test<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:31:57.93 ID:mM4hAfqU0<>昨日VIPでやってて、途中で落ちたものです。
こちらで初めから投稿しなおします。
よろしくお願いします。

※後半部分、グロ描写があります。ご注意ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1339410717(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>澪「red zone」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:34:51.67 ID:mM4hAfqU0<>
 律は洗面所の鏡に映った顔を見て、溜息を一つ吐いた。

「釣り合わないよなぁ」

 独り言を漏らしながら、いちごと連れ添って歩く映像を脳裏から払った。
律は以前からいちごに恋心を寄せていたが、どうしても告白に踏み切れなかった。
友人という関係を壊したくないのではなく、自分に自信が持てなかった。

「釣り合わないって、誰と?」

「えっ?」

 唐突に後ろから声が聞こえて、律は反射的に振り返った。
そこには、首を傾げる聡の姿があった。

「さ、聡っ?いつから、そこ居たよ?てか、聞いたのか?」

 驚いた律は、矢継ぎ早に言葉を放った。

「いや、聞くつもり無かったけどさ。
洗面所通りかかったら、姉ちゃんが深刻な顔して鏡を眺めてたもんだから。
つい、心配になっちゃって」

 慌てて弁解する聡の姿が、律に先程の自分の対応を思い返させた。
不意を打たれたとはいえ、問い質すような自分の語勢は冷静さを欠いていた。
少なくとも、心配してくれている可愛い弟に向ける態度ではないだろう。
そう反省した律は柔らかい笑みを作って、優しい声音で言葉を放つ。

「ああ、別に責めるつもりは無いんだ。私が勝手に呟いたんだし。
それより、心配してくれて、ありがとな」

「いや、いいって。姉ちゃんの事なんだし、心配だってするよ。
でも、姉ちゃん。聞いちゃったついでに、訊きたいんだけど。
釣り合わないって、誰と?やっぱり、澪ねぇ?」

 もう一度問いを繰り返す聡に、律は手を振りながら返す。
脳裏に蘇る澪の病的な執着心を、振り払うように。

「澪ぉ?ないない、それだけは無いって。
確かに釣り合わないだろうけどさ、それ以前に、澪はヤだよ。
だって、暴力的で怖いし、強引だし」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:36:13.24 ID:mM4hAfqU0<>
「まぁ確かに、澪ねぇは、ねぇ……。
あからさま過ぎて引くっていうか、
他の人の方が、姉ちゃんにはお勧めっていうか」

 聡も同意していた。
澪が律に寄せる病的な独占欲には、聡も辟易しているらしい。

「うん。冷静で優しい人のが、好きだし」

 脳裏にいちごの微笑を思い浮かべながら呟いた後で、慌てたように言葉を継ぐ。

「って、なーに言わせんだよ。
まー、さっきの独り言は、聞こえなかった事にしてくれると、有り難いかな、って」

「えーっ?それじゃ、勿体無さ過ぎるよ」

 聡が放った言葉を、律は復唱した。

「勿体無い?」

「そうだよ、だって姉ちゃん、可愛いもん。誰とだって、釣り合うよ。
ただ、姉ちゃんには自信が無いってだけで。
その冷静で優しい人が誰かは知らないけど、釣り合うって俺が断言する」

 気遣っているだけだと、律は自分に言い聞かせた。
それでも、頬の紅潮は抑えられなかった。

「な、何言ってるんだよぉ、聡ぃ。わ、私、別に可愛くなんかないし。
お世辞言ったって、何も出ないぞっ」

 慌てて否定する声にも吃音が交じり、胸中の高揚を隠せていなかった。

「そんなに可愛いのに、恋心を抑えるなんて勿体無さ過ぎるって、そう言ってるんだ。
それにこれは、お世辞じゃないよ、本心だよ」

 聡は声と表情に真摯さを漲らせて、更に言った。
そこまで言われれば、律も心動くものがあった。

「ほんとに?本当に私、恋が叶っちゃったりするのかなぁ?
別に私が可愛くなくても、実は釣り合わなくても、いいんだ。付き合えるんなら」

 最早恋心を隠す事無く、律は縋るように聡へと訊ねた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:38:07.10 ID:mM4hAfqU0<>
「誰が相手でも釣り合うってのは、保証するけど。
付き合えるかどうかは、相手もある事だから。
姉ちゃんの交友範囲を全て把握してる訳じゃない俺に、保証まではできないよ。
まぁ姉ちゃんなら、大概の相手はイっちゃうと思うけどね」

 聡といちごは、未見の関係ではなかった。
以前、いちごが律の家に来た時、二人は一度会っていた。
もしかしたら、聡の意見を参考にできるかもしれない。
律は胸を高鳴らせながら、震える声で言葉を放つ。

「前、いちごって女の子が、うちに来ただろ?
あの、お姫様みたいなサイドロールの子。
あの子なんだけど、聡的には、どう見えた?成功、しそうかな?」

 聡は考えるように、瞳の動きを止めて押し黙った。
或いは、いちごを思いだしているのかもしれない。

 聡の言葉を待つ間、律は自分の心臓がドラムになったかのように感じていた。
激しく打擲されたドラムを思わせる程に、律の心臓は凄まじい鼓動を轟かせているのだから。
そのせいか、聡が口を開くまでの僅かな時間が、律には酷く長く感じられていた。

「ああ、前に来た、綺麗な人だね。あの人なら、大丈夫だと思うよ。
多分だけど、姉ちゃんに相当な好意を持ってるだろうから。
実はさ、姉ちゃんが料理作る為に席外してる時、俺、色々と訊かれてたんだよね。
姉ちゃんの好みとか、貰って嬉しい物とか。
特に澪ねぇとの関係については、根掘り葉掘り訊かれたよ」

 聡の答えに、律は素直に喜ぶ事ができなかった。
期待していた以上の答えではあるのだが、本当の話だろうかと不安にもなった。
もしかしたら律を元気付ける為に、聡が気を使っているのかもしれない。

「その話、ほんと?ホントにホントの話?」

 律は上目で聡を見遣りながら、念を押すように訊ねた。

「本当だよ」

「でも、聡。今までそんな事、一言も言ってなかったし」

「ていうか、訊かれなかったし。
それに、姉ちゃんが連れてくる色んな子から訊ねられる、良くある事だったし。
まぁだからこそ、大抵の相手なら大丈夫って、太鼓判押せるんだけどね」

 初耳だった。驚いた律は二の句が告げず、黙って聡の顔を見つめた。
対する聡は思慮するように指を顎へと当てながら、言葉を続けてきた。

「それに、いちごさんからは別に口止めはされてなかったけどさ。
こういうのって、言わないのが普通なんじゃないかって、そう思ってた。
でも今になって考えると、言って欲しかったのかもね。
そうやって、遠回しに姉ちゃんに好意を伝えようとした。
だから、敢えて口止めしなかった」

「か、考え過ぎだよ、聡」

 そう窘めつつも、律は聡の言葉を信じたかった。
自己に有利な話だけ信じたがる人間の傾向さえ、今は擁護してやりたい気分だった。
その典型的な例が、今の自分なのだから。
それを自覚しても抑えられない程、いちごに対する律の恋慕は深い。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:39:56.12 ID:mM4hAfqU0<>
「そうかな?あながち、間違いでもないと思うけど」

「まぁ、参考にするよ。ありがとね、聡」

 情報を教えてくれた事に対する礼なのか、律を気遣ってくれた事に対する礼なのか。
律自身でも分かりかねているが、どちらにせよ感謝の気持ちは同じだった。
だから真摯な思いを込めて、礼を言った。

「そんな改まんなくてもいいよ。本当に参考になる話だったのか、自信ないし」

 聡は照れたように笑いながら、手を振って返してきた。

「充分に参考になったよ」

 少なくとも、律の背を押すだけの効果はあった。
そう、律は決めていた。いちごに告白しようと。

「あ、そうだ。聡」

 決意して立ち上がった律だったが、ふと思い付く事があり足を止めた。

「何?姉ちゃん」

「あ、いや。さっきさ、いちごに色々訊かれたって、言ってたよね?
それで、私が貰って嬉しい物を尋ねられた時、何て答えた?」

「向日葵をモチーフにしたアクセって答えといた。
姉ちゃん、向日葵好きだろ?」

 律は顔に満面の笑みを浮かべた。

「うんっ。ありがとね、聡」

 今度は、分かっていた。
情報を教えてくれた事に対する礼だと。
礼の言葉のみならず、今度、聡に何か奢ってやろうと。
律はポケットの財布を握りながら思った。
財布に付けた向日葵のピンズが、指に触れた。
それは、いちごから貰った物だった。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:43:40.36 ID:mM4hAfqU0<>
*

 澪の眼前には、連れ添って下校する律といちごの姿があった。
人通りが少なくなった頃合いを見計らって、澪は後ろから話し掛けた。

「おい」

「ん?」

 律といちごは、同時に振り向いた。
律は短い声を放ち、いちごは黙ったまま。

「あのさ、あんまり、いちごと一緒に居ない方がいいと思うけど」

 澪はいちごが居る事を無視して、律へと言った。

「いや、何で?」

 そう返す律の表情には、怪訝とも倦厭とも取れる表情が浮かんでいる。

「変な噂が立つぞ。いや、既に立ってる。
二人が付き合ってるって、そういう噂が」

 三日程前から、澪の周囲にそういう話をする者が表れ始めた。
早くも今となっては、事実として周囲には受け止められている。

「噂?何言ってんだよ、事実だよ。公言してる事だし。
ていうか、澪も聞いてるはずじゃん?」

 律の声には、心底呆れたような倦んだ響きがあった。

「ああ、冗談か何かだと思ってたよ。
そういう冗談も控えた方がいいって、忠告したかったんだ。
悪戯好きな律の性格は知り尽くしてるけど、度が過ぎると既成事実にされちゃうぞ」

 自分に都合の良い話だけ、信じていたかった。
都合の悪い話など、信じたくなかった。
それが多くの人間が陥る典型例だと自覚していながらも、澪は抗うように言った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:45:15.52 ID:mM4hAfqU0<>
「既成事実も何も、本当の事だって。
ていうか、今の話も疑ってるのか?ほんと、病的だよ」

 律は溜息を吐くと、近くにあった自動販売機へと身体を向けた。
それが自分との話を拒絶する仕草として、澪には映る。
澪は何とか話を続けようと、財布を取り出した律へと向けて言う。

「あ、その向日葵のピンバッジ、可愛いな。律には似合ってるよ。
律、向日葵が好きだものね。何処で買ったんだ?」

「知らないよ。いちごから貰ったんだもん」

 律は動きを止めて、横目だけ澪へと向けて答えてきた。
律との会話は続いたが、望まぬ答えだった。

「嘘言うなよ、自分で買ったんだろ?
今度、私が買ってあげるよ。
いっぱい買ってあげるから、いちごから貰ったなんて嘘を言うのはよせよ」

 自分の言動が藪蛇となった澪は、感情的になって言う。
対する律は大仰な溜息を一つ吐いてから、言葉を返してきた。

「嘘じゃないっての。どうしてそう、自分の妄想に執着するんだか。
繰り返すけど、本当に病気だね」

「ねぇ、律。だったら、治療してあげないと」

 それまで黙っていたいちごが、律に続けて口を開いた。

「治療?」

 復唱しながら振り向いた律の唇に、いちごの唇が重なる。
途端、律の顔が赤く染まった。
澪もまた、顔を赤く染めあげた。
尤も、同じ色でも異なる感情から齎された赤であると、澪とて分かっていた。
律は羞恥から、そして澪は滾る怒りから。

「何やってんだよっ」

 澪は怒りのままに咆哮すると、突進して二人を引き剥がした。
そのままいちごの両肩を締め上げて掴み、顔を寄せて言葉を叩きつける。

「私の律に、何やってんだよっ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:47:30.49 ID:mM4hAfqU0<>
「何って、澪が病的に律の話を信じないから、治してあげようと思って。
冗談や悪戯でキスまではしないでしょ?
これで、信じてくれた?」

 澪に詰め寄られているにも関わらず、いちごは落ち着いた態度で言葉を返してきた。
律の恋人だという確たる地盤が、その余裕に繋がっているのだろう。

「お前っ、律を誑かすなよっ」

 澪は苦し紛れに叫ぶと、いちごの両肩を更に強く締め上げた。
いちごの表情から冷静さが消え、痛みを訴えるように端正な顔が歪む。

「止めてっ、いちごに乱暴な事しないでっ」

 叫びながら割り込んできた律によって、澪は突き飛ばされた。
勢い余って身体が自動販売機に激突したが、律に気にした風は見られない。
守るようにいちごの前に立って、澪を睨み付けてくるだけだった。

「痛っ、何するんだよ、律。いいか?お前は騙されてるだけなんだ。
今ならまだ間に合う。私の所に帰って来いよ。
そんな悪の帝王みたいな女に入れあげても、決して幸福にはなれないよ」

「おい、私のいちごに、酷い事言うなよ。
私は騙されてなんかいない、誑かされてもいない。
私もいちごも、愛し合っているんだよ。澪の入る余地なんか、何処にも無いんだよ」

 諭すように言い聞かせた澪に対し、語勢を強めた律の言葉が返ってきた。

「お前……じゃあ、じゃあ何か?
騙されてたのは、私の方だっていうのか?
私を騙してたのが、お前だったって言うのか?
律、前に言ってたじゃないか。私の事好きだって、肌だって重ねた仲じゃないか」

 澪は縋るように言った。
脳裏の中では、未だ自分に甘えてくる律の姿を思いだせる。
それが眼前の律とは対照的なまでに異なっていて、
落差の激しさに澪は現実感さえ喪失しそうだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:49:43.60 ID:mM4hAfqU0<>
「あんなの、その場の雰囲気に飲まれてただけだし。
あの時、身体の調子崩して弱ってたし」

 二年の始めの時の話だった。
あの時、確かに律から愛されていたと、澪には断言できる。
和と澪が仲良くしているだけで、律は嫉妬に駆られた行動を取っていた。
その時に律が体調を崩した原因も、澪との距離感が起こした心因性のものだったはずだ。

 だが今や、律はその時の恋心そのものを否定していた。
雰囲気という一言で、澪との過去を唾棄してしまっている。

「律……お前……」

 呆然と呟く澪を余所に、いちごが割り込んでくる。

「ああ、つまり。
律が体調を崩しているのを良い事に、澪が押し倒してきたんだ。
律、可哀想。
誑かしてるのは私じゃなくて、澪の方だったと」

 最後にいちごは、皮肉めいた笑みを浮かべた。
いちごが表情に変化を付ける事は、少なくとも澪の前では珍しい事だった。
先程、澪から受けた痛罵を根に持っているのかもしれない。

「でももう、目が覚めたよ。私はさ、いちごが好きなんだから」

 律はいちごに同調して言った。
澪がいちごを罵った時とは、対照的な反応だった。

「律……私、何か悪い事したの?
それとも、やっぱりいちごの事が好きになったから、私なんてどうでも良くなったの?」

 今更原因を求めても、遅い事は分かっている。
それでも澪は、問わずにはいられなかった。

「別にいちごの事とは、関係ないよ。
いちごと付き合うようになったのは、三日くらい前からだし。
いちごの事を好きになったのはもっともっと前だけど、
澪の事はそれ以前から、しつこいと思ってたよ。
ていうか、遠回しに別れを告げても、澪には通じなかったし。
直接言うと、お前怖そうだもんな。だからこれ、乗り換えとかじゃないよ」

 思い当たる節ならあった。
律の澪に対する態度が、日に日に冷たくなっていったのだ。
澪は何とか律の心を取り戻そうと、必死のアプローチを繰り返していた。
それとても負の効果となって、律と自分を遠ざける結果になっていたらしい。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:51:18.63 ID:mM4hAfqU0<>
「じゃあ何で今は、そうはっきりした態度を取ってるんだよ。
おかしいじゃないか。直接言えなかったのなら、今だって」

 反論した所で、律の心が帰ってくる事は無い。
分かっていた、それでも反駁せずにはいられない。

「いちごが傍に居て、勇気をくれるから。
それに、私がいちごに告白できるよう、背を押してくれた人がいるから。
その応援に応える為にも、澪との仲を曖昧にはできないよ。
私はもう毅然としないと、いけないんだ」

 二人の仲は、律の告白から始まったらしい。
だが、それ以上に澪の注意を引く言葉があった。

「応援?誰かが、お前といちごの仲を取り持ったのか?」

「そんなんじゃなくって、言ったろ?背を押してくれたって。
私が自分に自信を持てなくて、いちごへの告白を躊躇ってた時にさ。
聡が背を押してくれたんだ。聡が居なきゃ、きっと付き合えてなかったよ。
だから、その思いに応えたい」

 律は先程の言葉通り、毅然として言った。

「聡が……」

 澪は愕然とした思いで呟く。
弟のように可愛がっていた存在からさえ、裏切られた思いだった。

「そう言う事。じゃあな、澪。
私ら、そろそろ帰るから」

 呆然と立ち尽くす澪に構う事無く、律はいちごの手を取って歩き出した。
咄嗟に我に返った澪は、必死の思いを込めて叫ぶ。

「ま、待てよっ。律、絶対に後悔するぞ?
私を捨てるんなら、絶対に酷い目に遭うぞ?」

「稚拙な脅迫なんか、聞く耳持たないよ。
いちごに何かしたら、私が一生澪を許さないし」

 律は振り返る事なく、歩きながら言った。
続いていちごが歩きながら顔だけ振り向いて、澪に言う。

「同じく。律に何かしたら、私だって許さない」 

「ま、待てよ。待ってよ……待って……」

 なおも繰り返す澪に、二人はもう反応を返してこなかった。
澪は絶望に打ちひしがれたまま、その二人の背を見送る事しかできなかった。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:53:09.21 ID:mM4hAfqU0<>
*

 澪は紙袋を手に、満身創痍の心を抱えて帰路に就いていた。
つい先程律から受けた拒絶の仕打ちは、
残酷なまでに澪の身体と精神を苛んでいる。
それが故に、錯乱したかのように余計な出費までしてしまった。
その出費が、今手にしている紙袋の中身だった。

 紙袋には、向日葵を擬したピンズの他、鬘も入っている。
律達と別れた後に寄った雑貨屋で、パーティーグッズとして売られていた鬘だった。
目当ては向日葵をデザインしたピンズだったが、この鬘も澪の目にふと留まったのだ。
その質感と色が、律の髪に似ていた。
律の髪に比べれば随分と長いが、切る等の手を加えれば瓜二つだろう。
そう気付いた澪は、衝動的にこの鬘を買ってしまっていた。
今となっては、この鬘を律の髪型に擬して作り変える事に、何らの意味も見いだせなくなっている。
そもそも、向日葵がデザインのピンズを買うという目的からして、最早意味など無かった。

「何やってるんだろうな、私は」

 自嘲気味に澪が呟いた時、その独り言に反応する声が前方から返ってきた。

「ん?あ、澪ねぇだ。どうしたの?」

 声に釣られて目を向けると、聡の姿があった。
呆然と歩いているうちに、気付けば自宅の傍まで来ていたらしい。

「聡、か」

 澪は呟くと、律から受けた話を脳裏に蘇らせた。
聡が余計な事さえしなければ、律がいちごと付き合う事は無かったはずだった。

 聡はそのような澪の思いに気付く事なく、然も心配そうな顔で言葉を放ってきた。

「暗い顔して変な独り言呟いて、どうしたの?」

 お前のせいだ、そう言いたい思いを澪は堪えた。
代わりに、探るように言う。

「ちょっと、ね。お前の姉に、フラれちゃってさ。
酷いよな、律は。新しい子と付き合うんだって」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:54:19.21 ID:mM4hAfqU0<>
「あー、そういえば、姉ちゃん、綺麗な人と付き合い始めてたね。
でもまー、良かったんじゃないの?
元々さ、澪ねぇと姉ちゃん、性格的に合わなかっただろうし。
新しい恋を応援して身を引くていうのも、親友の努めってものだよ」

 白々しく諭す聡に、澪は激しい怒りの念を覚えた。
聡さえ居なければ、その思いが沸々と強くなってゆく。

「聡は、私と律より、律といちごの方が合ってると思う?
ああ、いちごってのは、律の新しい恋人の事な」

 澪は一歩一歩、聡に近付きながら言う。
その際、人通りの有無を確認する事も怠らなかった。

「正直に言えば、そうだね。
まぁ澪ねぇには、もっといい人が見つかるから、元気出しなよ。
ていうか元々、姉ちゃんと澪ねぇって、付き合ってるように見えなかったし」

 聡が答え終わった時には、もう澪は聡の眼前にまで接近していた。

「ああ、それで。それでお前は、不要な事をしてくれたのか。
私と律の仲を引き裂いたのか」

「えっ?何言ってるのみっぐぼぉっ」

 聡の言葉が、途中で無様な呻き声に変わった。
聡の鳩尾へと、澪が素早く拳を打ち込んだからだった。
澪は容赦する事なく、無防備に浮いた聡の顎へと拳を突き入れた。

「っ」

 聡の口から荒い吐息が漏れ、その身が地へと崩れ落ちる。
更に澪は、聡の喉元を革靴の爪先で蹴り込んだ。

「っ、はっ、っ、はっ」

 聡の口から、苦しそうな絶え絶えの呼吸音が響く。
その口を片手で塞ぎつつ、澪は聡の身体を抱え上げた。

「やっぱり姉と弟、律と同じく、軽いね。
さ、少し静かにしてような」

 姉と弟、その自分の言葉で、澪は聡の顔立ちが何処となく律と似ている事に気付いた。
鬘が無駄にならずに済みそうだと、澪はそう思いながら自分の家へと急いだ。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:56:21.40 ID:mM4hAfqU0<> ここまでが昨日投下分です。以下、投下していない部分となります。
けいおんらしからぬグロ描写がありますので、改めてご注意を。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:57:36.04 ID:mM4hAfqU0<>
*

 ベッドへと大の字に縛り付けている聡に、鬘を被せて澪は満足気な笑みを浮かべた。
既にその鬘は、律の髪と同じ長さにカットしていた。

「うん、良く似合ってる。こうすれば、もっと似るかな」

 澪は鬘の前髪から頭頂部にかけてゴムで結わえて、髪型も律に擬した。

「うん、上出来、上出来。思ってた通り、律に似てるな。
さて、聡」

 澪は聡の顔を見据えて、言葉を続ける。

「お前のせいで、私と律は別れなくちゃいけなくなった。
それはお前も、知っている事だろう?さっきは、白を切ってたけどさ。
だから、その責任をお前に取ってもらおうと思って。
幸い、お前は律に似てる事だし、律の代わりにお前が私の物になれよ」

 澪はそう命令した。
そもそも澪は、聡に拒否権など与えていない。
聡の口に、下着とタオルで作った猿轡を嵌めているのだから。
聡はただ、怯えた目を澪に向けてくるだけだった。

「それが何を意味するか、お前にも分かってるだろ?」

 澪は服を脱ぎ捨てながら言った。
更に下着までも躊躇いなく外して、堂々と裸体を聡に見せ付ける。

「お前も、脱がせてやるな」

 澪は裁縫箱から、布を断裁する鋏を取り出した。
その鋏を用いて、聡の服や下着を切り裂いてゆく。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 19:59:09.94 ID:mM4hAfqU0<>
「へぇ?聡ったら男の子なのに、女の裸見て興奮しないんだ?
まぁ律と似てるから、私の身体を見て興奮しないだけかもな。
いちごの裸なら、もっと雄々しく隆起したのかな?」

 澪は裸となった聡の性器を撫でながら言った。
澪の裸を見ても、聡の性器は勃起していない。
性欲よりも、恐怖の方が勝っているのだろう。

「まぁいいや、無用の器官だし。
だってさ、律にはこんなの、付いてないものね。
まだお前を律と呼べない理由が、ここにあるんだ」

 聡は何をされるのか予想が付いたのだろう、瞳が恐怖に大きく見開かれた。

「骨が無いから、工作用の鋏で切れるかなぁ?
一応、キッチンから肉切り用の包丁も持って来てるけど」

 澪は裁縫用から工作用の鋏へと持ち替えて、交差部分を聡の性器の根元へと宛がった。
聡は身体を激しく振る素振りを見せているが、拘束されているので動きは鈍い。
首だけが、凄まじい勢いで左右に振れている。

「さぁ、私への罪を贖う為に、ちゃんと律になろうな」

 澪は鋏に力を込めた。
柔らかい肉に刃が食い込み、真っ赤な血が溢れてくる。
聡の口から、布を通してくぐもった呻き声が聞こえてきた。
それに構う事無く、澪は更に力を込めた。

「筋線維のせいか、これ以上は流石に固いね。片手じゃきついか」

 澪は両手を鋏の柄に宛がうと、更に力を込めて握った。
そうする事で固い肉に少しずつ、刃が食い込んでいく。
確かな手応えを感じた澪は、自身の体重も載せるように柄を握り込んだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 20:00:38.69 ID:mM4hAfqU0<>
 性器を切り落とそうとする澪に対し、聡は凄絶な反応を見せていた。
聡は泣きながら首を振り、涙を方々に散らしている。
聡の頭部付近にできたシーツの染みは、その涙の残骸だった。
聡の性器から溢れる血も夥しく、シーツに赤色を浸食させてゆく。
根を圧迫された陰茎の先端は膨れ上がり、赤く変色していた。

「もう、少し、だ。もう少しで、ほら」

 強く握っているせいか、鋏の柄が手に食い込んで痛みすら感じさせる。
それでも澪は力を緩める事なく、鋏を握り続けた。
そうする事で、後僅かだと言う感触がより直接的に伝わってきた。
ここが最後の関門だと、痛む指に鞭打って澪は更に体重を乗せた。

 澪の受けた感触は正しかった。
すぐに鋏の刃が勢いよく閉じ、聡の性器がシーツの上へと転がる。
聡は顔を仰け反らせると、鼻から荒々しい呼吸音を漏らした。

「ああ、疲れたー。指に負担加えたりして、ベーシストとして恥ずかしいな。
さて、聡。次は、この袋だね」

 澪は血塗れになった鋏を放ると、聡の陰嚢を右手で掴んだ。
そして空いた左手で、肉切り用の包丁を握る。
鋏で切る事は、もう考えていなかった。
脂と血が付着していては、拭いた程度で切れ味が戻るとは思えない。
鋏では思っていたよりも陰茎の切断に手間取った、という理由もあった。

 澪は陰嚢を伸ばすように引くと、根元へと包丁を添えた。
そのまま、鋸の要領で切断に取り掛かる。

「──っ」

 猿轡に邪魔され喋る事ができない聡は、鼻息と身振りで痛みを伝えてきた。
身振りといっても、先程と同じく首を振るだけだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 20:03:04.72 ID:mM4hAfqU0<>
 澪は聡の声にならない叫喚など無視して、淡々と刃を動かす事に集中した。
やがて、陰茎の切断よりは容易く、陰嚢の切断に成功した。
血が溢れ出てシーツに零れ、赤色を更に深く濃く染み込ませてゆく。
その赤には、若干ながらも黒みがあるようにさえ見えた。

「ふふっ、更に律に似てきたよ。いやもう、律そのものなのかな。
だってほら、この赤い血。まるであの日を迎えたみたいだ。
おめでとう、女の子にデビューしたんだよ、聡。いや、律」

 澪は微笑みながら、聡の股から噴き出した鮮血を月経に擬えた。

「実際には律はさ、ここまでグロテスクじゃないけどね。
律のヴァギナはこんな濃い赤色じゃなく、淡い桃色だったし。
とは言っても、見たのはもうかなり前になっちゃうけど。
まぁ、その辺は妥協するか。あの日だから血に塗れて赤い、って事にして。
でも、割れ目と穴は作らないといけないね」

 澪はまだ満足していなかった。
包丁を聡の股に宛がうと、縦に深く切り付けた。
途端、聡の首が跳ね上がる。
数少ない、聡の痛みを伝える手段なのだろう。
澪は軽く笑って、からかうように言う。

「あはっ、イったみたいな反応するね」

 澪は続いて包丁の先端を、今作った裂傷の中央辺りに軽く突き入れた。
陰門を擬した穴が広がり過ぎないよう、あまり深く突き入れる事はしなかった。
代わりに、先端を尖らせた鉛筆を束ねて、今開けた穴へと深く突き入れた。
包丁と違い太さが均一な為、穴を広げずに深める事ができる。

 穴から血が溢れ、聡の身体が痙攣したように小刻みに震えた。
鉛筆を奥へ奥へと捩じ込む度に、血の量は増してゆく。
それと呼応するように、聡の鼻息の荒々しさも増した。

 ただ、奥へと鉛筆が進む程に、突き入れる為に必要な力も増してゆく。
だがもう、深さは充分だろう。
澪はそう判断すると、鉛筆の束を抜いた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 20:04:33.35 ID:mM4hAfqU0<>
「律って、あの日の出血量が多い人なんだね。こんなに、真っ赤だよ。
ああでも、暴れたから鬘がズレちゃってる」

 澪はもう、聡の事を律と呼んでいた。
段々と、聡と律の見分けが付かなくなってきていた。
鬘の位置を直す事で、その傾向には更に拍車が掛かった。

「ああ、そういえば。良い物があるんだった。
さっき約束もした事だし、付けてあげるね」

 澪は紙袋から、先程買ってきた向日葵がデザインされたピンズを取り出した。
それを聡の肌へと、直接刺し込んでゆく。

「律、向日葵好きだろ?だからいっぱい、買ってきたよ」

 それは聡にとって、絶望的な宣告だろう。
それだけ、身を刺す痛みが多いという事なのだから。

 澪は容赦せずに、大量のピンズを聡へと次々に刺した。
耳朶、臍、乳首、脇、胸部、腹部、と。
その度に聡は、鼻から荒い息を漏らした。
もう体力が無いのか、首を激しく振る事はしなかった。
ただ、刺す場所が股の裂傷に及んだ時、聡は再び身体を痙攣させた。

「震える程、嬉しいの?」

 澪は聡の反応に満足すると、針を裂傷の内側から外側の肌へと貫通させた。
そして剥き出た針へと、留め具を宛がった。
裂傷の反対側にも同じ処置をする事で、聡の裂傷は開かれた陰唇のようになった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 20:05:48.99 ID:mM4hAfqU0<>
「ふふっ、準備完了、だね。じゃあ律、私を捨てた事、贖ってもらうよ?
私と交わって、償ってもらうよ?」

 澪は聡の股の穴へと、指を入れてゆっくりと動かした。
聡の身体はまたも痙攣を示したが、鼻息が荒くなる事はなかった。
大量の失血が、聡から反応を奪っているのだろう。

「律、私、もう、我慢できないよ」

 澪は指を抜くと、聡の身体へと覆い被さった。
そして自分の陰唇と、聡の股の裂傷を重ねて擦り合わせた。

「んっ、はぁ……」

 澪は恍惚とした吐息を漏らすと、聡の顔を両手で愛しげに掴んだ。
聡の顔からは血色が失せて、瞳も虚ろだった。
生命が失われてゆく過程が、そこには表れている。

 澪はその顔に向けて、言葉を紡ぎだす。
それが此処には居ない律に向けた言葉なのか。
それとも、律に見立てた眼前の聡に向けている言葉なのか。
澪自身にも、既に分からなくなっていた。

「なぁ、律。だから言っただろ?
私を捨てると、絶対に後悔するって。
絶対に酷い目に遭うって」


<FIN>
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/11(月) 20:07:39.10 ID:mM4hAfqU0<> >>2-19
以上で完結です。お読み下さり、有難うございました。
近いうちにHTML化依頼を出しておきます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/11(月) 20:09:36.43 ID:jrOK67jXo<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/11(月) 20:47:56.59 ID:I+GhHOKSO<> VIPで書いてて落ちてたやつだな
ぶっちゃけ、けいおんでグロ系はVIPじゃ時代遅れだ(けいおんSS自体も時代遅れ感があるけど) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/12(火) 05:26:15.32 ID:3rz6nl+do<> 誰が得するんだよコレ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/12(火) 19:47:03.98 ID:y4oE1OMSO<> さすが澪ちゃんだぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/06/12(火) 21:45:53.71 ID:FoLA/Kkl0<> HTML化依頼、出してきました。
次のSS発表機会がありましたら、その時もよろしくお願いします。
それでは、有難うございました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/06/12(火) 22:13:12.60 ID:foRKa739o<> 吐いた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/12(火) 22:24:40.13 ID:qYqMISHOo<> あきらかに俺得 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/12(火) 22:30:41.17 ID:tRxnG4mSO<> けいおんが好きじゃないのが伝わってきましたね <>