◆hnXIcjSJpw<><>2012/02/11(土) 00:41:03.47 ID:XEZvW1w9o<>夏目×足洗邸の住人たち。
超不定期投下になるが良かったら暇つぶしに読んでくれ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1328888456(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>夏目「足洗邸って随分賑やかな所なんですね」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/11(土) 00:42:50.87 ID:q1s/AyQKo<> 存分にやり給え <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 00:43:31.48 ID:XEZvW1w9o<>
〜〜〜

「おかしいやんなぁ?いやぁ……なんでやねん……ちゅーか……なんでやねん」

カバンを肩にかけた長髪の男がある田舎の高校の前で頭を抱えていた。
煙草を取り出すが、学校という事を思い出しそれをしまう。

登校してくる学生達は怪しい目つきでその男を見つめていた。

「はぁ……まぁ、ええか……そんな事もあるわな、来れたんやから帰れない事もない思うし」

ぱっと顔をあげ、そして立ち上がる。

「あ、河童や」

男は、予想していなかったものが普通に存在していた事に、自分の考えが間違っているのかと不安になった。

―― なんやなんや?大召喚前にタイムリープ!的なアレやないんか?
それともコイツらも実は狸や狐や兎なんか?もしかしたらどっか違う場所に飛ばされただけなんか?
<> 河童の一人称が怪しいんで間違ってたら教えてくれ
◆hnXIcjSJpw<>sage<>2012/02/11(土) 00:50:58.90 ID:XEZvW1w9o<>
「おーい、そこの河童ァ!」

なにかを探すようにキョロキョロとしている河童をとりあえず大声で呼び止めてみる。
なぜ学生達ではなく河童に声をかけたかは、迷わず歩を進める学生よりはなんとなく声がかけやすかったから、であろう。

そしてまわりの学生たちは変なやつがいると言う視線に「こいつ何をいっているのだ」という訝しげな表情を追加させ、男に冷たい眼差しを向けた。

「なぁ、おい河童さん」

河童の肩に手をかけると、その河童は驚いたように悲鳴をあげた。

「ひゃあ!やはり、わたしのことでしたか……な、夏目親分以外に見える人がいたとは……」

「はぁ?逆に見えんやつがおるわけ……た、沢山……おりはる……みたいや……ねぇ……あはは」

そこでやっと周りの学生が奇異の目で自分をみていることに気がついた。

―― なるほど、仮説は恐らくまちごうてなかった訳やな。ちっこい頃河童とか見かけた経験ないから、大召喚で急に現れたように感じとったけど……昔から妖怪や幽霊の類は存在してたに決まっとる。
大召喚前は見えんやつも、いや見えんやつのが多かったっちゅー事か……。 <> 河童の一人称が怪しいんで間違ってたら教えてくれ
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 00:53:58.04 ID:XEZvW1w9o<>
自分の中の常識が変わってから、もう二十年近くたっている。
昔の常識よりも今の常識-異形の物がそこらに溢れていて当たり前という状態-に慣れてしまっている事になんとなく寂しさを覚えた。

「あ、はは……はぁー……」

周りの学生を笑ってやり過ごすと大きくため息をつく。
そして河童が人の名前を口にしていた事に気がついた。

「ん?夏目親分ってやつは、人間よな?そいつは普通に見えるんか?」

小声で河童に尋ねる。

「はいー、とっても強くて優しいんですよ!」

「ほう……なら、そいつがなんか知っとるかもしれへんなぁ」

見える。
ここの常識から外れた者ならば、何か知っているかもしれない。

そして、同時に他人と違った常識の中で暮らすのはどれほど大変なのだろうと男は思った。 <> 河童の一人称が怪しいんで間違ってたら教えてくれ
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 00:56:49.48 ID:XEZvW1w9o<>
〜〜〜

―― なんだあの人?

「なーつめ!外ぼんやり見つめてどうしたんだ?」

「可愛い子でもいたかぁ?」

「いや、なんでもないよ西村、北本。ただ、いい天気だなぁって思ってさ」

―― 河童と……話してるよなぁあれは……めんどくさいことになりそうだな。

夏目は一人ため息をつく。

初夏の日差しはまだ鬱陶しさを感じさせず、窓から入ってくる風は自然の匂いに溢れている。
そして、夏目だけに見える、異形の者たち。
彼らも夏を楽しんだりしているのだろうかと夏目は少しだけ気になった。

<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 01:02:31.84 ID:XEZvW1w9o<>
「はぁ、本当、いい天気だ」

ため息をごまかすかのようにそうつぶく。

―― あの人はどうやら人間みたいだな。

人間の方が妖よりも厄介かもしれない。

最近の夏目はそう思ってしまうことが多々あった。
人間と妖、それぞれの良いところも悪いところも見てしまったから。
どっちを優先して良いのかわからなくなってしまったのかもしれない。

人間とも妖とも、波風をたてずに過ごせたらと、思っているのかもしれない。
だから、厄介ごとに巻き込まれそうな事は回避したいのだが、夏目の性格ではそれが難しい。

―― でも、なんとなくだけどあの人はいい人そうだ。

河童と楽しそうに話す男を見て、夏目はそう思った。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 01:05:34.51 ID:XEZvW1w9o<>
〜〜〜

「へ?あ、怪しいもんちゃいますて!あー、なんや、あれや!
オレ絵ェ描いとるんですわ、裸の大将に憧れてまして……旅しながら……あ、はは……。
お、おにぎりが……欲しいんだなぁ……なんて?」

河童と共に夏目とやらが出てくるのを、長髪の男は待っていた。
だが、昼間から学校の前で時折水を地面に撒き、ブツブツ小言を言っているような男が怪しくない訳もなく、こうして学校の先生に声をかけられてしまったのだ。

「……ふざけてるんですか?それより質問に答えてください。貴方はここでなにをしているのですか?」

「やっぱあかんか……」

男は小さく吐き捨てる。

「何か言いました?」

「いやぁ……あの、だから、そのー……」

男は心の中でまだ見ぬ「夏目」に謝る。

「な、夏目に……知り合いに会いに来たんですよぉ……」

「夏目?夏目って……夏目貴志?」

「そう、それです!貴志くん!その子待ってるだけなんで気にせんとセンセはお仕事頑張って下さい」

思い切り笑顔をつくって怪しくない事をアピールする。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 01:06:48.31 ID:XEZvW1w9o<>
「……なら、あと数分で今やっている授業終わりますし、夏目君を呼んで来ましょうか?」

「いや、休み時間潰すんは可哀想やからなぁ……ちなみに学校終わるんは何時なんです?」

「三時半くらいですかね……」

「んー、今十時くらいですよね?どうしようかなぁ……せや!」

何かを思いついたように鞄から紙とペンを取り、そこに伝言を書き込む。
それを二つ折りにし、先生に渡す。

「俺散歩してくるんで、これ渡しといてくれまへんか?たのんます!」

「……わかりました。お気をつけて」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 01:18:08.42 ID:XEZvW1w9o<>
先生はしょうがない、という風にため息をつくと手紙を受け取り学校の中へと歩いていった。

「……いやぁ、田舎はええなぁ……緩いなぁ……まさか普通に話聞かれて終わるとは思ってやんかった、ポリ呼ばれる思ったわー」

先生の背中を眺めながら頬をかき、そうつぶやいた。

「……私も夏目親分に用があるのでもし良かったらこの辺案内しましょうか?」

「お、それはありがたい、じゃ行きまひょか……あぁ、自己紹介してへんかったな、オレは田村・福太郎やよろしくな、河童さん」

「はい!じゃ、まずは―― 」


意思疎通が出来るならば妖怪だろうがなんだろうが恐れる事はないと考える福太郎は、夏目にどのような影響を与えるのだろう。
そして、福太郎は無事に足洗邸へと変える事ができるのであろうか。

<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/11(土) 01:22:10.02 ID:XEZvW1w9o<> まぁ、キリがいいのでとりあえずここで終わり

次回は
夏目、福太郎に会う。
福太郎、幽霊に会う。
夏目、福太郎、走る。

こんな感じで

足洗邸キャラは口調難しい
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/11(土) 06:12:49.64 ID:t4ixPDYDO<> まさかの足洗邸!
夏目とやらは知らんけど期待してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/02/11(土) 13:53:08.41 ID:HLiBpZd1o<> 楽しみにしてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/02/11(土) 15:06:03.92 ID:UL72ceINo<> キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/02/11(土) 23:45:18.04 ID:cnXX7Q1AO<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/02/12(日) 19:33:26.61 ID:QkKowkYE0<> 期待する <> 八ツ原には田沼の寺とは違った廃寺があったよね?なかったらあるという設定でお願いしま ◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:06:51.90 ID:IUaBfQ+IO<>
〜〜〜

まずはと連れてこられたのは八ツ原という場所であった。

「ほぉ〜、いいとこやなぁ……このなんというか寂れた雰囲気が最高やなぁ……お、廃寺になんや綺麗な着物着た人がおるでぇ?」

「おぉ、ちょうどいいところに!ヒノエー!」

「ん?あぁ、なんだい。河童じゃないか……その男は?」

ヒノエと呼ばれた女は福太郎をみると不機嫌そうに顔を歪めた。

「オレは田村・福太郎言います……な、なんや?睨まんといてや」

「フンッ男が嫌いなだけさ、わたしには近寄るんじゃないよ……というか、お前も見えるのか」

「あぁ、はい。そういうところから来たもんで……というかヒノエさん?も見えはるんですか?」

「見えるもクソもないよ、私だって妖の類さ」

「あ、そうなんですか?ほー……まぁ、ええわ」

嫌われているようだし、これ以上会話も続かないと判断した福太郎は、ヒノエから距離を取りスケッチブックを取り出した。

「河童ァー、ここで少し絵ェ描いてってもええか?」

「いいですよー。わたしは他の妖連れてきますね」

そう言い残すと河童はとてとてと茂みの中へと消えていった。

夏の匂いと青々しい景色をスケッチブックに写していく、色はないから白黒だ。
とても優しいタッチでサッとだが、丁寧に、一つ一つの景色を描いて行く。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:11:01.25 ID:IUaBfQ+IO<>
〜〜〜

「ふーくたろーさーん!」

ざっと書き上げ終わった頃、河童がひとつ目の妖と牛のような妖を連れて戻ってきた。

「夏目様のご友人だとか?」

「夏目の旦那の友達なら、払い人とかなのですかな?」

「いや、ちゃうよ。よくわからんけど気づいたらこの世界におって、目の前の河童に話しかけたらここは見えるやつが珍しいっちゅー話きいてな?
そんで夏目って子が見えるらしいから帰る方法教えてもらお思ってん」

「夏目様に?聞いても無駄ですよ多分あの人はそんな事わからないですぞ」

「無駄無駄。夏目の旦那は見えるだけだからなぁ」

ひとつ目の妖は饒舌にしゃべり、牛のような妖はニコニコしており好感が持てた。

「あー、そうなん?でも、まぁ、そこしか頼りなる人おらんからなぁ……ま、聞くだけ聞いてみますわ……ひとつ目と牛はなんて名前なん?」

「夏目様からは中級と呼ばれております」

「ほー、にしても夏目親分に夏目様ね……お前ら使い魔とかそういう契約チックなもんしとるんか?」

煙草を取り出し火をつける。
様々な神様や精霊、妖精などと契約し、大妖怪と戦い生きたまま地獄に突き落とされた“人間”を思い出し、なんとなく尋ねてみた。
大きく息を吸い、肺を煙でみたしてからゆっくり息を吐く。
線香のように細長い煙草は甘ったるい匂いがした。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:12:40.90 ID:IUaBfQ+IO<>
「バカ言うんじゃないよ、ただ、気にいったから困った時は助けてやってるだけさ」

何時の間にか近づいてきていたヒノエが、煙管をふかしながらそう言うと、河童たちもそれに続いた。

「そうですよ!夏目の親分は私たちを友人と言ってくれるのです!」

「我々はただ夏目様を慕っているだけですよ、何かあったら犬のように馳せ参じよう!という連中です」

ほら!というように犬の会と書いた旗をどこからか取り出した。

「夏目の旦那は恩人ですから」

―― 大召喚前の“こういう”奴らがまだ普通じゃない時代に、夏目っちゅー子は受け入れ、ここまで慕われるほど人と異形を差別なく付きおうてるんか。

単純に凄い、と思った。

自分は状況が違ったとはいえ変化した常識簡単に受け入れる事が出来ず、忘れる事を願った。

「そうかぁ……夏目やったら、大召喚の中をどうやって生き延びるんやろなぁ」

煙草を消すと、途中から加わってきた中級たちも絵を仕上げながらちょこちょこと書き足していく。

「大召喚……とは?」

「ん、あーまぁ簡単に言うとこの世界とお前らの世界、悪魔や神話の世界をある人達が繋げてしもうたって話や」

「ほう、つまり人間と妖が共存している世界という事かい?」

「ん、まぁそんな感じやな……その大召喚で人間は三分の一以上が死んだけどな、オレも家族を失った。そしてそれ以上の人間外の者が溢れたんや」

喋りながらも絵を描く手を止めない。
そして、よし、と小さく呟く。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:14:14.73 ID:IUaBfQ+IO<>
「出来た!ほな、これはヒノエにやるわ。これやるさかい睨まんといてっちゅーこんで」

スケッチブックからその一枚を切り取り、それをヒノエに渡す。

「おや、結構うまいじゃないか……ま、貰っといてやるさ……」

その絵には煙管をふかすヒノエ、広場を走り回る河童や中級達が描かれていた。

「福太郎殿、我々にも何かかいてくださいよ!」

「ええで、でもその前に腹ごしらえやなぁ……ハッ」

―― オレ、この世界の金なんて持ってないですやーん!

「どうしたんですか?」

急に顔を青ざめ固まる福太郎を、河童が軽く揺する。

「な、なぁ……お前らって普段なに食って生きてるん?」

「そんなもん必要ないよ」

「我らは酒と木の実や魚などを」

「私は魚ですね」

「よし、魚獲りに行こうや!ちゅーか河童さん、絵ェ書いたるから取ってくれや!オレ金なんて持ってへんから店はいれやんし、店はいる前に気づいて良かったわぁー」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:15:39.82 ID:IUaBfQ+IO<>
白亜の森で食った魚よりはメジャーな物が食えるだろう。
福太郎は自分の描かれた絵をダメにしたネッシー(※本当は違います)を殺そうとした親友を思い出す。

―― そういや、義鷹のやつ夕べからおらんかったな……どこいったんやろなぁ……。

「ふくたろさん、魚の取れるとこにいきますよー?」

その友人の事を考えるが、今考えても意味がない事だと思いなおし、カバンを掴むと河童のあとを追った。

「ん?こんな時間のこんなところに学生さん?」

その途中、視界のはしにセーラー服が見えたような気がした。
立ち止まりそちらのほうをみるが、もうその姿はない。

「福太郎殿〜?おいてきますよ」

「おぉ、すぐいくからちょお待ってくれやー」

―― ま、人間でも幽霊でもなんでもええか。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:16:53.55 ID:IUaBfQ+IO<>
〜〜〜

「おい、夏目」

授業が終わり、トイレに行こうと廊下に出ると、夏目は先生に呼び止められた。

「なんですか?」

「いや、なにも説教しようというわけではない。
そんな不安そうな顔をするな」

笑いながらそういうと、メモ帳の切れ端を渡された。

「知り合いという人から預かった。長い黒髪に服も黒、ズボンは迷彩柄でごついブーツを履いていた人だが……。
心当たりがないなら無視してしまえ、しつこいようなら先生に頼りなさい」

「……はい、ありがとうございます。
でもきっと大丈夫です、心当たりはあるんで」

先生の優しさを嬉しく思いながら、夏目も笑ってそういった。
先生はそうか、と答えるとそのまま職員室へと去っていった。

「……なんだこれ?」

先生の姿が階段の下へと消えると夏目は渡されたメモを開く。
そこには河童のイラストと「学校終わったら校門でまっててくれや」と雑な字で書かれていた。

「やっぱり……あの人か」

かわいらしいカッパのイラストに苦笑を漏らす。

―― 友人帳目当て……なのか?
でも、名取さんにすらまだ言ってないのに……もしかして的場一門に気づかれてる?
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:17:38.07 ID:IUaBfQ+IO<>
用をたし、教室に戻ると自分の席に座り、ぼんやりと窓の外を眺める。

「夏目ーお前今日ヒマか?」

―― いや、的場一門の人なら河童と仲良く話したりはしないと思う……。

「夏目ー?」

西村の呼びかけにも気づかぬほど、夏目は自分の思考にのめり込んでいた。

―― ……考えても仕方ないか。

「なっつっめ!」

三回目でやっと、何度も呼ばれていることに気がつく。

「え?あ、悪い西村ぼーっとしてた……で、なんだ?」

「いや今日さ、放課後ヒマなら北本誘って釣りでも行かない?最近暑いし水辺が恋しいだろー?」

「あぁ、いいな。でも今日はダメだ、人と会う約束があってさ……ごめん」

「あー、ならしょうがねぇよ。また今度にしようぜ」

「……ごめんな、せっかく誘ってくれたのに」

「いちいち謝るなよ、よくあることだろ」

「……そっか、ありがとう。西村」
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:18:04.68 ID:IUaBfQ+IO<>
普通は、誘いを蹴ったからと言ってこんな顔で謝ってきたりはしない。
軽くスマンスマン!程度で済む話だ。
だが、夏目は本当に申し訳なさそうな顔で謝り、気にするなというと安心したように笑いながらありがとう、と言った。

―― 夏目、おれたちは友達なんだ……友達、なんだよ。

西村はその夏目の態度を悲しく思う。
なぜならば、壁を感じるから。
友達甲斐がないやつだと思うこともよくある。

もっと頼っていいんだよ。
もっとワガママ言ったっていいんだよ。

そう、言ってやりたいといつも思っていた。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:18:59.12 ID:IUaBfQ+IO<>
〜〜〜

「あ、来ましたよ」

「……あの子が夏目」

中級の指差す先には色白で女と見間違えそうなくらい整った顔をした美少年であった。

―― いやー、イケメンやなぁ

夏目は友人三人に別れを告げるとこちらのほうに小走りで来た。

「とりあえず、どこか人のいないところへ……ここにこんな妖が集まってたら変なのもくるかもしれないから」

「……ほな、八ツ原の古寺にでも行きまひょか?」

「わかりました」

二人はサクサクと歩きはじめた。

そんな二人の後ろにはやいやい騒ぐ妖が三匹。

だが、それは夏目たち以外誰にも見ることは出来ない。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:20:10.82 ID:IUaBfQ+IO<>
〜〜〜

「そういうわけでな、オレは過去に来てしまったんかもしくは違う世界に来てしもうたんかよおわからんねんけど……帰る方法知りまへんか?」

「……いや、わからないですよそんなの」

妖がらみの方が楽だった。と夏目は思った。
いきなり知らない人に「よぉわからんねんけど、元の世界返してや」なんて言われてもどうしたらいいのかわかるはずもない。

「せやったら……どないしよ。
オレこのまんまこの世界で暮らすんか?……それも……まぁええか?」

「いや、よくないでしょう!
お金や……戸籍とか、色々問題があるんじゃないですか?……そういえば名前聞いてもいいですか?」

「あー、せやね。自己紹介してへんかったな……オレは田村・福太郎。
秀真國、卍巴市不思議町にある足洗邸っちゅー所に住んでんねん。
職業は絵描き……最近はガッコのセンセもやってるか。まぁ、よろしくな、夏目くん」

「あ、はい……僕は夏目貴志……普通の高校生です」

―― 普通か……。

「……さて、どないしよう」

「そ、そうですね」

―― あれ?これ、もしかして田村さんが帰れるまで付き合わされる感じか……本当、妖の方が楽だな。

「まぁ、考えてもどうにもならんか……夏目くん、今まで出会った妖っちゅーのか?
そいつらのこと教えてくれへん?」

「え?いいですけど……じゃあまずは僕の自称用心棒のニャンコ先生から―― 」

こうして、夏目の出会った妖たちとの思い出を福太郎にひとつずつ話していく事となった。
福太郎はそれらをとても楽しそうに聞いた。
見える人、そして自身と同じくどこか他人に一線を引いている福太郎に夏目は誰にも話せないような事まで話しそうになってしまう。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/13(月) 13:21:23.38 ID:IUaBfQ+IO<>
〜〜〜

「夏目はいろんな妖に出会ってるんやねぇ……でもオレのいた世界とはだいぶ毛並みが違うモンみたいやけどなぁ」

話を重ねるうちに夏目くんから夏目へと呼び名が変わった。
夏目も田村さん、から福太郎さんへと変えている。

「でも、福太郎さんの世界は凄いですね……鵺やヴァンパイアや僕たちが想像する怪物そのものがそのまま現れるなんて……怖くないですか?」

「怖くはないなぁ……この世界の妖は日本の八百万の神様って感じやな……何かに宿って―― 」

「どうかしましたか?」

急に言葉を打ち切った福太郎に夏目は心配そうに尋ねた。

「んー、いや夏目ってねーちゃんとかおるん?」

福太郎が「お前にめちゃめちゃそっくりなやつおるけど?」といいながら指差した方向に夏目も視線を向ける。

「え?……レイ…コ…さん?」

福太郎が夏目の姉と見間違えたもの、遠い昔に亡くなったはずの祖母の姿であった。
こちらを見つめ、挑発するような、嬉しそうな、とにかくわかる事は、とても楽しそうに笑っていた。

「な、なんで……」 <>
◆hnXIcjSJpw<>sage<>2012/02/13(月) 13:24:33.39 ID:IUaBfQ+IO<> 夏目、福太郎、走る。
は次回で

というか実は福太郎を足洗邸に返す方法まだ考えてないんだよねwwwwww
ヤベーヤベー、これはヤベーよなぁああ

キャラの口調は間違ってたり違和感あったら言ってくれ
どっちもかなり好きな漫画なのに自分で書くと違和感しかない

ではまた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州・沖縄)<>sage<>2012/02/13(月) 13:42:00.61 ID:Zf9RUosAO<> 乙であります!
足洗邸系のSSは珍しいですからね
更にクロスオーバーとなると
教授、麻帆良学園に就職
福ちゃん、幻想郷に往く
の2本しか知らないから頑張って下さい! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/02/13(月) 18:18:02.50 ID:35nhdTDAO<> 夏目しかしらんが楽しみだ

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/13(月) 21:00:13.18 ID:wwxX2bSDO<> メフィのおっさんか教授、ウズメくらいしか浮かばんなぁ
今後も期待してるからな! してるからな!
ところで、この福ちゃんは呪われ済み? <>
◆hZ/DqVYZ7nkr<>sage<>2012/02/15(水) 17:20:12.84 ID:swAzk0UNo<> いやぁ落ちてたねー

福太郎は一応呪われ済みだね
八巻のヒョウマン襲来前くらいのイメージですね

次の投下は未定だが今月中には来る〜きっと来る〜

きっと来る〜と気が狂っとる〜ってなんか似てるよね
最後に足洗邸ファンの人は原作ファン増やすためにSSもっと書こうぜ!
√3も始まったし大復活祭といろはも新装版でるし今がファン獲得のチャーンス! <>
◆hnXIcjSJpw<>sage<>2012/02/15(水) 17:21:03.12 ID:swAzk0UNo<> とりまちがいた
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/02/15(水) 17:25:24.42 ID:g884YsLEo<> 俺、受験終わったら足洗邸買うんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)<>sage<>2012/02/15(水) 17:30:03.57 ID:pkxRkPRoo<> 分かるけどキャラが動かしにくいんだよね

一人称ちがうミナホとメフィーくらいしかキャラ立たない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/16(木) 11:01:39.80 ID:QhaE+KVDO<> 非戦闘員は兎も角戦える連中がクロス先を食っちゃうからなぁ
それこそメガテンか? <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/16(木) 21:49:17.92 ID:/1Nh7+6to<>
〜〜〜

レイコと呼ばれた少女は、夏目が己の存在に気づいた事に気づくと追って来いと言わんばかりに走り出した。
いや、走るというよりはすり抜けていくような印象だ。
それは彼女が人ではない事を感じさせる。

「な、んで?本当に……レイコさんなのか?」

「夏目?あれは誰なんや?知り合いなんか?」

「おれの……祖母だ」

「……ずいぶんと、若い……おばあちゃんですねぇ……なんて冗談ゆーてる場合ちゃうよな……よし、追いかけようや!ヒノエ達は荷物みといてくれや、行くで夏目!」

「え?あ、はい」

二人はレイコを追い、走り出した。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/16(木) 21:51:41.11 ID:/1Nh7+6to<>
〜〜〜

「……」

レイコはニコニコとしながらするすると木々の間を抜けていく、福太郎と夏目がギリギリ見失わないようにスピードを調整しているようにも感じられる。
レイコを追う福太郎は何か違和感を二つ覚える。

―― なんやぁ?なんかあいつは違うきがする……なんや?
この違和感は……大召喚時のあの、変なもんがボコボコ出てくる感覚になんとなく似とるきがする……。
まるで、この世の妖では無いような……そんな感覚や。

「てか、あかん」

「どうしたんですか?」

走りながら、夏目はチラリと福太郎を見る。

「オレ、もう28なんよ、普段運動なんかしないんよ……もう、走れへんわ……」

「た、煙草なんか吸ってるからですよ!俺だって運動はそんな得意じゃないけど……というか自分から追おうとか言っといて……!」

「ま、まてや、まてや、もう一個の違和感の正体分かったで……距離が全く縮んどらんし、離されてもおらん……これ、追いかけても無駄や……とりあえず作戦考えよや」

福太郎はその場に仰向けに倒れた。
空は暗くなりかけている。
しかし、そこは何もない綺麗な空だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/17(金) 01:25:24.23 ID:lRXwXDMDO<> 落ちた? <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 09:42:02.06 ID:o61NYQ/No<>
〜〜〜

とぼとぼと息を切らしながら二人は河童達のもとへと帰ってきた。

「夏目親分、あのお方は?」

「捕まえられなかったから、捕まえる方法を福太郎さんと考えようと思って、戻ってきたんだ」

「そうかい……でも、レイコが今更化けて出るなんて……」

ヒノエは顔を少しだけ曇らせる。

河童、中級は直接面識がないのか黙って夏目、ヒノエの顔を見比べている。

「本当に夏目のおばあちゃんなんかなぁ?……なんかもっと違うモンのような気がすんねん」

「違うもの?」

「あぁ、なんかなぁ……ここにいるって感じがせぇへんかったというか……幽霊なんやから当たり前かも知れへんけどな?」

「こんな時に豚猫はなにやってるんでしょうかね」

せめるように中級は言った。

「豚猫?」

「あぁ、僕はニャンコ先生って呼んでる……用心棒みたいなものです」

「用心棒……なんや?夏目は妖の世界では結構なVIPなんか?」

冗談めかして笑うが、夏目にはうけなかったようだ。

「……本当に先生はどこ行ったんだろう……って、うわあああああああ!」

何かを思い出したように夏目は急に叫びながら立ち上がった。

「な、なんやぁ?ビビったぁー、急に大声出さんといてや」

「あ、すみません……そろそろ帰らなきゃ……うわもうこんな時間か……塔子さん心配してるだろうなぁ」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 09:45:24.45 ID:o61NYQ/No<>
慌ただしく荷物をまとめると、夏目は福太郎は帰る家がないという事を思い出した。

「あ……福太郎さんはどうするんですか?のんきに話なんかしてないでそのへん考えた方が良かったですね」

困ったように笑う夏目に対し、福太郎はカラカラと軽快に笑う。

「適当に野宿するからええよ!絵ぇかいたら河童が魚くれるし、つるつると牛もなんや木の実やらくれるし」

「警察の人に声かけられたらどうするんですか?」

「……」

笑ったままの表情で固まり、たらりと冷や汗を頬に走らせる。

「い、田舎やし大丈夫やろ?」

「田舎だからこそ、旅行者は目立つんじゃないですか?」

「お、おどかさんといてや」

「それに、僕の学校の先生も怪しがってましたし」

「……な、夏目、どないしよう……なんかあかん気がしてきたわ」

頭を抱え、夏目を見上げた。

夏目は困ったような照れ臭いような表情をした後、家に泊まれるように塔子さんに頼んでみますよ。と笑った。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 09:46:23.57 ID:o61NYQ/No<>
〜〜〜

「貴志くん!こんな遅くまでフラフラして!
遅くなるなら連絡しなさい!心配したでしょう、もう!」

帰るなり夏目は塔子の雷を喰らった。
そして、それは福太郎に飛び火する。

「大体、あなた大人でしょう?貴志のお友達らしいけれど学校の帰りに家に連絡もさせないで連れまわすなんて―― 」

「まぁまぁ、無事なんだし貴志も福太郎くんも反省しているようだしいいじゃないか。
……貴志、着替えて来なさい。福太郎くんはちょっとこちらへ」

「はい、すみません。塔子さん、滋さん」

「あぁ、はい……なんですのん?」

滋の言葉に二人は素直に従った。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 09:48:20.20 ID:o61NYQ/No<>
〜〜〜

「貴志の友人だという話だが……どこで知り合ったんですか?」

「はぁ……どこか忘れてしもうたんですが、オレは旅をしていてですねぇ。
えっとぉお…-夏目くんも引っ越しの多い子だったようで……よく旅先で会ったんですわ……」

『僕は両親を早くになくして、それで妖が見えるでしょう?
どの親戚も僕を気味悪がってたらい回しにされてたのを藤原夫妻が引き取ってくれたんです。
だから、塔子さんと滋さんには見える事は内緒で、あと僕と福太郎さんは僕の引き取られ先で偶然よく会ったって事にしましょう』

―― これ、深く突っ込まれたら妖しさ増すだけちゃいます?

冷や汗をかきながら、帰り道夏目と打ち合わせた内容を思い出し、たどたどしく福太郎は滋と話す。

「あ、あのー?普通に怪しむんがまともやと思うしアレやったら出ていきますけど」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 09:49:25.37 ID:o61NYQ/No<>
なにやら難しい顔で黙りこくった滋に福太郎は恐る恐る提案する。

「ん?……あぁ、すまない。違うんだ、貴志は随分あなたと仲が良さげだったのに今まで聞いたことがなかったから……。
きっと私たちには言えない事が沢山あるんだろうな、もっとわがままや自分の意見も言っていいのに……。
でも、あなたみたいなお友達がいるなら安心だ、きっと私たちに話せない事はあなたのような友人に話しているのでしょう。
これからも貴志と仲良くしてやってください」

「……わかりました、出来る限りはやらせてもらいますわ」

話し終えると丁度夏目が二階から降りてきた所だった。
そしてさらにタイミングよく、塔子から「ご飯よー」と声がかかった。
その声は優しく、もう怒ってはいないようだ。

こうして、夏目と福太郎の日常のような非日常の一日目は終わった。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 09:53:21.70 ID:o61NYQ/No<> 昨晩は寝落ちしてましたわ

とりあえず一日目終了
次回は

先生、行方不明?
福太郎、絵を描く
レイコさん、再び

こんな感じの話を予定してるが、あくまで予定
投下時期は未定ですね

では、暇つぶしにでも読んでくれ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/17(金) 14:27:42.20 ID:lRXwXDMDO<> 乙やないんかな
わしは知らんけど

アバオアクーとか余命半年(変動性)のは話してない感じかしら <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/02/17(金) 16:33:38.86 ID:CAFRfmqAO<> 乙ッ <> ◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/17(金) 21:47:09.47 ID:o61NYQ/No<> 今すげー頑張って>>46への答えをマミとシオリちゃんのやり取りで書いてたのに書き途中になんか消えた
なぜこの二人かというと、好きだけど多分出番がないから質問はこの二人に答えてもらおう思ったんだが出鼻をくじかれたよ
がっかりしたから簡単に答えるね

まだ話してはいないし、福太郎自身は今のところ話すつもりもないようです

まぁ、呪いとかは物語に関係して来るとも思えないので
ゆるゆるgdgdなSSなんでバトル展開とかは多分ない
そういうのを楽しみにしてる方はごめんなさい <> 足洗邸メンバーに開始のアレをやって見てもらった。口調むずいわ
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:49:32.47 ID:vpMjfZoro<> 「じゃあ、短いけどはじめるのニャ!予定の話は一個もないけど読んでくれると嬉しいのにゃー」

「しっかし、あれだよね〜私も物書きやってるからわかるけど……オチを考えてないってキツイわよねぇ」

「自業自得だ、ラビット望月!それより私の出番は?私外出れないから福ちゃん足洗邸に帰ってきてくんないと困るんだけど」

「あ"ぁ"?やんのかコラァァアア?」

「やーめーるーにゃ!
……仙ちゃんの心配は大丈夫なのニャ!
今回は「福太郎、足洗邸へ戻ったァアア?」なのニャ。
……超短いから前回の予告三本は今回ほど時間あけずになるべく近いうちにまた来るそうなのニャー……では、本編―― 」

「はじまりなのれすよー!」

「ねぇ、義鷹さんはいないの?」


「最後の決めセリフ取られたのニャ……」
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:50:44.15 ID:vpMjfZoro<>
〜〜〜

「いってきまーす!」

慌ただしく家を出る夏目を福太郎は塔子と見送った。
滋は夏目よりも数十分先に家を出たので今藤原家には福太郎と塔子の二人きりだ。

「福太郎さんも何処か出掛けるならお弁当作ってあげるわよ?」

塔子はニコニコと笑いながら玄関の扉を閉める。

「ん、あー……。
いや、今日は貴志くんの住んどるこの家を描かせて貰いますわ。
塔子さんは僕の事気にせんでいつも通りやっててください」

「じゃあ、お昼ご飯はなにか食べたい物あるかしら?」

「あー、じゃあチャーハンなんかどうでしょか?」

塔子はわかったわ、と言うと家事をし始めた。

―― 可愛らしいおばちゃんやなぁ……。仙もこんくらい上品やったらええんに……。

小さく笑うと寝室としてあてがわれた和室へと入った。

「は?」

そして、思わず声をこぼす。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:51:30.21 ID:vpMjfZoro<> ふすまを開けると、そこは藤原邸ではなく、見慣れた足洗邸であった。

「はっぁああああ?なんでやねん!いや……えぇええ?」

左右前後を見渡し、ここが足洗邸であることを確認する。

「ああああ!福ちゃん!どこいってたのさ!女か?女のところか!」

「ふっわぁあ!ヒビったぁ……なんやねん!急に大声で話しかけんなや!」

「な、なんだよう……怒るなよう」

突然現れたのは笠森・仙という天井下りの妖だ。
福太郎の隣に住む女子高生(当時は)である。

「あー……いやすんまへん……。怒っとらんで?今なぁ……オレにも状況がわからんねん……メフィストセンセどこか知らん?」

「あー、メフィーのおっさんなら学園行ったよー?つーか義鷹知らない?福太郎と一緒にいるかと思ってたんだけどなー」

福太郎の質問に答えたのは望月・玉兎。
兎の妖であり、職業は小説家。
エロ小説を書いているらしい。

「義鷹も帰ってないんかい……まぁ、あいつは大丈夫やろ」

「あー、まぁ、心配はしてないけどね……面倒起こされたら厄介だし」

あくびをしながら、階段をおりて行き、管理人である竜造寺・コマに福太郎が帰ってきたことを知らせた。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:51:59.35 ID:vpMjfZoro<>
―― つーか、荷物あっちに置きっぱなしですやーん……あかん、夏目に迷惑かかってまう……。

客人が荷物残したまま失踪など、普通の社会では大事件になってしまうだろう。
大召喚の生き残り、人間社会の常識をちゃんとに覚えている福太郎にはそれを理解している。
そして一宿一飯の恩がある藤原夫妻、そして友人である夏目に迷惑はかけたくなかった。

―― とりあえずメフィストセンセに会わな……あの人ならなんとか出来るかもしれやんし。

福太郎は顔をあげると階段を駆け下りた。

「管理人ちゃんほな、また出てきますわー!玉兎もお仙もまたなぁー!」

「あ、ちょっと福ちゃん待つのナ!」

コマの言葉を背中に受けながら福太郎は学園まで走った。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:52:44.83 ID:vpMjfZoro<>
〜〜〜

走ること十数分、福太郎は万魔殿学園へとたどり着く。
そして、メフィストに会うためにその門をくぐろうとする。

「あれー?福ちゃん、昨日はどうしたのよ?サボり?」

「る、誄歌先生……あぁ、すんません。ちょっと迷いまして」

「……ま、いいけど。今日は授業ないよ?あ、もしかして私に愛にきたとか?」

「違います。メフィスト先生どこにいるかわかりま?」

「え?メフィストに愛に?」

―― め、めんどくさい……。

「あぁ、ちゃいますちゃいます、本当は誄歌センセに愛にきたんですわ」

「調子乗るなばーか!……メフィスト先生なら私のクラスで授業中だよ、撃たれてるよ」

「え?撃たれてるん?……ま、まぁええわ……ありがとうゴザイマ」

福太郎は、途中他の先生に廊下を走るなと怒られながらメフィストのもとへとたどり着いた。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:53:14.88 ID:vpMjfZoro<>
「メフィスト先生!なんかあのどこでもドアもどき貸してくれませんか?」

「オゥ、ワッツハップンドゥ!田村くん?……落ち着いて一から説明説明プリーズですよ」

「昨日学園の門くぐったら夏目のとこにいて、今朝夏目の家のふすま開けたら足洗邸にいたんですよ!あっちになんもいわんと出てきたみたいになってるし事件んなったらえらいことやから一回帰りたいんですけど……助けてやー!」

「昨日感じたズレはそれか……誠に残念なーがら無理です。ミーのどこにでもいけるドアに世界を超える力はナッシング!でもまだズレは残ってマスカラ、何かの拍子に戻れるかもしれませーんネ」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:53:46.43 ID:vpMjfZoro<> 「ま、マジですか?……オワター最後の希望やったんに……」

「状況を思い出してください、ミスター田村。このズレは貴方と偶然波長があった……その肩の異形のようにね」

「え?な、なんで知っと―― 」

「だから、君なら簡単に行き来が出来るはずDEATH」

メフィストは福太郎の言葉を遮るように言葉を続けると怪しく笑った。
まるですべてを知っているかのように。

―― まぁ、ミーはアイドントノゥ!何もしりませーんけどね。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/02/22(水) 04:59:01.53 ID:vpMjfZoro<> 「お、思ったより少ないわね……私の出番も」

「魔魅達はでてすらいないのれす……ではまた次回なのれす」

「次回は義鷹さんでてくるの?べ、別に義鷹さん見るために来てるんじゃないからね!」

「あーはいはい、締め切りないからって逃げることはなさそうだけど……良かったら次も読んでやってよ。
物書きにとって読んでくれ人は偉大なのさ!
……それがプロであれ、趣味でやってるSSであれ……ね」

「じゃあ次回も―― 」

「読んでくれるとうれしいのれす」

「ま、また取られなのニャー……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2012/03/04(日) 00:26:23.30 ID:/LHT+vEko<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/03(火) 09:05:31.22 ID:8LppmjfDO<> エタったか……?
足洗邸クロスで完結したのみたことないんだが <>
◆hnXIcjSJpw<>sage<>2012/04/05(木) 13:58:41.35 ID:wG2MIfFIO<> エタらんぞい
少し忙しすぎてかけなかっただけですすみません

ここって俺が二ヶ月に一回生存報告すれば落とされないんだよね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/04/25(水) 00:21:37.36 ID:MtNhI/tAO<> 面白いのみつけた
楽しみにしております <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2012/04/25(水) 00:37:25.63 ID:iSg/VR9wo<> だな

だがしかし早く進めてほしいという <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:07:35.58 ID:iqu4Ytw2o<>
〜〜〜

―― えぇと……ズレがなんちゃら言うてたな……。

福太郎は階段に座り込み頭を抱えていた。

―― あーっクソ。落ち着け……まずあの時の事を思い出すんや……。
確か……『朝学校の門をくぐったら、そこは夏目のいる世界でした』

―― ……うん、わからん。
……帰ってきた時の事を考えてみよか、えっと確か...…『ふすま開けたら我が家でした』

―― ……アッカーン! 何もかも突然すぎてわけわからへん! <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:08:16.95 ID:iqu4Ytw2o<> さらに抱え込み、体を縮めるようにうなだれる。

「あれー?田村の人気持ち悪い格好でどうしたれすかー?」

「ん? おぉ、オマエか……今日はもう授業終わりなんか?」

「そうなのれすー! 田村の人はなにやってるれすか?」

話しかけて来たのは、狸人種の人をおどかすのが趣味な変わった少女、魔魅である。

「あぁ、ちと厄介な事になってなぁ……」

「厄介な事れすか……あ、昼ドラ展開れすね!」

「ちゃうわ! なんちゅーか強制どこでもドア的なな?」

「……わけわからないのれす」

魔魅は福太郎の隣に腰掛けた。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:09:18.37 ID:iqu4Ytw2o<>
「……オレもや」

なんとなく、二人して凹んでいると、またしても一人女学生が現れた。

「魔ァ魅ー! かーえろ!」

「……初音れすか……田村の人が元気ないれす」

「いやいや、あんたも元気ないよ?」

「ごめんなぁ、不幸はうつるっちゅーからあんまオレに近寄らんではよ帰ったほうがええで」

福太郎は煙草を取り出すが、なんとなくだるくなりそれをしまう。

「先生何を悩んでるの? 昼ドラ展開?」

「ちゃうわ! なんでそうなんねん」

もう一度、今度は魔魅にした説明よりも詳しく話した。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:09:52.56 ID:iqu4Ytw2o<>
「メフィスト先生に相談したらどうなのれすか? あの人そういうの詳しそうなのれす」

「もうしたわ。なんかズレがどうこう言っとったけど、ようわからへん。
でもまだズレは残っとるらしいから条件が揃えば行けるらしいで」

「……あれ? 答え出てない?」

初音は何を悩んでいるのかわからないというように言った。

「は?」

「いや、条件揃えたらいいんでしょ? 行った時と同じ状況でやってみれば良くない?」

「…………」

「先生?」

「そ、そんな手が……」

「……馬鹿なのれす」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:10:19.34 ID:iqu4Ytw2o<>
〜〜〜

魔魅、初音と別れると福太郎は一人校門の前に立った。

―― あん時の事、確か周りには誰もおらんくて、オレは一人でここの門をくぐったんや。

少し緊張気味にゆっくりと足を進める。

そして、門をくぐると―― 。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:10:48.97 ID:iqu4Ytw2o<>
〜〜〜

―― 福太郎さんにレイコさん、一体何が起きてるのだろう……。
あのレイコさんはなんなんだろう。
もしかしてレイコさんは……。

小さくため息をつく。

「夏目、また妖絡みの厄介事か?」

何時の間にか夏目の席のところへと来ていた田沼が声をひそめ尋ねる。

「あぁ、田沼か……おはよう。
……いや、大丈夫だよ。昔引越し先でよくあった友人に再会しただけだ」

「……そうか。まぁ、なにかあったらすぐ言えよ、俺にできる事なんかないかもしれないけどさ」

「……ありがとう、田沼」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:11:31.07 ID:iqu4Ytw2o<>
〜〜〜

福太郎は恐る恐る目を開ける。
すると、そこは昨夜眠った部屋で自分の荷物もちゃんとあった。
チラリと時計をみると、自分がこの世界から消えていたのがほんの数分だという事がわかり、安堵した。

「はっぁあああ……よかったぁ」

習慣で、煙草を口にくわえるが、ここが人の家である事を思い出し、またもそれをしまう。

「……とりあえず、行き来の方法は分かった。
けどこれ今またふすま開けて外出ようとしたら戻ってまうんじゃ……」

いいながら、ふすまを開けるが、そこはちゃんと藤原邸の廊下だった。

「わかりかけて来たで……つまり、あっちとこっちにオレしかおらん時に扉を開くと繋がってまうって事やな……いや、しかし待てよ」

考えをまとめるが、一つ気になることがあった。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:11:59.41 ID:iqu4Ytw2o<>
「でも、一番最初はこっちに来た時周りに学生さんがぎょうさんおったよなぁ……」

腕を組み、天井を見つめながらなにか仮説を立てられないかと思考を巡らす。

―― 巻き込まれた、としたら……?
例えば、オレのほかに波長があった奴がおって、そいつが偶然こっちに来てもうた時に引きずられた……ってのはどやろ。

考えながら、絵を描く道具を揃える。
そして、一応の仮説を立てると、庭に出た。

「あら? まだ家の中にいたの?
てっきりもうどっか描きに行ったのかと思ったわ」

洗濯物を入れたカゴを抱えるように、塔子も庭に出るところだった。

「あ、持ちますよ。
代わりにこっち持ってください」

福太郎は軽い筆の入った空のバケツを塔子に渡し、自分は塔子の持っていた洗濯物のカゴをてにとった。

「まぁまぁ、ありがとう。
何を描くか決めたかしら?」

「せやねー、家事する塔子さん描きまひょうかね」

福太郎は笑いながら、言った。

「あらあら、こんなおばさん描いても楽しくないでしょう」

塔子も笑う。

「いやいや、良い絵が描けそうです。
夏目……貴志くんと滋さんも描きたいなぁ」

―― 人を描くんは嫌やけど、オレはすぐこの世界からいなくなるからな……ええやろ。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/04/26(木) 23:13:40.84 ID:iqu4Ytw2o<> すんません遅くて

あと関西弁わからないから
せやね
ってのを少し丁寧な言い方したらどうなるか誰か関西の人教えてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/27(金) 00:29:04.79 ID:Y1zQvLRIO<> >>70
そうですね
だと思う。イントネーションが関西風になるはず。
六年関西に住んでたけど、そうですねって言ってたと思う

いつも楽しみにしてるから頑張って続けてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/27(金) 00:47:50.28 ID:iAcy1VjWo<> 普通にそうですねでいいのか
ありがとう!

超不定期だけど、投げる事はないからこれからもよろしくお願いします <>
◆hnXIcjSJpw<>sage<>2012/04/27(金) 00:48:53.04 ID:iAcy1VjWo<> とりつけわすれ

ではまた次回
お願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/27(金) 01:07:26.29 ID:Y1zQvLRIO<> 期待してる! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/04/27(金) 11:07:34.43 ID:lPfExlbAO<> 足洗邸は知らんがいい雰囲気だな
次回も楽しみにしております <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/05/08(火) 01:14:44.15 ID:KEgad/PAO<> ま……まだかな? <> ◆hnXIcjSJpw<>sage<>2012/05/23(水) 00:38:38.96 ID:TX89LXcVo<> すみません
忙しい
待って
完結はさせるので <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/23(水) 01:31:17.26 ID:fREdCC5IO<> 待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/05/23(水) 21:02:42.96 ID:dFS9vu0AO<> 完結させて頂けるならいつでも
楽しみにしていますー <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:02:24.07 ID:awtGqp+IO<>
〜〜〜

福太郎は妖達に描いたような絵ではなく、しっかりと一筆一筆丁寧に藤原邸とそこで家事に勤しむ夫人の風景を描いていた。

絵を描く時に基本となるのはよく見る事である。
福太郎は外観、そして塔子の表情、動きを観察しながらある事に気がついた。

―― 塔子さんはいつでも楽しそうやなぁ……。

夏目と藤原夫妻は遠い親戚だと聞いている。
夏目はその性質上親戚中をたらい回しにされ、人との付き合い方がわからぬまま、悲しい過去をどんどん胸に貯め、やっとここに辿りついた。

―― この人らはいい人やなぁ……。
なんちゅーか、人として、尊敬できるっちゅーか……。

藤原夫妻のもとで、夏目はだんだんと自然に笑えるようになったのだろうと福太郎は思っていた。
そして、それは正解である。

「福太郎さーん! ご飯よー! 」

何時の間にか時はすぎ、お昼すぎになっていた。
塔子がニコニコしながら庭にいる福太郎に呼びかける。

「はぁーい! 今行きまー!」

福太郎も、自然と笑みがこぼれる。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:03:08.74 ID:awtGqp+IO<>
〜〜〜

「ただいまー」

午後四時過ぎ、夏目が帰宅した。
リビングで塔子と少し話をしながら弁当箱を渡すと、塔子はアイスティーとおやつを二人分夏目に渡した。

それを持って夏目は福太郎がいる庭へと縁側から声をかけようとする。

「……これ、声かけてもいいのかな? 」

真剣に絵を描いている福太郎に、声をかけるのを若干ためらう。
もしかしたら、絵を描いている時というのは、福太郎にとって誰にも邪魔されたくない領分かもしれない。

「……どうしようかな」

お盆を持ったまま立ち尽くしていると、福太郎の方から夏目に気がついた。

「お、夏目ー! おかえりィ。
……なぁにぼーっと突っ立ってますのん?」

筆をおき、夏目の立つ縁側へと向かう。

「え? あ、いや……なんか絵を描く邪魔しちゃ悪いかな、と思って―― 」

「……はぁー」

それを聞くと、福太郎は呆れたように笑いながらため息をついた。

「お前なぁ……オレは今一応お前に世話んなってる身やぞ?
オレが気ィ使うんならわかるけど、お前がオレに気ィつかってどうすんねん」

「そう、ですね。
……でも、俺、その……相手の……どこまで踏み込んでいいかとか、そういうのが……わからなくって」

夏目は何故か申し訳なさそうな顔をした。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:03:36.42 ID:awtGqp+IO<>
「オレも重過ぎるもんをもってしもうた、と一時思ったわ。
でも、あいつらとおるんは楽しい。
夏目なんかまだ高校生やろ?
そんなん、どこまで踏み込んでいいか〜なんちゅーよぉわからんもんわかるわけないで?
何時の間にか、そんなことを気にせんと笑ったり怒ったり出来る人がお前にも必ず現れると思う」

―― アッレー?
オレなぁに言うてますのん?

福太郎は、自分のキャラに似合わぬいかにも教師らしい事を自分の口で言っていることに戸惑っている。
が、夏目にかけてやりたいと思う言葉は次々と湧き出てきた。

「色々と気にしすぎなんよ。
まぁ、お前の過去を考えたらそうなるんもしゃーないとは思うが、ここはお前を受け入れてくれたんやろ?
だったら、楽しみぃや!
人間前向いて行きなあかんで」

―― 死ぬと義鷹に言われた時「ようやく死ねる」思った人間の吐く台詞やないよなぁ……。

心の内で苦笑いながら、福太郎は夏目の肩を叩いた。

「うっわ……と危ないじゃないですか!」

よろけた夏目は、塔子のいれてくれたアイスティーをこぼしそうになった。

「お、これ塔子さんがいれてくれはったんか?
いただきまー!」

福太郎はそんな夏目を全く気にせずお盆からコップをひとつ取った。

「……まったく、大人なんだか子供なんだか……」

嬉しそうに一気にアイスティーを飲み干す福太郎を見て、すこし微笑んだ。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:04:20.24 ID:awtGqp+IO<>
〜〜〜

その日の晩御飯はグラタンであった。
可愛らしい皿には美味しそうに湯気をたてる熱々のグラタンが入っている。

塔子は学校の事などを夏目に聞き、夏目は些細な事を嬉しそうに話した。
滋は福太郎に今日一日何をしていたか、この町はどうかなどビールをちょびちょび飲みながら尋ねる。

楽しい夕飯を終え、福太郎は夏目の部屋へと来ていた。

「すっかり忘れてましたけど、ニャンコ先生が行方不明です。
あとレイコさんの事も考えなくちゃ……」

心配そうに夏目は顔色を曇らせた。

「……あー、まぁ、考えてもよぉわからんしなるようになるんちゃいます?」

対して福太郎は自身に関する謎がひとつ解けたからか、楽観的に火のついていない煙草をくわえている。

「……ちょっと」

その態度に腹が立ったのか、夏目は珍しく“人間”相手に怒気のこもった声をだした。

「……おばあちゃんの方は、恐らくエサや」

夏目に気づかれぬように少しだけ口角をあげると、福太郎は絵を描きながら立てた仮説を披露する。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:04:52.53 ID:awtGqp+IO<>
「エサ?」

「あぁ、よぉわからんけどお前はなんか特別な力持ってるかなんかで妖怪に狙われてんねんやろ?
それで、お前が一番会いたいとかよく考える人の姿飛ばしておびき寄せようとしてんちゃうかな?
本体がいるところにたどり着いた時にはお前は走りつかれてヘロヘロやし」

「……だとしたら、もう見ても追いかけないほうがいいですね」

少しだけ残念そうに、だがどこか安心したようにつぶやく。

「……おばあちゃんが成仏でけへんかったんやなくてよかったと思う気持ちと、もしおばあちゃんなら話をしてみたかったって気持ちがぐるぐるするんはわかるけど、その妖怪さんと話してやめさせな」

「…………確かに、普通の人を襲うかもしれないですもんね」

正確に自分の気持ちを言い当てられ、複雑そうな表情を少し見せたが、すぐに真顔に戻りそう言った。
<>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:05:25.02 ID:awtGqp+IO<>
〜〜〜

―― とは言ったもののニャンコ先生不在だとおれはどうしたらいいか検討もつかないんだよな……。

翌朝、学校への道すがら夏目はぼんやりとレイコさんを使って自分をおびき寄せようとした妖の事を考えていた。

「……ニャンコ先生って意外とちゃんと用心棒やってたんだな」

ハッと驚きの事実に気づいたが、すぐに「用心棒と言うより災害マニュアルみたいなものだな」と自身の今までの認識が正しかったと胸を撫で下ろした。

「……あれは」

一息つくと、前方に友人の後ろ姿が目に入った。
少し歩くスピードを速め、その肩を軽くたたく。

「おはよう、田沼」

「ん? あ、あぁ……おはよう、夏目」

サッと目を逸らした田沼に、違和感を覚えたが夏目はこういう時自分がその理由を聞いてもいいのかわからない。 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:06:01.17 ID:awtGqp+IO<>
二人は黙りこくったまま、並んで歩く。
しかし、その沈黙は数メートル進んだところで田沼が打ち破った。

「いや、ごめん。
やっぱ、正直に話すよ。
なんか人と会う約束がどうのこうのと北本と西村が話してたから、もしかしたら妖がらみ意外で大変なのかも、とか思ってさ。
でも、そうだとしても、話さないより話したほうが良いんだよな」

申し訳なさそうに、田沼はまっすぐ前を見つめながら言った。

「……あぁ、そうだな。
知っていれば、何か助けられるかもしれない……。
たとえ助けて欲しくないと思っていたとしても、それならそうとおれはそう言ってもらいたいと思う。
知らなければ、何も出来ないんだから……」

誰かが涙を流しているのを見たとき、その涙の理由も知らずに何か言ってやる事が出来ないのと同じだ。

その人や事の事情を知らないのに口を出す事はひどく無責任なことであるのだから。

「そう、か……。
昨晩眠れなくて散歩してたんだ。
そしたら木の影にスッと人影が見えた気がしてさ……。
よくみて見るとそれが……その……」

言い辛そうに、田沼は口ごもる。

「ん? どうした?田沼」

夏目は急に言葉を止めた田沼をキョトンと覗き込んだ。

「……いや、それがさ、お前の……母親だったんだ。
前に写真見せてもらっただろ?
……ちょうどその時夏目の両親の事を考えてたんだ。
二人とも優しそうな人達だったな、とかさ……」

「……そうか、ありがとう田沼」

「え?」 <>
◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:06:29.31 ID:awtGqp+IO<>
「両親の話をしてくれる親戚はいなかったし、今まで誰にもあの写真は見せた事がなかったから、当たり前だけど両親を褒められた事なんかなかったんだ。
やっぱり、ほとんど覚えてなくても嬉しいな……自分の両親をよく言ってくれる人がいるって……嬉しいな」

「夏目……俺、もしかしたら夏目の母親は、成仏できてなかったのかもって……。
良くしらないけど、悪いものに変わってしまうんじゃないかって……俺にも見えたから相当強い想いなんじゃないかと思って……。
ごめん、お前に言ったらいいのか言わなきゃいいのかわからなくてさ」

「あぁ、そうだよな……。
どこまで自分が踏み込んでいいのか、そういうのって……わからないよな。
でも大丈夫、それは違うんだ。
昨日、夕方俺のところにも来た。幻を見せて誘き寄せる妖……らしい。
だから、絶対に追いかけないでくれよ?」

「……俺も手伝うよ。
お前はその妖をなんとかするつもりなんだろ?
だったら、俺も―― 」

「ありがとう、なにかあったらすぐ言うよ」

田沼の言葉を遮るように、夏目は言った。

「……わかったよ」
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◆hnXIcjSJpw<>saga<>2012/05/25(金) 13:08:14.42 ID:awtGqp+IO<> 7〜8月には今メインにやってるほうのスレ終わらせる事できるので、もっと頻繁にこれるようになると思いま

また次も読んでください <>  <>sage<>2012/05/26(土) 03:01:36.36 ID:wTKXN+sAO<> 乙
次回も楽しみにしています <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/06/15(金) 20:14:15.24 ID:Bm4XIUiAO<> 待ってまっせー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2012/07/29(日) 00:48:47.91 ID:XHa98vnAO<> もいっこ待ってた夏目SSが落ちてた
こっちももうダメなのか…… <>