VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<><>2011/08/21(日) 20:54:37.02 ID:ihPXYSdAo<>律梓
だめにゃんが律の誕生日に頑張るお話<>梓「大好きな人の大事な日」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:55:52.19 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」

カレンダー:二十一日、律先輩バースデー!

梓「もう一週間切っちゃった」

梓「何か贈り物したいけど、私じゃ何もできないなぁ」

梓「はぁ、普段から家事習っておけばよかった」

チュン チュン

梓「たい焼きでも買ってあげればいいよね」

梓「いや、ここは奮発してハーゲンダッツにしてあげよう」

梓「うん、そうしよう。あの人ラムレーズン好きだし」ケッテー!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:56:48.92 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」

梓「…………」


――――――


律『あっずさ〜、カレーできたぞ』

梓『わ〜、いっただっきま〜す!』

パクパク モグモグ

梓『おいしい! 律先輩のカレー大好き!』

律『それだけ美味そうに食べてもらえたら、作りがいがあるよ』

梓『甘口でコクがあって、優しい味です』

律『はは、そりゃどうも』

パク…

梓『……』

律『どした?』

梓『あの、律先輩』

律『んー?』

梓『いつも、ありがとうございます』

律『うん』

梓『律先輩のおかげで、一人のときも心強いです』

律『いいんだよ』

梓『……』

律『親がいない時は、私を頼れって言ってるだろ』

梓『……はい』


――――――


梓「……」

梓「自信ないけど、やってみよ」

梓「こんなときにしか恩返しできないもんね」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:57:23.93 ID:ihPXYSdAo<>

梓「誕生日といえばケーキだよね」

梓「よし、立派なケーキを作って律先輩を驚かしてやろ」

サンプン クッキング!

梓「……」

梓「ケーキってどうやって作るんだろ」

梓「とりあえず卵は温めるよね」

梓「う〜ん、でも卵一個のためにお湯を沸かすのももったいないしなぁ」


梓「!」ピーン

梓「ここは電子レンジの出番だ」

梓「レンジなら時間もエネルギーも節約できるし。うん、何て地球に優しいエコだろ」ピッ

ウィーーン


チュドーーーン!!!

梓「……」

モクモクモク

梓「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:57:50.17 ID:ihPXYSdAo<>

「正午をお伝えします」

ピッピッピッ ピーーー

梓「……ケホ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:58:19.36 ID:ihPXYSdAo<>

プルルルル… ガチャッ

「はい、平沢です」

梓「あ、憂?」

「梓ちゃん? どうかしたの?」

梓「あのさ、ケーキってどうやって作るの?」

「あ、もしかして律さんに?」

梓「ち、違うもん! ちょっと自分で作って食べたくなっただけで……」

「ふふっ、羨ましいなぁ」

梓「違うって言ってるのに!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:58:46.93 ID:ihPXYSdAo<>
「う〜い〜、お昼ご飯まだ〜?」

「もう少しだけ待ってね、お姉ちゃん」

梓「ごめんね、お昼作ってる途中だった?」

「ううん、全然気にしなくていいよ」

梓「また、かけ直そうか?」

「どうせお盆で私もお姉ちゃんも暇だし、大丈夫」

梓「そっか。それじゃ教えてもらおうかな」

「は〜い」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:59:31.89 ID:ihPXYSdAo<>
「それで、どんなケーキを作ってあげるの?」

梓「へっ?」

「チーズケーキとかタルトとか。スポンジケーキでも、ココアとかモンブランとかショートケーキとか色々あるよ」

梓「……考えてなかった」

「う〜ん、初めて作るならパウンドケーキがおすすめかな」

梓「パウンドケーキ?」

「ほとんど焼きっぱなしで大丈夫だから、比較的簡単なケーキなんだよ」

梓「うん、それにしてみる!」

「それじゃメモのご用意を」

梓「了解!」

「まずは薄力粉、グラニュー糖、卵を用意しまして……」

梓「薄力粉ってうどん粉じゃだめ?」

「だめ」

梓「グラニュー糖って何?」

「お菓子用の砂糖なんだけど、なければ普通の砂糖でいいよ」

梓「ふむふむ、メモメモ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:00:14.31 ID:ihPXYSdAo<>





カキカキカキ

「……って、こんな感じかな」

梓「ふんふんなるほど」

「ごめんね、電話じゃ伝えきれないかも」

梓「ううん、すごく参考になった」

「後は律さんの好みに合わせてだけど、好き嫌いはあるの?」

梓「何でも食べるよ。雑食だし」

「そんな動物みたいに……」

梓「ムギ先輩のケーキはいつも美味しそうに食べてるよ」

「それじゃ大丈夫だね。まぁ、梓ちゃんが作ってあげたものなら何でも喜んでくれると思うけど」

梓「……」カァッ

「梓ちゃん?」

梓「な、何でもない!」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:00:49.39 ID:ihPXYSdAo<>
「こんな所かな」

梓「ありがと、色々教えてもらって」

「ううん、頑張ってね梓ちゃん」

「うい〜〜おなかとせなかがくっつくよ〜〜〜」

梓「何か悲痛な叫びが聞こえるけど大丈夫?」

「お姉ちゃん、今行くから待って!」

「ごめんね、また何かあったら電話して」

梓「うん、ありがと」

ガチャッ

梓「……」

梓「よし、頑張るぞー!!」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:01:25.46 ID:ihPXYSdAo<>

梓「とりあえず、試しに作ってみよう」

梓「えっと、砂糖はこれぐらいかな」バッサァ

梓「ラム酒はこんなぐらい?」ドバァ

梓「……」

梓「何かすごいにおいするけど……ま、いっか」

ベチャア

梓「……全然こねられない」

梓「とにかく焼いたら何とかなるよね」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:01:59.47 ID:ihPXYSdAo<>




梓「どうにか焼き上げたけど」

グチャァ

梓「……」パクッ

梓「うっ……ぱっさぱさで甘ったるくて、正直まずい」

梓「……」

梓「うん、誕生日までには何とかなるよね」

梓(多分)

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:02:32.84 ID:ihPXYSdAo<>


―公園―

ミーンミンミンミーン 

シャワシャワシャワシャワシャワ


律「あぢ〜〜」

梓「日陰じゃないですか」

律「日陰だろうがベンチの上だろうが、暑いものは暑いだろ」

梓「だからこそかき氷が美味しいんです」シャクシャク

律「それは同感」シャクシャク

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:03:12.83 ID:ihPXYSdAo<>
梓「ふんふ〜ん♪」

律「何かご機嫌だな」

梓「久しぶりの部活でしたから。家練よりみんなと合わせる方がやっぱり楽しいです」

律「だよな、家じゃ弟がうるさいって騒いでさ」

梓「それに、律先輩と二人きりになるのも久しぶりですし」

律「っ……」

律「ひ、久しぶりっても一週間ぶりぐらいだろ」

梓「一週間なら十分久しぶりです。だから、嬉しくて」

律「うっ……」

梓「……」シャクシャク

律「わ、私も梓と二人きりになるのが……」

梓「あぅ、きたきた」キーン

律「……」

梓「かき氷の醍醐味はこれですよね。あれ、何か言いました?」

律「何でも」プイッ

梓「?」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:03:45.47 ID:ihPXYSdAo<>
梓「やっぱりかき氷は氷あずきに限ります」

律「たい焼きといい、お前はあずきが好きだなぁ」

梓「だってあずきとあずさって似てるじゃないですか」

律「関係あんの?」

梓「ぜーんぜん」

律「何だよそれ」

梓「それにしても、律先輩がブルーハワイなんて似合わないです」

律「な、何だとー!」

梓「スイ、とか言って砂糖水かけてそうなのに」

律「お前の中で私はどんなイメージなんだ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:04:15.54 ID:ihPXYSdAo<>

ジジ・・ ジジ・・ ミーンミーン


梓「ふ〜、かき氷食べて頭すっきり、体ひんやりです」

律「大分涼しくなってきたな」

黒猫「ニャーン」

梓「あ、猫だ! おいで〜」

黒猫「ニャーオ」

チリンチリン

律「あっぶね、自転車にひかれそうになったぞ」

梓「ずいぶん間が抜けた猫ですね」

黒猫「……」テクテク

律「暑そうな色してるな」

梓「この子のせいじゃないですよ。ほら、ちっち」

黒猫「……」プイッ

梓「あれ?」

黒猫「ニャーン!」ピョン

律「ととっ、危ないだろお前」

黒猫「♪」ゴロゴロ

梓「むー……」

律「嫌われたらしいな」

梓「ふんだ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:04:42.82 ID:ihPXYSdAo<>
律「こら、お前」

黒猫「?」

律「もっと周りに注意を払え。いつか轢かれちまうぞ」

梓「まあまあ、猫は気ままな方がいいんですよ」

律「梓みたいに?」

梓「私は猫じゃありませんっ」

律「猫みたいに甘えん坊のくせに」

梓「むっ」

律「今日はいつもみたいに甘えてこないんだな」

梓「む〜〜……」

律「膝は占領されちゃったけど、私の肩は空いてるぞ」

梓「別にいいもん」

律「ふぅん、いいんだ」

梓「……」

律「……」

梓「……」ピチッ

律「素直でよろしい」

梓「うるさいです」

黒猫「……」ニヤニヤ

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:05:24.43 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」ジー

黒猫「……」ジー

梓(もしかして、この子も律先輩のことが好きだったりして)

黒猫「」フニャァ

梓(律先輩は私の恋人なんだからね)

梓(絶対にあげないよーだ)

黒猫「?」

梓(でも、今だけ律先輩の膝の上は貸してあげる。いつもは私の特等席だけど)

黒猫「ファーア…」

梓(ね、何だかほっとするでしょ? 私も大好きなんだ、その場所)

黒猫「」ゴロゴロ

梓(何だか君には親近感が湧いてくるよ)

梓(同じ人が好きな者同士、惹かれ合っちゃうのかな)

律「何ぼ〜っとしてんだ」

梓「何でもないですよ」

律「こいつと会話できるのか?」

梓「まさか」

黒猫「ニャッ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:05:51.15 ID:ihPXYSdAo<>
シャワシャワシャワシャワシャワ

梓「もうすぐ私はじゅうななさい♪」

律「あれ、誕生日いつだっけ」

梓「十一月です」

律「まだ三ヶ月も先じゃん」

梓「三ヶ月なんてあっという間ですよ」

律「その頃には涼しくなってるだろうな」

梓「涼しいどころか、もう秋になって寒くなってますよ」

黒猫「zzz」

律「……そうだな」ナデナデ

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:06:18.76 ID:ihPXYSdAo<>
律「何か雲が多くなってきたな」

梓「涼しくて結構じゃないですか」

律「けど、こりゃ雨が降るぞ」

梓「あ、天気予報でそんなこと言ってましたね」

律「洗濯物、取り込んでおかないと」
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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:06:45.65 ID:ihPXYSdAo<>
ジージージージージー

律「そっか、梓は十七歳になるのか」

梓「律先輩と同じ十七歳です」

律「私はもうすぐ十八になっちゃうよ。明日の日曜日にさ」

梓「あ、そっか。誕生日でしたね」

律「みんなには言ってないから、忘れられちゃってるだろうけど」

梓「みんなちゃんと覚えてますよ」

律「別にいいよ、誕生日なんか」

梓「何でですか、年に一度の大切な日なのに」

律「一つ歳をとるだけじゃん」

梓「そんなことないですよ。みんなでお祝いしたり、親に感謝したりする日です」

律「ふぅん、そんなもんかなぁ」

梓「私が律先輩をお祝いしてあげます!」ズイッ

律「そ、そっか」

梓(あれ? 何か引っかかるような)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:08:07.48 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」

律「梓?」

梓「…………」

梓「あっ!!」

黒猫「!?」ビクッ

律「ど、どうした急に」

梓「ごめんなさい、用事を思い出しました!」

律「え? あ、そうなの?」

梓「失礼します!」


ピュー


律「お、おい梓」


ステーン


律「あ、転んだ」

黒猫「……」フッ


律「おーーい! だいじょうぶかー?!」

「だいじょうぶでーーす!!」

ピューー

律「……変なやつ」

黒猫「ニャーゴ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:08:52.73 ID:ihPXYSdAo<>

梓(しまった、すっかり忘れてた)

梓(律先輩にケーキ作ってあげようと思ってたのに!)

梓(今から間に合うかな……いや、間に合わせよう)

梓(いつもお世話になってる律先輩のためだもんね)

梓(よぉーーし! ファイト、私!)


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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:09:15.44 ID:ihPXYSdAo<>

ワォーン オンオン

梓母「梓、台所占領して何するの?」

梓「ひみつ」

梓母「花嫁修業でもするわけ?」

梓「違う!」

梓母「……その材料からするとケーキかしら。この前も作ってたし」

梓「」ギクッ

梓母「そういえば明日って……」

梓「ちょっと黙ってて!」

梓母「はいはい」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:09:51.86 ID:ihPXYSdAo<>
梓「えっと、バターをよく練って砂糖を入れて……」

梓母「ちょっと、量はちゃんと量ったの?」

梓「そんなの適当だよ」

梓母「だめだめ、入れすぎたり足りなかったりしたらまた失敗するわよ」

梓「うっ……」

梓母「この前のパサパサケーキ、後の処理が大変だったんだから」

梓「もう、分かったよ」

梓母「はい、大さじ」

梓「……」

梓母「どうしたの?」

梓「大さじって何グラム?」

梓母「……」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:10:17.43 ID:ihPXYSdAo<>
梓「で、砂糖を入れたら白っぽくなるまでよく混ぜて」

梓「……」

『ここでよ〜〜く混ぜたら、ふっくらと仕上がるんだよ』

梓「よ〜〜し」グイッ

梓「やぁやぁやぁ!!!」シャカシャカシャカ

梓母「……」

梓「たぁたぁたぁ!!」シャカシャカ

梓母「それじゃ格闘してるみたいよ」

梓「ふんふん!」シャカシャカ

梓母「……」

梓母(ま、女の子にとって好きな人のために料理するのは、格闘みたいな真剣勝負なのかもね)

梓「う〜〜〜!!」シャカシャカ

梓母「……」ニヤニヤ

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:10:47.31 ID:ihPXYSdAo<>
梓「溶いた卵をちょっとずつ加えて混ぜるっと」

梓「む〜〜〜!!」シャカシャカシャカ

梓母「……」

梓「なじむまで混ぜたら、薄力粉類を入れてゴムべらで切るようにこねる」

梓「よいしょ、よいしょ」グッグッ

梓母「……」

梓「ふぅ、こんな所かな」

梓母「もっと混ぜなきゃ。ダマになってるじゃない」

梓「あ、ホントだ」

梓母「ちょっと貸してみなさい」

梓「だめ! 余計なお世話!」

梓母「何よ、せっかく手伝ってあげようとしてるのに」

梓「へ、へたでも自分で作りたいの!」

梓母「へぇ」

梓「そりゃ、私不器用だし……」

梓「今まで料理なんてやったことないから……上手くできないかもしれないけど」

梓「その方が……喜んでくれると思うから」

梓母「」キュン

梓「お母さん?」

梓母「……はっ」

梓母(わが娘ながら可愛いじゃない……不覚)

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:11:14.77 ID:ihPXYSdAo<>
梓「溶かしたチョコとラム酒を加えて」

梓母「あら、ラム酒なんてお洒落ね」

梓「友達に教えてもらったんだ。アクセントになるんだって」

梓母(それでこの前のアレはやけにアルコールの香りがした訳か)

梓母「入れ過ぎちゃだめよ」

梓「分かってる」

梓「……」ソー

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:11:59.37 ID:ihPXYSdAo<>
梓「そして生地につやが出るまでこねる」

梓「やぁ! やぁ! やぁ!」グイッグイッ

梓母「……」ソワソワ

梓母(だ、大丈夫かしら……? 危なっかしくて見てられない)

梓「ふん! ふん!」

梓母「……」ジー

梓母(でも、娘の頑張る姿は見たい……複雑だわ)

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:12:25.99 ID:ihPXYSdAo<>
梓「最後に律先輩の好きなラムレーズンを加えて、生地はできあがり!」

梓母「お疲れさま、割と上手くできたんじゃない?」

梓「焼き上がるまで分からないけど、自信はある」

梓母「きっと美味しいわよ。じゃ、オーブンにかけましょう」

梓「うん!」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:12:56.92 ID:ihPXYSdAo<>

〜〜一時間後〜〜


梓「……」ソワソワ

ジーーーーー

梓「……」ワクワク

梓母(あの子ったら、ずっとああして)

梓「後五秒……四、三、二、一」

チーン!

梓「できたー!」

梓「あつ、あつっ」

梓母「あら、いい香り」

梓「紙をそっと外して冷まし、冷蔵庫に入れて一晩置く」

梓母「ねえねえ、ちょっと味見してみない?」

梓「食いしん坊だなぁ」

梓母「この前の失敗作食べてあげたじゃない」

梓「いいよ、ちょっとだけだからね」

梓母「わーい」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:14:03.53 ID:ihPXYSdAo<>
梓母「」パクッ

梓「……」

梓母「……」モグモグ

梓「ど、どう?」

梓母「うん、すごく美味しい」

梓「ホント!?」

梓母「これならきっと、りっちゃんも喜んでくれるわ」

梓「うん! ……ってお母さん!」

梓母「あれ、りっちゃんにあげるんじゃないの?」

梓「うぅ……」

梓母「真っ赤な顔しちゃって」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:14:29.84 ID:ihPXYSdAo<>
梓「ラップして一晩置いて、あっちで切ればしっとり仕上がる」

梓「そしてメッセージカードを添えて……できあがり!」

梓母「何て書いたの?」

梓「み、見ちゃだめ!!」

梓母「いいじゃない、減るものでもないし」

梓「それでもぜぇっったいだめ!!」

梓母「もう、分かったわよ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:15:22.91 ID:ihPXYSdAo<>
カッチコッチ カッチコッチ

梓母「あら、もうこんな時間」

梓「ホントだ」

梓母「片付けは明日でいいから、もう寝なさい」

梓「はーい」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:15:52.87 ID:ihPXYSdAo<>

―梓の部屋―

梓「ふぅ、どうにか完成してよかった」

携帯「ピッピッ」

梓「あ、携帯チェックしてなかった」パカッ

梓「……」

梓「律先輩から電話あったんだ」

梓「今からかけ直すのは失礼だよね」

梓「うん、明日にしようそうしよう」

梓「……」

梓「ふふ、律先輩褒めてくれるかなぁ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:16:21.67 ID:ihPXYSdAo<>
パラ… パラパラ…

梓「……雨?」

梓「そういえば、夜から降るって言ってたなぁ」

梓「明日には止んでたらいいけど」

梓「年に一度の、律先輩の大事な日だもんね」

梓「お天道さま、お願いします。律先輩のためにも雨を降らせないでください」

梓「……」

梓「おやすみ」


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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:17:26.41 ID:ihPXYSdAo<>


チュンチュン

梓「ん〜、いい天気……でもないか」

梓「曇りのち雨ってところかな」



プルルルル… プルルルル…

ピッ

「ん〜〜、あずさぁ?」

梓「もしかして、寝てました?」

「……うん」

梓「もうお昼ですよ、律先輩のねぼすけ」

「うるせーし。夏休みぐらい寝かせろ」

梓「昨日はごめんなさい、電話に気づかなくて」

「それはいいけど、一体何の用?」

梓「お誕生日、おめでとうございます」

「……ん、ありがと」

梓「それで、今から律先輩の家に行きますんで。プレゼントがあります」

「えっ、何くれんの?」

梓「内緒です」

「ちぇっ、それじゃ後のお楽しみに」

梓「ダッシュで行きますんで、二度寝なんかしちゃダメですよ」

「はいよ。車に気をつけろよ、鈍くさいんだからお前」

梓「むっ……言われなくても」

「じゃ、待ってるから」

梓「はーい」

ピッ

梓「よし、準備しますか」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:17:54.66 ID:ihPXYSdAo<>
梓母「気をつけてね。あ、折りたたみ傘持って行きなさい」

梓「はぁい」

梓母「……梓」

梓「何?」

梓母「グッドラック」グッ

梓「……うん!」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:18:21.55 ID:ihPXYSdAo<>

テクテク テクテク

梓「せ〜んろはつづく〜よ〜 ど〜こま〜で〜も〜♪」

黒猫「ニャー♪」

梓「あ、昨日の猫ちゃん。こんにちは」

黒猫「ニャッ」

梓「また会えるなんて奇遇だね」

黒猫「……」クンクン

梓「もう嗅ぎつけたの? ずいぶん鼻が利くんだ」

黒猫「……」ジー

梓「だめだよ、まずは律先輩に食べてもらうんだから」

黒猫「……」シュン

梓「……君も一緒に来る?」

黒猫「?」

梓「律先輩と、お祝いするんだ。そこで食べよ」

黒猫「ニャッ」

梓「よしよし、ちゃんとついてくるんだよ」

黒猫「ニャー」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:18:47.78 ID:ihPXYSdAo<>
ポツリ… ポツポツ…

梓「あっちゃ〜、雨降ってきちゃった」

梓「傘持ってきてよかった。ケーキが台無しになっちゃうもんね」

黒猫「……」テクテク

梓「君も入りなよ、濡れちゃうでしょ」

黒猫「ニャア」

梓「ふっふ、猫を従えるなんて何だかいい気分」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:19:15.86 ID:ihPXYSdAo<>
ザーー ザーー

梓「雨が強くなってきたね」

黒猫「ニャー」

梓「でも、もう少しで律先輩の家」

梓「えへへ、律先輩どんな反応するかな」

梓「いっぱい喜んでくれるかなぁ」

梓「頑張って作ったケーキ……見てくれは悪いけど、気に入ってくれたらいいな」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:19:45.54 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「……」ピュー

梓「あ、ちょっと走っちゃだめだよ!」

黒猫「」ピュー

梓「猫ちゃんってば!」

梓「はぁ、はぁ……これじゃ私が猫に従ってるみたい」


梓「お〜〜い、待ってよ〜〜」

黒猫「ニャー!」

梓「も〜〜、勝手な猫」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:20:52.71 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「……」トテトテ

梓「……あっ」

梓「だ、ダメだよ! 赤信号だよ!」

黒猫「ニャッ?」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:21:35.61 ID:ihPXYSdAo<>


プーーーーーーーーッッッ!!


黒猫「?」

梓「あぶないっ!!!」


キィーーーーーーーーッッッ!!!




ドサッ



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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:22:12.25 ID:ihPXYSdAo<>

ザー シトシト… ザー


梓「……」

「お、おい大丈夫か! おい!」

梓「猫ちゃん、大丈夫……?」

黒猫「ニャッ、ニャー?」

梓「そ。よかった」

黒猫「」スリスリ

梓「もー……急に飛び出しちゃ、ダメじゃん」

黒猫「ニャー…」

梓「律先輩にも、注意されたでしょ」

黒猫「……」

梓「ホントにもう、この……」


……ばか猫。



――
――――
――――――――


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:22:41.70 ID:ihPXYSdAo<>

――――――――
――――
――



カッチコッチ カッチコッチ

律「……」チラッ

律「……」

律「……」ウロウロ

律「……」チラッ

聡「何やってんだよ、うっとうしい」

律「うるさい殴んぞ」

聡「誕生日なのにカリカリしてるなぁ」

律「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:23:17.46 ID:ihPXYSdAo<>
カッチコッチ カッチコッチ

律「……遅い!!」

聡「」ビクッ

律「いくら何でも遅すぎ! 何やってんだあのバカ!」

聡「ちょ、落ち着けって」

律「あ〜〜〜もう、連絡ぐらい寄こせってのっ!」

聡「こっちからすりゃいいじゃん」

律「……」

聡「知ってんだろ? 連絡先」

律「……」ポンッ

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:23:44.88 ID:ihPXYSdAo<>
プルルルル… プルルルル…

律「……」

プルルルル… プルルルル…

律「」グリグリ

聡「イテテッ、苛つくのは分かるけど俺に当たるなよ」

律「黙れ」

聡「」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:24:49.75 ID:ihPXYSdAo<>
プルルルル… ガチャッ

律「!? おい梓お前今どこいんだよふざけんな!」

「もしもし、梓の母です」

律「」

「あ、りっちゃん? ごめんね、あの子携帯忘れたみたいで」

律「す、すいません。失礼しました」

「梓はもう着いたかしら」

律「いえ、それがその」

「まだなの?」

律「……はい」

「おかしいわね、もう一時間以上前に出てるんだけど」

律「本当ですか!?」

「え、ええ」

律「何してんだよあいつ……」ギリ

「もしかして、何か……」

律「!」

律「すいません、私ちょっと探してきます!」

「えっ? りっちゃん?」

律「失礼します!」

ピッ

律「聡、というわけだ」

聡「ん。俺も探そうか?」

律「お前は留守番。何かあったら電話しろ」

聡「りょーかい。ねーちゃんも、こっちの電話ちゃんと出てくれよ」

律「分かってる」

聡「マナーモードちゃんと切っとけよ! ……って、行っちゃった」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:25:19.24 ID:ihPXYSdAo<>

―玄関先―

唯「じゃ、じゃあ私が押すよ」

紬「うぅん、ここは私が」

澪「お〜い、二人とも」

唯「あ、澪ちゃんだ」

紬「こんにちは」

澪「ここにいるってことは、律に?」

唯「うん! 憂と一緒にクッキー作ったんだ」

紬「私はマドレーヌ。澪ちゃんも?」

澪「私は手作りとかじゃないけどな」

唯紬「何?」

澪「参考書。ちゃんと勉強するようにってさ」

唯「おお、流石澪ちゃん。目の付け所が違いますなぁ」

唯「りっちゃん、誕生日だって教えてくれないんだもん。憂が言ってくれなきゃ忘れるところだったよ」

紬「私はちゃんと覚えてたわ。先月のお返しをしないといけないもんね」

澪「……何というか、あいつは幸せ者だなぁ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:25:46.01 ID:ihPXYSdAo<>
澪「で、どうして玄関先に?」

唯「だって、ほら……」

紬「ねぇ……」

澪「?」

唯「多分、あずにゃんは真っ先にりっちゃん家に着いてるよね」

澪「まあ、そうだろうな」

唯「玄関を開けて、りっちゃんとあずにゃんがお取り込み中だったら困るじゃん」

紬「そうそう」

澪「いやないから」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:26:15.37 ID:ihPXYSdAo<>
澪「ほら、雨も降ってるんだし早く入ろう」スッ

律「」ガチャッ

澪「!?」

唯「あ、りっちゃん!」

紬「お誕生日おめでとう!」

唯「おめでと〜」

律「み、みんなっ?」

澪「私たちがいるって分かったのか? 超能力者か」

律「あ、いやその……」

唯「はい、これ私と憂から」

紬「私からもこれ」

律「あ、あの」

澪「どうした、律」

律「ご、ごめん! ちょっと出かけなきゃいけないから!」

唯「ほぇっ?」

律「すぐ戻るから、家上がってて!」

紬「それはいいけど……」

澪「何かあったのか?」

律「本当にわりぃ!」

澪「お、おい律」

タッタッタッタッタッ

澪「雨降ってるぞ……って、行っちゃった」

唯「りっちゃん、どうしたのかなぁ」

紬「すごく慌ててたみたいだけど」

澪「……さぁ」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:26:56.62 ID:ihPXYSdAo<>

タッタッタッタッタッ

律「ぜぇ……ぜぇ……」

タッタッタッタッタ

律「はぁ……はぁ……」

律「何でこんな日に限って雨降ってるんだよ」グショ

律「誕生日ぐらい、晴れにしてくれよ」

「ねぇ、ママ。何であの人傘さしてないの?」

「こら、人に指さしちゃダメでしょ!」

律「……」

律「あ、あの!」

「な、何ですか?」

律「女の子見ませんでしたか?」

「女の子?」

律「高校生なんですけど、身長は私よりちょっと低いぐらいで」

「え、ええっと」

律「あ、黒髪でツインテールにしてます!」

「ごめんなさい、ちょっと分からないわ」

律「そうですか……すいません」

「あの、私たちはこれで」

律「……はい、ありがとうございます」


律「……」

律「あ、すいません! ちょっといいですか?」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:27:25.70 ID:ihPXYSdAo<>
律「……」

律「何てことしてる間に梓の家に着いちゃったよ」

律「……」

ピンポーン

「はーい」ガチャッ

律「あ、こんにちは」

梓母「あら、りっちゃん。今日誕生日だったわよね、おめでとう」

律「あ、ども……」

梓母「びしょ濡れじゃないっ、大丈夫!?」

律「はい、大丈夫です……それで」

梓母「梓からは……連絡来てないわ」

律「そう、ですか」

梓母「まさか本当に、何かあったのかしら」

律「……」

梓母「ねぇ、これって警察に連絡……」

律「私もう一度だけ探してきます!」

梓母「えっ?」

律「梓の行きそうな所、いくつか心当たりありますんで。警察にはそれからでも……」

梓母「……うん、わかった」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:27:54.56 ID:ihPXYSdAo<>
律「……」

律「何してんだよ、こんなに心配かけてさ」

律「……あのバカ」グスッ

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:28:25.04 ID:ihPXYSdAo<>
ザァー… ザァー…

律「……」

バシャッ バシャッ

律「はぁ……はぁ……」

律「……」

ピーポー ピーポー

律「今日は救急車が多いなぁ」

ピーポー… ピー…ポー…

律「……」

律「そんなの止めてくれよ、梓」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:28:50.99 ID:ihPXYSdAo<>

―駅前交番―


プップー

律「……」

律「あの、すいません」

警官「うん? 君、傘ささなくて大丈夫なのか?」

律「ちょっとお聞きしたいことが」

警官「聞きたいこと?」

律「はい……」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:29:19.70 ID:ihPXYSdAo<>





律「そう……ですか」

警官「探している人でも?」

律「はい、まぁ」

警官「協力要請出そうか」

律「あ、大丈夫です。ちょっと待ち合わせしてただけなんで……」

警官「? ならいいんだけど」

律「はい……ありがとう、ございました」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:29:46.26 ID:ihPXYSdAo<>
パシャ… パシャ…

律「……」

パシャ…


フラッ

律「……あっ」


ストン!


律「……」ボー

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:30:22.31 ID:ihPXYSdAo<>

シトシト… シトシト…

律「……」

律「…………」

律「梓の、ばか」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:30:53.81 ID:ihPXYSdAo<>

――――――



『今日の交通事故?』

律『はい、特にその……人身事故があったか教えてください!』

『分かった。ちょっと待ってね』

律『……』

『お待たせ』

律『! あの、どうでしたっ?』

『今日はまだ一件も起きてないよ』

律『……!』

『雨の日は事故が多いんだけどね』

律『……』

『いつもこれだけ平和ならなぁ』

律『……』


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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:31:51.68 ID:ihPXYSdAo<>
――――――



律「……」ハァ

律「事故じゃないみたいでよかった」

律「こんな真っ昼間に誘拐ってのも考えられなくはないけど、可能性としては低い」

律「なら、あいつは一体どこ行ったんだ……!?」

律「家でもない、学校でもない、商店街にもいない」

律「じゃあ、後は……」

律「……公園?」

律「こんな雨の日に?」

律「……」

律「考えていてもしゃあねえ、行ってみよう」

律「そこにいなかったら……」


シトシト… シトシト…

律「……」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:32:21.21 ID:ihPXYSdAo<>

シトシト… シトシト…

梓「……」

黒猫「ニャーゴ」

梓「……」

黒猫「ニャッ」

梓「……君のせいだよ、もう」

黒猫「ニャ?」

梓「うぅん、何でもない。落としちゃったのは私だしね」

梓「……」ジー

梓「……はぁ」

グチャ

梓「とっさに、思いっきり放り投げちゃったもんなぁ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:33:05.67 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」

梓「喜んでもらおうと思って頑張ったのに、上手くいかないもんだなぁ……」グスッ

ボロボロ

梓「……」

梓「せっかく作ったのに……」

梓「完全に崩れちゃってるし、こんなのプレゼントできないや」

梓「……」

黒猫「ニャー」

梓「慰めてくれるの?」

黒猫「……」スリスリ

梓「うん、ありがとね」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:33:52.78 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「!」

梓「どうしたの?」

黒猫「」ピュー

梓「あ、どこ行くの猫ちゃ……」

黒猫「ニャー♪」スリスリ

梓「……」

律「よっ」

梓「りつ……先輩」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:34:22.80 ID:ihPXYSdAo<>
律「こんな所で何やってんだ」

梓「……」

律「傘もささずにベンチに座り込んで」

梓「……」

律「あーあー、すっかり濡れてるじゃねえか」

梓「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:36:10.19 ID:ihPXYSdAo<>
梓「律先輩こそ、何でそんなびしょ濡れになって……」

律「ああ、ある奴を探してたらすっかり雨に濡れちゃってさ」

梓「……」

律「そいつってばよりにもよって携帯忘れやがって」

律「そのくせ、親にも恋人にも連絡の一つ寄こさないと来てる」

梓「……」

律「そいつの母親はあんまり心配になって、警察に連絡しようとさえしたんだ」

梓「……!」

律「私もさ、交通事故にでも遭ったんじゃないかって思って、そこら中探し回った」

梓「……」

律「おい梓、聞こえてないのか?」

梓「……」フルフル

律「……心配したんだぞ、この大馬鹿野郎!!!」

梓「」ビクッ

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:36:38.23 ID:ihPXYSdAo<>
律「」ズイッ

梓「」タジタジ

律「逃げんな」

梓「……」

律「目、つぶれ」

梓「……」キュッ

梓(殴られるっ……)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:37:18.77 ID:ihPXYSdAo<>
律「……」ギュッ

梓「……?」

律「心配かけんなよ、ばか」

梓「……」

律「お前に何かあったらって、生きた心地しなかったんだぞ……」グスッ

梓「……ごめんなさぁい」

律「……」

梓「ごめんなさい……律先輩、ごめんなさい……」ポロポロ

律「……うん」

梓「心配かけて……ごめんなさい」ポロポロ

律「泣くなよ」

梓「だって、だってぇ……」

律「ホントに梓は、泣き虫だな」

梓「……」グスッ

律「よしよし」

梓「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:37:52.30 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「ニャー♪」グルグル

律「……」

梓「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:38:31.44 ID:ihPXYSdAo<>
律「こらお前、ぐるぐる回るな」

黒猫「ニャ?」

律「うっとうしいだろっ」

黒猫「……」グルグル

律「回るなってのに!」

梓「……ぷっ」

律「おっ」

梓「くすくす」

律「泣いたカラスがもう笑ってやがる」

梓「だって、おかしくって」ヒック

律「……」

梓「」ヒックヒック

律「ぷっ、しゃっくり止まらなくなってやんの」

梓「う、うるさいです!」

梓「」ヒック

律「うぷぷ」

梓「律先輩!」

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(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:39:01.42 ID:ihPXYSdAo<>

パラ… パラ…


律「それで、何でこんな所にいたんだ」

梓「……それ」

律「うん? この箱のこと?」

梓「……はい」

律「あっちゃ〜、雨と泥でぼろぼろじゃん」

梓「……」

律「もしかして、私に?」

梓「……」コクリ

律「何が入ってんだ」パカッ

梓「……」

律「ケーキ」

梓「……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:40:10.72 ID:ihPXYSdAo<>
梓「その猫ちゃん、助けようとして」

梓「車に轢かれそうになったのを助けようとして、放り投げちゃったんです」

律「……」

梓「それでグチャグチャになっちゃって」

律「そっか」

梓「……」グス

律「ケガはなかったのか?」

梓「はい、不思議と」

律「そっか、よかった」ギュッ

梓「あっ……」

律「それが一番のプレゼントだよ」

梓「……律先輩」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:41:18.82 ID:ihPXYSdAo<>
律「」ジー

梓「それ、もう捨てちゃいましょうか」

律「何で。もったいないじゃん」

梓「だって」

律「幸い泥はついてないみたいだぞ」

梓「……」

律「ラップしてたおかげで、雨にもあんまり濡れてないみたいだし」

梓「……」

律「確かにちょっと潰れちゃってるけど、これなら食えるよ」カプッ

梓「あっ」

律「」ムシャムシャ

梓「……」

律「うん、すごく美味しい。香りが良くて、私の好きなラムレーズンがたっぷり入ってて」

梓「ほ、ホントですかっ?」

律「私のために、一生懸命作ってくれたんだろ?」

梓「……」コクリ

律「それじゃ、美味しいに決まってるじゃん」

梓「……」

律「ありがとな、梓」ナデナデ

梓「はい、私も嬉しいです」

梓(大好きな人に喜んでもらえて)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:42:02.40 ID:ihPXYSdAo<>
律「それから、ちゃんとメッセージももらったよ」

梓「へっ?」

律「ケーキの下に挟まってた奴」

梓「……あっ!!」

律「『律センパイ大好き』ってか。私も大好きだぞー?」ニヤニヤ

梓「あ、あうぅ……」

律「何だよ、自分で書いたんだろ」

梓「そ、それはそうですけど。よくよく考えてみると……恥ずかしくて」

律「じゃ、梓は私のこと嫌いなんだ」

梓「そんなはずないじゃないですか!」

律「……」

梓「はっ」

律「」ニヤニヤ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:42:29.99 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……好きですよ」

律「えっ?」

梓「好きって言ったんです!」

律「」キーン

梓「もうっ」

律「へへ、ありがと」

梓「……」ボッ

黒猫「ファーア」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:42:58.43 ID:ihPXYSdAo<>
梓「あれ、律先輩のポケット光ってますよ」

律「へっ? あ、やべ! 全然携帯見てなかった」

梓「……気づきましょうよ」

律「マナーモードにしっぱなしだったんだよっ」

梓「律先輩らしいです」

律「うわ、着信十数件!? 澪に唯にムギに聡に……」

梓(あんなに慌てて。さっきまですごく格好良かったのになぁ)クスッ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:43:25.73 ID:ihPXYSdAo<>
「あ、おい律! お前今まで何してたんだよ!」

律「ごっめ〜ん! 全然気がつかなくて」

「梓は大丈夫なのかっ?」

律「うん、一緒にいるよ」

「なら早く連絡しろよ……聡から事情聞いて、みんなでお前たちを探し回ってたんだぞ!」

律「へっ?」

「唯は泣いて収拾つかないし、ムギは捜索隊出動させようとするし」

律「ま、まじですか?」

「たくっ、とにかくすぐ家に戻ってこい。話はそこで聞くから」

律「りょ、りょうかいっ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:43:51.74 ID:ihPXYSdAo<>
律「……ふぅ」

梓「何だか、大変な事になってたみたいですね」

律「だな」

梓「色んな人に迷惑かけちゃいました」

律「そうだぞ。澪に唯にムギに聡に、それからお前の母親に」

梓「一人一人、謝っていくしかないですね」

律「私にも責任あるし、一緒に謝っていこうな」

梓「はいっ!」

黒猫「ニャッ」

律「お前はいいよ」

黒猫「?」

梓「……くす」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:44:31.81 ID:ihPXYSdAo<>
律「じゃ、帰ろっか」

梓「了解です。傘あるけどどうします?」

律「もういいんじゃね? 小降りだし、こんだけ濡れちゃったし」

梓「それもそうですね」

律「ということで、濡れて帰ろう」

梓「おー!」

黒猫「ニャー!」

律「って、お前も来るのかよ」

梓「あ、私が一緒に行こうって約束したんです」

律「猫と約束って」

梓「いいじゃないですか、ねー?」

黒猫「♪」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:45:57.19 ID:ihPXYSdAo<>
梓「律先輩、手つなご」

律「はいはい」

梓「せ〜んろっはつっづく〜よ〜 どっこっまっでっも〜♪」ブンブン

律「ちょ、手ふんなって」

梓「いいじゃないですか、誕生日なんだから少しぐらいワガママしても」

律「いや私の誕生日だし」

梓「細かいことは気にしない」

律「気にするわっ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:46:44.53 ID:ihPXYSdAo<>

梓「あ、そうだ律先輩!」

律「うん?」

梓「まだちゃんと言ってませんでした」

律「……?」



梓「お誕生日、おめでとうございます!」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:48:47.98 ID:ihPXYSdAo<>


律先輩は、滅茶苦茶になったケーキでもすごく美味しそうに食べてくれました。

そして、満面の笑顔で褒めてくれました。

大好きな人にここまで喜んでもらえると、とても嬉しいです。

こういう人だから、私は好きになったんだろうな。


あの後、私と律先輩はたくさんの人に怒られました。

でも、みんなすごく心配してくれて。

大切にされてるんだなと、改めて実感しました。


律先輩の誕生日パーティーは本当に楽しくて、時間を忘れるほどでした。

今度は私の誕生日にパーティーを開いてくれるそうで、今からとても楽しみです。


今日は本当に色々なことがあって、疲れちゃいました。

けど、今日の思い出はこれから先、きっとずっと記憶に残ると思います。


今日、八月二十一日は律先輩の誕生日。

私の大切な、大好きな人の大事な日です。



Fin

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/08/21(日) 21:58:06.51 ID:Q7+VG28/o<> 唯とムギを変なキャラにしなければ評価できた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/08/21(日) 22:00:33.80 ID:ihPXYSdAo<> りっちゃん誕生日おめでとう!
何とか間に合った

キャラスレでも本スレでも盛り上がってよかった
隊員の工作力には相変わらず脱帽です

余裕があれば、あずにゃんの誕生日にでも続編が書けたらなあ

ここまでお読みいただきありがとうございました


りっちゃん本当におめでとう!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 22:02:34.66 ID:p8qDxawSO<> VIPでも律誕SSあったけど、相手は梓ばっかり…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/21(日) 22:03:49.81 ID:PNifUUBR0<> 面白かったよ乙
りっちゃん誕生日おめでとう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 22:27:40.32 ID:tsNX5MtDO<> 最近律梓が無駄に豊作で私得

乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 22:32:24.76 ID:k95qqVcSO<> いいね
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)<>sage<>2011/08/22(月) 04:28:28.83 ID:UrCgiWyqo<> 乙
律かわいいよ律
しかし梓が可愛過ぎww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/22(月) 06:07:35.38 ID:/IKrmuWd0<> すごいよかった
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/08/23(火) 18:04:34.75 ID:qYbmdH62o<> 律梓が普及してきてなによりな乙 <>