VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<><>2011/08/21(日) 20:54:37.02 ID:ihPXYSdAo<>律梓
だめにゃんが律の誕生日に頑張るお話<>梓「大好きな人の大事な日」
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:55:52.19 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」
カレンダー:二十一日、律先輩バースデー!
梓「もう一週間切っちゃった」
梓「何か贈り物したいけど、私じゃ何もできないなぁ」
梓「はぁ、普段から家事習っておけばよかった」
チュン チュン
梓「たい焼きでも買ってあげればいいよね」
梓「いや、ここは奮発してハーゲンダッツにしてあげよう」
梓「うん、そうしよう。あの人ラムレーズン好きだし」ケッテー!
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:56:48.92 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」
梓「…………」
――――――
律『あっずさ〜、カレーできたぞ』
梓『わ〜、いっただっきま〜す!』
パクパク モグモグ
梓『おいしい! 律先輩のカレー大好き!』
律『それだけ美味そうに食べてもらえたら、作りがいがあるよ』
梓『甘口でコクがあって、優しい味です』
律『はは、そりゃどうも』
パク…
梓『……』
律『どした?』
梓『あの、律先輩』
律『んー?』
梓『いつも、ありがとうございます』
律『うん』
梓『律先輩のおかげで、一人のときも心強いです』
律『いいんだよ』
梓『……』
律『親がいない時は、私を頼れって言ってるだろ』
梓『……はい』
――――――
梓「……」
梓「自信ないけど、やってみよ」
梓「こんなときにしか恩返しできないもんね」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:57:23.93 ID:ihPXYSdAo<>
梓「誕生日といえばケーキだよね」
梓「よし、立派なケーキを作って律先輩を驚かしてやろ」
サンプン クッキング!
梓「……」
梓「ケーキってどうやって作るんだろ」
梓「とりあえず卵は温めるよね」
梓「う〜ん、でも卵一個のためにお湯を沸かすのももったいないしなぁ」
梓「!」ピーン
梓「ここは電子レンジの出番だ」
梓「レンジなら時間もエネルギーも節約できるし。うん、何て地球に優しいエコだろ」ピッ
ウィーーン
チュドーーーン!!!
梓「……」
モクモクモク
梓「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:57:50.17 ID:ihPXYSdAo<>
「正午をお伝えします」
ピッピッピッ ピーーー
梓「……ケホ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:58:19.36 ID:ihPXYSdAo<>
プルルルル… ガチャッ
「はい、平沢です」
梓「あ、憂?」
「梓ちゃん? どうかしたの?」
梓「あのさ、ケーキってどうやって作るの?」
「あ、もしかして律さんに?」
梓「ち、違うもん! ちょっと自分で作って食べたくなっただけで……」
「ふふっ、羨ましいなぁ」
梓「違うって言ってるのに!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:58:46.93 ID:ihPXYSdAo<>
「う〜い〜、お昼ご飯まだ〜?」
「もう少しだけ待ってね、お姉ちゃん」
梓「ごめんね、お昼作ってる途中だった?」
「ううん、全然気にしなくていいよ」
梓「また、かけ直そうか?」
「どうせお盆で私もお姉ちゃんも暇だし、大丈夫」
梓「そっか。それじゃ教えてもらおうかな」
「は〜い」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 20:59:31.89 ID:ihPXYSdAo<>
「それで、どんなケーキを作ってあげるの?」
梓「へっ?」
「チーズケーキとかタルトとか。スポンジケーキでも、ココアとかモンブランとかショートケーキとか色々あるよ」
梓「……考えてなかった」
「う〜ん、初めて作るならパウンドケーキがおすすめかな」
梓「パウンドケーキ?」
「ほとんど焼きっぱなしで大丈夫だから、比較的簡単なケーキなんだよ」
梓「うん、それにしてみる!」
「それじゃメモのご用意を」
梓「了解!」
「まずは薄力粉、グラニュー糖、卵を用意しまして……」
梓「薄力粉ってうどん粉じゃだめ?」
「だめ」
梓「グラニュー糖って何?」
「お菓子用の砂糖なんだけど、なければ普通の砂糖でいいよ」
梓「ふむふむ、メモメモ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:00:14.31 ID:ihPXYSdAo<>
・
・
・
カキカキカキ
「……って、こんな感じかな」
梓「ふんふんなるほど」
「ごめんね、電話じゃ伝えきれないかも」
梓「ううん、すごく参考になった」
「後は律さんの好みに合わせてだけど、好き嫌いはあるの?」
梓「何でも食べるよ。雑食だし」
「そんな動物みたいに……」
梓「ムギ先輩のケーキはいつも美味しそうに食べてるよ」
「それじゃ大丈夫だね。まぁ、梓ちゃんが作ってあげたものなら何でも喜んでくれると思うけど」
梓「……」カァッ
「梓ちゃん?」
梓「な、何でもない!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:00:49.39 ID:ihPXYSdAo<>
「こんな所かな」
梓「ありがと、色々教えてもらって」
「ううん、頑張ってね梓ちゃん」
「うい〜〜おなかとせなかがくっつくよ〜〜〜」
梓「何か悲痛な叫びが聞こえるけど大丈夫?」
「お姉ちゃん、今行くから待って!」
「ごめんね、また何かあったら電話して」
梓「うん、ありがと」
ガチャッ
梓「……」
梓「よし、頑張るぞー!!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:01:25.46 ID:ihPXYSdAo<>
梓「とりあえず、試しに作ってみよう」
梓「えっと、砂糖はこれぐらいかな」バッサァ
梓「ラム酒はこんなぐらい?」ドバァ
梓「……」
梓「何かすごいにおいするけど……ま、いっか」
ベチャア
梓「……全然こねられない」
梓「とにかく焼いたら何とかなるよね」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:01:59.47 ID:ihPXYSdAo<>
・
・
・
梓「どうにか焼き上げたけど」
グチャァ
梓「……」パクッ
梓「うっ……ぱっさぱさで甘ったるくて、正直まずい」
梓「……」
梓「うん、誕生日までには何とかなるよね」
梓(多分)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:02:32.84 ID:ihPXYSdAo<>
―公園―
ミーンミンミンミーン
シャワシャワシャワシャワシャワ
律「あぢ〜〜」
梓「日陰じゃないですか」
律「日陰だろうがベンチの上だろうが、暑いものは暑いだろ」
梓「だからこそかき氷が美味しいんです」シャクシャク
律「それは同感」シャクシャク
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:03:12.83 ID:ihPXYSdAo<>
梓「ふんふ〜ん♪」
律「何かご機嫌だな」
梓「久しぶりの部活でしたから。家練よりみんなと合わせる方がやっぱり楽しいです」
律「だよな、家じゃ弟がうるさいって騒いでさ」
梓「それに、律先輩と二人きりになるのも久しぶりですし」
律「っ……」
律「ひ、久しぶりっても一週間ぶりぐらいだろ」
梓「一週間なら十分久しぶりです。だから、嬉しくて」
律「うっ……」
梓「……」シャクシャク
律「わ、私も梓と二人きりになるのが……」
梓「あぅ、きたきた」キーン
律「……」
梓「かき氷の醍醐味はこれですよね。あれ、何か言いました?」
律「何でも」プイッ
梓「?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:03:45.47 ID:ihPXYSdAo<>
梓「やっぱりかき氷は氷あずきに限ります」
律「たい焼きといい、お前はあずきが好きだなぁ」
梓「だってあずきとあずさって似てるじゃないですか」
律「関係あんの?」
梓「ぜーんぜん」
律「何だよそれ」
梓「それにしても、律先輩がブルーハワイなんて似合わないです」
律「な、何だとー!」
梓「スイ、とか言って砂糖水かけてそうなのに」
律「お前の中で私はどんなイメージなんだ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:04:15.54 ID:ihPXYSdAo<>
ジジ・・ ジジ・・ ミーンミーン
梓「ふ〜、かき氷食べて頭すっきり、体ひんやりです」
律「大分涼しくなってきたな」
黒猫「ニャーン」
梓「あ、猫だ! おいで〜」
黒猫「ニャーオ」
チリンチリン
律「あっぶね、自転車にひかれそうになったぞ」
梓「ずいぶん間が抜けた猫ですね」
黒猫「……」テクテク
律「暑そうな色してるな」
梓「この子のせいじゃないですよ。ほら、ちっち」
黒猫「……」プイッ
梓「あれ?」
黒猫「ニャーン!」ピョン
律「ととっ、危ないだろお前」
黒猫「♪」ゴロゴロ
梓「むー……」
律「嫌われたらしいな」
梓「ふんだ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:04:42.82 ID:ihPXYSdAo<>
律「こら、お前」
黒猫「?」
律「もっと周りに注意を払え。いつか轢かれちまうぞ」
梓「まあまあ、猫は気ままな方がいいんですよ」
律「梓みたいに?」
梓「私は猫じゃありませんっ」
律「猫みたいに甘えん坊のくせに」
梓「むっ」
律「今日はいつもみたいに甘えてこないんだな」
梓「む〜〜……」
律「膝は占領されちゃったけど、私の肩は空いてるぞ」
梓「別にいいもん」
律「ふぅん、いいんだ」
梓「……」
律「……」
梓「……」ピチッ
律「素直でよろしい」
梓「うるさいです」
黒猫「……」ニヤニヤ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:05:24.43 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」ジー
黒猫「……」ジー
梓(もしかして、この子も律先輩のことが好きだったりして)
黒猫「」フニャァ
梓(律先輩は私の恋人なんだからね)
梓(絶対にあげないよーだ)
黒猫「?」
梓(でも、今だけ律先輩の膝の上は貸してあげる。いつもは私の特等席だけど)
黒猫「ファーア…」
梓(ね、何だかほっとするでしょ? 私も大好きなんだ、その場所)
黒猫「」ゴロゴロ
梓(何だか君には親近感が湧いてくるよ)
梓(同じ人が好きな者同士、惹かれ合っちゃうのかな)
律「何ぼ〜っとしてんだ」
梓「何でもないですよ」
律「こいつと会話できるのか?」
梓「まさか」
黒猫「ニャッ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:05:51.15 ID:ihPXYSdAo<>
シャワシャワシャワシャワシャワ
梓「もうすぐ私はじゅうななさい♪」
律「あれ、誕生日いつだっけ」
梓「十一月です」
律「まだ三ヶ月も先じゃん」
梓「三ヶ月なんてあっという間ですよ」
律「その頃には涼しくなってるだろうな」
梓「涼しいどころか、もう秋になって寒くなってますよ」
黒猫「zzz」
律「……そうだな」ナデナデ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:06:18.76 ID:ihPXYSdAo<>
律「何か雲が多くなってきたな」
梓「涼しくて結構じゃないですか」
律「けど、こりゃ雨が降るぞ」
梓「あ、天気予報でそんなこと言ってましたね」
律「洗濯物、取り込んでおかないと」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:06:45.65 ID:ihPXYSdAo<>
ジージージージージー
律「そっか、梓は十七歳になるのか」
梓「律先輩と同じ十七歳です」
律「私はもうすぐ十八になっちゃうよ。明日の日曜日にさ」
梓「あ、そっか。誕生日でしたね」
律「みんなには言ってないから、忘れられちゃってるだろうけど」
梓「みんなちゃんと覚えてますよ」
律「別にいいよ、誕生日なんか」
梓「何でですか、年に一度の大切な日なのに」
律「一つ歳をとるだけじゃん」
梓「そんなことないですよ。みんなでお祝いしたり、親に感謝したりする日です」
律「ふぅん、そんなもんかなぁ」
梓「私が律先輩をお祝いしてあげます!」ズイッ
律「そ、そっか」
梓(あれ? 何か引っかかるような)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:08:07.48 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」
律「梓?」
梓「…………」
梓「あっ!!」
黒猫「!?」ビクッ
律「ど、どうした急に」
梓「ごめんなさい、用事を思い出しました!」
律「え? あ、そうなの?」
梓「失礼します!」
ピュー
律「お、おい梓」
ステーン
律「あ、転んだ」
黒猫「……」フッ
律「おーーい! だいじょうぶかー?!」
「だいじょうぶでーーす!!」
ピューー
律「……変なやつ」
黒猫「ニャーゴ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:08:52.73 ID:ihPXYSdAo<>
梓(しまった、すっかり忘れてた)
梓(律先輩にケーキ作ってあげようと思ってたのに!)
梓(今から間に合うかな……いや、間に合わせよう)
梓(いつもお世話になってる律先輩のためだもんね)
梓(よぉーーし! ファイト、私!)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:09:15.44 ID:ihPXYSdAo<>
ワォーン オンオン
梓母「梓、台所占領して何するの?」
梓「ひみつ」
梓母「花嫁修業でもするわけ?」
梓「違う!」
梓母「……その材料からするとケーキかしら。この前も作ってたし」
梓「」ギクッ
梓母「そういえば明日って……」
梓「ちょっと黙ってて!」
梓母「はいはい」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:09:51.86 ID:ihPXYSdAo<>
梓「えっと、バターをよく練って砂糖を入れて……」
梓母「ちょっと、量はちゃんと量ったの?」
梓「そんなの適当だよ」
梓母「だめだめ、入れすぎたり足りなかったりしたらまた失敗するわよ」
梓「うっ……」
梓母「この前のパサパサケーキ、後の処理が大変だったんだから」
梓「もう、分かったよ」
梓母「はい、大さじ」
梓「……」
梓母「どうしたの?」
梓「大さじって何グラム?」
梓母「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:10:17.43 ID:ihPXYSdAo<>
梓「で、砂糖を入れたら白っぽくなるまでよく混ぜて」
梓「……」
『ここでよ〜〜く混ぜたら、ふっくらと仕上がるんだよ』
梓「よ〜〜し」グイッ
梓「やぁやぁやぁ!!!」シャカシャカシャカ
梓母「……」
梓「たぁたぁたぁ!!」シャカシャカ
梓母「それじゃ格闘してるみたいよ」
梓「ふんふん!」シャカシャカ
梓母「……」
梓母(ま、女の子にとって好きな人のために料理するのは、格闘みたいな真剣勝負なのかもね)
梓「う〜〜〜!!」シャカシャカ
梓母「……」ニヤニヤ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:10:47.31 ID:ihPXYSdAo<>
梓「溶いた卵をちょっとずつ加えて混ぜるっと」
梓「む〜〜〜!!」シャカシャカシャカ
梓母「……」
梓「なじむまで混ぜたら、薄力粉類を入れてゴムべらで切るようにこねる」
梓「よいしょ、よいしょ」グッグッ
梓母「……」
梓「ふぅ、こんな所かな」
梓母「もっと混ぜなきゃ。ダマになってるじゃない」
梓「あ、ホントだ」
梓母「ちょっと貸してみなさい」
梓「だめ! 余計なお世話!」
梓母「何よ、せっかく手伝ってあげようとしてるのに」
梓「へ、へたでも自分で作りたいの!」
梓母「へぇ」
梓「そりゃ、私不器用だし……」
梓「今まで料理なんてやったことないから……上手くできないかもしれないけど」
梓「その方が……喜んでくれると思うから」
梓母「」キュン
梓「お母さん?」
梓母「……はっ」
梓母(わが娘ながら可愛いじゃない……不覚)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:11:14.77 ID:ihPXYSdAo<>
梓「溶かしたチョコとラム酒を加えて」
梓母「あら、ラム酒なんてお洒落ね」
梓「友達に教えてもらったんだ。アクセントになるんだって」
梓母(それでこの前のアレはやけにアルコールの香りがした訳か)
梓母「入れ過ぎちゃだめよ」
梓「分かってる」
梓「……」ソー
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:11:59.37 ID:ihPXYSdAo<>
梓「そして生地につやが出るまでこねる」
梓「やぁ! やぁ! やぁ!」グイッグイッ
梓母「……」ソワソワ
梓母(だ、大丈夫かしら……? 危なっかしくて見てられない)
梓「ふん! ふん!」
梓母「……」ジー
梓母(でも、娘の頑張る姿は見たい……複雑だわ)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:12:25.99 ID:ihPXYSdAo<>
梓「最後に律先輩の好きなラムレーズンを加えて、生地はできあがり!」
梓母「お疲れさま、割と上手くできたんじゃない?」
梓「焼き上がるまで分からないけど、自信はある」
梓母「きっと美味しいわよ。じゃ、オーブンにかけましょう」
梓「うん!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:12:56.92 ID:ihPXYSdAo<>
〜〜一時間後〜〜
梓「……」ソワソワ
ジーーーーー
梓「……」ワクワク
梓母(あの子ったら、ずっとああして)
梓「後五秒……四、三、二、一」
チーン!
梓「できたー!」
梓「あつ、あつっ」
梓母「あら、いい香り」
梓「紙をそっと外して冷まし、冷蔵庫に入れて一晩置く」
梓母「ねえねえ、ちょっと味見してみない?」
梓「食いしん坊だなぁ」
梓母「この前の失敗作食べてあげたじゃない」
梓「いいよ、ちょっとだけだからね」
梓母「わーい」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:14:03.53 ID:ihPXYSdAo<>
梓母「」パクッ
梓「……」
梓母「……」モグモグ
梓「ど、どう?」
梓母「うん、すごく美味しい」
梓「ホント!?」
梓母「これならきっと、りっちゃんも喜んでくれるわ」
梓「うん! ……ってお母さん!」
梓母「あれ、りっちゃんにあげるんじゃないの?」
梓「うぅ……」
梓母「真っ赤な顔しちゃって」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:14:29.84 ID:ihPXYSdAo<>
梓「ラップして一晩置いて、あっちで切ればしっとり仕上がる」
梓「そしてメッセージカードを添えて……できあがり!」
梓母「何て書いたの?」
梓「み、見ちゃだめ!!」
梓母「いいじゃない、減るものでもないし」
梓「それでもぜぇっったいだめ!!」
梓母「もう、分かったわよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:15:22.91 ID:ihPXYSdAo<>
カッチコッチ カッチコッチ
梓母「あら、もうこんな時間」
梓「ホントだ」
梓母「片付けは明日でいいから、もう寝なさい」
梓「はーい」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:15:52.87 ID:ihPXYSdAo<>
―梓の部屋―
梓「ふぅ、どうにか完成してよかった」
携帯「ピッピッ」
梓「あ、携帯チェックしてなかった」パカッ
梓「……」
梓「律先輩から電話あったんだ」
梓「今からかけ直すのは失礼だよね」
梓「うん、明日にしようそうしよう」
梓「……」
梓「ふふ、律先輩褒めてくれるかなぁ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:16:21.67 ID:ihPXYSdAo<>
パラ… パラパラ…
梓「……雨?」
梓「そういえば、夜から降るって言ってたなぁ」
梓「明日には止んでたらいいけど」
梓「年に一度の、律先輩の大事な日だもんね」
梓「お天道さま、お願いします。律先輩のためにも雨を降らせないでください」
梓「……」
梓「おやすみ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:17:26.41 ID:ihPXYSdAo<>
チュンチュン
梓「ん〜、いい天気……でもないか」
梓「曇りのち雨ってところかな」
プルルルル… プルルルル…
ピッ
「ん〜〜、あずさぁ?」
梓「もしかして、寝てました?」
「……うん」
梓「もうお昼ですよ、律先輩のねぼすけ」
「うるせーし。夏休みぐらい寝かせろ」
梓「昨日はごめんなさい、電話に気づかなくて」
「それはいいけど、一体何の用?」
梓「お誕生日、おめでとうございます」
「……ん、ありがと」
梓「それで、今から律先輩の家に行きますんで。プレゼントがあります」
「えっ、何くれんの?」
梓「内緒です」
「ちぇっ、それじゃ後のお楽しみに」
梓「ダッシュで行きますんで、二度寝なんかしちゃダメですよ」
「はいよ。車に気をつけろよ、鈍くさいんだからお前」
梓「むっ……言われなくても」
「じゃ、待ってるから」
梓「はーい」
ピッ
梓「よし、準備しますか」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:17:54.66 ID:ihPXYSdAo<>
梓母「気をつけてね。あ、折りたたみ傘持って行きなさい」
梓「はぁい」
梓母「……梓」
梓「何?」
梓母「グッドラック」グッ
梓「……うん!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:18:21.55 ID:ihPXYSdAo<>
テクテク テクテク
梓「せ〜んろはつづく〜よ〜 ど〜こま〜で〜も〜♪」
黒猫「ニャー♪」
梓「あ、昨日の猫ちゃん。こんにちは」
黒猫「ニャッ」
梓「また会えるなんて奇遇だね」
黒猫「……」クンクン
梓「もう嗅ぎつけたの? ずいぶん鼻が利くんだ」
黒猫「……」ジー
梓「だめだよ、まずは律先輩に食べてもらうんだから」
黒猫「……」シュン
梓「……君も一緒に来る?」
黒猫「?」
梓「律先輩と、お祝いするんだ。そこで食べよ」
黒猫「ニャッ」
梓「よしよし、ちゃんとついてくるんだよ」
黒猫「ニャー」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:18:47.78 ID:ihPXYSdAo<>
ポツリ… ポツポツ…
梓「あっちゃ〜、雨降ってきちゃった」
梓「傘持ってきてよかった。ケーキが台無しになっちゃうもんね」
黒猫「……」テクテク
梓「君も入りなよ、濡れちゃうでしょ」
黒猫「ニャア」
梓「ふっふ、猫を従えるなんて何だかいい気分」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:19:15.86 ID:ihPXYSdAo<>
ザーー ザーー
梓「雨が強くなってきたね」
黒猫「ニャー」
梓「でも、もう少しで律先輩の家」
梓「えへへ、律先輩どんな反応するかな」
梓「いっぱい喜んでくれるかなぁ」
梓「頑張って作ったケーキ……見てくれは悪いけど、気に入ってくれたらいいな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:19:45.54 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「……」ピュー
梓「あ、ちょっと走っちゃだめだよ!」
黒猫「」ピュー
梓「猫ちゃんってば!」
梓「はぁ、はぁ……これじゃ私が猫に従ってるみたい」
梓「お〜〜い、待ってよ〜〜」
黒猫「ニャー!」
梓「も〜〜、勝手な猫」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:20:52.71 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「……」トテトテ
梓「……あっ」
梓「だ、ダメだよ! 赤信号だよ!」
黒猫「ニャッ?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:21:35.61 ID:ihPXYSdAo<>
プーーーーーーーーッッッ!!
黒猫「?」
梓「あぶないっ!!!」
キィーーーーーーーーッッッ!!!
ドサッ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:22:12.25 ID:ihPXYSdAo<>
ザー シトシト… ザー
梓「……」
「お、おい大丈夫か! おい!」
梓「猫ちゃん、大丈夫……?」
黒猫「ニャッ、ニャー?」
梓「そ。よかった」
黒猫「」スリスリ
梓「もー……急に飛び出しちゃ、ダメじゃん」
黒猫「ニャー…」
梓「律先輩にも、注意されたでしょ」
黒猫「……」
梓「ホントにもう、この……」
……ばか猫。
――
――――
――――――――
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:22:41.70 ID:ihPXYSdAo<>
――――――――
――――
――
カッチコッチ カッチコッチ
律「……」チラッ
律「……」
律「……」ウロウロ
律「……」チラッ
聡「何やってんだよ、うっとうしい」
律「うるさい殴んぞ」
聡「誕生日なのにカリカリしてるなぁ」
律「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:23:17.46 ID:ihPXYSdAo<>
カッチコッチ カッチコッチ
律「……遅い!!」
聡「」ビクッ
律「いくら何でも遅すぎ! 何やってんだあのバカ!」
聡「ちょ、落ち着けって」
律「あ〜〜〜もう、連絡ぐらい寄こせってのっ!」
聡「こっちからすりゃいいじゃん」
律「……」
聡「知ってんだろ? 連絡先」
律「……」ポンッ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:23:44.88 ID:ihPXYSdAo<>
プルルルル… プルルルル…
律「……」
プルルルル… プルルルル…
律「」グリグリ
聡「イテテッ、苛つくのは分かるけど俺に当たるなよ」
律「黙れ」
聡「」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:24:49.75 ID:ihPXYSdAo<>
プルルルル… ガチャッ
律「!? おい梓お前今どこいんだよふざけんな!」
「もしもし、梓の母です」
律「」
「あ、りっちゃん? ごめんね、あの子携帯忘れたみたいで」
律「す、すいません。失礼しました」
「梓はもう着いたかしら」
律「いえ、それがその」
「まだなの?」
律「……はい」
「おかしいわね、もう一時間以上前に出てるんだけど」
律「本当ですか!?」
「え、ええ」
律「何してんだよあいつ……」ギリ
「もしかして、何か……」
律「!」
律「すいません、私ちょっと探してきます!」
「えっ? りっちゃん?」
律「失礼します!」
ピッ
律「聡、というわけだ」
聡「ん。俺も探そうか?」
律「お前は留守番。何かあったら電話しろ」
聡「りょーかい。ねーちゃんも、こっちの電話ちゃんと出てくれよ」
律「分かってる」
聡「マナーモードちゃんと切っとけよ! ……って、行っちゃった」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:25:19.24 ID:ihPXYSdAo<>
―玄関先―
唯「じゃ、じゃあ私が押すよ」
紬「うぅん、ここは私が」
澪「お〜い、二人とも」
唯「あ、澪ちゃんだ」
紬「こんにちは」
澪「ここにいるってことは、律に?」
唯「うん! 憂と一緒にクッキー作ったんだ」
紬「私はマドレーヌ。澪ちゃんも?」
澪「私は手作りとかじゃないけどな」
唯紬「何?」
澪「参考書。ちゃんと勉強するようにってさ」
唯「おお、流石澪ちゃん。目の付け所が違いますなぁ」
唯「りっちゃん、誕生日だって教えてくれないんだもん。憂が言ってくれなきゃ忘れるところだったよ」
紬「私はちゃんと覚えてたわ。先月のお返しをしないといけないもんね」
澪「……何というか、あいつは幸せ者だなぁ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:25:46.01 ID:ihPXYSdAo<>
澪「で、どうして玄関先に?」
唯「だって、ほら……」
紬「ねぇ……」
澪「?」
唯「多分、あずにゃんは真っ先にりっちゃん家に着いてるよね」
澪「まあ、そうだろうな」
唯「玄関を開けて、りっちゃんとあずにゃんがお取り込み中だったら困るじゃん」
紬「そうそう」
澪「いやないから」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:26:15.37 ID:ihPXYSdAo<>
澪「ほら、雨も降ってるんだし早く入ろう」スッ
律「」ガチャッ
澪「!?」
唯「あ、りっちゃん!」
紬「お誕生日おめでとう!」
唯「おめでと〜」
律「み、みんなっ?」
澪「私たちがいるって分かったのか? 超能力者か」
律「あ、いやその……」
唯「はい、これ私と憂から」
紬「私からもこれ」
律「あ、あの」
澪「どうした、律」
律「ご、ごめん! ちょっと出かけなきゃいけないから!」
唯「ほぇっ?」
律「すぐ戻るから、家上がってて!」
紬「それはいいけど……」
澪「何かあったのか?」
律「本当にわりぃ!」
澪「お、おい律」
タッタッタッタッタッ
澪「雨降ってるぞ……って、行っちゃった」
唯「りっちゃん、どうしたのかなぁ」
紬「すごく慌ててたみたいだけど」
澪「……さぁ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:26:56.62 ID:ihPXYSdAo<>
タッタッタッタッタッ
律「ぜぇ……ぜぇ……」
タッタッタッタッタ
律「はぁ……はぁ……」
律「何でこんな日に限って雨降ってるんだよ」グショ
律「誕生日ぐらい、晴れにしてくれよ」
「ねぇ、ママ。何であの人傘さしてないの?」
「こら、人に指さしちゃダメでしょ!」
律「……」
律「あ、あの!」
「な、何ですか?」
律「女の子見ませんでしたか?」
「女の子?」
律「高校生なんですけど、身長は私よりちょっと低いぐらいで」
「え、ええっと」
律「あ、黒髪でツインテールにしてます!」
「ごめんなさい、ちょっと分からないわ」
律「そうですか……すいません」
「あの、私たちはこれで」
律「……はい、ありがとうございます」
律「……」
律「あ、すいません! ちょっといいですか?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:27:25.70 ID:ihPXYSdAo<>
律「……」
律「何てことしてる間に梓の家に着いちゃったよ」
律「……」
ピンポーン
「はーい」ガチャッ
律「あ、こんにちは」
梓母「あら、りっちゃん。今日誕生日だったわよね、おめでとう」
律「あ、ども……」
梓母「びしょ濡れじゃないっ、大丈夫!?」
律「はい、大丈夫です……それで」
梓母「梓からは……連絡来てないわ」
律「そう、ですか」
梓母「まさか本当に、何かあったのかしら」
律「……」
梓母「ねぇ、これって警察に連絡……」
律「私もう一度だけ探してきます!」
梓母「えっ?」
律「梓の行きそうな所、いくつか心当たりありますんで。警察にはそれからでも……」
梓母「……うん、わかった」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:27:54.56 ID:ihPXYSdAo<>
律「……」
律「何してんだよ、こんなに心配かけてさ」
律「……あのバカ」グスッ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:28:25.04 ID:ihPXYSdAo<>
ザァー… ザァー…
律「……」
バシャッ バシャッ
律「はぁ……はぁ……」
律「……」
ピーポー ピーポー
律「今日は救急車が多いなぁ」
ピーポー… ピー…ポー…
律「……」
律「そんなの止めてくれよ、梓」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:28:50.99 ID:ihPXYSdAo<>
―駅前交番―
プップー
律「……」
律「あの、すいません」
警官「うん? 君、傘ささなくて大丈夫なのか?」
律「ちょっとお聞きしたいことが」
警官「聞きたいこと?」
律「はい……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:29:19.70 ID:ihPXYSdAo<>
・
・
・
律「そう……ですか」
警官「探している人でも?」
律「はい、まぁ」
警官「協力要請出そうか」
律「あ、大丈夫です。ちょっと待ち合わせしてただけなんで……」
警官「? ならいいんだけど」
律「はい……ありがとう、ございました」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:29:46.26 ID:ihPXYSdAo<>
パシャ… パシャ…
律「……」
パシャ…
フラッ
律「……あっ」
ストン!
律「……」ボー
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:30:22.31 ID:ihPXYSdAo<>
シトシト… シトシト…
律「……」
律「…………」
律「梓の、ばか」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:30:53.81 ID:ihPXYSdAo<>
――――――
『今日の交通事故?』
律『はい、特にその……人身事故があったか教えてください!』
『分かった。ちょっと待ってね』
律『……』
『お待たせ』
律『! あの、どうでしたっ?』
『今日はまだ一件も起きてないよ』
律『……!』
『雨の日は事故が多いんだけどね』
律『……』
『いつもこれだけ平和ならなぁ』
律『……』
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:31:51.68 ID:ihPXYSdAo<>
――――――
律「……」ハァ
律「事故じゃないみたいでよかった」
律「こんな真っ昼間に誘拐ってのも考えられなくはないけど、可能性としては低い」
律「なら、あいつは一体どこ行ったんだ……!?」
律「家でもない、学校でもない、商店街にもいない」
律「じゃあ、後は……」
律「……公園?」
律「こんな雨の日に?」
律「……」
律「考えていてもしゃあねえ、行ってみよう」
律「そこにいなかったら……」
シトシト… シトシト…
律「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:32:21.21 ID:ihPXYSdAo<>
シトシト… シトシト…
梓「……」
黒猫「ニャーゴ」
梓「……」
黒猫「ニャッ」
梓「……君のせいだよ、もう」
黒猫「ニャ?」
梓「うぅん、何でもない。落としちゃったのは私だしね」
梓「……」ジー
梓「……はぁ」
グチャ
梓「とっさに、思いっきり放り投げちゃったもんなぁ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:33:05.67 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……」
梓「喜んでもらおうと思って頑張ったのに、上手くいかないもんだなぁ……」グスッ
ボロボロ
梓「……」
梓「せっかく作ったのに……」
梓「完全に崩れちゃってるし、こんなのプレゼントできないや」
梓「……」
黒猫「ニャー」
梓「慰めてくれるの?」
黒猫「……」スリスリ
梓「うん、ありがとね」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:33:52.78 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「!」
梓「どうしたの?」
黒猫「」ピュー
梓「あ、どこ行くの猫ちゃ……」
黒猫「ニャー♪」スリスリ
梓「……」
律「よっ」
梓「りつ……先輩」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:34:22.80 ID:ihPXYSdAo<>
律「こんな所で何やってんだ」
梓「……」
律「傘もささずにベンチに座り込んで」
梓「……」
律「あーあー、すっかり濡れてるじゃねえか」
梓「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:36:10.19 ID:ihPXYSdAo<>
梓「律先輩こそ、何でそんなびしょ濡れになって……」
律「ああ、ある奴を探してたらすっかり雨に濡れちゃってさ」
梓「……」
律「そいつってばよりにもよって携帯忘れやがって」
律「そのくせ、親にも恋人にも連絡の一つ寄こさないと来てる」
梓「……」
律「そいつの母親はあんまり心配になって、警察に連絡しようとさえしたんだ」
梓「……!」
律「私もさ、交通事故にでも遭ったんじゃないかって思って、そこら中探し回った」
梓「……」
律「おい梓、聞こえてないのか?」
梓「……」フルフル
律「……心配したんだぞ、この大馬鹿野郎!!!」
梓「」ビクッ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:36:38.23 ID:ihPXYSdAo<>
律「」ズイッ
梓「」タジタジ
律「逃げんな」
梓「……」
律「目、つぶれ」
梓「……」キュッ
梓(殴られるっ……)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:37:18.77 ID:ihPXYSdAo<>
律「……」ギュッ
梓「……?」
律「心配かけんなよ、ばか」
梓「……」
律「お前に何かあったらって、生きた心地しなかったんだぞ……」グスッ
梓「……ごめんなさぁい」
律「……」
梓「ごめんなさい……律先輩、ごめんなさい……」ポロポロ
律「……うん」
梓「心配かけて……ごめんなさい」ポロポロ
律「泣くなよ」
梓「だって、だってぇ……」
律「ホントに梓は、泣き虫だな」
梓「……」グスッ
律「よしよし」
梓「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:37:52.30 ID:ihPXYSdAo<>
黒猫「ニャー♪」グルグル
律「……」
梓「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:38:31.44 ID:ihPXYSdAo<>
律「こらお前、ぐるぐる回るな」
黒猫「ニャ?」
律「うっとうしいだろっ」
黒猫「……」グルグル
律「回るなってのに!」
梓「……ぷっ」
律「おっ」
梓「くすくす」
律「泣いたカラスがもう笑ってやがる」
梓「だって、おかしくって」ヒック
律「……」
梓「」ヒックヒック
律「ぷっ、しゃっくり止まらなくなってやんの」
梓「う、うるさいです!」
梓「」ヒック
律「うぷぷ」
梓「律先輩!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:39:01.42 ID:ihPXYSdAo<>
パラ… パラ…
律「それで、何でこんな所にいたんだ」
梓「……それ」
律「うん? この箱のこと?」
梓「……はい」
律「あっちゃ〜、雨と泥でぼろぼろじゃん」
梓「……」
律「もしかして、私に?」
梓「……」コクリ
律「何が入ってんだ」パカッ
梓「……」
律「ケーキ」
梓「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:40:10.72 ID:ihPXYSdAo<>
梓「その猫ちゃん、助けようとして」
梓「車に轢かれそうになったのを助けようとして、放り投げちゃったんです」
律「……」
梓「それでグチャグチャになっちゃって」
律「そっか」
梓「……」グス
律「ケガはなかったのか?」
梓「はい、不思議と」
律「そっか、よかった」ギュッ
梓「あっ……」
律「それが一番のプレゼントだよ」
梓「……律先輩」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:41:18.82 ID:ihPXYSdAo<>
律「」ジー
梓「それ、もう捨てちゃいましょうか」
律「何で。もったいないじゃん」
梓「だって」
律「幸い泥はついてないみたいだぞ」
梓「……」
律「ラップしてたおかげで、雨にもあんまり濡れてないみたいだし」
梓「……」
律「確かにちょっと潰れちゃってるけど、これなら食えるよ」カプッ
梓「あっ」
律「」ムシャムシャ
梓「……」
律「うん、すごく美味しい。香りが良くて、私の好きなラムレーズンがたっぷり入ってて」
梓「ほ、ホントですかっ?」
律「私のために、一生懸命作ってくれたんだろ?」
梓「……」コクリ
律「それじゃ、美味しいに決まってるじゃん」
梓「……」
律「ありがとな、梓」ナデナデ
梓「はい、私も嬉しいです」
梓(大好きな人に喜んでもらえて)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:42:02.40 ID:ihPXYSdAo<>
律「それから、ちゃんとメッセージももらったよ」
梓「へっ?」
律「ケーキの下に挟まってた奴」
梓「……あっ!!」
律「『律センパイ大好き』ってか。私も大好きだぞー?」ニヤニヤ
梓「あ、あうぅ……」
律「何だよ、自分で書いたんだろ」
梓「そ、それはそうですけど。よくよく考えてみると……恥ずかしくて」
律「じゃ、梓は私のこと嫌いなんだ」
梓「そんなはずないじゃないですか!」
律「……」
梓「はっ」
律「」ニヤニヤ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:42:29.99 ID:ihPXYSdAo<>
梓「……好きですよ」
律「えっ?」
梓「好きって言ったんです!」
律「」キーン
梓「もうっ」
律「へへ、ありがと」
梓「……」ボッ
黒猫「ファーア」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:42:58.43 ID:ihPXYSdAo<>
梓「あれ、律先輩のポケット光ってますよ」
律「へっ? あ、やべ! 全然携帯見てなかった」
梓「……気づきましょうよ」
律「マナーモードにしっぱなしだったんだよっ」
梓「律先輩らしいです」
律「うわ、着信十数件!? 澪に唯にムギに聡に……」
梓(あんなに慌てて。さっきまですごく格好良かったのになぁ)クスッ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:43:25.73 ID:ihPXYSdAo<>
「あ、おい律! お前今まで何してたんだよ!」
律「ごっめ〜ん! 全然気がつかなくて」
「梓は大丈夫なのかっ?」
律「うん、一緒にいるよ」
「なら早く連絡しろよ……聡から事情聞いて、みんなでお前たちを探し回ってたんだぞ!」
律「へっ?」
「唯は泣いて収拾つかないし、ムギは捜索隊出動させようとするし」
律「ま、まじですか?」
「たくっ、とにかくすぐ家に戻ってこい。話はそこで聞くから」
律「りょ、りょうかいっ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:43:51.74 ID:ihPXYSdAo<>
律「……ふぅ」
梓「何だか、大変な事になってたみたいですね」
律「だな」
梓「色んな人に迷惑かけちゃいました」
律「そうだぞ。澪に唯にムギに聡に、それからお前の母親に」
梓「一人一人、謝っていくしかないですね」
律「私にも責任あるし、一緒に謝っていこうな」
梓「はいっ!」
黒猫「ニャッ」
律「お前はいいよ」
黒猫「?」
梓「……くす」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:44:31.81 ID:ihPXYSdAo<>
律「じゃ、帰ろっか」
梓「了解です。傘あるけどどうします?」
律「もういいんじゃね? 小降りだし、こんだけ濡れちゃったし」
梓「それもそうですね」
律「ということで、濡れて帰ろう」
梓「おー!」
黒猫「ニャー!」
律「って、お前も来るのかよ」
梓「あ、私が一緒に行こうって約束したんです」
律「猫と約束って」
梓「いいじゃないですか、ねー?」
黒猫「♪」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:45:57.19 ID:ihPXYSdAo<>
梓「律先輩、手つなご」
律「はいはい」
梓「せ〜んろっはつっづく〜よ〜 どっこっまっでっも〜♪」ブンブン
律「ちょ、手ふんなって」
梓「いいじゃないですか、誕生日なんだから少しぐらいワガママしても」
律「いや私の誕生日だし」
梓「細かいことは気にしない」
律「気にするわっ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:46:44.53 ID:ihPXYSdAo<>
梓「あ、そうだ律先輩!」
律「うん?」
梓「まだちゃんと言ってませんでした」
律「……?」
梓「お誕生日、おめでとうございます!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage saga<>2011/08/21(日) 21:48:47.98 ID:ihPXYSdAo<>
律先輩は、滅茶苦茶になったケーキでもすごく美味しそうに食べてくれました。
そして、満面の笑顔で褒めてくれました。
大好きな人にここまで喜んでもらえると、とても嬉しいです。
こういう人だから、私は好きになったんだろうな。
あの後、私と律先輩はたくさんの人に怒られました。
でも、みんなすごく心配してくれて。
大切にされてるんだなと、改めて実感しました。
律先輩の誕生日パーティーは本当に楽しくて、時間を忘れるほどでした。
今度は私の誕生日にパーティーを開いてくれるそうで、今からとても楽しみです。
今日は本当に色々なことがあって、疲れちゃいました。
けど、今日の思い出はこれから先、きっとずっと記憶に残ると思います。
今日、八月二十一日は律先輩の誕生日。
私の大切な、大好きな人の大事な日です。
Fin
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)<>sage<>2011/08/21(日) 21:58:06.51 ID:Q7+VG28/o<> 唯とムギを変なキャラにしなければ評価できた <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/08/21(日) 22:00:33.80 ID:ihPXYSdAo<> りっちゃん誕生日おめでとう!
何とか間に合った
キャラスレでも本スレでも盛り上がってよかった
隊員の工作力には相変わらず脱帽です
余裕があれば、あずにゃんの誕生日にでも続編が書けたらなあ
ここまでお読みいただきありがとうございました
りっちゃん本当におめでとう!
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 22:02:34.66 ID:p8qDxawSO<> VIPでも律誕SSあったけど、相手は梓ばっかり…… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/21(日) 22:03:49.81 ID:PNifUUBR0<> 面白かったよ乙
りっちゃん誕生日おめでとう <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 22:27:40.32 ID:tsNX5MtDO<> 最近律梓が無駄に豊作で私得
乙です <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/21(日) 22:32:24.76 ID:k95qqVcSO<> いいね
乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)<>sage<>2011/08/22(月) 04:28:28.83 ID:UrCgiWyqo<> 乙
律かわいいよ律
しかし梓が可愛過ぎww <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/22(月) 06:07:35.38 ID:/IKrmuWd0<> すごいよかった
乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県)<>sage<>2011/08/23(火) 18:04:34.75 ID:qYbmdH62o<> 律梓が普及してきてなによりな乙 <>