◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 13:21:40.64 ID:V7FcZp5AO<>
前々スレ
上条「ヤンデレなフィアンマを安価で説得して逃げたい」 + 上条「ヤンデレなフィアンマを安価で幸せに出来たら良いんだけどな…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1339948221/
前スレ
神浄「ヤンデレデレなフィアンマを、安価で心から愛し続ける」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1341246863/
・ヤンデレな右方のフィアンマさんに愛され過ぎて恋人同士→事実婚状態になった上条さんがタイトル通り頑張っていくお話
・当スレのフィアンマさんは女性です
・基本はほのぼの(???)進行…だと思われます
・キャラ崩壊注意
・>>1は(安価スレの割に)遅筆
※注意※
安価次第で展開が多種多少に変化します(ガチホモから百合まで)
メインCPは『幻想右方』なスレです。
エログロ展開の可能性があります。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342412500
<>神浄討魔「キチデレなフィアンマを安価で愛でる」フィアンマ「俺様は正常だよ」
<見なくてもあまり支障の無い人物紹介><>saga<>2012/07/16(月) 13:23:07.11 ID:V7FcZp5AO<>
上条当麻(神浄討魔)
フィアンマさんに感化されて気付いたらヤンデレになっていた人。
世界中で誰が死のうとこの際構わない、フィアンマを愛する。
良識人かどうかは怪しくなってきたものの、そうそう神罰を下したりはしない。
本シリーズ通しての主人公。
激痛に堪え忍び身体を作り替えたため、寿命がすごく伸びた人。
殺人に対しての恐怖が消失してしまった。仲間を思う気持ちは健在。
『光を掲げる者(ルシフェル)』、『地獄の王(ルシファー)』、『全能の神(ゼウス)』に纏わる術式と、それらを自らの性質と魔力のみで使役する魔術師。
また、任意発動の(そして視線と意思だけでもやや効力を発する等非常に強力な)『幻想殺し』をその身に宿す超人。
その力をもって、イギリス清教元『最大主教』ローラ=スチュアートを殺した。
前作で幸福の定義が非常に曖昧である事が判明。
主に魔術サイド向けの傭兵、始めました。
<>
<見なくてもあまり支障の無い人物紹介><>saga<>2012/07/16(月) 13:24:12.59 ID:V7FcZp5AO<>
フィアンマ(右方のフィアンマ)
"世界をあるべき形に戻す為に(中略)『幻想殺し』が必要だ"というのは全て建て前で、上条当麻本人を『ベツレヘムの星』に閉じこめるべく戦争まで起こした凶悪なヤンデレだった人。
世界の命運などどうだっていい、上条を愛する。
上条が浮気してしまったなら一緒に死ねば解決だ、という後ろ向き過ぎて前向きになってしまったキチデレ。
本シリーズ通してのメインヒロイン。
生まれつき『救世主(メシア)』としての才能を持ち合わせ、『右方のフィアンマ』になる以前から特殊な右手・体質を持っていた。
故に、『千年間神が築きし国で彷徨える民を導く』という『偶像の理論』により与えられた特殊体質の為、身体が原型を留めている間は病気にかかろうと刺されようと"千年間"生き続ける。
また、何百年も前に亡くなった妹は前代の『幻想殺し』の持ち主。
『聖人』とはまた違う形で『神の子』に身体的特徴が似ており、『偶像の理論』により様々な十字教的奇跡(及びその特性を生かした特殊な術式)の行使が赦される。
また、前々作で右腕は肩から(アレイスターにより)斬り取られてしまったため、『聖なる右』は極端に弱体化し(不安定になっ)ている(『禁書目録』から自分の頭に移した『知識』により形は保てる時と保てない時があり、出力は特性通り)。
上条に買ってもらった義手(右腕)を大切に使っている。
性格は心配性気味で綺麗好き。また、完璧主義者で神経質気味。また、どこか感情や感覚がズレている時がある。
ギャグ(ほのぼの)パートではシリアス時と一転して世間知らずな天然、加えて(林檎と梨を間違えて買ってくる位に)どじっこ。
前作でイギリス清教に百年間勤める事に決まった(処刑の一つ)が、基本的には自由な罪人。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 13:54:13.07 ID:Cv+MmOcSO<> >>1乙。キチデレってキチガイのキチなのか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 13:55:53.97 ID:aF1ewlKmo<> >>1乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 14:04:49.46 ID:Cv+MmOcSO<> てか1000でクリの夜になったが一寸前に終わったよな?つまり来年……まぁ、金必死で貯める時間にあてがうか… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/16(月) 14:18:16.27 ID:KC8dhNlZ0<> 乙 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 15:16:00.69 ID:PlAaeUnh0<> 《>>4様 はい、そうです》
真夏である。
春のぽかぽか陽気はどこへやら、真夏の苦しみに、上条はだらけていた。
不幸な事に、部屋備え付けの冷房が壊れてしまったことも関係している。
管理人に涙ながらに暑いですと訴えたところ、扇風機を二台貸し出していただけたのだが、それにしたって暑い。
もう嫌だこんな夏休み、と涙目になりつつ上条は横目でフィアンマを見やる。
死にかけの恋人がベッドに横たわっていた。
さながら抱き枕のごとく扇風機と共に移動しながら、上条はフィアンマへ呼びかける。
上条「フィアンマ、死ぬなー!」
フィアンマ「…あつい」
上条「そりゃ暑いけど、我慢するしか…うぐ…」
フィアンマ「これだから世界は歪んでいるんだ…」
上条「違うだろ…」
もはや元気なツッコミすらいれられず、うだうだとする上条。
ふとフィアンマは起き上がり、『神の如き者』を司るに相応しい荘厳な雰囲気で言った。
フィアンマ「…神は言っている」
上条「!?」
フィアンマ「何か冷たいものを食せと」
上条「冷たいもの…」
何を食べに行く?
1.蕎麦
2.カキ氷
3.アイスクリーム
判定>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 15:17:35.83 ID:Cv+MmOcSO<> あ、じゃあとりま生中と冷奴でksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/07/16(月) 15:24:10.21 ID:xWXePm+V0<> 3 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 16:13:15.85 ID:lyFRxAcu0<>
上条「よし、じゃあアイス食べよう。コンビニでいいか?」
フィアンマ「アイスクリーム専門店が良い」
上条「ショッピングモールの中だっけ」
フィアンマ「…ん」
アイスを食べる事が確定したことで元気が出たのか、フィアンマは立ち上がる。
そして赤いスーツ(一応夏用に薄手生地ではあるが長袖だ)を脱ぎ、瞬時に着替えた。
赤いワイシャツに黒いスカートの丈は短く、膝上15cm程、裾には白いフリルがついている。
ワイシャツは七分袖で、かなり通気性のよさそうなものだ。
最初からそれに着替えればいいのに、と思いつつも、上条は黙ってあげることにした。
そんな訳で、ショッピングモール内、有名アイスクリーム専門店学園都市支店へ、二人はやってきた。
暑いからかある程度混んではいるものの値段の高さもあり、ゴタゴタしているほどではなく。
ダブルを注文するとトリプルにしてくれるキャンペーンを催しているらしく、二人揃ってダブル(もといトリプル)を注文した。
上条は当たり障りの無いバニラアイスとソーダ味にクリームチーズ味、フィアンマはイチゴ味と練乳いちご味、チョコミント。
アイスを食べる度に体温が下がるからか、フィアンマは上機嫌となっている。
そもそも彼女は基本的に機嫌の良い事が多いのだが。躁気質なのかもしれない。
上条「美味い?」
フィアンマ「あぁ、頗る美味だ」
舌先で舐め、乱暴に歯を立て。
フィアンマの食べ方がやたらとエロいことは意識しないようにしながら、笑顔で上条は問いかける。
幸せいっぱいという表情で、フィアンマは頷いた。
みるみる内にアイスがなくなっていく。
アイスを食べ終わったフィアンマはじっと上条を見つめて強請った。
フィアンマ「おかわり」
上条「まだ食べんのか? いいけどさ」
フィアンマに強請られるまま、またトリプルを購入する上条。
愛らしい笑顔で受け取ったフィアンマは満足そうにアイスを食べる。
一時間と経たない内に食べ終わり、フィアンマは上条を見つめた。
フィアンマ「おかわり」
上条「>>13」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 16:23:48.32 ID:Cv+MmOcSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 16:26:48.67 ID:Cv+MmOcSO<> 可愛い過ぎてナデナデしたいがいい加減にしないとぽんぽん壊しますぜフィアンマさんよォ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 16:42:13.52 ID:lyFRxAcu0<>
上条「可愛すぎて撫で撫でしたいが、いい加減にしないとぽんぽん壊しますぜフィアンマさんよォ…」
はー、とため息をつく上条にフィアンマは不可解そうに首を傾げてみせる。
フィアンマ「安心しろ、胃袋は強靭だ。自信がある」
上条「いやいや、幾ら何でも…」
フィアンマ「仕方がない。お前が買ってくれないというのならその辺りの女にでも…」
上条「分かった、後一回だけな!」
きょろ、と辺りを見回すフィアンマにびくつき、咄嗟に止める上条。
フィアンマは爽やかな笑みを浮かべて頷いた。
上条(ダメだ、勝てねえ…)
アイスを食べ終わり、すっかり涼しくなった上条とフィアンマはショッピングモール内に設置された休憩所、そのベンチに座っていた。
公園のものとは違い、オンボロさは窺えない。
フィアンマは退屈なのか、右脚を上にして脚を組んでいる。
パンツが見えそうで見えない、などと考えつつちらちらとフィアンマの下腹部に視線をやっていた上条は、しかしながら真面目な事も考えていた。
上条(どうせショッピングモールに来たならデートしたいよな…)
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 16:45:40.61 ID:Cv+MmOcSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 16:58:52.24 ID:TtAA3h570<> フィアンマの服を買いにいく <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 17:11:19.87 ID:lyFRxAcu0<>
上条「なぁ、フィアンマ」
フィアンマ「ん?」
上条「服買おうと思うんだけど、嫌か?」
フィアンマ「嫌ではないが。お前の服か?」
上条「いや、フィアンマの服」
上条は立ち上がり、フィアンマに手を差し出す。
フィアンマは上品な動きで手を取ると、上条に手を引かれて歩く。
人混みといえど外と室内ではまた違うもので、流されてしまうというほどではない。
しかし、はぐれないようにしっかりと手を握って歩く二人は、やがて目的地である服売り場のフロアに到着した。
今は夏だからか、やたらと水着を推している。
フィアンマは特に欲しい服はないらしく、暇そうに辺りを眺めていた。
上条「何か欲しいの無いのか?」
フィアンマ「服には困っていないからな」
上条「んー…」
じゃあ俺が選ぼう、と結論付ける上条。
フィアンマの手をやわやわと握り、さほど混んでいない服売り場を歩く。
どんな服を買う?(上下あわせて最大三着まで。例:ワンピース、ワイシャツスカート、Tシャツズボン等)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 17:13:56.13 ID:5IrnIymO0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 17:21:48.70 ID:FCyFK8iH0<> カウボーイハット、ワイシャツ、ジーンズ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 17:25:02.63 ID:Cv+MmOcSO<> 何故その3つなんだ… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 17:42:06.12 ID:lyFRxAcu0<>
売り場を歩きつつ上条が手に取りフィアンマに差し出したのは、夏用薄手素材のワイシャツ、脚の長さを際立たせるように細身のジーンズ、そしてカウボーハットの三点。
試着するまでもなくあてがってみれば入るかどうか分かる為、フィアンマは拒否をせず頷くものの、上条を見つめて首を傾げる。
フィアンマ「ところで、これを選んだ理由は何だ」
上条「帽子は何となく気分で。ワイシャツは着るかな、と思ってさ。制服セットじゃなくても、白ワイシャツって良いだろ、着易いし。ジーパンは…」
フィアンマ「…」
上条「ほら、あれだよ、フィアンマ持ってなさそうだな、と」
フィアンマ「確かに持ってはいなかったが」
上条「だからだよ」
まさか今はイギリスに居るであろうと思われる聖人の事を考えてた、などとは言えず。
少しばかり冷や汗をかきながらそう説明した上条を信じてか見抜いてか、フィアンマは会計を上条に任せる。
会計が終わり、フィアンマが先ほど買った部分を魔術的にどこかへしまいこんだ後、フィアンマは思い出したように提案した。
フィアンマ「さて、次はお前の服だな」
上条「別に気にしなくていいんだぞ?」
フィアンマ「俺様だけ、というのもつまらんだろう」
言いつつ、フィアンマは上条の手を引いて紳士服売り場の階まで来た。
やはりこちらも夏だからか、水着を推している。
フィアンマは上条にどんな服を買う?(上下あわせて最大三着まで)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 17:43:39.50 ID:5IrnIymO0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 17:47:04.77 ID:FCyFK8iH0<> 修道士のローブ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 18:03:57.16 ID:lyFRxAcu0<>
しばらく悩んだ後、フィアンマが上条に差し出したのは黒いローブだった。
どのようなニーズにも答える学園都市の服屋は、どうやら修道士の服まで売っているらしい。
上条「う…」
フィアンマ「…ダメか?」
上条「戦う時には役に立ちそうだけどな…」
フィアンマ「…着て欲しい、にゃ?」
上条「ッ」
流石に外で脅し言葉を口にするのはよくないと判断したフィアンマは、媚びてみる事にした。
確か、先月彼氏におねだりする時のフレーズランキングがどうとかでテレビでやっていたのだ。
上条は固まり、受け取ったローブを握ったまま俯く。
フィアンマ「…どうした」
上条「…も、…もう一回…」
フィアンマ「んん? 何をだ」
上条「今の、もう一回してくれ」
見目の悪い人間がやると気持ち悪いで一蹴されるが、幸か不幸か、フィアンマは容姿に恵まれている。
どこぞのサングラスをかけた男友達の『にゃー』と違う可憐な響きを帯びた声にときめきながら、上条は要求する。
鼻血でも出しそうなにやけ顔の恋人を前に、フィアンマはたじろいで後ずさった。
フィアンマ「気色悪い顔をするな、鼻息を荒げるな」
上条「フィアンマが可愛いのが悪い」
す、と一歩踏み出してくる上条の頬を引っ張り、フィアンマは会計すべく場を離れた。
服を購入し終わり、上条の興奮も治まり。
購入した服は紙袋ごと上条が魔術的に自宅へ送った為、手荷物や煩わしさは無い。
再びベンチで休憩している二人に、誰かが近づいてきた。
近づいてきたのは誰?(禁書キャラ名:一名)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 18:05:04.15 ID:FCyFK8iH0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/16(月) 18:05:43.25 ID:BuTPZxgz0<> かんざき <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 20:41:02.59 ID:Cv+MmOcSO<> そして生存してる神の右席の一人はいつまで満を持していれば……クッ俺がもっと頑張ってれば…ッ <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/16(月) 21:30:53.51 ID:DCMVdkqO0<> >>27
オッサン乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 22:18:56.47 ID:Cv+MmOcSO<> 俺はオッサンじゃない、オッサンじゃないんだあああ
ちょっと中身がとしくってるだけだ!
blackcoffeeとびーるとあたりめ、ゲソ唐が好きなだけだ! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 22:33:43.91 ID:SrvPH7Bao<> >>29
ちょっと中身がとしくってるおっさん乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 22:55:41.66 ID:Cv+MmOcSO<> …もうオッサンでいいや俺 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 23:26:56.04 ID:9nI5gK6v0<>
神裂「お久しぶりですね、お二方」
上条「おー、神裂じゃねえか。あれ? 何で今日は学園都市に?」
神裂「実はあなた達に折り入ってご相談がありまして」
上条「相談?」
フィアンマ「気軽なものであれば此処で応対することも可能だが」
神裂「いえ、出来る事なら内密に…」
近づいてきたのは、とある女魔術師。
二人にはよく親しんだ顔だ。フィアンマにも概ね友好的な態度をとってくれる、一人の女性。
奇抜な服装は術式の為のものなのだが、やはり人目を集めてしまうもので。
口ごもり気味に言う神裂の様子に二人は顔を見合わせると、こくりと頷いた。
上条「じゃあ、家で話しようぜ」
神裂「お気遣い痛み入ります…」
そんな訳で、二人は帰宅、一人は上条宅にお邪魔したということである。
神裂「すみません…」
上条「いやいや、いいって。丁度傭兵始めたところなんだ」
神裂「よ…傭兵?」
フィアンマ「少量の賃金で構わないから困り事を解決して金を得たいそうだ」
神裂「成る程。それは構いませんが…」
上条「相談、って言ってたよな」
神裂「はい…」
フィアンマ「何を頼みたいんだ」
神裂「>>35」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 23:28:02.30 ID:Cv+MmOcSO<> 何故遠くなったしwwwwwwksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 23:30:34.11 ID:5IrnIymO0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 23:34:41.12 ID:Cv+MmOcSO<> 極めて個人的な事なので聞くのは彼一人にしてもらっても構いませんか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/16(月) 23:49:11.65 ID:9nI5gK6v0<> 《計算間違えました…》
神裂「うぅん…やはり、…ええと、極めて個人的な事なので、聞くのは彼一人にしてもらっても構いませんか?」
フィアンマ「構わんよ」
思い直した神裂の発言に頷き、フィアンマは一時家を出る。
大丈夫だろうか、と思いつつも、すぐに戻ってくるだろうと結論付けた上条は黙って見送る事に決めた。
神裂は数度深呼吸をし、しばらくの後に、おずおずと口を開く。
そして上条の目を真剣に見つめながら、ようやく用件を口にした。
上条「…相談、っていうのは?」
神裂「……>>38」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 23:51:38.86 ID:Cv+MmOcSO<> その、実は…ご免なさい!!(聖人の力全開で押し倒すヤる訳ではないが) <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/16(月) 23:59:46.06 ID:Cv+MmOcSO<> 上 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 00:14:56.90 ID:tCJ23bgh0<>
神裂「その、実は…ご免なさい!!」
上条「!?」
神裂は勇気を振り絞って、という様相で、聖人の力をもって、上条を押し倒す。
上条は押し倒されながら、ひとまずここにフィアンマが居ない事に安堵した。
上条「…神裂? これはどういう…」
その頃、フィアンマはコンビニで暇を潰していた。
お菓子売り場を眺め、何を買うかでのんびりと悩んでいるのだ。
思考さえも遊興の一種。
暇を持て余したがために思い悩む事で気を紛らわせているというだけ。
上条が傍に居ない寂しさも多少は関係しているが。
フィアンマ(抹茶…)
抹茶チョコレートに視線を引き寄せられ、おずおずと手を伸ばしたフィアンマの手に、誰かの手が重なった。
偶然にも、同じタイミングで取ろうとしたからだ。
手を引きつつ謝罪の一つでもしようかと顔を上げたフィアンマは、その手の主を見、思わず目を見開いて閉口した。
???「お久しぶりですねー」
フィアンマ「…久しい、などというレベルではないが」
打って変わって、上条宅。
神裂火織に押し倒された状態で、上条は困惑していた。
上条「…神裂?これはどういう…」
神裂「>>41」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 00:17:35.02 ID:IsI/x2bSO<> ま、まさか…テッr <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 00:29:28.44 ID:IsI/x2bSO<> 突然ご免なさい……貴方が彼女と…愛し合っているのはわかります。でも、どうしても自分の気持ちを殺し続けるのは辛いんです…ッ
返事なんて要らないですから、何かしてくれと我儘も言いません。でも気持ちだけは知っておいて下さい。
貴方が、ずっと、好きでした
(泣きながら顔うずめる) <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/17(火) 00:29:54.35 ID:RZK8VJyM0<> その……あの子の……いえ、最大主教の命でして…… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/17(火) 00:30:20.17 ID:RZK8VJyM0<> あちゃー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/17(火) 00:31:00.64 ID:RZK8VJyM0<> 皆修羅場好きダナー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 00:41:54.79 ID:IsI/x2bSO<> 悪い。ちと自重はする <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 00:47:01.98 ID:d2KIdAZvo<> まーた修羅場ですか
. ハ,,ハ ミ _ ドスッ
. ( ゚ω゚ )彡―─┴┴─―
* * * \ / つ お断りし / ハ,,ハ
* * \ 〜′ /´ └―─┬/ ( ゚ω゚ ) お断りします
* ハ,,ハ * \ ∪ ∪ / / \
* ( ゚ω゚ ) * .\ / ((⊂ ) ノ\つ))
* お断りします * . \∧∧∧∧/ (_⌒ヽ
* * < お > ヽ ヘ }
* * * < の し 断 > ε≡Ξ ノノ `J
────────────< 予 ま わ >────────────
. オコトワリ < 感 す り >
ハ,,ハ ハ,,ハ .ハ,,ハ <. !! > ハ,,ハ
. .( ゚ω゚ ) . ( ゚ω゚ ) ( ゚ω゚ ) /∨∨∨∨\ ( ゚ω゚ )<お断り .ハ,,ハ
│ │ │ / .\ します>( ゚ω゚ )
,(\│/)(\│/)(\│ /. \
/ ♪お断りします♪ \
/ ハ,,ハ ハ,,ハ .ハ,,ハ ハ,,ハ\
. ( ゚ω゚ ) ( ゚ω゚ ) ( ゚ω゚ ) ( ゚ω゚ ) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 00:52:15.99 ID:tCJ23bgh0<>
神裂「突然ご免なさい……貴方が彼女と…愛し合っているのはわかります。でも、どうしても自分の気持ちを殺し続けるのは辛いんです…ッ。…返事なんて要らないですから、何かしてくれと我儘も言いません。でも気持ちだけは知っておいて下さい」
神裂の言葉に、上条は黙り込む。
神裂は上条の胸元に顔を埋め、ぼろぼろと涙を流す。
嗚咽を堪えながら、おずおずと、言った。
神裂「貴方が、ずっと、好きでした」
上条「…そっか」
上条は神裂の背中をさすることもせず、静かに目を伏せる。
応える訳にはいかない。何もしてやるべきではない。
上条「……俺みたいな男を、好きになってくれて、ありがとな」
一方、フィアンマはショッピングモールへと来ていた。
なぜかといえば、ただただ単純に暑かったから、としか答えようがない。
そんな訳で本日四度目のアイスクリーム(奢り)をいただきながら、『神の右席』時代程目立ちはしないものの緑緑しい元同僚と向かい合って座るフィアンマは、いたく退屈そうだった。
フィアンマ「まぁ、アイスクリームについてはそれなりの評価をしてやってもいいのだが」
ちなみに、フィアンマは別に上条の言葉を忘れたという訳ではない。
しかし、上条は神裂という知り合いの女性と二人きりなのだから、のけ者にされた自分だって知り合いの男性と二人きりで問題は無いだろう、という結論に至っただけだ。
上半身と下半身に分断されて殺された筈の同僚はぴんぴんとしている。
大きくなったなそういえば、などとテッラの子供時代を回想しながら、フィアンマは問いかけた。
フィアンマ「お前は何がどうして生きているんだ」
テッラ「>>49」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 00:55:36.37 ID:d2KIdAZvo<> あの瞬間光の処刑が一時的に完成したので <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 00:56:45.04 ID:IsI/x2bSO<> 何、アックアに斬られた後光の処刑で生を上位にして、誰も居なくなるまで必死で応急処置をし続けたんですねー。半身はとあるカエルさんにくっつけて貰いましたが <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 01:01:55.11 ID:IsI/x2bSO<> そしてまさかテッラさん出してくれるとは思わなかったありがとう>>1貴女は実に素晴らしい書き手さんだわ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 01:07:45.63 ID:tCJ23bgh0<>
テッラ「何、アックアに斬られた後光の処刑で生を上位にして、誰も居なくなるまで必死で応急処置をし続けたんですねー。半身はとあるカエルさんにくっつけて貰いましたが。彼は異教徒ですが評価に値しますねー」
フィアンマ「土壇場で『光の処刑』を完成させた訳か。なるほど、なるほど」
テッラ「入院生活を終え、現在はやることが無いのでどうしようか悩んでいましてねー。『神の右席』は解体となったそうじゃないですか」
フィアンマ「あぁ、俺様のせいだよ」
さらり、と言いつつ、フィアンマはアイスを食べる。
テッラは気分を害する事無く、フィアンマがアイスを食べる様子をいとおしむように見つめた。
人の視線が集中しているからといって食欲が衰える訳ではないフィアンマは、気にせずにアイスを食べ進めていく。
テッラ「第三次世界大戦、ですか」
フィアンマ「あぁ、そうだよ」
テッラ「…まぁ、仕方がありませんねー」
そんな一言で済ませてしまうテッラに、それで良いのかと、むしろフィアンマの方が首を傾げる。
テッラ「命の恩人且つ愛する貴女を、私が責められる訳もありませんからねー」
フィアンマ「はは、お前らしいな」
相変わらず差別主義のテッラに小さく笑い、フィアンマはテーブルの下で脚を組む。
フィアンマ「これからどうするつもりだ? あぁ、聞いてどうこうしてやるという話ではないぞ」
テッラ「>>53」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 01:11:52.15 ID:IsI/x2bSO<> 魔術関連の傭兵でもやりましょうかねー…メンバーがもう少し欲しいですが、誰か心当たりありませんかねー?複数でも構いませんが <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 01:17:27.96 ID:w/Z2JLTx0<> ↑ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 01:18:07.93 ID:d2KIdAZvo<> ↑ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 01:33:27.83 ID:tCJ23bgh0<>
テッラ「魔術関連の傭兵でもやりましょうかねー…メンバーがもう少し欲しいですが、誰か心当たりありませんかねー? 複数でも構いませんが」
フィアンマ「ウィリアム=オルウェル…と、意地悪を言っておこうか。魔術結社として設立するのであれば資金提供と人材を紹介しても良いが…恐らくお前は嫌悪感を示すだろうよ」
テッラ「嫌悪感?」
フィアンマ「上条当麻。『幻想殺し』の方が、お前には馴染みがあるか」
テッラ「……嫌悪感を通り越して憎らしいですねー」
フィアンマ「そんなに、か?」
テッラ「危害を加えられた事ではなく、貴女を盗られたことですかねー」
フィアンマ「俺様はお前のモノではないよ」
テッラ「理解していますねー。貴女は昔からそうでしたから」
アイスを食べ終え、飲み物をちびりと飲みながら、フィアンマは肩を竦める。
対して、テッラは柔らかく微笑んだ。
テッラ「しかし、私が死んだ時に泣いてくれました」
フィアンマ「忘れろ」
テッラ「心が別離していても覚えているものなのですねー」
フィアンマ「トランプのカードはどうひっくり返しても一枚だろう。それと同じだ」
通常魔術と『神の右席』の魔術を使い分けるフィアンマの心は二つ、それ以上に分断されている。
だから、『右方のフィアンマ』としての冷酷な彼女は笑ってテッラを箱に詰めたが、『−−−−−』としての人間らしい彼女は人の死の痛みに涙を流した。
テッラはそれを覚えている。
フィアンマは多少の気まずさを覚えたのか、ぷいとそっぽを向いた。
フィアンマ「メンバーが集まらない場合、単独で傭兵をやるつもりか?」
テッラ「>>57」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 01:37:46.41 ID:IsI/x2bSO<> さすがに一人は厳しいんですねー。なるべく努力はしますが。…もしダメなら貴女と一緒に居たいのですがねー?(ニコッ) <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 02:30:22.41 ID:IsI/x2bSO<> ↑ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 07:36:56.28 ID:PalKFXyAO<>
テッラ「さすがに一人は厳しいですねー。なるべく努力はしますが。…もしダメであれば、貴女と一緒に居たいのですがねー?」
フィアンマ「天の御国に導かれた後であれば、その様な検討も吝かではないが」
にこ、と穏やかで優しい笑顔を浮かべるテッラを見つめ、フィアンマは鼻で笑いつつ言葉を返す。 相も変わらず手厳しい、とテッラは笑って肩をすくめた。
フィアンマは思い出したかのように薄く笑んで言葉を付け加える。
フィアンマ「あぁ、一方的に俺様を守りたいから付近に居たいというのなら、一向に構わんが」
テッラ「…変わらず、期待をさせるのが上手な人ですねー、貴女は」
フィアンマ「そう解っていて尚俺様の事が好きなのだろう。なら、それなりに尽くしてもらおうか」
テッラ「結構尽くしてきたような気もするのですが…」
苦笑するテッラの言葉を遮る形で、飲み物を飲み終わったフィアンマは立ち上がる。
フィアンマ「さて、デートといこうか」
テッラ「おや、『幻想殺し』を放置していて問題無いのですか?」
フィアンマ「あっちはあっちでそれなりに楽しんでいるだろうから、良いんだ。久方振りに遭遇した友人と出歩いたところで、不貞の罪には問われまい」
テッラ「確かにそうかもしれませんが」
フィアンマ「良いから行くぞ。俺様は退屈なんだ」
帰ったところでまだ自分の居場所は無いだろうと判断したフィアンマは、幼少の頃より自分を慕い何十年と愛し続ける男の袖を引っ張り、財布として使うべくショッピングモール内をぷらつくのだった。
神裂は、上条の胸元に顔をうずめたまま、葛藤していた。
自分は、何をしているのだろう。
きっと、彼にだって迷惑に違いないのに。
神裂「……申し訳、ありません。あなた達を引き裂くつもりなど、本当に…無くて…」
上条「>>60」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/07/17(火) 11:37:18.97 ID:8dOGZLfOo<> いやフィアンマに引き裂かれるのはお前のほう…って茶化す場合じゃないな
大事な話なんだ、聞いてくれ…
お前の愛した『上条当麻』は死んだんだ…学園都市に墓もある、俺が殺した <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/17(火) 11:48:13.07 ID:94jO0cO10<> まぁとりあえず落ち着こうか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 12:49:53.45 ID:IsI/x2bSO<> フィアンマさんの魔性っぷりwwwwww>>59死んだ前条さんは1巻のラストのインスタントさんまででそれ以降は今の神浄さんだから神裂さんの愛した?上条さんじゃね? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 15:59:11.68 ID:nvJUbgdd0<>
上条「まぁ、とりあえず落ち着こうか」
落ち込む神裂の肩をぽんぽんと叩いて、上条は遠まわしに離れるよう促す。
一層深く落ち込みながら神裂は上条から離れ、正座したまま俯いた。
神裂「…」
上条「…俺はフィアンマを傷つけたくないし、安易に受け入れるのは神裂にとって失礼だから、絶対に頷かない」
神裂「…はい。重々承知しています」
上条「…お前は、俺の友達だ。今までも、これからも」
神裂「はい…」
ぺこ、と深く頭を下げ、神裂は家を出て行った。
上条はしばし黙り込み、深呼吸を繰り返す。
いたたまれなさと悲しみが、部屋の空気に満ちていた。
そんな上条の分を取り返すかのように、フィアンマは退屈を紛らわしていた。
主にテッラを振り回して遊ぶ、という方法で。
上条に対しては控えめな彼女だが、『駒』という認識の者には、容赦が無い。
ある意味、こちらの方が、彼女は甘えていると言えるのだが…上条はそれを知らない。
テッラはフィアンマに振り回される事も至福の一部として捉え、気分を害するどころか上機嫌で、フィアンマを退屈させないよう提案する。
テッラ「次はあちらに行きましょうか」
フィアンマ「あぁ、そうだな」
<>
イーモバイル対策<>sage<>2012/07/17(火) 16:37:21.69 ID:PalKFXyAO<> + <>
とある男の回想録 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga !orz_res<>2012/07/17(火) 16:39:14.30 ID:nvJUbgdd0<>
かつて。
一夜にして家族も何もかも失った幼い私は、スリをして生計を立てていた。
殴られる事もあった。怒鳴られるだけではすまなかった。
勿論、成功すれば一斤のパンを、満腹になるまで好きに食べ散らかす事も出来た。
犯罪を起こす事に恐怖は無かった。生きていくためには仕方のないことだと。
しかし、成功すればする程、周囲は警戒する訳で。
やがて私は躍起になって犯罪を犯すようになった。主に盗みを。
そんな折、一人の青年の財布をスった。
足の速さと身軽さに自信のあった小柄な私は、そのまま逃走しようとしたのだが。
「すまないが、それは俺様の物じゃないんだ。返してもらうぞ」
私に財布をスられ呆気にとられていた筈の髪の長い青年は、一瞬で私の背後に回り、襟首を掴みあげた。
ひょい、と持ち上げられ、必死で財布を死守しようとする私の様子をひとしきり眺め、彼―――否、彼女は楽しそうに笑った。
取って食われる、という発想にびくつく私の手から財布をもぎとり、彼女は軽くしゃがみ、怯える私と視線を合わせる。
「……殴るのか」
「ん?」
「…財布、盗ったから」
丁寧な話し方など分からず、スラングに近い崩れきったイタリア語で話す私とは対極に、彼女は上品な口調で言葉を話し、緩く首を横に振る。
とても退屈そうな表情だった。人生全てに飽き飽きしていると言わんばかりの。
背中を少し過ぎ、ほとんど腰に届く位の長く綺麗な赤い髪を緩く一つに後ろで結んでいる彼女は、前髪を揺らして首を傾げて。
「その程度では殴らんよ。懺悔すれば赦される程度の悪行だしな。見たところ、家も無いのだろう?」
「………だから何だよ。っつか、懺悔なんかしねぇし。神様なんか信じたって、何も良い事ねえじゃねぇか」
「はは、そうだな。俺様もそう思うよ。…おいで」
時々教会で見かける優しい神父様のようだ、と思った。
言われるがまま、不思議と吸い寄せられるように手を引かれ、とある教会に入った。
動揺する神父を半ば脅すようにして、私の世話を見るよう、彼女は掛け合ってくれた。
「あの、」
「…ん?」
「あ…」
「…俺様は忙しいんだ。何も用が無いのならもう行くぞ。…精々良い子にしていることだな」
ありがとう、と言えないままに、彼女は去っていった。
あの時彼女が手を差し伸べてくれなければ、教会に掛け合ってくれなければ、私は孤児として哀れにも一生を終えていただろう。
命の恩人。感謝してもしきれない、優しい人。
礼の言葉を求める事もせず、彼女はさっさと居なくなってしまった。
その日以来、街の端々まで走り回っても、もう彼女を見つける事は出来なくて。
いつかもう一度会ってお礼を言いたい、と考えた私は、懸命に神を信仰した。
天使のようなあの人にもう一度だけ会いたい。そして、お礼を言いたい。
やがて、私は『神の右席』に迎えられた。
長い長い年月がかかった。ローマ正教においても重要なポジションに見当たらなかった彼女は、『右方のフィアンマ』だった。
私の事を覚えていますか、と言った。覚えているよ、と彼女は笑った。
たったそれだけのやり取りで心臓が跳ねた事で、私は彼女に恋をしていたのだと知った。いや、しているのだと。
人が死ぬ度に彼女は子供のように悲しそうに泣いた。誰にも知られないように、神に祈りながら泣いていた。
ぼろぼろに砕けた心で泣き、何事も無かったかのように淡々と『右方のフィアンマ』として仕事をする。
不安定だ、と思った。そして同時に、どうにか支えてあげたい、とも。
記憶のある多重人格と呼んでも差し支えない程に、彼女の心は別離していて。
自覚はあるのだと、彼女は気にしない風に肩を竦めた。
そんな貴女を愛しているのだと告げた夜、彼女は首を横に振って断った。
好きな人が居る。産まれてくるその瞬間を、見つけ出せる瞬間を、待っている。だから、他人は愛せない。
それでも構わない、と私は思う。彼女が笑って幸せであれば、隣に居るのが私でなくとも。
ただ、彼女がもう泣かないように、嘆かないように、素敵な世界を作ってあげたいと思った。
結局、今でもそれは出来ずに居る。それでも、彼女が今幸福なら、それで良い。
―――神に愛され過ぎてしまったが故に不幸な貴女が、生涯少しでも多く幸福を感じられますように。 <>
イーモバイル対策<>sage<>2012/07/17(火) 16:39:19.58 ID:PalKFXyAO<> + <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 16:45:49.08 ID:IsI/x2bSO<> テッラアアアアアアアアアアア!!!!!!!(´;皿;`) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 16:46:28.86 ID:nvJUbgdd0<>
フィアンマはテッラと別れ、家に帰ってきた。
気配から察し、上条一人だと判断する。
ガチャリ、と鍵を開けて中に入ったフィアンマは上条に近寄り、落ち込んだ様子の彼に声をかける。
フィアンマ「やけに暗いな」
上条「あ…お帰り」
フィアンマ「?」
上条「別に元気無い訳じゃないんだ」
フィアンマ「そうか。…話とは何だったんだ。個人的なものだったのだろう? 解決したのか?」
何の悪意もなくそう問いかけながら、フィアンマは上条にくっつく。
ベッドに座ったまま、上条は後ろ手でフィアンマの頭を撫でた。
上条「>>68」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 16:50:17.40 ID:IsI/x2bSO<> ん?ああ、一緒に傭兵やりたいってさ……うん。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 17:01:27.18 ID:nvJUbgdd0<>
上条「ん? ああ、一緒に傭兵やりたいってさ……うん。現実的に厳しいだろうから断ったけど」
フィアンマ「そうか」
淡白な返事を返し、フィアンマは上条に後ろから抱きついたまましばし黙り込む。
目を伏せて黙る上条の服を握り、フィアンマはつまらなそうな表情でため息を吐いた。
フィアンマ「…嘘が下手だな」
上条「……」
フィアンマ「…大方、告白でもされたのだろう? そしてそのまま抱きつかれた訳だ」
どうしてそこまで分かるんだ、とは言わずに。
上条はただ黙って、何を否定したいのか自分でも不明なままに、首を横に振った。
上条「…」
フィアンマ「…まぁ、赦すよ。そういった行為まではしておらず精々ハグ程度だと、お前を信じている。どのみち百年後にヤツは死んでいるのだから」
上条「…」
フィアンマ「…元気を出せ」
上条「…俺、だんだん自信が無くなってきた」
フィアンマ「自信?」
上条「…>>71」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 17:12:01.10 ID:IsI/x2bSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/17(火) 17:14:57.62 ID:hTt/+arT0<> 本当にお前を幸せに出来るのかな……(号泣) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 17:31:20.43 ID:nvJUbgdd0<>
上条「…本当に、お前を幸せに出来るのかな……」
ぽたぽた、と涙が上条の腿に落ち、ズボンを濡らす。
堪えきれないくぐもった泣き声を漏らしている上条の頭を撫で、フィアンマは首を傾げた。
フィアンマ「俺様は充分幸せだよ。あまり意見を二転三転させるな」
上条「俺、何か…フィアンマに、迷惑、っていうか、悲しませたり、してばっかで…」
フィアンマ「……」
何やら完全に自信を喪失している上条の様子を眺め、フィアンマはため息を飲み込んだ。
そして、呆れたような語調で言う。
フィアンマ「なら、俺様の事はもう幸せにしてくれないのか。そうか。それならば、俺様が誰かに盗られても文句は無いんだな。そこまで自信が無いのに、俺様を守れる筈もなさそうだ。幸い、俺様を好いている男は暫定二人発見したところだしな。…見下げたぞ、上条当麻」
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 18:59:20.82 ID:IsI/x2bSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 19:02:04.74 ID:FPyxMfiIO<> 弱気モードから立ち直りフィアンマに好意を持った男を虐殺しに行く <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 19:05:03.85 ID:IsI/x2bSO<> おうふ…テッラさんとオッレルスさんが… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 19:15:51.12 ID:hML6Qu6T0<>
フィアンマの言葉を暫し黙って聞き届けた後、上条は顔を上げる。
そして振り返り、フィアンマと視線をあわせた時、少年はもう泣き止んでいた。
どこか決意を秘めた瞳だ、と思いつつ、フィアンマは首を傾げたまま問いかける。
フィアンマ「どうした、腑抜け。自信が出たのか?」
上条「…あぁ。もう、大丈夫だ。回復した。目が覚めたよ、ありがとな」
上条はフィアンマを抱きしめ、優しく背中を撫でる。
大きな猫のように大人しく撫でられながら身を預けてくるフィアンマの耳元で、上条はそっと、囁くように問いかけた。
上条「…その、フィアンマに好意を持ってる二人ってのは、誰なんだ」
フィアンマ「……」
さて、具体的な名前を挙げるべきなのだろうか、と考え込み、フィアンマは黙る。
恐らくここで言えば、上条は殺しに行くか危害を加えに行くのだろう。
何と無くではあるが、そのような予想は出来る。
上条「…答えてくれ。誰なんだ?」
フィアンマ「>>78」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 19:30:43.02 ID:IsI/x2bSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 19:35:36.05 ID:FPyxMfiIO<> オッレルス <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 19:37:53.06 ID:IsI/x2bSO<> オッレルスさんが生け贄にwwwwww <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 20:08:41.34 ID:hML6Qu6T0<>
フィアンマ「オッレルスだ」
上条「……」
ぎりり、と奥歯をかみ締める上条。
実はキスされたことがあるなどと言えばどのような顔をするだろう、と思いつつ黙ってフィアンマは上条の様子を見つめる。
上条は静かにフィアンマから離れると、にこっと優しく微笑んだ。
上条「ちょっと散歩してこようと思うんだけど、一時間位待てるか?」
フィアンマ「別段構わんが」
上条「ごめんな。行って来ます」
警戒用に結界を張り、上条はにこにこと笑顔のまま部屋から、そして家から出て行った。
後に取り残されたフィアンマは、一応、といった様子で胸元のロザリオを握り、ベッドに腰掛けたまま目を閉じた。
オッレルスの無事を願うと思いきや、そんなことはなく。
フィアンマ(当麻が怪我しませんように)
いつも通りであった。
二十分が経過し、フィアンマはひたすらに暇を持て余すばかり。
あまりにも暇なので、アックアに嫌がらせがてら通信術式で会話をしかけてみたのだが。
アックア『ぐ、っう』
フィアンマ「何だ、手負いの獣のような声を出して」
アックア『諸事情である』
フィアンマ「今何をしているんだ?」
アックア『>>82』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 21:10:16.28 ID:fhR7KMsZo<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 21:10:44.10 ID:fhR7KMsZo<> 以前から目を付けていた魔術結社と交戦中 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 21:43:39.65 ID:IsI/x2bSO<> 理解 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/17(火) 23:36:49.74 ID:hML6Qu6T0<>
アックア『以前より目を付けていた魔術結社と、ッは、交戦中である』
フィアンマ「お前が戦闘中に息切れとはな。相手は何人だ?」
アックア『そんな事を聞いて何とするのである』
フィアンマ「ん? 暇だからな。で、今何処かは分かっているが、相手は」
アックア『ざっと60人程である』
フィアンマ「そうか」
アックアの言葉を聞き、フィアンマはのんびりと伸びをする。
そして、実に軽い動きで右手を振った。
途端、アックアがしばし黙り込む。
アックア『…』
フィアンマ「…何だ? 味方を巻き込んでしまったか」
アックア『…いや。・・・変わったな、貴様は』
フィアンマ「そうか? 元々、俺様はこういう人間だよ」
他者の為にわざわざ労力を尽くしたフィアンマに、アックアはそう重々しく言葉を紡ぐ。
反して、フィアンマは軽い口調でそう応えた。
フィアンマ「世界を巡って復興でもしているのだったか」
アックア「事実である」
フィアンマ「…ふん、遣り甲斐があるのか?」
アックア「>>86」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/17(火) 23:51:28.80 ID:IsI/x2bSO<> なければ他の依頼を受けるのである。フンッハア!アアア!?アアァァァァァ………ッ <>
saga<>sage<>2012/07/18(水) 00:37:17.95 ID:EavWa1uwo<> 私に出来るのはこれくらいである <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 01:21:30.36 ID:qpyY9gGSO<> 色々ミスってね? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 14:10:33.32 ID:6BEpDWwK0<>
アックア『私に出来るのはこれくらいである』
フィアンマ「ご苦労な事だ」
アックア『初めに貴様の思惑に気付けなかった私自身の責任もある』
フィアンマ「それはどうかな。俺様の思索や命令の意図にすぐさま気付けていたのは、テッラ位なものだろう」
アックア『……』
フィアンマ「お前は無能な駒ではない。…まぁ、俺様の分まで頑張れ」
アックア『他人任せであるな』
フィアンマ「気力が湧かん。…さて。そちらは事後処理があるだろう。それではな」
アックア『礼は言わん』
フィアンマ「不要だ」
通信を切り、再び暇となったフィアンマはベッドへうつ伏せに横たわる。
スカートがだいぶ捲れ上がり少し下着が見えているものの、面倒な為彼女は頓着しない。
上条は、まだ帰ってこない。
フィアンマ「………」
無言で、フィアンマはタオルケットを抱きしめる。
そのままもごもごと顔を埋めた。
男が行うと少々変態臭い行動をしながら、寂しさを紛らわせるためだ。
フィアンマ(……、当麻の、匂いがする)
陽が落ちてきたため、あまり暑くはない室内でそんな事をフィアンマがぼんやり思っていると、ドアが開いた。
振り返れば、そこには上条が立っていた。
上条の状態(無傷も可)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2012/07/18(水) 14:20:21.42 ID:0nIr6ZKAO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/18(水) 14:20:27.94 ID:yFBA0SXt0<> 魔術の使いすぎでショタ条さんになって
オッレルスに連れられて来た(泣きながら) <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/18(水) 14:20:55.71 ID:v52fFpIA0<> ksk <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 14:31:04.65 ID:6BEpDWwK0<>
正確には、上条とオッレルスが、だが。
フィアンマはのろのろと起き上がり、二人に近寄る。
表情には困惑の色。何しろ、上条は泣きじゃくっていたのだから。
ところどころ服が破れているオッレルスはため息をつき、フィアンマと視線を合わせて説明した。
あっさりとした、簡易的な説明。
オッレルス「…特殊魔術にも関わらず、魔力を消費し過ぎた弊害だ。彼の体質も関係してしまったらしい。丁度、6歳位かな」
フィアンマ「…迷惑をかけたな」
オッレルス「いや、この間は俺も程度が過ぎた。すまない」
フィアンマ「そうか。…いや、まぁ、あの時はあれでよかったのだろう」
上条「う、ふぇ…」
未だぐずっている上条をフィアンマに預け、オッレルスはそう謝罪すると静かに出て行った。
予想外の展開に戸惑いつつも口にも顔にも出さず、フィアンマは上条の様子を観察しつつ部屋の鍵を閉める。
そして結界を正確に解除すると、上条を再度観察した。
事情からして、このような幼い姿でいるのは一週間ほどだろう、とフィアンマは予測する。
フィアンマ「…子供の世話は別段苦ではないが…」
上条の内面の状態
1.フィアンマの事は忘れてしまっている、完全な子供
2.フィアンマの事は覚えているが、精神が子供
判定>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/18(水) 14:36:04.21 ID:4AYnaJ730<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2012/07/18(水) 14:37:35.14 ID:0nIr6ZKAO<> 2 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 15:26:53.87 ID:6BEpDWwK0<>
上条「ひぐっ、えぐっ、ご、め…ふぃあん、まぁ」
フィアンマ「…謝る必要性は無い事案だと思うのだが」
上条「うう、ひくっ」
フィアンマ「お前は今日泣いてばかりだな」
そう軽口を叩きながら、フィアンマはベッドに座って上条を手招く。
とぼとぼと近づいてきた子供姿の上条を膝上に座らせ、フィアンマは優しく上条の頭を撫でる。
子供をあやす、優しい手つきで。
泣いた為に呼吸の調子が少々おかしい上条の背中を摩って宥め。
しばらくあやされた上条は泣き止み、深く深くため息を吐いた。
上条「…ふこうだ」
フィアンマ「落ち着いたか」
上条「…いろんないみでな」
フィアンマ「そうか」
しょんぼりとする上条の様子にどこか懐かしい気分になりながら、フィアンマは優しく話しかける。
よくない事だとは理解していても、どうしても、幼い子供は妹に重ね合わせて接してしまう。
フィアンマ「…何か食べたい物はあるか?」
上条「…>>97」 <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/18(水) 15:43:57.50 ID:XN4S6FQm0<> ksk <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/18(水) 15:57:49.19 ID:kDtzQMIW0<> お子様ランチ… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 16:23:26.19 ID:6BEpDWwK0<>
上条「…おこさまらんち…」
フィアンマ「…よし、食べに行こうか」
実は憧れで、どうせなら、などとやたらもごもご言い訳をする上条の頭を撫で、フィアンマは上条を降ろす。
そしてのんびりと上条の手を引いて再び外へ出た。
今度はショッピングモールではなく、ファミリーレストランに向かう為である。
所変わって、ファミレスの店内。
禁煙席で向かい合わせに座り、上条はお子様椅子に座るという屈辱に耐え忍んでいた。
フィアンマはあまり空腹を感じていない為、注文したのはイチゴパフェ。
やたらと機嫌よく表情柔らかなフィアンマを見つつ、おずおずと上条は問いかける。
上条「…なぁ、」
フィアンマ「ん?」
上条「なんでそんなにじょうきげんなんだ?」
フィアンマ「いや、深い意味も理由も無いよ。不機嫌よりは良いだろう?」
ドリンクバーを注文し、先程自分で持ってきた温かいココアを飲みつつ、フィアンマは首を傾げてみせる。
上条は少しばかり不満に思いつつも、小さな手で、小さなフォークスプーンを握り、お子様ランチを食べ始めた。
フィアンマ(ルーチェが居た頃は、このような料理形態は無かったし、金も無かったからな。…代替といえば悪い響きだが、俺様の行動はむしろ良い事なのだから、別に構わんだろう)
上条「ん…」
フィアンマ「…口に付いているぞ」
そう言い、フィアンマは傍らの紙ナプキンを数枚手にして上条の口端を優しく拭う。
兄らしい表情だ、と上条は思う。と、同時に、悔しさのような、嫉妬のような思いも湧いた。
フィアンマ「…美味いか?」
上条「……ん、む」
フィアンマ「…そうか、良かった」
慈愛に満ち溢れた笑顔に思わず見惚れながら、上条はこくりと頷く。
フィアンマは運ばれてきたイチゴパフェをゆっくりと食べながら、時計を見やった。
学生が帰るよう推奨されている時間には、まだ遠い。
フィアンマ「しばらく不便が続くな。服を買って帰るか?」
上条「>>100」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 16:42:36.15 ID:qpyY9gGSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/18(水) 16:45:58.39 ID:kDtzQMIW0<> いや……なんか今服を買いに行ったら嫌な予感が… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 21:43:01.72 ID:1Mv4b9Lr0<>
上条「いや……なんかいまふくをかいにいったらいやなよかんが…」
フィアンマ「いやなよかん?」
上条「んー…なんというか、ともかくふこうのよかんがするから、やめておく。なつばだし、しっかりふくきなくてもだいじょうぶだろ」
フィアンマ「まぁ、それはそうかもしれんが」
それで良いのだろうか、と考えつつも、ひとまずフィアンマはそれでいいと結論付ける事にした。
ちなみに今上条が着ている服はオッレルスが急凌ぎで用意した子供服だったりする。
これを使いまわそうか、などと思案しながらパフェを食べ終えたフィアンマは、静かにココアを啜る。
お子様ランチを食べ満腹になったためか、加えて子供の身体だからか、上条は眠そうにぐしぐしと目元を指で擦った。
フィアンマはそんな上条の様子に微笑ましさを覚えながら、空になったカップをテーブル上に置き、上条の頭を撫でる。
フィアンマ「…帰ろうか」
上条「…ん」
こくり、と頷いた上条の手を引き、フィアンマは会計を済ませると外に出た。
そして家に向かってゆっくりと、上条の歩調に合わせて歩く。
やがて帰宅すると、上条はベッドに潜り込み、もぞつきながら目を閉じた。
フィアンマはベッド脇に腰掛け、ぽんぽんと一定のリズムで上条の背中を叩いて寝かしつけようとする。
上条は抗おうとしたものの、耐え切れずに眠りに堕ちた。
幼い子供寝顔を眺め、フィアンマは少しだけ寂しそうに笑んだ。
フィアンマ「…おやすみ」
上条「んん…すぅ…」
自分は眠くないため、フィアンマは暇を持て余しながら普段の赤いスーツに着替えた。
陽はすっかり落ち、もう室内も暑くない。
しかし熱中症を起こす可能性を考慮して扇風機を点けたまま、フィアンマは退屈を舌の上で転がした。
さて、何をするべきか。
通信術式で誰かと会話でもしようか、という結論に至ったフィアンマは、準備とも呼べない準備をする。
誰と通信する?(禁書キャラ名)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 21:49:32.96 ID:qpyY9gGSO<> ヴェントちゃん希望 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 21:50:16.64 ID:Bmj//y+6o<> オッレ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 22:06:26.59 ID:1Mv4b9Lr0<>
フィアンマ「…」
オッレルス『…やぁ」
フィアンマ「…無事戻れたようだな」
オッレルス『まぁ、な』
フィアンマ「……お人よしが過ぎるからだ」
オッレルス『嘘を言ったつもりはないが。一応は本気だったよ。あの時君が寄りかかってくれば、それはそれで支えようと思っていた』
フィアンマ「…俺様を一方的に好く男は阿呆ばかりだな」
オッレルス『せめて人が良いとか言ってくれないか。…強そうに見えて、頑張っていて、それでも脆くて優しい女性というのは、男は大概好きになってしまうものだよ』
フィアンマ「その条件に当て嵌まるのは俺様よりもお前の身近な女だろう」
オッレルス『そうだな。否定はしないが…』
フィアンマ「俺様にそういう意味で割く時間があるのなら、その女に優しくしてやれ。そもそも俺様はそんなに脆くもなければ優しくもない」
オッレルス『あまり自分を卑下するのは感心しないな』
フィアンマ「お前の歓心を買う必要も無いからな」
オッレルス『つれないな』
フィアンマ「…大体、お前は俺様のどこが好きだと言うんだ。ロクに会話もしていなかっただろうに」
オッレルス『>>106かな』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 22:08:39.43 ID:qpyY9gGSO<> 放って置けない感じ <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/18(水) 22:10:32.39 ID:XN4S6FQm0<> なんかすぐヤレそうだったからwwwwww <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 22:13:01.63 ID:qpyY9gGSO<> …間違ってたらアレだけど、コイツ最近構ってちゃんやってるあのゴミクズか?自治スレでも安価スレに沸いてたりしてるとか言ってたが <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/18(水) 23:03:11.59 ID:1Mv4b9Lr0<>
オッレルス『すぐ性的行為に及べそうだったか、ッ冗談、冗談だよ!』
フィアンマ「はは」
オッレルス『危な…』
フィアンマ「すまんな、手が滑った。文字通り、手が滑ったんだ」
オッレルスの下世話な冗談に対し、フィアンマはシンプルに腕を振った。
途端、オッレルスにちょっとした危険が降りかかったため、冷や汗をかきつつ男は訂正する。
別に怒っているというほどでもなかったフィアンマは肩を竦め、のんびりと脚を組んだ。
オッレルス『…真面目に答えるとすれば、君の笑顔が素敵だと思ったんだ』
フィアンマ「…」
オッレルス『彼から君を盗る気は無い。俺もそんなに若くないしね。…ただ、君は、君が思っている以上に、愛される生き方をしているよ』
フィアンマ「愛されないように生きても不都合しかないからな。……一応、礼は言っておこうか」
オッレルス『俺はただ普通に君が好きなだけだよ』
フィアンマ「…ふん」
鼻で笑い、フィアンマは通信を切った。
顔を赤くすることもなく、フィアンマは項垂れる。
フィアンマ(…人の好意を恒久的に利用する程、俺様は若くもないし、器用でもない)
臆病者らしく一人そうごちながら、フィアンマは欠伸を噛み殺す。
そして上条の頭を優しく一度撫でた。
フィアンマ「……良い寝顔だ。何か良い夢でも見ているのかな?」
上条「>>110」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 23:06:03.55 ID:Bmj//y+6o<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 23:08:27.51 ID:qpyY9gGSO<> ふぃあんまー <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/19(木) 00:34:10.97 ID:vIleLbPAO<>
上条「ふぃあんまー」
フィアンマ「…ん?」
上条の幼い声に、寝言に首を傾げ、フィアンマは指先でぷにぷにとした上条の頬を突っつく。
上条はふにゃふにゃと笑みながら再度フィアンマを呼んだ。
どうやら自分に関する楽しい夢を見ているらしい、と判断したフィアンマは、上条の隣に横たわった。
赤いスーツの、リボンタイと取り替えた血生臭いロザリオが、静かにちゃらりという音を立てた。
フィアンマ(…睡眠中に夢を見るのは、記憶の整理に当たるか、眠りが浅い時だったか。良くないと理解していても、やはり微笑ましいな)
上条「んん、ぅ…」
すやすやと眠る上条は時折もぞつき、シーツをやんわりと握る。
如何にも子供らしい挙動に一層心を和ませながら、フィアンマは上条を抱きしめた。
また一度、ロザリオが鳴る。
フィアンマ「…当麻は、俺様が守ってやるからな」
上条「ん…すぅ…」
フィアンマ「…」
抱きしめたまま上条の背中を撫でるフィアンマ。昼寝感覚に近い浅い眠りだった為、上条はのろのろと目を覚ます。
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/19(木) 00:56:15.89 ID:obYOzuGSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/19(木) 02:16:56.21 ID:obYOzuGSO<> キスして抱きしめてスリスリして二度寝 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage saga<>2012/07/19(木) 16:27:15.83 ID:wltojQT90<> SS速報の安価スレでは雑談するなと何度言ったら……
あと、全角芝はニコ厨、馴れ合いは厨坊。
安価下 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/19(木) 23:50:11.10 ID:y4EvW68q0<>
目を覚ました上条はフィアンマの頬をぺたりと触り、そっと口付ける。
ふに、と小さな唇と成人の唇が重なる。
どことない犯罪臭に何ともいえないような、しかし微笑ましい気分になりながら、フィアンマは上条の髪を撫でた。
所謂天使のリングと呼ばれる程煌き、痛みの少ない上条の髪は触っていて心地が良い。
上条は小さな身体を精一杯使ってフィアンマをぎゅっと抱きしめ、頬ずりした後、見目通りの力の抜けた笑みを浮かべつつ再び眠りに堕ちた。
幸せそうな寝顔だ、とフィアンマは単純に感想を抱く。
上条「んん…」
深夜だというのに、フィアンマはどうにも寝付けない。
とても寝つきの良いタイプではないのだから、仕方がないというべきか。
退屈を持て余すフィアンマは、ぼんやりと、窓から夜空を見上げた。
白いカーテン越しに、真っ暗な空と、明るく輝く月や星が見える。
現在地が学園都市のため、多少霞んで見えないものの、一応は見える。
夜空が好きだ、と上条に宣言した通り、フィアンマは夜空をじっと見上げた。好きだから、見つめる。
明日も晴れるだろうな、と適当な予測をつけ、フィアンマは目を閉じた。
そろそろ眠らなくてはならない。
フィアンマ(早めに戻ると、いいが)
上条の身を案じつつ、フィアンマは眠りに堕ちた。
フィアンマの見た夢の内容(アバウト可)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/19(木) 23:52:08.26 ID:obYOzuGSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/20(金) 01:10:57.25 ID:ZambZgrIO<> 上条さんとフィアンマが結婚して自分らの子供の世話をしている場面 <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/20(金) 08:28:36.10 ID:2y/2OMQf0<> >>114
黙ってろカス
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/20(金) 16:11:35.77 ID:X0eXgNYSO<> 殺伐としてまいりました
更新速度がアレだが>>1の身に何かあったんだろうか…心配やで <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/07/20(金) 16:27:16.55 ID:JMxpOo0AO<>
やめて、>>1の為に争わないでっ
…冗談です。
夢の内容をどう綴るか悩んでいるのでまだ更新出来ません…もうしばらくお待ちくださいませ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/20(金) 17:50:25.86 ID:X0eXgNYSO<> 了解。楽しみに舞ってるんだよ! <>
『Il suo Sogno』 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/20(金) 23:14:25.31 ID:qRxlD7mR0<> 気がつくと、麻夜の髪をブラシで梳かし、撫でていた。黒くて長い髪。
麻夜は俺様と当麻の間に産まれた長女で、父親に似たのか説教したがりではあるものの、素直で良い子だ。
嬉しそうににこにことしながら俺様に撫でられているも、当麻の声に反応して頭を振り、麻夜は部屋から出て行った。
追うように歩いていくと、麻夜は当麻の膝に座って脚をぱたつかせていて、楽しそうだった。
反対に、麻夜より二歳年下の、俺様と当麻の息子である永兎は暇を持て余して仕方ないのか、俺様を見るなりくっついてきた。
そしてすりすりと俺様の手の甲に頬ずりをすると、手を引っ張る。
俺様によく似た、永兎の赤い髪が揺れる。
弱い力に引っ張られるままソファーへ近寄ると、当麻の隣に座らされた。
当麻は麻夜を甘やかし、幸せそうな笑顔で俺様を見る。
狙ったかのように、永兎が切り出した。
永兎「おとうさん、おかあさんとのなれそめおしえてー」
麻夜「わたしもききたい! おしえてー」
上条「えー? ませてるな、お前達。ま、いっか。してやってもいいか?」
フィアンマ「…、…あぁ、構わないが」
当麻は楽しそうに笑って、二人の頭を撫でる。
そして、のんびりとした調子で語り始めた。
上条「お母さんはな、お父さんの事大好きなんだ。今はお父さんもお母さんの事大好きだけどな」
麻夜「ままからこくはくしたの?」
上条「そうそう。初対面で唐突に付き合って欲しいなんて直球で言われたから戸惑ってたら、お母さん、貧血で倒れちゃってさ。これはまずい、と思って、お父さん、病院に運んだんだ。目が覚めるまで心配だから待ってて、起きたお母さんに『ありがとう』って言われて。その時のおずおずとした言い方とか、柔らかい笑顔だとかにドキドキとして、お父さん、思えばその時からお母さんの事好きになってたんだろうな」
永兎「なんかどらまみたいだね」
上条「だろ? それから、まぁ、何やかんやあって一緒に暮らすようになっちゃってな。お母さんは今も変わらず美人だけど、当時は可愛い女の子だったし、当然意識しちゃうんだ。可愛い女の子だなー、って。しばらく一緒に暮らして、恋人になって、結婚したんだ。それで、麻夜と永兎が産まれてきてくれた」
麻夜「ままはどうしてぱぱのこと、すきになったの?」
フィアンマ「……、…大好きな人に、似てたから、だ。今は、本当に当麻が好きだよ」
話していて、話を聞いていて、違和感が生じた。
当麻は今子供姿の筈だし、そもそも俺様と当麻は結婚などしていないし、子供も居ない。
上条「―――――? どうかしたのか?」
フィアンマ「いや、…」
当麻が俺様の本名を知っている訳もなく。
そもそも、右腕が義手で無い時点でおかしい。
この状況に至るまでの全てが、思い出せない。
フィアンマ(そうか)
俺様が、もし産まれる時代を間違っていなかったなら。
妹の死を、いたって普通に乗り越えられたなら。
戦争という手段など選ばず、普通に上条当麻に好きだと伝えていたのなら。
『右方のフィアンマ』として生きず、『―――――』として生き続けてきた世界なら。
きっと、こんなifの世界があったのか。
こんなにも、こんなにも、幸せな世界が、あったのか。
少なくとも、二つは選択出来たはずだ。
普通に好きだということも、『右方のフィアンマ』として生きなかった道も。
自分で、いつも選択してきた。そして、いつも失敗してきた。
夢が幸せであればあるほど、苦しくなる。
俺様にこんな幸福は与えられない。そんな資格も身体も持ち合わせていない。
そして、当麻にも、このような幸せは与えてやれない。
異常な人間でもいいから、『普通』を目指すべきだったのだ。
そうすれば、『普通』の幸せを、当麻に与えてやれた。
自分だって悩まずに幸福になれた。それなのに。
いつだって選択してきた。いつだって失敗してきた。
もう今更どうにもならない。
こんなにも幸せな夢なのに、惨めになる。
こんなにも楽しい夢なのに、夢想なのに、苦しくなる。
上条「―――――…本当に大丈夫なのかよ、顔色悪いぞ」
フィアンマ「…あり、がとう」
ごめんなさい、は、口に、出せなかった。
<>
イーモバイル対策<>sage<>2012/07/20(金) 23:14:51.43 ID:JMxpOo0AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/20(金) 23:15:57.48 ID:qRxlD7mR0<>
目が覚めた。
息がうまく出来ない。
力の入らない身体を叱咤して、どうにか立ち上がる。
そして、朝の冷えた洗面所に移動した後、ドアを閉め切って、膝をついた。
出すつもりのない嗚咽が、口の隙間から漏れていく。
どうして、あんな夢を見たんだ。
自分を追い詰めるだけじゃないか。
当麻に普通の幸せを与えてやれないと、そう再確認しただけじゃないか。
失敗ばかりの人生に、妹を巻き込み、当麻を巻き込み。
自分がしくじっただけの癖に、被害者のような顔をして。
フィアンマ「…ッ…」
胃液しか無いであろう腹部が、ストレスによってか、痙攣を起こす。
それに付随する吐き気に、のろのろと立ち上がり、洗面台の排水口に顔を向けた。
誰か、助けて欲しい、と甘えそうになった。
甘えてはいけない立場の人間が。
フィアンマ「ごめん、なさい、」
謝罪の言葉を漏らしてみても、誰も何も救われない。
そんなことをしても、死者は還らないし、怪我人の怪我は治らない。
フィアンマ「ごめんなさい、」
奪ってきたものの重責が、圧し掛かってくる。
震える手に力を込め、胃から押し上げてきた強い吐き気に、胃液を吐き出した。
フィアンマ「ごめんな、さい、ごめんなさい」
情緒不安定で落ち着かない。
胃液を洗面台の中にぶちまけ、ほとんど無意識の状態で謝罪の言葉を吐く。
恐慌状態だ、というのは理解しているのに、どうにもならない。
甘えるな。助けなど求めるな。
脚が震えて力が抜ける。
頭痛がした。ガンガンと重いものが。
上条はどうする?>>+2
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/20(金) 23:17:05.00 ID:YwKR1p3Mo<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/20(金) 23:19:19.69 ID:X0eXgNYSO<> ど、どうしたの?大丈夫?(泣きつつ抱きしめる、撫でる)
→つ頭痛にバファリン <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/21(土) 22:17:24.80 ID:5vaPZAUb0<>
誰にも甘えない、助けは求めない、そんな事を思いつつ心身ともにパニックを起こし、嘔吐していたフィアンマの居る洗面所のドアが開いた。
入ってきたのは一人の子供。上条当麻。子供姿ではあるが、立派な少年だ。
とはいえ精神性は身体の方につられてしまっているため、フィアンマの様子を見、心配のあまり泣き出しながら近寄った。
ぼんやりとした視界で上条の姿を捉えるフィアンマを抱きしめ、というよりも体格差の問題で抱きついた上条は、おずおずと、小さな手のひらで、自分の涙を拭う事もせずフィアンマの背中を撫でた。
上条「ど、どうしたんだ…? だいじょうぶ?」
フィアンマ「…、」
返事も出来ないまま、フィアンマは上条を抱きしめ返した。
胃液で嫌な味のする口内と未だ治らない頭痛に眉を寄せ、上条の髪を数度撫で、フィアンマはどうにか少しばかりの落ち着きを取り戻す。
虚ろな表情を見せるフィアンマを心配しつつ、上条は深呼吸してどうにか泣き止みつつ、問いかけた。
上条「たいちょう、わるいのか?」
フィアンマ「…頭が、痛いだけだ」
上条「…そっか…」
子供の状態になろうと、上条当麻という人間であることに変わりはない。
上条は冷静にフィアンマの様子を見つめ、口を濯ぐように優しく言うと、一時洗面所から出て行った。
フィアンマはしばし自分を落ち着け、虚ろな表情のまま深呼吸を繰り返した。
戻ってきた上条の手には錠剤と、水の入ったコップ。
錠剤の方は頭痛薬であり、半分が優しさで出来ている、などというキャッチフレーズで有名なものだ。
上条「ずつうやく、のめそうか?」
フィアンマ「……」
言葉を返す事なく、フィアンマは小さく頷くと上条から錠剤とコップを受け取り、口の中にほんの少し残っている胃液の混じる苦酸っぱい唾液を流すように錠剤を水で流し込んだ。
上条が来てくれた事である程度元気が出たフィアンマは、再び口を濯いだ後洗面所から出てコップをシンクに片付け、寝室に戻った。
フィアンマに着いていく形で寝室へと戻った上条は、フィアンマにベッドへ座るよう言い、隣に座る。
上条「いやなゆめ、みたのか」
フィアンマ「…別に、そういう訳ではないよ」
嫌な夢ではなかった。
一般的に言えば、むしろ幸せな夢なのだ。
フィアンマ自身の精神構造や気質に問題があったというだけで、普通は『好きな人と結婚して、好きな人との間に出来た子供を可愛がる夢』というのは、幸福以外のなにものでもない。
フィアンマ「…気にするな。お前には関係の無い事だよ」
上条「>>129」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/21(土) 22:24:40.28 ID:7UuYqUGR0<> ksk <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/21(土) 22:27:56.22 ID:8PrnJwTf0<> ……嘘はだめだぞふぃあんま 多少なりとも関係があるはずだ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/21(土) 22:56:40.00 ID:5vaPZAUb0<>
上条「……うそはだめだぞ、ふぃあんま。たしょうなりともかんけいがあるはずだ」
フィアンマ「………」
上条の鋭い指摘に、フィアンマは黙り込む。
上条はフィアンマの手をやわやわと握り、俯く。
落ち込んだ声音で、言葉を続けた。
上条「…おれが、なんかしちまったのか?」
フィアンマ「そういう事ではない」
上条「…おれには、はなせないようなことなのかよ」
フィアンマ「話してどうにかなるだとか、そういうものでもない。俺様の性格と、無駄な劣等感の問題だ」
仮に心中を吐き出しても、願いが叶わない限り、フィアンマの劣等感は絶対的に君臨し続ける。
そう認識した上で、フィアンマはそう言葉を返したのみで再び黙った。
一番に愛する人へ普通の幸せを与えてあげられないという劣等感は、愛する人自身が否定してくれても、中々消し去る事が出来ない。
結婚が出来ない点においては、駆け落ちをすれば良いだろう。
だが、フィアンマの場合、相手に定住させてあげられない。加えて、子供を産んであげられない。
元々の不妊症や不妊体質ではなく、自分が選んできた過去によって。
上条当麻は、客観的に見れば不幸な人間だ。
好きでもない人間に閉じ込められ、心を病み、閉じ込めてきた張本人を愛するようになり、激痛と共に身体まで作り変えた。
フィアンマのせいで、人生を変革させられた。異常な人間であり、犯罪者の為に、自分を犠牲にした。
何もかも捨てて、人まで殺して。
上条当麻自身は、そんなことは思っていない。
だが、フィアンマは上条当麻と違い客観的に物事を判断出来てしまうせいで、憂鬱になる。
自分は、上条を不幸にしている。自分の存在が、彼を異常者に仕立て上げている。
上条「…ふぃあんま?」
フィアンマ「……すまないな」
何に対しての謝罪か、判断のつかないままに、上条は首を傾げる。
フィアンマは目を伏せ、緩く首を横に振った。
フィアンマ「…才能しかない、どうしようもない人間だ。…すまない」
上条「…、…>>132」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/21(土) 23:01:43.63 ID:IemqyDkSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/21(土) 23:09:47.93 ID:I+n8HD/+0<> バーカ(ナデナデ) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/22(日) 11:41:07.59 ID:9yiKPRge0<>
上条「…、…ばーか」
上条は手を伸ばし、頭までは僅か届かず、フィアンマの頬を撫でた。
顔を上げ、自分の方へ視線を向けるフィアンマに微笑みかけ、上条は首を傾げてみせる。
上条「さいのうだけじゃねーよ。ふぃあんまのせいかく、そりゃ、ちょっとばかししんぱいしょうはすぎるけど、おれはすきだし」
フィアンマ「……」
上条「どんなゆめみてたんだかしらねえけど、おれはたのしいよ。こうやって、ふぃあんまとふたりでいると。しあわせだな、っておもう。そりゃ、もっとしあわせにはなりたいし、してやりたいけど、そのさきっていうのは、なんというか、いっぱんてきなそれとはちがうきがする。ふぃあんまがわらってくれてれば、おれはなんでもいいんだ。だから、あやまるなよ。さいしょとか、きっかけがどんなものだって、いま、ふぃあんまがおれのこいびとで、おれもふぃあんまをすきなら、なんだって、どうだっていいだろ。それじゃ、だめなのか?」
フィアンマ「……、…お前は、普通の幸せを手にしたいとは、思わんのか」
上条「そもそも、ふつうのていぎってなんだよ。おれにとってのふつうは、ふぃあんまがいてくれるかどうかだけだぞ?」
フィアンマ「………寝る」
上条「ん、…おれもいっしょにねる」
上条の言葉を聞き、フィアンマはベッドに潜り込んだ。
上条も追うように隣へ横たわり、そっと抱きつく。
愛情を身体でも伝えるように、ぎゅうぎゅうと抱きしめながら。
フィアンマ(普通の定義、か)
自分の先入観と偏見だけで上条の幸福を選定してしまうのは良くない事だ、とフィアンマは思っている。
ただ、そうは思っていても、自らへの劣等感を最優先に現状を判断してしまうのは、多少仕方のないことだ。
上条の言葉は特別用意されたようなソレではなく、だがそれ故に、フィアンマの心にしっかりと届く。
子供のような拙い言葉こそ、人の心を最も動かすのだから。
頭痛薬の副作用によって訪れる眠気にうとつき、フィアンマは上条の背中を、幼子をあやすようにぽんぽんと叩く。
あやされた方の、子供姿の上条はといえば、今度はフィアンマが寝付くまで寝るまいと我慢をして。
やがてフィアンマの息遣いが寝息のそれに変わると、上条も眠りに堕ち始めた。
上条の見た夢の内容(アバウト可)>>+2
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/22(日) 12:27:31.71 ID:gVrqw0pR0<> トイレに行って気持ち良く放尿する夢 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/22(日) 13:17:41.57 ID:suS4VC060<> >>134
<>
『こどものみたゆめ』 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/22(日) 19:04:24.25 ID:jTcdps7V0<>
爽やかな朝に目が覚めた。
二度寝しちゃったなー、なんて思いつつ、起き上がって伸びをする。
小さな身体は不便だけど、多分身長的にトイレはギリギリ行けるだろう。
だるい気分になりつつトイレに移動し、もぞもぞとズボンを下げる。
しゃあ、とお決まりの音と共に、放物線を描いて小水が便器の中に着地していく。
何かものすごく気持ちがいい。いや、エロい方じゃなくて、生理的な方。
上条「んん、っ…」
完全に出し切り、いつも通りぶんぶんと振る。
ものすごく心地の良い放尿だった。
この身長じゃ水を汲むのはともかく台所には立てないな、と残念な気持ちになりつつベッドに戻って、フィアンマの隣に戻る。
夢の内容、きっと話してくれないんだろうけど…怖い内容なら、早めに忘れられるといいな…。 <>
イーモバイル対策<>sage<>2012/07/22(日) 19:04:51.09 ID:W7eFipEAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/22(日) 19:28:35.32 ID:jTcdps7V0<>
フィアンマが目を覚ますと、シーツが残念なことになっていた。
有り体に言えば、上条がおねしょしてしまったということだ。
フィアンマはしばし考えこんだ後、別段躾ける必要も無いだろうと考え、のろのろと起き上がって洗濯などを開始する。
上条は放尿してしまったことにも気付かずすやすやと眠り続け。
別段上条のものであれば排泄物でも触れる事に抵抗の無いフィアンマは欠伸を噛み殺しつつ上条からズボンとパンツを没収する。
そして洗濯にかけると手を洗い、何も無い空間から布を取り出し即興で子供用の小さな衣類を作ると上条に着せた。
完璧主義の彼女が作ったからか、既製品のようにしっかりとしている。
上条はそこまでされてようやく目を覚ましたのか、ぼんやりとフィアンマを見上げる。
着替えさせ終わったフィアンマは上条から離れ、部屋から出ると洗濯の終わったズボンやパンツ、シーツを干した。
一応乾燥機能がついている洗濯機ではあるものの、一応しっかりと乾かしておいた方が後で着る際に心地良い。
そして干し作業を終えたフィアンマは上条の下に戻り、ベッドに座って上条の頭を撫でた。
上条は首を傾げ、フィアンマを見つめる。
上条「せんたく…?」
フィアンマ「あぁ」
上条「あれ、しーつ、なんで…」
フィアンマ「お前がおねしょしたからな」
上条「え」
フィアンマ「俺様が嘘を吐くと思うのか?」
上条「……ごめん」
しゅん、と落ち込む上条の髪を優しく撫で、フィアンマは小さく笑う。
気にしていない、と言わんばかりに。
フィアンマ「まぁ、時にはそういった失敗もあるだろう。まして、その身体ではな」
上条「ぅ…」
フィアンマ「別に落ち込む必要は無い。…何か食べたいものは?」
上条「…>>140」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/22(日) 19:30:29.00 ID:bnpo58/m0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/22(日) 19:36:41.98 ID:pJEg5XWG0<> ハンバーグ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/23(月) 21:18:19.20 ID:Th5B3rIR0<>
上条「…はんばーぐ」
フィアンマ「作ったものと、食べに行くのと、どちらが良い?」
上条「ふぃあんまがつくったやつがいい」
子供が駄々をこねるような調子の声に目を細め、フィアンマは上条の頭を撫でた後、立ち上がる。
上条も立ち上がると、未だしょんぼりとはしつつも伸びをした。
ついでに呑気な欠伸を漏らし、上条はフィアンマを見上げる。
そして、小さな手を、つい、と差し出した。
フィアンマは差し出された手を握り返す。鎮痛剤を飲んで眠った為、もう頭痛は無い。
また、再度よく眠った為、完璧に落ち着いた。
いつも通りの様子へ戻ったフィアンマは上条を優しくあやした後、外へ出た。
ハンバーグを作ろうにも、まずは材料を購入しなければならないからだ。
そんな訳で、二人はスーパーマーケットへとやってきた。
午前中だからか、まだそんなに客は居ない。
タイムセール狙いで安く済ませる必要も無い為、フィアンマはのんびりとひき肉のパックを眺める。
付け合せは作るべきだろうか、と首を傾げるフィアンマにくっつき、上条は子供の姿を生かして甘えた。
弟のような上条の髪を撫で、フィアンマはふと思い出したように問いかける。
フィアンマ「材料は一通り買うが、他に食べたい物はあるか?」
上条「んー…>>143」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/23(月) 21:29:46.59 ID:6Jz4MHTSO<> お菓子かってー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/23(月) 21:36:24.06 ID:F+g9UOJ/0<> ネルネルネルネ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/24(火) 00:05:21.85 ID:+WWkJClF0<>
上条「んー…ネルネルネルネ」
上条が求めたのは、混ぜて食べる食玩菓子。
フィアンマは拒むでもなく材料をカゴに入れ、上条の手を引いてお菓子売り場に移動した。
少々甘やかし気味なのは、やはり上条の姿が子供であることが関係しているのだろう。
上条は棚を眺め、背伸びをして取ろうと試みる。
しかし運悪く足が滑り、不幸にも転びかけ―――フィアンマが素早く上条の襟首を掴んだ。
親に首を銜えられた猫のような状態で、上条は申し訳なさそうにフィアンマを見上げて。
上条「…ごめん」
フィアンマ「仕方無いだろう。そもそも。無理をして取る必要もあるまい」
身長の小ささに歯噛みする上条をちゃんと立たせ、フィアンマは先ほど上条が取ろうとした菓子をカゴに入れる。
早く戻らないと、とようやく焦り始めた上条の髪を撫で、フィアンマは会計へと向かった。
フィアンマ(ずっと、このままでも良いのだが)
そんな事を、思いながら。
帰宅し、手伝おうとした上条は危ないからとベッドに追いやられ。
フィアンマが調理をしている間どうにも暇を持て余す上条は、ネルネルネルネをぐるぐると回して遊んでいた。
上条(暇だな…)
はぁ、とため息をつき、上条は菓子を口に含む。
じゃり、という溶けきらない砂糖の感触と共に甘ったるい味がした。
流石子供向け、と思いつつ、上条はゆっくりと脚を揺らす。
過剰な葡萄のような香りに、静かに目を伏せる。
いつ元の身体に戻れるのだろうか。オッレルスとは和解したけれども。
一応は平和な情勢ではあるものの、この身体ではフィアンマを守ってやることは難しい。
出来ない事は無いが、頼りなさが付きまとう。
上条(やり過ぎるんじゃなかった…)
料理にはまだ時間がかかるらしい。
玉ねぎを炒める、良い音がする。
上条はどうする?>>146 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/24(火) 00:13:26.89 ID:/EaNp/ISO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/24(火) 00:38:18.29 ID:/EaNp/ISO<> ちょっかいかけてかまってもらう <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/25(水) 20:57:38.89 ID:PN3A7Izy0<>
上条が食玩菓子を食べ終えたところで。
ハンバーグの焼き作業に入ったらしく、とても良い匂いがしてきた。
ちなみに部屋が暑いのに耐えかねたフィアンマが料理途中部屋に魔術記号を書いて熱遮断を行った為、少し寒いくらいだったりする。
上条はしばし考え込み黙った後、台所へと移動した。
そしてフィアンマに近寄ると、くいくいと服を引っ張る。
付けあわせを作ることを放棄したフィアンマは暇だったらしく、上条を見やって小さく笑む。
フィアンマ「ん?」
上条「ひまだったんだ」
フィアンマ「そうか。もう菓子は食べ尽くしたのか」
上条「あんまりりょうもなかったからな」
フィアンマ「そうか」
ハンバーグの焼き具合を時折見つつ、上条と同じように暇を持て余していたフィアンマは、上条の髪を撫でつつ抱きしめる。
子供体温は成人や少年のそれより遥かに高く、温かい。
ホッカイロのような扱いを受けつつも上条は嫌がる事無く受け入れる。
やがて料理が出来上がり、配膳を済ませて二人は席に着く事にした。
上条は若干嫌がったのだが、フィアンマは聞かず、自分の膝上に上条を座らせる。
正確には脚の間に座った上条はのんびりとハンバーグを見つめた。
上条「いただきます」
フィアンマ「召し上がれ」
フィアンマはいまいち食欲が湧かないのか、上条に食べさせる事に徹した。
ハンバーグは現在の上条の子供舌に合うような、ややチープな味付け。
一口大に切り分け、上条に食べさせるフィアンマはどこか楽しそうな様相を見せる。
フィアンマ「…美味いか?」
上条「>>149」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/25(水) 20:59:08.59 ID:m9ADQgvm0<> んまい! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/25(水) 21:03:49.46 ID:28NE9lFSO<> おいしー。フィアンマにも食べさせてあげる。はい、あーん <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/26(木) 17:58:03.89 ID:yKRx8w0SO<> 最近投下速度が…寂しいなー>>1の都合があるから仕方ないのはわかるが <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 00:39:04.28 ID:Y+i7h4ZW0<>
上条「おいしー。ふぃあんまにもたべさせてあげる。あーん」
フィアンマ「…ん、」
食欲が無いといえど、上条に口元まで運ばれてしまっては拒む術もなく。
差し出されるまま口に含むと、フィアンマは上条の頭を撫でる。
上条は嬉しそうにはにかみ、フィアンマにくっつく。
子供の身体ではいまいちフィアンマの肩を抱けない事に、上条は不満を覚えるのだった。
食事を終え、午後。
上条とフィアンマは協力して部屋の中にチョークでかりかりと陣を描いていた。
解呪の要領で上条の身体を元に戻そう、とそういう訳なのだ。
既存の物理法則を捻じ曲げて今の上条の身体状態であることを考慮すれば、更に物理法則を捻じ曲げて必ず元に戻れるとは限らないのだが。
しかし子供姿では嫌だと言う上条の強請りにより、やるだけやってみることにするのだった。
フィアンマ「…これで問題無いな」
上条「とびひしないといいけどな…」
『飛び火』。
言葉にすると簡単だが、ありえない話ではない。
簡潔に言うと、フィアンマの身体に何らかの影響が出るということだ。
生命は『火』。フィアンマは『炎』を司る。
つまり今回の術者はフィアンマなのだが、上条が元に戻った瞬間、術者たるフィアンマに何らかの問題が発生する場合も考えられる。
恐らく『幸運』にも逃れられるとは思うのだが。
フィアンマ「…案ずるより、と言うだろう。目を閉じろ」
上条「ん…」
心配する事を放棄したフィアンマは欠伸を噛み殺し、術を執行する。
と、次の瞬間。
二人はどうなった?(アバウト可)>>153 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 01:29:41.57 ID:QHpkefBLo<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 01:33:46.28 ID:NW5RdPxSO<> 上条さん30代位に、フィアンマさんは24位に <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 02:48:00.09 ID:NW5RdPxSO<> そう言えば上条さん最近学校行ってないな…え、ダブったかなコレ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 07:05:49.60 ID:mGTIT3nm0<> 文字通り上条『さん』になっちゃった <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 15:24:08.59 ID:wS9gGHc90<>
『飛び火』が発生した上、思い通りの結果は得られなかった。
しかし、『幸運』にもフィアンマはさしたる余波を受けず、24歳程の見目になっただけだ。
髪が肩を過ぎる程に伸びた程度で、その位しか違いはない。
深刻なのは上条の方である。
当初の予定では大体17歳程度になる筈だったのだが、現在の上条はどこからどう見ても成人などとっくに過ぎた様相。
大体30代前半、といったところだろうか。
元に戻れた、とは少々言いがたい自らの状態に、それでも子供の姿よりはまだマシかと思いつつ、上条はフィアンマを見やる。
フィアンマはリトライする気力もないのか、のんびりと陣を消していた。
フィアンマ「しばらく学校は諦めた方が良いだろうな」
上条「しばらくも何も、もう最近行ってなかったしな…まぁ、一回は辞めてるし、あんまり後悔はないけど」
言いつつ、上条は服を着てみたものの。
16歳の頃に着ていた服を30歳が着れば、大概入らなくなってしまっているもので。
どうにか入ったはいいものの、身長の問題で丈は足りず、横幅は(太ってしまったということではなく体格上の問題で)ピチピチ。
上条(フィアンマより身長が大幅に高くなった事しかメリット無いな…)
ずーん、と落ち込む上条に構うでもなく陣を消し終わったフィアンマはのんびりと伸びをし、立ち上がった。
フィアンマ「さて、お前の服を買ってくる。大人しく留守番していろ」
上条「いや、俺も行く」
フィアンマ「…その姿で、か?」
上条「……」
ピッチピチの服装。
後方のアックアのような状態、というには、みっともなさが漂う。
筋肉が有り余ってピチピチになっているのではないのだ。
例えるなら、大人が子供服を無理やりに着ているような状態。
情けないことこの上無い、と一層落ち込む上条の頭を撫で、フィアンマは部屋から出て行った。
仕方がない、フィアンマの無事を祈ろう、と思いつつ、上条は部屋の隅で膝を抱える。
少年であるならばともかく、おっさんが部屋隅で膝を抱えて落ち込んでいる、というのは少々気持ちの悪いビジュアルである。
上条「…ん?」
ふと、携帯の振動に気付いた上条は通話ボタンを押す。
電話をかけてきた相手(禁書キャラ名)>>+158 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 15:26:11.66 ID:NcQFeSCW0<> ksk <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/07/27(金) 15:30:49.77 ID:wS9gGHc90<>
>>+158っておかしい…
このレスから>>+1でお願いします <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 15:31:46.21 ID:NW5RdPxSO<> +…158…?!
安価ならテッラさん <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 15:40:09.45 ID:wS9gGHc90<> 《>>159様 >>+2と>>158が脳内で混ざっていました…》
テッラ『お久しぶりですねー』
上条「ッ、テメェは!?」
金属を擦るような、不快を誘う声。
左方のテッラ。
確か死んだはずだと聞いていた。
にも関わらず、何故テッラがかけてこられるのか。
何故電話番号を知っているのか。
数々の疑問が頭の中を駆け巡り沈黙する上条の様子を電話越しに知ったのか、テッラは笑った。
テッラ『そんなに驚く事はありませんよ。偶然の積み重ねでこうして電話を繋げたのですから』
上条「生きて…やがったのか…?」
テッラ『勿論。見くびっていただいては困ります』
上条「……何の用だ」
テッラ『>>162』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 16:16:18.20 ID:NcQFeSCW0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 16:30:11.30 ID:ppmcqogN0<> フィアンマをいただきます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 16:51:35.30 ID:fTlNmURu0<> 即修羅場ったwww <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 16:57:37.36 ID:NW5RdPxSO<> 傭兵メンバーとして誘うかと思えばwwwwww <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 17:05:11.54 ID:wS9gGHc90<>
テッラ『フィアンマをいただきます』
上条「な…!?」
テッラ『彼女を外に放置したのが、そもそもの過ちでしたねー』
上条「テメェ…フィアンマに何かしやがったのか」
テッラ『まだ何もしていませんよ。傍には居ますが、ね』
ギリ、と上条は奥歯を噛み締める。
何が何でも、フィアンマだけは渡す訳にはいかない。
電話の向こう側、確かにフィアンマの声が聞こえる気がする。
フィアンマは今右腕が無い。『聖なる右』が弱体化している以上、テッラに勝てるかどうか、上条には分からない。
聞いても答えないだろう、という予想の下、上条は大急ぎでサーチ術式を組む。
だが、あざ笑うかのようにすり抜けて見つからない。
こうなっては学園都市中を走り回った方が早いか、という結論を出し、上条は仕方なく修道衣のようなマントを羽織る。
ピチピチの服装のみよりは、まだマシというもの。
黒色、ましてや夏なので目立つが、神父さんか、などと思ってもらうしかない。
電話を切り、上条は外に出る。暑いが文句は言っていられない。
一方。
切れた通話、先ほどまで耳に宛がっていた携帯電話をしまい、テッラはのんびりとフィアンマの様子を眺めていた。
先ほどの電話は嫌がらせに近いものだったりする。
わざわざ上条当麻と引き離してフィアンマの不評を買う程、テッラは馬鹿ではない。
フィアンマに危害を加える訳もなく。何しろ、テッラはフィアンマの幸福を自分の幸福として得ているのだから。
ただ、上条当麻と二人で居たのであればまだしも、彼女が一人で服売り場をうろうろとしていたから。
つい、声を掛けた。
別段刺々しくない返事が返ってきたため、ショッピングモール内への喫茶店へと誘い。
上条当麻のものである服の入った紙袋に重みを感じていたフィアンマは、拒否するでもなく一時休憩として、テッラをまたしても財布として使うのだった。
分かってはいても、上条の事を考えているフィアンマの姿は、テッラにとってあまり良い気持ちを浮かばせるものではなく。
結果、先ほどの嫌がらせへと走った訳である。
フィアンマ「…幼稚だな」
テッラ「えぇ、自覚はありますねー」
フィアンマ「お前が俺様に手出し出来る訳もあるまいに」
テッラ「心身共に貴女には敵いませんしねー」
テッラの様子に肩を竦め、フィアンマはアイスココアを飲む。
汗をかいたグラス表面を指先で撫で、フィアンマはふと思い出したようにぼやいた。
フィアンマ「……公然猥褻の罪で捕まらなければ、良いのだが」
上条(ちくしょう、見つからねえ、ッは)
学園都市内を走り回った上条は、ため息をついていた。
流石にあの格好では目立つので、小さい洋服店でいたって一般的なTシャツとズボンを購入して着替え、走っていた訳だが。
何分現在の身体は30代。一般的な。アスリートのように鍛え上げられている訳でも、聖人のように特殊な状態でもない。
簡単に言ってしまえば、体力を使い果たし気味なのである。
上条「うぅ…」
休憩をする訳には、と思いつつも耐え切れなかった上条は公園のベンチへ崩れ落ちるように腰掛ける。
疲れきったおっさんに他ならない様子であった。
上条(フィアンマなら、あんな野郎より強いよ、な…?)
彼女の無事のみを祈りつつ項垂れる上条の首筋に、ふとひやりとしたものが宛がわれた。
飲み物の缶であろうそれは、上条の身体をびくつかせるに充分な冷たさを保持している。
上条の首筋に缶ジュースをあてがった人物(禁書キャラ名)>>+2 <>
名無しNIPPER<>sage<>2012/07/27(金) 17:42:39.00 ID:dYJUdnWAO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 17:42:41.79 ID:vNdKq6hM0<> オッレルス <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 17:44:58.01 ID:vNdKq6hM0<> オッレルスじゃねぇしオティヌスだったorz <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 17:54:54.09 ID:wS9gGHc90<>
上条「う…?」
のろのろと上条が振り返った先には、一人の少女が居た。
完全なる魔神である、オティヌス。
オティヌス「随分と落ち込んでいるように見える。情けない様だ。何かあったのか?」
上条「……」
じわじわ、と涙目になりつつ、上条はオティヌスから缶を受け取った。
神出鬼没な再会。何処に居ても違和感しか無いのが、オティヌスという少女の謎なところである。
だがしかし、上条に今『何でオティヌスが学園都市に居るの』と聞けるだけの気力は無く。
缶にインプリントされているのは、『ヤシの実サイダー』という文字。
ぷしゅ、と軽快な音を立てて開けると、上条は一気にそれを煽った。
しかし、少年の身体でない以上、多少美味しいものを摂取しただけではあまり体力は回復せず。
上条「フィアンマが…」
オティヌス「ヤツが?」
上条「左方の、テッラと…一緒に居るみたい、なんだけど…サーチ魔術使っても、分からなくて…俺…」
どうしよう、という思いばかりが高まり、上条は俯く。
オティヌスは上条の隣に腰掛けると、ぽふぽふと頭を撫でた。
少女に慰められるおっさん。
画面としてはなかなかにシュールなものだ。
上条「どうすれば、いいんですかね…走っても、見当たらない、し…」
オティヌス「そうだな…」
上条「俺がフィアンマを守ってやらないといけないのに…昔から、そうだ…インデックスが危険な時だって、俺はいつも出遅れて…遅くて…」
オティヌス「…>>171」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 18:01:23.84 ID:NW5RdPxSO<> グチグチうっせーぞこの、
まさに
ダメな
オッサン
略してマダオが!
考える前に行動しろっての <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 18:24:50.23 ID:9Hc2ec5P0<> ばーかばーかヘタレのまさにダメな男!
貴様の思いがそれていどならあきらめれば?
本当に好きなら諦めてんじゃねぇよカス <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 18:36:41.29 ID:wS9gGHc90<>
オティヌス「…バーカバーカ。ヘタレ、まさにダメな男!」
上条「うぐ…」
オティヌス「…お前の想いがその程度なら、諦めれば良いだけの話だろう?」
上条を罵ったオティヌスは、上条の手にある空の缶を奪い、掃除ロボットに投げつけた。
巡回の掃除ロボットは警報を鳴らす事なく、ゴミとして処理をする。
罵られ、一層落ち込む上条を見やり、オティヌスは脚を組んだ。
珍しく、その見目に似合った少女らしい馬鹿にする口調だった。
オティヌス「…本当に好きだというのなら、何が何でも諦めてるんじゃねぇよ、粕。お前の決意など、所詮その程度か」
上条「…ありがとう」
上条は立ち上がり、一度深呼吸をした。
オティヌス「さっさと行って来い」
同じく立ち上がるでもなく、オティヌスはそう言葉を放つ。
上条は表情と気持ちを引き締め、走り出すのだった。
オティヌス(というより、携帯電話というものを活用しないのか、アイツは。すっかり魔術一色だな)
所変わって、右方のフィアンマはといえば。
フィアンマ「おかわり」
テッラ「…何というか、飽きませんねー」
フィアンマ「辟易したか?」
テッラ「いいえ、ちっとも」
ケーキ食べ放題店へと来ていた。
マイペースなことに、テッラにケーキを自分の所へと運ばせて食べている。
彼女の本質は、人を振り回すところにある。
上条がどれだけ必死に自分を捜しているか、分からないという訳でもないのだが。
フィアンマ(…さて、今はどの辺りに居るんだ)
(フィアンマは)上条に電話をかける?かけない?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 18:51:57.84 ID:NW5RdPxSO<> 心理学的に、尽くす女より我儘な女の方がモテるらしいねksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 19:15:25.51 ID:z9QgvN+d0<> 掛けて泣く演技をする <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/27(金) 20:00:56.14 ID:xLlBOCkt0<>
フィアンマは少しだけ思案した後、ポケットの中の携帯電話に手を伸ばす。
そして取り出すと、上条に電話をかけた。
フィアンマ「…、っ…もし、もし」
上条『フィアンマ!? フィアンマなのか!? 今、どこに居るんだ、ッ』
フィアンマ「分から、ないんだ…此処が、何処なのか…見当も…」
上条『何か目印は無いのか?』
フィアンマ「……見当たら、っん…っぐす…ただ、そんなに寮からは離れていないと…」
上条『あんまりテッラを刺激しないようにして、気をつけていてくれ。必ず助けに行くからな』
フィアンマ「…すまない、」
涙を堪えたような泣き声での通話を終え、フィアンマは携帯をポケットにしまった。
悪びれる様子は見当たらない。
テッラはフィアンマの前に、ティラミスをよそった皿を置き、向かい側に腰掛ける。
通話内容を聞いていたが為、苦笑いしか出なかった。
テッラ「わざと心配させるのですねー?」
フィアンマ「救った多数の内の一つにはなりたくないからな。不安や恐怖という感情は、人の記憶に強く刻み込まれる」
テッラ「罪な人ですねー」
フィアンマ「いやいや。俺様はただ、当麻を愛しているし、当麻にももっと俺様を愛して欲しい、というただそれだけだよ」
緑がかった甘い炭酸水の注がれたグラスの側面を指先でなぞり、フィアンマはテッラに微笑みかける。
どこか不安定な笑顔だった。可愛いとも、恐ろしいとも言いがたい。
フィアンマ「何百年も待ったんだ。この程度、赦されるだろう。…不安になって、怖がって、俺様だけを捜して迷えばいい」
ぼんやりとした表情でそう語り、フィアンマはグラスを撫でた。
上条の首筋を愛でるかの如き手つきだった。
フィアンマ「人とは貪欲な生き物だからな。一を手に入れれば十を欲し、十を手に入れれば百を欲し…キリがない。俺様もまた、その類に漏れず。だが、誰に咎められると言うんだ? 何百年と一心に待ち続け、何を犠牲にする事も厭わず、こうして心底から愛しているのだから、相手にもまた、同じように愛を求めて何が悪い。無償の愛などといった耳障りの良い愛を降り注げるのは恋人以外だ。友人や知り合い全てだ。俺様がどれだけ貪欲に望んだとして、誰にもそれは咎められないはずだ。俺様はこれだけのことを望むに相応しい、それだけの努力を続けてきたんだ。当麻には、愛してもらうだけではまだ足りん。執着して、依存して、手放したくないと、最早臆病の域まで俺様を愛して欲しい」
凍っていて少し硬いティラミスにフォークの先端を鋭く突き立て、フィアンマはそう話す。
その視線の先はテッラに向いてはいたものの、どこにも向いていなかった。
テッラ(変わらず、不安定で心の砕けている方ですねー…)
臆病者の狂ったような独り言に、左方のテッラは聖職者らしく、慈愛に満ちた微笑みを向けるのだった。
右方のフィアンマは、寮近くの公園のベンチに座っていた。
上条には既にメールしてある。
まもなく来る筈だろう、と思いつつ、フィアンマは上条と離れていた間の、嘘の理由を思い浮かべていた。
テッラに攫われただとか、今さっき解放されたばかりだとか、くだらない内容ばかり。
今日一日、上条が自分の為に走り回って、困った。
たったそれだけのことで、フィアンマはどうにも幸せな気持ちでいっぱいだった。
上条「フィアンマ、」
フィアンマ「…当麻」
上条「怪我、っげほ、怪我とか、してないか?」
フィアンマ「あぁ、無事だよ」
上条「そ、っか…良か、った…」
フィアンマ「…心配させてしまったな」
上条「>>177」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/27(金) 20:12:41.50 ID:7NFjPXuM0<> も…ダメ…限界……バタッ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 20:25:40.34 ID:NW5RdPxSO<> もう、会えないかとおもったじゃんか…テッラの方に乗り換え、たかと、おもったじゃんか…
ばかやろぉ… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 20:35:42.70 ID:NW5RdPxSO<> 天井くンや木ィ原くン、黄泉川や芳川、木山てんてーとかと今の上条さんが飲みに行ったら面白いかもしれない(笑) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/28(土) 13:40:28.88 ID:95CDcrJg0<>
上条「もう、…会えないかと思った、じゃんか…テッラの方に、乗り換えた、とか…思った、だろ…ばかやろ、ぉ…」
ぐた、と半ばフィアンマに寄りかかるようにして、疲れきった表情で上条は言う。
フィアンマは薄く笑み、上条の髪を撫でつつ首を緩く横に振った。
フィアンマ「誰に何をされようと、俺様はお前以外を好きになるつもりはないよ。…帰ろうか」
上条「ん…」
上条はのろのろと起き上がり、ふー、とゆっくり息を吐き出した。
フィアンマは傍らの(上条の服が入った)紙袋を手に持ち立ちあがり、上条の手を引く。
いたく上機嫌な彼女に、上条は眉を潜めたものの、何も言う事は無かった。
夜。
食事と入浴を終えた二人はベッドに横になっていたのはいいものの。
上条の身長がベッドと合わず、窮屈そうにしていた。
フィアンマは気にする様子もなく、上条の頬をつついている。
フィアンマ「やはり明日、術式の再構成を行うべきか」
上条「んー…」
フィアンマ「その身体では不便が多いだろう。本来もう到達する事のありえない身体年齢だしな」
上条「ひとまず、明日になってから考える」
フィアンマ「そうか」
上条の胸元でもぞつき、フィアンマは暇を持て余す。
横になったからといって、すぐさま眠気が訪れる訳ではない。
上条は尽きそうな体力とフィアンマに触れたい気持ちとの間で揺れ動いていた。
上条(やたらと疲れて…ねむ…)
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/28(土) 14:45:14.51 ID:MlMQ0nOU0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/28(土) 15:45:20.44 ID:MlMQ0nOU0<> 寝る <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/28(土) 17:33:34.31 ID:UJBoRtK40<>
上条はしばし苦悩した後、フィアンマの頬を撫でて目を瞑り、眠りへと堕ちた。
部屋の中、一人意識のある状態で取り残されたフィアンマは、暇そうに上条の手を握る。
指を絡ませて恋人繋ぎにすると、欠伸を噛み殺した。
眠気からくるそれではなく、暇と脳への酸素不足からこみ上げる欠伸を。
上条「すー…」
フィアンマ「……嬉しいと思う時点で、おかしいのだろうな。俺様は」
呟き、フィアンマは上条の右手を撫でる。
『幻想殺し』。
その短い言葉が、フィアンマの長い人生を、永きに渡って狂わせてきた。
人生だけでなく、彼女の人格そのものさえも。
フィアンマは上条の右手をやわやわと握り、目を閉じる。
石鹸の良い匂いと、上条自身の匂いが混じり合って空間に漂っている。
心地が良い、とフィアンマは心中で呟いた。
フィアンマ(お前が、俺様に関する些細なことでさえ、泣きそうになったり、困ったり、一生懸命になったりすると、実感するんだ)
愛されているということを。
歪んだ考え。しかし、歪ませたのは誰だ。
フィアンマ「…狂って尚、愛しているよ」
暴走した列車のように、今更元に戻る事も出来ないまま。
そう囁いて、フィアンマも深い眠りへと堕ちていった。
翌日。
上条が目を覚ますと、既に朝食が用意されていた。
あまり手の込んだ品目ではないが、作ってくれたことだけで充分。
フィアンマと共に食事を開始し、食べ終えて。
この姿では学校にいけないため、さて何をして時間を潰そうかと悩む上条。
そんな折、インターフォンが鳴った。
上条「行って来る」
フィアンマ「あぁ」
暇を持て余している最中だったということもあり、すぐさま上条は応答した。
ドアを開けた先に居たのは―――
来客(禁書キャラ名。出来れば用件も)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/28(土) 19:01:30.81 ID:c1Hp/neK0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/28(土) 22:44:52.89 ID:SeS8HFEz0<> 佐天 御坂さんが……レズに目覚めて目の前で白井さんとイチャイチャしまくってて……逃げて来ちゃいました… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/29(日) 00:26:08.74 ID:fpU2OAFo0<>
ドアの先に居たのは、セーラー服姿の快活そうな一人の少女。
佐天涙子。
佐天「上条さん…?」
上条「あー…ちょっと諸事情でさ。本人だよ」
佐天は上条の姿に驚いた後、しばらく悩んだ後信じることにした。
都市伝説が好きな子なので、あるいは上条であればどんなことがあってもおかしくないと考えたのかもしれない。
事実、上条当麻は一般的な少年が一生をかけても経験しないであろうことを短い期間でぽんぽんと経験しているのだから。
上条は佐天を招き入れ、カーペットに座らせる。
そして佐天の隣に腰掛けると、優しく問いかけた。
上条「何かあったのか?」
佐天「その…最近まで、御坂さん、失恋のショックで塞ぎ込んでたんですけど…急にレズに目覚めちゃったみたいで。白井さんとイチャイチャしまくってて……あはは、逃げて来ちゃいました…」
上条「……」
フィアンマ「居辛かった、という訳か」
佐天「簡単に言っちゃうとそんな感じですね。今まで四人で仲良くしてた内、二人が付き合っちゃうと何か残りの二人はお邪魔っぽいですし…初春っていう友達がその一人に当たるんですけど、彼女は彼女で『風紀委員』の仕事があるので、そっちの先輩の方に逃げたみたいで」
上条「あー…」
佐天「家に引きこもっても暇で仕方ないので、遊びに来た、というのもあるんですけど…う、アポ無し突撃ごめんなさい」
上条「いやいや、別にいいよ」
のんびりと伸びをして、上条は欠伸を噛み殺す。
父親のような歳の離れた兄のような、微妙な年齢差の身体となっている上条を見、佐天は不思議そうに首を傾げる。
そして、おずおずと問いかけた。
佐天「その、何か何というか、嫌なら答えなくてもいいんですけど、上条さん、その体どうしたんですか? 身長伸びたとかそういう域じゃない気がするんですけど…」
上条「>>187」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/29(日) 00:29:06.99 ID:1b7u8VRn0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/29(日) 07:24:23.10 ID:EN2Wk/jD0<> あー……えっと……言っていい?フィアンマ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/29(日) 16:17:24.91 ID:ArExD6ZU0<>
上条「あー……えっと……言っていい? フィアンマ」
フィアンマ「お前が言うと妙な説明の仕方をしそうだから止めておこうか。俺様が説明する」
佐天「?」
フィアンマ「治験、というものを知っているか?」
ベッドに腰掛けたまま、真面目な表情でフィアンマは問いかける。
佐天はうんうんと唸って知識を探った後、こくりと頷いた。
佐天「開発途中の薬を飲んで、結果を見てもらってお金をもらうバイト…ですよね」
フィアンマ「あぁ。で、先日当麻はそれを受けた訳だ」
佐天「はっ、それで、お薬の後遺症でこんな姿に!?」
フィアンマ「俺様も驚いたが、幸いにして内面には何の影響も無い。体力は落ちてしまったようだが。まぁ、そんな訳で、今の状態なんだよ」
佐天「な、なるほど…」
さらっと、真剣な表情で嘘を吐くフィアンマに、佐天は頷く。
どうやら納得したらしい、と判断したフィアンマは、悪びれる様子もなく、同意を求めるように上条を見やる。
上条は嘘を吐くのも方便、とどうにか割り切って頷くのだった。
話題を転換しよう、と思い至った上条は、明るく問いかけた。
上条「お昼、ウチで食べていくか?」
佐天「え、いいんですか?」
上条「いいよな?」
フィアンマ「構わんよ」
佐天「ありがとうございます!」
上条「何か食べたいものがあるなら言ってくれよ」
佐天「うーん…>>190」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/29(日) 16:20:53.05 ID:1b7u8VRn0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/29(日) 17:42:34.32 ID:sGyju/Mo0<> 上条さんとフィアンマさんの得意料理が食べたいです! <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/29(日) 18:18:49.33 ID:ArExD6ZU0<>
佐天「うーん…上条さんとフィアンマさんの得意料理が食べたいです!」
上条「得意料理かー…んー」
フィアンマ「…得意料理か」
佐天「あんまり深く考えない感じでいいですよ!」
考え込む大人二人に、佐天は少し焦った様子で言う。
実際は得意料理と呼べるものが多いためにうんうんと悩んでいるというだけなのだが、佐天にとっては実は二人とも得意料理と呼べるものはないのではないか、と少し感じられたからである。
上条「いや、得意料理と言えそうなものが多くて…カロリーとか気にした方がいいかな?」
佐天「今日はちょっとハメ外しちゃうというかご馳走していただくのにカロリーとか関係ないです、大丈夫ですっ」
フィアンマ「メインが二つでは満腹を超える。当麻は何を作るんだ」
上条「んー…ハンバーグでも作りましょうかね」
フィアンマ「…アイスを作るか」
上条「アイスなんて作れるのか?」
フィアンマ「あぁ。冷蔵庫の中は把握している」
時間がかかるから、と理由を口にしてフィアンマは部屋から台所へと移動した。
卵黄や生クリームを使ってアイスクリームを作るらしい。
佐天は気になって仕方がないのか、フィアンマに近寄っていった。
上条は少し迷った後、今はまだ休む事に決めた。
佐天「アイス作るってすごいなー…買うしかないと思ってました」
フィアンマ「世の中の大抵のものは、材料さえあれば家庭で作る事が出来る。少々面倒ではあるが」
佐天「すいません、何か…」
フィアンマ「暇を持て余していたところだしな。混ぜてみるか?」
佐天「いいんですか!?」
やったー、と無邪気に明るく笑んで、佐天はアイスのタネをしっかりと冷やしながらぐるぐると混ぜる。
バニラエッセンスと蜂蜜の、甘くて良い匂いがした。
佐天「何だか、フィアンマさん、お母さんみたいですね」
フィアンマ「……、…」
佐天「あの、老けてるとかじゃないですよ!? ただ、あったかいっていうか、落ち着くっていうか…優しいですし。あ、でもお兄ちゃんとかお姉ちゃんっぽい感じもするんですけど…うーんっ、言葉にし辛い!」
フィアンマ「…そうか」
むむむ、と悩む佐天とは裏腹に、フィアンマは喜ぶ事も嘆く事もできず、沈黙していた。
母親。
…自分が、絶対になれないもの。
佐天「そういえばフィアンマさん」
フィアンマ「ん?」
佐天「>>193?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/29(日) 18:20:47.05 ID:EN2Wk/jD0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 18:29:03.81 ID:rw8rEMrSO<> 前に御会いした時よりも何か綺麗になってますけど、何か化粧品かなにか変えました? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/29(日) 23:56:04.78 ID:2pYzgqUl0<>
佐天「前にお会いした時よりも何か綺麗になってますけど、何か…うーん、化粧品か何か、変えました?」
フィアンマ「いや、変えていないが。…というよりも、そもそも化粧をしていないしな。基本的に」
佐天「うぇっ!?」
思わず叫び、佐天はかき混ぜる作業を終えて口元を手で覆う。
そして恥ずかしそうに、はにかんだ笑顔を見せてからフィアンマに場所を替わり、おずおずと問いかける。
佐天「え、全然してないんですか…?」
フィアンマ「…面倒だろう? マナーとしては良くないのだろうが」
佐天「ノーメイクでその美貌なんですね…うぅ、羨ましい…」
フィアンマ「化粧は肌を傷めるしな」
佐天「むむー…っ」
服に合わせて所作を変えるフィアンマが、男性用スーツ着用状態で化粧をする訳もなく。
悔しいような羨ましいような気持ちで項垂れつつ、佐天は上条の居る方へと戻った。
上条「何かあったのか?」
佐天「いやー、何でもないんですけどねー…」
しゅん、と落ち込んで笑う佐天の頭を撫で、上条は入れ替わるように台所へとやってきた。
ついでにハンバーグの仕込みを始める。
フィアンマは一度アイスのタネを放置する工程に入っているのか、退屈そうだ。
上条「フィアンマ、佐天ちゃんが何で落ち込んでるか、わかるか?」
フィアンマ「いや、わからん。俺様が化粧をしていないと言ったら落ち込んだというか、ショックを受けたようだ。何故だろうな?」
上条(>>196…) <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/30(月) 06:34:32.15 ID:JJu2xRXG0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 15:40:54.82 ID:ct3ubLpSO<> 世の努力してる女性が聞いたら怒られるぞ… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/30(月) 21:58:52.59 ID:5wHxzcoN0<>
上条(世の努力してる女性が聞いたら怒られるぞ……)
上条「…一応、薄化粧ってことにしといた方が良いかもな。嘘も方便で」
フィアンマ「何故だ」
上条「別に恋人の欲目とかじゃなくて本気で言うけど、フィアンマって美人なんだよ。だから、他の…化粧で美貌をカバーしようとしてる人にとっては、すっぴんだよと言うのはイヤミになると思うんです」
フィアンマ「元の顔立ちの違い、加えて美醜というものはその時々の周囲の価値観だろうに」
上条「そうはわかっていても、気になるものなのですよ、普通は」
不思議そうに首を傾げるフィアンマの様子に苦笑いして、上条はいそいそとハンバーグのタネを作っていく。
フィアンマは何回かかき混ぜると、一旦冷凍庫へとしまいこんだ。
ちなみに、後でまた取り出してかき混ぜなけれならない。
フィアンマは手ぶらになって暇なのか、佐天が暇だろう、と気遣いからテレビを見る許可を与えつつ、軽く上条に寄りかかる。
上条はほんわかとしつつ、同時にドキドキとしつつ、安心感も覚えながら、フィアンマの表情を眺めた。
何も考えていないのか、ぼーっとしている表情は珍しく、普段のキツさが剥がれていて、可愛い。
フィアンマが瞬きをする度に長い睫毛が動き、上条の視線を釘付けにする。
改めて見ても、普通に見ていても美人だ、などと思いつつ、上条はフィアンマの表情をじっと見つめ続ける。
しばし、癒しの時である。
一旦ハンバーグのネタを寝かせるべく、上条は手を一生懸命洗い。
綺麗になった手でフィアンマの髪を優しく撫でると、ぼーっとした表情に照れの色が混じった。
フィアンマ「…ん?」
上条「いや、可愛いなー、と思って」
フィアンマ「…何がだ」
上条「全部、かな?」
フィアンマ「……正直、俺様よりもお前の方が可愛らしいと思うぞ」
上条「俺!?」
フィアンマ「自覚がなかったのか?」
おっさん姿の上条に可愛いと言うフィアンマ、という姿はシュールではあるが。
しかし、フィアンマにとっては殆どの人間が年下なので、容姿は一切関係無かったりする。
上条「俺の何処に可愛い要素があるんでせう…?」
フィアンマ「…強いて挙げるとするなら、>>199なところか」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/30(月) 22:15:39.11 ID:lds/3+Rz0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/30(月) 22:28:40.59 ID:CQEzU4Yl0<> 嫉妬深い 目が可愛い ウニのような髪 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/07/30(月) 23:04:00.69 ID:5wHxzcoN0<>
フィアンマ「…強いて挙げるとするなら、嫉妬深い、目が可愛い、ウニのような髪…といったところか」
上条「前半二つはまぁわからないでもないんですが最後!」
フィアンマ「刺々しさが何というか…好きなんだ」
上条「……遊び心的な?」
フィアンマ「そうだな」
俺の頭は玩具じゃないんだぞ、とうなだれる上条。
そんな上条の様子を気に留める様子もなく、フィアンマは上条の頭を撫でた。
ツンツンとした微妙な痛みが、フィアンマの掌に感じられる。
ふふ、と小さく笑うフィアンマに逆らう事も出来ず、上条は作業再開のその時まで遊ばれるのだった。
昼食を食べ終え。
デザートとして、フィアンマが作ったアイスをのんびりと食べながら、佐天は思い出したようにもごもごと上条に耳打ちする。
佐天「そういえば上条さん、まだプロポーズはしてないんですか」
上条「う…今年のクリスマスにしようと思ってさ」
佐天「指輪なくさないように気をつけてくださいね…」
上条「大丈夫大丈夫」
フィアンマ「…何の話をしているんだ?」
上条「いや、何でもない」
佐天「何でもないですよー」
二人して誤魔化す佐天と上条にフィアンマは首を捻りつつも、それ以上は問いかけない事にした。
フィアンマはもう、上条の不貞を疑ったり、不安になったりすることを一切放棄したのだ。
上条が何処へ行こうと誰と話そうと触れ合おうと、その相手は必ず百年程で死ぬか自分が殺すし、上条を取り戻しに行けばいい。
上条が明確に自分と別れる意思を見せた時だけ、四肢を切り落としてしまえば良いのだから。
いわゆる『正妻の余裕』と呼ぶべきかは微妙なところではあるが、フィアンマは今現在そう考えている。
午後、佐天は友人の家に泊まるだか何だかで、用意をする必要があるから、と帰っていった。
上条はだらしなくベッドに横たわっている。
まだ身体状態(30代)のありとあらゆる感覚に慣れない為、疲れやすいのだ。
対してまだ元気なフィアンマは、うつ伏せになっている上条の背中の上に跨って上条の頭を見下ろしている。
上条「うー…」
フィアンマ「……」
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/30(月) 23:05:05.28 ID:AHyAYsAN0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/07/30(月) 23:12:01.35 ID:+3eszpkE0<> 気を失う <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 16:09:20.18 ID:0cZBe1eSO<> 上条さんは年くったらきっとナイスミドルになる。
フィアンマさんは…だめだ色んな意味で想像できねぇ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/01(水) 17:18:51.58 ID:VBHLjLDR0<>
上条(だるねむい…)
そう心中で呟き、上条はうつらうつらとしながら目を閉じる。
やがて気を失い眠った上条の頬を突っつき、フィアンマはいたく退屈そうな表情を浮かべた。
そしてやや子供っぽく頬を小さく膨らませると、上条の頬で遊び始めた。
少年の体ではないため、さほどハリはない。
指で押せば抵抗なく沈み込んでしまう残念な肌だ。
フィアンマ「…老いるというのは、つまらんな」
そう評しつつ、フィアンマは上条の首筋を撫でた。
そして、ふと、思う。
今なら、簡単に殺せる。
殺してしまえば、上条は動かなくなる。
殺したら、どんな顔を見せてくれるだろう。
やはり、苦しそうな顔をするだろうか。当たり前か。
人は最期に見たものを網膜に焼き付けて事切れると言う。
ならば、ここで仰向けにして殺せば、上条は自分だけを網膜に焼き付けて死んでくれるのではないだろうか。
ごく、と生唾を飲み込みながら、フィアンマは上条の呼吸音を聞く。
規則正しい呼吸ペース。多少体重をかけると、ぅぐ、という声が混じって不規則になる。
死体を愛でる趣味はフィアンマにはない。
だけれど。
フィアンマ「…………、……」
しばらく沈黙した後、フィアンマは上条の体から降り、隣に横たわった。
何を考えているのか、誰にも読み取ることはできない。
フィアンマ「…好きだよ」
呟いて、フィアンマは上条を横向きにさせ、腕の中へと滑り込む。
上条はむにゃむにゃと言葉になっていない寝言を漏らし、腕の中のフィアンマの体を抱き寄せて昼寝を続行した。
そこに何か意識はない。無意識の領域。
寝相や寝言は、人の深層心理をよく体現したものだと言う。
上条「フィ…アンマー…すー…」
フィアンマ「、ん…」
口元を緩ませ、フィアンマは眠る事に決めた。
夕方、目を覚ました上条はぼんやりとしていた。
何となく気力が湧かない。
上条「……」
フィアンマ「…すぅ」
上条(外出てたのに、焼けてないな…肌白い…)
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 19:28:45.13 ID:Vru8KWsSO<> 何となくだけど、やたらと「上条さんorフィアンマさんが目が覚めたら何をやんだコノヤロー」なシチュが多いような…?>>1はそのシチュが好きなんかね……まさか手ぬk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 19:47:00.57 ID:ShhcYBgPo<> 寝ているフィアンマにキスする <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/02(木) 21:18:31.61 ID:D+Rhmn3n0<>
上条「…、ん」
気力が湧かないなりにどうにか振り絞り、フィアンマの頬へ触れ。
真っ白な肌をしばらく触った後、上条はそっと顔を近づけて口づけた。
ふに、という感触に笑んで、口を離す。
まだ目の覚めないフィアンマの髪を撫で、上条は立ち上がって台所へ移動する。
夕飯の準備をしておこう、と思ったからだ。
昼の食事が豪華だった分、夜は質素でもいいか、と思いつつ、上条は考え込む。
素麺などが涼やかで良いのかもしれないが、フィアンマは少々食べ辛いだろう。
冷製パスタかな、と思いつつ、上条はトマトなどを用意する。
冷麺用の細い麺であれば、茹でる時間も短くて済む。
いそいそと調理をしている間に起きだしたらしいフィアンマが、上条にくっつく。
暑いと思いつつも文句を言うレベルではなく耐えられるので、上条は振り返ってフィアンマを見やった。
何を考えているのか一切読めない目をしていた。
上条「…フィアンマ?」
フィアンマ「…当麻」
上条「ん?」
抱っこ、と眠そうな声での要求にきょとんとしながらも、上条は火を止めてフィアンマを抱きしめる。
酔っている状態と寝ぼけている状態が似ているという説を聞くが、フィアンマの場合これに当たるのかもしれない。
フィアンマ「……」
上条「…眠いならもう少し寝てても良いんだぞ?」
フィアンマ「…嫌だ」
上条「? そっか」
もぞ、と上条の肩口に顔を埋め、ふるふると首を横に振り。
上条「…何か、嫌な夢でも見たのか?」
ぽんぽん、とフィアンマの頭を撫でつつ、上条は首を傾げる。
フィアンマは何も答えず、上条の肩口で甘えた。
ご飯作れないな、と思いつつもフィアンマを甘やかし、上条は動けないまま、好きなようにさせる。
フィアンマ「…本名」
上条「本名?」
フィアンマ「…知りたいか?」
上条「誰の」
フィアンマ「…俺様の」
上条「>>209」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/02(木) 21:20:41.28 ID:nqR5o/QB0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/02(木) 21:37:45.07 ID:PDyEl8YSO<> …教えてくれるなら <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/04(土) 00:55:22.39 ID:RPHVnNie0<>
上条「…教えてくれるなら」
フィアンマ「…Campana」
上条「…カンパーナ?」
フィアンマ「…、…ん」
日本語で鐘を意味する、ヨーロッパ圏では一般的な名前。
英語であればベル、といったところ。
上条に甘えつつ初めて本名を明かしたフィアンマはもぞもぞと甘えて未だ離れない。
上条は首を傾げつつフィアンマをあやし、落ち着いたところで調理を再開した。
麺を茹でている間もフィアンマは離れず、暑いだろうに上条に密着したまま。
上条「…大丈夫か?」
フィアンマ「問題無い」
こんなに甘えるタイプだったっけ、と思いつつ。
しかし上条としてはこうしたあからさまな甘えは嬉しく、可愛く思えるので問題は無い。
出来上がった夕飯をテーブルに並べ、席について。
上条は思い出したように問いかける事にした。
上条「…どうして、急に本名なんか教えてくれたんだ?」
フィアンマ「…いや、特に意味はない」
上条「そっか…」
フィアンマ「…本名で呼びたいなら、好きにすると良い。俺様はお前を本名で呼んでいるしな」
上条「>>212」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 01:50:13.62 ID:/Yvwjv5SO<> 呼んで欲しい、じゃないのか?カンパーナ?クスッ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/04(土) 07:00:21.21 ID:Cu211/940<> カンパーナお兄様(裏声) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/04(土) 18:28:41.27 ID:NGIBGoJY0<>
上条「カンパーナお兄様…か」
女声を真似ようとし、僅か届かず、微妙な声音で言った上条の様子にくすくすと笑って、フィアンマは食事を開始する。
少し出遅れた形で上条も食事を開始つつ、フィアンマの様子を窺った。
意外なことに、怒っている様子は感じ取れない。
フィアンマ「その姿で言われても、な」
上条「まぁ、そりゃそうだけど。…カンパーナって、どういう意味なんだ?」
フィアンマ「日本語に直せば、『鐘』という意味合いになる」
上条「『鐘』、か」
フィアンマ「英語であればべル、などといったところか。一般的で平凡な名前だろう?」
上条「確かにそうだな。俺は可愛い名前だと思うけど」
フィアンマ「…名前に可愛いも可愛くも無いような気が、するのだが」
上条「響き的な意味で。…あれ、照れて」
フィアンマ「ない」
上条「でもちょっとほっぺた赤いぞ」
フィアンマ「気のせいだろう」
上条「いやでも」
フィアンマ「唇を縫われるか食事を再開するかどちらかにしろ」
上条「はい」
ぴしゃり、と言われて食事を再開する上条。
フィアンマは以降黙々と食事を終え、食器を片付ける。
上条も食べ終わって食器を片付け、両者が入浴を終えたところで、再び暇な時間となった。
暇を見計らったかのように自分にのしかかってきたフィアンマに不思議そうな表情を浮かべつつ、上条はフィアンマを甘やかす。
カーペットでは痛い、という理由により、ベッドで。
ベッドで横になっていてもそうそう性行為に及ばないのは互いの性格の問題だろうか。
上条「何か本当に今日はよく甘えるな」
フィアンマ「嫌なのか」
上条「嫌じゃない。ただ、どうしてかなー、と気になってさ」
フィアンマ「…>>215」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 08:06:44.49 ID:ZOTVla5SO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 08:33:27.81 ID:ZOTVla5SO<> …今の当麻に、「父」を感じるからかもしれないな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/05(日) 13:11:44.44 ID:9T+BH3H/0<>
フィアンマ「……今の当麻に、『父』を感じるからかも、しれないな」
上条「…そっか…見た目がおっさんだもんな」
フィアンマ「年下に変わりはないのだが、雰囲気構成に容姿は大きく関わるから、な」
上条「…フィアンマは、お母さんの顔、知らないんだよな」
フィアンマ「物心がつく前に死んでいたからな。もしくは、出て行ったのか。どちらにせよ、もう生きてはいないだろうし、会う事もない。顔は見ていたと思うが、何分、一、二歳の頃のことなど覚えていないだろう」
上条「……、」
上条にとっても、両親というものは親しみが無い。
記憶を失う以前の自分は充分親しみがあったのだろうが。
自分にとっては、息子思いなんだろうなあと他人行儀に思う父親だと言う男性、優しい母親と言う女性、という認識でしかない。
ただ、そうやって途中から失うのと物心つく頃に既に親が居ないのは別なのだろうなあ、と上条は思う。
上条「…お父さんは、優しい人だったのか?」
フィアンマ「あぁ。俺様は男として生きると宣言した分少々キツい言い方もされたが、生活に必要な沢山なことを教えてもらった。優しいが厳しさもあり、良い父親だったよ」
上条の隣に横たわり、横向きになりながら、フィアンマはもぞもぞとのんびり甘える。
上条の服を握り、胸元に顔を埋めて。
昔のことを思い出し、ほんの少しだけ泣きそうになりつつ、フィアンマは目を閉じる。
子供のような様子を感じ取り、目元を和ませながら、上条はフィアンマの髪を撫でた。
上条「…好きなだけ甘えてもいいからな。包容力は、ちょっと自信ないけど」
フィアンマ「…ん」
フィアンマは少し悩んだ後、上条の手を握る。
そして指を絡ませると、目を開けて視線を落とした。
落とした、とはいっても、見つめているのは上条の衣服及び腹部なのだが。
フィアンマ「…お前は、暖かな家庭というものが、欲しいか?」
上条「家庭?」
フィアンマ「あぁ」
上条「>>218」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 03:22:41.53 ID:OzdMIrmSO<> 温かい家庭を知らない上条さんでは興味はあるかな位だったりなんだろうか…(´;ω;`)ウッ
どーでもいいがフィアンマさんの本名が『鐘』と聞いてBONNIE PINKの「鐘を鳴らして」を思い出した。何となく歌詞と合ってなくもないような気はするぜksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 17:09:33.07 ID:hraGE2mio<> いまさらだが神上になったんだったらアカシックレコードくらいはアクセスして記憶を戻すぐらいのことはやれそうなんだが。
安価下 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 18:21:00.15 ID:OzdMIrmSO<> 神条さんになった時に前条さんをころしたから無理じゃね?
安価↓ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 20:59:15.66 ID:hraGE2mio<> >>219
でもアカシックレコードには過去現在未来すべての情報があるから前条さんを殺そうが情報はあるんだから関係なくね? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 22:03:38.03 ID:OzdMIrmSO<> 前条さんがいないから、膨大過ぎる情報からの特定の人間の特定の主観的、極端に限定的かつ、何を、どんな情報を求めてるかの幅を決める基準点がわからない上に検索エンジンに書き込むワードがわからないから、引き出す為のかぎがない。ある程度の枠組みとなる筈の前条さんが失われてるから無理じゃね?
安価↓ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 04:13:32.06 ID:R7N6nVIX0<> 欲しくない…と言えば嘘になるな。だけど、俺にとってはお前が傍にいてくれるならそれだけで充分だよ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/07(火) 21:05:23.45 ID:DDTK7gYw0<>
上条「欲しくない…と言えば嘘になるな。だけど、俺にとってはお前が傍にいてくれるならそれだけで充分だよ」
フィアンマ「…そうか」
正直な上条の言葉に、フィアンマは相槌を打ってぼんやりと考え込んだ。
色々と考えてはみたものの、良い案は浮かばず。
残念そうなため息を漏らし、フィアンマは上条の髪をいじった。
そして頬を撫で、つっつき、自分の唇を舐め。
しばらくそうして手遊びをした後、フィアンマは目を閉じて眠る体勢になった。
上条はぽんぽんとフィアンマの肩を軽く叩き、寝かしつけるように背中を優しく、一定のリズムで叩く。
上条「おやすみ」
フィアンマ「…ん、おやすみ…」
季節は移り変わり、秋。
どうにか試行錯誤の果てに元の状態(=年齢)へと戻った二人は、手を繋いで歩いていた。
完全に元の状態、というには少々語弊がある。フィアンマの見目は現在、上条と同い年の17歳程度。
もう少し努力してみようかと悩んだものの、これでいい、とフィアンマが割り切ったのだ。
見目が若返ったからといって、右腕が戻ってくることはない。
生活にあまり変化は無い訳だ。
そして、上条の突発的我が儘により。
多少魔術を使う羽目にはなったが、周囲の認識を丸ごと塗り替える形で、フィアンマは元より女子生徒だということに"変え"た。
故に、現在。フィアンマは慣れない女子生徒用制服…セーラー服(セーラー襟のスーツとは勝手が違う)を着、上条と一緒に帰り道を歩いている。
上条「寒くないか?」
フィアンマ「あぁ」
冷え気味のフィアンマの左腕をやんわりと握り、上条は問いかける。
フィアンマはゆるく首を横に振り、上条より少し遅れて歩いた。
衣服に行動を合わせるので、スカート姿で大股に歩くのは気に入らないからだ。
神経質ではあるものの、そのような面にはすっかり慣れた上条は特段文句を言う事なく、フィアンマの歩行スピードに合わせててくてくと歩く。
帰り道、向かう先は、夕飯の買い出しをする為のスーパーマーケット。
フィアンマ「…甘い物が食べたい」
上条「甘い物?」
フィアンマ「ん…」
上条「>>225でいいか?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:08:33.09 ID:7GVVUPy1o<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/07(火) 21:12:02.32 ID:efx1Wy8d0<> アイスクリーム <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/07(火) 22:43:12.98 ID:DDTK7gYw0<>
上条「アイスクリームでいいか?」
フィアンマ「あぁ。バニラが良い」
上条「バニラな、わかった」
秋に食べたら寒くなるような、と思いつつも、上条は断らない。
いつフィアンマがイギリス清教から呼び出しを受けるか、自分に仕事が来るか、わからないから。
日常を日常として過ごせる間は、せめて普通通りに、のんびりと優しい時間を過ごしたい。
スーパーに入り、カートを押す上条と腕を組む形で、フィアンマは辺りの商品棚を眺めた。
また酒かな、と微妙な顔をする上条の様子を見、フィアンマは見目によく似合った、少女らしいくすくす笑いを零す。
口元に指を当てて笑う様は上品だ。
上条は見惚れないよう視線を逸らし、今晩のメニューを考えつつ、野菜や調味料をカゴに入れていく。
フィアンマ「ところで、何を作るんだ」
上条「晩飯? 予定としてはシチューかな。きのこ安いし」
フィアンマ「そうか」
自分よりも身長の高い上条を見上げ、フィアンマはぼんやりと考える。
このまま魔術でまた調整を行わなければ、自分と上条は一生このままの姿。
やはり便利ではないな、と思いつつ、微調整を行わなければならないという面倒臭さに辟易しつつも、口や表情には出さずに考え。
考えても仕方の無い事か、と首を横に振り、思考を振り払ったフィアンマは上条と一緒にアイスコーナーまでやってきた。
一口にバニラアイスといっても、沢山の種類が存在する訳で。
しばらく悩んだ後、適当に選択したアイスをカゴに入れ、会計へ。
酒類よりも甘味の方が好きだと思えるのは、フィアンマの味覚が現在成人のそれではないからなのだろう。
帰宅し、シチューをコトコトと煮込みながら。
上条は少しばかりいやらしい事を考えていた。
既に失われた部分…特に右腕はともかく、フィアンマの身体は自分と同じ成長期。
年齢から考慮すれば成長期であるはずだ。
つまり、胸を揉めば大きくなるのでは、という期待。
ちら、と上条は後ろ、自分の居る台所ではなく部屋の方を見やる。
角度的に丁度ベッドの上が見えるのだが。
部屋が暑かったのか、珍しくだらしない格好(=スカートの腰部分を折って短くした状態)をしていたフィアンマのパンツが見えた。
セックスの雰囲気まで持ち込んでしまえばこのような事は無いが、ふとしたエロスに弱い上条少年。
家に上条しか居ないからこその、ミニスカで後ろ脚をぱたつかせるという振る舞いである。
おぐ、と残念な声と共に鼻血を出した上条は鼻頭を手で押さえ、ついでに火を止めて鍋に蓋をした。
振り返って良かったのか良くなかったのか、反省すべきか迷いつつ、上条は鼻血を飲み込んでフィアンマに近寄る。
フィアンマは暇だったらしく、上条が部屋に来たと察し、うつ伏せになったまま上条を見上げた。
フィアンマ「…鼻頭を手で押さえているようだが、鼻血か? そんなに暑い季節でもなかろうに」
上条「>>228」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/07(火) 22:45:18.60 ID:083EXVdV0<> 興奮しすぎた <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 22:47:59.78 ID:Q8rrNRBSO<> いやちょっと鼻くそ深追いしただけだから気にしないで…お願い。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/07(火) 23:28:42.14 ID:DDTK7gYw0<>
上条「いや、ちょっと鼻くそ深追いしただけだから、気にしないで…お願い。うん、鼻掃除に失敗しただけ」
フィアンマ「…そうか」
訝しがりつつもそれ以上追及することはなく、フィアンマはティッシュの箱から数枚ティッシュを数枚手に取り、上条に手渡す。
上条はありがとう、と鼻声で返事をした後、慎重にティッシュで栓を作り、鼻へと詰めた。
幼さの増した情けない上条の風貌にくすりと笑い、フィアンマはベッドに座る。
座った状態というのはスカートがあがる。
ミニスカートであれば太腿の付け根ギリギリ…とまではいかないものの、結構な露出だ。
もうだめだ、と唇を噛みつつ、フィアンマに促されるまま、上条はフィアンマの隣へと腰掛けた。
上条「ん…お腹空いてないか?」
フィアンマ「あぁ、問題は無い」
上条「そっか」
ならいいんだけど、とふぐふぐ言いつつ、上条は真っ直ぐの方向を向く。
顔を下に向けては血液がカーペットを汚す恐れがあるし、上に向けると血液がとめどなく喉に流れ込んでくるためだ。
確かここを押さえれば良かったような、とうろ覚えの知識で鼻の上の方をしっかりと押さえていると、不意にフィアンマが上条の顔に、自分の顔を近づける。
そしてそのまま、口付けを…しなかった。
フィアンマの舌は上条の頬に付着した血液をのんびりと舐めとる。
どうすることも出来ないまま固まる上条さんの頭を撫で、フィアンマは目を細めた。
上条「…フィ、アンマ?」
フィアンマ「…あまり鉄の味がしないな」
上条「うぐっ、おぇ…フィアンマ、何して」
動揺し、上向きになったため、上条の口内に大量の血液が溢れかえる。
口を開いた上条の後頭部を引き寄せ、フィアンマは深く口づけた。
血液の溢れる口内を舌で蹂躙され、上条はびくつきながら涙目になった。
フィアンマはそんな上条の様子に頓着せず、血液の味も構わず舌を絡ませ。
決して唾液だけではない、ぴちゃぴちゃという水音に心地よさそうな笑みを浮かべ、フィアンマは唇を離す。
上条の血液に赤く染まった舌を口内に引っ込め、フィアンマは優美に笑ってみせる。
上条「う…何、すんらよ、いきなり」
フィアンマ「美味かと思ったのだが。息苦しかったか?」
上条「>>231」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 23:40:29.38 ID:Q8rrNRBSO<> 今ドキドキしすぎて息苦しくなったわ…(キュン死なんてアホな物がマジであり得るかもしれないって思っちまった…) <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 14:19:15.07 ID:5Uyvlrlyo<> >>230 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/08(水) 18:14:32.18 ID:VnFkjkQs0<>
上条「今ドキドキし過ぎて息苦しくなったわ…」
顔を赤くする上条の頬を触り、フィアンマは首を傾げた。
上条(キュン死なんてアホなもんがマジであり得るかもしれないって思っちまった…)
フィアンマ「興奮すると鼻血が再発するぞ」
フィアンマの言葉通り、ぶり返してきた血液の濁流にあぷあぷとしながら、上条は閉口する。
差し出されたのは真っ白なティッシュ数枚。
慎重に、鼻の中に詰めていたティッシュと取り替えてゴミを捨てると、ゴミ箱の中は赤黒くなった。
グロ、と自分の血液ながらも思いつつ、上条は冷房の電源を点ける。
魔術を行使すると多少なりとも疲れてしまうし、部屋が涼しい方が鼻血が止まりやすいからだ。
ぽふぽふ、と上条の頭を撫で、フィアンマはおもむろに自分のスカートに手をかける。
上条「!!? 何してんの!?」
フィアンマ「いや、皺になりそうだから脱ごうかと」
上条「いいよ! 脱がないでいいから!」
フィアンマ「お前は制服フェチなのか」
上条「違うよ!?」
常識的に考えてくれ、と頭を抱える上条。
フィアンマは不思議そうな表情を浮かべるのみ。
フィアンマ「どうせお前はこちらを見ないだろうに」
上条「そういう問題じゃ…」
だめだもう、と鼻血の止まった上条はティッシュを捨てつつ。
どのようにして羞恥心を教えれば良いのだろうか、と悩んだ。
年齢が変わるだけでこうも意識せざるを得なくなるものか、と思いつつ。
夕食と入浴を終えた上条は、先に入浴を終え、うたた寝をしているフィアンマの隣に横たわって様子を眺めていた。
成人していた時、つまり元の姿よりも、今の姿の方が多少は健康そうだが、やはり細い。
髪の傷み具合も違い、元の姿以上に美人さを引き立てている。
ただ、成長途中の身体の為、元の美人というよりも、可愛いという印象も目立つが。
戦場においてはこの姿のままでも恐ろしいのだろうが、敢えてその事は思考から外し。
上条(何というか、フィアンマはフィアンマなんだけど、フィアンマの妹さんを見てるみたいな…あんまり変わってないのに違うというか)
自分に対してもうまく説明出来ないまま、上条はうーん、と首を傾げる。
フィアンマ「ん…」
ごろん、と寝返りを打ち、フィアンマは上条にくっついてうたた寝の心地良さに浸る。
上条はどうする?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 18:20:40.79 ID:gmAtcfFCo<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 18:35:18.48 ID:yqRKww8y0<> ちょっと出かける <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/08(水) 19:01:45.49 ID:VnFkjkQs0<>
上条(ちょっとコンビニ行ってこよう)
フィアンマの枕元にフィアンマの携帯を置き、自分は自分の携帯を持ち。
もう強く警戒する必要は無いとは思うものの、一応軽い防御結界を施して。
行ってきます、と静かなささやき声で告げた後、上条は家から出て行った。
完全下校時刻は過ぎてしまっているし、辺りも暗いが、人通りの多い場所でなければ、存外警備員は見回りに来ない。
まして、学生寮に程近いコンビニでは、そのような心配はほとんど無い。
上条はコンビニに入り、のんびりと商品棚を見て回る。
あまり客の居ない店内の為店員は暇らしく、椅子に座って持参してきたらしい漫画を読んでいた。
不真面目過ぎるだろ、とは思いつつも注意する気力は無い為、上条は商品を見つめる。
ふと、携帯が震えた。
電話かな、と思いきや、新着メール一件。
上条(フィアンマからか)
-----------------------
From:カンパーナ
-----------------------
Sub:(件名なし)
-----------------------
どこいったの
-----------------------
寝起きで頭が回っていないのか、はたまた怒っているのかわからない簡素な文章。
絵文字をやたら使った騒がしいメールよりは、上条にとって親しみのあるメールを見つつ、少年はメールを返す。
-----------------------
To:カンパーナ
-----------------------
Sub:今
-----------------------
コンビニ!
何か欲しいものあるか?
-----------------------
携帯操作に慣れたのか、割と返信は早い。
-----------------------
From:カンパーナ
-----------------------
Sub:ううん
-----------------------
いらない(´・ω・)
さっき幽霊が出た
-----------------------
上条(ゆっ!?)
-----------------------
To:カンパーナ
-----------------------
Sub:え
-----------------------
大丈夫か?;
幽霊ってどんなヤツ?
-----------------------
-----------------------
From:フィアンマ
-----------------------
Sub:(件名なし)
-----------------------
>>237
----------------------- <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/08(水) 19:03:16.00 ID:Qmh4KC7AO<> >>235
最後だけミスしましたがTo、From共にカンパーナで統一です。
安価下で <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 19:03:48.66 ID:yqRKww8y0<> なんか茶髪のロングで眼鏡掛けてて巨乳だった <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/08(水) 19:22:49.70 ID:VnFkjkQs0<>
-----------------------
From:カンパーナ
-----------------------
Sub:(件名なし)
-----------------------
茶髪でロングの髪で眼鏡
をかけてて、巨乳だった
-----------------------
上条はうーん、と悩んだ後、ドリンクコーナーの前でドリンクを眺めつつ、返信を打つ。
-----------------------
To:カンパーナ
-----------------------
Sub:多分
-----------------------
それ俺の友達だと思う。
いや、別に幽霊じゃなく
て…うまく説明出来ない
んだけど、とにかく、霊
体に近いだけで幽霊じゃ
ない
-----------------------
-----------------------
From:カンパーナ
-----------------------
Sub:あれか
-----------------------
昨年発現した学園都市製
の天使か
-----------------------
-----------------------
To:カンパーナ
-----------------------
Sub:(件名なし)
-----------------------
女子制服着てるなら、そ
う。
もしかしたら俺を訪ねて
きたのかもしれないし、
部屋に招いてやってくれ
ないか?
-----------------------
-----------------------
From:カンパーナ
-----------------------
Sub:(件名なし)
-----------------------
わかった
-----------------------
上条(多分風斬だろうな)
幽霊じゃなくて良かった、と安心しつつ、上条はコンビニから出て真っ直ぐに帰宅した。
上条「ただいまー」
フィアンマ「お帰り」
風斬「お帰りなさい、というより、夜遅くにごめんなさい…」
上条「そんなに夜でもないし、大丈夫。その節はありがとな…。と、何か用事か?」
風斬「>>240」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 19:32:06.57 ID:gmAtcfFCo<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 19:32:26.59 ID:Zr3zhfTm0<> 顔に刺青のあるお化けと身長が高い革ジャンお化けと金髪の外人さんお化けが出たんですぅぅぅ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 19:32:58.28 ID:Zr3zhfTm0<> 身長が高い革ジャンお化けは駒場さんね <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/08(水) 20:39:52.37 ID:VnFkjkQs0<>
風斬「わ、私街を歩いてて。あの、ある意味お家とかないので…」
上条「うん…それで?」
風斬「そしたら、顔に刺青のあるお化けと、身長が高くて革ジャンを着たお化けと、金髪の外人さんのお化けが出たんですぅぅ…」
じわ、と涙目になる風斬を宥めるように、上条は左手で彼女の頭をぽんぽんと撫でる。
風斬「それで、怖くて、ええと、貴方に助けてもらいたいと思って来たら…」
上条「フィアンマしか居なかった、って訳か。ごめん。…しかし、幽霊か…」
うーん、と考え込む上条。
ふと、期待の眼差しをフィアンマへと向けた。
フィアンマ「…何だ」
上条「フィアンマって、聖職者だよな?」
フィアンマ「そうだな。所属としてはそうだった」
上条「お祓いとか出来ないか? こう、悪魔祓い的に」
フィアンマ「…出来ない事も無いが」
上条「頼めるか?」
風斬「お願いしますっ!」
ぺこ、と頭を下げる風斬と、申し訳なさそうに言う上条。
果たして処女性を喪った自分でも可能なものだろうか、と悩みつつも、フィアンマはひとまず引き受ける事にした。
やってきたのは、とある学区の寂れた廃墟。
風斬を上条の自宅に待機させた二人は、そこへやってきた。
風斬が休む時に使っている場所だったのだが。
そこ居たのは、三人の『幽霊』。
一人は、木原数多。
一人は、駒場利徳。
一人は、フレンダ=セイヴェルンの…いわば生霊だった。
フィアンマ「…聖水をかけても効果が無さそうに見えるのだが」
上条「確かに、な」
駒場『…む』
木原『あ?』
フィアンマ「未練を晴らす方向でいこうか。何か未練があるから留まっているのだろう?」
駒場『未練か…残さないつもりで、いたのだが』
フィアンマ「何か、思い当たる未練はあるのか? そこに居られても困るんだ」
手順を踏んで祓うのが面倒になったフィアンマはそう問いかける。
顔面に刺青の刻まれたガラの悪そうな男が聞き返した。
木原『未練を晴らす手伝いってやつか?』
フィアンマ「そうだな。何かあるのか?」
木原『>>244』
駒場『>>247』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 20:41:33.69 ID:gmAtcfFCo<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 20:42:35.60 ID:9YQNl3VU0<> 愛しの一方通行に謝れなかった! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 20:45:12.78 ID:9YQNl3VU0<> そしてksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/08(水) 20:48:23.58 ID:9YQNl3VU0<> さらにkskだ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 20:49:52.11 ID:5Uyvlrlyo<> フレメアにもう一度会いたい <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/08(水) 22:38:47.15 ID:qj3AooZX0<>
木原『愛しの一方通行に謝れなかった!』
駒場『フレメアに、もう一度会いたい』
フィアンマ「それぞれ、会いたい人間が居るのか。なるほど、なるほど。…フレメア、アクセラレータ…知っているか?」
振り返られ、話を振られた上条はびくりとしつつ考える。
考えるまでもなく、一人はメアドも電話番号も知っているが。
上条「一方通行はすぐ会えると思うけど、…フレメアって子は知らないな。どんな子なんだ?」
駒場『舶来は…』
言いかけ、フレンダ=セイヴェルンの生霊が、駒場に代わって発言する。
フレンダ『結局、金髪で、アイドルみたいな格好をしてる子って訳よ』
フィアンマ「情報が少ないな…お前は見た事がある。死んだのでなければ生霊…として」
コンビニで過去見かけた、自分が妹を連想した可愛らしい幼い少女。
彼女だ、と何となくフィアンマは察したが、だからといって連絡先の控えがある訳でもなし、ひとまず手詰まり。
フィアンマ「…先にお前の未練を晴らすとしようか」
仕方なく、フィアンマは木原を見やった。
上条は頷いて、一方通行に電話をかける。
夜とはいえそこまでの夜更けではないため、まだ起きていた一方通行は応答してくれた。
上条「もしもし」
一方通行『あァ、オマエか…』
上条「ごめんな、こんな夜遅くに。頼みがあるんだ」
一方通行『あン?』
頼み? と電話口の向こうで首を傾げる様子が何となくわかる。
上条は気にせず、続けた。
上条「お前に謝りたい、っていう人が居るんだけど…」
一方通行『昼じゃダメなンかよ』
上条「夜の方が何かと都合が良いんだ。頼む」
一方通行『…今何処に居る』
上条「――学区の――の辺りに居るから、ここに来てくれ」
一時間後。
一方通行はだるそうに現れた。
一方通行「ンで? なンなンですかねェ、俺に謝りたいってヤ…ツ…」
木原数多の亡霊を見るなり、一方通行は固まった。
木原は一方通行に近寄り、深く頭を下げる。
木原『>>250』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 04:13:43.50 ID:7bF0Qs1SO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 04:14:54.02 ID:7bF0Qs1SO<> …悪かった。一方通行。あ、いや…謝って済む事なんざひとっつもねェけどよ…昔から何も親父らしい事もしてやれなかったしなぁ……
……なーんてなぁ!油断したなテメェ!俺が謝るようなキャラな訳ねーだろォが!!あ゙あ゙?!(木原神拳!)
オラオラァ!!こんなモヤシバディでだっせぇな!飯くらいちゃんとバランスよく食えや!第一位が体調管理すらまともにできねーなんて笑っちまうわ!!
ハハッ。殴られてんのに助けてくれるダチすらいねーのか?!一人でしんでくのは淋しいぜぇ?今から俺にころされちまう前に、友達3人くらいは作らせてやってもいいんだぜ?つーか作れ。テメェが無様にキョドりながらお友達作るとこが見てぇわwwwwww
あー、あと…アレだアレ!あの…テメェが大事にしてた第三位のクローン!テメェがまともに育てられんのかぁ?!どーせロクに教育受けてねぇテメェじゃまともに育てれねぇなぁ!将来的には戸籍とか用意して学校通わせてやる、なーんて発想すらテメェには無理か!ギャハハハ!
ハ、ハハッ…ハッ…あー、まぁ、…テメェっていう「最強の超能力者」を作れたって事は…俺の人生の誇りって事にしといてやらなくもねぇよ。バカ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 10:37:09.58 ID:zdwFugxIo<> >>250
ツンデレすぎクッソワロタ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県)<>sage saga<>2012/08/09(木) 15:27:27.64 ID:n5h7PWX90<> 問題は触れるかどうかだ…! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 15:59:33.40 ID:7bF0Qs1SO<> 触れないなら触れないで面白いやん? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 21:05:15.61 ID:zdwFugxIo<> でも木原くンなら幽霊になっている間に、生きているものに干渉できるように研究しているに違いない! <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/09(木) 22:24:51.23 ID:MUViKCDj0<>
木原『…悪かった。一方通行。あ、いや…謝って済む事なんざひとっつもねェけどよ…昔から何も親父らしい事もしてやれなかったしなぁ……
』
一方通行「…、…オマエ…」
上条、フィアンマ、駒場、フレンダ(の生霊)は四人(?)揃って二人の様子を見守っている。
あからさまに傍に居ては謝罪し辛いだろうと配慮して。
上条はこの安っぽい流れにじーん、と感動していたのだが。
木原『……なーんてなぁ! 油断したなテメェ! 俺が謝るようなキャラな訳ねーだろォが!! あ゙あ゙?!』
一方通行「な、ッ、ごッ、ガァアアアアアアアッッ!!」
次の瞬間、木原数多の亡霊は不敵な笑みを浮かべるなり、一方通行にパンチを『喰らわせた』。
自分以外に一方通行に攻撃の通じる人が居たのか、というより幽霊って人に攻撃出来るのかよ、と目を瞬かせる上条。
一方通行は殴られたままに吹っ飛び、廃墟の壁に背中を打ち付けて咳き込む。
チッ、と舌打ちをしながら立ち上がり、電極スイッチに手をかけながら、一方通行は立ち上がり、木原に近づいていく。
木原『オラオラァ!! 来いよクソガキィ! こんなモヤシバディでだっせぇな! 飯くらいちゃんとバランスよく食えや! 第一位が体調管理すらまともにできねーなんて笑っちまうなぁ!!』
一方通行「き、はら…木ィィィィ原ァアアアアア!!!」
跳ぶように向かっていく一方通行。
対して木原は戦闘態勢に入り、一方通行に殴る蹴るの暴行を食らわせていく。
霊体だから『反射』の影響を受けないのかどうかはわからない。
しかし見た目程のダメージは無いらしく、一方通行は歯を食いしばり、木原を睨む。
木原『ハハッ。殴られてんのに助けてくれるダチすらいねーのか?! 一人で死んでいくのは淋しいぜぇ? 今から俺に殺されちまう前に、ま、友達3人くらいは作らせてやってもいいな? つーか作れ。テメェが無様にキョドりながらオトモダチ作るとこが見てぇわ』
はははは、と嘲笑混じりの爆笑。
しかし、そのセリフはよくよく聞けば、悪意に縁どられた、一般的な父親のそれ。
木原『あー、後…アレだアレ! あの…テメェが大事にしてた第三位のクローン! テメェがまともに育てられんのかぁ?! どーせロクに教育受けてねぇテメェじゃまともに育てらんねぇなぁ! 将来的には戸籍とか用意して学校通わせてやる、なーんて発想もテメェにゃ無理だろ! ギャハハハ!』
一方通行「はン、馬鹿じゃねェの。オマエみたいなインテリちゃンに言われなくても、それ位予想ついてましたァ」
言葉を返す一方通行も、悪意に縁どられた、息子のような発言を。
どこか歪だけれど、親子にしか聞こえない会話。
木原『ハ、ハハッ…ハッ…つまんね。…あー、まぁ、…テメェっていう"最強の超能力者"を造れたって事は…俺の人生の誇りって事にしといてやらなくもねぇよ。バカ』
謝罪をしたことで未練が薄れたのか、木原の足から徐々に薄れていく。
まるでホログラムのシステムに異常でも発生したかのような、儚さ。
一方通行は少し黙った後、木原を睨み、少々出血した口元を手の甲で拭い、嘲笑の声で言った。
一方通行「そォかい、そりゃご苦労サン。…、悪い事ばっかりだったが…超能力者になった御蔭で生きたって言えば、まァ、否定出来ねェし。感謝してやらねェでもねェよ、バーカ。バァァカ」
和解したからこその別れにほんの少しだけ感情をマイナス方面に揺さぶられ、視線を落として、一方通行はそう罵った。子供のような罵倒。
木原は最後に一歩踏み込むと、ぐしゃっと一方通行の頭を撫でて、消えた。
上条「…良い風景だったな。暴力的だったけど」
一方通行は、上条に『用事は済ンだだろ。じゃァな』と告げてその場から去り。
思い出しては、ぐす、と鼻を啜る上条を放り置き、フィアンマは駒場とフレンダ(生霊)の方を見やる。
フィアンマ「一つ問題は片付いたな」
フレンダ『次はこの人の悩みを解決って訳よ。…フレメア、何処に居るんだろう』
駒場『…すまない』
フィアンマ「いや、構わんよ。ところで、お前達二人は昼間でも行動出来るのか?」
フレンダ『>>257』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/09(木) 22:34:14.72 ID:hmKVTEoy0<> 結局無理って訳よ
私はいわゆる幽体離脱ってやつだから <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/09(木) 22:42:51.63 ID:hmKVTEoy0<> >>256
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/10(金) 17:24:15.66 ID:DAwBXCkg0<>
フレンダ『結局、無理って訳よ。私はいわゆる幽体離脱ってやつだしね』
フィアンマ「そうか。となれば、お前の身体が起床している間は不可能、と。ところで、お前は何で幽体離脱しているんだ」
フレンダ『んー、結局、簡単に説明するなら…一時期死の淵を彷徨った挙句、この男がフレメアに会いたいとぼやいてるのを聞いてとどまってるって訳よ』
フィアンマ「つまり、この男の未練が晴らされ、消え去ればお前も戻れる、か」
フレンダ『そ』
駒場『舶来…元気だろうか…』
フィアンマ「…そのお前達が言うところのフレメアという少女に会った事はあるが、元気そうだったぞ。連絡先は持っていないが故に、今どうかはわからんが」
駒場『そうか…』
フィアンマ「…手詰まりか。…夜、抜け出している間の記憶は?」
どう考えてもどん詰まり。
しかし、フレンダとフレメアが仲良しそうだったのを見た事のあったフィアンマは、一縷の希望を託しフレンダへと問いかけた。
結果はNO。
解離性同一性障害のようなもので、本人には違いないが、記憶は共有しない。
フィアンマはしばらく悩んだ後、上条を見やった。
元はと言えば上条を頼って来た人間の困り事を任されたのだ、上条に責任がある。
フィアンマ「…何か案は無いのか?」
上条「んー…>>260」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/10(金) 17:43:30.00 ID:mBLDelyX0<> 特徴口癖背格好がわかるなら探索魔術でいけるかも <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/10(金) 18:41:34.51 ID:Lsv2WG/i0<> >>259
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/11(土) 15:39:11.98 ID:gBt5qpR00<>
上条「んー…特徴、口癖、背格好がわかるなら、探索魔術でいけるかも。ただ、直接の知り合いじゃない分、精密性は低いよな」
フィアンマ「そうだな」
駒ンダ『『魔術?』』
フィアンマ「気にするな」
適当に誤魔化し、フィアンマは探索魔術用に、フレメアという個人の特徴を魔術記号化していく。
もしかしたら髪を染めるなりして多少の誤差は出るかもしれないが、やらないよりはマシである。
今居る建物の壁を使い、どうにか術式を組んだフィアンマは上条から離れる。
上条はというと、魔術記号を使いながら探知・及び探索を始めた。
一人それらしい少女が見つかった辺りで、今度はそれを科学サイドにも分かりやすいよう座標に置き換える。
置き換えた座標をチョークで床に綴り。
上条「…多分ここに居る子だとは思うんだけどな」
確証は持てないままに、そう言い、上条は首を傾げた。
座標を眺めて場所はわかったのか、ふむふむとフレンダは頷く。
ふと、思い出したようにフィアンマが問いかけた。
フィアンマ「…ちなみに。会うというのは、会話も含めて、か? それとも、現在元気かどうかを見られればそれで良いのか?」
駒場『>>263』 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/11(土) 16:13:47.50 ID:yLJ+qNLSO<> …遠くから暫く見ているだけでいい。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/11(土) 18:03:57.19 ID:ZICQRIh30<> 元気かどうかを見られればそれで良い <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/12(日) 08:18:48.61 ID:XjBVn8sn0<>
駒場『元気かどうかを見られれば、それで良い』
フィアンマ「そうか。…さて、移動するとしようか」
中規模移動術式は上条に丸投げでフィアンマはそう言い、こくりと頷いた。
どうにか夜が明けてしまう前に問題を片付けてしまいたい。
当然の如く術式構成を振られた上条は疲れを感じながらもしっかりとやり遂げたのだった。
やってきたのは、とあるホテル。
丁度フレンダの『身体』の方が起きだしたのか、「あ」と短い声を漏らしてフレンダの生霊は消えていった。
恐らく、元の場所、つまりは本来の意識の方に『収束』されたのだろう。
駒場が成仏してしまえば彼女の生霊が地上にとどまる理由も無い為、残りは駒場が未練を晴らすのみ。
ホテルの一室、206号室に、フレメア=セイヴェルンは居る。
驚かれないだろうか、怖がらせないだろうか、と渋る駒場を急かす形で、上条とフィアンマは真面目に諭した。
まもなく夜明けがやってくる。
窓の外。
ホテルの一室のベッドの中、窓に身体と顔を向けてすやすやと眠る少女を、駒場は静かに見守っていた。
最期まで無能力者だった彼だが、
自分と別れた時と比べても、少々の成長は見られるが、体調が悪そうには見えない。
元気そうでよかった。そう思っていると、不意に少女が目を覚ました。
少女―――フレメアは瞼をぐしぐしと擦り、きょとんとしながら起き上がる。
そしておずおずと窓を開けると、
フレメア「にゃあ。…駒場のお兄ちゃん」
駒場『……久しぶりだな。舶来』
フレメア「…にゃあ。大体、どこいってたの?」
駒場『……色々と、やる事があった。元気か』
フレメア「大体、元気。お姉ちゃんもいるもん」
駒場『……そうか。良かった』
未練が解消されていくにつれて、駒場の足元から、空気に溶けゆくかのように薄らいでいく。
フレメアは駒場が駒場だという実感を持てないのか、夢を見ているような、ふわふわとした感覚で駒場を見上げていた。
そして、にこ、と可愛らしさの際立つ、純粋無垢な笑みを浮かべた。
フレメア「にゃあ。帰ってきたから、大体、もうこれから一緒にいられるよね?」
駒場『……』
フレメア「……駒場のお兄ちゃん?」
駒場は、黙って首を横に振った。
フレメアはただ不思議そうに首を傾げる。
フレメア「…?」
駒場『……少し我が儘を言って、舶来に会いに来た。もう会えない』
フレメア「……絶対?」
駒場『……』
駒場は静かに頷く他、無かった。
もう、腰の下辺りまで薄らいできてしまっている。
存在が、曖昧になってきてしまっている。
とても残念そうな顔をしながら、フレメアはさみしそうに言った。
フレメア「…もうわがまま言わないよ。駒場のお兄ちゃんも、大変そうだから」
駒場『……すまないな、舶来。本当に、元気でいてくれて、良かった。姉とは仲良くするんだぞ』
フレメア「うん」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/12(日) 08:19:19.11 ID:xfHUHZZAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/12(日) 08:39:44.36 ID:XjBVn8sn0<>
やがて駒場が完全に消え去った後、フレメアは静かに窓を閉め、鍵をかけた。
後ろから姉が不可解そうに声をかける。
フレンダ「フレメア、どうかした?」
フレメア「…大体、なんでもない」
なんでもない、ともう一度繰り返し、フレメアはベッドの中へと再び潜り込んだ。
大切な『駒場お兄ちゃん』に言われた通り、お姉ちゃんと仲良く過ごしていこうと誓って。
あんまり話せなかったけれど、いつか遠い遠い未来で、また話せるような気が、した。
駒場の消滅を遠くから見届けたフィアンマと上条は学生寮(=自宅)に戻り、風斬に無事、事は片付いたと説明した。
風斬はぺこぺこと頭を下げて丁寧にお礼を言った後、静かに出て行った。
どうやらあの廃墟に戻ったらしい。
結局徹夜してしまったものの眠気の湧かない上条は、だるそうにベッドに横たわる。
生命力から魔力を精製している為多少の疲労感はあるのだが、何となく眠れない。
フィアンマはベッドに腰掛け、上条に背を向け、何かを考え込んでいた。
上条「…何、考えてるんだ?」
フィアンマ「いや、ゴーストなどというものが本当に存在するとは思わなくてな」
上条「……」
フィアンマ「…死後の標、指針となる神を信仰していないから発生するのか、人の強い未練がそうさせるのかは知らんが。…存在しないものだと思っていた。世界は広いな」
哀しみを帯びた声音が誰を想ってのものか位、上条にはすぐわかる。
もし、フィアンマの妹が幽霊となっていて、フィアンマとずっと一緒に居たのなら、戦争は起きなかったかもしれない。
上条に執着することも、ここまで心が歪んでしまうこともなかったかもしれない。
世界の命運を握る男としてありとあらゆる修羅場、戦場に立っていた人間とは思えない程、上条にとって、今の彼女の背中は小さく見えた。
フィアンマ「……、…記憶から死者の幻を生み出す術式は行使出来るが、所詮は妄想の域。そこに本人の意思は介在しない」
上条「……」
身体を起こし、ベッド上に膝をつき、上条はフィアンマの身体を抱き寄せた。
フィアンマはバランスを崩して倒れこむ事なく、俯いて笑う。
フィアンマ「…あのフレメアという少女は幸せだろう。最後にまた逢えて。あのアクセラレータとかいう少年も、何だかんだで充実した表情を浮かべていた」
上条「…フィアンマ」
フィアンマ「…別に、羨ましい訳じゃない。…違うんだ、そんな事を言うつもりじゃ、」
羨ましいと言えば、今生者として自分を愛している上条を傷つける事になる。
発言してからその思考に至り、フィアンマは唇を噛み締めて黙った。
上条「…>>268」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/12(日) 09:12:21.27 ID:WjfOpLC40<> ルシファーとゼウスに頼んでみるか? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/12(日) 10:06:22.72 ID:f85wKRLM0<> >>267
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/12(日) 10:40:24.61 ID:AeLht9XSO<> 俺に気を使わなくてもいい。亡くなった大事な人とまた会いたいって思う気持ちはわかるからさ
…俺は一緒に悲しむくらいしか、傍にいる事しかできねーけど <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/13(月) 02:11:48.55 ID:s2TxUNEAO<>
上条「…ルシファーとゼウスに、頼んでみるか?」
曲がりなりにも地獄の王と全能の神。
銀行から金を下ろす時のように、魂を持ってこられるかもしれない。
そんな、確実性の薄い夢物語染みた提案に、フィアンマは緩く首を横に振った。
フィアンマ「…いや、いい。お前の身体に負担がかかる」
上条「だけどさ、」
フィアンマ「良いんだ」
遮り、フィアンマは後ろ手で上条の髪を触った。
フィアンマ「…もし会ったら会ったで、どちらにせよ引きずる。だから、良い。お前を疲弊させ、ルーチェの安らかな眠りを引き裂いてまで私利私欲を叶えるつもりはない」
上条「……」
フィアンマ「…寝る」
言うなり、フィアンマは後ろに体重をかけた。
上条はベッド上で脚を開き伸ばして座ったまま、フィアンマを抱きしめる。
ぎゅう、と強く抱きしめた後、ぽつりと言った。
上条「…妹さんの分まで、俺がお前を幸せにするから。お前が妹さんの事を思い出しても悲しい気持ちが薄れる位、幸せぬするから、さ」
フィアンマ「…、…うん」
学校を平然とサボった(体調不良、と連絡は入れたが)二人は、惰眠を貪っていた。
もう昼過ぎだが、昨夜はお祓い騒動で眠れなかったので、仕方がないと言えよう。
短針は二。
長針が三を指した頃、ようやく、フィアンマだけが目を覚ました。
上条は未だすやすやと眠っている。
フィアンマは起き上がり立ち上がると、台所に移動した。
ぐし、と瞼を擦りながら冷蔵庫を覗き込む。
朝+昼食に何を作る?>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/13(月) 04:31:25.32 ID:T2gNANgSO<> コーンポタージュ、米パン数個、サラダ、卵焼き <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/13(月) 07:06:30.37 ID:YkdAhPk70<> なんだか肉が食べたいからステーキ(600g) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/13(月) 07:57:34.25 ID:s2TxUNEAO<>
昨夜少し働いたにも関わらず朝食を抜いたせいか、食欲の薄いフィアンマが空腹を覚えている。
珍しい、と自分自身に小首を傾げながら、フィアンマは冷蔵庫の中から肉のパックを取り出した。 二食分の食事なのだから、多少カロリーが高いところで問題は無いだろう。
一枚300gのステーキ用肉をバターで焼き始め、ついでに冷凍食品のポテトを温める。
付け合わせを完璧に作っても良かったが、そこまで好きでもないため、今日はやめておいた。
ステーキだけではバランスが悪いので、シンプルなサラダも作り。
調理途中、目を覚ました上条が近寄ってきた。
上条「おはよ…」
フィアンマ「おはよう」
テキパキと動くフィアンマの様子に新妻のソレを思い浮かべながら、上条は呑気に挨拶をした後、フォークや飲み物などを配膳した。
バターと、肉の焼ける良い匂いがする。
上条「ステーキ?」
フィアンマ「あぁ。腐る前に食べきった方が良いしな」
上条「そうだな」
全ての配膳を終えて席に着き、遅めの昼食を開始する。
今夜の食事は少なめにして早く寝なければ、と上条は思った。
昼夜逆転は厄介だ。
フィアンマ「…当麻」
上条「ん?」
フィアンマ「…遊びに行きたい」
上条「…珍しいな」
もぐ、と切ったステーキを口に含み、おずおずと提案する。
上条は笑顔で頷いた。
普段は基本的に自分が何をやるかに彼女を同行させているからだ。
上条「何か希望あるのか?」
フィアンマ「いや、無い。何処でも構わん」
上条「んー…」
さて何処に遊びに行こう、と上条は考える。
一般的に女性が『何でも良い』と言う時はその女性の中での正解が出るまで文句を言うものだが、フィアンマはその辺りはさっぱりし過ぎている為、問題は無い。
上条「>>275なんてどうだ?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/13(月) 13:37:55.08 ID:T2gNANgSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/13(月) 13:45:54.83 ID:T2gNANgSO<> 遊園地関連はちょっちお腹一杯なんで…
シカゴフィールド博物館 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/14(火) 17:48:01.52 ID:Ir6NpvpN0<>
上条「シカゴフィールド博物館なんてどうだ?」
フィアンマ「今から旅行か」
上条「今日はもう休んじまったし…そもそもあんまり学園都市に未練が無いというか。…ダメか?」
フィアンマ「ダメということは無いが。お前が良いのなら、俺様は別に何もこだわらんしな」
上条「よし、じゃあ準備しようぜ」
フィアンマ「あぁ」
そう返事し、フィアンマが旅行準備に取り掛かったところで、連絡がかかった。
イギリス清教の通信部隊からのもので、三日後に指定の場所まで来いというもの。
贖罪、刑に処されるという意味合いを持つ労働の為断れないが、そもそも断るつもりもないため、フィアンマは一つ返事して了承した。
三日後、ということなので、博物館を見てから行けそうだ。
上条「今回はどの位かかるんだろうな」
フィアンマ「二日間程度で終わる」
上条「? 何か自信あるんだな」
フィアンマ「終わらせるからな」
上条を待たせているという負い目があると、仕事の速さに拍車がかかる。
以前と違い喧嘩していないため、丁寧な仕事になるだろう。
彼女は複雑怪奇に見えて、上条当麻という少年に対してだけ、意外と、単純な側面も多い。
翌日。
ホテルに荷物を置いた二人は貴重品は身に付け、シカゴのフィールド博物館までやってきた。
フィールド博物館の名前に親しみの無い人間に対しては、"『Sue』と名づけられたティラノサウルス・レックスの全身骨格をオークションで落札した博物館"と説明すれば分かるだろう。
この博物館は、1893年に『知識の蓄積と普及』を目的としたコロンビア博物館とイリノイ州とが提携して設立されたもので、寄付者マーシャル・フィールドに因んで、1905年に改名された。
フィールド博物館の展示室は、南北に通る中央吹き抜けホールの東西両側の1階と2階、加えて地下にある。
フィールド博物館はニューヨークのアメリカ自然史博物館と同様なテーマをもつ博物館で、職員数は600人、その内キューレータ(人類学、生物学、古生物学の研究者)が90人、職員数ではニューヨーク自然史博物館の半分の規模と言える。
敷地面積は上野の国立科学博物館とほぼ同じといえるが、建物が分かれていない分とても広く感じられる。
年間予算は5,500万ドルで、そのうちシカゴ市から800万ドルとイリノイ州から45万ドルの支援がある。
その他の収入は、博物館会員の会費、入場料、会社などからの寄付、科学研究費、財団基金だそうである。
勉強が好きなフィアンマはのんびりと楽しそうに眺め、上条は反対に感心しつつも若干の飽き、退屈を感じながら眺めていた。
ちなみにこの博物館では夜会も開かれている。二人は関与しないことだが。
博物館で一日時間を潰した二人はホテルに戻り、歩き回った疲れからぽふりとベッドに倒れ込んだ。
今回は二人きりの旅行の為、部屋にはダブルベッドが一つである。
上条「楽しかったか?」
フィアンマ「充実していたな」
上条「そっか。なら良いんだけどさ」
ふと、思い出したように上条はフィアンマの髪を撫でつつ問いかけた。
上条「そういえば、仕事ってどんな事してるんだ?」
フィアンマ「ん? >>278」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/14(火) 23:10:25.03 ID:5AGx90qSO<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 03:30:46.17 ID:pAPsGuHSO<> 樹海で迷子になったらしいヴェント捜索 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/16(木) 23:07:56.28 ID:4BJwQxGA0<>
フィアンマ「ん? 樹海で迷子になったらしいヴェントの捜索」
上条「ヴェント!?」
フィアンマ「冗談だ。…とはいえ、今回はヤツと会うかもしれんな」
上条「…、…会って、大丈夫…なのか?」
フィアンマ「んー? どういう意味だ」
上条「いや、…戦争中の事、」
フィアンマ「別に恨まれていても、なんなら攻撃を受けても構わんよ。覚悟の上での行動だったしな」
上条「……」
第三次世界大戦中、フィアンマはヴェントと交戦した。
霊装を潰すという目的もあったのだろうが、ヴェントの舌の鎖を引きちぎった上、圧倒的に叩きのめした。
そもそもフィアンマは上条以外の誰かに好かれたいとは思っていない為、どうでもいいことなのだ。少なくとも、彼女にとっては。
避けようの無い事態だと理解はしているものの、上条は不安に思う。
また、五和の時のように、甘んじて私刑を受けようとするのではないか。
上条は、フィアンマが『純粋な被害者』からの刃しか受けない事を知らない。
いや、どんな理由があったとしても、彼は彼女が傷つけられる事に対して過剰反応するのだが。
表情を暗くする上条の額にぺたりと触れ、フィアンマは首を傾げてみせる。
フィアンマ「…俺様が倒れたら、助けに来てくれるのだろう?」
上条「そりゃ、そうだけど。…"不幸"にも、間に合わないかもしれないだろ」
フィアンマ「"幸運"にも、間に合うかもしれん」
前回、直接的にフィアンマを救ったのはアックアであり。
上条はその点においてちょっとした負い目、コンプレックスのようなものを感じていた。
彼の性格の中心には無力感があり、彼女の危機にいまいち間に合わない事が重くのしかかっている。
自分では役不足では、といった台詞がここのところ多いのはその為。
フィアンマは上条の顔をじっと見つめた後、ふぅ、とゆっくりため息を吐きだした。
フィアンマ「自衛位出来る」
上条「…出来るのは知ってる。してくれよ?」
フィアンマ「あぁ」
神様とやらに誓って、と頷くフィアンマ。適当な調子。
何だかな、とうなだれつつ、上条は眠る事にしたのだった。
それから二日後。
上条は今回呼ばれず着いて行けない為(着いてこなくていいと言われたのもあり)、ホテルに待機。
フィアンマは例によって出向き、言いつけられるまま力仕事を片付けていたのだが。
久しく目にした同僚の姿、その黄色い衣装に特に懐かしむでもなく視線を向けたまま、フィアンマは仕事をする。
ヴェント「…アンタがイギリスの犬とはね」
フィアンマ「人道的な量刑を受けた結果だよ」
ヴェント「……」
フィアンマ「ローマ正教に戻って罰を受け直せとでも言うつもりか? 面倒がかかる、断るが」
ヴェント「別にそんな事言ってないわよ」
フィアンマ「…なら何だ。俺様に何か用か」
ヴェント「>>281」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/17(金) 00:08:42.69 ID:h0cCbgKSO<> やっとヴェントちゃん登場だぜヒャッハーksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/17(金) 03:01:07.26 ID:zXNzp4IOo<> そういえば風のうわさで聞いたんだけどあんた男できたみたいじゃない、ちょっとそいつ紹介しなさいよ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/17(金) 17:17:50.51 ID:9Ss1+3bu0<>
ヴェント「あー…そういえば、風の噂で聞いたんだケド、アンタ男デキたみたいじゃない? ちょっとソイツ紹介しなさいよ」
フィアンマ「その必要は無いな」
魔力を練り上げ、霊装の微妙な調整を行いながらフィアンマは肩を竦める。
つまらなそうな顔をするヴェントを見やり、続けて言葉を発した。
フィアンマ「大体、お前はよく知っている筈だ」
ヴェント「知っている?」
フィアンマ「皆まで言わずとも分かるだろう」
ヴェント「…上条当麻か」
フィアンマ「そうだよ」
ヴェント「随分とご執心だったコトは知ってたケド…ま、おかしくはないか」
フィアンマ「最大の加害者と最大の被害者が共に居る、というのは少々妙ではあるが。手放すつもりもない」
容姿十七歳程度のフィアンマは、見目だけ取れば華奢な少女にしか見えない。
ヴェントは彼女の姿に少しばかり目を疑ったものの、フィアンマであれば何事も有り得る、と納得した。
何しろ、誰にも何も腹の内を話さず、話した事は偽り。まったくもって腹の読めない人間だからだ。
霊装の安全確認を終え、フィアンマは仕事を終えた。ヴェントはヴェントで自分の仕事は終わらせてきたため、これで二人共暇となる。
ちなみにヴェントはアックアのように傭兵として一時的にイギリス清教に雇われ、フィアンマは言うまでもなく、同じ仕事をした。
運ぶかどうか迷った結果、フィアンマはひょいと霊装を投げた。細腕からでも大きな威力が出るのは、『天使の力』を応用しているからだ。
暇を持て余したヴェントはよほど興味があるのか、上条に会わせろと言い。
適当にいなすのも面倒になってきたため、フィアンマはヴェントを連れてホテルまで戻ってきた。
上条は予想外に早く帰ってきたフィアンマを出迎え、笑顔になるも、背後のヴェントを見るなり目を瞬かせた。
上条「えー、と…仲直りしたのか?」
フィアンマ「直す仲も無いが。お前に会いたいと喧しくてな」
上条「俺に?」
フィアンマはヴェントの様子を見やる。
見目はあまり変わらず(身長は伸びた)、しかし魔術師としては成長した上条だが、どこからどう考えてもただの少年のままのように見えた。
ヴェント「思ったより変わってないのね」
つまらないの、と言わんばかりの顔に少々不服を覚える上条。
フィアンマ「そもそも見たいと考えた理由は何だ」
ヴェント「>>284」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/17(金) 17:23:29.62 ID:FJtG4t7h0<> なんか体質が変わったらしいじゃない?
あと噂なんだけど神と悪魔を見たって話があるんだけど それは関係ある? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2012/08/17(金) 17:30:18.78 ID:OrJRHqsAO<> >>283
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/17(金) 18:20:22.64 ID:9Ss1+3bu0<>
ヴェント「何か体質が変わったらしいじゃない?」
上条「…、」
どうしようか、と閉口する上条。
彼はフィアンマと違い、インデックスという少女を誤魔化す程度の嘘しか上手くない。
たじろぐ上条を追い詰めるかのように、ヴェントは言葉を続ける。
ヴェント「後、噂なんだけどさ、神と悪魔を見たって話があるんだケド それは関係ある?」
上条「あー…それは…えーっと…」
説明してもいいものか、といった表情で上条はフィアンマを見やる。
彼女は特に関与する様子は無く、好きにすればいいとばかりに肩をすくめた。
上条「…どこで聞いたかは知らないけど、まぁ、…本当。全部」
ヴェント「色々とちょっかい出したみたいね、話は聞いた。元からそういうヤツか」
上条「必要だからやっただけだ」
ヴェント「ふーん。ま、いいケドさ。アンタが何をしようと。私はあくまでローマ正教基準の傭兵だし」
上条「……」
ヴェントは一歩踏み込み、上条だけに聞こえるよう、余計な事を一言囁いてその場から去っていった。
どうやら答えを聞いた事で興味は失せたらしい。
ヴェント『コイツは人格が破綻してる。不安定で虚ろ。アンタがどうして好いているのかは知らないケド、何もかも全面的に信じるのは勧めない』
上条(…知ってるよ、そんな事。どこか壊れてるけど、好きなんだから仕方ないだろ。ただ、フィアンマが俺に信じてもらう為に何でもする性格だってことは、俺しか知らない。だから、信じられる。たとえそれで後ろから刺されたって、それはそれでいいんだ)
気を取り直し、上条はフィアンマに話しかける事にした。
上条「そういえばもう仕事って終わったのか? 早かったな」
フィアンマ「早く終わらせてきただけだ」
上条「そっか、お疲れ様」
部屋の鍵を閉め、上条はのんびりと笑んだ。
フィアンマは目元を擦り、上条にくっついて暇そうな顔をした。
まだ夕方にもなっていない。
上条「腹減ってないのか?」
フィアンマ「特には」
上条「そっか」
ベッドに座る上条にもたれかかり、うとつきながら淡々と返事を返す。
魔力の消費は生命力の消費。その気になれば彼女はだいぶ捻出出来るのだが、浪費した分眠りたいというのは当然の事。
これも甘えの一種だということは、魔術師となった上条は充分理解出来る。
上条「……」
フィアンマ「…そういえば、ヴェントは何か囁いていたな。何と言っていたんだ?」
上条「え? あー…>>287」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/17(金) 18:26:52.25 ID:HXLwqJj90<> かそ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/17(金) 18:28:06.97 ID:h0cCbgKSO<> 背中に気を付けろって <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/17(金) 19:39:07.47 ID:f09ofbB/0<>
上条「え? あー…背中に気を付けろって」
上条(嘘は言ってない)
フィアンマ「…」
じー、と睨めつけるような視線にもたじろがず、上条は涼しい顔で言う。
確かに嘘はついていない。
フィアンマはその内に睨むのをやめ、上条にもたれたまま再び眠気に浸った。
今眠ってしまうと夜に目が覚める恐れがある。それにしても眠い。
生命力の浪費は全体的な体力の消耗と、疲労。
どうにか寝るまい、と我慢しているものの、うつらうつらとしてしまうフィアンマの様子を見、上条は苦笑する。
上条「我慢しないで寝た方が良いと思うぞ。数時間経ったら起こすし」
フィアンマ「…眠りたくない」
上条「数時間の昼寝にしておけば夜もちゃんと寝られると思うぞ?」
フィアンマ「……寝たくないんだ」
上条「何でだ?」
フィアンマ「…寝たら意識が無くなるだろう。せっかく戻って来たというのに」
上条「……いつも可愛いけどさ、寝る前のフィアンマとか、ちょっと意識曖昧な時がすごく可愛いと思うんだ」
フィアンマ「…」
む、とむくれるフィアンマを寝かしつけ、上条は表情を一層和らげるのだった。
数時間の昼寝の後、フィアンマは上条と共に入浴食事その他を終え、再び眠り。
翌朝、昼にほど近い時間。
やることもなくなった事だし、帰ろうか、それとも何処かに行こうか、という話をしていたのだが。
唐突にホテルのドアがノックされた。
上条「誰だろ」
ホテルの従業員は基本的に来ない。
上条は恐る恐るドアを、開けた。
やってきた人物(禁書キャラ名)>>+2
用件>>+4 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/17(金) 19:40:37.80 ID:h0cCbgKSO<> kskといこうじゃないか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/17(金) 19:42:40.13 ID:bWj+G+2T0<> 三流企業のサラリーマン並みに腰の低い一方さん、 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/17(金) 19:48:40.67 ID:h0cCbgKSO<> そしてkskだ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/17(金) 19:49:52.59 ID:bWj+G+2T0<> 打ち止めに嫌われたァ… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/19(日) 10:04:25.63 ID:GMGBCJPh0<>
訪ねてきたのは、決して敵側と呼称すべき人間ではなく。
むしろ、二人との関わりの度合いを考えれば友人とも、戦友とも呼べる。
白い髪に赤い瞳、刺々しい雰囲気を纏う学園都市最終兵器、『一方通行』―――超能力者。
そんな彼は前述の刺々しい雰囲気ではなく、やたらと腰の低さをアピールしていた。
或いは、アピールするつもりがなくとも、弱々しさが表立っているというべきか。
一方通行「…」
ぺこ、と頭を下げられ動揺しながらも、幽霊騒動以来そんなに久しくもない友人に声をかけるべく、上条は首を傾げた。
上条「えーっと…どうしたんだ? 何か元気無いみたいだけど」
アレイスターが機能を強くなしていない今、割と旅行許可は出やすいので、何故一方通行がイギリスに来られたのかという疑問は浮かばない。
気遣いの言葉を受けた一方通行は、三流企業の下っ端か何かのように腰の低い様子で上条を見上げた。
一方通行「すまねェなァ、邪魔して…」
上条「いや、それは別に良いんだけど…」
一方通行「こンなダメなヤツですいませン…」
フィアンマ「……用件を話せ。落ち込んでいても何ら解決せんだろう」
一方通行「流石ヒーローの嫁さンはしっかりしてンなァ」
上条「…とりあえず、入るか?」
促されるまま、一方通行はへこへことしながら部屋に入り。
勧められるまま椅子に腰掛けると、一層落ち込んだようにうなだれた。
人から話を聞き出すテクニックには自信がないものの、どうにか元気付けよう、と上条は話しかける。
上条「何か、あったのか?」
一方通行「打ち止めに嫌われたァ…もォダメだ鬱だ死のう」
上条「いやいやいや待てって、嫌われた確証がある訳でもないだろ。打ち止め…って、あの小さい子だよな?」
一方通行「あァ…」
一方通行に反抗出来る位元気になったならよかった、と若干的外れな事を考えてしまいつつ、上条は重ねて優しく問う。
上条「具体的に、どんな態度を取られたんだ? 一緒にパンツ洗わないでくれ、とかそういう感じなのか?」
一方通行「>>295とか>>296だなァ…」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/19(日) 10:09:22.69 ID:cjaFQEdn0<> ksk
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/19(日) 10:11:49.77 ID:EiTZ1qoa0<> いつも一緒に風呂に入ってたのにいきなり
あなたとは入りたくないって言われてェ…
じゃあ一緒に寝るかっていったらァ…
真顔で嫌!黄泉川と寝る!って… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/19(日) 10:57:10.38 ID:cFUntMEd0<> あとォ…俺が言ったことに何かと反抗するンだよ…
うるさいなーとかさァ……
何故か顔を近づけると真っ赤になるンだがやっぱ怒ってンのかなァ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/20(月) 22:31:44.04 ID:rozBSaDy0<>
一方通行「いつも一緒に風呂に入ってたのに、いきなり『あなたとは入りたくない』って言われてェ…『じゃあ一緒に寝るか』って言ったらさァ、真顔で『嫌! 黄泉川と寝る! ってミサカはミサカは無い胸を張って主張してみたり』って…後ォ…俺が言った事に何かと反抗すンだよ…『うる、うるさいなーっ!』とかさァ…」
上条「……」
フィアンマ「……」
本当に嫌いな場合、人間というものは相手を無視するものである。
まして、同居していればもっと八つ当たりというか、暴言を吐くはず。
一方通行「何故か顔を近づけると真っ赤になるンだが、やっぱ怒ってンのかなァ…そォだよな、当たり前だってのォ…」
自身の罪深さに項垂れる一方通行。
こと自分に対する好意には鈍い上条だが、何故だかこの件は打ち止めの恋愛感情によって発露したものだと予測した。
同じことをされた場合、気付かないのだろうが、上条当麻という少年は他人を心配している時は敏いのである。
上条はしばらく言葉を練った後、一方通行に話しかける。
上条「…これは、あくまで予想なんだけどさ」
一方通行「どォせ俺はダメ…あン?」
上条「多分、打ち止めはお前の事を男性として意識してるんじゃないかな。思春期によくあるだろ」
一方通行「……」
上条「…反抗期か、それとも、多分…多分、だけど」
一方通行「多分?」
上条「一方通行の事が、好きなんだと思うぞ。よく、態度の裏返しとかいうだろ。本当に嫌いだったら無視してると思うし」
一方通行「……、…ありがとよォ。帰るわ」
よいしょ、と立ち上がった一方通行の表情は晴れやかだった。
いっそ清々しい程に爽やかだった。少年らしい表情だった。
慌ただしく、しかしきちんと礼を言ってから出て行った一方通行を見送り、鍵を閉め、上条は首を傾げつつフィアンマの方を振り返る。
上条「…何か、忙しかったな?」
フィアンマ「咄嗟に来たんだろう、恐らくな」
それから三日程滞在し、上条とフィアンマとは学園都市にある学生寮の一室、自宅へと帰ってきた。
だらけた上条にくっつき、同じくだらけながら、フィアンマは退屈そうな表情で上条に体重をかけた。
かけられたところで息の詰まるような体重でもなく、上条はむー、と唸るのみ。
退屈だからといって何かをする気力は無い。
上条「重いですー」
フィアンマ「女に『重い』と言うのは禁句だと知らないのか?」
上条「気にしてないだろ」
フィアンマ「あぁ。重くないからな」
上条「…俺以外の、特に女の子の前では言うなよ、それ」
フィアンマ「言うつもりはないが。嫌味になるだろうからな」
上条(化粧の件はともかく、それは分かるのか)
だらん、とベッドへうつ伏せになる上条の襟足、後ろ首を指でなぞり、フィアンマは欠伸を呑み込んだ。
フィアンマ「…間食がしたい」
時間は午後三時。
おやつには丁度良い時間だ。
上条「んー…何が食べたいんだ?」
フィアンマ「>>299」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/20(月) 22:33:58.98 ID:DIZIyybSO<> ひょっとして総合スレでの奴でスレたてたりするのかなksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/08/20(月) 22:39:56.21 ID:bAhs6iSho<> お前 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/21(火) 00:12:12.44 ID:RpK/auB00<> 《>>298様 あれは尻切れトンボで終わってしまいました。無視シリーズ(=発想)は良いものですね。今はオッレルスさんと上条さんに取り合いされるフィアンマさん(男)、神裂さんと何だかんだで恋仲になるフィアンマさんが書きたいです。が、先に『あちら』をやります》
フィアンマ「お前だ」
上条「…俺!? 上条さんは食べても美味しくありませんのことよっ」
フィアンマ「別にそういう意味ではない」
イマイチ理解度の薄い上条に、より一層体重をかけるフィアンマ。
困惑気味の上条の頬をぐい、と引っ張り、フィアンマはじとりと睨んでみせた。
フィアンマ「……全て言わなければ分からんのか」
上条「…昼間だぞ?」
フィアンマ「…後一時間もすれば夕方になる」
上条「…う」
フィアンマ「…別に最後までシようという訳じゃない」
上条「……、…最後までしちゃったらごめんな?」
フィアンマ「別に困らんよ。その時は一切合切お前に丸投げして眠る」
上条「…何だかな」
上条は苦笑しつつも、最愛の彼女からのお誘いに、乗る事にしたのだった。
避妊せずとも、そもそも何ら生産性の可能性すら無い行為。
快楽に喘がされながら、フィアンマは様々な事を考えていた。
上条に、自分は何をしてあげられるのか。
これだけのものをもらって、これだけのことをしてもらって、自分はどう返せば良いのか。
一生かけても返済不可能な借金を目の前にした債務者のように、様々な思案を巡らせたフィアンマは、自分を抱きしめてくれる男の髪を撫で、考える。
自分も、彼も、手に入れられなかったものがある。
一般的に幸福な情景と言われて思い浮かぶソレだ。
無くていい、要らないと言ってくれた。けれど、自分は与えたいと願う。
生涯手に入らないだろうと互いに覚悟はしている。
しているの、だが。
それでも与えたいと尚思ってしまうのは、自分が欲しいからなのだと、今、気付いた。
本当に我侭な女だ、と自己評価しながら、上条の背中に爪を立てて、考えを纏める。
そうだ。
彼という砂金の一粒を見つける為に、自分は何百年もの長い歳月をかけて砂山を探った。
そしてたった一つの奇跡を見つけた。これ以上を望むは、最早人の業ですらない。
だけれど、自分はどうせ何をしたところで化物だ。ならば今更自分を咎める必要も無い。
時間はまだ有り余っている。なら、その莫大な貯蓄を費やしても良いだろう。
フィアンマ「当麻、」
上条「ん、?」
フィアンマ「好きだ」
上条「俺も、好きだ」
深い口付けを交わし、フィアンマは一瞬だけ自分の右肩を見やる。
忌むべき才能(キセキ)。彼の存在によって昇華された奇跡の悪用法。
捨てよう、と決意する。莫大な力を捨ててでも、得たいモノがある。
フィアンマ「…、俺様が『聖なる右』を完全に喪っても、好きで居てくれるか?」
上条「? >>302」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/21(火) 00:18:34.93 ID:+fjHJNzr0<> 当たり前だ 俺は『フィアンマ』を愛してるんだ
フィアンマ本人を愛してるんだからな安心しろ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/21(火) 00:37:46.15 ID:+fjHJNzr0<> >>301
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/21(火) 02:42:46.49 ID:PWJKVCOi0<>
上条「? 当たり前だろ。俺は『フィアンマ』…突き詰めて言えばカンパーナを愛してるんだ。つまり、フィアンマ本人を愛してるんだからな。安心しろ。…って、何でそんな質問?」
フィアンマ「いや、別に意味は無い」
上条「? そっか」
不思議そうな表情を浮かべ、後片付けを手短に済ませた上条はのんびりと後戯を続ける。
隣に横たわり、自分の髪を撫でる優しい指の動きに心を和ませながら、フィアンマは思考を完全に纏めて問いかけた。
フィアンマ「当麻」
上条「ん?」
フィアンマ「もしもの話をしようか。未来において、子供を儲けるのであれば、何人欲しい」
上条「ええ? また急な質問だな。うーん…」
フィアンマのさらさらとした髪を撫で、上条は首を傾げる。
遠い未来の、もしもの話として。夢物語として。
上条「…特に理想は無いな。ただ、一人一人命懸けで産む訳だろ。死んじゃう人も居るらしいし。だから、フィアンマが欲しいと思うだけでいい。お腹を痛めるのは、結局の所俺じゃない訳だし」
フィアンマ「そうか」
ほんの少しつまらなそうな顔をして。
しかし、自分を第一に置いて思いやってくれる上条らしい回答だと思えば、自然と笑みが零れ。
率直な、だが愚直で素敵な回答の後に、問いかけの意図を聞く辺り、あれが本心なのだ。
問われた上条はといえば、ただ不思議そうな表情を浮かべるに過ぎないのだった。
季節は移り変わり、冬の半ば。
寒々しい教室で、フィアンマと上条は補習を受けていた。
あまりにも学校を休み過ぎた為、その分を取り戻す為の帳尻合わせのため。
二人、否、小萌先生を含めば三人しか居ないので、暖房はしっかり点けていない。寒い。
上条「先生寒いんですけど」
小萌「もう少しで終わるのですよー、さぁ、どんどん解いちゃってくださいねー」
先生も寒いです、とのため息。
あくまでこの補習は小萌の善意で行われているものだとわかっている為、上条は特に何も言えない。
フィアンマは寒いらしく、制服であるセーラー服の上から深い色合いの赤いカーディガンを着用している。
ワンサイズ大きめのそれの袖はフィアンマの手の甲を覆い、指先近くまで隠している。
小萌「そういえば上条ちゃん」
真面目にかりかりとプリントを筆記して片付けていくフィアンマを尻目に、小萌は上条を廊下に呼び出した。
ものすごく寒い。
上条「な、何ですか?」
小萌「先生最近記憶が混乱してしまっているのですが、ミハイルちゃんは上条ちゃんの何なんです?」
記憶が混乱しているのも無理は無い。
魔術で無理やり塗り替えて、否、ぼやかしてしまっているのだから。
そういえばフィアンマは元々女子生徒だと印象をぼやかして変更させただけで、どのような関係かは言っていなかったような。
上条「>>305」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 04:43:08.34 ID:tdYxKA4SO<> んー…間柄は彼女で婚約者ですかね。愛しい人ですよ
もっとも、抱いてる気持ちは「愛してる」だとか「好きだ」とか、そんな言葉で言い表せる物ではないけど。いや勿論好きだし愛してるけれど、ニュアンス的には崇拝とか狂信、盲信が近いのかもしれない。
俺にとっての彼女は「世界」であり、「希望」であり、「真理」であり、「自分の半身」…etcで。
もし仮に魂なんてものが存在して、いつか俺がしんで肉体がなくなって、魂だけになったとしても、いつか、それすら消える時がきても、彼女の側にいて寄り添いたい。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 05:40:14.48 ID:5DqZoSSTo<> >>304 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/21(火) 06:57:54.21 ID:X1r9j1qo0<> 上条さん若干病んでるな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 07:18:02.59 ID:tdYxKA4SO<> >>2にも書いてあるからこんなかなと <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/21(火) 15:09:56.28 ID:rCTJgSNK0<>
上条「んー…間柄は彼女で婚約者ですかね。愛しい人ですよ。最も、抱いてる気持ちは『愛してる』だとか『好きだ』とか、そんな言葉で言い表せるものではないけど。いや勿論好きだし愛してるけれど、ニュアンス的には崇拝とか狂信、盲信が近いのかもしれない。俺にとっての彼女は『世界』であり、『希望』であり、『真理』であり、『自分の半身』で、『宝物』で、『幸福の象徴』…他にも言い表す言葉があるのかもしれませんけど、俺にとっては"絶対"で。もし、仮に魂なんてものが存在して、いつか俺が死んで、肉体がなくなって、魂だけになったとしても…いつか、それすら消える時がきても、彼女の側にいて寄り添いたい。そう、思ってます。何よりも大事なんです」
小萌「上条ちゃんは本当にミハイルちゃんが大好きなのですねー」
上条の言葉をしっかりと聴き、その上で小萌は優しく笑む。
生徒の幸福は教師の幸福でもある、と彼女は常常思っている。
小萌「女の子は壊れ物ですから、なるべく優しくしてあげるのですよ?」
上条「はい」
寒々しい廊下から教室に戻ると、フィアンマはもう自分の課題を終えてしまったらしく、退屈そうにしていた。
ちら、と上条達を見やる。
上条「ちょっと個人面談してた」
フィアンマ「そうか」
再び自分の席に着き、のんびりと筆記を始める上条。
フィアンマは退屈しているからといって課題の邪魔をするような事はしないため、上条の顔をじっと見つめるに留まる。
この一年の間で随分と身長は伸びたし、顔も精悍なものになったように感じられる。
術式の影響を受けているフィアンマ自身も成長の伸びしろがあるのだが、どうせ20代半ばで成長も何もかも止まる事はわかっているので、自分の事はあえて考えない。
上条も恐らく20代半ばで成長が止まる事だろう。
正確には、それ以上老化しなくなる、ということだ。
果たしてどれだけ上条は身長が伸びるのだろうか、と首を傾げるフィアンマ。
視線を受けつつも突っ込まず、どうにか課題を終わらせた上条はパンクした風船のようにへたりと机に上体を伏せた。
上条「うあー…」
小萌「はーい、お疲れ様でしたー」
ぐだる上条の様子に和みながら、小萌は二人分の課題をしっかりと纏める。
小萌「帰っても良いですよー」
上条「うーい…」
フィアンマ「ん…」
のろのろと立ち上がる上条。
それに続くかのように立ち上がると、フィアンマは上条を連行するかのようにして帰路につくのだった。
上条「頭使うとものすごく疲れるな」
フィアンマ「ただ単に勉強が嫌いなだけだろう?」
上条「まぁ、そうなんだけどさ」
フィアンマと手を繋いでてくてくと歩く内に回復したのか、上条は自分の意思でもって歩く。
丁度昼時で空腹だ。
上条「何作るかなー…」
フィアンマ「暖かい物が良い」
上条「寒いもんな」
シチューにしようか、でも毎年シチュー食べてるような、と悩む上条。
何を作るにしても大体の材料は揃っている為、買い出しへ向かう事なく真っ直ぐに帰宅。
カレンダーを見やり、ふと、思い出したように上条は問いかける。
上条「フィアンマ」
フィアンマ「ん?」
上条「クリスマスプレゼント、何が欲しい?」
渡すにしても、指輪は指輪。プレゼントはプレゼント。
はっきりと分けている上条は笑顔で問いかける。
対して、フィアンマは悩む素振りを見せた後にこう答える。
フィアンマ「……>>310」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/21(火) 16:22:30.10 ID:CaayVkBx0<> ksk <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 17:45:28.58 ID:tdYxKA4SO<> バッグ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/21(火) 23:44:42.22 ID:tMxrR48f0<>
フィアンマ「……バッグ」
上条「バッグって、手持ちのヤツか?」
フィアンマ「サッチェル・バッグが欲しい」
上条「サッチェル?」
フィアンマ「小さな手提げの旅行鞄のことだ。サッチェル、という言葉の意味が、元々『手提げの学生鞄』を指す」
上条「へー…どんな色が良いんだ?」
フィアンマ「…赤…いや、黒でも良い」
上条「うーん…実用的な大きい方と、可愛い方、どっちが良い?」
フィアンマ「お前に任せる」
上条「わかった。赤か黒、デザイン自由、だな」
フィアンマの答えに頷き、上条は台所に立つ。
退屈だからか、彼女は上条にくっついた状態で後ろに立った。
萌え袖状態の腕が、上条の腹部に回される。
むぎゅう、と後ろから抱きしめられ、上条は首を傾げた。
上条「ん?」
フィアンマ「暇なだけだ。邪魔はせんよ」
上条「火傷しそうになったら手引っ込めろよ?」
フィアンマ「あぁ」
上条「オムライスで良いか?」
フィアンマ「ん」
上条に抱きついたまま、こく、とフィアンマは小さく頷く。
冬場の台所は、火を扱ってようやく居心地が良くなる。
もしかすると自分が寒いのを気遣ってだろうか、と上条は思った。
二人くっついていれば、たとえ雪原でも暖かい。
『ベツレヘムの星』から出た直後の事を思い返しながら、上条は緩やかに笑んだ。
フィアンマ「…お前は何か欲しい物は無いのか」
上条「何が?」
フィアンマ「クリスマスプレゼント」
上条「んー…>>313」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 23:49:55.06 ID:tdYxKA4SO<> 絶対落とさない財布とか、水没したりダンプカーに轢かれても壊れない携帯とか、空き缶とかを踏んでも転ばない靴とかかな… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 00:11:27.15 ID:8k7Ip/EWo<> ……フィアンマ、かな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/22(水) 03:17:12.13 ID:orW8CweAO<>
上条「んー………フィアンマ、かな」
フィアンマ「…」
フィアンマからの問いかけに対し、真剣に考えてはみたものの、浮かんだのはやはりいつもの一言だった。
声にこそ出さないが、むすーっ、と、背後で彼女が拗ねたのを察し、上条は苦笑する。
上条「仕方ないだろ、欲しい物浮かばないし。強いて言うならフィアンマが欲しいし」
フィアンマ「…」
上条「わざわざ言わなくても居る、って感じで睨まないでください」
むすくれた彼女の厳しい視線に耐えかねてそう言いながら、上条は調理を続ける。
フィアンマ「…お前が望むなら何でも用意してやれるぞ」
上条「それがハッタリじゃない事は分かってるよ」
例えば、上条が死体の山を望んだら。
フィアンマは顔色一つ変えずに用意してみせるだろう。
彼女は自分の為なら、なりふり構わず犠牲に出来る。実際、してきた。
分かっているからこそ、上条は何も望まない。
これ以上彼女に努力させたくなかった。
ただ、隣で、または後ろで、幸せそうに笑っていてくれればいい。
その笑顔を、自分が生み出してあげられればもっと良い。
ただ、それだけしか望まない。
頑張り屋が何百年と頑張ってきたのを誰よりも知っているのに、これ以上何かを強いるつもりは無い。
むむ、と拗ねるフィアンマを宥めながら、ライスを薄焼き卵で丁寧にくるみ。
そそくさと配膳を始めた上条は、会話を打ち切るようにして、恋人を食事へ誘うのだった。
昼食を済ませ、フィアンマは暇そうに上条に乗っかっていた。
性的な意味ではない。
仰向けに横たわった上条の体を跨ぐ形で座っているのだ。
中身が出るー、などと言いつつも抵抗はせず、上条はフィアンマを見上げた。
互いに制服姿のままであるため、フィアンマの、黒いストッキングを纏った脹ら脛が腕と脇腹の間にあって、いまいち落ち着かない。
破ったら真っ白い脚が、などとちょっとした妄想をする上条を現実に呼び戻すかのように、問いかけが投げかけられた。
フィアンマ「…そういえば」
上条「ん?」
フィアンマ「お前は犬と猫ならどっちが好きなんだ」
上条「>>316」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 03:42:39.59 ID:daEum+NSO<> 猫、かな。飼ってたし。特に野良猫が好きだな。だってアイツらいつも自由そうだろ?あまり自分から媚びたりしないし。
後犬好きには悪いけど、犬はあまり好きじゃない。何か見てると可哀想になるんだよ。
犬って、大抵はケージに入れられたり、首輪に紐つけられて散歩だったり、よくご主人様に甘えるようなったりするよな?
アレを見るとさ、何か自由じゃないなって思うんだ。犬達が強い何かに従わなきゃ生きれないから、自分の意思を押しころさせられてるみたいで。
よく家族同然とか言われたり、実際に思われてても、もし犬達に人間みたいな思考力があれば、「人間って、俺達を大事にしようとしてくれてるんだろうけど、結局奴隷みたいに扱ってるよな」って思ってたりすんじゃないかな。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/08/22(水) 04:56:30.22 ID:QHWOWQFio<> 犬かな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/22(水) 23:31:16.42 ID:vQFlIppa0<>
上条「犬かな」
フィアンマ「犬か」
上条「何かこう、人懐っこいだろ。気まぐれな猫も可愛いし、前飼ってた猫もそりゃ可愛かったけど、犬って良いな、って思う。でも、あくまでどっちかって聞かれたら犬。人間の心が何となく読めるのか、悪い大人から子供を守ろうとしたり、主人に懐いて一生懸命尽くそうとしてる姿が可愛いと思える」
フィアンマ「なるほど」
上条「フィアンマは?」
フィアンマ「犬だな」
上条「フィアンマも犬か」
フィアンマ「犬畜生、とはいえど賢いからな。盲導犬等が良い例だが、教え込めば役立つ」
上条「大型犬の方が好きなのか?」
フィアンマ「小型は踏みそうで危ないじゃないか?」
上条(それもそう…なのだろうか)
うーん、と首を傾げる上条の頬をむにむにと触り、フィアンマは暇を持て余した。
ひたすらに退屈だ。
補習を受けている時には疲労感がそれなりにあったものの、食事中に体力・気力共に回復したらしい。
彼女は退屈を嫌う。暇もあまり好まない。
結果として、上条にこのような誘いの言葉が投げかけられた。
フィアンマ「デートをしよう」
上条「…うん、まぁ…うん」
雰囲気もへったくれも無い、暇潰しだと思われるお誘いに、上条は何ともいえない気分になりつつも、そこに混じる嬉しさから素直に頷いた。
結局制服からまだ着替えずに外に出た二人は、特に目的地も無くのんびりと歩いていた。
寒いものの、補習があった午前中と違いしっかり陽が昇った為、そこまで極寒でもない。
そもそもロシアと比較すれば、日本の寒さなどそこまでキツくもない。
上条「どっか行きたいところ無いのかよ?」
フィアンマの手を握り、数度やわやわと握り直して互いに手がかじかまないよう努力しながら、上条は問いかける。
考えなしに外に出てきたフィアンマはというと、少し悩んだ。
行きたいところ。やりたいこと。
フィアンマ「…特には無いな。……ふと思ったのだが、学生らしいデートとは何をするんだ。お前は前、こう言っていただろう。『放課後デートがしたい』と」
上条「あぁ、言ったな、そういえば」
現在進行形で放課後デート中である。
フィアンマ「何かしたい事があったんじゃないのか?」
上条「>>319」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 23:32:51.04 ID:daEum+NSO<> 買い食いとか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 01:39:06.50 ID:gdJKh4USO<> 買い食いしたり、映画鑑賞したり、カラオケしたいかな… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/23(木) 17:16:21.02 ID:v9AZYt+A0<>
上条「買い食いしたり、映画鑑賞したり、カラオケしたい、かな…」
フィアンマ「…から?」
上条「カラオケ。…空オーケストラの略だったような気もするけど…知らないのか?」
フィアンマ「…」
こくん、と一度縦に振られる首。
肯定を示す行為に、上条は和やかな気分で笑む。
そうだ、彼女はその辺りの深窓の令嬢と同じ程に世間知らずだった。
今は空腹ではない。見たい映画も無い。
説明するよりも実際に行った方が良いだろう、と結論付け、上条はフィアンマの手を引いてカラオケ店へ向かった。
久しぶりに彼女の美しい歌声を聴きたい、という思いもあったが。
カラオケ店に到着し。
諸手続きを終えた二人はカラオケルームに一度伝票を置き、ドリンクバーコーナーへと来た。
色々と混ぜてみようか、と悩むフィアンマを止めつつ、上条は当たり障りの無いコーラを選択。
フィアンマはアイスコーヒーにする事に決め、ルームへと戻った。
機械を弄って目的の曲名を見つけたらそれを選択して曲を入れる。
そしてマイクのスイッチをいれて歌えば良い。
上条からそう簡略的な説明を受け、フィアンマは選曲機械を触っていた。
フィアンマ「先に何か歌ったらどうだ」
上条「うーん…」
アイスコーヒーをちびりと飲み、フィアンマはそう促す。
彼女は上条の歌声を聞いた事が無い。
上条「じゃあ…」
上条は何を歌う?(曲名)>>+2 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/23(木) 17:35:51.88 ID:sZo9FmHm0<> トゥーラ ンドット」の「誰も寝てはならぬ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 17:39:42.62 ID:gdJKh4USO<> 自分のキャラソン <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/23(木) 22:53:46.26 ID:zpX8ikFT0<>
しばらく悩んだ上条は、もう一台の機械を弄って曲を入れる。
ぴぴぴ、と間抜けな音の直後、少しの待機時間を持ち、曲が始まった。
慌ててマイクを手にした後、上条は歌い始める。
上条「夢。ちっぽけでもいいから 手を離すなよ! もう一回 笑うため…」
フィアンマ「………」
声に合っていて上手い、と感じつつ上条の歌を聞き。
語りかけるかのような口調の歌は、どことなく自分にも、あの少女にも適用されるような気がした。
上条「待ってろ いますぐ行くから すぐに追いつくから 絶望ぶっ壊し 守ってやる」
一曲歌いきった上条は、まだ初めて歌った一曲目だからか調子が出ないと微妙な顔をし。
上条が歌っている間に決まったのか探し終わったのか、フィアンマは機械を弄って曲を入れた。
二十年程昔の歌だったような気がする、と上条は思う。
マイクを通した歌声は発声練習も無しに歌ったとは思えない、美しく澄んだ歌声だった。
ただ欠点としては声量があまりないところだが、そこは調整してしまえば問題は無い。
洋楽だったものの、そちらの発音の方がフィアンマとしてはし易いので、無理をしている感じは無かった。
三時間程のカラオケを終え。
フィアンマから強請られるままに多くの歌を歌った上条は若干疲れていた。
歌を歌うという行為、特に立って歌うというのは、沢山の筋肉を使う。
しかし、フィアンマはまだそこまで疲れておらず、元気で。
上条をショッピングモールへと引き込んだ彼女は、彼に歩幅を合わせながらも歩いていた。
上条「何探してるんだ?」
フィアンマ「お前の欲しい物だ」
上条「クリスマスプレゼントならフィアンマがいいって言っただろ?」
フィアンマ「それだけではつまらんだろう。何か無いのか」
上条「うーん…」
辺りを見回す上条。
上条「>>325」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/23(木) 22:55:46.46 ID:hi1kLKtt0<> じゃあ……だいぶ前に壊れたゲーム機一式がまたほしいかな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/23(木) 23:06:18.10 ID:hi1kLKtt0<> >>324
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/25(土) 00:08:29.37 ID:NPfQbqLT0<>
某付録が話題になった結婚雑誌を購入して神浄さんとフィアンマさん…カンパーナちゃんの婚姻届書いてました。
『夫が帰宅したとき』を書いている時が一番楽しかったです。皆さんも是非買って見てみてください。あれ一冊で4.2Kgありますが。
別にステマではありません。ただ、妄想用というだけあって素敵な項目でした。 花嫁衣装のフィアンマさんマジ大天使
これ以降書き溜めてから最後まで投下するので少し間が空きます。申し訳ありません。
ゆっくりお待ちいただければ幸いです。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/25(土) 01:11:53.59 ID:NFiAKcfSO<> え゙……まさか、お、わり……?マジかよ……なんてこった…そりゃねーってばよ……ちくせう。
何でいっつも>>1のひとつのスレが終わる度にこんなに悲しくなるかわかんねー…
後さっぱりわかんねーから雑誌云々について詳しく頼む <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/25(土) 14:14:34.35 ID:LVkcbTNx0<> >>327様
ありがとうございます。また性懲りもなくスレを立てた時、お付き合いいただければ幸いです。
女性向け結婚情報雑誌ゼク○ィです。
妄想用婚姻届、でググるとしっかり出てくるような気がします。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/25(土) 15:55:49.66 ID:NFiAKcfSO<> あざーす調べてみますわ。ラスト楽しみにしてます <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:22:26.63 ID:BhyZXFJM0<>
上条「じゃあ……だいぶ前に壊れたゲーム機一式がまた欲しい、かな」
フィアンマ「以前、お前が『色々とあって壊れた』と言ったアレか」
上条「そうそう。ごめんな、持って帰ってやれなくて」
フィアンマ「いや、別段気にしていないが」
以前、不幸にも壊れたゲーム一式。
ハードは、PS3とPSP。
購入するソフトは新作のディスガイアとコープスパーティー、加えて桃鉄。
アレイスターとの決戦前の出来事であったため多少記憶は曖昧だったものの、二人共割と覚えていた。
ずしり、とゲームの入った重そうな袋を持ち、上条はぐたりと肩を落とす。
上条「結構重い…な…」
フィアンマ「手伝ってやろうか」
上条「いや、大丈夫。…あ、ついでだし、バッグも買おうぜ。とはいってもどこで売ってるんだろ」
プレゼントに関して、ショッピングモールという場所は大抵が揃うようになっている。
そんな訳でひとまず建物内マップを眺めた上条だが。
上条(ものすごくごちゃごちゃしている…)
狭い空間にテナントを大量に押し込めれば、地図はわかりづらくなる。
そもそもバッグ屋というものはバッグ屋などとわかりやすい書き方はされていない。
洒落た店名だったり、バッグを含む小物屋の形式をとっていたりするものだ。
さっぱりわからない、と首を傾げる上条の隣で、フィアンマも地図を眺めて悩む。
何となく予想はついたのだが、さてどちらがバッグを売っている場所なのか。
欲しいのはサッチェル・バッグ。小物屋でもあるはず…とは思うのだが。
しばらく悩んだ末に、ひとまず現在地点から近い方へ向かった。
彼女の幸運か偶然か、辿りついた小物屋でバッグを販売していた。
クリスマス商戦とは早いもので、ひと月前から様々なイベント・安売りを実施しているところもある。
この小物屋も例に漏れず、空きスペース含め、バッグフェアーと称して沢山のバッグが綺麗に陳列されていた。
赤色か黒色か。
フィアンマの反応を見つつ、上条はのんびりと売り場を歩いて回る。
赤と黒はクラシックなデザインからシンプルなデザインまでよく使用されるため、候補が多い。
そんな候補達の中から上条が選び出したのは、少々少女趣味に見えるゴシック調の黒いサッチェルバッグ。
とはいえあしらわれているフリルやレースはそこまで華美でもなく、よく見ればお洒落、といった品物。
上条「これなんてどうだ?」
フィアンマ「それなりに容量もあるようだし、良品だと思うが」
上条「じゃあ、これにしようか」
フィアンマ「あぁ」
大きさとしては一般的な学校鞄程度。
上条「そういえば、どうしてサッチェルバッグなんだ?」
フィアンマ「お前と一緒に学校へ通う為のモチベーション維持だ」
上条「そ…そっか」
照れ気味に笑って、上条は相槌を打つ。
何かと鈍い彼だが最近改善されてきた上、元々直接的な言葉、告白には弱い。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 00:22:30.57 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:22:56.11 ID:BhyZXFJM0<>
互いのクリスマスプレゼントを購入し合い、帰宅した上条とフィアンマは食事を終えた。
作るのが面倒だったので、ショッピングモールの地下デパートで弁当を購入してきたのだ。
驚きの値段だったが、フィアンマの財力において高価である事はほぼ関係無い。
健康的なおかずの弁当を食べ終え、風呂に入り。
暇になった二人のやる事といえば、今日買ってきたゲームだ。
始めたのはまずホラーゲームから。夜やるには適していないというのに。
上条「これ調べた方が良いよな」
フィアンマ「調べなければ進まんだろう」
上条「ですよねー…っうわ」
操作を行っているのは上条で、フィアンマは隣りから見ているのみ。
ただ、上条は一々不幸にもバッドエンドを迎えたりするため、見ていても飽きない。
上条「あー…まただ…」
フィアンマ「バッドエンドばかりだな」
運の悪さを呪いつつ、上条はそのゲームを片付ける。
続いて行ったのは育成ゲーム。
かなり時間がかかりそうだ、と感じつつものんびりとプレイを行い。
最後に眠気眼ですごろくのようなゲームを二人でやったはいいものの、時刻は深夜。
翌日が休みだからといって調子に乗りすぎただろうか、と二人して自省しつつ眠りに就いた。
この二人で運が関わる勝負事を行うと大抵上条がボロ負けしてしまうのは、言うまでもない。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 00:22:57.52 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:23:19.42 ID:BhyZXFJM0<>
冬休みに入り、しばらく経ち。上条当麻はそわそわとしていた。
クリスマスというのは、二人にとって他カップルよりも少々比重の大きいイベントだ。
クリスマス当日はフィアンマの誕生日でもあり。
加えて今年は、昨年から考えていた通り、上条は婚約指輪を贈る日でもある。
そんな訳で本日はクリスマスイブイブと俗に呼ばれる12月23日にも関わらず、早めにお祝いする事にした。
フィアンマ「別に祝うのは構わんが…随分と早いな」
上条「昨年は誕生日とクリスマスを一緒にして祝ったからな。今年のクリスマスは早めに祝って、誕生日は別」
フィアンマ「そこまで重要な事か?」
上条「重要なんです」
今年は、という言葉を呑み込んで頷く上条。
眼前の男の並々ならぬ熱気に不思議そうな顔をしながらも、フィアンマは不服を唱えなかった。
何だかんだで、好きな人から祝われて、イベントに誘われて、嫌な気はしないのだ。
クリスマスケーキは昨年フィアンマの要望に合わせたものなので、今年は上条の要望に合わせたもの。
大粒の苺が乗った、白生クリームショートケーキ。ホールまでは要らない、という事で、正真正銘『ショートケーキ』だ。
台所に二人で立ち、空腹に急かされる事無くご馳走を作り。
上条「いただきます」
フィアンマ「…いただきます」
食べつつ、上条は視界に入った、明日自分が出かける時に着ていくと決めた上着のポケットを見つめる。
あそこには大事な指輪が入っている。婚約指輪だけれど、喜んでくれるだろうか。
喜んでくれると思いたい。
上条「明日出かけたいんだけど、良いか?」
フィアンマ「明日は何処へ行くにも混んでいると思うが」
上条「大丈夫、多分混んでないから」
学園都市の第一二学区にある教会。
何軒かある場所の中でも、人気の無い、あまり、というよりもほとんど使われていない教会がある。
フィアンマ「お前が行きたい場所であれば何処でも構わん」
上条「ん、ありがとな」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 00:23:22.85 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:24:52.00 ID:BhyZXFJM0<>
第一二学区。
神学系の学校を集めた学区だ。
修学内容はオカルト方面からではなく、科学的な面からアプローチした物。
1つの通りに各種宗教施設が並び、多国籍な雰囲気を放つ町並み。
その中には祈りの場所としてよく使われている教会もあるが、あまり使われていない教会もある。
使われていない方の教会、月光の射す夜の教会の中、上条とフィアンマは二人きりで見つめ合っていた。
何の音もしない。静かな空間。
座った状態で向かい合い。
上条は非常に緊張した様子で、深呼吸を一度した後、言葉を紡ぎ始める。
上条「…フィアンマ。いや、…カンパーナ」
フィアンマ「…何だ」
上条「あー…いや、その…」
色々と考えてきた素敵な台詞は緊張感で吹っ飛んでしまった。
言葉が出てこなかった上条は、上着のポケットに手を突っ込んで指輪の入った箱を差し出した。
深い青色の、角が丸い四角の小箱は指輪やピアスを入れるもの。
そっと開けて中身を見せながら、上条は視線を箱に落として言った。
上条「式はまだ挙げられない。籍云々も微妙なところだ。だから、正確にはそう言えないのかもしれないけど…結婚して欲しい。出来る事なら、笑顔で受け取ってくれ」
フィアンマ「……、…」
アンティーク調のデザインの、プラチナリング。
そのリングの一部、王冠の様な台にはキャストライトがはめ込まれている。
茶色い地色に、黒い十字が透けて見えた。故にこの石の別名は十字石。
無言のフィアンマに対し、上条は語る。
上条「本当は、銀の方が良いのかもって思ったんだけど、さ。プラチナは、何百年経っても色褪せないっていうからさ。この石は『キャストライト』って言って、石言葉は『聖なる契約
』。何ていうか、結婚とか婚約って、一種の契約だと思うんだ。だから、良い契約にしたいなって思って。それと、誕生花っていうか誕生石で調べたら、このキャストライト、12月2
5日のものだったから」
上条は口にしなかったが、キャストライトにはパワーストーンとしての力もある。
未来に対する不安や恐怖を取り除き、挑戦する意欲を高める石。
精神状態を安定させ、ストレスなどを軽減することによって精神面から来る病気などを防ぐ助けとなる石。
ヒーリング効果がある事を、フィアンマは知っていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 00:24:55.40 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:25:27.06 ID:BhyZXFJM0<>
フィアンマ「…知っているよ」
上条「そ、そっか」
フィアンマ「……」
情緒の安定。
未来に対して挑戦する意欲を高める。
ストレスの緩和。
罪悪感を取り除く。
精神面から来る病気を予防する。
これらのヒーリング効果を知ってか知らずか、上条はその石を選んだ。
最も彼女を癒すに適切な石だ。
プラチナのリングは、少々薄暗い教会の中でも、月光に反応して煌めいた。
箱を開いたまま、フィアンマはそっと箱を受け取った。
フィアンマ「……」
上条「…」
あまり気に入らなかっただろうか、それとも無感動に受け取ったのか、とやや残念に思いつつも、上条は顔をあげる。
フィアンマは、受け取った小箱を胸元でぎゅっと、抱きしめるように握りながら、声を出さずに泣いていた。
そんなに気に入らなかったのか、と持ち前の鈍感さを発揮して上条が口を開きかけた瞬間、彼女が言葉を発する。
フィアンマ「る、…大事に、する…」
上条「……、…ん」
ぎゅう、と強く握り締め、溢れる涙を手の甲で拭いつつ、深呼吸を繰り返し。
どうにか涙の勢いを下げていきながら、上条の言葉を叶えるべく、フィアンマは微笑んでみせた。
上条「…嵌めてみてくれないか?」
フィアンマ「…、…」
こくん、と一度頷き、フィアンマは箱を手のひらに乗せ、中身の指輪を取り出すと、自分の左薬指に嵌めた。
サイズがぴったりの為、すっぽ抜ける事も無く、かといって途中で痛い思いをする事無く、フィアンマの薬指に、指輪はしっかりと収まった。
フィアンマ「…、…サイズが、」
上条「手、握った時に一生懸命計算したんだ。ピッタリ合ってるみたいだな」
良かった、と笑う上条を見、フィアンマは指輪を戻す事無く箱を閉じ、自分の上着のポケットにしまいこんだ。
ぐし、と目元を擦り、泣き止んだところで、彼女は上条に勢いよく抱きつく。
間の抜けた声を出し、無事指輪を受け取ってもらえたことで身体力を抜いていた上条は後ろに倒れ込んだ。
上条は笑みながら抱きしめ返し、フィアンマの背中を優しく撫でる。
フィアンマ「…死ぬまで大切にする」
上条「…あぁ」
フィアンマ「ありがとう、」
上条「どういたしまして」
細身の身体をしっかりと抱きしめ、上条は微笑む。
上条「カンパーナ、これからも、ずっと一緒に居てくれる、か?」
フィアンマ「あぁ…約束だ」
(本編)おわり <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 00:25:28.27 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:26:54.68 ID:BhyZXFJM0<>
しばらくおまけというか単発小話を投下して、終わらせてからHTML依頼を出します。
スレタイの趣旨とズレますが、今後の彼女はデレデレです。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 00:26:59.29 ID:z4qPCykAO<> + <>
大晦日 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 00:28:58.66 ID:BhyZXFJM0<>
日本人は無宗教とも他宗教とも言える。
その最たる部分が、十字教のイベントであるクリスマスを祝った後、正月という神道のイベントを行い、その後バレンタインという十字教のイベントを祝うところだ。
12月、1月、2月と続けて日本に滞在する外国人は違和感に首を傾げるという。
ちなみに日本人が宗教全般を愛しているということではなく、単なるそれぞれ食品会社の策略であったりする。
別に会社の策略に乗せられたところで、楽しめればそれで良いというのが日本人であり。
類に漏れない日本人である上条はお正月ということで切り餅を買ってきた。本日、十二月三十一日。
さてどう食べようか、と悩む。砂糖醤油、きな粉、砂糖のみ、醤油だけ、磯部、納豆、大根おろし…色々とスタンダードな候補が浮かび。
そんな彼のお嫁さんはというと、感覚のズレからか、硬い切り餅をそのままかじろうとしては首を傾げていた。
上条「どうやって食べようかなー…って」
フィアンマ「……硬いな」
上条「それはそのまま食べるものじゃありません! 不味いからやめなさいっ」
熱して食べるものだ、と言いつつ切り餅を奪った上条はひとまずそれを電子レンジで温め。
醤油はそこまで好きじゃないだろう、と考えた結果、砂糖をかけて差し出す事にした。
上条「はい、どうぞ」
フィアンマ「…食べられないものなのかと思ったのだが」
上条「普通生で食べないというか、生だと食べられないからな? そもそも何で生でイケると思ったんだよ」
フィアンマ「ホシイモ、という物はそのまま食べるのだろう?」
上条「干し芋はそうだけど」
常識知らず、というのは可愛くもあり、困りもするもので。
だからといって怒らずとも彼女は自分の失敗に気付いていると思った為、上条は何も言わないでおいた。
お節料理を用意する気力は無く(験担ぎを信じていないというのもあり)、ひとまずお雑煮の用意だけは済ませた。
年越し蕎麦は食べてしまったため、テレビを見る気力も無く、こうして暇を持て余している訳である。
砂糖を塗した餅が気に入ったのか、彼女は個装の切り餅を上条に差し出した。お代わり、という意思の現れ。
前より食べるようになった気がする、と思いつつ。
しかしそれは彼女の身体つきから考えれば喜ばしい事なので、上条は機嫌良く餅を温めるのだった。
上条「そういえば日本文化で詳しいのって何だ?」
フィアンマ「…寿司と味噌汁と…オシルコ、というヤツだ」
上条「お汁粉は知ってるんだな」
フィアンマ「甘味は大抵分かる」
上条「うーん…そうだ。明日作ろうか? お汁粉」
フィアンマ「家庭で作れるものなのか」
上条「材料買えばすぐ作れる。丁度お餅もあることだし」
フィアンマ「あれはシラタマを入れる食べ物だろう? これはモチだ」
上条「白玉は知ってるのかよ!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 00:30:30.94 ID:gzSiTG9SO<> 乙!もう終わりなのか…>>1の作品でも一番長寿だったなー。中々に感慨深いわ…
おまけも楽しみにしてる。もう一度乙。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 00:46:12.66 ID:gzSiTG9SO<> やべおまけ早速投下してくれてた…すまん>>1もしまだ大丈夫なら是非投下してくれ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/26(日) 01:01:43.64 ID:BhyZXFJM0<> >>343-344様
読者様方のご協力により、長く楽しく書く事が出来ました。ありがとうございます。お疲れ様でした。
おまけは一テーマ(例:大晦日)ずつ投下しますので、今日はひとまず大晦日のお話で終わりです。
次からは終了宣言(今回の投下はこれで終わり、など)を記します、失礼しました。
何かネタ(例:ホラー映画)がございましたらお気軽にどうぞ。書けるかどうかはわかりませんが…。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/26(日) 07:52:48.81 ID:2OC0YbNB0<> げっ!終わってた!乙! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/26(日) 07:57:41.89 ID:2OC0YbNB0<> ホラー映画じゃなきゃダメなんか? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 09:43:45.39 ID:gzSiTG9SO<> 二人で夏祭りとかプール、海行って花火大会行って城見に行ったり。二人で青鬼をプレイしてみるとか結婚式をあげたりとか親との和解とかねーちん五和、御坂妹、テッラやアックア、ヴェントにつっちーとかの登場した彼等のその後とか卒業後、魔術関連の傭兵の仕事してる大人?上条さんとか数百年後の二人とか>>1の製作裏話とか
はどうだろうか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 10:27:25.91 ID:gzSiTG9SO<> 後インちゃんとの仕事、ギャグとシリアスバージョンとかオッレルスさんと拾ってきた頭に子葉があるフィアンマにそっくりな子とシルビア達の生活とか「約束」についてとかむぎのんとばったりとか <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/26(日) 16:32:01.56 ID:g1KwOy6g0<> >>347様
いえ、そういう訳ではありません。例です。
>>348-349様
一番最後のシーンは決めてあるので、そこに至るまで出来る限り書いてみます。
ありがとうございます。
一日一テーマずつの投下になるかもしれません…わかりませんが。
では、以下より投下。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 16:32:03.38 ID:z4qPCykAO<> + <>
バレンタイン ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 16:32:45.47 ID:g1KwOy6g0<>
おじいさんは芝刈りへ、という訳でもないが、上条は補習へ。
おばあさんは洗濯へ、という訳でもないが、フィアンマは在宅。
今回の補習は成績が悪いが為に上条のみが行くもので。
別にフィアンマも行って図書室辺りで本を読みながら待っていても良かったものの、用事がある為に、彼女は家に残ったのだ。
用事、といってもそこまで仰々しい事ではなく、お菓子作りなのだが。
今日は2月13日。明日はバレンタインである。
バレンタインというイベントは聖ヴァレンティヌスに発露し…という十字教の歴史知識はひとまず考えない事にし、彼女はチョコチップシフォンケーキを作っていた。
日本においてのバレンタインとヨーロッパ諸国でのバレンタインは少々違うのだ。
だから、彼女は日本においてのバレンタインという慣習に従う事にしたのである。
生クリームに砂糖を混ぜ、ホイップという程に硬くは無い、程よく滑らかなクリームを小鉢にいれて冷蔵庫へとしまい。
ケーキの材料を確認しているところで、インターフォンが鳴った。
一応のぞき窓から確認してみれば、見知った少女の顔があり。
ガチャ、と音を立ててドアを開ければ、いつものセーラー服ではなく、私服姿の少女がずっしりと重そうな紙袋を手にぺこっと頭を下げた。
佐天「お久しぶりです!」
フィアンマ「久しいな。当麻に何か用か?」
佐天「いえ、ちょっとフィアンマさんにお願いがあって。上条さんに義理チョコ持ってきたのもそうなんですけど」
フィアンマ「一先ず入ってはどうだ。寒いだろう」
佐天「あっ、はい! お邪魔しまーす」
佐天涙子。
フィアンマと上条、両者に親しい気立ての良い快活な少女だ。
フィアンマに促されるまま入室し、後ろ手で鍵をかけた佐天はフィアンマを見上げておずおずと言う。
佐天「お願いがあるんですけど…」
フィアンマ「先程も言っていたな。何だ?」
佐天「美味しいチョコレートのお菓子の作り方教えてくださいっ!」
一生懸命頼む姿に和やかな気持ちになりながら、フィアンマは二つ返事で引き受けた。
佐天「ありがとうございます!」
フィアンマ「物珍しさは保証出来んが、それなりに美味な物であれば教えられる。希望の傾向があれば聞くが」
佐天「こう、ケーキみたいな…この箱に入れられる大きさが良いんですけど…」
佐天が見せたのは、持ってきた紙袋の中。
脈絡無く購入してきたらしい小麦粉やタルト生地、クッキー用チョコチップなどの製菓菓子等、食品が半分。
もう半分はケーキ屋で貰うような洒落たデザインの小さな箱やラッピング道具。
フィアンマ「アーモンドプードルもある事だし、タルトにするか」
佐天「チョコタルトですか?」
フィアンマ「これを渡す相手は甘い物が好きなのか?」
佐天「大好きです。でも、皆それ知ってるからなぁ…甘ったるくない方が良いかもしれません」
フィアンマ「ならブルーベリーを使うか」
ブルーベリーとチョコレートのタルトを作る事に決め。
腐らせずに持って帰る為、必要な保冷剤を冷凍庫に入れさせてもらった佐天は、持参したエプロンを身に付け、フィアンマの隣で頑張り始めるのだった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 16:32:47.49 ID:z4qPCykAO<> + <>
バレンタイン ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 16:33:37.64 ID:g1KwOy6g0<>
佐天「うーん…手が…ふー…」
フィアンマ「料理、特に菓子作りは力仕事だ。少々の疲労は我慢するしかあるまい」
ボウルにバターを入れ、粉糖を三回に分けて振るってやりながら、フィアンマは肩を竦める。
料理のプロでもアマプロでも無い少女の細腕では、ただひたすらに掻き混ぜる作業というのは中々に疲れる。
溶き卵を少しずつ注いで手伝ってもらいながら、佐天は一生懸命にボウルの中身を混ぜていく。
アーモンドクリームを作るにあたって、既に一時間程かき混ぜているのではなかろうか。
フィアンマ「ちなみに、何人分が必要なんだ」
佐天「んー、…と…ざっと八人分位ですね!」
フィアンマ「この分量では少し余りが発生するか。全作業が終わったらティータイムにしてやるから、もう少し、根を上げずに頑張ってみろ」
佐天「! はいっ!」
女の子は全員が全員そうではないが、甘い物などがご褒美になると頑張れる生き物だったりする。
額に汗しながらも笑顔で努力を続ける佐天を適度に励ましつつ、最低限の手伝いをするフィアンマだった。
ちなみに、上条宅に電動泡立て器などという便利な物はない。
タルト台にアーモンドクリームを敷き込み、ブルーベリーを程よく敷き詰めて。
余熱済みのオーブンに入れて、焼き作業を開始すればひとまず三十分程放置。
それでも焼きが足りないのであれば、もう少し焼けば良いというだけで。
これで佐天が作る『ブルーベリーとチョコレートのタルト』の作業工程はおしまいである。
続いて作るのは、フィアンマの分のシフォンケーキ。
佐天「チョコチップはそのまま使わないんですね」
フィアンマ「クッキーであれば丁度良いが、シフォンケーキという柔らかい物の中だとチョコチップの硬さが目立つだろう。口に痛い」
佐天「なるほどー…」
出来る限りの手伝いをしつつ納得する佐天。
市販のチョコチップは溶け難いので、こうして板チョコを刻んだチョコチップを使ったシフォンケーキの方が口当たりが良いのだ。
作業中に焼きあがったタルトを冷ましつつ、オーブンレンジをほんの少しだけ冷ました後、生地を注いだシフォンケーキの型を入れて焼き作業。
冷まし、焼き作業中は暇な為、疲れを圧して片付けを行う。
片付けが終わった頃に焼けたシフォンケーキを取り出し、マグカップの上で逆さまにし、完全に冷めるまで待った後。
パレットナイフで生地を剥がし、型から外して出来上がり。
大きい方は上条と食べる為ナイフは入れず、佐天とのティータイム、加えて味見用に焼いた小さい物は切り分け、小皿に取り分け。
タルトはカットして持ち帰りの分を冷蔵庫で冷やし、余りの分を小皿に乗せる。
シフォンケーキの上に少しだけクリームをかけて皿上にフォークを添えれば二種ケーキ盛りの完成。
佐天にはミルクティー、フィアンマの分はレモンティー。
佐天「いただきまーす!」
フィアンマ「…」
幸せそうにケーキを頬張っては美味しい、と感想を言う少女。
そんな様子に記憶を重ね、良くない事とは思いつつも、フィアンマは薄く笑んで、紅茶を啜った。
上条「ただいまー…って何か良い匂いだな」
フィアンマ「菓子作りをしていたからな。それと、佐天という少女から義理チョコだそうだ。一日早いが渡してくれと言われた」
上条「おー…お返ししないとな」
白い箱にピンクのリボンがかかった可愛らしいチョコ。
手作りではなく買ったもののようだが、厚意の表れである以上、上条は嬉しかった。
フィアンマ「それから、」
上条「?」
フィアンマ「…明日、午後の間食はチョコレートシフォンケーキだ。異論は認めん」
上条「…手作りだったりするのか?」
フィアンマ「…そうだよ」
上条「ちょっと一時間位抱きしめてもいいか? ついでにキスもしたいんだけどさ」
フィアンマ「…三十分程度にしておけ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 16:33:41.34 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/26(日) 16:37:13.01 ID:g1KwOy6g0<>
バレンタインネタは以上です。
>オッレルスさんと拾ってきた頭に子葉があるフィアンマにそっくりな子とシルビア達の生活
ちなみに、
オッレルス「安価でフィアンマの苗木を育てようと思う」というSSがその内容に当たります。
今は倉庫検索の調子が悪いようですが…。
ぐだぐだと続けますがのんびりお付き合いください。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/26(日) 16:47:07.12 ID:3GQ1/8Qm0<> ファイナルデスティネーションシリーズをみて
どこにもいけなくなる上条フィアンマを
説得する佐天さん <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 19:19:41.77 ID:gzSiTG9SO<> 乙ー。めっさ楽しみにしてるんだよ!バレンタインデーにふさわしく甘いな。
苗木フィアンマスレは中々の良スレだった…あれも終わっちまったのが残念すぎる…できればネタでちらっとだけでものつもりで書いたが、書いてくれてもくれなくても>>1の好きでいいんで。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/26(日) 22:14:22.43 ID:lfADsHpp0<> この>>1に計画的な投下なんて無理でした。書けたら投下していきます。
>>357様
少なくともアレを見たら上条さんはどこにも行けなくなる気がします
>>358様
両者共デレッデレです。本編の途中からそうでしたが。
次に立てたいと考えているスレでもし浮かべば…書くかもしれません。
では投下。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 22:14:45.06 ID:z4qPCykAO<> + <>
青鬼 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 22:15:50.85 ID:lfADsHpp0<>
唐突だが、上条当麻はパソコンを買った。
ノート・パーソナルコンピュータを。
どうしても必要だった訳ではなかったが、あれば便利だということで。
買ったところでビジネスマンでもなし、書類を作る訳でもなく。
インターネット回線を引いたは良いものの、しょっちゅう調べ物がある訳でも、ネットゲームをする訳でもない。
結果として、上条は適当にゲームをダウンロードして遊ぼう、という結論に至った。
どのみち、数年経ったらノートパソコン等壊れてしまうので、重要なデータを入れるには適さない。
ベッドに並んで俯せに横たわり、上条の手元を眺めながら、フィアンマは暇を潰す。
上条「何が良いかな」
フィアンマ「ホラーが良いと思うが」
上条「夜に!?」
フィアンマ「昼間にホラーを見て何が楽しいんだ? 恐怖感を楽しみ味わうものだぞ」
上条「いやいやいや…まぁいいけど…」
ゲームをランキング別に纏めたサイトの中から、適当に一つ選ぶ。
RPG風だが、脱出系ホラーに分類されるゲーム。『青鬼』。
そのまま鬼ごっこなのか、と思いつつ操作していく上条。
しかし、これの本領は読めないところにある。
上条「!?」
部屋の下の方に移動したら唐突に鬼が現れ。逃げる間もなく捕まり。
上条「…ふ…不幸だ…」
がっくり、と項垂れる上条に代わって、横からフィアンマがちょっかいを出し始めた。
何度かのゲームオーバーから学習し、逃げるルートを頭の中に叩き込んでから操作していく。
少々時間はかかったが、何とかゲームクリア。とはいえハッピーエンドとはいえなかったが。
フィアンマ「ゲームでは咄嗟に反応出来んのか」
上条「ヤバい、って思ったら頭真っ白になって何も出来なくなるんだよな…現実だと割と反応出来るんだけどさ」
フィアンマ「叩いて被ってじゃんけん」
上条「ポン!」
フィアンマ「…確かに、現実では対応出来るようだな」
上条「一瞬の間に雑誌丸めて上条さんの頭に振り下ろすなよ! せめて素手でお願いします!」
フィアンマ「素手なら喜んで受け入れるのか?」
上条「まぁな」
フィアンマ「……」
上条「その『ああこの人可哀想な人なんだな、暖かく見守ってあげよう』みたいな顔やめろ! 上条さんがマゾみたいだろ!」
フィアンマ「事実だろう」
上条「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 22:15:52.55 ID:z4qPCykAO<> + <>
ホワイトデー ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/26(日) 22:17:12.80 ID:lfADsHpp0<>
上条「土御門」
土御門「にゃー?」
本日も上条当麻は補習である。
補習の相方兼親友の土御門元春と青髪ピアスの内、青髪ピアスが席を外してから、上条は呼びかける。
別に青髪ピアスの悪口だとかそういったことではなく、聞かれたらものすごく食いつかれそうなのでやめただけのこと。
上条「ホワイトデーって何あげれば良いのかな。いや、普通はクッキーとかなんだろうけど」
土御門「それを土御門さんに聞くとは、カミやんなかなかの鬼畜ですたい…」
上条「土御門にゃ舞夏が居るだろうが。義理のお返しじゃなくて本命のお返しなんだよ」
土御門「んー…」
土御門は魔術師だ。
魔術師が喜ぶ一品などどれも不可解なもので、普通は手に入らない。
そもそも、右方のフィアンマが自分のような一般魔術師と同じ感覚とも限らない。
土御門はしばらく悩んだ結果、ごくごく一般的な解答を返す事にした。
土御門「相手の好きな食べ物をあげて、いつもありがとうとか好きだとか言えばいいんじゃないかにゃー」
上条「やっぱ食べ物かな」
会話を終え、帰宅途中、上条はいたく悩む。
何をあげれば喜ぶだろうか。いや、何をあげても喜ぶとは思うが。
マシュマロは定番らしい。白いから。
だが、一説ではマシュマロは『嫌い』という意味も持つらしい。
世間知らずと博識を兼ね備える彼女に下手な物を渡すと残念そうに笑って受け取られる可能性もある。
バレンタインに食べたシフォンケーキは非常に美味しかった。あれ程の美味しい物を作れる気がしない。
上条「…んー…」
ふらりと立ち寄った小物屋で、見繕ってみる事にする上条少年だった。
上条「ただいまー」
フィアンマ「お帰り」
上条が帰宅すると、フィアンマは暇そうにベッドへ横たわっていた。
むく、と顔だけ上げた姿は少々幼い。が、彼女の言動からすれば丁度良い位だ。
佐天や他義理チョコへのお返しは、数日前にクッキーをあげる事で完了している。
彼女に買ってきたものは、別の物だ。
上条「お返しなんだけどさ」
フィアンマ「?」
上条「バレンタインの」
フィアンマ「あぁ、なるほど。気にしなくても良い」
上条「いや、普通気にするからな? はい」
差し出されたのは、小物店特有のプレゼント用の紙袋。
洒落たデザインのそれを受け取り、ベッドに座ったフィアンマは開けて良いかとの了解を取る。
勿論、と頷く上条。
シールで閉じられた紙袋の中には、ラッピングされた可愛らしい箱。
過剰包装とはこのことか、とは思いつつも、無言で丁寧にフィアンマは開封していく。
中身は紅茶のティーパックが二袋。何となく甘い匂いがするのは香料か。バニラの香り。
上条「バニラ風味の紅茶のパックなんだ」
フィアンマ「洒落ているな」
この甘ったるさは嫌いじゃない、と思いつつ一旦元に戻し。
何やら物言いたげな上条の前に立つべく立ち上がったフィアンマは、柔らかい笑顔で言った。
フィアンマ「ありがとう。今度落ち着いて頂く事にする」
上条「どうしたしまして。それと、バレンタインの時はありがとな。美味かった」
上条はそう言葉を返すと、今まで我慢していたかのように。
先月と同じく四十分間程、ぎゅうぎゅうと彼女を抱きしめるのだった。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/26(日) 22:17:16.68 ID:z4qPCykAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/26(日) 22:20:32.73 ID:lfADsHpp0<>
以上で本日の投下は終了です。
ホワイトデー発祥のマシュマロは「あなたが嫌い」という意味になるそうなので、お気を付けください。
もしくは脈なしという説も。お返しをするのであればクッキー辺りが無難のようです。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/27(月) 17:00:25.60 ID:t1QK/gYSO<> 乙。青鬼でフィアンマさんが怖がりながらの強がりプルゥウエエイが見れるかと思ったら淡々だった…ちくせう
お返しのセンスいいな。
次も楽しみにしてる。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/27(月) 19:08:29.98 ID:n0HCiYOc0<> >>366様
彼女は作り物には反応しないタイプのようです。
以下より投下。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/27(月) 19:08:34.76 ID:zrp60BvAO<> + <>
プール ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/27(月) 19:09:13.97 ID:n0HCiYOc0<>
上条当麻は、無事学園都市のとある高校を卒業した。
だからといって学園都市内に就職するでもなく、進学するでもなく、引っ越した。
しばらく都会のマンションに二人暮らしだが、あまり変化は無いと感じる。
学園都市の学生寮も何だかんだで一般マンションと似たり寄ったりの作りだったからだ。
とはいえ、引っ越すにあたってもう少しばかり広い場所へ来たが。
家具を運び込み生活を初めて数年。例年に比べ、今年の夏は非常に暑かった。
地球温暖化が叫ばれる昨今ではどの年が一番暑いというよりも毎年段々暑くなっているという言い方の方が正しいのだが。
クーラーをかけてずっとだらけているのも良い事ではない。
上条は携帯を弄り、ぐだぐだとしながら言った。
上条「よし、近所のプールに行こう。室内プール」
フィアンマ「プールか」
上条「泳げないか?」
フィアンマ「突然川に突き落とされても溺れない程度のスキルはあるが…」
上条「じゃあ行こうぜ」
乗り気な上条について行くままに、フィアンマは歩く。
やがて辿りついたショッピングモールの水着売り場。
上条の方はすぐ決まるというかそもそも形も種類も少なめなのだが、女性向けは種類が多く。
まるで決める気の無く丸投げのフィアンマに対し、上条はうんうんと悩んでいた。
上条「んー…」
フィアンマ「…」
優柔不断に悩んでいる上条を見、フィアンマは一つ水着を手にとった。
上はビキニタイプのホルターネックだが、レースがある為、あまり胸自体には注目が行かず。
下はビキニとスカートタイプで、こちらもレースが可愛らしさを加味している。スカートを穿かなければ両方共ビキニだが。
所謂ゴスロリ水着、というやつである。生地は黒で、レースは白。
フィアンマ「これで良い」
上条「あぁ」
悩んでいた割には自分が選ぶという執着は別段無かった上条は水着を受け取って会計へ。
ゴスロリ趣味なのか、と思ったものの、そもそもフィアンマの年齢を考慮すればこちらのデザインの方が親しみがあるのだろう。
とはいっても、上条はフィアンマの正確な年齢は把握出来ていない。
上条「…、…可愛いな」
フィアンマ「水着が、だろう?」
上条「いや、両方」
室内プールは程よく涼しく。
互いに着替え、プール内で合流した二人は、それぞれよく水着が似合っていた。
暑いとはいっても冷房の発達した世の中、プールにやってきた客は二人を含め、予想よりも多くはない。
ちゃぷ、と水に脚を浸け、フィアンマは上条に手を引っ張られる形で水中へと入った。
初めてのプールは心地よく、塩素の臭いもそんなに悪いものではないと思えた。
上条「気持ちいいなー」
フィアンマ「そうだな」
泳ぎを競う訳でもなく、のんびりと泳ぎながら言う。
上条の身体つきは、初めて出会った時よりずっとずっと逞しい。
身長もだいぶ伸びた。少しだけ置いていかれているような気がして、フィアンマは上条に抱きついた。
上条「うわぷ!?」
フィアンマ「そういえばウニは海の生き物だったな」
上条「誰がウニだ!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/27(月) 19:09:15.64 ID:zrp60BvAO<> + <>
お祭り ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/27(月) 19:10:04.63 ID:n0HCiYOc0<>
夏の日本では、どこもかしこも祭りが催される。
盆踊り大会であったり、花火大会であったり。
或いは、神輿を担いで練り歩く伝統的な物も。
はたまた、出店が沢山出るだけの『お祭り』らしい光景なお祭りだったり(この場合、厳密には祭と呼べないのかもしれない)。
上条とフィアンマの二人は、今挙げた内、全てが複合された祭へとやってきた。
とはいっても、出店を回って遊んで帰るだけなのだが。
両者共普段の装いではなく、浴衣を身に纏っていた。水着と同じく、ショッピングモールで購入した物。
日本人だから着付け出来る訳でもない上条は、浴衣店の人に着付けを頼み。
一人当たり二千円程度の料金で着付けてくれたので、安いものだ。
ちなみに本物の下駄は壊れるなどの『不幸の予感』がした為に購入せず、一見下駄風、しかし普通のサンダルを購入した。
上条は黒を基調としたシンプルデザインの浴衣を。
フィアンマは赤を基調としたシンプルデザインの浴衣を。
男性向けも女性向けも様々な種類があったが、お互いシンプルな方が良いと感じたのである。
特に女性向けは流行なのか分からないが、やたらと装飾の多いドレスの如く華美な浴衣が多く。
派手過ぎるのは好きではない、と二人共落ち着いたものにしたのだった。
上条「何か食べてみたいもの、あるか?」
フィアンマ「…一度も来た事が無かったからな」
この数年間で伸びた髪を緩く結わえたフィアンマは、挙動不審にならない程度に視線を彷徨わせる。
出店は多かった。毎年そうなのかもしれない。引越し後、ゴタゴタ続きで来られなかったが。
人が行き交う様や楽しそうにはしゃぐ子供。威勢の良い声。
ヨーロッパ圏のお祭とはまた違う雰囲気。
フィアンマ「…あれが良い」
上条「あれ?」
つい、と指差したのは、綿菓子。
ふわふわとしていて大きく白い雲のような、甘い砂糖菓子。
一つ二百円というお祭値段だが、それは想定済みで金銭を用意してきたため、問題は無い。
フィアンマ「…ん、」
上条に綿菓子を買ってもらい、設けてあった席に座ったはいいものの、どう食べれば良いか分からず。
かぶりついて良いものなのか、ちぎって食べるべきものなのか。
原料は上白糖だったはず、であれば触らない方が良いのではないか、と首を傾げるフィアンマへ手本を見せるように、上条は横からもふりと綿飴にかぶりついた。
手芸用の綿にも見える菓子を食べる様は少々シュールである。
上条の様子を見てかぶりつけば良いのかという判断に至ったフィアンマは、もぐもぐと綿飴を食べる。
口の中に含めばふわふわとした口溶けのままに消えていき、甘ったるさとじゃりじゃりとした砂糖が口の中に残る。
半分は白で、砂糖味。もう半分は少しだけピンクがかっていて、苺風味の砂糖の味がした。
上条「溶ける前に食べきらないとな」
フィアンマ「溶けたら単なる砂糖だろうしな」
もぐ、と綿飴を食べ。
三十分もしない内に食べ終わった彼女は、今度は上条の希望を問う。
フィアンマ「お前は何か無いのか」
上条「んー…」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/27(月) 19:10:06.15 ID:zrp60BvAO<> + <>
お祭り ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/27(月) 19:10:22.90 ID:n0HCiYOc0<>
辺りを見回し。
上条としては甘い物よりも腹に溜まるものの方が目を惹かれた。
上条「たこ焼きだな」
フィアンマ「蛸か」
立ち上がり、買いに行き。
再び席に戻ると、上条はたこ焼きのパック蓋をぱかりと開けた。
ソースとマヨネーズ、削り節の良い匂いがする。
付けてもらった割り箸をパキリと割り、息を吹きかけながら食べる上条の様子を眺めながら、フィアンマはじっとたこ焼きを見つめた。
食べたいと思ってはいるものの、酷く熱そうなので、戸惑う。
上条はたこ焼きを一つ箸でつまみ、数度息を吹きかけてしっかり冷ました後、彼女の口元に運んだ。
上条「そういえば欧米の人は蛸食べないとかいう話があるけど、どうなんだ?」
フィアンマ「イタリアでは少なくとも普通に食べる」
嫌いでなければ、と付け加えつつ。
たこ焼きのとろりとした食感が気に入ったのか、フィアンマはすぐ飲み込まずに咀嚼しながら、辺りを眺める。
他に何か面白いものはないだろうか。
食べる量に固執しない分質を求める彼女は、面白いものは大体食べてみたいと思う。
かき氷やかち割りは美しいものの、何となく味が読める。お好み焼き等はたこ焼きと同じような分類だろう。
林檎飴は綿飴と同じような分類だろうし、ステーキ串等はステーキそのもの、味はよくよくわかっている。
食べ物に惹かれなくなれば、自然と遊びの出店の方に目を惹かれるもので。
射的、輪投げ、宝釣り。金魚掬いや缶倒し。
フィアンマ「…籤がやりたい」
上条「くじ引き…って言うと、あれか?」
くじ自体はないので、宝釣りの事だろう。
宝といっても、一番良い物で大きいぬいぐるみやBB弾を装填出来る銃、大当たりが商品券一万円分程度だ。
彼女がやりたいというのであれば別に良いか、と結論付け、上条は手を引いて列に並ぶ。
子供も多いが、商品の中に現実に即した金券セットなどもある為、大人も引いている。
だが、余程確率が低いらしく、子供染みた要らない玩具ばかりが引き当てられていく。
お祭の宝釣りなどそんなものだ。射的なども。最近は特に。
人並み外れた幸運をその身に宿す彼女の場合は、違うのかもしれないが。
店員にはいどうぞ、と促され、彼女はぐいと一本の紐を引く。
付け間違ったミスなのか何なのか、ずるずると金券や旅行券が連なって引き出された。
大当たり中の大当たり。店員はしまった、と言わんばかりの表情を浮かべている。
フィアンマ「今日はラッキーデイだな」
ふむ、と考え込み、フィアンマは店員を見やる。
そして紐を軽く振りながら囁くように提案した。
こんなに沢山の金券は必要無いから、商品券以外は紐の下に戻そう。
だけれど、その代わりに参加代を返してはもらえないだろうか。
出店側としてはそちらの方が遥かに助かるらしく、頷かれた後、そそくさと作業が行われた。
かくして、無料で商品券(約一万円分)を得たフィアンマは、機嫌良く上条に差し出すのだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/27(月) 19:10:24.24 ID:zrp60BvAO<> + <>
花火 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/27(月) 19:11:00.15 ID:n0HCiYOc0<>
出店を充分に楽しみ。
幸運にもそれなりに良いポジションに席を取る事に成功した上条は、フィアンマと並んで空を見上げていた。
後十分程経過すれば、花火が打ち上がる事になっている。
暑さは難点だが、今日はよく晴れていて。きっと空というスクリーンに花火が美しさを添える事だろう。
上条「楽しかったか?」
フィアンマ「あぁ。楽しい」
上条の問いかけに穏やかな表情でそう答え、フィアンマは夜空を見つめる。
浴衣は生地が薄い為、風が吹くと涼しく、心地よかった。
フィアンマ「…目的に追われ、仕事に追われ、感情に追われ、罪に追われ…長い時間、こうして緩やかに過ごせなかったからな。あの頃の俺様にとっての最善だったにしても、無為にし
てきた何百年よりも…こうしてお前と過ごしてきた数年の方がずっと濃密で、楽しくて、幸福だ」
上条「……そっか。良かった」
上条の右手と握り合う生身のフィアンマの手指は、数度身動いた。
確かめるように、より深く絡み合う指。
上条が繋がれた手を見、再び空を見上げたところで、花火が上がった。
ひゅうう、という音の後に、美しい色とりどりの光。
遅れて届く、ばんばん、といった爆発音。
戦争においての火薬消費ではなく、純粋に、花火職人が人々を喜ばせる為に作った花火は様々な顔を見せ、楽しい。
フィアンマ「…、…綺麗だな」
上条「綺麗だよな…」
今度手持ちもやろうか、そうだな、と二人は言葉を少しだけ交わし。
後はただ黙って、最後の一発が終わるその時まで、花火を眺めているのだった。
何となく寂しいような、程良い余韻を残して…夏が、終わった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/27(月) 19:11:01.41 ID:zrp60BvAO<> + <>
>>1の製作裏話 ◆2/3UkhVg4u1D<>sage !orz_res<>2012/08/27(月) 19:12:41.39 ID:n0HCiYOc0<>
このシリーズで何度かやたらと更新遅い時期がありました。スランプでした。
というよりも、>>1が更新やたらと遅い時はそのスレ内容にスランプな時です。
完全に創作物が書けない時期と、幾つかのCPであれば書ける時とあります。
スランプの間、せっかく頂いた安価を消化出来ない悔しさに歯噛みしながら色々と考えている間にスランプが晴れ、書き込みが出来ました。
気付くとスレをだいぶ跨いで綴ってきましたが、上条さんとフィアンマさんの組み合わせが好きだからだと思います。公式ですし。
このスレ(もとい神浄右方シリーズ)が一番長く続きました。読者様と運の良さのお陰だと思っています。
今はオッレルスさんと上条さんとフィアンマさんの三角関係が書きたいと考えていますが、我慢します。
立てるにしてもオッレルスさんとフィアンマさんの純愛ホモです。きっと。
それか、垣根くんとフィアンマさんのホモです。多分。
フィアンマさんと神裂さんのお話も書いてみたいのですが、ガチホモ翌優先です。
プロットを組み立ててから書いた事が無いので、いつか実現したいと思ってます。
真面目な裏話とか無くてすみません…。
ちなみに、苗木フィアンマという発想は>>1の友人のものです。
『ベツレヘムの星』を用いたリアル脱出ゲームという案をその友人からいただきましたが、謎を考え出せる気がしなかったので諦めました。
引き続きグダグダ続けますが、本日の投下は以上です。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/27(月) 19:26:14.23 ID:jAM8Mqx80<> 今更ですが>>1は腐男子ですか?
それとも腐女子ですか?
今は検索機能が死んでますが良かったら
作品のURLを <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/28(火) 16:06:37.79 ID:FR1b1VaSO<> 乙。しかし、1タイトルで1レスは短いよーな…まぁあんだけたくさんのリクと自分の発想を捌いてりゃ>>1も大変だとは思うがちと寂しいんだぜぃ… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/28(火) 17:15:22.55 ID:NtNylO9h0<> >>378様
文章から割とあからさまににじみ出てしまっているので、お察しください…。
HTML化済の物は多々ありますが
・フィアンマ「オッレルスに性的な悪戯をしようと思う。安価が導くままに」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1336211126/
・フィアンマ「アックアに性的な悪戯をしようと思う。安価が導くままに」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1338049086/
等があります。
他は『垣根「しょたなおれとー」麦野「お姉さん」』・『僕の彼女は未元物質』(この二作は酉バレで現在のモノに変更する前なので別酉です)・『フィアンマ「俺様というものがありながら…」上条「ふ、不幸だー!」』『テッラ「困りましたねー」フィアンマ「言う程困ってもいないだろう」』…思っていたより沢山あるので省略します。板の検索機能は未だ直らないようですが、グーグル先生が何とかしてくれるはずです。
ちなみに現行はこのスレと
・インデックス「フィアンマに、安価で恩返しするんだよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344434112/
です。
>>379様
せっかくいただいたネタを散財してしまい、申し訳ありません…
SS(ショート・ショート)ということで寛容な精神で受容してくだされば幸いです。
では、以下より投下。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/28(火) 17:17:06.86 ID:7wVHUnfAO<> + <>
和解 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/28(火) 17:17:09.37 ID:NtNylO9h0<>
記憶を辿って、上条当麻は愛しい恋人を連れ、両親の住む自宅へとやってきた。
勇気が出ない。数年も会わずに居た。
最後に会った時逃げ出して以来、一度も連絡を取っていない。
表札には『上条』の二文字がある以上、空き家でもなければ別人が住んでいる訳でもないだろう。
不在の可能性はあるが、それを確かめるにもまずはインターフォンを鳴らさねばならない。
上条「……、…」
フィアンマ「……」
自分のせいで逃げ出す事となった以上、フィアンマは少々申し訳なさを感じていた。
上条にも、上条の両親にも。
優しい時間を過ごす事で精神を研磨した彼女には、昔程の冷酷さは無い。
フィアンマ「…ここまで来た以上、入るしかあるまい」
上条「分かってる、けどさ」
上条に関しては、百歩譲って優しくしてくれる可能性がある。
何しろ実の息子なのだから。記憶喪失についても、両親は知らない。
高校生の頃には何をするにも勢いでどうにかなったが、成人した今では、考え込み、立ち止まってしまう。
一度は関係無いと振り切った。記憶の無い上条にとって、両親は他人にも等しい。
しかし、和解したいと思った。自分の思いを貫かねば。
インターフォンを鳴らす。ピンポーン、という呑気な音と、少し遅れて女性の返事の声。
ガチャリ、とドアを開け。
出てきたのは上条の母親だった。
数年経ったにも関わらず、相変わらずあまり老けた様子は見られない。
上条の母親―――上条詩菜は二人の顔を見、少し驚いた表情を浮かべた後、優しく微笑みかけた。
詩菜「あらあら、お久しぶりね。お帰りなさい、二人共」
フィアンマ「…、」
上条「……」
逃げるように、というよりも文字通り逃げた人間に対しての言葉ではなかった。
何も考えていないという訳ではないだろう。不快感もあったはずだ。
だけれど、彼女は優しく微笑んで"二人"に『お帰り』と言った。
言葉を失う二人に対し、詩菜はのんびりと中へ入るよう促した。
促されるまま入室し、椅子に座った二人はまるで怒られる前の子供のように見えて。
詩菜は母親らしく、愛情の籠った笑みを見せた。
詩菜「今日は二人共運が良いみたいね。もうすぐ刀夜さんも帰ってくるから、もう少し待ってて。あ、喉は渇いていない?」
上条「大丈夫。…その、…ごめん…母さん」
詩菜「? 連絡無しに帰って来たからって謝る事は無いわ」
連絡しておいてくれればもう少し豪華な夕飯が用意出来たのに、なんて言いながら詩菜は和やかに言葉を返す。
言葉に悩む上条とは反対に、言葉を選び終わったフィアンマが、口を開く。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/28(火) 17:17:13.95 ID:7wVHUnfAO<> + <>
和解 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/28(火) 17:17:26.53 ID:NtNylO9h0<>
フィアンマ「…数年前には、ご迷惑をおかけしました」
詩菜「迷惑という程でも…」
うーん、と人差し指を顎に当てて首を傾げる詩菜。
フィアンマは首を横に振り、言葉を続ける。
フィアンマ「…彼とは別れられませんでした。結婚も諦められませんでした」
詩菜「そう…」
話題とは違い、まるで夕飯メニューを聞かされたかのような返答。
上条が、言葉の先を引き取った。
上条「真面目に結婚しようと思ってるんだ。…出来れば、父さんや母さんと仲直りしようと思って。もしダメなら、俺は駆け落ちしてでも結婚する」
詩菜「私は良いと思ってるわ」
式をやるなら是非呼んでね、と付け加えられた言葉に、上条はきょとんとする。
詩菜は、言葉を続けた。
詩菜「二人が帰って来ない間、刀夜さんと何度も話し合った。当麻さんがフィアンマさんを好きなら、それを応援してあげるのが親なんじゃないか、って」
フィアンマ「……」
詩菜「本当に大変な事になった時は、手を差し伸べる。後は、それ以外は、子供の意思のまま一生懸命人生を送らせてあげるのが一番じゃないか、って」
上条「母さん…」
詩菜「当麻さんも、年齢を考慮すれば、もう全部世話してあげなくちゃいけない子供じゃないものね。…少し寂しいし不安だけれど、愛し合っているなら、止める権利は誰にも…親にも
無いもの」
そう言い切って、詩菜は立ち上がると玄関へ向かった。
帰宅した上条刀夜は、二人を見て少し迷った後、笑ってみせた。
刀夜「久しぶりだな、二人共」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/28(火) 17:17:28.67 ID:7wVHUnfAO<> + <>
和解 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/28(火) 17:18:25.18 ID:NtNylO9h0<>
上条の強固な意思は数年前に劣るどころか、益々優っていた。
刀夜は父親というよりも一人の男として、そんな意思を良いものだと思う。
結婚するということは、自分の妻を一生涯かけて愛し、守り、味方で居るということ。
例え親が相手でも、それを貫き通す辺り、もう上条当麻は年齢を考慮せずとも大人なのだ。
不運に泣いていた弱い子供はいつの間にか凛々しい少年となり、一人の女性を心から愛せる青年まで育った。
ここまで育てば。
後は強く干渉せずに子供の成長や意見を認め、笑顔で見守ってあげるのが、親の役割ではないだろうか。
少なくとも、上条刀夜と上条詩菜は、そう思う。
数年の間に、そのような考えに至ったのだ。
上条は数年の間に変化した事を、静かに落ち着いて語った。
数年前と違い、包み隠さず。フィアンマは止めようとしたが、上条は止まる事なく話した。
もう、彼女はそこまで追われる身ではない。
例え何か問題が起きても、自分は絶対に彼女を守りぬくと決めた。
心から愛おしいと思っている。
何を言われたところで諦められないし、彼女を愛している。
彼女の本名。どうして偽名を使ったのか。
真剣に語る上条の言葉を聞き、両親は顔を見合わせてから、言葉を返す。
詩菜「フィアンマさん…ううん、カンパーナちゃん」
フィアンマ「…、はい」
詩菜「これからは、私の事をお母さんって思ってもらって良いからね」
フィアンマ「……、…ッ、…はい」
これまで母親など実母含め居なかった彼女にとって、その言葉はどんな言葉よりも強く響いた。
自分を受け入れられている、とよくわかった。
どうにか平静を保って泣かず、深呼吸して落ち着きを取り戻したフィアンマに対し、刀夜が言葉をかける。
刀夜「ウチには息子しか居ないから、娘が出来たのは初めてだ。自分の父親だと思うのは不可能だと思うが、気軽にお父さんと呼んでくれると嬉しい」
フィアンマ「…お義父さん」
人に向かって、呼称として父親を意味する単語を口にしたのは、何百年振りだろう。
今度こそ涙を目元に浮かばせながら、彼女は笑んだ。
数年前とまるで違う、感情しか無い、人間らしい笑顔だった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/28(火) 17:18:26.48 ID:7wVHUnfAO<> + <>
五和ちゃんと女教皇 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/28(火) 17:19:38.50 ID:NtNylO9h0<>
数年経った今だからこそ、五和は過去の自分を客観的に見る事が出来た。
頭に血が上っていたから、死者の無念を晴らすという大義名分があったから。
そんな理由で、好きな人が心から愛する人を言葉で、刃で傷つけた。
相手は無抵抗だった。あれだけ強大な力を持っていながら、自分にやり返す事はなく。
裁判の結果決まった、百年間の奉仕。
顔を合わせても、彼女は自分に頭を下げるのみで仕事に入る。
天にまします我らが父でもないのに、私刑を行った自分は何と考えの及ばない子供だったのだろう。
自分が完全に間違っていたかというと決してそんなことはない。あの人間は重罪人だと、今でも思う。
それでも、自らが慕う神裂が彼女に憎しみを向ける事をやめた時点で、自分も気づくべきだったのだ。
死者の為に復讐を行って満足するのは今生きている者だけ。
綺麗事だ。わかっている。それでも、これ以上彼を苦しめたくもなかったし、全ての罪を引き受けて死んでも構わないという姿勢を示した彼女に憎悪を向けるべきではない。
戦争の引き金を引いたのは右方のフィアンマだ。間違いない。
けれど、何も無いところに戦争を持ち込む事は出来ない。様々な思惑が入り混じって、あの戦争が引き起こされた。
戦争という名の銃に弾を詰め込んだのは彼女ではない。安全装置を外したのも彼女ではない。
単なる大量殺人ではないのだから、彼女一人に責を押し付けてしまうのは愚行だ。
結局、自分は目先の免罪符に全てを押し付けて自己の安息を得ようと思ってしまっただけなのだ。
幼かった。あまりにも。感情的だった。
好きな人を盗られた、という個人的な想いと混ぜてしまった。
最早それは私刑とも呼べない。嫉妬による暴力だ。
五和「…女教皇」
神裂「五和。どうしましたか?」
五和「…犯した罪は、償えるものでしょうか。傷つけた人にはどうすれば、」
神裂「心の底から悔い、傷つけた分だけ一生懸命自分の出来る事をすれば良いのですよ」
五和が悩んでいる事を見抜き、神裂はそう優しく述べた。
五和は思う。自分は結ばれなかったけれど、彼の幸せを祈ろう。
次にもし会えた時には、応援の言葉をかけよう。
五和(あの方が…上条さんが幸せなら、私は)
それで良い。それが良い。
自分と一緒に居るよりも彼女と居る事を幸せだと感じるのであれば、それもまた彼の選択。
五和「…女教皇、手紙を書こうと思っているのですが…彼等は今何処に居るのですか?」
神裂「…調べましょうか」
あの時の罵詈雑言を打ち消し、包み込む位に。
どうか、友愛の籠った手紙を。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/28(火) 17:19:39.98 ID:7wVHUnfAO<> + <>
(元)前方と左方 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/28(火) 17:20:37.88 ID:NtNylO9h0<>
はー、とため息をつき、女が空を仰ぐ。
『神の右席』が解体となった今、彼女は傭兵稼業に取り組んでいる。
本来もう一人相方が居た筈なのだが、あちらはイギリスの第三王女と結ばれたということで、傭兵はやめた。
とはいっても、今度は騎士として、こういう荒仕事を続けるらしいのだが。
まず利害が対立することもないだろう、と思いつつ、女―――前方のヴェントと呼ばれていた魔術師は、横目で相棒を見遣った。
てっきり死んだとばかり思っていたエリマキトカゲモドキ…否、左方のテッラが生きていたのだ。
戦いで生きてきた人間は、戦いで身を立てた方が、とかく生き易い。
ヴェント「復興で忙しい時期は捜さなくても仕事が来たケド、流石にこうも平和になっちゃあ、自分から探しに行くしかないようね」
テッラ「致し方ありませんねー。縁故もありませんし」
ヴェント「ま、気ままにやるとするか…ところで、アンタもうアイツの事は諦めたワケ?」
テッラ「アイツ?」
ヴェント「フィアンマ」
テッラ「諦めてはいませんが、彼女が幸せなら何処に居ても会えずとも、私は別に構いませんねー」
ヴェント「ふーん」
テッラ「また唐突な質問ですねー?」
ヴェント「別に深い意味は無い。もう報われない事が確定してる恋を引きずるって女々しいわね」
テッラ「彼女以上に魅力的な方も居ませんしねー…」
ヴェント「……」
テッラ「どうかしましたか?」
ヴェント「…何でもない」
テッラ「何でもないようには見えませんが」
ヴェント「うっさいわよこのエリマキトカゲ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/28(火) 17:20:39.46 ID:7wVHUnfAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/28(火) 17:23:05.22 ID:NtNylO9h0<>
以上で本日の投下は終了です。
書けなかったネタについては先に謝罪を。申し訳ありません。
……カンパーナちゃんのウエディングドレスのデザインに悩みます。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/28(火) 17:24:32.61 ID:zcITOHXl0<> 乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/28(火) 23:32:36.58 ID:FR1b1VaSO<> 乙ー。もうこれで本当に終わっちまうのか…
フィアンマさんはシャープな感じとか似合いそうな気は。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/29(水) 20:32:38.30 ID:gH4mfHSj0<>
書き溜めが出来ました。
結婚情報誌見ながら本気で良い式場とかドレスとか探してました。
以下より投下。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:32:56.31 ID:w73aoclAO<> + <>
結婚式 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/29(水) 20:34:08.85 ID:gH4mfHSj0<>
和解して数日、上条家に二人は宿泊していたのだが。
詩菜が思い出したように言った一言で、唐突にイベントが決まった。
結婚式だ。
元々だいぶ乗り気だった上条に対し、フィアンマはやや消極的な反応。
上条の両親の同意は得られた、共通の知り合いも居る、籍だって色々と手間はかかったものの、数年前正式に用意した。
昔、結婚式は女性の幸せの最たる事だと言われた。フィアンマは個人的にそう思っているし、申し出自体は嬉しい。
にも関わらず、拒否の意思を示すのには理由があり。
上条「嫌なのか? 結婚式って花嫁さんが主役だろ」
フィアンマ「……嫌という訳ではないのだが。俺様には父親が居ないだろう。お義父様に代わりになってもらう訳にもいくまい」
上条「そこか…」
うーん、と上条はしばし考え込み。
ふとグッドアイデアが浮かんだのか、笑顔で返した。
上条「よし、アックアにお願いしよう」
フィアンマ「…、」
思わず紅茶を勢い良く吹き出しそうになりながらもどうにか飲み下し、フィアンマは困った顔で上条を見やる。
フィアンマ「正気か」
上条「真面目に言ったつもりだけど。ほら、アックアなら数年前にヴィリアンさんと結婚してるしさ。式嫌がらないだろ、多分」
フィアンマ「イギリスの第三王女はヤツと結婚した事で臣籍に下り、一般人となったそうだな。と、そうではなく」
上条「代役を立てる場合、年配の男性に頼めば良いんだろ? それに、俺達にまったく関係ない人どころか結構お世話になってきたし」
フィアンマ「…それはそうかもしれないが」
上条「多分お願いしたらやってくれると思うんだ。他に候補が居るならそっちにお願いしても良いけど…」
フィアンマ「……、…そもそも、式を行わなければならない理由が無いだろう。俺様がやりたいならともかく、何でお前がやりたがっているんだ」
上条「…俺には、幸せな記憶が年齢相当な分、無いから」
上条が生きている間、その半分程の記憶は、今は死人と化している『彼』が持っていった。
フィアンマやインデックスと過ごした楽しい思い出はあるものの、それだって数年分。
だから、経験出来る限りなるべく幸せな思いをしたい。幸せになれそうなイベントがあるのなら、参加したい。
上条はそう告げ、少々暗くなった雰囲気を打開すべく笑顔で言った。
上条「あー、それに! ウエディングドレス姿のカンパーナも見たいし! 実はそっちが目的とかじゃないけど!」
フィアンマ「……」
上条「……だから、さ。…しよう」
フィアンマ「…うん」
亭主関白なのかカカア天下なのか、よく分からないのがこの二人である。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:34:19.50 ID:w73aoclAO<> + <>
結婚式 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/29(水) 20:35:00.35 ID:gH4mfHSj0<>
二ヶ月程を準備に費やし。
披露宴はやらずに式だけやるという事が決まり。
上条「式場、教会じゃなくて本当に良かったのか?」
旧教ではなく新教式の結婚式にする、と決め、今更ながらの上条の問いかけに、フィアンマは緩く首を横に振った。
フィアンマ「身を寄せた場所がローマ正教であった、ただそれだけの事に過ぎない。旧教に親しみ…いや、慣れがあるだけで、別段、どちらでも構わんよ」
上条「なら良いけど…」
フィアンマ「…しかし、」
上条「ん?」
フィアンマ「よく、胸を張って俺様を愛していると他者に言えるな」
上条「……」
フィアンマ「…自分で仕向けておいて言う事でも無いが。俺様を好きになって、お前に利点や旨味は少なかっただろう?」
上条「まぁ、本来しなくていい苦労はしたけどな。カンパーナ…フィアンマ以外の誰かを好きになったり、ところどころで逃げ出したり別れたりしてれば、苦しい事も辛い事もそんなに
無かったと思う。誰かを殺す事も、悩む事だって」
フィアンマ「……」
上条「後悔してる」
フィアンマ「…そうか」
上条「って、言って欲しいんだろ。誰が言うかよ、してないのに。大体な、利害とか旨味だとか、そんな事で人を好きになったり嫌いになったり、そんな簡単に出来るなら友達も何もか
も成立しない。…ちょっと自惚れるようだけど、俺が何したってカンパーナは俺を嫌いにならないだろ。だからカンパーナが何したって俺はお前を嫌いになんかならないし、なってやら
ない。その自信があるから、他人にだって胸張ってコイツが好きなんだって言える。悪い事したら恋しちゃいけないのか? 違うだろ。悪い事をした人間を好きになっちゃいけないって
事も無い。…それに、苦しんだり辛かった事以上に、一緒に居ると楽しくて幸せだから一緒に居たいって思うんだ。これまでがそうだったんだから、これからだってきっとそうだ。何度
選択肢与えたって無駄だからな。俺は俺の思ったようにやってるんだから」
フィアンマ「……お前が誰彼構わず好かれる理由が、今の一言に集約されているな」
上条「今はそうでもないだろ」
フィアンマ「そのまま一生鈍感で居てくれ」
上条「鈍感って何ですか。いや、認めるけど」
明日の式を目前とした会話とは思えない程、いやむしろ正しいのか、だいぶ重い会話を交わした二人は、ホテルの一室でしばし沈黙する。
明日はこのまま二人一旦別れ、別室で着替えなどを済ませた後、ホテル内の式場に向かう。
結婚式をしたから結婚した、という訳でもないし、互いに想い合ってさえいれば婚姻届すら関係無いのだが、目に見えない緊張感がこみ上げた。
緊張を和らげるべく、上条はリハーサル時の彼女のウエディングドレス姿を思い浮かべ。
フィアンマ「…何を考えているのかは知らんが、その力の抜けきった顔。明日はするなよ」
上条「そんなにだらしない顔してないって…」
フィアンマ「鏡を見ろ」
上条「…うん、ごめん。明日は気をつける」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:35:02.83 ID:w73aoclAO<> + <>
結婚式 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/29(水) 20:35:57.64 ID:gH4mfHSj0<>
祭壇に向かって右側には、上条の両親や従姉妹。
加えて、一方通行と呼ばれる青年や、打ち止めと呼ばれる少女。
他、上条当麻と関係のある人間達が、参列者として着席している。
祭壇に向かって左側には、小萌や佐天。
加えて、オッレルスと呼ばれる魔術師や、シルビアなど。
他、この期間でフィアンマを赦す事が出来た、或いは彼女の所業を知らないながらも親しい人間達が、参列者として出席している。
平凡だった少年の頃とあまり変化は無いが、より精悍で実直そうな容姿に白いタキシードを纏った長身の花婿は既に入場し、聖壇の前で花嫁を待っている。
着席している、と前述したが、今現在は列席者一同起立している。
まだ閉じられた門の向こう、フィアンマとアックアとは、腕を組んだまま言葉を交わす。
フィアンマ「…すまないな、巻き込んで。…その驚いた顔は何だ」
アックア「貴様が他人に対して真面目に謝罪を口にする日が来るとは、と思っただけである」
フィアンマ「この状況でその言葉を口にするか、この野郎。…この数年で、変化したんだよ。いや、変えられた…変えてもらったというべきか」
アックア「……毒が抜けたな」
フィアンマ「そうだな。自分でも、そう思う」
第三次世界大戦。
幾度もの事件。
彼女が『右方のフィアンマ』として世界を、人々を傷つけてきた事実に変わりは無い。
後ろを振り返り悔やむ事であれば何度でも出来る。だが、今は前を向く時だ。
聖母属性を所持していた男の隣に、『神の如き者』を司る自分がマリアヴェールを身に纏っている状況に、少々愉快さを感じ、彼女はくすくすと笑った。
小声ながらも笑えば肩が揺れ、連動した様にブーケの葉が揺れる。
彼女の身に纏っている白一色とは逆に、手に持っているブーケはキャンディーカラーのバラで構成されており、形はショートキャスケード―――明るく華やかなものだ。
フィアンマ「……、…あの時、」
アックア「……」
フィアンマ「…助けてくれて、ありがとう」
イギリスで私刑を受け、死んでも構わないと無抵抗でいたどころか、助けに現れてくれた事に暴言を吐いたにも拘らず、ただ自分の信念に基づいて助けてくれたことを。
あの時は礼の言葉など言わなかったし言うつもりもなかったけれど、どうしてだか、言いたくなった。
冷たくなり、決断力が増す事だけが大人になるということではない。世話になった相手にお礼の言葉が自然と出てくるのも大人になるということ。
それを踏まえれば、何百年重ねても得られなかった成長を、上条と共に過ごした数年で、彼女はようやく得られたのだろう。
その末に、こうしてありがとうと、感謝の言葉を紡ぐ事が出来た。
対して、アックアはいつも通りの様子で、言葉を返す。
アックア「自らの信念に従ったまでである」
フィアンマ「…相変わらず、どこまでも面白味の無い愚直な男だなぁ、お前は」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:35:59.28 ID:w73aoclAO<> + <>
結婚式 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/29(水) 20:36:39.36 ID:gH4mfHSj0<>
父親の代役と共に入場した花嫁は、美しかった。
赤く長い髪は緩やかに纏めてあり、整った顔立ちは白いヴェールに隠され。
上半身はケープ型の作りで、首周りを露出し、二の腕半ばまでの長いレースグローブは、一部少しだけ真珠飾りがある。
腰から下、イタリアサテンを贅沢に使用した、自然なドレーブを使用したドレス。
可愛い、よりも上品だという印象を強く受ける。広がりは少なく、甘さはない。
裾は床につく程あるものの、過剰に長くは無く、歩く度、祭壇へと続く大理石のバージンロードに響く靴音に対して静かな衣擦れの音を立てた。
新郎の横へと辿りついた新婦の手を、新郎は新婦の父親―――その代役からそっと受け取る。
そしてそのまま、二人は祭壇前まで進んだ。
列席者も起立したまま、決まり通り一同で賛美歌を歌い、一時着席。
司式者、牧師役の男性が、決まり通りの言葉を口にする。
男「私たちは今、上条当麻さんとカンパーナ=フェリーチさんの結婚式をあげようとしています」
そして、聖書の中から婚姻に関してふさわしい愛の教えを朗読し、神に祈りを捧げる。
男「それでは誓約をしていただきます。皆様、ご起立ください」
列席者は再び立ち上がる。
程よく間を取りながら、司式者は発言する。
男「上条当麻さんとカンパーナ=フェリーチさんは、今結婚しようとしています。この結婚に正当な理由で異議のある方は今申し出てください。異議がなければ今後何も言ってはなりま
せん」
祝いに来ている参列者に、異議など無かった。
男「どうぞお座りください」
列席者全員が着席し、沈黙が残る。
暖かく、それでいて神聖且つ厳粛な雰囲気の中、司式者は問うた。
男「上条当麻さん、貴男はこの女性を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しい時も、良い時も悪い時も愛し合い、敬い、慰め助けて変わることなく愛することを誓いますか」
上条「はい、誓います」
緊張しながらも噛む事無く、上条はそう誓った。
続いて、司式者は問う。
男「カンパーナ=フェリーチさん、貴女はこの男性を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しい時も、良い時も悪い時も愛し合い、敬い、慰め助けて変わることなく愛することを
誓いますか」
フィアンマ「…はい、誓います」
男「あなた方は自分自身をお互いに捧げますか」
幻想右方「「はい、捧げます」」
ここで誓うまでもなく、お互いの為にお互いと他人を捧げてきた。
そしてそれは、これからも変わらない。
司式者は、指輪について説明する。
内容としては、『指輪は丸くて終わりがないことから永遠の愛を意味し、貴金属で出来ていることは永遠に価値のあるものを意味する』といったことだ。
そして、指輪交換へと移行する。
プラチナで出来た、一見シンプルな結婚指輪は、上条とフィアンマが二人で購入したものだ。
内側にはとあるメッセージが綴り彫ってある。その内容は生涯二人共口にしないだろう。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:36:40.88 ID:w73aoclAO<> + <>
結婚式 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/29(水) 20:37:03.82 ID:gH4mfHSj0<>
男「上条当麻さん。あなたはこの指輪をフェリーチ=カンパーナさんに対するあなたの愛のしるしとして彼女に与えますか」
上条「はい、与えます」
男「カンパーナ=フェリーチさん。あなたはこの指輪を上条当麻さんのあなたに対する愛のしるしとして受け取りますか」
フィアンマ「はい、受け取ります」
男「カンパーナ=フェリーチさん。あなたはこの指輪を上条当麻さんに対するあなたの愛のしるしとして彼に与えますか」
フィアンマ「はい、与えます」
男「上条当麻さん、あなたはこの指輪をフェリーチ=カンパーナさんのあなたに対する愛のしるしとして受け取りますか」
上条「はい、受け取ります」
男「では、指輪の交換を」
予定通りの言葉を述べ、答え。
指輪を交換した二人に対し、司式者は穏やかに促した。
男「では、ヴェールをあげてください。誓いのキスを」
指輪を交換し、向かい合ったままの体勢で。
リハーサルをしたにも関わらずだいぶ緊張しながらも、どうにか堪えて、上条は手を伸ばす。
そして、長いヴェールを持ち上げて彼女の背中に流せば、見慣れた愛おしい顔が見えた。
フィアンマの顔をきちんと見た事で多少緊張が解けたのか、上条は薄く笑む。
声に出して言えば雰囲気を崩す為、上条は口パクで褒めた。
上条『やっぱり綺麗だな』
フィアンマ『当麻は格好良いな』
声を出さずにそう返し、唇が重なった。
数秒の口付けの後、そっと離れ。
神と列席者の前で、司式者が、二人が夫婦となった事を宣言する。
結婚証書へのサインを終え、司式者もサインを行って。
無事結婚が成立し、閉式を伝える言葉。
晴れて結婚式を終えた二人、新郎新婦は腕を組んでバージンロードを歩き、退場していく。
退場する間際、フィアンマはふと参列者の方を見遣った。
見間違いだろうと思う。そんな事があるはずはないとも思う。
けれど。
ルーチェ『お兄様。幸せになってくださいね』
目の見えない亡き妹が、それでも祝いに来てくれたような気が、した。
少し悔しそうで、寂しそうで、でも嬉しそうに、微笑みながら、そう言ってくれたように、視えた。
ぎゅう、とブーケの持ち手を握り締め、上条の腕を抱きしめ、泣きそうになりながら、彼女は幸せいっぱいの笑顔で言う。
カンパーナ「あぁ、幸せに……しあわせに、なるよ…!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:37:05.07 ID:w73aoclAO<> + <>
上条夫婦 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/29(水) 20:37:47.62 ID:gH4mfHSj0<>
結婚式を終えて、一週間が経ち。
二人は自宅に帰り、やる事を済ませ、のんびりと寛ぎながら、言葉を交わしていた。
上条「ブーケ、佐天ちゃんが受け取ってたな」
フィアンマ「あの少女なら良い妻になりそうなものだが」
上条「多分なれるだろ。良い旦那さんが見つかると良いけどな」
フィアンマ「そうだな」
ベッドでだらける上条の頬を弄り、フィアンマは薄く笑む。
フィアンマ「結婚したのだから、俺様をそう簡単に未亡人にしてくれるなよ」
上条「気をつける。…死なないにしても、フィアンマも気をつけてくれよ」
フィアンマ「まぁ、気をつけるつもりはあるが。そんなに心配せずとも、お前が守ってくれるんだろう?」
上条「まぁ、うん」
否定はせず、上条はこくりと頷いた。
傭兵というより最早便利屋のような仕事をしている彼だが、実力はある。
少なくとも、フィアンマが『聖なる右』をなくしても守りきるくらいの自信も。
上条「あれだよな、昔の人の『嫁にフライパンより重い物を持たせるな』とか、分かる気がする」
フィアンマ「フライパンも大概重いが」
上条「まぁな。でも、銃とかはもっと重いし…それより何より、自分のお嫁さんに重い物を持たせて辛い思いさせたくない」
フィアンマ「…言い回しがキザになったな?」
上条「多分似てきただけだと思うぞ。夫婦は似るって言うだろ」
フィアンマ「…」
上条「…それに、素手はともかくフライパンより重い物で殴られたら正直勝てる気がしない」
フィアンマ「単純な腕力で言えばお前の方が上だ」
上条「いや、でも泣かれたら何も出来なくなるし、微笑まれたらごめんなさいしちゃうからな? 本当に好きな子を前にした男なんてそんなもんですのことよ」
フィアンマ「……情けないな」
上条「う…」
フィアンマ「だが、…そんな所が好きだ」
上条「……、…ッ、よし、ご飯作ろう、ご飯!」
フィアンマ「照れるなよ。お前だって同じような事をよく言っている」
上条「言うのと言われるんじゃ違うんです!」
フィアンマ「デザートはティラミスがいい」
上条「よし、任せろ」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/29(水) 20:37:49.69 ID:w73aoclAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/29(水) 20:38:40.86 ID:gH4mfHSj0<>
もう少しだけ続きます。が、本日の投下は終了です。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/29(水) 20:43:03.62 ID:O482urLI0<> 乙!
上条夫妻と
佐天さん幸せになってくれ! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 03:04:13.29 ID:AlIKhuDSO<> 乙。フェリーチって言うのか…言葉の意味がわかんねーけど。妹ちゃんのサプライズゲストもいいな。アックアさんマジかっけーす。佐天ちゃんも幸せになれりゃいいな!
やっぱ皆に祝福される結婚式はいいもんだなぁ…つっちー青ぴ姫神吹寄五和ねーちん、天草組、オルソラやインちゃんテッラやヴェントオリアナシェリー風斬や御坂妹、すている、みこっちゃんもいたのだろうか…
あ゙、みこっちゃん出てねェェェ! <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/08/30(木) 18:58:24.27 ID:aaamNxL70<>
フェリーチはイタリアの方の一般的な苗字だそうです。
参列者の方々の顔ぶれはご想像にお任せします。
長々と蛇足を付け足してきましたが、次の投下で終わりです。
では、短いながらも投下。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/30(木) 18:58:30.32 ID:tWw4W6QAO<> + <>
魔女と神浄の終幕 ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/08/30(木) 19:02:15.66 ID:aaamNxL70<>
百年間の償いの奉仕など、気付いたら終わっていた。
思えば自分にとって不都合な年は、気付けば過ぎ去っている。
何百年も経過した割には、何百年前とあまり状況は変化していない。
学園都市は相変わらずあるし(人道的な実験が主軸に据えられたらしいが)、魔術サイドもそれぞれ適当な均衡を取り戻した。
自分と上条を知る人間など、もはや存在しない。
そんな状況の中、フィアンマは未だ特に変化した様子の無い青年の見目で、だらけ半分に上条に甘えていた。
上条も同じく青年の見目だが、数百年という長い時を経たからか、落ち着くどころかやや暗くなった感が否めない。
自分が親しくしていた人間が自分を取り残して老い、死んでいくのを看取るというのは、寂しい。辛い。
フィアンマが自分以外の人間とあまり友好関係を築こうとしなかった理由が、今の上条にはよくわかる。
どこまでも無気力な上条に対し、フィアンマは笑みながら問いかける。
フィアンマ「今日は何の日だ?」
上条「えーっと…」
ちら、とカレンダーを見やり、上条は悩む。
長い年月を生きると、人間は痴呆症でなくとも過去の出来事を忘れる傾向にある。
フィアンマに関するイベントであれば思い出せるのに、と上条は悩み。
結局答えを出せなかった彼は、彼女に頼る事にしたのだった。
上条「ごめん、わかんないんだけど…」
フィアンマ「お前の誕生日だ」
上条「…何回目だっけ」
フィアンマ「確か…312…だったように思うが」
上条「ん、そうだっけ…」
どうだったか、と首を傾げるフィアンマに対し、淡白曖昧な上条の返事。
上条は彼女の髪や頭を愛でるように優しく撫で、欠伸を噛み殺す。
フィアンマは現在、『神の右席』として調整した天使に近い身体ではない。
『聖なる右』を喪う代わりに、普通の人間に近い身体を得た。
まるで活気の無い上条に対し、フィアンマは眠そうに問いかける。
フィアンマ「時に、当麻」
上条「んー?」
フィアンマ「久しく月経が来た」
上条「!」
がばっ、と唐突に起き上がり、上条はフィアンマを一度強くハグした後に聞き返す。
上条「ほ、本当か?」
フィアンマ「あぁ。故に怠い」
上条の頬を弄り、本当にだるそうな様子でそう言葉を紡ぐ。
数ヶ月前、約束していたことがある。
フィアンマは900歳前半。以降は普通に歳を取る。
だから、もし月経が戻る事があれば、子供を為そうと。
そして子供が巣立った後は寿命を測り、フィアンマが死ぬ少し前に彼女は上条を殺す。
それがどちらも取り残されず、一番幸せな死に方だと考えたからだ。
元より、上条はフィアンマの為に寿命を延ばしたに過ぎない。少し遅れて彼女が同じ場所に来るのであれば、本望だった。
上条「元気な子ならどっちでもいいよな」
フィアンマ「お前に似ていればどちらでも」
上条「カンパーナに似た方が可愛いと思うぞ」
フィアンマ「さて、どうだろうな。どちらにせよ可愛い事に変わりはあるまい」
上条「…何百年も前から言ってたもんな」
フィアンマ「あぁ、…お前と築けるのなら、不服は皆無だ」
理想的と言われる、父母が居て子供が居る幸せな家庭を築きたい、と彼女は言った。
自分も彼女も親の記憶は薄いけれどきっとつくろう、と彼は答えた。
二人の最期は記さない。
どんなおとぎ話も小説も昔話も、ハッピーエンドとは甘美な余韻を遺すものなのだから。
おわり <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/30(木) 19:06:22.29 ID:EtDfrwip0<> 乙っしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、!!!! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/30(木) 19:23:48.39 ID:NUl7Gz5E0<> 最初から見て、最初のスレの途中から参加してました!
にしても最初のヤンデレフィアンマ脱出ゲームから
よくここまできたなぁ…
いやぁ素晴らしかったです! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 19:35:28.99 ID:yBUeqSob0<> 乙 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 23:39:46.62 ID:AlIKhuDSO<> 乙。長かったな…神条と魔女の二人、そして>>1に幸あれ。
いやほんとに素晴らしかったわまた良スレをお願いします。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/09/17(月) 00:13:49.85 ID:OtxWNT70o<> HTML化しないのか? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/09/17(月) 07:57:16.75 ID:FaxhjVQy0<> >>419
依頼出されてるから安心しろ <>