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HTML化した人:lain.
唯「天使の作り方」
1 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 20:41:49.44 ID:sAVTLlKAO

唯『天使を作ろう』

2 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 20:43:10.87 ID:sAVTLlKAO

卒業式の後、わたしたち4人は廃ビルの屋上で空を見ていたんだ。
夕日が落ちて、真っ黒になってしまう前の空。

同級生の騒ぎ声はまだ耳に残っていて、それに負けないように歌ったよ。
でも、そうじゃない。
だから、もう何の歌かは思い出せなくて。
3 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 20:45:50.53 ID:sAVTLlKAO
そうそう、ここからはいろんな、本当にいろんなたくさんのものが見えるんだ。

公園。病院。スーパー。楽器店。交差点。信号機。月。家々。踏み切り。電車。金星。桜。

わたしはそのどこかに天使の姿を探してた。

4 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 20:53:09.48 ID:sAVTLlKAO
風が吹いて――ううっさみぃ――りっちゃんが言って、わたしたちは身を寄せあった。

「こんなとき思い出話をするのがぴったりなんだろうなあ」

だけど、わたしたちには語れるような思い出が何一つなかったんだ。そういうのって、すごくすごく悲しいけどさ。

もちろん、それは最初からまるっきりの空っぽだったってわけじゃなくてね。
そう、失くしちゃったんだ。

5 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 20:58:39.62 ID:sAVTLlKAO

だから、だからせめてさ――思い出を作っちゃおうよ。

わたしは言ったんだ。
みんながこっちを見て呆れるように笑って、その後思いっきりはしゃぎ声をあげた。
6 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 21:03:38.25 ID:Q+wMtN3po
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7 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 21:05:51.97 ID:sAVTLlKAO

――すごい。すごいよ、それっ

――だなっ。唯のくせにー

――りっちゃんひどい!

――いたっ。わかったわかったわるかったよぅ。ああほっぺたいてぇ

――ふふっ

――あ、ムギー笑うなー

――えへへ、でもうまくいくかしら?

――大丈夫だよっ

――まったく、お前のその自信はどこからくるんだ
8 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 21:12:31.77 ID:sAVTLlKAO

――じゃあ最初はどうする?

――あ、最初はもう考えてあるんだ

――どうするのっ?

――ムギ、落ち着けっ

――で?

――天使だよ。天使を作るんだっ

――……へ?

――あれれ?

9 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 21:18:58.63 ID:sAVTLlKAO

――何だよそれっ

――だーかーら、天使なんだ。わたしたちを幸せにしてくれる。ほらっ前にりっちゃんコーハイ欲しいって言ってたじゃん

――ああ、後輩ってことか

――でも、いいな天使

――でしょー

――うん、すごくいい

10 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 21:20:07.56 ID:V6TanjuAO
今のところなんとも言えないがとりあえず期待。
11 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage]:2012/01/01(日) 21:23:38.45 ID:sAVTLlKAO

――よーし。じゃあわたしがみんなに天使の作り方を教えてあげるね

ごにょ。ごにょ。ごにょ。

――いい?行くよ

――うん

――ばっちり

――おう

――せーの……

わたしたちはいっせいに振り返った。

12 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/02(月) 22:52:01.26 ID:WCfbN3SRo
End?
13 :以下、あけまして[sage]:2012/01/03(火) 18:21:58.54 ID:x/CKVlvIO
深い意味があるようなないような
14 :以下、あけまして[sage]:2012/01/04(水) 22:33:41.99 ID:/8s47t7AO
まだ続きますごめんなさい
15 :以下、あけまして[sage]:2012/01/04(水) 22:34:28.87 ID:/8s47t7AO
唯『ブルーム現象』
16 :以下、あけまして[sage]:2012/01/04(水) 22:49:50.17 ID:/8s47t7AO
例えば、後で食べようと思ってとっておいたチョコレートが突然白くなっちゃうみたいにさ。
この世界も間違った方向に進んじゃったらしいんだ。
よくわかんないけど。

誰かから聞いたんだっけ。
それとも昔から知ってたのかな。
チョコレートが変色して、でも別に問題はないよーってやつ。

“ブルーム現象”

そう言うらしい。

で、らしいってことはやっぱり誰かから聞いたんだろうなあ。
そんな思い出。
失くなっちゃった思い出。

17 :以下、あけまして[sage]:2012/01/04(水) 23:28:53.91 ID:/8s47t7AO

梓「こうなってああなったんですよ……唯先輩?」

唯「へ?きいてる聞いてるよ」

梓「……へえ」

唯「あれだ純ちゃんの話だ」

梓「そうです。それで?」

唯「どーなつっておいしいよね」

梓「まあ、そうですね」

18 :以下、あけまして[sage]:2012/01/04(水) 23:44:24.89 ID:/8s47t7AO
唯「今から食べにいこう」

梓「さっき食べたじゃないですか」

唯「あれはた、い、や、きだよあずにゃん」

梓「まあ、そうですけど」

唯「ばあかばあか」

梓「はあ」

唯「そこは怒るとこだってっ」

梓「こう……むっ」

あずにゃんは精一杯怒った顔を作ろうとした。

唯「えへへ、へたくそだあ」

梓「むう」
19 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:03:08.89 ID:n9QaGRpAO

わたしたちは公園のベンチに腰かけて、足をぶらぶらやってた。
二年生のわたしは一年生のあずにゃんに、先輩として何か伝えるべきことがあるんじゃないかって、脳髄をしぼりあげてたんだ。
目の前の鳩が飛び上がって、ばたばた、あずにゃんが驚いて変な声をあげた。
わたしは笑った。

20 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:12:47.18 ID:n9QaGRpAO

唯「あずにゃんも飛べるんじゃないかな」
梓「なんでですか?」

唯「だって天使だよ」

梓「飛び方わかんないんですし」

唯「でもこんな立派な羽だよー」

梓「先輩方はそう言いますけど……わたしには見えませんよ」

21 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:14:18.63 ID:n9QaGRpAO

唯「あずにゃんも飛べるんじゃないかな」
梓「なんでですか?」

唯「だって天使だよ」

梓「飛び方わかんないんですし」

唯「でもこんな立派な羽だよー」

梓「先輩方はそう言いますけど……わたしには見えませんよ」

22 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:21:48.70 ID:n9QaGRpAO


唯「ねえねえやってみよう」

梓「えー」

唯「いいからいいからまずはわたしがやり方を見せるよ」

わたしはベンチの上に立った。
座るとこに靴で立つなんてマナーが悪いですよ。あずにゃんが言った。
わたしは跳んだ。
落ちた。

23 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:27:56.26 ID:n9QaGRpAO

梓「ダメじゃないですか」

唯「わたしには羽がないもん。さ、次はあずにゃんの番だ」

梓「はいはい」

ゆっくりとした動作でベンチの上にあずにゃんは立った。
そして。

唯「いいよー」

梓「えいっ……いたた」

唯「あ、落ちた」

24 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:39:18.07 ID:n9QaGRpAO

唯「むむむ、残念」

梓「まったく……」

唯「どうしたら飛べるんだろうねー」

梓「ムリですって」

唯「あーあ空はあんなに青いのにー」

空をわたしは仰いだ。
今日は曇りなんだけどね。

25 :以下、あけまして[sage]:2012/01/05(木) 00:47:36.17 ID:n9QaGRpAO

梓「そんなに気を落とさないでくださいよ。そうだ、どーなつでも食べましょう」

唯「やったあ!てか実はあずにゃんも食べたかったんだねっ。くふふ」

梓「何ですかその笑い方」

唯「いやあ、食いしん坊にゃんだっ」

梓「語呂わるいです」

唯「ぬぅ」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga]:2012/01/06(金) 23:58:24.99 ID:1qQ60Nek0

商店街の真ん中を歩く。
半分以上の店がシャッターを下ろしていて、さびしいなあっていつもわたしは思うんだ。
となりおばあちゃんが若かったころはにぎわってたんだって。
ほんとかな?
なんとなく、そうぞうできないや。


唯「ねえ」

梓「はい」

唯「あずにゃんはさ、昔だったころのここをみたことある?」

梓「ないですよそんなの。タイムマシーンは信じてないです」

唯「そっかー。でもわたしは未来にいたんだよー」

梓「へえーそりゃすごいですね」

唯「あー信じてないねっその顔は」









27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga]:2012/01/07(土) 00:14:56.89 ID:sB/oYTQ80

梓「じゃああれですか」

唯「なんでしょうか」

梓「これから起こることとかわかっちゃう感じですか」

唯「わかんない感じです」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga]:2012/01/07(土) 00:24:29.73 ID:sB/oYTQ80

梓「じゃああれですか」

唯「ん」

梓「たぬきなんですね」

唯「っぽんぽこん」

梓「何ですかそれ」

唯「鳴きまねだよ」

梓「むむ」

唯「たぬきっ」

梓「じゃあ、たぬきは、っぽんぽこんってなくんですね」

唯「うん」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga]:2012/01/07(土) 00:48:11.09 ID:sB/oYTQ80
うそつき。
聞き取れないくらいのためいきまじりの小さな声であずにゃんはつぶやいた。
でも聞こえてしまった。

そうだった。
時々忘れちゃうけど。わたしはうそをついたんだ。
そして、だまされたのもやっぱりわたしなんだろうな、きっと。
たぬきが逆に狐に化かされるみたいに。

唯「あずにゃんはいじわるなこぎつねだあー」

梓「天使の次はきつねですか……こんこん」

唯「っぽこぽこん」

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga]:2012/01/07(土) 01:01:23.87 ID:sB/oYTQ80

梓「って動物ごっこをしてるんじゃないんですよっ」

唯「あずにゃんからはじめたくせにー」

梓「う……てか未来から来たって」

唯「違うよ未来にいたんだよー」

梓「それって同じじゃないですか」

唯「んーそうなのかなあ」

わかんない。わかんないんだ。
口にしようとしてやめた。

わたしだってホントは何もわかっちゃいないよ。
だけどあずにゃんにはちゃんと説明しなくちゃいけない気がしたんだ。



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