◆dWVtcnK36s<><>2012/11/07(水) 18:15:46.83 ID:qbkOcHBU0<>・2011年 3月 25日


女「ねえ」

男「なんだ」

女「……募金とか、した?」

男「いや、してない……」

女「なんでよ」

男「いや、やったほうがいいのはわかってんだけど」

女「ものぐさ!」

男「ゔ。いや、でも募金ってどこですりゃいいんだよ?」

女「駅前とかでもしてるよっ」

男「電車は滅多に乗らねえし……そもそも駅ウチから遠いし」

女「だからあんたねえ……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1352279746
<>「遠い聞こえる行進曲」
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/07(水) 18:19:46.58 ID:qbkOcHBU0<> 男「そういうおまえは?」

女「したよ、こないだ帰りに」

男「わざわざ駅前まで行って?」

女「わざわざもなにもないでしょ、こんなときに」

男「んう、まあそうだけどさ」

女「あんたは何しぶってんのよ。お金ないとか言うんじゃないよ、10円20円でもいいんだから」

男「いや、金はあるよ」

女「じゃあしない理由がないじゃない」

男「そ、だね……」 <>
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/07(水) 18:27:37.20 ID:qbkOcHBU0<> 女「よし、じゃあ行くよ今から」

男「え、まじで」

女「だから!あんたは!」

男「うわ、わかったわかった」

女「ほんとなんでそうまで渋るのよ……」

男「なんていうか、さあ……」

女「歯切れ悪いわね」

男「いや、言ったら怒られそうだし」

女「誰に」

男「おまえ。あと向こうの人達にも申し訳ないと思う」

女「はあ。よくわかんないけど」

男「とりあえず俺、今けっこうひどいこと考えてる」

女「なに?」

男「言いたくねえなあ」

女「言えよ。聞かないことにゃわからん」

男「そうなー……」 <>
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/07(水) 18:36:29.78 ID:qbkOcHBU0<> 男「なんていうかね」

女「うん」

男「あれ、ほんとに現実のことなのかなって」

女「は?」

男「そういう気がしてて」

女「なにそれ」

男「いまいち実感がないんだよ」

女「……そりゃ、あれだけの被害だし、あまりに普段の私たちの生活とかけ離れすぎてる光景だけど」

男「うん。そうなんだけど、そうじゃなくて」

女「……ん?」

男「えっと悪い、どうにも説明しづらくて」

女「うん、全然分かんない」

男「だろうなあ」 <>
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/07(水) 18:41:29.45 ID:qbkOcHBU0<> 〜〜〜〜駅前〜〜〜〜

女「結局何が言いたいんだがサッパリ」

男「俺も頭ン中こんがらがってきたよ……」

女「くそ、イライラする」

男「面目ない」

女「はあ。わかった、もう急かさないからそのうちちゃんと聞かせなよあんたの考えてること」

男「うん。で、どこでやってんの、募金」

女「反対側のロータリーだよ。ほら、そこ」

男「ほんとだ」

女「……そういえばあんた今日、財布とか」

男「ああ大丈夫。ちょっとは持ってきてるから」

女「そっか」

男「……ってありゃ。小銭ねえな」

女「ちょっと貸そうか?」

男「いや、いいよ。そういうの面倒。お前の言うように金額が問題じゃないなら――」 <>
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/07(水) 19:19:04.33 ID:qbkOcHBU0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜


女「……いいの、千円も。いや私がいうのもヘンだけどさ」

男「ん。いいのいいの」

女「でもあんた、お金入れる前にお札じっと見てたじゃん」

男「?ああ、うん」

女「惜しいのかなって思ったけど」

男「そうじゃなくてね、ちょっと考え事」

女「なに?」

男「お札に番号書いてあんじゃん」

女「偽札対策、的なアレ?」

男「そうそう。さっきのにはEH9998537RPって書いてあった」

女「それを見てたの」

男「うん。でさ、俺が入れた千円はまあ向こうに届くわけじゃん」

女「そりゃそうだ」

男「でも、向こうの人が現金として受け取るのって、俺のあのお札じゃないんだよなあ。EH9998537RPのお札は受け取ってもらえないんだ」

女「それはまあ……そうだろうね。集まった募金をそのまま現金のかたちで配れるわけないだろうし」

男「それがなんていうか」

女「……ますます分からんわ、あんたの言いたいこと」 <>
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/07(水) 20:13:02.67 ID:qbkOcHBU0<> 男「あれ、おまえ今日も募金したの」

女「いいでしょべつに、何回しても」

男「まあそうだな」

女「うん。じゃ帰ろう」

男「おう。そうそう、さっきの話だけどさ」

女「考えまとまった?」

男「いいや」

女「おちょくってんのか」

男「そうじゃないけど。わかりやすいかなーっていう例えを思いついて」

女「はあ」

男「ハルヒでさ、古泉が『人間原理』の話してたじゃん」

女「……はあ?」

男「あれ、覚えてない?ほら自分が超能力者だって明かす前に車乗るじゃんキョンと。そこで、」

女「ああ、あれか。で、それがなに?」

男「それと似てんのよね。人間原理じゃないけどさ、直接自分が観測できないものは無いのと一緒だって」

女「え、えーと……」

男「たとえテレビでいくら向こうの映像を観ていても、それが本当のことだなんて証明する方法は一切ないわけで……」

女「……じゃあなにか、あんたは自分が直接その目で見てないから、向こうであったことは無いのも一緒だって言いたいの?」

男「もちろん実際にあったことだってのは分かってるよ。人がいっぱい死んだのも、分かってる」

女「……」

男「実感が無い、だけなんだ」 <>
◆dWVtcnK36s<>sage<>2012/11/13(火) 01:43:17.03 ID:VU5kbd0Ho<> 男「つうか人多いな。こんな賑わってたっけここ?」

女「ほら、ちょうど学校なり会社なりから帰る時間じゃん。だからだよ」

男「あー」

女「でもまあ……ちょっと驚くよね。この駅で降りるってことはみんなこの街で暮らしてる人ってことじゃん」

男「そうだね」

女「それがこんなにいっぱいいるなんて……ちょっとすごい。この街なんて全然田舎だと思ってたのに、たった一本の電車でもう数え切れないくらい人が降りてきて」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/25(火) 06:22:10.34 ID:fspZ7AoIO<>      ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
_..||::|   o  o ...|_ξ|:::::::::|    .|::::::::|
\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
.||.i\        、__ノフ \|    |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\   |::::::|
.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜 <>