VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 03:59:46.13 ID:nwXgRxXAO<>【ふゆ】
知らない街で雪が降る。
僕はそこに一人で立ち尽くしていた。
この街の『こどく』に負けないように。
冷たい雪を踏みつけながら僕は……小さく小さく震えていた。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1326567586(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>童話「つかまえてをつかまえて」
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:03:46.79 ID:nwXgRxXAO<> 【こどく】
一人ぼっちを実感したのは、いつ頃からだったろうか。
家族がいて、友人がいて、そして『こいびと』がいた。
僕の心はそれなりに満たされてきたはずなのに。
時間が過ぎれば、それは全部流れて……そして、消えてしまう。
幸せな感情だけを消して、いつまでも心の奥に住み着いてしまう……思い出。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/01/15(日) 04:06:36.66 ID:sgaaaYdFo<> あっそ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:07:27.58 ID:nwXgRxXAO<> 【こいびと】
君と一緒にいた時間はとても楽しかった。
同じ映画を見て笑って、おすすめの小説を読んで僕は泣いて。
夕食後のゆったりとした一時に「何の作品を借りようか」と君と話をするのが『すき』だった。
あの時間が今返ってきたとして……果たして僕は同じように笑えるのだろうか。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:08:18.10 ID:nwXgRxXAO<> 【すき】
今の僕には無い『かんじょう』だ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:14:12.32 ID:nwXgRxXAO<> 【感情】
歳を重ねるに連れて、だんだんと消えていくものだと僕は考える。
楽しい事があってもあまり心は踊らず、つらくても沈まず。
悲しくても泣けず、溜まっても吐き出せず。
なるべく平穏に保とうとする自分の『こころ』の行方が、僕には不思議でならなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:17:26.50 ID:nwXgRxXAO<> 『こころ』
反応は薄くても、僕の中の気持ちは確かにそれを示す。
たまに、その動きを実感出来る時があるんだ。
心の中で一番強く反応するのは『さびしい』と思う気持ちだ、と。
改めて考えてみて、僕はまた、ほんのちょっとだけ寂しくなったんだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:21:11.83 ID:nwXgRxXAO<> 【さびしい】
一体どれだけの人間がこの感情と戦っているのだろう。
それに勝てる人間はいるのだろうか。
もしいるとしたら……その人はきっと、笑っていられる時間が他の人よりもほんの少し。
ほんの少しだけ多いのだろう、と僕は『かって』に感じていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:24:56.75 ID:nwXgRxXAO<> 『かって』
思い通りにならない事ばかり。
みんな自分勝手にその日を生きている。
逃げて、逃げて、でも生きている人もいる。
寂しくても、それをなんとか埋めようと頑張っている人もいる。
僕は戦う方法を知らない。
だから、今日も雪の街で呟くだけだ。
『だれか』助けて。
と、だけ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:29:09.51 ID:nwXgRxXAO<> 『だれか』
例えば、大通りを歩いている優しそうな女の人。
例えば、待ち合わせ場所で携帯電話をいじりながら時間を過ごしている、人。
今自転車で僕の横を通りすぎていった、主婦の人。
死にそうな顔をしながら一人で歩いている、スーツ姿の中年の……。
助けてくれるのなら、誰でもいい。
少しでもこの気持ちの『すきま』を埋めたい。
埋めたいだけなんだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:33:47.96 ID:nwXgRxXAO<> 【すきま】
今思えば、前触れはあったのかもしれない。
大切な人と別れた時に感じ取ってしまった、確かな心の隙間。
埋めても埋めても、埋まらない。
幸せのストックが、まるでいっぱいにならない……。
それどころか、一向に幸せが募る気配も無い。
僕は『ふこう』だ、と毎日泣き嘆いては生き、そして時を過ごしていった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:36:50.16 ID:nwXgRxXAO<> 【ふこう】
いくら他人から見て恵まれた状態でも、本人が不幸と感じればそれは不幸になるのだろう。
幸せの中にいても、本人にしてみれば……。
きっと幸せが勝てないくらいのマイナスの感情を抱きながら、今日も。
自分の幸せはどこにあるのだろう、と……。
誰もがみんな『さがしている』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:39:26.59 ID:nwXgRxXAO<> 【さがしている】
果たして『それ』が見つかる日は来るのだろうか。
それは誰にもわからない。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:46:06.58 ID:nwXgRxXAO<> 【それ】
大切な人。
好きな人を振り向かせる方法。
クラスの女の子にアドレスを聞く方法。
依存させてくれる、誰か。
楽にお金を手に入れる方法。
自分にあった仕事、職場。
今日を生きる方法。
今月を生きる方法。
来年まで生きる方法。
今年中に、どうやって「それ」を探すのを終わらせるのかの方法。
ナイフ。
ロープ。
薬。
名所。
今日もみんな、何かを探し『ながら』生きている。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:50:30.37 ID:nwXgRxXAO<> 【ながら】
生きるだけがこんなに難しいだなんて。
今日も一つ、小さな命が探すのを諦め、終わらせている。
でも外の世界には何一つ関係なくて……。
みんな、自分の事で精一杯。
気持ちの重圧に潰されそうになりながらも、必死に生きているのだ、と。
終わらせてしまった人にその声はもう『とどかない』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 04:54:11.98 ID:nwXgRxXAO<> 【とどかない】
あなたにこの手紙を書きましたが、これはとても渡せそうにありません。
引き出しの奥にしまわれた、ピンク色をした封筒。
表には大切なあの人の名前。
そして裏にはそれを慕う自分の名前を綴りながら……。
けっして重ならない二つの名前は、今引き出しの奥へ消えていく……。
いつかその名前が『おもいで』になった時。
私は誰を好きになっているのだろう……。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:05:28.71 ID:nwXgRxXAO<> 【おもいで】
思い出が思い出に変わる瞬間が、僕は嫌いだった。
「ありがとう、あなたと過ごした時間はとても楽しかったよ」
楽しかった思い出は灰色になりながら、僕の心の奥に乱暴にしまわれる。
まるで壊れた『おもちゃばこ』だ……。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/15(日) 05:08:01.71 ID:Q/TCcB6IO<> つかまえて。か。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:10:47.38 ID:nwXgRxXAO<> 【おもちゃばこ】
心の奥に、何がしまわれているのだろう。
ひっくり返して、探してみようか?
……。
大抵の人はこう言うだろう。
そんな物、いらない。
見たくない。
見たくない……。
一度ひっくり返してなかった事に出来たら。
どんなに、どんなに楽だろう。
そして『からっぽ』のおもちゃ箱を見て人は……。
それを笑いながら、見つめるのだろうか。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:13:44.85 ID:nwXgRxXAO<> 【からっぽ】
からっぽ。
『にもつ』を持たないから、とても身軽に。
吹けば飛ばされるような重さで。
それが……からっぽ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:20:00.35 ID:nwXgRxXAO<> 【にもつ】
誰もがそれを抱え、生きている。
それが重荷になるのは当たり前だけれども……。
抱えきれないだけの荷物を持った人も、たくさんいるのだろう。
崩れる、崩れる、崩れる。
僕は何も持っていないのに、何かに潰れ崩されそうだ。
何か……?
つまり、からっぽ『じゃない』という事なのか? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:21:38.53 ID:nwXgRxXAO<> 【じゃない】
否定、しないでくれ。
誰か僕を受け入れてくれ……。
誰か僕を『あい』してくれ……。
誰かに、頼んでばかりだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:24:05.12 ID:nwXgRxXAO<> 【あい】
言える愛。
言えない愛。
言ってほしい愛。
『つたえたい』愛。
伝わらない愛。
愛はたくさんあるはずなのに、僕には見えない。
ああ、これも探しているって事なのかなぁ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:28:32.14 ID:nwXgRxXAO<> 【つたえたい】
ねえ、聞いて。
僕の声を聞いて。
ねえ。
声は出てないけれど、聞いてよ。
目でわかるでしょ。
こんなに悩んで苦しいでいるんだから……。
誰か、わかってよ。
女「大丈夫」
……。
女「私は、わかってるよ」
女『ね』?
僕「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:30:52.81 ID:nwXgRxXAO<> 【ね】
この一言で、僕は安堵して。
うん、と首を縦に振って……甘い甘い香りに包まれながら眠りに落ちたんだ。
何に対してそう言われたのかは……もう『覚えていない』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:36:40.08 ID:nwXgRxXAO<> 【覚えていない】
都合のいい言葉。
自分の過去の発言や言動をなかった事にしてくれる。
言葉が勝手にそうするんだから、自分は悪くない。
だって覚えていないのだから。
自分の中ではそれくらいに『どうでもいい』事だ。
からっぽになったおもちゃ箱の中身など、僕はもう覚えてはいない……。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:43:02.12 ID:nwXgRxXAO<> 【どうでもいい】
きっと、世の中の大半はそんな事で溢れている。
『世界』はちょっとだけ広すぎるような気がするよ……。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<><>2012/01/15(日) 05:48:08.64 ID:nwXgRxXAO<> 『せかい』
小さくて
狭くて
からっぽで
何も持っていなくて
ただ誰かに愛されたくて
『あいたい』
そんな世界を……僕は持っている。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 05:57:20.57 ID:nwXgRxXAO<> 【あいたいせかい】
同じ時代に生まれて。
同じ町で生きている。
君に会えるなら……。
いや、会えなくてもいい。
でも会えないのは寂しい……。
何を言っているんだ、僕は。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 06:05:15.54 ID:nwXgRxXAO<> 【つかまえて】
僕「……」
ここまで堂々巡りをしても。
僕を取り巻く景色は何も変わらない。
ただ雪はしんしんと降り続いていて、僕の身体から生きている温度を奪い続けている。
ああ、寒いな、と。
僕は一言だけ、吐いた吐息にのせて呟いた。
雪で真っ白に染まった道路には、まだ足跡はない。
これから……僕はこの道に足跡をつける事ができるのだろうか?
……。
答えは、自分が一番よく知っている。
それはきっと……。
『こどく』な僕が行く先は、もう決まっているのだ……。
僕は降りしきる雪の音を聞きながら。
静かに冬の終わりを、まっていた……。
【終】 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 06:17:31.57 ID:nwXgRxXAO<> 『むねのいたみ』
あるところに一人の少女がいました。
その女の子の心の中はからっぽで、少女は何も嫌な事を感じずに毎日を生きていました。
少女「私の心はからっぽだよ」
少女「でも毎日がとても楽しいの」
少女は確かに幸せでした。
そんなある日、少女の心にちょっとした異変が起こります。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/15(日) 09:19:42.63 ID:pTBsijODO<> まさかのつかまえてシリーズ?
星の海で〜以降見かけなかったけど何か書いてたのかしら <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 13:17:39.60 ID:nwXgRxXAO<> >>32
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/kako/1309879693/49
過去に誰かが書いてくれたの。
↑の短に「ねえ、またいつか」「死と夕闇をつかまえて」があと加わるくらい。
他もぽちぽち書いてたけど、はっきりと覚えているのは↑の物まで。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/15(日) 13:20:20.49 ID:nwXgRxXAO<> その日も少女は、いつもと何も変わらない様子で町を歩いていました。
太陽はぽかぽか、風も少女の足取りを邪魔しないくらいに、穏やかに。
そして、優しい木漏れ日の中で少女はある男の子に出会ったのでした。
その瞬間ちくり、と。
胸の奥に小さな小さな痛みが走りました。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/15(日) 15:03:30.03 ID:pTBsijODO<> >>33
わざわざありがとう
星の海以降もタイトル見たことあるのがちらほら <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/15(日) 17:05:56.43 ID:5ExhzPlSO<> ほうお前か
期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/15(日) 23:54:49.90 ID:rOtQo7bi0<> この痛みはなんだろう?
少女は不思議に思いました。
そっと胸の中を覗いてみると……。
そこには一本の小さな棘が刺さっていました。
針のように、細く小さな棘が少女の胸にポツリと。
まるで最初から刺さっていたかのように。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/16(月) 15:32:37.82 ID:1eZTE8td0<> これが胸の痛みの原因なんだ、と少女は思いました。
しかし、今の少女にその棘を考えている余裕はありませんでした。
少女「あの人はいったい誰なんだろう」
少女の瞳には、あの男の子の姿だけが今も焼き付いています。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/16(月) 15:49:44.29 ID:1eZTE8td0<> 少女はそれから、毎日あの樹の下へ足を運びました。
その度に彼女の胸はチクリと痛むのでした。
彼の姿を見つけると、チクリ。
彼ただ空を見上げただけで、チクリ。
髪の毛を左手人差し指でかきあげただけでも、チクリ。
しかし。
彼がその場から離れると、ズキリと。
また新しい痛みが少女を襲うのでした。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/16(月) 17:04:04.23 ID:1eZTE8td0<> いいえ、同じ痛みなどなかったのかもしれません。
痛みがはしるたびに、一ミリ、また一ミリと。
針は深くに刺さっていくようでした。
最初は痛みを気にしていなかった彼女も……次第に。
この胸の中にある刺々しい感情が気になり出してきたようでした。
少女「どうすれば、この痛みはなくなるのかな」
少女には、まだ何の知識もありませんでした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/18(水) 22:26:46.74 ID:wNbU/cq40<> 少女はまず、何をどうするかを考えました。
この胸の痛みを取り除くのか、はたまた。
あの男を追いかけて、楽しくお話をしたいのか。
少女「おかしいな。自分の事なのに自分の気持ちがわからないや」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/01/19(木) 23:57:53.35 ID:WhpucRPHo<> つかまえてシリーズか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 00:16:19.73 ID:D2n71OwAO<> 少女「わからない」
何をすればこの気持ちは救われるのでしょうか。
少女「救われる……?」
少女「救ってほしい?」
少女「私は誰かに助けてほしいの……?」
誰に?
誰か私を助けてくれるの? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 00:19:22.99 ID:D2n71OwAO<> 少女「……」
少女「……」
少女「……」
少女は押し黙ったまま、また立ち止まってしまいました。
その間も胸に刺さった棘はジクジクと痛みを産み出していきます。
少女「痛い……痛いよ……」
あの男の子の事を考えると、もうどうしようもないくらいに。
少女の胸は痛みます。
そんなある日……。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 00:22:57.74 ID:D2n71OwAO<> 少年「ねえ」
少女「!」
少年「こんにちは」
少女「え、え、あ……」
あの男の子が少女に対して声をかけてきたのでした。
少女の胸は……。
チクリ。
ガラスよりも透明な気持ちで、また。
痛みが胸の中で……暴れています。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 01:12:19.71 ID:D2n71OwAO<> まるで、蜂が暴れているように強い強い、刺激。
少女「あ、あ、あの……」
少女「こ、こんにちは」
少女は戸惑いながらも言葉を返しました。
そして何か話をしよう、と。
ドキドキする胸を押さえながら、少女の針は苦い蜂蜜で満たされていくようでした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 01:16:15.50 ID:D2n71OwAO<> 少年「何をしていたの?」
少女「……お、お散歩」
少年「へえ。君、よくここを通るよね?」
少女「!」
少年「この道を毎日毎日あるいていたよね?」
少女「う、うん……」
少女は少しうつむいて、彼の靴先を見るだけでした。
茶色く小さなブーツが、くるりと草原の地面を小さくて蹴りました。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 01:18:44.52 ID:D2n71OwAO<> 少年「ここがお散歩の道なんだね」
少女「う、うん、あ……」
あなたこそ、いつもあの樹の下で何をしているの?
好きな食べ物は?
お家は?
お名前は?
頭の中を、真っ赤な血液と淡い淡い気持ちが駆け巡ります。
今だけは胸の痛みも……あまり感じませんでした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/20(金) 14:27:23.76 ID:D2n71OwAO<> 初めての会話。
初めての感情。
戸惑う事しか少女にはどきません。
少年「……あ、もう夕方だ。ごめんね、帰らないと」
少女「うん……」
少年「じゃあね。あ、よかったらさ、明日もまたお話できるかな?」
少女「え、う、うん」
少年はその返事だけを聞くと、常に笑顔でいた顔とはまた別の、フッとした微かな笑みを見せてくれたような気がしました。
じゃあね。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/01/21(土) 23:53:34.16 ID:b24RIN6L0<> 来たか
同人でもなんでもいいから、作品出してくれよ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:06:44.38 ID:YrXekrNAO<> 少女「ぼーっ……」
少年が帰ったあとも少女はその場にしばらく立ち尽くしていました。
さっきまで大人しかった胸はまた痛みを伴い、暗い夕方の中に一人ぽつんと残っています。
少女「……私、また明日も会っていいんだよね?」
誰に話すでもなく、少女はそう呟きました。
遠くの空がもう真っ黒に染まっているのも知らずに。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:23:38.15 ID:YrXekrNAO<> 少年「あ」
少女「あ……」
次の日、約束した通り少年と少女はまたあの樹の下で会えました。
こんにちは、とお互いに小さく挨拶。
そして、少年は何かを話しながら少女はを頬を赤くしながらそれを聞いて……。
あまり対話という感じではなかったのかもしれません。
少女はあまり自分の事を話せずにいました。
ただ黙って彼の話を相づちをうちながら聞いているだけ……。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<><>2012/01/22(日) 21:26:44.63 ID:YrXekrNAO<> でも少女にとってはそれが幸せでした。
だから毎日、毎日少女は樹の下に足を運びました。
彼と会う度に胸のドキドキはおさまったものの、今度は代わりにチクリとした痛みがまた。
日に日に少女の胸を襲っていくのでした。
最初は小さな一本の棘がイバラになり、イバラは胸にがんじがらめ……そして。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:30:18.08 ID:YrXekrNAO<> イバラは、日に日に強く少女の胸にどんどんと食い込んでいきました。
でも少女にとっては同じ痛み、なにも変わりはありません。
少女は自分の胸の中身など気にせず、少年に会い続けました。
そして季節が一つだけ変わったある日の事……。
少年「今日は……もう最後」
少女「え?」
少年「明日、僕はこの町を出ていく事になったんだ。ごめん」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:33:22.14 ID:YrXekrNAO<> 少女「……」
少年「……この町に来てから君に会えて。すごく楽しかった」
少女「……」
チクリ、と複数の針が胸に突き刺さります。
その痛みをどうにかする事は、今の彼女には出来ません。
少年「うち、住む場所を変えてばかりでさ。お父さんのお仕事の都合で……」
少年「だから、今日でバイバイ。ね」
少女「……」
少年「じゃあ、ね。元気で」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:37:03.83 ID:YrXekrNAO<> 次の日。
一人ぼっちになった樹の下で。
少女は遠い遠い夕方空を見つめていました。
もう彼はやって来ない。
今はただ、棘が刺さって赤い生傷だらけになった心臓と、寂しそうに足踏みをする一組のブーツだけがここには残っています。
少女「……」
少女「もうイバラは巻き付いていないはずなのに」
少女「どうして、こんなに胸が痛いんだろう」
……遠くの道に、一台。
大きな荷物を乗せた馬車が、夕焼けに照らされて影絵のようになっているのを少女は見つけました。
チクリ。
ああ、また胸が痛む。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:43:02.08 ID:YrXekrNAO<> あれから、少女の胸の痛みはしばらく消えないでいました。
美味しいスープを飲んでも、柔らかいパンを食べても……胸に空いたイバラの跡は消えてくれません。
しかし、またしばらくすると、絡み付いたイバラは腐り果て……傷の跡だけが残りました。
それ以来、少女の心臓は汚れてしまいました。
ピカピカで、まっさらな赤い赤い命の塊が今は。
腐敗した植物と、もう羊の毛すらも刺せないくらいにただれ落ちた針と棘の数本が残るだけで。
少女「……」
彼女の心臓は、もう二度と痛みに侵される事はありませんでした。
終 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/22(日) 21:49:07.68 ID:YrXekrNAO<> 「駅のホーム、ドーナツの匂い」
一人のサラリーマンが駅を歩いている。
毎日の通勤で通い慣れた、いつもの駅。
その駅の中には小さなドーナツ屋さんがあった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/23(月) 13:02:41.40 ID:YNbzYb5AO<> そのお店の前を通る度に、甘い匂いが鼻をくすぐる。
男は毎日毎日その香りを嗅ぎ、そして仕事へと向かっていた。
しかしその甘い香りは、男の心には何一つとして響いていない。
毎日同じ匂いを嗅ぎすぎたせいか、はたまた男が大人になってしまったからなのか。
男がワクワクとしながらそこを歩く事は、もう無いのだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/23(月) 13:06:13.48 ID:YNbzYb5AO<> 男(今日も疲れたな)
男(帰ってから明日の書類まとめて、経理の整理をして……)
少女「お姉さん」
今日もドーナツの香りがする場所を、疲れた顔をして通りすぎた男の後ろで……。
少女「そのチョコレートクリームホイップと、いちご練乳のドーナツください」
一人の少女がとてもとても甘い表情をしながら。
甘味を買っている姿があった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国)<>sage<>2012/01/26(木) 02:23:40.13 ID:8G3supOGo<> 来てたんか気付かなかったわC <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/28(土) 03:14:08.51 ID:vubbyVcAO<> VIP用に書きためするんでちょっと停止 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国)<>sage<>2012/01/28(土) 03:48:56.85 ID:ft5BDt+no<> VIPで待ってる! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)<>sage<>2012/01/28(土) 07:01:46.69 ID:amH+g3Qfo<> >>62
スレタイだけでも予告してくれれば嬉しい
vipは殆ど行かんから <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/01/28(土) 21:45:17.34 ID:vubbyVcAO<> >>50
作品作るノウハウも、挿し絵とか書いてくれる人もいないんで今のところは考えらてないです、ごめんね
>>64
立てる時はスレタイとある程度の時間晒しますね。
多分、つかまえては入れないと思う。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/01(木) 18:02:44.89 ID:/MKAztbSO<> まだかね <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国)<>sage<>2012/03/15(木) 00:27:10.31 ID:lbWosqk6o<> にぇー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/26(月) 16:23:04.70 ID:8ZMqv0080<> ボトルメールの話書いてた人だっけ? <>