◆XWbYHsHbTc<><>2012/06/09(土) 21:38:42.84 ID:x8r2QupA0<>−戦火の飛び火が世界中に広がり、もはや平和な場所もない世の中−

「散開だ!敵は数で攻めてくる!」

屈強な歴戦の指揮官が声を上げた。

「イエッサァーッ!」

それに返事をかえし次々とバラバラに散開する兵士達は、各々遮蔽物を見つけ、そこに身を隠す。
容赦なく.45口径の悪魔が兵士たちに降り注ぎ、何人かに被弾し、叫び、うめき声があがる。

「くそ・・・!航空支援はまだなのか、通信兵ィ!」

「まだです!HQが攻撃を受けていてしばらく持ちこたえろと!」

「チィッ!」

指揮官の心の中に少しづつ、諦めの感情が芽吹き始める。
もうだめだ。ここまでだ。・・・彼の頭に悪魔の囁きが過ぎる。

(どうすればいい・・・、この戦況を打開する・・・手段はないのか・・・!?)

「そう思いつめた顔をするな。勝利の女神も寄り付かなくなるぞ」

戦場に、凛とした女性の声。銃声の飛び交う戦場の中、その声ははっきりと聞こえた。

「お前・・・なんでここに!」

「お前たちを生きて本部に連れて帰るためだ。航空支援じゃなきゃ不満か?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1339245522(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>兵士「戦場の女神・・・」
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/09(土) 21:47:54.17 ID:x8r2QupA0<> 「ふむ、悪い状況だ」

「ああ、相手は俺たちより数が多く、手練ばかりだ、こいつらヒヨっ子どもには手に余る」

指揮官は汚れた赤いベレー帽をかぶり直し、滴る汗を手で拭う。

「なんとかなりそうだ。ありったけの手榴弾を持ってこい。兵士共に各4つ渡してやれ、あとあればで構わないからロケットランチャーを3つだ」

指揮官は度肝を抜いた。
頭脳戦で攻めるものかと思っていたが、なんとも単純明快。爆発物でねじ伏せるらしい。
こんなことをなぜ指揮官である自分が思いつかなかったのか。しかし後悔の念はない。
大口開けて笑いあげると、こういった。

「いいだろう、持ってこい!全部だッ!!」
<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/09(土) 22:01:41.19 ID:x8r2QupA0<> 「持ってきました!既に兵士には配布してあります!」

補給係の兵士が息を切らして手榴弾の詰まった箱をゴトリと置いた。
頼もしく黒く光る、広範囲に渡る死の爆発を巻き起こすものだ。

「よくやった、帰ったらキスの一つでもしてやろう」

冷静沈着な女性は軽く冗談をかますと、手榴弾のピンを抜いた。
それと同時に兵士が一斉に悪魔の蓋を開けるような、ピンを抜く音が立て続けに起こる。

「よぉぉーし!ぶん投げろォォォォ!」

指揮官がそう指示すると、一斉に兵士たちは手榴弾を投げる。
その瞬間銃声がやみ、一瞬の静寂。嵐のまえの静けさとは正にこのことだ。
すぐあとに敵兵たちの恐怖に塗りつぶされた絶叫。手榴弾が投げられたことに気づいたのだ。

「ジ・エンド」

女性がそうキザに決め込むと、爆風が吹き荒れた。
彼女が無造作に束ねた金髪の髪が爆風にゆれ、あいた胸元にぶら下げてあったドックタグが露になる。
"Mathilda"−マチルダ−。 通称"戦場の女神"。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/09(土) 23:52:08.56 ID:p7TrzK8Vo<> http://i.imgur.com/u0sNy.jpg
これが浮かんでしまった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(秋田県)<>sage<>2012/06/09(土) 23:59:38.24 ID:GG9PSfxLo<> アテナよおおおおお <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/06/10(日) 00:37:34.51 ID:dAGbUOTh0<> The BoSSか <> ◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 00:56:16.62 ID:CSOstgkI0<> 歓喜の声と、焦げ臭い臭いが立ち込める戦場の中で、マチルダの姿は異様な存在感があった。
戦場に女性がいること自体が、既に注目の的となっている理由のひとつである。
だが最も注目を集めるのは、21歳にして中佐というポジションに位置しているからだ。

「しかし、マチルダ中佐様が、わざわざこんなところに出向くとはなぁ」

「可愛い部下たちのためだ。命だって捨てる覚悟もある」

その上、この美麗な容姿、そしてカリスマ性だ。
ここにいる誰もが、彼女を慕い、彼女のために動く。

「とりあえず、生き残れたわけだ。本部に帰還する」

「いや、お前がいなきゃどうなってたことか・・・感謝するよ」

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 10:10:52.44 ID:CSOstgkI0<> 立て続けに起こる戦闘に、兵士たちは疲弊していた。
敵は波のような人数で来ることもあれば、一定の距離を保ち、じっとこちらを観察していることもある。
常時気が抜けぬ極限状態の中で、次々と兵士は戦闘に駆り出されていく。

「はぁ・・・」

まだ若い二等兵が度重なる戦闘の疲れかため息をひとつもらした。
装甲車の窓から見える曇天の灰色の空がたまらなく陰鬱な気分にさせ、ガタガタと容赦なく揺れる自分の乗った装甲車が軽い吐き気を誘う。
今回は生きて変えることができたが、次はもしかしたら死ぬかもしれない。
死という根本的な恐怖はまだ経験の浅い二等兵の心の内側に根を張っていた。

「そう暗い顔をするな、二等兵。本部まで帰ったら酒でも飲んでゆっくり休め」

マチルダが新兵特有の憂鬱を見ていて、懐かしいと思ったのか二等兵に声をかけた。

「中佐・・・でも自分、不安なんです」

「いつ死ぬかわからないことがか?・・・・・・以前私もそうだったよ」

「・・・」

「あれは今日みたいに、どんよりとした曇り空が空を覆い尽くしていた日・・・・・・、私がまだやっと一等兵になった頃だった」


<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 10:20:52.93 ID:CSOstgkI0<> 「当時私の部隊は負け無しの最強部隊と謳われた"チャーリー・ホース"の一員だった」

「え、あの部隊ですか・・・?確かかなり前に全滅したと聞いたことが・・・」

「ああ、全滅したよ。敵軍の爆撃でな。だが私はこうして生き延びることができた。・・・なぜだと思う」

二等兵はしばらく考えたあと、首を振った。

「自分にはさっぱりです。・・・もし自分がそんな状況下に居たら何もできません」

「私も、何も出来なかったんだ。仲間を安全な地下に連れて行くこともできずにただ一人だけ逃げ延びたんだ。」

「・・・」

「私の抱えていた、ライフル一丁だけが味方のように思えた、肉親とも思ったかもしれない」

「そして、敵の爆撃が終わると、辺り一面には死体一つすら見当たらなかった。そんな中、私は無我夢中で逃げた」

「途中に何があったかなんて関係なかった。とにかくがむしゃらにライフルを抱えて逃げた」


<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 10:31:33.99 ID:CSOstgkI0<> 「まあ、経験を積むといい。・・・長話をしてすまなかったな、二等兵」

「いえ・・・・・・」

なぜだろうか、二等兵の心に巣食っていた死の恐怖はいつの間にか不思議と消えていた。
装甲車の吐き気を催す激しい揺れすら気にならないほど、何故かスッキリとしていた。

「さ、もうすぐ愛しい本部だぞ!マチルダも今日は"飲み"に加わるらしいからな!」

指揮官がニカリと笑いながら狭い装甲車の中でそう言った。
"飲み"というのは戦場から帰ってきた兵士たちが気晴らしにやるささやかな祭りみたいなもので、マチルダはごくまれにしか"飲み"に加わることはない。

「私の方から上に少しばかり休みを取ってもらうよう頼んでおく。しばらくは好きに過ごすといい」

一斉に賑やかになる窮屈な装甲車は、さらにスピードを上げて本部に向かう。

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 10:46:34.73 ID:CSOstgkI0<> 《本部に着いたぞ、みんな降りてくれぃ》

「よーし、俺たちの故郷だ!今日も手酷くやられたなぁ!いつ見てもボロボロだ」

「ああ、どこかのバカが滑走路に迫撃砲を撃ってな。航空支援がこなかったのはこのせいだ」

マチルダはそう言うと迷彩柄のジャケットを脱ぎ捨て、黒のタンクトップ姿になった。
女性の身だしなみをあまり心得ていないマチルダは、ブラジャーすらつけていないのか胸の部分の小さな隆起をあまり気にしていない様子だ。

「・・・」

ゴクリとつばを呑む新兵たち。それもそのはずだ。

白く透き通るような肌に、魅惑的なスタイル。
適度にある筋肉がたくましさを感じさせる一方で、一種の美しさを感じさせる。

「ふう、暑いな。・・・・・・"飲み"には参加するが、あまりハメを外しすぎるんじゃないぞ」

「イエス・マム!!」

新兵たちのある意味いきり立った返事に満足したのか、マチルダは微笑み、後ろに束ねていた髪をほどく。
ふわりと揺れる金髪のロングヘアーから、軽く甘い香りが、新兵たちの鼻をくすぐるようにして漂った。

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 12:58:51.26 ID:CSOstgkI0<> 『ガァーッハッハッハ!!』

"飲み"の会場である滑走路の脇に建てられた小さなテントでは、案の定バカ騒ぎが繰り広げられている。

「そこでだな、私は上の人間に言った。"私は貴方の秘書的な立場にありますが、個人的な欲求までは解消できない"とな」

マチルダは身振り手振りでそれを表現し、兵士たちを笑いの渦に誘った。

「ヒャーッハッハ!痛快だなァ!」

ひときわ声の大きい指揮官が、ジョッキに入ったビールを一口で飲み干した。

「ヒック、おい、二等兵・・・酒を持って来い。ありったけだ!」

だいぶ酔いが回ったのか、マチルダは二等兵にそう言った。

「え、あ、はい!」

言われたままに、二等兵は酒のある倉庫まで走っていく。
それを見たマチルダは、どことなく懐かしげな表情を見せて笑った。

「フフッ、・・・やっぱり新兵は可愛いな。自分にもこんな時期があったと思うと、面白くてしょうがない」

「ああ、あん時のお前は・・・、なんつーか、同期だからわかるが、今とは性格が少しちがってたな」

指揮官が頭を無造作にかきながら言った。

「ふん、やっぱりお前は気に食わん・・・・・・、よし、気晴らしに"野球拳"でもどうだ。もちろん、脱ぐのは私だ」

それを聞いたとたん、周りの兵士たちはそれをはやし立てた。

「だが、ジャンケンではない。格闘の模擬戦だ。脱いで欲しかったら実力で脱がせてみろ」

「ほう、言ったな!よし、やってやろうじゃねえか」

「お前が負けたら、・・・ふふふ、そうだな・・・考えておこう」

こうして、兵士数十人という観客のもとで、"野球拳"が始まった。










マチルダが勝つか負けるか安価

>>14 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/06/10(日) 14:14:16.88 ID:DLzlRs1Go<> 勝つ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/06/10(日) 14:50:40.79 ID:R2O6b2+Ro<> 勝つ <> ◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 16:58:32.14 ID:CSOstgkI0<> 亀ですが、>>6さんが言ったザ・ボスは全然関係ありません。




「うおりゃっ!!」

気合の入った一声と共に、全力でマチルダに向かう指揮官。
訓練、実戦で鍛えられた足腰から繰り出される瞬発力は、正にチーターである。

「ふっ!」

その一直線な攻撃を見て、マチルダは心の中で笑止とあざ笑う。
だが、いくら直線的な攻撃といえど、彼の鍛え抜かれた瞬発力にはあまり関係のないことだ。
酒が回っていたのか、マチルダは足元が少しぐらついて、回避が遅れた。

・・・ように見せた。

「取った!」

実際彼の拳はマチルダを捉えていた。
だが、当たるギリギリの間際でそれを手で軽くさばく。
マチルダによって受け流された指揮官の拳は虚空の中を、ブオンと空振りさせた。

「甘いな、私を脱がすには、まだまだだ」

そのまま受け流されたあとにできる大きな隙をついて、マチルダは指揮官を地面に押し倒した。

「クソ!・・・ぐああああ!ギブギブギブ!」

「ふん、もうギブアップか。・・・だらしない」

懸命に床を叩こうと、ギブアップの意思を示そうとする指揮官の腕をマチルダはそっと解放した。

「今回も私の勝ちだな、さて・・・何をしてもらおうか」

「・・・腕が痛む、あまり酷なものはやめてくれよ!」

「ああ、そうだ。・・・お前は東方に伝わるキタキタ踊りというのを知っているか?」

「キタキタ踊り?!・・・あ、あれだけはできん!やめてくれ!」

「おいおい・・・・・・、私は"勝った"んだぞ。これではアンフェアだ」

「くっ・・・わかったよ、わかった!・・・絶対笑うんじゃないぞ!」 <>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 17:10:05.21 ID:CSOstgkI0<> 独特な音楽が、古いコンポから響き渡る。
指揮官の格好といえば、上半身裸で、腰みのをまとっているだけだ。

「ほら、セリフはどうした・・・・・・ククッ」

「う、・・・・・・き、"キタキタ踊りぃ〜!行きますぞぉぉ〜〜〜!"」

それと同時に始まる奇怪なダンス。腕をカクりと曲げて、そのまま腰を振った。
笑うな、と釘を刺しておいたにも関わらず、周囲からは笑い声が絶えない。

「アハハハ!・・・どうだ二等兵、上官っていうのも辛いものだ。見ての通りな!あはは!」

「ちょ、中佐・・・!」

もはや酒に酔いつぶれたタチの悪い酔っ払いとなったマチルダは、二等兵を抱き寄せて、爽快に笑いあげた。
周りの兵士たちは、笑いながらも、揃って手を叩いて盛り上がっていた。

「くっそ〜・・・!お前ら笑うなと・・・」

「まあまあ!それは水に流してくださいよ!」

彼を取り囲んでいた兵士の一人がそう言うと、指揮官を除く全員が大きく笑った。
無論マチルダも、二等兵も。

結局ハメを外してしまった"飲み"は深夜まで続くことになった。





注意を書き忘れましたが、エロとかありますんで注意を <>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 17:36:37.57 ID:CSOstgkI0<> 「ふぅ・・・・・・っ」

"飲み"が終わった深夜、二等兵はそれぞれの個室となっている設営されたテントに戻ると、大きなため息をついた。
だが、これからの未来を悲観してはいたため息ではなく、とても充実としていて、体の中が飽和状態である、そんなため息だった。

(中佐・・・・・・あんな綺麗な人が、俺にここまでしてくれるのはなんでだろう)

(酒のせいかもしれない、だけど、そうじゃない気がする)

(ああ・・・中佐・・・中佐・・・)

二等兵は無意識のうちに自慰をしていた。
思うのは中佐、マチルダである。

(くっ・・・・・・)

もうすぐ絶頂を迎える、そんな時だった。
外から聞こえる足音に彼は気づかずにいる。ただ、思いながら動かすだけであった。

「二等兵、入るぞ」

「えっ・・・」

その声で彼は正気に戻ったが、もう遅かった。
声の正体はマチルダであり、ちょうどテントの入口を開けたところだった。

「・・・な」

「ちゅ、中佐・・・!うわっ!」

絶頂。止まらぬことを知らない、生命の活力があふれ出る。

「んっ・・・・・・二等・・・・・・兵」

「す、すみません!つい!・・・クソ、ティッシュどこだったかな・・・・・・!」

おもむろにティッシュを探し始める二等兵を尻目に、マチルダは少し笑った。

「案ずるな、二等兵。私なら大丈夫だ」

「で、でも、汚れてしまってます!」

「飲むから問題無い」

そう言うと、マチルダは顔についた白濁液を手で拭い、綺麗に舐めとる。
時折漏らす彼女の声が、二等兵をたまらなく恥ずかしい思いにさせた。

「んっ・・・・・・、全く、ずいぶん出すんだな、口の中が臭くてたまらん」

「す、すみません」

「まあ、今回は許してやる。私もノックせずに入ったからな。それは謝罪しよう」

「だが、このままでは収まりがつかんだろう。とくにお前、二等兵はな」

マチルダはそう言うと、二等兵の下腹部に視線をうつす。
そこには相変わらず自己主張をする、生命の象徴がある。

「い、いや、あの」

「この私が、シてやるんだ。・・・任せておけ、初めてだが、だいたいやることはわかってるつもりだ」

そう言うとマチルダは二等兵の前にひざ立ちの姿勢になり、下腹部のモノにゆっくりと顔を近づけた。
高鳴る胸の鼓動が、二等兵、マチルダとも抑えられない。

「う、中佐・・・っ」

「ふっ、案ずるな、任せておけと言っているだろう?・・・んムッ」

「う、くぁッ」

二等兵のモノを容赦なく、マチルダは咥えた。
派手な水音をたて、顔を前後に動かす。

「ん・・・・・・ちゅ・・・・・・、んは・・・・・・、二等兵、どうだ。私にだってこれくらいできる」

「さ、最高です、中佐」

「ふふっ、可愛いな、お前は・・・・・・んむっ・・・・・・チュるっ」

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 18:54:52.62 ID:CSOstgkI0<> 「・・・くっ!」

二等兵は快感の波に、身震いする。
自分のモノを暖かく包み込まれ、舌でねぶられる。立て続けに起こる快感に、絶頂はすぐそこまで来ていた。

ちゅっ、ちゅる、ジュぶっ。最後の止めと言わんばかりに、マチルダは激しく動いた。

「ぐぅはっ・・・!」

二等兵の情けない声と同時に、二等兵は絶頂を迎えた。
マチルダの口内に容赦なく白濁液の波が襲いかかる。

「んぐぅっ・・・ん・・・んくっ」

短い喘ぎ。マチルダは無意識に白濁液を嚥下した。

「ん・・・・・・んむ・・・・・・んはァ・・・」

彼のモノがマチルダの口から吐き出すようにして出された。
少量の白濁液と、唾液が糸を引き、彼女の妖艶な唇から、熱いため息が漏れる。

「全く、出しすぎだ。・・・・・・口が臭い上に、体中にかけるとは・・・」

「あの、よかったら・・・・・・シャワー浴びませんか?」

二等兵は照れくさそうに言った。

「・・・お前と一緒にか?・・・・・・とんだ部下を持ったものだな。私も・・・」

マチルダは呆れながらも、快く承諾してくれた。・・・のだろう。
彼女の浮かべる微笑みは、何故かいつも浮かべる笑みとはちがっていて、とても満足げな、そんな表情だったから。

「ほら、何をボーっとしている。行くぞ?」

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 19:51:34.46 ID:CSOstgkI0<> 深夜のシャワールームには、誰もいなかった。
心もとない電球の弱い光一つだけが、個室のシャワールームを照らしていた。

「せ、狭いぞ。二等兵、少し離れろ・・・あと、私の尻にお前のを・・・・・・当てるんじゃない」

「す、すみません、この個室、ちょっと狭くて・・・」

キュッ、と言う音と同時に、シャワーから温水があふれ出る。
ちょうど良い温度の温水が、マチルダと二等兵に降り注ぐ。

「二等兵、そこのシャンプーを・・・」

「はい、どうぞ・・・・・・、失礼かもしれませんけど、洗いましょうか?」

「・・・そんなことぐらい私にもできる・・・。が、今回は甘えておこう」

いい香りのするシャンプーは、戦時下においてとても貴重品だった。
そんなシャンプーを二等兵は恐る恐る手に取ると、マチルダのサラサラとした金髪を洗い始めた。

「痒いところはありませんか?中佐。・・・一度言ってみたかったんですよね、こういう台詞って」

「ふん、痒いところはない。適当にやってくれ」

そっけなく返された返事だが、二等兵はたまらなく嬉しかった。
二等兵が生まれた時、世は既に戦争前の独特な緊張状態にあった。
自国を蝕む壊滅的な不況は、若者たちから未来を、幸せを奪い去った。
その中の一人である二等兵は、戦争が始まる前までは、おとなしい少年で、将来は美容院で働こうと必死で勉強をしていた、未来を奪われた若者の一人だ。

「その、美容師っていうのは、二等兵の夢なのだろう?・・・どういう仕事なのだ、それは」

「ええと、今やってるようにお客の望むヘアスタイルにしたり、髪を洗ってあげたり、でしょうか」

「裸でか?」

「ちがいますよ・・・。はい、終わりました。どうでした?」

「なかなかやるな。・・・気持ちよかった」
<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 20:10:15.45 ID:CSOstgkI0<> 「さて、どうでしょう。お背中でも流しましょうか」

二等兵は少し照れながら言った。
マチルダは、正直シャワールームをのぼせる前に出ようと思っていた。
しかし、誰かに体を洗われるのも悪くはないものだろうと思い、その願いを承諾することにした。

「それじゃあ、それに甘えるとしよう。頼む」

「はい・・・じゃあ行きますよ」

ボディソープを手に取り、マチルダの柔らかな身体にボディソープを塗りたくるようにして洗ってゆく。
肩、腕、胸、腹部、と優しく、丁寧に洗っていく。

「ん・・・ぁ・・・、なんで胸だけ重点的に洗うんだ・・・」

「いえ、そんなことはないですよ・・・!すいません!」

「は・・・・・・ぁひっ・・・」

二等兵の手はマチルダの下腹部へ到達し、ゆっくりと洗い上げる。
二等兵がやさしく撫でる度に、マチルダはぴくりと体を震わせ、小さく喘ぐ。

「ぁ・・・くぅ・・・も、もういい加減に・・・」

「はっ?!・・・すみません、つい・・・欲望に負けてしまって」

自分の心境を素直にさらけ出した二等兵に感心したのか、マチルダは優しく微笑んだ。
もはや二人のあいだに壁などないのかもしれない。

「そんなに触りたいのなら・・・、別に構わん」

「えっ・・・」

「いいと言ってるんだ・・・、触りたければいくらでも触るがいい」

(そう言われると、触りづらいんだよな・・・・・・)

それでも丁寧に下腹部や胸をそっと撫でていく自分は、男なんだなあと何故か感心してしまった。

「アっ・・・二等兵・・・ィ、くゥ・・・っ」

二等兵は、マチルダの体を洗いながら、つぶやいた。

「中佐・・・最後に、"中"も洗いましょうか?」

「な、中?・・・へ、変態め。いい加減にしろ!・・・だが・・・」

「わ、悪くはないな・・・、こ、こんな私で良ければ、いつでもいい」



<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 21:37:12.34 ID:CSOstgkI0<> 「冗談です・・・って言ったら怒りますかね」

「・・・なんだと?」

「・・・やっぱり怒りますよね。・・・きっと、僕にはまだ早いですよ・・・こういうのは」

「・・・」

「また機会があれば、中佐に頼むかもしれません。・・・それまでは絶対に死にません」

マチルダは顔をうつむかせ、少し間をおいてから言った。

「二等兵・・・、一つ、ワガママを言わせてもらえないか」

二等兵は少しドキリとした。
一体どんなワガママなんだろうか。・・・期待もあれば少しばかりの不安もある。

「・・・なんでもいってください」

マチルダは深く息を吸いこんで、深呼吸した。
真っ裸の男女二人が、こうして向き合うと、意識しなくても恥ずかしさというものがこみ上げてくる。

「一緒に、寝たいんだ」

二等兵は度肝を抜いた。
怒って、明日の休暇を返上してトレーニングだ。なんていうのかと思っていた。
それが、こんなにささやかなワガママだったとは。・・・二等兵はどうも複雑な心境になった。

今目の前にいるのは、中佐ではない。
マチルダ、という少し世間離れした女性だ。

「勿論です。中佐殿」

そう言って、ニコリと笑い敬礼の真似事をしてみる。
あまり似合ってないのか、マチルダはくすくすと笑い出した。

「ふふふ・・・ははは・・・何をやってるんだ、私たちは・・・」

「中佐・・・好きです」

「私もだ。二等兵、・・・愛しているよ」

夜も深い、薄暗い個室のシャワールームで、二人は愛を確かめるように抱き合った。
二等兵が少し力を込めると、マチルダもそれに応えて、力を込める。

「私はな、二等兵・・・。今までこんな気持ちになったことがなかった」

「今日の私はなんだか変だ。・・・自分の過去をペラペラと喋ったり、普段は参加しない"飲み"にも参加したり」

「中佐、もういいです」

「もう、何も言わなくてもいいです」

「・・・ふん、生意気な二等兵だ・・・」 <>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 21:57:46.29 ID:CSOstgkI0<> 「さ、少し狭いですけど・・・」

「いや、構わない・・・邪魔するぞ」

場所は変わり、二等兵のテント。
あまり豪華とは言えないが、前線にいた時の簡易宿泊テントよりはマシな作りになっている。
簡易ベッドがテントの隅に置いてあり、二等兵はそれを引っ張り出し、テントの真ん中に敷いた。

「・・・このテント、好きなんですよ。俺」

ふと二等兵がつぶやいた。

「ほう、どうしてだ?」

「とりあえず、横になってみてください」

言われるがまま、マチルダはその体をベッドにゆだねた。
二等兵はそそくさと何かを準備している。

「上を見ててください、いいですか?・・・はい」

二等兵がテントに備えられた紐を引っ張ると、テントの屋根の部分がクルクルと回って開かれた。

「おお・・・圧巻だな」

解放されたテントの屋根からは、満天の星空、柔らかな光を放つ月が、見て取れた。
まるで自分が世界の中心で寝ているような、そんな壮大さが全身を駆け巡った。

「ちょっとテントに細工したんです、いつも寝るときはこうやって寝てるんですよ。雨の日以外は」

「なかなかいい、二等兵も横になれ、一緒に見よう」

簡易ベッドは二人だと少し窮屈ではあるが、そんなことは気にもならないことだった。
二人で見る、目前に広がる星空はいつも見る星空と違い、暖かい。

「お、ながれ星ですよ」

遠くに見えたのは、星の小さな直線の奔流だった。

「ながれ星に何かお願いしましたか?」

「いいや、なにもしてない。・・・今の私にはお前がいる、だから満足だ」

「・・・俺は、戦争が早く終わるように、毎日お願いしてるんです」

二等兵はそう呟くと、マチルダの手を握る。

「中佐、俺は早く戦争が終わって欲しいんです。・・・こんな馬鹿げたこと、もうしなくていいはずなんです」

「・・・私もそう思う、早くこの戦いを終わらせるために、戦おう」

戦いを終わらせるために戦うとは、またおかしな話だ。とマチルダは心の中で自嘲する。
戦争が勝ちで終わろうが、負けで終わろうが、平和は早く取り戻すべきだ。
兵士たちの疲労はもうすでにピークに達している。
マチルダが上の人間にわざわざ休みを要求したのは、このことを心配してのことだった。

「・・・二等兵」

「二等兵?・・・・・・寝てしまったか、軟弱者め」

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 22:03:39.26 ID:CSOstgkI0<> 「聞いていないかもしれないが、聞いてくれ、二等兵」

「私は、今まで人の死を何度も見てきた」

「こうやって、特定の人と付き合いを持つと、そいつが死んだ時に得る悲しみは大きい」

「だから私は、今までこういうような関係を持つことは避けてきた」

「だが、二等兵。人は愛し合わなければ、生きていけないんだろうな」

「私は夜な夜な、夢を見た。・・・平和な世界で、家庭を持つ夢だ」

「・・・だからなんだというのだろうな・・・。今日の私は本当にどうかしてる・・・独り言をこんなにもしゃべるとは」

「・・・そんなことないですよ、立派な夢じゃないですか」

どうやら二等兵はまだ起きていたらしい。
それを知ったマチルダは、たまらなく恥ずかしくなった。

「起きているなら起きていると言え。全く・・・最低な奴だ」

<>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/10(日) 22:09:13.47 ID:CSOstgkI0<> 夜が明け、朝日がテントにさしこむ。
二等兵は昨日の精力的な疲れからか、普段起きる時間は起きる時間だというのに、まだ眠っていた。

「こら、起きろ二等兵」

「・・・」

「ふん、しょうがない奴だ。全く」

マチルダはベッドにこしかけると、二等兵の寝顔をじっくりと眺めた。
だらしなく開いた口からは、ヨダレがたれており、それでいて安らかな顔をしている。あまりよくわからない顔だ。



(・・・意外と可愛い寝顔だ、どう起こそうか)






起こし方安価

>>25 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/06/10(日) 23:44:03.96 ID:DLzlRs1Go<> おでこにキス <> ◆g8RyI57iZo<><>2012/06/11(月) 00:24:10.07 ID:lpWMN/dW0<> なんか文章がおかしいですねえ・・・。たまげたなあ。


>>25


(どうしたらいいのだろう。どうもこういうことをするのはあまり気が引けるな)

(まあ、少しぐらい、構わないだろう)

自分の中で勝手にそう結論をつけると、二等兵の寝顔に、ゆっくりと顔を近づけた。

「ん・・・・・・」

彼女の唇が、二等兵の額に触れた。
微かにくちづけの音が響いた。それはこの忙しなく動く世界の中では些細なことだった。

「・・・おはようございます」

「ああ、おはよう。やっと起きたな」

「何をされるつもりだったんですか?俺の上に馬乗りになって」

「いや、なにも」

マチルダはそっけなく答えると、二等兵の上からどいた。
二等兵はまだあまり意識がハッキリとはしていないようで、半分目をつむっている状態でフラフラと身を起こしていた。

「戦場の前線でもこんなふうに寝ぼけていたのか?ほら、しゃきっとしろ」

「・・・はい」

「今日は休暇だ、どれ、私と一緒に朝食でもどうだ」

「・・・ご一緒できるならありがたくさせていただきますよ、中佐」

二等兵はまだ眠たい体に鞭打って立ち上がった。
それから自分のデスクの上に置いてあった水をグイと飲み干す。
少し意識が鮮明になり、昨日のことに少し思いをはせた。

(あの時、中佐に見つかってから何故かこんな関係になってしまった。)

(俺自身、嬉しいわけだが・・・果たしていいのか。こんなことで)

「ほら、早く行くぞ」

物思いにふけていたせいか、二等兵は呼ばれていたことに気づけなかった。


マチルダに強引に手を引っ張られ、二等兵は食堂に連れて行かれた。
ちょうど朝の時間帯ということもあり、朝食をとる兵士や、オペレーターなどが席に座り、他愛のない話をしているようだ。
いつもの二等兵なら早めの朝食を済ませ、テントでのんびりと空を観察している時間帯だ。

「・・・おい、中佐が二等兵連れてるぞ・・・」

「ん?・・・本当だ。ずいぶんと仲良さげだな。中佐も楽しそうだ」

「マジかよ、こりゃあ付き合ってんな・・・・・・」

二等兵は何故か羨望のまなざしで見られていることに愉悦を覚えた。
中佐といえば、いわゆる高翌嶺の花のような存在だ。
昨日のことがなければ、自分は見向きすらされなかったろうし、あんな出来事が起こりえもしなかった。
今だけは神という存在を信じていいのかもしれない。無神論者の彼は好都合にもそう思えた。

「ほら、君のだ二等兵」

「あ、ありがとうございます」

マチルダから質素な食事が渡された。
ポテトサラダにパンといった、ありきたりな食事だ。

「軍のお偉方は、毎朝ステーキを食べるらしい」

「そうなんですか、そりゃあ、あんなふうに太ってもしょうがないですね」

「違いない、ふふっ」 <>
◆g8RyI57iZo<><>2012/06/11(月) 00:38:02.00 ID:lpWMN/dW0<> 戦時下の世の中では、当然のことながら、物資が足りなくなる。
その上、戦争の原因は不況から来ているので、なおさらである。
そんな中、軍の幹部のみがありつける高級な食事というのが、兵士の間で密かな噂になっていた。
どうやらそれは本当のようで、マチルダが実際に見たという。
これを軍に広めれば、指揮力は大きく下がり、腑抜けの軍となってしまうだろう。

「君はいつも何をして過ごすんだ?」

マチルダが不意に疑問を投げかけてきた。

「ええっと・・・特になにもしませんね。暇になったら空を見上げてるか、ラジオ聴くか・・・ぐらいでしょうか」

「なんて退屈な奴だ、もっと趣味はないのか?」

マチルダは呆れたようにため息をもらし、金髪の髪をかきあげた。

「ええ・・・趣味は・・・あまりないんです」

「いいか、趣味というのはとても大事なものだ。戦場で溜まったストレスを発散するのに趣味は効果的だ」

そう言われて、二等兵はしばらく考えた。
確かにここ最近趣味にはあまりうちこめてなかったし、何よりうちこむものすらない。
そして、ある結論にたどり着いた。

「・・・趣味ですか・・・あ、ひとつありましたよ」

「ほう、なんだ、聞かせてみろ。私にも手伝えることだったら・・・」

「中佐とのイチャイチャです」

「・・・それは本気で言っているのか?二等兵」

「はい、勿論です」

「・・・こほん。まあ、手伝ってやれないこともないがな」

二人は静かに笑いあった。


『緊急連絡!敵軍が本部に進行中、チームアルファからデルタまでは速やかに迎撃に当たれ!』

突然の緊急警報が鳴り響き、どやどやと辺りは騒がしくなった。
いそいで装備を整えている者や、通信機でどこかと連絡を取っている者もいる。

「敵軍か、私も同行しよう」

「え、中佐・・・!?」

「私とイチャイチャしたかったら、生き延びることだ二等兵」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/06/11(月) 00:46:16.93 ID:pEabWFV0o<> メール欄にsaga入れよう
sageじゃなくてsagaな <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/11(月) 06:54:51.12 ID:lpWMN/dW0<> sagaですか。了解です。

「ほら、とっとと準備しないか」

二等兵はマチルダと共に装備を整え、いつでも出撃できるようにしていた。
肩に突撃銃をかけ、腰には手榴弾数個がぶら下がっている。
カーキで統一された戦闘用の防弾ベストには、弾倉をいつでも取り出せる着脱式のポーチが装備されている。

「ふん、なかなか様になってるぞ」

「一応、俺も兵士なので」

「今回の戦い、絶対生き延びろ。絶対だ」

マチルダはそう言うと、二等兵を強引に引き寄せ、熱烈な口づけを交わした。
舌と舌を絡ませ、時折漏れる熱い声が、警報にかき消されてゆく。

「んむ・・・ちゅっ・・・・・・は・・・・・・キスまでしてやったんだ、何度も言うが、生きて帰ってこい」

「・・・必ず、ここに帰ってきます。中佐!」

二等兵はそう言い残すと、敬礼をし、自分が割り当てられている戦場へ向かった。
自分の中でぐるぐると渦巻く、生き残るという言葉。
今なら何でも出来る気がする。例え銃弾に倒れようが、何度でも甦れる気がする。
体全体が軽く力んでいる感じがした。あふれ出ん力を、敵軍にぶつけてやるため、二等兵は戦場へ駆けてゆく。

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/11(月) 07:11:57.58 ID:lpWMN/dW0<> マチルダは二等兵とは違う防衛前線に到着した。
防衛の前線についてみれば、怒号と共に銃弾があちこちに飛び交い、時折爆発音を轟かせる手榴弾が投げたり、投げられたりしている。

「死者の数は、どれくらいだ?」

「中佐!今のところ3名です。まだまだいけます!」

「わかった、援護させてもらおう」

マチルダはそう言うと、敵軍の方へ踵がえし、遮蔽物に身を隠した。
何段かにつまれた土のうにふせるような状態で身を隠し、相手の様子を伺う。
どうやらこちらと戦力はほぼ同等だ。味方が数十人に対し向こうも数十人。マチルダは問題無いと判断すると、狙いを付ける。
青いマチルダの双眼が、まるで機械のように相手の頭に突撃銃の照準を合わせ、発砲する。
短い銃声と共に、突撃銃の銃口から唸る弾丸が次々と吐き出され、敵軍を殺してゆく。


―――


二等兵は近くの物陰から、突撃銃を乱射していた。
マチルダとくらべ、あまり優雅な戦い方ではない。だが、身を隠すには非常にいい場所から射撃を加えているので、どんどんと敵を地に倒していった。

「二等兵、やるじゃねえかお前!」

同期の二等兵に声をかけられた。二等兵は喜ぶことさえなく、ただ一心不乱に銃を撃つ。
弾が切れたら弾倉を入れ替え、再度物陰から銃を乱射する。

喜ぶのは、生き残ってからでいい。彼の心には不屈の闘志が湧き出るように燃えている。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/11(月) 20:48:42.71 ID:lpWMN/dW0<> 「敵の戦車だァーッ!」

ほぼ絶叫に近い声がそう言うのがマチルダの耳に入った。

「すぐにRPGを用意しろ、慌てるんじゃない!お前たちならきっとやれる相手だ」

マチルダは的確に指示を伝えると、ぴくりとも動かない通信兵の装備からトランシーバーを乱雑に掴み取り、航空支援を要請する。

「座標はXXの○○、味方に当てるんじゃないぞ、"ジェーン"」

《了解したわ!すぐに向かうから待っててちょうだいよッ!》

正確な位置を伝えるには少々時間が足りなかったが、マチルダの知る"ジェーン"という人物にはそれで十分だ。
長年の付き合い、そして本部というホームグラウンドにおいて、"ジェーン"に伝えるのはこれだけで『事足りる』とマチルダは理解している。

「RPG発射カウント!ファーイヴ・・・!フォーゥ!スリーィ!トゥー!・・・ワン!第一部隊、全弾発射しろ!」

荒々しい男の兵士のカウントが終わると、無慈悲な対戦車弾が爆炎を撒き散らし、戦車まで駆けてゆく。
煙が弾頭の後を追うようにして、かき消されてゆく。
その後すぐに、大地を揺るがす爆発音、軽い振動がマチルダたちに伝わった。着弾したのだ。

「よし、戦車3機のうち、2機の破壊を確認。よくやった」

マチルダはそう言うと、今にも雨が降りそうな黒の曇天の空を見上げる。

上空に自軍のマークの書かれた戦闘ヘリが旋回している。彼女が支援を要求した"ジェーン"が到着したのだ。

《待たせたわね、これより援護を開始する!》

通信が切れると同時に、頼もしいガトリングガンとミサイルの連続攻撃が敵を襲った。
次々と倒れてゆく敵兵たちを、マチルダはただ見ている。
どことなく、哀れな感情が湧いた。
自分が敵兵に対してこんな気持ちになったのは何年ぶりだろう。そう思うと、あの時の自分の青さが何故か懐かしくなった。

《今日もいっちょやってやったわね!ねえ?あんたのボーイフレンドは迎えにいかなくていいの?》

「・・・なぜそれを知っている。誰から聞いた」

《そりゃあもう噂にもなるわよ!あんたたちが出撃間際に、あつぅ〜いキスしてるの、見てた人がいたってわけ》

「くっ・・・それ以上言うな・・・バカ者め」

《あんたのテレ顔、久々に見たからよしとするわ。ボーイフレンドの担当は正面ゲートだったかしら?迎えに行っておいてあげる》

「余計なお世話だ。・・・だができるなら頼んでおこう」

《素直じゃないのねえ!まあ、そんなあんたが好きってね!アーッハハハ!》

これ以上マチルダを怒らせるのを避けるかのように"ジェーン"はしっぽを巻いて逃げるようにしてヘリを方向転換させて、二等兵の防衛担当場所の方角に消えていった。

「全く・・・ほかの兵士に丸聞こえだろうが・・・あの性悪女め」



<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/11(月) 21:25:30.12 ID:lpWMN/dW0<> 「おい、あっちの方角からヘリが来るぞ!味方なのか?」

「ああ、あの古いヘリに、ハッチに描かれたあの国旗。間違いない」

味方に歓喜の声が上がった。
戦力差が敵と味方にあまりなく、持久戦が続くと思われていた正面ゲート防衛前線は、疲弊した兵士たちが身を隠し、時が過ぎるのを待つばかりだった。
それが攻撃ヘリの到着により、戦況は一気に逆転。
一気に敵をなぎ払うミサイル、ガトリングガンが火を噴いて、数秒で敵を全滅させてしまう。

(今日は、生き延びれた・・・)

二等兵は、安心しきったのか地面にヘタリと力なく座り込む。
有刺鉄線でふとした拍子に切ってしまった指が、今さらになってズキズキと痛みだす。
だが、大きな怪我はない。二等兵はとりあえず自分の生還を喜ぶことにした。

「おい、お前どうやって中佐を落とした?・・・まさか強引に」

「な、なんの話をしてるんだ?!俺と中佐には何も無い」

「トボけるなよ。出撃前のあのあっついディープなキス。羨ましいねえ。あれがあれば頑張れるってもんだよな!だろ二等兵!」

「そんな・・・」

「ちょっとゴメン・・・、どいてくれ・・・・・・ふう、ついた、・・・二等兵。キミ宛に連絡・・・だよット」

小柄な男の通信兵が、背中の通信機を手に持って、人の間をかき分けてくる。
丸い縁のついたメガネに、少し生えた無精ひげがなんとも根暗な顔を演出している。

「それにしてもキミ、あの"ホーネット・エース"の"ジェーン"とお知り合いとはどういうことだイ?二等兵の割りに結構コネを持っているんだネ」

二等兵は首をかしげた。
"ホーネット・エース"の存在はある程度知っていたが、知り合いになった覚えもないし、なおさら話をしたこともない。廊下ですれ違ったことも無い。
一体何がどうなっているのだろう。・・・"ホーネット・エース"である彼女とコネクションを持っているのは、中佐以外に二等兵には考えられなかった。
おそらくマチルダのささやかな心遣いだろう。

《あんたがあのマチルダを射止めた男なのォ?かなり可愛いじゃない!》

通信機から聞こえる声に、周りの兵士たちはどっと笑い出した。

《マチルダを射止めるぐらいだから、どれだけズル賢い男かと、いつでも蜂の巣にする覚悟は出来てたんだけどね、ウブそうな男じゃない。まだチェリーボーイかしらね?あっはは!》

二等兵はたまらなく恥ずかしくなる。
なんでここまで自分のことをコケにする奴が"ホーネット・エース"なのか。・・・マチルダの軽いイタズラが見え隠れしていた。

《ほら、乗りなよ!あの乙女が待ってるわ!アハハハ!》

気さくな"ホーネット・エース"は高らかに笑い、古いボロボロのヘリを徐々に降下させる。
間近で見ると、所々装甲が取ってつけたように貼り付けてあったり、"ホーネット・チーム"を示すブラックを背景とした鷹のシンボルがスライド式のドアに描かれているようだ。
二等兵は、よくこんなオンボロのヘリで戦おうと思ったものだ。と感心してしまう。

「このオンボロヘリにようこそ、さあ、乗った!」

赤毛のショートヘアーの女性・・・・・・というより女の子だろう。"ジェーン"はコックピットから手を振っていた。
一目見ただけで、活発な印象を持つような赤毛のショートヘア、顔に浮かぶ明るい笑顔がとても輝いている。

二等兵はヘリに乗り込もうとすると、小柄の通信兵に腕をつかまれる。
とても小柄で、根暗な性格(とは言っても二等兵が単にそう思っているだけだが)とは思えないほどの怪力、威圧感に二等兵は息を飲んだ。

「ジェーンさんの秘話みたいなの、聞くことができたらきかせてヨ」

そう耳打ちされると、二等兵は腕を放された。
周りの兵士が見守る中、ヘリは徐々に離陸準備に移っているようだ。
ローターの回るスピードが徐々に早くなってゆくのが見て取れる。

「ヒューッ!この色男!後でいろいろ聞かせろよォー!」

「そうだぞォ!中佐とのキスの味とか、胸の揉み心地とかな!ワッハハハハ!」


散々笑われた二等兵は、苦笑いで答えると、ヘリに乗り込んだ。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/11(月) 21:48:46.93 ID:lpWMN/dW0<> 「しっかし、あのマチルダがよりによって二等兵と付き合うとはね。私も驚いたわ」

ヘリ内部では、まるで世間話好きな団塊世代の女性のようによくしゃべる"ジェーン"から質問攻めにされる二等兵の姿がある。
どこで出会ったのか、初キスはいつ?やら、プライバシーお構いなしに質問を繰り返す"ジェーン"に二等兵はただ曖昧に返答する他ない。

「ねえ、私とマチルダ、どっちがいい?!・・・・・・やっぱりマチルダ?確かに大人の魅力、っていうのがあるわよね」

なぜ答えもしていないのに自分で結論づけるのか、二等兵は痛い頭を押さえたい衝動に駆られるもこらえる。
あちらの方が若いとはいえ、一応自分よりは上の階級にいるのだ。ある程度の敬意は示すべきである。

「でも、私だって大人になったらナイスバディになるのよ!その証拠に、最近胸が大きくなってきたもの!」

頼むから、運転に集中してほしい。
本部で彼女が操縦をミスして墜落して死ぬなんて、もうやりきれない。
切実な願いは果たして"ジェーン"に届くのだろうか。届くはずもないだろうと思いつつも、酷くなる頭痛にため息を吐くことすら許されない。
一種の拷問に近いこの状況が早く終わらないか、二等兵は切に願うばかりである。

「あ、信じてないわね。だったら今度見せてあげるわ!二等兵なんて悩殺よ!」

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/12(火) 20:27:09.90 ID:5c8hM4C70<> 「あ、もう着いちゃったみたい。・・・まだまだ聞き足りないこといっぱいあるけど、またの機会にしておくわ」

もう二度とごめんだ。心の中で二等兵は叫ぶように思った。
見れば、眼下には見慣れているテントの数々があった。
人は疎らのようで、まだ前線から帰還している途中なのか、あるいは永遠と帰ってこないのか、二等兵には知る由もない。
ヘリは出力を徐々に落とし、降下しているようだ。

「ラベリングって経験したことある?ないわよね!だったら・・・・・・じゃーん!このロープを使って下まで降りてみなさい!」

ラベリングとは、簡単に言えば一本のロープを使い、ヘリを着陸させることなく兵士たちを降下させる、映画でよく見るそれである。
二等兵はそのような訓練とは無縁で、ラベリングを行えば落下死するだろう。

「いやねえ、冗談よ!キャハハ!あんたが死んだらマチルダに恨まれそうだし・・・」

そんなやり取り(ほとんど彼女が一人で喋っているようなものだが)をしているうちに、地上はもうすぐそこに迫っていた。
そして、着陸。
ヘリを揺さぶる軽い衝撃が、身構えていなかった二等兵を襲った。
その結果、二等兵は尻餅をつくような状態で機内で尻を打ち、"ジェーン"に笑われることになる。

「あはははは!・・・・・・はい!お疲れさま。次からは遠慮なく呼んでね。すぐにヘリで駆けつけたげる」

「どうも、わざわざすみません」

「いいのよ!マチルダの頼みなんだもの、それに、それなりの"対価"も貰ったしね!」

「た、対価・・・ですか?」

「マチルダのテレ顔なんて、初めて見たかもしれないわ。あんな冷静沈着なあのマチルダが、あんな表情を浮かべるとは思わなかったわよ!」

「そう・・・ですか」

「・・・んもう、元気ないわねえ!これから"色々"とあるんでしょ!?ねえ!アッハハハハ!」

本当にプライベートなことに、首を突っ込む上官だ。二等兵は何度もらそうと思ったか分からないため息をまたこらえる。

「ほら、外で待ってるじゃない、行ってあげなさいよ!」

「はい、それでは、ご武運を」

二等兵は上っ面だけの敬礼で礼を言うと、地獄のようなヘリから逃げるように降りた。

「・・・はあ」

外の空気がこんなにも新鮮に感じたのはいつぶりだろうか。
今まで堪えていたため息を、二等兵はようやく吐き出すことができた。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2012/06/13(水) 04:34:05.79 ID:BYIcgQ7go<> なかなか見ないシチュエーションで、続きが楽しみ超絶支援


出来れば鬱展開は嫌だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/06/13(水) 10:55:46.05 ID:v5MFLsMqo<> 戦場でなぁ!恋人や女房の名前を口にするというのは、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよぉ!! <> ◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/13(水) 21:35:26.46 ID:7BAVeNK10<> 「こってり絞られたようだな。・・・顔に出ているぞ」

顔を上げると、汚れた軍服姿のマチルダがこうなることを知っていたような表情で立っていた。
どうやらマチルダの差し金らしい。

「中佐、失礼ですが、あの方と自分はうまくやってけそうにありません・・・」

「だろうな。私もそう思った」

あの地獄のような時間は経験済みらしい。
それでいてなお"ジェーン"と友達として付き合っているのだから、マチルダの忍耐力は評価に値するだろう。
例えれば、自分の興味のない話を延々と続けられるようなものだ。
しかも立場はあちらの方が上。適当な相槌では納得してくれない。
これほど苦痛のことがあろうか。

「先に入ってるぞ」

マチルダはいつもと変わらない綺麗な金髪をさらりとかきあげると、テントの入口についているファスナーを下げ、テントの中に消えた。

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/13(水) 22:03:17.63 ID:7BAVeNK10<> 二等兵は遅れてテントの中に入った。
自分のテントなのに、なぜこう遠慮がちに入らなければならないのだろうか。
だが二等兵にとってそれは別にどうでもいいことである。

「ふう・・・・・・落ち着くな、ここは」

マチルダはベッドに腰掛け、深く満足げなため息をついた。
二等兵はその横に腰掛け、なんとなく上を見上げる。

「なんというか・・・言葉ではうまく言い表せない。君がいるからかもな二等兵」

照れくさそうに言う彼女が、二等兵にはとても可愛く見える。
その口調、クールな風貌に本来うつることのない表情に違いない。

「光栄です。中佐・・・・・・」

「ん、・・・ふ・・・ぁ」

二人は今生きていることを確かめるように口づけを交わす。
時に激しく、時に愛でるように。

「む・・・・・・ぁ・・・はっ・・・」

マチルダの熱い声が漏れる度、二等兵はふたえの意味で燃えるような感覚を心で感じた。
二等兵は貪るように舌を絡ませ合い、水音をたてる。

「ちゅ・・・ぅッ・・・・・・ぷは・・・・・・いつになく激しいな君は・・・胸が唾液で・・・ヌルヌルだ・・・」

数十秒か、それとも数分か。
ともかくそれぐらいの時間が経過し、二人はようやく口と口を離した。
唾液が口から糸を引いて、ゆっくりと落下しシーツにしみる。


「もし、中佐と知り合っていなかったら、俺はもう死んでいたでしょう。そう思ったら、つい・・・」

「・・・ふん、だが、そういうのも悪いことじゃない。・・・私に一途な君も好きだ」

「中佐・・・・・・」

「二等兵・・・・・・」

二人はただ抱き合った。
そこに本当に存在しているのか、マチルダ、二等兵、両者共気になったからだ。
もし今までの出会いが嘘だったら。先の戦闘で死んでいたとしたら。
それが自分の悪い夢であるように、二人は抱きしめ合う。

「・・・二等兵、お願いだ」

「はい・・・なんですか中佐」

「服を脱がせてくれ。・・・体が火照るように熱くてかなわん」

「・・・・・・」

二等兵は、服の脱がし方をあまり心得ていない。
だが、彼の手は自然と動き、彼女が身にまとっていた迷彩服、下着を脱がしてゆく。

「手馴れているな・・・前にもこんなことがあったのか」

「いえ、一度もありません!本当です!」

「ふふっ・・・必死だな。大丈夫、信じてるさ」


<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/14(木) 07:14:51.32 ID:/E5Q+enF0<> 「君も服を脱いだらどうだ」

服を脱ぐことを催促させるというか、半ば強制的な視線を感じた二等兵は、汗で濡れた迷彩服を無造作に床に放り投げる。

「・・・・・・。君の匂い・・・」

「あ、すみません。汗をかいてて・・・」

「違う。・・・好きなんだ。君の匂い」

「・・・・・・」

「じゃあ、俺も中佐の匂いをかがせてもらいます」

二等兵はそう言うと、マチルダの体を引き寄せ、深呼吸する。
鼻に香るのは、いつもと変わらない髪の甘い香りだ。

「君は・・・どうなんだ?・・・私の、好きなのか」

「好きですよ。でも中佐は、いつもなんだか甘い匂いがします。なんだかフェアじゃないです」

「ふん、匂いにフェアもなにもあるか。」

二等兵は、引き寄せたマチルダの体をおもむろに弄り始める。
首、肩、胸、腹部・・・・・・、優しくなでるように、ただ弄る。

「ぁ・・・・・・二等へ・・・まだ、心の準備が・・・」

「大丈夫ですよ」

ただ一言、マチルダの耳元でそう呟くと、マチルダは体の力を抜くようにしてベッドに横たわる。

「いいぞ・・・来ても」

二等兵はそのマチルダに覆いかぶさるような体勢になる。

「中佐・・・・・・」

「・・・ふん、甘いぞ二等兵ッ・・・」

「・・・え」

次の瞬間には、彼女はそこにいなかった。
いつの間にか背後に回り込まれ、逆にベッドに押し倒されてしまう。
つい先ほどまでの、マチルダの位置に二等兵がいる状態だ。

「私が受けなはずないだろう。・・・二等兵」

「・・・そういうことですか、中佐」

「ああ。私は何かと受けが嫌いでな。今までは君に流されっぱなしだったが・・・・・・、もう慣れた。今までの分君のことを攻めてやる」

ある意味で鬼教官と化したマチルダは、そう言い不敵な笑みを浮かべた。
二等兵は自分が"先導"する妄想を諦め、まるで女のようにベッドに身を委ねるのだった・・・。

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/14(木) 21:06:13.17 ID:/E5Q+enF0<> ここらへん終わったら続きを新スレ立ててやろうと思ってるのですが、大丈夫でしょうかね。
タイトルに注意書きをしたいのもありますし、何より世界観を伝えるタイミングを失ってしまったというのが大きい理由です。


「さあ・・・・・・ドコを責めようか・・・ココか?ふふふっ」

「・・・・・・」

二等兵はつばを飲んだ。
誘うような動作で、ゆっくりと、くすぐるようにその白く細い指を二等兵の体をゆっくりとなぞる。

「っ・・・・・・」

何故か例えようがない快感に二等兵は襲われ、身を震わせる。
それを見たマチルダは熱い吐息をもらし、今度は二等兵の身体に舌を這わせる。

「ん・・・、君の味・・・・・・ちゅぅっ」

「くぁっ、ちゅ、中佐・・・」

「もう我慢できないのか。・・・こんなに大きくなって・・・可愛いものだ」

マチルダは二等兵の下腹部のズボンの大きな突起に目をやった。
今にも暴発しそうな勢いで、さらに肥大化しつつあるソレを、マチルダは指で軽くつつく。

「くぅっ・・・!」

「可愛い・・・可愛いな、君は・・・・・・」

満足したようにマチルダはまた、ため息を一つはいた。
するりと手を動かすと、二等兵のズボン、パンツをマチルダはゆっくりと脱がしてゆく。

「・・・っ!」

「ふふっ、ずいぶんと我慢しているようだな、君は・・・。大丈夫、この私がすぐ楽にしてやる」

そう言うと、二等兵の独特な生臭い臭いがするソレを、躊躇なく口にくわえ込む。

「う・・・!」

まるで叫び声を噛み殺したような声が、二等兵の口から漏れる。
気を抜けば、すぐに絶頂してしまうほどの快楽に、二等兵はみをよじる。

「んむっ、ん、ちゅうっ、じゅぷっ・・・はうへ、おんはいはいはあ・・・・・・んっ」

まるで、女みたいだな。おそらくマチルダはそう言ったのだろう。
確かに二等兵の表情といえば、快感に溺れながらもそれを寸前に止めるまさに女性のそれである。
目を固くつむりながら、必死に声を押し殺すその様は、マチルダをさらに燃えさせる。

「ん、ふぅ・・・っ、んぁ・・・」

マチルダの指は自然と秘部にのびていた。
まるで自分の指が意志を持ったように動き、マチルダの秘部を撫で回す。

「んっ!・・・ぁむ・・・、ちゅうっ・・・」

マチルダは顔をさらに激しく動かす。
それに連鎖して二等兵のモノはピクピクと一定間隔で動き始めたのが、マチルダにはわかった。
もう限界なのだろう。

(・・・私も、変態なのか・・・っ・・・・・・何かが、こみあげて・・・・・・)

「中佐ァっ!」

ほぼ悲鳴に近いそれと同時に、二等兵のモノは鼓動するように動き、白濁液を容赦なくマチルダの口に放射する。

「んっ、んふぅぅっ!」

同時にマチルダも絶頂を迎えたらしい。
彼女の体がびくびくと震え、秘部から粘性の愛液がとめどなく溢れてくる。

「ん・・・・・・ちゅぅっ、じゅっ・・・」

マチルダは二等兵のアレに残った白濁液を、貪欲に吸い出す。

「ぷは・・・・・・んァ・・・・・・ぅ」

マチルダは大量の唾液の混じり粘性が増した白濁液を吐き出し、手皿で受け止める。
妖艶な笑みを浮かべるマチルダは、二等兵に手皿に溜まった白濁液を見せつけた。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/15(金) 20:15:07.52 ID:cCSb5nEF0<> 「ふん、君も罪な奴だ。これほどの量を私に飲ませようと・・・言うんだから」

全く、と付け加えると、手皿に溜まった白濁液を、マチルダは自らの胸部に塗ってゆく。
彼女の豊満とも言えないが、小さいとも言えない平均的な大きさの清く白い胸に、二等兵の生命の源がゆっくりと、塗られていく。

「・・・ふぅ・・・んぁ・・・」

短く吐息をはいて、残りの白濁液でマチルダは自分の綺麗な桜色の乳輪を濁った白に染め上げてゆく。
まるで神聖な儀式でも見ているかのような錯覚を覚えた二等兵は、思わずその芸術的な美しい姿に息を飲んだ。
まるで池のほとりでたまたま見つけた八方美人のような女性が、全裸で水浴びをしているような、そんな錯覚を覚えた。

「ふふっ、そんなにじっと見て、君は本当にかわいいやつだ」

微笑混じりにそういう彼女はたまらなく美しかった。

「そこで、一つ提案だ二等兵」

マチルダは突然声の音量を下げて言い放った。

「え、な・・・なんですか?」

「今から私の部屋にこないか。そっちのほうが何かと都合がいいのでな」

「ど、どういう・・・・・・」

「あの"馬鹿"のことさ。ちょっとそこから外を覗いてみるといい」

そう言って、マチルダはテントに備えてあるファスナー付きの窓を指さした。
ファスナーを下げると開ける仕組みになっているそれは、今は勿論固く閉ざされている。

「・・・・・・」

二等兵は無言で窓に抜き足差し足で近づいた。

ズィーッ、と少しだけファスナーを開いてみると、なんとそこには意外な人物がいた。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/15(金) 22:35:09.07 ID:cCSb5nEF0<> 「はっ!?」

素っ頓狂な声を上げる若い女性の声。おそらくまだ十代。
そして二等兵にはその声を嫌と言うほど聞かされた覚えがある。

「や、やっほー・・・」

「・・・」

二等兵はただ沈黙でしか返事を返せなかった。
別に驚いているわけでもなく、この先の未来が不安というわけでもない。
おそらく、呆れてものが言えなくなるとはこのことだろう。
今の彼女は赤面しながら、なんと自慰をしていたのだ。

「捕まえたぞ、"ジェーン"め」

外の方で何者かに襟首をつかまれた"ジェーン"。
悲鳴を上げたくても、今上げればひどいことになるだろう。

「ま、マチルダ・・・命だけは・・・・・・!」

「ふん、最初からこんな汚いマネをしなければこうならなかった」

「じゃあ・・・堂々とみてていいわけ?・・・」

「それはジョークで言っているのだろう。・・・だろうな?"ジェーン"」

マチルダの鋭い目つきから放たれる強い威圧で、"ジェーン"は萎縮するばかりだ。
必死に顔を縦に振って相槌を打ち、もう二度としない、などと機嫌をとるような言葉を並べに並べる。

「まあ、はなからそういうつもりは無い。・・・ある願いを聞いてくれれば、見逃してやる」

「ほ、本当ね?・・・何でもするわ・・・!」

「言ったな。これで拒否したら・・・・・・」

「わかったわ。わかったから・・・デコピンだけは・・・っ!」

何を怯えていると思えば、そんなことだったのか。二等兵は落胆した。
軍では"ホーネット・エース"と褒め称えられるほどの称号を持つパイロットだが、こうして見るとただの子供だ。

「で、お願いっていうのは・・・・・・」

「ふふっ、それは・・・・・・」

マチルダは妖しい色気のある笑みを浮かべ、"ジェーン"に耳打ちをする。
その時呟かれた言葉はなんだったのか、"ジェーン"の顔を真っ赤にさせ、軽く錯乱させるくらいの要望をマチルダは言の葉に乗せて言ったのだ。

「そ、そんなこと・・・・・・っ!私は・・・」

「お前はさっき言ったことすら忘れたのか。なんでもするといったろう」

「で、でも・・・」

「そうか・・・しょうがないな・・・」

マチルダの細い、繊細な蝋細工のような指が、ゆっくりと"ジェーン"の額の前に構えられる。
そして、発射の構えをとった。要するにデコピンをやる気だ。

「ひ、ひぃっ・・・!ひ、ひどいわマチルダ・・・!」

「のぞき見していたお前も最低だろう」

「そ、それは・・・・・・」

「私たちのアレを見て、何をしていたんだ」

「う・・・く・・・っ」

明らかにマチルダと比べて明らかに幼い"ジェーン"は、そこで言葉が詰まってしまう。
二等兵は完全に蚊帳の外だったが、ある種の保護者的心境でそれを見ていた。
何故か微笑ましい。

「とにかく私の部屋まで来い。"ジェーン"、お前もだ」

「ぎゃあ〜・・・!ヤダぁ!」

かくて、ジタバタともがく"ジェーン"の襟首を掴んだまま、マチルダは二等兵と自室へ向かった。

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/15(金) 23:07:01.06 ID:cCSb5nEF0<> 場所は変わりマチルダの部屋。

ある程度の広さのあるマチルダの自室は、彼女の性格からか、非常に綺麗に整頓されていた。
そして柔らかで少し暗めな照明。
部屋の一角にある木製のデスクには、かなり前のものであろうと推測される、家族らしき人たちの写真が立てられている。

「その写真か。・・・かなり前のものだ。私の家族が揃った唯一の写真だ」

「そうなんですか。・・・それっきり家族とは・・・」

二等兵は咄嗟に言葉を止めた。
先ほどの一言が彼女を傷つけたかもしれない。二等兵は恐怖に駆られた。

「ああ・・・、しばらくして、私の父親は戦場に行った。それっきり戻ってこなかった。惨たらしく敵軍に殺された」

「・・・」

「あまり覚えていないが、母は私は一晩中ずっと泣いていたと言っていた。父はどこに行ったのか、なぜ帰ってこないのか、と泣き叫んでな」

一番辛かったのは私の母だったろうに。とマチルダは付け加えた。
二等兵は沈黙を守る他なかった。
相槌もうってはならない気がする。呼吸も一つ一つが何故か緊張していた。

「だから私は、"政府軍"に入った。父の敵を討つために」

"政府軍"。
二等兵たちが属している軍で、本部はアメリカ合衆国のどこかにある。
そもそも本部の位置すら、自分たちには通知されていない。
本当に知っているのは軍の幹部たちで、その誰もが自軍に誇りを持ち、日々戦っている。
元々この戦争の発端は世界的な不況、そしてテロリストの大規模なテロ事件が原因だ。
政府の会見では、経済的に弱りきった今を狙った敵のテロ攻撃。・・・と言った認識らしい。
そのテロ集団"反政府軍"がイラク周辺地域に位置するらしい。
あくまで噂程度の情報だ。敵の本拠地が分かっていれば、すぐに爆撃機が急行し、この戦争は終わっていることだろう。
だが現にこの戦争は終わっていない。
すでに悪の根は世界中に広がっており、世界各地に"反政府軍"の基地がある。
今やアメリカの足場はぐらついており、ユーロ各国などが応援に駆けつけなければおそらくは壊滅していただろう。
ユーロの善戦により、敵軍は5割の戦力を失った。
しかし、ユーロ全体には、すでに敵軍の基地がいくつもあった。
結果的にユーロは、内側からの崩壊を招き、事実上壊滅したことになっている。

「ふん、辛気臭くなってしまったな。・・・しかし、ヤることはやるぞ」

そう言うと、これから起きる恐怖に怯える"ジェーン"にマチルダは目をやった。

「ほ、本当に・・・ヤるの?」

「ああ、当たり前だろう・・・私のほうが収まりがつかないし、"ジェーン"、お前だってそうだろう」

マチルダは"ジェーン"の下腹部に目をやった。
薄目の生地のズボンには、少しシミがついている。

「こっ、これは・・・」

「全く、二等兵もお前も可愛いな。ふふふっ」

彼女が屈託のない笑みを見せる。
本当に心の底からの感情のようで、先ほどまでの暗い顔が嘘のようだ。

「ほら、"ジェーン"。とりあえず服を脱ぐといい」

「えぇっ、ちょっ、やめ・・・・・・!」

拒絶の言葉を言わせる前に、マチルダは手際良く、"ジェーン"の身につけていた服を脱がせ、ベッドに放った。
"ジェーン"の白い素肌が露になり、こじんまりとした胸には、背伸びしているようにしか思えない、黒色のブラジャーをつけている。

「う・・・、マチルダぁ・・・」

「心配するな」

マチルダはまるで母親のように"ジェーン"に囁くと、その白い頬に軽いキスをかました。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/06/16(土) 11:48:28.83 ID:JrJXfH7Vo<> wwktkが止まらない <> ◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/16(土) 14:35:42.52 ID:TSbM/RS00<> 「は・・・ぁっ」

ゆっくりと、マチルダはその白い素肌に舌を這わせる。
時にじっくりとねぶるように、時にあっさりと。

「も・・・ぃ・・・ゃッ・・・・・・んぅッ・・・!」

小さく聞こえた拒絶の言葉を塗りつぶすように、マチルダは"ジェーン"の乳輪に吸いついた。
時折聞こえる、いやらしい水音がなんとも二等兵を興奮へ誘った。

「ひ・・・ぁッ!ま、マチルダ・・・ァ・・・も、もう・・・んぅッ!」

「ちゅ・・・ぅっ・・・・・・ん・・・、君も元気だな、二等兵」

二等兵に優しくマチルダは言った。。
二等兵は顔を小さく縦に振るぐらいしか余裕がない。

「本当に自己主張の激しい息子だな・・・ふふっ」

マチルダが二等兵の下腹部を見やる。
彼女はやわらかく微笑んで、二等兵のズボンを下ろした。

「ぅ・・・わっ」

"ジェーン"が小さく驚嘆の声を上げた。
おそらく初めて間近で見るそれは予想より生々しいものだったに違いない。

「くくっ、さすがにお子様には刺激が強すぎたか」

マチルダは意地悪く笑ってみせた。

「なっ、お子様なわけ・・・っ!」

容赦なくマチルダは自分の口で二等兵のモノをしゃぶった。
かなり慣れてきたようなのか、時折強く吸ったり、舌でじっくりとねぶられたり、かなりいろいろなことをしてくる。

「ん、ちゅうっ・・・・・・ぷぁっ・・・・・・なら"ジェーン"、まさかそこでぼーっと突っ立っている気ではないだろうな」

「え・・・じゃ、じゃあ、何をすればいいの・・・?」

当然の疑問だ。
まだ思春期真っ盛りのせいか、顔を真っ赤にしてそういう様は見ててとても可愛いものだった。

「こう、ん・・・ちゅぅっ・・・・・・ぷはっ・・・舌で舐めてやったり、咥えてやったり・・・んむっ・・・ちゅうぅっ・・・ん・・・吸ったりする。簡単だ」

「・・・こ、こう?・・・・・・んっ」

慣れない舌使いで、"ジェーン"はゆっくりと二等兵のモノの先端部分を舐め始めた。

「うぁ・・・っ!」

二等兵の上げる小さな声に、マチルダはほんの少しだけ不機嫌になったように言った。

「ふん、なかなかだな。・・・私に比べたらまだまだ・・・だが」

二等兵のモノが、右側を"ジェーン"、左側をマチルダ、と二人に弄ばれるように舐められ、二等兵の快感はもうすでにピークに達していた。
だが二人の舌はさらに妖艶、かつ刺激的に動く。

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/16(土) 14:36:23.07 ID:TSbM/RS00<> 「ん、ぇ・・・ぅ・・・っ・・・ちゅっ・・・」

自分がやっていることを信じられないと言うような表情ながらも、必死に舐め続ける可憐な"ジェーン"。

「むぅっ・・・・・・じゅっ・・・」

反対に、大人の余裕のようなものを見せる、妖艶で美しいマチルダ。

「くぅ・・・!」

二等兵はただ声を押し殺し、必死に我慢することしかできない。

「ん、ちゅ・・・ぅっ・・・んぅ・・・む」

「んむぅ・・・・・・ちゅ、ん・・・」

絶頂が近くなる。
二等兵のモノは心臓の鼓動のように一定間隔で脈打ち始める。

「・・・ん、ぷあっ・・・・・・、"ジェーン"、ほら、咥えてみろ」

「うむぅ・・・んぱぁっ・・・・・・そんなの・・・マチルダがやればいいじゃない」

「いつ私が拒否していいといった。まだ刑罰は続いている」

「ひいっ!わ、わかったから・・・・・・・・・んむっ・・・ちゅうっ」

脅迫された影響か、ジェーンはいともすんなりと小さい口には不相応なアレを咥えた。
その動作には多少の怯えがある。

(な、何だ・・・・・・簡単じゃない・・・こんなの)

"ジェーン"は咥えながらそんなことを思った。
少し慣れてきたようで、ちょっとした刺激を加えてみたりなどの工夫をする程にまで"ジェーン"は成長していた。

「く・・・ぅっ!"ジェーン"さんっ!」

絶頂する前の腰にこみ上げる快感の波が二等兵に押し寄せた。
これ以上は耐えられない。

「んむぅ・・・?・・・ん、んぅっ・・・・・・ちゅうっ」

"ジェーン"は何事かとモノを咥えながら首をかしげた。
男が絶頂するタイミングを知らない彼女は、さらに激しく、貪欲といえば、語弊があるかもしれないが、必死に口を動かした。

「ぅぁっ・・・!!」

「ん、んぷッ・・・!んぐぅ・・・ぅ!・・・」

小さい口に、とめどなく白濁液の流れが押し寄せた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/16(土) 17:24:49.57 ID:zD/zfYw/o<> 素晴らしい <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/19(火) 20:20:39.30 ID:VWOZX+K70<> しかし口から離したところで、二等兵から出される白濁液は止まるわけではない。
二等兵のモノは数回脈打ちながら、"ジェーン"とマチルダに白濁液が飛び散り全身を白く汚される。

「"ジェーン"・・・」

マチルダは"ジェーン"の名前を囁くように呼ぶとヒョウのように"ジェーン"の顔に自分の顔を近づけ、何を思ったのかくちづけをして舌と舌を絡め合う。

「ちゅ・・・んむ・・・・・・」

"ジェーン"の口内に残った白濁液が、マチルダの舌でかきまわされる。白濁液が長く糸を引いた。

「うぅ・・・んむっ・・・・・・ゲホッ!こ、これなんなの?・・・生臭くて・・・苦い・・・」

「・・・それが生命の源、というものだ"ジェーン"」

マチルダは得意げに答えた。

「・・・こんなのが・・・」

"ジェーン"が意気消沈するのも当然だろう。
何がなんだかわからないまま、結局のところ初体験は散々な結果で終わってしまったのだ。

「なんだか・・・すみません」

二等兵は謝ってしまった。
彼の性格上、そうしないとこの湧き出るような罪悪感が止まらないだろう。

「・・・いいけど、せめて出すときは・・・・・・」

"ジェーン"は一拍おいて、唐突に言った。

「イッちゃうぅぅぅぅぅ!!」

「!?」

あまりにも突然のことで、二等兵の体は、ビックリして思わず飛び上がった。
それを見た"ジェーン"はクスクスと笑みを浮かべて、明るく笑いながら続ける。

「・・・・・・ぐらい言いなさいよね!あははははっ!」

「・・・・・・」

「これはまたしてやられたな、君も」

マチルダはため息混じりに呆れ笑うように言った。

「でも・・・またいつか誘ってよね。いつでもいいからさ・・・えへっ」

"ジェーン"はそう付け加えると、にこやかに笑った。
その笑みは年齢に相応しく、輝いて見えた。
<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/19(火) 20:40:26.00 ID:VWOZX+K70<> それからしばらくのことである。
時はすでに真夜中。部屋に、3人の静かな寝息だけが響いている。

あの強烈な3P体験のあと、各々はシャワーを浴び、雑談に花を咲かせ、眠りについていった。
一番最初に眠りに落ちたのは"ジェーン"で、マチルダと二等兵は、まるで私たちの子供のようだと静かにクスクス笑い合っていた。
その後マチルダ、二等兵と順に眠りについていった。
何があったわけでもなく、普通に眠っているだけだった。

「・・・ぅ・・・」

"ジェーン"が小さく声を上げ、寝返りをうつ。
その時の動作で振り下ろされたジェーンの可愛らしい小さな手が、容赦なくマチルダに振り下ろされる。

「・・・ぉぐっ!」

振り下ろされた小さな手のひらは完全にノンレム睡眠状態だったマチルダの腹部に直撃した。
見事なまでのクリティカルヒットである。マチルダはしばらくの間、腹を抱えて声を出すのを堪えていた。

「・・・ッはぁ・・・はぁ・・・」

顔に冷ややかな汗が少しづつ浮かぶ。
マチルダは目を瞑り、息を整えた。

「・・・ふぅ・・・っ・・・、なんなのだコイツは・・・」

小声でそう愚痴をこぼすと、マチルダは"ジェーン"の腕をつかみ、そっと"ジェーン"の腹部の上に乗せた。

(ちょっと寝るにはこのベッドは狭すぎるのだろうか)

そんなことを思いながら、マチルダは再び眠りに落ちる感覚を感じ、目を閉じた。

<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/20(水) 20:13:48.41 ID:TEV32Zti0<> 数日が経過した。
ここ数日の間は敵勢力からの攻撃がピタリと止んでいた。
マチルダから聞いたところ、敵はこちらの警戒が緩んだ隙をついて一気に畳み掛ける算段らしい。
なんともゲリラらしい戦法である。
そしてこの数日間、二等兵は直々にマチルダから訓練を受けていた。
筋力トレーニング、持久力を上げるトレーニング、・・・そして精力的なトレーニングなど、一通りの訓練をこの数日間でこなした。
時に軟弱者が、と叱られ、やればできるな、と褒められたり、正に叱咤激励の一言に尽きるマチルダ。
そんなマチルダにしごかれ、二等兵はどんどんとたくましくなっていった。

「今まで・・・よく耐えたな。ここまで耐えた奴は久しく見ていない」

「ありがとう・・・ございます・・・」

二等兵は息も切れ切れにそう言った。
先ほどようやく最後のトレーニングが終わり、トレーニングルームに戻ってきたところだ。
トレーニングルームにはある程度の設備が備えられているが、どれも使い古されており、金属製のものは錆び付いて、新品の頃の面影も見えない。
最後のトレーニングは、持久走である。
何故かマチルダも二等兵に付き添うように持久走に加わっていた。
だがどうだろう、彼女は汗こそかいているが、呼吸にさほどの乱れは見えない。
かなりの持久力が彼女には備わっているのだろう。

「今日は・・・、どうするんだ」

マチルダが恥ずかしそうに顔を俯けて言う。
汗が滴るその白い健康的な肢体がたまらなく美しく、何かの芸術作品のようだと錯覚してしまう。
もし芸術作品なら、ゴッホのように死後理解されるような作品ではないことは確かだ。

「・・・やりたいんですか?」

二等兵はちょっとだけマチルダをいじめたくなり、そう言う。

「私は・・・どっちでもいいんだ。だが、今日は・・・」

「はい」

「今日、できれば・・・私の・・・初めてを、あげようと思って・・・な・・・君に」

二等兵は、すぐさま、はい、と返事を返した。
心臓の鼓動が柄に合わず速くなっていた。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/24(日) 18:22:41.36 ID:JVtyQCEG0<> 場所は変わり、マチルダの自室の前。
部屋に来るよう呼ばれた二等兵は、柄にもないと言えば語弊があるが、緊張した面持ちで扉の前に立っていた。
彼の服装といえば、一度も使ったことのない軍の支給品の服だ。いわゆる軍服である。

「・・・」

二等兵は軽く深呼吸をして、意を決したように扉をノックした。
そのあと、扉の向こうからの物音と足音。

ドアが少し開かれた。マチルダが顔を少し覗かせている。

「・・・君か」

麗しく、なんとも美麗な声。その姿もまた心洗われるように綺麗である。

「どうも、中佐」

二等兵は軽く頭を下げた。

「ずいぶんと遅かったな」

マチルダは少し不機嫌そうに言った。
別に約束の時間は決めていなかったが、ここでそう言えば雰囲気が台無しになるというものだ。
二等兵は別にそこまで意識していないが、すみませんと謝った。

「・・・入っていいぞ」

促されるまま、二等兵はすっかり馴染んだとも言えなくもない、マチルダの自室に足を踏み入れた。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/24(日) 19:05:56.88 ID:JVtyQCEG0<> 二等兵は部屋に招かれ、部屋の中央に3つほど並べられた椅子に腰掛けた。
どうやら食事等もここでするらしく、食器等の用品が綺麗に並べられている。

「何か飲むか?・・・酒はあまりないが」

マチルダは二等兵になんでもないように言った。
二等兵としては、軽く酒の力を借りたいところだったので、あるものでいい、とだけ言った。

「口に合うかわからないが、こんなものでいいか」

マチルダが手にしているのは、少し大きめのワインのボトルだった。
すでに少し減っているところから、たまに飲んでいるのだろう。

「ありがとうございます、・・・お酒を注ぎましょうか?」

「・・・ふふっ、頼もう」

彼女はそう言い微笑むと、小奇麗なグラスを手にとった。
二等兵は重みのあるボトルワインを、ゆっくりと注いだ。
ワイン特有の匂いが、二等兵の鼻に漂う。

「ん・・・、それぐらいでいい」

「はい」

「次は君だ、ほら、グラスを」

そう言うとマチルダは二等兵のグラスに、かなり大胆にワインを注ぐ。
二等兵が慌てて止めると、マチルダは笑った。

「ふふふっ、まあそう慌てるな、君は男だろう」

「いや、でも自分は酒に弱くて・・・」

「なんだ、私の酒が飲めないのか」

「・・・すみません」

こうして、グラスいっぱいに注がれたワインで、二等兵とマチルダは乾杯した。

「それでは、私たちの初めてに」

「・・・・・・か、乾杯」

二等兵は少しだけそのワインを口に含んでみた。
一口含めば、深い風味が全身に広がる。なんとも不思議な味わいである。
二等兵は思わずため息を漏らした。体の全身が、まるでアルコールで酔ったように。

「・・・どうした?口に合わなかったか」

「いえ、そういうわけでは・・・ふぅ・・・」

「まさか、もう酔ったのか」

「とんでもない、まだまだ平気れすよ・・・」



<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/06/24(日) 21:01:03.41 ID:JVtyQCEG0<> ―――反政府軍の基地の一角。

「起きろ」

非常に冷たい刃を思わせる男の声。
その冷酷な男の目の前には、後ろ手に拘束された傷だらけの兵士。その服装からして、政府軍の兵士である。
その殆どの外傷は拷問によるもので、どれもが痛々しいほどに出血していた。

「う・・・ぅっ」

傷だらけの男が、うめき声を発して顔を上げた。
何日間も連続で拷問を受けており、まともに食事すら食べていない。
なんとも衰弱した顔だった。

「なんの・・・用だ・・・"狼"」

狼と呼ばれた男は、ポケットから煙草を取り出し、火を灯した。
"狼"―ヴォールクとロシア語で呼ばれるその所以は、様々だ。
ロシアの特殊部隊出身の彼は、高い戦闘能力を買われ、反政府軍にスカウトされた。
恐ろしく冷酷であり、自軍の勝利のためなら手段は選ばない男である。

「食事だ」

"狼"は人切れのパンを傷だらけの兵士の前に投げ捨てた。
兵士はそれを一瞥し、つばを吐いてみせた。

「こんなものは・・・いらん・・・死ね、"狼"」

「・・・」

"狼"はなんの表情も見せず、ただ口からもうもうとした煙を吐く。
煙草の先にともった小さく赤い火が、彼の不気味なほのかに照らしている。

「一つだけ教えてやる」

"狼"が口を開いた。
その低いトーンの声に、並みの人は噛み殺されそうな恐怖を覚えるだろう。
それだけ彼の言葉には、なんとも不気味な威圧感があった。

「死ねとは、相手よりも優位に立ってからいうものだ。お前みたいなやつが言っても見苦しいことこのうえない」

「・・・俺に、説教・・・垂れる気か?くたばっちまえ」

"狼"の眉が、ピクリと動いた。
今までなんの表情も見せなかった彼が、初めて怒りを見せたのだ。
兵士はその豹変に、思わず閉口した。
いや、閉口せざるをえないという、一種の強迫観念かもしれない。

「いいだろう、タップリと苦しむといい・・・死にたいと懇願するまでな」

"狼"は煙草を靴でねじり消し、どこか暗がりへ去っていった。
それと入れ替わるように拷問係の兵士がやってくる。
またこれから拷問が始まる。

「今日こそ喋ってもらうぞ!この野郎ッ!」

「・・・」

もう言い返す気力すら残っていなかった。
もうこのボロボロの体に傷がつこうが関係ない。
味方を売るようなことは絶対にできないのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<><>2012/06/30(土) 13:12:59.62 ID:jV68vk1+o<> 急転直下支援 <> ◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/01(日) 10:01:18.94 ID:K1GZ8wn00<> 生活の都合で来れませんでした。



「今日は最高の拷問道具を用意したぜ・・・、これだ」

拷問官らしき初老の男が、禍々しい雰囲気を醸し出す拷問道具らしき物を重たそうに、うつむいたままの兵士の前に置いた。

「これは爪を剥ぐ道具でな、痛みで忠誠心なんか麻痺するだろうよ・・・ヒッヒ」

邪悪に笑う拷問官。
兵士は沈黙を押し通して、早く終わらないものかと心の中でつぶやいていた。

「5分ごとに、一枚爪を剥ぐ。痛い思いをしたくなかったら、5分以内で、隠してることを全て話せ」

5分。
兵士にとっては長いのか短いのか、時間の感覚が麻痺した今の状態では知る由もない。
今までの態度を変えることなく、兵士は沈黙を守った。

「・・・あと1分だ」

拷問官は、薄汚れた腕時計を見てそう言った。冷酷に。
・・・あとどれくらいの時間が残っているのだろうか。
この1分という時間は、どうしてなかなか長かった。

「時間だ。・・・おい、セットしろ」

「はっ!」

拷問官が部下に命じた。
後ろ手に縛られた兵士の腕を強引に台へ固定すると、ちょうど指がフィットする箇所に、人差し指がはまった。
恐ろしいぐらいに、指がぴったりとはまるそれは、正に人間の爪を剥ぐためだけに生み出された、冷酷な拷問道具である。

「やれ」

拷問官の部下は容赦なく拳を振り上げ、拷問道具へ振り下ろす。
振り下ろされた拳は、拷問道具のグリップのような部分を怒涛の如き力で叩きつける。

「・・・!ぎゃあぁあッ!!!」

兵士は悲鳴を上げた。
先程までは何も言い返す気力すらなかったというのに、こんな声をまだあげられるとは自分でも驚きだった。
だがそんなことは、兵士の身体を縦横無尽に駆け巡る激痛の前では、呼吸をするのと同じくらいにどうでもいいことである。
残りの爪は9枚。一枚ごとに5分だから、あと45分はある。

「おぉ、まだまだ鳴くなあ・・・。まあ、拷問っていうのは女にするのが一番いいがな。俺としては」

「・・・ッ、黙れェ・・・・・・!!」

「お前の女房も、こうやっていたぶりたいもんだよ、フヒヒッ!」

地獄はまだまだ終わらない。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/01(日) 10:03:47.34 ID:/bF62WXio<> 支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)<>saga sage<>2012/07/01(日) 11:06:54.45 ID:9grkvrdl0<> 拷問と聞くとアルスラーン戦記に出てきた「とても恐ろしい拷問」を思い出すなぁ
…脇の下や足の裏をひたすらくすぐるという拷問なんだけど

田中芳樹と冨樫はマジで仕事するべき <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/01(日) 11:54:39.71 ID:K1GZ8wn00<> 「ぐあぁああッ!」

「三枚目か・・・まだまだ爪はあるな」

あれから10分が経過し、爪はとうとう3枚目を剥がれてしまった。
痛みに慣れることはなく、むしろ痛みは鋭く、強くなっていく。
手が恐怖で微かに震えていた。呼吸も不安定になる。

「手が震えているな。そろそろ楽になりたいだろう」

拷問官は、そんな兵士の心境を手に取るように理解していた。
そこにつけこむように、拷問官は今までの相手を皮肉る態度を一変、子供に童話を語りかけるようにそう言った。

「・・・くっ」

「それとも、まだ耐えるか?あと爪は・・・8枚もある」

兵士は完全に心を揺さぶられていた。
ここで喋れば、楽になる。少なくとも爪はもう剥がれない。
しかし情報を喋れば自分はもう用済み。
仲間の情報をしゃべるだけ喋った挙句、無残に殺されるのがオチだ。

「どうする?・・・あと2分だ」

「・・・くたばれ」

兵士は鋭い痛みに歯を食いしばりながら、そう吐き捨てた。


その時、拷問官のウェストポーチに入っていたのだろう。年季の入ったトランシーバーがザザザとノイズを漏らした。

「・・・はい、こちらQ地区」

《敵の・・・・・・が・・・かっている・・・・・せん・・・・・・にそ・・・・・・えろ》

ノイズがひどいのか、兵士の耳にはあまり聞こえなかった。
敵というのは、恐らく反政府軍の敵、政府軍だろう。
内容はあまり聞き取れなかったが、こちらに向かってきているのかもしれない。
兵士の目に希望の火がともった。

「了解しました・・・・・・すまないが急用ができた。おい、お前ら。撤収だ」

「イエッサー!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/01(日) 19:11:52.67 ID:/bF62WXio<> おっつん <> ◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/02(月) 14:01:03.58 ID:UHKcPVgx0<> 場所は変わり、政府軍基地のマチルダの自室。
普段は彼女の性格上キチンと整頓されているそれなりに広い部屋も、今は酒の匂いが漂い、散らかっていた。

「り、りろうへ・・・い」

舌が回っていない彼女は、もはや解読も難しいが、二等兵。と言った。
顔が朱に染まり、今にも極楽浄土へ行ってしまいそうな満足げな顔を浮かべている。

「・・・」

二等兵は返す言葉もなく、机に突っ伏したまま沈黙している。
元々酒に強くない彼だったが、私が注いだ酒が飲めないのか、だとか、だらしない、などの言葉を受け、半強制的に強い酒を飲まされ続けた。
とうに彼の限界は超えていた。ひどい頭痛に、軽い吐き気。
今動けばこの吐き気はさらに強くなるだろう。動かないのは得策だった。

「おい・・・起きろぉ・・・、にとうへ・・・」

「・・・・・・」

相変わらず机に突っ伏したままの彼を、マチルダは無情にもゆさゆさと揺らした。
それと同時にこみ上げてくる吐き気に、二等兵は顔は真っ青になる。

「うっ・・・うっ・・・」

「おっ・・・面白い、ほれ、早く起きろ・・・っ」

「う・・・うぷっ・・・」

彼女がいっかい揺らすたびに、二等兵は声を漏らした。
酒に酔い、頭が小学校時代ぐらいに退行しているマチルダは、それを面白いと思ったのか、さらに二等兵の背中を揺すった。

「うっ・・・ちゅ、中佐・・・、やめ・・・」

二等兵は何かに押しつぶされそうな声で、マチルダに訴えた。

「聞こえないぞ・・・っ、早く起きんか、今日は私と・・・・・・」

どうやら聞こえないようだ。彼の希望は秋に紅葉したモミジが舞うように、悲しげに散った。

「・・・もう・・・無理・・・」

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◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/07(土) 20:34:07.66 ID:KZG+87mY0<> その夜のことを語るのは、語るだけ野暮だろう。
吐き気とマチルダに襲われながら、二等兵は辛うじて眠ることができた。
酒はもう懲り懲りだ。新たな事実を学び、二等兵はまた一つ大人になったのである。

―――

個人的には、彼女の作り出した"兵器"とやらを評価していた。
兵器という無機物のジャンルでありながら、冷酷さ、残忍性などを併せ持つところが好みだった。
むしろ兵器だからこそ、その両立が出来たのかもしれない。
"狼"は目の前で解体されてゆく鉄の筺体をただぼんやりと眺めていた。
別に感情移入していたというわけではない。
ただ彼は"もったいない"と、そう思っただけだ。

「・・・お前と別れるのはさみしいよ・・・イックス」

サラサラと清流を思わせる綺麗なロングヘアーの黒髪、整った顔つき。
彼女が兵器の名を呼ぶたびに、彼女の豊満なバストは悲しげにゆれる。
兵器を作った当の本人、・・・名はリョウコだったろうか。
イックスとはその兵器の名称で、あまり褒められたものでもないネーミングセンスだが、彼女は与えられた名前を純粋に喜んでいた。

「あぁ・・・ッ・・・これで最後なのか・・・イックスの体を抱くのは・・・」

リョウコの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
彼女のこのイックスとやらにかける熱意を見たものなら、理解できなくもないことだ。

解体の作業をしていた作業員数名が、イックスからリョウコを引き剥がす。
女の科学者のひ弱なその体は軽々と抱え上げられた。

「いやァッ・・・!やめてよ・・・!私たちの邪魔をしないでェ・・・っ!」

彼女の叫びも虚しく、イックスの胴体、顔面部分はバラバラに解体された。

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◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/08(日) 09:29:42.57 ID:aZ3recgL0<> 今ではあの冷酷そうなボディの見る影もない。
なんの価値もない、ただの鉄のスクラップだ。

「うぅっ・・・!なんでなんだ・・・っ!イックスのどこが悪いって言うんだ・・・!」

薄汚れた地面に、手をついてリョウコは嘆く。
科学者の認められたいという性なのか、それともただ自分の兵器を溺愛していたのか。
それは誰にも解らない。
"狼"はそんなリョウコの肩を軽くたたいた。
冷たい絶対零度な彼の性格の柄にもあわず、励ましてやろうと思ったのだ。

「・・・上には、上なりの理由があるんだろう。」

「えっ・・・でも・・・っ、あんまりだと思わないか・・・っ!?」

「俺も・・・あんたの作ったイックスとやらが、好きだった」

「わ、分かってくれるのか・・・っ?あのイックスの凄さを・・・っ!」

「あまり上手く言い表せない・・・、機械だというのに、俺はイックスから無言の気迫のようなものを感じた。そこに惹かれた」

「そ、そうだっ!私がそう思いを込めて作ったんだからっ!」

「ほう」

「中身自体はシンプルな作りだが、拡張性を持たせ、遠距離、近距離や破壊工作にも対応できるように作ったっ・・・」

「そしてこのイックスの凄さはAIにあるっ・・・!」

リョウコは大量に散らかった書類の山から、設計図をいとも簡単に探し当て、少し汚れた床に広げた。
その設計図は、もはや元の図がわからないほどに、書き足しされていた。
またリョウコのものと思われる特徴のある書体。
彼女以外の技術者はこの設計図を理解できるのだろうか?
"狼"はあまりこう言った技術関係には詳しくはないが、それだけは間違いないと思った。

「このAIは、瞬時に状況の判断が可能になるよう、特殊な設計になっているっ、ムダを省いて、効率をよくしたんだっ」

彼女はそう言って、AIの設計図の右下を指差して、回路を白く細い指で彼女は辿った。
よくわかるものだ。

「それから・・・それからっ、この部分っ!私はここに処理が集中すると予想してっ・・・・・・・・・」

それから彼女の講義は数十分にわたり続いた。
彼女の使う難解な言葉は理解すらできなかったが、"狼"は不思議と悪い気がしなかった。
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◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/08(日) 19:45:39.31 ID:aZ3recgL0<> 「・・・と、まあこんなところだっ」

彼女は満足げに胸を張った。
重たげなバストが跳ねるように揺れる。

「よくできているんだな」

"狼"はほぼ何を言っているか分からなかったが、あのシンプルなボディにかなりの科学力を詰め込んであるということを理解し、感心した。
遠い昔の、純粋な子供だった頃、憧れていたアニメのヒーローを想起させるのだ。

「そうだろうっ、なのに何故私の傑作が・・・っ」

"狼"はここまで聞くと、それも一理あると思い始めた。
確かに、様々な場面に対応できる柔軟な判断力を持つ兵士は必要不可欠だ。
イックスはそれを可能にし、近距離、遠距離や様々な任務に対応できるハイテクな兵器だったのだ。
それに加えて、リョウコ自信作の人工知能、AI。
どこにデメリットがあるのか"狼"にはわからなかった。

「私には解らないっ、理解ができないっ。・・・これだけやっても、"アイツ"に敵わないっ・・・」

「・・・"アイツ"?」

「もう一人の科学者だっ、名前は・・・クレウスっ、ドイツ人の科学者だっ」

「・・・クレウス・・・か」

「アイツはっ、私よりも画期的な兵器を開発したと浮かれていたっ。私はそれを越えようとイックスを作ったっ!」

あの兵器、イックスはただクレウスというヤツと競うためだけに作ったのだという。勿論愛情を込めて、だそうだ。
彼女が言うには、純粋に殺戮を目的とした兵器を作るのは、モチベーションが上がらないらしい。
なんともおかしな話である。

「アイツは・・・っ、私のイックスを殺したも同然だ・・・っ」

リョウコは涙を流し、手を固く握りしめる。
微かに微震するその手は、怒りと悲しみが混ざる、負の感情で埋め尽くされている。

「・・・すまないっ、君に言っても、仕方のないことだった・・・っ」

「構わない」

「君・・・っ、名前はっ?」

「・・・ニコライ。反政府軍の同士は"狼"、ヴォールクと呼んでくれる」

「ニコライっ・・・、素敵な名前だなっ」

リョウコは目尻の涙を手で拭い、手を差し出した。
恐らく握手の意を込めているのだろう。
"狼"はその小さな手を握り、握手を交わした。

「私は、リョウコっ・・・。キサラギ・リョウコだっ。」

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◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/09(月) 20:55:11.14 ID:OAAHkrne0<> 地下特有のジメジメとした湿気。
その湿気のせいもあってか、周囲はとてもカビ臭いのが、いやと言うほど理解できる。
愚痴を言えばキリがない。
このボロボロの体もそうだし、未だ痛みが引かないこの爪の剥がれた指もそうだ。
一体自分は何故こんな環境下に置かれているのだろうか。
傷だらけの兵士は、最後の力を振り絞り、芋虫が這うように、ゆっくりと、光が射し込んでいる場所を目指していた。
あの穴は、拷問官どもが去ったあと、偶然石の壁の石がゴロリと落ちて開いたものだ。
おそらく老朽化が進んでいたのだろう。だが穴があく理由なんぞはどうでもいい。
逃げれるか逃げれないか、傷だらけの兵士にとってはそれだけが頭の中を埋め尽くしている。

「はぁ・・・はぁ・・・っ」

顎で進んできたせいか、首の筋肉がつりそうだ。
何より自分は衰弱しきっている。
何日もの間、何も食べていない。早く死にたかったからだ。
それなのにどうしてだろう。
今自分は、生きるためにイモムシのように地面を這いながら、脱出しようとしているのだ。

(・・・キャサリン)

ふと頭の中に、妻の顔がよぎる。
最後に、戦地に赴く前。
彼女と話したひと時の時間。彼女の笑顔、送り際の泣き顔。大きく手を振る妻。
それらが一瞬で、頭を駆け巡った。
走馬灯とはなにか違っていた。
力の入らなかった腕に、次第に力が入るようになる。
足はもはや他人のものと思えるぐらい重かったのに、今では意のままに動く。

まだ生きて、やり遂げることがある。

傷ついた兵士は、誰もいないジメジメとした拷問室を、少し、また少しと逃げ出しつつあった。

「・・・っは」

大きく息を吸って、再度前に進む。
動かなかった足を器用に使い、前に進むスピードもそれなりに速くなる。

あと数センチ。幸いにも石の壁にできた穴は自分一人が入れるくらいの大きさだ。
高さもそれほどない。抜け出すには最高の条件が揃った。

「ぐっ・・・ぅっ」

顔全体を使い、体を持ち上げる。
それがこの上なく苦痛でも、耐えなければならない。
妻に会うために。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/10(火) 20:35:45.81 ID:cwy39Use0<> 「おい、敵だと?政府の連中じゃないのか?」

反政府軍の歩兵たちが、出撃に備えていた。
今回は毎度の出撃と違い、政府軍が相手ではない。
相手の性質が解らない以上、慎重な行動をするべきである。

「偵察部隊からの話だと、白い背景に赤い丸が中央に描かれている旗を掲げて、前進してきているらしい」

「・・・そいつらって日本軍じゃねえのか?白の背景に赤、日の丸のことだ」

「へえ、あのジャップ共が?俺らを見くびってるとしか思えねえなァ」

「おう、目にもの見せてやろうぜ」

男たちは、意気揚々として、まだ焦げ臭さの残る戦場へ続々と進んでいった。
突撃銃を掲げ、雄叫びを上げながら突撃するなんてことはしない。
人数が少ないことを極限に生かしたゲリラ戦法が彼らの防衛戦の要である。



しばらくして、彼らは日本軍と思わしき部隊を発見し、包囲を始めた。
着々と兵士たちが配置につく。念密にねられた役割分担、そして経験が彼らを動かしている。

『こっちは配置についた、そちらはどうだ?』

トランシーバーから、ノイズ混じりに男の声が聞こえた。
自分たちとは反対側で襲撃の準備を進める部隊のリーダーの声だ。

「こっちもバッチリだぜ、いつでも行ける」

『あとは相手の出方次第だ・・・行くぞ』

トランシーバーをウェストポーチに収納し、襲撃の機をうかがった。

敵のアーマーは見たことがない形をしている。
白をベース色とし、所々がライトブルーに発光している。
ヘルメットは全体を覆うようなタイプではなく、特徴のあるデザインで軽量そうなヘルメットに、バイザーが取り付けられている。
バイザーにはいくつかのウィンドウが小さく表示されているのが遠目からだが見て取れる。
おそらく、サーモグラフなどに切り替えが可能なのだろう。

技術を詰めるだけ詰め込んだようなそのアーマーはなんとも不気味なものであった。

『いまだ、攻撃開始』


<>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/10(火) 21:05:54.67 ID:cwy39Use0<> 数人のギリースーツを着た男が、銃身の長い狙撃銃を構え、ゆっくりと敵に感づかれぬように、立ち上がった。
息をゆっくりと吸い、とめる。

「・・・」

そしてトリガーにかかる指に少しづつ力を加えてゆく。
それに伴い、肺の中に溜めていた空気を、少しづつ吐く。

トリガーが完全に引かれた。
数発が四方八方から日本軍に襲いかかる。
気づいたときにはもう遅い。いや、気づきすらしまい。
現にすでに命中して・・・。

「攻撃を受けたぞ!!各隊員はバイザーのスイッチを入れろ、サーモグラフモードで起動だ!」

いなかった。
スナイパーは度肝を抜いた。
自分でも何が起こっているのか、理解しがたい。
弾丸が撃ちだされた瞬間、日本軍兵士たちは、人間とは思えない反射神経でそれを回避したのだ。

日本軍の応戦が始まる。
それぞれが今までかけていたセーフティを外し、一定の間隔で発砲。
よく訓練されたプロの兵士の戦闘スタイルだ。

「くそっ、ジャップ共がァ!」

反政府の一人の兵士が悪態をつき、声を上げる。
木陰に隠れてうまく弾は当たらないものの、それもいつまで続くだろう。
グレネードを投げられればそれで決着がついてしまう。

「・・・ぅあッ!?!?」

予想通り、日本軍は手榴弾を投擲した。
奴らは平和主義じゃなかったのか?平和ボケした国じゃなかったのか!?
歴戦の自分たちがこのようにねじ伏せられた屈辱と、驚きを隠せないまま、反政府軍の兵士たちは爆風に飲まれた。

制圧まで、わずか1分弱。 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/07/15(日) 09:57:01.07 ID:d2qG1l9P0<> まだ火薬の臭いと焼け焦げた死体の異臭がたちこめる中、日本兵は銃を四方八方に巡らせ、親指を立てる。
安全を確認した合図だ。
安全が確認されると、日本兵達は緊張を解いたのか、ため息を漏らす。

「・・・、それにしてもこのバイザー本当に銃弾をよけられるなんて思わなかった」

「半信半疑だったけど、これは凄いな。飛んでくる弾丸が見えたし」

「おしゃべりも程ほどにな、政府軍の援護に来たというのに、その前にやられてしまっては話にならん」

リーダー格の男が低い声で言った。

「今は戦闘区域のど真ん中だ、気を抜けば死ぬぞ」

「は、はいっ!」

「それとあまりそのバイザーに頼らないことだ。最近開発が終わったばかりで、どんな不具合があるかわからない」

リーダー格の男はそう言い、眉をひそめてくわえたタバコに火を灯す。
タバコにほのかに明るい赤の火が灯り、紫煙がもうもうと空に上がった。

「行くぞ、さっさとこの戦争を終わらせよう」 <>
◆g8RyI57iZo<>saga<>2012/08/01(水) 16:01:02.56 ID:M9NxfQGc0<> お久しぶりです

「どうやら日本から兵隊が来たらしいな」

政府軍の必要以上に装飾されている司令室で、年をとった男は、葉巻を吸いながらしゃがれた声で窓の外を見ながらそう言った。
彼の吐いた紫煙はゆっくりと上に昇ってゆき、室内を煙らせる。

「はい、人数はそれほどでもないですが、圧倒的な強さと技術力を誇っているようです」

部下らしき男が、報告書を片手に丁寧に読み上げる。

「・・・こちらの味方とは言え、怒らせるべき相手ではないな」

沈黙。その場にはただ老人が葉巻を堪能する動作の音だけが聞こえる。
息を吸い込み、深く吐く。時折咳き込んでは、また葉巻をくわえて息を吸う。
そんな時、部下の男は申し訳なさそうに言った。

「私なぞが言うのもおかしいですが、・・・喫煙はお控えになったらいかがでしょうか」

「・・・そうだなぁ、私も年だ。自ら先を短くするのも・・・またおかしな話だ」

「・・・」

「だが、私もそれを承知の上で、この葉巻を吸うのさ。世界が戦いを欲するように、私もこの葉巻を欲している・・・」

「は、・・・はぁ」

老人は戸惑う部下を尻目に、いつの間にやら短くなってしまった葉巻を、灰皿でねじり消した。

(・・・日本からの援軍。これがどう影響するか・・・。どう出ようが、それが宿命だ) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/08/02(木) 10:20:42.36 ID:NgIXefO5o<> 来たかっ!! <>