◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 19:55:46.81 ID:5l/e1mCy0<>「軽音部?残念ながら去年廃部したのよ」

綺麗に足をそろえて背筋を伸ばした、理想の姿勢で座り

上目づかいで私にそう言ったのは、音楽教師山中さわ子先生である。

一限目終了直後なので、教師や生徒の出入りは激しく、周りはひどくざわついている。

それでも、さわ子先生の声ははっきりと聞こえた。
<>中野梓の幽霊たちとの共同生活
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 19:56:30.87 ID:5l/e1mCy0<> そのよく通る声も、音楽教師であるゆえんなのか。

じゃあ新しく創ります。それで大丈夫ですよね?」

ここで引き下がっちゃだめだ。

「無理よ」

「なんでですか?」私は思わず声が大きくなっていた。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 19:57:15.17 ID:5l/e1mCy0<> 部室はもう満杯なのよ、新しくできたとしても意味がないわ」

じゃあ、部室はなくても結構です」

「軽音部なのに部室がなくてどうやって活動するの?」

う〜、ぜんぜん言い返せない。

「用件は終わりね。私授業だからこれで。あなたも遅刻しないように」 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 19:58:33.06 ID:5l/e1mCy0<> さわ子先生は事務的な口調でそういうと教師用の帳簿を抱え

職員室を出て行った。







午前中の授業を一通り受け午前中の日程を終えた。

昼休みは、別のクラスではあるが、同じ中学で仲も良かった鈴木純と過ごしている。

一日の中で一番楽しいのはこの時間だろう。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 19:59:23.93 ID:5l/e1mCy0<> 言動が生き生きとしているのが自分でもわかる。

「そういえば梓、なんか部活入らないの?」

紙パックにささっているストローを手で弄びながら純が言った。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:00:00.69 ID:5l/e1mCy0<> 「軽音楽部入ろうと思ったんだけど、廃部したらしくて」

「へぇ〜、じゃあジャズ研は?」

「見学してみたんだけど、思ってたのとなんか違うっていうか……」

「軽音部、作ればいいじゃん。そしたら梓が部長だよ」

「ダメなんだって。新しく作ったら」

「ん〜?どういうこと?」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:02:02.39 ID:5l/e1mCy0<> そこで私はさわ子先生に言い負かされた今朝の話をそのまま伝えた。

「それじゃ仕方ないね、先生を論破するのは無理だって」と言い

少し控え目な笑い声をあげる。

「そうだね、諦めるしかないね。許可もらったとしても部員が集まるかどうかもわかんないし」 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:03:45.52 ID:5l/e1mCy0<> それからの会話は昨日のテレビの話、中学の頃の話となり軽音部が話題にあがることはなかった





午後の授業は窓際の特権でもある、窓から差しこむ暖かい日差しに包まれながら、

5限、6限とぶっ続けで眠り、起きた時にはすでに放課後だった。

同じクラスに友達がいない故なのか、だれも起こしてくれなかったらしい。

心地よい眠りに対する代償だと思えば安いものだ。とそう思うことにした。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:04:45.28 ID:5l/e1mCy0<> 幸いHRが終わった直後だったらしく、

下校時間まではかなり時間があり、このまますぐに帰宅するのもなぜかもったない気がする。

そうだ、少し校内を見て回ってみよう。入学してまだ2週間だし、まだまだ行ったことがない場所が多くあるはずだ。

私は教室を出て、校内を適当に散策してみた。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:05:53.01 ID:5l/e1mCy0<> なんだか小学生になった気分だ。なにをしてもどこへ行っても大発見の連続だった時代。

私は自然と頬が緩み鼻歌を歌う。歩いていくうちに、場所は部室棟へとさしかかった。

とりあえずどんな部活があるのか詳しく見てみることにしよう。

新歓では紹介されなかった部活も多くあるはずだ。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:06:56.82 ID:5l/e1mCy0<> 書道部、茶道部、囲碁部、そしてなんとオカルト研究会という部活もある。

普段は一体何をしているのだろうか。音楽室へ続く階段付近へとさしかかったとき、

楽器の演奏が聞こえた。私は、耳をすまして聴いてみる。

かすかに聞こえてくる演奏に何か違和感を感じた。

ジャズ研のそれとは何かが違う。はっきり言ってしまえば素人バンドレベルだ。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:07:45.15 ID:5l/e1mCy0<> 真相を確かめるべく、私は木製の手すりをつかみながら、ゆっくりと階段を上がっていった。

ここが軽音部室、なのか?

曲自体はまったく聞いたことがないが、演奏の音が聞こえるのはこの部屋からだ。

ちゃんとあるじゃないか、軽音部。

あの嘘つき教師め、次会ったら文句言ってやんなきゃ。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:08:20.45 ID:5l/e1mCy0<> 曲の演奏が終わった頃を見計らい、私はドアを開けた。

「すいませーん」

「は〜い」

返事をしたのは黒髪で背の高い女生徒だった。

しかもかなりの美人だ。

「ここ、軽音部ですよね?」

「そうだけど。なんか用かな?」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:09:04.49 ID:5l/e1mCy0<> 「新入部員とかもう受け入れていませんか?」

そのとき、ガタッガタッと椅子の動く音がした。

「もっ、もしかして入部希望?」

「入部してくれるのぉ〜?」

奥に座っていた二人の女生徒がかなりのスピードで私に向かってきた。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:10:41.72 ID:5l/e1mCy0<> そりゃそう必死になるよね。

なんでかはわからないけど教師にすら存在忘れられて、新観もでないんじゃ部員が来るわけないし。

名前がわからないのでこの二人はヘアピン、もう一人はカチューシャとしておこう。

ヘアピンカチューシャの質問攻めにあい私が困惑していると、黒髪さんがとめてくれた。

この人は割りとしっかりしているかも。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:11:42.78 ID:5l/e1mCy0<> その後、改めて自己紹介をすることになり、黒髪は秋山澪、ヘアピンは平沢唯、

カチューシャは田井中律、あと奥の席で私達を見ていた、金髪と太い眉毛が特徴の琴吹紬、

四人とも先輩だということでああ、これからビシバシ鍛えられてもっとうまくなっていくのかなと、

理想の未来像を描いていた。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:12:30.14 ID:5l/e1mCy0<> 「じゃあ私、今日は帰ります」

「うん、お疲れ〜」唯先輩が言った。

「皆さんは、まだいるんですか?」

「あっ、私達は…えっと……」

「唯先輩?」

「ミーティングがあるのよ」ムギ先輩が笑顔で言う。

「それでしたら私も」

「梓ちゃんは今日入ったばかりだし、いきなり参加してもよくわからないと思うから。先に帰っても大丈夫だよ」

「そうですか。じゃあそうさせてもらいます」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:13:09.80 ID:5l/e1mCy0<> 私は部室をあとにし、それからしばらく歩いて校門を出た。

「軽音部かあ〜」

高校の部活はいったいどんなことをするのだろうか

うまくいけばスカウトの目にとまって

CDデビューとかしちゃったりして。私の妄想は家に帰り、眠りにつくまでとまらなかった。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:14:41.47 ID:5l/e1mCy0<> 次の日、私は朝からずっと放課後が待ち遠しくてたまらなかった。

昼休みの純との雑談も、軽音部の話題ばかり振っていると純が

「私も行ってみたい」

と言い出したので、快く承諾し一緒にいくことにした。

そして、時間は流れついに放課後がやってくる。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:15:18.04 ID:5l/e1mCy0<> 記念すべき高校での部活動初日。中学ではみんな自由気ままに楽器をいじって終わりだったけど、

高校ではどうなんだろうか

「こんにちは〜」

「おお〜来たか梓」

「こんにちは〜」

「さあお茶にしましょう」

「ん?梓そっちは誰だ?」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:16:08.43 ID:5l/e1mCy0<> 先に澪先輩が純に気付いた。

「軽音部のこと話したんですけど、ぜひ見学してみたいんだそうです。」

「そうなんだ、名前なんていうの?」澪先輩が尋ねる。

他のメンバーは奥のテーブルからこちらの様子をうかがっている。

澪先輩は客人担当ってやつなのか。と、私が思案している間も純は黙ったままだ。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:16:40.63 ID:5l/e1mCy0<> 緊張しているのだろうか。純にしては珍しい光景だ。仕方がないので私が彼女の名前を伝えた。

「鈴木さん、今日はゆっくりしていってね」

澪先輩がそういうと純が口を開いた。

「梓…」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:18:09.23 ID:5l/e1mCy0<> 「ん?なに」

「どこに部員がいるの?」

「えっ?」

純の思わぬ言葉に私はぽかんと純を見つめる。純もぽかんという顔で私を見ていた。

「人っ子一人いないじゃん、今あんた誰と話してたの?」

「いや、だから澪先輩と」

「梓」いつまにか律先輩たちも私達の近くにやってきていた。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:19:51.19 ID:5l/e1mCy0<> 「その子には私達が見えないみたいだねえ〜」

唯先輩が残念そうな表情を浮かべる。

「ど、どういうことですか?」

そして律先輩から思いよらない言葉が発せられた。

「うちらな…実はすでに死んじゃってるんだよ」
<> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 20:20:00.14 ID:oQZL+A0fo<> そういうことか・・・ <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:20:38.19 ID:5l/e1mCy0<> 「いやいやいや」意味分かんない。死んでたらここにいないじゃん

「私達は幽霊なのよ。その子には見えないみたいだけど」

ムギ先輩、そんなことを笑顔で言わないで下さい。

「あずさあぁ!」

「にゃ?」

純が大声で叫んだためびっくりして変な声が出てしまった。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:21:57.69 ID:5l/e1mCy0<> 「なっ何純? びっくりするじゃない」

「もう!さっきから私放り出して何一人で喋ってるの?」

「いや、だから独りごとじゃなくて」

「ん〜?」純が思いっきり顔を私に近づける

だめもとで言ってみるか。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 20:23:37.64 ID:5l/e1mCy0<> 風呂いってきます。また来ます <> ◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:03:08.85 ID:5l/e1mCy0<> 信じてもらえなかったらその時はその時だ。私は純に話した。

先輩達から説明された事をありのままに。

下手したら電波女とか言われて友達やめられるかもしれないな。

「えっ〜なにそれずる〜い」

えっ、ずるい?
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:03:41.64 ID:5l/e1mCy0<> 「それ梓にしか見えないんでしょ?しかも会話もできるんでしょ?」

「そうだけど」

「なんで梓には見えてんの?」

「それは私にもわからないよ」

「ちぇ、つまんない」

相変わらずのマイペースというか、私を変な目で見ることはなかった。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:04:45.06 ID:5l/e1mCy0<> 先輩たちはというと私達のやりとりに退屈したのか、四人で雑談に興じている。

暇ならフォローくらい入れてほしかったな。あっどうせ聞こえないか

純は、自分には見えないんじゃいる仕方がないと言って、部室をあとにして帰って行った。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:06:38.10 ID:5l/e1mCy0<> れにしても幽霊だったとは。足も手もあるし、声もはっきりと聞こえる。演奏が聞こえたってことは物もさわれるって事だ。
そして致命的なことに、全然怖くない
「こら梓」
「な、なんですか律先輩」
「おまえ今怖くないとかいっただろ」
しまった。声に出ちゃってた。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:07:46.90 ID:5l/e1mCy0<> それにしても幽霊だったとは。足も手もあるし、声もはっきりと聞こえる。

演奏が聞こえたってことは物もさわれるって事だ。

そして致命的なことに、全然怖くない

「こら梓」

「な、なんですか律先輩」

「おまえ今怖くないとかいっただろ」

しまった。声に出ちゃってた。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:08:55.98 ID:5l/e1mCy0<> 「まあ怖いって言われたらそれはそれで嫌だけどな」と澪先輩

私は「そうですね」といったあと、ずっと気になっていたこと疑問を切り出した。

「なんで私には見えるんですか?」

その瞬間、場が静まりかえった。沈黙を破ったのはムギ先輩
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:09:37.68 ID:5l/e1mCy0<> 「たぶん梓ちゃんの内面が影響してるんじゃないかしら」

「はぁ」

「少し乱暴な言い方になるけど、私達もいたくてここにいるわけじゃないのよ」

「成仏できないってこと……ですか?」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:10:15.37 ID:5l/e1mCy0<> 「そう。私達ね、結成してから軽音部らしいことは何一つできなかったの」

そこからいままで一番口数が少なかったムギ先輩はかなり饒舌になった。

しかし落ち着いた喋りと口調だからなのか、あまり深刻さは感じられない。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:11:49.10 ID:5l/e1mCy0<> 「廃部寸前ってとこで奇跡的にこの四人が集まって、無事存続できたのだけどね、
去年合宿に行く途中の事故で四人とも死んじゃった」

だから笑いながら言わないで下さいよ。

「学園祭でライブやりたかったなあ〜」

「違うよりっちゃん、その前に夏休みで遊ばないと」

「おお、忘れてた」

「練習のことも思い出せよ」澪先輩が唯先輩と澪先輩にあきれながらツッコミをいれた。 <>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:13:38.30 ID:5l/e1mCy0<> ほんとうに彼女たちは幽霊なのだろうか

「私達が死んだとたん、生徒も教師も気味悪がってここに近づかないし」

「でも演奏が聞こえてましたよ?あれで誰か気づくんじゃ…」

「演奏も視覚と同じ。聞こえる人と聞こえない人がいるのよ」

そういうことか、私がうなずき納得しているとムギ先輩が言った。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:14:40.59 ID:5l/e1mCy0<> 「ごめん、ちょっと話が逸れちゃったわね。梓ちゃんの内面が影響してるっていったけど」

私の内面。私自身、自分のことはよくわからない。

「梓ちゃん、いままで一人で楽器やってたでしょう?」

「はい」

「でもだれかと一緒に演奏したいって思ってたんだよね?」

「もちろんです」
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:15:09.69 ID:5l/e1mCy0<> 自分の気の合う仲間たちとバンド組んで、聴いている人が喜ぶような音を奏でたいという気持ちは抱いていた。

ギターを始めたころから、一人で練習ばかりでライブなんてでたことなんてなかった。
<>
◆yPglaITM9U<><>2011/12/17(土) 21:15:39.72 ID:5l/e1mCy0<> 「だからよ。だから梓ちゃんには私達が見えるの」

「なるほど」澪先輩が納得する。

「よくわかんないけど見えてるならそれでいいんだよ」

「だな」

唯先輩と律先輩は思った通りの反応だった。

<>
◆yPglaITM9U<>sage<>2011/12/17(土) 21:24:24.07 ID:5l/e1mCy0<> 今日は終わりです。読んでくれた人、ありがとう <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/17(土) 21:34:37.14 ID:DegfDoCeo<> 乙です。

傍から見ればアレな梓を電波扱いしないとか純ちゃんマジ良い子。
梓に取り憑けば4人は移動できるのかな? というか地縛霊ではない? <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/18(日) 02:51:25.78 ID:stZ+w0XPo<> 憂ちゃんがどうしてるのか気になる… <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/18(日) 05:13:47.60 ID:SDgFoA/Zo<> 澪は夕子さんに似てる <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/18(日) 10:46:16.39 ID:ONDVpet6o<> これは今後の展開に期待。 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/18(日) 11:08:47.45 ID:wyS/Znp8o<> >>44
あと和もどうしてるか気になる。 <>