◆WPwc2pN1N6<>saga sage<>2012/11/25(日) 00:04:33.27 ID:MZhlkD9Go<>隊長「学園戦隊ねぇ……」
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344265063/)

の続きです。


あらすじ:
冒険者の学校でチーム組んでお勉強してるよ。
それを学園戦隊って呼んでるよ。
学園からいろんな作戦を紹介されて、冒険技術を磨くよ。

主人公チームは隊長、剣士、術士、工兵、救護員だよ。

すっごい強い魔物、竜から全力で逃げたよ。

<移動中>

隊長「学園は知ってて竜に学生をぶつけたのか? 頭おかしいんじゃねーのか」

工兵「すげぇ! 隊長、僕の腕が義腕になったーよ!」ガッションガッション

救護員「やっべぇ、甲斐甲斐しく隊長の世話をして私の株が上がりまくりじゃね?」

隊長「……。って、学園が竜に襲われてるじゃねーか、急げ!」


<学園>

術士「私達にも出来ることはある」キリッ

剣士「強くなりたいと思ってたら何もかも裏目だ。やってらんねーぜ」

術士「隊長……死んじゃったの……?」

剣士「お前そればっかだな」


<それ以外>

会長「ちょっくら竜を倒しに行ってきまーす」

天測士「ちょっと腐れ××って言っただけで捕まりました(´;ω;`)」


詳しくは前スレをご覧ください。
では、スタート。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1353769473
<>隊長「よーし、お前ら。学園戦隊出動だ」
◆WPwc2pN1N6<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:06:37.38 ID:MZhlkD9Go<> 数刻前。


>剣士、病室。

剣士「……」

呪術士「……くぁ」

術士「大丈夫、呪術士?」

呪術士「大丈夫ではないわ……でも、あなたほどではないわよ」

呪術士「私はちょっと寝てないだけよ」

剣士「一晩中検査しやがって」

呪術士「あなたがねー! 早くしろだのなんだのうるさいからでしょ!」

剣士「悪かった。お前の師匠にも礼を言いたい」

呪術士「急に物分かりが良くなられると気持ち悪いからやめてくれる」

剣士「……チッ」

術士「それで、何か分かったの?」

呪術士「うん、師匠と遠隔念話もしてたんだけど……」

剣士「……」

呪術士「彼の呪印がなぜ複雑化したのか、その理由よ」 <>
◆WPwc2pN1N6<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:07:06.52 ID:MZhlkD9Go<> 呪術士「呪印は、いわば願望を埋め込むようなものなのよ」

術士「……方陣術とはまったく違うわね」

呪術士「ええと、方陣術の場合は」

術士「魔力を込めた紙や布に数字を並べて、順番通りに展開していくだけ」

呪術士「私はそっち方面は明るくないのよね……発声魔法の方が分かりやすいというか」

剣士「どうでもいい。俺の呪印に関しては?」

呪術士「うるさいわね! チームなんだから、術士にもちゃんと伝えるのが大事でしょ」

術士「……ごめんなさい、邪魔して」

剣士「お前は悪くない、こいつが的確に説明しないだけだ」

呪術士「……この人、いつもこうなの?」

術士「あ、いえ。私も早く結論が知りたいわ」

呪術士「あ、ああ、そう」

剣士「……」

呪術士(うーん、このチーム、仲が良いんだか悪いんだか) <>
◆WPwc2pN1N6<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:07:38.14 ID:MZhlkD9Go<> 呪術士「じゃあ、結論よ。剣士の呪印が複雑化した理由は、あなたの感情が強すぎるからよ」

剣士「……もう少し丁寧に説明しろ」

呪術士「だから、願望を埋め込むのが呪印って言ったでしょ」

呪術士「その発揮力も、願望の強さによって、変動するの」

術士「相手を呪う気持ちが強ければ、とかいうやつ?」

呪術士「そういうこと。あなたの呪印はただ筋力の発揮量を増やしているだけじゃない」

呪術士「これは師匠の見立てだけど、あなたは憎悪を呪印の発動要件にしているんじゃないかしら」

剣士「……」

呪術士「してるのね?」

術士「憎悪……それは、その」

剣士「誰かを憎んでいるのがそんなに悪いのか?」

呪術士「そうじゃなくて、それを術に組み込んだこと、そしてそれを徹底的に描き込んだことが問題なの」

剣士「……」

呪術士「どうなの?」 <>
◆WPwc2pN1N6<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:08:04.02 ID:MZhlkD9Go<> 剣士「否定も肯定もない」

呪術士「きまりね。そもそも、強い憎悪は精神的なストレスをもたらすものなのよ」

剣士「……」

呪術士「師匠によれば、通常の人間の精神作用に加えて呪印の反動によってさらに負担が起きやすいと」パラッ

呪術士「……えーっと、ここね。『呪術は負の方向に染まりやすい術である……』」

呪術士「『それは対象への効果ではなく、時として術者への反動として現れる』」

呪術士「『なぜなら、感情というものが、もともと他人ではなく自分に対するある種の呪いだからだ』」

剣士「意味が分からん」

術士「なんとなく、分かるわ」

呪術士「そう?」

術士「自分が、みじめだ惨めだって思っていると、実際に行動や性格もそうなってしまうの」

呪術士「そう、それよ」

術士「……私は、隊長がいたから、少しずつ良くなったの。少しずつ、良くなれたのに……」

呪術士(重いんですけど) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:08:42.77 ID:MZhlkD9Go<> 剣士「それで?」

呪術士「あー、つまりね。感情それ自体がストレスをもたらすわけでしょ」

呪術士「それに呪印の反動が加わって、元々体に負担を加えやすい術式になっていたわけ」

剣士「……」

呪術士「おまけに、憎悪をこの呪印に封じ込めるようにして、丁寧に、何重にも、描き込んでいたわけだから……」

呪術士「自身の精神面と呪印の相互作用で、スパイラル的に威力と負担の両方を高めていたの」

剣士「……」

術士「威力も、高めていたの?」

呪術士「そうよ。この筋力の発揮量を増やすっていう単純な術式のはずが、こっちでは瞬間的な動作や、あっちでは長時間に渡る行動の補助など……」

剣士「分かった。もういい」

呪術士「もういいって、あのね」

剣士「俺は憎悪を前向きに変換した、と考えていたんだがな」

呪術士「それはさすがに無理があるわよ」

剣士「……」

術士(ちょっとうるうるしてる) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:09:18.83 ID:MZhlkD9Go<> 剣士「それで、どうすりゃいいんだ?」

呪術士「……あなた、これを解呪したいの?」

剣士「どういう意味だ」

呪術士「とにかく痛みを取りたいなら、憎悪を抑えて、明るいことを考えるっていうのが手っ取り早いわ」

剣士「ああ?」

呪術士「あのね。別にこの呪印を解読したわけじゃないの。推測しているだけなの」

呪術士「おそらく、この呪印の元になっている願望と感情とは何か……っていう」

呪術士「解呪には時間がかかるし、まず対処療法としては、その感情を抑えることが一番なのよ」

剣士「……俺におちゃらけろっていうのか」

術士「明るい剣士かぁ」

剣士「おいやめろ。変な想像をするな!」


   剣士『隊長! 今日も元気に訓練しようぜ!』

   隊長『めんどくさいなぁ』

   剣士『はっはっは、軟弱な野郎どもだな! 四対一組手を百本やるか!』

   工兵『やめてください、死んでしまいます』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:09:44.60 ID:MZhlkD9Go<> 術士「ふふふっ」

剣士「妄想してんじゃねぇかよ!」

呪術士「え、私のせいなの?」

術士「……妄想なんてしてないけど」

剣士「大体、明るく楽しくって、そんなもん、呪術士が言うことなのか?」

呪術士「あのね、最初に言ったように、呪術はストレートに願望から発生する魔法なの」

呪術士「呪いは『マジナイ』、よく言うでしょ? 子どもがするおまじない」

術士「ええ、そうね……」

呪術士「あれも効果の問題ではなくて、心の有り様から生み出される、魔法の一種だと呪術士は考えるの」

呪術士「つまり、呪術というのは、心とつながっている魔法なのよ。心の魔法なわけ」

呪術士「だったら分かるでしょ。心のアドバイスは呪術士の特権」

呪術士(っていうのを忘れてて、師匠に念話で怒られたわ……)

剣士「納得いかねぇ」

術士「ふふっ」

剣士「お前も笑うんじゃねぇ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:10:10.86 ID:MZhlkD9Go<> 忍者「失礼」シュタッ

剣士「む」

忍者「七番隊の忍者です」

呪術士「え、え、な、七番隊がどうしてここに……!」

剣士「ほっとけ、何か言いに抜け出してきたんだろう」

忍者「左様ですな」

呪術士「いや、あの、その」

剣士「文句があるなら、気絶させてやろうか?」

術士「……剣士」

剣士「冗談だ」

忍者「では、手短に。『これより、数刻と半分を置いて、竜が学園を襲撃。脱出を図れ』」

三人『!』

忍者「お伝えしました。それでは」スッ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:10:49.66 ID:MZhlkD9Go<> 呪術士「ちょ、ちょっと待って!」

剣士「追うのは無駄だ。相当な鍛錬を積んでいるやつだからな」

呪術士「あ、あんた、何を冷静に……」

術士「そう、竜が来るのね」

剣士「そうらしいな」すくっ

呪術士「ど、どうするつもりよ? まさか、さっきの話を信じるわけ?」

剣士「俺はそのつもりだ。武器を集めないと」

呪術士「あのねぇ。あんたは拘束命令が出ていて――」

剣士「竜が来たらそれどころじゃないだろうが」

術士「戦うつもり?」

剣士「ああ。仇になるか、あるいは逆にこっちが仇かは分からんが」

呪術士「ちょっと、待ちなさい!」

剣士「……雨か」


――さぁぁぁぁぁ……。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:11:15.81 ID:MZhlkD9Go<> 術士「強くなるわね、きっと」

剣士「そうだな」

呪術士「ま、待つのよ!」

剣士「なんだ?」

呪術士「剣士、自分の体がどういう状態か分かっている?」

剣士「今の調子なら、半分までは持っていけるはずだ」

呪術士「そういうことじゃないわよ」

術士「……方陣」スッ

剣士「効果は?」

術士「疲労の無視」

剣士「十分だ。少しは走れるだろう」

呪術士「ねえ、待ってよ……!」

術士「止めないであげて」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:11:48.30 ID:MZhlkD9Go<> 呪術士「いや、でもね……」

剣士「要するに、憎悪? 負の感情で戦わなければいいんだろう」

呪術士「戦闘までは保証できないわよ!? まして、怪我だって治ってないのに!」

剣士「……術士、お前はベッドの下にでも隠れていろ」

術士「この病室ごと吹き飛ばされたら意味が無いわ」

剣士「そう簡単には崩したりはしないだろう」

術士「そうね……」

剣士「じゃあ、またな」スタスタ

術士「ええ」

呪術士「あ、ちょっ……!」

術士「……」

呪術士「う〜……術士、変なことを考えちゃダメだからね!」

術士「分かっているわ、ありがとう」

呪術士「もう!」タッタッタ……


術士「……隊長」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:12:22.51 ID:MZhlkD9Go<> >七番隊。

天測士「……斧使い! なんでこう、あんたの友達は友達甲斐がないのよ」

斧使い「いや、俺に言われてもなー。竜が来るなんて、普通は鼻で笑うだろ」

占い師「私たちが、必死になって戻ってきたのに〜」

狩人「だーよね」

斧使い「ま、槍使いも何も考えてないわけじゃないと思うんだがな」

天測士「ぬう〜」

狩人「昨日から、大騒ぎしているのに全然相手にされてないし」

斧使い「……そりゃ、懲罰室で騒いでもなぁ」

天測士「占い師も狩人も、もっと呼べる人はいないの!?」

占い師「よ、呼びましたよ〜」

狩人「僕も。てんで相手にされなかったけど。っていうか、リーダー……」

天測士「な、なによ」

狩人「リーダーは呼ぶ人、いなかったの?」

天測士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:12:49.13 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「そう、私は孤高の天才。よって、この技術を理解し得ない愚か者どもに」

斧使い「友達がいなかったんだなぁ」

占い師「クラスでも浮いてましたし〜」

狩人「あっ(察した)」

天測士「(;ω;)」

斧使い「大丈夫だよ、リーダー。俺たちがついてるって」

占い師「結婚式の友人席は埋めてあげるから〜」

狩人「二人組を作らないといけない時も安心だよ」

天測士「うるさいわぁあああああああ!」

天測士「お前らは嫌いじゃ! だいっきらいじゃ!」

斧使い「じゃあ、七番隊は解散しようぜ〜」

二人『さんせーい』

天測士「いやあああ! 見捨てないでぇぇぇえええ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:13:15.23 ID:MZhlkD9Go<> 斧使い「冗談はさておき、その間中も、ずっと天測機をカラカラ回してたじゃん」

天測士「……竜の到着時間を測っていたのよ」

占い師「あ……」

天測士「もう時間がないわ。対策は打てなかった。私達だけでも生き延びるくらいしかない」

斧使い「……」

狩人「ま、仕方なーいね」

天測士「私たちは、竜を出し抜く程度の能力は持っているわ。でも、それだけ」

天測士「竜を迎え撃つだけの力はない」

斧使い「……やけに冷静だな。頭でも打ったのか?」

天測士「だからね?」

狩人「斧使い、リーダーがおかしいのはいつものことだから」

占い師「え〜」

天測士「まじめに聞きなさいよっ!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:13:59.23 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「とにかく、いくら私が正確に観測を進めたとしても、学園の生徒たちが一致団結して戦わなければ、竜なんか倒せるわけがない」

天測士「……観測は観測。ま、ここまで軟弱な連中ばかりだとは思わなかったけど」

斧使い「運命など簡単よ、じゃないのか」

天測士「あらゆることを先見できるわけじゃないのよ」

占い師「まあ、運命は決まったものしか指しませんから」

狩人「よく分からないなぁ。狩場の人間にとっちゃ、風は変わりやすいものだし、運命なんか気まぐれみたいなものってのが常識だけど」

斧使い「あれだけわーきゃー言ってたのに、いきなり物分かりが良くなられてもなあ」

天測士「私だって悔しいわよ。だから、ここからは逃げ出してからの話で、いくつか提案」

天測士「ひとつは竜を倒せるだけの実力をつける」

斧使い「……無理くせぇ〜」

天測士「ひとつは、倒せる人をもっと引っ張ってくる」

狩人「うーん、いなくはないと思うけど」

占い師「探すのが難しいんじゃ……?」

天測士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:14:25.47 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「ええいっ、なんでもかんでも文句ばっかり言って!」

斧使い「現実味がないからだ」

天測士「だったらあんたはどうすればいいっていうの!?」

狩人「学園側の尻を叩いたらいいじゃない」

斧使い「そうそう、ぐわーって怒った方がリーダーらしいぞ?」

天測士「あんたたち、私を一体なんだと思っているわけ……?」

占い師「そうですよ〜、リーダーもかよわい女の子なわけで」

斧使い「女の子……?」

狩人「かよわい……?」

二人『あははははっ』

天測士「……お前らの首を落とすなんて簡単よ」

二人『すみませんでした』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:14:51.57 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「私は出来もしないことはしない主義よ! もちろん、諦めるのもまっぴらごめんだけどね!」

天測士「ここから脱出しての方策、最後の一つは例の二十八番隊の、隊長を探す」

天測士「これよ!」

斧使い「……」

狩人「……さすがに。一週間以上経ってるんだしさ」

天測士「占い師!」

占い師「あ、はい〜。あのですね、みなさん」

占い師「リーダーに言われて、かなり気合を入れて占いをしたんですよ」

斧使い「もしかして……」

占い師「星がひっくり返るほどの何かが起きない限り、私たちは、隊長さんたちに、会えます」

斧使い「ほ、ほ、ホントか!?」ガッ

占い師「きゃあっ」

天測士「ええいっ、興奮するな!」

斧使い「あ、わりぃ」

狩人「えっと、会えるってのは……」

占い師「どういう形になるかは分かりませんが、近い将来に会えるということです」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:15:24.98 ID:MZhlkD9Go<> 狩人「……なるほど、僕らがあの世行きする可能性もありそうだよね」

天測士「あんたねぇ。どうしても彼らを殺したいつもり?」

狩人「どう考えても、一週間も戻ってこれない時点でアウトでしょ?」

斧使い「いいや。あいつなら、何とか生き延びているかもしれねぇ」

斧使い「つーか、占い師ちゃんが言ったんだから間違いねぇよ」

狩人「えっと、バーカ?」

斧使い「うるせぇっ!」

天測士「とにかく! 私達にとって一番認識を共有しやすいのは彼らだわ」

天測士「忍者にも剣士術士に声かけはしてもらった」

天測士「一隊で出来ることに限界があるなら、まずは二隊からよ!」

狩人「……竜に襲われたら、嫌でも認識を共有すると思うんだけどなぁ」

天測士「全滅してしまったらどーすんのよ」


――さぁぁぁぁ……。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:15:57.25 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「御覧なさい、雨が降ってきた」

天測士「これから数刻を待たずして、雨足は強まり、黒雲が押し寄せてくる」

天測士「その波に沿うようにして、竜が現れる」

天測士「私たちは行動すべきなの。そして、周りを説得するという手段は、もう使い終わってしまった」

三人『……』

天測士「……ふ。怯える必要はないわ」

天測士「竜と対峙した時ですら、私たちは切り抜けてきたわ」

天測士「たとえそれが、何らかの犠牲を必要とするものであっても、作戦を遂行できたのは私達よ」

斧使い「ま、リーダーを信用してなくはないさ」

狩人「別に、文句言いたいわけじゃーないし」

天測士「わかってるわ」

占い師「……ごく」

天測士「覚悟を決めるの。あらゆる困難を乗り越えることなど、私達にかかれば簡単よ」

占い師「はい」

斧使い「ん」

忍者「ですな」シュタッ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:16:23.24 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「来たわね、忍者」

忍者「つい先程。剣士、術士へも伝達を行いましたゆえ」

斧使い「おおー、ご苦労さん」

狩人「いよいよだけど、ここから脱出する方法がね」

忍者「ああ、それでは」ヒュパッ

占い師「また消えちゃいました〜」

忍者「はい」ヒュタッ

狩人「戻ってきたよ」

忍者「……人払いも済ませました。今のうちに脱出するのがよろしかろう」カチャリ

斧使い「本当に、なんでも出来るんだな」

忍者「ははは。この程度は、基礎も基礎ですよ」

狩人「恐るべしニンージャ」

天測士「よし、じゃあ、行くわよ! 寮で各自の荷物をまとめてきましょう!」

三人『おー!』

忍者「ふむ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:16:49.18 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「ああ、忍者には伝えてなかったわね。私たちは学園を離れて、バッチリ活動するつもりよ」

忍者「……なるほど」

狩人「もうここで閉じ込められているばかりじゃ駄目だしね」

忍者「しかし、それでは学園を辞めるということに……」

天測士「んー……まあ、そうなるかもしれないわね」

斧使い「現に、学園が竜に襲われるって出てるしなぁ」

忍者「そういうことであれば、私はここで隊から別れなければなりますまい」

占い師「ええっ」

天測士「……どうして?」

忍者「私は学園の生徒ですので」

斧使い「いやいや、俺たちゃさっきから閉じ込められていたんだぜ」

忍者「……」

天測士「なんなの? この学園に未練があるとか、そういうこと?」

忍者「そうではなく……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:17:20.65 ID:MZhlkD9Go<> 忍者「まあ、密命というわけでなし、お伝えしてもよろしいでしょう」

天測士「うん」

忍者「私は、忍者の里に所属している構成員の一人です」

忍者「学園に入ったのはその里からの指令なのです。学園をさぐれ、と」

忍者「したがって、命令の変更がない限り、学園の教育プログラムを受け入れることになっておるのですな」

天測士「閉じ込められてもそれで良い訳!?」

忍者「それがプログラムの一環であれば」

天測士「あ、あんた……」

斧使い「なあ、忍者。お前は俺達と指令のどっちが大切なんだよ」

忍者「指令」

狩人「だめだこりゃ」

天測士「忍者、ちょっと柔軟に考えるのよっ」

忍者「と言いますと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:17:47.66 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「あのね、あんたの、その里が出した指令の意味を考えるのよ」

忍者「意味?」

天測士「指令ってのは、学園を探れ、そのために教育プログラムを受けるってことなんでしょ?」

忍者「ですな」

天測士「学園を探るのが上位命令なら、追い込まれて学園を辞めざるを得なくても、目的は達成できるはずよ!」

忍者「……」

占い師「でも、学園を一度離れるのよね〜?」

忍者「それはちょっと」

天測士「だ、だからぁ! 作戦でも学園を離れてたでしょ!?」

忍者「ふーむ。そういうものですかね」

天測士「そういうものよ!」

斧使い「忍者。こいつは、学園側が俺たちに対して挑戦しているも同然だ」

狩人「そうだよ、むしろ学園を探るチャンスだと思わないと」

忍者「常に探っておりますが」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:18:20.39 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「そ、それなら、ちょっとくらい離れててもいいじゃない!」

狩人「……ちょっと待った」

忍者「は」

狩人「常に探っているって、どういうこと? どんなことを探ってたっていうの?」

忍者「学園の教育計画や、各国との交流ですな」

斧使い「地味だな」

忍者「竜の情報もありましたよ。竜の餌付けに関する」

四人『……』

狩人「あのさぁ……」

天測士「餌付けって何?」

忍者「竜の飼育です。薬物と魔法を併用して、魔物を操る術を竜に応用して――」

天測士「どういうことよっ!?」

忍者「そのままの意味ですな」

斧使い「早く言え、それを!」


    \ガァァァァァァアアアアアアアア/ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:18:46.46 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「だああああああっ! 近づいてきた! 時間ない!」

斧使い「ち、ちょっと待て! 竜を操ってるなら、こっちに来ても襲うってことにならないんじゃ……」

天測士「私の天測では襲われること確実なのよ!」

占い師「わ、私の占いも、未来真っ黒で〜」

狩人「待ってる暇はないよ。どうするか決めないと!」

忍者「どうしますか」

斧使い「どうするもこうするも、逃げるんじゃないのか」

狩人「僕も、逃げる気満々なんだけど……」

天測士「……決めたわ」

天測士「七番隊の作戦――『学園の謎を暴け』! 作戦を遂行するなら、忍者も文句ないでしょ!?」

天測士「何しろ、戦隊として実習をしているんだからね!」

狩人「自分で作戦を作っちゃうのかー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:19:12.70 ID:MZhlkD9Go<> 天測士「……竜を出し抜く、情報を集める、脱出する、しかるべき組織に情報を売っぱらう!」

斧使い「じゃあ、脱出してからでも――」

天測士「ダメよ、竜に校舎ごと吹っ飛ばされたら、何にも残らないじゃない」

天測士「忍者、あんたの言う情報の証拠、集めるのよっ!」

忍者「承知しました」

斧使い「こ、この状況で、か!?」

天測士「ふ、ふふふ。今まで誰のおかげで生き残れたと思っているのよ……」

天測士「あんたたちが暴れたりないって言うから、やってやろうってのよ!」

天測士「総員、戦闘準備! 目標、職員室!」

四人『おー!!』

天測士「我が天測と予言の前には、あらゆる困難など、簡単なことよっ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:19:42.06 ID:MZhlkD9Go<> >八番隊。展望塔。

――どざあああああああああ!

短パン「……うぬぅぅぅ」

僧侶「何を唸っているの?」

短パン「おっ僧侶か!!」

僧侶「あまり大きな声で呼ばないで」

短パン「はっはっは! 僧侶は照れ屋だなぁ!」

僧侶(……悪人じゃないんだけど、うざい)

短パン「見ろ、この大雨」

僧侶「はあ?」

短パン「七番隊の連中の言っていたことだよ!」

僧侶「大雨と共に、竜が来る……ですか?」

短パン「そうだ。あっさりと捕まった割に、様子を見に行ってみたら大騒ぎをしている」

短パン「だったら、何のために捕まったのかと……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:20:07.80 ID:MZhlkD9Go<>
僧侶「よくわかりませんけどね、私は学園の要請とはいえ、同じ仲間を拘束したことが良いこととは思いません」

短パン「はっはっは! 僧侶は生真面目だからなぁ!」

僧侶「そういう問題ではないのですが」

短パン「……分かっている。確かに妙だ」

槍使い「よー、リーダー」

侍「ぬ」

短パン「おお、槍使いに侍!」

槍使い「本当に七番隊を捕まえちまうんだもんなー」

短パン「そういえば、お前は七番隊のと……」

槍使い「んー、斧使いのことか?」

短パン「うむ。お前たち、七番隊が言っていたこと、どう思う?」

槍使い「どうって……竜が来るってやつか?」

侍「ぬ」

僧侶「私は、軽視すべきものではないと思います」
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:20:33.78 ID:MZhlkD9Go<> 槍使い「俺もそう思うわ。あの場では馬鹿にしくさったけど、斧使いのとこのリーダーは……」

短パン「ああ、なんとかそくだったか」

槍使い「だろう? それに、その、なんだ……」

侍「ぬ」

槍使い「……おう。隊長ともさ、俺ら、友達だったから」

僧侶「ああ、行方不明の二十八番隊の方たちですね。竜と交戦して、という」

槍使い「うん。それを知っているのに、冗談で竜が来るなんては言わねーだろ、普通」

短パン「というかだな、確かに来てるぞ」

侍「ぬ」

槍使い「は?」

短パン「竜は来ている、そのために展望塔で監視していたんだからな!」

僧侶「ちょ、ちょっと待って下さい」

槍使い「み、見えるのか? 望遠鏡とか、なしに?」

短パン「おう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:21:06.32 ID:MZhlkD9Go<> 短パン「あの速度からすると、あと三十も数えれば到着するっ」

槍使い「た、た、大変じゃねぇか!」

短パン「槍使い、呪術士に連絡を入れてくれ! 七番隊と学園に報告をするんだっ!」

槍使い「わ、わ、分かった」

短パン「よーし、各人、武器を準備だ!」

短パン「俺も……戦闘準備に入る!」ぬぎっ

僧侶「きゃあ! やめてください!」

槍使い「うわ、またそのぴっちぴちのスパッツを……」

スパッツ「俺の必殺攻撃は、足技だ! 蹴りは突きの三倍!」ヒュオッ

侍「ぬ」

スパッツ「うん、刀も拳の三倍段、だったか?」

侍「さよう」

スパッツ「とにかくだ、二手に別れてまず三人は竜と戦う!!」

僧侶「戦うって、竜に勝てると思っているのですか?」

スパッツ「やってみなければ分からん!!!」


――グギャアアアアアアアアッ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:21:33.18 ID:MZhlkD9Go<> スパッツ「よし、東の方角だ、いくぞおおおおおおおおおっ」ズダダダダダッ

僧侶「ああ……一人で先行して……」

侍「追いかける」タッ

僧侶「あ、早い! 早いから!」

槍使い「すまん、リーダーの後は任せた!」

僧侶「あなたも無理なさらないでね」

槍使い「おう、楽したいからな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:22:00.80 ID:MZhlkD9Go<> ……雨雲が降りしきる中に、巨体が到着する。

竜が取った作戦とは、まさに速攻だった。建物一つにつき、三体が同時に取り付いて攻撃をしかける。
爪と頭突きで塔を挟み込むと、もう一体が炎を吐き出す。

生徒たちが息を飲んだ。

塔の中には、同じ学生がいたはず――

人間たちが反応する暇もなく、尾を振り回して焼けた塔の部分を吹き飛ばす。
あわせて、周囲へも尾撃を食らわせると、次の建物にかじりつく。


……ガアアアアアアアアア!


黒い影が、次々と飛来してくる。


「うわあああああっ!」

「ひいぃいいいいい!」

「ま、ま、魔物だ!」

「早く逃げろぉおおおお!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:22:32.04 ID:MZhlkD9Go<> スパッツ「おおー、こいつはでけ……でけぇえええええええええ!」

侍「ぬ」


竜の尾撃! スパッツは身を伏せてかわした!


スパッツ「あぶねっ」

僧侶「はぁ……はぁ……!」

スパッツ「よし、三人揃ったな!」

僧侶「そ、揃ったじゃありませんよ!」

僧侶「こんなに大きいなんて……」

スパッツ「うーん、熊くらいの大きさかと思ってたんだが、その数倍はあるぜ」

侍「ぬ」スラッ

スパッツ「待った! まずは俺がやる!」

僧侶「い、いや、もういいでしょう、こんなの、相手になりませんよ」

スパッツ「俺を誰だと思ってんだ?」

僧侶「声のうるさい変態」

侍「間違いなく」

スパッツ「おい、お前ら!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:22:58.07 ID:MZhlkD9Go<> スパッツ「ちげーよ、俺は……!」


竜の火炎放射!


スパッツ「うおっと!」

僧侶「きゃああっ!」

スパッツ「雨ん中で火炎とは、よくやる!」

侍「いや、上がる」

スパッツ「まじかよ」

僧侶「落ち着いて! 要救助者もいるんですよ!」

スパッツ「ちっ、左の方角から攻めるぞ!」

僧侶「この状況で攻めるんですか!?」

スパッツ「何が効くのかも分からん! 試してみないことには」

侍「すでに先制は相手に取られている。一矢なくば、手のつけようがない」

僧侶「そ、そんなことを言われても……」

スパッツ「……うおおおおおおおおおおおい! トカゲ共―――――――!」


……竜がこちらを振り向いた! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:23:31.75 ID:MZhlkD9Go<> 僧侶「あ、ちょ」

スパッツ「すぅ――っ」


スパッツは大きく息を吸い込んだ!


スパッツ「とまれえええええええええええええええええええええええええ!!!」


スパッツの雄叫び! 竜の動きが止まった!


スパッツ「……効くぜ! 行くぞ、侍!」

侍「承知」


……そう、スパッツの雄叫びは魔法の一種、発声魔法である。
彼は魔法と格闘を組み合わせたまったく新しい格闘技の持ち主、魔闘士だったのだ。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:23:57.68 ID:MZhlkD9Go<> 魔闘士「うおおおおおおおっ!」ゲシッ


魔闘士の攻撃! 竜の鱗に弾かれた!


魔闘士「かてぇ」

侍「ふん」ビュオッ


侍の攻撃! 竜の足に刀が食い込んだ!


侍「ぬ」

魔闘士「馬鹿、武器を放せ!」

僧侶「前、まえ!!」


竜の攻撃、魔闘士は足蹴にされた! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:24:23.89 ID:MZhlkD9Go<> 魔闘士「うおわああああああっ」

僧侶「リーダー!」

侍「退くぞ」

僧侶「ええっ」

侍「我々では手に負えない」

僧侶「それもっと早く分かりましたよね!?」

魔闘士「ぐぬっ……」

僧侶「ば、馬鹿!!」


――ぐぎゃああああああああああああ!


僧侶「ひ、退きますよ」

魔闘士「お、おお……!」

僧侶(血まみれ……こんな冗談みたいな真似で死なないでほしいわ……!) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/25(日) 00:24:50.25 ID:MZhlkD9Go<> とりあえず、今夜はここまで。

またぼちぼち更新速度を上げていきます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/25(日) 08:48:40.20 ID:LretcacDO<> やっときたか!乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/25(日) 15:38:47.90 ID:6SkBCgleo<> 待ってた超期待! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:32:01.53 ID:/4QAOA0yo<> >廊下。

剣士「……雨が止んだか?」タッタッタッ

呪術士「ちょっと……ちょっと!」

剣士「なんだ?」

呪術士「な、なんだ、じゃ、ないでしょ……!」

剣士(じゃあ、なんだよ)

呪術士「ほんとにほんとに竜が来てるじゃないの、どうするのよ!」

剣士「……これも実習だと思えば」

呪術士「冗談じゃないわよー!」

剣士「チッ。うるせーな」

呪術士「いや、あんた、どうするつもりなの!?」

剣士「お前は自分のところの隊に合流していろ。個人でやりあうには荷が重い」

呪術士「あんたはどうするの」

剣士「それこそ、関係がないことだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:32:47.32 ID:/4QAOA0yo<> 剣士(体が軽い)

剣士(魔法陣も体に貼り付けてみると、呪術印みたいなもんだな)

呪術士「ね、ねぇ、あんただってさ、命は惜しいでしょ?」

剣士「ほんとにうるせーな」


ずしぃぃん!
竜が三匹現れた!


呪術士「ひやわああ!」

剣士「……チッ」


竜の攻撃! 竜は男子寮をぶん殴った!
剣士は飛び退った!


剣士「……くっ!」

剣士(なんだ、建物を攻撃している……?) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:33:36.18 ID:/4QAOA0yo<> 竜たちはまるで「チーム」を組んでいるかのように、三匹一組で行動していた。
一体が、正面の塔を崩せば、二体目が爪で瓦礫をさらう。
そして、三体目が火炎を放ち――建物が崩れ落ちていく。

無論、学園の住人が、それを黙って見ているわけではない。
生徒たちは、竜の突然の攻撃にショックを受けていたが、誰かの大声を皮切りに、反撃を開始していた。

剣も、拳も、ろくに通らないと見るや、弓矢と魔法が持ちだされた。
柔らかい目玉の部分、鱗も爪も当たらない部分に攻撃を集中させ、強力な火炎の魔法の詠唱にとりかかる。

竜はそれらに目もくれずに行動していたのだが、次第次第に邪魔なチビどもを蹴散らし始めていた。

   生徒「くそおおお! 負けるな!」

   生徒「どんどん矢をつがえ! 諦めるなよおおお!」

竜の尾撃! 生徒たちは吹き飛んだ!


   生徒「うぐあああああああっ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:34:05.83 ID:/4QAOA0yo<> ――なぎ倒された生徒の体が宙を舞う。
その内の一つが、呪術士のそばまで飛んできて、二三度跳ねて動かなくなった。


呪術士「うわわわわっ!」

剣士「あぶねっ」

呪術士「ど、どうするのよ」

剣士「俺は最初から病室に戻るつもりだ」

呪術士「え、そうなの?」

剣士「術士を一人にはしておけないだろうが」

呪術士「いや、でも、みんな戦ってるし……」

剣士「ああー! うるせーな、お前は!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:35:06.94 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「俺に戦ってほしくないのか!? それともここで戦死してほしいのか!?」

呪術士「そ、そんなことは言ってないでしょ!?」

呪術士「ただ、あんたが自暴自棄になったんじゃないかと……」

剣士「なってない、武器が必要だから、取りに戻っただけだ」

呪術士「戦闘がどうのって言ってたじゃない!」

剣士「いざという時の話だろうが!」

呪術士「……もう、心配して損した」

剣士(隊長じゃねぇけど、本当にこういうやつはウザい)

僧侶「……呪術士!」

呪術士「あ、僧侶!」

剣士「……チッ」

魔闘士「……」プシュー <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:35:33.02 ID:/4QAOA0yo<> 僧侶「心配したわ、こんな状況だから」

呪術士「えーっと、なに、この惨状」

槍使い「見りゃ分かるだろー。突っ込んで、ぶっ飛ばされて、はいオシマイ」

呪術士「あああ、もう、何やっているのかしらね」

槍使い「うちのリーダーは本当に使えねぇからなぁ」

侍「同感」

剣士「……」

槍使い「あっ!? お前、隊長と同じパーティーの!」

侍「ぬ、ということは、拘束命令が出ていた」

呪術士「ちょっと待った! 今、そんな場合じゃないでしょ!」

槍使い「いや、そりゃそーだけど」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:35:59.49 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「悪いけど、病室に戻るところなんだ。どいてくれ」

呪術士「あのねぇ」

槍使い「病室? 悪いけど、保健室の方角は、もう完全に竜にぼこぼこやられてるぜ」

剣士「なおさら、急ぐ必要がある」

侍「ぬ」

僧侶「待ちなさい」

剣士「ああ?」

僧侶「あなた、満足に戦えない体じゃないの?」

剣士「……つまらねぇことで呼び止めるな」

呪術士「あー、ダメダメ。彼も、うちのリーダーとは別ベクトルで話を聞かないタイプ」

剣士「一緒くたにするんじゃねぇよ」

槍使い「はははっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:36:25.21 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「大体、竜の行動を見ろ」

僧侶「こ、行動?」

剣士「おい、槍の」

槍使い「あ? 俺かよ」

剣士「竜はこっちを攻撃する気があるのか分かるか?」

槍使い「分かるわけねーだろ、そんなもん」

侍「……何か探しているようだ」

剣士「そうだ、少なくとも積極的にここの連中を葬り去るつもりじゃない」

剣士「だったら、下手に迎え討たなきゃいいんだ」

槍使い「いやいや! 建物の中に人がいるだろ!?」

剣士「……だから、自分からぶつからない限り、そうそうやりあうこともないって言ってるんだ」


その時、竜がこちらに向かって、尾撃を繰り出してきた! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:36:58.44 ID:/4QAOA0yo<> 剣士はくるりと背中を向けて、呪術士の首をひっつかんで押し倒した。
その頭上を竜の尻尾が通りぬける、もちろん、いくつかの肉をなぎ倒していったが――

呪術士の呼吸に構う暇もなく、剣士は立ち上がった。
あの夜のように、力任せに剣を振るうことも、まして首を落とすことなど到底出来ない。
彼は目を走らせて、竜の視線を追った。

三匹一組になっている竜は、こちらを見てなどいないのだ。
ただ体にたかるハエを振り払うようにして、尻尾を振るったにすぎない!


剣士(……クソが! 連中が向かってるルートに、保健室がある)

剣士(尾を斬り落とすか? しかし、今の腕では無理だ)

呪術士「う、うぐ……」

剣士(二人ほど吹っ飛んだな……)

剣士(……起き上がっているのは、槍のと刀持ちか) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:37:28.20 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「おい! お前ら!」

槍使い「お、おお?」

侍「ぬ」

剣士「動けるなら答えろ」

侍「無論」

槍使い「……うわっ、僧侶! リーダー!」

剣士「ほっとけ! それより、竜の動きを少しでも止められないか」

槍使い「お前、人のパーティーがぶっ倒れてるにそりゃないだろ」

侍「どうするつもりだ」

剣士「俺はやつらがしらみつぶしている校舎の方に行きたいんだよ」

槍使い「いやー、死んじまうぞ?」

侍「それに、やつらに生半な攻撃は通じん」

剣士「魔法は効くんだがな……」

呪術士「……げっほえほ! わ、わ、私は、大丈夫よ!」ガクガク

剣士「無理をするな。リーダーがあっちに吹っ飛んでったぞ」

呪術士「あ、あ、そう……」ブルブル

剣士「……チッ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:38:20.68 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「ほらつかまれ」グイッ

呪術士「あ、あ、ありがとう」

剣士「……」

呪術士「り、竜って、こんなに大きいものだとは思わなかった」ガタガタ

槍使い「いや、本当にな」

侍「ぬ」

剣士「でかいだけだ。確かに鱗も硬いし、まともにやり合うのは厳しいが」

槍使い「十分すぎるわい」

剣士「呪術士、お前の呪術ってのは、あれだけ大きくても効くのか」

呪術士「効かないことはないだろうけど……規模が違いすぎるから……」

剣士「……じゃあ、あそこで瓦礫に埋まってる連中を掘り起こしてやれ」

呪術士「え、あ、きゃー! 僧侶ー!」タタタッ

槍使い「あ、ちょっと!」

剣士「待った!」

槍使い「なんだよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:38:46.75 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「いいから聞け! 一矢でも報いたいだろう」

槍使い「いや……むりだろ?」

侍「何か方法があるのか」

剣士「簡単な話だ。どれほどでかい魔物でも、やつらは悪魔やスライムのような体の持ち主ではない」

剣士「目玉や、腹、急所には攻撃が効くはずだ」

剣士「……爪の間、とかな」

侍「ほう」

槍使い「いやいやいや! 飛び込めばぶっ飛ばされるだけだろ!」

剣士「ところが幸いにして、やつらはこちらを見てなどいないし、その一匹はこちらに尻を向けている」

侍「察しがついた。肛門を狙え、ということだな」

槍使い「はぁ!?」

剣士(なるほど、そりゃ盲点だった)

剣士「……穿った後に、尻尾の一撃を切り抜ける速度が必要だな」

剣士「ま、後は、ケツをつついてやるとなれば、お通じが良くなってしまうかもしれん」

侍「はっはっは!」

槍使い「本気で言ってんのかよ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:39:42.67 ID:/4QAOA0yo<> 剣士「尻尾が邪魔なら、俺が斬る」

剣士「それで、後ろから槍のがケツを突け、刀持ちはそれを見届けたら横っ飛びに槍のを抱えて逃げろ」

槍使い「いや、その……」

侍「お主に、あの巨大な尾が斬れるのか」

剣士「……斬ったら後は知らん」

剣士(俺の腕もな)

侍「リーダーは倒れている、我々が血路を開くしかあるまい」

槍使い「……ケツ路の間違いじゃねぇのか」

剣士「それこそクソどうでもいい。行くぞ! 三つ数えたら追ってこい!」

槍使い「お、おい!」

侍「槍使い、一撃を入れたら離脱、一撃を入れたら、だ」

槍使い「くっそ、マジでやるしかねーのか!」


三人は走りはじめた。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:40:15.50 ID:/4QAOA0yo<> 剣士は剣を引きずるように、駆けていた。
呪印を使わなければ、剣を持ち上げるのにも苦労することになる。
しかし、使わずとも鈍痛を伴っている腕に、これ以上の負荷をかけられるものか。


剣士(……腹を守る。両手に、剣を抱えて真正面)


前のめりに走りながら、彼は頭に「勇者の教え」を思い浮かべた。


剣士(獲物に対して真正面、だ。自分が回転する、竜尾を割くならば、横合いからだ――)

剣士(力を込めるのではなく、相手の筋に沿うようにして――)

剣士(振り下ろす!)


剣士の攻撃! ――しかし、斬撃空しく、竜のうろこに弾かれた!


剣士「チッ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:40:49.99 ID:/4QAOA0yo<> 剣士が舌打ちをした、その瞬間、何かにぶっつけられたそれを振り払うように、竜が尻尾を動かした。
剣士は尾撃を潜り抜けるように、身を伏せる。

作戦は失敗だ――振り返って叫ぼうとした、その後ろに、二人の戦士が到着する。

制止をするより早く、槍使いは、振り上げられた竜尾を睨んで剣士を追い越した。

槍使いはかつての剣士の言葉を頭に刻みつけていたのだ。
「動きが遅い」と言われてから、一撃の速度から、その判断に至るまで――
彼は剣士の刃が弾かれるのを見ていた。
が、竜の尻尾が撥ねつけるように高く持ち上がったのも見ていた。

一撃! 一撃を打ち込むことはできる!

……長い得物でも届かないと見るや、槍使いはそれを力いっぱい、放り投げた。


竜が絶叫した。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:41:26.37 ID:/4QAOA0yo<> 「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


槍使い「お、っほお!」

侍「ぬ」


絶叫とともに振り下ろされた竜尾を、槍使いと侍はすれすれで回避した。
その尾を挟んで向かい側に、剣士も転がっている。

剣士は手を振って、「病室に行く」と示した。
それを見届ける間もなく、のた打ち回る竜の影に剣士の姿が隠れてしまう。


槍使い「ああ! 行っちまいやがった!」

侍「こちらも反転しよう。急所を挿したとはいえ、致命傷ほどではない」

槍使い「まじかよ……全力でぶん投げたんだがな」

侍「命を奪うには、もう少し太くないと満足できないということだ」

槍使い「へっ、笑えねぇ」

侍「む」


……二人はかけ出した。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:42:12.20 ID:/4QAOA0yo<> >病室。

ずしぃん、ずぅぅん……

術士「……」カタカタ

術士(……方陣術は、効かなかった)

術士(いや、効いた。効いたけれど、突き破られた……)

術士(対抗できない。何もできない……)

術士「……はぁはぁ」

術士「……できること、やらなきゃ……」

術士「うあっ」ズルッ ビタン

術士「……グズッ、うう」

術士「隊長……」

術士「私、頑張ったよね……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:42:38.09 ID:/4QAOA0yo<> 術士「ごめんね……」

術士「私が、もっと頑張ってれば……」

術士「……」

   ――グギャアアアアアアアア!

術士「……」

術士「……まだ、時間あるわ」

術士「はぁ、はぁ」

術士「……方陣を、配置する」

術士(……召喚、この世ならざるものを呼び寄せる)

術士(その方法は、発声、陣、呪文、長大な構成……)

術士(発声魔法は瞬間的な効果を発揮し、方陣術は数字の組み合わせによって長期間、基本的な効果を発揮する)

術士(呪文は異世界の言葉を借りることで発動し、呪術は印と情念によって……)

術士(召喚はそのいずれもを借りる。なぜなら、強大な力を引き込み、そして帰さなくてはならないから……)

術士「……逆に言えば」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:43:12.84 ID:/4QAOA0yo<> 術士「逆に言えば、すべてが召喚術に変換できる」ブツブツ

術士「方陣術は、その逆……すべての術を数字の組み合わせに帰してしまう」ブツブツ

術士(あらゆる術の基礎・基本を、数字によって展開できるということは――)

術士(『強大な術を数字によって分解している』ということである)

  ギャアアアアア! グギャアアアアアアアァァァァ……!

術士「……」ビクッ

術士「……」

術士(……方陣を、魔方陣に変える)

術士(数字の配置によって、強大な術を『再現』する) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:43:40.45 ID:/4QAOA0yo<> ……術士は、病室に誰も来ないことに気がついていた。
校舎が端から破壊されているのは、その声と音が次第に近づいてくることで理解していた。
そしてもう、はっきりとその咆哮が聞こえるほどに、竜がこの棟に近づいてきているのだ。

術士は助けを諦めた。

そして、代わりに、彼女はこの一週間をかけて準備したものを――
つまり数百に及ぶ数字の書かれた紙を、部屋に敷き詰めだした。
魔力の込められた方陣を、素早く、そして隙間なく敷き詰めていく。

病室をまるごとひとつ、魔方陣とすることで、彼女はある術を試みようとしていた。


ずどぉおおおおおん……!


――轟音が彼女の耳にも届いた。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:44:09.05 ID:/4QAOA0yo<> 術士(まだ、来ないで)

術士(間に合わないよう……)

術士(まだ、まだ、出来上がってないの)

術士(……これが、これが終わったら、もう終わりでいいから)

術士(隊長の、ところに……)

術士「はぁ、はぁ……」

術士「ごめんね、私は、ずっと……」

術士「誰かを、犠牲にして、生きてきた」

術士「他人が、失敗するのを、眺めて……」

術士「それを助けも、せず……」

術士「良い所だけ、つまみ食い、してきた」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:44:34.88 ID:/4QAOA0yo<> ズガッ!

竜「ぐぎゃあああああああああ!」


術士「――きっと、その、報いだね」


竜の目が、ギョロギョロと中を見回す。
何かを探しているかのように、術士の姿を捉え、口を開いた。

大きな顎を開くと、その喉奥から赤い炎が――


術士「うっ……」


吐き出されなかった。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/11/27(火) 22:45:34.39 ID:/4QAOA0yo<> 今夜はここまで。

※槍使いに +アナルブレイクボーナス! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/28(水) 00:12:36.25 ID:8B/PlII2o<> 乙

変なボーナス加算すんなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/28(水) 07:33:01.09 ID:NxImVF26o<> おつ <> ◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:14:21.84 ID:gpuID6i9o<> 竜「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


絶叫とともに、竜が飛び上がった。
何か、とてつもないことが起きたのか――口内に真っ赤に膨らませた炎を空に向かって吹き上げる。
そして横倒しに身を、隣の竜に預けた。

怒りか、それにも勝る感情にか、竜が震える。

視線が逸れた。
報いなどなかった。

彼女は頭を切り替える、今、相手は動きを止めたのだ。


術士(諦めちゃ駄目なんだ)

術士(最後まで、やりきって死ぬ!) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:14:55.00 ID:gpuID6i9o<> 数字の配置がまだ終わらない。
少しクシャクシャになった方陣を拾い上げ、数字の塊を意味のある配置に置き戻す。

……一枚の正方形に配置された9つの数字、それらの配置そのものが、完全なる力の流れを意味している。
方陣術は、それを世界そのもの、あるいは世界の諸法則に見立てて、その数字を読み上げることで魔法を展開させる。
召喚術は、異世界の門を開く術、ただこの世界のみを表すものでは、表現しきれない。

術士にもっと知識がありさえすれば、方陣を、世界を拡張する術を理解し得たのだろうが、今の目標は「召喚術を自分の方陣によって再現すること」のみだった。

――敷き詰めた魔方陣が、示しているのは、それ自体は極めてシンプルな「召喚」の魔法にすぎない。
何しろそれらは、彼女の知る召喚術の工程の二三を投げ捨てていたからだ。

「召喚」と「送還」、そしてそれらを喚び出すための「代償(あるいは負担)」。
その内の「送還」「代償」を捨てているのである。

理由はただひとつ、元来この世界にいた者たちを、異世界から喚び寄せるからである。


術士「はっ、はっ、は」

術士(ドキドキする……心臓が止まらない)

術士「ええと……」

術士「すー、はー……」


   竜「ぐおおおおおおおおおおおおんん!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:15:21.94 ID:gpuID6i9o<> 術士「展開……6−1−8−7−5−3……」

術士「9−7−3−2−7−6……」


術士の展開にしたがって、魔方陣の数字が光を発していく。
まだ呼びかけに従っているのは「完全なる世界」の法則の範囲内だ。
術士は、力の領域の展開を、徐々にはみ出させる。


術士「1−8−7−7−6……」


光に気づいたのか、震えていた竜が首をもたげて付近を見回してくる。
構わず、展開を続ける。
言葉に力を込めるように、しかし、すべての数字を拾って唱えあげる。


術士(来い、来い、来い……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:18:18.50 ID:gpuID6i9o<>
光の切れ端が部屋をじわじわと侵食していく。
その総量が床全体に広がったところで、突然、光が縦に吹き上げた。
光の柱……ほどではない、強いていうなら枯れ折れた樹木のような形、である。

その光樹の「うろ」から覗きこむ、小動物のように、何かが目を光らせている。


「――見えたぞ、諸君。全員、前進」

「指図するな! おい、お前ら、出口だ!」


術士「……き」

術士「来た!」


一団が「うろ」から這い出てきた時、術士は膝をついた。
召喚術の完成である。


召喚士「越境のタイミングが最も危険なのだ」

魔剣士「お前、また俺を先頭に押し出したろう!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:18:45.71 ID:gpuID6i9o<> 召喚士「各自、武器を確認。状況は私が確認しよう」

魔法使い「ちょっと待って。本気で気持ち悪い」

召喚士「気の持ちようだけかな?」

魔法使い「なんか頭がぐるぐるするの!」

魔剣士「……どこかと思ったら、ここは学園か」

弓兵「リーダー! 竜がいますよ!」

魔剣士「ははっ、竜から逃げ出したと思ったら、ここでも竜が出てやがる。笑えねぇ」

術士「……」

召喚士「む。二十八番隊の娘か」

術士「召喚士、さん」

召喚士「隊長はどうした? 君の隊のリーダーだ。別働隊で動いていたはずだが」

魔法使い「えーと、待って。ここ、学園なのよね」

術士「隊長は……私たちの囮になって……」

召喚士「……君たちは、結局、谷には来なかったのか?」

術士「いえ、行ったわ」

召喚士「……ふむ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:19:13.54 ID:gpuID6i9o<> 召喚士「確認だ。君たちが谷を離れてから何日経っている?」

術士「八日よ」

召喚士「……ほう」

魔法使い「なによ、どういうこと?」

召喚士「我々は、八日後の学園に移動したということだよ、諸君」

魔法使い「なんですって?」

召喚士「どうやらある世界にはその世界に特有の時間が存在するというわけだ」

召喚士「これで異世界が存在を認められながら、観測に限界がある理由がよく分かる」

召喚士「つまり、何か同様のボックス的世界が隣接していたり、世界同士が重層的に広がっているのではないのでは――」

魔法使い「ごめん、要するに、それは今なにと関係があるの?」

召喚士「特に関係がない。危機を脱していないということだ」

魔法使い「……術士ちゃん、なんで学園に竜が来てるの?」

術士「分からないわ」

魔法使い「はぁぁ……とにかく、リーダー!」

召喚士「うむ。今度こそ、仕損はしないようにする」

魔法使い「お願いよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:19:39.33 ID:gpuID6i9o<> 魔剣士「数は少ないが、囲まれているな」

弓兵「どうしますか!」

魔剣士「一旦脱出、と言いたいところだが、鼻柱を斬りつけてやろう」

魔剣士「罠にハメてやるには、時間と手間がいるからな……」

魔剣士「全員、武器を構えろ! 俺をフォローしろ!」

四人『いえっさー!』


召喚士「こちらには怪我人もいる、脱出すべきだろう」

召喚士「二番隊が足止めを行うつもりだ、我々は退路の確保と補助を務める」

召喚士「二つを数えたら、行動開始。さらに拾五を数えた時点で、私が二番隊の脱出を援助する」

召喚士「何か質問は?」

三人『異議なし!』

召喚士「では、行こう。困難には正対すべし」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:20:17.46 ID:gpuID6i9o<>
――弓兵の攻撃! 竜のうろこに弾かれた!


弓兵「くっ、やっぱり、効かないか」

魔剣士「撃ち尽くすつもりでやれ! どうせろくには効かない!」


竜が大きく口を開き、息を吸い込んだ。


弓兵「ふっ……」ヒュン

竜「グモっ!」

魔剣士「よーしよし。その調子だ」

魔剣士「連中は、自分の身体に自信を持ちすぎて、弱点を隠そうという気がないらしい!」


自分の迂闊さなどを棚に上げ、魔剣士は踏み込んだ。
喉奥に小骨が引っかかったように、引きつった表情を浮かべる竜に、駆け寄る。

その手に持った剣が、急速に冷気を帯びてくる。
雨でじっとりと濡れていた地面から、氷の触手が伸びて、剣に絡みつく。
顎を押し上げるように、冷剣をぶつけると、竜の頭部が巨大な氷に包まれた! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:20:43.20 ID:gpuID6i9o<> 弓兵「やった!」

魔剣士「やってねぇ! 下がるぞ!」


言葉通りに、頭部を固められた竜は、早くも体を震わせて凍結から脱出しようとしている。


弓兵「う、うそ……」

魔剣士「だから、一発入れるだけっつっただろうが!」

召喚士「道を譲ってくれ」

魔剣士「おうわっ」

召喚士「……氷室の神、氷の世界を拡大せよ」ピシッ


召喚士は氷の息吹を喚び寄せた!
竜の頭部から上半身に、氷が張り付いていく……。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:21:56.74 ID:gpuID6i9o<> 召喚士「これでよし」

魔剣士「……おい、今のは俺の」

召喚士「ああ、君の魔剣に上乗せをしたに過ぎない。だから時を待たずして撤退してくれたまえ」

魔剣士「分かってるならいい」

召喚士「実に素晴らしい魔剣だ。君が自信を持つのもよく分かる」

召喚士「魔剣には三種類あるだろう! つまり、これは魔についてどう捉えるかということなのだが!」

魔剣士「相変わらず、うるさいやつだな」

召喚士「君にとっても有益な話のはずだ」

魔剣士「『この場では』有益じゃねぇだろ、おら、全隊! 全速で後退!」

四人『いえっさー!』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:22:23.50 ID:gpuID6i9o<> 〜〜

魔法使い「……術士ちゃん、大丈夫ね?」

術士「ええ、ええ……」

魔法使い「なんかボロボロだけど」

術士「ちょっと、怪我していたから」

魔法使い「んっ、せ」

術士「ありがとう」ズルズル

魔法使い「おたくの隊長はどうしたのよ、結局」

術士「……」

魔法使い(うあ、なんか泣きそうになってる!?)

魔法使い(ヤバイヤバイ何がヤバいって泣きそうな顔を見て興奮している私が)

術士「……大丈夫よ。私はあきらめない」

魔法使い「うん、とにかく、ま、うちのリーダーに任せとけば大丈夫よ」

術士「ええ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:23:26.38 ID:gpuID6i9o<> 魔法使い「それにしても、その、こんなところに出られるとは思わなかったわ」

術士「ええ、私が喚んだから」

魔法使い「喚んだ?」

術士「私も、聞きたいことがあるんだけれど……」

魔法使い「いやいや、八日もぶっ飛んでるなら、術士ちゃんの方がよく知ってるでしょ?」

術士「……私は、十三番隊が異世界に飛んでしまったんじゃないかって思ったの」

術士「推測は当たっていたし、ある程度、誤差があっても『召喚』できたのは良かったわ」

術士「つまり、こちらに帰りたがっているものを喚び寄せるわけだから、こちらの世界とのつながりが相当太くあって」

魔法使い「はあ」

術士「死なずに帰ってこれて良かったわね」

魔法使い「そういうのやめて!」

術士「でも、どうして、異世界に?」

魔法使い「あ〜、それ聞いちゃう?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:23:52.34 ID:gpuID6i9o<> 魔法使い「もう、本当にとんでもないわ。うちのリーダーが失敗したのよ」

術士「……」

魔法使い「竜に囲まれた! と気づいた時は数がハンパなくって、もう、谷の周りにずらーっと」

術士「それはその、大変だったわね」

魔法使い「どうも、罠を張っていた、みたいね。それで慌てて戦おうとして」

魔法使い「竜の火炎放射が来そうになったところで、召喚士が『巨大な結界を張る』って言って」

術士「失敗したと」

魔法使い「そう」

術士(それでほとんど傷ついてなかったわけね、彼女たちは)

魔法使い「……代わりに、あなた達が戦ったみたいね」

術士「ええ」

魔法使い「それで、おたくの隊長は……」

術士「竜から逃げるために、囮に」

魔法使い「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:24:19.69 ID:gpuID6i9o<> 魔法使い「まあ、まだ分からないわよ、なんとか逃げ延びてるかもしれないし」

術士「八日経ったわ」

魔法使い「……」

術士「でも、ごめんなさいね。無理やり呼び出してしまって……」

魔法使い「まあ、竜に囲まれている谷から抜けだしたと思ったら、こっちにもいるんだもんね」

術士「……谷にいた数よりは、少ないはずよ」

魔法使い「ん、まあ、でも、この校舎の感じだと……」


ミシミシと音を立てている校舎。


魔法使い「早いところ、ここからも逃げ出した方がよさそうよねぇ」

術士「ええ」


『あー、あー。マイクテスト』


二人『!』


『校内放送、校内放送、学園戦隊各隊および、全校生徒に連絡』

『緊急の作戦が開始されます。速やかに学園を脱出し――』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:24:45.39 ID:gpuID6i9o<> >放送室。

教師A「おい、まだ直らんのか?」

教師B「分からん……この手の道具は、一度壊れると直すのが難しいんだ」カチャカチャ

教師A「工兵とかがいればな」

教師B「あー、特組の。確かに、妙に機械類に強いからな」カチャカチャ

教師A「……」

教師B「……」カチャカチャ ガッガン

教師A「どうだ?」

教師B「駄目だ」

教師A「クソがっ」

教師B「まずいな。生徒を逃さないといけないんだが……」

教師A「もう手分けして避難はさせているからいいだろう」

教師B「おいおい、じゃあなんでこれを直しているんだ」

教師A「なんでもいいだろう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:25:13.51 ID:gpuID6i9o<> 教師B「かんべんしてくれ。ただでさえ人手が足りないんだ」

教師A「校内放送じゃなくて、外部との連絡が取りたいんだよ」

教師B「いや……そうは言うがな……」

教師C「おーい、Aはいるか」

教師A「すまん……」

教師B「ああ、いい。一人で何とかする」

教師A「恩に着るぞ」

教師C「早く来てくれ!」

教師A「ああ、すぐ行く」


教師C「……通信はまだ回復しないのか!」

教師A「俺に言うな! Bがやっているが、ありゃどうも無理そうだ」

教師A「そんなことより、飼育班の連中は何をやってやがるんだ!」

教師C「それだ。飼育班は全員『餌』を持って逃げ出しやがった」

教師A「なんだと!」
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:25:39.43 ID:gpuID6i9o<> 教師C「確認したが、学園長もいなくなっていた」

教師A「どういうことだ。まさか、竜がこっちに来ることまで計算に入れてたっていうのか!?」

教師C「そんなことはありえない……はずだ」

教師C「だが、聞いた話だと、お前が懲罰室にぶち込んだガキどもが、竜が来るって騒いでたそうじゃないか」

教師A「まさか、それを信じて逃げ出したってのかよ」

教師C「信じたわけじゃないだろうが……監視しているやつらがいてもおかしくないわな」

教師A「くそったれ! 俺はお前が学園長派になれば、もっと楽に生活できるっつーからついたんだぞ!」

教師C「だからって教頭派についていいことなんかあるか! 正論しか吐かない爺さんに何が出来るってんだ」

教師C「今だってあの爺さんは、指揮官気取りで職員室に陣取ってるんだぞ」

教師A「だけど、俺達はここでこうして使い捨てられ……」

教師C「あー、知らん! ガキどもと同じようにギャーギャー騒ぐな」

教師A「なんだと!」


どずぅぅぅぅぅんん……


二人『……』


教師A「もう逃げちまおうぜ」

教師C「そうだな。それがいい」

天測士「……ちょっと待ちなさい! 腐れ○ンポ野郎ども!!」

斧使い「わあああ、リーダー! 出ていっちゃダメだって!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2012/12/01(土) 22:27:30.22 ID:gpuID6i9o<> 今夜はここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/02(日) 11:01:51.42 ID:yokdaw44o<> 天測士キター! <> ◆k.6bdeNTfg<>saga<>2012/12/07(金) 22:59:10.48 ID:IkDB9BDko<> 遅れてすみません。

今夜中に投下していくよ! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:16:07.73 ID:IkDB9BDko<> 教師A「なんだ!? お前ら!」

教師A「なんでお前らがここにいる。懲罰室にいるはずだろう!」

天測士「そんなことより、聞き捨てならないことばっかりなんだけど!」

斧使い「ちょっと、リーダー……」

天測士「『飼育班』って何! 学園長派って何!」

天測士「やっぱりあんた達みたいなクソ教師が、私達を巻き込もうとしてたのね!」

教師A「……」

教師C「何のことだ? 巻き込むも何も、今、学園は竜に襲われてる真っ最中だ」

教師C「君たちも逃げたほうがいいんじゃないかな」

狩人「閉じ込めたのはお前らの方だよねー」ギリッ

教師A「おいおい、先生に向かって矢を向けるのか、いけないやつだな」

教師C「物騒な真似はやめてくれ」

斧使い「あー……」

天測士「狩人、よーく狙ってね。こいつらの証言を取って、徹底的に追い詰めてやる!」

占い師「……あっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:16:33.14 ID:IkDB9BDko<> 教師A「どうする?」

教師C「どうするも何もない。武器を向けられたんなら、相手取るもんだ」


教師たちはナイフを取り出した!


天測士「や、ヤル気!?」

教師C「……拘束命令だ。教師に武器を向けてタダで済むと思うな」

狩人「矢を向けられているのに、えらそーだね」

教師A「教師を殺すつもりなら、覚悟しろよ」

斧使い「リーダー! 早く指示!」ガチャ

天測士「……狩人!」

狩人「ちょ、二人いっぺんに」


教師は二人同時に狩人に殺到した! 的を絞りきれずに、狩人が組み伏せられる!


狩人「うぐぇ」

教師C「アマチュアに負けるかい」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:17:01.37 ID:IkDB9BDko<> 教師A「よーし、クズども、武器を捨てろ」

天測士「だ、誰が」

教師C「動けないように足を切っておくか」ズッ

狩人「うわああああ!!」

天測士「な、なにを!」

斧使い「リーダー! 抑えて、マジで!」

占い師「や、やっぱり」

斧使い「……ほれ、これでいいんだろ」ガチャン

教師C「おい、こいつら拘束しておけ」

教師A「ああ。くそ、この忙しい時に、面倒臭いことを……」

天測士「このっ……」

斧使い「だから、出ちゃダメだって言ったのに」

天測士「だって!」

教師A「うるせぇ、黙れガキども」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:17:32.65 ID:IkDB9BDko<> 天測士「……このぉっ、バーカバーカ!」

教師A「あー、うるせぇ。元々ガキは嫌いだったんだが、抵抗されると本当に腹が立つわ」

教師C「違いない」

斧使い「だったらなんで教師なんかやってんだよ」

教師A「そら、他に仕事がなかったからさ」

占い師「あの〜、それって、冒険者としては……」

教師A「あーあー、うるさい、うるさい」

教師C「宮仕えやバカな地主共の相手をするよりは楽だと思っていたんだがなぁ……」

教師A「冒険者なんぞやるもんじゃねぇ。こいつは、教師としてのアドバイスだぜ」

斧使い「自分の存在意義を全否定すんなよ……」

狩人「ひっ、ううっ……」

天測士「狩人、ごめん、我慢して……!」

教師A「……よし、これで全員ふんじばったぜ」

教師C「どうする、肉の壁にでも使うか?」

教師A「足手まといもいいところだ。無駄だ」
<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:18:37.33 ID:IkDB9BDko<> 教師C「女は使えそうだけどな。何にしても」

教師A「ああ……」ニヤニヤ

天測士「……ちょっと! 本気!?」

占い師「あっ、えっ、その〜」

斧使い「お、お前ら! 占い師ちゃんに手を出したらマジ許さん!」

狩人「……ううっ」

狩人(こいつ、リアル被害を受けてる僕には冷静に反応してたのに……)

教師A「でも、ま、それなら、どうするよ」

教師C「どっちみち、『特務』当たりに声をかけた方がいいだろ」

教師C「『飼育班』は俺らを捨て石にしたつもりなんだろうが、こっちが生き延びれば、逆に弱みを握ったも同然だ」

教師A「むしろ帝国とかの方が……」

教師C「いやあ、俺はそっち方面にツテがないから」

教師A「まあ、あそこは一人や二人じゃ相手にはしないだろうからな……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:19:05.21 ID:IkDB9BDko<> 天測士「あんた達……『特務機関』とつながってたってこと?」

教師A「……つながってたってのは正確じゃねぇなぁ」

天測士「だったらなんだって言うのよ! まさか、学園内の数人で陰謀を巡らせてたわけ?」

教師C「天測士、先生はお前のそういう決め付けが過ぎるのが良くないと思うな」

教師C「その……天測術が優れているからと言って、推測を怠っては」

斧使い「先生もまどろっこしいこと言ってんじゃん」

教師C「……分かるように言うとな、これは学園のためなんだよ」

天測士「はあ!?」

教師A「ああ、そうだ。俺らは学園のために働いていただけだ」

教師C「そうそう」

天測士「何がためだって言うのよ。竜を目覚めさせることが!?」

教師A「違ぇよ、バカ」ガッ


教師Aは天測士を蹴りつけた。


天測士「グェッ」

占い師「リーダー……!」

教師A「色気のねぇ声だな」
<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:20:17.24 ID:IkDB9BDko<> 教師C「あのね、先生たちはお前たちのことも考えていたんだよ」

教師A「ああ、そうそう」

天測士「ゲホッ、ぐほっ……」

天測士「ど、どこが……私たちのためだって言うのよ……」

斧使い「後学のために、教えてもらいたいもんだ」

教師C「勉強熱心だな。普段もこうだと嬉しいんだが」

斧使い「そんなに褒められると照れるわ」

教師A「褒めてねーよ」

斧使い「あ、あと、リーダーはいいから、占い師ちゃんに触るな!」

教師A「……」


教師Aは斧使いを無言で蹴り飛ばした!


斧使い「ぬぐっ」

天測士「あんた……後で、覚えておきなさいよ……」

教師C「ま、いいだろ。どうせここにいたら、竜に踏み潰されるんだし」

教師A「なんでもいいけどよ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:20:49.83 ID:IkDB9BDko<> 教師A「……元はといや、竜の生き残りが見つかったのが始まりだ。調査でな」

教師A「で、学園ではさっさと退治しようかとも考えたんだがな」

斧使い「飼ってみようって言い出したのか」

教師C「そういうことだね」

教師A「冒険者の頂点といえば勇者だ。その最大の功績が竜退治」

教師A「生徒に箔を付けさせるために、これを卒業試験としても考えていたんだ」

教師C「まあ、実際のところは、洞窟探索も苦労するような生徒ばっかりだったから……」

教師C「飼育で数を増やしたり、行動を制御したりすることはできたけど」

天測士(できてないじゃない!)

占い師「そ、それがどうしてこんなことに……?」

教師A「財政難だよ。ちったアタマを使え」

斧使い「どう繋がるんですかぁ、先生」

教師A「うぜぇ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:21:47.38 ID:IkDB9BDko<> 教師C「大体、冒険者の技術が陳腐化して、旧時代の産物になりつつあることが問題だった」

教師C「街道が整備されれば、馬車が流行れば、遺跡が観光名所になれば……冒険探索はだんだんと要らなくなる」

教師C「卒業生も宮仕えが増えた。それを改善するために……」

天測士「竜を使おうって話になったわけ!?」

教師C「……話を遮らない。いろんなテコ入れを行ったわけだ。もちろん『学園戦隊』もテコ入れの一つだ」

教師A「『討竜戦隊』をあやかったわけだ」

教師C「だが、決定打になったのは、帝国がいよいよ軍隊を作る準備にかかり、学園への寄附が大幅に減ることがはっきりしたことだ」

教師A「じゃあ、どうするよ?」

天測士「竜を……」

教師A「竜じゃなくて、お前らだったらどうやって学園を立て直すかってことだ」

四人『……』

教師C「簡単に言うと、学園長は、学園自身が『軍隊に匹敵する部隊を抱えればいい』って考えたわけさ」

天測士「……はぁ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:23:26.72 ID:IkDB9BDko<> 教師A「元々学園戦隊が、冒険者の卵をパーティーに編成して、様々な依頼を受けるようになっている」

教師C「学園と特務機関と連携して、依頼を受注、レベルに応じて振り分ける体制を作るってわけだ」

教師A「もちろん、プロの仕事を受ける力量がない部隊には、学園内の草むしりからやらせるが……」

斧使い「つまり、俺らにゃ力量が……」

教師C「なかったねぇ〜……想定以上に学園戦隊は、プロ以下の学生が多かった」

教師A「だが、これを延長すれば、学園を通じてプロの冒険者集団として金を稼ぐことが出来る部隊の出来上がりだ」

教師A「それだけじゃなく、複数の部隊が学園出身のパーティーとして、太く結びついていれば、傭兵集団にもなりうる」

天測士「……バカらしい! そんなの、個人個人の意思があるし……」

教師A「だから、集団で長期に実習をさせて、結びつきを強めるんだ。失敗したところは解散するが、結束力が高まればしめたものだ」

教師A「個人で職を探すよりも楽だし、気心が知れているから働きやすい」

教師C「もちろん、契約は結ぶ。だが、君たちだって、地元に帰ったり、別の場所に就職するより、今のパーティーが続けば、って思っただろう?」

天測士「……」

教師C「無論、思っているだけじゃ駄目だ。そのために、先生たちは厳しい試練を……」

天測士「いやおかしいでしょ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:24:39.29 ID:IkDB9BDko<> 天測士「それが竜とどう絡んでくるわけ?」

天測士「あんた達の建前はよく分かったけど、それが全然つながってこないじゃない!」

教師A「……」

教師C「……ま、いいだろ。話しても」

教師A「簡単な話だ。『軍隊に匹敵する冒険者』を具体的に認めさせるにはどうしたら良いか?」

天測士「そっ……! それが竜退治ってわけ!?」

教師C「元は卒業試験に組み込むはずだったんだけどね、どうも見学会で特使の方々がお前たちに失望されたらしくて」

教師A「もちろん、レベルの低さの懸念はあったが、まあ、その保険として一番隊の用意もあった」

教師C「……もっとも、四隊もぶっつければ、どうにかなると思っていたんだがなぁ。結果は最悪だった」

斧使い「おいおい、俺達が弱かったのが悪い、みたいな言い草だな」

教師A「事実だろうがよ、そのくせ、アホみたいな理由で怒鳴りこんできて」

天測士「ぬぐぅ〜」

占い師「じゃ、じゃあ、どうして最初から竜だって教えてくれなかったんですか!?」

教師A「学園が竜の存在を予め知ってましたじゃ、大した成果に思われないだろう。それじゃ困るんだよ」


  \ぐぎゃあああああああ!!!!/


教師C「……どうやら、向こうもいよいよお冠だな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:25:06.46 ID:IkDB9BDko<> 教師A「よし、お前と、お前はついてくるんだ」

天測士「ちょっ……!」

占い師「ひゃわわっ」

教師C「抵抗するなよ」

斧使い「てめぇ! 占い師ちゃん! とリーダーを離せ!」

天測士「斧使い! あんたは後でぶっ飛ばす」

教師A「黙ってろ」ゴンッ

天測士「ぐげぇ」

教師A「……お前らは本当に自分勝手だよな。アレはいや、これも不愉快」

教師A「その上、自分達の未熟さを棚に上げて他人だけは批判する」

隊長「そうですよねぇ」ニコニコ

教師A「やることをやりきってから言ってもらいたいもんだ」

隊長「まったく」ニコニコ

…………

斧使い「おまっ!」


隊長の攻撃! 教師Aの尻穴に鉄棒を突っ込んだ!!!


教師A「あーーーーーーーっ!!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:25:33.28 ID:IkDB9BDko<> 教師A「ひぃっ、ひぃっ」

隊長「先生、二十八番隊、隊長。以下三名、只今戻って参りました」

教師C「お、お、お前っ!」

隊長「あ、下手に身動きするとごりごり削れちゃいますよ」

教師A「ふぐぐぐっ、ぐぅぅぅ〜……」フルフル

隊長「それとその……新型の武器になってまして、先端部分が爆雷管を仕込んであるものなんです!」

隊長「取っ手を引くだけで、ぼおん!」グイッ

教師A「やめろおおおおおおおっ!!」

隊長「はははっ、今のは安全装置を外しただけですよ」

教師C「お前、どういうつもりだ! 教師にこんなっ……」

隊長「人間に試すのは初めてなんですよ。どのくらい体が弾けるのかなぁ。腹が爆発するくらいなら大丈夫だけど」

隊長「さすがに下半身が吹き飛ぶほどなら、俺も無事じゃ済まないだろうしなぁ」

教師C「!!」

教師A「ひいっ、やめ、やめろっ!!」

工兵「お腹が焼けるくらいだよー」ヒョイ

隊長「なんだー、なら、全然余裕だな」

『!!!』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:25:59.99 ID:IkDB9BDko<> 工兵「それより、隊長、放送室の機械直ったけどー?」

隊長「んじゃあ、そこにいる先生を拘束してくれ。敵みたいだから」

教師C「き、君たち……!」

占い師「あうっ」

教師C「ち、近づくなよ! こちらにも人質がいるんだから!」

工兵「まとめて貫こう。いいよね、隊長」

隊長「……また新型の武器か? 別に構わないけど」

斧使い「良くねえよ! 占い師ちゃんに! 手を出すな!」

教師A「お、お前、おま、お前……!」ハァハァ

隊長「よくまあ、こんな状況でべらべらおしゃべりしてくださって」

隊長「でも、俺はもうちょっと疑問があるので、もうちょっと聞きたいことがあるんですよね」

隊長「分かりますよね? 先生」ニコニコ

教師A「……ぐぐぐ」ハァハァ

教師A「くっ、けっ、爆雷管……だと! そんなもの……ハッタリだ! 爆雷管は、一定の大きさを持っていて……」

隊長「尻穴に入るほどじゃないって?」

工兵「隊長! 僕、人のお腹で爆雷管が爆発するのを見てみたいな〜!」

隊長「……しょうがないな。ちょっと待ってろ」

教師A「ま、待った! 待ってくれ!」
<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:26:26.27 ID:IkDB9BDko<> 隊長「……」

救護員「……もー、隊長! こんなところに!」

隊長「救護員。けが人がいるから、頼む」

救護員「は、はいはい! がんばりますよぉ」

狩人「う、あ、ありがとう」(忘れられるかと思ってた)

救護員「足をバッチリやられてますね、こういう時は添え木と……」

教師C「……おい、聞いているのか!」

隊長「……」

教師C「君だって、お姉さんの顔に泥を塗りたくはないだろう、教師殺しなんて言う汚名を……」

斧使い「隊長! 占い師ちゃんと、そいつを交換してやるんだ!」

隊長「……」

天測士「ちょ、ちょっと待ちなさい! そもそも、あんた生きてて」

工兵「隊長、先生(B)が呼んでたけど」

隊長「ああ」

占い師「ああああの、私は、べべべ別に〜……」

「隊長!」 「君!」 「たいちょー!」


――隊長はズルリと教師Aから鉄棒を引き抜くと、機雷を爆発させた!


『……』

隊長「一人ずつ喋れ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:26:56.42 ID:IkDB9BDko<> 隊長「うるせぇよクズども。全員自分勝手にしゃべんな」

天測士「あの……キャラ変わって……」

隊長「口を開くな。頭を吹っ飛ばすぞ」

工兵「隊長、いきなりそれは引くよ〜」

隊長「……ああ、悪かったね。で、じゃあ、最初に先生に言っとこうか」

隊長「占い師を放してやってくれませんか。そうしたらC先生は見逃しますから」

教師C「……!」

隊長「今のショックでA先生は気絶しちゃったんで、一人いれば足りるんで」

教師A「」シーン

教師C「君ね……」

隊長「一人で十人相手にしたいなら構いませんけど。俺は解放しないならしないで、あんたの頭を吹っ飛ばすだけですし」

教師C「……あー」

隊長「早くしろ。時間がない」

教師C「ふ、ふん。それが君の本性ってわけかな」

隊長「本性の一つですよ。ね、先生?」ニコリ

教師C「……チッ」タタッ

隊長「…………ふー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:27:22.37 ID:IkDB9BDko<> 隊長「次だ。天測士」

天測士「あ、あんたねえええええっ! こっちは心配したのよ!」

隊長「分かった、けどどうしようもなかっただろ」

天測士「そういう問題じゃないわよ!」

隊長「どういう問題だよ……」

斧使い「『無事で良かったぁ(;∀;)』を素直に言えない乙女心だよ」

天測士「う、うるさい!」

隊長「積もる話は後回しだ。剣士と術士の居場所を知らないか?」

天測士「……知らないわ。忍者を通じて、竜が来るとは伝えたはずだけど」

隊長「忍者! 彼はどうしているんだ?」

天測士「職員の、ネタになりそうな書類とかお薬とかをまとめて物色中」

隊長「なるほど……じゃあ、大荷物で脱出するって感じかな」

天測士「それは分からないけど……とにかく、こちらとしては、忍者が見つけられるもの以外に、何か証拠がないか探していたんだけど」

隊長「……それはいいが、直にここも竜に吹き飛ばされるぞ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:27:51.68 ID:IkDB9BDko<> 天測士「わかっているわ。何しろ、ここに来る竜は九体」

隊長「……そのとおりだ。三頭一組で、いま三組来ているからな」

天測士「もう、建物もかなりまずいことになっているわ」

隊長「だったら、もう脱出しておいた方がいいよ」

天測士「それは、そうだけど……」

隊長「こいつは証言者になるだろう。ケツ穴がイカれたら、大体の男はなんでも話すようになるし」

天測士「そういうもんなの……?」

隊長「……こういう時に冷静にならないでくれ」

隊長「とにかく、こいつを連れて脱出しろ」

斧使い「つったってよ、どこに行けばいいんだ?」

隊長「西の方に合宿所があっただろ。学園の対策本部もそこにすべて移すように、校内放送をかける」

工兵「あー、それそれ、B先生が、隊長当たりに校内放送を入れてくれって……」

隊長「はあ? なんでだよ」

工兵「うーん、でも、直すだけ直したら行っちゃってさ――」

隊長「……はぁー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:28:51.90 ID:IkDB9BDko<>
隊長「そういうわけだ。悪いけど、また後で」

天測士「ん、まー、仕方ないわね! 合宿所に移動するのは、私に任せておきなさい!」

隊長「ああ」

天測士「くふふっ、ま、私にかかれば脱出など簡単なことよ!」

隊長「はいはい」

天測士「……生きててホッとしたわ」

隊長「もう少しこの場にいないと行けないから、全然ホッとできねぇ」

天測士「大丈夫よ! 多分」

斧使い「おい! 隊長」

隊長「……ん?」

斧使い「ったく、こんなタイミングで帰ってきやがって」

隊長「学園に生存を報告するのも危ういかな、と思ってさ」

斧使い「……全くお前らしいわ」

隊長「いろいろ頼むよ」

斧使い「頼まれた! お前も死ぬなよ」

隊長「まあな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:29:59.12 ID:IkDB9BDko<> 工兵「……あ、天測士さん」

天測士「な、なに?」

工兵「前から、その天測機って前線地域じゃ役に立たないと思ってたんだけど」

工兵「じゃじゃーん! コンパクトサイズに腕時計型に観測記録を付けられるのはどうだろう!?」

工兵「前から、その、砂をこぼしたこぼれ方とかなんとかで調べるのって時間が足りないと思ってさ」

天測士「……余計なお世話よ」


救護員「じゃあ、担ぎますよー、えい」

狩人「うーわ、ありがとう」

狩人「……久しく言って無い気がするなー、こんな言葉」

救護員「何言ってるんですか!」

占い師「あ、私、担ぎます!」

救護員「いや、大丈夫ですよ」ヒョイッ

二人(どんだけ体力があるんだ……?) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/07(金) 23:31:03.94 ID:IkDB9BDko<> 放送室。

隊長(……やれやれ)

隊長「まあ、校内放送をかければ、剣士や術士も、俺の存在が分かるはず、だ」

隊長「あーあ、あー」

隊長「……よし」

隊長「あー、あー。マイクテスト」

隊長「校内放送、校内放送、学園戦隊各隊および、全校生徒に連絡」

隊長「緊急の作戦が開始されます。速やかに学園を脱出し、西の合宿所へ向かうこと」

隊長「繰り返します」

隊長「校内放送、校内放送、学園戦隊各隊および、全校生徒に連絡」

隊長「緊急の作戦が開始されます。速やかに学園を脱出し――」 ゴギン

隊長「……」

隊長「あー、どうやらやられちまったようですなぁ。スピーカーが」

隊長「放送担当は、学園戦隊二十八番隊に所属する、隊長でした」

隊長「さて……」


ガリッ!!


隊長「もう見つかってしまったわけだな」


竜の瞳が、放送室をのぞき込んでいる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/08(土) 08:00:47.19 ID:CZva4ro4o<> くはー、いいトコで!

乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/08(土) 14:15:50.86 ID:Y5Yx5BaDo<> 乙 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:55:52.50 ID:sHLZ+QIbo<> 竜「ぐるるるるる……」

隊長「……?」

隊長「……いきなりは、攻撃しない?」

隊長「はーい、そこぞのドラゴンさん」


―――「ぐぎゃあああああああああ!!」

隊長「おっ」ビクッ



隊長(……竜の行動を思い起こせ。やつらは何をやっているのか?)

隊長(もう一つは、やつらの行動の様式だ)

隊長(ひとつは分かる。何かの目的でもって、校舎を破壊している)

隊長(俺たちを皆殺しにするという気はなさそうだ。人間を目標に掃討作戦をやっているわけじゃねぇし)

隊長(要するに、俺らを害虫とは見ても、対等な敵とは認識していないわけだわな)


竜はふるふると首を左右にすると、硬い顎で屋根を突き上げた。


隊長「おう」

工兵「隊長、大丈夫?」ガラッ

隊長「来るな、馬鹿」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:56:25.75 ID:sHLZ+QIbo<> 工兵「なんだ、せっかく直したのに壊しちゃったのか」

隊長「俺じゃないからな?」

工兵「知ってるよ。ううん、あれ結構傑作なのに……竜は野蛮だねぇ」

隊長「そういうことだ。幸い、スリッパで叩いてきたりはしないようだから、とっとと部屋を出てしまおう」

工兵「僕らはゴキブリかなんかかいな」

隊長「うーん、俺はあいつらが、こっちをそういう風に見ているんじゃないかと思うんだわ」

工兵「……」

隊長「他の連中は?」

工兵「おー、七番隊、と救護員はあの先生を抱えて脱出したよん」

隊長「よし、そうしたら、病室のある棟に回ろう……」

工兵「……あ! 隊長!」


隊長が振り返ると、三頭の竜が一斉に火炎を口に溜めている!

二人は転がるように、放送室の扉から脱出した。


隊長「逃げるぞ!」

工兵「了解!」

\ギャアアアアアアアアア!!!/


工兵「ひぃー、背中が、焼けそう!」

隊長「走れ、振り向くなよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:56:55.10 ID:sHLZ+QIbo<> 二人が放送室を飛び出した途端、メキメキと音を立てて部屋が崩れだす。
火炎に焼かれた、というよりは、炎の質量に押し負けて壁を潰されたような感じで――

爆ぜる炎に後押しされるように走って右手に折れる。
窓を見やると、放送を聞きつけたのか、バラバラと生徒たちが逃げ出していく。

職員室の、いわば本営も、いよいよその校舎が破壊に回られたということだろう。
生徒に混じって教師たちの姿もちらほらと見える。

竜たちは、爪で、焼けた校舎をさらいながら、互いに咆哮を投げ合っている。
なおも戦いを続けようとする生徒たちに、頭を高くしながら息を吸い込み、一挙に火炎で――

工兵の義腕と隊長の棒付き機雷が、カチッと何度か触れ合う。
燃える学園の中で、影がめちゃくちゃな形に揺れる。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:57:21.62 ID:sHLZ+QIbo<> 隊長「……はっ、はっ」

工兵「ふっ、ふっ」

隊長「あのな、その」

工兵「な、なに?」

隊長「あいつら、どうも、知恵をつけてやがるっ」

工兵「そ、そー」

隊長「三頭がっ、三組、九頭っ」

隊長「集団で、行動して、下手くそだが、チーム戦闘をしているっ」

工兵「だ、だから、なにっ?」

隊長「指揮者がいるはずだっ!」

工兵「はあ!?」

隊長「チーム行動を取るということはっ、リーダーがいるんじゃないかっ」

工兵「ああ、そういうっ」

隊長「頭を潰せば……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:57:49.20 ID:sHLZ+QIbo<> 工兵「頭はどれで、どうやって潰すの?」

隊長「……」

隊長「……まずいな、病室のある方って……」

工兵「はーっ、はーっ」

工兵「……南棟はもう潰れてるよね」

隊長(どうする? 優先すべきは自分の仲間だ)

隊長(だが、この混乱の状況で、見つけ出せるのか?)

隊長(竜を撃退するのは……いや、いかにも無理臭い)

隊長「……めんどくせぇな、ホント」

工兵「隊長って、急にふいっとそういうこと言うよね」

隊長「当然だろ、俺だって人間なんだ」

工兵「そういうことじゃなくて……」

隊長「工兵、救護員と一緒に先に脱出してくれないか」

工兵「冗談でしょ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:58:40.67 ID:sHLZ+QIbo<> 隊長「ここは危険だろ。俺は、二人に対しては責任があるし」

工兵「僕らにだって責任はあるはずだよ」

隊長「そうだ。だから、安全策を取りたい」

工兵「ここまで来て安全策もクソもないじゃん」

隊長「……御者さんが待ってくれていく刻限もある」

工兵「だったらなおさら! 一人で探せるとは思ってないでしょうが」

隊長「そうだな……」

工兵「しっかりしてほしいわ。隊長は落ち着けばちゃんと出来る人なんだから」

隊長(この野郎、なんか調子に乗ってねぇか)

工兵「あ、今、イラッとしなかった?」

隊長「した。すごくしたから、俺からも一言いっていいか?」

工兵「いいよ」

隊長「工兵は無神経で時々ウゼェ」

工兵「……あっ、傷つくわー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:59:22.63 ID:sHLZ+QIbo<> 救護員「隊長おおおおおお!」

隊長「あー、はいはい、どうしたの」

救護員「どうしたじゃないですよ! 放送室が吹き飛んで!」

工兵「うん」

隊長「それより、あのクソ教師と七番隊は」

救護員「押し付けちゃいましたー」

隊長(……こいつも大概適当だわな)

隊長「分かった。そうしたら、まずパーティー編成……」

工兵「そんなことをしている暇があるの?」

隊長「ある。理由は二つ」

隊長「冷静に判断してみれば、だ。竜の攻撃目標は、学園の校舎にある」

隊長「やつらが俺たちを眼中に入れていないことは、どう考えても明らかだ」

救護員「ええーっ! だって、みんな……」

隊長「こっちが抵抗しているからじゃないかな。逃げる生徒には目もくれていない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/17(月) 23:59:56.06 ID:sHLZ+QIbo<> 隊長「もう一つ、あの二人のことだが……」

隊長「七番隊の話によれば、脱出を勧めたらしい。もう脱出しているとしたら、ここにとどまる意味はないが」

隊長「怪我が長引いているそうだ。だから、動けなくなっている可能性は高い」

商人「……じゃあ、もうやられちゃったんじゃないの?」

救護員「はあっ!? ふざけるのも大概にしてくれますか?」

隊長「商人、まだ残っていたのか」

商人「男子寮女子寮、まとめてお陀仏だわ。寮の荷物も壊滅よ……サイアク……」

隊長(クソがっ、秘蔵のエッチな下着とかもやられたか)

隊長「だったら、西の合宿所に脱出した方がいい」

商人「そうさせてもらうわ。ただ、あの、なんだっけ、七番隊の」

隊長「天測士?」

商人「違うわ。地味な顔をした、素早い……」

隊長「忍者か」

商人「そう。彼に、ほら、これ渡されて」

隊長「……なんだこれ。ボール?」

商人「『ドラゴンペレット』ってやつね」

三人『ドラゴンペレット?』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/18(火) 00:00:23.03 ID:qgTkgCYXo<> 商人「竜の餌よ」

隊長「ほおう……」

救護員「これで餌付けしろってことですか?」

商人「バカ?」

救護員「隊長! この、この女、殴ってもいいですよね、ね!」

隊長「いや、餌付けって手はありうると思うけどな」

商人「……馬鹿?」

隊長「要するに、そういうことだろう? 学園の暗部ってわけだ」

商人「ま、そういうことね。私も一人じゃ正直、持ち切れないから、渡しておくわ」

救護員「え? え?」

工兵「なるほどー、竜は腹ペコだったのか」

隊長「……そういう考え方もありうるな」

隊長「商人、他にはなかったか。その、俺達のパーティーについてだ」

商人「うーん、あ、忍者が、剣士については、見たって……」

隊長「どっち方向で?」

商人「学生寮の辺りで」

隊長「……ふむ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/18(火) 00:01:00.81 ID:qgTkgCYXo<> 隊長(剣士の動きを想像してみよう。学生寮に荷物を取りに行って……)

隊長(脱出したとは思われない。竜と戦っているとも思わないが、術士を助けるとしたら……)

隊長(無論、さっきの放送を聞いているとしても、この方角からすると――)

隊長「……南門だな」

工兵「南門って……馬車の方じゃないよ」

隊長「二人は俺たちが来ているかどうかなんて知らないからな。商人!」

商人「分かったわよ、南門に移るように」

隊長「いや、そのまま合宿所へ脱出してくれ」

商人「はぁ? いいの?」

隊長「俺達の脱出を待っていたら、竜が壊すものをなくなって、こっちに興味を持ち出すかもしれない」

隊長「そういう意味では少し時間がない。よろしく」

工兵「時間稼ぎなら……」

隊長「うん?」

工兵「いや、要は破壊活動して捜し物をしてるんでしょ」

工兵「だったら、いかにも何かありそうな硬ーい箱がさ、あるんだよねー。技術室に」

工兵「僕が作ったんだけど、すっごく重いから、動かすのはアレなんだけどね」

隊長「なるほど。ここには、竜の餌がある」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/18(火) 00:01:26.93 ID:qgTkgCYXo<> 隊長「商人」

商人「わ、分かったわよ! その代わり、やばそうになったらすぐ逃げるからね」

隊長(今も危険なんだが、感覚が麻痺してんのかな)

隊長「ありがとう、よろしく頼む」ニコ

商人「はぁ……引き際の分からない商売人なんて、三流以下ね」


隊長「……よし」

隊長「二人とも、急いで移動するから、俺が先頭だ」

救護員「は、はい!」

隊長「で、あの時みたいに縦列隊形。後ろは工兵」

工兵「おっけー」

隊長(時間もそうだが、後は体力勝負ってのもあるな)

隊長(……剣士も術士も、俺を恨んでるかな)

隊長「……」

救護員「隊長?」

隊長「ん、行こう」

隊長(俺は、全部受け止める責任がある) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/18(火) 00:02:22.45 ID:qgTkgCYXo<> とりあえず今夜はここまで。
遅筆ですみませんです… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/18(火) 00:12:50.59 ID:hyntVML0o<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/18(火) 17:53:20.31 ID:sntRUvKgo<> 乙 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2012/12/19(水) 21:06:46.74 ID:YHmP6YuEo<> >南棟(病室のある校舎)。

術士「はぁ……はぁ……」

魔法使い「ちょっと、無理しちゃだめよ」

術士「だって、隊長の、声、だった!」

魔法使い「はいはい、わかったから」

術士「に、西、西に行くわ!」

魔法使い「ストーップ! まずは校舎を出ないとどうにも……」


   召喚士「渡り廊下へ飛び込め! 二つを数えて伏せろ!」


魔法使い「……! ちょいやー!」ダッ

術士「あぐっ」ずざざざーっ


魔法使いが術士を抱えて前方へタックルを仕掛けた。
押し倒すようにして飛び込んだその後ろで、爆発が起きた。


魔法使い「ひぃぃ、かんべんして欲しいわ」

魔法使い「あ、術士、ちゃん?」


……術士は目を回している。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:07:14.45 ID:YHmP6YuEo<> 魔剣士「くそが! 全員いるか!」

弓兵「間違いなく!」

魔剣士「おい、おい、十三番の」

召喚士「……なんだ?」

魔剣士「無事か?」

召喚士「無論」

魔剣士「今の爆発はなんだ。あいつらにそんな技があったのかね」

召喚士「爆雷管に引火でもしたのかもしれん。そう、竜は天を司るとも言われているな」

召喚士「天雷、天雨、天火、天雲、天風、竜の王はそれらを、操るとまでは言わないものの……」

魔剣士「御託はいい。あいつらとやり合う手はあるか」

召喚士「君の魔剣が致命傷にならなかった時点で、私の想定以上だ」

魔剣士「……あれが本気ってわけでもない」

召喚士「だが、発動に手間と時間がかかる。それも複数体を相手にすることは難しい」

魔剣士「言葉を先取りするんじゃねぇ」

召喚士「私の手持ちも似たようなものだ。先ほどの放送のように、西へ脱出するべきだろうな」

魔剣士「だが、通路を塞がれてるんだぞ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:07:40.67 ID:YHmP6YuEo<> 召喚士「……竜を退けて、西へ向かうか」

魔剣士「無理だって言ったばかりだ、この際、校舎をぐるっと回りこんで西へ行くか」

召喚士「しかし、それでは校舎が持たない」


ずずぅぅんん……
地鳴りとともに、校舎の壁がパラパラと崩れ落ちていく。

いよいよ南棟も崩壊の時を迎えようとしていた。


魔法使い「リーダー! ちょっと、術士ちゃんが……」

召喚士「む」

魔剣士「置いていけ、そんなやつ」

魔法使い「……リーダー、さすがに私ひとりじゃ抱えられないわよ」


ごしゃあっ!!


弓兵「うわっ、天井が」

召喚士「……」

魔剣士「どうする!?」

剣士「……こっちだ、こっち」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:08:16.00 ID:YHmP6YuEo<> 魔剣士「お前、剣士!」

召喚士「む、確か二十八番隊の」

剣士「話は後回しにしろ。術士は俺が背負う」

魔剣士「おい、どうするつもりだ」

剣士「西にいけと言われたからといって、何が何でも西門から出る必要はねぇだろうが」

召喚士「確かに」

魔剣士「ああ?」

剣士「南門から出て、森を抜ける。合宿所に向かう道があるはずだ」

魔剣士「俺に指図するな」

剣士「チッ、だったら勝手に死ね!」ダッ


剣士は術士を背負うと、走り始めた! ……と思ったら転んだ。


剣士「……」

魔法使い「えーと」

剣士「疲労が限界に来ているようだ。疲労の感覚を無くす術をかけていたんだが」

魔法使い「あんたそれ絶対ヤバいよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:08:41.51 ID:YHmP6YuEo<> 召喚士「……よし、全員全速力で南門へ向かおう。三つを数えて、装備を再確認」

召喚士「その後、二十八番隊のお二人を抱えて、渡り廊下から校舎外へ脱出」

召喚士「……何か質問は?」

三人『異議なし!』

魔剣士「勝手に決めるな!」

召喚士「そちらの決定は任せる」

弓兵「り、リーダー……」

魔剣士「こちらもそれで行く。ただし、俺が殿だ」

弓兵「分かりました!」

魔剣士「さっさと行くぞ!」

四人『いえっさー!』


剣士「……めんどくさい連中だな」

魔法使い「そっちとも大して変わらないでしょ?」

剣士「……チッ」

魔法使い(なんで舌打ちしたのよ) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:09:08.85 ID:YHmP6YuEo<> ――校舎外。

召喚士「はっ、はっ、はっ」

魔剣士「ふっ、ふっ」

召喚士「しかし、あれ、だな。剣士、くん」

剣士「なんだ?」ズルズル

召喚士「君、自分の、隊長は、いいのかね?」

剣士「うん?」ズルズル

魔剣士「だからよ、西に行くっつったのに、別の方向から出て、ちゃんと合流出来るのかってことだよ」

魔剣士「ちゃんと打ち合わせしてるんだろうな」

剣士「打ち合わせなんか出来るわけがない」ズルズル

剣士「俺達は離れ離れになっていたんだからな」ズルズル

魔剣士「どういうことだ?」

召喚士「……隊長氏は、囮に、なったのだ。怪我を、した、剣士君など、逃がす、ために」

召喚士「つまり、ここにやってきたのは、タイミングが良かっただけで……」

魔法使い「あのね、それよりちょっといい?」ハァハァ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:09:45.79 ID:YHmP6YuEo<> 魔法使い「剣士ー! 術士ちゃんを引きずりながら移動するのはやめなさい!」ハァハァ

剣士「……チッ」

魔法使い「舌打ちかい!」

剣士「思ったよりも力が出ねぇんだよ」

魔剣士「はっ、笑わせるぜ。鍛え方が足りない証拠だ」

剣士「ふざけろ」

召喚士「ケンカは、はっ、はぁ、やめに、しないかっ」

剣士「ふぅー」

剣士「……これでいいか?」


剣士は術士の膝を抱え上げた! お姫様抱っこだ!


魔法使い「それも、恥ずかしい感じがするからやめてあげて……」ハァハァ

剣士「うるさいやつだな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:10:12.54 ID:YHmP6YuEo<> 魔剣士「どうでもいいが、その、隊長とやらがなんだって言うんだ」

召喚士「……ふー。離れ離れになっているということは、彼らの方でもこちらを探している可能性があるだろう」

剣士「ああ。そのことか」


\ぐるおぉぉぉぉおおおおおおおおおんん!!!/

……竜が唸りを上げて、行く手を塞いでいる。


剣士「俺がやつの考えを推し量る必要なんかねぇんだよ」


その爪が、校舎に振り下ろされる。
だが、何かに突き刺さったか、それが抜けないでいる……。


剣士「なぜかって言うと、こっちが考えていることを、あいつは必死に考えているからさ」


苦悶する竜の横をすり抜けて、三つの影が近づいてきた。


剣士「こっちが全力でやれば、勝手に応えてくれるんだから、楽なもんだ」

召喚士「ほう……」

魔法使い「あら、ほんとね」


……隊長が現れた! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:10:38.55 ID:YHmP6YuEo<> ――南門。

隊長「召喚士、魔剣士」

召喚士「久しぶり、と言うべきか」

魔剣士「はっ、随分とタイミング良く出てきたもんだな」

隊長「全くだね、運が良かったとしか言いようがない」

召喚士「さて、この状況で運が良いとは、君も不思議な男だな」

隊長「その話は長くなりそうかい?」

召喚士「はは、君の方こそ、話したいことがあるんじゃあないのかい」

隊長「うん、あー……」

隊長「お前ら生きてたの」

魔剣士「……うるせぇよ、ぶったぎられてぇか」

召喚士「それはこちらも聞きたいな。つまり、彼女からは……」(術士を指さして)

召喚士「君は竜の囮になって、七番隊とそこな二人を逃したと」

隊長「ああ、お陰で満身創痍だ。体が動かないよ」

二人(どの口が言うんだろう……) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:11:04.53 ID:YHmP6YuEo<> 召喚士「それで、だ。今後の行動だが」

隊長「提案がある。ここからわざわざ壁づたいに西門の方へ移動するのはかえって危険だ」

隊長「だから、ここから森を抜けて……」

魔剣士「そんなことは知っている! 合宿所に行くならそこを通るしかねぇからな」

隊長「……」

剣士(露骨に嫌そうな顔をしてるな……)

工兵(不機嫌さがマックスだね)

救護員(最近、隠してないですよねー)

魔剣士「俺は先にうちのメンバーを連れて抜ける。足手まといにするのもなるのも御免なんでな」

隊長「ああ、とっとと失せろ」

魔剣士「……んん?」

隊長「その方が助かるよ、道が出来ているわけじゃないしね」

魔剣士「はっ、ならとっとと行く」

魔剣士「全員、点呼ォ!」

弓兵「いーち!」「にぃ!」「さぁん」「しー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:11:30.58 ID:YHmP6YuEo<> 魔剣士「……よし、いくぞ、お前ら!」

四人『いえっさー!』

ザッザッ……

隊長「……で、どうせあいつじゃあ、何がどうなったのかわからないだろう」

召喚士「それはこちらも聞きたいことだ。竜がなぜ学園に来ている?」

隊長「俺に聞かないでくれ」

召喚士「見給え、竜の行進たるや、なかなか壮観である」

隊長「行進と言うよりは食事風景だがな」

召喚士「言い得て妙だ」


   「ぐぎゃああああああああああああああああああんんん!!」


隊長「……やっぱり、話は後だな」

召喚士「ふむ。魔法使い!」

魔法使い「はいはい、三人ともいますよ」

召喚士「では、二十八番隊のメンバーの後ろに控えよ。準備ができ次第、前進を開始する」

隊長「悪いが、先に行っててくれ。俺たちはほら……」

救護員「怪我まみれですからー」

召喚士「怪我人を放置しておくわけにはいくまい」

隊長「すまないな。やっぱり、召喚士と組んだほうが良かったかな?」

召喚士「さてな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:12:43.64 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「……剣士」

剣士「すまんが、こいつ……」ドサッ

隊長「おうっ、術士か」

救護員「怪我してるんですか!」

剣士「いや、気絶しているだけだ」

隊長「よし、じゃあ俺が背負う。それでいいだろう」

剣士「待て」

隊長「……」ピク

剣士「その前に、なんか言うことはないのか」


剣士『羨ましいんだろ、俺達が』


隊長「……悪かった」

剣士「……いや、謝られたいわけでもないんだが」

救護員「じゃあ、何なんですかぁ? 隊長だって怪我しているんですよぉ!」

剣士「うるせーな、アホ」

救護員「アホじゃねーし! 同じメンバーだし!」

工兵「はいはい、口出しせずに、待ってましょうね」

救護員「むぐぐ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:13:30.68 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「ん、いや、怪我の調子はどうだ?」

剣士「駄目だ。まだろくに剣なんか振るえない。怪我の元は分かったが」

剣士「いや、そういうことじゃねぇって」

隊長「ええと……術士は、大丈夫なのか?」

剣士「ちょっと病的なくらい痛々しかったが、まあ、疲れが出ているだけだろう」

剣士「……いや、他にさ、ほれ、あるだろ」

隊長「……」

隊長「……ただいま」

剣士「ああ、おかえりだ」

隊長「……これでいいのか?」

剣士「ああ。やっぱり俺は二十八番隊だ」

隊長「なんだそりゃ」

剣士「いいからさっさと編成をやれ」

隊長「……そうか」
<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:13:56.79 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「では、術士が気絶しているが、編成を行う。と言っても、森の道を、二番隊の後を追いかけるだけだ」

剣士「俺が先頭に立つ方がいいだろう」

隊長「剣が振るえないんじゃなかったのか?」

剣士「お前らよりかはマシだ」

工兵「どのへんがマシなのさ」

剣士「疲労で歩き方がめちゃくちゃになってやがる」

隊長「お、お前もだろ」

剣士「義腕」

工兵「これファッションだし」

剣士「まるごと機械を取り付けるファッションがあるかぁ!?」

工兵「発雷装置もついてる。出力が弱くて、サンダービームとかは竜に効かなかったけどね〜」

剣士「……まあいい。それで、アホ」

救護員「はぁああああ!? ふざけんな!」

剣士「なんか、見ない間にアホ面が増したような気がするんだが」

救護員「あんた、自分のパーティーをなんだと……!」

隊長「あー」

救護員「たいちょおおおおおおおおっ!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:14:38.34 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「いずれにしても、森歩き山歩きも剣士は得意だしね。それほど異論は無いよ」

剣士「そうだろう」

工兵(スルーした)

救護員(スルーされた……)

隊長「工兵は二番目、俺は三番目で術士を背負う、救護員は最後に並んでくれ」

救護員「は、はい」

隊長「後ろから十三番隊がフォローしてくれるはずだから、ね?」

救護員「任せてくださいよ!」

剣士「俺達を追い抜かしていくような真似はするなよ」

救護員「し、しませんよ! ずっと後衛やってたんですから!」

隊長「救護員はよく列を乱すからなぁ」

救護員「隊長、私のこと嫌いなんですか……?」

隊長「悔しいけど、嫌いじゃないね」

救護員「えっ、どういう?」

隊長「……それじゃ、そろそろ出発するよー」

召喚士「承知したー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:15:11.22 ID:YHmP6YuEo<> ――しばらくして。

剣士「こっちだ」

隊長「……」ざっざっ

救護員「ねぇねぇ、工兵くん、隊長がさっき言ったことって、どういう意味だと思います?」ヒソヒソ

工兵「うーん、自分の感情に素直になれないってことじゃないかなー」ボソボソ

救護員「す、素直になれない……つまり、隊長は、わ、私のことが、好き……?」ヒソヒソ

工兵「好意はあるけど、あまり認めたくない感じ、ってところだと思うよ」ボソボソ

救護員「認めたくないのはなんでなんですかねぇ」

工兵「さぁねぇ……」

剣士「うるせーよ、お前ら」

隊長「歩きながらしゃべると体力使うよ?」

救護員「やだなぁ、隊長ー、そんなに心配しなくてもー」ニヤニヤ

隊長(ぶん殴りてぇ……)

剣士「お前もうかつなことを言ってつけあがらせるんじゃねぇよ」チッ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:16:47.48 ID:YHmP6YuEo<> 術士「ん……んう……」

隊長「お……」

術士「揺らさないで……えっ?」

隊長「術士、気がついたか」

術士「……たいちょう?」

隊長(……ああ)


術士『ちょっと自分に犠牲を払ったからって、許されないから』


隊長「あー……」

術士「隊長……本当に?」

隊長「うん、その、なんだ。悪いが、このまま背負われて……」

術士「……」ギューッ

隊長「術士?」

術士「……」

術士「良かった……」

隊長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:17:13.52 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「悪かった。遅れてしまって」

術士「私は嬉しい。だから、謝らないで」

隊長「そっか」

術士「……」

隊長「……」ざっ、ざっ

救護員「ニヤニヤ」

工兵「わー、なんか感動的だねー」

剣士「おい、茶化してやるな」

隊長「うるさいよ、お前ら」

召喚士「見給え、あれが愛情というものだ」ハァ、ハァ

魔法使い「面白いわね」フーッ

隊長「うるせーぞ、後ろの!」

術士「……ふふ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:17:41.30 ID:YHmP6YuEo<> 術士「隊長、その……」

隊長「歩けるかもしれんが、今はこのまま移動するよ」

術士「う、うん」

術士「えっと、重くない?」

隊長「大丈夫だよ」

救護員「……これは! おっぱい当たってるかもしれませんな」ヒソヒソ

工兵「術士は控えめだから……」ボソボソ

術士「……」カーッ

隊長「聞こえてんだよ、ボケナスども。げんこつ喰らいてぇのか」

剣士「チッ、いちいち立ち止まるんじゃねーよ!」

二人『ごめんなさーい』

隊長(クソが……) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:18:09.95 ID:YHmP6YuEo<> 術士「た、隊長、あの、その、今、どういう状況で」

隊長「西の合宿所を目指して移動中だ。先行する二番隊を追いかける格好になっている」

剣士「……力が有り余っているらしいな、やつらは」

隊長「どういうことだ?」

剣士「森の中の魔物を、丁寧に撃ち倒しながら進んでいる」

隊長「そりゃ楽でいい。ただ、足場があまり良くないけどな」

術士「……竜はどうなったの?」

隊長「置いてきた。学園は、まあ、もうダメだろう」

術士「そう」

隊長「何かあったのか?」

術士「いいえ、それなりに貴重な魔法書が……図書館が」

隊長「図書館! そういえば、司書さんは逃げられたのかな」

剣士「まさかとは思うが、今更戻るなんて言うなよ」

隊長「さすがにそれはないけどさ」

術士「隊長、これから、その、どうするつもりなの?」

隊長「合宿所についたら? もちろん、竜を叩く、と言いたいところだが、各国に応援を要請するなりした方がよさそうだろうな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:22:59.71 ID:YHmP6YuEo<> 剣士「……はっきり言うが、俺もお前も、今は竜とやり合う力はない」

隊長「今はって、まさか俺が竜の首を落とすまでになれると思っているの?」

剣士「首を落とさなくても、竜殺しは出来るだろう」

隊長「そりゃ過大評価ってもんだ」

術士「隊長なら、なんとかなりそうよ?」

隊長(う、ん。なんだろう、ムズムズする)

隊長(なんか、こう、信頼されているってのが分かると、こう……)

隊長「……竜殺しは別に俺達の仕事じゃないだろ」

工兵「ギュイーン!」

隊長「な、なんだ」

工兵「繰り出し式のナイフを加工して、数十本の刃を回転するように設置してみるってのはどう?」

隊長「うん、そりゃ恐ろしいな」

救護員「工兵君、空気読めてないですよぉ?」

工兵「救護員に言われるとすごく腹が立つなぁ」

救護員「ひどい!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:25:22.93 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「……剣士自身はどうなんだ。それこそ、竜の首を落としただろう」

剣士「憎しみで戦うな、だとよ」

隊長「は……? いつから正義の味方になったんだ?」

剣士「チッ! そうじゃねぇよ! 腕の呪印が、憎しみに過敏に反応するようになってんだよ!」

隊長「ふうん」

術士「隊長、その、困っているのよ、剣士も」

隊長「よく分からないけど、楽しく剣を振ればいいのか?」

剣士『ワハハハハ、悪いドラゴンどもめ! この剣士がステーキにして残らず食べ尽くしてくれるわ!!』

隊長「……みたいな」

剣士「バカにしてんのか、お前」

術士「隊長……背負いながら高笑いは、揺れるから……」

隊長「ああ、悪い悪い」

救護員「またレアなモノ見ちゃった」

工兵「僕も」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:25:48.96 ID:YHmP6YuEo<> 隊長「こう言ってはなんだが、剣士は力に頼った戦い方をしすぎていたような気がするな」

剣士「どういう意味だ?」

隊長「こう、もっと姑息に戦ってもいいんじゃないかなって思うよ」

剣士「……」

隊長「剣技にこだわらなくても、頭もあるし、腕もある。体力も」

術士「私も、隊長と同意見」

剣士「お前はすぐそれだ」

術士「……本当に思ってるから言っているのよ」

剣士「ふん」

隊長「やっぱり会長に対抗心を持っているのかい?」

剣士「……いや、どうだかな」

剣士「正直に言えば、今は……どうでもいい」

隊長「ん?」

剣士「リーダーが言うなら試してみるか。おっさんもよく言ったもんだ」

剣士「『武器のいいところは捨てられるところだ。拳法家の腕や足と違って』ってな」

工兵「腕も捨てられなくはないよ」

剣士「うるせぇよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:28:56.36 ID:YHmP6YuEo<> ――二十八番隊の少し後ろ。

召喚士「ふっ、ふうっ」

魔法使い「はっ、はっ」

召喚士「ぬっ、木の根が……」

魔法使い「リーダー、ちょっと、いい?」

召喚士「うむ、む」

魔法使い「二十八番隊って、怪我、してるのよ、ね?」

召喚士「そのはずだ、剣士、は、転んで、いて」

魔法使い「あんだけ、おしゃべりしながら、ある、歩いて、なに?」

魔法使い「なんで、私、たちより、は、早いの? 歩く、速度っ……」

召喚士「うむ、それ、については、いくつか、考察が」

魔法使い「あー、いい、いい、リーダー、死んじゃう」

召喚士「……隊長! 少し、休憩に! 休憩にしてくれ!」

魔法使い「なんなの、二十、はち、番隊……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/19(水) 21:29:24.82 ID:YHmP6YuEo<> 今夜はここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/19(水) 23:21:03.06 ID:f5zTuDpVo<> いやー面白い
やっぱ全員揃うといいなぁ
ニヤニヤ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/20(木) 12:09:07.16 ID:llMKNKvz0<> 良いわぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/22(土) 08:55:03.42 ID:fjNtHxhso<> 乙 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2012/12/22(土) 20:39:54.41 ID:elgZDrVQo<> ――合宿所。

隊長「……ふう」

剣士「何事もなかったな。竜は追ってこず、か」

術士「隊長、重くなかった?」

隊長「大丈夫だ。訓練の賜物かな」

工兵「あー、やったねー、樹海行進」

救護員「やめて、思い出したくないですよ」

剣士「……竜とやり合うための運動量を作るには、もう少し強度が必要だな」

工兵「ひぃっ」

隊長「気持ちは分かるが、今の体では無理だろう」

工兵「ですよねー」ほっ


>十三番隊。

召喚士「はぁはぁはぁ……」

魔法使い「うぇっほ! げっほ」

召喚士「不覚だ……」

魔法使い「おかしいわ……あいつら……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:40:20.87 ID:elgZDrVQo<> 魔剣士「なんだ、もうついて……もう来たのか!?」

隊長「……ああ、二番隊の」

魔剣士「いや、まさか追いつて来るとはよ……」

魔剣士「まあ、いい。会議室で、学園戦隊の隊長格のみ集合して、会議をするんだと」

隊長「格?」

魔剣士「隊長が行方不明か、死んだところもあるだろう」

隊長「なるほど。しかし、俺はかまわないけど」

召喚士「……む。私も、少し、したら、行く」

魔剣士「へとへとになって現れても話にならんだろ」

召喚士「そうは言うがな」

隊長「会議はもう、今にでも始まるのかい?」

魔剣士「別に遅れて出てきても構わんぜ」

隊長「じゃあ、召喚士、十三番隊を休めて、少し落ち着いてから出ようよ」

召喚士「ああ、そうさせてもらう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:40:50.56 ID:elgZDrVQo<> 隊長「そういうわけだ、魔剣士。後から行くと伝えておいてくれ」

魔剣士「いいだろう。さっさとしろよ」

隊長「よろしく」


隊長「……大丈夫か?」

召喚士「む……うむ。しかし、君たちは優秀だな」

隊長「他に勝るところがないからな。基礎体力だけは優先して鍛えてもらったんだ」

召喚士「ふー……やはり、それにつきるか」

隊長「俺も隊員に話してくるよ。それじゃ、また後で」

召喚士「うむ。うむ」

隊長「それと、その……なんだ。一つ、謝っておこうと思って」

召喚士「謝る? 何をだね」

隊長「んー、ま、なんだ」

隊長「……俺は、召喚士のことを、ちょっとおかしな人間だと決めつけていた、かな」

召喚士「ふむ」

隊長「ありがとう。術士と剣士、助けてくれたんだろう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:41:48.20 ID:elgZDrVQo<> 召喚士「それは違うな。彼女らは、自ら、我々を喚びだした」

召喚士「そして、自らの力で、窮地を脱したのだ」

隊長「そうか?」

隊長(ん? 喚びだした?)

召喚士「そうだとも。万物には互いに引き合う力が備わっている」

召喚士「そこに意思が生じる。この意思は単なる石、自然に発生したものに過ぎない」

召喚士「だが、意思が、それに反発する意志へと変わった時、その時こそ――」

魔法使い「リーダー、なにがどうなったの?」

召喚士「ああ、しばらく休息を取る」

魔法使い「やったー……さすがに、夜から夜を歩くってのは難儀だったわよね……」

隊長「……あ、そうだ。忘れていたよ」

召喚士「何をだね」

隊長「商人って、いるじゃん。召喚士のところのじゃなかったっけ」

二人『……忘れていた』

隊長(忘れられてたのかよ、かわいそうに) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:42:14.85 ID:elgZDrVQo<> 隊長「確か、馬車で脱出して、こっちに来ているはずだよ」

召喚士「分かった、迎えに行こう」

魔法使い「ありがとうね、隊長くん」

隊長「どういたしまして」ニコ

召喚士「ふふふ、では」

隊長「……」

隊長「さてと、こっちも御者さんを迎えに行かないとな」

剣士「……話は終わったのか?」

隊長「これから始まる感じになりそうだよ」

救護員「ふぇぇ」

隊長「ん、そうか。工兵、救護員。御者さんをお迎えしてもらっていいかな?」

救護員「あ、そうですね!」

工兵「了解したよ」

隊長「剣士、術士、その……しばらく休んでてくれ」

剣士「ああ」

術士「隊長も、無理しないで」

隊長「ありがとう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:42:47.68 ID:elgZDrVQo<> 隊長「じゃ、俺は、隊長会議に行ってくるよ」

剣士「ああ」

隊長「暇な時間で訓練なんかはじめるなよ」

剣士「当たり前だ」

救護員「当たり前ですよぉ! なんかこう……ビシバキじゃないですか、腕が」

剣士「お前、もう少し救護員らしいセリフは吐けないのか」

救護員「呪印ってやつが浮かんでいるせいで、よく見えないんですよぉ。早いところ外してくださいね!」

剣士「……」

隊長「そうだ。笑う練習をしたらどうだ? 真剣に」

剣士「ふざけるな」

隊長「冗談じゃなくて、憎悪で戦わないとしたら、やっぱり楽しむってのはひとつの手段だと――」

工兵「なになに? 面白い話?」

剣士「寄るんじゃねぇ!」

隊長「あとはいっそ、腕を切り落とすとか……」

工兵「キマシタネ!」ガッションガッション

剣士「お前、絶対、考えるなよ! 実行するなよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:43:15.36 ID:elgZDrVQo<> 術士「冗談でも、そういうのは良くないと思うわ」

工兵「あ、はい。でも、義腕って結構いいんだけどなー」

工兵「内蔵武器・暗器の類とかさ、おやつだって収納できそうだし……」

隊長(……マジっぽいから、これ以上刺激するのはやめておこう)

剣士「ああ、いい、それなら、笑う練習をしておくから! それでいいだろうが!」

隊長「ははは」

剣士「チッ、笑ってんじゃねぇよ!」

術士「笑顔、笑顔」

剣士「……」

隊長「……はは」

隊長「そうだな、会議が終わったら、ちょっとみんなに言いたいことも、ある」

術士「言いたいこと?」

隊長「……まあ、大したことじゃないよ」

救護員「で、隊長、会議は?」

隊長「そうだった、行ってくる」

救護員「いってらっしゃ〜い」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:43:41.32 ID:elgZDrVQo<> 救護員「……じゃあ、剣士さんを笑わせるために一発ギャグを」

剣士「ぶん殴るぞ?」

工兵「治療のためだよ」

剣士「明らかに楽しくなってきたぞって顔してるだろうがよ」

術士「無礼なブレイド(剣)……」


隊長「なんか楽しそうだな」

隊長「……」

隊長(……みんな、ありがとう)

隊長(もっと責めれられてしかるべきだろう、俺は)

隊長(それなのに……)

隊長「……」

隊長(……要は、例のボードゲームと同じだ)

隊長(目標は、逃げた学園長派、としよう。作戦終了は、やつらを捕縛すること)

隊長(……うん。地図が必要だな) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:44:08.89 ID:elgZDrVQo<> >会議室。

教頭「……だから、君の言うことはわかるが」

天測士「だからあっ! あのクッソ教師を締めあげて、事実を公表するんですよ!」

教頭「そんなことをすれば、学園の評判は地に落ちる」

天測士「もう建物がこの世に存在してないでしょーがっ!?」

短パン「ぶははは、そのとおりだな!!!」

天測士「笑うな! 変態野郎!」

短パン「だが、実際に公表したところでどうなる? 学園の一部教師が竜を飼っていました〜、そして自滅しました〜」

魔剣士「……それがなんだ?」

天測士「ぬぐぐぐぐぅぅ〜」

教頭「君の思いは分かる。しかし、だな……」

   隊長(……荒れているな、主に一名)

   隊長「あー、二十八番隊、隊長来ました」

天測士「! 隊長!」

隊長「席はどこへ?」

教頭「手近なところでいい」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:44:34.65 ID:elgZDrVQo<> 教頭「さて……改めて説明させてもらおうか」

教頭「学園戦隊の隊長諸君は、いまだに何が起きたのかを正確に把握はしてないだろうし」

隊長「ちょっと待った。後からもう一名来ますので、全体のまとめはその時で構いませんよ」

教頭「ん? そうか?」

隊長「僕からの提案なんですが、まず地図を用意しませんか」


「なんだあいつ……」「急に出てきやがって、偉そうに……」

「知ってるぜ、確か竜を調査して」「死んだんじゃなかったのか」

「むしろ、あいつが疫病神かなんかじゃ……」

ざわざわざわざわ……


隊長(急に出張りすぎたか)

天測士「なに! こいつの言っていることは間違ってないわよ!」

隊長(今、お前にフォローされても意味がねぇっての)

教頭「――静かにしたまえ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:45:00.70 ID:elgZDrVQo<> 教頭「ご苦労様。困難に耐え、よく学園に戻ってきてくれた」

隊長「ありがとうございます」

教頭「しかし、なぜ地図を? 今は学園全体のことを決める時だと思うんだが」

隊長(言うべきか……?)チラ

魔剣士「……ん」

天測士「……」グッ b

隊長「……では。まずひとつ、学生には学園の経営に関しては決定権はありません」

隊長「破壊された学び舎を再建する義務もありませんし、別に学校を辞めてもいいんでしょ?」

教頭「……うむ」

隊長「学園側に示していただきたいのは、この件に関して、作戦を――出すのかどうか」

隊長「報酬の提示と。それがあるなら我々は請ける請けないを決めますよ」

「な、何いってんだ!」「こんな時に、馬鹿じゃないのか!」

教頭「静かにっ!!」

教頭「……うむ。それで?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:45:34.31 ID:elgZDrVQo<> 隊長「つまり、学園内の教師たちの内紛に関してはどうでもいいんです」

隊長「ふざけるなって気持ちはありますけどね」

隊長「ただ、隊長会議では、それこそ情報の共有が必要だと思います」

隊長「見たところ――」

とぐるりと見回しながら、

隊長「すべての戦隊隊長が、現状を掴んでいるとは言い難いですし」

天測士「……それは、その通りよ」

魔剣士「もちろんだ。俺もわからないものは分からない」

隊長「だから、そのためにも地図が必要だと思います。どこで何が起きたのか、という説明のために」

教頭「……うむ」

教頭「うむ。うむ」

教頭「分かった。学園側の方針をもう少し詰めなおして、作戦を提示する」

教頭「まず、この場では、情報の整理をすると。そういうことにしよう」

隊長「はい」

隊長(驚きだな。方針が決まっていなかったのか……まあ、この状況では無理もねぇけど)

教頭「B先生! 地図を持ってきてくれ!」

召喚士「……ちょうど、タイミングが良かったようですな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:46:00.66 ID:elgZDrVQo<> 教頭「まず、本件の経過を解説する。B先生と、四隊の隊長から」

教師B「はい。じゃ、まず僕の方から……」


教師B「みな、知っていると思うが、今回は二番隊、七番隊、十三番隊、そして二十八番隊に、『竜の谷(?)を、調査せよ』という作戦を受けてもらった」

教師B「そこで、二隊が消息不明、一隊が帰還。残りの一隊が、半分ほどに人を別けて、また行方不明に」

教師B「この時点で、謎の魔物が竜であることは確定した」

教師B「調査してもらったのは、学園から、数日間の移動を要する、ここだ」


地図を指す――


隊長(……こうして見ると、かなり近いな。相当、学園に近い)


教師B「そして、そこへほぼ間を置かずに一番隊とプロの冒険者の団体に竜の討伐を依頼」

教師B「そこから約一週間をおいて、竜が学園に襲来」

教師B「つまり、考えたくはないが、その――」


教頭「ストップ。予測を交えないでよろしい。一つ一つ、確認するべきだ」

隊長(……その通りだ。予測より、事実が知りたい) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:46:27.80 ID:elgZDrVQo<> 教頭「以後のことは、みな体験したことだから、捨て置こう」

隊長「……その前に。一応、竜の襲来のポイントなんですけど」

天測士「なによ、ポイントって」

隊長「僕は外から来たので、竜がやってきた方向を見ていたんですが……」

短パン「ん、ああ! 何が言いたいのか分かるぞ!」

短パン・隊長『谷から来ていない』

魔剣士「はあ?」

短パン「監視塔でずっと見ていたんだ。谷から来るとなると、こっちの……川が見える方角だろ?」

短パン「でも、来たのはもっと北寄りだ」

天測士「それって、でも、まさか――」

教頭「断定は避けよう! それでは、まず二番隊の……魔剣士君、報告は?」

魔剣士「……我々は、十三番隊とともに、空間の移動術に巻き込まれて、時間と空間を飛び越えて学園に到着したので、はっきり言って、状況がつかめておりません」

ざわざわざわざわ……

教頭「……召喚士君」

召喚士「術の失敗によるものです。それ以上はなんとも」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:46:58.64 ID:elgZDrVQo<> 召喚士「ただし、報告できるとしたら、竜の谷の状況ですな」

魔剣士「それなら。我々は竜の谷の、このあたり――と、地図上の崖を指して――に沿って移動し、谷の入口付近で竜に遭遇しました」

魔剣士「竜に囲まれてしまいましたが、これは誘い込まれたというより、地形的な問題でしょう。バラバラと現れて、次第に数を増していきました」

隊長(ほう……)

魔剣士「退路の確保に手間取り、やむなく交戦しようとしたところで、術の失敗に巻き込まれ……うん、何匹いたかな? 十匹はいたと」

魔剣士「当初は人間を見てもあまり警戒せず、こちらが交戦の準備をしたところで、一斉に攻撃にかかってきました」

召喚士「……あれは罠を張っていたのでは?」

魔剣士「ああいうのは罠とは言わん。やるなら、もう少し、奥の方まで引き寄せる必要がある」

召喚士「ふむ、なるほど」

教頭「……場所は、間違いなく、ここかね?」

隊長「間違いないです。光の柱……移動魔法が発動した後、このポイントに地面がえぐれたような痕跡がありましたので」

教頭「そうか……」

天測士「それから、私たちの方へ竜が行く手を阻むようにして、飛んできたわ」

天測士「その辺のこと、報告には出しましたけどね!」

教頭「うむ。目を通している」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:47:24.52 ID:elgZDrVQo<> 教頭「……二十八番隊は、七番隊と一緒に行動していたのだったね。何か補足は?」

隊長「僕らは別ルートで逃げました。この、崖から川に飛び降りて――」

天測士「……あんた」

隊長「それしか抜け道がなさそうだったから。で、ここの町についてしばらく、療養をしていました」

隊長(正確には、しばらく意識がなかったんだがな)

教頭「何か気づいたことは?」

隊長「……逃げるのに必死だったので。ただ、うーん、でも……」

教頭「何か?」

隊長「あまり知恵が回るような魔物には見えませんでしたね。その時は」

魔剣士「そうだな、俺もそう思った」

教頭「ふむ……B先生、何か?」

教師B「竜の巣というか、そういったものは見れたのかい?」

隊長「それは見てませんね」

召喚士「同じく」

教師B「なるほど……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:47:50.72 ID:elgZDrVQo<> 教頭「それで、学園について以後のことだが……」

天測士「だから、さっきから言ってる通りよ。どの教師か知らないけど、安否の確認もできないのに討伐隊を出したり、帰ってきた部隊に拘束命令を出したりしたのを言えばいいのよ!」

魔剣士「ギャーギャー騒ぐんじゃねぇよ」

天測士「なんですってぇ!」

隊長「時系列的には、一番隊への作戦依頼が来るでしょう。僕らも理由が知りたい」

教頭「あれは、学園長が直々に出したものだ」

教師B「教頭! いいんですか?」

教頭「私はまさしく、安否の確認を優先すべきだと提案した」

教頭「元々、学園長とは反りが合わなかったが……人気取りの経営などすべきではないと」

隊長(実際にどうかは置いとくにしても、学園長がクロなのは間違いなさそうだな……)

教頭「拘束命令は……A先生だったか。七番隊が、今回の件をめぐって、教師や生徒を巻き込んだ暴動を起こそうとしているという旨の情報があった」

天測士「そっ……!」

「やりそう」「やりそうだな」「てゆーかやってたじゃない」

魔剣士「無理もねぇな」

召喚士「うむ」

隊長「余計なことしちゃったんだな」

天測士「隊長までッ!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:48:21.78 ID:elgZDrVQo<> 短パン「そっから先は竜の襲来だな! いやまったく、拘束から竜との交戦まで、全部やった俺が報告を……」

教頭「それは皆が経験したことだ。何らかの理由で、竜は学園に襲いかかった」

教頭「だが、まずそれよりも前に、天測士君、何かいうことがあるのでは?」

天測士「……いいですか」

隊長「泣くなよ」

天測士「そう思うんだったら、話を遮らないでくれる!?」

隊長「はい」

天測士「教頭先生がどこまで把握しているのか知りませんけど、七番隊は、学園側が『竜を飼育している』という事実を突き止めました」

天測士「数の減った竜を、薬物と餌を使って、従順な魔物として利用しようとしていたわけです」

天測士「つまり、予め学園は竜の存在を知っていて、それを売名に利用していたと。卒業試験などに位置づけようとしていた、などという証言もあります」

教頭「竜は学園を襲ったようだが……」

天測士「そ・れ・は! それこそ予想を立てなきゃいけないところです!」

召喚士「……実際に、竜の餌、と呼ばれるものが見つかっています」


「まじかよ!」「なんなの……? どういうことなの?」「ふざけやがって……!」


隊長(そういえば、召喚士は商人と会えたのかな) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:48:50.58 ID:elgZDrVQo<> 天測士「実際に、私はそれに関与しているらしいA先生に攻撃を受け、危うく殺されるところでした」

隊長「証言します。彼女が襲われているところを助けましたんで」

教頭「む……」

教師B「ああ……やっぱり……」

天測士「サンキュウ、隊長! 愛してる!」

隊長「うぜぇ」ニッコリ

天測士「(´・ω・`)」

魔剣士「……先生方は、まるでご存じないので?」

教頭「学園長が、学園戦隊を実習に採用すると聞いた時から、不穏なものは感じていた」

天測士「……あのクソ教師は言っていたわ。学園戦隊を軍隊に匹敵するような冒険者にすると」

天測士「それで、帝国と対抗できるようにするって言うような意味のことをね」

天測士「それって、つまり、戦隊を学園の私兵にするってことじゃないかしら!?」

教師B「そんなバカな!」

隊長「ありえますね、十分」

魔剣士「そりゃ、おかしい」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:49:22.57 ID:elgZDrVQo<> 天測士「どういう意味よ!」

魔剣士「いいか? 学生を私兵にする、まあそれはいい」

魔剣士「だが、そんなことより、大前提としてすでに十分大きな戦力があるじゃねぇか」

天測士「何がよ」

魔剣士「竜だよ、竜。飼っているっつーなら、それを使ったほうが、よほど便利じゃねぇか」

短パン「なるほどな!」

「そうだそうだ!」「天測士はおかしい」「早く土下座しろ」

天測士「ぐぬぬっ」

召喚士「……それには盲点がある」

魔剣士「何がだ?」

召喚士「一つ目、本当に竜を制御できているのか。仮に竜が制御できるというなら、我々を追い詰めるような事態に至ったことが問題だ」

魔剣士「……」

召喚士「学園側に被害をもたらしたことも考えて見給え。すでに、何名かの生徒が亡くなってさえいる」

魔剣士「だが、竜の餌とやらの証拠はあったんだろう」

召喚士「飼う、ということと、思い通りに制御できることには天地の開きがある」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:49:49.37 ID:elgZDrVQo<> 召喚士「二つ目、仮に出来ているとして、なおかつ、この事態を起こしている場合もある」

隊長「な……」

魔剣士「ああ?」

短パン「なんだ? どういうことだ?」

召喚士「学生を私兵にするのには利点がある。傍目には、他国からは脅威とはみなしにくいからだ」

召喚士「そこで、竜はまさに切り札として用意していたとする」

召喚士「ところが、いざ使おうとしたところで、こうした竜の飼育の証拠が掴まれそうになったと」

召喚士「……学園側に証拠を残しておけない」

天測士「そ、それで校舎の破壊を!」

ざわっ――――!

教頭「静かに! 静かに!!」

教頭「静かにせい!!」バンバン

隊長(なるほど、そういう考えもある)

隊長(だが、どうだ? 可能なのか?) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:50:15.15 ID:elgZDrVQo<> 召喚士「無論、これは想定に過ぎないが、我々には疑うべき点が多すぎる――」

?「……あの、ちょっとイイスカ」

教頭「ああ、ああ、待った! とにかく、静まれ!」

教頭「一人ずつ話しなさい、で、君は」

軍師「……えと、十六番隊の、軍師、ですケド」

軍師「ゴホッ、あの、都合よく考えすぎじゃないスカ」

召喚士「都合よく、とは?」

軍師「教師に反発している生徒が、言った言ったというのを、無闇に信じるのってどうかなって」

天測士「そうよねぇ……」

隊長「僕もそう思います。別の側面からですけど」

天測士「え、え?」

隊長「竜の知能についてなんです。連中、あの夜の時は、それほど集団の行動は取りませんでした」

隊長「それから、二番隊、十三番隊を囲んだのは、罠ではなかったと……」

隊長「ところが、今回は三頭一組の編成を組んで行動した」

軍師「……そっすネ。学園を破壊するのに、陣形とかはいらないですし、明らかに加速的に知恵がついているように……ミエますね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:50:42.27 ID:elgZDrVQo<> 教頭「……」

軍師「ま、要するに……事実としては、学園側が仕組んだと言っている人がいる、と」

軍師「そして、肝心の学園長が、いつの間にかいなくなっている、と」

軍師「こんなところじゃないスカ」

教頭「……ぬ」

天測士「だから、さっきの話なんです! あの教師を、締めあげて、教頭先生が確かめてみたらいい!」

教師B「おい、天測士……」

天測士「私たちはねぇ、逃げたっていいんですよ! だけどね、バカにされっぱなしでこのままってわけにはいかないのよ!」

天測士「あんたたちもそうでしょ!? 違うの!?」

天測士「これだけ、バカにされて、コマにされて、そのままでいいの!?」

シン……―――

天測士「はぁ、はぁ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:51:10.86 ID:elgZDrVQo<> 魔剣士「……その点は賛成だ」

召喚士「原因の究明は必要ですな。教頭先生もご存じないことが多いのではないかと」

短パン「よく分からんが、このまま喋ってるだけじゃダメだな!」

隊長「僕もそう思いますね。少なくとも、先生方ご自身で確かめることが必要だ」

軍師「……どのみち、事実の、確認は、賛成デス」

「そ、そうだそうだ!」「学園はきちんと暗部を公開しろ!」

「このままじゃ浮かばれないわ……」「先生、なんとかしてくださいよ!」


教頭「……」

教頭「……分かった」

天測士「よぉし!」

教頭「だが、その件については、一任させてもらいたい」

隊長(当然、だな) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:51:37.70 ID:elgZDrVQo<> 教頭「それと、今回の件で、とにかくも学園の敷地は破壊されてしまった」

教頭「どうあれ、各国へ使者を送る必要があるだろう」

教頭「それらをまず、希望の戦隊を募ることにしよう」

教頭「……本格的な方針は、それ以降とする」

教頭「他に、議論すべき点がなければ、隊長会議をこれ以上続けても無用だろう」

教頭「何かあるか」

隊長「一つだけ」

教頭「隊長君、どうぞ」

隊長「学園内の数人だけで、学園の方針が牛耳られていたとは思えません」

軍師「あ、あー……そっか、そっすネ」

教頭「……どういうことだ?」

隊長「他国、他の組織とつながっている可能性も考慮に入れるべきだと思います」

教頭「……分かった」

教師B「……」

教頭「では、隊長会議を終了する。解散!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:52:03.39 ID:elgZDrVQo<> 隊長「ふぅ……」

天測士「隊長ーーっ!」

隊長「お、おう」

天測士「まったく、遅いんだから! 心配させないでよね!」

隊長「……天測すれば分かっただろう?」

天測士「知っていたわ。だから、少し場つなぎをしたというか」

魔剣士「うるさくてかなわなかったぞ、そのアホはな」

天測士「うるさい! パーマ! ナルシスト! ヘタレ!」

魔剣士「こいつ……!」

隊長「おいやめろや」

魔剣士「ふん……ふんっ」

召喚士「隊長殿」

隊長「ああ、召喚士」

召喚士「パーティーのところに戻るのかね? まあ、そうした方がいいだろうが」

隊長「いや、うーん」

隊長(どうするかな、ここの連中と話していこうか)


【久しぶりの選択肢】
>隊長同士で話し合うか、さっさとパーティーのところへ戻るか。

・隊長どもと話そう。気になるひともいるし…(誰とメインに話すかもあれば)
・いやいや、うちのパーティーに、きちっと話したいことあったから。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/22(土) 20:54:14.46 ID:elgZDrVQo<> 今夜はここまで。
ペースを、ペースを上げるんだ…(ヽ'ω`) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/23(日) 03:16:35.55 ID:jZ5GndD0o<> 乙!

軍師キレるねぇ。是非軍師と話して貰いたい! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/23(日) 15:29:59.50 ID:geYgRAgIO<> まずは他の隊長と情報共有してその上で別の視点から物を見てた軍師の話を聞けばまた違った発見が出来るかも <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/24(月) 05:58:31.40 ID:mb6/G7D80<> ここは話を聞くべきだな

情報は大事だし <>
◆k.6bdeNTfg<>sage<>2012/12/24(月) 23:42:54.37 ID:VfHZiEkIO<> あ、すみません。軍師は十七番隊です…
隊長連中と話すルート執筆中…明日にはなんとか! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/25(火) 00:50:28.91 ID:7qNE/HEuo<> 承知。待ってる <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:38:29.51 ID:G8fDZk2Wo<> >話を聞こう。


隊長(……聞くか)

隊長(これを逃したら機会がないかもしれない)

隊長「……ごめん、ちょっといいかな?」

召喚士「何かな?」

隊長「うん……さっきの会議で、大体の情報は、出し尽くしたと思うんだが」

隊長「少し、信頼のおけるメンバーには、まだ情報があれば聞いておきたいし、今後のことも話したいんだよ」

天測士「し、信頼……くふふっ、そう、そうよね! 私にっ」

召喚士「……申し訳ないが、我々は八日を飛び越して、まだ掴みきれていないことの方が多い」

魔剣士「俺もかよ」

天測士「あ、あの」

隊長「……一番隊がどうなったのかも気になるだろう?」

魔剣士「俺はな、こいつが妙な魔法を失敗させなければ竜を屠っていたとも!」

召喚士「学園では到底、そうは見えなかったが……」

魔剣士「と、とにかく、一番隊だろうが、そうそうやすやすと竜を倒せるわけもないし、逆に、そうあっさりと返り討ちに遭うとも思えんな」

天測士「おーい」

隊長(……ふむふむ) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:38:55.39 ID:G8fDZk2Wo<> 隊長「情報に関していえば、学園内のことは天測士に聞いたほうがいいかな」

天測士「あっ、そ、そうよ!」

天測士「……そうね、私達が帰ってきてから、学園は対応にうろたえるということはなかったわ」

天測士「そのせいか知らないけど、私はね、竜が来ることを予測していたの」

天測士「だけど、それを知らせても、学園内の生徒は全然ピンと来てないみたいで……」

天測士「情報を統制されていたというか、学園側に判断を預けていたというか……」

天測士「何より、私達を拘束しようとしていたしね!」

魔剣士「それは正解じゃねーのか」

天測士「何よぅ!」

隊長「そうか……」

軍師「……」

魔剣士「おいおい、つーかよ、お前がなんで仕切ってんだ?」

隊長「ん?」

魔剣士「いいか? 順列で言えば、お前の隊にいる剣士にさえ勝った、二番隊が仕切るべきじゃないのか?」

隊長「……」

隊長(ふー、イライラを抑えよう)

天測士「ちょっと!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:39:22.44 ID:G8fDZk2Wo<> 天測士「聞くけどね、あんたはこの先、どうするつもりなのか、考えているわけ!?」

魔剣士「あ? そんなもん……そりゃ、学園が方針を決めないことには」

天測士「それじゃ遅いわよ! 竜も、学園長派もどんどん動いているんでしょう!」

天測士「だから、今後の行動も話したいって言ったのよね!?」

隊長「察しがいいね。実を言うと、俺の隊は一晩越したらとっとと移動をしようと考えているんだ」

天測士「え、ええーっ!?」

隊長(自分で予想しているのになぜ驚く……)

天測士「も、もう、い、行っちゃうの?」

召喚士「私も理由が知りたいな」

隊長「いや、だって……作戦を受けたところで寮に置いた財産が戻ってくるわけじゃなし」

魔剣士「そういえば……」

天測士「学園をやめる気!? いや、私もこの際とは思っていたけど」

隊長「いずれにせよ、再建はすぐには無理だ。だったら、今残っている教師陣の指示を待つよりは……」

軍師「外堀を埋める……っスカね」

隊長「あ、ああ」

隊長(誰だよ) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:39:49.99 ID:G8fDZk2Wo<> 軍師「学園長派も学園を焼け落としておいて、ふらふらとしているわけがないでしょうからネ」

軍師「隊長さんは、お姉さんが王国にいるんでしたっけ? で、王国が学園長派に味方しないように、先行して説得に行くと」

隊長「……そうだけど、どちらさまでしたっけ?」

軍師「あ、ちゃんとお話するのは初めてですしネ。軍師です、十七番隊の」

天測士「十七番隊がどうしたっての?」

軍師「あー……踊り子、がいる部隊って言ったら、隊長さんは察していただけまスカ」

隊長「……戦隊ランキングのことかな?」

魔剣士「ああ、あれかよ」

天測士「ランキングって、あの、ほら、出回ってた……」

軍師「その節はどうも大変失礼をしました」

隊長「失礼って、何のことかな?」ニコ

軍師「ご存知ですよね、あのランキング。あれの成績を見て、帝国が軍隊の設立に踏み切ったこととか」

軍師「今回の竜の谷の調査が、その成績を流出させた者への報復だったとか」

天測士「はっ!?」

魔剣士「おい、どういう意味だ」

召喚士・隊長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:40:17.53 ID:G8fDZk2Wo<> 召喚士「商人か」

隊長「だろうね」

天測士「ちょっと!? うちのパーティーに、そういうやつらがいるってこと!?」

軍師「ゴホッ、忍者サンがいらっしゃるでショ」

魔剣士「ありゃあ公然の秘密だったはずだ。誰だって存在には気づいていた!」

軍師「流出、もそうですし、販売も問題だったんスよね」

隊長「……俺たちは関わってないはずだったんだけど」

軍師「え、あ、まあ。それが一番の謝罪、なん、で」

隊長「……」

軍師「……」

隊長「なるほど」

軍師「申し訳ない」

隊長(要は、学園側に誤認させたわけだな。踊り子を被害者にして、ランキング作成の首謀者を、俺あたりに設定したと)

隊長「……メンバーの動きを見逃していたのか」

軍師「上昇志向の強いメンバーだったんで……泣きつかれたんス」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:40:43.69 ID:G8fDZk2Wo<> 天測士「あんたはぁ! ヘタしたら、隊長とか、全員、死んでるところだったのよっ!!」

軍師「戦隊の隊長として、どう対応するかは迷ったんスけど、その時はこれが最善だとは思いました」

軍師「学園だって、成績を公開し始めたし、流出したところで大した騒ぎにもならなかったと」

軍師「でも、まさか……こんなことになるとはネ……」

隊長「踊り子はどうしているの? 本人に謝罪させた方が、誠意は――」

軍師「死にました、学園から逃げる途中」

天測士「あ、う」

召喚士「……」

魔剣士「……ふん」

隊長「そうだったか。お悔やみを」

軍師「いらないっス。止められなかった自分の責任なんで」

隊長「……それで、俺たちに話しかけてきたのは責任感の現れなのかな?」

軍師「ええ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:41:10.08 ID:G8fDZk2Wo<> 軍師「隊長会議では、事実の確認だけにしとかないと……困るかな、と思ったんスよ」

軍師「予測まで飛び交うと……ゲホッ、隊長さん、かなり過激なことも考えてるっショ?」

隊長「過激かどうかは分からないけど」

軍師「……どこの国と学園長派がくっついてるのか、とか」

魔剣士「何ぃ」

隊長(こいつ……)

隊長「君、自身はどう思っているのかな?」

軍師「……大当たりだと思うんスけど、特務機関でショ。目下、帝国と対抗できる組織が他にないデス」

隊長「俺もそう思う」

天測士「ちょっと! 予想するなら、私の天測が!」

軍師「他に、どんな情報があります? 隊長サンこそ、隠していることがあるでショ」

天測士「(;ω;)」

隊長「……あー」

召喚士「隊長殿」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:41:38.53 ID:G8fDZk2Wo<> 召喚士「失礼だが、軍師殿。あなたの言うことこそ、真偽が不明ではないだろうか」

軍師「と言いまスと?」

召喚士「まず、今回の作戦が、成績流出者の報復だった、という件。これに心当たりのある者もいるかも知れないが、全く証拠がない」

召喚士「そして帝国が軍隊の設立に踏み切ったこととの関連性をなぜ知っているのか?」

軍師「あの中身見ればわかるでショ、冒険者の集団のレベルは落ちていると」

召喚士「だから、軍隊を作る必要があるのか。トップランクの一番隊は、プロ顔負けの集団だ」

召喚士「仮にそこを必要としない、となれば、学園との関係が悪くなった時に、相当程度レベルの高い冒険者と関係が切れることを意味する」

召喚士「成績を見て、踏み切ったとなれば、学園の方針に暗黙の否定を突きつけたことにほかならない」

魔剣士「……そりゃ確かにそうだ」

軍師「……」

召喚士「それに、踊り子殿が亡くなったかどうか、も分からないな。あの混乱で遺体を確認するのも難しいことだ」

召喚士「我々にいたっては、口だけで聞いたに過ぎず――お悔やみも受け取らなかった」

召喚士「君は、我々に取り入って、何らかの動向を探ろうと考えているのじゃないのか」

軍師「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:42:05.12 ID:G8fDZk2Wo<> 軍師「どう見えますか」

隊長(すごく怪しく見えるぜ)

軍師「……正直に言えば、冒険者になる気もないんですよ。帰ったら、自分の地元で仕事がある」

軍師「隊長サンとか、召喚士サンとかとは違ってね」

召喚士「む」

隊長「……」

天測士「え、なに?」

隊長「詮索したら殴る」

天測士「何よぅ!」

軍師「数十年前とはいえ、竜に焼け出された都市や町は多い、スからね。大体、探れば分かりますよ」

隊長「……そういう軍師も、地元ってことは国じゃないのかな」

軍師「海を超えるんデスよ。ずっと向こうにあって」

隊長「ふうん」

軍師「でも、ま、せっかく海に渡ってきたのに、こっちでも使われっぱなしじゃ、嫌でショ? 天測士サンの言うようにネ」

魔剣士「おい、もっと分かるようにしゃべれ」

隊長(うるせぇなー、こいつは) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:42:31.11 ID:G8fDZk2Wo<> 隊長「軍師はな、多分……」チラ

軍師「あ、あー……」

隊長「……この周辺を元々探るように言われて来たんだよ。それで、この辺の事情通になっているってことだろう」

軍師「そ、そういうことで」

魔剣士「嘘をつけ」

隊長「でなくとも、似たような状態だろう。問題は、それで、本心でどうしたいのかってことじゃないかな」

軍師「一泡吹かせたいんスよね」

召喚士「……誰に?」

軍師「学園長にはネ。軍隊はともかく、竜なんて出てきた日には……」

隊長「地元に影響が来かねない、と」

軍師「ええ、まあ。あー……弔いの意味も、ありますし」

天測士「うう……よし!」

天測士「だったらやってやろうじゃないの!」

全員『勝手に決めるな』

天測士「(´・ω・`)」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:42:56.99 ID:G8fDZk2Wo<> 軍師「え、まあ、それで、その」

召喚士「君の情報はそれだけかね?」

軍師「参ったなぁ、じゃ、言っときましょか」

軍師「……各国の動向で、一番ヤバそうなところス。特務機関ですね」

魔剣士「……なんか、やけにそこにこだわるな」

軍師「特務機関は勇者を雇っていましたからネ。竜の情報も、一拠点しかない学園より、よく知っているはずデス」

召喚士「なるほど、他の国レベルでは、いかんせん自国の領土にのみ観察が限られてしまうな」

軍師「それに、学園戦隊の実習制度はかなり特務機関が噛んで成立してますカラ」

天測士「学園長派ともつながっているってこと?」

隊長「というより、機関が学園をそそのかしたかもしれないよね。冒険者不要となったら、仕事の斡旋をしている機関が困るのも目に浮かぶ」

天測士「ひっどい」

隊長「俺からも、ひとつ、出しておこうか。東、竜の谷を流れる川の下流に町がある」

隊長「そこで聞いたことだが、各国は学園に監視や詳細な要望を手渡していた、と言うんだ」

魔剣士「監視だと?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:43:24.05 ID:G8fDZk2Wo<> 隊長「ああ。王国内部に詳しい人からの又聞きになるが、献金額に応じて、卒業進路や教育内容にもかなり踏み込んでいたようなんだ」

天測士「何よっ、それーっ!」

召喚士「それ自体が言いたいことではなかろう」

軍師「……うん、ということは、学園側は徹底抗戦する気ってことですよネ」

隊長「帝国に対してな」

召喚士「なるほど」

隊長「帝国の献金額は、他国とは比較にならないほど多かった。それが、軍隊や自前の教育機関も含めて検討するとなれば、自然、その額が絞られる」

隊長「そうなれば、学園の経営は成り立たない。いくら強力な冒険者が育っても……」

魔剣士「それで、特務機関の知恵入れで新しい教育プログラムを組んだとなりゃ、それは徹底抗戦する気だわな」

隊長「うん……」

軍師「……」

魔剣士「……」

召喚士「……」

天測士「えーとさ、そんな政争にまで巻き込まれるつもりは私もないわよ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:43:50.13 ID:G8fDZk2Wo<> 隊長「だから、提案だ。学園長を封じ込めるのも、竜から逃れるのも、俺達だけじゃあ手に余る」

軍師「つまり……」

隊長「それぞれ分担して、各国にこの惨状と事情を伝えるんだ。良くて学園長側を追い詰める人手を出させる」

隊長「悪くても、中立か……そうだな、竜の餌をばら撒いて、竜退治に無理やり引きずり込んでやるか」ニヤ

軍師「つまり、プレイヤーをさらに増やすってワケですネ」

隊長「ヘタを打てば捕まる可能性も重々あるがな」

天測士「ん、うん。分かったわ」

魔剣士「いいだろう」

召喚士「そうだな……」

隊長「さっきも言った通り、時間との勝負もある。俺は王国に」

魔剣士「だったら、俺は特務機関の本部に行く。機関にも、まあ、多少話が分かるやつがいるだろう」

軍師「帝国に行きましょうかね」

召喚士「共和国に行こう」

天測士「私は大きな町を回るわ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:44:16.20 ID:G8fDZk2Wo<> 隊長「よし、お互いに連絡を取り合うわけにもいかないが、最終的には学園長をとっ捕まえるか」

魔剣士「竜をぶった切るか」

軍師「……学園がどうなるか、にも、寄ると思いますがネ」

召喚士「やれやれ。学園の方針を決める間もなく、十数人が消えたら、さぞかし驚くだろうな」

天測士「いいのよ! どうせ私らは報復組なんでしょ!」

隊長「そうむくれるなって」

魔剣士「しくじるなよ、お前らも――」


軍師「……あー、隊長さん」

隊長「ああ」

軍師「すみません、信じていただいて」

隊長(謝ることなのか?)

軍師「なんとかうまく行ったら、お酒でも一緒します?」

隊長「ああ、別にいいよ」

軍師「ゴホッ、ん……本当に、ありがとうございます」

隊長「……ああ」

隊長(さて、うちのメンバーのところに行っておかないと……) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:44:42.16 ID:G8fDZk2Wo<> >体育館。

隊長「……」


隊長は、少し呆れたようにその光景を眺めていた。
なんとなく、突っ込んでいいのか、それとも自分が言い出したことだから、止めるのも問題あるか。

剣士が、満面の笑みを浮かべていた。
興奮したように、息を切らせて、目を見開きながら剣を振るっている。

体育館内で、まるで暴動でも起きたかのように、生徒たちが十数名倒れ伏している。

竜にやられた傷ではない。


工兵「あ、隊長ー」

隊長「……会議、少し長引いちゃったのがまずかったかな?」

工兵「いやあ、どうだろうねぇ」

救護員「あ、たいちょう! 止めてください!」

救護員「あんまりからかうもんだからって、笑いながら人を殴る練習を剣士さんがっ!」

隊長「……おう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/25(火) 20:45:20.49 ID:G8fDZk2Wo<> と、とりあえず、今夜はここまで……
良い方向に分岐させたと思いたい・。・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/25(火) 21:04:25.24 ID:7S6VWwFBo<> 乙
天測士かわいいよ天測士
メンバーとの話も楽しみだわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/26(水) 12:01:49.57 ID:DmlxeDdbo<> 剣士が壊れたww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/27(木) 18:14:59.93 ID:DEdpcLW50<> 剣士好きだわーw <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2012/12/27(木) 22:35:08.55 ID:kX9UY6Kwo<> 隊長「おーい、剣士ー」


剣士「ふーっ、ははははっ、ははははっ!」ブンブン

生徒「うおおお、誰か止めろあいつ!」

生徒「無理じゃあ! 大振りしているのに隙がねぇっ!」

剣士「楽しい、弱いものいじめは楽しいなぁっ!」


隊長「……楽しそうだな」

救護員「止めてください!? 僧侶さんと手一杯なんですよっ!」

救護員「っていうか、僧侶さんも怪我している人なのにっ!!」

術士「良くない方向にハッスルを発する剣士……」

隊長「うん?」

救護員「……あー、あまり受けなかったからって頑張らなくていいんですよぅ」

術士「隊長、遊び人のネタ帳って、図書館になかったかしら」

隊長「いや、図書館焼けたし」

術士「そう……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:35:37.60 ID:kX9UY6Kwo<> 短パン「とまれぇええええええええっ!!」

ピタッ

短パン「っしゃああ!! 竜をも止めた俺の魔法、そしてぇ!」

剣士「強敵の登場、そうだ、修行時代はなんでも楽しかった……」ゴキバキ

短パン「動いてるんだがあっ!?」

剣士「おっさんも、会長もいて、三人で一日百匹殺れるかな……」ガンッ、ガンッ

剣士「大走破砂漠を水一滴なし徒競走……」バシッ、ズバッ

短パン「いてぇぇええ!!」


救護員「あー、怪我人増えたー!」バタバタ

隊長「なんかスゴイことを言ってるな」

工兵「そういえば、剣士って竜の首をぶった切ったんだよねー」

術士「……人間なのかしら」

工兵「改造人間かもねー」

隊長「……改造はするなよ」

隊長(うーん、みんなに、いろいろと話したいことがあったんだけど、全部吹っ飛んでしまった) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:36:03.90 ID:kX9UY6Kwo<> 隊長「剣士! ステイステイ!」

剣士「……チッ」

隊長「あ……スマイルスマイル!」ニッコリ

剣士「……」

隊長「なんか変な顔になってるよ」


「お、おお……止まったぞ」「バカな、これが戦隊隊長の実力……」

「恐ろしい……」「ゴクリ……」


隊長「腕の調子は?」

工兵「うーん、気にするところはそこじゃないと思うよ、隊長」

剣士「快調とは言い難いが、痛みは薄れた」

隊長「え……じゃあ、この路線が最適解ということに……」

呪術士「そ、そんなわけないでしょ」

剣士「お前か」

呪術士「お前かじゃないって、急に暴れだして、もう」

剣士「暴れていたわけじゃない、ちゃんと言っただろう」

剣士「稽古をつけてやる、とな」

呪術士「どう見ても憂さ晴らしにしか見えませんでしたけど!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:36:29.59 ID:kX9UY6Kwo<> 剣士「大剣を大振りして、竜の尾撃を真似てみたんだが、どうだったろう?」

工兵「振り幅の大きさはかなり意識されていたねー」

隊長「気にするところはそこじゃないと思う」

呪術士「そういう会話がおかしいのよ! さ、ほら、腕!」

剣士「……」

呪術士「う……ん……あー、何なのよこれ」

剣士「なんだ?」

呪術士「露骨に呪印が解放されているわね」

剣士「多少無理はしたんだが……」

呪術士「……一応、解呪・軽減の法を重ねてかけるから、僧侶のところに行かないと」

剣士「隊長」

隊長「行って来なさい」

剣士「やれやれだ」


「お、おお……魔人がおとなしく女に手を引かれて……」「彼女かっ、彼女なのか!?」


呪術士「そんなんじゃないってば……」

隊長「楽しそうだね」

剣士「そうか?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:36:56.31 ID:kX9UY6Kwo<> 工兵「良かったね、剣士が明るくなって」

隊長「そうだね。怪我に対してはおとなしいみたいだし」

術士「そういう結論でいいのかしら」

隊長「はぁー……」

隊長「……しばらく剣士が笑ってなきゃいけないのか」

工兵「笑いのツボはどこらへんなんだろうねー?」

術士「ギャグは合わないみたいなの」

隊長「それはつまらないからじゃないかな」

術士「……」

隊長「あっ、何事も訓練が大事だと……」

術士「隊長の意地悪……」

隊長「……とりあえず、各方面に謝ってくるよ」

工兵「謝るも何も、腕の立つやつはーって言って募ったんだから、自己責任だよ」


天測士「なぁにやってんのよ、斧使い!」


隊長「……あーいうのもいるから」

工兵「そうだね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:37:24.75 ID:kX9UY6Kwo<> >七番隊。

斧使い「いやぁ、対竜を想定した訓練をすると言っててな」

天測士「あんたはっ! 今日はゆっくり休んで、今後のことを決めるって言ってたでしょうに!」

狩人「まーまー、斧使いも必死なんだーよ、生き残るのに」

斧使い「占い師ちゃんに格好わるいところは見せられないし、俺が肉壁かつ要だからな」

占い師「はい〜?」

天測士「で、何手で負けたの?」

斧使い「もった方だ、打ち合い三合」

天測士「バカ! 弱虫毛虫!」

斧使い「リーダー、そりゃないぜ……」

隊長「ごめん、うちの隊員が」

斧使い「おっ、隊長! 無事に到着してたみたいだな」

隊長「当たり前だろ?」

斧使い「言うようになったね〜、こいつ」グリグリ

隊長「やめろって」

天測士「こらっ、斧使い、迷惑をかけないのよ! 彼は怪我しているんだから」

斧使い「ちゃんと加減はしてるよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:37:54.59 ID:kX9UY6Kwo<> 狩人「……っていうかさ、リーダーって、隊長さんのこと」

忍者「うむ、慕情の念がはっきり分かりますぞ」

天測士「な、ななな、そんなわけないでしょ! こんなチビ!」

隊長「俺も小うるさいガキは嫌いだ」

天測士「……」

斧使い「なんだよ、照れてるのか、隊長ー。応援してやるぞ!」

隊長「リアルに不愉快だからやめてくれ」

天測士「……」

斧使い「あ、そこまで言うことはナインジャナイカナ」

隊長「それより、この人数だと宿舎に全員入るってわけにもいかないだろ?」

斧使い「あー……後から来た隊は、体育館で雑魚寝になりそうなんだ」

隊長「そうか……」

斧使い「なんだったら掛けあって見るか? まだ傷は完治してないんだろ」

隊長「いや、従うよ。どのみち、すぐに移動を……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:38:24.39 ID:kX9UY6Kwo<>
天測士「……(´;ω;`)」

工兵「ああ、素直にしていれば良かったのに〜」

天測士「いや、ホント、違うし……ただ、本気で拒絶を食らったことに言い知れぬショックを受けてるだけだし……」

狩人「そういうのが恋って言うんだーよ」

天測士「あ、あのね!」

占い師「大丈夫ですよ〜、リーダーと隊長さんの相性はそこそこ良いんで」

天測士「いや、違うんだって」

工兵「ちなみに〜? うちの隊員の女性陣とは〜?」

占い師「……もっと相性がいいです」

狩人「あははははははっ」

天測士「うわああっ! そんなに笑ってると、狩人の結婚相手を天測によって算出してやるわよ!」

天測士「仮に絶望するような相手でも、おとなしく運命を受け入れることねっ」

工兵「あー、そうだそうだ」

天測士「な、なに?」

工兵「その、天測機。もっと改良出来ないかと思ってたんだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:39:00.59 ID:kX9UY6Kwo<> 天測士「はい? これは、その、かなり精度がいいやつでね……」

工兵「うん、師匠が若かりし頃に作った試作品でしょ。賢者の『レコード』と接続してある」

天測士「は? え? は?」

工兵「やー、久しぶりに師匠にあった時、その話をしたら――」

師匠『あんな未熟な作品を使われていると、私の仕事の信用に関わる』

工兵「って言ってこれを」どちゃ

天測士「……」

工兵「えーとね、レコードと接続する部分がこれになっていて、リールが回転し、この盤面上に金砂が展開するような仕組みになっていてね」

天測士「ええーっ!?」

工兵「なに?」

天測士「いやいや! あなたのお師匠様が!? これを!?」

工兵「そうだけど」

天測士「だって、これ、うちの家宝になっていて」

工兵「あ、その話は聞いておきたい。師匠の顔から火を吹かせてやれそうだしー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:39:32.48 ID:kX9UY6Kwo<> 天測士「本当に? マジで?」

工兵「うんうん、家宝なら、それはお家に返してあげてさ、こっちが最新型らしいから――」

天測士「世界が狭すぎてクラクラするわ……」

工兵「……大丈夫?」

隊長「おーい、工兵。毛布を支給してくれるらしいから」

工兵「あ、隊長。ごめん、あとちょっとだけ」

隊長「うん?」

工兵「んじゃ、試しに、明日の天気を調べて見よう。貸して」

天測士「え、ええ……」

工兵「風向、風量、光などを設定。この辺は自動的に算出することもできるが、自分で測定することも可能だ」

工兵「その他の要因になりうるものを数値変換して入力……」ピッピッ

工兵「一番お手軽なのは金砂をばら撒いて、正確な読み取りをしないと行けなかったのを、この透明な板に吹き付けることで、代用しているという……」

工兵「さあ、天測機よ! 明日の天気を算出せよ!」


ビーッ ぱしっ、ぱしっ

『アシタノ テンコウハ ハレ。キタノカゼ ニッチュウ ヤヤツヨク トコロニヨリ リュウノ イドウニヨリ クズレル オソレ』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:40:00.44 ID:kX9UY6Kwo<> 全員『しゃべったー!?』

工兵「サイレントモードも出来るから、音を出したくないあなたも安心」

隊長「……なんというか、工兵だけ異様な技術力だな」

天測士「あ、あんた、自分のところのメンバーなんでしょ?」

工兵「いや、これは師匠だから出来ることだよ」

工兵「全く、あの腐れ師匠は、いちいち機能解説をしながら『お前にはまだ無理だ』『お前にはまだ不可能』『基礎をつけろ、基礎を』と延々と……」ブツブツ

天測士「あ、えっと、ありがとう」

工兵「うへへ。感謝するなら、使い心地とその天測機を家宝にした経緯を教えることだよ」

隊長「いやいや、いい加減に、他の隊にも謝りに行かないと」

工兵「残念」

天測士「あっ」

隊長「……なんだ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:40:31.21 ID:kX9UY6Kwo<> 天測士「し、死ぬんじゃないわよ」

隊長「お互いにな」

天測士「ん、一応、これで本当の意味で、あの夜の作戦は終了したわけよね」

隊長「そういうことになるか。これからは自由作戦だからな」

天測士「だったら、次からは」

天測士・隊長「……『学園の不正と竜の情報を、各地に広めよ』」

隊長「この辺だろう」

天測士「く、ふふっ、ま、せいぜいお姉さんにやり込められないように頑張ることね」

隊長「天測しこそ。そうだ、川下の町に行ったら、救護員のお父さんが有力な商人でもある」

隊長「尋ねるといいだろう」

天測士「ありがとう。明日、すぐに出るんでしょう?」

天測士「その前に、天測と占いで、素早い王国へのルート、出しておいてあげるわ」

隊長「ああ、それじゃな」

  二人は、ハイタッチをして、別れた。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:40:57.82 ID:kX9UY6Kwo<> >八番隊。

呪術士「僧侶、どう?」

僧侶「んー、個人でやったものとしては、かなり高レベルな呪印でしょうね」

僧侶「さすがに今は薄れてきているけれど」

短パン「うおおおおおおっ、ふたりとも、彼もそうだけど、俺の怪我も見てくれよっ!」

呪術士「……」

僧侶「……」

短パン「なんだなんだ、なんなんだー!? この冷たい視線はあああああああっ」

剣士「リーダーのくせに無鉄砲だからだろ」

短パン「言われたくねぇええええええ!!」

槍使い「ほんと、俺達はリーダーで損しているよな」

侍「む」

術士「どうもー……」

救護員「ごめんなさーい! お世話になりまして!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:41:25.88 ID:kX9UY6Kwo<> 呪術士「そ、そんな、いいのよ」

僧侶「むしろ、こんな実例を見れるなんて、正直に言うと幸運もいいところじゃないかしら」

術士「そう」

呪術士「……」

僧侶「……」

二人(き、気まずい……)

呪術士(うーん、剣士を媒介にしていたけど、この人はネクラっぽくて会話が成り立たないタイプっぽいのよね)

僧侶(いや、ここには救護員がいるから……)

救護員「剣士さん、隊長が謝罪行脚に行っちゃいましたよ!」

呪術士「……」ホッ

僧侶「この空気読まない感がいいのよね……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:41:54.93 ID:kX9UY6Kwo<> 剣士「……謝罪?」

救護員「剣士さんが訓練と称したシゴキともつかないいじめに対して、怪我したところに謝りに」

剣士「修行が足りねぇんだろ」

救護員「はっ、これだから、陰険な剣士、略して陰険士は」

剣士「……チッ」

呪術士「あああっ、腕の赤い呪印がじわじわと」

僧侶「た、楽しいことを考えてみてくださいね〜」

剣士「……」ふっ

短パン「どんな楽しいことを考えたんだ?」

剣士「いやなに、麻薬の密売組織を壊滅させる訓練をした時、家族が危険に晒されたことがあってな」

救護員「詳しく喋らなくていいんですよ、そういう話は」

剣士「父親の片耳のくだりが一番おもしろいところなんだが……」

槍使い「もうその単語だけで不穏だよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:42:24.43 ID:kX9UY6Kwo<> 剣士「大体謝罪というがな、その男もそうだが、俺は名乗り出た連中としか殴り合ってないじゃねぇか」

短パン「ふははははははははっ、実力を試して見たくてな!」

剣士「だったら、さっきのお前の動きについて、講評はしてやる」

剣士「はっきり言って、発声魔法の密度が弱い。声がでかいだけで魔力が濃くないから、勘所さえ合えば外しやすい」

剣士「何より、次に繋がるはずの、肝心な攻撃がへなちょこだった」

短パン「ばっさりと!」

剣士「雑魚を相手にする分なら優秀だろうが、強敵にも通じるのは威勢だけだ」

槍使い「ああ、弱い魔物と雑草を刈るだけなら、一番スゴイ戦隊と有名だからな……」

呪術士「そ、そんな嫌な有名があったのね」

侍「むう」

救護員「せ、洗濯物をたたむのが得意な戦隊といえば――」

術士「うちにそんな有名はないから」

剣士「何を張り合ってんだ、お前らは……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:42:50.80 ID:kX9UY6Kwo<> 僧侶「……これで、よし」

剣士「……どうなった?」

僧侶「解呪の魔法を埋め込んだわ。呪印の効果と反動が少しずつ消えていくように、なる、はず」

剣士「……」

呪術士「な、なによ。そんな便利な術をどうして今まで、みたいな」

僧侶「呪術士が解析してくれなければ、的確に魔法を組み立てることはできないのよ」

剣士「ああ、いい、わかっている。むしろ、ここまでしてくれて、感謝している。ありがとう」ペコリ

呪術士「うぇっ!? あ、いやー……」

僧侶「そんな柄じゃないって言いたいみたいよ、彼女は」

呪術士「僧侶、そんな言い方しないでよ、もー」


救護員「じ、術士さん……剣士さ、剣士が感謝を!」

術士「驚くのはまだ早いわ」

剣士「お前らに憎悪を抱くのも、そう遅くはなさそうだな、おい」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2012/12/27(木) 22:43:16.75 ID:kX9UY6Kwo<> とりあえず、今夜はここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 05:02:04.08 ID:jkPnrACAO<> 乙
救護員ちゃんは家事手伝いかわいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 17:51:21.55 ID:YCalYCdy0<> 隊長はやっぱり隊長だな

やっぱり剣士が好きだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 21:21:11.39 ID:jei41weTo<> 乙 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/01/05(土) 21:00:13.77 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「……お話し中、どうも」

呪術士「ああ、隊長さん」

僧侶「大変でしたね、いろいろと」

隊長「いや、こちらこそ。剣士がお世話になったみたいで恐縮です」

呪術士「はぁ〜、あなたみたいな人が隊長だったら良かったのにね」

槍使い「ないない」

侍「同感だ」

隊長(イラッと来る)

呪術士「あんた達、あれのほうがマシだと思うわけ?」

短パン「アレ?」

槍使い「だって、まあ、そりゃうちのリーダーはアホだけど、やっぱりうちにあってるよ」

僧侶「私もそう思いますわ」

呪術士「ええ〜?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:01:02.40 ID:yDEH3xSwo<> 槍使い「一応言っておくけどな、こいつはすんごい面倒くさがり屋なんだぜ」

槍使い「組んだパーティーの関係で、えらく頑張っているように見えるかもしれんが」

隊長「否定しないよ」

槍使い「俺らと組んでいたらどうせ丸投げして、結局、俺らは苦労するんだぜ」

侍「さよう」

短パン「おいおい、それじゃまるで、俺が苦労してないみたいじゃないか!」

槍使い「余計な苦労を呼び込んでるんだけどな……」

侍「さよう」

呪術士「そういうものかしら」

剣士「まるで俺らがこいつに迷惑をかけているような口ぶりだが?」

救護員「そうですよ〜」

隊長「否定しないよ」

工兵「否定しようよ」

隊長(……まあ、俺の方が) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:01:36.43 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「それで、剣士の様子だけど……?」

僧侶「安心して良いですわ。安静にしていれば、一週間もあれば」

剣士「竜鱗に傷くらいは付けられるだろう」

呪術士「あ、あんたね……」

隊長「無理しちゃダメだぞ」

剣士「……」チッ

術士「剣士、無理すると、みんな心配だから……」

剣士「分かってる!」

隊長「ほうほう」

工兵「え? なになに?」

救護員「恋バナですか?」

剣士「……」

槍使い「苦労してんな、あんたも」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:02:02.62 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「とにかく、いろいろと世話になったみたいで」

短パン「気にするな! 俺も、かえって迷惑をかけた面はあるからな!」

短パン「まあ、他のメンバーが助けていたみたいだし、イーブンだろ。わはははははっ!」

隊長(こいつ……)

槍使い「あー、なんだ。剣士と術士のな、拘束命令が出ていて……」

隊長「ああ、聞いたよ。でも、結局は助けてくれたんだろう」

僧侶「困っている方を助けることは、神の御心に適うことですからね」

救護員「えっ、僧侶っていつも、悪の成敗が神の……むぐぐ」

僧侶「と、とにかく、ちょっとよろしいですか?」

隊長「な、なんだ?」

僧侶「……あなたがいない時の術士さんの落ち込みようと言ったら、本当に痛々しいもので」ヒソヒソ

僧侶「あなた、何をどうしたか知りませんけど、人をあそこまで追いやってはダメよ」ヒソヒソ

隊長「ん……その辺は俺も問題意識を持っていたんだ。最近は、言うようになってきたから、安定してきたんだと思っていたんだけど」ヒソヒソ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:02:28.35 ID:yDEH3xSwo<> 僧侶「救護員もね、よくあなたのことをヘラヘラ笑いながら話していたんだけどね……」

隊長「ああ。同じクラスでしたったっけ?」

僧侶「そうよ。なんていうのかな、間近で見れば分かるんだけど、あなたって放っておけないタイプなのよね」

僧侶「うちのリーダーに似ている感じ」

隊長「……一緒にされると複雑だなぁ」

僧侶「あなた自身は周りを引っ張っていっているつもりでしょう。だけど、実際のところ、仲間に支えられてあなたは動いている」

隊長「……それは確かに」

僧侶「あら? 自覚があるの?」

救護員「ちょっとー、僧侶も隊長も、目の前でナイショ話はなしなんじゃないですかぁ」

隊長「大人の会話だよ。大人にならないとできないんだ」

救護員「子ども扱いはやめてください!」

僧侶「隊長さん、仲間にそのような態度はいけませんよ」

隊長「救護員がいて助かってるって話さ」

救護員「へぇひっ!?」

隊長・僧侶(奇声を上げおった……) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:02:55.90 ID:yDEH3xSwo<> 救護員「い、いやいや、私はねぇ、別に」

隊長「竜から逃げる時も、救護員が」

救護員「わ、私は一緒に逃げまわってただけで!」

隊長「たどり着いた町でね、泣きながら」

救護員「わー! わー! わー!」

工兵「え? なになに?」

隊長「そんなに恥ずかしいことじゃないだろ」

救護員「は、恥ずかしいですよ!」

隊長「俺は嬉しかったよ」

救護員「わ、わざと言ってませんか!?」

僧侶「ごめん、面白い」

救護員「僧侶ちゃん!?」

術士「えーと……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:03:23.78 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「じゃあ、そろそろ就寝の時間かな。明日には俺達は出発する」

短パン「なんだと!? まだ学校から方針も出てないだろう!」

隊長「それじゃ、遅すぎると思うんだ」

隊長「ただ、八番隊が残って、全体を見ていてくれるなら心強い」

短パン「むむ、そこまで言うなら……」

槍使い「心にもねぇことを」

隊長「腹の底から思っているけど」

隊長(拠点に駒を残しておくのは、盤面上じゃ当たり前のことだし)

槍使い「……」

隊長「じゃあ、また。生きて戻れたら、宴会でもしようか?」

短パン「ふっ、はははっ! 任せとけ!!」

呪術士「また適当な受け答えをして……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:03:50.66 ID:yDEH3xSwo<> 槍使い「おい、隊長」ガシッ

隊長「な、なんだ?」

槍使い「まぁなんだ。斧使いもそうなんだけどよ」

槍使い「お前も随分図太くなったな、おい」

隊長「そうかな?」

槍使い「そうだよ。帰ってきてないって聞いた時、さすがにぞっとしたぞ」

槍使い「冒険者業やってたら、こうも早くに友達をなくすものかって思ったもんだよ」

隊長「……」

槍使い「なんていうかな、お前、ニコニコしてて、そういうやつには見えなかったけど……」

槍使い「無茶するタイプなんだな。もっと自分を大事にしろ」

隊長「自分のことしか考えてないけどね」

槍使い「そういう意味じゃねぇ! ……死ぬなよ」

隊長「……」

隊長「お前もな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:04:17.15 ID:yDEH3xSwo<> >宿舎、外。

御者「……あー、お嬢さんに、隊長さん」

救護員「あっ、御者さん!」

隊長「無事、で何より」

御者「いやー、こんな目に会うとは思わなんです」

剣士「……お嬢さん?」

工兵「うん、救護員のお父さんの、世話になった人だから」

工兵「かなりのやり手でね、まあ、町の発展にも力を尽くした人だから」

救護員「なんですか? なにか言いたいことでもあるんですか?」

剣士「別にねぇよ」

術士「……救護員は、良家のお嬢様、ということね」

救護員「うぇへへ、実はそうなんです」

剣士「……」プルプル

救護員「笑いこらえてんじゃねーよ」

隊長「まあまあ。それで、御者さんにはここで……」

御者「というわけにもいかんでしょう。ここまできたら」

御者「どうせ、ここでのんびりするってわけでもないんでしょ?」

隊長「……王国に行くつもりです」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:04:43.65 ID:yDEH3xSwo<> 御者「それなら、まあ、出来る限りはお付き合いしますよ」

救護員「で、でも、竜と会うかもしれないんですよ?」

御者「そんなに何度も出会えるなら、いいみやげ話にできるっすよ」

御者「それで、いつから出発なさるおつもりで?」

隊長「明朝にも」

御者「……じゃ、馬と一緒にお昼ごはんも貰って積んでおきますよ」

隊長「いろいろと、すみません」

御者「ははは、ちっとも悪いと思った顔じゃないのに」

救護員「ええ〜? 心のそこからありがたいと思ってますよぉ」

御者「正直、あのスリルはなかなかのもんでしたね」

隊長(……スリルジャンキー?) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:05:10.58 ID:yDEH3xSwo<> 商人「……あ」

隊長「商人! 無事だったか」

商人「まあ、まあね」

隊長「召喚士とは会えたのか?」

商人「ええ……まあ、頭を下げられるとは思っていなかったけれど……」

隊長「あまり驚いてないみたいだけど」

商人「あー……正直、有りそうだと思っていたから、あの御仁については」

隊長(確かに)

術士「確かに」

商人「もう、こうなったら腹をくくるわ」

隊長「どうするつもりだ?」

商人「もちろん、十三番隊として行動するのよ」

隊長「ほう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:05:38.34 ID:yDEH3xSwo<> 商人「なんか、その……私がしくじった面も大きいじゃない」

隊長「大方、知り合いの商人仲間に手ひどい対応をされたんだろう」

商人「まあ、そうなんだけど」

救護員「自業自得ってもんですね! べー」

商人「……あんたまだいたの?」

救護員「隊長! この女をぶん殴ってください!」

隊長「なんでだよ……」

工兵「粘膜に挿入する?」ウィンウィン

商人「やめて、おい、やめろや」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:06:04.62 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「何にしても、自業自得は本当だろう」

商人「はぁ〜、悪いことをすれば、それを聞いているやつもいるし、換金しようとするやつもいるもんね」

隊長(腹はくくったが、反省はしてないようだな……)

隊長「それで、どうしてここへ?」

商人「御者さんと話があって」

御者「ああ、商人さん」

商人「学園の方からは、持ち出せたものから一部を支払いして、残りは再建後でいかがでしょう、だって」

御者「なるほど、まあ、それが妥当すね」

隊長「あー、そういえば、お金を」

御者「ええ、ええ。脱出する生徒を、怪我人など何名か乗せて移動したので、その御礼ってわけで」

救護員「あー、お金が入ったから連れていく気になったのね!」

御者「そりゃあ、お金か餌がなければ、馬車は動いてはくれませんよ」

隊長(もっともだが腑に落ちない) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:06:33.32 ID:yDEH3xSwo<> >二十八番隊のスペース。

救護員「男女混合で毛布雑魚寝って結構キツイですよねぇ」

隊長「そういうな。野宿しているもんだと思えば」

術士「寒い……」

隊長「救護員とくっついてみれば……ほら、もう少し」

工兵「隊長は同性愛支持派?」

隊長「何言ってるんだこいつ」

剣士「チッ、うるせぇな」

工兵「隊長、怒った?」

隊長「いや、怒っているのは剣士だと思うけど」

剣士「怒ってねぇよ」

剣士「それに、寒いなら、全員でもっと身を寄せればいいじゃねぇか」

隊長「それはちょっと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:07:04.51 ID:yDEH3xSwo<> 術士「私は、隊長とくっついても気にならない」

隊長「体温が高いのは救護員なんだけど……」

救護員「うぅは、私は人間カイロ!」

術士「鼻息が荒そうで」

工兵「我慢すべき」ガバッ

救護員「きゃあっ、こ、工兵くん」

工兵「ほらほら、隊長も」

隊長「いや、俺はそこまで寒くないし、それに明日のこともちょっと……」

剣士「……」ガシッ

隊長「剣士、無言で掴まないでくれるか?」

剣士「やはりな。お前もかなり体温が高い」

隊長「勘弁してください」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:07:30.55 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「あのね、明日からのことなんだけど」

剣士「馬車で王国に向かう、でいいんだろ」

隊長「それはそうだが、情報共有は大事だろう」

剣士「なんでも共有すればいいってものでもないだろう。隊長同士の会議までやったんだ」

剣士「お前がちゃんと決めてくれれば、それでいい」

隊長「……まあ、そこまで言うならいいけど」

術士「私は……聞きたい。隊長が伝えたいと思ったことは、聞いておくべきだと思う」

隊長「そうかい?」

工兵「要点を絞ってくれればいいよ。隊長の話って、いっつも長くなるから」

隊長「悪かったな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:07:57.21 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「じゃあ、二点だ。まず、俺の予想から。学園長は帝国に向かったと思う」

剣士「なぜ、そう言える?」

隊長「まず王国はない。あそこは身を隠す場所が大してあるわけじゃない」

隊長「帝国に次ぐ献金額ではあるが、国力に比べれば相対的な金額は低いし、独自の教育機関が育ちつつある」

隊長「よって、学園長派がそれほど跋扈できるほどの足がかりがない」

術士「……」

隊長「共和国。これも難しい。あそこは選挙で首長がかなり入れ替わっている、それも、近年は三党が互いを牽制している」

工兵「でも、せめぎあっているところに乗じて……」

隊長「なくはないが、最近、選挙が終わったばかりだし、なにより双方にそれほどメリットが思い当たらない」

工兵「へぇ〜」

隊長「それから、特務機関本部」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:08:23.23 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「怪しい。だが、仮にここに立てこもるとなると、脱出や言い逃れがしづらいな」

隊長「……とにかく、本部にとどまっているというのは危険度が高い」

隊長「全国に支部があるのでその線は大きいが、ここもまた何かあれば真っ先に抑えられるところでもある」

隊長「逆に、ここを追っても難しい」

剣士「……だから、帝国、だと?」

術士「でも、帝国っていま、学園とあまり仲が良くないんじゃ……」

隊長「そこだ。帝国は軍隊をつくって、脱冒険者を図ろうとしている」

隊長「だけど、元々は学園への献金額は高く、外部教育機関として学園に依存してきた」

剣士「帝国内に、学園派がいるってことか」

隊長「そのとおりだ」

工兵「やっぱり、話がながいよ」

隊長「え、あ、そうかな?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:08:49.54 ID:yDEH3xSwo<> 救護員「えーと、あのー、じゃあ要するに、帝国に行った方がいいんじゃないですかぁ?」

隊長「いや、別に学園長を捕まえるのは俺達の仕事じゃない」

隊長「だから、二つ目。こっちが本題だ」

救護員「ご、ごく」

隊長「竜を倒す方法を考える」

救護員「うぇぇぇええええ!?」

剣士「静かにしろ」

工兵「いやムリでしょ」

剣士「……」

術士「どうやって?」

隊長「理由を聞かないのか?」

剣士「竜が成長しているからか」

隊長「そうだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:09:18.31 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「学園長派が何を狙っているにせよ、竜たちはどんどん成長している。正確には組織化が進んでいる」

隊長「最初はまばらな襲撃、いや、目撃されるような偵察行動……」

剣士「偵察だと?」

工兵「うーん、谷から落っこちた先の町でね。目撃情報があったんだ、実は」

隊長「それが、包囲作戦、編隊飛行、三頭一隊行動、どんどん複雑化していっている」

術士「竜の王、が復活したのかしら」

剣士「……」

隊長「分からないが、そうでないにしても、元々竜は社会的な動物だと聞く」

隊長「だとすれば、指揮官となる竜がいて、それがいずれ王になってもおかしくはないだろう」

救護員「それって、めっちゃくちゃヤバいですよねぇ!?」

隊長「うん」

剣士「だが、どうする? 俺たちだけで倒すのは不可能だ」

隊長「各国の協力を仰げればいいんだけど……」

術士「隊長、その、学園長派っていうのは、その、竜を操る手段を持っていたんじゃないの?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:09:45.45 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「ああ。今の事態は意図的に解放したか、やむを得ず解放したかのどちらかだろう」

剣士「後者なら、俺達は終わりだな」

工兵「なんでさー、『竜を止めて欲しければぁ』とかってやってくるかもだし……」

隊長「つまり、竜の暴走を盾に、脅しつけるということか」

工兵「そうそう」

隊長「そんなことが可能なら……」

隊長「……」

隊長「いずれにせよ、竜が倒せれば、どう転んでもなんとかなる」

剣士「そんな夢みたいなことを言ってんじゃねぇよ」

救護員「そ、そーですよ。隊長、私達、逃げ回ってばかりで」

隊長「そうなんだけど……」

術士「倒す方法だけでも、見つけられればということ?」

隊長「そう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:10:11.77 ID:yDEH3xSwo<> 隊長「実はこの件で、ひとつだけ、召喚士から話を聞いたことがあった」

術士「召喚士が……なんて?」

隊長「うん。竜討伐の方法の一つとして、挙げられたんだが……召喚によって、専門家を喚ぶ」

救護員「専門家?」

剣士「……勇者か」

隊長「みんな勘が良くなってきたね。なんでも、召喚というのは、時間を超えて喚び出せるそうなんだ」

隊長「それは、術士が……やってくれたみたいだけど」チラ

術士「でも、あれは奇跡的なもので、私自身も歩けないくらい、完全に体力を奪われてしまったわ」

隊長「……そうだ。召喚士も、いわゆる全盛期の勇者を喚び出せればとは言っていたんだけど」

隊長「定式化している召喚魔法と異なって、ある時期を選んで喚び出すなんてことは……」

工兵「じゃあ、だめじゃん」

隊長「だが、アイデアとしては別の考え方もある」

隊長「例えば、竜だけを勇者のいた時代に送る、とかな」

救護員「え、えー……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:10:38.58 ID:yDEH3xSwo<> 術士「はい、隊長」

隊長「なに?」

術士「多分、あの大きさと数を全部送り出すのは、危険というより、無理に近い」

剣士「分かるぜ、あの二隊が失敗してまるごと異世界に飛んじまったんだ」

剣士「隊長、その失敗とも天秤にかけたら、どうしたって難しい。何より、術者が少なすぎる」

術士「……召喚魔法の使い手は、あまり聞かないし」

隊長「ふーむ」

工兵「普通に考えて、冗談話じゃないの。召喚士だって失敗したわけじゃない」

隊長「それはそうなんだよな」

救護員「じゃあ、竜の倒し方を教えて下さいって聞くのはダメなんですか?」

剣士「……」

隊長「勇者が竜を倒した方法というのは、極めてシンプルだ。親玉を倒して、逃げる他の竜を皆殺しにした」

救護員「そう聞くと勇者ってバイオレンスな人ですよねぇー」

剣士「それだけじゃない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:11:11.76 ID:yDEH3xSwo<> 剣士「当時、竜自体は敵対する勢力がいなくなったことで、弱くなっていったんだ」

隊長「……弱く」

剣士「そうだ。竜は強すぎた、誰も彼もを侮っていた。だからスキだらけだったわけだ」

工兵「えっとー、じゃあ、これから強くなっていってる竜には……」

剣士「勇者も勝てないかもしれない」

救護員「ひぃぃい!」

隊長「……」

術士「でも、諦めたら、ダメだと思う」

隊長「そうだな」

隊長(手詰まり感が強ぇな)

隊長「……とにかく、明日から王国行きだ」

隊長「その二点だけは確認しておきたかった」

剣士「……」

救護員「はぁー……」

術士「……」

工兵「みんな、暗いなぁ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:11:37.56 ID:yDEH3xSwo<> 剣士「そうだな、リーダー」

隊長「ん、なに?」

剣士「俺から、明るくなるために提案があるんだが」

隊長(嫌な予感しかしない)

剣士「竜を倒すとなれば、やっぱり修行が必要だと思う」

工兵「いらない!」

救護員「ヤダー!」

剣士「うるせぇよお前ら」

隊長「えー、それで?」

剣士「俺自身としても、腕を治す最善は、楽しい修行にあると確信した」

術士「そ、そう」

隊長「つまり?」

剣士「馬車を追いかける、耐久レースはどうだろうか?」

隊長「うーん、いいかもね」

三人『やめて!』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:12:19.46 ID:yDEH3xSwo<> 翌朝。

隊長「……というわけで」

御者「マジでやるんすか。学生って若いなぁ」

救護員「ううう」

工兵「あああ」

術士「……」

剣士「……」グイッ、グイッ

剣士「お前ら、ストレッチはしっかりやっておけよ」

救護員「ストレッチどころじゃないDEATHよ!」

工兵「隊長、僕ら、まだ怪我完治してないよね……?」

隊長「ああ。超回復を狙う」

術士「隊長、何かがおかしい」


天測士「おはよー、ってなに、この空気」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/05(土) 21:12:45.71 ID:yDEH3xSwo<> 年が開けました。お疲れ様です。
今夜はここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:22:16.20 ID:feq7wa/y0<> あけおめー

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 08:13:33.88 ID:VYcm1Dilo<> 乙ー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 13:51:02.44 ID:IyAuailxo<> 乙 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/01/10(木) 20:37:42.31 ID:9y8CusJCo<> 天測士「……は? 王国まで馬車を追いかける訓練!?」

隊長「まさか。人間が馬車に追いつけるわけがないだろう」

剣士「無休憩ダッシュだ。俺らに必要なものは、体力と素早さだ」のびー

剣士「まず馬車に四半日先行して移動してもらう」

剣士「全力でそれを追いかけ、速く到着したものは最後尾のところまで戻る」

剣士「全員が到着したら、残りは馬車で移動する」

天測士「いや死ぬでしょ」

隊長「元々、歩いて王国に行くつもりだったんだ」

隊長「多少の時間的な余裕はある」

天測士「そういう問題なの?」


救護員「……いいですか!? 水分が足りなくなったら、すぐに私に言ってくださいね!」

工兵「呼吸器系も改造しとくんだったかなぁ……」ブツブツ

術士「……これだから戦士組は」


天測士「三名ほど悲壮感が」

隊長「武者震いじゃないかな」

剣士「俺は武器を持ちながら走るぞ」

天測士(二名ほど嬉しそうね) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:39:12.64 ID:9y8CusJCo<> 隊長「それで、どう?」

天測士「ええ。王国行きのルートよ」ガサッ

隊長「……ここで蛇行しているのは?」

天測士「魔物を避けるため」

剣士「不要だ」

天測士「馬車が先行するって言ってたじゃないの!」

隊長「そうだね。剣士、馬車が魔物と付き合っていくのは大変だから」

剣士「チッ、残念だ」

隊長「さすがに体力の消耗になるだろ」

天測士「……竜の予測も出したわ」

隊長「どうなった?」

天測士「あの巨体でしょ? かなり天候にも影響を与えているの」

天測士「運行を確認したわ、今度の出現ポイントは地図上だと、この辺りになりそう」

隊長「……帝国だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:39:49.23 ID:9y8CusJCo<> 隊長「軍師には伝えたのかい?」

天測士「そりゃもう! ……ただ、『大丈夫スよ〜』とか言ってあまり真剣っぽくなかったけど」

隊長「死にたいのか、あいつ」

天測士「ううん……」

隊長(軍師は、何かまだ隠していることでもあるのか?)

天測士「……そうね。ちゃんと出現時期に関しては揺れもあるのかとか、いろいろ聞いてきてはいたわ」

天測士「バカじゃないとは思う、けど」

隊長「……」

天測士「隊長、何か思うことがあるなら、教えなさい」

天測士「私はたといどんな運命でも飲み込む自信はあるから」

隊長「うん? いや、そう大したことじゃないよ」

隊長「ただ、これまでの話を総合すると、学園長派は、帝国に潜伏する可能性が高い」

天測士「そこに、竜が来ると」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:40:26.44 ID:9y8CusJCo<> 隊長「そうだ。不穏なんだよ」

隊長「例えば、学園長派が帝国を潰すために呼び寄せる、あるいは竜が連中を追いかけて探しまわる」

天測士「それって、どっちにしても帝国が次の標的ってわけ!?」

隊長「どのタイミングになるかは分からなかったが、来るとは思ってたよ」

天測士「……時期については、まだ正確には出せてないわ」

隊長「ふむ……」

天測士「だったら、私は十七番隊としばらく行動しておくわ」

天測士「どうせ途中までは同じ道になるわけだし」

隊長「そっか。ありがとう」

天測士「ふ……ふふふっ、当然よ」

隊長「うん、同伴など簡単ですよね」

天測士「な、なによ、その風俗みたいなの」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:40:53.27 ID:9y8CusJCo<>    斧使い「おーい、リーダー、そろそろ行くぞ〜」

天測士「分かったわ! ……それじゃ、隊長、またね!」

隊長「ああ」


   天測士「あんた達! 私たちも修行するのよ!」

   斧使い「はぁ〜? わざわざ急ぐって時に?」

   狩人「正直、急造の訓練なんて無駄もいいとこだーね」

   忍者「では、簡単に出来る暗殺歩法をお教えしましょう……」

   占い師「それは〜、移動しながらでも出来るんですかぁ?」

   忍者「左様、実は皆さんの食事に薬効のある微量の毒物を混ぜ込んで、肉体改造は着々と」

   天測士「えっ、なにそれは」

   忍者「皆さんが立派な忍者になりたいとおっしゃっていたので」

   四人『言ってねぇよ!』


剣士「……楽しそうだな」

隊長「さすがに食事まで訓練にはしたくない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:41:22.86 ID:9y8CusJCo<> 御者「それじゃ、先行して、行ってるっすよ」

隊長「はい、よろしくお願いします」

御者「ハイ、ヨー」グイッ


ガラゴロガラゴロ……


工兵「ああ、行っちゃった……」

術士「隊長、見捨てないで……」

隊長「まだ始まってもいないでしょ」

救護員「いーですか! 私は隊列的に、ダッシュ・バックを繰り返して、最後尾を守るようにしますからね!」

隊長(俺が思うに、救護員が一番化け物くさいんだが)

剣士「隊長、せいぜい追いついて見せろ」ニヤッ

隊長(うう、こっちはこっちで面倒な方向に成長してしまったような)

隊長(まあ、これも隊長の務めかな)

隊長「……いいぜ、その代わり、俺を引き離せなかったら、王国で飯をおごるんだ」

剣士「はっ! 面白い」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:41:49.80 ID:9y8CusJCo<> 隊長「じゃあ、よーい、ドン!」


ダッ!


剣士「ふっ、ふっ」

工兵「あああああああっ!」

術士「……」

救護員「うーっはーっ」

隊長「しゅっ、しゅっ」

隊長(とにかく、だ。俺たちが竜を退治するにせよ、対抗するには、まだまだ体力が足りない)

隊長(止まったら負けなんだ。こちらは運動量において勝る他に、勝利の道は無いに等しい)

隊長(それだけじゃない、速さだ)

隊長(相手は身を捩り、ただ尻尾を振っただけで、強力な武器にしている)

隊長(爆発的な速度、それを連続させる体力、この二つだ)

隊長(たとえ、剣士があの夜に放った攻撃を放てなくとも、前提を底上げする) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:42:17.33 ID:9y8CusJCo<> 剣士「ふっ、ふっ」チラ

隊長「……ふーっ、はっ」

剣士「……ひゅっ」

隊長(爆発力、それは、剣士にもそれほど備わってないはず)

隊長(仕掛ける、踏み足を速くする!)グッ


隊長が前のめりに地面を蹴る。
姿勢を低くして、大地を擦るように足を繰り出す。

その横を、大きな歩幅で剣士が並走してくる。
彼は武器を持ったままの走法、にも関わらず、隊長の勢いにまるで負けていない!


剣士「ふっ、ひゅっ、ダメ、だっ」

隊長「……はっ、はあっ」

剣士「ぜん、けいに、なるなっ!」

剣士「相手の、こう、げき、にっ! あわせる、なら、まだしも!」

隊長「はあっ、はあっ」

剣士「前を、見ろ! 顎を引け、からだ、を、なるべくっ、自由にっ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:42:54.87 ID:9y8CusJCo<> 剣士「一撃に、込めるっ! 踏み込む瞬間を決めるっ!」


剣士が前方の枯れ木に向かって走る。
数歩、さらに大きく踏み込んだ最後に、振りかぶった剣を振り下ろす!

ガギッ、という乾いた音とともに切り裂かれた枯れ木を踏み越える。
切り立てても、動きを止める様子はない。

そのまま――隠れていた邪鬼を刺し貫いた!


邪鬼「ぐぎぇええええ!」

剣士「方向を、固定するな! もっとも、効果的な、速度をっ!」

剣士「柔軟につくる!」

隊長「ひゅっ、ひゅーっ」

隊長(実に、楽しそうだ。このやろう……)

隊長(差がありすぎるわ、ボケ) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:43:21.08 ID:9y8CusJCo<> >数時間後。

隊長「はあーっ、はあーっ」

剣士「……ふう」

術士・工兵「……」ハァハァ ハァハァ

救護員「はい、体温が上がりすぎているので、ちゃんと冷やしてくださいね!」

救護員「深呼吸! 息を吸って、吐く」

隊長「はー……元気がいいな」

剣士「まったくだ。俺もドロドロに疲れたっていうのに」

隊長「そんな風には見えないけど」

剣士「いいや。さすがに、十本も往復すれば、頭がクラクラしてくる」

隊長(クラクラだけで済むのがおかしいわけだが)

隊長「武器の方はどうだ。腕の痛みは?」

剣士「微かにある。ただ、振るえるようにはなってきた」

剣士「……力が十全に戻るとは言えないがな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:43:47.43 ID:9y8CusJCo<> 隊長「竜を斬るのは難しい、かな?」

剣士「当たり前だ!」

隊長「となると、やっぱり毒物や内部破壊を狙うのが良策か……」

剣士「……」

剣士「お前、本当に竜とやり合うつもりか?」

隊長「実際にやり合わなくても、想定しておくことは重要だ」

剣士「例えばだ。たった五人ぽっちよりも、帝国の軍隊の方が戦えるかもしれん」

隊長「それはあるな。ただ、それなら旧大国が敗れたとは考えにくい」

隊長「あの巨体、そして機動力、さらに組織力……すべてが揃うと手が付けられなくなる」

剣士「まったくだな、どうやってあのおっさんは竜を倒したんだ……」

隊長「ううん……」

剣士「指揮官を潰す、それは分かった。だが、集団で襲いかかってきたら、とてもじゃないが太刀打ちできんぞ」

剣士「なんのかの言って、学園では太刀打ち出来なかった」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:44:14.67 ID:9y8CusJCo<> 御者「大丈夫っすかー」

隊長「はーい! もうちょい休憩したら、移動しましょうー!」

御者「了解っすー」

剣士「もう少しの休憩で、あいつらが動けると思うかね」

隊長「荷台に放り込んでおこう」

剣士「はっ、お前も大概だな」

隊長「……」


術士「ぜひゅ〜、ぜひゅ〜」

救護員「術士さん、含むようにして水を飲んでくださいね!」

術士「うう、もっと体力をつけたい……」

工兵「ひー、はー」

救護員「工兵くんは下手な走り方だからダメなの」

工兵「救護員が手厳しいよー……」


隊長「余裕ありそうだけど」

剣士「明日は武器を持って走らせるか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:46:43.83 ID:9y8CusJCo<> 剣士「……よし、それじゃ思い切って、竜じゃなく、別のものと戦うと考えてみるのはどうだ?」

隊長「別のもの……?」

剣士「そう、ちょっと困難なものを倒す、と考えるとする」

剣士「そうだな。それこそ、帝国の軍隊を倒すと考えてみろ」

隊長「軍隊を倒す、か。それなら案外、手はいろいろありそうだな」

剣士「ほう」

隊長「まず、補給を断つ。なんといっても食料がなければ人は動けない」

剣士「そうだな」

隊長「それから、集団で行動することに拘泥してしまうから、移動の方向に中型の罠をしかける」

隊長「大量の人員を一定方向に動かすのは大変だ。熟練していなければ、目標に対して直線的になりがちだ」

剣士「なるほど」

隊長「大集団ってのは、どんなに強力でも動きが鈍くなるもんだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:47:11.83 ID:9y8CusJCo<> 隊長「いろいろパターンがあるが、なんと言っても相手に攻めさせないことだろう」

隊長「鈍いといっても数では負けるし、相手に攻めさせたらあっという間におしまいだ」

隊長「いかにして相手に攻撃を許さず、こちらが効果的に攻撃するか、だな」

剣士「よく分かった。それで、そういう方法は竜には活用できないのか」

隊長「……ん?」

剣士「だから、だ。まずやつらは食料をどうしているのか」

隊長「う、む」

剣士「やつらの行動パターンを予測して、罠は仕掛けられないのか」

隊長「お、う」

剣士「そもそも、だ。相手に攻撃を許すからこうなる」

剣士「こちらが攻める側に回るのだ」

隊長「あ、ああ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:47:57.89 ID:9y8CusJCo<> 隊長「ううん、そういうことなら、考えはいろいろあるぞ」

隊長「どうも、学園での出来事も含めて、真正面か、あるいは襲撃を受けた時の対応ばかりになっていたな」

隊長「たとえば……」

工兵「隊長ー……」

術士「楽し、そうね」

隊長「お、おお!」ビクッ

救護員「ほら、そろそろ行きますよ?」

剣士「なんだ、元気になったのか」

救護員「そりゃ、こんだけ近づいても気づかないほどおしゃべりしていればね!」

隊長「ああ、怒っているの? 悪かったよ」

救護員「そうじゃないですけど」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:48:24.11 ID:9y8CusJCo<> >馬車内。

ガラゴロガラゴロ

工兵「竜の倒し方? そりゃもう、義腕に仕込んだ秘密道具で」

隊長「まだ何か隠してるのかい?」

工兵「ひっひっひ、探究心の強い男の子は日々進化するんだ」

隊長「……。術士は何かある?」

術士「吐きそう」

隊長「あー、無理せんでいいから」

救護員「無理に食べなくてもよかったんですよ?」

術士「……足手まといになりたくないの」

剣士「基礎の差を考えれば上出来だ。実戦で鍛えるなど、お前らには難易度が高すぎる」

救護員「はぁ〜? 隊長、こう、仲間をボロクソに言うのはどうかと思いませぇん?」

隊長「剣士、事実だけ言ってもしょうがないだろ」

隊長「こう……言っても分からない子もいるわけだし」

工兵「隊長ひどい」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:48:50.75 ID:9y8CusJCo<> 隊長「術士、大丈夫?」

術士「たいちょう」

隊長「無理させすぎちゃったかな」

術士「大丈夫よ、私も二十八番隊の一人だもの」

隊長「そこを自慢する要素はあまりないと思うんだけど」

術士「……そうでもないわ」

術士「ねえ、隊長」

隊長「ん?」

術士「えーと、王国についたら、どうするの?」

隊長「ああ。ま、一番手っ取り早いのは姉を経由して、外交官に話を通してもらうことだろうな」

術士「お姉さんにそんな権限はあるのかしら」

隊長「観測や報告は届いているはずだ。学園が崩壊したこともね」

術士「そういえば……」

隊長「う、ん。ただ、身内だからといって、あの姉が相手してくれるかは微妙な線だな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:49:17.60 ID:9y8CusJCo<> 救護員「隊長、お姉さんが怖いんですか?」

隊長「怖いというか、頭が上がらない」

工兵「アタマねぇ」

術士「その……まあ、私も兄弟姉妹いなかったけど」

剣士「上の兄弟は無意味に威厳を見せつけようとするからな」

隊長「そういうわけじゃないんだがな、言っていることはもっともだし」

救護員「洗脳されているんじゃないですかぁ? それは」

隊長「……まあ、そうかもしれないね」

隊長「孤児院から学園に行こうって言い出したのも、あいつだし……」

救護員「孤児院?」

隊長「あー……」

術士「救護員」

救護員「え? え?」

隊長「うん。そうそう、とにかく頭が上がらんのさ」

隊長「別に間柄の問題だけじゃなくて……って、まあ、それは置いといてだな」

剣士「惚れているのか」

隊長「あー?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:49:54.03 ID:9y8CusJCo<> 救護員「え、隊長やっぱりのシスコン!?」

隊長「いや、やっぱりって」

術士「……まあ、王国の教育庁に就職して、すぐに学園の視察を任されるくらいだから」

工兵「あー、なるほどね。憧れのお姉さんなわけだー」

隊長「いや、あれに憧れるのは難易度が」

剣士「はっ、俺には分かるぜ、憎悪は屈折した愛情に近いもんだ」

隊長「お前、それは自分がホモだって話になるぞ」

剣士「ああ?」

救護員「ききき、近親相姦したいんですか!」

隊長「なんでそうなる」

工兵「あー、やっぱりね。どうせ、学園に来る前はガンガンやってた口でしょ」

隊長「するわけないだろ」

術士「はぁ……不潔」

隊長「」プチ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:50:21.44 ID:9y8CusJCo<> 隊長「あああ、面倒くさい連中だな、お前らはよ!」

救護員「きゃー! 隊長が怒った!」

工兵「隊長が汚い言葉遣いに!」

剣士「チッ、沸点低いな」

隊長「お前に言われたくねぇええええええええ!!!」

術士「あ、えっと、隊長?」

隊長「ええい、術士も術士じゃ!」

術士「は、はい」

隊長「俺があいつとそんなに仲良しに見えたか、ええ!?」

工兵「喧嘩するほど仲がいいって言うじゃん? ベッドの中では大仲良しだったかもしれないー」

隊長「そんなこと言ったら、剣士と会長はどんだけベッドで仲良しだったんだよ!」

剣士「ふざけてんのか、てめぇは!」

救護員「はい!」

隊長「なに?」

救護員「剣士さんの強気受けで」


剣士の攻撃! 救護員は張り倒された。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:50:47.80 ID:9y8CusJCo<> 救護員「なんで……」

剣士「すまん、隊長。さすがの俺も我慢が出来なかった」

隊長(我慢していた記憶がないんだが……)

工兵「女の子殴ったらダメだよねー」

救護員「うー」

剣士「うるせぇ、気持ち悪いことを言うからだ」

術士「と、とにかく……」

術士「……そんなに仲良しには見えなかったけど、深いつながりがあるかもしれない」

隊長「そりゃ信頼してなかったら王国に行くつもりもねぇっての!」

隊長「俺は、その、例えばだな……みんなを……信頼しているけどな」

隊長「だからといって、好きだとかそういう風には思ってない」

隊長「それと、同じ事だ」

救護員「……あ、そっすか」

術士「……そう」

工兵(露骨にテンションが下がっている) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:51:16.01 ID:9y8CusJCo<> 剣士「ほう、隊長が俺を信頼しているとはな」

隊長「えっ、まさか、剣士にそんなこと言われると心外なんだけど」

剣士「なぜだ?」

隊長「だって、訓練でも何でも、剣士を軸において話を聞いたり」

剣士「それは、戦力的に前提にすべきことだからだろう」

隊長(こいつ……)

剣士「うん? そうか、隊長は俺をね……」

隊長(もしかして、ほんっとに会長のことで頭がいっぱいでしたとか、そういう)

工兵「はーい、隊長は僕も信頼してくれてるのかな?」

隊長「ああ。だけど、まだまだ俺の知らないところがあるからな」

工兵「んー? 巨乳好きなこととか?」

隊長「別に聞きたくないよ」ニッコ

工兵「あははっ」

工兵「……まあ、僕もね、隊長についていく! って気持ちが足りなかったかもだし」

隊長「そうだな。お互い、なんか遠慮していたのかもしれない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:51:42.07 ID:9y8CusJCo<> 救護員「はっ、そ、そそそ、そうですよ!」

救護員「隊長、私が好きじゃなくても、信頼、信頼してるって言った!」

隊長「なんか、前にも言わなかったっけ?」

隊長「川を落ちた時なんか、救護員がいなかったら全滅だったじゃない」

救護員「ですよねぇ」

隊長「頼りにしているよ」

救護員「……」フルフルフル

隊長「どうしたの?」

救護員「幸せをかみしめているんです」

隊長「え?」

救護員「いつだったか、隊長に褒められたときは、あまりのことに自分が死んでしまうんじゃないかと思っていたので、素直に喜べなくて」

工兵「叱られてばっかりだったしねー」

救護員「今、ちゃんと幸せと感じられる時に、かみしめておかないと」

隊長「……あー、そう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:52:09.10 ID:9y8CusJCo<> 隊長「……めんどくせぇ子ですね」

隊長「……」

隊長「救護員、いつもありがとう」

救護員「えひゃっ!?」

隊長「助かってるよ」

救護員「いひぃ!?」

工兵「一番、予想外に成長して、すごく嬉しいよ」

救護員「にゃふっ!?」

術士「昼間もお水、ありがとうね」

救護員「ふへふっ!」

剣士「特にねぇ」

救護員「は?」

隊長「顔も俺の好みだし」

救護員「あびゅるびゅるびゅりゅ!」

隊長(どうやって発音してんだ?) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:52:38.07 ID:9y8CusJCo<> 救護員「えへへぇ……これで、マイメモリーに隊長が信頼してくれた記念日を刻み込みましたぁ……」

隊長「よくわからないけど、良かったね」

術士「……」

隊長「まあ、だから、そういうことと同程度だけど、姉のことは信頼していると……」

術士「ん。ん」クイ

隊長「なんだよ」

術士「私も、褒めてほしいわ」

隊長「……」

術士「ダメでしょうか」

隊長「えーと、褒めているというかな。信頼していると」

術士「どのくらい? どのくらい信頼してくれているの?」

剣士「甘やかすなよ、隊長。そいつは隊長がいなくなった時、本当に酷かったもんだ」

術士「うるさい、いい気になりやがって」

剣士「……あ?」

隊長「君たち、俺がどう思っていようとどうでもいいでしょ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:53:14.59 ID:9y8CusJCo<> 救護員「どうでもよくないですよ!」

工兵「そうだそうだー、士気に関わるー」

隊長「嘘つけ」

剣士「何を言ってやがる。俺たちはお前がよく考えてくれていることくらい、知っている」

隊長「……何をだよ」

術士「いろんなこと。将来とか、そういうのも」

隊長(……そんな話もしたかな)

救護員「だから、き、気になるっていうか、口で聞きたいですよね?」

工兵「うん」

隊長「いや……うん」

術士「じーっ」

隊長「なんだ……」

救護員「ドキワク」

隊長「その……」

隊長「……あのな、正直いえば、俺は信頼とか、そういう感じじゃない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:53:45.29 ID:9y8CusJCo<> 隊長「別に、バカにしているわけじゃなくて、まあ、なんだ」

隊長「うまく言えないな。俺は踏み台でいいっつーか」

術士「その、それがよく分からない」

術士「私、隊長の嫌いなところもあるけど、踏み台にしたいなんて、思ってないし」

隊長「俺の気持ちの問題だよ」

隊長「自分はみんなとは永遠に距離を縮められない、みたいな」

隊長「だから、せめて、自分が出来る限りのことをしてやりたいんだよ」

工兵「……えーと」

隊長「ああ、上から見てることくらいは知っている」

隊長「だけど、今は、そうだな、こちらの方がもらっている、みたいな」

隊長「だから、うまく言えないけど、できる限り返してやりたいっていうか」

剣士「なに言ってるのか、全然分からねぇ」

術士「……隊長」

隊長「……そうだな」

隊長(まあ、いいか) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:54:11.26 ID:9y8CusJCo<> 隊長「あのな、俺の村は、魔物に滅ぼされたんだ。ちょうど、学園みたいに」

救護員「え」

隊長「それで、しばらく孤児院でタダ働き。姉ちゃんがいなかったら、いつまでそこにいたか知らない」

工兵「……」

隊長「だからどうしたってことじゃないよ。ただ……ああ、俺は無力なんだなって思って」

隊長「学園を卒業したら、冒険者になってお金を貯めて、村に帰るんだ。せめてお墓だけでも建てたいなって」

隊長「そのぐらいは出来るだろうと」

剣士「……村に帰るって、そういう意味かよ」

隊長「うん? ああ、そうかな」

隊長「でも、孤児院にいたときは辛くってね、なんか性格がネジ曲がったみたいで」

隊長「だから、みんなには不愉快な思いをさせたかもしれない」

隊長「ごめん」ペコ

術士「た、隊長……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:54:39.08 ID:9y8CusJCo<> 隊長「でも、自分なりに、この戦隊でいい成績を出して、お金を稼げればいいと思って」

隊長「みんなにいろいろと『指導』をしてきた……んだ」

隊長「途中から、だんだん、みんなが自分についてきてくれるのを見て……」

隊長「惨めな気持ちになった」

隊長「そっからは、よし、全員を引き上げてやるぞって、まあ、意気込んだりもしたけど」

隊長「どうかな。いろんな気持ちが渦巻くようになってる」

隊長「……信頼しているよ」

隊長「好きかもしれない。よくわからないんだ」

隊長「自分一人なら、いつ死んでも構わないと思っている。ただ」

隊長「責任を持ちたい。俺は二十八番隊の隊長だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:55:12.14 ID:9y8CusJCo<> 隊長「そういう感じだ」

救護員「……」

工兵「……う」

剣士「……」

術士「……グス」

隊長「重たい話じゃないよ。ただ単純には説明できないってだけで」

救護員「は、ははー、そうですねぇ……」

術士「たいちょうっ」ダキッ

隊長「うあっ!? なに!?」

術士「私は、隊長のことを嫌いなんかじゃないから」

術士「隊長に、救われたことも、ひ、一人で立とうって思えたのも……全部、ある」

隊長「あ、あああ、そう」

剣士「隊長、俺もだ。俺も……」

救護員「あ、あの、あの、私もっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:56:11.04 ID:9y8CusJCo<> 工兵「はーいはい、はい!」パンパン

工兵「みんな、恥ずかしい暴露大会は禁止!」

工兵「隊長も困ってるでしょ」

隊長「あ、ん、まあ」

工兵「ほら、術士も、気持ちは分かるけど、一人立ちしたいなら、甘えるのは二人きりの時にしてね」

術士「……はっ」バッ

工兵「剣士も、口あいてるよ」

剣士「チッ……うるせぇな……」

工兵「救護員も」

救護員「はーい……」

隊長「あー……」

隊長「ま、まあ、なんだ。こういうことを言うのも計算の内でな、本当は涙目のみんなを心のなかで嘲笑っているっていう」

工兵「顔真っ赤ですが」

隊長「……クソ」


御者「青春すねー、丸聞こえなんすけどねー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/10(木) 20:57:37.11 ID:9y8CusJCo<> 今夜はここまで。

次回、王国でも隊長が恥ずかしい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/10(木) 22:37:00.55 ID:be0vhGRuo<> 乙
術士ちゃんは可愛いのう(*´∀`*) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/11(金) 07:12:41.81 ID:K3sGFSTw0<> なんと、期待

乙したー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/11(金) 09:14:23.60 ID:dVJoF6o+o<> 恥ずかしい隊長かわいい <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/01/14(月) 21:24:37.58 ID:MCZbzFAwo<> >王都。

隊長「……結局、剣士には一勝すら出来ずじまいだった」

剣士「一勝でもするつもりだったのか? 手を抜けばよかったかな」

隊長「かんべんしてくれ」

術士「はぁー……死ぬかと思った……」

救護員「全然、そんな風には見えませんよぅ、術士ちゃん、成長したんじゃない?」

術士「そうかしら」

工兵「……」

救護員「工兵……」

工兵「何も言わないでほしい」

剣士「乗り物を使おうとするからだ」

工兵「だって! 持ち物を持って走る訓練って言ってたじゃん!」

隊長「乗り物と持ち物は違うよね?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:25:08.23 ID:MCZbzFAwo<> 工兵「大体、僕が基礎体力をつけても竜に敵うわけがないのにー」

剣士「チッ、そんな後ろ向きだから」

隊長「……例えばだけど、あの夜の時みたいに、罠を仕掛けるとするだろ?」

工兵「え、うん」

隊長「素早く設置したとしても、一定の時間は取られる。もちろん、作戦が成功させるように指揮はとるけど」

隊長「そこで、あと少し体力がつけば、罠が三つのところを四つ仕掛けられるかもしれない」

工兵「いや、そんなことで心が動かされるわけないでしょ」

隊長「……」

隊長「たとえば子竜を生け捕りに出来たとするじゃない?」

隊長「戦いの真っ最中、ろくな体力がなければ、そのままだ。だけど、連れて帰れる体力があれば……」

工兵「竜の改造……!?」

剣士「勘弁してくれ……機械で出来たドラゴンを作るくらいにしておけ」

術士「いや、どっちも……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:25:40.39 ID:MCZbzFAwo<> 救護員「強い男の人ってステキだと思う!」

工兵「うん、僕より隊長や剣士の方が強いね」

術士「でも、正直な話、剣士についていけないと足手まといだと思う」

工兵「うっ、それは、そうだけど……」

隊長「まあまあ、ここで話をしていてもしょうがない」

隊長「御者さんには馬をつないでもらっているし、王都に来たんだから、一度別行動にしよう」

隊長「編成だ。俺は姉のいる教育庁に行く」

隊長「他のみんなには、買い出しと情報収集に行って貰いたい」

救護員「ええ〜、一人で行くんですか、隊長」

隊長「元々、学園の特使ではなく、独自の判断に寄る行動だ。隊として行く必要もないし」

隊長「まあ、でも、直接乗り込んで面会って行っても難しいとは思うし、何かあったらみんなに知らせる必要があるから、もう一人くらいは必要だが……」

術士「あ、じゃあ、私……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:26:09.05 ID:MCZbzFAwo<> 剣士「あまりワガママを言うんじゃねぇよ」

術士「そ、そうかもしれないけど……」

隊長「いや、術士でいいよ。食料や医薬用品の補充は救護員が適任だし、工兵は必要なものは自分にしかわからないだろ」

救護員「そ、そーですけど」

工兵「まあねー」

隊長「剣士は護衛にぴったりだ。腕の調子も見ておくといい」

術士「あ、私、王都には来たことがあって……」

隊長「そうなんだ。だったら、術士に町の案内をしてもらったほうがいいのかな?」

術士「い、いえ、事務所の場所とか、知ってるから」

隊長「なら、ちょうどいい」

剣士「まあいいが、隊長も武器は携帯しろよ」

隊長「分かってるよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:27:10.26 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「じゃあ、とりあえず会えれば話をしてくる」

剣士「ああ。お守りは辛いからとっとと帰ってきてくれ」

工兵「パパ〜」

救護員「パパ―!」

剣士「ふざけるな」

隊長「……じゃあ、お父さん、宿屋で待っていてくれ」

隊長「長引きそうなら術士を走らせる」

剣士「てめぇな」

術士「ふふ」

救護員「じゃあ、いってきまーす」

工兵「早く戻ってきてねー」

隊長「ああ、それじゃ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:27:41.03 ID:MCZbzFAwo<> 術士「それで、隊長」

隊長「うん?」

術士「どうやってお姉さんに会うつもりなの?」

隊長「ああ。王都の役人になったとはいっても、あいつはまだまだ低賃金だ」

隊長「わかりやすく言うと、宿舎に住んでいる。俺も行ったことがある」

隊長「まずは正面から当たるんじゃなく、家族が訪ねてきたという体でいく」

術士「……不在だったら?」

隊長「まあ、昼間だから不在だろうな。そこで、ちょっと緊急の用だということで、取り次いでもらおう」

隊長「もちろん。相手の出方次第では、一旦退却する」

術士「でも、どちらにしても突然来たらお姉さんも怪しむんじゃ……」

隊長「実を言うと、学園に寄る前に王国へ向かう計画もしていてな」

隊長「姉には手紙を出していたんだが……」

隊長(額面どおりに受け取ってるとは思えんがな) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:28:07.69 ID:MCZbzFAwo<> 術士「もう一つ、実際に会っても、それで王国が動くわけじゃないでしょう」

隊長「……どう思う?」

術士「えっと、王国が動くかどうか?」

隊長「いや、王国が『どう動くか』」

術士「どうって……下手に関わりたくないと思うんじゃないかしら」

術士「あの、多分、竜が学園を破壊したことは知っているだろうし、学園内の抗争に巻き込まれるなんてことになったら……」

術士「私なら、静観を選ぶ、と思う」

隊長「王国は学園へ、寄附をしている。正確に言えば、卒業者を通じてだけど」

術士「……学園内の生徒から言われれば、突き上げは可能ってことかしら」

隊長「とも言い切れないけどね。ただ、俺なら静観は状況の悪化を招く、と判断する」

隊長「問題なのは竜の動きだ、観察はしているが、これへの対抗策が少ない」

術士「……そうね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:28:51.31 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「帝国は、軍隊を組織して……もちろん、育成は始まったばかりだが、そうでなくても戦闘訓練をこなした元・冒険者が多く所属している」

隊長「だけど、王国は? 独自の教育機関は持っているものの、それは貧弱だ」

隊長「軍隊がいるわけでもない。衛兵はいるものの、竜を討伐するとなると……」

術士「そうすると、どうなるの?」

隊長「関わりたくないのは確かだ。だが、孤立も避けたいだろう」

隊長「どこと手を組むか。教頭派なんてのは、とてもじゃないが組む相手には厳しい」

隊長「特務機関、難しいな。おそらく学園長派と関わりがある」

隊長「だとすれば……」

術士「帝国?」

隊長「大いにありうる。というか、いい線だ」

隊長「だが、天測士の結果を見れば、帝国に竜が来るとある。この情報を渡したとしたら」

術士「……手詰まりね」

隊長「そのとおりだ。だから、学園長派に流れるな、という警告が響く、かもしれない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:29:24.15 ID:MCZbzFAwo<> >宿舎。

隊長「すみませーん」

管理人「は、何か」

隊長「こちらに、私の姉が住んでいるかと思うんですが」

管理人「お姉さん……? あーあー! 学園から来た!」

隊長(これで通じるって有名なんか、やつは)

管理人「君、弟さんなんだね。じゃあ、言付けを預っていてね」

隊長「え?」

管理人「近いうちにこちらに訪ねてくるはずだからって言って……」

管理人「あの、教育庁の方に応接室があるから、午後の間ならそこへ通してほしいと」

隊長「は、はあ」

隊長(あいつ、この展開を読んでいたのか……?)

術士「隊長」

隊長「あ、ああ。行かないと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:30:04.49 ID:MCZbzFAwo<> >教育庁、庁舎。

隊長「すみません、こちらに務めております……」

受付「あ、はい。弟さんでいらっしゃいますね?」

隊長「ええと、ご存知で」

受付「ええ、はい。数日前からここに来るはずだということで、課長から言われておりまして」

隊長(課長になってたのか、あいつ)

受付「それでは、あ、そうそう、お連れ様はちょっと……」

術士「私、彼と同じ隊の隊員でして……」

隊長「彼女は連れていけませんか」

受付「あまり庁舎内を自由には……?」

受付「あ、え? 術士ちゃん!?」

術士「え?」
<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:30:33.40 ID:MCZbzFAwo<> 受付「あの、ほら、私! 学園やめちゃったけど」

術士「え、あ、う、そ」

受付「こんなところで会うなんて……ほら、教育庁なんて役所に、普通はなかなか尋ねないでしょう、冒険者は」

術士「あ、え、と」

隊長「すみません、彼女とは?」

受付「あ、大変失礼しました。私、実は『学園』を中退した生徒でして」

隊長(まさか……)

受付「彼女とは、同じクラスだったこともあって、ついつい」

受付「あ、ごめんなさい! こんなところで引き止めてしまって!」

隊長「いいえ」

術士「……」

隊長(まずいな、顔面が蒼白になってきている) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:31:15.72 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「すまない、術士」

術士「は、い」

隊長「悪いんだけど、姉とは会えそうだから、先にみんなのところに合流してくれないか」

術士「わ、かりました」

受付「あの……?」

術士「……ごめんなさい」ダッ

受付「あっ」

隊長「ごめんなさい、ちょっと急用でおつかいしてもらわないといけなくて」

受付「は、はあ」

隊長「また、積もる話しは後にしていただいて、案内をお願いしてもらえますか?」

受付「あ、分かりました! では、こちらです」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:31:41.86 ID:MCZbzFAwo<> >応接室。

隊長(ふー……術士のことは気になるが……)

隊長(こちらはこちらで集中しないとな……)

ガチャ

姉「遅い」

隊長「……いきなりそれか?」

姉「当たり前でしょうが。人に手紙を寄越しておいて、いつまで経ってもこっちに来やしない」

姉「つーか、なに。会議中に来んな」

隊長「そりゃ悪かった。こっちも、仲間がやられそうで右往左往していたんだ」

姉「あ、そう」

隊長「……」イライラ

隊長(落ち着け、こいつのペースに飲まれるな)

姉「それで、何か用?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:32:21.47 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「理由ならおおよその予測はつくだろ」

姉「言いたいことがあるならはっきり言ってくれないかしらね」

隊長「分かった。単刀直入に言う」

隊長「竜が徘徊している。学園は潰れた。討伐と再建のために王国の兵士を出せ」

姉「出来ない」

隊長「だったら――」

姉「王国はマジで手を出さないわ。学園内のいざこざなんか」

隊長「……あれだけ投資していたのに?」

姉「そうそれ。学園を焼け出された生徒や教師については、再建まで王国として受け入れる余地がある」

隊長(こ、こいつ……!)

隊長「冗談だろ? まさか、そのつもりで手出ししなかったのか!」

姉「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:33:05.12 ID:MCZbzFAwo<> 姉「そんな、竜の行動が予測出来るわけはないでしょ」

隊長「観察はしていたはずだ。遠視の魔法でも何でも! 学園側からは、主要な授業の報告もあったはずだ!」

姉「だから、そこから王国として出来る範囲で判断したのよ」

隊長「ふざけんなよ、死んだ奴もいるんだぞ!」

姉「……それはどうしようもないでしょ」

隊長「……俺も死に損なったんだぞ!」

姉「あ、そう。生きて戻ってきて良かったわねー」

隊長「お前は……!」

隊長(クソが! 何を考えている!?)

隊長(王国のためも何も、竜を相手取ることになったらどうするつもりだっていうんだ!)

隊長(仮に王国側の決定がそうだとしても、少なくともこいつがそれに唯々諾々従うとは――)

隊長「……」

姉「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:33:32.79 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「……さっき学園内のいざこざと言ったな。なら、学園長一派のことは分かっているのか」

姉「……さあねー」

隊長「分かった。最終的にそこと関わらないなら、それでいい」

隊長「もう一つだ、王国はどこと組む気だ?」

姉「組むも何も、同盟を結んでいるのは帝国でしょ」

隊長「……なら、友軍を送る必要が出てくると思うんだがな」

姉「王国に軍はないわよ」

隊長「揚げ足に余裕がねぇな。一体、何を焦ってやがる?」

姉「何も焦ってなんかいないわよ」

隊長「お前はもっと相手をからかうように絡んできたはずだけどな」

姉「そうだったっけ?」

隊長「……『お姉さま』が、上の声を繰り返すようなインコになったとは信じられませんな」

姉「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:34:03.78 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「俺が来たのを、会議中なのに出迎えて、それなのに最大限に利用する気もないらしい」

隊長「何があった?」

姉「……別に」

隊長「何かまずいことでもやらかしたのか?」

姉「……」

隊長「あのな、俺が何を伝えに来たのかくらい、想像はつくだろ」

隊長「何も学園のために献身しているわけでもない」

姉「そーいうことじゃない」

隊長「あ?」

姉「他に言うことあるでしょ?」

隊長「何言ってるんだ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:35:44.75 ID:MCZbzFAwo<> 姉「お前、人を散々心配させといて、一言も無いじゃない」

隊長「……は?」

姉「は、じゃねーよ。分からないの?」

隊長「……」

姉「心配かけてすみませんでした、でしょ」

隊長「はぁー?」

姉「心配かけてすみませんでした、ほら」

隊長「……心配かけて、すみませんでした」

姉「うん、よろしい」ニヤッ

隊長「……」

隊長「おい、ひょっとして……それだけ?」

姉「当たり前でしょ? 入ってきて、『理由ならおおよその予測はつくだろ』! キリッ!」

姉「バカじゃないの?」

隊長「うるせぇな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:36:19.56 ID:MCZbzFAwo<> 姉「お前、私をどれだけ心配させたいのよー……」ぎゅー

隊長「あ!?」

姉「……」

隊長「……」


ガチャッ

受付「すみません、お茶をご用意するのが遅れまして!」

受付「……」

受付「すみません、お取り込み中をおじゃましまして!」

ガチャッ


隊長「……おい」

姉「あー、こりゃ噂になっちゃうわー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:36:49.50 ID:MCZbzFAwo<> 姉「んでんで、なぁにをしてほしいってー?」ニヤニヤ

隊長「ふぅー、久しぶりにこれかよ」

姉「私が冗談で抱きしめちゃうとでも思ってる?」

隊長「やめろ! そういうのは!」

姉「あっそう」

隊長「お前、王国の情報で学園側の裏事情もある程度つかめていたんだろう」

姉「……お前?」

隊長「お姉さまは、王国内にいらっしゃいましたので!」

姉「あーはいはい。そのことね。いや確かにさ、途切れ途切れではあるけど、竜についてはつかめたのはかなり最近になってからよ」

隊長「それは漏らしてもいいことなのか」

姉「私は表舞台で有能だからね。上がその件で攻撃するなら、そらもうアレよ」

隊長「ああそう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:37:15.79 ID:MCZbzFAwo<> 姉「で、なんだっけ、王国の兵士を動かせ、ね」

姉「そんなことより、プロの冒険者が竜退治に動いているじゃない」

姉「宛にならない連中よりは、そこに頼む方がいいんじゃないかしら」

隊長「って言うことは、王国も独自に依頼を立てているのか」

姉「そう。元王国内の冒険者ギルドや、特務機関支部、両ルートから、この件で退治も依頼しているわ」

姉「成果は出てないみたいだけどね」

隊長「まあ、当たり前か」

隊長(元々、プロの冒険者なら、竜退治と来れば腕がなる依頼だろう)

姉「……関わりたくないってのが本音なのはガチ」

隊長「そうだろうな」

姉「……竜の件に関しては、はっきり言って、外交部の不明もあるわ」ヒソ

隊長「それはマジで俺に言ってもいいのかよ」

姉「いいのよ。さっきの会議でぶちまけてきたから」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:37:42.28 ID:MCZbzFAwo<> 姉「で、お前はどうする? 私を使って、王国をどう動かす?」

隊長「帝国に竜が現れる」

姉「……なるほど」

隊長「重大なのは、それがどう転ぶか分からないってことだ」

隊長「これは王国にとっての最悪のシナリオだが、例えば、帝国に竜が加わる、とかな」

姉「ふーん」

隊長「なんだ、その態度」

姉「そうだとしても、帝国に兵士を差し向けるような真似は出来ないわね。内政干渉だし」

隊長「どうにもならねぇのかよ」

姉「なんでもうちょっと頭を使わないのかしらね」

隊長「使えって言われてもな……」

姉「だから、王国は、焼け出された生徒と教師を受け入れる余地があるって言ったでしょ」

隊長「……?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:38:34.30 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「それは、その、王国が吸収するって意味じゃないのか」

姉「なんでよ。再建するまでって言ってるのに」

隊長「……学園側の行動を、担保してやる、と?」

姉「王国は学園からのいざこざに対しては知らなかったことにする」

姉「ただし、かわいそうな学生や教師を受け入れることは出来る」

隊長「事実上、教頭派につくってことか!」

姉「さあねえ」

隊長「なら、帝国や竜への対策はどうするつもりだ」

隊長「手を拱いているわけではないだろ」

姉「例えば、なんだけど。私たちは情報に飢えているわー」

姉「そして、竜を封じる方法も知りたい。さて、今日、事情をよく知っていそうな学生の冒険者が現れた」

隊長「なるほど。『依頼』をする、というわけか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:39:16.67 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「それも、ただのスパイ活動じゃあないんだろ」

姉「そうね。一つは『レコード』から、知識を引き出してほしい、ということ」

隊長「『レコード』って、賢者の記録のことか」

姉「そ。あの、経験に応じないと何も教えてくれない記録石のこと」

姉「竜に会ったんでしょ? だったら、竜の退治法くらい、引き出せないかしら」

隊長「ち、ちょっと待った!」

姉「なに?」

隊長「王国にそんなものがあるなんて初耳だぞ!」

姉「そりゃ秘密にしてあるもの。でも、大体、予測は付きそうなものでしょ?」

隊長「何がだ?」

姉「討竜戦隊の勇者一行のうち、勇者は冒険者の組織である『特務機関』の再建に」

隊長「……ああ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:39:44.51 ID:MCZbzFAwo<> 姉「賢者は『王国』に知恵を残し、戦士が『帝国』で武力を。それぞれの国家が、崩壊した旧大国から英雄たちの助言をもらって再建したわけよ」

姉「が、それは単なる言葉だけじゃなくて、モノもちゃんと残っていたってわけ」

隊長「確か、天測士ってのが、『レコード』を利用した天測機とやらを持っていた」

姉「……天測機? 知らないわね」

隊長「……じゃあいい。とにかく、その『レコード』とやらから情報を収集しろってわけだな」

姉「そう。やる?」

隊長「他にもあるんだろ」

姉「もちろん。そうして得た情報を、すでに退治を依頼している冒険者たちに、対竜討伐作戦として、届けてほしいわけよ」

姉「あんた達に退治を任せるのは荷が勝ちすぎると思うけど、連絡、なら大丈夫でしょ」

隊長「……報酬はいくらになるんだよ」

姉「……このくらい」

隊長「……低すぎる」

姉「なんでよ、かなりの額じゃない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:40:17.04 ID:MCZbzFAwo<> 隊長「あー、実はな。学園が破壊された時、もちろん寮もぶっ壊されてな」

姉「ってことは、お前の秘蔵のエロ本が!?」

隊長「なかっただろ、そんなもん」

姉「えー」

隊長「そうじゃなくて、貯めていた金がほぼパァだ」

姉「……」

隊長「これじゃ、せっかくの墓代が……」

姉「そんなの、私が出すから、別にいいでしょ」

隊長「俺の人生の目標を否定されても困るんだが」

姉「はぁー……そんなものに囚われてどうするのって何回言わせるんだか」

隊長「とにかく、金が欲しいんだよ。それ次第だ」

姉「んじゃ、このくらい……」

隊長「……まあ、それなら」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:40:42.86 ID:MCZbzFAwo<> 姉「で、本当にいいわけ? 受ける?」

隊長「……」

隊長「そりゃ、王国の秘密を知れるなら、大したことだ」

隊長「それも一介の学生に教えるんだから、王国も相当キテるってことだ」

隊長「こいつは話の種になる」

姉「でしょうね〜」

隊長「……」

隊長(なんか青筋が立ってるな……)

姉「じゃあ、やるのね?」ニヤリ

隊長(相当キテるのはこいつの方だったか) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:42:35.00 ID:MCZbzFAwo<> 姉「……あんた、宿取ってるの?」

隊長「え、あ、ああ」

姉「あとで私の宿舎の方に来なさい。いいわね?」

隊長「なんでだよ……」

姉「あ?」

隊長「なぜ私がお姉さまの宿舎に、行かねばならないのでしょうか」

姉「何でもいいじゃん。来ないわけ?」

隊長「女性の寝所を訪ねるのは夜這いするときだろ?」

姉「ふーん」

隊長「……あのさ、うちのメンバーの一人が困ったことになっててさ」

隊長「それも、あの、受付の子と、知り合いみたいで」

姉「じゃあ、彼女も誘ってくるから、あんたのところのも全員連れて、宿舎の裏の酒場に来なさい」

隊長「……」


【選択肢】

>やってられるか。術士を慰めたりしないと。
>この際だから、姉に従うか……。
>「うるせぇな、ババァ。弟離れしろ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/01/14(月) 21:43:03.08 ID:MCZbzFAwo<> 今夜はここまで。
雪で死にそうになったさ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/14(月) 22:10:35.66 ID:El3sx+qAO<> 乙、大変だったな

術士が行けるなら従おうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/14(月) 23:11:07.52 ID:M9tiZGlno<> 姉√でいこう(提案) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 09:16:26.60 ID:RbFneq0IO<> 姉との距離が縮まる展開も見てみたいがここは術士のケアをする方が大切だと思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 11:20:13.99 ID:W6jFimkFo<> 術師連れで姉ルートだろな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 23:22:31.94 ID:zlMvG3890<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/18(金) 19:27:42.42 ID:D6CZ1b6G0<> いこーよ

<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:12:58.54 ID:H+kvJbTjo<> >この際だから、姉に従うか……?

隊長(別にそれ自体は構わない。だが……)

隊長「なあ、お前は知っていると思うんだが」

姉「あ?」

隊長「……。姉ちゃんは受付の子のことを知っているだろ」

姉「学園を中退した子でしょー? 優秀なのよね」

隊長「なんで中退したかってことだよ、わかるだろうが」

姉「何、あの術士って子が退学させたってことになるわけ?」

隊長「……そういう訳じゃないと思うんだが」

姉「疚しいところがないなら、ちゃんと向き直らないと損よ」

隊長「姉ちゃんみたいにまっすぐ向いている人ばっかりじゃないんだ」

姉「お前みたいに、すぐ貯めこんじゃうよりはマシ」

隊長「ん?」

姉「強制的に発散させたいわけ。姉としては」

隊長(だったら強制しないでくれよ……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:13:29.37 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「とにかく、それなら、日が暮れてからにしてくれ」

姉「おっけおっけ。私も仕事を押し付けてくるわ」

隊長(片付けて来るよじゃないのかよ)

姉「お前から聞いた情報をもとに、上を締めあげてやるわ」

隊長「……ああ、そう」

姉「そんじゃね〜」ササッ

隊長「あっ」

隊長「……あっという間に出ていきやがった」

隊長「……」

隊長「仕方ない、術士も気になるし、みんなのところに合流するか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:13:55.90 ID:H+kvJbTjo<> >宿屋。

術士「……」

剣士「……」

工兵「ん、んー。えへん」

剣士「うるせぇぞ」

工兵「な、なんだよ、この雰囲気が嫌だってだけじゃないか」

剣士「ふー」

救護員「隊長、まだですかね。お買い物は済ませちゃったんですけど」

工兵「僕はまだ途中だったけど」

剣士「途中から余計なものまで買い始めたからだろうが!」

工兵「ええ〜? 何が役に立つかわからないじゃん?」

救護員「真剣に聞きたいんですけどね、根野菜が冒険に役立つとしても、使わなかったら腐りますよね?」

工兵「ああ、別に食料にしてもいいんだけどさ……」

剣士「とにかく、だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:14:28.55 ID:H+kvJbTjo<> 剣士「おい、そんな顔をされて、黙りこくってちゃ分からん」

術士「……」

剣士「何があったのかくらいは言え」

術士「何も……」

剣士「チッ、何もないわけがあるかよ」

救護員「ははぁ、さてはあの隊長のお姉さんにいびられたんですね」

工兵「ああ〜、あの人、性格が良くなさそうだし」

術士「違う!」

二人『……はい』

剣士「違うなら、ちゃんと説明しろ」

術士「……うまく、説明できない。わ、わた、しの、問題だから」

剣士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:14:54.19 ID:H+kvJbTjo<> ガタン。

隊長「だから、宿の場所くらい教えてくれと」

救護員「あ、隊長!」

隊長「ん、みんな揃ってるな」

術士「あ……」

剣士「どうだったんだ?」

隊長「いろいろあったが、有益な情報も得られた。明日から、おそらく数日、王国内で情報収集に当たる」

工兵「また集めるのかー」

隊長「今回の集め方はちょっと違うものになるぞ」

救護員「違うもの? ですかぁ?」

隊長「ん、まあ、俺も詳しくは分からない。明日になってからだな」

隊長「それで、だ。姉ちゃんの方から、食事のお誘いがあった」

剣士「断る!」

隊長(お前が断るのかよ) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:15:27.87 ID:H+kvJbTjo<> 剣士「下手に付き合って情報を抜き取られても困るからな」

隊長「今更出し惜しみをしている場合でもないだろ?」

隊長「……まあ、あの女は言い出したら聞かないからな。このままだと宿に乗り込みかねない」

工兵「隊長がしぼんでいる」

救護員「た、隊長、顔色が悪くなるくらい、嫌なんですね……」

隊長「……やつが学園在学中のことは知らないか」

隊長「学園で制服を導入しようという動きがあったの、知っているか?」

剣士「ああ、あったな」

隊長「あれには賛成派と反対派がいたが、その議論の最中にやつが裏で動いて叩き潰した」

救護員「え、えーっと」

隊長「考えてみれば、統一した服装を導入することは、生徒の組織化を強固にしようとする目論見があったかもしれん」

隊長「だが、やつはもっとつまらない理由で俺を使い走りにして、裏で関係職員を脅して辞めさせたそうだ」

工兵「理由ってなに?」

隊長「……『ジャンパースカートなんてダサいものを着れるわけないじゃん?』」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:15:58.06 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「……何の話だったかな。そうだ、とにかく断れない、ということだ」

隊長「みんなが行きたくないのであれば、俺一人で行くしかないが……」

術士「……」ピクッ

隊長「……術士。あの子も来るそうなんだけど」ヒソ

術士「い、行きたくない」

隊長「気持ちは分かる。俺も、なんだ。無理強いは出来ない」

術士「……」

隊長「どちらかと言えば、術士の望むようにしてやりたいし、ほら、話を聞かれたくもないだろ」

三人『ジーッ』

隊長「声に出すのはやめろ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:16:27.62 ID:H+kvJbTjo<> 術士「隊長は」

隊長「うん?」

術士「隊長は、私が、私が行った方が嬉しい?」

隊長「そういう考え方はなしだ。前に言ったかもしれないけど」

隊長「俺を基準にして考えるより、どうすれば自分がすっきりするか、考えてくれないか」

術士「……」

隊長「……」

工兵「なんかシリアス」

救護員「私達、ギャグ要員ですもんねぇ、どっちかというと」

剣士「俺も含めるんじゃねぇ」

隊長「ねー、黙ってくれるかなぁ!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:16:53.15 ID:H+kvJbTjo<> 術士「……い、行く」

隊長「いいのか?」

術士「く、く、来るなら、謝らない……と」

隊長「分かった。じゃあ、荷物を整理したら、行くことにしよう」

工兵「隊長、黙ってるから、僕も行っておっけい?」

隊長「行かないつもりだったのか?」

工兵「や、ほら、茶々入れちゃいそうだからさ」

隊長「……いや」チラ

隊長「空気を読んでくれれば大丈夫だと信じる」

救護員「あー、隊長のお姉さん美人ですからねぇ。緊張しちゃうかも」

剣士「……チッ、しょうがねぇな」

隊長「いや、剣士は行かなくても」

剣士「しょうがねぇな」

隊長(めんどくせぇ!) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:17:22.00 ID:H+kvJbTjo<> >宿の外。

術士「……」

隊長「そうだ、行く前にアドバイスはさせてくれ」

術士「何?」

隊長「謝りに行くつもりじゃない方がいい」

術士「……どうして」

隊長「謝ったら、それを受け取るかどうかにしかならないじゃないか」

術士「……」

隊長「あの受付の子は、別に術士に謝ってほしそうには見えなかった」

隊長「彼女がどう思っているのか、聞きに行くつもりで行ったほうが、間違いは少なく済む、はずだ」

術士「……隊長」

隊長「何?」

術士「……えらそう」

隊長「おお、悪うござんしたね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:17:52.39 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「とにかく、だ。俺は姉の相手をする、術士はあの子の話を聞く」

隊長「今回はそういう作戦で行こう」

術士「……うん」


工兵「……ああー、二人で連れ立って、こりゃ完全にカップル状態だね」

救護員「ま、まあ、身長的にもお似合いなんじゃないですか? 顔面偏差値とかも」

剣士「チビで不細工だってか?」

救護員「そ、そんなことは言ってないじゃないですかぁ!」

剣士「何をキレてんだ」

工兵「僕らが要らない子状態になりそうで辛いよねー」

剣士「別にいいだろうが、タダ飯を食えるんだから」

救護員「そりゃ剣士さんみたいに、修行キャラ&大食いキャラならいいですけどぉ」

工兵「えっ、救護員って剣士と同じくらい……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:18:19.67 ID:H+kvJbTjo<> 剣士「俺のどこが大食いだ、自身に見合った量をある程度計算しながら食事しているぞ」

工兵「ってことは、救護員が大食いなんだね。気づかなかったよ」

救護員「い、いやあの……やめてくださいよぉ、こういうの!」

工兵「町にいた時も、常に何か屋台ものを食べてたもんね」

工兵「育ち盛りだからってスルーしてたけど……」

救護員「ちょっと!?」

剣士「……十分成長しているとは思うが」

救護員「あのね!」

工兵「脳に行かずに胸に行くってのは本当なんじゃないかって思うよねー」ヒソヒソ

剣士「ああ……だが、知的な女性がすべて小さい胸というわけではない」ヒソヒソ

剣士「現におっさんが言っていたが、あの賢者は……」ヒソヒソ

救護員「聞こえてますけど!?」


隊長「……なんか楽しそうだな」

術士「向こうに行っても、大丈夫だと思う」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:18:46.18 ID:H+kvJbTjo<>
>酒場。

姉「来たわね」

受付「こ、こんにちは」

隊長「待たせた、すまない」

術士「……」ペコリ

救護員「こんばんわー」

工兵「ばんわー」

剣士「……チッ」

姉「また態度が悪そうなのが」

隊長「まあまあ! とりあえず、積もる話もあるだろうが、先に乾杯をね!?」

姉「お前が気を使わなくてもいいのよ」

姉「何のためにここに呼んだと思ってんの」

剣士「気を使うような展開に追い込んだとしか思えないがな」

姉「あははっ、言うねぇ、勇者の秘蔵っ子」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:19:13.87 ID:H+kvJbTjo<> 剣士「……あんた」

姉「調べたわよー。さすがに。特務機関での教育なんて、大したことがないと思っていたけど……」

姉「まさか勇者が直接指導に当たっていたなんて、知らなかったわー」

救護員「えっ!?」

剣士「デタラメを言うな。それに、あのおっさんは強いことは強いが、『語り』がキツいやつだった」

姉「ふーん」

剣士「年齢を考えても、勇者には当てはまらなさそうだし」

隊長「おい」

剣士「ああ?」

隊長「乾杯」

剣士「いやでも」

隊長「乾杯な、乾杯」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:19:43.68 ID:H+kvJbTjo<> 姉「じゃあ、今日はここ、貸し切りでツケで飲み食いし放題なんで」

マスター「えっ!?」

姉「ダメなの?」

マスター「初耳が多いんですけど……」

姉「カンパーイ!!」

全員『カンパーイ!』

マスター「ちょっ、ちょっと待って……」

隊長(犠牲者か……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:20:12.10 ID:H+kvJbTjo<> 姉「あーあ、それにしても、姉ちゃん、やっぱり心配してたんだわー」

隊長「何がだよ」

姉「一度、お前の隊員を見た時さ、なーんか損する方を選びそうなメンバーと思って」

隊長「そうでもないだろ」

隊長(うーん) ぐるり

隊長「……そうでもあるな」

姉「いや、私が言いたいのは、お前が損を選ぶ方って意味よ?」

隊長「どういう意味だ?」

姉「つまり、お前らがうちの弟に迷惑をかけてんじゃねぇのかってことよ」

剣士「あ?」

工兵「あー、かけてますね」

救護員「言いがかりですよ!」

隊長(煽ってんじゃねぇええええ!) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:20:39.96 ID:H+kvJbTjo<> 姉「じゃあ、かけてるって言った君から行こうか。どうかけてるの?」

工兵「んー、僕は自分のやりたいことをやれればそれでいいんで」

工兵「なんてんですか、あんまり、自分のやりたいことばかりやってると、みんなしてアレがダメ、これが良くないとかしか言わないんですよ」

工兵「そのお陰で、隊を組んだ頃は随分と落ちていた時期でして」

隊長「いや、工兵はよくやってるよ。もし居なかったら、竜の群れなんか突破できなかったし」

工兵「ほらこれ。好き放題やっててこれですよ」

姉「分かるわ〜、ホント好きにやってもなんだかんだでフォローしてくれるし」

隊長「……」

工兵「隊長、優しいしね〜。表面だけかと思ったら、もう、根も良い人で」

隊長「何なの? もう酔っ払ってんの?」

救護員「た、隊長が険しい表情になってますけど」

剣士「ふん」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:21:06.81 ID:H+kvJbTjo<> 姉「ほら、次はお前だよ、お前。仏頂面」

剣士「俺が隊長に迷惑をかけた、だと」

隊長「……なんだよ」

剣士「はっ、俺達は互いに成功もあれば失敗もする。つまり、お互い様ということだ」

姉「誰がそんな一般論を聞きたいって言ったのかしら」

工兵「ですよね〜、本音トークが必要なんですよ」

姉「あら、工兵くん、前に会った時よりも、話が分かるようになってるじゃない」

工兵「あはは、それほどでも」

剣士「……チッ」

隊長「剣士、こいつらの言うことは気にするな」

剣士「そんなことくらい、知っている!」

姉「ほら見なさい。素直に言えないことで、自分にも相手にも負担をかけているのよ」

姉「それがお前の言うお互い様なのかしら?」

剣士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:21:32.88 ID:H+kvJbTjo<> 剣士「ふー、分かった。俺自身の、隊長に対する感情を説明すればいいんだな?」

姉「そんな言い回しは要らないけど、そういうこと」

剣士「……素直に言えないというのは、そういう考え方ができないということだ」

剣士「聡明なあんたなら、理解できると思うんだがね」

姉「私、察して君は大嫌いなのよね」

剣士「チッ」チラ

隊長「俺と剣士は、それなりに信頼しているよ。それだけさ」

剣士「お前はそうかもしれないが、俺は違う」

隊長「えっと……」

姉「お、キタネ!」

剣士「俺は特務機関で、今の学園の生徒会長と二人同時におっさんから指導を受けてた」

姉「その幼少期から話すとかは、ナシにしてくれない?」

剣士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:21:58.57 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「いや、好き勝手に言うなよ」

姉「お前も聞きたいのは、今、どう思っているかでしょ?」

隊長「過去も、大事な話なんだろ?」

剣士「まあ、今となっては少しバカらしくなっても来ているからな……」

剣士「過去に囚われ過ぎていた。それを辛抱強く、向き合い続けてくれたことには、感謝している」ペコリ

隊長「そ、そうか……」

剣士「そうだな、はっきり言っておこう」

剣士「俺は会長と――」


術士「……だから! どうして私を責めないの!?」

受付「だって、術士ちゃんは悪くないじゃん」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:22:28.17 ID:H+kvJbTjo<> 五人『……』

隊長(しまった、完全に飲まれていた)

剣士「あー……」

隊長「困ったな」

剣士「隊長、あの二人のところに行ってやれ」

工兵「最初から二人でボソボソ話してたみたいだしね」

救護員「まあ、剣士さんの話はこちらで回収しておきますんで」

剣士「……お前らに聞かせたいわけじゃない」

姉「そういう露骨な顔なら私も分かるのよ」

隊長「いや、いいんだけどさ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:22:53.78 ID:H+kvJbTjo<> 術士「私、私は……!」

受付「あのね、気持ちは分かるよ。術士ちゃん、庇って、まあ、言ったら大怪我よ」

受付「だけど、あれはチームとしてのミスじゃん? ちゃんと連携が取れてなかったっていう」

術士「そう、かもしれないけど……!」

受付「あのさ、この話、実習後に医務室でもしたし、学園辞める前にもしたじゃない」

術士「それは……」

受付「怪我。残ってるよ」

術士「……!」

受付「だけど、私、もう結婚もしてるしさ」

術士「えっ」

受付「だから、別に術士ちゃんが悩むようなことって一切ないと思うんだけど」

術士「えっと……おめで、とう」

受付「……。ありがとう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:23:20.34 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「ごめん、いいかな?」

受付「ああ、課長の、弟さん」

隊長「姉がお世話になってます」

受付「とんでもない! あのね、課長には聞こえないようにしてほしいんだけど……」

隊長「うん?」

受付「私、課長に拾ってもらったようなもんなの! めちゃくちゃ感謝してます」

隊長「そうですか……」(俺には関係ないがな)

術士「……」グスッ

隊長(あ、まずいな)

隊長「あの、術士の知り合いだということで」

受付「ああ、そうだ。今、同じチーム? 学園戦隊というのを作っているんでしょう?」

隊長「ええ、まあ」

受付「言ってやってくださいよ、チームのミスは個人の責任じゃないんだって」

隊長「はあ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:23:51.44 ID:H+kvJbTjo<> 術士「隊長……ごめんなさい……」

受付「だから!」

隊長「ちょっと待って」

受付「は、はい」

隊長「術士、落ち着いて」

術士「私、分からない、謝りたいの……」

隊長「落ち着いて!」

術士 ビクッ

隊長(許してほしい、んじゃないんだよな。納得出来ないんだ、きっと)

隊長(自分が許せないって言った方がいいか)

隊長「……術士、その、冒険実習の時の話をしてくれないか」

受付「えっとー」

隊長「すみません。でも、そこを話さないと、進めない人もいるんですよ」

受付「……ん」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:24:21.98 ID:H+kvJbTjo<> 術士「……曇りがちだったわ。実習の内容は、決められた薬草を、決められた分量だけ持ち帰ってくること」

受付「そうだったわね。私はあまり覚えてないけど」

術士「適切な行動計画も、練ったはずだった。だけど、帰り道に天候が崩れそうになって……」

受付「そうそう。濡れる前に、急いで帰ろうとして、魔物の溜まり場に踏み込んじゃったのよ」

隊長(作戦計画の変更か……あの夜と似ているな)

術士「私は、その時も体力がなかったから、途中で魔物に追いつかれて」

術士「彼女が、割り込んでこなかったら……」

受付「指揮を取っているやつも下手くそ過ぎたわ!」

術士「そんなこと、ない。私がちゃんと」

隊長「ストップ!」

隊長「術士、その時の作戦の問題点を言ってみてくれ」

術士「……え?」

受付「はぁ? あの……」
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:24:49.17 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「重要なことだ、全体のミスを掴めなければ、次に生かせない」

術士「……」

受付「いや、だから」

隊長「しっ」

術士「……行動計画に、矛盾はあった」

隊長「ほう、それはどんな?」

術士「薬草の種類の事前調査が不十分だったの。確認するのに時間がかかったのが、まずひとつ」

術士「そして、その遅れをルート変更で補おうとした」

受付「……うん」

術士「チームは、冒険実習前に集まったのが数回」

術士「……そう! 編成もしていなかったわ」

受付「へ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:25:24.38 ID:H+kvJbTjo<> 術士「早い人が早く行ってしまって、隊列が伸び伸びになってしまっていたわ」

術士「……隊長なら。少なくとも、そんな失敗はしない」

隊長「ああ。全体の意思統一をしないと、集団行動は出来ないからな」

隊長「もう一つ上げるとすれば、受付さん、なにか体術とか?」

受付「いや、どっちかって言うと救護で」

隊長「なるほどね。本来的には、最前列と後列に、特別に気を払うべきなのだ。出来れば殿を務める者には、体力のある者を」

隊長「その基礎基本ができていないとなると、実習前の教育指導に問題があったことも考えられる」

術士「……」

隊長「……ということなんだよ」

術士「う、ん」

受付「えーっと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:25:50.61 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「俺は、もう、この件に関しては、それ以上のことは言わないよ」

術士「……」

受付「あの……」

隊長「それで、次は別件なんだけど、術士」

術士「はい」

隊長「受付さんの話を聞こうねって言ったと思うんだけど」

術士「う……」

隊長「受付さんが何を話したいのか、ちゃんと聞いた?」

術士「……私は、関係ないんだって」

受付「ええ!? 違うって」

受付「学園のみんながどうしてるのか、とか、そういうことをね」

術士「……学園は、竜に襲われて滅んだけど」

受付「うぇぇええええ!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:26:18.51 ID:H+kvJbTjo<> 隊長「こほん。とにかく、だ。本当に話したいことは、もうそこじゃないんだ」

隊長「……で、いいんですよね?」

受付「あ、はい。というか、その、学園が滅びたとかなんとか」

隊長「そりゃもうすごかったですよ」

術士「……目の前まで、竜が迫ってきて」

受付「ひぃ〜、よく生きて帰ってこれたね」

術士「うん。隊長が、来てくれたし……」

受付「へぇ、強い人なの」

隊長「大して強くはないですよ」

術士「……うーん、剣の腕が立つとかじゃないんだけど」

術士「やっぱり、かっこいい」

受付「ふーん。こういうのが趣味なわけね、術士ちゃんは」

隊長「目の前で論評しないでいただけますか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:26:47.71 ID:H+kvJbTjo<> 隊長(……ほっとした。ぎこちないけど、やっぱり友達同士だったんだ)

隊長(これなら、術士も、少しずつ打ち解けていけるだろう)

隊長(問題なのは……)

術士「だから、あの、あの。隊長には迷惑を……」

受付「あのね、そんなことを言っていたら、他の人に取られちゃうのよ」

受付「私だって旦那に告白しようとした時は、ダメ元を超越して、最初からネタのつもりよ!」

術士「そういうのは……」

受付「心が本当なら、行動すれば伝わるんじゃないかなって」

隊長(目の前で恋愛相談しているってことなんだが……)

術士「隊長」

隊長「何?」

術士「結婚して下さい」

隊長「」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/18(金) 23:27:39.64 ID:H+kvJbTjo<> 今夜はここまで。

ん? なんで術士がプロポーズしてんだ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/19(土) 08:27:06.00 ID:SnTlQ/Qoo<> 乙! 書いたのお前だろうがwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/19(土) 11:01:38.21 ID:HlXg05eDO<> 乙
術士かわいい



救護員はぺったんのちんちくりんだと思ってたのに… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 06:20:04.90 ID:8sMWEywQ0<> 乙ー

色々すっとばして結婚か(笑) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 18:31:04.04 ID:rOVXiPKSo<> 受付「ひゅーひゅー。やるぅ!」

隊長「ちょっと待ってくれ」

術士「合理的だと思うわ。うん」

隊長「何が合理的なのか説明しろよ」

術士「つまり、私は隊長の助けを必要としているの。それで、その……だけど、私からは返せるものは少ないわ」

術士「それはこの戦隊のメンバーとしてのことだけど、妻としてなら、他に出来ることは色々あるはずよ」

隊長「それは術士の目的に対して合理的かもしれないけどな」

受付「嫌なの? 嫌いなの?」

隊長「そんなこと言えるか」

術士「どうして? 私は、覚悟している。それだけの覚悟は」

隊長「覚悟の問題じゃない、俺には結婚が必要ないから」

受付「はぁ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 18:31:29.89 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「いや、だからな……言っただろ。将来は村に戻って……」

術士「二人なら村の再興も出来るわ」

隊長「おいどうにかしろ!」

受付「何が嫌なの? それとも、タイプじゃないとか?」

隊長「ああ、そこまで言うなら、好みの顔じゃないとはっきり言っておくぞ」

術士「……」グッ

受付「ひどいわ〜」

隊長「……ちょっと待ってくれ。俺は確かに、最初よりは戦隊のメンバーを信頼出来るようになったとも言った」

隊長「だが、女として好きかどうかは別問題だぞ。そういう考え方が出来ない」

術士「出来なくても、関係は作れるわ」

隊長「そういうことじゃねぇ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 18:31:56.60 ID:rOVXiPKSo<> 受付「他に好きな子がいるんじゃないかしら」

隊長「おい、やめろ、ふざけるな!」

術士「もしかして、救護員の方が……?」

隊長「そりゃ顔や体は好みだが、性格でごめんなさいだ」

術士「……」

隊長「選べる立場じゃないことは知っているが、だからこそ、すべて断るんだぞ」


救護員「えー? 隊長、何か呼びましたー?」

隊長「なんでもねーよ!」


術士「確かに、家事でも胸でも負けているかもしれないけど……」

隊長「なんでそこに逸れるんだよ!」

姉「おい、小娘」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:43:00.53 ID:rOVXiPKSo<> 術士「何でしょう」

姉「なんか聞き捨てならない話になってない?」

術士「なんでもありません、これは、私と弟さんの話であって、あなたの話ではないです」

姉「そんなわけないじゃない、家族の話よ」

姉「それも、二人ぼっちの姉弟のね」

術士「たとえ家族でも、男女間には口出しすべきではありませんね」

隊長「おい、勘弁してくれ」


  救護員「……何の話しているの? 急にお姉さん、立ち上がっちゃったけど」

  工兵「うーん、女のたたかい、かな」

  剣士「……隊長の嫁になりたいんだとよ。術士が」

  救護員「嫁? えっ、ええ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:43:27.54 ID:rOVXiPKSo<> 姉「ふー……じゃあ、ちょっと待ちなさい。今日、お前を呼んだ理由の決着をつけるから」

隊長「決着? 何の話だ」

姉「今後のことよ。学園が潰されて、お前、将来をどうするつもりなの?」

隊長「それは……とにかく、冒険者として……」

姉「そんな甘い人生設計はやめなさい。ボードゲームじゃないのよ」

隊長「言われなくても分かっている」

姉「分かってないわ」

隊長「……何が言いたいんだ?」

姉「王国に就職しなさい。便宜は図れるし、私も宿舎を出て一軒家を構えることも出来るわ」

姉「一人で住むには大きすぎるからね」

隊長「勝手に決めるな、そんなもん」

術士「ちょっと、待ってください!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:44:05.01 ID:rOVXiPKSo<> 姉「何?」

術士「私たちの隊長を、奪い取るつもりですか?」

姉「奪いとるんじゃない。進路の選択として、有力なものを提示しているだけよ」

姉「例えば、どうしてもこのメンバーで続けたいというなら、そういう形態で雇うこともできなくはないわ」

術士「そ、そうかもしれないけど……!」

受付「あー、課長?」

姉 ギロリ

受付「すみません、黙っています」

隊長「悪いが国に忠誠を誓うなんてことは、俺には出来ないと思うんだがな」

姉「だから、形態はいろいろ出来るわ。少なくとも、寮を焼け出されて、身の振り方を決めるのに、私を利用する、というのは悪くない選択肢でしょ」

隊長「だからな……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:44:41.57 ID:rOVXiPKSo<> 術士「そ、そうだ。別に、それなら、結婚は関係ないですよね。隊長と私が」

姉「バカなの? 姉弟で住む家を捜しているのに、その前提をひっくり返してどうするのよ」

姉「どういう生き方をするにせよ、私は、彼に落ち着いて考える時間を上げたいの」

姉「がむしゃらに生き過ぎなのよ? 体を壊しそうになるくらい依頼実習を受けたりしたこともあったでしょう」

術士「うっ、く……」

隊長「いや、そうかもしれないけどな」

隊長「それは、俺自身の落ち度であって、そこまで姉ちゃんが考えることでは」

姉「だから! 出来る限り、お前のやりたいことと私のやりたいことを交換できるように考えているんじゃないの」

隊長「お、おう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:45:07.38 ID:rOVXiPKSo<> 受付「えー、課長のやりたいことって、そのー……」

姉「そんなの、二人で一緒に孤児院をやることに決まっているじゃない!」

隊長「なんだって?」

姉「ああんなクッソみたいな所で犠牲になる子を出さないためにも、そういう事情を知っている私達が孤児院をやるべきでしょ」

姉「全国どこでもクソだらけだけど、孤児院を教育機関として許可出している国は王国だけだしね!」

隊長「初耳なんだが」

受付「別にそれは、弟さんがいなくてもいいんじゃないですかねー?」

姉「私は、二人で、一緒に、やりたい。いい?」

受付「は、はい」

姉「もちろん、希望だけどね。そのために、きっちりきっちり根回ししているわけよ」

隊長「……そうですか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:45:33.20 ID:rOVXiPKSo<> 姉「だから、勝手に結婚とかは許さないし、命を粗末に使うことも許さないわ」

隊長「なんでそこに飛ぶんだよ!」

姉「何が?」

隊長「お前に結婚を許してもらう必要がどこにある?」

姉「お前?」

隊長「……。お姉さまに結婚に関してお許しを頂く必要はありませんよね!」

工兵「近親相姦なんかね」ヒョコ

隊長「頼む、話の輪に入ろうとしないでくれ」

剣士「何でもいいが、さっきから料理の皿に誰も手をつけていないじゃないか」

剣士「うまいぞ」

隊長「うるせぇ、黙れよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:46:02.83 ID:rOVXiPKSo<> 術士「もしかして、嫉妬なんですか?」

姉「ああー?」

術士「私は、その、この、気持ちは、依存かもしれないけど、隊長を、あい、あい……してますけど」

術士「それを、便利な弟が取られることに嫉妬して邪魔をするなんて、らしくないです」

受付「――おっと、ここで術士ちゃんが告白プラス嫉妬切りの二重攻撃!」

術士「姉弟なんて不毛ですよね。私は、今は、ダメでも、ち、ちゃんと隊長にふさわしく成長しますから……!」

姉「……」

隊長「張り合うな。いいから落ち着け」

姉「別に不毛じゃないわ」

術士「は……?」

姉「私たちは同じ村を焼け出されて、たった二人生き残ったから姉弟を名乗ってるだけで」

姉「血の繋がりもないし、結婚も出来るわ!」ダン!

術士「うぐっ」

受付「これはまさかのカウンターだぁ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:46:38.25 ID:rOVXiPKSo<> 姉「ついでに言うけどね……」

術士「な、なんですか」

姉「私には、帰る家も用意できるし」

姉「共通の過去もあれば、同じ目標も持てるし」

姉「就職先ももちろん、資産も十二分にあるわ!」

術士「うううっ」

受付「た、畳み掛けるような課長の口撃!」

術士「そ、そういうのは愛とは言わないんじゃないですか!」

姉「口に出すほどのもんでもないから言わなかったけど、誰が愛情も持ってない人間にそこまで出来るわけ?」

術士「うああああっ」

受付「これはっ、抜群の納得感――!」

隊長「冗談だろ?」

姉「お前は何を選んだとしても殴るから、絶対に」

隊長「えーと……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:47:05.92 ID:rOVXiPKSo<> 受付「さあ、ここから術士ちゃんは、どう立ち上がるのか……?」

術士「う、うう、そ、そんな、こと……」

受付「術士ちゃん、頑張ってよ」

術士「でも……」

受付「私、怒るとしたら、こういう時だからね! 簡単に諦めちゃ駄目だよ」

術士「……」


  救護員「あの、何か白熱しているんだけど……」

  工兵「しーっ、今いい所だから」

  剣士「隊長のお姉さんも、実は血がつながってないし、婿にしたいんだとよ」

  救護員「ええっ、む、婿!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:47:33.82 ID:rOVXiPKSo<> 術士「わ、私は」

受付「うんうん」

術士「私は、何の、取り柄もなくって、迷惑を、かけてばかりかもしれないけど……」

術士「隊長が、好きだから。何でもしてあげたい」

受付「キター―ッ! 真っ直ぐな告白だーっ!!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:48:02.93 ID:rOVXiPKSo<> 姉「だから、そんなこと言って、仮に一緒になったところで、彼の希望が叶えられると思うの」

姉「お金のこともあるわ。気を使わせて、かえってお互いに辛い思いをするんじゃないかしら」

術士「ぎ、逆に言えば、そういった心を許して来なかった人に、ちゃんと手順を踏んで、お互いに歩み寄ることが、隊長にも大切、だと思う」

術士「この、ままだと、一生を……墓守に、捧げてしまう、みたいな」

隊長「……別にいいだろ」

剣士「良くないと思うがな」

工兵「うーん、僕もそう思うな」

術士「そのためには、新しい関係が、必要だと、思います」

姉「……」

受付「これは、さすがの課長も心に染み入ったかー!」

姉「うるさい」

受付「すみません」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:48:50.88 ID:rOVXiPKSo<> 救護員「はーい!」

受付「なんですか?」

救護員「なんだかんだ言ってますけど、隊長がどうしたいかでしょ?」

隊長「そ、そうだ! 誰が結婚したいと思うか!」

姉「ほう?」

術士「うっ……」グス

工兵「あー、泣かせたー」

隊長「大変申し訳ございません」

受付「じゃあ、どう思ってらっしゃるんです?」

隊長「本心から言うと、なぜそこまで俺に拘るのか分からない。俺は自分の村に墓を立ててやりたいだけの人間だ」

隊長「能力も高くない、チビでブサイクの部類だ」

救護員「性欲はあるんですかぁ?」

隊長「嫌なことを聞くな。ないわけじゃない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:49:17.74 ID:rOVXiPKSo<> 救護員「じゃあ、一番え、ええ、エッチがしたい人を選べば解決ですよぉ!」

隊長「頭が湧いてんのか?」

救護員「へへへー、聞きましたよぉ。隊長って私がタイプなんですよねぇ」

隊長「……」

救護員「ちなみに、私と結婚したら、お父さんに言って、いろんなお金を出してもらえますよ!」

受付「おっっとおおおおおお! ここで三人目の参戦だああああ!」

救護員「顔・体アンド金! これなら、お姉さんと一緒に住もうが問題ないですよねぇ!」

隊長「性格でお断りだって言ったはずだが……」

救護員「そ、それは」

隊長「大体、お前、他の人が好きだったんじゃないのか、工兵とか、剣士とか……」ヒソヒソ

救護員「ま、まあ、ほら、恋多き乙女なので……」ヒソヒソ

救護員「でも! お姉さんにベッタリだけじゃ良くないでしょう」

隊長「だから、最初から王国に就職する気はないと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:49:44.62 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「おい、お前らもなんとか言ってやってくれ」

工兵「僕? あー、ノーコメント」

隊長「工兵だって、救護員を引き取る気はあるんだろ?」

救護員「引き取る……」

工兵「隊長のところに行ってくれるなら、心置きなく師匠の工房で働けるからねー」

隊長(熟女趣味だったか……)

剣士「良かったな。三人の女から求婚されるなんて」

隊長「ホモは黙ってろ!」

剣士「……チッ」 スッ

マスター「ちょっと! ここで抜剣なんて勘弁してよ!」

隊長「とにかくだ、まずは冷静になれ!」

姉「最初から冷静よ。私は」

隊長「ああ、そうですね。本当にね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:50:15.89 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「……まず、術士。とにかく落ち着いて考えてみてくれ」

術士「本心、だから」

隊長「本心は分かった。そして俺も本心を言ったぞ、そんなことは考えられない、と」

術士「……」

隊長「一度形を取ってみればいいって、そんな気軽に決められることじゃない」

隊長「ふー……前にも言ったけどな、俺は腹の底では術士を馬鹿にしていたんだ」

隊長「術士じゃなくて、まあ、その、大体周りをな。そういう人間なんだ」

術士「今は、でも、少しずつ変わっているのでしょう」

隊長「少しずつ、な。だけど、聖人に生まれ変わったわけでもない」

術士「……私は聖人と結婚したいわけじゃない」

<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:50:43.98 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「そりゃあ、俺だって、結婚に救いを求めているわけじゃない」

術士「……それは」

隊長「とにかく、俺には結婚したいって気持ちが分からないんだ。術士の好意は、分かった」

術士「嬉しい?」

隊長「……分からない」

術士「どんな感じがする?」

隊長「ドキドキはするよ。暖かくも感じる」

工兵「ニヤニヤ」

術士「それなら、今は、いいです」

隊長「うん。すまない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:51:11.05 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「で、なんだ、あのですね」

姉「……だから、最初から二人きりで話すべきだったわよね」

隊長「追い込むつもりだったのか。全く用意周到だな」

姉「はっきり言って、人材不足もあるけど、王国は方向性が定まっていないのよね」

姉「だから、お前が私の傍にいてくれるなら、それは心強いと思うわけよ」

隊長「……世話になりっぱなしだから、返したいとは思う」

姉「そういうのやめて」

隊長「だけどな」

姉「見返りが欲しいわけじゃない。ただ、小さい頃から傍にいたじゃない」

姉「だから、何かしてやりたいの。それがそんなにおかしい?」

隊長「急に言われても困るよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:51:37.13 ID:rOVXiPKSo<> 姉「急じゃないわよ。昔からよ」

隊長「……俺にとって、姉ちゃんはいつでもコンプレックスだったんだよ」

姉「あ、そう」

隊長「……」

姉「そんなこと言われてもねぇ。私のほうが、恥ずかしいこと出来ないと思って走ってきたから」

姉「いつの間にか、お前を基準に考えてたけどね」

隊長「……王国の件は保留だ。一軒家については、まあ、なんだ。折半とかはどうだ?」

隊長「とにかく、相談が必要だし、俺にも格好はつけさせてくれ」

姉「生意気」

隊長「うるさいな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:52:03.10 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「それから、おい」

救護員「はぁい?」

隊長「冗談はよしてくれよ」

救護員「あははっ、場が解れたでしょ?」

隊長「……ヒートアップさせただろ」

救護員「もう、隊長、私が一度走り始めたらぶつかるまで止まらないと知らないんですか!」

隊長「自分で言うな」

救護員「それに、本気は本気ですよぅ」

隊長「分かった、それに対しては俺も答えているよな?」

救護員「はいはい」

隊長「……?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 20:52:59.10 ID:rOVXiPKSo<> 救護員「でも、実際、あそこで私がどーんと行かなかったら、隊長だって場を収めにくかったでしょ?」

救護員「どっちか選べってより、なんか三つ巴状態の方が、ほら、どっちも選べない的なこと言いやすいというか」

隊長「ああそうだな」

隊長「……助かったよ」

救護員「うへへー」

隊長「だが、いつまで親を頼る気だ、救護員は」

救護員「うあっ、そ、それはいいじゃないですか〜」

隊長「別に否定したいわけじゃあないが……まあ、程々にな」

救護員「でへへ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 21:01:05.97 ID:rOVXiPKSo<> 隊長「ほら! もうそんな話しか出来ないなら、今夜は解散だ!」

姉「はあ、確かにね」

剣士「お騒がせしました」ペコリ

マスター「いいわよ。こんなのいつものことだから」

受付「まあ、確かに、将軍がどうとか、いつも大暴れですからねぇ」

姉「うん?」

受付「何でもありません」

術士「……んう」

隊長「疲れるわ、ホント……」

救護員「あ、待って! もう少し飲みたいです!」

隊長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/20(日) 21:09:12.07 ID:rOVXiPKSo<> >宿屋。

隊長(はぁ……)

隊長(何かと思えば勧誘だったのか)

隊長「でも、術士が仲直りというか、受付の人と分かり合えたのは良かったのかもな」

隊長「……妙な方向に立ち直ったような気もするが」

隊長「……」

隊長「……」ガリガリ

隊長「……チッ」

隊長「しょうがない、一言いっておかないとな」

【選択肢】
せっかくなんで個別ルートに行こうかと思います。一番多いので決めるよ!

>術士にちゃんと話しておくか。
>救護員を褒めておくか。
>剣士に相談しておくか。
>工兵に口止めしておくか。
>姉に一軒家のことは聞いておくか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 23:25:37.19 ID:aOJiSZh4o<> 剣士行こう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 23:38:35.99 ID:AMqRzwqBo<> 一軒家が重要そう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 23:53:19.55 ID:FtuHYpyIO<> 確かにベッドが姉と一緒かどうかがとても重要だよな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 02:28:45.80 ID:jXq3OLsso<> 救護員が気になる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 03:07:11.07 ID:WPBkdJPAO<> 剣士と工兵に相談しよう
ついでに工兵には釘も刺しとこう

でも姉ちゃんには殴られよう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 03:07:45.99 ID:+gmHxcDqo<> 救護員褒めとこう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 03:43:27.45 ID:gahMhm4Yo<> 全部は駄目ですか、そうですか
術士で <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 07:39:18.98 ID:c+hpoJIKo<> 一軒屋についてきかないとな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 07:56:59.93 ID:YCq603LDO<> お姉様のところへ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage<>2013/01/21(月) 08:39:18.12 ID:48rQdNBIO<> では姉ルート確定で!
2〜3日中には続けていきますです <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/01/22(火) 22:34:05.53 ID:z+vsJpBOo<> >姉に一軒家のことを聞きに行く。


>女子宿舎。

隊長「……よく考えてみたら、女子宿舎だったな」

隊長「どーもボケてる。ええと、確か、二階の?」

隊長「東から三つ目……あそこか」

隊長「ちょいと窓に石でも投げて」

姉「何してんの」

隊長「うおわっ」

姉「おう」

隊長「……ね、姉ちゃん」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:34:45.06 ID:z+vsJpBOo<> 隊長「こ、こんなところでどうしたんだ」

姉「飲み足りないから、酒場行って、もう少しお酒分けてもらった」

隊長「飲み過ぎだぞ」

姉「そういうお前こそ、ここに何しに来たのよ」

隊長「そ、そりゃあ」

姉「夜這い?」

隊長「そんなわけあるか」

姉「やれやれ、ようやく覚悟を決めたのかと思ってたのに」

隊長(……覚悟ねぇ)

姉「部屋来る?」

隊長「冗談だろ? 公園とか、そういうところで話したらいいじゃないか」

姉「酒入ってるのに、下手にウロウロしたくないっしょ」

姉「さ、ほら、こっちからなら、人に会わないから」

隊長「お、おい」

姉「別に男子禁制ってわけでもないのよ、徘徊させたらペナルティだけど」

隊長「や、やめろって」

姉「ほれ、ほれ」
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:35:31.55 ID:z+vsJpBOo<> >部屋。

姉「んくはーっ」

隊長「……」チビ…

姉「それで? 話って何さ」

隊長「一軒家の話だよ。まあ、それも含めて、なんなんだ?」

隊長「今までそんなこと、一度だって言って来なかったじゃないか」

姉「……」

隊長「俺に何をさせるつもりだ?」

姉「何って、言ったとおりよ」

隊長「何か含みや裏があるんじゃないか、と思ってたんだがな」

姉「ん、まあ、騙されないようにしようって教育してきたつもりだしね」

隊長(教育ねぇ……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:35:57.66 ID:z+vsJpBOo<> 姉「お前、どうなの? 私と一緒に何かしら経営してみる気はないの?」

隊長「孤児院か。確かに、魔物の活発化のせいか、村が破壊された例は多い」

隊長「だけど、それは各国が対策を講じるべきじゃあないのか」

姉「それは無理よ。孤児院なんて善意の塊じゃないと普通はできない」

隊長「到底そうは思えないがな、あそこは」

姉「あれはね、善意で引き取ってやっているのに、気に食わない態度を取るから、善意から暴力を振るってたわけ」

隊長「はぁ? 意味が分からない」

姉「お前も、よくみんなをいじめてなかった?」

隊長「俺が!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:36:27.10 ID:z+vsJpBOo<> 姉「そうよー、なんかひどいことを言ったり、馬鹿にしたり、そういうの」

隊長「いや、それは……」

隊長(していた、かもしれないな。腹の底でイライラムカムカして、当たり散らすような言葉を吐いたこともあるし)

姉「でも、それは、みんなのためなんだ、みんなの成績を上げて、大手を振って冒険者をやれるためなんだー、とかさ」

姉「考えていたでしょ」

隊長「……」

姉「お前、そうやって自分のやりたいことを、すぐ善意に流し込もうとするじゃない」

隊長「そうなのか……?」

姉「違うと思うなら、まあ、それならそれでいいわ」

隊長「……最善を、尽くそう、尽くそうとは思っていた」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:36:55.55 ID:z+vsJpBOo<> 姉「そ」

隊長「だけど、結局は、俺が失敗して、みんなを傷つけるんだ」

隊長「確かにそいつは、善意の塊だったのかもしれないな」

姉「……」

隊長「でも、そんなことを言ったら、姉ちゃんも似たようなもんじゃないのか」

姉「私はやりたいことをやるだけ。で、お互いに利用し合えばいいじゃないって感じ」

隊長「まあ、偽悪的というか、わざとそうやっている節は感じられるけどな」

隊長「……だから、よくわかんねぇーよ。いろいろ言ったのは、その、本心なのか?」

姉「……」ジーッ

隊長「なんだよ」

姉「ちゅーして」

隊長「ぶっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:37:21.31 ID:z+vsJpBOo<> 姉「ちゅーしてー、だっこしてー」

隊長「げほっ、げほっ、何いってんだよ!」

姉「夜なんだから、静かにしなさいよ」

隊長「あのなぁ……」

姉「私、お前とそういうこともしたいって思ってるわ。ただ、肉親的な情もあるから、複雑なの」

隊長「……」

姉「分かってるわ。そんな気がないってことくらい」

姉「だから、じっくり詰めていこうと思っていたんだけど……まさか、こんな事件に巻き込まれるとは思ってなかったから……」

隊長「……」

姉「ちょっとずつ、お前の感情に侵入しようと思ってたんだけどなー」

隊長「怖いこと言うなよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:37:50.32 ID:z+vsJpBOo<> 姉「怖いかしら。でも、お前が今のパーティーを選ぶなら、それでもいいわ」

隊長「なんだって、そんな……」

姉「肉親的な情もあるって言ったじゃない」

隊長「……ちょっと整理させてくれ。話が飛びすぎだ」

隊長「酔っ払ってるだろ」

姉「酔ってないと、もう言えないことばかりだからね」

隊長「……」

隊長「孤児院や、一軒家の件についてはどうするんだ?」

姉「もちろん、準備しているわ。お前が嫌なら、ま、私一人で協力者を探して、やることにする」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:38:16.67 ID:z+vsJpBOo<> 隊長「住む場所の話しなら、別に俺は負担することに異存はないよ」

姉「ダメ。居付くつもりのないところに、お金を出すなんて馬鹿な真似はやめなさい」

隊長「あ、ああ」

姉「んー、おいしー」ゴクゴク

隊長「……好きだの、結婚したいだの、は?」

姉「本心よ」

隊長「……なぜだ?」

姉「理由を聞いてどうするのよ。お前の判断が覆るの?」

隊長「それは、分からない」

姉「じゃあ、いくら説明したって、納得出来ないでしょうね」

隊長「だったら、その、なんでそんなに余裕なんだ」


姉は隊長をひっぱたいた。 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:38:44.26 ID:z+vsJpBOo<> 隊長「……」

姉「さっき、何選んでも殴るって言ったわよねー」

隊長「余裕は、ないってことか?」

姉「好きな男の前で泣き顔見せたくないし、ましてや弟の前でかっこわるい顔を見せられないだけよ」

姉「そういう女が大っ嫌いだって言うなら、私も考えなおすけどさ」

隊長「……悪かったよ」

姉「ん」

隊長「……」

姉「……生きて帰って来なさいよ。私の方こそ、お前のためなら多少の傷は我慢出来るわ」

隊長「馬鹿言うな。姉ちゃんが傷つく理由なんてないだろ」

姉「……だからさ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:39:13.26 ID:z+vsJpBOo<> 姉「お前がそう思うのと同じように、私もね、ずーっっっと思ってたわけ」

姉「なんでお前が、数ヶ月一緒になったクラスメートのために命を張る理由があるのよ?」

隊長「そりゃあ、隊長だからだ」

姉「ばぁーかっ」

隊長「……」

姉「……村から逃げ出した時のこと、覚えてる?」

隊長「いいや、大して」

姉「チッ、だからか」

隊長「何がだよ」

姉「お前、私を背負ってくれたのよ」

姉「自分ももう、傷だらけだったのに……私を、背負って、逃げたのよ、お前は」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:39:38.63 ID:z+vsJpBOo<> 隊長「……」

姉「お前はね、そういうところがあるの」

姉「結局、最後は、自分が傷ついても、他人を助けようとするわけ」

姉「それなのに、孤児院に回されてから、お前が暗そうな顔をしているのを見て、私は……」

隊長「……」

姉「だから、私は多少の傷なら我慢するわ。お前が、私のために受けてくれた傷くらいは」

姉「それでお前が、私を選ばなかったとしても……ま、お前をそれなりに導いてこれたなら、満足、かしらね」

隊長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:40:05.10 ID:z+vsJpBOo<> 姉「……」クピ

隊長「……」 チョイチョイ

姉「ん?」

隊長「ん」

姉「んー……」 すくっ

隊長「……」

姉「ん」 どさっ

隊長「悪かった」ギュー

姉「んっふっふ。良きにはからえ」

隊長「そういうアホみたいなこと言わないでくれ」

姉「褒美にちゅーしてやろう」

隊長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:40:32.63 ID:z+vsJpBOo<>
――――――
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:41:00.13 ID:z+vsJpBOo<> 姉「……ん」

隊長「おう」

姉「本当にちゅーするとは思わなかったわ」

隊長「なんでだよ」

姉「どうせヘタれると思ってたから」

隊長「うるせぇ」

姉「それとも、あれ? 同情とか感じちゃった?」

隊長「同情で姉を襲うほどイカれてないつもりだ」

姉「じゃあさ……本気って取っていい?」

隊長「いいよ」

姉「よっしゃ!」

隊長「お、おう」ビクッ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:41:30.16 ID:z+vsJpBOo<> 隊長「ただな、そのー、全部一足飛びには頭を切り替えられないぞ」

隊長「結婚するだの、そういうのは」

姉「いいわよ、そんなの」

隊長「そんなのって」

姉「これから、その気にさせるのは、こっちの仕事だもんね。お前はゆーっくり私のことを女として見れるようになりなさい」

隊長「ああ、そうだな」

姉「よしよし。こういうところで茶化さないのは褒めてあげるわ」

隊長「で、なんだ。さすがにこのまま宿舎で一晩明かすのは勘弁してくれ」

姉「じゃあ、明日は別の宿を取っておくわ。んで、私の分の部屋も用意しておくから」

隊長「出来るか! だから一足飛びは無理だっつってんだろうが」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 22:42:01.28 ID:z+vsJpBOo<> 姉「……もたもたしてたらお前が死んじゃうかもしれないじゃない」

隊長「いや……分かったよ。ちゃんと死なずに帰ってくる」

姉「そしたら、二人きりで旅行とか有りよねー」

隊長「あのな」

姉「まあ、帰ってくるってんなら、安心して長期計画を練っておくわ」

隊長「ああそうかよ」

姉「ふひひ。嬉しくて顔がにやけるわ」

隊長「そんなにかよ」

姉「そんなになの」


――しばらく、ふたりでイチャイチャした! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/22(火) 23:14:00.31 ID:z+vsJpBOo<> 今夜はここまで!
次は「レコード」で情報収集だ。

おまけ。
他の人だったら、こんな感じかな、的な。

>剣士ルート?
剣士「俺はな、会長と決別しようと思ってるんだ」

剣士「冒険者に最強はない。俺はお前を見て、つくづく思うよ」


>工兵ルート?
工兵「なんだったら、僕と異世界へ冒険ってのはどうよ」

工兵「隊長が重苦しく生きたくても、そうはさせないからさ」


>術士ルート?
術士「……ただ二人で生きるんじゃないの」

術士「私、もっともっと成長するから。一緒に、行けるところまで行きたい」


>救護員ルート? 
救護員「夢じゃないですよね? うあぁ、嬉しいよぅ……」

救護員「えへへ、好きな人に好きって言ってもらえるっていいもんですよね、ね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 01:15:26.60 ID:6e/u6j2wo<> うへぇ全部見たかったなぁ・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 01:28:21.71 ID:7YqZ5Vfko<> 大丈夫、俺、>>1のこと信じてるから。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 02:07:35.28 ID:pN82+1zFo<> 俺も信じてる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 09:52:42.05 ID:i5ZlppEm0<> 俺もだ

信じてるぞ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 11:02:34.14 ID:ciAYpkOQo<> ガチでルート選択だったのか
術師も報われてほしいんだが <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/23(水) 13:08:46.87 ID:q0FXlr0IO<> 全部書いてたら死んじゃう( ;´Д`)
個別ルートに入るって書いたんですけど、うまく伝えられずにすみません
おまけ拡大版でも出します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 16:43:30.83 ID:7YqZ5Vfko<> 救護員が可愛いんだよおおおおお <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 17:11:03.30 ID:NoPDEUYIO<> つまり剣士や工兵の個別ルートに入った後に出たであろう安価次第ではホモエンドの可能性もあったわけか…

惜しいことをしたな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/24(木) 07:20:48.27 ID:ib1d1Vvdo<> ルート選択なら救護員選んでたのに・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/24(木) 08:40:03.08 ID:qIUCwrnro<> ちゃんと個別ルートに行くって言ってたじゃないか。
くそ、術士ルート…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/24(木) 17:38:31.36 ID:qj9GfTZAO<> まさか他の道筋が見えないくらい細い路地につっこむとは思わなかったのだよ… <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:22:21.90 ID:oqNGLAzNo<> 本編が書けないにゃー(´・ω・`) おまけ拡大版4連発。ただし、相当絞りました。
――
『剣士ルート』

剣士「……なんだ、起きていたのか」

隊長「そりゃこっちのセリフだ」

剣士「訓練が足りないと思ってな」

隊長「お前はいつもそればっかりだな」

剣士「ああ。憎悪を捨てろと言われて、真っ先に思い付いたのは、結局、俺は強くなることが好きだってことだった」

隊長「で、ハードルがなかなか越えられなくてイライラしたと」

剣士「その通りだ。ずいぶん、迷惑をかけたかもしれないが」

隊長「まさか。俺のほうこそ……」

剣士「女に言い寄られて、うらやましい限りだ」

隊長「本気で言ってるのか?」

剣士「もちろん」


剣士「で? 誰を取るんだ?」

隊長「取るも何も、俺が何かを選ぶような立場にはない」

剣士「と、思っていたかった」

隊長「……」

剣士「俺も決断には時間がかかったが、一度、自分の来た道を見直してみることは必要だろう」

隊長「本気なのかな」

剣士「冗談だと思うなら、冗談で返せばいい」

隊長「それはもうしにくいな」

隊長「そうだよ。剣士は好きな女とかいないの?」

剣士「俺か?」


剣士「思い当たらないな……」

隊長「呪術士とかさ。それとも、やっぱり会長が」

剣士「やめろ。確かに執心していたが、もうそのことには、きっぱりと決断することにしたんだ」

隊長「決断……」

剣士「ああ。俺はな、会長と決別しようと思っているんだ」

隊長「……そういえば、さっき何か言いかけていたな」

剣士「俺たちは特務機関で、最高の冒険者になるよう、育てられた」

剣士「互いに競い合ったが、やつとの差は離されていくばかりだった」

剣士「焦ったし、苦しかった。憎悪に燃えたのも無理からぬことだな」

隊長「……で、決別するってのは?」

剣士「やつを超えようとは思わないことにした」

<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:22:52.66 ID:oqNGLAzNo<>
隊長「それはその、諦めるってことかい?」

剣士「ちょっと違う。やつとの手合わせは、腹立たしいが楽しかった」

剣士「剣の腕を競うことは続ける。もっとも、やつが竜退治から生きて還ってこれればな」

隊長「そういえば、そうだな」

剣士「だが、俺がすべきことは、やつを超えることではない。冒険者として大成することだ」

隊長「……大成」

剣士「そうだ。腕を壊せば竜は斬れる……だが、一頭一匹斬り伏せて、後は食われておしまいじゃあ、単なる間抜けなパワーバカでしかない」

隊長「なるほどね。それは分かる」

剣士「竜は斬る。斬れるように努力しよう。しかし、それを目標としない」

剣士「技や力を自慢しない、どんな状況でも最善が尽くせる」

剣士「それが俺の考える、最高の冒険者だ」


隊長「……そうか」

剣士「冒険者に最強はない。俺はお前を見て、つくづく思うよ」

隊長「まあ、確かに俺は強くはないがな」

剣士「だが、強かだ。ちょっと根暗が顔を見せることもあるがな」

隊長「うるせ」

剣士「もし、この冒険が終わったらどうするんだ? 本気で王国に就職するか、滅んだ村の墓守をするのか?」

隊長「さあな。正直、わからなくなってきたよ」

剣士「……」

隊長「姉の言う、選択肢に飛びつくか、それとも、年来の目標を持ち続けるのか……」

剣士「どんな生き方だろうと、俺はお前を蔑むことはない」


剣士「もし、この隊を解散することになっても、呼んでくれ」

隊長「……」

剣士「俺には目標やライバルはいても、友人はいなかった、と思う」

剣士「お前に、友達になってほしい」

隊長「バカ言うな。みんな友達だと思っているよ」

剣士「どうだかな。まあ、隊長が言うなら、そういうことにしておこう」

隊長「しておいてくれ」

剣士「……くくっ」

隊長「なんだよ」

剣士「こんなことを言ったのは生まれて初めてだ。顔が赤い」

隊長「なんだ、俺もだ。顔真っ赤だぜ」

隊長「お互い、めんどくせぇ性格だよな」

剣士「違いない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:23:19.04 ID:oqNGLAzNo<> 『工兵ルート』

工兵「隊長、ちょいと」

隊長「なんだよ、どうした?」

工兵「いやあ、モテモテですな〜」

隊長「……お前、なんか言いふらしたりしないだろうな」

工兵「はっは。まあ、救護員もそっちに行ったし、僕としては肩の荷が降りたぜーって感じ」

隊長「ありゃ、冗談だよな?」

工兵「前から言ってたじゃん。救護員の本命は隊長に移ったって」

隊長(ううん、まさかなぁ……)

工兵「カワイソー。信じてもらえなくて」

隊長「お前もひどいよな」

工兵「なんで?」


隊長「工兵ってさ、今の性格が素で地なのか?」

工兵「素って、あ、ああ、会った時は随分ねぇ」

隊長「まあ、なんでもいいけどよ。こんなテンションが高いタイプだとは思わなかったよ」

工兵「救護員といるとさー、必然的に僕がツッコミ役に回らざるを得なくなるじゃん?」

隊長「あー」

工兵「まあ、なんのかんの言ってもね。僕は結構、救護員のこと好きだよ」

隊長「ウソくせぇ」

工兵「あはは。もし救護員と結婚したら、友人代表でスピーチしてあげるよ」

隊長(とことんむかつく)

工兵「で、実際のところ、どうするつもりなの?」


隊長「……今のところ、誰とも結婚するつもりもないし、村に戻って墓守で、いい、と思う」

隊長「ただな、みんな、善意で言ってるし、姉ちゃんの同居しろってのもな、断りにくい……」

工兵「あー、ダメダメ」

隊長「何が?」

工兵「消去法で決めるからダメなんだよ。断りにくいってことは、何か引っかかってるんじゃないの」

隊長「だから、そりゃな」

工兵「今すぐじゃなきゃ結婚していいの? 絶対に墓守じゃなきゃダメ?」

隊長「……」

工兵「自分を引っ張ってくれる人がいて、一緒に行こうって言ってくれて、そういう人を振り切るほどの決意があるの?」

隊長「そんなもの、お前にだってあるのか?」

工兵「あーるよ。僕は師匠の工房で働きたいんだ。勘当されても別にいいし」

隊長「ふうん」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:23:44.93 ID:oqNGLAzNo<> 工兵「でも、こうして冒険するのもいいもんだね。腕がなくなった時はどうしようかと思ったけど」

隊長「……悪かった」

工兵「あーあー、いつもは偉そうなのに、こういう時はすぐ謝っちゃうのは僕、好きじゃないな」

隊長「じゃあ、なんて言えばいいんだ? 俺には、お前ほどの決意なんてないんだ」

工兵「いや、僕はね、隊長が来てくれって言ったら断らないけどね」

隊長「はぁ!?」

工兵「優先順位の問題さ。ほら、なんだったら、僕と異世界へ冒険ってのはどうよ」

隊長「異世界ね。俺が行くつったら、行くのかい?」

工兵「……隊長はさ、自分の魅力にあまり気づいてないよね」

隊長「俺のどこに魅力なんてあるんだ」

工兵「なかったら、女三人、言い寄ってきやしないよ」

隊長「だから、それはな」


隊長「……まあ、でも、なんだ、自分のことはともかく、俺はみんなのことはなんとか、うまく進路を進めるようにしたいと思っているよ」

工兵「ブッブー。重婚したら問題解決とか言っちゃうよ?」

隊長「ば、馬鹿言うな」

工兵「でしょ。僕らのことは、隊長のことでもあるんだから。まあ、じっくり考えてみなよ」

工兵「隊長が重苦しく生きたくても、そうはさせないからさ」

隊長「生意気言って」

工兵「結構、うちのメンバーって隊長に突っ込まれるタイプが多いじゃん。一人くらい、ツッコミ役でも良かろうと思ってな」

隊長「ふっ、はは」

工兵「あはははっ」

隊長「……ありがとうな」

工兵「で、いつ改造させてくれんの?」ガッショガッショ

隊長「するわけねーだろ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:24:10.84 ID:oqNGLAzNo<> 『術士』

隊長「術士、起きてる?」

術士「……ええ」

隊長「ちょい、外出ようか」

術士「いいの?」

隊長「みんなが起きる前に、ちょっと」

術士「……」


>外。

術士「ん」

隊長「ほい、飲み物」

術士「ありがとう」

隊長「……」

術士「……」


隊長「なあ、術士。ちゃんと受付の子と仲直りできたのか」

術士「な、何」

隊長「ひょっとしてさ、俺に結婚がどうの言い出したのって、相手が、もう謝らせてもくれないって、思ったからじゃないのか」

隊長「話に詰まって、だから言い出したのかなと思って」

術士「……どうして、そう思うの」

隊長「そう簡単に傷ついた心を切り替えることなんか出来ない」

術士「……」

隊長「少なくとも、俺は」

術士「……私も」

隊長「だったらさ」

術士「あの、でも、隊長と……したいというのは、嘘ではないわ」


隊長「あのな、繰り返すけど、俺は本心じゃみんなを馬鹿にしていて……」

術士「でも、変わったって言ったわ。私も変わったの。何度も、紆余曲折をしながら」

隊長「……」

術士「……結婚ってね」

隊長「うん?」

術士「……ただ二人で生きるんじゃないの」

術士「その人と暮らすだけじゃなくって、家柄とか、出自とか、そういうものを互いに背負いあうって言うか……」

術士「彼女が、それが出来たって聞いた時、私と関係ないところで、立ち上がって、そして歩いていたんだって……」

術士「そう、思った」

隊長「だから、関係ないんだって言ったのか」

術士「うん」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:24:37.64 ID:oqNGLAzNo<> 術士「それでね、私も、関係ないところで、幸せになろうとしてもいいって、思って」

隊長「……それがプロポーズだって言うのか?」

術士「うん、断られちゃったけど」

隊長「今は、考えられないってだけだよ」

術士「じ、じゃあ、いつかちゃんと考えてくれる?」

隊長「……本当に、何も考えてないなら、呼んだりはしないよ」

術士「!」

隊長「俺も、その、なんだ。気になっているから」

術士「……たいちょうっ」だきっ

隊長「お、おい!」

術士「ん、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅーっ」

隊長「ん、お、ん、ふ……」


術士「ちゅ、ちゅ……」

隊長「ちゅっ、れろっ」

術士「……」

隊長「……」

術士「……ご、ごめんなさい」

隊長「いや、別に、嬉しくないわけじゃない」

術士「うっ」グスッ

隊長「な、泣かないでくれよ」

術士「ん、ううん。だって、隊長からもキス、もらったし」

隊長「……ああ」


術士「もうしばらくは、冒険者、続けるんでしょう」

隊長「そのつもりだ。宮仕えや墓守をする前に、しなくちゃいけないことは……あると思う」

術士「じゃあ、仮に、二十八番隊が解散になっても、私、連れて行ってくれる?」

隊長「あ、ああ」

術士「私、もっともっと成長するから。一緒に、いけるところまで行きたい」

隊長「……そうだな。もっと女として、見るようにするよ、俺も」

術士「……」カァー

隊長「なんだったら、術士が引っ張ってくれればいい。うん、そうだな、術士の故郷に行くってんでもいいかな」

術士(実家の挨拶……まさか隊長から言い出してくれるなんて)

隊長(……結婚ね。結婚か……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:25:03.94 ID:oqNGLAzNo<> 『救護員ルート』

隊長「ここにいたのか」

救護員「んあ? あ、隊長! ちょっと寝付けなくってですね、お茶飲んでました」

隊長「ああ」

救護員「それにしても、さっきはすごかったですねぇー」

隊長「そうだな。ん、もう一回言っておくけど、なんだかんだで助かったよ」

救護員「えっへん。もっと褒めてください」

隊長「えらいえらい」

救護員「へへ、でも、隊長はどうするんですか?」

隊長「救護員こそ、どうなんだ」

救護員「わ、私、今は、隊長が一番好きなんでっ、その……」

隊長「……人のこと、チビだの何だの言ってたじゃないか」

救護員「あ……はは」


救護員「ですよね〜、まあ、そうなんですよ。でも、ほら、うん。隊長も成長しましたしね! あはは」

救護員「かっこ良く、なってきたし、術士ちゃんもお姉さんも、そりゃもう、真剣に狙うわけですよ、ね」

救護員「だから、ちゃんと、考えなきゃ、ダメです、うん」

隊長「……ごめん。一つ聞くんだけど……」

救護員「なぅ、なんですかぁ?」

隊長「真剣に狙うって、本当なのかね?」

救護員「そっ、そんなの当たり前ですよ! 女が冗談で結婚したいなんて言ったりしませんからっ」

隊長(妙に説得力があるな……だとしたら、本当なのか)

救護員「私は性格でアウトかもしれませんけど、お姉さんも術士ちゃんも、隊長のこと、ちゃんと考えているんですから……」

隊長「ちゃんと……か」

救護員「その、私も、応援しますよっ」

隊長「応援って、好きな男が他の女と結婚するのをってことになるよ?」

救護員「……うう」


救護員「だっでぇ、しょうがないじゃないですかぁ。私、選ばれないことくらい、もう分かってるから……」

隊長「お、おい、泣かないでくれ」

救護員「好きになっちゃったんだもん、隊長に笑ってて欲しいもん」

救護員「一人で、なくなった村に帰るだなんて、そんな寂しいこと、嫌です……」

隊長「……」

救護員「わ、私、馬鹿だけど、そういうことをするのは良くないって、思いますから」

隊長「……そうか」

救護員「だから、ね。ちゃんと、幸せになろうと、してください」

隊長「……」

救護員「ぐすっ、で、で、だ、誰が好きなんですか? 暫定一位とかなら、いるでしょ」ズッ

隊長「救護員かな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:25:29.87 ID:oqNGLAzNo<> 救護員「へっ?」

隊長「だから、真剣に、考えるなら、顔とか体はタイプだし」

救護員「だ、だって……性格がアウトとか言って……」

隊長「そりゃ、前から馬鹿にされてたからな。俺だってろくな性格じゃないんだし、お互い様かなって」

救護員「……」ボフッ

隊長「おうふっ」

救護員「……」

隊長「いやその、結婚したいとか、付き合いたいとかじゃないよ。ただ、自分を棚に上げて、好きな人を聞かれたら、救護員かなって言う」

救護員「……棚になんかあげなくていいです」

救護員「夢じゃないですよね? うあぁ、嬉しいよう……」

隊長(う、恥ずかしい……)


救護員「……よし、元気でた」

隊長「そ、そうか」

救護員「とにかく、隊長は、そういう風に、好きなものを好きって言っていけばいーんです」

救護員「そうしたら、きっと、幸せになれますよ」

隊長「……そうか」

救護員「……えへへ、好きな人に好きって言ってもらえるっていいもんですよね、ね」

隊長「……」

救護員「これは一生もののメモリーに取っておこう……」

隊長「救護員」

救護員「はい?」

隊長「ん」 ちゅっ

救護員「!」

隊長「ありがとうな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/24(木) 20:26:02.31 ID:oqNGLAzNo<> 今夜はここまでだ!しばしまて! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/24(木) 23:31:54.37 ID:9v8ybN70o<> ひゃほーいありがとー! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/25(金) 08:47:18.74 ID:iCUKfO5Bo<> サンクス!
やる気出た! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/25(金) 19:58:38.67 ID:3xZPM+RDO<> 乙



…あれ
天測士ちゃんどこ行った <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/25(金) 22:07:20.83 ID:DIP3TfxDO<> 天測士なら俺の隣で寝てるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 13:38:13.72 ID:4K7O6+Sv0<> 縺ゅj縺後◆繧繝シ縺ゅj縺後◆繧繝シ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 13:38:53.89 ID:4K7O6+Sv0<> 文字化けした

ありがたや <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/01/26(土) 20:47:36.12 ID:y1OBr08Fo<> >翌日。王立大図書館。

隊長「全員揃っているか?」

救護員「はーい」

剣士「ああ」

工兵「はいはい」

術士「はい」

隊長「……いるぞ」

姉「よろしい。じゃあ、説明はモノの前で行うわね」

姉「一応、極秘扱いだから、口外したら即首が飛ぶと思ってちょーだい」

救護員「えっ」

姉「それじゃ、図書館の地下に移動するわ。ほれ、付いて来なさい」

隊長(昨日の今日でその極秘扱いにオッケーを出させたのかよ) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:48:15.01 ID:y1OBr08Fo<> 救護員「ん、んー」

剣士「なんだ、唸って。腹でも下したか」

救護員「ち、違いますよ! あの、イマイチよくわかってないんですけど」

工兵「説明はモノの前でやるって言ってたじゃない」

救護員「そうなんですけどぉ、隊長」

隊長「ああ。『レコード』ってなんなのかってこと?」

救護員「そんなの、歴史の授業ではやりませんでしたよね?」

隊長「賢者は世界の境界線をあやふやにして異世界とのつながりをつけたり、摩訶不思議な魔物を呼び出したりしたらしいからな……」

術士「その全貌は、数十年経った今でも分かっていないわ」

姉「よく学んでいるみたいね」

救護員「……で、なんなんですかぁ?」

隊長「一言でいうなら、世界の全知識を記録する装置のことだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:48:42.25 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「ただ、モノなのかなんなのかはよく知られていない、けど」

姉「見てもよくわからないわよ。それと、無駄口はちょっと控えておきなさい」

救護員「ケチケチ!」

姉「……」ふっ

救護員「な、なんですか、あの笑いは」

隊長(昨日ので随分ごきげんになってしまったようだな……)

姉「さあ、ここね。鍵を開けたら、処理室に入ってね」

姉「大丈夫だとは思うけど、念のため魔法による防護処理をかけるから」

工兵「へぇー、そっちの方が気になるけど」

隊長「こらこら」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:49:09.93 ID:y1OBr08Fo<> >地下、『レコード』室。

術士「……すごい」

救護員「すごいんですか?」

隊長「ほー、でかいね」

姉「お前、これを見た第一声がそれかい」

工兵「そりゃ無理もないよ。なにこれ?」

剣士「魔力の球体だな。触手が延びているが……」


ぼんやりと紫色の物体が浮かんでいる。
その先から、剣士の言葉通り数十本の触手状の魔力体が地面に突き刺さっている。


術士「おそらく、あの触手体が、魔力の移動を感知して、それを記録しているのね」

術士「これ、魔法よ」

隊長「魔法か」

姉「よく学んでいるじゃない」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:49:36.99 ID:y1OBr08Fo<> 姉「簡単に言うと、これは賢者の魔法の……まあ、慣れの果てじゃないかと言われているわ」

姉「世界中の魔力の流れを記録しているみたいなんだけど……すべてを一人の人が引き出せるわけじゃないの」

姉「なんて言うのかしら、その個人の経験に応じて返答する答えが違うらしいの」

姉「使い方は、触手の一部を頭に乗せて、聞きたいことを頭の中で尋ねると、返事がある、という格好」

救護員「卑猥ですねぇ」

工兵「あー、それ思った」

剣士「緊張感がねぇな、お前らはよ……」

姉「……それでね? 記録係を準備させているから、終わったらそこで回答を話してもらうわ」

姉「それがこれを使用する条件。オッケー?」

隊長「副作用については?」

姉「私が使ったこともあるけど、もし異常が出たり、長時間の使用が続いたら危険と見なして引きはがすわ」

姉「下手に何でも知ろうとはしないことね」

隊長(まあ、そうだろうな) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:50:06.55 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「分かった。それじゃあ、一人ずつ行こうか?」

術士「私から、行きましょうか」

隊長「いや、術士は召喚魔法との絡みもある。長時間がどのくらいになるかは見極めが必要だろうから――」

剣士「俺だろうな。効率よく竜を戮殺する方法など、回答は短いものになるだろう」

隊長「うん(戮殺……)。で、救護員」

救護員「は、はい!」

隊長「工兵、術士、そして最後にみんなの回答を聞きながら、俺、というのはどうだろう」

隊長「剣士とか救護員は、直接的な要素が強いんだろうけど、後の三人は質問内容も考えたほうがいい」

術士「それなら、妥当だと思うわ。最後にまとめが必要だと思うし」

隊長「よし、じゃあ、剣士から」

剣士「ああ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:50:32.92 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「頭に乗せるっていうか、なんか被っている感じだな」

工兵「すんごいシュール」

救護員「うう、これこそなんか洗脳される感じじゃないですかねぇ」

術士「これほどまでの魔法が、永続的に機能するなんて、ちょっと異常ね。何を目的に放たれたのかしら」

隊長「……英雄たちの考えることは分からないけど、普通に考えれば、竜の復活を阻止したり、対抗策を収集出来るようにしたんじゃないか」

術士「実際のところは、人の手で竜は育てられ、暴走しているし、性質上、竜に会って生き延びた人でないと、その真価が試せない術だわ」

隊長「確かにな……」

隊長(天測士のあの機械は、おそらく入力する経験を数字に置き換えることで、客観性を得ているんだな)

隊長(だからこそ、未来予測が可能だってわけだ)

隊長(うーむ、本来的にはそういう使い方が出来るように考えていたとか……それとも、慣れの果てと言うぐらいだから、本来の魔法とは違うものとか……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:51:00.10 ID:y1OBr08Fo<> 剣士「ぐっ……」べしゃっ


救護員「……な、なんかすんごいイライラした顔してますけど!」

剣士「クソがっ」

隊長「記録係さんはあっちだよ」

剣士「ああ、行ってくる」

隊長「……何が見えたんだ?」

剣士「くっそむかつくおっさんが頭の中に登場して、受け答えをしてくれやがった」

救護員「お、おっさん?」

隊長「ああ、そういえば……」


記録係「それでは、質問の内容と回答を――」

剣士「竜の斬り方だ。通常、首や腹部を狙い、内臓などの柔らかい部分を切り裂く方法が考えられるが、実際に接近すると危険度が高く――」

記録係「ちょ、ちょっと待ってください。何ですって?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:52:23.35 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「剣士も常人じゃないからな……」

術士「プロの冒険者ってあんな感じなのかしらね」

工兵「剣士はプロの中でもおかしいレベルだと思うよ? アホみたいな体力、剣技、それからあの自信だもんねー」

救護員「うう、私もおっさんが語りかけてきたら、どうしよう……」

隊長「多分、そうはならないと思うけど」

救護員「と、とりあえず、行ってきますね」

隊長「……姉ちゃんや」

姉「なんだい?」

隊長「あの『レコード』ってのは、自分の記憶にある人物を呼び起こしたりするのかい?」

姉「んん〜? 私が試した時は、そんなことなかったと思うけど」

隊長「……」

姉「ただ尋ねたら、返ってくる。そういうものではあったわ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:52:50.22 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「……工兵、術士、試してみる時に、どんな状況で受け答えをしたのかも頭に入れておいてくれ」

工兵「隊長、あらかじめ質問しておく内容はどうするの?」

隊長「ちょっと待って。剣士からも話を聞こう……」

剣士「……」

隊長「お、戻ってきたか」

剣士「チッ、面倒くさいんだよ、あの記録係」

姉「何かあった?」

剣士「いちいち話を遮ってもらっちゃあ困る。竜を人の身で斬れるはずがないとかなんとか」

姉「あー、それは悪かったわね。でも、普通の人は竜なんてもはや祖父祖母の世代の話だから」

剣士「昔話ってか。はっ! だったら、事前にこう伝えておくべきだったな。俺はすでに竜を斬り殺したこともある、と」

姉「まあ、記録がグチグチ言ってたら、記録にならないからね。ちょっと別の人間を呼びましょう」
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:53:35.46 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「……で、剣士」

剣士「さっき言ったおっさんってのは、あれだ、勇者のことだ」

隊長「ああ。お前に剣を教えたっていう?」

剣士「そうだ。そいつが出てきて、まあ、とにかく大笑いされたぞ。もっとマシな竜の倒し方を教えろ、と聞いたんだが」

剣士「『お前、剣の腕は戦士が一番だったからなぁ、俺に聞いてもアレ以上はわかんねぇよ』」

剣士「……だってよ! ふざけてやがる」

隊長「『レコード』の意味がないんじゃないのか」

剣士「ああ。だから、もっと有益な話はねーのかって聞いたよ」

剣士「とにかく、あの戦士だって、一人で斬り合って倒したりはしないかったって言われてなぁ」

剣士「巨体で、集団で行動されたら、とにかく引っ掻き回して動きを封じる、くらいしかない、と言っていた」

隊長「ううん。まあ、人間が竜になれるわけじゃないしな……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:54:04.35 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「他には、何か?」

剣士「発想を変えろと。何を斬るかを考えるべきだってな」

隊長「……質問を否定してるじゃねぇか」

剣士「だが……その後に、そうだな。確か、あのおっさん以外の人だったと思うんだが、いたような気がする」

隊長「ほう」

剣士「確か、竜のもっとも隙が出来る瞬間は、炎を吐き出す直前、大きく息を吸い込む時だと」

剣士「その瞬間を狙え、と言っていたな」

隊長「確かに、それは道理がある」

姉「……いやいや、普通は近付くのも精一杯でしょ」

隊長「まあ、剣士だから、出来そうだと思っちゃうんだけど……」

剣士「要は火炎を吐き出させるような状況に追い込めばいいということだろう」

姉「それって、命がけよね、多分」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:54:30.77 ID:y1OBr08Fo<> 救護員「お、終わったぁああ」ふらふら

隊長「お疲れ様。どうだった?」

救護員「どーもこーも。なんか綺麗なお姉さんが出てきて、竜の炎を回避する方法とかー、やけどの処置とかー」

隊長「そもそも、何を質問したんだ?」

救護員「んー、思いつかなかったんで、私に出来ることはなにかありますかーって聞いたんです」

救護員「そしたら、お姉さんが、竜の炎は魔力の火炎だから、魔法で防ぎやすくってどうのこうの」

救護員「私には関係ないですよね、それって言ったら、困ったような顔をして……」

隊長「ある意味、そのお姉さんに同情したいよ」

救護員「はあ?」

隊長「いやなんでも。それで、他には何か」

救護員「うーんと、大きくなりすぎると必然的に呼吸系が特殊でなくてはならないので、実は天気の変化に弱いとか!」

隊長「……雨雲に乗ってやってきているような気がするが」

隊長(待てよ……? 確か、一雨来たあと、晴れてから行動していたような気がするな) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:54:57.86 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「で、救護員はさ、その女の人に心当たりはあるの?」

救護員「ありません!」

隊長「……だとよ?」

姉「その女性は、どんな格好をしていたか覚えている?」

救護員「えー、髪が長くってー、頭に変なながい帽子をかぶっててー」

姉「……」

隊長「何考えているか分かるよ」

術士「えっと、あれよね。勇者の討竜戦隊に加わっていた……」

姉「神官ね」

救護員「え? でも、全然若くて綺麗な……」

隊長「記憶と関わりなく出てきているからじゃないのか」

救護員「ふーん? なんでそんなすごい人が私に会いに来たんですか?」

隊長「会いに? そりゃ面白い考え方だね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:55:23.95 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「話を総合しよう。今、かなり重大な事態が起きている」

隊長「一つ目。勇者一行のソースを信じるとしたらだ、討竜戦隊であっても、竜をバッタバッタと斬り伏せてはいなかったらしいってことだ」

隊長「二つ目。どういう理屈か知らんが、勇者一行が直接後輩を指導しに来ているようだ」

工兵「へー」

剣士「……ちょっと待った」

隊長「なんだい?」

剣士「だとすると、あのおっさんの後に出てきた人は、もしや……!」

隊長「戦士じゃないかな。伝説の」

剣士「うがあああっ、俺はもういっぺんやる!」

隊長「どうどう! 次にまた出てくるとは限らないんだよ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:55:51.26 ID:y1OBr08Fo<> 工兵「えっとさー、そしたら隊長、僕は何を聞いたらいいかな?」

隊長「実際に竜を倒した方法……だと大きすぎるかな」

術士「自分自身の経験に基づくということは変わらないのでしょう」

術士「なら、やっぱり工兵が何を聞きたいのかに寄るほうがいいと思うわ」

工兵「僕の聞きたいこと、ねぇ?」

隊長「竜に関係することで頼むよ」

工兵「えっと、そうだなぁ。竜の改造の仕方、とか?」

隊長「……」

工兵「うーん、正直なところ、倒すことにあまり興味がないからなぁ」

隊長「なら、異世界からの技術知識で、竜退治に役立ちそうなものはあったのかどうか、とか」

工兵「そうだね。僕なら、有用か無用かは判断できると思うし、賢者が異世界の道を開いたんだしね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:56:18.51 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「それから、術士の質問は」

術士「……竜の火炎を防ぐ魔法ね。それ以外にも、防御を固めたりする術の強度に現実味があるのかどうか」

隊長「うん。それが妥当なところだろう」

姉「そんなに強力な魔法だったとしたら、誰もが倒せる方法にはならないと思うけど」

隊長「それなんだが、術士は元々、魔法を数字で再現する方陣術に長けているんだ」

術士「……竜クラスの魔炎に対抗できるかは分かりませんが、使いやすくは出来るかと」

姉「ふむ」

隊長「最後は俺か。俺は……」

隊長(竜を絶滅させる方法を、今度こそ知らなくてはならない)

隊長(おそらく、それを知らなければ、アレほどの暴力を止めるのは相当難しい) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 20:56:44.68 ID:y1OBr08Fo<> ――しばらくして。

工兵「ふひー」

術士「んっ……」

隊長「ご苦労様」

工兵「参ったよ。すんごい色んな知識を教えてもらっちゃった」

剣士「珍しいな。参った、とは」

工兵「……魔力抜きで、町一つを吹っ飛ばす爆薬が作れるなんて、想像できる?」

姉「……それ、記録させた?」

工兵「理解力が追いついてないから、省いたよ」

隊長「姉ちゃん」

姉「分かってるわ。存在を記録しない方がいい」

工兵「僕らごと吹っ飛ぶし、あまり意味が無いよね」

隊長「術士は?」

術士「……魔方陣を書くのに一昼夜かかるわ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:01:04.17 ID:y1OBr08Fo<> 隊長「工兵、術士も、それを言ってきたのって、賢者……だった?」

工兵「んー、分からない」

術士「私、違うと思うわ。女性だったし」

姉「勇者一行の誰か、かもしれないわね。ああ、いいわね。貴重な体験よ、それ」

工兵「うーん、随分と話を聞かなそうな人だったんだけど」

術士「私は、ちょっと大人しくて、わたわたした人だった」

隊長「そっか……」

術士「隊長、私、これからすぐに、魔方陣を量産したいと思うわ」

隊長「そうだな……姉ちゃん」

姉「だと思ってたわ。すぐに、王立図書館の作業室を開けさせるから」

術士「ん」

隊長「工兵は、その、他になにか聞いた?」

工兵「うーん、いろいろ聞いたけど」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:01:35.31 ID:y1OBr08Fo<> 工兵「あっ、そうだ、竜というか、巨大な動物を眠らせる薬物があってね」

剣士「薬物……?」

工兵「それをバシューッて尖らせた筒を打ち込めば、かなり行動を鈍らせることが出来るよ」

工兵「問題は、僕は薬品の知識はあまりないってことなんだけど……」

隊長「確か学園長派は、餌と薬物によって、竜を飼い慣らしていたはずだ。連中の痕跡を調べさせれば、似たようなものは見つかるかもしれない」

隊長「姉ちゃん、悪いんだけど、あれの調査を早めに進めておいてくれないか?」

姉「ああ、竜の餌ね」

隊長「そうだ。あの固形物の中に、薬物が混入されている可能性は高いはずだ」

姉「ただ、睡眠薬とは限らないと思うけど……」

隊長「それもそうだが、念のためだ」

隊長「……さて、じゃあ、後は俺か」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:02:03.49 ID:y1OBr08Fo<> 隊長が紫色の触手に手を伸ばす。
じんわりと触れた先から暖かくなってくるそれを、頭に乗っけると、奥のほうで声が聞こえた。

その声を聞き分けようとした時に、不意に体が落ちていくような感覚に襲われる。
落下してはまずい、と思ったところで、目の前にはっきりと男の姿が見えた。

落下している。
落下しているのに、その男が目の前から離れない。
これが『レコード』か、と隊長はが思ったところで、目の前の男が声をかけてきた。


男『あー、そのままでいいよ』

隊長『……いや、これ、落ちているんじゃないのか』

男『精神描写みたいなものだから、気にしない気にしない』

隊長『いや、どういう態勢で聞いたらいいんだ?』

男『落ちっぱなしでいいとも』

隊長(どうしろってんだ……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:02:31.65 ID:y1OBr08Fo<> 隊長『じゃあ、まず、質問だ』

男『ちょっと待った。その前にこちらから確認させてほしい』

隊長『……どういうこと? これはこっちから聞く装置じゃなかったのか』

男『いいから聞くぞ。竜にあったか?』

隊長『……あった』

男『何匹いた?』

隊長『最低でも十五匹はいるって話だよ。全部は見てないが、確かにそれ以上、いそうだった』

男『「学園」は何やってたんだ?』

隊長『何やったって……竜に破壊されちまったよ!』

男『ほほー、そいつは想定ミスだな』

隊長『お前、何者だ? 勇者の一行じゃないのか』

男『うん? そうそう、お前が見ている俺は、境界を有耶無耶にする魔法によって創りだされたパラレルな俺だ』

隊長『……何を言っているのか、さすがに分からん』

男『じゃあ、言い方を変えよう。俺は賢者だ』

隊長『!』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:03:07.60 ID:y1OBr08Fo<> 隊長『……衝撃すぎる。こんな軽そうな男が賢者とか』

賢者『あ? なに、俺ってば英雄視されちゃってんの? てか、チビに言われたくない』

隊長『うるせーよ!』

隊長『……まあ、いい。すまんが話を進めてくれ。何が何だって』

賢者『この魔法は、ある特定の条件で俺が未来の知恵者と対話が出来るように設定されている』

賢者『竜に出会った連中を指定しているはずだ。間違いないよな?』

隊長『……ああ』

賢者『状況は俺なりに理解した。人間は竜を制御することが出来なかったようだな』

隊長『ようだな、ということは、あんたはこの事態を想定していたのか』

賢者『つーか、悪い。竜を生き延びさせたのは俺だ』

隊長『……ああ?』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:03:34.63 ID:y1OBr08Fo<> 一旦休憩。 <> ◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/26(土) 21:54:53.14 ID:y1OBr08Fo<> すまぬ、今日はここまでじゃ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 00:49:40.58 ID:Ejlu0ka4o<> なんと。乙です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/28(月) 01:30:42.66 ID:II2RLp6wo<> 乙 <> ◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/29(火) 22:15:58.54 ID:0XSwwVVAo<> すみませんが、もう少しお待ちを… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/29(火) 22:40:46.60 ID:mDB9UexRo<> 待っとる <> ◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/01/30(水) 23:01:18.16 ID:nfKvVRV9o<> っしゃー! 全然うまく書けないからさくさく投下するぞ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
賢者『ふっふっふ、まずは聞きなさい。これが人類のためだと思ったわけだよ!』

隊長『……どういうことだよ?』

賢者『竜の伝説ってあるよね、魔族と覇権を争ったっていう、あれね』

賢者『強靭な体、鋭い爪牙、優れた知性、そしてブレス。どれもがたったの一振りで地面を引き裂くほどだったという』

隊長『……かつての竜は、今よりももっともっと強かった、と?』

賢者『その通り! 竜は弱体化していたんだよ』

賢者『なぜか? その理由を説明することもまた難しいが、要するにだな、強くなりすぎたのよ』

隊長『……』

賢者『竜は魔族との戦いに打ち勝ち、この世界の覇権を握った、ずっとずっと昔にな』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:01:49.64 ID:nfKvVRV9o<> 賢者『ところが、絶対強者となった竜はどうなったか。溢れる力、素晴らしい知性、それらをすべて衰えさせてしまったわけ』

賢者『敵がいないのなら、力も知恵も、使う必要がない』

賢者『それは繁栄していないって意味じゃない。ただ、力と知恵の代わりに、世界の隅々まで住処を広げることだけを優先した、と』

賢者『ここまではいい?』

隊長『ああ――で、そこに人間が現れた』

賢者『その通り、環境の激変ってやつだ。人間はとにかくポコポコ生まれて、知恵ばかりでなく、竜の使っていた魔法も盗みとった』

賢者『竜を退治するには、竜の魔法! しかもちょこまかと逃げまわっては不意打ちをかます人間に、次第に竜は押され始めた』

賢者『そして、竜を大陸の隅に追いやり――超大国の出来上がりだ』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:02:16.58 ID:nfKvVRV9o<> 賢者『そこで、俺達の時代の前、竜の王の登場だ』

賢者『世界を掌握したと思っていた人間は、記憶の片隅にも残っていなかった竜の登場にびっくりした』

賢者『そして、その時にはすでに、竜に対抗できるような魔法は忘れさられていたのだ』

隊長『……なんつーか、イタチごっこだな』

賢者『分かるか?』

隊長『どちらかが繁栄すれば、それをどちらかがひっくり返す。そしてまた、没落の道に入る……』

賢者『その通りだ。俺はこの事実を調べていくうちに、ちょっと考えたんだよね』

隊長『何を、だ?』

賢者『なんだと思う?』

隊長(くっそめんどくせぇ)

隊長『……』

隊長『竜を倒した後、人間がどうなるのか』

賢者『いいね、いいねー! 未来の知恵者は物分かりがいい』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:03:02.70 ID:nfKvVRV9o<> 賢者『弱肉強食と誰かは言う。だが、強者となって世界を支配したかと思うと、新しい現象が起きた時に対応できない』

賢者『例えば、魔法で一時代を築き上げた一族が、何かの拍子に魔法が使えなくなってしまったら?』

隊長『何か別の武器でも使えばいい』

賢者『だが、元のようには戻れない。少なくとも、肉体では勝てなくなっている可能性も高いよ』

賢者『人と竜がそれでも互いに生き残っていたのは、まさに柔軟な対応力に基づくものだったからだ』

隊長『……』

賢者『絶滅の危険性を減らすためには、多種多様な人間を育てるしかないでしょ』

賢者『魔法以外で戦えるやつ、戦いは得意じゃなくても、体力だけは有り余っている奴』

賢者『冒険者には色んな奴がいっぱいいた。だが、そんな連中を集めるだけじゃあダメ』

隊長『……育てる必要があるって考えたのか』

賢者『そう。それが、今準備している「学園」ってやつなわけ……いや、今は滅びたのか』

隊長『……まさか、竜を生き残らせたのは、その』

賢者『教育の一環だよ』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:03:29.53 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『……ちょっと待て』

賢者『なんだね?』

隊長『あれのどこが教育だ! 俺たちは殺されかけたんだぞ!』

賢者『そうは言うけどさ。竜の王を倒した後、残っていたのは知性ある魔物ではなく、単に体のでかい動物だったぞ』

賢者『餌や飼い方も残してやったし、何よりこれで人竜が共存できれば、人類の未来の可能性を増やすことになるし』

隊長『あ、あのな……』

賢者『それに、安心しろ。万一暴走しても、「学園」には竜を退治するためのあるものが埋められている』

隊長『あるもの……?』

賢者『毒だ! これによって竜を弱らせればだな……』

隊長『……』

賢者『ん、どうした?』

隊長『ふざけんじゃねぇよ、この大アホがーっ!』

賢者『おおう』ビクッ <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:03:57.73 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『今、学園内の一部教師陣が、その毒と餌を握っているんだぞ!』

隊長『それを利用して、俺たち学生に牙を向けさせてるんだぞ!』

隊長『あんたの話を信じるなら、竜に対抗する切り札は、俺らの敵が握っていることになるじゃねぇか!!』

賢者『……お、おう』

隊長『仮に残っていたとしても、「学園」は破壊し尽くされて――』ハッ

隊長(そ、そういうことかよ……)

隊長(学園長派は、対竜の切り札を焼き尽くしたんだ……)

隊長(くそがっ……!)

賢者『おかしいな、こんな予定では』

『……だから、言ったじゃねぇか』

賢者『勇者!』

隊長(勇者……?) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:04:32.39 ID:nfKvVRV9o<> 勇者『お前の未来予測は宛てにならねぇってな』

賢者『そうは言うがな、俺の未来予測ではこのまま竜を滅ぼせば、早晩人間同士の争いで世界は荒廃すると……』

勇者『あー、分かった分かった。運命ね』

隊長『……おっさんじゃないのか』

勇者『うん? 俺のことか』

隊長『しかし、勇者と賢者が揃っているならちょうどいい。今からでも遅くはない。あんたたちの時代に戻って、竜を絶滅させてくれ』

隊長『そうすれば、この話は一発でおしまいだ』

賢者『それは無理だな。ここにいるのはパラレルな俺だ。お前たちの世界にいた過去の俺たちに、フィードバックがあるわけじゃない』

隊長『あー、くそっ!』

勇者『まあ、落ち着けよ、少年』

隊長『……』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:07:09.19 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『だが、毒が必勝の切り札って言うなら話が早い。今、餌に混入されていた薬物を調べさせている』

隊長『対竜毒を大量生産すれば、こちらにも勝機があるって訳だな』

勇者『お、いいね。その不屈っぷり』

隊長『お前らのせいだろうが!』

勇者『まあ、そういうなよ。賢者にその毒の精製法を聞けば話は早いだろ』

賢者『いやしかし、あれは言うほど必勝ってわけじゃ……』

隊長『ほんっとにふざけんなよ』

賢者『と、とにかく教えるよ。そんなに怖い顔をしないでクダサイ』

勇者『すまんな。これから、俺たちはこいつが穴を開けた異世界も閉じないといけない』

隊長『……ああ、そう』

勇者『未来の世界についていろいろ聞きたいところだが、フィードバックがあるわけじゃないしな』

隊長『だったら、もう少し聞かせてくれ』

勇者『いいぞ』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:07:36.14 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『一つ目だ、あんたらはどうやって竜を倒したんだ?』

勇者『竜の王を追い詰めたのさ。絶対的な指導者によって竜が再興したことは間違いなかったからな』

隊長『……しかし、例え王を倒しても、大勢残っているだろう』

勇者『殲滅戦に関しちゃあ、賢者や戦士が力を発揮してくれたんだ』

勇者『指揮系統さえズタズタにすれば、後はただの動物の群れだと思って、うまい具合にこう、追い詰めたのさ』

勇者『特に、やつらは雨を吹き飛ばさなくては、うまく行動できない』

隊長『……そ、それは、どういうことだ?』

賢者『どうも呼吸構造の問題でね、雲に届く大きさだというのに、実際に雲に当たったりすると息がうまく出来なくなるらしいな』

賢者『随分、雨を降らせまくったもんだよ!』

隊長(なるほど……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:08:04.64 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『二つ目、学園の連中は、竜を操るかして国に脅しをかけようとしているぞ。そこまで考えなかったのか』

勇者『考えてはいなかったな。だが、何かしらまずいことは起きる、と思っていた』

賢者『いや、だけど……』

勇者『あー、こいつは知恵はあってもかなりのアホなんだ』

賢者『(´・ω・`)』

隊長(今、何かを彷彿とさせるような顔をしたな……)

勇者『保険的な意味はあるが、俺もいろいろと考えているよ。特務機関で、何人か稽古をつけてやるとか』

賢者『俺もだ。この地に、この記憶魔法を設置したのも、その一つなんだぞ!』

勇者『俺が提案したからだろ』

賢者『う、うるさいっ』

隊長『……』

隊長(彼らは、過去に竜の保険を考えて行動していたのだな。そしてその結果が、会長や剣士だったというわけか……) <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:08:31.56 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『……三つ目だ。竜とまともにやり合うのはとにかく厳しい。何か、もっと楽な策はないか』

勇者『ない』

隊長『ないって……』

勇者『ねぇって。あの時だって死に物狂いだったし、今は竜の王がいるわけでもないのに、脅威になりつつあるんだろ』

勇者『それになあ、何か竜に対するとびっきりの弱点でもあるなら、俺らだって大声で後世に残しているはずだし』

隊長『……毒薬が有効だというのは聞いたが』

勇者『あれも、しばらく痺れる程度にしか効かないからな。もちろん、常用させていれば別だが』

隊長『じゃあ、どうしろってんだよ!』

勇者『ヒントはいっぱい出しただろ。一つ、雨にあまり強くない。二つ、毒に効き目がある』

勇者『それから、三つ、お前は一人でここまで来たわけじゃないだろう』

隊長『……』
<>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:08:57.94 ID:nfKvVRV9o<> 勇者『俺達は一人ひとりが優れた冒険者だっていうプライドは持ってる』

勇者『だが、それとともに、チームで集まったからこそ、この結果を作り出せたと知っているわけさ』

勇者『お前も冒険者なんだろ?』

隊長『……』

勇者『だったら、仲間を信じてやりな。俺に言えるのはそのくらいだ』

隊長『はぁ』

勇者『へっ、ため息をつくんじゃねぇよ』

隊長『そんなの、俺は、ちゃんと信じているからな』

勇者『ああ、そう?』

賢者『勇者……普段は俺のことをバカボケ扱いしていたのに……』

賢者『やっぱり心の底では俺のことを信頼して……!』

勇者『それとこれとは話が別なんだぞ』 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:09:24.52 ID:nfKvVRV9o<> 隊長『……分かった。最後に一つ聞いてもいいか?』

勇者『何?』

隊長『あんたら、どうやってチームを組んだんだ? そこのところ、今の伝え話じゃ大して残ってないからさ』

勇者『……』チラッ

賢者『んっ、ふっ、大したことじゃない』

勇者『同じ学園の出身なんだ。仲良し五人組でな、学園戦隊とか名乗ってだな……』

賢者『あーっ、なんで言っちゃうんだよ』

勇者『それがいつの間にやら、竜を退治した討竜戦隊なんて呼ばれて……』

隊長『へぇ……』


――バンッ! <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:09:51.12 ID:nfKvVRV9o<> 姉「大丈夫!?」

隊長「……は」

姉「ちょっと、医療班呼んで!」

救護員「わ、私が診ます! ちょっと見せて下さい!」

隊長「……」

姉「声聞こえる!? 聞こえるわね!」

隊長「ああ。うるさいから、少し静かにしてくれ」

姉「あ……」

救護員「た、隊長、起き上がらないでください。長時間接続して、ビクンってなったんですからっ」

隊長「……ああ、そう」

姉「ったく、だから、そんなに長話をするでないと言ったのに」

隊長「言ってたか?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:10:17.44 ID:nfKvVRV9o<> 救護員「たいちょー! 安静に、安静に」

隊長「分かっているって。それより、記録をつけないと……」

姉「本当に大丈夫なのね?」

隊長「大丈夫だ。記録係を呼んでくれ」

姉「……分かったわ。でも、休み休みでいいからね!」

隊長「おう」

隊長「……」

救護員「はい、お水を上げますよー」

隊長「ん」ゴクッ

術士「……隊長、大丈夫?」

隊長「大丈夫だ」

剣士「青ざめているぞ。無理をするな」

工兵「さすがに無茶し過ぎだよー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:10:43.98 ID:nfKvVRV9o<> 隊長「……」

隊長「ああ、ありがとう」

救護員「はい、息を整えてくださいねっ、深呼吸」

隊長「すーはー」

術士「あの、『レコード』から離れて、休憩室でしばらくしてからの方がいいわ」

隊長「ああ」

隊長「……」

隊長「よし、一息ついたら、作戦会議といこう」

剣士「何か分かったのか?」

隊長「あー、そうだな。ま、なんていうか……」

隊長「仲間を信じろって言われたよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>sage saga<>2013/01/30(水) 23:11:13.33 ID:nfKvVRV9o<> 今夜はここまで。ばしばし更新していきたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/30(水) 23:30:11.80 ID:LpVMsmADO<> 乙



賢者は天測士ちゃんの何かだったりするんやろか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/01(金) 06:59:08.68 ID:eIj5ka5Z0<> 乙 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/01(金) 22:33:32.51 ID:0aT2sgpso<> >>483
孫です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
>>休憩室。

隊長「じゃあ、話を総合しよう。まず一点目、竜は賢者によって

生き延びさせられていた」

術士「えっ……」

姉「なるほど」

剣士「どういう意味だ?」

隊長「過去の記憶によるものかもしれんが、賢者自身の言葉によ

れば『教育のため』だそうだ」

工兵「引くわー」

救護員「えーっと、賢者ってどんだけ気狂いなんですか?」

隊長「俺に言うな、と言いたいところだが、これはおそらく勇者

たちの間でもかなり議論になったことみたいだ」

隊長「それに、おそらくだが、前提として『竜をここで生き延び

させなければ、人類は絶滅の危機に陥る』という未来を予測した

らしい」

術士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:34:44.62 ID:0aT2sgpso<> 隊長「ちょっと待った、なるほどって言った理由はなんだよ」

姉「ああ、いいわよ、続けて」

隊長「良くないって」

姉「いや、最近の情勢の話になるんだけど、今、帝国が軍隊を作ろうとしているじゃない?」

姉「その上、どうも周辺諸国に強圧的になって来たのよね、今の皇帝になってから」

姉「詳しくは分からないんだけど、どうやら、他国に対する切り札、を手に入れたらしい、と我が国の外務省は見ているわけ」

剣士「つまり、それは竜とつながりがあるってことじゃないのか



姉「そうとは限らないわ。竜は今まで巧妙に隠されてきて、こちら側としては、何かの新兵器でも創りだしたんじゃないかっていう」

工兵「新兵器ねぇ……」

隊長「つまり、国家間で戦争に突入して、滅びの危機に陥るって?」

姉「そ。王国だって、その点については負けてないし……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:35:24.09 ID:0aT2sgpso<> 救護員「はい」サッ

隊長「うん、もう少し話してから説明するから」

救護員「ごめんなさい、ついてけなくて……」

隊長「大丈夫だよ。救護員がいてくれれば心強いから」

救護員「そ、そーっすか、えへへ」

隊長(なんか少し心が痛むな……)

隊長「……直接の滅びになるかは分からないが、竜がいなければ人間同士の争いになる」

隊長「特に、竜をも克服したとなると、かえってそれ以上の力があるなら制圧出来ると考えてもおかしくはないだろう」

剣士「ちょっと待った! じゃあ、帝国には竜を制圧する何かを持ってる可能性もあるんじゃねぇか」

隊長「姉ちゃん」

姉「ありえるわね。確か、さっきも工兵くんが聞いていた異世界の技術、異様な技術も混じっていたわ」

工兵「うーん、でも、あれって数百年から数千年に渡って毒を撒き散らす技術って感じだったような……」

術士「それが本当なら、まさに滅びの危機、ね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:35:58.44 ID:0aT2sgpso<> 姉「何? マジでマジなら私達、国を上げてひっくり返る必要があるんだけど」

隊長「……いや、落ち着いてくれ。それは不確定な話題だから」

隊長「二つ目、竜の弱点について、だ」

剣士「弱点、ああ、炎を吐き出す直前が狙い目とかか」

隊長「そ、それはまあ、出来る人と出来ない人がいるからな」

隊長「そうじゃなくて! もう少し具体的な話題が聞けた」

隊長「一つは、雨に弱いんじゃないかってことだ。息がうまく出来なくなるらしい」

姉「……それは本当なの?」

隊長「嘘かどうかは知らんが、やつらが活動している時は、大体雲を風や咆哮で吹き飛ばしてからだった」

術士「うーん、だとしたら、雨を呼ぶ魔法、とか」

隊長「あるいは、天候を予測して、そこに誘い込む、とかだな」

工兵「天候予測……」

隊長「あー、分かる。誰を思い浮かべたのかは」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:36:35.12 ID:0aT2sgpso<> 救護員「はい」サッ

隊長「……もう少し待って」

救護員「あ、いや違うんですけど!」

工兵「えっ、救護員が意見を……!?」

救護員「工兵くん、さすがに怒るよぅ」

隊長「何かあるのか?」

救護員「えーっと、なんか雨が弱点かもって話、私もしたような気がするんですがぁ」

隊長(……ああ、さっきの話か)

救護員「でもね、土砂降りとかだと、私達もあまり行動出来ないと思うんですけど!」

隊長「い、言われてみればそうだね」

剣士「雨天時の戦闘訓練は、あまりやっていなかったからな」

工兵「ヒィィ!? これからさらに訓練するの!?」

姉「いいえ。もし仮にそれが弱点だっていうなら、それを基本線に据えることは可能よ」

隊長「……そうだな、最初からその予定だったし」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:40:09.56 ID:0aT2sgpso<> 隊長「竜の弱点の二つ目だ。竜を弱らせる毒物、の精製法を入手した」

隊長「例の餌の痕跡から調査をしろと言っていたが、大幅に短縮して、毒物を生産するように指示してほしい」

姉「分かったわ。というか、さっき移動中にメモを送っといた」

隊長(この指示の速度は驚きの速さだな……)

隊長「それで、だな。工兵、この毒物を保管する容器って作れないか?」

工兵「待ってました!」ガターン

隊長「お、おう」

工兵「ま、僕にかかればそんな……簡単だよね!」

工兵「というかだよ、考えたんだけどさ、武器の先端部分を射出して、薬をちゅーっと注入出来ればいいんじゃないかと思いまして」

術士「うん……」

工兵「隊長の武器を改造してました!」ジャキーン!

隊長「……は?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:40:56.28 ID:0aT2sgpso<> 工兵「はい、ただの鉄棒が、爆雷管付き鉄棒に変わり、いよいよこれで鎖付きの注射針打ち込み型鉄棒に」

隊長「訳が分からんのだけど」

工兵「まず鎖部分を相手に向けます」

隊長「うん」

工兵「留め金を外します。すると……鎖がバネの力で勢い良く飛び出して、注射針が突き刺さります!」

隊長「……うん」

工兵「そこに衝撃を与えることで、内袋が破れて圧力によって薬品が押し出されるような仕掛けになっております」

隊長「なんで作った」

工兵「いやあ」

隊長「いやあじゃねぇよ。何を予測してたらこんなものを作ることになるんだよ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:41:32.17 ID:0aT2sgpso<> 工兵「だって、隊長が、手が痺れる〜って言うからさー」

工兵「だったら、手から離れた所で爆雷管を爆発させればいいんじゃねって思ったわけ」

術士「……いいなぁ」

隊長「良くないよ?」

工兵「いろいろ付け替えを出来るようにしといて良かったー」

工兵「もちろん、鎖はワンタッチで取り外しオーケー。刺さったまま魔物に振り回されたりすることもありません!」

剣士「手間暇をかけたはいいが、実用に耐えうるかは疑問だな」

工兵「隊長が使うから。実験台」

隊長「お前、思ったことを何でも正直に言えばいいってもんじゃねぇんだぞ……」

姉「楽しそうね」

隊長「うるさいっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:42:12.36 ID:0aT2sgpso<> 隊長「それで、だ」

隊長「なんだかんだいろいろ聞いたが、俺も最善の策が思い描けているわけじゃない」

隊長「もうすでに、色々と出し合ってもらっているが、なんだ、その……」

隊長「みんなの知恵と力を借りたい」ペコリ

剣士「……ふっ、アホらしい」

隊長「おう、何笑ってんだ」

剣士「お前らしくもない。俺達は言いたいように言う。お前がまとめる」

剣士「何も変わらないだろうが」

術士「……うん」

工兵「むしろ、こんだけ好き放題に言ってて、隊長は疲れないの?」

救護員「が、頑張ってついてってますよぉ」

隊長「……そっか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:43:10.66 ID:0aT2sgpso<> 姉「なに? それが竜退治に必要なことなの?」

隊長「そうだよ。勇者が言っていたんだ」

隊長「仲間を信じろってさ」

剣士「ははははっ!」

工兵「わ、笑ってる」

救護員「気持ち悪いです、ホントに」

剣士「こいつらぶん殴っていいか?」

隊長「正直、俺も……あっ」

剣士「……」

術士「何がおかしかったの?」

剣士「いや、あのおっさんが、そんなまともなことを、意味もなく言うはずがない」

剣士「さっきも聞いたが、要するにそれはからかわれたのさ」

隊長(そうかなぁ) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:43:50.30 ID:0aT2sgpso<> 隊長「そうなのか?」

剣士「あのおっさんならあり得ることさ」

剣士「ま、まあ、なんだ、俺がお前を信頼していないってわけじゃない」

姉「……ちょっと聞いていい?」ヒソヒソ

隊長「なに?」

姉「お前、同性趣味はないでしょうね、姉ちゃん泣くわよ」ヒソヒソ

隊長「頭が痛くなりそうだからやめてくれ」ヒソヒソ

術士「あの、お姉さん。彼は会長さんっていう人が元々好みだったようで」ヒソヒソ

救護員「こないだ、隊長に乗り換える宣言を……」ヒソヒソ

工兵「パネェっすよねー」ヒソヒソ

剣士「おい、お前ら」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:44:37.16 ID:0aT2sgpso<> 救護員「うっさいですね! 隊長はノーマルなんです!」

救護員「性的な目で隊長を『信頼してないってわけじゃねぇ』とか言わないでくださいー」

剣士「ああー?」

隊長「まあまあ、それは置いとくから、何かアイデアを出してよってことなんだけど」

工兵「はーい、提案!」

隊長「はい、工兵」

工兵「王国が公認して、竜退治作戦をバックアップしてくれるんでしょう?」

姉「正確には、王国から依頼をする、という形になるけどね」

工兵「なんでもいいけど、そしたらさ、王国で雨乞いしてもらったらいいんじゃないかな」

隊長「雨乞い、ねぇ」

剣士「あいつら、雲を飛び越えて来るぞ。下手に雨乞いをしても、別に竜にダメージを与えられるわけではない」

工兵「そっかー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:45:33.33 ID:0aT2sgpso<> 術士「戦闘時に、水を無理やり降らせる方陣術ならあるわ」

隊長「あるのか!?」

術士「多分……理論上は可能」

姉「それ、本当なら相当高度な術よね。悪いんだけど、それも含めて量産するために缶詰してもらうわよ」

術士「あ、あう……隊長……」

隊長「差し入れはするから」

術士「そ、そういうその……」

工兵「はーい、僕も一緒にもろもろ量産するから、一緒に頑張ろうよ」

術士「……はい」

姉「で、それは置いても、よ。具体的にはどうするわけ? 弱点はある、それを突くための武器はばら撒く、それは分かったわ」

姉「だけど、それだけじゃ竜を追い詰めることは出来ないでしょう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:47:53.42 ID:0aT2sgpso<> 剣士「……勝算はないわけじゃない」

姉「へぇ、どんな?」

剣士「隊長、これは前提として聞くんだが……竜は独自の意思で行動しているのか?」

剣士「それとも人間に操られているのか? つまり、学園長派ということだが」

隊長「……」

隊長(竜は、好き勝手に暴れまわっているように、見える。だが、今の状況を考えるなら――)

隊長「少なくとも、誘導されていることは間違いない」

隊長「根拠は二つ。学園を襲った時、竜は人間に目もくれずに何かを探していた」

工兵「そういえば、そうだったかな……」

隊長「もう一つ、天測士の予測だ。竜が帝国に現れる、という。もし仮にこれが当たっているとなると、ちょっと困る」

救護員「……」プシュー <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:48:34.61 ID:0aT2sgpso<> 隊長「ええとだな、学園長派が帝国と敵対している場合、一番やつらにとって巨大な敵は帝国だ」

隊長「だとすると、竜に国を攻めさせることで、帝国はズタボロになる」

姉「それは我が国にとって有利になるわね」

隊長「嘘つけ、帝国がこの近辺では最も強大な国だ、そこが落とされたら、もう降伏するよりほかはない」

救護員「そ、そうですか」

隊長「逆に学園長派と帝国がつながっていた場合、ひょっとしたら、これが一番最悪かもしれんが……」

隊長「下手をすれば、帝国に竜がつく、という可能性だってある」

救護員「な、なるほどー」

隊長「とにかく、竜は学園長派の思い通りに動かされている可能性が高いってこと」

救護員「なるほどー」

剣士「ということはな、竜とやりあわなくても、学園長派をぶっ潰せばそれで済むってわけだ」

剣士「頭を潰す! おっさんも言っていた最善手だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:49:22.12 ID:0aT2sgpso<> 術士「はい、隊長」

隊長「何?」

術士「私も剣士に賛成。竜と戦ってうち下すのは、私達にはちょっと荷が重いわ」

術士「もちろん、対峙した時の対抗策はもっていていいと思うけど……」

隊長「そうだなぁ」

工兵「学園長ってどんな人だっけ?」

救護員「教頭よりは若くてイケメンでしたけどぉ」

隊長「ああ。じゃあ、倒してもなんら問題はないな」

工兵「どういう理屈で……?」

隊長「ブサイクでいじめられることがなかったのに、卑怯な手を使っているから」

姉「……言うほどブサイクじゃないわよ」ボソ

救護員「んだんだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:50:00.52 ID:0aT2sgpso<> 術士「わ、私、隊長の顔も、割りとタイプ、だし……」

工兵「あー、なんだろうな〜この気持ち。素直に祝ってあげられない感情」

剣士「嫉妬だな。早めに解消しないと憎悪に変わるぞ」

隊長「いやあの、俺は事実しか話してないんだが」

姉「そりゃお前が小さい頃は、表向き大人しくして抵抗しなかったからよ」

隊長「……」

姉「はい、とにかく、ここで王国からの提案よ」

隊長「あ、ああ。そういえば……(王国の代表者、だったか)」

姉「外務省から声明を出させるわ。今度の竜の襲来事件において、多くの学生が犠牲になったこと、誠に遺憾であると」

姉「それにも関わらず、学園長からの連絡が一切なく、学生自ら学園再建へ協力の要請があったと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:50:55.43 ID:0aT2sgpso<> 姉「ついては、学園代表者に再建の相談を受ける旨を伝えるとともに、学園長に対してはその責任を問う」

姉「……どうかしら?」

剣士「そりゃ最上級の協力と言っていい」

姉「実際に、連中は焦って連絡をこちらに寄越していない。我々としても、どういう形であれ動く口実がほしかったわ」

姉「いいこと、こちらは竜への具体的対抗手段の生産に入るわ。あんた達はそのサンプルを作って、信頼の出来る冒険者に配りなさい」

姉「一方で、学園長をふん捕まえて来なさい」

隊長「……そこまで宣言して、大丈夫か?」

姉「大丈夫よ。はっきり言って、王国には大義名分が足りなかったんだもの」

隊長「いや、根回しが大変だろ」

姉「弟に、あーいや、ま、何もしてやれないんじゃ示しがつかないからね!」

隊長「あ、ああ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:52:54.21 ID:0aT2sgpso<> 隊長「分かった、そこまで言うなら、乗っかってやろう」

隊長「では、俺からも作戦を言う。まずひとつ、飛び出していった他の学園戦隊に武器を配る」

工兵「毒、と、あれか、防火用の魔方陣」

隊長「そうだ。ただ、散らばっていった人たち全員を追いかけても仕方がない」

剣士「なら、七番隊だな。帝国へ、例の軍師を追いかけて一時的に向かったはずだ」

剣士「それ以外にも、天候が予測出来るってんなら、好都合だ」

工兵「……わざわざ竜が出そうだってところに行くのかー」

救護員「戦闘狂はこれだからぁ」

剣士「チッ!」

隊長「……一番隊にも接触できないかな」

隊長「彼らは竜と戦っているはずだし、プロと一緒にいたんだから」

術士「でも、戦っていたはずの竜が、学園に来ていたわ」

隊長「ううん……」

受付「――失礼します!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:53:36.94 ID:0aT2sgpso<> 受付「あ、術士ちゃん」

術士「どうしたの……?」

受付「ごめんね、今は課長に。課長……」ヒソヒソ

姉「うん。へぇ、ふーん」

受付「……あまり驚いてませんね」

姉「今、その話していたから」

隊長「何があったの?」

姉「帝国が、王国に併合の要求を出してきたわ」

剣士「ああ?」

姉「こちらには味方に、伝説の竜がついているんだぞって」

全員「……!!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/01(金) 22:57:02.15 ID:0aT2sgpso<> 今夜はここまで。

行け行け早く。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/01(金) 23:27:37.83 ID:Fmqz7ckRo<> 乙!
盛り上がってきたな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 09:07:53.24 ID:eVkSbyIc0<> 良いね良いね

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 22:36:03.04 ID:vYy7zMxDO<> 乙


孫かー
思ったより近い関係だった
解説ありがと <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/12(火) 21:32:55.93 ID:I2uICRtIo<> 救護員「ど、どどど、どうするんですか!?」

剣士「落ち着け。帝国を牽制するんじゃなくて、戦争するのに変わっただけだ」

救護員「大違いですよっ!?」

術士「隊長、その……」

隊長「うん、そうだな」

隊長「姉ちゃん、これは俺の方からは言い難いことなんだけど」

姉「何を考えているか分かるわ。徹底抗戦よね」

隊長「あ、ああ」

姉「お前に言われなくても、人類の敵を味方につけて、偉ぶってるような連中に腹を見せる気はないわ」

隊長「あまり、無茶をしても困るけど」

姉「あー……っていうかね。うちは姫が好戦的だから」

受付「あっ、課長」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:33:32.88 ID:I2uICRtIo<> 救護員「お、お姫様が……?」

受付「いやあ、なんでもないんですよ。ちょっと! ちょっと好奇心旺盛で」

姉「うーん、多分この状況を聞いたら……」


?「竜諸共、彼奴らを滅ぼし尽くしてくれるわ!」カッカッカッ

?「ひ、姫、関係者区域とはいえ、そのようなこと……」


隊長「……なかなか勇猛な姫様のようですね」

工兵「へー」

受付「ひぃ、き、聞かなかったことにしてくれませんかっ」

術士「え、ええ。もちろんよ」

姉「こっちの方に来ていたのか。よし、チャンスね」

隊長「何をする気だ?」

姉「捕まえて進言してくるわ」

受付「!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:33:59.03 ID:I2uICRtIo<> 受付「あ、あのー、課長、さすがにいくらなんでも王族に直接アピールはまずいんじゃ」

姉「大丈夫よ。別に入れ知恵とかするんじゃなくて、対竜の作戦に予算を回してもらうだけ」

受付「あああ、この人も大概だなぁ」

術士「が、頑張って」

受付「う、うん」

隊長「じゃあ、俺達も作戦に入るわ。術士と工兵、それぞれ活動に入って欲しいし」

剣士「待った。事態が展開したなら、もう一度……」

隊長「いや、竜が帝国についたとなれば、要は凄まじい機動力を確保したも同然だ。二人はもう行動に入ったほうがいい」

術士「ん、うん」

工兵「了解です、隊長」

姉「じゃあ、向こうの部屋を使ってね、それじゃ!」タッ

受付「あ、課長! あ、あ、そうだ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:34:51.25 ID:I2uICRtIo<> 受付「あの、隊長さん、でしたよね」

隊長「そうですが」

受付「こ、これ。あなた宛だと思うんですけど」サッ

隊長「……」

救護員「なんですかぁ? ラブレター?」

術士「え……そんな……」

受付「何言ってるのよぅ、これは外部から来た手紙なの」

術士「だ、だよね」

工兵「先に行ってるよー」

術士「ん、行きます。それじゃ隊長」

隊長「ああ」

隊長「……さて、そうしたら、帝国に行くルートを決めないと」

剣士「そうだな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:35:22.70 ID:I2uICRtIo<> 剣士「この部屋は使い続けてもいいのか」

隊長「何も言われていないんだからいいんじゃないの」

救護員「隊長も結構適当ですよねー」

隊長「まあね」

剣士「しかし、なんだ、早すぎないか、仮に帝国が学園長一派とつながっていたとしても」

隊長(確かにそうだ。先手を打たれた感じだな……)

救護員「隊長、手紙はいいんですか? 手紙!」

隊長「ああ、それもあったな」

救護員「だ、誰からですか?」

隊長「……十七番。軍師からか」

剣士「ああ?」

隊長「ちょっと、隊長会議の時に会ってさ」

救護員「なんか、変な手紙ですね。封が剥がれそうな感じの」

隊長「ちょっと待ってくれよ……」ガサガサ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:35:49.65 ID:I2uICRtIo<> 『当地にてサプライズパーティー企画。近日中に、大パレードの開催予定』

『ただし、あぶり出しがうまく行かず。』

『貸切を行うため、酒場に連絡とのことかと。クラッカーが足りないことはご承知おきくだされば』

『先着一名さま、南の谷でサーカスにご招待済み。立ち見なら間に合います』

『なお、プレゼントの持ち寄りは不要のこと。さようなら、十七番より』


剣士「なんだぁ?」

救護員「……は?」

隊長「暗号、かな」

剣士「くっそ面倒くさいことをしやがって」

隊長「手紙が途中で覗かれたらって気にしたんじゃないか」

隊長(しかし、まじめに受け取ろうとすると、これって……) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:36:19.63 ID:I2uICRtIo<> 隊長「……最後のセリフが遺書みたいだね」

救護員「ふ、不吉な」

隊長「まあ、これの言っていることは、おそらくこんな感じだ」

隊長「『学園長派に対する工作を行った、近いうちになんらかのアクションが起きる』」

剣士「おい、それがこの戦争だってのか?」

隊長「だろうな」

救護員「何をしたんですかぁ?」

隊長「分からないけど、やつらに行動を決意させるようなことを行ったことは間違いないようだ」

隊長「で、続き。『ただし、学園長派は地下に潜伏し、表に引きずり出せなかった』」

隊長「『そのための手はうった』……? かな? だが『武器や戦力が足りない』」

隊長「あとが良く分からん。南の谷でサーカス……」

隊長「『返信不要』」

救護員「さっぱりわけが分かりませんけどぉ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:36:49.59 ID:I2uICRtIo<> 剣士「南の谷……まさか、会長たちがそこで竜と戦っているということじゃないのか!」

救護員「な、なるほどぉ」

隊長「待ってくれ、だとすると、それこそ一週間以上戦い続けている計算になるよ?」

剣士「ありうる。やつらなら」

隊長「それに、学園長派が一番隊を犠牲にする理由がないだろう」

剣士「だが、学園を潰したんなら、利用価値は低くなる……いや」

剣士「最初からそのつもりだったのかもしれんな。勇者の指導を受けたのは俺たちぐらいなものだ」

剣士「竜の部隊を作るつもりだったなら、俺たち二人は邪魔になりかねない」

剣士「そのために、順位の低い俺のいる部隊を先行させて様子を見させて、しかる後に一番隊を送り込む……」

隊長「……」

救護員「はい!」

剣士「ちっ……なんだよ」

救護員「それって、私たちはかませだったってことですか?」

隊長「大当たりだ。冴えてるね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:37:17.64 ID:I2uICRtIo<> 剣士「ふざけやがって!」

救護員「いや、剣士が言ったことなんですけど」

隊長(一番隊が南の谷に縛り付けられているとして……俺たちがそこに向かっても何か出来るのか?)

隊長(それに、なんというか、仮に合流したとして、だ。結局学園長一派を逃すことに……)

救護員「うーん」

剣士「とにかく、だ。知らんやつの言うことは気に食わないが、こうなったら南の谷を経由して、帝国を攻めよう」

剣士「武器をばら撒くにしても、使いこなせるやつがいるなら、そいつに渡した方がマシになる」

隊長「それはそうかもしれないけど、目標は別に帝国と戦うことじゃないんだよね」

剣士「だったらどうするんだ」

救護員「んー?」

隊長「……どうしたの?」

救護員「いや、なんか、ここ不自然に……」

隊長「あっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:37:43.52 ID:I2uICRtIo<> 隊長「なるほど、『あぶりだし』ね!」

剣士「はぁ?」

隊長「ここの部分だけ、変な句読点が打たれてるんだ……良く気がついたな、救護員」

救護員「へっ?」

隊長「……何に気がついたんだよ」

救護員「いや、なんか変な匂いがするなーって」

剣士「みかんの汁なんかで書いたからだろう。子どもっぽい仕掛けをしやがって」

救護員「あー! 道理で!」

隊長「……あぶってみるよ」


『ただし、あぶり出しがうまく行かず。迷路の出口は西の七番口』


救護員「……えーっと」

剣士「炙っても意味が分からん」

隊長「いや、おおよその検討はついた」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:38:10.11 ID:I2uICRtIo<> 隊長「……よし! 荷物をまとめよう」

剣士「おい、どういうことだ?」

隊長「南の谷を通って、帝国西部で七番隊と合流だ」

救護員「あっ、西の七番口ってそういうことですか」

隊長「そうだ。思い出したぞ。ちょうど、谷が続いていて、地形的に一本道になる場所だ」

隊長「要するに、そこまで黒幕共を追いやるから、パーティーをやってくれってことだ」

剣士「面倒くさいことを……」

隊長「いや、面倒なことをしないと出せない状況だったってわけさ」

隊長「おそらく、軍師は命がかかってるんじゃないだろうか」

救護員「えっと、その、どうして?」

隊長「封が剥がれかかっている。おそらくは一度開けられたんだ」

隊長「目をつけられていたか、郵便物を検閲されたか、どちらにしろロクな状態じゃないってことだ」

剣士「チッ、急ぐか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:38:52.74 ID:I2uICRtIo<> ――宿屋。

御者「おー、お嬢さん……」

救護員「御者さん、急いで支度して!」

御者「えっ、まだここに来て数日も経ってないでしょ」

救護員「急ぐのよぅー!」

隊長「すみません、二人ほど作業をしていますが、それを終えたらさっさと飛び出す必要があります」

隊長「馬の状態にも寄りますが……」

御者「ううん。酷使酷使で来ているから、結構潰れそうっすね」

剣士「馬は変えられないのか」

御者「そう簡単には……」

隊長「王都に馬を買えるところはあったか」

御者「わ、分かりました! まあ、ここに来るまで、休み休みは出来たので、なんとか一日分はぶっ飛ばしましょう」

御者「ちなみに、どこまでで?」

隊長「竜の谷です」

御者「殺す気か」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/12(火) 21:39:57.03 ID:I2uICRtIo<> 更新が遅くてすみません(´・ω・`)
今夜はここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/12(火) 23:12:53.96 ID:JyHGv4zto<> [ピーーー]気かワロタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/12(火) 23:56:14.00 ID:A1p3PzPIO<> 乙
何気に御者さんも部隊の一員と化してきてるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/15(金) 21:25:59.96 ID:Eok/ERnI0<> このコンビネーションが良い


<>
◆k.6bdeNTfg<>sage<>2013/02/17(日) 23:16:04.04 ID:/7A6o3PIO<> 明日から頑張るから、もう少しお待ちを! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/18(月) 12:01:59.32 ID:V5phqytvo<> 待ってる <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:49:22.10 ID:HfakbSzio<> ――宿屋裏。

剣士「……だから、注射針のある方を振り回すんじゃねぇ!」キィン

隊長「無理だろ!」カン

剣士「衝撃耐性があるとはいえ、針が折れたら意味がないだろうが!」

隊長「それだと、柔軟に使えないぞ!」

剣士「直線の動きを心がけろ! 相手はでかい、こちらの動きを最小にする方がベストだ!」

隊長「そんなこと言ったって……うわっ」


剣士がばしぃっ、と隊長の鉄棒を叩き落とす。
笑いながら、剣士が駆け寄ってくる。


救護員「お〜」

御者「ほ〜」

剣士「ふん、まだまだだな」

隊長「……これ、相当なポンコツ武器だな。最終的には針でブッスリやらないといけないのに」

剣士「なら、いっそのこと、針は取り外ししておいたらどうだ?」

隊長「何の意味があるんだよ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:49:55.47 ID:HfakbSzio<> 剣士「意味はある。元々、棒付きの機雷だったのが、射出型の武器になったんだから」

隊長「……ああ。バネ仕掛けで機雷を打ち出して、相手の手元で爆雷させればいいのか」

剣士「そういうことだ。例の薬品は、いざって時に使えばいい」

隊長「工兵のやつ、戻ってきたら文句言っておこ」

剣士「そう言ってやるな」

隊長「やけに優しいね」

剣士「やつもお前のためを思って行動しているからな」

隊長「それは知っているさ」

隊長(うーむ、戦闘技術の不足を補うのは、やっぱり道具だな)

隊長(いずれ冒険者になったら、この手の道具を売りさばくのもよさそうだな……)ニヤ

剣士「悪い顔してるぞ」

隊長「ん?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:50:22.04 ID:HfakbSzio<> 隊長「救護員、術士たちの様子は?」

救護員「なんか汗だくになってました」

剣士「終わりそうかどうかってことだよ」

救護員「えっとぉ……分かりませんでした」

剣士「チッ」

救護員「だって! 私は術もあんな機械なのも得意じゃないですしー」

御者「まあ、時間がある内に、馬の調子を整えて置けるのはいいっすけどね」

隊長「……救護員、周りの人は何をやってた?」

救護員「えっと、バタバタしてました」

剣士「……」

隊長「なるほど。だったら、もう少しだね」

救護員「えぇ!? なんで分かるんですか?」

姉「……あー、いたいた」

救護員「あっ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:50:57.76 ID:HfakbSzio<> 姉「お前たち、結局、どう移動するの?」

隊長「いきなり来てそれか……まず、南の谷へダッシュ、後に西の谷口を塞いで学園長一派をぶっ潰す」

姉「なに、そこまで分かったの?」

隊長「一応、連携を取る予定だ」

姉「……信頼できるの?」

隊長「ダメなら、王国がやればいい」

姉「はっ、そういうことか。なら、任せておきなさい」

隊長「報酬は?」

姉「ほい、王家直筆サイン入りの依頼証明書。今、お金持ってても邪魔なだけでしょ」

隊長「……憎いくらい手際がいいな」

姉「旦那のフォローすんのが妻の役目じゃん?」

隊長「うるせー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:51:36.47 ID:HfakbSzio<> 救護員「……あのぉ、剣士さん」

剣士「なんだ?」

救護員「お姉さんと隊長、めっちゃくちゃ仲良くなってません?」

剣士「そうか? そうかもな」

御者「ありゃ、男と女の関係っすねー、間違いない」

救護員「ええっ!」

剣士「……なるほど」

救護員「えっ、えー……マジで、えー……」

剣士「くだらんことで落ち込むな」

救護員「だって、隊長、えー……」

剣士「チッ……おい」ガシッ

救護員「な、なにするんですかぁ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:52:02.38 ID:HfakbSzio<> 剣士「隊長といつも一緒にいられるのはどっちだ?」

救護員「わ、私の方ですけど」

剣士「だったら、そこでアピールでもなんでもすりゃいいだろう」

救護員「でも、それって術士さんがいるし」

剣士「うるさいやつだな、そこまで気兼ねするなら、最初から諦めていろ」

救護員「そ、そんなの、わ、わかってます、し……」

剣士「分かっているような面か。どんな時でも諦めないのが勇者の条件だ」

救護員「……わ、私はただの凡人ですし」

剣士「言い訳はしてもいいが、それでも最後までついてこいよ。何しろ、隊長が求めてるんだからな」

救護員「そ、そうですか」

剣士「……」

救護員「……。あ、あーはいはい! 剣士なんかに言われなくてもやりますってば!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:52:34.82 ID:HfakbSzio<> 隊長「何の話をしているんだ」

剣士「こいつが、今更怖気づいてきたから」

救護員「ビビってないですし!」

隊長「そう。俺は少し怖いから、頑張ってもらおうかな」

救護員「へい、任せてくださいっ!」

姉「……ああ、来たわよ。あんたたちの」

工兵「ヒャッハー! 終わったぜー!」ボロボロ

術士「……は、早く、行きましょう」ボロッ

姉「随分、頑張ってもらっちゃって申し訳ないわね」

隊長「心にもないことを……」

姉「ん?」

隊長「お気遣い、ありがとうございますぅ」

姉「よろしい」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:53:01.61 ID:HfakbSzio<> 工兵「こ、これで、竜なんかメじゃないよね……」

術士「隊長……がんばった……」

隊長「お、おう。お疲れ様」

剣士「休んでいる暇はない。ないが、馬車の中で休憩していろ」

御者「ぶっ飛ばすっすけど」

隊長「……うん」

隊長(手は出揃った。駒も作戦も……)

隊長(後は貫き通す意志一つだな)

姉「ちょっと」

隊長「なんだ、まだ何かあるのか?」

姉「頑張んなさい」こつん

隊長「ん……ああ、ありがとう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:53:33.01 ID:HfakbSzio<>
隊長「よーし、お前ら。学園戦隊出動だ」

隊長「二十八番隊の目標は、一番隊の回収、七番隊との合流、そして――」

工兵「学園長一派の殲滅!」

術士「物騒ね」

救護員「でも、こんだけボッコボコにされて、やりたいようにやられっぱなしじゃ、虫の居所が座らないって話ですよ!」

剣士「何いってんのか分からねぇぞ」

隊長「とにかく行くぞ! えいえい……」

全員『おー!』
<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:54:02.76 ID:HfakbSzio<> ――南の谷。一番隊。

盗賊「……ストップ」

会長「いるか?」

盗賊「いるよ、参ったなー、こりゃ」

魔術師「なんとかならないか?」

盗賊「とにかく、まだ動くなよ……」

会長「……」

魔術師「……」

ズ――……ン ズズ――……ンン――

盗賊「……行った」

会長「ほっ」

魔術師「まずいな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:54:28.51 ID:HfakbSzio<> 会長「魔術師、格闘士と斧戦士の容態は?」

魔術師「良くもない、悪くもない」

斧戦士「……すまん」

会長「しゃべらなくていいからね」

格闘士「ごめんね、足手まといに……」

会長「いや、これは俺のミスだ」

盗賊「会長、それより、あそこ、休憩場所になるかも」

会長「む。よし、慎重に移動……」

魔術師「了解」

盗賊「俺が先行するよ」

会長「よろしく頼む」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:54:57.35 ID:HfakbSzio<> >穴。

会長「なんとか休めるところまで来たか」

魔術師「結界を張る。と言っても、気休め程度だが……」

魔術師「西の頂点より――」

格闘士「はぁ、はぁ」

斧戦士「反対方向の出口に近づいているのか……?」

会長「さあ、どうだろう」

盗賊「ちきしょー、なんだってんだよな」

会長「すまない、みんな」

魔術師「もう、謝らないでくれ」

盗賊「そーそー。まさか、プロ部隊がさ、裏切るって想定外すぎるだろ?」

会長「しかし、学園側が何か異常な目的を持っているのではないか、という予想はあった」

会長「だから、何度も言うがやっぱりこれは俺のミスだ」

斧戦士「……それは違う」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:55:41.40 ID:HfakbSzio<> 会長「斧戦士」

斧戦士「……俺も何度も言うが、こんな非道を予想出来る方がおかしい」

斧戦士「……自分を責めるな。俺達は脱出する」

盗賊「とはいえ、もう何日だよ。食料も限度ってもんが……」

会長「……」

魔術師「ふう。結界終わり」

格闘士「ん、はぁ」

会長「よし、とにかく、もう一度計画を練り直そう」

盗賊「おう」

会長「いいか、まず、この竜の谷に、この辺りから突入した」

会長「そして、内部の……おそらく地図上だともう山になっている部分だ」

会長「この崖下の洞窟を探索して、序盤に、あの連中に閉じ込められた」

魔術師「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:56:12.76 ID:HfakbSzio<> 会長「それで何体かの竜を撃破、四日目におそらく戦士の竜と出くわして、これもなんとか……」

格闘士「け、怪我はしちゃったけどね」

会長「すまない」

格闘士「いいって」

会長「それから、さらに奥深くを通り越して、今はこの、川を超えた方にたどり着いていると思う」

盗賊「な、な〜んだ。あと少しじゃねぇか」

会長「だが、長い。出口が見つからない」

会長「もうひとつは、竜の数が増えているということだ。つまり、俺達は……」

魔術師「出口のない方を探している、かも?」

会長「……その可能性もある」

斧戦士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 01:57:18.18 ID:HfakbSzio<> 今夜はここまで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/19(火) 01:57:57.20 ID:pIIF4je+o<> 乙! <> ◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:48:52.83 ID:HfakbSzio<> 斧戦士「会長」

会長「駄目だ」

斧戦士「……まだ何も言っていない」

会長「全員で帰るんだ。こんなところで終わってたまるか」

格闘士「……こんな時まで善人ぶられてもねー」

魔術師「やめろやめろ、仲間割れを起こしてどうする?」

会長「どうせ怪我人の自分たちを置いて、一旦助けを求めに行けってところだろう。そんなことはしない」

会長「第一、怪我は魔術師が回復をかけている。体力は消耗しているが、戦力を減らしたら勝ち目が余計薄まるんだ」

斧戦士「……」

盗賊「あー、ちょっといい?」

会長「どうした?」

盗賊「だったら、俺が先行して様子見ってのはどうよ」

会長「それは……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:49:19.13 ID:HfakbSzio<> 盗賊「ま、この間も俺がなるべく先頭していたけど、ここなら見つかりにくい」

盗賊「ちょっくらひとっ走り、出口が近くにないかを探索するってのは」

会長「……いや、駄目だ」

魔術師「しかし、会長、もう、ジリ貧ってやつだ」

会長「それで失敗したらどうする?」

盗賊「もう、そんなことを言ってる場合じゃないぜ。可能性の高い方にかけるのは、無意味じゃねーだろ」

会長「……」


会長(剣士がいたら、どうするかな)

会長(やつがいたら、まあ、主張するだろう。『竜を全員斬り伏せれば、それで終わりだ』)

会長(やれやれ、成績が良くても、肝心な点ではやつには負けるな)


会長「……ちょっと、考えさせてくれないか」

盗賊「……ま。今すぐじゃなくてもいいけどよ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:49:45.30 ID:HfakbSzio<> 会長(隊長君。彼ならどう考えるだろう)

会長(意見が対立していて、良い案が思い浮かばない)

会長(……いや、違うな。そういう風に考えるんじゃない)

会長(盤面遊戯でのことだ。彼は、どう駒を動かしていた?)

会長(そう、こっちをじーっと見るんだ。気持ちが悪いくらいにこちらを観察する)

会長(そして、奇妙なところでストップする。相手の動きを想定するのか、情報を収集するのか)

会長(そうだな、たとえば)ジーッ


斧戦士「……こっちを見ているな」

格闘士「会長も壊れたのかしらー」

盗賊「まあ、疲れてるからでしょ」

魔術師「お前らも随分と楽天的だな。食料だって……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:50:21.52 ID:HfakbSzio<> 盗賊「くっく、実は隠し食料を持ってるんだよ〜ん」

魔術師「おい、お前」

格闘士「ずっる! こっそり一人で食べてたんじゃないわよねー」

斧戦士「……ふう」

盗賊「あとさ、竜の肉ってうまいのかな?」

斧戦士「……お前、ひょっとして切り分けていたのか」

魔術師「ハラ壊すぞ」

盗賊「意外と伝説あるじゃん? 不死になるとか」

格闘士「天国に行ける、じゃなかったっけ?」

魔術師「ちょっと食ってみろ。毒見役だ」

盗賊「いやいやいや! ここは精力をつけてほしいなってことで、二人にね」

斧戦士「毒見は必要だな」

格闘士「うん」

盗賊「アレレー?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:50:48.02 ID:HfakbSzio<> 会長「よし、決めたぞ」

盗賊「あ、会長! ここはひとつ、リーダーとして毒見を先導……」

魔術師「バカ言うな。頭を潰してどうする」

会長「何の話だ?」

魔術師「こいつが竜の肉を持ってきたって言うんだ」

会長「へぇ……」

魔術師「いやちょ、興味持たなくていいからね」

盗賊「とりあえず、生肉はまずいと思うんだけどさ〜」

会長「ううん。火を起こすとなると、竜に気づかれる恐れがあるからな……」

盗賊「それもそうかぁ」

魔術師「いや、会長、何を決めたの」

会長「ああ。竜に斬り込む」

四人『……はあ?』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:51:31.32 ID:HfakbSzio<> 会長「俺達と共に、竜も出入り口の一つを塞がれたわけだ。だが、そこに殺到するでもなく、活動している」

会長「つまり、やつらには別の出入り口がある」

会長「そして、それを知っているというわけだ」

斧戦士「……脅しつけて、逃げ道へと案内させる、と?」

盗賊「いやいや、もしそれが、バッサバッサ飛んで行けるところだったらどうするのよ?」

会長「少なくとも、出口は出口だ」

魔術師「いや、まあ、飛行魔法とかも、ないではないけど」

格闘士「えーっと、その場合、誰が斬り込むわけー?」

会長「もちろん、俺だ」ドンッ

四人(あかんわ、この人……) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:51:58.11 ID:HfakbSzio<> 会長「俺が全力で暴れ回り、竜を追い立てる。すると、竜に動きの流れが生まれるはずだ」

会長「みんなはそれを確認して、隠れながら、出口へとついていく」

格闘士「バカなの?」

会長「言い方は悪いが、この中で一番強いのは俺だ。剣の腕しかり、体力しかり、戦術しかり」

魔術師「どんなナルシストだよ」

会長「みんなも、俺より優れているところがあるのは認めるけど、この役回りを果たすには力不足だ」

斧戦士「……」

盗賊「おい、眉間にシワを寄せるなって」

格闘士「本気なの?」

会長「検討した結果だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:52:23.80 ID:HfakbSzio<> 盗賊「みんなで生き残るんじゃなかったんかい」

会長「……? だから、そのための方策で、一番現実的な案なんだが」

斧戦士「……すまないが、会長。強力な竜に、五人で立ち向かって、俺達も怪我をして、やっと倒せたんだ」

斧戦士「それでどうして、一人でも戦えると?」

会長「俺は怪我をしていないし、目的が戦闘を避けるような姿勢で振舞っていたからだ」

会長「あのクラスの竜なら、まあ、三匹ならなんとかなる」

盗賊「嘘つけ!」

会長「五人の連携も取る必要があった」

格闘士「いやあの、そう露骨に足手まとい扱いされるとピキッときちゃうかなーって」

会長「一人なら一人の戦い方があるというだけだ」

会長「それに、引き際をわきまえられない人間に見えるか?」

格闘士「一人で戦える相手じゃないと思うって言ってるんだけどさー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:53:00.07 ID:HfakbSzio<> 魔術師「……まあ、体力的にも今が分水嶺、かもしれんが」

格闘士「ちょっと、本気なの?」

魔術師「格闘士も、斧戦士も、戦闘はともかく行動は素早く取れるくらいには回復しただろう」

魔術師「食料の話もあったが、こちらからアクションを起こすなら、今くらいがちょうどいい」

斧戦士「……む」

盗賊「だからって、一人で戦わせるつもりか!?」

魔術師「ただ送り出すわけには行かない。肉体強化の魔法を使わせてもらう」

会長「それはありがたい。もう一つ、魔術師には、合図に合わせて、洞窟を崩落させてほしいと思っている」

盗賊「おいおいおい、崩落って」

会長「竜を追い詰めるには、この狭い場所に留まっていられない、と思わせる何かが要る」

会長「俺が暴れて引き付ける、そこに崩落、少なくとも自分たちが有利な状況に出るためには、ここから出たほうが戦いやすいはず」

会長「もちろん、みんなはそれに巻き込まれないように、出来る限り計算して魔法を撃ってもらう」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:53:35.64 ID:HfakbSzio<> 会長「どうだろうか?」

盗賊「……」

魔術師「やろう」

格闘士「あのねー……」

盗賊「俺も賛成〜、自分の危険度が減るなら、そっちの方がいいや」

格闘士「こいつっ」

斧戦士「死ぬつもりでやる、わけじゃないんだな?」

会長「当然」

斧戦士「……なら、俺も最善を尽くそう」

魔術師「格闘士は?」

格闘士「はー、反対できるわけないでしょうに」

会長「なら、決まりだ。各人、準備をしてくれ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:54:13.37 ID:HfakbSzio<> ―――― <> ◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:54:56.51 ID:HfakbSzio<> ……竜は、警戒を強めている。
谷の洞窟を出た先発隊が戻ってきていない、それどころか、こちらに侵入してきた者がいる。
何か、狂ってきているのは確かなのだが、彼らはそれに気づけないでいる。

一頭、ずし、ずし、と地面を踏み鳴らしながら、同じ通路を行ったり来たりする。
それは警備ではあったが、必ずしも効率的で効果的なものではなかった。

漫然とした歩調で、その竜は曲がり角に差し掛かり――


竜「!?!?」どずっ!


強烈な衝撃が、喉に襲いかかり、警備竜はそのまま後ろに倒れ伏した。
背の低い、見えない位置からの攻撃! 油断していた上に、尋常ではない威力が、うち加えられる!

竜にとって悪いことに、倒れても、その喉に数回の攻撃が加えられる。
めちゃくちゃな突撃によって破けた喉から、液体が吹きだしたところで、抵抗すべく腕を振るう、が、当たらない。
影は飛び退り、足を鳴らして着地した。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:55:23.16 ID:HfakbSzio<> 竜「ぐっ、ぐっ、があああああああっ!」


ごぼごぼという血と息の漏れる音、しかし、それに被せるように、目の前の敵が叫び声を上げた。


会長「あああああああああああああ、トカゲ共、出てきやがれ――――ッ!!」


倒れ伏した竜が、仲間に助けを求めるより先に、その男は次の獲物に向かって走りだした。
顔をのぞかせた別の竜の目に石を投げつける。
怯んだ隙に、手にしていた武器を高々と振り上げる!


魔術師「壊れろ!」 ブワッ。


合図だ。
発声に伴う衝撃が、数匹の竜たちの頭上に打ち当たった。
音と煙と、そして洞窟の天井が破けた欠片が降り注ぐ――


盗賊「おい、威力足りてねぇぞ」

魔術師「……吹き飛べ、吹き飛べ!」ずどん! グバッ!


今度は黒の衝撃ではない、赤々と激しい爆発が、洞窟に広がった! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:55:55.22 ID:HfakbSzio<> 竜たちは動揺した。

天井からの攻撃を防ごうと腕で頭を庇う、すると一頭の足に鋭い痛みが走った。
それは巨大な針を踏んづけたような、いや、果たして、何度も何度も加えられていく攻撃は、折れた釘を踏み抜いたような痛みに変わっていく。


竜「ぐぎゃああああああっ!!」


怒号と土煙の間を、うろちょろと、何かが駆け抜けていく。

怒りのあまり、竜たちがそれを踏み抜こうとした。だが、逆に強烈な力で押し返されてしまう。
一頭がバランスを崩せば、次の一頭が重みに耐え切れない。
数匹が倒れそうになったところに、再びの爆発が襲った!


魔術師「豪炎、業火、破滅の門から現れろ!」 どぶむぅっ!!

「ぐるぅああああああああああっ!」


洞窟が、激しく震動する! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:56:21.39 ID:HfakbSzio<> ……

盗賊「……いいぞ、あとは会長に引きつけてもらって、俺達はこそこそ移動だ」

格闘士「だ、大丈夫なの、これー。すんごい揺れてるけど」

魔術師「しっ、叫んでなんだが、静かに素早く!」

斧戦士「……奥を見ろ、こちらに近づいてくる連中と、別の連中がいる」

盗賊「っしゃ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:57:15.30 ID:HfakbSzio<> タッタッタッ……

格闘士「しっかし、いくら先制攻撃をしたからって……」

斧戦士「……ああ、異常だな」

盗賊「完全に、最初の一匹は力で押し切ってたよな?」

魔術師「俺の魔法のおかげだな」

格闘士「……。あー、すごいすごいー」

魔術師「チッ、俺は会長の位置を把握するから、後方に下がるぞ」

盗賊「おっけ、おら、お前ら、速度を緩めるなよ!」

斧戦士「ああ。大丈夫だ」


ずしゃっ。


格闘士「あぶなっ」


格闘士が、落下してきた岩をとっさに蹴り飛ばす。


盗賊「お、おお。さんきゅ」

格闘士「……回復率は四半ってところか」ワキワキ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:58:55.36 ID:HfakbSzio<> 盗賊「! おい、見ろ、あそこ出口じゃないか」

格闘士「ナイス、一気に駆け抜けよーよ」

斧戦士「……ちょっと待った!」

盗賊「ど、どうしたんだよ」

斧戦士「誰かいるぞ、影がちらついている」

盗賊「……」ジーッ


斧戦士の言う通りだった。
竜が飛び出していった、強い光の方角に、何か覗きこむような動きを見せる者がいる。


格闘士「もしかしてさ、あの、プロの連中じゃない?」

盗賊「あ、そうか。一個を閉めたなら……」

斧戦士「もう一つを抑えてもおかしくはない、というわけか」

魔術師「……おい、何をしている!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:59:22.46 ID:HfakbSzio<> 魔術師「まずいぞ、ここでもたついていると――」

盗賊「あそこに敵影発見なの! どうするんだ!?」

魔術師「吹き飛ばすか!?」

斧戦士「バカ言うな、出入り口が埋まってしまう」

格闘士「ぶっ飛ばすしかないでしょ!」

盗賊「くそっ、出たところを狙い撃ちされたら、ひとたまりもないぞ」


会長「うおおおおおおおっ、こっちだ、こっち!」 ダダダダッ

「GYAAAAAAAA!!!!」 ずしん、ずしん、どしん――


斧戦士「……竜の一頭、あの竜だ、あいつが出入り口に向かおうとしている」

盗賊「だから!?」

斧戦士「タイミングを合わせて、同時に脱出するんだ。俺が盾代わりに斧を持つ」

斧戦士「格闘士、俺の背を飛び越して攻撃……いけるな?」

格闘士「行けなくても、ここで行くしかないでしょ!」

魔術師「俺は会長をフォローする!」

盗賊「よっしゃ、行くぞ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/19(火) 21:59:49.50 ID:HfakbSzio<> ――十三番隊。

召喚士「……」

商人「あ、あの、リーダー」

召喚士「どうしたのだ? 我々の任務は一先ず決着がついたはずだ」

魔法使い「ええ、まあ……帝国が戦争をふっかけてきたんなら、否応なしにどっちにつくかを決めなくちゃならないしね」

召喚士「そして、共和国は議論の末、といっても、大統領が決定権を行使したのだが……」

召喚士「戦うことを決めた、と」

魔法使い「ま、リーダーの謎の話術のおかげじゃないかしら」

商人「それはいいんだけど、どうして、私達、こんなところで野営しているの?」

召喚士「うむ……」

魔法使い「竜と戦うからでしょ。あるいは、学園長派の逃げ道を防ぐ」

商人「だからぁっ! なんで、竜と、戦うの!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/19(火) 22:01:05.81 ID:HfakbSzio<> 今夜はここまで。ここまでなんだ、すまぬ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/19(火) 23:41:17.88 ID:HF6dpr+AO<> 乙 <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:36:06.08 ID:qnnKyhS+o<> 商人「私たちの任務は、その、一先ず決着が着いたんじゃないの!?」

召喚士「その通り。ここから先は、いわばアフターサービスのようなものだな」

商人「あ、アフターサービスが一番大変そうなんですけど!」

魔法使い「うるさいわねー。共和国が、準備が整っていないんだからしょうがないでしょ?」

魔法使い「大体、あんただって喜んで報酬を受け取ってじゃない」

商人「えっと、あれ?」

魔法使い「元から共和国に要請を行うのはボランティア。あそこでもらった報酬は、帝国軍、および竜の監視に対する前払金」

商人「……」

召喚士「まさか商の道を司る者が、そのような有様とは」

商人「う、う、うるさい!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga<>2013/02/20(水) 22:36:38.81 ID:qnnKyhS+o<>
商人「あんたたちも、言いたいことはないの!?」

重装兵「ないな」

騎士「同じく」

商人「まあ、そうでしょうね、そう言うと思ったわよ」

召喚士「商人。考えて見給え」

商人「な、何を」

召喚士「元はといえば、我々に取っての今回の任務、君が発端だった」

商人「う……」

召喚士「責めているのではない。さらに底根をたどるならば、学園こそが元凶であり、いわばそこに入学した事自体が発端とも言える」

商人「いや、回りくどいのはいいんですけど」

召喚士「我々にとって、これは真実に近付く発端だった」

召喚士「あらゆる運命は、学園の崩壊に向かって勢い良く走りだしていた。もし竜に近づかなければ、無知のまま命を落としていたかもしれない」

商人「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:37:04.72 ID:qnnKyhS+o<> 召喚士「何らかの分岐を経たにせよ、学園の存立と歪みは、それぞれ成長してここに至った」

召喚士「それは結局をつけなければならないほど、崩壊する運命であった。だが、崩壊に際して、我々は真実に近づこうとした」

召喚士「だからこそ、いち早く……我々は他のどんな学生たちよりも、行動し、対抗しようとしている」

召喚士「そう、学園の本来の種である、冒険者を育てるという目的が、いまや芽を吹いて、歪みと滅びに巨大な綱を張っている」

魔法使い「……王国はともかく、共和国の情報不足は目に見えていたものね」

魔法使い「はっきり言って、私達が国を動かしたって言っても、まあホラ吹きにはならないわよ」

商人「……」

召喚士「ならばこそ、最後まで見届ける必要がある」

召喚士「真実を前にして、それを食すこともしないのでは、まったく不愉快という飢えは満たせないだろう?」

商人「……いやその、それとこれとは話が別っていうか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:37:30.63 ID:qnnKyhS+o<> 商人「大体! もし共和国が有り難みを感じているなら、そこで報酬もらって当然じゃないの!」

魔法使い「あー、そうね、そういや」

商人「こ、こ、このっ」

召喚士「ドラゴン・ウォッチングは商売にならないかね」

商人「むきぃーっ! ウォッチしている間に逃げ遅れるわよ!」

重装兵「諦めろ、動きがあったぞ」

商人「ひっ」

騎士「さて……手入れはしておくか」

召喚士「ふむ。では、各人、襲来する対象を観察しつつ、仕掛けを作動させる準備に入れ」

魔法使い「了解、了解」

商人「あああっ、納得出来ないっ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:38:02.13 ID:qnnKyhS+o<> 重装兵「むっ、リーダー、あれは竜ではないぞ」

召喚士「ほう……人間の、軍隊か」

騎士「どうする? 人道に反するのでは」

召喚士「では、到達する一歩手前で作動させよう」

魔法使い「おっけい、対竜型破壊兵器、第一段階作動!」


――魔法使いの言葉に応じて、装置が反応する。
仕掛けは至ってシンプルだ、巨大な投石兵器、ただし竜への攻撃を行うために、魔法が施してある。

投じられる岩に、火が灯る。そう、火炎岩を発射させるのだ。

支えに張られたロープを、重装兵が持つ。
上空にいる敵への攻撃だけに、距離と高度が求められるため、固定式の大型の投石器を持ってきたのである。(なお、商人が用立てた)


商人「ね、ねえ、もしかしてデモンストレーションでこれを使うつもりなの?」

魔法使い「そうでないと、実際、竜に効くかわからないでしょ」

商人「これすっごくお高いんだからね!?」

召喚士「よし、では、これより十一を数えて行動を開始する」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:38:27.84 ID:qnnKyhS+o<> 召喚士「風向きは良し。どうやら竜の動きはこちらには流れてきていないようだ」

魔法使い「そりゃそうでしょう。共和国なんて与し易しと見て、人間の兵隊をまず向かわせたんだから」

召喚士「なるほど。では、召喚魔法を使うのも、まだと見て良いだろう」

商人「つ、使うつもりなの?」

召喚士「おそらく、人生の中で、これほど力を振り絞る時は他にないだろう」

召喚士「我々は幸福だ。自らの命を賭ける時が、こうもはっきりと分かるのだから」

商人「全然幸福じゃないわよね!?」

召喚士「五」

商人「うおい!」

召喚士「四」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:38:53.86 ID:qnnKyhS+o<> 召喚士の視線が、重装兵に伝わる。

行軍は止まらない、何らの不安も感じていないようだ……。

召喚士が腕を振り下ろす。
グイッと引っ張られたロープが、巨大な錘を引きずり下ろし、それに引っ張られるようにして燃える岩が打ち出される。

ぐぅぉおんっ!!


召喚士「爆砕!」

魔法使い「はじけろっ!!」


召喚士の合図と同時に、魔法使いが発声する。
その掛け声にしたがって、空中に大きく放り出された岩が、その、上空で――爆発した。


ずっどぉんんん――!!!


燃え立つ破片が、速度を増した火炎が、八方に降り注ぐ! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:39:20.88 ID:qnnKyhS+o<> 間一髪、だろうか。
爆砕した岩の欠片は、地面に次々と突き刺さり、さらに岩場で赤々と燃え盛った。
ここが草地であれば、一挙に燃え広がっていたことだろう。

人の群れは、その足を止めていた、いや、逆方向に動きまわるものもいる。
それを、指揮者たちが必死になって食い止めようとする。
誰が想像できようか、本気で殺す気の――


召喚士「……よし」

商人「……」パクパク

魔法使い「自分でやっといてなんだけど、すっごいエグい」

召喚士「これならば、あの竜を相手にもなるだろう。ただ、距離と発見の速度が求められる」

召喚士「投石機を再度準備し直そう。あわせて第二弾、第三弾の装置を、使用出来る状態にしておく」

重装兵「了解」

騎士「了解、了解」

商人「……了解」

召喚士「……ふむ」

召喚士(高速で接近された時には、これらの装置は無力となる)

召喚士(そうなれば、私の召喚術が必ず必要になってくる)

召喚士(今度こそ失敗はしない、魔王の力でも借りて、竜の足止めを行ってやろう)

召喚士(……二度も三度も居場所を奪われては、たまらん) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:39:46.81 ID:qnnKyhS+o<> ――七番隊。隊長到着まで、後一日。

斧使い「はっ、はあーっ、あの、り、だー!」

天測士「なに!?」

斧使い「ほんっとに、大丈夫、なのか!?」

天測士「なにがよ!」

斧使い「こんなに駆けずり回っていて!」

天測士「大丈夫よ! 隊長たちが来るのは、あと一日のはず!」

狩人「わか、分かったからさー」ハーハー

占い師「き、休憩、ぷひ〜」

忍者「リーダー、さすがに少し急ぎすぎですな」

天測士「し、仕方ない、わね」ハァハァ

斧使い「はぁー、あ、占い師ちゃん、大丈夫?」

占い師「大丈夫、なわけが……」バタン

斧使い「うわー、倒れたー!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:40:12.35 ID:qnnKyhS+o<> >木陰。

占い師「……はっ」

狩人「あ、気がついたよ」

占い師「あ、わ、私」

天測士「……ごめんね」パタパタ

占い師「あ、リーダー……」

斧使い「全く、チームの体力を考えろっての」

忍者「いやはや、皆、ひところに比べれば随分と上がりましたぞ」

狩人「そうだーね。森に住んでた頃よりも体力ついたかも」

斧使い「そりゃあ、な?」

天測士「……いいえ。まだまだ足りないわ」

占い師「あ、うう」

天測士「あーいや、私がね、私の話」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:40:38.44 ID:qnnKyhS+o<> 斧使い「とりあえず、街の有力者とやらには大方声を掛けただろ」

天測士「うーん。まさか、あの、救護員、だっけ? の父親がその一人だとは思わなかったけど……」

斧使い「やたらとキレてたけどな」

狩人「それから、例の軍師さんに言われてたやつだーね」

天測士「ええ……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
軍師『うーん、怪しいって言われましてもネ』

天測士『そうよ、怪しいのよっ!』ダンッ

軍師『と言われましても。帝国で、学園長派の行動を制限させる、それが目的デスよね?』

天測士『その方法が怪しいのよっ! 私達を嵌めようとしてない?』

軍師『……そのつもりはないデスが、結果的にそうなるかもしれないですネ』

天測士『やぁっぱり隠しているんじゃない!』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:41:08.85 ID:qnnKyhS+o<> 軍師『隠していると言いますか、お宅の隊の忍者サンに聞いた方が良いと思いますケド』

軍師『帝国に、学園長がいるのではないかと』

天測士『なにっ!?』

軍師『なので、表舞台に引きずりだそうかなぁーとネ』

天測士『……えーっと』

軍師『「学園長一派が竜を操り、帝国に叛旗を翻そうとしている」……こんな噂をまき散らしながら』

天測士『……なるほど』

軍師『それで、天則士さんにはお願いがあるんデスけど』

天測士『……ちょっと待った!』

軍師『はい?』

天測士(結局、結局よ、学園長をぶっ倒せばそれで済むってわけじゃないわ)

天測士(学園と、各国は根深くつながっている。学生が犠牲になる流れを断ち切る必要はある) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:41:39.26 ID:qnnKyhS+o<> 天測士(そのために、こいつの作戦が役に立つの?)

天測士『……あんた、なんでそれを知っているわけ?』

軍師『情報網がね、ちょーっと他の人より広いんデス』

天測士『……ふん』

天測士『少なくとも、そのやり口がしっかり効果を発揮するためには、相当潜り込まないといけないでしょ?』

軍師『まあ、大丈夫デス、大丈夫』

天測士『本当に大丈夫、なの?』

軍師『ま、それでですね、お願いすることがあるんですケドね』

天測士『何よ』

軍師『多分、抑えどころは西になるのではないかと』

天測士『はぁー?』

軍師『……。学園長派を、西に逃げるんじゃないかと』

天測士『西に?』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:42:32.46 ID:qnnKyhS+o<> 軍師『西には、各国に属さない、商人達の街が広がってマス』

軍師『もちろん、天測士さんが奮闘されても、金次第でどうともなりますカラ……』

軍師『なので、王国、特務機関本部、共和国、帝国、それから学園の人たちが追い詰めたとしても……』

天測士『つまり、私たちの作戦には穴があるってわけね』

軍師『そうですね』

天測士『分かったわ』

軍師『察しのいい』

天測士『ちょっと待って』ピッ ダララララ……

軍師『……なんスカそれ』

天測士『……』ピーッ

「セッショクテン、ニチジ、オシラセシマス」

天測士『なるほど、四日後』

軍師『……』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:43:02.22 ID:qnnKyhS+o<> 天測士『いいわ、やって上げる』

天測士『その代わり、死ぬんじゃないわよ』

軍師『……大丈夫デスよ』

天測士『それで!? 隊長にはちゃんとそういうの伝達しないとダメでしょ!』

軍師『あ、は、はい。いや、他の隊長さん方にもお知らせするつもりでして』

天測士『よし、いいわよ!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
天測士「まあ、多分、へらへらしているけど、やることはやったみたいだしね」

斧使い「やり過ぎだぜ。まさか、帝国が戦争ふっかけてくるとは思わないじゃん?」

狩人「ああ、なんかどんどん大事になってくるね」

忍者「まったく」

天測士「……。ほら、あんた達は、休憩! 占い師が元気になったら、移動するわよ!」

三人『は〜い』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:43:28.82 ID:qnnKyhS+o<> 占い師「ごめんなさい……リーダー」

天測士「いや、こっちの方こそ」

占い師「私、おかしいな〜って思ってたんですよ」

天測士「え、何が?」

占い師「このチームで、私だけあまり役に立ってないというか……」

天測士「ど、どこがよ」

占い師「斧使いさん、は、武器を持ってて強いし〜、狩人さんは遠距離攻撃……」

占い師「それに、忍者さんには誰も、追いつけない……」

占い師「か、肝心な、情報収集でも、リーダーの天測には敵わない……」

天測士「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:44:20.12 ID:qnnKyhS+o<> 占い師「私、追いつきたいです」

天測士「あのね」

占い師「……はい」

天測士「私の天測は、ちゃんと情報入れないと回答がないわけ」

天測士「占い師が読みだしたものがきっかけになったこと、一度や二度じゃないでしょ」

占い師「それは、その……」

天測士「……ふふん、もちろん、この私にかかれば、運命など簡単なことよ!」

天測士「だ、け、ど! 七番隊の運命は、それこそ私だけにかかっているわけじゃないもの」

天測士「全員が、もっと強くならなくっちゃ、私たちはただ助けられるだけの人だっけ?」

占い師「ううん」

天測士「でしょ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:46:24.30 ID:qnnKyhS+o<> 今夜はここまで。許せ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/21(木) 12:16:48.80 ID:J8b0pRyio<> 乙乙。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/02(土) 23:04:26.45 ID:E8HUANmUo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/18(月) 21:17:46.75 ID:awnCT9tTO<> どうした。 <> ◆k.6bdeNTfg<>sage<>2013/03/19(火) 16:59:27.97 ID:fJiWpOIYO<> 絶賛不調中で、開けてしまってすみません…
とりあえず間に合えば今夜から! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:05:33.57 ID:QnHyln6jo<> 天測士「よっし、それじゃ、元気になったら……」

占い師「でも、リーダー」

天測士「な、なに」

占い師「なんだか、嫌な予感がするんですよ、私」

天測士「嫌な予感……?」

占い師「本当に隊長さんたちが来れるのかどうかとか……」

天測士「……」

占い師「ね、リーダー、もう一度、天測をしませんか?」

天測士「えっ、いや、でもさ、私の予測じゃああと一日で来るのよ」

占い師「そうですけど、私も手伝いますから〜」

天測士「……」

天測士「分かったわ。でも……忍者!」

忍者「ここに」シュタッ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:07:11.81 ID:QnHyln6jo<> 天測士「あんた、これまでの情報で、何か欠けているものを知らないかしら?」

忍者「ふむ。欠けているもの、ですか」

天測士「竜のことや、学園の裏のつながりは知ってたでしょ?」

天測士「他になにか……あるんじゃないの?」

忍者「ふむ。あると申されましても、どの程度をご存知なのかが知りませんので」

天測士「ああ、もう! 例えばあんたが気になっていることとかはないの!」

忍者「そうですな。あの軍師とかいう男、非常に気になります」

天測士「いや、あいつはさ」

忍者「我々は強行軍で町を駆けずり回りましたな」

天測士「……そーだけど」

忍者「それはなぜですか?」

天測士「そりゃ、帝国の西に学園長を追い込むから時間が……あ」

忍者「我々はこれしかない、という道を選ばされているのでは?」

天測士「ちょ、ちょっと待った!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:08:03.39 ID:QnHyln6jo<> 天測士「……マジ?」

忍者「彼奴の出身は大陸を離れた海向こうの国です。まあ、旧大国領土がどれほど荒れようと、痛くも痒くもありますまい」

天測士「まっずいじゃないのー!」

天測士「も、もしあいつの思惑通りに動いているとしたら……」

忍者「一網打尽の策に巻き込まれるでしょうなぁ」

天測士(ぐう〜、隊長に見張っとけって言われてたのに、見事に引っかかったと来たら……)


隊長『……はぁ、使えない女だな』

天測士『ち、違うわい!(´;ω;`) ちょっと騙されたフリをしていただけで……』

隊長『がっかりだよね』


天測士「……全員集合!」

占い師「え? え?」

狩人「なーにー?」

斧使い「おー、どうした?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:08:31.67 ID:QnHyln6jo<> 天測士「これから天測を開始する!」

斧使い「……は?」

狩人「いやいや、リーダー、そんなことやってる暇が……」

天測士「私を信じて!」

斧使い「……」

狩人「あーのさ」

占い師「やりましょう」

忍者「同意ですな」

天測士「よしっ!」

斧使い「せめて経緯くらい説明してくれよ」

天測士「だからっ、私達がハメられている可能性がひとつ!」

天測士「そして本当に隊長たちが来るのか、学園長一派が来るのかが分からないのがひとつ!」

天測士「私たちは、誰かに操られて動いているわっ!」

狩人「ええー?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:09:17.08 ID:QnHyln6jo<> 天測士「本格的な天測を行うわ、斧使い、機材はちゃんと持ち合わせているわよね」

斧使い「いや、それは一応、持ってるけど」

狩人「そんなあやふやな理由でやるってのもねぇ」

占い師「いいえ、私も感じるわ」

占い師「モヤモヤした不安が、はっきりと形を取り始めているっていうか、そんな感じの」

斧使い「よっしゃ、占い師ちゃんが言うなら間違いねぇや!」ドン

狩人「ええええ」

天測士「狩人、忍者、あんた達は、目的のポイントを偵察してくれないかしら」

狩人「えっと……先行しろってこと?」

天測士「ええ。放置は出来ないから」

忍者「承知」スッ

狩人「仕方ないなぁ……」

天測士「よろしく!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:11:17.03 ID:QnHyln6jo<> びゅぉおおおおおお……

斧使い「ひぃー、なんか変な風が吹いてきやがったな」

占い師「リーダー、これもしかして……」

天測士「竜が動いているのかもしれないわ」

斧使い「げっ、俺達にゃ、竜を相手に出来るような力はないぞ」

天測士「……」

天測士「上等じゃない」

斧使い「いやいや、そういうやる気は要らないって」

天測士「ふっふっふ、全力で逃げ回ってくれるわ」

斧使い「そっちかい」

天測士「私達をコケにしてくれたこと、後悔するくらい追い込んでやるわ!」

占い師「おー!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:11:50.24 ID:QnHyln6jo<> ――二十八番隊。『竜の谷』、クレーター付近。

御者「……おおーい!」

隊長「はーい!」

御者「停まるすよ! 前方、敵影あり!」


   ぐぅぅぅォォォォォ……


隊長「……竜だ」

剣士「よし」

救護員「よしじゃないでしょ」

剣士「交戦準備はしておくべきだ」

術士「……わざわざ竜と戦うの?」

隊長「いや、準備はしておいてね。準備は」

隊長「……御者さん! 様子は」

御者「いやぁ、それが何がなんだか。とにかく、次から次へと出てきているみたいなんすが」

隊長「次から次へ?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:12:25.27 ID:QnHyln6jo<> 言葉どおりだった。
竜が崖っぷちから飛び出たかと思うと、次々と空へ飛び立っていく。
その様子は、まるで洪水から逃げ出そうとするネズミの様である。


隊長「……」

御者「どちらにしろ、これ以上は馬じゃあ近づけませんよ」

隊長「了解、この付近に一番隊も向かったはずですんで」

御者「無茶はなさらないでくださいね」

隊長「当然」

隊長「……全員、出てきてくれ。術士、いつでも耐火結界を張れる準備を」

術士「分かったわ」

隊長「剣士が先頭、なるべく向こうに気づかれないように」

剣士「ああ」

隊長(――だが、こんな状態で間に合うか、一番隊は) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:13:00.79 ID:QnHyln6jo<> 救護員「はーいはい! 隊長、私は?」

隊長「……手当の準備、一番隊をいつでもサポート出来るように」

救護員「くぅ〜、了解!」

隊長「工兵、薬剤のカートリッジを。二人は後方にいてね」

工兵「おっけーよ。楽でいいなぁ」

隊長「よし、駆け足!」


ザッ、と駆けだす間にも、空に巨大な影が放たれていく。
だが、影はその場に留まるでもなく、ふらふらと飛び立っては消えていく。


隊長(竜たちには一貫性がないぞ。リーダーがいないのか?)

救護員「……あっ、隊長!」

隊長「静かに!」

救護員「うぇぇ? でも、あそこに人影が……」

隊長「なんだって?」

剣士「……隊長、ありゃあ、一番隊じゃないぜ」

隊長「……なんだって?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:13:48.96 ID:QnHyln6jo<> 剣士「ひ、ふ、み、十人か」

隊長「素直に考えれば、一番隊と一緒に行動しているプロの冒険者隊だな」

救護員「じゃ、じゃあ、一番隊を助けようとしているんじゃないんですかぁ?」

工兵「そうなの?」

剣士「待て。ストップだ」

隊長「どうしたの」

剣士「連中、武器を構えてやがる、それだけじゃない……」

剣士「……あれは、見覚えがあるな。竜の、餌だ!」

隊長「……!」

救護員「え? え?」

術士「どうしてあの人達が、対竜の道具を持っているのってこと?」

隊長「……武器を構えろ」

剣士「おう」グッ

術士「……準備します」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:14:42.40 ID:QnHyln6jo<> 救護員「たいちょー! どういうことなんですか?」ヒソヒソ

隊長「やつらは学園長派に雇われた冒険者だ。つまり、俺達の敵になる」ヒソヒソ

救護員「……おお!」ポン

剣士「ごちゃごちゃ言ってないで斬り込むぞ! このままじゃ一番隊は絶望的だ」

隊長「待て、連中は竜に気を取られている」

隊長「……工兵!」

工兵「あいはい」

隊長「爆雷管をありったけ打ち込んでくれ」

工兵「死んじゃうと思います」

隊長「いいんだよ。剣士が先行して斬りこんだら態勢を整えられる」

隊長「そんなことより、混乱させてまとめてぶっ飛ばそう」

工兵「死んじゃうのはいいのかなーって僕は思うよ」

工兵「ま、やるんだけどね」

隊長「術士、方陣術で一足飛びにやつらに近づこう」

術士「了解」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:15:33.22 ID:QnHyln6jo<> 隊長「竜がこちらに構う前に、まず連中を制圧する!」


隊長が言うと、全員が体に緊張を漲らせた。

早速、工兵が背負いカバンから爆雷管を取り出して、人の塊に狙いを定める。
術士が方陣符を地面に投げつけて、速度を上昇させる『台』を設置する。

けたたましい竜たちの叫び声の中で、工兵が爆発を起こそうとしたその時、剣士が制するように言った。


剣士「待て! あの崖の端から誰か出てくる!」

工兵「え、ちょ、間に合わないよ!」


がしゅっ、がしゅっ、ずどどど……!!

音を立てて雷筒が弾け飛ぶ!
一直線に煙を上げて、爆雷管が飛び出していったのだ。


剣士「くそっ、行くしかねぇ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:16:06.95 ID:QnHyln6jo<> 隊長「剣士!」

剣士「ああ! 後から来い、お前ら!」

術士「展開、1−7−5−3」


術士が封を切るようにして方陣を踏みつけにすると、『台』に駆け寄った二人が吹き飛んだ。
まるでジャンプ台を強く踏んだようだった。
前方に向かって異常跳躍した二人は、さらに次のステップで早くも煙の中に飛び込んだ。

何かが打ち込まれ、さらに何かが飛び込んで来た。
影達は、動けないでいた。

晴れる間もなく、剣士が剣をさっくりと振るう。
「ぎゃあああっ」と悲鳴、そして風で吹き飛びかけた煙の影に向かって、もう一度斬りつける!


隊長「右を頼む!」

剣士「ああ!」


隊長は鎖付きの撃ち出し槍を、迷うことなく左手に発射した!
びゅうっと風切り音が煙を切り裂き、「ぐげっ」という潰れたような声が鳴った。
手応えを感じ、鎖ごと引っ張って鉄槍を取り戻す。
ぐるりと回して目の前の人物を殴りつける――


冒険者A「お、お、お前ら……!」

隊長「ちゃんとしたセリフで頼む」ゴスッ! <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:16:35.79 ID:QnHyln6jo<> ――

剣士がさらに斬り上げる。するとその斬撃が、カチッという音でナイフを弾き飛ばした。
構わず振り下ろそうとした時、目の前の影が大声を上げた。


盗賊「うおおおおおい! お前、剣士だろ! 俺だよ、俺!」

剣士「誰だ?」

盗賊「盗賊さんですよ!」

剣士「……」

盗賊「ゆ、幽霊じゃないよな?」

剣士「どいてろ、殲滅の邪魔だ」

盗賊「殲滅!? いやいや、竜がいっぱいいてね、っていうか、冒険者さんたちを倒してどうする! あっ、そういや、こいつら俺らを閉じ込めたんだった!?」

剣士「……」

格闘士「出れた! 盗賊!」

剣士「チッ、うるさい連中だ。黙って見ていろ」

盗賊「あっ、格闘士、か、会長は!?」

格闘士「まだ中! 魔術師がフォローしてるけど……!」

剣士「……会長がいるのか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:17:02.29 ID:QnHyln6jo<> 隊長「剣士!」

剣士「ああ、先に連中を片付けるのが先だ」

隊長「ちゃうちゃう、さっさと穴に突入しろ」

剣士「いや、しかし……」

隊長「間に合わなくなったらどうする!」

剣士「……恩に着る」ダッ


隊長「あと三人……!」

冒険者B「くっ、なんなんだ! 竜が暴れるわ、ガキどもが襲いかかってくるわ!」

冒険者C「こんなことになるなんて、聞いてないわよ!」

隊長「そりゃおめでとう」

冒険者D「おっと、待てや!」ガシッ

格闘士「あうっ」

隊長「……ふー」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:17:28.66 ID:QnHyln6jo<>
盗賊「くそ、格闘士!」

冒険者D「動くな、お仲間をやられたくなければ……」

隊長「ああ、いいよ、別に。やっちゃってくれ」

盗賊「うおい!?」

冒険者B「仲間意識の欠片もないな……」

格闘士「はっ、はっ、か、構わないっての」

冒険者D「生意気なことを抜かしてるんじゃねーよ!」

隊長「いや、お前らに言ったんじゃないんだ」

工兵「はい」

『!?』


その場にいるほとんどが絶句、した。
まさか、人間の腕がカチリと外れて、しかも発光しているだなんて――


工兵「サンダービーム!」バババババババッ

『――! ――!』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:17:56.98 ID:QnHyln6jo<> 工兵「おー、なかなかの威力」ズバババババッ

工兵「もうちょっと延長しよう」

隊長「もう気絶しているぞ」

工兵「あ、そうかな?」パチッ


冒険者D プスプス

冒険者C ピクピク

格闘士 ガクガク


盗賊「お……お前……ら……」

救護員「……大丈夫ですかぁ! うわあ、ひでぇ!」

盗賊「誰のせいだと思ってんだー!!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/19(火) 23:18:28.94 ID:QnHyln6jo<> 今夜はここまで。最後までやります、頑張ります。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/19(火) 23:28:12.13 ID:WaNhsTh1o<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/20(水) 00:09:08.82 ID:dmqmZVB/o<> 乙だ! 頑張って! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/20(水) 01:53:59.89 ID:245DGQgpo<> 最大級の乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/20(水) 03:27:30.43 ID:iVgJ+vLAO<> 乙!待ってた! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/20(水) 07:50:16.16 ID:YuWoi5eHO<> なんという工兵の安心感…大変乙で御座います <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:11:46.21 ID:PLLEMlqlo<> ――洞窟内。

一体、いくつ斬り捨てたのか。それとも、ただぐるぐると回っていただけなのか。

会長が剣を杖代わりに寄りかかって息を吐く。
暴風雨のように、幾つもの巨大な影が飛び去り、打ち当たり、そして消えていった。

いつの間にか、目の前に巨大な影があった。
怒りに満ちた瞳、そして岩石のような皮膚が迫ってくる。

荒い息と鼓動を胸に、会長が剣を再び構える。
気づけば、体を包んでいた高揚感――魔法のことだ――は途切れていた。
魔術師が逃げてしまったのか、単に魔法が時間切れたか、それとも――

みんなは逃げ出せたのだろうか。


会長(俺はリーダー失格だな)


自嘲は心の中にのみ留め、息をすうーと思い切り吸い上げた。
睨み返す。

まるで最後を悟った人間のように、正対して剣を立てる。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:12:22.38 ID:PLLEMlqlo<> 正面から突っ込もうとした時、口顎に赤い筋が見えた。
男はそれを構わずに飛び込むようなフリをして、洞窟の壁を蹴って横っ飛びする。

地面に吹きつけるようにして吐き出された火炎が床を浚う間に、懸命に取っ掛かりに手をかける。
上方から、せめて後ろに、後ろにさえ回れれば。
壁面を這うようにして登ると、わずかに足のかかる穴が見つかった。

すると、竜が腕を振り上げ、会長をつかみにかかる。

会長は穴を蹴って勢いをつけると、その腕に飛びかかった。
剣を突き立てるが、しかし、腕の振りに押し飛ばされて、壁にたたきつけられる。


会長「ぐっ!」

「ぐぎゃああああああああああっ!!」

会長「げほっ、ふっ、わ、わかってるよ……」

会長「焦るな。これで、終わりだから」


剣先から、光が走る。
「奥の手」を使うなら今しかない。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:13:08.77 ID:PLLEMlqlo<> 一瞬、竜がうろたえた、その時だった。

竜の背を何者かが駆け上がってくる。
速い、というより、軽い。
軽快に跳ね上がってくるそれが、あっという間に首元まで到達したところで、竜がようやく異常に気づいた。

身じろぎして追い払おうとした、その首筋に刃が当てられる。


会長「け……」

剣士「どうした、早く斬れ」

会長「言われなくても!」


剣を静かに抜いた。
剣に纏った光のためか、するりと滑るようにして抜けた。
竜はそれに気づくこともない。
竜の腕を段々と二度踏んだ時、叫びを上げて巨体が揺すぶられた。しかし、もう遅い。

血を吐きながらも肩口まで到達すると、剣士と反対に刃を当てた。

剣士は、首を固定するように力を込める。
会長は、輝く剣でさっくりと――竜の首を薙いだ。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:13:36.88 ID:PLLEMlqlo<> ―――――― <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:15:12.49 ID:PLLEMlqlo<> 盗賊「……あっ!」

斧戦士「……ふうー」

盗賊「おい、会長はどうしたんだよ!」

魔術師「来る来る。もう、生きている竜はこの中にはいないよ」

盗賊「うおお……やっぱすげーな、うちの会長は」

魔術師「瀕死だがな」

盗賊「手当早く!」

救護員「はいはい、出てきてから手当しますよ」

隊長「そう焦らないで」

盗賊「誰のせいだと思ってんだよー!」

隊長「いや、おたくの会長が自分でやったことだし」

盗賊「格闘士は……」

工兵「手元が狂った。反省している」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:16:26.12 ID:PLLEMlqlo<> 隊長「……おっ」

剣士「……」ずるずる

隊長「お疲れ様」

剣士「早く手当してやれ」ドサッ

会長「う……」

救護員「ひぃー、忙しいけど役に立って嬉しいけど忙しいですよぅ」バタバタ

隊長「大丈夫なのか?」

剣士「ボロボロになるまで剣を振るってたんだ。大丈夫じゃないに決まってんだろ」

魔術師「手当に入ろう。回復の魔法をかける」

救護員「ああー、お水も用意してくださいねっ!」ドタバタバタ

隊長「術士、方陣術に回復するような陣はなかったっけ?」

術士「張ります。準備してくるわ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:17:15.70 ID:PLLEMlqlo<> 剣士「……疲れた。俺も座らせてもらう」ドカッ

隊長「洞窟の中はどうなっていた?」

剣士「ところどころ崩れかかっている」

斧戦士「……会長が暴れたからな。竜も大挙して逃げ出していったし、無理もない」

隊長「じゃあ、これでこの谷も竜が住めなくなったわけか……」

盗賊「何か問題でもあるのかよ?」

隊長「いや、追い詰められたら、何をするかわからないっしょ?」

盗賊「おっそろしいこと言わないで欲しいよなぁ」

魔術師「それよりも、あんた、なぜここにいる」

魔術師「死んだんじゃあなかったのか」

隊長「勝手に殺さないでくれよ」

工兵「それを言うなら、そっちこそよく生きていたね。竜の巣のどまんなかに入ってたってことでしょ?」

工兵「何なの? ドッキリでも食らったわけ?」

盗賊「正解!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:18:38.33 ID:PLLEMlqlo<> 工兵「へー、こっちが死ぬような目に会っている間にねー」

盗賊「誰が好き好んで命がけの遊びにチャレンジするんだよ! あいつらだ、あいつら」

工兵「あの焦げてる人達がどうしたの」

盗賊「だから、あいつらに嵌められたんだよ」

隊長「なるほど……」

魔術師「……ちょっと情報を整理しないか?」

斧戦士「ああ。その必要がありそうだ……」

隊長「そうしたけど、こちらも急いでいるんでね」

剣士「……隊長」

隊長「なんだい?」

剣士「俺が言うことじゃないかもしれんが、会長達は外のことを知らない」

剣士「俺は、やつが目覚めるまで待ったほうがいいと思う」

隊長「けどさ、学園長たちを逃してもいいのか?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:19:08.01 ID:PLLEMlqlo<> 術士「隊長、この場を収めないままでいるのはまずいと思うわ」

術士「そう、七番隊が向かっているのよね?」

隊長「あの作戦がうまく行ってるなら」

術士「だったら、追跡は彼らに任せて、私たちは態勢を整えてもいいんじゃないかしら」

隊長「……」

盗賊「何の話だよ」

魔術師「学園長が、どうしたって?」

隊長「あー、分かった分かった。一から説明するよ」

隊長「それに、そうだな。この黒焦げをそのままにしておくわけにもいかないだろう」

隊長「剣士、お疲れのところ悪いんだけど……」

剣士「ああ。縛り上げておくか」

隊長「終わったら、竜が戻ってこないか見てくれないか」

剣士「……チッ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/22(金) 23:19:34.88 ID:PLLEMlqlo<> 短いですが、今夜はここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/25(月) 10:41:42.20 ID:52D1HlY2o<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/26(火) 23:45:58.60 ID:CwqVTNdDO<> 乙。 <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 21:39:53.01 ID:1X+Y/1RXo<> ――――

盗賊「……ちょっと待ってくれ。学園が竜を飼ってた?」

格闘士「学園長派が裏で糸を引いていた?」

斧使い「……学園が竜に襲われてぶっ壊されたと」

魔術師「帝国が各国に宣戦布告……」

会長「ちょっと荒唐無稽にも程があるな。俺達が竜の巣に潜ってから、確かに長い時間が経ったような気もするが」

隊長「そうは言うけどなぁ?」

剣士「事実だ、実際にお前らが学園を出発してから、竜が押し寄せてきた」

剣士「その時、ちょうどうちの隊長が帰ってきたんだ」

盗賊「ってぇことは、学園でバッタバッタと竜を斬ってきたのか」

剣士「そんなわけあるか。逃げまわるだけで精一杯だった」

会長「……。ふーん」

剣士「何笑ってやがる!」

会長「いいや、昔のお前なら、そんなことを冷静に言ったりはしなかっただろう、と思ってな」

剣士「チッ!」

救護員「なにか、ホモホモしい空気を感じたんですが」

隊長「救護員は黙っててもらえるかな?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 21:47:32.87 ID:1X+Y/1RXo<> 隊長「その……焦げてる連中が、一番隊を閉じ込めたことからも分かるだろう」

隊長「今度の件、学園内に敵はいたんだ」

会長「……」

盗賊「はぁー……まあ、そんなこともあるかとは思っていたけどな」

魔術師「しかし、どうする? さっき術士に教わった方陣術を応用すれば、竜の火炎には耐えられる」

術士「……あれだけ苦労して覚えた術を……」

魔術師「よく練られた魔法陣だったから。ものすごくわかり易かったぞ」

術士「なら、いいけど」

魔術師「いずれにせよ、薬物なり、術なり、竜への強力な対抗手段は手に入ったわけだ」

斧使い「……正面は無理でも、張り合うことくらいは出来るかもしれんな」

会長「それなんだがな、ちょっと隊長同士で相談できないかな?」

隊長「ん?」

会長「まだ分からないことがある。二人だけで話をさせてほしいんだ」

隊長「分かった。じゃ、ちょっと肩を貸そう」

剣士「おい」

会長「ああ、いい。少し頭でっかち同士で話すべきことがあるってだけだ」

剣士「ああ、そうかよ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 21:56:06.85 ID:1X+Y/1RXo<> 会長「……よし、みんな遠ざかったな」

隊長「何かあるのか?」

会長「単刀直入に聞きたい。君、学園長って見たことある?」

隊長「いきなり何を言い出すんだよ」

会長「だからさ、俺、こんな役職に付いているのに、大体集会挨拶だのなんだのは、教頭だろ?」

会長「一度もお目にかかったことがないんだよね」

隊長「……なんとなく言いたいことは分かった」

会長「話が早くて助かる」

隊長「けど、存在してないわけじゃないだろう。教頭も含め、教師陣はいるって言ってんだから」

会長「そりゃ確かにそうだ。だけど、ここで問題なのはそういうことじゃない」

隊長「……」

会長「どうも気になる。君の想定だと、学園長は学園のためを思って行動しているんだろ。生徒を犠牲にしてはいるけど」

隊長「そうだな」

会長「そんな人が、生徒はともかく、学園そのものをぶっ壊すような真似を認めるかな?」

隊長「つまり、どこかで入れ替わりでもあったとか?」

隊長「いや、違うな。得するやつがいないんだ。今のままだと」

会長「そういうことだ。俺らは盤面遊戯上で言えば、対戦プレイヤー不在で駒を進めている」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 22:06:20.99 ID:1X+Y/1RXo<> 隊長「……」

会長「つまり、攻略法以前に、対戦相手を見定め切れていないからうまく動けていないんだ」

会長「……この作戦の目標はなんだ? 竜の正体を探り、その行動の目的を見つけることだ」

隊長「それは、もう会長の仕事だろう」

会長「そうかもしれない。けど、俺には竜がなぜこんな手に乗っかったのかが見えない」

会長「薬と餌で追いやられている。まあ、それもあるかもね」

隊長「竜自身が人間を利用している可能性もあるってこと?」

会長「その可能性だってある」

隊長「……いや。やっぱり、それでもおかしいぜ」

隊長「竜にとっちゃ、利益が少ない。行動だってデタラメだ」

会長「そうだな」

隊長「単に、全員把握できてないって可能性もあるけど」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 22:19:51.14 ID:1X+Y/1RXo<> 隊長「だけど、人間と竜が共倒れしたとして、一番喜ぶやつっているか?」

会長「分からない」

会長「けど、見たこともない人間を悪人と決めつけるより、竜が本丸の敵、と考えたほうが、すっきりするんじゃないか?」

隊長「いやそれは……」


『……海を超えるんデスよ』


隊長「――」


『踊り子、がいる部隊って言ったら――』


隊長「……」

会長「とにかく、俺としては竜を討伐する役に回りたいわけで――」

隊長「待った!」

会長「え?」

隊長「俺こそ、会長に聞いておきたいことがあった」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 22:45:58.54 ID:1X+Y/1RXo<> 会長「な、何を?」

隊長「会長、十七番隊の軍師って記憶にある?」

会長「軍師……? いや、そうだな。盤面試験で当たったくらいか」

隊長「やつがどこ出身だか知っている?」

会長「海の向こうの国、だろう。そのくらいは聞いたことがあるよ」

会長「……ちょっと待ってくれ。隊長、まさかその彼が、この事件の裏の首謀者だ、とか言い始めるんじゃないだろうね」

隊長「旧大国の領地が混乱すれば、得するのはそうでない国だ」

隊長「そういう意味では条件にひとつ当てはまる」

会長「竜が暴れた原因は? 彼にそんな力はないだろう」

隊長「もちろん、それは竜を生かしておいた『学園』内部の人間によるものだ」

隊長「けど元々、学園側が竜を利用した『挑戦』に出ようとしたのは、帝国が軍隊を正式に作ると言い出したから、と言われている」

会長「……」

隊長「学園と関係の深い帝国がそれに踏み切ったわけは何か。学生の成績ランキングの流出だ」

隊長「そしてそのランキングを作ったのが……十七番隊の踊り子、だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 22:57:12.50 ID:1X+Y/1RXo<> 会長「さすがに突拍子がないぜ。一学生が、学園を動かすように仕向けたって?」

隊長「火種を作るだけなら子どもでも可能だ」

隊長「ましてや、学生といえど、俺達は冒険者の卵だぜ?」

隊長「各国の情報に気を配りながら、最悪のタイミングで様々なものを暴露することは、十分に可能なことだ」

会長「……」

隊長「何か、会長でも気づいたことはないのか」

隊長「俺は確証がほしい」

会長「……彼が、試験の時から多少『調整』をしていることは目に取れたよ」

会長「なんていうのかな、動きやすい立ち位置を見計らっているのは知っていた」

会長「だが、それとこれとは話が別だ」

隊長「他になにか」

会長「……そうだな。一つある」

隊長「どんな?」

会長「その、ランキングがどうのって話だ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 23:12:29.26 ID:1X+Y/1RXo<> 会長「あれの出処をめぐって処分があったというのは少し聞いている」

会長「ただ、その首謀者ってのは判然としなかった」

隊長(あいつも大概怪しいんだよなぁ……)

会長「そこに軍師が絡んでいるというのは聞いているよ」

隊長「それは知っている。やつ自身が、踊り子をかばうために云々、と口にしていたから」

会長「そう? 学園が調査した時の、証言者になったって話なんだけど」

隊長「……わざわざそんな役まで買ってでたのか」

会長「俺はてっきり、彼が犯人で、自首でもしたのかと思っていたんだ」

会長「ところが、十七番隊に何かお咎めなり、事実関係の調査なりが入ったという話は入ってこなかった」

隊長「……」

隊長(学園長に接触する機会はあったわけか) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/27(水) 23:12:56.95 ID:1X+Y/1RXo<> 今夜はここまで。
頑張って更新するぞ(願望 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:14:56.97 ID:ozZ8Z15xo<> 会長「しかしな、俺には同級生や先生を疑うなんてことは……」

隊長「会長……」

隊長「あんた閉じ込められてたじゃん」

会長「……そういえば」

隊長「あのな、はっきり言うけど、この件に関しちゃ俺らは被害者よ」

隊長「会長は聖人ぶりたいのかもしれないが、こちとら殺されかけて頭に来ているんだ」

隊長「学園長だろうと、軍師だろうと、敵対するならぶっ潰す」

会長「荒っぽいな」

隊長「正直な話、自分ひとりならまだいいんだぜ」

隊長「だけど、うちのメンバーは軒並み傷ついた。工兵なんか腕がふっ飛ばされてるんだ」

会長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:21:51.38 ID:ozZ8Z15xo<> 隊長「俺は会長とは違って、お人好しじゃないよ」

会長「そりゃ、俺だってそうだ」

隊長「なら、先生や同級生が相手でも容赦なくぶん殴れるかい?」

会長「ううん、しかしなぁ」

隊長「いや、別に一番隊が竜の足止めをしてくれるなら、それはそれでいいんだけど」

会長「……よし」

隊長「どうするんだ?」

会長「分かった。君にかけてみよう」

隊長「へ?」

会長「一番隊は君の指揮に従うよ。命を助けてもらったわけだしね」

隊長「……そりゃ心強いが」

隊長(ううっ、この人はキラキラ系でやりづらい!) <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:26:32.40 ID:ozZ8Z15xo<> 救護員「……た、隊長ーっ!」ダカダカダカッ

隊長「どうした。まだ話し合い中だよ」

救護員「あのっ、あのっ!」

会長「落ち着いて、深呼吸」

救護員「すーはー」

会長「すーはー。で、どうしたの?」

救護員「天測士がっ! で、竜が! わーって!」

隊長「落ち着いて言おうな。まず天測士がどうしたんだ?」

救護員「こっちに来てるんです! で、竜も一緒に近づいてきているんです!」

隊長「いや、竜はついさっき、追い出したじゃない……」


天測士「隊長はいるの!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:32:08.15 ID:ozZ8Z15xo<> 隊長「……ここにいる」

天測士「いよっしゃー! 逃げるわよー!」

隊長「説明をしてくれないか」

天測士「竜に! 追われて! いるから!」

会長「分かりやすい説明をありがとう」

天測士「……会長!? なんでこんなとこにいるの!?」

会長「ええっと、竜を討伐に、行ったわけだよね。俺は」

天測士「あーそう! おっけ、分かった!」

天測士「とりあえず、急いで!」

隊長「――」


隊長が目を凝らす。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:37:43.25 ID:ozZ8Z15xo<> 吹き付ける風に髪を抑えると、遠くから大群が、まばらに、しかし確実にこちらを目指しているのが見て取れた。
竜。

忌々しい、強大な魔物。
人間と相容れない存在。


隊長「天測士」

天測士「なに!? 早くしないとこっちに追いついちゃうわよ!」

隊長「分かった、走りながらで聞く」

隊長「救護員!」

救護員「はいはい!」

隊長「負傷者を馬車に乗せて、出発の準備」

救護員「了解ですよぉ!」

隊長「会長、急ごう」

会長「ああ」

隊長「悪いが、ここで置き去りにして戦っててくれ、なーんて指揮は取らないぞ」

会長「分かってるって!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:43:11.62 ID:ozZ8Z15xo<> 隊長「天測士」

天測士「何!」

隊長「なんでここにいる? 竜がどうして追っている?」

天測士「あーもー、察して!」

隊長「説明を怠るんじゃありません」

天測士「……私たち、あいつの作戦に乗ってたわけよね!?」

隊長「軍師の」

天測士「うん! で、やっぱり怪しいじゃない!」

隊長(しかし、乗るしかなかった。遅れていれば、一番隊は壊滅していたし)

天測士「だから、もう一度、動きを予測しようと思ったわけ! 学園長のね!」

隊長「……それで?」

天測士「それで――あー、斧使い、遅い!」

斧使い「む、無茶言うんじゃねぇ、占い師ちゃんを抱えて、お前らに、ついてけとかっ……!」

隊長「抱えて走ってきたのか」

斧使い「おっ、隊長!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:49:40.51 ID:ozZ8Z15xo<> 隊長「おお。無事だったか?」

斧使い「まあな、今は瀬戸際だけどな、はははっ!」

天測士「笑ってないで、早く!」

斧使い「ま、まだ走るのかよ……」

占い師「あのぉ〜、リーダー、私、もう……」

天測士「諦めちゃダメよっ!」

隊長「馬車に放り込んでくれ。怪我人がいるから手当も必要だし」

占い師「ううう、すみません〜」

天測士「サンキュー!」

隊長「それで、学園長の動きを予測して、どうなったんだ?」

天測士「ええ――」カチッ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:50:07.95 ID:ozZ8Z15xo<> ――

『ガクエンチョウノ イキサキ ハレ。ヒガシノ ホウガクヘ チョウキョリ。リュウノ イドウニヨル クズレル オソレ ナシ』 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 22:56:53.32 ID:ozZ8Z15xo<> 天測士「――っていうわけなのよ!」

隊長「……」

天測士「西に追い込むつってんのに、このザマとかね!?」

隊長「そういうことじゃあないと思うよ」

天測士「そりゃ当たり前よ! それで、次に、竜の移動についても天測をしたわけ!」

天測士「何しろ、天候を変えちゃう要因になるわけだし、こっちの方が容易ってものよ!」

隊長「その結果が、これか」


  ぐぅぅぅぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおおお……――――


天測士「私のせいだっての?」

隊長「そうは言わない。つまるところ、俺達は西の谷間のところで竜に嬲り殺されるところだったってわけだな」

天測士「まあ、ちょっと、ねー……!」

隊長「……?」

天測士「そ、そういうわけよ!」

隊長「天測士、もしかして……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 23:05:12.06 ID:ozZ8Z15xo<> 天測士「別に、見に行ったうちのアホが、待機していた竜に気づかれたとか……」

天測士「そういう、そういう……!」

隊長「はぁ……」

天測士「ため息をつくなー!」

隊長「七番隊って、忍者がいたよね? 彼は偵察行動が得意だったような気がするけど」

天測士「……狩人よ」

隊長「獲物に気づかれる狩人もいるもんなんだな」

天測士「むっきー! だったら隊長はどうだって言うのよー!」

天測士「ここに来てたってことは、二十八番隊も軍師のやつに乗せられたわけじゃない!」

隊長「実際、一番隊が心配だったから、乗らざるを得なかったのさ」

隊長「学園長が来てれば御の字だったんだがな……」

天測士「屁理屈! 前髪!」

隊長「一体なんの罵倒なの?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 23:33:57.55 ID:ozZ8Z15xo<> ――

軍師「さ、学園長サン、もうすぐ特務機関本部ですヨ」

学園長「うむ……」

学園長「今、こっちの方面なら、手薄になっているはずだ」

学園長「それに私としては、特務機関の方がつながりはあるからな」

軍師「ええ、ええ。ただ、どこも長居はしないほうがいいでしょうネ」

軍師「少なくとも、旧大国は全域的に危険な土地になりマスし」

学園長「そうだな……」

軍師「それで、正式に我が国への招待を受けてくださるのデスよね」

学園長「ああ」

軍師「それは良かった」

軍師「学園の、教育指導技術は、なかなか他に代えがたいものですカラ」

学園長「……そうだ。教育の力とは偉大なものなのだ」

学園長「今の学園の生徒にも、まさに勇者の素質を持った者はいる」

学園長「しかし、それだけではダメだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 23:37:27.09 ID:ozZ8Z15xo<> 学園長「困難を乗り越えなくては人は成長できない」

学園長「君も知っているだろう、竜を、残したのは――」

軍師「はい、存じてマスよ」

学園長「これは試練なのだ。人間に与えられた」

学園長「これを乗り越えるべき人間は、若い世代でなくては」

軍師(同じ事の繰り返し……)

軍師(申し訳ないスけど、技術知識体系を絞ったら用済みですネ)

学園長「君、それで、知っているかね……」

軍師(……ま、言われたことをやるだけデスね、こっちは)

軍師「さ、ほら、着きますよ――」


―――― <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/03/29(金) 23:38:02.00 ID:ozZ8Z15xo<> ここまで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/31(日) 10:39:50.50 ID:C6wFdLODO<> 乙。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/04/13(土) 17:19:35.10 ID:DceaoBUAO<> 待つ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/04/14(日) 03:17:14.77 ID:cy2/n6Lso<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/04/14(日) 22:31:19.37 ID:DgLEwWbBO<> すまぬ…必ず書く… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/04/15(月) 06:39:08.52 ID:4hfU2iQoo<> 頑張れ、待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/04/27(土) 10:26:07.57 ID:hZmgeSHIO<> ま、まだか。。。 <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:31:26.94 ID:M8MAPbVAo<> /(^o^)\ スランプに出張がドハマリして親父が入院した件。gdgd言ってても始まらないから、少しだけでもアップしていくよ〜 <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:32:22.07 ID:M8MAPbVAo<> ……過去。

戦士「……おい! 本気で言ってるのか?」

賢者「本気さ、これでも先読みに関しちゃ一家言あるってもんよ」

戦士「無理に決まっているぞ、共存なんて」

戦士「何人死んだと思ってんだ!」

賢者「大丈夫さ。人間はそうヤワじゃない」

勇者「絶滅まで追い込まれただろ、馬鹿」

戦士「そうだ!」

賢者「いやさ、そうは言うがな。万一暴走しても大丈夫なように――」

戦士「おい、勇者、なんとか言ってやってくれ」

勇者「……」

賢者「勇者、お前だって思うだろう、弱者は強くならねば」

勇者「弱いから弱者なんだろ」

賢者「……しかしな」

戦士「俺だって、竜を倒したところで、新たな脅威が生まれるかもとは思うさ」

戦士「だが、お前の言っていることはめちゃくちゃだ!」

勇者「そうとも限らねぇよ」

戦士「なに?」

賢者「だ、だろ!」

勇者「別に肯定したいわけじゃないんだけど」

賢者「(´・ω・`)」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:33:07.93 ID:M8MAPbVAo<> 勇者「簡単な話だ。大国家、今は旧大国か。竜の繁栄の隙を突いて生まれた国だった」

勇者「人間が天下を取ったこの代表国が、一体何をやったのかね?」

戦士「そ、そりゃ……」

賢者「同じ人間を支配し、抑圧した」

勇者「だろー?」

戦士「しかし、そりゃ暇を持て余していたから……」

勇者「故郷がある戦士にゃ分からんだろうが、村を焼き払うのは竜よりも人間の方が多かったぞ」

勇者「竜にしちゃ人間なんか取るに足りない存在だけど、人間同士は違うもんな」

戦士「……お前ら、孤児だってことを気にしているのか」

勇者「気にしているのは周りじゃん」

賢者「そうそう、何かにつけて文句言うよな。貴族とか王様って」

戦士「だからか? だから人間はなんとか、みたいなことを言い出すのか?」

賢者「ち、違うわい! そういう予測が出ているんだ」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:33:58.84 ID:M8MAPbVAo<> 勇者「俺が言いたいのは簡単な話よ。竜王は殺す。確実に」

勇者「そして、それ以外の連中をどうするのか、虐殺するつもりはねぇってこと」

戦士「……」

賢者「そ、そうか!」

勇者「だからって共存しようとも思わないな。逆らう連中はガチで対抗する」

賢者「えぇぇ〜?」

勇者「ええ、じゃなくってさ。で、提案はある」

戦士「提案?」

勇者「ああ。賢者が言う共存を探ろうとは思わないけど、後世の連中が強くなるのは大賛成だ」

勇者「だから、それぞれ人材を育成するってのはどうだ?」

戦士「じんざい」

賢者「いくせい」

戦士「……お前も相変わらず突拍子もねぇな」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:34:27.83 ID:M8MAPbVAo<>

勇者「俺ら、同じ学園だったろ。そんだから、一緒に集まれたじゃん」

戦士「それは……そうだが」

賢者「まーねー。勇者が友達に入れてくれなかったら、女との付き合いもなかったかもしれんし」

戦士「だからって身内できゃっきゃすんじゃねぇ」

賢者「してないもん!」

勇者「うるせぇよ、馬鹿」

賢者「あれれ? 嫉妬? 嫉妬ですか?」

勇者「よーし、殴っちゃうぞー、嫉妬に任せて殴っちゃうぞー」

賢者「タンマ! 人材のね、育成ね!」

勇者「あー、そうよ」

戦士「要は、竜を倒せる人間をたくさん作ろうってことか?」

勇者「そういうこと」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:35:07.60 ID:M8MAPbVAo<> 勇者「なんつーか、俺らだって不死身のヒーローじゃないだろ」

勇者「ましてや竜相手に何度か戦ってきて、結構自信も傷ついているしな」

戦士「お前にもメンタルが傷つくことがあるとは驚きだ」

勇者「うるせ」

賢者「ふっ、まあ、所詮は勇者ちゃんってところだな」

勇者「何いってんだ」

賢者「そんなら、学園みたいなのをもう一回つくろーぜよ!」

戦士「そりゃお前一人でやれ」

賢者「えっ」

勇者「そーだな。それぞれ教育機関を作って、どこが一番優秀なやつが出来るか勝負ってのも面白そうだ」

賢者「ちょ、それ、その」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:35:36.06 ID:M8MAPbVAo<> 勇者「ま、とにかくは竜の王だ」

戦士「そうだ、目の前のことにもう少し集中しろ」

賢者「ちぇー、しょうがない。行動予測を立てるからちょっと待ってておくれ」

勇者「おう、早く頼む」

賢者「ふふん、俺にかかれば運命など簡単なことよ」

勇者「そうかい」

賢者「なんか勇者冷たくねぇ!?」

戦士「いいから早くしろよ」

賢者「天国の父さん母さん、仲間が今日も冷たいです……」

勇者「……」

勇者(竜との共存、ね)


―― <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:36:17.25 ID:M8MAPbVAo<> 召喚士「おかしい」

商人「リーダーの頭が?」

召喚士「そうではない。時間が近づいてきているのに、竜の動きが見えない」

魔法使い「そりゃ……まだ時間になってないからじゃないかしら?」

召喚士「空を見よ。竜とは破滅、極端な変動、それらを意味している」

召喚士「つまりは、天候が大荒れになってしかるべきなのだ」

商人「……風は強いようだけど」バタバタ

召喚士「ということは動いているということだ」

召喚士「しかし――」


召喚士は言葉を切った。
敵の行軍は止まっている、何しろ、対竜用の兵器の威力を目の当たりにしたのだから。
しかし、それらは退却はしたものの、攻撃範囲の外に出たところで、じっと動かない……。

伝令が走っている、しかし、それらは彼ら全体を動かすものになっていないのだ。

はっと顔を上げた。


召喚士「――魔法使い」

魔法使い「何?」

召喚士「進軍しよう」

魔法使い「は!?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:37:25.40 ID:M8MAPbVAo<> 商人「ちょちょっと、リーダー! いきなりなんなの?」

召喚士「見誤っていた。ここには重点が割かれていない」

魔法使い「あの……説明してもらわないと分かんないわ」

召喚士「分からないか? ここに竜は来ない」

召喚士「竜は、大戦力だとばかり思っていた」

騎士「それは事実ではないのか」

召喚士「事実だ。だが、当てられる箇所が違うのだ!」

商人「だから、どういう意味?」

召喚士「……遠視鏡を用意してくれ、早く」

商人「な、なんなのよ、もう」タタッ

魔法使い「リーダー、当てられる箇所ってどういうこと?」

召喚士「いいか、竜という戦力は誰が操っているのだろうか?」

魔法使い「そ、そりゃ、学園長……じゃないの?」

召喚士「そのとおりだ。だとすると、彼の目的は一体何になると思う?」

魔法使い「えっと……帝国で財をなす、じゃないわよね」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:38:19.37 ID:M8MAPbVAo<> 召喚士「だとしたら、各国に戦争を吹っかけるはずがないだろう」

魔法使い「……」

召喚士「争いを起こすことが目的か? だとしたら、学園に竜を放ったままにしておけばよい」

召喚士「彼は、やはり、帝国からも逃げ切ろうとしているのが目的だろう」

魔法使い「だから、そのためにこうして私達が」

召喚士「しかし、だ。そのためにどうするのか、なのだ」

召喚士「協力を申し出ておいて、帝国から逃げ出そうとする時、そう簡単に逃げさせてくれるものでもないだろう」

召喚士「協力には強力が働く、一度結びついたものを振りほどくには――」

商人「はいはいっ、双眼だけど!」ダダダッ

召喚士「む。ありがとう」チャッ

召喚士「……」

魔法使い「な、何が見えたの?」

召喚士「予想通りだ……!」


見えたのは、赤く燃える空。

帝国帝都が、真っ赤に燃えている――。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:41:16.45 ID:M8MAPbVAo<> 召喚士「これが決定打だ。共和国の人に伝えてくれ、これから帝国に攻め入ると!」

魔法使い・商人『はぁぁああ!?』

召喚士「幸いにして、我々はもっとも竜に対向する武器を取り揃えている部隊だ」

召喚士「戦うなら、今」

騎士「了解」

重装兵「了解」

商人「了解じゃねぇよ! それは冒険者がやることではないでしょー!?」

召喚士「だから、此処から先は私が行こう」

魔法使い「そ、それはもっと無茶ですって」

召喚士「近づきつつ、方陣を展開する」

召喚士「こちらに気づく前に、対竜兵器を召喚すれば、五分に持ち込める」

騎士「一人では無理だろう。最後までお供する」

重装兵「当然だな」

召喚士「得がたいことだ」

商人「アホかッ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:41:48.50 ID:M8MAPbVAo<> 召喚士「なんと言おうと構わない。ここで、十三番隊は解散ということにしよう」

魔法使い「そういう問題じゃないでしょ?」

商人「そ、そうよ!」

魔法使い「まさか、ここまで来て、置いていくつもりがあったなんて思ってなかったわ」

商人「そっち!?」

召喚士「無論、兵器の移動や行動は、共和国の警備隊達にお願いする」

召喚士「我々がすべきことは、これらを呼び寄せることだ」

魔法使い「だから、私がいらないっての?」

召喚士「そういう意味で言ったのではない」

魔法使い「似たようなものでしょ」

召喚士「違う!」

魔法使い「……」

召喚士「……」

商人「ちょっと待ちなさい! 大体、アレ、『レンタル』なのよ!?」

召喚士「なんだと?」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:43:00.36 ID:M8MAPbVAo<> 商人「もしかして、レンタル代どころか、補償費まで私にけじめツケさせる気!?」

召喚士「そうか……」

商人「だ、だから、こういった兵器は、どちらかと言えば待ちのタイプであって――」

召喚士「すまないが、その点は泣いてくれ」

商人「もう泣きそうよ!」

召喚士「よし、では、魔法使いも、来るなら来てくれ」

魔法使い「はいはい」

召喚士「急ぐぞ、出来れば帝国軍も巻き込んでしまいたい」

商人「おい!!!!!」

騎士「諦めることだな」

重装兵「運がなかったな」

商人「お前ら!!!!!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/04/27(土) 23:43:51.81 ID:M8MAPbVAo<> 今夜はここまで。明日もできれば。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/04/28(日) 02:50:19.75 ID:9T++iIGAO<> 乙。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/05/07(火) 17:57:48.69 ID:X/tkxU1ko<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/05/17(金) 09:49:30.38 ID:ahQfFGsAO<> 待つぞ <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/05/26(日) 21:05:26.60 ID:HjC2Nr0Fo<> がんばりたい、あと少し、構想はできてきているので…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/05/26(日) 21:50:29.93 ID:pRHS10kFo<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/05/27(月) 15:09:31.34 ID:evoIA3lOo<> 期待してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/06/04(火) 15:43:20.03 ID:XHQk6F4AO<> パンッ
学園戦隊を知るもの来たれ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/06/21(金) 12:46:33.85 ID:5nOBRF7io<> そしてまだか <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/06/26(水) 23:30:46.61 ID:DcgRtKMEo<> test <> ◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/06/26(水) 23:48:10.79 ID:DcgRtKMEo<> 隊長「列を乱すな! 目標まで走りぬけ!」

剣士「追い込まれているぞ!」

隊長「一直線だ! 風上まで、とにかくできるだけ高い方へ!」

天測士「ちょっとちょっと! 飛べる、連中に、高さで勝負しても無駄でしょ!?」

隊長「保険だよ、保険」

隊長「……工兵!」

工兵「あいさーい」

隊長「準備してくれ」

工兵「いつでもオッケーだろ。注射用の竜毒のストック」

隊長「いや! 何か一つにまとめられないか、爆雷管と」


  ぐぅぃぃぃぉぉおおおぉぉぉぉ……


工兵「うわっぷ……なんだって?」

隊長「ひとまとめにしてくれ。まとめてブッかける」

工兵「いやあの」

剣士「おい、体内に注射しなけりゃあ、効きが薄いだろう!」

隊長「この際、一匹、一体を葬っても意味がないんだ! 幸いにして、連中はこっちを追い詰める気でいる!」

会長「……追い詰めるなら、相手も自然とまとまるものだからな」

隊長「その通り――術士!」

術士「いるわ」

会長「魔術師」

魔術師「俺も?」

会長「タイミングを測って反転して結界を張るんだ」

隊長「竜の火炎に耐えられる、アレ」

術士「……分かったわ」

魔術師「走りながら術式を構成すると結構たいへんなんだぞ……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/06/26(水) 23:53:02.00 ID:DcgRtKMEo<> 隊長「工兵、準備出来たか!?」

工兵「さすがに、この短時間でこれ」

工兵「あーもう! 御者さん、もうちょい揺れないで!」

御者「無理っすよ!」

工兵「……隊長……」

天測士「ちょっと待った! 全部、使うんじゃないわ!」

隊長「出し惜しみしている場合か!?」

天測士「ノーノー、うちには射撃部隊がいるから」

狩人「独りだけど……」

隊長「工兵、一瓶」

工兵「無理ばっかり言うね!」ぽいっ


怒号、足音、息遣い――
すべてすべて風に孕ませながら、人の群れは崖を駆け上がっていた。

そして、それを追う、竜たちも。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/06/27(木) 00:06:13.66 ID:OBM4l3/Oo<> ズズん!

「GUGYAAAAAAAAAAA!!!!」


御者「まずいっすよ、アタマ飛び越えられました!」

隊長「チッ、やはり機動力はあちらが上だな」

剣士「タイミングは」

隊長「ま、まだだ……」

剣士「なら押し通るぞ、速度を緩めるんじゃねぇえ!」ダダッ

斧戦士「なら前衛の仕事だ」

斧使い「うっしゃあ、ヤルシカネー!」


剣士が迷わず飛び出たのに続いて、負傷したものも前に出る。
何か策があるわけではない、正面から竜の腿に飛びつくと、剣を突き立てて反動で伸び上がった。

一瞬、竜が怯む。

まさか、距離をとるでもなく、そのまま飛びかかってくるとは――遅れた判断の直後、足元に斧が打ち込まれた。ちょうど大木を切り倒すような打ち下ろし。
慌てて前肢と、尾で振り払おうとしたその時、目の前に剣が迫っていた。


剣士「ふんッ!」 ズブッ

「GYAAAAAAAAAAA!!!!!!!」


振り払おうとした顎に、二撃目。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/06/27(木) 00:16:23.09 ID:OBM4l3/Oo<> 隊長「すぐ横だ! すぐ脇を通れ!」

御者「あいっさー!!」ビシッ

隊長「足元をすり抜けろ! 避けることだけ考えろ!」

天測士「みんな、体を低くすんのよー!」

会長「落ち着いてかわせ、向こうは闇雲に暴れているだけだ!」


斧使い「あと一撃!」

斧戦士「欲をかくな、時間が足りん」

斧使い「ちぇっ、動きを止めるんじゃあなかったか」

剣士「十分過ぎる」

斧使い「え?」

斧戦士「……早く行くぞ」

斧使い「な、なに、褒められたのか?」

剣士「……」ダダダッ


痛みと視界を奪われた苦しみから、先んじていた竜が狂ったように暴れだした。
尾撃も当たらない――むしろ、後から押し寄せてきた仲間に――ぶつかった。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/06/27(木) 00:17:08.88 ID:OBM4l3/Oo<> よし、まだ書けるな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/06/27(木) 03:04:25.29 ID:txcaf/CAO<> 乙。頑張れー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/06/27(木) 03:05:59.79 ID:txcaf/CAO<> 乙。頑張れー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/06/27(木) 11:46:51.61 ID:xRDjUuPso<> まだまだ書けるとも!
頑張れ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/07/02(火) 22:44:38.25 ID:jqz2YmkQo<> 会長「はっ、はっ、おい」

隊長「なんだ?」

会長「気づいた、か? 追い込まれているぞ……」

隊長「ああ、包み込むようにして迫ってきている」

隊長「前方をいくら突破しても、この先は崖だ」

天測士「は、羽でも生えてなきゃあ、落っこちるしかないものね!」

隊長「なんだ? 落ちたいのか?」

天測士「冗談、やめてよ!」

隊長「冗談じゃなくって、ひとつの案だ」

天測士「……はっ、はっ、マジ?」

会長「怪我人を抱えて跳躍するのは無理だ」

隊長「だろうね」

天測士「おい……」

隊長「……もうそろそろだ」

会長「それは、いい。だけど、やつら、このまま、文字通り追い落とすつもりじゃあないかな」

隊長「火炎を防ぐどころじゃないって?」

会長「ああ」

    御者「隊長さァ――ん! 道の奥は切れてますよぅ――!」

隊長「ギリギリで止まってくれ!!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/07/02(火) 22:55:39.23 ID:jqz2YmkQo<> 隊長「術士!」

術士「いつでも」

隊長「攻撃を織り交ぜることは!?」

術士「無理です」

魔術師「俺がやるわ」

会長「格闘士、魔術師を支えておいてくれ」

格闘士「いいよ」

剣士「――怪我人にさせるような真似か?」

会長「最後尾にいたんじゃなかったかな、お前」

剣士「はっ、隊長、それで?」

隊長「合図をする、三度目のタイミングで暴れてくれ!」

剣士「分かった、ボスクラスでいいんだな?」

隊長「出来るものなら!」

剣士「じゃあな……」ダッ

天測士「あんたの、とこ、大概、化け物、ね」

会長「羨ましいな、ここに来て自由に剣を振れて」

天測士「大人しく指揮してなさい!」


足音が激しさを増す。
誰もが崖の向こう側すら飛び越える勢いで、走り続けていた。

誰が、何の指示を得たのか、次々と張り上げて、我はと叫ぶ。
頂点にたどり着くまでの一瞬の間、三名の隊長達が声を張り上げた。

<>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/07/02(火) 23:09:20.28 ID:jqz2YmkQo<> 走る一団には、ある行動が確かに見えた。
一つは頬にマスクを括りつけ、全身に羽織れるものを手繰り寄せた。
一つは武器を縦に持ち、振り下ろす練習を始めた。

竜たちには、それが足掻きに見えた。
大方、奴らは崖の手前で急ブレーキをかけて、最後の抵抗を見せるに違いない――
――しかし、その抵抗とは?
声を低くして疑問を呈するものは、しかし、先頭集団には間に合わない。

先頭のうち、三頭が大きく息を吸い込んだ。
追いかける竜たちが、慌てて炎の通り道を作らんと、左右に割れて空へ逃げる。
灼熱が口内に膨らんで、ぎらりと目が光る。

人間たちの駆け上がる道が、いよいよと幅を狭くした瞬間に、炎と、そして声が放たれた。


隊長「反転ッ!!」


轟、とも、応、とも付かぬ返答は、噴出した竜の火炎と同時に湧いた。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/07/02(火) 23:25:49.84 ID:jqz2YmkQo<> 地面に突き立てられた武器たちにしがみつきながら、冒険者達が急ブレーキをかける。
そのうちの二人は、別の戦士達に抱きかかえられながら、吠えた。


術士「展開――」

魔術師「展開!!」


ビシィッ! という、音が、火炎を跳ね返した音だったのだ。

ばら撒かれた魔方陣は、予めそこに位置していた地の魔力を噴出させ、ドーム状のシェルターを作り出す。
……はずが、二重に展開された魔法によって、シェルターどころか、まるで刺の付いたウニのように、火炎が突き破られた。

思わぬ効果は次にも現れた。
左右に散ったはずの竜たちを追って、火炎が彼らに飛びついたのだ!


  「GYYYYYYYAAAAAAAAAA!!!!!!」


喚く竜たちの元へ、魔術師が声を張った。


魔術師「炎よ、取り憑け!」

術士「……なるほど」


一度、熱に当てるだけでは足らない、彼ら自身が作り出す炎を、まとわりつかせる魔法。
術士は見よう見まねで魔法を解析し、数字を書き込んでいく。
無論、間に合わない。

シェルターが効力を失っていく。

竜が飛び込んでくる。

誰かが叫ぶ。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/07/02(火) 23:26:16.31 ID:jqz2YmkQo<> 明日も書きたい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/07/03(水) 03:18:23.10 ID:kXbP9xuAO<> 乙 熱いな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/07/25(木) 03:22:58.47 ID:ggBFdyqAO<> 待つぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/10(土) 15:54:47.25 ID:J44A6mYAO<> 待つ <> !ninja<>sage<>2013/08/15(木) 10:24:44.46 ID:uzEsPwPuo<> 待ってる <> ◆k.6bdeNTfg<>sage<>2013/08/16(金) 18:28:11.44 ID:1EZCpldfO<> もうちょい待ってくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/17(土) 11:00:25.21 ID:6xAn+CkAO<> よっしゃ 待つぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/17(土) 11:55:26.12 ID:jEY6Dt0Go<> 舞っている <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/22(木) 05:51:17.02 ID:QWwngWRXo<> わたしま〜つ〜わ♪ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/22(木) 06:41:11.63 ID:nnRJBoxD0<> いつまでもま?つ?
わ♪ <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/22(木) 23:46:09.14 ID:tw74KoRso<> 反転した勢いで、頂点に向かっていた空気が逆転した。
群れる竜に向かって炎と空気が流れ込み、彼らは翼を、閉じてしまった。


天測士「天候十分! 風向き良し!」

隊長「投げつけろ!」


応、と掛け声が上がると、男性陣が勢い良く『毒』を投げつけた。
そこに向かって、矢が放たれる。

破裂音につづいて、『毒』が吹き散らされる――


絶叫が弾けた。



斧使い「ど、どうだっ!?」

剣士「口を抑えろ」

会長「みんな、何か布を。口元を覆って、毒を吸い込まないように」

隊長「前衛は攻めるぞ! 武器を取って――」


言いかけた隊長の前に、一際巨大な影が突進してくる。
その前肢を鉄棒で受け止めようとして、とても受け止めきれないと悟る。


隊長「ぐぅっ……!」

救護員「隊長ォ!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/22(木) 23:53:17.46 ID:tw74KoRso<> 隊長「……大丈夫だ! 武器を持って」

救護員「鼻血出てるよ、めっちゃ!」

隊長「大丈夫だって」

剣士「言ってる場合か!」


竜『ぐぅるるるるぅぅぅ……――ぎゅボッ!!』  ビチャビチャビチャッ


斧使い「うおっ、き、キタネ!」

工兵「毒の効果だよ、触れるとヤバイと思うから近づかないでね」

術士「私見だけど、使ったほうが危険なんじゃないかしら」

天測士「今更そういうこと言うの!? ってか、あんた、前、前!」

隊長「くっ」


体液を吐き出した竜が、顎を上げ、隊長の前に立ちはだかる。


会長「隊長、距離を取れ!」

隊長「後ろは崖だよ……!」


隊長が鉄棒を構えた後ろで、竜達がもだえ苦しんでいるのが見える。
攻めるチャンスは今しかない、という時だった。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/23(金) 00:05:39.00 ID:btXMzqZJo<> 竜『――無念だぞ……』


隊長「!」

天測士「し、しゃべっ」

会長「構えを解くな!」


一同に衝撃が走った。

化け物のような巨体から、確かに低く声が漏れている。
知能のある生物だとは知っていたが、まさか人語を操るとは思いも寄らない。


剣士「おい……隊長、命令だ」

隊長「……ああ!」

隊長「左方向へ攻撃を集中し、そのまま回りこんで谷側に叩きこむ!」

斧使い「お、おい、いいのかよ」

隊長「ここまできていいも悪いもあるか」


ズゥン!

竜が、一歩、踏み出した。 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/23(金) 00:18:35.84 ID:btXMzqZJo<> だが、呻く竜の後ろから、別の竜が殺到する様子が、ない。
なおも爪を立てて、胸を張っている竜も、前に出てこようとしない。
「毒」にのたうちまわり、苦しみもだえている叫びが、連鎖的に広まっている。
直接浴びた者の中には、反っくり返って後続に倒れこんだ者もいる。
吐き捨てた内容物を後ろの竜が浴び、さらに「毒」が拡大している。

目の前の竜もまた、直に浴びた竜鱗からは、しゅうしゅうと音を立てて煙さえ上がっている。


占い師「うっ……」


数名が目を背けた。
暗い中で竜の肉が、外気に晒されているのが見えたような気がした。


天測士「ち、ちょっと、効き過ぎじゃない……?」


ズン、と音を立てて、竜が踏み出す。いや、膝をついた。


竜『この命、貴様らを屠るには、足りる、が……』

竜『その、悪意を……完成させたのなら、もう……』

工兵「……完成?」

会長「工兵くん、耳を貸しちゃダメだ……!」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/23(金) 00:36:45.14 ID:btXMzqZJo<> 竜『王を殺し、我らを……追い詰めた者』

竜『ふ、復活の、悲願……飼われ、毒に蝕まれながら……』

竜『痛みに耐え、待っていたッ!』

竜『し、しかし、叶わぬか。ど、毒は――掘り尽くし、灰にしたはずが――』


隊長「……」


竜『より、強力な、悪意を、作り上げていたとは!』


工兵「なるほど」


隊長が手を上げた。
攻撃を、制止する合図だった。


隊長「あんたら、人間に従っていたんじゃないのか」


竜が鼻を鳴らす。


竜『バカな! ……だが、だが、引き離された群れを、探していた……』

会長「……竜の群れは二つあったのか」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/23(金) 00:49:57.08 ID:btXMzqZJo<> 竜『……ぐぅるるるる……』

隊長「……提案がある」

天測士「ちょっと、本気で言ってんの!?」

会長「やめておいたほうがいい」

隊長「いいから言わせてくれ」

隊長「――俺達に敵対する意思はない。いいか? お前らを封じ込めた連中は別にいる」

竜『……GUUUUUUUU――!』

隊長「俺達は、襲われたから戦っただけだ。お前たちに悪意を込めた相手を」

竜『グギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

ボタボタっ!

隊長「うっ……」

竜『生命は……』

竜『どちらかが上に、立たねば。命じるものと、命じられるものがいなければ』

竜『我らには王がいた。王を戴いていた』

隊長「……」 <>
◆k.6bdeNTfg<>saga sage<>2013/08/23(金) 01:01:23.10 ID:btXMzqZJo<> 竜『対等など、ない』

隊長「……」

竜『奪われたならば、奪い返さなくては』

隊長「そうかよ」

竜『王を失い、隊の長も失ったならば……自分が、立たねば』

隊長「……」


遠吠えがする。
風がこちらに向かって吹いてくる。
暗い空の向こうから、群れに追いついたらしき竜の一団が、翼を広げている。

まだ、奥の方に残っていたのだ。竜の一軍が。


竜『――悪意持つ者よ!』

隊長「……そりゃお前らの方だろ」

竜『その、毒あるならば、いずれ、わ、われ、らは、滅ぶ。滅ぶが、せめて』

竜『せめて、貴様らだけでも道連れにせねば!』

隊長「……ああ、そうかい!」


隊長が、上げていた腕を振り下ろした瞬間、狩人が矢を放った。
「毒」を塗った矢を。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/23(金) 01:55:30.41 ID:9FBwyRcAO<> 乙 <> 以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/02(月) 16:44:15.47 ID:37+3xSwAO<> 乙 ままならんな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/10/02(水) 00:10:18.26 ID:v/IYOT/G0<> 保守 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/10/15(火) 02:52:52.21 ID:x+trw6rAO<> あと1週間…

最近同時期に始まったSSが次々落ちてるから寂しい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/10/20(日) 17:18:02.30 ID:+iCUVUVX0<> せめて生存報告だけでもしてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/10/26(土) 16:13:58.63 ID:EBaHDbSAO<> 仕方ない
暇になったらまた何か書いてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/10/26(土) 18:37:35.18 ID:OwGDpDMZo<> 無念だ <>