◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 11:03:08.11 ID:XbjeqNTAO<>

◆H0UG3c6kjA改め◆2/3UkhVg4u1Dです。


・右方のフィアンマさんと垣根帝督くんが世界の広さを知るお話

・時間軸曖昧、22巻後半からの捏造スタート

・フィアンマさんの(当スレにおいて本当の)性別を、スレの途中一度だけ安価(男・女・ふたなり)をとり、決めます→BL・NL・ふたなりスレの可能性有り(ただし二人がくっつくかどうかは別)

・基本はほのぼの進行…だと思われます

・キャラ崩壊注意

・>>1は(安価スレの割に)遅筆


※注意※
安価次第で著しく展開が変わります。
ホモスレになる場合があります。
NLスレになる場合もあります。
ふたなりスレになる場合もあります。
エログロ展開の可能性があります。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1349056988
<>フィアンマ「…天使…?」垣根「それじゃ、安価旅行に洒落込むとしようぜ」
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 11:04:20.32 ID:XbjeqNTAO<>
ぶくぶく。
培養基の中。
得体の知れぬ液体に浸かる、一人の少年。
吐き出した呼気は泡となり、垣根帝督の顔の前を上へ上へと昇っていった。
周囲の研究者は感嘆の様子で、彼の様子を眺めては計測を行っている。
学園都市第一位に叩き潰された肉塊から、冷蔵庫よりも大きい循環器系代替機を付けられた脳に。 そしてようやく昨日、彼は演算能力により、自らの身体を造り出す事に成功した。
そして、目を覚ます。
自らの状態を、その優れた頭脳で把握する。
周囲の研究者達の話を聞き、現在の世界情勢を把握する。

第三次世界大戦。
ロシア。
学園都市の混乱。
開発機関『マジュツ』。

ぐちゃぐちゃに混ざる情報を適切に処理した少年は、端正な顔立ちの、その唇を、引き裂いた様に―――吊り上げた。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 11:05:24.11 ID:XbjeqNTAO<>
垣根「あー」

久しぶりに声を出して、深呼吸。

研究所を荒らし、想像したままに自分の身体を作り替えて追跡対策を施し、逃亡。
ついでに医療道具の詰まったセット(形は鞄)に携帯食糧も詰め込んで盗み出してきたので、しばらく困らないだろう。
現在、垣根帝督はロシア上空を、身一つ(服は研究者から盗んだ金でささっと買った)、鞄片手に飛んでいた。
悠々と翼を羽ばたかせる様は、まるで天使か何かの様だった。

垣根(木を隠すなら森の中、ってヤツだ。とは言っても、大体終わっちまったみてえだな)

学園都市第二位『未元物質』という兵器である自分を隠す為に、戦場ど真ん中のロシアにやって来たのは良いのだが、もはや戦争は終了していた。つまんねえの、と呟き、ふと垣根は視線を、雪の中の赤に留める。
そして興味の向くまま近くに降り立ち、顔や身体にかかっている雪を払ってあげた。

垣根「…死体…じゃないな」

死体は見慣れている。
だから、冷えた身体でぐったりしている人間が死んでいるか、はたまた冷えているだけなのか、垣根にはよく分かった。
幸い、自分が気紛れに雪を払ったこの人物は生きている様だ、と判断して。

垣根「…旅は道連れ世は情け。偶には人助けも悪くねえ。代わりに、俺の逃亡旅行に付き合ってもらおうか」

うん、と頷いて、垣根はその人物の手当てを開始する。
右肩から先は切断されたばかりなのか、大量の血液が溢れ出している。
医療道具セットから適切な薬品や道具を取り出し、処置をしていると、その人物が目を覚ました。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 11:05:54.41 ID:XbjeqNTAO<>
フィアンマ「…、…天使…?」

垣根「どちらかと言えば悪魔に近い気もするけどな。軍隊関係者にも一般人にも見えねえけど、名前は?」

フィアンマ「…、右方の、フィアンマ。フィアンマで、いい。…お前の名前は?」

垣根「未元―――いや、やっぱり好かねえなこの呼び方。…垣根、帝督。あぁ、逆に名乗った方が良いか?」

フィアンマ「…いや、構わん。下の名前が帝督で、相違無いな」

垣根「あぁ」


正史では絶対に出会わない二人が出会った時、物語は始まる――――。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 11:06:49.70 ID:XbjeqNTAO<>
フィアンマの手当てを終えた垣根はフィアンマを抱えて移動し、どうにかロシアの民家に宿泊許可を取り付けた。
持ち前の仕事用猫被りと、フィアンマが重傷である事、そしてその民家の家主たる老夫婦に垣根位の年齢の孫がかつて居たという同情と憐憫と幸運が功を奏したのである。ベッドに横たわり、のろのろと毛布にくるまって気を失ったフィアンマは、一時間程眠ってから目を覚ました。

フィアンマ「……、…何故、俺様を助けた」

垣根「気紛れ。後、道連れ探してたからだな」


老夫婦から振る舞われた温かなシチューを食べ、垣根はさらりと答える。 ちなみに、右肘から先が無いなどという事実は彼の『自分だけの現実』に介入出来なかった為、垣根帝督は五体満足だ。

フィアンマ「道連れ?」

垣根「捕まったら死ぬか、はたまた死んだ方がマシだっていう扱いを受ける事が目に見えてる立場に居るんだよ、俺は。予想出来てる。…まぁ、そんな訳で、死ぬ前に自分が見た事の無い世界を知りたいと思って、逃亡旅行中だ。一人じゃ寂しいだろ」

フィアンマ「…なるほど。…なら、俺様は道連れにお誂え向きだな。お前と同じ様な状態だ。これから旅行するつもりでいた」

垣根「奇遇だな。…それじゃ、生死を賭けた逃亡旅行に洒落込むとしようぜ」

お互いに居た場所が地獄の、血なまぐさい闇の中だったからか、二人は話が合った。
素性をある程度話し、理解し合い。
お互いに死ぬまでに世界を見ようと決めた。
垣根帝督はもはや、野心や復讐心に縛られる事も、学園都市に戻るつもりも無い。
フィアンマもまた、責務や責任感に縛られる事も、ローマ正教に戻るつもりも無かった。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 11:07:15.69 ID:XbjeqNTAO<>
魔術と科学。
対極に位置した、規模は違えど暗部組織のリーダー同士、気が合うのだろう。
お互い体調はあまり良くなかったが、割と話は弾んだ。

フィアンマ「ところで、まずは何処に行くつもりだ」

垣根「学園都市から出た事無かったからな……」




何処に行く?(学園都市以外)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/01(月) 11:23:26.28 ID:dz0Ta1PE0<> イギリス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/01(月) 11:24:44.15 ID:dz0Ta1PE0<> 連投ありなら上と同じくイギリス
連投なしなら安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/01(月) 12:10:46.74 ID:CenFsByf0<> ま た お ま え か <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 12:18:37.34 ID:XbjeqNTAO<> 《連投及び連続取得は問題ありません、読者様の良識にお任せします》


垣根「イギリスだな」

フィアンマ「イギリス、か」

垣根「何か不都合でもあんのか?」

フィアンマ「いや、問題は無いが。どのみち、この戦争の爪痕とも言える混乱がある、そうそう捕まる事も無いだろう」


垣根「一応、イギリスは学園都市と密接に繋がってるんだったか。…鬼門だな。ま、そこで捕まらなけりゃ良い。行くなら今だ。…お前の回復待ち。追われる立場に居るって事は、お前もそれなりに実力はあるんだよな?」

フィアンマ「デスクワークしか出来ません、というタイプでは無いな。…料理が不味くなければ良いが」

気軽に話すのは、自分達の実力に自信があるからなのか、そうしていないと怯え挫けてしまいそうだからか。
捕まってしまえば、待ち受けるのは死一択。
何も考えていない訳ではない。
だが、長期的にはネガティブ、短期的にはポジティブな考えと切り替えるのが二人だ。
自らの野望の為、綿密に計画を企て、実行するだけの頭の良さが、この二人にはある。

垣根「あー…でも、不味いらしいな」

フィアンマ「正確には味が無いんだろう。各々、食卓の調味料で調整して食べるのだったか」

途中入室してきた老夫婦にシチューのお代わりをもらい、垣根は慣れない手付きでフィアンマに食べさせる。
垣根より遥かに体調の悪いフィアンマは素直にその好意を受けた。

垣根「シチューに入ってる人参美味くねえ?」

フィアンマ「そうだな。俺様としては煮込まれた玉葱が好きだが」

好きな食べ物についての会話の和やかさは、万国共通である。

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 12:19:38.71 ID:XbjeqNTAO<>
3日程休養し、回復した垣根とフィアンマはロシアを出、イギリスまでやってきた。
適当な店に入ったは良いものの、そこで出された料理は味気なく…正直言って、不味かった。
ひとまず身元がバレないようあれこれ画策しながら、ホテルの一室を取る事に成功する。
金の宛ては、垣根が(研究員から奪っておいた財布より発見した)クレジットカードから午前中引き出せるだけ引き出しておいたドル(学園都市通貨<円>→$)と、フィアンマの持つ財産。
後者は魔術的に取り出せば良い。
何処にも定住するつもりはないし、追われて息切れを起こし倒れれば死ぬ(殺される)人生なのだ。
老後の生活資金なんて考える必要は無い。
だから、散財したところで後悔は無い。
ホテルのルームサービスで注文したピザを食べ、そのマシな味に舌皷を打ち。
来る途中購入した苺ジャム入りチョコレートを味わい、フィアンマと垣根は他愛もない会話をしていた。
お互い、今までこれといった友人など居なかったから、他人との二人きりの楽しい行動は、何もかもが新鮮だ。

垣根「クソ甘いけど美味いなコレ。ちょっと洋酒入ってんのか」

フィアンマ「そうだな。…それにしても甘過ぎる」

文句を言いながらも摘み、二人は時計を見やる。

フィアンマ「退屈だな。何かやりたい事は無いのか」

垣根「やりたい事…んー…」




垣根がやりたい事(アバウト可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/01(月) 12:51:46.00 ID:9xkOR91SO<> スレたて乙。てかアレの続きじゃねーのかよwwwwこのネタはかなりおもろそうだが
安価ならグルメ旅行と各地の娯楽を楽しみまくりの享楽主義な感じの事 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/01(月) 14:01:24.14 ID:Hd9hdMaIO<> ↑ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 20:42:54.73 ID:1VFRpQdS0<> 《>>12 書き溜めに手間取っていましたが、ようやく立ててこられました》


垣根「ま、グルメ旅行ってヤツだな。後はその国特有のゲームとか。これといってはっきりとした目的はねえ。旅行中、楽しければそれで良い」

フィアンマ「刹那的だな。まぁ、将来を見据える必要も無いが」

垣根「だろ?」

苺ジャム入りチョコレートの空き箱、ゴミをくしゃくしゃに丸めて捨て、垣根はフィアンマを見やる。
そして、自分に投げかけられたのと、まったく同じ質問をした。

垣根「お前はやりたい事無いのかよ」

フィアンマ「無い」

垣根「即答だなオイ」

フィアンマ「お前に合わせる。少しでも楽しい思いが出来て、人の笑顔が見られたらそれで良い」

垣根「まるで善人だな」

フィアンマ「俺様は善人だよ」

仕出かしてきた事はともかく、フィアンマは元々悪い人間ではない。
むやみに人を傷つけようとは思わないし、結構純粋だ。
一種狂気すら宿るその処女の恋情の如く盲目的な純粋さに基づいた邪悪にぞっとしつつ、垣根は肩を竦める。
一度"殺されて"以来、人に悪意を向ける事が馬鹿馬鹿しく感じられるようになったのだ。
丸くなった、というべきか。無気力になった、というべきか。
はたまたこの短い時間の中でそれなりの友好関係を既に築いたからか、とかく、垣根帝督は昔より穏やかになった事を自覚していた。

垣根「そういやお前、何歳なの?」

フィアンマ「十七だが」

垣根「同い年か…ふーん」

意外だ、とぼやき、垣根はベッドに身体を預ける。
今日はこのまま休んでしまっても良いかもしれない。
フィアンマは暇で仕方がないのか、垣根に話しかける。

フィアンマ「あの翼は何だ」

ちなみに療養中、人を天使と呼ぶとは、と揶揄した結果恐ろしく宗教臭い説教を受けた為、垣根はもうその事について触れないと堅く誓った。

垣根「能力使うにあたって本気出すと勝手に出ちまう」

フィアンマ「自力で出す事は出来ないのか?」

垣根「出来なくはねえけど。何で?」

フィアンマ「…、…>>15」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/01(月) 20:46:12.58 ID:Ad5plqODO<> 魔術士として気になるのだ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 20:56:50.66 ID:1VFRpQdS0<>
フィアンマ「…、…魔術師として気になるんだ」

垣根「ああ、そういやそうだったか」

垣根の中で、フィアンマは開発機関『マジュツ』…その中の『ローマ正教』で開発された優秀な能力者イメージであり。
宗教的事実に沿っての研究なのだろうと解釈している為(説教の内容は宗教臭しかしなかった)、納得しつつその背に翼を顕す。
ふわふわとした柔らかそうな翼に知的好奇心をくすぐられ、フィアンマはそろそろ左手を伸ばし、もふりと触る。
豊かな白い羽の中に手は沈み、その感触は心地良い。ただ、少々血液の残り香と思われる鉄臭さがあった。

垣根「くすぐってえからあんまり無闇矢鱈に触んな、っく」

『神が住む天界の片鱗を振るう者』。
人体すら創る事の出来るその能力は、神を冒涜せしめるもの。
しかし、フィアンマは怒るでもなく、しばらく慎重に触って知的好奇心を満たした後、ばふりと顔を埋めた。
彼は敬虔といえばそうだが、それはあくまで生きる為の指針の一つであって、神が全てだという訳ではない。
おい、と不服そうな声を出す垣根の声に応える事もせず、フィアンマは目を瞑った。
美しい白は天国にあるそれにも等しいのに、その翼から香るのは温かな垣根自身の体臭と、甘い香水と、血液の臭い。

垣根「…おい」

フィアンマ「…すー」

垣根「…この野郎」

マイペースなものだ、と呆れ。
垣根はちらりとフィアンマの様子を見やる。
腕を斬られ、体力を消耗している体での長旅は疲れるに決まっていた。
以前の自分であればふざけるなムカついたと殴って即座に起こしていたものだが、さて、どうするか。

垣根「……」




垣根はどうする?>>+1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/01(月) 21:12:05.67 ID:PjrdLwi+0<> 寝る <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 21:33:25.18 ID:1VFRpQdS0<>
右の頬を打たれたら左頬を差し出せ。
そんな事をあの地獄の説教中に言われたっけか、と思い返しつつ、垣根は目を瞑る。
そして能力を用い、手を触れずして部屋の電気を消した。
自分も、何だか疲れた。今になって、疲れがぶり返してきたようだ。
体がぐったりとだるい。何か物音があるまで、しばらく眠ってしまおう。
寝れば疲れも取れるし、そうすれば、明日何をして遊ぶかなどと、色色考えられる。


垣根「……」

そういえば、こうやって他人と眠った事は無かった。
『置き去り』として学園都市で生き、いつしか野心に囚われ、ほとんどの人間を遠ざけてきた。
ある意味馬鹿だったなあ、と思う。馬鹿は死ななきゃ治らないというが、死んだら本当に治ったらしい。
他者と二人きりで穏やかに過ごし、安堵と安寧を得る。
他愛もない優しいやりとりと和やかな会話に、心の傷を癒されて。
かりそめの幸福に腰を下ろしたまま、垣根は自嘲する。
これでは、学園都市第一位を笑えないじゃないか、と。
しかし、不思議と復讐心や憎しみがこみ上げる事は無かった。
こうして学園都市から出てしまえば、自分がどれだけ狭い檻の中で獣の様に足掻いていたか、わかったからかもしれない。

垣根「…チッ。寝るんだっての」

しっかりと目を閉じ、思考を空っぽにして、呼吸ペースを緩やかにしていく。
途中、翼に擦り寄る感覚があった。寒いのか、フィアンマが暖を求めているらしい。
手を伸ばし、起こさない様にして毛布をかけてあげた後。
思い出した様に気付いて、垣根はぼやいた。

垣根「……前は他人に気遣った事、無かったな」

眠りに、堕ちる。



翌朝。
ホテル備え付けのドライヤーがぶぉんぶぉんと音を立てていた為、垣根帝督は目を覚ました。
髪をどうにか洗ったらしい、左手で不自由そうにフィアンマがドライヤーをかけていた。

垣根「…早いな」

フィアンマ「早起きは三文の得、らしいな。今の通貨価値でいうとそんなに価値は無いから、眠っておけ」

垣根「いや、もう眠くねえよ」

一度起きてしまえば眠気は消失してしまうタイプの垣根は、起き上がって伸びをする。
のんきな猫の様に欠伸を漏らしながら、コキコキと首を鳴らし、翼をしまいこんだ。
眠気は無いが、完全にすっきりという訳でもない。
垣根は部屋からシャワールームに移動し、シャワーを浴びた。髪も洗う。
ついでに歯磨きも済ませ、能力の応用で髪を乾かした。
汎用性の高い能力は何かと便利だ、と思いながら、垣根はフィアンマを見遣った。
善意を施されていると、何故だか善意を返したくなる。
どんなに善意をくだらないと突っぱねてきたにしても、垣根帝督も結局は普通の人間で、不幸な少年というだけに過ぎない。

垣根「乾かしてやろうか、髪」

ドライヤーの手を止め、フィアンマは悩む。

フィアンマ「>>19」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/01(月) 21:41:46.31 ID:5V8TAmzDO<> 未元物質と言うのは髪も乾かせるのか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/01(月) 22:05:51.01 ID:1VFRpQdS0<>
フィアンマ「未元物質というのは、髪も乾かせるのか?」

垣根「何にせよ、応用次第だけどな。余計な水分を物質で吸い上げて空気中に放棄すれば、髪をさほど傷ませず乾かせるって訳だ」

フィアンマ「なるほど」

代償として部屋が若干湿気る、と言いつつ、垣根はエアコンのスイッチを操作して除湿モードにする。
こうすれば別に部屋が暑くなりすぎる事も無い。落ち着いている時の彼の頭脳の回転はその辺のスーパーコンピュータよりも優秀だ。
垣根はフィアンマに近寄り、その髪の濡れ具合を眺めながら、演算を行う。
ついでにドライヤーを片手間に片付けている間に、乾かす作業が終わった。
櫛で軽く梳かし、その適切な乾き具合に目を瞬かせ、フィアンマは垣根を見る。

フィアンマ「利便性が高いな」

垣根「まぁな。能力の特性上、応用はだいぶ利く。最も、それを扱うヤツがわかってなけりゃ意味が無いが」

フィアンマ「頭の良さをさり気なくアピールしているつもりなのかは知らんが、子供だな」

垣根「オーケー、ムカついた」

髪乾かしてやったのにその発言は何だ、と憤る垣根に、フィアンマはくすくすと笑う。
馬鹿にしている訳ではなさそうだった。単純に感想のつもりだったらしい。
その笑いがあまりにも楽しそうで毒気を抜かれる垣根に、フィアンマはふと思い返した様にお礼を言った。

フィアンマ「わざわざ手間をかけさせてしまってすまなかったな。ありがとう」

垣根「…、…おう」

バツが悪そうな表情で相槌を打った垣根は、視線を逸らして言う。

垣根「…腹減ったな。何食うか」




朝食を兼ねた昼食(料理or食材)>>+1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/01(月) 22:09:21.75 ID:9xkOR91SO<> びしそわーず <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/02(火) 19:56:47.14 ID:EfNbTZmp0<>
フィアンマ「外食で済ませても構わないが、また不味いものを食べる事になるな」

垣根「部屋にキッチンも備え付けてある事だし、自分で作るか。…そういやお前、料理は?」

フィアンマ「隻腕ではあるが、手伝い程度であれば問題無いだろう。買い出しもまた然り、だ」

垣根「もう店は開いてるモンなのか?」

フィアンマ「後一時間程経過してから行けば、確実だろうな」

垣根「早起きが裏目に出た訳か。何作るか決めようぜ」

フィアンマ「空腹の度合いによるな。俺様はそうでもない」

垣根「俺も実際そんなに激しく腹は減ってねえな…スープでも作るか」

話し合った結果、ヴィシソワーズというじゃがいものポタージュスープを作る事に決め。
ホテルの部屋内にあるキッチンにはオリーブオイルや塩コショウなどの調味料が置いてあり。
買ってくる物はジャガイモ、玉ねぎ、牛乳、白ワインで済んだ。
最寄りの店に出かけた二人はさっさと買い物を済ませ、てくてくと帰路を進む。

垣根「南瓜と人参、トウモロコシはよく聞くが、馬鈴薯のポタージュは初めて飲む」

フィアンマ「作るにあたって手間はかかるが、作り方は他のポタージュスープと大差無い」

垣根「味も似たような感じか。…それにしても、」

フィアンマが左手に持つは、ワインボトル、玉ねぎ、牛乳パックの入った袋。
垣根がやや辛そうに抱えているのは、20kg分馬鈴薯がぎっしりと詰まったダンボールだった。
日本のスーパーで、ダンボールにこんなにも馬鈴薯が入っている事はまず無い。
珍しい、重い、と交互に思いながら、垣根は時折休憩を挟みつつ歩いた。
能力から創り出した体といえど所詮は人体、ベースは細身の垣根の体。手腕。
筋力はある程度持ち合わせているものの、重いに決まっていた。

垣根「小袋で売ってないな、こっち」

フィアンマ「100g単位で割れば日本よりも安い価格だが、如何せん少量を詰めた袋売りは見かけんな」

垣根「イギリスのヤツ等ってそんなに大食いすんの?」

フィアンマ「いや、しないだろう」

そんな事を言い、垣根が限界を迎えた。
ホテルには後少し、歩かなければならない。
だが、隻腕のフィアンマに持たせるのは気が引ける、ともうひと踏ん張りしようとした垣根の手から、フィアンマがダンボールを攫った。
とてつもなく重いダンボールに、それなりに重い袋を持ったまま、フィアンマは垣根を手招きしててくてくと歩く。
あまり鍛えている様には見えない体つきに細い腕でどうやって持っているんだ、能力の一種か、と垣根は訝しがった。
しかし、垣根は旅行中(まだ始まって間もないが)、フィアンマが炎の魔術を使うところ見ている。つまり、火炎系だと思っていたのだ。

垣根「…何で持てるんだよ」

フィアンマ「何でだと思うんだ?」

垣根「>>24」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/02(火) 20:08:12.26 ID:hI58Q9cDO<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/02(火) 20:21:55.37 ID:/FlI+G0SO<> 物体を離れた地点から引き寄せる空間移動系の能力を持ってるとかか?
炎を出してたのはどこかで燃えてた物を引き寄せた。
今重いダンボールと袋を持てるのは、自分の手に常に引き寄せ続けてるとか…当てずっぽうだけど <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/02(火) 21:08:39.92 ID:EfNbTZmp0<> 《>>22 ×使うところ ○使うところを》


垣根「物体を離れた地点から引き寄せる空間移動系の能力を持ってるとかか? 炎を出してたのは、どこかで燃えていた物を引き寄せた。今重いダンボールと袋を持てるのは、自分の手に

常に引き寄せ続けてるとか…当てずっぽうだけどよ」

フィアンマ「どれも不正解だ。最後のは当たらずとも遠からず、か。…とはいっても、街中で説明するつもりもないが」

真面目な考察を一刀両断し、フィアンマと垣根はホテルの部屋に戻った。
調理作業を開始しつつ、フィアンマは本当の事を話し始める。
この世界には、超能力と同じ様に、魔術というものが本当にあること。
その中でも、自分は特殊中の特殊ケースにあたる使い手だということ。
先程の力は『天使の力』を自分の手腕に封入する事で、集中している限り怪力を得られるということ。

それから、それから、えとせとら。

様々な事を聞かされた垣根は、ややぐったりとしつつミキサーにかけたじゃがいも達を丁寧に裏ごししていた。
魔術というものの仕組みは大変興味深かったものの、やれ『神の如き者』やら、やれ『天使の力』などとファンタジーに出てきそうな単語ばかりを並べられて辟易している訳である。
フィアンマはそのまま説明するような事はせず、垣根がわかりやすいよう言い換えたりして説明したのだが、それでも、科学一本で生きてきた垣根にとって、天使様がどうの、神様の奇

跡がどうの、という話はいまいち理解に苦しむ。
最も、魔術を用いるにも理論や計算が必要な為、完全に文系という風の言葉選びではなかった。

垣根「……そのカミサマがどうこう、っていうのは置いといて。ま、話はわかった。多重能力者もイイトコだな、それ」

フィアンマ「素人でも出来るからな。が、お前には勧めない」

垣根「俺の才能…開発された人間で、才能あるヤツは副作用で最悪死ぬのに、何でお前は平気な訳」

フィアンマ「魔術的な才能だからな」

垣根「ふーん。…自分で"特別な『神の子』の性質を持ち合わせている奇跡を証明する存在"とか言ってて恥ずかしくないの?」

フィアンマ「いや、特には。お前でいうと、自分の力を科学兵器に喩える様なものだしな」

垣根「あー、なるほど」

どちらにせよ宗教を学ぶ必要があるのなら、副作用を抜きにしても魔術は学びたくない、と垣根は思う。
ことことと煮込み作業に入り、お互いの持っている情報を交わす。

フィアンマ「お前は頑なに神を否定し続けるな。何故だ?」

垣根「…>>27」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/02(火) 21:42:58.70 ID:/FlI+G0SO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/02(火) 22:10:31.14 ID:qD5bvNzF0<> 見えないからな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/02(火) 22:41:29.55 ID:EfNbTZmp0<>
垣根「…見えないからな」

フィアンマ「不可視の域に存在するからな」

垣根「ん。…見る事も、聞く事も出来ねえ。それでいて、何か功績があったらカミサマの御陰で、何か失敗したらカミサマの与える試練なんだ、なんて言われたって、信じられる訳ねえ

だろ。見た物は信じるけどな。お前がその奇跡の力? で水をワインに変えたなら拍手してやるし、それが何らかの力に基づいての結果だと信じるし、まあすげえと思わなくもない。だ

けど、二千年前の『神の子』がどうこう、それは神の与えた力がどうこう、っていうのは信じないし、認めない。お前が奇跡を起こすにあたって重要なものを握っているにしても、それ

を神が与えたっていう証拠は見当たらない」

人は信じるが、神は信じない。
理由は、目に見えないからだ。
無神論者らしい理由だったが、フィアンマは無理に布教しない。
別に魔術を扱わないのであれば、何の教徒であろうと神を信じなかろうと無問題だからだ。
ただ、少し。

フィアンマ「理論的で理性的な考えだが、勿体ないな」

垣根「勿体ない? 何が」

塩コショウで味を整え、垣根は首を傾げる。
フィアンマは肩を竦め、言葉を返した。

フィアンマ「信仰はいざという時の支えになる。身近に親しい人間が居ない時、孤独感を埋める存在にもなりうる。救いも得られる」

垣根「救い、ね。何だったか、愛をもって全て許せ、だっけか」

フィアンマ「あぁ。愛というと日本人は恋人同士のそれを思い浮かべがちだが、友情も愛の一種ではある。兄弟愛もまた然り。愛をもって人を赦す事が出来れば、いつか自分も許される

だろうと、そういうことだ。赦すといっても罪を無かった事にするのではなく、一度は罪を突き詰め、その相手が赦して欲しいと悔い改めた時、それ以上責めない事を意味する。故に、

難しい。その人物が罪を犯したことを忘却してしまう方が、許しを与えるよりも余程楽だからな」

垣根「俺の思う『許す』イメージとは違うな。やられた事を忘れてなかったら腹立つもんじゃねえの」

フィアンマ「それは本当に許せていないからだろう。友人に…そうだな、例えば、近しい人間にキツい冗談を言われるとしよう。その時は苛立つ、もしかすると数週間、あるいは数ヶ月

は許せないかもしれない。だが、その友人がその事…その、人を傷つけたという罪に気付き、心の底から申し訳ないと思って謝ってくれば、忘れることなく許すだろう。そしてその事自

体は忘れずに、しかしもうそれについて二度と責め立てる事は無い。…実際問題、それは難しいが。罪を軽視しろという話ではない。寛容であれという話だ」

垣根「寛容って単にお人好しか気が弱すぎて文句言えないだけじゃねえか」

フィアンマ「お人好しはまぁ、そうかもしれんな。気弱と寛容は別だよ」

垣根「ふーん。十字教は隣人愛がどうこうっていうけど、『隣人』ってそもそも何」

宗教の話に耐性がついたのか、はたまた聖書の内容は読み物的で面白いと感じているのか、垣根は問いかける。
出来上がったスープをよそい、スプーンを突っ込んで配膳を兼ねて移動する。
スープを飲み。程よい塩加減に舌鼓を打ちながら、フィアンマは聖書の内容を思い返しつつ話す。

フィアンマ「隣に住んでいる人物、という事ではない。自分に最も近しい…親しい人間の事だ。つまり、俺様にとってはお前が隣人にあたる。俺様の命を助け、こうして今も行動を共に

しているからな」

垣根「まったく関係無い他人に限らず、住んでる場所は関係無いのな。って事はお前、俺の事愛してるとか言えんの?」

冗談混じりに問いかけ、スープを口に含みつつ垣根は笑う。
対してフィアンマは真面目な表情で頷いた。

フィアンマ「あぁ、今のところ、俺様が一番愛しているのはお前だな」

垣根「ぶっ」

ギャグ漫画の如くポタージュスープを勢いよく吹き出し、垣根はげほげほと噎せる。
皿を一度テーブルに置いてティッシュを差し出し、フィアンマは食事を再開する。

フィアンマ「何だ。勢い良く吹き出したりして」

汚いじゃないか、と言わんばかりの表情で、フィアンマが窘める。

垣根「>>30」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/02(火) 22:41:53.41 ID:sDXLVSy00<> また安価か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/02(火) 22:51:41.24 ID:/FlI+G0SO<> お、お前そういう人か?いや差別とかそんなんはしないけどよ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/02(火) 23:20:22.20 ID:EfNbTZmp0<>
垣根「お、お前そういう人か? いや、差別とかそんなんはしないけどよ」

フィアンマ「…"そういう"? …意味はよくわからんが、妙な勘違いをしている様であれば訂正しておこうか。俺様の話を聞いていたのか? 友情も愛の一種だ。故に今の言葉を用いたが…不服か。言い換えてやる。俺様の人間関係において、最も親しいのはお前一人だ」

垣根「そっちの意味かよ…」

場所がホテルの部屋で、同性(と思われる)相手からの告白という生々しく危険な非常事態に遭遇したのかと、と垣根はほっと胸を撫で下ろす。
危うく全力で尻をガードする羽目になりそうであった。しかし、心のどこかでコイツには勝てないのではと思わなくもない。
誤解が解けて満足したらしいフィアンマはスープを飲み下し、お代わりを注いでくると、再び飲み出した。
細い割に食べる量が少ない訳ではないのか、と思いながら、垣根もお代わりをして再び飲んだ。
ポタージュとはいえ馬鈴薯なので、地味に腹に溜まる。が、肉料理ではないので、苦しくはならない。
やがて食事を終え、暇になった二人は馬鈴薯で出来る料理の話をしながらトランプを開始した。
運が割と重要になるトランプゲームでは、圧倒的にフィアンマが強く。
あまりにも負け続けるので悔しくなった垣根はチェスを持ち出した。これは運があまり響かない。
駒を動かし、時折眠気が来るのか欠伸を堪えつつ、フィアンマは世間話がてら問いかけた。

フィアンマ「そういえば、お前は学校に行った事は無いのか」

垣根「学校? ねえな。必要性も無かったしよ」

フィアンマ「なるほど。だから友人が居ないのか」

垣根「…この野郎、駒ぶちまけるぞクソボケ。…それも必要無かったし、そもそも周囲と知的レベルが合わなくてな。レベルの高いヤツに話を合わせるならともかく、格下のバカと親しくしても失うものが多いだけで意味がねえ」

フィアンマ「馬鹿は馬鹿で使えるがね。チェック」

垣根「……」

使う使わないと親しい親しくないは別問題の様な気がする、とは思いつつ。
口ごもった垣根は、駒を動かして攻めの姿勢を作った。

フィアンマ「…俺様にも、友人は居なかったからな。必要も無かった。だから、お前が恐らく最初で最後の友人だ」

垣根「最後、って決めるにはまだ早いんじゃねえの」

フィアンマ「この逃亡生活の中で親しい人間を作ろうとは思わんな」

垣根「そういうことか。チェック」

駒を動かし追い詰めたは良いものの、後少しばかり及ばず、垣根の負け。
これもかよ、と項垂れ、再戦を申し込んだところで、またとりとめも無い話を続ける。

フィアンマ「友人はともかく、恋人は居なかったのか?」

垣根「あ? >>33」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 00:03:44.90 ID:0mZ/HDMSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 00:29:10.54 ID:JjXARQI50<> いなかったな……モテなかった訳じゃねぇぞ? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 12:31:57.04 ID:pnvVUmCX0<>
垣根「あ? いなかったな……モテなかった訳じゃねぇぞ?」

フィアンマ「そうか」

垣根「…信じてねえな」

フィアンマ「ん?」

十字教徒であるフィアンマにとっては、彼女が居なかったということで垣根の危惧している"童貞とみなされる"事は悪い事ではない。
むしろ、淫行に及んでいないというのは穢れが少ないということなので、天の国に入れる可能性が非常に高い。良い事だ。
なので何を考えるでもなく素っ気なく相槌を打っただけなのだが、科学サイド出身の健全(?)な男子高校生である垣根は不名誉だと思うのか、何やら言葉を重ねている。

フィアンマ「お前が女にモテようとモテなかろうと俺様には関係の無い話だな。チェックメイト」

垣根「…」

垣根の訂正話が長々としていたので面倒になったのか、そう軽く言って、フィアンマは勝利を宣言した。
もういいや、と肩を落としつつチェスセットを片付けた垣根はキッチンに移動して馬鈴薯料理を開始する。
スープだけだったので、チェスに熱中し頭を使った為にお腹が空いたのだった。
同じく空腹感を覚えているフィアンマもその食事を頂くべく近づいて要求しながら垣根の手つきを眺め、暇潰しついでに問いかけた。

フィアンマ「そういえば」

垣根「あん?」

フィアンマ「享楽、ということだが何処か行かないのか」

垣根「そもそもイギリスに何があるのかあんまり知らねえけど…んー」




何処に行く>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 12:37:28.87 ID:0mZ/HDMSO<> 時計塔とか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<><>2012/10/03(水) 12:43:31.19 ID:rh7lnydd0<> ウィンブルドン <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 13:13:59.11 ID:pnvVUmCX0<>
垣根「ウィンブルドンだな」

フィアンマ「ロンドン南西部か」

垣根「そうそう。テニスで有名だろ?」

フィアンマ「ウィンブルドン選手権を題材とした映画もあったな」

垣根「中々良い話だったぜ、あれは。市場経済用語で『自由競争による淘汰』、ウィンブルドン現象・効果の発源地でもある」

フィアンマ「テニスが見たいのか?」

垣根「そんなところだな。言っただろ、その場所場所の面白いモンが見れれば良いって」

フィアンマ「その意見には賛成だし、構わんが」

出来上がった馬鈴薯の洋風炒め物(垣根帝督作創作料理)を配膳し、食べる。
スープで余った材料を使った炒め煮の様なそれは中々美味しく、垣根には料理の才が備わっている事が発見された。

フィアンマ「料理人としても生きていけそうだな」

垣根「そこまで上達するつもりはねえよ」



ウィンブルドンまでやって来た二人は、テニスプレーを眺めていた。
スポーツ観戦はすれど芯の部分はクールなので、大声を出して応援する訳でもなく。
来たばかりなのでこれといって注目選手が居る訳でもないので、暇潰しがてら眺めるのだった。
フリーのテニス場なので、動きやすい服装の貸出も行われており、参加出来るようだ。

フィアンマ「お前はやらんのか」

垣根「誰がやるか。夢と希望を信じてるガキじゃあるまいし」

フィアンマ「十七歳は日本ではまだ子供と呼ばれる年齢に相当するんじゃないか?」

垣根「お前人が格好つけてる時に尊重するつもりゼロだろ」

フィアンマ「俺様が何故わざわざ他人を尊重せねばならんのか疑問だな」

垣根「……」

何だかんだで自分は謙虚の国・日本の人間なんだな、と垣根はしんみり思いつつ。
尊大だが腹の立たないフィアンマと会話をしつつ、テニスプレーの様子を眺める。
選手達は皆楽しそうで、試合終了後には笑顔で会話をしている。今さっきまで争っていた相手と。

垣根「…」

フィアンマ「もし出るのであれば応援してやるぞ」

垣根「>>39」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 13:42:16.78 ID:0mZ/HDMSO<> そーかよ…ちなみにあっこで飛び入り参加できるとこあるみたいだが一緒にやろう…っていったらやってくれんの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 16:11:33.83 ID:JjXARQI50<> いーや、遠慮しとく <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 17:15:13.80 ID:gBESxf080<>
垣根「いーや、遠慮しとく」

フィアンマ「若さが無いな」

垣根「つまらなそうな顔しやがって」

俺は玩具じゃねえ、と言いつつ、垣根は立ち上がる。
気付けば三時間程、テニス試合観戦に費やしてしまった。
日は暮れており、そろそろホテルに戻った方が賢明だろう。
日本と違い、欧米諸国は夜呑気に構えていると身ぐるみを剥がされる恐れが高い。
勿論一般人程度の暴漢に負ける程二人は弱く無いのだが、面倒事は避けて通りたい。
ましてや、無意味に人死にを出してしまっては気分が悪い。
自分の目的を邪魔する、或いは嫌悪感をもった相手を殺害する事に躊躇はしないが、別に垣根もフィアンマも快楽殺人者ではないからだ。
垣根は格下は見逃す主義であり、フィアンマは本当に必要な時しか殺しはしない。



二人はホテル付近の店へ、ひとまず戻ってきた。
馬鈴薯が大量に残っているので、それらを使って夕食を作ろうかと考えている訳である。

垣根「何作るかな」

フィアンマ「どのみち此処を去る時に捨てるとはいえ、腐らせるのは問題だしな」

垣根が手にしているのは、戻ってくる途中に購入した、学園都市製でないプリペイド携帯だ。
ポイント補充用のカードも幾つか買い込んだので、しばらく使えることだろう。
何を検索しているかというと、馬鈴薯料理のレシピだった。
これまで携帯電話など『仕事』に使う位しかしてこなかった垣根としては非常に新鮮な感覚である。

垣根「何種類か作るか。腹も減ったし」

フィアンマ「俺様は手伝い程度しか出来ん。どの程度作るか、好きに決めろ」





今日の晩御飯(ジャガイモ料理)>>41-42 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 17:26:09.38 ID:0mZ/HDMSO<> ポテトサラダ、ポトフ、ジャガバター <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/03(水) 17:36:04.60 ID:hTqOjaPX0<> マッシュドポテト
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 18:08:03.92 ID:gBESxf080<>
垣根「とりあえず…バター買うか」

何を作るにもバターは重要だ。
質の良さそうなバターを購入し、これはじゃがバターを作ろうと垣根は決める。
刹那的な旅、帰国を考えていないということは、後先考えずに金を使えるということでもある。
そもそも垣根は今まで残金を気にした事が無かったが、それは余裕に裏打ちされたもの。
まるで自殺する場所を捜しているかの様だ、と考え、あながち間違ってもいないか、と垣根は苦く笑った。

夕食の内容はマッシュ・ド・ポテト、ポテトサラダ・ポトフ・じゃがバター。
箱の中の馬鈴薯半分は消えるのではないだろうか、と思いつつ、他に必要な材料を購入していく。
バター、人参、玉ねぎ、ベーコンなど。
外食にはすっかり懲りたので、イギリスに居る間は自炊生活となりそうだ。
幸いにもジャガイモと違って人参などは主食となる野菜で無い為に箱売りではなく単数買いだった為、あまり買わなくて済んだ。

垣根「食べ物に縛られる生活ってのも嫌になるな。まだ嫌気はさしてねえけど」

フィアンマ「買ってしまった以上、理由もなく食べずに腐らせるのは気分が悪いからな」

垣根「ま、この調子でジャガイモ主食にしておけばなくなっていくだろ。パン食うより力出そうだしな」

垣根の中において力の出る食べ物は米>ジャガイモ>ナン>パンの様だ。
基準は長い時間腹に溜まるかどうか、だそうで。
ちなみに。
自らの能力に常識は通用しないと敵に豪語し、宣言する彼は、だいぶ常識人である。

垣根「おいやめろそれ明らかに地雷っぽいじゃねえか」

フィアンマ「安心しろ、賭けには強い」

垣根「知ってる。その賭けが強いお前が店選んで失敗したんだから多分この国の既製品は駄目なんだっての」

アップルパイに目を引かれるフィアンマを止める姿は、同い年ながらもまるで兄の様だった。




ホテルに戻ってきた二人は、じゃがバターを食べつつ調理をする。
軽く塩茹でした熱いほくほくのじゃがいもを二つに割ったその間にバターをひとかけら、細かく切ったベーコンを乗せる。
ジャガイモの熱でバターが溶け、ベーコンも温まり、その脂が染み出して非常に美味しい。
ベーコンを存外多く購入してしまったため、載せてしまおうと垣根が提案したのである。
ジャガイモ本来の甘みとバターのコク、ベーコンによる肉の香り、という食欲をそそるソレをおやつ代わりに食べながら、長い調理に耐える。
ジャガイモを茹でるのにはそれなりに体力が要る。長時間火を焚いている為キッチンが暑い上に鍋が重い。お湯を捨てるのも一苦労だ。

フィアンマ「一人暮らしでもしていたのか。随分慣れている様に見えるが」

垣根「ああ、一人暮らし。とはいっても金には困らなかったから専ら外食だったけど、飽きるからな。趣味半分に自炊してた時期はあった」

余儀なくされて、というより、単純にファミレスやケータリングのメニューに飽きが来たから。
何とも贅沢な理由で自炊していたのだという答えを聞き、フィアンマは相槌を打つ。

垣根「お前は料理した経験あんの? 今の生活中のは除いて」

フィアンマ「>>45」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 18:10:44.94 ID:0mZ/HDMSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/03(水) 18:12:52.45 ID:kYk1d/go0<> 以前ローマ正教の厨房で料理長をしていた <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 19:23:47.37 ID:73cci0/K0<>
フィアンマ「以前ローマ正教の厨房で料理長をしていた」

垣根「マジかよ」

フィアンマ「嘘ではない。そういう時期もあったというだけで」

別に右方のフィアンマは産まれた時から『右方のフィアンマ』という位置にいた訳ではない。
その身に奇跡の才能を与えられた時点で座に着く事は確定していたかもしれないが、それは垣根帝督が産まれた瞬間に『未元物質』を得ていないのと同じ。
ローマ正教の息がかかった店で料理をしていた時期がフィアンマにはあった。
だから片腕でもそれなりに出来るのか、と垣根は感心する。

垣根「ガキのバイトにしちゃスケールデカいな」

フィアンマ「学校に行った事が無いからな。時間だけは無駄にあった。魔術の勉強をしている時以外は寝るか働くかしていた方が楽で良い。無為に時間を消費すること程無意味でつまらない事もない」

垣根「確かにそれは同意する。ダラダラ寝ててもつまんねえ…って、学校行った事ねえのかよ。一度も?」

フィアンマ「あぁ。独学とはいえ魔術以外にも勉強はした、数学等は一般程度出来る筈だが」

垣根「語学も独学な訳?」

フィアンマ「イタリア語はそもそも普通に話せる。英語も同様だ。周囲で使っていた人間が多かったからな。フランス語とロシア語、ラテン語、日本語は勉強した」

垣根「ふーん。なるほど、ちなみに一番最初に覚えた日本語って何?」

出来上がった美味しそうなジャガイモ料理達を皿の上に丁寧によそっていき、飲み物(購入してきたミネラルウォーター)のペットをテーブルに置く。
垣根はいただきますとぼやき、フィアンマは祈りもせずに食べ始める。
ふと垣根は疑問が浮かぶままに首を傾げた。

垣根「十字教徒なんだろ? 祈らなくて良いのかよ」

フィアンマ「>>48」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/03(水) 19:38:19.32 ID:D8+8+ZzJ0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/03(水) 19:39:05.75 ID:D8+8+ZzJ0<> 小さいな、垣根帝督 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 20:01:13.69 ID:73cci0/K0<>
フィアンマ「小さいな、垣根帝督」

垣根「小さいって何だコラ」

喧嘩を売っているのか、と眉を寄せ、垣根は食事の手を止めずに言葉を返す。
いくら友情を築いているにしてもやる時はやるぞ、とばかりの態度。
フィアンマは肩を竦め、食事を続けつつ話した。

フィアンマ「祈る必要は無い。神とは必要な時に利用するものだ。毎回毎回律儀に祈っているのは、神を怖がっているからだろう」

垣根「カミサマより上に居るみてえな言い方だな」

フィアンマ「実際、短時間とはいえ、神より上位に居たからな。それに、祈れば救われるという保証はどこにもない」

垣根「…バチ当たりもいいとこだ」

何故自分が敬虔な十字教徒がすべき発言をしているのだ、と垣根はため息をつく。

フィアンマ「俺様は神に愛されている。だから努力はいらない」

垣根「すげえ自信持ちだよな、お前。口調といい態度といい不信心といい」

フィアンマ「真面目に信仰はしているさ。だが、その為に必要な儀式をせずとも、俺様は神を愛しているし、神も俺様を愛している。それに代わりはない」

垣根「はー」

それでいいのか、と思いつつも、垣根は突っ込まなかった。
別にフィアンマの言葉を電波発言だと思っているとかそういうことはなく、そこまで自信があるのなら心配せずとも構わないだろうと思ったからである。

フィアンマ「そもそも祈れば救われるという発想が甘ったれている。救われたいのなら自分で何とかするべきだ」

垣根「いや、それ、お前が言っちゃ駄目だろ、俺はともかく」



夕飯を終え、疲れる為に二人はテレビを見ていた。
戦争の爪痕がいたるところに残っていて、その復興作業を伝えるニュースが多い。
苦い表情を浮かべるフィアンマに気づかず、垣根は呟いた。

垣根「…随分様変わりしてやがるな、色んな場所が」

"死んで"から"創る"までの間の記憶は無い。
覚えているのは、何もかも全て研究者の前にさらけ出される感覚と、頭の中を弄られた感覚。
戦争というのもその被害に遭っていない為、実感無くいたのだが、ニュースで各地の復興していく様を見て、ようやくほんの少し実感が持てた。

フィアンマ「……」

垣根「…」

フィアンマ「…仮に、戦争の首謀者を発見したら、お前はどう思う?」

垣根「あ? あぁ、この大戦の? んー…>>51」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 20:07:03.09 ID:PNUnlm8B0<> 別に何もしないんじゃね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 20:17:08.96 ID:CZsv5ZpSO<> 話を聞いてみたくはあるな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 20:34:03.17 ID:73cci0/K0<>
垣根「あ? あぁ、この大戦の? んー…話を聞いてみたくはあるな」

フィアンマ「話を?」

垣根「そうそう。どういう理由で戦争起こそうと思ったのか、とか。俺は戦争の間中、意識無かったしな。戦争で受けた被害は無いしよ。むしろ、俺の能力を戦時中の兵器に活かそうと研究開発してくれたお陰で、身体を創れる程にもなった。戦争が無けりゃ焦って開発しなかっただろうし、俺が元に戻れるのにはもっと時間がかかった。話も聞きてえだけじゃなくて、感謝したって良い位だ」

フィアンマ「…感謝、」

垣根「ソイツが何したかったかは知らねえし、被害は大きいみたいだけど、少なくとも…第三次世界大戦が起きたことで、俺だけは救われたな。…オイ、お前のせいで俺まで宗教臭くなったじゃねえか」

うええ、としょっぱい顔をして、垣根はチャンネルを回す。
チャンネルを回しても映るのはやはりニュース。
その他は子供番組で、趣味に合わずつまらなかった。
仕方がない、と諦めてテレビを消す。
ふと、フィアンマの表情が暗くなったり、視線が右往左往している事に気付き、垣根は眉をひそめる。

垣根「元気ねえな。何、お前の知り合いに戦犯でも居んのかよ」

フィアンマ「…、…俺様が戦犯だ。首謀者ということになっている。事実だが」

垣根「…は?」

フィアンマ「……」

垣根「…マジで?」

フィアンマ「ガチだ」

垣根「えー…意外じゃねえ。そりゃ追われる訳だ。…いや、まぁ…すげえな。それと、ありがとよ」

大事な人が居ないどころか人が嫌いな垣根には、戦争で傷ついた人などどうでも良くて。
ただ、自分がこうして普通に呼吸出来る様に、間接的に協力してくれたのはフィアンマだと知っただけ。
だから、フィアンマを咎めるどころか、手を叩いて賞賛出来る程の気分だった。
先程彼自身が言った通りに自分に礼を言った垣根に、フィアンマはきょとんとする。
フィアンマは心のどこかで、自分の行いを赦してくれる人間を求めていたから。
道徳的には問題だが、人間の心はそんなものだ。自分が悪い事をしたとわかっていても、優しくして欲しい。

フィアンマ「……、」

垣根「色々質問しても良いか?」

明るく笑って、垣根は首を傾げる。
一般的な倫理観は持ち合わせているものの、彼とて暗部組織に居た人間。
歪んでいる部分はある。一方通行の様に偽悪的ではなく、絶対的な悪を地で行く人間なのだ。
だが、暗部組織に居たとて、普通の少年。
間接的とはいえ、命の恩人には感謝の念を抱く。
隣に座っている人間が世界的に大変な混乱を引き起こした当人だと知っても、嫌悪感は無かった。

フィアンマ「…構わんが」

垣根「>>54?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 20:38:07.86 ID:40Jn6R7DO<> ksk↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/03(水) 20:48:26.04 ID:D8+8+ZzJ0<> お前の好きなジョジョの名言はなんだ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/03(水) 20:48:35.60 ID:s2J87zyp0<> お前って男?女? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 21:06:31.00 ID:73cci0/K0<>
垣根「お前の好きなジョジョの名言はなんだ?」

フィアンマ「『二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。一人は泥を見た。一人は星を見た』」

垣根「それか。扉絵のやつだよな」

フィアンマ「あぁ」

本題から逸れた問いかけに、フィアンマは躊躇せず答えた。
垣根はふむふむと相槌を打ち、その後に初めて戦争関係の事を質問した。
垣根帝督にとって、そんなどうでも良い程に、フィアンマが何をしようと関係無いのだ。
責めるつもりも、責める理由も無い。
戦争は良くない事だが、空で聞いた話によると学園都市第一位はそれで苦しんだらしいから。
自分の手を汚さずしてフィアンマに復讐してもらったようなものでもある。
だから憎む心が無いのか、と垣根はふと思う。
フィアンマから戦争の目的や流れ、最終的な勝者について聞いた垣根は、なるほどと頷いた。

垣根「世界を救う、ね」

フィアンマ「…今思えば愚かだったよ」

垣根「少数を切り捨てて大多数を取るってのは、普通じゃねえの。お前が後悔する必要あんのかよ」

たとえフィアンマが何をしても、多数の思惑がからまった時点で戦争は自然災害と同義だ、と垣根は言う。
彼にフォローするつもりは無いのだろうが、フィアンマは精神的に安息を得た。
垣根の傍に居れば、自分は傷つかず、ある程度現実から逃げる事が出来る。
フィアンマもまた、周囲が思っている程に心の強いタイプの人間ではないのだ。

フィアンマ「…風呂に入ってくる」

垣根「ん」

シャワールームに消えたフィアンマを見やり、垣根はぼんやりと思う。
フィアンマは、自分を初めて救えた人間だと言った。
自分も、フィアンマが初めて救った人間だ。
運命といった曖昧なものは否定する垣根だが、今回ばかりは何か、思惑に乗せられているのではないかと感じる。

それは、たとえば――――神様、だとか。

垣根「…くだらねぇ」

そういえば歯磨きし忘れていた、と垣根は立ち上がり、シャワールーム近くの洗面所に歩み寄った。

垣根「それにしても、男二人ってよくよく思うと華のねえ旅だな…」






>>1にある注意書きの通り、安価投票をお願いいたします。

1.男

2.女

3.ふたなり

この中から一つ選んで投票してください。
番号でなく男・女・ふたなり等とそのまま文字での表記でも有効です。
一人(同ID)1票で、それ以上は無効とします。
また、万が一どれか二つが同票数の場合(例:男(2)・女(2)・ふたなり(1)等)もう一度だけ投票をお願いさせていただきます。

投票場所(レス間)は>>58-62です。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/03(水) 21:11:52.59 ID:EG308QxAO<> 《書き忘れた…>>56はフィアンマさんの性別の話です》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<><>2012/10/03(水) 21:29:04.96 ID:rh7lnydd0<> 2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/03(水) 21:30:27.59 ID:9nKqUDnF0<> 2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/03(水) 21:36:46.15 ID:hTqOjaPX0<> おんな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 22:01:37.61 ID:0mZ/HDMSO<> もう2でいくね <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 22:02:39.50 ID:73cci0/K0<> 《>>58-60で既に女が三票と入った為、締め切らせていただきます。当スレにおいて右方のフィアンマさんの性別は『女』に決定しました。投票にご協力いただき、ありがとうございました》


垣根がそんな事をぼやいたところで、不意にシャワールームのドアががちゃりと開いた。
風呂から上がったのだろうか、と何の気無しに垣根はそちらの方へ視線をやる。

右肩には綺麗に仕上げられた(垣根がやった)縫合痕。
細い脚、細い腰。
ほとんど肉のついていないその体に少しだけある、胸元の些細な膨らみ。
何らかの事情で身体が拭けていないらしい、その身体は水分に濡れていた。
ついつい視線を向けてしまった脚の間には、垣根が思っていたようなモノは付いておらず。
むしろ粗末だとかそういうレベル以前に何も付いておらず。

垣根(あ、髪と同じで赤いのな)

そんな事を思い、垣根はやや上を向いて鼻を啜る。
口の中に気持ちの悪い液体が溜まっていく。これは恐らく血液だろう。
エロい事しないの? と言った事があるが、垣根は実際そういう事に詳しくない。
割と純真な、日常的感覚の麻痺していない少年が同い年の少女の裸体をモロに見れば、どうして血液が口に溜まるのか、第三者にはわかるだろう。

フィアンマ「あぁ、すまんな。シャツとタオルをうっかり忘れた」

垣根「…そっちにあるだろ」

そっち、とフィアンマが持って行き忘れたシャツ達を指差し、垣根はフィアンマの身体から視線を外す。
心理定規は自分よりも年下なので、露出の多いドレスを着たまま密着されても、垣根は眼中に無かった。
しかし、フィアンマは違う。一応、垣根の中での"射程圏内"に入っている。
フィアンマは垣根の様子に気がつかず、タオルとシャツを持って一旦シャワールームに引っ込んだ。
垣根は冷静に鼻を指で強めに指で摘み挟み、口の中のものを洗面台に吐きだした。大量の血液が白い洗面台を汚す。
げほげほ、と咳き込み、血液を吐き出すも中々止まらない。
頭の中では、先程の衝撃的な光景がリフレインしていた。

垣根「……勃ちそう」

ぼそりと呟き、垣根は項垂れる。
てっきり男性だとばかり思っていた。くっつかれても、柔らかみなど感じなかったから。
いやしかし、気づこうと思えば特徴はあったのだ。肩幅はあっても二の腕は細すぎ無いだとか、色色。
うぐ、と唸り、それでも学園都市第二位のプライドから、鼻からではなく、口から血液を出す。

と、フィアンマがシャワールームから出てきた。
ズボンとシャツを着用した姿は男性的だが、真実を知ってしまった今、垣根はまともにフィアンマを見る事は出来なかった。
フィアンマは垣根の様子を見、洗面台に広がる血液を確認し、眉を寄せた。

フィアンマ「……、…肺病か胃病か。何故隠していた」

垣根「…げほ、…>>64」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 22:08:56.32 ID:CZsv5ZpSO<> 恋患いです(キリッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<><>2012/10/03(水) 22:12:14.66 ID:rh7lnydd0<> よくわからねぇ・・・ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 22:25:24.58 ID:73cci0/K0<>
垣根「…げほ、…よくわからねぇ…」

フィアンマ「…何の話だ」

垣根「いや、…気にすんな。病気じゃねえ。…その、…逆上せだ、逆上せ。部屋が暑かっただけだ」

フィアンマ「ああ、なるほど」

体調不良に適した言い訳を見つけた垣根はそうナチュラルに嘘をつき、洗面所の蛇口を捻り、その冷水で手首を冷やす。
こうすることで身体が冷え、多少興奮状態が治まり、鼻血が止まりやすくなる。
フィアンマも垣根の吐血の訳がわかり、少し迷った後、備え付けの冷凍庫から(本来酒用の)ロックアイスを幾つかビニール袋(エチケット袋)に入れ、簡易的にアイスノンを作ると、垣根の首筋に宛てがった。
身体が熱を持っている時は、こうして冷やすのが一番だ。
段々と鼻血が落ち着き、口の中に血液が溜まらなくなってきた為、垣根は深く息を吐き出す。
やがて鼻血が完全に止まったところで指を離し、口呼吸に切り替え、汚れた部分を水で洗って、タオルで手を拭いた。

垣根「………」

フィアンマ「…暗いな。頭痛が併発しているのか?」

垣根「…俺、人を見る目無かったんだな…闇の中で生きてきて、多少審美眼は備わってると思ってたんだが…大きな間違いだ…」

フィアンマ「…?」

まさか自分が原因だとは思っていない、思う訳もないフィアンマは首を傾げ、簡易アイスノンを解体して捨てた。
彼女は垣根を同性だと思っているから警戒していないのではなく、そもそも貞操の危機を感じていないのだ。
実際はそんな事は無いのだが、右腕を喪った今、昔以上に自分の身体に魅力は無いと考えているだけである。
垣根はタオルと着替えを手に、シャワールームに引き籠った。

垣根「……」

バスタブにお湯を張り、顔を半分沈めてぶくぶくと息を吐き出す。
どんな顔をしてこれから彼女と話せば良いのか。

垣根「…性別は関係ねえ」

そう自分に言い聞かせてみても、やっぱり重要な訳で。
ちなみに垣根帝督は男女の間に友情は成立し辛いと思っている人間である。

『あぁ、今のところ、俺様が一番愛しているのはお前だな』

思い返し、垣根は顔を赤くして沈黙する。自分の中で、お湯が熱いからだと言い訳をして。
違う、あれは友情の意味だと知っていても。

本当は違うんじゃないか、と期待してしまう。

確かに一般的な女性はいくら恩人であっても好きでもない男性とくっついて寝たり、同じホテルの部屋に泊まったりしない。
しかし、それはあくまで垣根の中での常識であって、フィアンマには当てはまらない事だ。


シャワールームから出た垣根は、フィアンマから頑なに視線を外していた。
あからさまな態度の急変化に困惑し、フィアンマは首を傾げる。

フィアンマ「…俺様が何かしたか?」

垣根「…>>67」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<><>2012/10/03(水) 22:31:40.74 ID:rh7lnydd0<> 女の子とは思わなかった。(いや・・・なんでもない) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/10/03(水) 23:09:33.20 ID:73fCGu4D0<> さすが世界ってヤツは広いな…常識が通用しねえ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 23:10:07.43 ID:0mZ/HDMSO<> いや、お前はなんもしてねぇ。ちょっと自分自身の問題だ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/03(水) 23:36:56.12 ID:EG308QxAO<>
垣根「…さすが、世界ってヤツは広いな…常識が通用しねえ」

フィアンマ「…何を急に」

一人で悟りを開くな、と不服そうなフィアンマから逃げる様に、垣根はベッド、毛布に潜り込む。

垣根「…寝る。おやすみ」

フィアンマ「…おやすみ」

一体何なのかと不可解に思いながら、フィアンマも部屋の電気を消し、ベッドに入る。
ダブルではなくツインの部屋の為ベッドは2つだが、その間は存外狭い。 中々垣根が寝付けないでいると、後からベッドに入ったはずのフィアンマが眠りに就いた。
垣根の後頭部より少し離れた位置から、緩やかで穏やかな寝息が聞こえる。

垣根「………」

もぞもぞ、と寝返りをうち、垣根はフィアンマの様子を窺った。
整った顔立ちだが、寝顔だけは美人というより可愛らしいものだった。

垣根「……、」

フィアンマ「…ん、」


すやすやと眠っている。多少触っても起きないのでは、と垣根は思った。





垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/03(水) 23:38:57.20 ID:0mZ/HDMSO<> 寝顔鑑賞 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<><>2012/10/03(水) 23:39:58.56 ID:rh7lnydd0<> 悶々としすぎてねれなくなった。
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 00:10:21.59 ID:Prka4cwAO<>
垣根帝督が思い返すのは、ここしばらくの出来事。
多量の血液を失い、息を荒くしている様はよくよく考えたらエロかったな、だとか。
先程見た整った裸体だとか。
自分の発言に笑う彼女の笑顔だとか。
思い返せば返す程、悶々としてしまって、眠れない。
昨日までは男性だと思っていたから、まるで意識していなかった。

垣根「……」

垣根(俺の年齢から考えて、ここでは普通悶々とし過ぎて襲うと思うだろ? 俺の鉄壁の理性にその常識は通用しねえ。ついでに言うと俺は力があるからか、かえって乱暴なレイプ系の話は萎える。どうせなら愛に満ち溢れたエロいことがしたい。いや、別にコイツが好きかって言ったら微妙だけどよ。確かに同い年から年上は恋愛相手に見れるし、スタイル良いし、俺のタイプに当てはまる適度に気が強くて頭の良い女だし、話合うし、境遇は似ててギャップも大いにあって、ついでに間接的に恩人だし、料理上手ってのも好みに入るが多分違う。俺を怖がらないし美人系の顔で色白でどれもドツボだが、違う。そういやさっきすぐ氷用意してくれたけどああいう女性的な気遣いって良いよな)

誰に説明するでもなく、心中でまくし立て。
考え込んでいる内に、時計の針は進み。
気付けば陽が昇り、朝が来た。
一睡も出来なかった垣根はぐったりとしながら毛布の中で身じろぐ。

垣根「…好みと好きってのは違う」

ぽつりと呟いて、目を閉じる。
眠れない。

フィアンマ「…眠れないのか」

垣根「」

唐突に声をかけられ、垣根は目を開ける。
まだ眠そうな表情で、フィアンマは首を傾げた。

垣根「…ちょっとな」


フィアンマ「…何か、してやろうか」

ぐし、と目元を指先で擦り、フィアンマは問う。 寝ぼけているので、優しさが普段より増している。

垣根「…>>74」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 00:31:54.27 ID:Tfpk+YdSO<> じゃあ、何か面白い話をしてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 01:11:50.85 ID:2gqeS00to<> ↑ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 13:29:24.61 ID:2kXSwekH0<> 見た目が被ってるよなこの二人 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 13:30:21.24 ID:Tfpk+YdSO<> わかっていても決して言ってはいけない事を… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 16:25:33.23 ID:lA1s86PK0<>
垣根「…じゃあ、何か面白い話をしてくれ」

フィアンマ「面白い、か…」

なかなかに高度な要求。
ぐしぐし、と目元を擦った後、フィアンマは考える素振りを見せ、笑えるという意味よりも興味深いカテゴリーに入る話をした。

フィアンマ「次の8つの単語の中から、1つを自由に選んで見ろ。最終的に何を選んだか当ててやる」

垣根「単語?」

フィアンマ「スキー、鼻水、コップ、温泉、ゴミ箱、コーヒー、冬、お土産。…選んだか?」

垣根(『温泉』)

垣根「選んだ」

フィアンマ「今度は、その単語と関係あると思うものを、次の8つの単語から選べ」

垣根「? わかった」

フィアンマ「電卓、雪、針、ティッシュ、米、まんじゅう、牛乳、電話」

垣根(温泉といえば温泉饅頭…『まんじゅう』だな)

垣根「選んだぜ」

フィアンマ「そうか。では、選んだそれを強くイメージしてから、次に進め。…そのものの特徴を、次の8つの中から選べ」

垣根「また8つかよ」

フィアンマ「大きい、遅い、白い、鋭い、暗い、甘い、赤い、狭い」

垣根(饅頭っていうと『甘い』か)

フィアンマ「最後に、その特徴に当てはまるものを次の8つの中から選ぶ。ナイフ、ピラミッド、砂糖、亀、犬小屋、宇宙、血、深海」

垣根(『甘い』。…『砂糖』だな)

垣根「選んだ」

フィアンマ「そうか。お前が選んだものは、『砂糖』だな?」

垣根「何でわかんの? 心理的法則を利用したアレか」

フィアンマ「そうだな。連想しているものを特定出来る選択肢を用意し、その中から選ばせる為に『魔術師の選択』と呼ばれている」

垣根「そういう『面白い』話か。…なるほどな」

知的好奇心を擽られる話に、相槌を打つ垣根。
若干眠気は残っていたが、このまま起床して夕方から眠った方が良いだろう。
そう判断して、垣根はむくりと起き上がった。反対に、フィアンマはもうしばらく浅い惰眠を貪ろうとする。

垣根「寝るのかよ」

フィアンマ「…もう三分だけ、だ」

子供かよ、と思いつつも、垣根は突っ込まずに考える。
起きよう、と決めると、腹が減ってきた。
何か、朝食を作ろう、と垣根は決める。





今日の朝御飯(ジャガイモを使う料理)>>78-79 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 16:29:18.99 ID:zGhtd1ZS0<> ビシソワーズ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 16:38:10.25 ID:Tfpk+YdSO<> 自作ポテチをつかったサラダ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 16:54:04.25 ID:lA1s86PK0<>
垣根(あのスープと…朝らしくサラダ作るか。玉ねぎ…塩もみしとくか)

自分も食べるとはいえまさか他人の為に調理をする羽目になるとは、と思いつつ、垣根はキッチンに立つ。
彼はまだ17歳なので、多少睡眠不足だとしても料理中怪我などしない。
二人分を黙々と作りながら、時折時計に視線をやる。自分が作業にどの程度時間をかけているのか知る為だ。

フィアンマ「…すー…」

垣根「…ムサい男だったら無理やり起こして手伝わせても良いんだけどな」

垣根は基本的に弱者には容赦する。
それは命を賭けてまでやる事ではないと思ってはいるが、基本的に優しいのだ。
だが、彼は現時点であまり救われてはいない。だから、完全に何でも許せる訳もないし、自己犠牲も嫌いだ。
フィアンマが友人でなければどつき起こしていただろうが、気の合う唯一の友人にして隻腕というハンデ持ち、加えて見目は細身なのだ。
そんな彼女が眠いと言っているのに無理をさせる程、垣根は残酷無慈悲な人間ではなかった。

ヴィシソワーズを作り、冷蔵庫にてスープが冷えるまでの時間で、ジャガイモを薄く切る。
薄く切っている間に油を温め、ついでにドレッシングもワインビネガー等で作っておく。
クルトン代わりに、自家製ポテチを砕いてサラダにかけようと決めたのである。
塩もみした玉ねぎ、細かくちぎったレタス、薄切りして丁寧に洗った人参に甘めのドレッシングをかけ、最後にポテチをぱらぱらと砕いてかければ、サラダの出来上がり。

垣根「…ふー」

サラダを作るのは楽しかったものの、スープを煮詰めるにあたって少し体力を消費した。
まぁいいか、と垣根は伸びをして、出来上がった二人分の食事をよそってテーブルに並べる。
垣根が起こそうとした矢先、食事の匂いで目が覚めたのかどうなのか、フィアンマがのろのろと起き上がった。
ぐぐ、と伸びをして、欠伸を噛み殺して、テーブルに視線を移す。

フィアンマ「…一人で作ったのか」

垣根「まぁな。一旦やる気になっちまえば苦でもねえ」

フィアンマ「ん、…」

寝起きはやはり口調が揺らぎ思考も混ざるのか、ありがと、とイタリア語で短く礼を言ったフィアンマは、席につく。
垣根も同じく席に着いて、食事を開始した。

フィアンマ「…今日は何処に行くんだ」

垣根「何処にすっかな…>>82」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/04(木) 17:19:28.94 ID:KQC+99rG0<> 博物館でもいくか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 17:22:36.72 ID:0cNaCp0IO<> 統一教会渋谷本部 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 17:42:53.07 ID:lA1s86PK0<> 《このスレもあちらのスレも諸事情によってしばらくsage進行にします》




垣根「何処にすっかな…統一教会ってどうなの? 日本の渋谷に本部あるらしいけどよ」

同じ十字教の所属であれば親和性があるのでは、という無宗教の人間ならではの軽い言葉だったのだが。
そもそもそこは崇拝している対象が違う。間接的には同じなのかもしれないが、ローマ正教徒として生きてきたフィアンマとしては、行きたくない。
そこへ行くのなら、自分を讃える宗教組織を構築してしまった方がマシだと思う位だ。

フィアンマ「…あれは十字教以前の異教にも等しい。かといって魔術を扱っている訳でもない。学ぶ事は無いな」

垣根「そ、そうか…」

フィアンマ「聖書の解釈がいまいち気に入らん」

曰く、正しくあるべき救世主が正しくないと感じるのが不快だそうで。
いつも以上に据わった目と淡々とした物言いにたじろぎながら、垣根は話題を転換する事にする。

垣根「なら、大英博物館? って所行こうぜ」

フィアンマ「……」

イギリス清教関係者に会わなければ良いが、と危惧しつつ。
フィアンマはこくりと頷いた。

食事を終え、少し食休みをとり、二人は博物館までやって来た。
幸いにもイギリス清教関係者は見当たらず、一安心。
とはいえ、それなりに見て、閉館前に素早く帰った方が良いだろう。

フィアンマ「何が見たいんだ。美術品か?」

垣根「んー、>>85」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 17:48:32.24 ID:Tfpk+YdSO<> 何でもいいけど、ロマンを感じる物が見たい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 17:49:18.04 ID:0cNaCp0IO<> 彫刻のおちんぽ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 18:15:15.16 ID:lA1s86PK0<>
垣根「んー、彫刻のおちんぽ」

フィアンマ「ジ·アイオープナーギャラリーツアーにおけるアッシリア彫刻のことか」

垣根「あ、それだそれ」

恥ずかしい上に若干違う覚え方だった、と思いつつ、垣根は周囲の調度品を眺める。

垣根「宗教的なモンが多いな」

フィアンマ「そうだな」

相槌を打ち、フィアンマも周囲の美術品を眺めた。
一定の組み合わせで配置すれば大規模魔術を展開出来そうな品が置いてある。
戦術的に便利だろうな、などと思いながら、彫刻を眺めた。
垣根は垣根で、こういった場所に来た事が無い為に、内心はしゃぎながら眺めている。

フィアンマ「そういえば、こういった場所に来た事はあるのか」

垣根「美術館? ねえな」

本当の、幼い子供時代は、そんな事は許され無かったから。
教科書の中に印刷された美術品の写真を見た事がある程度。

垣根「お前は昔からこういうの、親しみある訳?」

フィアンマ「>>88」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/04(木) 18:38:21.90 ID:IXALuvdS0<> 俺は、あまりないな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 18:39:05.45 ID:BhoBPj630<> 特に無い <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 19:24:45.02 ID:eCRhLmYB0<>
フィアンマ「特に無い」

垣根「無いのか、意外だな」

フィアンマ「仕事上取り扱っていた物にこれに似ているものはあったが…そもそも国が違うからな。実戦的なそれは美術品とは言えんだろう」

垣根「ガラスの靴と優秀な銃の違いか」

どちらも殺害には使えるが、その造られた目的が違う。
やっぱり自分と似たようなものか、と思いながら、垣根はゆっくり歩く。

垣根「ちなみに来た経験は、っと」

問いかけをしようとして、フィアンマにぐいと服を引っ張られる。
つられてバランスを崩しかけ、一体何事かと垣根はフィアンマを見た。
展示室隣の、程よく空いているギャラリーカフェに心を惹かれているようだ。

フィアンマ「…ケーキを、食べたいと思わないか」

それ、自分が食べたいだけじゃ、と思いながら。
外の地元の人間向けの店と、観光客向けの博物館の店では違うかもしれない。
味がまともである可能性はあるのだが。
かぼちゃ味のマフィン等等に目を惹かれている彼女は、垣根をどうにか誘おうとしている。
ここで垣根が肯けば、恐らく此処でお茶をする事になるだろう。

垣根「…>>91」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/04(木) 19:28:46.53 ID:IXALuvdS0<> 結構歩いた気がするし、店で休むか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 19:29:05.56 ID:0cNaCp0IO<> おちんぽ食べたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 19:41:43.62 ID:xxsR0xTt0<> ガトーショコラ食いたい <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 19:49:35.14 ID:eCRhLmYB0<>
《内容にそぐわず、その安価を捌けそうにない時、安価下で書いてもよろしいでしょうか…?》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/04(木) 19:51:47.91 ID:IXALuvdS0<> おk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 19:54:43.00 ID:EOh+sGNP0<> 普通安価下にするべき <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 20:28:46.49 ID:eCRhLmYB0<> 《>>94-95 ありがとうございます。以後、どうしても出来ない時は安価下でいきます》


垣根「…ガトーショコラ食いたい」

ギャラリーカフェのショーケース越しに、甘ったるそうなケーキが見えて。
そんな中でも一番マシそうなガトーショコラを発見し、確認した上で、やや棒読み気味に垣根は言った。
断っても良かったのだが、垣根は別にフィアンマの残念そうな顔を見て気分が良くなる趣味は無い。
仮に後悔する事になったとしても、それはそれで後で話のネタになる。構わない。
垣根の返答を聞き、機嫌を良くしたフィアンマは垣根の手を引く形で店に入る。
どうやら今回の『賭け』は自信があるようだ。
垣根はガトーショコラとストレートの紅茶、フィアンマはかぼちゃ味のマフィンとカスタードパイらしきケーキ、レモンティーを注文した。
甘いものがそもそもそんなに好きでもない垣根と違い、フィアンマは甘過ぎないものであれば好むようだ。

垣根(女って皆甘いものが好きな生き物な訳?)

そういえば心理定規もやたらとお茶の美味しいカフェを探し回っていたような、と思いながら、垣根は紅茶を啜る。
ガトーショコラはやたらと苦かったものの、紅茶はとても美味しかった。そこに関しては、流石イギリスというべきか。
今回選んだそれらのケーキは不味く無いものだったらしく、フィアンマは機嫌を害した様子も無く食べ進めた。

垣根「甘いモン好きなのかよ」

フィアンマ「甘過ぎるものは敬遠するだけだ。基本的に十字教徒とはマナの時代より甘味を好む」

垣根「そのマナなんとかはさっぱりわからねえけどな。ああいや、説明しなくていい。……」

不意に気になり、垣根は何となしに問いかける。
その芯の部分には、自分に当てはまっていて欲しいという願いが混ざっているのかもしれないが。

垣根「好きなタイプとかねえの」

フィアンマ「男女どちらだ」

垣根「男。…あ、恋愛的な意味な」

フィアンマ「タイプ、と言われてもな。…>>98」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 20:32:12.76 ID:0cNaCp0IO<> 捌けないのは技量不足だから仕方ないです
けど内容にそぐわないってのはおかしいですよね。気に入らない安価を無視するなら安価スレの意味が無いじゃないですか

荒らし認定したがるのも無理はないかと思いますが、今一度考えてみてください <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 20:32:49.63 ID:0cNaCp0IO<> おちんぽが大きい男性 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 20:34:00.54 ID:/xcFstcSO<> >>85を捌ききった時点で技量は相当だから問題ない

安価なら「特にないが、強いてあげれば煩くない事」で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 20:40:18.02 ID:a5ylsJ+o0<> このスレの>>1が技量不足なら他のスレの
作者はどうなるんだ 
クソ安価を上手く捌けるんだから技量は充分だ
捌けないでそのまま安価採用してスレが意味不明に
なるほうが技量不足だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 20:54:34.34 ID:Umngv/Dco<> とりあえず空気読め

>>98はさっきからわざとブチ壊そうとして荒らし連投してるようにしか見えない
作者はこいつNGしていいと思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 20:58:39.26 ID:0cNaCp0IO<> 私はシリアスとギャグがちょうど良く合わさっているスレが好きなんですが…どうも荒らし認定したがる子が多いですねσ(^_^;)
スレが荒れるんで過激な書き込みは辞めてもらえます?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 21:01:30.07 ID:kfvaxD8D0<> >>102

だーかーらー気に入らないなら来るなっつってんだろが! <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 21:02:54.26 ID:eCRhLmYB0<>
フィアンマ「タイプ、と言われてもな。…特にないが、強いてあげれば煩くない事だな」

垣根「おしゃべり苦手なのか?」

フィアンマ「要らん事まで言うのであれば、黙っていた方が賢明だ」

垣根「なるほど。…ちなみに女は?」

フィアンマ「胸があって五月蝿くなければ何でもいい」

垣根「胸無いと駄目なの?」

フィアンマ「駄目だ」

垣根「ふーん」

煩くないタイプ。
自分は当てはまっている方じゃないか、と思い。
次いで、自分はフィアンマにそういう意味で好かれたい訳ではないだろうと自戒した。
別に、友人でいい。友人がいい。友人の方がいい。きっとそうだ。絶対そうだ。
ガトーショコラを食べる度にその舌に残っているのと同じ位苦い表情を浮かべる垣根の様子を眺め、フィアンマはおもむろに甘いカスタードパイをひと切れ上手にフォークへ乗せ、垣根の口元へ持っていった。

垣根「…何だよ」

フィアンマ「足して割れば調度良いかと思ったのだが」

垣根「割るって、甘みと苦味を?」

フィアンマ「そうだよ」

思いやりらしい。
しかし、これは間接キスに当たるのでは、などと垣根は思う。
口ごもる垣根に対し、フィアンマはカスタードが苦手なのかと問いかけた。
そんな事は無い、と答え。

垣根は友達が居ないながらにほんの少しだけ学校に通っていた為、友達がすべき事、すべきで無い事がわかっている。
しかし、フィアンマは学校に通った事など一時間たりとも無い。なので、常識がわかっていないのだ。
この状態が恋人同士が本来やるべき『あーん』に相当する行為だとか、そんな事はまったくもって。

好意を遠慮するべきか、食べるべきか。

垣根「>>106」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:03:05.00 ID:0cNaCp0IO<> このお子様は何様なのか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:03:36.98 ID:0cNaCp0IO<> >>1さんは無視されるのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:04:14.42 ID:0cNaCp0IO<> 残念だなぁご返答いただきたいなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:04:52.84 ID:Umngv/Dco<> …あーん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 21:04:53.22 ID:kfvaxD8D0<> あーんする <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:06:13.17 ID:0cNaCp0IO<> こんなの誘導してるだけじゃん <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 21:22:18.03 ID:eCRhLmYB0<>
垣根「…あーん」

嬉しそうに口を開けるのは癪だったので、渋々といった様子を演出しつつ、口を開ける。
雛鳥に餌をやっている気分なのか、フィアンマは垣根に食べさせた後、感想を聞くでもなくまた食事を再開する。
垣根はそんな彼女の様子を眺め、まずは常識を教えなければならないような気がする、と心中で呟くのだった。

ホテルの部屋に入るとほぼ同時に、雨が降ってきた。
激しさは無く、穏やかなものの、長く降り続くようだ。
激しい通り雨にしろ、穏やかな長雨にしろ、もう外には出ないので関係無いのだが。
退屈なこの時間を使って垣根はフィアンマに一般常識を教えていたのだが、大体は知っているようだった。
ただ、人間関係のそれについてだけ、非常に疎く。
かといって自分も完全に人間関係に関する全てを知っています、という訳でもないから、詳しく教えられず。

垣根「お前、貞操観念無いの?」

失礼を承知での質問に、フィアンマは不可解そうに首を傾げる。

フィアンマ「充分にあるが」

垣根「…別にそういうつもりは皆無だけど、俺についてきてヤられるとかそういう危機感は無かった訳?」

フィアンマ「無かったし、無いな。そもそも、力量では俺様の方が勝っている」

垣根「そうとも限ら…ああもういいか」

はー、と肩を落とし、垣根はチェスのセットを始める。
別に自分に警戒しろと言っている訳ではないのだ。して欲しいということでもない。
ただ、そんな甘い考えで他の誰かに襲われやしないかと無駄に心配をしてみただけだ。
そういえば他人の心配なんかした事無かったな、と思いながらチェスのセットを終えた垣根は、チェスの駒を指先で撫でる。
右肘から先が無くなったなんて現実は"認めない"。
だから、今ここに右腕は存在している。超能力者だからこそ、そして『未元物質』だからこそ、成立する。
フィアンマは駒を動かし(じゃんけんなどする前から勝敗は目に見えている)、ふと垣根に問いかける。

フィアンマ「そういえば、お前は何処でチェスを習ったんだ」

垣根「>>113」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:23:10.48 ID:0cNaCp0IO<> よし、>>1さんが無視するから荒らしらしく連投でもしよーかね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:24:11.13 ID:0cNaCp0IO<> あ、でもめんどくせぇ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 21:24:18.55 ID:aBY22r9z0<> ネット <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:26:13.51 ID:0cNaCp0IO<> 既に眠い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 21:28:15.25 ID:0cNaCp0IO<> でも俺、頑張るよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:28:47.52 ID:0cNaCp0IO<> 活動再開するって、決めたんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:29:29.03 ID:0cNaCp0IO<> また糞スレにレスする仕事が始まるお… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/10/04(木) 21:32:04.65 ID:hYBOdV4IO<> 関係ないけど専ブラって便利だよね。

安価下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:33:48.41 ID:0cNaCp0IO<> 関係大有り!NGIDにした方が良いよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:35:02.45 ID:0cNaCp0IO<> スルーしきれてないよー <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/04(木) 21:36:05.42 ID:eCRhLmYB0<>
垣根「ネット」

フィアンマ「誰かに習った訳ではないのか」

垣根「そもそも教えてくれるような大人もガキも周りに居なかったからな。ただ、暇とネット環境はあった。暇つぶしに色色ゲームを探してたらチェスに行き着いた訳だ。将棋より、世界で通用し易いしな」

フィアンマ「だが、学園都市から出るつもりは無かったのだろう?」

垣根「昔はな。…色色とあって、…学園都市の全てを間接的にでも掌握したら、自分の知らない世界を見てみたいとは思ってた。籠の鳥も井の蛙もうんざりだったし、何より、あのクソッタレな場所よりまだマシな場所があるんじゃねえかと思った」

フィアンマ「実際に今現在進行形でその夢を叶えているが、感想は」

垣根「悪くねえな。追われる身でなけりゃ、もっと心の底から楽しめただろうよ。それ位、今の生活の方が楽しい。…人を殺す生活の方が、楽だと思ってたんだけどな」

フィアンマ「お前に良心が備わっているからだろう。人を殺せば、少なからず痛む」

垣根「良心、ね。…ハッ、…俺は一流の悪党以上に、絶対的な悪を確信して、…実際、その通りだった人間だ。良心なんか、ねえよ」

フィアンマ「…絶対的な善を確信していた俺様にも、悪意はある。あった。…人間は、その双方を持ち合わせている。悪いだけの人間も、善いだけの人間も存在しない」

垣根「……」

フィアンマ「だから、赦すんだろう。何をされても、憎悪で返さない事で赦す。誰かが我慢しなければならない。絶対的なものが無いからだ。この地上にはな。…ただ、人間が今日まで生き続けている事が、善意が悪意を上回ることの証明だ」

垣根「はん、説教そのものだな」

フィアンマ「俺様がされた説教そのものだからな」

綺麗事の上塗りで吐き気がする。
そうは思えど、垣根帝督という少年は、完全には否定出来なかった。
自分以上に凶行を重ねた存在である第一位、『一方通行』が、許されているから。
それはつまり、あの凶行に付随した全ての悪意に善意が打ち勝ったということ。

垣根「…純粋な善意なんて反吐が出るな」

フィアンマ「…悪意はともかく、何故善意を拒絶する」

垣根「>>124だからだよ」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:37:21.32 ID:0cNaCp0IO<> 頑張れ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/04(木) 21:37:28.93 ID:qYEJAQKD0<> 善意なんて向けられたことが無いからだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:37:57.35 ID:0cNaCp0IO<> 人少ないよ!もっと集まれよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:39:09.05 ID:0cNaCp0IO<> 盛り上げようよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:40:30.42 ID:0cNaCp0IO<> 安価だけとってちゃだめだよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:41:01.84 ID:0cNaCp0IO<> 感想も入れようよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:42:04.90 ID:0cNaCp0IO<> 面白いんだろ!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:43:33.07 ID:0cNaCp0IO<> 面白いのかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:45:40.51 ID:0cNaCp0IO<> はぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:47:03.21 ID:0cNaCp0IO<> 疲れた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:48:07.09 ID:0cNaCp0IO<> 本当に面白いSSならもっと人が集まるでしょ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:48:51.25 ID:0cNaCp0IO<> 俺達で盛り上げようぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:49:34.57 ID:0cNaCp0IO<> もっと沢山の人の目に触れるべき <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:51:13.70 ID:0cNaCp0IO<> 魅力有るSS…だよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:52:29.03 ID:0cNaCp0IO<> こいよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:53:36.22 ID:0cNaCp0IO<> 実際飽きてるし着地点見つからないし眠いし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:54:44.99 ID:0cNaCp0IO<> >>1さん投下してよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:56:06.71 ID:0cNaCp0IO<> 早く! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/04(木) 21:57:06.27 ID:0cNaCp0IO<> 自分のSSに自信持てよ! <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 22:05:08.87 ID:eCRhLmYB0<>
垣根「善意なんて向けられたことが無いからだよ」

フィアンマ「…お前は目で見えないものは否定する主義だったな」

垣根「そうだ。…ついでに言えば、…悪党が救われるってのもおかしいだろうが」

いくら悔い改めたって、悪人は悪人のまま。
取り返しのつかない罪を犯した人間が手を差し伸べられるのは、おかしい。
根っからの善人が犯してしまったあやまちや、軽い罪であれば許されたっていい。
生きる為に、物を食う為に盗みをしてしまいました、ごめんなさい―――この程度なら許されて然るべきだ、と垣根は思う。

けれど。

金と利己的な目的の為に人を殺してきた自分のような人間や、自分の力の為、その孤独感を埋める為に殺人を重ねた一方通行。
ここまでの悪党となれば、救われるべきではない、と垣根は思っている。

フィアンマ「…健康な人間に医者は必要無いように。…重罪人にこそ、救いは必要だ」

垣根「必要なのは裁きだろ」

フィアンマ「裁きは手術のようなものだ。それよりも重要なのは薬だ」

垣根「薬イコール救いってことかよ」

フィアンマ「そんなところだな」

垣根「…本当の重病人は薬を与えられようが手術されようが惨めに死ぬだろ」

フィアンマ「…そうだ、否定はしない。だからといって治療をしないのは怠慢だろう?」

垣根「……」

ならば、裁きも救いも拒否している自分は、怠慢だというのか。
不機嫌を纏う垣根を見つめ、フィアンマは緩やかに息を吐き出す。
しとしと、という雨の音がやけに耳についた。

フィアンマ「…仕方がない。俺様がお前を何とかしてやる。命の恩人等はこの際捨て置いて、職務を全うする事とする。このままではお前が病む一方にしか思えん」

垣根「あ? 職務って魔術師じゃねえの?」

フィアンマ「それと同時に聖職者でもある。お前は裁きと救い、どちらが良いんだ。どちらかといえば」

垣根「……、…>>144」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/04(木) 22:05:41.75 ID:IXALuvdS0<> 荒らしなんて気にするな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 22:06:32.22 ID:Tfpk+YdSO<> そりゃ、できることなら救いだろ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 22:21:59.05 ID:eCRhLmYB0<>
垣根「……、…そりゃ、できることなら救いだろ」

フィアンマ「そうか。なら、俺様がお前を救ってやる」

垣根「救う? どうやって」

フィアンマ「お前のコンプレックスを抜き出して解消する」

垣根「コンプレックスなんざ、ねえよ」

フィアンマ「あるさ。…無ければ、衣食住を満たされている人間は、罪など犯さない」

垣根「……、」

自分より遥かに罪を犯しているのに。
女警備員に優しく手を差し伸べられ、女研究員に守られ、殺したクローンの記憶を持った個体に愛され。
そんな日だまりの中から、中途半端に闇へ足を突っ込み、そのクセして、弱者を守る。
まるでダークヒーローの様で。自分より遥かに恵まれていて。沢山の罪を犯しているくせに。
悔い改めたから救われたのか。違うだろう。偶々、運が良かっただけ。
喪ったものは、たかが若干の演算能力のみ。日常での不便を得た。
だが、それだけだ。何度死にかけたか知った事ではないが、失ったものは少ない。
羨ましいと思ったことはないと、思っていた。
大切なものがあって、そのために一生懸命になれて、何だかんだで評価を受け、光の世界にいつでも戻れるその姿を。
一度として妬んだ事は無いと言い切ってしまえば、嘘になる。

つまり、自分にとってのコンプレックスとは、そこなのだ。
罪を犯すことは、ほとんど、運命にも等しい確率で決まっていた。さもなくば死んでいた。
自分には、自分以外の大切なものがない。大切にしてくれる人も居ない。
その絶望を一人でも多くの罪人に、同じ場所に来たヤツに味あわせてやりたくて、自分は絶対的な悪の道を突き進んでいたのだ。
一流の悪党などと名乗った、あの偽悪者の偽善者より、よほど、よほど。

垣根「……俺は、救われねえよ」

他人の為に、自分の何かを失いたくない。
そんな保身的な考えしか出来ない自分には、誰も守れないし、守ろうと思えない。
この絶望というコンプレックスを解消する事なんて、誰にも出来ない。

フィアンマ「…そうか。…だが、お前は、確かに一人救ったぞ。身体的―――命も、精神的にも」

垣根「あ? 誰をだよ」

フィアンマ「俺様が生きていることがその証明だ」

垣根「…、旅の道連れ欲しさに助けただけだ」

フィアンマ「他に誂えることも出来ただろう。なのに、治療という手間がかかる俺様を選んだ。人を救える人間が、それでも罪を犯したから救われないなどと、本気で思っているのか」

垣根「…>>147」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 22:36:52.35 ID:Umngv/Dco<> 殺したのがたくさんで、助けたのが一人。釣り合いが取れねえだろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 22:44:22.78 ID:tTclfozg0<> 犯した罪の大きさにもよるだろう。たった一人救ったくらいでそれまでの過ちを許されるとは思えねえな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/10/04(木) 22:46:21.08 ID:S8hp8qfW0<> 思っているさ。高々お前一人助けたからって、この俺のすべての罪が贖えると?何様だ、お前は。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 22:59:51.77 ID:eCRhLmYB0<>
垣根「…犯した罪の大きさにもよるだろう。たった一人救ったくらいで、それまでの過ちを許されるとは思えねえな」

フィアンマ「そうだな。俺様もそう思うよ」

垣根「…は? なら何で、」

フィアンマ「まだ、たった一人しか救っていないからな。殺した人数を遥かに上回るだけの人数を救い助ければ、多少は罪も禊がれる」

垣根「俺はもう人助けなんざしねえよ。お前が最初で最後だ」

フィアンマ「いいや。俺様がお前に救われた最初の人間だとしても、これ以降に増える。だから、最後ではない」

垣根「未来予知でも出来る訳?」

はん、と鼻で笑って、垣根はキングの駒を倒す。
追い詰められた局面での、降伏の合図。

フィアンマ「…未来予知は出来んが、お前に救いの助言を与える力はある。『神の如き者』を司っている身として、な」

垣根「…罪を赦してやれんのは被害者だけだ」

フィアンマ「加害者自身の罪の意識が残っていれば、それは被害者が赦していても意味はない」

垣根「そもそも俺の手にかかった野郎達は俺を許しちゃいねえよ」

フィアンマ「何故わかる?」

垣根「実験で、俺がのし上がる為に殺された奴らが赦す訳ねえだろうが」

『未元物質』の調整や開発の為に、何人もの同年代の子供を殺すよう言われた。
何の疑問も持たず、ほとんどゲーム感覚で、泣きじゃくりながら逃げ惑い、命乞いをする子供を笑顔で殺したことだってある。
思い返す程、その罪深さが垣根の背中に覆いかぶさり、重みを増していく。

垣根「怖かったはずだ。痛かったはずだ。俺を憎んで恨んで苦しんで苦しんで苦しんであいつらは死んだんだよ。俺の為にな、」

そこまで一気にまくし立て、急激に冷静になる。
まさか自分は、世間話レベルでなく、本気で救済を望もうとしているのか。
唐突に黙り込んだ垣根に対し、フィアンマは穏やかに言葉をかけた。

フィアンマ「……自分を恨んでいるか、その人間達から聞いた事があるのか?」

垣根「…ねえよ。その前に死んじまったからな」

フィアンマ「そのまま生きていたら、その人間達はどうなっていた」

垣根「…どっかに閉じ込められたまま、モルモットらしく餓死じゃねえの」

フィアンマ「お前は少しずつ残酷に殺したのか。慈悲をかけたのか?」

垣根「…いや。…一気に殺した。…殺さなきゃ、最悪俺がもっと酷い目に遭わされた。保身の為に殺した」

フィアンマ「なら、俺様はお前を間違っているとは思わない」

垣根「…、」

フィアンマ「…自分が生き残る為に人を殺す事は、仕方のないことだ」

垣根「…は、死人に口なしもイイトコだな。だからって殺しが良い事の筈ねえだろ。どう殺したって殺しは殺しだ」

フィアンマ「その殺しを、悔いているのか」

垣根「そりゃあな」

フィアンマ「…それならば、お前は許される。絶対に」

きっぱりと言い切られ、垣根は腹を立てた。
コイツに何がわかる、とばかりの、激しい感情。
八つ当たりだとわかっている、フィアンマは自分をカウンセリングしてくれているのだと客観的に見て理解している、それでも。

垣根「…ッ、>>151!!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 23:05:21.44 ID:dAkfsMaT0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 23:06:55.17 ID:/xcFstcSO<> なんでそう言い切れる <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/04(木) 23:18:59.93 ID:eCRhLmYB0<>
垣根「…ッ、なんでそう言い切れる!!!」

相手がフィアンマでなければ、暴力で無理やり捻じ伏せていただろう。
今まではそうしていた。

気に入らなければ壊せばいい。
腹が立つなら殺せばいい。

そう思って生きてきたのに、どうして殺そうとは思わないのか。
その姿はまるで親に反抗する子供の様だった。
今まで、善意を憎み、優しさを遠ざけて生きてきた。
だって、その方が楽だった。あまり成長をしない代わりに、苦しむ事も無い。
救われるためには、どうしても、裁きでなくとも必要最低限の苦しみが必要だ。
自分が犯してきた罪の再確認と、その罪の重さを量る事と、耳に痛い説教。
激昂する垣根とは打って変わって、フィアンマは静かな視線を彼に向けた。

フィアンマ「お前が苦しめた人間の為に、充分苦しんだからだ。お前は保身の為に殺したと言ったが、それでも悔いているのだろう。反省していたのだろう。何とも思っていなければ、今口に出さなかった筈だ」

垣根「だから、」

罪が重すぎると言っているのに、どうして通じないのか。
能力を使いかけた垣根に同じく暴力で立ち向かう事もせず、フィアンマは言う。

フィアンマ「…言っただろう。赦すという行為は忘却ではない。罪を軽く見る事でもない。その罪の重さを確認した上で、悔い、それ以上責められないよう嘆願し、それが成就されたということだ。神に祈れとは言わん。俺様に祈れとも言うつもりはない。だが、そうやって自分が許されるにあたって条件付けをするな。一生その苦しみを言い訳にして間違いを犯すつもりなのか。違うだろう。俺様からの救済の提案を叫んで暴力を振るって止めなかった時点で、お前は許されたいし、これ以上罪を犯したくない、間違いたくない人間なんだよ。苦しみにも疲れただろう。八つ当たりをしたいなら好きなだけすればいい。俺様は免罪符だ。今ここで何を言って、何を思っても、俺様がそう誘導したのだと他人には言い訳が出来る」

自分で自分を許せない限り、人に許されても意味が無い。
フィアンマが持っている聖職者に与えられた秘蹟は、罪を赦すこと。
正確には、その懺悔をした相手が自分自身を許せるよう、手助けをする資格があるということ。

フィアンマ「お前は自分を赦す事の、一体何をそんなにも怖がっているんだ」

垣根の脳裏に浮かぶのは、幼い子供の死体の山。
薬品や、消毒液の臭い。痛い実験や、注射。

垣根「、…>>154」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/04(木) 23:23:00.81 ID:IXALuvdS0<> あまりにも多すぎて、・・・正直わからない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/04(木) 23:34:58.18 ID:Tfpk+YdSO<> いいか、俺はあいつらを『食い物』にしたんだ。わかるか?殺されてったあいつらを踏みにじって、俺は今ここに立ってる。

もし俺が許されたら、俺はいつか必ずそれを『忘れちまう』。罪悪感が薄れれば必ずそうなる。俺だけじゃねぇ。誰でもだ。現に、スクールの奴等や暗部の奴等はそうだった! <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/05(金) 00:00:44.23 ID:bUrjWsjA0<>
垣根「、…いいか、俺はあいつらを『食い物』にしたんだ。わかるか? 殺されてったあいつらを踏みにじって、俺は今ここに立ってる。もし俺が許されたら、俺はいつか必ずそれを『忘れちまう』。罪悪感が薄れれば必ずそうなる。俺だけじゃねぇ。誰でも、だ。現に、スクールの奴等や暗部の奴等はそうだった!」

喉元過ぎれば、熱さ忘れる。
つまり、垣根はそう言いたいのだ。
苦しい間は何があっても覚えていられる。
首を絞められている時に、相手の手を意識しない馬鹿は居ないだろう。
しかし、相手が首を絞めるのをやめ、手を離し、それから数年経過したら。
きっと、忘れてしまう。完全に忘れないにしても、記憶は薄れていってしまう。
垣根は今、罪の意識に苛まれているから、今まで殺してきた人間達の顔も、断末魔も、全て覚えていられる。

でも、もし。

ここでフィアンマに全てを吐露し、許しを得て、自分を赦してしまったら、忘れてしまう恐れが大きい。
苦しみを捨てて忘却するか、苦しみはそのままに記憶を保持するか、そのどちらかしか、成立しない。
そして垣根は、自分に優しくなかった。厳しかった。
自分が食い物にして、踏み台にして、階段した死体達の事を、怪我人達の事を、忘れてはいけないと思っている。

垣根「…確かに、お前が言う通り、許されるってのは忘れていい許可だって事じゃないんだろ。苦しんで、それでもそれを言い訳にしないで前向きに、誰かを助けて生きていければそれがいいってことなんだろ。俺には無理だ、」

幼い時分より、垣根は許された事が無い。
放られるか、憎まれるか、恐れられるか。
何か大変な事をしでかしても、それは須らくもみ消された。
それは許しではない。ただの忘却だ。無理やりに、現実を捻じ曲げただけ。

垣根「俺は、許されちゃいけない人種なんだよ」

格好悪いだとか、そんな事は何も思っていなくて。
思うがままに言葉が零れ出して、頬を透明な雫が流れていく。

垣根「俺が許されたら、殺されたヤツ等の事は、誰が覚えててやるんだよ」

赦して欲しいと思った事は、あった。
思い返せば確かにあったし、今もそうだが、それでも。
それは、許されていい理由にならない。

垣根「殺されたヤツ等の事を、誰が悔やんでやるんだ」

ごめんなさい。ゆるして。たすけて。
そう逃げ惑った子供を、手に入れたばかりに力で残忍に殺した。
人を殺す事が悪い事だなんて、まだ知らなかった頃。それでも、罪は重い。

垣根「あいつらの許しの言葉を却下するどころか、殺した俺が、…おれが、…どのツラ下げて、『赦して』なんて言えるんだよ…」

なぁ、教えてくれよ。
そう泣く垣根を見つめ、フィアンマはおもむろに立ち上がると、彼の横に回った。
そして彼を左腕で抱きしめ、目を伏せる。

フィアンマ「…急にどうこうとは言わん。…今日一日でお前が自分を許せるとも思わん。…だが、…そこまでの強い意思があるのなら、苦しみを軽減して自分を許し、その記憶を保持する事は出来る。……憐れな子だ、お前は」

哀れみという言葉を、垣根は今まで嫌ってきた。見下されている感じがしたからだ。
だが、今泣いている自分に向かってかけられている言葉も抱擁も、驕りは感じなかった。
本当に自分という、垣根帝督個人を助けてやりたいという想いを下地にした言葉の響きは、嫌味でなく、優しく響いた。
垣根は顔を上げられず、俯いたままぼろぼろと涙を流す。傷口に針が入ってしまったから、無理やり開いて取り出している様な、苦痛を伴う精神的作業だった。

フィアンマ「……お前はまだ自分を許せないだろうが、…許されてはいけない人間ではない。急な許しを得れば、確かにその罪過を忘却の彼方に追いやってしまいかもしれない。時間をかけよう。この旅が終わって、どちらかが死ぬ瞬間まで、手伝ってやる。……一緒に探してやる。お前が許され、且つ他人を苦しめた事実は忘れないで済む、救済方法を」

垣根「……>>157」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/05(金) 00:03:24.58 ID:ZiryRJjIO<> 台詞がっつり書き込んでる奴はマジでキモい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/05(金) 00:08:35.89 ID:4NkNIKNSO<> …何で、俺にそこまですんだよ?暇だからか?恩返しのつもりか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/05(金) 00:25:53.85 ID:ZiryRJjIO<> 入り込んでるねーID:4NkNIKNSO <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/05(金) 03:07:50.96 ID:pLrjYsKUo<> 乙!また続き楽しみにしてる
変なのはNG <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/05(金) 23:12:42.34 ID:tHLJxWSj0<>
垣根「………何で、俺にそこまですんだよ? 暇だからか? 恩返しのつもりか?」

フィアンマ「…どうして、だろうな」

目を閉じたフィアンマが思い出すのは、一人のヒーローに言われたこと。
『ベツレヘムの星』から脱出する時の、会話。

フィアンマ『……良いのか……?』

上条『何が』

フィアンマ『俺様は、"世界中"なんていうのが、どれだけ広い場所なのかも分からん人間だぞ』

上条『そうか』

フィアンマ『俺様は、取り返しのつかない間違いをした。最悪の罪人だ。…それでも、生かすつもりか。人を殺すかもしれんぞ』

上条『俺はそうは思わない。…それに、…お前の全部が全部、間違ってた訳じゃない。世界の危機の為に立ち上がれたヤツが、人の危機の為に立ち上がれない訳がないだろ』

フィアンマ『…、』

上条『世界を知らないっていうなら。…これからたくさん確かめてみろよ』

あの少年が何故笑っていたのか。
自分が右腕を斬られるその瞬間まで、自分と同じ様に取り憑かれた様なヤツの表情を見るまで、理解する事は出来なかった。
世界を救う盲目的なあの情熱が、何と虚しい事だっただろうか。
自分がしたかったのは、本当は、誰か、個人の笑顔や幸福を創る事。
あの少年の様に、誰か。苦しんでいる人を救えたのなら、自分はこの右手に怯える事は無かったのだ。
だから、今更だけれど。垣根を救う事で、自分が救われようとしている。

フィアンマ「…俺様が、救われたいからだろうな」

垣根「…利己的だな、オイ」

はは、と笑って、垣根はフィアンマの頭を撫でた。
歪んでいるパズルピース同士を繋げれば、多少歪は正されるのかもしれない。




しばらくその状態を続けた後、何やら気恥かしさが催してきた為、二人は離れた。
チェスのセットを片付け、フィアンマは外の風景を眺め、垣根はベッドに潜り込む。

垣根「……」

フィアンマ「……」

善についてよくわかっているとはいえ、個人に善意を発露した事のなかったフィアンマ。
善意も善もわからないし拒否をしてきたが、今回は受け入れてしまったことで気まずい垣根帝督。
双方共悪意の方が慣れているので、こうした好意と厚意に満たされた雰囲気は、慣れない。
垣根は無理やり目を閉じて眠る事にした。





垣根の見た夢の内容(アバウト可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/05(金) 23:15:00.40 ID:6X7gIW/DO<> ksk↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/05(金) 23:23:04.28 ID:qIND8DBb0<> 垣根「フィアンマサイコーーーー!!」
と言いながらビーチを走っている夢 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/05(金) 23:32:52.02 ID:79sCiX140<> 悪夢かな。内容は過去の罪とか,一方通行戦とか,うなされそうなもの <> 夢 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 00:35:15.15 ID:biMO9roY0<>
目を覚ますと砂浜の上だった。
いつの間にイギリスから南国へ来たのか。
思い出せねえ、とぼやきながら、海パン姿の垣根は辺りをきょろりと見回す。
さっぱり心当たりは無いが、どうやらプライベートビーチであるようだ。
そういえば枕がちょっと硬い、と目線をそのまま空へ向けると、赤い髪が見えた。

「…あん?」
「…目が覚めたのか」

膝枕をしてくれていたらしい。
ふに、と垣根の頬に触れ、フィアンマが首を傾げる。
クラシックロリの様な、どこか衣装染みた可愛らしい水着を纏っている様だ。
目を瞬く垣根の頬をふにふにとつっつき、フィアンマは小さく笑む。
彼女が首を傾げると、それに合わせてセミロングの髪も揺れた。
そういえば写真以外で女の水着姿など見た事が無かった、と思い返し、垣根は口ごもる。

「どうかしたのか」
「いや、…別に?」
「……」

ふい、と顔を逸らす垣根の手を握って、フィアンマは少し泳ごうと誘った。
断ろうとして、若干潤む金の瞳を見、垣根はその誘いを受ける。
よく恋愛映画で恋人同士がやる水の掛け合いの何が楽しいのかと思っていたが、実際にやってみると、何というか、フィアンマの反応が可愛く感じられ。
心理定規という常識も酸いも甘いもよく知った少し堅い女の子とはまた別に、過去の割に擦れの無いフィアンマの反応は、狙いなく可愛かった。
同い年なのにな、と思い、同い年だからか、とかえって気がつく。

と、不意にはらりとフィアンマの水着が脱げて。

鼻血回避に血液を飲む垣根は、フィアンマサイコーーーー!! と叫びつつビーチを走っていくのだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/06(土) 00:35:20.32 ID:IodkFK6AO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 00:36:14.92 ID:biMO9roY0<>
シュール過ぎる夢から覚め、垣根は自分が鼻血を出していないかどうか確認しながら起き上がった。
幸いにも本当に出した訳ではなく、一安心して。
そういえば自分が眠る時、窓の外を見ていたフィアンマは、と思いながら、垣根はふとそちらに視線をやる。
雨音でかき消される程度の声で、彼女は泣いていた。どうして泣いているのか、まったくわからない。
無言で固まる垣根は、息を殺して彼女を見つめる。静かに泣いているということは、自分に気づかれたくないのだろうと思ったから。
現実と夢の落差に一気に意識が醒める中、毛布の中で目を閉じる。寝たフリをした。
話しかけて慰めるべきなのかどうか、判断がつかない。
これがたとえば心理定規であったり、普通の女の子であったら肩を抱いて慰めるだろう。
だが、彼女は男の感覚に近いような気がする。だとすれば、泣いている顔すら見られたくないとも思う。

垣根「……、…」

フィアンマ「…、」

自分の右肩を、左手で摩って。
フィアンマは静かに項垂れた。

フィアンマ「…何が、聖職者だ。…そんな資格も無いくせに、…驕るな」

ズボンの布を握り締め、嗚咽をかき消す様に咳をする。
その咳をする声すら涙声だというのに、それには気付いていない様だ。
薄目を開けて確認しつつ、自分は無視して寝ても良いのだ、と垣根は自分に向かって心中で言った。





垣根はどうする?(言動・行動どちらでも、何もしない可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/10/06(土) 00:50:52.43 ID:VgmWsEOh0<> 寝たふり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/06(土) 00:57:16.44 ID:epy2i01SO<> …どうしたんだよ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 01:11:52.42 ID:biMO9roY0<>
垣根「…どうしたんだよ」

話しかけるつもりはなかったのだが。
唯一の友人が、自分が泣いていた時に抱擁してくれたのに無視というのはどうか、と思い、声をかけた。
結局垣根帝督という少年は割と常識に縛られる人間なのかもしれない。
学園都市から出た今、悪として徹する場も、必要もまったく無い。
フィアンマは唐突に話しかけられ、ぐし、と目元を擦り、垣根にちらりとだけ視線を寄越す。
そして何事かを言いかけ、服の袖で顔を拭き、数度深呼吸をすると、無言のままに首を横に振った。

フィアンマ「…目が覚めたのか。良い夢は見られたか?」

垣根「まあまあってところか。……で、何で泣いてた訳」

フィアンマ「……」

お前には関係無い、とまでは口に出さないまま、フィアンマはそっぽを向く。
やはり感覚的には男性のそれに近いらしい、泣き顔を見せたくないようだ。

フィアンマ「……言っても分からんよ」

垣根「…ムカついた」

せっかく自分が心配してやったのに、とまで驕るつもりはないものの。
フィアンマのむすくれた態度に、言葉を漏らした通り軽いムカつきを覚えた垣根は、じっとフィアンマを見つめる。
所謂ジト目でのささやかな睨みに、フィアンマはティッシュで泣き顔の後始末を終えた後、垣根と視線を合わせた。

フィアンマ「…何だ」

垣根「>>171」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/06(土) 15:32:23.19 ID:RhFB4heF0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/06(土) 17:07:33.13 ID:ET550/LC0<> お前の肌って結構きれいなんだな。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 17:27:42.07 ID:pqSeIOnM0<>
垣根「お前の肌って結構きれいなんだな」

フィアンマ「…、」

ふー、と苛立ちを吐息に溶かしながら、垣根はそう言った。
毒気を一気に抜かれ、困惑の雰囲気を纏う彼女の瞳の辺りを眺め、垣根はぼんやりと思う。
無表情や見下した顔をしているより、無邪気に笑ったり少し泣いた方が、この綺麗さが引き立つんじゃないか、と。
思考の転換を出来るようになった辺り、学生に囲まれなくなった事で垣根は成長したのかもしれない。
先程まで泣いていた為、ティッシュで後始末したにしても泣いた直後特有の頬の赤みや目の潤みなどに幼さを感じながら、垣根は立ち上がる。
そしてティッシュを軽く濡らすと、若干嫌がる彼女の頬をぺたぺたと拭いた。

垣根「泣くと色が付くだろ。綺麗だと思っただけだ。ちょうど、白い紙に色鉛筆で色塗ったみたいにな」

フィアンマ「冗談だろう」

垣根「あん? 何で」

フィアンマ「俺様の容姿に良点は無い」

垣根「…それ、本当のブサイクが聞いたら怒るだろうな」

ティッシュを丸めて捨て、垣根は肩を竦める。
尊大な口調にも関わらず自信が無いとは、また不思議な人物だと思いながら。
救うと言ってみたり、資格が無いとぼやいてみたり。
ただ、そうした相反する感情は暗部に居た人間特有のものかもしれないな、なんて思いつつ。
一旦思考をすっきりさせるべく、垣根はシャワーを浴びた。

烏の行水と呼称されてもおかしくないスピードでの入浴を終え、垣根は部屋に戻ってきた。
そして、予てより気になっていたことを聞いた。

垣根「ところで、」

フィアンマ「ん?」

短い時間とはいえ一人になった事で落ち着いたのか、先程の様な理不尽な攻撃の色はなく、フィアンマは返事をする。

垣根「何でお前、一人称が『俺様』なんだ? 女の一人称にしては珍しいだろ。『俺』とか『僕』とかは偶に居るけどよ」

フィアンマ「…昔は『私』だった時期もあるが」

垣根「途中で変わったのか。…いや、どうしても話したくねえなら聞かねえけど、何で?」

フィアンマ「……>>174」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/06(土) 18:17:38.96 ID:ET550/LC0<> ksk↓
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/06(土) 19:44:26.78 ID:epy2i01SO<> その方が何かと都合がいいからだな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 22:54:10.58 ID:A15OKjH80<>
フィアンマ「……その方が何かと都合がいいからだな」

垣根「都合?」

フィアンマ「俺様の見目は中性的だろう。男だと思われれていた方が何かと利便性が高い。加えて、中性的な人間が『私』という一人称を使うと紛らわしい」

垣根「あー。…いや、でも女と思われた方が都合良いモンじゃねえの?」

フィアンマ「何だかんだで今現在、旧教は男社会のままだからな。それに、女であることの得はほとんどリスクと隣り合わせだ」

たとえば、風俗だとか。
身体を売るには男性よりも女性の方が買い手がつきやすいが、それは様々なリスクを伴う。
これは極端な例だが、女である事の得と損、男である事の得と損は、比較すると若干男の方がリスクが低い。
何か命令を下されるにも、女より男の上司からの方が聞き易い・聞いてくれ易いのだ。
面倒事を避けたいのなら性別を偽るというのも一つの手ではあるのかもしれない。
ふぅん、と適当な相槌を打ち、垣根はベッドに座って脚を組む。
フィアンマは窓から離れ、垣根の向かい側に座る。そして時計を見やり、退屈そうにため息を漏らした。
数分程して、思い出した様にフィアンマはシャワールームへと消えた。
程なくして水音が聞こえ、垣根はぼんやりと意味の無い思考の海に浸る。
先の事は、将来の事は、考えない。どうせ死ぬのだから、考える必要などない。

垣根「…」

そういえば、自分の身体は創れるが、他人の身体の修復などはどうなのだろう、と垣根は思う。
他人の身体の作りに干渉出来るのなら、それは攻撃に転じる事が出来る。

シャワールームから出てきたフィアンマは、ぽふりとベッドへうつぶせに横たわった。

フィアンマ「…そういえば、お前の身体は『未元物質』で出来ていたのだったか」

垣根「正確には『未元物質』をベースに人体細胞を上手く構築したって感じか」

フィアンマ「そうか。…もし黒髪のウニ頭の男に会った時は逃げた方が良いだろうな」

垣根「は?」

フィアンマ「いや、こちらの話だよ。勝手は良いのか?」

垣根「使い勝手か? 悪くねえな」

フィアンマ「ん、」

そうか、と相槌を打ち、フィアンマは目を瞑る。
柔らかなホテルの毛布に埋もれ、眠気無く意識を揺蕩わせていた。

垣根「…お前、右腕無いの不便?」

フィアンマ「んー? …>>177」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/06(土) 22:54:52.76 ID:vsYsgog50<> かなり不便 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/06(土) 22:56:34.63 ID:rDNOK1zAO<> うつ病になりそうな位不便 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 23:15:59.70 ID:A15OKjH80<>
フィアンマ「んー? うつ病になりそうな位不便だな。一つの動作をするにも疲れが多い上、片側ばかり使って左肩が痛い」

垣根「そっか。創ってやろうか?」

フィアンマ「何をだ?」

聞き返し、意識を浮上させながら、フィアンマは視線を垣根に寄越す。
少しだけ眠くなってきたのか、毛布を抱き寄せていた。
自分の翼といい毛布といい、柔らかいものに埋もれないと寝れないのか、などと思いながら、垣根は口を開く。

垣根「お前の右腕」

フィアンマ「……」

垣根「とは言っても今この瞬間に、って訳じゃねえけど。まだ他人の身体創った事なんざねえしな。少し実験と考察を重ねて、安全性が確立してから…一番早くて明後日の話だけどよ」

人体細胞の構築干渉が他人にも出来るのなら攻撃方法として使える、と思った垣根は、今さっき治療という発想に繋がった。
フィアンマが精神的に自分を救うと言うのなら、自分はフィアンマを身体的に救おう。
そんな恥ずかしいことまではしっかりと考えた訳ではないが、そのような事は思っている。

言うなれば、垣根帝督は人に手を差し伸べられる機会の無かった一方通行で。
言うなれば、右方のフィアンマは人に手を差し伸べる機会の無かった上条当麻だ。

その本質が完全に悪である訳ではないので、人を助けたいという欲求が浮かんでもおかしくはない。

垣根(…多分コイツに感化されただけだろうけどよ)

他人の為に打算抜きで頑張るなど、馬鹿馬鹿しいと思っていた。
それでも、愛だとか許しだとか、そういった論理で割り切れないことを、知ってみるのも、やってみるのも、悪くないと思える。
フィアンマに感化されてしまったものだ、と内心自分を笑う垣根に対し、フィアンマは首を傾げて問いかけた。

フィアンマ「…お前の能力による物質は『天使の力』に近い、そんなもので俺様の腕を作れば一時期の様な出力は得られそうだが。故に、お前が良いというのなら頼むのも吝かではない。……だが、理由は?」

垣根「何が」

フィアンマ「不便とはいっても、先程言った通り病気になる程、本当に精神的に激しい苦痛を得ている訳ではない。演算、ましてやそういった新しい部分の開拓というものは苦労が要るのだろう。そこまでして、俺様の腕一本では報酬が足りんだろう」

無駄に疲れさせるのは申し訳ない、といった様子のようだった。
どうして自分にそんな提案を、施しをしてくれるのか、という問いかけに、どう理由を説明したものか、と垣根は考えた。

垣根「んー…>>180」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/06(土) 23:19:16.36 ID:epy2i01SO<> 目の前で親しい奴が辛い思いしてて、自分なら何とかできるってんなら助けようとするのは当たり前じゃねーの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/06(土) 23:22:00.30 ID:vsYsgog50<> >>179

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/06(土) 23:38:06.27 ID:A15OKjH80<>
垣根「んー…目の前で親しい奴が辛い思いしてて、自分なら何とかできるってんなら…助けようとするのは、当たり前じゃねーの?」

フィアンマ「……」

垣根「…何か言えよ。恥ずかしいだろうが」

今までの自分であれば、こんな偽善者染みた言動は一度として無かっただろうし、言う事を躊躇しただろう。
だが、そうして時分を諌めて、格好をつけて、得たものはあったか。
ある程度はあったかもしれないが、それはどれもこれも死体か金で繋がれたモノばかりで、下らない代物だった。
もうそんなものに縛られる必要もなければ、拘る必要だってない。
偽善だと嘲笑っていたのは自分だけで、少なくともこの目の前の人物はこうした偽善染みた発言をしたって、笑いはしない。

フィアンマ「…そうだな」

自分もそうしようと思ったのだから、垣根帝督がそう思ってくれても当たり前。
思考の中で結論を叩き出し、フィアンマは小さく笑んでこくりと頷く。
好意や厚意を向けられることに、不服などなかった。嫌悪感などない。
上条当麻が自分を諭した様に、人の心には、どんな人物だって良心や優しさが眠っている。

フィアンマ「…だが、急がなくて良い。優先順位は低めに設定しろ」

垣根「お前は謙虚なのか傲慢なのかはっきりしろよ」

フィアンマ「はは。…楽しみにしている」

嘲りの意味合いを持たない笑みは柔らかく、善意を誘うもの。
垣根はそんな彼女の顔を見つめた後、ベッドへ潜って部屋の明かりを消し、声に出さずにぽつりと、呟いた。

垣根(……いつもそんな顔してれば良いのによ)

フィアンマ「……おやすみ」

垣根「おやすみ」



翌朝、早めに目を覚ました垣根は、自分なりに未元物質を応用した人体干渉理論を組み立てていた。
今この場に、優秀な研究者は居ない。
だから、理論から仮説から実験から、全て自分で行わなければならない。

垣根「……」

ホテルの部屋に元々サービスとして置いてあったボールペンとメモ帳にかりかりと記していきながら、時折十分程休憩を挟む。
ほとんど八割方自分のための行動ではないが、無力感や徒労感に襲われる事は無かった。

垣根「『目の前で親しい人間が辛い思いをしていて、自分なら何とか出来るなら助けようとするのは当たり前』、か」

学園都市第一位と自分の間に割って入ったあの女警備員も、こんな思いだったのだろうか。
自分は、或いはああして誰かに庇ってもらいたかったのかもしれないな、と思う。
だが、自分が何もしないのに成果を得ようとするのは無い物ねだりだ。

垣根「…底力を見せてやる」

過去の自分より、『未元物質』を掌握している自信はある。
"死ぬ"一歩手前で理解したあの爽快感は、今も胸に残っていた。


理論と仮説とを並行で考え、メモに綴っていきながら研究に没頭する垣根の背中を視界に入れ、フィアンマは目を覚ました。
そして眠そうに目元を擦ると、欠伸を噛み殺す。





今日の朝食の内容>>182-183 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/06(土) 23:41:51.85 ID:epy2i01SO<> チーズフォンデュ、アボガドさらだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/06(土) 23:54:58.02 ID:ET550/LC0<> 竜田揚げ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 00:15:35.74 ID:PvlSPC4r0<>
欠伸を数回噛み殺し、ちゃんと目を覚ましたフィアンマは身体を起こし、毛布を傍らに退ける。
そしてなるべく音を立てないようベッドから降りて立ち上がると、キッチンに移動した。
がさごそと材料のなりうる食材達を漁りながら、何を作ろうかと悩む。
沢山の油がある。鶏肉も発見した。どうやらチーズも沢山買ってしまっていたようだ。
垣根は生粋の日本人である。となれば和食が好きだろうか、と思いながら、フィアンマは調理を開始する。
手足の代わりに魔術を駆使する彼女は、ある意味本当の意味での台所の魔女かもしれない。

バゲットを切ってチーズフォンデュの付けるものを作り、レタスなどもちぎってサラダを作る。
丁寧に水で洗ったアボカドを乗せ、ドレッシングを適当に作ってかけた。ほとんど創作料理に近いが、美味しければ問題無いだろう。
発見した鶏肉を醤油(生姜もニンニクも見当たらなかった)に漬け込み、片栗粉を使って油でからっと揚げる。
ほかほかと湯気を立てるそれは、日本で竜田揚げと呼ばれるものだ。
きちんと揚がっているか確かめる為に一つ口にしながら、二人分をそれぞれ皿によそう。
一時間程で食事の準備が出来上がり、垣根はその良い匂いに気がついて一旦メモを綴る手を止めた。

垣根「美味そうだな」

フィアンマ「一部口に合わない場合は自分で工夫しろ」

垣根「多分大丈夫だろ」

そういえば必要も無いのに二人揃っていつもご飯を食べているような、と思いながら、二人はいつも通り朝食を開始する。
朝から揚げ物やこってりとしたチーズはややハードだったが、年齢的にはまだ育ち盛りなので問題は無さそうだ。

フィアンマ「今日は一日研究に費やすのか?」

気分転換に出かけるのならついていく、という姿勢で、フィアンマは問いかける。
垣根はメモの内容を思い返しながら、どうしようか悩んだ。

垣根「>>186」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 00:20:03.43 ID:9JOMcSBZ0<> あともう少しなんだ…だけど何か…何かが足りない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 00:22:37.38 ID:ykf+UwWSO<> さて、どうすっかね…お前はどーすんの? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 00:37:34.70 ID:PvlSPC4r0<>
垣根「さて、どうすっかね…お前はどーすんの?」

今まで何だかんだで垣根が希望するままに行き先を決めてきた。
行く先々でフィアンマが行きたい場所にも(カフェだとか)行ってきたが、それにしても垣根が主に行き先を決めている。
何処か行きたい場所、やりたいことは無いのかとばかりの聞き返しに、フィアンマは緩く首を横に振った。

フィアンマ「お前が出かけるのであれば共に向かうし、そうでなければ適当に暇を潰すだけだ」

垣根「そうかよ。…とりあえず煮詰まったら外出る」

今は集中した方が上手くいきそうだ、とぼやき、垣根は食事を終えた。
フィアンマもちょうど食べ終わった為、食器を洗って片付ける。
垣根はその後、再びメモ帳を綴りに定位置へ戻った。
とりあえず理論や仮説を組み立て終わってしまえば、後は実験を重ねて解析すれば真実を導き出せる。
フィアンマは邪魔をする事無く、退屈しのぎに自分も作業を始めた。
垣根が創ってくれた右腕が仮に駄目だった時の場合を考えて左手で字を書く練習を兼ねて、術式の組み立てを行う。
頭の中に入っている聖書の記述から、長い時間をかけて一つの術式を編み出すのだ。
攻撃用のものを編み出すのにはヘタをすれば何年もかかるが、回復術式であればそんなに時間もかからない。
とはいえこの術式はほぼフィアンマ専用で、よほど『神の子』の性質を持っている者でなければ使用出来ないだろう。
先に作業が終わったフィアンマは、邪魔にならないよう気配を殺して垣根の様子を眺めていた。
彼は目鼻立ちが整っているので、美術品を観賞する気分に似ていた。

垣根「……」

仮説を幾つか組み立て、実験の手順を記し、その実験の優先順位をつけておく。
自分が思うに当たっている確率の高い仮説から、順位を上に置いておくのだ。
ベッドに座り、暇を持て余しながら。
少し疲れた様子の垣根に向かって、フィアンマは声をかける。

フィアンマ「…少し休んだらどうだ。疲れを加熱しても思考力が鈍る」

垣根「…そうだな。…はー」

急がなくていいと言われても、垣根としてはなるべく早く完成させたいのだ。
フィアンマの発言にも一理ある、とボールペンを置いた垣根は、だるそうに息を吐きだした。

フィアンマ「何か飲むか?」

垣根「…>>189がいい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/07(日) 00:47:08.59 ID:PARU5SL40<> ksk↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/10/07(日) 01:04:10.57 ID:9o03msg90<> ホットミルク <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 01:20:30.06 ID:PvlSPC4r0<>
垣根「…ホットミルクがいい」

フィアンマ「砂糖は入れるか?」

垣根「角砂糖二つ分程度頼む」

ぐだ、と身体の力を抜き、垣根はベッドに上半身をぱたりと倒す。
少し落ち着いて休んだら、作業効率も上がるだろう。
フィアンマは垣根から離れて立ち上がり、キッチンに入ると黙々とホットミルクを作り始めた。
角砂糖二つ分の砂糖も溶かし、白い膜が張らないようかき混ぜて牛乳を温める。
マグカップにその甘く温かなミルクを注ぎ、鍋を洗って片付けたフィアンマは少し細工をしてから、マグカップを持ってきた。
甘い匂いが近づいてきたことに気がつき、垣根はむくりと身体を起こしてマグカップを受け取る。
火傷しないよう気をつけて啜り、意外にも調度良い温度だった牛乳にほっと一息つきながら、垣根は時計を見遣った。
昼時だが、腹は減っていない。牛乳を飲んで砂糖を摂取して、そのことによる血糖値の上昇が原因だからかもしれないが。
フィアンマも空腹を感じていないのか、ベッドに座って暇そうな様子を見せた。
程よい甘さで美味しいホットミルクを全て呑みきると、垣根は自分がとても元気になっている事に気付いた。
血糖値の上昇が元なのか、それにしては不可解な程に疲労感が取れている気がする。

垣根「…お前、コレに何かヤバい薬でも入れたか?」

フィアンマ「いや。…ああ、術式は使ったが」

垣根「術式?」

フィアンマ「回復術式。治癒術式ともいうか。全身の力を程よく抜き取る事で疲労の回復を狙ったものなのだが。よく気がついたな」

垣根「…、…」

非科学的だが信じるしかないのだろう。
まるで危ない薬物でも使ったかのように、頭が軽かった。
ゲームの主人公でいえば、体力回復用の薬草を丸呑みでもしたかのような。

垣根「…それ、誰でも使えれば覚せい剤はこの世から消えるだろうな」

フィアンマ「俺様もそうは思うが、使うには資質が要る」

垣根「一般大衆向けの術式とかって作れない訳?」

フィアンマ「難しい」

『神の右席』として身体を調整してあるフィアンマは、その辺の魔術師とは仕様が違う。
無能力者に突然『未元物質』という能力が備わったところでその人間が使いこなせないように、『特別』なのだ。
特別な人間が凡人に何かを与えるには、沢山の仕様変更が必要だ。難しい。

垣根「ま、そりゃそうか。特別パターンの人間ってのはそういうもんだしな」

ひとまずありがとよ、と礼を言い、垣根はマグカップを片付けてから作業を再開する。

二時間程して、垣根はベッドにぼふりと倒れた。

垣根「……とりあえず実験はいくつか考えた」

フィアンマ「何をするんだ?」

垣根「とりあえず、>>192する…」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 01:23:49.63 ID:ykf+UwWSO<> 実験用マウスを用いる。右腕を切り落として、未元物質で再現した右腕を接着してみる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 06:44:48.15 ID:wysI6TEE0<> >>191

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 15:58:03.36 ID:wEmHWZbE0<>
垣根「とりあえず、実験用マウスを用いる。そいつの右腕を切り落として、未元物質で再現した右腕を接着してみる…っていう単純な内容なんだけどよ」

フィアンマ「問題は、実験用のマウスなど手に入らないというところか」

垣根「アウトロー…非合法のペットショップとかねえかな」

後は実験をして、その様子から正確な理論を組み立て直して終わり。
それなのに、実験をするための素材がどうしても足りない。
優先順位を最高に設定にしたこの実験をしなければ、未元物質で右腕が創れるということが100%成功すると証明されない。
完璧主義故にハムスターを使うなどの妥協案を採用する訳にもいかず、垣根はげんなりとしつつ頭を抱えた。
フィアンマは少しばかり考え込む様子を見せた後、垣根から離れる。
そして台所で甘い紅茶を飲んで思考を纏めた後、部屋のドアに手をかけた。

フィアンマ「ところで、そのマウスとやらは何匹程必要なんだ」

垣根「あ? …>>194」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 16:01:42.74 ID:t/Ac6P0a0<> 1匹……できれば保険にもう1匹で2匹だな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 16:21:43.89 ID:wEmHWZbE0<>
垣根「あ? …1匹……できれば保険にもう1匹で2匹だな」

何で、と聞き返そうとしたところで、何やら合点がいった様子のフィアンマは部屋から出て行った。
自分の話を聞いていたことはわかるのだが、それにしても突拍子のない外出だ。
垣根が彼女の行動を制限する必要も権利も無いのだが、唐突な外出に驚きながらドアに近寄って、開ける。
いくら歩くのが早くてもまだ居るだろうと思ったのだが、もはや後ろ姿さえ認められなかった。

垣根「……、…」

死ぬなよ、と心中で呟き、垣根はぱたんと部屋扉を閉じて中に戻る。
一時間待てど二時間待てど、彼女はなかなか帰らず。
力量では自分に勝っていると豪語していた彼女がそうそう死ぬ筈もないだろう、とたかをくくり(或いは自分に言い聞かせ)、ベッドに横たわった垣根は、目を閉じるのだった。


一方。
垣根の求める実験用マウスを得るべく、フィアンマは日本でいうところのわらしべ長者をしていた。
物を交換するのではなく、情報を交換することでだんだん目的に近づいてきたのだ。
夕方にはネズミ二匹を手に戻れるだろうと見越し、フィアンマは路地裏に入り込む。
と、タイミング悪くカツアゲでもしそうな集団に鉢合わせた。
負けるなどとは1ミクロンも思わないが、ここで魔術を使うのも疲れる。面倒だ。

男「良いカモだな」

男2「ツイてるじゃねえの」

フィアンマを弱そうな旅行者、しかも単身と認めた集団は徐々に近づいてくる。
オマケにその手には凶器があるようだ。ナイフだったり、銃もあるようだ。
ギリギリまで引きつけて一掃してしまった方が楽そうだと判断し、フィアンマは人気の無い方向へ逃げていく。
当然の事ながら男達はゲーム感覚で彼女を追いかけていった。

路地裏の、更に人気の無い場所で。
凶器を突きつけられながら、フィアンマはだるそうに息を吐きだした。
男達よりもよほど彼女の方がゲーム感覚だったりする。
叫んで助けを求めてみるのも一興、どうしようか、と迷っていると、不意に男達とは関係の無い人間が現れた。






助けに来た人物(禁書キャラ名。一名)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/07(日) 16:27:35.91 ID:wSit8lC2o<> 上条 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/07(日) 16:29:16.07 ID:wSit8lC2o<> kskst <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 16:29:39.78 ID:xyfjASCk0<> 神浄として覚醒した上条 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/10/07(日) 16:29:51.77 ID:XWMPLayEo<> 麦野 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 16:39:32.78 ID:wEmHWZbE0<>
その少年の姿に、フィアンマは見覚えがあった。
いやという程にある。何しろ、自分の人生や考え方をまるごと変えた男なのだから。
最後に見たままの学生服姿、その少年の右手が特殊であることを、知っている。
むしろその右手を得る為に色色な段取りを組んだのだから、忘れられる筈もないのだ。

男2「何だお前」

英語で言った男は、どこか気圧されている。
対して、その黒髪の少年はため息をついて肩を落とした。

神浄「…不幸だ。ちょっと"退いて"もらうぞ」

呟いて、上条は右手の指先をほんの少し動かした。
たったそれだけの動きで。些細過ぎるアクションで。
壁が崩れ、突風が吹き、男達だけをガレキと共に何処かへ流していった。
魔術の類か、はたまた科学か。
どちらにせよ、この、フィアンマの目の前に居る少年がそういった特殊な力を行使出来る筈もないのに。

上条「外国まで来てこんな、…って、あれ」

のろのろと顔を上げ。
驚きのままに立ち尽くすフィアンマの姿を捉えた上条は、嬉しそうに笑った。
先程の何やら暗い様子とは打って変わって、元気そうである。

上条「…良かった。生きてたんだな」

フィアンマ「それはこちらの台詞だ。お前の場合、何があってもおかしくはないか」

上条「いやいや、上条さんは普通の人間ですのことよ。…今はどっちかっていうと化物か」

憂鬱そうにぼやき、上条は思い出したように問いかけた。

上条「…、…その右腕、どうしたんだよ」

フィアンマ「………」

はっとした様子で、上条はフィアンマの右肩から先、空の袖を見つめる。
元は敵だというのに、心配のみの色しか無いその瞳は相変わらずといったところか。

フィアンマ「お前には、関係の無い事だ」

上条「>>202」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 17:20:18.80 ID:ykf+UwWSO<> そんなに聞かれたくないのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 17:36:33.23 ID:314oA9cv0<> どうせアレイスターにでもやられたんだろ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 17:53:23.92 ID:wEmHWZbE0<>
上条「どうせ、アレイスターにでもやられたんだろ」

フィアンマ「…、」

まるで、夕飯時に食事を零してしまった子供をたしなめているかのような、軽い声音。
フィアンマの腕の事は心配しているようだが、アレイスターについて一切の―――思いが、見えない。
カラカラに乾ききった表情を浮かべ、上条は悲しそうにため息を漏らす。

上条「……この世界には、救えないヤツも居るんだな。…今思えば、お前のやり方はそんなに間違ってなかったような気もする」

フィアンマ「何の話だ、」

上条「言葉じゃわからないヤツって居るもんだよな。言って聞かせて道を示しても、従わない強情なヤツが」

ぼんやりとした表情で呟き、上条はのんびりと伸びをした。
感情の灯らない声音。かつての自分以上に何か狂気に囚われている上条の様子に、フィアンマは閉口する。
何が、とははっきり言えないが、何かがおかしくなっている。自分の知る上条当麻ではない。

上条「…その、…腕は、まだ俺の力じゃどうにもしてやれないけど、さ。……アレイスターは殺しておいたから、安心してくれよ」

柔らかな笑み。無機質な笑顔。
少しつついたら崩れてしまいそうな。

上条「そういえば、さっきのヤツ等に怪我させられてないか?」

この少年は、見境無しに他人を攻撃する人間だっただろうか。
たとえ相手が誰であれ、殺したり、むやみに傷つけるような人間ではなかった気がする。
もしかしたら、それは自分の思い違いだったのかもしれない。
上条の様子から恐怖を催し、フィアンマは一歩後ろに下がる。
そして息をゆっくり吐きだした後、足の位置を戻した。

フィアンマ「…問題無い。無傷だ。どのみち、お前が割入らなければ自衛はするつもりだった」

上条「そっか」

良かった、と笑んで、上条は首を傾げる。
真っ黒な瞳には果てしない絶望が広がっていて。吸い込まれそうな。
何だかよく出来た人形のようで、気味が悪かった。

上条「ところで、何か用事あるのか? 引き止めちゃったならごめんな」

フィアンマ「…少し探し物をしている」

上条「探し物?」

フィアンマ「実験用のマウスを二匹。取引出来る場所を知らないか?」

上条「>>205」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/07(日) 18:08:21.48 ID:PARU5SL40<> 木原一族に聞いてみる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 18:09:40.93 ID:zd6xNpIr0<> 俺の店 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 19:35:51.76 ID:XYK7xVqd0<>
上条「俺の店で良ければ」

フィアンマ「店?」

上条「何ていうか、小売店みたいな感じかな」

少し人間味の戻った表情でそう言うと、上条はのんびりとフィアンマを手招いた。
フィアンマはついていくリスクと断った場合のリスクとを頭の中で天秤にかけ、ついていくこととした。


色色なものを扱う非合法の闇市場は、物一つ流通させるにも一苦労だ。
その苦労を金で請け負うのが現在の上条の職業、だそうで。
暗部と分類される仕事をしているからか果てしない力を手に入れたからか、ともかく上条は荒んでいた。
また来いよ、と手を振る上条にアイコンタクトで別れを告げ、マウス二匹の入った箱を手に、フィアンマはホテルへ戻るのだった。


ホテルに戻り。
自分が望んだ通り、実験用のマウスが二匹入っている箱を手渡され、垣根はきょとついた。

垣根「何、闇取引でもしてきたのかよ」

フィアンマ「そうだな。長いわらしべ長者物語だった。或いは賭博か」

垣根「?」

今日はラッキーデイだな、とどこか落ち込んだ様子でぼやくフィアンマの様子に首を傾げ、垣根は実験用の囲いを作る。
そして作業を終えた垣根は、実験の前にまずは腹ごしらえからだと伸びをして。

垣根「朝は任せきりだったしな。何食う?」

フィアンマ「ん…」

気付けば午後七時。
夜と呼ぶに相応しい時間だった。




今日の夕飯(料理名)>>+1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 19:37:52.40 ID:Lc7O9oEW0<> カツ丼 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 20:00:36.51 ID:XYK7xVqd0<>
フィアンマ「肉料理を希望する」

垣根「肉、ね」

そういえば何かあったような、と垣根はキッチンに移動する。
がさごそと食糧達を漁り、カツ用になりそうな肉を発見した。
分厚い肉を二つに切り、まずは小麦粉、そして卵、最後にパン粉をまぶし、熱した油でからっと揚げる。
良い匂いがしてくるまでの間に米を―――炊こうと思ったのだが、無かったのでキャベツを茹でて代用した。
揚がったカツを適度にざくざくと切り、鍋に入れる。
醤油、砂糖、料理酒、みりん(これは入れなくても良い)、だしの素(無かったので我慢)を溶かし、煮詰めて。
最後に溶き卵をぐるりと回しかけて火を止め、その残った熱で卵が固まるまで手を出さない。
茹で上がったキャベツをよくよく湯切りした上、それぞれ丼によそった後、具であるカツ煮を乗せて出来上がり。
白米でなくキャベツなので少々ヘルシー感(別名:物足りない感)は否めないが、そこのところは我慢である。

いただきます、と食べ始め。
明日までに実験を終わらせて理論を書き上げて終わりだ、と垣根はぼんやりと思いながら食事を食べ進めた。
フィアンマも同じく食事を進めながら、ふと上条との邂逅を思い返しながら、告げる。

フィアンマ「そういえば」

垣根「何?」

フィアンマ「学園都市理事長、アレイスターが死んだそうだ。知り合いに幾つか証拠も見せてもらったし、間違い無い」

垣根「>>210」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/07(日) 20:01:21.10 ID:XWMPLayEo<> 加速下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 20:02:04.78 ID:Lc7O9oEW0<> マジで!?誰がやったんだ!?やっぱ第一位の奴か? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 20:16:34.61 ID:XYK7xVqd0<>
垣根「マジで!? 誰がやったんだ!? やっぱ第一位の奴か?」

きらきらと、否、ぎらぎらと目を輝かせ、垣根は問う。
フィアンマは緩く首を横に振り、正直に答えた。
上条当麻という名前を聞き、垣根は少し考える素振りを見せた後、なるほどと頷いた。

垣根「あっちはどうにも換えが利かない『第一候補』みてえなもんだったか…え、何、昼間会った訳?」

フィアンマ「あぁ。俺様が知る姿とはだいぶ変貌していたが」

垣根「ふーん。何にでも首突っ込むヒーローだって聞いたけどな」

フィアンマ「以前はそうだったが。…いや、本質は変化していないだろうな」

それでも自分の行いを肯定してしまった時点でもはや別人のような、と思いながら、フィアンマは食事を終える。
ほぼ同時に食べ終わった垣根の分も食器を片付け、ベッドに横たわる。
垣根はというと、先程の興奮は冷め、黙々と実験準備の点検をしていた。

フィアンマ「…学園都市に戻りたいとは思わんのか」

垣根「アレイスターの野郎が死んだにしても、思わねえな」

フィアンマ「学園都市を掌握しようと考えていたんじゃないのか? 今なら容易い事だろう」

垣根「うるせえな。俺がどうしようと勝手だろうが」

フィアンマ「それはそうだが、」

垣根「俺はまだ旅行する。追われる恐れが多少減ったかもしれないってことで、その情報の価値ははい終わりだ。俺はもう学園都市に執着しちゃいねえよ」

フィアンマ「…まったく未練は無いのか」

垣根「…>>213」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/07(日) 20:17:14.73 ID:XWMPLayEo<> 加速下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 20:18:33.97 ID:ykf+UwWSO<> ……そういや、スクールの奴等はどうなったんだろうな…未練といや、そんくらいな気はする <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 20:26:52.36 ID:XYK7xVqd0<>
垣根「………そういや、『スクール』の奴等はどうなったんだろうな…未練といやあ、そんくらいな気はする」

フィアンマ「……。…戦時中、暗部は解体となったそうだ」

垣根「それも聞いてきたのかよ。なら、もう未練ゼロだな。あいつ等はあいつ等で好き勝手にやってんだろ、今頃。俺が居た時から割とそんな感じだったしな」

フィアンマ「………」

垣根「何だよ、辛気臭い顔しやがって」

フィアンマ「…一応、曲がりなりにも帰れそうな場所があるのなら、と思っただけだ」

垣根「ハッ。あそこを帰る場所だとは思いたくねえな。今俺が帰る場所といえば、このホテルの部屋位なモンだ」

だからそんな顔すんな、と明るく言って、垣根はマウスを拘束する。
グロテスクな光景に目を逸らす事なく、マウスの右腕を切り落とした。
自分の考え出した演算の式に沿って、マウスに触れながら、小さな右腕を創り出す。
人間で言えば肩の辺りからぐにゃぐにゃと腕が生えていくのは、少々奇妙で不気味な光景だった。

垣根「頼むぜ、鼠さんよ。一つしかストックがねえんだ…」

元暗部のリーダーらしいドスの効いた低い声を出してしまいながら、垣根はマウスの様子を眺める。
マウスは先程与えられた切断の痛みにジタバタした後、創られた腕を動かそうと、した。




実験用マウスの腕は動かないor動いた>>+1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/07(日) 20:37:03.74 ID:PARU5SL40<> 動いた。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 20:49:07.00 ID:XYK7xVqd0<>
マウスの意思通り、最初はぎこちなく。
そして後半になるにつれスムーズに、それこそ元からあった腕のように動き始めた。
垣根はそんなマウスの様子に心から安堵しながら、最終理論、微調整した演算式をさらっとメモ帳に綴る。
そしてマウスの背中を撫でた後、罪悪感も無く能力にて殺した。
死骸は未元物質で素粒子レベルまで解体してしまう。そうすればもう、跡形も残らなかった。
少し汚れてしまった手を洗面所で何回も洗いながら、垣根はフィアンマに声をかける。

垣根「なあ」

フィアンマ「んー?」

むく、と枕から顔を上げ、フィアンマは視線を垣根に寄越す。
垣根はリレーで一等賞を取った子供の様にはしゃいだ声で告げる。

垣根「実験がうまくいった。一時間程度のリハビリは必要になるが、腕は出来る」

フィアンマ「そうか。ご苦労」

垣根「感動薄いな。その不便さが消えるんだぜ?」

もっと喜べよ、と言いながら、垣根は手を拭く。
念入りに洗ったので、手から血の臭いはしない。
関係無いけど香水買おうかな、などと考えながら、垣根はベッドに座る。
そして異様にテンションの低い(いつも高いという意味ではない)フィアンマの様子を眺めた。

垣根「やたらと暗いけど、どうしたんだよ。何か悩みでもあんのか?」

言ってみろお嬢さん、などと冗談半分の声音で促し、垣根は首を傾げる。
フィアンマは枕に顔を埋め直し、もごもごと話した。

フィアンマ「…>>218」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/07(日) 20:51:09.66 ID:XWMPLayEo<> 加速下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 20:54:59.61 ID:Fi2iH5pv0<> ちょっと怖い <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 21:04:38.96 ID:XYK7xVqd0<>
フィアンマ「…ちょっと怖い」

垣根「怖い?」

フィアンマ「義手とは違うだろう。義手以上に痛みを伴う恐れもある」

垣根「いや、大丈夫そうだったぞ?」

フィアンマ「……」

魔術的に細工をもたらした飲み物は怖くて科学的に創られた腕は怖いとはどういうことか。
これがジェネレーションギャップか、と思いながら、垣根は手を伸ばす。
ぽふぽふ、と触った後、彼女の頭を撫でてのんびりとなだめてみる。
まるで手術前の患者を諌める医者だ、と思いながら。

垣根「あー…あれだ、痛かったらどうにかする」

フィアンマ「何をするというんだ」

垣根「鎮痛剤とかあらかじめ用意しておいて、最悪寝れば良いだろ」

フィアンマ「痛いんじゃないか」

垣根「お前何で急に子供っぽくなったの? 注射とか泣いてたタイプ?」

フィアンマ「……」

垣根「あ、泣いてたんだな。滅茶苦茶痛いのはともかく地味な痛みが耐えられないタイプなんだな、お前」

フィアンマ「……、…」

鋭い指摘に拗ねた様子で、フィアンマは左手を伸ばす。
そして垣根の手を引っ張って体勢を崩させると、彼の背中に触った。

垣根「あん? 何」

フィアンマ「翼を触らせろ」

垣根「俺の翼は精神安定効果なんかねえよ」

フィアンマ「………」

じと、と見つめられ、垣根は口ごもる。
何だというのだ。こちらとしては、翼を触られるのは気持ちが悪いのだ。
どうして自分が治療をする相手に苦労をかけられなければならないのか、と思いながら、言葉を発する。

垣根「代わりで手を打ってやる」

フィアンマ「代替案か」

垣根「>>221」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/07(日) 21:04:54.74 ID:XWMPLayEo<> 加速下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 21:09:21.84 ID:Fi2iH5pv0<> 羽で作ったぬいぐるみだ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 21:24:08.32 ID:XYK7xVqd0<>
垣根「羽で作ったぬいぐるみだ」

フィアンマ「…ツルノ=オンガエーシというやつか」

垣根「何かイントネーションおかしく感じるが、それだそれ」

フィアンマはしばらく迷った後、こくりと頷く。
垣根はほっと一息つきながら、体勢を元に戻してベッドに座り直し、翼を出し、その羽を抜く。
鋭い爪で引っ掻かれたかのような痛みが走るが、構わず抜いた。
鶏の様に生えている訳ではないので、彼が痛みを感じようと出血はしない。
糸なども未元物質で作り出し、時計の針の音と二人分の呼吸しか無い部屋で、彼は作業を淡々と進めていく。

三時間程経過して、ようやくぬいぐるみが出来上がった。
兎のシルエットをしているそれは、白く柔らかい。
あくまでモチーフ、シルエットに過ぎない為、目はついていない。

垣根(ちょっとガキっぽかったか)

垣根「これでいいかよ」

ちょうど、フィアンマの腕の中にすっぽりと納まる程度の大きさ。
ほら、と寄越され、フィアンマは眠気をしまいこんでそのぬいぐるみに触った。
受け取って抱きしめ、もふりと顔を埋める。
素材の都合上当然というべきか、垣根の翼とまったく同じ匂いがした。
血液か、少し鉄臭いけれど、それはそれで心地よく。
ぎゅう、と強く抱きしめ、しばらく顔を埋めて戯れた後、フィアンマははにかんでみせた。
他人からこういった実用的でない贈り物をもらうのは、今日この瞬間が初めてだ。

フィアンマ「…あり、がとう」

垣根「ん、」

気に入ったのならいい、と垣根は疲れを預ける様にベッドへ倒れる。
そして腕を伸ばし、フィアンマの抱きしめているそれ<力作>に触れた。
やわやわと触り心地は快適で。これを抱いていればよく眠れそうだ。

フィアンマ「…モチーフは兎か」

垣根「何となく、だけどな。目を付けた訳でもねえし」

フィアンマ「名前はあるのか」

垣根「名前?」

意外と少女趣味だな、いや少女か、と思いながら、垣根はぬいぐるみから手を引く。

垣根「>>224」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/07(日) 21:25:37.75 ID:XWMPLayEo<> メジャーハート……かな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 21:25:53.48 ID:etv4ZWwCo<> 上 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 21:35:36.22 ID:XYK7xVqd0<>
垣根「メジャーハート……かな?」

別に『心理定規』にぬいぐるみが似ていると思った訳ではないが、何となく浮かんだのがそれだった。
考え出して咄嗟に浮かんだのが何故元同僚の名前なのだろうかと自分で疑問に思いながら、垣根は目を閉じる。
そして部屋の電気を消すと、おやすみと一言呟いた。
にも関わらず、中々意識は薄れていってくれない。疲れ過ぎて眠れない、というものなのかもしれない。

フィアンマ「おやすみ」

少し遅れてそう返したフィアンマは眠る気がないのか、ぬいぐるみと戯れている。
子供の様にはしゃいで投げたりだとか、そんなことをしている訳ではなく、抱きしめ、撫でているようだ。
左手を沈ませると、もふりと埋まる。どこまでもどこまでも、触り心地は楽しく、軽やかで柔らかい。

垣根「…寝ろよ」

フィアンマ「『メジャーハート』と充分戯れたなら眠るさ。騒がしくしている訳でもあるまい。お前は気にせず眠れ」

そのぬいぐるみに触れる度に手が血の残り香に染まっても、何とも思わない。
血液の臭いなど、とうに嗅ぎ慣れてしまっていて、何ら嫌悪感が湧き出す訳でもなかった。



翌朝。
若干寝不足ながらも目を覚ました垣根は、まだ眠っているフィアンマを置いて買い物に出た。
朝食だとかそういったものではなく、昼に行う治療用、もしもの為の鎮痛剤だ。
麻酔レベルに近いものは市販では無いか、と残念に思いながら、垣根はドラッグストアを巡る。
幾つか見慣れた栄養食品を目にして、小さく笑った。昔はよく食べていた。

垣根「ついでに何か買っていくかな…」

熱中症は今の季節ほとんど無いだろうけれど。
常備薬の類はあった方が良いだろうと考慮して、垣根はドラッグストア内を歩くのだった。





(フィアンマの)夢の内容>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/07(日) 21:41:12.47 ID:tLDr5xv+0<> 何かとても恐ろしいものに追いかけられているのに
足が動かない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/07(日) 21:47:29.94 ID:PARU5SL40<> >>226 <> 夢  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 21:57:19.23 ID:XYK7xVqd0<>
本能的な恐怖に、意識が醒める。
何かが後ろから迫っているのに、足が動かなくて、逃げられない。
先程逃げおおせたのは単なるまぐれであって、実力でないことぐらいわかっていた。
だが、俺様には助けてくれる人間など居ない。
ただの一人だって居ない。作らないように生きてきた。
冷や汗が出る。恐怖感のあまり、吐き気までこみ上げてきた。
頭を殴られでもしたかのような激しい頭痛が意識を揺るがし、それでも意識を飛ばすことまでは赦してくれない。

「……、」

ぽた、と涙の様に汗が床に落ちた。
足が動かない。何かに縛り付けられている訳でもないのに、動かない。
動け動け、と無理やり脚を動かしてみれば、足の骨の位置がズレたかのような激痛。
逃げられない。追いつかれる。
死にたくないとは、思う。殺されるなら、仕方無いとも思うけれど。

「…、」

助けてとただ一言言って誰かが助けてくれたなら、一緒に逃げてくれたなら、良かったのに。
諦念と絶望に蝕まれるまま、息を詰める。
死ぬならひと思いに殺せばいい。

追いつかれて尚、殺す様子は窺えない。
ただ、ただ、そこには漠然とした恐怖と闇が広がっている。
後ろにぴたりとくっついているのは一体何なのか。

「ぁ、…」


こわ、  い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/07(日) 21:59:34.89 ID:HRZUR9yAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/07(日) 22:04:17.04 ID:XYK7xVqd0<>
ドラッグストアから帰った垣根は、困惑していた。
自分が部屋を出る時には、彼女は眠っていた。
そこで悪夢でも見てしまったのか、帰ってきた自分に抱きついて、それから離れない。
もう五分も経過した。怖い夢を見たのなら内容を吐露すればいいのに、そういうこともなく。

垣根「……何だよ」

そう声をかけて、垣根は袋を一旦適当なテーブルへ放る。
見事に着地したのを見、部屋のドアのオートロックが作動しているかどうか、視線を一度だけそちらにやって確認した後、ため息をついた。
不意に彼女が一言だけ口にしたのは、イタリア語で『助けて』。

垣根帝督は、人を慰める事が苦手だ。
経験など無かったし、慰められたこともほとんど無かったから。
気休め程度の言葉なら、かけられない方がむしろ苛立たなくて済む。
どうしろというのだ、と困惑のままに、垣根はフィアンマに何があったのかと問いかけた。
混乱しているのか思考が回っていないのか、応える声は日本語ではない。
イタリア語はそもそも話せる垣根は別に困らず、そのまま言葉を促す。

フィアンマ「…怖い夢を、」

垣根「……」

フィアンマ「…死ぬ、より。恐ろしくて、」

垣根「……」

何と言葉をかければ最適なのか、わからなかった。
その辺りの女を口説く用の猫かぶり言葉ならいくらでも知っているが、それを言うには自分が嫌だ。






垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 23:12:44.54 ID:El1zzBAIO<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/07(日) 23:22:15.98 ID:ykf+UwWSO<> 抱きしめる。

…話すと案外楽になったりするぞ

無理そうなら、ずっと起きて抱きしめて、手も握ってる。だから安心しろよ。お前の恐いものから守ってやるから <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 12:37:47.66 ID:C7IS9heJ0<>
まだ創ってあげていないから、フィアンマは隻腕で。
左腕しかなく、それでも怯えのままに抱きついてくる彼女を抱きしめ、抱きしめ返し、垣根は努めて優しい声音で言う。

垣根「…話すと案外楽になったりするぞ」

されたことがないから、というのは理由にならない。
人間性とは、想像力の問題なのだから。
垣根が幼い頃、悪夢を見た時にされたかったことをすれば良い。

フィアンマ「……、」

垣根「無理そうなら、夜中だってずっと起きて抱きしめて、手も握ってる。だから安心しろよ。お前の『恐いもの』から守ってやるから」

自分が傍に居る。
だから、もう怖い夢に怯えることはない。そんな夢は見させない。
そうきっぱりと宣言して、垣根はフィアンマの背中をさすりつつしっかりと抱きしめる。
こうして密着すればする程、如何に化物染みた力を持っていようと、自分と同じ歳の細い少女だということがよくわかった。
罪の意識から救ってやる、と言ってくれた時は、存在が大きなものに感じられたのだが。
フィアンマは垣根から離れることなく、やはり日本語で話す事に気が回らないのか、呟きを重ねるように話す。

フィアンマ「…恐ろしいものに追いかけられた。が、…足が固められていて、動けなかった。……助けてくれる人間など居なかったから、捕まれば死ぬのだろうと思ったのに、殺されず、……恐怖だけが満ちて、」

垣根「…」

肌の白さとはまた別の意味で非常に顔色が悪いフィアンマの髪を撫で、垣根は呆れた様にゆっくりと息を吐き出す。

垣根「助けてくれそうな人間なら一人居るだろうが」

フィアンマ「居ないさ。作らないように生きてきた」

垣根「俺はランク外か? ああ?」

フィアンマ「……」

目を瞬かせる彼女に、本当にランク外だったようだと垣根は肩を落とす。

垣根「…俺の事は救います助けます、でも俺様には何の助けもないっておかしいだろうが。お前が助けようと思ってる相手から助けてもらえるとか、思わない訳? 視野が狭いな」

何やら小っ恥ずかしい事を言ってしまっている、という自覚はありながらも、文句を告げる。

垣根「お前か俺が死ぬまで、俺の罪をどうにかしてくれるって言っただろ。なら、俺は俺が死なないように気をつけて、お前が死なないように守ってやる。ついでに、死ぬに限らず精神的やら身体的やら、色色とな。死ななくても再起不能になられちゃ困るしよ。サービスってやつだ、嬉しいだろ」

フィアンマ「……帝督」

垣根「急に名前呼ぶんじゃねえよ」

フィアンマ「お前は女にモテそうだな」

垣根「実際モテてた、ってそうじゃないだろ、真面目な話してるのにテメェは、」

フィアンマ「頼っても良いのか」

垣根「…>>235」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/08(月) 14:25:56.55 ID:wpDrKU3r0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/08(月) 14:27:02.04 ID:wpDrKU3r0<> わたしは…子供のころ…レオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」って
ありますよね…あの絵…画集で見たときですね。

あの「モナリザ」がヒザのところで組んでいる「手」…あれ……初めて見た時…
なんていうか……その…下品なんですが…フフ…………
勃起……しちゃいましてね…………
「手」のとこだけ切り抜いてしばらく……部屋にかざってました。
あなたのも……切り抜きたい…。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 14:32:40.98 ID:nCH7QLNi0<> ああ、お前は独りじゃない。だからちゃんと俺を頼れ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/08(月) 14:45:45.86 ID:BkYeq+hAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 14:46:22.96 ID:C7IS9heJ0<>
垣根「…わたしは…子供のころ…レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』ってありますよね…あの絵…画集で見たときですね。あの『モナリザ』がヒザのところで組んでいる"手"…あれ……初めて見た時…なんていうか……その…下品なんですが…フフ…………勃起……しちゃいましてね…………"手"のとこだけ切り抜いてしばらく……部屋にかざってました。あなたのも……切り抜きたい…」

フィアンマ「…」

垣根「お前がテンパらせるから昔の事思い出した上に変な事口走っただろうが。……お前の綺麗な―――ああくそ、違ぇよクソボケ。……お前の手なら、いくら引いてやったっていいってことだ。頼りたきゃ好きにしろ。強制はしねえ。だが、頼る相手は居ないなんて発言は金輪際赦さねえぞ」

フィアンマ「…愉快なヤツだ」

小さく笑って、垣根から離れる。
そんな彼女の顔色は、垣根が帰宅した当初よりだいぶ元気そうなもので。
元気になったならいいか、と結論付け、垣根はそっと離れると買ってきたものを使いやすいよう少しバラした。
購入してきたものの内、常備薬の類は水で飲めるもの、水無しで飲めるものに分類し、適所にしまう。
消費期限の長い栄養食品も適所にしまい、鎮痛剤を分類し始めた。
一番効くもの、一番内臓に負担の少ないもの。

フィアンマ「鎮痛剤か」

垣根「ああ。お前痛いの駄目なんだろ」

フィアンマ「よほどのマゾヒズムでも持ち合わせていない限り、人間は痛みを忌避するものだ」

垣根「お前、ある意味ものすごく人間らしいよな」

組み立てた演算式を頭の中で再生しながら、垣根はぱきぱきと鎮痛剤の錠剤を取り出していく。
本来沢山飲んではいけないのだが、痛みを伴う施術を自宅(病院以外)でやる場合は不可抗力といったところか。

垣根「準備完了、と。…心の準備は?」

コップに水を溜め、錠剤達と共に差し出しながら、垣根はフィアンマを見る。
深呼吸を繰り返して落ち着いたのか、先程の様なパニックの様子は見られない。

フィアンマ「…>>240」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 15:11:32.54 ID:/LNk5uJSO<> 上々。いつでもいける <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 15:15:53.16 ID:EYsoeHOd0<> >>239 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/08(月) 15:51:10.44 ID:BkYeq+hAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 15:51:15.99 ID:C7IS9heJ0<>
フィアンマ「上々、といったところか。いつでもいける」

垣根「そっか。じゃあ、これ呑め。寝てる間に全て終わらせておいてやる」

フィアンマ「……」

信じるぞ、とぼやいて、フィアンマは錠剤の数々を受け取る。
垣根が成分を見て飲み合わせを考えた量の為、まとめ呑みではあるがそんなに身体へ害は出ない。
他人に意識の無い自分の身体を自分の意思で任せるのはこれで二度目だな、とフィアンマは思う。
その二回共、相手は垣根帝督で。神の思し召しというやつだろうか、などと彼女は考えてみる。
錠剤を口に含み、その苦味が定着してしまう前に、水で飲みくだす。
胃が痛むのはあまり良くないから、と垣根に差し出された牛乳も呑む。
二時間程待っていると、強力な眠気が頭をがつんと殴った。非常に眠い。

フィアンマ「……帝、督」

垣根「、…な、…何だよ」

フィアンマ「…置いて、行かないか」

垣根「あん?」

フィアンマ「治療、して。それから、…置いて行かない、か?」

垣根「置いていかねえよ。言っただろ。俺の帰る場所はこのホテルの部屋位だって」

寝ちまえ、と垣根はフィアンマの背中を撫でる。
段々と強制的な眠気に意識が支配され―――右方のフィアンマは、静かな眠りに堕ちた。


垣根「誰が置いて行くかよ、」

傷をつけなければ、再生は出来ない。
だから、心の痛みを無視して、垣根はフィアンマの左肩を少し傷つける。
そしてその箇所にぺたりと触れると、演算を行って腕を構築していった。
知らず知らず、独り言が漏れ出ていく。
作業に没頭しながら、少女を救う。少女との短い思い出を頭の中に思い浮かべて。
その姿は、或いはかつての一方通行に酷似していた。

垣根「俺以外に味方が居ないんだろうが。頼る相手も、味方も」

人間の腕の組織は複雑で、演算式を進めていく度に、頭が痛い。

垣根「俺にだってテメェしかいねえよ。何だってそれがわからねえ。何が悔いがあるのか、だ。何が未練だ。学園都市にそんなものある訳ねえだろ。俺に楽しい思いをさせてくれたのは、お前だけだ」

愉しい思いじゃなくて。楽しい思い出。
自分を心から理解しようとしてくれる人間は、少なくとも今の自分にとって、彼女だけ。彼女ただ一人。
これは恋だとか愛だとか依存だとか、そんな簡単な言葉で割り切れる感情じゃない。

垣根「俺を見くびるな。この俺を、学園都市第二位『未元物質』―――垣根帝督を」

思ったように上手くいかない。途中で諦める訳にもいかない。
これは後で胃液を吐くな、と思いながらも複雑な演算のストレスに耐え、続ける。

垣根「俺は気に入らないものは壊す。腹が立ったら殺す。それが悪だ。……だから、お前が苦しんでる状況<気に入らないもの>は、壊す」




フィアンマが目を覚ますと、垣根は自分の隣でぐったりと眠っていた。
敷かれた新聞紙には少しの血液が飛び散っている。
右腕に、久しく感覚があった。ぎこちないが、動かせる。

フィアンマ「……」

まるで奇跡の前借りだ、と思いながら、フィアンマは鎮痛剤で揺らぐ意識を何とかキープし、ふらふらと片付けをした。
リハビリも兼ねて、右腕もちゃんと使いながら。
動かしている内に、それが元から彼女の腕であったように、その未元物質から創られた人体組織はよく馴染んだ。
片付けを終え。眠る垣根の背中に毛布をかけ、フィアンマは小さく息を吐きだした。まだ、頭が怠い。

フィアンマ「…やはりお前は天使かもしれんなぁ、」

自分に福音を授けた少年の背に、今、翼は無かったが。
思ったままにぼやくと、彼女は再びベッドに倒れ込んだ。垣根が隣りに居るのも構わず、そのまま眠り始める。




フィアンマと垣根の見ている夢の内容(アバウト可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 16:37:28.45 ID:/niLyXPU0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/08(月) 16:43:06.29 ID:xhKJGg6i0<> 垣根とフィアンマの子供がいる <> ゆめ  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 17:10:24.24 ID:C7IS9heJ0<>
うっすらと目を開けた垣根は、赤ん坊の泣き声でしっかりと目を覚ました。
そして立ち上がると、壁を伝ってベビーベッドに近寄る。
泣いていた赤ん坊を抱き上げてあやす。不思議と違和感無く、この子供は自分の子供だと思えた。

「…こういう直感って普通女が持つもんじゃねえの」

ぼやきながら、赤ん坊の顔を覗き込んでみる。
ようやっと泣き止んだ赤ん坊は、金色の瞳を向けていた。
地味に重い。もしかすると赤ん坊ではなく幼児なのではなかろうか。
そんなことを思いながら、ロクに抱き方もわからないままに、どうにか落とすまいとその重みに堪える。
とりあえず、一旦ソファーに座る。幾分か楽になった。


右方のフィアンマはのろのろと起き上がり、赤ん坊の楽しそうな声で意識が醒めた。
何となく呼ばれるまま、導かれるままに歩いていくと、不慣れそうに幼児をあやす垣根の姿が目に入った。
東洋人らしい肌と、自分によく似た金色の瞳。
髪の毛は垣根の地毛に似てか、茶色がかった黒っぽい色。

「さっきまで泣いてたんだぜ、コイツ。うるせえの何の」
「子供の前で汚い言葉を使うのは感心せんな」

口に出されずとも直感的に何となく。
この子は垣根と自分の間に産まれた子だな、とわかる。
そっと手を差し出してみると、存外強い力で指を握られた。

「あー」
「喃語ってやつか」
「親がわかるんだろう」
「うー」
「腹減ってんのか?」
「いや、ただこの状況が気に入っているだけのようだが」
「分かんのかよ。母親ってすげえな」
「あくまで直感だ。というよりも、腹が減っていたら泣くものだろう」

垣根に手渡され、フィアンマは背筋を伸ばし緊張した気分で幼子を抱く。
その子どもは両親が隣に居て嬉しいのか、その感情のまま、嬉しそうに『あー』と言った。

「お前に似たよな」
「そうか? お前にも似たと思うが」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/08(月) 17:10:25.31 ID:BkYeq+hAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 17:15:42.79 ID:C7IS9heJ0<>
ほのぼのとした気分で目が覚めた。
同時に目を覚ました二人は、各々理由は違えど身体のダルさに起き上がろうとしない。
あのような夢を見た理由は、くっついていたからかもしれない。

垣根「……変な夢見た」

フィアンマ「どんな夢だ」

垣根「俺がお前とガキ作ってて、そのガキ育ててる夢」

フィアンマ「…俺様も同じ夢を見た」

恋人じゃないんだから、と内心で同時にぼやき、先に垣根が起き上がる。
ベッドに座ったゆうるりと伸びをした垣根は、欠伸を噛み殺す。
吐いてしまうかと心配したが、死んだように眠っていたことでストレスは多少解消されたようだ。

垣根(ま、俺にとっては悪い夢じゃなかったが)

垣根は『置き去り』出身で、親が居なかった。
故に幼少期、たとえば大覇星祭などで親と食事をしている子供を見て、羨ましいと思った事もある。
だが、それは遠い場所での出来事。

垣根(そもそも、この状況でガキが産まれたとして、そのガキが幸せになれるとは思えねえな。親の両方が追われてる身って)

そこまで考えて鼻で笑い、だから自分はそういう目でフィアンマを見ている訳ではないのだと垣根は首を横に振る。
まだいまいちだるさはあったが、もう一眠り、というほどではない。むしろ寝飽きた。

垣根「何か食う?」

フィアンマ「…>>249」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 17:17:42.45 ID:/LNk5uJSO<> ドーナッツ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/08(月) 17:20:56.23 ID:uL4r1yJT0<> オマエを <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 17:35:34.84 ID:C7IS9heJ0<>
フィアンマ「…お前を」

垣根「…俺?」

フィアンマ「…間違えた。鶏肉料理が食べたいところだ」

垣根「普通腕プラス命の恩人と鳥間違えるか? あ? 翼か? 翼かコラ。ぶっ倒すぞテメェ」

ぎりぎり、と歯ぎしりする垣根を見上げ、フィアンマは焦る様子も謝る様子もなくだるそうに起き上がる。
そしてベッドに手をついて立ち上がり、垣根に近寄った。

フィアンマ「冗談だよ。お前も疲れて眠っていたようだが、……苦労をかけた。お前が創ってくれた右腕はリハビリがてら動かしてみたが、今ではきちんと馴染んでいる。不便さは解消された。感謝している」

垣根「…ならいいけどよ」

面と向かって感謝していると言われてしまえば、口ごもってしまう。
お礼を言われる事に慣れていない垣根はそれならいいともごもごと呟き、食糧を見てみた。
いくつか残りはあるものの、料理を作るには材料が今一つ足りない。

垣根「思ったより無いな。…歩けるか?」

フィアンマ「脚には何の問題も無い。歩ける」





水を呑み、休憩を取った後。
二人は夕飯に使う食材を探しに、近くのスーパーマーケットまでやってきた。
以前ジャガイモを箱で買って痛い目にあった場所である。

垣根「鶏肉が一番身体に良いらしいな。次が豚肉」

フィアンマ「ほう」

垣根「豚肉はビタミン、鶏肉はタンパク質が豊富。一番身体に良くないのは牛肉だ」

フィアンマ「どれにしろ摂取量や料理法に因るだろう」

垣根「まあな。鶏肉が身体に良いです、なんていっても毎日鶏の唐揚げじゃ身体に悪い」

さて何を作ろうか、と二人で悩む。
何だかんだで、気付けば今日は朝食も昼食も摂っていないのだ。





今日の夕飯(鶏肉料理)>>251-252 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/08(月) 17:39:26.76 ID:pJLBqcM5o<> から揚げ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 17:59:57.67 ID:/LNk5uJSO<> 焼き鳥丼 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 18:25:40.12 ID:po86KglS0<>
その事実を認識してまうと、先程以上にお腹が空いてくる。
沢山食べよう、と欲望のままに決めた二人は大きい鶏肉パックを購入した。
米を探すと偶然にも温めるだけのものを発見したので、それも購入する。
足りない分の調味料も購入し、ホテルに戻った二人は無言のままに調理を開始した。
調理という作業には非常に時間がかかるが、それも二人だと早く進み、終わる。

レトルトのご飯を温め、深さのある器によそう。
そこへ水気をきったレタスを軽く敷いて、具を乗せる御飯は出来上がり。
鶏肉はそれぞれ一口大、一領域は大きめの一口、もう一領域は小さめの一口。
小さめの方には、醤油と砂糖、酒やみりんを程よく調合した甘めのタレを塗りつけながら丁寧に焼く。
大きめの方は片栗粉に塩やチキンパウダーなどを混ぜた唐揚げ粉の上で転がし、熱した油へそっと投入する。
焦げないよう、しかししっかりと味が付くように焼いた焼き鳥は、等分して先程のご飯の上に並べる。
少し多めのタレがレタスを伝い、やがてその甘しょっぱい味がご飯に染みて甘みを引き出す要となる。
もう片方のから揚げの方は揚げたてのそれに霧吹きで清潔な水を数度吹きかけると、食べるのに時間がかかってもしんなりしない。
仕上がったから揚げはキッチンペーパーでよくよく余計な油っ気を取った後、こちらも等分して皿によそう。
後はスプーンやフォークを添えて運べば、食卓が出来上がった。

垣根「やっぱり右腕あるとお前作業早いな」

フィアンマ「元の速さに戻ったというべきか」

感覚も以前の腕と同じ。
垣根に創ってもらった腕を自分のものとして自在に操りながら、フィアンマは淡々と食事を続けた。

垣根「指先の調子も良さそうだな」

フィアンマ「そうだな」

垣根「時期的にソレ、クリスマスプレゼントってことでもいいな」

食事を終え、水を飲んで食器を洗い、片付ける。
そんな事をぼやいてベッドに座り食休みを取る垣根に対し、隣のベッドに腰掛けたフィアンマは『メジャーハート』を両腕で抱きしめながらゆっくりと首を傾げた。

フィアンマ「クリスマスプレゼントか、なるほど。お前は何か欲しい物は無いのか」

垣根「欲しい物? >>255」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/08(月) 18:39:14.87 ID:Zp6O6OSo0<> 静かに暮らせる場所 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/08(月) 18:46:05.02 ID:uL4r1yJT0<> おm・・・悪い忘れろ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 19:32:28.29 ID:2z0NRukF0<>
垣根「欲しい物? おm………悪い、忘れろ」

フィアンマ「何だ、何かあるんじゃないのか?」

垣根「…ガキじゃあるまいし、お前に何か欲しいって言ったらサンタクロースさんが届けてくれるーって訳もねえだろ。言う必要が無い」

フィアンマ「お前は悪い子だしな」

垣根「サンタ不存在云々の前にムカつくなその言い方」

はー、とため息をつく垣根を見つめ、フィアンマはぬいぐるみを抱きしめる。
先程散々眠ったので、今夜は眠れないかもしれない。

フィアンマ「もし風俗に手を出したいのであれば金は出すが」

垣根「」

嬉しくない意味で言葉を失った垣根の様子を眺め、フィアンマはぬいぐるみの頭部分を撫でる。
垣根はしばらく黙った後、思わず声を荒げた。

垣根「そうじゃねえだろ! そうはならねえだろうが!!」

フィアンマ「以前、『俺についてきてヤられるとかそういう危機感は無かった訳?』と言っただろう。その性欲を解消するにあたって機会を望むかと思ったのだが…あれは冗談で、実は日本人の女で無ければ勃たんのか」

垣根「冗談じゃなくてその気になれば勃つ。じゃなくて、…聖職者、加えて女がそういう事口走るなよ」

フィアンマ「それは男女差別に当たるんじゃないか?」

垣根「………」

何で急にエロい話題になったの? と首を傾げ、垣根は再びため息を吐き出す。
ため息をつくと幸せが逃げるぞ、という迷信を言われ、お前のせいだよと肩を落とした。

フィアンマ「安心しろ。お前が所謂『ヤリチン』だとしても俺様は軽蔑せんよ。特殊な生活環境だったのだから仕方あるまい。まして、お前は十字教徒ではないのだからな。俺様の考えを押し付けるつもりも無い」

垣根「その思いやりいらねえからな」

垣根帝督は童貞である。
女の子には事実モテていたが、それとセックス経験はイコールではない。
ただ、軽い見た目をしている為に勘違いされやすいが。

フィアンマ「わかった。…物品では味気無い。お前が恋をした時、その成就を手伝ってやる」

垣根「恋、ね…」

そんなものするものか、と思いながら。
垣根はそっぽを向いた。

フィアンマ「好きなタイプは無いのか。男女どちらでも」

垣根「男はそういう意味では好きにならねえ、絶対にな。…好きな女のタイプ…」

今まであまり深く考えたことは無かった。
考え込む垣根を見、フィアンマはぬいぐるみを枕元に置いた。

垣根「>>258」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/08(月) 19:40:04.64 ID:Zp6O6OSo0<> 案外お前みたいなやつがいいのかもしれないなぁ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 19:57:20.78 ID:TkOQFMQIO<> ↑ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 20:12:28.26 ID:2z0NRukF0<>
垣根「案外、お前みたいなやつがいいのかもしれないなぁ」

意識し過ぎることもなく、べたべたし合う事もなく。
頭の悪い言動を取る事もなく、軽口を叩きあえる。
自分が落ち込めば支えようとしてくれて、辛そうなところを見れば助けてやりたいと思える。
そんな相手がいい、と垣根は思う。
そもそも無感動気味な自分ば恋のときめきを得られるタイプではないし、夢見がちな性格でもないので、運命の相手云々などという妄想はしない。
そこにいてくれれば、安定出来る相手。
そして、いつも庇護する必要性までは無い、か弱くはない存在。
かといって性格が合わなければ一緒に居たくないし、強みばかりを見れば、自分が居なくても良いのではないかと思う。
垣根が持っている孤独感は、ピースが一つだけ欠けたパズルのようなもの。
誰でもしっかりと当てはまる訳ではなく、選ばれた中の選ばれたものしか当てはまらない。
手を伸ばせばすぐに届いて、手を引けばそれにあわせてくれて。それに無理の無い人物。
自分の罪深さ全てを知って尚怯えずに向き合ってくれる、優しさと強さを兼ね備えている人物。

垣根「お前だって人間だし、欠点はそれなりにあるんだろうけどよ。少なくとも、俺にとっては欠点じゃねえし、時々ムカつくにしても、それは日常会話をしていれば誰を相手にしたって有り得る事だ」

この距離感を失いたくないから、あえてフィアンマは計算に入れない。
たとえ見目も内面も自分のタイプだと、そのパズルピースを埋める者だとしても、それは思わないようにする。
他にもっと良い相手がいるかもしれない。
それより、何より、垣根はフィアンマとそういう仲になるのが怖かった。
自分は彼女と一緒に居たいから、勘違いしてるんじゃないか。
彼女が受け入れてくれたにしても、それは彼女が独りになりたくないから、受け入れるのではないのか。
立場が立場で、お互いに孤独だからこそ、依存の感情を勘違いしてしまうのではないか。
正してくれる人はどこにも居ない。
この場所に、この二人の関係を正当に判断してくれる『大人』は居ない。

垣根「多分、俺が恋っていうか、まあ、恋愛って意味で好きになるとしたら、お前みたいなタイプの女なんだろうな、多分」

フィアンマ「……それは、俺様では駄目なのか」

垣根「…え?」

フィアンマ「いや、何でもない。風呂に入ってくる」

言うなり、立ち上がった彼女はシャワールームに消えた。
割入っても問題無いのだろうが、モラル的に考えてそれはしないでおく。

垣根(…今、『俺様では駄目なのか』って言った、よな?)

確信が持てない。
仮にそうだったとして、どうしてそんな言葉を吐いたのか。

垣根(何なんだよ、急に。というか何でこんな話になったんだ…)

ベッドに倒れ、毛布を頭からかぶる。
思考を冷静にまとめようと、一度深呼吸をした。

垣根(俺は、…アイツの事を)





垣根はフィアンマのことをどう思っている?(例:大切な友人)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 20:14:00.67 ID:DBGvJd5DO<> ksk下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/08(月) 20:15:04.51 ID:xhKJGg6i0<> 好きだけど本当に俺なんかが好きになっていいのか
迷っている <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 20:43:11.59 ID:2z0NRukF0<>
垣根(…好き、なんだろうな)

たかが友人の為に、自分が死ぬ気で演算式を組み立てるなどと、そんなことは有り得ない。
自分はきっと、彼女の事が好きなんだろう。
好きになるまでにかかった日数は短いものだが、恋など案外そんなものかもしれない。
だけれど、自分はどうしようもない罪人だ。
人殺しで、罪深くて、そのクセして、今日まで自殺することすら出来なかった臆病者だ。
重い罪を犯したくせに、あれだけ長い間暗部で生活していたくせに。
光を求める人間を罵倒して、ありったけの凶器を、狂気を向けた。そんな人間が、人を好きになっていいのか。

『……お前はまだ自分を許せないだろうが、…許されてはいけない人間ではない』

垣根「……」

『…何が、聖職者だ。…そんな資格も無いくせに、…驕るな』

泣いて苦しみにうつむく自分に八つ当たりをされても、彼女は自分を救うと約束した。
救いようのないこんな俺を、それでも助けてみせると。

『……帝、督』
『…置いて、行かないか』
『治療、して。それから、…置いて行かない、か?』

泣きそうな声を出されて、迷いなく頷いた。
自分はフィアンマのことが好きだ。ネックになるのは、やはり、重い罪。
迷っていた。これから先もずっと一緒に居るという約束をしたのだ、告白したっていいだろう。

でも、自分なんかが、彼女と居て幸せだと思って―――良いのだろうか。



シャワーのお湯で髪を洗いながら、フィアンマはゆっくりと息を吐き出す。
馬鹿な一言を口走ってしまったものだ。

フィアンマ「…俺様では、…駄目に、決まっているだろう」

好きなタイプに喩えられたから何だというのか。調子に乗ってはいけない。
そう自戒して、彼女は髪を洗う。液体石鹸の溶けたお湯が目に染みた。
自分には、女としての魅力は無い。身体的にも、精神的にも。
そんなものは要らないと思っていたから、身に付けようと思った事もない。

『…話すと案外楽になったりするぞ』
『無理そうなら、夜中だってずっと起きて抱きしめて、手も握ってる。だから安心しろよ。お前の『恐いもの』から守ってやるから』
『助けてくれそうな人間なら一人居るだろうが』
『……お前の手なら、いくら引いてやったっていいってことだ』

その事を、こんなにも惜しく思った事は無かった。

『多分、俺が恋っていうか、まあ、恋愛って意味で好きになるとしたら、お前みたいなタイプの女なんだろうな、多分』

フィアンマ「…あくまで俺様の様な、というだけで。本人という意味ではない」

自分は罪人で。彼もまた罪人だ。
手を伸ばせば届く距離で、だからこそ我慢しなければ、と思う。
それに、告白などしたところで、戸惑われることだろう。
こんな凹凸の無い身体に性欲を抱けるとも思えない。自分には価値が無い。

服を着て、シャワールームから出た。
出てきたフィアンマを見、垣根は起き上がってベッドに座る。
そして彼女を手招いた。

フィアンマ「何だ」

少し迷った後、フィアンマは垣根の隣に少し距離を空けて座る。

垣根「話がある」

フィアンマ「…話せば良いだろう」

垣根「……、」

フィアンマ「…何を言いよどんでいる。重要な用件でないのなら俺様は寝るぞ」

先程の一言は聞かれてしまった。もしかすると、一緒に居たくないと言われるのかもしれない。
それはそれで仕方がないことだけれど、聞きたくなくて。フィアンマはやや突き放すようにそう告げた。

垣根「>>264」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/08(月) 20:59:45.78 ID:Zp6O6OSo0<> ksk↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/08(月) 21:00:49.89 ID:xhKJGg6i0<> 結論が出た俺はお前が好きだ。異論は認めない <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 21:15:35.41 ID:2z0NRukF0<>
垣根「…結論が出た。俺は、お前が好きだ。異論は認めない」

好き勝手やってきた人物が、今更自分の想い一つ成就出来なくてはただの笑い話だ。
垣根はそんな結論を叩き出し、ストレートに告白の言葉を口にした。

垣根「友達だとかそんな生ぬるいアレじゃねえぞ」

フィアンマ「………」

当たって砕けるのなら、それも受け入れる。
多分それでも自分は彼女と旅をするのだろうし、断られることに対する恐怖は無かった。
フィアンマは沈黙したまま、思考を巡らせる。
先程、シャワールーム内ではひたすらに悩んでいた。自分を否定した。
自分を好きになってもらえる訳がないから、そんなことは思わないようにしようと。
返事をしなければならないと思うのに、言葉が出てこなかった。というよりも、声が詰まる。
人から告白されたことは無かった。いや、興味の無い女から一度あったかないか位のもの。

垣根「…、」

フィアンマ「……明日、」

垣根「今答えろ。返事を引き伸ばしたって、どのみち住居が同じなんだ、意味が無い」

明日返事をする、という発言を先読みされた。
つくづく理解されてしまっている、と思いながら、フィアンマは沈黙する。
一緒に居て欲しいと思った。有り体に言えば好きだ。
だが、この告白に応える事で、かえって何か悲劇を呼ぶのではないか?
自分は賭博に強い自信があるが、それでも、人が絡むと弱くなる。
此処で応えて、仲を深めて、そして彼を喪えば、傷つくのではないのか。

垣根「……別に、断ったって旅は続けるし、お前の傍に居てやるよ。俺が好きだからお前にも俺を好きになって欲しいっていうのはエゴだしな。叶うに越した事は無いが、無理させることじゃない」

フィアンマ「…俺様は、…>>267」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/08(月) 21:24:24.63 ID:Zp6O6OSo0<> やはり帝督が好きなんだと改めて思った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 21:26:21.18 ID:/LNk5uJSO<> まだ関係を変えたくない。

それに、 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/08(月) 21:51:57.67 ID:2z0NRukF0<>
フィアンマ「…俺様は、…まだ関係を変えたくない」

垣根「…」

やっぱりか、と垣根は思う。
心のどこかで諦めていたから、ショックは少なかった。

フィアンマ「それに、」

垣根「それに、何?」

フィアンマ「お前と違って、俺様は取り返しがつかん重罪人だ。お前と違って、決して許されることは無い。そして、お前と関係を深いものに変えれば、いつか喪う時の傷が深まって増すだろう。希望とは賭けだ。ここで結ばれて、愛し合ったとして、その先はあるのか? 無いじゃないか。どこにも見当たらない。何かを望めば何かを捨てる事になる、何かを望めばいつかそれに傷つけられる日が来る。お前は怖いと思ったことはないのか。無いのだろうな。だからそんな簡単に言えるんだろう。……俺様とお前が笑い合って恋人として過ごす未来なんて来ない」

垣根「…それは、『神の如き者』としての預言ってヤツか?」

目を伏せ、垣根は問いかける。
フィアンマは少しだけ迷って、小さく頷いた。
勿論違う。しかし、垣根が自分を諦めてくれればそれでよかった。

垣根「…なら、やっぱり俺はカミサマと相性が悪いみたいだ」

フィアンマ「…?」

垣根「俺は、気に入らないものは壊すし、気に入らないヤツは殺す」

フィアンマ「…」

自分を殺すのだろうか、とフィアンマは思う。
垣根は言葉を続けた。

垣根「まだ変えたくないって事は、そういう意味での好意はあるんだよな」

フィアンマ「…」

垣根「無言は肯定を示すって事位わかってるだろ。…先が必要なのかよ。そんなに確実なルートが歩きたいのか? 現実はゲームじゃねえんだ。思いにもよらない事が次々と起きるし、悲劇も惨劇も、人間の意思なんてお構いなしに起きる。それがカミサマとやらのご意思なんだろうよ。……お前は怖くないのかって言ったよな。怖いに決まってんだろうが。お前が勝手に一人で死んじまうなんて考えたくもねえよ。考えてるけどな。逆に聞くぞ。…お前は、この関係を続けて、俺が先に死んでも後悔しないのかよ。絶対に後悔しないって言えるのか。賭けの場で、賭け金を失いたくないから何にも賭けなくて、一切の配当が得られないままいつか後悔する、そんな人生が良いのかよ。結ばれて愛し合って、その先は自分達で作るんだろうが。取り返しがつかない? 馬鹿言うな。俺だってつかねえ。人を殺した人間に取り返しがつく訳ねえだろ、相手に謝れないんだから」

フィアンマ「…、…」

垣根「カミサマとやらが決めた運命のせいで俺とお前が好き合えないんなら、俺は神だって殺してやる」

フィアンマ「帝と、」

垣根「もうそろそろ、お前を救う気の無い神様なんざ捨てて、俺だけ信じてろ」




フィアンマはどうする?>>+2
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/08(月) 21:53:29.81 ID:Zp6O6OSo0<> ksk↓
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/08(月) 22:00:20.48 ID:uL4r1yJT0<> 泣いて抱きつこうしたら、転んでキス <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/08(月) 22:46:40.62 ID:BkYeq+hAO<>
《えんだああああああいやあああああ

明日の夜に来ます。
加えて、大変な時に庇ってくださった読者様方、ありがとうございました。
おやすみなさいませ
》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/08(月) 23:25:01.25 ID:Zp6O6OSo0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/08(月) 23:27:04.97 ID:uL4r1yJT0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 23:55:22.39 ID:/LNk5uJSO<> 乙。何かまた終わりそうな気配が……ッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 06:57:34.17 ID:Hdn8w1H/0<> 神浄×フィアンマスレを越えることはできないのか……!! <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 19:40:44.60 ID:pfcocsCm0<> 《>>274様 大丈夫です、このスレは…! >>275様 出来れば、越えたい…です 4スレとか夢です》


フィアンマは、或いはそんな言葉を求めていたのかもしれない。
神を捨てろと、強制力を持った言葉が欲しかったのかも、しれない。
結ばれて愛し合って、その先は自分達で創る。
運命を定める残酷な神を殺してでも自分を愛してくれるというのなら、踏み出す勇気とて持てるというもの。

フィアンマ「…っ、」

じわ、と涙が滲みだし、意識に逆らって視界が歪んでいく。
泣いても困らわせるだけで意味などないというのに、ぼろぼろと涙が溢れてズボンを濡らす。
空けていた距離を詰め、抱きつこうとして、抱きしめようとして。
右腕の無い状態に慣れ始めていた身体のバランサーは見事に異常警鐘を鳴らし、体勢を崩した。
コンマ一秒垣根はフィアンマをじっと見つめ、躊躇なく受け止めた。
予期せぬタイミングの予期せぬ動きで、唇が、重なる。

軽いリップ音はしなかった。
ファーストキスはレモンの味というのは嘘じゃないか、と二人は思う。
先程の夕飯の、舌に染み込み残った甘い味がした。
お互いに硬直した後、思い出したように目を瞑る。
まるで恋愛映画初主演の、下手な役者達のようだった。

しばらく唇を重ねた後、舌を絡ませることも差し出すこともなく、口を離す。
たとえその身にどれだけの返り血を浴びていようと、根本の部分ではやや幼い二人は揃って沈黙する。赤面する。

垣根「……」

フィアンマ「……」

事故だ、と弁解しようとして、いやしかし恋人同士になった者、好きあった人間同士が口付けを交わして何の問題も無い為、フィアンマはしばらく黙り込む。
何か言おうとして、羞恥が先走って何も言葉が出てこない垣根帝督。こちらも黙り込む。

垣根「…寝るか」

フィアンマ「………」

こく、と頷いたフィアンマは毛布に潜り込み、ぬいぐるみを抱きしめた。
垣根も烏の行水を済ませてベッドに潜る。




深夜三時。
寝れない。

フィアンマ「…なあ、」

垣根「…何だよ」

フィアンマ「…そちらで寝ても良いか」

垣根「…>>278」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/09(火) 19:44:23.30 ID:0p8SzK6SO<> かそくした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/09(火) 19:45:48.10 ID:w/JK/bTSO<> 一々聞かなくても勝手に入ってこいよ……ったく、ほら <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 20:01:28.04 ID:pfcocsCm0<>
垣根「…一々聞かなくても勝手に入ってこいよ……ったく、ほら」

渋々、といった様子で薄く笑み、垣根はフィアンマを手招く。
きちんと彼女のスペースを空けてくれたようだ。
二人とも平均より細身なので、縦幅さえ入ればベッドに横になるのは問題無い。
今までほとんど人と一緒に寝た経験の無いフィアンマはやや緊張気味に垣根の隣りに収まる。
同じ一枚の毛布を被り、双方共再度目を閉じる。
緊張がそのまま表現されており、間に子供でも横たわれそうな距離が空いている為、一緒に寝ているという感覚はほとんど無い。
フィアンマは仰向けの状態であり、垣根はそんな彼女に背中を向けていた。
本当は向かい合って抱きしめでもすれば一番良いのかもしれないとは思っているものの、彼にそんな精神的余裕は無かった。
胸が無かろうが尻が無かろうが、そういった官能的要素が無いにしても女の子は女の子である。
晴れて恋人同士になったとはいえ、彼女に触れながら眠る勇気は無かった。まだ。

フィアンマ「……」

垣根「……」

そして、寝れない。
フィアンマは数度、垣根の服に手を伸ばしかけ、手を引いて諦める。
これ以上を望むのは、と躊躇しているのだ。

フィアンマ「…帝督」

垣根「…何」

フィアンマ「…いや、…何でもない」

垣根「…そうかよ」

深夜三時半。
まだまだ眠れなさそうだった。

垣根「…なぁ、」

フィアンマ「…何だ」

垣根「…抱きしめて良いか」

緊張しながら、真面目に声を搾り出す。
どうにか蛙の潰れたようなみっともないそれではなく、低い声で出力された。

垣根「……嫌とか、落ち着かないなら良いけどよ」

フィアンマ「…>>281」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 20:28:34.06 ID:pUf5Efg70<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<>sage<>2012/10/09(火) 20:32:27.93 ID:QKBSFYy20<> いいよ。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 20:53:53.95 ID:pfcocsCm0<>
フィアンマ「…いいよ」

もご、と口ごもり気味に言い、フィアンマは垣根の方に身体を向け、大人しくする。
日本語では尊大、ロシア語では傲慢である彼女だが、本国であるイタリア語では、少々刺が取れた話し方をする。
変な学び方したのか、と予想しながら、垣根も彼女の方に身体を向け、先程の言葉通り、抱きしめた。
別にいやらしい事をしている訳でもないのに、やたらと心拍数が上がる。

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「…妙な時間に寝たせいで、寝れねえな」

フィアンマ「…そうだな」

垣根「………」

フィアンマ「……抱き心地は良くないだろう」

肉付きが悪いから、とぼやき、フィアンマは垣根の首元に顔を埋めた。
垣根自身の体臭と、シャンプーやボディソープの匂いが入り混じっている。
眠気がこみ上げてくる訳でもなく、フィアンマはそのままじっとして起きていた。
垣根も眠る気になれず、眠れず、起きたまま、時計の音を聞いている。

垣根「そんなことねえよ。求めてねぇし」

フィアンマ「そうか」

垣根「…お前さ、好きになったヤツって、居たの?」

初恋相手、と問いかけ、垣根はまるで逃がさないとでも言うかのように彼女をしっかりと抱きしめる。
フィアンマはおずおずと抱きしめ返し、昔の事を思い返してみた。

フィアンマ「…>>284」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 21:03:51.12 ID:6UJTN0A9o<> これまでは縁がなかったから実は今が初恋なんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 21:09:22.47 ID:jearr7qV0<> 恥ずかしながら今が初恋だ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 21:31:49.10 ID:pfcocsCm0<>
フィアンマ「…恥ずかしながら今が初恋だ。…初恋は叶わないというジンクスがあるというが、そうでもないようだな」

垣根「…ふーん」

フィアンマ「お前はどうなんだ」

垣根「…俺も同じだけどよ。…何となく気になっただけだ」

手を伸ばし、垣根はフィアンマの髪を触る。
つやつやとしたそれは触り心地が良い。
男と女じゃ違うもんだな、などとかつての部下の髪を思い返しながら、しばらく触れた。
撫でられているのか髪で遊ばれているのかわからないままに、フィアンマはそのくすぐったさに目を細める。

垣根(…しかし、まぁ。…何もかも今更ってのは拭えねえが。…自分の幸せの為に努力するのは、結局のところ自分だけだしな)

暗部に長く身を置いていると、わかる。

自分の幸せは自分が掴み取るもので。
自分の困難は自分が倒すもので。

救われてはいけないと今も思ってはいるが、それでも、幸福になる権利は得られるだろうと垣根は考える。
何より、自分と同じような境遇の彼女に何があろうと愛していると告げた時点で覚悟を決めるべきなのだ。
本当に一方通行の野郎と遜色なくなっちまった、と心中でぼやき、垣根は眠る体勢に入る。
まともに触れた記憶の無かった人肌は温かくて、心地よくて、幸せだった。





翌朝…もとい、翌昼。
昼過ぎに目を覚ました垣根は、退屈そうに彼女の寝顔を眺めていた。
そろそろ国を移動しても良い頃だろうか、と思わないでもない。

垣根「…綺麗な顔してんな」

自分もなかなかに容姿の優れた方だとは思うが、釣り合う程に彼女は美しい。
難点は口を開くと尊大で他人を気後れさせるところだが、自分は不快ではないし、構うまい。

垣根「……初恋、か」

恋以前に人を好ましいと感じた事がまず無かった自分にとっては、新鮮も新鮮な言葉だった。

垣根「…守るだとか救われるだとかは置いておいて。…ヒーローになるつもりはねえ。大事なものは一つだけあればいい」

別に、おとぎ話の騎士の様に彼女を守りたいと願う訳じゃない。
別に、あの男のように一人の少女に贖罪しなければならない理由も無い。

守ってやるとは言ったが、それは言葉としてのもの。
自分には、守る力も救う力も無い。
あるのはただ破壊するだけの力で、それで良いと思っている。
彼女か、自分か。傷つけ、邪魔をするものがあるのなら、徹底的に殺し、破壊するだけ。

垣根「…利己的も良い所だな。…ま、恋愛なんてそんなもんだろ」

二流だろうが三流だろうが、自分は悪人を通す。

フィアンマ「…」

垣根の肩にぐりり、と額を擦りつけ、猫の様にフィアンマが目を覚ました。

垣根「…はよ。とはいってももう昼だけどな」

フィアンマ「ん、…今日は何処へ行くんだ」

垣根「あー…」






垣根はどうする?(言動可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/09(火) 21:32:19.33 ID:crPY+qTDO<> ksk下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/09(火) 21:32:41.77 ID:w/JK/bTSO<> スイスいきたい <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 21:57:57.23 ID:pfcocsCm0<>
垣根「そろそろ他の国に移動しようぜ」

フィアンマ「具体的に希望はあるのか?」

垣根「ん、スイス行きたい」

フィアンマ「そうか」

垣根「その前に飯と…後色色手配しねえとな」

チケットとかホテルとか、と言いながら、垣根はまず食事の準備を開始しようとする。
フィアンマは少し考えた後、手続き一切を任せるからと料理を引き受け、黙々と調理を開始した。
垣根はその言葉に頷き、途中出かけながらも一時間程で全ての用事を済ませる。
取れたのは夕方の便。夜よりは安全度が高いことだろう。
最も、高い場所から墜ちた程度で死ぬ程、自分達はまともな人間ではないが。
自分の荷物を鞄に詰め込んだ垣根は、悩んだ後、フィアンマの鞄に手をかける。
衣服を片付けている最中下着も見たのだが、残念ながら自分と似たような男性用下着だった。

垣根「………」

しょっぱい、と何ともいえない表情で片付けを終え、食事を始める。
残っていた食材を使い切ってしまおうと頑張ったらしい、創作料理ばかりだった。

フィアンマ「全て終わったのか」

垣根「まあな」

フィアンマ「そうか」




食事を終え、最後に色色と見て回り。
荷物を到着先のホテルに送った二人は、ほとんど手ぶらで飛行機に乗り込んだ。
何事も無い筈だったのだ。そう、何事もなく到着する筈だったのだが。
離陸して数時間、後数時間でスイスに到着するから寝ようかな、というところで。

男「手をあげろ!」

男数人の集団が暴れだした。
どう見てもハイジャック犯だ。
こっちは爆弾を持っているんだぞ、と何やら強気な辺り、自爆テロ組織なのかもしれない。

垣根「…チッ」

あまり目立ちたくないのだが、と垣根はフィアンマを見やる。
彼女はというと、マイペースにお外の風景を見ていた。

垣根「……」

マイペース過ぎるだろ、とツッコミたくなったが、ひとまず黙っておく。
テロ組織のリーダーらしき人物は、席の間、通路をうろついては無闇に乗客を拳銃で脅していた。
このままだと予定時刻に到着しないばかりか、この飛行機が墜落する恐れもある。

垣根「面倒臭ぇな…」

男3「ああ!?」

垣根「あ」

うっかり声に出してしまっていた、という表情を浮かべる垣根。
実力に基づいた余裕なのだが、天然の命知らずに見える。

男3「テメェ、見せしめに殺すぞ」

垣根(拳銃で死ぬ訳無いだろ…)

本当に面倒だ、と思いながら、垣根は冷静に男を見据える。





男達はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/09(火) 22:03:00.52 ID:w/JK/bTSO<> 垣根の太もも目掛けて発砲 <> 名無しNIPPER<>sage<>2012/10/09(火) 22:03:12.94 ID://8UJkhj0<> 神浄と同等の力を手に入れた佐天さん(上条さんのパートナー、仕事もプライベートも)と上条さんを人質にとってしまう <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 22:20:49.46 ID:pfcocsCm0<>
男3「見せしめに殺すんなら他にも候補が居た、か。まぁいいか、とりあえずそっちにするとしよう。連れて来い」

リーダー格がそう言うと、他の男が二人の東洋人の少年少女を連れて来た。

一人は黒髪、ツンツン頭の少年。―――上条当麻。
もう一人も黒髪、さらさらストレートの少女。―――佐天涙子。

どちらも有しているのは、神浄と呼称されても違和の無い力。
力が強すぎる二人は、うっかり発動すると、乗客全員を巻き込んで飛行機を墜落させてしまう。

佐天「うう…」

上条「…はー」

フィアンマ(…情けない様だな)

思いながら、フィアンマは動くか迷い。
垣根が重い腰を上げようとした為、渋々、といった様子で。




右手を一度、振った。





フィアンマ「良い出力だったな」

垣根「何さっきの」

ホテルに到着した二人は荷物を受け取り、使いやすいよう適所に片付けながら会話をしていた。
時刻は夜。とりあえず今日はシャワーを浴びて眠り、明日から楽しむことになるだろう。
垣根に創ってもらった腕を基盤にした『聖なる右』は腕の性質(原料:未元物質)を受け、全盛期程とは言わないが、強力だった。
形ももやもやとしたそれでなく、弱体化前の形があるそれだ。不安定ではあるが。

垣根「何かすげえ腕みたいの出てたけど」

片付けを終え、垣根はベッドに座る。
今回はダブルの部屋なので、フィアンマも同じベッドに座った。

あの後、テロリスト達は上条達が秘密裏に処理したそうで。
垣根達は何ら気負う事も後処理に手を貸す事も無く、ホテルへやって来られたのだった。

フィアンマ「『あれ』か? 『あれ』は…」

垣根「アレは?」

フィアンマ「>>293」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 22:23:13.25 ID://8UJkhj0<> ゴッドハンドだキリッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<>sage<>2012/10/09(火) 22:23:49.33 ID:QKBSFYy20<> 幻想殺しに消されたと思っていた力だ。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 22:52:00.39 ID:pfcocsCm0<>
フィアンマ「『幻想殺し』に消されたと思っていた力だ。…まぁ、俺様の力を食い殺す程には強くなかったということか。或いは宿主に戻ったのが原因…?」

垣根「何の話かまったく読めねえけど、お前の持ってる力って訳か」

フィアンマ「そうだな。お前で言えば翼といったところか。何もかも気にせず確実に倒せる保証の上で気軽に使えるのは良いのだが、回数制限がある。普段は普通の魔術を使うが吉だろうな」

垣根「『天使の力』、だっけか。あれを手に籠めて物ぶん投げるのは駄目なの?」

フィアンマ「物騒じゃないか」

垣根「俺にはお前の物騒の範囲がわからねえよ」

そもそも全部物騒だ、とツッコミをいれつつ、垣根はシャワールームに消えた。
部屋に残されたフィアンマは欠伸を漏らし、ベッドの片側に身体を預ける。
ぼふりと身体が沈んだ。どうやら低反発というものらしい。
心地良いが身体を痛めるのではないか、と思いつつ、フィアンマはぬいぐるみを鞄から取り出して抱きしめる。
言うまでもなく、垣根が自分の為に創ってくれた『あれ』である。

垣根が出た後続けてシャワーを浴び、フィアンマは眠ることにした。
垣根はだるそうに片付けをした後、彼女の隣に横たわる。
フィアンマは、やや冷えた垣根の頬を、毛布で暖めた温かい手で触り、あっためてみた。

フィアンマ「冷えているな」

垣根「もう冬だしな」

秋は終わってしまった。
正確には、今日、10月末日である。
その事実を思い出し、フィアンマは垣根を見上げて小さく笑んだ。

フィアンマ「トリックオアトリート」

垣根「は?」

フィアンマ「知らんのか。ハロウィンだよ」

垣根「……」

知識を総ざらいしてみる。
確かこの文句を言われて、お菓子を渡せば悪戯されない、だったか。





垣根はどうする?>>+2

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/09(火) 22:58:05.21 ID:QKBSFYy20<> あえてお菓子を渡さない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 23:00:26.72 ID:YL84lfN30<> 和三盆使用の和菓子を渡し、トリックオアトリート <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/09(火) 23:01:19.45 ID:w/JK/bTSO<> 噛んでたガム出して「はい」べちょとかだったらどうなる事か…

安価なら…じゃあ、悪戯で… <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/09(火) 23:29:10.39 ID:pfcocsCm0<> 《>>297様 うっかり(右)手が滑りますね、恐らく。うっかり》


用意出来ていないだろう、とばかりの様子に、垣根は何となく対抗心を燃やしてみた。
鞄の中には、フィアンマとほんの少しの間別行動していた時に購入した和菓子がある。
スイスに和菓子があることの物珍しさに購入したのだが、そうやら使う時が来たようだ。

垣根「お菓子なら何でもいいんだよな?」

フィアンマ「? あぁ」

垣根は毛布の中から長い腕を伸ばし、自分の鞄を漁る。
そして黒い小さな箱を取り出すと、フィアンマに差し出した。

垣根「和三盆。高級砂糖を使った上生菓子ってやつだ。ま、和菓子だな」

フィアンマ「……」

むむ、とやや不服そうな表情(目立たない)に、垣根は満足そうな笑みを浮かべた。
少々子供っぽいやり取りだが、彼等はまだ十代の少年少女である。

垣根「で、」

フィアンマ「…何だ」

小箱を受け取り、中を覗いた後、お菓子で形作られた苺に一瞬目を惹かれるもぱたりと閉め、フィアンマは垣根を見遣った。
垣根はにやにやとしながら、先程言われた文句を放つ。

垣根「トリックオアトリート。お前が言い出したんだし、用意してないって事は無いよな?」

無ければ悪戯だ、と垣根は楽しそうに言う。
フィアンマはしばし沈黙した。そして、一旦小箱を枕元に置く。





フィアンマはどうする?(+お菓子を渡せない場合垣根がする悪戯の内容も)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/09(火) 23:38:58.21 ID:QKBSFYy20<> かぼちゃを使った手作りケーキ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 23:42:04.72 ID:YL84lfN30<> 貰う気満々だったから用意してなかった

悪戯は着るだけで性感が異常に高まる服(未元物質製)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/09(火) 23:42:31.23 ID:YL84lfN30<> を着せる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/09(火) 23:43:03.82 ID:kGAGL5q50<> 後者で
未現物質使って人並み以上の羞恥心を植え付ける <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/10(水) 00:18:26.54 ID:Ju/PBc8B0<>
フィアンマ「……無い」

垣根「無いの?」

フィアンマ「…貰うつもりはあったが、贈るつもりは無かった。というよりも、そもそもお前が逆に要求してくるとは思わなかったんだ」

垣根「俺だってチョコとか色色、それなりに好きなんだし、想定内だっただろ。吹っかけた責任は取ってもらうぜ?」

不敵に笑い、垣根は起き上がってベッドに座った。
そして能力を使い、未元物質を原料として衣服を形作っていく。
人体細胞を未元物質で構成するとなると苦労するが、衣服程度であればそんなに疲れない。
さっさと作り上げた衣服は、ワイシャツに似たワンピースのようなもので、透け感のある白色をしている。

垣根「…自分で着るか俺に着させられるか選べ」

フィアンマ「…潔く着てやる」

垣根からそのワンピースを受け取り、垣根が背を向けたのを見つつ、フィアンマはやや面倒そうに着替えた。
そういえば女物の衣服を着るのは何年ぶりだろうか、とフィアンマは思う。
色々と考えている内に着替えは終わっていた。下着も、渡されたもの(垣根なりにイメージした女性用のそれである)に着替えた。

垣根「もう終わった?」

フィアンマ「あぁ」

振り向いた先、陰部を布の透けていない部分で隠そうと考えたフィアンマは、自然と乙女座り(ぺたんこ座り)の状態をしていた。
垣根は上から下まで舐めるように彼女を見た後。

垣根「…よし、寝るか」

フィアンマ「……、…そうだな」

悪戯しないのか、と拍子抜けに思いながら、フィアンマは先程脱いだ服を畳んで傍らに置き、枕元の小箱を一旦片付け、ベッドに再度潜り込む。
垣根もベッドに潜り込み、十分間は何もしなかった。
ちなみに未元物質で造られたこの服は、着用している者の体表面から作用し、一種興奮状態を作り上げる。
つまり、刺激によって起こされる性的興奮―――性感が高まるものだ。

垣根は手を伸ばし、彼女の体を抱きしめたかと思うと、そのままやや身じろいだ。
何でもないその動作だが、垣根の胸元に控えめ過ぎる胸の突起が擦れ、フィアンマは息を詰める。

垣根「…」

フィアンマ「…っ、ぅ」

ふ、と耳に息を吹きかけられ、フィアンマはびくりと震えた。
唇をキツく噛み締め、深呼吸をする様子に、かえって興奮しながら、垣根は問いかける。

垣根「…調子悪いのか?」

如何にも心配していますと言わんばかりな声音。
フィアンマは緩く、力無く首を横に振った。

フィアンマ「…問題無い」

垣根(…やべえ、勃ちそう)

レイプ物は一気に萎える垣根だが、こういった状況にはムラつく少年である。






垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/10/10(水) 00:34:34.82 ID:W1fG9+nI0<> ひとまず何か適当な理由をつけて外に出る。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/10(水) 00:36:10.96 ID:IlHHQwDSO<> 体中を愛撫してみる <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/10(水) 12:47:49.46 ID:Oy52Ljxq0<>
やめるか続けるか迷って、垣根はフィアンマを抱きしめるのを一旦やめ、首筋を甘く噛む。
痕がつかない程度に、痛みを与えない程度に、弱く。
無言のまま熱い吐息を漏らすフィアンマに軽く一度口付け、手を這わせる。
ほとんどただの胸板と言ってしまって差し支えないが、ほんの少しだけの柔らかみが、垣根の手を楽しませた。
興奮に乾いた唇を舐め、垣根は服越しに彼女の胸をしばらく触る。
指先でその突起を撫で、細い腰を下り、臀部を一撫でした後、肉感的要素ゼロの太ももに触った。
ごく、と生唾を呑むも、それ以上を執り行う勇気は無い。
指で、舌で、歯で、彼女の体全体を愛撫し、痛い程に勃起した自身と、それによる苦しさに垣根は眉を寄せる。
ここまで来てしまったのなら、いっそマスターベーションに及んでしまった方が解消出来るだろう。
しかし、ここで彼女とのセックスに持ち込むという選択肢もある。

フィアンマ「て、とく」

垣根「…何、だよ」

ドキドキムラムラとしながら、垣根はフィアンマと視線を合わせた。
性的興奮状態にある為、瞳は潤み、白い頬はやや赤く染まっている。
泣いている顔とは違い、同じく庇護欲は湧けど、そこに悲壮感は無い。
下半身がもどかしいのか両脚を擦り合せ、彼女はゆっくりと息を吐き出す。

フィアンマ「……」

何も口に出さず、彼女はふるふると首を横に振る。
これ以上は嫌だ、という意思表示だとは思うが、それが照れ隠しなのか本気なのか、垣根にはいまいちわからない。
徐々に痛みすら訴え始めてきた股間を数度摩り、垣根はゆっくりと息を吐き出す。

フィアンマ「…先を、…するのか」

垣根「…まぁ、出来れば」

フィアンマ「…」

彼女は再度、首を横に振る。






垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/10(水) 12:54:39.39 ID:5ZG+yy3A0<> フィアンマに本当はどうしたいか聞いて
フィアンマの意思を尊重する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/10(水) 12:54:43.44 ID:NEKoFU3SO<> かそくした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/10(水) 12:55:01.10 ID:5ZG+yy3A0<> >>307

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/10(水) 13:02:10.87 ID:IlHHQwDSO<> 押し倒して優しくりーどしつつ充分リラックスさせてから <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/10(水) 14:46:51.21 ID:xsrymlOe0<>
セックスはしたいが、彼女の意思を無視してまで及びたい訳ではない。
というよりも、そんなことをすると自分の性的嗜好として、萎える。
何をさておいても和姦嗜好の垣根は一度深呼吸し、落ち着きを取り戻すとフィアンマと視線を合わせた。

垣根「…嫌なのか?」

フィアンマ「…嫌悪感という意味ではないが、…嫌だ」

垣根「…そっか」

フィアンマ「…子供が出来ると困る。後は、…時期尚早だ」

垣根「ん」

確かに、理屈としてはそうだ。
恋人になったばかりなのに、性行為をするというのは如何なものか。
意思はどうあれ、今ここで断るのも当たり前のことかもしれない。
何しろ避妊薬もコンドームも何も無いのだから。
フィアンマは『右方のフィアンマ』として天使に近い身体を持っている為、妊娠の確率はその年頃の少女、否、一般女性に比べて非常に低い。
ただ、可能性が無いという訳ではない。1%でも可能性があれば、デキる。
また今度、と頷いて垣根は安心させるように彼女の頭を撫でた後、ひとまず離れてトイレに消えた。
流石に処理はしないと眠れそうにない。

垣根(何もかも無視してヤって、和姦に持ち込めることはそうだろうけど、…ガキが出来たら困るしな)

確かに家族に憧れはあるが、今の立場や年齢で作るつもりはない。
はー、とため息をつき、垣根は黙々と自己処理に勤しむのだった。



朝になり、元の服に着替えたフィアンマは、眠そうに目元を指で擦っていた。
何となくだるい。眠い。
所謂旅行疲れというものであるが、じき慣れる事だろう。
何しろ、これからも死ぬまで旅行を続けるのだから。
垣根は目を覚まし、昨日創った服一切をもそもそと消す。こちらもまただるそうだった。

垣根「…何か食いに行くか…」

フィアンマ「…そうだな」

だるだると立ち上がった二人は身支度を済ませ、ホテル内のレストランで軽食を摂った後、部屋に戻る。
何しようかな、とぼやいて、垣根はベッドにぼふりと倒れた。

垣根「そもそもスイスって何で有名なんだ? 赤十字か?」

んー、と首を傾げ、垣根はプリペイド携帯でネット検索を行う。
十分程経過した後、フィアンマが眠そうに問いかけた。

フィアンマ「…何か、したい事は見つかったか?」

垣根「>>313」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/10(水) 15:20:01.20 ID:JP5cHz5S0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/10(水) 15:39:23.40 ID:O56boogz0<> 会社作ろうかなぁ… <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/10(水) 16:23:40.05 ID:xsrymlOe0<>
垣根「会社作ろうかなぁ…」

フィアンマ「会社?」

垣根「スイスで有名なのは銀行だろ。どうにかして金を借りれば会社出来るんじゃねえかと…、…いや、無理か」

フィアンマ「一応世界から追われている立場なのだが。目立たない方が良いんじゃないか?」

垣根「だよな…」

憂鬱そうなため息を出し、垣根は枕に顔を埋めて携帯を片付けた。
起業してみようにも、立場が立場だ。

垣根「慈善事業的会社だったら、それなりに黒字になりそうだと思ったんだが…」

享楽的とは程遠い目標を打ち立ててしまう自分に、つくづく仕事人間かと垣根はうんざりした。
悪態を口の中で呟き、垣根は手を伸ばす。
むに、と掴んだのは例のぬいぐるみ。フィアンマにあげたものなので、壊しはしないが。

垣根「…自分達の罪悪感はさておいて。…追われるのはどうにかなんねえかな」

垣根は、もしかするとアレイスターが死亡したことで追われなくなった可能性もある。
しかし、フィアンマは戦犯であり。その中でも最も重罪の戦争の首謀者で。
世界が戦火を忘れるその日まで、彼女が戦争首謀者だと知る人間は追ってくるだろう。

垣根「…ま、死なせるつもりも処刑させるつもりもねえ」

フィアンマ「先程からぶつぶつと何を言っているんだ」

垣根「…>>316」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/10(水) 17:07:16.01 ID:m2wb8Frg0<> ダークマターで顔を変えてみるってのは? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/10(水) 17:15:15.45 ID:2iBINTfvo<> 変装と称してフィアンマに女の子らしい格好をしてもらいデート <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 17:58:27.77 ID:veKLiHzG0<>
垣根「…変装する気ねえ?」

フィアンマ「変装?」

垣根「そうそう。…ま、暇だし、とりあえず出かけようぜ」

暗い事を考えていたって、明るい事を考えていたって、何も変わらない。
現実に変化が無いのなら、今はとりあえず、精一杯楽しく生きるだけだ。
外に出ようとフィアンマを誘った垣根は、彼女を連れて外に出た。
何処に行くのかと問いかける彼女に決めていないとあっさり言い放ち、服屋に入る。

垣根「お前のままの格好だと何かと目立つ訳だ」

フィアンマ「…それで?」

垣根「服を買い込む。今までのお前の趣味と逆の…何というか、アレだ。女の子女の子、って感じの」

フィアンマ「似合わんよ」

垣根「似合うに決まってんだろ。俺が保証してやるよ」

というか俺が選ぶ、と豪語した垣根は、のんびりと店内を眺めた。
彼女の容姿と見比べ、色色と考えてみる。
清楚系が良いだろうか。とりあえず、胸を強調しない服装の方が良いだろう。





どんな服を買う?(色のみ・デザインのみ可)>>318-319 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 18:01:56.29 ID:sirMTDqD0<> 黒のゴスロリ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 18:14:24.29 ID:7bTlh5pSO<> 全体的にはアシンメトリー調で、黒の厚底ミニブーツ、黒白のしましま長靴下、赤ミニスカ、白ブラウス(はだけさせて)金のハートペンダント、黒ベスト(金ボタン)、頭にちっさいシルクハットの髪飾り

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 18:16:40.93 ID:opPsygcL0<> >>319

なんかモデルはあるのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 18:17:29.92 ID:7bTlh5pSO<> 即興でこんななら可愛いんでないかと書いてみた。モデルはない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 18:21:49.26 ID:opPsygcL0<> >>321

あんた相変わらず凄いな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 19:30:09.59 ID:veKLiHzG0<>
きょろ、と辺りを見回し、垣根は手を伸ばして服を手にする。
黒を基調としたゴスロリ風のワンピースドレス。これには上着が付いている。
目のついたものと彼女の身体を頭の中で混ぜ、似合うかどうか試してみてから、衣装を手に取る。
赤いミニスカート、白いブラウス、それに合う金色をしたハートペンダント。
赤は彼女が元着ている衣装から、白はそれに見合った色、ハートペンダントは彼女の瞳の色から。
合わせて黒いベスト(こちらも瞳色に合わせて金色のボタンだ)、黒と白のボーダー柄な膝上丈の靴下。
黒の厚底のミニブーツと、首の下でリボンを結ぶタイプのミニシルクハットの髪飾り。
全体的に、着て見ると、アシンメトリー調の様子となる。
女の子女の子しているデザインといえど流石に目立つか、いやしかし日本じゃないし良いか、と結論付け、垣根は試着したフィアンマを見、その似合いっぷりに満足そうな笑みを零した。

フィアンマ「…違和感が無いか」

垣根「ねえよ」

フィアンマ「…いやしかし、」

垣根「慣れないだけだろ。それとも、俺のセンスを疑う訳?」

フィアンマ「そういう訳ではないよ。…ただ、欲目というものもあるだろう」

垣根「恋人の? いや、差し引いて見てる」

事実、人形の様に整った顔立ちと細い体躯を持つ彼女の体には、衣装染みた服の方がよく似合う。
演劇染みた服や高級に仕立てたスーツの方が似合う為、むしろボロい服を着ると違和感が生じてしまう程に。

垣根「…何でお前そんなに自信ねえの」

タグを取り、会計を済ませるも、フィアンマは店から出ようとせず。
いつもの自信と尊大さはどこへいったのかと垣根はため息を漏らした。

垣根「…恥ずかしいの?」

フィアンマ「…いや、…そういった訳では、ないのだが」

今着ている服はアシンメトリー調の、後者に挙げた服一式だ。
ややはだけた白いブラウスからは、白い肌が覗いていて、中性的―――性別不明な印象になっている。

垣根「じゃあ何だよ?」

首を傾げ、ゴスロリ風ワンピースと上着の入った白い袋を揺らし、垣根は首を傾げる。

垣根「よく似合ってるって、本当に」

フィアンマ「……>>325」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 20:07:37.06 ID:opPsygcL0<> 加速してやるから安価とれよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 20:19:39.94 ID:7bTlh5pSO<> 褒められる事に、馴れてないんだ…こういう時、どんな顔をしたらいいか、わからない… <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 20:39:11.48 ID:Kyc0S+MC0<>
フィアンマ「……褒められる事に、馴れてないんだ…こういう時、どんな顔をしたらいいか、わからない…」

垣根「…そういう時はただ一言『ありがとう』で良い。俺もその方が気分良いしよ」

フィアンマ「…あり、がとう」

垣根(うわ恥ずかしい)

ナンパする時特有の猫を被っていれば役者気分といえど、垣根は恋愛事自体には疎い。
というよりも、フィアンマが初恋なのだから当たり前の話だ。
なので、こういった愛情たっぷりのやり取りは少々気恥ずかしい。
ほら行くぞ、と垣根に促され、フィアンマは若干渋々といった様子で服屋から出る。
似合う似合わないを除いても、スカート姿で、ましてやミニ丈で外出するのは初めてらしい。

垣根「スカート穿いてた時期はあるのか」

フィアンマ「所謂修道服だが。あれは肌が出ないからな」

垣根「スカート丈としては超ロングだしな」

修道服を改造する気力も無ければ必要ともしなかったフィアンマは、修道女時代ぴっちりとした状態で着用していたそうで。
多分清楚なイメージで可愛かったんだろうな、と思いながら、垣根は彼女に歩調合わせて歩く。
スカートでの歩きが久しぶりで本当に慣れないのか、まるで女装した男の歩き方である。
ただし、二十分程歩いて慣れを得たのか、彼女はやがて普通の歩き方に戻った。

垣根「…ん?」

不意に袖を引かれ、垣根はきょとんとしながらフィアンマを見やる。
厚底を履いた彼女は調度自分と身長が釣り合う程で。目線もかちりと合う。

フィアンマ「…、」

垣根「?」

フィアンマ「…手は、…繋がないのか」

垣根「っ、」

フィアンマ「…何でもない」

自分から繋ぐ事はせず、フィアンマはおずおずと手を引いた。
本当に、謙虚なのか傲慢なのか、非常にわかり辛い少女だ。

垣根「>>328」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 20:48:15.69 ID:Rck0NZno0<> 無言でガシッと手を掴み
ハッとして顔を上げたフィアンマの顔を
恥ずかしそうに斜め上を見上げながら
行くぞ!と行って歩き出す <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 20:49:50.23 ID:bGft/YYuo<> うえ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 21:21:58.50 ID:Kyc0S+MC0<>
垣根「…、」

垣根は無言のままに、がしっとフィアンマの手を掴む。
動作こそ乱暴だが、握力は調整している為、痛みは与えない。
顔を上げ、驚愕と困惑と嬉しさの入り混じった視線を向けるフィアンマに対し、垣根は斜め上を見上げる。
ふい、と視線を宙に逸らし彷徨わせたまま、自分らしくやや粗雑に言った。

垣根「…行くぞ!」

フィアンマ「…ん、」

別に、恋人繋ぎなんてしなくたっていい。
誰に見せつけずとも、往来であからさまにいちゃつかなくても、お互いがお互いを好いている事をわかっているから。
垣根が照れ隠しに視線を彷徨わせ、そんな手に引かれながらフィアンマが小さく笑う。
各々の性格がよく表れた歩き姿、それは信頼関係を意味していた。
垣根はフィアンマに背中を向ける事を嫌だと思わないし、フィアンマも勝手に手を引かれて怖いとは思わない。



垣根はしばらく歩いた後、疲れてしまう前にと彼女と共に喫茶店へ入った。
クッキーを摘み、そのバニラシュガーによる噎せ返りそうな甘い匂いに目を細め、垣根は辛抱して口に含む。
フィアンマはというと、同じく甘ったるい香りを放つカカオシュガーがまぶされたクッキーを摘み、紅茶を口にした。

垣根「…甘いな」

フィアンマ「匂いだけだ。クッキー自体はそうでもない」

垣根「確かにそうだけどよ」

甘い甘いクッキーの残り香を消す様にコーヒーを啜り、垣根はゆっくりと息を吐き出す。
何となく、学園都市ではなく日本が恋しくなってきた。

垣根「…冷奴食いてえ」

フィアンマ「…ヤッコ?」

垣根「あれだ、豆腐に醤油…ソイソースぶっかけたヤツ」

フィアンマ「なるほど」

簡易的な説明に頷き、フィアンマは紅茶を啜った。
残念ながら、スイスに豆腐を扱っている店は無い。

垣根「…しかしまぁ、そういう格好してるとまるで別人だな。俺にとってはまったく同じだが、第三者目線で見てお前が…そういう立場だとはわからねえ」

フィアンマ「…服装でそんなにも変化するものか?」

垣根「印象がだいぶ違うな。容姿が整いすぎてる事の利点だろ」

フィアンマ「……」

垣根はともかく自分は果たしてそうだろうか、とフィアンマは内心首を傾げる。
自分に自信があるのか無いのか、不安定な精神性だ。

垣根「そういや、何歳位まで修道女やってた訳?」

17年の人生の内、14歳より『右方のフィアンマ』の座に着いた事を、垣根は知っている。
いつ頃から男の様に振舞うようになったのだろうか、という純粋な知的好奇心から、質問が飛び出した。

フィアンマ「>>331」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 21:27:34.76 ID:7bTlh5pSO<> んー…いつ頃か当てられたら御褒美をやろうか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 21:29:26.78 ID:BMqKuFo40<> さて、いつからかな? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 21:43:22.67 ID:Kyc0S+MC0<>
フィアンマ「さて、いつからかな?」

垣根「勿体ぶりやがって。…んー…10歳」

フィアンマ「不正解だ」

垣根「あ? ……6歳」

フィアンマ「違う」

垣根「9歳だろ」

フィアンマ「よくわかったな」

垣根「反応見てればな」

フィアンマ「嘘だろう?」

垣根「嘘だよ。お前何の反応も出さない為に何も考えて無かっただろ」

フィアンマ「そうだよ」

10歳以降、フィアンマは女性らしい言葉遣いも、女性らしい衣服を着る事も辞めた。
何か転機があったようだが、それは喫茶店で聞くような軽々しい内容ではないだろうと判断し、垣根は静かにコーヒーを啜った。

垣根「なら、スカート穿いたのはざっと7年振りか」

フィアンマ「そうだな。…もう二度と着ないものかと思っていたのだが」

垣根「…ふーん。…ちなみに、一人称は今更変えると違和感あんの?」

フィアンマ「ある。お前が唐突に、必要も無いのに一人称を『わたくし』にするようなものだ」

垣根「違和感しかねえな」

フィアンマ「だろう?」

クッキーをかじり、フィアンマは緩く長い息を吐きだした。
一人称というものはアイデンティティである。
別に垣根はそこに文句を持つ事は無かった。
女の一人称一覧という常識など、愛の前にかしづいて滅び果てるのみである。

フィアンマ「…後は、」

垣根「後は?」

フィアンマ「…立場的に、丁寧さやへりくだった調子は不要だろう。尊大な話し方をするしかなかったんだ。その内に染み付いて、今やまったく抜けん」

垣根「別言語だと刺増えるしな」

フィアンマ「…問題だとは思っているのだが」

垣根も急に常に敬語口調になれと言われても無理だと思う人間だ。
ゆっくりやってけば良いだろ、と垣根に頭を撫でられ、フィアンマは小さくため息をつく。

フィアンマ「……」

垣根「…穏やかな方が素なの? お前三種類位の話し方するだろ」

厳しく、傲慢。
弱気で、甘えがち。
穏やかで、尊大。

フィアンマ「……素は、…>>334」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/11(木) 21:46:12.87 ID:D90IIWQc0<> 記憶共有系の多重人格障害 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 21:59:31.85 ID:7bTlh5pSO<> どれだったかな…演じすぎてわからなくなった <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 22:15:44.09 ID:Kyc0S+MC0<>
フィアンマ「……素は、…どれだったかな…演じすぎて、わからなくなった」

垣根「…そっか」

垣根と違い、フィアンマは常に演技を続けてきた。
垣根は必要な猫被り一つと素で生きてきたが、フィアンマはそうではない。

強い自分、傲慢な自分、優しい自分、甘えられる自分。

複数の『自分』を用意することで、彼女は彼女なりに精神の均衡を保っているのだろう。
『自分だけの現実』を重要視される超能力者はまず彼女のような事は出来ないし、しない。してはならない。
だから不安定なのか、と納得しながら、垣根はクッキーを手にし、それを彼女の口元に持っていった。
親から餌を受けた雛鳥の如くぽりぽりと食べ、フィアンマは首を傾げる。
垣根は緩く笑って、彼女の口元に付着した欠片を指先で掬った。
クッキーの欠片で汚れた指をそのまま自分で舐め、垣根は目を伏せる。

垣根「……ま、…もう、俺の前で肩肘張る必要はねえし、…徐々に、戻るだろ」

フィアンマ「……ん」

無理をしなくていいとは思うが、無理に素を曝け出せとも思わない。
お互いが何でもかんでも理解し、把握していれば、いつしかボロが出る。




ホテルに戻り、フィアンマはゴスロリ調ワンピースの方に着替えた。
こちらの方が、先程の服よりも動きやすいのだ。
あちらは外出着にしようということで丁重に片付け。
ケープの形の上着から除く長く白い腕にドキドキとしながら、垣根は視線を逸らし、理性を整えた。

フィアンマ「…」

とんとん、と軽く肩を叩かれ、垣根は返事をする。

垣根「何?」

フィアンマ「お前の好きな色は何色なんだ」

垣根「唐突だな。…好きな色、ねえ」

悩む様子を見せ、垣根はベッドに座って答えた。

垣根「>>337」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/11(木) 22:59:37.38 ID:ThdwYsOA0<> あお <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 23:02:58.26 ID:7bTlh5pSO<> ……赤、かな。(じー) <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/11(木) 23:25:14.52 ID:Kyc0S+MC0<> 《>>335 ×除く ○覗く》


垣根「……赤、かな」

じー、と見つめられ、フィアンマはきょとんとした。
別に、自分が司る『燃える赤』という答えが欲しくて質問した訳ではなかったから。
注がれる視線に考慮し、自分の色だからかと回答の真意に気付けば、思わずはにかんだ。

フィアンマ「…そうか。…俺様は金色が好きだよ」

それは、今の垣根の髪色。
そもそも右方のフィアンマにとって好きな色はなく、魔術的に役立つ色かそうでないかが、今までの判断基準だった。
しかし、今は右方のフィアンマとしての自分のこだわる必要はどこにも無いので、素直に考えて答えられる。
垣根は一瞬インゴットを脳内に思い浮かべ、そういえば自分の髪の毛の色も金じゃないかと思い返し、照れにそっぽを向く。
フィアンマは垣根に歩み寄り、少し迷った後、後ろから抱きついてもたれかかる事にした。
後ろから抱きついたまま垣根の肩に顎を乗せ、ぺたりと頬をくっつける。

垣根「…どうでも良いが、恋人っぽいな」

フィアンマ「恋人だからな」

ぺた、と密着した頬のまま喋り、フィアンマは体重を垣根にかける。
その程度で倒れたり苦しむ程、垣根帝督という少年はひ弱ではない。
暖房が入っている部屋は暖かく、フィアンマは取り付け式の袖を着けようか悩んで、やめた。
衣服を増すよりも、垣根にくっついて甘えている方が余程有意義で、温かい。
素直に抱きつけば良いものを体重をかける事を中心に据えてしまう辺り、甘え下手というべきか。
別に良いが、と思いながら、垣根は手を伸ばして彼女の髪を撫でる。さらさらとしていて心地が良い。

垣根「…何か体温高いけど、眠いの?」

フィアンマ「…眠い」

やはり素は甘えなんじゃなかろうか、と思いつつ、垣根は眠ってしまえば良いと促す。
いやいやと首を横に振る動作は、若干幼い感が否めない。本気で眠いのか。

垣根「……」

フィアンマ「………」

垣根(甘えの一種なのはわかるが、眠いなら寝ろよ)

非効率的な事はあまり好まないが、かといって彼女を押しのける程嫌悪感は無い。
さてどうしたものか、と垣根は内心首を捻った。





垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/11(木) 23:33:18.73 ID:ThdwYsOA0<> かそく
あんかした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 23:48:28.24 ID:7bTlh5pSO<> 抱えあげてベッドにはこんで一緒に寝る <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 00:17:21.41 ID:JmCBPLnL0<>
垣根「寝ろ」

フィアンマ「断る」

垣根「……」

仕方が無いな、と気持ちを切り替えた垣根は、後ろを振り返って彼女の身体を抱え上げる。
垣根の人肌の温かさに誘発されえの眠気の中、抱き上げられ、ほんの少しだけ不満そうな様子を見せ。
しかし、そのままベッドにきちんと横たわらされた上、垣根に再度抱きしめられてしまっては、もはや『眠る』しか選択肢は残されていなかった。
垣根の服を掴み、目を閉じる彼女の服に、垣根は手をかける。
別に無闇に脱がそうという訳ではなく、上着を着たままでは寝づらいだろうとの配慮だ。
上着を脱がして脇に追いやり片付け、垣根はしっかりと彼女の身体を、毛布の中で抱きしめ直す。
二人で抱きしめあっているだけで、何でも出来そうだった。何でも生み出せそうな気が、した。
『神の子』はかつて愛で世界が出来ていると言ったが、科学的根拠を除外すればあながちそれでも間違っていないのかもしれない、と垣根は思う。

垣根「……」

慣れない手つきで、ぽんぽん、と寝かしつけるように、フィアンマの背中を軽く叩いてあやす。
心音と同じペースで、緩やかに、のんびりと。眠気をより深く出来る様、促すように。
彼女が悪夢を見ないように、逆の手で彼女の手を握る。外でやるより、横たわっている方が、毛布の中の出来事の方が、ハードルは低かった。
しっかりと握り、垣根は優しく、『おやすみ』とだけ囁いた。
対して、彼女も一言だけ、同じ文句を返して目を閉じる。

しばし、睡眠の時だった。



目を覚ましたのは、何と深夜二時半である。
何と微妙な、と思いながら、垣根は起き上がった。
昼はクッキー、夜は食べていない。
当然の事ながら、お腹が空いてきた。

垣根「…」

とはいっても、食糧は買ってきていない。
つまり、何かを作ることは出来ない。
ホテル内で販売しているものは、恐らく自動販売機の残り物飲料。

フィアンマ「……」

一瞬目を覚まし、フィアンマは垣根の服をしっかり掴んで、手を再度握り直して、目を瞑る。

垣根(寝ぼけた状態でも離れたくねえってか)

はは、と声に出さずに笑って、垣根はベッドに潜り込み直す。
あまり、眠れそうになかった。





垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 00:21:57.10 ID:lyZ/JK9SO<> 未元物質って食えるのか……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 01:40:27.64 ID:lyZ/JK9SO<> 未元物質で食べれそうな物をつくってみっか…?

駄目そうなら我慢してフィアンマの側にいりゃいいか <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/12(金) 09:37:39.26 ID:cNvbf+MAO<>
《うっかり年表間違いしたのでそこはかとなく脳内補完していただけると嬉しいです 以後気をつけます 訂正もしますが

夜に来ます》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/10/12(金) 10:36:50.36 ID:7GSHFU3Wo<> 気にならさずー
乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 15:56:02.36 ID:lyZ/JK9SO<> どこが違ってたんや…わからんでー
フィアンマさんの髪型、どのくらい弄れるのかわからん…両サイドちっさい三つ編みとかやれるか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/12(金) 16:30:23.90 ID:cNvbf+MAO<>
《戦争終了から何日経ったか計算してなかったんです…見てみぬフリでお願いしますありがとうございます

>>346様
セミロングで肩に付くか付かないか程度の長さなので大丈夫です》 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 19:13:17.18 ID:VrxUsHyX0<>
眠れない。
眠ろうと何度も努力したが、その度に空腹がその存在感を増やしていく。
どうしようもない、本能から発露した感覚に思考を支配され、垣根は遂に禁断の手に及んだ。
自分の能力『未元物質』を食べようと決意したのである。
究極の選択な上実験体は自らであったが、これが成功すれば将来餓死を免れる可能性もあり。
仕方が無い、と妥協に妥協を重ね、せめて美味しそうなものを作ろうと、強くイメージを始めた。

垣根(駄目なら…動かないでとりあえず一緒に居れば良いだろ)

彼女の寝顔を見やり、口元を緩ませ、垣根はイメージを続ける。
恐らく未元物質は現実世界の物質と違うので、栄養は宿らない食べ物が出来るだろう。

垣根(どうすっかな…)

イメージをして、それから、そのイメージを創造する為の演算を行う。
さて何を作ろうか、と垣根は頭を悩ませた。




何(料理名)に似せた未元物質を創る?>>+1
(+ >>+1のコンマ一桁<2012/10/12(金) 16:30:23.90は0>が0〜4ならば美味しい、5〜9ならば不味い) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 19:14:09.61 ID:lyZ/JK9SO<> ホットドック <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/12(金) 19:33:59.42 ID:CvQLuj5G0<> セリフの安価って内容はアバウトでもいい?
安価だったら下で <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 20:01:02.97 ID:VrxUsHyX0<> 《>>350様 はい、大丈夫です。単語のみの場合は後付けするかもしれません》


不意に垣根少年の脳内に浮かんだのは、パンに挟まれた熱々のウインナーソーセージ。
焼きたての熱いソーセージを挟んだコッペパン、その間に、ケチャップとマスタードを好きなだけ、思う存分ぶっかける。
空腹である分、想像は働いた。とてもとても、美味しい方向に進んでいく。
ホットドッグを創る、と決めれば、後はその味を感じられるように、味覚に対して働きかける物質の作りにすれば良いというだけ。
素粒子レベルで形を再調整し、味蕾に適切な刺激を与える。
味覚にばかり気を遣ったので、匂いは無かった。
しかし、隣りで眠るフィアンマが反応する可能性があるので、むしろこれで良かったのかもしれない。
食感も、硬すぎず柔らか過ぎず、ソーセージの皮がパリッというように。
そして、歯を立てて食いちぎった後、口の中に程よく、且つたっぷりの肉汁(の様な味がする液体状の未元物質)が溢れるように。
計算しつくされたその物に、ソーセージへ若干の歪みを与えることで、彫刻の様な違和感を消失させる。
出来た、と満足そうに笑んで、垣根はホットドッグのようなモノにかぶりついてみた。

水気の少ないパンにはケチャップとマスタードが染み込み、そこに肉汁が合わさって、素敵な味を構成した。
ソーセージも美味しく、口に広がる肉汁だけで、何杯だってご飯が食べられそうだ。
呑み込んだ後、ほのかに口の中へ残るケチャップの酸味と、ぴりりとした辛さを残すマスタードもまた良い後味。


と実感したところで、所詮は未元物質に過ぎない訳だが。
こういった物質や、細胞を突き詰めて何でも創造出来るようになれば、彼はいつしか世界だって構築出来るようになることだろう。
それを何と呼ぶべきだろうか。神に次ぐ、存在。

垣根(そういや、フィアンマは『神の如き者』だったか。…似てんな)

ぼんやりと思いながら、全て食べ尽くして。
胃袋の膨れる心地良さに長く息を吐きだし、垣根はどうにか眠るのだった。




翌日。
昼過ぎに目を覚ました二人は順にシャワーを浴びて。
昼食を摂ると、暇を持て余した。
何をしようか、と垣根はベッドへ退屈そうに寝転がる。
フィアンマも同じく暇なのか、垣根の髪にちょっかいを出していた。

垣根「…何やってんの」

フィアンマ「>>353」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 20:27:14.03 ID:lyZ/JK9SO<> 一部巻き毛ー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/12(金) 20:29:38.91 ID:dkIfP1O/0<> わからないか?魔術で地味に髪を伸ばしている <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 20:51:43.55 ID:VrxUsHyX0<>
フィアンマ「わからないか? 魔術で髪を伸ばしている」

垣根「何でだよ…」

フィアンマ「暇だからだよ。他に理由があると思うのか?」

垣根「…ちなみに、どういう理屈に基づいてるんだ、それ。髪伸ばす…ジュツシキ?」

フィアンマ「―――福音書にて、仰せになられました。『髪の毛さえも数えられています』。一羽の雀であっても、天の父であられる我らが主の許しなしには死なず。『雀の一羽でも、あなたがたの天の父のお許しなしには地に落ちることはありません。また、あなたがたの髪の毛さえも、みな数えられています』―――という訳で、髪に現在以上に伸びる許可を与えているという話だ」

垣根「…神様代行か。すげえな。何ら羨ましくないけど」

フィアンマ「神が行使するのが万物に対する根本からの強大な干渉、つまりは天恵…奇跡だからな。福音書に記されている内容を応用すれば、俺様の為の術式は自然と出来上がる」

垣根「なるほどな…」

やっぱり羨ましくないな、と口の中でぼやき、垣根はフィアンマの頬にぺたりと触れる。
げっそり痩せている訳ではないが、ぷにぷにと…つまり、触っていて心地の良いものでもない。
次いで左腕の二の腕に触り、ほとんど無い、むしろ骨と筋肉の感触に、垣根は思わず、女性にとって地雷とも呼べる発言をした。

垣根「……なぁ、」

フィアンマ「何だ?」

垣根「お前はそれ以上胸大きくなんないの?」

AA。多く見積もっても、A位。
体がここまで細く無く、標準体型であればその些細な存在さえ感じられず、まな板、或いは洗濯板と呼ばれるだろう。
否、現在でも、そう呼ばれておかしくない。ほとんど胸板なのだから。
男性として生きてきたにしても、サラシを巻いて成長を阻害したりだとかそういったことをしている訳ではない。
もしかして魔術で隠してるだけなんじゃ、という期待の籠った一言に、きっと悪意は無い。
無いのだろうけれど、それは女性に向けてはならない言葉だ。世の中には努力してもどうにもならない女性だって居る。
或いは、胸が無いということを少し残念がっていて欲しいという、『貧乳は貧乳を気にしているから可愛い理論』による期待かもしれない。
フィアンマは垣根の髪より手を離して目を閉じ、ベッドへ座り直して、しばらく沈黙した。

垣根「………」

フィアンマ「…>>356」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/12(金) 20:59:24.02 ID:dkIfP1O/0<> 昔乳癌になってな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<>sage<>2012/10/12(金) 21:06:17.82 ID:h6HxbBhA0<> どうなんだろうな、もしかしたら育つかもしれないな・・・。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 21:22:14.47 ID:VrxUsHyX0<>
フィアンマ「…どうなんだろうな、もしかしたら育つかもしれないな…。…まぁ、年齢はまだ17。見込みゼロという訳では無いだろう」

垣根「……」

言った後、実はひやひやしていた垣根はほっと胸を撫でおろす。
実は気にしていた、などといった場合、泣きだされてもおかしくない。
そして垣根帝督という少年は、彼女の涙が非常に苦手である。
今まで女の涙というものにたじろぐ周囲を笑っていたが、とうとう自分もその一部になってしまったのだ。
しんみりと言い、フィアンマはゆっくりと息を吐く。

フィアンマ「…育たなければそれは運命だ。諦めろ」

垣根「…運命って言葉は嫌いだけどな。……揉まれると一時的にデカくなる。…好きなヤツに揉まれると女性ホルモン分泌の影響で恒久的に効果が出るって聞いたな」

ふと、思い出した科学知識を披露して、垣根はフィアンマの胸元を見つめた。
ゴスロリ風のワンピースは、胸元にレース使いのリボン飾りがある。
じ、とやや熱心に見つめられ、フィアンマは少し悩んだ後、毛布を垣根にかぶせた。
頭から、思い切りばふっと。

垣根「ん、っぐ、何すんだコラ、」

フィアンマ「色欲に取り憑かれているように思えた」

ぐぐぐ、と毛布をかぶせたまま押さえつけ、フィアンマは淡々と言う。
もしかすると、ちょっぴり、そう、ほんのちょっぴりだけ、怒っているのかもしれない。

フィアンマ「そんなに大きな乳房に憧れがあるのなら、水風船を買ってきてやろう。水でなくクリームを入れれば程よい揉み心地になる」

まるで、火を強火にしたシチュー鍋のように。
ぐつぐつと湧き上がってきた怒りをそのまま発露させはせず、毛布から垣根が脱出出来ないようにしながら、フィアンマは続けて発言した。

フィアンマ「お前に付けてやっても構わんぞ。そうすれば、誰に遠慮することなくいつでもどこでも自己処理中でも触れることが出来るだろう? DEFG、どれがいい? もっとか?」

垣根「んぐ、む」

表情には何の感情も宿さず、フィアンマは毛布で包み込み、繭状態になった垣根を見つめる。
未だ離すつもりは無いらしい。思い出し笑いならぬ、思い出し怒りというやつだ。
よくよく考えたらさっきのムカつく、といったところだろうか。






垣根はどうする?>>+2
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/12(金) 21:24:48.17 ID:dkIfP1O/0<> 抵抗したらおっぱいを鷲掴みにして 何を掴んだのか確かめて揉んでしまう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<>sage<>2012/10/12(金) 21:31:23.34 ID:h6HxbBhA0<> 未元物質でホットドックを作ることができたから、
もしかしたら豊胸薬みたいなものもできるかもしれないと思い、
豊胸薬を作ろうと決心する。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 21:59:59.56 ID:VrxUsHyX0<>
怒りを遠まわしにぶつけられ、抵抗を諦めて毛布の塊となりつつ。
怪人デカ毛布は、しんみりと思った。

垣根(…ホットドッグは出来た。つまり、その気になれば、俺は人体細胞、物事の変質、食物を作り出せる。…いや、細胞一切ってところか。直接手を加えずとも、いつか薬品みてえなモンが創れるかもしれねえ。…そうだ、豊胸薬作ろう)

京都行こう、と同じようなあっさりとした内心においての宣言。
フィアンマはしばらく毛布で垣根を追い詰めることで気が済んだのか、ようやく離れた。
それでも若干蟠りは残ってしまったのだろう、ベッド上に座ったまま、脚を組んでそっぽを向いている。
垣根は毛布の塊から脱出し、短時間ぶりのシャバの空気に深呼吸を数度する。

垣根「……わかった、俺が悪かったよ」

フィアンマ「具体的に何が悪かったか、反省出来ているのか?」

垣根「からかったというか、俺の言動が気に入らなかったんだろ」

フィアンマ「それだけではないが」

垣根「あん?」

フィアンマ「…見抜けるまでしばらく許さん」

垣根(随分と無茶振りだな)

本当に怒っている場合彼女は『聖なる右』にて容赦なく振り払うので、実はあまり怒っていない可能性がある。
すっかりふてくされてしまった彼女に対し、垣根はうんうんと考え込んでみた。




垣根はどうする?(発言可)>>+2
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/12(金) 22:01:16.50 ID:h6HxbBhA0<> ksk↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 22:11:32.48 ID:lyZ/JK9SO<> わるかった。乳がでかかろーとなかろーと関係なかったな。お前はお前だ。無理にお前に変質を求めたことも謝る。だから機嫌直せ。なんならなんか欲しいもん買ってきてやるよ。何がいい? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 22:41:16.70 ID:VrxUsHyX0<>
垣根「…悪かった。乳がデカかろうと無かろうと関係なかったな。お前はお前だ。無理にお前に変質を求めたことも謝る。…だから機嫌直せ。なんなら、何か欲しいモン買ってきてやるよ。何がいい?」

フィアンマ「…俺様が物で釣れる安い女だとでも?」

垣根「思ってねえな。せめてもの詫びの印、ってヤツだ」

フィアンマ「………」

拗ねた様子で、フィアンマはぬいぐるみを抱きしめる。
怒っていても垣根の作ったものに触っている辺り、ずっと怒っているようではなさそうである。

フィアンマ「……ココア」

垣根「ココア?」

フィアンマ「…そこの、外に出てすぐの自動販売機で販売しているホットココアが、いい」

垣根「…買ってくる」

別に、物でつられた訳ではなく。
ただ単に、垣根がきちんと謝ってくれただけで充分だったのだろう。
許しを与えるには目立ったものがあった方が宣言し易いというだけで。



垣根に買ってきてもらったホットココアの缶を開けて少しずつ飲み、フィアンマは暇そうに時計を見た。
すっかり機嫌が直ったらしい。むしろ、上機嫌かもしれない。

垣根(ま、いつまでも怒ってるよりかは、わかりやすい方がマシか)

垣根に対して、彼女は弱く甘え気味な自分でいるのだろう。
一度冷酷な支配者となればまた対応も違ったのかもしれないが、彼女が本気で怒る事はほとんど無い。
自分の理念や生死に引っかかるか、計画を邪魔されるか。それ位のものだ。
後は恐らく、今であれば、垣根帝督に危害を加えたら。
ココアを飲み終われば缶を捨て、フィアンマはのんびりと伸びをする。

フィアンマ「……退屈だな。何かする事は無いのか」

垣根「>>365」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 22:42:54.54 ID:lyZ/JK9SO<> なんか謎かけとかやるか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/12(金) 22:52:48.23 ID:h6HxbBhA0<> フィアンマが言った物を作り出してみようかな。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 23:11:25.58 ID:VrxUsHyX0<>
垣根「フィアンマが言った物を作り出してみようかな。実験だ」

フィアンマ「俺様が言った物?」

垣根「昨日、目が覚めてな。あまりにも腹が減って、頭振り絞ってホットドッグ創ったら美味かったんだよ。この調子で色色作っていけば、能力行使の幅が広がるだろ」

フィアンマ「なるほど。…と、言われてもな」

何か創るから、と言われても、困るもので。
空腹であればお菓子や料理をリクエストしてみても良いが、そういう訳ではなく。
喉が渇いているのであれば飲み物をリクエストしても良いが、そういう訳でもなく。
かといって戦闘中ではないから、物騒なものをリクエストする必要も無い。

フィアンマ「………」

垣根「…」

フィアンマ「…」

生き物をリクエストしても、困るだけ。
奇妙なものが生まれてくる可能性もある。
神への冒涜云々を除いても、創ってしまったら困るのだ。

フィアンマ「……髪、」

垣根「髪?」

フィアンマ「…俺様の髪を伸ばす…つまり、他人の髪を創る事は出来るのか?」

垣根「…とりあえずやってみるか」

やった事が無いので、出来るかどうかは不明である。
垣根は手を伸ばし、ひとまず彼女の毛先に触った。





フィアンマの髪はどの位伸びた?(伸びなかった可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 23:16:32.37 ID:lyZ/JK9SO<> いっそ腰まで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/12(金) 23:22:52.17 ID:h6HxbBhA0<> ↑ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/12(金) 23:47:57.58 ID:VrxUsHyX0<>
毛先をしばらく触り、色色と考える。
この髪が伸びた状態と、それを実現するためにどのような演算をすれば良いか。
たとえば、それは創作料理が浮かんでから、材料を揃えるのに似ている。
出来上がりの図が浮かんで、それを実現するために色色と考えを補填していく。
式が出来上がってしまえば、レシピが出来上がったようなもの。
後は冷静に、間違えてしまわないように実行するだけ。

実行した結果、だいぶ伸びた。
イメージ図より勢い余ってしまったようだ。
前髪には手をつけていないため、後ろ髪がとてもとても伸びている。
決して背が低い方ではない彼女の腰辺りまで伸びたのだから、長さとしては結構なものだろう。

垣根「ちょっとしくじったな」

フィアンマ「これはこれで良いんじゃないか?」

長い髪を両手で一まとめにし、前に持ってくると、フィアンマは口元を緩ませた。
思っていたよりも長いからか、成功したからか。
とりあえず機嫌の良さそうな彼女の様子に、まぁいいかと垣根は結論付けた。

垣根(次は何創るかな…)





何を創る?(ホテルの部屋内で創れるサイズ)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/13(土) 00:07:28.09 ID:xGa9M69y0<> 髪飾り <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 00:42:34.12 ID:aVQ9m+fE0<> >>370 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/13(土) 01:33:17.33 ID:2Eb4kO0AO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 01:33:32.87 ID:vlWraWZE0<>
垣根はしばらく眼前の赤く美しい髪を見つめ、髪飾りを作ろうと決意した。
まずはデザインを考えるところから始めなくてはならない。
フィアンマは暇そうに自分の髪を弄び、独り言を漏らしている。
どうやら垣根が演算に集中していると思っているらしい。

フィアンマ「…髪が長いというのも、久しいな」

垣根「……」

垣根(ってことは、昔は長かったのか)

幾つか案を自分の中で出していきながら、のんびりと考える。
これは実験であり、戦闘中ではない。
だから、高速で思考しなければならない理由など、どこにも無かった。

フィアンマ「……褒めてくれる人間など、居なかったが。…いや、いたのか」

垣根「……」

フィアンマ「…ただ、俺様が拒否をしていただけで。…俺様に、優しく接しようとした人は、居たのか」

垣根「……」

フィアンマ「……、…」

長い髪を指先で触れ、いじり。
寂しそうにそう呟いて、フィアンマは視線を下に向けた。





どんな髪飾りを創る?(色のみ・形のみでも可)>>374-375 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/13(土) 02:36:17.82 ID:xGa9M69y0<> リボン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 02:49:01.26 ID:L60cfBfSO<> 髪型次第で髪飾り変わるからなー…
ロングのまま→両サイドのもみあげ?の部分にクロスして巻き付くような感じ、が白造花が片方についてる

ポニーなら炎が彫りこまれた金のバレッタ

ツインテならエヴァのアスカプラグスーツ着用時のヘッドセットみたいなデザイン

ロング、腰で止めるやつなら左から赤黒赤の色のリボンでクロスさせるようにつける

ショートになるならまた考える <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 03:23:55.51 ID:vlWraWZE0<>
手を丸め、まるで手品でもするかのように手の形のまま、演算する。
考えて浮かんだのは、髪留めのついた白いリボンの髪飾り。シュシュとも呼ばれる。
それに加えて、クロスさせて着けるタイプの髪飾り。こちらは、白の造花が片方についている。
出来上がったそれが壊れないかどうか指先で強度を確かめ、垣根はフィアンマに声をかけた。

垣根「ちょっと目、閉じてろ」

フィアンマ「目?」

何事かと思いながらも、フィアンマは割と素直に目を瞑った。
抵抗する理由が、何ら存在しないからだろう。
垣根は彼女の前面に回り、両サイドの髪に、髪飾りをつけていく。
右側から覗く白い造花は、小さな白いツツジの形をとっている。
白いツツジの花言葉は、『初恋』である。
白いリボンの髪留め付き髪飾りは、先程の髪飾りをして尚残る前髪に対して使った。
頭の半分から上の髪は緩く結んでそのシュシュを着け、半分から下は丁寧に梳かすだけでロングのまま。
ハーフアップ、所謂お嬢様結びだ。
それぞれがあまり目立たないようなデザインにした為、上品な印象となっている。

フィアンマ「…もう開けても良いか」

いつまでやっているつもりかと言わんばかりの声音。
もう良い、と垣根が許可を出し、彼女は目を開けた。
そして髪型がやや変化していることに気がつくと、洗面台の鏡を見た。
何となく、その髪留めや髪型の印象から、女性らしい雰囲気が増している。

垣根「…気に入らねえ?」

フィアンマ「…>>378」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 04:22:35.24 ID:L60cfBfSO<> なんか>>1がちゃんと寝てんのか心配になってくるわKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/13(土) 04:40:22.37 ID:Qy1/uyEk0<> >>1寝ろよ

安価は気に入った <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 04:51:29.87 ID:9yeLqhsIO<> 実生活大丈夫か?リアルで辛いことでも有るんか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/13(土) 11:18:02.09 ID:2Eb4kO0AO<>
《心配していただきありがとうございます…割とちゃんと寝てます。
リアルはちょっと色々ありましたが、フィアンマさんにお祈りすれば大体大丈夫です

もうしばらく経ったら再開します


余談ですが、公式がオレフィアでしたね…》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 15:12:47.32 ID:L60cfBfSO<> 二次創作に公式は通用しねぇ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 18:37:44.43 ID:XB0KYxSM0<> 《もうしばらく経ったら、と言っておいて寝てました。再開します》


フィアンマ「…気に入った」

装いによって、彼女のイメージというものは変化する。
どんなに明るく振舞っても闇の気配を残してしまう垣根と違い、一般人に見えなくもなかった。
柔らかな笑みと共に返された感想に、垣根は軽く相槌を打って視線を逸らす。
何だか、何となく、気恥ずかしかった。打算なしに他人へ贈り物など、したことが無かったから。
髪留めを見やり、花の形について口に出しながら、フィアンマは彼の隣りに戻る。

フィアンマ「…白ツツジか」

垣根「ん、…それ全部お前にやるよ。髪留めるのに必要だろ」

フィアンマ「大切に使わせてもらう。…花言葉は『初恋』だったか」

垣根「花言葉なんか知ってたんだな」

フィアンマ「学術的な本はよく読んだし、読まされたからな。有名な花一般の花言葉であれば解る」

垣根「なるほどな。…別に、チョイスに深い意味はねえよ」

フィアンマ「……」

垣根「…無い」

フィアンマ「俺様は何も言っていないのだが」

墓穴を掘りつつ、垣根はフィアンマの髪に触れる。
伸びたばかりの髪に痛みはなく、つやつやとしていた。
指を通してみると、さらさらとしているのがよく解る。
美術品でも創り上げた気分で、垣根は心地良さに笑む。



能力研究にも飽きがくれば、再び暇となり。
今のところ栄養があるとは思えない未元物質ばかりで食事をする訳にもいかないので、二人は買い物にやって来た。
気付けば十一月半ばと、だいぶ肌寒い時期になっている。
ただし、セーターなどを着れば問題無く。上着を着たフィアンマは、暇そうに商品達を眺めていた。
垣根も同じく商品棚を眺め、何を買おうか悩む。

垣根「…とりあえず、今日の晩飯何作るか」

フィアンマ「>>384を食べたい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/13(土) 20:05:19.97 ID:9MmjIoYr0<> 加速してやるから安価取りな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/13(土) 20:11:30.84 ID:xGa9M69y0<> チーズフォンデュ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 20:59:59.30 ID:XB0KYxSM0<>
フィアンマ「チーズフォンデュを食べたい」

垣根の手を引っ張り、フィアンマは商品棚の一部を指差す。
スイスはチーズが安い。日本に比べるとその傾向は顕著だ。
ホテル部屋内のキッチンの鍋を使えば良いか、と結論付け、垣根は頷いてカゴにフォンデュ用のチーズを入れる。
フォンデュ用といっても特別なものではなく、熱すると溶けやすいものだ。
他に食べるものとして、チーズに浸けるものが必要になる。
適当に選んだのはバゲット、人参、ベーコンなど。

買い物が済めばそのままホテルにとんぼ返り。
長い楊枝で刺せる程度、一口サイズになるよう、浸ける具材をカットする。
垣根にその作業を任せ、適当な温野菜サラダを作ったフィアンマは、暇そうに彼の手つきを眺めていた。

垣根「チーズ好きなのか?」

フィアンマ「好きだよ」

垣根「嫌いな食べ物は?」

フィアンマ「…あまりに辛いものは舌が痺れるからあまり好かん。ついでに言えば胃を痛めるしな」

垣根「論理的な嫌い方だな。どうしても受け付けないものは?」

フィアンマ「…ゲテモノ」

垣根「……なるほど。…生しらすは?」

フィアンマ「……」

ぶんぶん、と首を横に振るやや幼い動作ながらも完全な拒絶の姿勢。
つまり踊り食いは好きじゃないのか、と納得し、垣根は配膳を始めた。
フィアンマも配膳を手伝い、終わってからは席について食べ始める。

フィアンマ「お前はどうなんだ」

垣根「何が」

フィアンマ「嫌いな食べ物、加えて受け付けない物は」

垣根「んー…」

サラダをもごもごと食べ、垣根は考えこむ素振りを見せた。

垣根「>>387」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/13(土) 21:14:30.66 ID:5ruGOKJa0<> ksk↓
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/13(土) 21:18:12.86 ID:oePehynE0<> ゲテモノ
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 21:52:53.68 ID:XB0KYxSM0<>
垣根「ゲテモノ。基本的に何でも食えるし、好き嫌いは無いが…虫食うのとかは死んでも嫌だな」

フィアンマ「…虫は、な」

虫しかない未開の地に居たら二人で死ぬ羽目になりそうだ、と思いながら、昆虫については深く考えず、食事を進める。
小さく切ったパンをチーズの海に浸し、フィアンマはぼんやりとした表情で呟いた。

フィアンマ「……楽しいな」

垣根「楽しい?」

フィアンマ「今の生活のことだ。…何に縛られることも、気負わされることも無い」

垣根「…そうだな」

暗部の身を置く。
自らの為にその道を選んだが、何だかんだで辛い生活であったことは間違い無い。
人を殺して虐げて、気分が良い訳がないのだ。
誰かを傷つけるということは、同時に自分を傷つけることでもある。
後暗い生活を送ってきた二人にとって、今の生活が本当の意味での平穏だった。
平凡な生活(とはいっても逃亡生活ではある)が一番幸せだと思えるのは、今までの生活が非日常的だったからだろう。

垣根「マトモが一番ってことだな。…長続きするかは不明だけどよ」

フィアンマ「長続きさせるしかないだろう。自力で」

垣根「そりゃそうだ」






そう話していた、たった数時間後。
平穏を破られた垣根帝督は、半壊したホテルの部屋の中で不愉快だと言わんばかりの表情を浮かべていた。

垣根「…まぁ、部屋のドアがぶち破られるのもわかる。襲ってくるのもわかる。魔術師だったっていうのもわかる。…それにしたって、急過ぎるだろうが」

事件はいつだって急に起こる。魔術を封じられたフィアンマが攫われるのは、驚く程早かった。
如何に『神の右席』といえど、何らかの手段で術式を封じられてしまえば一介の少女に過ぎない。
守ると決めてからこんなにも早く奪われるとは予想外だった。
何とかして取り返さなくては。

垣根「…ムカついた」

冷静に見えて、腸は煮えくり返っている垣根帝督は、吐き捨てるようにそう呟く。




攫った人物(禁書キャラ名)>>+1

目的>>+3

垣根はどうする>>+5 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/13(土) 21:54:26.61 ID:FNpT0BlV0<> 馬場 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/13(土) 21:57:19.49 ID:FNpT0BlV0<> そしてksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<>sage<>2012/10/13(土) 22:00:28.91 ID:5ruGOKJa0<> 身体変化の薬を作らせる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2012/10/13(土) 22:07:14.82 ID:xmS5JyLAO<> ks <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage saga<>2012/10/13(土) 22:07:17.52 ID:FNpT0BlV0<> 犯人(馬場)を殺す
誰がなんと言おうと殺す <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 22:30:27.95 ID:XB0KYxSM0<>
馬場芳郎。
かつて垣根が起こした暗部抗争で上手く立ち回ろうとした挙句、垣根による『博士』撃破で割を喰った人物である。

馬場「悪く思うなよ」

やや下卑た笑みを浮かべて、馬場はフィアンマを見下ろす。
フィアンマはというと、先程反応が遅れてしまった自分に対して反省しながら、大人しくしていた。
今から死に物狂いで…いや、軽く抵抗すれば外に出ることが出来るだろうが、ここが何処なのかわからないので、ひとまず大人しくしているのである。

馬場「恨むならあの男を恨め」

フィアンマ「あの男?」

馬場「垣根帝督…あの野郎のせいで、俺は…ッ」

かつて『避暑地』に閉じ込められた彼は、一種気が狂ってしまっていた。
気味の悪い半笑いを浮かべたまま、馬場はフィアンマを見つめる。
彼女を人質にとり、垣根に身体変化の特殊な薬を作らせよう、そしてついでに復讐もしよう、と踏んだ訳である。

馬場「助けに来ると思ってるのか?」

フィアンマ「思っているが」

馬場「来ねえよ。お前がどう思っていようと、俺はアイツの素を知ってる」

フィアンマ「学園都市の人間か?」

馬場「そうだ」

フィアンマ「そうか」

馬場「あいつは最低最悪の殺人鬼だ」

フィアンマ「ほう」

単調で淡白な相槌にも関わらず、馬場は垣根を罵倒した。
そして彼女の方を見やると、発想を変えた。

馬場(最悪失敗して殺されるにしても、この女を陵辱すれば多少は復讐になる…)

狂気と復讐に駆られた男の視線が、やや粘っこく彼女の体表面を舐めた。

馬場「あの野郎は助ける技能が無い。人を守る技能ゼロだ。肝心な時に間に合わないだろうよ」

手足を縛られている彼女の服に手をかけ、馬場は自分に言い聞かせるようにそう言った。
服をやや脱がされかけながら、フィアンマは哀れむような表情で発言する。

フィアンマ「……>>396」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 22:40:11.86 ID:L60cfBfSO<> …小物だな。矮小さが見てとれる。

相手は実力差の埋められない第二位。どんな道筋を辿っても、結果は必ず破滅だ。何故こんなくだらんことをするのか知らんが、それ以上無様なまねはさらさないことを薦める。

……ああ、もう遅かったか。遅いぞ。帝督。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/13(土) 22:42:38.09 ID:x6sVzO7E0<> >>395

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 23:08:00.14 ID:XB0KYxSM0<>
フィアンマ「……小物だな。矮小さが見てとれる」

馬場「何だと、」

憐れむような視線とその言葉に激昂し、馬場は声を荒げる。
対して、馬場と違い、実力の下に全てを見下してきた冷酷な彼女はため息混じりに忠告をする。

フィアンマ「相手は実力差の埋められない第二位。どんな道筋を辿っても、結果は必ず破滅だ。何故こんなくだらんことをするのかは知らんが、それ以上無様な真似は晒さないことを薦める」

馬場「…わかってるさ。どのみち俺は一度破滅してる」

もう何を怖がることもない、と無鉄砲に彼は動いた。
もはや導く気にもなれない子羊だ、と思いながら、彼女は退屈そうに言う。

フィアンマ「……ああ、もう遅かったか。遅いぞ。帝督」

垣根「ちょっと探すのに手間取ってな」

そもそも止めるつもりもなかったが、そんな自由時間すら無く、垣根は馬場を彼女から引き剥がし、壁に叩きつけた。
素手ではない。触れる気力など湧かなかった。もはや垣根帝督の中で、馬場芳郎は汚物以下の存在である。
まだ彼女を脅迫するだけであったら楽に殺す気になれたかもしれないが、状況から見て、彼女に乱暴しようとしていたことは明らかで。
垣根は敵に容赦しない。格下だからといって、見逃すつもりも無い。

彼はヒーローでもなければ、一流の悪党でもない。

だから、相手を生かそうとする努力も想いも信念も無い。
たとえ自分に恨みを持った人物だとしても、だからどうした。
自分の敵側として明確に回った以上、そこにどんな理由が介在していようと、垣根は徹底的に壊す。
誰に止められようが何を言われようが、徹底的に殺す。

壁に叩きつけられた影響で軽い脳震盪に意識の揺らぐ馬場は、歯を食いしばりながら垣根をのろのろと見上げる。
そこには一人、天使が居た。否、その冷酷な表情は、悪魔かもしれない。
白い羽が部屋に舞い、その羽は墜ちた床から先を壁や天井に至るまで、白く白く染め上げた。

此処は垣根帝督が統べる世界。
存在が許されるのは、右方のフィアンマと、垣根帝督、彼や彼女を傷つけなかった者。
まるで全てを凍りつかせたように真っ白な部屋の中。
この部屋の中において絶対的な支配権を有する神の如き天使の様な少年は、シンプルな二文字を口にした。

垣根「死ね」





同じスイス国内とはいえ、垣根とフィアンマが宿泊していたホテルとはだいぶ距離の離れたホテル。
馬場芳郎という人間が宿泊手続きをしたホテルの部屋の中。
白い世界が日常<元の世界>に戻った時、あるはずの死体は無かった。素粒子レベルで解体されてしまえば、もう存在しない。
着衣を正され、垣根に強く抱きしめられたまま、フィアンマは少し困っていた。

フィアンマ「…何だ。…俺様はともかく、何故お前が泣きそうな顔をする。ヤツを殺したのは不可抗力だろう。罪悪感か?」

垣根「んな訳ねえだろ」

フィアンマ「…ならばどうした」

垣根「…>>399」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 23:15:41.89 ID:L60cfBfSO<> 別に。ただ、また同じ事して、また一つ、背負っただけだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/13(土) 23:21:37.81 ID:5ruGOKJa0<> >>399 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)<>sage<>2012/10/13(土) 23:22:11.68 ID:5ruGOKJa0<> ミス>>398 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 23:22:26.11 ID:iS2MM2Lg0<> また、失うかと思った <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/13(土) 23:44:46.56 ID:XB0KYxSM0<>
垣根「…別に。ただ、また同じ事をして、また一つ、背負っただけだ」

フィアンマ「…悔いているのか」

垣根「今回の場合は、憎くてムカついて殺した訳だしな。別に、後悔はしてねえ」

言いながらも、抱きしめる腕の力は強まる一方だった。
何も落ち込む必要なんて無い筈なのに、垣根の表情は浮かなかった。
結局、自分が背負っている人を殺して目的を達成するという業は、いつまでたっても変わらない。
少しは変われたつもりでいたのに、結局はこうして人を殺す。
そして、そうやって殺すことでしか、守ることが出来ない。
馬場が言った『垣根帝督には他人を助ける技能が無い』というのは、あながち間違っていない。
脅威を消し去ることでしか、安寧を得ることは出来ない。穏便な解決法を望めない。

どんな理由があっても他人を許さず徹底的に殺す垣根は、どんな理由があっても自分を許せない。
たとえ今さっき殺人を犯した理由が、たとえば金の為であっても、彼女を守る為であっても、殺したことに変わりはないと考える。
自分はまた一つ、自らの為に死体の山に死体を足したのだ。
今回に限っては、垣根は相手に申し訳ないだとか、そんなことを思いはしない。けれど、罪は重い。

泣きそうな顔はすれど泣かず、苦しそうな様子ながらも苦しげな声は出さず。
淡々とそう発言したことが、かえって垣根の心が追い詰められていることを表現しているかのように思えて、フィアンマは目を伏せた。
そして、何度か、いや、何度も彼の頭を撫で、背中をさする。

フィアンマ「…お前は悪く無い。俺様が悪い。俺様が抵抗せずにいたから、お前は殺人をしなければならなかった」

垣根「後悔してねえって言ってんだろうが」

フィアンマ「独り言だと思って聞き流せば良いじゃないか。…俺様が悪いんだ」

うまく慰められない代わりに、彼女は罪を背負う。
何かと他人の免罪符として生きてきた彼女は、そうやって罪を肩代わりする方が慣れていた。
ある意味、これも許しを与えるということであり、救うということなのかもしれない。

フィアンマ「怖かったのか」

人を殺すことで遊興は感じていないながらも、心のどこかに安心感を抱えること。
その度に、垣根は罪悪感や、どうしようもない無力感を得る。

垣根「怖く、ねえ」

フィアンマ「そうか。俺様のせいだな」

垣根「話聞いてんのかコラ、」

フィアンマ「罪を犯すのが悪いことなら、罪を犯させてしまった原因も、また悪い」

垣根「…お前は被害者だろ」

フィアンマ「ヤツに関してはな。…お前に対しては、加害者でもある」

垣根「お前が悪いとは思えないし、常識的には悪く無い」

罪の共有すら甘えないのは、垣根帝督が自分に厳しい人間だからだろう。
フィアンマは微笑んで首を横に振り、彼の頬に右手を沿わせる。
翳すだけで死者を蘇らせ、怪我を癒し、罪を赦す奇跡の右手。

フィアンマ「俺様がお前に甘えなければ、お前は殺人を犯すことは絶対に無かった」

罪を請負い、やった事を無かった事にする。
大切な誰かの罪状を覆い隠すのも、また愛情の一つだった。

フィアンマ「…すまなかった。…赦してくれ、」

垣根の罪を無理やり肩代わりした上で、彼女は許しを請う。
かつて信じていた神様ではなく、今目の前に居る天使<コイビト>へ。

垣根「……>>404」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/13(土) 23:56:03.07 ID:xGa9M69y0<> kskst 気の効いた台詞が思いつかない・・・
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/10/14(日) 00:03:30.76 ID:wYgNtJUIO<> …お前のせいじゃねぇよ。別にいいさ、たった一つ、今更だろ。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 00:29:42.19 ID:sQ/aNrLY0<>
垣根「………お前のせいじゃねぇよ。別にいいさ、たった一つ、今更だろ」

笑って、彼は彼女の長い髪を撫でる。
安易に甘えはしないが、自分が罪を認識して落ち込んだ時、罪の肩代わりをしてまで想ってくれる相手が目の前に居る事で、多少気持ちが楽にはなった。
倫理的には何もかも間違っているのかもしれないが、この二人はこういった許し合いが向いている。
根本的には、右方のフィアンマも決して一般人ではないのだ。

どちらもが相手を大切に想っていなければ成り立たない言葉の交わしあい。
自分を救おうとして、それでもどうにもやり方が間違っている可愛い恋人の頭を撫で、垣根は苦笑した。

垣根「…不器用過ぎるな」

フィアンマ「…こんな事なら真面目に聖職者の仕事をしていればよかったか」

垣根「そこまでお堅いと好きになれねえから、今位で調度いい」

その気遣いだけで充分だと垣根は心から笑む。
手を取るかどうかは別として、ふさぎ込みそうになった時、手を差し伸べてくれたという事実が、彼にとっては重要だった。




自分達が宿泊すべきホテルへと戻り。
双方友シャワーを浴び、眠る彼女の髪を指先で梳き、垣根はゆっくりとため息を吐き出す。
彼女には、気を抜くと甘えそうになる。甘えさせようとしているのかもしれないが。

垣根「…俺は、誰にも肩代わりさせるつもりはねえよ。…勿論、お前なら尚更な」

心地よさそうに隣りで睡眠に浸る彼女の姿を眺めていると、後暗い感覚はぼやけていく。

垣根「……俺が悪い男だったらどうすんだよ、お前。…いや、悪い事には悪いが」

彼女に甘えてばかりの駄目な男だったら、何でもかんでも彼女のせいにするだろう。
それでも良いというのか、と垣根は呟き。
むしろ、そうはならないから手を差し伸べてくれるのか、とも思う。
自分に厳しい垣根相手だからこそ、躊躇なく全て支えようとする。

垣根「…傷の舐め合いなんざ、馬鹿馬鹿しいと思ってたし、…第一位の野郎にも甘えるなとは思ってるが」

心地良さを覚えた以上、多少は肯定しなければならないだろう、と垣根は思う。

垣根「…戦略関係無しに誰かを助けに行ったのは初めてだな」

彼女が性的に乱暴されそうだった。
たったそれだけで、脳が沸騰しそうな程の怒りを感じた。
何の容赦もなく、徹底的に、且つ無駄な苦痛を与えて死なせようと決意した。
それ程までに彼女を好いているということに他ならないのだとしても、垣根は少し、自分を怖いと思った。






フィアンマの見ている夢の内容(アバウト可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 00:44:31.62 ID:nhzez3+SO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/14(日) 00:47:07.62 ID:YMIqKxexo<> 受胎告知 <> 夢  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 01:16:26.67 ID:sQ/aNrLY0<>
目が覚めると、懐かしい大天使が目の前に居た。
戦時中手足と使っていた筈の、大天使『神の力』。
まったくもって呼び出した覚えが無い。一体何があったというのか。

『喜びなさい。主は貴方をお選びになりました』
「…何の話だ」

本来人間にはわからないはずの、天使の言葉。
とはいえ、戦時中感覚を共有していた俺様にとって、それは学んだ後の異国語のように理解の範疇にある。
白い百合を携えた大天使は、己が指名を果たすべく、凛と宣言した。

『貴方は聖霊のお慈悲によって子を得るのです』
「俺様は聖母の様に不妊で悩んだことは無いのだが』
『その子は神の御子です』
「聞け」
『貴方の夫にも、預言を授けます』
「だから聞けと言っているだろう。殴るぞ貴様」

何もありがたくない。何も。
『聖なる右』でコテンパンにしてやろうかと睨むと、『神の力』は仕事だからと言わんばかりの顔をした。
正確には表情には何ら変化はないものの、雰囲気がそう雄弁に語っている。
聖書に書かれている通りであれば、混乱する女を諌めるのがお前の役割だろうに。




それに、俺様は。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/14(日) 01:16:45.75 ID:vQZ4+WKAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 01:26:45.48 ID:sQ/aNrLY0<>
フィアンマ「…俺様は、…神ではなく、帝督の子を孕みたい」

垣根「」

フィアンマ「…ん?」

垣根「お、…起き抜けに何言いやがる」

フィアンマの夢の中で大天使が居た位置は、垣根帝督が居る位置へと変化しており。
きょとんとする彼女に対し、垣根は唐突な宣言に顔を赤くした。
夢の中で言ったつもりが、起きた瞬間口にした言葉として出力されたようだ。
寝言でも何でもなく、起きてから放たれた言葉に動揺を隠せず、垣根はたじろぐ。
セックスはおろか、そういった性的接触をしていない彼女から自分の子供が欲しいと言われれば、いろんな意味で動揺する。

垣根「……」

フィアンマ「…夢か」

垣根「…何の夢見てたんだよ」

フィアンマ「受胎告知の夢だが」

垣根「…受胎?」

フィアンマ「おめでとうございます、オメデタですよと天使に言われることだ」

垣根「わかりやすい説明だな」

フィアンマ「…本当に夢だったか?」

垣根「は?」

フィアンマ「白い謎の怪物が部屋に入ってきてはいないか?」

大天使に対して随分な言いようだと思いながらも、フィアンマは問いかける。
対して、垣根は首を横に振った。

垣根「いや、何もねえけど」

フィアンマ「そうか」

垣根「…っていうか、さっきの発言は何なんだよ」

フィアンマ「神の子を孕むより、お前の子を産みたいと、そういう話だが。子供嫌いなのか?」

垣根「>>412」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 01:41:55.45 ID:nhzez3+SO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2012/10/14(日) 03:47:30.37 ID:RiJAMQXe0<> お前その面で何言ってんの?冗談だろ…… <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 04:06:38.80 ID:vQZ4+WKAO<>
垣根「お前、その面で何言ってんの? 冗談だろ……。いや、別にガキは好きでも嫌いでも無いが」

真面目な顔で何を言うのかと突っ込む事でどうにか自分を落ち着かせ、垣根は肩の力を抜いた。
フィアンマも別に子作りがしたいというアピールがしたかった訳ではないので、食い下がらずに笑った。

フィアンマ「そもそもそんなつもりも無ければ、子を成せる立場でも無いが。まぁ、珍しい夢だったんだ」

垣根「聖書の読み過ぎ、ってヤツだ」

そう指摘して、垣根は彼女の隣に横たわる。
先ほどまでは寝付けずに座っていたのだが、先程の動揺と不要な思索で疲れた為、多少の眠気が訪れてきた。
フィアンマも再度眠ろうとしたものの、先程の大天使のインパクトが強過ぎてなかなか眠れない。

フィアンマ「…宗教画の様に愛らしいデザインであれば良いものを」

垣根「宗教画?」

フィアンマ「こちらの話だ。…寝付けんのか」

垣根「まぁな」

フィアンマ「…ところで、通常の人体と、未元物質から創られた人体。違いはあるのか?」

垣根「些細だけどな。例えば…>>415」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/14(日) 06:15:41.35 ID:I3bvtwgU0<> 皮膚の弾力が違う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 07:10:12.43 ID:sLSAwMsDO<> 関節の駆動範囲がやや広い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/10/14(日) 10:54:12.65 ID:ew0+IEcZo<> 手のひらを後ろに反らして手首に僅かにつけれるレベル <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 13:18:00.89 ID:h6qX11Dv0<>
垣根「些細だけどな。例えば…関節の駆動範囲がやや広い」

フィアンマ「それ以外はほぼ同一か」

垣根「そうだな。未元物質を人体細胞に似せたものなのか、未元物質を元にして構成された人体細胞なのか、その辺での誤差はあるが、お前の右腕と俺の体は後者だから、さっき言った程度の違いしかねえ」

フィアンマ「なるほど」

垣根「試しに比べてみたらどうだ?」

垣根から言われた通り、フィアンマは右腕と左腕で同じ動作をしてみる。
確かに、垣根が述べた通り、右腕の方がやや関節の駆動範囲が広く、妙な動きも出来るようだ。
脱臼せずに攻撃動作が出来るのであれば良点かと頷き、フィアンマは毛布の中に手を引っ込める。

垣根「…色々と創っていけば、その内人間一人程度なら創れそうだよな」

フィアンマ「神の領域か」

垣根「そうなるな。…別に誰かを蘇らせたいとか、そういうのはねえし、…無理だが」

フィアンマ「……死者を蘇らせれば、謝罪が出来るだろう」

垣根「やった事自体に変化はないけどな。……、…それこそ、命への冒涜だろ」

自分に背を向ける垣根に視線をやり、フィアンマは毛布の中から、彼の背中をさすった。

フィアンマ「……お前が身体を創って、…俺様が『中身』を持ってくれば、人間を蘇らせることは出来る」

垣根「『中身』。…人魂ってやつか。……誘うんじゃねえよ」

垣根が罪の意識に苛まれているのは、被害者に謝れないから。
そして、その被害者の死を悼む人間が、自分しか居ないから。
それを解消するには、被害者のことを忘れてしまうか、自分を赦すか。
或いは、該当する死者を蘇生させ、謝罪をして赦してもらうか。
およそ善性など無視してきた垣根だが、彼女の提案には心底からゾッとした。
自分が楽になりたいが為に、愛している訳でもない、死者を蘇らせる。死者どころか、命という存在自体への冒涜だ。
何となく、それは、それだけは、人間がたどり着いてはいけない、やってはいけない悪事である気がする。

垣根「…リセットボタン押せば罪が消えて無くなるってことだろ」

たとえば。
蘇った死者が、罪を赦すことを拒絶したのなら、その首が縦に振られるまで、何度も殺すだとか、そういったことも出来ることになる。
垣根帝督は、自分がそんな行為に及んでしまう気がした。生殺与奪権を握ったら、何をするか、自分でもよくわからなかった。

垣根「それは、…駄目だ」

フィアンマ「今まで沢山の悪事をこなしてきたんだろう? 何故、ここに来て拒否をする」

右方のフィアンマは、救うと決め、執着した対象が救済されるその瞬間まで、執着を続ける。
かつて世界を救う為に第三次世界大戦を起こした様に。
たとえその救うべき対象がどこまで堕落したとしても、堕落させたとしても、どのような手段を使っても、やり遂げる。

垣根「…>>419」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/14(日) 15:59:14.48 ID:I3bvtwgU0<> ksk↓
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 16:16:06.56 ID:nhzez3+SO<> 悪事をしてきたからこそ、だ。
例え殺された本人が生き返って、仮に殺った奴を赦したとしても、『一度犯した罪は絶対に消えない』

そんなもん、決してあっちゃならねぇ事だろ。
それに、そんな事が出来るようになったら、弱い俺はもっと[ピーーー]だろうよ。罪の意識が消えるんだからな。
テレビゲームみたいに。「どーせ生き返るんだから」って <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 17:25:25.27 ID:6eGF8zeF0<>
垣根「…悪事をしてきたからこそ、だ」

恐ろしくも魅力的な提案を、垣根は振り払う。

垣根「例え殺された本人が生き返って、…仮に殺った奴を赦したとしても、『一度犯した罪は絶対に消えない』」

その拒否が、自分も彼女もズタズタに傷つけると知っていて、垣根は言葉を選ばなかった。
だって、世界の中で傷つくべきなのは善人ではなく、罪人なのだから。

垣根「そんなもん、決してあっちゃならねえ事だろ」

加害者の安寧を優先するのではなく、被害者の安らかな眠りを優先するべきだ。
安息を受けるべきなのは罪が無いものであって、罪人は苦しむべきだ。
命懸けで贖罪をするべく足掻いたって救われないと、垣根は思っている。

垣根「それに、そんな事が出来るようになったら―――弱い俺は、もっと殺すだろうよ。罪の意識が消えるんだからな」

マゾヒストではない。
垣根はしっかりと現実を見据えて生きる選択をしたいだけ。
たとえどんなに甘美な誘いであっても、彼は拒絶する。

垣根「テレビゲームみたいに。"どーせ生き返るんだから"って、…そんな風に、思うようになる」

フィアンマ「………」

垣根「…お前が俺を救いたいと思ってくれてるのは解るし、嬉しい。でも、…それは被害者を蔑ろにして良いって事じゃない」

深呼吸した上で落ち着き、垣根はフィアンマに向き直る。
悲しそうに目を伏せる彼女の頬を撫で、垣根は努めて優しく諭した。

垣根「……無理に許されなくたって良いだろ。そんな簡単に許されたり、自分のいいように罪を扱うんじゃ、駄目だ。一生苦しんででも、その罪と向き合うんだよ。……ごめんな」

フィアンマ「…謝る必要は無い」

垣根「いや、…ごめん」

彼女が恐ろしい提案をしてまで垣根を救おうとするのは、彼女自身が救われたいから。
そう見抜き、或いは感じ取った上で謝罪した垣根は、フィアンマと視線を合わせる。
不安定に揺らぐ金の瞳を見つめ、彼はぎこちなく言葉を紡ぐ。

垣根「…神様が許さなかろうと、被害者から憎まれようと、俺が背負っていくものが増えようと。…それは、俺が選んできた選択肢で、進んでいく道だ。目的がどうあれ、お前が罪を犯したのも、これからまた罪を犯す事になっても、それだってお前が選んできた選択肢で、お前がやっていくことだ。救いにこだわる必要なんかどこにもねえ。お前がどんな右手を持ってたって、俺を赦す為に尽力しなければならない義務は無い。…だから、そんなに縛られるなよ。俺を信じるんだろ。…カミサマじゃなくて、俺を」

フィアンマ「……ん」

『奇跡』がコンプレックスであるフィアンマは、こくりと頷いて黙った。
垣根帝督を愛しているから救おうとしているのか、それとも自分が救われたいから、人を救うのが義務付けられた人間だから救おうとしたのか。
少女は、よく考える為に、目を閉じた。



翌朝。
早めに目を覚ました垣根は、ぼんやりとしながら彼女の長く赤く広がる髪を撫でた。
昨日は少々キツい物言いをしてしまっただろうか、と思いながら。

垣根「…どっちかが"一般人"だったら、な」

せめて、自分が英雄になれそうな器の人間であったなら、彼女のコンプレックスを解消出来ただろうか。
ため息を緩く吐きだし、そして初めて、垣根は室内に誰かが居る事に気がついた。
まったくもって気配がしなかった。

垣根「…誰だ」





部屋にいつの間にか居た人物(禁書キャラ。1人)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/14(日) 17:49:31.70 ID:I3bvtwgU0<> 姫神秋沙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 19:04:13.94 ID:nhzez3+SO<> トール

まだ読んでなかったら木原病理 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 20:34:48.62 ID:pTYgNRKt0<>
???「そう怯えんなよ。こっちとしては敵意ゼロだからさ、今のところは」

起き上がり、垣根は声の主の姿を視界に捉える。
慎重に立ち上がり、一瞬も目を離さずに、意識を少年へ向けた。
長い金髪に白い肌の、女性的な印象を持つ少年。
確かに敵意は感じられないが、得体が知れない。
少なくとも完全に気配を消せる辺り、所謂『一般人』でないことは明白だろう。

垣根「…誰だって聞いてんだ、こっちは。答えろ」

トール「雷神トールとでも、自己紹介しておこうかね…っと」

不意に、トールが首を横に振った。
何かを避けるような動作だった。
垣根が気付いた時、フィアンマは可愛らしい装いではなく、最初に会った時の、つまり、赤い装束を纏って、垣根の隣に立っていた。
どうやら彼女が攻撃を放ったらしい。トールは反撃するでもなく、彼女の様子を眺めた。

フィアンマ「……魔法名と所属を名乗れ」

トール「戦う気は無いから、魔法名はオフレコの方向で。所属は『グレムリン』―――の、直接戦闘担当」

フィアンマ「聞き覚えの無い魔術結社だな」

トール「最近出来たばかりだからな。結成するにあたってはお前にも責任の一端がある…とはいっても復讐するだの何だのそんな話じゃない。…簡単に言えば、お前に頼みがある。『右方のフィアンマ』」

フィアンマ「…何の用だ」

警戒する垣根を半ば庇うような立ち位置で、フィアンマは聞き返す。
やれやれとばかりに大げさに肩を落とす様子を見せた後、トールは目的を口にした。

トール「>>425」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 20:35:46.96 ID:nhzez3+SO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/14(日) 20:41:11.39 ID:7l3Iwek20<> 仕事を頼みたい <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 20:56:24.37 ID:pTYgNRKt0<>
トール「仕事を頼みたい」

フィアンマ「仕事?」

トール「そうそう。報酬は…そうだな、金でも…」

金銭以外で何があっただろうか、と悩むトールの様子を観察し、フィアンマは問いを重ねる。

フィアンマ「…流血沙汰か」

トール「場合によっては、って感じか」

軽い言い方だが、どうにも食えない男だ、と感じつつ、フィアンマは言葉を聞く。
曰く、自分の所属している箇所の結社リーダーの暴走を止めたい、との内容。

トール「ついでに言うと、もう一つ。敵対勢力を止めてもらいたい。…いや、人の奪取ってことでも良いのか」

フィアンマ「はっきり言え」

トール「助けたい女の子が居る。手伝いが欲しい。…そこに居るのは、学園都市の人間だろ?」

垣根「…だったら何だよ」

トール「『窓のないビル』。そこに閉じ込められている女の子が、ウチの実質的なリーダーと、もう一つの勢力に狙われてて、殺されそうだ。統括理事長が死んでる以上、守る人間が誰一人居ない。……報酬は出す、二人共、仕事として引き受けてくれ」

真面目な表情だった。
垣根にとっては、慣れ親しんだ暗部らしい暗部の仕事。
フィアンマにとっても、慣れ親しんだ魔術的な暗部の仕事。

垣根「…適当なところで身を引くが、良いか?」

フィアンマ「命を賭ける保証はせんが」

トール「構わねぇよ。俺だって、賭けるつもりは無いしな」




仕事を引き受けた二人は、学園都市にやって来た。
垣根にとって、とてもとても久しい場所である。

垣根「…仕事依頼、ね。本当にお前有名なんだな」

フィアンマ「悪名だよ」

長い髪を無造作に一つに結わえたフィアンマは、ひとまず垣根と共に学園都市を見て回っていた。
後で合流すると言っていたトールだが、なかなか姿を現さないのだ。
陽の光を浴びて輝く垣根の金に近い髪を眺め、次いで、フィアンマは視線を動かした。

フィアンマ「遅かったな」

トール「色々とやることがあったんだよ。で、不味い事になった」

垣根「不味い事?」

トール「>>428」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/14(日) 21:30:23.36 ID:BRgAAHF90<> kskst <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/14(日) 21:38:16.10 ID:kvBEVexz0<> 上条と佐天に仕事を依頼したんだが
二人とも今フランスに旅行に行ってるから
と断られた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 21:43:16.53 ID:nhzez3+SO<> アレイスターの奴が厄介なモン残していやがった。

fiveover未元物質の仮面つけたパワードスーツ装備の強化アンドロイド部隊、プロの傭兵魔術師複数名etc…
知らん系統の魔術罠もいくつかある <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 21:54:11.71 ID:pTYgNRKt0<>
トール「上条当麻と佐天涙子に仕事を依頼したんだが、二人共『今フランス旅行に行ってるから』で断られた。…つまり、これ以上の手助けは望めない」

フィアンマ「想定内の事態じゃないか?」

トール「そりゃそうだ。不味い事には不味いだろ…まぁいいか」

肩を竦め、トールは二人にやって欲しい事を話した。
自分は工作をするのに忙しいので、実働、或いは陽動を任せたいと、そういう話である。

トール「…って訳で、後はいちゃいちゃしながらでもいいし、仕事してくれ」

垣根「構わねえよ」

トール「また後でな、」

ひらりと姿を消し、垣根は退屈そうに少年を見送った。
そしてフィアンマの手を引くと、『人払い(Opila)』とやらが施されている場所に、向かう。


トールのいうところの、『もう一つの勢力』。
それすなわち、オッレルス勢力のことに他ならないのだが。
途中迷子スキルによって垣根とうっかりはぐれたフィアンマは、絶大なる威圧感を放つ魔術師に、一歩引いていた。

オッレルス「…君は、」

フィアンマ「…確認されるまでもなく、『神の右席』―――右方のフィアンマだ」



一方、その頃。
トールに頼まれたことを済ませた垣根は、オッレルス勢力の人間とやらを探して歩いていた。
フィアンマとはぐれてしまったことも気がかりであるのだが、いかんせん、彼女は見つからない。

垣根(何処行きやがった…)

手を繋いでいたのにはぐれるとは子供か、と垣根はため息をつく。






垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/14(日) 22:01:46.96 ID:d+zSdX5Q0<> 加速してやるから安価取りな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/14(日) 22:08:47.62 ID:BRgAAHF90<> 空からフィアンセを探そう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/14(日) 22:10:01.67 ID:BRgAAHF90<> 予測変換…
>>432は「フィアンマを」です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/14(日) 22:16:42.01 ID:ERQmyVa+0<> まぁ間違っちゃいないわな <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 22:33:53.39 ID:pTYgNRKt0<>
とりあえず空から俯瞰した方が、誰を探すにもやりやすい。
廃ビルの階段を昇り、屋上にたどり着いた垣根は白い翼を悠々と広げる。
本来飛行に特化したものではないが、長時間飛行することは充分可能だ。

垣根「さて、と。探すか」

ばさ、と柔らかな翼を動かし、優雅に空を飛ぶ姿はまるで天使のようである。
フィアンマか、フロイラインという少女か、はたまたオッレルス勢力における金髪の魔術師か。
誰が見つかるかは賭けだが、ひとまず彼女の無事を祈りつつ、垣根は羽ばたくのだった。



垣根がフィアンマを探し始めて一時間。
陽が暮れてきた、午後五時頃。
何をどうまかり間違ってか、フィアンマはオッレルスにディナーをご馳走、奢られていた。
トールから頼まれた仕事内容の中に『オッレルス勢力の人間の足止め』も含まれている為、ある意味仕事をこなしているとも言えるのだが。
まったくもって底が読めない男だと思いながらも、フィアンマはパンを口に含む。
どれだけ食べたところで自分の懐は痛まない。
トールに強力していることは、ひとまず黙っておく。

フィアンマ「…それで、オッレルス…だったかウルだったか。ウルで良いな」

オッレルス「それでも構わないが」

フィアンマ「…俺様に話があると言ったな。何だ」

オッレルス「>>437」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 22:35:10.11 ID:nhzez3+SO<> すまないがここは引いてもらえないか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/14(日) 22:41:35.72 ID:BRgAAHF90<> ↑ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 23:10:31.64 ID:pTYgNRKt0<> 《>>435 ×強力 ○協力》

オッレルス「すまないが、ここは引いてもらえないか?」

フィアンマ「何の話だ?」

パンを咀嚼して、フィアンマはとぼけてみせる。
不思議そうな表情を浮かべ、何の感慨すら浮かんでいない緑の瞳を見つめて。
濃密な『死』の気配を纏った男は、困ったように優しい微笑みを浮かべる。

オッレルス「言わずともわかっているだろう」

フィアンマ「…」

オッレルス「こちらに付けなどと、言うつもりはないよ。手を引いてくれたのなら、それで良いんだ」

フィアンマ「…『その少女』をどうするつもりだ?」

オッレルス「君に話す義務は無いな」

突如、パン、とまるでクラッカーでも鳴らしたかのような音がした。
大きな力と大きな力がぶつかりあい、相殺された音。
ソースで少し汚れた左手の指を舐め、フィアンマは銀のフォークの先端に触れたまま、首を傾げる。
周囲の客や店員は、音源はどこかと視線を彷徨わせ、動揺している。
そんなどよめく空間の中で、二人だけが落ち着いていて、『異質』だった。

オッレルス「……」

フィアンマ「……」

オッレルス「…どうしても、引く気は無いのか?」

フィアンマ「たとえば、ここで引くと宣言して。信じるのか?」

オッレルス「それは…」

マイペースに食事を終え、フィアンマは立ち上がる。

フィアンマ「お前が何をしようと、俺様は俺様がやると決めたことをする。言葉の意味は好きに取れば良い」

オッレルス「………」

フィアンマ「それから」

オッレルス「何かな」

フィアンマ「ご馳走様」

そう言い残して、フィアンマは店内から出る。
一度救うと決めた対象を、彼女は目的達成のその日まで、決して見捨てない。



垣根「お前何処行ってたんだよ」

フィアンマ「ちょっとした散歩に。…おや」

??????「……、」

垣根「…フロイライン…だっけか」

フィアンマ「あの雷神に連絡するとしようか」

垣根「そうだな。一応確保…しといた方が良いのか?」

ただし、とてつもなく嫌な予感がした。
その目に捉えられたら最後、大変なことになるのではないか、と。






垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/14(日) 23:12:41.31 ID:2YT+2J4D0<> 未元物質で拘束する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 23:14:20.13 ID:nhzez3+SO<> うっかり安易に近づいてしまう <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 23:30:35.04 ID:pTYgNRKt0<>
垣根(いやしかし、妙な印象さえ除けば普通の女…)

思い、垣根はあまり深く考えないまま、『彼女』に近づいてしまう。
ぎょろり、と目玉を動かして垣根の姿を捉えた彼女は、無言のままに彼を見つめる。
ぼこり、と。
垣根は、自分の身体の内側に、感知し難い何かがあることを、演算で感じ取った。
彼女の注目をこちらに向けた、ただそれだけで、妙な生体拒絶反応を起こしている。

垣根「が、っぐ……!」

げほ、と一度咳き込み、垣根は演算にてその異物を消し去る。
未元物質で創られた体は、常識的に倒れこむことは無かった。
膝をつき、どうにか呼吸を続ける垣根に対し、彼女は辺りに視線を彷徨わせた。
トールと連絡を取り、現在地を伝えることに成功したフィアンマは、そんな彼女の様子を眺める。
彼女はまるで、宛もなくさまよう迷子のようだった。
フィアンマは手を伸ばし、垣根の背中を数度摩ると、彼女をこの場に留めるべく、陣地的な結界を張る。

??????「……、」

フィアンマ「…フロイライン。それが、お前の名か」

フロイライン「……、…」

無言のまま、彼女はフィアンマの方へ目玉を動かす。
絶え間無い緊張感が、その場を支配していた。
どうにか体調を立て直した垣根は深呼吸し、立ち上がる。
と、そこへどうにか、何とか、トールがたどり着いた。

トール「一度逃がした時はどうなるかと思ったが、何とか間に合ったみたいだな」

フィアンマ「こちらには被害が出たが」

トール「報酬割増ってことで頼むぜ」

フロイライン「……、」

ぼんやりとした表情で、フロイラインは辺りに視線を走らせては興味を持つ。

フィアンマ「…で、『これ』はどうするんだ」

トール「>>443」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/14(日) 23:37:21.95 ID:/+FEX7VM0<> 逃がす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 23:38:17.42 ID:nhzez3+SO<> ま、処分…だろうな。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/14(日) 23:54:34.88 ID:pTYgNRKt0<>
トール「ま、処分…だろうな。…想定していた以上に危険度が高い。とはいっても殺す気はねぇが、…隔離すんのが、彼女にとっても一番だろうよ」

フィアンマ「そうか」

単調に相槌を打ち、フィアンマは危険を省みずに彼女へ近寄る。
彼女はというと現在、草の青々しさに目を惹かれているようだった。
彼女には、思考というものが存在していない。まるで、かつての垣根帝督のように。

フロイライン「……、」

フィアンマ「帝督、頼みがある」

垣根「何?」

フィアンマ「ちょっと作り替えてくれないか」

垣根「作り替える…、」

フィアンマ「恐らく、お前にしか壊せない現状だ」

こちらへ来い、と手招かれるまま、垣根は警戒しつつ、近づく。
フィアンマは彼女の目元を右手で覆い、垣根にとある指示をした。
人体に干渉し、作り変える、垣根帝督にしか出来ないことを。
神明裁判でまったく傷つかなかった彼女を、その無機質さを喪わせるための、行動を。




垣根「……」

疲弊した垣根の背中をさするフィアンマと、先程の虚ろさや常軌を逸した感がまるで無くなったフロイライン。
そして、この状況に困惑しながらも最も最良のハッピーエンドを迎えたことに動揺するトール。

フロイライン「此処は何処でしょう?」

垣根「…学園都市」

フロイライン「学園都市、ですか」

フロイライン=クロイトゥーネに、もはや彼女らしい特異性は無い。
垣根帝督が細心の注意を払って脳を作り替えた為、彼女は普通の人間へと落ちぶれた。
しかし、このまま放っておけば彼女は『素材』として使用されるか、『危険』とみなされ殺害されるか、そのどちらかだっただろう。
彼女に永遠の命があることには変わり無いが、ひとまず、他の人間と同じように物を考えるようになった。
神明裁判にかけられることの無い今、彼女は普通に物事を捉えて良い。何処かに閉じ込められる必要も無い。

トール「…言葉が出ない類の奇跡だな。見ただけじゃよくわかんねぇけど」

垣根「…疲れたな」

フィアンマ「すまないな」

垣根「いや、別に良いけどよ…」

フロイライン「ええと、それで…私は、どう行動すれば良いのでしょう?」

垣根「お前を助けたのはソイツだ。後はソイツに聞け」

トール「助けたのは俺じゃな「お前だ。…俺達にヒーローは似合わねえ」…」

フロイライン「?」

無垢な様子で、フロイラインは首を傾げる。
トールはしばらく迷った後、彼女を連れて身を潜めたようだった。またどこかで会うこともあるだろう。

フィアンマ「後のことは丸投げしてしまおう。楽が出来る」

垣根「それで良いのかよ。…腹減ったな。お前は?」

フィアンマ「空腹ではないな」

垣根「…飯食ったの?」

問われ、もごもごと気まずそうに彼女は言う。

フィアンマ「…>>446」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 23:57:12.69 ID:nhzez3+SO<> 道中もらった。食べないわけにはいかないだろう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 00:37:28.71 ID:8HQXRqNL0<> 魔神に貰った <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 00:48:46.31 ID:gHFTqoMy0<>
フィアンマ「…魔神にもらった」

垣根「あ? 魔神?」

フィアンマ「正確には、それになり損ねた男というべきか」

垣根「…え、男と飯食ってたの?」

フィアンマ「不可抗力だ。気づいたらそうなっていた」

垣根「…ふーん」

フィアンマ「…帝督?」

垣根「…とりあえず俺は腹減ったんだよ。適当に食うぞ。飲み物だけで良いから付き合え」

フィアンマ「それは構わんが、」

並みの女の子であれば痛い痛いと涙目になる程の強い力で手首を掴まれ、引っ張られるままに、フィアンマは歩く。
垣根の表情は不機嫌そのもので、オーラも不機嫌そうな、威圧感を伴ったそれになっている。
ファーストフード店に入り、垣根がハンバーガーセットを機嫌悪く平らげる様子を眺めつつ、フィアンマはホットコーヒーを啜った。
砂糖とミルクを溶かしたそれは、もはや一種カフェオレにも近い味となっている。

垣根「……」

フィアンマ「…食事をしている時位、機嫌を直したらどうだ」

垣根「俺の勝手だろうが」

フィアンマ「先程から何を怒っているんだ」

垣根「>>449」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 00:52:37.85 ID:ZQSoq2bSO<> 怒ってねーし!機嫌も悪くねぇ!

別にお前が俺以外の男と飯くおーがお前の自由だしぃ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 00:57:03.86 ID:YZ1WQD780<> >>448 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/15(月) 01:23:18.87 ID:0USb1xbAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 01:23:41.68 ID:gHFTqoMy0<>
垣根「怒ってねーし! 機嫌も悪くねぇ! 別にお前が俺以外の男と飯食おーがお前の自由だしぃ!」

非常にあからさまな反応である。
フィアンマはそんな垣根の反応を眺め、考え、頷いた。

フィアンマ「なるほど、嫉妬か」

垣根「…違ぇし。バーカ」

ばーか、とむすくれる垣根に対し、彼女は空になった紙カップを机に置いた。
そして手を伸ばし、彼の口元に付着していたソースを、そっと人差し指で掬い取る。
マヨネーズベースな甘めのそれをそのまま口に含み、彼女は垣根を見つめた。

フィアンマ「以降、気をつける。…別に楽しい食事という訳でも無かったしな。あわや戦闘だった」

垣根(俺の女と飯食って戦闘寸前って何だそいつ。死ね)

垣根「…だから別に怒ってないって言ってるだろうが」

フィアンマ「それならそれで良い」

垣根が食事を終えたのを見計らい、ホットアップルパイを差し出して、彼女は悪気無く笑む。
周囲の客は痴話喧嘩かと二人に目を向けたものの、一転して甘くなった雰囲気に視線を逸らした。

垣根「…何」

フィアンマ「あーん」

垣根「…、…ぁ…ん……ぐ」

こんなもので、と思う垣根帝督ではあったが、彼女の柔らかな笑みに段々と怒りが和らいでいき。
しまいには食べさられるまま、何となく幸せな気分で、アップルパイを平らげるのだった。





スイスに戻るには時間的に疲れるので、ひとまず学園都市に一泊することに決め。
どうにかホテルの部屋を取れた二人は、疲れながらベッドに座った。

垣根「…慌ただしかったな」

フィアンマ「そうだな」

垣根「怪我とか」

フィアンマ「していない」

垣根「そうかよ」

だるそうに相槌を打ち、次いで、垣根は肩を落とした。

垣根(…何でシャワールームがガラスな訳?)

それも、すりガラスではなく、本物の。
つまり、入れば丸見えという訳である。
ラブホではないはずなのだが、唯一の謎サービスらしい。不要である。

フィアンマ「すまなかったな」

垣根「あん?」

フィアンマ「フロイライン=クロイトゥーネを救うにあたって、無理をさせてしまった」

垣根「>>453」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 01:28:23.02 ID:ZQSoq2bSO<> …何あやまってんだよ。あれくらい楽勝だっての。

むしろ感謝するわ。自分の能力の新しい使い道の可能性をみた気がする。あの子も処分されずに済んだしな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 03:36:59.99 ID:8HQXRqNL0<> >>453 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 06:40:03.90 ID:ZN8fBY3E0<> >>452

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/15(月) 07:28:34.74 ID:0USb1xbAO<>
《当スレのサブカップルはトルフロになったかもしれません。
流れによりけり、あまり描写しませんが。
胃が、痛、

 夜に来ます》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 10:52:53.95 ID:ZQSoq2bSO<> 乙。ひゃくそうがん飲んどき。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 18:41:59.47 ID:kAnVJRnT0<>
垣根「…何謝ってんだよ。あれくらい楽勝だっての。…むしろ感謝するわ。自分の能力の新しい使い道の可能性を視た気がする。あの子も処分されずに済んだしな…」

フィアンマ「…、」

垣根「謝り過ぎなんだよ。お前そんなキャラじゃねえだろ」

そう明るく言って、垣根は彼女の頭を撫でる。
咄嗟にトールのせいにしたものの、他人を助けたという感覚は、垣根の胸にも優しく響いている。

垣根(似合わねえな)

思いながらも、悪い気分ではなかった。
幽閉され、意思を持たないぼんやりとした様相が、かつての自分に似ていたからかもしれない。
何はともあれ、さしたる犠牲を出すこともなく事が済んだのだから、これでよしとする。

垣根「オイ」

フィアンマ「何だ」

垣根「何で平然と風呂入ろうとしてんの?」

フィアンマ「…普通文化人は風呂に入るだろう?」

垣根「それにしたってそのガラス張りでは入らねえだろ」

フィアンマ「何か問題でもあるのか」

垣根「…目のやり場に困る」

フィアンマ「寝れば良いじゃないか」

垣根「まだ寝れねえよ、時差ボケで」

フィアンマ「そうか」

垣根「だから行こうとすんな」

フィアンマ「目を閉じていれば良いだろう」

垣根「無理」

フィアンマ「わかった、一緒に入れば良いのか?」

垣根「何でそうなりやがる」

フィアンマ「嫌なのか」

垣根「…>>459」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 18:52:44.70 ID:ZQSoq2bSO<> てめぇ…しまいにゃ襲うぞこのやろ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 19:15:09.25 ID:Zx2YCkDt0<> 襲われたいなら一緒にはいってやる <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 19:37:50.74 ID:kAnVJRnT0<>
垣根「…襲われたいなら、一緒に入ってやる」

彼の一言に、フィアンマはしばらく悩む素振りを見せた。
そして時計を見やると、残念そうにため息を吐き出す。

フィアンマ「…ひとまず、今日は諦めるか」

垣根「……」

襲われたくない、という意思表示は男としてはほっとするような、彼氏としては残念なような気分になる。
フィアンマも拒否したものの、微妙な表情を浮かべていた。
女性だから性欲が無いということは無い。如何に貞淑な女性といえど、本能にはそういった欲求がある。
何だかんだで致していないのは、未来や子供がデキた際のことを率先して考えてしまい、それによって性行為に及ばない二人の理性の強さに問題があるからだろう。

フィアンマ「…『行為』をするには、どの程度の付き合いが良いものなんだ?」

垣根「会ったその日に、ってのもあるらしけどな。人によるんじゃねえの」

フィアンマ「……」

垣根「…何だよ」

フィアンマ「…誘っては、理性で現実に立ち返り、拒否をしている。…嫌気がさしていないか」

自分と同じ垣根の年齢を踏まえた上で、フィアンマは口ごもり気味に問いかけた。
つまるところ、セックスの出来ない恋人など嫌なのではないか、飽きるのではないか、とそういうことだ。

フィアンマ「…もっと貞操観念や考えが軽い女であれば、お前も気軽に…"及べる"だろう」

垣根「>>462」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 20:05:21.50 ID:ZQSoq2bSO<> お前が嫌みたいだからそれはしねぇ。俺はお前と別れる気はねーしできねーし。

…まぁ正直、お前がもう少し軽い女ならなー…と思わなくもないけどな…
基本的に男はそういう事がしたいから、寸止めとかされまくればすげーストレスたまるし、セックスレスは別れる原因にもなるぐれぇだし。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 20:07:39.05 ID:ZQSoq2bSO<> 何か変な文章に…ちくせう安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 20:24:30.03 ID:A4k3RV590<> 軽すぎるのは嫌だ!お前くらいがベストだな <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 20:41:33.78 ID:kAnVJRnT0<>
垣根「軽すぎるのは嫌だ! …だから、お前くらいがベストだな」

フィアンマ「…、そうか」

安堵の様子で薄く笑み、フィアンマはこくりと頷く。
女という生き物はいちいち口にされなければ不安がる生き物なのだろうか、などと一括りに考え、垣根はベッドに広がる彼女の髪を指先で弄んだ。
眠気が訪れるまで暇であり、且つ体は動かしたくない程に疲れきっている為、彼は彼女の髪で遊び始める。
未元物質から創り出したブラシで丁寧に丁寧に梳かし、三つに均等により分けた上で、編んでいく。
きつ過ぎず、かといってほどけてしまわないよう緩く編んだ後、その先端を小さなゴムで結ぶ。
とはいえ腰までの長さともなれば全てを編む事は出来ず、半ばまで緩く編んだ後に止めておくだけ。
最後まで編みきらないことで、かえって何となしに品の良さが漂う髪型となっている。
昔読んだ絵本のお姫様にこんな髪型の姫が居たような、と思いながら、垣根は手を引いた。

垣根「これだけ長さがあったら猫とか出来そうだよな。流石にその結び方は知らねえが」

フィアンマ「猫?」

垣根「猫の耳みたいな形を髪の毛で作り上げる髪型…と、雑誌で見ただけで詳しくは無いんだけどよ」

編み上げるのだったか、特殊なヘアピンを使うのだったか、と首を傾げる垣根を見つめ、フィアンマはふと気になったままに問いかける。

フィアンマ「犬派か猫派、どちらかといえばどちらなんだ」

垣根「心理テストにありがちな質問だな。んー…>>466」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/15(月) 20:48:17.24 ID:knXyrRAZ0<> どちらかと言えばいぬだな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 21:02:31.38 ID:iUVVnprO0<> 猫 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 21:25:52.26 ID:kAnVJRnT0<>
垣根「心理テストにありがちな質問だな。んー…猫」

フィアンマ「猫か」

垣根「お前は?」

フィアンマ「猫だな。触り心地が良い」

垣根「…前々から思ってたが、やっぱりお前の基準って触り心地なの?」

フィアンマ「割とそうだな。お前の翼もぬいぐるみも、猫も」

垣根「…前者二つはともかく、同列に並べるんじゃねえよ」

俺は猫じゃねえ、ときっぱり突っ込みながら、垣根は彼女の手元を見やる。
どこから取り出したのかいつの間に持ってきたのか、そこにはぬいぐるみがあった。
こうなると魔術は何でもありなのか、と思いながら、ふと、垣根は彼女の顔を見やる。

垣根「そういや、」

フィアンマ「ん?」

垣根「身体に干渉する魔術ってあるんだよな?」

フィアンマ「あるが」

垣根「お前の頭に猫の耳生やしたり出来ない訳?」

フィアンマ「無理だな」

垣根「…何でもありじゃないんだな」

フィアンマ「いまいちピンと来ないかもしれないが、制約はある」

垣根「ちょっと面白いかと思ったんだけどな」

そう思うのなら未元物質で再現してみれば良いじゃないか、とは思ったものの。
わざわざ墓穴を掘る趣味は無い彼女はノーコメントのまま、ぬいぐるみを抱きしめ、毛布の中に潜った。
垣根も思い返したように彼女の隣りへ潜り込む。まだ眠くはないが、横たわった方が体は楽になる。

フィアンマ「…おやすみ」

垣根「ん、おやすみ」





翌日、どうにかスイスへ帰還した二人はシャワーを浴び、飛行機疲れにだらけていた。
別にフィアンマの『奇跡』を応用した直線平行瞬間移動を使っても良かったのだが、無闇矢鱈と魔術を使っても生命力が削がれるだけだ。

フィアンマ「…やはり平和が一番だな」

垣根「それには同意だが…また厄介事に巻き込まれる気がしないでもねえな」

フィアンマ「そうだな。…まぁ、先日のように片付けば良いんじゃないか?」

垣根「そりゃそうだが」

そう簡単にはいかない気がする、と枕に顔を埋め、垣根は細く長く息を吐き出す。

垣根「もう仕事に追われる生活はまっぴらだ」

フィアンマ「年齢に見合わん、元企業戦士の様な口ぶりだな」

垣根「あながち間違ってもいねえからな」

????「なかなかに忙しないと称すべき日々だったな」

垣根「そうそう。……・じゃねえよ、誰だお前」

フィアンマ「…天使『アイワズ』―――或いは、『エイワス』か」

エイワス「『ドラゴン』と呼ばれていた時期もある。危害を加えるつもりは皆無、そんなに警戒しなくて良い」

垣根「…テメェが誰かはともかく、何の用だ」

エイワス「>>469」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/15(月) 21:44:10.62 ID:knXyrRAZ0<> アレイスターがいなくなった時点で学園都市は垣根提督を追う事は無くなった事を伝えに来ただけだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 21:50:29.71 ID:qGnLWZKY0<> >>468

それとフィアンマの罪(第三次戦犯)を
自分が指揮したとしていた事が判明した
もうフィアンマは罪には問われん好きに生きろ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 22:10:29.46 ID:kAnVJRnT0<>
エイワス「天使としての仕事…この言い方は正確とは言えないか。『終焉を告げる暇つぶし』。…アレイスターが居なくなった時点で、学園都市は垣根帝督を追う事は無くなった事を伝えに来ただけだ」

垣根「…ハッ。俺にこだわってたのは、統括理事長様一人だった、ってことか」

エイワス「そういうことになるな。それと、君にも…そうだな、所謂"福音"を授けよう」

フィアンマ「…俺様に?」

フィアンマが怪訝そうな表情を浮かべるのも無理はない。
何しろ眼前の聖守護天使は、興味を抱いた者にしか知識―――情報を授けない。
自分と垣根に興味を持つとは思えない、と不可解そうな表情を浮かべるフィアンマの様子を眺め、エイワスはどこか異質で、それでいて人間を真似た笑みを浮かべる。

エイワス「第三次世界大戦の戦犯たる君の罪は、私の指揮ということになった」

フィアンマ「……何を、」

エイワス「つまり、『右方のフィアンマ』は罪には問われん。私怨の刃はともかく、好きに生きると良い」

フィアンマ「…」

エイワス「人の世の罪を人が背負うには、少々荷が重い。ということで、人を超越した私に罪を押し付ける事にした」

フィアンマ「…貴様にそこまで肩入れされなければならない理由は何処にも無いが」

エイワス「『暇つぶし」だ」

フィアンマ「……なるほど」

もはや十字教ですら解釈の難しい、便宜上天使と呼ばれる存在は、興味を持った人間二人の罪をさらりと消す事にしたらしい。
垣根に関してはその限りではないが、フィアンマに関しては帳消しと同じことだろう。
気まぐれな救済。気まぐれに、免罪符となれる存在。
フィアンマが決して手の届かない場所に居る霊的存在はメッセージを伝えることで何かに満足したのか、音も立てずに消えた。

垣根「…信用出来ると、思うか?」

フィアンマ「ヤツは望めば望んだだけの知識を、正確に与える。…嘘は吐かん。その行動理由が単なる気まぐれであるところが恐ろしいが」

垣根「ふーん。……よくよく思い返せば、俺も一度だけ会ったな」

まだ、内臓の代わりに代替機械を体に取り付けられていた頃。
どうにか助かりたいと知識や策を願い、何者かに与えられたかのように、その考えはすっと入り込んだ。
その知識、感覚を元に、現在垣根帝督は人体細胞の構築が出来る。
今思えばあの唐突な知識の授与、一種の天啓(恵)は、先程の霊的存在によるものなのかもしれない。

垣根「…自由に生きろって、言われてもな。…ま、怯える必要性が無くなったのは良いが」

フィアンマ「まだ世界を見て回りきっては、いないしな…」

とりあえず命の危機というか、身を隠さなければならないという焦燥感は減退した。
だからといって旅をやめるつもりにもなれない。

垣根「…とりあえず保留で良いか」

フィアンマ「…そうだな」








垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 22:17:58.21 ID:kdObW8Pw0<> そろそろ別の国に行く <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 22:30:41.65 ID:kdObW8Pw0<> >>471

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/15(月) 22:31:26.61 ID:knXyrRAZ0<> >>471 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 22:45:49.74 ID:kAnVJRnT0<>
垣根にもフィアンマにも、どうせ帰る場所もなければ、待っている人だって居ない。
そんな人は作らないよう、自分達自身で捨ててきた。
なので、何がどう転んでも、旅の生活を送るのだ。
垣根が心配すべきは、これ以降、フィアンマが戦争被害者の私怨で傷つけられないかどうか、のみである。

垣根「とりあえず今日はもう少し身体を休めるとして。…何処か別の国行こうぜ」

スイスにも飽きた、とぼやき、垣根はそう誘った。
フィアンマは抵抗するでもなく頷き、候補地について考える。

垣根「俺は…浮かばねえな。お前は?」

フィアンマ「ん? >>475」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/15(月) 22:47:35.46 ID:9dD60sOd0<> イタリア

既に行ってたらドイツ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 23:29:33.39 ID:L3ou7foL0<>
フィアンマ「ん? そうだな…イタリアが良い」

垣根「本国か」

フィアンマ「とはいっても、バチカンに行くつもりはないさ。知り合いに見つかると厄介だしな」

垣根「完全にお前がやったってバレてるからな」

フィアンマ「そういうことだ。対外的な責任の所在はあの天使に押し付けられたとはいえ、あまりにも俺様と近しかった人間には通用せんだろう」

垣根「ま、バチカンから離れた場所なら良いんだろ?」

フィアンマ「恐らく問題無いだろう」

垣根「イタリアか。…何か暖かいイメージしかねえな」

フィアンマ「気候的にはそうかもしれんが…」

アバウト過ぎるイメージだ、と思いながら、フィアンマは曖昧に肯定する。
馴染みがあるのはバチカンだが、イタリア全土自体にも親しみはあった。




だるさが取れるまで。
つまり、二日程休んだ二人は、イタリアへとやってきた。
いつもの如く、アパートに近いホテルを借りて。
ハーフアップの髪型のフィアンマは、垣根に手を引かれるようにしてゆっくりと歩く。

垣根「目的の無い散歩は良いな」

フィアンマ「いつでも予定が変更出来るからか?」

垣根「ん」

そういうことだ、と頷き。
適当に歩いてデートをしていると、不意にフィアンマが垣根の陰に隠れた。

垣根「何? 知り合いでも居たのかよ?」

フィアンマ「…>>478」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 23:35:19.76 ID:8HQXRqNL0<> 元同僚だ(ヴェント) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/15(月) 23:36:46.01 ID:82un/EQa0<> ヤハウェ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/15(月) 23:38:11.70 ID:knXyrRAZ0<> >>477 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/15(月) 23:59:18.50 ID:L3ou7foL0<>
フィアンマ「…ヤハウェ<主よ>」

垣根「…は?」

フィアンマ「……」

ひし、と垣根の陰に隠れたまま、彼女はさっぱり離れようとしないし、出てこない。
ぽつりと一言漏らした言葉は、英語で言うところのオーマイゴッド、といったところだろう。
垣根には宗教は未だよくわかっていないが、彼女がひたすらお祈りをしていることだけはわかる。
一体何事かと垣根が視線を前に向けると、筋肉質な男が通り過ぎていった。
ちらりとこちらに視線を寄越し、何か迷った素振りを見せた後、そのまま闊歩していく。
その人物が去った後、フィアンマは垣根から離れ、再び手を繋いだ。

垣根「…知り合い?」

フィアンマ「そうだな。面倒な事になるのが嫌で祈っていたが、やはり俺様は神から愛されているようだ」

垣根「お前はもう神を愛してないのにな。…って、そんなことはどうでもいいが」

とりあえずそれならばこの場から離れよう、と垣根は動く。
今日は晴天で、歩いてどこまでも行けそうな陽気である。

フィアンマ「何処か、行きたい場所は無いのか」

辺りを見回し、垣根は悩みつつ言葉を返す。

垣根「>>482」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 00:03:55.05 ID:Tg28H9pSO<> うまいピッツア食いたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 00:09:17.63 ID:vbNV/dXA0<> まさかのアックア!?

安価>>481 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 00:57:48.78 ID:fFgvEF6Q0<>
垣根「美味いピッツァ食いたい」

フィアンマ「なら、こちらが良い」

先程までとは打って変わり、フィアンマは垣根の手を引いた。
てくてくと歩いて向かうのは、フィアンマがかつてよく行っていた店である。
モッツァレラチーズにバジル、トマトソースという実にシンプル、つまりはマルゲリータなのだが、生地にこだわりがある為に美味しい。
フィアンマに引っ張られるまま歩き、店に入って席に着いた垣根は、注文を彼女に任せることにした。
パスタを食べる程空腹ではないので、一枚を二人で分けて食べることとした。
運ばれてきた焼きたてのそれを適宜カットし、もぐもぐと食べながら、垣根はのんびりと予定を立ててみる。
立ててみようとしたのは良いが、そもそもイタリアの地理にはさっぱり詳しくないので、すぐさま諦める。

垣根「美味いな」

フィアンマ「昔から味が変わらん」

垣根「そんな昔から知ってたのか、この店」

フィアンマ「昔という程でもないか。まあ、この辺りに来た時はほとんど必ず立ち寄っていたな」

垣根「へー」

水をちびりと飲み、もちもちとした食感の生地を頬張り、垣根は天候を見やる。
変わらずの快晴。気分が良い。

フィアンマ「イタリア語は堪能だというのに、イタリア自体には来た事が無いのか。何故イタリア語を学ぼうと思ったんだ?」

垣根「>>485」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 01:00:22.65 ID:Tg28H9pSO<> 何か語調が気に入ったんだよ。次点でフランス語が好きだな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/16(火) 01:16:59.23 ID:+wKuSBt00<> 暇を持て余して。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/16(火) 08:45:48.92 ID:Kogg5H6AO<>
《エイワス様マジ守護天使

夜に来ます》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 18:32:43.47 ID:Tg28H9pSO<> そういや最近夜にお越しになるな…お忙しい中オツカレーッス <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 19:02:37.49 ID:X8Kh6WFt0<> 《>>487様 携帯の電池が弱ってきたのも一因ですが…ありがとうございます》


垣根「暇を持て余して。…言語なら、覚えておいて損はねえだろ」

フィアンマ「まぁ、暇潰しをするにあたって有意義な情報だろうな」

垣根「だろ?」

言葉を返し、フィアンマはティラミスを口に運ぶ。

垣根「…いつ頼んだ訳?」

フィアンマ「奢りの様だ」

むぐむぐと口を動かし、フィアンマはとあるテーブルの方へ視線をやる。
別に魔術師然としている人間が居るだとかではなく、ただの男性だ。
どうやらナンパらしい、つまり、垣根を彼氏と見ていないようである。

垣根(何でだよ)

フィアンマ「日本人は幼く見えるからな」

垣根「…お前心読めんの?」

フィアンマ「まさか」

それは無い、と彼女は肩を竦め、完食する。
ちなみにこういった奢りを受けるのは誘いに乗るという合図なのだが、別に彼女は件の男性とデートをするつもりは無い。
右方のフィアンマという女の子は、ただ単に『食べ物に罪は無い』という考え方をしているだけである。




二人はホテルへと戻ってきた。
ケータリングの店がいくつもあり、そして美味であるイタリアでは、あまり自炊せずとも困らなそうだ。
自分はフィアンマの彼氏に他人から見えていない、という事実に地味にダメージを受けている垣根の様子を眺め、フィアンマは暇を持て余す。

フィアンマ「…元気が無いな。聖書を読んでやろうか」

垣根「要らねえよ。何だその気遣い」

フィアンマ「ちょうど全巻揃っているようだからな」

部屋の中の本棚には、びっしりと旧約・新約を合わせた聖書が詰まっている。
うわ、とだるそうな声を出した垣根は、ベッドへぼふりと倒れ込んだ。

垣根「…」

フィアンマ「憂鬱そうだな」

垣根「>>490」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 19:14:08.79 ID:Tg28H9pSO<> 電池くらいショップ行って換えなよwwwwww

安価なら、
……んー、ピザ食った時さ、俺がフィアンマの彼氏って思われてなかっただろ?何か悔しくてな

なぁ、何をしたら『彼氏っぽい』んだろうな?
一緒に手を繋いで歩けばいいのか?キスとかしまくる事か?性行…、抱きしめあったりすればいいのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 19:17:39.05 ID:R2gIsxtV0<> さっきから寒気がしてなぁ…風邪かな <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 19:31:30.06 ID:X8Kh6WFt0<> 《>>489様 財布の中がロシアです》


垣根「さっきから寒気がしてなぁ…風邪かな」

フィアンマ「寒気か。明らかな悪寒か?」

垣根「風邪引いたことが…これまで二回位しかねえんだよ。わからねえ」

ベッドに倒れ込んだまま、垣根はそう言葉を返す。
風邪だろうかと思ってしまったが為に、彼の体はだんだんと熱を持ち始める。
熱を上げていく身体とは反対に、感じるのは寒さだけ。
寒い、とぼやき、垣根は毛布にくるまる。
フィアンマは手を伸ばし、垣根の額にぺたりと触れた。
推測するに、微熱、といったところだろうか。だからといって放置すると悪化する。
彼女はきちんと垣根の身体に毛布をかけて包み、慣れないながらも看病することにした。




二時間後。
気づかなければよかったものを、認識してしまった垣根は、段々と悪化してきた風邪の諸症状にぐったりとしていた。
フィアンマはというと、ホテル内の自販機で購入してきたスポーツドリンクのペットボトルを彼の枕元に置き、彼の隣に座って様子を見ている。

垣根「…けほ」

フィアンマ「……」

垣根「…」

無言のまま、がちがちと鳴らしてしまいそうな歯を食いしばり、垣根はゆっくりと息を吐き出す。
どうにも寒くて、どうしようもなかった。
予備として、しまってあった毛布を足して重ねたものの…やはり寒い。

フィアンマ「…寒いのか?」

垣根「…寒い、」

フィアンマ「…」

魔術を使うかどうか迷って、しかし自分の用いる術式はよほど重症・重傷なそれを治すか、はたまた自分にその苦しみを移すものしか無い。
魔道書の写本でも手元にあれば別だが、持ち合わせの術式はそれ位しか無い。

フィアンマ「……俺様に移して治すという手があるが、どうする?」

垣根「……、…>>493」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 19:35:44.50 ID:Tg28H9pSO<> どんだけ極貧だよwwwwww2、3千円でしょwwwwwwKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 19:38:11.09 ID:R2gIsxtV0<> 馬鹿やろう二、三千円が貴重なんじゃねぇか!!

お前に移すわけにはいかないから自力で治す! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 19:38:40.28 ID:R2gIsxtV0<> お前に移すわけにはいかないから自力で治す!

が安価ですすまん <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 19:45:22.45 ID:X8Kh6WFt0<> 《>>492様 ロシア状態の財布から出すのは厳しいのです…うーん》


垣根「……、…げほ、…お前に移す訳にはいかない、から自力で治す!」

フィアンマ「…そうか」

強がらずとも、と思うフィアンマにそうきっぱりと言い切り、垣根はげほげほと咳き込む。
毛布に手を差し込んでそんな彼の背中をさすり、フィアンマはどうすべきか迷った。
これまで、人を看病したことなど、人生で三回程しかない。
それも随分と昔の話、他人に手伝ってもらった時の話であって。
今のように一人で誰かを看病したことなど無かった。なので、どうすれば良いのかわからない。
とりあえず自分に感染すという手段を却下されたため、フィアンマはしばし垣根の背中を摩ってみる。
あまり風邪をひかないので、『風邪を引いた時はこうして欲しい』という希望が無いので、基準がまるで無いのだ。

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「…なぁ」

フィアンマ「…ん?」

垣根「…外出るんじゃねえぞ」

フィアンマ「別に言われずとも出ないが」

垣根「そうかよ」

フィアンマ「…寂しいのか?」

垣根「別にそういう訳じゃねえ」

フィアンマ「そうか」

垣根「……」

フィアンマ「…寝付けんのか」

垣根「寒くて落ち着かねえ」

フィアンマ「薬を買ってくるべきか? 市販薬程度しか手に入らんが」

垣根「>>497」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 20:03:08.40 ID:Tg28H9pSO<> 働けwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/16(火) 20:05:31.32 ID:+wKuSBt00<> そこにいてくれ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 20:16:23.67 ID:X8Kh6WFt0<> 《働けど働けど、我が暮らし楽にならず》



垣根「そこにいてくれ」

フィアンマ「…だが、」

垣根「…病気なんざ、気の持ちようだ。風邪程度なら、特にな。…薬飲むより、お前が席外さない方が治る」

フィアンマ「……」

自分を心配してくれているのだろうとは認識しつつも、垣根はそう言い切った。
事実、肺炎に発展する程、垣根の体は弱くない。寝ていれば治る類だろう。
垣根はもそもそと毛布から手を出し、フィアンマの右手をくいと引っ張る。
彼女は少し迷った後、指を絡ませて手を握った。
フィアンマは一貫して無表情だが、不安げな様子がその雰囲気よりにじみ出ている。
世界の救済に失敗し、自分が間違っていたと認めた、あの瞬間から。
彼女は垣根との旅の中で癒しつつも、絶望という名の病に羅っている。

垣根「…んな顔すんじゃねえよ。死ぬ訳じゃあるまいし」

フィアンマ「……、」

垣根「救うのは義務じゃねえ」

何も気負うなと言外に告げ、垣根は少しだけ笑みを見せた。
フィアンマはこくりと頷き、手をやわやわと握り直す。
熱で意識が揺らぎ、辛い筈なのに、垣根帝督はあまり苦しいとは思わなかった。

垣根(第一位みてえに、家族愛を求めてなかった、…俺は、普通の愛が欲しかったのか)

元闇の世界の住人同士で築いたのが明るい場所とはどういうことだろう、と垣根は思い。
マイナスとマイナスを掛けてプラスになる計算式か、と適当に結論付けた。
目を閉じる。寒さはだいぶ和らいだ。彼女が何かしているのかは、わからない。

垣根「……すー」





三時間程、後。
垣根が目を覚ますと、フィアンマはベッドの空きスペースに上体だけ預けて、眠っていた。
だいぶ身体の調子が楽になったのは、眠ったからだろうか。

フィアンマ「…帝、督」

垣根「…」

垣根(寝言か?)

フィアンマ「……>>500…」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 20:18:24.09 ID:Tg28H9pSO<> 何故紐ビキニを着てる……うぇ、は、吐く……やめてくれ、頼む、その格好で迫らないでくれ……えぐっ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 20:19:05.18 ID:iXMVJfBB0<> ダメじゃないか、オネショしちゃ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 20:27:15.20 ID:X8Kh6WFt0<>
フィアンマ「……ダメじゃないか、オネショしちゃ…」

むにゃむにゃと甘めの声で紡がれた寝言。
内容の割に表情は穏やかというか、『しょうがないなぁ』という感じの様子である。

垣根「誰がオネショするか…ッ」

この歳になって漏らしてたまるか、と突っ込みながらも彼女をどつき起こさないのは、垣根少年の優しさである。
このような言葉を、寝言だとしても彼女以外が言った場合、どんな表情で言おうが彼の怒りの琴線に触れて強制起床だ。
腕を伸ばして眠る彼女の頭を撫で、垣根は天井を見上げる。
調子が良くなった代わりに、眠っている間にどっぷりと汗をかいたのか、身体がべたべたする。
まず暴走しない自信はあるが、能力の応用で解消する気にもなれない。
シャワーを含め、風呂に入れば悪化する。となれば、身体を拭く、などの方向でどうにかするしかないだろう。

フィアンマ「……ん」

垣根「はよ。寝起きに悪いが、濡れタオル持ってきてくれよ」

フィアンマ「ぬれ…タオル…?」

眠そうな様子でぐしぐしと目元を擦り、欠伸を噛み殺し、フィアンマは垣根を見上げる。
身体がべたべたするから、と言われて濡れタオルの用途に思考がたどり着いたらしく、彼女はこくんと頷いた。

フィアンマ「ん、…まだ体調は悪いだろう。俺様がやってやる、」

垣根「>>503」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 20:28:39.22 ID:Tg28H9pSO<> …まさか、『全身』とか言わないよな?デリケートな部分は自分でやるからな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 20:30:17.95 ID:iXMVJfBB0<> 上半身だけな!上半身だけ! <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 20:51:14.22 ID:X8Kh6WFt0<>
垣根「上半身だけな! 上半身だけ!」

フィアンマ「別に全体でも「俺がよくねえんだよ」…?」

垣根「そうだな、お前寝起きだったな。二十秒位じっとしてからもう一回発言しろ」

二十秒程後、上半身だけだと納得し、彼女は一度バスルームに消える。
戻ってきた彼女の手には乾いたバスタオル、濡れたタオルが二つ。
濡れタオルの内の一つは石鹸水を含ませている為、部屋には良い匂いが漂う。
くすぐったさに耐えてじっとした垣根の功績により、上半身はすぐ拭き終わり。
やはり手伝いをすべきだろうかと悩む彼女をシャワーに追い立て、垣根は下半身なども拭いた。

一時間後。
フィアンマは長い長い髪を苦心して一つにまとめ、シャワールームから出てきた。
垣根はとうに清潔な服に着替え終わり、タオルを洗って所定の位置に片付けた。

フィアンマ「放っておけば良かったものを」

垣根「調子は良くなった訳だしな。何でもかんでもお前にやらせる気はねえよ」

ガキじゃあるまいし、と付け加える垣根は、暗部生活に長く浸かった影響の下、女だからといってか弱いとは思っていない。
また、女だから劣っているだとか、体力が無い生き物だとも思っていない。
しかし、家事一切は女がすべきとも思っていない為、フィアンマにあまり手間をかけさせるつもりは無いようである。

垣根「…しかし、調子良いな。お前何かした?」

フィアンマ「>>506」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 20:52:52.75 ID:Tg28H9pSO<> いや、何mゴホッゴホッゴホッ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 20:53:20.25 ID:iXMVJfBB0<> ちょっとばかりおまじないをな <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 21:03:29.70 ID:X8Kh6WFt0<>
フィアンマ「ちょっとばかり、『おまじない』をな」

垣根「…」

不信感を視線に宿す垣根に対してそっぽを向き、フィアンマは髪を乾かし始める。



一時間半前

エイワス「やあ」

フィアンマ「……」

エイワス「知識を授けに来たのだよ」

フィアンマ「別に求めていないが」

エイワス「暇潰しに付き合ってはくれないか?」

フィアンマ「…で、俺様の求めるものはわかるのか」

エイワス「垣根帝督の治癒、それも自然に近いもの」

フィアンマ「……そうだが」

エイワス「その表情は確か、『バツが悪い』というものだったか」

フィアンマ「…教えるのであれば早くしたらどうだ。代償など何も渡さんが」

エイワス「常に代償を求めるのは、君たちの時代の神や天使だろう」

気まぐれ且つ神出鬼没な大天使に授けられた知識を元に、垣根の自然治癒力を高める術式を行使したのだ。
時代の違う魔術に四苦八苦しながらも、かえって『この時代』の通常術式よりは迂回すべき神話が少なくて済んだ。


そんなこんなで垣根はだいぶ元気な訳なのだが、フィアンマはあえて口にしない。
何もするなと言外に言われていたのにしてしまったのだから、黙っているほうが得策なのだ。
別にフィアンマは好戦的な人間ではないし、ましてや、垣根との喧嘩はしたくない。

垣根(まあいいか)



数日経過して、風邪が完治した垣根は、ぐだぐだとしていた。
フィアンマも暇な為、垣根の様子を眺めて暇を潰している。

フィアンマ「何処かに出かけないのか?」

垣根「>>509」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 21:05:10.77 ID:Tg28H9pSO<> あー、じゃあ何か観光名物でも見に行くか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 21:07:51.45 ID:iXMVJfBB0<> >>508

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 21:22:02.36 ID:X8Kh6WFt0<>
垣根「あー、じゃあ何か観光名物でも見に行くか」

そう返事して、垣根は立ち上がる。
あまりグダグダとしてばかりでも身体が鈍るので、多少の外出は必要だ。

フィアンマ「とはいっても、ほとんど聖堂や城だが」

垣根「良いじゃねえか、城」

フィアンマ「そうか? スフォルツェスコ城が近いな」

垣根「どんな城なんだよ」

上着を羽織り、垣根は首を傾げる。

フィアンマ「正確には博物館だが」

垣根「博物館、ね」

フィアンマ「労せずして資料は見られる、良いだろう。スフォルツェスコ城は14世紀建造、ルネッサンス期にミラノを治めたヴィスコンティ家の城跡に建てられた、スフォルツァ家の居城兼要塞だ。…まぁ、次第に城塞としての構造を強め、現在は1辺約200mの長い城壁に囲まれているが。元が住居であった部分には、フレスコ画が彩る部屋が連なっている。内部の一部は市立スフォルツァ城博物館で、ミケランジェロの作品、他には古代ローマ、エジプト美術や彫刻などの美術品といったさまざまな展示品を見ることができる」

垣根「城塞か。…響きが物騒だな」

フィアンマ「実際、ミラノが危機に晒されれば、その機能を取り戻すだろうな」

垣根「魔術って放っておいても成立すんのか?」

フィアンマ「一度作り上げれば問題無いな。まあ、何もかもに歪みが生じているこの世界では、完璧な術式などそうそう創造出来んがね」

垣根「…」

聞いてみたのは良いものの、さっぱりわからない。
魔術について真面目に学ぶかどうか迷いつつ、垣根は彼女と共に博物館へ向かうのだった。




垣根「…そういや」

フィアンマ「ん?」

人気の少ない箇所で美術品を眺め、不意に垣根が口を開く。

垣根「お前の持論だと、この世界ヤバいんだろ。何年位で壊れんの? 予想だと」

フィアンマ「んー…>>512」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 21:22:49.51 ID:Tg28H9pSO<> 3ヶ月くらい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/16(火) 21:25:22.52 ID:FkLdbmt+0<> 忘れてた。とっくに危機は回避されてる
安心しろ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 21:43:50.48 ID:X8Kh6WFt0<>
フィアンマ「んー…忘れていた。とっくに危機は回避されてる、安心しろ」

垣根「…危機回避って、」

フィアンマ「問題無い。気にするな」

さらりと嘘を吐き、フィアンマは美術品を眺める。
確かに予想はしてあったが、それは今すぐに、という話ではない。
人々の行動によって早まるし、遅くなることもあるだろう。
何にせよ、もう自分が関わらないと決めたものに対し、興味を持たないし、努力しない。
この世界は自分の救いを拒絶したのだから、後は好きに転がり落ちていけばいい。
垣根は少々蟠ったものの言葉は続けず、博物館内の資料を読む。

垣根「…神話の内容を抜き出して、理論で組み立てて、『奇跡』を再現する、か」

フィアンマ「ん?」

垣根「いや、それってカミサマへの冒涜じゃねえの、って勝手に思ったんだよ」

フィアンマ「…まぁ、そうだな。だからこそ、魔術は『毒』なんだ。…宗教防壁を張っていなければ、蝕まれて殺される」

垣根「物騒だな」

フィアンマ「才能の無い人間が、才能のある人間へ追いつく為に編み出したものだからな」

垣根「なるほど」

科学サイドでいうところの、無能力者が能力者を目指して作った武器のようなものだろうか、と垣根は解釈する。
そしてふと、唐突に、知識欲が刺激された。

垣根「…なあ」

フィアンマ「?」

垣根「俺は、脳さえやられなければ何度でも演算出来る。…魔術を使っても、そうそう死なねえと思う。…だから、…あれだ、…学ぼうと、思うんだけど」

フィアンマ「>>515」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 21:45:27.29 ID:Tg28H9pSO<> 天使同盟思い出すな……Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/16(火) 21:47:31.92 ID:dJPGmk1R0<> やめておけ」と言いつつ目キラキラ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 22:01:37.26 ID:X8Kh6WFt0<>
フィアンマ「やめておけ」

言いながらも、彼女の瞳は輝いている。
金の瞳が、絶望という重い病を癒せそうな現実の展開に。
垣根はたじろぎながら、もごもごと言う。

垣根「…あくまでそれを主流にする訳じゃねえ。俺は能力メインでいく。…ただ、使えて損は無いだろ。シュウキョウボウヘキ、とやらはよくわかんねえけど」

フィアンマ「聞かんヤツだな。仕方が無い、そこまで言われてしまっては」

垣根(いや、まだ一回しか言ってねえしそんなに粘ってもいねえよ)

フィアンマ「お前がそうまでして望むのであれば、致し方あるまい」

垣根(お前が学ばせたいだけだろ、それ)

思いながらも、垣根は突っ込まないでおいた。
何となく、彼女が絶望という病に囚われていることや、コンプレックスがそれに輪をかけていることを知っていたから。
求められることに応えられることは、彼女にとって一種、やりがいのある仕事のようなものなのかもしれない。




ホテルに戻った垣根は、辟易していた。
フィアンマによる宗教講座や、聖書を読む作業。
文章を頭に叩き込むだけでは駄目だそうで、科学サイド出身の垣根は四苦八苦せざるを得ない。
とりあえず十字教で構わないので、『信仰』しなければならないようだ。

垣根「……」

フィアンマ「…大丈夫か?」

垣根「>>518」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 22:03:32.30 ID:Tg28H9pSO<> 今日は流れ早いなーKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)<>sage<>2012/10/16(火) 22:09:51.58 ID:SkbQvozAO<> 空飛ぶスパゲッティ・モンスター教じゃ駄目? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 22:11:40.51 ID:Og9K5TSSO<> スパゲティー魔術か <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 22:18:42.59 ID:X8Kh6WFt0<>
垣根「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教じゃ駄目?」

フィアンマ「それでも構わんが。架空の神を設定し、自らが教祖としてそれを信奉し、いくつかの神話や逸話を創り上げて盲信し、その上で術式を作ることからスタートとなるな」

垣根「…ちくしょう」

彼女に向かって『カミサマより俺を信じろ』などとまで言った垣根が、神の存在を信じられる訳もなく。
半ば投げやりに言った問いかけは肯定されたものの、先程より更にややこしい話になっている。

垣根「面倒臭え…」

フィアンマ「術式は縛りの上で成り立っているからな」

垣根「それは解るけどよ…」

自分が神になったという発想ではだめなのだろうか、と垣根は思う。
しかし、魔術はただ単純に思い込むだけでは成立しない。
妄想癖が誰でも術式を用いることの出来る世の中ならば、この世界にそうそう悲劇など起こらない。
自分が神になるという発想は、新時代、つまり『ホルス』の価値観に近い。
なので、知識を受け取るにはエイワスが必要となるが、人間のタイミングに合わせて出てくるようなことは無く。

垣根「……やっぱり科学の人間に宗教なんざ無理だな。頭の中にある既存の論理が邪魔しやがる」

フィアンマ「この世界が何で出来ていて、どうか進化してきたか、という話か」

垣根「まあ、そうだな。それ含め、色色と。……はー」

フィアンマ「諦めるのか?」

垣根「…>>522」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 22:20:57.00 ID:Tg28H9pSO<> キィ……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 22:27:36.47 ID:Tg28H9pSO<> お前にそんな残念そうな顔されたら諦めるなんて言えるかクソッタレ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 22:27:40.56 ID:Og9K5TSSO<> いや、もう少しやってみる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/16(火) 22:31:27.81 ID:vaRQxRiA0<> 天使同盟といい某所の未元禁書といい工場長は魔術を学ぶ展開が多いよな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 22:32:50.10 ID:Tg28H9pSO<> まー、能力が魔術に近いってのもあるし、つっちーより魔術をかっこよく扱いそうだしなー <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/16(火) 23:46:34.89 ID:yGsdhJSx0<>
垣根「…お前にそんな残念そうな顔されたら諦めるなんて言えるか、クソッタレ」

やや残念そうな色合いを滲ませた彼女の表情を見逃すことなく、垣根は首を横に振る。
この程度の努力が何だというのか。自分は地獄の研究所でもっともっと辛いことを学ばされたのだ。
あの頃に比べれば、自らの意思で学んでいる分、今の方が遥かに楽で。
一生懸命やれば結果は出ると、恋人が保証しているのだから、今は頑張り時だ。
リレーでも何でも、上り坂で息切れする時程、体力がついてくるように。
辛い時に前を向かず逃げ出せば、その瞬間までの苦労をもが意味を喪う。

垣根「………」

聖書を熟読する。
メモに記された、フィアンマの作りし写本についても学ぶ。
この世界の構造が歪んでいることを理解した上で、魔術を用いるということについて。
化物と罵られてきた自分にしか、このような行いは出来ない。
どれだけ命を投げ打っても構わない。どうせ死なないのだから、自分の命の価値など考えない。





二時間後。

垣根「xsvkgbwxkal」

フィアンマ「…大丈夫、ではなさそうだな」

垣根「xfckbwzqhwsu! xwjl…」

フィアンマ「神を罵ってどうする」

宗教防壁を張った結果、疲れがピークに達した垣根は、ベッドで暴れていた。
いわゆる子供帰りに近い。ストレスを解消しているようだ。
しばらく意味不明な言葉を口走った後(フィアンマはそのニュアンスから理解して相槌をうっていたが)、垣根はぱたりとうつ伏せにベッドへ倒れる。

垣根「……とりあえず、これで問題ねえだろ。ガードは終わったんだ、そろそろ本題に入ろうぜ」

フィアンマ「それは構わんが。…どういった術式を学びたいんだ?」

垣根「アバウトで良いのか?」

フィアンマ「構わん。必ず応えられるかどうかは別問題だが」

垣根「>>528」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/16(火) 23:48:32.41 ID:Tg28H9pSO<> やっぱ『槍』だろ。色んな意味でこれしかねーわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 00:08:31.47 ID:LgIZQ9000<> 一瞬黒翼化したかと思ったwwww

「やっぱり使い慣れてる『羽』を用いたい。後、神殺し的な意味で『槍』」 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 00:29:21.95 ID:Auslazjo0<>
垣根「やっぱり、使い慣れてる『羽』を用いたい。後、神殺し的な意味で『槍』」

           ロンギヌス
フィアンマ「…聖槍。『神殺しの槍』か」

垣根「道具とか要るもんなの?」

フィアンマ「技量と道具が必要だな。恐らく、今挙げた中では前者の方が良いだろう」

垣根「なら、後者は追々、って感じだな。『羽』に関するヤツは、何かあんの?」

フィアンマ「六枚の羽、といえば一般的な天使のソレだが。…いや、いきなり天使に関する術式というのも少々性急さが過ぎるか」

ぶつぶつと呟き、考え込む様子を眺め、垣根は大人しく待つ。
やがて考えを纏めたらしいフィアンマは聖書を捲り、メモ帳にボールペンでかりかりと何事かを書く。
垣根は手渡されるままにそれを眺めた。

垣根「…防御か」

フィアンマ「攻撃の方が良いと思うかもしれないが、高速戦闘において防御は重要だ」

垣根「『神のまことは大盾、小盾―――』げほっ、えほっ、ッ!」

ほとんど祈るような気持ちで手振りを行い、魔術記号を示した上での文句。
紡いだ途端、部屋に羽が顕れて垣根を何人からも守ると共に、彼は血液を吐きだした。
身体の中がぐじゅぐじゅと痛む。口を手で押さえ、未元物質で身体の修復作業<治療>を行いながら、垣根はゆっくりと息を吐き出す。

垣根「…よし、やべえ。死ぬ」

フィアンマ「運が悪ければすぐに死ぬ。気をつけろ」

垣根「気をつければどうにかなる類でもねえけどな」

心配ではあるものの、垣根の意思を何よりも尊重するフィアンマは、彼の背中を摩るのみで続けて講義を続ける。
『右方のフィアンマ』として得てきた知識をわかりやすいよう噛み砕き。
いくつかの術式を学んでは吐血し、時に身体の内側を灼く痛みに咳き込み、垣根は順調に覚えていった。
魔術を行使するにあたっては、頭の良さが物を言う。身体は『超能力者』なので魔術には向かないが、頭は向いているのだろう。

フィアンマ「…さて、今更なのだが」

垣根「何?」

フィアンマ「役職持ちの魔術師ではないからな。魔法名を決めよう」

垣根「魔法名…指針を表現するアレだっけか」

フィアンマ「あぁ。意味からつけるもの、単語からつけるものがある」

垣根「意味からつけたほうがわかりやすいだろうな」

フィアンマ「そうだな。何かあるか?」

垣根「信念、ねえ…」






垣根の魔法名(アバウト可 例:『万物を敷く者』『superboque074』など)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/17(水) 00:51:48.43 ID:w3dOOoXvo<> 常識の通用しない者 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/10/17(水) 01:03:15.85 ID:+3psCdWSO<> 彼女のためなら神をも殺す <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 07:23:07.45 ID:9/kalUd+0<> Gottermord666 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/17(水) 13:48:34.03 ID:9n1XXLUv0<> 傲慢 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 19:23:16.93 ID:+WWIKCKK0<>
垣根「『彼女のためなら神をも殺す』、ってのはどうだ」

フィアンマ「…彼女?」

垣根「…お前に決まってんだろ。言わせんじゃねえよ、恥ずかしいだろうが」

フィアンマ「…、…少し待て」

垣根の発言に口ごもり、密かに照れるという女の子らしいリアクションを見せたフィアンマは、それでも理知的な表情で辞書を手に取る。
ラテン語の辞書を読んでいき、さてどれにしようかと悩んだ。

垣根「そういや、どういうモンがあんの? 魔法名って」

フィアンマ「『我が名誉は世界のために(Honos628)』、『その涙の理由を変える者(Flere210)』、『礎を担いし者(Basis104)』…などがあるが」

垣根「一般的に通じる方が良いのな。…んー」

さてどう言い変えようか、と悩む垣根に軽くもたれかかり、彼女は静かに言葉を待った。
魔法名というものがどういったものか、どういうルールでつけるか、既に垣根には説明してある。
絶対に被らない数字で『666』を選んだ垣根は少し、いや、だいぶひねくれているようだ。
天使の術式を扱うと言っておきながらも、悪魔の数字を名乗るのだから。

フィアンマ「『神を殺す者』か、『愛に全てを捧ぐ者』か。どちらが良い?」

二つの候補にまで絞り上げたフィアンマは、垣根を見て言う。

垣根「>>536(『神を殺す者』、又は『愛に全てを捧ぐ者』のどちらかを選択したという意思を示す台詞)」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 19:26:50.26 ID:b5EwyQvS0<> もしかしてなんとなくちょこっと採用してくれた?
ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 19:30:17.85 ID:LgIZQ9000<> 神を[ピーーー]か、フィアンマを守るかって状況になったら
後者を選ぶんだろうなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/17(水) 19:32:58.03 ID:RdEHljtUo<> 愛に全てを捧ぐ者 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 19:33:09.94 ID:8UY63ZkIO<> 上手く言えないけど、文字が集まって単語になって、それらが作用し合って森羅万象が表現されていく所かな。
パソコンの前に立つとさ、キーボードのキーってある程度の数しかないのに、これらの押す順番で人の頭に物語を作り出す事ができるってワクワクする。
読んでて、自分の気持ちに相応しい言葉が出ると昂る。
書いてて、自分が表現したい言葉が出てカチッとそこに嵌まると、もうその単語が自分がそこに嵌めるために存在してるかのような大それた錯覚を覚える。
書いててなんだけど、変かな? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 19:49:02.34 ID:+WWIKCKK0<> 《>>535様 …安価該当しなくても、少し採用させていただく時があります》


垣根「神を殺すか、フィアンマを守るかって状況になったら…後者を選ぶんだろうな」

フィアンマ「…、」

垣根「俺が第一に置くのは、神様とやらへの復讐じゃねえ。お前が先」

だから後者だ、と垣根は言う。
守るものなど持ったことの無かった垣根にとって、彼女という存在が何よりも率先して先に置かれる。
そして、魔法名とはその魔術師が本当に本当に大事にしている理念だ。
果たしてそれを自分という他者に置いてしまっても良いのか、と思いながらも、フィアンマは辞書のページを捲る。

フィアンマ「この辺りから自由に選ぶと良い」

垣根「信念に沿った内容から単語を抜き出す、数字付けて出来上がり、だよな。『Dilige666(愛に全てを捧ぐ者)』で良いだろ」

フィアンマ「お前が良いのならそれに決定すれば良い」

垣根「ん。…ま、これで良いんだが、…恥ずかしいもんだな。…まぁ、俺が学園都市第二位『未元物質』って自己紹介するのとさして変わらねえか」

フィアンマ「そうだな。名前を伏せる役割を持つ。…そもそも、そうそう魔術と能力を併用しなければ倒せん人間とそうそう出会う事も無いだろう」

垣根「一応、追われてはいない訳だしな。…ま、そん時が来るとしたら、俺の危機じゃねえよ」

自分が死ぬのなら、死に物狂いで抵抗はしない。
彼女が殺されるのなら、死に物狂いで抵抗する。
どんな手段を使っても、自分にとって最も害たるモノは排除する。
それが垣根帝督のやり方で、生き方で、戦い方で。
つまるところ、彼の性格は魔術師向きなのである。

垣根「名前を伏せる、で思い出したけど」

フィアンマ「ん?」

垣根「お前って、本名あるの?」

フィアンマ「……、」

垣根「…フィアンマ?」

フィアンマ「…>>541」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 19:53:00.40 ID:fX7e2nzw0<> フェリーチ=カンパーナ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 20:26:09.28 ID:0al/hqau0<> ↑ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 20:32:22.70 ID:+WWIKCKK0<>
フィアンマ「…フェリーチ=カンパーナ」

垣根「フェリーチ?」

フィアンマ「…そちらはファミリーネームだ」

垣根「ってことは、カンパーナが名前か」

フィアンマ「…フィアンマで良い」

垣根「あ? 何で」

言いにくそうに答えた後、フィアンマは本名で呼ばなくていいと首を横に振った。
むしろ『右方のフィアンマ』という呼び名の方が良いのだと言う。
垣根にとって、本名は役職より何より大事なもので。
未元物質と呼ばれることを嫌悪する垣根には、本名で呼ばれることを拒絶する彼女の思いがまるで理解出来なかった。

垣根「…何か嫌な思い出でもあんのか? 名前が気に入らないとか」

フィアンマ「…名前が気に入らないと思ったことは、ないが。…気に入ってもいないがね」

垣根「……何で呼ばれんの嫌なんだよ」

もはや『神の右席』という組織は存在しない。
組織の役職名の名残である『フィアンマ』よりも、彼女本来の名前で呼ばれる方が良いに決まっている。
不可解そうな表情を浮かべる垣根に対し、フィアンマは視線を逸らし、顔を背け、辞書を片付けに立った。

垣根「……」

不意に、彼女がぼそりと呟く。

フィアンマ「…>>544」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 20:40:34.63 ID:bBoZzZ5d0<> 加速してやるから以下略 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 21:05:03.98 ID:yHESCDQL0<> 本名よりも、フィアンマと呼ばれるのに慣れているからだ。
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 21:19:29.01 ID:+WWIKCKK0<>
フィアンマ「…本名よりも、フィアンマと呼ばれるのに慣れているからだ」

垣根「……」

それは、学園都市第一位が『一方通行』と呼ばれ過ぎて、本名を忘れたことと同じだろうか、と垣根は思う。
名前は自分という存在を強く示す。
それが本名ではなく通称に取って代わられるほどに、彼女は『右方のフィアンマ』として生きてきたのだ。
そう思うと少し悲しくて、しかし、自分が悲しいと思ってもどうしようもないか、と垣根はため息を呑み込む。

フィアンマ「…だから、フィアンマで良い。…フィアンマが良い」

そう言い、彼女は辞書を片付け、垣根の隣に座りなおす。
自分のこの(元)地位、通称に誇りがあるのだ、と彼女はぼやく。
垣根としては、その表情からそのようなプライドは読み取ることが出来なかったが。
彼女にも彼女なりの考えや意見があるのだから受容しよう、と垣根は思う。

フィアンマ「…さて、勉強を再開しようか」

垣根「…そうだな」

魔法名は決めた。
宗教防壁も張った。
故に、後は好きなだけ学ぶのみ。
フィアンマから話を聞きつつ既存の魔術を会得し、その派生術式を作る。
ほんの少し位置を変えたり、採用する色を変えるだけで、術式が引き起こす結果は変わる。
吐血し、内臓を蹂躙され、皮膚を破られ。
血液を吐きだし、ぐったりとしながらも治療を行っては、垣根は懸命に魔術を学んだ。
力は持っていて損が無い。ある程度を超えれば孤独になるが、彼には恋人が居るので問題無いだろう。

垣根「………」

フィアンマ「…」

垣根「…なあ、」

フィアンマ「んー?」

垣根「俺が死んだら泣く?」

瀕死状態でベッドに倒れ、治療、演算を行いながら、垣根はふと問いかける。
別に深い意味はなく、世間話程度の内容だ。

フィアンマ「そうだな…>>547」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/10/17(水) 21:21:09.70 ID:9n1XXLUv0<> 自害する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 21:23:21.91 ID:MrIEA9jw0<> 世界を完全に破壊してから自害する <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 21:39:18.47 ID:+WWIKCKK0<>
フィアンマ「そうだな…世界を完全に破壊してから自害する」

垣根「じ、ッ」

フィアンマ「どこまで壊せるかはわからんが、ひとまず戦争以上の災厄をもたらしてから、だな。出来る限りの殺戮と破壊を行う」

垣根「……八つ当たり?」

フィアンマ「いいや。完全にそうとも言い切れんだろう。お前が死ぬことを赦したこの歪んだ世界に問題があるのだから」

垣根(理論がブッ飛んでやがる)

フィアンマ「自害するまでもなく、世界を破壊していく途中で誰かに殺されるだろうしな」

垣根「…」

フィアンマ「…俺様は、お前に会う為なら何でもする」

こくりと頷いて、フィアンマは垣根の治癒を手伝った。
重傷且つ重症なので、フィアンマの行使する超十字教的奇跡が役に立つのだ。

フィアンマ「…何でも、する」

垣根「……」

フィアンマ「…なんでも」

小さな声で呟き、『箱庭』を弄って垣根を治すその姿は、泥遊びに興じる子供の様で。
と同時に、一人ぼっちで人形遊びをする幼い少女のようでもあり。

垣根「…死んでも俺に会える保証は無いだろうが。前を向いて生きるとか、そういう選択肢はねえの?」

フィアンマ「…>>550」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 21:43:59.61 ID:+3psCdWSO<> 前を向いて生きる、というのはお前を忘れて生きる、ということになるじゃないか。
そんなものはごめんこうむる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 21:47:36.63 ID:MrIEA9jw0<> お前を忘れることなんてできないから無理だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/17(水) 21:53:22.91 ID:BabQCYxs0<> うぅっ・・・ひっく・・・」まじ泣き
・・・は三点バーストでたのんます

俺の愛機三点さん打てないorz <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 22:03:18.44 ID:+WWIKCKK0<> 《>>551様 三点リーダー、で変換してみるなど…うーん》


フィアンマ「…お前を忘れることなんてできないから、無理だ」

断言して、彼女は箱庭を弄る。
一人で作業する方が慣れている、といった様子。
そもそも魔術師にチームプレイなどというものは向いていないのだが、それを除いても、彼女は孤独にして孤高の存在に見えた。
寂しそうだな、と一方的なイメージを受けつつも、垣根は言葉を返す。

垣根「お前、人には赦される方法を考えようとか前向きな事言っておいてそれはねえだろ」

フィアンマ「人と自分は別だよ」

垣根「…それはそうかもしれねえが」

フィアンマ「…中身のあるフリをして。…俺様には、何も無いんだ」

垣根「…、」

治療を終え、箱庭を破棄しつつ、フィアンマはそう言う。
彼女にあるのは莫大な財産や才能と重い罪、絶望という名の病、垣根帝督という人間への愛情くらいなもの。
才能はイコール人格とはいえないし、罪はマイナス要素であり、病もまたそれであり、愛情でさえ、垣根がいなければ存在しない。
世界を守ろうかと考えたこともあったが、上条がああなってしまっては、その望みも絶たれ。
自分は空っぽなのだと告げ、フィアンマは垣根にくっつく。

フィアンマ「……」

垣根「…何もねえとは思わないけどな」

フィアンマ「…そうか?」

垣根「そんなに機械染みた印象が無いからな。…卑屈になり過ぎだろ」

フィアンマ「……」

垣根「…俺が好きになった女なんだから、自信持てよ。…後追いは嬉しくねえが、…まぁ、…待っててやる」

フィアンマ「死なないという約束は、してくれないのか」

垣根「>>554」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 22:07:02.71 ID:+3psCdWSO<> そりゃ、色んな意味でできねーよ。大体、人間である限りはいつか必ず死ぬだろうよ。お互いに。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 22:07:40.39 ID:MrIEA9jw0<> 人はいつか死ぬもんだ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 22:23:02.48 ID:+WWIKCKK0<>
垣根「人はいつか死ぬもんだ」

フィアンマ「……」

垣根「…お前の隣辺りで死にたいとは思うが」

フィアンマ「……」

垣根「『死なない』って内容の約束は出来ねえな。…『お前の傍で死ぬ』っていう約束なら、してやらなくもねえ」

フィアンマ「…帝督、」

垣根「俺は別にこの世界がどうなろうが知ったこっちゃねえと思ってる。嫌いだからな。だから、お前が人を殺そうと暴れ回ろうと、止めねえ。ましてや、死んでれば物理的にも止められないしな」

フィアンマ「……」

垣根「…待っててやるから、…やりたい事をやりたいだけやって、こっちに来い」

フィアンマ「…生まれ変わりか、はたまた、地獄と煉獄の岐路で。先に行かないのか」

垣根「お前は手繋いでても迷子になるからな。…俺が手引いてやらねえと、危ないだろ」

だから待っていてやる、と再度言い、垣根はフィアンマの頭を撫でる。
別にそこまで彼女が弱々しいと思っている訳ではない。自分がそうしたいだけで。
ついでに抱きしめながら、つくづく、自分には無いと思っていた庇護欲を強制的に刺激するヤツだ、と垣根はぼんやり思う。



その日は休み。
翌日も術式を編み出したり、学びながら、垣根は疲れていた。
正直、ここまで必死になって力を身につける必要性は無いのだ。
無いのだが、万が一、億が一を考えると、どうしてもやめる訳にはいかない。
世界などどうでも良いと本心を語った垣根だが、それでも一応、自分の生死に世界の命運がかかっているのだと思うと、更に術式研究へ追い立てられた。

垣根「…」

まるで長時間勉強に追い立てられている受験生か何かのように、垣根は真面目に取り組みながらも、疲労に圧倒される。

垣根「…おかしいよな。最初は旅行の筈だったんだが」

フィアンマ「外出するか? 休憩でも良いが」

垣根「>>557」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 22:24:53.93 ID:yIaKDrPy0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 22:25:31.82 ID:MrIEA9jw0<> 腹減った… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 22:25:48.06 ID:+3psCdWSO<> 開放的なとこ行きてぇ……

あー、でも、その前にフィアンマ成分が足りないから補給させろモフモフ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 22:38:43.66 ID:+WWIKCKK0<>
垣根「腹減った…。…出かける気力はねえな」

フィアンマ「何か注文するか?」

垣根「ピッツァが良い」

フィアンマ「…好きなのか」

垣根「腹持ち良いだろ、あれ」

理由を述べる垣根に対し、フィアンマはテキパキと注文を始める。
垣根に合わせて術式をいくつも行使した筈だが、まるで疲労感が見られない。
慣れか、それとも才能や身体構造(超能力者か否か)の差違なのか。
魔術サイド最大組織の頂点に君臨していたのだから、当たり前というべきなのだろう。

注文した通り、届けられたカット済みのピザを食べ。
ぐだぐだとしながら、垣根は写本を読む。
これはフィアンマが記したものではなく、魔術的な手段で取り出した、彼女の私物である。
頭が痛むが、魔術書の汚染は未元物質で適宜防ぎ、垣根は一生懸命にそれを読んだ。
何冊も読みふけってはその知識についてフィアンマと問答し、内容についての理解を深める。
この作業は術式を行使するものではないので、そんなに辛くも無い。

垣根「ふぁふふぇふぁ」

フィアンマ「飲み込んでから話せ」

垣根「…、…その人間によって、術式の向き不向きとか、あるもんなの?」

フィアンマ「>>561」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 22:43:20.35 ID:+3psCdWSO<> せやで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 22:48:58.24 ID:LgIZQ9000<> 無論だ、私にも苦手な分野ぐらいある <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 22:49:00.29 ID:gUlwuAW40<> そりゃそうだとも まぁ能力者のように
炎系なら炎のみ水系なら水のみ とゆうように
縛りはないがね <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 22:58:54.72 ID:+WWIKCKK0<>
フィアンマ「無論だ、俺様にも苦手な分野ぐらいはある」

垣根「やっぱりそうか」

フィアンマ「全般を習い、向いている方向を極めれば良い。…まぁ、縛りは無いが」

垣根「んー」

わかった、と頷き、垣根は再び本の読み込み作業と問答に戻る。
魔術は能力開発と違い、他者から教えられるまま、与えられるまま、才能を開花させるものではない。
まずは他者に習い、学び、自分で何か違うものを作り出せてこそ、一人前なのだ。
なので、自分が得意とするものを早急に見つけ、突き詰めなければならない。
魔神になりたいと願うのであれば話は別だが、基本的には専門知識があれば、自分の攻撃については組み立てられる。
様々に幅広く勉強をしておけば相手の手を先回りして読むという高度な戦闘も可能にはなるが、必須ではない。
学んで日が浅すぎるというのに、自分で術式を創り出そうと試行錯誤し、実際に作り出せている垣根は想像力が豊かなのだろう。

垣根「……何かパズルみてえだな。何枚かの紙を切って、パズルピースを造って、他のピースと組み合わせて円を作ったり真四角を作ったり」

フィアンマ「なるほど、言い得て妙だな。…何か浮かんだか?」

術式は、と問いかけ、フィアンマは暇そうに垣根の様子を眺める。
彼女がすべきは垣根に手本を見せること、治療する、などのため、退屈なのである。

垣根「>>565」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 23:04:01.13 ID:+3psCdWSO<> ん?ああ、世界の歪みを矯正する術式。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 23:07:09.95 ID:gUlwuAW40<> >>564

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 23:11:28.03 ID:+WWIKCKK0<>
垣根「ん? ああ、世界の歪みを矯正する術式」

フィアンマ「……」

垣根「?」

フィアンマ「…そう簡単には実現出来んだろう」

垣根「まあな。…ただ、魔術記号の組み合わせと俺の能力によっては、改変出来そうだと思ったんだよ。調度、壊れちまったセーブデータの上に、新しくプレイ設定を施したそれを上書きするみたいにな」

フィアンマ「……」

そんな簡単にいくものか、と少しむくれた様子のフィアンマに小さく笑って、垣根は思考を続ける。
今すぐに、という話ではなく、あくまで時間をかけて、世界を飛び回っての話だ。
能力と魔術、両方を融合させるなど正気の沙汰ではないが、垣根の能力である未元物質であるならば、さほど問題は無い。
未元物質自体が『天使の力』に近い物質だからである。

垣根「…」

フィアンマ「…世界の歪みを正すメリットなど、無いだろう」

世界などどうでも良かったのではないのか、と、言外に聞こえる。

垣根「>>568」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 23:13:49.50 ID:+3psCdWSO<> 彼女の心配ごとを解消してやるのも彼氏の勤めだろ。あんなウソつきやがってデコピン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/17(水) 23:14:23.85 ID:0al/hqau0<> >>567

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 23:22:29.56 ID:+WWIKCKK0<>
垣根「彼女の心配事を解消してやるのも、彼氏の務めだろ。…あんなウソつきやがって」

垣根は腕を伸ばし、彼女の前髪を上げた上で、デコピンを食らわせる。

フィアンマ「っつ、」

垣根「バーカ。……お前のコンプレックスは、問題に付随してる。…なら、それを取り除けば良いってだけの話だ」

フィアンマ「…、」

垣根「どんなに意識するなって言ったところで、お前は自分の持ってる力だとか、奇跡だとか、そういったものを意識せざるを得ない。性格もそうだが、目の前に問題があるからな」

フィアンマ「……」

バツの悪そうな様子で、フィアンマが視線を外す。
ひりひりと地味に痛む額を右手でさする様子は、ふてくされているようにも見える。

垣根「医療従事者が目の前にけが人が居る時、手当しちまうようなもんだ。つまり、職業病に近い。……コンプレックスなんて、そんなもんなのかもしれねえが」

フィアンマ「…コンプレックスなど、」

垣根「…その『右手に備わるべき奇跡』…『世界を救えるほどの力』がお前の重荷になってることは事実だろ」

フィアンマ「…なっていない」

垣根「……」

フィアンマ「……」

拗ねた声でそう言い張り、フィアンマは目を伏せる。

フィアンマ「…たかが俺様の心配事云々で、お前が要らぬ苦労をするのは、…喜べん」

垣根「>>571」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 23:25:59.96 ID:+3psCdWSO<> 要らぬ苦労じゃねーだろ…お前の苦労は俺の苦労でもあるんだよ
お互いの荷物を一緒に背負って、一緒に行けばいいじゃねーか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 23:30:19.81 ID:LgIZQ9000<> 人の一生は、重荷を背負いて遠き道を行くがごとし <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/17(水) 23:42:03.94 ID:+WWIKCKK0<>
垣根「『人の一生は、重荷を背負いて遠き道を行くがごとし』」

フィアンマ「?」

垣根「日本の武将の徳川家康が遺訓として遺した文句。意味は、"人生は不断の努力と忍耐をもって一歩一歩をおろそかにせず進み続けることが大切である"だったか。…別に、必要な苦労なら辛くねえ。お前にとっては要らぬ苦労でも、俺にとってはそうじゃねえ。…俺は、何のしがらみもなく、何をコンプレックスに思うこともなくお前が生きられる世界なら、それがいい。…無理しろって言ってる訳じゃないからな」

フィアンマ「…お人好しだな」

垣根「馬鹿言え。お人好しってのは、赤の他人に対しても今のと同じ苦労が出来るヤツのことだ。俺には出来ねえよ」

フィアンマという自分の好きな人間の問題でなければ取り組まない。
そうぼやいて、垣根は自分の思うがままに努力を続ける。
努力などというものを鼻で笑ってきた人間だが、それでも、結局のところ何かを成し遂げようとすれば、努力が必要になるのだ。
人の運命というものは、才能と努力で決まる。
その点では、垣根はフィアンマを、フィアンマは垣根を見つけることで、自分達がかつて浸っていた血の海よりはよほど有意義な運命を獲得することが出来た。
お互いはお互いに愛されるだけの才能を持ち、努力をしている。
ここ一番の頑張りが自分の進む先を決定してしまうことを知っている垣根は、死ぬ思いで努力する。
失う割に得られるものは少ない。だが、それで今の幸福が守られるのであれば、それで良い。





世界の歪みを穏便に正す方法に関する理論を組み立て。
術式を幾度も行使した垣根は、ほとんど死人状態でベッドに倒れている。
疲れきっている。ともすれば、泥酔して吐いた酔っぱらいのようでもあった。

フィアンマ「……大丈夫か?」

垣根「…>>574」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 23:43:16.98 ID:+3psCdWSO<> 大丈夫に見えるなら眼科医にかかった方がいいんじゃねーの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/17(水) 23:50:49.56 ID:+3psCdWSO<> …お前がいい子いい子してくれたら直るでちゅ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 00:02:50.98 ID:jZ0HTJMv0<>
垣根「……お前がいい子いい子してくれたら治るでちゅ」

何もかも投げやりぞんざいな態度でそう言い、垣根は毛布に顔を埋める。
身体を傷つけては修復、もとい治療するという行為で全て疲れきっていた。
どう見ても大丈夫ではないし、仮に撫でても治らないだろう。

フィアンマ「…『あなたがたに告げます。信じる者は永遠の命を持ちます。天から下りしパンは、貴男を生かすことでしょう』」

言いつつ、フィアンマは右手で垣根の背中をさすった後、手を伸ばしてピザの一部分、耳の辺りをちぎる。
小麦で出来たパン生地は、『神の肉』とほぼ同じ。
右手の奇跡によって清められたパンを半ば口に突っ込まれる形で、垣根はもぐもぐと咀嚼した。
当然、術式の効果によって、体調は良くなる。
こうされたかった訳ではなかったのだが、と不服に思いながらも、垣根は大人しくパンを食べて身体を癒した。
別に彼は奇跡の恩恵が欲しかったのではなく、彼女に甘えて欲しかっただけなのだ。
甘えの意味合いを含むスキンシップをとってくれれば元気が出そうだったのだが、まるでわかっていない。

垣根「…お前、たまに鈍いよな」

フィアンマ「何の話かすらわからんのだが」

垣根「…>>577」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 00:11:52.15 ID:pm35X/TSO<> 膝枕してくれ。で、耳掃除してくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 00:34:29.22 ID:pm35X/TSO<> 上

寝る前に一報くれると嬉しいんだよ! <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/18(木) 05:31:12.61 ID:8oICulVAO<>
《>>577様 気付いたら寝ていました 今後気をつけます…

おはようございます。
今日は来られたら夜に来ます》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 12:37:52.82 ID:pm35X/TSO<> 待とう <> 小ネタ:サンタさん
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/18(木) 16:43:44.33 ID:8oICulVAO<>
垣根「クリスマス、ね。…そういや、昔はサンタなんて信じてたな」

フィアンマ「…さんを付けろ」

垣根「は?」

フィアンマ「…だから、サンタクロースさんと言え。ヤツは実在する。失礼だろう?」

垣根「…は?」

垣根(え、いや、お前17だろうが。現実見ろよ…能力使って現実ねじ曲げてる野郎が言う事じゃねえが)

フィアンマ「…サンタクロースさんは居る。…サンタクロース会議というものもあるだろう?」

垣根「サンタ気取りなおっさんの会合だろ」

フィアンマ「…実在のサンタクロースさんだ」

垣根「…あのな。…サンタ…さん、ってのは、正体があんだよ。そいつの身の回り…ガキなら親、保護者、その辺りが正体だ。ガキが寝てる間に枕元にプレゼント置いて、翌朝照れ隠しに『サンタさんがくれたんだよ』なんて宣ってるだけだ」

フィアンマ「…」むむ


垣根「大体、お前一度もサンタ…さん、見た事無いって事はねえだろ。何だかんだで夜うっかり目が覚めたりして、"正体"を見ちまうもんだ」

垣根(俺は経験ねえけどな。そもそも、研究者が『置き去り』にクリスマスプレゼントをする義理も無い)

フィアンマ「…俺様は幼少の頃にサンタクロースさんからプレゼントをもらった事が無い」

垣根「そうなの? …よく信じられるな」

フィアンマ「サンタクロースさんが俺様に何らプレゼントを寄越さなかったのは、俺様が『いいこ』の基準点に達していなかった、ただそれだけの話に過ぎん」

垣根「……」

フィアンマ「…今年は先に貰ったが」

垣根「先?」

フィアンマ「『巡り合わせ』、といったところか。お前との出会いをもらった。…ん? ああ、17年間、毎年本来受け取るべきプレゼントの価値を総合すると、帝督になる訳か。なるほど、なるほど」


垣根「お前、恥ずかしい事言ってる自覚ある?」

フィアンマ「? 無いな」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 17:54:17.61 ID:pm35X/TSO<> ニヤニヤがとまらねーぜ乙 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 18:46:10.79 ID:NQ2D/zFQ0<>
垣根「…膝枕してくれ。で、耳掃除してくれ」

フィアンマ「…正座は苦手なのだが」

垣根「出身国的にそうだろうよ。…正座じゃなくていい」

ベッドに座って脚を揃えてくれれば良いと告げ。
垣根に言われるまま、太腿をくっつけて座ったフィアンマの膝上に、垣根は頭を乗せる。
細い分あまり柔らかみは無かったが、男のように筋肉質という訳でもない。
フィアンマは手を伸ばし、綿棒を手にすると、垣根の耳穴の様子を眺めた後、耳掃除を開始した。
万が一にでも鼓膜を傷つけてしまわないよう、気をつけて。慎重に、丁寧に。

垣根「っ…、」

こそばゆさと緊張にびくつく垣根の様子に、これで安らぐのだろうかとフィアンマは不思議に思う。
別にプロ並みの耳掃除を期待している訳ではなく、この状態・体勢が垣根にとって安らぎなのだが。

垣根「…お前、実用的かどうかしか重視しねえよな」

フィアンマ「ん?」

垣根「心情的に元気になる、とか…説明しにくいな」

男とは、基本的にプライドの生き物であり。
垣根も類に漏れず、実際に癒されるかどうかは別として、彼女に優しくされるだけで頑張れるのだ。
だがしかし、彼女はそういったことがわからないため、疲れを癒して欲しいと要求すれば魔術を持ち出す。
ロマンが無いものの、それもまた男慣れしていないという証明か、と垣根はぼんやり思う。

フィアンマ「……痛くないか」

垣根「>>584」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 18:58:58.70 ID:pm35X/TSO<> いやもう心が痛いわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/18(木) 19:17:39.02 ID:NOy14BFA0<> むしろ気持ち良い <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 19:32:10.36 ID:NQ2D/zFQ0<>
垣根「むしろ気持ち良い」

うっかり鼓膜を破るのでは、という程度の緊張はするが、丁寧で慎重な手つきは優しい。
おっかなびっくりといった手つきでの耳掃除は、こそばゆいながらも心地良いものだった。

フィアンマ「…そうか」

安堵しながら、フィアンマは手を動かす。
綿棒の面を逆に変え、傷つけないよう気をつけながら、掃除していく。
何となく、今のこの状態が耳掃除を主に置いたものではないのだと、理解した。
たとえば、祈りを捧げる儀式と一緒で、そのこと自体に強い意味があるのではなく。
それをするかどうかが重要なのである、と。

垣根「んー…」

フィアンマ「…眠るなよ」

垣根「…無理」

そう言葉を返すなり、垣根はその場でむにゃむにゃと眠り始めた。
体勢を一切変えず、彼女の膝上に頭を置いたまま、すやすやと。

フィアンマ「…」

困ったものだ、と思いながら、汚れた綿棒を捨て。
フィアンマはしばらく垣根の髪を触ることで、暇を潰すのだった。







魔神の少女(実際の年齢は不明である)は、面倒臭さと怒りに舌打ちした。
部下に当たるマリアン=スリンゲナイヤーは、ベルシを喪った事でやる気が出ないらしく、いまいち使えない。
『神殺しの槍』を創る為の『素体』は、裏切った部下―――或いは同僚の、雷神トールに持ち去られた。
そして、彼の消息は未だ掴めない。いつまでも目標を達成出来ない。
いっそこの世界を気の済むまで破壊してしまおうか、と刹那的な発想に走り。

オティヌス「…ただ何もかも諦めるのは、あの『出来損ない』の思い通りのようで腹が立つしな」

目下、自分の宛てを見事に外してくれた雷神トールと、その素体―――今やまったくもって使えない少女を探し。
また、その二人の逃亡を手伝った人間を含めて殺すか、霊装として使う事にしよう。"作り替え"て。





眠る垣根の頬をぺたぺたと触り、フィアンマは欠伸を噛み殺す。
部屋の中の換気は、冷房・暖房の換気機能にて済ませた。

垣根「…ん…」

フィアンマ「……」

垣根「…>>587」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 19:36:00.04 ID:pm35X/TSO<> 何かがこっち向かってんな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/18(木) 19:38:03.53 ID:LsIsSJzy0<> なんか嫌な気配がする <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 19:50:26.10 ID:NQ2D/zFQ0<>
垣根「…なんか嫌な気配がする」

フィアンマ「…気配?」

垣根「気配っつか…予感、というか。…感じねえ?」

フィアンマ「…特に何も感じないが」

彼女が鈍いのではなく、彼が聡すぎたのだろう。
何となしに遠方からの悪意を受け、垣根は不快そうな表情を浮かべる。
そしてのろのろと起き上がり、誰にも渡すものかと意思表示でもするかのように、彼女の身体を抱きしめる。
ようやく掴んだ宝物を、奪われる訳には、ましてや捨てる訳にはいかない。
強く抱きしめられ、フィアンマはきょとんとしながら垣根の背中を撫でる。

フィアンマ「……」

垣根「…」

フィアンマ「…一つ、約束してくれないか」

垣根「…何を」

フィアンマ「…もし。…もし、俺様が死ぬことになったら。それが、お前よりも早いのなら。…お前の手で止めを刺してくれないか。…もしくは、…俺様が死んだら、世界を守ってくれ」

垣根「何で俺が、」

フィアンマ「…俺様は、この世界に損害を与えてきた。お前に先立たれたら、損害を重ねて与える。…俺様が先に死んだ時、もう損害を与えたくない。俺様がいなくても、世界を矯正する術式を完成させ、達成してくれ」

垣根の表情に遠方の悪意を察したのか、はたまた神がかり的な予感なのか。
彼女の言葉に対し、垣根はよく考えた上で、言葉を返す。

垣根「…>>590」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/10/18(木) 20:03:23.07 ID:pm35X/TSO<> …お前がそれを望むなら。

もしお前が先に逝っちまっても、俺がぜーんぶ背負ってやるよ。世界も、術式も、お前を殺す咎も。

だから、もし死ぬ時が来ても、心配しなくてもいい。安心して逝け。その時に必ず側にいる事になるしな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/18(木) 20:08:51.54 ID:d6jkLoyC0<> >>589

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 20:24:04.12 ID:NQ2D/zFQ0<>
垣根「……お前がそれを望むなら」

弱く頷いて。
深呼吸した後、垣根はあえてやや明るい声の調子で言った。

垣根「もしお前が先に逝っちまっても、俺がぜーんぶ背負ってやるよ。世界も、術式も、お前を殺す咎も」

果たしてこの約束を自分は守れるのだろうか、と疑問を抱きながら。
自分が死ぬことでもう何にも傷ついて欲しくないと願う彼女の髪を撫で、垣根は言う。
きっとそんなことになってしまわないよう、守りたいと念じながら。

垣根「だから、もし死ぬ時が来ても、心配しなくてもいい。安心して逝け。その時には、必ず側にいる事になるしな」

人を傷つけることに躊躇の無い彼女が、申し訳なさそうに、最期を自分に任せる。
垣根を信頼しているからこその、残酷な願いであり、約束。
それをきっと守ると宣言して、垣根はフィアンマの頭を撫でた。
何度も撫で、背中を摩り、ぎこちなく頬に口付ける。
フィアンマも垣根の髪を触り、おずおずと額に口づけた。

垣根「何もかも、考えないで逝けよ」

俺が、全部持っててやるから。
そう言って、彼は微笑む。
たとえ彼女がどんな目に遭っても、それは仕方のないことだ。
だけれど、それからは守ってあげたいと願う。
それすら叶わないなら、彼女を殺し、彼女の願いを殺し、彼女に会いに逝く。
自分の人生の終わり方としては、血と悪意と泥沼の中で這いつくばって死ぬよりは良いか、と垣根は思った。






数ヶ月経過した。
ある程度の術式を編み出し、学び。
世界の歪みを正す術式の完成にはまだ遠く及ばないものの、垣根はその頭脳を活かして魔術を会得していった。

そして、今は二月。
二人が出会い、三ヶ月と少しが経過したという訳である。
付き合って三ヶ月というと、一般的なカップルは一種倦怠期、はたまた愛が深まる頃で。
特殊な事情持ちである二人はあまり深め幅が無い為、前者とも後者とも言えないのだが。

垣根「…バレンタインか」

フィアンマ「勉強したいのか?」

垣根「聖ヴァレンティヌスの話じゃねえよ。……こっちじゃチョコじゃねえのな」

フィアンマ「…チョコレートが食べたいのか」

垣根「>>593」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/18(木) 20:48:01.23 ID:aUbJjS7o0<> チョコレートフォンデュが食いたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 20:50:35.12 ID:pm35X/TSO<> 『気持ち』が欲しいんだよ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 21:00:48.00 ID:NQ2D/zFQ0<>
垣根「『気持ち』が欲しいんだよ」

フィアンマ「気持ち、」

垣根「…もしかしてお前、日本式のバレンタイン、知らない?」

フィアンマ「知らんよ。…こちらの方では精々カードのやり取り程度だな」

垣根「道理で通じない筈だ。…日本だと、バレンタインにはチョコのやり取りがあんだよ。女がチョコ贈って、男がホワイトデー…来月の14日にお返しする、っていう風習」

フィアンマ「何故チョコレートなんだ」

垣根「チョコレート会社の陰謀じゃねえの?」

フィアンマ「なるほど」

垣根「カードって何、メッセージカード?」

フィアンマ「そうだな」

一般的には、と彼女は頷く。
イタリアに居る事だし、チョコレートを要求する必要は無いか、と垣根は考え直す。
ヨーロッパ諸国流のやり取りであるカードにしよう、と決めたのである。

垣根「男女問わず?」

フィアンマ「あぁ」

垣根「んー…」

フィアンマ「…カード程度の短い文句と、長い文面。どちらが良いんだ?」

垣根「あ? 書いてくれんの?」

フィアンマ「『気持ち』が欲しいんだろう?」

垣根「まあな。…>>596」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/18(木) 21:04:46.11 ID:pm35X/TSO<> それこそ、お前に任せるわ。
短い文に凝縮した気持ちをこめてくれても嬉しいし、長い文で思いの丈をぶつけてくれるのも嬉しいし。

お前の性に合った方でいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/18(木) 21:05:17.51 ID:GvKZiorL0<> >>595

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/18(木) 21:11:56.31 ID:NQ2D/zFQ0<>
垣根「まあな。…それこそ、お前に任せるわ。短い文に凝縮した気持ちを籠めてくれても嬉しいし、長い文で思いの丈をぶつけてくれるのも嬉しいし。だから、お前の性に合った方でいい」

フィアンマ「…わかった」

気持ちを籠めた、とは、その個人が様々な選択肢の末に選び取り、内容を伝えるということ。
だから、垣根は余計な要求はしない。全て彼女に任せる。
彼女は少し悩んだ後、二枚のメッセージカードを取り出した。
ラインは引かれていないので、長い文章でも短い文章でも、好きにしたためることが出来そうである。
こちらは帝督の分、と渡され、黒色のボールペンも渡され、垣根は受け取った後、悩む。
彼女は垣根に背を向け、ものすごく真剣に考えを巡らせている。

長い文章で思いの丈を一切合切、赤裸々に優しく綴るか。
大切な想いだからこそ、一言や二言程度の文章を丁寧に綴るか。

垣根もまた、彼女にどのような文章を送るか悩む。

垣根「……」





垣根の綴った内容>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/18(木) 21:12:30.23 ID:KvS/rjk00<> 加速 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/18(木) 22:53:04.84 ID:NQ2D/zFQ0<> 《今日は寝ます、明日は夜に再開します。

安価下でお願いします》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 13:13:54.12 ID:3DxSDs8SO<> I've never loved anyone like this before.

I'm lovin'you. It's true.

You're the most important person to me.

I get the feeling, the more involved I get with you.

I didn't know the meaning of my love and happiness until I met you.

I had no idea about this side of my personality either until I met you that it.

I'm really glad I met you. <> 小ネタ:猫語
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/19(金) 16:42:47.56 ID:nKO+Bu6AO<>
垣根「…」いらいら

フィアンマ「…」いらいら

垣根「…何だよ」

フィアンマ「にゃんでもないが?」

垣根「」

フィアンマ「…、」

垣根「……」

フィアンマ「…にゃんだ」

垣根「…お前、昨日までは『な行』発音出来てたよな?」

フィアンマ「口にゃい炎というヤツだ」

垣根「ふーん」なでなで よしよし

フィアンマ「…機嫌が悪いのではにゃかったか?」

垣根「一気に弛緩したから、もうどうでも良い」なでなで

フィアンマ「…」む


<> 小ネタ:名前 
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/19(金) 16:43:34.02 ID:nKO+Bu6AO<>

フィアンマ「Angolo della recinzione una recinzione〜♪」

垣根「焚き火だ焚き火だ…、じゃねえよ。人の苗字からかうな」

フィアンマ「揶揄してなどいないが」

垣根「あ?」

フィアンマ「ほんの冗談だろう、そう目くじら立てるなよ。…そういえば、帝督の名前は誰が付けたんだ?」

垣根「俺自身で付けた。ガキの頃にな」

フィアンマ「そうか。…帝督」

垣根「何?」

フィアンマ「呼んでみただけだ。呼び心地が良いな」

垣根「…バーカ」

フィアンマ「お前のネーミングセンスを賞賛しているだけじゃないか? 日本人は性別問わず照れ屋だな」

垣根「…お前があからさまなんだよ」

垣根(しかも、不意打ちで来やがる…)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 17:20:34.30 ID:3DxSDs8SO<> 相変わらず>>1はニヤニヤさせるのがお得意のようで。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/19(金) 20:26:27.18 ID:gIb/mtQn0<> 《>>603様 ニヤニヤしながら書いてました。不審人物扱いされないか心配でした》



悩みぬいた垣根は、英語で丁寧に綴ることにした。
自分が自分が、となってしまったが、情熱的ということで受け取ってもらえることだろう。

『I've never loved anyone like this before. (俺は今まで、こんな風に人を愛したことが無い)

I'm lovin'you.(お前を愛してる) It's true. (本当に、心から)

You're the most important person to me. (俺にとって最も大事なのは、他ならぬお前だ)

I get the feeling, the more involved I get with you. (お前と一緒に、沢山のものを感じ取りたい)

I didn't know the meaning of my love and happiness until I met you. (俺はお前に会うまで、愛することや、幸福の意味なんて、知らなかった)

I had no idea about this side of my personality either until I met you that it. (俺が誰かを愛せるだなんて、考えたことも無かった)

I'm really glad I met you.(お前に出逢えて良かった)』

垣根(…恥ずかしい文章だな、コレ)

思いながらも、訂正はしない。

垣根「書けた?」

フィアンマ「あぁ。短いとも長いともつかん微妙な長さになってしまったが」

垣根「構わねえよ」

そう相槌を打って、お互いに書いていたメッセージカードを交換する。
フィアンマが内容の読み込みを始めたのを見届け、垣根はそっと、受け取ったメッセージカードを見た。

『私は、世界で一番、貴男を愛しています。
たとえどんなことがあったとしても、貴男以外を愛することは無いでしょう。
私に幸せを運んできてくれて、ありがとう。
やっぱり貴男は、私にとっての天使様なのかもしれません』

垣根「…、」

自分が書いた文章もなかなか恥ずかしい愛の文句だったが、こちらもこちらでロマン溢れた、やや恥ずかしい内容だ。
けれど、フィアンマが先程一生懸命考えて日本語で書いたのかと思うと、胸の中が温かい何かに満たされるような錯覚へと陥る。
自分が天使云々と自惚れるつもりなどさらさらないが、彼女にとって自分はそのような存在なのかと思うと、ときめいた。

垣根「…」

ちら、と彼女の方を見やる。






フィアンマの反応(アバウト可)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/19(金) 20:28:28.59 ID:wv0M5HCK0<> 顔が真っ赤になり頭から煙が <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 20:44:09.43 ID:3DxSDs8SO<> お互い中々に恥ずかしい文書だったな

ということで厳重にしまって封印しておこうじゃないか <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/19(金) 20:55:34.99 ID:gIb/mtQn0<>

フィアンマ「お互い、中々に恥ずかしい文書だったな。…ということで、厳重にしまって封印しておこうじゃないか?」

淡々とそう提案し、フィアンマは『財産』をしまいこんでいる空間に、垣根からのメッセージカードをしまう。
何だ照れないのか、とやや残念に思いながらも、垣根は同じくメッセージカードを片付ける。
無くさないよう、未元物質でカードカバーを作り、厳重に、大切に。
がさごそ、としまいこんだ垣根は、彼女に再び視線を向ける。
フィアンマはというと、毛布を頭から被ってそっぽを向いていた。

垣根「……」

フィアンマ「……満足したか」

垣根「した。充分過ぎるくらいにな」

フィアンマ「そうか」

垣根「…」

フィアンマ「…」

垣根「…照れてんの?」

フィアンマ「照れてなどいないが」

垣根「……」

フィアンマ「……」

もそもそ、とベッド上で身動き、毛布に隠れる。
無言のまま、何かを紛らわすかのような動き。
まるで猫の昼寝のようであり。

垣根「…俺が天使、ね。…そう思う理由は?」

フィアンマ「……、…>>609」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 21:00:29.85 ID:3DxSDs8SO<> お前との邂逅で、第一印象がそれだった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/19(金) 21:03:55.50 ID:+Con/SAu0<> 第一印象と羽 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/19(金) 21:17:48.81 ID:gIb/mtQn0<>
フィアンマ「……、…第一印象と羽」

垣根「やっぱり羽か」

フィアンマ「…俺様にとっての福音を与えた存在だというのもあるが」

垣根「…」

嬉しいような、そうでもないような。
フィアンマは天使を所詮神の遣いっ走りだと見下しながらも、どこか真面目に崇めている。
十字教徒なのだから当たり前といえばそうなのだが、それとは少しばかり違うような。
いつも彼女にはちぐはぐな印象を覚える、と垣根は首を傾げた。

垣根「そんなもんか」

フィアンマ「そんなものだ」

別に深い意味などない、と言って、彼女はようやく毛布から顔を出した。
まだ引いていなかった赤みが少しだけ残り、彼女の白い頬を少しばかり染めている。
やっぱり顔赤くしてたのか、と少し嬉しく思いながら、垣根は手を伸ばす。
先程まで猫の昼寝のような動きをしていた彼女の頭を撫で、小さく笑んだ。
先程手紙に綴ったように、垣根にとってフィアンマの存在は幸福を構築するために必要なものだ。



翌日。
暇を持て余し、二人は外へ出てきた。
宛もなく散歩を続け、垣根は数度、彼女の手を握り直す。
いつ迷子になられるか、わかったものではない。

垣根「お前、昔から方向音痴なのかよ?」

フィアンマ「>>612」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 21:24:22.41 ID:oqPOWHqu0<> オティヌスフラグが怖いな……

「…………今日も良い天気だな(目線をそらしつつ)」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 21:27:30.35 ID:3DxSDs8SO<> 俺様がいつ方向音痴になったというんだ

俺様はその時その時で自分の行きたいと思った方に行く事にしてるだけだ。目的地なんて常に変わるんだプイ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/19(金) 21:37:14.92 ID:gIb/mtQn0<>
フィアンマ「俺様がいつ方向音痴になったというんだ」

垣根「学園都市であからさまに迷子だっただろうが」

フィアンマ「俺様はその時その時で自分の行きたいと思った方に行く事にしているだけだ。目的地なんて、常に変わるものだ」

ぷい、とそっぽを向き、フィアンマはそんな言い訳をした。
少々苦しい言い訳だが、彼女としてはある種信条・理論なのだろう。
私悪くないもん、といった様子に苦く笑って、垣根は彼女と視線を合わせる。
高圧的な物言い、知的な判断。
けれど、その分だけ子供っぽいのが魅力だとも思うから、腹は立たない。

垣根「ま、その意見にも一理あるけどよ。…どっか行くなら俺に言ってからにしろ」

フィアンマ「…わかった」

とはいっても、実際問題彼女は気づくと迷子になっているので、伝えようはないのだが。
フィアンマがむすくれるとつまらないので、垣根は機嫌を取るでもなく、理解を示す。

垣根「ん、…昼飯にするか」

フィアンマ「お前に合わせるが」

垣根「何食うかな…>>615」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 21:40:20.27 ID:3DxSDs8SO<> なぁ、フィアンマ何かリクエストない……っておらんがな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/19(金) 21:45:40.37 ID:+VS1w3sI0<> あんなところに回転寿司が! <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/19(金) 21:53:42.94 ID:gIb/mtQn0<>
垣根「何食うかな…っと、あんなところに回転寿司が!」

フィアンマ「好物か」

垣根「いや、食った事がねえ。回らない方ならあるんだが」

フィアンマ「そうか」

それならば今日食べれば良い、とフィアンマは垣根の手を引く。
ちなみに彼女は寿司という食べ物を食べたことが無い。
知的好奇心をくすぐった以上、垣根がやっぱりやめようと言っても、彼女は引かないだろう。

店内に入り。
円に換算して百円でそこ無かったが、安い値段で寿司を提供しているらしい回転寿司屋であった。
日本人よりはイタリア人の味覚に合わせているらしく、一部珍しいネタがある。

フィアンマ「……」

垣根「…卵、好きなのか?」

フィアンマ「この味は気に入った」

垣根は適当にイカやタコ、マグロといった定番且つ目についたものを食べ。
フィアンマはというと、卵ばかりを選んで食べていた。

垣根(出汁巻き卵か)

あまり食べないな、と思いながら、垣根も食事の手を止めずに進める。
フィアンマは食べる量に振れ幅があるらしく、食べる時はとことん食べるタイプだ。

垣根「なぁ」

フィアンマ「ん?」

垣根「少食だったりすげえ食ったり、何か魔術的な制約でもあんのかよ?」

フィアンマ「>>618」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 21:54:46.82 ID:3DxSDs8SO<> 天草のやつらは何かあったなKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/19(金) 21:59:29.85 ID:IunOGDNU0<> その時の気分だ。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/19(金) 22:12:59.01 ID:gIb/mtQn0<>
フィアンマ「その時の気分だ」

垣根「ふーん。何かルールでもあんのかと」

フィアンマ「他の『右席』メンバーはあったが…まぁ、俺様は特例だしな」

『聖母の慈悲』以上に、制約から解かれた存在。
『神の子』の特殊パターン、つまりは救世主。
そのような特別な質を持ち合わせたフィアンマが、苦しい努力をする必要は基本的に無い。
多くを望まない限り、彼女はその才能に助けられる。幸運に恵まれる。
その代償として様々なものを捨てたりしてはきたが、基本的に彼女の人生は、所謂『イージーモード』である。

垣根「それにしても卵食い過ぎだろ。バランス悪い」

フィアンマ「後で野菜を食べれば良いんだろう」

垣根「ガキかよ。今食えよ」

フィアンマ「…」

仕方が無いな、といった様子でサラダ巻きを数個食べ。
さて次はどれにしようか、やはり卵か、と彼女は首を傾げた。





寿司『たまご』を20皿程平らげたフィアンマは、再び垣根と共に街を歩いていた。
満腹なのか満腹過ぎるのか、時折呼吸の調子を正している。

フィアンマ「…食べ過ぎだ」

垣根「…自省しろよ?」

冷たく、ではなく、ため息混じりにそう言うと、垣根は空を見上げる。
何となく、曇ってきた。雨が降りそうだ。
しばらく歩いていて消化が済んだのか、彼女は通常の呼吸ペースで歩く。

垣根「降りそうだな」

フィアンマ「戻るか」

垣根「そうだな」

言って、垣根が一歩踏み出した瞬間。


彼女の手を握っていた左腕が、二の腕の途中から吹っ飛ばされた。
激痛と衝撃に一瞬意味がわからず訳もわからず、その場へ膝をつく。

垣根「が、ッ…!?」

フィアンマ「ッ、」

動揺しながらも、フィアンマは垣根の身体を支えようとする。
と、後ろから、静かな靴音が響いた。
街中の一般人は恐れおののき、一歩も動けないままに、フィアンマと垣根を含めた数人を見ていた。

垣根「…だ、れだ」

数ヶ月前に感じた、遠方の悪意。
その、根源。

出血する腕断面を手で押さえつけ、荒い呼吸を繰り返しながら、垣根は背後を振り向き、膝をついたままに、隻眼の少女を睨んだ。
隻眼の少女の後ろには、工具片手に周囲の一般人を眺めている少女が居る。

オティヌス「…>>621」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 22:15:53.14 ID:3DxSDs8SO<> すみません、サイゼリヤどこですか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 22:25:33.28 ID:3DxSDs8SO<> 知らんで結構。まぁ、赤いのは取り合えず四肢千切るか…
金髪は厄介すぎるな…マリアン、アレは冷蔵庫にしろ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/19(金) 22:30:31.53 ID:nKO+Bu6AO<>
《寝落ちしそうなので今日は寝ます。
小ネタは投下するかもしれませんが、本編再開は明日の夜です
お疲れ様でした。》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 22:31:05.90 ID:3DxSDs8SO<> 乙 <> 小ネタ:眠気覚まし
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/20(土) 07:42:44.34 ID:tprYKXpAO<>

垣根「…勉強したいんだが、どうにも眠いな」うとうと

フィアンマ「珈琲でも淹れるか」

垣根「だな」うとうと


フィアンマ「…ん」

垣根「砂糖だけでい、って何で緑茶混ぜてんだお前」

フィアンマ「カフェインの相互作用によって目が覚めるらしいが」

垣根「なるほど。…いや、続けて飲めば良かったんじゃねえの?」

フィアンマ「…」

垣根「…」

フィアンマ「…」

垣根「…」

フィアンマ「……、」まぜまぜ

垣根「オイ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/20(土) 16:11:40.71 ID:6QLNZ0VSO<> 間違いなんて、認めない。


そんなフィアンマさんが可愛いです <> 小ネタ:良心の阿責
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/20(土) 16:52:38.77 ID:tprYKXpAO<>

垣根「そういや、学園都市名物を発見したから土産…? に買ってきたんだけど、食う?」

フィアンマ「食物なのか」

垣根「カステラな」っひよこかすてら

フィアンマ「……」受け取り

垣根「…ん、中身カスタードか。悪くねえな」


フィアンマ「……」じー

ひよこ『…』ぴよっ

フィアンマ「……、…ひよこ…」

垣根「…食わねえの?」

フィアンマ「いや、…食べる…が…」

垣根「……?」

フィアンマ「……」じー

ひよこ『…』ぴよぴよ

フィアンマ(弱者を食い物にして生きてはきたが、これは…コイツは、…食えん…)

<> 小ネタ:日本語は難しい
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/20(土) 17:04:43.99 ID:tprYKXpAO<>
フィアンマ「時に、」

垣根「あん?」

フィアンマ「ザーメン? とは美味いものなの「ぶふっ」汚いな」

垣根「汚いのはどっちだ…ッ、…誰から聞いたそんな話」

フィアンマ「ふと思い出してな」

垣根「美味いっていうか、…いや、…舐めた事はねえが、不味いと思うぜ?」

フィアンマ「不味いのか」

垣根「そもそも食いモンじゃねえ」

フィアンマ「……白いし、どう見ても食べ物だったように思うが」

垣根「…見た事あんの?」

フィアンマ「実物は無いが。茹でている内に柔らかくなる、パスタと同じ原理で出来ているものだったか」

垣根「それ、そうめんだろ」

フィアンマ「…そう、なのか?」

垣根「ラーメンとかと混ざったのかは知らねえが、それは『そうめん』だ」

フィアンマ「なるほど」

垣根「美味いんじゃねえかな、あれは」

フィアンマ「……?」


垣根(紛らわしい…クソ、焦った…) <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/20(土) 19:04:30.40 ID:tprYKXpAO<>
《諸事情で今日は更新出来なくなりました
明日は必ずします》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/20(土) 21:18:31.56 ID:6QLNZ0VSO<> マジか乙 <> 本編再開 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 12:50:42.33 ID:1nJ+I0Lu0<>
オティヌス「…知らんで結構。まぁ、赤いのは取り合えず四肢千切るか…金髪は厄介すぎるな…マリアン、アレは冷蔵庫にしろ」

マリアン「指定が出るなんて珍しいね。ま、冷蔵庫造るのもたまにゃー悪くないか」

淡々と。
夕飯のメニューの説明でもするかのような軽い様子で四肢を引きちぎるだとか、人を電化製品に作り変えろだとかの指示をして。
隻眼の、まるで魔女のような装いをした少女は、無表情に二人を見つ―――見下す。
垣根は無言で浅い呼吸を繰り返し、切断された左腕を創り直す。
垣根にとってその事実が真実でないのなら、現実から消え去る他無い。
工具片手に少女はやや無邪気な笑顔を見せて、垣根へと向かう。

垣根「あっちは俺がやる。お前はそっちをやれ」

フィアンマ「…痛みは」

垣根「後で癒してくれればそれでいい」

言って、垣根は術式を纏わせた工具を受け止める。
垣根の右腕が蛇口へと一旦作り替えられたものの、即座に垣根が創り直したので、意味はない。

マリアン「無限に人体創れんの? 良いね、そういうの。私の専属素材提供屋にならない?」

垣根「悪いけど、働く気はもう無いんでな。無職上等だ」

垣根にマリアンを任せ、フィアンマは魔神と対峙する。
100%を保証された右腕と、50:50を保証された身体とが、向かい合った。
とはいえ、フィアンマに勝目は無い。此処から退かせるだけで精一杯、関の山。

四肢に圧力が、見えない力が攻撃を仕掛けてくるも、フィアンマは無視して右手を振る。
『聖なる右』の出力限界と魔神の力が押し合って、空気中に歪みを生じさせた。

オティヌス「どちらも面倒、か」

フィアンマ「…目的は何だ」

オティヌス「どうせ死ぬ相手にのんびり話すような趣味は無いな」

言外に必ず殺すと宣言して、純粋な魔神の少女は術式を行使する。
『右方のフィアンマ』―――十字教の中でも最高峰の天使の術式を用いる者でさえ、押し負ける。

フィアンマ「がッ、…ぐ」

押し負けた結果、そのダメージを身体に受け、少量の血液を吐きだしながら、彼女は噎せた。

オティヌス「…そういえば、十字教の復習を昨日したところだ。殺すのも疲れる。…『使う』事にしよう」

不穏な一言と共に、オティヌスは一度、指で心臓を突くような動作をした。
ほんの一瞬だけ心臓が停止し、意識を無理やり刈り取られながら、フィアンマはその場に倒れる。
何の移動術式かは不明だが、そのまま土の中へと埋め込まれていった。不自然な沈まり方からして、そのまま何処かへ運ばれるのだろう。

オティヌス「…予定変更だ。戻るぞ、マリアン」

マリアン「げほ、っげほ…」

垣根「テ、メェ…!」

演算で術を防いではマリアンに攻撃をしていた垣根がようやく魔神側の状況に気がつき、頭に血が上る。
雰囲気から、勝てないことはわかっていた。だからといって、立ち向かわずに見過ごすという選択肢も無かった。

戦闘意思を確認したオティヌスは、一度だけ何か術式を行使した。     らしい。

防がれた。ただ、垣根の前に立った金髪の青年によって。

オッレルス「…ようやく見つけた」

オティヌス「…出来損ないが。私の邪魔しかしないな」

呟いて、オティヌスは垣根を殺すことは諦めたのか、マリアンと共に、そのまま立ち去った。
歩いて去った訳ではなく、先程土中に消えたフィアンマのように、一瞬で。
頭の中も心の中も、どす黒い絶望というモノに侵食されながら、垣根は青年を見て問いかける。

垣根「……誰だ、お前。…何で、俺を庇った。アイツは何なんだ。どうしたらフィアンマを取り返せる」

矢継ぎ早な問いかけに、オッレルスはひとまず『人払い』を敷いて一般人を去らせた後、垣根を見てこう答えた。

オッレルス「>>632」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/21(日) 12:57:42.49 ID:oUZDz7j70<> 加速 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 14:33:02.36 ID:OldtrWsSO<> まず、落ち着いてくれ。…順に答えようか。俺はオッレルス。魔神のなり損ないだ
君を庇ったのは、君が[ピーーー]ば彼女が悲しがるから。…俺は彼女が辛い思いをするのは見逃せない。
彼女を取り戻す方法だが…奴等の潜伏場所が掴めない現状ではどうにもならない。アイツらサーチ系の魔術やらに引っ掛からないんだ。

…それはそうと、垣根くん。一発殴らせてくれ。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/21(日) 17:34:50.84 ID:RfCIJkqAO<>
オッレルス「まず、落ち着いてくれ」

垣根「……」

気にくわないものは叩きのめす。
そんな悪として生きてきた垣根帝督だが、命の恩人にわざわざ手向かう事はしない。
かつてフィアンマが呑まれた、今も尚時に呑まれている果てしない絶望という病に歯を食いしばり、垣根は身体の修復作業をした。

オッレルス「…順に答えようか。私はオッレルス。魔神のなり損ないだ」

垣根「…魔神?」

オッレルス「先程の少女だ」

隻眼の、と付け加えて説明し。
魔術を究めて神様の領域にまで足を踏み入れた魔術師の事であると、簡易的に話した。
順々に、オッレルスは問いかけに答えていく。
優しげな様子であるのに、垣根以上に濃密な『死』のオーラを纏っている。

オッレルス「君を庇ったのは、君が死ねば彼女が悲しがるから。…私は彼女が辛い思いをするのは見逃せない」

自らの治療を終え、オッレルスが信用に足るか否か見極めようとしながら、垣根は静かに話を聞く。
今頃、連れ去られたフィアンマが何をされているのかわからず、嫌な方向へと転がる想像に、苛立った。

オッレルス「彼女を取り戻す方法だが…奴等の潜伏場所が掴めない現状ではどうにもならない。アイツら、サーチ系の魔術等には引っ掛からないんだ」

垣根「…捜しようがねえじゃねぇか」

オッレルス「厳しい。が、私の予測が正しければ、まだ猶予はあるはずだ。彼女に何か細工を施すには、7ヶ月もの期間を要する」

垣根「…7、ヶ月」

長いとも短いとも、つかない。

オッレルス「…それはそうと、垣根くん。一発殴らせてくれ」

垣根「…殴られるいわれもなければ、お前に殴る権利もねえだろうが。……お前はフィアンマの何なんだよ」

彼女が辛い思いをするのは見過ごせない。
まるでヒーローのような事を宣うオッレルスに、垣根はやや攻撃的に噛みついた。
混乱と疲労とに、垣根自身、もう何が何だか判別がつかない。

オッレルス「>>635」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/21(日) 18:05:20.80 ID:uws4cAfo0<> 落ち着くんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 18:05:50.12 ID:b1zjteOIO<> んっ、だっこ。←駅弁態勢要求 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 18:07:35.60 ID:OldtrWsSO<> 安価なら彼女を大事に思ってる人間の一人だ

彼女を守る立場の人間がむざむざさらわれさせたのが腹がたつんだよ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/21(日) 18:43:39.56 ID:RfCIJkqAO<>
オッレルス「んっ、だっこ。……と、彼女にされたかった。…確かに、君を殴る権利なんて、私には無いんだろう」

ハグの姿勢を取ってみせ、オッレルスは腕を下に垂らす。
ため息を吐き出しながら。

オッレルス「私は、彼女を大切に思っている中の一人だ。…好意すら抱いているから、先程はジェスチャーを交えたが、……君から彼女を引き剥がそうとは、思っていないよ」

垣根「…、」

オッレルス「…君は、彼女の恋人なんだろう。誰よりも彼女を守るべき君が、彼女を守りきらなかった。その事実に、腹が立つ」

垣根「……、…俺が、無力だった。認める。殴れよ」

彼女を守りきる自信は少なからずあった。
だが、相手が強大過ぎて、奪われた。
それは理由にはなるが、言い訳にすべきではない。
オッレルスは垣根の態度に、緩く首を横に振った。

オッレルス「…何でもかんでも暴力に頼るのは、やめるよ。……移動しよう。此処に居ても、何ら意味は無い」





オッレルスに促されるままやって来たのは、同じイタリア国内のアパートメント。
簡素な服装ながらもどこかメイドのような印象を与える女性は二人を出迎え、垣根を見、オッレルスを軽く睨んだ。

????「……性懲りもなく、また子供を拾ってきた訳?」

オッレルス「…>>639」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/21(日) 19:38:50.28 ID:p5X0tBBO0<> 加速してやるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 19:40:05.19 ID:OldtrWsSO<> …今回は個人的な事情があるんだよ。多目に見てくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 19:41:45.65 ID:b1zjteOIO<> あれ、???の名前じゃないのか <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 19:51:59.66 ID:9MVIUdrf0<>
オッレルス「……今回は個人的な事情があるんだよ。多目に見てくれ」

真面目な様相での発言に、メイドのような女性は考える素振りを見せた後、頷いた。
彼がごちゃごちゃとした言い訳を重ねない時点で、真面目な『事情』なのだから。
フィアンマに好意を抱いていると言っておきながら女性を囲っているのか、と勝手に判断を下していた垣根は、女性に促されるまま、中に入る。

シルビア「私はシルビア。あんたの名前は?」

垣根「…垣根帝督」

シルビア「そう」

垣根「……」

シルビア「…私が介入すべき『問題』なら、あいつが私に声をかける。…ま、それ以外で何か話があったら、気軽に話しかけていいから」

垣根「…どうも」

口数少なくそう返事し、垣根はオッレルスと二人で部屋に入った。
シルビアは食事の支度か用事か、オッレルスに何事かを告げて部屋から出て行った。
かち、こち、と時計の針が音を響かせる静かな室内で、垣根は言いよどんだ後、言葉を紡ぐ。

垣根「……猶予期間があるのはわかった。サーチに引っかからないってのも。…何をしておびき出す?」

オッレルス「具体的な策については、まだ思案しているよ。君もヤツの狙いの一つ、だから、此処に居てくれれば安全は保障する」

垣根「…わかった」

いきり立ったところで、解決法が見つかる訳でもなく。
どうして自分が魔神に相対しなかったのか、それとも何にせよ結果は同じだっただろうか、と垣根は無言で項垂れる。
自分の命や身の安全の保障をされても、あまり嬉しくない。

オッレルス「十字教において、7という数字は重要視されている。だから、天使に近い、純粋な十字教の身体の彼女を何らかの道具…武器にしようとすれば、時間がかかる。七日ではとても不可能だろう。…だから、七ヶ月。……それにし たって、早く奪取した方が良いにきまっているが。…君、魔術は? 学園都市の能力者だから、期待はしないよ」

垣根「一応、扱える。…多少死にかけるが、能力で補えば問題ねえ」

オッレルス「現時点では、どの程度の魔術を扱える?」

垣根「>>643」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/21(日) 20:20:07.59 ID:uws4cAfo0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 20:22:49.12 ID:OldtrWsSO<> 一般的基本術ならどの属性でも。後は軽い防御術式なら… <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 20:32:53.72 ID:9MVIUdrf0<>
垣根「一般的基本術ならどの属性でも。後は軽い防御術式なら…」

オッレルス「わかった。ありがとう」

浅く広く。
まだどの傾向が自分に向いているのかすら、見定める時期ではなかった。
魔術に関しては素人も素人である垣根の話を聞き、オッレルスは悩む。
能力だけで勝利をおさめられるのであれば、垣根が先程敗北する訳も、押される訳もない。
つまり、魔術について学び、能力と併用しなければ、あの二人に勝つ事は難しい。
ましてや、七ヶ月以内に間に合わねば、フィアンマとも戦う羽目になる。
最悪の事態とはいえ、そちらも計算に入れておかねばならない。

たとえば将棋で手加減をするにあたって、ルールは完璧に、技量がそれなりに必要であるように。
フィアンマを傷つけるにしても殺すことのないように、まずは強大な力を手に入れなくてはならない。

オッレルスはあらかじめ垣根の能力についてそれとなく調べ、知っている。
その能力と相性が良いのは、恐らく[[光を掲げる者(ルシフェル)]]を元にしたものだろう。
北欧神話のそれを名乗るオッレルスではあるが、十字教魔術についての知識も、あらかた頭には入っている。

垣根「……魔術を学んでる途中だった。…やってる途中に死ぬことはねえ。何か、…教えてくれ。何でもいい。アイツ等をぶっ殺せるだけの、フィアンマを取り返せるだけの力を得られるなら、何だっていい」

オッレルス「…>>646」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/21(日) 21:20:08.85 ID:In6E4YSC0<> だれか加速ぐらいしろよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 21:21:45.20 ID:b1zjteOIO<> 石仮面で吸血鬼になろう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 21:21:58.80 ID:OldtrWsSO<> …ダメだ。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 21:35:12.25 ID:9MVIUdrf0<> 《>>96の理由により安価下》


オッレルス「……ダメだ」

垣根「何で、」

オッレルス「力をつければ、最悪君は彼女と戦う事になる。安全は保障するが、君は戦わせない」

垣根「…お前一人が取り返すってことかよ。で、俺は童話のお姫様よろしく、この家で待ってろってことか。ふざけんじゃねえよ」

オッレルス「ふざけてなどいないよ。…君では力が及ばない」

垣根「だから、…だから、教えてくれって言ったんだろうが。命の安全をただ保障されて、嬉しい訳ねえだろ。お前が戦いに行って、それで確実に成功出来るならいい。そうじゃないだろうが。せいぜい相殺だろ、見たところ」

オッレルス「……」

彼女を自分の手で救いに行く。
それは垣根が自分自身に課せた枷でもある。
魔法名にも刻んだように、垣根にとって彼女が居ない人生はほとんど意味が無い。
そして何より、最悪の場合、彼女を自分の手で殺すのが役目、約束でもある。

垣根「…フィアンマには、俺が向いているであろう術式は『光を掲げる者』だと言われた。それ関連の術式を教えてくれ。……アイツと果たさなきゃならない約束もある。頼む」

本気で頭を下げる垣根に、オッレルスは口ごもる。
確かに、自分とシルビア、他数名協力者を得たとしても、『グレムリン』…残るは少ないとはいえ、絶対に勝てるという力量差は無い。
むしろ、力量のみで計算すれば、負けてしまっている。あちらが50:50の勝率だとしても、若干劣ることには変わり無い。

垣根「俺のせいでこうなった。否定はしねえ。…だからこそ、俺がやらなきゃならねえんだよ」

オッレルス「…>>650」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/21(日) 22:06:27.57 ID:C1yeBUax0<> 命を落としても知らんからな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 22:08:28.91 ID:OldtrWsSO<> …なら聞くが、やっとキャッチボールが出来るようになった野球少年が、名コーチに教えてもらったからと、いきなりメジャーリーグで活躍できると思うかい?…君の言ってる事はそういう事だよ。
ご自慢の能力を使って負けてる君が、付け焼き刃で魔術を覚えても恐らくは。…それでも覚えたいか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 22:28:01.75 ID:9MVIUdrf0<>
オッレルス「……なら聞くが、やっとキャッチボール出来るようになった野球少年が、名コーチに教えてもらったからと、いきなりメジャーリーグで活躍出来ると思うかい? …君の言っている事はそういう事だよ。ご自慢の能力を使って負けている君が、付け焼刃で魔術を覚えても、恐らくは。…それでも、覚えたいか?」

痛烈な一言だった。
オッレルスが垣根に死んで欲しいと思っていないからこそ出る、厳しい言葉。

子供の考えに何でもかんでも賛同するのが大人ではない。
子供の想いを何でもかんでも実現させるのが大人ではない。

今まで能力で敵を一掃出来ていた垣根は、第一位に負けて以来、二度目の挫折を覚えた。
先程までその敗色と絶望に呑まれていたが、彼女との約束を優先して、心を取り戻す。

垣根「…確かに、素人をいきなりプロに混ぜれば、コテンパンにやられるだろうよ。まして、これは野球じゃねえ。本当の戦いだ。付け焼刃で覚えたって、ロクに役に立たない恐れだって大いにある。常識的に考えりゃ、一瞬で死ぬだろうな」

オッレルス「…なら、」

垣根「…俺の『未元物質』に…いや、…垣根帝督に、その常識は通用しねえ」

プロと戦った素人が、まぐれで勝つ事もある。
思いもよらない展開で、全てを成せる場合もある。
確率はごくごく低いが、それでも、付け焼刃が、最後の一手を成立させる可能性はあるのだ。

垣根「…俺は、フィアンマに奇跡を教えてもらった」

彼女が願って、自分が努力すれば、何にしても成せることを、垣根は知っている。
壊し、創るにしても殺しに繋がるこの力で、少女を救えた。腕を創ってあげられた。
ありえない事なんて、この世界に一つだってない。もし叶わないのなら、それは想いが弱いというだけのことに過ぎない。

垣根「そうそうまぐれに頼るつもりはねえ。まぐれを起こすにも、力が要る。…だから、教えてくれ」

オッレルス「…わかった」

一冊の魔道書を手渡し、オッレルスは視線を落とす。

オッレルス「……珍しく形を保っている『原典』だ。『光を掲げる者』に関する知識一切や、術式について載っている。それを読み込めば、後は練習を重ねるだけで術式を実行出来るようにもなるし、短略的な魔術記号の表現方法だって生み出せるだろう。ただし」

垣根「…ただ、し?」

オッレルス「多少血を吐く程度では済まない。しばらく寝込むだろうな。下手をすれば死ぬか、昏睡状態に至る恐れもある。…それでも、読みたいのなら」

垣根「……」

原典。
人一人の脳など、あっさり壊せる程の『毒』―――知識を宿した、モノ。
一冊読みきるだけでも、死にそうな程の苦痛に晒される。
彼女の為に、その苦しみを受け入れられるか。所詮付け焼刃に過ぎないのに。

垣根「………」

深呼吸をして、受け取る。
努力が中途半端では、何事も意味が無い。裏を返せば、努力をすれば、何にしても力が身につく。
やるなら早くしなければ。

垣根「…ッ、」

本を、開く。
そして、『中身』を読んだ。






垣根の状態(例:激しい頭痛)>>+2
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 22:48:28.11 ID:OldtrWsSO<> たまにはKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 23:18:55.34 ID:OldtrWsSO<> 何か誰もとらないからやっとく。
廃人ギリギリに。
安価とりすぎてるから他に来たら安価↓で <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 23:36:27.38 ID:9MVIUdrf0<>
まず最初に、全身の血液が沸騰したかのような錯覚を覚えた。
身体の中心がぐらぐらと揺らぎ、目の前の景色がどうなっているかすら判別出来ない。
猛烈な吐き気の中、めくってもいないのにページが捲られ、情報が頭に叩き込まれる。
能力開発中、頭に電極を突っ込まれて与えられた刺激とは比べ物にならない程の、断続的で凶悪な衝撃。
数度吐血しながらも、ページから目を逸らさない。一度始めた以上、拒絶すれば、この本に殺されてしまう気がした。
身体の内側から外側から殴られ、刺されたかのような激痛が侵食してくる。
精神的にも大打撃を受けているが、それについて深く考える程の思考力すら持てない。

「が、ぁぐ、痛い、痛い痛い痛い、ッ、いたい、」

知識を記した文字が、眼球を押しつぶすようにして脳に叩き込まれていく。
もうすぐ全て読み終わるのか、それともまだ読み始めなのか、確認出来ない。
あまりの痛みに嘔吐し、血液の混じった嘔吐物が口周りを汚しても、もはやそちらへ意識を向けられない。
意思も意地も無理やり押し通され、ぼろぼろと涙が流れる。痛い。逃げられない、避けられない苦しみ。
死んでしまったほうがマシだ。死んでしまえば、楽になれる。
舌を噛もうとして、ハンカチか何かを噛ませられた。思い切り噛み付く。暴れる。

「いだい、い、ッつ、ぅぐ、痛い、いっ、ッが…!!」

涙と鼻水と血液と胃液。
げほげほと咳き込み、やがて、読まれた原典はひとりでにパタンと閉じる。





本が閉じると同時に、垣根は気を喪った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/21(日) 23:36:29.49 ID:RfCIJkqAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/21(日) 23:36:34.86 ID:9MVIUdrf0<>
オッレルス「……」

あれから一週間程、垣根は寝込んでいる。
無理をさせ過ぎた、とは思いつつも、オッレルスにはどうしようもない。
治療は施したし、回復術式も施したが、日常生活に戻ることすら難しいかもしれない。
一般人でさえ魔術の原典など読めば色々と犠牲にするというのに、学園都市製の超能力者ともなれば、犠牲は計り知れない。
どうにかリハビリで取り戻せる範囲なら良いが、と思いながら、オッレルスは静かに垣根の様子を見守る。
あれから何度もサーチ術式は実行してみたが、依然としてオティヌス達の動向は掴めない。
寝言一つ漏らさずにただただ昏睡する垣根帝督は、夜になって、ようやく目を覚ますことに成功した。


膨大な知識を、頭の中で片付けていく。
まるで大量に買い受けた本を、本棚にしまっていくように。
その作業を終えて目を覚ました垣根には、何の思考力も残っていなかった。

垣根「あ、…ぅ…」

子供のような声を出す。
言葉になっていない。

垣根「…ぁ…」

オッレルス「……」

ほとんど廃人状態の垣根に、さてどうしたものかとオッレルスは冷静に考える。
こればかりは垣根の運と時間に賭けるしかないが、何しろ猶予期間が短い。

垣根「う…ぁぐ…xfjvsao…」

オッレルス「……」







オッレルスはどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/21(日) 23:42:29.17 ID:OldtrWsSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 00:31:15.75 ID:VRHJ6+kc0<> フィアンマがどうなってるか気になるな……


トールと少女に連絡を取る
無理なら安価↓ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/22(月) 00:42:21.28 ID:sRzgr7eAO<>
《今日は寝ます。
お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 00:44:03.43 ID:VRHJ6+kc0<> 乙ー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 00:46:32.70 ID:uH5FoLXSO<> 乙レルス <> 小ネタ:独り言
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/22(月) 11:55:40.53 ID:sRzgr7eAO<>
フィアンマ「……」

垣根「……」すやすや

フィアンマ「…帝督」

垣根「ん…」むにゃ

フィアンマ「…俺様は、お前を愛しているよ」
垣根「……」すやぁ

フィアンマ「…だから、」

垣根「…んー」ごろん
フィアンマ「…帝督だけは、俺様を」

垣根「……」くぅ




フィアンマ「…私を、置いて逝かないで」 <> 本編再開 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 15:07:28.07 ID:V37qxbAj0<>
再三悩んだ結果、オッレルスは傍受される恐れの低い通信術式にて、雷神トールへ連絡を取った。
トールはフロイラインを連れて逃げて以来、自らの方針にそぐわない『グレムリン』ではなく、オッレルス勢力側についている。
だからといっていつも一緒に行動しても非効率なので、トール達は普段は世界を旅行し、フロイラインに世界を教えてあげているようなのだ。
どこかの誰か達とまったく構図が同じだ、と思いながら、オッレルスは辛抱強く通信が繋がる瞬間を待つ。

オッレルス「…」

トール『はいどーも』

オッレルス「少し連絡というか、相談事があるんだ。良いかな」

トール『大丈夫大丈夫。で? 用件は?』

促されるまま、オッレルスは静かに、そしてわかりやすく状況を説明した。
フィアンマが『グレムリン』、オティヌス側に連れ去られて今何をされているかすら不明であること。
その対処にあたるために力をつけようと努力した結果、垣根帝督が廃人状態であること。
七ヶ月、否、少し時間が経ってしまっている以上、残り半年程度で大変な事態に発展してしまうであろうということ。
順序立てて説明され、トールはしばらく黙って状況を聞き届けた後、簡素に一言告げた。

トール『出来る限りの協力はさせてもらう。後、今からそっちに行って問題無いか?』

オッレルス「問題無いよ。出来れば『彼女』も連れてきてくれ」

トール『了解、と』

通信術式を遮断され、オッレルスは術式に必要だった諸々の文字を消す。




三時間後。
やや疲れた様子のトールが、辺りに興味を示すフロイラインを連れてやって来た。
彼は垣根の様子を見、苦々しい表情を浮かべる。

トール「…酷いな。何、原典読んだんだっけか?」

オッレルス「大きな組織ではないから、あまり防御機構を施す事も出来なかった」

フロイライン「……」

垣根「…xcjhwiq…ぅ…」

トール「…どーすっかな…」

軽い言い方だが、トールは真剣に悩んでいる。
自分が救いたいと願ったフロイラインという少女の人権と命を守ってくれた恩人の内の一人である垣根の手助けをしたいと思うのは、人間として当然の感情だ。

フロイライン「……優しい優しい雷神様。私に、何か出来ますか…?」

おずおずと問いかけ、フロイラインは垣根とトールの顔を交互に見る。

トール「んー…>>665」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 16:57:00.77 ID:uH5FoLXSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/22(月) 17:36:45.44 ID:aFtrn4080<> uH5FoLXSO
頑張れ良いのが思いつかない

kskst <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/22(月) 17:48:23.91 ID:bFiTHs8M0<> フィアンマの声でも聞かせてみるか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 18:10:27.25 ID:uH5FoLXSO<> 今更だが、>>662の小ネタ、もう少し掘り下げるっつーか、もうちょい欲しかったな… <> 本編再開  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 20:08:54.80 ID:YCs+/fOa0<> 《>>667様 本編で深めます》


トール「んー…フィアンマの声でも聞かせてみるか。フロイラインちゃんは、ひとまず大丈夫。俺に任せて」

言うなり、トールは術式の準備を始める。
自分の武器を奪われた雷神が、盗人をおびき出すべく美貌の女神フレイヤに化けた、という神話的事実を応用した変装術式。
女限定の変化だが、フィアンマは女の子なので、変化する分には問題無い。
変化を済ませたトールは、二、三度、あーうーと声を出して調整する。
どの角度から見てもフィアンマにしか見えなくなったトールは、少しばかり台詞について考える。

フィアンマ(トール)(…ま、愛しの彼女からそれっぽい台詞聞けば、男は元気になるモンだろ)

俺はそうだし、とアバウトに勝手付け、トールは声を出した。

フィアンマ(トール)「…帝督」

垣根「……」

フィアンマ(トール)「…起きてくれ。……助けてくれとは、言わん。無理をしたくないのなら、もうやめても構わん。…だから、……今だけは、元に戻ってくれは、しないか」

垣根「っぐ…xcbwailzj」

フロイラインとオッレルスが見守る中、トールは丁寧に演技を続ける。
右方のフィアンマという人物が普段垣根にどのような態度で接しているのか、一生懸命予想しながら。

フィアンマ(トール)「帝督」

垣根「…cxvjkbszgkwu…?」

未だ言語にならない言葉を漏らし。
虚ろな瞳で、苦しそうな表情で、垣根はトールを見上げる。
眼前に映るのは、自分が取り返したいと願っている恋人の姿。

垣根「……ンマ。…フィアン、マ」

フィアンマ(トール)「……目が、覚めたのか」

垣根「…戻って、来たのか」

無理矢理に身体を起こし、垣根は手を伸ばし、トールの頬に触れる。

フィアンマ(トール)「…残念。俺だよ、垣根帝督」

パキパキ、という音を立てて、トールは元の自分の姿を取り戻す。
垣根はそっと手を引くと、残念そうに笑った。

垣根「…、…ま、目は覚めた。……ありがとよ」

トール「これが愛の力ってやつかね」

オッレルス「能力行使は出来そうか?」

垣根「ん……問題ねえ」

垣根はだるそうに深呼吸を繰り返し、ガンガンと痛む頭を手で摩る。
意識と正常を取り戻した以上、術式の構成に入らなければならない。

トール「さて、王子様はすっかり目覚めた事だし…いや、一応俺達はまだここに居た方が良いか?」

オッレルス「>>670」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/22(月) 20:20:51.24 ID:Xt77KOpn0<> 頼む。俺は魔術を何としてもモノにしなきゃならないんだ。そこの女性も、頼む。この通りだ土下座 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/22(月) 20:57:22.09 ID:q/Jacde50<> ↑ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 20:59:20.85 ID:uH5FoLXSO<> 一応言うが、オッさんの台詞安価やで。
安価ならああ、頼むよ。彼のカリキュラムも組まなきゃならないから協力して欲しい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/22(月) 21:05:37.81 ID:q/Jacde50<> あ、間違えた <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 21:18:03.88 ID:YCs+/fOa0<> 《少し考えましたが、>>96の理由により安価下》


オッレルス「ああ、頼むよ。彼のカリキュラムも組まなきゃならないから、協力して欲しい」

トール「こっちは時間が無限にあるようなもんだしな、構わねえよ」

垣根はベッドに座ったまま、二人の会話をそれとなく聞く。
深呼吸をまた繰り返すと、幾分か頭がすっきりしたように思えた。

トール「まぁ、体調を見ながらのスパルタカリキュラムになるだろうけど、仕方無いな」

オッレルス「時間があるのならゆっくり取り組んでも構わないんだけどね…」

急いては事を仕損じるとは言いつつも、やはり急がなければならないことは事実。
悠長に過ごしていれば、あっという間に七ヶ月など過ぎ去ってしまう。
オッレルスの予想が正しければ、一種兵器に作り替えられたフィアンマは、自らの意思に関わらず凶行に及ぶ。
それだけは何としても避けたいし、何より、フィアンマをそのような化物に作り替えられたくはない。

オッレルス「まずはリハビリから始めよう。まともに歩けない、では困る」

垣根「う…」

本当にスパルタだな、と口の中で呟き、垣根はベッドに手をついてよろよろと立ち上がる。
オッレルスから指示を受けたフロイラインに手伝われるまま部屋の中を歩く垣根だったが、その些細な徒歩でさえ苦痛だった。

垣根「や、べえ、死ぬ、」

フロイライン「ええと…」

おろおろとするフロイラインに対し、二人の魔術師は気にせずに続けてやってくれとさらり、言い放つ。
あまりにも事務的だ、と思いながら、垣根は懸命にリハビリに挑むのだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/22(月) 21:18:05.10 ID:sRzgr7eAO<> + <> 昔のお話  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 21:18:40.22 ID:YCs+/fOa0<>
私は、この世界が大好きでした。
私は、この世界が大好きでした。

私は、   こんな世界が、 だいきらいでした。


昔の話をしましょう。
俺様が、私だった頃のお話を。
昔の話をしましょう。
私が見上げるお空が青くて、まだまだ世界は幸せに満ちていると信じていた頃のお話を。

朝が来て、昼が過ぎ、夜が来る。
当たり前の出来事全てが、神様の配した歯車によって回る素敵な出来事だと、思っていました。
教会にはいつも、優しい神父様と、優しい修道女様と。
それから、私と同じ歳の頃の少年少女が数人居ました。
毎日が輝き、楽しく生きていました。あの頃の感覚を、今でも幸せの基準に、しています。

楽しい時は過ぎ去り、私にとっての人生の転機が訪れました。
あまり身体を動かして遊ぶのを好まなかった私は、その日だけ、珍しくかくれんぼに参加しました。
外に出るのは日差しが怖かったので、私はクローゼットに隠れてみることにしました。
最初こそ、鬼役の子供の声が響き、『みーつけた』などと談笑する声が聞こえていたのです。

しかし、何発かの銃声の後、子供達の声は聞こえなくなりました。

神父様や修道女様が声を荒げている声が聞こえ、私は身を竦ませ、息を殺していたのです。
今思えば、勇気を出してその場に出て、撃ち殺されてしまうべきだったのかもしれません。
そうすれば、私の代わりに誰か一人、助かったのかもしれません。

神父様や修道女様が呻く声を漏らした後、扉向こうは沈黙に包まれました。
幼いながらも何が起きているのかを察した私は、口を噤んで、両手で口元を押さえて、震えていました。
どうしようもない緊張と恐怖に冷える身体、その頬に伝う私の情けない涙だけが、温かく感じられました。

がちゃ、と無慈悲な音を立てて、クローゼットが開けられました。
漏れ出る悲鳴は、しかし、震えに阻まれ、呻き声だけで終わりました。
私を見つけた男は、銃を取り出し、銃口を私に向けました。
ああ死ぬのだなあ、とその時、思いました。
しかし、周囲の子供達や神父様方が死んでいるとわかっている状況において、その死は救いでした。
出来るだけ痛くありませんように、とキツく固く目を瞑る私に、男は嘲りの色を含んだ笑いを漏らします。

『運が良いな、お嬢ちゃん。弾切れだ』

私は、幸運に救われました。幸せを構成していた全ての人々に、置いて逝かれました。
そして、それと同時に、もはや何の明かりも見えない、死に至る病へかかったのです。


それからは、毎日のように働いていました。
新しく、引き取っていただいた教会には、私よりも幼い子供しか居なかったのです。
私が最年長でしたから、働かなければならない、と思ったのです。
私の所属していた『ローマ正教』が経営の一端を担っている料理店で、一生懸命働きました。
あまり料理の才能がある方が居なかったのか、数年して、私は料理長に繰り上げとなりました。
お料理の勉強に励む最中、私は余った時間を有効活用すべく、魔術を学ぶことにしました。
努力すればする程、魔術も料理も、良い結果が出ました。
やがて私には、莫大な魔術の才能があることを知りました。
『神の子』と同じような、奇跡の才能。
その頃から、私は少女、いえ、女らしく振舞うことをやめました。
才能に見合った生き方をしようと思ったのです。
どんなに頑張っても、やはり病は治りませんでした。

主が私を愛しているからでしょうか。
やがて私は、魔術を扱える人間として、出世していきました。
魔術について学んでいく内に、自らの罪を薄める術を知りました。

原罪を癒す術を得て。
私は、『右方のフィアンマ』となりました。
その頃から、世界が歪んでいていることに気づいていました。
そして、その歪みを正し、世界を救うことで、私自身も本当の意味で救われることを目指し、邁進していました。
しかし、その反面。この力が恐ろしくも思えました。不完全というところも、かえって怖かったのです。
世界を救う為の準備を着々と勧めていく中、私は誰かに諭してもらいたいと、何度も思いました。
絶対なんて言葉がこの世界にあるはずがないのに、私は自らが絶対的な善性を宿していると思い込むことで、懸命に生きていたのです。

―――誰か、私を止めてください。

しかし。
そもそも、私に逆らえる人間の居るはずが、無かったのです。
私は、我らが父の、かつて体現せし―――奇跡を所有していたのですから。
それでも、私は誰かに止めてもらいたかったのかもしれません。
こんな右手を、そんな力を、捨てて欲しかったのかもしれません。
或いは、こんな力なんて無くても、貴女はあなただと、誰かに言って欲しかったのかも、しれません。
希望が欲しかったのです。ただ、それだけでした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/22(月) 21:18:41.42 ID:sRzgr7eAO<> + <> 昔のお話  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 21:19:21.58 ID:YCs+/fOa0<>
カンパーナ。
幸せを告げる鐘のような女の子に育つように、と名付けられた素敵な名前を捨てた私は。

フィアンマ。
全ての戦火の後に、救いすら全う出来なかった愚か者に成り下がりました。

私は、何もかも間違えていました。
もはや、免罪符として生きていく他ないとも、思いました。
こんなにも莫大な才能を持っていながら、何と無能なことかと、自分を責めました。
それでも最後、何とか、あの少年の救った世界だけは、守りきれて。
満足感のままに死んでしまおうと、私は目を瞑ります。
楽園には、きっと逝けません。きっと、煉獄か…地獄に堕とされることでしょう。

そう思っていたのに、手当をされました。
目を開ければ、真っ白な翼が見えました。
六対の翼。一般的な天使様のそれでした。

『…、…天使…?』
『どちらかと言えば悪魔に近い気もするけどな。…垣根、帝督』

大きな背中に身を預け、そのまま、彼に救われました。
幸運でした。
私のこれまでの不幸は、彼に出会う為のものだったのかも、しれません。

彼の笑顔を見る度に、病の苦しみが和らぎ。
彼に触れられる度に、病の痛みが薄らいで。

嗚呼、私はきっと。
私は、私の力を支える天使様<神の如き者>ではなく。
私を愛し、守ってくださる天使様<垣根帝督>が欲しかったのです。


私は欲深い女でした。
そして、馬鹿な女です。



『救うのは義務じゃねえ』

そう言ってくれる彼の優しさに、いつまでもいつまでも、甘えていました。
平穏と安息と幸福な温かみ。
置いて逝かれやしないかと不安がりながらも。

私が、欲しかったもの。
それは確かに、手に入ったのです。
けれど、今私が苦しんでいるということは、やはり分不相応だったということなのでしょう。
神様はきっと、私を試しておられるのです。




神様はきっと、私が生まれる前から、わたしのことがきらいだったのです…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/22(月) 21:19:24.57 ID:sRzgr7eAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 21:19:50.65 ID:YCs+/fOa0<>

両の手を止める杭は、掌など貫通して、十字石に突き刺さる。
磔にされた状態で、足が床についていることだけが幸いか。
真っ暗な部屋の中、どうやら俺様は要らぬ回想をしていたようだ。

フィアンマ「……」

両手両足。
ついでに口も塞がれている。
つまり、魔術を使用することは不可能。

フィアンマ「……」

暗闇に慣れた目、現状を確認する。
ため息すら漏らせず、憂鬱感だけが胸に残った。
帝督は、大丈夫だろうか。死んではいないだろうか。
そうそう死なないにしても、どれ程傷ついたことだろう。
拘束中に盗み聞いた内容が正しければ、俺様は『神の如き者』を堕ろした化物に作り替えられる。
『神の右席』として調整されている身体を更に微調整すれば、確かに可能ではあるが。
自我を二分割される、つまりは俺様の意思が薄くなるという予想が立つ。

目的は刹那的なもので、世界を出来るだけ破壊したい、ただそれだけ。
まったくもって理解出来ないが、ヤツ等にはヤツ等なりの理念があるのだろう。
魔神を相手取ってしまっては、俺様一人では歯が立たない。

フィアンマ「………」

また、助けて欲しいとは思わない。
あの場において、俺様は帝督を守り抜いて、戦線離脱するべきだったのだ。
帝督よりも俺様が強者なのだから、努力すべきだった。
努力を怠ってしまったから、今こうして磔にされている。

フィアンマ「……」

もし化物になってしまったら。
帝督は戸惑わずに、俺様を殺すことができるだろう。
なるべく何も、誰も傷つけないで死ねたら、と思う。
帝督と一緒に居られなくなってしまうことは惜しいが、それもまた仕方が無い。




神を捨てた私に対する罰なのでしょうか。主よ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/22(月) 21:19:51.76 ID:sRzgr7eAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga <>2012/10/22(月) 21:20:42.59 ID:YCs+/fOa0<>
軽い地獄のリハビリを終え。
垣根はオッレルスとトールに組んでもらったカリキュラムに従い、魔術を学んでいた。
基礎は元より、そこから応用まで発展した内容まで突っ込んでいく。
『光を掲げる者』が堕天した時などの神話的事実から術式を編み出してみたり。
ついでに能力も使う工夫をしていくことで、魔術に取り込んでみたり、治療速度を速めたり、など。
疲れ果ててもそうそう休憩を入れないカリキュラム内容に、垣根はフィアンマがどれだけ甘優しい教え方をしてくれていたのか、認識する。
拒否は許されないし、何より自分は拒絶すべきではない。
なるべく自分を自分で追い詰めないようにしつつも、垣根は持ち前の真面目さで努力を重ねる。
一ヶ月程集中的に取り組んで、どうにか形を成す程度には完成した。
後は実戦でも使えるように、練習を重ねるなど、自力で努力しなければならない。

垣根「……」

トール「…いやー、疲れてるな。大丈夫じゃねえよな」

垣根「……、」

トール「飲む?」

垣根「……」

ほれ、と差し出された水を飲み、垣根はソファーにずるずると倒れる。
そんな垣根にぶつからないよう空きスペースに座ったトールは、自分も水を飲みながら、話しかけた。
ほんの短い時間だけ、休憩を取ることに決めたのである。

トール「ま、後五ヶ月程猶予がある。俺も手伝うし、そう気負うなよ」

垣根「……よく協力出来るな」

トール「あん? …そりゃ、見知った女の子が危機の上、恩人が頑張ってるなら、協力もするだろ」

垣根「…随分懐かれてるみてえだが、あの女とは付き合ってんの?」

フロイライン、と口にすると、トールは口ごもった。
そして水をがぶ飲みした後、平静を装って答える。

トール「>>683」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/22(月) 21:22:31.96 ID:q/Jacde50<> ごめん>>1 素でキャラの名前見間違えた…
安価下 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/22(月) 21:25:59.13 ID:YCs+/fOa0<> 《>>675 ×声を荒げた声 ○声を荒げたの >>682様 大丈夫です…!


今日は寝ます。明日は昼頃に来ると思います。
安価下でお願いします》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 21:52:47.81 ID:uH5FoLXSO<> 乙。今日は早いな安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 21:56:44.78 ID:VRHJ6+kc0<> 乙ー

まあな(目が泳ぎながら) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/22(月) 22:17:46.79 ID:mIaU63cT0<> 乙 
安価なら、そんなことは無いさ。 <> 小ネタ:雨宿り
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/23(火) 03:42:02.14 ID:AdfzPXnAO<>

垣根「降り出しやがったな」ささっ

フィアンマ「勢いが減退するまで、しばらくここで待つとするか」

垣根「そうだな」

フィアンマ「……」

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「……フィアンマ」

フィアンマ「んー?」


垣根「…お前が一人の時に、雨が、降ったら。俺が傘差してやるよ。……じゃないと、お前ずぶ濡れのまま立ってるからな」

フィアンマ「…、…ん」

垣根(雷雨に濡れても、誰もコイツを守らねえ。庇わねえ。…世界にはこんなにも沢山の人間が居る癖に、自分を救おうとしてくれたコイツを罵るだけで、無能な自分を満足させやがる)

フィアンマ「……帝督」

垣根「あん?」

フィアンマ「どんなに豪雨でも、…わざわざ俺様一人の為に、傘を開いてくれるか」

垣根「…当たり前だろうが」

<> 小ネタ:半分こ
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/23(火) 03:42:42.36 ID:AdfzPXnAO<>

垣根「夏のアイスと冬のアイスじゃ意味合いが違うよな。冬にアイス食いきんのはしんどいしよ」

フィアンマ「なのに2つ入りを買ってきたのか?」

垣根「一つを2つ買うより効率的だろ。…口開けろよ」あーん

フィアンマ「……ぁ」あーん

垣根「ん」

フィアンマ「……」もぐもぐ

垣根「……」もぐもぐ

フィアンマ「…ティラミス風か」もぐもぐ

垣根「甘過ぎるのは否めねえが、まあまあ美味いな」

フィアンマ「……」もぐもぐ

垣根(ガキみたいな顔して食いやがって)なでなで

フィアンマ「…?」
<> 本編再開  
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 11:28:51.24 ID:3GdKd7rf0<>
トール「まあな」

言いながら、きょろきょろと目を泳がせている。
あからさまな動揺の様相に小さく笑って、垣根は会話を続けた。

垣根「どっちからコクった訳?」

トール「……俺」

垣根「ふーん。…あの子のどの辺が好きなんだよ」

トール「子供じゃねえのはわかってるんだが…無邪気なところ、だな。何にでも興味を示して、俺に聞いてきて。俺がやること一つ一つに対しても、目を向けて機嫌を良くしてみたり…名前の通り、お嬢さんって感じのところかな」

垣根「…無邪気、か」

雷神トールの惚気を聞き出しながら垣根が想うのは、フィアンマのこと。

トール「直接戦闘を極めた結果、俺の力は戦争レベルにまで発展してる。スプラッタ映画は好かねえし、お化け屋敷は嫌いだが、…それなりに、本物の血は見てきてる。手だって汚してきた。……でも、あの子の笑顔を見る度に、少し許されてるような気分になる。有り体に言えば可愛い癒し系ってヤツだな。少なくとも、俺にとっては」

垣根「…なるほど」

自分と似ている理由だ、と垣根は思う。
自分も、フィアンマの笑顔を見る度に、ほんの少しだけ、許されているような気分になるから。

垣根「……」


『…一つ、約束してくれないか』
『…何を』
『…もし。…もし、俺様が死ぬことになったら。それが、お前よりも早いのなら。…お前の手で止めを刺してくれないか。…もしくは、…俺様が死んだら、世界を守ってくれ』
『何で俺が、』
『…俺様は、この世界に損害を与えてきた。お前に先立たれたら、損害を重ねて与える。…俺様が先に死んだ時、もう損害を与えたくない。俺様がいなくても、世界を矯正する術式を完成させ、達成してくれ』
『……お前がそれを望むなら』


"約束"が重く伸し掛るのを感じながら、垣根は水の入っていたペットボトルが空になったのを見てから、ぽいと捨てる。
最悪の結末を迎えない為にも、今ここで死ぬ気で努力しなければならない。
痛いだとか、後遺症だとか。そんなものに苦しむのは、後回しにしてしまった方が良い。

垣根「…この後の予定ってどうなってたっけか」

トール「んー、>>691」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 11:30:10.86 ID:7Ckkjd3+0<> 加速 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 11:34:33.82 ID:dgnxuGWSO<> なるほど昨日早かったのはこのためか…
本編でフィアンマさんが出ないと>>1のモチベがもたねーわなww乙
安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 12:06:29.73 ID:GQasm2kb0<> とりあえず魔術の特訓だ
原典読んでもひっくり返らないくらいにはなってもらわないとな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 12:24:04.12 ID:3GdKd7rf0<>
トール「んー、とりあえず魔術の特訓だ。原典読んでもひっくり返らないくらいにはなってもらわないとな」

垣根「それは無理だろ」

トール「無理だな。喩えだよ、たーとーえ。少なくとも、多少のことで動きが止まるようじゃ魔術の連発は出来ない」

能力は演算によって即時効果をもたらすものだが、魔術はそうではない。
フィアンマやオッレルス程のレベルまで達すればノーモーションのようにも見えるが、その力を行使するにあたっても様々な下準備がなされている。
魔術は正しい手順をこなせば沢山のことが出来るが、下準備が何度も必要になる。
そのタイムラグを少しでも縮める為に、一般的な魔術師はルーンを使用してみたり、服装に工夫を施してみたりと工夫するのだ。

トール「ってことで、まぁ、頭の中に入ってる知識から術式抜き出してちょっとやってみろよ。短略化すんのはそれからだ」

垣根「…」

本棚から本を一冊抜き出すようにして知識を引き出した垣根は、術式を執行する為の用意を始める。
未元物質製の血液はワイン…つまり『神の血』の象徴よりは上、普通の血液を使うよりは下、と威力が分かれる。
魔術記号を綴った紙に未元物質製の血液を垂らし、清めた上で決められた文句を紡ぐ。
光を掲げる者の別名は、『炎を運ぶ者』でもある。
その名の通り、紙が火元となって、任意のものに引火させることの出来る術式がある。
垣根が行ったのはそれに当たる為、無事紙は燃えたが、と同時に、垣根は血液を一筋口端から垂らす。

トール「不可抗力なんだろうけど、痛々しいな」

垣根「げほっ、…ま、仕方ねえな」

傷ついた内臓を即座に能力で癒し、垣根はげほげほと噎せる。
噎せながらも指先で魔術記号を示し、言葉を紡ぐと、次の術式が執行される。
自らではなく他者を『光を掲げる者』とみなし、自分は唯一神の座に一時据えられているという前提の上で、その相手の重心を下に無理やり落とすというもの。

垣根「…中途半端な信仰心が、かえって向いてるんだろうな」

ぼやきながら、垣根は身体を治療する。
ふらふらとするが、倒れず座らず、続けて連発する。
多少の無理をしなければ、人は成長しない。






地獄の底のように、暗い部屋の中。
フィアンマはぼんやりとした表情で血痰を適当に吐き捨て、言葉をかけた。
目の前に居る、そして自分をこのような状態にまで貶めた、隻眼の少女に向かって。

フィアンマ「……お前は、何故この世界を歪めようとする。…何故、世界を壊す。ヘタをすれば、お前も死の運命を迎えることとなる。……お前に、大切なものはないのか」

少女はフィアンマを見やり、答える必要は無いと言いかけ、しかし暇潰しに世間話程度ならば構わないか、と思い直すと、口を開いた。

オティヌス「……>>695」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 12:27:20.77 ID:xan1ZNU40<> あったよ、あったがそれを奪っていったこの世界を壊す。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 12:43:22.29 ID:dgnxuGWSO<> あるさ、あるとも。組織、理想、信仰、友人…etc。

何故壊すか?
そうだな、お前、公園の砂場で何かを作ってる子供連中に混ざって、砂遊びをした事はあるか?
私はある。特に、皆で城を作るのが大好きだった。
でだな、大事に大事にして、凝りに凝って、皆で協力して、とてもいい作品が出来た時、皆が歓声をあげる直前で

『ぶち壊すんだ』

その時の驚愕と絶望感に溢れた顔を見るのが最高に楽しかった。
私にとって、世界も同じ。砂場遊びなんだよ
<> ,;゙ ・ω・;, もふ
◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/23(火) 13:57:25.10 ID:J2QDqqbGo<> 体を常時未現物質で修復しながら術式を使うっていうのはどうだろーねー。そしたらダメージが少なくなるんじゃないかな? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 14:01:24.19 ID:6p+f5qLs0<>
オティヌス「……あるさ、あるとも。組織、理想、信仰、友人…etc」

フィアンマ「…あるのならば、何故」

オティヌス「何故壊すか? そうだな、お前、公園の砂場で何かを作ってる子供連中に混ざって、砂遊びをした事はあるか?」

フィアンマ「…経験は無いな」

オティヌス「そうか。私はある。特に、皆で城を作るのが大好きだった」

フィアンマ「……」

オティヌス「で、だな。大事に大事にして、凝りに凝って、皆で協力して、とてもいい作品が出来た時」

フィアンマ「…出来た、時?」

オティヌス「皆が歓声をあげる直前で『ぶち壊すんだ』。…その時の驚愕と絶望感に溢れた顔を見るのが、最高に楽しかった」

フィアンマ「……、」

オティヌス「私にとって、世界も同じ。砂場遊びなんだよ」

フィアンマ「…歪んでいるな」

オティヌス「人は誰しも、私と同じような願望を持っているよ。でなければ、二段オチのホラー映画など絶対に流行らない」

フィアンマ「全ての人間を貴様と同じ尺度で測るな」

オティヌス「言うじゃないか。…人の善意を信じられなかった哀れな女が」

お前だって随分と歪んでいたじゃないか、と言外に指摘され。
口を噤むフィアンマに、魔神は嘲笑った。

オティヌス「お前は砂の城を綺麗に作り変えようとした。結果的に、一部壊しただけで終わった。…私は思うがまま、砂の城を壊す。叩き出される結果に、何の違いもない」

オティヌスは手を伸ばし、フィアンマの髪を掴む。
神の如き者を堕すにあたって調整された彼女の身体は、周囲が知っているものとはやや変化していた。

ややくすみを感じさせる、金の長い髪。
瞳の色は、金と赤が混じり合っている。

フィアンマ「……させる、ものか」

オティヌス「…無駄に足掻きたいのなら、好きにすれば良い。何にせよ、お前はこれから先、私の"スコップ"に変わるだけなのだからな」





三ヶ月経過した。
残り、二ヶ月。
魔術を扱える全員でサーチ術式を様々試してみたものの、依然としてオティヌス達の居場所は掴めない。
垣根はというと、多少魔術を扱えるようにはなったが、まだ実戦には今ひとつ実力が足りない。

垣根「……」

オッレルス「…先読みをされて妨害されているのか、…まったく掴めないな」

垣根「…何か良い方法ねえのかよ」

オッレルス「…>>699」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/23(火) 14:30:35.45 ID:Ns81dbc60<> 人海戦術 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 14:46:01.44 ID:VqEoludM0<> 仕方がない……神浄の2人に協力を要請してみよう

来る来ないの確率は50:50だが
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 15:03:08.59 ID:6p+f5qLs0<>
オッレルス「……仕方がない……神浄の2人に協力を要請してみよう。来る来ないの確率は50:50だが」

良い方法と問われても、オッレルスはそこまで豊富な人材を得ている訳ではなく。
そうぼやくと、彼は通信術式を構成して連絡を取った。
科学的にアプローチしても良かったのだが、オッレルスは生憎科学にやや疎い。

垣根「……」

トール「……」

オッレルス「……」

しばらく、待ってみる。
一時間、二時間、二時間半…。

オッレルス「…悪い方の50%のようだ。繋がらない」

垣根「…はー」

何か被害が出るまで魔神の所在はわからない、ということになる。
ということは、事後策を考える方が先決だろう。

垣根「……もし、…フィアンマが神の如き者を堕した化物にされたとして、戻す手立てはあんのかよ」

オッレルス「あることには、ある。…彼女には、作り替えられた時と同じ位に身体的苦痛を要求することになるが」

垣根「…チッ」

神はサイコロ遊びをしない、というが、こうも上手くいかない状況が続くと、やはりサイコロ遊びをしているのではないか、と垣根は思う。
世界の為に身を粉にした彼女に、これ以上どれだけの苦痛を与えれば、神様とやらは気が済むのだろう、とも。
憤ったところで事態は進展しない為、今は大人しく魔術を学ぶことに専念する他無い。

垣根(……能力開発なんざ、目じゃねえんだろう、な)

どれ程痛いのか、想像がつかない。
イメージとしては、人体に無理やり歯車を埋め込んでいるようなものか。
脳に電極を突っ込んで開発させられるのは苦しかったが、最低でもそれと同じだけの苦痛へ、長期に渡ってフィアンマは晒されている。
気が狂ってしまわないだろうか、と垣根はふと心配に思う。

垣根「…なぁ」

オッレルス「うん?」

垣根「…その、…作り変える、作り戻す、…って、…苦痛を伴うんだろ。…普通は、どうなる。…気が狂うモン、なのか」

オッレルス「…これはあくまで予想に過ぎないが」

垣根「…」

オッレルス「>>702」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/23(火) 15:10:31.12 ID:Ns81dbc60<> 何年かかけて治療しないといけないほどの精神的ダメージを負うことになる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 15:11:33.83 ID:VqEoludM0<> 自我が消滅する可能性が高い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 15:19:07.53 ID:dgnxuGWSO<> 猫耳、尻尾が生え、口調が痛い猫語、語尾に『にゃ』がつき、全世界の人々を魅了するきゃわゅい赤猫系アイドルになる事受け合いだ。

困るな、非常に困るぞ、俺は我慢できる自信がないなファンクラブ設立、会長となり会員No.00000001になるしかなくなってしまう <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 15:32:02.38 ID:6p+f5qLs0<>
オッレルス「自我が消滅する可能性が高い」

垣根「…自我、が…?」

オッレルス「記憶は消滅しないにしても、それを出力する為に必要な、全ての意思がなくなる」

垣根「……」

自我とは、その人間の身体を除く全てだ。

感情、感じ方、愛憎、仕草、癖。

その人間の精神を構成する全て。
犬猫にだって、食事をしたいと思うだけの自我がある。
それすら無くなれば、脳死状態の人間と同じ。
動かない、喋らない、笑わない、泣かない、怒らない。
もはや、何も感じない。何も思わない。

オッレルス「…これはあくまでも、予想だよ。…彼女は強いし、そうそう自我が崩壊、消滅を起こす事はないと、…そう、思いたいが」

垣根「……」

垣根(…別に、アイツは強くなんかねえよ…)


『……素は、…どれだったかな…演じすぎて、わからなくなった』


ただでさえ、彼女という一人の人間はしっかりと確立されきってはいない。
そこを弄り回されれば、崩壊してしまってもおかしくはない。
だが、"作り戻す"ことをしなければ、彼女は『神の如き者』に支配された化物のままだ。
そんな彼女を放置することは出来ないし、彼女はそうなる位だったら、作り戻されるか、殺されたいと願うことだろう。

垣根「……報い、ってやつか」

第三次世界大戦中、フィアンマが何をしたか、垣根は聞いた。
人を利用した天罰が人に利用されることなら、これも不可抗力。運命と呼ばれて然るべきだろう。

垣根「……この世界には、アイツと同じ位悪い事をしたやつが、いくらだって、居るのに」

どうして、彼女なんだろう。
これから、誰かの為に一生懸命生きようとした矢先で、こんな目に遭わされるのが。
罰を受けるべき人間は、沢山、沢山…居る、のに。

『………何で、俺にそこまですんだよ? 暇だからか? 恩返しのつもりか?』
『…どうして、だろうな。…俺様が、救われたいからだろうな』


神様よりも自分を信じろと言っておいてこの体たらくか、と垣根は自分を責めて、前を向いて立ち上がる。
そして再び術式に取り組み始めた。どの角度から見ても、無理をしているように見えた。

トール「…作り戻す、ってことは、作り変えるのと同じ工程で、逆の効果を紡げば良い訳か」

オッレルス「…そうなるな」

トール「淡々と言うんだな。心が痛むとか、無いの?」

治療速度を速めていきながら術式開発に専念する垣根の様子を眺め、トールはため息混じりに問いかけた。
つくづく、この世界は優しくない。

オッレルス「多少は、痛むが」

トール「…魔神に近づくとそうなるかは知らないが、あんたも大概若干ズレてるな」

オッレルス「……>>706」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 15:37:07.83 ID:VqEoludM0<> そうでなければやってられん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 15:59:32.34 ID:dgnxuGWSO<> …ズレているからこそ、出来る事もある <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/23(火) 16:02:28.82 ID:AdfzPXnAO<> >>703が現実になったら…口調痛くてもフィアンマさん…ふぃにゃんまさんなら無問題だよ…もう…もう…副会長の座をください… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 16:05:43.77 ID:dgnxuGWSO<> さぁそのネタで小ネタを執筆するんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 16:09:56.18 ID:dgnxuGWSO<> ちなみに個人的には>>700からのifルートでを希望 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 16:20:20.08 ID:6p+f5qLs0<> 《>>708-709様 書けそうでしたら書いてみます》


オッレルス「………ズレているからこそ、出来る事もある。…冷酷になれる人間が誰一人いなければ、なせないことだってあるだろう。子供の遊びではないんだ」

人を愛するには向いていない、と自覚済みのオッレルスはそう淡々と話して、表情を変えずに垣根を見守る。

オッレルス「…私は、彼女に幸せになって欲しい。そうなってもらうために、私が出来る範囲での努力をする。ただ、それだけだよ」

トール「…やっぱ俺の予測は間違って無かったようで」

オッレルス「予測?」

トール「こっちの話だ、気にすんなよ」

首を軽く横に振り、トールは垣根に近寄って手伝いを始めた。
サーチで見つけて先回りすることが絶望的なら。
出来るだけ傷つけずにフィアンマを奪還して、丁寧に治療する。
そうするしかないし、そうするのがベストであるはずだ、と垣根は無言のままに、思った。





二ヶ月。日数に換算してしまえば、たったの61日。
あっという間に過ぎ去った日々から垣根が得たものは、どうにか実戦レベルに役立つ程度な魔術の腕。
予想通り付け焼刃に過ぎないかもしれないが、何とか役立てることは出来るだろう。
オッレルスは誰に協力を要請するか迷った結果、シルビアとフロイラインには家に居てくれるよう頼み、トールと垣根を戦地まで連れて来た。
途中から来れそうな人員に連絡をしてみたものの、誰が来るかはわからない。
自然災害にしても大規模過ぎる災厄が、先程から広い範囲に渡って及ぼされている。

地震で言えば震源地。
中心地に、『神の如き者』はぼんやりとした表情で立っていた。
右手に握っているのは巨大な剣。握っているというよりも、そう見えるだけで、その細腕に持てそうな剣の様相ではない。
右方のフィアンマが戦時中に使用していた、何キロメートルどころの話ではない長大な剣を完成させれば、ちょうどこのような見目になるだろうか。
天使長、『神の如き者』。
その右手には史上最強の武器を持ち、天界戦争では『光を掲げる者』をも圧倒した、神に次ぐ強さを宿す天使。

神の如き者『…?』

視界に入った垣根達に興味を示したのか、危険分子と判断したのか。
魔『神』に指示された被害を捻出すべく、"彼"は剣を振るった。
あまりの衝撃に地鳴りがして、足場がグラつく。

垣根「…話、は通じる訳ねえか」

オッレルス「…オティヌスの方は、私が見つけて、何とか…彼女を操っている何らかの霊装を破壊する。それまで、雷神と持ちこたえられるか」

垣根「努力はする」

トール「しくじって死ぬなよ」

オッレルス「…気をつけるよ」

言い残して姿を消したオッレルスに視線を一度だけ向け、垣根は神の如き者を見つめる。
長い髪は金に染められ、虚ろな金の瞳には、赤色が入り混じっている。

ただ、そこに存在するだけで。
神が人に与える、天罰を、神罰を体現する存在。

神の如き者『……』

垣根「…」







垣根はどうする?>>+2

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 16:22:14.01 ID:MoGwGg3w0<> 加速 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/23(火) 16:25:43.25 ID:Ns81dbc60<> できる限り大きな声で名前を呼んでみる
駄目なら下 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 16:43:47.20 ID:6p+f5qLs0<>
話が通じるとは思えない。
だが、まだ自我が消えていないとしたら、声が届く可能性は多少なりともある。
思うがまま、垣根は自分が出せる限り大きな声で、"彼女"を呼んだ。

垣根「…っ、…フィアンマ!」

神の如き者『……』

剣を握り直し、"彼"は首を傾げる。
無表情のまま、ほんの少しばかり、子供のような邪気の無さを無機質に宿して。
そして、何事かを呟いたかと思うと、剣を一度振って周囲を更地にした後、剣の形状を変えた。
近接戦闘を行いやすいようにか、先程の馬鹿デカい大剣ではなく、細身の、黄金の剣。
やはり通じないか、と垣根は歯ぎしりをしながら、術式を行使する。
重力を下に持って行かれ、グラつく神の如き者に対し、トールが動いた。
あまり近づいては剣で貫かれる恐れがあるので、中距離から、矢を模した雷の術式を向ける。
実際矢を使用してはいるのだが、そこに雷の力を負荷させることで、突き刺さった相手の内側を灼く。
放たれた矢が腹部に突き刺さり、その電撃が身体の中を焼いたにも関わらず、"彼"は一切動きを止めない。
トールを視界に入れた後、何事かを呟く。

神の如き者『…実行します』

ぽつり、とだけ呟き、剣を一度振るう。
人間に近い呟きに反し、振るわれたのは天使の力。

トール「ちょ、ちょっと待て待て、」

言いながらも咄嗟にガードを出来た辺り、トールも只者ではないのだろうが、目標達成ならずと判断したらしい神の如き者は、トールをじっと見つめた後、次の行動に移った。
一歩踏み込んで一気に間合いに入ると、その剣を振り下ろしたのだ。

トール「ッ、」

絶対的な正義を証明する剣が腕を掠り、立ち上がれない程の罪悪感に駆られるトールは、急いで後ろに下がる。
精神的に立ち直るべく回復術式を自分に施しながら、トールはちらりと垣根を見遣った。
心苦しいながらも、垣根も剣を抜く。
背に宿した12対の羽は、『光を掲げる者』の象徴。

垣根「…お前は、俺が止めてやる」

神の如き者『……?』

神の如き者は何事かを考え、左手に何かを出現させる。
魂の公正さを測る、神の天秤。
次いで、背に大きな二枚の翼を現出させ、神の如き者は垣根に剣を向けた。
魔『神』にそういった指示を受けていないのか、盾は持っていない。







垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 16:49:55.72 ID:0ad2rmmf0<> 未元物質でダメージが無効化する鎧を作り身につける <> ,;゙ ・ω・;, もふ ◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/23(火) 16:57:54.86 ID:J2QDqqbGo<> 少しギャグありだったら猫耳を生えさせる。
シリアスだったら上 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 16:58:18.75 ID:dgnxuGWSO<> ↑で覚えた重力をほにゃっとする魔術使ってみる <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 17:14:15.66 ID:6p+f5qLs0<>
垣根は少し迷って、鎧を現出させた。
中世ヨーロッパ等で目にするそれではなく、白い色をした、一種天使の肌―――それに近いものだ。
直接魔術ですり抜けられた場合は半減程度の効果しかないが、物理的ダメージは無効化出来る鎧。
一発受けて即死では、立ち向かうことが出来ないからだ。
天使としての力、スペックは高いにも関わらず"彼"の動きや思考が遅いのは、"彼女"がせき止めているのだろうか、と垣根は思う。

神の如き者『……実行します』

言うなり、振られる剣を自らの生み出した剣で受け止め、垣根は二歩後ろに下がる。
両腕にかかる衝撃と重みで、骨が軋む。
切りかかれば同じく受け止められ、その余波によって周囲は荒廃していく。

垣根「っ、ぐ…重い、っての、クソボケ…っっ」

神の如き者『……実行します』

左手に持つ天秤を揺らし、神の如き者はそこから一歩踏み出した。
垣根の魂を測るという名目で一部抜き取るという荒業だ。
半分の魂を削られ、垣根の腕力が弱まる。

神の如き者『………』

垣根「力、が…入…」

抜けていく力をどうにか補うべく、血を吐いて術式での補強と、能力での治療、遠距離攻撃を行う。
ことごとくが弾かれ、膝をつきそうになりながら、垣根は眼前の冷酷且つ生真面目な大天使を見据える。

垣根「……ッ、…」






一方。
決着がつかないながらも、オッレルスはオティヌスと争い、フィアンマを神の如き者として操っている霊装を目視で探していた。
力量が今一つ足りないが為に、オティヌスを殺せる程には至らない。

オティヌス「…良い顔をするな、なり損ない。あの女が惜しいか」

オッレルス「お前にわざわざ話す事でもないよ。…このまま彼女を放り置き、お前も破壊行動を重ねれば、世界は壊滅に追い込まれる。……退くつもりは、無いのか」

オティヌス「>>719」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 17:21:43.98 ID:LZO1kAF80<> 無いね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/23(火) 17:38:22.75 ID:Ns81dbc60<> …有るわけがない。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 17:55:25.03 ID:6p+f5qLs0<>
オティヌス「…有るわけがない」

オッレルス「やはりそうか。…私の役目は、お前を殺すことじゃない」

今は、と付け加え、オッレルスはオティヌスから視線を外さずに霊装を探す。
そんな彼の行動に対し、魔神は愉快そうに口端を吊り上げた。

オティヌス「お前の探しているものを当ててやろう。…あの天使を操っている霊装。そうだろう?」

オッレルス「……、」

オティヌス「信じるかどうかは別問題としても、探すのは無駄だ。…『それ』は」

此処に眠っているのだから。
そう言葉を発して、魔神が指差した先は――――少女の、心臓。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/23(火) 17:55:31.36 ID:AdfzPXnAO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 17:58:53.51 ID:6p+f5qLs0<>

張り付いた真面目な無表情の中、口元が泣きそうに歪む。
そんな人間的な、口元だけの表情に、垣根は言葉を失う。
自分を見つめる瞳は揺れ、やがて、唇が動いた。

神の如き者『…、』

垣根「…何、だ」

神の如き者『…やく、そく』

自我を二分割されながらも、神の如き者…否、彼女はそうぎこちなく発音した。

垣根「約、束」

全部全部背負って、この手で彼女を殺してやる。
どうしようもなくなったら、自分が彼女を手にかける。
世界の歪みを正すことも、彼女を殺したという罪も、全て全て、引っ括めて受け入れる。

垣根「……俺は、」

フィアンマが神の如き者に逆らって術式を解除してくれたのか、腕に力が戻る。
剣同士がかちり合い、ガチガチと音を立てた。

垣根「……、」

彼女を殺す時がきても。
自分は、感情に囚われず、淡々と殺せると、思っていた。
それなのに、怖かった。どう考えても、不可能だとしか思えない。

垣根「殺したく、ねえ」

誰も傷つけたくない、と願う彼女の意思に反していると、思わない訳ではない。
だが、手に握る剣を、彼女の胸元に、突き刺す勇気が出ない。

神の如き者『……て、とく』

垣根「…まだ、…まだ、その時じゃ、ねえだろうが。まだ…」

神の如き者『…俺、様の。…意思が、…のこる、うちに』

垣根「……、」

押し返す、神の如き者の手に握られた剣からの圧力が、減退する。
死ぬ覚悟が出来ているとばかりに、どんどんと力が弱まっていく。


フィアンマ『―――やくそく、したように。わたしを、ころして』








垣根帝督の行動安価投票をお願いいたします。

1.フィアンマを殺す

2.フィアンマを抱きしめる


この二つの中から一つを選んで投票してください。
どちらを選んでもストーリーは続きます。
一人(同ID)1票で、それ以上は無効とします。
番号で選択してください。


投票場所(レス間)は>>723-727です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 17:59:52.67 ID:GQasm2kb0<> 2以外見えない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 18:11:39.11 ID:e5hNJlxTo<> 2しかない!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 18:13:14.93 ID:dgnxuGWSO<> まぁ>>1のbadendを見た事ないし、1で。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/23(火) 18:14:17.53 ID:Ns81dbc60<> 2以外あるわけないよ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 18:29:52.08 ID:6p+f5qLs0<> 《>>723-726間で2が三票(=過半数)獲得したので、2に決定しました。投票にご協力いただき、ありがとうございました
>>725様 ある事にはあったような気がします。…左方右方スレとか》



わたしを、ころして。
そう願われて、頼まれて、それでも。

垣根「…悪いな。…俺は、二流三流の悪党だから。…そう簡単に、約束を守らねえんだ」

垣根帝督は、約束を守らない。
彼女を殺さず、一時剣を下げて、腕を伸ばし、彼女の身体を抱きしめた。
大天使を堕すにあたって、無機質に近いそれに作り替えられた身体は、死体のように冷たい。
まるでプラスチックのようだ、と思いながら、垣根は絹糸の様な彼女の髪を撫でる。
すっかり色の抜け、変わってしまった金の髪を。

フィアンマ『…うそ、つき』

垣根「何とでも言えよ。後でいくらでもぶん殴られてやるから」

抱きしめ返せないまま、泣きそうな声で、彼女は言う。
どこまでも世界に損害しか与えない自分の身体と運命を呪いながら。

フィアンマ『……また、…酷いことを、した。…世界、だけでなく、…お前、まできずつける、…傷つけ、た』

垣根「……」

フィアンマ『……ころして、くれないん、だな。…どう、して、』

垣根「>>729」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 18:32:12.95 ID:pioqxi620<> お前を失いたくない!俺はお前を愛してるから!
絶対に諦めない!絶対にだ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 18:32:50.81 ID:iVA9BQ/yo<> お前を愛している
それ以外に理由がいるのか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 19:00:47.70 ID:6p+f5qLs0<>
垣根「お前を愛している。…それ以外に理由がいるのか?」

フィアンマ『…馬鹿だな、お前は…知識ではなく、…もっと、こんぽんの、部分で…』

垣根「世界なんかどうだっていい。…俺は、世界が壊れるのを止めに来たんじゃねえ。お前を取り返しに、ここまで来ただけだ。お前を殺したら、それこそ本末転倒の大馬鹿野郎だろ」

言って、垣根は彼女を一際強く抱きしめた。
世界を壊そうが、誰を殺そうが、世界中から憎まれようが。
そんなことは、彼女を嫌う理由にも、見捨てる理由にも、ならない。

沈黙の後、フィアンマが右手に握る黄金の剣を握り直した。
再び、瞳の中へ、血液のような赤が混じる。

神の如き者『……、』

垣根「…天界戦争じゃ、互角だったらしいな。光を掲げる者と、神の如き者は。だが、逸話通り負けてやるつもりはねえ」

神の如き者から離れ、垣根は剣を構えなおす。
そんな光を掲げる者に対して、神の如き者もまた、剣を構え直した。
"彼"の左手に握られた天秤は、何も乗っていないにも関わらず、『右』に傾いている。
剣の一振りで、山が燃え、海すら干上がる。かつて右方のフィアンマが宿した、『神上』を上回りこそしないが、大きな力の総量。
トールはようやく復活し、神の如き者の操る術式から派生した天候の制御を行うことで、垣根のサポートに回る。





『……再制御に成功しました。裁きを実行します』

「…神様の遣いで、よほど偉い地位にあるとしても。…俺の女に、気安く入り込んでんじゃねえよ、クソ野郎……!」





雷鳴轟く中。
神話が繰り返された通り、運命、天命通り。
負けたのは『光を掲げる者』―――『明けの明星』。
黄金の剣に貫かれ、ほとんど串刺しの状態で、垣根は血を吐きだした。
幸いにして心臓ではなく、肺を貫かれたので、呼吸が苦しいだけに留まる。

垣根「が、ッ……かひゅ、…げほ…」

神の如き者『……実行、…命令、が…中…fcvhkbwz断…xcvezhji…』

垣根に留めを刺そうとした神の如き者の動きが、不自然に止まる。
動力源を失くしたロボットのように、そのまま地面へと膝をついた。
天を仰ぎ、祈るような姿勢で、"彼"も"彼女"も呆然としている。
その手にあった天秤や剣は消滅した。

オッレルス「…間に、あって…いない、ように思える、な…」

げほ、と、彼のものかオティヌスのものか、血にまみれたオッレルスが、咳き込みながらその場にやってくる。
彼はオティヌスの心臓を狙うにあたって、多少の攻撃を受けて死にかけながらも、どうにか、神の如き者を操る為に必要な霊装を破壊したのだ。
魔神自体を仕留める事は出来なかったが、これ以上フィアンマの身体を使って神の如き者が惨劇を起こすことは無い。

後に遅れて来た救援の魔術師の知り合いに場の片付け、後始末を頼み。
オッレルスとトールは協力して垣根とフィアンマをアパートメントまで引き戻してきた。
丸一日程かけて戦闘を行っていたため、生命力が底をついてしまいそうだったが、何とかフィアンマを『作り戻す』為のセットだけはしておく。
垣根は気を失う前に治療を行えたのか、傷は無い。


二時間程経過して、垣根は目を覚ました。
そして自分の治療をほぼ完璧に行うと、オッレルスに言われるがまま、『治療部屋』までやってきた。
『作り替える』作業とほぼ同工程の為、真っ暗い部屋の中で、フィアンマは鎖に繋がれ、座り込んでいた。

垣根「……、」

何と声をかければいいのか、と迷い。

垣根「…>>732」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 19:01:38.87 ID:dgnxuGWSO<> あー…そういえばテッラさんはbadだった。もっかい読んできたけどあれも良かったなぁ…安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 19:06:24.89 ID:xYwFfrwy0<> カンパーナ。俺の愛しいカンパーナ。早く俺に君の笑顔を見せておくれ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/23(火) 19:11:45.95 ID:AdfzPXnAO<> 左方右方読み返したら泣いた…気持ちを切り替えよう
垣フィアには幸せになってもらいたい <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 19:24:18.91 ID:6p+f5qLs0<>
垣根「…カンパーナ。俺の、愛しいカンパーナ。早く俺に、君の笑顔を見せておくれ」

フィアンマ「………」

どこか演劇染みた台詞になってしまうのは、それが叶うかどうかわからなくて、怖いから。
彼女の本名を呼ぶことで反応があるかと期待したが、微塵もそれはない。
まるで脳死の恋人を待つかのようだ、と思いながら、垣根はオッレルスを見やる。

垣根「…あんまり騒がしくしない方が、良いよな」

オッレルス「そうだな。彼女の生命力も、強制的に魔力を練り上げさせられることで消耗しているだろうし」

垣根「…しばらく、ここで面倒看てくれ」

オッレルス「言われるまでもなく、そうするつもりだよ」

垣根「……七ヶ月、かかんのか」

オッレルス「そこまでかかるとは思わないが、…長い期間はかかるだろう」

垣根「…自我が消滅する恐れは」

オッレルス「そんなには高くない。…揺らぐかもしれないが。少々、精神退行を起こすかもしれないな。一時的なものとはいえ」

垣根「……話しかけるのは、避けた方が良いのか」

オッレルス「>>736」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 19:31:22.14 ID:xYwFfrwy0<> むしろその逆だな。なんでもいいから話しかけてやれ。
俺はまた神浄の2人に連絡を取ってみる。あの2人の協力があるなら多少なりとも期間の短縮が望めるからな。…ついでに聞くが上条当麻の連絡先などは知っている、もしくは持っていないか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 19:36:51.04 ID:xYwFfrwy0<> ↑ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 20:18:37.44 ID:dgnxuGWSO<> 念のため

安価なら
ずっと手を握ってあげててくれ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 20:21:43.04 ID:9Gti1jFF0<>
オッレルス「むしろその逆だな。なんでもいいから話しかけてやれ。俺はまた、神浄の2人に連絡を取ってみる。あの2人の協力があるなら多少なりとも期間の短縮が望めるからな。…ついでに聞くが、上条当麻の連絡先などは知っている、もしくは持っていないか?」

垣根「残念ながら、俺は持ってねえな」

オッレルス「そうか。じゃあ、俺は一旦席を外すよ。戸締りをして出てきてくれればいい。好きなだけゆっくりしたら良い」

垣根「わかった」

『治療部屋』に入る前に施錠の為の術式を教えてもらった垣根は頷いて、再びフィアンマを見つめる。
オッレルスは『治療部屋』―――正確には、フィアンマを作り戻す為に魔術的に創り上げた、現実とやや隔離された空間から出て、アパートメントに戻る。
現実世界とこの空間での時間の差は一日程度。
ゆっくり時間をかけて治療出来るよう、空間の方が遅い。

垣根「…話しかける、ってもな。…返事がねえのに、どう話題を捻り出せば良いか、迷いモンだな」

フィアンマ「…う、」

垣根「…、…フィアンマ」

フィアンマ「……」

鎖に繋がれ、床にへたりこんだまま、フィアンマは垣根を見上げる。
触れるのは良くないと考え、垣根は手を伸ばさずに、彼女の様子を見守った。
フィアンマは自我が揺れており、記憶と目の前の光景が合致しない。

フィアンマ「……だれ」

垣根「……、…」

記憶をうしなってしまった訳ではない、と垣根は自分に言い聞かせ、久しく自己紹介をする。

垣根「>>740」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 20:29:54.67 ID:dgnxuGWSO<> 垣根帝督。お前の彼氏で、お前曰く天使だキリッ

Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 20:31:18.52 ID:PL5xiarg0<> 垣根帝督。お前の彼氏だ。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 20:40:55.30 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「垣根帝督。お前の彼氏だ」

フィアンマ「…かれ?」

垣根「恋人、ってことだ」

フィアンマ「…ん」

よくわからない、といった様子の表情。
オッレルスが言った通り、精神が子供返りしてしまっているのかもしれない。

フィアンマ「……」

垣根「…」

フィアンマ「…くらい」

垣根「…暗い場所、嫌いなのか?」

フィアンマ「…くろーぜっとの中、…おもいだす、から…嫌い」

垣根「クローゼット?」

フィアンマ「…かくれんぼしてた」

垣根「…隠れ…?」

話が通じているのかいないのか、微妙なところだと垣根は首を傾げる。
話題を変えるか突っ込むべきか迷いながら、垣根はとにかく話しかけてみることに決めた。

垣根「>>743」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 20:42:07.47 ID:dgnxuGWSO<> …じゃあ君の好きなものは何かな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 20:43:18.14 ID:OWFZcfeP0<> >>742

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 20:51:36.12 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「…じゃあ、君の好きなものは何かな?」

フィアンマ「…わたしの、…すきなもの。……お料理。ごはん」

垣根「食べるのか?」

フィアンマ「つくるのも」

垣根「そっか。何作ってる時が一番好きなんだ?」

自分とフィアンマの間に娘が出来たらこんな感じか、否、もう少し勝手が違うか、と思いながら、垣根は話しかける。
一時的なもの、とオッレルスは言っていた。
ならば今は、今現在の彼女にわかりやすい優しい話し方をすべきだろう。
幸いにも、猫被りというか、そういった猫なで声には、垣根は自信があった。

フィアンマ「…もこもこしてるやつ」

垣根「んー…ケーキか?」

フィアンマ「シフォンけーき」

垣根「メレンゲが好きなのか」

フィアンマ「もふもふしてるのがすき」

垣根(何歳かはわからねえが、退行ってことは…ガキの頃から好きなのか、手触りが良いモンが)

垣根「将来の夢とか、あるのか?」

フィアンマ「ゆめ、…ゆめ……>>746」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 20:52:17.98 ID:xYwFfrwy0<> お嫁さん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 21:03:00.03 ID:dgnxuGWSO<> 自分の家族が欲しい <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 21:14:49.42 ID:9Gti1jFF0<>
フィアンマ「ゆめ、…ゆめ……自分の、家族がほしい」

垣根「…家族、か」

フィアンマ「…きょうかいには、…しんぷさまも、…しすたーさまも、いたけど。大好き、だけど…わたしの、…ほんとうのかぞくには、…会った事が、ないから」

垣根「………」

フィアンマ「…お父さんは、…しんじゃったって、きいた。…おかあさんは、どこにいるのかわからない」

垣根「……そっか」

フィアンマ「…いつか、あうのが…会って、名前をよんでもらうのが、…わたしの、ゆめ」

垣根「…カンパーナ、って?」

フィアンマ「…うん」

垣根「……」

教会育ちで、働く合間に魔術の勉強。
彼女はずっと孤独であり、それが当たり前だと思ったものの、そう諦めるまでには長い時間がかかったのだろう。
本当の素の部分は、今会話している、優しく、おとなしい女の子なのかもしれない。

フィアンマ「……かきねの、ゆめは」

垣根「あん? 俺?」

夢。
幼い頃はヒーローになりたいだとか、そんなものはあったが。
今は何だろう、と垣根は悩む。

垣根「俺の夢、ねえ。…>>749」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 21:17:34.25 ID:HPmw1aLV0<> お前の家族になること <> ,;゙ ・ω・;, もふ ◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/23(火) 21:33:52.69 ID:J2QDqqbGo<> 上 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 21:42:51.05 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「俺の夢、ねえ。…お前の家族になること」

フィアンマ「…?」

垣根「家族の定義ってあるだろ」

フィアンマ「…おとうさんと、おかあさんと…」

垣根「それだけか? もうちょっとあるだろ、定義はもう少し広いはずだ」

フィアンマ「こどもと…きょうだいと、…およめさんと、はなむこさん?」

垣根「そうそう」

彼女を人生の軸に置いている垣根の夢といえる夢といえば、それくらいなものだろう。
フィアンマは少し悩んだ様子で首を傾げる。

フィアンマ「…けっこん?」

垣根「結婚。…別に、今すぐって訳じゃなくて、あくまで夢な」

フィアンマ「……よくない」

垣根「あ? 何で」

フィアンマ「…わたしは、あんまりかわいくないから、だめ」

垣根「あんまり、ってのが何ともいえねえな。安心しろ、可愛いから」

果たしてそうだろうか、という表情で、フィアンマは首を傾げたまま、うつらうつらとし始めた。
どうやら眠くなってきたようだ。生命力の消費量から考慮すれば、仕方のないことだ。

垣根「眠いなら寝ちまえよ」

フィアンマ「…あしたもくる?」

垣根「>>752」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 21:43:52.18 ID:3reeAbjJ0<> あぁ、毎日来るよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 21:44:30.08 ID:dgnxuGWSO<> いや、ずっと側にいる。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 21:53:00.78 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「いや、ずっと側にいる」

フィアンマ「…ごはんは?」

垣根「…腹減ったら食ってすぐ戻る」

フィアンマ「おふろは…?」

垣根「お前が寝てる間にさっさと入って、また戻ってくる」

フィアンマ「…寝るのは、どうするの…?」

垣根「座ってても寝れる。お前もそうだろ。此処で寝てるから、話したくなったら声出して起こしてくれりゃいい」

フィアンマ「……」

申し訳なさそうな表情を浮かべるフィアンマに、垣根は苦く笑う。
恋人としては割と当たり前というか、おかしさの無い行動なのだが、退行していると感じ方が違うらしい。
垣根の退く様子の無さに頷くと、眠気に身を任せ、うとうととしながら、フィアンマは壁に身体をもたれる。

フィアンマ「…ことしは、がんばったから…さんたさん、くるかな」

垣根「サンタ?」

フィアンマ「さんたさん。…いいこにしてたら、きてくださる、って…しすたーさま、がいって、た…」

垣根「…>>755」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 21:53:13.26 ID:dgnxuGWSO<> よく考えたらこれストーK <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 21:54:34.62 ID:eXTin+Gf0<> おお!きっと来てくれるよ!何をお願いするんだ?
秘密にするから教えてくれないか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 22:17:50.61 ID:9Gti1jFF0<> 《>>754様 ……伴、侶、です》
 

垣根「…おお! きっと来てくれるよ! 何をお願いするんだ? 秘密にするから教えてくれないか?」

流石に幼い精神性をしている彼女に、サンタなど存在しないと言う気にはなれなかった。
そもそも、一度議論して何時間も粘られた末、やや喧嘩になったこともあるのだ。彼女は大真面目にサンタクロースを信仰している。
なので、プレゼント内容について聞いてみることにした。

フィアンマ「ぬいぐるみと、おかあさんと、あまいものと、後…」

垣根「結構沢山あるんだな」

フィアンマ「たくさんおねがいしたら、どれかひとつくらいならくれるかもしれない」

強欲な訳ではなく、候補を上げて、その中から、たった一つ。
サンタクロースの慈悲を願い、そう答えを返すと、かくんかくんと眠たそうに首を揺らして彼女は言う。

フィアンマ「……ないしょにしてね」

垣根「内緒にする。絶対、秘密にするよ。約束だ」

フィアンマ「ん…おやすみ、なさい」

垣根「おやすみ」

手元にある毛布を手繰り寄せ、フィアンマは目を瞑る。
すやすやと眠る彼女の様子をしばらく見守った後、垣根は最低限人間らしい行動(食事だとか、入浴だとか)を済ませるべく、ほんの少しの間だけ、施錠して『空間』から出た。
時間のズレがあるものの、思っていたよりも日は過ぎていない。

垣根(…元に、戻るといいが)

シャワー借りる、と家主たるオッレルスに許可を取り、垣根は入浴を済ませ、軽食もいただく。
そして再び『空間』に戻ると、仮眠をして起きた後、未だ寝ているフィアンマを横目に、ぬいぐるみを作り始めた。
ホテルまで取りに行っても良かったのだが、作った方が早いと判断した為、『メジャーハート』と同じ要領で作ることとした訳である。



しばらくして目を覚まし、フィアンマは隣に置かれたもふもふと柔らかい物体に気がついた。
垣根が精魂つぎ込んで創った…未元物質製のぬいぐるみである。

フィアンマ「……? …かきね、…何、これ」

垣根「>>758」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 22:20:54.02 ID:tlP6Z5vSO<> サンタさんから、早めのプレゼントだとさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 22:21:53.53 ID:tQ6LyG6l0<> 俺からの早めのクリスマスプレゼント <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 22:32:46.41 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「俺からの、早めのクリスマスプレゼント」

フィアンマ「かきね、から?」

垣根「昨日、欲しいものリストにぬいぐるみ入ってただろ? だから、それ」

フィアンマ「…」

チャリ、と鎖の音を響かせ、フィアンマは傍らのぬいぐるみを抱き上げる。
前回フィアンマにあげたものとは違い、やや茶色に染色されたうさぎモチーフのぬいぐるみ。
もふり、と抱き上げ、思うがまま、フィアンマはしばらくぬいぐるみに触った。
精神退行の影響か、素直過ぎる程にきらきらと目を輝かせ、耳に相当する部分をやわやわと握って愛でる。

フィアンマ「…もふもふ」

垣根「もふもふしてるのが好きなんだろ」

フィアンマ「…ん、…だいじにする」

垣根「ん、ありがとよ」

フィアンマ「なまえ、あるの?」

垣根「それの、か?」

フィアンマ「うん」

余程気に入ったのか、がっしりと抱きしめながら、フィアンマは首を傾げた。
じー、と見つめられ、名前をつけてやるべきか、と垣根は考える。

垣根「>>761」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 22:39:32.79 ID:3reeAbjJ0<> speranza(スペランザ)意味、希望  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/10/23(火) 22:44:52.62 ID:Ns81dbc60<> 上 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 23:02:19.72 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「speranza。意味はわかるか?」

フィアンマ「希望。…あと、期待」

垣根「明るい名前だろ」

フィアンマ「うん。…すぺらんつぁー」

何も語らぬぬいぐるみにそう呼びかけ、フィアンマは無邪気な笑顔を浮かべる。
元あるべき状態の彼女が時折浮かべるそれによく酷似した可愛らしい笑み。
気に入ったなら良かった、と口元を緩ませ、垣根はしばらくフィアンマの遊ぶ様子を見つめる。




三ヶ月程経過し、だいぶフィアンマの症状はマシになってきた。
精神退行は終わり、今は意識の薄らいだ状態と本来の状態が入れ替わり立ち代り、変化している。
一人称で判別出来る為、垣根としてはわかりやすい、が。

フィアンマ「………」

垣根「……」

自我が薄まっているのではないか、と危惧しながら、垣根は静かにフィアンマを見守る。
彼女の手はぬいぐるみを撫で、指先でもふもふと柔らかな生地に触れていた。

フィアンマ「……、…」

垣根「……」

フィアンマ「…後、…何ヶ月。…私は、…此処に居れば、良いのですか…」

垣根「…>>764」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 23:03:26.86 ID:dgnxuGWSO<> わからないが、きっともうすぐ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 23:05:02.88 ID:3reeAbjJ0<> >>763

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 23:16:09.29 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「…わからないが、きっともうすぐ」

フィアンマ「…そう、ですか…」

フロイラインに似ているといえばそうだが、敬語であることにどことない悲哀を纏わせている辺り、違いが生じている。
自然な話し方というよりは、神を前にした信徒のような、『その時だけの敬語』感が否めない。
懺悔しているかのような、粛々とした言葉遣い。
元よりフィアンマは穏やかな性格をしているが、それにしても静か過ぎる。
寡黙な人間が無理をして話しているかのようで、本質が掴めない。
これもまた、彼女が自分を構成するにあたって創り出した自分の内の一人なのかもしれない。

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「…」

何か話題を。
話しかけなければ。
思うのに、精神退行していた彼女に対してと違って、この物静かな彼女への話題が上手く浮かばない。
それでも口を開き、垣根は頭を振り絞る。

垣根「…>>767」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 23:25:15.08 ID:dgnxuGWSO<> じゃあ、食用マンボウについて話そうか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 23:26:32.35 ID:3reeAbjJ0<> 知ってるか?
トゲナシトゲアリトゲトゲって言う虫がいるんだぜ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/23(火) 23:38:09.11 ID:9Gti1jFF0<>
垣根「…知ってるか? トゲナシトゲアリトゲトゲって言う虫がいるんだぜ」

フィアンマ「トゲアリトゲナシトゲトゲとも呼ばれる、日本に生息中の架空の昆虫の話だろう?」

垣根「…戻ってんなら言えよ」

フィアンマ「今さっき戻ったんだ」

どうにか明るい話題を、と思った結果そのような話に及んだのだが、タイミングが良いのか悪いのか、彼女本来…フィアンマらしい言葉遣いで、彼女は応えた。
意図しないタイミングで意識が戻るので、垣根はやや困惑する。
統合が終わるまでの辛抱だとお互い言い聞かせ、会話を続けた。

フィアンマ「ちゃんとトゲのあるトゲアリトゲトゲもいるのではなかったか」

垣根「居るとされている、だったか。よく知ってんな」

フィアンマ「図書館で片っ端から辞書や事典を読みふければ大抵の雑学は頭に入る」

垣根「なるほど。…お前本好きなの?」

フィアンマ「好きだよ。知識の宝庫だろう。少々内容が古い場合もあるが」

垣根「ふーん」

フィアンマ「……残り何ヶ月かはわからんが、……苦労をかけるな」

垣根「>>770」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 23:40:59.05 ID:dgnxuGWSO<> 苦労なんてカケラもしてねーよ…単に俺がお前といたいだけだからな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 23:44:20.14 ID:3reeAbjJ0<> 好きでやってるんだ。苦労なんか感じないぜニコッ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/23(火) 23:49:38.31 ID:AdfzPXnAO<> 《今日は寝ます。
明日も昼頃から来ると思います。
お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/23(火) 23:54:39.00 ID:T7H8grUM0<> おやすみ乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/23(火) 23:59:11.17 ID:dgnxuGWSO<> 乙 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 11:43:35.97 ID:dzfTD0ov0<>
垣根「好きでやってるんだ。苦労なんか感じないぜ」

にこ、と笑みすら浮かべて、垣根は応える。
恋人と会話することに、長時間共に居る事に、苦労など感じなかった。
いやいややっているのであればまだしも、自らの意思で行っているのだから。

垣根「…体調はどうなんだよ」

フィアンマ「…悪くは、ないが。…解毒を行っている状態だからな。良いとも悪いとも言い切れん」

瞳の中から赤色はだいぶ抜けた。
髪色は戻らないのか、金のままであるものの、似合っていない訳ではないので、垣根は気にしない。
兵器として、神の如き者の支配下から逃れられただけで充分だと、感じているから。

垣根「…真っ暗な部屋に髪の長い女を幽閉、か。ラプンツェルみてえだな」

フィアンマ「ラプンツェル、か。…姫にしては品が無いがね」

垣根「お前そんなに下品でもねえだろ」

フィアンマ「生まれの高貴さとは滲み出るものだ。孤児出身の俺様に、そんなものは備わっていないよ」

垣根「それを言えば、俺も孤児出身だしな。王子様なんざ似合わねえし、お前と似合いだ」

相槌を打って、垣根はフィアンマを見つめる。
鎖に繋がれた細い手足はどことなく欲情を誘うが、なるべく考えないようにして。

垣根「クローゼットの中で隠れんぼを思い出すから暗闇は嫌いだ、って言ってたが。何か理由あんのか? 隠れんぼで置いてきぼりくらったとか?」

フィアンマ「…そのような発言をした覚えが無いのだが。…>>776」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 11:54:00.94 ID:fkU4Mr5h0<> 隠れてたら気づかれずにそのまま鍵をかけられてな

約一日ほど閉じ込められたことがある <> 小ネタ:まじかる☆ふぃあみゃんみゃん 
◆DP90z.U42cRW<>sage saga<>2012/10/24(水) 11:59:17.79 ID:dzfTD0ov0<>

《>>700からのif分岐。安価下でお願いします》

垣根「…なぁ」

オッレルス「うん?」

垣根「…その、…作り変える、作り戻す、…って、…苦痛を伴うんだろ。…普通は、どうなる。…気が狂うモン、なのか」

オッレルス「…これはあくまで予想に過ぎないが」

垣根「…」

オッレルス「猫耳、尻尾が生え、口調が痛い猫語、語尾に『にゃ』がつき、全世界の人々を魅了するきゃわゅい赤猫系アイドルになる事受け合いだ」

垣根「…は? …マジで?」

オッレルス「『人間らしさ』を人為的に"欠如"させることで天使を堕せる程の異常な身体にしているんだ。作り戻す途中に揺らいでしまえば、猫の属性を取り入れる可能性もある」

垣根「猫の、属性…」うーん

『…取れにゃいにゃ』しっぽぶんぶん
『もふもふにゃんにゃ…』ごろごろ
『ていとく…にゃー』すりすり

オッレルス「困るな、非常に困るぞ。俺は我慢できる自信がないな。ファンクラブ設立、会長となり会員No.00000001になるしかなくなってしまう」

垣根「共同会長にさせろ」

オッレルス「君は彼女の恋人だからな。わかった」

垣根(大体猫で可愛いのに魔術使えるって、今流行りらしい魔法少女ってヤツじゃねえのか。…これはこれで戦わせたくねえな)

オッレルス(猫の気質になれば多少なりともおやつで釣れるだろうか。撫でる位なら…)



トール(……何か、…何かダメだ、コイツ等…) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 12:26:22.57 ID:w8MsRFUJ0<> >>775

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 12:45:12.42 ID:Ar4yYWfSO<> 小ネタ乙。ワロタwwお早い仕事ぱねーす <>
◆DP90z.U42cRW<>saga<>2012/10/24(水) 12:49:35.06 ID:dzfTD0ov0<>
フィアンマ「…そのような発言をした覚えが無いのだが。…隠れていたら、気づかれずにそのまま鍵をかけられてな。約一日ほど閉じ込められたことがある」

垣根「キツいな」

フィアンマ「だろう?」

思い出そうとすると、トラウマだからか、記憶がすり替わった。
そのすり代わりがなせるままに思い出した内容を告げたフィアンマに対し、垣根は苦笑して同情する。

垣根「…ま、もう少し経ったら出られるだろ。そしたら、明るい場所で話せる」

フィアンマ「…そうだな」

まるでもやしの栽培だ、などと思いながら、フィアンマは目を伏せる。


フィアンマ「…私は、…許されざるべき、…悪事の限りを、尽くしてきました。……此処が似合いの場所なのです」

垣根「…俺は、そうは思わねえな。……罪人にだって、明るい場所に居る権利位、あるだろ」

フィアンマ「…そうでしょうか」

垣根「俺は、俺を擁護するつもりはねえが。お前のことは擁護するって決めてある」

フィアンマ「………」

話し方が変化したフィアンマの発言に、垣根は緩く首を横に振る。
まるで多重人格者を相手取っているかのようだ、と思いながら、垣根は彼女に近寄る。
オッレルスからは移動させなければ、拘束を解かなければ良いと言われただけであったことを思い出し、彼はそのままフィアンマを抱きしめた。
術式を完成させてしまった影響か、12枚の羽から戻らない翼を現出させ、それで彼女を包み込みながら、背中をさする。

フィアンマ「…私の、懺悔を聴いてくださいますか。天使様」

垣根「……好きなだけ話せよ。聴いてやるから」

鎖こそ繋がっているものの、一応はそれなりに自由な両手を指折り組み、祈り懺悔するような体勢で、聖女の様な様相で、彼女は懺悔を行った。
『昔のお話(>>675 >>677)』を語り、垣根の翼で構成された白い繭のような空間で、彼女は懺悔と告白を終えた。

フィアンマ「………私は、…貴男が好きです」

垣根「>>781」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/24(水) 12:51:24.56 ID:ukYPyoQAO<> 悪の一味になってまじかる☆ふぃあみゃんみゃんに救済されたいです


安価下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 13:00:16.54 ID:wey9QQoF0<> 嬉しいね。俺もお前が大好きだよ、愛してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 13:13:21.56 ID:Ar4yYWfSO<> …俺ちょっと救済されてくる!ダッ <> ◆DP90z.U42cRW<>saga<>2012/10/24(水) 13:15:34.91 ID:dzfTD0ov0<>
垣根「嬉しいね。俺もお前が大好きだよ、愛してる」

よしよしと頭を撫で、垣根はのんびりと返す。
愛憎という感情がしっかりしていることは、もう自我が消滅する心配は無いだろう。
これも彼女の持つ驚異的な幸運の叩き出した結果なのかどうか、それはわからないが。

垣根「……だから、…無理しないでゆっくり戻れば良い。焦るなよ」

フィアンマ「…うん」



結局、作り戻し期間には七ヶ月程。
つまり、作り替えられるのにかかった日数と同じ位の時間をかけて、治療は完了した。
一日程度の現実との誤差しか無かった為、『空間』外に出ても経過日数は変わらなかった。
途中何度か長期宿泊手続きの為、垣根だけがホテルに戻ったがこれでようやく二人揃って帰れる。
まずは歩くリハビリか、と思いながら、フィアンマはいつも通りの自分を取り戻し、言葉をどう紡ぐか悩んだ。

フィアンマ「…多種多様な迷惑をかけた」

トール「これでイーブン位だろ、フロイラインちゃんのことを思えばな」

垣根「立ってんのキツいなら座れよ」

フィアンマ「いや、少しでも立つ訓練をせねばならんだろう」

そう相槌を打ち、フィアンマはオッレルスに近寄る。
そして口ごもった後、おずおずと言った。

フィアンマ「…俺様の身体を元の状態へ戻すにあたって、色色と提供してくれたこと、加えて帝督を守ってくれたことに、感謝する。…何か望むものがあれば言え」

オッレルス「…>>785」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 13:30:31.45 ID:Ar4yYWfSO<> たった今気づいたが酉が>>1のじゃないなKsk <> 名無しNIPPER<>sage<>2012/10/24(水) 13:36:49.93 ID:GAZM4iAZ0<> ほんとだ、でもIDは一緒だな。よかった
安価は
いざという時の為の神浄への連絡先を頼みたい
連絡が取れたらお前の快気祝いに呼ぼう <>
◆DP90z.U42cRW<>sage<>2012/10/24(水) 13:37:09.66 ID:dzfTD0ov0<> 《これで直った筈です…安価下で》 <> 名無しNIPPER<>sage<>2012/10/24(水) 13:38:51.84 ID:GAZM4iAZ0<> なおってないよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 13:54:50.15 ID:Ar4yYWfSO<> 過去3回?神浄系安価やっても出ないんだから>>1は書く気ないって事なんだし、そろそろ諦めろww <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 13:56:57.00 ID:dzfTD0ov0<> 《同じ酉中身(=文字)なのに…何故か反応されない… もしかするとこの先この(=さっきの)酉でいくかもしれません。全然直らない…テストスレで試すとうまくいったのですが…あれ…》


オッレルス「いざという時の為の神浄への連絡先を頼みたい。連絡が取れたら、君の快気祝いに呼ぼう」

フィアンマ「上条当麻の方しか持ち合わせが無いのだが、構わんか」

オッレルス「構わないよ」

もっと他に要求しても良いのだろうが、オッレルスはとかく無欲な人間だった。
連絡先を譲渡し、立つのが辛くなってきたフィアンマをおぶる形で、垣根は帰る事にした。


垣根「遠慮しないで体重預けとけよ。中途半端に体重置かれると背負いにくい」

フィアンマ「あぁ」

垣根の肩に腕を乗せ、首元で手を組み、フィアンマは身体を預ける。
意識を保った状態の少女一人では重荷にもならず、垣根は人目を避けてホテルへ向かっててくてくと歩く。
フィアンマはというと、しっかり体重を預け、茶色いぬいぐるみ片手に垣根に身を任せていた。

フィアンマ「…重くないのか」

垣根「今のお前を重いって言う野郎がいたらよほど貧弱だろうな」

フィアンマ「…基礎筋力が弱まっているしな」

家を出る前にどうにかシャワーを浴びさせてもらったため、フィアンマの髪や身体からは甘いシャンプーの匂いがしている。
途中数度抱え直し、ホテルに到着した垣根はそのまま、従業員に心配されない内にと部屋へ戻った。

フィアンマ「久しいな」

垣根「ほぼ一年振りだしな」

フィアンマ「自分で掃除をせずとも状態が清潔に保たれるのがホテルの利点か」

垣根「だろうな。…っと、もし眠いなら寝てろ」

フィアンマをベッドに下ろし、垣根は自分の身支度に取り掛かった。
別に眠気は無いものの、筋力のほとんど無い身体では座っているよりも横になっている方が楽な為、そのままぼふりとベッドへ倒れこむ。

ようやく、日常に帰ってきた。

フィアンマ「………」

作り替えられてくすんだ金。
つくり戻されて、美しい金。
自分の知る自らの頭髪と見違えた、と自分の長い髪を触り、フィアンマは目を瞑った。
眠くはないが、疲れた。

フィアンマ(…体力作りをせねばならんな)

歩く練習からだろうか、と思いながら、彼女はシャワールームのドアが開いた音を認識する。
入浴と歯磨きを済ませ、垣根は少し迷った後、彼女の隣に寝転んだ。

垣根「……」

フィアンマ「……」








フィアンマはどうする?>>+2 <> 名無しNIPPER<>sage<>2012/10/24(水) 13:58:18.64 ID:/FrXhWw/0<> 思いっきり甘える <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 14:05:00.21 ID:Ar4yYWfSO<> 垣根にかぶさる <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 14:14:05.19 ID:dzfTD0ov0<> 《直りました。お騒がせしました》


フィアンマは目を開け、ぬいぐるみを枕元傍らに置いた後、ベッドに手をついて身体を起こした。
そして、無反応であった垣根にぼふりと被さる。
垣根の顔の横に手をつき、彼の顔を見下ろした。

垣根「…何だよ」

何事かとフィアンマを見上げ、垣根は首を傾げる。
彼女を愛しているから、警戒しないし、する必要も無い。
垣根は不可解に思いながらも手を伸ばし、自分の方に垂れるフィアンマのサイド前髪を指先で弄び、頬を撫でる。

フィアンマ「…甘えだよ」

垣根「あ? 甘え?」

フィアンマ「甘え」

復唱して、フィアンマは腕から力を抜く。
右手を伸ばして垣根の左手を握り、そのまま覆いかぶさった。
体に力を入れなければ、垣根の身体とフィアンマの身体が密着するのは自然の理であり。
鼓動さえ溶け合いそうな体勢で、垣根は軽く緊張した。
彼女に緊張しているというよりは、女体に緊張しているというべきか。
垣根の鎖骨辺りに頭を置き、彼を押し倒した状態、乗っかった状態で、フィアンマは口を紡ぐ。

垣根「……、」

ゴム樹脂を真似た物体を作るべく研究用に購入してしまったコンドームの存在が頭に浮かんで、垣根は緩く首を横に振って邪念を払う。
先程宣言した通りこの状態が彼女にとっての『甘え』らしく、何も語らず、フィアンマは静かな呼吸を繰り返す。

フィアンマ「…受け取った時の記憶は薄らいでいるが、…ぬいぐるみをくれて、ありがとう」

垣根「…あぁ」

フィアンマ「……心拍数が高いな。不整脈か」

垣根「>>794」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 15:14:29.36 ID:Ar4yYWfSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 15:18:05.94 ID:J6ya95c90<> 馬鹿、お前が可愛すぎてドキドキしてるんだ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 18:22:04.10 ID:RiG1XqSw0<>
垣根「馬鹿、お前が可愛すぎてドキドキしてるんだ」

フィアンマ「判断基準がズレているな」

垣根「何しろお前曰く天使だからな。人間と感覚がズレてても仕方ねえってこった」

フィアンマ「なるほど」

くすくすと笑って、フィアンマは身体を預けたまま離れない。
少しだけズレ、垣根の左胸元に耳をぺたりとつけ、目を閉じる。
生者の証明である、規則正しい脈拍、呼吸音が聞こえた。
フィアンマの平温が垣根よりも低い為、彼女にとって彼の身体はぽかぽかとしていて温かい。

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「…当たり前が一番だな」

フィアンマ「…そうだな。…実感した時に限って非日常に引き戻されている訳だが」

垣根「カミサマこの野郎、って思ったな」

フィアンマ「…そういえば、いくらでも好きなだけ俺様にぶん殴られてくれるのだったか」

垣根「…嫌な事はしっかり覚えてやがる」

フィアンマ「約束を破られてしまったしな」

迷惑をかけてすまないと言っていたのにこれか、と垣根はため息をつく。
確かに、約束違反にいくらでも殴られてやるとは言ったのだが。
家族が欲しい、家族になってやる、といったやりとりは覚えていないのにこんなことだけ、と垣根は項垂れた。

フィアンマ「何だ。怖いのか?」

垣根「>>797」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 18:35:25.83 ID:Ar4yYWfSO<> いや…まぁ、好きにしてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 18:50:25.02 ID:juza1o6J0<> >>796

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 19:00:10.69 ID:RiG1XqSw0<>
垣根「いや…まぁ、好きにしてくれ」

男に二言は無いし、と諦める垣根に、フィアンマは目を閉じろと要求する。
目を瞑らせて殴るのは少々鬼畜が過ぎるのでは、と思いながらも、垣根は大人しく目を閉じた。
横殴りの一発がくるかもしれないので、密かに歯を食いしばりながら。
多少歯が抜けてしまってもまた未元物質で再生すれば良いのだが、なるべく折れないに越したことはない。
フイアンマはベッドに手をついて身体を起こし、垣根にまたがった状態で座り直す。
そしてしばし悩む様子を見せた後、自分の両手で垣根の両手を握り、抵抗させない状態で、おずおずと口づけた。
言われた通り殴られると思っていた垣根は歯を食いしばるのをやめ、口付けを受け入れながら目を開けようとする。
そんな垣根の動きに気がついた彼女は繋いでいた左手を離し、その左手でもって垣根の目元を塞いで、目隠しをした。

フィアンマ「…ん、…っん…」

垣根「ん…」

顔を赤くしながら垣根の口内に舌を伸ばし、唾液を絡ませる。
歯磨き後のミントの香りと、唾液本来が持つ甘みが口内を支配した。
垣根にしっかりと目隠しを施したまま、角度を変えてフィアンマは口付けを深め、継続する。
くちゅくちゅという水気を帯びた音と、接吻による息の乱れが部屋に響く。

フィアンマ「…っは、…」

垣根「は、……」

三分程濃厚な口付けをした後、口を離したフィアンマは、顔の赤みの引かないままに口ごもる。
垣根は左手で彼女の左手をどかし、そんな彼女の表情を見て薄く笑う。

垣根「…殴るんじゃなかったのかよ?」

フィアンマ「……、…>>800」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/24(水) 19:23:25.76 ID:UzBJNmwGo<> 天使を殴ることなど出来ないだろう?
罰当たりな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 19:33:09.18 ID:iLZ3/Olu0<> 私を救うために約束を破ったんだ
殴るなんてできない。それにこうして救ってくれたしな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 20:22:27.58 ID:WSoBaXV40<>
フィアンマ「……、…俺様を救うために約束を破ったんだ、殴るなんて出来ない。…それに、こうして救ってくれたしな」

垣根「救うなんて言い方されるとこそばゆいな。…俺は、俺が思うままやっただけだ」

大仰な事を言うつもりなどどこにもない。
垣根帝督は自分がしたいことをやり、結果的に達成しただけだ。
彼女を殺す選択をするくらいなら自分が死んでも仕方が無いと覚悟を決めた上で取り組んだら、勝手に道が開けていた、ただそれだけのこと。
世界を救ったことにもなるが、垣根はそのような自覚はまるで無かった。
ただ、またこうして彼女と普通の日常に戻り、話せるようになれるのであれば、何でも良かった。
胸を剣で貫かれても、どれだけの被害を目の当たりにしようとも、垣根の意思も目的も揺らがなかった。
超能力者でありながらも、本質的にはやはり魔術師が向いているからだろう。

垣根「…お前が不治の病か何か…末期ガンとかで殺してくれって言ったら、…その時は、楽にしてやるが。それ以外は"妥協"するつもりはねえ」

フィアンマ「完全に約束を破棄するつもりは無いんだな」

垣根「流石にそこまで最低じゃねえよ」

座っている状態に疲れ、再び垣根に被さる形でフィアンマはうつ伏せに横たわる。
彼はそんな彼女の頭を撫で、するすると髪に指を通した。

垣根「……あれだ、…お揃いってやつだな」

フィアンマ「染め方は違うが、…身体を再構成したお前の場合、俺様と同じく根元から染めたようなものか」

垣根「変わんねえよ」

似たようなもん、と言いながら、垣根はしばらくフィアンマの髪で遊ぶ。
他人の指が髪をなでていく心地良さに少しばかり眠気を催しながら、彼女はしばし甘えた。

フィアンマ「…旅行は続けるのか? とはいえ、体力作りをしてから、が前提となるが」

垣根「>>803」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 20:26:01.23 ID:Ar4yYWfSO<> そーさなー…お前が元気になったら、また一緒に色々なとこ行きたいなー…アレだ、今度は草原とか深い谷とか、自然が多いとこ行きたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 20:26:39.11 ID:tZaFiHOSO<> お前さえいいなら、どこまででも旅してみたいと思ってる <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 20:41:23.37 ID:WSoBaXV40<>
垣根「お前さえいいなら、どこまででも旅してみたいと思ってる」

フィアンマ「そうか」

まだ世界を知るには足りない、と思うフィアンマはこくりと頷いて、小さく笑んだ。
出来ればもう少し旅をしたいと思っていたところなのだ。
その前に基礎体力と基礎筋力を身につける方が絶対に先だが。

フィアンマ「なら、早めに体力を作ることにする」

垣根「無理をしてまでやることでもねえよ」

時間はまだまだあるのだからゆっくりやればいい、と告げ、垣根は首を横に振った。
最初は旅を中心に据えていたが、今はお互いを中心に据えているためだ。




フィアンマ「車椅子は便利だな」

垣根「いくら何でもこれは手抜き過ぎだろうが」

一週間程。
一生懸命筋力・体力作りに取り組んだフィアンマだが、当然のことながら思ったような結果は出ず。
現在、歩くことに疲れたフィアンマは、垣根に頼んで車椅子を押してもらっていた。
怠惰の結果だが、彼女が力を抜きたいと主張するのも珍しいので、垣根は妥協して許す。

垣根「…お前さ、…和解したいヤツとか、…居ないの?」

フィアンマ「どうした、唐突に」

垣根「いや、俺は同僚なんざ居て居ないようなモンだったし、実質全員部下というか、力量の差がはっきりしてたから、謝る必要はねえんだが。…お前の性格から考えて、謝りたい相手とか居んのかな、と」

フィアンマ「…>>806」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 20:43:37.75 ID:9K9TduSU0<> 元右席メンバー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/24(水) 20:49:49.68 ID:uiCtC6Bn0<> 上 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 21:08:16.97 ID:WSoBaXV40<>
フィアンマ「…元『神の右席』に所属していた人間だな。それ以外には、謝罪出来んし、必要性も、もう無いだろう。あの天使が罪を請け負ったのだから」

垣根「ま、世界中に謝って回る必要はねえな。…ソイツ等の居場所ってわかんの?」

フィアンマ「一人であれば、一度遭遇したが」

垣根「え、マジかよ」

フィアンマ「俺様が隠れた時だ」

垣根「…あー」

神に祈りながら自分の後ろにフィアンマが隠れた時のことを思い出し、垣根は納得する。
あの筋肉質な男だろう、と予測立てて。

フィアンマ「ヤツならイギリスに居そうなものだが…、…もう一人はわからん」

垣根「もう一人ってどんなヤツ?」

フィアンマ「記憶のままであれば、黄色みがかった髪と、強気そうな顔立ち…ピアスをしているはずだ」

垣根「耳?」

フィアンマ「いや、顔に」

垣根「顔かよ」

フィアンマ「術式上ヤツには必要だったからな」

垣根「ふーん…」

歩く事に飽きた垣根は一度立ち止まり、フィアンマの髪を横で軽く結わえた。
結わえるとはいってもバレッタで長い髪を留めておくだけなのだが。
季節は五月、春らしい装いをしていても若干暑かった為、その気遣いは彼女にとってありがたかった。

炎が彫り込まれた黒のバレッタ。

金のバレッタでもよかったのだが、髪色が金に対し髪留めも金ではつまらない、と思った垣根が考えを変更して贈ったもの。

垣根「似合ってるな」

やはり自分の見立てに狂いは無い、と一層自信を持つ垣根の様子に微笑んで、フィアンマは指先でバレッタをなぞった。
と、視線を移した先に、先程話していた『男』が居た。
フィアンマは隠れず、逃げず、近づいてきた男を見上げる。

フィアンマ「…久しいな、アックア」

アックア「生きていたのであるか」

フィアンマ「"幸運"にも」

誰も殺気を放っていない為、人は過ぎ去っていく。
垣根は少しばかり男―――元『後方のアックア』…ウィリアム=オルウェルを少しばかり警戒した。
どう謝罪したものか、とフィアンマは言葉の選択に悩む。
アックアが言葉を切り出した。先に、紡いだ。

アックア「>>809」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 21:12:52.83 ID:Ar4yYWfSO<> …随分雰囲気が変わった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/24(水) 21:18:54.67 ID:uiCtC6Bn0<> 男だとばかり思っていたのである...
もったいない(ボソ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 21:30:31.26 ID:WSoBaXV40<>
アックア「男だとばかり思っていたのである。…もったいない」

ぼそり、という呟き程、よく耳に届くものであり。
フィアンマは肩をすくめてアックアを軽く睨む。

フィアンマ「お前は声量を控えているつもりかもしれんが、問題無く聞こえているぞ。仮にも十字教の人間、それもローマ正教に所属していた者が同性愛嗜好とは如何なものか」

アックア「世界に存在する全ての人間には、個人の権利、個人の指針、個人の思想、個人の未来があるのである」

フィアンマ「格好をつけて言ったところで本音を先に言ってしまっては何の意味も無いな。そもそも俺様はお前の好意の範囲外だと思っていたが」

アックア「男であればまあまあ射程圏内であるな」

垣根(危ねえ)

フィアンマ「そうか。…と、そんなことはどうでもいい」

アックア「…」

車椅子の空きスペースに髪の毛を収め、フィアンマは言葉を選ぶ。
垣根相手であれば素直にそのままごめんなさいやすまないを口に出来るのに。
かつての同僚を前にすると、なかなか言葉が出てこない。

フィアンマ「…俺様はお前の力を、利用した後、結果的に全て奪った。…俺様を恨んでいるか」

アックア「>>812」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 21:36:45.22 ID:Ar4yYWfSO<> わりと





嘘であるKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 21:43:06.81 ID:/FrXhWw/0<> 憎くてしょうがない。






男じゃなかったなんて!
それ以外は気にしてないである <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/24(水) 21:47:35.31 ID:uiCtC6Bn0<> 俺のせいだけどアックアさんガチホモ確定ですか...
st <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 21:58:16.34 ID:WSoBaXV40<>
アックア「憎くて仕方がない」

男の一言に、それもまた仕方無いこと、むしろ当たり前のことかとフィアンマは苦く笑う。
恨まれても、憎まれても仕方無い。
計画の差し障りになることだけでなく、感情論でもこの男を止めはしたが、そもそもあのような凶行に自分が及ばなければ、アックアは力を失うきっかけすら得なかった。
垣根という希望を得た以上アックアの為に死ぬということは出来ないが、謝罪の意思を示して少しでも溜飲を下げてもらえるだろうか。
一抹の期待を抱いた上で、フィアンマは乾いた唇を舐め、ひとまず相槌を打つ。

フィアンマ「そうか…だが「男じゃなかったなんて! それ以外は気にしていないのである」……、」

アックアの発言にきょとつき、フィアンマは口を噤む。
半分は本気かもしれないが、もう半分は自分を思っての発言だろうと察し、この男はどこまで女子供に甘いのか、とフィアンマは内心ため息をついた。

フィアンマ「…性別詐称の件はすまなかったな」

アックア「今更のことではあるが」

フィアンマ「……まぁ、…今なら、…お前が必死になって何を守りたかったのか、わかる」

アックア「……」

フィアンマ「それに気づくまで、多くの犠牲を払い、自分自身も色々と失ったが」

アックア「『その事』に気づけたのであれば、もはや誰も貴様を責めるまい。気を狂わせてまで貴様が心血を注いだことは、一概に悪いとも言えん」

フィアンマ「……最暗部にあったが、お前は曲がらんな」

アックア「信条のブレさえなければ人は変わらんのである」

フィアンマ「…そう、だな。…俺様も、魔法名を恨み名にしなければ、あのようなことにはならなかっただろう」

アックア「…」

フィアンマ「…お前は愚直な男だ」

アックア「元より、私は一介の傭兵崩れに過ぎない。…用事を思い出したのである」

それでは、と場を去るアックアを引き止めず、フィアンマは視線を地面に落とす。
明確な言葉は無くとも、最初から彼は自分を責めるつもりはなかった。赦すつもりはあっても。

フィアンマ「…何が傭兵崩れだ。気障な騎士のなり損ないが」

垣根「…和解した、ってことなのか?」

フィアンマ「そうだな。…元から、和解するまでもなかったかもしれんが」

垣根「…そっか」

車椅子の背もたれに身体を預け、二、三度、深呼吸をした後、フィアンマは垣根を見やる。

フィアンマ「空腹だ」

垣根「何食うんだよ」

フィアンマ「>>816」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 22:02:42.17 ID:Ar4yYWfSO<> 消化にいいの <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/24(水) 22:10:34.03 ID:FtImZuOG0<> ミルクセーキ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/24(水) 22:25:35.50 ID:WSoBaXV40<>
フィアンマ「ミルクセーキ」

垣根「飲み物じゃねえか」

フィアンマ「ミルクセーキに合う食べ物が良い」

垣根「とはいってもな。…甘いモンだと、…甘さ控えめの…パンケーキ辺りか」

作るのも楽だしそれにしよう、と結論付けた垣根は車椅子を押しつつスーパーに入る。
牛乳、卵、砂糖、バニラエッセンスと、ミルクセーキの材料はパンケーキと同一だ。

フィアンマ「バランスが悪い気もするが」

垣根「よくよく思えばそうだが…」

何を作ろうかと悩み、垣根は売り場を眺める。

垣根「甘いモンに合わせるんであれば、甘いモン以外に…塩気があるもの、か」

フィアンマ「……トマトソースのパスタにする」

垣根「作るの俺だけどな」

フィアンマ「手伝い位はするさ」

垣根「…出会ってすぐの頃、こんなようなやり取りしてたな」

フィアンマ「懐かしいな」

そう言葉を交わして笑い、垣根はスパゲッティーの麺やホールトマトをカゴに入れる。
出来合いのソースもあることにはあるのだが、胡椒がキツいのでやめておく。

買い込んだ材料を手にホテルへ戻り、垣根がパスタを作っている間に、フィアンマは黙々とミルクセーキを作った。

垣根「……そういや、…ミルクセーキって響きがエロいよな」

フィアンマ「……>>819」















《今日は寝ます。
明日は夜に来ます。
2スレ目を立てるか、オレフィア小ネタばかりを綴るスレを立てるか非常に迷っております
よろしければそれとなく意見を交えてレスをくださると嬉しいです
お疲れ様でした。》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 22:26:28.66 ID:rZ2RWulO0<> お得意の両方立てちゃえ
ksk乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/24(水) 22:26:46.60 ID:Ar4yYWfSO<> どっちもやったらいいんじゃないかなKsk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/10/24(水) 22:30:24.54 ID:FtImZuOG0<> どっちもやれば良いじゃない。
安価なら「なんで??」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/24(水) 22:30:34.30 ID:rZ2RWulO0<> 自分のモノを飲んでみたらどうだ? <> 小ネタ:雪だるま ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/25(木) 07:22:21.80 ID:u4ZKMquAO<> 《両方立てることにします》





フィアンマ「…」ごろごろ

垣根「雪だるまってヤツか?」

フィアンマ「そうだよ」ごろごろ

垣根「……」ごろごろ

フィアンマ「……」ぺちぺち ごろごろ

垣根「……、…ところで、どん位デカいの作る気だよ」ごろごろ

フィアンマ「そうだな。ちょうど人が入れる位か」ごろごろ

垣根「……俺はガキの頃は研究所詰めで、あんまり雪遊びには詳しくねえが」

フィアンマ「?」

垣根「人が入れる位雪寄せ集めて、中くり抜くんだよな?」ごろごろ

フィアンマ「そうだが、何か問題でもあるのか」ぺちぺち

垣根「それ、『雪だるま』じゃなくて、『かまくら』じゃねえの?」ごろごろ

フィアンマ「……」

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「……」

フィアンマ「……」ごろんごろん

垣根「オイ」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/25(木) 14:04:33.39 ID:b/6Qd9ySO<> 乙。雪だるまの形で、中に入れる奴を作れば間違ってない



ちがうか <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/25(木) 20:40:57.75 ID:FmZdxuJZ0<>

フィアンマ「……何で??」

頭の上に無数のクエスチョンマークを浮かべて聞き返すフィアンマに、垣根は口ごもる。
つい元同僚に言うようなノリで言ってしまったが、下ネタの説明をするのは一種羞恥プレイだ。

垣根「こう、…ミルクとか」

フィアンマ「牛乳がどうかしたのか」

垣根「…セーキとか、一文字足すとアレになるだろ」

フィアンマ「…アレ?」

楽しんでんのかこいつ、と垣根はフィアンマを見やるも、彼女は純粋な知的好奇心のままに首をかしげている。
悪気というものはまるで無く、不思議そうな表情。純粋そのもの。
ここで詳しく説明してこの表情を穢して良いのか、と自問自答した垣根は、視線を彷徨わせて調理に真面目に取り組むフリをした。
バニラエッセンスを垂らして香り付けをしながら、フィアンマは不可解そうにミルクセーキというものへの淫猥さについて考える。
彼女の中でミルクセーキという飲み物は卵、牛乳、砂糖が入り混じった、甘く滋養のあるモノという認識しか無い。

フィアンマ「…やはり考えてもわからんな。どの辺りが卑猥なんだ」

垣根「…野郎に羞恥プレイさせて楽しいのか? お前」

フィアンマ「いや、純粋な興味だよ。帝督の考えから発露した発言だろう?」

垣根「……>>826」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/25(木) 21:11:18.93 ID:7OsTLe6t0<> 言葉遊びだよ、日本語特有の
セーキに一文字足したらセーエキ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/10/25(木) 21:12:26.47 ID:w6F4l9Coo<> 耳元で全部教えてあげる <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/25(木) 21:42:06.38 ID:FmZdxuJZ0<>
垣根「……ちょっとこっち来い」

フィアンマ「?」

調理を終えてパスタをよそい、フィアンマも作業が終わっているのを見届けてから、垣根は彼女を手招く。
下ネタ耐性がなければこの先彼女が困るのだ、と自分に言い聞かせ、垣根はフィアンマの耳元でひそひそと教えた。

垣根「…精液はわかるよな?」

フィアンマ「それ位はわかるが」

垣根「色、白色だろ。基本的には」

フィアンマ「そうだな」

垣根「それがミルク…つまり牛乳に似てると、まずこれが一部冗談って訳だ」

フィアンマ「なるほど」

垣根「で、セーキの部分は、日本語でセーキに一文字『エ』を付け加えることで精液になる。まぁ、そのまま性器ってことでも充分下ネタなんだが」

フィアンマ「ふむ」

垣根「ミルクセーキっていう飲み物自体、牛乳使ってるから白いだろ。見目と名前の改変、両方合わさって精液を彷彿とさせるからちょっとエロい、とそういう訳だ」

フィアンマ「…なるほど、なるほど」

全て聞くと真面目に頷き、フィアンマは垣根の言葉をそのまま知識として受け入れる。
かといって軽蔑の眼差しで彼を見る訳でもなく、ただ一言冷静に言った。

フィアンマ「それにしても、食事時に言うべき洒落ではなかったな。下劣だ」

垣根「…悪かったよ」

17歳の女って皆こうなの? 俺が同い年の女知らないだけなの? と勘違いと少女への偏見を抱きながら垣根は配膳し、席につく。
フィアンマは車椅子から椅子に移動するのが面倒なのか、そのままテーブルに移動した。

垣根「いただきます」

フィアンマ「…」

適当に十字を切る少女と、適当に手を合わせる少年は、共に食事を開始するのだった。




フィアンマ「……」

部屋の中をのろのろぐるぐると歩きながら、フィアンマは細く長くため息を吐き出す。
筋力が無い為にふらふらと足取りがおぼつかない。まるで酔っ払いのようだ。

フィアンマ「…ちなみに、最低限の筋肉などを取り戻させるのは、帝督の能力でどうにかならんものなのか」

垣根「>>829」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/25(木) 21:53:26.42 ID:b/6Qd9ySO<> やめとけやめとけ。できなくはねーだろーが、変に余計な事するより自然に治すのが一番いい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/25(木) 22:00:16.04 ID:iF1T3XlA0<> 俺が適切なプランを立ててやるから、それに
従ってやればいい。これでも昔暇だった時に色んな資格を取ったんだ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/25(木) 22:28:07.01 ID:FmZdxuJZ0<>
垣根「俺が適切なプランを立ててやるから、それに従ってやればいい。これでも、昔暇だった時に色んな資格を取ったんだ」

フィアンマ「資格?」

垣根「例えば『スポーツジムインストラクター』とかな。…いや、働いたことはねえけど」

言いながら、垣根はメモ帳を引っ張り出してトレーニング、もといリハビリメニューを書き出す。
進歩するよう多少の辛い部分はあるものの、しっかり休憩も挟める、五時間程度の集中プログラム編成。
かりかり、と垣根の指先が操るボールペンが奏でる音を聞きながら、フィアンマは軽く壁に寄りかかる。
元は歩けていたし、脚が悪い訳でもないので、要は体力、気力、持久力の問題だ。

垣根「…こんな感じか」

ほら、と手渡されたメモ帳を読み、彼女はこくりと頷いて、メニューの通りリハビリを開始した。
リハビリ兼体力作りというべきか。時折息を切らしながらも、あまり弱音は吐かずに真面目にやる。
そんな様子を眺めながら、垣根は転ばないようにほんの少しばかりだけ手を貸し、見守る。
予定通り五時間程度で終わり、メモ帳を無くさないようしまいこんだフィアンマは、だるそうにぼすりとベッドへ倒れこんだ。

垣根「…死人みてえな顔してるな」

フィアンマ「…疲労だよ」

ぐたり、とまるで今からダイイングメッセージでも書きそうな様子で俯せに横たわる彼女に、もう少し内容を緩くしようかと甘くなりかけた垣根だが、自省する。
特別扱いとは、ただひたすらに甘やかすということではない。
もふもふ、とぬいぐるみに顔を埋め、フィアンマは動かなくなった。
しばらく時間が経過した後、穏やかな寝息が聞こえてくる。
ぬいぐるみに顔をうずめたまま、うつ伏せで寝てしまったらしい。

垣根「…息苦しくねえのかよ」

つっこみながら、垣根は彼女の体に毛布をかける。
つられ眠気はこなかったため、どうにも暇を持て余した。

垣根「……」







垣根はどうする?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/25(木) 22:35:43.35 ID:b/6Qd9ySO<> 本でも読みつつコーヒーを飲むか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/25(木) 22:46:04.65 ID:EcmFHHXi0<> 腹が減ったからなにか出前を頼む <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/25(木) 22:56:02.76 ID:FmZdxuJZ0<>
垣根(さっき飯は食ったが、何となく小腹空いたな)

何かケータリングを、と思い立ち、垣根は冊子状のチラシメニュー(部屋ドアの下から差し込まれたもの)を眺める。
ピザだとか、少々地雷臭のする寿司だとか、果てにはクリスマスでもないのにケーキまで。

垣根「…何にすっかな…」

どれにしようかな、と適当に指を運ばせ、適当に決める。
ピザの中からも、どれにしようかな、と再び天命に任せ。
結果としてカスタードと林檎のピザという何とも甘そうなものに決まったが、小腹が満たせれば何でも良いので、それを注文した。
三十分と経たない内に届けられ、代金を支払った垣根はカット済のそれに手を伸ばす。
フィアンマは眠りながらも甘い匂いに反応したようだったが、起きるまでには至らず、もぞもぞと毛布にくるまり、横向きになった。
甘く煮込まれた林檎と砂糖控えめカスタードの程よい甘みの調和、薄めのクラストはもちもちとしていて美味しい。
悪く無いな、と思いながらも三切れ程で満腹になり、残りはひとまずぱこっと紙箱を閉じる。

フィアンマ「ん…」

垣根「…よく寝てんな」

ぼやき、垣根は彼女の寝顔を眺める。
良い夢でも見ているのか、表情は和やかだった。
時折何か寝言のようなものを呟いているが、寝言のむにゃむにゃ感とイタリア語であることが入り混じり、聞き取りにくい。

垣根「……」

フィアンマ「すー…」







フィアンマの見ている夢の内容(アバウト可)>>+2







《早いですが今日は寝ます。
明日も多分夜に来ます。

お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/25(木) 23:02:23.07 ID:kk0H2ryX0<> 乙st <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/25(木) 23:04:53.10 ID:b/6Qd9ySO<> 生きたぬいぐるみと戯れたり一緒におどったり <> 夢  ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/26(金) 19:12:41.57 ID:Szxi+A6l0<>

綿と布で創られたぬいぐるみがもぞもぞと動く。
不気味な蠢きではなく、意思を持った動き。

『……』
「…、」

耳を揺らした白い布兎が俺様を見上げる。
ぴこぴこと耳を動かして、何かアピールをしているようだ。

『……』
「…口で言え、…といっても、…お前には声帯が無いのか」

俺様には帝督のような特殊能力が無い。
だから、声を与えてやろうにも、声帯を与えてやることは出来なかった。
代わりにと頭をなでれば、更に耳を揺らし、ぴんと立てて喜んだ動作を見せる。
触り心地はふわふわとして柔らかい。全体的にもこもことしている。
しばらく兎と戯れていると、茶色い、テディベアと思われる大きなぬいぐるみが寄ってきた。

『……』

ぽふ、と頭を撫でられ、手を引かれるまま、社交ダンスに持ち込まれる。
リハビリで疲れきっていた上に筋力は無い筈だが、何故だか思ったまま、自由に身体が動く。
ああなるほど、これは夢か。
自覚すれど、気分が良いことに変化は無い。

「…帝督」

ダンス中に転け、テディベアに抱きつく。
俺様よりも体格の大きなこれは安定感と包容力がある。
そして、帝督と同じ匂いがした。気のせいかもしれないが。

「……」
『……』

背中を撫でられ、疲れが癒される。
世界中に存在する全てのぬいぐるみが生きていれば良いものを。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/10/26(金) 19:12:49.97 ID:JlY/9T6AO<> + <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/26(金) 19:13:21.70 ID:Szxi+A6l0<>
フィアンマ「…ん、…」

垣根「起きたか?」

フィアンマ「…」

こくり、と頷き、フィアンマは垣根を見上げる。
垣根は彼女の寝顔を眺めながら、頭を撫でて隣に横たわっていた。
垣根にやや抱き寄せられているような形で、道理で夢に感覚がついてくるはずだとフィアンマは納得した。

フィアンマ「退屈させたか」

垣根「ま、暇ではあったけどな」

フィアンマ「……あれは何だ」

垣根「カスタードピザ。食う?」

立ち上がるのが億劫なのか、能力の応用でピザの箱を引き寄せ、垣根は一切れ、フィアンマの開いた口に入れ込んだ。
もぐもぐと口を動かし、少々品が無い行動だと自覚はありつつも林檎カスタードピザを食べ、フィアンマは垣根にくっつく。
垣根は再び横着してピザの箱を片付け、彼女の口端に付着したカスタードを指先で掬った。

フィアンマ「……」

垣根「…ん、」

その指をそのまま口に含んでカスタードを舐めとった垣根は、だるそうに横たわる。
体調が悪い訳ではなく、何となくやる気が出ないだけである。

フィアンマ「…退屈だな」

垣根「>>840」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/26(金) 19:14:19.41 ID:qfwQyhE10<> 退屈な時にトレーニングさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/26(金) 19:19:58.11 ID:LrHpdXsSO<> んじゃあ、何か話をしてやるよ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/26(金) 19:30:58.78 ID:Szxi+A6l0<>
垣根「んじゃあ、何か話をしてやるよ」

フィアンマ「話?」

垣根「雑学で良いか?」

フィアンマ「構わんが」

だるだるとした様子の垣根を見つめ、フィアンマはこくりと頷いた。
唇端に残っていた微量のカスタードを舐めとった彼女は割と真面目な様子で垣根の言葉を待つ。

垣根「タラバガニは『カニ』とついているが、実はあれはカニじゃなくてヤドカリの仲間なんだとよ」

フィアンマ「証拠はあるのか?」

垣根「証拠というか根拠というか、だから足がカニに比べて2本少ない8本だと」

フィアンマ「なるほど」

垣根「タコは外敵に襲われた時、自分の足を切り離して逃げる。そん時に無くなった足はすぐに再生されるが、ストレスで自分の足を食べちまったときは、二度と再生されない」

フィアンマ「…難儀だな」

垣根「他人にやられたのはともかく、自傷はアウトってのがな」

フィアンマ「…」

垣根「後は…人間の味覚が感じることのできるものは、甘さ・酸っぱさ・苦さ・塩辛さの四つで、辛味や渋味は含まれてねえ。これは、辛味や渋味は主に触覚と痛覚が絡み合って分かる感覚だからだ」

フィアンマ「正確には味ではないということか」

垣根「そうなるな」

フィアンマ「なるほど。…ところで、その雑学はどこから仕入れてきたんだ?」

垣根「>>843」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/10/26(金) 19:35:48.28 ID:GDM/xIY60<> つトリビアの湖 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/26(金) 20:48:02.10 ID:XWVbqCOV0<> >>842

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/26(金) 21:18:12.46 ID:DE5FWtMi0<>
垣根「ちょっと待ってろ」

言うなり、垣根はフィアンマから離れるとホテルのテレビに近寄り、細工を施した。
未元物質で工業品の代用を作るなど少々無茶をしつつもどうにかテレビの造り変えに成功する。
流されたのは、学園都市及び日本でも有名な雑学紹介番組『トリビアの湖』。
ちょうど放送の行われている時間だった為、すんなりと見ることが出来た。
のそのそとベッドの元の場所に戻り、垣根はフィアンマと共にテレビを鑑賞する。

フィアンマ「…ふむ」

垣根「暇潰しにテレビは使えるからな。かといってあんまり見てても退屈になるが」

フィアンマ「テレビか」

垣根「あんまり見て無かったのか?」

フィアンマ「仕事とやるべき準備と読書で一日潰れてしまっていたからな。自分のやりたい事に打ち込んでいたから、テレビを見る暇が無かった」

垣根「なるほどな」

しばらく眺めて飽きた為、他のチャンネルに回す。
やっていたのは料理番組で、料理人とその手伝いが軽く雑談(料理に関する)をしながら、料理を作っていく。





料理番組に出演している料理人(禁書キャラ名):一人>>+2
そのお手伝い(計量済みの調味料などを手渡す係。禁書キャラ名):一人>>+3 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/26(金) 22:04:54.13 ID:pIKcIcUI0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/26(金) 22:06:51.72 ID:pIKcIcUI0<> このスレって連とうありだっけ?
ありならインデックス <> ,;゙ ・ω・;, もふ
◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/26(金) 22:11:20.37 ID:3L6yOmwPo<> ラストオーダー  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/10/26(金) 22:19:09.04 ID:pIKcIcUI0<> 一方道行 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/26(金) 22:56:19.90 ID:DE5FWtMi0<>
インデックス『今日はきんぴらごぼうを作るんだよ!』

打ち止め『美味しそう、ってミサカはミサカは材料しょーかーい!』

年端もいかぬ少女が料理を作るのが流行っているのだろうか。
そんなことよりも、フィアンマ、垣根両名は別の意味で驚いた。

垣根「最終信号…!?」

フィアンマ「禁書目録…、」

垣根「…知り合い?」

フィアンマ「…見覚えがありすぎる程にな」

垣根「…」

フィアンマ「あちらの幼い子供に見覚えが?」

垣根「…あり過ぎるくらいにな」

ぼやいて会話をしている間にも、二人のはちゃめちゃクッキングは進む。

打ち止め『こちら塩適量ですってミサカはミサカは分量説明してみたり!』

インデックス『適量ってちょっとわかりにくいかも。えいっ』

打ち止め『ご、豪快クッキング、ってミサカはミサカは口ごもってみる…』

どばぁ、とフライパンに被さる白い塩の山。
食材がもったいない、としょっぱい顔をするスタッフを想像しながら、フィアンマは話かける。

フィアンマ「…ちなみに、あの少女とはどういった知り合いなんだ」

垣根「あ? …>>851」 <> ,;゙ ・ω・;, もふ
◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/26(金) 22:56:20.69 ID:3L6yOmwPo<> なんかインデックスと打ち止めだとひとりでできるもん!になりそうな悪寒wwwwww
でも保護者的な立場にセロリさんをつけたらこれはこれで・・・ <> ,;゙ ・ω・;, もふ
◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/26(金) 22:57:04.37 ID:3L6yOmwPo<> 知り合いのロリコンと同居しているガキだよ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/26(金) 23:06:36.98 ID:DE5FWtMi0<>
垣根「あ? …知り合いのロリコンと同居しているガキだよ」

フィアンマ「…ロリコン?」

垣根「ロリータ・コンプレックス」

フィアンマ「それはわかるが」

垣根「いやしかし、ガキに金稼がせるとはな…アイツも落ちぶれたモンだ」




一方通行「ぶェっくし!」

黄泉川「風邪でも引いたじゃん?」

一方通行「違ェだろ。…噂されてるとか、その辺りじゃねェのか」

黄泉川「モテる男は辛いじゃんねー」

一方通行「そうはならねェだろォが」



打ち止め『仕上げに七味唐辛子でーす、ってミサカはミサカは少量を希望してみる』

インデックス『ひとつまみってこれ位でいいのかな?』

垣根「…それにしても、またアバウトなクッキングだなオイ」

フィアンマ「分量が適当なんだろう」

垣根「それにしたってあの塩の量は…」

フィアンマ「…塩漬けだと思えば、…いや…」

それにしてもつらい、と二人揃って首を横に振り。
垣根は思い出したように問いかける。

垣根「その銀髪の方のガキ、知り合いなんだろ。どんな知り合いだよ」

フィアンマ「…>>854」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/26(金) 23:14:02.47 ID:LrHpdXsSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/26(金) 23:28:01.72 ID:qDCUNuhdo<> 本を借りた <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/26(金) 23:45:46.30 ID:JlY/9T6AO<> 《今日は寝ます。
お疲れ様でした
明日は昼頃に来ます》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/26(金) 23:49:54.08 ID:LrHpdXsSO<> 乙ノカタキヲトルノデス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/27(土) 00:52:10.56 ID:oa59nLBt0<> 乙
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 01:48:35.79 ID:aLHND96U0<> うん、確かに(脳内の魔道)本を借りてたな <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/27(土) 12:32:36.62 ID:/lOIBMdz0<>
フィアンマ「…本を借りた」

垣根「本?」

フィアンマ「色々と、な」

多くは語らず、フィアンマはテレビ画面を見つめる。
画面内の禁書目録は、少女らしく楽しそうに料理に取り組んでいた。

フィアンマ「……」

莫大な魔道書を宿していて尚、彼女は穢れていない。
自分とは違い、人を思いやれる。
本当の意味で、人を助け、救うことが出来る。
自分などでは、遠く及ばない。
悔しいとは思わない。もう、そこまで救いにこだわって、執着している訳ではないからだ。
結局、自分は垣根に救われただけで、垣根を救うには至っていない。
所詮、自分が誰かを救おうなどと考えることがそもそもの間違いだったのか。
自分の人生の大半は間違っていて、今、その罪の回収をしているのか。
この罪悪感と苦しみが、償いの履行だというのか。

フィアンマ「…」

垣根「…機嫌悪いのか?」

フィアンマ「そういう訳ではないが」

垣根「…何か元気無くなったように見えるけど」

フィアンマ「…>>861」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 13:25:45.73 ID:7fmgXmTIO<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 13:30:06.93 ID:MV2N7nTSO<> 少し、彼女が羨ましくなった。助けを、救いを求める人達を、真に救済できるだろう彼女が。

…皆に泣いて欲しくなかっただけなんだけどなボソッ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/27(土) 14:55:03.37 ID:lBJ8/zcz0<>
フィアンマ「…少し、彼女が羨ましくなった。助けを、救いを求める人達を、真に救済出来るだろう彼女が」

垣根「…、…お前が暗部の人間だったから、だろ」

フィアンマ「…そうだろうな。…俺様は間違えたんだ」

垣根はインデックスについて知らないながらも、予測立てる。
きっとフィアンマは彼女に憧れているのだ。
大体の少女は人を殺したことなどないし、特殊過ぎる才能にだって悩まない。
たとえ科学のトップに近い位置にあろうとも、魔術のトップに近い位置にあろうとも。

フィアンマ「いつも、選ぶべきものを間違えてきた」

垣根「…それでも、お前は救おうとしたんだろ。世界とか、…世界中の人とか」

フィアンマ「……ただの凶行だよ。戦争を起こしただけに過ぎない」

垣根「必要だったんだろうが」

何を言っても垣根が自分を守り慰めようとするとわかっていて、フィアンマはそのようにぼやく。
庇護するような発言が心地良いと思いつつ、どこかそれを求めながら話している自分が醜いと感じた。
やがて料理番組の終わったテレビの電源を消し、フィアンマは緩やかにため息を吐き出す。

そして、ぼそりと。

とてもとても、寂しそうに、呟いた。

フィアンマ「…皆に、泣いて欲しくなかっただけなんだけどな」

貧困に苦しむ人がいた。
悪意に苦しむ人がいた。
孤独に苦しむ人がいた。

そんな人たちを助けて、救って。
笑って、ありがとうと言ってもらえる日を夢見て、それを希望として据えて、生きていた。
ただ、誰かにありがとうと言ってもらえたら、それだけでよかった。
笑って欲しかった。泣いて欲しくなかった。皆に、幸せになって欲しかった。

フィアンマ「…俺様は、他者の幸せの踏み台にすら、なれなかった」

垣根「……、…>>864」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 15:06:35.24 ID:MV2N7nTSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 16:43:00.09 ID:MV2N7nTSO<> だきよせて、
いいじゃねぇかよ、そんな踏み台〈もの〉にならなくても。
俺は、そんな誰とも知らないやつの幸せのために犠牲になるお前なんか見たくねぇ。
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/27(土) 17:58:05.22 ID:lBJ8/zcz0<>
垣根「……、…いいじゃねえかよ、そんな踏み台<もの>にならなくても」

フィアンマ「……、」

彼女を抱き寄せ、垣根はそう穏やかに言った。
穏やかながらも、いたって真面目に、真剣に。
思ったままを、特に飾らず、思ったままの言葉で告げる。

垣根「俺は、そんな誰とも知らないやつの幸せのために犠牲になるお前なんか見たくねぇ」

フィアンマ「…お前は、俺様を甘やかすのが上手だな」

垣根「だろうな。愛してたら甘やかすし、何度もやってりゃ上達するモンだ、普通」

フィアンマ「…ただ、」

垣根「…」

フィアンマ「…ただ、…誰かに、…『ありがとう』って、言って、欲しかったんだ…」

垣根「……」

フィアンマ「お前のお陰で救われたと、…『あの時』、誰も救えなかった俺様が、誰かを救えたと、…その一言をかけてもらうことで、証明したかったんだ…自分に」

垣根「……」

フィアンマ「なのに、何もかもうまくいかなかった。間違えた。全部が全部間違いだ」

自分を踏み台にしてでも誰かが幸せになれば、と思えば思う程、その誰かが自分のせいで不幸になる。

フィアンマ「…、」

垣根「…何か忘れてるようだが」

フィアンマ「…?」

垣根「…俺は、お前に救ってもらったんだぜ。少なくとも、俺は。お前のその『間違い』とやらで救われた」

フィアンマ「……、」

垣根「だから、………俺からの感謝で、我慢しろ。ついでに実感しやがれ。……ありがとう」

わしゃわしゃ、とフィアンマの頭を撫で、垣根は困ったように笑む。
彼女が誰かを傷つけたことで垣根は救われた部分がある。

垣根「それとも何、百万人からのありがとうじゃねえと満足出来ない訳?」

フィアンマ「…満足した」

垣根「そうかよ」

ありがとうとはまた柄にもないことを、と思い返し、垣根はそっぽを向く。
フィアンマは垣根の身体を抱きしめ返し、幸福そうに表情を和ませる。

フィアンマ「…キザなのか何なのか、…よくわからんな、帝督は」

垣根「>>867」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 18:19:54.57 ID:MV2N7nTSO<> 単にお前が大好きなだけだっつの <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/27(土) 18:48:14.78 ID:MV2N7nTSO<> 誰も安価とりやがらないので上 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/10/27(土) 22:51:59.34 ID:hLrzEH1AO<> 《今日は調子が優れないので寝ます…すみません。
お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/28(日) 00:14:16.53 ID:4W7odJSSO<> 乙。あんなに頑張ってたらそりゃ体調崩すわ…ゆっくり休めよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/28(日) 20:33:06.26 ID:5LWn0c+V0<> 乙。
いつも楽しみに読ませてもらってます。

お大事に。
<> 小ネタ:if
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/29(月) 01:30:50.92 ID:DfL16yWAO<>

垣根「紆余曲折あって友人関係まで発展した第一位と深夜に通話している訳だが」

一方『誰に説明してンだ、オマエ』

垣根「いや、何か言わなきゃいけない気がした。まぁいい、話しようぜ」

一方『恋人は放っておいてイインかよ』

垣根「疲れて寝てるからな」

フィアンマ「…」すやすや

一方『ふゥン』

垣根「…そういや、お前、最終信号に対して理想とか望みとか無いの?」

一方『あン? …望み、ねェ』


〜想像〜


打ち止め「ただいまー! 今日は中学校で友達が沢山出来たのー、ってミサカはミサカはどや顔で報告してみる!」

一方「そォかい」

打ち止め「それとね、小テストが満点だったんだよってミサカはミサカは誇らしげ!」

一方「そォかい、良かったな」


〜想像終了〜


一方『…って具合か。それ以外にはねェよ』

垣根「保護者だな」

一方『違ェよ。…オマエはその彼女とやらにあンのか? 望みやらなにやら』

垣根「あー…」



<> エロいこと
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/29(月) 01:32:21.32 ID:DfL16yWAO<>
口付けながら押し倒した。
嫌がらないかどうかよくやく確かめてから散々愛撫して、十回近くイかせたそこは、非常に濡れて滑っていて、甘い匂いがして。
オナニーはおろか、洗う時以外ロクに触った事が無かったからか、涙目で快感にびくつくフィアンマを宥めて、甘やかして、挿入した。
膜を破る時こそ痛そうな顔をしていたが、動かずにしばらく待っていると慣れたらしく、涙声で動いていいと言われて。
なるべく気持ち良くなるように指先で刺激しながら腰を動かす度、ぐちゅぐちゅといやらしい音が聞こえてきて、一層エロい気分になる。

「っあ、っん、ん、んっ、ぅ、」
「そ、いや…っはぁ、ゴム、着け無かった、な…」
「はぁっ、ぁ、ん、っあ、ぅ、こ、ども、デキ、っ」
「ダ、メ?」

旅行で色んなものを見るのは楽しい。
コイツの反応を見るのも、色んなものを見て楽しむのも。
ただ、安定だって欲しい。
家族というものを作ってみたい。
良い父親になれる自信はゼロだが。

「ぁ、っう、んっぁっ、あ、ふ、らめ、じゃな、」
「俺とお前のガキならかわいいだろうな、っは、」
「ん、んっぅ、…て、とく、と、俺、っさまの、赤、ちゃ、ん…?」
「っ、ん…そう、だ…女、でも、男でも…多分すげえ美形、だろうよ、…前に言っただろ、妊娠するなら、神より、俺のガキが良いって」
「んぁ、っぅ、いった、が…んっんっ、ん…ぁ、っう」
「だから、…っう、…子供、作ろう、ぜ。…な? …はっ、…ぁ…」
「ぅん、…っ、ぅ、こ、ども…」
「ふ…、…まぁ、セックスしてる、し…今更、嫌がられても、孕ませるけどな、」
「はらみゃ、んっあ、ひっ、う、クる、あっ、ぅ、何かク、っあ」
「イく、って言え、よ…ッ」


<> 小ネタ:if 
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/29(月) 01:33:04.33 ID:DfL16yWAO<>
垣根「エロいことしたい」

一方『…いや、すればイイだろォが』

垣根「いまいちタイミングが掴めなくてな」

一方『適当に雰囲気作れば女もまァまァノるだろ』

垣根「問題は相手が純粋で疎いところだ」

一方『あン? 同い年じゃねェの?』

垣根「同い年だけど? ……はー」

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/10/29(月) 01:33:50.79 ID:DfL16yWAO<>
《調子は良くなってきました。優しいお言葉、ありがとうございます。
ムラムラしたのでカッとなって書きました。
今日の夜はきっと来ます。
おやすみなさい》 <> ,;゙ ・ω・;, もふ
◆KUBIWAyEE2<>sage<>2012/10/29(月) 04:58:58.55 ID:aIsGv86Uo<> おつ。お大事にー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/29(月) 15:33:18.87 ID:49iEWhQSO<> 乙ー。もっとねっとり描写してもいいのよ
>>875いい加減酉外せ。>>1以外の酉つけはアレだろーが <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/29(月) 20:41:00.76 ID:6Vef4XYx0<>
垣根「単にお前が大好きなだけだっつの」

ややぶっきらぼうにそう言い、垣根はフィアンマの髪をわしゃりと撫でる。
照れ隠しをしたり、恥ずかしさを我慢して言葉を紡いでみたり、年頃の少年らしく、忙しない。

垣根「友達ってヤツが居たら惚気けてるところだ」

フィアンマ「友人を無くすな」

垣根「だろうな」

だから要らない、と小さく笑い、垣根は暇そうに彼女を愛でる。
愛情と愛玩が混ざっている気持ちである。




翌日。
垣根帝督はだらだらだと昼過ぎまで眠っていたのだが、不意に鉄の臭いで目が覚めた。
鉄、とはいっても、正確には血液のそれである。
襲撃か、それだったら気づくはず、と辺りを見回すも、何もなく。
フィアンマも怪我をした様子は無い。ただし、非常に顔色は悪いが。
天使に近いといえど、彼女の体は一応女性基準である。つまり、月に一度血液の排出と苦痛に苦しむ訳なのだが。
知識はあれど咄嗟にそうだと判断出来る訳もなく、垣根はおそるおそるフィアンマの様子を窺う。

垣根「…顔色がだいぶ不味い事になってるが、大丈夫か?」

フィアンマ「……、…>>879」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/29(月) 21:05:28.06 ID:49iEWhQSO<> ……帝督も一辺味わってみればわかる。何故女だからとこんな痛みを毎月…ブツブツ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/10/29(月) 21:58:41.30 ID:kM7/HYbTo<> ↑ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/29(月) 22:20:30.13 ID:6Vef4XYx0<>
フィアンマ「……、………帝督も一辺味わってみればわかる。何故女だからとこんな痛みを毎月…調整された身体であるが故に一日で済んではいるが本来これが一週間持続すると思うとぞっとする…下腹部の痛みに耐え兼ねて子をなして尚年を取っても終了するその瞬間まで毎月これは起こるのだろうふざけやがってクソッたれ神よこれだけは設計ミスだったと俺様は思うしこればっかりは恨むぞこの野郎」

ぶつぶつと紡がれる声は低く、いかにもストレスが溜まっていますと言わんばかりの怨念が籠った声で、恐ろしい。
怒っているのとは違うのだろうが、何となく、近寄りがたい威圧感まで放っている。
毎月の痛み、血液の臭い、という二点から月経だという結論を見事導き出した垣根は、さてどうしようかと悩んだ。
心理定規というかつての同僚が生理痛について愚痴っていた覚えがあるが、正直適当に聞き流していたので、どうしたら良いかわからない。
確か、ホルモンバランスの関係でイラつきやすくなっているはずである。となれば、あまり刺激しない方が良い。
また、油物は気持ち悪くなる恐れがあり、水分を多めに取った方が良かったような気がする、とも垣根は思う。
糖分は良くない影響を及ぼすともいわれ、しかしそれは個人差の範囲内であり、本人が望むのであれば食べた方がストレスを溜めないで済む、だとか。

垣根(酸っぱいモンだっけ…?)

一部妊婦に対しての知識と混同しながら、垣根は思考する。
ベッドやフィアンマの衣服は血まみれになっていないので、生理用品はあるのだろう。
一応追加で必要かと質問したところ、必要無いと断られた。手負いの獣のような刺々しさで。
こればかりは共有出来る痛みではないため、垣根はどうすべきか悩む。

垣根「どう痛ぇの?」

フィアンマ「…主に下腹部と、鈍い頭痛がする。…後は関節の局所が痛み、身体が怠い」

七日間分を凝縮しているのかしていないのか、スポーツタイプでないフィアンマの生理痛は非常に重い。

垣根「…何かして欲しい事あるか?」

フィアンマ「…>>882」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage<>2012/10/29(月) 22:34:52.60 ID:UM89Wf1Y0<> とりあえず量産型阿部さんを呼ぶ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/29(月) 22:46:03.59 ID:49iEWhQSO<> ぎぶみー生理痛に効く薬 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/10/29(月) 23:05:46.22 ID:6Vef4XYx0<>
フィアンマ「…ぎぶみー、生理痛に効く薬…、」

普段垣根とはイタリア語か日本語、或いはその二つを混ぜて使っているのだが、微妙な英語を使う辺り余程体力及び気力を消耗しているのだろう。
普段の自分を忘れる程に、継続的に地味な痛みは耐えられないものだ。何しろ、痛みを紛らわせる為に絶叫したり、気絶したり出来ない。
生理痛に効く薬って何だ、と思いながらも頷き、垣根はフィアンマの頭を撫でてひとまず離れるのだった。

垣根「…買ってきてやるから、怠いならとりあえず寝とけよ」

フィアンマ「…すまないな」

垣根「別に、性別上の生理的問題だろ。仕方ねえよ」

自分が股間を強打したのならフィアンマは一生懸命看護してくれるだろう。
何となくそう予測立てて、ここで見捨てる程自分は残念な男ではない、と自分に言い聞かせた垣根は外に出る。
目指したのはひとまず薬局である。イタリアの薬局にどれ程生理痛に効く薬が売っているかは知らないが、店員に聞けば何とかなるだろう、と思い。
薬局は見当たらなかった為にドラッグストアへ入り、その独特の薬臭さのような香りに眉をひそめ、垣根は周囲を見回す。
求められたのは薬だが、身体を冷やすと痛みが悪化すると何かの医術書で読んだ覚えがあるので、ホッカイロを購入する。
日本だけのものかと思っていたのだが、どうやらこのドラッグストアは手広く扱っているらしい。

垣根「…さて、適当に店員に聞くか…」

ぼやいた垣根に、何かお探しですかという声がかけられた。
日本並みの気がつきようだ、と微妙に人種差別をしながらも口にも顔にも出さず、垣根は振り返る。




ドラッグストアの店員(一人。禁書キャラ名)>>+2




《今日は寝ます。風邪が治ったら長時間やりますので…。
お疲れ様でした》
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/30(火) 02:48:44.95 ID:CdYh+MkSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/30(火) 02:49:54.36 ID:CdYh+MkSO<> かんざきさん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>sage<>2012/10/30(火) 11:04:34.87 ID:m5b3fd1i0<> お体お大事に、お疲れ様です <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 16:09:24.62 ID:cgJK5ITo0<> 《戻りました。全快です》


振り返った先に居たのは、一人の女性であった。
東洋人らしい。だからこその日本人的気遣いだろうか、と思いながら、垣根は口を開く。

神裂「何かお探しですか?」

垣根「鎮痛剤、なんだが…生理痛に効く薬ってねえの?」

神裂「生理痛ですか…ええと、こちらへどうぞ」

少し考える素振りを見せた後、店員、もとい神裂は垣根を連れて歩き始めた。
何となく、神裂から一般人のそれというよりも、トールに対してのそれに似た雰囲気を感じながらも、垣根は無言のままについていった。
案内された先に並べてあった鎮痛剤を眺め、副作用の弱そうなものを厳選する。
これでいいか、と頷き、垣根はふた箱程、鎮痛剤を手にとった。

垣根「ところで」

神裂「はい?」

垣根「わからないなら俺の電波発言ってことにしておいてくれて構わねえが、お前魔術師か?」

神裂「>>889」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 16:17:00.23 ID:XfrNSBhSO<> >>1が無事帰還で何より。Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 16:40:57.85 ID:XfrNSBhSO<> 中2びょ……ゲフン



…何故わかったのですか? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 16:57:01.03 ID:cgJK5ITo0<>
神裂「…何故わかったのですか?」

垣根「雰囲気だな。…同類の」

神裂「同類…、ということは貴男も、」

垣根「所属は話さねえぞ。…と、お前が魔術師なら聞きたいことがある」

薬局内の商品を一時入れて置くためのミニカゴを手にするか少し悩んで、結局手にしないまま、垣根は神裂を見る。
薬局の店員らしい装いをしていたにも関わらず、自分を魔術師であると見抜いた上に同類だと名乗った垣根に、神裂は不可解さを覚えながら目を見る。
垣根はというと、少し迷った後、フィアンマについて尋ねることにした。

垣根「『右方のフィアンマ』って、わかるか?」

神裂「…ええ。先の大戦の、…」

戦争の裏事情を知っている神裂は、言葉を濁し気味に頷く。
垣根は、続けて問いかけた。
一応疑わないようにはしているが、エイワスが本当に罪を請け負ったかどうか、今まで確かめてこなかったからだ。

垣根「ソイツ、首謀者なんだろ?」

ここで頷いただけなら、エイワスが嘘をついたということ。
自分に関しては嘘ではないだろうが、フィアンマの罪を肩代わりした訳ではないだろうということだ。
神裂はインデックスのことを想い、一瞬感情的になりかけるも、深呼吸をして落ち着いてから答える。

神裂「>>892」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/11/01(木) 17:33:17.44 ID:mwvzfc/Ko<> えぇ、その通りです。
私はイギリス清教の所属になりますが、彼によってかなりの被害を被りました…
それで何が言いたいんですか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 17:38:31.95 ID:XfrNSBhSO<> アイツは………ッ…いえ、正確には違うようですが。
ただ、最近彼に関しておかしな噂を聞きますね <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 17:47:55.63 ID:cgJK5ITo0<>
神裂「アイツは………ッ」

垣根「……、」

神裂「…いえ、正確には違うようですが」

今更天使の預言を受けたから、操られるまま、と聞いても。
神裂火織にとって、右方のフィアンマがインデックスを傷つけたことは変わらない。
それも、仕方なくという体ではなく、自ら率先して。
インデックスを傷つけただけどころか、戦争を起こして、遠まわしに沢山の人間を殺害もしただろう。
沢山沢山傷つけて、それでも全てを超える天使に操られていたから、ただその一言で、彼も被害者ということになる。
到底許されることではないと神裂は思うも、それはあくまで個人的な感情に過ぎず。
現状、右方のフィアンマを捕縛、殺害する許可など、誰にも与えられてはいない。
何しろ、その高次元にあるべき霊的存在自らが、説明しに来たというのだから。
上からの強い命令に逆らってまで、神裂はフィアンマに刃を向けられない。

神裂の表情に個人的な恨みや敵意を感じ取りながらも、垣根は余計なことを言わず。
ただ、そうなのかと相槌を打って頷くのみ。
彼女がこの場に居たのならきっと庇ったであろうが、今はその必要は無い。

神裂「ただ、最近彼に関しておかしな噂を聞きますね」

垣根「噂?」

あくまでフィアンマとの直接的繋がりはない、という風を装って、垣根は聞き返す。

垣根「どんな内容だ?」

神裂「>>895」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/01(木) 17:53:21.70 ID:cb6VFkGu0<> 彼が首謀者だと思われていたのに
実は首謀者ではなく指示されていただけ
だとか。しかもそれをほとんどの人間が信じている <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/01(木) 17:59:38.49 ID:MdHT74Fy0<> フィアンマを裏で操っていた人間がいる、しかも学園都市の人間 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 18:01:44.64 ID:XfrNSBhSO<> なんでも、女装してホストとデートしてるだとか、ピザ屋でアプローチかけられてたとか…
あと、彼を憎む人間達、科学、魔術側問わずで組織を組み、拷問、抹殺しようとしてるだとか……まぁどれもナンセンスな噂ばかりですが <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 18:41:05.55 ID:XxVJoe8o0<>
神裂「フィアンマを裏で操っていた"人間"が居る、しかも学園都市の人間…という話ですね」

垣根「学園都市の?」

神裂「あくまでも噂ですが…」

垣根(噂ってのは大体下地があるモンだが…いや、操ってるなら今も操られてるな。となると、俺が学園都市の人間…これと、フィアンマが裏で操られてる…、この二つの情報が混じって妙に曲解されて流行してるだけか…)

神裂「…ところで、何故そのような質問を?」

垣根「あぁ、…妹が戦争の犠牲になってな」

さらりと嘘をつき、垣根は神裂から離れてレジへ向かう。
とりあえず、あの天使は嘘をついていなかったようだ、と判断しながら。



薬を購入し、ドラッグストアの袋片手に、垣根はホテルへと戻ってきた。
フィアンマは具合が良くなるはずもなく、むしろ悪化しており、ぐったりとしながら垣根を見上げた。

フィアンマ「…お帰り」

垣根「ん、ただいま。店員に聞いて適当に買ってきたが…起き上がれるか?」

フィアンマ「……」

のろのろ、と起き上がった彼女に対し、垣根はミネラルウォーターの詰まったペットボトルの蓋を緩める。
そして彼女に差し出すと、続けて薬を二錠分、シートを手でカットした。
まず喉を潤す為に水を呑み、フィアンマは低い声で問いかける。

フィアンマ「…女と話していたのか」

垣根「>>899」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/01(木) 18:43:14.67 ID:bCGioitl0<> エイワスの情報操作の確認にな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 18:44:55.72 ID:XfrNSBhSO<> お前エスパー?言っとくが確かに女と喋ってたがお前が思うような感じじゃないからな? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 18:57:36.70 ID:XxVJoe8o0<>
垣根「お前エスパー? 言っとくが、確かに女とは喋ってた…が、お前が思うような感じじゃないからな?」

何も一言も言っていない内から恋人が異性と話したことをズバリ当てられるのは所謂『女の勘』だろうか、と少々恐ろしく思いながら、垣根はそう話した。
シートから錠剤を押し出し、白い粒をフィアンマに差し出しながら。
フィアンマは気分を害した様子もなく白い粒達を受け取ると、水と共に飲み下した。
ペットボトルが空になるまで水を呑みきると、一言そうかと相槌を打ち、ペットボトルを捨ててベッドに横たわる。
毛布にくるまり、労いの言葉を口にすると、フィアンマは静かに目を閉じた。
まだ眠いのだろうか、と判断して、垣根は彼女の様子を見守る。

フィアンマ「……何も、被害に遭っていないか」

垣根「あん?」

フィアンマ「…交通事故程度で怪我はしないだろうと思っているが…」

垣根「…別に何もねえよ」

垣根を心配していたのか、そう問いかける彼女に、彼はそう真面目に返した。
心配されるような出来事など、何も起こっていない。

フィアンマ「すまなかったな。買い物に行かせてしまって」

垣根「構わねえよ。俺が風邪引いたらお前もこうするだろ」

フィアンマ「…そうだな」

ちょいちょい、と垣根を手招き、フィアンマは彼の手を触った。
ぺたぺたと無意味に触った後、手を握る。
普通体型の男の手にやわらかさなどないのだが、別に構わないようだ。

フィアンマ「……」

垣根「……」

フィアンマ「…一時期無かったのだが、元に戻ったということは、帝督の子が孕めるな」

だるそうに呟いて、フィアンマは垣根の手に指を絡ませる。
垣根は拒絶せずに、彼女の手に指を絡ませた。

垣根「…>>902」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 19:02:12.26 ID:XfrNSBhSO<> ……お前は俺を惑わす天才だなオイ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/01(木) 19:03:18.88 ID:nPtpWxHj0<> ……欲しいの? <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 19:11:58.42 ID:XxVJoe8o0<>
垣根「………欲しいの?」

フィアンマ「…今は無理だろうがね。…好きな男の子供を産むのは、女の幸せだろう?」

垣根「古い考えだな」

フィアンマ「男女差別甚だしいか? だが、出来る事ならそう考えるのが自然に沿っている。幸せの概念は人それぞれというが」

垣根「…お前にとっては、俺の子供産むのが幸せなのか?」

フィアンマ「…今以上を望むとしたら、そうだな。別に望む必要は無いが」

煙に巻くようなわかりづらい答え方だ、と思いながら、垣根は手を差し入れて彼女の腰を摩る。
腰をさすられて多少腰痛が和らぐのか、力を抜いて無抵抗のままに、フィアンマは目を閉じたままでいた。

フィアンマ「…俺様には、金に換えられる財産しか無い」

垣根「……、」

フィアンマ「才能は金に換えられないものだが…換えられる事には換えられる。それだけが支えという訳ではない」

垣根「…俺はどうなんだよ」

フィアンマ「…そうだな、訂正しようか。…俺様には、金に換えられない財産が、帝督しかいない」

垣根「…まあ、それは俺もそうだが」

フィアンマ「…何でもない。今の話は忘れろ」

子供というよりも、垣根帝督との間に何かが欲しい、といった意見。
垣根はそう判断して、しかし、子供以外の何かではダメなのだろうか、と考える。

垣根「……」

幼い精神状態の時、彼女は家族が欲しいと言っていた。
そう思いだして、垣根は問いかける。

垣根「…お前、結婚とかに夢抱いてるタイプ?」

フィアンマ「んー? >>905」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 19:39:54.34 ID:XfrNSBhSO<> 夢、というほどではないが、理解しあって、幸せな生活を築こうとは思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/01(木) 19:59:25.62 ID:EtC7Xt6s0<> 結婚はしなくても一緒に居られるならそれで幸せだと思う <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 20:22:50.73 ID:XxVJoe8o0<>
フィアンマ「んー? 結婚はしなくても、一緒に居られるならそれで幸せだと思うが」

垣根「なるほどな」

結婚指輪だとか、結婚式の思い出だとか、そういうものにこだわる性質ではない。
ただ、彼としては、彼女が自分との間に何か消えない財産が欲しいと言っている以上、何かを贈ってやりたいとは思う。
だからといって子供という選択肢を安易に選ぶ訳にもいかず、垣根はため息を漏らす。
今までこんな風に、誰かに何かしてやりたいなどという問題で悩んだことは無かった。
彼女相手にはいつも悩まされているような、しかし気分が悪くなる悩みでもないし、と考えを巡らせ、垣根はフィアンマを見やる。
寝ようとして眠るにはいたらなかったらしい彼女は目を開け、じーっと垣根を見上げていた。

垣根「…何だよ」

フィアンマ「造形が良いから見ていただけだ」

垣根「まぁ、イケメンだからな。それは認める」

フィアンマ「自分で言うのか?」

垣根「日本人が皆謙遜すると思うなよ」

フィアンマ「そんなものか…」

垣根「何か欲しい物とかねえの」

フィアンマ「物?」

垣根「生活とか安定とか、抽象的なヤツじゃなくて、物理的な」

フィアンマ「物理的、と言われてもな…」

垣根「……」

フィアンマ「…>>908」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/01(木) 20:23:58.67 ID:m0+QnTls0<> 加速 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 20:29:57.18 ID:c4R4eA2IO<> ・・・ペアの、物、とか <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/01(木) 20:45:47.04 ID:XxVJoe8o0<>
フィアンマ「……ペアの物、とか」

抽象的なものなら、垣根との幸せな生活の継続だとか、安定した幸せだとか、沢山あるのだけれど。
物理的に、と要求されて浮かんだのは、ペアの物品だった。
服は、流石に揃いで着るのは恥ずかしいので、候補に入れないにしても。
繋がりがあることが物理的に、ひと目で証明されるお揃いのもの、または対のもの。
フィアンマの回答に対して垣根は頷いた後、冷え気味の彼女の手を数度握り直し、考える。
ペアのものと言われて浮かぶのは、マグカップだとか、ネックレスだとか、その辺りだ。
ただ、不用意に贈ると魔術の妨げになるのでは、と思う。
フィアンマが魔術を行使するまでもなく自分が強くなれば良いだけの話かもしれないが、生憎彼女に勝てる程の力すら持ち合わせてはいない。
魔術については後々考えることにして、ペアの何を贈ろうか、と考え込む。

垣根「…そういやお前、誕生日は?」

フィアンマ「誕生日?」

垣根「そ、誕生日。覚えてないってことはねえだろ?」

フィアンマ「>>911」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/01(木) 20:49:31.32 ID:m0+QnTls0<> 12月25日 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 22:55:53.94 ID:aaS/JZpL0<> ↑↑↑上のやつで
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/11/01(木) 23:55:44.38 ID:53J3ha9AO<> 《今日は寝ます。思ったより更新出来なかった…。
お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/01(木) 23:58:59.86 ID:XfrNSBhSO<> 病み上がりやし乙。ぶり返しに気を付けてくれ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/02(金) 17:56:37.20 ID:nFAiJnSN0<>
フィアンマ「12月25日。…とはいえ、クリスマスにかき消されるがね」

垣根「当日なら仕方ねえな。12月25日、な」

ふむ、と頷いて、垣根は考える。
十二月ということは、白いものがいいだろうか。
しかし、フィアンマのイメージからすると赤が適切か。
だが、今の彼女は自分と同じ、それ以上に薄い色合いの金髪であり。
となれば金という色に合うように金そのものの色、はたまたやっぱり白か。

垣根「ペアのもの、ねえ」

フィアンマ「……?」

垣根「ペアルックはダサいから却下として、ペアの何なら欲しい訳?」

カテゴリーだけでも、と問いかけられ、フィアンマは理性的に悩む。

フィアンマ「…>>916」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/11/02(金) 17:58:23.97 ID:lv4a2BAxo<> ファミリーネーム <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/02(金) 17:59:06.69 ID:zWypln1d0<> ゲコ太ストラップ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/02(金) 18:09:28.08 ID:nFAiJnSN0<>
フィアンマ「…ゲコ太ストラップ」

垣根「ストラップ…ゲコ、何だって?」

フィアンマ「ゲコ太、というカエルをモチーフとしたキャラクターだ」

垣根「有名なの? それ」

フィアンマ「学園都市では有名らしいが」

垣根「聞いたことねえな…」

カエルモチーフ、と聞いて気持ちの悪いストラップを想像しながら、垣根はプリベイド携帯を開く。
かちかちと操作して画像検索を行うと、スーツの上部分を着た、ヒゲをはやしているまぁまぁ可愛いカエルのキャラクターがヒットした。
幼稚園辺りで使われてそうだ、というアバウトな感想を抱き、彼女が欲しいと思うのならこれでもいいか、と垣根は思う。
携帯をしまい、彼女の顔を見、重ねて問いかける。

垣根「ストラップって、何処に付けるんだよ。携帯持ってねえだろ?」

フィアンマ「>>919」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/02(金) 18:12:16.52 ID:cJ54qcEi0<> これを機に携帯を買おうかと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/02(金) 18:22:47.99 ID:zWypln1d0<> 御坂ちゃんに近づくために、買うんだ
上条当麻を殺そうとしたのも、御坂ちゃんとくっつくためだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/02(金) 18:24:18.62 ID:Zr+iV4YW0<> フィアンマ女だぞゴルァ
カッキーと付き合ってんだぞゴルァ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/02(金) 18:32:39.00 ID:nFAiJnSN0<>
フィアンマ「…御坂ちゃんに近づくために、買うんだ」

垣根「御坂、っつーとあの第三位か」

フィアンマ「…少女らしいだろう?」

垣根「まあな」

フィアンマ「……」

垣根「…別にお前が雄雄しかろうと何だろうと気にしねえんだけどな」

フィアンマ「…、上条当麻を殺そうとしたのも、」

垣根「あん?」

フィアンマ「御坂ちゃんと"くっつく"ためだ」

垣根「…お前が上条当麻を殺そうとしたのは知ってるが、何で急に第三位の話になりやがったんだ?」

フィアンマ「…うまく説明出来ん。世界を救う最中、彼女の姿を目にしてな。いたく少女らしいと感じた。簡易的な嫉妬だ。上条当麻を殺し、その反応を見て真似ることで女の子らしくなりたいと思ったのを思い出した」

垣根「ああ、ゲコ太で思い出したって話か。急に意味わかんねえ話の切り出し方してんじゃねえよ」

フィアンマ「すまないな」

謝罪して、フィアンマは緩やかに息を吐き出す。
思考と出力が釣り合っていない彼女の様子に、やはり生理痛の影響で疲れているのだろうと判断し、垣根は彼女の背中を摩る。

フィアンマ「……お前は、普通の少女相手の方が良かったんじゃないか?」

垣根「何で」

フィアンマ「…お前の感覚は普通の少年だろう?」

垣根「>>923」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 19:12:17.55 ID:PWuA/wKP0<> なんだ その振りは?(性的な意味で)というやつか?

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/02(金) 19:26:22.31 ID:4qRD7TBb0<> 俺が良いと思ったらそいつが俺の好みだ <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/02(金) 19:37:20.21 ID:nFAiJnSN0<>
垣根「俺が良いと思ったらそいつが俺の好みだ」

フィアンマ「…、」

垣根「大体、俺の感覚とか好みが普通なら何だよ。つまり、お前が普通ってことだろうが」

急に弱気な、自分に自信の無いといった趣旨の発言を始めたフィアンマに対し、垣根はそう話すことで宥める。
今のところ彼女に不足や不満を感じてはいないし、卑屈になられても困惑するだけだ。
ホルモンバランスの関係でイライラするのではなく、不安になるタイプなのだろうか、と思いつつ、垣根はわしゃりとフィアンマの頭を撫でる。
情緒不安定な時は真面目に言葉を返すのが一番であり。

垣根「俺は男は好きじゃねえが、お前が男っぽい分には個性だと思って、好きの一部に入るんだよ」

フィアンマ「……」

垣根「装われても違和感があるだけだ」

むに、とフィアンマのあまり肉の無い頬をつまんで言う垣根に対し、フィアンマは微妙な痛みに眉を寄せる。

垣根「…大体、お前が今以上に男みたいになったとして、俺が好きでなくなると思うのかよ?」

フィアンマ「ん、む…はなひぇ…、…>>926」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/02(金) 20:38:50.48 ID:GJt849Ba0<> 加速 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 20:47:52.23 ID:1bKur/xSO<> ほ前はひょーマルなんひゃろう?ふぉもでひゃいにゃら、ほとこっふぉいのは嫌だろう… <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/02(金) 21:18:10.17 ID:nFAiJnSN0<>
フィアンマ「ん、む…はなひぇ…、…ほ前はひょーマルなんひゃろう? ふぉもでひゃいにゃら、ほとこっふぉいのは嫌だろう…」

垣根「……はぁあ」

ぱ、と手を離してやり、垣根は深い深いため息を漏らす。
海よりも谷よりも深淵よりも深い深い重いため息を。

垣根「…そもそも、俺は最初お前を男だと思ってたんだ」

フィアンマ「…そうだろうとは思うが」

垣根「確かに意識し始めたのはお前の裸見てからだ。ノーマルだからな。けど、惚れた理由は身体じゃねえ。…俺を救うだとか宣ったり、…笑顔だったり。料理が出来るだとか、…妙に弱いところとか。他人じゃ換えは利かねえが、色々な…心理的理由があって、お前を好きになったんだよ。だから、…お前が勝手に女らしくするとか、男らしくなるとか、どっちに転ぼうと気にはしねえ。だけど、求めることは何もねえよ。お前は何しても変わらないし、代わりは居ないしな」

フィアンマ「……、」

垣根「…小っ恥ずかしいこと言わせんじゃねえよ、バーカ」

ぷい、とそっぽを向く垣根を見つめ、フィアンマはくすりと小さく笑う。
毎回言葉を求めて不安がっている訳ではないが、慣れないなりに何度でも安心させるように適切な台詞を返してくれる垣根帝督という男が、愛おしい。

垣根「逆に聞くが、仮に俺が…あれだ、カマっぽかったとして、お前は嫌いになるのかよ」

フィアンマ「>>929」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 21:24:48.60 ID:1bKur/xSO<> ふむ、嫌いにはならないが見たくはないな?ニヤ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 22:50:48.90 ID:aBIWggpSO<> ああ。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/02(金) 23:25:58.24 ID:nFAiJnSN0<>
フィアンマ「ああ」

垣根「…だからか」

人間とは自分の価値観で物事を測る。
フィアンマがそう思っていたからこそ、自分が性別にそぐわない性格であることを理由に不安がったのだろう。
女装趣味などを持ち合わせない垣根は彼女の返答に傷つくでもなく、まあいいかと肩をすくめた。

垣根「お前はそうだとしても、俺はならねえよ。わかったか?」

フィアンマ「…ん」

垣根「……」

よしよし、と宥めるように彼女の腰を撫で。
その後は何もなく、一日が過ぎて行くのだった。




翌日。
生理の終わったフィアンマは昨日と打って変わって非常に元気だった。
横たわっている垣根に乗っかったまま降りないのである。
別に体重は重くないので辛いだとか息苦しいだとかは無いのだが、垣根はうまく身動き出来ずぐだぐだとしていた。

垣根「何してんのお前…」

フィアンマ「>>932」






《今日は寝ます。
やっぱり2スレ目はやらない気がします…
お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 23:29:26.81 ID:1bKur/xSO<> なん……だと……乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/03(土) 00:28:13.03 ID:GtZD76VSO<> ……………苦しい。てい、とく…

オティヌスが、何か細工したらし…グブッ←吐血 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/03(土) 22:59:22.08 ID:x96jY6tX0<>
フィアンマ「………」

彼女はいつもの調子で何かを答えようとして。
口を開いた瞬間、唐突に身体の内側からせりあがる悪寒と吐き気に、垣根から離れた。
唐突な行動にきょとんとしながら、垣根は再度声をかける。

垣根「…おい、」

フィアンマ「……苦しい。てい、とく…」

けほけほと咳き込み、フィアンマは床に座り込む。
尋常ではない様子を感じ取り、垣根はベッドから飛び降りて彼女の背中を摩った。
胃腸の調子が悪い場合、逆流性食道炎なので唐突な吐き気を催すこともある。
科学的にそう予想した垣根だが、彼女はげほげほと噎せ、眉を寄せて言う。

フィアンマ「オティヌスが、何か細工したらし…ぐ、ぶっ…」

げぼ、と血液を吐きだし、フィアンマは全て吐いてしまおうと何度も噎せる。
オティヌス、という名に苦い思いを浮かばせながら、垣根は彼女の背中を摩ったまま、自らも吐血しつつオッレルスに連絡を取った。

オッレルス『何の用かな』

垣根「フィアンマが吐血した。曰く、オティヌスの野郎の仕業らしい…どうすればいい」

オッレルス『…>>935』
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/03(土) 23:08:46.87 ID:SuSY2DRe0<> 上条当麻を呼べ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/03(土) 23:09:51.27 ID:GtZD76VSO<> え…………い、医者あああああ!!!!!医者は呼んだのか?! <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/03(土) 23:22:20.43 ID:x96jY6tX0<>
オッレルス『…え…………い、医者あああああ!!!!! 医者は呼んだのか?!』

垣根「いや、まだ呼んでねえ。科学じゃ片付かねえ問題なら医者を呼んだところで、」

オッレルス『多少は有効かもしれないだろう!!』

垣根「…わかった」

オッレルスの声にそう返事すると、垣根は連絡を断ち、続けて電話をする。
医者を呼ぶのはかかりつけでない限り難しい。
なので、近くで、且つかかりつけでなくとも診てくれるという総合病院に電話することにした。
本音を言えば学園都市の冥土帰しでも呼べれば最高だったのだが、イタリアでは厳しい。
悪寒と吐き気、吐血に苦しみながらも、フィアンマはどうにか堪えて待つ。
やってきた救急車にて聞かれた個人情報については旅行者だからと適度に誤魔化し、ひとまず総合病院の救急外来に担ぎ込まれた。
『神の右席』として天使に近いとはいえバイタルは人間のそれを指し示す彼女の身体を急いで診察し。
付添人且つ家族の次に事実を知るべき優先順位の高い恋人である垣根は、医者の話を聞いた。
現在、彼女は吐き気止めの混ざった点滴をされ、一時的に眠っている。

垣根「…、原因は。…どうすれば良くなる」

医者「……>>938」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/03(土) 23:27:58.21 ID:GtZD76VSO<> …申し訳ないが、全くわからん。体は正常で、どこもおかしなところはないのに、次々体のどこかが『何か得体の知れぬ物』に変化していってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/03(土) 23:29:56.37 ID:GtZD76VSO<> ↑
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/03(土) 23:39:06.38 ID:x96jY6tX0<>
医者「………申し訳ないが、全くわからん。体は正常で、どこもおかしなところはないのに、次々体のどこかが『何か得体の知れぬ物』に変化していっている」

垣根「…『得体の知れない物』?」

医者「勿論、突然の救急外来とはいえ、私の患者を研究所かどこかへ売るつもりは微塵も無い。だが、ありとあらゆる医療的検査を行っても、恐らく彼女の状態を正確に調べることは…今は身体的なバイタルのみを見て、吐き気止めと低血糖防止を食い止めるべく点滴をしているが…」

垣根「……、…わかった。それだけ聞けば充分だ。患者を売らない、ね。あんた、将来出世しないぜ」

言って、垣根は立ち上がる。
科学的に解析出来ないのであれば、やはり、予測した通り彼女は魔術的に何かの障害を有している。
立ち上がった垣根は医者から離れ、眠る彼女へと近寄る。
確かに、顔色はそんなに悪く無い。ただし、手を触ると異常に冷たい。まるで死体のようだ。
だけれど、彼女の体は震えてはいない。風邪であればバイタルにそう出るし、身体が小刻みに震える筈であるというのに。

垣根「…」

垣根はひとまず、トイレへ行くことにした。
魔術を使えば吐血することがわかっているので、騒ぎにしないためだ。

垣根「…フィアンマは、無事なことは無事だ。…だが、医者が言うには、異常が無いにも関わらず、フィアンマの身体が『何か得体の知れぬ物』に変化していってるそうだ」

オッレルス『…今は病院に居るのか』

垣根「あぁ。…アイツは点滴打たれて寝てる。…何か思い当たる節ねえのかよ。オティヌスが仕掛けそうな細工で、遅効性のヤツ。このままだと、どうなる。また『神の如き者』になんのか?」

数時間の間に落ち着いたらしいオッレルスは、真剣に考える。
魔神に限りなく近い彼にしか、魔神の考えは予測出来ない。

オッレルス『…>>941』

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 00:42:44.38 ID:Pgh1vjzSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 00:44:00.73 ID:Pgh1vjzSO<> 正直、まだその方が良かったかも知れない。
…もし、俺が、奴なら。…奴の思考回路で、最大限の悪意を持って、細工をするなら……

恐らく、彼女に施された、ミカエルに変貌する術式……それが壊れた時から、発動する術式だ。
…ミカエルという名前を直訳すれば「神に似たるものは誰か」という意味になるが、『タルムード』では「誰が神のようになれようか」という反語と解される。それを利用した、反転術式…
いや、…わかりやすく言おうか。もし、俺の予測通りなら、このまま放置すれば、文字通り世界中の大陸の大半が、『ひっくり返る』。
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/11/04(日) 00:50:21.55 ID:6qwuHLEAO<>
《お、恐ろしい魔術だ…解釈が多々出来そうで難しいですが…
今日は寝ます。
明日(今日)は昼頃から来ます。
お疲れ様でした》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 01:26:29.72 ID:Pgh1vjzSO<> 乙レルス <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/11/04(日) 12:37:39.34 ID:N2jyUumv0<>
オッレルス『…正直、まだその方が良かったかも知れない。…もし、俺が、奴なら。…奴の思考回路で、最大限の悪意を持って、細工をするなら……』

垣根「…なら…?」

今まで何度も死線をくぐり抜けてきたからこそ、話の後が何となしにわかる。
不穏な予感。嫌な予感。
第六感が鍛えられた垣根は、生唾を呑んで促す。

オッレルス『恐らく、彼女に施された、ミカエルに変貌する術式……それが壊れた時から、発動する術式だ』

出来ることなら何も、誰も傷つけないで生きていたいと願う彼女の意思への冒涜。
右の苦手、左の毒手。
垣根は彼女を救うべく、右の苦手を選んだ。
それにしても、残酷な現実を、予想という形でオッレルスは告げる。
悪意をもって最悪の仕掛けを施した、未だ何処かで生きている魔神の、代わりに。

オッレルス『…ミカエルという名前を直訳すれば「神に似たるものは誰か」という意味になるが、『タルムード』では「誰が神のようになれようか」という反語と解される。それを利用した、反転術式…』

垣根「……」

沈黙したままに話を聞く垣根。
オッレルスは乾いた唇を一度舐め、冷静に言い換えた。

オッレルス『いや、…わかりやすく言おうか。もし、俺の予測通りなら、このまま放置すれば、文字通り世界中の大陸の大半が、……『ひっくり返る』』

垣根「…ひっくり、…」

オッレルス『…イメージし辛いだろうから、具体的な天災を上げるとすると…津波。高さも量も尋常ではない大津波。呑まれれば都市は壊滅し、街は海に沈む。超広範囲でそれが起これば、その場所に住む人間は助からない』

垣根「……それを、津波無しで。津波対策をしようと何だろうと、無条件で沈められるって訳か」

オッレルス『…そういうことになる。急激な床下浸水に飲み込まれるようなものか』

垣根「どうにか出来ねえのかよ。…例えば、他の魔術を行使して阻害する、反転の反転を行って正常にする…策はまったくないのか」

オッレルス『…大魔術―――『異界反転(ファントムハウンド)』 を行うか、』

垣根「…、」

オッレルス『…魔術とは思考が出来なければ発動しない。気絶した魔術師は故に無力だ。だから、具体的な解決法が浮かぶまで彼女を寝かせておく』

垣根「昏睡させる術式は知ってるが、……」

大魔術『異界反転』を行った場合、世界がどうなるかわからない。
大陸が『反転』するよりも更に最悪の結果をもたらす恐れもある。
故に、そう易易とは行えない。
オッレルスが提案した内容、後者は垣根の不幸を意味する。
前と同じく七ヶ月…戻すのも含めて一年と少しであれば、きっと垣根は嘆くことなく待てるだろう。
だが、その『具体的な解決法』が浮かぶまで、何年かかるかわからないのだ。
垣根は世界の大陸の大半がひっくり返り、誰が死のうと関係無いとは思うが。
きっと、フィアンマはそうではない。
自らの意思と関わらず、自らの脳を使って術式を執行され、世界が破壊されていくことを、嘆き苦しむだろう。
そうなれば、彼女の精神状態が限界を振り切って自[ピーーー]る恐れも高い。
垣根としては、そちらの方が恐ろしかった。
垣根帝督は、研究所で電流を流され、演算"させられて"いた記憶がうっすらとある。
ひたすらに不愉快だった。少し、怖くもあった。そんな思いを彼女にさせたいとは思わない。

垣根「…少し、考えさせてくれ」

オッレルス『…彼女ともよく話してくれ。彼女の身体―――思考回路が術式の執行に使われるようになるには、まだ日数にゆとりがある』

言って、オッレルスは通信を切った。
垣根は深呼吸し、フィアンマの居る個室へ向かう。
点滴をしている時間が長いので、一時入院という扱いになったのだと看護師に聞いたからだ。


垣根「……」

フィアンマ「…帝督、」

目を覚ましたらしいフィアンマは、やや焦点の定まらない瞳で垣根を見上げる。
垣根は彼女に近寄り、見舞い客用の椅子へと腰掛けて、死線を合わせた。

フィアンマ「……俺様は今どうなっているんだ」

垣根「…、…>>946」
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>age<>2012/11/04(日) 12:38:47.26 ID:6qwuHLEAO<> 《上げ忘れました。安価下です》 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/11/04(日) 14:13:26.16 ID:6qwuHLEAO<> >>944
ちょっと誤字が酷いので訂正


×床下浸水
○床上浸水

×自[ピーーー]る
○自殺する

×死線
○視線



安価下でお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 14:46:17.92 ID:Pgh1vjzSO<> ちょっとミカエルになってた時の後遺症みてーなもんが出ただけだってよ…寝てりゃ治るって、オッレルスも言ってた。…だから、安心して、寝てろよ…
俺が、ずっと、お前の側に…いるしっ…
→昏睡魔術使用 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/04(日) 20:24:59.39 ID:Bdi8HTyh0<>

垣根「…、…ちょっと『神の如き者』になってた時の後遺症みてーなもんが出ただけだってよ…寝てりゃ治るって、オッレルスも言ってた」

フィアンマ「…、」

垣根「…だから、安心して、寝てろよ…。…俺が、ずっと、お前の側に…いるしっ…」

知らず知らず、泣きそうな顔をしている垣根の様子に、彼が話したことと現実とは違うのだろうと思いながら。
フィアンマはそれでも垣根に何事か追及せず、焦点の未だ合わない瞳で薄く笑う。
何という顔をしているのか、と思いながら、彼女は彼の頬に手を伸ばした。
ぺたりと触れる。彼の頬が酷く熱いものに感じられたのは、垣根が風邪を引いているなどという訳ではなく、フィアンマの手が冷たいから。

垣根「…昨日今日と連続して体調不良だしな。疲れてるだろ」

フィアンマ「…そうだな」

お前が言うのなら、きっとそうなんだろう。
声に出さずに呟いて、彼女は目を閉じる。
魔術師として、うっすらながら、自分がどのような状態かはわかる。
垣根が言うように、眠れば勝手に治るようなものでもなければ、後遺症でもないであろうこと位。
それでも、彼が自分の為に嘘をついたのだと思えば、抵抗する気にはなれなかった。

目を瞑り、静かに穏やかな呼吸をし始めるフィアンマの様子を眺め、垣根は準備を始める。
解除法をよくよく思い出しながら、魔術記号を部屋や自分に施し、身体の内側を灼く痛みに耐えながら、術式を行使した。
思考も何も存在させられず、夢すら見ないよう強制的に眠らされた彼女の寝顔を眺め、垣根は唇を噛む。
憎しみや怒りといった乱暴な感情を浮かべていなければ、泣いてしまいそうだったから。

垣根「…何で、お前なんだろうな」

過去と同じことを呟く。
世界には悪いことをした人間が沢山居るのに、犯罪者同士で恋人となった人間だって沢山居るだろうに、どうして自分たちばかりがこんな風に不幸になるんだろう。

垣根「…何で、お前なんだろう」

未だやや暗部から抜け出せていない自分はともかく。
無関係な自分の為に、身を粉に出来る人間が傷つけられるのは、どうしてなのか。
これが信徒に課せられる試練だとでもいうのなら、神様は余程意地の悪い性格をしている。

そう思える時点で垣根帝督自身も暗部から抜け出せていることに、彼は気付かない。

垣根「……」

垣根が無言で居ると、病室のドアがノックされた。
適当な返事をすると、誰かが入ってくる。





入ってきた人物(1人。禁書キャラ名)>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/04(日) 20:36:31.93 ID:NqofkTJH0<> 上条当麻 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/11/04(日) 20:37:07.23 ID:gQkpc/Kz0<> ヨハネのペン起動中のインデックス <> 名無しNIPPER<>sage<>2012/11/04(日) 20:37:19.24 ID:VG7JDC7r0<> >>949

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/04(日) 20:47:46.03 ID:Bdi8HTyh0<>
垣根が振り返った先に居たのは、一人の白い修道女。
ついこの前料理番組に映っていたのを見たばかりだ。
しかし、どうも様子がおかしい。
あの無邪気さは見当たらず、どこか冷淡な様子を呈している。
もしかするとあれはテレビ用の顔があの可愛らしさだったのかもしれないが、何となしに違う気がする。
フィアンマは、彼女に本を借りたことがある仲だ、と言っていた。
額面通りその発言を信じるとしたのなら、彼女とフィアンマは顔見知り、はたまた友人である筈だ。
少なくとも顔見知りでなければ、この病室へはやって来ないだろう。
警戒心を持ちながら、垣根はインデックスを見つめる。
自動書記を発動している彼女は冷淡且つ冷静な様子で、垣根を見つめ返した。
殺意も敵意も無いのに、指一本動かせば殺されそうな、そんな緊張感が部屋に漂っている。

垣根「…お前は誰だ」

ペンデックス「第三章第九節。私は『必要悪の教会』所属、『Index-Librorum-Prohibitorum』です」

垣根「…何の用だ」

ペンデックス「>>954」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/04(日) 21:02:35.61 ID:VR4pYf/F0<> フェリーチ=カンパーナ 別名右方のフィアンマの治療 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 21:04:00.51 ID:Pgh1vjzSO<> 右方のフィアンマの捕縛です <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/04(日) 21:13:14.89 ID:Bdi8HTyh0<>
ペンデックス「第五章第八節。右方のフィアンマの捕縛です」

垣根「……、…渡すかよ」

相手が少女であるからといって、垣根は容赦しない。
だが、昔のようにすぐ実力行使へ走ることは少なくなった。
フィアンマ、オッレルス、オティヌス…と、見目に似合わぬ力を平然と持ち合わせる人間が、魔術サイドにはわんさかいるとわかったから。
先程の自己紹介の通りであれば、インデックスは魔術師である。
また、フィアンマに本を貸したともあれば、それなりの強さは持っているだろうと垣根は予測する。
本、といっても、自分が今まで一方的に思っていた一般的なそれではなく、恐らく魔道書の類だろう。

垣根「……何で捕縛する必要がある。誰に言われた。コイツは安全だ。寝てれば何もしねえよ。術式もかけてある、目を覚ます事はねえ」

悲しいながらも、垣根は術式の執行とその効果に自信があった。
彼独自のアレンジを加えた術式の為、彼にしかフィアンマを目覚めさせることは出来ない。

垣根「……」

ペンデックス「>>957」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 21:39:10.48 ID:Nef00P3i0<> 世界の『反転』を阻止するには、原因である右方のフィアンマの消去が最も確実であると
『必要悪の教会』は判断しました
よって、速やかに右方のフィアンマを『必要悪の教会』に引き渡して下さい
応じない場合、まずは貴方から排除します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 21:41:56.42 ID:Pgh1vjzSO<> ↑ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/04(日) 21:56:08.58 ID:Bdi8HTyh0<>
ペンデックス「第一六章第三節。世界の『反転』を阻止するには、原因である右方のフィアンマの消去が最も確実であると『必要悪の教会』は判断しました。よって、速やかに右方のフィアンマを『必要悪の教会』に引き渡して下さい。応じない場合、まずは貴方から排除します」

垣根「…元の原因はあの魔神だろうが。あっちを殺らないでこっち、ね。なるほど、組織ってのは科学魔術問わず弱いモンから殺して解決する訳だ。何処も変わんねえな」

呟いて、垣根は立ち上がる。
冷静な視線がこちらへ注がれているのを感じながら、垣根はフィアンマの腕から針を抜く。
点滴は既に終わっていたので、何ら問題は無かった。
出血のことを考えて彼女の腕の針痕を未元物質による皮膚で修復し、垣根は彼女の身体を抱えた。
何処に逃げようかと考える。恐らく、少女は自分を追ってくる。
狙いが右方のフィアンマただ一人と明確である以上、誰かを囮にすることは難しいだろう。

垣根「…眠り姫抱えて逃走、か。まるで王子様だな」

静かに眠る彼女をしっかりと抱きかかえ、垣根は後ろに跳んだ。
窓を突き破り、落下する直前で翼を広げて飛ぶ。
一瞬だけ呆然とする少女に視線を向けるでもなく飛び立つと、フィアンマの髪の先にほんの少しだけ付着したガラス片を手で除ける。

垣根「元々世界を敵に回してたんだ。それが元に戻っただけだし、問題ねえな」

言いつつ、地上に降り立つ。
あまり長く飛行していると、撃墜術式を応用される可能性があるからだ。
体力に自信があるかないかといえば多くは無いものの、走る。
ひとまず目指すのは、彼女の為に命を張ってくれそうな―――彼女に好意を持った人間。


どうにかオッレルスの居るアパートメントまで逃げ延びた垣根は、事情を説明する。
オッレルスはしばらく悩んだ後、垣根の腕の中で一切目を覚まさずに眠る彼女の様子を眺めた。

垣根「…『必要悪の教会』の禁書目録ってのはどれ程強いんだ。勝てるのか?」

何処に逃げるべきだろうか、と考えながら、垣根は問いかける。

オッレルス「…>>960」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 21:57:43.34 ID:Pgh1vjzSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:09:36.59 ID:Nef00P3i0<> 正確には『禁書目録』としてではなく、魔神『Index-Librorum-Prohibitorum』。
彼女の脳内には十万三千冊の魔道書……その原典の内容が、一語一句違わずそのまま保管されているんだ。
当然、君の今使える魔術も全て使える上に、それらへの対応策も完璧だろうな

……しかし、まさか彼女に再び“首輪”をつけてまで送り込んでくるとは……ッ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/04(日) 22:23:29.55 ID:Bdi8HTyh0<>
オッレルス「…正確には『禁書目録』としてではなく、魔神『Index-Librorum-Prohibitorum』。彼女の脳内には十万三千冊の魔道書……その原典の内容が、一語一句違わずそのまま保管されているんだ。当然、君の今使える魔術も全て使える上に、それらへの対応策も完璧だろうな」

垣根「…、」

絶望的な状況だった。
純粋な魔神であるオティヌスであっても、『Index-Librorum-Prohibitorum』―――『自動書記』相手では魔術を解析されて勝てない。
オッレルスは独自で複雑怪奇な術式『北欧玉座』を用いている為、解析まで時間がかかるだろうが、それですらも戦いが長時間に長引けば倒されることを意味している。

オッレルス「……しかし、まさか彼女に再び“首輪”をつけてまで送り込んでくるとは……ッ」

垣根「……」

垣根は無言で、フィアンマを見る。
術式によって昏倒させられている彼女は、思考凍結状態の為、魔術を使えない。
そもそも、『聖なる右』を解析されてしまえば負けるだろう。
イギリス清教が『自動書記』を使うことを決めた時点で、負けは避けられないのだ。
魔術的な仕掛けは当然のように突破される。科学的な仕掛けは、応用で突破される。

絶体絶命。

その言葉が、垣根の頭にくっきりと浮かぶ。

オッレルス「…仕方が無い。俺がしばらく彼女の相手をする。その間に何処かへ逃げれば、多少は生き延びられる…」

垣根「…それでいいのかよ」

オッレルス「殺されてしまうのであれば、それもまた運命といったところか」

垣根「……」

フィアンマの為に命を賭けると宣言し、オッレルスは彼女の髪をそっと撫でる。
彼女は無抵抗無反応のまま、穏やかな呼吸を繰り返した。

垣根「……いや、俺が戦う。あんたはむしろ、フィアンマを守っててくれ」

オッレルス「…、君を死なせる訳には」

垣根「どのみち、どこまで逃げても殺されるなら変わらねえ。預けるなら、コイツの為に死んでも仕方無いと言ってくれたあんたに任せる」

言って、彼女の身体を明け渡し。
止めようとするオッレルスの言葉を聞かず、垣根は外へ出た。
既に彼女は外に居て、人払いが行われたらしく、戦場としては完璧に整えられていた。

ペンデックス「第一六章第一七節。右方のフィアンマの身柄譲渡を要求します。拒否の場合、殲滅対象に加えられることとなります」

垣根「好きにしやがれ。…俺は、誰にもアイツを渡すつもりはねえ。フィアンマは俺のモンだ」

12枚の翼を広げ、垣根は自動書記を起動したインデックスを睨む。
左手に銀の剣を現出させる。すぐ解析させるにしても、一打撃位は与えたい。





ペンデックスはどうする?>>+2

垣根はどうする?>>+4




《今日は寝ます。
お疲れ様でした》

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:26:17.59 ID:3Y2qJmhSO<> 竜王の吐息 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:28:47.63 ID:Pgh1vjzSO<> ドラゴンブレス+神よ、何故私を見捨てたのですか+聖なる右 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:29:18.97 ID:Pgh1vjzSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:30:44.32 ID:3Y2qJmhSO<> 魔術要素込みの殺人光線(一方戦で使ったやつ) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:34:14.21 ID:Nef00P3i0<> >>963
うわぁ、鬼畜コンボwwww

乙ですー! <> 名無しNIPPER<>sage<>2012/11/04(日) 22:40:05.43 ID:geIyYIgc0<> SOが相変わらず鬼畜すぎる <> 小ネタ:空白
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2012/11/05(月) 09:36:26.92 ID:+ODCBPLAO<>

「なぁ、」

手を伸ばし、垣根は問いかける。
何だ、と返事をする彼女の髪を撫で、手繰り寄せながら、垣根は言葉を続けた。

「俺が記憶喪失になったら、どうする?」
「…それは、『意味記憶』『エピソード記憶』『技能記憶』…どれの事を言っているんだ?」

上条当麻について思い浮かべながら、フィアンマは細かく追及して聞き返す。
垣根は少し考えこむ素振りを見せてから、彼女の身体を抱きしめて答えた。

「そうだな―――エピソード記憶。演算も出来るし、物の意味もわかるが、お前の事、自分の事すらわからない」
「…何も変わらんよ。また、やり直すだけだ」


抱きしめられながら、フィアンマは戸惑うでもなくそう返した。

やり直すだけ。

素っ気ない言い方だからこそ、そこには沢山の感情が詰まっている。

「……その時は、もう少し自分を良く見せる」
「アプローチで?」
「そうだよ。…たとえ帝督が俺様を忘れても、…俺様は何も忘れない」


記憶が無くなっても、自分を愛していなくとも。フィアンマにとって、垣根帝督は愛するべき人間である事に変わりはない。
忘れられたのなら、もう一度愛してもらえばいい。
その為に、何度だって努力したら良い。
かつて世界を救う為にどこまでも犠牲に出来た自分が、人に愛される為に努力出来ない筈が無い。
右方のフィアンマは。

カンパーナという一人の少女は、少なくともそう、自分を信じている。

「…ま、そうそう記憶喪失になんざならねえだろうけどな」
「脳を酷使している帝督の場合、ボケるのは早いかもしれんがね」
「んな訳ねえだろ、ぞっとする事言うんじゃねえよ」







―――眠り姫は、夢を視ない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 15:04:46.32 ID:OM7LL/XSO<> 乙。あー…そうか、あの展開もあるわけかー…それはそれで美味しい展開ッbグッ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/05(月) 21:20:20.29 ID:3KjaAU7+0<>
自動書記は無表情で、何事かを呟く。
展開されるは、『聖ジョージの聖域』。

ペンデックス「第一三章、第六節。『竜王の殺息』、完全発動まで約二秒」

垣根の敵意に呼応するように、自動書記は術式を展開する。
直径数mもの光の柱。垣根は、その光を翼で防ぐ。
彼の背には、彼女と、彼女を守ってくれている魔術師の命がかかっている。
垣根はというと、彼女の攻撃に対して翼を大きく広げ、太陽光を殺人光線へと変貌させる。
自らの『光を掲げる者』―――『明けの明星』に際して、星の光までも活用しながら。
自動書記は焦る様子もなく、術式を切り替える。

ペンデックス「第二〇章九節。曲解した十字教のモチーフを確認。上記の術式に対し最も有効な術式の構築を開始します。命名、『神よ、何故私を見捨てたのですか』発動準備完了。即時実行します」

純白の光が、鮮血のような真紅へと変貌する。
垣根は咄嗟に12枚の翼で自らを包み、ガードする。
学園都市製の能力による副産物に、少女はほんの少しだけ首を傾げる動作を見せた。
無機質に、無感動に、彼女はやるべき任務をこなすべく、思考"させられる"。

垣根「…ッ、ぶ、ねえっ」

ペンデックス「第二一章第四節。『光を掲げる者』の象徴を確認。最も効果的な術式を検索しています。一、二…検索に成功しました。術式の構築を開始します。命名、『聖なる右』。完全発動まで約一秒」

言うなり、フィアンマのものよりは遥かに劣化した(インデックスは『神の右席』でもなければ神の如き者と相性が良い訳ではないので、当たり前のことだが)『聖なる右』が、垣根を襲う。
近くの建物の壁に背中を叩きつけられ、目測ではとても追えない速度の攻撃に、垣根は眉を寄せる。

全てを掌握しろ。
思い出せ。
世界の全てに勝てると思えた程の、あの感覚を。

ペンデックス「『聖なる右』の術式執行に遅延が発生します。約120分間の遅延の為、別の術式を検索しています」

垣根「わざわざご説明ありがとよ…ッ」





垣根はどうする?>>+2

それによってどうなる?(アバウト可)>>+4

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 22:43:15.67 ID:OM7LL/XSO<> 自分の持てる知識、演算、能力、物質、魔術、発想を用いて、ルシフェルを『再現』した体に変貌する。
また、対魔術特化効果発揮に理想的な性質、構造をした物質を未元物質で創作、加工。あらゆる魔術防壁を貫く即席「ロンギヌスの槍」を携える <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 23:10:41.40 ID:OM7LL/XSO<> 上。

これやるのあんま好きじゃないんだけどなー… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 23:21:15.83 ID:OM7LL/XSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 23:36:38.91 ID:d1IZ5C7T0<> もうXSO自分で書けよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 23:52:58.43 ID:OM7LL/XSO<> いや一人でとりまくりは嫌なんだけど安価誰もとらないし…早く>>1の文が読みたいだけなんだけども自重はするが安価↓ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/11/05(月) 23:54:40.12 ID:uhnL54zS0<>
《今日は寝ます。
明日も夜に来ます。今日よりは多少早く来れる予定です。
お疲れ様でした。


安価下でお願いいたします》 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 00:15:04.19 ID:VQ6icRHSO<> 乙。安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 19:23:47.07 ID:khOfuSWC0<> >>971の二行目部分のみで
結果:“首輪”の破壊に成功するも限界来てぶっ倒れる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/11/06(火) 19:42:40.71 ID:uI4Pim9K0<> 安価スレのなんていうかバランスって難しいよな <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/06(火) 21:36:48.52 ID:BDIGyMug0<>
ぞわぞわ、と身体の奥が蠢く。
まるで別の何かを飼っているかのような。
吐き気にも似た悦楽に目を細め、垣根は銀の剣をインデックスへ投げる。
自動書記は『光を掲げる者』の象徴の一部である剣に反応するも、何かの術式で消し去った。
その間に、垣根帝督の変貌は終わりを告げる。
『神の如き者』によく似た、金色の髪と、赤色の瞳。
金に黒が混じった色合いの髪は、『光を掲げる者』だけでなく、『闇へ堕ちた者(ルシファー)』の象徴も混ざっている。
能力をも混ざったそれは、自動書記といえどそうそう推し量れるレベルのものではない。

「………」

少年は。
創られたばかりの科学と魔術の間の子―――『天使』は、薄く笑う。
右手の中に現出させたのは、かつて神の子へ死を与えた、十字教救世主の受難の象徴。
『所有するものに世界を制する力を与える』特性すら持ち合わせる、聖槍。
世界を全て掌握した垣根帝督にとって、それはもはや象徴だけではない。

「…第二三章第四節。『ロンギヌスの槍』を確認。材質を検索しています…検索不能、検索に失敗しました」
「……fxwjgzkqhis」

ありとあらゆる魔術防壁を貫く、必殺の槍。
具現化するにあたって未元物質が使われたそれへ、自動書記ですら対応出来ない。
神の子を一度殺した聖槍に、どうしてたかが魔術の毒を詰め込んだだけの図書館が太刀打ち出来ようか。

神へ逆らった大天使の手に握られた、神の子を殺した聖槍。

万物に対する反逆の存在。
神など認めない。神の子など認めない。
この手で確実に殺す。
神様とて構わずに殺すと言った彼の精神性が、よく現れている。

「…ihbf殺wq…」

呟いて、天使は槍を手に自動書記へ向かう。
自動書記の名の元になった福音書ごと、引き裂くように。


―――突き立てられた、聖槍。


「自動…書…記、の…破壊…ガ、…再…起…動、…できま…」

少女の喉を突き破った槍の細い切っ先は、彼女の『首輪』を破壊した。
槍を通じ、彼女の身体すら掌握している垣根は、唇を噛み締めて、傷口を塞ぐ為の演算を行い―――限界を迎え、その場に倒れた。
インデックスを見捨てて殺してしまう事は易かったが、垣根にとっての敵は『首輪』だった。
だから、『首輪』を殺した以上、少女を殺害する理由はなかったのだ。


(甘く、なっちまったもんだな)

ぼんやりと、思う。
かつて第一位と自分の前に立ち塞がった女のことを思い出した。
まったくもって理解出来なかったあの行動。今なら、わかる気がした。

(―――だけど、…俺は多分、こういった死に方がしたかったんだろう)

ぐらぐらと揺れる視界に目を閉じる。
そんな彼の体に。
まるで雪のように、残酷な―――かつて『上条当麻』を殺した羽が、降り注ぐ。
ひらひらと舞い、羽は美しく、垣根帝督を殺そうとしていた。
しかし、もう、彼は指の先のほんの少しだって、動かせはしなかった。
彼は気を失う直前、彼女のことを想った。



(…守り、きってやったぞ、…クソボケ、)







>>+2のコンマ一桁(23:54:40.12←この場合は『2』)で判定


0.7 奇跡的に羽が垣根の身体を避けて地面に落ちる


それ以外(1.2.3.4.5.6.8.9) 垣根帝督が記憶喪失となる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 21:38:57.80 ID:VQ6icRHSO<> 魔法数字だったっけ、7って <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 21:39:37.20 ID:5wk1rNSu0<> 厳しい!が <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 21:40:13.29 ID:5wk1rNSu0<> よっしゃあ!でいいのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 21:41:36.67 ID:VQ6icRHSO<> 展開と話の流れ的には失敗だろうな <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/06(火) 21:53:58.34 ID:BDIGyMug0<> 《判定>>982(21:39:37.20=『0』)よって、結果:『奇跡的に羽が垣根の身体を避けて地面に落ちる 』。
>>981様 十字教で特に重要な数字なので候補に入れました。また、ゼロはルーレットでまず出ない出目と言われていますので、奇跡にふさわしい数字かと思いまして》


ひらひらと舞い散る羽は、誰を殺してしまうこともなく。
垣根の身体を避け、地面に溶け消える。
少年は静かに呼吸をしながら、深い眠りに浸った。
演算も魔術も何もかも全てを扱い、疲れきったのだ。
『自動書記』に勝利するという奇跡的所業と、それでいて疲れただけとは、彼もまた運が良い。
或いは、思考出来ないながらも『彼女』が願ったのか、神様が偶々微笑んだのか、それは誰にもわからない。



フィアンマを一時的に(彼女が眠っている間。つまり、垣根が彼女を起こすまで)仮死状態にする代わり、『垣根帝督という男性』が『口づけ』るまで何者からも守られるよう『眠り姫』の術式を施したオッレルスは、加勢すべく外へ出たものの。
既に戦闘は終了しており、彼は続いて垣根とインデックスの手当にあたった。
インデックスは『首輪』が破壊されたショックで気絶しているだけであり。
垣根帝督は前述の通り、疲れきって眠っているだけだった。
とはいっても些細な怪我はしていた為に手当を終え、オッレルスは二人を静かに看護する。

オッレルス「……」

誰も死ぬことなくこの問題が片付いたことは奇跡だ、とオッレルスは思う。
ましてや、垣根帝督が『自動書記』に勝利するとは。
絶対的な才覚。魔術にしても、科学にしても、絶対的な。
才能がものを言うとは魔術というものまた皮肉なものだ、と思いながら、彼はしばらく看護を続けた。




数日後、垣根は目を覚ました。
それよりも早く目を覚ましたインデックスはというと、オッレルスの計らいにより、現在近くの、イギリス清教とは関係の無い教会に居る。
一人の部屋―――正しくは、隣に『眠り姫』の居る部屋で、垣根はぼんやりとした。
まだ、疲れが残っている。かといって、また眠れるとは思えない。

垣根「……」

垣根は『光を掲げる者』に変貌する前の容姿に戻っている。
まるで何もかもが夢だったかのようだが、痛む身体がそうではないと明確に教えてくれる。

垣根「………」

フィアンマ「……」







垣根はどうする?>>+2

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 21:55:39.93 ID:VQ6icRHSO<> Ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 21:56:21.82 ID:5wk1rNSu0<> インデックスが起きる
またはオッレさんに上条さん達呼んで貰う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 21:57:57.35 ID:5wk1rNSu0<> 起きたら だな
すまん <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/06(火) 22:02:22.96 ID:BDIGyMug0<>
垣根「……」

のろのろと起き上がる。
身体の至るところが悲鳴をあげたが、垣根はそれを丸っと無視した。
息を吸ったり、吐いたりする度に肺辺りがズキズキと痛む。
それぞれ未元物質で修復しながら、ため息を漏らした。
あれだけの目に遭って死なないとは、つくづく自分はゾンビのようだ。
別に死にたかった訳ではないものの、ほとんど怪我の無い自分に気味の悪さを覚えながら、垣根はオッレルスを呼んだ。

垣根「狙われてることには変わりねえからな。…上条当麻に連絡つくか?」

オッレルス「少し、やってはみるよ」

連絡をした結果、佐天涙子は来られなかったものの、上条当麻はやってくる事が出来た。
この期間で何事か良い事でもあったのか、瞳は以前にも等しい光を宿している。

上条「…寝てるのか」

オッレルス「寝かせていないと、世界の存亡に関わるからな」

上条「……」

静かに眠る、自分の知らないフィアンマの姿に、上条は数度目を瞬いた。
そして、唇を噛み締める。

上条「…俺は、何をすればいい?」

垣根「>>992」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/11/06(火) 22:03:57.46 ID:k7Vz6VdAO<> 間違えました

kskst <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 22:05:51.49 ID:5wk1rNSu0<> いいだろう
加速しようじゃないか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 22:32:24.56 ID:7rKuLD0n0<> フィアンマを蝕んでいる術式を破壊して欲しい
<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/06(火) 22:50:00.49 ID:BDIGyMug0<>
垣根「フィアンマを蝕んでいる術式を破壊して欲しい」

上条「破壊…」

上条は、自分の右手を見る。
ありとあらゆる異能を打ち消せるこの右手。
かつて右方のフィアンマがあらゆる策略を巡らせて欲しがった右手。
しかし、上条はフィアンマを怖がっていなければ、嫌っている訳でもない。
純粋に助けたいと願うものの、果たして触れるだけで消せるのだろうか。

垣根「…術式がある限り、コイツは一生イギリス清教に狙われる。頼む」

上条「やれるだけ、やってみる」

きっと助ける、と頷いて。
垣根は上条の反応に安堵の思いを抱きながら、彼女へ口付ける。
『眠り姫』の術式は解けたものの、彼女自体が目覚める訳ではなく。
眠る彼女に対し、上条はそっと右手を伸ばし、その頬に触れた。




>>+2のコンマ一桁(21:57:57.35の場合は『5』)判定


0〜4 成功。オティヌスの仕掛けた反転術式は破壊された

5〜9 失敗。フィアンマが起きたのみ。『大陸の反転』を回避すべく『異界反転』が行われる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 22:51:59.47 ID:7rKuLD0n0<> あ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 22:55:28.40 ID:VQ6icRHSO<> さて <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/06(火) 23:04:12.11 ID:VQ6icRHSO<> オティヌス涙目(笑) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 23:12:29.47 ID:7rKuLD0n0<> オティヌスザまぁwww <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/06(火) 23:53:33.84 ID:/Ww3wF3P0<> 《判定>>995(22:55:28.40=『0』)よって、結果:『成功。オティヌスの仕掛けた反転術式は破壊された』。》



パキィイン、と甲高い音が響いた。
垣根の昏倒術式を破っただけでなく、その先の、目的の術式までをも破壊出来た。成功したのだ。
かつて『神の子』がその右手の一振りで重い病に苦しむ人間を救ったように、上条の―――神浄の右は、悪意も毒も祓う。

「……、」

白い瞼が開き、金の瞳が久しく外気に晒される。
最後に見ていた病院とはまるで違う、一般的なアパートメントの天井。
続いて彼女は視線を逸らし、金髪の魔術師と、黒いツンツン頭の学生を見た。

「…良かった。全部うまくいったみたいだな」

不幸を呼び寄せる右手で不幸を祓えた。
上条当麻は、安堵の笑みを浮かべる。
そして、事が済んだのであればもはや自分は必要あるまい、と部屋から出て行った。

「……、話したいことは山ほどあるだろう」

君が無事で良かった。
オッレルスは、安心したような笑みを浮かべて。
そう気遣いの一言を残すと、同じく部屋から出て行った。

どうやら自分は沢山の人間の協力を得て、何かから助かったらしい、とフィアンマは判断する。
後で礼を言わなければ、と思いながら、視線を反対方向へ向ける。
見慣れた、整った顔立ち。最後に見た時に泣きそうな顔をしていた彼は―――やっぱり、泣きそうな顔をしていた。

「…全部終わったな」
「…帝督?」
「全部、終わったか…。…よく寝れたかよ」

言って、垣根は彼女を抱き起こす。
そして強く抱きしめると、一言だけ呟いた。

「…お帰り、カンパーナ」
「…ただいま、帝督」

抱きしめ返して、彼女は目を閉じる。
口元が自然と弛むのは、喪いかけた日常を再び取り戻したと、感づいたからだろうか。

「…ありがとう、帝督」
「手間かけさせやがって」

ぺた、と額同士を合わせ、二人は心地良さそうに笑った。
世界を構成するには、二人の人間が愛し合うだけで事足りる。

「またリハビリだな」
「もう慣れたよ」
「組んでやるよ、プログラム」
「あまりキツくしないでくれ」
「わかってるっての」

彼と彼女は、心の中で思う。
世界とは広く、やはり残酷で、汚くて、恐ろしいけれど。
それらをよくよく知った代償に、優しく暖かなものを知った。
世界の半分が悪意で出来ているのなら、世界の半分は好意で出来ている。

神に仕えし『神の如き者』と、神に反逆した『光を掲げる者』。
その象徴をよくよく持ち合わせた両者が神に等しく愛されていることで、世界の構成がそうであることを証明している。

「…何があっても、俺はまたお前と旅行するからな」
「俺様もきっと、何があったとしても…そうするよ」

微笑みを交わして、口付ける。




式場も仲人も要らない―――けれどそれは、神聖な婚約の様だった。






おわり
(?) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/06(火) 23:54:45.57 ID:7rKuLD0n0<> 乙 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/11/07(水) 00:07:55.98 ID:AbDlaotj0<>
もしかすると、しれっと番外編やif編みたいなものを立てるかもしれませんが、本編はこれで一応終わりです。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
もしフィアンマさん関連でスレ建てられそうなネタあるよ、という方は某スレに書き込んでくださるととてもありがたいです。
そろそろネタが尽きてきました。



>>1000ならこのスレのフィアンマちゃんはスレの垣根くんといちゃいちゃした後結婚して老衰で死ぬ!




お疲れ様でした。 <> 1001<><>Over 1000 Thread<> ☆.。 .:* ゜☆.  。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
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