VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 00:18:07.53 ID:5fZ+aeFuo<>自分としては大変不本意ではあるのだが、ハルヒの面倒事に付き合わされるスキルに関しては
日本一を自認している俺であるから、最初にそのニュースを見た時点で、既になんとなく予感
めいたものを感じていたりもしたものだが、とはいえ、そんな事を今更言っても後出しジャンケン
みたいなもので、負け惜しみにしかならないことだし、しかもそんな事を言ったってこの団長様の
決定事項は到底くつがえらないってことぐらいSOS団のメンバーなら誰もが学習済みなので、
従って、団室の扉を開け放って叫んだハルヒの言葉に『来たか』という顔をしてしまったのは、
もはや致し方ないと言うほかないのである。

 ついでに言うと、この俺の語り口調にはそろそろ辟易している向きもあるだろうが、少々お付き合い願いたい。

「ニュージェネ・・・ですか?」

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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/<>キョン「ギガロマニアックス?」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 00:19:22.17 ID:5fZ+aeFuo<> 初スレ立て。ちょいちょい投下してく。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 00:21:01.88 ID:5fZ+aeFuo<>  開け放たれた勢いの余韻をビリビリとした振動で訴えている扉を全く顧みず言い放った
団長殿に対してそうオウム返しに聞き返したのは、いつものムカつく爽やかスマイルに困
惑スパイスを2割ほど加えたSOS団副団長殿だ。

「そうよ!ニュージェネよ!今すごい勢いで話題になって、ニュースでもバンバン流れてる
んだから、知らないなんて言わないわよね!?」

 知らん、知らん。俺は知らんぞー。

「あ、あの、涼宮さん。そのニュージェネってあの事件の、ですか?」

 今日も今日とて可愛らしい御姿の朝比奈さんが、ハルヒにお茶を差し出しながら恐る恐
る尋ねている。もう既に秋の色もそろそろ深まろうという時期だ。朝比奈さんの淹れる暖
か〜いお茶がさらなる威力を発揮していることは、もはや誰にも否定出来ない宇宙の真理なのである。
 しかしながらハルヒの野郎はその極上の甘露を少しも味わう素振りも見せず、猫舌なら
裸足で逃げ出す温度のお茶を、風呂上りの牛乳ばりの勢いで一息に飲み干すのだから、
なんとも恐れ多い行為をしやがって、とか、ああ、もったいない、とか色々と感じ入ってしまう。
そんな俺をよそ目に、ハルヒのボルテージはまだまだ下がる兆しを見せない。


「そうよ!そのニュージェネよ!まぁこんだけ世間で騒がれているんだから、知っていて当然よね!?
だけど、こんなに不思議な事件なら、そもそもなんでSOS団に飛び込んでこないのかしらね!?」

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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 00:32:48.52 ID:5fZ+aeFuo<> いつも不思議が大手を振ってやってくるならSOS団は設立当初からの依頼が部長氏の一

件しかないなんて、閑古鳥状態にはなっていないだろうよ。

「うるさいわよ!でも、確かにそうね。この就職難の折り、いくら我がSOS団と言えども不思
議が勝手にやってくるのを待っているだけなんて虫が良すぎたのよ!

だけど私は待っているだけの女じゃないわ!

不思議がそこにあるのなら、捕まえてみせるのが我がSOS団の気概ってものでしょ!」


 不思議と就職難が関係あんのかよ・・・。それに毎週毎週不思議探索という名のリクルー
ト活動には余念がなかったはずだがな。

 とはいえ、ハルヒはああ言っているものの、実際のところはハルヒが知らないだけでこの
一年半の間、不思議や怪異がひっきりなしにこのSOS団を襲っているわけで。

むしろ俺達は就職難に喘いでいる学生が押し寄せる大企業の採用担当者みたいな心境だ。


「それで、ニュージェネがどうしたって?」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 00:34:39.57 ID:5fZ+aeFuo<> 「ニュージェネ。正式には『ニュージェネレーションの狂気』と呼ばれる一連の猟奇事件の呼称。
その被害者がどれも異様な状態、もしくは方法で死亡しており、また手口に一貫性が無いことからこう呼称される。
被害者は現在9名に及ぶ」


わざわざ読んでいた本を閉じてまでの解説ありがとうよ、長門。

ところで、一貫性が無いのに一連の事件として扱われてるのはなんでなんだ?



「それは、事件がすべて渋谷で起きている、という地理的な要因でしょうね。それと・・・」

目配せで古泉が長門にセリフを譲ってやがる。と、そこを割りこんで、ハルヒが


「その目だれの目」

 
と、どうにも得意げな顔をしている。

「そう。その言葉が何らかの形で事件現場に必ず残されている。
このことから元々一貫性の見出されなかった事件が、一連の
『ニュージェネ事件』として扱われるようになった」
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(東海)<>sage<>2011/08/31(水) 00:42:00.36 ID:MBVMZiuAO<> 被害者9名ってけっこう進んでるな

事件でいうと『美味い手』の辺?



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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/31(水) 00:48:42.21 ID:hB1vmO6L0<> >>6
集団ダイブで5人妊娠男で2人貼り付けで1人ヴァンパイ屋で1人じゃない?
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(東海)<>sage<>2011/08/31(水) 00:56:48.70 ID:MBVMZiuAO<> >>7
集団ダイブって5人だったっけ…
うろ覚えで4人だと思ってたorz

ところで妊娠男の事件は二人って数えていいのか?
それと、俺的には間にノータリンが入ってた気がしたんだが…

長文スマンす

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(長屋)<>sage<>2011/08/31(水) 20:22:54.21 ID:nrHjRaeRo<> 期待
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:16:14.56 ID:5fZ+aeFuo<> 「ふぇ。ひ、人が死んでるんですかぁ?」

大丈夫ですよ朝比奈さん。そんな猟奇殺人犯からは俺が必ず守りますからね。

とはいえ、今回なんとなくハルヒがこの事件に対して首をつっこむことに関しては意外性を感じてしまう。
なぜなら、朝比奈さんの言うとおり、この事件、人が死んでいるからなのだ。

いつもエキセントリックにぶっ飛んだことをしでかす奴ではあるが、人死を望むような奴ではないので、
ハルヒがこの事件を口にしたとき、「やっぱりか」と思う反面、「まさかな」と思う気持ちも同時に沸き上がった。

そんな事を心中で訝しんでいる俺に、こいつはやっぱり予想の斜め上の言動で返しやがった。

「ホント、嘆かわしい事だわ!」

「何がだ?」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:21:08.43 ID:5fZ+aeFuo<> 「不思議っていうのは楽しくなくちゃいけないの!
そして発見したら楽しんであげるのが不思議に対する礼儀ってものだわ!」

「当たり前でしょ、と言わんばかりに意味のわからんことを言うな」

「当たり前のことじゃないの、キョン。その楽しむための不思議を人殺しなんかに使われちゃ、
これから先心置きなく楽しめなくなっちゃうじゃないの!
[たぬき]が殺人事件を起こしちゃいけないのと一緒よ」


「良く解らん例えだが、不思議がらせないとすぐに警察に捕まっちまうだろうが」

「相変わらずキョンは察しが悪いわねぇ。そんなんだからあんたはいつまでも平団員なのよ」

「まぁまぁ、涼宮さん。それでどうしようと言うのです?」


「だから不思議を見抜けない日本の警察を、この不思議のスペシャリストたるSOS団が助けてあげようってんじゃないの!」


そう言うのを大きなお世話っていうんじゃないだろうか。


「というわけで、明日の不思議探索はいつもの公園前集合じゃなく、渋谷に集合よ!
9時にハチ公前。遅刻したら死刑だから!それじゃ、私は明日の準備があるから先に帰るわね。
戸締りよろしく!」

それだけ言うと、俺が静止の言葉を発する間もなく、ハルヒはいつもの如く颯爽と団室を去っていった。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:28:30.03 ID:5fZ+aeFuo<>
「渋谷、ねぇ」

なんとはなしに呟いてみる。

まあ確かに、いつもの公園駅からなら電車に1時間も揺られれば渋谷には着くわけだし、
遠そうでそんなに遠くはないのだが。

「しかし、涼宮さんがこんな一般的な事件に興味を示されるとは、いやはや、少々意外でしたね」

演技臭い動きで肩をすくめた副団長に、相槌を打つのは朝比奈さんだ。

「そうですよね。殺人事件に関わろうなんてちょっと意外ですよね」

「長門、この事件って・・・」

「違う。これは涼宮ハルヒの願望によって引き起こされた事件ではない。
偶然発生している猟奇事件に涼宮ハルヒが興味を示しただけ」


 そうか。

「おや、少しほっとした顔ですね」

うるさいぞ、古泉。
それにニュージェネが一般的な事件って、どういう感覚してるんだ?
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:34:08.95 ID:5fZ+aeFuo<>
「あくまでも統計学的な見地からの一般論ですよ。
確かに被害者の方々は特異な殺され方をしてはいますが、世界的に見れば決して珍しくもないことですし、
こと日本に限っても変死体なんて結構ごろごろ転がっているものです」


「そ、そんなに猟奇殺人が一杯あるなんて、なんだかこの時代も怖いですね」


「おっと、これは失礼。言い方が悪かったかもしれません。
もちろん、絶対数としては少ないのですよ。ですが、・・・そうですね、
例えば仮に貴方が本当に一般人で涼宮さんとも関わりがなかったとしましょう」


「どういう意味だ」


「例え話ですよ。仮に貴方がただの人だとしたら、『偶然』対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェイスである
長門さんと出会う確率と、なんらかの理由で変死体になってしまった人と出会う確率は、
一体どちらが高いでしょうかね?」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:40:27.26 ID:5fZ+aeFuo<>
「なるほど。そりゃ天文学的な数字を並べる位に長門に出会うことの方が難しいだろうよ」

「そういうことです。それに未来人の朝比奈さん、そして超能力者の僕ですからね。
人類レベルで稀少価値の高い存在に出会う、という意味では、貴方は人類史上稀に
見るほどに、確率の偏った存在ということになるでしょう。
もはや特異点と言っても過言ではないかもしれません」


俺まで人間じゃないもの扱いしないでくれ。


「これは失礼。とはいえ、涼宮さんに出会ったことで、僕ら三人に引き合わされた、
とも言えますから、強運に恵まれたのは涼宮さんに出会った最初の一回だけ、
と言えるかもしれませんが」

そりゃ少なくとも凶運の間違いだ。


「あ、もちろん朝比奈さんに出会えたのは間違いなく幸運ですよ?長門、お前もな」

「これは手厳しい。僕は含めて頂けないのですか」

やかましい。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:49:02.87 ID:5fZ+aeFuo<>
俺の突っ込みが入ったところで窓際の長門が本を閉じた。

最近は長門の読書終了は団活終了の合図となっているので、俺達は団室に鍵をかけて
取り敢えず下校することにしたのだが、やはり帰りの道すがらも話題はニュージェネ事件の
ことに終始してしまう。

「そもそも、ニュージェネ事件ってどんな事件なんだ?」

「おや、ご存じないのですか?」

説明好きの古泉の目がキラリと輝くのを俺は見逃さなかった。

「あ、じ、実は私もあまり詳しくは知らないんです。なんか怖い事件が起きてる、ってことぐらいしか・・・」

「朝比奈さんもですか。実は俺もその程度の認識です。
なんか最近ニュースが騒いでるなって」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 21:56:42.08 ID:5fZ+aeFuo<>
「ニュージェネレーションの狂気と呼称される事件は現在のところ4件発生している」

「最初の事件は『集団ダイブ』ですね」

長門が小さく頷くのを見て、何故か得意げに古泉が前に出る。
ほんとに人に説明するのが好きな奴だ。

「渋谷コーネリアスタワーの屋上から、5名の若い男女が集団自殺しました。
最初はただの自殺の可能性も考慮されていたようですが、屋上の鍵が閉められていたことが発覚し、
事件性が強くなりました」


「自[ピーーー]るくらいなんだから、邪魔されないように鍵くらい閉めるもんなんじゃないか?」

「それが、5人の遺留品からその屋上の鍵は見つからなかったのですよ」


 つまり、どういうこった?


「学校の屋上を思い浮かべて欲しい。
通常あのような施設の屋上扉には手で回せる錠がついておらず、
内側外側共に鍵穴になっていることが多い」

「ありがとうございます、長門さん。
つまりですね、ダイブした5人は屋上に出るために鍵を持っているはずです。
しかし5人の遺留品から鍵は見つからなかった。
その為、論理的に考えるのならば、5人が自殺をしてから屋内に戻り、扉の鍵を閉めた人物がいなければなりません。
加えて、他に誰かがいたという事実が決定的になったのが、ミュウツベにアップロードされた動画でした」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:04:54.04 ID:5fZ+aeFuo<>
「ミュウツベって、あのMu Tube、ですか?パソコンで見られる」

「その通りです。動画投稿サイトMu Tubeに5人がダイブするまでの記録映像がアップロードされたのです」

「悪趣味な奴もいたもんだ」

「むしろ僕は動画をアップロードすること自体が目的、のようにも感じたのですが、
まぁそれはいいでしょう。そして、その動画の中で自殺者のひとりがある言葉をつぶやいていることが、
後に明らかになりました。それこそが」

「その目だれの目」

俺の背後で低い声で長門がつぶやく。

おおう。心臓に悪いぜ。

古泉は「決め台詞を取られてしまいまいしたね」とニヒルな笑を浮かべながら
またも肩をすくめやがった。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:10:50.50 ID:5fZ+aeFuo<>
「次に起きた事件は・・・妊娠男、だったか?」

「妊娠、おとこ、ですかぁ?」

俺の言葉に不思議そうな表情を浮かべる朝比奈さん。
想像を巡らせる表情がなんとも愛らしい・・・。
だが、次の長門の一言で、その不思議そうにしていた表情が一瞬で凍り付く。

「そう。男性の腹部に妊娠30週前後とおぼしき胎児が埋め込まれた状態で発見された」

「・・・え?ひぇっえええええええ!?」

「男性の腹部は生きている状態で裂かれ、胎児を入れられ、閉じられた」

想像するだにグロいぜ・・・。

「ちなみに、殺された男性と、胎児の間に血縁関係はありませんでした」

「・・・赤ちゃんが、可哀想です」

補足したのは古泉。朝比奈さんは既に涙目だ。
まぁ、無理もないよな。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:19:26.11 ID:5fZ+aeFuo<>
「三つめが張り付け」

「磔?」

オウム返しに聞き返すと、長門は空中に指で文字を書き始めた。
『張り付け』であるらしい。

「磔、でもあまり違いはない。ただネット上ではしばしば『張り付け』が用いられている。
男性の死体が、コンクリートの壁に鉄製の釘で張り付けられていたことから、このように呼称されているものと思われる」

「おいおい待てよ。コンクリートの壁に杭なんて打てるのか?
しかも大人の男一人を張り付けにするなんて、そんなに簡単じゃないんじゃないのか?」

「簡単にはできそうにないことが、現実に起きている。だから『猟奇的』と言うのでしょう」

またも古泉がやれやれと肩を竦める。いちいち癪に障るリアクションをする奴だ。

「杭にはドイツ製の特殊なものが使用されている。
力を要するが、コンクリートに打ち込むことは可能と思われる」

まぁ、長門がそう言うんならそうなんだろうよ。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:25:58.62 ID:5fZ+aeFuo<>
「そして4件目、これが最新の事件となりますが、『バンパイ屋』というわけです」

バンパイア?

「いえ、バンパイ『屋』です」

「ええい、ややこしい」

「えっと、それはどんな事件なんですか?」

そんな朝比奈さんの疑問に、一瞬躊躇する素振りを見せる古泉。

「ある大手オークションサイトにですね、出品されたんですよ。
全身の血液が抜かれてまるでミイラのように変色した遺体の写真が」

「ち、ち、血、ですか」

「こら古泉。怯えてるじゃねえか」

「すみません。驚かせるつもりはないんです。そして、その写真、渋谷駅のトイレの一室なのですが、
壁面に血文字で『その目だれの目』と、またも書かれていたのです。
まるで、ダイイングメッセージのように」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:31:50.54 ID:5fZ+aeFuo<>
「ったく、その『その目だれの目』ってのはなんなんだ?」

「これについては全くの謎のようでして、最近の若者の間では流行り言葉にすらなっています」

「流行り言葉、ですかぁ?」

「例えば・・・そうですね、明日は大変そうですねその目だれの目? みたいな感じですね」

「朝比奈さんは今日も可愛らしいですねその目だれの目?」

「そう。そんな感じです」

「やれやれ、全く意味がわからんぞ」

「意味など無いのですよ。きっと」
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(チベット自治区)<>sage<>2011/08/31(水) 22:37:53.43 ID:5fZ+aeFuo<>
「ところで、そんな物騒な街に行ってホントに大丈夫なんだろうな?」

「そ、そうですよね。ちょっと、怖いです」

「問題ない」

怯えた朝比奈さんににべもなく告げたのは相変わらず無表情な長門だ。

「な、なんでですかぁ?」

「現在渋谷区の昼間人口は約20万人。休日となれば更に数万人は増加する。
その中において9名の死亡いう数値は無視して良いレベル」

「そうか?実際に人が殺されている街だったら、それなりに用心するにこしたことはないと思うがな」

「何かあってもあなた達には危害を加えさせない」

長門はそう言うと俺と、朝比奈さんと、古泉の目を見て

「私が、させない。だから問題ない」

強く、言い切った。
万能宇宙人の長門がこう言い切るからには、俺達の安全は保証されたようなもんなんだろうな。

「ありがとよ。だけど無茶はすんなよ」

「そうですね。僕も自分の身くらいは守れるように用心いたしましょう」

「が、がが頑張ります」
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/09/01(木) 17:58:37.94 ID:8s22uBe7o<> ギガエロマニアックスに見えて開いたのは俺だけで良い

支援支援
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(長屋)<>sage<>2011/09/01(木) 20:57:52.59 ID:7WfklRzl0<> 古泉て確かカオヘ出てたよな?
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 読んでくれてる人、ありがとう!<>sage<>2011/09/01(木) 21:38:21.37 ID:5tOXKGFko<> ―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
―――――――――



『あなた、知ってるよね?知ってなきゃおかしい。知っているはずよ?
知らないはずがない。いいえ、あなたは知ってる。
知・っ・て・る・よ・ね?』

『西條、タクミくん?何かあったらいつでも連絡して』

『もうっ、おにぃ!早く携帯買いに行くよ!』

『ずっとここにいればいいんさぁ。ここにいれば誰にも見つからない。
将軍にだって見つからないよ?ずっと、ずぅうっと私が守ってあげるって!』

『おいおいタク!いつの間にあんな可愛いこと知り合ったんだよ!?
おいー、今度紹介しろよなー!』

『あれ?タク・・・、よかった』

『ディソードを、探して』



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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 21:43:36.98 ID:5tOXKGFko<>






「・・・なんだ?今の夢・・・か?」










  
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 21:52:59.63 ID:5tOXKGFko<>
「遅い!罰金!」

もはやお約束のような不思議探索開始の掛け声である。

ハチ公のド真ん前を陣取って、仁王立ちのハルヒが大声で叫ぶ。

そんなハルヒに対峙する俺は、既に駅の改札からここまでの人ごみの多さに既にへとへと
だったりするのだが、俺の疲労度に反比例するかのようにハルヒの元気の良さったら。

忌々しい、ああ、忌々しい。


それにしてもまだ朝の9時前だってのに、人の多い街である。

ハチ公の前は俺達と同じように待ち合わせと思しき男女がひしめき合っているし、
目の前を通り過ぎる人の数も地元の比ではない。

よくもまぁ、こんなに人間が集まったもんだ。

「さて、それでは一旦どこか喫茶店にでも入りますか?
なにせ初めての街ですから、それなりに計画を練ったほうが良いのではないでしょうか」

「さすが副団長ね。確かにそのとおりよ。
それじゃあのO-Frontにコーヒーショップがあるから、そこで今日の計画を練りましょ」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:01:48.36 ID:5tOXKGFko<>
俺達はスクランブル交差点を渡ってすぐの建物にあるコーヒーショップに入っていった。

注文は入ってすぐのカウンターで行い、二階にある客席を自由に使用するスタイルのようだ。

まだ9時前という時間も手伝ってか、なんとか席は確保できたようだが、それでもほぼ満席状態のようだ。

辺りを見渡すと窓際でカメラをを構えている外人が多く見受けられる。
それも結構しっかりしたカメラを使用していて、旅行者だろうか?という疑問よりも、なに撮ってんだ?
という疑問が先に立ってしまう。

気になって俺も窓の外を覗き込むと、なるほど、こりゃ壮観だ。

さっき渡ってきたスクランブル交差点が見渡せるのだが、信号が青になった途端に何百という人間が一斉に混ざり合う様は、
まさにスクランブル交差点と呼ぶに相応しい。

「ふわぁ、すごいです」

「外国のガイドブックでは、既に観光地の一つとして紹介されているようですよ」

「こら、なにやってんのよバカキョン。そんなもの見てないでさっさと作戦会議よ!」

へいへい、っと溜息をついて席に戻ると、既にハルヒのコーヒーカップは底を見せていた。
ホントにこいつの喉はどんな材質でできているんだろうか。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:09:56.46 ID:5tOXKGFko<>
「それで、今日はどうするんだ?」

「そうね、まずは事件の現場を見てまわろうと思うわ。現場100回ってよく言うしね」

「そう仰られると思って、簡単な地図と事件の一覧を作成しておきました」

そう言って地図と事件リストをテーブルの上に広げる。なんとも抜け目のない。

「さっすが古泉くん!いい働きよ!」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、まずはいつものとおり組み分けから。爪楊枝はないから、マドラーでいいわよね」

あっ、俺はまだ使ってるってのに。
そんな事など気にもしないで各々が使用していたアイスの棒みたいなマドラーを強引に集めると、例のごとく赤ペンで印をつけて即席のくじ引きにする。

「僕は、無印ですね」

「赤」

「あ、印ありです」

「私も印ありだわ」

「げ、ということは・・・」

俺の手に残されたのは無印のマドラー。

「おやおや」

なにが悲しくて週末の休日に、男二人で渋谷なんて歩きまわらないといけないんだろうな。
いつもの不思議探索に輪をかけて悲しくなってきたぜ。

「それじゃ、各チーム毎に現場を見てまわること。
もちろん、それ以外にも不思議そうなものがあればそちらを優先しても構わないわ!
ほかはいつもどおり。一旦12時になったらまたハチ公前で集合よ。それじゃ、解散!」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:16:37.62 ID:5tOXKGFko<>
「しかし古泉よ」

店を出た俺達は取り敢えずここからだと一番遠くになる渋谷コーネリアスタワーへ向かって歩いている。
地図で事件現場の地理を確認したところ、コーネリアスタワーだけが駅の南側に位置している国道を
越えたところにあるので、まずは遠いところから攻めることにしたのだ。

「噂には聞いていたが、渋谷ってのはホントに人の多い街だな」

「はは、そうですね。どこを見ても人ごみばかりですから」

ったく、これだけ人が多いと少しだけだが閉鎖空間が懐かしく思えてくるな。

「あまり不謹慎なことを言わないでください。
閉鎖空間の処理は、あれでいてその実結構重労働なんですから」

「それにしても、なんでわざわざ俺達はこの貴重な休日に、渋谷なんて洒落た街に来て、
男ふたりで事件現場の見学なんてことをやっているんだろうな」

「言わないでください。僕も少し、いえ、大分、残念に思っているのですから」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:24:39.84 ID:5tOXKGFko<>
そうこうするうちに、コーネリアスタワーの下に辿りついた訳なのだが、こりゃ想像していたよりもよっぽどでかい建物だ。
入り口すぐの施設案内じゃ地上41階と書かれている。

高さは約180メートル、屋上にヘリポート。
こりゃ落ちたら即死は免れんな。

取り敢えず高層用エレベーターに乗り込み41階を押すと、凄い勢いで階数表示の数値が上がっていく。
ついで、耳に違和感。

そこから数秒でエレベーターは最上階に到着し、屋上への入り口を探しているのだが、
この雰囲気は高校生がうろついていい感じじゃないぞ。

ものすごーく場違いな空気を感じながら歩いていると、警備員が扉の前に立っているのが眼に入る。
後ろの扉にはご丁寧にKEEP OUTのテープまで貼られているところを見ると、この先が事件現場のようだな。

「やっぱり立入禁止だな」

「ええ、まぁ予想はしていました」

そう言うと古泉は特に躊躇うこともなく警備員の方へ歩いていく。
そして、2,3言葉を交わしたかと思うと、警備員は俺達を招くように扉を開いた。

「また機関の差し金か?」

「予想はしていた、と申し上げたでしょう?」

不敵な笑みを浮かべて階段を登っていく古泉を追いかけて、俺も後を追う。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:36:08.94 ID:5tOXKGFko<>
屋上に出る扉を見ると、なるほど、ノブとその上部に鍵穴が付いていた。
長門の話の通りなら外側にも鍵穴があるわけか。

屋上に出ると強烈な風が俺達に吹き付ける。
さすが地上180メートル。そこからの景観は、そりゃぁ凄いものだった。

街を歩いているときはどこもかしこも高い建物ばっかりだと思っていたのだが、
この場所からは自分より高い建物が見当たらない。

いや、遠くの方に高そうな建物は見えるのだが、あの形からすると都庁か。
新宿の方まで一望できるってわけか。

「そのうち、女性を連れて夜景でも見にきたい位の光景ですね。どうです?
そのうち涼宮さんとご一緒されてみては。そして耳元でアイラービュー、と囁くんです」

「蹴り落とさるのがオチだろうよ」

朝比奈さんと来るのならやぶさかではないがな。

さて、屋上に出たはいいが、特に何の変哲もないヘリポートだ。
基本的には緊急用としての用途しか無いようだから、ヘリが停まっているわけでもないし、特に面白いものは見当たらない。

そもそも、集団ダイブなのだから、5人が亡くなった現場はここから180メートルほど下になるんじゃなかろうか?
そんな事を考えていると、古泉がなにやら小さな機械を取り出した。

なんだそれ?
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:50:35.80 ID:5tOXKGFko<>
「ああ、僕もよくわからないのですが、何かの測定装置だそうです。
長門さんからお預かりしました。持ち歩いて、現場でスイッチをいれるだけでいいそうなので」

しばらくするとピッという電子音と共に、何かの測定が完了したことが通知される。

「なあ古泉。5人がダイブしたのって、こっち側だったよな」

俺はその方向に歩きながら古泉に尋ねる。

「ええ、そうですね。丁度その柵の向こう側から、5人は手をつないだままダイブしました」

「ここから180メートル。多分数秒なんだろうけど、5人はどんな気持ちだったんだろうな」

ひゅぅと、俺の前を風が通り過ぎた。

「あまり、深く考えない方がいいですよ」

いつものニヒルな笑顔を少しだけ崩して、古泉はそう言った。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 22:59:03.75 ID:5tOXKGFko<>
その場を後にした俺達は、次いで渋谷駅のトイレへ来ている。
4番目の事件である『バンパイ屋』の現場を見るためだ。

といっても、利用者の多い渋谷駅のトイレである。
既に通常の使用が可能になっており、特に何の変哲もないトイレになっていた。
しかし、なんとなくこの個室は使う気にはなれないけどな。

知らずに使ってあとから知るのも怖いが。

そんな事を考えていると古泉が先ほどと同様に小さな機械を操作している。
20秒ほどで測定が終わり、トイレを後にするとまだまだ集合時間までは時間が余ってしまっている。

「さて、どうしましょうか?」

「そうだな。少し時間があるとは言っても、30分程度だしな。ハチ公の周りにも座れる場所はあったし、待っててもいいんじゃないか?」

「そうですね。僕もこの人ごみの中をこれ以上ウロウロするのも、少々辟易していたものですから、そう言って頂けると助かります」

というわけで、俺達は駅の構内を抜けてスタート地点のハチ公前に戻ってきたのだが、朝以上にこの周辺の人口密度が上がっている。
こりゃホントに凄いとこにきちまったな、と田舎者丸出しの感覚でキョロキョロしてしまう。

家からここまでたったの一時間程度なのだが、一時間でこれはもう別世界に来てしまったと言っても過言ではない感じだ。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 23:06:43.17 ID:5tOXKGFko<>
「ところで古泉。お前はこの事件、どう思ってるんだ?」

「どう、とは?」

「ああ、いや。この間お前はこのニュージェネを一般的な事件、と言っただろ?
しかしなぁ、あのハルヒが興味を示しちまったんだ。
その事実だけで普通の事件じゃなくなっちまうんじゃないか、なんて思うのは過剰反応なのかね?」

「そう思うのも致し方ないかと。それくらい彼女の周りには不思議が集まりすぎています。
もっとも、時には彼女がその不思議を引き起こすトリガーとなってしまう場合もあるわけですが。
しかしながら、そうですね、今回ばかりはあまり危険視はしていません。
これは機関としても、僕個人としても、です」

「ほう、そりゃまたどうしてだ?」

「以前から申し上げている通り、涼宮さんは非常に常識的な方です。
そしてきちんとした良心を持ち合わせている。
つまり、不思議自体が人を[ピーーー]ことは有り得ないし、今回の殺人事件についても不思議を装った殺人犯が人を殺している、
と考えるはずだからです」

「相変わらず回りくどい。つまりなんだ、ハルヒは『人を[ピーーー]のは常に人間だ』ということが分かっている、ということか」

「その通りです」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 23:14:55.59 ID:5tOXKGFko<>
まぁ、俺はその不思議って奴に殺されかけたことが何度かあるんだけどな。

時計をみるとまだ集合時間の12時までは20分程度の時間があった。
暇を持て余しているということもあるし、なにより少し喉が乾いた。

俺は古泉に断って自販機に飲み物でも買いに行くことにするか。

「それでは、僕にも缶コーヒーなど買ってきて頂けると」

へいへい、あとで金は払えよ。

ハチ公から少し離れたところに自販機を見つけて、缶コーヒーを二つ買った。
手で持つには少し熱すぎたのですぐに上着のポケットにねじ込んだ。

ところで缶コーヒーって缶は持てないほど熱いのに、飲んでみると意外にぬるかったりすることってあるよな。
そんな事を考えながらハチ公前に戻ってみると。

「いえ、ですから友達を待っているのですよ」

「えー、いいじゃん、そんな事言わないでさ。一緒に行こうよ。お昼奢ってあげるし、ね?」

古泉一樹が、逆ナンされていた。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/01(木) 23:24:46.33 ID:5tOXKGFko<>
見れば大学生くらいだろうか?

ちょっと派手目な格好をした二人組が、馴れ馴れしく古泉に絡んでいる。

くそっ、この爽やかイケメン野郎は本当にモテるらしい。

ただ、困惑顔の古泉を見るのはなかなか無いことなので、ちょっと観察してみようかといたずら心が芽生えてきた。
どうせ何かしようったってハルヒ達のことを考えりゃこの場を離れる訳にもいかないわけだし、
俺が合流して彼女たちを追っ払ったところで、ハルヒ達が来るまで無為に暇つぶしするしか無いのだから、
いつもポーカーフェイスか地の顔か判別のつかない野郎の困っている姿を眺めて
時間を潰そうと考えた俺を誰が責められよう。

「それにしてもホントに君イケてるよねー。背も高いしさー、手足も細いしさー」

「それでいてそんなに線は細くないよね。結構がっしりしてたりして。
脱いだら凄いんです、みたいな?」

あまり上品とは言えないその二人組は困惑顔の古泉をおいてけぼりに、勝手に盛り上がっては勝手に笑っていたりする。

と、そこで目ざとく古泉が俺を見つけて、助けてくれと言わんばかりの視線を投げかけてくる。

男からそんな視線を投げつけられてもちぃっとも嬉しくないぞ。

意地悪な笑みだけ返して、取り敢えずそっぽを向いておこう。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 00:04:45.10 ID:b5AJy4p5o<>
「それでさ、私たち渋谷は結構詳しいからさ、ランチの美味しい所も知ってるし、ねっ?一緒に行こうよぉ」

「ですから、先程から何度も申し上げている通り、僕は友人を待っているのですよ。
残念ですが、あなた達とは・・・」

その時、視界の端に黄色いカチューシャが入った。

脳がそのシンボルを認識した時、俺は静観していたことを若干、いや、大きく後悔し始めていた。

「こらぁ!そこのあんたち!うちの大事な団員になにしてんのよ!?」

仁王立ちのハルヒだった。

「す、涼宮さん!?いや、これはですね、いえ、何でも無いんですよ。安心してください」

「ふえっ、ど、どうしたんですかぁ?」

「おそらく、逆ナンパと呼ばれる行為」

何故か慌てて弁解する古泉に少し遅れて朝比奈さんと長門がやってくる。

あーあ、あの女二人、ハルヒ達三人に囲まれて、こりゃダメだと思ったに違いない。

そりゃあ、朝比奈さんや長門みたいな美少女コンビを見たら、
ハルヒみたいにやたら自分に自信がある奴以外は戦意喪失しちまうだろうしな。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 00:06:19.60 ID:b5AJy4p5o<>
「ぎゃ、逆ナンパ・・・ですかぁ」

「古泉一樹の容姿は一般的に端正と言われる部類。特別不思議なことではない」

「へぇ、アンタ達、うちの古泉くんに手をだそうなんて、いい度胸じゃない」

「な、なによこいつら」

女性二人が気色ばむ。

「あー、ハルヒ。そこまでにしとけ。ほら、あんた達ももういいだろ?」

「では、失礼しますね」

俺が女性二人を制止している隙に、古泉はさっさとハルヒ達を促して歩き始める。

さすがに彼女たちも更に追いかけてくるようなこともせず、しぶしぶといった面持ちでその場を去っていった。

「まったく、うちの団員に手を出そうなんて、不届きな奴もいたものだわ!大丈夫?古泉くん」

「ええ、お陰さまで助かりました。何度断ってもしつこく言い寄られてしまって・・・。
どこかの誰かさんは助け舟も出してくれませんでしたし」

いつもより粘り気が強いぞその視線。

まぁ、今回ばかりは悪かったと謝っておくよ。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 00:08:37.32 ID:b5AJy4p5o<>
「まぁでも、さすが古泉くんだわ。どこかの誰かさんにはこんな出来事絶対起きないだろうしね」

ハルヒがジト目で俺を見る。
俺を見るな。

「なによ、あんたも逆ナンされたの?」

「そりゃされてないが」

「人間ってさぁ、平等じゃないわよね」

「そういうお前はどうな・・・」

と、そこまで言いかけて少し後悔した。

ハルヒはまるで可哀想な物でも見るような目で俺を見ながらこれ見よがしにため息を吐く。

「あんたねぇ、こっちにはみくるちゃんに有希がいるのよ!
これでナンパされないなんて、それこそ不思議な事態だわ!」

「そ、そんな事ないです。それに一番声掛けられてたの涼宮さんじゃ・・・」

「間違いない」

「あんな奴らに声を掛けられたのは、掛けられたうちに入んないわよ!」

忘れていた。ハルヒは、黙っていれば美少女なのだということを。

しかし朝比奈さんよりハルヒの方がナンパされた数が多いってのは信じがたいが、
長門が言うのだから間違いはないのだろう。

いや、どうでもいいんだけどな。

「SOS団員たるもの、常に気を引き締めてなさい!あんなのにフラフラついてったら承知しないからね!
特にキョン、あんたなんかすぐに鼻の下伸ばしてどっか行っちゃいそうなんだから、気合いれなさいよ!」

中学時代に告白されたそばから付き合ってた奴に言われたかねえよ。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 21:55:24.24 ID:b5AJy4p5o<>
そんなこんなでがやがや言いながら適当な店でランチを済ませると、午後の部のメンバー組み合わせが決められた。
爪楊枝を使用したくじ引きの結果、ハルヒ−古泉、俺−朝比奈さん−長門、という組み分けになった。
古泉と二人きりの午前の部と比べたらまるで天国のようだぜ。

「あー、ところでハルヒ。コーネリアスタワーだがな、屋上には出られなかったからな」

別れ際にハルヒに言っておく。こうでもしないと古泉の素性がバレるかも知れないからな。
古泉、これでさっき助けなかったことはチャラだぜ。

「さて、俺達はどうしましょうかね?」

「そうですねぇ、一応妊娠男と張り付けの現場には行ってきたんですけど・・・」

俺と朝比奈さんが次にどこに行くべきか思案していると、珍しく長門が自己主張するような目で俺を見てきた。

「来て」

そう言うとさっさと歩き始めてしまう。
そのまま107の脇を抜けて道玄坂をまっすぐ登り始める。
このまま神泉方面へ行くとしたら、事件現場としては張り付け事件の現場が近いのだが。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:05:26.34 ID:b5AJy4p5o<>
「こっちの方向ってことは、張り付けの現場に行くのか?」

「そう」

「え、でもそこはさっき行きましたよね?」

「そう。でも気になる」

なにが気になるんだ?

「正確に表現することは難しい。でも、気になる」

「分かった分かった。そこまで言うなら別に構わないさ。それに他に行くべき場所も無いしな。
朝比奈さんもいいですよね?」

「私は構わないですよ」

ニコニコと笑顔の朝比奈さんを尻目に、無表情のままどんどん道玄坂を登っていく長門。

登り切って幹線道路沿いの道から右手に入り、円山町の細い路地を歩いていく。
道が入り組んでいてちょっと道幅が狭いが、閑静な住宅街と言うに相応しい街並みになってきた。

坂の下と上でこうも街の雰囲気が違うとは、これもまた新鮮な驚きだ。
そんな事を考えているうちも長門はすたすたと歩いて行ってしまう。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:14:46.70 ID:b5AJy4p5o<>
 「あれ?」

何度か角を曲がったところで、つい呟いてしまった。
長門がいない。いや、それどころか、朝比奈さんはいつから居なかった?

急に全身が総毛立つ。とてもおかしな雰囲気を感じる。

どこか、閉鎖空間にも似た感覚が急に辺りを包み始めたように感じられた。
はっきりとはわからない、不穏な雰囲気。

カンッ!

どこかで聞こえた甲高い音に、背筋に冷たいものが走った。
なんだ、今の音は。

カンッ!・・・カンッ!

「っ・・・!」

今度ははっきりと、次の角を曲がったところから、音が聞こえた。
なんだ、この嫌な感じは。

「長門!朝比奈さん!どこですか!?」

閑静な住宅街には不似合いな声を上げる。
だが、辺りはしんと静まり返っていて、その間も甲高い音は続いていて。

俺は、角から先を覗き込んでしまった。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:19:10.16 ID:b5AJy4p5o<>
「・・・なっ、に!?」

一瞬その光景を脳が認識しなかった。
角を曲がったその先の、細い路地の最奥部。

薄暗いコンクリートの壁に、血まみれの男が磔にされていた。

「う・・・ぁ」

喉元まで出かかった悲鳴を腹の中に押し込める。
磔にされた男の前に、髪の長い女がいる。誰だ。犯人か?
気づかれちゃいけない、と頭が反応したのは僥倖だったのだろう。

まだ、女は気づいていない。さっさと逃げ出せ。

頭が足に命令する。
だが、俺の足は地面に磔にされたように動かない。

ゆっくりと、髪の長い女が振り向いて。

「そんなところで何をしている」

切れ長な瞳をこちらへ一直線に向けて、鋭く、清冽な響きを孕ませた声を響かせた。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:28:47.85 ID:b5AJy4p5o<>
磔の前で佇む少女。年の頃は同じくらいだろうか?
どこかの高校の制服を着て、綺麗な黒髪は腰の上で揺れもせずに留まっている。

彼女の瞳は微塵も揺れずに俺の目を見据えていて、俺はその視線から逃れることができなかった。
それは別に、その女子高生が意外にも美人だったから、とかそんな理由では無いぞ。決して。

「何をしているのか、と聞いている」

俺はなにをしているんだろうね?
高校に入って涼宮ハルヒなんて無自覚な破壊神と出会ってからというもの、そりゃあ確かに不思議な連中と知り合いにはなったさ。

宇宙人に未来人に超能力者だぞ。

そしてそんな連中と閉鎖空間なんて異世界にも行ってみたりもしたさ。

だからな、大抵のことには動じないつもりではあったんだ。

磔にされた男を見たってそんなに動揺せずにいられたのも、きっとそんな経験値の賜物なんだろうさ。

だけどな、やっぱり人間苦手なものというか、トラウマ、みたいなもんがあると思うわけなんだが、
どうしてか俺はそのトラウマの原因って奴に縁があるらしい。
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:34:59.89 ID:b5AJy4p5o<>
「貴様、耳が聞こえないのか?何をしているのか、と聞いているんだ」

少女は更に切れ長な瞳を釣り上げて、こちらに一歩にじり寄ってくる。

「ま、待て!話せば分かる!」

「何をそんなに慌てている?」

「何を慌ててるかって、あんた何言ってんだ!?」

「おい、貴様・・・」

「だから、ま、待ってくれ!寄るな!」

何をそんなに必死になってるのか、だって?

「そんなでっかい剣持ってる奴に会ったら誰だって慌てるって!なんなんだそれは!?」

その女子高生は、身の丈くらいはありそうな鈍い蒼を放つ剣を持っていた。

いや、どこのベルセルクだあんた。朝倉涼子のアーミーナイフが可愛く見えるぜ。

「・・・・なん、だと・・・?」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:48:19.00 ID:b5AJy4p5o<>
俺がその剣を指摘した瞬間に、彼女は表情を凍り付かせた。
なんかまずい事でも言っちまったらしい。

「おい、お前、これが見えるのか?」

少女は軽々とその剣を俺の方へ差し伸ばす。
身の丈もありそうな剣は、どれほどの重さなのだろうか、見た目通りの細腕でよく支えられるものだ。

「見えるもなにも、そんなデカいもんが見えないわけないだろうが」

「見つけた・・・、貴様もギガロマニアックスだな!やっと見つけたぞ!」

ギガロマニアックス?なんだ?何を言っている?
おい、電波か?電波なのか?
慌てて思考が停止している俺を尻目に彼女は更にこちらへ近寄ってくる。

「リアルブートしていないディソードが見えるとはな。
やはりまだ他にもギガロマニアックスはいると思っていたが、予想通りだな」

「マジでシャレになってないぞ!だから近寄るなって!」

「まだとぼけるつもりか・・・。そっちがその気なら・・・」

そう言うと彼女は剣を目の前で構え直し、切っ先を一直線にこちらへ向けた。
迸る清冽な輝きと、威圧感が俺を圧倒する。

一瞬、その切っ先がゆらっ、と揺れて。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 22:52:40.90 ID:b5AJy4p5o<>
「はあっ!」

彼女は裂帛の気合と共に、俺へ向かって疾駆した。

妙にゆっくりと、振りかぶられる切っ先が彼女の肩口に消えて、再び現れて、
正確に俺の首筋へ目がけて滑るように空気を切り裂く。

走馬灯なんて見えやしない。

見えるのは剣が放つ蒼い光の軌跡だけ。

「そこまで」

その軌跡があと少しで俺の首元へ飛び込む直前に、俺と彼女の間で俺を心底安心させるささやかな声がした。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 23:01:46.03 ID:b5AJy4p5o<>
「ギガロマニアックス?」

「そうだ。お前、ギガロマニアックスじゃないのか?」

「えっと、その、キョンくん?これもこの時代の流行り言葉ですか?」

「いえ、多分、違うかと」


あの後、長門VS朝倉の時のように某週刊漫画みたいな戦闘には発展しなかったので一応補足しておく。

長門の活躍で命からがら、文字通り首の皮一枚つながった俺は、距離をおいた女の子に休戦
(初めから戦闘なんかする気はないのだが)を申し入れて、情報交換をさせて欲しいと申し出た。

俺としてはなんでいきなり襲われなければならなかったのかも知りたかったし、
彼女は彼女で俺に剣が見える理由を知りたがっていた。

かくして、ここに交換条件が成立したわけである。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 23:11:01.27 ID:b5AJy4p5o<>
路地から元きた道へ戻る途中で朝比奈さんと合流したのだが、朝比奈さんにもこの少女の剣は見えているようだった。
同じように、この少女は驚きを隠そうともせずに、ギガロマニアックスがどうとかのたまっていたが、
でっかい剣を見て狼狽していた朝比奈さんのほうが余程驚いていたに違いない。

合流した俺達はしっちゃかめっちゃかな朝比奈さんをなだめつつ、近くの公園にでも、
という事になり平和的に松濤公園まで移動してきた、というわけだ。

「最初に言っておくが、普通はな、この剣は見えないんだよ」

「見えない・・・って、いや、持ってるじゃないか」

「そう・・ですよね」

「ちなみに私にも見えている」

長門も同調するように首をわずかに縦に振る。


「ええい、だからだなぁ・・・!」

埒があかない、といった様子で頭をガシャガシャとかきむしってから辺りを見回して、
手近なベンチへ歩いていく。

「ちょっと見てろ」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 23:16:11.49 ID:b5AJy4p5o<>
言うや否や、彼女はその蒼く光る剣を振りかぶり、縦に一閃。ベンチを一刀両断にした。

「ひゃっ?!」
「お、おいっ、なにして・・・」

「よく見ろ」

俺と朝比奈さんは首を傾げてその切られたベンチをしげしげと眺める。

「ふぇ?・・・切れて、ない?」

おいおい、どういうこった。確かに今『切った』はずだぞ。

「つまり、こういう事なんだよ」
「つまり、どういう事なんだ?」

「だから、この剣には実体がないんだ!リアルブートしていないからな」

「リアルブート?」

「この剣はディソードと言ってだな、虚数展開物質で構成されている。
一般的に言うなら・・・そうだな、幻でできているんだよ。
だから当然、普通は見えない」

「いや、しかし」

「しつこいぞ」

言いながら、彼女は剣をあさっての方向に突き出した。
丁度歩道を遮るように剣を差し出した格好だ。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 23:44:16.17 ID:b5AJy4p5o<>
5メートルほど先から、こちらへ向かって老夫婦が向かって歩いている。
ゆっくりとした歩みではあるが、特に危なげなところもない。

だが、妙だった。

目の前に剣が突き出されているにも関わらず、特に気にした様子がない。

2メートル。

もう眼前に剣が迫っているというのに、変わらずこちらへ歩いてくる。

1メートル・・・50センチ・・・ゼロ。

「おいおい、これは」
「これで分かったか?」

最後まで老夫婦は突き出された剣を意識せずに、あまつさえ顔面からもろに剣に突っ込んだにも関わらず、
何事もなかったかのようにすり抜けてそのまま公園の奥へ歩いて行ってしまった。

「恐らく私と彼と彼女の『剣が見える理由』はそれぞれ異なると思われる」

と、ここで静観していた長門が口を開いた。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/02(金) 23:51:57.35 ID:b5AJy4p5o<>
「剣が見える理由が違う、だと?」

「そう。私は情報統合思念体が創りだした対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェース。
情報がそこにある限り、私に観測できないものはない。故に虚数展開物質も観測は可能」

「お、おい長門?そんな事いきなりバラしていいのか?」

「問題ない」

「情報統合・・・?すまん、もう一度いいか?」

「私は情報統合思念体が創りだした対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェース。
情報がそこにある限り、私に観測できないものはない。故に虚数展開物質も観測は可能」

少女が困惑を隠そうともしない瞳で俺を見ていた。

分かる。分かるぞその気持ち。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:04:09.80 ID:eIZ4zcdGo<>
「あー、つまりだな・・・こいつは、宇宙人、なんだよ」

「・・・・」

「それから、朝比奈さん、彼女は未来人だ」

「・・・・・」

「えっと、未来人、です」

「お前は?」

「俺か?俺は・・・ジョン・スミスだ」

カタカタと切っ先が揺れていた。

「貴様らぁ!私を馬鹿にしているだろう!何が情報交換だ!
こちらが素直にディソードのことを教えてやったというのに、ふざけるのも大概にしろ!」

「ひぇっ?!」

「いや、ふざけてないからね!?ほんとだから、これホントだから!だから剣構えるのやめて!」

「だったらもう少しまともな嘘をつけ!」

「待って」

「なに?」

「証拠を見せる」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:09:09.85 ID:eIZ4zcdGo<>
怒りを爆発させた彼女を尻目に長門はディソードに触れて、お馴染みの宇宙言語を呟いた。

「・・・なん、だと・・・?」

彼女の持つ剣が、まるで朝倉が消えたときみたいにキラキラと光の粒子になって霧散する。

「お、お前、私のディソードに何をした!?」

「安心して欲しい。一時的に虚数展開された情報にバグを紛れ込ませて意味消失させた。
すべて消えたあとで再度貴方が願えば、ディソードは出現する」

その言葉の通り、彼女はディソードが消え去るのを待ってから、一度手を閉じて。
そして、再び開いた時にはそこにディソードが顕れていた。

「いったい、どういう事だ」

「彼の話は本当。貴方は私たちの話を聞くべき」

「・・・・・」

「納得してくれたか」

「まだ信じがたいがな」

「ありがとよ」

「礼を言われるようなことじゃない」

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:16:31.97 ID:eIZ4zcdGo<>
さて、せっかくここから本格的に情報共有をしようかと言うところなのだが、ハルヒ達と合流する時間が迫ってきてしまっていた。

それに、ここからの話は古泉にも参加してもらったほうが良いだろう。
こういう小難しい話は奴に任せるに限るぜ。

ということで、俺達は一度別れて不思議探索終了後に再度落ち合うことにした。

「私は蒼井セナだ。連絡先を渡しておく」

「分かった。それじゃこれは俺の連絡先だ」

「それから、後ほど合流する際には私も仲間を連れて行くからそのつもりでいてくれ」

それだけ言うと、彼女は踵を返して歩いていく。

「あ、あの!」

とそこで突然、朝比奈さんが彼女を呼び止めた。


「なんだ?」

「あ、あの、TPDDを知っていますか?」

「TPDD?新手のクスリかなにかか?」

「いえ・・・、その、ご存じないなら、いいんです」

「?」

「すまん、俺も一つ教えてくれ」

「なんだ?」

「さっきのあの張り付けは、なんだったんだ?」

「あれか」

蒼井セナは、ああ、とどうでもいい事を思い出したような表情で。

「あれは、私の妄想だ」

そんな風に答えた。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:26:06.80 ID:eIZ4zcdGo<>
さて、とっぷりと日も暮れて夜の渋谷駅前はそりゃあもう昼間の比では無いくらいに人が増えていた。

あれからハルヒ達と合流し、成果を報告し合いながら俺達は一旦地元の駅まで戻ってきては、
何事もなかったように帰路に着くふりをして、各々改めてトンボ帰りで渋谷まで舞い戻ってきたわけである。

ハルヒに隠し事をしているようで後ろめたい気もするのだが、これから長門や古泉、
朝比奈さんの素性も含めて話をするとなると、ハルヒにいてもらっちゃ困るんでな。

仕方ないがご退場願ったわけだ。

「なるほど、そのような方と出会われていたのですね」

「あれも一種の超能力って言っていいと思うんだが、機関では何かつかんでたりしないのか?」

「いえ、ちょっと聞いたことがありませんね。我々が知り得る超能力者は涼宮さんに関わる能力、
つまり閉鎖空間の発生を感知し、侵入し、神人を消滅させる、という能力しか有していないのですよ」

渋谷へ戻る電車の中で、古泉に蒼井セナという少女とギガロマニアックスという言葉について話しておく。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:39:12.01 ID:eIZ4zcdGo<>
「あのぉ、キョンくん」

「なんですか、朝比奈さん」

「あの、さっきの蒼井さんのディソード、でしたっけ?あれって、未来の技術に似ているんです」

「なんですって?」

「その、私たちはIFSって呼んでるんですけど・・・」

「IFS?」

「詳しくは禁則事項なんですけど、その技術を使えばあんなふうに剣を出したりしまったりってできるとおもうんです」

「まるで四次元ポケットみたいですね」

「えっと、禁則事項から禁則事項することで禁則事項する技術なんですけど、情報改変とはまたちょっと違う概念で・・・」

「えっと、つまり、あれは一種の進んだ科学技術なんじゃないか、ということですか?」

「あぅぅ、そうです」

科学技術、って言われてもな。あんな魔法みたいに出したり消したりされるとな。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:46:52.96 ID:eIZ4zcdGo<>
「ふむ、魔法、とは言い得て妙かもしれませんよ」

「ん?どういうことだ?」

「聞いたことありませんか?充分に発達した科学はまるで魔法のように見える、と」

「ああ、聞いたことはあるが、よく意味がわからん」

「そうですか?ではご自分が江戸時代の人間だとしたらどうでしょう?」

「江戸時代?」

「ええ、科学技術なんて殆ど発達していなかった時代です。
ヨーロッパでやっと電気の存在が示唆され始めた程度の時代に、
僕と朝比奈さんがタイムスリップしてきたとします」

「うむ、朝比奈さんは着物を着ても可愛いだろうな」

「ふぇっ?」

「それは疑いようもありませんが、まぁ今は置いておきましょう。
そこで僕と朝比奈さんが携帯電話で会話をし始めたら、貴方はどう思うでしょう?」

えっと、電気の概念もまるでなかった時代に、目の前で二人が携帯で会話する、と。

確かに、何が起きているかわからないだろうな。
そもそも電話って物自体知らないわけだから、離れたところにいる二人が会話できる仕組みが理解出来ない。

だが目の前の二人は確かに意思疎通が行えているわけで、そりゃあ魔法のようだ、
と思うかもしれないな。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 00:57:17.53 ID:eIZ4zcdGo<>
「つまり、そういうことです。まるで概念の理解されていない仕組みが未来において技術として確立されていたとしたら。
そしてそれを現代人の我々が目撃したとしたら、それは魔法のように見える可能性があるわけです」

「それと、IFSだとするともう一つ説明できることがあるんです」

「え?それは?」

「私とキョンくんにあのディソードが見えた理由が、説明できます」

なんだって?

「もちろん、長門さんは先程自分で言っていたように情報統合思念体だから、
情報を観測できるのは不思議じゃないんです」

朝比奈さんの説明に小さく頷く長門。
まぁ、そりゃあ長門にも見えないものが俺に見えてたら、それこそ危機的状況な気がするしな。

「そのIFSというのは私の時代では確立された技術なので、私も使うことができるんです。
あ、もちろんこの時代にいる間は禁則事項なので、使用できないようになっているんですけど」

朝比奈さんはちょっと焦ったような雰囲気で、そして禁則事項に引っかからないように言葉を選んで説明してくれている。

「その、仕組までは難しすぎて私も理解出来ていないんですけど、ただ、IFSには特徴があって、
IFSが使える人じゃないとそのIFSで出した物質は基本的には見えないんです」

「え?仕組みが理解できてない・・って?」

「ふむ、なるほど」

どういう事だ古泉。

 
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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/03(土) 01:05:28.89 ID:eIZ4zcdGo<>
「貴方は電球がなぜ光るか、をきちんと説明できますか?」

「そりゃあれだ、フィラメントに電気が通ることでだな・・・」

「ではなぜ、フィラメントに電気を通すと発光するのでしょうか?」

ぐっ・・・、そう言われると説明できんな。

「僕もです。ですが、僕たちはスイッチを入れれば電球が光りだし、部屋が明るくなる、ということを知っています。
きっと朝比奈さんにとってのIFSはそういうものなんですよ。
一般的すぎて仕組みなんて理解していなくても使える、というね」

「それじゃ仮に、朝比奈さんにあの剣が見えるのはIFSのおかげだとして、
俺にもあの剣が見える理由はなんなんでしょうか?」

「それもやっぱりIFSなんです」

だんだん頭が混乱してきた。

「えっと、古泉君がさっき言ってくれたみたいにIFSっていうのは未来における電気みたいなもので、
本当に一般的に利用されているんです。基礎技術、って言ったらいいのかな?
だから、実はTPDDにもIFSは使われているんです」

「なるほど。俺は何度か時間移動をしているから・・・」

いや、当たり前のように言ってるけどこれ結構すごいこと言ってるよな。

「そうですね。でもその時にキョンくんにもIFSが禁則事項したんだと思うんです」

「それで俺にもあのディソードが見える、と」

「では、僕にそのディソードが見えなければ、その説はより有力になりますね。
僕は残念ながら時間移動する機会には恵まれていませんから」

「ところで長門。さっきあの蒼井セナと出会ったときに、やけにあっさりみんなの正体をバラしたが、
あれはよかったのか?」

「良くはない。が、あの時はあれが最善と判断した」

「まぁ、長門の判断なら俺は支持するさ」

「問題があれば彼女の記憶は消去可能」

なるほど、保険付ってわけね。


 
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(関西地方)<>sage<>2011/09/03(土) 04:28:08.34 ID:zFA4mWrVo<> 東京住みのハルヒさんかよ
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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> >62 神奈川住まいくらいのイメージ<>sage<>2011/09/05(月) 22:58:11.96 ID:64p2mp5bo<>
「おい、こっちだ!」

ハチ公前に到着すると、蒼井セナが待っていた。

彼女は俺たちを呼びつけるとハチ公前に設置されている昔の電車のカットボディへ歩いて行く。

中は休憩ルームとなっていて昔の渋谷の風景を展示しているのだが、この時間には既に閉鎖されているはずだ。

しかし、特に気にした様子もなく彼女は扉を開けて俺たちを手招きしている。

「早く来い」

俺達は一瞬お互いに目を見合わせてから、肩をすくめて彼女のあとについて行った。
カットボディの中には蒼井セナ以外に3人の人間が待っていた。

「こんばんは!」

「あ、と、こんばんは」

俺達全員がカットボディに入るのを見計らって、その中の一人がフレンドリーな挨拶を交わしてくる。

俺も釣られて挨拶を返すものの、なんだか妙な感じだな。

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:15:54.16 ID:64p2mp5bo<>
「あなた達が蒼井さんが言ってた人たちだよね。
うーん、えっと、宇宙人に未来人に、超能力者にジョン・スミス、だっけ?
ちなみに、誰が宇宙人で未来人で超能力者でジョン君なの?」

「あの、梨深さん?こういう時はこっちから自己紹介した方がいいんじゃないかなぁ」

そんなフレンドリーな女の子を嗜めるように発言をしたのは少し幼さの残るショートカットの女の子だった。
隣にいる男の袖を軽くつまんでいる。

「な、七海。こ、こう言うことはセナ達に任せたほうが・・・」

袖をつままれている男はこれまた酷くおどおどした様子で、視線もキョロキョロしている。

「えっと、そっか、そうだね。そしたら私から自己紹介するね」

と、片方だけ軽く髪の毛を結わえている女の子はそんな後ろの二人のやりとりにはあまり気を留めず、どんどん話を進めていく。

「ビシィ!咲畑梨深だよ。えっとー、翠明学園の2年生」

ビシィってなんだよ、ビシィって。
彼女はそんな掛け声と共に敬礼をしてみせた。

なんだ、これも流行ってんのか?

「ほら、次はタクだよ!自己紹介して」

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:18:01.29 ID:64p2mp5bo<>
「な、七海先にやれよ。ぼ、僕はこう言うの苦手なんだよ」

「なっ、おにぃ。ちょっと情け無さ過ぎない?もうちょっとしっかりしてよ。
ったくもう・・・、えっと、私は西條七海、です。
翠明学園の一年生で、それで、この情けないバカおにぃの妹です」

「バカとはなんだよバカとは」

「ホントのことじゃん!自己紹介くらいでびくびくしちゃってさ。
妹に先にやらせるとかどうなのそれ?」

「う、うるさい!しょうがないだろ、苦手なんだから」

おいおい、いきなり口喧嘩始めたぞ・・・。

「えっと、よろしいですか?今度は我々も自己紹介をさせて頂こうかと思うのですが」

「あっ、ご、ごめんなさい」

古泉の割り込みに西條七海はしゅんと項垂れて恐縮したように下がっていったのだが、
それでも小声でまだ兄貴に文句を云っているようだ。

なんとも微笑ましい。

年が近い兄弟だったら俺もあんな感じになってたのかね?

「それでは改めて、僕は古泉一樹と申します。先程の宇宙人云々で言うのであれば、
僕は超能力者、ということになりますね」

「それってスプーンとか曲げられるの!?」

いきなり咲畑梨深が目を輝かせて古泉に食って掛かる。
やっぱり超能力って聞いたらそう思うよな。

「いえ、スプーンを曲げるとしたら、力づくでしょう」

古泉は軽く苦笑して、「そういう能力ではないのです」と付け加えた。

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:20:04.52 ID:64p2mp5bo<>
「あ、あの、私は朝比奈みくるです。えっと、一応、未来人です。学年は私だけが3年生です」

「同じ年・・・、だと?」

そう反応したのは蒼井セナだった。

いや、反応するなら未来人ってとこに反応しろよ。

「うわぁ、完全に負けた」

「3年生なのにロリ。そして巨乳・・・。これは、萌える!」

「バカおにぃ!どこ見てるのよ!それにそんな発言の時だけ力強くならないで!」

咲畑は自分の胸と朝比奈さんの胸をしきりに何度も見比べているし、西條兄妹はこれまた変なやりとりをしているし、
蒼井セナに至っては壁の一点を見つめながら「私なんて」とか「この洗濯板が」とか「どうせ私はえぐれ胸だ」とか
不穏当な言葉をブツブツと呟いている。


さすが朝比奈さん。なんという破壊力か。

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:21:55.97 ID:64p2mp5bo<>
「長門有希。情報統合思念体による対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェース」

そんな空気もなんのその、長門が淡々と自己紹介を済ませると、なんとか彼らも平静を取り戻したようだ。

「対有機生命体コンタクト用?」
「ヒューマノイドインタフェース?」

もとい、別の混乱に巻き込んだらしいな。

「一般的な概念で、宇宙人として問題ない」

「えっと、じゃあ長門さんと、朝比奈さんと、古泉さんで宇宙人と、未来人と、超能力者、だよね?
えっと、じゃあ、君は?」

咲畑梨深が確かめるように三人を確認し、次いで、俺を見る。
俺を見るな。

「いや、俺は・・・」

「彼は属性的な意味では一般人ですよ。正真正銘の。しかし、重要な『鍵』なのです」

「鍵?」

「我々は涼宮ハルヒに集められた。このことはご存知ですか?」

「え?んと、知らないけど」

「涼宮ハルヒは我々の部活の団長、というポジションの人物です。そして、彼女こそが我々を集めた、
いや、もしかしたら『創りだした』のかもしれない」

「創りだした・・・だと?」

「そうです。彼女は『願望実現能力』の持ち主です。
彼女が宇宙人や未来人や超能力者と遊びたい、と願ったから我々は存在します」

「なぜそんな事が分かるんだ?」

「それは我々にもわからないのです。ですが、解ってしまうのだから仕方ありません」

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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:23:54.23 ID:64p2mp5bo<>
「創りだした、とはどういう意味だ?」

「もちろん僕には17年間の記憶がありますが、超能力に目覚めたのは4年前です。
と、同時に長門さんがこの世に出現したのも4年前です」

「私は情報統合思念体に創りだされた存在。それが4年前」

「4歳の女子高生!?真性ロリキタコレ!日本始まってたーーー!」

「だから黙ってバカおにぃ!」

「世界5分前仮説、か?」

「そういう事です」

蒼井セナと古泉一樹が訳知り顔で頷き合っている。
やれやれ、この二人は気が合いそうだな。

「世界5分前仮説・・・中二病乙」

「なんだ、西條だっけか?お前はどっちかというと俺よりの考えらしいな。
さっきから言動はあれだけど」

「だ、だって、世界5分前仮説なんて、いまどきラノベだって出てこないよ。
チラ裏でやってろって感じじゃないか」

「ま、そりゃそうだよな」

「え?」

「え?」

「うわぁ・・・、おにぃと普通に会話出来てる・・・」

「え?」

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:30:23.94 ID:64p2mp5bo<>
「願望実現能力ってのはどういうものなんだ?」

「困ったことに、言葉通りの意味なのです。つまり、彼女が願えばそれが現実になる」

「そんな、馬鹿な」

「ま、そんな馬鹿な事に、俺達はもう1年以上も付き合わされているんだよ。
例えば、秋に桜が咲いたり、猫がしゃべりだしたりってのはまだ良い方だ。

孤島に嵐で閉じ込められたり、雪山に嵐で閉じ込められたり、朝比奈さんなんて目から殺人ビームが出るようになったり、
とまぁ、これもまだ可愛いほうだ。

一番最悪なのは、ハルヒのイライラで世界が何度も終りかけてる、ってことなんだよ」

「世界が」
「終わる?」

「あー、つまりだな。なんかこう思いっきりムシャクシャするようなことがあるとさ、
たまに『こんな世界無くなっちまえばいいのに』なんて思ったりすることあるだろ?」

「う、確かに僕なんか毎日思ってるかも。
こんな下らない世界なんて無くなって、エンスーの世界になればいいのに、とか」

「エンスーってのは分からんが、まぁそんな風にハルヒが思っちまうとな、
本当になっちまうんだよ」


「なん・・・だと・・・?それじゃあ私たちの世界はその涼宮ハルヒとか言う奴の
気分一つで無くなるかもしれんということか?」

「残念ながらその通りです。しかし、それをさせないために、我々がいるのです。
そしてその中でも彼が彼女に対する『鍵』として重要な役割を果たしているのですよ」

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:33:14.98 ID:64p2mp5bo<>

「ふむ・・・、俄には信じがたいが、しかしその願望実現能力というのは興味深いな。
ギガロマニアックスの使う妄想具現化能力と似たような能力なのか?」


「恐らく、全く違うものと思われる」

「ふむ、その根拠は?」

「恐らく貴方の言う妄想具現化能力は可能性任意選択や確率固定化に近い概念だと予想する」

「確率固定化?」

「貴方の脳内にあるイメージを強制的に他者に認識させ、観測者とすることで存在確率を固定化するいうこと」

「た、確かにその通りだ。ギガロマニアックスは何かを現実に取り出すとき、
自分と誰かの間に周囲共通認識を作り出す事で存在を確定させる」

「涼宮ハルヒの能力は他者を必要としない。
無から情報を生み出し、オーバーライトする能力」


「つまり古泉よ。どういう事だ?」

「ええと、ギガロマニアックスの方々が何かを作り出すときには一人では不可能、
ということではないですか?」

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:36:10.99 ID:64p2mp5bo<>
「えっと、あ、あのシュレディンガーの猫って知ってますか?」

勝手に話を進める長門と蒼井セナを眺めながら、まるで理解できずに落ちこぼれている俺と、
多少は理解しているものの、完全な理解には至っていない古泉に話しかけてきてくれたのは西條七海だ。

ちょっと幼そうにも見えるがとてもしっかりしているように感じる。
俺の妹もこんなふうに育ってくれればいいのだが。

「シュレディンガー、ですか?不確定性原理を説明する有名な思考実験ですね」

「そう、それです。あの話だと箱の中の猫は半分生きている状態と半分死んでいる状態が
重ねあわせの状態で同時に存在しているわけですけど、もっと言うと箱を開けなければ
中の猫が犬になっていても誰も気づかないし、構わないって事になりますよね?」

「に、日本人のシュレディンガー好きは異常。ハイゼンベルク乙。
ちなみにシュレディンガーは真性のロリコン」

「今そんな事関係ないでしょ!バカおにぃ」

俺と古泉は互いに目を見合わせて苦笑してしまう。 

俺もシュレディンガーの話は知っている。
観測者が居なければ物体の状態は決まらない、とか言うような話だったはずだ。

しかし、だからといって箱の中の猫が別モンになっちまうなんてことまで認めていいのか?
猫が箱に入っている事は観測されているんだろ?

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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:38:49.59 ID:64p2mp5bo<>
「あ、えっとそうですね。確かにシュレディンガーの話では猫が箱に入るところからですから観測されちゃってますけど、
でも箱を閉じた瞬間に観測はできなくなって、中で猫が犬に変化したり、二匹に分裂したり、オスがメスになったり、
そんな事が起こっても誰にもわからないと思いませんか?」

見えないだけで何でも起きる可能性があるんなら、そうなるのか?

なんか釈然としないものを感じるんだがな。

「もちろん、普通は中の猫はそのままです。
でもその箱の中を自由にしちゃうのがギガロマニアックスの『妄想』で、その箱を開けて誰かに
観測させちゃうのが『周囲共通認識』って考えてもらえればいいと思います」

「なるほど、自分一人の認識ではただの『妄想』で終わってしまうところを、
他者にも認識させることによって『現実』として確定させてしまう、ということですね?」

「うん、そんな感じだよ。みんなすごいねー。
私なんて自分でやってることなのにちんぷんかんぷんだよー。たはは・・・」

「大丈夫だ。七海ちゃんの丁寧な説明を聞いたにもかかわらず俺もまるでちんぷんかんぷんだからな。
ところで、咲畑、だったよな?お前もあのディソードって奴、出せるのか?」

「え?うん、出せるけど?」

「ちょっと出してみてくれないか?」

「いいけど?」

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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:40:56.86 ID:64p2mp5bo<>
咲畑はそんな風に、なんでもないことのように返事をすると一瞬だけ目を閉じてディソードを出現させた。

蒼井や咲畑にとってはディソードを出すという事は別に特別なことじゃないんだろうな。
まるで俺が右手で頭を掻くのと同じくらい、自然な行為なんだろう。

咲畑が出現させたディソードは、蒼井のそれとは全く違う形状をしていた。

蒼井のディソードはベルセルクか武蔵伝かと言わんばかりに無骨で直線的、質実剛健な大剣だったが、
咲畑のそれは曲線的で優雅で、まるで天使の羽根を思わせるフォルムをしている。

「これでいいかな?」

「ありがとな。ところでこれ、今はリアルブート、だっけ?はしてないよな?」

「うん、まだリアルブートしてないよ。結構危ないし」

「古泉」

「ええ、そうですね。朝比奈さんの予想通り、僕には見えないようです」


「え?うん、リアルブートしてないからね」

「いや、それが俺は見えてるんだよ。あと朝比奈さんと長門も」

「ええっ!?な、なな、なんで?」

「それは・・・」

ちらりと朝比奈さんを見てみると、小さく首を横にふっている。
現在のところ先程のIFSという奴が俺にディソードが見える原因の最有力候補ではあるが、
やはり禁則事項なんだろうな。

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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:41:49.88 ID:64p2mp5bo<>
「長門はあれだ、宇宙人だからな。宇宙人の凄い技術で見えるみたいなんだよ。
朝比奈さんは未来の技術で似たようなものがあるらしくて、そのせいじゃないかって」

「うーん、そっかー。それでキョン君は?普通の人、なんだよね?」

「俺は・・・わからないんだよ。昔から不思議な事に好かれる体質みたいだけどさ」

「ふーん」

そんな風に相槌を打ちながら、咲畑の視線は俺の頭から足元までを二往復して、
最後に俺の目を見据えるように留まった。

「な、んだよ?」


「あ、ううん。もしかしたらキョン君にディソードが見えるのはさ、

キョン君がギガロマニアックスだから、

だったりしてね?」

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(チベット自治区)<>sage<>2011/09/05(月) 23:44:13.29 ID:64p2mp5bo<>
今日はもう遅いということで、後日再会する約束をして、その日は別れた。

結局時間が足りなくて蒼井がなぜギガロマニアックスを集めているかといった、
彼らの目的については聞くことができなかった。

「しかし、不思議なことなんてハルヒの周りだけで腹いっぱいなんだけどな」

「ええ、まさか涼宮さんに関係の無いところに、あんな能力者がいるなんて夢にも思っていませんでした」

「そう・・・、ですね」

帰りの電車の中で、朝比奈さんは窓の外を眺めながら、どうにも暗い表情をしている。
俺達との会話もどこか上の空だ。

「どうかしたんですか?朝比奈さん」

「いえ、その・・・、なんでもないんです。ごめんなさい」

朝比奈さん、そんな顔してそんな事言われたら、何かあるとしか思えませんよ。
とは言わなかった。

何故か、あまり追求してはいけないような気がしたからだ。

「それで、今度集まる時はハルヒも連れて来なきゃならんが・・・」
「そうですねぇ・・・、一体どう紹介すればいいものやら」

そういえば蒼井たちとの別れ際、次回の集合時には是非ハルヒを連れてきて欲しいと頼まれていた。
もちろんそれは構わないのだが、ギガロマニアックスなんて真性もんの不思議と巡りあわせて大丈夫なのか、不安で仕方ないんだよな。

「とはいえ、彼らにも能力の話は厳禁である旨を伝えましたし、ニュージェネ事件を調べるうちに知り合った、
ということで良いのではないでしょうか?」

「まぁ、それしか無いだろうな」

そんな具体策も無いままに、その日は三々五々引き上げていった。

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/07(水) 21:23:49.91 ID:qWMxdnx50<> 俺的にはかなり面白い
だができれば投下終了したときに今日はここまで的なものを書いてくれると嬉しい <> 1<>sage<>2011/09/09(金) 18:56:29.85 ID:BKN/u0pVo<> すみません。
1なんだけどちょっと2,3日投下できないかもです。

読んでいただいている方々、ありがとうございます。

>76
そんな感じでその日の書き始めと終わりは明確にするようにするよ。 <> 1<><>2011/09/21(水) 19:51:16.54 ID:vINzyxF00<> 帰れんのでちょっと投下。というか書き込み。書き溜めじゃないから後々破綻するかも。 <> 1<><>2011/09/21(水) 20:04:03.07 ID:vINzyxF00<>
「遅い!ばっ・・・・き・ん・・・?」

第二回不思議探索渋谷遠征。
珍しく困惑気味のハルヒである。

困惑の原因は言わずもがな、俺と一緒に登場した面々にある。

「うわぁ、凄い美人。七海ちゃん!これは負けてられないね」

「梨深さん、一体なにを張り合うんですか」

「うんうん、朝比奈さんも長門さんも可愛いけどさ、私たちだって負けてないよね。
セナさんはクールビューティだし?七海ちゃんは流行りの妹系?だし?
元気印っぽい涼宮さんにはビシィ!っな私が対抗する感じでさ」

「自意識過剰乙。完全敗北宣言すべき」

「あーっ!タク酷い!今のは酷いよ!?」

「だっ、だだだだ、だっ・・・」

なんだハルヒ、ドラクエの階段のモノマネか?

「おいおいお前ら。少しは落ち着いたらどうだ。彼女たちも困惑してるじゃないか」

「だっ、誰なのよアンタ達!?」

人のこと指さすなっつーに。しかも器用に順番に全員指してんじゃないよ。

<> 1<><>2011/09/21(水) 20:13:46.19 ID:vINzyxF00<>
「古泉君!」

「はい、なんでしょう?」

「これはアレね!?バカキョンが馬鹿みたいに彼女たちの逆ナンに引っかかって鼻の下伸ばしてる図って理解していいのよね!?」

「恐縮ながら、それは無いかと」

「じゃ、じゃあ一体誰なのよ!?キョンの周りにこんな美人が3人も集まってるなんてそれこそ不思議な事態だわ!」

それじゃあ俺の周りは年中不思議だらけじゃねえか。
あ、あながち間違ってはいないな。

「でも確かに、よくよく見ると不思議な集団ね?
この美人集団に混じってるヒョロ暗い男子はなんなのかしら?」

「ひょ、ひょろぐらい!?」

初対面でなんて無礼なやつだ。言い得て妙ではあるが・・・。

「タク・・・、残念だけどぴったりだよ。今の表現」
「おにぃ・・・」
「西條・・・」

お前らもそんな憐れんだ目で西條を見てやるなよ。
まったく、同情に値するね。

「うう、こういうDQNっぽい騒がしい女子は苦手だ」

「俺もだ西條」

さて、気を取り直して。 <> 1<><>2011/09/21(水) 20:28:35.93 ID:vINzyxF00<>
「ええい。いい加減落ち着かんかハルヒ」

「なっ!?何よそれ!珍しくキョンが団員以外の女の子と仲良さそうにしてたからって
別に取り乱してなんか無いわよ!」

そりゃそうだ。
SOS団団長様ともあろうお方が平団員の周辺の瑣末な変化なんかで狼狽したりはしないだろうしな。

「そ、そうよ!わかってるならいいのよ!」

「フヒヒッ。これはいいツンデレ」

「自重しろバカおにぃ」

「それでだ。彼女たち、西條兄弟と蒼井セナさんに咲畑梨深さんって言うんだけど、
前回の渋谷探索の時にちょっと知り合ってな。
彼女たちもニュージェネ事件を調べてるらしいんだ」

「なっ!?なんでアンタはそういう事を団長の私に報告しないのよ!脳みそ湧いてんじゃないの?」

「いやいや、前回はホントに現場でちらっと会った程度だったんだよ。
また会うことになるなんてこれっぽっちも思ってなかったし、そんな些細な事で団長を煩わせるのもな?
そしたら今日ばったり渋谷の改札で再会してな、彼女たちもこれからニュージェネ調査するから、
一緒にどうか?って話しになったんだよ」

「と、言うわけなんだ。私たちは渋谷が地元だし、多少の力にはなれると思う」

「・・・ふぅん」

「なんか含みのある相槌だな」

「別に。地元のあなた達が協力してくれるというのなら、確かに有利でしょうね。
土地勘も利くだろうし、何より周辺ネットワークから入手できる情報が大きいでしょうし」

「勢いだけかと思ってたら、なかなか聡明そうだな」

「バカにしてるの?まぁいいわ。でも、だからこそ、余所者の私たちに協力してもあなた達にメリットが無い。
にもかかわらずそんな申し出、なんか裏があると疑いたくなるってものじゃないかしら?」

さっきまでの高いテンションとは裏腹に、あの理論派の蒼井セナと論戦を展開する。
ここらへんの頭の回転の速さはさすがだな。素直に関心しちまう。
<> 1<><>2011/09/21(水) 20:50:01.48 ID:vINzyxF00<>
「なるほど、確かに涼宮さんの言う通りだな。
だけど私たちはそれこそ放課後に集まっては情報交換したり一緒に調べて回ったりをしてるんだが、
そろそろ煮詰まってしまってな。
新鮮な視点と言うか、客観的な視点で事件を洗い直したいという想いもあるんだ」

割って入ったのは梨深だった。

「もーセナさん。そんな難しいことばっかり考えなくていいってば。
みんなでワイワイしながら調べたりするのって面白そうだし、楽しそうじゃない?
それでいいじゃん。ね?七海ちゃん」

「え?私は、その、一緒に行動するのも、悪く無いと思いますけど・・・」

言いながら七海ちゃんはチラリと西條兄の様子を伺う。

「フヒヒッ。僕としては美少女追加は望む所!むしろ望外の幸運!
いや、ガルガリ女にビシィに姦し妹、電波女、追尾女の相手をしている僕に天が与えたご褒美に違いない
涼宮ハルヒはDQNっぽいが真性幼女子高生に正統派ロリ巨乳で完全にお釣りが来るレベル!
これは勝つる!!」

なんか気持ち悪いことをブツブツつぶやいていた。あ、殴られた。 <> 1<><>2011/09/21(水) 21:23:36.44 ID:EzHnMhNQ0<>
「涼宮さん、副団長として進言します。ここは、彼女たちと協調関係を築く事が得策かと」

「なぜかしら?」

「我々の武器は何か、ということです。
涼宮さんのリーダーシップと大胆な発想、長門さんの冷静な分析力、
大きくはこの二点が我々の持ちうる武器、そして彼女たちのグループに
勝るものと考えてよいでしょう」

「続けて」

「対して弱点はなにか。これは情報量の差、と言い切ってしまって差し支えないでしょう。
ならば、彼女たちを上手く利用して情報を引き出してやれば良いのです。
彼女たちにとっては意味不明な情報の集積でも、長門さんの分析力と涼宮さんの発想、
思考の瞬発力と言ってもよいでしょうが、これらを用いることで有効に利用することが可能なはずです」

相手のグループを目の前にしてずいぶんとズケズケといったもんだ。
後ろで朝比奈さんなんかおどおどしながら相手方の表情を伺っている。
長門は相変わらずの無表情。
蒼井セナは柳眉を釣り上げながらも静観し、梨深と七海ちゃんはほぇーっと二人の様子を眺めている。

西條兄はまだ殴られた苦痛にのたうちまわっていた。

「ふふっ、さすがは古泉くんね!副団長を任せた私の目に狂いはなかったという所かしら」

「では?」

「その作戦、採用よ!」

「と、言うわけです。みなさん、よろしいですか?」

知りあってから一ニを争う胡散臭い爽やかスマイルだ。
最近古泉の爽やかスマイルは半分くらいドヤ顔が混じってるって事に気づいたが、今回はその最たる例だね。

<> 1<><>2011/09/21(水) 21:33:23.19 ID:EzHnMhNQ0<> 電車が動き出しそうなので今日はここまで。
何でもいいからコメントもらえると1は喜ぶんだぜ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/09/21(水) 21:56:37.19 ID:W0RcnMYao<> 今日見つけた超乙。期待を込めて重箱の隅つつくと

梨深一人称:あたし
ちなみに優愛は「わたし」、セナとあやせは「私」、七海は「ナナ」、こずぴぃは「こずぴぃ」。一応後ろ2人は「私」もあったと思う
梨深→七海:ナナちゃん
タクの笑いはひらがなで「ふひひ」

まぁキョン視点や演出って言うなら別だけど…。楽しみにしてるから頑張ってくれ! <> 名無しNIPPER(栃木県)<>sage<>2011/09/21(水) 22:50:31.71 ID:t41CzSJAO<>

おもしろいよ

ところでFDDって神曲だよね <> 1<>sage<>2011/10/01(土) 01:57:55.07 ID:cM92rmjno<> またまた前の投稿から時間が空いてしまった・・・。
ちょぼちょぼ投下してく。 <> >85 マジ助かる。頑張るわ。<>sage<>2011/10/01(土) 02:19:56.92 ID:cM92rmjno<>
「そうと決まったからにはアンタたちは今日からSOS団渋谷支部のメンバーよ!気合入れなさいよね!」

「SOS団?」

「世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団、の略称」

疑問を呈したのは西條妹、答えたのは長門、呆れたのは渋谷支部のメンバー全員だった。

「勝手に編入するなバカもん」

「これは酷い。さすがに厨二病でもドン引きするレベル」

軽く俺を小突く蒼井さんに呆れ顔の西條兄。
すまんお前ら、俺が謝るからこいつのわがままに付き合ってやってくれ。

「えー、いいじゃんいいじゃん。入れてもらおうよ!あたし団員No.006番もーらい!」

対して相変わらず楽しそうにはしゃいでいるのは咲畑だ。
順応性が高いのか、演技力が高いのか、それともそもそも何も考えていないのか。

「ほらっ、ナナちゃんは007番ね!セナさんは008番と009番どっちがいい?」

「なんだかサイボーグみたいな番号だな。正直どっちでもいいが」

「じゃあ蒼井さんが008番で、タクが009番だよ!」

「加速装置乙」

正直ナンバリングするなら鶴屋さんたちが先じゃなかろうか、とか愚にもつかない事を考えていた俺の横で、
ハルヒは満足気にうんうんと頷いている。

「それじゃキョン!団員No.001番として今日一日の計画を立てるために喫茶店でも探してきなさい!」

なん、だと?

「あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!き、気づいたら団員No.001にされていた」

「す、既にテンプレにもなっていない件について」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/01(土) 02:54:59.97 ID:cM92rmjno<>
「やれやれ」

久しぶりにぼやきながらさっさと喫茶店を探しに行くことにするが、9人の大所帯が入れるような
喫茶店が果たしてあるかね。

「あ、キョンくん。それならあたしも一緒に探しに行くよ!いくつかお店の心当たりもあるし」

「お、そりゃ助かるよ咲畑」

俺と咲畑はハルヒ達をハチ公前に待たせたまま、センター街方面へ抜けていく。

「あ、ここなら空いてるんじゃないかな」

何件か喫茶店を覗いてみたが9人が座れるようなお店はなく、徐々にハチ公前から離れ始め
既にセンター街を抜けてデパートのほぼ裏側まで来たところで、やっと空いている店を見つけた。

携帯でハルヒに電話をし、遅いだなんだと文句を言われつつも場所を説明する。

「しっかし驚いたなぁ。神様みたいな女の子って聞いたから、どんな人かと思ってたけど、すんごく普通の女の子だよね」

先に店に入ってテーブルの端に座ったところで咲畑はそんな事を言った。

「あ、もちろん凄い美人、ってのは普通じゃないところだけどさ」

「まぁ、見た目がいいのは否定しないさ。まぁそれに関しちゃ咲畑だって負けてないと思うけど」

「なっ、何を言うかなーこの人は。たはは、そんな事言ってたらまた涼宮さんが怒っちゃうよ?」

「?」

「でも、本当に普通の人みたいに見える。ギガロマニアックス特有の雰囲気みたいなものも全然ないしさ」

「本当に普通の人になってくれたら、こっちも苦労しないんだろうけどな」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/01(土) 02:56:52.53 ID:cM92rmjno<> 駄目だ。
ネタが浮かばん。書き溜めしてるパートまで繋がらんww

取り敢えず一回寝る。
明日の晩くらいにはまた投稿します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/10/01(土) 03:04:34.83 ID:ln7j07Dso<> 乙
舞ってる <> 出かける前にちょっと投稿<>sage<>2011/10/01(土) 16:14:06.32 ID:cM92rmjno<>
「そう言えば、咲畑たちのギガロマニアックスってどうやって覚えた?んだ?身につけたって言ったほうがいいのか?」

俺はコップの水をグラスの中でくるくる回しながら、店の入口を伺いつつなんの気は無しに話題を振る。

でっかい剣を出されたりで動転していたが、冷静に考えれば凄い能力だよな、ギガロマニアックスって。
なにせ妄想した事を現実に取り出せるんだから、使い方によっては物凄く便利だ。

雨が降ってきたら傘を出せばいいし、歩くのが面倒なら自転車を出したっていい。
腹が減ったら食い物を出して、喉が渇いたら水を出して、ってこともできるのか?
悪用しようとすりゃ、それこそ金を出したりだってできるだろう。

しかもハルヒみたいに「世界がー」ってほどに大規模じゃなく、極限られた範囲で使うことが出来るんだから、
むしろ長門の宇宙パワーに近いくらいかもしれない。

「たはは、そんなにいいものじゃないよー。それに簡単に身につくようなものじゃないしさ」

「そうなのか?」

「私と蒼井さんは後天的に発現したから、キョンくんも何かのきっかけで発現しないとも限らないけどさ」

「うーん、やっぱりそんなに上手いこと行くわけないか」

「それに、ギガロマニアックスの能力が発現するってことはさ、ホントはか・・・」

「あ、ちょっと待った咲畑、この話はここまでにしよう」

俺は店の入口を目配せして、ハルヒたちが来たことを告げる。
こんな真性もんの不思議をハルヒに気づかせるわけには行かないからな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/01(土) 18:01:48.16 ID:cM92rmjno<>
「あ、来たねみんな。涼宮さんたちもすぐに場所分かった?」

「まぁね。蒼井さんたちが案内してくれたし」

「団長をエスコートするのも団員の務め、だよね」

「あら、よくわかってるじゃない」

そんな言い合いをしながら全員が席に着く。
古泉に目をやると、思った以上に馴染んでいる様子に少々苦笑いしていた。

「ふ、ふひっ。こ、この僕が女子高生数人と喫茶店に入るなんてリア充的な振る舞いをするはずがない。
き、きっと夢なんだ。それとも機関の精神攻撃?ふひひひひひひ」

大丈夫かこいつ?

「なにさ、おにぃだっていつもナナと一緒にワックとか行ってるじゃん」

「い、妹は女子高生にカウントしないっ」

「その理屈はおかしい。高等学校に通っている女性が女子高生と呼称されるのならば、
西條七海も女子高生のカテゴリに含まれるべき」

「わぁー、七海ちゃん、そのストラップのカエル可愛いですねー」

「あっ、みくるさんもそう思います!?ゲロカエルんって言うんですけど、渋谷で流行ってるんです」

「いいなぁ。幾つか種類があるんですか?」

「こっちが基本のゲロカエルんで、こっちはちょんまゲロカエルんで、
こっちがゲソカエルんっていってなんか流行りのアニメ?とコラボとかで」

可愛い、のか?これ。
既にイカだか蛙だか判別がつかないわけだが。 <> これで一旦区切り。出かけてくる。<>sage<>2011/10/01(土) 18:30:03.57 ID:cM92rmjno<>
「キョンにしろ古泉にしろ、涼宮ハルヒの扱いには相当慣れているようだな」

「ええ、そうかもしれません。我々SOS団員は常に涼宮さんの事を考えていますからね」

「良きにつけ悪しきにつけ、か」

そんな蒼井の問いに古泉はキザったらしく肩をすくめて返答にする。

「それじゃ、全員飲み物回ったみたいだし、これからどうするか考えましょ」

「涼宮たちは取り敢えず今までの事件の現場は見て回ったんだよな?」

「ああ、取り敢えずひと通りはな」

「それは正確ではない。最新の事件『ノータリン』の現場はまだ見ていない」

そう言えばそうだった。
前回の渋谷探索から今日までの間に一件、ニュージェネと思われる新事件が発生している。

「渋谷区の路上で衰弱死した男性が発見された」

「確か、司法解剖の結果では脳が取り除かれてから飲まず食わずで
一週間程度生存していた可能性がある、とのことでしたね」

「そ、そんな、頭がなくても生きていられるんですか・・・?」

「あ、ある意味脳死状態と一緒だから、出血性ショックとかなければ、多分」

「生きていると言うより、死んでいない、心臓が止まっていない、とでも表現すべきか」

「ますます猟奇的じみてきたわね。取り敢えず現場見学は外せないかしら」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/02(日) 00:07:26.20 ID:9i/jXGn+o<>
「それならまずは全員で『ノータリン』の発見現場に行かないか?私達もまだあの現場には行っていないんだ」

「そうね、そうしましょう」




喫茶店を出てから歩いて数分。
何の変哲もない、メインストリートから一本入った路上。

ここが『ノータリン』発見現場だという。

「なんて言うか・・・、なんてことのない場所ね。特に痕跡みたいなものもないし」

「既に警察による現場検証も終わっているのでしょう」


「あれ?西條君じゃないっスか?」

何の変哲もない路地にたむろする高校生9人に不意に声をかけてきたのは、
二十歳過ぎのスーツ姿の男性だった。

「え?あ、け、刑事さん」

「刑事?」

「あ、自分は警視庁刑事部捜査一課の諏訪と言うッス。西条くんのお友達ッスか?」

「そうよ!警察がなんの用かしら?」

おいおい、国家権力に突っかけるなよ。

「いやいや、自分は刑事っすから。現場100回は基本ッス」

そもそもなんで西條は刑事と知り合いなんだよ。

「その、張り付けの現場が僕の住んでるところのすぐ近くなんだ。
操作中の刑事さんにそれで声を掛けられて・・・」

「それで、西条君たちはこんな所で何をしてるッスか?一応、事件の現場でもあるわけだし、
あんまり不用意に近づかない方がいいと思うッス」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/02(日) 01:35:17.89 ID:9i/jXGn+o<>
「そ、そうですね。それじゃ僕た・・・」

「何よえっらそーに!アンタ達警察が無能だから私達がこうやって捜査してやってんじゃないの!」

「うわっ、なんっすかこの子」

うぉぉおおい!ハルヒさぁん!?いきなり何を言い出してるんですかー!?

「いやははは、なんでもないです。失礼なことを申しまして」

「こらバカキョン!なにヘコヘコしてんのよ。国家権力と団長とどっちが怖いと思ってんのよ!?」

国家権力に決まってんだろうがぁああ!

「申し訳ありません刑事さん。彼女の発言については聞き流していただけませんか。
ここにいるのも高校生の無鉄砲な興味本位というやつでして、もう用事も済みました」

俺たちの後ろでは長門がいつもの通りに何かの計測を済ませたようだ。
こんな時に落ち着き払っていられる古泉は頼りになる。

この落ち着き払った態度は古泉の性格によるものなのか、それともバックに機関が着いているという
自身によるものなのか判断に迷う所ではあるが。

「まあ、別に怪しいことをしてるわけでも無いみたいだし、見逃すことにするッス。
刑事ってのは疑うのが仕事ッスからね、あんまり疑われるようなことしちゃだめッスよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/10/02(日) 09:17:50.62 ID:aoySrb2Ao<> 寝たのか?
乙 <> 1(ほんの少しだけ投稿)<><>2011/10/07(金) 14:40:21.22 ID:Wnsfq24N0<>
「あー、全く!なんなのよアイツ!」

じゅごごごごッ、と音を立てて一気にオレンジジュースを飲みつくすハルヒ。

「みくるちゃん!おかわり!」

「は、はい〜っ」

とてとてとドリンクバーに向かう朝比奈さんを見送るのは既にこれで3回目だ。

「なんだか急に沸騰したね、涼宮さん」

「ああ、アイツは頭ごなしに抑えつけられるのをものすごく嫌うからな」

「ふぅん。相手が警察官じゃ、ねぇ」

興奮醒めやらぬハルヒを横目に、咲畑は別段表情も変えずににこやかに微笑んでいる。
蒼井や西條妹も苦笑いしつつ少々表情がひきつっている。

「あの、大丈夫なんですか?涼宮さん、大分イライラしているみたいですけど」

「ん?何が?」

「おい、涼宮ハルヒはイライラすると世界を崩壊させるんだろう?」

ヒソヒソと小声で西條妹と蒼井が両側から詰め寄ってくる。

「どうだ?古泉」

「ええ、今のところ心配ないでしょう。僕のところにアルバイトの要請も来ていません」

「むしろあなた方3名の距離感のほうが危険性が高い。即刻離れるべき」

向かい側の長門が俺を責めるような視線で見つめてくる。


「・・・え?っあ、えへへ」

「むっ、すまん」

「?」

「うわぁ、無自覚だよこの人。そういう人にはビシィってやっちゃうよ!?」

「リア充爆発しろ!」

「え?なに急に責められてるの俺?」


<> 1(投稿速度遅くてごめん)<>sage<>2011/10/08(土) 01:40:39.55 ID:7KXyp/Cgo<>
「ええ、ええ、もっと言ってやってください。本当にこの方ときたら、彼のせいでアルバイトに
勤しむことになったのも一度や二度では無いですからね」

「ぬぐ、そりゃ何度か迷惑をかけたことはあったがな・・・」

「反省しているように見えて、ポイントがずれてたりするのですよ。あなたの場合」

「ああ、うん。多分わかってないよね、キョンくんって」

「なんかそういう所はおにぃと似てるかも・・・」

「なっ、何言ってるんだよ七海。ぼ、僕とこんなリア充が似てるはず無いだろ!」

「褒めてるんだか貶してるんだか卑下してるんだか妬んでるんだかわからんぞ」

「だあっ、もういいだろ!悪かった、俺が悪かったよ。言われたとおり何が悪いのか分からんが
俺が悪かったよ!おいハルヒ!このあとどうするんだ?団長がその調子じゃ団員が纏まらんぞ」


じゅごごごごっごっ!

「う、うるさいわね!今考えてたところよ!」

で、なんか良いプランは浮かんだのか?団長さんよ。 <> 1<>sage<>2011/10/08(土) 02:17:51.94 ID:7KXyp/Cgo<>
一面フローリングのフロアは喧騒に包まれている。
そこかしこにグループがあり、男女のグループが目立つ。

「馬鹿な。この僕が女子の方が多いなんていう一般リア充でもまず体験できないグループ構成で
ボーリング場に来ている、だと?この状況はヤバい。どれくらいやばいかって、世界がヤバい」

あのままじゃ世界がヤバいからここに来たんだがな。

「うーん、ボーリング場なんていつ以来かしら!あのピンをあの警察官になぞらえてぶっ潰してやるわ!」

既にハルヒはボールを両出に持ってブンブンと肩を回している。
おい、危ないからやめろ。

9名という大所帯ということもあって、隣同士の2レーンを借りている。

「ん?どうした長門?」

「よく分からない」

「ボーリングがか?やったこと無いのか?」

「ない。15000回強繰り返した夏休みでも、ボーリングに行ったケースは一件も存在しなかった」

「なに、そんなに難しくはないさ。ちょっと重めのボールを投げて、あのピンを倒すゲームだ。
10ゲーム投げて、倒したピンの合計が一番多い人が勝ち、っていうシンプルなゲームだ」

「そう」

「きょ、キョンくん〜。球が重くて持てません〜〜」

「ああっ、朝比奈さん!?なんでそんな重い方の棚から!?」 <> 1<>sage<>2011/10/08(土) 02:18:48.74 ID:7KXyp/Cgo<> 駄目だ、眠い。
今日はここまでにします。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/10/08(土) 02:23:29.56 ID:XOBsCiTFo<> 乙でした <> 名無しNIPPER(栃木県)<>sage<>2011/10/08(土) 13:04:36.81 ID:oiyscMsAO<> オモシロオモシロ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/10/09(日) 21:04:47.63 ID:yzAZJnVHo<>
なんとか全員が収まるところに収まったのを見計らってゲームがスタートした。

必然的に4人レーンと5人レーンに分かれるが特に問題はないようだ。

「行くわっ!団長のスーパーショッ!」

隣のレーンでは豪快な掛け声と豪快なフォームで、豪快な炸裂音が鳴り響いている。

「うう、ナナもボーリングはちょっと苦手なんだよね・・・」

こちらのレーンでは今まさに西條妹が投球フォームに入っている。

「よいしょっ」

可愛らしい掛け声と共に、ゴトンっ、と緩やかな球が放られた。

「おおっ、8本とはなかなか上手いじゃないですか」

古泉がパチパチと手を叩きながら、自分のボールを取りに行った。

「それでは」

スッ、シュバっ、ブンッ・・・ガコー・・ンッ!

嫌味なまでに完璧なフォームで古泉の手から放たれたボールは、理想的な軌道でレーンの上を滑り、
見事にストライクを叩き出す。

ボールを投げ終えた余韻が腹立たしいっ!

対して隣のレーンでは西條兄が自信なさげにレーンの端に立っている。
古泉の醸しだす風格とはまさに対照的だ。

「ぼ、僕はこういうリア充ゲームは苦手なんだ。どうしてこうなった・・・」

「つべこべ行ってないでさっさと投げなさーい!」

「っ!わかったよもうっ!」

半ばヤケクソ気味に放たれたボールは、一直線にガターへ向かう。
と思ったら一歩踏みとどまったように右端ギリギリを進み、ピンを一本だけ蹴り飛ばす。
連鎖して後ろの5本が倒れたようだ。

なんて器用な奴。

「ちょっ、アンタ。意外とやるじゃない!」

ハルヒは満面の笑顔で西條兄の肩をバンバン叩いている。

「ま、マグレだよ」

ハルヒの勢いに押されたのか、でも満更でもないみたいにバツが悪そうにはにかんでいた。 <> 1<>sage<>2011/10/10(月) 02:11:22.35 ID:2CRBL4fPo<> ちょっと落ち着いて作業できないので、明日にまた投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/10(月) 13:38:19.40 ID:LrB5l4Fyo<> 了解

舞ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/10(月) 16:43:31.41 ID:2CRBL4fPo<>
「ビシィッ!」

またまたコチラのレーンでは咲畑が元気の良い掛け声と共に投球する。
気合と勢いは良いものの、いかんせんパワー不足か。

見事に一番ピンをはじき飛ばすものの、右側半分の7本を倒すのみに終わった。

「・・・」

ノーモーションで繰り出された豪速球はやはり長門か。
手首だけでピンが爆裂せんばかりの勢いでボールがすっ飛んでいった。

「何かおかしかった?」

いや、そんな事は無いさ。その調子で頑張れ。

「そう」

満足気な表情を(本当に微かに)浮かべると、自分の席へ戻っていった。

「きょ、キョンくん〜、こここんな感じでいいんですかぁ・・・あっきゃあっ」

なぜそんな何もない所で転ぶんですか朝比奈さん!?

だが放たれたボールは・・・、やはりガーターです。

「あううぅ・・・痛いですぅ」

少し赤くなった膝をさすりながら、涙目で朝比奈さんは戻っていった。

「さて、私も・・・こんな、感じ、っか?」

おお、蒼井さんも古泉に負けず劣らず美しいフォームだ。
長い髪が軽やかに流れてその余韻も古泉と違って清々しい。

「あちゃ、一本残ってしまったな」

最後に俺の番だが、俺もボーリングはそんなにやったことが無いが、全くの未経験ってわけでもない。
放った球はなんとかピンへ向かっていき。

「がっ、何だそりゃ!?」

見事に両端の2本ずつが残りやがった。

「あっはっは。何よそれ、アンタらしいじゃない!」

うるせえよ。お前のドストライクもお前らしいけどな。 <> 1<>sage<>2011/10/10(月) 17:21:29.88 ID:2CRBL4fPo<>
そんな調子で一ゲームを消化する頃には、西條兄のぎこちなさもだいぶ薄れたようだった。

「チーム戦で勝負よっ!」

なんかここまで来るとハルヒがそう言い出すのも必然的な気がしてきたな。

「だがハルヒ、9人じゃ綺麗にチーム分けできないぞ。3レーンあるわけじゃないから、3チームにもできんだろう」

「ん、そういえばそれもそうね」

「それでしたら、私はちょっと休憩させてください。先ほどのゲームで勢い込んでしまったのか、
右手に少々違和感を覚えます。観戦に専念させて頂きますよ」

また下手な遠慮しやがって。
だが、確かにこの戦いは参戦するより観戦する方が面白そうではあるけどな。

「それじゃ、副団長抜きだけど、チーム戦よ!」

結局、その後の厳正なくじ引きの結果、チーム分けは・・・・。

ハルヒチーム:西條兄、長門、朝比奈さん
キョンチーム:西條妹、咲畑、蒼井さん

「みんな、気合入れなさいよね!キョンなんかに負けるなんて許されないんだから!」

「ビシィ!頑張れば下克上だよ!渋谷支部が本部を超えるときは今なんだよ!」

いや、俺渋谷支部じゃないし。むしろお前らみんないつの間にか渋谷支部に納得してないか?

しかし思い返せばハルヒと同じチームで戦うことはあっても勝負したことは無かったな。
こんな事でもなけりゃ、ハルヒと真剣勝負する機会なんてないだろうからな。
これはこれでいい機会かもしれないな。 <> 1<>sage<>2011/10/10(月) 20:50:53.51 ID:2CRBL4fPo<>
「よし。それじゃハルヒ、俺も本気で勝ちに行くからな」

「団長に向かって言うじゃない。受けて立つわ!」

「おにぃ、手加減なんてなしだからね」

「あ、安心しろ七海。そもそも加減できるほど上手くない」

「それもそうだね、タク。ナナちゃんも一生懸命頑張ろ!」

「あぅぅ、みんなの足を引っぱちゃいそうです・・・」

「大丈夫。朝比奈みくるのカバーは私がする」

「長門さん・・・」

「長門、本気といってもだな・・・」

宇宙パワーは無しで頼むぞ。じゃないとパーフェクトを出しかねんからな。

「心配は無用。実力で勝負する」

おお、長門がヤル気になっている。

「それじゃ、第一投は誰だ?え?私?」

「頑張れよ、蒼井!」

パァン!とハイタッチで送り出す。

「おうっ!」

「有希ー!切り込み隊長は任せたわ!」

「まかせて」


こうして、ボーリング勝負はスタートした。 <> 1<>sage<>2011/10/10(月) 21:52:31.48 ID:2CRBL4fPo<>
今日で3連休終了なので、今日はここまで。

ボーリング勝負終わったら書き溜めしてるパートにつながるからもう少し投下スピード上がる、はず。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/10/10(月) 22:13:03.34 ID:9/dADswYo<> 乙。楽しみにしてる <> 1(今日で何とか書きためパートに繋げたい)<>sage<>2011/10/15(土) 20:58:52.15 ID:KsTfscMEo<>
ゲームがスタートして数分、まだ3フレーム目程度だがだんだんと流れが見えてきた。

ハルヒ、長門がポイントゲッターとなりチームを牽引する一方、朝比奈さん、西條兄は足をひっぱるほどではないものの、そこそこのポイントしか積み重ねてはいない。

対してこちらは蒼井さんと咲畑がそれなりに点数を積み上げてはいるものの、二人でハルヒと長門に対抗できるほどのレベルではない。

ただ俺も西條妹も朝比奈さんと西條兄よりは良いスコアを出しているため、チーム対チームで見るとスコアは不思議なほどに拮抗していた。

「おやおや、なかなかどうして。これはなかなか良い勝負なのでは?」

古泉がまさしく他人事のように両チームのスコアを見比べる。

どちらかのチームに古泉が入っていたら、こんなにバランスがとれた戦いにはなっていなかっただろうな。
まさかそこまで見越して観戦を申し出たわけじゃないだろうな?

「いえいえ、誤解ですよ」

苦笑いで肩をすくめる。
追求しても仕方が無いことだし、ここはそういうことにしておいてやろう。

<> 1<>sage<>2011/10/15(土) 21:07:37.89 ID:KsTfscMEo<>
そうこうする内にゲームも残りフレーム数が少なくなってきた。

ここまでポイントが拮抗しているだけに、お互いにワンミスが命取りだ。

「っあ!」

そんなことを考えている矢先、西條兄が投球の瞬間足を滑らせたのか、見事なガーターを叩き出した。

「こらー!この終盤で何してるのよ!」

「ご、ごめん」

「ま、いいわ!団員の失点をカバーするのも団長の勤めだから!」

こういう時のハルヒは本当に取り返すからな。
あ、やっぱりストライク出しやがった。

「うーん、涼宮さんと長門さんはホントにすっごいねー。個人戦じゃまるで太刀打ちできないよ」

「そうだな。だが、これはチーム戦だからな。まだまだ勝ち目はある」

「そうですね、さっきもおにぃがミスしてたし」

「俺達は俺達のペースでやってこうぜ。ハルヒと長門の真似なんでやろうと思ったってできないしな」 <> 1<>sage<>2011/10/15(土) 21:26:09.18 ID:KsTfscMEo<>
「よしっ!最後のフレームだ」

「キョンくん頑張ってー!」

「キョンさん!頑張ってください!」

最後の投球を前に、咲畑と西條妹が声援を送ってくる。
ハルヒの視線が妙に痛いが、二人の声援の前ではなんの効果もないぞハルヒ。

放ったボールは見事にストライクを叩き出す。

「よっしゃ」

「やったねキョンくん!」

「うう、最後の投球は私なのに、キョンさん、プレッシャー掛けないでくださいよ」

「はは、気にせず気楽に投げてくれ」

俺と入れ替わりで西條妹がレーンへ向かう。
相変わらず力の弱々しい投げ方だが、コースはなかなか正確なのでコンスタントにポイントを獲得する。

最後の投球でも6ピンを倒す、まずまずの結果だった。

「これでこちらの投球は全員終わったな。スコアはどうだ?」

隣のハルヒチームとの得点を見比べる。

差は8ポイント優勢。
だが、あちらはまだ最後の投球が終わっていない。

「西條さん、がんばってー」

「あなたには期待している」

「西條君!我チームの勝利はあんたにかかってんのよ!気合入れなさい!」

「ううう・・・・どうしてこうなった、どうしてこうなったぁ!
こんな接戦の最後の最後に登場とかどんな罰ゲームだよ!だから人生はクソゲーって言われるんだ!
これはあれだ。僕が投げたら7ピン倒れて僅か1ピン差で負けるんだ。そういう流れなんだ。
僕がこんなチャンスでヒーローになれるはずがない」

なんだか段々見ていて気の毒になってきた。

「ほらっ!いい加減投げなさい。大丈夫よ西條君。あんたはもうSOS団の仲間なんだから!」

「ど、どういう理屈だよ。これだからDQNは・・・。わかったよ!投げるよ!どうなっても知らないからな!」

まだブツクサと言いながら、やっと投球動作に入る。
放たれたボールは・・・・。

<> 1<>sage<>2011/10/15(土) 22:00:58.35 ID:KsTfscMEo<>
「あ・・・え・・・?」

「おにぃが・・・」

「これはこれは」

「え?」

一瞬、妙な静寂に包まれた。
レーンの奥で機械がピンの掃除をしている。

「やるじゃないアンタ!」

パーンと、ハルヒが西條兄の背中を勢い良く叩いた。

「え?え?」

最後の最後でストライクとは。
西條兄にしてやられたな。

「西条君、凄いですねー」

「あ、ありがと・・・」

「やるじゃないか西條。見直したぞ」

「凄いねタク。やったね!」

「この功績にはご褒美が必要ね!今日からあなたはSOS団渋谷支部、支部長を名乗りなさい!」

わいわいと、時間が過ぎていった。 <> 1<>sage<>2011/10/16(日) 01:31:24.30 ID:DHDs5Cqro<>
申し訳ない。
今日はここまでにして明日投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/10/16(日) 19:32:29.05 ID:W/6qd6jso<> 乙乙
面白いぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/10/16(日) 20:59:45.21 ID:hj8kzUPco<> wwkwwk <> 1<>sage<>2011/10/16(日) 23:09:39.37 ID:DHDs5Cqro<>
それからはみんなでファミレスに移動してワイワイと食事した。

西條兄のぎこちない感じもほとんど見られなくなって、またSOS団本店と渋谷支部の面々の交流も一段と進んだようだった。

たまにこういうことまで見越してたのか?って聞きたくなる時があるよ。
なぁハルヒ?どうなんだ?

「ふふ、涼宮さんには不思議と人を惹きつける魅力みたいなものがありますからね。
それが深い洞察と考えによるものなのかどうなのか、聞いてみたい気もしますが・・・」

「まぁ、野暮ってもんだろうな」


「うわー、長門さん小柄なのにすっごい食べるね」

「そんなことはない。適切なエネルギー摂取を心がけている」

「羨ましいですよね。私なんて食べるとすぐに・・・」

「貴様っ、喧嘩を売っているのか!?食べた物すべて胸部に溜め込んでいるとでも言うのかっ」

「え、ええっ!?」

「あ、蒼井さん、落ち着いて!怒ったら負け!負けだから!」

「ひ、ひんぬーはステータスだ。希少価値だ!だが、ある方がいい!」

「おにぃ、いい加減しばき倒すよ?」

「待ってください!お兄さんは今、ものすごく勇気のある発言をされたのですよ!?」

「え、ええー!?」


今は、仲間が増えたことを素直に喜んでおくとするか。

<> 1<>sage<>2011/10/16(日) 23:18:38.49 ID:DHDs5Cqro<>
「それじゃキョン、みんな、また近い内に遊びに来てくれ」

「そうだな。ニュージェネ調査のはずがただのボーリング大会になっちまったけどな」

渋谷駅前の雑踏の中で、蒼井さん、咲畑、西條兄弟が見送ってくれる。

「き、キョン君とは所々で近いものを感じる。ふ、ふひ。こ、今度僕のコレクションを見せてあげてもいい」

そ、そいつはありがとよ西條。楽しみにしておくよ。

「みくるさん!今度一緒に洋服とか見に行きましょうね!あ、あとゲロカエルんのお店とかも紹介しますから」

「ホントですか!わぁー、ありがとうございます」

「それじゃみんな!近いうちにまた来るわ。それから、今度はみんなも遊びに来なさいよねっ!」

「うん。必ず行くからね!その時はビシィっと案内頼むね!」

「ではでは、名残惜しいですが本日はこのへんでお暇いたしましょう」

「ばいばい」

三々五々挨拶を交わして、俺たちは改札をくぐっていった。

<> 1<>sage<>2011/10/16(日) 23:32:34.06 ID:DHDs5Cqro<>

数日後。
事態は急展開を迎えた。


いつものようにつまらない映画のスタッフロールみたいに長ったらしい坂道を登って、
少し汗ばみながら登校すると、珍しく教室にはまだハルヒの姿が見えなかった。

ここ数日、毎日のようにニュージェネ事件の話しかしない所を見ると、夜も遅くまで調べ物でもしているだろう事は伺えた。

そんな事を毎晩のようにやっていれば、あいつもたまには寝坊することもあるだろう。

それにどうせ来たところで口を開けばニュージェネニュージェネと朝っぱらから猟奇事件の話を
されるのも目に見えているので、久しぶりに静かな朝を迎えられてちょっとラッキーだと思ったくらいだ。

そんな風にこの時はまだ軽く考えていたのだが、結局授業が始まる時間になってもハルヒはやってこなかった。

『風邪でもひいたのか?』

と、取り敢えず休憩時間にメールも送ってみたが、結局放課後になっても返事は来なかった。

代わりに、笑顔のポーカーフェイスで表情を殺した古泉と、無表情な長門が教室にやってきた。
ああ、これは何かマズい事が起こったんだろうな、とこの時になってやっと思い至った。

ただ、この期に及んで『ハルヒがまた閉鎖空間でも創りだしたんだろう』なんて
程度にしか思っていなかった俺の危機意識の薄さは、ホントに救いようがないね。

<> 1<>sage<>2011/10/16(日) 23:34:46.12 ID:DHDs5Cqro<>

数日後。
事態は急展開を迎えた。


いつものようにつまらない映画のスタッフロールみたいに長ったらしい坂道を登って、
少し汗ばみながら登校すると、珍しく教室にはまだハルヒの姿が見えなかった。

ここ数日、毎日のようにニュージェネ事件の話しかしない所を見ると、夜も遅くまで調べ物でもしているだろう事は伺えた。

そんな事を毎晩のようにやっていれば、あいつもたまには寝坊することもあるだろう。

それにどうせ来たところで口を開けばニュージェネニュージェネと朝っぱらから猟奇事件の話を
されるのも目に見えているので、久しぶりに静かな朝を迎えられてちょっとラッキーだと思ったくらいだ。

そんな風にこの時はまだ軽く考えていたのだが、結局授業が始まる時間になってもハルヒはやってこなかった。

『風邪でもひいたのか?』

と、取り敢えず休憩時間にメールも送ってみたが、結局放課後になっても返事は来なかった。

代わりに、笑顔のポーカーフェイスで表情を殺した古泉と、無表情な長門が教室にやってきた。
ああ、これは何かマズい事が起こったんだろうな、とこの時になってやっと思い至った。

ただ、この期に及んで『ハルヒがまた閉鎖空間でも創りだしたんだろう』なんて
程度にしか思っていなかった俺の危機意識の薄さは、ホントに救いようがないね。



団室に入ると、酷く狼狽した朝比奈さんが待っていた。

「きょ、キョンくぅん」

「ちょっ、あ、朝比奈さん。どうしたんですかいきなり」

扉を開けた瞬間に狼狽えた朝比奈さんと目があって、その瞬間に朝比奈さんの瞳にはみるみるうちに涙が溜まっていったのだ。

「す、涼宮さんがぁ・・・」

「お、落ち着いてくださいって!おい、どうした?何があった、古泉」

「今回の事態は我々の認識不足が招いた結果です。申し訳ありません」

珍しく表情を歪めて、沈痛な面持ちで古泉は頭を下げた。

だからよ、古泉。俺はお前のつむじなんて見せられたって何が起きたかなんてわからないんだよ。


「昨夜未明、涼宮さんが何者かに誘拐されました」

<> 1<>sage<>2011/10/16(日) 23:36:49.82 ID:DHDs5Cqro<>
あれ、なんか二重投稿になっちまいました。
121はなかったってことで。

やっと書き溜めパートに繋がったので多少は投下速度上がるかな。
と言ったところで本日はここまでにします。 <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 21:36:22.23 ID:JWSnReqOo<>
またまた間が開いちまいました。
明日早いので今日は適当に投下してきます。 <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 21:39:49.97 ID:JWSnReqOo<>

誘拐?誰が?ハルヒが?どこへ?誰に?どうして?
一瞬で頭の中をめまぐるしく疑問符が浮かんでは消えて行った。

ハルヒが誘拐?

いつぞや朝比奈さんが誘拐されたときと同じような状況か?

「機関は、その可能性は低いと見ています」

「なぜだ?」

「このタイミングで組織が行動に出るメリットがありません。
佐々木さんへの能力移譲は不可能であることが分かった事で、彼らも我々と同じく涼宮さんの
精神的安定を図る路線にシフトしています」

「敵対未来人の線はどうです?」
「それも、無いようです。朝比奈さん、長門さんともに、時空震は観測していない、との事なので」

古泉の説明に、長門が微かに頷く。

「長門。それじゃあ当然、天蓋領域も関係ないんだろうな?」

「完全な否定はできない。しかし可能性は低い」

「じゃあ!誰なんだよ!」

「ひっ・・・」


朝比奈さんの怯えた声にハッと我に返る。
こんな所で声を荒げたって仕方ないし、仲間を責めてどうなるもんでもない。

「落ち着いて、ください」

古泉が、注意深く俺の様子を伺いながら、声を掛けてくる。

「すまん古泉。朝比奈さん、申し訳ありません」

ふるふると朝比奈さんは首を振って答えて、微かに笑顔を見せた。

「今のところ手がかりはありませんが、機関が総力を挙げて涼宮さんの行方を追っています。
何らかの情報を得るまでに、そんなに時間は要しないでしょう」

「古泉一樹が所属する機関は優秀。その能力は日本の警察組織に匹敵する」

それはどれくらい凄いのか良く解らんが、俺を元気づけようとしてくれた言葉なんだろうな。

「気を遣わせちまって悪いな長門。ありがとよ」

「涼宮ハルヒを心配する気持ちは私も同じ。礼には及ばない」

「そうかい。だけど俺が嬉しかったんだから、礼くらい言うのさ」

「そう」

  <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 21:42:48.65 ID:JWSnReqOo<>
「それで、これからどうする?」

「取り敢えず、僕達にできることは今のところありませんから、機関からの報告を待つというのが最善だと思います」

「しかしだな・・・」

「何かできる状況で足掻くことは重要ですが、何も出来ない状況では何もしないことも、また重要です。
・・・その焦りは、僕も理解しているつもりですが」

古泉にしては珍しく、悔しさを滲ませた声だった。

機関に所属している古泉がハルヒの捜索ではなくここに居るのだ。
何かできることが「あるかもしれない」のに、何もしないことを「選択させられて」いる古泉。
その悔しさは、俺の比ではないかもしれないな。

「今のところ、閉鎖空間は発生していません。
これは涼宮さんの身に重大な問題が発生していないことの証左として考えて良いでしょう」

「ひとまず無事だろう、ってことか。そりゃなんとも明るい情報だな」

「もっとも・・・、むしろ閉鎖空間が発生してくれたほうが良いのかもしれません。
そうすれば、涼宮さんの居場所など、僕には手に取るように分かるはずですから」

「そんなのっ・・!」

本気とも冗談ともつかない古泉の言葉に、朝比奈さんが敏感に反応した。
驚きと、疑念を含んだ視線が古泉に突き刺さる。

これには古泉も珍しくバツが悪そうに、

「申し訳ありません。不謹慎な発言でした。撤回します」

と、頭を下げた。

「いえ・・・、いいんです。すみません」

朝比奈さんは元気なく頷くだけだった。


「それじゃあ、今日は一旦家に帰るしかないか。
お互いにすぐに連絡が取り合えるよう、携帯は肌身離さず持っておくように、ってところか」

「そうですね。それから、朝比奈さんと長門さんをお送りしましょう。
キングを獲った後にナイトやビショップを狙うとも思えませんが、用心に越したことはないでしょう」


  <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 21:47:19.45 ID:JWSnReqOo<>
朝比奈さんと長門をそれぞれの家まで送り届けて自宅に戻ったのは、
既に夕方のアニメ番組も終わっている時間だった。

靴を脱いでカバンを自室に置き、制服を着替えてリビングに降りると既に母親が晩飯を
テーブルに並べ始めており、妹はちゃっかり食卓に着いて、テレビ番組が始まるのを
今か今かと待ち構えていた。

ビールか何かのCMが明けると、画面は渋谷のセンター街を映しだした。
そこにテロップで「検証!ニュージェネ事件。今夜救世主が現れる!?」と派手な装飾文字が、
わざとらしい効果音とともに現れる。

「あ、始まったー」

なるほど、ニュージェネ特番か。
最近ホットなこの事件だ。特番が組まれてもおかしくはないが、妹よ。
小学生のお前がこんな猟奇事件に興味を持つなんてな。なんともはや、世も末って感じがするぜ。

俺はなんの気なしにその番組を眺めながら、並べられた夕食を摂っていた。
コーネリアスタワーや張り付けの現場と思われる路地など、ところどころ先日探索した場所も紹介される。

ついこの間も見てきたはずの場所なのに、こうしてテレビを通してみると途端に
現実味が薄く感じられるのはなんでなんだろうな?

テレビの中に映っている『渋谷』って街は、もしかしたらどこかの舞台にある大掛かりな
装置なんじゃないか、なんて想像すら浮かんで来てしまう。

そんな想像を鼻で笑って、そういえばそんな映画が昔あったなぁ、
なんて思いながら味噌汁をすすっていると、俄にテレビがざわめきだした。

『ご、御覧ください!誰か出てきました。・・・あれは、高校生?でしょうか?』

急に画面はスタジオからセンター街のライブ映像に切り替わって、レポーターのアップから
O-Frontのオーロラビジョンの上、屋上の辺りに遷移した。

画面が暗いのと、周りの電飾の光の下限で良く見えないが、確かにO-Frontの屋上に誰かいるようだ。

「ねぇねぇ!キョン君!誰かいるよ!」

「ああ、そうだな。夜も遅いんだからあまり大きな声は出さないようにしなさい」

妹を窘めながらも、画面から目が話せない。

なんなんだこの雰囲気。

駅前からセンター街に集まっている人だかりが一斉にその人物に向けて写メを向けたり、
一部では救世主コールまで起こっている。異様な光景だ。

それから一転してヘリの映像に切り替わり、上空から屋上の人物が撮影されて、鮮明な映像がテレビに流た。

「・・・え?」

目を見張った。いや、疑った。あれは・・・、

「西條・・・?」

そこに映っているのは、SOS団新団員の渋谷支部長の西條拓巳だった。

  <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 22:14:46.61 ID:JWSnReqOo<>
耳元で呼び出し音が鳴っている。
急いで自室に戻ると部屋の小さいテレビを点けて、すぐに古泉をコールした。

『はい、古泉です』

「俺だ。テレビは見てるか?」

『見ています。西条さん、ですね?』

「そうだ、どういう事だコレ?」

『まだ状況が掴めていませんが、異様な雰囲気であることは間違いないでしょう。妙な感覚がします』

「俺は蒼井さん達に連絡してみる」

『では、僕は朝比奈さんと長門さんに連絡しておきましょう』


簡潔に会話をして一旦電話を切ると、すぐに蒼井さんをコールする。
先程よりは長いコール回数。出ない。

一度電話を切って、念のためもう一度だけコールする。
少しして、電話がつながった。

『なんだ、キョンか』

「蒼井さんか!?今テレビを見ていて・・・」

『ああ、分かっている。西條だろう?』

「どういう事なんだ?」

画面の中では、西條がO-Frontの屋上から身を乗り出してなにやら虚空に右手を伸ばしている。

なんだ?何をやってるんだ?


『詳しくは話せないが・・・、西條七海が何者かに誘拐された』

「なっ・・・!?」

『奴は、妹を人質に取られてあの場にいる、と考えるのが妥当だろう』

「なんてこった・・・。まさかそっちでも」

『こっち・・・でも?おい、どういう事だキョン?』

画面の中では、さっきまで虚空に手を伸ばしていた西条がO-Front内部に姿を消した。

と、同時にセンター街、スクランブル交差点、駅前で一斉に不満の声が上がる。

先程までの救世主コールは汚い野次に代わり、失望感が画面を満たしていた。

「実は・・・な、ハルヒが、誘拐されたんだ」

『なんだと!?いつだ!?』

「昨日の夜」

『くっ・・・、あいつら・・・ギガロマニアックスでもない人間にまで手を・・・。
なにか要求は届いていないのか?』

「いや、要求なんかは何も届いていないが・・・どういう事だ?」

『なんだキョン?』

「あいつら、って誰だ?まさかお前たちには犯人の目星がついてんのか!?」

『ああ、分かっているさ。だが此処から先は一旦合流してから話そう』

それから家の前に機関が手配した車が到着するまでは10分と掛からなかった。

  <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 22:21:06.25 ID:JWSnReqOo<>

渋谷駅前に到着した時には、既にテレビの中にあった異様な雰囲気は微塵もなく、
仕事帰りのサラリーマンや、夜遊びに勤しむ若者が闊歩する、至って普通の光景が広がっていた。

「では、まず我々の状況からご説明しましょう」

そう言って古泉は、カットボディで合流した蒼井セナに説明を始めた。

とはいえ、昨夜未明にハルヒが誘拐されてからこれといった手がかりも無いため、
その事実を伝えるだけの簡単な説明になってしまう。

「現在も機関メンバーが捜索を継続中ですが、思った以上に芳しくない状況です」
「希テクノロジー」

そこまで大人しく話を聞いていた蒼井セナが口を開いた。
同時に、朝比奈さんが息を飲む。

「そこを調べるべきだ」

「では・・・」

「ああ、西條七海を誘拐したのは希テクノロジーだ。恐らく、涼宮ハルヒを誘拐したのも同様だろう」

ちょ、ちょっと待て!

希テクノロジーといったら日本でも有数の医療・製薬企業じゃないか。
CMだってバンバン流れているような、普通の一部上場企業だぞ?
なんだってそんな所が誘拐なんてことをする?

「企業の裏の顔、と言ってしまえばそれまでだがな。希テクノロジーの代表、野呂瀬玄一。
その男が、私達の敵だ」

蒼井セナが発した言葉には、清冽な怒りが迸っていた。
その迫力に押されて、俺達は一瞬しんと静まり返ってしまう。

  <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 22:25:04.88 ID:JWSnReqOo<>

「キョン君!す、すぐに助けに行きましょう!」

意外にも、その静寂を破ったのは朝比奈さんだった。

「待ってください。仮に敵の正体が希テクノロジーだったとして、どう攻めるか、
きちんと検討をするべきです」

「そんな悠長なことを言っている間に!涼宮さんが!
涼宮さんがどんな目に合わされるかわからないんです!」

普段見たことがないくらい、朝比奈さんは取り乱していた。

いつもの焦ったような、あたふたしたようなそんな雰囲気ではない。
明確な意思を持って純粋に行動を早めるべきだと主張している。

「朝比奈みくる。貴方は少し落ち着くべき」

「ダメです!落ち着いている余裕なんて、ありません!」

これには本気で驚いた。朝比奈さんが長門に意見するなんてな。

真っ向から反論された長門も僅かに目を丸くしている。

「朝比奈さん!一体どうしたんです?何をいきなり焦っているんですか?
さっきも古泉が言っていたように、閉鎖空間が発生していないってことは、
一応ハルヒは無事ってことなんじゃないですか?」

「ダメ。ダメなんです。希テクノロジーだけは、ダメなんです」

「・・・・・」

言いながら、朝比奈さんは押し黙っている蒼井セナにちらりと視線を向けた。

「IFSは未来では基礎技術だ、って言いましたよね?」

「え?・・・はい。そうでしたけど、いきなりなんです?」

「IFSとギガロマニアックスは、多分同じ技術だ、とも言いましたよね?」

「そう、ですね」

「未来では・・・、未来では、IFSは『想像を絶するほどの非人道的実験』を経て開発された、と習うんです」

「・・・な、んです、って?」

「だから・・・」

「ギガロマニアックスはな」

「蒼井さん・・・」

「ギガロマニアックスはな、キョン。みんな一度、壊れているんだよ」

  <> 1<>sage<>2011/10/21(金) 22:30:15.06 ID:JWSnReqOo<>
さて、前述のとおり明日はすげぇ朝が早いんで今日はここまでにしときます。
また明日の晩か、明後日の晩に投下するのでよろしく。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/22(土) 02:31:28.78 ID:pkKCTsxLo<> 乙!
まってたぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/10/22(土) 02:43:39.97 ID:7wlPtuqTo<> 乙!物語が大きく動いてきたな
O-FRONT後のタクはこずぴぃが話しかけてくるまでかわいそうだったけど
諸事情知っている人が多いからアフターケア?が比較的マシになりそうでよかった <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 21:11:07.22 ID:QS8R1v0Xo<>
>132
お待たせしちまいましたね。
いや、待ってていただけるってだけですげぇ嬉しいです。

>133
原作だとO-FRONT後の拓巳は腫れ物扱いでしたからね。
SOS団が関わってどうなるか、って所でしょうか。


と、言う訳でこれから投下してきます。
とりあえずは切りの良いところまで。 <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 21:14:11.20 ID:QS8R1v0Xo<>
蒼井セナが語った話は、とても信じられない内容だった。
いや、とてもじゃないが『信じたくない』内容だった。

腐敗していく妹の死体を、愛おしそうに、幸せそうにあやし続ける母親の姿を見せつけられて、
しかもその実験の首謀者が父親で。

そんな光景を見せつけられてまともで居られるわけがない。

「そうして、私のどこかは『壊れた』んだよ」

誰も、一言も発せられなかった。

IFSの開発経緯を予備知識として知る朝比奈さんは、それでもその被験者の語るダイレクトな内容に
肩を震わせながら長門にすがりついていた。

長門は今まで見せたこともないような表情で、不快感を顕にしていた。

あの長門が、こんなふうに表情を変えるまでに、蒼井セナの話は悲痛に満ちていた。

蒼井セナの話が終わると、誰も一言も発せられずに、金縛りにあったような静寂に囚われた。

「私も、今すぐに助けに行こうっていう朝比奈さんの意見に賛成」

いつから居たのだろうか。
そんな沈黙の空間を破ったのは、入り口に立っていた咲畑梨深と項垂れた西條拓巳だった。

「私は、私はその野呂瀬玄一に直々に、延々と拷問を繰り返されて覚醒したギガロマニアックス。
だから、希テクノロジーと野呂瀬の怖さは、知っているつもり」

また、聞きたくない話だった。
だけど、耳をふさげない話でもあった。

壮絶な話を淡々と語る少女に向かって、俺は数日前にあろうことか。

『俺もギガロマニアックスになれるのか?便利だよな?』

・・・なんて馬鹿げた発言だったんだろう。
その能力のために、蒼井や咲畑がどれだけの犠牲を払ったかも知らないで。

「野呂瀬がどうやって涼宮さんを誘拐したのかはわからない。目的もわからない。
だけど、あんな狂気の男のもとに置いておくことは絶対にできない。だから、すぐに助けに行こう」

「どうやって助けるって言うんだよ」

  <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 21:29:53.25 ID:QS8R1v0Xo<>
咲畑の言葉を覆すように呟いたのは西條だった。
とても憔悴しているようで、目には生気が感じられない。

それもそうだ。
さっきのあの大騒ぎの渦中から、すぐにここに来ているのだろうからな。

「相手は、七海を人質にとって、あんなもの送りつけてくるような狂ってる連中なんだぞ!?
ただの高校生の僕達が、一体どうやって助けるって言うんだよ!?」

「タク・・・」
「西條、貴様・・・」

そんな西條の言葉に、咲畑は悲しそうな視線を、蒼井さんは怒りとも憤りともつかない視線を向けている。

俺は聞くのが怖かった。

蒼井さんや咲畑のあんな話を聞いた後では、人質にされた七海ちゃんの身に何が起きているのか、
想像もしたくなかった。

だけど、二人を助けるためには訊かなければならない。
俺は注意深く言葉を選んで、だけどストレートに。

「西條、あんなもの、ってなんだ?」
「・・・っ!」

聞いた瞬間、西條と、咲畑の体が強張った。

「一体、何があったのですか?申し訳ありませんが、我々も涼宮さんが人質に取られています。
心苦しいのですが、正確な情報が必要なのです」

「ナナちゃんの、左手」


全員が息を飲んだのは同時だった。

  <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 21:51:58.23 ID:QS8R1v0Xo<>
「さっき、病院の保冷庫に預けてきたの。だけど、早くナナちゃんを助けて手術をしないと、
元通りにならなくなる。だからっ」

「分かった。もういい。・・・古泉」
「分かっています。作戦を練っている時間などクソ食らえです。今すぐにでも、行動しましょう」

「だからって、どうやって・・・っ!」
「西條!」
「っ!?」


「助けられない理由なんて、考えりゃいくらでも出てくるさ。
そりゃあ、俺もお前もただの高校生だからな」

「っっ!?僕はっ!」

「西條?」

「僕はっ、僕は・・・」

ただ、そう言いながら西條は泣き崩れた。

一体どうしたってんだ。

膝を折って、子供のように泣いている西條に誰も声をかけられなかった。
嗚咽を漏らす西條の背中を、咲畑がさすってやっている。

そうして少し落ち着いたのか、ぽつぽつを話し始めた。

「僕は、ただの高校生じゃ、ない。それどころか、人間ですら無かった」

何を言っている?

「タク・・・。みんな、実は、タクは・・・」

悲痛な面持ちを深めて、膝をついた西條に寄り添う。

キィ・・・キィ・・・。

「誰です?」

金属の軋む音に、全員が一斉に入り口を見る。
車椅子に乗った、小柄な、老人?

「梨深、事情は僕から話すよ。初めまして、みんな」

声は見た目からは想像が付かないくらいに若々しかった。

だけど、覇気はない物静かな声だった。

小柄な、嗄れた体を車椅子に乗せて、入り口に佇んでいる。

「僕は、西條拓巳。ギガロマニアックスだ」

表情はまるで伺えなかった。

  <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 22:39:57.29 ID:QS8R1v0Xo<>

将軍と名乗る小柄な老人は、いや、少年は話を終えると疲労感も露に息をついた。

話は、理解した。
ハルヒのトンデモに慣れている俺でさえ、俄には信じがたい内容だったがな。
西條が、将軍が産み出した妄想の産物だってのも理解した。

だからなんだってんだ。
こんなに悩んで、泣いて、怯えて、コンプレックスだって抱えているような奴が、そこらの誰かよりも人間らしいこいつが、人間じゃなくってなんなんだ。

仮に、いや、事実として人間じゃなくたって、それがなんだ。
それを言ったら、長門だって人間じゃない。
だけど。

「・・・」

「西條、うちの団長を舐めんなよ?お前が人間じゃない?だから、なんだ?
だからSOS団から抜けられるとでも思ったのか?何を勘違いしているんだ?」

「・・・なにを」

「お前が人間か人間じゃねえかなんて関係ない。お前はハルヒが団員だって認めた奴なんだ。
だったら、仲間だろうが!」

「キョンくん」
「否定の要素はない」
「ふふ」


「そして、ハルヒの選んだ俺の仲間は『普通の』高校生じゃないんだよ」

「宇宙人に、未来人に、超能力者・・・」

それぞれの顔を見回した西條に、古泉は不敵な笑みを、長門は揺らがない視線を、
朝比奈さんは優しい笑顔を返した。


「それ以上に俺は属性なんか関係なくこいつらを頼りにしてる。ハルヒの選んだ仲間を、俺は信じてる。
だから、咲畑も、蒼井さんも、西條、お前も。俺は頼りにしているし信じられるんだよ!」


結局こいつらに頼り切りになっちまう自分に嫌気もさすが、それ以上に頼もしさを感じてしまうのさ。

  <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 22:48:04.53 ID:QS8R1v0Xo<>

「それにしても」

急に古泉がニヤニヤと気持ち悪い笑みをこちらに向けて、
朝比奈さんと長門と示し合わせたように頷き合っている。

「な、なんだよ?」

「いえ、今回だけは絶対に負けられないな、と思いましてね」

「そうですねー。まさかキョンくんがあんな嬉しいことを言ってくれるなんて」

「私という個体も、あなたの期待に応えたいと感じている」

「ぐっ!?」

「仲間としてこんなに信頼いただいていたなんて、感激ですよ」

このニヤけ野郎・・・。1分前の自分をぶん殴りたい気分だ。
やれやれ。

「よし、話はついたな」

まだ赤面冷めやらぬ俺を尻目に、蒼井セナは腰をあげながら辺りを見回した。

全員が、彼女の目を見て頷き返す。


西條の頷きは、弱々しかったが、それでも、確かに。


  <> 1<>sage<>2011/10/23(日) 22:54:27.23 ID:QS8R1v0Xo<>
という訳で、今日はここまでにしときます。
お疲れっした!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/10/24(月) 00:28:26.25 ID:8zjGeU1Vo<> トラウマだった右手が左手に…!まぁ右手であるという要素は、七海がいつも右手首にバングルつけてたとか
LCCの右手マドハント妄想攻撃くらいで、どっちの手首でもインパクトとしては変わりないけどね

梨深が先走らない・将軍の登場・タクに味方がいっぱい・タクが覚悟を決めた?、なんだかワクワクしてきたぞ乙! <> 1<>sage<>2011/11/04(金) 00:47:49.05 ID:897KcuRlo<>
昨日投下しようと思ってたら体調崩してできんかったorz
ちょろっと投下してきます。

>141
素 で 間 違 え た。
み、右も左も大差ないよね。

  <> 1<>sage<>2011/11/04(金) 00:54:12.84 ID:897KcuRlo<>
俺を含めて蒼井セナと朝比奈さんの三人は希テクノロジー本社へ向かっていた。
さぁ進軍開始だ、という段になって長門が2チームに分かれる事を提案したためだ。

「蒼井セナの言うとおり、我々が攻略すべきは希テクノロジー本社。
ただし、そこに野呂瀬玄一がいるかは五分五分」

「どういうことだ?」

「もう一箇所、非常に怪しい場所が存在する」

「それは?」

「旧天文博物館プラネタリウム」

確か数年前に潰れた渋谷の古いプラネタリウムだな。

「今回のニュージェネ事件は全てある一貫性を持っている」
「それは、『その目だれの目』というキーワードではないのですか?」

「違う。古泉一樹。貴方にはコーネリアスタワーで測定をして貰ったはず」

「ええ、何かの計測を行いましたが、あれは?」

「渋谷はもともと重力異常値が大きい土地。
その中でもニュージェネ事件の現場は特に重力異常値が大きい場所だった事が分かっている」

「では・・・」

「次の事件を防ぐのなら、その認識で間違いない。ただし今回は逆」

「逆、だと?」

「希テクノロジー本社は重力異常値がゼロ。つまり理想的な重力場の上に建っている。
そして、この渋谷の中で同様の立地が一箇所だけ存在する。それが、旧天文博物館プラネタリウム」

  <> 1<>sage<>2011/11/04(金) 00:59:03.51 ID:897KcuRlo<>
どちらに野呂瀬玄一がいるかは五分五分だったため、希テクノロジーを蒼井さん、朝比奈さん、俺の3人が、
プラネタリウムを古泉、西條、咲畑、長門が担当することになった。

さて、程なくして希テクノロジー本社ビル前に到着したわけだが、さすがは日本有数の一部上場企業。
その巨大なビルの容貌には威圧感すら覚えてしまう。

当然受付時間は終わっているようで、入り口は薄暗く入り口ロビーに人気はなかったが、
完全に閉鎖されているわけでもないようだった。

「いくぞ、キョン」

蒼井セナに背中を押されて希テクノロジーの建物に入った瞬間だった。
ビルのあちこちからガタガタとガラス同士がぶつかり合う音や、物が落ちる音がロビーにこだまする。


「くっ・・・」
「きゃぁああ!キョン君、なんですかこれ!?」
「地震!?」

気づいた頃には立っているのもやっとという位の揺れになっていて、
俺と朝比奈さんは手を取り合いながら半分床にへたりこんでいた。

そんな俺達を尻目に、険しい思案顔で蒼井セナはその場に立ち尽くしている。

「馬鹿な。セカンドメルトだと・・・?早過ぎる」

地震が収まる頃、気づけばあたりは真っ暗になっていた。

「く、暗いですぅ」
「地震で電気が落ちたんでしょうか?」

まだ暗闇になれない目であたりを見回すと、非常灯のような物がポツポツと灯っている。

「いや、誘われてるようだな」

非常灯の灯す先を睨みながら、蒼井セナがつぶやいた。

  <> 1<>sage<>2011/11/04(金) 01:08:04.06 ID:897KcuRlo<>
恐らく罠だろうとは全員が思っていたが、それ以外に進めるルートはどうやら無いようで、
俺達は非常灯の光が不気味に明滅しているその下を歩いて行く。

何度か廊下を曲がった先にエレベーターの扉が開いていた。

あからさまに罠の匂いがするエレベーターの中は煌々と明かりが付いているようで、
薄暗い廊下に漏れ出す光は暗闇に慣れていた目に少し痛いくらいだ。

「どうします?迂回路を探したほうが良くないですか?」

とは朝比奈さんの言。

「いや、ここまで来たら正面突破すべきだろう。迂回路を探してもいたずらに時間を浪費するだけだ」

とは蒼井セナの言。

どちらも一理あるだけに、どうすべきか悩むところだ。
そんな思案に入ろうとした矢先。

『あまり迷っている時間はないわよ、キョン君?』

エレベーターの中に備え付けられた液晶のディスプレイから突然声が聞こえた。

『私は早く貴方との再会を喜びたいの。だから、すぐにこのエレベーターで上がってきてくれるかな?』

「ハルヒっ!」
「涼宮さん!」

画面には、目を閉じたハルヒの姿が映っている。
微動だにしない姿だが、生気がないわけでもなくただ眠っているように見える。

『ほら、キョン君?涼宮さんも、待ってるわよ?』

細く長い指が、ハルヒの頬をわざとらしく撫でていく。

『ね?キョン君。早く上がってきて?』

ハルヒの前を遮るように、声の主が満面の笑みでカメラのレンズを覗き込んでいた。

ああ、くそったれ。
道理で一言目から聞き覚えのある声だとは思ったよ。

なぜお前がいるんだ?
朝倉。

  <> 1<>sage<>2011/11/04(金) 01:10:13.93 ID:897KcuRlo<>
と言った所で本日はここまでです。
ちょっとラストの書き溜めが終わってないので書いてきます。

土曜日の夜くらいにまた更新できたらいいなぁ、ということで。
ではでは。

  <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:14:27.08 ID:E8P4ndg9o<>
随分遅い時間になっちまいましたが、ちょろっと投下してきます。 <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:15:55.36 ID:E8P4ndg9o<>
「ずいぶん遅かったわね。そんなんじゃ涼宮さんの王子様失格よ?キョン君」

「なんでお前がここにいる」

言いながら、視線は朝倉の後ろへ釘付けになった。

一段上がった過装飾な祭壇のようなところに、儀式的な十字架に縛り付けられた状態のハルヒがいたからだ。

「さあ?理由なんて私にも分からないわ。誰が私を再構築したのかも分からないんだから」
「なんだと?」

「でも、これだけははっきりしてるのよね。
私が目覚めたときに、この胸の真ん中あたりにたった一つだけあった、確かな想い」

朝倉は目を細めて、熱っぽい視線で俺を見つめている。
過去の事やらがなくて、こんなシチュエーションじゃなけりゃそれだけでどぎまぎしちまいそうな表情だ。

「今度こそ、この想いをキョン君。貴方に届けたいの」

俺は朝比奈さんを右手で制して後ろへ下がらせる。

「受け取って?――貴方を殺したい、っていう私の気持ちを!」

  <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:18:11.58 ID:E8P4ndg9o<>
瞬間、流れるような黒髪をなびかせながら、お馴染みのアーミーナイフを腰だめに持って一直線に疾駆する。

「くっ・・!朝比奈さんっ!」
「きゃぁあ!」

咄嗟に朝比奈さんを庇うように突き飛ばし、俺も床に転がることでなんとか朝倉のナイフをかわす。
だが、すぐさま朝倉の視線が俺を捉え、追撃体勢に移ろうとしたその時。

「そこまでだ」

蒼井セナが、ディソードを朝倉涼子に突きつける。

「あらっ」

街角で知り合いに声を掛けられた位の気軽さで呟いて、朝倉は軽やかにステップを踏んで2歩3歩と後ずさって距離を取った。

「キョン君、ダメよ?涼宮さんがいるのに他の女の子二人も侍らしちゃって。
そういうイケナイ子にはお仕置きが必要よね?」

「お仕置きってのは更生させるためにあるもんだぜ?殺されちゃたまんねぇな」

俺は朝比奈さんの手を引きながら立ち上がって、なんとか体勢を整える。

その間も蒼井セナは切っ先と視線を朝倉から一瞬も外さずに牽制している。

  <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:20:29.19 ID:E8P4ndg9o<>
「キョン、こいつ何者なんだ?」
「元、長門の同僚だ」
「こいつも宇宙人か」

そう呟いて、蒼井セナは一歩前に出た。
すっと一筋、ディソードを朝倉の右後方へ、視線を左後方へ走らせる。

「で、そこで見ている貴様らは何者だ?」

何を言っているのかと、戸惑いながら蒼井セナの背中と朝倉の表情を交互に見やると、
朝倉は何かとても面白いものでも見つけたかのように唇を歪めた。

「気づかれているわよ?委員会のお二人さん」

『なかなかどうして、鋭い』
『ふふ、ギガロマニアックスというのは感覚も鋭いのですかね?』

ハルヒが磔にされている祭壇の左右に、不意に明かりが灯る。
それはやがて初老の男を浮かび上がらせた。

「誰だ・・・?」
「貴様らも野呂瀬玄一の仲間か?」

『ははは、野呂瀬の仲間か。あんなヤツと一緒にされては困るな』
『全くじゃ。あ奴があそこまで力を持ったのも我々のお陰なのじゃからな』

ってことは、こいつらが希テクノロジーの親玉連中ってことか?

「・・・朝倉さん」
「あら、どうしたの朝比奈さん」

「さっき、この人達のことを『委員会』って言いました?」
「ええ、そうよ?」
「っ!」

  <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:21:42.71 ID:E8P4ndg9o<>
何気ない朝倉の言葉に、朝比奈さんは全身を慄かせた。
その一瞬の戦慄の後、努めて冷静に朝比奈さんが息を吐く。

こんな様子の朝比奈さんはもちろん初めて見る。
委員会?この言葉に反応したのか?

「あなた達は、300人委員会、ですね?」
『おや、私たちのことを知っているとは』

「今すぐ、こんなことをやめてください」
『こんなこと、とはどういう事じゃ?』

「とぼけないで下さいっ!あなた達は一体どれだけのことをしているのか分かっているのですかっ!?
あなた達のせいで、私の時代はっ――――」

そこで急に朝比奈さんは息を詰まらせた。
声を出そうとしてもがいて、自らの手で喉を絞るようにして、それでも声が出ない。

  <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:22:50.54 ID:E8P4ndg9o<>
「朝比奈さんっ!落ち着いてください、朝比奈さん。喉から血が・・・」

綺麗に手入れされた爪が、白磁のような喉に突き立てられて血が滲んでいる。
なんとか宥めるように俺が朝比奈さんの手を押さえると、朝比奈さんは震える声で。

「・・・禁則・・・っ事項っなんて」

『なるほど。そのお嬢さんは時間遡行者ですかね?』
『ほうほう、これは珍しい。なるほどのぉ、この小娘がこれだけ我々に敵意を向けるということは、
我々の計画は未来まで順調に推移している、ということかの。僥倖僥倖』

「くっ・・・」

朝比奈さんの手が白くなるほどに握りこまれ、ブルブルと震えている。


『ふふ、まぁIr2など委員会からすれば数ある計画の一端でしかない。
仮にお嬢さんが計画を妨害したとしても何も影響など無いのだがね』

『さて、朝倉くん。待たせている所悪いのだが、もう少し時間を貰えるかね?』

「私としては早く3人を始末したいのだけれど、まぁいいわ。
お年寄りには優しくすることにしてるの、私」


『なに、ちょっとした余興じゃよ。君たちも気になるだろう?お仲間の様子は』

  <> 1<>sage<>2011/11/06(日) 02:23:28.46 ID:E8P4ndg9o<>
と、言った所で今日はここまでです。
次回からは西條君側のパートを投下します。

ではでは、また週末にでも。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(兵庫県)<>sage<>2011/11/06(日) 02:38:34.41 ID:dmNrS3Iho<> 乙っした。舞ってるぜ <> 1<><>2011/11/13(日) 01:52:43.46 ID:5hJmuAOQo<>
さてさて、前回の予告通り西條チームを投下してきます。

お付き合いよろしくお願いします。 <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 01:55:05.06 ID:5hJmuAOQo<>
先頭を長門さん、その次を梨深と古泉くんが、最後に僕がついていく形で地下道を進んでいた。
プラネタリウムまで続くこの通路は今は閉鎖されているのか、人気はまるで無かった。

にも関わらず煌々と明かりが付いている通路は、逆に不気味なくらいだ。

「しかし先程の地震はなんだったのでしょうね?
あまりにもタイミングが良すぎるといいますか、気になりませんか?」

この地下道に入ってすぐに、割と大きな地震があった。
地震なんてあまり珍しくも無いけれど、今このタイミングで起こった事を偶然と片付けるのはちょっと軽率だろう。

そんな疑問を古泉くんが長門さんに尋ねると。

「確実に関係している」
「えっ?それって、なんで?」

長門さんの表情はここからでは見えないけれど、いつものように無表情なんだろうか。
それに対して古泉くんと梨深は訝しげな声を上げている。

「先程の振動は明らかに人為的な物」

「ほう、わかるものなのですか」

「震源地が海抜ゼロメートル以上で観測された。
このような振動を人為的に起こす方法は地下核実験など幾つかの可能性に限定される。
それらを無視した場合、Ir2と呼ばれる装置が引き起こしたと考えることが最も自然」

  <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 02:12:38.59 ID:5hJmuAOQo<>

「じゃあ、この先に何かあるって思ってていいのかな?」

「そうですね。涼宮さんと西條さんの妹さんがいてくれれば良いのですけれど」

古泉くんが七海の名前を出した途端に、脳裏に七海の姿が浮かんだ。

七海と最後に会ったのはいつだっただろう。

いつも憎まれ口を叩いて、いつもいつも口やかましく世話を焼きに来た、妹の七海。


それを僕はさっき見捨てた。

あのQ-Frontの屋上であと少し手を伸ばせば、ディソードに届いたかもしれない。
なのに、僕の手は伸びてくれなかった。

だけど、仕方なかった。

あんな衆人環視の状況で、将軍に脅されて、相手は七海の手を切断して送りつけてくるような
サイコ野郎で、それで僕に何が出来るって言うんだ。

そもそもなんで僕が将軍に狙われなくちゃいけないんだ。

僕はただ、静かに暮らしていたいだけなのに。


そんな事をぐちゃぐちゃと考えている自分を、冷静に客観視している自分がいる。

この期に及んで自分に言い訳している情けない僕を、もう一人のボクが見つめている。

もう一人のボクが、僕を嫌悪している。

『大丈夫だよ。超能力者の古泉っちも、スーパー宇宙人の長門っちだっているんさっ!
なーんにも心配することなんてないんさ、ぼけなす』

なのに、僕はまだ星来に救いを求めたりしてる。

妹を、七海を、人質に取られてるってのに、それでも他力本願なのか?

『人には得意不得意があるんさっ。戦うことが得意な人だっているし、そうじゃない人だっているっしょ?
だから不得意な人は得意な人に任せちゃえばいいんさ』

一人の僕が、救われたように頷く。
もう一人のボクは・・・。

『自分の命と、他人の命、どっちが大事?ね?ぼけなす』

  <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 02:28:33.23 ID:5hJmuAOQo<>

気づくと、いつの間にかプラネタリウムの入り口に到着していた。

梨深がガチャガチャと扉のノブを回してみたが、当然ながら鍵がかかっているようだ。

「長門さん」

「任せて」

古泉くんに促されて長門さんが扉の前に立つと、あっさりと扉は開いた。

「ええっ、なんでっ!?」

「情報操作は得意」

扉をくぐった先も相変わらず薄暗い。

だけど、今までの通路と違って空間が広くなったように感じる。


壁伝いに歩こうと手探りで進んでいたら、何かちょっとした突起が手に触れた。

おそらく電気のスイッチだと思って操作すると、案の定蛍光灯に光が灯って部屋中が明るくなった。

エントランスのような空間。

奥には上階へ続く階段。

部屋の真ん中に・・・。

「おやおやぁ?西條君たちじゃないっすか。どうしたんすか?こんな所に」

「け、刑事さん?」

視界が一気に開けた瞬間に出くわしたせいもあるのか、僕は混乱していた。

どうしてこんな所に諏訪刑事がいるんだ?

いや、そうか。捜査をしにきてるんだ。

希テクノロジーは、野呂瀬玄一はトンデモないことを企んでいるんだ!

だから、刑事さんが捜査に・・・。


言いながら、刑事さんに駆け寄ろうとした矢先。

「西條拓巳、下がって」

  <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 02:46:45.78 ID:5hJmuAOQo<>  
長門さんに制止された。

「あれ?気づかれてたッすか?」

「あなたのその背中の装置から、ディソードに類似した要素を確認した」

「察しがいいっすね!」

カンッ!

甲高い音がしたかと思うと、突如長門さんの足の甲に十字架が生えていた。

「長門さん!」
「いい」


古泉くんが駆け寄るのを長門さんが制止する。

長門さんの表情は歪みもせずに無表情そのもの。

「なんで?この人はギガロマニアックスじゃないはずなのに・・・、」

隣で梨深が怪訝な顔をしていた。

そうだ。

確かに今の攻撃、諏訪刑事が十字架の杭を投げる動きすらなかった。

気づいたら長門さんの足に杭が刺さっていた。

「そういえば、西條君、さっきはお疲れ様っすね」

「へ・・・?な、なに?」

「ああ、気づいてなかったっすか?」

ジジッ!と一瞬視界にノイズが走る。

なんだ?と思った次の瞬間に、諏訪刑事の左手にスパークウォーズの仮面が現れていた。

あれは、Q-Frontの屋上で将軍を名乗った・・・。

  <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 03:06:38.78 ID:5hJmuAOQo<>
「全く、情けないッすよお?妹さんがさらわれてるっていうのに、お兄ちゃんがあんな体たらくじゃ、妹さんも浮かばれないじゃないッすか?」
 
「なっ、ナナちゃんに何したの!?」

「おっと、自分は何もしてないっすよ。自分はね。ただ、そうッスねぇ。
あの委員会のクソジジイ共は権力と色事が趣味、みたいなもんッスから・・・」

言って僕を睨みつけると、諏訪刑事はニヤァっと信じられないくらいに下品な微笑を顔面に張り付かせた。

「う、うう、うわぁああああああ!」

その表情を見た瞬間、僕は自分でも知らない内に諏訪刑事に掴みかかろうとしていた。


カンッ!

「うわっ!?」

いきなり僕の右手が壁に磔にされた。

「タク!大丈夫!?」
「ふ、服だけだから、大丈夫」

梨深がほっとしたのも束の間。

「ほらほらぁ!どんどん行くッすよお!」

カンッ!カンッ!カンッ!

咄嗟に古泉くんと梨深がその場を飛びすさる。
反応できない僕の目の前に長門さんの後ろ姿が飛び込んできた。

一瞬前まで古泉くんと梨深がいた場所には数本の杭が新たに現れて。
そして、甲高い音に混じった鈍い音。

「あ・・・ああ、うわぁあ・・・」

長門さんの背中から、尖った先端が覗いていた。
  <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 03:32:44.18 ID:5hJmuAOQo<>  

「西條拓巳。情報思念体のインタフェイスである私にこの程度の傷は問題にならない。
慌てなくていい」

言いながら、血塗れの胸に刺さった十字架を気にもせずに僕の腕を張り付けている杭を抜く。

「くっ、どうして?ギガロマニアックスでもないのに彼は、杭を”リアルブート”した」

「くはっ!かはははははは!そうっすよねぇ!
いつも自分たちがやっていることを一般人の俺がやっちまってるんスもんねぇ!」

今まで落ち着き払っていた諏訪刑事が、突然高笑いした。

その目は僕達を蔑むような、見下すような、そんな歪んだものだ。

「どうやら、その背中の装置に何かカラクリがありそうですね」

古泉くんはそう言うと僕達を庇うように諏訪刑事の前に姿を晒す。

「くははははっ!カッコいいっすねぇ!ヒーロー気取りっすか!?」

「長門さん。ここは僕に任せてもらえませんか?」

「待って古泉君!今の攻撃どう考えたってギガロマニアックスの能力だよ。
ここはギガロマニアックスの私が相手をしたほうが・・・」

「それでは野呂瀬玄一と対峙したときの切り札がなくなります」

「でもっ!」

「大丈夫ですよ、咲畑さん。僕は超能力者ですから」

古泉くんは顔だけこちらへ向けて、梨深に向かってウインクする。

普段の僕なら「UZEEEEEEEE!」って叫んでる所だろうけど、古泉くんがやると妙に様になっていて、
そんな気も起きなかった。

「分かった。この場は古泉一樹に任せる。あとからちゃんと追いついて」

「お約束しますよ、長門さん」

「いやぁ勇ましいっすねぇ。だけど、古泉君。年長者としてアドバイスするっすけど・・・」


「行ってください!」

古泉くんが叫び、弾かれたように僕達三人が走りだす。

「出来ない約束はしちゃダメっすねぇ!」

無数の、数えきれないほどの甲高い音が僕らの背中で反響した。

長門さんは振り返らなかった。

僕は振り返れなかった。

  <> 1<>sage saga<>2011/11/13(日) 03:33:50.63 ID:5hJmuAOQo<>
今日はここまでです。
今月中には完結させたいなぁ、という感じで今後も投下してきます。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(東京都)<>sage<>2011/11/16(水) 01:13:05.66 ID:sYk/LGNRo<> 乙 <> 1<>saga<>2011/11/20(日) 23:51:04.35 ID:scR+iHvJo<>
1です。
ホントは今週あたりに投下したかったんですが、ちょっと書き溜めが底を尽きそうなので、
もうちょい書きためてから投下します。
申し訳ありません。

ここまでで80%くらいは消化してるのであと少しだと思います。
もう少しお付き合いいただけると幸いです。

次回は2,3日以内に投下できるように頑張ります。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(兵庫県)<>sage<>2011/11/21(月) 01:07:33.12 ID:S5Ztotp4o<> 了解、待ってる <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 22:27:32.92 ID:/Pb02wRxo<>
1です。
こんな遅筆にも関わらず待っていただけるってのは嬉しいもんですね。

書き溜めしながらなんですが、ちょろっと投下してきます。
 
<> 1<>saga<>2011/11/23(水) 22:29:42.23 ID:/Pb02wRxo<>
階段を登ると、プラネタリウムの中心部であるドーム外周部に辿り着いた。
映画館のような入り口を開ければ、プラネタリウムドームに入れるはずだ。

扉を開けると、二重扉になっているのか、2メートルほど先にもう一枚扉が見えた。
三人で一枚目の扉をくぐり、ついで2枚目の扉にたどり着く前に一枚目の扉が閉じる。
一瞬だが暗闇に視界が奪われた。

『・・・え?』

自分の呟きが、妙な残響音に囚われる。
目眩がする。
これは暗闇に目が慣れていないからか?

梨深に駆け寄ろうと、廊下を走る。
廊下?
こんなにも歩くほどの、長い廊下?
暗闇の?

あれ?
おかしいな?

何が?

「あ・・・なんで・・・?」

扉はたった2メートルほど先にあったはずだ。
長門さんはなぜ扉を開かないんだ?
それに、梨深はどこに行った?

はっと気づくと、プラネタリウムの二階席中程に立っていた。

「こ、こは?」

なぜか身動きが取れなかった。声は出ているんだろうか?
先ほどの呟きは音になっているのか?

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 22:31:21.14 ID:/Pb02wRxo<>  
目の前は薄暗く、妙な反響音が聞こえる。
重く低く、蠢くように響く不快な音だった。

どうやらそれは部屋の中心部、ドーム中央から発せられているようだ。
その脇に、輝く銀の蒼く光る十字架。

十字のディソード。
そこに、左手の無い七海が張り付けにされていた。

「七海っ!七海ぃ!」

声の限りに叫んだ。声が出ているかは分からない。
重低音に掻き消されているかもしれない。
自分の耳にも、自分の声が届かない。

だけど、叫んだ。

「ナナちゃんっ!」
その時、フロアの中央に梨深の声が響いた。
入り口の扉を抜けて、”三人”が七海の元へ駆け寄る。

梨深がまず七海の元へ駆け寄った。
長門さんは表情を変えずに、だけど急ぎ足で梨深の後ろを追随する。

その後ろで、”僕”が白刃を煌めかせた。

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 22:53:29.78 ID:/Pb02wRxo<>  

「古泉ぃ!」

既にモニターに映る古泉の手足には数本の鉄杭が刺さっていた。

長門達が古泉にその場を任せて数分。
古泉の制服は血で染まっている。

『なかなかやるッすねぇ!見てからでは絶対かわせないギガロマニアックスの
”リアルブート”をかわすなんて、常人じゃ不可能ッすよ』

『生憎と、私は常人ではなくて超能力者ですから』

『その減らず口も、いつまで続くか見物ッすね!』

「くっ!』

言葉とは裏腹に、古泉の表情には焦りがありありと伺える。
諏訪刑事の視線を定めさせないように小刻みに動きながら、外れた鉄杭を壁や床から抜いては投げつける。

『ムダッすよぉ!自分でリアルブートしたものはいつでも消せるっすからねえ!』

諏訪刑事の言うとおり、古泉が投げる鉄杭は諏訪刑事の目前で何事もなかったかのように姿を消す。

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 22:55:53.75 ID:/Pb02wRxo<>
対して、古泉には目前に迫るどころか、気づいたときには体に刺さった状態で鉄杭が具現化している。

しかも古泉が諏訪刑事に肉薄するということは必然的に諏訪刑事の視界に入る範囲がより広くなり、
可能性も高くなるということだ。


おい、古泉。

このままじゃどうやったって勝ち目は無いぞ。
長門にあれだけの啖呵を切ったんだ。なんか秘策があるんだろ?


「はは、あの少年頑張りますなぁ。あれだけの鉄杭に貫かれてまだあんなに動けるとは」

「しかし、それもそろそろ限界じゃ。あれだけの出血量じゃて」

老人の嗄れた声が癪に障る。
だが、今はモニターから目が離せない。朝比奈さんも同様だ。


朝倉は退屈そうにハルヒの祭壇の前で膝を抱え込むようにして座っている。
蒼井さんはそんな朝倉をディソードで牽制しながらも、モニターに見入っている。

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 22:57:19.08 ID:/Pb02wRxo<>  
「くっ、古泉、くそ、なんなんだよあのチート能力!?」

「ははは、あれはさしずめ小型Ir2といったものかの」

「ISFの、原型」

「あの装置を使うことでギガロマニアックスの能力をエミュレートし、
使用者を人工のギガロマニアックスにすることが可能じゃ。
少々不恰好なのが玉に瑕じゃが」


嗄れた声による説明が行われている間に、古泉の体に刺さる鉄杭の数が目に見えて増えてきた。

ダメージの蓄積か、動きが鈍くなっている。

『そろそろ終わりっすかね?』

『くっ、情けないですね。長門さんに合わせる顔がありません』

言いながら、古泉が片膝をつく。

諏訪刑事が右手に鉄杭を具現化させながら、古泉に近づいていく。


『ところで、古泉君。超能力者って言ってたっすけど、いったい何の能力なんスか?』

『あ、なたにお教え、する必要はありま、せんね』


「古泉!おい、古泉!」
「古泉君!」
「くそっ・・・」


『冥途に旅立つ前の置き土産として教えて欲しかったんスけど、仕方無いっスね』


弄ぶようにして鉄杭を逆手に持って、見せつけるように眼前にかざす。


『最後まで可愛げのない少年スけど、最後くらいはこの手で脳天ブッ刺して終わりにしてやらぁ!』


「古泉ぃいいいいい!」

最後の瞬間に、古泉はいつもの気障ったらしい微笑を浮かべた。

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 23:22:37.05 ID:/Pb02wRxo<>
「長門さん!そいつは僕じゃない!」

力の限りに叫んだけれど、声は音になっていたのだろうか?
長門さんも梨深も全く気づかずに、向こうの”僕”が、長門さんの背中に白刃を突き立てた。


ゆっくりと、七海の足元に長門さんが崩折れる。


「な、長門さん!?タクッ!なんで!?」

「・・・ーーーーー目標ーーーーーー達成ーーーー」


”僕”が歪な、だけど少女のような声を発する。

梨深はその声に弾かれたようにディソードを出現させ、同時に”僕”に向かって躊躇なく振り切る。

「あなた、誰!?」

”僕”は音もなく梨深から離れると、やがてその姿を変貌させた。

「ーーーー周防ーー九曜」

「なぜ・・・?」

倒れたまま長門さんがつぶやく。
少女は、梨深の問いかけにいかにも機械的に答える。

長門さんは顔を苦痛に歪め、微動だにできないようだ。

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 23:24:24.89 ID:/Pb02wRxo<>
さっきはあれだけの鉄杭に体を貫かれながら、まるで痛痒すら示さずに
一瞬で回復した長門さんが顔を苦痛に歪ませている。

あのナイフ、ただのナイフじゃないのか?

「情報改変やジャミングの痕跡はなかった。西條拓巳と入れ替わる隙はなかったはず。いつから?」

「ーーー最初ーーからーーー」

「くっ・・、うかつ・・・」

一際長門さんが苦痛に顔を歪ませる。

「どういうことなの!?あなたは誰なの!?」

「咲畑梨深、聞いて。
彼女は天蓋領域という情報統合思念体とは発端を異にする情報生命体が作成した人型インタフェイス。
彼女は数ヶ月前から渋谷全域を対象に情報統制とプロテクトを施しこの瞬間を待っていた。
私は最初から周防九曜を包含した世界を正しいものとして認識し観測させられた。
気づけなかった私のミス。
現在の私は彼女の作成したウイルスにより、自我を保つことに機能の98%を割かざるを得ない状況。
だがこのウイルスは純粋な彼女の能力ではなく、何らかの装置で強化されている可能性が高い」

「長門さん、私は何をすればいいの?」

「Ir2を破壊して」

  <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 23:32:15.39 ID:/Pb02wRxo<>
と言ったところで今日はここまでです。
結構書いてるつもりでも投下してみると大した分量にならないよね・・・。

それではまた。
次回は週末に投下予定です。

  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(東京都)<>sage<>2011/11/24(木) 00:20:49.14 ID:Bd0I9HSlo<> 乙
舞ってる <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 11:31:04.11 ID:OPIrbEbUo<>
1です。
昼日中ですが投下してきます。

では、始めます。 <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 11:35:46.16 ID:OPIrbEbUo<>  
長門さんの呟きと同時に、梨深は茫洋な少女、周防九曜に背を向けて、七海の横を駆け抜けた。

プラネタリウムの心臓部、投影機の設置される場所にIr2が鎮座している。

ディソードを振りかざす直前、梨深の眼前に周防九曜が滑るように現れた。

「ーーー目標ーーー防衛ーー」

梨深の振りかざすディソードを手に持った光の板のようなもので弾き飛ばす。
梨深も瞬時に、周防九曜からも、七海や長門さんからも距離が取れる位置に移動する。

「ーーー攻撃ーーー穿孔ーーー」

歪んだ音と共に周防九曜が手をかざすと、突如光の槍が現れて一斉に梨深に襲いかかった。

「くっ!」

その場から二度三度と飛び退りながら槍を交わす。
槍は今しがたまで梨深が立っていた床に穴を穿つと、そのまま霧散して消えていった。

「ーーー攻撃ーーー切断ーーー」

槍の襲撃が止んだのも束の間、周防九曜から一筋の光線が空気を切り裂きながら襲いかかる。

光は発振したと同時に、ドーム内の椅子や手すりなどの設備を切断しながら梨深に向かって進んでいき、
彼女の首と胴体を引き離しにかかる。

梨深は両手のディソードで光を遮るように盾にして、ひらりと光を飛び越えた。
虚数物質で発現したディソードならではの防ぎ方だ。

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 11:46:18.24 ID:OPIrbEbUo<>
「今度は、こっちの番っ!」

言うやいなやディソードが鮮烈な煌きを発し、空間にノイズが走る。
次の瞬間、周防九曜の周囲に無数の鎖が現れて彼女を雁字搦めに縛り付けた。

だが、周防九曜の表情は変わらない。

「ーーー情報連結ーーー解除ーーー」

既に梨深は鎖ごと切断しようと周防九曜に向かっているが、鎖が巻き付く先から光の粒子となって霧散している。


「私のほうが速い!」

「ーー完ーーー了ーー」


瞬きほどの後には、鎖から逃れた周防九曜が幾分離れた場所で佇んでいた。

梨深はディソードを振り切った体制からすぐに切っ先を周防九曜へ向け直す。

「ーー想定ーー以上ーーー」

周防九曜の胸元に僅かながらもディソードがつけたと思われる傷ができていた。

だが、様子がおかしい。

衣服に傷をつけた程度なのに綻んだ場所から、黒い茫洋とした何かが漏れ出している。

「よかった。宇宙人でも、ディソードで傷は付くみたいだね」

「ーーー想定ーーー修正ーーー完了ーーー」

「えっ?」

「ー攻撃ー穿孔ー弾幕」

「えっ!?わっ!?」

「ー攻撃ー切断ーー」

途端に梨深の対応に余裕がなくなった。
宣言から発動までのタイムラグが明らかに短くなっている。

「攻撃ーー穿孔ー穿孔ー穿孔ー」

「くっ・・・!」

「ーー攻撃ーー爆砕ーーー」

空間を劈く轟音に梨深の悲鳴が掻き消された。

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 11:48:20.14 ID:OPIrbEbUo<>  

「梨深ぃっ!」

叫んでも、やはり自分の耳にすら声が届かない。

爆炎が晴れると、梨深はその場に膝をついていた。

虚数物質で防護壁でも作り出していたのか、爆発の大きさの割にダメージは小さそうでほっとする。


一気に苛烈になった周防九曜の攻撃に梨深は一気に形勢不利になった。

それもそうだ。

やたらめったらでたらめに飛んでくる光の槍に、触れたら即終了のチート攻撃力の光線。

そしてあたり一面を吹き飛ばす爆発攻撃。


梨深の五体がまだ満足なのが不思議なくらいだ。

梨深は体のあちこちを煤で汚して、肩や足からは血を流して、ディソードで体を支えながら立ち上がった。


どうして僕はまた、見ているだけしかできないんだ。
どうして僕はまた、誰も助けられないんだ。
どうして僕はまた、誰かが傷つくのを見ていなきゃならないんだ。


そんな疑問が口をついた時。


「それは君の本質が与えられたものだからだ」


耳元で、怖気を振るう声がした。

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 11:50:54.95 ID:OPIrbEbUo<>  

「だ、誰!?」

「初めまして、西條拓巳くん。私が野呂瀬玄一だ」

目の前に立ったのは、一目で嫌悪感を催すような眼をした、壮年の男だった。

「君には感謝しているんだよ」

視界にノイズが走り、次の瞬間には今までそこになかった豪奢な椅子が現れて、野呂瀬が悠然と座っていた。

「正確には、君の生みの親である西條拓巳くんだけどね」

「感謝?な、なんのこと?」

「fun^10 * int^40 = Ir2」

「っ!?」

「君の書いた作文の裏面を見た時、正直私は魂の震えを禁じ得なかったよ。
神のめぐり合わせとも言うべき出会いにね」

野呂瀬は滔々と語っていた。

公式に出会ってから、いかにして理論体系を構築していったか。

公式を紐解くほどに知る、美しい深淵なる世界がどのようなものだったか。

梨深に行った理論の実践と言う名の拷問の数々、それをいかに楽しんでいたか。

セナを絶望に追いやった実験と、その人間の認識力と錯誤の結果がとても興味深かったこと。


自らの研究成果と功績を自慢気に、陶然と、自らがこの世界の神であると言わんばかりに。

いや、実際に野呂瀬は自分が新世界の王であると、神であると信じて疑ってなどいないのだ。

正に彼こそが、誇大妄想狂。

正に彼こそが、ギガロマニアックス。

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 11:54:58.68 ID:OPIrbEbUo<>  

「どうだね?西條拓巳くん。素晴らしいとは思わないか?人間はね、認識の生き物なんだよ。
脳が快感を感じるならば、ナイフで貫かれたって人間は絶頂を迎えられる!」

「狂ってる・・・」

「逆もまた然りだ!脳が苦痛を感じるならば・・・」


野呂瀬が、おもむろに席を立つ。

そしてほんの一撫で、僕の左手を撫でた瞬間。

「・・・え・・?あ・・・が・・ぐ・・ぁああッあああアアっあああ!」

『激痛』などと表現するには生温い、想像を絶する痛みが全身を駆け抜けた。

「たったこれだけの刺激でも、気が狂うほどの苦痛を味わうことができるんだよ」


愉悦で下品に歪ませた表情を隠そうともしない。

ああ、この痛みは七海が受けた痛みとどちらが大きいんだろう?

朦朧と、しかし薄れない意識でそんなことを考えた。


「ぼーっとしている暇はありませんよ?
あなたが痛みにのたうち回っている向こうでは、あなたの仲間がそろそろ力尽きる頃ですし」


野呂瀬はそう言いながら僕の右肩に手を置いた。

右肩から体の中心をすり抜けて左半身まで、まるで刃がゆっくりと、
それでいて何度も何度も何度も何度も行き来するように、凄烈でいて、鈍く重い痛みが駆け抜けていく。


その向こうで、周防九曜は容赦ない攻撃を梨深に向けて放っていた。

光の槍が何度も梨深の体を掠め、光線は無数の傷を穿っていく。

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 12:29:26.93 ID:OPIrbEbUo<>  

その間、梨深もただ手をこまねいているだけだったというわけではないのだろうけど、
残念ながら遠距離攻撃を得意としない梨深は周防九曜に近づくことすらできない。


「ちょこまかと・・・!」

「ーーー接近警報ーー移動ーー」

「ダメ、追いつけない・・・」

「ーー接近警報ーー攻撃ーー穿孔」

「くっ・・・!」

梨深は大きく肩で息をしていた。

近づいては逃げられ、Ir2に接近しようにも槍の弾幕や爆砕攻撃でそれすら許されない。


また、息をつこうとしても周防九曜からの容赦無い攻撃が間断なく梨深を襲うため、それも許されない。

「それならっ!」

空間にノイズが走る。

周防九曜に向かって鎖の束が向かい、同時に梨深の周囲に出現した剣の林。

「これはどう!?」

林立した剣を次々と周防九曜に向けて投げつける。

単純だが鎖で足止めしての投擲による連続攻撃。

「ーー優先行動ーー高脅威目標設定ーー排除開始」

鎖に巻きつかれるを厭わず、かろうじて動く右手を頼りに飛来する剣を撃ち落とす。

「今っ!」

更に四本、剣を投擲すると共に自らも周防九曜に向かって翔ぶ。

「ーー設定変更ーーー情報改変ーー開始ーー」

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 12:31:32.55 ID:OPIrbEbUo<>  

突如、周防九曜に巻き付いていた鎖が反旗を翻す。

周防九曜の体から勢い良く伸びた鎖が、まず飛来する二本の剣を撃ち落とした。

更にもう二本の鎖は残った剣と交錯しながら真っ直ぐに梨深の体へ向かっていく。



直撃コースの鎖をディソードで弾くも、周防九曜から伸びる鎖の本数は更に増え、梨深の周囲をあっという間に覆いつくした。


「ーー高脅威目標ーー接近警報ーー行動選択ーー捕縛を優先」


残った二本の剣が周防九曜の体を貫いたのと、伸びた鎖が梨深の体を絡めとったのは同時だった。


だが、次の行動にいち早く移ったのは周防九曜。

肩と腹部に貫通した剣を残したまま茫洋な音を発し始める。


「ーー攻撃準備ーー凝縮ーー」


四方から梨深の頭上へ向かって光が集まる。


「ーー攻撃準備ーー形成ーー」


「っ!これじゃ・・・」


梨深が絡みついた鎖を断ち切ろうとディソードを振るう。
しかしそれすら拘束された手足ではままならない。

その間も光は収束していく。


まただ。また、助けられない。

僕は自分の体を襲う激痛すらもどこか別世界の出来事のように感じながら歯ぎしりすることしかできない。

「梨深いいいいい!」

「ーー攻撃ー発動ーーー爆」

  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 12:33:01.83 ID:OPIrbEbUo<>

バぎンっ、と響いた鈍い音と駆け抜けた赤い閃光は、どちらが速かっただろうか。




「あなたを、待っていた」




「お待たせしてしまい申し訳有りません、長門さん。咲畑さんは大丈夫ですか?」


「あ・・・」


古泉一樹が立っていた。


  <> 1<>saga<>2011/11/27(日) 12:40:37.79 ID:OPIrbEbUo<>

と、いうことで今回はここまでです。


書いてて梨深と魔法少女(青)のイメージが被って困ったよ・・・。
調子に乗って返り討ちに合いそうな雰囲気とか、なんかそっくりなんだよ・・・。


次回はもう少しハルヒsideのメンバーを活躍させる予定。
ではでは、また。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(東京都)<>sage<>2011/11/27(日) 14:36:35.73 ID:sPKt4fXVo<> 乙 <> 1(携帯)<><>2011/12/03(土) 01:32:34.85 ID:LLU30sDQo<> すまん。規制入って投下できん…。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(兵庫県)<>sage<>2011/12/04(日) 00:25:43.06 ID:bHs+JyVSo<> 早めに解除されることを祈りつつ待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)<>sage<>2011/12/04(日) 10:09:42.72 ID:v6b3hQhQo<> ワクワク <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:00:51.91 ID:UVuhQaSTo<>
私は帰ってきた!



すみませんすみません、1です。
やっと戻ってこれました。

なんだかんだで書き溜め期間にできたんで、ラストまで一気に投下してきます。

では、始めます。 <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:03:48.70 ID:UVuhQaSTo<>
時は少し遡る。


古泉は笑っていた。

いつものボーカーフェイスの微笑じゃなく。

笑っていた。

『な、何をしたッすか!?』

『超能力、ですよ』

『うわっ!?』

諏訪刑事の背中で小型Ir2が紫電を迸らせて小爆発を起こす。

『これであなたは普通の人間。僕は超能力者、勝負は見えましたね』

『くっ、こ、この!糞ガキがーーー!』

興奮気味に諏訪刑事が腰の拳銃を抜こうと手を掛けたときには、
既に古泉の容赦無い一撃が諏訪刑事の頭部を痛烈に壁面に叩きつけていた。

その一瞬だけは、見たことのない野性的な笑みが古泉の表情を覆っていた。

『獲物の前で舌なめずりなんて、三流のやることですよ』

言葉通りに、古泉は既に意識のない諏訪刑事に話しかける。
その時には既に、もとの気障ったらしい微笑に戻っていた。

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:05:01.54 ID:UVuhQaSTo<>  
「古泉、あのやろぉ!」

「ふ、ふぇええ」

今ほどお前をぶん殴ってやりたいと思ったことは、後にも先にも無いだろうよ。

「やるな。遠距離では分が悪いと見て、最後の最後、止めを刺しに来る瞬間まで切り札を隠していたとは」

全くだ。
超能力は閉鎖空間でしか使えないと言っていたくせに、この通常空間でも使えてるじゃねえか。

「あーあ、負けちゃった。どうするの?お爺さんたち」

「はっは。まぁ余興としては楽しめたじゃろ。良しとするかの」

「そうですね、こんなものでしょう」

「さて、蒼井セナ君。
このままインタフェイスと戦闘を再開してもらっても構わんのじゃが、取引をする気は無いかね?」

「取引?何を言っている」

「お前ら!散々好き勝手してきたくせに今更何言ってるんだ!?」

「なに、君たちにとっても悪い話ではないはずだ」

「蒼井さん、こんな奴らの言うことを聞く必要はないだろ!?」

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:06:41.70 ID:UVuhQaSTo<>  
「ねえ、お爺さんたち。無駄な話はやめてさっさと場を明け渡して頂戴。
老い先短いのだから、時間は大切にするべきよね」

朝倉涼子が委員会の二人を無視して祭壇の脇で立ち上がる。

「全く、若いもんは。感情と利害は切り離して考えるべきじゃというに」

「全くです。せっかく涼宮ハルヒの殺害に協力してもらおうと思っていましたが」

ふっざけんな!
それのどこが俺達に悪く無い話だ。

「考えて見給え。涼宮ハルヒなどという気まぐれな神がいるからこそ、
この世界はどれだけもろく脆弱なものに成り下がっているか」

「言うなればこの小娘は全世界の核ミサイルのスイッチと等価じゃからな。
いや、どんな核ミサイルでも機嫌一つで爆発はしないだけ幾分マシかという物。
この小娘がいなくなれば、世界規模で見てどれだけ平穏になるか」

「涼宮さんに手を出すということはそれだけで世界を危険に晒す事になります。
あらゆる手段を講じた『組織』や天蓋領域が手を引かざるをえないと判断したはずっ!」


そうだ。
だからこそ佐々木陣営は静観を選択したはずだ。

「あら、キョンくん。その結論は少なくとも天蓋領域は撤回したわ」

なんだと!?

「だって、私のパーソナルデータを再構築したのはどうやら、天蓋領域のようだもの」

「なっ!?さっきお前は自分を蘇らせたのが誰かすら分からないって言ってたじゃねえか」

「ごめんね。さっきまでは本当に分からなかったのだけど、プラネタリウムに天蓋領域のインタフェイスが現れたみたいなの。
だから、多分そうじゃないかなって」
<> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:07:46.56 ID:UVuhQaSTo<>
長門側に天蓋領域か。
まったくしつこい連中だ。

だが、天蓋領域が加担していようが、ハルヒが世界の脅威であることは変わりない。
手出しが出来ないという事も変わりないはずだ。

「ふん、だからこそのギガロマニアックスだ」

「・・・なるほど、そういうことか」

今まで黙していた蒼井さんが歯ぎしりをしながら、呻くように呟いた。

「どういうことですか?蒼井さん」

「こいつらはどこまでも下衆で醜悪なクソジジイ共だってことだ。
くっくっく・・・、全く、反吐が出る」

「蒼井さん・・・?」

呆れて笑みさえ浮かべる蒼井セナの様子に、朝比奈さんも心配そうに声をかける。

「キョン。人間はどこまで行っても認識の生き物だ」

意味を計りかねて言葉をつぐんでしまう。

「はは、そうだよな。わからんよな」

さっきまで怒りに揺れていた瞳は既に力なく、俺と朝比奈さんを交互に睨め上げる。

「涼宮ハルヒに幸せな夢と凶刃を、それが奴らの計画だ」

「正解よ、蒼井セナさん」

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:09:36.46 ID:UVuhQaSTo<>
鈴の鳴るような玲瓏な声で蒼井セナを称えながら、踊るように笑いながら祭壇を降りてくる。

「通常の催眠術や洗脳なんかじゃ、何をきっかけに現実に気づかれるか分からない。
少しでも涼宮さんに不快感を与えたら、感づかれたら、何が起きるか分からない。
だから手出しできない。

だけど、もしも完璧な催眠術が可能だったら?」

「なん・・・だと・・・?」

「どれだけの苦痛を与えられても、それを感知できない、
いえ、それすら快感に感じてしまうような、そんな風に脳を誤認させられたら?」

「そんなことが・・・・」

「普通の方法では無理。
情報統合思念体でも、天蓋領域でも人間の仕組みを理解しきれていないから、多分無理。

だけど、ギガロマニアックスなら?」


「・・・蒼井さん」

「多分・・・、いや、できる、だろうな」

「そう、できるわよね。

涼宮ハルヒを幸せな夢に溺れさせ、首を刎ねて神経を切断し、僅かに頭部に残った血液が流出して、意識が完全に途絶えるまでのその数秒間まで。

魂が消失するその瞬間まで、世界を誤認させられる」

朝倉涼子の顔が愉悦と歓喜に踊り狂う。


「あははは、なんて幸せな死に方なのかしら。世界一幸せな死に方だわ」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:11:12.27 ID:UVuhQaSTo<>

「黙れ・・・」

「涼宮さんが望む、
なんでも涼宮さんの思い通りになる、そんな夢の世界に溺れながら、痛みも感じず、恐怖も感じず、
自分が死ぬことに気づくことすらなく死ねるなんて!

ああっ!

なんて素晴らしい死に方なのかしら!?」


「黙れっ!」

「あははは!その幸せな夢の中で、何でも思い通りになる世界の中で、涼宮さんは誰を隣に置くのかしらねっ!?」

「黙れぇえっ!」

蒼井セナが一気に祭壇を駆け上がる。

中腹の朝倉涼子に向けてリアルブートしたディソードを迸らせる。

部屋の中心で鳴り響いた蒼井セナと朝倉涼子の激突は、破壊的な動きとは裏腹にとても澄んだ音色を奏でた。


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:12:01.27 ID:UVuhQaSTo<>  
「キョンっ!ここは私が抑える!お前は・・・」

「あら、口を開いている余裕があるのかしら?」

「くっ!?キョンっ!お前は、涼宮ハルヒを起こせ!」

「ハルヒを?」

言われて祭壇の上のハルヒを見上げる。

「任せろ!」

一言で返して、祭壇をハルヒの傍まで一気に駆け上がる。

ハルヒの顔を覗き込むと、顔色もよく呼吸も規則正しく、無事ではあるようだった。

ったく、こんな騒ぎの中で熟睡しやがって。

文句の一つも言ってやりたくなるが、いつもの騒々しい姿と違って寝顔は穏やかそのもの。可愛いもんだ。


だが、これだけの騒ぎの中で全く起きる気配が無いってことは、
当然ながら天蓋領域や朝倉が何らかの対策をしているってことなんだろうな。


いいさ、起こしてやるさ。

古泉、お前はいつも言ってたな。

俺が涼宮ハルヒの鍵だって。

だったら、


「ハルヒの目蓋くらいこじ開けてやるよ!」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:13:15.20 ID:UVuhQaSTo<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーー
ーー





古泉君が戦列に加わったことで、戦いは俄に均衡し始めた。

古泉くんは無数の紅球を創りだしては次々と周防九曜に放っていく。

避けようとする周防九曜を妨害するのは梨深のリアルブートだ。

時には鎖で、時には剣の投擲で周防九曜を牽制する。


一気に攻撃の手数が増えたことで、周防九曜は防御に回すリソースを増やさざるを得なかった。

そうして出来た隙に、梨深はIr2への攻撃を試みる。


だが、それだけは許すまじと光の槍や光線で牽制しそれを防ぐ。

「ふむ、中々やりますね。そろそろ手を貸してあげますか」

言った次の瞬間に、野呂瀬玄一の体は僕の目前から消えていた。

あたりを見回すまでもなく、野呂瀬玄一の姿は長門さんのすぐ傍、七海の後ろにあった。

「っ!?野呂瀬っ!玄一!」

一瞬で顔色を変えたのは梨深だった。
周防九曜への牽制も忘れて、一目散に攻撃に向かう。

「ディソードを返してもらいますよ」

野呂瀬は七海を拘束している十字架に手をかけて、それを引きぬいた。

禍々しい、巨大な十字架。

それは野呂瀬玄一の狂気を具現したかのような、彼のディソードだった。


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:15:10.68 ID:UVuhQaSTo<>  

襲いかかった梨深を一閃の元に弾き飛ばす。
と同時に、拘束から解放された七海がその場でくずおれた。


「ナナちゃん!」

紅球が野呂瀬と周防九曜の二人を牽制し、周防九曜を足止めすると同時にその場から野呂瀬を引き離す。

「ナナちゃん、ナナちゃんっ!」

駆け寄った梨深が七海の体を抱きすくめ、頬を叩いたり体を揺すったりしている。

その間も古泉君は野呂瀬と周防九曜の二人に睨みを利かせながら、自らと梨深の周囲に紅球を次々と産み出していく。

「梨深さん。七海さんの様子は?」

「ダメ、目を覚まさない。だけど、左手の出血は止まってるし、呼吸も安定してる」

「では、早く七海さんを長門さんの隣に」

古泉くんが言うと同時に、梨深の周囲にある紅球が長門さんへの道を開ける。
合わせてそれは野呂瀬や周防九曜に対する牽制の役割を果たす。


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:19:23.27 ID:UVuhQaSTo<>  

ライフル弾のような攻撃や、敵を足止めする弾幕、拠点防衛に有効な機雷のようなものまで、古泉君の能力は非常に万能だ。

ただ、利用範囲の広い武器ではあるが実体がない分、梨深のように盾には使えない。

周防九曜の光線や槍を防ぐことはできない。


また当然ながら、野呂瀬の妄想攻撃を防ぐことはできないだろう。

ギガロマニアックスでもない彼には妄想攻撃に対する耐性がないはずだ。

だけど、野呂瀬は古泉君に対して僕に行った精神感応系の攻撃を行なっていない。

限定的なリアルブート攻撃に留めており、それはこちらからすれば僥倖と言えるんだろうけど、解せない点でもあった。


「古泉君。退避完了だよ」

「了解しました。それでは、第2ラウンドと行きましょうか」

言葉を合図に、周囲に蠢いていた紅球、その数およそ300。
半数を野呂瀬と周防九曜に。半数をIr2へ一気に放つ!


放たれた紅球は直線に、曲線に、時には追い抜き、追い抜かれ、幻惑しながらあたり一面を紅の軌跡で埋め尽くす。


これは初めてIr2へダメージが通るか?と思った矢先、周防九曜は瞬時に紅球とIr2の間に入り、光の槍を弾幕として展開する。


「ー緊急展開ーーMode Aegisーーー」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:21:05.89 ID:UVuhQaSTo<>  

即座に展開された無数の槍が古泉君の紅球を次々に撃ち落としていく。
あの数でも足りないのか・・・?

いや、それならディソードを持つだけの普通の人間のはずの野呂瀬なら?

あの数に紅球を捌ききるなんて芸当、宇宙人でも無い限り不可能なはずだ。

しかし、野呂瀬はその禍々しいディソードを展開し、飛来する紅球を切り捨て、防ぎ、弾き飛ばし、時には不可視の防壁を築いて防いでいた。

あれだけの数の紅球が、みるみるうちに目減りしていく。


「くっ・・・、これでも、ダメですかっ!?」

残っていた幾つかの紅球が空中で螺旋を描き、一つに収束していく。

「セカンドレイドッ!」

一際大きな紅球が周防九曜を襲撃する。

が、今度は脅威目標が一つ。余裕を持って周防九曜は右手に光の盾を展開し、衝撃に備える。

「スプレッド!」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:22:07.72 ID:UVuhQaSTo<>  

合図と共に、紅球から無数の光弾がIr2へ伸びていく。
だが。

「ーーー想定ーー事項ーーー」

別れた光弾がIr2へ届くよりも早く。

周防九曜は目の前の大きな紅球を躊躇なく弾き飛ばした。

瞬間、Ir2へ向かっていた光弾も瞬時に霧散する。

「これでも惑わされてくれませんか。・・・ですがっ!」

「さすがにあれだけの紅球の対処してたんじゃ、私のことまでは気が回らなかったみたいだねっ!」

梨深がIr2の頭上からディソードを構えたまま高速に落下、いや、鉛直方向に疾走していた。

ディソードが吸い込まれるようにIr2に突き刺さる。

「やった!?」

一瞬だけ快哉の声を上げた梨深を視界の端に捉えながら、古泉君は追撃に備えて紅球を周防九曜に向けて牽制する。

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:23:24.48 ID:UVuhQaSTo<>  

「・・・ふっ、くくっ、はははっ、はーっはっはっっは!」

そこで突然、あたりに場違いな笑い声が響いた。

周防九曜がIr2から離れると同時に、野呂瀬玄一の相貌が崩れて哄笑を垂れ流す。

「何がおかしいのですか?」

古泉君が怪訝そうに尋ねる。

「あ・・・え?な、んで?」

その声に答えたのは梨深だった。

Ir2に突き刺したはずのディソードを引き抜くと、刀身が一切合切消えてなくなっている。

力なくディソードを取り落とすと、残っていた柄の部分までがIr2に接触した面から瞬時に霧散していく。

「馬鹿な」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:24:48.17 ID:UVuhQaSTo<>  

それは、一瞬の隙だった。
たった一瞬の、二人を支配した驚愕という名の隙。

「ーーー攻撃ー粉砕ーー」

「しまっ・・・!?」

まず、古泉君が吹き飛ばされた。

「え?っきゃああああああ」

次いで瞬く間に距離を詰められてディソードを再出現する暇もなく、梨深が崩折れる。

そのまま梨深も吹き飛ばされて七海の隣でぐったりとしている。

「くっ・・・そんな、なぜ・・・」

古泉君が膝をついたまま紅球を周囲に浮かべると、周防九曜が身構える。

「もういいですよ」

古泉君がもう動けないと悟ったのか、野呂瀬が一言で周防九曜を引き止める。

阻むもののなくなった無数の紅球はIr2の側面に吸い込まれるように消えていった。

もうもうとした煙すら立たず、Ir2には当然ながら傷ひとつ付かず、拍子抜けするほどに何も起きない。

「くくっ、ははは。いや、すみませんね。初めから貴様らにIr2を傷つけることなど適わない。
それくらいは分かっていたのだがね」

「なんで・・・」

「Ir2はギガロマニアックスと同様に条理を捻じ曲げる代物です。
それは設定次第であらゆることが可能になると言って過言ではない。
恐らく天蓋領域でも周防さん単体ではダメージを与えることはできないでしょう」

コンコンと、野呂瀬玄一がIr2をノックする。


「ーー肯定ーー支援をー要するーー」

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:26:16.41 ID:UVuhQaSTo<>  

「・・・ならばなぜ、わざわざ我々の相手をするようなことをしたのです?
Ir2が絶対に破壊できない代物ならば、こんな戦闘は不要のはず」

「そのほうが面白いからだよ!
先ほどの戦闘自体もそうだが、何よりIr2を破壊できないと知った今の君たちの表情は何よりも滑稽だ!」

「くっ・・・」

「あ、そうそう。涼宮ハルヒ殺害のために時間稼ぎが必要だった。それも理由の一つだ」

さもそちらはついでの要件だと言わんばかりに興味なさげに告げる。

「なるほど。我々はまんまとあなた方の罠に嵌められたと言う訳ですか。やれやれ、困ったものです」

「そんな・・・」

「まぁ暇つぶしとしてはそれなりに楽しめたから良しとしよう。
今までの善戦を讃えて、涼宮ハルヒを神とした世界の終焉を、一緒に眺めさせてやろう」


ディソードを再展開しようとする梨深だが、体が言うことをきかないのだろう、体を起こすことすらままならず、手元に集まった光の粒子がディソードを形作ることもなかった。

古泉君も紅球を周囲に出そうとするが、出来上がった紅球は見るからに弱々しく、それすら維持することもままならないようだ。

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:29:01.75 ID:UVuhQaSTo<>
「仕方有りませんね。戦闘続行は不可能なようです」

「こんな状態でも中々どうして、落ち着いているな」

「なに、僕らは所詮前座ですからね。真打に委ねることにしたのですよ」

「ほう」

「咲畑さん。良いですか?彼らの言葉に乗せられて希望を失うなど愚の骨頂です。
Ir2を今すぐ破壊することができないのは分かったのですから、それは一歩前進です。
残念ですが今の僕らには何もできないのですから、好機を伺うとしましょう」

「なんで・・・そんな悠長なこと・・・」

「ちょっとした疑問が浮かんだのですよ。Ir2は今すぐに破壊できない。
では、野呂瀬玄一氏を殺害したあとでは?周防九曜を排除したあとでは?」

「それはそうかも知れないけど、だけど・・・それじゃ涼宮さんが」

「大丈夫ですよ」

「え?」

「あちらには彼がいますから」

「あ・・・」

「涼宮さんの身には、危険の一つもありません」


本当なら負けて後がない状況なのに。

いつ殺されてもおかしくない状況なのに。

それは梨深を安心させるためのポーカーフェイスなんだろうか?

それとも、本当に、心の底から彼を信じているからなんだろうか?

古泉君は嫌味なくらいに気障ったらしい微笑で、だけど、これ以上彼に似合う表情はない微笑で、力強く言い切った。


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:32:44.47 ID:UVuhQaSTo<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーー
ーー





背中に蒼井さんと朝倉の剣戟を聞きながら、ハルヒに向き合う。

ハルヒをどうやって起こそうか、考える前にどうしてもその金属の擦り合う音が気になってしまう。

「あらキョン君?そんな涼宮さんだけを見てていいのかしら?
万が一私が蒼井さんを倒しちゃったら、問答無用でキョン君のこと刺し殺しちゃうわよ?」


響く剣戟の中で朝倉涼子の声が背中にかかる。
確かにハルヒに向き合うと戦っている二人には背を向ける事になるな。

「あはっ!集中できてないみたいね。でもそれも仕方ないかもね。
だって貴方、私に二回も刺されているんですもの。三回目はきっとあと少しよ」

「おい宇宙人。お前もそんな余計なことを考える余裕はあるのか?」

「あら、あるわよ」

朝倉に言われたことは図星だった。

頭では蒼井セナを信じてハルヒに集中するべきだと分かってるんだが、
朝倉が俺の腹部をさした感覚が、冷たい金属が体の芯を侵食する感触が、俺の心を恐怖に染めていく。


「キョンくん。大丈夫ですよ。キョンくんは私が守るから」

「朝比奈さん?」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:34:03.46 ID:UVuhQaSTo<>
声に振り返ると朝比奈さんが、俺を背に仁王立ちしていた。

「もし、万が一、蒼井さんが突破されたら、その時はキョンくんより先に私が刺されます。
そうしたら、そのまま朝倉さんを捕まえて絶対に離さないから。
キョンくんにだけは手出しさせないから、だからキョンくんは安心して涼宮さんを起こしてあげてください」

「朝比奈さん・・・」

カタカタと朝比奈さんが震えながら、だけど俺を安心させるようにそんな様子を微塵も声色に乗せずに、必死に笑顔を作って俺に向けてくれる。

聖母みたいに慈愛に満ちた表情をハルヒに向けてくれる。

おいハルヒ、見えるか?


あの臆病な朝比奈さんが、お前のために精一杯勇気を振り絞ってるんだぞ。

蒼井さんは今この瞬間も、お前を、朝比奈さんを、俺を守ってくれてる。

あのいつもクールな古泉は、隠してた激情を露にしてまでお前のために戦った。


咲畑はお前を自分と同じ目に合わせたくないって、お前の救出を強く願ってた。

長門はお前が引き入れた新米団員を身を挺して守ってた。

妹を拐われた西條も、妹を助けるためにもう一度立ち上がった。
きっとお前のことだっておまけ程度には助けてくれるだろうよ。


お前が選んだ団員は、みんなお前を助けたがってる。

団員の期待に応えるのだって、団長の仕事じゃねえのか?

  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:35:35.38 ID:UVuhQaSTo<>  

なぁハルヒ。
これも古泉が言ってたんだけどさ。

俺が宇宙人や、未来人や、超能力者に出会えたのは、お前に出会うっていう幸運に恵まれたからだってさ。

だからハルヒ。

もしもお前がいなくなっちまったら、待ってるのは馬鹿みたいに平穏な毎日なんだろうな。

宇宙人も、未来人も、超能力者もいない。

もちろんギガロマニアックスなんて存在、想像すらしない。


適当に毎日を過ごして、こんな世界があればいいなってたまに空想しては溜め息をついて、
だけど現実ってこんなもんだよなって諦めて、周りとか、世間とか、常識とかに順応して、
なんとなく自分を納得させるような、そんなつまんない毎日になっちまうんだろうさ。


だけどなハルヒ。

俺は知っちまった。
もう知っちまったんだよ。

涼宮ハルヒがいる世界ってのを、知っちまったんだ。

知っちまったら、もう戻れねえよ。
戻りたくねえ。

だからハルヒ、帰ってこい。
帰ってきて、

「俺をもっと楽しませろ!ハルヒ!」


  <> 1<>saga<>2011/12/11(日) 01:38:13.85 ID:UVuhQaSTo<>

と、言う訳でキリがいいので今日はここまでです。


次の投下は3日以内に。


ではでは、また〜。
 



<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 01:38:41.41 ID:6czfZ456o<> 乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 16:46:24.89 ID:lxte0FmEo<> おつかれー <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:45:34.64 ID:CkQ3NWTPo<>
>211
>212
コメントありがとう!

それじゃラストまで全部落としきるよ。

<> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:46:52.49 ID:CkQ3NWTPo<>  
「・・・ん、あ・・」

「ナナちゃん、よかった!気がついた!?」

梨深は未だに体を起こすことは適わなかったが、先程からずっと七海の頭を撫でてくれていた。

少し離れた所では、野呂瀬がIr2の稼動状態でもチェックしているのか何やら作業を行なっている。

周防九曜はその傍で不測の攻撃から彼を守る為か、茫洋と立っている。

そんな最中、淡い声と共に瞳を開き、体をゆっくりと起こした。

何度も梨深が声をかける。

対して七海は聞こえているのかいないのか。


梨深の問いかけに答えることなくふらりと立ち上がった。

無くなった左手を庇うように右手を添えて、ふらふらと二歩三歩歩き出す。

「おにぃ・・・」

「!?」

七海が呟いた瞬間、僕を拘束する十字架ごと部屋の中心に引き寄せられるように移動した。

「タクッ!?」

「西條さん!?」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:48:36.66 ID:CkQ3NWTPo<>  
梨深と古泉くんが突然の僕の出現に驚いている。

七海はそんな二人を意に介した様子もなく、僕の方へふらふらと歩いてくる。


「七海!大丈夫なのか!?おい、七海!」


今度はちゃんと音になっているはずなのに、七海にも聞こえているはずなのに、七海は全く反応を示さない。

やがて目の前まで七海がたどり着く。

「おにぃ、なんで?」

「?」

「・・・なんで助けてくれなかったの?」

「っ・・・・」

「おにぃ、ナナ聞こえてたよ?梨深さんがやられそうな時、必死に叫んでたの全部聞こえてた。
 あ、おにぃの手首、血が出てる・・・。そんなに必死に梨深さんのこと助けようとしてたんだね・・・。
 梨深さんには、そんなに必死に・・・だけどっ・・・!」

「七海・・・」

「おにぃ、なんで!?ナナの時はなんで助けてくれなかったの?ナナはおにぃの、妹、なのにっ・・・!」

七海が僕の体を抱きしめるように両手を僕の背中に回して、僕を拘束する十字架に触れるとそれは瞬く間に変化した。

ああ、そうか。

これが、七海のディソード。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:50:51.95 ID:CkQ3NWTPo<>  
そう思った時、背中に鈍いような、鋭いような、熱いような、それでいて凍えるように冷たい痛みが侵入してきた。

七海の刃でできたディソードの柄が、僕の体に侵入してくる。

それはズブズブと背中から侵入して僕の腹部へ貫通する。

「な、なみ・・・」

咄嗟にそのまま刃が飛び出ないように、右手でディソードの柄尻を抑える。

「タクっ!」

「い、いよ。梨深。七海だけは、僕に、助けさせてくれ。七海は、僕の妹、だから」

喋った瞬間、ごほごほと血を吹いてしまって、七海の綺麗な髪の毛を汚してしまう。


ああ、ごめん七海。

助けられなくてごめん。


僕は七海のホントの兄貴じゃないけど、人間ですら無いただのバケモノだけど。

だけど、七海、ごめん。


お前の綺麗な髪を汚してごめん。

助けてやれなくてごめん。


七海の体をこちらからも抱きしめて、髪の毛に顔を埋める。

更に深く、七海のディソードが僕の体を侵食し、腹部から覗くディソードの柄は長さを増してく。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:54:43.35 ID:CkQ3NWTPo<>  
腹部の痛みは容赦なく僕を攻め立てる。

だけど鼻腔をくすぐる微かな香りが心地よかった。



どれほどの間、そのままでいたのだろうか。

長いような、短いような。

腹部の痛みと、僕の胸を支配する七海の香りと、悔恨と、そして、七海を守りたいという想いと。

そんな思いが綯い交ぜになって、もっと強く、七海を抱きしめた。


「なんで?おにぃ。右手、離してよ」


「七海こそ、右手、離せ。そんなディソードじゃ、お前まで、怪我しちゃう、じゃないか」


「どうして、ナナのディソードを抑えてるの?」


「僕には・・・兄貴の資格なんて、全然ないけど・・・」


「ナナは、おにぃを傷つけてるのに、なんでナナを庇うの?」


「でも僕は、それでも、七海の兄貴でいたいって、思ったから」


くしゃくしゃと、七海の頭を撫でた。

僕がつけてしまった血が、七海の髪の毛を斑模様に染め上げる。


  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:55:25.90 ID:CkQ3NWTPo<>  
「おにぃ・・・、ごめんなさい。ごめんなさい」

七海の瞳から涙が零れて、いつの間にかディソードは霧散したみたいだった。

「七海、ごめん。まだ僕のことをおにぃって呼んでくれて、ありがとう」


もう一度、七海の頭を撫でる。

七海の香りが、僕の鼻腔をくすぐる。


七海の髪の毛越しに、床の模様が幾何学模様へ変化する。

「あ・・・見え、た」

その一瞬に、僕は不意に左手を握りこんだ。

気づいた次の瞬間には、僕の手にディソードが握られていた。


「タク、それ!?」


「あ・・・、なんで?」






  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:56:04.99 ID:CkQ3NWTPo<>  












『やるじゃない、アンタ』









ーーーー誰かに、肩を叩かれた気がした。





  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:57:53.54 ID:CkQ3NWTPo<>  

「はは、これはこれは」


「うそ、なにこれ・・・」



「局地的な閉鎖空間の発生を確認」



「ーーー緊急ーーー事態ーーー」



「馬鹿な!?」



目の前に広がるとても幻想的な光景に、誰もが思い思いの言葉を呟いた。



  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 22:58:52.32 ID:CkQ3NWTPo<>  

青白く光る巨人が、プラネタリウムを破壊して回っている。

こんな意味不明な光景なのに、なんでだろう。

とても、安心していられる。


「通常のサイズとは比較にならないくらいに小さいですが、これは確かに神人」

「神人って、涼宮さんが爆発すると出てくるってあの・・・?」

「そうです。今の神人は普通の人の3倍程度・・・。
 本当ならこの10倍は大きいのですが、このような通常空間に現れるとは・・・。
 確かにIr2が影響を及ぼす空間では僕も能力を使えるようですから、
 閉鎖空間に近い空間ではあるのでしょうが・・・」


「そうだよ。涼宮さんなら、こんな事態に黙っていられるはずがない。
 団員のピンチに、駆けつけてくれたんだよ!」

「ええ、きっとそうでしょうね。そして、きっと彼がこの状況を作り出してくれた。
 あとは我々が、それに応えるだけです!」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:00:30.55 ID:CkQ3NWTPo<>
古泉君が立ち上がり、紅球を周囲に展開する。

梨深も立ち上がってディソードを展開する。

僕は七海を長門さんの傍へ移動させて、古泉君の隣でディソードを構えた。

「こ、古泉君、僕に一つだけ考えがある。上手くいく確証なんてないけど・・・」

告げた言葉に古泉君は一瞬だけ驚いた顔をして。

「分かりました。何をすればいいですか?」

ありがとう。

「僕と野呂瀬が一対一になれるように、周防九曜を抑えて欲しい」

「了解です!」


野呂瀬玄一と周防九曜は神人の対応に追われている。

神人が直接二人に攻撃を仕掛けると共に周囲を破壊するため、椅子やら手摺やらの設備が飛来して、
それらがことごとく彼らを襲っている。

徐々に野呂瀬玄一と周防九曜が分断され、そこを好機に古泉君が周防九曜に紅球を投げつける。


「ーー緊急展開ーー防壁ーーー」

「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁ!」


叫びながら野呂瀬玄一が禍々しいディソードを振るって神人の右手を切り落とす。

だが神人はそれを意に介す様子もなく、破壊活動を続ける。

「野呂瀬玄一!もう、あなたは終わりだよ!」

「そ、そうだよ!今のセリフ、完全に敗北フラグだからね。ふひひっ」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:03:16.30 ID:CkQ3NWTPo<>  
「黙れ、黙れ黙れ黙れだまれだまれだまれだまれだまれ!」

振るったディソードが鈍い光を放つ。

リアルブート!?


「させないっ!」


梨深がディソードを展開すると同時に、周囲に無数の目が現れた。

周囲共通認識を必要とするリアルブートが、ことごとくその目に吸い込まれる。


「その目、だれの目?」

「このっ!?糞アマがぁあああああ!」


野呂瀬。

さっき気づいたことがあるんだ。


梨深のディソードもIr2には触れる前に消え去った。

古泉君の紅球も、Ir2になんの影響も与えられずに霧散した。


だけど、野呂瀬。

「お前は、お前だけは!Ir2に触れて、操作して、影響を与えていた!」

ディソードを真っすぐ野呂瀬に向けて伸ばし、ヤツの視線にイメージを叩きこむ。

それは同時にヤツのイメージが僕に流れ込んでくることを意味している。

途端に野呂瀬の禍々しいイメージが、巻きつく茨と体を貫く焼けた鉄柱となって知覚され、
言葉にし得ない痛みと不快感、それらが渾然一体となって僕の体を包んでいく。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:06:21.88 ID:CkQ3NWTPo<>  
だけど、みんなが僕を支えてくれる。


キョン君が僕の背中を押してくれた。

蒼井セナが弱気の僕を叱咤してくれた。

朝比奈さんが優しい笑顔で応援してくれた。


梨深が僕を支えてくれる。

長門さんが、真っ直ぐに僕を見つめてくれる。

古泉君が、僕を信じてくれる。

涼宮さんが、僕の肩を叩いてくれる。





七海がまだ僕をおにぃと呼んでくれる。






それを思ったら、痛みも、恐怖も、なんてことない。

「ぼっちがリア充になった瞬間を舐めるなよ!」


伸びるディソードは野呂瀬を捉えて、それは大蛇の大顎となって牙を突き刺し、
そして野呂瀬自身を砲弾に変える。

「お前だけが、Ir2に影響を与えられる。ならっ!お前を弾丸にしてIr2をぶっ壊す!!」


「ふ、ふざけるなぁああああああ!」

ドップラー効果すら残さず、野呂瀬玄一が光になる。

Ir2が響かせる蠢くような音が止んで、その瞬間に神人は霧散した。
  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:14:43.88 ID:CkQ3NWTPo<>  
「周防九曜の情報連結解除を申請。同時に当該有機情報群に干渉された空間の修正を実行」

「ーーーー」

いつの間にか起き上がった長門さんが何やら物騒なことを早口言葉で宣言する。

それは一瞬の出来事で、音もなく周防九曜が足元から消えていく。


野呂瀬と周防九曜が消えた空間には、僕らだけが残されて。

そこは、とても静かだった。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:18:30.88 ID:CkQ3NWTPo<> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーー




ハルヒの拘束が解かれるのと、朝倉涼子が消え始めたのは同時だった。

なんだ?ハルヒはまだ目を覚ましてないってのに、何が起きてるんだ?

「どうやら野呂瀬側が敗北したみたい。
 あーあ、やっぱり私ってこうやって消え去る運命なのかしら」

自虐的な笑みを浮かべて、朝倉涼子が問いかける。

「やだな。涼宮さんさえいなくなれば、私も普通の人間になれるかもって思ったのに」

「だったら、今度はハルヒと友達になってみればいい」

「そうね、また機会があったら今度はそうするわ。それじゃあね、キョンくん」

そんな余韻を残して消えた朝倉涼子の横で、傷だらけの蒼井セナが膝をついて肩で息をしている。

さっきまで俺を守るために仁王立ちしていた朝比奈さんは、へなへなとその場にへたり込んだ。

俺はまだ眠っているハルヒを支えながら、そんな朝比奈さんの頭を撫でた。

「へぅっ!?きょきょきょ、キョン君!?」

「あ、すみません朝比奈さん。なんか、つい」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:19:52.88 ID:CkQ3NWTPo<>  
「はは、やったなキョン」

「ええ、古泉達が何とかしてくれたみたいですね。
 それより蒼井さん、その傷、大丈夫なんですか?」

「ああ、あちこち痛いが、致命傷は無い」

「よかった。蒼井さんに何かあったら俺・・・」

「・・・キョン」

「キョンくん・・・?」

先ほどとは打って変わって朝比奈さんがジトッとした目で見上げてくる。

なんだ?なんか変なことでも言ったか?

「よし、それじゃあそろそろここから・・・・ん?揺れ・・て・・・?」


蒼井さんの呟きと同時に、ズシンっと足場がぐらつく。

ついで、ゴゴゴゴと地響きと共に先ほどとは比べ物にならないほど大きな地震があたりを揺らす。


「きゃああああああ!」

「くく、Ir2が破壊された余波が出始めましたか」

「サードメルトはこんな予定ではなかったんじゃがな」


既に画面のクソジジイ二人の映像も乱れに乱れている。

「さっさと逃げるぞキョン!」

「蒼井さんこそ大丈夫なのか!?」

「心配するな!お前は涼宮を無事に連れ出すことだけ考えろ!」

「きょ、キョンくん。ま、待ってください〜」

ハルヒをおぶって、朝比奈さんの手を引きながら、なんとか非常階段を駆け下った。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:21:20.81 ID:CkQ3NWTPo<>  




「タクっ!タクっ!!」

「おにぃ、おにぃ!やだよ、ナナを一人にしないでよ!」

「西條さん・・・」

「・・・」


表へ出ると、ひどい有様だった。

あちこちのビルが崩れたり傾いたり、あの107すらひび割れて原型を留めていない。


一体どれだけの震度だったんだ?


ハルヒをおぶったまま4人で辺りを歩いていると、程なくして咲畑達を見つけることができた。

これだけ騒然とした状況の中で彼らを見つけられたことは僥倖と言えるだろう。


「おい古泉!大丈夫か!?」

「おお、そちらも無事でしたか。涼宮さんは!?」

「無事だ。眠っちゃいるが・・・。それより西條はどうしたんだ!?」

「それが・・・」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:22:22.89 ID:CkQ3NWTPo<>  
「プラネタリウムからの脱出後、地震によるビル外壁の滑落が起き西條七海を襲った。
 瓦礫から守るために西條拓巳が身を呈し、負傷を負った」

「そんな・・・せっかくみんな助かったのに」

「周囲の状況に気を配りきれなかった私のミス」

「いや、長門のせいじゃ・・・」

「タクっ!目を覚ましてよ!」

咲畑が取り乱して西條兄の肩を揺すっている。

「おにぃっ!」

西條妹は縋り付いて兄の胸に顔を埋めている。

「ちょっとアンタ達!なにしてんのよ!」

うおっ!?

いつの間に起きたハルヒ!?


「いつまでおぶってんのよバカキョン!さっさと下ろしなさいよ!」

言うやいなや飛び降りると、西條のもとに駆け寄る。

「ちょっと、コイツ息してないじゃない!
 こういう時は人工呼吸でもなんでもして、蘇生させんのよ!」

「人工」
「呼吸」

二人が、ピタっと動きを止めた。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:24:01.65 ID:CkQ3NWTPo<>  
「何してんのよ。あんたらがやんないんなら私がやるわ。さっさとどきなさい!」

「だ、ダメだよ!タクは私が助けるよ!」

「り、梨深さんこそちょっと待ってください。
 おにぃは私を助けるために怪我したんだから、ここは私が助けないと!」

「そ、そそそそんなこと無いんじゃないかな!?
 普段からお世話になってる梨深さんがビシィっとタクを助けたっていいんじゃないかな!?」

「でもでも、そんな人工呼吸なんて、その、口と、口が・・・。
 でもその点ナナならおにぃの妹なわけだし、ノーカンで・・・」

「そ、そんなの、人命救助なんだからどっちにしたってノーカンだよ!?」

「だったら尚更妹の私のほうが傷は浅いでしょうしっ!」

「ん?ん?ん?なにナナちゃん、私がタクとキ・・・、人工呼吸したらタクが傷つくって思ってるわけ?
 それはちょっと酷いんじゃないかなぁ!?」

「そういう意味じゃなくて!知らない間に女の子とキ・・・、人工呼吸なんてされたら残念がるんじゃないかなって。
 こんな機会がなければおにぃなんて一生縁がなさそうですし!」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:26:54.17 ID:CkQ3NWTPo<>  
おい、こいつら何を争ってんだ?

「いえ、私にも分かりかねます」

なんだかんだでほっぽらかしてるけど、大丈夫なのか?

それになんか引っかかるんだよな。

なにせ、あの長門が瓦礫が落ちてくるのを、見過ごす、なんて。


「大丈夫。私は空気の読める賢い子」


ああ、なるほど。

相変わらずお前の冗談は分かり難いな。


「ええい、お前ら!一体いつまで西條をそのままにしておくつもりだ。
 やはりお前らには任せられん!こ、ここは私が一肌・・・・」

「なっなっなっ、何を言っているのかな!?」

「蒼井さんは黙っててください。言っときますけど、おにぃは巨乳好きですから」

「よろしい、ならば戦争だ!」

「キョンくん、これって私も参加したほうがいいんですかぁ?」

馬鹿なこと言わないで!?

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:27:59.28 ID:CkQ3NWTPo<>  
「では、ここは私が」

古泉がおもむろに上着を脱いでネクタイを緩める。

「それ誰得!?」

ガバッと、弾けるように西條拓巳が身を翻した。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」






「あ、あれ・・・?」

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:29:07.86 ID:CkQ3NWTPo<>  
とても、不穏な空気だった。

咲畑も、西條妹も、蒼井さんも、長門も、冷たい視線を投げかける。


「起きてるなら早く言ってよ!」

「バカ!バカ!バカおにぃ!そのまま死んじゃえ!」

「西條七海、お前は私を怒らせた。その責任は拓巳、貴様が取れ!」


「西條拓巳は空気の読めない悪い子」


一気にまくし立てられる西條兄。

大慌てで言い訳も何もしどろもどろだ。

だけど、

「全く、地震に巻き込まれるなんてついてないわね。だけど、こうしてみんな無事に済んでよかったわ」

そうだなハルヒ。

こうして全員が戻ってこれて、こうして笑っていられるなんて、これ以上の結末はないよな。

  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:34:22.14 ID:CkQ3NWTPo<>  

だけど、俺は今から頭が痛いんだ。

お前が渋谷のど真ん中で地震に遭遇して気を失い、俺におぶわれるまでの経緯について、
上手い言い訳を考えないと行けないからな。


だけどまぁ、今だけはそんなこと棚上げして叫んだっていいだろ?






「おいリア充、爆発しろ!」












The end of episode--Delusion of Haruhi Suzumiya-- <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:39:36.31 ID:CkQ3NWTPo<>

---Unnecessary addition





「もしもし、朝比奈みくるです。聞こえますか?」

「ああ、聞こえているぞ。報告したまえ」


「はい、過去の私達はなんとか行動目標を達成しました。
 しかし、良かったのですか?
 これでは既定事項から少々逸脱するのでは?」


「ふむ。まぁ今回はイレギュラーな事態が多かったからな、これ以上は望めんだろう。
 ダイバージェンスも修正許容範囲内を確認している」


「それならば、良いのですが・・・」


「ふ、仮に既定事項から逸れたとしても、だ。それもまた、神たる少女の、いや・・・、

 運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だ」




  <> 1<>saga<>2011/12/12(月) 23:47:47.06 ID:CkQ3NWTPo<>  

と、言う訳で終了です。
お疲れ様でした。

最後の一文だけをやりたくて書き始めた。今は激しく後悔している。


投下だけでも足掛け4ヶ月以上。
書き始めたのが消失BD発売でテンション上ってだから丸1年・・・・。

こんな俺が書ききれたのも見てくれた人のお陰なのは間違いない。
初スレだったけど楽しかったよ!ホントにありがとう!


今度は「涼宮ハルヒちゃんのらぶchu☆chu!」とか気楽なのを書きたいなwww
キョン「リーディングシュタイナー?」とかだと激しく後悔しそうな気がする。



それじゃノシ

  <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 23:53:16.86 ID:ZU9mZuAWo<> ラスト続きが気になる
乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 00:10:31.08 ID:qs21/vMYo<> 乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 00:11:07.84 ID:EmNM7DDY0<> 乙
俺得で楽しかったよ。もっと日常が見たかったぜ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 00:30:05.08 ID:0p0n9pToo<> 乙。続きも気になるしChu☆Chu!も見たいな <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 03:57:53.87 ID:/DZu5M5wo<> 乙。
ちゅっちゅっもハルヒ×シュタゲも楽しみにしてますねwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)<>sage<>2011/12/13(火) 13:29:12.67 ID:kOEBM1xho<> おつかれ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/13(火) 16:50:57.20 ID:ut14kft20<> さいごおおおおおおおおおがああああああああああああ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 17:53:13.50 ID:VRWq4jVc0<> 乙

なんだ最後 <> 1<>saga<>2011/12/18(日) 03:09:16.04 ID:wcsmfIZyo<>
>237
ありがとう、そして、すまん。
こんなつながりがあったら面白いなって夢想したのが書き始めのきっかけだけど、ホントに続きとか考えてないんだ。

>238
ありがとう。

>239
ありがとう
アンタとは趣味が合いそうだな。

>240
すまぬー。
続き思いついたらスレでも立てるっさー。

>241
ちゅっちゅならSS文法?で気軽に書きたいね。
そんときゃよろしく!

>242
ありがとう

>243
おう!
西郷どんがどうした!?

>244
ありがとう
未来つながりでこんなんなってたらオモシレーなってだけなんだ。



みんな、ホントにコメント残してくれてありがとう。
更新もしないのにスレ残しとくのも迷惑だしHTML化申請してきた。
そのうち別スレ立てたらそんときゃまたよろしく!

<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/18(日) 03:28:40.68 ID:4I/bsMdmo<> ぜひともハルヒ×シュタゲを思いついてくれ

楽しかったぜ乙 <>