VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 12:25:23.40 ID:vsfN+0+DO<>子供の頃の私、歳納京子は泣き虫だった。
本当に軽いことでも泣いていた。
転んだり、苦いものを食べたり、テストで間違えたり、暗い場所に入ったときとか、そういうことで泣いてた。
なにか怖いものがあると結衣が庇ってくれた。ある意味、あの頃の結衣は私にとってはナイトみたいなもので、幼心に頼っていた。
先頭を切って何かを進んでやる姿勢はかっこよかったから、私の行動は自然と結衣に似ていった。
だからかもしれないけど、今は結衣を私が引っ張り回している感じで、それは結衣からもらったものだ。
だから、自然と考えてしまう。
京子『なら、あかりは私に何かくれたのかな?』<>京子「アッカリーン」
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 12:41:10.46 ID:vsfN+0+DO<> 昔のあかりは一言でいえば、変なの子だ
天真爛漫というか、無駄にうるさかったし、葉っぱ仮面とかを簡単にやるような、そういう女の子だ。
その頃の私を気弱な王女様とするなら、結衣がナイトだろうけど、あかりは今でもよくわからない。
京子「なあなあ、あかりってさ。なんか取り柄ってあるの?」
あかり「京子ちゃん。面と向かってそういうこと聞かないでよー」
京子「いやだってさ、存在感が――」
あかり「いやぁぁー、それ以上言わないでー」
慌てるあかりを見ながら、なんとも不憫だなー、んて思い始める。
この頃のごらく部の活動はなかなかにぐだっている。
だから何かと暇つぶしをしたくなるのだ。
まだ、ちなつちゃんに結衣が来ていない部室の中、お茶を啜りながら、なにかおもしろい事はないかと模索する。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府)<>sage<>2011/12/07(水) 12:46:52.98 ID:SppgSCp4o<> なんかしらんが期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 13:04:47.12 ID:vsfN+0+DO<> 長くて四人でできるものがいい、考えてるとあかりが何か読み始めたので見てみると、絵本のようだった。
京子「それなに?」
あかり「白雪姫だよ」
白雪姫とはなんともメルヘンチックなものを読む。
しかし、小人たちに囲まれながら生活する姫か。あかりはそういう姫様に憧れてるのかな?
京子「あかりは白雪姫の中で何になりたい?」
あかり「何になりたいかー。うーん」
考えるように首を傾げてから、少ししてから。
京子「京子ちゃんは何なりたい?」
逆に質問されてしまった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 13:30:54.15 ID:vsfN+0+DO<> 京子「そうだなー。ちなつちゃんに白雪姫やってもらえるなら、王子様だな!」
あかり「王子様かー、やっぱりかっこいいよね。はあー、ちょっと憧れちゃうなー」
京子「そういうあかりはなにがいいんだ?」
その言葉にあかりはただ、一言述べた。
あかり「あかりは鏡か王妃様でいいかな?」
なんとも存在感のあるキャラクターを選ぶ辺り、やはり気にしているのか。
あかり「京子ちゃん、なんでそんな惨めな子を見るみたいな目をしてるの」
京子「いや、なんだ。不憫な子だなって」
あかり「不憫っていわないでよー!」
と、そこで遅れてちなつちゃんと結衣がやってきて、ちょうどよくやることが決まった。
京子「ごらく部の今回の活動は『劇』に決めた!」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 14:18:58.37 ID:vsfN+0+DO<> 急遽すぎたということもあったが、みんな賛成という形で、白雪姫もどきをやることになった。
もどきの理由としては、まず観客が知り合いだけ。人数関係上、小人が不在出せないことだった。
綾乃や千歳は手伝ってもいいと言ってくれたが、観客がいなくなると困るので断っておいた。
そして気になる配役であるが………
京子「げげっ、まさかの鏡」
結衣「王子様か」
ちなつ「結衣先輩、その、本番は熱いキスでお願いします」
あかり「あかりは王妃様だ」
京子「結衣!鏡役と王子様役交換して!」
ちなつ「ちょっと京子先輩、そういうのは無しですよ!」
そう言いながら結衣にくっつくちなつちゃん。王子様役になれれば、ちなつちゃんとチュー出来たのに。残念である。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 15:04:27.00 ID:vsfN+0+DO<> ちなつ「じゃ、結衣先輩。練習しましょうー」
結衣「ちょっと、ちなつちゃん待って」
早々に2人がいなくなって、最初のように二人きりになった。あかりは少しだけ不安そうな顔で私を見てくる。
あかり「ちゃんとできるか心配だなー」
ちゃんと練習すれば大丈夫だろ、そう言って手に持った鏡役と書いてある紙をヒラヒラと動かす。
京子「鏡役って書いたのはいいが、まさか私に回ってくるなんてなー」
あかり「やっぱり京子ちゃんは王子様の役がやりたかったの?」
その言葉に、結衣が王子様役にはぴったりだってことをわかってる自分がいて、言葉を濁した。
京子「そういうあかりは、王妃役でよかったじゃん。出番もそれなりにあるしさ」
なにより可愛さをちなつちゃんに取られたあかりが、仕返ししているような絵に見えなくもない。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 16:33:43.93 ID:vsfN+0+DO<> そんなことを思いながら、私は自分に与えられた鏡役を考える。
鏡役、今の私が昔の結衣の姿をまねしているようなものなのだから、これはこれで間違っていないものだろう。
京子「まあ、妥当な役かなー」
あかり「京子ちゃんにはお姫様とかの方がいいと思うんだけどなー」
あかりの言葉に、思わず笑いかけた。
京子「私がお姫様とか、あかりはおもしろいこというね」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 16:56:48.16 ID:vsfN+0+DO<> あかり「だって、京子ちゃん可愛いところいっぱいあるもん」
京子「ちょ、いきなりなに言い出すんだよ。可愛さならちなつちゃんが一番に決まってるじゃん」
あかり「そんなことないよー。あかりは京子ちゃんの可愛いところいっぱい知ってるもん」
そう言って、あかりは笑った。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 17:55:53.54 ID:vsfN+0+DO<> あかりは私のことを可愛いといったけど、私にはそんな自覚も無ければ、自信もなかった。
だって、歳納京子は誰かを真似しながらここまできたのだから。
なんだか変なことを考えている。そんなこときにしなくてもいいのに、そうしていると、あかりが私の前に座る。
あかり「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのはだれ?」
真剣な眼差しでそう聞いてくるあかりに、私はすぐに答えられなかった。
京子「え、えっと。誰だろ?」
なんて答えればいいのか、わからないままにそう言うと、あかりはなんだか拍子抜けしたように表情を崩した。
あかり「そこは白雪姫か王妃っていわなきゃー、練習にならないよー」
もう練習なのかと、珍しくあかりに主導権を握られてることに、なんだか私らしくないと思った。
京子「よーし。あかり!がんがん練習するぞー!」
あかり「うん、だけど。私たち出番少ないね」
京子「そう言うことはいわないでもらいたかった」
こんなのんびりな更新でいいのかな? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方)<>sage<>2011/12/07(水) 18:15:09.77 ID:EstP8uky0<> 構わん、続けろ
むしろ、続けてください。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>saga<>2011/12/07(水) 18:30:54.35 ID:vsfN+0+DO<> しばらくの間、あかりと一緒に劇の練習をしていて気がついたことがある。
家に帰って机に向かいながら、この白雪姫もどきの内容に頭を抱えていた時であった。
京子「あかりと二人っきりってかなり久し振りだったんじゃないか?」
あかりと二人っきりで遊んだことがあったか色々考えてみて、一度だけあったことを思い出した。
まだ、私が泣き虫だった頃。結衣が熱で休んだときだったか。
私は結衣がいないってことだけでも泣いてたはずだったけど、何故だかその日泣いた記憶はなかった。
京子「なんで、あのとき泣いてなかったんだろ?」
深く考えても、なかなか答えはでない。忘れているのかもしれないなんて思いながら、鏡役のセリフを考えて、それが終わったらベッドに倒れた。
なんであかりのことでこんな悩んでいるのか、それがわからなかった。
京子「なんで、あかりは王妃なんてやりたいっていったんだろ」
あかりの性格と、王妃の性格は真逆なはずなのにである。
あかりの性格を考えたら、お姫様とかのほうが似合っている。
優しいし、私もそれに子供の頃に助けられた。
京子「あかりは私に優しさをくれたのかな?」
でも、私はそんな優しい子じゃないと。なぜかその考えを否定して、布団をかぶる。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 18:57:48.22 ID:vsfN+0+DO<> 眠ってしまえば楽になれる気がしたけど、久々のごらく部の活動には力を注ぎたくて、台本もどきを作っていく。
鏡と王妃の登場シーンは、王子様と白雪姫の出番の半分にもみたない物だった。
鏡の出番は王妃よりも少ないけど、鏡にはちょうどいいかなんて思った。
そしてもう寝ようと目を閉じた。
いやな夢を見なければいいけど、そんなことを考えながら眠る。
なんだか、無駄に疲れてしまった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 19:15:50.64 ID:vsfN+0+DO<> あかり『京子ちゃん、今は結衣隊長がいないけど、大丈夫!』
京子『外は怖いよ。結衣がいないと、私……』
手が震えてた。
いつも私を引っ張ってくれてた人がいなかったから。
だから家から私は出るのを拒んでた。外に行くのが怖かった。
あかりには悪かったけど、あかりが私を守ってくれる気はしなかった。
これはその日の夢なのかな?
あかり『じゃあ、京子ちゃんのお家にあがってもいいかな?』
そうだ、この日はあかりが家に来てくれたんだ。
あかり『京子ちゃん!一緒に結衣隊長の風邪が治るように一緒に応援しよう!』
京子『わ、私でもできるかな?』
あかり『大丈夫だよ!京子ちゃんにだって出来るよ!』
そう言ってるあかりは終始笑顔で、私を不安にさせないためにそうしてたのかなって思えた。
これは夢。
夢で、泣き出しそうな私はあかりの笑顔とかを見てて、悲しい気持ちが消えていったように、その日笑顔だった。
あかり『京子ちゃんの笑った顔、あかりは大好きだよ』
京子「って!なにいってんだー!」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 19:25:37.25 ID:vsfN+0+DO<> あかり「みんなおはよー」
いつも通りの通学路、なんだかあかりと顔を合わせ辛いのは、やはり夢のせいだろう。
子供の頃の夢、しかもその夢の中のあかりに見取れていたということが、私の心境を複雑にしていた。
結衣「どうしたんだ京子」
京子「な、なにがだー?」
結衣「いや、やけにソワソワしてる気がしてな。なんかあったのか?」
なんでこういうときに限って勘が鋭いのか。そう思いながら目線を反らすと。
あかり「京子ちゃん、なにか悩み事?あかりなら力になるよ」
京子「あ、アッカリーン!」
思わず走り出していた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西・北陸)<>sage<>2011/12/07(水) 20:20:11.42 ID:QO9rkXcAO<> あかりちゃんは誰とでもカップリングできる天使 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 20:34:38.69 ID:vsfN+0+DO<> 教室についてからしばらく結衣に気を使われたが、そっとしてもらいたい一心でできた台本もどきを結衣に渡す。
渡された結衣はなにかを感じ取ったのか、わかったと一言漏らして離れていった。
放課後の部活にはなんとかしたほうがいい、そんな風に考えながら、頭にはやはり夢のことが思い出される。
子供の頃のあかりは今よりも髪が長かった。それにやっぱり変なの子だった。
今のあかりとはやっぱり違うけど、あの笑顔は変わらない。優しいところも変わらない。
なにか貰ってるはずなのに、私はそれをかたくなに否定したいのだろうか?
京子「あー、なんだよ。よくわかんない」
気づけば時間は放課後になっていた。
結衣「京子、部活いくぞ」
京子「うん」
結衣「台本読んだけど、生徒会のみんなに見せるにはちょうどいいくらいの長さじゃないかな」
京子「そう………」
ちょっとばかり気分がネガティブになってるみたいだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 20:45:04.46 ID:vsfN+0+DO<> 台本を渡して私は縁側に腰掛ける。ちなつちゃんは、キスのシーンにおまかせと書いてあることに喜びの表情を浮かべていて、結衣はなんだか複雑な顔だった。
できる限り部室の中を見ないようにしたのは、あかりを視界に捉えないようにしたいからだ。
なのに………
あかり「京子ちゃん、どうかしたの?」
京子「何でもないよ」
あかりはすぐに心配してくる。あかりはそういう子だ。
あかり「でも、ほら、京子ちゃん、今日少し変だから」
京子「何でもないって、それより台本に目を通しておけよー」
あかり「わかったよ」
ようやくあかりが私から離れていって、肩の荷が軽くなった気がした。
確かに感じられる開放感に、ちょっとばかり息をもらしてから、夢のことを思い出してまただんまりした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 21:00:32.12 ID:vsfN+0+DO<> 一緒にやるべきところの練習も、あかり一人だけでやってもらった。
どうせ私がやるのは少ないから、気にする必要もないと思ったから。
部活が終わると、みんなから逃げるように帰って部屋に入る。
京子「あー、なんなんだよ。なんで、こんなことに……」
こんなことは初めてだった。
あたまの中はあかりの事だらけ、なぜにこんなにあかりのことで悩まなければならないのかと。
考えてもやはり答えは見つからなかった。
今日しなかった練習をするために台本を開く。
本当に鏡はセリフが少ないわけで、かなり短く書いたこともあって、さらにセリフは少なくなっていた。
京子「この世で一番美しいのは、白雪姫です」
簡単なセリフだった。
あかり『鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのは誰?』
頭の中で、あの日のあかりを思い出した。
京子「それは赤座………って、なにをいってるんだ私は」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 21:14:18.81 ID:vsfN+0+DO<> 思わず、無意識に出てきたその名前に正気に戻った。
あかりは確かにきれいかもしれないが、そこまで名前を出すものではないと首を振った。
確実に疲れているという漠然とした考えだけがあって、ベッドに横たわって天井を見る。
あかりは、あかりは今でも私の笑顔を大好きといってくれるのだろうか?
京子「ちょっとまて、なんで私はあかりに大好きといわれることを期待してるんだ」
変なことを考えすぎている。漫画を読もうと開くと、君の笑顔は素敵だねと話すページになっていたので、思わず投げ捨てた。
思った以上に落ち着いていない、落ち着かなくてはと深呼吸を繰り返す。
でも、なんだか胸は落ち着く雰囲気はなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 23:43:08.41 ID:vsfN+0+DO<> あかりの所為でこんなことになるなんて、本当にどうかしてる。
京子「劇、やめようかな」
しかし、そんなことをしたらちなつちゃんは怒るだろうし、さらにあかりに心配されてしまう。
どうせ今週中に準備も終えられるのだし、そこまで私が頑張ればいいのだ。
無理にそう決めて、まだ早いのに眠ろうと努力して、結局いつも通りの時間に眠った。
あかり『京子ちゃんは笑顔が似合うから、あかりは京子ちゃんが元気でいられるように、元気をいっぱいあげるんだ!』
京子「あかりは元気じゃ、いけないの?」
夢の中のあかりは、私に元気をあげると言ってくれた。でも、それを聞いているのは今の私だった。
あかり『私は大丈夫!京子ちゃんが元気になってくれるなら、それだけで嬉しいから!』
ニコニコの満面な笑みでそう言ってくるのは、今のあかりだった。
あかり『少しごめんね』
でも、そう言ってくるあかりは、どこか申し訳ない顔をしていた。
あかり『元気になってね?』
しずかにあかりの顔が近づいてくるのを、ただ私は待っているだけで、鼻を擽るあかりの匂い。
目が覚めたときに、私は顔を真っ赤にしていた。なんていう夢を見たのだろうか。
しかもよりによって、あかりから…………
京子「…………あーあー!」
思わず枕に顔を埋めて窒息死したくなったが、玄関のチャイムに阻まれた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>saga<>2011/12/07(水) 23:58:16.46 ID:vsfN+0+DO<> 時計を見てみると、まだ2人が来るには早いという時間であった。
めずらしい来客かと、パジャマ姿のままで玄関に向かう。
この時、私は完全に寝ぼけていたし、変な夢のお陰で混乱していたと思う。
京子「はいはい、どちらさ―――」
あかり「京子ちゃん、おはよー」
思わずドアを閉めた。
そして少ししてから、ドアを開けてきょとんとしているあかりを発見した。
あかり「京子ちゃん、いきなり閉めるなんてひどいよー」
京子「す、すまん。いったい、なにようかなー、あは、あはははは」
振り絞れる限りの言葉を並べながら、どうしたものかと考える。
夢のおかげで、あかりの唇ばかりに目がいくし、心臓もバクバクだった。
あかりは私の様子に少しだけ心配そうにして、今日早くきた理由を述べる。
あかり「昨日、京子ちゃんおかしかったから、心配になって。こんな早くきちゃった」
なんだ、その恋人が心配だからみたいな理由は。
まだパジャマ姿の私ではあるが、このまま待たせるわけにもいかないし。ここで帰すと後々、結衣に何かいわれる気しかしなかった。
京子「こんな朝から、まったくアッカリーンは……」
あかり「迷惑だったかな?」
京子「睡眠妨害であったことは間違いないなー」
あかりはあかりでも、もっと強烈な内容で目を覚ましたわけで、この最中私はあかりを直視できなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/08(木) 00:15:10.31 ID:FFo2w0hDO<> あかりには玄関で待ってもらい、素早く着替えるとパンを二切れほど持って家を出る。
パンを二切れほど持ってきた理由としては、道中であかりと軽い会話だけにするためである。
パン食べながら進んでいれば、あかりからはあまり話しかけてこないはずだ。
京子「キスか………」
あかり「きょ、京子ちゃん突然どうしたの?」
京子「うわっ、私なにいってんだー!今の無し、ノーカンノーカン!」
自分から墓穴を掘るとはなんという失態!
あかりはなんだか不思議な顔で私をみてくるわけで、何のためにパンを持ってきたのかと頭を抱えたくなる。
あかり「やっぱり、ちなつちゃんと結衣ちゃん、台本の通り好きにやっちゃうのかなー」
京子「そ、そう。そのことを考えてて、キスなんて言っちまったんだよー」
我ながらなんと無理矢理な方向転換だろうか。
しかしあかりは、そうなんだー。って納得してから何だか遠くを見るような目をした。
あかり「かなしい」
京子「あー、もしかしてあのちなつちゃんとのキスを思い出して―――」
私も夢の光景を思い出して、顔を真っ赤にしていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/08(木) 00:25:15.93 ID:FFo2w0hDO<> 顔を真っ赤にしながらパンを口にして歩く私は、なんだか無性に恥ずかしくなってきた。
周りに漂う何ともいえない空気に、ちょっと居心地が悪くなった頃。
あかり「京子ちゃん、学校に着いたら一度部室に行こうよ」
そうあかりは提案してきて、その提案に私はうなずきを返した。
それにあかりは笑顔で礼を言ってきて、その笑顔に私は見取れてしまった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/08(木) 00:26:57.36 ID:FFo2w0hDO<> 読んでいる方がおりましたら、今日はここまででございます。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/08(木) 00:29:39.83 ID:u7klTRkDo<> 乙! <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 05:49:52.16 ID:BJlaT2lqo<> 京子×あかりとは…これは俺得
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 12:08:58.21 ID:FFo2w0hDO<> 朝の部室というのは、なんとも殺風景な場所である。
遠くから聞こえる他の部活の掛け声とか、そういうものが聞こえない場所にあることもあって、余計に静かだ。
あかりは早々にお湯をかけていて、まだここを出るのには30分位の余裕があった。
あかり「お茶入れるね」
京子「お湯を準備するの早すぎるって」
机に突っ伏しながら、置いてある台本に手を伸ばす。
そう言えば昨日のこと、あかりは怒っていないのかな?
劇の練習を一人でやらせてしまったわけで。
我ながらかなり身勝手なことをしたと思う。
あかり「はい、京子ちゃん」
京子「ん、ありがとう」
用意されたお茶を一口、体が温まるのを感じながら、あかりを見る。
あかりはただ私を見ながらニコニコしている。その無邪気な感じは、夢の中に出てきたあかりとは違う感じがした。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 12:19:38.43 ID:x/OAff6go<> きたー <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 12:29:55.59 ID:FFo2w0hDO<> あかり「京子ちゃん、顔赤いよ?」
京子「うえっ、そんなことないぞ!」
お茶が熱すぎたかな?とか心配するあかりに、私は再び顔を真っ赤にする。
このままでは、茹で蛸になってしまうと思う。
京子「そ、それよりも、なんで部室にきたんだ?」
あかり「そうだった!昨日、あかりセリフいっぱい練習したから、京子ちゃんと一緒に合わせてみたくなったんだよ。迷惑だったかな?」
つまり、合わせをしたかったということか。まあ、このまま無駄に時間を過ごして顔を真っ赤にし続けるよりはマシか。
そんな考えで台本を手にとり、鏡のセリフをさらっと調べる。
京子「じゃあ、毒リンゴを白雪姫にあげるところまでやろうぜ」
あかり「うん、いいよ!」
あかりは少しばかりの間をおいてからセリフを始める。
あかり「この世で美しいのは、妾だけー。今日もこの世で美しいものは妾はだけのはずじゃ」
なんともあかりには似つかないキャラクターだ。
と、ここで私のセリフだ。
京子「この世で美しいのは、王妃さまでございます」
あかり「さすがは妾の鏡、そうこの世で美しいのは妾だけなのじゃー」
妾の鏡。それってあかりの鏡ってことかな。って、私はなにを考えている。
あかり「じゃあ、ここでちなつちゃんの白雪姫のシーンが入って、次の鏡さんのシーンだね」
京子「う、うん」
何だろう、とっても頭がぼんやりする。
あかり「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのは誰じゃ?」
あかりがかわいい笑顔で私に聞いてくる。夢の時みたいなかわいい笑顔で。
京子「そ、それは………」
なんで、こんなに胸が痛い。なんでこんなに………
あかり「京子ちゃん、大丈夫?」
あかりが近づいてくる。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 12:39:28.91 ID:FFo2w0hDO<> あかりが目の前に来て、心配そうな顔をしてくる。
夢で見た光景に似ていた。
あかり「少しごめんね」
そう言ってあかりの顔が近づいてくる。おかしい、これは夢なのか?
無駄に胸が高鳴る。こういうのは私があかりをからかうときに、自分からやることじゃないだろうか。
鼻にあかりの匂いが近づいて、目の前にある顔の唇を私は見つめていた。
でも、それはそれ以上近づくことはなくて、おでこに当たったあかりのおでこ。
あかり「うーん、熱はないみたいだけど………」
京子「あかり………」
あかり「京子ちゃん?」
おでこが離れそうになった。顔が離れるのが嫌になった。頭がクラクラした。
色々と頭で言い訳を考えながら、私は部室から学校から逃げ出していた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 12:51:35.97 ID:FFo2w0hDO<> あかり「きょ、京子ちゃん……?」
台本が落ちる音、まだ飲みかけのお茶。静かな部室に私。
走りながら、なにをしたのかを考えて、後悔して走りつづける。
まだ学校は始まらない、今日は休んでしまえ、家に帰って倒れてしまえばいい。
そう思って家の前までついて………。後は、塞ぎ込みたい。
周りを同じ学校の子達が不思議そうな顔でみてくるけど、忘れ物でもしたのかと直ぐに目線を外す。
息が切れそうなくらいに走りつづけて、やっと家に着いた。
今日は疲れてしまった。
そう思って玄関を開けると。
結衣「京子?」
後ろからそんな声が聞こえた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 13:06:14.39 ID:FFo2w0hDO<> なんでもない、うそをつけ。
忘れ物して、ならば玄関の中で待っててやるから取ってこい。
ちょっとしたらいくから先に、あかりが先に来たはずなのになんであんたがここにいる。
結衣は私の逃げ道を全て塞いで、私の部屋にきていた。
学校に結衣は休みの連絡をいれ、母親も事情を察したように休みの連絡を入れていた。
結衣の奴、これで皆勤賞逃したな。
少しばかりの沈黙の後、結衣は静かに口を開いた。
結衣「あかりと何かあったのか?」
京子「な、なんでそう思うんだよ」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 17:27:12.51 ID:FFo2w0hDO<> 結衣「あかり以外になにかあるなら、それはそれで安心するんだけどな。京子、この頃あかりを避けてるみたいに見えたからさ」
京子「そんなことない」
結衣「嘘だな。京子は嘘を付くときよく下を見るからな」
幼なじみだからそういうところを指摘してくる。やめてほしい、そう考えて布団の中に入る。
今さっきしてしまったことを、結衣はどう思うのか、友達だからって言えないことだってある。
あかりになにをしてしまったのか、そればかりが後悔に満ちてくる。
結衣「京子………」
京子「なんだよ」
結衣「あかりのこと、好きだったりする?」
その言葉に、私はなにも考えられなくなった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 17:38:02.74 ID:FFo2w0hDO<> 結衣「はあ、好きなんだな」
京子「そんなこと、ありえない」
そうだ、あり得るわけがない。あかりを好きになんて、私になにもくれなかったあかりを、誰にでも優しいあかりを好きにるなんてありえない。
結衣「私ね、昔京子が私に嫉妬みたいな視線を向けてきたこと覚えてるんだ」
京子「そんなこと、したことない」
結衣にそんな視線を向けたことない。
結衣「あれは、昔私が風邪で休んで、治った日のことかな。教室に行って一番最初に声をかけてくれたのがあかりだった」
その言葉に胸が痛んだ。なんでか分からないけど、確かに胸が痛くなった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/08(木) 22:30:48.21 ID:FFo2w0hDO<> 結衣「その時の京子さ。すっごいムスッとしてた」
京子「それがなんだよ」
結衣「今思うと、あれは何に対して嫉妬してたのかなって思ってさ。でも、あの日から京子ってあまり泣かなくなったよね」
結衣はそう言って、私の言葉を待ってるみたいだった。
私はあの時なにを思ったのかってことだろうけれど。
あかりは私だけに優しいんじゃなくて、みんなに優しい。前日に私を励ましてくれたあかりは、次の日には結衣のことも励ましてて。
そこで気がついた。
京子「そっか………」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/08(木) 23:41:06.94 ID:FFo2w0hDO<> 私はあかりのその優しさが、気に食わなくて同時にとてもうらやましかったのだ。
京子「結衣」
結衣「なんだ?」
京子「私ね。今さっきさ………」
結衣「うん」
京子「あ、あかりに、き、キスしちゃったんだ………」
結衣の息が止まったように感じて、見てみると目を点にしながら固まっていた。
私自身、この発言で顔が真っ赤だというのに、結衣の所為で緊張感が無くなっていた。
京子「ゆ、結衣?」
怖くなって声をかけてみる。なんだかわなわなと震えているようで、何だろうか。とっても面白い。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/09(金) 00:06:07.10 ID:gtqpP0UDO<> 結衣「ちょっと待ってくれ、口喧嘩とかしたんじゃないのか?」
京子「いや、その、昨日見た夢でさ。あかりがその、顔をだね……」
説明しながら顔が赤くなっていくのがわかって、今さっきまでもやもやしてた物の正体に、さらに恥ずかしさが増していく。
結衣「やばい、茹で蛸だ。茹で蛸がいやがる」
京子「ゆ、結衣。私、どうしたらいいのかな?」
結衣「どうしたらって、なにをだよ?」
京子「そ、それはさ。だって私、あかりにさ。一方的にキスしたんだよ。嫌われたに決まってる。それに、あかりは女の子で私も女の子なんだよ?」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 00:21:06.61 ID:gtqpP0UDO<> あかりも私も女の子だ。それは変わらないことだ。私があかりからもらったものに気づいたとしても、これだけは絶対に変わらない。
だって今のこの私は、あかりの元気とか、そういう優しい感じとかに反発して出来上がった。それで、そんな私にもいつも通りのやさしいあかりは、気づかなかったけど眩しすぎたんだ。
鏡だからそんなまぶしい光を弾いてしまう。だから私は自分の気持ちに素直になれなかった。でも素直になったところで、性別の壁は変わらない。
結衣「京子が、その、だ。あかりにキ、キスしてしまったことは変わらないことだよ。でも、残酷なこというけどさ。あかりが京子を許しても、京子のことを1人の人として好きって言ってくれるかはわからないよ」
京子「そうだよね、ははは」
結衣の言葉は確かにその通りだった。あかりの性格を思えば、許してはくれると思う。
だけど、私の気持ちに応えてくれるかはわからない。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 00:34:28.59 ID:gtqpP0UDO<> 結衣「で、京子?」
京子「な、ななな、なに?」
混乱している私に、結衣は落ち着けと促してから、これからどうするのか聞いてきた。
今から謝りに行くのは無理だ。頭と体が全くと言っていいほど動かない。恋愛マンガとかのそういうシーンを読んで、こんなことある訳ないじゃん、と笑っていた私に何か言ってやりたい。
でも、けじめはつけないといけないんだろうな。
結衣「劇の事もあるし、ここまで準備して放棄するのは京子らしくはないぞ」
京子「そういうときは、劇はやっぱりやらない事にしようか、とか言うもんじゃないかな?」
私の言葉に結衣はクスッとしてから、あかりだったらそう言ってくれるだろうが、生憎私は京子を甘やかす気はないよ。って言った。
強気な性格は昔から変わらないみたいで、私も結局弱虫で泣き虫な所はあまり変わってないみたいだった。
だって、こんな風に相談しながら私は泣いているのだから。
泣き虫京子は、まだまだいるんだなー。って少しだけ泣き虫になった。
京子「ゆ、結衣、私だめな子だね」
結衣「ああ、そう思う。だからちゃんとするんだぞ」
京子「…………うん」
泣きながら、私は静かに頷いてあかりのことを思う。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 00:43:45.56 ID:gtqpP0UDO<> あかりはみんなに優しい、それはあかりの一番いいところだ。だから、あかりが白雪姫でやりたい役を聞いて、王妃や鏡でいいって言ったのは本心からじゃない気がした。
あかりは、誰かに本当に甘えたことなんて無いんじゃないかって、身勝手に考えて私に甘えてくれたらいいなー、なんて思う。
結衣「京子、もうどうするか決めたのか?」
京子「うん、ありがとう結衣」
結衣「まったく、世話の焼ける幼なじみだよ。今日はゆっくりした方がいいよ。私は学校に今から行くから」
遅刻してでもいくとか、その根性は凄い。今さっき休みの連絡を入れてたはずなのにさ。
結衣が去った部屋の中、疲れ切った頭を休ませるように、私は目をつぶる。
今日は夢が見られなくても良さそうだ。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 00:53:16.54 ID:gtqpP0UDO<> 部屋の中、私の唇とあかりの唇が重なってる。あのときの光景だ。
あかりの目が見開いて、持ってた台本が落ちる。
私のキスはふれる時間の長いキスで、終わったときにはあかりはきょとんとしていて、私はその場から逃げ出した。
目覚めると昨日、あかりが家にきてくれた時間より10分早い時間だった。
恐ろしいくらいに、私は昨日のことを鮮明に覚えていたいようで、翌日の夢に見るとは。
京子「アッカリーン」
思わず叫ばずにはいられなかった。
なんだか、あかりの名前を呟くと胸が落ち着く。これは本格的に危ないのではないという気持ちになりながら、着替えて準備をする。
こんなわずかな時間で、これほどの心境の変化に私もびっくりしている。
でも、そのけじめを私はつけるつもりだ。
京子「やっぱり、怖いなー」
これから学校の部室に行く予定である。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/09(金) 00:56:42.06 ID:gtqpP0UDO<> もしも読んでくださっている方がおりましたら、今日はここまででございます。
明日で終わらせられるようにがんばります。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 05:31:05.79 ID:Dp4m1qNno<> 乙
明日で終わりか
いちゃらぶも書いてほしいぜ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 05:47:41.43 ID:0Ld1cyrD0<> 乙
京あかは俺の好物 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 12:18:16.80 ID:gtqpP0UDO<> 昨日眠る間際に結衣から電話があった。
内容は明日朝一番に部室に来いで、結衣が微力ながら私に協力してくれたということだろう。
さて、どう話を切り出せばいいのだろうか。そんなことを考えながら、妙に落ち着いているのは、昨日で吹っ切れることができたからかもしれない。
いや、吹っ切れるとかそう言うのは私の気持ちをはっきりあかりに伝えてから…………
京子「………これは酷い」
鏡に映る私は顔を真っ赤にしていた。
これは相当危険だ、ミラクるんとライバるんの対決を初めて見たときより危険だ。
京子「しっかりしろ私!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/09(金) 20:18:43.15 ID:CJ6mUOyUo<> 読んでる
完結は今日か明日か <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 00:14:32.50 ID:9WsvdVQDO<> これほど気合いは、締め切り間近の時でさえないというくらいだ。
鞄に入れた教科書の中身など気にしていられない。これで、今日の教科を入れ忘れたら、あかりの所為にしよう。
そうだ、あかりの…………
京子「私は子供か!」
また顔を真っ赤にして、母親に不思議がられた。
深呼吸を一度してから、私は玄関の扉を開く。そこには誰もいないのはわかっていたので、そのまま勢い良く通学路を駆け抜ける。
確かに、あかりが私を拒絶することもあるかもしれない。
そういう悲しい結果だってあり得るのだ。
だけど、それを気にして動かないのは、今の私らしくなかった。
鏡の私なんだ。みんなから貰ったものを全部使ってしまえばいい、あかりにこの思いを伝えたいのは、間違えなく私の意志なんだ。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 00:22:18.20 ID:9WsvdVQDO<> 学校に駆け込んで、教室に向かうことなく部室に向かう。
早く、部室に駆け込みたいと、見えてきたドアに手をかけて勢い良く開こうとして、開かなかった。
京子「あれ、ってやっぱり早く来すぎたか!」
今の時間は朝練が始まるよりも10分は早い。昨日は今より20分も早くきていたのだから、まだ朝きている先生もあけていない時間なのだろう。
しょうがないから職員室から鍵を借りてくるかと、振り返ろうとしたところで足音が聞こえた。
それは立ち止まったような音。
ゆっくりと振り返ると、特徴的な団子が二つ目に入った。
胸が……
確かに……
大きく高鳴った……… <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 00:32:31.44 ID:3aIApa2po<> つい「アッカリーン」にワラタ
でもええ話や…
楽しみにしてます <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 00:35:09.44 ID:9WsvdVQDO<> 京子「あ、あかり……」
どこか気まずそうに下を向いたあかりが、そこにはいた。
昨日の事を思い出して、私の中に後悔と同時に恥ずかしさがこみ上げてくる。
しばらくの沈黙が過ぎて、いつの間にか朝練開始のチャイムが響く。
京子「あ、あかり、まずはさ、中入ろうぜ?」
緊張で声が震える。いつもみたいに話しかけられない歯痒さと、あかりに無視されてるんじゃないかという思いで、心がぐらぐらする。
あかりは頷く事もなく、私の横を通り過ぎる。どうやら鍵を借りてきていたようで、部室を開けるとそのまま中に入っていった。
やっぱり、嫌われてるのかもしれない。仕方のないことだ。
心の中がズキズキと痛む。だが、私がやったこと、自業自得だ。
遅れて部室に入ると、あかりは座って待っていた。
恐る恐る、私は対面に座り、あかりの様子を見る。
いつもはあがっている顔も、今は下を向いていて、表情はわからない。
それが私の不安を一層強くする。嫌われた、軽蔑されるかもしれないし、もう友達でもないって言われる可能性だってある。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 00:44:40.83 ID:9WsvdVQDO<> 覚悟は決めていた。けじめはつけるって言ったじゃないか。
心を叱咤して、云うべき言葉を口から絞りだそうとするけど、怖くなる。
情けない、言わなければわからないままで済むって、ずる賢い心がある。
あかりに、伝えたい。ごめんなさいと、あんな事をしてごめんなさいって。
そして、あかりに好きだって、私はあかりが大好きだって伝えたいのに。
まだ、私の心は動けない。なんで、あの覚悟はどこにいったの?
体中が痺れたように動かなくなる。
喉もカラカラになったみたいで、私は下を見ながら切り出せないことに情けなさだけを蓄積させる。
泣き虫、弱虫、意気地なし!
気づけば、私は泣いていた。
情けなく、涙を流しながら、それでも怖くなって、なにも言い出せないまま、泣いていた。
こんなの嫌だよ。素直になるって決めたのに、こんなの………
「なんで、泣いてるの?」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:03:19.34 ID:9WsvdVQDO<> 横から声が聞こえて、でも私は顔を上げられなかった。
情けない、一押ししてもらってやっと声が出せる。
京子「き、決めたのに………、そうできなくて、私、弱虫で泣き虫で、意気地なしだから、怖いの」
怖い、あかりに拒絶されることが。怖くて一歩を踏み出せない。
そんな私に、あかりは語りかけてくる。
あかり「あかりね。今困ってることがあるんだ」
どこかやさしい声で、友人に気軽に相談するように、優しい音色で。おかしいよ、私はまだ謝ってもいないのに、なんでそんな優しい声を掛けられるのさ。
あかり「あかりの大切な人が、あかりの為に苦しんでて、それで泣いてるの。あかりの為になくことなんて無いのにね」
あかりが悪いんじゃないのに、何でそんなこというんだ。私が悪いのになんで……
京子「な、なんであかりは、そんなに優しくしてくれるのさ」
その私の言葉に、あかりはすぐに答えた。いつも通りの声で。
あかり「京子ちゃんも、あかりの大切な人だからだよ」
その言葉に顔を上げてしまう。あかりが今どんな顔をしているのか、何となくわかってしまったから。
目線が合って、そこにはいつもみたいに優しく笑うあかりがいた。
軽蔑なんてない、ただいつもみたいに優しいあかりがそこにいて、私は甘えるようにあかりの胸に顔を埋める。
限界だった。怖くて、でも云わなくちゃいけないって思う心が絡み合ってる。
もう、一歩踏み出せばいいのに、まだ怖いのか私は。
あかり「京子ちゃん、大丈夫だよ」
あかりの手が背中に回されて、暖かさを感じる。私の中の心がその怖い道に足を踏み入れた。
京子「ごめん、ごめんね」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:20:24.76 ID:9WsvdVQDO<> やっと出てきた。
京子「あかり、ごめんなさい!あんなことして、私が私が弱くて自分勝手にした。あかりの気持ちなんて考えないであんな事をした。ごめんね、ごめんね……」
ああ、なんて酷い言葉の羅列だろうか。
もう謝って謝っても、言葉が見つからない。私の言語力は無さ過ぎる。
そんな私の背中をあかりは優しくさすってくれる。
あかり「京子ちゃん、ありがとう。もう大丈夫だから、泣かないでね。可愛い京子ちゃんが台無しだよ」
そう言ってくれるあかりに、私は甘えているのかもしれない。でも、今さっきの言葉、京子ちゃんも、っていう言葉に私は少しだけ悲しんでいた。
それは、やっぱり特別ではない証なのだろうから。
あかりの制服に涙の後が付いて、泣き続けることにも疲れた頃。私はまだあかりに抱き付く形のままだった。
あかりは私が落ち着くまで待ってくれているようだった。
あかり「京子ちゃん、落ち着いた?」
京子「もうちょっとだけ………」
私の願いに、あかりは小さく頷いてくれた。
あかりの匂いを感じながら、私は云うべきもう一つのことを口にする。
京子「あかり………」
あかり「どうかしたの京子ちゃん」
京子「私、あかりのこと……………」
一気に心拍数があがる。でも、心地良い感覚だった。
ああ、あかりってホントに優しいんだ。だって、私もこんなに優しい気持ちになれるんだもん。
これは今まで否定してたあかりから貰った優しさなのかもしれない。
まだ自分にしか使えてないけど、私の心を支えてはくれてる。
言葉にしたほうが良いよと、私を応援して押してくれる。
そんな優しさに応えるように。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:21:59.09 ID:9WsvdVQDO<>
――好きだよ――― <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:30:51.79 ID:9WsvdVQDO<> やっと言えた。
そしてそれを聞いたあかりは………
あかり「えっ、き、京子ちゃん!?」
今さっきの優しい顔なんかどっかに行ったみたいに、恐ろしく混乱していた。
なんだこれは!
京子「ちょ、そこはさ。わ、私も好きだよ。とか、そういうこと言うんじゃないかね!」
あかり「そ、そんなこといきなりいわれたって、ええっ、京子ちゃんがあかりのこと好きって………」
なんだか、今さっきまで悩んでいたことが、なんか意味ないことのように思えてきた。
あかりはこんな子だ。たがら私はあかりが好きになったんだ。
あかり「京子ちゃん、その私、えっと、まだ、よくわからなくて」
京子「わかってるよ。ただ、私はあかりのこと好きだよ。もちろんlikeじゃなくてloveの方でだよ」
あかり「そ、そうなんだ」
あかりは団子を触りながらソワソワとしていた。これはなかなかにかわいい姿だと思いながら、ちょっとばかりショックを受けた心を繕う。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:42:48.01 ID:9WsvdVQDO<> このままあかりは、自然と私と付き合うように動くかもしれないけど、それが優しさとかそういうのじゃないとは言い切れない。
私の言葉にすぐに答えてもらいたくはなかった。あかりにはあかりの思った答えを聞きたいから。
京子「まあ、答えは劇が終わったら聞くよ」
あかり「京子ちゃん、もういいの?」
気づけば、私は立ち上がっていた。涙の後は残ってるけど、心の中は無駄に爽快だった。
だから一つ聞きたいことがあった。
京子「あかりはなんで王妃とか、鏡をやりたいって言ったんだ?」
あかり「みんながやりたくない役かと思ったからだよ」
京子「やっぱり、あかりは優しいからなー」
あかり「そんなことないよ」
そんなあかりの手を掴んで私は言う。
京子「いいや、優しいよ。だから私はあかりが好きになったんだから。だからその証拠をあげる」
私はそう言ってから、目をつぶる。正直、待つのはやっぱり怖い。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:46:58.97 ID:9WsvdVQDO<> 私が求めていることをあかりは理解してくれるだろうかと、思った矢先に唇に一瞬の感触があった。
あかり「京子ちゃん、私の答え。ちゃんと劇が終わったら伝えるね」
そう言うあかりは優しい笑みを浮かべていた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:52:27.06 ID:9WsvdVQDO<> 劇は結果的に喜劇的に終わった。
部室の中、観客の生徒会一同の前でなんとも即席なセットを使っての事だったので、劇終了間際に崩れたのはまさにひどい落ちであった。
その後、私は一人部室で待っていた。
答えを聞くために。
それがどんな答えであっても、私は後悔しないだろう。
だって、それが私の望んだ事なのだから。
静かに扉が開く。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:53:26.25 ID:9WsvdVQDO<>
京子「アッカリーン」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 01:56:33.05 ID:9WsvdVQDO<> いつも通りになった私であかりの答えを待とう。
あかりを好きっていうこの心と一緒に。
お わ り <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/10(土) 02:00:39.69 ID:9WsvdVQDO<> ここまでお読みいただきありがとうございました。
レスをくれた方には感謝をありがとうございます。
まだまだ、文章構成が未熟で読み辛いところもありましたでしょうが、読んでいただきありがとうございます。
初めてで緊張しました。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 02:58:07.76 ID:LAs+Dwap0<> お疲れ
京あかはSSが少ないからすごく良かったです。
余力があったら、イチャラブ編も書いてくれるとありがたいww <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 03:37:56.70 ID:mR1vf+jAo<> 乙!
投下間隔が結構遅いから、リアルタイムで遭遇した時は結構ヤキモキした
けど、ヤキモキするぐらい続きが気になったし、読んでて楽しかった
イチャラブ編見たいねww <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 06:06:32.34 ID:3aIApa2po<> 楽しませてもらいました
みんな天使や… <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 08:03:49.70 ID:YTe0QUAAO<> SS速報では少ないけど短編も悪くないな
乙 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 09:11:17.52 ID:6g8v2mHZo<> 楽しかったです…
乙! <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 12:31:50.03 ID:HxqQGeFio<> おつ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 14:02:18.76 ID:GNA50Olpo<> 乙 <>
京子「これはなかなか………」あかり「は、恥ずかしいよぉ………」<>sage<>2011/12/10(土) 16:31:50.19 ID:9WsvdVQDO<> 京子「しまった。私としたことが。冬になってから夏の日を惜しむことになるとは………」
今年の内に撮った写真を振り返りながら、私は一つの失敗に気がついた。
京子「なんでこういうときも、存在感ないかなー」
そう愚痴りながら机に立てかけた写真を見る。みんなと撮った写真をみる。
大きく手を挙げて、私いるよアピールをしているその子がすぐに目に入る。
「困った、あかり分が足りない」
そして何よりあかりの水着写真が余りにもない!
それこそが私の最大の失態であった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 16:36:25.31 ID:6ZVhFUWTo<> なんかきたってか名前欄なんだこれ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 17:03:33.11 ID:9WsvdVQDO<> 思えば、あかりに告白したときには夏は終わっていたし。告白する前まではアッカリーンの壮絶な威力で、存在感があまりにもなかった。
京子「毎日毎日あかりのことみてきたと思ったけど、なんで水着写真はないのか、納得できん」
これは何とかしなくてはいけない、そう今年最後のあかり分をどうにかしなくては………
追記:前書いた話とは関係ありませぬ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 17:06:01.01 ID:9WsvdVQDO<> すまない、1だ。
名前欄に題名を書いてみたんだ。
混乱させてしまったならすまない。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 17:21:19.05 ID:6ZVhFUWTo<> なんだタイトルか
読むからがんば <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 17:21:49.30 ID:9WsvdVQDO<> しかし、この寒い季節に海にはいけない。
私もそうだが、あかりに風邪など引かせたら…………
いや、風邪を引かせてそれを看病するのもなかなかにいいかもしれない。
そう、赤いくまさんプリントのパジャマと、布団からちょっと顔を出して申し訳なさそうにするあかり。
あかり『ごめんね、京子ちゃん………。わざわざお見舞いにきてくれて』
京子『いいんだって、それに恋人が風邪引いてるのに、お見舞いにこないなんてあり得ないことだぜ』
そうして、熱をおでこで計って、そのまま…………
京子「い、いかん。私の中のアッカリーンが、あふれそうだー」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 17:49:14.53 ID:9WsvdVQDO<> これほどの妄想を出来るようになったのは、間違いなくあかりの所為だ。
京子「しかし、どうすればあかりの水着姿を拝むことができるかなー?」
問題はそれだ。いきなり明日からバカンスなんてことは有り得ないわけである。
今できる限りのことで、あかりの水着を拝む方法はあるだろうか?
金銭的に、まだ大きく動くことができないことは明白だから、自然と選択肢は絞られていく。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 17:56:24.57 ID:9WsvdVQDO<> 京子「やはりこの寒空の中、海に向かうしか………」
と、そこで部屋のドアをノックする音がした。
入ってきたのは母親で、なんだか少しばかり困っているような顔をしていた。
母「ねぇ、京子。明日までなんだけどこれ使う?」
それはなんともボロボロになってしまっている紙であった。
まったく、今の私はあかりの水着姿を拝むために色々と考えているところなのだ。邪魔しないでいただきたい!
と、心の中で宣言しながらその紙とやらに目を向ける。
向けて暫くして、私に電流が走った。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 18:09:04.21 ID:9WsvdVQDO<> バスに揺られながら、私とあかりはその場所を目指していた。
あかり「でも、私たちだけでよかったのかなー?」
隣に座るあかりは、他のごらく部の面々のことを気にするようにそうつぶやいた。
京子「大丈夫だって。それより、これはデートなんだからな」
少しだけ照れているのか、ソワソワしながら服をキョロキョロとみている。
あかり「ど、どこも変じゃないかな?あかりの服なんか変じゃないかな?」
これが初デートって訳でもないのに、あかりはこうやって動揺する。
京子「大丈夫、とっても可愛いぞ」
我ながらなんと恥ずかしい台詞だ。
あかり「き、京子ちゃんも、とっても可愛いよ」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 18:32:31.49 ID:9WsvdVQDO<> 京子「あかり、やめて、マジ恥ずかしいから」
あかり「だって、京子ちゃん可愛いよ?」
あかりは普通にこういうことを言ってくる。それが私に伝染はしたが、やはりあかりのナチュラルな発言は、どうも私の心臓をよく射抜く。
現にあかりよりも私の顔の方が赤い。
あかり「京子ちゃん、顔真っ赤だよ?」
京子「うるさい、うるさーい」
あかり「ご、ごめんね」
バスの中ではしゃぎながら私はこれから向かう場所での戦いに備える。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/10(土) 18:40:18.49 ID:9WsvdVQDO<> 今はここまでです。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 18:45:28.35 ID:mR1vf+jAo<> 乙
続編より短編か?
水着成分わっふるわっふる <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 18:47:10.95 ID:mR1vf+jAo<> >>81
×続編より短編か?○続編というより短編かな? <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/10(土) 21:18:24.14 ID:sZTFSPvWo<> 京あかがゆるゆりで一番好きだ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 00:35:28.09 ID:EFcf8/UH0<> 乙
待ってましたぜ、旦那ww
エロくない京あかSSっていいよねww
おかげで俺の股間もアッカリーンしてしまったよ、はっはっは。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 17:25:18.84 ID:bzU5edSDO<> 財布の中に入っているボロボロな券を二枚見る。
今年最大のビックイベントがあかりへの告白だとするならば、これはその後のラストイベントになるだろう。
そのキーアイテムワクワク温泉ランドの無料招待券である。
魅力的なのはこの温泉ランドは水着で入ることが前提であり、なんとその水着も貸し出しているというところなのである。
つまり、あかりの水着姿を拝む絶好のチャンスであることに他ならない。
今日だけは母親に感謝せざるを得ない。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 00:40:57.34 ID:2DWW7PWDO<> あかり「でも、水着で入れる温泉なんてなんか楽しいね」
京子「おおっ、健康ランドっていうけど、中はレジャー施設みたいなもんみたいだし、流れる温水プールもあるんだってさ」
あかり「そうなんだー、楽しみだね!」
可愛い笑顔のあかり、この顔が見れただけでもすでに大豊作である。
と、ここであかりの顔が少しだけ不安な色を帯び始める。
なんだろうか、酔ったのだろうか?
京子「あかり、どうした?」
あかり「あのね京子ちゃん、水着本当に持ってこなくてよかったのかな?」
その言葉に、心の中でにんまりしてしまった。
京子「大丈夫、水着を貸してくれる場所なんだから、私はすぐに準備できたけどあかりは色々と探さなくちゃだめだろ?」
主にお姉さんであるあかねさんの部屋とか………くまさんパンツまだ見つかってないらしいな。
まあ、そういう言葉を並べて、あかりに水着を用意させなかったわけだ。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 00:50:53.54 ID:2DWW7PWDO<> 確かにあかりの水着姿はみたい、それはもう舐めまわすように見たい。
だけど、あかりが用意する水着は多分スクール水着だ。いや、あかりの可愛いさはわかる。スクール水着×あかりは強力なタッグであることはわかる。
だけど………
京子「見るなら、やっぱり可愛いあかりがいい」
あかり「京子ちゃん?」
京子「んっ、何でもないぞー」
そう、私は可愛い水着に身を包んだあかりが見たい。うん、見たい。
今からその水着姿を想像するだけでも、胸が高鳴る。
おっ、落ち着けー。まだ、戦いは始まったばかりだぞー。
やがてバスは温泉ランドに到着した。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 00:57:18.13 ID:2DWW7PWDO<> ボロボロな券を係員に見せて中に入ると、なかなかに人がいた。
冬場だというのに、やはり水着になりたいという欲望に耐えられない輩は多いようだ。
あかり「京子ちゃんは先に中に入ってていいよー。あかり水着借りてから行くからー」
と、ついて早々あかりが水着を借りるためにカウンターに向かう。
あかりに任せてはスクール水着を選ばれるんじゃないか、そう考えている時期が私にもありました。
京子「ふふー、あかりだって可愛くなりたいに決まってるから、心配はいりません」
あかりが可愛いものに目がないことはわかってるから、私はさっさと脱衣所に向かう。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 01:12:38.60 ID:2DWW7PWDO<> それなりに私も持ってくる水着は気合いを入れた。
あかりは可愛いとか、綺麗とかそう言うことはすぐにいってくる。
だが、顔を赤くしながらそういうことを言ってくれたことがない。
私だって、あかりに恥ずかしさ混じりの言葉をもらいたい。
その、か、かわいいよ。あ、ありがと、って会話に凄く憧れる。
京子「ふっふっふ、昨日わざわざ部屋の中を探し回って見つけたこれで、あかりを赤くしてやるぜ」
持ってきた水着を手にとりまして、少しばかり妄想中。
あかり『き、京子ちゃん』
京子『どうしたんだよあかり。顔真っ赤だよ?』
あかり『あのね………、か、可愛いくて、そのあかり恥ずかしくなって、ごごめん』
京子『あ、ありがと……』
京子「これだ、これしかない!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 01:21:36.29 ID:2DWW7PWDO<> 服を脱いで水着に着替えると、いつもと違う私がいる。
今になって無駄に緊張してきた。
こういうドキドキは中々に曲者だった。緊張を隠すために髪の毛をいじりながら、水着の姿を見る。
あまり大きくもない胸、細い位の体、なんだかとても貧相だ。
京子「あかりはどんな感じなんだろう」
そんな妄想を考えていられなくて、タオルを肩に掛けながら先に中に入る。
中に入ると最初に感じたのは、この暖かい空気だ。本当に過ごしやすい夏の日のような感じで、向こう側には大きなプールがまるまるある。
京子「うおー、すっげぇー!」
思わず声を出してしまう。私なりの感動表現である。
だが、すぐに飛び込みたい気持ちを抑える。まだ、あかりが来ていないのだ。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/12(月) 01:22:43.43 ID:2DWW7PWDO<> 今日はここまでです。
時間帯がバラバラで申し訳ない <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 16:15:24.13 ID:2DWW7PWDO<> 改めて着ている水着に目を配る。
ビキニタイプの水着、胸はまだ無いに等しいけど、あかりを驚かして恥ずかしく目を逸らさせる事だけを目的に選び出したものだ。
なんだか背伸びしすぎた水着だって思う。
でもやはり恥ずかしくて、すぐにタオルを巻いた。
京子「あかりまだかな?」
あかり「京子ちゃーん」
と、そこで聞こえてくるあかりの声。
よしと顔を向ける。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 16:30:06.97 ID:2DWW7PWDO<> あかり「可愛いの選んでみたけど、どうかな?」
そう言ってあかりが私の前でくるりんって一回転する。
あかりの赤よりは薄いチェック柄のセパレートタイプの水着に、フリルが付いたそれが靡く。
あかりが私の前で、可愛い水着を着て一回転して笑ってる。
京子「あ、あのその、えっと」
あかり「似合わないかな?」
あかりが頬に手を当てながら聞いてくる。
もう可愛い、かわいいです。
抱きしめたいくらい。
あかり「えっ、き、京子ちゃん?」
気づけば抱き締めてました。はい、往来する方達からの視線が熱い。
京子「はうっ!ご、ごめん!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 16:53:13.06 ID:2DWW7PWDO<> 完全に私が返り討ちにあっている。
京子「えあ、とってもにあってるよ。うんうん!」
あかり「えへへ、京子ちゃんも水着、とってもきれいだよ」
京子「第二波来ましたー!」
思わず背を向ける。顔が火照って本当にやばい。
あかりの水着姿が見れたけど、これは予想以上の衝撃だ。
あかり「京子ちゃん?」
京子「な、なにかね!あ、あかりさん!」
思わずさん付けしてしまった私、それを見てあかりはまた笑う。
あかり「京子ちゃん、顔真っ赤ー、おかしいね」
京子「あ、あかりの所為だ!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 22:34:58.04 ID:2DWW7PWDO<> あかり「えー、あかりの所為なの!?」
京子「そ、そうだよ!あかりが予想以上に可愛すぎたとか、そういうんじゃないんだからな!」
あかり「えっと、京子ちゃん?」
しまった、まるでこれではツンデレみたいではないか!
私のキャラじゃないと頭を振ってから、よしと一息。
あかりの姿を見て、やっぱりかわいいという結論に至った。
京子「よし、それじゃプール見に行ってみようぜ」
あかり「うん、京子ちゃん」
と、そこで手になにやら感触。柔らかいそれは手だった。
どうやら、手をつないで行こうということらしい。
あかりは子供だなー、そんなことを思いながら握り返す私なのだった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 22:50:11.09 ID:2DWW7PWDO<> あかり「暖かいねー」
京子「だねー」
ぷかぷかと浮かびながら、流されているのはちょっとばかり疲れたからである。
今の間まで結構な数のプールを行き来した。泡プールとか、波のプールとか、普通の25mプールとか様々、やっぱり暖かいこともあってかきてる人の殆どがゆったりとしている感じだった。
京子「やっぱり流れるプールはゆったりと流されるもんだねー」
あかり「そうだね、まだのんびりー」
そんな風に流されながらあかりを見る。
プールに入る前と違って髪が濡れてる。お団子から伝わるように下顎に滴り落ちる水がなんだか、色っぽく見える。
水の中に見えるあかりの胸が静かに上下してて、うす白い肌も少しばかりの幻想的なものがある。
前に海に行ったときは見えなかったけど、少しばかり見えるおへそ、お腹周りのキュッとしてる部分がなんとも舐めまわして見たいくらい。
あかり「京子ちゃん、なんか目が怪しいよ?」
京子「そんなことないよー?」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 23:04:31.10 ID:2DWW7PWDO<> 静かにあかりに向かう。
あかりはなんだか距離を取るようにしてる。
そんなことをされると追いかけたくなるのが私の性分、つまり!
京子「あかりー!」
あかり「わわっ、京子ちゃん!」
京子のだいしゅきホールド!
あかりは寸でで潜って回避した!
京子「くっ、やるなーあかり」
あかり「き、京子ちゃん。落ち着いてー」
京子「私は落ち着いてるぞー、ふっはっはっは」
とは言っても私は落ち着けません。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 23:33:20.33 ID:2DWW7PWDO<> 京子「あかり、一回ぎゅーってするだけだから」
あかり「ここじゃ、恥ずかしいよ」
京子「恥ずかしいと思うから恥ずかしいんだよ。だからあかり、私の胸に収まるのさー!」
そういうわけで流れに任せて進撃!
あかりは逃げようとするけど、私の方が早い。流れも私の味方、勝利は確定的だ。
一気に勢いをつけてあかりに近づいていく。
もう届く距離になったので一気に床を蹴って飛び上がる。
京子「アッカリーン」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/12(月) 23:36:48.07 ID:2DWW7PWDO<> ちょっと休憩 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/12(月) 23:38:35.12 ID:d4P4lAbAo<> のんびりだな <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 00:03:12.78 ID:qs21/vMYo<> ふむ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 01:26:36.32 ID:vcKlny7DO<> なんか胸がすぅーってした。
はて、何故にこんなに胸がすぅーっとするのか、そんなことを考えながら下を見る。
なんだあるべきはずの物が見当たらない。
なにが起きたのか数秒考え―――
あかり「きょ、京子ちゃん!」
気づけばあかりに手を回されていた。
なんだか守ってもらってるみたいな、そんな感じで、なんであかりがいきなり積極的になったのかと考えようとした。
あかり「すいませーん、水着だれか取ってくれませんかー」
だけどあかりのその発言で私の置かれた状況がよくわかった。
京子「っ!!!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 01:36:16.33 ID:vcKlny7DO<> 自然とあかりに密着する。
顔の火照りと心臓の高鳴りが止まらない。
たしかにこんな事になってパニックになっているのだけど、何よりも上半身が裸の状態であかりに密着していることが大事件であった。
自然と顔も近くなるし、お互いに鼓動が早くなってるのもわかる。
周りをみるとなんだか野次馬がいっぱいいるけど、今はこのまま待つしかない。
あかり「きょ、京子ちゃん、胸が当たってる………」
何時もなら当ててるんだよ、って言えるんだけど、今は色々なことがごちゃ混ぜになって大変だった。
京子「あ、あかり、今はこのままでお願い」
あかり「う、うん……」
鼓動は早くなる一方で、胸が少しだけあかりの水着で擦れる。
擦れる度になんだかくすぐったいような、そんな感覚があって…… <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 01:43:11.05 ID:vcKlny7DO<> 京子「これはなかなか………」
あかり「は、恥ずかしいよぉ…………」
あかりの顔は真っ赤だった。
胸を隠すようにした手をあかりの胸に当てると、バックンバックンっていう鼓動が感じられた。
なんだか、私でそういう風になってるって感じがして、嬉しくなる。
それに今さっき、水着がとれてしまった瞬間、すぐさま私を庇ってくれたのも嬉しい。
京子「ありがとあかり」
ボソッとそういった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/13(火) 01:44:28.62 ID:vcKlny7DO<> 今日はここまでになります。短編なのにのんびり更新ですまないです。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 02:09:42.63 ID:CJiNgRnJo<> 乙
赤くさせようとして返り討ちにあっちゃうなんてかわいいな
そしてナイスハプニング! <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 02:13:15.91 ID:kWPMEENJ0<> 乙
ゆっくりでもいいから、俺に京あか成分を与えてくれww <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/13(火) 17:20:44.81 ID:wSVmLySx0<> 乙
のんびりで良いので更新待ってます! <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 02:08:22.42 ID:hMUUIXxDO<> しばらくして水着を係りの人が届けてくれた。
あかり「京子ちゃん、もう大丈夫?」
京子「う、うん。大丈夫……」
再び胸を隠す水着を着ける。これで周りからの視線はどうにか楽になった。
それと同時に、あかりが私から離れる。そんな大きな距離ではないけど、離れるあかりの感触に思わず声が漏れた。
あかり「京子ちゃん?」
京子「な、なんでもないよ」
まだ抱き締めていてほしいとか、そんなこといえない。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 02:12:24.93 ID:bjYptGVio<> きたか…
見てタイけど寝る <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 02:17:30.53 ID:hMUUIXxDO<> あかり「ちょっと上がろよ」
京子「うん」
弱々しく返事をして、私はプールから上がった。
プールサイドにあるイスに腰掛けながら、今はあかりがやってくるのを待っている。
今さっきのこともあって私の心は流れるプールより濁流だった。
抱き締められたこともそうだけど、いつもと違ってあかりがカッコ良く見えた。
これじゃ、ますます好きになる。あかりには変に魅力が詰まりすぎてる気がする。
京子「何で私があかりにベタ惚れしてんだよー」
あかりの水着姿見たさに来た。結果は予想以上に可愛くて、困ったときに助けてくれるあかりも見れた。
なんだか一年が終わる時期にしては、幸せなことが起きすぎじゃないだろうか。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 02:27:03.66 ID:hMUUIXxDO<> それに、なんだかまだ今さっきの恥ずかしさが抜けてないのか、頭がクラクラする。
あかり「京子ちゃーん、おまたせ」
京子「ああ、あかりー」
なんだか胸も熱いくて、あかりを見てると頭がぼーっとする。
あかり「京子ちゃん?どうしたの、顔真っ赤だよ!」
それはあかりが可愛すぎるからだよ、とか言いたいけど、頭がなんだか回らない。
椅子から無理矢理立ち上がって、ふらふらな足取りであかりに向かう。
すると自然にあかりが私に近づいてくる。
なんだか支えられてる気がするけど、あかりを近くに感じる。
やったね!
あかり「京子ちゃん、大丈夫?」
京子「わかんない、けど………」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 02:33:14.49 ID:hMUUIXxDO<> あかりがいるから大丈夫、そんな恥ずかしい台詞を言おうとして、なんだか体が重たいことに気づく。
あかりが心配そうにおでこに手をおいて、すぐに慌て始める。
あかり「きょ、京子ちゃん!熱あるよ」
京子「そんなことないよー。この胸の暑さとか、頭のクラクラとかはあかりの所為なんだから」
あかり「えー、あかり京子ちゃんに悪いことしちゃったのー」
本当、あかりは見ててかわいいな……… <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/14(水) 02:34:37.33 ID:hMUUIXxDO<> 今日の夜はここまでで、こんなに遅くてすまない <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/14(水) 07:55:31.83 ID:xDWnj+jz0<> 乙!
しかし、このあかりはイケメンだなww <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 00:45:27.43 ID:7T2ni6bDO<> こんなにいっぱいあかりを見れたのなら、来た甲斐があったなー。
そんなことを考えて、一度目を瞑った。
そして再び目を開くと、何故だか知らないが、白い天井が目の前に広がっていた。
なんでこんなとこにいるのかと思ってみたが、なんだか頭が動かない。
あかり「あ、京子ちゃん大丈夫?」
京子「あ、あかり?ここは……?」
意識で覚えていることは、あかりに抱きついたこととかであって、こうしてベッドの中に入った記憶はない。
あかり「救護室だよ。京子ちゃん苦しそうだったから、係員さんに頼んだの」
京子「そ、そう。デートの続きを……いてて」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 00:53:22.15 ID:7T2ni6bDO<> 少し体を動かすと、頭がジンジンと痛んだ。
なんでかと思ってると救護室の係員が入ってきて、熱があると言われた。
係員「悪いことはいいません、今日はお帰りになった方がよろしいかと」
私としては全くと言っていいくらいに面白くない事だった。
こんな熱、あかりとのデートを続けるためになら耐えられる!
頭の痛みとかと格闘しながらベッドから出ようとしたところで、あかりに声をかけられた。
あかり「京子ちゃん、今日はもう帰ろうよ」
京子「で、でも。まだ遊び足りないじゃん」
あかり「そんなことないよ。あかりもう十分遊べたよ」
京子「だって、私の所為で帰ることになるなんてさ」
格好が付かないじゃないか。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 00:59:34.10 ID:7T2ni6bDO<> 今日はもっと長い時間あかりとデートできると思ったのに、悲しいじゃないか。
あかり「京子ちゃんは病人なんだよ?これ以上悪くなったら、あかり悲しいよ」
心配を含んだ表情で、あかりが見てくる。
本当に純粋に心配してくれている、それだけで私の心はあかりの判断に傾いてしまう。
本当はまだ楽しみたいけど、仕方がない。
京子「ううっ、わかったよあかり」
こうして、私たちは温泉ランドを後にした。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 01:08:45.95 ID:7T2ni6bDO<> 帰りのバスの中、私は少しばかり不機嫌なままだった。
あかり「京子ちゃん?」
京子「ふーんだ」
変にいじけている私を、あかりは見ながら少しだけ笑った。
なんだ、あかりのくせに生意気だ。
あまり人の乗っていないバス。しずかな時間の中、あかりの肩が私に触れる。
京子「あかり?」
目を向けると、そこには疲れて眠りこけているあかりがいた。
やっぱり私のこともあるけど、疲れていたんだなって思う。
京子「やっぱり今日は疲れたよなー」
あかり「んんー、ムニャムニャ、えへへ、京子ちゃん………」
あかりの夢の中に、どうやら私が出ているらしく。それはそれでなんだかくすぐったい気分になった。
京子「今日は楽しかったよ、ありがとうあかり」
だから現実の私も、あかりの近くにいるってわかってほしくて、その無防備な唇を奪ってやった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 01:13:00.50 ID:7T2ni6bDO<> あかりの唇は柔らかくて、もう一度触れたかったけど、それはなんだか女々しく感じたからやめた。
京子「なんだか、私も眠くなってきたよ」
私もあかりに体を預けるようにして目を閉じる。
心地よく揺れるバスの中、ちょっとばかりの休憩。
大丈夫、今度はあかりにお見舞いにきてもらうつもりだから、今はのんびりとしよう。
私の夢の中にも、あかりが出てきますように………
おわり <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/15(木) 01:14:43.77 ID:7T2ni6bDO<> これで終わりになります。このスレの短編2つに付き合ってくれたお方にお礼を。
ありがとうございました! <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 01:35:44.80 ID:csl2rO7Wo<> 乙!
すごくよかったよ。二人ともかわいかった
ガチで終わり?このまま短編短編続いたりはしない? <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 11:10:37.62 ID:T4QFcSCQ0<> 乙
京あかは供給が少ないので
とても助かりましたww <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 15:45:35.10 ID:7T2ni6bDO<> 1です。また性懲りもなく話を書きます。
よろしければお読みください。
空を見上げる。
何もない空、まだ昼間。
空を駆ける星があったなら、今までのこと、全部忘れさせてくださいって願うのかな。
知らなかった。漫画なんかでドキドキする出来事が、これほどに辛いことだなんて知らなかったから。
忘れさせて………
願っても、私の元に星は流れないから、なんだか一人取り残されたみたいに、心が寒くなる。
星よ、私のこの気持ち、どこかに連れて行ってよ。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 15:58:25.00 ID:7T2ni6bDO<> その変化に、いち早く気づいたのはあかりだった。
こういうときに気づくのは意外な人物だっていうのは間違ってなくて、あかりは本当になんともいつも通りに話しかけてきた。
あかり「京子ちゃん、悩み事?あかりなら力になるよ」
その時の私は悩んでいないと強がっていたし、何より自分が悩んでいるという実感がなかった。
京子「いや、別に悩み事なんてしてないぞ」
あかり「そう、あかり勘違いしちゃった」
頭のお団子を触りながら謝ってくるあかりを、私はなんとなしに扱っていた。
それ自体が、すでに悩み事で頭がいっぱいだったっていう現れだったのかもしれない。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/15(木) 17:03:27.82 ID:bNpZQ+M2o<> いいぞいいぞ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/16(金) 00:41:59.12 ID:9hGqc/rDO<> 私は3年生になって、まだそれとでもないが受験のこともいろいろと考え始めていた。
あかりとちなつちゃんが入って賑わったこの娯楽部も、今はなんだか様変わりしている。
去年は良く遊ぶことに抵抗なかった結衣も、今は机の上に参考書やらを広げて勉強している。
私も結衣と同じ学校を受ける予定なのだが、この学校はやたらと勉強が難しい。
私も人知れず勉強はしているが、結衣は念には念を入れて勉強に励んでいる。
ちなつ「結衣先輩、お茶どうぞです」
結衣「ありがとうちなつちゃん」
ちなつ「えへへ、京子先輩もお茶いります?」
私は少しだけ考えてから、愛のこもったお茶を頼む、と言い。とても濃いめのお茶が置かれた。
京子「ちなつちゃんの愛は重いなー」
そんなことを呟きながら、私の目は誰かを追いかけていた。
ちなつちゃん、結衣、あかり。
この三人とのんびり過ごしてきた時間も、今となっては過ぎ去った時間。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 00:25:57.37 ID:sSIY+Z8DO<> 気づけば、もう11月を終えるかもしれない時期になっていた。
ごらく部としての活動をしようにも、受験が終わる2月位までは静かにしているのが一番だった。
あかり「気づけばあかりも二年生かー」
ちなつ「私も二年生だよ。なんだか月日が経つのは早いですねー」
結衣「そうだね」
京子「はあー、まったくだよー」
目の前に広げたけど、まだなにも書いてないノートに、ヘロヘロした線を書きながら私の頭はなんだか右往左往していた。
それがなにに対しての右往左往なのか、私自身よくわかってなかったから、あまり気にしていなかった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 00:32:51.64 ID:sSIY+Z8DO<> こうして、みんなと一緒にごらく部で集まれなくなることへの寂しさなのかなと、考えたりもした。
けれど、別に会おうと思えば何時だって会えるわけで、それ以上のことを私は考えなかった。
結衣「おい、京子」
京子「んー、なに?」
結衣「勉強、しないのか?」
京子「ちょっと休憩だよー。ってまだなにも書いてないけどさ」
握ったシャーペンを少しだけ弄りながら、私はなんとなしにあかりを見る。
二年生になって、あかりは何だか雰囲気が変わった。髪も少し延びて、なんだか落ち着きのある感じにもなったし、なにより存在感が増した。
と、見ていることに気づいたみたいでこちらに目が向く。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 00:38:32.53 ID:sSIY+Z8DO<> 丸いかわいらしい目が私を見つめていた。
あかり「京子ちゃん、どうかしたの?」
京子「んー、なんかあかりも変わったなーって思ってさー。去年まではアッカリーンって感じだったのに、今はあかりって感じでさ」
あかり「それってどういう感じなのかな……」
つまりはなんだか存在感が強くなったねって事なんだけど、言ったら普通にいじけてしまうんだろうなと、私は口を閉ざす。
でも、あかりは何だか女の子っぽくなった。
それがなんでかは、やっぱりわからなかった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/20(火) 13:28:40.94 ID:9+ocRRVm0<> 結衣「そういえば、ちなつちゃんとあかりはどこか行きたい高校とかあるの?」
その結衣の言葉を聞いてなんとも聞かなくてもいいことを聞いてるな〜、なんて思った。
ちなつちゃんは私……、いや結衣を追いかけて私たちと同じ高校に入ろうと考えるだろうし、あかりだって同じだろう。
こんなことを言うのはなんだけど、いらぬ心配である。
そうしてお茶を口に含んだあたりで、ちなつちゃんが結衣の顔を見ながら。
ちなつ「もちろん、結衣先輩の後を追いかけますよ!」
結衣「あ、ありがと」
予想通りだと思いながら、あかりのほうに目を向ける。
あかりは何も言わないで、でも高校っていう言葉になんだか神妙な顔をしている。珍しいこともあるんだなーって思いながら、あと数カ月でこの楽しい放課後もなくなってしまうのだと、少しだけさびしい気分になった。
私の抱えている悩みは、多分そのことなのだろうと気付いたのは、それから少し後になってからだ。
あかり「それじゃ、あかりは生徒会に行ってくるね」
京子「あ〜、もうそんな時間か〜。あかり、綾乃からまたラムレーズン貰いに行くからって言っといて〜」
あかり「京子ちゃん、杉浦先輩からなんだけど『今度ラムレーズンとプリン勝手に食べたら罰金バッキンガムよ』だって」
結衣「ぶふっ」
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/20(火) 15:05:21.38 ID:9+ocRRVm0<> あかりはそれだけ言って部室を出ていく。
時間は4時頃、授業と掃除が終わってこの部室にあかりがいられるのは30分くらいで、今は綾乃と千歳を補佐するくらいに生徒会の役に立っているって聞いている。
ちなつ「あかりちゃん、人数が足りないからそれをどうにかするために生徒会に入ったんだよね」
ちなつちゃんの言葉に、少しだけ変な気分になった。それを紛らわすようにお茶を一気に飲み干して、あかりが生徒会に入った理由を思い出す。
会長が卒業して、綾乃が生徒会長、千歳が副会長、櫻子に向日葵でやりくりしていたのだが、今年に入っていろいろと多くの作業が生徒会にも回るようになってきたのだ。
最初はどうにかなると思っていた綾乃たちも、処理能力の限界に気づいたらしく、新しく生徒会役員を増やすことになったわけであるけど。
今思えば、あんな激務な生徒会に入ろうとするモノ好きは中々いないし、できれば後任になることのできる後輩、1、2年生を生徒会は欲していた。
だけど、1,2年生はほとんどが部活に入り。委員会の中でもやることの多さや各行事の準備などに携わる生徒会に進んで入ろうというものはまずいなかった。
ある日、部室に綾乃と千歳がやってきて、ちなつちゃんとあかりに生徒会に入ってもらえないかを聞いてきたんだ。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/20(火) 15:20:29.21 ID:9+ocRRVm0<> ちなつちゃんは私、いや結衣といられる時間のほうが大切だったし、あかりもそうだと思ってた。
けど、あかりは『困っている人はほっとけないよ』って言ってすぐに生徒会に入ることを決めたんだ。本当にあかりはいろいろと優しいんだなって思ったし、同時に面白そうだな〜って思った。
そして気付けば、あかりは学校でもそれなりに有名な人になっていた。
生徒会での活動もそうだけど、今まであかりが何をしていたのかっていうことがいろいろと話されるようになってきて、三年生である私たちのクラスでも時折あかりの名前を耳にする。
その分、私と結衣は学校であまりあかりと会えなくなってた。
京子「結衣〜」
結衣「どうかした?」
京子「この頃、あかりがここにいる時間が少ないのがいつも通りになってきたな」
その言葉に結衣は少しだけ黙っていて、そうだなって言葉を漏らした。
ちなつちゃんも確かにそうだなっていう顔をしていた。それもそのはずで、二人は同じクラスではないのだ。
ある意味、三年生になって6月を越える前までが、去年みたいなごらく部だったと思う。
京子「ちょっと、生徒会室行ってくるわ」
結衣「またラムレーズン取りに行くのか?」
ちなつ「食欲旺盛ですね」
京子「ふふふ、ラムレーズンがなんだか読んでる気がしてなー。ってわけでちょっくらいってくる〜」
私はのんびりとした足取りで部室を出た。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/20(火) 15:33:25.18 ID:9+ocRRVm0<> 冷え込んだ外気に、吐息が白くなるのを見ると、12月が近くなってることを改めて実感する。
今年の冬コミはそれほど手に入れたいものもないし、さすがに高校が掛っていることもあって新刊とかを出す気力もないく、ただ静かに勉強しているだけの日々だった。
京子「そういえば綾乃と千歳とかはどこの高校行くんだろう?」
二人の行きたいであろう高校、よくよく考えればまだその話を聞いていなかったと思う。
やはり進学校を選ぶのだろうか、綾乃はわからないけど千歳と千鶴はそんな感じがする。
そんなに考えるべきことでもない気がしたけど、どこを行くか聞いておけば後々色々と役立つだろうと思った。
気付けば生徒会室前に来ていた。少しばかりドアが開いていて、こんな寒い日によく開けてられるよな、なんて思いながら手を掛ける。
さて、入る時はなんて言おうか、ラムレーズン貰いに来たぜ綾乃〜とか、そんな感じでいいのかなって思う。
綾乃はいつも通り怒りながらも私にラムレーズンをくれるだろうとか、そんなことを思いながら手に力を入れて……
綾乃「あかりさん、進学校に行こうって思ってるんだ〜。何とも意外だわ」
聞こえてきたその声に、体が一瞬強張った。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/20(火) 15:42:36.31 ID:9+ocRRVm0<> あかり「うん、お姉ちゃんの行ってた学校なんだけどね」
千歳「ほんまか〜、あかりさん成績も十分やから前期募集でも受かる確率高いと思うでぇ〜」
櫻子「あかりちゃんが進学校ねぇ〜。向日葵もおっぱいばっかりに栄養使ってないで頭にも使えよ〜」
向日葵「胸は関係ないでしょう!」
そんな楽しい声が聞こえてくるその空間に、私は入るべきか躊躇した。
無駄に、無駄に何かが重くのしかかってくる感じがして、ドアに掛けた手を外すこともできないでただ立ち尽くしていることしかできなかった。
なぜ動けないのか、それもわからないままに、ただ私は立ち尽くす。
綾乃「でも歳納京子は進学校を受けないのよね」
千歳「京子さんの行く学校受けることに決めてるんやろ?」
綾乃「ちょ、ちょちょ、か、関係ないでしょーが!」
千歳「あはは、綾乃ちゃん顔真っ赤や〜」
あかり「先輩落ち着いてください〜」
ドア一枚隔てた先には、楽しそうな世界がある。
軽い気持ちで入っていけるはずなのに、今はその中に入ることも、そこから離れることもできそうになかった。
足の裏に血が回ってないみたい、足はとても重くて動かない。頭の中は無駄にすっきりしていて、今さっき聞いた話を整理していた。
でも、それはとても短い整理だ。
『あかりは私たちが行く高校とはちがう高校に行こうと考えている』 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/20(火) 15:43:35.19 ID:9+ocRRVm0<> 鈍足更新でもうしわけない <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/21(水) 14:46:14.59 ID:gJette2DO<> まだ二年生なのに、あかりは私達とは違う道に行こうって考えてる。
それが思った以上に、ショックだったのかもしれない。
何でショックを受けているのか、それはよくわからなかったけど。
体が動くようになってから、私は部室へと戻る。
戻ってからなにをすべきなのか分からないままに、私は部室に入ってすぐさま結衣に何かあったのかと聞かれた。
京子「なんでもない」
結衣「わけないだろ。それになにもなかったら、ラムレーズン食べて満足そうに帰ってくるだろ?」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 12:17:28.24 ID:hLj0OaUF0<> 結衣の指摘は間違っていない、いつも生徒会に行ってはアイスとかを食べて帰ってくるし、なかったらなかったで笑いながら帰ってくるのが私なのだ。
だから今回のように見るからに何かがあったみたいなことになってる私を見て、結衣が異変に気づくのは当然のことであった。
ちなつちゃんもやっぱり私が変であることは理解しているようであって、その視線を受けながら座る。
座って少しばかり手を動かしたり、下を向いては首を振ったりなど、結構挙動不審なことをしているななんて、思いながら今さっきの生徒会室から聞こえてきた会話を思い出す。
進学校に行く……
あかりはまだ二年生だ。後々考えだって変わるかもしれないし、どこの高校に行くのかを決めるのは本人であって私じゃない。
わかっていても、なんだかすっきりしない。それがなんであるかはわからなかったけど、二人が向けてくる目に若干待機れなくなってきた。
京子「み、見るなよう」
結衣「照れたフリしない、何かあったんだろ?」
ちなつ「京子先輩ってあまりショックとかとは無縁の人と思ってたんだけどな〜」
結衣「いや、こいつは何気にショックを受けると、こうなる性質なんだぞ」
意外ですね〜、そんなちなつちゃんの言葉を聞きながら私はやっぱりショックを受けていることを隠し通すことができないんだな〜と、心の中で大きな溜息を吐いた。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 12:36:30.98 ID:hLj0OaUF0<> 結衣「へぇ〜、あかりが進学校ね〜」
ちなつ「あかりちゃん、確かに勉強できるからね〜」
結衣は何とも意外そうに、ちなつちゃんは淡白に感想を述べた。
どちらもそれほどこの出来事にショックを受けているわけではなくて、それがなんだか気に障った。
京子「なんで二人ともそんな冷静なんだよー」
結衣「まて、落ち着け」
ちなつ「そうですよ、少し落ち着いてください京子先輩」
二人になだめられて腰を下ろすと、いつの間にか淹れられたお茶を一気に飲み干す。
めちゃくちゃ熱かったけど、そんなことを気にするような感じにはなれなかった。
なんで二人はそれほど冷静にことを分析しているのかと、私はこれほどまでにショックを受けているというのに。
私の憤慨をわかっているはずなのに、結衣は何も言わないで少しばかり何か考えているし、ちなつちゃんは私を見てはなんだか首を横に振ってた。
ちなつちゃん、その若干のあきれ顔はなんなんだ?
京子「ちなつちゃん、なんで今首横に振ったの?」
ちなつ「そうですね。なんか、京子先輩ってちょっと鈍いのかなって思って」
京子「何がだよ!」
思わず上がった声にちなつちゃんがびくりってなって、少ししてからごめんとと私は言葉を漏らした。
こっちも言い過ぎました、ごめんなさい。ちなつちゃんの言葉に小さく頷いてから、結衣に目を向けるともう勉強を再開している頃だった。
そこまで勉強が大事なのかと思った。若干呆れてしまって、どうでもいいと倒れこむ。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 12:48:55.26 ID:hLj0OaUF0<> 結衣「まったく、まるで中学生になったときみたいだな」
ちなつ「京子先輩って、こういう風になったことあるんですか?」
二人の言葉に耳を傾けながら、ふて寝を決め込むことにした。もう、なんだか疲れた。
結衣「ほら、あかりは年下だろ?」
ちなつ「そうですね、一年間は中学生と小学生で別れた時間がありますね」
結衣「その時もこいつ、こんな感じになったんだよ。なんていうか、遊ぶ時間がなくなっちゃうとか言って騒いでた」
聞こえる声に、確かにそんなこともあったななんて思った。
あかりは小学五年生で、私と結衣が小学六年生で卒業式が近付いてた頃に、いつもの公園で私が帰りのチャイムが鳴ってるのに遊ぼうって駄々こねたことがあった。
結衣も困ってたし、あかりは一番困ってた。
あかりが小学校に残っちゃうと3人で遊ぶ時間が少なくなっちゃうとか、そんな理由だった気がする。
結衣「まあ、あの時のことを京子はあまり覚えてないと思うけどね」
そういう結衣は、なんだか一瞬だけこちらを見た気がして、振り返ったけど黙々と勉強をしていた。
ちなつちゃんはその言葉の意味になんか含むことがあったのか、私を見てから溜息を吐いた。
なんだか馬鹿にされた気がしたけど、もういいやとふて寝をやめて、いっぱい寝ることにした。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 13:14:02.61 ID:hLj0OaUF0<> 体を揺すられている気がして、靄がかかった意識が徐々にだけど覚醒していく。
綾乃「歳納京子、こんなところで寝ていると風邪引くわよ」
京子「あれ、なんで綾乃が………」
寝惚け眼を擦りながら周りを見ると、綾乃以外に誰もいなかった。
結衣が勉強していたはずの机の上には紙があって『起きそうにないから私たちは先に帰るね』と書いてあった。文字の形から結衣のだってわかったし、今は一人にしたほうがいいなっていう気遣いも感じられた。
少し寝て色々なもやもやは解消されたから、少しは動きやすくなってた。
綾乃「べ、べ別にあんたが寝てるって聞いて、風邪ひいたら大変だなってーって思ってきたわけじゃないんだからね!」
京子「なんだそれ、おもしろい言い方だな〜」
からかわれたって思ったのか、顔を真っ赤にしながら怒る綾乃に、少しばかり救われたなと体を起こす。
もう夕日が入り込んだ部室の中、やっぱり冷え込んでいてちょっと体が震える。
寒いからと上着を羽織って、時計を見ればそろそろ五時半になる。
京子「生徒会はもう終わったのか?」
綾乃「今日は終わったわよ。それにこの部室の許可を出してるのは私なんだから、誰か残ってないかくらい確認して帰るわよ」
そう言って綾乃は先に出口に向かい、私は少しばかりまだ回転してない頭を使って鞄に物を入れてから部室を出た。
京子「うう、外は寒いな」
外に出ると頬に痛い風が当たる。体中が少しばかり冷えてたこともあって、外を歩くにはなんだか辛い。
後ろで鍵の閉まる音がして、綾乃が隣に立つ。
綾乃「さ、ささ、か、帰るわよ」
京子「顔赤いな」
綾乃「う、うるさい!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 13:33:01.65 ID:hLj0OaUF0<> 部室から校門までの道は思った以上に静かだった。風で木々がざわめく音もなくて、他に歩いている生徒もあまりいない。
歩きながらあかりのことを聞いてみようか考えてみたが、隣の綾乃はなんだか緊張しているみたいにときどきこっちを見ては目を逸らすなんてことを繰り返してる。
なんでそんなことになってるのかなんて知らないけれど、なんだかそれは可愛く見えた。
空もだんだんと暗みを帯び始める頃に、私と綾乃は校門についてそこで待っているメンバーを見つける。
千歳「あ〜、綾乃ちゃ〜ん」
あかり「あ、京子ちゃんも一緒だ〜」
千歳「………ええもんや」
その中の一つの声に体が強張ったのは、多分気のせいじゃない。
二人の待ち人の一人、あかりの姿に私の体は強張った。
京子「あ、あかり……」
あかり「ん、どうしたの京子ちゃん? 寒いのかな?」
そう言ってあかりは近づいてきて私の手をギュって握る。握ってから、京子ちゃんの手冷たいね〜と笑顔で言った。
なんだか、それが無性に私の心でチクリって痛みになった。
京子「大丈夫だから」
あかり「だってこんなに冷たいよ?」
綾乃「……」
千歳「混ざってくればええやん」
綾乃「ちょ、千歳!」
そんな風に二人が話をしてるから、私は残ってる冷たい手で綾乃の手を握る。なんだか、それだけでチクリとした痛みはなくなった。
代わりに茹でダコみたいな綾乃と、眼鏡外した千歳が出現した。
綾乃「ちょ、歳納京子、い、いったいなにを!」
千歳「ええわ〜、とってもええわ〜」
あかり「京子ちゃんの手、早くあったまるといいな〜」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 14:00:29.04 ID:hLj0OaUF0<> なんだか不思議な格好で下校をしている。
左手を綾乃、右手をあかり、それを見ながら鼻血を流してる千歳っていう感じ。
今ここにいる4人の内、3人が生徒会役員であるのだから少しばかり見る人から見ると複雑なものなのかもしれない。
あかり「京子ちゃんの手、温まってきたね」
綾乃「うー、まだ温まってない」
綾乃の手はあかりに比べると発熱してるんじゃないかってくらいに熱いんだけどと零そうとしたが、そうなるとあかりの手だけが残る気がして、言う気になれなかった。
あかり「京子ちゃん、私が行った後何かあったかな?」
京子「特に何もないよ〜、いつも通りのごらく部ですから」
嘘であるが、今はそれくらいしか言うことがなかった。まさか、あかりのことでみんなと少し口論になったなんて言えるわけがない。
言ったらあかりが心配するに決まっているし、そうなるとあかりが進学校に行きたいって話をもう一回聞かなくてはいけなくなるから。
今日はできればその会話を思い出すことはあっても、聞きたくはないのだ。
あかり「そっか、えへへ。あかりも生徒会が落ち着いたらみんなと一緒にのんびりしたいな〜」
綾乃「少しは休んでいいって言ってるんだから、少し休んだらどうかしら?」
あかり「もう少しで生徒会がやることも終わるから大丈夫だよ〜」
そんな会話が左右でされていることに、内心安堵しながらそろそろ綾乃たちと別れなくちゃならない交差点が近付いている。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/22(木) 14:01:21.64 ID:hLj0OaUF0<> 今日はここまでで <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/22(木) 14:07:43.37 ID:Xx1rDO89o<> 続き楽しみにしてる <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/22(木) 15:17:16.00 ID:fWw200dG0<> 乙です
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/23(金) 12:36:44.87 ID:AwPsdz+c0<> 千歳「綾乃ちゃん、うちらはこっちの道やで〜」
綾乃「そ、そそそ、そうね!」
二人の言葉と共に綾乃の手が私の手から離れていく。
あ…、思わずこぼれた言葉は誰にも聞こえてないみたいだったけど、それが何を求めて口からこぼれた言葉なのか。
離れた手はとても暖かくなっていた。今さっきまでずっと握ってもらっていたからだけど、なんだか少しばかり安心したのは間違いなかった。
あかり「それじゃ、私たちはこっちなので」
千歳「うん、ほな、明日な〜」
綾乃「ま、ままた、あ、あしたね!」
京子「……うん」
細々と言葉を返し、二人と別れて帰り道を歩く。
街灯が照らす帰り道、まだ握られている手はもう温まっていた。
温まっているけど何も言わなかった。なんだか、今言葉を発してしまうといけいない気がしたから。
コツコツ、二人分の足音が響いては消えていく度にいつも通りになろうと思ったけど、やっぱりなれなかった。
あかり「京子ちゃん?」
不安を帯びた声が耳に入った。見ればあかりはなんだか怖がっているように縮こまりながら、まだ私の手を握っていた。
どうかしたんだよ〜、寒いのか〜、なら温めてやるぜぇ〜、そんな言葉を出せばいいのに。
京子「……なに?」
どこか冷たい、そんな言葉が漏れてきた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/23(金) 12:47:13.41 ID:AwPsdz+c0<> こんな冷たい声、私の口から出てるのかって思った時に、あかりの足が止まってた。
でもまだ手は握られたままで、何も言わずにただ立ち止っていた。
あかり「あかり、京子ちゃんに何かしちゃった……のかな?」
迷ってるみたいにそう言葉を漏らしていた。
そう思うってことは、あかりは私に何かしてしまったっていう自覚があるってことなのか?
そう聞くのもありだと思う。そう聞けばあかりは謝ってくると思うし、それで私もよくわからないけどその謝罪を受け取ればいい。
だから。
「いや、ちょっと、今日は体調がね……。ほら、部室で寝てたから風邪ひいたかもしれないからさ」
そんな言葉であかりへの質問を濁して、もう一回歩き始める。
繋がれていた手が離れそうになったけど、私は手に力を入れないで、あかりは手に力を入れてそれを維持した。
少しだけ、作るような笑顔を見せながら後を追いかけてくる。
あかりの家に着いて、やっと離れた手。
あかり「それじゃ、また明日学校でね」
京子「うん、また明日」
あかり「うん、風邪引かないように気をつけてね」
そうして扉が閉まって、一人残された。別に気にすることでもなんでもない、ここからは結衣がいなければいつも一人で帰っていたのだから。
思いのほか、一人になったときのほうが気が楽だった。
二人から握られた手はとても暖かくなっていたけど、すぐに外の寒さに冷たくなり始めたからポケットに突っ込んだ。
突っ込んでも、なんだか暖かさは無くなって行くのを感じながら、家に着いた頃には体中が暖房を求めていた。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/23(金) 13:02:38.90 ID:AwPsdz+c0<> 鞄を床に、制服を適当に脱いでショーツだけでベッドに横たわる。
部屋の中はすでに暖房が掛っていて、その点を母親に感謝しながら体中に感じた疲労を全部溶かす。
染み込んでいくように、ベッドに疲れが落ちていく。
京子「……なんで、なんでだよ」
だから疲れで紛らわしていた感情が静かに顔を出す。
あかりが来年の受験で進学校を受ける。
また高校でも三人、ちなつちゃんも入れれば四人で遊べるかと思ったのに、なんでこんなことになるのだろうか。
理不尽なことだと枕をおもいっきり叩いたところで、少しだけストレスが抜けた気がした。
なんでストレスを感じているんだろうと考えても、四人で遊べなくなることに対してのものだろうって思った。
そこでこの頃の悩みというのが、卒業式を迎えると四人で遊べなくなるからなんだと思った。
仕方ないじゃないか、私はまだまだ遊びたいのだ。昔みたいに、ちなつちゃんも入れて四人で遊び楽しみたい。
とそこで、一度くしゃみをしてこのままじゃ風邪を引いてしまうと服を適当に着込んで、あかりに風邪を引かないように心配されたことを思い出して、少しばかり不機嫌になった。
なんでこんなに不機嫌になる必要があるのかと、再びベッドに倒れこんで天井をぼんやりと見上げる。
そして何分経ったころだろうか、携帯が鳴った。
それはすぐに止まってメールの受信だってことはわかって、のろのろとした動きで携帯を取って開くとあかりからだった。
『今日は寒くなるらしいから暖かくして寝るといいと思うよ。それに今日の京子ちゃんなんか変だったから、おせっかいでごめんね』
京子「あかりは、私たちと離れることに何も思ってないのかな……」
そんなことを思っていると、電話帳を開いて電話をしていた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/23(金) 13:24:14.10 ID:AwPsdz+c0<> 数回の呼び出しコール、のんびりと待つ間はなんとも退屈な時間ではある。
綾乃『も、もも、もしもし』
掛けた相手は綾乃にだ。特に理由は……ない。
京子「おー、綾乃〜」
綾乃『と、歳納京子、い、いいったい、なんのようよ!』
何をそんなに挙動不審になる理由があるのかわからないが、少しばかり今さっきの不安から解放されてる私がいた。
京子「いや〜、特に理由は無いんだけどさ。ちょっと電話したくなった」
綾乃『べ、べつに、いきなり電話が来たから、びっくりしてコップ落としたりしてないから』
声に混じってカチャカチャっていう音が聞こえてくるのに、思わず笑ってしまいながら色々と話をすることにした。
なんていうか、今は心に余裕が欲しかったのだ。
もしかしたら綾乃があかりの進学校の件を話してくるかもしれないけど、今はできる限り誰かと話がしたかった。できれば昔からのあかりを知らない誰かと。
京子「へぇ〜、千歳がそんなミスをね〜」
綾乃『あの時は驚いたわよ〜。千歳にしては珍しいミスだったから』
京子「でも、結衣も結構もときどきミスする時があるんだぜ。その時の狼狽の仕方はほんと見てて面白いよ」
綾乃『でも、なんだかさ。いてくれると安心できるのよね〜』
京子「わかるわかる、去年のクリスマスでありがととか言われた時、思わず熱測っちゃったけど、今思うとそう意味だったんだなって思うわ」
綾乃『そういう話してたからね。ふふっ』
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/25(日) 16:36:54.84 ID:maEkWpqp0<> 楽しみにしてるんだけどなぁ… <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/26(月) 14:08:44.80 ID:P1CQC2iW0<> 楽しい会話、楽しい時間、途中からは趣味の話とかになって、一息入れるために紅茶を入れたりするくらいに長く話した。
思った以上に綾乃はおしゃべりで、途中今日の手を繋いだことについて聞いたときは、おもしろいくらいに狼狽していたけど。
綾乃『でも、先に手を握ってきたのは歳納京子のほうじゃないの!』
そう言われて、私はなんで綾乃の手を即座に握ってしまったのか考えた。
二人の会話が聞こえたからだって言うのが一番簡単な理由だったけど、私にとって本当の理由はそういうものじゃない気がした。
わからないけど、私は綾乃と手を繋ぎたいという思いで繋いだんじゃないって言うことだけは、なぜか理解していたから。
京子「驚かそうと思ってさ〜」
綾乃『こ、今度はちゃんと事前に言ってくれないと罰金バッキンガムなんだからね』
京子「あははは、ごめんごめん」
部屋の中、紅茶を啜りながらふと時計を見上げると結構電話をしていることに気がついた。
携帯の電話代はなんとも金額の掛るものだから、これ以上の長電話は叱られて没収されてしまう危険性さえあるくらいだ。
ニ、三回ほどの終わりのあいさつをして、互いにまた明日と言って電話を切った。
幾分か気分も良くなった。
あかりにはメールを返さなかった。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/26(月) 14:17:37.09 ID:P1CQC2iW0<> 京子「おはよー」
結衣「おいおい、どうしたんだよ?」
玄関を開けての開口の挨拶に対しての返答はそれであった。
少しばかりの喉の痛みを感じながら、私は通学路に足を踏み入れる。体自体がだるいわけではないし、熱があるわけではないが、風邪を引いたようである。
そして、この二人だけの通学はもう慣れたものだった。
京子「あかりは、また生徒会?」
結衣「まぁな、綾乃と千歳が本格的に生徒会から抜けることになるからさ、色々と覚えることもあるんだってさ」
京子「ふ〜ん、向日葵と櫻子が会長と副会長になるんだから、それほど気にする必要もないと思うんだけどね」
そっけなく言葉を漏らして通学路を進む。周りには私たちと同じように受験を迎えようとしてる同級生が多いけど、その中でも進学校を目指す子たちは歩いていない。
なんでも、進学校を目指す子たちのために学校が早くに学習室を提供しているという話で、暖房完備のとても良い空間らしい。
これを推進したのがあかりなのだから、それが一番驚くべきことだと思う。
結衣「あかりは色々と生徒会で生徒のためにできることをやってるね」
京子「そうだね」
心なしか、言葉が冷たくなった気がした。
気にしないように努めているものの、やはり結衣の態度には少し納得がいかないのだ。
あかりは友達だ。昔馴染みの友達なんだ。
その友達が違う高校を来年受験しようとしていることに、何か思うことは無いのだろうか?
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/26(月) 14:28:14.18 ID:P1CQC2iW0<> 結衣「京子、あかりの忠告を無視したんじゃないだろうな?」
京子「なんの話だよ?」
突拍子もなくなんの話だと思うと、結衣が昨日送られてきたメールの話をしてきた。
それは私に送られてきたメールと同じで、あかりはみんなにそんなメールを送ってたのかとなんだかあほらしく思えた。
結衣「まったく、あかりが心配してくれたんだからさ」
京子「………」
なんだかわからないけど、少し腹が立った。
どうして腹が立ったのか、それはわからないけどそこから学校に着くまでの間に私と結衣は話すことは無かった。
気づけば別々のクラスになったこともあって、もう少しで朝の会が始まる頃になっていた。
千歳「歳納さん、おはよう〜」
綾乃「歳納京子、お、おはよう」
京子「お〜、綾乃〜」
綾乃「って、なんでマスクしてるのよ」
京子「ちょっと風邪引いただけだよ」
生徒会の集まりが終わったように二人が入ってきて、なんだか心が落ち着いた。
綾乃と千歳はなんだか見ていて落ち着くのだから、これは私の心にとっての栄養剤か何かなのかななんて思った。
千歳「この時期の風邪はつらいから、早く治さんと〜」
京子「そうだな〜、受験までには何とか治したいし」
綾乃「ふふふ、毎日の健康に気を配ってる私は安心アンコールワットね!」
京子「綾乃、その言い回し恥ずかしくないのか?」
綾乃「ん? 何が?」
どうやら無意識な発言らしい。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/26(月) 14:43:54.03 ID:P1CQC2iW0<> 放課後、気付いたら私は部室に行ってなかった。
携帯にはメールが二つ、ちなつちゃんと結衣からあって、少し用事があるから遅れていくなんて繕った。
結衣にはそんなメールを送っても見透かされてる気がしたけど、別に気にする必要もなかった。
やることがないからって、図書室に行ってみると思った以上に人がいなかった。
なんでかと思ったけど、あかりが使えるようにしてくれた学習室に、今まで勉強してた人が移ったんだろう。
確かに受験の始まり頃の図書室は、どこか重い空気が漂ってた。
新入生とかが本を借りに来るのは、なんだか空気を読んでいないみたいな感覚もあったくらいだ。
そう思うと今の図書室は静かで過ごしやすい場所だ。確かに勉強をしている人はいるけど、ギスギスしているような感じは無い。
本を借りる人ものんびりと探している気もする。
運良く開いている窓際の一人用の机を取ると、そのまま倒れる。
部室にはストーブがあるけど、今は結衣と顔を合わせる気がしなかったから、こうしてここにいる。
暖房も効いてるし、静かで眠るにはちょうどいいかなって思った。
図書室で寝るなんていう行為に励むのも、なんだか滑稽で迷惑な気もしたけど、今はここで眠っていたい。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/26(月) 14:53:33.39 ID:P1CQC2iW0<> ちなつ「結衣先輩、今日何かあったんですか?」
そうちなつちゃんに言葉をかけられて、そんなことないよと答える。
できる限りの勉強に気を向けていたけど、内心は何とも安定はしていなかった。
その理由がなんであるか、私は理解している。そう、理解しているからこそにいつも通りを心掛けているんだ。
結衣「ちなつちゃんは、私と一緒じゃ退屈じゃないの?」
ちなつ「退屈じゃないですよ。結衣先輩がそういうこと聞いてくるのはなんだか珍しいですね」
結衣「そうかもしれないね、ごめんね」
そうして再び勉強を再開しようとして、頭に過る言葉がある。
進学校……
あかりが進学校に行くという話を京子が言った時に、私は確かに感じたのだ。
京子の言動に中学生に上がる頃よりも強い何かを。
多分、それにちなつちゃんは気付いているんじゃないかって思うけど、わざわざ私から切り出すべき話でもない気がしてならなかった。
ちなつちゃんは、私たちと幼馴染というわけじゃないから、そもそもこんな話を振られても困るだろうし、逆に指摘をされたらそれはそれで、なんだか腑に落ちないって感じになるだろう。
ちなつ「私は結衣先輩と二人っきりになれるからうれしいですけど、なんだかこの頃はみんなあまり楽しそうじゃないです」
結衣「しょうがないよ、京子と私は受験を控えてるし、あかりは生徒会での引き継ぎとかで忙しいしね」
ちなつ「それだけならいいんですけど」
そう言っているちなつちゃんの目は、私をまじまじと見ていた。」
なんだろう、見られていると恥ずかしくなるのが普通なのかもしれないけど。今のちなつちゃんの目からはそういうものが感じ取れなかった。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/26(月) 15:09:41.27 ID:P1CQC2iW0<> 結衣「ちなつちゃん?」
ちなつ「それよりも、結衣先輩も勉強しなきゃ。私お茶を入れてきますね」
そう言ってちなつちゃんはお茶を入れに向かう。
違和感に苛まれながら、携帯を一度開いて昨日のメールを開く。
あかりから昨日届いたメールには、『今日は寒くなるから暖かくして寝たほうがいいよ。今日、京子ちゃん何が可おかしかったけど、何かあったのかな?』そう書いてあった。
あかりは京子のことを心配していて、私はわかっているから平然でいられる。
結衣「そう、平気だ」
独り言のように呟きながら、携帯を閉じると目の前の勉強力を注ぐ。
こうして勉強しているのは、受験に失敗しないためだ。受験は勉強で出来る限りどうにかできることだ。
ゲームだって同じ、できれば強くレベルを上げて困難っていう壁をすぐに飛び越してやるんだ。
それが昔からの私の考えで、そんな考えがどんな物事にも通じるんだって思っている。
できれば、そう思わせてくれていてほしい。
私らしくもなく、ネガティブなことを考えてる気がしたけど、この頃の受験に対する不安もあるんだろうと、大きくため息を吐いた。
生徒会にあかりが行って、3人だけの活動が多くなったごろく部は、なんだか抜け殻みたいになり始めているのは、その時からわかっていた。
だからって、盛り上げようという気を起こす前に、受験はやってきて今はこうして静かな場所がある。
結衣「は〜、私もまだまだってことなのか?」
しばらくして運ばれてきたお茶をすすって、もう一度勉強に力を入れた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/26(月) 15:13:03.17 ID:P1CQC2iW0<> 今日はここまでで <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/26(月) 17:16:26.21 ID:/oX8ddt30<> 乙です <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/26(月) 19:03:46.59 ID:D2jow72Yo<> 乙 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/29(木) 15:20:48.09 ID:9VUU88Lb0<> あかり「先輩、この資料はこれでいいんですか?」
綾乃「うん、それで大丈夫よ。ほんとあかりさんはよくできるわね」
生徒会室の中で、私はそう話をしながら与えられてる最後の仕事に従事してる。
今日は千歳が千鶴さんと外せない用事があるとかで生徒会に来ていないし、向日葵に櫻子もそれぞれの用事で来られていないのだ。
だからこうして、あかりさんと二人で作業することは珍しいことだった。
綾乃「ふぅ〜、ちょっと二人でやるには多い量よね」
あかり「そうですね〜。でも、あかり頑張りますよ〜」
そう言って新しい資料に目を通し始めるあかりさん。
本当に色々できるし、気配りもできるから少しばかり先輩としてはなんだか複雑な対抗心が燃えてしまう。
適当なプリントを手に取って、内容に目を通して印を押す作業。
本来なら先生あたりがやるべき作業なんだろうと思いながらも、一応生徒会に仕事が回ってくるのは生徒会があるべき理由作りなんだなって思う。
理由作り……
綾乃「あ、あのさ……」
あかり「どうかしましたか?」
プリントに向いていた瞳がこちらに向いて、少しばかりの間があった。
別におかしなことを聞くわけでもないのに、なんだかよくわからない罪悪感を感じていた。
綾乃「あ、あかりさんは、歳納京子とは幼馴染なんでしょ?」
あかり「なんだか、今更な気がするような気もしますけど、そうですよ〜」
綾乃「聞きたいことがあるんだけど、その、ね……」
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/29(木) 15:35:10.05 ID:9VUU88Lb0<> あかり「あかりの知ってることだったら何でもいいですよ〜」
そう言ってにこやかにほほ笑むあかりさんには、私の思いがすべて筒抜けになってるんじゃないかって思う。
千歳は長い付き合いってこともあるだろうから、私のことをよく理解してるだろう。
それがあかりさんにもできてると思うと、なんだか複雑な気持ちになる。
綾乃「あ、あのね。そろそろ、年末になるわけで、そその、ね」
あかり「はい」
綾乃「歳納京子の年末の予定をね、そのね、知ってるかな〜、って思ってね」
あかり「はい」
綾乃「えっと、そのね、あの、えっと、や、やっぱりやめとく!」
あかり「ええ〜、ここまで言っておいてやめると後悔しますよう!」
綾乃「だ、誰にも言わないよね?」
私の懇願する声に、あかりさんは静かに頷いてくれた。
もう今年で卒業なのだから、私も素直にならなくちゃいけないって思ったから。
一歩を歩みたいから、こうしてあかりさんに話を聞いてるんだ。
綾乃「わ、私ね。歳納京子にね、その、今年中にね……」
あかり「もしかして、その、告白とか?」
綾乃「……なっ、ななななな、なん、なんでわかんねん」
思わず千歳のような口調になってしまって、それを見てあかりさんが楽しそうに笑う。
ああ、なんだってこんな感じになってしまうのだろうか。
私のこういった慌てぶりは、どうにかしたいと思うのに、歳納京子のこととなるとこうなってしまう。
あかり「大丈夫ですよ。先輩、京子ちゃんのこと好きなんですよね」
綾乃「あ、あ、その、う、……うん」
その問いに対して私は千歳意外に、初めて頷いた。 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/29(木) 15:48:14.48 ID:9VUU88Lb0<> あかり「じゃあ、やっぱりクリスマスに告白の流れがいいのかな〜」
綾乃「ク、ククク、クリスマスに、こここ、こく、告白だなんて!」
あかり「あかり、ロマンチックですごくいいと思うよ!」
そういえば昨日、去年やったクリスマスのカップルごっこのことを歳納京子と話した。
カップルごっこじゃなくて、ちゃんとしたカップルとしてデートできたらすごくいいなって思うと…
綾乃「もしも、歳納京子に告白して付き合えるなら。クリスマス前のほうが、うれしいな」
それに、クリスマスの日に告白して振られたら…
そしたら突然手を握られた。強くて、なんだか暖かくて、安心させてくれるそんな感じだ。
あかり「先輩、もしもなんて考えないでいいんですよ」
綾乃「あかりさん……」
あかり「えへへへ、なんだかあかりらしくないですよね」
確かに、なんだかいつものあかりさんらしくないけど、それはそれでなんか安心できた。
私の恋路に、取っても真剣になってくれてるのが無性にうれしかった。
あかり「あかりはみんなが幸せになってくれたらいいなって思ってますから、先輩もあかりの幸せになってほしい人なんですよ〜」
綾乃「ちょ、あかりさん。そのセリフすごく恥ずかしいんですけど」
だから、思わずそのセリフに顔を真っ赤にする。
本当にあかりさんは純粋な子だ。
それゆえに気になる。
なんで、歳納京子や私たちが行く高校に行こうとしないのか。
来年が受験なのに、すでに進学校に行くっていうことを決めていることが、なんだか気になった。
なったけど、それ以上のことを私が詮索するのは、なんだか身に余ることだと思えて。
私は何も聞かなかった。
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga sage<>2011/12/29(木) 16:15:48.74 ID:9VUU88Lb0<> 京子『いやだ! あかりだけ小学生のままなんてやだ!』
懐かしい夢だ。
ああ、相当私はあかりが進学校に行くことを気にしているんだなって思えた。
気にしていなかったら、こんな夢見るはずもないのだろうから。
いつも遊んでいた公園、小学校を卒業するのが近付いている私と結衣に、まだあと一年は小学生でいるあかり。
夕方の帰りのチャイムに、夕焼け色に染まるジャングルジム。
私はブランコに座りながら、顔を膨らませながら動こうとしてなかった。
結衣『京子、なに訳のわからないこと言ってるんだよ。私たちはもう中学生になるんだぞ』
京子『やだやだ、あかりと遊ぶ時間がなくなっちゃう! 結衣だって嫌だろ!』
結衣『京子、わがまま言うなよ!あかりが困ってるじゃないか!』
第三者の視点で見ていると、なんともいえないくらいに子供だな、小学6年生の私。
本当にこれが3年前の私なのかと疑いたくなるような。
幼稚な私と、それに対抗している結衣もどことなく子供みたいだった。
あかり『京子ちゃんが中学校に行ったって、あかりとはまだいっぱい遊べるよ』
でも、なんだかそこにいるあかりは、今とあまり変わってない気がした。
京子『あかりは嫌じゃないの、私と離れ離れになって……』
やめたほうがいい、そう昔の私に言ってあげたいけど、これは夢だから声なんて出ない。
だから昔の私は何かを言っているみたいだったけど、自然と私は耳を閉じていた。
結衣があかりに目を向けてて、あかりはそれを聞いて困ったように笑ってて。
もう見ていたくないと思いながら、その光景に背を向けて、そこには大きくなった結衣とあかりがいた。
結衣『まだ駄々こねるのか?』
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/29(木) 16:18:13.56 ID:9VUU88Lb0<> 今日はここまでで <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/29(木) 20:09:30.55 ID:hY9LZVI2o<> 乙です <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/30(金) 01:43:21.44 ID:MXtP4gsVo<> 乙
待ってるから <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/30(金) 02:54:35.37 ID:qdxeu0QEo<> 乙かん
追いついたと思ったらもう年末だった
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/01(日) 23:32:59.28 ID:i1o3LBem0<> 結衣は私を睨みつけている。いつもみたいにどこか落ち着いてる瞳とは違う、そこには苛立ちと怒りが含まれているのが分かる。
その瞳に睨まれて動けない私と、結衣の横に立っているあかり。
私と結衣が睨み合っていることにオロオロしてて、やめてよって言っても結衣は聞かない。
だからもう何もできないから、様子を伺ってるっていう感じだった。
結衣『またそうやって、あかりを困らせるんだろ?』
冷たい声だ。
昨日、あかりに対して発した言葉と同じくらいに冷たい声で、体全体が強張ってしまう。結衣は怒ったら怖い、昔からの馴染だからこそわかる怖さがある。
今の私には、そんな結衣に何かを言って返すほどんぼ冷静さは無くて、ただただ目を逸らすことばかり考えていた。
結衣『そうやって聞きたくないことから逃げても、なんにも解決しないって言ったよね?』
私が見ている夢なのに、なんでこんなに辛いんだ。なんでこんなに結衣は辛くあたってくるんだと、考えても答えなんてではしない。
だから背を向けようと思った。こんな風に責められるなら、その言葉を全部背中に当ててほしいから…
でも、後ろには今さっき見たくないと否定した光景がある。
嫌悪する光景二つが私を板ばさみにしてることが、何よりの苦痛だった。
結衣はそんな私に何かを言うわけでもなく、ただただ静かに立ちふさがって、どこか勝ち誇ったような顔で立ち塞がっている。
昔は守ってもらってたはずなのに、なんで私にとっての壁になってしまうの? <>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/01(日) 23:41:26.56 ID:i1o3LBem0<> 結衣『それはお前が素直じゃないからだ』
吐き捨てるように、結衣はそう言い切った。素直じゃないってなんだよ!
京子『なんだよそれ、私はいつだって素直だよ!』
思わず声が飛び出たけど、結衣は動じることもなかった。こういうときは、何も言えないと思ってたとか言うのかと思ったけど、夢に出てくる結衣は無駄に冷静で冷酷だった。
結衣『身勝手にしてることと、素直なのは違うことだよ。京子は昔から身勝手だったでしょ? 後ろの姿を見ても気がつかないわけじゃないよね?』
この結衣は、なんでこうも私を責めてくるんだろう。現実で喧嘩みたいになった所為なのかもわからないまま、でも後ろにいる幼い私たちに目を向けることなんてできない。
あれは昔の私だ。泣き虫で弱虫だった昔の私なんだ。今の私とは違う!
???『だから、本当に悩んでることを理解できないんだよ』
その変な発言に顔を上げる。
なんで結衣が結衣っていうのかわからなかったから、だからとっさに顔をあげる。
長い金髪にいつも見ている顔。
よく見るのは朝の洗面所とかかもしれない、そんなある意味見慣れていて、同時にそういう鏡で見なかった場合に嫌な気持ちになる顔があった。
???『気付けよ、私は素直じゃないってさ』
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2012/01/01(日) 23:51:46.22 ID:fOK1O7klo<> 待ってましたー! <>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/01(日) 23:53:31.86 ID:i1o3LBem0<> 京子「……!!!」
あかり「うわっ、びっくりした!」
起き上がってすぐに聞こえたその声と、寝惚けた感覚に頭が少し痛くなっているのを感じる。
今さっき見ていた夢のせいなのかと首を動かしながら、窓から差し込んでくる暖かい夕日に、もう夕方なんだなと思いながら隣で驚いたように固まっているあかりを見た。
覚醒したばかりの眠気眼な私を見ながら、あかりはなんだか心配そうにしている。なんだろうか、方に何か掛ってる気がして手を当てると、あかりがいつも着ているコートがあった。なんだか、少し変態チックなことだけと、あかりの匂いがして、なんだかほっとしてしまう。
あかり「京子ちゃん、風邪引いちゃったの?」
京子「あ、ああ……」
昨日のメールを読まなかったのかなって首をかしげてるあかりには、読んだけど従う気がなかったなんて言う気にもあまりなれなくて、何も言わなかった。
あかりは、まだ進学校に行こうって考えてることを直に話してはくれない。昨日、どこの学校に行こうかっていう話のときに言うことくらいできたはずなのに、なんで話をしないのか、私には理解ができなかった。
あかり「それじゃ、帰ろうよ。今日は早く生徒会も終わったんだ〜。杉浦先輩も校門で待っててくれてるから」
京子「綾乃が?」
なんで綾乃が私を待っているのだろうって考えたけど、今は早く家に帰って休んだほうがいいって考えたら、自然と足は動いていた。
あかりはまだ私に掛けたコートを取らないで、寒いはずなのに何も言わないでいる。寒いに決まってるだろうって、思いながらも暖かくてすぐに手放す気にはなれなかった。
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/02(月) 00:09:56.13 ID:deb0qqFN0<> 図書室を出るように足を進める。今さっき見ていた夢の中のあかりと、まんま変わらないあかりが横にいる。なんだかそれが私の思っているあかりのイメージそのもので、なんだか気味悪くなった。
もうすでに勉強している人も、本を探してる人も、図書委員もいない図書室から出ると、廊下はもっと寒々しくなっていた。なんだってこうも暖房を切るのが速いのか、そんなことを思いながらあかりを見ると方が少しだけ震えてて、声をかけるべきかと思ったけど、それよりも早くあかりが顔を上げる。
あかり「京子ちゃん、あかり図書室の鍵を職員室に返してこなくちゃいけないから、先に杉浦先輩のところに行ってあげて」
京子「あ、うん」
あかり「えへへ、じゃ、行ってくるね〜」
京子「あ、ちょっと……」
私の言葉を待たないで、あかりは階段の下に消えていく。この寒さの中、コートを着ないでうろつくと寒いじゃないかって思っても、やっぱりあかりの後を追いかける気にはなれなかった。
だって、暖かいのだから仕方がないなんて、あかりは寒くても大丈夫だろうなんていうどうでもいい言葉で片付けて、校門に向かうことにする。
窓の外からも見ることのできないごらく部の部室、二人とももう帰ったんだろうななんて思いながら、私も早くに誰かと一緒になりたいと廊下を早歩きする。上履きを脱いで靴を履いて、扉を開けると中に比べれば寒くない外に出る。
もしかしたらもう少しで雪が降るのかもしれないな、そんなことを思いながら残すところ一か月もない二学期に何ができるかを考えようとして、すぐにやめた。
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/02(月) 00:25:58.79 ID:deb0qqFN0<> ―綾乃―
綾乃「ん〜、ううん、き、緊張する…」
今、私はこんな寒空の下であいつを待ってる。別に恋人同士ってわけじゃないけど、待ってるってこと自体で緊張はするものだ。
何度となく深呼吸を繰り返して、なんだか変なところは無いかななんて服装を調べて、よしって思ってはまた身なりが気になる。
あかりさんには、私の素直な頷きを返した。私は素直になれない自分が少し嫌いだから、なんだかあかりさんに歳納京子が好きだっていうことを素直に知ってもらえてうれしかったって気になった。
綾乃「みんなが幸せか……」
あかりさんはみんなが幸せになるといいなって言ってた。だから歳納京子のことは任せてとか言われて、私はそれに甘えるようにしてここにいる。あんな風にあかりさんは色々なことに目が向いて、いつでも誰かのためになる最善なことを目指してる。
私は今日、あかりさんに歳納京子と冬に一緒になる時を作るための理由を作るために話しかけた。卑怯だと思ったけど、私は素直じゃないから、何か仲介が欲しくてそれをあかりさんに求めた形になった。
純粋で、とても無欲だ。まぁ、なんだか出番が少ないのは気のせいだと思うけど。
綾乃「それにしても……、歳納京子にあかりさん遅いわね」
京子「おーっす、綾乃〜」
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/02(月) 00:35:00.55 ID:deb0qqFN0<> やっぱり、歳納京子はとても不意打ちが得意だと思う。今さっきまでの間に寒さで落ち着いた思考が、一気に活性化して聞こえてきた声のほうを見るのに、なんだか時間をかけてしまう。
ギィギィ、そんな風に関節から音が聞こえてきそうなくらいに遅い動きで、私はくるみ割り人形か何かかと自身の滑稽な動きを恥じる。
京子「なんだ綾乃〜、くるみ割り人形でもはじめたのか〜」
綾乃「そ、そんなわけないじゃない!」
やっぱり強くなっちゃう言葉、もう少し優しく言い返すことはできないだろうかなんて思いながら、あかりさんがいないことに首をかしげた。おかしいな、あかりさんは歳納京子を呼んで、一緒に帰ろうって言ってたのに…
っと、そこでいきなり携帯が鳴って変な声をあげてしまう。こんなタイミングにメール、誰かは少しだけ予想がついてメールを開く。
綾乃「あかりさん……」
京子「ん、あかりがどうかしたのか?」
綾乃「ん、本当は三人で帰るはずだったんだけど、職員室で先生に頼まれごとされたって……」
そうして歳納京子を見て、私はその肩に掛ってるコートに目が向く。あれは、今さっきまであかりさんが着ていたコートで、それをなんで歳納京子が羽織っているのか?
綾乃「歳納京子、そのコートは?」
京子「ん、ああ、あかりのコートだ。合流すると思ってたから返し忘れてたぜ。う〜ん、ちょっと下駄箱に置いてくるか」
綾乃「待って、私もついてく!」 <>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/02(月) 00:49:07.78 ID:deb0qqFN0<> あかりさんの下駄箱の中に、ビニール袋に包んでコートを入れて校門を出る頃には、外はもう暗くなっていた。空には雲は掛かってなくて、キラキラ光るお星さまが暗闇を彩ってる。
京子「お〜、今日の夜空はなんだかすげぇな〜」
綾乃「ほんとね、本当にきれい」
京子「だよな〜、こういう光景見ながらの帰り道なら何回でも大歓迎なのにな〜」
私は歳納京子と一緒の帰り道ならいつでも大歓迎なんだけどね。そんなことを心の中で呟いて顔を赤くする私。まだまだわかれ道ってところじゃないけど、だんだんとそこが近付いてるとわかると胸がきゅうってなる。
京子「まったく、もう少しで二学期も終わりなのかよ〜」
綾乃「そうね、三学期になったらすぐに受験になるわね」
歳納京子はあかりさんが来年進学校を受けようとしてることを知ってるのかという考えが過った。でもそれを教えて私は何を得ようとしてるのか?歳納京子からの信頼、それとも頼りになる人?
わかるけど、私はそのどれかが欲しいんじゃなくて、歳納京子に特別に見られたいって思ってる。
京子「お、今流れ星流れた!」
歳納京子は隣で楽しそうに夜空を眺めている。こんなに夜空はきれいなのに、素直になれない私はなんだかきれいじゃないななんて思う。素直になればなるほど、何かが壊れそうな気がして、でもあかりさんにこうして時間を作ってもらえたんだから、頑張らなくちゃいけないって思う。
そんなことを思いながら、気付けばわかれ道まであと少しになってた。ここで言わなくちゃいけないってわかってるから、足の動きを遅くする。
綾乃「ね、ねぇ、歳納京子……」
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga sage<>2012/01/02(月) 01:00:02.77 ID:deb0qqFN0<> 京子「ん、どうかしたの綾乃?」
歳納京子が振り返る。流れる金髪、いつもと同じ明るい笑顔。ああ、なんでこんなに幸福と痛みが一緒にやってくるんだろう。でも言うことがあるんだ。
綾乃「あ、あのね。その、さ……」
京子「うん」
勇気を出すのよ私、心の中で叱咤と激励を繰り返しながら少しだけ素直になろうと頑張って、やっと出てきた私の言葉。
綾乃「再来週、なんだけど、私とどこかに、で、でかけない?」
絞り出して、やっと言えたその言葉。もう恥ずかしさとちょっとの後悔があって、もう顔を下に向けて返事を待つくらいしかできない。なんでこんなに不安になるのか全然わからなかったけど、少しの間だけ素直になったんだから自分自身には表彰状をあげたくなった。
長い沈黙、本当に何千何千分にも思えるくらいに心臓が高鳴って、あまりの長さにあきらめようと顔を上げて。
京子「いいよ。どこに行こうか?」
その返事に力が抜けてしまった。ここまでできるなんて思ってなかったから、緊張感が全部虚脱感に変わってしまったんだ。
そんなよくわからない言い訳と興奮を交えながら、どこに行こうかなんて考えてないやっておぼろげに呟いて、歳納京子が笑う。
京子「なんだよ〜、綾乃から誘ってきたんだからな。だから綾乃が行く場所決めるんだぞ〜」
綾乃「い、一緒に考えればいいでしょ!」
京子「ふっふっふ、綾乃が考えるデートプランコースなんて、なかなかに面白そうじゃないか〜」
<>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>saga<>2012/01/02(月) 01:09:05.41 ID:deb0qqFN0<> そう言ってはしゃぎ始める歳納京子を見ながら、よく言えた、がんばったぞ私なんて自分を褒めてた。座り込んで立ち上がるのに時間はかかったけど、体の重みよりも幸福と充実感が体を包んでた。
素直になれてよかったって思えるし、なによりこういう結果になって本当に良かった。
綾乃「じゃあ、私こっちだから」
分かれ道、いつもなら惜しむように分かれるところだけど、今日は全然違った形でバイバイできる。再来週の予定はもう決まって、その予定を決めて歳納京子を驚かせてやるんだって、意気込んでる私がいる。
京子「おう、再来週楽しみにしてるよ。変な場所とかチョイスするんじゃないぜ」
綾乃「ふふんだ、そんな心配はノンノンノートルダム! 逆にすっごいコースを考えて驚かせてやるんだから!」
京子「へへ、それじゃな〜」
手を振る歳納京子に、私も大きく手を振る。姿が見えなくなるまで降ることは無い、今日はとても充実してる。素直に慣れた私だっている。あかりさんには感謝しなくちゃいけない。
綾乃「あかりさん、ありがと」
そう呟いて、私は自宅に向けて足を進めた。自然と足は軽くて、今日はもしかしたら眠れないかもしれないなんて思って、明日の学校は大丈夫かななんて思う。
きっと大丈夫、誰に言い聞かせるわけでもなく、私は家に着いた。
今日はここまでになります。
新年明けましておめでとうございます。
私のこのような文章を読んでくださってる方たちに感謝です! <>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2012/01/02(月) 18:44:45.80 ID:1Z+W1W4To<> あけおめ
待ってるよー <>
以下、あけまして<>sage<>2012/01/03(火) 02:04:46.93 ID:wZFDPpaIO<> 待ってるから <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/06(金) 16:17:06.13 ID:j9l2fNx60<> ―あかり―
下駄箱の中を見るとビニール袋にきれいにたたまれたあかりのコートがあった。
もう真っ暗になって寒くなって、誰もいないと思う場所であかりなにしてるんだろう?
あかり「京子ちゃん、着て行ってもよかったのに」
ビニール袋から出したコートを着込んで、上履きから外履きに変えて後者から出る。
正門のほうを見て、杉浦先輩と京子ちゃんがいないのを確認して、ちょっとだけほっとした。二人と一緒に帰りたくなかったとかそういうことじゃなくて、二人で一緒に帰ってくれたことにホッとした。
あかり「杉浦先輩、ちゃんと京子ちゃんをデートに誘えたのかな」
携帯を取り出してメールをしてみようかって考えて、でも今すぐ聞くのは悪いかなって思ってポケットに戻した。
これは杉浦先輩と京子ちゃんが考えることで、あかりはその手助けをするだけでいい、そう思ってる。
あかり「こんな時間になっちゃった。お父さんに叱られちゃうかも……」
でも、寒いから走ったら寒いな〜、そんなことをもいながら正門に向かう。明日も色々やることあるから、そのことも考えなきゃって学校と通学路の境界線を跨いだとき、影に隠れて誰かがいた。
一瞬暗くてわからなかったけど、そのシルエットが誰かは何となくわかって、こんな時間なのになんでいるのかなって思いながらも声をかける。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/06(金) 16:31:04.88 ID:j9l2fNx60<> あかり「結衣ちゃん」
声をかけたところであかりがいるってことに気付いたみたいで、振り返ると同時にいつものように軽く言葉をくれた。
でも、やっぱりなんでこんな時間まで残ってるんだろうって思った。
結衣「生徒会? あかりは大変だね」
あかり「えへへ、でもみんなのためにできることをやるのは楽しいよ」
結衣「まったく、昔からその性格は変わらないね」
そう言って結衣ちゃんは先に歩き始めて、その後を追いかける。
そういえばこうやって結衣ちゃんと二人で帰るのはなんだか久しぶりだなって思う。
この頃のことを思えば、なかなかみんなと一緒に帰る時間がないな〜なんて思えてくる。
結衣「生徒会の引き継ぎのほう、どんな感じなんだ」
あかり「うん、杉浦先輩もよく教えてくれるから。スムーズに進んでるよ」
結衣「そう、それでさ。あかり……」
そこで、なんだか結衣ちゃんが何か言い辛そうな顔をしてた。
なにかな、もしかして京子ちゃんと何かあったのかなって思って、そういえば昨日のあかりが送ったメールに京子ちゃん返事してくれなかった。
京子ちゃん風邪引いてたし、もっと京子ちゃんのことを思ったメールの文章にすればよかったのかな?
そんなことを考えながら結衣ちゃんの言葉を待ってると。
結衣ちゃんが振り返って、あかりのことをじっと見てきた。
なんだかとても真剣な顔してて、それがなんだか怖かった。
あかり「結衣……ちゃん?」
結衣「あかり……、来年さ……」
結衣ちゃんがこれだけ言い辛そうにしてることって……
結衣「進学校受けようとしてるって……ホント?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/06(金) 16:41:36.07 ID:j9l2fNx60<> あかり「……」
なんで知ってるのって思った。
あかり、まだ生徒会の人としか話したことなかった。
結衣「ねぇ、あかり。嘘だよね? 嘘じゃなくても私たちの行く学校に後から入ってきてくれるんだよね?」
いつもみたいに、頼れる結衣ちゃんみたいな冷静な顔がそこになかった。
なんで、そんな戸惑ってるのか、あかりにはわからない。
本当なら、あかりが混乱したいのに結衣ちゃんの冷静じゃない姿が頭の混乱を無くしてる。
だから、あかりは答える。
あかり「あかり、進学校に行こうって思ってるよ」
進学校に行くことは、あかりが決めたこと。多分、来年になってもこの考えは変わらない。
だから、結衣ちゃん。そんな泣きそうな顔であかりを見ないでよ。
あかり「結衣ちゃん、なんで泣きそうなの。あかりわからないよ」
結衣「あかりは、なんで進学校に行こうと思ってるの? 私、あかりにそんな夢があるなんて聞いたことないよ」
夢、かなえたい夢なんてあかりには一つしかないよ。
でもそれはあまり口にしない、多分実際に言うと、あかりの性格みたいに思ってる人のほうが多いだろうから。
みんなが幸せになるように……、それがあかりの夢だから。
結衣「やっぱりなの、あかりはやっぱり……」
あかり「結衣ちゃん、あかりは……」
いつもなら車も多く通ってるのに、なんで今日は車が通らないんだろう。
他に誰か歩いててほしいのに、ここにはあかりと結衣ちゃんしかいない。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/06(金) 16:51:58.18 ID:j9l2fNx60<> 結衣「……行かないでよ」
あかり「結衣ちゃん……」
結衣「知ってるんだよ。あかりのこと、私はよく知ってるんだよ。なんで進学校に行こうとしてるのかも、大体察しがつくんだよ……」
結衣ちゃんは下を向いたままで、あかりはもう何が何だか分からなくて。
でも結衣ちゃんは知ってるのは当たり前なんだって思った。
だって、あかりは結衣ちゃんがどうしてこんなになってるのかわかってて。
それでも、進学校に行くのをやめようって思わない、悪い子なんだって知ってるから。
あかり「結衣ちゃん、あかりの考えは変わらないよ」
結衣「あいつだったら変えるの?」
あかり「……変えないよ」
結衣「約束してよ。絶対に変えないって、これで変わったりしたら私、あかりを許せなくなる」
弱弱しく小指が伸びてきて、それは指切りを望んでるんだなってわかった。
あかりの考えが変わることなんてないよ。
だからあかりは杉浦先輩の助けをしてるんだから。
それに、もしもそれで変わってしまったら結衣ちゃんが不幸になっちゃう。
あかり「うん、約束は守るよ。あかり、約束だけは守るの得意なんだ〜」
伸ばされた小指に小指を絡めて、指切りげんまん。
子供みたいな無邪気な行為だったらよかったのにって思っても、やっぱりそんな軽いことに思えない。
結衣ちゃんはすごく悲しんでて、あかりはそれを抱き締めてあげた。
でも、それが結衣ちゃんにとってうれしいことなのかと聞かれたら、多分ただの慰めになっちゃうんだってわかる。
だって、あかりは結衣ちゃんから告白されて、それを断ったことがあって、その時もこうやって抱きしめてしまったのだから。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県)<>sage<>2012/01/07(土) 00:05:09.42 ID:FLr5HNheo<> 待ってるから <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 17:05:53.94 ID:JSkoPqAA0<> あかりはみんなが幸せになるといいなって思ってる。
あかりができることで、あかりの手が届く範囲でもいいからみんなが幸せになることがあかりの夢なのに。
結衣「絶対に、約束守ってよね……」
結衣ちゃんを泣かせてしまって、誰かを不幸にしてる。
それがおかしなくらいに滑稽で、結衣ちゃんを幸せにしてあげるために告白に頷けばよかったのに。
でも、その「のに」っていう言葉は、なんだか投げやりであかりは結衣ちゃんのことを、本当に好きな人として見ることなんてできない。
そういう意思表示みたいに感じた。
結衣「あかり……」
あかり「うん、約束だよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 17:15:26.86 ID:JSkoPqAA0<> ―結衣―
あかりに抱き締められながら、私はあかりに告白をした日のことを思い出していた。
新学期が始まり、夏の到来に合わせて舞い込んできた生徒会の話。
私と京子はすでに3年生で入るっていう選択肢がなかった状態だったから、自然とちなつちゃんとあかりに矛先が向いた。
綾乃「もう頼れる人がいなくて! 吉川さん、赤座さん、生徒会に力を貸してほしいの!」
千歳「私からもお願いや」
最初、私は二人が断るものだって思ってた。ちなつちゃんは、自惚れかもしれないけど私といる時間のほうが重要だろうし、あかりも私たちと一緒にいる時間のほうが大切だって思ってたから。
土下座までして頼んでもらってるけど、あかりもちなつちゃんも生徒会に入るわけないって思ってた。
ちなつ「先輩、残念なんですけど私は………」
ちなつちゃんの返事に仕方ないかって二人が立ちあがって帰ろうとする。
だから、大変だなって思いながらもこれから何をしようかって他人事になりかけたところで、あかりが手伝うよって言ったんだった。
それから少しずつあかりがごらく部に来ることが少なくなっていって、気になって生徒会室に行くまであった。
私はそれなりに冷静でいられるっていう自信はあって、私があかりに対して抱いてる感情にだってそれなりに気づいてた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 17:26:58.37 ID:JSkoPqAA0<> 昔、京子とあかり三人で遊んでいたころから、それなりに意識していたのかもしれないし、中学校に上がってからは完全に意識してたと思う。
あかりのあの他人にも優しくできる性格とか、そういう振舞いを見てると胸が痛んだ時もあった。
ちなつちゃんとキスしてる姿を見たときは、あまりの衝撃にそこから京子と一緒に逃げだして家に帰った後になってからショックが支配してた。でも、あれが誤解だってわかった時は心底安心していた。
そしてあかりが中学2年生、私たちが中学3年生になって、生徒会の用事であまりあかりがこれなくなった頃からあかりがいないと寂しいってことに気がついてた。
これはどんな感情なのかって考えて、あかりを独り占めしたいっていう独占欲なのかなって悩んだこともあった。多分、本当はその独占欲に近い好意だったんだ。
綾乃『あかりさん、この資料お願い』
あかり『はい、杉浦先輩』
千歳『ほんま、あかりさんはよく仕事するわ〜』
ある日近付いた生徒会室、中から聞こえる声は楽しげで、同時に前まで名字で呼んでいた千歳と綾乃が名前で呼んでることに嫉妬してた。
今思えば、名前で呼ぶのも名字で呼ぶのかは人それぞれで、呼ばれ方に異を唱えるのはあかりの権限なのに、まるでそれが私にあるように勘違いして、あかりをどうにか私のものにしたいなんて、馬鹿げた考えが浮かんでしまった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 17:37:28.25 ID:JSkoPqAA0<> 今日と同じように校門で待ち伏せした。
京子とちなつちゃんは用事があって帰っていたから、自然とあかりを待つ口実ができていた。
緊張とかそういうのが全くなかった、怖いくらいに冷静にあかりを私のものにしようなんて考えていた。
今思えば、狂っていた。
まだ日が長い日だった。17時になっても十分に明るいくらい。
私は経つ時間も忘れていて、空をぼんやり見上げながらこの後のことを考えていた。
考えて考えて、やっぱり私のものにしようなんて考えになっていたのは、思考なんてあまりしてなかったからかもしれない。
あかり「あれ、結衣ちゃんだ〜」
多分、その待っている間で唯一心臓が跳ねたのはその瞬間だけだったと思う。
あかりが私に声をかけてくれてて、結衣ちゃんっていう言葉で呼んでくれて、抱き締めるかどうかを悩んでいたくらいだった。
一緒に帰る道、それだけでもうれしくて、これからそんなあかりが私のものになるという馬鹿げた妄想だけが動き回っていた。
結衣「あかり、ちょっと家に来ない?」
それが私があかりを家に招き入れるための言葉だった。
まだ明るかったしあかりの性格を思えば、この言葉だけでも家に来るだろうって思ったから。
案の定、あかりは喜んで私の家に足を運んでくれて、私は心の中で安心してた。
手荒な事をしないであかりを家の中に入れられるなんて、馬鹿げた感想を浮かべながらだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 17:49:25.50 ID:JSkoPqAA0<> あかりに先にリビングに行ってもいいよって言って、私は鍵を閉めた。
チェーンロックもした、こうすればあかりが逃げ出しても、チェーンロックに気づかないで開けられないはずだなんて思ったから。
妙に頭がすっきりしてて、この後はどうすればいいんだろうなんて思っていたけど、気にすることもないよなんて呟いていた。
リビングに入ると座りながら、「結衣ちゃんの家に来るのは久しぶり〜」って周りをキョロキョロ見回してる。
特に真新しいものは準備してないけど、久しぶりに来て新鮮な感じだったのかもしれない。
今思えばそう考えられたと思うけど、その時の私はあかりのことしか見てなかった。
結衣「あかり」
あかり「ん、なに、結衣ちゃ――」
本当に自然だった。
近づいて肩を軽く押す。怪我なんてしない優しい力であかりを押し倒してた。
あかりも何が起きたのかわかってなくて、私の頭はすっきりとしていた。
これから、あかりを私のものにするっていうこと、そしてその時の私は告白をしようとかそういうことを考えていなかった。
だって、その時の私は完全に狂っていて、あかりに告白なんてしなくても大丈夫、あかりも私のことを好きでいてくれるはずだなんて、ストーカー丸出しの思考だったから。
あかり「ゆ、結衣ちゃん、どうしたの?」
不安げな瞳、そんな不安にしなくても大丈夫だよ。
ボソボソ呟く私に、あかりの顔がどんどん不安に彩られていくのを感じた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:04:10.97 ID:JSkoPqAA0<> 結衣「あかりの髪ってきれいだよね」
手を伸ばして髪を触る。
ビクッて震える体、その震えであかりが私の下にいるってことが感じられて、とてもうれしかった。
クシャクシャって髪を撫でて、優しく撫でてるけどあかりの震えは止まらなかった。
結衣「あかり、なんで震えてるの?」
あかりは何にも答えないから、寒いのかなって思った。
なら抱き締めてあげないと、なんて思っていた私は完全に馬鹿だった。
その時だけは、本気であかりは私のものなんだから私が守るべきだなんて思っていた。
抵抗しないあかりの上着に手を伸ばして、ボタンを外す。
其の間も何も言わないで震えてるあかりを、ギュっと抱き締めて胸に耳を当てて、心臓が恐ろしい早さで鼓動してるのを聞いて喜んでいた。
私でこんなにドキドキしてくれてる。
だから直に聞きたいなんて思っていた。
全く動かないあかりの胸のボタンを一個ずつ外していく。
少しだけ「やめてよ」って言葉が聞こえたけど、私は無視した。
可愛らしいスポーツブラが見えて、そこに耳を当てて鼓動を聞いてる。
せわしなく動いてるその音、あかりの心臓がなんでこんなに頑張ってるのかなんて、私といて緊張してるからだって思ってた。
だから、その後頬に落ちてきたものの意味を少し勘違いした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:11:13.69 ID:JSkoPqAA0<> あかり「ううっ、やめてよぉ、ゆいちゃん……ひっぐ」
結衣「あかり、なんで泣いてるの?」
私の頬に落ちてきたのはあかりの涙だった。
なんで泣いてるの、私とこうなれたからうれしくて泣いてるの?
その涙をぬぐいながら、安心させてあげなくちゃなんて思った。
でも、どうやって安心させるんだろう。
抱き締めてあげた、涙もぬぐってあげた。
でも泣きやまない、ならあかりとキスしよう。
そうすればあかりは安心するだろう。
箇条書きにすれば反吐が出るような一方的な考えで、正常な人から見れば自惚れと狂気であることは間違いなかった。
でも、その時の私にはそれしかなくて、自然と唇をあかりの唇に伸ばしていた。
もう泣くことは無いよとか、離れたりしないよとか、あかりがそれを嘆いたことなんてないのに、あたかもそれが望みであるように錯覚した。
結衣「あかり……」
下顎に手をやって、そのままあかりの唇に私の唇を重ねればいい。
それだけであかりは安心する。
私はあかりとキスができて、まさに一石二鳥だと、考えている愚かな私。
あかり「 …」
だから、あと数センチで聞こえてきたその言葉に、私の動きは止まってしまった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:19:58.50 ID:JSkoPqAA0<> 結衣「なんで?」
近づけていた唇はもう離れていた。
目の前には泣きじゃくりながら、上はブラだけになったあかりがいた。
この時、頭の中が無駄に常識を取り戻していた。
今さっき聞こえた言葉に、私の常識が急速に頭に戻り始めていた。
客観的にこれはどういう状態なのか、私がやっていたことはいったいどういう行為だったのか?
泣いてるあかりから出た言葉は、なんであんなにも怖がっていたのか。
答えは単純だ、あかりは純粋に私がした行為に対して怖がっていたんだ。
結衣「あ、あかり……」
あかり「ゆ、ゆいちゃん、あかり、何か悪いことしちゃったの?」
涙目のあかりがそう聞いてくる。
何か私に悪いことをしたのか?
私はあかりに何か嫌なことをされたのか?
答えはノーで、私が嫉妬に流されただけのことだった。
その瞬間、私自身がやった愚かな行為に気がつく。
これはただの強姦、レイプだ。
結衣「あ、ああああ」
死にたくなった。
この時だけは本当に死にたくなった。
こんなひどいことをあかりにしてしまったこともあるし、なによりあかりの言葉の意味を理解できたから。
私は、あかりの親友で、それ以上は望めないんだと理解してしまったから。
頭に浮かんだ手っ取り早い死に方に、台所の包丁が思い浮かんで、それで首を切って死のう。
だから、すぐにそれを行おうとした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:31:10.13 ID:JSkoPqAA0<> でも、それより先にあかりが私の腰に手をまわしていた。
振り払おうって思えば振り払えるそんな力。
まだ手と体の震えは止まってないのに、なんで私に触れることができるんだろうなんて思って。
あかり「結衣ちゃん、大丈夫だよ」
結衣「なにが、大丈夫なんだよ」
声も震えてるじゃないか、なんでそんな状態なのに大丈夫なんて言えるんだ。
でも、あかりが形は違えど抱き締めてくれてることに、少しだけ安心してる私がいた。
あかり「結衣ちゃん、あかり平気だから。もう大丈夫だから」
結衣「なんで、私がやったこと、非難しないんだよ!」
安心していても、まるで私のやったことに対して関心がないみたいな言い草に腹が立って、体を振ってあかりを振り払う。
倒れたあかりを見ながら私はやろうとしていたことを全部吐き出す。
私のものにしようとしていたとか、唇を奪った後のことも全部を吐き出して、それでも私を許せるのかって聞く。
汚れた思考ばかりの私を、これからも友人として見ていけるのかって聞いた。
虫のいい話だってわかってる。許してもらうならそれなりの態度と言葉が必要なのに、私は私の持ってるすべての欲をあかりに求めている。
素直にいえば、嫌いにならないで、友達のままでいてほしいって言う意味だ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:38:42.96 ID:JSkoPqAA0<> そしてすべてを言い終わって、私は膝を付いた。
もう情けなくなった。
あの言葉だけで揺らいでしまう私に。
こうしてこんなことをしてしまったのに、嫌わないでくれなんて懇願してる私に。
あかりは何も言ってくれない。
あかりから嫌われてしまったら、私には何も残らない気がしてならなかった。
だから、死にたくなったのにあかりはなんでそれを止めるんだろう?
あかり「……結衣ちゃん」
だから、こうして今日のように抱き締められた時。
私は心の底から気付いた。
こんなことをした理由、あかりが愛しくて愛しくてたまらないんだって。
好きなんてレベルじゃない、愛しいんだ。
だから、こうしてあかりが泣いている姿を見ると、それをどうにかしてあげたくなるんだって。
あかり「あかりは、結衣ちゃんのこと嫌いになったりしないよ?」
結衣「……あかり」
あかり「あかり、結衣ちゃんの友達だよ」
その言葉で、私はあかりの特別には絶対になれないんだってわかった。
あかりのその言葉は、力強いくらいに私を安心させて、同時に悲しませた。
だから、私も思っていることを言おうって思った。
もう、隠ししてても意味がないってわかってるし、こんなことになってしまってごまかす気にもなれないから。
あかりだけには告げておこう。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:50:32.11 ID:JSkoPqAA0<> 結衣「私ね、あかりのこと好きだよ。愛してるよ」
静かな部屋の中に、私の言葉がむなしく響く。
あかりはその言葉に、ありがとうとごめんなさいを告げた。
車がは通り始めた下校道、抱き締めあってる私とあかり。
こうして抱き締めてもらってると、そのことをぶり返しそうになるから離れる。
結衣「ごめん」
あかり「ううん、結衣ちゃんが落ち着いてくれてあかりうれしいよ」
そう優しく告げてくれるあかりに、今さっき突きつけてしまった約束。
もう信じられなくなる。
あかりは進学校に行ってしまうという現実、できればそんな約束破ってくれてもいいのに。
でも、そんな力は私にはなくて、多分あいつなら変えられるんだろうななんて思う。
結衣「あかり」
あかり「大丈夫だよ〜、あかり決心だけは固いから」
そう言って笑うあかりは無駄に寂しそうで、無理してる気がして、でもそれをどうにもできない私がいて。
流れた涙を拭きとって、あかりにそれじゃ、帰ろうかって告げる。
あかりはそれに元気良く返事をしてくれて、横に並んで歩いてくれる。
私は、今でもあかりを愛している。だから、同時に幸せになってほしいって思う。
それが、あかりの信条としている、手の届く範囲の人が幸せになれますようにって言うものを踏みにじってしまうことになったとしてもだ。
だから、早く気付いてほしい。
その時が来たら、私はそれを押す側にまわれるだろうから。
だんだんと寒くなるこの頃、12月中間で雪が降るんだろうなって考えながら、私とあかりは帰り道をいつも通りに帰っていった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)<>sage<>2012/01/10(火) 18:50:45.06 ID:l56PWb2so<> 京あかで釣っといてこれはちょっと… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga <>2012/01/10(火) 18:51:26.66 ID:JSkoPqAA0<> 今日はここまでです <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)<>sage<>2012/01/10(火) 18:55:42.78 ID:EvHgw5v9o<> 乙
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/10(火) 18:56:31.32 ID:JSkoPqAA0<> 1です。
ごめんなさい、2つ京あかで書いたので、今回は違うキャラクターも話に組み込みたくなったんです。
一応本質は京子あかりなので、大目に見ていただけるとうれしいのですが。
すいませぬ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)<>sage<>2012/01/10(火) 18:59:02.87 ID:EvHgw5v9o<> 気にスンナ
>1の書きたい様に書けばいい <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/10(火) 19:42:54.81 ID:Xy2CkJwDO<> 押し倒してるのに頬に涙かってどういう体位? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 13:36:13.89 ID:+tysSFyX0<> ―京子―
綾乃とデートをする約束から、もう結構な時間が経っていた。
明後日にはそのデートが控えてるわけで、この頃の勉強疲れを解消するには、とてもいい気分転換になりそうだ。
そんなことを考えながら、私は前と同じように部室に行かないで図書室で勉強してた。
この頃は一人で学校に行くことも多くなったのは、ごらく部のメンバーに会いたくないからなんだってことはわかってた。
それはそうだ、あと数カ月でちなつちゃん、あかりとは離れ離れにならなくちゃいけない。
そう考えたらそれが別に今からだって早すぎるってことは無いだろうなんて、そんなことを考えてた。
京子「う〜ん、こんなに勉強してるとか、私もどうかしてるな〜」
しかし、こんな風に勉強に勤しむのは何とも私らしくないとは思う。
やっぱり、避けているんだろうってことはわかってるから、それを自覚しながらも克服しようとしてないっていうことなんだろう。
京子「……」
いつでもほとんど一緒だった去年からは想像できないくらいに、私は一人で過ごしてる気がする。
だってそうだろう、ごらく部は卒業するまで遊び呆けてることを目標としてたはずなんだから。
去年の私が今のごらく部を見たらなんて言うだろうかなんて考えて、結局同じように仕方ないのかなって思うのかな?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 13:55:17.22 ID:+tysSFyX0<> >202さん
すいません、描写不足でした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 15:10:50.47 ID:+tysSFyX0<> 京子「まぁ、受験近いし、仕方ないよな」
綾乃「何が仕方ないのよ」
京子「ん?」
綾乃の声が聞こえたので視線を向けると、真横になんだか若干呆れたように溜息を吐いている姿があった。
手には参考書、その格好はまるで勉強しに図書室に来てるようだった。
綾乃「勉強しに来たんだけど」
京子「私の心の中を読むなよ」
綾乃「別にいいじゃない」
そう言って綾乃は後ろの席に座る。
心の中を読まれた気分の私としては、なんだか釈然としない雰囲気だった。
なんというか、綾乃が無駄に緊張しているように思えてならなかったし、なんで綾乃は私がここで勉強しているとわかったのか。
正直、努力している姿はあまり見られたくない性質なのだ。
京子「う〜ん」
なんだか人に努力してるところを見られるのは、なんというか恥ずかしいのである。
私という京子っていう人間は、そういう努力のしない楽天家として人の目には映っててほしいわけである。
まぁ、そういう願いが通用しないのは、多分あかりだけだと思う。
京子「って、なんで思い出すんだ」
また微妙なもやもやした気分になってきた。
こういうのは綾乃にちょっかいを出して解消しよう。そうしよう。
後ろの席を見るとなんだか勉強してるのかよくわからない顔で、参考書とにらめっこしてるように振舞っている綾乃がいた。
参考書が上下逆な時点で、一体何をしているのかっていうところだ。
京子「綾乃〜」
綾乃「な、ななな、なによ!」
なぜそんなに狼狽する必要があるのか、綾乃はなんというか見ていて楽しいな。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 15:19:33.06 ID:+tysSFyX0<> それに明後日はデートなわけだし、その予定について聞いてみるのもいいんじゃないかとか思った。
私としてはとても楽しみなのだ。
この頃のもやもやとかうっぷんを晴らせるわけだし、それにこの一週間と少しを掛けて綾乃が作ったデートプランというやつが楽しみなのだ。
京子「デートプランはどんな感じなんだ?」
綾乃「な、ななななん、とと、歳納京子! なんでその話を振ってくるのよ!」
予想通りトマトみたいに顔が真っ赤な綾乃に変わった。
生徒会長がそんな大声を図書室で出していいのかなんて思いながら、周りを見ると思った以上に注目の的になっているようで、綾乃の顔が真っ赤を通り過ぎてフルフルって震え始めてる。
なんだか悪いことしちゃったな〜、なんて思いながらごめんごめんと呟いて、綾乃を落ち着かせる。
綾乃「は、恥ずかしかった……」
京子「ごめんって、それでさ、デートのことなんだけどさ」
綾乃「それは明後日まで秘密で、これ以上の追及は罰金バッキンガムよ!」
結衣がいたら笑ってそうだなんて思いながら、なんでここに来たのか聞いてみることにした。
よくよく考えたら、綾乃は大抵勉強は家とかでやるって言ってたし、わざわざ図書室に来てまで勉強することなんてなかなかないと思ったから。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 15:30:08.81 ID:+tysSFyX0<> 京子「そういえば、なんで図書室なんて来たんだ?」
綾乃「え、えっとね……」
そこでなんだか言い辛そうにする綾乃、まるでここに誰かいるからきたみたいに感じるけど。
もしかして私がいるからか!とか、自意識過剰なことを考えて、これ言ったらおもしろい狼狽してくれそうだけど、それそれで後々変なことになりそうだから言わないことにしておく。
だから、代わりの言葉に固まった。
綾乃「あかりさんがね」
京子「あかりが?」
綾乃「え、えっとね……、デートがもう明後日だから歳納京子と話してきたらどうかなって……」
実際、私と綾乃がデートすることくらいみんな知ってる、っていうか私が言いふらした感じだから、あかりが知っていてもおかしくないことなのに、なんだろうか。
なんだか嫌な気分になる。
綾乃「わ、私もね。明後日のデート楽しみにしてるから、その事前にちょっと話がしたくてね」
京子「なるほどね」
あかりとはあの日以来あまり会話をしてない。
なぜかだけど、この頃は廊下ですれ違うこともあまりなかった。
まるで、私が結衣を避けてるみたいに、避けられてるみたいな気がした。
綾乃「うん、ただそれだけで」
京子「勉強はしないの?」
綾乃「……この参考書で受験勉強できるかな?」
京子「え〜っと、『秘境アマゾンに住む不思議な生物』ね」
なんていう本を綾乃は引いてくるんだろうか
なんか論文作ったりとか、生物学を専攻するとかなら武器になりそうだけど、私たちが行こうとしてるのはただの普通高だから、使わないね。
京子「勉強には向かないけど、なら私に勉強教えてよ」
綾乃「ふぇぇ! わ、私がお、教えるの?」
京子「うん、ちょっとここがわかんなくてさ」
これ以上あかりの話は聞きたくは無いから、綾乃を引っ張って私の横に立たせる。
これでいい、こうすれば勉強だけで今の時間を過ごせる。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 15:46:37.53 ID:+tysSFyX0<> でも、なんっで私はあかりのことを未だに気にしてるのか。
遊べなくなるからなんだって思っても、やっぱり何だか引っかかる。
綾乃が教えてくれる内容に耳を傾けながら、私はどこかぼんやりとした顔でときどき窓から外の景色を見ていた。
まだ夕暮れにまでは時間がかかるその光景を見ながら、これを他に見ている誰かはいるのかって少しだけ感傷に浸るだけ。
その誰かは私にとって知らない誰か他人だったらとてもいいななんて思いながら、シャーペンを走らせる。
私は何を気にしてるのか、それを理解することからも逃げている気がして、でもそれは無いって思う。
だって私が悩んでいることは、みんなと一緒に遊べなくなることなんだから。
今は避けてるけど、一段落した頃にはそれをどうにかするために遊んでるに決まってるんだ。
淡いその予想図を描こうとしたけど、私にはその光景の中に、私以外の他人を描くことができなかったんだから。
それがなんでなのか、考える前に綾乃の声が聞こえてきて、私は勉強に頭を傾け始めた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 15:51:00.50 ID:+tysSFyX0<>
―あかり―
窓の外にはいつもの景色が広がってる。
教室からも、生徒会室からも、いつも見る光景が広がってて、あかりはのんびり資料とかをまとめながら誰も腰かけてない生徒会長の椅子を眺めてる。
杉浦先輩、うまく京子ちゃんを見つけられたかなって思いながら、前に結衣ちゃんが私にした約束を思い出す。
どんなことがあっても変えない、変わっちゃいけない、揺らいではいけない。
だって、あかりは約束は守る。
守って守って、ここまで来たのがあかりなんだから。
あかり「まだ、仕事終わらないな〜」
千歳「ほんと、綾乃ちゃんは歳納さんが気になってしかたないんやな〜」
一緒に作業してくれてる池田先輩は、元々杉浦先輩と京子ちゃんがくっついてくれるのが夢だったみたいだから、今幸せそうに作業してる。
あかりも、誰かが喜んでくれてるとうれしくなるし、頑張ろうって思えてくる。
勢いそのままに資料のまとめを再開していると、なんだかじっと池田先輩に見られている気がした。
あかり「池田先輩?」
千歳「あかりさん、なんやうれしそうなのと悲しそうなのが混じった顔しとるで?」
それってどんな顔なんだろうって思いながら、池田先輩を見る。
なんだかいつもみたいに暖かい笑顔なんだけど、なんだか不思議と威圧感があった。
作業を何か間違えちゃったかなって、資料を探ろうとするとそういうことじゃないねんって手を振った。
千歳「あかりさん、なんかこの頃頑張りすぎやで?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/12(木) 15:59:59.78 ID:+tysSFyX0<> 池田先輩の言葉に、あかりはそんなに頑張って仕事してるかなって思った。
櫻子ちゃんも向日葵ちゃんも一緒に仕事してくれることもあったし、こうやって池田先輩も手伝ってくれて、杉浦先輩からも引き継ぎを教えてもらいながら手伝ってもらったから、そんなにいっぱい仕事をしてる実感は無かった。
千歳「いやいや、生徒会の仕事のこととちゃう」
あかり「じゃぁ、なんなんですか?」
千歳「なんやろ、あかりさん。この頃、あんまり笑ってない気がしてな〜」
そうかな、いつもニコニコしてるのが取り柄だよねって京子ちゃんに言われたことあるくらいにニコニコしてることのほうが多いのに。
だって、バカっぽいって言われたこともあるくらいなんだよ?
千歳「あかりさん、いつも笑ってるってみんなから言われてるかもしれんけど、私から見るとこの頃無表情なこと多いで?」
あかり「そ、そんなことないですよ」
なんで焦って返事をあかりはしてるんだろう。
静かな部屋の中、今はなんだか池田先輩といるこの空間が、なんだか重たくて仕方なかった。
まるで首を絞められてるみたいに、息苦しさを感じて自然と視線が窓に向いた。
あかり「そんなこと、あるわけないですよ……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/01/14(土) 14:03:16.99 ID:/d640iiXo<> 京あか素晴らしい <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 14:03:21.62 ID:Hio5M4MX0<> 千歳「ならいいんやけど……」
そう言って池田先輩は作業を再開する。
このまま続けても、後一時間くらいは掛るんじゃないかって量、でも今は目の前にある作業に集中する。
そう、作業をすればいいの。
あかりは、周りのみんなが幸せになれるように作業してればいいの。
それがあかりのするべきことだって思ってる。
だから、この頃辛いとか、そんなこと思ったりしない。
あかり「辛くなんてない」
そう、辛くなんてないよ。
京子ちゃんに思いを寄せてる杉浦先輩が幸せになって、京子ちゃんもそれで幸せになれるって思ってる。
二人とも付き合ったらとてもお似合いな二人だから、池田先輩だってそう思ってるに決まってる。
だって、あかりにはわかる。
池田先輩は、杉浦先輩に幸せになってほしいって思ってるって。
千歳「あかりさん」
あかり「なんですか、先輩?」
だから……
千歳「あのな〜」
私は……
千歳「綾乃ちゃんの応援してるの、ちょっとおせっかいや」
その言葉に凍りついた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 14:12:14.63 ID:Hio5M4MX0<> ―千歳―
どうやらウチの言葉に、あかりさんは混乱してるみたいだった。
でも、あかりさんは何か勘違いしてる感じがしたから、少し言っておくことがあった。
あかり「お、おせっかいって……」
千歳「せやな、ウチも綾乃ちゃんと歳納さんがくっつくって言うことには何ら文句は無いんや」
これは本望、だってウチは綾乃ちゃんのことが好きやからな。
一緒に生徒会やってきたこともそうだし、何より1年生から一緒の仲。
最初の頃の綾乃ちゃんと比べたら、今の綾乃ちゃんは話に聞いてる昔の歳納さんと同じくらいの違いがある。
引っ込み思案で、不器用で、何かに夢中になると一直線な、そういう綾乃ちゃんになったのは、歳納さんに会えたからやって思う。
あかり「なら、なんでおせっかいなんですか……」
あかりさんの手の動きが止まって、ウチをジーっと睨んでくる。
やっぱり、あかりさんもこういう顔するんやなって思った。
だって、そうやろ。
ウチらは人間なんや、嫌なものは嫌と感じる。
千歳「そうやね。おせっかいな理由やったな」
今、ウチはどんな顔をしてるのかなんていまいちわからないけど。
多分、今のあかりさんと同じくらいに挑発的な目をしてるんだと思う。
現にウチはあかりさんに嫌悪に近い感情を抱いてるし、それをごまかすつもりなんて更々ない。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 14:22:02.98 ID:Hio5M4MX0<> あかり「池田先輩だって、杉浦先輩と京子ちゃんが結ばれたらうれしいですよね。なんであかりのやってることをおせっかいだなんて言うんですか!」
これほどの大きな声を、生徒会室であかりさんが言ったことは無かったと思う。
よほど、誰かのためにしていることを否定されるのが嫌なんだなって思った。
千歳「うん、うれしいでー。二人が結ばれたら、すっごく嬉しい」
あかり「じゃあ、なんで!」
あかりさんはそう言う。
他人から見たら、分かってないのかって思うんやろう。
不器用な人だなって、可愛そうな人やなって。
自分の気持ちにも気づけない、そういう人なんだなって。
もしも、そういう人だったらウチは気付かせてあげる。
それがその人のためにもなるし、なにより綾乃ちゃんのためにもなるから。
千歳「いつまで、そんな風に振舞うんや?」
あかり「な、何がですか!」
千歳「もうええ、でもこれだけは言わせてな」
だから本当にわかってないんだったらよかった。
それなら、まだ良かったんや。
でも、あかりさん。
貴女は、自分の気持ちと、今やってることの意味も、すべて理解してるから……
千歳「綾乃ちゃんを、あんたの未練の掃き溜めに使わないで」
許すことができへんのや。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 14:32:38.76 ID:Hio5M4MX0<> あかり「は、掃き溜めって……」
千歳「……」
これが綾乃ちゃん以外の女性だったらよかった。
それならウチは何も気にすることなんてなかったから、残酷やけど千鶴に綾乃ちゃん以外の人を、ウチは死んでも守ろうなんて思わへん。
千鶴は血の繋がった妹で、綾乃ちゃんはウチの大好きな人。
だから、それ以外の人が不幸になろうとウチには関係ない。
でも、綾乃ちゃんはあかりさんに相談したんや。
ウチじゃなくて、歳納さんの近くにいたあかりさんに。
千歳「ウチ、今のあかりさん嫌いや」
あかり「!」
このままや、3学期迎える前にあかりさんと絶縁してしまうくらい。
ウチは今のあかりさんが嫌い。
応援してるようにして、綾乃ちゃんに不幸へと落ちて行くだけの坂へと道案内してる。
そんな性質の悪い行為を、平然と行ってるあかりさんを、、よく思うことなんてウチにはできなかった。
あかり「あ、あかりは……」
千歳「今学期の生徒会の仕事はこれで終わりやから、しばらくは生徒会室に来なくていい。いや、来ないで」
あかり「………」
立ち尽くしてるあかりさんに、もうウチから言えることなんて何もない。
まだ残ってる資料の、まとめを終わらせるためにせっせと作業を再開する。
手際のいいあかりさんは、もう少しで終わるだろう。
そして、6個くらいの資料をまとめ終わったところで小さく扉が閉まる音がして、向かいの席を見るとあかりさんの姿は無かった。
かわりに、これお願いしますって書いたメモと一緒に資料が大量に置いてあった。
千歳「まだやることが残ってるんやけどな〜」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 14:43:35.72 ID:Hio5M4MX0<> その資料と、今やっている資料をまとめる。
まぁ、あのままこの部屋で資料整理を続けられるくらいに、あかりさんの肝が据わってたらもうどうにもできなかったけど、出て行ったらなまだどうにかなるのかもしれない。
そんなことを思いながら、まだやるべきことがあるなって思った。
千歳「でも、それは向こうがどうにかしてくれるやろ。ウチが気づいてるんやから、多分あの子は気付いてるやろうし」
変なものだけど、ウチはあのごらく部のメンバーを慕っていて、同時に信頼してる。
綾乃ちゃんに色々な可能性をくれたのがごらく部のメンバーだったからかもしれない。
そのごらく部のあかりさんがあれなのだから、少し心配やけど。
千歳「ウチが言うのは少しばかり荷が重すぎるって言うか、嫉妬丸出しになってまうもんな」
そんな風に言葉を漏らしながら、まったく面白くない状況やなって思う。
前みたいに、ウチは2人の姿を妄想して鼻血流して、あかりさんがティッシュくれるっていう図になればよかったのに。
千歳「ほんま、感情っていうのは厄介なもんやで……」
再び始まる資料まとめ、今日はもう少し時間が掛るんやろうけど、まぁ仕方ないかと、ウチは気合を入れなおした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 14:52:45.02 ID:Hio5M4MX0<> ―ちなつ―
ごらく部には今日私しかいない。
結衣先輩も京子先輩も勉強で忙しいって言うし、あかりちゃんはそもそもこの頃ごらく部に来てないから勘定に入らないわけで、こうして一人過ごすのはある意味で日課みたいになりつつあった。
ちなつ「はぁ〜、やっぱり結衣先輩ってあかりちゃんのこと好きだったんだ」
この前、見た結衣先輩とあかりちゃんは、すでに一悶着があってそれが解消された後の関係のようだった。
泣き崩れてる結衣先輩を優しく抱き締めてるあかりちゃんの姿に、自然と嫉妬とか起きそうだったけどそういうのは無かった。
なんというか、私が追い求めてやまない結衣先輩の印象とはまったく違っていたからかもしれない。
ちなつ「あかりちゃんが進学校を来年受けようとしてるって話が転がり込んできてから、なんかみんな変わっちゃった気がする」
私自身、何か変わったことがあるかというとそういうわけではない。
同時に思うことがあるとすれば、この頃の京子先輩の動向である。
京子先輩は、この頃杉浦先輩と過ごしていることが多いって言う話で、図書室でよく一人勉強しているyらしい。
昔のごらく部を思えば、それが異常事態であることは間違いなかった。
というか、一人で部室にいるのは、まるでぼっち部ではないか? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 18:19:22.72 ID:IjTTBvPr0<> ちなつ「それにしても、偽って生活するのって辛くないのかな?」
このごらく部のメンバーの中で、偽ってないのは私くらいなんじゃないかって思う。
まぁ、それは自惚れてるだけかもしれないけど、少しこれには自信が持てる。
あかりちゃんは偽りながらも、それを承知で気付いてないフリをして、京子先輩は気づいてなくて、結衣先輩はまだ偽っている側に残ってる。
多分、あの中に入ってきた私はかなり異質だったんだろうななんて思う。
ちなつ「はぁ、今の結衣先輩はなんだか私の好きな先輩じゃないんだよね」
今の先輩に私が求めている姿は無くて、それが少しばかり悔しかった。
あかりちゃんは、結衣先輩にとっての特別になれるチャンスがあったのに、それを振った。
それが指し示すことなんてわかってるから、それはそれでかなり一途っだ。
私が結衣先輩に求めているものよりも、遥かに高い思いがあるんだ。
ちなつ「素直になれないか……」
今学期と今年もあとわずかになってきて、色々急ぎ始めてる中で、私は何かをするべき時にあるんじゃないかって思う。
少し前に聞いたことがある、あかりちゃんの夢。
極端にいえば、みんなが幸せになれますようにだったっけ?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 18:30:56.72 ID:IjTTBvPr0<> ちなつ「あかりちゃんらしいけど、あまりよくは無いかな」
このことで誰かがあかりちゃんを叱ってくれてるといいんだけどななんて思いながら、それよりももう一つの問題を思い浮かべる。
あかりちゃんはどうにかなるかもしれないけど、あの2人のことはできる限り早めに真意を確かめたほうがいいと思ってる。
結衣先輩に私は恋をしていたから、なんとなく恋のニュアンスって言うのが分かる。
言い方を悪くすれば、それが愛によっての恋なのか、憧れによっての恋なのかとか、そういうニュアンスのこと。
ちなつ「はぁ、できれば結衣先輩と私のラブロマンスを二人がサポートしてくれたらよかったけど、そういうわけじゃないから荷が重くなるな〜」
そう言って一度背筋をピンと伸ばす。
決して二人の恋が性樹脂ないと面白いからとか、もしくはその逆を望んでするわけじゃない。
そんな後味悪くて最低なことはする気は無い。
でも、他人から見ればそうも見えるかもしれないし、あの2人から最低と言われるかもしれないけど、私はどうにかしてこのことをきかなくちゃいけない。
ちなつ「そうだよね。昔喧嘩しちゃったけど、今は私、みんなと友達なんだから」
友達が不幸になる姿なんて見たくない、それが私の本心だ。
生徒会のみんなだってそうだ。
だから、私は覚悟を決めて聞かなくちゃいけない。
ちなつ「だって、不幸な終わりなんてつまらないもん」
一人の部室で、少しばかり天井を眺めながら、いずれ来るその時を待つしかなかった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 18:42:28.66 ID:IjTTBvPr0<> ―京子―
もう夕日も隠れて暗くなった通学路を、綾乃と一緒に歩く。
最初綾乃の歩幅は、私の後ろくらいだったけど、今は隣を歩いてる。
顔を赤くしながら、もじもじしてる姿はなんだか可愛いけど、一体何に緊張してるんだろうか?
綾乃「と、歳納京子……」
京子「ん〜、どうした?」
綾乃「え、えっとね。明後日ので、デートなんだけどさ」
京子「おう、楽しみにしてるぜ」
いい気分転換になるって思ってる。
綾乃だって長い間の受験勉強と、生徒会の引き継ぎもあって色々疲れもあるだろうから丁度いいやって思ってるだろう。
しかし、綾乃の選んだデートコースが明後日に拝めると思うと、何とも言えない感じになってくる。
これはまさに、ハイキングとかに行くのに似てる。
つまり、明日はわくわくが止まらナイトになる気がする。
綾乃「あ、ありがと……」
京子「なんでお礼されてるんだ私?」
綾乃「う、うるさ〜い」
照れ隠しみたいに大げさに動く綾乃をなだめながら、そろそろ分かれ道だななんて思う。
明後日にはもう一度会える。
本当に綾乃といるといい気分転換になるもんだ。
綾乃「そ、それじゃ、あ、明後日、公園に集合ってことで……」
京子「へへ、それじゃね〜」
手を振りながら綾乃が路地に入っていく姿を見て、私はのんびりと歩き始める。
空は暗くなり始めてて、そろそろ寒さも増してくるななんて思うと、なんだか帰る足が速くなってしまう。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 18:51:25.41 ID:IjTTBvPr0<> 京子「ふぅ〜、寒い寒い」
手袋付けてるのに、手がとても寒くて困ってしまう。
そう思いながら近くにある公園が目に入る。
昔、みんなとよく遊んだ公園で少しだけ寄って行こうかなんて考え始める。
京子「懐かしいし、ちょっと寄っていこう」
どうせ、少しだけの時間だと中に入る。
もう暗いし、かなり寒いこともあって公園には誰もいなかった。
滑り台に登ってみようかなんて考えたけど、お尻が冷たくなりそうだからやめておいた。
京子「懐かしいや、ここでみんなと遊んだな〜」
そのみんなとは、あまりこの頃会っていないのに、私は何を言ってるんだろう。
ここで私、あかりが小学生になってしまうと駄々をこねたんだな〜って思う。
この前、夢で見たあの光景を思い出して、あの日あかりに言った言葉を思い出す。
今思えば、私はなんていうことを言ったんだろうと思う。
京子「あかりは私を幸せにするために一緒にいなきゃいけないの……か」
子供だからって言っていいことと悪いことがあるだろうって思った。
それって、あかりの意思はどうでもいいっていう意味そのものだ。
あかりはそれに困ったように笑って、でも京子ちゃんが幸せなら、あかりうれしいよって言ったんんだ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 19:05:33.50 ID:IjTTBvPr0<> 京子「私、なんでこんなにあかりのことで荒れてるんだよ?」
結局寄ってもいいことなんてあるわけなかったんだと、今気がついたけど後の祭りだった。
入る前と比べれば、あまり良い心境ではないことこの上なかった。
明後日まで家から出ないほうがいいななんて思いながら、帰ろうとして誰かがいるのに気がついた。
京子「私他にも物好きなんているんだな」
小さい声でボソッと言ってその方角を見ると、見慣れたピンク色の髪があった。
誰だろうなんて思う必要もなくて、でもなんでここに来たんだろうって思った。
ちなつ「こんばんは、京子先輩」
京子「ちなつちゃん?どうしてここに?」
そう言っている間に、ちなつちゃんは私の近くにまで歩み寄ってきた。
久しぶりに見るちなつちゃんはなんだか、ちょっとだけ真剣そうな顔をしてて、どこか重たい感じがあった。
だから自然と、息を呑んでしまって、そんな私にそんな緊張されると、まるで京子先輩を苛めてるみたいじゃないですかと、言って笑った。
ちなつ「イジメイケナインジャー!っていう言葉を、思い出しちゃってここに来ちゃいました」
京子「イジメイケナインジャー!って、それ昔あかりが言ったことあるけど、なんで知ってんの?」
ちなつ「京子先輩鈍すぎです。ここはチーの縄張りなの!って言えば思い出します?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/16(月) 19:11:35.87 ID:IjTTBvPr0<> その言葉で、ちなつちゃんが何を言いたいのか分かって、自然と体を守る態勢に入った。
まて、そんな馬鹿な、あのかわいいちなつちゃんがあの、あの!
京子「チーチーだったなんて!」
ちなつ「変な名前付けないでくださいよ!」
京子「い、今更正体を現すとは、だ、だけど、昔の私じゃないぞ!」
ちなつ「はいはい、そんな昔のことなんてもうどうでもいいです。ちょっと京子先輩に聞きたいことがあってきました」
そう言ってちなつちゃんは、ブランコに腰掛けて私を見る。
今さっきの真剣な表情のまま、一体何なんだろうって思いながら、その隣のブランコに腰掛けた。
ちなつ「京子先輩って、好きな人いるんですか?」
京子「なんでそんなこと聞くんだよ」
ちなつ「気になったからですよ。ちなみに私は結衣先輩が大好きです」
ちなつちゃんはどこか誇らしげにそう宣言していた。
本当に自信満々に言ってくれて、私は言葉を失っていたけど、私自身に好きな人なんていない。
昔から、そう今に至るまで本当に好きな人なんていない。
だから、普通に私はいないよって答えた。
だって、いないもんはいないんだから、これ以上の答えは無いだろうなんて思って顔を上げる。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/01/18(水) 01:32:44.69 ID:lDf93weho<> どこでレスしていいかわからん
最後まで頑張ってくれよ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/01/21(土) 11:48:28.11 ID:nIaNV2aqo<> ようやく追いついた
待ってるぞー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/22(日) 13:59:13.08 ID:UMOxHAsQ0<> 京子「ちなつちゃん?」
ちなつちゃんは呆れたように、首を振ってる。
馬鹿にされてるような気がして、少しだけ腹が立ってきて思わず、何かあるなら言えばいいだろと、口にした。
ちなつちゃんはその言葉になんだか含むことがあるのか、意味ありげな笑顔を向けてくる。
ちなつ「京子先輩の初恋って、何時だったんですか?」
京子「だ、だから、好きな人なんて今までできたことないんだよ。なら、恋自体まだ未体験だよ」
ちなつ「そうですか、なら杉浦先輩のことはどう思ってるんですか?」
なんでそこで綾乃の名前を出してくるんだ?
確かに明後日、デート行く約束してるけど、綾乃は友達だ。
そうだよ、なんだよその言い方。
ちなつ「やっぱり、そうなんですよね」
京子「な、何がよ」
酷く苛立っていた。
私のことを分かったように呟くちなつちゃんに、とても苛立っていた。
昔泣かされたことを思い出して、その時みたいに誰かに助けてほしくなる。
誰かに近くにいてほしいって思う。
誰かに支えてほしいって思う。
でも、今は誰もいないから、一人で絶えなくちゃいけないって思うと、少しだけ体が震え始めた。
ちなつ「京子先輩、昔から変わりませんね。まぁ、私はあの時に一回会っただけですから雰囲気は変わったことはわかりますけどね」
京子「わ、私は変わったよ! ちなつちゃんは私とあかりに結衣が過ごしてきた時間なんて知らないからそんなこと言えるんだ!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/22(日) 14:12:37.23 ID:UMOxHAsQ0<> その言葉にちなつちゃんの顔が少し暗くなって、私を正面から見据えてくる。
おかしかった、私が怒っていたはずなのに、ちなつちゃんからはそれ以上に怒っているそんな空気があった。
ちなつ「変わったですか……、今にも泣きそうにしてるじゃないですか?」
京子「そ、そんなことない!」
ちなつ「誰かに近くにいてほしいって思ってるみたいですし」
京子「っ!」
ちなつ「それで変わったっていうんですか」
京子「わ、わた、わたしは……」
足が震えてならなかった。
今さっきまでの楽しい気分が凍りつくみたいに、体中が凍りついてしまう。
公園の寒さよりも、体の底に氷を入れられたみたいに、心が寒くなってく。
なんで、私こんな目に会ってるの……
ちなつ「偽らなくてもいいんですよ。私、ごらく部のみんなはそういう偽りとかいうものからは一番遠くにいる人たちだって思ってました」
京子「い、偽りって、なんだよ」
絞り出すように出た声はそれだけで、ちなつちゃんの言ってることの意味はよくわからなかった。
でも、ちなつちゃんはただ一つ溜息を吐いてから、何かを言おうと口を開いた。
ちなつ「それはですね。あかりちゃんも京子先輩も、素直じゃないってことですよ」
京子「素直じゃないって、なんだよ!」
ちなつ「結衣先輩はもう、その偽りの輪からいつでも出られる場所に立ってますけど、あかりちゃんと京子先輩だけはまだ輪の中をグルグルグルしてるだけですよね」
京子「意味わかんないよ。やめてよ!」
ちなつ「なんでそうやって、理解しようとしないんですか!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/24(火) 15:02:54.38 ID:+AAoU0zT0<> ちなつちゃんの手が肩に乗る。
とても力強く、下を向いていた顔があげるくらいに強い力。
肩が砕けてしまうんじゃないかって思えてきて、私は何も分からなくなってきた。
ちなつ「京子先輩! お願いです、気付いてください!」
何を気付けって言うんだ。
私の口はその言葉を出すことはできなかった。
心で悪態を吐きながら、もう目からあふれ出る涙を止めることができなかった。
純粋に、こうしてちなつちゃんに責められていることが怖くて、もう考えることなんてなにもなかった。
京子「こわい、こわいよ」
ちなつ「京子先輩……」
京子「わかんない、わかんないよ。なんで、こんな風に怒られなくちゃいけないの……」
誰か助けに来て、そう心の中で願いながら誰も助けに来てくれない。
もう動きたくなかった。
地面に着いた膝が寒くなって、体全体が寒さに震えて、でも頬に感じる暖かい涙だけが妙に優しく感じた。
悲しいから、怖いから、それから少しでも気を紛らわすように、私は泣き続けるしかなかった。
ちなつ「どうして、わかんないんですか」
京子「だれか……」
耳を塞いで、もう何も聞こえないように私は振舞う。
本当に何も聞きたくないから、早く終わってくれればいいなんてそんなことを思ってた。
だから、ちなつちゃんの手が私から離れても、私は耳から手を外そうとしなかった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/24(火) 15:24:06.04 ID:+AAoU0zT0<> 離れてちなつちゃんが公園入口のほうに顔を向けている。
何も聞こえないから、ただそれを茫然と眺めていた。
ちなつちゃんの顔はまだ変わってない、私に対してしていた真剣な表情のままに、その入り口を見ていて、やがて口を開いて何かを言っているみたいだった。
誰かいるってことはわかったけど、その誰かが分からない。
耳を塞いでいた手を外すと、耳に感じる冷たい外気と、周りの音。
そして、ちなつちゃんの声。
ちなつ「なんで、そんな風に振舞えるの」
???「ちなつちゃんには関係ないよ」
そう言葉が聞こえて、ちなつちゃんとは反対側にその声の主が立つ。
同じ目線の高さにある赤い髪に丸い目、そして安心させてくれるような微笑みがあった。
すぐ誰かわかった。
あかり「京子ちゃん、大丈夫?」
京子「あ…あかり?」
あかり「うん、あかりだよ」
そう言って私の手をギュっとしてくれる。
冷たい冷たい手が、暖かさに包まれるのが分かって、でもなんだか複雑に心が痛んだ。
そんな私の心の痛みを分かってるようにちなつちゃんが、私を見下ろしながら言う。
ちなつ「後悔しちゃいますよ」
京子「わからないよ」
ちなつ「そうですか、でも最後に一つだけ」
そう言ってちなつちゃんは、どこか悲しそうな顔をした。
今さっきまでのまじめな感じじゃなくて、ただ悲しそうに。
ちなつ「不幸になるのが京子先輩だけなんてことないんですよ。他に巻き添えになる人のこと考えてください」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/24(火) 15:42:26.04 ID:+AAoU0zT0<> それだけ言ってちなつちゃんは公園から姿を消して、私のそばにいてくれるあかりだけが残った。
まだ泣きやまない私を、あかりがなだめるように背中を優しく撫でてくれる。
こぼれおちる涙がしょっぱくて、でも手を動かせなくて私はしばらく泣いたままだった
あかり「京子ちゃん、ごめんね。あかり、京子ちゃんが泣く前にここに来られなかった」
そう言ってあかりは私を後ろから抱き締めてくれる。
懐かしかった。
泣いてる時、こうやって抱き締めてくれることが多かったから、でも、それが少しだけ私の心を痛めた。
あかり「約束、守れなかったね……」
約束、そう約束。
あかりは私を幸せにするために一緒にいなくちゃいけない……
私は今不幸せだった。
ちなつちゃんに責められて、涙を流して、またあかりに気遣ってもらっている。
あかりが近くにいると、心が痛いんだ。
ムカムカしてくるとは違うけど、痛いんだ。
だから、自然と。
私はあかりの手を振り切って。
走り出した。
後ろから私を呼ぶ声が聞こえる。
心配してくれる音色が聞こえてくる。
でも、今のそれが私には猛毒のように感じられて。
逃げ出さずにいられなかった。
公園を飛び出して、そのまま急いで家に向かう私の目からは、また涙がこぼれていた。
どうして、涙が零れるの?
空を見上げると、白いものがちらほらと目について、雪が降ってきたことを理解した。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/01/24(火) 15:44:52.45 ID:+AAoU0zT0<> 今回はここまでで。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 14:02:58.72 ID:8mwsMNZS0<> ―あかり―
京子ちゃんが走り去ってから、雪が降るまでの間をぼんやりと過ごしてた。
いつもみたいに困ったように笑おうとして、笑ってみたけど携帯のディスプレイに反射する顔は、なんだかぐんにゃりしてた。
約束守れなかったね。
京子ちゃんが幸せになれたらいい、泣かせるようなこと無いようにってしてきたのに、今日は怖い思いをさせた。
あかり「えへへ、お、おかしいな」
携帯のディスプレイに落ちる雨、あかりの天気予報はいつも晴れなのに、今日は雨になっちゃった。
ちなつちゃんの言葉が頭を過って、昼間に池田先輩に言われたことに近いことを言われた。
あかりは京子ちゃんが幸せになれるようにって思ったから、約束したから、あの日に約束したんだから。
あかり「泣かないでよ、あかりは泣いちゃだめなんだから」
瞼を擦っても、涙はまだまだ溢れてくる。
京子ちゃんが泣いちゃったから?
違う、違うよって、分かってるから言葉が詰まちゃう。
あかり「わかってる、わかってるよ」
だんだんと雪の勢いが強くなってきて、ここにいたら風邪ひいちゃう気がした。
あまり体は丈夫じゃないことくらいわかってるよ。
でも、この雪の中なら誰にも見つからないよ。
だから、あかりはこの中で立ち尽くして、まだ溢れてくる涙を拭ってた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 14:15:47.72 ID:8mwsMNZS0<> 止めどなく溢れてくる。
溢れて溢れて止まらないのは、分かってるけど知らんぷりしてるからだって。
子供じゃないんだからって言われたら、そうだねって言うしかなくて、やっぱりあかりは馬鹿なんだなって思う。
あかり「馬鹿でもいい、卑怯だって言われてもいい、嫌いだって言われてもいい!」
京子ちゃんが、京子ちゃんが幸せだって言ってくれるなら、あかりが何言われたっていい!
約束をあかりは守る。
守って、守って、京子ちゃんが幸せになれるようにあかりが頑張ればいいの。
でも、ならなんであかりは来年に進学校を受験しようって考えてるの?
その答えをあかりは知ってて、それが一番あかりにとって弱虫なところなのかもしれない。
杉浦先輩と京子ちゃんが付き合って、それで京子ちゃんが幸せになって、あかりは静かに京子ちゃんから離れるの。
離れないといけない、京子ちゃんの幸せの邪魔をしちゃうから。
だって、今さっき京子ちゃんはあかりから逃げ出してしまったから。
あかり「避けられてるのもわかってる」
でも、京子ちゃんが幸せになれるように頑張る。
それだけでも、あかりは………
とっても……
あかり「しあわせ…なんだよ?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 14:25:36.78 ID:8mwsMNZS0<> 京子ちゃんが幸せそうに笑ったり、何か楽しそうなことしたり、何か間違えて悔しそうにしてるけど内心楽しそうにしてるとことか、そういう風に振舞う京子ちゃんの幸せの踏み台になれるだけでも、あかりは幸せなの。
だって、そう。
あかりはね。
あかり「京子ちゃんのこと、本当に好きだから」
池田先輩に言われたこと、分かるよ。
杉浦先輩に私が京子ちゃんに思いを告げることのできないことを、押しつけるようにしてることも理解してる。
本当なら、京子ちゃんに好きだって。大好きだって、約束とかそういうの関係なしに大好きだって。
あの日の約束が、あかりにはとてもうれしかったんだって、告げてあげたい。
あかり「でも、あかり臆病で、馬鹿で、ドジだから」
素直じゃない、素直じゃなくて、京子ちゃんに押しつけるように杉浦先輩を動かしてる。
応援してるように見えて、とても醜いことしてる。
京子ちゃんが何を考えてるのかなんてわからない、杉浦先輩と付き合うかもしれない。
それでもいい、付き合ったっていい。
京子ちゃんへの思いも、全部全部無くしてくれるくらいに、お似合いな二人組になってほしい。
結衣ちゃんの告白を断って、辿りついた結末がこんなことなんだ。
あかり「しょうがないよ」
あかりは京子ちゃんにとって幸せになるための道具だって思ってるんだから…… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 14:37:48.76 ID:8mwsMNZS0<> 道具だから、京子ちゃんが幸せになれるように動けばいい道具だから。
だから、京子ちゃんが泣かないように尽くしたい。
京子ちゃんが楽しめるように尽くしたい。
あかりはそう思ってる。
あかり「だから、好きだなんて思っちゃいけないんだ」
あかりが道具じゃなくなるのは、京子ちゃんが幸せだよって言ってくれた時だけ、本当の意味で幸せだよって言ってくれた時だけ。
今は昼間じゃないけど、前みたいに空を見上げる。
顔に落ちてくる雪の冷たさが、頬を流れた涙の暖かさを消し去っていく。
前は昼間なのに、流れ星が流れてほしいって祈った。
中学生に上がって、京子ちゃんと一緒に日々を過ごして、好きなんだって本当に気付いてしまって。
心が酷く痛んでいった。
あかり「明後日で、終わるのかな?」
明後日で京子ちゃんと杉浦先輩が付き合ってくれたら、この心の痛みは全部消えてなくなるのかな?
こんな風に、悩むことなんてなくなるのかな?
考えても答えなんて出てこないのに、あかりは祈るように考え続ける。
私の元に星は降ってこない。
来ることなんてないから、願ってもそんなことあるわけないから。
あかり「だから、この気持ちをどこかに連れてってよ……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 14:42:48.77 ID:8mwsMNZS0<> 雪はまだ止まない。
涙の跡が冷たくなって、頬に刺激が加わり始めると、体全体がおもしろいくらいに震えてきた。
体が温かさを求めてる。
でも、それは心のほうなんだなって思う。
どこまでも、凍りついてしまえばいいのにって思っても、この気持ちだけは凍りつかない。
あかり「こういうところだけ、なんで頑固なのかな」
独り言、これ以上寒くなると体も冷えちゃう。
少ししたら帰ろう。
でも、あと少しだけ、此処にいたなる。
この公園を抜けたら、あかりはまた道具のあかりに戻らなくちゃいけないから。
だから今だけでいいから、偽りのないあかりでいたかったから。
雪は多くなって地面も雪で塗れていて、明後日二人のデートは雪の街なんだなって思って。
最後に涙がこぼれた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 15:03:04.90 ID:8mwsMNZS0<> ―結衣―
結衣「わざわざ報告してくれるのは、おせっかいじゃないかな?」
電話を片手にやっていたはずのゲーム。
でも今はゲームの電源まで落として話をしていた。
ちなつ『ごめんなさい結衣先輩、でもやっぱり伝えておきたくて』
結衣「あの2人のことだよね」
ちなつ『はい、そうです』
ちなつちゃんが何を言いたいのか、私は少しだけ理解できる。
少しだけっていうのは、私もまだごらく部偽り科に所属してるからかもしれない。
ちなつちゃんは恋愛に結構真剣な方だって前から思ってたけど、これほどなんて思わなかった。
結衣「ちなつちゃんはどう思ってるの?」
ちなつ『正直、絶対にいい結果にならないと思います』
結衣「即答しちゃうんだね」
とはいいながらも、私は今のあの2人の様子を見てちなつちゃんと同じ感想であった。
どちらにせよ、いい結果になるとは思えないことは確かだった。
今さっき開けたばかりのポテトチップスには、まだ手をつけていないままで、このままじゃ湿気ちゃうかななんて思った。
ちなつ『結衣先輩はどう思ってるんです?』
結衣「まぁ、残念だけどちなつちゃんと同じ感想かな?」
そう思うしかないってわかっていた。
あかりだって、京子だって、本心を偽ってることはわかってる。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 15:44:53.41 ID:8mwsMNZS0<> あかりは偽りながらも、それを認めて偽り続けて。
京子は偽ってるのを分かってるけど、それを理解しようとしてない。
そう考えると、本当にちなつちゃんは器用な子なんだなって思えるよ。
ちなつ『残念って、私結衣先輩からも信頼されてないんですかね?』
結衣「そういうわけじゃないよ。ただね、やっぱり、ちなつちゃんは私たちからすると眩しすぎるんだ」
これは本当に私が思っている感想だ。
ちなつちゃんはごらく部に入ってきたときから眩しかった。
自分に素直で、まっすぐだし、思いっきり自信を持ってるそんな女の子。
私たちみたいに、お互い何か偽りながら生活を送ってきたことなんてないんだって思う。
ちなつ『眩しすぎるですか?』
結衣「うん、そういうこと。ある意味、そこはちなつちゃんに憧れちゃうよ」
ちなつ『結衣先輩なら、すぐにそうなれると思いますけどね』
そう言ってから、少しばかりの沈黙があった。
なんだか、ちなつちゃんに聞かれることが少しだけ予想できた。
こうして電話してきてくれたことは、ちなつちゃんなりに考えたことなんだと思う。
もう、無視できないんだろうけど、私はちなつちゃんの言葉を待っていた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 16:17:20.07 ID:8mwsMNZS0<> ちなつ『結衣先輩は、あかりちゃんに、どうなってほしいんですか?』
結衣「……」
あかりにどうなってほしいのか、それがちなつちゃんの聞いてきたことだった。
少しだけ部屋の中が寒くなった気がしたけど、それは勘違いだってわかる。
私自身が少し寒くなってるんだってわかった。
私があかりに望んでいることか……
結衣「ちなつちゃんは、どうなってほしいの?」
ちなつ『先に結衣先輩からお願いします』
こちらの提案を完全に拒否されてしまった。
なんだか、ちなつちゃんの積極的な言動に、私はよく押されちゃうみたいだなって思った。
あかりにどうなってほしいのか、私は一度あかりに手を出して、それを許してもらえた身なわけである。
そんな私があかりにどうなってほしいのかと考えて、この前してしまった約束を思い出す。
そうだ、そうだよね。
結衣「あかりには、素直になってほしいかな」
ちなつ『素直ですか?』
結衣「うん、あかりは素直じゃないよ。昔はそうでもなかったけど、小学校上級生になるくらいから素直じゃなくなった気がする」
多分、私と京子が中学校に上がった時だろうか?
あの日から、あかり周りの人が幸せになれるようにっていう風に考えるようになった。
その根っこにあるのは多分、京子の幸せなんだろうけどね。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 16:39:06.91 ID:8mwsMNZS0<> 結衣「ちなつちゃんも同じ考えなんでしょ?」
ちなつ『当たり前です』
本当に自信満々に即答してくる。
ちなつ『友達が不幸な恋をしてるんですよ。それをどうにかしようって思うのは友達として当然です』
結衣「不幸な恋してるって……、まぁ確かにあの2人は不幸な恋をしてるね」
多分、この先の展開は若干だけ予想できる。
あの2人は恋なんてしないほうがよかったと、そんな思い出を抱えることになるだろう。
それがちなつちゃんとしては許せないことなんだろうなって思った。
ちなつ『結衣先輩も、そんな恋したくないですよね?』
結衣「そうだね、私の恋は本当にひどいものだったから」
ちなつ『あかりちゃんですよね?』
その瞬間だけ、心臓がまじめに跳ね上がった。
なぜ知っているって言う感じで、思わず受話器を落としかけたほどで、気付いたら笑い声が聞こえてきた。
ちなつ『あははは、結衣先輩動揺しすぎです』
結衣「いや、動揺しないほうがおかしいっていうか、なんで知ってん―――いや、私はあかりに恋したことなんてないよ」
ちなつ『今頃、まじめに訂正しても遅いですよ。というか、この前抱き合ってるの見ましたよ?』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 16:46:35.24 ID:8mwsMNZS0<> その言葉で完全に私の思考は停止しかけていた。
なんてことだ、よりにもよってちなつちゃんに目撃されていたとは!
結衣「え、えっとね。あれは転びそうになった私をですね」
ちなつ『結衣先輩泣いてましたよね?』
結衣「目にゴミが……」
ちなつ『こういうことで無理なごまかしやめませんか?』
結衣「ごめんなさい」
ちなつちゃんの覇気のこもった言葉に、何も言えなくなってただ一度謝罪した。
そこで、また笑い声が入ってから少しだけ冷静な声が届く。
ちなつ『でも、結衣先輩が好きになったあかりちゃんが、このまま素直になれないで不幸になってくのは、見てられないよ』
結衣「ちなつちゃん……」
ちなつ『だからちょっと頼みたいことがあるんです。これは、もう私じゃできないことだから』
その言葉は、私を頼っているということが分かるくらいに真剣な声だった。
私にちなつちゃんは何をさせようとしてるのか、それはあまり分からなかったけど、それがあかりのためになるかを聞いてから考えるのは悪くなかった。
結衣「うん、わかったよ、ちなつちゃん」
ちなつ『そういう実行力のある結衣先輩は好きですよ』
ちなつちゃんは最後にそう言って、私に頼みたいことを言ってくれた。
外の雪はまだ強いままだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/26(木) 16:47:27.95 ID:8mwsMNZS0<> 今日はここまでになります。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/31(火) 13:41:39.50 ID:WbNtukUV0<> ―京子―
京子「……」
心の中のイライラはまだなくなりそうになかった。
見上げた天井、今日降った雪と同じくらいに真っ白で、このもやもやもそういう淡い白だったらいい。
そう考えても、やっぱりそんなことは無いんだってわかる。
今さっきの公園での一件、昔から変わらない私をちなつちゃんに指摘されて、とても怖かった。
自然と枕を抱きよせる。
抱き締めると辛さとか、悲しみとかに耐えられるなんて誰かが言ってたけど、別にそんなことあるわけない。
京子「ううっ……」
抱き締めれば抱きしめるほどに、ちなつちゃんの言葉が気にかかる。
気にかかって、気にかかり続ける。
素直に、ただ素直になってほしいと。
いつか見た夢で、私は言われた。
素直じゃないと、歳納京子は素直じゃないんだと。
偽っている、私は何を偽っているのかなんてわからない。
分からないから、ならいいじゃないかって思う。
枕に顔を埋めて、深呼吸しながら頭の中にあるもやもやのなんと鬱陶しいことか。
京子「もう、なんなんだよ!」
気持ちに負けて、思いっきり枕を投げ捨てる。
壁に当たって落ちて、静かになった部屋の中で、枕の近くにある携帯が目につく。
このイライラを解消したい、解消するのにいい相手がいるじゃないかって、分かってる。
綾乃、綾乃に電話してみて、楽しく会話して、私のもやもやを解消したい。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/31(火) 13:51:40.45 ID:WbNtukUV0<> 携帯に手を伸ばして、電話帳を開く。
いくつもあるわけじゃない電話帳の中、さ行から『杉浦綾乃』を押す。
電話番号にメールアドレスを見てから、私は何を話すべきなのか考えていた。
明後日のデートの話?
それとも今さっきのことを話して慰めてもらいたいの?
ただ、気分転換がしたいの?
何を求めて綾乃に電話をしたいのか、ただ単純に何もないのに電話するなんてこと、する気になれなかった。
京子「なんでかな」
自然と指が戻りボタンを押して、あ行の電話帳を映す。
あ行の中にある『赤座あかり』を押す。
同じように映る電話番号とメールアドレス。
それがなんだか、とても新鮮に見えて、それがなんでなのかを思い出して、この頃全く電話もメールもしてなかったからだって気付いた。
この電話帳の『赤座あかり』を開いたのは、本当に久しぶりなことだった。
京子「あかり……」
なんでそうしたかなんてわからない。
すでに携帯は私の耳についていた。
何度かのコール音、自身の鼓動は一定のリズムを刻んだままで、どこか虚ろな私は何を話そうかなんて考えようとしなかった。
そして、少ししてから出る音が聞こえた。
京子「……」
あかり『……』
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/31(火) 14:03:49.17 ID:WbNtukUV0<> 沈黙、電話をかけた私は何も言うことがなくて。
あかりも何も言わないで黙りこんでいた。
電話をしたこと、それだけでもなんだか頭が重たくなるような行為なのに、今はそんなことは無かった。
ただ、真っ白に何も考えていない私が、あかりに電話をしただけだ。
部屋に響く時計の音と、隣の部屋から聞こえるテレビの音。
それ以外に音は何もなくて、少しして携帯の通話時間を見たら5分経っていた。
あかり『……切るよ?』
ようやく聞こえてきた声はそれだった。
あかりの声は、公園で会った時より弱弱しくて、それがなんだか胸を痛くする。
何か言わなくちゃいけない気はした。
それでも、何を言えばいいのかなんて考えられなくて、声という手を伸ばしてもやっぱり届かない気がした。
あかり『……京子ちゃん』
京子「……なに?」
やっと出た言葉がこれで、体全体が縛られるような気がした。
もっと何か言うことあるはずって気がしたけど、何も考えられない。
怠惰でなんの意味もない会話を、途切れさせないようにしてるみたいで、女々しく感じる。
あかり『今日ね……』
あかりがしゃべり始めるのを、私は待っていたのかもしれない。
だから、もう何も言わないでそのお話に耳を傾けることにした。
私からしゃべることなんて、今は何もないから。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/01/31(火) 14:15:08.59 ID:WbNtukUV0<> あかり『池田先輩にね………、嫌いっていわれちゃったの』
多分、それは千歳のほうだろうなって思った。
でも、あかりが千歳が嫌がるようなことをするのかって言われたら、信じられないというのがぼんやりとした私の感想だ。
でも私は同情の言葉も何もない、ただ言葉を拾いながら頭に入れて行くのが今できる私の精一杯だった。
あかり『えへへ、それでね。あかり悲しくなっちゃったの』
何が悲しいのか、あかりはいつも笑ってばかりだから、悲しいとかそういうのから無縁の生活を送ってるじゃないか。
そう言ってあげればいいのに、私は口を閉ざしたままだ。
あかり『人のためにやってきたことなのに、こういう風に否定されちゃったから……』
そうあかりは淡々と言葉を紡ぐ。
ただ無気力に、言葉が紡がれて、私はそれをただ漠然と頭に入れていくだけ。
でも、学校の授業に比べれば、私の心はどこか真剣にその話を聞いていた。
頭は漠然となのに、心はどこか真剣に、あかりの言葉を聞いていた。
あかり『やってきたこと、御節介だってきっぱり言われちゃって。あかりもその言葉にカーっとなっちゃって……』
あかりでも怒るようなことを千歳は言ったのかって思って、でも、それを確認して何をどうしたいのか?
まったく、わからなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/02/01(水) 10:41:28.23 ID:Z9sHH/Bxo<> 次待ってます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/02/02(木) 00:59:26.20 ID:Dy8Iuwxno<> 期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/02/06(月) 13:32:07.35 ID:SZB/8jjB0<> あかり『おかしいよね、こんなこと京子ちゃんに言わなくてもいいことなのにね。あかり、今日おかしいよね』
何も言葉が見つからなかった。
電話していることも、電話したことも、何を思ってあかりの話を聞いているのかも。
私には何も分からなかった。
あかり『京子ちゃんのピンチに、すぐに駆け付けられなくてごめんね』
今日のあかりは謝ってばっかりで、なんだか胸が締め付けられるように痛む。
震えるような声のあかりを想像しようとする頭を、必死に押さえつけながら、悶えるように電話から聞こえる声を聞き続ける。
あかり『京子ちゃん、明後日杉浦先輩とデートなんでしょ?』
京子「そ、そうだよ……」
一番最初に出したその声は、どこか震えていた。
なんでこんなに震えているのかなんてわからなくて、でも私はそれを口にしたことを大きく恐れていた。
どうして怖がってるのかもわからなくて、答えてから後悔ばかりが募った。
あかり『がんばってね……』
京子「う、うん」
あかり『ごめんね、京子ちゃんから電話してくれたのに、あかりが話してばっかだったね』
そう言っているあかりが、なんだか悲しく笑っているように感じた。
だって、そう思えるくらいに声が震えているから。
私も同じくらいに声が震えてたけど、口数少なくしてるからあかりが気づいている感じは無かった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/02/11(土) 15:08:46.99 ID:7UYDiLV/0<> あかり『……』
あかりの言葉に、私は何も返す言葉が見つからなかった。
なんで、言葉選びに慎重になってるいるのかわからなかった。
言葉を返すくらい簡単なことじゃないかって、そう思ってもやっぱり言葉は出ないままで、気づけば何もないままに時間だけが過ぎていた。
こんな気まずい電話は多分初めてなんじゃないかってくらいに思えて、だから終わらせ方もわからなくて。
あかり『京子ちゃん』
京子「あ、あかり?」
あかり『切っても大丈夫だよ。京子ちゃ――』
だから、そう言って助け舟みたいに渡された言葉に。
私は瞬間的に電話を切っていた。
最低な切り方、おやすみもさよならも、何もない切り方だ。
それを私はあかりに対してやった。
京子「……」
携帯を机に放り投げる。
独特な金属とプラスチックがぶつかり合う音がしてから、部屋の中はすごく静かになった。
あかりは辛そうにしてた。
声だけでもわかるくらいに、辛そうだった。
だけど、私はその辛さを分かろうともしなかったし、それを救いあげようなんて思わなかった。
だから会話をしなかったのかって言われたら、多分そうじゃないんだと思う。
いくらか頭で考えて、でもただ分かることがあるとすれば。
京子「聞きたくなかった……」
そう、聞きたくなかったから。
だから会話を繋げたくなかった、だから言葉が見つからなかった。
だって、もし言葉を間違えたら聞くことになってしまう。
辛そうで、でも意固地になって明るく振舞うあかりの声を。
頭から布団を被って、私はまどろみに飛び込む。
眠って楽になれるかなんてわからないけど、頭はジンジンするばかりで、逃げ出すこと以外に考えてることは無かった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/02/11(土) 15:29:41.66 ID:7UYDiLV/0<> 頭の中にあるのはぼんやりとした思考だけだった。
起きたばかりの頭で昨日のことを思い出す。
昨日は何もしないでただ家の中でぼーっとしているような日だった。
朝起きて、ご飯食べて、こたつでのんびりして、テレビはつまらないから見ないで、気付いたら外は暗くなっていた。
その代わり、夜に来たメールを読んだ記憶だけはある。
差出人は綾乃で、それが今日のデートのことだってことはわかってた。
そして、集合一時間半前くらいに私は目を覚ました。
京子「んん……」
体中から疲れは結構抜けた気がしたけど、思い出しそうになると体中がだるくなりそうだった。
だからあまり考えないようにして、出かける準備を始める。
休日で私が起きてくると、何か用事があるんだなってことを親は理解してる。
手早くご飯を食べて、着替える。
うん、特に問題は無い!
いつも通りに家を飛び出して、そのまま駅にある公園に向かう。
カップルごっこクリスマスデート編をした公園で待ち合わせである。
京子「まぁ、いい気分転換になるでしょ」
そんな気持ちで足を進めようとして、二日前のちなつちゃんの言葉が頭を過る。
あの公園で、言われたこと、他に不幸になる人がいるっていう言葉。
私が不幸にならないために、あかりがいるんだって昔思っていた自分。
でもそれって、今でも私はそう思ってるってことなのかな? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/02/21(火) 16:03:17.32 ID:4K10ejny0<> 京子「そんなことない……」
他に不幸になる人なんているわけないし、あかりが私の不幸と関係あるはずない。
あかりだって、私がした約束なんてとっくに解消してもいいはずなんだ。
あと数分で着くであろう公園を目指しながら、心の中にかげるように出ている大きな雲。
それを私は無理やり払いのけることもできず、ただ漂わせたままだった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/02/21(火) 16:11:29.16 ID:4K10ejny0<> 京子「ごめん、ちょっと遅れたわ〜」
綾乃「ん、べ、別に遅れてないわよ! わ、私が早く来すぎただけだし……」
公園に着いたらすでに待ち合わせに綾乃の姿があった。
前やったクリスマスデートごっこの日よりも、なんだか気合が入ってる服装をしてらっしゃるわけで、こんないつも通りの恰好でよかったのかと少しだけ身形を確認してしまう。
綾乃「ど、どうしたのよ」
京子「いやさ、綾乃すっごい気合入ってる服装だから、その私釣り合ってないな〜なんて思ってさ」
綾乃「いや、か、可愛いわよ、って〜、何言ってんの私!」
京子「おっ、そう? サンキュー、綾乃もすっごい可愛いよ」
私の言葉に何やら顔真っ赤にしている綾乃、可愛いって言われなれてないんだな〜とか思いながら、少しばかり心の中のしこりがすっきりした気がした。
完全ってわけじゃないけど、ここまで来るまでの間の憂鬱感は無くなった感じである。
綾乃「う〜、いきなりこんなんで大丈夫なのかしら私」
なんだか悩んでいる綾乃。でも、こっちは今日を楽しみにしていたのだから、早くデートコースへと案内してほしいわけである。
エスコートよろしくの意味を込めて、手を握るとなんだか顔をすごく赤くしてる綾乃がいた。
綾乃「と、歳納京子、な、なにすんのよ!」
京子「デートなんだからさ〜、手くらいは握ろうぜ。それでどこに連れてってくれるんだい?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/02/21(火) 16:25:09.34 ID:4K10ejny0<> ―あかり―
こんなことしちゃいけないってわかってる。
分かってるけど……
あかり「二人ともうまくいってるみたいだね」
そんなことを言いながら、手を繋いで歩く二人の後を追っていた。
本当は会うことも、出会うこともないように家で静かにするべきだった。
だけど、それをさせてくれなかった人がいた。
結衣「うん、そうだね」
それが隣にいる結衣ちゃんだった。
朝、今日でもう終わっちゃうんだなって思ってたら、電話が掛ってきた。
結衣ちゃんからで、ちょっと買い物に手伝ってって言われたから、気分転換に良いかなって思ったところが間違え立ったって気付けなかったんだ。
結衣「あかり、怒ってる?」
あかり「……それなりに怒ってるよ」
結衣「ごめんね、でも買い物があるのは本当だからさ」
そう言って結衣ちゃんは笑って、その表情を見ながら早く買い物を終わらせられればいいかなんて思った。
あかりは、できれば杉浦先輩の恋路を邪魔したくないから、京子ちゃんと付き合えるようになってほしいって思ってる。
でも、結衣ちゃんがこんなことを考えるとは思えないから、誰かに頼まれたのかなって思った。
結衣「あかり、追うよ」
もう二人を追うことだけが目的になってる気がした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/02/23(木) 09:56:25.24 ID:LPaB04Gio<> 次待ってます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/02/23(木) 15:07:18.74 ID:I+3W8VYSo<> 期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/02(金) 15:03:08.33 ID:mvhoIL+y0<> 少し前を歩く京子ちゃんと杉浦先輩。
傍から見ても、杉浦先輩の服装はとっても力が入ってて、とっても可愛かった。
今日のために杉浦先輩はいっぱい準備したって聞いたから、ここまで頑張ってきたのは無駄じゃないって思えた。
でも……
結衣「ふ〜ん、綾乃が珍しく京子を引っ張ってる形なのか」
あかり「そ、そうだね……」
京子ちゃんの手を杉浦先輩が握っているのを見ると、自然と視線を外しちゃう。
外してから視線を戻して、笑いあってる姿を見ると心が痛くなる。
こういうことがあるってわかってたから、家にいようって思ったはずなのに……
しばらくの間、京子ちゃんと杉浦先輩は街の中をのんびり歩きまわってた。
どこかに入るわけじゃなくて、ただ街を見て回って二人で話しながらときどき顔を赤くしたりしてた。
幸せそうな二人の後を追ってると、胸が痛んで辛かった。
あかり「結衣ちゃん、買い物終わらせようよ」
こんな行為から早く逃げたいからそう提案して、結衣ちゃんの足が止まった。
振り返る結衣ちゃんは、いつも通りの顔だったけど、あかりの願いを聞いてくれた。
結衣「それもそうだね、ごめんごめん」
一度だけ、二人の背中を見てから近くのデパートに入る。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/02(金) 15:10:16.64 ID:mvhoIL+y0<> デパートに入って、二人の姿が見えなくなると体の痛みとかが消え去った気がした。
でも、同時になんだかさみしく思った。
結衣「それじゃ、買い物だね」
あかり「……うん」
二人の姿が見えないことが、なんだかすごく不快に思えた。
なんでって思ってもそれがなんだかわからないフリをすることしか、できないから結衣ちゃんの背中を追って歩く。
文房具のコーナー、上に貼られてる文字が目に入る。
『受験生応援フェア』
結衣「今日、文房具が安いらしくてさ。買いだめしようって思って」
あかり「そ、そうなんだ」
来年、私が進学校を受けること、京子ちゃんにはまだ言ってないなって思った。
別にいいよね。言わなくても、どうせ今日で京子ちゃんへの気持ちに区切りがつくんだから。
そのために……
結衣「あかり、ちょっとこれ持って」
あかり「うん、わかったよ」
渡された籠の中に、色々とノートとか鉛筆が入ってくる。
糊もそうだし、修正ペンも入ってくる。
こんなに買う必要なんてあるのかなって思ったけど、別に結衣ちゃんが買うものにとやかく言うつもりは無かった。
でも、それにしてはこの量、まるで2人分買ってるくらいの量だった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/02(金) 15:17:58.77 ID:mvhoIL+y0<> あかり「こんなに何に使うの?」
結衣「んー、ちょっとね」
あかり「買い溜めするって量じゃないんじゃないかな?」
結衣「まぁ、いいからいいから」
そう言って籠の中にいっぱい物が入ってくる。
持ちながら、頭の中で今見えない二人の姿を思う。
まだ街の中を歩いてるのかな?
どこかのお店に入ってるのかな?
笑いあって、いいムードになって、二人とも顔を赤くしたりしてるのかなって考える。
結衣「……あかり」
あかり「な、なに」
目の前がちょっとだけ滲んで、それがなんでなのかよくわからなかった。
開いてるほうの手で目を擦るとそれは無くなったけど、結衣ちゃんが眼を細くしてこっちを見てた。
結衣「……ニ人のこと気になる?」
あかり「ううん、そんなことないよ」
結衣「そう、そうだよね。あかりは二人のこと気にしないんだよね」
結衣ちゃんの手があかりの持ってる籠を取る。
両手が軽くなって、結衣ちゃんがレジに向かうのを見ながら、今さっきの滲んだ光景の原因を思う。
あかり「あかり、嫌な子になってる……」
言葉を漏らして、ちょっとだけ胸にある本音を吐き出す。
でも、楽になんてならなくて、ただその場に立っているだけでも辛い感じがした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/02(金) 15:26:59.19 ID:mvhoIL+y0<> 結衣「おまたせ」
あかり「……うん」
結衣「一階に喫茶店があるから、そこに入ろうか?」
結衣ちゃんに手を握られて、そのままエレベーターの中に入る。
握ってくれる手は暖かかったけど、全然癒された気はしなかった。
むしろ、心はなんだか冷たくなってる気がしてきて、結衣ちゃんの行く場所に付いて行けばいいのかななんて思い始めてた。
あかり「……京子ちゃん」
自然と京子ちゃんの名前が口から漏れた。
無意識に出てきたその名前にハッとした。
でも、結衣ちゃんは何も言わなくて、だからあかりも何も言わないでエレベーターが下に付いた。
結衣「着いたよ」
あかり「あ、うん」
そして扉が開いた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/03/17(土) 04:42:15.86 ID:QR9qc2Noo<> 切ない... <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/03/26(月) 11:33:13.90 ID:yon/ddsno<> やっと追いついた
切ないよぉ…… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/29(木) 10:13:08.31 ID:+2e9BTx+0<> 綾乃「あれ、船見さん?」
だからその言葉に、体が止まる。
顔を上げるとそこにいたのは杉浦先輩だった。
途端に頭が真っ白になったのは、気のせいじゃなくてとっさに結衣ちゃんの背中に隠れた。
今、杉浦先輩の顔を見たくなかった。
理由は知ってる。だから見たくない。
結衣「杉浦さん、こんにちは」
綾乃「それに赤座さんも」
あかり「こ、こんにちは」
ぼそぼそっとした声で挨拶する。
このまま、無言でエレベーターの閉まるボタンを押して違う階に行きたいって思った。
だって、杉浦先輩がいるってことは近くにいるはずだから。
結衣「一人で来たの?」
結衣ちゃんの問いかけに杉浦先輩が焦ったように赤くなったのが分かった。
頬に赤みがあって、なんだか指摘されたことがうれしいし、恥ずかしい。
そんな初々しい反応で、それがとても羨ましかった。
綾乃「と、歳納京子と一緒に来たの」
結衣「そうなんだ。で、京子は?」
綾乃「ん、ちょっとトイレ」
その話に合わせるように結衣ちゃんは手を取ってエレベーターから出る。
外に出ると、まだ京子ちゃんがいないことが分かって、ホッとして同時に胸が痛む。
結衣「そっか、それじゃ私たちはこれでね」
それだけ早々と言葉を並べて、結衣ちゃんは歩き始める。
握ってくれてる手はどこか力強かったけど、小さな声で「ごめん」って言ってくれた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/29(木) 10:23:49.05 ID:+2e9BTx+0<> ―京子―
どこか落ち着かなかった。
変な罪悪感があって、楽しい時間を過ごしてるはずなのにどこか心は空っぽだった。
鏡に映る私は、今にも泣き出しそうで一体なんでこんなにみじめな気持になっているのか、全然わからなかった。
京子「しっかりしろよ、私」
綾乃にトイレに行くって言って、用を足しに来たわけじゃなかった。
こんなときになんであかりのことを思い出してるんだろう。
この前の公園と電話、あかりが進学校に行くことを考えてることを知ったこと、昔のめちゃくちゃな約束とか。
今まで考えてなかったことが一気に押し押せてきて、精神的に疲れてるんじゃないかって思った。
京子「ははっ、なんだか表情硬くなってきちゃった」
自分の表情が硬い感じがして、鏡を見ながら顔を解してもなんだか硬い顔。
今は綾乃とデート中なんだから、他の女の子のことなんて考えちゃだめなんだぜ。
そんなことをいつもなら自分に言えるのに、今はその言葉を掛ける気になれない。
手を洗ってトイレを出ると、エレベーター前で待ってる綾乃の姿を見つける。
綾乃「遅いわよ」
京子「ごめんごめん、へへへ」
笑ってごまかすってこういうことなんだろうなって思いながら、到着したエレベーターに乗る。
行先は文房具店で、今日はフェアをやっているらしい。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/03/29(木) 10:34:03.30 ID:+2e9BTx+0<> デートコースに文房具なんて変わってるななんて思いながら、私も適当に見て回る。
特に買うものなんて何もないわけで、綾乃が品定めするのを呑気に待っている感じだった。
でも、文房具なんてあまり買わないわけである。
確かに絵は描いたりするけど、そういうのにはちゃんとした道具を使うわけだし、綾乃自身も文房具を買いだめするんだって言ってた。
確かに受験だななんて思いながら、私もそれなりに勉強しなくちゃいけないって思った。
行く先は普通の学校、あかりの行きたいと思ってる進学校への受験はもう間に合わないよななんて思いながら、まるで間に合うんだったらその進学校を受ける気みたいだななんて思った。
綾乃「おまたせ」
京子「うん……」
心なしか声が小さくなっていた。
こんなんじゃいけないよねって思ってても、なんだか色々考えてることが頭をぐしゃぐしゃにしてくれそうだった。
まったく、これじゃデートの相方失格だなんて思いながら顔を上げると、綾乃がなんだか複雑な顔をしていた。
そう、なんかやっぱりとかそんな感じな顔で、時計を見る。
私も調べると、丁度昼ごろくらい。ご飯を食べるにはちょうどいい時間かな。
綾乃「それじゃ、おひるごはん食べにいこうか?」
京子「う、うん」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/04/04(水) 20:46:10.65 ID:hrc2RjMAo<> 次待ってます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/04/09(月) 15:03:10.95 ID:KpdM6e8u0<> 軽い昼食を取りながら、私はなんだか何を考えてるのか分からなくなってた。
ファミレスで対面に座ってる綾乃に、すっごく悪いってわかってるけどなんかあまりデートに集中できてる気がしない。
なんでこんな感じになってるのかなんてわからなくて、ただ綾乃と同じものを頼んで、そしてそれを待っている間もなんだか意識は上の空だった。
綾乃「って、歳納京子?」
京子「あ、なに綾乃?」
今さっきからこれで何度目かなって感じに、どこか空っぽな言葉を返す。
先に置かれた紅茶に砂糖を入れて、それをスプーンでカラカラ掻き混ぜる。
ああ、なんだろ。こういうことしてるだけでもなんだか気分が落ち着く。
何かしてないと、余計なことを考えてしまいそうになる感じだったから、掻き混ぜ続けていた。
綾乃「まったく、いつまで掻き混ぜてるつもりなのよ」
京子「いや〜、なんか物悲しくて」
綾乃「まったく、まぁちょっと午前中は買い物に付き合わせちゃった感じよね」
そう言って綾乃は横に置いてある袋に手を掛ける。
まぁ、元々綾乃のにデートコースを任せてたんだから、別に気にしてないわけで。
どっちかというと、デートの最中なのに上の空な私に問題がある気がしてならなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/04/09(月) 17:44:07.69 ID:erWBVxR3o<> たった1レスなんて酷い生殺しだ
期待して待っとります <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/02(水) 15:51:47.55 ID:Lvh5sFTc0<> 綾乃「午後はたくさん調べてきたんだから、覚悟してなさいよ」
京子「うん」
どうにか声を返してみるけど、心の中はどこかゴロゴロしてて、午後からのデートの内容に期待できるかなんてわからなかった。
綾乃は見たところ楽しそうだけど、内心どう思っているのかって気にしてしまう。
こんな状態の私とデートなんてして楽しいのかなって思う。
そしてなにより、目の前にいる綾乃よりも、違う人のことを考えている私は……
綾乃「って、歳納京子?」
京子「ん?」
綾乃「冷めちゃうわよ」
京子「あ、そうだね」
少しばかり冷めてしまった紅茶を口にしてから、時計を見る。
結構長い時間をここで過ごしてるけど、綾乃が話してくれたことを、私はあまり覚えていなかった。
こんなことで良い訳もないけど、今の私には時間が過ぎることとかもあまり関係がなかった。
綾乃「……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/02(水) 16:01:36.21 ID:Lvh5sFTc0<> ファミレスを出てからは、本当に色々楽しむ場所を巡った。
映画も見たし、ゲーセンにも行った。本屋にも行ったし、美術館みたいなのにも行った。
本当に色々考えられてて、私もこんな調子じゃなかったらもっと楽しめたはずなのにって、なんだかあかりに責任転嫁している心境があった。
あかりが悪いんだって思いながら、午後の大半は過ぎていた気がする。
だから、気付いてここがどこなのかってことを今一の見込めてなかった。
時刻はもう夕方に差し掛かっていて、朱色の空に赤かしく燃える夕日がきれいな場所にいる。
綾乃「良かった〜。ちゃんと見える……」
そううれしそうにつぶやく綾乃を見ながら、本当にきれいなその夕日を私は見つめなおす。
とてもきれいで、子供のころに見た夕日もこれくらいきれいだったと。
綾乃「はぁ〜」
そこで綾乃が溜息を漏らしながら、私を見てくる。
なんだか、その瞳は揺れていて、少しだけ顔を赤くしながら、なんだかフルフルと震えていた。
京子「綾乃?」
綾乃「と、歳納京子……今日のデートどうだったかな?」
なんだか辛そうに聞いてくる綾乃に、私の心は謝りたい気持ちでいっぱいになった。
やっぱり私の機嫌に気がついてたんだって思うと、本当に最低なことしてたんだってわかったから。
京子「楽しかったよ」
綾乃「えへへ、でも歳納京子は、なんだか楽しそうじゃなかったよ?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/02(水) 16:11:22.39 ID:Lvh5sFTc0<> そう言われて、胸が痛む。
だって、事実で、それを取り繕うなんてことできるわけがなかったから。
京子「ごめん」
綾乃「うん、誤魔化さないでくれてありがと」
なのに綾乃はそう言葉を漏らして、一度深呼吸をしてから強い瞳で私を射抜く。
その変化に驚いて、何かあるのかって身構えてしまうけど、綾乃はただ静かに近づいてきて。
綾乃「い、いちどだけ、一度だけしか、言わないから。聞いてほしいことがあるの」
京子「綾乃?」
両肩に手を乗せながら、真剣に揺れる瞳がそこにあった。
どこかで見たことがあるその光景に、ただ私は何も言えずに棒立ちで、ただ言葉を待ってるだけだった。
綾乃「私ね、京子のこと好き」
短くて、でもしっかりとした声が私の耳に届いた。
そう届いて、一瞬心臓が高鳴ったのはわかった。
そう、確かに心臓は高鳴っていた。告白を、しかも綾乃から受けたことに対して。
京子「あ、綾乃?」
綾乃「……」
綾乃はそう言って、ただ真剣に私を見ていて、ただそれだけで私の言葉を待ってる気がした。
綾乃のこと嫌いじゃない、どちらかっていえば好きだから。この告白に応えてもいいって思い始めてる心があった。
だから、私は綾乃の手に手を伸ばす。
この告白を受け入れれば、綾乃は私を支えてくれるのかなって、そんな最低なことを思いながら。
だから、その手を……… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/02(水) 16:27:10.27 ID:Lvh5sFTc0<> 綾乃「でも、いいの」
そう言って肩に乗っかっていた綾乃の手が私から離れた。
肩から離れて行く手、まるで突き放されたみたいに感じて私の顔が少し悲しみに歪んだ気がした。
だから、そんな私を見て綾乃は大きく声を上げる。
綾乃「もう、歳納京子!」
京子「!!!」
綾乃「まったく、デート中に他のこと考えてるなんて駄目よ! ほんとのデートでそれじゃ相手が安心アンコールワットできないじゃない」
そう綾乃はいつも通りの顔で語りかけてくる。
いきなりのテンションの変わり方に、私のは戸惑っていた。
もしかして、すぐに言葉を返さなかったから壊れちゃったのかなって心配になって、今からでも遅くないから返事しようかって思うと、それを言わせないように綾乃が口を開く。
綾乃「今日、船見さんと赤座さんに会ったの」
その言葉に、なんだか心臓を鷲掴みされたような痛みが胸に走った。
明らかに、今の発言で私は動揺していた。
なんであかりと結衣が一緒に出かけてるんだろうって、楽しそうにしてたのかなって思い始めると頭が痛くなりそうだった。
綾乃「そこでね、赤座さんにすごい目で見られちゃった。羨ましいっていう目で見られた」
京子「あかりがそんな目で、なんで綾乃のこと見るんだよ?」
綾乃「素直に羨ましいって思ったってことでしょ?でも……」
すると、のんびりとした足取りで私の横に20cmくらいの距離を置いて立つ。
隣だけど、完全に接触しない距離に綾乃は立って、辛そうにつぶやく。
綾乃「多分ね、私は歳納京子の此処までにしか近づけないの」
京子「何言ってるのかわかんないよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/02(水) 20:34:19.09 ID:YjH4hGe90<> 綾乃ちゃん… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/05/03(木) 00:41:54.89 ID:XXDhRD2ko<> 続きが気になる <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/09(水) 14:30:12.29 ID:nE7q8kWc0<> 綾乃「分かってよ。分かってくれなきゃ、困るんだからね」
そう言って綾乃は距離を置くように離れる。
その顔は見たことがある。昔の私と同じように、泣かないように我慢してる顔。
なんで、そんな……
綾乃「ささっ、今日のデートは終わり。ありがとね」
京子「綾乃……」
心配だったから、だから一歩足を踏み出そうとした。
だって、あんなこと言われて、気にするななんて無理な話だし、綾乃といればこの空白を埋められる気がしたから。
この空白……、そう、ずっと私を悩ませ続けるこの空白を。
綾乃「来ないで!」
だけど、そんな私を綾乃はそう言葉で拒絶して。
私はただ、何もできないままだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/09(水) 14:38:03.87 ID:nE7q8kWc0<> ―綾乃―
歳納京子が私の前からいなくなって、どれくらいの時間が経ったのかな?
夕日はもう完全に沈みかけてる頃、手に握った携帯電話はある人に電話をするために使ったものだ。
相手はいつも通りに出てくれて、今から公園に来てほしいって言ったら、すぐに来てくれるって言ってくれた。
自然と涙は出そうにもなかった。歳納京子がいなくなったからかもしれないけど、なんだか胸の痛みは少しなくなった。
綾乃「って、思ってるだけなんだろうな〜」
言葉を漏らすように呟いて、あたしはふと公園の入り口を見る。
この感じ、あたしは知っているから。
入口に立っている一つの影、その影があたしを見つけたようでのんびりと手を振っている。
だから、あたしも手を振り返す。
気付いてるよ〜って意味を込めて。
千歳「綾乃ちゃん、どうしたん?」
分かってるくせに、千歳はそう聞いてくる。
まったくと言っていいくらい、千歳には色々筒抜けなんだなって思いながら、ベンチに座ってこちらを見てくる。
眼鏡の下にあるのはいつもの千歳の顔で、ああ、やばいって思った。
千歳「夕日がきれいやね」
綾乃「う……うん」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/09(水) 14:47:11.02 ID:nE7q8kWc0<> 千歳の言葉に夕日を見る。
今さっきに比べたら、少し見劣りするその夕日を眺めがら、こんなタイミングで千歳を呼んでいるあたしに、何とも腹が立つ。
こんなの罰金バッキンガムもいいところだし、千歳はそれを分かってここにきてくれてるんだっていうことに、かんしゃしたかった。
だから、あたしから話し始めなくちゃいけない。
こんなところまで、千歳にお膳立てされるわけにはいかないから。
千歳「そういえば――」
綾乃「歳納京子のこと諦めたの」
千歳の言葉を遮るように、あたしはそう言葉を吐いた。
ほんと、今さっきまで平気だったのに、千歳が近くに来てくれたからかな。
色々なことが胸の中で暴れ始めた。
綾乃「だってね、歳納京子ったら。あたしとデート中なのに違うこと考えてるんだもの。これは脈なしだわ―っておもうしかないよね」
あー、痛々しい。こんな風に言葉を繋げている、自身が痛々しい。
無理やり笑おうと振舞って、できるかぎり笑い話になるように、声を大きくして、なんだってこんな風に話してるのかなって思ったけど。
多分、千歳に慰めてほしいからなんだなって、心のどこかで分かってた。
ほんと、だから千歳を呼んだんでしょって心でつぶやく。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/09(水) 14:54:46.74 ID:nE7q8kWc0<> 綾乃「ほんと、歳納京子って、おかしいのよ。あんなに楽しそうにしてる時と、何か悩みがある時の違いが分かりやすいし、その原因だってほんとわかるもん」
ああ、声に涙が混じってきた。
歳納京子に振られたわけじゃない、あたし自身で振ったのにこの体たらく。
ちょっと心がやさぐれてしまいそうになるのを感じる。
綾乃「それに――」
千歳「綾乃ちゃん」
だから、そのやさぐれそうな心を受け止めてくれる。
こうして話して、本当に辛くなったときにこうして、支えてくれる人を知ってるから。
あたしはこうして泣きそうになりながらも、言葉を繋げて。
もう限界だってところで、止めてもらえるの。
千歳「綾乃ちゃん、もういいんやで」
綾乃「……うう」
千歳「綾乃ちゃん、こうなっちゃうってわかってるから、電話してきたんやろ?」
やっぱり、分かってたよね。
我慢して、本当に我慢し続けた涙が零れてしまった。
綾乃「千歳、あ、あたし」
千歳「うん」
綾乃「歳納京子のこと、本当に好きだったの。大好きで、いつか手を繋いだり、一緒に食事したり、キスとかそういうのだってできたらいいなって思ってる相手だったの」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/05/09(水) 15:07:53.37 ID:nE7q8kWc0<> 涙がもう止まらなくなってきて、それを隠すように千歳の胸に顔を埋める。
正確には千歳が抱きよせてくれた。
綾乃「でも、歳納京子の心にあの子がいること気付いたの。敵うわけないよ、こんなの卑怯だよ」
最初にこのデートのことを提案してくれて、サポートもしてくれたあの子が、歳納京子の心の中には住んでいる。
ほんと、依存レベルで存在していて、そこに今頃現れたあたしに純粋な好意として入る余地なんてなかった。
偽りの恋人としてなら、もしかしたらなれたかもしれない。
でも、そんな関係が長く続くわけもないし、それはあたしが耐えられないって分かっているから。
あの子の代わりであるあたしじゃなくて、あたしとして歳納京子の特別な人になりたいから。
綾乃「ずるいよぉ、こんなのって」
抱き締めてくれる千歳は何も言わないで、ただ頭を優しく撫でてくれた。
本当に優しくて、安心できる。
千歳「いっぱい泣いてええよ。綾乃ちゃん、今日はいっぱい頑張ったんやから」
その言葉が暖かくて、優しすぎたから。
何より、支えてくれることが分かってたから。
あたしはそのまま、泣き始めた。
支えてくれる、千歳の胸の中で泣く。
歳納京子への恋情を全部洗いながすように、さようならって言葉にできないから、ただただ流し続けるだけだった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/05/09(水) 23:40:08.22 ID:Rok1qktko<> きてたー乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/05/10(木) 01:45:49.06 ID:pG9fD9tFo<> 綾乃ちゃん・・・ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/06/06(水) 16:07:23.94 ID:YBdo1/3I0<> ―京子―
ぽっかりした空間を埋めることもできない私は、ただ天井を見上げていた。
綾乃から告白されて、もしかしたらこの渇きも潤うのかもなんて思って、でも綾乃は私をすぐに拒絶した。
言っていた、綾乃は私にここまでしか近づけないって、少しだけ開いた空間。
その意味が、なんだか分からない。
京子「なんだよ、もうわかんない」
愚痴るように言葉を漏らして、携帯に手を伸ばしてからメールが来ていることに気づく。
相手は誰だろう、こんな気分を和らげてくれるような相手だったらよかった。
あかりからだったら……
京子「そんなわけないじゃん、何を期待してるんだよ。私は……」
メール受信画面を開くのに、どこか淡い期待を抱いている私。
あかりからメールが来てるんじゃないかって、なぜか期待してる私。
そして、メール受信画面を見て少しだけほっとして。
京子「………」
少しだけ機嫌が悪くなっている私がいた。
その送り主の名前を見て、なんでかとても胸がむかむかしてきた。
前なら喜んでいたと思う。
でも今は、警戒とかが入り混じった心だけがそのメール相手の名前を見ていた。
京子「ちなつちゃん……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/06/06(水) 16:17:34.30 ID:YBdo1/3I0<> この前の公園のことを思い出す。
ボロボロ言われて、泣いてしまったあの日。
あかりが来てくれなかった、私はどうなってたのかわからなかった。
それくらいに、私はちなつちゃんに心をボロボロにされた。
またそんなことを書かれてるのかなって、思ってメールを開けない。
だって、そうだ。
また、あんなこと言われたり、書かれたりなんてしたら、私は泣いてしまうと思う。
京子「……でも」
確認しないでいるのはなんだか癪に障る。
だって、これじゃ情けないままだから。
少しだけ時間をおいてから、深呼吸して、覚悟を決める。
メールを開いて、その内容に目を通す。
『がんばってください。応援してます』
それだけが、書かれていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/06/06(水) 20:33:33.37 ID:KnGz92RNo<> キテマシタワー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/06/07(木) 02:20:16.17 ID:gqY3TN8Ko<> キテマシタワー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/02(月) 15:05:32.71 ID:d2wa2gKg0<> その内容は、予想していたものと違いすぎていた。
もしかして、煽られてるのかなって一瞬でも考えて、でもちなつちゃんの性格を思い出して、こんな風に遠回りなことはしないって思えた。
でも、何を頑張ればいいのかなんてわからない。
わからないから、携帯を放り投げて、また同じように天井を見上げる。
京子「ねぇ、どうしたらいいの、あかり」
自然と名前が零れてしまう。
同時に、こぼれた言葉に安心してる私がいる。
泣きそうな私を、中学校に上がるまでは見てくれたあかりを思い出せる。
あかり『京子ちゃん、どうしたの?怖いことなんて、あかりが全部なくしてあげるんだから!』
うん、だから私の中にある、この空間を吹き飛ばしてよ。
でも、なんでかわからないけど、その空間にあかりはいる。
この空間を無くしたら、私の中にいるあかりがいなくなっちゃう気がして、心が震えて止まらなくなる。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/02(月) 15:07:03.08 ID:d2wa2gKg0<> 京子「あかり……、あかり怖いよ」
ちなつちゃんも、綾乃も私に分かってと言っていた。
認めてって、気づいてって。
それに気づけない私が悪いのかなって、体を抱きしめる。
怖いんだ、怖いから、それから逃げたっていいじゃないか。
そう考えながら、目を閉じる。
だって、怖いものはあかりが全部取り払ってくれるんだ。
あかりが……
京子「でも、あかりは来年進学校に行くって……」
それを口にして空間が大きくなる感じがした。
あかりが、私を守ってくれるあかりが、どこか違うところに行っちゃう。
そう考えると、体中が強張ってしまって、すぐに考えることを止める。
そんなことあるわけない、だってあかりは私を不幸にしないって約束したんだから。
自己完結させるだけさせて、私の今日が終わる。
耳に聞こえるのは、時計の静かな音で、それが今はとても心地よく感じた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/02(月) 15:08:47.16 ID:d2wa2gKg0<> ―ちなつ―
結衣『これでよかったの?』
その少しだけ苛立った言葉を耳に入れながら、私は今さっき京子先輩に送ったメールを思い返す。
お節介かもしれないし、もしかしたら悪い意味に捉えられてしまうかもしれないけど、それでも結果的にそれが良い方向に進めばいいなって思った。
ちなつ「はい、結衣先輩」
結衣『あかりを綾乃とデート当日に、鉢合わせるように私を動かして、これで満足?』
ちなつ「先輩、怒ってます?」
結衣『それを聞いてどうすんだ?』
電話の向こうの結衣先輩は本当に怒ってるみたいだった。
それもそうだよね。
今日の結衣先輩とあかりちゃんの買出しの予定は、私が結衣先輩に頼んだことなんだから。
いや、頼んだことって言うよりは、間違いなく脅迫に近いものだったと思う。
だって、さすがに私ではあかりちゃんと一緒に出かけることはできない、あの日のこともあるし、なにより京子先輩に出会ってしまう最悪のリスクは必ず避けたかったからだ。
だから、あかりちゃんが心を許してる結衣先輩を使った。ただそれだけだった。
結果的に、私はみんなから恨まれるようなことを、影でこそこそやってる悪女になったわけだけど、それはかまわない問題だった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/02(月) 15:10:47.83 ID:d2wa2gKg0<>
結衣『あかり、泣くの我慢してた。わかる? 好きな人がデートしてる相手に会う気持ちなんて……』
ちなつ「……分かってるつもりです」
結衣『ならなんで!』
ちなつ「どんなことを言っても、私のやったことは最低なことです。それは間違いないから」
繕う言葉なんてあるわけ無かった。
結衣先輩は、もしかしたらそう言う言葉を期待してたのかもしれない、繕うってことは後悔があるってことで、後悔があるってことはやらなくてもよかった事って自分自身で認めることだ。
私は、起こしてしまったこの事を後悔なんてしない。私が本当に正しいなんて思ってなんていないけれど、後悔は絶対にしない。
京子先輩もあかりちゃんも、弱い人だなんて思ってない。
これは私の主観から見た二人への期待だった。
結衣『ちなつちゃん、後悔してないってことでいいの?」
少しの間を置いてから、耳に結衣先輩の声が聞こえてくる。
ずいぶんとはっきりしてる声だった。良く耳に残る結衣先輩の声だなって思った。
ちなつ「そうです、後悔なんてないですよ」
結衣『二人の事、ちゃんと最後まで見て行けるって事でいいんだよね?』
力強い口調でそう告げてきた結衣先輩に、私は少しばかりの息を漏らしてから肯定するように「はい」と返事をした。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/07/02(月) 15:39:26.81 ID:rFz/CKnPo<> お久しぶりでした <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2012/07/02(月) 16:03:28.40 ID:QoF9ux7oo<> 待ってた <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/07/03(火) 16:32:19.50 ID:vIeYid7Jo<> キテマシタワー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/25(水) 10:39:41.52 ID:HPVNzyAu0<> ―あかり―
新しく部屋に置かれた鏡台の前に座りながら、長く伸びた髪に触れる。
少しだけ枝毛が増えたかななんて考えながら、頭の中に浮かんでくるイメージをどこかに送ろうと頑張る。
でも、思うと浮かび上がってくるものがあった。
あかり「……」
手を繋ぎながらデートをする二人、頭が痛くなってくるのは、多分気のせいだって言い聞かせながら枝毛を見つける作業に没頭しようとする。
恋人同士、そう、二人が恋人同士になることは私が望んだこと。
だから、何も未練なんてないはずなんだから。
言いくるめるようにしても、心中は落ち着いてなどいなくて、過るビジョンが心を締め付ける。
分からない、まだそうだなんてわからない。だから、余計に思い浮かべてしまう。
あかり「京子ちゃん」
思わず言葉に出てしまって、ハッとしてしまう。
想った以上に歯切れの悪いことに、自己嫌悪に陥ってしまいそうになる。
京子ちゃんに電話を切られた日、頬を伝った涙を思い出して情けない気持ちが膨らむ。
あかり「うう、なんで」
気付けば目尻から涙が零れていた。
本当にあかりは悲しいから涙を流してる。
それが嫌だった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/25(水) 10:53:49.17 ID:HPVNzyAu0<> あかり「なんで、なんで零れるの?やめてよ」
拭っても拭っても、涙は溢れ続けてくる。
諦めきれない涙が、もう終わってるんだと認めたがっている心に相反して流れる。
心に亀裂が入りそうだった。
自分から離れているのに、それを咎めるように心が悲鳴をあげてる。
鏡台に映る姿を見たくなくて、ベッドに倒れても、涙が止まることがない。
脳裏に浮かんでくる京子ちゃんの姿。
怒ってたり、笑ってたりって色々ある。
でも、その中で一番見ていたのは、京子ちゃんが泣いてる昔の頃の姿。
泣いてる京子ちゃんを笑顔にしてあげられることがうれしくて、その京子ちゃんが泣いてる顔から笑顔に変わっていくがとても好きだった。
あかり「最初は、そんなことなかったのに」
最初は子供の優越感だった。
誰かを笑顔にできることに優越を覚えて、それが泣き虫な京子ちゃんだった。
京子ちゃんが困ってたり、泣いてたりしたら、すぐに元気にしてあげられた。
あかりは、京子ちゃんのヒーローとかじゃなくて、誰かを幸せにできるっていう特別な人だとか想ってた。
だから、中学校に京子ちゃんが上がる時、京子ちゃんは泣いていて、その理由を聞いて心が跳ね上がっていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/25(水) 11:08:37.24 ID:HPVNzyAu0<> 気付いたら、京子ちゃんを笑顔にすることに優越感なんてなくなっていた。
ただ、京子ちゃんが必要としてくれてることよりも、あかりが京子ちゃんと一緒にいたいって思うようになってた。
中学校なんていう壁だけで、あかりが京子ちゃんから離れるなんてことあるわけなかった。
でも、京子ちゃんはあかりのこと、道具だって思ってる。
それでもいいからって、私はこういう形に落ち着いている。
好きなのはわかってる。もうそれはこの前に口に出したから、だから今度はそれを切り捨てなくちゃいけない。
だって、そうしなくちゃ。京子ちゃんから離れられないから。
離れたいなんて嘘、離れたくない。
京子ちゃんと一緒に笑って、泣いて、時々喧嘩だってしてもいい。
京子ちゃんと時間を共有したい、それを望んでる。
あかり「あかり、本当に道具を続ければよかった」
そう考えればよかった。
そうあればよかった。
でも、あかりは人間で、優越感を最初感じて、最終的にそれが恋情になっていた。
バカだよ、ほんとに大馬鹿だ。
だから、もう離れようって思って色々やって、その結果がこれなんだ。
道具じゃなくなるのは、京子ちゃんが幸せだって言ってくれた時。
あかりがいなくても幸せなら、あかりが京子ちゃんのそばにいる意味も、道具である意味もなくなるんだから… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/07/25(水) 11:15:32.08 ID:HPVNzyAu0<> 自虐的な考えで、興奮した心を抑える。
だんだんと落ち着いて来るのはわかってきて、明日の学校のことを考える。
明日ですべて終わっているんだったら、それでいいよ。
そのほうが心も楽になれるから、杉浦先輩と京子ちゃんが恋仲でなくても、それに近いものになってたら……
あかり「……涙止まってよ」
でも、やっぱり、今涙が止まりそうになかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<><>2012/07/25(水) 12:48:57.46 ID:5n91OOiI0<> キテター! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/07/25(水) 23:18:47.15 ID:w+VJPAfNo<> キテマシター! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/08/25(土) 14:36:34.05 ID:FQAsJa+k0<> ―結衣―
珍しく寝付けなかったのは、今日のあかりの顔を見てしまったからだたとすぐにわかった。
あの辛そうな顔が、頭からなかなか離れないのは、まだあかりのことを完全に諦められないからだ。
ちなつちゃんの言っていた言葉が頭を過る。
後悔していない。
ちなつちゃんは後悔なんて絶対にしないって言っていた。
それは強がりだとかそういうことじゃない、本当に純粋な言葉だと信じられる語気があった。
今さっきまでいじっていた携帯に手を伸ばす。
開くのは画像のフォルダで、その中にはちなつちゃんが送ってきてくれた写真が結構ある。
結衣先輩に見てほしくて、これどう思います?
そんな当り触りない一言と一緒に送られてきた画像を見ながら、私も覚悟しなくちゃいけないんだと気付かされる。
今日の買い物だって、拒否すればよかったんだ。
あかりのことが好きなら、拒否しておけばよかった。あかりは傷つかないし、私も傷つかない。
そうなるべきだったって。
でも、私は、あかりに素直になってほしい。
結衣「あかりは道具なんかじゃない」
あかりは道具だなんだって言葉で、すべてをごまかしたがってる。
京子を好きなこと、私に告げたその言葉を、本人に言わないで、ぐちゃぐちゃに丸めた紙屑みたいにしようとしてる。
それが、とても我慢ならなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/08/25(土) 14:51:10.28 ID:FQAsJa+k0<> あかりが幸せになることに、誰も反対なんてしない。
そんな奴いたら私はぶん殴ってしまうかもしれないし、だったら前のこともあるし、自分をぶん殴るべきなのかなと一瞬思って、頬に拳を一発投げつけてやった。
やっぱり、自身で加減してるとはいえ、痛いものは痛いって思う。
もうすぐ受験の本格的シーズンに入る頃で、此処を逃してはいけないってことは重々承知していた。
明日、まず綾乃に話を聞いてみることにしよう。
今日のデートの結果が気になる。
京子はとても今は不安定な状態だから、誰かに告白されたら好きか嫌いかで判断できないと思える。
不安とかイライラ、そういうのを包み込んでくれるなら、誰だっていいなんて言う、ある意味終わってしまっている考えかもしれないから。
同時にちなつちゃんのことも考える。
私を慕ってくれるし、何よりこんな風に考えることができたのはちなつちゃんがいたからだ。
ちなつちゃんは最後まで見届けるって言っていた。
だけど、そこに私がいたって何の問題もないはずだろう?
ちなつちゃんを支えながら、京子とあかりがどういった決断を出すのか、見届けるのは義務だって思えた。
静かな部屋の中で、私はそんなことを思い浮かべながら、やっとやってきた眠気に身を任せるようにして、眠りに就いた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/08/26(日) 00:47:55.07 ID:K07UTWu3o<> 乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<><>2012/09/03(月) 01:04:36.65 ID:ldqDlvs70<> キテター! <>
◆wubK.PZ8MU<><>2012/09/03(月) 03:04:53.79 ID:5PXqD38o0<> ほお <>
◆wubK.PZ8MU<><>2012/09/03(月) 03:05:56.42 ID:5PXqD38o0<> 繧縺」縺溘シ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/09/05(水) 04:04:02.88 ID:mWKT2mRIo<> 忍者こんなとこにもいるのか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/10/04(木) 23:39:04.69 ID:W1gLbwPW0<> ―あかり―
ちなつ「あかりちゃん、おはよう」
あかり「おはよう、ちなつちゃん」
いつもだったらもっと早くに家を出るのに、今日は遅れて家を出た。
だからかもしれない、久々にちなつちゃんに会って学校に向かってる。
道にはちょっとばかり雪が残ってるのを見ながら、隣で歩くちなつちゃんの様子を伺っている。
ちなつ「どうしたの、あかりちゃん」
あかり「う、ううん。なんでもないよ」
なんでもないなんてこと無い。
ちなつちゃんが何を考えてるのかなんて分からないけど、ちなつちゃんは私が来るのを待っていたんだって思った。
よく見てみたら、ちなつちゃんにしては髪が整ってなかったし、少しばかり寒そうにしてた。
何か私に用があるからだと思うけど、私はそれを聞けないままでいた。
だって、聞いて何か変わるってことも無いって分かってるから。
ちなつ「今日も寒いね」
あかり「そうだね、雪も降ったからね。みんな風引いたりしないといいけど」
ちなつ「……あかりちゃんは、どうするの?」
あかり「防寒対策?」
ちなつ「もう、分かっててはぐらかしてるでしょ」
あかり「……」
ちなつちゃんの真剣な目が、あかりを射抜いてる。
ああ、ごまかせないって思う。
ちなつちゃん、こういうことすごく鋭いから。
でも、このまま話しをする気になんてなれないから、足を近くの公園に向ける。
遅刻しちゃうかもしれないけど、ちなつちゃんが逃がしてくれるなんて思えないから。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/10/04(木) 23:39:58.14 ID:W1gLbwPW0<> ちなつ「わざわざ場所変えちゃうのが、あかりちゃんらしいね」
あかり「そうかな……、そうかも」
はにかみながら笑って、ちなつちゃんに顔を向ける。
やっぱり、ちなつちゃんの顔は真剣そのものだった。
少しだけ、言葉を切り出すのを迷ってたように、少し間を置いてからちなつちゃんは口を開く。
ちなつ「京子先輩のこと好きなんでしょ?」
すぐに心が揺れたのが分かって、でも、それを表に出すのはなんだか嫌だったから、必死に心を殺して笑う。
多分、結構怖い顔になってる気がする。
ちなつちゃんの表情が曇る。苛立ってるみたいだ。
ちなつ「あかりちゃん、なんでそんなに頑なに拒むの」
あかり「拒んでなんて無いよ。京子ちゃんのこと、好きだなんて思ってない」
ああ、自身の言葉に心が揺れたのが分かった。
傷ついてる。自分の言葉で、本心を否定するたびに心が痛んでしまう。
でも、仕方ないよね。
ちなつ「京子先輩が幸せになるための道具だから?」
あかり「………」
その言葉に、一瞬心臓が止まったような感覚に見舞われて、ちなつちゃんから目線を逸らしてしまった。
見ていなくちゃいけないって分かってるのに、その言葉だけで目線を逸らしてしまった。
公園の中、ちなつちゃんの視線を受けながら、どうすればいいのか分からないままで、ただ手を握ったり開いたりして思考が止まらないように勤めるしかなかった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県)<>sage<>2012/10/07(日) 01:06:39.08 ID:KLs/qnloo<> 乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2012/10/07(日) 18:36:35.26 ID:rFacMJTy0<> 次待ってます乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県)<>sage<>2012/10/31(水) 11:48:23.93 ID:SwogCRD4o<> 忙しいのかな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/11/03(土) 15:19:30.66 ID:hmXVQoDF0<> ちなつ「私はあかりちゃんじゃないから、あかりちゃんがどう思ってるかなんてわからない」
ちなつちゃんの言葉が耳に入る。
あかりとちなつちゃんは違う、そう違う。
ちなつちゃんは何処までもオープンで、好きな気持ちを全然隠そうとしない。
本心のままに、結衣ちゃんのこと好きだって言ってた。
そう、あかりはちなつちゃんにはなれない。
ちなつ「だけど、このままでいいの? このまま埋もれさせる気なの?」
埋もれさせるとか、このままでいいのかとか。
ちなつちゃんはあかりじゃない、なんでこんなに構ってくるの。
放っておけばいいのに。
だって京子ちゃんは、もう杉浦先輩のものになってるはずだから。
そうなるように、杉浦先輩と京子ちゃんのデートを手引きしたんだから。
ちなつ「ねぇ、どうなの?」
だから、今はちなつちゃんの言葉を聞きたくもない。
もういい。
あかり「もういいの」
ちなつ「あかりちゃん?」
動かしてた手を止めて、顔を上げる。
なんだか自分じゃないみたいな感じがして、ちなつちゃんの顔がすごく引き攣ってた。
異様に冷たく感じる。体温が逃げてるみたいだった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/11/03(土) 15:31:24.52 ID:hmXVQoDF0<> あかり「もうほっといて、あかりはちなつちゃんじゃないの! ちなつちゃんみたいに、行動的じゃない!」
爆発するみたいに言葉が出た。
抑えきれなくて、引き攣ってたのはあかりの顔の方なのかもしれない。
あかり「いいの、もう終わったからいいの。あかり、京子ちゃんが笑っていられるために頑張ってきたの! これだけがあかりが京子ちゃんのそばに居る理由なの!」
気づけば、目の前がすごく潤んでいた。
こんな光景、見ていたくないって眼に雫が溜まって、ちなつちゃんの姿が見えなくなる。
あかり「だから、もういいの。昨日で終わったの。もう全部終わっちゃったの。だから、もういいの」
ちなつ「あかりちゃん!」
もう矢継ぎ早だった。
みじめで、格好悪いってわかる。
言うことだけ、ちなつちゃんにぶちまけて、公園から逃げ出すように走る。
登校中の生徒たちの波を抜けて、走って走って、ちなつちゃんから逃げるように?
でも、わかってた。逃げても、ちなつちゃんは追いかけてこないって。
だって、ちなつちゃんはわかってるから、こんな時に慰めてくれるべき人は、本当に大切な人だって。
あかりには、そんな人が来ることなんてないってわかってた。
もう、わからないままに、ただ走ることくらいしかできなかった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/11/03(土) 15:52:26.29 ID:hmXVQoDF0<> ―結衣―
結衣「それ、本当なの?」
生徒会室の中、少しだけ気まずそうに頬を掻いて私の前に座る綾乃に目を向ける。
今日自体は生徒会もないわけだから、あかりの姿は無かったからこれはこれで好都合だって思ってきてみれば、話を聞いて少しばかり以外だという感じの答えが返ってきた。
綾乃「そうよ、歳納京子に告白して、同時にごめんなさいしたの」
結衣「だ、だって、京子のこと好きだったんでしょ?」
綾乃が京子を好きなことなんて、京子以外は気づいているようなことだった。
京子自身がどう思っていたのかは、京子自身に聞かなくてはならなかったけど、あいにく京子は今日学校を休んでるから、聞きようがなかった。
携帯にも出ないので、放課後に向かうつもりではあるけど。
私の質問に対して、綾乃は少しだけ考えてから、溜息を少し漏らして、繕っても仕方ないよねと、言葉を漏らした。
そこには、いつも以上に強い瞳の綾乃がいて、それに圧されて背筋を自然と伸ばした。
綾乃「敵わないって、気づいちゃったの。昨日のデートでね」
結衣「敵わないって……」
綾乃「赤座あかりさんにはね。敵わないってわかっちゃったから」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/11/03(土) 16:20:56.58 ID:hmXVQoDF0<> そう言って少しだけお茶を飲む。
敵わない、綾乃はそう呟いてから少しだけ悔しそうに、だけどすっきりした表情で笑う。
綾乃「昨日彼方たちに会った事を言った時、すごく動揺してた。もう、それを言う前から少しだけ感じてたんだ。京子には好きな子がいるって」
結衣「……」
綾乃「それに、赤座さんがね。このデートの話を私に持ちかけてきてくれたのは嬉しかったけど、なんだか急かされてる気がしてた」
少しだけ時間を置いて、綾乃は告白した時のことを切り出してくる。
顔は、泣くのを我慢してるのがわかるくらいに強がってて、でも、こうして勇気を出して言葉にしてくれることに、私は憧れみたいなものを感じる。
私が最初に、あかりに強行に迫った姿とでは、雲泥の差だったから。
綾乃「告白した時、歳納京子の目はね。告白を受けてくれる人の目じゃなかったの。寂しくて、不安で、そう言うのを埋めてくれる空間を求めてるような眼をしてた」
それは多分、昔私もしたことがある目だと思う。
ただ離れていくのが不安で、それを埋めるなら、どんなことをしたっていいんだと勘違いしていた私。
それと全く同じだ。
そんなことを考えて、顔を上げると1つの雫が見えて、私は綾乃を見る。
綾乃「その時わかっちゃったんだ。あたしはどんなに頑張っても、歳納京子の大切な人になれないって」
綾乃は静かに泣いていた。本当に、静かで、自然とこぼれてしまった涙なんだってわかった。
心が揺れているのがわかった。
私は、相当酷なことを綾乃に聞いているから、それがとても許せなく感じた。
綾乃「悔しくかった。確かにね、あたしが歳納京子を見てきた時間は短いけど、好きだって気持ちは負けるつもりなかった。でもね、隙間だけしか埋められないあたしだと、歳納京子は幸せになれないから」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga sage<>2012/11/03(土) 16:48:17.97 ID:hmXVQoDF0<> 綾乃は言った、所詮代わりにしかならないって。
恋で好きな人の代わりになる人が、本当に幸せになれるかどうかなんてわからないけど、京子の隙間を埋める存在になっても幸せなんてあるわけないと、そう言ったのだ。
結衣「本当にそれでいいの? まだ京子だって」
綾乃「それ以上は、罰金バッキンガムだから」
結衣「ぶふっ」
いきなり雰囲気が壊れたってわかった。
ああ、私の噴き出す癖はどうにかならないかなと、顔を赤くしながら頭を掻く。
綾乃の方も、まだ言うことがあったのかもしれないけど、この雰囲気じゃ話すことじゃないってわかったのかもしれない。
一度深呼吸をして、零れた涙をハンカチで拭いてから私を見る。
綾乃「あ、あたしが諦めたんだから、歳納京子にはちゃんとした答え出してもらわないとね。あと赤座さんにもね」
結衣「そうだね。実は正直な話、もう二人が付き合い始めてたら、どうしようかって思ってたところなんだけどね」
綾乃「うわぁ、遠まわしに良かったとか、言ってくれるわね」
そう笑って言ってくれるだけでも、私は結構救われたと思える。
だから、後は私があの馬鹿に行動を起こさせなくちゃいけないわけだ。
結衣「ありがとう杉浦さん」
綾乃「歳納京子の事、まかせるわね。あたしができるのなんて、できても助言くらいだから」
そう言って綾乃は微笑んで、私は生徒会室を後にする。
ここまで、人に迷惑をかけてる二人に、内心呆れながら、幼馴染であり、友人として、それに好きなあかりの為に、やれることをしよう。
思った以上に、ちなつちゃんの影響を受けてるんだなって、思いながらそれが少しうれしくもある私を意識して、少しだけ笑みがこぼれた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/03(土) 19:58:41.44 ID:TDuTNrxQo<> 来てた <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県)<>sage<>2012/11/03(土) 22:19:40.70 ID:eepAMynOo<> 乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2012/11/04(日) 17:24:57.23 ID:neX1PxPO0<> 乙です <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/02(日) 00:55:17.41 ID:AzbOAoJG0<> そこで携帯に届いたメールがある事に気づく。
差出人はちなつちゃんで、偉くタイミングが良いため少しばかりの嫌な予感がした。
もう、わかりきってると言ってもいいほどに、潔く私はメールを開いた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/02(日) 01:05:57.91 ID:AzbOAoJG0<> ―京子―
京子「もう、なんなんだよ」
部屋から出る気が起きず、結衣から来たメールに返信もせずに私は倒れていた。
風邪っていうわけでもない、でも外に出ることをかなり拒んでる私がいて、それが何でなのかっていうと、会いたくないと思っている人物がいるからだ。
別に嫌悪してるわけじゃない。
良くわからない、気になるけど、視界に収めたらいけないっていう気がしてならないから。
だからこうして部屋で何も考えないようにして過ごすのが今できることだった。
子の前のデートで綾乃に言われた言葉は、私には誰か好きな人がいるっていう意味だっていうのはわかった。
綾乃が私を好きだったっていうことよりも、私がわかっていないことを綾乃に指摘された事が、結構心を揺らしていた。
京子「私のが好きな人って……」
ちなつちゃん?違うと思う。
確かにちなつちゃんは可愛いし、好きだよ。でも、綾乃が私に打ち明けてくれた好きとは絶対違うと思う。
言われ放題なことがあったけど、嫌いっていうことは無い。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/02(日) 01:15:55.04 ID:AzbOAoJG0<> 私にとってちなつちゃんはそういう存在だった。
次に浮かんだのは結衣だった。
昔、まだ泣き虫だった私を守ってくれた存在、憧れだったし頼りにしてた。
好きだけど、やっぱり形が違う気がした。
好きの形がやっぱり違う。漫画とか読んでると良く見る友愛っていう方の好きだ。尖って無い、真丸い形の好きだと思う。
結衣とは長い間一緒にいたからかもしれない、だからそう言った目線で見ることはないんだろう。
じゃあ、誰なのかってなる。
綾乃は意識したことがなかった。そう、昨日初めて、告白された時意識したくらいだった。
失礼な言い方になると、そういう目で見る事が一度もなかったのだ。
だけど、私は綾乃の告白を受け入れようとしてた。
その意味を考えようとすると、恐ろしい罪悪感に苛まされる。
自己嫌悪だと思う、でも何に対しての自己嫌悪なのか、私にはわからなかった。
一体、何のせいなのかって思って、頭を抱えて、そのまま目を瞑って忘れようとすると、携帯が震えて身体を起こした。
着信音から結衣からだっていうことはわかった。
わかったけど、出るかどうか迷っていたら、携帯の震えが止まる。
別に出なくたっていいと、再び横になったところで扉を誰かが叩く。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/02(日) 01:24:33.82 ID:AzbOAoJG0<> 京子「母さん?」
声をかけてみたが返事は無かった。
時計を見ると、もう夕方に差し掛かるかなって時間になっていた。
夕飯の予定かな、と思って返事を待っていると。
結衣「京子、私だ」
結衣の声が入ってきた。
わざわざ家にまで来てくれるなんて、別に来なくてもいいのになんて思いながら、今さっきまでの気持ちを紛らわしたくて言葉を返す。
京子「結衣?どうしたの〜」
できる限り平静、いやいつも通りを心がけながらうまくできたんじゃないかな?
そんなことを思いながら、結衣が来た理由はなんだろうかなんて考えてみる。
もしかして昨日の綾乃のとのデートの事でも聞きに来たのかな、結衣もやっぱりそういうの気になるのかなって思う。
綾乃には振られちゃったんだから、笑い話にしてしまってもいいのだろうか?
それは綾乃にも悪いか、そんな事を考えて頭の中をゴシップで一杯にする。
少しでもテンションを上げるための工夫だから仕方ない。
そして、結衣の返事は――
結衣「あかりが見つからない」
思わず、首を傾げている私がいた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/02(日) 01:33:28.57 ID:AzbOAoJG0<> いや、意味がわからない。
いきなり何を言い出すのかと思えば、それをなんで私に言いに来た?
そう言われてから、今さっきのメールを確認する。少し前に来ていたメールを開くと、あかりが見つからないという文だけが鎮座していた。
良く見ると、ちなつちゃんからも来ていた。
結衣「京子、入るよ」
返事を待たずに結衣が部屋の中に入ってくる。
顔は赤くて膝も赤い、外は結構寒いってことがわかった。
だから、それも踏まえて私は聞く。
京子「あかりが見つからないって……」
結衣「ああ、家にも帰って無いらしいし、今日は学校にも来てないんだって」
京子「うそだ、だってあのあかりだよ?」
学校なんて早々休まない、自分よりも他人の事を優先する性格してるあかりが、学校を休むというのが想像できなかった。
でも現実に、あかりは学校に来ていないし家にも帰って無いわけで、こうして結衣が探していることが何よりの証拠だった。
結衣「ああ、そうだ。あのあかりがだよ。京子も探すの手伝ってほしい」
結衣の目は真剣そのものだった。こんな目の結衣は余り見た事が無くて、自然と気圧されてしまう。
私の知ってる結衣じゃない気がして、自然と足の力が抜けてしまって、同時に今さっき考えていた事を思い出してしまう。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/02(日) 01:46:47.36 ID:AzbOAoJG0<> 綾乃の告白で心が動いてしまった理由というものを。
京子「ごめん」
結衣「京子?」
京子「わたし、手伝えない」
手伝えない、手伝えるわけがなかった。
孤独を埋めてくれる機械を望んでいた私、何かが遠ざかる気がした。
それは私の今日までの悩みの正体だった。
あかりっていう、私を孤独から救ってくれる存在が、違う場所に行ってしまうということを、一番ショックに思っていた自分自身を知ってしまったから。
私は、心の底で思っていたんだ。あかりっていう存在が、孤独を埋めてくれる道具として私のそばに永遠に居てくれると。
私の言葉に結衣の顔が豹変したのはすぐだった。
一気に私の胸倉を掴んできた。
結衣「なんで手伝えないんだよ!」
京子「無理だよ、私はあかりのこと道具にしか思ってなかったんだよ?今気づいちゃったんだもん、私友達失格で、あかりにどんな顔して会えばいいのかわからないの」
結衣「それがどうした?そんな理由であかりのことなんて知らないって言い切るの?」
胸倉を掴んでいる手に力が入っていくのを感じる。
胸に感じる服がねじれる感覚に痛みが入り始めた頃、結衣の力強い瞳に怒りが混じり始めた。
結衣「なんで、こんな奴選ぶんだよ」
そのセリフと同時に、手に入る力が緩み始めた。
喉が解放されて、一気に涼しい空気が胸辺りに広がると同時に、結衣の視線は私を見下ろしていた。
結衣「京子、私ね。あかりの事好きなんだ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/02(日) 13:09:49.97 ID:G/OHkFQDo<> 来てた <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/20(木) 14:03:35.71 ID:siHHOgcC0<> もう1年か はやいな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/22(土) 00:20:29.53 ID:o42L4wXt0<> 追いついた
乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/27(木) 08:10:33.94 ID:0qUcxKiIO<> 応援してます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 01:24:20.03 ID:5w/yIz+Mo<> これで完結しなかったら私は死んでしまいます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 01:15:48.23 ID:tZIrPquo0<> つづきはやく <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:06:06.55 ID:Ir9U+kq4o<> 100レス以上に渡って分かり易い文章で延々と鬱になりそうな心理描写
人の心を動かすというか突き落とす才能に長けすぎ…
京あかがこれ以上不幸なのに耐え切れそうもない、はよくっつけ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 21:46:54.22 ID:2g/svH5/0<> 寒空の下に一ヶ月以上放置されたあかりちゃんはもう… <>