんですか?」


ウツギ「うん、ポケモンじいさんって呼ばれてる人で、学者ではないんだけどポケモンにはとても詳しい人なんだ」


和「え?そんな人に私たちが会っても大丈夫なんですか?」


ウツギ「ああ、そこは大丈夫だよ。ちょっと僕の代わりにあるモノを預かってきてほしいんだ」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:10:27.34 ID:YghPWBWS0
和「あるモノ、ですか?」


ウツギ「うん。そうだね、それが何かは見てのお楽しみってことにしよう」


ウツギ「とにかくそれをポケモンじいさんから預かって持ってくるだけだから簡単だよ」


唯「任されました!」


和「わかりました。それで、そのおじいさんはどこに住んでいるんですか?」


ウツギ「彼は30番道路にある一軒家に住んでいるよ。ワカバからだと、ヨシノシティを通ってそこから北に進むことになるね。一応地図を渡しておくよ」


唯「オッケー!了解しましたっ。じゃ、早速行こうよ和ちゃん」


和「そうね。じゃあ博士、行ってきます」


唯「いってきまーす!」


ピチュー「ピチュピチュ」


ワニノコ「ワニワニ」


研究所の外まで見送りに出たウツギに、大きく手を振り、唯たちは研究所を後にした。


まず目指すはワカバタウンの真西に位置する、ヨシノシティ。


67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/01(月) 07:15:13.35 ID:YghPWBWS0
とりあえず今日はこのぐらいにして今から寝る。引き夏休みヒャッハ―
明日もっと投下できると思う。

あと行間隔も変えてみたんだけど、見た人いたらどっちが見やすいか教えてくれたらありがたい。
それでどっちで行くか決めようと思う。

ではおやすみ
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 19:55:51.82 ID:Ihv4U8P30
ワカバタウンの真西に位置するヨシノシティ。


その入口に唯と和の姿があった。傍らには各々のパートナー達がちょこちょことついてきている。


和「ふぅ。ヨシノシティ、到着ね」


唯「和ちゃ〜ん、あとどれくらいー?」


和「そうね、博士の渡してくれた地図によるとおじいさんはヨシノシティを出てそう遠くないみたいだから、ここまで来たらもうちょっとね」


ワニノコ「ワニ〜…」


地図を見ながら道を確認する和のズボンをワニノコがぐいと引っ張った。


和「あら?どうしたのワニノコ」


ワニノコ「…グウゥゥ」


ワニノコの腹が鳴る。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 19:57:05.22 ID:Ihv4U8P30
和「ちょっとワニノコ、あんたもうお腹すいちゃったの?出発前にあんなに食べたじゃない」


ペタンと地べたに座り込んだワニノコは和の問いかけに首を縦に振りってうなずく。


和「もうちょっとなんだから一気に行っちゃうわよ。ほら、がんばって」


座りこんだワニノコを起こし、スタスタと歩を進める。


和「……」


和「……」


和「唯?」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 19:58:46.34 ID:Ihv4U8P30
唯「和ちゃん…もう私……動けない」


振り向くと、先ほどまで隣にいると思っていた唯がへたり込み、助けを求めるようにこちらに手を伸ばしていた。


ピチュー「ピ〜チュ〜」


ピチューも唯を真似てへたり込む。


和「あー、もう。わかったわ、お昼にしましょう」


溜息をつきながら再度地図を開き昼食を取る場所を確認する。


唯「よーし!お昼だって!やったね皆!」


ピチュー「ピチュピチュ!」


ワニノコ「ワニワニワー!」


とたんに踊りまわる三匹だった。



71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 19:59:36.64 ID:Ihv4U8P30
ヨシノシティの東側に位置する公園が地図を持つ和の目にとまり、一行はそこで昼食を取ることにした。


唯「ごちそうさまでした」


和「なんだかんだでいい休憩になったわね」


唯「そうだよ!やっぱり息抜きは大事だよー」


和「唯は少しそれが多すぎよ」


唯「えーそんなことないよ〜。私だってやることはやってるもん」


和「へぇー、じゃあこの美味しいお弁当は誰が作ったのよ?」


唯「う…、それは…憂だけど」


唯「わ、私だってやるときはやるんだよ!?」


和「じゃあたとえば?」


唯「ご飯のときにお皿を出します!」

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:00:33.16 ID:Ihv4U8P30

和「……」


和「まぁ…それが唯っぽいわ」


唯「あー、和ちゃんなんかひどーい」


唯「他にもお風呂掃除とかもするんだよ?たまにだけど!」


唯「ね、ピチュー?」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:01:03.28 ID:Ihv4U8P30
「…………。」


唯和「あら?」


唯「あれーピチュー。どこ行っちゃったのー?」


和「ワニノコもいないじゃない。さっきまで二匹してじゃれ合ってたのに」


唯「(ハッ!)」


唯「ま、まさか…誘拐!?」


和「落ち着きなさいよ」


唯「えへへ〜冗談だよ」


和「どうせワニノコのことだから美味しそうな木の実でも見つけたんだわ」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:01:50.86 ID:Ihv4U8P30

和「…と言ってもあちこちに木の実がぶら下がってる木があるわね」


唯「うーん、じゃあ手分けして探そっか」


和「全く、しょうがないわね。じゃあ唯はあっちを……あら?」


唯「?」


唯「どーしたの?」


和「…いたわ」


唯「えっ?」


唯が和の視線の方へ振り向くと、そこは自分たちのいた広場の裏に面した小さな林になっており、その先にはグラウンドのような開けた敷地が見えていた。


その林の先に空き地に向かって駆け出すピチューとワニノコの姿が見えた。

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:02:43.50 ID:Ihv4U8P30

唯「あー本当だー!」


和「どこに行くつもりよ、あの子達」


唯「追いかけよう、和ちゃん」


先行して林の中へ走っていく。


和「あっちょっと唯!」


和もそれに続く。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:03:11.60 ID:Ihv4U8P30

林の中は一応空き地と広場の間を移動できるように草は茂っておらず、小走りでも足をとられる心配はなかった。


上を見上げる。


葉の隙間を縫って日の光が細かく降り注いでいる。


目を細めてそこをよく見てみると、木々には緑色の木の実がなっていた。


木の実の名前は詳しく知らないけれど、確かこれはワニノコがよく拾い食いをしていたものだ。


たまに唯たちと遊んでいるとワニノコが消える。


どこへ行ったのかと思うと度々木の実をくわえてワニノコは帰ってきた。


和はまた一つため息をついてパートナーの食いしん坊ぶりを嘆いた。


林を抜けると空き地が広がる。


その空き地の中心に自分たちのポケモンが見える。


だが、見えたのは二匹だけではなかった。


ピチューとワニノコ以外に二匹、小型のポケモンが目に映る。

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:03:49.55 ID:Ihv4U8P30

唯「んんー?ピチューたち何やってるんだろ?あ、あのポケモン達のパートナーもいるね」


和「あれ?もしかして…」


唯「和ちゃん行ってみようよ!」


唯が先行して空き地の中心に向かって走り出した。

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:04:17.69 ID:Ihv4U8P30

唯「すいませーん!」


?@「うん?」


?@「あーあなたがこの子のパートナー?」


唯「そうです!」


?A「良かった良かった。急にこの子たちが私たちのポケモンに駆け寄ってきたから、少し驚いていたんだ」


?@「まぁ、あの様子だと心配いらないみたいだけどな」


ポケモンたちを見てみると、四匹が仲良く飛び跳ね、じゃれ合っていた。


唯「…ああ!」


?@「ど、どした?」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:04:45.05 ID:Ihv4U8P30

唯「…か、かわいいー」


?@「(かわいいっておい…なんか抜けてそうなやつだな)」


?@「というか、ここら辺じゃ見ない顔だけど、ヨシノの人?」


唯「ううん、私は隣のワカバタウンから来たんだ」


?A「え?ワカバ?歩きだと結構大変じゃないか」


?@「何か用事でもあったのか?」


唯「うん、ちょっとウツギ博士から頼まれ事なんだ」


?A「ウツギ博士?」


唯「あ、私ウツギ研究所の近所に住んでてちっちゃい頃から知り合いなんだー」


?@「へぇー!あ、私たちの友達にも似た子がいるよ。なぁ?」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:05:20.72 ID:Ihv4U8P30

?A「ていうか、アレ」


?@「ん……?」


?@「ワニノコ」


?@「あ、あー!もしかしてこのワニノコって――」


唯「うん?あ、そっちの子は私のポケモンじゃないよ。私のパートナーはこっちのピチュー!」


?A「もしかしなくてもこの状況は――」

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:06:05.51 ID:Ihv4U8P30

和「律ー!澪ー!」


律澪「やっぱり!和!」




唯「へ?」




遅れた和も手を降りながらこちらへ駆けてきた。

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:06:53.51 ID:Ihv4U8P30

澪「和!久しぶりだな!元気だったか?」


和「ええ、博士共々元気でやってるわ」


律「いやぁワカバのワニノコって聞いてまさかと思ったけど、本当に和だとはな〜」


和「ふふ、律も元気そうね」


澪「何か用事があるって聞いたけど、またお使いに来たのか?」


和「ううん、今日は少し違うのよ」


律「珍しいなー。でも博士の用事なんだろ?」


和「何か最近みんな忙しいみたいなの。私たちでも出来る用事だからって軽い出張を頼まれたのよ」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:07:21.20 ID:Ihv4U8P30

澪「それって和も博士の助手が板についてきたってことなんじゃないか?」


和「そんなことないわ」


澪「そうじゃなくたって少なくとも信頼はされてるんだよ」


和「うーん、そうかしら」


律「またまたーご謙遜をー!いよっ!和博士!」


和「もう、律は相変わらずね」





唯「…あ、あの〜」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:08:08.28 ID:Ihv4U8P30


律「ん?」


和「ああ唯、ごめんね」


唯「うう、なんか私だけ除けものになっていたよ」


和「えっと、じゃあ紹介するわね」


和「まずは、こっちのカチューシャの子が――」


律「頭脳明晰!容姿端麗!さわやか笑顔で幸せ運ぶ皆のアイドル・田井中律とは私のことだぜ!りっちゃんて呼んでくれよな!」


和「……」


唯「ア、アイドル!?(この人そんなにすごい人なんだ!)」


キラキラした視線を律に向ける中、傍らに佇む黒髪の少女は律と名乗った少女に拳骨をお見舞いする。


律「アイテェッ」


澪「持ちあげすぎだっ!」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:08:57.80 ID:Ihv4U8P30

律「ごめんなしゃい」キュウウウ


澪「ごめんな、こいつすぐ嘘つくから。私は秋山澪」


澪「和とはこの子たちをウツギ博士から貰った時に知り合ったんだ」


唯「!!」


澪はそう告げるとじゃれあう四匹の中から頭に一枚の葉を生やすポケモンを胸元で抱き上げ、ほら、と唯に見せた。


澪「チコリータって言うんだ」


チコリータ「チコ!」


唯「……」


和「それからはヨシノシティにお使いに行ったときなんかはちょくちょく会ってたのよ」


澪「ワニノコも相変わらず元気いっぱいだな」


ワニノコ「ワニワニワー!」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:09:44.89 ID:Ihv4U8P30

律「あたしのポケモンも紹介するぜ!」


澪「復活はやっ」


律「あたしのパートナーはこいつ!ヒノアラシ!気弱そうだけど結構強くて頼りになるんだぜー?」


ヒノアラシ「ヒノー!」


ヒノアラシは律の肩に飛び乗り、挨拶代わりと言わんばかりに背中から炎を噴き出す。


唯「……」


律「で、あれ?え…っとまだ名前を聞いてなかったな」


唯「……」


澪「あれ?ど、どうしたの?具合でも悪いのか」


和「唯?」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:10:30.23 ID:Ihv4U8P30


唯「わかっちゃったよ和ちゃん」


和「何言ってるの?」




唯「りっちゃんと澪ちゃんは、私の宿敵だよ!!」




律澪「え…!?」

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:11:06.91 ID:Ihv4U8P30

和「ちょっと唯、何おかしなこと言ってるの…?」


唯「だってだって和ちゃん、あの日のこと覚えてるでしょ!?」


和「な、なんのこと?」


唯「もう!」


唯「私たちが博士からポケモンを貰った日!」


和「え…」


和「ああ…唯の言いたいこと、なんとなくわかったわ」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:12:02.72 ID:Ihv4U8P30

またもや溜息をひとつつき、和は続ける。


和「唯、あんたあの時のこと根に持ってたのね」


唯「あたりまえだよ!だって凄い楽しみしてたんだよ!?悩みに悩んで憂と相談してもまだ決められなかったんだんだから!」


和「で、それが原因で寝坊したんだったわよね」


唯「その通りです!」




律「あのー…話がなかなか見えないんだけれども」


和「ああ、ごめんなさい。律と澪は唯とは初対面だもんね」


和「説明するわね」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:13:06.26 ID:Ihv4U8P30

**********************************



和「(>>2>>24あたり)と、いうことがあの時にあったわけよ」


律「…えっと、つまり、なんだ」


律「ホントはあの時ポケモンを選ぶはずだったのは和と唯ちゃんで」


澪「私たちが急にやってきたものだから、寝坊した唯ちゃんには別のポケモンを渡すしかなかった、と」


律澪「そういうこと?」


唯「そういうことです!それと私のことは唯でいいです!」


律澪「……」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:13:56.16 ID:Ihv4U8P30

澪「あ、ああ……ご、ごめんな?そ、その…私たちそんなこと知らなくて」


律「あー、なんと言っていいものやら……(唯には可哀そうかもだけど、これって私たち悪くなくない?)」


唯「もう!私ホントにあの時はどうにかなりそうだったよ!」


和「ちょ、ちょっと唯?それは言いがかりじゃない?」


唯「いいがかりじゃないよ和ちゃん!」


唯「りっちゃんと澪ちゃんは確かに私のポケモンを奪いました!むぅぅぅ!」プンプン


律澪「(す、すごいプンスカしてる…)」


和「でもあれはがないじゃない。寝坊した唯も唯よ?」


唯「でーもでもぉ!約束してたのは私だよ!?」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:14:42.64 ID:Ihv4U8P30

唯「さっきも言ったけど私は楽しみを取られちゃったの!憂とも夜中まで相談して楽しみで楽しみで眠れなかったの!」


和「……」


唯「それなのにそれが私の分が残ってないなんて、こんなおかしな話はないよ!!だいたい和ちゃんも何で止めてくれなかったの!?」


律澪「(和にも飛び火…)」


唯「私がすごい楽しみにしてたのわかってだしょ!?そうだよね!?だってその前の日あの子たちと一緒に遊んだもんね?」


唯「ていうか何さ!和ちゃんはしっかり選んでワニノコ貰っちゃってさ!ずるい!私だって――」




和「いいいいいいいいい加減にしなさいっ!!!!!!!」




唯「ひっ!?」


律澪「(あ、とまった)」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:15:23.53 ID:Ihv4U8P30

和「あのねぇ、唯?」メガネスチャッ


唯「は、はひっ」アワワ


唯「(ふええ〜和ちゃん怒らせちゃったよぅ…)」


和「まず、あんたが律と澪を妬んでるのはお門違いよ?即刻二人に謝りなさい?」


唯「えっええ、でもでも」


和「早くなさい?」ギロリ


唯「ふふふふたりともごごごごめんなさい!!」


律澪「(…これから和を怒らせるのはやめておこう)」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:16:06.95 ID:Ihv4U8P30

和「あの時言ったと思うけど、二人はあんたのこと知らなかったの。だからもし怨むとするならそれは私と博士よ」


和「『怨むなら』ね」ジロリ


唯「(こ、怖い…)」


和「唯、私が何言いたいかわかる?」


唯「わ、わかんない……」


和「まず、ずばり言うけどあんたはこのことで誰にも文句言う資格なんてないわ」


唯「う、うう…」


和「勿論私と博士があんたにポケモンを選ばせてあげられなかったのは本当に申し訳なかったと思うわ」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:17:15.72 ID:Ihv4U8P30

和「でもこれはあの時私たちがきちんとあんたに謝って、それであんたも一度は納得したことじゃない」


唯「はい…確かにそうです…」


和「それでね?私が一番怒ってるのは、そのあんたのいい加減な姿勢よ」


和「あの時、あんたが楽しみにしてたあの時に何で寝坊なんかしたのよ?しかもこれからポケモンのパートナーになろうって人が」


和「いい?私たちはもうポケモンのパートナーなの。パートナーっていうのは友達とは少し違うわ」


和「ポケモンが人間と一緒に生きていくには、それなりの努力が必要じゃない。そりゃ時には厳しく叱らなきゃいけない時だってあるわ」


和「だからパートナーになったからには私たちは責任を持たなきゃならないの。あの子たちをきちんと育てる義務があるのよ」


和「まだポケモンと一年しか付き合いがない私がこんな説教をするのもおかしいかもしれないけど」


和「でも私だって一年間一生懸命ワニノコを育てたわ。それを踏まえて言うけど、そんなずぼらな態度はよくないわ」


和「可愛がるだけじゃだめなのよ」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:18:13.22 ID:Ihv4U8P30

和「一度自分で決着したことにはとやかく文句はつけないこと」


和「それと生活にメリハリをつけること。全部が全部そんなのほほんとした調子じゃだめだわ」


和「まぁ唯はそれが個性だから考えすぎもよくないかもしれないけどね」


和「で」


和「私の言いたいこと、わかった?」





唯「」ヒックヒック


律澪「」


和「」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:18:56.25 ID:Ihv4U8P30

*************************************************



和「本当にごめんね?なんか久しぶりに二人にあったのに私ったら空気も読まずにあんなお説教なんか…」


澪「い、いや和が謝ることもないだろ?ほ、ほら、唯も納得してくれたみたいだし」


律「ホントか……?」


唯「」ウェッグウィック


澪「あ、あー」


和「唯もごめんね…?私あんなに怒るつもりなかったのよ。ついカッとなっちゃって……」


唯「のどがぢゃんしどいよおぉ。私がグズでノロマで人間の屑だなんてえぇぇ」ウェッグウィック


和「ごめんなさい」


律澪「(さすがにそこまでは…)」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:20:08.27 ID:Ihv4U8P30

ピチュー「ピチュ!」


澪「お?唯、ほら!ピチューが来たぞ」


唯「ふええ?」


ピチュー「ピチュ〜?」


律「なんだなんだー?ご主人を慰めようとしてんじゃないかー?可愛い奴め」


唯「……」


ピチュー「ピチュ」ペロペロ


唯「う、うわああああんピチューごべんねえええ!」グリグリ


ピチュー「ピ〜チュ〜」グリグリ
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:21:22.21 ID:Ihv4U8P30

唯「ごめんね、私ちょっとおかしかったよね?」


唯「自分勝手に人のこと逆恨みして。私のそういうだらしないとこがいけなかったんだよね?」


唯「それに私、ピチューのこと忘れてあんなしどいことを…。あの時あんなことがなかったら私ピチューに出会えてなかったのに……」


唯「ヒック…私って本当に馬鹿だよう」


ピチュー「ピチュ」グリグリ


和「唯…」


唯「うう、ありがとうピチュー。私これからもうちょっとしっかりするよ」


唯「せめて憂に言われなくても起きられるようにする…お寝坊さんは卒業するよぉ」


律「ふう、なんとか唯も落ち着いたみたいだな」


澪「一時はどうなる事かと…」


唯「りっちゃん、澪ちゃんごめんね。私二人があの子たちを元気に育てていたから少し妬いちゃったみたい、えへへ」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:24:01.91 ID:Ihv4U8P30

律「よおおおし!じゃあ一件落着したところで」


唯和澪「?」


律「和!ポケモンバトルだ!」


澪「なんだ、またそれか」


和「律も懲りないわね」


律「なんだとおー!?よーし今日は絶対勝つからな!」


澪「律、無茶はよせ」


律「くうぅ澪まで…!!お前ら見とけよー!?特訓の成果を見せてやるぜ!な、ヒノアラシ?」


ヒノアラシ「ヒノヒノ!」


唯「和ちゃん和ちゃん」


和「どうしたの唯?」


唯「和ちゃんもポケモンバトルしてたんだね!」キラキラ


和「ええ?別にそんな、やってるってほどじゃないわよ?」


唯「そうなの?」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:24:32.74 ID:Ihv4U8P30

和「うん。でも律は会うといつもバトルバトルってせがんでくるのよね」


和「それでヨシノに来た時はいつもバトルをしてたってだけ」


唯「ほえー、私の知らないところでそんなことが」


澪「律はここらへんじゃ結構強いんだけど、まだ和には勝ったことないんだよな」


和「まあ火と水じゃ相性が悪いしね」


律「うるせー!相性がなんだー」


澪「唯はバトルとかしないのか?」


唯「うーん、実は私ポケモンバトルって今まで見たこともないんだー」


律「へー珍しいなー」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:24:59.49 ID:Ihv4U8P30

和「ワカバって田舎だからなのか知らないけど、ポケモン持ってる子って少ないのよ」


唯「あ!でも盗み食いに入って来たコラッタ達を追い払った事ならあります」フンス


ピチュー「ピチュ!」フンス


律「うん、それはバトルじゃないな」


唯「へへへ」


澪「じゃあ唯にはこれが初めてのバトルだな」


唯「フンス!フンス!」キラキラ
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:25:31.16 ID:Ihv4U8P30

和「なんか唯に見られてるって思うと緊張するわね」


律「よーし、唯!私たちの絆の強さとくと見せつけてやるぜ!そんで和からの初勝利をプレゼントだ!」


唯「がんばってりっちゃん!」


和「じゃあ澪、いつも通り審判をお願いね?」


澪「ああ、任せてくれ」


律「いよーし!じゃあいくぞヒノアラシ」


ヒノアラシ「ヒノー!」ゴウッ


和「ワニノコ、準備できてるわね」


ワニノコ「ワニワニワー!」バタバタ


澪「勝負は一本勝負。先に戦闘不能になった方が負けだ」


律「オーケーオーケー」


和「いいわ」


澪「では。バトルスタート!」





***********************************


104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:30:51.59 ID:Ihv4U8P30
とりあえずここまで。

ていうか書けば書くほどテンポのセンスの無さを痛感・・・
あまり堅い文章にしたくないからほぼ会話文にしてみたんだが、これはヒドイ

でもスレ立ててしまったのでとりあえず区切りのいいとこまでは書こう・・・
次の更新はいつになるかちょっと未定です。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/08/02(火) 20:50:37.80 ID:Ihv4U8P30
あ、ごめん。細かいことかもしれんが
>>99>>100の間に


律「いいっていいって。気にすんなよ」

澪「律の言うとおりだ」


って台詞を入れておいてくれ。もうダメダメだ
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/08/03(水) 23:44:05.04 ID:dTiOnyeSO
ちょっ、これまだやってたんか

前に終わったから、もうやらないと思ってたわ
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/08/12(金) 08:06:25.84 ID:PbJw1VTHo
続いてたんだな
これからも楽しみにしてる
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/08/13(土) 17:56:04.02 ID:mtXL81HN0
面白いじゃん
続き待ってるよ
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/21(日) 20:47:07.96 ID:CVjpa/PR0
唯「ポケモンマスターになるよ!」が更新ないからつまらんかったがこれは期待



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