VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:34:53.39 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「…そうか、じゃあ来てくれないなら私から」ガバッ
誠子「ちょっ!なに人の肩に腕回してるんですか!?」
菫「来ないから着た」
誠子「そういう意味じゃありませんよ…」
菫「いいじゃないか、私と誠子の仲だろう」サスサス
誠子「もう!顔に触らないでください!」
菫「案外うぶなんだな」
誠子「違いますって。私はさっき断ったでしょうが」
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<>菫「こっちにおいで」誠子「お断りします」
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:38:25.17 ID:yQ3LP5LD0<>
誠子「それに、弘世先輩には宮永先輩が!い・る・じゃ・な・い・ですかっ!」グイッ
菫「うっ!いっ…っ〜先輩の手を捻るってお前な」
誠子「残念ながら後輩に色目使うような人は先輩じゃありませんので」
菫「なかなか手厳しいな」
誠子「なんとでも言ってください。イチャイチャしたいなら心置きなく恋人とどうぞ。私は部会の準備で忙しいんですから、これ以上邪魔しないでくださいよ」
菫「分かった分かった。もうしない」
誠子「本当に頼みますよ」
そう呆れ顔でお願いすると誠子はそのままパソコンの前にある椅子に座り、ディスプレイを眺めながらキーボードを叩き始めた。
今回の部会は麻雀部の秋大会選出メンバーを決めるための校内戦についての説明が主だった。
100名近い部員がいる白糸台麻雀部の会議室のセッティングは尭深たちにすべて任せていて、菫は説明資料をまとめる誠子の補佐としてここにいた。
菫はテーブルの上に頬杖をついて誠子の微かに揺れる背中を淡々と眺めた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:43:29.61 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「ここから見てると板についてきたって感じがするな、誠子も」
誠子「はい?」
菫「部長、さ。もうなって一ヶ月経つんだな」
誠子「ああ、そうですね。板についてきたかは分かりませんが…早いもんですよ」
パソコンのキーボードを叩く音に低く唸る空調音、
閉め切ったはずの窓の向こうから、9月半ばを過ぎてもいまだうるさい数の蝉の声と、それに混じってテニス部の掛け声が聞こえてきた。
あえて触れず、あえて言わず、けれども2人の頭は確実に一ヶ月前のあの大会のことを思い出していた。
各高校が、各選手がそれぞれの思いを背負い打ち続けた、あのインターハイ。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:46:48.99 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「そうそう。部長になって何か困ったことはあったか?」
淀みなく叩かれていたキー音がカチャリと止み、逡巡した後、再び手を動かし始めた。
誠子「とりあえず、部長の大変さを骨身に染みて知っているお方が、最近いの一番に私の邪魔をしてくるのは正直どうにかしたいですね」
菫「さっきから随分とはっきり物を言うな」
誠子「そりゃ鍛え上げられましたからね、先輩に」
菫「私に?」
誠子「そうですよ。私が入部した時、弘世先輩は私と他の1年生麻雀部員何人かの教育係だったの覚えてますか?」
菫「もちろん」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:49:18.33 ID:yQ3LP5LD0<>
誠子「最初の頃は牌を1つ切るにも「なぜだ?」「どうしてだ?」の嵐で、皆もうんざりしてたんですよ?弘世先輩はいちいち細かいって」
菫「失礼な奴らだな。その場の空気に流されて理由のない牌を切る方が悪いんだ」
誠子「だから『当時は』ですよ。私もまだ場慣れしてなくて流されやすい奴でしたから、答えられなくて毎回ハラハラしてましたよ」
誠子「でもそのお陰で捨て牌に迷うこともなくなりましたし、何より麻雀のレベルも上がって一軍になれましたから」
誠子「他の子たちだって先輩の指導を受けたからこそ2軍でもトップクラスに入ってますからね。皆、先輩には感謝してますよ」
菫「感謝ねぇ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:52:14.00 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「私は最初から誠子は虎姫になると思っていたけどな」
誠子「えっ?」
菫「教育係だから中学時代の成績データくらい見てるさ。経験不足な面やスジに頼りすぎるところはあったが相手の捨て牌で和了るというのは戦術さえしっかりしていれば、かなりの強みになる」
菫「入った中じゃ、お前が1番虎姫に近いかなという検討はつけていた」
誠子「それは…どうもありがとうございます」
誠子「でも、私のスタート時は4軍ですよ?それでも虎姫だと?」
菫「4軍5軍のスタートの新入部員の半分は入って一年以内に辞めるからな、確かに辞める可能性の方が高い。だから辞めずに続けて一軍まできてくれて嬉しかったよ」
菫「そして、口やかましい先輩の後を継いで部長になってくれたことも」
菫「誠子、ありがとう」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:54:48.77 ID:yQ3LP5LD0<>
誠子「どうしたんですか急にそんな…」
菫のいつもとは違う、気の緩んだ微笑みを見せられ、誠子は言った後ですぐ、恥ずかしさを隠すためパソコン画面へ向き直した。
そして、頭を下げスカートの裾をギュッとひっぱり、小刻みに震えていると後ろから自分が温かいものに包み込まれるのを感じた。
菫「あとは頼んだよ」
腕の中で抱きしめられている間に、後頭部に優しくキスをされ鼻を押し当てられる。その感触が伝わると、それが見えない分混乱と動揺が抑えられず顔が火照っていくのが分かった。
菫が小さな声で言った。その言葉の意味をちゃんと理解するのに少し時間がかかった、分かった時には火照りや温かみ以上に寂しさしか残っていなかった。
誠子「らしくないですね。本当に」
菫「また困る?」
誠子「いいえ、そういう邪魔のされ方したら断れませんよ」
菫誠編おわり
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 22:55:57.69 ID:yQ3LP5LD0<> 次は菫照編 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:01:09.95 ID:yQ3LP5LD0<> タイトル
誠子「弘世先輩早いとこ!」尭深「宮永先輩に!」淡「好きっていいなよ!」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:06:51.22 ID:yQ3LP5LD0<>
誠子「弘世先輩早いとこ!」尭深「宮永先輩に!」淡「好きっていいなよ!」
菫「言ってます…」
淡「ウソつき〜言ってないじゃーん!ぜーんぜん!」
誠子「これは珍しく淡に同意します、私も聞いたことありません」
尭深「以下同文です」
菫「あ〜もう!言ってるんだよ!お前らの知らないところで!」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/11/19(月) 23:11:13.19 ID:EtTyB8bBo<> ふんふむ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:12:25.46 ID:yQ3LP5LD0<>
誠子「へー、じゃあその話聞かせてもらいましょうか」
菫「えっ?」
淡「いやいや「えっ?」じゃないですよ、言ってる宣言したのは自分なんですから」
尭深「先輩がおっしゃった以上は私たちには聞く権利があります」
ジーッ
菫「…分かった。話すよ」
菫「例えば部活前に―
菫『…以上のメンバーを個人戦に出そうと考えているんだが、どう思う?』
照『いいんじゃない』
菫『じゃあ、何もなければそうする』
照『よろしく』
菫『…あのさ』
照『なに?』
菫『照はその…今、気になってる人っているのか?』
照『気になっている人?』
菫『ああ』
照『…う〜ん、今のところ三箇牧の荒川憩かな』
菫『他校だと!?』
照『えっ?校内じゃないとダメだった?』
照『そっか、校内だったらやっぱり淡かな。なんだかんだ言って強いから気になる選手だし』
菫『…選手?』
照『うん、だって気になってる選手の話をしてるんでしょ?』
菫『あっ…ああ』
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/11/19(月) 23:15:52.46 ID:lvRGu4lFo<> なるほどなるほど〜 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:17:54.35 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「−といった感じで」
誠子「…弘世先輩、せめてそこは違うって押し通してくださいよ、押し弱すぎ」
尭深「回りくどいベタな例ですね」
菫「てっ照が鈍感なのが悪いんだ!」
誠子「それもありますけど、それにしたってシチュエーションがひどすぎます」
淡「よし!決めた!」
菫「なんだよ、大星」
淡「練習しよう!」
菫「ふぁ?れっ、れんしゅう?練習ってなんの?」
淡「決まってるじゃ〜ん」
淡「この流れで練習って言ったら一つしかないでしょう」
菫「まさか…」
尭深「告白の練習ですね」ニコリ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:20:37.73 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「ばかぁ〜!私がこっ後輩の前で、そんなっみっともない練習できるかぁ〜!」
誠子「できるできないの問題じゃありません、これは。マストシュッドです」
尭深「先輩に拒否権はありません」
淡「さぁーさ、たかみをテルだと思って」
菫「そんな…」
誠子「大丈夫です、先輩しっかり」
淡「はい!テイク1、アクショーン」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:27:20.33 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「えーえっと、てっ照そのー」
尭深「うん、なぁーに菫」ニコニコ
菫「わっ私は、おっお前のことが〜」
尭深「うん」ニコニコ
菫「すっすっすきゅぅぅわぁ〜〜〜やっぱり私にはできな〜い!」
淡「あー、あともうちょっとだったのに〜」
誠子「かなり無理のある『もうちょっと』だけどね」
尭深「もう一度やる?」
菫「できないよー告白なんて無理だよー」
誠子「いや〜あんな駄々こねてちゃね」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:32:20.30 ID:yQ3LP5LD0<>
淡「あっ!いいこと思いついた!たかみーせーこ耳貸して」
ごにょごにょ ごーにょ ごにょごにょ
誠子「ふーん。なるほど、淡にしては冴えた考えだ」
淡「なに『淡にしては〜』って」
誠子「そのまんまの意味だよ」
尭深「するなら始めないと、もうあんまり時間ない…」
淡「じゃあ準備準備〜」バタバタバタ
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:38:54.71 ID:yQ3LP5LD0<>
誠子「じゃあ私は…」
テクテクテク
誠子「弘世先輩、もう泣き止んでください。ちょっと私たちが無理させ過ぎました。もうしません」
菫「んっ本当に?」
誠子「本当ですよ。ほらティシュで鼻水拭いてください、すごいことになってますから」
菫「ありがとう」
誠子「どうも先輩たち見てると居ても立ってもいられなくて私たち」
菫「いいんだ。後輩たちにこうさせることになったのも、いつまでも照に気持ちを言えない私が悪いんだから」
誠子「あんまり自分を責めないでください。尭深が今、お茶を淹れてくれているので、それ飲んで元気になりましょう」
菫「…うん、分かった」
尭深「先輩、お茶です」
菫「ありがとう」
誠子「しかし、本人だけに気持ちが伝わらないなんてこと本当にあるんですね」
尭深「皆、弘世先輩が宮永先輩のこと好きって知ってるのに」
菫「1年の頃から、こんな微妙な感じでのらりくらりと来てしまった」
尭深「でももう3年生ですから」
誠子「ここはそろそろ…」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:45:31.52 ID:yQ3LP5LD0<>
ガラガラ
淡「ねぇ〜スミレ泣き止んだ〜?」
菫「大星」
淡「あっ、なんかもう大丈夫そうだね〜」
菫「…お前に泣き顔を見られたことは一生の不覚だ。いっそ、できることなら記憶と共にお前も抹消したい」
淡「なんだか、さらりと私に酷いこと言ってくれてませんか?」
尭深「それで淡ちゃん、お花は摘んできてくれた?」
淡「もちろん!これでしょ?」
尭深「ありがとう」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:49:40.74 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「なんだ、その花?」
尭深「これですか?これは ハルコイ草 というお花で、乙女の花占いに使われる定番のお花です。先輩の恋が叶うように淡ちゃんに中庭から摘んできてもらったんです」
淡「告白もできない可哀想な哀れな先輩のために後輩の私が告白のきっかけを作ろうと一肌脱いでやったってわけですよ!」
菫「随分と上から目線の恩着せがましい人助けだな」
淡「どうとでも言ってください、泣き虫チキンのスミレちゃん」
菫「…やはりお前は私のシャープシュートで抹殺しておかないといけないようだな…」カチャリ
誠子「まぁ、先輩落ち着いて。尭深がせっかく気を利かせてくれたわけですし、やってみましょうよ」
菫「でも…」
尭深「弘世先輩、花を一輪取ってください。取ったら後は普通の花占いと同じ要領で好きな人の名前を言いながら「好き」「嫌い」と花びらを一枚ずつ摘んでいってください」
菫「…分かった」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/19(月) 23:55:08.79 ID:yQ3LP5LD0<>
菫「宮永照は、私のことが好きー嫌い」
菫「好きー嫌い、好きー嫌い、好きー嫌い」
菫「好きーきらっ・・・」
誠子「一枚残ったぞ淡!」
淡「大丈夫、まさせて!」
タッタッタッ
淡「スミレ。はい、もう一本!」
菫「えっ?だって花占いって普通一本だけじゃ」
淡「ホント相変わらず頭かったいな〜こういうのは願掛けみたいなもんで告白しようっていうきっかけ程度でいいわけ。ほら、もう一本やらないとこのまんま嫌いで終わっちゃうよ?」
菫「…やるよ」
淡「うん!よろし〜」
菫「やっぱり見下された気分だ」
淡「つべこべ言わずにやる!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:02:48.66 ID:vMACzJ1a0<>
菫「…宮永照は私のことが好きー嫌い」
菫「好きー嫌い、好きー嫌い、好きー嫌い」
菫「好きーきらっ…あっ…嫌い」
「残念、嫌いで終わっちゃったね」
菫「ああ、好きで終わりたかった…って、んっ?」
菫「てっ照!なんでここにいるんだ!?」
照「菫、ここ部室だよ?」
菫「そっそうだったな。えっとーもしかして今の聞いてたか?」
照「うん」
菫「どこから?」
照「2回目の花占い始めたところからずっと」
菫「始めから…」
照「聞かれて複雑?」
菫「まぁな」
照「そう?でもよかった」
菫「何が?」
照「花びらが嫌いで終わって」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:17:14.81 ID:vMACzJ1a0<>
菫「嫌いで終わって…よかった?」
照「うん」
菫「…あっ、そっそうなのか。お前は、嫌いだったんだな私のこと。ゴメン、知らなかった、知らずにいつも隣にいて、ゴメン。一緒にいるのもうざかったか?」
照「菫…」
菫「でも!私は、照お前のことが好きなんだ!ずっとずっと前から好きなんだよ…お前のことがずっと前から…」
照「ありがとう、菫。もう泣かないで」
照「私は菫のこと、嫌いじゃないよ」
菫「でも、さっき!」
照「それは『花びらが嫌いで終わったのがよかった』って意味。菫の早とちり」
菫「どうして?」
照「だって、嫌いで終わらなきゃ次の『好き』、私が言えないでしょう?」
菫「えっ?」
照「分からない?私も菫のことが好き」
菫「ほんと、に…?」
照「うん、宮永照は弘世菫のことが大好きだよ」
菫「照…」
ギュッ
淡「エヘヘ これ計画したの全部私だよ〜!褒めて褒めて〜」ヒソヒソ
誠子「淡、静かに!こっそり外出るんだから」コソコソ
尭深「押さないで」バタバタ
菫照編おわり
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:18:54.58 ID:vMACzJ1a0<> 次は菫尭編 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:23:04.61 ID:vMACzJ1a0<> タイトル
尭深「熟れた果実」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/20(火) 00:31:16.10 ID:wRp2QnPdo<> え?ババァ? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:33:44.45 ID:vMACzJ1a0<>
スタスタスタ
尭深「!」
菫「中堅戦お疲れ様、よくやった」
尭深「ありがとうございます」ペコリ
菫「尭深、今ちょっといいか?」
尭深「はい?」
……………
…………
…………
………
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:47:22.81 ID:vMACzJ1a0<>
―仮眠室―
尭深「どうしたんですか?仮眠室なんて」キョロキョロ
菫「その…してほしいんだ」
尭深「?」
菫「してほしいんだ」
尭深「えーと、何を?」
菫「…膝枕」
尭深「ひざ、まくらですか…?」
菫 コクリ
尭深「いいですよ」
菫「すまない」
菫「少しの間だけ、こうさせて―」
尭深「はい」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 00:58:32.98 ID:vMACzJ1a0<>
尭深「このまま寝てもいいですよ」ポンポンポンポン
菫「なんだか赤ちゃんを寝かしつけてるお母さんみたいだな」
尭深「そうだとすると随分大きな赤ちゃんですね」
菫「図体だけ大きくて心は子どものな」
尭深「…久しぶりに競り負けてへこんでるんですか?」
菫「そんなことない、負けることだってあるさ」
尭深「じゃあ、どうしてこんなお願いを?」
菫「控室にいると疲れるんだよ、すごく」
尭深「…あの2人がいるからですか?」
菫「結局、あの2人のための虎姫なのかもしれないな」
尭深「…悲観的すぎますね」
菫「でも私は負けた。テルと淡なら絶対に負けてない」
尭深「やっぱり、そこ気にしてたんですね」
菫「そうやすやすと本音を言うなんてみっともないだろう」
尭深「そんなことありませんよ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 01:06:17.20 ID:vMACzJ1a0<>
尭深「何があっても先輩は部長ですよ、白糸台の」
菫「ただの飾りだよ」
菫「私はどちらかというと、あの2人の保護者みたいなもんだ。迷子にならないか馬鹿なことしないかっていう」
尭深「…自分を、そうやって卑下するのはいいことではないですよ」
菫「尭深、お前は悔しくはないのか?」
尭深「私はあまり気にしていません。私の能力はオーラスで力を発揮するタイプですし、あの2人とは系統が違いすぎます」
尭深「それ以前にライバル意識が芽生えないのが一番の理由ですが…」
菫「私にはそういう考え方ができない」
尭深「そうですね、先輩は普段沈着冷静で何事も一歩離れて客観的に判断するタイプなのに麻雀となると少し感情が前へ出てきてますね」
菫「負けず嫌いなんだ。初めて好きだと思えてずっと続けてきたことだから、どうしても負けたくないっていう気持ちが表に現れるんだろうな」
菫「だから照の麻雀を初めて見た時愕然とした、同じ15歳の女の子が打つような麻雀じゃなかった。センスも運も兼ねそらえた人間に初めて対峙して、ああこういうのを天才と呼ぶんだと悟らされた」
菫「今の私では照の足元にも及ばない、そう思ったから死に物狂いで練習と研究をして2年生でレギュラーを獲得した。同じ位置に立てたと思っていたんだ、淡が来るまでは」
尭深「淡ちゃんの存在が1年生の宮永先輩のデジャブに見えたんですね」
菫「…そう見えたし自分より2歳も年下の子が3年の照と同等の力があるというだけで鳥肌が立った。私がしてきた努力を軽々越えていく人間が目の前に2人もいるんだ、もう何も考えられなかったよ」
菫「今だって必死に食らいついてる。だけど何が違うんだろうな…どうすれば辿り着くのかもう私には分からないよ」
尭深「弘世先輩…」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 01:10:21.04 ID:vMACzJ1a0<>
菫「なぁ尭深、私を収穫してくれないか?」
尭深「熟した先輩を摘むのは私の仕事ではないので」
菫「尭深は勘違いしてる。私と照はそういう関係じゃない」
尭深「うそ。本当はあの人の膝で泣きたいんですよね?強く魅かれているのにプライドがそれを邪魔してしまう」
菫「違う。他の誰かに摘まれるくらいなら、この身なんて朽ち果ててしまっても構わない」
尭深「なかなか情熱的な台詞」
菫「本当のことだ、こんなこと尭深にしか言わない」
尭深「素敵な口説き文句ですね」
菫「ねぇ…2人の時は『すみれ』って呼んで」
尭深「今日の先輩はひどく甘えん坊さんなんですね」
菫「失望した?」
尭深「まさか、本当に赤ちゃんみたいで母性本能をくすぐられます」
尭深「こうやってたくさんの人を虜にしてするんですね」
菫「さっきも言ったけど、尭深にしかこんなことしないし言わない」
尭深「じゃあ、そういうことにしておきましょうか」
菫「信じてくれないの?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 01:17:58.44 ID:vMACzJ1a0<>
尭深「…ホント、今日の先輩は困ったちゃんで可愛い」
尭深「思わず食べたくなっちゃいます」
菫「なら…」
尭深「ダメです」
尭深「我慢してください。ここで投げやりならないでください」
菫「でも…もうダメかもしれない怖いんだ」
尭深「知ってます。先輩が宮永先輩と淡ちゃんに恐怖を感じていることも、その恐怖を誰にも言わず1人で抱え込んでいることも」
尭深「だけど我慢してください。私がここで先輩に手を差し伸べたら、その場しのぎの安息感に満たされて先輩はもう勝てなくなります。安らぎは今いらないんです、必要なのは貪欲にまで勝ちを求めていくことだけ。だから今は誰にも頼らず耐えてください」
菫「じゃあ、どうすればいい!」
菫「私は、いまこの瞬間の!今の私を支えて欲しいんだ!!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 01:40:17.50 ID:vMACzJ1a0<>
尭深「…それは今の私にはできません」
尭深「でも、少しだけ―」
菫「なにするんだ?」
尭深「手を貸してください」
ペロペロペロ
クチャクチュクチャ
菫「どうして指なの?」
尭深「味見ですから」
菫「口にはしてくれないのか?」
尭深「望む人にしてもらってください」
菫「私が欲しいのは尭深、お前だ」
菫「お前のその身にまとう温かい安らぎの中に私も入れてほしい包み込んでほしい」
尭深「…本当にそう思っているのなら、それは摘むまで待って」
菫「いつまで待つの?」
尭深「決勝が終わるまで」
菫「焦らすな」
尭深「私は熟れたあなたが欲しいだけです」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 01:46:57.21 ID:vMACzJ1a0<>
菫「もし…」
尭深「あっ!」ドン
菫「待てないと言って押し倒して、私からこうやって迫られたらどうする?」
尭深「…あなたからもし口づけしたら、その時あなたは落ちたリンゴ」
菫「落ちたリンゴ?」
尭深「引力に負けたの」
菫「価値なき作物…というわけか?」
尭深「ただ、自分で摘みたいだけですから」
菫「随分とわがままなんだな」
尭深「オーラスで最高の牌を収穫するように最後の最後まで待つと美味しくなるんですよ果実って」
―準決勝副将戦が始まります、選手の方は対局室まで集まってください―
尭深「帰りましょうか?皆のところへ…」
菫「ああ」
菫尭編おわり
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2012/11/20(火) 01:47:38.83 ID:vMACzJ1a0<> 以上です。
ありがとうございました。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)<>sage<>2012/11/20(火) 01:51:27.10 ID:U5wwG5TAO<>
ごちそうさまでした <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2012/11/20(火) 02:15:51.56 ID:UhreRrvAO<> 乙!
>>26 roofーtop
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sag<>2012/11/20(火) 12:08:42.37 ID:hPVAFKfb0<> 乙 <>