VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:00:06.95 ID:gXZb2BEDO<>オナスレですが、
よろしければ閲覧していってください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1337986806(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>カミシバイ the "d" runic
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:09:39.94 ID:gXZb2BEDO<> しわが目立つようになってきた女性は、自分の娘が手にする"物"を見て目を剥いた。
「!? どうしたの! "それ"!!」
娘は一瞬迷うように目を伏せると、簡潔に言った。
「教会の前に落ちてたの」
この母娘は教会のシスターだった。
しかしこんな事は、彼女達がシスターになってから始めてのことだった。
「落ちてたって……?」
街道にぽつんと建つ、このはぐれたような教会に誰が"赤ん坊"を捨てていくと言うのだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:13:25.53 ID:gXZb2BEDO<> 旅人の仕業か?
しかし、誰かが尋ねてきた様子は無かった。
母が断言できるのは、教会の前は足跡が残るほどの柔らかい土だったからだ。
丁寧に痕跡を消して行ったというのか?
「どうしよう……」
娘は不安になっているようだった。
母はその赤ん坊を見て少し悩み、しかし否と自分のある考えを否定して、ある決定をした。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:19:10.21 ID:gXZb2BEDO<> 時が立ち、母が老婆に、娘が母になった頃。
ざっく、とん。
ざっく、とん。
教会の裏で、土を耕す音がしていた。
「お前は畑を耕すのが上手になったねぇ」
少年になった赤ん坊は、クワを振る手を止め振り向く。
「……」
成長した少年は、無表情だった。赤ん坊の時からあまり泣かない子だった。
透き通るような赤い瞳が母をじっと見ていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:24:40.00 ID:gXZb2BEDO<> たったそれだけで、
「ああ……お腹が減ったのね」
子の言わんとしている事を母は理解できたから、無口はあまり問題では無かった。
「クワはそこに置いておきなさい、それで、手を洗ってくるのよ」
頷いた少年は、少し駆け足で水場に向かった。
昔から食事と寝る事が好きな子であった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:28:45.62 ID:gXZb2BEDO<> 「「「……」」」
神への祈りが済んでから、老婆と、母と、少年は質素な食事に手をつける。
赤ん坊の頃から続いたこの退屈な生活に、少年が苦を訴えた事は無い。
「お前はよくできた子だねぇ……」
その事に対して、よく老婆は少年を褒めていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:34:16.36 ID:gXZb2BEDO<> そして老婆が土になった頃……。
少年は青年に成長し、変わらず母と教会を続けていた。
血の繋がらない母と子は、血の繋がった親子の様に信頼しあっていた。
最近になると母の身を労り、青年は一人で畑にでていた。
それが禍したのだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:39:41.49 ID:gXZb2BEDO<> いつもの様に、日が暮れてから青年が教会へ戻る。
「……母さん?」
そこはもぬけの殻だった。
寝室、礼拝堂、台所……。母の姿はどこにもない。
あるのは散乱した家具、調度品、衣服。
「……」
青年は日が昇るまで母を待った。
そうして日が昇ってから、日が暮れるまで母を待ち。
また日が昇るまで母を待つ。
それを繰り返した。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:44:29.58 ID:gXZb2BEDO<> やがて青年は母が戻らない事を悟ると、教会を後にした。
これまでにも幾度と母が一人で町に出かけた事はある。
今回もきっとそれだ、急用ができて急いで出かけたに違いない。だから部屋が荒れていたのだ。
既に母が教会から消えて10日以上が経つ……
(きっと……何か忙しい用事なんだ)
だから自分の所に戻ってこれないに違いない。
探そう、探して……手伝ってあげよう。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/26(土) 08:47:56.43 ID:gXZb2BEDO<> 母の用事は分からないが、早く済ませて休ませてあげよう。
楽をさせてあげたい……、青年は感謝する母をいつでも気遣っていた。
町なら1日歩けばつくからと、青年は身の着のまま教会を飛び出した。
……… <>