VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:56:15.74 ID:7ddG/jUfo<>ゆるゆりSS、地の文多め
文章を書くのが初めてなので表現が所々拙い、至らないことがある


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1330858570(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>あかり「ハッピーエンドを探しに行こう」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:56:57.80 ID:7ddG/jUfo<> 全てが反故になった世界。終わりもなければ、始まりもない。
全てが全て一様に、主を失い、意味を失い、存在すら失いかけている。

「あ、あ……あー、誰か、誰かいませんかぁ……。」

「……なんて。いるわけないよね……。」

そんな世界に、私はたった一人でいる。
まだ諦めきれずに救いを求めるこの声も、
その本来の意味など、とうに失い、今やそれは、ただ私の精神の崩壊による、世界の流出、消失を防ぐシガラミでしかなく、

なぜなら、ここはただあるだけの世界であり、
私はそれを認識し得る、唯一の存在なのだから。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:57:31.65 ID:7ddG/jUfo<> そう、事の始まりはつい一週間前のこと。
その日私は、いつものように学校へ通い、まじめに授業を受けて、放課後になるとごらく部へと向かい、
取るに足らないお喋りをし、適度に退屈を覚え、午前中はまさに日常と呼ぶに相応しいものだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「暇だね。」

結衣ちゃんが呟く。

「そうだねー。あかりちょっと眠たくなって来たなぁ。」

「今日は天気良いから、良い昼寝日和だね。」

「うん、ぽかぽかだよー。ちょっとだけ眠っちゃおうかな。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:58:26.35 ID:7ddG/jUfo<> 「そうだね。まだ誰も来ないみたいだし。」

「あ、そういえば京子ちゃんは?」

「うん、なんか先生に呼び出されているらしいから、もうしばらくしたら来ると思うよ。」

「へぇ、京子ちゃんまた何かしたの?」

「さぁ、あいつには思い当たる節が多すぎるから……。」

「あはは、確かに……。」

「そういうあかりこそ、ちなつちゃん今日どうしたの?」

「あ、ちなつちゃんなら掃除だよ。今週当番だから。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:58:55.24 ID:7ddG/jUfo<> 「そう、じゃあそれまで二人っきりだね。」

「そうだね、えへへ……。」
「じゃ、じゃあ、あかりお昼寝するから、その、膝枕。してもらっても良い?」

「……ん、まったく。あかりは甘えん坊さんだなぁ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁ……、お腹、減ったなぁ……。」

そういえば今朝から泣いてばかりで、なにも食べていない。

「どうしよう……、なにかないのかな。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:59:22.64 ID:7ddG/jUfo<> ふと、脳裏を過ぎるのは最悪の結末。
私はこのまま、孤独と飢えに苦しみ衰弱し、仕舞いには餓死でもしてしまうのではないか。
十分にあり得る、いや、むしろこれは確定されたことなのだろう。
なぜなら、どの道、このまま順調に物事が進めば、餓死こそしなくても、いつかは老いる。
いや、それより以前に精神が限界を迎えてしまうだろう。
とすれば私は二度と人に見えることなくその一生を終えることは必至なのだから。

「考えていても仕方ないよね……。よしっ。」

都合の悪い予断を許さぬべく、すくと立ち上がり辺りを見渡すと、
なんという僥倖だろう。どうやら天はたった一人でも信ずるものがあれば、
その存在は絶対的なものになり得るようだ。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 19:59:48.38 ID:7ddG/jUfo<> 「あっ……。」

そこに見えるのは、大きな大きな樹木。
そして、その枝の先には、赤々とした、見るからに旨そうな瑞々しい果実が成っている

ゆっくりと、出来るだけ慎重に、道路の脇道をあえて選び、足をそれへと運んで行く。
緊張か焦燥か空腹から来るものなのか、先ほどまでずっと乾いていた口の中に唾液が溢れ出すので、
私は、それすら苛立たしく思い、ごくりと音を立て飲み下した。

真下へと達すると、それは少々高すぎるように思えた。
しかし、動じることなく、私は手を伸ばす。

「あ……、う、うぅん……、よい、しょっ……っと……。」

「あれ?取れないや……。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:00:14.38 ID:7ddG/jUfo<> やはり、すこし背丈が足りないのだろうか。
私の手はただ宙を掴むだけだ。

「ふ……、んっ……んぅ……。」

「ふぬぬ……、んん……。」

もう一度挑んでみたがやはり取れない。
あと少しで届きそうなものなのだけれど。

「はぁ…………。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:00:42.61 ID:7ddG/jUfo<> その後も小一時間程できうる限りのあらゆる手段で試みたのだけれど、
それらは全て徒労に終わった。
しかし、そうこうしている内になぜか空腹は幾分かましになっていたので、
ここに居るだけではあまりにも非生産的すぎる。
私は食料を求めまた別の場所へと歩き出した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おっすー!歳納京子ちゃん華麗に参上!」

ふすまが開くや否や、はつらつとした、しかしすこし鼻にかかったような声が響く。
そして彼女の横をさも事もなげに通り過ぎるピンク色のもふもふ。もといちなつちゃん。
彼女のその紺碧の双眼が結衣ちゃんを捉えるや否や、一直線に駆け出した。

「結衣せんぱーい!会いたかったですぅー!」

向かう先はもちろん結衣ちゃん。
もはや執念に近い彼女の愛情は、抱擁などというちんけな表現はとうに超越し、
いまやサブミッションホールドのそれに類似したものとなって、結衣ちゃんの胴を圧迫する。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:01:09.47 ID:7ddG/jUfo<> 「く、苦しい……ちなつちゃん……、く、くるしぃ……。」

結衣ちゃんが懇願するような目でこちらを見ている。
冷や汗を流しながら必死の形相でこちらを見ている。
が、こうなればもはや私になす術などはなく、
居たたまれなくなり、つい顔を逸らした。

すると今度は京子ちゃんがそれへと向かって行く。
心なしか少し憤った様子だ。

「おい!結衣!ちなつちゃんは私のものだぞ!返しなさいー!」

結衣ちゃんに抱きつく、もとい結衣ちゃんを絞めるちなつちゃんを
引きはがそうと躍起になる京子ちゃん。
その様子はさながら地獄絵図。
組んず解れつ、三つ巴の大乱戦。私が滑り込めそうな余地すらない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:01:41.04 ID:7ddG/jUfo<> 「あ……!」

瞬間、誰かが足を躓かせたらしく、皆一様に崩れ落ちる。
畳が鳴り響き、辺りに埃が舞う。

「いててて……。」

「だ、大丈夫みんな!」

「あれ、あかりちゃん、いたんだ。」

「そんなぁ!?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あっか、りーん……。」

「はは、もう空気扱いされることもないや……。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:02:07.07 ID:7ddG/jUfo<>
だって、もう他に人がいないもの。
暫定主役。
観客のいない舞台で踊り続けるだけ。
悲しみも痛みもなにもかもを表現しても、
もし、そこに観客が大勢いると悲劇になるものも、小勢なら一転喜劇に、
しかし、誰も見るものが居ないのならば、それににすらならない。
単なる一人遊びだ。そうだ。
私はひとりぼっち。



「はぁ……。」

涙は涸れ果てていてもう出ないけれど、代わりに雨が降ってきたようだ。

歩く、ただ歩く。
雨に濡れてもし風邪でも引いてしまったら、手の打ちようがないので、
予定を変更し、さっさと家へと帰るために、ただひたすらに歩き続ける。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:02:32.74 ID:7ddG/jUfo<> 寒い。あぁ、寒い。凍えそうだ。
季節も分からない曇り空の下、私はただひたすらに心を平常に保つよう努めるしかなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「それで、今日はなにするの?」

結衣ちゃんが京子ちゃんに問う。
私はその横にちょこんと座り、彼女の手に自らの頭を預けている。
気のせいか対面からピンク黒いオーラの波動を感じるが、あえて、知らない振りをする。

「うーん……、そうだなぁ、じゃあ、今日は久し振りに外に行こう!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:03:21.16 ID:7ddG/jUfo<> 京子ちゃんは気軽に言ってみせる。
が、考えなしもここまで極めると尊敬に値する。
が、それはそれ、これはこれ、止めなければ、と思案していると、
結衣ちゃんと、ちなつちゃんが同時に身を乗り出す。

「先輩!正気ですか!?いくら先輩が主人公だからって死ぬときは死ぬんですよ!」

「そうだ京子。おまえ自分が何を言っているかわかっているのか?」

怒涛の勢いで捲くし立てる二人。
これにはさすがの京子も苦笑い。
ていうか、酷いよちなつちゃん。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:03:52.25 ID:7ddG/jUfo<> なぜ、二人がこんなにも必死になって引き留めるのか。
そう、なぜなら今、ゆるゆり連載当初より幾百年がすぎた、新暦xxx年、
大日帝国は、近隣数カ国に対して絶賛戦争中であり、(後にこの戦いは終末戦争と呼ばれることになる。)
したがってこの七森町も例外なく、爆撃対象となりうるのだから、
そのような、厳重警戒体勢の中、女学生の集団が外で遊ぶなど、自殺でもない限り、正気の沙汰ではない。

もちろんその事実は、京子ちゃんも重々承知しているはずだ。
なぜなら、いまここでこうして集まっているのも本来禁止されているはずで、
実際私たち以外の一般生徒はおろか、教員達まで皆一様に、学校が終わると、真っ先に帰宅し、
いつ来るかも知れない空襲に怯え、日々を過ごしているはずで、

私たちが、ここに居られるのは、京子ちゃんの巧みな話術によるそれぞれの両親の説得により、
(実際、この学校内が避難地域に設定され、シェルターが設置されていることは、最も安全なのかもしれないが)
許可を得て、学校には内密に、ここに集まっているのだから、その張本人がそれを蔑ろにするはずもない。
とすれば、彼女には、その身を危険に晒してでも町に行かなくてはならない理由が何かあるのだろう。
京子ちゃんは確かに楽天的だが、浅慮でもなく、ましてや、理由もなくこのような事を冒すほどおろかではないことは明らかなのだから。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/03/04(日) 20:04:17.33 ID:7ddG/jUfo<>
「京子ちゃん……、なにか理由があるんでしょ。話してよ……。」

「あ、あかり……。」

京子ちゃんがこくりと頷く。
そして、ゆっくりとその口を開く。

「みんな、落ち着いて聞いてくれ……。」

ごくりと溢れる唾液を飲み込む。

「私がいつも帰宅後、敵対国の無線を盗んだり、ハッキングを仕掛けていることは知っているよな。」

「まぁ、成功したことないですけれどね。」

ちなつちゃんが緊迫した空気に耐え切れず茶々を入れる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:05:25.36 ID:7ddG/jUfo<>
「あぁ、そうだよ。そりゃあ、一国の機密情報を盗み出そうなんて、いくら私が優秀だからって、そう易々と成し遂げれることじゃあない。」

「そんなことができるのなら、断言する。私はとっくにこの戦争を終わらせているよ。」

「だから、もうそれらは祖国を救う名目なんてとっくになくして、
いつしかライフワークから、ただ、私の退屈を紛らわせるだけのルーチンワークに成り下がっていたんだ。」

「そう、昨日まではね。」

「これはきっと奇跡なんだと思う。私たちを、神様が不憫に思って、助けてくれただけ。」

「そう、私は手に入れたんだ、とある国の機密文書。」

「っ……!」

皆が一様に息を呑む。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:05:48.39 ID:7ddG/jUfo<> 「それで……、なにが、わかったんだ……?」

結衣ちゃんが恐る恐る訊ねる。
私の肩に回す手の力がグッと強くなるので、そっと手を重ねた。

「あぁ、どうか冷静に、覚悟を決めて聞いてくれ。」

「明後日、この七森町に爆撃機が来襲する……!」


     ざわ…
   
        ざわ…


「みんな落ち着いて!話はまだ終わっていないから!」

「だ、だって、そんな……っ、私たち、もう死ぬしかないんですか!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:06:20.01 ID:7ddG/jUfo<>
ちなつちゃんは声を荒げて、今にも泣きだしそうだ。
私も内心気が気ではない。
が、隣にいる結衣ちゃんも震えているので、これ以上不安を煽る事が無いよう、
気丈に振舞うことにする。

「それで……、つまり、京子ちゃん。この町を出るつもりなの?」

「あぁ、そのつもりだ。」

しかし、おかしい。
ここまでの情報が分かっているのならば、それをそのまま軍に報告すれば、然るべき対処をなしてくれるはずだ。
私がそれを訊ねると彼女は答える。

「そうだな、あかりは冷静だ。実際、この情報のみで弾き出すなら、最良にして、的確な判断だよ。」

「でも、それは無理だ。」

京子ちゃんが諦めた表情でため息混じりに言う。
京子ちゃんの意見はいつも正しいものだけれど、私はあえて、それに食ってかかる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:06:46.34 ID:7ddG/jUfo<>
「どうして!?いくら劣勢だとしても、事前の情報があれば、なにか対処をするだろうし、
攻撃を未然に防ぐことも十分可能だと思うよ!」

「それに、それがもし無理だとしたって、みんなに伝えて、みんなで逃げようよ!
そんな……、見捨てるようなこと……、できないよ……。」

京子ちゃんがスッと手を上げ私を制する。

「まってあかり。私がどこの国からその情報を手に入れたのかをまだ話していないよ。」

「……っ!まさか、京子、そんな……。」

ようやく平静を取り戻した結衣ちゃんが、またしても絶句する。

「さすが結衣、勘がいいね。おそらくご名答だよ。」

京子ちゃんがそういうが私にはさっぱり分からない。

「結衣ちゃん、どういうこと?」

「あぁ、おそらく京子が手に入れた情報の入手先って言うのが、この大日帝国なんだ。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:07:13.37 ID:7ddG/jUfo<>
「え、え?それって、それって。」

「うん、私たちは見捨てられた。この町に入ってくる情報もおそらく偽者。もう、国も後がないんだろうな。」

すると、ついにちなつちゃんが泣き崩れてしまった。

「そ、そんなぁ……、わたし、わたしたちは……。」

「いや……、嘘よ、こんな、こんなのってない……、あんまりだよ……。」

すると、京子ちゃんがすかさずちなつちゃんを後ろから抱き締める。
そして、優しく、極めて優しく彼女の頭を撫でる。

しばらくすると、ちなつちゃんは泣きつかれて眠ってしまった。
いや、おそらくこの現実に目を向けて居たくないのだろう。
わたしだって結衣ちゃんがいなければ今にも発狂してしまいそうなほどなのに、
ましてやただでさえ感情の振れ幅が大きい彼女だ、
むしろ、今の今までずっと耐えていたことのほうがおかしい。
きっと、ものすごく頑張ったのだろう。
その寝顔は彼女の心情に反してとても穏やかのものだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:07:42.30 ID:7ddG/jUfo<>
「さぁ、あまり時間がない。二人ともよく聞いて。」

京子ちゃんが仕切り直しとばかりに、真剣なまなざしをこちらに向けるので、
私たちはそれに呼応する。

「そう……、さっき結衣が話したとおり、ここ一体は恐らく、囮、いや、時間稼ぎに使われるだろうな。」

「それも、もはや意味を成さないだろうけど……。」

ぼそりと付け加える京子ちゃんの顔は精悍なものだった。

「だから、おそらく彼らはこの町がそれとして機能しないこと、つまり事実が伝わり、
人民が避難し、結果、敵国に認識されないようになることを許さないだろうね。」

「幸い私たちの近しい友人たちは、大方疎開をしていったみたいだし、
親や兄弟には明日、ここを出るようにだけ言っておこう。大勢だと捕まってしまうから。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:08:09.52 ID:7ddG/jUfo<>
「状況は伝えちゃいけないよ。もしかしたらの可能性も否めないからね。」

ここまで話し終えると、京子ちゃんは一度呼吸を整えた。

「さぁ、好き勝手喋っちゃったけれど、これは強制じゃないから。
私は家族よりみんなの方が大事だと思う。」

「だけど、そうじゃない人もいるかもしれない。」

「だから選んでよ。私と来るか、家族と死ぬか。一つに二つだよ。」

「もし……、もし私と一緒に来てくれるのなら、今夜深夜の0時から15分の間まで、xxxの前で待つから。」

「さぁ、ゆっくりと選んで。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しとしとと雨の降る中を、一人とぼとぼと歩く。
衣服が肌にべったりと張り付き、不愉快だ。それに寒い。

気付けば、とあるマンションの前に立っていた。
結衣ちゃんの家だ。私の家はもう壊れてしまって雨は凌げない。
思えば、最後の数ヶ月はここで過ごすことのほうが多かったっけ。
降り注ぐ雨がしょっぱい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:08:41.90 ID:7ddG/jUfo<>
エントランスを抜け階段を上る。
所々に倒壊の兆しが見え、気味が悪い。
いや、この爆撃を生き残った数少ない一つなのだから、むしろ縁起がいいものなのかもしれないが、
やはり、耐え切れず、すこし早足気味に駆け上る。

「ただいまー……。」

歪んでしまった扉が、不快な音を立てて、私を歓迎する。
なんだか、一人生き残った私に対する結衣ちゃんの怨み言に聞こえなくもない。
いや、違う、結衣ちゃんはそんな人間じゃないもの。
京子ちゃんやちなつちゃんだってきっとそうだ。

意を決して、ついに足を踏み入れる。
が、そんな私の出鼻を挫くような惨状が目の前に展開する。
それは、ついこの前までの面影など欠片も残さず、ただただ、繰り広げられた惨劇の事実のみを痛感させられるのみだった。
家具は倒れ、衣類は散乱し、壁はヒビ入り、私たちの写真はクシャクシャになってしまっている。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:09:07.84 ID:7ddG/jUfo<>
「あはは……、もう、いいや。」

「疲れたよ、結衣ちゃん。みんな。」

「もう、良いってことだよね。褒めてよ結衣ちゃん、あかりがんばったもん。」

「ほんとうに、ほん、とう……、に。うぅっ、ううあぁ……、あぁ、うぁあああああ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


もう、どれくらい走ったのだろうか。
ペダルを漕ぐ足の筋は悲鳴を上げて限界を訴える。
だが、走る。走り続けなければならない。

無言で、ただ無言で瞬間ごとの永遠に打ち克ちただ漕ぎ続ける。
京子ちゃんの算段ではこうだ。
まずは自転車で三つ隣の町へ行く、するとそこは、軍の物資を運ぶ貨物列車が運行しているらしいので、
なんとかそれに乗り込み、十分に離れたところで飛び降り、そこでやり過ごす。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:09:33.87 ID:7ddG/jUfo<>
なんとも頼りない計画だが、今はこれに頼る他はない。
もし失敗したとしても、どうせ死ぬのならどの道一緒なのだから。

程なくして、京子ちゃんが唐突に声を上げる。(といっても声量は控えめだが。)

「みんな、見えたよ。基地の明かりだ!」

「やっと、やっとついたんだな……!」

「もう、あか、り……、くたくただ、よぉ……。」

「わ、わたしも、です……。」

「さぁ、町も近いし今日はここら辺で野宿だ!」

そういうや否や京子ちゃんはイソイソとその準備を始める。
みなもその後に続く。

リュックサックの中身を確認する。
寝袋、懐中電灯、ラジオ、あとは詰め込めるだけの保存食を持ってきた。
みんなも大体同じような内容だ。

全身の筋が痛む。体が休息を求めているのだろう。
パサパサな保存食を唾液で飲み下すと、このまどろみが覚めやらぬ内に就寝の準備を終え、
寝袋に潜り込む。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:10:00.32 ID:7ddG/jUfo<>
言葉を発する気力も残っておらず、ただ、それぞれ就寝の挨拶を交わすと、
崩れるように、眠りに落ちた。

その晩、奇妙な夢を見た。
とても奇怪で気味の悪い、黒よりも黒く、それでいて、どの色にも当てはまらないようなイメージが頭に渦巻き、
それは私に生理的嫌悪感をもたらした。

まぁ、よくある話なのかもしれない。
極限状態に陥れば、焦りや不安や恐怖からくる浅眠と、それ自体によりもたらされる悪夢。
これ自体は、映画や小説にもありがちな話だ。
もっとも、自らの身に起こることなど予想だにしていなかったが、
それほど気にすることではないだろう。
と、私は、覚醒とともに、その記憶を振り払った。

皮肉にも天候は快晴。
事を起こすには少々部が悪いだろう。
京子ちゃんもそれを懸念しているようで、
朝起きたときからずっと、なにやら考え事をしている。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/03/04(日) 20:13:18.44 ID:7ddG/jUfo<> 今日は終わりです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本)<><>2012/03/04(日) 23:00:35.29 ID:5y2UHa+ao<> おつおつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/04/09(月) 20:11:32.86 ID:3CFg8yE20<> 続きは? <>