VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<><>2012/01/11(水) 01:12:31.63 ID:LFooJzIg0<>禁書目録というよりは超電磁砲よりの二次創作SSです。
半オリキャラが主人公になっております。
またキャラや口調が若干崩れている箇所があるかもしれません、見つけましたら指摘してくださると嬉しいです。
原作などは大体のものには一度目を通したことがある程度です。
以上を踏まえお楽しみいただければ幸いです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1326211951(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>佐天「透明にする能力?」
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>saga<>2012/01/11(水) 01:13:14.47 ID:LFooJzIg0<> 私はとても困っていた。
何に困っていたかと言うと初めて訪れた街で迷子になっていて、そして私には時間が残されていないことだった。
今日私は柵川中学校というところに転校することになったんだけど、朝起きてバスに乗るところまではよかった。
問題はそこから。乗ったバスは柵川中学校方向とは逆に向かうバスだったらしくて次のバス停で慌てて降りて今度こそ柵川中学校の方向に向かうバスに乗った。
次は降りるバス停を間違えて少し手前で降りてしまったらしい。
そしてそこで一番の失敗。はじめて来た街であとバス停二つくらいの距離なら歩いていこうとしたことだ。
土地勘もなく、この学園都市という外の都市とはかけ離れた空間の中で私は案の定迷子になってしまった。
「後どれくらいで学校始まるんだっけ」
中学に入学した時にお兄ちゃんから貰った時計で今の時間を確認する。
聞いていた始業時間まではまだ余裕があるものの、今日から転校と言うことで色々始業前までにやらなければならないことがあるから、もうタイムリミットは十分を切っていた。
「うぅ〜、もっと余裕をもって出てくるんだったぁ。こんな状況になるなんて思わなかったしな〜」
愚痴をつぶやいても何も問題は解決しないのだけどついついつぶやいてしまう。
絶体絶命の状況だ、転校初日から遅刻だなんて私のイメージがひどく下の方から始まってしまう。
転校するって決まってから、転校先では今までのようなイメージから抜け出そうと決心したんだ、憧れの由花子お姉さんみたいな凛としたイメージの女の子になると決めたんだ。
だからこそ私はここで躓くわけにはいかないのだ。
(そうだ、今は学校に行く学生が一番多い時間のはずなんだから誰かに道を聞くか、あわよくば同じ制服の子についていけばいいんじゃないそうすれば―――)
「ってこんな時に周りに誰もいないじゃない!」OH MY GOD!
誰もいないけど街中で素っ頓狂な声を上げてしまうほど私は焦っていた、OH MY GOD!なんて口にするのはいつ以来だろう、パパの口癖がつい出てきてしまったようだ。
それほど焦って取り乱していたからだろうか、後ろの人の気配に全く気づかなかったのは。
「えっと〜、君こんなところでなにしてるん?ここらへんは人通りも少ないし日が出てても女の子が独りで歩くのはあんま感心せんで?」
「はっ!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:13:51.58 ID:LFooJzIg0<> 私はぱっと声のした方向に振り返るとそこには百八十センチは超えるくらいの大男が立っていた。
いや、大男って言ってもひょろっとした印象で顔はにこやかな表情を作っていたし、目立つ青い髪の毛とピアスの分を差し引いても悪い人には見えなかった。
「君すごい美人さんやな、でもえらい困った顔してるし。どないしたん?」
「ん、えとですね、ちょっと、その〜〜〜道に迷ってしまいまして。柵川中学校っていうところに行きたいんですけど・・・・・・」
私は正直に男の人に事情を話した。今のところ頼れる人なんて周りにこの人ぐらいしかいなかったし。
「柵川中学校?あぁ、確かこの近くにそんな名前の中学校あったなぁ。それやったら一本だけ通りを隣にずれたら今の時間帯同じ制服の子がぎょうさんおるはずやわ。けど迷子なんてこんな時期に珍しいなぁ、君もしかして―――」
「あ〜、はい、今日から転入です。学園都市に来たのもつい数日前でして」
「なんや、そうやったんか。でもこれもなにかの縁や、道案内ついでにメアド交換しようや、なんか困ったことあったら助けになるし」
「え?」
道案内を申し出てくれたのは正直嬉しいけど、いきなりメアド交換とかは・・・・・・
お兄ちゃんやパパも学園都市に行ってもナンパとかには気をつけなさいって言ってたし、これもナンパなのかな?
(で、でも時間が惜しいのも事実。ここでこの人を逃したら次に人に会えるのはいつになるか分からないし・・・・・・)
「お、お願いします」
結局私は青髪の人を頼ることにした。もしこの人が変な人だったらメアドを変えるかお兄ちゃんにとっちめてもらおう。
「はい承りましたよ、と。ちなみにこの道はいろんなお店がある、どちらかといえば放課後に賑わう通りやから朝は全然人おらんねん、今度から覚えときや」
「は、はい」
「それじゃあ途中までは一緒にいったるわ、僕はまだ時間に少し余裕あるし」
「ありがとうございます」
まぁこの人がいい人であることを祈ろう。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:14:21.38 ID:LFooJzIg0<> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
道すがらメアドを交換した私と青髪の人はビルとビルの間を通っていた。
薄暗い路地だがこちらを通らないと大分遠回りをしてしまうそうで、仕方なく青髪の人につきしたがって後ろをついていく。
そこまで長い路地ではないみたいで、向こう側の景色も青髪の人の肩越しにちらちら見える。
「あ、そこ段差あるから気いつけな」
「はい」
段差どころか隣のビルなどから配管なども伸びてたりするからうかうか前ばかりは見れないのだけれど。
「ほい、こっからなら周りに同じ学校の子も居るから迷わんと思うわ」
路地から抜けるとさっきの通りとは打って変わって人通りが激しくなっており、青髪の人の言うとおり私の着ている制服と同じ制服を着た子もいる。
「ありがとうございました。わざわざ送っていただいて」
「ええよ、ええよ。君みたいな美少女と朝一緒に歩けたうえにメアドも教えてもらえたし」
う、謙遜してるのかマジで下心なのか分からない人だな・・・・・・
「ほな、僕は僕の学校行くわ。またね」
そう言うと青髪の人はさっき来た路地の中へと姿を消した。
まぁ総合的に見ればいい人だった、かな?
「っと私も急がなくちゃ!ちゃんと間に合うかなぁ?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「う〜い〜は〜るっ!!」
「きゃっ!!」
いつものように親友の初春のスカートを勢いよくめくる、もちろん男子には見えない角度、タイミングを絶妙に見計らってだ。
伊達に一年近く初春のスカートをめくってはいない。
「もう佐天さん!やめてくださいっていつも言ってるじゃないですかぁ〜!」
「いや〜〜〜ごめんごめん。初春がかわいいからついやっちゃうんだよね〜」
頬を膨らませて抗議する親友は相も変わらず小動物的でかわいいなぁ。しみじみと思う。
「次からは本当にやめてくださいね」
「は〜い、善処しておきま〜す」
もちろんやめるつもりはさらさらない。
なぜなら私はこの世で一番好きなのは初春のスカートをめくることなのだから。というのはいいすぎかな?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<><>2012/01/11(水) 01:14:53.64 ID:LFooJzIg0<> 「もう、前もそんなこと言ってましたよね。まぁいいです、それより佐天さん知ってます?」
「? 何を?」
「転校生の話ですよ、今日来るらしいですよ。しかもうちのクラスらしいです」
「えっ、何それ本当?男?女?」
「あ、いやそこまでは分かってないんですけど・・・・・・」
転校生、もしかしたらイケメンだったりして。いや人生そうそう甘いものでもないし女の子かな?どちらにしろ変な人じゃなきゃいいけど。
「でもこんな時期に珍しいですよね。転校生なんて、しかも外から」
「あ、それ私も思って所なんだよね。二年生のしかもこんな時期に」
二年生になってから少し経って夏の足音が聞こえてきそうなこんな時期だもの、なにか特別な事情でもあるのかな?
しかも外からっていうのがさらに謎だよね、今から能力開発っていうのも遅すぎる気が・・・・・・
そんなことを考えていると間の抜けたチャイムの音がスピーカーから流れてきた。
もう始業時間か、そういえば今日は朝の占いを最後まで見てたせいかちょっと遅く家を出たんだった。しかもわざわざ見た結果が最悪だったし。
「じゃあ私自分の席に戻るわ。また休み時間にね〜」
私がそんなくだらないことを考えながら自分の席に着くと程なく担任の先生が教壇に現れた。
そのまま授業の前のHRに入る。初春の話が本当ならこの時間のうちに転校生のことを紹介するんじゃないかな?
「ええ〜、いつもならここら辺でHRは終わるんだが今日はそれに加えて一つお知らせがある」
教室が少しざわつく。私や初春、または情報にさといクラスメイトなんかは期待していたことなので体を少し起こして先生の言葉を待つ。
「今日からこのクラスに一人の仲間が加わることになった。その子の紹介をしようと思う、東方(ひがしかた)、はいってきてくれ」
「はい」
間違えることのない、女の子の声だ。高くてそれでいて嫌にならないような透明感のある声だった。
教室の扉が開かれる、教室のみんなの視線が扉のほうに向けられる、が―――
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:15:17.84 ID:LFooJzIg0<> 「?」
そこには誰もいない。扉の影に?でも待っていても誰も入ってこない。
その代わりに、
『 コッ コッ コッ 』
足音だけが教室の中にはいってきた。
教壇の上に上がると、若干音の変化があったものの人が進んでるように足音がなる。
『 』
音が途中で止まると、次は音も無くチョークが持ち上がり黒板に文字を書いていく。
『東方 静』
書きおわるとチョークは元の場所に戻った。
次の変化は黒板の前に起こった。
「みなさんはじめまして―――」
段々と色が浮き上がりだし、人の形を作っていって―――
「東方静といいます」
ポニーテールの女の子がそこに現れた。
「よろしくお願いします」
教室の皆はあっけに取られて女の子を見ている。
さっきの能力のこともそうだけど・・・・・・すごく可愛い女の子だったから。
同性の私から見ても可愛いと思える子だから男子から見たらそれはもう、能力なんかよりも感心のあるファクターなんだろう。
その女の子は私達の視線なんて気にしていないように言葉を続けた。
「えっと、さっきのは私の能力で『透明乙女(インビジブルガール)』って言います。今の所周り2mくらいまでなら自由に者を見えなく出来ます、とはいってもまだうまく制御できないこともありますけど」
「というわけで、みんな東方と仲良くするように。席はそこの空いている席を使ってくれ」
「あ、はい」
「じゃあこの後はそのまま授業に入る、準備はちゃんとしておくようにな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:15:59.07 ID:LFooJzIg0<> それだけ言うと先生は教室から出て行き、東方さんは自分の席へと歩いていってよどみない動作で座り、次の授業の準備を始めた。
ずいぶん真面目な女の子だなぁ、って言うのがその時の私の印象かな・・・・・・
ぼけっと私が見ている間にもほかの皆は行動を起こしている。
もちろん授業の準備と言うわけではなくて、東方さんに話かけにいったということだ。
いや、気持ちは分かるけど皆さんがっつきすぎじゃないですか?そんな私の本音は『出遅れちゃったな〜。あ〜あ、私も東方さんと話したかったな〜』ていう所です。
「佐天さん、佐天さん」
「ん、なんだい初春?初春も東方さんのところに行かないんだ?」
「あはは、みんながあんなに行ってますから。私には入れませんよ。それで佐天さん、その右手どうしたんですか?包帯なんて巻いて、怪我でも―――」
「ああ、別にたいしたことはないよ。どっかで引っ掻いたのかな、絆創膏じゃ長さ足りなかったから包帯巻いてるだけだし。それより今日のお昼さ、屋上で食べない?」
「え、屋上ですか?あそこは鍵がかかってるからはいれないんじゃ?」
「ふふふ、実は昨日たまたま屋上の鍵が外れてるのに気付いてね。今日は天気もいいし、まだそんなに暑くも無いから丁度いいかなって」
「い、いいんですかね、屋上は立ち入り禁止なのに」
「そんなこと言って初春も乗り気な顔してるよ」
指摘すると初春ははっと顔を隠したが私は初春のにやけた面を見逃さなかった。
「うひひ、初春って風紀委員なのにアンモラルなことが意外と好きだよね。いつもはキッチリしてる反動?」
「ん〜〜〜、佐天さんちょっといじわるですよその言い方」
「あはは、ごめんごめん。じゃあお昼にお弁当のから揚げ一つ初春にあげるからぁ」
「もう、佐天さんったら」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お昼休みのチャイムが鳴ると私と初春はこっそりと屋上に続く階段に向かった。
心なしか教室が騒がしかったようだけど今から屋上に行く私達には関係の無いことかな。
こっそりと向かったのは先生に見つかると何をしているか聞かれたり厄介なことになりかね無いからだ、屋上の鍵が開いてることに気付かれたらせっかくのお昼が台無しだし。
屋上まで難なくたどり着いた私達は最後の関門 (昨日の時点で先生が気付いて施錠しているという事態も起こらず)を突破し屋上へと足を踏み入れた。
「あぁ〜〜〜、風が吹いてて気持ちいいねぇ初春!」
「そうですねぇ、今だと日差しもそこまで強くありませんし丁度いいですね」
「それじゃあさっそくお弁当でも広げますか!」
意気揚々と持ってきていたレジャーシートを広げ(昨日のうちから準備万端だったのだ)その上に座り込む。
しかし―――
「あの佐天さん、二人だけじゃ風でシートがめくれちゃいますよ」
準備万端とはいかなかったようだ。
どうしよう、今から教室に何かとりに行くのもめんどくさいし教師に見つかるかもしれないし・・・・・・
せっかく気持ちよく昼食がとれるかと思いきや、予想外のところで出鼻をくじかれる形になってしまった。
しかしそんなとき上のほうから救いの手が、いや声が降りてきた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:16:27.12 ID:LFooJzIg0<> 「困ってるなら手を貸しましょうか?」
「えっ!?」
その声は聞きなれなくて、けれど印象に残っている声で、つまり、その人は―――
「東方静!?」
「Yes ,I am !!」
「「・・・・・・?」」
「さっきのは忘れてください」
いきなり流暢な英語で返されてはとが豆鉄砲を食らったような表情になってしまっていた私と初春は、東方さんの恥ずかしそうな顔を見て空気を読み言葉通り先ほどの言葉を流して会話を続けることにした。
「な、なんでこんなところにいるんですか?」
「あはは、さすがに休み時間ごとに質問攻めじゃあ参っちゃうから透明になって屋上まで逃げてきちゃった。皆良い人そうなんだけどさすがに疲れちゃって」
「大変なんだねぇ、転校生っていうのも」
「私も初めて知ったわ」
東方さんは柔らかな表情のまま冗談で返してくる。絵になるなぁ。
「一緒に食べてもいいかしら?えっと・・・・・・」
「私は佐天涙子、こっちは初春」
「どうも初春飾利です。丁度人手が足りなくて困ってたんです、二人じゃレジャーシートが舞い上がっちゃって」
「うん、よろしくね、涙子、飾利。私のことは静って呼んでくれればいいから」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「へぇ、静ってアメリカで育ったんだぁ!」
「ええ。とは言ってもよく日本にも長く滞在してた時期もあったし、どっちで暮らしてても苦しくは無いわ」
「すごいですね、と言うことは日本語も英語も喋れるんですね」
「うん、近くに英語を話す人とと日本語を話す人がいたから自然と両方使えるようになったわね」
「ほええ〜〜〜」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:16:58.35 ID:LFooJzIg0<> 三人でお弁当を囲んで色んなことを話した、静は初めてきた学園都市のことをよく聞いてきたし、私達は静の育って来たこれまでのことなんかを話してもらった。
なんでも静は今までアメリカに住んでいたらしくていわゆる帰国子女なんだとか。
あと複雑な家庭なのかお兄さんは日本に住んでて、日本に滞在してたのはお兄さんの住む家に遊びに行ってたからだそうだ。
お兄さんの友達とかなんかにも静は可愛がられていたらしくその人たちの話も聞いた。
けれどその中でもお兄さんの話とお父さんの話をしている静かは顔が活き活きしていて、そのことを指摘すると顔を赤らめた。
(最初見たときはお人形さんみたいに可愛くて近づきずらかったけど、案外私達とそう変わらない普通の女の子なのかな)
「でも学園都市って凄いのね、見たことも無い形の建造物や、自動で動く清掃ロボットが動いてたり」
「あぁ〜〜〜、最初に来た人はやっぱり驚くよね〜〜〜」
「引越しを手伝ってくれたお兄ちゃんも凄く驚いてわ」
「誰でもそんなもんですよ。そのうち慣れていきますから」
「ええ、そうね。・・・・・・・・・あの、それでちょっと相談があるんだけど」
「ん?なになに、この佐天さんに出来そうなことなら何でも言ってちょうだい」
静がなにやら改まった様子で、話を切り出した。
「その、私今日の朝ここにくるまで道に迷ってしまって、その時は親切な人に助けてもらったんだけどいつもそうはいかないでしょう?だから・・・・・・この街のことをもっと知りたいの」
「えと・・・つまりそれはこの街を案内してほしいってこと?」
「ええ、せめて学校やよく使いそうな施設くらいは知っておきたくて」
静は申し訳なさそうに少しあごを引いてうつむいてしまった。
「あれ、そのさ、さっきの休み時間とかに誰か名乗り出てこなかったの?街を案内しようか?とか男子がいいそうじゃん」
静は首を左右に振る。
「まだ皆さんとはちょっと距離があるみたいで、そういう風なことは・・・・・・でも二人にはなぜかそういうのを感じなかったから」
「佐天さんはいつも馴れ馴れしいですからね、もう一気に人の射程距離内に入っちゃいますよね、毎度毎度」
「照れたからってちゃかすんじゃないよ初春。ま、私も嬉しいよ。そんな風に言ってもらって」
「じゃ、じゃあ」
「うん、私達が案内してやろうじゃないか、この学園都市を」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:17:24.18 ID:LFooJzIg0<> 静の表情がぱぁっと明るくなる。
彼女が笑うと、やはり同性でさえ魅力を感じてしまうほど可愛らしい。
なんか御坂さんとは逆の方向で可愛いなこの子は、なんていうか正統派の可愛さだ。いや御坂さんが正統派じゃないって意味じゃないよ。
正統派でも系統が違うっていうか・・・・・・て誰に説明してるんだか。
「あ、あのぅ・・・・・・・」
「なんだい初春」
「私は今日風紀委員で放課後はご一緒できそうに無いので、佐天さん一人でお願いしますね」
「な、なにぃ〜〜〜」
この友人は友人で正統派な友達甲斐のなさを発揮していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
柵川中学校に転校してきてからはじめての放課後、私は約束どおり涙子に街を案内してもらうために一緒に下校していた。
飾利は風紀委員があるからということで校門を出たところで別れた。
「まぁ今度は初春もいる風紀委員の支部にも遊びに行こうよ」
と涙子も言っていたことだし、今日は涙子と素直にこの街を案内されよう。
「じゃあ今日はよく友達と遊びにいく場所でも一緒に回ろうか。場所もここから近いし」
「わかったわ」
涙子について一緒に通りを歩く。今朝通ってきた道を引き返すように通りを行くと人通りがだんだんと増えてゆく。
ふと道案内してくれたあの青髪の人のことを思い出す、そういえばあの人は迷っていた時に私がいた通りは『放課後に人が賑わう』と言っていたような。もしかして―――
「ねえ涙子、もしかして今から向かうところってあの通りの一つ隣の通りのことかしら?」
そういって私は今朝通ったあの路地のあたりのビルの前の通りを指差す。
「あ、そうそう。よく知ってたね静」
「実は今日あの通りを通って学校まで来たの、だからそうなのかな?って」
「あの通りから?」
途端に涙子が顔をしかめた。私何かおかしいことでも言ったかしら?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:17:50.69 ID:LFooJzIg0<> 「それはまたずいぶん遠回りしたね。あの通りからうちの学校に向かうなんてさ」
「えっ?」
「だってあの通りって横に抜ける道がなくてちょっと不便じゃない?ま、遊んでるときはそんな気になんないけど、登校中にあの道通るのはあの長い通りをわざわざ端まで行って折り返して戻ってくることになるじゃん」
「ちょ、ちょっと待って。私が今朝学校に来たときはあの道から細い路地だけど通ってきたわよ」
「? そんなはずないよ。あの道には横方向には抜けれないはずだよ、よく行ってるから知ってるけど」
今度は私が困惑する番だった、もしかして私の言っている通りが涙子の言っている通りとは違うとか?
「じゃ、じゃあ私が今朝通った道を通ってみましょう。それなら話が早いでしょう?」
「あ、うん。そうだね、もし静の言ってるとおりに道があるならこれから便利だし」
そういって私は今朝来たはずのあの路地に向かって歩を進めた、涙子が後からついてくる。
朝に起きたことは事実のはずだ、バスに乗り間違えたり、バス停を間違えたり、道を間違えたり―――あの青髪の人にあったことも。
私は片手で携帯電話を開きアドレス帳を呼び出す、名前を聞きぞびれたため『青髪の人』と入力しているため上のほうに表示されているはずで・・・あった。
たしかに私は今朝あの人にあって細い路地から学校の手前の道までやって来たはずだ、それが事実であると携帯電話に表示されたこの文字列が証明している。
そして―――
「ここ、この路地から私はこっちの道に来たわ」
「う〜ん、たしかにここから一つ向こうの通りが目的地だけど・・・・・・たしかこの道って」
「とにかく行ってみましょう」
なにやら涙子が難色を示しているようだが私は確かにこの路地を通ってきたのだ、隣り合うビルも今朝見たものと同じはず。
私は涙子をおいて路地に飛び込んだ、しかし私の足はすぐに止まってしまう。
「・・・・・・っ!?」
「あのさ静、この先にはさ―――」
「どういうことよこれ・・・・・・」
私の目の前に朝には無かったはずのものが当たり前のように立っていた。
「フェンスがはってあって通れないよ」
そんなものは見れば分かる。私が道を間違えた?その可能性はある、けれどつい今朝のことなのに間違えるか?
「ここ以外のところもなぜか通れそうなところにはフェンスがあって通れないんだよね、まぁ上れば超えれるだろうけどスカートで登る気にはならないけどねぇ」
「・・・・・・今朝ここを通った時にはこんなフェンス無かったのよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:18:33.13 ID:LFooJzIg0<> 狐につままれたような気分になり呆然とフェンスを眺める、ところどころ痛んでるところもあり、長い間そこにあることを証明しているようにも見える。
私が学校に行っている間にはられたものではなさそうだ。
ということは―――
(この現象自体は私は知らない、けれど、この種類の違和感を感じるのは初めてではないっ!これは―――)
「これは『あったりなかったりの道』だね」
「・・・・・・何を言ってるの涙子」
またも私は困惑した表情を浮かべることになってしまった、涙子の突拍子も無い発言。あったりなかったりの道???
「私さ、学園都市の都市伝説とかネットで調べるのが好きなんだけどその中で今結構体験談とかが多く寄せられてるのがその『あったりなかったりの道』なの」
「えっと、つまり私はその都市伝説に遭遇したと言うこと?」
「いやぁ、まさかこんな身近なところで体験する人が出るなんて。あ、ちなみにその都市伝説は別に遭遇した人が不幸な目にあったりしない割とソフトな奴だから安心して」
「詳しく教えてくれないかしら?その都市伝説とやらを」
「えっ!?もしかして静もこういう話いける系の子なの?じゃあ仕方ないなぁ、この柵川中の都市伝説ハンター佐天さんの―――」
やれやれだわ、まさか涙子がそんなオカルト系の趣味を持ってたなんて。普通能力者の仕業とかを考えるんじゃないかしら。
「というわけで、『あったりなかったりの道』は最近生まれた話で、名前どおりあったはずの道が消えたり、壁なんかでふさがれちゃったりする話なわけさ」
「本当にそのまんまなのね」
「まぁあとで地図とかで調べると体験者が通ったところは元から道なんてなかったっていうのがオチかな。思い違いだったり、能力者の悪戯っていうのが有力な説かな」
「ふぅん、まさに今の状況のような都市伝説なのね」
「今日帰ったら体験談として掲示板にでも書き込んどかなきゃ!」
なんだか時間をロスさせてしまったのに涙子は嬉しそうだわ、まぁ罪悪感を感じなくて良かったとは思うけど。
「結局この道は使えないってことね。涙子、引き続き街の案内を頼めるかしら。ちゃんと消えない道を知っておかなくちゃあならないから」
「オッケー、じゃあさっきの道を―――」
涙子の後について路地を後にしながら私の中には一つの疑惑が生まれていた。
今朝出会ったあの青髪の男、何らかの能力者なのではないか?と、そして涙子の言っている『あったりなかったりの道』は彼の能力による仕業ではないかと。
(一度会って問い詰める必要があるかもしれないわね)
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:18:59.16 ID:LFooJzIg0<> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
時刻は日暮れをすぎてしばらくたったくらいのことだった。
私はあの後涙子の案内でとても有意義な時間を過ごした、朝に通った時とは大違いで人通りの多いあの通りは色んなお店があって凄く楽しめたわ。
今度はちょっと離れたところにあるセブンスミストっていう服飾のお店がいっぱい集まったところにも案内してくれるとか言ってたわね。
けれど今日はもう遅くなりそうだから帰ろうとしたところで―――
「いいからどっか行こうぜぇ、いいところ知ってるからよう。一緒に行こうや」
「俺達別に怖い人たちじゃないからさ、ね?」
こういう人間に絡まれて最悪な気分になってしまっている。
大体怖い人じゃないだとか言ってるけど女性二人をどこにも行けないように囲みながら誘ってくる時点でその条件から外れてるじゃない。
「なぁ〜、もういい加減だるくなってきたからさぁ〜。もう力づくでよくね?」
「だな、もたもたしてっと風紀委員が来ちまうしよぅ」
最初はただのナンパかと思った。涙子は結構可愛らしい外見をしているし、私もこれまでにそういう経験がなかったわけでもないからそういうものだと思って軽くあしらって帰ろうとしたんだけど。
この人たちはもっとタチの悪い連中だったらしくて、ほとんど引っ張り込まれるように涙子が連れて行かれて私も付いていかざるを得なかった。
しかも一番最悪なのは誰も止めようとしないことだったわ、学園都市は治安が悪いって聞いてたけどそっちのことのほうがよっぽど胸糞悪いと思う。
(囲んでるのは四人、か。少しでも距離を離せば涙子と一緒に能力で消えて逃げられるのに・・・・・・今は機を待つしかないのかしら)
「つうかこっちの子がさっきから妙に落ち着いてるんだけどよぅ、もしかしてこいつ能力者なんじゃね?」
「ばーか、この制服の学校はそんな高位能力者はいねえって調べ付いてんだよ。だから目ぇつけたんじゃねえかよ」
なんだか腹の立つ人種だわ、力がないものを狙って、力がある側がさらに数にまで頼って
「グレートに腹の立つクソ野郎どもね」
「ちょ、ちょっと静っ!?」
「あ?なんか言ったかお嬢ちゃん」
「あら、口に出ちゃってたかしら。せっかく猫被ってたのに、あなた達みたいな胸糞悪い連中に出会っちゃったせいで口調がめちゃくちゃだわ」OH MY GOD!
「てめぇ〜〜〜っ!!下手に出てたら調子こきやがって〜〜〜っ!!むかつくぜ!!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:19:33.05 ID:LFooJzIg0<> あぁ、やばいわね。とてもヘヴィな状況になってしまったわ。いえ、してしまったと言ったほうがいいのかしら、自分で招いた状況よねこれ、ああどうしようかしら。
でも涙子は関係ないわよね、ピンチに陥ったのが私が原因ならそれを涙子が被る必要はないわ。
だったらまずは涙子を逃がさなくてわ、私がこのまま挑発して殴られている間に涙子を透明にして逃がせばいいわ。
あぁ〜〜〜でも痛そうだなぁ、けど涙子なら誰か呼んできてくれそうだなぁ、風紀委員とか、それまでの辛抱かなぁ。
(っていうか今日あったばかりなのに涙子のこと凄い信用しちゃってるわね、私)
「で、どうするの?女の子をぶん殴っちゃうのかしら?それともそんな度胸もない?」
「ぷっつんきたぜぇぇ〜〜〜っ!!てめえは痛い目にあわせてボロ雑巾みてえにしてやるっ!!」
振り上げられる暴漢の拳、けれど私は目を閉じるわけにはいかない。
涙子を逃すタイミングを見誤るわけにはいかないのだから。
だけれどその暴漢が拳を振る前に声が掛けられる。
「ちょっと待たんかい」
「っ!!?」
暴漢も振り返るが、私も驚きのあまり声のした方向を向いてしまった。
この声は・・・今朝聞いたばかりだから間違いない。
「女の子二人に男四人で囲むってえらいかっこ悪いことしとるやん」
「あ、あんたは―――」
「今朝ぶりやね、名前も知らんカワイコちゃん」
そこに立っていたのは間違いなくあの青髪の男だった。
変に親切で、女の子に平気でカワイコちゃんなんて言ってしまえる妙な男だけど―――
(助けに来てくれた・・・・・・助けに来てくれたっ!!)
青髪の男の人は暴漢達のことなどお構いなしにこちらに歩いてきた。淀みない歩調だ。
「おいてめえ!何近づいてきてんだよタコ!自分の状況ちゃんとわかってんのか!?」
「まぁ僕が一人で君ら四人ですんごい不利やね」
さらりと言ってのけ、さらにこちらへと進んでくる。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:20:03.09 ID:LFooJzIg0<> 「でも僕が高位の能力者やったら君ら四人でも問題ないやんな?そういう可能性は考えんの?」
「っぐ・・・・・・」
さらに進み、ついに暴漢の一人の目の前までたどり着いた。
「どうや、君の射程距離までやってきてあげたで。殴りかかるか?でももし殴りかかるんなら覚悟してから殴ることやな」
「〜〜〜〜っ」
青髪の人の前にいる奴は顔を赤くし、激昂したのか私たちのほうから完璧に青髪の人のほうに標的を定めたようだ。
彼の余裕な態度に腹を立てたであろうそいつは右拳を強く握りふるふると震わしている、相当力がはいっている証拠だ。
そしてそいつはすぐさま攻撃態勢へと入った。
「無能力者だからってなめてんじゃねェ〜〜〜っ!!」
青髪の彼は振るわれた右拳をなんとも思わないようにこちらを向き叫んだ。
「今や!!二人とも逃げろぉっ!!」
突き刺さる、右拳。
転がる青髪。
「へっ?」
何が起こったの?あの青髪の人は何かの能力者じゃなかったの?あの朝の路地は彼の能力でどうにかしたんじゃないの?
ピンチの時に颯爽と現れておいて、散々期待させておいて・・・・・・
(私の探している人だと少し思ったのに・・・・・・・・・)
「静!何ぼさっとしてるの!!早くっ行くよ!!」
私が呆然としている間に涙子は冷静に青髪の人の言うことを聞いていたらしい。
私の手をとって路地の奥に逃げ出していた。私は涙子に引かれるがままにされて一緒に駆ける。
殴った本人も、周りの三人もまさかクリーンヒットするとは思わずあっけに取られていたようで私達は男達の間を抜けることに成功した。
しかもそれに追従するように―――
「それじゃあ僕もこのへんでっ!」
青髪の奴も逃げた私達を四人が目で追った隙に彼らの後ろから走りぬき、私達を追うような形で逃走を始めた。
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:20:30.32 ID:LFooJzIg0<> 「あっ!待てこのスッタコ!!」
「追いかけろ!!あの野郎ぶっ殺してやる!!」
青髪の奴が彼らを追い抜いたせいか、彼らも我に返ったのか追いかけてきた。
暗い路地に足音が騒々しく響いて、私達はいつのまにか三人組になって走っていた。青髪の奴が並走してくる。
「いやぁ、痛かったけどおおよそ成功かなぁ。あとはあのおっかない人たちをまければええんやけど」
「うっさいこのスカタン!かっこつけといてあっさり殴られてるんじゃないわよ!」
「静!別にいいじゃない!この人のおかげで逃げられたんだし!!」
「まぁだ逃げ切ってないでしょ!それに私は個人的な理由でこの青髪にグレートに腹が立ってるのよ!!」
「っていうか静ってそんなキャラだったっけ〜?」
路地を奥へ奥へと進む、時に右へ、時に左へと建物の間を疾走する。
しかしこっちは三人のうち二人は女の子だ、しかも中学生。
あちらはどう頑張っても高校生といった風貌で、暴漢らしく体力もあるみたいだ。
追いつかれるのは時間の問題、といったところだった。
「あぁ〜っ!!もう!!結局あんたが来ても絶望的な状況には変わりないじゃない!!追手は巻けないし、このままじゃ追いつかれておしまいじゃない!!あんたなんとかしなさいよ!!」
「い、いやいやそんなん無理に決まってるやん。あんなスキルアウト四人を倒せる力なんて僕には、ありませんし」
「あんな状況でやってくるならなんか能力でも持ってなさいよ!そんでスキルアウトをずば〜っ!と倒すとかさ〜〜〜っ!!」
ついつい青髪にも八つ当たりをしてしまったりする。
それにしてもコイツが期待を持たせすぎなのだ、あんな状況で助けに来るなんて・・・・・・まるで私が待ち望んでるような、おとぎ話に出てくるような―――
「まるで都合のいい漫画に出てくるヒーローみたいやな、そんなんやったら。でもこれは現実で僕はそんな大層な力はもってへんねん、ごめんな夢壊してぇ」
「なっ!!」
図星を指された。よく友達からも夢見がちとか言われたりするけど悪いのか、現実に期待しちゃあ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:21:05.79 ID:LFooJzIg0<> 「いや、でもあのままだったら、静は殴られちゃってたし、私としては結構助かったと思って、ますよ」
「ほんまぁ?君みたいな可愛い子にそんなこと言われたら僕、照れてしまうわぁ。しかも息切らして言うのがエロくてグッド!」
確かに現実は非常だけどさ。助けに来たのがこんな奴だし―――
「道行く先にはたっかい壁が立ちふさがってるしさぁ!!」
「えっ!?」
息を切らしながら曲がり角を曲がった先には高いフェンスで封鎖された道が視界に広がった。
もう引き返せないし、曲がれる道もない。
「はははっ!!絶体絶命だなぁ!!もう諦めやがれぇっ!!」
後ろから下卑た叫びが聞こえ、背中にぞくりとしたものが伝わる。隣の涙子の顔色もすっかり青ざめている。
どうするの?ここから透明乙女を使って三人だけ隠して引き返すとか・・・・・・いや、こんな狭い路地だと誰かにぶつかってばれるだろう。
じゃあ立ち向かう?青髪の奴は当てにならないし、私一人じゃあいつらの一人にもかなわないんじゃ。
最悪の想像しか頭の中を巡らない、あまりにも絶望的な状況―――だけど
「二人とも!!思いっきり走れぇ!!壁に向かってっ!!」
となりの青髪は全然絶望なんかしていなかった、むしろ希望に満ち溢れているような顔つきだ。
「えっ!?でもフェンスが―――」
「ええから!!僕を信じて!!」
この顔を私は知っている。ううん、とても似ている顔を知っている。
「ええか!?フェンスにぶつかるつもりで走り!!そうすれば確実に逃げ切れる!!そのためにここまで走ってきたんや!!」
お兄ちゃんや、パパが時々見せる表情。
輝きに満ちた『黄金の表情』
ちから
「僕にスキルアウトを四人も倒せる力なんかないけど!!君らを逃がす『能力』くらいならある!!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:21:56.36 ID:LFooJzIg0<> 三人でフェンスにぶつかる寸前、青髪の叫びが耳に突き刺さる。
「『ムード・エレベーター』!!このフェンスの高さを吸い取れぇ!!」
私達の前を小さな影が飛び出しフェンスに触れる、すると―――
『グオォン!!』
一瞬でフェンスが消え去り―――
「そして高さを戻す!!」
私達の後ろにまたフェンスが出現した。
「う、うわああぁぁぁ!!?」
後ろでけたたましい音が響き、暴漢達がフェンスに突っ込んだのだと分かったが振り返らずに青髪の後ろに続く。
今の、今の『現象』って、もしかして、本当に―――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここまで来れば、平気やろう・・・・・・」
「あ、ありがとうございました。助けてもらって」
あの後、路地を抜けて駅の手前の道まで走ってきた。さすがにあの暴漢達は巻いただろう。
しかしそれよりも―――
「ありがとう、助けてくれて。それとさっきは・・・ひどいこと言ってゴメン」
「ええよ、ええよ。君に言われたことも当たってたしね、本当は颯爽と現れて悪者倒してめでたしめでたしにしたかったんやけど」
「いやいや、そんなことないですよ!!お兄さんの能力凄かったですよ!よくわかんないのがびゅんっ!ってなってフェンスが消えたり、現れたりってなって!!」
「あはは、とは言ってもこれでもレベル0なんやけどね」
「えええ!!嘘でしょう!?だってあんなことが出来るのに―――」
「ちょっと涙子」
「え、どうしたの静?・・・・・・そんな真剣な顔して」
涙子の言葉を遮ってでもこの青髪の人には聞かなくてはならないことがあるのだ。
とても重要なことだ、さっきの暴漢どものことよりももっと重要なこと。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/01/11(水) 01:22:55.74 ID:LFooJzIg0<> 「あなた、レベル0って言ったわよね」
「? そうや、それがどないしたん?」
「それって・・・・・・その能力が能力開発で生まれた能力じゃないからじゃないですか?」
「っ!!?・・・・・・・・・どういうことや?」
「???」
緊迫した空気が流れる、涙子は突然のことでついてこれてないみたいだけど。
ヴィジョン
「私には、あなたの能力が発動した時、ある『像』が見えたわ。それは今まであなた以外に見えた人はいないんじゃない?」
「・・・・・・・・・君には見えたんか?コイツが」
「ええ、あなたの肩に乗ってるそいつのことがはっきり見えてるわ」
私の目には、ブリキの人形のような物体が青髪の人の肩に乗り、じっとこちらを観察するように見ているのが映っている。
ヴィジョン
「私もあなたと同じような能力があるの。『像』はないけど、同じものよ」
「ちょ、ちょっと待って静。話しについていけないよ、二人の能力は能力開発によるものじゃあないの?」
「はっきり言うと能力開発以前から私は能力を持っていたわ、青髪の人は知らないけど。そして私の能力には本当の名前があるの」
青髪の人は私の方をじっと見つめて言葉を待っている、涙子も完璧に理解してるかはわからないけど次の言葉を待っているようだ。
私は、ゆっくりと言葉をつむぐ。
「透明乙女も東方静も、学園都市に入るためにつけられた名前よ。私の本名は、静・ジョースター。能力名はパパのジョセフ・ジョースターが名づけた―――」
『アクトン・ベイビー』
「っていう名前があるの」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>saga<>2012/01/11(水) 01:27:10.60 ID:LFooJzIg0<>
第一話は以上になります。ちょこちょこルビがおかしなことになってしまいました、申し訳ありません。
冒頭で説明し忘れましたがこの物語はジョジョとのクロスオーバーになっています。
透明の赤ん坊が成長し、学園都市に入り、という感じで進めていきます。
杜王町の住人はどうしようか今のところは考えていませんが主軸には絡んでこないかと。
そうなるとチートすぎますからね。
それではこれにて
第一話「静・ジョースター、学園都市に訪れる」了 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県)<>sage<>2012/01/11(水) 02:06:36.31 ID:PFIGd+SM0<> ちょっと期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/11(水) 02:06:58.80 ID:AJb5gWAWo<> ジョジョクロスとかwktkですわ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)<>sage<>2012/01/11(水) 02:07:18.73 ID:6XevJzvEo<> OH MY GODでジョセフを思い出し、静だったら俺得だなぁと思ってたら……期待する頑張ってくれ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/11(水) 04:07:16.94 ID:5277Vpal0<> これは迸るほど期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/01/11(水) 04:59:18.99 ID:QontTA2Ao<> まさかマジで静だったとは <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/11(水) 19:56:04.64 ID:Lj+lWExko<> 能力スレもどきかとおもた <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/16(月) 19:03:38.48 ID:A56SXA5IO<> 早くも良スレの予感!!!? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<><>2012/02/11(土) 14:35:40.76 ID:y8jz3D+/0<> 第二話が遅れに遅れましたが完成しました。
今回の主役は青髪さんかな?
それでは投下します。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:36:17.90 ID:y8jz3D+/0<> 二話「ムード・エレベーター」@
夜の駅前。
三人の男女が道端で話をしている。
端から見れば背の高い青髪の少年が、少女達をナンパしているようにも見える。
「私の能力も、あなたの能力も学園都市の能力開発によるものではない。それだけは確かなことよ」
「僕も何度か身体検査を受けた、けど能力はいつまで経ってもレベル0。おかしいとは思っとったけど超能力以外の力、か」
「うわぁ、いきなりの超展開でさすがの佐天さんもついていけないねこりゃ」
しかしその実、少年が二人の少女をスキルアウトから救ったところだった。
そして話はさらに展開を見せ、ひどくぶっ飛んだところまで飛躍していた。
「う〜ん、いきなりこんな話を信じろっていうのも無理な話よね。青髪の〜〜〜、えと名前なんていうの?」
「別に青髪でも青髪ピアスでも好きに呼んだらええよ。友達にもそんな風に呼ばれとるし」
「じゃあ青髪。青髪はスタンド能力を持っているから理解しやすいでしょうけど涙子には難しいかもね」
「あ、でも私も興味ないわけじゃないよ。学園都市も知らない新しい力なんてさ、わくわくするじゃん」
「涙子ってば・・・・・・スタンド能力について、詳しく教えたいところだけどさすがに道端で話すには長すぎるわね。時間も時間だし、どこか日と場所を改めたいところね」
静はアゴに手をやり思案をめぐらせるが彼女はこの学園都市にやってきて日も浅い。
当然ながら地理にも疎く、そんな場所は思い当たらない。
自分だけで考えをめぐらせることを諦めて、彼女は二人に頼むことにした。
「涙子、青髪。どこかいい場所はないかしら?話ができて、できればあまり大勢は人のいないところ。個室のある喫茶店、みたいな?」
「う〜ん、そんなこと言っても結構あるで、そういう場所。カラオケでも個室やし、漫画喫茶みたいなところも個室あって三人くらい入れるし」
「・・・・・・・・・」
「あら、学園都市でも外の街と変わらない施設もあるのね。まるで別世界みたいに思ってたけど、一気に親近感が沸いたわ」
「そらあるよ。カラオケなんてどうあがいても外と同じようなものになってしまうからな、漫画喫茶も同じや」
「え、でもPVが立体だったり漫画なんかが浮き出てきたりはしないの?」
「んなことできるかいな。漫画もPVも外で作られたもんやし、それを学園都市に輸入してきてるだけや。学園都市で漫画描いたり、PV作ったら話は別やけどナ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:36:54.29 ID:y8jz3D+/0<> 学園都市だから、とカラオケや漫画喫茶、ひいては他の娯楽施設にも近未来的妄想にも近い期待をちょっぴり抱いていた静は少しがっかりしたように肩を落とした。
「ああもう、話を最初に戻すで。結局どこにするかや、色々あるそういった施設の中から何を選ぶか―――」
「ちょっといいですか?」
先ほどからずっと黙ったまま何か考えていた佐天から声が上がった。
「ん、さっきから黙っていたと思ってたら涙子も何か考えてたの?」
「うん。あのさ、静の話を総合するとそのスタンドの話はイタズラに大勢の人には聞かれたくないんだよね?」
「そういうことになるわね」
「なら―――」
佐天はもったいぶるような調子でわずかにためを作って、言葉を続けた。
「丁度いい場所があるわ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:37:33.33 ID:y8jz3D+/0<> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ねぇ涙子」
「なに静?」
「私はイタズラに大勢の人に聞かれないような場所がいいって言ったわよね?」
「うん。だからここならいいんじゃないかな?って」
「OH MY GOD」
静は眉間を押さえるように手を当てて呆れたように呟く。
そして―――
「ここのどこが大勢の人に聞かれないような話が出来る場所だッ!!このスッタコがぁ〜〜〜ッ!!」
「ちょっとうるさいですの!!静かに出来ないようなら出て行ってもらいますわよ!!」
「あ、すいません」
部屋の奥のほうでなにやら作業をしていたツインテールの少女に叱咤されて我に返った静は冷静に謝罪を入れる。
今現在部屋の中にいるのは静、佐天の他に初春、眼鏡をかけた高校生くらいの少女、先ほどのツインテールの少女の五人だ。
「涙子、あなたのせいで怒られたじゃないの」
「えぇ〜〜〜、今のは静が悪いよ。いきなり叫びだすんだもん。というか静、最初と比べるとキャラ全然違うよね」
「ちょ、ちょっと感情が高ぶってただけよ。最初の方が正しい私よ」
静は内心、
(危なぁ〜〜〜い、ちょっと素が出てきたのかしら。私の憧れは由花子お姉さんなのよ。お兄ちゃんのことが嫌いなわけじゃないけどお兄ちゃんの口調はたぶん女の子としてアウトだもの)
とかなり焦っていたがこれ以上素の自分を出すまいと必死にそんなそぶりを押し隠していた。
「そ、それにね、元はといえばあなたが悪いんじゃない。普通にスタンドとかを全く知らない人が三人も、しかも飾利までいるし。あなた私の話聞いてたわよね?」
「うん聞いてたよ。だから『大勢の人』には聞かれないようなところでさらに防犯の問題もばっちりな場所じゃない」
「『イタズラに大勢の人』に聞かれたくないって涙子自分で言ってたでしょ!大勢じゃなくてもイタズラに人に聞かれるでしょうが!」
「イタズラじゃないでしょ、別に」
「え?」
佐天は当たり前のように口を動かす。
本当に静の言葉を吟味した上で佐天はこの場所を選んだのだろう。
佐天の目を見ても、静はふざけた様子のないことを感じ取ってそう判断した。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:38:07.62 ID:y8jz3D+/0<>
「・・・・・・つまり涙子、あんたはここにいる人達にならスタンドのことを喋ってもいい。そう思ってるわけ?」
「うん、というか話しておいたほうがいいと思うんだよね。そのスタンドっていうのがどういうものかわかんないけど、学園都市に二人だけっていうのもおかしいと思うしさ、そうなるとほら、あれじゃん?」
佐天は少し言葉を探すように、一拍おいて言葉を続けた。
「昨日の青髪さんみたいに助けるために使う人ばっかりじゃないかもって事」
佐天が濁して言った言葉の意味を静ははっきり捉えていた。
兄や、父から小さい時に教わった話の中にもそういう輩は幾度も出てきたし、スタンドに限らず力をもった人間の中には正しい方向に振るわない人間が少なからずいることを静は知っていた。
「涙子、あんたの言いたいことの意味はしっかり分かったよ。けれどそれとこの場所はどういう関係があるの?私はここがどういった場所か全く教えてもらってないんだけど」
佐天はうっかりしていた、と慌てて説明を始めた。
「あっ、そういえば説明するの忘れてた!ゴメンゴメン。前に風紀委員は説明したよね?」
「ええ、学生が主体になっている治安維持の組織のことでしょ?飾利もその風紀委員に所属しているって話だったわよね」
「そうそう。それでここが初春の所属する風紀委員の―――」
「詰め所、第117支部や。まだ学園都市に来てから日が浅いゆうても勉強不足やで、静ちゃん♪」
佐天の言葉を遮り、静に答えを与えた人物は昨夜二人を救った青髪の高校生だった。
先ほどまでこの詰め所内にいなかったはずの人物、しかもここは学生の主体といっても治安維持の組織の詰め所である。
もちろん扉には学園都市の技術で防犯対策、施錠がなされていたはずだが誰にも気づかれずあっさりと彼は侵入してきた。
「あ、青髪さんっ!?一体どうやって入ってきたんですか、扉は風紀委員か、中から開けてもらうかしないと開かないはずなのに!?」
「あっはっは、まぁちょっとしたデモンストレーションっちゅーことで。能力使って入ってきてしまいました」
しかも彼は苦もなくといった様子である。
あっけにとられて言葉もでない二人。青髪はその反応にご満悦―――
「ちょっとそこの殿方」
だったのだがそこに浴びせられた声の鋭さにびくりと肩をすくめた。
「どうやって入ったのかは分かりませんが、あなたが堂々と侵入してきたのは風紀委員第117支部。勿論ここがどういう場所なのかは分かってらっしゃいますわよね?」
ツインテールの少女が青髪に向かって鋭い視線を向けている。
例えるなら警察官が犯罪者に向けるような冷たい、蔑むような視線だ。
「あ〜〜〜」
青髪の頬に汗が一筋、つぅと伝う。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:38:49.05 ID:y8jz3D+/0<>
「なにか言いたいことはありますの?」
「僕は涙子ちゃんと静ちゃんの知り合いです!!今日は二人に呼ばれてきました別に怪しい人とちゃうんで見逃してください!!」
見事な土下座で自分の身の潔白を証明する青髪。
この支部に侵入した時に見せた余裕などどこへやら。佐天と静も先ほどまでの表情とは打って変わり白い目を青髪に向けていた。
「はぁ・・・最初からちゃんと訪ねてきてほしいですの。佐天さんから事情は聞いてましたから言えばちゃんとお通ししましたのに」
「ほんますいませんでした」
「私は職務に戻りますから、あまり騒がしくしないでくださいまし」
「はい・・・・・・」
土下座の姿勢のまま応対を済ませた青髪は、ツインテールの少女が最初に座っていた椅子のところに戻るその時まで、頭を下げたままだった。
「「・・・・・・・・・」」
無言で青髪の背中を見つめ続ける静と佐天。
気まずい沈黙が流れる。
「・・・・・・・・・しょうがないやん。あんな目で見られたら誰だってあないなるわ」
ボソリと言い訳気味につぶやきながら立ち上がる青髪。
今だ無言で視線を投げかける少女二人にかまわず膝をはたき二人のいるソファの向かい側に座る。
「「・・・・・・・・・」」
「さ、皆揃ったことやし昨日の話の続きしよか」
「「・・・・・・・・・」」
「ええ加減その目線やめえや、いややめて、やめて下さい!」
「しょうがないわね、そこまで言うのなら本題に移ってあげるわよ」
やれやれといった様子で(芝居がかっている)静は息をつきながら肩をすくめた。
横では佐天がくすくすと笑っている。先ほどまでの冷たい視線はどうやら青髪をからかっていたようだ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:39:40.07 ID:y8jz3D+/0<>
「それじゃあスタンドのことについて一通り話していこうと思うわ」
「あ、ちょっと待ってよ静。初春たちにも説明するんじゃないの?」
「それは後。まずスタンドを持っている青髪にするべき話をしてから他の人には説明しようと思うわ。いきなり話だけしても信用されないと思うから実演込みで、ね」
「そうだったの。ごめんね、話遮っちゃって、じゃあどうぞ」
ちょっと早合点をしてしまった佐天はバツが悪そうに静を促す。
「では改めて、最初にスタンドの簡単なルールを説明しようかしら。まずは一つ目、スタンドは一人につき一つ、能力も一つ」
「そこは超能力と同じようなものなんだね」
「そうね、確かに似てるわね。そして二つ目、スタンドが傷つけばその使用者、本体も傷つく。とは言ってもスタンドは基本的にスタンドでしか触れないから物理的なダメージはこちらから触れた時くらいしか発生しないけど」
「げっ、ほんまかいな。コイツに触れへんのは知ってたけど傷ついたら僕まで傷つくん?」
うげぇ、と顔をしかめる青髪。
だがいきなりそんなリスクを背負った能力だと知ればこうなるのも頷けるが。
「でもスタンドの中にはスタンドを傷つけられても本体が傷つかないタイプもいるらしいわ。そういうのは大抵自動で動くロボットみたいなスタンドらしいけど」
「僕もそんなスタンドやったらええんやけど・・・・・・」
「それを区別するのは次のルールでできるわ。三つ目は本体からスタンドの動ける範囲は決まっていること」
「う、それは調べたことあるから知っとるわ。30m、僕のスタンドは僕から30m以上遠くへは行けへんかった」
「ご愁傷様、そのタイプはダメージのフィードバックはあるらしいわ。たぶん分類は遠隔操作型ってところかしら」
くすり、と静は軽く微笑み、青髪は対照的に落ち込んだ表情を浮かべた。
「えっと、スタンドってタイプがあるの?」
「いい質問だわ涙子。青髪に言ったタイプのほかに近距離パワー型、これが一番多いかしら。他にはさっき言った本体とスタンドの関係が希薄な遠隔自動操縦型なんかがあるわ」
「静は何タイプ?」
「私はこれに該当しないタイプなの。スタンドに像がないタイプで能力があるだけって言う珍しいタイプかな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:41:20.17 ID:y8jz3D+/0<>
ここまで説明をしていた静はじゃあそろそろ、といった感じに青髪に向き直る。
「じゃあ次は青髪に能力を説明してもらおうかしら」
「僕のスタンドのってこと?」
「そうそう、それによって飾利たちにするデモンストレーションの内容を考えるから。超能力とは違うところを分かりやすく見せないとだし」
「なるほど、そういうことやったら―――」
青髪は静の言葉を受けると軽く肩をまわした後、自らの分身たるスタンドの名前を呼んだ。
「『ムード・エレベーター』」
青髪の頭の上に呼ばれたことで呼応するように像(ヴィジョン)が浮かび上がる。
昨夜静が目撃したのと同じブリキの人形のようなシルエットのスタンドが現れた。
スタンドは周りを見渡すように何度か首を振ると、青髪の肩、腕を伝って器用に机の上に降り立つ。
「改めて見ると人形っていうよりも小人みたいな感じなのね。で、このスタンドの能力は?」
「まぁ焦りなさんなって。よう見ときや」
青髪は机の上に自身の携帯電話を置くと青髪のスタンドがそれに気付いたようにちょこちょこと近づいてきた。
「んじゃいくで。ムード・エレベーター、高さをこれに『与えろ』」
青髪がスタンドに向かいそう口にした瞬間、異変が起きた。
「え?」
「へえ、かなりシンプルだけどグレートな能力じゃない」
携帯電話が、青髪の言葉通りの状態になっていた。
まさに高さが与えられた状態になっていた、おそらく青髪の携帯は厚さ1〜2cmほどだったはず、しかし今は。
「わかりやすいように50cmくらい高くしてみたんやけど」
携帯電話が縦に伸びたような奇妙な形状になっていた。
不自然に伸ばしたような形ではなく、『元からそうであったかのよう』な伸び方だった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:42:21.06 ID:y8jz3D+/0<>
「これって戻すことも?」
「もちろんや。ちなみに言葉にせんでも能力は使えるで、ちなみにこいつから5m 以内に入ってる無機物やったらなんにでも能力は使える。んで他にも色々ルールがある」
青髪の奇妙な携帯電話はまた瞬時に元の厚みまで戻り、それを青髪はズボンのポケットにねじ込んだ。
「まずは能力の限度やけど、高さを与えられるのはこいつの胸のところにある四桁のカウンターの数字分のメートルまでや」
青髪がスタンドの胸のあたりを指差すと確かにスタンドの胸の辺りにおもちゃのようなカウンターがあり、『0026』と表示されていた。
「このカウンターってどうやったら増えるんですか?」
「それはこいつの能力でなんかの高さを『奪った』ら増えるようになっとる。それとこれはこの能力の応用の一つなんやけど」
そういいながら青髪は自身の髪の毛を一本抜くと机の上に置いた。
「まずこの『線』に高さを与える、すると―――」
また二人の目の前で一瞬にして物体が変貌した。
太さはそのまま、しかし高さを与えられた髪の毛は『線』ではなく『面』になっていた。
材質は変わってないようで平たい紙のようになった髪の毛は机の上に広がった。
「さっき高さを与えた面が横になったらまたさっきまで横やった面が上になったな。つまりこの紙状の髪は薄さ、つまり高さが髪の毛一本分くらいになった。んでこれにさらに高さを加えると―――」
青髪が途中で言葉を区切ったところで、髪の毛だったものはさらに形を変化させた。
「うわぁ、なんか気持ち悪いような・・・・・・ありえないものがこうもあっさり目の前に現れると変な気分になるのね」
「箱状の髪の毛って・・・・・・なんかシュールな光景ですね」
二人の目の前で一本の『線』だったものが二度高さを与えられただけで、『塊』になってしまっていた。
やはり材質はそのままらしく、やわらかい状態のまま、しかし底面がしっかりしているからか崩れず立っている。
「まぁこんな風に高さになる部分を変えたらこういう使い方もできるわけやな。これだけでも結構すごいんやけど、こいつにはもう一つ凄いルールがあるんや」
「まだ何かあるんですか・・・?」
「むしろこっからが本番。最初に言葉で説明するけど、こいつの能力にはスピードとパワーは存在せえへんのや」
塊を紙状に戻しながら青髪は説明を始めた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:42:58.71 ID:y8jz3D+/0<>
「? ちょっと待って、言葉だけじゃよくわかんないんだけど」
「大丈夫や、今からちゃんと説明する。まぁスピードのほうは今まで見てきたから分かってると思うけど、『奪う』にしても『与える』にしても一瞬で完了する。ほんまに一瞬でな」
青髪が二人に同意を求めると二人とも無言でうなづきを返してきたので青髪は説明を続ける。
「じゃあ次はパワーのほうやな。まず最初のほうで説明したけど僕の能力は有機物には効かん、でも高さを与えることで天井に押し付けたり、逆に奪って潰すことはできるのか?って話や」
青髪はそこで言葉を置いてあたりを見まわした。
やがて目当てのものを見つけたのか席をたって、窓際に置かれていた小さな観葉植物を手に取ると戻ってきて紙状の髪の上に乗せた。
「結論はどちらもノーやった。色々試して見たけど文字通り虫も殺せへんかったわ。けどその試してる最中にもっと面白いことが見つかったんや」
青髪は再び髪に高さを与えて観葉植物を乗せたまま髪は柱のような形に変化させた。
「まず一つ目は高さを与えた物に乗っかっとった物体はカタパルトみたいに飛び出したりはせえへん。二つ目は物が乗っとる状態で高さを奪う時、乗ったまんま低くするか、もしくは乗ったものをその高さに置き去りにするかは自分で決めれる」
言葉通りに髪の柱は一度観葉植物を乗せたまま平たい状態に戻り、また柱の状態に戻って見せた。
「んでこれが最後になるんやけど」
青髪が人差し指をかるく振るような動作を見せると、先ほど青髪が言っていたように、観葉植物を空中に置いたまま髪の柱を紙状に戻してしまった。
二人の少女はあっ、と息を呑む。観葉植物を入れた植木鉢は、今ある高さから机に叩きつけられれば確実に割れるだろう。
そんなことがはっきりと想像できた、その想像が現実に変わるまであと1、2秒しかないだろう。
「こいつの能力にはスピードもパワーも存在せえへん」
その短い時間の中で、青髪の声が二人に届いた。
そして、机の上に落下する寸前の植木鉢は、二人の想像を裏切り。
しかし誰かが手を差し伸べたわけでもなく。
予想外の形で―――
『髪の柱の上に何事もなかったかのように鎮座していた』
「え?」
静も佐天も唖然としている。
先ほどまで落下していた植木鉢が髪の柱の上で、ぴたりと止まっているのだ。
(え、なんで・・・もし髪の柱で受け止めたとしても、落下していた植木鉢を受け止めたんだからもっと揺れていてもいいはずなのに―――待てよ、最初の青髪の言葉。スピードもパワーも存在しない・・・・・・だったら)
「落下のスピードも落ちた時の衝撃、つまりパワーもあんたの能力には存在しない、ってこと?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:43:35.33 ID:y8jz3D+/0<>
静の問いに青髪は言葉では返さず、にやりとした笑みでその問いに答えた。
「本当にグレートじゃないの、あんたの能力〜〜〜ッ!」
「あぁ、びっくりした〜。植木鉢割ってたら最悪追い出されるんじゃないかって心配しちゃったよ」
「あはははは、それは悪いことしてもうたなぁ。堪忍してや」
イタズラに成功した子供のように笑う青髪に、呆れたような視線を送る佐天。
「そんで静ちゃん、これでスタンドについてのレクチャーは終了ってコトでええの?」
「そうね、今話せることはここまでってとこかしら。涙子、飾利達にも話したいから呼んでくれるかしら?」
「うん、わかった」
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初春、ツインテールの少女、メガネの少女。三人が静たちの座るソファのそばまで集まってきていた。
最初は来ることを渋っていたが、真面目な話であるのが佐天から雰囲気で伝わったのか割とすんなり集まってくれた。
「それで、私たちに見せたいものというのはなんですの?」
「その前に自己紹介。今から説明したいことがあるけど名前を知らないのはめんどくさいでしょ?私は静・ジョースター、静って呼んで」
「僕は―――」
「こいつは青髪とでも呼べばいいわ」
「ちょ、ちょっと静ちゃ〜〜〜ん・・・・・・」
青髪の非難の声を静は聞こえない振りをして無視を決め込んだ。
「私は白井黒子と申しますわ、よろしく静さんと、えっと青髪さん?」
「固法美偉です。よろしくね静さんに青髪さん」
「ほらぁ、定着してもうたぁ。静ちゃんのせいやで!」
「〜〜〜〜♪」
「口笛でごまかしてもアカンで!」
「あの〜、話が進まないんで青髪さんも今は我慢してください」
佐天の指摘に青髪がうっ、と詰まる。
最初、二人に名乗った時にちゃんと名乗れば良かったと思う青髪であった。
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:44:36.48 ID:y8jz3D+/0<>
「じゃあ説明を始めるわね。あなた達三人が治安維持組織の構成員だって聞いたから話すわ、これから起こるかもしれない話よ」
前置きをして、静は語り始める。
「この学園都市に、能力開発の超能力以外の異能が発生した恐れがあるわ」
「異能・・・・・・?」
「それは、どういう意味ですの?」
「言ったとおりの意味よ。あなた達が知っている以外の能力がこの学園都市にも入ってきた可能性があるの。その異能の名前は『スタンド』、ちなみに私の能力もそのスタンドよ」
「「「・・・・・・・・・」」」
静の言葉に目の前に立つ三人は沈黙した。
その沈黙は静の言葉が信じられない、といった懐疑的なものだ。
そしてその沈黙を最初に破ったのは白井だった。
「正直、そんなことを言われても信用しろというのが無理な話ですの。けれど私達を呼んでまでそんな話をするということは―――それを証明できる術があるんですのね?」
白井は懐疑的だった、しかし白井はそれ以上に聡明で、友達のことを信用出来る人物だった。
佐天がこの風紀委員の支部に遊びにくるのは毎度のことであったが、それがなにやらよく分からない人物を二人も連れてくることも気にはなっていた。
それにあの青髪の人物は自分達に感づかれることなくこの支部に入ってこられたこともとても印象深く頭の中に残っている。
そういう細かな違和感から、話を聞いてみてもいいのではないかと白井は思い至ったのだ。
そして初春も固法もそれぞれ別な理由ではあるが白井と同じような見解ではあった。
「グレート、そうこなくっちゃ。青髪、スタンドを出して」
「あいよ」
青髪が再びテーブルの上にスタンドを呼び出す。
「超能力は一人につき一つ、そうよね黒子?」
「ええそうですわね、超能力の大原則ですわ。つまりスタンドにはそれがないと?」
「いいえ、能力は一人につき一つ、これは変わらない。けれどスタンドは物に触れることが出来る、そして動かすことが出来る。もちろん非力なスタンドや私みたいに触れることが不可能なスタンドもあるわ」
「・・・・・・触る、っていうことはそのスタンドというのは手があるんですか?」
「え?」
「そうね、色んな形が存在するけど人型が多いからそういう認識でかまわないわ。じゃあ青髪、スタンドで何でもいいから持ち上げてみて」
「ほいきた」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:45:08.06 ID:y8jz3D+/0<>
青髪は懐から携帯電話を取り出すとテーブルに置き、それをスタンドで持ち上げて見せた。
「サ、念動力(サイコキネシス)?」
「確かにそう見えるけど、今青髪のスタンドが携帯電話を下から持ち上げてるの。青髪、能力を使ってみて」
「あいあいさー。ムード・エレベーター、それに高さを『与えろ』」
青髪が呪文を唱えるように言葉を呟く。その瞬間、携帯電話の厚みが10cmほど増える。
「!?」
「きゃっ!」
「こ、これは・・・・・・」
初めて青髪の能力を見た三人は驚愕の表情を浮かべた。
確かに普段見る学園都市の超能力とはスタンド能力は毛色が違う現象を起こすから、その反応はおかしくはない。
「高さを操る能力、それが僕のスタンドの能力や。ここに入ってきたときは扉の高さをいじくって入り込んだってわけ」
「どう?念動力と高さを操る能力、二つの能力を持っているってことにならないかしら?」
静は三人に同意を求めて視線を投げかける。
「た、確かにそうですわね。一人につき超能力は一つ、この方はそれを破った。となれば超能力以外の力という等式は成り立つことになりますわね」
「スタンドという異能がある、ということには一応納得したけれど、そのスタンドというのは人には見えないものなのかしら?」
「あっ、そういえば私には見えてるから説明するの忘れちゃってたわ。美偉さんだけじゃなくて黒子や飾利たちも見えないはずよ、見えるのはスタンドを持っている人だけ。そういうルールがあるわ」
「・・・・・・・・・」
「他にも色々なルールがあるけれど、それは後回し。今はこの能力が学園都市にあって、その状況がこれからどういった危機に結びつくかが重要なの」
「危機?」
初春の疑問の声に答えるように静は話を続ける。
「スタンドはさっき言ったように普通の人には見えない。けれど超能力のような能力と、スタンドによっては人間以上のパワーとスピードをもったやつもいる。そんな能力を悪人が持ってしまったら、ひどいことになるわ」
「今の学園都市では解明されてない能力での犯罪・・・・・・」
「そうよ飾利。そういうことが起こりうる可能性がある。たまたまわたしや青髪は悪用するようなことがないけど、もしそんなことが起これば」
「今の超能力による犯罪は、起きた事象から犯行に使用した能力を判断していますがそれが全く役に立たない。厄介なことになる、いえもしかしたら『もうなっている』のかも」
「静、ねぇ静」
「何よ涙子、今重要な話を―――」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:45:35.51 ID:y8jz3D+/0<>
「青髪さんのスタンドはブリキの人形みたいな形で人より小さい。胸のところにあるカウンターの数字は今『0026』、合ってる?」
「いきなり何?えっと・・・そうね、合ってるわ。それがどうし―――!?」
佐天の言葉の意味をやっと理解した静は驚愕を隠せなかった。
いや、むしろなぜ今まで気付けなかったのか。そのことに対して静は自分の愚かさに嫌になった。
「涙子、あなた・・・・・・」
「どうしよう静―――」
「あたし見えちゃってるよ」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/02/11(土) 14:48:38.31 ID:y8jz3D+/0<>
To Be continued
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<><>2012/02/11(土) 14:51:24.41 ID:y8jz3D+/0<>
以上で二話終了になります。
先の展開を練っていたらこんなにかかってしまいました。次からはもう少し早く上げれるように頑張ろうと思います。
それではこれにて <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/11(土) 15:11:43.03 ID:L5Ti/7XDO<> 乙! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/12(日) 03:07:24.57 ID:W1Zi6CKDO<> おつおつ
なかなか面白いじゃあないか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/03/16(金) 07:15:19.49 ID:qOTpiet20<> 1ヶ月間書き込みのないスレッドは自動的にHTML化されます。
また作者の書き込みが2ヶ月以上ないスレッドもHTML化の対象となります。
という事なんで気をつけてな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/25(日) 10:34:52.60 ID:78uPci98P<> 期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/31(土) 01:14:11.89 ID:JQZ6InbEo<> まだー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/03/31(土) 01:15:35.18 ID:00L1St7c0<> 能力は右天さんを思い出すな。
基本的にあいつみたいに仕掛ける戦い方になるな。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/04/10(火) 08:28:02.26 ID:SSrgqDWh0<> 明日で二ヶ月か・・・ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)<>sage<>2012/04/13(金) 22:42:38.29 ID:7UOQwZFOo<> 透明にする能力かあ アクトン・ベイビーかなあ
・・・流石に数ある透明能力からアクトン・ベイビーはねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
スレタイにもジョジョとか書いてねーしwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
まあ常識的に考えてクロスとかじゃなく佐天が透明人間になれる能力を習得していろいろやるんだなwwwwwwwwwwwwwwww
とか思ってたらマジかよ・・・ <>