VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:09:30.27 ID:nmoOh3NN0<>魔法少女まどか☆マギカと東方projectのクロスです。

いくつか注意点です

※初SSです。いろいろ足りないところがあると思いますがよろしくお願いします。

※独自設定がてんこ盛りです。

※一部オリキャラが出ます。

※東方キャラはすべて出るわけではありません。また、かずマギ、おりマギのキャラは出ません。

※駄文、超展開ありです。

批判はいつでも受付中です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1355670570
<>魔法少女フラン☆マギカ VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:18:52.10 ID:nmoOh3NN0<>

プロローグ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:20:38.04 ID:nmoOh3NN0<>
 風がうなり声をあげている。ビュウ、ビュウ、と吹いている風は、多分に湿気を含んでいて冷たく、重い。それは空高くでも同じなのか、嵐の忘れ物のように残されている雲がかなりの速さで流れている。

 見上げると、空は夕暮れ時で、黄金色に染まっていた。だが、まだ沈んでいないはずの太陽の姿は、雲の合間からも見ることはできない。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:22:50.62 ID:nmoOh3NN0<>  山のように大きく、漆のように黒い。
この世の物とは思えない巨大な影が遠くにそびえ立っている。
それが太陽を隠しているのだ。

 バベルの塔よろしく、天に向かってそびえる三角形。
あまりにも大きすぎて、遠近感が狂ってしまい、それがここからどの程度遠くにあるのか分からない。
ただ、それが果てしなく邪悪な存在であること、そして誰にも倒し得ないであろうということだけは分かった。
強い、弱いといった次元を超え、ただひたすらに脅威なのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:24:54.14 ID:nmoOh3NN0<>  あれは相手にしてはならない。あれを滅ぼすことは叶わない。

 嵐に破壊され、水に沈んだ街。人はいない。
皆あの巨大な影に吸い込まれていった。
その中で、私はただ一人、水に半分ほど沈んだビルの上に立ち、影の山を見上げているのだった。

 自分には強い力がある。けれど、これには勝てる気がしなかった。
この影の山を目の当たりにすると、自分がひどくちっぽけで無力な存在だと思わされてしまう。

 あれは「救済」するのだ。
何が救済なのか、全く訳が分からないが、とにかくあれは「救済」するモノなのだ。
こうして私が眺めている間にも、あれは世界に生きるあらゆる命を吸い尽くし、身勝手に「救済」する。

 唸りを上げる風が、私の髪を乱す。
私は帽子が飛んで行かないように、思わず手で押さえてしまった。
それから、ここが夢の中であり、帽子を紛失する心配がないことを思い出した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:26:43.70 ID:nmoOh3NN0<>  まったく、自分らしくない。
あまりにも絶望的な光景を目にして動揺しているのだろうか? 
慌てる必要も、嘆く必要もないというのに。

 そう。ここは夢の中の世界。

 私が見た、いつか起こるかもしれない未来の話。

 いつまでも起らないかもしれない仮想の話。

 起こるか起こらないかは分からない。
それは、私の努力で変えられるからだ。こんな残酷な未来を避けられるなら、私はどんな対価でも払おう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:27:33.17 ID:nmoOh3NN0<>  ――けれどもし、この夢の光景が現実となってしまったら?

 その時は、影の山はすべてを救済し尽くし、その後には天国でもなく、地獄でもなく、ただ虚無が広がるだけである。
やがて、あれは自らをも救済する。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:28:16.96 ID:nmoOh3NN0<>  
 



 
 ――――――そして、誰もいなくなるのだ。





<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 00:30:09.75 ID:nmoOh3NN0<> 今日はとりあえずこれだけです。

続きはまた明日にでも。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/17(月) 08:09:12.01 ID:FaTEVlKDO<> すっごい、興味があります! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/12/17(月) 22:58:22.78 ID:NtcvV4bu0<> 乙です
出来れば、もう少し投下量が多いといいかもしれませんね〜
ともかく期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/17(月) 23:59:38.85 ID:nmoOh3NN0<> >>10ありがとうございます!!

>>11試験的な意味合いもあったので昨日は短かったんです。今日は長めにけると思います。

では、投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:01:37.47 ID:NZiZepMN0<>


第一章


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:04:32.77 ID:NZiZepMN0<>  サラサラと柔らかな春の日差しが降り注ぎ、穏やかな朝の訪れを告げている。
生い茂る木々の葉は陽光を浴びて鮮やかな緑を発色し、木漏れ日はその間を通り抜けて地面に虫食い状の日向を作っていた。

 桜の季節が終わり、そろそろ暖かくなってきた頃。
陽気に誘われるように生き物たちは活発に動き出す。
鳥は木の枝にとまって春の賛美歌を謳い、昆虫たちは歓喜して舞い踊る。

 今日も今日とて、そんな平和な一日が始まろうとしていた。

 都市の緑地化のために整備された公園の中をせわしなく人々が行き交う。
木くずを固めたチップが敷き詰められた道。
その脇を、丸い石を集めて形作られたせせらぎが走り、さらに道の両側には木立が広がる。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:07:06.18 ID:NZiZepMN0<>  どこまでも作られた自然の中を、人々は特にその違和感や不自然さに気づくことなく通って往く。
道には雑草は生えていないし、木立の間にもほとんど下草はない。
自然の森の中ならあって然るべき、雑草たちが、ここにはそれほどいないのだ。
それは、この公園の整備が良く行き届いていることの証だろう。
人々は、それを「良く」評価するだろう。

 だが、果たしてそれは本当に「良い」ことなのだろうか?

 自然は、自然のままに。それが本来のあるべき姿じゃないだろうか?

 最も、今ここでそれを問い始めても意味はない。
忙しそうな彼らは、自然についての哲学に付き合うことはないだろうから。
今の自分の仕事に夢中でそんな当たり前のことは省いてしまう。
多くの人間たちにとって、自然は前提条件だ。そこにあって然るべきもの。

いつからだろうか? 
人間たちは、時間に追われて生きるようになった。
資本主義経済は、時代を経るごとにより短時間でより大きく変化するようになって来たという。
僅か一日もあれば、株価が乱高下することもあるそうだ。
そして、それに合わせるように人間たちも1分1秒を惜しむようになった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:09:43.52 ID:NZiZepMN0<>  どうしてなのだろうか? 人はどうして生き急ぐのだろうか?

 人間は自分たちの作ったシステムにコントロールされている。

 傍から見れば滑稽なものだ。
彼らはそれを「自治・自律」と言うだろうが、単にシステムの傀儡になっているにすぎない。
「自知」ではないし、「自立」でもない。
「自治」も「自律」も、「自知」と「自立」ができて初めて成り立つものだ。
システムに頼り、それに守られている彼らは「自分で自分を知る」ことも、「自分で立つ」こともできていないのだ。

 そして奇妙なことに、彼らは自然にもそのシステムを強要する。
彼らは、自然すらもシステムの支配下に置ける、と考えているのだ。

 馬鹿馬鹿しいことこの上ない。
自然は、人間ごときが作ったシステムには支配されない。

 その証拠に、自然をコントロールしようとして作られたこの公園にも、数こそ少ないものの、雑草が生えている。
彼らは決して人間に望まれてそこに生えている訳ではないのだ。
それは細やかな自然の抵抗。
世界を支配し、統制し、利用しようとする科学文明への、小さな小さなレジスタント。
けれども、その力は圧倒的だ。
この雑草たちもやがては公園の「清掃員」たちに引き抜かれてしまう運命なのかもしれない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:11:28.60 ID:NZiZepMN0<>  人間は傲慢で、恐れ知らずだ。

 なぜなら、彼らは自分たちが恐れる脅威を――幻想を、追放したからだ。
怖いものがいなくなれば、もう何にも怯えずに生きていける。
 
 人は科学を手にし、幻想を捨てた。
本当なら勝てないはずの強大な「人ならざるモノたち」に打ち勝ったのだ。
それは奇跡で、そして残酷な仕打ちだった。

 その後始まったのは、理性の時代。そして科学文明の暴虐。
 
 木々は切り倒され、草地は焼き払われ、川には虹色の毒が流され、海には黒い油が漏れ、大気は有害なガスにで汚され、土はアスファルトとコンクリートで覆われてしまった。
それはまさに、自然の蹂躙。統べる者たちを失った人間の暴走は留まることを知らない。
挙句の果てにはこの公園のように、自然を自らの思い通りにしようとし出した。

 それは、何と恐ろしく、何と不愉快なのだろう。
そしてなんと嘆かわしいことだろう。
かつて人間たちの上に君臨した幻想は駆逐されてしまった。

だから、そんな世界で一人ぼっちの「あの子」がうまくやっていけるのだろうか?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:13:51.06 ID:NZiZepMN0<>

「ふあぁ」

 恥ずかしいことに、こんなところで思わず大きな欠伸をしてしまった。乙女がはしたない。
でも、まあ誰も見ていないからいっか。

 そんなふうに適当なことを考えながら、悪魔の妹は可愛らしく小さな溜息を吐いた。
この天使のように可愛らしい悪魔の名前はフランドール・スカーレット。
彼女は今、一本の木の幹に背を預け、その下の木陰で膝を抱えて地べたに直接座り込んでいるところ
だった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:15:14.22 ID:NZiZepMN0<>  見た目は10にも満たない幼子。しかしてその正体は齢500にも及ばんとする吸血鬼。

 由緒正しき高潔な吸血鬼の家系であるスカーレット家の次女にして、幼い容姿ながら比類なき力と
美貌を持った深窓の令嬢。

 鬼にも匹敵するパワー、天狗と競えるスピード、魔法使いと肩を並べるほどの魔力。
基本的なスペックからしてそこらの妖怪とは次元が違う、圧倒的な恐怖。破滅的な剛力。
そしてこのリトル・スカーレットは、更に馬鹿げた力を持っていた。

 それが――ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:18:13.61 ID:NZiZepMN0<>  曰く、あらゆるものには最も緊張している部分である「目」がある。
曰く、この「目」を手のひらに移動させて握りつぶせば、どんなものでも破壊できる。
曰く、きゅっとしてドカーン。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:19:49.17 ID:NZiZepMN0<>  それほど強大な力を持っている故に、吸血鬼は弱点が多い。
太陽はその最たるものである。
他にも、流水を超えられない。
招かれないと他人の家に上がれない。
銀が苦手。
折れた枝やニシンの頭もダメetc……と、とにかく弱点が多いのだが、それを補って余りある力を
持っているので、さして問題にはならない。
殊、フランドールに関しては、最早それを止められる人間はいないであろう。

 破壊能力を持った吸血鬼と言うのは、それほどまでに桁違いの化け物なのだ。
もはや存在そのものが反則。
出会ったら最後、見かけたら命なし。
次元を超えた、残酷なまでに強大な力の象徴。

 そんな、恐怖と破壊の具現のような彼女だが、ただ今公園の木立の陰で自分の膝と会議を
始めようとしていたところだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:22:11.20 ID:NZiZepMN0<>


 眠い。とにかく眠い。

 なにしろもう朝なのだ。日が出ているうちは、吸血鬼はおねむの時間なのだ。
しかも、夜に思いっきり動きまわったせいで、さすがに疲れが溜まっている。
いくら並みいる吸血鬼の中でさえ超常的と言われるフランでも、疲労しない訳ではない。
もちろん、肉体的な疲労より、精神的なそれの方が比重は大きい。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:23:54.32 ID:NZiZepMN0<>  それもそのはず、いきなり見知らぬ世界に放り込まれたのだから。
お蔭で一晩中この大きな大きな「人里」で――右も左も分からないのに――ただひたすら彷徨い歩く
羽目になってしまった。
そして、東の空から太陽が「おはよう」するころにこの公園にやって来たのだ。

 という訳で疲労困憊のフランちゃんだけど、今この場で寝られる程神経は図太くなかった。
こんな日陰、何時日向に変わるか分かったもんじゃないし、これほど人目の多い場所では安眠
できないだろう。

 さて、ではどうするか? このままここで膝を抱えている訳にもいかない。
早いとこ寝床を探して眠りに就きたい。
けれど、一晩中探して良さそうなところはなかったし、
それ以前に寝ていいのかすらわからなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:25:54.53 ID:NZiZepMN0<>  寝てしまったら、そのまま自分と言う存在が消えてなくなってしまいそうだったから。
そう直感した。そもそもが、ここは本来私がいるべき場所ではないのだ。

 そう。ここではフランのような妖怪は存在しづらい。
言ってしまえば、彼女はこの世界にとって不純物でしかないのだ。

 彼女たちの言葉でこの世界を表すと、それは「外の世界」と言うことができる。
すなわち、幻想を否定し、科学を受け入れた世界。
故に、幻想の存在である吸血鬼をはじめとした妖怪たちにはかなり暮らしづらい世界となって
しまった。

もちろん、この「外の世界」にもごく少数妖怪は存在する。
佐渡の化け狸など、人目につかないような自然の奥地でひっそりと暮らしている筈だ。
そういう場所は影響も少ない。

けれど、こんな人類文明のど真ん中では彼らでさえ存在を保つのが危ういだろう。
一度幻想の世界に逃れた者は尚更だ。
結局、フランがいかに強大な力を持っていようと、
その存在そのものを否定されるのでは本来の力を発揮できず、
ただの非力な幼子に成り下がってしまう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:28:38.36 ID:NZiZepMN0<>  今のフランは霞のような儚い存在だ。
寝たら最後、そのまま消えてしまうかもしれない。

 従って、フランは先ほどから眠らないように気を紛らわせるために哲学をしていたのだが、
かえって眠気を加速する結果になってしまった。
やっぱり考えことだけだと、どうにも意識がもたない。
思考が徐々に散漫になっていき、瞼が重りでもつけたかのように重くなって、
だんだんと下りてくる。

 とにかく、眠らないようにしよう。
ここで待っていれば、スキマの妖怪辺りが迎えに来てくれるかもしれない。
でも、暇だ。いつまでもこのままではいられないのだ。

 目をこすってあくびをかみ殺す。
なんとか眠気を振り払う。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:29:37.62 ID:NZiZepMN0<>  ふと、目の前を歩く人間たちに目が行った。
むくむくと、それまで眠っていた好奇心が自分の中で起き上がる。
そのおかげか、睡魔に犯されかけていたフランの意識が徐々に覚醒し出した。

 今まで眠くて何となく視界に入れていたに過ぎない人間たちだったが、よく見ればその年齢構成に
偏りがあるのが分かった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:31:59.87 ID:NZiZepMN0<>  子供が多いのだ。

 自分の姿と同じような小さな子供から、うちのメイドと同年代と見える少年少女まで、その年齢層に
はばらつきがあるが、総じて皆人間の子供である。
その子供たちの間に、ちらほらと大人が混じっている――と言うのが、目の前を行き交う集団の
年齢構成だ。

 小さな子どもたちは、全員同じような形をしたバックを背負っている。
赤や黒、ピンクや青、黄色など、色はさまざまであるが、基本的な形状は変わらない。
一方、彼らより少し大きい――我が家に居るメイドと同年代ぐらいの――少年少女たちは、同じような鞄に、
統一されたデザインの服を身につけている。

この服装は知っている。制服と言うやつだ。

男女ともに、やや黄色がかった白い上着を着ている。
男子の方は、ボタンがなく、恐らくはチャックで締めてあるのだろう。
下も、同じ色のズボンをはいている。
女子は、上着の下に、白いブラウス、胸元に赤い大きなリボンが付いていて、肩の下、
二の腕の上の部分が大きく膨らんでいるのが特徴だ。
下は、ダークグレイが基調のチェック模様のミニスカートをはいている。
なかなかカワイイデザインだと思う。
が、ちんちくりんな姿の自分には似合わなそうだ。

人間たちは、それぞれ同じ格好をしたり、同じようなものを持ったりしている者同士で、同じ方向に
向かって歩いて行く。
きっと彼らはこれから「寺子屋」に行くのだろう。
その程度の知識は本で読んだ。
これでも読書家なのだ、フランは。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:34:21.47 ID:NZiZepMN0<>  フランが人間たちを観察するように、向こうも彼女を見ていた。

 人間たちは、何人かのグループ(男女で別れた数人ずつの小グループだ)に分かれて歩きながら、
ちらちらとフランを見ては、ひそひそ話していた。
けれど、彼らは見ているだけで、フランに話しかけようとはしなかった。

誰も話しかけてこないな。

 日向を歩く人間たちにこちらから近づくことは出来ない。
向こうから話しかけてくれることを望んだが、人間たちはそんな素振りは見せなかった。
話しかけてくれれば、この場所の情報もある程度掴めるかもしれないのに、だ。

 最も、フランはそんなことではいちいち苛立ちはしなかった。
視線を不快だとは思うが、それ以上のことは特に何か感想を抱くこともない。
こちらも観察しているのだから、お相子だろう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:36:33.98 ID:NZiZepMN0<>  それに、フランの格好もだいぶ奇異に見えるに違いなかった。

 見た目こそ幼子のフランだが、人間とは決定的に違う物が体に付いている。
羽根だ。

 いや、羽根と表現していいかもわからない。
背中から生える一対の曲がった木の枝のような羽根に、七色の宝石のような結晶状の
何かがぶら下がっている。

 それに加え、今のフランは余り綺麗な格好をしていなかった。

 サイドテールにした金髪。
ドアノブカバーのような形の帽子。
真紅を基調とした、半そで・ミニスカートのドレス。
スカートの下のドロワーズ。
どれも、汚れて乱れていた。

 一晩、さんざん動きまわったせいだ。
朝になり、動きが鈍って木の幹に背を預けて座り込んだ。
かくして、家出少女のような吸血鬼が木陰で休んでいるという、珍妙な図が出来上がった。

 そりゃ、誰も声を掛けんわ。
こんな私に声を掛ける輩がいるとしたら、そいつはとんでもないお人好しか、物好きのどちらかね。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:39:28.14 ID:NZiZepMN0<>  フランは自嘲したような笑みを浮かべ、再び膝と相談し始めた。

 Q.そもそも、どうしてこんなところにいるの?

 A.原因は、パチュリーよ。

 Q.ここはどこ?

 A.外の世界か、あるいは異次元の世界。とにかく、幻想郷じゃない。

 Q.どうしたら帰れるの?

 A.スキマ妖怪さんお願いします。

 Q.お姉様は心配しているかしら?

 A.ノー・コメント。

 Q.取敢えず、どうする?

 A.寝たい。けど、寝ていいか分からない。とにかく、ここから動いた方がいい。
昼になるころには、ここも日があたると思うから。

 移動しよう。

 そうしよう。

 膝との相談の結果、移動することが決定した。
もっと木立の奥に行ってみよう。日のあたらない、影となる場所へ。

 フランはそっと息を吐き、足腰に力をれて立ち上がろうとした。

 その時だった。


「ねえ。あなた。どうしたの?」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/12/18(火) 00:43:21.35 ID:NZiZepMN0<> 今日はここまで!

また近日中に来ます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/18(火) 02:02:03.00 ID:NsCcTpXAO<> 乙
期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/18(火) 02:21:05.19 ID:Vbzy5mKl0<> てっきりフランケンふらんかと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/18(火) 09:23:23.53 ID:25BA/ajDO<> 乙
現代入りフランちゃんでしたか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/18(火) 11:09:22.34 ID:e+e0lw/20<> QBが幻想郷の住人を困らせる話なのかと思っていたが…… <> 1<>saga<>2012/12/19(水) 00:50:04.73 ID:9DCke6ux0<> 現代入りフランちゃんです。

そしてべえさんは空気・・・・・・ <> 1<>saga<>2012/12/19(水) 00:54:44.64 ID:9DCke6ux0<>
*


不意に声を掛けられて、フランは飛び上がらんばかりに驚いた。
 目の前に、人間が立っている。制服を着た女だ。
道の端を流れる水路の淵の辺りに立ってこちらを見ている。
一人だった。

 フランは焦った。膝ばかり眺めていたから、この女の接近に気が付かなかった。
妖怪としてはあるまじき失敗だ。思わず小さく舌打ちする。

特に、今は自分でも情けないと思うほど弱くなっている。
ただの人間の少女にさえ、力で敵わないだろう。
もっと警戒すべきだったのだ。
ここはあくまで、見知らぬ世界。
長閑な雰囲気に呑まれて油断していたが、どこにどんな危険が潜んでいるか分からないし、人間たちが自分に危害を
加えないという保障も無いのだ。

 舌打ちの音が聞こえなかったのか、女は不思議そうな顔をしてさらに近づいてきた。
水路をまたぎ、木立に入ってくる。

 フランは立ち上がった。

 用心するに越したことはないが、今のところ目の前の女からは敵意が感じられないし、それならば、
情報を集めるためにもこの女を利用した方が得策だろう。
けれど、下手なからまれ方をすると厄介だ。
だからすぐに逃げ出せるように構えておく。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 00:56:07.56 ID:9DCke6ux0<> 「迷子なのかしら? 大丈夫?」

 発している言語は日本語。言葉は通じる。

 女は、当然、フランより背が高い。
スカートから延びる足は黒いストッキングに覆われている。
適度に筋肉がついたすらっとした美脚だ。
髪はフランと同じ金髪だが、髪型は珍しい物だった。
お下げのように後頭部で髪を分けているが、編んでいるのではなく、らせん状に巻いてある。
一体どうやったらそんな髪型になるのか甚だ疑問だ。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 00:57:28.39 ID:9DCke6ux0<>  だが何より目を引いたのは、彼女の胸元。
赤いリボンの下でその存在を主張する女性の象徴。
彼女はある意味、女らしい女だった。

 それは、この年の女にしては発育がよさそうで、彼女のボディラインにメリハリをつけていた。
加えて、ウェストは締まっており、かなりのプロポーションを誇ることが伺い知れる。
そのたわわに実った柔らかそうな女性の象徴は、フランの目を釘づけにして離さなかった。

 フランの周りにも、胸の大きい者たちはいた。門番にしろ、紫色の魔女にしろ、
結構な悩殺ボディを備えていた。
けれど、けれど、彼女たちを見ても、こんな敗北感に襲われることはなかった。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 00:58:36.88 ID:9DCke6ux0<>

 一体どうして? 

 なぜ、こんなにも悔しいの? 

 なぜ、こんなにも悲しいの? 

 なぜ? 

 どうして?


<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 00:59:35.80 ID:9DCke6ux0<>  頭の中でぐるぐると疑問が渦巻き、フランはふらふらと背後の木の幹にもたれかかった。

 先程の警戒心は、この圧倒的なボリュームに、自尊心もろとも粉砕されてしまっていた。
もはや、逃げ出すことすらかなわない。

 恐るべきことに、この少女の豊かなバストは、ある強大な悪魔を破ったのだ。
それは歴史が始まって以来の快挙。
あまたの聖者や英雄が嫉妬と羨望(と欲望)の眼差しを向けるほどの偉業。


女性は偉大である。


 片や、敗北感に打ちひしがれた吸血鬼少女は真っ白な灰になった気分だった。


<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:00:55.36 ID:9DCke6ux0<>
                    *
 巨乳女がフランの顔を覗き込んだ。

「どうしたの? 具合が悪いの?」

 彼女はかがんでフランと目線の高さを合わせる。
おかげでその豊かなバストが垂れ下がり、否応なくフランに存在を認識させた。

 主に、あなたの体のある部分のせいで具合が悪いんですよ。

 そう言おうと思ったが、ここは我慢した。
彼女は情報提供者になるかもしれないのだ。
というか、今の自分にそんなことを考えられる余裕があるのが驚きだ。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:02:44.88 ID:9DCke6ux0<> 「ねえ」

 そこでやっとフランは相手に声を掛けることができた。
巨乳女の胸から瞳へ視線を移す。

 黄金色の大きな瞳が見返してくる。
髪と同じく、綺麗な色だった。
優しげに眉尻が下がっていて、心配そうな表情を浮かべていた。
顔は、その悩殺的でアダルトなボディとは裏腹に、やや童顔気味で、幼い印象を受ける。
それでも、人並み以上のその美貌と起伏に富んだ体のためか、年の割には大人びた雰囲気を持つ
少女だった。

「何かしら?」

 いきなりしゃべったフランに彼女は多少驚いた様子だったが、特に慌てることもなく、
落ち着いて訊き返してきた。
中身のほうも、大人びてはいるらしい。

「ここは、どこ?」

 単刀直入に尋ねた。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:04:49.23 ID:9DCke6ux0<>  その様子に、目の前の彼女はさらに驚いたようだった。
フランにはその理由は分からなかったが、金髪巨乳の少女は、
明らかに外国人の幼子が流暢に日本語を話したことを意外に思ったのだ。

 少女は逡巡した。

どう答えればいいのだろう?
 
薄汚れた風貌から、目の前の女の子は迷子のようだ。
きっと相当歩きまわったのだろう。
しかもこんな朝早くにこんな場所に居るのだ。きっとただごとではない。

 近くの交番に連れて行くべきか悩みながら、取敢えずのところ、少女は答えた。

「見滝原よ。群馬県見滝原市。ここは、ええと……」

 この公園の名前が思い出せない。
近くに少女の通う中学校があるのは分かるのだが。
いわゆる度忘れというやつで、こういう時は結構焦る。

 だが、そんな心配は無用だった。
むしろ、それ以上の心配事があったのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:06:55.91 ID:9DCke6ux0<> 「ミタキハラ……」

 フランには聞き覚えのない地名だ。
そもそも、この東洋の島国――名前の印象からここは日本だろう――の地理はそんなに詳しくない。
ミタキハラと言われてもどこなのかさっぱり分からなかった。

「東京の北にある街よ。ちょっと遠くて、電車でも2時間はかかるけれどね」

 何を勘違いしたのか、巨乳少女はそんなことを言った。

 東京という地名は知っている。ロンドンにも匹敵する日本最大の都市だ。
その北にあるというのは、ここは海から離れている、ということだろうか?

 はっきり言って、そんなことはどうでもいい情報だった。
重要なのは、外の世界にもあるという、博麗神社の場所だ。
その手掛かりとして、先ずはここが何所か知りたかったのだが、
あいにく日本の地理にあまり詳しくないフランにはほとんど役に立たなかった。

 まあ、目の前のこいつに聞けばいいのだ。

「博麗神社が何所にあるか、知ってるかしら?」
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:09:16.56 ID:9DCke6ux0<>  対する巨乳少女は、困惑していた。

 見滝原と言う地名を知らないみたいだったし、東京から2時間という情報を与えても
芳しい反応は返ってこなかった。
代わりに返って来たのが「ハクレイ神社はどこ?」という、予想外の質問だったのだ。

 この外国人然とした女の子がどうして聞いたこともない神社のことを尋ねるのか、
全く分からなかった。
ひょっとしたら、その神社で家族と待ち合わせでもしているのかもしれない。
いや、きっとそうだ、と少女は決めつけた。

 だったら――少女は思う――このまま交番に連れて行って、ハクレイ神社の場所を
調べてもらった方がいいかもしれないわね。

 幸い、最寄りの交番の場所はすぐに思い出せた。
お人好しで優しい少女は、この幼い女の子を交番に連れて行こうとした。
学校には少し遅れるかもしれないが、理由を話せば怒られはしないだろう。
それに、こういった困っている人を手助けするのが自分の使命なのだ。
このまま見過ごす訳にはいかない。

「ごめんなさいね。その神社は知らないわ」

 その答えはフランを落胆させたが、一方で少女はすまなそうな表情を一転させて優しく微笑んで
すぐに続けた。

「だから、近くの交番に行って、そこでその神社の場所を調べてもらいましょう」
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:16:54.64 ID:9DCke6ux0<>  フランは答えに窮した。

 目の前の少女は本当に単なる親切で言っているのだろう。
無下に断ることはできそうにない。
けれど、コウバン――どういう場所か分からないが――とやらに連れて行かれるのも問題だった。

 なにしろ、フランは日にあたることができない。
日光を浴びた途端、ジュウジュウ煙を吹きながら灰になってしまう。
もしここでそんな目にあえば、ただじゃ済まないだろう。

 単に、騒ぎになるとか言うレベルの話じゃない。

 今の、弱った自分はそれをきっかけに存在そのものが消えうせてしまう恐れもあったのだ。

 だが、博霊神社の場所を調べてもらう、という提案は合理的で、現状最善の策に思えた。

 さて、どうすべきか。

 日が暮れるのを待って、その「コウバン」に行くのがいいだろう。
ただし、それにはこの少女、あるいは「コウバン」の場所を知っている人間の助けが必要だ。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:19:43.26 ID:9DCke6ux0<> 「そこなら、神社の場所は分かるの?」

 念を入れて、確認しておく。

「見滝原にある場所なら、地図で探せば見つかるんじゃないかしら。
まあ、なくてもインターネットで調べられるわね」

 いんたーねっと?なんぞ、それ。

 何だか聞き慣れない単語が出てきたが、それを使えば博霊神社の場所が分かるらしい。
ならばそれでいい。
次に聞くべきは、「コウバン」の場所だ。紙にでも道順を書いてくれればいいんだけれど。

「その、交番にはどうやって行けばいいの?」

「連れて行ってあげるわ」

 まあ、当然の反応だ。
しかも少女はフランの手を取り、日陰から引っ張り出そうとした。

「ま、待って!」

 慌ててフランは手を引く。あわや、手が焦げるところだった。

「あの、あのね。後で自分で行くから、道順だけ教えてくれればいいわ。今は疲れていて、
しばらくここで休んでいたいの。休み終わったら、一人で行くから」

 なかなか苦しい言い訳だ。けれど、咄嗟に思いついたのはそれぐらいだった。

 だが、しかし、

「それなら、私がおぶっていってあげるわ。交番ならここよりずっと楽にできるわよ。
それに、あなたも早くお父さんお母さんに会いたいんじゃない?」

 完全に迷子の子供に間違えられている。実際、そうなのだけど。
でも、ほんとはそうじゃないのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:21:59.61 ID:9DCke6ux0<> 「いや、違うわよ。そうじゃないの。そうじゃなくて……ええと…………」

 言葉が出てこない。

 ダメだ。まごついていても埒が明かない。
なんとかして「コウバン」の場所を聞きださなければならない。
だがこのままあわあわ言っていても、この巨乳の少女が聞き入れてくれるとは思えない。
だから、こんな方法は使いたくないけど、やるしかない。


 フランは決断した。


「お願い。『コウバン』への道順だけでいいの。教えてくれたら、それはとっても嬉しいな」


 上目使い。瞳を潤ませ、両手を胸の前で握り合わせて、おねだりするように、
可愛らしく見えるように、精一杯の…………ああ、もう無理だ。

 羞恥でフランの顔は真っ赤になった。
自分でも火照っているのが分かるくらいだ。
顔面から冗談じゃなく、炎が噴き出すかと思った。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:23:52.49 ID:9DCke6ux0<>
 は、はずかしい。

 フランが恥ずかしさのあまり身もだえしている目の前では、巨乳少女がそのあまりの可愛さに
心を打たれていた。
完全に落とされてしまった少女は、フランにとって意外な、そしてある意味当然の行為に出る。

 彼女はフランの両脇に手を入れ、その小さな体を抱え上げた。

「な、なに!?」

 突然のことに、フランはびっくりして咄嗟に反応することができなかった。
少女と目が合う。その瞳は、異様に輝いていた。

 フランは戦慄する。

 まさか、魅了が働いていたの? でも、魔力は込めてなかったし、魅了が効くはずがない。

 それはフランの思う通り、少女は吸血鬼の能力の一つ、魅了で洗脳された訳ではなかった。
単に、フランの可愛らしさに、元来かわいいもの好きであった彼女が陥落しただけの話であった。
そして、それこそがフランの誤算だったのだ。

 一方の少女は、フランを抱き上げたものの、そのまま固まってしまった。
なぜなら、彼女の心の中では今、すさまじい葛藤の嵐が吹き荒れているからだ。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:26:21.61 ID:9DCke6ux0<>

 お持ち帰りしたい!!

 ダメよ!それは犯罪よ!

 でも、可愛過ぎる。我慢できないわ! お家に帰って、あれしたりこれしたりそれしたりしたい!!

 学校があるじゃない。そんな暇はないわ!!

 1日ぐらい休んでもいいわよ。優等生で通っているんだから!!

 優等生だからこそだめよ。街を守る私が罪を犯す訳にはいかないのよ!!

 ばれなきゃいいのよ!

 だからダメだって。第一、この子を交番に連れて行かなきゃならないでしょ。

 はっ。そうだ!


 我に返った少女は、なんとかあらぶるもう一人の自分をなだめすかす。
女の子をおもちゃにするなんて、ロリコンもいいところだ。
それははんざいだ。よいこはまねしちゃいけないよ。


<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:28:18.63 ID:9DCke6ux0<>  少女が自分自身と壮絶なバトルを繰り広げている間、フランは何度か少女の手から逃れようと
もがいた。
しかし、妖怪としての存在が希薄になったせいか、筋力も見た目相応に落ちてしまい、
拘束から抜け出すことは出来なかった。
むしろ、この巨乳少女の方が、見た目以上の力を持っているみたいだった。
フランがどんなに暴れても、両腕はピクリとも動かなかった。

「離して! 下ろして!」

 ポカポカと少女の体を叩くが、もちろん効果はない。
それどころか、ますます体を押さえつけられ、
甘い臭いと共にその胸の柔らかな肉の果実に包まれてしまった。


 なんという質量。なんという張り。なんという柔らかさ。


 同性でなければ、気持ちよさと幸福感のあまり、昇天していたかもしれない。
だが、フランにとって、少女の乳は苛立ちの対象でしかない。
<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:30:26.66 ID:9DCke6ux0<>  フランは、焦っていた。
このままでは、身動きの取れないまま日向に引きずり出されてしまう。
本来なら、ちょっとやそっと日光を浴びたぐらいでは、死にはしないのだが、
今のこの状態を鑑みると、ほんのわずかでも致命的になる気がする。

 不快な柔らかさと、日光への恐怖から、だんだんフランはテンパッてきた。
加えて、本来の力を使えず、人間にいい様にされていることに対するストレスも溜まっていた。


 どうする? どうする? 
 こんな人間の小娘に、自分の十分の一も生きていない様な餓鬼に、
この吸血鬼フランドール・スカーレットが翻弄されるなんて、あってはならないのだ。


 いや、プライド云々はともかく、これは切実な生命の危機である。ほんとに、どうする?


 そんなフランを抱きとめる少女は、葛藤を何とか抑えつけ、我に返った。そして、

「じゃあ、交番に連れて行ってあげるわ」

 と言って、日向に向かって一歩踏み出した。


 ああああ、もうどうにでもなれぇぇぇ!!


 フランは心の中で絶叫した。そして、無意識のうちにある行動に出た。

 それは、本能に従った行為。
 吸血鬼が、当然する動作。
 すなわち、吸血。

 フランは、思いっ切り少女の首元に噛みついたのだ。



「ぎゃあああああああ!!」



 少女の悲鳴が朝の公園に響き渡った。


<> 1<>saga<>2012/12/19(水) 01:32:53.29 ID:9DCke6ux0<>
今日はここまでです!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/19(水) 01:36:29.96 ID:OJ+rqorAO<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/19(水) 02:54:33.22 ID:suc3L7MDO<> 乙
マミさん吸血鬼になってしまうん?

いつぞやの幻想入りスレ以来の東方クロスか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/19(水) 10:28:09.56 ID:SWWDXPGQ0<> 乙
さて、どうなる事か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/19(水) 16:41:20.10 ID:EADzJHwV0<> たぶんフランちゃんが感じる魔法少女の血の味は、
俺らの感覚で言えば、ただ茹でただけのハンペンを食った時の感じじゃないか? <> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:35:56.71 ID:fhyS5BAz0<>

                 *



「なんですの? 今の悲鳴は」

 緑色の長い髪をした少女呟く。
彼女は今し方公園に響き渡った謎の悲鳴についてコメントしたのだ。
隣を歩く二人の友人たちも一様に首をかしげている。

「なにか、あったのかな?」

 桃色の髪を短いツインテールにした友人の一人が反応する。
彼女は少し不安げな表情で、悲鳴が聞こえて来た木立の向こうを見透かそうとしていた。
ただならぬ気配のした悲鳴に怯えているようだった。

「なんてゆうか。結構おぞましい感じの悲鳴だったよね」

 もう一人、左右非対称の青いショートヘアの少女が半分おどけたような調子で言う。
三人の中では一番背が高く、活発そうな印象を受ける子だ。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:37:31.33 ID:fhyS5BAz0<> 「ええっ!? 朝だよぉ。幽霊とかじゃないよね」

 青髪の少女の発言を真に受けたのか、桃髪の少女は、見えない恐怖におののくそぶりを見せた。
それを見て、後の二人はくすくす笑う。

「もー。まどかったらぁ。そんな訳ないでしょ。大方、誰か蛇でも見つけて驚いたんじゃない?」

「ええ。蛇いるの? ここ」

 まどかと呼ばれた少女は、また友人の言うことを鵜呑みにした。
良くも悪くも彼女は純真で真面目なのだ。
それ故に人一倍優しいし、別の言い方をすればお人好しで、だまされやすい。

 だが、だからこそ二人の友人は彼女のことを好いているのだ。

「そういう話は聞いたことがありませんけど、気をつけていれば大丈夫ですわよ」

 緑髪の少女は、青髪の子とは反対に、お淑やかなお嬢様然としている。
その動作一つ一つが洗練された丁寧さと美しさを持っていた。
彼女は正真正銘、お嬢様で、花よ蝶よと育てられて来たのだ。
容姿も、三人の中では特に美人という言葉がふさわしいと言えるものだった。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:38:35.14 ID:fhyS5BAz0<> 「ま、でも、おっちょこちょいのまどかは余計なことして蛇と会いそうだけどね」

「くす。それこそまさに、藪蛇、ですわね」

「もー。ひどいよ二人とも」

 まどかはほっぺを膨らまし、からかった二人から顔を背けた。
その動作に、青髪の少女がまどかに抱きついた。

「あーもー。まどかはかわいいなぁ。こんなかわいいまどかはぁ、私の嫁になるのだー!」

 青髪の少女――美樹さやかは、桃髪の鹿目まどかの頬にキスをしようとする。
それをまどかは軽く悲鳴を上げながらかわした。
その様子を、緑髪の少女、志筑仁美がほほ笑みながら見守っていた。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:40:01.98 ID:fhyS5BAz0<>  彼女たちのじゃれ合いは日常茶飯のこと。
毎日、さやかは仁美やまどかに絡み、その度に3人はキャッキャ、キャッキャ言いながら
楽しい時を過ごしていた。
それは当り前にある日常。
彼女たちは、それを謳歌していた。


 その背後に、白い非日常の影が迫っていることも知らずに。



<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:41:21.67 ID:fhyS5BAz0<>

                    *



「日の光に、あたることができない?」

 先輩系金髪巨乳女子中学生、巴マミが眉をひそめて言った。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:42:17.05 ID:fhyS5BAz0<> 「うん。そういう、病気なの」

 フランは答えた。
自らの体質を病気というのは憚られたが、吸血鬼云々と言っても信じてもらえないか、
逆に怖がられるだけだろうから、これは仕方ないことだった。

 フランは痛む右手をさすりながら更に説明を加えていく。

「だからこうして日陰の中にいるんだけどね。
本来は、夜しかお外に出ちゃいけないって言われてたんだけど、お姉様とはぐれちゃって。
それで、博霊神社に行けば、そこでお姉様が待っている筈だから、行こうとしてたのよ」
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:43:42.30 ID:fhyS5BAz0<>  他方、マミはフランに噛みつかれた首筋に手をあてながら、更に困ったように眉を寄せる。

「何か、布で体を覆い隠せば、なんとかなるの?」

「日の光さえあたらなければ、日傘で十分なのよ」

 実際、我が愛しのお姉様はメイドに日傘を差させて白昼堂々出歩いている。
重要なのは、日光を遮断しているという事実であって、直射でなければ、反射した光は
眩しい程度の認識しかない。

「日傘、ねえ。雨傘は持ってるけど、それも家だし、何か替わりになるような物も、ないわねぇ」

「別に、日が沈むまで待ってもいいんだけど。日陰にさえいれば、問題無いわ」

 フランは、自分という存在が消えてしまうのではないかという懸念から、
ある程度は解放されていた。
というのも、そのことはそこまで心配するほどのことでもないと考えられるようになったからだ。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:45:35.27 ID:fhyS5BAz0<>  実は、先ほどマミの首筋に噛みついた直後、驚いたマミからフランは振り落とされ、
うっかり右手が日向に出てしまったのだ。
ジュッという音がして、手が一瞬焦げてしまった。
そのせいで、今も右手が痛むし、赤く腫れあがっている。

 ただ、幸い手が焦げたことはマミにばれず、かえって自分の体質をごまかすのに役に立った。
赤くなった手を見せて、日にあたるとこうなる、と言ったのだ。嘘は言っていない。

 そして、手が焦げたことによって、自分自身の存在に何か変化があったかと言えば、
何もなかった。
つまり、多少日を浴びたくらいでは自分は消えてしまわない。
ただし、本来ならすぐに回復するはずの右手は、未だに痛みと腫れが引かない。
どうやら、ここにいることによって、回復速度が落ちているようだった。

 ちなみに、マミは噛みつかれた直後に、とても少女が発したとは思えないような声で絶叫し、
その後恥ずかしさのあまり沈んでいた。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 00:47:38.02 ID:fhyS5BAz0<>

それはともかく……。



 理由はもう一つある。
そしてこれこそが今、フランの思考の大半を埋め尽くしていることだった。

 結論から言おう。巴マミには魔力が流れている。それも、そこそこ強力なものだ。

 なぜマミに魔力が流れていることが分かったかと言えば、マミの首を噛んだ時、彼女の血を
僅かに吸ってしまったのだ。
そして、その血には確かに魔力が感じ取れた。
だから、フランはその魔力を得ることである程度存在を確立されたのだ。

 今までは、恐らく、フランはこの世界に異物として認識され、排除されようとしていた。
だから、存在が薄まっていたのだ。

フランは吸血鬼。妖怪。幻想の存在。

 それは、この世界から逃げ出したにしろ、追い出されたにしろ、居ることが出来なくなった者たち。
故に、この世界からは異物として排除されてしまう。
本来の力を十分に扱えないほど存在が薄まってしまう。

 けれど、この世界のマミの血、もっと言えばそこに含まれていたこの世界の幻想の力である彼女の
魔力を吸収したことで、この世界の認識が改められた。
この世界にあるはずないものから、この世界にあってもいいものに変わったのだ。

 それが、フランが出した仮説だ。
当たっているか自信はないが、こう考えるとつじつまが合う。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:07:06.71 ID:fhyS5BAz0<>  今までフランは、ここが幻想郷の外の世界だと考えていた。
しかし、この仮説に基づくと、そうではない可能性も浮かび上がってくる。
幻想を否定した世界ではなく、幻想を何らかの形で認めている世界。
そうである可能性も考えられるのだ。

 すなわち、異世界。あるいは、パラレルワールド。

 そも、フランは外の世界を、一部を除いて、幻想がいない世界だと考えていた。
一部の例外も、やがてはそこから駆逐されてしまう運命にある。

 つまり、フランの考える外の世界、すなわち、元々フランたちが幻想郷に越す前にいた世界は、幻想を
完全に否定する世界であるはずだ。だから、幻想郷に行ったのだ。
そして、未だその外に残る例外たちはこの巴マミのように、世界の一部として組み込まれている訳
ではない。

 ところが、フランのような幻想は淘汰の波に呑まれてしまうが、マミのような幻想は、
どういう訳かこの世界に存在することを認められている。

 つまり、フランたちがかつて暮らしていた外の世界と、今フランやマミがいるこの世界は
違う可能性があるのだ

 故に、もしここが、そのように一部の幻想の存在を認めている世界とするなら、
この世界に博霊神社が在るかは定かではない。

 仮に在ったとしても、幻想郷に通じているか分からないし、通じていたとしてもそこは
パラレルの幻想郷である可能性も否定できない。
そういうことは、スキマ妖怪の領分なのだ。

 根っからの引き籠もりで、専ら本の知識ばかり蓄えて来たフランには、実体験という物が
欠けていた。
状況を分析することはできても、これからどうするか、行動の起こし方が分からない。

 だから、分析する。ただひたすらに。それしかできないから。


 とにかく、こいつについて行ってみよう。何か分かるかもしれない。


 そう考えて、フランは目の前にいるマミを見た。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:10:32.84 ID:fhyS5BAz0<>

 そしてすぐに目をそらした。


 さっきまで冷静に思考していた脳みその温度が急に上がってくる。
先ほどの醜態が思い出される。

 なぜなら、マミの首筋に噛みつき、吸血したことでフランは処女を破った。
つまり、あれが生身の人間から血を吸う初めての体験だったのだ。
いわば、ファーストキスのような、あるいは初夜の様なものである。

 吸血鬼にとって、血を吸うという行為は、食事や眷属作りのほかに、愛情表現という意味合いも含まれているのだ。

 お姉様は時々メイドの血を吸っているが、あれは当然食事という意味ではなく、
「お前は私の愛しい従者だ。我に一生従え」という意味なのだ。
同時にメイドにとっても、服従と忠誠の証明でもある。

 で、マミで初体験をしてしまったフランな訳だが、初対面の相手にいきなり、それも混乱した末に
思わず本能に従ってやってしまったということ実に気が付き、これまた羞恥に身を焦がした。

 結果、二人はしばらくの間それぞれ恥ずかしさのあまり仲良く真っ赤になっていたのだった。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:11:58.33 ID:fhyS5BAz0<>

閑話休題。


 フランは目の前にいるマミの乳と顔を見ないようにしながら、なんとか羞恥心を押し殺して
会話を続けた。

「あなたは、行くところがあるんじゃない? 私はこのあたりの木陰で待っているから、
日が沈んだら迎えに来てくれるといいわ。
先ずはあなたの用ことを優先した方がいいと思うのだけど」

 気が付けば、マミと同じ制服を着た人間たちはもういなくなっていた。
人通りもまばらだ。

「ううん。どうせもう遅刻確定だから、今日はいいわ。
あなたを一人こんなところに放っておくのはさすがにまずいと思うのよ。
交番には、なんとかして連れて行ってあげるから」

 マミは首を振る。

 彼女は、本当に人がいいみたいだ。
身勝手な輩ばかりの幻想郷じゃ、まず滅多に見ないタイプである。
どこぞの白黒魔法使いに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:13:43.93 ID:fhyS5BAz0<> 「あなたの家がいいわ」

 親切はありがたいが、もう行きたいのは「コウバン」ではなくなった。
なんとかその優しさにつけ……頼って、彼女の家に行きたい。
なにしろ、招待されないと上がれないので。

 もうフランの興味の対象は完全に巴マミに移っていた。
魔力を持つ人間。
幻想郷でも、それほど数はいない。
白黒の魔法使いと、うちのメイドぐらいしかいない。マミは、何ができるんだろうか?

「でも、いいのかしら? ハクレイ神社の場所を探すんでしょ?」

「あなたの家で、調べられないの?」

「パソコンはあるから、出来ないことはないけど、警察に行った方が安全だし、確かだと思うわ。
何かあってもすぐに病院に行けるし」

 病気だという嘘を本気で信じて本気で心配している。
ただ、フランとしては病院は勘弁願いたかった。
なにしろ、日光にあたれないのは体質であって病気ではない。
それに、最先端の科学技術が集まる病院なんかに行くと、自分の体をいいように調べられそうで怖い。
今のフランは抵抗する力もない、か弱い少女なのだ。
捕まったら逃げられない。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:15:03.31 ID:fhyS5BAz0<>  それはともかくとして、先ずはマミの家に行かなければならない。
時間はあるが、早くゆっくり休みたい。
そのためにも、なんとかしてマミを説得しなければならない。

「今さら病院に行ったところで、治るようなものでもないわ。ほとんど体質みたいなものだからね。
それより、早くお姉様と連絡を取らないと、向こうも心配しているわ」

 嘘は真実と併せて言うべきである。
なぜなら、人は真実に挟まれた嘘を、真実と誤解する傾向があるからだ。
病院に行っても治らないのは本当。
体質というのも、間違っていない。

 お姉様が心配しているのは……多分……いや、おそらく、そう。だよね? 
さすがに唯一の肉親だものね。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:16:40.94 ID:fhyS5BAz0<> 「それなら、なおのこと交番に行くべきよ」

 マミは粘る。フランはその言葉に、心の中で舌打ちをする。

 くそ。面倒くさいな、この女。

「それに、いきなり見ず知らずの人の家に行くのは、怖くないの? 
さっきまで交番に行きたいって言っていたのに、急にどうして私の家に行くなんて言い出したの?」

 純粋な善意で言っているのだろうが、フランにとっては苛立ちを加速する要因でしかない。
それにしても、痛い矛盾点を突かれたものだ。
咄嗟の話で、うまく辻褄合わせができていなかった。

「うーん。それは、ね。あなたが、優しそうだったからよ。お姉さん、そんな悪い人に見えないし、
今だって私のことをすごく心配してくれてるじゃない。
だから、大丈夫かなって思ったの。それに、私、『コウバン』には拘らないのよ」

 なんとか出まかせを言って、ついでに愛らしく見える笑顔も張り付けておいてやる。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:17:49.20 ID:fhyS5BAz0<>  マミの頬が少し染まった。僅かにフランを見つめた後、視線を下げる。

「そ、そんなふうに言われると、照れちゃうわ」

 恥じらいながら再び視線を上げて、フランを見る。
フランも、マミの黄金色の瞳を見返す。
それは、期待と感動に揺れていた。心なしか、目も潤んでいるように見える。

「そんなに言うなら、仕方ないわ。私の家でよかったら、お招きするわ」

「うん。ありがとう。嬉しい」

 満面の笑顔で答える。その笑顔の意味は、マミには正しく伝わらないだろうが。

 ちょろいぜ。イェイ。

 なんとなく、マミの扱い方を習得したフランだった。
ただ少し、後ろめたさが残ったのだが、100万ドルの笑顔でお詫びをすることにする。

 今になって、初めてこの幼い容姿に感謝したフラン。
うまくマミを誘導できて満足だったが、目下の問題はこれですべて解決した訳ではない。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:19:31.28 ID:fhyS5BAz0<>
 燦々と降り注ぐ太陽光の下、いかにしてマミの家に向かうかという、最大の難関が待ち受けているのだ。


 などと、大業に言ったところで、雨傘の一つでもあればこの問題、解決する。
しかしながら、天気のいい今日にそんなものを持ち歩いている物好きはいないだろう。
マミ自身も、日傘を差して歩くような淑女でもないだろう。

 まあ、さっきも言ったように日が暮れるまで待ってもいいのだ。
お姉様ならいざ知らず、フランはマミに家まで傘を取りに行かせるなんて真似はしたくなかった。
頼めばしてくれるだろうが、世話になる上に、まるで召使のごとく扱っては、いくらなんでも失礼だろう。

 そういう、尊大でないところは、お姉様に言わせれば「吸血鬼としての自覚が足りない」だそうだ。
だが、本来の性格なのか、フランは姉ほど傲慢ではないし、引き籠もりながら、礼儀作法は
一通り弁えてある。
あれだけ我が儘な姉がいるなら、少しは謙虚な妹がいた方がバランスはとれるだろう。

 だが、だからと言っていい代替案がある訳でもない。
やはり、日暮れまで待つ以外にはない。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:20:38.19 ID:fhyS5BAz0<>  幸い、時間に追われる人間たちとは違って、長寿の吸血鬼をはじめとする妖怪たちは、
時間の観念に疎い。
木陰に座って一日潰すことに抵抗は全く覚えないのだ。
マミには「寺子屋」に行ってもらう。夕方には戻ってくるだろう。

 そう言おうとしてフランは口を開きかけたが、それより先にマミがしゃべった。

「いいこと思いついたわ。この近くにコンビニがあるの。多分折り畳み傘が売ってあると思うから、
それを買ってきましょう。
ちょっと、小さいけど、なんとかなりそうね」

 ぽかんとフランは口を開いたままマミを見つめた。
「こんびに」が何かは分からないが、店の一種なのだろう。
マミは、そこで傘を調達してくると言うのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:21:24.54 ID:fhyS5BAz0<>  いくらなんでも、お人好しすぎないか? 
今し方初めて会ったばかりの赤の他人に、いきなりそこまで尽くすことはあるのだろうか? 
やはり、先ほど魔眼で魅了してしまったのだろうか? その可能性はないはずだけど。

 フランはあっけにとられていた。
そのうちにマミは「ちょっと待っててね」と言って、急いでコンビニ向かって走って行ってしまう。


「……」


 一人ポツンと残されたフランは、自分の想像を超えたお人好しぶりに圧倒されているだけだった。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 01:30:46.85 ID:fhyS5BAz0<> ここまで!!

おやすみなさい・・・・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/20(木) 06:48:17.28 ID:IEazttjSO<> おつ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/20(木) 11:50:37.32 ID:9eIrZ/ET0<> ふむ。血には魂分が無くても魔翌力がありゃ良いのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/20(木) 11:55:14.41 ID:BH2HCNADO<> 乙
世界のどこかには、「吸血鬼になってみたい!」とかって契約した魔法少女も居るんだろうなぁ <> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:20:18.68 ID:fhyS5BAz0<>
こんばんわ!

ミスを見つけたので修正入れときます↓

>>70
×先ずはあなたの用ことを優先した方がいいと思うのだけど」

○先ずはあなたの用事を優先した方がいいと思うのだけど」 <> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:23:12.66 ID:fhyS5BAz0<>  かくして15分後、フランはマミに抱き上げられ、紺色の折り畳み傘を差してマミの家に向かっていた。


 なぜ抱きあげられているか? それは、木立から出る時のことだった。


 木立と道の間には、小さいながら水の流れる水路があったのである。
そして、吸血鬼は流水を渡ることができない。自力では。

 そこでフランは、恥を忍んでマミに抱き上げてもらい(当のマミも嬉しそうだったが)、
無事水路を超えることができた。

 しかし、自分から抱きあげてほしいと頼んだ手前、すぐに下して欲しいなどとは言えず、
結局そのままなのだ。
結果、晴れているのに雨傘を持った女の子と、それを抱いている少女と言う珍妙な図が出来上がり、
道行く人々の注目の的となってしまった。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:24:22.61 ID:fhyS5BAz0<>  二人は仲良く耳まで間で赤く染めながらマミの家へと向かっていた。

 二人は思った。

ああ、どうして今日は朝からこんな恥ずかしい思いばかりしているのだろうか、と。


 なんとか気を紛らわせようと、マミはフランに何か話しかけることにした。

 訊きたいことはダース単位であったが、とりあえず先ほどから気になっていることを訊くことにしてみる。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:25:03.71 ID:fhyS5BAz0<> 「ねえ、フランちゃん」

 自然にマミは「フランちゃん」と言った。
フランも、若干の気恥ずかしさを覚えながらも、特に気にすることなく「ん?」と、可愛らしく
首をかしげながら、真紅の瞳でマミを見上げた。

「その、背中に付いているのは何?」
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:26:30.33 ID:fhyS5BAz0<>  マミが指摘したのは、フランの「羽根」だった。
だが、奇妙な形をしたそれは、マミの目には羽根とは映らなかった。
せいぜい、何かのアクセサリーぐらいにしか思わなかったのだ。
最初は……。

 ずっと気になっていたけれど、なかなか訊きづらいことだった。
なにしろ、この不思議な「アクセサリー」、時々動くのだ。
例えばフランが驚いた時。
それを表すかのように、「アクセサリー」が跳ね上がる。
恥ずかしがっている時、「アクセサリー」の位置が下がる。

 明らかに不自然なものなのに、まるで体の一部のように動く。
そしてそれを見て、マミはかわいいと思ってしまったのだ。
普段から常識はずれな物を相手にしているだけあって、不自然な物にもそれほど違和感を
持たないあたり、もうだめかもしれない。

 自分の感性に疑問を持ちつつ、マミは意を決してフランに尋ねたのだった。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:29:31.68 ID:fhyS5BAz0<>

「あ……………………」



 それがフランの反応だった。

 まるでいたずらが発覚した子供のように、その表情には露骨に「しまった」と書かれてあった。
目線が逸れ、フランの白い肌から血色が引いて行き、妙に汗ばんでいく。

 マミはその反応に思わず閉口してしまった。これを見る限り、よほど訊かれてはまずいことだったらしい。
目に見えてフランは動揺していた。


 実際、フランは内心焦りまくっていた。

 彼女の背に生える「羽根」。
これは明らかに人間には存在しない物。
彼女が人外の存在であることの証左。
そして、ある意味において、彼女のあり余る力の源。

 体の一部で、あまりにもマミが自然体で接するので、自分でも完全にその存在を失念し、
対策を講じるのを忘れていた。
その気になれば、服の中にでも隠せるのだ。
でも、すっかり忘れていて、その結果がこれだ。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:30:37.90 ID:fhyS5BAz0<>  完全にフランの思考はフリーズしてしまった。
先ほどのように、咄嗟に言い訳が出てくることもなく、ただ冷や汗を流すだけだった。

「あ……えっと、その。ご、ごめんなさい。変なこと訊いてしまって」

 マミが慌てて謝罪してくるが、フランはそれどころではなかった。

 なんとかフリーズした頭は動き始めたが、もはや手遅れだった。
気づかれた以上、話さない訳にはいかないだろう。
諦めモードに入ったフランは、「もういいや」と投げやりな思考に陥り、マミにこう言った。

「後で、話すから」

 死んだ魚のような目をしてそう言うフランの姿に、マミはすさまじい罪悪感を抱いた。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:31:40.61 ID:fhyS5BAz0<>  余計なことを訊くんじゃなかった。

 激しく後悔したが、覆水盆に返らず。後悔先に立たず。最早後の祭り。
空気の読めない質問をしてしまった自分の愚かさを激しく責めつつ、なんとかフォローをしようとする。

「あ、あの。無理に、話さなくても、いいのよ? 
人には、誰だって言いたくない秘密があるでしょうし、ね?」

「うん。でも、いいわ。交換条件と行きましょう」

 マミが首をかしげる。

 この時、もうすでにフランは思考を切り替えていた。
犯してしまったミスはもう戻らない。
だから、いかに起き上がるかが重要なのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:33:19.78 ID:fhyS5BAz0<>
我が家のメイドが言っていた。

『人は、人に限らず妖怪も神も、必ず転ぶことはあります。
その後どうするかは、三つの方法があります。

一つは、転んだまま寝っ転がっていること。

二つ目は、ただ起き上がること。

そして三つ目は、転んだことをも利用して、災い転じて福となすこと。

人は、今まで何度も何度も転び続けてきましたが、その度に何かを得てから起き上がりました。
転んでも寝転がったままだったり、そこから何も得ずにただ起き上がるだけなんて、
とても非生産的ですわ。
私も、ただでは起きあがらないようにしております』

 メイドらしい、もっと言えば人間らしい思考だ。レッツ、ポジティブである。

 その言葉を思い出したフランは上手いこと交渉を持ちかけたのだ。
自分の秘密を教える代わりに、マミから彼女の魔力について聞き出そうと目論んだ。
そもそも、それがマミの家に行く目的の一つでもある。
だから、これは丁度良かったのかもしれない。

 よって、フランはこう続けた。


「簡単なことよ。代わりにあなたの魔力について、教えてほしいだけよ」



 今度はマミが固まる番だった。



<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:36:26.07 ID:fhyS5BAz0<>


               *


 その少女は丁度駅から自分の家に向かっているところだった。

<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:37:39.83 ID:fhyS5BAz0<>  ある目的のために調達した、この国では一部の職業の者以外の所持が禁止されている特殊な道具を
多数持ち、家に帰ってそれらを「調整」しなければならない。
時間はあるようで少ないのだ。


 故に彼女は急いでいた。やや早足で我が家に向かう。


 少女は一人暮らしだった。
親は、遠い土地で自分のために汗水流して働いている。
それはそれで大変感謝するのだが、残念なことに彼女はもうすっかり自分の両親の顔を忘れてしまっていた。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:39:12.09 ID:fhyS5BAz0<>  自分でも親不孝な娘だとは思うのだが、ある意味仕方ないことだった。
自分はなにしろ「特殊」なのだ。
内と外の年齢に齟齬がある人間なんて、自分ぐらいだろう。
それも、精神年齢と肉体年齢が食い違っているなどという、単純なことじゃない。
本当に自分は、精神の経て来た年月と肉体の年齢が違うのだ。

 ある理由があってそんなことになっているのだが、
少女はそれほど年齢のことは気にしていなかった。
そんなことは自分にとってたいしたことじゃないのだ。
むしろ、人より大人びて見えると、高評価してもらえる。
それはそれでいいことなのだ。

 さて、ただ今彼女は家路を急いでいる。
時間は午前9時前。
本来なら、彼女の(外見の)年齢なら、学校に通っている筈の時間帯だが、少女は例外だった。
まだ、通わなくていいのだ。
そもそも、彼女は学校に行く必要性すらあるとは思っていない。
少女は、学校に行かなくても、そこで教えられる授業内容を把握しているのだから。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:40:52.93 ID:fhyS5BAz0<>  少女が今歩いているのは、彼女が行くことになる地元の市立中学の通学路の一つだった。
もう30分ほど前なら、その中学の制服を着た生徒たちがたくさん歩いていただろうが、
今は人通りもまばらだ。

 少女は、前述の通り、まだその中学校に通う必要はない。
しかし、だからと言ってその学校の制服を着ていく訳にもいかず、今の彼女は私服だった。
デニムのショートパンツとその下に黒いレギンスを履き、
白いTシャツの上から薄いカーディアンを羽折るという、地味な服装だが、それを重視してわざと
着ているので、気に留めていない。

ジャージでも良かったのだが、
こんな時間に女子中学生がジャージを着て歩いていたらかえって目立ってしまうだろう。
従って、中途半端に目立たない服装をあえて選んだのだ。

 最も、彼女は幸か不幸か、人並み外れた美貌の持ち主で、地味な格好をしていても目立ってしまうのだが。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:42:12.17 ID:fhyS5BAz0<>
 と、少女は奇妙な人を見つけた。
金髪お下げロールの後ろ姿が目に映る。


 見覚えのある特徴的な髪と、例の中学校の制服を着ている少女だ。
実際、彼女はその少女のことを知っていた。
向こうは知らないが、彼女はよく知っていた。
だからこそ、彼女は困惑した。

 彼女の知る金髪お下げロールの少女は、少なくともこんな時間に、学校とは反対方向に
歩いているような人物ではなかったはずだ。
しかも、特に急いだ様子もなく、むしろ歩く速さはゆっくりとしたものだった。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:43:36.04 ID:fhyS5BAz0<>  彼女はその理由を色々考えてみたが、全く想像つかなかった。
だが、関わっている物があるとしたら、それは彼女が差している傘だろう。

 それが、お下げロールの少女が奇妙に映る所以である。

 一体、どんな理由があれば小春日和のこんなに天気のいい日に傘なぞ差して学校とは反対の方向に
歩いているのだろうか? 
あまりに意味不明な状況に、少女は首を傾げるしかなかった。


 その上、傘の差し方もおかしいのだ。


 傘は、どう見てもそこら辺のコンビニで売っている折り畳み傘だ。
普通は雨傘として使う物だが、百歩譲って日傘として使用としているとしよう(それでも、
直射日光の強くない春に日傘を使うのは考えにくいし、少女の知る限り、このお下げロールの少女は
そんな貴婦人みたいなことをする習慣を持っていないはずだ)。

 差し方が変だ。

<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:44:32.73 ID:fhyS5BAz0<>  傘は、彼女の右肩辺りを覆っていて、頭の部分には日が当たっていた。
日光によって髪が痛むのを嫌がるなら、まず頭に影を作るだろう。
そもそも、彼女の来ている制服は冬服なのだ。
肩を覆う意味はないに等しい。

 論理的に考えて、彼女は右腕で何か、日光から隠したいものを抱えていると考えるのが妥当だ。
左手で鞄を持っているので、右手は傘を支えているのだろう。
<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:45:12.24 ID:fhyS5BAz0<>  
 ひとしきり縦ロールの少女を観察した少女は、尾行しようか迷った末、今の自分の用ことを
優先することにした。
正直、彼女が学校をさぼろうが、大して関係ないことだ。



 結果、少女はこの時ある出会いをせずに家に帰ってしまったのだった。





<> 1<>saga<>2012/12/20(木) 22:48:18.21 ID:fhyS5BAz0<> 今日はここまで。

誤字脱字が有ったらを見つけたら教えてください。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/20(木) 23:02:41.48 ID:TQ5t8bfAO<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/20(木) 23:28:54.79 ID:C8Yyg7N30<> 乙
フランちゃんの程度の能力がちゃんと使えれば、ある事を出来る可能性がある訳かな? <> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:47:04.76 ID:hlN+pPyJ0<> >>99

>誤字脱字が有ったらを見つけたら教えてください。

どういうことやねん(´・д・`)

誤字脱字が有るのを見つけたら教えてください。 <> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:49:00.21 ID:hlN+pPyJ0<>

           *



 そこは、何もかもフランにとって目新しい場所だった。


 まず、高い建物というのを知らない。
自分の館の塔よりずっと高く巨大なマンション。
そこにはたくさんの部屋があり、たくさんの人が住んでいる。

 好奇心に駆られ、フランはマミを質問攻めにした。
マンションを見た途端、いきなり饒舌になったフランにマミは多少混乱したものの、
一つ一つの質問に丁寧に答えていった。


 そうこうするうちに、二人はマミの部屋に入った。

 中は思ったより広い。
キッチンや二つのベッドルーム、浴室、そしてリビング。
大まかな間取りはだいたいそんな感じ。
しかし、一つ一つの部屋が大きい。
姉の自室ほどではないが、リビングはマミの家の中で一番広い部屋だ。
何より、その圧倒的な解放感がすごいのだ。

 西向きの部屋。壁自体が大きな窓になっていて、そこからは見滝原のビル街が望めた。
窓の反対側には、何故かロフトがある。

 世間知らずのフランだが、それでもこの部屋に住むにはそれなりの金が必要だということは分かった。
マミは思ったより金持ちのようだ。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:50:20.13 ID:hlN+pPyJ0<> 「ごめんなさいね。余り片付いていなくて」

 マミは謙遜して言うが、そもそも彼女の部屋にはあまり私物がなかった。
広いリビングも、真ん中にソファと三角形のガラスのテーブル、そしてカーペットがあるだけで、
随分と殺風景だった。

「広いのね」

 素直に感想を述べる。ありがとう、とマミは言った。

 取敢えず、フランはテーブルの傍に腰を下ろす。
するとマミはキッチンに向かい、紅茶を淹れ始めた。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:51:33.65 ID:hlN+pPyJ0<>  フランはガラスのテーブルに映る自分の顔を見下ろした。


 疲れてるなぁ、私。


 自分でもそう思ってしまう程、フランの顔には疲労の色が表れていた。
目には力がないし、肌の艶も落ちている。
目の下にうっすらと隈も見える。

 ひどい顔である。よくこんな顔で外に居られたものだ。
フランも女の子である。自分の見た目には気を払う。

 バタン、という音がして視線を上げると、マミがケーキ型のカスタードプディングを乗せたお盆を
抱えていた。
その後ろにある、大きな箱型の物体はなんだろうか?

 だが、フランの興味はすぐにプディングに移った。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:52:49.52 ID:hlN+pPyJ0<>  マミはプディングを扇状に切り分け、二つを皿に乗せ、残ったプディングを大きな箱型の物体の中に戻す。
そして、涎をすすりながら待っているフランをニコニコと見ながら運んできた。

「こんなのしか用意できないけど、良かったらどうぞ。もう少ししたら紅茶も淹れるから」

「ありがとう。プディングも紅茶も大好きよ」

 特に、血が入った奴が好みだ。

「ほんと? 好みが合うのね。このプリン、私が作ったんだけど、舌に合うかしら?」

「へえ。あなたは自分でデザートを作ったりするの?」

「お菓子作りが好きなのよ」

「売ったりしているの?」

「まさか。自分で食べるだけよ。人に食べさせたことは……あまりないわ」

「ふーん。じゃあ、頂きます」

 フランは会話もそこそこに、小さなスプーンでカラメルを絡めながらプディングを抉る。
そして、一切れ口に運ぶ。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:56:54.40 ID:hlN+pPyJ0<>
 瞬間、ほっぺが落ちるかと思った。

 柔らかな口触り。卵臭くなく、舌がとろけそうなくらい甘い。
一瞬でフランは破顔し、恍惚とした表情を浮かべた。

 天にも昇るような心地になったフランの脳裏に、懐かしい光景が浮かぶ。


 春のポカポカとした陽気に包まれ、時折涼しい風が吹く、ある晴れた日の午後。

 懐かしい故郷の家の庭で、美しい湖を眺めながら藤色の髪の親友と一緒に楽しんだ優雅なティータイム。

 白樺のテーブルの上には琥珀色のプディングと香ばしい紅茶。

 パラソルの日陰から望む新緑と碧い湖面はどこまでも長閑で、庭には色とりどりの花が咲き誇り、
深い緑の垣根の向こうから、ひょっこりピーター・ラビットが顔を出しそうだった。

 湖はキラキラと陽光を反射し、優しい風が若葉を揺らす中、フランたちは他愛のない話をしては、
コロコロと笑いあった。


 あれはいつのことだったか。


 故郷を去る直前だったように思う。
もう二度と見ることは無いであろう美しい景観を目に収めるために、
親友を誘ってティータイムと洒落込んだのだった。

 その時は、あのメイドもいなかった。上海から来た使用人がすべての準備をしてくれたはずだ。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:58:05.91 ID:hlN+pPyJ0<>
「お気に召したかしら?」

 マミの一言でフランは過去の回想から現在へ引き戻された。
ほんわかとした微笑みを浮かべているマミがフランを見下ろしている。

「ええ。とっても」

「嬉しいわ。自分じゃなかなか分からないからね」

「最高よ。こんなおいしいお菓子、そうそう食べられる物じゃないわ」

 実際には、ほぼ毎日のようにメイドが作ったおいしいお菓子を食べていたのだが、
それとはまた違った味のお菓子を食べることができて、たいそうご満悦だった。

「紅茶を持ってくるわね」

 そう言ってマミは立ち上がる。
彼女も自分のプディングを食べていた。
その食べかけが置かれてあるが、なんとか貰えないだろうかとフランは思索し始める。
もうフランのプディングは半分以上がなくなっていたからだ。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 22:59:34.71 ID:hlN+pPyJ0<>  そんなことを思っていると、マミが紅茶を持って戻って来た。
先程から蒸らしていた淹れたてほやほやの紅茶だ。
これまた香ばしい匂いを発している。

「はい。熱いから気をつけてね」

 出されたのは、熱々のストレートティ。

 フランは一口すする。

 熱い液体が、咥内を満たす。ほんのりとした苦みがカスタードプディングの甘さと丁度よく調和して、
フランは再び天国を見た。

 ああ、幸せ。

 二人はそのまま朝のお菓子タイムを愉しんだ。
フランはその間ずっと幸せそうな表情でお菓子をほおばり、紅茶を味わい続けた。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:01:55.12 ID:hlN+pPyJ0<> 「ごちそうさまでした」

「お粗末さま」

 マミは食器を片づける。

 先ほどの至福の時間のおかげで上機嫌になっていたフランは、今度はマミの部屋の中を物珍しそうに
見まわしてある物を見つけた。

 あの、四角く分厚い黒い板はなんだろうか?
Sannyというロゴが書いてあるそれは、ロフトの手前の壁際に置かれていた。

「テレビを見たいの? 付けていいわよ」

 キッチンからマミが声を掛けながら戻ってきた。

 今度出て来たのはフランにも聞き覚えがある単語だったが、フランは首をかしげた。
その様子を見て、さらにマミも首をかしげる。
何が分からないのか、分からないといったふうだ。

「テレビって、どれが?」
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:04:26.85 ID:hlN+pPyJ0<>  さすがのフランも、テレビぐらいは知っていた。

 以前、我が家のメイドが大きな箱に金属の触手のような物が付いた物体を持ってきたことがあった。
何でも、魔法の森にある古道具店で見つけて来たとか。

 珍しい物好きの彼女は、特に深く考えず、そのようなガラクタを持って帰ってくることが度々あった。
本来なら、彼女にとって見慣れた物であるはずだが、それを幻想郷で見つけたのが珍しかったのだろう。

 ただ、持って帰ってくるのはいいものの、そういった文明の利器に対して蕁麻疹が出るほど嫌悪を
抱いているお姉様に見つからないように注意が必要だった。

 吸血鬼の姉はなぜかテクノロジーを、というより科学全般を蛇蝎の如く嫌っているのである。

 しかし、姉と違ってフランはそうではない。

 どちらかというと、子供っぽく学者気質の妹の方は、そういった科学の産物に多大な興味を示してやまない。
時たまメイドが拾ってくるガラクタは、たいていが外の世界から幻想郷に流れ着いた物だ。

 だから、フランは好奇心に駆られ、それら未知の利器を分解して構造を調べたりするのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:05:39.49 ID:hlN+pPyJ0<>  テレビも、そんなガラクタの一つだった。

 外の世界で使われなくなったテレビが、幻想郷に流れて来たのだ。
しかし、テレビは電気がなければ動かない。
そして、電波がなければ映像を写さない。

 家に持ち帰ったところで、その両方がないのでは、テレビはただのゴミである。
帰ってからそれに気が付いたメイドは、5分でテレビへの興味を失った。
だから、フランはテレビを払い下げてもらい、ばらばらに分解してその構造を調べたのだ。
もちろん、それは姉の知らないところで行われた。

 もし彼女が自分のテリトリーにそのような物があることに感づいたら、それこそ激怒するだろうから。

 すべては秘密裏に進み、そしてフランは人間の科学技術のすごさに驚いたのだった。

 見ただけで道具の用法が分かるという古道具店の店主によれば、それは離れたところから映像を
送ってもらい、それを見るための道具だそうだ。
そのためには、映像を取るビデオカメラが必要で、それとテレビを直接つなげることができれば、
電波がなくても映像が見られるという。
だが、ビデオカメラはなく、従ってテレビで映像は見れなかった。
メイドが飽きたのも、それが一番の理由だ。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:06:48.97 ID:hlN+pPyJ0<>  そんなふうにフランにとっては慣れ親しんだテレビだったが、マミの部屋にはテレビらしき物は
どこにもない。
少なくともフランにはそう見える。
それを素直に口にした時、マミは随分といぶかしげに眉をひそめた。

「どれって。これじゃない」

 そう言って、板状の大きな物体を指す。

「これ?」

 思わず聞き返してしまった。

「これ以外に何があるの?」

 マミは、テレビのスイッチを入れる。
すると、綺麗な映像が映った。
丁度、人間が何人かこちらに向かってしゃべっているところだった。

「す、すごい」
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:10:32.87 ID:hlN+pPyJ0<>  フランはテレビに飛びかかった。そして、隅々まで舐め回すように観察する。

 本当にテレビだ。
そして、フランはテレビが映像を写しているところを、テレビがテレビとして機能しているところを、
初めて見た。

 フランはテレビを隅々まで観察する。
鼻先を画面にくっつけてよく見れば、赤、青、緑の光の三原色をそれぞれ発光している無数の素子がある。
そんなに近くで見たら目が悪くなっちゃうわよ、というマミの忠告に気付かず、フランは今度は顔を
離して画面を眺める。

 無数の素子が集まってできた一つの大きな画面では、そこに映る人間がまるで生きているかのように
動いていた。
スピーカーからは、映像に合わせて、まるでそこで喋っているかのように、人の声が聞こえて来る。

 裏側は、黒くて固いフランの知らない素材で覆われていた。
その表面にはシールが張られていて、そこには「製造番号」や「型番」、「消費電力」といった
項目の隣に、意味不明な数字とアルファベットを組み合わせた文字列が書かれていた。

 その下には、形も大きさも様々な端子が並び、そこからいくつかのコードが伸びていた。
特に目を引いたのは、赤、白、黄色のコード。
それぞれ、「音声−右」、「音声−左」、「映像」の三つの端子に繋がっている。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:11:47.81 ID:hlN+pPyJ0<>  裏側をどんなに見回しても、昔解体した古いテレビに入っていた大きなブラウン管はどこにも
見当たらない。
フランは、目をキラキラと輝かせながらマミに尋ねた。

「う、薄い。何でこんなに薄いの? ブラウン管はどこに入っているの?」

「ブラウン管?」

 プッとマミが噴き出す。何かおかしなことを言っただろうか?

「ブラウン管って。それは薄型の液晶テレビよ。ブラウン管なんか入っていないわよ」

「は……………………?」

 液晶は確か、固体と液体の中間にある状態のことだったはず。
時折、魔法の実験でも使うことがあるから知っている。
それをテレビに使用した。
そして、ブラウン管テレビより大画面でかつ軽量化することに成功した。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:12:55.47 ID:hlN+pPyJ0<>  フランは舌を巻いた。
やはり、人間の科学技術の進歩には目を奪われるものがある。
これでは妖怪たちが駆逐されてしまうのも仕方ない。


 敵わないのだ。


 フランは何となく悟った。これはそういうことなのだと。

 成長することを放棄した妖怪と、短いサイクルで世代交代しながら種族全体で前に進み続ける人間。
停滞を選んだ者と進歩を選んだ者の差がそこにはあった。

 しかし、それでもフランは妖怪が人間に劣っているとは思わない。
そこは、意地でも譲れない部分だった。
姉から「吸血鬼としてのプライドが足りない」と苦言を呈されているが、それでも妖怪としての
矜持がフランにもあった。
<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:13:41.71 ID:hlN+pPyJ0<>
「負けない。負けないから」

 フランはこぶしを握り締め、強くテレビを睨みつけながら決意した。
その小さな体には、しかし気迫があふれんばかりに詰まっていた。


 それを、マミが不思議そうな眼で見ていた。

 あの子は、CMを見て何をそんなに気合を入れているのだろうか? 
何かいい商品でも見つけたのだろうか?



<> 1<>saga<>2012/12/21(金) 23:18:29.54 ID:hlN+pPyJ0<> 投下終了。

マミさんの部屋などはTV版を参照しています。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/22(土) 00:19:57.48 ID:on9IXXdAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/22(土) 00:27:03.70 ID:C/vUd3bQ0<> 乙
妖怪は凄い。凄いから人間に嫌われたのだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/22(土) 01:45:46.61 ID:dftk05qg0<> 乙
みすず元メイド説か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/22(土) 09:39:34.70 ID:HlaDaWnSO<> 追い付いた。もしやフランは午後のパトロールついてくのか
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/22(土) 11:51:01.99 ID:VxFM5uLh0<> 否定しておきながら、それでも人は幻想を求める <> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:47:34.53 ID:h+kIYEON0<>
>>120嫌われたというより、恐れられたというべきか。
人は暗闇が怖いから火を手に入れた、のかもしれません。

>>121みすずって誰? と思ったら、門番のことかw

>>123想像するのはただですからねえ・・・

では、投下します。 <> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:49:06.43 ID:h+kIYEON0<>

       *


「私からでいいのかしら?」

「結構よ。お願い」

「分かったわ」

 そう言ってマミは姿勢をただした。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:50:22.32 ID:h+kIYEON0<>  テレビの前での決意の後、フランはマミを質問攻めにした。
疲労困憊じゃなかったのかと突っ込みたくなるくらい元気な様子で。

 液晶テレビはどんな仕組みなのか? 
中に何が入っているのか? 
テレビ電波はどうやって受信しているのか? 
電気自体はどこから引っ張って来ているのか?

 テレビの構造などほとんど何も知らないマミには答えることができなかった。
しかしフランは諦めず、挙句の果てにテレビを分解するとまで言いだした。
これにはさすがのマミも参ってしまい、なんとかなだめて落ち着かせたのが1時間ほど前のこと。

 そこからさらにフランはいろいろなことを訊いてきた。

 やれテレビはどうやって作っているだの、
冷蔵庫(フランは冷蔵庫も知らなかった)はどうやって電気で冷却できるのだの、
電気自体どうやって供給しているのだの、
マミには答えかねる質問ばかりだった。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:51:23.64 ID:h+kIYEON0<>  結果、いささかマミのフランに対する印象は修正された。

 それまで、ちょっと不思議なカワイイ女の子という認識だったが、
かなり好奇心旺盛で面倒くさいがカワイイ女の子に変わった。
随分と家電製品に興味のあるようだが。


 ちょっとどころではない世間知らずみたいね。


 世界中で販売されている液晶テレビや先進国のごく日常にある冷蔵庫を知らないあたり、
相当の箱入り娘に違いない。
その癖、日本語は異様に上手いのだ。
フランの正体について、マミはますます図りかねていた。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:52:18.51 ID:h+kIYEON0<>  特殊な病気を患っているから、世間知らずなのはまだ分かる。
夜にしか出歩けないと言っていたし。

 しかし、あの背中のあれはなんだろう?

 ともかく、マミは無理やり話題を変え、道中の話の続きを話すことにした。

 碌に質問の回答が得られなかったので、フランの機嫌は下がって行ったが、やはり魔力云々の話は
それより優先される話題だったらしい。
先にマミが話すことを条件に、質問の嵐は止んだ。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:53:23.16 ID:h+kIYEON0<>  フランとマミは、三角形のテーブルをはさんで向かい合っていた。

 空気が張り詰めていく。正直、不安だった。
これから自分が言おうとしていることは、非常識極まりないことだ。
ひょっとしたら、頭の痛い子と思われるかもしれない。
けれど、フランも魔法に関して、何か知っていることがあるみたいだった。
というより、フランも私と同じではないか、とマミは考えていた。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:53:59.12 ID:h+kIYEON0<> マミは唾を飲み込んで、懐からあるものを取り出した。

それはマミの髪や瞳と同じく、黄金色の輝きを放つ宝石。
台座に収められたそれは、形も大きさも卵と同じくらいだった。


「何かしら、これ」

 フランの反応は、こうだった。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:54:57.65 ID:h+kIYEON0<>  その様子に、マミは混乱する。

 てっきり自分と同じかと思っていたが、どうやら違うようだ。
もし同業者なら、これが何か、すぐに分かるはずなのだから。

 でも違うとしたら、ではフランは何者なのだろうか?

 疑問は積もるばかりだが、取敢えずそれは置いておいて、話を先に進める。

「ソウルジェムよ」

「そうるじぇむ?」

 やはり知らないようだ。フランは愛くるしい仕草でマミの宝石を興味深げに眺めている。
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:56:23.04 ID:h+kIYEON0<> 「そう」

 一呼吸おいてマミは意を決する。
包み隠さず自分の正体を明かそう。
少なくとも、鼻で笑われることはないはずだ。

「フランちゃん。あのね、笑わないで聞いてほしいのだけれど、私は、魔法少女なの」

「うん。それで?」

「あれ?」
<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:57:56.58 ID:h+kIYEON0<>  フランの反応は淡白なものだった。
まるで知っていると言わんばかりだ。

 ますます頭が混乱してきた。

 ソウルジェムを知らないのに魔法少女のことは知っているみたいだ。
ということは、まだ契約していない、候補生というところだろうか? 
でも、それだとマミが魔力を持っていることに感づいた理由が説明できない。

 矛盾だらけの状況に、マミは戸惑うばかりだった。

「魔法少女のことを知っているの?」

「魔法を扱う少女のことでしょ?」

「いや。うん。まあ、そうなんだけどね」

 言っていることは正しい。端的に言えばそうだ。
しかしそれならばなぜ、

「ソウルジェムのことは、分かるわよね?」

「ううん。知らない。何かの魔法に使う、魔法昌石の一種なのかしら? 
黄色だから、属性は金かしら」


 いや、そんなドヤ顔で言われても……。


<> 1<>saga<>2012/12/22(土) 23:59:06.52 ID:h+kIYEON0<>  どうやら、互いに魔法についての認識の齟齬があるみたいだ。
これが混乱を引き起こした原因だろう。
つまり、マミの知っている魔法と、フランの知っている魔法は違うものなのだろう。

 正直、自分の知らない魔法があることにびっくり仰天だ。
けれど、驚いてばかりでは埒が明かない。
まず、マミは一から説明することにした。

「ソウルジェムは、私たち魔法少女の魔力の源なの。そして、これを持っていることが、
魔法少女である証よ」

 フランがかすかに首をかしげる。
だが、何も言わず、目で先を促してきた。

 それを見て、マミは立ち上がった。

「百聞は一見に如かず。いいわ。見ててちょうだい」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:02:11.38 ID:YH2eXGCF0<>  戦う前ではないので、特にポーズは決めない。
魔法少女は、自分の思ったタイミングで変身できるのだ。
ポーズを決めるのは、戦意高揚のためだ。

 マミの体が一瞬光り、着ていた服がなくなって新たに魔法少女の衣装を身にまとう。

 変身し終わると、そこには目をまん丸に開いたフランがいた。ついでに口も開いている。

 その、何とも気の抜けた可愛らしい表情に、マミは小さく笑った。

「魔法少女はこうやって変身できるのよ」

 マミの衣装は全体的に黄色と白を基調とした色合いだった。

 まず目につくのは、ダークブラウンのコルセット。
これにより、ウェストが引き締まり、マミのグラマラスなボディが強調されていて、
とってもセクシーだ。
いやらしさを出さず、むしろ清楚で可憐な印象を与えるのが良い。

 ブラウスは半そでの白で、胸元に黄色いリボンが結んである。
腕には同じく白いアームカバー、黄色のミニスカートに、ストライプの入ったコルセットと
同色のサイハイソックス。
そして、ひざ下まであるロングブーツを履き、頭にはベレー帽を乗せている。
更に、ベレー帽には白い羽毛と、大きな花びらの形をしたリボン、その中心には花形に形を変えた
ソウルジェムが収まっていた。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:05:20.97 ID:YH2eXGCF0<>  てっきり、紫色のネグジュリみたいな衣装を予想していたフランは、いい意味で裏切られた。
なかなか、マミの衣装はオシャレで素敵だ。
そして何より、マミによく似合っていると思う。
ファッションのセンスは、森の人形遣いといい勝負かもしれない。

「これだけじゃないのよ」

 マミはそう言ってスカートを両手でつまみ上げた。
すると、なんということだろう。スカートの中から、二丁の銃が出て来た。

「フロントリック式のマスケット銃ね」

 その摩訶不思議な現象に、魔法に詳しい吸血鬼少女フランちゃんは舌を巻いた。
でも、それが何か、即座に見抜くあたり、流石である。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:09:36.16 ID:YH2eXGCF0<> 「あら、詳しいのね」

 マミが感心したように言う。実際意外なのだろう。

 見た目10歳未満の子供のボキャブラリーになかなか「マスケット銃」という言葉は
入っていないだろうから。

「家にも、似たようなのがあるから」

 銀のボディに黒い装飾板がはめ込まれたクラシカルなデザインの銃だ。
それ自体が芸術品として価値を持ちそうなくらい、洗練された美があった。
当然、見たこともないタイプなので、恐らくはマミのオリジナルだろう。
これも、そして衣装も、マミ自身の魔力で作り出したものだと、フランは素早く分析した。

  物質創造という高等魔法を易々と行うマミに、フランはひどく心魅かれた。
今まで見たことも無い、全く未知の魔法。
それなりに魔法に精通している自負があるフランにとっては、知的好奇心を刺激してやまないものだ。

<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:11:08.41 ID:YH2eXGCF0<> 「これが私の武器。本来の力の象徴は、リボンなのだけど、私はリボンを銃に変形させて戦っているのよ」

「戦う? 何と?」

「もちろん、悪い魔女と戦うの」

「魔女と?」

 思わずフランは図書館の魔女とマミが戦っている様子を思い浮かべた。
マミの実力がいかほどかは判らないが、絶好調の図書館の魔女が相手ではさすがに分が悪そうだ。
喘息の時なら分からないが。

 次に、よく図書館に侵入してくる白黒の魔法使いとマミを思い浮かべた。
リボンで縛って銃でぶち抜けば勝てるかもしれない。

「うん。ネズミ退治にはいいかもね」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:12:17.60 ID:YH2eXGCF0<> 「ネズミ?」

「ううん。何でもないわ。続けて」

 思わず本音が漏れていた。

 それにしても、こちらの世界にも、魔法を使って迷惑行為を働く不届き者がいるらしい。
全く、嘆かわしいことだ。これだから人間は……。

 マミは銃を消し、変身を解いて元の制服姿に戻ってから、腰をおろした。

「まあ、魔女と言っても、見た目は化け物だけどね」

「え?」

「ふふ」

 驚くフランに、マミは謎の笑みを浮かべる。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:13:04.02 ID:YH2eXGCF0<> 「とんがり帽子をかぶって呪文を唱えたり、毒りんごを売ったりするお婆さんを思い浮かべた? 
残念。私の言う魔女は違うのよ」

 何処か二人の認識はずれていた。
まあ、マミの言うのは一般的な魔女のイメージだ。
対して、フランが思い浮かべたのは本物の魔女である。

 だが、話を先に進めるために、フランは何も言わずに目で促した。

「そう。あれは人外の化け物。人の姿をしていないのよ」

「妖怪みたいなものかしら?」

「そうね。そう言った方がしっくりくるかもしれないわ。
私たちは魔女と呼んでいるけど」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:15:53.67 ID:YH2eXGCF0<>  妖怪の中には、当然人の姿を採らない者もいる。
一般的には、グレードの高い妖怪ほど人の姿を採るものだが、中には例外もある。
ただ、逆にグレードの低い妖怪はそれこそ人外の姿だ

 なら、魔女という存在はそれほど強くないのかもしれない。
ここではほぼ無力だが、本来は最高峰の力を持つ吸血鬼であるフランの敵ではないのかもしれない。

 すると、マミの力もそこまで強いものじゃないのだろうか? 
だとしたら、白黒には敵わないのかも。
あれはあれで、魑魅魍魎の闊歩する幻想郷の中で、
人里の庇護を受けずに一人で生活できる程度に強いから。

 フランがそんなことを思っているうちに、マミは続ける。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:16:32.86 ID:YH2eXGCF0<> 「そもそも、魔法少女になるには、奇跡を願わなきゃいけないの」

「奇跡?」

「そうよ。奇跡。願いことを何でも一つ叶えてもらえるの」

「何でも?」

「一つだけだけどね。奇跡が叶ったら、ソウルジェムが生み出され、魔法少女になるのよ」

 と、ドヤ顔で語るマミ。ロールにしたお下げが軽く揺れた。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:17:41.41 ID:YH2eXGCF0<>  奇跡なんて、幻想郷じゃ春のバーゲンセールス中だ。
最近やって来た守谷の風祝なんて、そのまま奇跡を起こす力を持っているし、
そのバックには本物の神様がいる。
ついでに言えば、我がお姉様の運命を操作する力(笑)も似たようなものだろう。
まあ、あれはほとんど眉唾だとフランや周囲の人妖たちは思っているけれど。

 だから、彼女は特に反応を表さなかった。
むしろ、たった一つしか叶えられないなんて、ケチなものだと思ったぐらいだ。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:19:09.53 ID:YH2eXGCF0<> 「あれ? 驚かないのかしら?」

 そんなフランの反応にマミはドヤ顔を崩し、面を食らったような表情を浮かべる。

「別に」

「奇跡よ。何でも叶えられるのよ。すごいと思わないの?」

 何が不満なのか、若干怒ったふうにマミは言った。
けれど、フランには何がすごいのか分からなかった。

「でも、一回だけなんでしょ?」

「まあね。でも、それが奇跡というものじゃない? たった一回だからこそ、とても価値があるの。
そんな何回も願い事が叶ったら、誰も苦労しないし、それこそ奇跡の安売り状態じゃない。
奇跡のありがたみが薄れちゃうわ」

 熱心にご利益があると言い、勧誘を欠かさない奇跡を起こせる風祝が聞いたらどんな顔をするのだろうか?
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:20:51.52 ID:YH2eXGCF0<>  それにしても――フランは思う――奇跡で願い事を何でも叶えるなんて、いかにも人間らしい考えだ。
奇跡なんてそんないいものじゃないのに。
まあ、この世界では奇跡には至高の価値が置かれているのだろう。
奇跡も、幻想の産物だ。

「特に叶えたい願い事なんてないしね」

 思ったことは言わなかった。それを言えばマミの機嫌が悪くなってしまう。

 人間のご機嫌取りなんて妖怪のすることじゃないが、今の無力なフランでは外に放り出されたら
どうしようもない。

「そうね。一生に一度の願い事なんて、誰もが持っている訳でもないし。
ましてやリスクがあるものね」

 否定的なフランの見解に、マミは意外にも頷いた。
どうやら、彼女自身、奇跡によって何でも願い事を叶えることに対し、何か思うところがあるようだ。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:22:28.52 ID:YH2eXGCF0<> 「そのリスクが、化け物と戦うこと?」

「魔女ね。そう。あなたの言う通り。私たち魔法少女は契約することで奇跡を叶える代わりに、
魔女と戦い続ける運命を科せられるの」

「ちょっと待って」

 調子良く説明を続けるマミの言葉をフランは急に遮った。
気になる単語があったからだ。
どうしても聞き逃せない単語だ。


「契約って?」


<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:23:10.04 ID:YH2eXGCF0<>  吸血鬼も悪魔の一種である。
そして、悪魔にはその言葉が何より重要だった。
なぜなら、悪魔とは契約するモノであるから。

「魔法少女の契約よ」特に気を悪くしたふうもなく、マミは言う。
「説明が前後しちゃったけど、私たちは魔法の使者、キュゥべえと契約して魔法少女になるのよ。
あの子は、今ここにはいないけれど、一緒に暮らしているのよ」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:24:25.41 ID:YH2eXGCF0<>  何だか胡散臭い話になってきた。

 魔法の使者とな(笑)。どう考えても……いや、そう考えるのは早計か。

 でも、話は見えてきた。奇跡の対価に支払うものと言えば――相場は決まっている。

「キュゥべえ、ね。変な名前」

 そう言うと、マミはクスリと小さな笑いを零した。

「そう言わないであげて。あの子がいなかったら、私は今ここに居なかった訳だし。
それに、魔女と戦っている時もいろいろサポートしてくれるのよ」

 それを聞いて何だかマミが可哀想になってきた。
それは、体よく利用されているだけでは?
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:26:00.06 ID:YH2eXGCF0<> 「どんな奴なの?」

「見た目は、そうねえ。
白くて、猫と犬を足し合わせたみたいな姿かしら。
目は丸くて赤いの。
尻尾は、ふんわりしていて、触り心地がいいのよ」

「妖怪じゃん」

 フランがそう言うと、マミは苦笑しながら首をかしげた。
半分当たっているけど、半分外れと言った感じだ。

「見ようによってはそうかもしれないけど、妖怪というよりは、妖精と言った方がいいかしら」

 人外の生物か。これは増々……。


 この手の存在にとって、見た目というのは余りあてにならない。
人は見た目に依らないという言葉があるが、それはむしろ妖怪にこそふさわしい。

 かく言うフランも、可愛らしい見た目をしているが、実際は100万の屍を山と築き上げて、
その頂でワインを嗜む恐ろしい吸血鬼なのだ。
そんなこと、したことないけど……でも、やろうと思えばできないことはない。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:26:46.60 ID:YH2eXGCF0<> 「しゃべれるの?」

「テレパシーで会話できるわ。
ちなみに、テレパシーの中継もしてくれるの。
おかげで離れたところに居る魔法少女と話せるし、その素質がある子ともテレパシーを繋ぐことができるわ」

「ふーん。なるほどねぇ」

 テレパシーに、奇跡を叶える契約。

 一度、そのキュゥべえとやらに会ってみたくなった。
それで、そいつが何者かはっきりするだろう。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:27:30.53 ID:YH2eXGCF0<> 「フランも素質があったら契約できると思うわ」

「素質? 魔法少女になれる人となれない人がいるの?」

「ええ。そうよ。素質がなければキュゥべえは見えないし、女の子限定よ。
フランの年頃で契約できるかは、キュゥべえに聞かないと分からないけどね。
キュゥべえが見えるなら、あなたにも素質があるということよ」

 果たして吸血鬼は契約できるのか? そもそも、この年でもまだオーケー?

 ま、今はそんなことは後回し。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:28:33.29 ID:YH2eXGCF0<> 「で、魔女って言うのは?」

「魔法少女の対極に位置する存在かしら。
魔法少女は希望を持って奇跡を祈るけれど、魔女はその反対。
絶望から生まれ、周りに呪を振りまくのよ。
原因が不明な事故や自殺、動機が不明瞭な殺人とか行方不明はかなりの確率で魔女が関わっているの」

「だから、戦うのね」

「ええ。街を守るために。それが魔法少女の使命だと、私は思うわ」

 マミは、本当に善人のようだ。
ますます不憫で仕方がない。
どう考えても、人の良い彼女はキュゥべえに騙されているに違いない。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:29:20.10 ID:YH2eXGCF0<> 「でもね、そうじゃない魔法少女もいるのよ」
 そう言ってマミは顔を曇らせる。
「これを見て」
 そう言って、マミは懐から黒い宝石のような物を取り出した。
 それは、球体に一本細い針が貫通したような形をしていて、表面には何かの模様が刻まれている。見た感じ、好くない物であることが分かった。
「何これ」

「グリーフシード。魔女の、卵よ。魔女を倒すと時々手に入るの」

「へえ。卵ね」

 どちらかと言うとソウルジェムの方が卵に似ているのだが、敢えて口にはしないでおく。

「危ないんじゃない?」

「まだ、大丈夫よ」

 マミは微笑む。そして、ソウルジェムも取り出した。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:32:22.58 ID:YH2eXGCF0<> 「ソウルジェムを見て。下の方の、台座のすぐ近くの辺り。少し、黒い濁りが見えないかしら?」

 マミに言われたとおり、ソウルジェムに顔を近づけてよく見る。
確かに、ソウルジェムの台座との接合部分近くには、黒い濁りのような物が溜まっていた。

「魔力を消費するとね、ソウルジェムに濁りが溜まって行くの。これが溜まって行くと、
使える魔力が少なくなっていっちゃう。
そこで、このグリーフシードの出番よ」

 マミはソウルジェムとグリーフシードを並べて持った。
すると、ソウルジェムから黒い濁りがグリーフシードに移ったのだ。
不思議な現象にフランは目を剥く。

「こんなふうにソウルジェムから濁りを移せるの。そうしてジェムを綺麗にしておかないと、
いざという時、魔法が使えなくなるからね」

「使用限度って、あるんでしょ?」

「もちろんよ。濁りを限界まで移しちゃうと、また魔女が生まれちゃうの。そうなる前に、
キュゥべえに渡すの。
濁り切ったグリーフシードを回収するのもあの子の重要な役目なのよ」

 なるほど。悪い魔女の種を回収すると。

「グリーフシードをたくさん持っていると、魔法をたくさん使える。だから、人を守るためじゃなくて、
魔女を狩るために戦う魔法少女も居るって言いたいのね」

「鋭いわね。その通りよ」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:35:34.93 ID:YH2eXGCF0<>  マミは微笑んだが、それがフランには気に入らなかった。
まるで舐められているように感じたからだ。
実際、マミにその気はないのだろうが。

「まあね。でも、それならそれでいいじゃないの? みんなが積極的に魔女を狩って、街の平和は
守られるでしょう?」

 若干不貞腐れたような声で喋るフランだったが、マミは気が付かなかったみたいだ。
ただ、残念そうに首を振るだけだった。

「それがそうでもないのよ。
実は、魔女には使い魔という手下がいてね。
この使い魔も人を襲うのだけれど、こちらはグリーフシードを落とさないの。
だから、グリーフシード目当ての魔法少女は使い魔を無視したり、邪魔な分だけしか倒さないの。
魔力の無駄使いだって言ってね。
それどころか、使い魔は人を襲って食べることでやがて魔女に成長してグリーフシードを
持つこともあるから、ひどい場合なんかはあえて使い魔を放置して、魔女になるまで待ってから
倒す、という子もいるの」

 なるほど、合理的だ。
そして、人間らしい考えだ。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:36:59.67 ID:YH2eXGCF0<>  そもそも、人間ではないどころか、その捕食者であるフランには、その考えは特に抵抗なく
受け入れることができたが、根っからの善人であるマミはそうもいかないのだろう。
正義感の強そうなマミには受け入れがたいことに違いない。

 マミは続ける。

「それにね、グリーフシードを巡って、魔法少女同士で争いになることもあるの。
特に多いのが縄張り争い。
この見滝原は、近場じゃ有名な狩り場でね。
他から流れ着いた魔法少女とよく争いになるの。
なんとか説得したいのだけど、一度も成功したことがないのよ」

 よくあることだ。
そんなことにいちいち心を痛めていては、マミはいずれ心労で倒れてしまうだろう。
つまり、それだけ優しい心根の持ち主ということだ。
まあ、お人好しが過ぎるのもどうかと思うけど……。

 そんなことを考えながら、フランはさらに質問を重ねる。

「でも、あなたはずっとここを守って来たのでしょ? 相当な実力者ってことにならない?」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:38:20.94 ID:YH2eXGCF0<> 「もう、三年は魔法少女をやっているわ。
でも、いつも危険と隣り合わせ。
魔女との戦いは、毎回命がけなのよ。
魔法少女って、一年やっていればベテランと言われるのよ。
その意味が解るかしら?」

「ええ。よく解るわ」

 そんなことだろうと思った。

 いきなり年端もいかない娘が、命がけの戦いを始めて、一体何人が初陣を生き残れるだろうか? 
それを考えると、マミはやはり強いのかもしれない。運も、実力も。

「ひどいシステムね。魔法少女って」

「否定はしないわ。でも、私はもう後戻りできない。
一度選び取ってしまったら、もうやり直しは出来ないのよ」

 それにね、とマミは少し頬を緩める。

「誰かが魔女を狩らないといけないでしょう? その役目を果たしていることが、私の誇りなのよ」

 マミは、優しい目でフランを見つめる。
あまりに純粋な思いに、フランは目を合わせられなかった。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:39:31.85 ID:YH2eXGCF0<>

彼女は、気高い。


 気品に溢れているのは、単に上流階級趣味なだけじゃないのだろう。
お姉様とは別の意味で、自分に誇りを持っている。

 お姉様が、我を突き通すことが誇りだと考えているなら、マミは自己犠牲を誇りに思っている。
まるで、鏡のように正反対の考えだ。

 それに比べて、自分はまだまだ子供だ。
お姉様も、性格は我が儘で傲慢だが、そこには一人の吸血鬼として、また一国一城の主としての
意地と矜持がある。
だが、フランにはそのどちらもない。


 ただ、生きるために生きているだけだ。ただやりたいことをやるだけだ。


 そこに、誇れるものなど無い。
いかに強大な力を持っていようとも、所詮は中身のない腑抜けだったのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:40:08.48 ID:YH2eXGCF0<> 「まあ、もっと詳しい話はキュゥべえが帰ってきたら、聞いてね。あの子の方が詳しいでしょうし」

 マミがそう言ったので、フランの思考は中断された。

「今度は、フランのことを話してくれる? 嫌なら、いいけど」

 フランは首を振った。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:41:14.48 ID:YH2eXGCF0<>  正直話したくないが、ここでマミの優しさに甘えて逃げても何もならない。
自分が余計に腑抜けになるだけだ。
そもそも、悪魔は約束を破らない。

「あなたの話は、だいぶぶっ飛んでいたけれど、私の話はもっとぶっ飛んでいるわ。
笑わないで聞いてほしいのだけど」

「笑わないわよ」

 そういいながら、マミは笑った。お淑やかな、落ち着いた笑みだった。

 それを見て少し安心した。


 フランは意を決して伝える。



「私はね、吸血鬼なのよ。人間じゃないの」



<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 00:45:18.70 ID:YH2eXGCF0<> 数えてみたら36レス。めっちゃ長い・・・

という訳で、マミさんのカミングアウトの回でした。

次はフランちゃんの番です。もうちょっと短いです・・・・・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/23(日) 00:51:19.65 ID:38vurKF/0<> 乙
マミさんならどういう反応するか、ちょっと分かるかもww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/23(日) 01:11:14.71 ID:HTVziANDO<> 乙

一ヶ所誤字
誤)守谷 → 正)守矢

早苗さんに九字切られちゃうぞ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/23(日) 03:07:04.46 ID:ZTU5fflb0<> 二人のやり取りが完全に違和感なくなってきた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/23(日) 21:44:48.05 ID:rCELL5OSO<> 読まず嫌いせず読んだら面白かった
続きも楽しみにしてる <> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:24:49.57 ID:YH2eXGCF0<> >>163ご指摘ありがとうございます^^

>>143は脳内変換でお願いします。

>>164フランはまだちょっとマミさんから距離を置いてる感じ。でもマミさんは仲良くなりたい感じ。

>>165
スレタイのせいで人が少ないのかな?
なにはともあれ、ありがとうございます。

では、予告通り、フランのカミングアウトの回です。 <> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:28:16.32 ID:YH2eXGCF0<>

       *



「つまり、ドラキュラなの?」




 フランから、一通りの説明を受けたマミはこんなことを訊いた。

「ドラキュラじゃないわよ。それは個人の名前。私たちは吸血鬼。
それ以上でもそれ以下でもないわ」

 フランははっきりと告げた。

 マミは未だにいぶかしげな顔をしている。
眉をひそめ、疑わしげな視線をフランに送っている。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:29:01.34 ID:YH2eXGCF0<> 「でも、本当に吸血鬼なの?」

「太陽の下に出られないって言ったじゃない」

「傘を差せばいいの? 反射した光とか浴びたらまずいんじゃないの?」

「重要なのは、太陽光を何かで遮断しているということ。
その状態を維持すれば、反射光は怖くないわ」

「そういうものなの?」

「そういうモノなの」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:30:26.87 ID:YH2eXGCF0<>  いまいち納得いかないという顔だ。

 仕方のないことだ。
いくら相手が異形の化け物と戦う魔法少女だからと言って、いきなり目の前に居るのが吸血鬼です、
なんて言われて納得できるはずもない。

 何か、証明できるものがあればいいのだが。マミが変身して見せたように。

 だが、悲しいかな。
ここでは吸血鬼としての力をほとんど失っているフランでは、自慢の怪力も、得意の魔法も
見せることができない。

「あ、そうだ。吸血鬼なら、血を吸えるんでしょ? そのための牙があるのよね?」

 そこでマミはぱちんと手を叩き、そう尋ねた。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:31:21.68 ID:YH2eXGCF0<> 「ええ」

 思わぬ助け舟に、フランはニコッと笑って見せる。
もちろん、牙が見えるように。そして、こう付け加えた。


「主食は人間よ」


 途端にマミの顔が青くなる。
表情も強張り、その小さな口を僅かに開いて、呻くように呟いた。

「それは、ジョークよね?」

「いえ。本当よ」

 目に見えてマミは緊張していた。今にも変身しそうな感じだ。

 それを見て、フランは悪戯が成功した子供のように、あどけない無邪気な笑顔を作る。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:32:35.26 ID:YH2eXGCF0<> 「あなたは食べないわよ。
そもそも、生身の人間から血を吸ったのは、さっきのが初めてだったのよ?」

「へ? さっき? あ!!」

 マミが気づいた。慌てて自分の首筋、先ほどフランに噛みつかれた所を押さえる。
そこには見ことに噛みついた跡が付いていた。
吸血鬼の牙が刺さった小さな穴と、ついでに残ったお茶目な前歯の跡がはっきりと見て取れる。

「あ、これ。そうなの?」

「うん」

「あ、ああは」

 がっくりとマミは項垂れた。巻かれた髪の房が揺れ落ちる。

「どうしたの?」

「ね、ねえ。私、ひょっとして吸血鬼……」

「そんな訳ないじゃん」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:33:34.37 ID:YH2eXGCF0<>  マミがとんでもない勘違いをしているのに気が付いて、フランは呆れながら即座に否定した。
どうやら、吸血鬼に噛みつかれる=吸血鬼化と考えているようだ。

「ちょこっと、血を吸っただけよ。そんなんで眷属にはならないわ」

 吸血鬼にとって、眷属を作るという行為は、極めて重要な意味を持つ。
それは、愛情表現の、ある種の究極の形。
子供を作るようなこと、と言えば分かるだろうか。

 そんな重要な意味を持つことを、初対面の相手にいきなりしたりはしない。

「ちょっとって!? 血を吸ったの?」

「ええ。そのおかげであなたに魔力があることも気が付いたの。
あなたの血液に、かすかに魔力を感じたのよ」

 マミの目にじわっと滴が溜まる。綺麗な色の瞳は潤んでいた。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:35:13.74 ID:YH2eXGCF0<> 「あ、ああ、あ。そう」

 なんだかすごくショックを受けているみたいだ。
半ベソをかいておろおろするマミが、フランは可愛いと思った。
大人びてると思ったら、意外と子供っぽいらしい。
それとも、予想外の事態に弱いタイプなんだろうか?

「あ、そ、そうだ。吸血鬼なら、太陽のほかに、十字架にも弱いのよね?」

 若干涙目から回復したマミが首をかしげて訊く。
光を反射したのか、目がキラッと輝いている。
それに、フランは快活に笑って答えてあげた。

「アハハ。太陽に弱いのは、さっき言った通り。
でも、十字架は特に気にならないわ。
何であんなアクセサリー如きにビビらなきゃいけないのさ? 
それが、銀でできている場合は例外だけどね」

「銀には、弱いのね」

 ふむふむと頷くマミ。
警戒されて弱点を調べられている気がしているのだが、それは考え過ぎだろうか? 
まあ、いっかと思い、吸血鬼は続けた。フランちゃんは楽観的な性格なのだ。

「銀には退魔の力があるからね。
そもそも、吸血鬼自体、悪魔の一種なのよ。
悪魔は一般に銀に弱いわ」

「あ、悪魔なのね。でも、あなたみたいな姿だと、小悪魔って言った方がいいかも」

 マミはそう言って小さく笑った。
その様子にカチンときたフラン。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:36:09.75 ID:YH2eXGCF0<> 「馬鹿にしてる? そこはかとなく馬鹿にしてるよね? 
私は、図書館の司書兼雑用係兼もやしの世話係兼被験体兼メイドのスパイ兼実はそれがばれている役立たず兼メイドのサンドバッグ兼妖精の悪戯のメインターゲット兼いじめられっ子に近いいじられ役ではないわ。
これでも、最高峰の力を持つ悪魔なのよ」

 きょとんとするマミ。

 対して、顔を真っ赤にして反論する吸血少女。小悪魔やないで!

「な、何のこと?」

「気にしないで。あなたには関係のないことよ」

 今度は別の理由で真っ赤になるフランだった。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:38:05.37 ID:YH2eXGCF0<>  先ほどから、吸血鬼としての名が折れるくらい恥をかきまくっていた。
このままではダメだと思うのに、どうもペースを崩される。
いや、自分から崩れていっている。意外と自分もこういうことには弱いなあと感じた。


「大体ね」

 自分のペースを取り戻すためにフランは仁王立ちする。

 しかしその姿は、マミからは小さな子が何かを自慢するときに胸を張っているようにしか見えなかった。

「私、あなたなんかよりずっとか年上なのよ。これでも、もう500歳なのよ」

「500?」

「500よ」

「嘘でしょ?」

「本当よ!」

 マミはいまいちピンと来ていないようだった。
それもそのはず、目の前に居るのは見た目も中身もお子様な10にも満たないかという少女。
それが、齢500に達したという化け物には見える訳がない。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:39:07.82 ID:YH2eXGCF0<>  そのマミの反応に、フランはますます不満を溜めていった。

 もっとインパクトがあり、マミに理解しやすいようにスペルの宣誓でもしたいところだ。
だが、生憎今のフランは霞のように薄れてしまったカスみたいな存在だ。
今のままでは、自分の力は見た目相応。
当然、魔法少女であるマミには敵うはずがない。

 どうしようかと思索していると、マミが口を開いた。

「取敢えず、フランが吸血鬼だということは分かったわ。
500歳って言うのはちょっとあれだけど。
それで、あなたはどこから来たの? 
本当は別の所に居たはずなのよね」

 マミは存外聡明らしい。
フランが真面目に言っているのを察して、頭ごなしに否定するようなことはしない。
普段から異形の化け物を相手にしているからだろうか? 
こういうことには耐性があるようだ。

 フランはマミの問いに頷いて答える。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:40:40.43 ID:YH2eXGCF0<>

「幻想郷。それが、私が住んでいる場所の名前」


「幻想郷…………。聞いたことがないわね。そこに、ハクレイ神社があるの?」

「その通りだけど、私が探しているのは、こっちの世界の博霊神社。
いわば、幻想郷への入口みたいなものよ」

「こっちの世界? どういうこと?」

 マミが首をかしげる。


「……幻想郷は、他からは隔離された世界なの」


 ほんの僅かに逡巡してから、フランは答えた。

 フラン自身、幻想郷にはそれほど詳しくない。
館の外の様子については、引き籠りなので、異変解決で得た情報や里で流れていた噂話をメイドや
姉に教えてもらうのが関の山だ。
なので、フランは伝聞でしかマミにそのことを教えられない。

 だが、そもそも、こちらの世界のマミにどれほどの情報を与えるべきだろうか? 
あまりしゃべりすぎても具合が悪いのではないか?

 少し迷ってから、フランは幻想郷について基本的なことだけを言うことにした。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:42:36.82 ID:YH2eXGCF0<> 「私たち妖怪は、幻想の存在なの。
だから、科学が発展して幻想を否定した世界では生きられなくなってしまった。
事実、ここにきて私の力はほとんどなくなってしまったの。
吸血鬼としての力は、私自身が幻想であるから、この世界では弱まっているのよ。
存在が薄まっていると言った方がいいかしら?」

 マミが神妙な顔で頷く。
分かっているのかそうでないのか分からないが、真面目に話を聞いてくれるようだった。

「それで、そうやって消えゆく妖怪たちが移り住んだのが幻想郷。
幻想郷は外の世界と結界で区切られていて、その中では幻想が肯定され、私も本来の力が振るえるわ」

「なるほど魔女の結界みたいなものかしら?」

「魔女の結界?」

「ええ」マミは首肯し、「さっき言っていなかったけど、魔女は自分が隠れるために結界を
張っているの。
その中はまさに魔女の世界よ。
そこに人を引きずりこんで襲う訳よ」

「ふーん。魔女による魔女のための結界と、妖怪による妖怪のための幻想郷ね。
似ては、いるわね」

 マミは自身のよく知る魔女の結界をイメージすることで幻想郷を理解しようとした。
そのあたりの姿勢が、彼女の良さである。

 フランは、人の話を真摯に聴いて理解しようとするマミに好感を覚えつつ、話を続けた。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:44:07.78 ID:YH2eXGCF0<> 「幻想郷について簡単に言うと、そういうことよ。
で、その中に博霊神社があるの。
博霊神社は、幻想郷と外の世界を繋ぐ出入口みたいなものかしら? 
そこにいる巫女に頼めば外に出してくれるらしいけど」

 この辺は、全部伝聞なので、あまり詳しいことは言えない。
最も、あの巫女がそう簡単に外と幻想郷を繋ぐことは無いはずだが。

「あなたは、その巫女さんに会いたいのね? 
外に出せるなら、中にも入れることはできるんでしょ?」

「そうだけど。うまく巫女に会えるとは限らないわ。
あの巫女も幻想郷の住人。
結界の向こう側にいるの。だから、会えないかもしれないわ」

「え? 何で? 博霊神社にいるんでしょ? その巫女さんは」

「結界と言っても、直接の出入り口は見えないし、そもそも設けられていない。
神社の扉をノックすれば巫女が出てくる訳じゃないのよ」

 お賽銭を入れれば出てくるかもしれないけどね!
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:45:43.45 ID:YH2eXGCF0<> 「そうなの? ということは、幻想郷と外の世界は直接行き来できる訳じゃないのね」


「そう考えてもらって構わないわ」

「じゃあ」マミの顔が翳る。「どうやって帰るの?」

「神社に行けば、迎えが来ると思うわ」

「迎え? 巫女さんが来てくれるの?」

「あいつはそんなことしないわよ。
別の妖怪が、幻想郷の管理者と呼ばれているのがいるの。
神社に行けば、そいつが来てくれると思うわ」

 今頃、紅魔館の中は大騒ぎになっているだろうし、それにスキマ妖怪が感づかない訳がない。
とすれば、スキマ妖怪がフランを探している可能性は高い。

「その、妖怪さんはこっちに来ても大丈夫なのかしら?」

「大丈夫でしょ。あれは、特別よ」

「特別?」

「時々外の世界に出ているみたいだし」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:47:02.60 ID:YH2eXGCF0<>
 わざとぼかした。

 スキマ妖怪の「境界を操る程度の能力」を言ったら、自分の能力について言う羽目になるだろう。
それは、隠しておきたかった。
詰問されるのも面倒だし、不必要に恐れられるのも気に入らない。
使うことも無いと思うし、言わないでおいても問題はないだろう。

「妖怪にも、いろいろいるのね」

 マミは、フランに何か言いたくないことがあるのを察して、あえて追及しなかった。
やっぱりマミは聡明なようだ。
フランはますますマミのことが気に入った。

「ま、簡単に言うと、そう言う訳よ。とにかく、博霊神社に行けば何とかなるわ」

 ただ、この世界にその神社があれば、そしてその神社が私の知る幻想郷と繋がっていればの話だが。
その可能性はある。
この世界が、フランが元々住んでいた幻想郷の外の世界ではない、並行世界という可能性が。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:48:28.58 ID:YH2eXGCF0<>
 しかし、考えても仕方がない。
フランに出来るのは、破壊と状況分析ぐらいだ。
それでも何もできないよりはましだが、仮にこの世界がフランの元いた幻想郷と繋がっていなかったと
しても、フラン自身にはどうすることも出来ない。
それこそ、そんなことが可能なのはあの妖怪の賢者ぐらいなものだろう。

 今フランが最も恐れていることはその可能性である。
すなわち、幻想郷へ帰れないこと。
スキマ妖怪が必ずしもフランを見つけるとは限らない。
もし、ここが異世界で、スキマ妖怪が迎えに来なかったら、フランはどうなるのだろうか? 

 まあ、その時はその時だ。
なるようになる。ただの少女として生きていくのも一興かもしれない。

 取敢えずのところ、フランは難しいことを考えるのを後回しにした。
他に考えることはあるのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:49:47.04 ID:YH2eXGCF0<> 「そう。じゃあ、さっそくハクレイ神社を探してみましょう」

 気が急いているのか、マミはそんなことを言った。
フランからしてみれば、早いに越したことはないが、今は昼間である。
本来吸血鬼が寝ている時間帯であり、フランは言うなれば、夜更かしならぬ昼更かしをしているのだった。
つまり、調べ物は夜になってからすればいいと考えていた。

「なんで? まだいいじゃない」

「あれ? 早く帰りたくないのかしら?」

「まあ、そうだけど」

 そんな寂しそうな目で見られても、ねぇ? 
本心ではゆっくりしていって欲しいのが見え見えだから。

 それに……。

「だったら、」

「まだ昼間よ」

 フランは遮った。そろそろ寝たいのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:50:54.08 ID:YH2eXGCF0<>  昨日は一晩中動きまわり、今日は朝からマミとひと悶着あって、この部屋に来てからはお菓子を
ご馳走になったり、テレビに興奮したり、長話をしたりした。
その間、一睡もしていない。
いい加減、疲れたし、眠たいのだ。

「お願い。休ませて。眠たいのよ」

 話が一区切り付きそうになった途端、急に瞼が重くなってきた。

 マミは仕方ないわね、と言うように笑って立ち上がった。

「ここじゃなんだから、寝室に連れて行ってあげるわ。
ベッドを使っていいわよ」

「うん。ありがとね」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:51:49.68 ID:YH2eXGCF0<>  フランは片目を擦りながら、マミの案内に従って居間の隣にある寝室に入って行った。

 寝室も広かった。ベッドも大きかった。
だが、フランがいつも使っている天蓋付きの貴族御用達の寝台ほどではない。
そこに微かに優越感を持ちつつ、フランはふらふらとベッドに寄った。

 ベッドの上には、掛け布団と枕が一組。
枕元に、黄色いネズミのような形をした大きめのぬいぐるみがあった。

 フランは掛け布団を捲り、そのままベッドに寝転がった。

「あ、待って。着替えてよ」

 マミがそんなことを言ったが、もうその時にはフランは夢の中だった。

「あ、もう」
<> 1<>saga<>2012/12/23(日) 23:53:25.52 ID:YH2eXGCF0<>  困ったことになったとマミは思ったが、無理やりフランを起こして着替えさせるのも気が引けた。
なにしろこの目の前の幼い吸血鬼は、本当に幼い子供のように、あどけない顔で幸せそうに眠っているのだ。
この安眠を妨げる資格は、自分にはない。

「洗濯すればいいか。でも、着替え、どうするのかしら?」

 フランに合うサイズの服はない。
自分が昔着ていたお古は、もう売るか捨てるかしてしまった。
それに、背中に生えている「羽根」(フラン曰く)のせいで、サイズが合わないと思う。
今フランが来ている服は、背中から羽根を出すことができる、特殊な構造になっているみたいだ。
そのような服は、当然ながらどこの店にも売っていない。


 この子の、服について考えとかないといけないわね。
今着ているのも、洗濯しておかないといけないし。あとは……。


「あ!!」



 そこまで考えて、大声が出てしまった。

 しまった。学校に欠席の旨を伝えるのを忘れていた。これじゃあ、無断欠席だ。


 どうにかして言い訳を考えないと。


 がっくりと項垂れるマミであった。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 00:03:12.19 ID:rM9azKNW0<> 今日はここまで!!

小悪魔は紅魔館の愛されキャラです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/24(月) 01:11:54.16 ID:2XxFvsyW0<> 乙
また巡回スレが一つ増えてしまった、激しく期待
フランちゃんうふふ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/24(月) 01:46:46.16 ID:u3QINFB30<> 乙 毎日更新してくれてうれしい <> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:11:47.28 ID:rM9azKNW0<> >>188フランちゃんうふふ
エタらないように頑張りますw

>>189書き溜めはまだまだ・・・・

では、投下開始
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:13:12.31 ID:rM9azKNW0<>


           *



 ガラス張りの校舎。

 近未来のデザインというものをどこか勘違いしたかの様な設計で建てられた学校。

 市立見滝原中学校。
これで、私立ではなく公立だというのだから驚きだ。
それほどまでに、金がかけられている。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:14:48.22 ID:rM9azKNW0<>  東京都のような例外を除けば、現在の日本の地方公共団体は皆、多かれ少なかれ財政難にあえいでいた。
だが、ここ見滝原市はそんな数少ない例外であり、日本で最も成長率の高い都市であった。

 もとよりバブル期に駅周辺の都市開発が進み、街の近代化が進んでいたが
――それはバブル崩壊後一旦停滞したものの――、2000年代に入って再び都市開発が
盛んに行われるようになり、見滝原はここ何年かで急速に発展した。

 ここ数年、日本経済は徐々に回復傾向にあり、その後押しもあって見滝原の発展は進み、昨年には
地下鉄建設の発表も行われた。
ある意味成熟した先進国経済の下でこれほどまでに急成長を遂げる見滝原に、国内のみならず、海外
の企業も目をつけた。
結果、見滝原に資金が流入し、その都市化はさらに加速されることになった。

 その象徴がこの市立見滝原中学校である。
公立中学であるため、学区制ではあるが、市内外から入学希望者が後を絶たず、現在日本で最も人気
のある中学校だ。

 それはまさしく、人々が憧れる近未来というものを体現していた。
だが、校舎のデザインについては、生徒の間では不評である。
彼らも勘違いなセンスには疑問を抱いているのだろう。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:15:50.42 ID:rM9azKNW0<>  しかしながら、残念なことに、この勘違いセンスでデザインされた建物は何も見滝原中学だけではない。
とにかくガラス張りの建物が多い見滝原だが、それは一般家庭にも言えた。

 例えば、これが駅ならば解放感があり人々には好意的に見られるだろうが、プライバシーが尊重される
一般の住居には些か不都合であろう。
というのも、この学校に通う二年生の鹿目まどかの家がそのような設計なのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:17:24.20 ID:rM9azKNW0<>

 “彼”には人間の、設計に拘る心理が理解できない。
多少自分の私生活を見られたって、特に困ることじゃないし、どうして他人の私生活に興味を持つのかも
分からない。
根本的に人とは違う“彼”にとって、このような考えは理解の範疇外にある。

 ガラス張りの校舎にしても、陽光をたくさん取り込むことにメリットはあるが、それ以上に不必要な
紫外線を取り込み、熱気が籠りやすく、眩しいせいで勉強に支障が出るというデメリットの方が
大きいと考えられるため、学び舎には不適切だと思っている。
しかし、今回の場合には、この見通しの良い校舎は都合がいい。

 “彼”の観察対象であるとある少女たち。
彼女たちが授業に取り組む姿を彼は校舎脇に立つ木の枝の上から眺めていた。

一人は、今現在熟睡中である青い髪の美樹さやか。
もう一人が、そんな親友の姿に苦笑しながらも、こちらは真面目に板書を写している件のガラス張りの
家に住む鹿目まどか。

 二人は“彼”が契約を目論む対象であり、特に鹿目まどかとは是が非でも契約したかった。
だが、問題点が一つ。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:18:46.75 ID:rM9azKNW0<>  “彼”の契約は、奇跡を対価にする物だが、二人はどこにでもいるようなごくごく普通の中学生
であり、ごくごく普通の幸福を享受しており、従って奇跡を使って叶えたいような願い事は持っていない
ように思えた。

 だが“彼”は諦めない。
今は、そのような願い事がなくても、将来それを持つかもしれない。

 人間は欲深い生き物だ。
その行動原理は基本的に自己の欲求を満たすことである。
故に、今はある程度充足した生活を送っている彼女たちも、いずれは大きな欲求を持つ可能性はある。
そこに奇跡という餌を垂らせば、簡単に食いつくであろう。

 それに、まだ彼女たちの周辺調査は完了していない。
その結果如何によっては近日中に契約可能かもしれない。だが、ここにも問題が一つある。


 それは……。


 と考えたところで、突然、何の前触れもなく、“彼”の体が弾けた。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:20:29.69 ID:rM9azKNW0<>  頭に大きな穴があき、活動を停止した“彼”の体は力なく木の枝から墜落する。
しかし、血は流れなかった。


 やれやれ、またかい。


 口には出さないものの、“彼”はそう思った。

 そこに居たのは、今し方撃ち抜かれたはずの“彼”。
だが、その体には傷一つない。そして、その目の前には死んだ“彼”。

 常人が見れば、同じ生物が二匹いるように見えるだろうが、その認識は正しくない。
死んだ“彼”も、生きている“彼”も同一の生物であり、この体は単なる端末に過ぎないのだ。
いくら端末を潰しても、また新しい端末が現れるだけである。

 とは言え、端末のコストもタダではない。
効率の塊である“彼”にとって、無意味に端末を潰されるのは、あまり快いことではない。

 新しく現れた端末は、先ほどまで死んだ端末が立っていた木の枝を見上げ、次に撃たれた時の
衝撃の方向から逆算して、発射位置と思われる校舎の屋上を見た。
一つの意志で複数の端末を操る“彼”ならではの芸当だった。

 “彼”は、詰まる所狙撃されたのであるが、当然ながら校舎の屋上には狙撃手の姿はなかった。
いや、それどころか発射音すら聞いていない。
サイレンサーでも付けていたのだろうか?
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:22:01.70 ID:rM9azKNW0<>  こうもしつこく狙われると、鬱陶しいね。

 早いところ何とかしないといけないけれど、肝心の犯人の姿すら分からない。

 狙いが僕ということは、新しい魔法少女を増やさないことが目的なのかな? 

 だけど、こんなことをしても無駄だと分かっているだろうに、それでも尚しつこく狙ってくる理由は何だ? 

 牽制、あるいは警告。

 どちらにしても、早いところ排除しないと契約の邪魔にしかならない。

 ここはひとつ、マミに相談してみるか。 <> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:22:57.19 ID:rM9azKNW0<>
 そう考えた“彼”は、端末の活動エネルギー源と証拠隠滅のために、古い端末を食べ出した。
傍から見れば、共食いのようでおぞましい限りだが、“彼”は特に気にしない。

 そうしてむしゃむしゃと食べ終えると、“彼”は一旦観察を止めて、今の自分の活動拠点に戻ることにした。

 焦る必要はないのだから。
不確定要素があるとしても、チャンスはいずれ回って来る。
<> 1<>saga<>2012/12/24(月) 23:26:39.26 ID:rM9azKNW0<> リア充どもが性夜を楽しんでいると思いますが、今日はここまでです。

メリークリスマス・・・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/25(火) 13:49:21.88 ID:DysJswJR0<> ふむ。出会うのか?いや、寝てるからまだ先かな <> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:14:03.36 ID:7RVOOMlu0<> こんな時間にこっそり灯火 <> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:15:35.57 ID:7RVOOMlu0<>

        *


   
「ただいま」

 マミは自分の家にそう言って入った。

 だが返事はない。今朝方招き入れた客人はまだ夢の中だろうか?

 マミは買い物袋を持ってリビングに入った。
ガラスのテーブルに上には、出掛け際に残したその旨を伝える書置きがそのままの状態で置かれていた。
部屋の様子も、何かを動かした様子もなく、冷蔵庫を開けてみても、何かが減っているということはなった。
つまり、フランはまだ寝ているようだった。

 きっと、余程疲れたのだろう。
いくら強い吸血鬼であるとは言え、見た目相応の幼子らしいのだ。
ゆっくり寝かせてあげよう。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:16:40.24 ID:7RVOOMlu0<>  マミは冷蔵庫に買ってきた食材を詰め込む。
昼食を家で摂った後、マミは出掛けた。客人が一人いるし、そもそも今日買い物に行こうと
思っていたところだった。
ハンバーグにしようと思って、牛のひき肉なんか買ってしまった。

 しかし、これはついで。メインは、フランの換えの服だ。

 サイズは分からない。
本人は寝ているため、無理に起こして測ることもできない。
なので、適当にサイズの合っていそうな下着を四枚ほど購入してきた。
しかし、仮にサイズを図ったとしても、あの「羽根」が邪魔なので、普通の上着は着せられないだろう。
だから、取り敢えず今すぐ必要になるだろう下着だけ買ったのだ。


<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:17:23.04 ID:7RVOOMlu0<>

 恥ずかしかったぁ。


 マミは、店で見た店員の奇異なものを見るような目が辛かった。
なにしろ、中学生(ともすれば高校生に見える)が、真っ昼間から小さな女の子用の下着を買うのだ。
相当に目立つだろう。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:18:20.03 ID:7RVOOMlu0<>
 マミは部屋の壁に掛けてある時計を見上げた。


 もう3時だ。おやつに何か食べたかったが、最近はおやつを抜いている。
理由は明快。余計なカロリー摂取は健康に悪いのだ。
特に、コレステロールが増えれば動脈硬化の恐れもある。
従って、決して体重が増えるから、という理由ではなく、健康のためなのだ。


 何でカスタードプリンを作ったかって? 食後のデザートです。

 マミは誘惑を我慢して、パソコンを寝室から持ち出してそれに向かい合った。
フランが起きる前に、少し件の神社のことについて調べておきたかった。
どうせ暇なのだ。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:19:38.19 ID:7RVOOMlu0<>  学校には、昼前に連絡を入れた。
あれこれ言い訳をして、何とか応対に出た教師を丸め込み、無断欠席という事実を誤魔化した。
何だかどんどん自分が悪い人間に落ちて行っているような気がする。
そもそも、幼女を連れ込んでいるという時点で……。


 マミは首を振ってパソコンを見た。

 既にインターネットが開いている。
出て来た棒検索エンジンのトップページに「はくれいじんじゃ」と打ち込む。
そこで気が付いた。

 「神社」は普通に変換されるが、「はくれい」が漢字変換されない。
ひらがなとカタカナとローマ字以外に、変換候補がない。
フランから漢字を聞き忘れた。


 はくれい。はくれい。はくれいねぇ。どういう字を書くのかしら?


 マミは、しばらく画面と向き合いながら、漢字を考えた。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:22:35.24 ID:7RVOOMlu0<>

 白霊? これは神社っぽいわね。


 打ち込んでみる。ヒット。

「広島?」

 実在する神社のようだが、なんと広島の方にあるという。遠過ぎる。

 他を探してみる。例えば……柏澪。

 なし。


 うーん。この作業、意味があるのかしら?


<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:24:07.68 ID:7RVOOMlu0<>

「調べ物かい。マミ」

 不意に声をかけられて、マミは飛び上がった。
慌てて振り向くと、そこには見慣れた魔法の使者の姿。

「き、キュゥべえ。もう、驚かさないでよ」

 眉間に皺を寄せて文句を言うマミ。

「すまないね。僕としてはいつも通りに声を掛けたつもりなんだけど」

 全く謝意の感じられない謝罪の言葉と、弁明。
いつものことだからと、マミは小さく溜め息をついた。

 見た目は白い猫のような生き物。
背中には赤い輪っかの形をした模様がある。
猫と違うのは、真丸な目と、耳から生える一房の長い毛、その先に付いている金属のリングである。
どこからどう見ても、普通の生物ではなく、実際キュゥべえは生物と言うより妖精と言った方がいい存在だった。

 数年前、マミが契約した相手であり、今まで彼女をサポートして来てくれた良き相棒であるが、
少々デリカシーに欠けるという欠点があった。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:25:04.44 ID:7RVOOMlu0<> 「で、何か調べていたのかい? こんな時間に」

 グサリと心をナイフで刺されるような気がした。
暗に非難されているように思えて、マミはつと視線を反らす。

「ちょっと、いろいろあったのよ」

「学校では優等生で通っている君が、特に病気なふうでもないのに欠席するなんて、初めてじゃないかい?」

「分かってるわよ。もう、ほっといて」

「まあ、君がそう言うならいいけど」

 と言って、キュゥべえはパソコンの画面をさり気なく覗き込む。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:26:04.27 ID:7RVOOMlu0<> 「はくれい神社?」

 どうやら興味を持ったらしい。

「知っているの?」

「いや、まったく知らないよ」

「そう」

 少し期待した自分が馬鹿なのだろうか? 
マミはキュゥべえから再びパソコンに視線を戻した。

「神社に参拝に行くつもりなのかい? 近場にそんな名前の神社はなかったように思うけど」

「そうじゃないのよ。これには、いろいろ深い訳があってね?」

 問答が面倒臭くなって、適当にあしらうように言う。

「そうかい。ま、何かあったら僕に言ってよ。探すことの手伝いくらいは出来るかもしれないからさ」

 キュゥべえはそれを察したのか、あっさり引き下がった。

「そうね。お願いするわ」

 マミはそう言って「はくれい神社」の文字を消す。



 そして新しい単語を入力した。「吸血鬼」と。
<> 1<>saga<>2012/12/26(水) 02:28:04.74 ID:7RVOOMlu0<> 投下終わり

「白霊」という神社は、実在するみたいです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/26(水) 02:33:53.37 ID:QezitxRAO<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/12/26(水) 03:53:02.39 ID:PVXVBpMg0<> 乙
こんな時間まで起きててよかった
描写が細かいのは大変嬉しいのですが、完結まで投下しきれるか不安です。無理をなさらないようにお願いします。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/26(水) 11:54:05.16 ID:dJoAdriP0<> 乙
確かに博麗って漢字は普通は出てこないよなぁ

マミさんの横腹prpr <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/26(水) 15:18:44.52 ID:JXlxBxfo0<> 乙
薄霊神社……存在しているかどうかも分からないような廃神社には、この名前がお似合いだろうか?
幻想郷にある方は、ちゃんとそれなりだがね <> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:34:04.50 ID:FA7zNvlU0<> >>213まだ書き溜めの6分の1くらいです。

>>214マミさんをデブとかいうやつは屋上ティロ・フィナーレ!!

決してマミさんは太ってない!!!!!
でも最近お腹周りにお肉がついてきたのを気にして体重計を離れられないマミさんもいいなぁ・・・

>>214外の方は意外と繁盛しているって香霖堂に書いてあるらしい?
持ってないから知りませんけど・・・
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:36:38.38 ID:FA7zNvlU0<>

           *



 目が覚めると、暗い部屋にいた。

 ふかふかのベッドの上。フランは起き上がろうとして、背中に鋭い痛みを感じた。
思わず顔をしかめる。

「うっ。寝違えた」

 稀にあることだ。
人間と違って、背中に「羽根」が付いているため、不用意に寝返りを打つと寝違えて痛い思いをする。
特に、慣れないベッド等ではそうなりやすい。


 このベッド、硬いのよ。


 フランは八つ当たり気味に傍らの黄色いぬいぐるみを殴りつけた。
ぬいぐるみの顔面がぐしゃっと潰れるが、すぐに弾力で元通りになる。
本来の力で殴っていたら、布切れになったまま戻らなかっただろう。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:37:43.44 ID:FA7zNvlU0<>  フランは何とか痛みを堪えて起き上がり、ベッドから降りた。
随分と寝汗をかいたようで、服が肌に纏わり付く。お風呂に入りたい。

 暗い部屋を出ると急に眩しい光が襲ってきて、フランは目を瞑った。

「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」

 マミの声がする。

 フランは何度か目をしばたたかせ、光に慣れてから声のした方向を向いた。
その様子を見て、マミが小さく笑う。

「眩しいのね」

「ん。今、何時?」

「10時よ。夜の10時。随分とお寝坊さんね」


 10時か。起きるのはだいぶ遅いかな。


 ふと窓の外を見る。


<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:39:27.34 ID:FA7zNvlU0<>
「わあ」

 その瞬間、寝惚けていた頭が一気に覚醒する。
そこに広がるのは、見たこともない景色だった。

 フランの表情が変わったことに気がついて、マミが得意げな声を出す。

「綺麗でしょ。ちょっとした自慢なの」


 昼間に遠望した林立するビルディング。
今それが煌々と輝いていた。

 赤、黄色、オレンジ、白、青。さまざまな色の光が星のように煌めいている。

 まるで天に挑戦するかのようなバベルの塔たちは、街自体の光で輪郭を露わにし、その足元では
光の筋が流れる。

 地上を這う蟻のように赤橙色と黄白色の光が行き交う。
あれは何だろうか? 別のところでは、白い光の列を持った蛇のような何かが走る。
その蛇たちは時折すれ違い、光の森の中に消えていく。

 街が光ることで、空は明るく照らし出され、残念なことに星は見えなかった。
だが、天の星は見えずとも、眼下には地上の星が光っていた。

<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:40:28.30 ID:FA7zNvlU0<> 「毎日、これを見ているの?」


「ええ。まあね」

「すごい」

 満天の星空はいいものだ。だが、この夜景もなかなか趣のあるものだと思う。
フランは、見た目相応に夜景に目を奪われ、それを輝かせた。

「いいなぁ。こんな景色毎日見れるだなんて」


「でも、あなたの所では星空が綺麗じゃないの?」

「そうだけどね。でも、私はあんまりお外に出ないっていうか、見る機会は少ないのよね」

「もったいないわ。ここじゃ、天のお星様は見られないのよ」

「でも、これはこれでいいものよ」

「そうね」

 褒められて嬉しいのか、はしゃぐフランが微笑ましいのか、マミはニコニコとしながら答える。

「あ、でも、これじゃあお外から丸見えじゃない?」

「大丈夫よ」

 そう言いながらマミは大窓の横のにあるスイッチを指す。。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:41:36.16 ID:FA7zNvlU0<> 「このガラスはね、偏光ガラスと言って、光の入ってくる方向を変えることができるの。
これがそのスイッチね。
今これがオンになっているから、中から外はよく見えるけど、外から中の様子は見れないようになっているのよ」

「何それ! すごい!!」


 フランはさらに目を輝かせてはしゃぐ。

「魔法みたい」

「魔法じゃなくて、れっきとした科学技術だけどね」

 すごいすごーい、とはしゃぐフランを見てマミは微笑みを絶やさない。
こうして見ると、フランは本当に子供のようだ。
とても齢500の吸血鬼には見えない。
天真爛漫な性格なのか、案外幼い精神の持ち主なのかもしれない。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:42:54.92 ID:FA7zNvlU0<> 「ねえフラン。お腹減っていない? ハンバーグを作ったんだけど、食べる?」
「ほんとに? 食べる食べるー」
 フランのテンションはさらに上がる。どうやらハンバーグは好きなようで、マミは一安心した。「子供扱いしないで欲しい」などと言われたらどうしようかと思っていたが、杞憂に終わった。
「あ!」
 突然フランが大声を出した。
「どうしたの?」
「お風呂に入りたい。寝汗かいちゃった」
「あら。それならすぐに準備するわね。私もまだだったし、丁度良かったわ」
「お願い」
「いいわよ」


 マミは先に風呂の準備をする。と言っても、湯張りの設定をするだけだが。

「あ、でも。お風呂が沸くのに時間がかかるから、先にご飯を食べててね」

「はーい」

 入学したての小学一年生のように元気良くフランが返事をした。
いい返事ですね〜等と言うと機嫌を損ねてしまいそうなので、黙っておく。

 それからマミは、冷蔵庫から冷えたハンバーグを取り出し、電子レンジでチンした。
そして例の如く、フランから電子レンジについての説明を求められた。
マミは、特に面倒がる素振りも見せず、にこやかに電子レンジについて簡単に教えた。

 チンしたハンバーグをフランに出して、コーンスープも添える。
フランは嬉々として食べ始めた。


<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:43:38.12 ID:FA7zNvlU0<>

「マミ。その子は誰だい?」



 不意にフランとマミの頭の中に声が響く。

「誰?」

 フランが振り向くと、そこには見慣れない白い生物が一匹。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:44:41.29 ID:FA7zNvlU0<> 「あら。帰ってたのね」

 つい先ほどまで、この白い生物は外出していた。
が、神出鬼没な“彼”は、突然帰ってくる。
いつものことなので、特にマミは驚いたりはしなかったが、フランは随分とびっくりしたようだった。

 何だか、ピリピリと緊張した雰囲気を纏っている。
ただ、口元にハンバーグのソースが付いていて、何とも間の抜けた光景になっているのだが。

 その様子に噴き出さないように気をつけながらマミは努めて柔らかな口調で言った。

「その子がキュゥべえよ。昼間に説明した、魔法の使者。魔法少女の心強い味方よ」

 フランはしげしげとキュゥべえを観察する。
その目は、まるで怪しい者を見抜こうとするような目であった。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:46:22.22 ID:FA7zNvlU0<>
「君には僕が見えるんだね。
ということは、君にも魔法少女としての素質があるみたいだね。
それも、結構すごい物だよ」


「あなたがキュゥべえ? ちっちゃいのね」


「そうだね。だから、僕自身には戦う力はない。
ところで、君の名前を教えてもらってもいいかな?」


「二つ名は『悪魔の妹』ですわ」


「悪魔の妹? どういう意味だい?」


「そのままの意味よ」


「君は、自分が悪魔だと言うのかい?」


「そうよ。あなたと同じく、ね」


「僕は悪魔じゃないよ。そもそも、そんなものは存在しないはずだろう?」


「フフフ。存在しない、ね。そうかもしれないわね」


「君は何が言いたいんだい?」


「でも、存在するかもしれない。あなたが知らないだけで」


「僕の質問に答えて欲しいな。君の意図が分からないよ」


「分かる必要はないわ。ただ答えたい質問に答えて、知りたい質問をすればいい。
自分の思うままにすればいいのよ」


「全く。会話が成り立たないよ。それじゃあ、コミュニケーションが取れないじゃないか」


<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:47:24.14 ID:FA7zNvlU0<>
 キュゥべえがやれやれと言うように首を振った。

 どう言う訳か、フランはキュゥべえとまともに話す気はないようだ。
普通に会話できるので、完全に業とやっているのだろうが、その意図はマミにも見えてこなかった。

「こら、フラン。ちゃんと会話しなきゃだめじゃない。せめて、名前を教えてあげたらどうなの?」

 なんとなく、年上の感じで言ってしまったが、怒らせはしないだろうか?

「フランドールよ」

 フランは短くそう答えただけだった。
相変わらず、キュゥべえを探るような目で見ている。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:48:09.96 ID:FA7zNvlU0<>

「フランドール。日本人じゃないよね」


「そう見えるかしら?」


「見えるね。でも、日本語は流暢だよね。日本暮らしは長いのかい?」


「長いのかしら? 自分でもよく分からないわ」


「それこそ、意味が分からないよ。説明を願いたいところだけども、答えてくれるかな?」


「さあ? それはあなた次第」


「僕次第?」


<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:49:23.51 ID:FA7zNvlU0<> 「フラン」


 マミは呆れて会話を止めに入った。

「どうしてキュゥべえにそんな意地悪をするの?
私と話した時は普通だったのに。
その子のことが、嫌い?」

 すると、フランはうーんと首を捻る。

「嫌いでもないけど、好きでもないかな?」

「あなたは、嫌いでも好きでもない相手に、あんなふうに接するの?」

「小煩い烏にはそうしてやったわ。私、鬱陶しいのが嫌いなの」

 質問攻めにしてくるあなたのほうが鬱陶しい時があるのだけどね。

 マミは心の中でそう呟く。それにしても、烏とは何だ? 烏の妖怪のことかしら?

「鬱陶しいようなことをした覚えはないんだけどなあ」

 キュゥべえがポツリと呟いた。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:50:29.20 ID:FA7zNvlU0<> 「頭の中にテレパシーを送りつけてくるのが鬱陶しいの。普通にしゃべれないの?」

「仕方ないよ。僕の声帯は言葉を話すのに適していないからね。
こうでもしないと君たちと意思疎通が図れないんだよ」

「口が動かないのに声が聞こえて来るって、不気味よ」

「もう」マミは怒った。
「どうしてそんなに辛辣に当たるのよ。私の大切なお友達なのよ。
そりゃあ、少しデリカシーに欠ける所はあるけど、基本はいい子なの。
あまりいじめないで欲しいわ」

 両手を腰に当て、頬を膨らます。
もちろん、本気ではない。
フランにいいように翻弄されるキュゥべえもなかなか珍しいのでマミはこの二人をもう少し
しゃべらせたかったが、そろそろ終わりにさせないとややこしくなりそうだ。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:51:33.02 ID:FA7zNvlU0<> 「マミがそう言うんなら、仕方ないわね。話ぐらい聞いてあげるわ」

「随分とマミに懐いているようだけど、何かあったのかな?」

「ハンバーグ食べるから、待っててね」

 そう言って、フランは食べかけのハンバーグを器用に切り分け、お上品に口に運んだ。
食事作法は一通り身についているようで、育ちの良さが伺えた。口元のソースはご愛嬌。

 キュゥべえは、リビングのソファの上にくるまった。
律義に、フランが食べ終わるまで待つつもりだろう。

「ご馳走様」

「お粗末さまでした」

 フランは口元をティッシュで拭い、マミは食器を片付け始める。
丁度その時、お風呂が沸いたことを知らせるアラームが鳴り響いた。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:52:33.71 ID:FA7zNvlU0<> 「じゃあ、お風呂に入るわ」

「食べ終わったら僕の話を聞いてくれるんじゃないのかい?」

 キュゥべえが顔を上げて、抗議の声を上げる。

「それは後」

 しかしフランはキュゥべえを見向きもせずそう言い放った。
マミは困ったような笑顔を浮かべてフォローする。

「もう、あんまり急かしちゃだめよ。寝汗かいているって言っていたから、早く入りたいんでしょう」

 マミがそう言っている間に、きょろきょろと風呂場を探していたフランが彼女を呼ぶ。

「マミー。お風呂どこー?」

「今行くわ」
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:53:43.65 ID:FA7zNvlU0<>  マミはフランをお風呂場まで案内し、自分のシャツと今日買ってきた下着を差し出す。


「これ、着替えね。今着ている服は、洗濯するからね」

「あら。世話になるわ。ありがとう」

「どういたしまして」

 それからマミは、服を脱ぐのに苦労しているフランを手伝って、全裸にすると服を洗濯籠に放り込んだ。

 改めて裸の背中を見ると、本当に「羽根」は背中から生えていた。

「見れば見るほど不思議ね、その羽根」

「魔法で変形させたの。
この方が魔法を使うのに都合がいいから。
この宝石みたいなのは魔法結晶で、まあソウルジェムみたいな物かしら」

「元から魔法が使えるのね」

「ええ。そうよ」

 そう言ってフランは浴室の中に入って行った。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:54:58.74 ID:FA7zNvlU0<>
「あ」

 そこでマミは気が付く。

「流水がだめって言っていたけど、大丈夫なの?」

 当然、水場では水が流れる。
流れる水を超えられない吸血鬼には、よくない環境ではないか? 
特に、シャワーなんかは浴びられないのでは?

「心配ないわ。お風呂位は大丈夫よ」

 浴室の中から水の音がしてフランが答える。
湯船に浸かったようだが、特に様子はおかしくないので、実際に大丈夫なのだろう。

「そう。じゃあゆっくり浸かってね。逆上せないようにね」

「うん」

 マミは脱衣室から出ると、台所に向かい、フランが使った食器を洗い始めた。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:55:59.89 ID:FA7zNvlU0<> 「マミ」

 不意にキュゥべえが呼んだ。

「何かしら?」

「彼女は、フランドールは何者だい?」

「迷子の子なの。今朝、学校に行く途中に見つけてね。
いろいろ事情があるみたいだから、とりあえずここに連れて来たのよ」

「マミ。それは、この国の法律では、未成年者誘拐にあたるんじゃないかな?」

「ギクゥ」

 キュゥべえの一言に、マミのお下げロールが跳ね上がる。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:57:13.86 ID:FA7zNvlU0<>  考えなかったことではない。
客観的に見て、キュゥべえの言う通りなんじゃないだろうか。

 やっぱり、警察に届けた方が……ううん。あの子は特殊なのよ。
安易に警察に届けるべきじゃないわ。

「だ、大丈夫よ。問題無いわ」

「問題しかないように思うけど」

「う、うるさいわね」

 手厳しいキュゥべえ。マミは怒ったようにそっぽを向いた。

「大体」マミは洗い物をしながら言い放った。
「そんなことを言うなら、お友達を家に泊めることもアウトじゃない!! 
中学生だって、未成年でしょ」

「僕が覚えている限り、この家に君と同年代の子が泊まりに来たことはないよ。
これからもその予定はあるのかな?」
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 21:58:10.49 ID:FA7zNvlU0<> 「も、もう!! キュゥべえのばかぁ。なによ! そんなこと言わなくてもいいじゃない。
もう、あなたのことなんか知らない!! 口も利いてあげないんだから!!」

 結局半ベソをかきながら洗い物を終えたマミはキュゥべえをソファからどけて、その上で膝を抱えて
座り込んだ。

 そのまま一人と一匹はしばらく無言で風呂場のシャワーの音を聞いていた。
部屋の中を重苦しい沈黙が支配する。
<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 22:00:07.65 ID:FA7zNvlU0<>

 カチャリ。


やがて、戸が開いて、脱衣室からフランが出て来た。
どう見てもサイズの合っていないマミのシャツを「羽根」の上から着ている。
袖もダボダボで、裾は膝にかかっていた。

 濡れた金髪を下ろし、白い肌が瑞々しく光を反射する。
その姿は、幼子ながら艶かしく、背徳的な色気を醸し出していた。

 はっと顔を上げたマミの目に、その表情が映る。

 フランは、それはそれは大層に、憐れむような目でマミを見ていた。
そして、実に平坦な口調でこう言い放ったのだった。



「マミ。友達いないの?」





「う、うわあああああああん」



 巴マミ。15歳。


 泣いた。


 見た目10歳未満の幼女と、謎の魔法の妖精に痛恨の事実を指摘され、涙を流した。



<> 1<>saga<>2012/12/27(木) 22:02:39.62 ID:FA7zNvlU0<>


ドンマイ、マミさん

キュゥべえとフランの掛け合いは、文花帖での文とのやり取りを意識しています。

うまく雰囲気を出せたかな? 出せてるといいんですが・・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/27(木) 23:34:34.55 ID:kwKiSC+10<> 乙!
そそわ民である自分だがすんなりと読めた。実にうまい構成である。東方クロスは難しいが頑張ってほしい。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 00:58:34.77 ID:kU4U+RX70<> 乙
さりげなく今回から、フランからのマミの呼び方が「あなた→マミ」に変わってるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 02:13:53.08 ID:od7RgX8go<> 乙
幻想郷の少女たちは、だいたい攻め好きである <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 13:15:51.02 ID:s+QsNAAL0<> これから先どうなってゆくのか、非常に楽しみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 17:06:45.61 ID:tb1sD3dXo<> 乙

でも友だちいないのはフランも一緒なんでは・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 17:35:32.67 ID:vJ7Tsfjw0<> 乙
ぼっちのことマミさんとか七色人形遣いとかいうのやめろよ!1!! <> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:35:00.51 ID:C6RI5EXM0<> >>242まだしばらくグダグダな話が続きます。三話は遠い・・・

>>243このフランはリア充。

<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:37:07.39 ID:C6RI5EXM0<>

                *



「ごめんね。マミ。悪気はなかったのよ。気にしていることを言って……」

「もういいわ。もう何も言わないで!!」

「うん。分かった。私のこと、友達と思ってもいいよ」

「ありがとうね。フランは優しいのね。
なのに、何でこんなに心が抉られるような気がするのかしら?」

「それは気のせいよ。私もマミと友達になれて嬉しいわ」

「嬉しいわ。泣いているのは、きっとそのせいね」

「嬉し泣きね。そんなに喜んでくれるなんて、こちらも嬉しくなるわ」

「そうね。そうかもしれないわね。ああ、涙がしょっぱい」

「塩分含まれてるのよ」

「そうね」

「塩分補給した方がいいわ」

「そうね」

「10世紀に誕生した中国の王朝は?」

「宋ね」

「大変良くできましたー」

「やったー」

 マミは全く覇気の無い声で言った。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:38:57.67 ID:C6RI5EXM0<>
「ほんとに、元気出してね?」

 フランがマミの顔を覗き込むと、目を赤くしたマミは視線を反らした。

「元気よ」

 全く元気が無いんだけどね。

 フランは敢えて口にしなかった。
何も言わないのが優しさというものだろう。


「ていうか。お風呂早いのね」

 強引に話題を変えたマミ。フランは取敢えず合わせた。

「お風呂早い主義なのよ」

「早風呂はいいわ。どう? さっぱりした?」

「うん。お蔭さまで」

 ニコニコと笑うフラン。
それを見て、マミもやっとその顔に笑顔を取り戻した。

「そう。良かった。じゃあ今度は私が入ってくるわね」

「はーい。待ってるわね」

「キュゥべえと仲良くね」

「はいはい」

 フランと入れ替えに、マミが風呂場に行った。
残されたのは、フランとソファの端っこでうずくまるキュゥべえだ。

<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:39:48.70 ID:C6RI5EXM0<>

「さて」


 フランはソファに飛び乗った。
そしてキュゥべえに向かって言う。

「お話しましょっか」

「待っていたよ」

「お待たせしました」

 ソファの上で正座したフランがぺこりと頭を下げる。
お茶目で可愛らしい動作だが、キュゥべえはそれを見ても表情を変えない。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:40:35.68 ID:C6RI5EXM0<>
「今度はちゃんと会話してくれるんだろうね」

「言ったでしょ。それはあなた次第」

「分かったよ」

 キュゥべえは身じろぎをして、フランの目の前に座り込む。フランも足を崩した。


<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:41:47.26 ID:C6RI5EXM0<>
「まず、こちらから質問してもいいかな?」

「ええ。どうぞ」


「それじゃあ、一番気になっていたことから聞くとするよ。
フランドール。君は、本当に只の人間かい?」


「あら? どうしてそんなことを言うの?」

「いくつか、根拠があってね。
まず第一に、君のその背中にある物。
今はシャツの中に隠れているけれど、それは何なんだい? 
普通、人間にはそんな物が付いていない」

 フランは答えなかった。キュゥべえは続ける。

「第二に、君はかすかに魔力を持っている。
ごくごく微弱ながら、その波動を感知したよ。
つまり、君は元から魔法を使えるね?」

 それを聞いて、フランは微かに笑みを零した。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:43:19.33 ID:C6RI5EXM0<> 「気が付くものね。さすがは魔法の使者だわ」

「だからこそだ。
逆に、僕じゃなかったら気が付かなかっただろう。
それで、第三の根拠なんだけど。
さっき、僕がマミに『その子は誰だい?』と尋ねた時、僕はマミにしかテレパシーを送らなかった。
なのに、真っ先に君は反応した。
つまり、君はあの時僕の送ったテレパシーを傍受したことになる」

 キュゥべえの真円の赤い瞳がフランを見つめる。
全く感情を感じさせない目で見つめる様子は不気味そのものだった。

「僕は魔法少女や、その素質を持つ子にテレパシーを送ったり、その中継をしたり出来るけど、
意図しない相手にテレパシーを送ることはできない。
そしてまた、魔法少女の素質を持つだけの子たちに、僕のテレパシーを傍受することもできないはずだ。
君みたいな例は、初めてだよ」

 フランは、相変わらず口元に笑みを浮かべたまま、こちらも全く表情を変えない。
その深紅の瞳がキュゥべえを射抜く。
並みの人間ならたじろいでしまう程鋭い物だった。
けれど、キュゥべえは動じない。ただ、お互い見つめ合うだけだ。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:44:34.10 ID:C6RI5EXM0<>  両者の間には無言の探り合いが繰り広げられた。
部屋に響くは、遠く街の喧騒と、マミが流す水音だけである。

「魔法少女というのが」フランが沈黙を破る。
「ソウルジェムの有無に関わらず魔法を扱う少女のことを指すのだとしたら、
私も魔法少女と言えるかもしれないわね」

「やはり、君は魔法が使える。それも、ソウルジェムも無しに」

「Yes」

「どうやって? 僕の知る限り、魔法を使うにはソウルジェムが欠かせないよ」

「あなたはソウルジェムを持っているの?」

「僕の場合、これは厳密には魔法じゃないよ。まあ、テレパシーは擬似的な魔法なのだけど」

「科学ってこと?」

「物分かりがいいね。良過ぎるくらいだ」

「お褒めに与り、光栄ですわ」
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:46:54.87 ID:C6RI5EXM0<>  両者は、片や口で、片やテレパシーで会話する。
その様子に、先程のような噛み合わない会話の気配は感じられない。


「でも、一体どうやって? どうやって君は魔法を扱えるようになったのだい?」


「簡単なことよ。そこに、魔法を扱える少女がいる、と認識されれば、
そのようなお伽噺が出来上がれば、魔法少女が誕生するの」


 キュゥべえが僅かに首を傾げる。


「言っている意味が分からないね。これじゃあ、さっきと同じだよ」


「意味が分からないのはあなたの理解力が不足しているだけ。もっと勉強しなさいな」


「そうかもしれないけど。でも、君の言っていることは支離滅裂だ。
魔法少女がいるという認識があれば、魔法少女は誕生するのかい? 
無茶苦茶だよ。論理の『ろ』の字もないじゃないか」


「論理じゃないの。理屈じゃないの。そういうモノなのよ。あなた、感情を持たないのね?」


「よく分かったね。その通りだ。厳密には、僕達にも僅かに感情を持つ個体は存在するけど、
それらは極稀な精神疾患として処理されるよ」


 するとフランは何が可笑しいのかクスクスと笑った。

<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:48:30.46 ID:C6RI5EXM0<>
「精神疾患ねぇ。クスッ。馬ぁ鹿みたい」


「可笑しな所があるかな? 
それはまあ、感情を当たり前に持つ君たちからすれば、違和感を覚えざるを得ないことだとは思うけれど、
僕たちにとってはそれが当たり前だよ。
大体、感情を論理より優先させるなんて、それこそ不合理だと思わないかい? 
僕たちにとっては効率が第一だ。
その考えは君たちにも理解できるだろう?」


「ああ。そういう意味じゃないのよ。
あなたたちの価値観なんて聞いていないし、違和感なんて覚えていないわ。
ただ、滑稽だと思ってね」


「滑稽? ……まあ、いっか。論点がずれて来た。話を戻そう」


そう言うキュゥべえに、フランは頷き返した。
それを見てキュゥべえがさらに続ける。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:50:34.96 ID:C6RI5EXM0<> 「確かに僕たちは君言う通り、感情は持たない。
より正しくは、僕たちは感情を論理より優先させることがないのだけれどね。
そして、それに不便を感じたこともない。
だから、感情論なんて言うあやふやなものは理解できない。
もし仮に、君の言う通り、認識だけで魔法が存在するなら、それは妄想を現実にする、ということだよ。
現に、魔法少女の魔法はそういうメカニズムだ。
けれど、ソウルジェムも無しにそれが可能なら、今の世界はもっと別の形になっていたと思うけど」

「幻想と言って戴きたいですわ。
要するに、ソウルジェムなんかなくても人間は魔法を扱えるのよ」

 キュゥべえの尻尾がピンと立った。



「じゃあ、どうしてこの世界の大多数は魔法を扱えないのだい?」



<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:52:03.46 ID:C6RI5EXM0<>

「そういう物を否定してきたから。否定することで、逆に科学は進歩してきた」


「確かに、多くの人間は魔法なんて存在しないと考えているね」


「ほら、蝙蝠って」


「蝙蝠?」


「目が退化しているでしょ? でも、その代わりに超音波を使えるようになった。
何かを得た陰で、何かが捨てられるの。
魔法は、幻想は、人間たちが科学を得る代わりに捨てて来たものよ」


「なるほどね。そういう考察もあるのか。で、君はそういう力を扱えると」


「それなら、マミもそうじゃない」


「そうだけどね。でも、信じ難いね。僕と契約せずに魔法を扱えるなんてね」


「契約して欲しい?」


「もちろん。契約を取り付けるのが僕の役目だ。
契約して魔法少女になれば、今よりもっと大きな力が扱えるよ」


「でも、魔女と戦わないといけないんでしょ?」


「強制はしないよ。戦いたくなかったら、戦わなければいい。
でも、グリーフシードを溜めておけば、より多くの魔法を使えるよ」


 ふう、とフランは軽く溜め息を吐いた。そんなこと、全く関心が無いと言わんばかりに。

<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:53:12.09 ID:C6RI5EXM0<>

「私、力そのものに興味は無いの」


「力だけじゃない。契約によって願い事が一つだけ叶うよ」


「願い事を増やすっていう願いは?」


 キュゥべえは首を振った。


「それは出来ないよ」


「だと思ったわ。ところで」


「何かな?」

 フランの目が怪しく光る。真紅の瞳に白い生物が映る。




「あなたの契約って、悪魔の契約よね?」




<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:54:57.49 ID:C6RI5EXM0<>

 すぐにはキュゥべえは答えなかった。
白い使者は何事かを考えるように沈黙する。
それをフランは口元に笑みを浮かべながら眺めていた。


「どこまで感づいているんだい?」


 帰って来たのは答えではなく、質問。
それを聞いてフランは自分の予想が当たったことを確信した。

「少し考えれば分かるわ。名は体を表す。そうでしょ?」

 それに、奇跡の対価なんて一つに決まっているじゃないと、フランは付け足した。

「なるほどね。君は、見た目の割に随分と聡明なようだ。
やっぱり、只者じゃない。君に興味が湧いて来たよ。
その頭脳と、背中に付いている物が、君が人ではないことを表している」


「感情がなかったんじゃないの? 興味があるなんて、感情がなければおかしいわ」


「さっきも言った通り、厳密には感情を持たない訳じゃない。
自分の行動に関わる範囲の物事になら興味は持つさ。
しかも、その相手が契約できるかもしれないなら尚更ね」


「私との契約は期待しない方がいいかもね。ああ、それと」


「まだ何かあるのかい?」



「ソウルジェムって、魂なのよね」



「……それも気付いたのかい? 鋭いね」

「ええ」

<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:56:31.00 ID:C6RI5EXM0<>

 だって、マミの血は、とっても不味かったから。


 それは塩のない料理のような不味さだった。
塩は料理の味付けの要である。
それがないということは、根本的に料理というものが成り立たないということである。
魂の入っていない体に流れる血とは、つまりそういうものだった。

 もう二度と飲みたいとは思わなかったが、一方であれは貴重な魔力の補給源でもある。
どんなに不味くても、飲まなければならないだろう。生きるために。

「僕たちの役割はね、人間の魂を抜き取って、ソウルジェムの形にすることなのさ」

「魂の結晶化か。すごいことができるのね、あなた」

「造作もないことだよ」

 こいつは好きになれない。
なんか、いろいろと腹が立つ。
まったく変わらない表情とか、そのくせ可愛いふりをしているところとか、
すごいことを事も無げにやってしまうところとか。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:58:13.77 ID:C6RI5EXM0<> 「科学よね、それも」

「そうだよ」

「ということは、いずれ人間もその術を獲得できるの?」

「その可能性はあるね」

 淡々と答えるキュゥべえ。
その姿に少し辟易しながら、フランは肩をすくめた。


 何とも皮肉なものだと思う。
キュゥべえは幻想を否定したが、彼がやっていることは幻想の範疇に入ることだ。
魂の結晶化なんて、幻想の塊であるフランですらできるかどうか分からないというのに。

 「発展し過ぎた科学は魔法と変わらない」とはよく言ったものだ。
幻想を否定することで人類が手に入れてきた科学の行きつく先が、また幻想とは何の運命の因果か。
神様っていうのは、余程ひねくれた性悪なんだろう。どっちが悪魔なんだか。


「なんだか馬鹿らしいわ」


 フランがそう言った時、バタンと風呂場のドアが閉まる音がした。そしてかすかに鼻歌も。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 21:59:13.52 ID:C6RI5EXM0<> 「あら。マミが上がってきたみたいね」

「そのようだね。大体いつも通りの入浴時間だよ」

「詳しいのね」

「一緒に暮らしているからね。君もこれからここに住むのかい?」

「私には帰るべきお家があるわ。ただ、そのためにマミの協力が必要。
だから、しばらくはここにいるわ。

よろしくね。『魔法の使者』さん」

 にこりとフランは笑った。

 脱衣所の扉が開き、淡い黄色のパジャマを着て、肩に掛けたバスタオルで髪を拭きながら上機嫌な
様子でマミが出て来た。
濡れた金髪が艶やかに輝く。
豊満な体が色気を出し、実年齢以上の雰囲気を漂わせている。
<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 22:00:22.62 ID:C6RI5EXM0<>
「二人とも仲良くしてた? フランはちゃんと会話したんでしょうね?」

「うん」

 大人びたマミに軽く嫉妬を覚えながらフランは視線を反らした。

「そう。それは良かったわ。キュゥべえも、フランはしばらくここにいるから仲良くしてあげてね。
あんまりデリカシーのないこと言っちゃだめよ」

「そうだね。いろいろと彼女には聞きたいこともできたし」

「うん。良かった良かった。相手のことを知りたいと思うのは、仲良くなる秘訣よ」

 一人、事情を知らないマミが頷く。
そして、機嫌のいいまま寝室に入って行った。

 フランはその背中を見つめていた。
真紅の瞳に、長い金髪が映る。

 だが、美しい光沢は無く、翳りを帯びたように金髪はその瞳から消えて行くだけ。


「マミは、何も知らないのね……」

「そうだよ」

 素っ気無く、キュゥべえが答えた。



<> 1<>saga<>2012/12/28(金) 22:03:15.15 ID:C6RI5EXM0<> 「宋ね」の辺りは、某レールガンアニメのネタ。何となくやってみたかった。
後悔なんてある訳ない!!

さて、マミさんにお友達ができました。やったね!!





アリス? ああアリスは・・・おや、こんな時間に誰か来たよry



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 22:16:05.74 ID:2P83U/Ma0<> アリス「ぼぼぼぼっちちゃうわ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 22:21:46.39 ID:S8j+nGNT0<> ぼっちのことをアリスって言うなよ! いい加減にしろ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/28(金) 22:30:10.64 ID:MH14CuD00<> 乙
やっぱり不味い味だったのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/28(金) 23:14:36.23 ID:792p1xQk0<> 乙
既に四分の一を過ぎたのに魔法少女候補と接触すらしてない……だと……?
>>1は1スレ原作2話分ペースで投下する気か!?

>>265の家に金髪の女の子が飛んでいった気がするが俺は何も見ていない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/29(土) 22:04:31.68 ID:bgJPBKmIO<> >>267
アリスが家にくるとかご褒美以外のなにものでもないだろ <> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:45:52.44 ID:618RBN580<>
本人未搭乗なのにこの人気のアリスに嫉妬w





今回はちょっと暗い話になります。。。。。


<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:48:21.29 ID:618RBN580<>

              *



 翌日、マミは学校に行き、一人残されたフランは就寝した。
その前の夜は、マミが寝付いてからフランは一人で漫画を読んだり本を読んだりして時間を潰していたのだ。

 これはなかなかに困ったことであった。
マミとフランでは生活サイクルが合わないのだ。
普段マミが活動している昼の間、フランは眠るし、フランが起きている夜間はマミが寝ている。
両方起きているのは朝と夕方くらいなのだ。
最も、平日の昼間にはマミは学校に行っているから問題は夜だけだが。

 とはいえ、マミも生活サイクルが合わないことに頭を悩ませているようだった。
そこでフランは提案した。夜、魔女を探すのに同行できないか、と。

 マミは快諾した。フランには素質もあるし、魔女や使い魔のことを知っているべきだろうと考えたのだ。
かくして、魔法少女体験コースの開催が決定された。

 夕方、まだ日があるうちにフランは早起きした。
その時にはもうマミは帰宅していて、洗濯したばかりのフランの服をちゃんと用意してくれていた。
それを着て、さあ出発である。

<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:49:59.12 ID:618RBN580<>  マミの家には傘が何本か置いてあった。
昨日、公園からフランを連れてくる時に差していた折り畳み傘のほかに、2本のビニールでできた傘と1本の、
少女らしい花柄の雨傘である。
日光を通してしまうビニール傘は論外なので、フランは花柄の傘を借りて出かけた。

「魔女や使い魔が現れると、ソウルジェムが反応するの。
だから、それを見落とさないようにしないといけないのよ」

 マミはソウルジェムを宝石の形に戻し、それを掌の上に乗せて街を歩く。

「地道なのね」

「ええ。基本は足頼み。ある程度近付かないと反応しないから、こうやって街を歩き回って、
どこかに魔女がいないか探さないといけないわ。
面倒臭いけど、その手間を惜しんでいたら魔女退治はできないもの」

 ふーんと、フランは頷く。
もとより魔法少女になるつもりはないので、魔女探しの方法にはあまり興味はなかった。
何よりも見たいのは、魔女である。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/29(土) 22:49:59.86 ID:TJ6U8rZSO<> そういやおりことキリカは秘封が元なんだよな


蓮子ちゃんかわいい <> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:52:24.38 ID:618RBN580<>

 それはこの世界の幻想。
この世界では淘汰されてしまうはずなのに、未だ世を徘徊する魑魅魍魎の類。


 魔女は、魔法少女から身を守るために結界を張るのだという。
それが同時に、幻想郷の結界と同じような働きをするのだろう。
「外」と「内」が分け隔てられ、幻想が幻想として存在することができるようになる。
一方で、魔法少女や普通の人間が入ることができるあたり、幻想郷の結界より構造は単純なのであろう。

 それがフランの立てた仮説だった。当たっている自信はある。
それだけ、こういうことには詳しいつもりだからだ。

<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:54:23.06 ID:618RBN580<>

 生まれておよそ500年。そのほとんどを屋敷の地下室で過ごしてきたフランにとって、
読書が趣味だった。
読んでいたのは、ほぼ全てが魔法に関する本。
地下に引き籠もっているとそれくらいしかすることが無かったからだ。
ただ、後に親友となる魔女が屋敷に大量の本と共にやって来た時から、少しフランは変わった。
趣味に、読書の他に魔法実験も加わったのだ。


 様々な魔法実験を繰り返したが、結界に関する実験はその中でも多い方だった。
しかも、フランが見滝原に来る原因となった魔法実験も、結界に干渉するものだった。


 積み重ねてきた魔法の知識とノウハウ。それを駆使してフランは分析を行う。



<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:56:31.69 ID:618RBN580<>
「なかなか見つからないのね。いつもこんな感じ?」

「ええ。結構歩き回るものよ。疲れちゃったかしら?」

「ううん。まだ大丈夫」

 二人は街の中心を流れる川に沿って走る道を歩いていた。
人通りもまばらで、静かな所だ。不吉な予感はしない。

「もう少し、人の多い所に行ってみましょうか」

 フランの歩調に合わせて隣を歩いているマミが言う。
「人の多い所?」とフランが返すと、マミは優しげな表情で続けた。

「ええ。魔女は人通りの多い道から外れた路地裏によく潜んでいるの。
この時間は仕事帰りで疲れた人が多いからね。
そういう人たちを狙って、魔女も人の多い所に移動するのよ」

「疲れていると狙われやすいのね」

「そうね。特に危ないのが、大きな悩みを抱えていたり、強いストレスを感じている人よ。
精神的に弱っているところを狙って、魔女は寄って来るの。
あと、注意するのが病院ね。
病気の人は精神だけじゃなくて、体の方も弱っているから。
ただ、それはあくまで、そういう傾向があるっていうだけで、
元気で健康な人がいきなり魔女の結界に取り込まれちゃうこともあるのよ」

「……」

<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 22:58:39.84 ID:618RBN580<>

 淡々と事実を言っているように思えても、マミの言葉には経験に裏付けられた力強さがあった。
それが、今まで彼女が積み上げてきたものだからだ。


 自然と目線は足元に落ちる。


 自分には、そういうものはない。
積み上げてきたものと言えば、知識くらいなものだ。
マミのように人を助け続けてきたわけでもなければ、姉のように矜持がある訳でもない。

 それを言うなら、親友の魔女だって同じようなものだが、彼女にとって知識の収集と言うのは、
ある意味存在意義そのものだから、吸血鬼であるフランとは違うのだ。

 本来は傲慢で強靭で、覇者たる資格と力を持つのが吸血鬼。
姉はまさにそんな本来の吸血鬼の体現者であり、フランはただの穀潰しだった。

 今まであまり考えたことのなかった。
姉は姉、私は私、という風に割り切っていたからだ。
けれど、マミを見ていると、そんな自分に自信がなくなる。

 どうしてだろう? 出会って一日しか経っていない相手にどうしてこんなに心を乱されるのだろう?


<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:00:11.56 ID:618RBN580<>

「マミは、そうやって戦い続けてきたのね」

「そうよ」

「何で?」


「それが、私の……『使命』だと思ったから」


 使命。


 なんと自分からほど遠い言葉だろう。なんて縁のない言葉だろう。


 思えば、フランの周りのいる人妖たちはみんな何らかの使命、あるいはそこまで大業なものではなくとも、
役割は持っていた。

 姉は言わずもがな。メイドは館の管理に防衛、門番は庭師を兼任、小悪魔は司書。
そして、魔女は「役に立たない」と言われつつも、紅魔館のブレインを務める。
フランだけが何もない。フランだけが何もしていない。


 今更ながらにそれに気がついて、ひどく気分が落ち込む。
どうしてこんな気分になるんだろう?


 それもこれも、この女が悪いのだ。
この女が、偉そうなことを言うから。
ただ利用されていることに気が付いていないくせに。


<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:01:58.61 ID:618RBN580<>

 見上げると、マミが照れ笑いを浮かべていた。

「なんてね。そんな大袈裟なものじゃないわよ。
ただ、普通の人にはできないし、それをできる魔法少女にもやる人はいないから、
私がやるしかなかっただけよ」


 眩しい。


 夕日がマミの顔を赤く染める。
川面で反射した光がフランの目に飛び込む。小さな吸血鬼は傘で顔を隠した。


「……何で? どうして、そんなふうに思えるの?」


 聞かなきゃいいのに。聞いてもみじめさが増すだけなのに。
知らないことをそのままにしておけない、自分の性が恨めしい。



「私は、ずるい人間だから」



 傘の上からそんな声が降ってきた。
思わず反応して、マミの顔を見上げると、その眼は遠くを見つめていた。


「私ね、昔、事故でお父さんとお母さんを亡くしたの。だから一人暮らしなのよ」


 語られるのは彼女の記憶。フランはそこで口を挟むほど野暮ではない。
ただ、黙ってマミの顔を見上げたまま続きを聞く。

<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:03:31.99 ID:618RBN580<> 「その事故で、私も死にかけたの。でも、そこにキュゥべえが現れた」

 微かに潤んだマミの瞳が、夕焼けの雲と同じ色の宝石を見下ろした。


 それはマミの魂。希望の結晶。プライスレスのトパーズ。


「考えている余裕なんてなかった。ただ、助けてと祈っただけ」

 だから、

「私は助かったわ。
大きな事故に巻き込まれたのに、全くの無傷だったから、医師の先生も不思議がっていたわ。
でも、当然よね。奇跡ですもの」

「……」

「私は卑怯な人間よ。
そうやって奇跡を自分のためだけに使って、自分一人だけが生き残った。
私は、お父さんとお母さんの命を繋ぎ止めるために奇跡を使わなかった。
それで家族がいなくて寂しいなんて言ってるのよ。馬鹿よね、私」
<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:05:22.01 ID:618RBN580<>

 マミの声には微かに自虐の色が含まれていた。
一人、生き残った自分への嘲りと非難。


 それを、彼女はいったいどれくらい繰り返してきたのだろう? 


 どれほどの間、寂しさに耐えていたのだろう?


「本来は、私に寂しいなんて言う資格はないの。
家族を見捨てて生き残った身勝手な私は、だから、契約して手に入れた力を誰かのために使わなきゃいけない。
それが、天国に居るお父さんとお母さんへの、せめてもの罪滅ぼしになるならと思って、ね。
そしたらそれが、いつの間にか私の生きる意味になっていたわ。
巴マミという人間は、街を守る魔法少女でなければならなくなっていたのよ」

 マミのリビングに飾ってあった写真立て。
その中で、フランと(見た目が)変わらない年頃のマミと、よく似た顔立ちの大人の男女が笑っていた。
その写真を見た時から感づいていたことは真実だった。


 マミは、ずっと孤独だったのだ。
家族を引き裂かれ、たった一人で生きていかざるを得なくなった。

<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:06:34.92 ID:618RBN580<>


 私と似ているわね。



 フランも、そうだった。
その右手に宿る、あまりにも恐ろしい力のために、家族から遠退けられ、地下へと幽閉されていた。
その間、ずっと孤独に耐えていた。


 でも、マミとフランとでは決定的に違うところがある。

 それが、己が突き通す軸。マミには、「街を守る」という軸があり、フランにはなかった。


 そんなフランの心中など知らぬマミは、さらに語りを続ける。

<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:07:57.88 ID:618RBN580<> 「だけど、今ではそれで良かったと思ってるわ。
お父さんとお母さんを助けられなかったことは後悔しているけれど、
契約したおかげでたくさんの人たちを守ることが出来た。

守ってあげられなかった人も、居たけれどね」

 最後に付け加えられた一言は、何か特別な意味を持っている気がした。
言葉にそんな響きがあった。
単に、魔女の魔手から無辜の人々を守ることができなかった、という訳ではなさそうだ。

「守れなかった人が、居たの?」


「……ええ。たくさん居たわ。
間に合わなかったり、手遅れだったり、私の力不足だったり、原因はいろいろだけど。
とっても悔しくて、無力な自分が恨めしかった。

でも、一番悔しかったのは、あの子のことかな」

「あの子?」

「ええ。私ね、昔、弟子をとっていたの」
<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:09:49.80 ID:618RBN580<>

 弟子。


 意外な響きにフランが大きく反応する。
顔を上げてマミの顔を見つめるが、彼女は再び遠くを見つめていて、視線が合わない。

「私は、弟子っていうより、友達だと思ってたのよ。
その子も魔法少女で、一時期一緒に戦っていた。
『マミさんと一緒に街を守るんだ!』とか言ってね。とっても可愛かったのよ」


 昔のことを思い出したのか、ほっこり笑うマミ。だが、すぐにその表情が翳る。


「でもね、それも長くは続かなかったの。
ある日、その子が魔法少女だってことがその子の家族にばれちゃってね、
お父さんに『魔女!!』って言われちゃったのよ。
それで、その子のお父さんは酒浸りになって、

最後は…………家族のすべてを失うことになったの、あの子」


<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:11:45.66 ID:618RBN580<>
 魔女を倒している魔法少女も、普通の人間から見れば魔女なのか。
ある意味当たってはいるが、それはとんでもない皮肉だ。裏切りだ。

 それを家族から投げ掛けられたその子の気持ちが、フランは少し解った。
自分にも覚えがあるから。


「佐倉さん……その子は、その家族のために奇跡を祈って魔法少女になったの。
でも、それが結果的にあの子の家族を壊してしまった。
まさかそんな形で願いが裏目に出るなんてね。

私には、あの子の気持ちが想像もつかなかった。

なんて言葉をかけてあげればいいかも分からなかった。

ほんとに、師匠失格よ。

だから、あの子とは決別してしまったの。
あの子は、もう二度と他人のために魔法は使わないって誓ったから。

私はそれを止めることができなかった」


 マミの顔に涙はないけれど、今でも彼女がそのことを後悔して、嘆いているのもはっきりと分かる。
その心は未だに涙を流しているのだろう。


<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:12:40.10 ID:618RBN580<>

「って、ごめんなさい。
こんな話、今まで人に言ったことがなかったから、つい長々と語っちゃって。
暗いし、つまらなかったわよね。ごめんね」

 はっと我に返ったのか、立ち止まって慌てて取り繕うマミ。
フランは微かに笑みを浮かべて首を振った。

「いいよ。マミのことを一杯分かったから」

 その時、マミの顔が赤かったのは、きっと夕日のせいだけじゃないはず。
ぷいっとそっぽを向く。




「フ、フランは、優しいのね」




 そんなことを、フランは初めて言われたのだった。




<> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:16:25.36 ID:618RBN580<>

>>272何それ、初耳w

道理であの二人は百合百合しているんだなw

おりキリちゅっちゅ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/29(土) 23:21:39.72 ID:TJ6U8rZSO<> >>286
というかおりマギ作者が秘封同人書いてた影響でデザインが似たみたい



どうも百合は苦手だ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/29(土) 23:22:09.11 ID:HsDU9Nfgo<> ガチ百合とかホモじゃんきめえわ <> 1<>saga<>2012/12/29(土) 23:23:19.04 ID:618RBN580<>
今日はマミさんの過去語りの回でした。

マミさんが戦うのは次回ということでw
     ・
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   おまけ↓↓

魔理沙「心配すんなよアリス。



独りぼっちは……寂しいもんな……。いいよ、一緒にいてやるよ……。アリス……」



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/29(土) 23:57:54.54 ID:NubB+5kt0<> 乙
魔女結界の中は、魔翌力で満ちてるんだよな?と、いう事ならば…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:04:42.08 ID:Q544H66F0<> >>289
それって無理心中フラグじゃないですかー! やだー! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 01:47:41.29 ID:Z98y/un20<> 乙
暗い話っていうからちょっと身構えてしまったけど、いつも通りのマミフラprprで何の問題もなかった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/30(日) 13:07:55.24 ID:KBHH/E6A0<> 乙でした
もしマミさんが魔女化しても桃色の使い魔は出てこなさそうだな
代わりに7色の赤い剣士が出てきそうだけど


>>287
野郎と女の子がイチャコラしても女の子の方しか見ないなら両方女の子にすればいいじゃん
ってことじゃね?よく知らんけど

>>288
おま、それハマるフラグだぞ!! <> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:50:15.66 ID:7ugFJviq0<>

>>292
このSSはそこまで暗くならないかもしれないですね^^;

>>293
使い魔フランちゃんとか何それ無理ゲー





今回はいろいろはっちゃけ過ぎたので、閲覧注意ですw

<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:52:29.78 ID:7ugFJviq0<>

              *



「ここね」

 繁華街の大通りから外れたビルとビルの間の薄汚い路地。
そこに、異形の世界への入口が構えていた。
掌に乗せられた黄金色の宝石は激しく明滅し、その光が結界の入口に現われた不気味な模様を照らす。

「これは使い魔だけど、油断しないでね。魔女より弱いとはいえ、凶暴なのは変わりないから」

 マミがそう言うと同時に、彼女のソウルジェムから金の光の帯があふれ出てきて、
彼女の体を包む。
それが解けると、一瞬にして魔法少女の出来上がりだ。

 マミの変身した姿を見るのはこれで二度目だが、こうして実際の現場で見ると、昨日とは違った
印象を受ける。
やはり、凛々しいというか、誇らしげというか、そんな感じがする。
<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:53:38.73 ID:7ugFJviq0<>

「それじゃあ行きましょう」

 マミはフランの手を握り、結界の中に飛び込んだ。


 瞬間、フランドールは自分の口元が吊り上ったのを自覚した。
幸い、マミには見えていなかったが、笑いを抑えることができなかった。




 五割だ。



 半分ほど、フランドールの力は戻っていた。




 それの意味する所は明白であり、仮説が実証された。
つまり、この結界の中は、フランにとって文明社会より親和性が高い。
考えてみれば当たり前の話。
フランもこの世界の魔女や使い魔も、幻想の存在同士なのだから。
<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:54:48.18 ID:7ugFJviq0<>



 しかし、それでも五割だ。半分しか力が戻っていない。




 なぜだろうか? それはやはり、使い魔が幻想の存在としては弱い部類にあるからだろう。
使い魔の結界は幻想郷のそれはもちろん、魔女の結界よりも簡素で貧弱なのだろう。
だから、外の、科学の影響を消しきれない。


 とはいえ、魔女や使い魔の結界の中ではある程度力が戻ると分かったのは大きな収穫だ。
これからは可能な限りマミの魔女退治に付いて行って、こうした結界の中に入って行こうと、
フランは決心した。

<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:57:38.36 ID:7ugFJviq0<>

 さて、その使い魔の結界の中だが、何とも毒々しい気色悪い空間だった。
これを作った奴は余程悪趣味に違いない。

 この結界の風景を分かりやすく言うなら、「ピカソの絵の中に入ったみたい」と表現するのが一番だ。
最も、ピカソの絵は非常に素晴らしい芸術作品で、こんな馬鹿みたいな結界の風景の比喩に使ったら失礼だ。
精々、ピカソを真似した素人の絵とか、先鋭過ぎる現代アートとか、子供の落書き程度といったところだ。

 ただし、それは地面の話。
モノトーンの下手くそな絵が地平線まで続いている。
そして、その上。赤とか黄色とか、割とグロテスクな色合いで表現された、
ゴッホの絵に描かれてあるような空が広がっていた。


 見ていて気分のいいものではない。

「来たわよ」

 マミが警戒の声を上げる。
フランが空から目線を落とすと、いつの間にか周りに使い魔が現れていた。
<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:58:49.07 ID:7ugFJviq0<>  やっぱり、芸術に関係するらしい。
絵心のない素人が適当に描いた人間のデッサン画を切り出したような姿をしている。
白い紙に適当な線を引いて、しかも顔はぐちゃぐちゃに描かれていた。
それがざっと見20体。
ゾンビのようなふらふらとした動きで近寄って来ていた。


 ぶっちゃけ、生理的に無理。気持ち悪すぎる。


「気持ち悪い……」

<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 20:59:59.71 ID:7ugFJviq0<>
「魔女や使い魔って、大概個性的な姿形をしているわ。でも、これはなかなかインパクトがあるわね」

 使い魔から視線をそらさず、マミは一丁の銃を取り出した。
昨日やってみせたように、スカートの中から出したのだ。
そしてそれを、顔を顰めながらドン引きしているフランの足元に突き立てた。


 一瞬にして、フランの周りは明るいオレンジ色の光に包まれ、彼女を守る結界が出来上がった。




 目を丸くするフラン。





 訳が分からない。
これは防御結界の一種だろうが、マスケット銃を突き立てて展開させたなんて聞いたことがなかった。
呪文を唱えた様子もないし、マミはまるで当り前のようにやってのけたのだ。



<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:01:34.02 ID:7ugFJviq0<>

「これで良し。ここで大人しくしていれば安全だわ」

 そう言ってフランに背を向け、新たな銃を出現させるマミ。
まあ、とにもかくにも、まずはお手並み拝見だ。
正直、あの使い魔どもをさっさと弾幕で弾き飛ばしたかったけれど。


 マミは帽子を手に取り、それを持ったまま腕を水平に振る。
すると、なんということだろう、帽子の影から何本もの銃が落ちてきた。
それを見て、フランはまるで手品を見ている気分になった。


 全く未知の魔法。何をどうやっているのかすら見当がつかない。
それは、これからマミが何をやってくれるんだろうかという、ワクワクした気持ちに繋がる。
そう言えば、母国語では「魔法」も「手品」も、“magic”と言った。

<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:02:57.98 ID:7ugFJviq0<>
 フランがそんなことを考えているうちに、マミは次の行動に移る。

 自分の体の前に並べ立てたマスケット銃を手に取り、両手で交互に持ちながら順次使い魔へ向けて発射していく。
マジカルマスケット銃もやっぱり単発装填なのか、一発撃ったら捨てていく使い捨てらしい。
そして次の銃を手に取る。

 動きが遅い上に群れて襲ってくる使い魔に外すことなどないのだろう。
一発一発が正確に使い魔の体に穴を穿っていく。
その様子に焦ったところもなく、落ち着いていて、かつ手慣れていた。
ただ、所々に無駄に洗練された無駄のない無駄な動きが混ざるのはどうなのだろう? 



新しい銃を出すのに、その場で二回転してスカートをふわりと舞い上げる必要はないと思います。
しかも、勢いよく回り過ぎて一瞬下着が見えましたよ。

 色は……。


<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:05:01.74 ID:7ugFJviq0<>



 それはともかく、調子よくマミは使い魔を撃破していく。
と、残り5体になったところで、新たな増援が現れた。

 しかも、さっきより多い。30体は居るだろうか。
一体一体は弱いが、こう数が多いといろいろ面倒だ。

 それはマミにとっても同じだったらしい。
小さく舌打ちをして、大きくバックステップを踏み、フランの近くに着地する。

「数が多いわね。雑魚ばっかりだけど、やんなっちゃうわ」

 ふうっと一息つくマミ。

 本当にどうでもいいが、激しく飛んだり跳ねたりするから体のある部分も激しく動いて
大変なことになっている。主に、胸部が。





 いや……何でそんなとこばっかり見ているんだろう、私。




 フランはちょっと嗜好がアレな方向に行きかけている自分に危機感を覚えた。
<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:06:41.96 ID:7ugFJviq0<>

「ハッ」


 さて、フランのそんな心中など露知らず、マミは掛け声とともに勢いよく跳躍する。
宙に浮かんだマミは、胸元のリボンを解いた。
そして、マミがそのリボンをくるくるとまわすと、それは一瞬でマミの体より大きな大砲へと変化したのだ。
質量保存の法則さんがログアウトしました。

 輝く銀のボディに、マスケット銃と同じく黒い装飾が加えられている。
発射機構も同じらしく、マミの胴体程の大きさのハンマーに、同じくマミの頭ほどの大きさの火皿が
付いている。




「ティロ・フィナーレ!!」




 お世辞にもあまり上手いとは言えない発音のイタリア語と共に、撃鉄が火皿を叩き、砲口から
爆音とともに閃光がほとばしり、群れていた使い魔をまとめて消し去った。
一瞬、空間に魔力が膨張し、フランは思わず目を細めた。


<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:08:21.55 ID:7ugFJviq0<>

 スタッとかっこよく着地を決めたマミ。
その右手にはいつの間にか白いソーサー。
どこからともなく降ってきたティーカップを器用にそのソーサーでキャッチし、紅茶を啜る。
そして、奥ゆかしい淑女のような微笑みをフランに向けるのであった。



 砲火後ティータイム。確かに紳士の国の砲兵たちはそれをするけれど……。



 いろいろと突っ込みたいフランであったが、頑張って黙っていた。
調子よく使い魔を撃破したマミの機嫌を損ねるのは可哀想だ。

 格好付けているのがバレバレだとか、

 イタリア語とティータイムが痛々しいとか、

 それが自信満々なところとか……。


<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:09:51.28 ID:7ugFJviq0<>

「終わったわよ」


 マミがそう言うと同時に、結界が溶けるようになくなっていく。
二人は元居た路地裏に立っていた。日は沈んで、かなり暗くなっている。

「ま、ざっとこんな感じかしら」

 変身を解きながらこちらに向かって歩いてくるマミ。
フランを囲んでいた防御結界もそれと同時に消えた。


「すごかったね」


 何が、とは言わない。


「今回は弱かったから楽だったけれど、もしあの場に魔女が居たら、あんなに簡単にはいかなかったわ。
魔女や使い魔にも強弱の差はあるのよ。弱い相手でも相性が悪ければ苦戦するし」

 そう言いつつソウルジェムを掌の上にマミは、それを見てかすかに眉を寄せた。
黄金色の宝石は、魔力を使ったからか、昨日より濁りが増していた。

<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:12:04.69 ID:7ugFJviq0<> 「あんまり濁ってないけど、綺麗にしておこうかしら」

 ぶつぶつと呟きながらマミは懐から黒い宝石を取り出す。
昨日のグリーフシードだ。
それに、ジェムの濁りを移すと、マミはグリーフシードを軽く振る。

「もう限界ね。これ以上使うと魔女が孵化するわ」

 そう言ってフランにもグリーフシードをよく見えるように近づけた。
確かに、昨日よりは何か良くないものが淀んでいるような感じがする。

「これをキュゥべえにあげるのね」

「まあ、そうよ。キュゥべえ!」


 マミが呼ぶと、「なんだい?」と言いながら路地の暗がりから白い獣が姿を現した。
あまりにいいタイミングで現れたことに、フランは警戒を強める。
つけていたのか、単に呼ばれて現れただけなのか。
後者だとすると、キュゥべえはかなり高度な移動手段を持っていることになる。

「このグリーフシードをお願い」

 と言ってマミはキュゥべえにグリーフシードを投げ、


「あっ」


 フランが声を上げているうちに、それはキュゥべえの背中にある、赤い輪のような模様の中に
吸い込まれてしまった。

<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:13:10.95 ID:7ugFJviq0<>

 回収って、そうやるんだ。


 あの背中がどうなっているのかすごく気になる。
さあ、思い立ったらすぐ行動だ、フランちゃん!


 フランはてくてくとキュゥべえに近づく。

「どうしたんだい?」

 顔を上げるキュゥべえを、フランは無造作に掴んで持ち上げた。あんまり重さは感じない。

「きゅぶ」

 変な声を上げる白い魔法の使者。フランはその背中に触った。
<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:14:28.73 ID:7ugFJviq0<>  何とも言えない感触。敢えて近いものを言うなら、マシュマロか。
プニッと押せば、柔らかい弾力で押し返される。

「僕の背中がそんなに気になるのかい?」

「ええ。何がどうなっているのかしら。解剖していい?」

 無邪気に笑うフラン。もちろん純粋な知的好奇心からそう言ったのだ。


「それは勘弁してほしいな」


「いいよね」


「だから……」


「いいよね」


「フラ〜ン」

 ペシっと軽い力でマミがフランの頭をはたく。
<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:15:55.19 ID:7ugFJviq0<>
「あいたっ」

 持ち上げたままのキュゥべえをそのまま放し、両手で頭を押さえて半目でマミを見上げるフラン。
キュゥべえは猫のようにしなやかに着地した。

「嫌がってるでしょ」

「だって……」

 ぷくっとフグみたいに頬を膨らませる幼い吸血鬼。
お姉さん魔法少女も怒ったふりをして両手を腰に当てる。


「………………ごめんなさい」


 折れたのはフランだった。マミは満足したように笑う。

「よし。じゃあ、今日のところはもう帰りましょうか」

 そう言って歩き出すマミ。フランはすぐには動き出さず、その背中に声をかけた。





「マミ! 正しい発音は”Tiro Finale”よ!」





 ピタッと足を止めたマミを、歩き出したフランが追い抜いた。




<> 1<>saga<>2012/12/30(日) 21:20:13.99 ID:7ugFJviq0<>




マミさんは中二かわいい。異論は認めない。





エル・プサイ・コングルゥ


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/30(日) 22:33:23.01 ID:b2mKFlPf0<> マミさんェ・・・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2012/12/31(月) 01:22:18.17 ID:fivdTNIJ0<> 乙
マミさんェ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 02:18:29.43 ID:WOOJpjUHo<> 次からのティロフィナーレは本格発音版なんですねわかります <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 15:48:58.83 ID:jlkuJeu40<> 乙
魔法少女ってシステム上長生きできないよな……黒歴史で濁る的な意味で <> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:12:46.34 ID:n+67Zjuq0<>


>>314
イタリア語教材を買ってきて必死で発音練習してるマミさんprpr


>>315
マミさんェ・・・・





今日はちょっと短いですが投下

<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:14:19.38 ID:n+67Zjuq0<>


             *



『ご覧ください。

こちらが守矢神社の跡地になります。

信じがたいことに、およそ半年前、ここに建っていた神社が忽然として消えたのです。

火災で焼失したわけでもなく、何かが原因で建物が倒壊したわけではありません。

完全に消失してしまったのです。

昨年の10月26日。

一体、ここで何があったのでしょうか?』



<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:16:32.60 ID:n+67Zjuq0<>

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


『その夜、守矢神社はいかにして消えたのだろうか? 

なぜ消えたのだろうか? 

我々取材班はその謎に迫るため、地元の方々に話を伺った。




――朝起きたらびっくりしたんですよ。

だって神社がなくなってて、ほんとにわが目を疑いましたよ。




――夜ですか? ええ、深夜の12時頃だったと思います。

部屋で仕事をしていたら、突然窓の向こうがすごい明るくなったんです。

外を見たら、神社の方から、こう、白い光がバーッとなってたんです。

音ですか? 音はしなかったですね。




――神社の方が光っているから慌てて外に飛び出して、神社に向かったんです。

そしたら、神社の境内が白い光に包まれててね。

あまりに眩しくて、目を瞑っちゃったんですけど、気が付いたら、

神社がなくなってたんですよ』








<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:19:43.37 ID:n+67Zjuq0<>


『多くの人が目撃したという白い光。

深夜、神社は突然その光に包まれ、消えてしまった。

この光はなんだったのだろうか。

東京大学の物理学教授、新房氏はこう語る』





『未だかつてこんな話は聞いたことがありません。

神社が丸々一つ、光に包まれたら消えてしまったなんて、そんな現象は科学的にありえない。

しかし、現実としてそれは起こりました。

これは人類史上最大の謎です』




<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:20:35.15 ID:n+67Zjuq0<>


『人類史上最大の謎。

新房教授は決して大げさに語ったのではない。

しかし、我々の調査の結果、過去にも似たような事例があったことが判明した』





<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:21:53.39 ID:n+67Zjuq0<>

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―




『今から10年前の1998年。

イギリスの湖水地方にある“スカーレット・ヤード”という小さな村の外れにあった古い屋敷が、

やはり一夜にして消えたというのだ。

この屋敷は当時、無人の廃墟だったが、地元の村人から“紅い悪魔の館”と呼ばれて恐れられており、

誰も近づかなかったそうだ。

我々は、この事件を探るべく、イギリスへと飛んだ』




『湖水地方の入口、ウィンダミアの南西およそ8キロのところにスカーレット・ヤードは位置する。

ウィンダミア湖の西岸にあり、周囲には牧場が広がる長閑な村だ。

本当にこの平和な村で世紀の大事件が起こったのだろうか? 

我々はこの村の村長に取材を試みた』





<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:24:28.71 ID:n+67Zjuq0<>



『このスカーレット・ヤードで50年間住んできた村長のピーター・マグレガー氏はこう語る。



――あれは春の、確か5月の6日ぐらいだったと思う。

その朝、突然郵便配達員が私の家に飛び込んできて、こう叫んだんだ。

『スカーレット・ハウスがなくなってるぞ!』とね。

スカーレット・ハウスっていうのが、件の屋敷の呼び名さ。

で、私は『そんな馬鹿な』と思い、彼と一緒にスカーレット・ハウスを見に行ったんだ。

そしたら、本当になかったんだよ。

まるで最初からそんなものは存在してなかったようにね』




<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:25:39.81 ID:n+67Zjuq0<>



『この状況、あまりにも守矢神社の時と酷似している。

我々は、事の真相を確かめるべく、スカーレット・ハウスの跡地に案内してもらった』





『スカーレット・ハウスは村を見下ろす小高い丘の上に建っていた。

村からは、林の中を抜ける一本道を登らなければならない。


木々が鬱蒼と生い茂っている。

足元には大きな石や、地面から飛び出した木の根っこがあり、非常に危険だ。





――ほら、ここがスカーレット・ハウスの跡地だよ。

10年前の春まで、ここにでっかい古びた館が建っていたのさ。

三階建てで、幅はこれくらい、奥行きはこのくらいだった。

建物の周りには、広い庭もあったんだけど、それも一緒に消えたんだ』





<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:26:31.19 ID:n+67Zjuq0<>



『――光? いや、知らないね。

村の、誰もそんなことは言ってなかったよ。

もし、そんな強烈な光が発せられていたら、必ず誰か気付いたはずだ。

だから、多分そんなものはなかったんじゃないかな』





『庭もろとも突如消えてしまったスカーレット・ハウス。

光が発せられなかったとはいえ、守矢神社を髣髴させる状況だ。

ところで、このスカーレット・ハウスはいったい誰のものだったのだろうか?』




<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:27:19.69 ID:n+67Zjuq0<>



『――村の誰のものでもなかった。

もちろん、カウンティ(州)のものでも政府のものでもない。

誰も欲しがらなかったんだ。

だから、手入れがされていなくて、庭も館も荒れ放題だったよ』





『――なんでかって? 




スカーレット・ハウスには、吸血鬼が住み着いているっていう言い伝えがあったからさ』






<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:28:20.78 ID:n+67Zjuq0<>



『吸血鬼! 

思わぬ言葉が飛び出してきたことに、我々は大いに動揺した。

この村には吸血鬼伝説があったのだろうか?』





『――昔、この辺りはスカーレット・ハウスに住む吸血鬼の領土だったらしい。

それとスカーレット・ハウスが消えたことが関係している気がしてならないんだ。

いきなりあんな無人の館が消えてしまうなんて信じられないからね。

吸血鬼が実は犯人じゃないかと思ったんだ』





『吸血鬼が犯人ではないか。

そうマグレガー氏は言う。

守矢神社も、吸血鬼が関わっていたのだろうか?』





<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:29:47.25 ID:n+67Zjuq0<>



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−






『今回の守矢神社消失事件。

消えたのは、神社だけではありませんでした。

この神社の神主の一人娘、東風谷早苗さんも同時に行方不明となっているのです。

早苗さんは当時、地元の諏訪清陵高校に通う一年生でした。

彼女は、守矢神社消失に巻き込まれた可能性があるとして、現在も警察がその行方を捜査しています』



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




『事件当夜、早苗さんの両親は外泊しており、神社には早苗さんしかいなかったという。

早苗さんは……』





<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:30:58.70 ID:n+67Zjuq0<>














「フ〜ラ〜ン〜!!」










「ワッ!?」


 いきなり耳元でマミの声がしてフランは飛び上がった。


<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:32:00.26 ID:n+67Zjuq0<> 「呼んでるの聞こえなかった? 晩ご飯できたわよ」

 振り向くと、三角形のガラスのテーブルにパスタやらコーンスープやらが乗っていた。
その美味しそうな匂いがここまで漂ってくる。
それを意識すると、グーッとフランの腹の虫が鳴いた。
自分はこの匂いにも気が付かない程テレビに熱中していたらしい。


 時間は午後7時40分ぐらい。
初めての使い魔退治から帰ったフランは、7時から始まった特別番組を見ていた。
守矢神社が消えた謎を追うという番組を。

 液晶テレビの目の前に座り込んで、その画面を穴が開くほど眺めていたフランを、
マミは立たせてから、こう言った。







「ほら、早く食べないと冷めちゃうわよ」








<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:32:58.82 ID:n+67Zjuq0<>




 不意に、








 その姿が――








「今日はパスタだから」








 ――かつての姉と重なった。







<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:34:06.01 ID:n+67Zjuq0<>


 懐かしい故郷の風景を見て、ノスタルジックな感傷に浸りやすくなったのだろうか。
マミの姿を見ると、妙に寂しい。



 まだ優しかったころの姉。
フランが大好きだったころの姿が、どうしようもなく脳裏に溢れてくる。
二度と見ることはないと思っていた故郷を、テレビ越しとは言え、見てしまって、

こんな気持ちになってしまった。




「どうしたの?」




 その場で呆然と立ち尽くすフランに、マミがしゃがんで目を合わせる。
黄金色の瞳に見つめられて、フランは我に返った。


「う、ううん。なんでもない」


 そう言って、懐かしさを振り払うように頭を振り、フランはテーブルに着いた。




<> 1<>saga<>2012/12/31(月) 21:38:41.05 ID:n+67Zjuq0<>



※ この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・地名等とは一切関係ありません。






今回はフランちゃんがテレビを見ているだけの話です。

一瞬「何これ」と思われた方、ご安心をw


時系列について説明が欲しいという方は「ノ」してください。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 21:54:40.47 ID:SP5JiTBg0<> 乙

幻想郷の外≠まどマギ世界と思ってたけど違ったのか
2008年の話ってことは、妖精大戦争か東方緋想天頃ってことでOK? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 23:14:06.93 ID:912qhTcDO<> まどかのアニメ本編放映時(2011年春)だと神霊廟(守矢神社幻想入りから4年)のはずだから、緋想天相当だと思う。(冬なら地霊殿だけど) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 09:55:09.18 ID:9GN4v6VJ0<> もしも幻想郷の守矢神社が増えてたら、向こうの人妖達はとっても困惑するだろうなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 11:11:21.14 ID:0QN1smUd0<> >>335
ま た 守 谷 か

で万事解決 <> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:19:57.87 ID:i44tBVvZ0<>


>>333>>334このssでは2008年の春になってります。

もちろん訳あってです。・・・・と言うほどのものではないんですが・・・・


>>335それは嫌過ぎるww

>>336そう言えば最近の異変は全部守矢が関わっているんでしたよねw

蜃気楼はどうなんかなあ







ここからしばらく1話とほとんど一緒の展開なので、あんまりおもしろくないかもしれないです・・・・・










話が動くのは、シャル戦から・・・・・




<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:21:43.02 ID:i44tBVvZ0<>



           *










「暁美ほむらです。よろしくお願いします」










 静かな声で一人の少女が言う。



<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:23:05.83 ID:i44tBVvZ0<>

 腰の辺りまで伸ばされた長い黒髪。

 ほっそりとしたモデルのようなスレンダーな体形。

 理知的で落ち着いた紫色の瞳。

 すらりと通った鼻筋。

 少女らしい小さな口。


 同性が見ても憧れるような大変な美貌を持った少女が立っていた。
彼女が背にしているホワイトボードには黒いマジックででかでかと彼女の名前が書かれていた。
「焔」と言う、そのクールで静謐な雰囲気にはふさわしくない名を持つが、返ってそのミスマッチが
彼女の魅力を引き上げていた。


 容姿は、どこをとっても100点。
惜しむらくは、その瞳にやや覇気が足りないところだろうか。
良く言えば、年の割に落ち着いていて大人びている。
悪く言えば、冷めていて少女らしい快活さがない。

<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:24:58.13 ID:i44tBVvZ0<>  とは言え、相当な美貌を持った彼女は、クラスに歓迎を以って迎えられた。
本人も、転校してきたばかりだと言うのに、別段緊張しているようにも見えなかったし、
それが彼女の第一印象をさらに良くしていた。

 知性を窺わせる大人の雰囲気を纏う転校生に、まだまだ子供っぽさが抜けきれない中学生たちは、
皆目を奪われたのだ。


それは、このクラスに所属する青・緑・桃色頭のトリオも同じだった。


 青髪のさやかはただ純粋に美少女な転校生に目を奪われていたし、
緑の仁美は、元々そっちの気があるのか、惚れ込んだかのようなとろんとした目をしていた。

 しかし、桃色のまどかは他の二人とは違う意味で彼女に目を奪われていた。

 長い烏羽色の髪を持つ彼女に見覚えがあったのだ。
と言っても、少なくともまどかの方は初対面。暁美ほむらという名前も、今初めて知った。

 まどかはほむらを、自分の夢の中で見たのだ。
それも、今朝の話であるが、肝心の夢の内容はほとんど覚えていなかった。
ただ、彼女が何かと戦い、自分はそれを眺めていた、ということぐらいしか記憶に残っていない。
ひどく曖昧な記憶だが、確かに見覚えがあった。

「えっ? うぅ、んぅぅ……」
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:25:44.57 ID:i44tBVvZ0<>

 瞬間、転校生を目が合った。
いや、正確には睨まれたというべきか。
まどかは委縮し、イスにその身を沈める。

「えぇと……暁美さん?」

 その様子に、困惑したようにクラス担任の早乙女が声を掛け、転校生はまどかから目を離した。




<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:27:53.84 ID:i44tBVvZ0<>

           *



 当然の如く、転校生暁美ほむらは質問攻めにあった。
次々と彼女の周りに群がった女子たちが質問を浴びせかける。
しかし彼女は、そんな同級生たちの様子に眉ひとつ動かすことなく答えていく。
その慣れた様子に、彼女は何回か転校を繰り返しているのかもしれないとまどかは思った。
自己紹介の時も緊張していなかったし。


「不思議な雰囲気の人ですよね、暁美さん」

 仁美がそれを眺めながらぽつりと呟いた。

 まどかたち三人トリオは、群がる女子たちから少し離れたまどかの席から暁美ほむらを見ていた。

「ねえ、まどか」前の机に腰掛けているさやかがほむらからまどかに視線を移して尋ねた。

「あの子知り合い? 何かさっき思いっきりガン飛ばされてなかった?」

「いや、えっと……」


 向こうも自分のことを知っているのだろうか? 
はっきり答えることができない。自分も、夢の中で見かけたなんて言っていいのだろうか?


<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:29:10.85 ID:i44tBVvZ0<>
「ごめんなさい」ほむらは片手でこめかみを押さえた。
「何だか緊張しすぎたみたいで、ちょっと、気分が。保健室に行かせて貰えるかしら?」

「え? あ、じゃあたしが案内してあげる」

「あたしも行く行く」

 周りにいる女子たちが騒ぐが、ほむらは気にも留めず、あっさりと断った。
あまり緊張したふうには見えない。恐らく、質問タイムを切り上げる口実だろう。

「いえ、お構いなく。係の人にお願いしますから」

 そう言って彼女は立ち上がり、まどかたちに近づいて来た。

 少し怯むまどか。

 ほむらはまどかたちの前に立つ

「鹿目まどかさん。貴女がこのクラスの保健係よね」
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:30:24.52 ID:i44tBVvZ0<>  平坦な、ともすれば冷たいと感じられるような声がまどかを指名する。

「え? えっと……あの……」

「連れてって貰える? 保健室」

 そう言われれば断る理由も無く、まどかは友人二人に「行ってくるね」と伝えて、
ほむらと共に教室を出た。

 ガラス張りの教室が並ぶ廊下を進む。
そこら中から「綺麗」、「ほむかわいい」といった声が聞こえて、視線がほむらに集中する。
当のほむらは、そんな事を気にも留めず、何故か案内するはずのまどかを先導していた。

 こんな美人の子と一緒に歩いていると、自分の容姿の凡庸さが浮き立つようで、まどかは身を縮こまらせていた。
威風堂々と周囲を気にせず歩いているほむらが羨ましい。
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:31:27.16 ID:i44tBVvZ0<>  黙って歩いていても間が持たない。まどかは何か話しかけることにした。

「あ……あのぅ……その……私が保健係って……どうして?」



 沈黙。



 無視された? ほむらは答えない。


 まどかはやり辛さを感じた。
元から寡黙なのか、いまいちコミュニケーションが取り辛い気がする。
もっとも、まどかの気弱な性格も要因の一つなのだろうが。
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:33:08.25 ID:i44tBVvZ0<>

「早乙女先生から聞いたの」

 少しして、やっとほむらが答えた。質問の答えが返ってきたことにまどかは安堵する。

「あ、そうなんだ」

 その答えに、少しまどかは嬉しさを覚える。
こんな自分でも、一応は先生に聞いて頼ってきてくれたのだ。
ここはちゃんと案内して、係としての務めを果たさないといけない。
こんなこともできないような役立たずではないはずだから。


「えっとさ、保健室は……あぁっ」

 ほむらは迷うことなく廊下の角を曲がる。
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:34:30.98 ID:i44tBVvZ0<>
「こっちよね」

「え? うん。そうなんだけどさ」

 まるで勝手を知っているかのように、その歩みに迷いはない。
これではどちらが案内されているのか分からない。
小さな決心があっと言う間に揺らいでしまった。

「いや、だから、その、もしかして……場所知ってるのかなって」



 また沈黙。



 どうにも会話のテンポが悪い。
向こうは話すつもりはないんじゃないだろうか? 
そう穿ってしまう程、ほむらは口数が少なかった。


「あ……暁美さん?」

 目の前を、長い黒髪が左右に揺れる。その持ち主は沈黙を保ったまま歩き続けた。
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:35:45.63 ID:i44tBVvZ0<>


 せめて何か反応して欲しいな。



 そう思った時、ほむらが口を開いた。

「ほむらでいいわ」

 よく分からないが、名前で呼んで欲しいと来た。苗字が嫌いなのだろうか?

「ほむら……ちゃん」

「何かしら?」

 今度はすぐに返事が返って来た。やっぱり、名前の方がいいみたい。

 取り敢えず呼んでみたのだが、まさかすぐに反応されると思ってなかったまどかは、慌てて何か
会話になりそうなネタを言おうとした。


 そうだ。名前。

「あぁ、えっと……その……変わった名前だよね」

 反応なし。言い方がまずかった?

「い、いや……だから……あのね。変な意味じゃなくてね。その……カ、カッコいいなぁなんて」

 慌てて取り繕うように言う。しかし、相変わらずの無反応。


<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:37:14.18 ID:i44tBVvZ0<>

 不意にほむらが振り向いた。


 校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下。
周りには誰もおらず、前後10メートル程の空間には二人だけ。
ほむらは、睨むような鋭い視線でまどかを射抜いた。

 その紫の瞳に、驚きと戸惑いを浮かべた自分の顔が映る。




「鹿目まどか。貴女は自分の人生が、貴いと思う? 家族や友達を、大切にしてる?」




 先程までとは違う。はっきりとした、問い質すような口調だった。


 なぜ、急にそんな事を?


 戸惑うだけで、理由は判りそうにない。
けれど、こんな事を聞かれたら、答えない訳にはいかなかった。
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:38:28.17 ID:i44tBVvZ0<>


「え……えっと……わ、私は……。大切……だよ。家族も、友達のみんなも」



 はっきりと、自分が思うことを伝える。

「大好きで、とっても大事な人たちだよ」

「本当に?」

「本当だよ。嘘な訳ないよ」

「そう」

 ほむらの声は少しトーンが下がり、問い質すような雰囲気は無くなった。
<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:39:52.46 ID:i44tBVvZ0<>






「もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね。さもなければ」








 何かの感情が籠った声。あるいは、脅すような……。









「全てを失うことになる」










「え……?」

「貴女は、鹿目まどかのままでいればいい。今まで通り、これからも」

 そう言ってほむらは踵を返し、保健室へ向かって歩いて行った。

 発言の意味を理解しかねていたまどかは、そのまま渡り廊下に取り残された。



<> 1<>saga<>2013/01/01(火) 22:44:35.73 ID:i44tBVvZ0<>



やっとほむらが転校してきました。

ぶっちゃけこのシーンはなくてもよかったんですが(だって本編と同じだし)、
なんとなく、気が付いたらほむらが転校してきました、と言う展開は嫌だったので入れてみました。


それにしても、
書いてて思ったんですが、、、、ほむほむマジコミュ症w



それはそうと、
あけましておめでとうございます。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 22:49:24.02 ID:vEvycSAAO<> 明けましておめでとう


確かにあんなんじゃ信用できないよね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 23:13:23.24 ID:0QN1smUd0<> 乙
ほむほむって容姿は中学生だけど、実際何年くらい生きてるんだろうか?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/01/02(水) 02:56:58.25 ID:Nq9+MHVo0<> 乙、そしてあけましておめでとうございます

>>354
完全に心が死んでしまうほどの回数はこなしてないし、まだヘタを打つだけの余地があるくらいの回数には留まっていると思いますけど、
それにしたって、声のトーンが変わっちゃうくらいにはループしたんだろうなって気がします。    (by虚淵)

脚本が考える気無いから分からん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/01/02(水) 14:49:56.30 ID:mMSj5kua0<> 乙
ところで他の東方キャラは出てくる予定はあるんでしょうか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 05:20:10.65 ID:gs1psOi00<> 本編でのまどかに繋がれた糸の数だけループしてるというのが予想
元がメガほむだった事を考えると50回も持つのか怪しい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 14:53:15.98 ID:W3pNLQyP0<> 乙
ほむらはフランに何を思うのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 17:03:24.08 ID:Iqw1Q91/0<> 寧ろフランがほむらをどう評価するか楽しみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 14:16:07.04 ID:GvnOmWoCo<> 正直幻想郷の住人はマミさんのこと中二とか言えないよね
弾幕ごっこで美しさを競うとか言ってる時点で



全世界ナイトメア() <> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:29:26.97 ID:FtYSWYTI0<>


             *



 才色兼備。
 まさにこの暁美ほむらという少女を言い表すなら、その言葉がふさわしい。
どうやら見た目相応に知能も高いようだった。




 数学。英語。国語。


 意味不明な数式をスラスラと解き、ややこしい構造の英文をさらりと訳し、難解な評論文をあっさりと解説する。
それどころか、彼女は走り高跳びで県内記録に匹敵する成績を叩き出した。
座学だけでなく、実技も優秀だった。

 その圧倒的な知能と運動能力に、クラスのみんなはもちろん、先生も思わず感嘆の声を上げた。
これが本物の優等生なのだと、暁美ほむらの実力を見せつけられた誰もが思い知った。


 ところが、その優秀な転校生は実は頭がイタイ電波さんだった。


<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:30:18.79 ID:FtYSWYTI0<> 「ええ!? 何それ?」


 学校帰り。市内最大のショッピングモールにある、とあるファーストフード店に立ち寄った三色トリオは
そこで今日来た転校生のことを話していた。
主に、まどかがほむらに言われた事を相談していたのだが。

 さやかは、予想外の転校生の本性に大袈裟なリアクションを取る。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:31:42.80 ID:FtYSWYTI0<> 「訳解んないよね」

 まどかも溜息を吐く。
何故か保健室の場所を知っているのにわざわざまどかに案内をさせたり、いきなり脅すような事を
言って来たり、転校生の言動は意味不明で支離滅裂だった。

「文武両道で才色兼備かと思いきや実はサイコな電波さん。
くー! どこまでキャラ立てすれば気が済むんだ? あの転校生は!? 
萌か? そこが萌えなのかあ!?」

 更にオーバーな仕草で机に倒れ込むさやか。
それを見て苦笑した仁美がまどかに訊く。

「まどかさん。暁美さんとは初対面ですの?」

「うん……常識的にはそうなんだけど」

 ガバッとさやかが起き上がった。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:32:49.22 ID:FtYSWYTI0<> 「何それ? 非常識なところで心当たりがあると?」

「あのね……昨夜夢の中で会った……ような……」

 それを聞いた二人は思いっきり噴き出した。

「すげー。まどかまでキャラが立ち始めたよ」

 さやかが笑いながらからかった。まどかは身を乗り出して全力で抗議する。

「ひどいよぅ。私真面目に悩んでるのに」

「あー、もう決まりだ。それ前世の因果だわ。
あんたたち、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわぁ!」
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:35:18.67 ID:FtYSWYTI0<> 「夢って、どんな夢でしたの?」

 騒ぎ立てるさやかに対し、仁美は至って真面目な顔でまどかと向き合った。

「それが、何だかよく思い出せないんだけど……。とにかく変な夢だったってだけで」

 まどかは、記憶があやふやな夢に首を傾げつつ答えた。
何かと戦っていたなんて言ったら、またさやかに馬鹿にされるだけだから言わない。

「もしかしたら、本当は暁美さんと会ったことがあるのかもしれませんわ」

「え?」

 意外な一言に、まどかもさやかも仁美に注目する。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:36:46.41 ID:FtYSWYTI0<> 「まどかさん自身は覚えていないつもりでも、深層心理には彼女の記憶が残っていて、
それが夢に出てきたのかもしれません」

「それ出来過ぎてない? どんな偶然よ?」

 さやかが呆れるように言った。確かに俄かには信じ難い話なのだけど。


「そうね」

 仁美はそう言って、バッグから取り出した携帯電話を見る。

「あら、もうこんな時間……。ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

 そう言って彼女は立ち上がる。

「今日はピアノ? 日本舞踊?」

 さやかが尋ねると、仁美は微かに首を振った。

「お茶のお稽古ですの。もうすぐ受験だっていうのに、いつまで続けさせられるのか」

 少し困ったように言う仁美だが、嫌がっているようには見えない。


 仁美は他の二人とは違い、本物のお嬢様である。
家も地元じゃ有名な名家で、住んでいる建物も広いお屋敷だ。
それ故教育が厳しいのか、彼女はいくつもの稽古を掛け持ちさせられている。
放課後三人で集まっても、真っ先に仁美が抜けることはよくあることなので、
まどかもさやかも特に気にすることはない。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:39:11.59 ID:FtYSWYTI0<>
「うわぁ、小市民に生まれて良かったわ」

「私たちも行こっか」

 まどかはそう言って立ち上がった。

「あ、まどか。帰りにCD屋に寄ってもいい?」

 さやかが身を乗り出して、少し小さな声でまどかに耳打ちする。
すぐにその意図を理解したまどかは笑って答えた。

「いいよ。また上条君の?」

「へへ。まあね」

 その後、二人は稽古へと向かう仁美と別れ、同じショッピングモールにあるCD屋に立ち寄った。


 上条恭介というのは、さやかの幼馴染でバイオリン奏者志望の少年のことだ。
演奏の腕は確かで、かなり将来有望だった。
しかし、先日交通事故にあい、左腕と足が動かなくなってしまったのだという。
現在は病院に入院しており、さやかは彼のために足繁くクラシックCDを持って見舞いに行っているのだ。


 CD屋に来た二人はそれぞれ試聴用のヘッドフォンを着けた。
さやかは新入荷のクラシックを、まどかは先週発表されたばかりの人気グループの歌謡曲を聞いていた。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:41:11.67 ID:FtYSWYTI0<>













「助けて!」














 音楽を聞きながらリズムを取っている時だった。
いきなりまどかの頭の中に変な声が響いた。



「助けて! まどか!」



 ヘッドフォンを外し、声のする方向を探す。



「僕を、助けて」



「え……? え?」



 謎の声に導かれるようにしてCD屋を出ていくまどか。
それをさやかは視界の端で捉えた。
まどかは、ふらふらと非常口の方に行ってしまう。
そして、薄暗いその向こうに消えてしまった。

<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:43:08.56 ID:FtYSWYTI0<>

「ん?」


 どうしたんだろ、まどか。


 その様子にただならぬものを感じたさやかはアヴェ・マリアが流れているヘッドフォンを外し、
後を追う。

 非常口から先は工事中の区画のようで、人気もなく明かりも少なかった。
ひんやりとした空気に包まれ、表の喧騒が一気に遠のく。


「まどか?」


 呼んでみるが、返事がない。
ひょっとして、何かの事件に巻き込まれたのだろうか? 
とろくさい所のあるまどかだ。その可能性は充分にある。


「まどか!」


 もう一度、今度は強く呼んでみる。
が、やはり返事はない。
ほんとに何かに巻き込まれたりしてないだろうか?

 その時、頭上から扉が開くような音がした。きっとまどかだ。さやかは駆け出した。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:44:30.43 ID:FtYSWYTI0<> 「まどか! どこにいるの?」


 薄暗い通路を走る。しかし、手掛かりになりそうなものはない。

 上から音が聞こえたということは、何処かに階段を探せば、その先にまどかが居るはず。

 ジワリと、心の中に不安が広がって行く。
何か良くないことが起きている。そんな予感がさやかに焦燥を産む。

 ガチャンと何かが落ちたような、大きな音がした。
すぐ近くだ。音のした方向を見ると、改装中のフロアがあることを示す立て看板と、鎖で封じられた階段があった。
そして、その階段の上には半開きの扉。


「まどか!」


 さやかは躊躇なく鎖を跨ぎ、階段を上った。

 そうする間にも、もう一度大きな音がした。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:45:52.88 ID:FtYSWYTI0<>  扉を開けると、桃色の短いツインテールの後頭部が見えた。
その姿に一瞬安堵するが、すぐに体に緊張が走った。

 床に直接座り込むまどかと、何故かその目の前に立つ転校生。
転校生の格好は見慣れないものだった。
黒や紫、灰色の地味な制服のような服装。もちろん、見滝原中学のそれではない。


 何よ、あいつ。何してんのよ。


 取り敢えずまどかがピンチらしいことは分かった。さやかは慌てて武器になりそうな物を探す。


 ここは看板に書いてあった通り、改装中のフロアのようだ。
辺りには、鉄パイプやロープなどが雑然と置かれている。
だけど、その中で非力なさやかでもすぐに使えそうな物はと言えば……。


 あった。あれだ。


 閃いたさやかがそれを手に取る。
ずっしりとした重さ。
赤いボディに、黒いノズルが付いたそれは、消火器だ。
使い方は絵付きのラベルに書いてあるし、避難訓練でも教わったことがある。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:47:05.17 ID:FtYSWYTI0<>  黄色い安全ピンを抜き、ノズル付きのホースを持って、レバーを引いた。
 勢いよく白い消火剤が転校生に向かって噴き出す。ノズルをしっかり押さえながらまどかを呼ぶ。


「まどか、こっち!」


 すぐに反応したまどかは立ち上がり、さやかの方に駆け出した。

 粗方消火剤を吹き付けた後、さやかは消火器を転校生の方に放り投げて、
まどかと一緒に出口の方に走り出した。

 まどかは何かを抱えていた。猫程の大きさの、白い生き物。だが猫でも、犬でもないようだ。


「何だよあいつ。今度はコスプレで通り魔かよ! 
つーか何それ、ぬいぐるみじゃないよね? 
生き物?」

「分かんない。分かんないけど……この子、助けなきゃ」

 目の前に非常口が見える。二人は緑色のランプを目指して走った。



<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:48:08.15 ID:FtYSWYTI0<>


 しかし、



「あれ? 非常口は? どこよここ」

 見えていたはずの非常口が消えた。それどころか、周囲の様子が妙だ。


「変だよ、ここ。どんどん道が変わっていく」

 まどかの鈴を転がしたような声が不安の響きを含む。
実際、まどかの言う通り、辺りの光景はみるみるうちに変化していった。
何とも言い難い、不思議な空間。


「あーもう。どうなってんのさ」

 さやかはイラついたように喚いたが、それで何かが変わる訳じゃない。


「あ! やだっ。何かいる」
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:49:27.19 ID:FtYSWYTI0<>
 まどかが叫んだ。見ると、この意味不明な空間に蠢く無数の影。それが姿を現した。


 白く丸い綿に手足が生えて、髭を着けたような、よく分からない生き物。
生き物と呼んでいいのかすらも分からなかった。

 この謎の綿人形は、甲高い声で何かを叫んでいる。
続々と現れ、二人はあっと言う間に囲まれてしまった。
辺りには、鎖やら、何故か紙で出来たような蝶や花があってもう何が何やら訳が分からなくなっている。


 二人にできることは体を寄せ合い、恐怖に打ち震えることだけ。

「冗談だよね? 私、悪い夢でも見てるんだよね? ねえ、まどか!」

 ガチャガチャと鋏が鳴る。綿人形は徐々に包囲を詰めて来た。

 さやかはまどかの肩を抱き、恐怖を紛らわすように叫んだ。
しかし、最早為す術も無く、囲まれた二人には助けが来ることを祈るしかなかった。


 だが、そんなフィクションの中のようなことはまず現実では起きないものだ。
二人はついに、死を覚悟した。


<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:50:33.69 ID:FtYSWYTI0<>


 ガチャン。



「!?」


 不意に頭上から何本もの鎖が落ちて来て、二人を囲んだ。
そして、鎖に囲まれた範囲がオレンジ色に光る。
まるで、二人を守るかのように。


「あ、あれ?」

「これは?」

 戸惑う二人に、背後から声がかけられた。




「危なかったわね。でももう大丈夫」



<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:52:58.34 ID:FtYSWYTI0<>

 振り向くと、同じ見滝原中学の制服を着た女子生徒が一人。
金髪に縦ロールのという特徴的な頭に、人並み以上の美貌。
そして、こんな異常な空間でも落ち着いている大人びた雰囲気。

 片手に鎖の端を持ち、もう片方の手に大きな卵型の台座付きの黄色い宝石を持っていた。

 彼女は二人に近づき、まどかに抱えられている白い生物に目を向ける。


「あら、キュゥべえを助けてくれたのね。ありがとう。その子は私の大切な友達なの」

 そう言って彼女は微笑んだ。
こんな不気味な空間には不釣り合いな、柔らかで温かい微笑み。
それを見て、さやかの心から恐怖が洗われていく気がした。

「私、呼ばれたんです。頭の中に直接この子の声が」

 まどかがそう言うと、この先輩っぽい人は肯いた。

「ふぅん……なるほどね。その制服、あなた達も見滝原の生徒みたいね。2年生?」

「あ、あなたは?」

 この状況、全く意味不明だったが、この人が味方であることは二人にも分かる。


「そうそう、自己紹介しないとね」

 先輩っぽい人はそう言ったが、俄かに周囲が騒がしくなりだした。彼女は振り向き、


「でも、その前に」


 先輩(仮定)はその場で一回転すると、ステップを踏み、台座付きの宝石を掲げた。



「ちょっと一仕事、片づけちゃっていいかしら?」



<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:54:22.85 ID:FtYSWYTI0<>

 そう言うや否や、宝石から光が溢れ出し、先輩の体を包んだ。


 その光が晴れると、目の前に衣装を変えた先輩が立っていた。
その服は、先程までの見滝原の制服ではなく、御伽話の中から飛び出して来たようなファンシーな衣装。
茶色いコルセットと黄色いミニスカートが特徴だ。
魔法少女と言うのが相応しいような、そんな恰好だった。


 目の前で次々と起こる非現実的な光景に唖然とするまどかとさやかを背後に、先輩っぽい人はポーズを
決めて変身を終える。
そして、彼女が空中に飛び上がると、「ハッ」という掛け声とともに、彼女の背後に無数の銃が現れた。
黒光りする現代の武骨なそれではなく、近代の古いデザインのマスケット銃だ。
それが、一瞬でどこからともなくたくさん現れた。


 それらは皆綿人形に照準が合せられていた。
次に始まるのは処刑の時間。
そのすべての銃口が火を吹き、光る弾を綿人形の群れに打ち込んだ。
腹に響くような轟音が連続し、綿人形たちは火の海に飲み込まれて行く。


<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:56:54.64 ID:FtYSWYTI0<>

「す……すごい」


 先輩が軽やかに着地すると、辺りの景色は元に戻って行った。


「も、戻った!」

 さやかは安堵したように言い、まどかと笑い合った所で、音を立てて人影が近くの機材の上に
飛び降りた。


 それは転校生。二人は緊張するが、先輩は臆することなく言い放つ。

「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい。今回はあなたに譲ってあげる」

「私が用があるのは……」

「飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの」

 先輩の口元には笑みこそ浮かんでいたが、その声は冷ややかで、微かに怒りが込められていた。
その迫力に、僅かに転校生が目を開く。


「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいとは思わない?」


 転校生は答えない。さやかはまどかを庇うように体を前に出す。


 先輩と転校生はしばらく睨み合っていた。
互いに譲らない。
戦う者の間にだけ流れる殺気によって空気が張り詰める。
殺し合いとは無縁のまどかとさやかにも、この二人のうちどちらかが仕掛ければそれが始まるという
予感があった。



 やがて、転校生は殺気を引っ込めると踵を返した。
ただその振り向きざまに、一瞬辛そうに眼を閉じて。


 まどかとさやかの二人は、機材の向こう側に降りた転校生を見て安堵の溜め息を吐いた。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:58:27.88 ID:FtYSWYTI0<>
 どうやら危機は去ったようだ。
先輩が居なかったらどうなっていたか分からない。
さっきの化け物たちにやられていたかもしれないし、転校生に何かされていたかもしれない。


 先輩はそんな二人を振りかえって、優しく微笑んだ。
先程までの、戦う者の気配は消えうせ、そこには思いやりにあふれた慈悲深い女神のような笑みが湛えられていた。













 非常口の前で先輩が白い生き物に両手を翳す。
すると、先輩の手から黄色い光が溢れ出て、みるみるうちに白い生き物の傷が治っていく。
今まで苦しそうに呼吸していた白い生き物は起き上がると、真っ赤な目を瞬かせて、先輩を見上げた。

「ありがとうマミ、助かったよ」

 口を全く動かさず、頭の中に響くような声でお礼を言う。
その様子に、まどかとマミと呼ばれた先輩は微笑むが、さやかは口を開けて驚いていた。

「お礼はこの子たちに。私は通りかかっただけだから」

 マミがそう言うと、白い生物はくるりとまどかたちの方を向いた。
<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:59:14.24 ID:FtYSWYTI0<>
「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ」

「あなたが、私を呼んだの?」

「そうだよ、鹿目まどか、それと美樹さやか」

 いきなり名前で呼ばれたことに軽く驚く二人。


「何で、私たちの名前を?」


「僕、君たちにお願いがあって来たんだ」


「お……おねがい?」




<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 01:59:47.04 ID:FtYSWYTI0<>

















「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ」














 キュゥべえは僅かに首を傾け、目を閉じて笑ったような表情を見せた。








<> 1<>saga<>2013/01/06(日) 02:03:59.45 ID:FtYSWYTI0<>

例のアイツがついにまどさやと接触・・・





二回連続で本編と同じことをやるのはつまらないので、

さやか視点にしてみました。(大して変わらない;;)



>>356
まだまだ出てきますよ!
あの人とかあの人とかあの人とかw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:31:44.18 ID:xfCFnIpSO<> 乙
一話の時点で脚本虚淵だしQB胡散臭いなぁ…って思ったあの気持ち思い出したわ
やっぱQBくたばれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 10:15:47.64 ID:Qsswg2+b0<> さぁて、ここからどう変わり、収束してゆくのか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 12:45:41.79 ID:6iGFfWUr0<> 乙
原作見た時はなんで消火器ぶっぱしたのかが理解できなかった
コスプレ&盾&怪しい雰囲気はあるものの、別にほむらが直接何かしてるところを見たわけでもないし、凶器を持ってたわけでもない
いきなりやりすぎというか、ぶん投げた時ほむらに当たったりしたらどうするつもりだったのか(当たらないところに投げ捨てたのかもしれないけど) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 22:29:32.70 ID:utV6JKbvo<> 東方キャラは設定上強キャラ揃いだから、大勢来るなら駄作クロスでよくある一方側の蹂躙物になり易いからきちんとパワーバランスは慎重にな。 <> 1<>saga<>2013/01/08(火) 20:55:39.64 ID:XiH+v0lE0<>


































壁|д´)チラッ







キョロ ( ̄д ̄*)))(((* ̄д ̄) キョロ






( ・`ω・´)ダレモイナイ








(*´∀`*) <> 1<>saga<>2013/01/08(火) 20:58:05.32 ID:XiH+v0lE0<>




              *




 その後、二人はマミの部屋に呼ばれてついて行った。


 彼女の家は高層マンション。
いかにも高そうな、立派な建物だった。

 案の定、マミの部屋はとても中学生が暮らしているとは思えないほど広々としていた。
何よりも目を引いたのは、壁一面のはめ込み式の窓ガラス。
そこからは、見滝原の市街地が大パノラマで眺めることができた。


「素敵なお部屋……」

 まどかがうっとりとして呟くと、マミは唇に人差し指をあて、片目を閉じて言った。

「実はもう一人いるの。今は寝ているから、あまり大きな声を出さないでね」

 マミはちらりとリビングから通じる扉を見遣る。
どうやら寝室に続いているようだったが、扉は閉まっていた。

「え? そうなんですか?」

「ルームシェアってやつですか?」

 さやかの問いにマミは首を振る。

「うーん。そうじゃないの。まあ、ちょっと面倒を見ているだけよ」

 マミは曖昧な笑みを浮かべた。
二人は、あまり詮索しない方がいいだろうと思い、口を噤む。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 20:59:48.32 ID:XiH+v0lE0<>  それからマミは、ちょっと待っててねと言ってリビングに向かう。
マミに勧められるままに二人はテーブルに着いた。
二人の後をついて来ていたキュゥべえはまどかたちとはテーブルを挟んで反対側、
丁度そこにクッションがあり、その上に体を乗せた。

 珍しいことに、ガラス製の三角形のテーブルだ。
マミの部屋によく似合うお洒落な物だった。どこに売っているんだろうか?

「碌にお持て成しの準備もないんだけど、ゆっくりしていってね」

 と言いつつ、すぐにマミは美味しそうな紅茶とケーキを持って戻って来た。


 まるでプロが作ったかのようなケーキに、二人は感激した。
普段は大人しいまどかもはしゃいでいる。

「マミさん。すっごく美味しいです」

「んー、めっちゃうまっすよ」

「ありがとう」

 マミは嬉しそうに微笑み、おしゃべりもそこそこに本題に入った。


<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:00:54.86 ID:XiH+v0lE0<>
「キュゥべえに選ばれた以上、あなたたちにとっても他人事じゃないものね」

 持て成された二人は真剣に聴く姿勢になる。

「ある程度の説明は必要かと思って」

 すると、紅茶を啜っていたさやかは肯いた。

「うんうん、何でも聞いてくれたまえ」

「さやかちゃん、それ逆」

 すかさずまどかがツッコミを入れる。
いいコンビだとマミは思い、手元にソウルジェムを乗せる。


 そうして、魔法少女についての説明を始めた。



<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:02:47.26 ID:XiH+v0lE0<>



 ソウルジェムのこと。


 契約と願い事のこと。


 そして、魔女のこと。




「魔女って何なの? 魔法少女とは違うの?」

 さやかの疑問にキュゥべえが答える。

「願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから産まれた存在なんだ。
魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を蒔き散らす。
しかもその姿は普通の人間には見えないから性質が悪い。
不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

 その説明にマミが補足する。

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。
形の無い悪意となって、人間を内側から蝕んでゆくの」

「そんなヤバイ奴らが居るのに、どうして誰も気付かないの?」

 さやかの率直な疑問に、再びキュゥべえが答える。

「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね。
さっき君たちが迷い込んだ、迷路のような場所がそうだよ」

「結構、危ないところだったのよ。あれに飲み込まれた人間は、普通は生きて帰れないから」

 不穏なワードが含まれたマミの言葉に二人は息を飲む。

「マミさんは、そんな怖いものと戦っているんですか」

「そう、命懸けよ」

 静かな声でマミは答えた。


<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:03:53.18 ID:XiH+v0lE0<>

 大きな窓から、燃え上がるような西日が部屋を照らし出す。
それは、しかしマミの顔を照らすことはなく、影を作っていた。



「だからあなたたちも、慎重に選んだ方がいい。
キュゥべえに選ばれたあなたたちには、どんな願いでも叶えられるチャンスがある。
でもそれは……」



 マミは僅かに目を細める。









「死と隣り合わせなの」










<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:05:17.42 ID:XiH+v0lE0<>

 女の子なら誰しも一度は憧れたことのある摩訶不思議でファンシーな光景を目にして、
実際まどかとさやかの心は浮かれていた。
その上、自分たちにもアニメの主人公のようなヒロインになれる素質があるのだから、
それは余計に気持ちが浮かれるのは無理からぬことだった。

 だから、その明るい事実の陰にある現実を示されて、二人はやっとこれがフィクションではないことを
思い出したのだ。



 まどかは不安そうに眉目尻を下げ、さやかは悩ましそうに顔を歪めた。


 実際、何でも願い事を叶えられるという提案は魅力的だが、その代償にいつ死ぬとも分からない
人生を歩まなければならないと言われると、唯の女子中学生である二人には即決できなかった。




<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:07:13.48 ID:XiH+v0lE0<>


「そこで提案なんだけど」



 そんな二人の様子を見たマミが人差し指を立てて口を開いた。



「二人ともしばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」



「えぇ!?」


「えっ?」


 驚く二人。マミは続けた。

「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみればいいわ。
その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの」






 丁度マミがそう言い終わった時、ガチャリと音がした。

 三人と一匹がそちらを見ると、寝室へ通じる扉が僅かに開き、隙間から目が片方、こちらを窺っていた。


「あら、起きたのね。おはよう」


 それを見てマミは優しく微笑んだ。どうやら同居人のお目覚めのようである。



「おはよう」



 扉の向こうから、小さな女の子の声がした。若干、緊張したような声だった。


「安心して。この子たちは悪い子じゃないわ。お客さんよ」


 こちらを窺う目はまだ動かない。
じっと、まどかとさやかを観察しているようだった。
よく見えないのはそこが陰になっているからだ。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:08:45.26 ID:XiH+v0lE0<> 「ごめんね。あの子ちょっと人見知りなの」

 マミは二人にそう言って少し困ったように笑った。


 すると、扉は音もなく開ききり、中から案の定、小さな女の子が姿を現した。


「わぁ、かわいい」


 思わずまどかが呟く。




 ゼミロングの金髪に、真っ白な肌、真紅の瞳に、幼いながら将来を期待できる容貌。
マミとは違って、日本人ではないようだ。
二人は人形のような可愛らしい少女に目を奪われた。


 恐らくマミのであろう、サイズの合っていないシャツを着て、下半身はスカートも履いていない
みたいだった。
何故かシャツの背中側が膨らんでいる。


 その少女は、寝起きなのか眉を顰め、目を細め、ぶすっとした顔をしていた。
その視線はすでにテーブルの上のケーキと紅茶に注がれている。

「マミ、私のは?」

「もう食べるの? 待ってて、今すぐ用意するわ」

 そう言ってマミは立ち上がり、台所に向かった。
その間に、少女はテーブルにてくてくと歩いて近づいて来る。
それを二人は微笑ましく眺めていた。

 少女は、テーブルを挟んで二人の対面にちょこんと座った。
そして、相変わらず眠そうな目をケーキに注いでいた。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:10:08.54 ID:XiH+v0lE0<> 「可愛いですね。この子、マミさんの……」


「マミに拉致されたの」


 まどかの疑問にマミが答える前に、少女は言った。


「えぇ!?」


 まどかの笑顔が凍りつく。

「こら。変な誤解を生むようなことを言わないで!」

 マミが台所からケーキを持って歩きながら顔を顰めて見せた。

「間違った認識ではないけどね」

「ケーキあげないわよ」

「前言撤回するわ」

 少女は目の前に置かれたケーキの皿を両手で掴む。

 まどかとさやかはそれを見て小さく笑った。
何とも可愛らしい同居人が居たみたいだ。
それに、さっきまでお姉さん然としていたマミの態度も、随分と砕けた感じになった。
もちろん、それに二人は好感を覚えるだけだったが。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:11:32.72 ID:XiH+v0lE0<>

「実際わね」

 ケーキを上品に切り分けながら少女が口を開く。
その仕草で、現役のお嬢様と付き合いのある二人はこの少女の育ちがいいことを察した。

「迷っていたところを助けてもらったの。
行くあてはあるんだけど、遠いところだからしばらくここでお世話になっているのよ」

 まあ、実際はケーキと紅茶があるから居付いているだけなんだけど、と少女は付け加え、
ケーキを口に運んだ。

「あー、分かる気がする。これを毎日食べられるとか、幸せもんだねぇ」

 さやかが大業に頷く。

「でも大変だね、迷子なんて。大丈夫なの?」

 まどかが心配そうに少女を覗き込む。
だが少女はそんなことなどどこ吹く風でケーキを頬張っている。

「ま、なんとかなるでしょ」

「い、意外と適当なんだね……」

「考えても仕方ないし」

 少女はせっせとケーキの切れ端を口に運んでいた。
それを見ながら、さやかがマミに尋ねる。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:13:12.47 ID:XiH+v0lE0<>

「この子の名前、なんていうんですか?」



「フランドール。フランドール・スカーレットよ」



 口いっぱいにケーキを詰め込んだフランドールの代わりにマミが答える。

「あ、やっぱり外国人なんだ。マミさんの妹とかじゃないんだね」

 何気なくさやかが言い放った一言に、マミは僅かに顔を陰らせる。
微かに視線を下げ、テーブルの傍でクッションの上に寝そべっているキュゥべえを見つめた。


「ええ。姉妹に見えたかしら?」


 何か言っちゃいけないことを言ったみたい。

 察した二人は取り繕うように笑みを浮かべて、「仲が良さそうだったので」と答えた。

「友達、と言った方がいいかしら」

 マミは同意を求めるように言うと、フランドールは小さく頷いた。

「それより、大事なお話の途中だったんじゃない? 続けたら?」

 ケーキを飲み込んでからフランドールは言った。
そしてまたケーキを食べ始める。

 食べることに御熱心なようで、まどかとさやかの名前すら尋ねない。余り興味がないみたいだ。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:14:50.98 ID:XiH+v0lE0<>

「あ、でも……」

 さやかがマミを窺って言い淀む。しかしマミは首を縦に振った。

「魔法少女のことなら話してあるから大丈夫よ。心配しなくていいわ」

「え? あ、そうなんですか。じゃあ、この子も……」

 まどかの問いに、今度はフランドールが答えた。

「一応、素質はあるみたい。実際、キュゥべえが見えるし。でも、契約はしてないわ」

「そうなんだ。何で契約しないの?」

「する必要がないから」

 フランドールはケーキを食べ終え、紅茶を啜り始める。
それにしても、随分ドライな答えだ。年の割に冷めているのかもしれない。
それともこの年頃の子どもはこんな感じなのだろうか、とさやかは首を傾げた。

「そこは人それぞれよ。無理に契約する必要はないんだしね」

 マミが付けたし、

「それじゃあ、話を戻しましょう」


<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:16:41.79 ID:XiH+v0lE0<> 「えーと、どこまででしたっけ?」


 さやかが顎の手を添え、軽く頭を捻る。
フランドールの登場で随分と話しの腰が折られてしまった。


「魔法少女体験のことだよ」


 答えたのはキュゥべえだった。
いつの間にか起き上がってテーブルを囲む顔を見上げている。

「あー、そのことか。それなら、いいかもしんないですね」

「でしょ? 今すぐ決めなくてもいい。
怖かったらやめてもいい。
そのための考える時間は必要だし、いきなり契約しても何やったらいいか分からなかったら返って危険だわ」

「じゃあ、決まりっすね」

 うんうんとさやかが頷いた。
まどかも了承の意を示したので、魔法少女体験コースは決まりだ。


「あら? 私の後輩ってこと?」

 そこで紅茶を啜りながら話を聞いていたフランドールが口を挟んだ。
首をかしげる二人に対し、言い忘れてたわと、マミが説明を加える。

「この子も一緒に魔女退治に行くのよ。魔女がどんなものか見てみたいって言うから」

<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:18:43.39 ID:XiH+v0lE0<>

「へー。意外だなあ。あ、そうか。かっこいいマミさんを見たいんだね?」


 悪戯っぽい笑みを浮かべてさやかがフランドールに顔を近付ける。
フランドールもそれに呼応して口の端を釣り上げる。


「エロかっこいいマミさんを見たいのよ。なんたって……」


 そう言ってフランドールはちらっとマミを見た。主にその胸部を。

「ああ、なるほど」

 納得したようにさやかが頷く。
激しく飛んだり跳ねたりすれば、どうなるかは明白だ。


「揺れる、揺れる」


「コラ! セクハラじゃない!」

 マミが眉尻を上げて怒った。なんというか、あんまり迫力のない可愛い怒り方だった。

「あー。いやー、つい……」

 さやかは取り繕うように愛想笑いを浮かべ、後頭部を掻いた。

「ついじゃない」

「ごめんなさい」

 ぺこりとさやかが頭を下げる。

「あなたも」

 ぺしんとフランドールの頭をマミがはたいた。

「いたッ! 何で私だけ叩くのぉ?」

「セクハラ禁止」

「その胸が悪いのよ」

「何でよ! ていうか胸のこと言わないで」

「はぁ。マミは心が狭いなあ。でも、仕方ないから今日はこれぐらいにしといてあげるわ」

「勝手なこと言わないで。もう」

 そう言ってマミは頬を膨らませてプイッとそっぽを向いてしまった。
本気で怒っているのかわざとなのか、どちらにしても可愛らしい仕草だった。
そんな先輩の思わぬ一面に、まどかとさやかは微笑んだ。マミさん意外と可愛いね。
<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:21:15.05 ID:XiH+v0lE0<>

「あ、そうだ」


 話題転換ついでに、さやかは気になっていたことを聞くことにした。


「あの転校生も、えっとその……魔法少女なの? マミさんと同じ」


「そうね。間違いないわ。かなり強い力を持ってるみたい」


 空気が和やかなものから、シリアスなものへ変わる。
マミもさやかの方を向いて真剣な面持ちで顎を引く。


「あれ?」そこでフランドールが疑問を挟んだ。
「この街に魔法少女はマミしかいないんじゃなかったの?」


 そうだったんだけどと、マミが首を振り、

「転校生って言うくらいだから、他所からこの街にやって来たのでしょうね。
ここは、魔女の狩り場としては有名なとこだから」


「え? どういうことですか?」

まどかが首をかしげる。

「魔女を倒すとそれなりに見返りが貰えるの。
いわば、魔女退治の報酬ってやつね。
時として、魔法少女同士でその取り合いになることもあるの。
見滝原は周辺と比べて魔女が多いから、いろんなところから魔法少女がやってくるのよ」

「そんな……。同じ敵と戦うんだから、仲間になればいいのに」

 ややショックを受けるさやかに、マミは翳りのある顔で返す。


「そう上手くはいかないのよ。
大抵は競争になったり、ひどい時には魔法少女同士で戦ったりするわ」

「えぇ……」


「あの転校生も、そういう目的で? じゃあなんでまどかを襲ったの?」


「彼女が狙っていたのは僕だよ。
新しい魔法少女が産まれるのを、阻止しようとしてたんだろうね」

 答えたのはキュゥべえだった。マミの目が僅かに暗く淀む。


「そんな……ひどい……」

「つまりアイツは、キュゥべえがまどかに声掛けるって最初から目星をつけてて、
それで朝からあんなに絡んできた訳?」

 さやかは顎に手を充て、転校生の目的を言い当てた。まどかはさやかを見つめる。

「多分、そういうことでしょうね」

 マミは、ソウルジェムを指輪の形に戻しながら頷いた。


<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:23:13.64 ID:XiH+v0lE0<>

「それにしては」


 そこで再びフランドールが口を挟んだ。

「回りくどいことをするのね。それなら最初からマミを叩けばいいのに」


「そうね。でも、例え彼女が襲ってきても負けるつもりはないわ。
私には、この街を守るという使命があるからね」

 力強くマミは微笑んだ。その姿に、候補生二人は憧れの視線を送る。

「おお、さっすがマミさん。あんな奴ちょちょいのちょいですよね」

「か、かっこいいですよ、マミさん」

「フフフ。ありがとう。二人とも」

「豚も煽てりゃ木に登るってね」


「何か言ったかしら、フラン」


 マミは優しく微笑んだ。
その微笑みに、とてつもない凄味が含まれている気がしたが、それは本当に気のせいだろう。
優しいマミさんがこんな顔するはずない。


「な、なんでもございませんわ、マミさん。
明日は紅茶にアプリコットのジャムをお願いしますわ」

 フランドールは目線をあからさまに逸らして、若干震えながら呟いた。


「さあ? 明日、紅茶があるのかしらぁ?」


 マミさんは全く表情を変えずに言う。きっと紅茶の茶葉が残り少ないのだろう。


「あ、あるのかしらぁ? あると嬉しいなぁ」


 フランドールはにこりと笑いかけた。


「それは、あなた次第よ」

「はい。以後気をつけます」

 フランドールは頭を下げた。
マミは満足そうに頷いた。

 候補生二人は、マミさんを怒らせてはいけないと思い知った。
普段優しい人ほど怒らせた時は怖いって言うし……。



<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:24:49.08 ID:XiH+v0lE0<>

「ところで」

 機嫌を直したらしいマミがフランドールを見て話を続ける。

「この子たちの紹介をしていなかったわね」

「あら、そうだったかしら?」

 なんてフランは惚けたけど、わざとやっているようにしか見えない。
だけど、悪気はないみたいだ。


 まあ、小さい子だし、仕方ないか。


 そうさやかは思った。


「紹介するわ。右の子が鹿目まどか。
左の子が美樹さやかよ。
私と同じ見滝原中学の2年生で、二人とも魔法少女の素質を持っているの。
今日、キュゥべえを助けてくれたのよ」

「改めて自己紹介するわ。私はフランドール・スカーレット。よろしくね」

「よろしくー」

「よろしくね。フランちゃんって呼んでもいい?」

 まどかが言うと、フランは首肯して返した。

「いいわ。でも、私は人の顔を覚えるのが苦手だから、間違ったらごめんね」

 フランは白い歯を見せて控え目な感じで笑う。




 八重歯が大きいな、とさやかは思った。










<> 1<>saga<>2013/01/08(火) 21:27:27.08 ID:XiH+v0lE0<>


まどさや、フランちゃんと会うの巻でした!!



もうちょっとで初の魔女戦です・・・・



|彡サッ!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 21:30:58.17 ID:DJr6PCZDO<> 逃すかよ!俺らに乙させるのだー! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 21:35:01.06 ID:6D0LZTPd0<> 上から目線の東方キャラを使ってまどマギを踏み台にしたssか
たいした交流もないにマミさんがあっさり心を許しすぎ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2013/01/08(火) 21:56:47.34 ID:g5Zd9jDr0<> >>407
助けた見知らぬ子をいきなり魔女退治に誘っちゃうマミさんだし、それほど不思議じゃないと思うが
これがほむほむとか杏子だったら違和感だらけだろうけど
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 22:41:32.03 ID:6D0LZTPd0<> 魔法少女の素質を持った人間と一緒にするなよ
そうじゃないなら遠ざけるだろ
ドラマCDでも似たような事を言っていたし
それに警戒心が強い事は本編だけじゃないその他の媒体でも描かれていて
まどポで人間不信になっている事も描かれていたぞ。加えて一般人と壁を感じてるみたいなのに魔法少女以外に簡単に心を許すとかありえない
二次創作でよくあるボッチキャラに毒され過ぎだ
ちゃんと公式の設定や性格を把握してるのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 22:43:21.48 ID:wq9p8zDko<> 原作だけ見てりゃいいじゃん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 22:51:58.68 ID:XdRuFxuC0<> 俺もアニメだけ見てればSS書く資格は十分にあると思う
というか、キャラ崩壊まどマギSSなんて腐るほどあるのに、
このSSに絡んでくるってことは、尤もらしい理屈をつけて東方クロスを叩きたいだけだろ
以下スルー推奨 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 22:54:27.24 ID:6D0LZTPd0<> 仮にも原作付きなんだから
可能な限り本編の設定を取り入れて元と近くするのが普通じゃないのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 22:58:11.24 ID:/WYEjXx00<> >>411
そいつ東方元々よりも
まどかのクロスssが気に食わなくて叩いてるだけの厨房だから相手にすんな
ss談義でも発狂して暴れてたし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 23:07:08.84 ID:6D0LZTPd0<> >>411
それって様するにクロス側のキャラに合わせてキャラを改編してる様なもんじゃないか
元の設定も調べていないなんて愛着も何もないと言ってるのと同じなんだが
本編があれだけ絶望的でほむらがあれだけ失敗してるのを他のキャラがあっさり出来るとか
原作レイプにもほどがあるわ。もう少し納得のいくキャラ描写と過程が欲しかった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 23:12:27.22 ID:XFA1O31V0<> 乙です
ここからどのように物語が動いていくのか楽しみです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/08(火) 23:25:17.69 ID:nuUy4IXwo<> >>414
言っても無駄なような気はしなくもないが…
多少のキャラ改変はそもそも原作者じゃない人間が書く以上、捉え方の違いなどから必然であり避けようがない
全ての設定資料を読み込んだ人間だけが書けというのは二次創作に対する暴論だ
議論する余地もない。二次に何を期待している?こう言っちゃなんだが商業目的でもない以上個人の道楽だ。書く側も読む側もな
だからお前さんに合わないなら読まなければいいし、指摘がしたいなら指摘だけでとどめればいいじゃねーか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/09(水) 00:10:40.45 ID:1e/0YSXF0<> スルーする程度の能力 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/09(水) 00:34:09.86 ID:tqCMRgbG0<>      _          _              _         _
    /::::::;ゝ-──- 、._/:::::ヽ             /::::::;ゝ-──- 、._/:::::ヽ
    ヾ-"´       \:::::::|             ヾ-"´        \:::::|
    /   _     _ ヾノ            /   _      _ ヾノ
    |   /::::::ヽ    /::::::ヽ |              |  /::::::ヽ    /::::::ヽ |
    l  (:::━ノ ▼ ヽ━:::)l             l (::::::・ノ ▼ ヽ・::::::) l
    ` 、  、、、 (_人_) 、、、 /             `、 、、、 (_人_) 、、、 /
     ノ`ー 、_      /               | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|  トン
   _/((┃))_____i |_ キュッキュッ      (,,)           (,,)_
  / /ヽ,,⌒) ̄ ̄ ̄ ̄ (,,ノ   \        /  |   >>1乙!!  |  \
/  /_________ヽ  \    /   |_________|    \




>>407
二次創作自体原作レイプなんだからアキラメロン
どうしても文句があるなら自分で書こう
タイトル教えてくれれば支援するよ



がんばって! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/09(水) 00:55:29.78 ID:C3qhDmTSO<> >>409
魔法少女の資格はもってるし
見た目は羽以外ただの幼女で出会った時はただの困っていた一般人的な存在
どこかに行く宛もない
人間不信にしても行く宛のない子供を放置したらそれマミさんじゃねえだろ

それにフランがワルブル倒すのに影響するかなんてまだそこまで書かれてないのに何言ってんの

クロス物でまどマギ側の状況が変わるのが嫌なんだろ?クロスそのもの読まない方が良いよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/09(水) 11:00:12.04 ID:j0qIJ4aJ0<> 乙
フランちゃんは、ちょっとは暴れて吸血鬼としての気晴らしが出来るだろうか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/10(木) 01:25:09.78 ID:v0Ucwn7Eo<> 俺はまどマギ見たことないし、これからも見る気はない
東方も詳しくは知らない、ちょっとだけキャラの名前がわかるくらい
でもまあ面白いと思うよ、このss <> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:11:04.78 ID:f6g8R38Z0<>



・・・・・・レスが多いw


まあ、楽しみにしている方もいるので

それだけでも書いた意味はありますね































て言うかマミさん、人間不信だったのか・・・・・

このssのマミさんはそんなことはないので <> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:12:18.69 ID:f6g8R38Z0<>




                    *





 翌日、朝からキュゥべえの仲介でテレパシーが使えるようになっていたり、昼休みに転校生と
睨み合ったりしたが、無事まどかとさやかの二人は放課後を迎えた。
そして、これからが本日のメインイベントである、魔法少女体験コース第一段の始まりだ。



「ごめんなさい、時間掛けさせて。
あの子も来たいって言っているから、迎えに行かないといけないの」

 すまなそうに謝罪するマミに、さやかは元気よく笑って答えた。
<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:13:56.94 ID:f6g8R38Z0<>
「いやいや、全然構わないっすよー。エロか……」


「美樹さん」


「う、ご、ごほん。いや、これは失礼……なんちゃって」


「美樹さん」


「ごめんなさい」




 三人はやや早足で歩きながらマミの家に向かっていた。

 マミ曰く、夕方は一番魔女が出やすい時間帯なのだという。
理由は、人々に一日の疲れが溜まっているからだそうだ。
疲労している人は魔女の結界に取り込まれやすいらしい。


「だから、私は夕方を中心に魔女探しをしているのよ。
丁度学校も終わっている時間帯だしね。
でも、時々夜遅くなるまで時間が掛かることもあるわ。
なかなか魔女が見つからなかったり、手強い相手に苦戦したりしたらね」

「うわぁ、大変なんですね」

「警察の方に声を掛けられたことも一度や二度ではないわ。
9時、10時なんて、女子中学生が出歩いていていい時間帯ではないしね。
私は独り暮らしだからまだいいけど、ご家族と暮らしているあなたたちは、ちょっとそういうのは
無理かもしれないわね」
<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:15:04.17 ID:f6g8R38Z0<>

「うーん」


 さやかが唸る。


 マミの言う通り、まどかもさやかも家族と住んでいる。
いやむしろ、一人暮らしをしているマミの方が特殊なのだ。
だからこそ、マミは身軽に動けるのだが、二人はそうはいかない。
実際、二人は今朝方にそれぞれ家族から、昨日の帰宅が遅かったことについて注意を受けていた。

「まあ、無理にとは言わないよ。
マミのような生活は一般的じゃないしね。
かと言って無関係な家族にも魔法少女のことを言っても、理解が得られるかと言えば確かなことは言えないよ。
なにしろ大多数の人間は、魔法の存在なんて信じないだろうからね」

 キュゥべえが三人を見上げて言った。
歩くスピードが速いため、キュゥべえはやや小走りになっている。
<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:16:11.13 ID:f6g8R38Z0<> 「そうだよねぇ」

 さやかは溜め息を吐いた。
自分自身、つい昨日まで魔法が存在することを考えたことも無かった。
小さい頃は、魔法があればいいのになんて思っていたけど、それは幼い幻想だったのだから。

「私も今朝ママに門限のこと言われたよ。やっぱり、心配かけちゃうよね」

 まどかも困ったように眉を寄せていた。
ほむらに宣言した通り、彼女は友人も家族もとても大切にする優しい心の持ち主だ。
それは、いきなり出会ったキュゥべえを、傷ついていたからという理由だけで躊躇なく介抱することからも分かる。

 本人は度々自分に取り柄が無いと嘆いていたが、その優しさこそがまどかの取り柄だとさやかは
考えていた。
そんなまどかなら、案外魔法少女になることそのものが願いになるのかもしれない。

<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:18:12.21 ID:f6g8R38Z0<>

それはそうと、あなたたち、準備はしてきた?」

「準備になってるかどうかは分からないけど……持って来ました! 
何も無いよりはましかと思って」

 と言って、さやかは体育館倉庫から拝借してきた金属バットを掲げた。

「まあ、そういう覚悟でいてくれるのは助かるわ」

 マミは少したじろいだように微笑んだ。
やたらやる気を出しているさやかに圧倒されているようだ。

「まどかは何か、持って来た?」

 さやかが目を輝かせて尋ねると、まどかは「え? えっと……私は」と言いつつバッグを漁り、
一冊のノートを開いて見せた。さやかとマミが覗き込む。


 そこには、まどかが授業中に描いた魔法少女たちの絵があった。
見開き1ページ丸々絵のためのスペースに費やされている。
まどかが想像した自分の魔法少女の姿や、マミとキュゥべえ、そして何故かほむらの姿も描かれていた。
下絵もあり、それなりに苦心した様子が伺える。

「うーわー」

 その余りにファンシーなセンスに、思わずさやかは感嘆の声を上げる。

「と、取り敢えず、衣装だけでも考えておこうと思って」

 慌てて取り繕うまどかに、二人は大声で笑った。

「え? えぇぇぇ」

 なぜ笑われたのかよく分かっていないまどかは、二人を交互に見た後、真っ赤になって縮こまった。

 ひとしきり笑ったマミが目尻に溜まった涙を拭きながらフォローする。

「うん、意気込みとしては充分ね」

「こりゃあ参った。あんたには負けるわ」

 いまだ笑い収まらないさやかが半分笑いながらまどかをからかった。
まどかはさらに赤くなって小さくなり、二人は笑いがぶり返したのか、しばらくそのままだった。




<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:19:25.94 ID:f6g8R38Z0<>




 そうこうするうちに一行はマミの家へとたどり着いた。


「ただいま」


 マミが中に入る。だが、返事はない。


 この時間昼寝をしているというおチビさんはまだ夢の中だろうか?


「まだ寝ているのかしら? さ、あなたたちも上がって。すぐに準備させるから待っててね」

「はーい。おじゃましまーす」

 さやかが元気よく言い、後輩二人も部屋の中に入った。


 一足先に上がったマミは寝室のドアを開け、案の定中でベッドに包まっていたフランを叩き起こす。
<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:20:37.37 ID:f6g8R38Z0<> 「ほぉら、フラン起きて。魔女退治に行くわよ」
「んー」
 唸りながら、それでもフランは素直に起き上がり、眠そうに眼を擦りながら千鳥足で寝室の入口へと向かい、半開きだったドアに衝突した。



「あだっ」



 ゴンという音がして、フランが額を押さえる。その姿を見て、三人が一斉に噴き出した。

「もう、大丈夫?」マミが半笑いで声をかける。

「いたい……」

 何とも不機嫌そうにフランは呟いた。若干涙目になっている。


「ほら、早く着替えて。こっちよ」

 マミはフランに赤いフリルのついた服を渡した。
フランは額から手を離し、それを受け取ると寝室の戸を閉めた。マミも一緒に中に入る。

<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:22:15.55 ID:f6g8R38Z0<>
「カワイイねー」

 くすくす笑いがおさまらないまどかはさやかを見遣った。
さやかも同じように笑っていた。

「いやあ、今の最高だわ。いいなぁ、私もあんな妹欲しい」

「手が掛って大変だよ。その分可愛いんだけどね」

「まどかにはたっくんがいるもんね」

 たっくんとは、まどかの弟――鹿目タツヤ(3)のことだ。

「うん。でも、女の子もいいなぁ、なんて」

「だよね。私も、弟よりも妹が欲しいかな。お姉ちゃんしたい」

「さやかちゃんがお姉ちゃんやってるところかぁ。あんまり想像できないなー」

「コラー。なんだとー! まどかのくせに生意気な」

 さやかはまどかに飛びかかり、まどかは身をくねらせて躱した。

「生意気って何? 私お姉ちゃんだよ」

「まどかは妹キャラだろー。マミさんみたいなキャラがお姉さんにふさわしいんだよ」

「うー。そうかな? まあ、マミさんは世話見がいいからお姉さんに向いてるよね。
フランちゃんも何だか妹っぽいし」

「ちょっと生意気なところとかね」

 二人は隣の寝室に聞こえないように声のトーンを落としていた。
昨日、マミに姉妹の話題を出したら、微妙な顔をされたので、それに配慮してのことだった。


 その時急にドアが開き、二人は飛び上がった。

 マミと、続いてフランが姿を見せる。

<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:24:14.91 ID:f6g8R38Z0<>

 服は真紅を基調としたドレスを着ていた。
薄いピンクのブラウスの上から赤いベストを着ており、下はピンクのフリルのついたミニスカートに
白いショートソックス。
腰元には大きなリボンがあり、胸元に黄色いスカーフを着けていた。
頭には、片側に赤いリボンが付いたドアノブカバーのような帽子をかぶり、ブロンドの髪は
頭の左側でサイドポニーにしていた。


 まるでパーティに出かけるかのようなお洒落な服装。
とてもこれから戦いの場に赴くようには見えない。


 だが、まどかとさやかの二人の目を奪っているのは服装ではなかった。

 その背中に付いた、何とも言えない奇妙なアクセサリーのような物。
一対の黒い細い枝のような曲がりくねった棒に、それぞれ七色の宝石のような透明な結晶がぶら下がっている。
宝石は光を反射し、非常に幻想的に見えるのだが、二人の目にはひたすらに奇妙にしか映らなかった。


「あの……。何、それ?」

 さやかがフランの背中に付いている何かを指して尋ねる。
するとフランは小さな笑みを零した。

「みんな同じことを言うのね」

「それはそうでしょ。珍しい物だし」

「まあね」

 マミは事情を知っているようだし、キュゥべえも何も言わない。
さやかは指摘したことを早くも後悔し始めていた。
言わない方が良かっただろうか?

「できれば、聞かないで欲しいわ」

 フランはそう言った。まどかとさやかは無言で頷く。
あまり触れていいことではないみたいだ。

<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:25:50.24 ID:f6g8R38Z0<>

「さて、それじゃあ魔法少女体験コース、行ってみましょうか」



 パチンとマミが手を叩いて合図する。
いよいよ、魔法少女の見学コースの始まりだ。








<> 1<>saga<>2013/01/11(金) 00:32:16.08 ID:f6g8R38Z0<>


ちょっと短いけどここまでです。



15歳の子供って、難しいですよね

大人なようで子供だし、
子供のようで大人だし


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/11(金) 12:32:53.04 ID:kMRzwMnf0<> ふぅむ。いよいよか……どうなる事やら <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/11(金) 19:09:19.89 ID:yP8SSai00<> 乙でした
ホント大変だよね15歳
感情の揺れがランダムだし、いきなり癇癪起こしたと思ったら物投げ散らかすし、
他人の目に過剰に敏感になるし、自分が間違えていても絶対に非を認めないし、
しかも女の子になると尚顕著というね

>>434
大丈夫だ、問題ない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/11(金) 20:07:24.33 ID:ba0QeMSM0<> ssを書く前に公式の設定を碌に把握していなかったのかよ
どんだけいい加減なんだよ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/11(金) 22:51:06.73 ID:WOiCP5Dr0<> 乙です
使い魔の結界では戻った力は半分程だったけど、魔女結界内ではどうなるのかな? <> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:35:52.82 ID:CckQICuD0<>


*


 一行は街の中心から外れたとある廃ビルの近くにやって来た。

 昨日、まどか達が襲われたショッピングモールから、僅かに残った魔女の痕跡を、
マミのソウルジェムの光を充てにして辿って来たのだ。
その道中、マミは候補生二人にいろいろと魔女探しのやり方や、
魔女の出現しやすい場所について説明していた。
それは、すでにフランが聞いていたことなので、彼女は特に口を挟むことなく、
ただ黙ってついて行くだけだった。
心なしか、元気がない。

 まどかもさやかもマミの家を出る時に、なぜフランが雨傘を持って行くのか尋ねた。
答えは、日傘変わりだという。
マミに因れば、余り日焼けをしてはいけない体質なのだそうだ。
<> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:37:38.30 ID:CckQICuD0<>

「あ、マミさんあれ!」


 ビルの前にたどり着いた時、さやかが何かに気がついて頭上を指した。

 その場に居る全員が指の指す方を見上げる。
そこには、屋上から身を乗り出し、今にも飛び降りんとするOL風の女性が一人。
とても正気とは思えない様子だった。


 そして、

「あ!」

 フランが叫ぶと同時に、女性は躊躇うことなく身を投げた。

「あ……」

「きゃあ!」

 さやかが茫然と呟き、まどかは眼を閉じて悲鳴を上げた。
その時フランは全く別のことを考えたのだが、マミの行動が視界に入り、それを頭から追いやった。

 マミは飛び出すと、走りながら変身し小さな掛け声とともに落ちてくる女性をリボンで絡め取って、
優しく地面に横たえた。
マミはその傍らにしゃがみ込む。
<> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:38:43.23 ID:CckQICuD0<>  女性は意識を失っているようだが、外傷はない。
単に気絶しているだけだ。
そして、その原因ははっきりとその体に刻まれていた。

 その首元には赤く光る禍々しい何かの紋様。

「魔女の口付け……やっぱりね」

 それを見たマミは納得したように呟く。
まどかとさやかも覗き込む。
フランはなぜか少し残念そうな顔をしながらその様子を眺めていた。

 マミは立ち上がった。それを見てまどかが問う。

「この人は?」

「大丈夫。気を失っているだけ」

 安心させるように声色を和らげて言う。
そして次に鋭く言い放った。

「行くわよ」

 マミが駆け出し、三人が後に続く。四人はビルの中に突入した。
<> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:39:50.70 ID:CckQICuD0<>

 窓ガラスは割られ、床にはガラクタやガラスの破片が散乱し、ところどころに「KEEP OUT」と
書かれたテープが張られていた。


 マミがゆっくりと警戒しながら進む。
すると、頭に付けられた花形のソウルジェムが何かに反応し、キラリと光り、目の前の階段の上に
先程の魔女の口付けと同じ紋様が描かれた空間の裂け目のようなものが現れた。
それが、魔女の結界への入口。

 フランは差していた傘を閉じながらそれを鋭く睨んだ。
今までの魔女退治では、まだフランは使い魔しか見たことがなかった。
当然、使い魔の結界の入口は知っているのだが、この目の前の入口は、今まで見てきたどの入口より
も大きく、禍々しい気配を出していた。


<> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:40:57.48 ID:CckQICuD0<>

すなわち、この先に魔女が居るのである。



「今日こそ逃がさないわよ」

 マミが覚悟を決めたように言う。
そしておもむろにさやかの持つバットを握った。
するとあら不思議、武骨なバットはファンシーな外見に変化した。


「うぅ、うわぁー」

「すごーい」

 驚き感激する二人に対し、フランは苦笑しつつ「マミらしいわ」という言葉を口の中で転がす。


「魔法少女だからこれぐらいがいいのよ」

 そう言って可愛らしくウィンクするマミ。

「気休めだけど。これで身を守る程度の役に立つわ。絶対に私の傍を離れないでね」

 階段を上って行くマミに、二人の後輩は力強く返事をして、その後に続いた。
<> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:41:58.03 ID:CckQICuD0<>

フランも、ゆっくりと階段を上って行く。
体が震える。
思いのほか緊張しているのか、口の中がカラカラだ。

フランが階段を上り切ると、前を行く三人は次々と結界の中に飛び込んだ。

フランは結界の前で一度立ち止まり、生唾を飲み込んだ。
それはまさに地獄への入口のような、悪魔の巣窟への玄関扉のような、おぞましく、禍々しく、
そして懐かしい臭いのするものだ。


フランは不意に背後を振り返る。

無論、誰もいない。
さっきの女性は外で気絶したままだろう。
なので、フランは再び入口を向き、一気に飛び込んだ。








<> 1<>saga<>2013/01/12(土) 03:47:42.48 ID:CckQICuD0<>


おやすみなさい

|彡サッ!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/12(土) 11:51:28.41 ID:bUCHxEfSO<> 乙

あまり夜更かしはしないほうがいいよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/12(土) 12:10:06.28 ID:7J82C0Hx0<> 乙
人死にが見たかったのか?やはり人間とは感性が違うな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/12(土) 14:03:10.34 ID:QGMmKiyn0<> 乙です

>>446
自分の意思で死ぬ様な人間なら食料にしても問題ないと思ったのでは?
幻想郷では自殺しようとした人間が迷い込み食料になっている設定だから <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/12(土) 16:20:45.77 ID:oVwAms3i0<> もしかしたら、それで幻想郷へのスキマが開けば一緒に帰れると思ったのかも?
パラレルでも、きっとゆかりんならスキマでなんとかしてくれるだろうし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/12(土) 17:01:01.21 ID:tJZ8/tmZ0<> 乙
4時まで起きてるとか……いくら土曜日だからって流石に寝た方が良い時間帯だろ
投下してくれるのは嬉しいけど、>>1の体調が崩れることの方がこっちは心配だよ

>>447>>448
展開予想につながるからこれ以上の雑談は控えろ控えよう控えてくださいお願いします <> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:26:51.63 ID:nqUdIfj40<>


夜更かし怒られた・・・・・・・

ちょっと忙しかったんです・・・
でも投下したかったんです。

短いからいいかなって・・・・・


今日すごく眠かったorz



>>446>>447
実は単純に血肉が欲しかっただけという・・・・・

だって吸血鬼ですもん
死んだ人間から少しもらうくらいならいいかなって思っちゃたんです

死因なんて関係ない。食えりゃいいんです。 <> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:28:42.17 ID:nqUdIfj40<>



            *



 中は、灰色のコンクリートと庭園が混ざったような、サイケデリックな空間だった。
あちこちに蝶や花の意匠が見える。
だが、周りが味気ないコンクリートなので、どうしても華やかさより違和感や不気味さを覚えてしまう。

 調和のとれていない、不均衡で醜悪な空間。
音に例えるならば、不協和音で奏でられた楽曲の様。
魔法少女のファンシーさとは正反対だった。
まさに、呪を振りまく魔女の結界らしい空間だった。

<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:29:45.83 ID:nqUdIfj40<>
 魔女が潜むだけあって、中にいる使い魔の数も尋常じゃなかった。
余りにも多いので、マミも邪魔な使い魔だけを排除して先へと進む。

 武器はフロントリック式のマスケット銃。
一発撃っては捨てる。
捨てられた銃は自然消滅した。


「来るな、来るなー!」

 さやかはバットを振り回し、襲ってくる使い魔を弾き飛ばす。
まどかはキュゥべえを抱えて恐怖に縮こまっていた。
一方でフランは俯き、拳を握ってかすかに震えていた。
<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:34:09.30 ID:nqUdIfj40<> 「どう? 怖い? 三人とも」

 走りながらマミが尋ねた。

「な、何てことねーって!」

 さやかはそう叫んだが、声が震えていて強がっているのがばればれだった。
まどかに至っては、恐怖で声も出ないらしい。

 ふとマミは立ち止まり、前方から襲ってきた使い魔を銃で撃つ。だが、他にも襲ってくる。それをマミは使った銃で殴りつけた。
 使い魔は四方八方から飛びかかって来た。今度はまどかたちの背後に使い魔が迫る。さやかがバットを持ち上げたところで、マミがその使い魔たちを蹴り飛ばした。
<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:34:58.58 ID:nqUdIfj40<>

 ほんの一瞬、まどかとマミの視線が交差する。


 異形の化け物に恐れず立ち向かうマミの姿に、まどかは恐怖を超える感情を抱いた。
胸の奥底から込み上がってくる昂ぶり。
それは、憧憬であり、羨望であった。
彼女は、金色の銃士に魅了されていく。



マミは、かっこよかった。




 怖いけど……でも……。





<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:40:03.32 ID:nqUdIfj40<>


「頑張って。もうすぐ結界の最深部だ」

 まどかの腕の中にいるキュゥべえが四人を激励する。
それを聞いて、フランが身を震わせた。
背中のアクセサリーに付いている宝石同士がぶつかり合って、シャララッという音を出す。
それに気が付いたまどかがフランを見下ろした。

 様子がおかしい。

 マミの家を出てからフランはずっと押し黙ったままだ。
元から寡黙な子なのか、単に元気が無く恐怖に震えているだけなのか、付き合いの薄いまどかには
判別できなかった。


 まどかはフランに向かって微笑み、自分の恐怖も和らげるように優しく言った。

「怖い? でも大丈夫だよ。マミさんがいるもん」


<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:41:29.34 ID:nqUdIfj40<>
 その声に、俯いていたフランの顔がまどかを見上げる。そして視線が交差し……。











「ッ!?」











 ゾオッ! と背筋をすさまじく冷たい悪寒が走り抜けた。
全身に鳥肌が立ち、一瞬呼吸も鼓動も止まった。
まどかの眼は限界まで開かれ、フランから視線が離せなくなる。
顔を、嫌な汗が垂れるのが分かった。


 瞬く間に心拍数が上がり、呼吸が荒くなり、手足が震えた。
その震えが伝わったのか、キュゥべえが無言でまどかを見上げるが、まどかはそれを気にする余裕はなかった。
ただ、フランを見下ろしていた。


 その深紅の瞳に、はっきりと恐怖に怯えるまどかの姿が映る。
澄んだ透明感のある綺麗な瞳なのに、その色は真っ赤な血の色だ。
瞳の中の赤い自分と目が合う。


 フランは無表情でまどかを見上げているだけ。
真っ白な肌は、人間ではないような、白蝋のような生気を感じさせない色合い。
唇は、真紅のルージュを塗ったみたい。
金色の髪は太陽の如く輝いている。


<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:44:03.30 ID:nqUdIfj40<>

 まどかは完全にフランに目を奪われ、体は金縛りに遭ったように動きを止めてしまう。



 しかし――、



 すぐにフランはまどかから視線を外した。
同時に、硬直していたまどかの体も正常に動くようになり、呼吸も動悸も落ち着いてきた。


「そうだね。マミなら安心だね」

 フランは何事もないかのように答えた。

「あ……うん……」


 今のは何だったんだろう? あれは、あの感覚は……まさか。


 だが考えていても仕方ない。
マミとさやかは先に行っている。
まどかとフランは急いで二人の後を追った。










 僅かに、フランの背中の結晶が発光していることに気が付いたのは、本人を除いて誰もいなかった。












<> 1<>saga<>2013/01/13(日) 01:46:57.86 ID:nqUdIfj40<>



今日はここまで。


次は薔薇園の魔女戦です。

















何の関係もないけど、
Beginとか聞いてると、無性に夏が恋しくなるw

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/13(日) 11:29:41.41 ID:PHzagxzw0<> ふむ。そういう震えですか。 乙 <> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:10:34.97 ID:OkdZnfK90<>




結界の中で力が戻ったことを喜ぶフランちゃんprpr




さて、いよいよ魔女戦です。 <> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:11:53.22 ID:OkdZnfK90<>




                  *





 結界最深部に通じているドアの前にたくさんの使い魔が門番の用に立ち塞がっていた。
マミは両手を広げると、一斉に数挺の銃を現出させ、それらを一斉に発射した。
ドアの前に群がっていた使い魔が一掃される。









<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:12:25.42 ID:OkdZnfK90<>



























 そして、彼女たちは招かれた。
























<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:13:56.12 ID:OkdZnfK90<>

 ドアが開く。
その向こうにもまたドアがあり、それが開く。
更にその向こうにもドアがあり、
次々とドアが開いて一行は引き寄せられるように、
そこに入って行った。






 広い空間。たくさんの使い魔が蠢いているその中心に、魔女がいた。



 それを一言で言い表すなら、まさしく化け物だろう。
随分と意味の不明な姿だった。
ここまで形容しにくい姿も珍しい。
少なくとも、この化け物の姿形を一言で言い表せるようなボキャブラリーをまどかもさやかもフランも、
そしてマミも持ち合わせていなかった。

マーブル模様の茄子のような形をした胴体に、
背中には大きな蝶の羽、
頭の部分はドロドロとした気持ち悪い緑色で所々にバラの花が付いた、
何とも言い難い形をしていた。
敢えて言うなら、髪を前に垂らした女のように見える。
足の部分には無数の触手が生えており、それが魔女の巨体を支えていた。


<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:15:09.98 ID:OkdZnfK90<> 「見て。あれが魔女よ」

 魔女がこちらに気づき、緑色の顔(?)を上げる。

 魔女は大きな椅子に腰かけており、その足元にはバラと植物の蔦が絡まっていた。


「う……グロい」

「あんなのと……戦うんですか……」

「個性的な姿ね……」

 三者三様のコメントを残す。

 マミは最後のフランのコメントに少し苦笑しつつ、三人を安心させるように言った。


「大丈夫。負けるもんですか」

 そして、さやかからバットを受け取り、その先端をコンクリートの床に突き立てると、
オレンジ色の結界が三人を包み込んだ。
昨日、使い魔から二人を守るためにマミが作ったものと同じものだ。
なるほど、これなら途中で使い魔に襲われても安全という訳だ。
<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:16:05.27 ID:OkdZnfK90<>

「下がってて」

 そう言って、マミは魔女の部屋に降り立つ。
そして、挨拶代わりとばかりに、足元を動いていた使い魔を一匹踏み潰した。
それからスカートの両端を摘み上げて、その下から二本のマスケット銃を出す。


 それが魔女の怒りを買ったらしい。
すぐに反応すると、威嚇するような声を上げて自分が座っていたイスを投げつけた。
高さだけで5,6メートルはあるような巨大な物体だ。

 投げつけられた椅子は轟音を立てて地面を砕くが、マミは銃を持ったまま少し飛びのくだけで
それを躱した。
そして、両手に持った銃でイスを撃ち砕く。
<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:17:28.55 ID:OkdZnfK90<>  一連の動作は滑らかで危なげが無い。
黄色い銃士は踊っているみたいでまどかもさやかも、
そしてフランもその軽やかで洗練された動きに舌を巻かざるを得ない。


 その間に魔女は飛び上がった。その巨体に似合わぬ速さでマミの周囲を飛び回る。


 だがマミは落ち着いていた。
表情を変えることなく頭のベレー帽を取ると、それを持って体の前で広げるような仕草をする。
すると帽子の下から次々と銃が出てきて、マミの周りに突き刺さった。

 帽子を元の位置に戻したマミは、周囲の銃を手に取り、次々と発射していく。
その姿に容赦はなく、黄金色の瞳に銀色の銃と紅蓮の炎が映るだけだ。

 しかし魔女もものすごいスピードで動き回り、銃弾を次々と回避していく。
そしてやられてばかりではない。

 銃を撃つのに夢中になっていたマミの足元、無数の使い魔が押し寄せてその体に這い上がり始めた。
マミは振りほどこうとするが、使い魔は離れない。
そうこうするうちに、魔女の手下たちは黒い鞭に変化してマミを縛り上げ、空中に吊り下げた。
だがマミは、それに怯むことなく両手に持った銃で尚も魔女を撃つ。
しかし、狙いが定まらないのか、魔女には当たらなかった。

<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:18:09.61 ID:OkdZnfK90<>  マミはそのまま振り回されて、バコッ!! という音ともに壁面に叩き付けられてしまった。
壁にのめり込んだマミが痛みでかすかに呻く。


「あっ!」

「マミさーん!」


 まどかとさやかの二人が悲鳴を上げる。

 マミは尚も使い魔の鞭に捕まっていた。
そのまま魔女の前で逆さに吊り下げられる。


<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:19:19.81 ID:OkdZnfK90<>

「大丈夫。未来の後輩に、あんまり格好悪いところ見せられないものね」


だが、余裕を崩さないマミ。
そう言って三人に向かって微笑む。
と同時に、銃弾が穿った穴から次々と金色の糸が伸びてきて、あっという間に魔女と使い魔を縛った。
これでもう魔女は飛びまわれない。


 なるほど、巧みな戦法だ。
基本的に使い捨てのマスケット銃の欠点をカバーする巧いやり方だった。
マミは銃弾を糸やリボンに変形できる。
例え外しても、それがこのように相手を縛って身動きをとれなくする伏線となるのだ。
そして動きを止めてしまえば、もうマミの独壇場である。



<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:20:54.34 ID:OkdZnfK90<> 「惜しかったわね」

 マミは胸元のリボンを解くと、それを使って自分を吊り下げていた鞭を切断し、
空中で姿勢を変えてリボンを巨大な大砲に変形させた。
身長の何倍もあるような巨砲だ。


 銀のボディが魔女を狙う。そうしてウィンク一つ、高らかに勝利を宣誓する。






「ティロ・フィナーレ!」






 相変わらずの発音と共に、撃鉄が振り下され、金色の光の筋が魔女を撃ち抜き浄化する。
すさまじい魔力の奔流によって邪悪は燃え上がった。
吹き飛ばされた魔女はグリーフシードになって落下し、魔は滅び去ったのだ。




 華麗に着地を決めたマミは、どこからともなく落ちて来たソーサーと紅茶のカップをキャッチし、
砲火後ティータイムと洒落込んだ。

 そして、三人を見上げて微笑む。

 それは勝利のサイン。

 強者の証明。









<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:21:53.26 ID:OkdZnfK90<> 「かっ、勝ったの?」

「すごい……」

 鮮やかな逆転劇に見せられ呆然とする二人。
そして、マミともまどかたちとも違う笑みを零しているフラン。
それは、凄惨で残虐な笑い。
だが、フランは誰にも気付かれることなくその笑みを隠した。


「あっ」

 魔女が倒されたため、結界が解けてゆくと、まどかがそう声を漏らす。
先ほど結界の入口があった階段の踊り場ではないが、同じ廃墟の中のようだ。


 マミは変身を解きながら、傍らに落ちていたグリーフシードを拾う。
そこには日が当たっていたので、すかさずフランは傘を差して日光を遮った。

<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:22:49.64 ID:OkdZnfK90<>  マミはグリーフシードを後輩の二人に見せる。



「これがグリーフシード。魔女の卵よ」



「た、卵……」

 たじろぐさやか。
無言でまどかもグリーフシードを見つめる。
事情を知っているフランは全く別の方向を向いていたが、他の三人は気にしなかった。

「運が良ければ、時々魔女が持ち歩いていることがあるの」

 不安がる二人にキュゥべえが補足する。

「大丈夫、その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重な物だ」

 そうしてマミはソウルジェムを見せ、濁りを移すところを実演する。
加えて、これが魔女退治の見返りだと言う。
<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:23:56.42 ID:OkdZnfK90<>


「そろそろ出て来なさいよ、ストーカーさん」



 不意にフランが日の当たっていない暗がりに向かって声を掛けた。
それを見て、マミが少し感心したように軽く目を見開く。


「あら、フランも気が付いていたのね」


「あからさま過ぎて、鼻に付くわ」


 フランが大袈裟に顔を顰めてみせた。
腐った生ごみの臭いを嗅いでしまったと言わんばかりだ。



 カツッカツッと靴音を鳴らして暗がりから一人の少女が出て来る。

 黒く長い髪、スレンダーな体に、無表情の美貌を備えた別の魔法少女――暁美ほむら。

「あなたが、マミが言っていたキュゥべえを襲った魔法少女?」

 暁美ほむらは答えず、見定めるようにじっとフランを注視していた。
紫の瞳と真紅の瞳が交差する。
二人は相手の視線に怯むことなく互いを観察し、その間には昨日マミとほむらが交わした殺気の
ぶつかり合いが再現されていた。


<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:25:19.26 ID:OkdZnfK90<>

「そうよ。彼女が、昨日キュゥべえを傷つけた犯人よ」


 マミが代わって答えた。
それだけでなく、その言葉にはほむらに対する非難と断罪も込められていたような響きがあった。


「ふーん」


 フランは尚も探るような目でほむらを見る。ほむらもフランを見返す。
二人の間に無言の緊張が張り詰めていた。


 やがて、フランが口の端を釣り上げる。

「残念だわ。とっても残念だわ」

 そう言って、大袈裟な素振りで首を振る。
肩もすくめ、馬鹿にしたような目でほむらを見た。シャララッと宝石が音を立てる。




「魔女の結界の中で出会っていたら、すぐに細切れにしてあげられたのに」




 とても小さな女の子の口から出たとは思えないような残酷な一言に、まどかとさやかは軽くショックを受けた。
マミも軽く目を見開き、ほむらも表情こそ変わらないものの、少し驚いているようだった。


<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:26:21.22 ID:OkdZnfK90<>

「あんまりマミを怒らせないようにね。さもないと、元々ない胸がもっと減ってしまうわよ」


「プッ」

 さやかが噴き出した。まどかは呆れたように笑い、マミは溜息を吐いた。
フランはニタニタと嫌らしい笑みを浮かべて露骨に挑発する。


 さすがに怒ったのか、むっとしたように顔を歪めてほむらは反撃した。


「偉そうなことを言って、所詮ははったりと虎の威を借りただけね。お子様はお家に帰る時間よ」

「アハハ、そうね。はったりかもね。ここでは」

 ほむらの嫌みにも動じず、フランはさらに馬鹿にしたようにほむらをからかう。
完全に怒ってしまったらしいほむらはくるりと踵を返し、靴音を大きく鳴らしながら早足で去って行った。


<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:27:08.68 ID:OkdZnfK90<> 「くー。ナイスだったよ、フランちゃん」

 さやかが笑いながらフランの頭をポンと叩いた。
だが、フランはさっきまでの笑みを引っ込め、無表情で「ありがと」と素っ気無く言っただけだった。

 それに対してまどかは少し残念そうな、悲しそうな顔でぽつりと漏らす。

「仲良くできればいいのにね」

「お互いにそう思えれば、ね」

 尚もほむらと友好になろうとする優しいまどかを、マミは微笑ましく思う。
本当に、優しくていい子なのだろう。









<> 1<>saga<>2013/01/15(火) 01:29:28.22 ID:OkdZnfK90<>




何かあっさり終わったけど、初の魔女戦でした。
本編と同じですのであまり長くしませんでした。








う〜ん、
戦闘描写難しい・・・・・



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 02:38:14.92 ID:Xwf/ypjDO<> 乙

ほむら、喧嘩売る相手は考えた方が良いぞ、マジで…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 03:42:29.57 ID:xLhtLIC10<> 乙でした……眠れねえ……
戦闘描写のコツってなんだろうね、ホント


>>マミは銃弾を糸やリボンに変形できる
マスケット銃はリボンを変形させたものだから、どちらかといえば解除では……?
変形でも問題ないけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 14:45:13.92 ID:Kclyssy/0<> 乙
フランちゃんは、ほむらちゃんが真実を知ってる事には、薄々気付いているんだろうな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 21:00:02.45 ID:0qQmU8so0<> 乙でーす
>「魔女の結界の中で出会っていたら、すぐに細切れにしてあげられたのに」

これは誰の事を指してるんだろうな
ほむらの事を言っているのか。それとも……

<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:36:31.20 ID:tBTFEEvm0<>


☢Caution!!☢


R−15注意 <> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:38:36.37 ID:tBTFEEvm0<>




             *




 その夜。



 フランはソファに寝転がってテレビを見ていた。
マミはシャワーを浴びている。
そして、いつも居るはずのキュゥべえは居ない。


 昨日からキュゥべえは鹿目まどかの家に行っている。
フランは特に気にしなかったが、マミは仕方ないこととはいえ、少し寂しそうな顔をしていた。

 今までマミの世話になっていて、強い素質を持つ候補が見つかるとあっさり掌を返すように
そちらに行ってしまうキュゥべえをフランは冷たい奴だと思ったが、感情がないのだから仕方ない。
彼にとって、より多く契約を結ぶことが至上の使命なのだろう。


<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:39:59.35 ID:tBTFEEvm0<>

 テレビでは、何が面白いのかよく分からないバラエティ番組をやっていた。
テレビ画面の中で、いわゆる芸人と呼ばれる人間たちがいろいろとふざけ合うだけの寒い番組。

 馬鹿げたことを仕事なので大真面目にやっている彼らには悪いが、フランはまったく面白いとは思わなかった。
それどころか、このテレビジョンという素晴らしい科学技術の結晶を、こんなくだらない番組のために
使う人間が信じられなかった。

 いや、それを言うなら、遊びに膨大な妖力や神力を費やす弾幕ごっこもそうなのだろうが、
あれはあれで幻想郷の秩序を保つために必要なシステムなのだ。
このくだらない番組とは意義が違うのだ。


 人間は、こんなふうにテクノロジーの無駄遣いをするために幻想を駆逐し、
科学を進歩させて来たのだろうか? 
そう思うと、少しやる瀬ない。
そのために、吸血鬼をはじめとした妖怪や神々は幻想郷という掃き溜めに追いやられたのだ。

<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:41:28.79 ID:tBTFEEvm0<>



 幻想郷は決して悪いところではない。

 あそこは、楽園である。


 しかし、それと同時に牢獄でもある。




 皮肉なことだが、事故によってその外に放り出されたフランドールは、世界の広さを知った。


 外の世界には捨てられたはずの幻想がまだあること。

 その力の使い手たちは、残念ながら救いのない宿命に囚われていること。

 そして、それでも他人のために自己の犠牲を顧みず戦い続ける崇高な者がいること。



 ひょんなことからマミと友達になってしまったフランだが、今ではなって良かったと思っている。
既に博霊神社の場所は特定し、いつでも帰れるというのに未だにマミの家に居座っているのは、
ケーキと紅茶だけが目当てだからではない。


<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:43:02.80 ID:tBTFEEvm0<>

 いつかはお別れしなければならないのは分かっている。
このままここにいても、いずれはスキマに見つかるだろう。
ただ、先延ばしにしたいだけなのだ。ここは居心地がいい。


 でも、フランとマミは決して共には居られない。
片や幻想の住人であり、片や現実世界の住人である。
そして、恐らくマミの未来は長くない。
それは、魔法少女の運命だからだ。


 他方、フランは齢500の吸血鬼で、これからも悠久の時を生き続けるだろう。
そう、二人一緒にいつまでもは、ない。






 だから、今しかないのだ。





 今しか、マミと時間を共有することができないのだ。






<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:44:22.11 ID:tBTFEEvm0<>


 そのマミは脱衣室から出てきて、フランの隣に腰かけた。

「今日はどうだった? 初めての魔女だったでしょ? 怖くなかった?」

「なんていうか、想像と違ってて驚いたわ」


 寂しい気持ちを押し隠してフランは笑う。
今という時が少しでも楽しいものになるように。
こんなささやかな会話でも思い出に残るように。


「ふふ。そうでしょうね。
あなたが以前言った通り、魔女というより、化け物と言った方がいいような姿をしているものね」

 マミが優しくフランの金髪を撫でる。フランもマミの腰元に手を回し、顔を埋めた。


 いい匂いがする。


 柔らかなマミの体から、心地よい香りがフランドールを優しく包んだ。
今は夜だというのに、フランはまどろみの中に落ちそうになった。
優しいマミの手つきも気持ちいい。
<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:45:52.96 ID:tBTFEEvm0<>




 マミも、年の離れた妹のようにフランを見下ろす。
彼女は人間ではないし、一緒にいた時間はキュゥべえよりも短いが、それでも愛おしいと思った。


 神社の場所は分かっている。
フランに漢字を教えてもらって検索したら、すぐに見つかった。
東京の山奥の方にあるらしい、とても小さな神社だとか。

 さすがに遠いので、毎日が魔女退治に忙しいマミはなかなか時間が取れず、
まだ神社には行っていない。
次の週末に行く予定だ。
遅れてしまって、フランには悪いと思う。


 でも、このままフランと一緒にいたいと思うのは、悪いことなのだろうか?


 我が儘だということは分かっている。
フランには帰るべき家とそこで待っている家族がいる。そして、それに嫉妬する。


 家に帰っても一人。いるのは人間ではない生物。
言葉こそしゃべるが、恐らくは本質的に人間とはまったく別種の価値観を持つ生き物。
そのキュゥべえも、鹿目家に行き、今フランが居なくなるとマミは本当に一人暮らしになってしまう。
<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:48:17.40 ID:tBTFEEvm0<>

 帰った時に、家の中に人の温もりがあるというのは本当に素晴らしいことだと、
マミはフランと一緒に暮らすようになってから思い出した。
家族を失ってから久しく忘れていた感覚だった。
昔は一緒に戦っていた弟子がいた。
けれど、彼女には彼女の家族がいたし、彼女が家族を喪ってからは、
残念なことに決別してしまったという苦い思い出がある。








 だから、フランと一緒にいたい。





 離れたくない。





 でも、それは叶わぬ夢。










 一人になるのは怖い。寂しい。辛い。


 けれど、大丈夫。今までやってこれたんだから。



 不意にフランがマミの顔を見上げた。



 眠たげな、半開きのとろんとした目にマミの顔が映る。
だが、フランは何も言わない。
いや、何か言いにくそうに目線を反らした。

 マミも黙っている。フランが自分から言い出すまで、何も言わないつもりだった。




 騒がしいテレビをBGMに二人はそのまま無言でいたが、やがてフランが意を決したように口を開いた。




<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:49:31.43 ID:tBTFEEvm0<>



「ねえ、マミ」




「何かしら?」




「お願いがあるの」




 フランは気恥ずかしそうにマミの胸元に視線を落とした。
正確にはその少し上、首の付け根あたりを見つめている。

 マミは何も言わず、ただ黙ってフランが続きを言うのを待った。






「……を、頂戴」






「え? 何が欲しいの?」


 声が小さくて聞き取れなかった。












「血を、下さい」













<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:50:53.85 ID:tBTFEEvm0<>



 フランは再びマミと目を合わせる。


 少し潤んだような瞳。真紅の海の中にマミの意識は引きずり込まれる。
今、誰よりも愛おしい人の頼みだ。断われる訳なかった。





「いいわ」





 マミは躊躇なく着ていた寝間着の首元を肌蹴させた。
白い、首から肩、胸元にかけての艶やかな肌と、魅惑的な鎖骨が露わになる。
異性のみならず、同性すらも欲情してしまいそうな艶かしい色香を放っていた。
それはまるでヴィーナスのように何処か欠けた危うさを含み、一つの芸術品のようだった。



 フランドールは身を起こし、ゆっくりとした動作でマミの首元に顔を近付けた。




 温かいフランドールの呼気が肌に当たってこそばゆい。


 思いもよらず鳥肌が立ってしまった。
けれど、それが返って快感となってマミの全身を駆け巡り、マミはその身を震わせた。


<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:55:08.91 ID:tBTFEEvm0<>


「いくよ」




 そう言って、フランドールは口を開けて、



「あ、ああ」



 首筋に鋭い痛みが走る。
マミは一瞬体を硬直させるが、すぐに血と共に力も抜けて行った。
肺も大きく空気を吐き出し、マミの瞼が下がって来た。






 痛みはやがて快感に変わる。


 ジワリと、感じたことのない痺れが体に広がってゆく。
全身が汗ばみ、敏感な部分は特に反応した。








 気持ちいい。




 ふしだらだ。




 愛おしいわ。




 ……背徳よ。




 感じてるわ。





 …………イケナイことなのに。


 逝ってしまいそう。





 ………………ああ……だめぇ…………。


「あ、あぁん」



<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:56:34.30 ID:tBTFEEvm0<>



 思わず自分のものとは思えぬ嬌声が漏れた。
だというのに、マミの理性は働かず、ただフランドールに血を吸われるがままだった。


 だらしなく口が開きっ放しになり、その端から透明な汁が零れる。
目はここではないどこか遠くを見つめ、四肢からは力が抜けていた。
自分が吸われている感覚。
本来感じるはずの恐怖はなく、マミはただ快楽に身を任せていた。






 もう抗えない。もう逃れられない。




 私は囚われてしまったんだわ。





 ああ、気持ちいい。
一生このままでいい。
この子に血を吸われるなら、そのために生きても…………。







<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 00:58:10.84 ID:tBTFEEvm0<>  フランドールがマミの首から口を離した。





 唐突に訪れた終わりに、マミはすぐに反応できなかった。
とろんとした目をフランドールに向けると、夢見心地で尋ねた。


「もう、終わり?」


 それに、フランドールは首を振った。

「もうって。あんまり血を吸うと、マミが貧血で倒れちゃうわ。それに、私自身少食だし」

「そう。残念」

 ふう、とフランドールは溜め息を吐き、いきなりマミの口元にキスをした。
正確には、そこに垂れていた彼女の涎をすすったのだ。


 しばらく茫然としていたマミだが、自分が何をされたのか認識すると、
途端に茹で上がったタコみたいに真っ赤になった。
慌ててキスされた場所を手で覆う。




「な!? フ……フラン!! 何てこと、するの!!」




「やっと帰って来た?」


 フランドールはそう言って悪戯っぽく笑った。幼さが残るが、どこか妖艶な笑み。


<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:00:17.09 ID:tBTFEEvm0<>
 それはまさに、吸血鬼としての本能が為す業だった。
その笑みに、思わずマミは体を強張らせる。

「ありがとう」

 フランの力一杯のハグ。
以前より少し力が強くなっている気がする。

「え? あ……ああ」

 先程の醜態を思い出してさらに羞恥に身を焼かれるマミだったが、反射的にフランを抱きしめ返した。

 しばらく二人で抱き合っていたが、お互いに無言だった。
フランは何もしゃべらないし、マミも気まずくて話し出せなかった。
だが、いい加減間が持たない。
マミは勇気を振り絞ってフランに声をかけた。


「てっきり、死ぬまで血を吸われるかと思ったわ」


<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:01:41.56 ID:tBTFEEvm0<>  するとフランは、優しい声色で返した。

「そんなこと、しないわ。
吸血鬼は、人間が死ぬまで血を吸うことはないの。
特に、私たちは体が小さいから、そんなに量はいらないの」

「私たちって?」



「私と、お姉様」



「ああ、そっか。お姉ちゃんがいるんだったね」

 そう、フランには姉がいる。家族がいる。血の繋がった、家族が……。




 だから帰らなくちゃいけない。
きっと彼女の姉も心配しているはず。
だけど、帰したくないと思う自分がいる。






「ごめんね、マミ」




 脈絡もなく、フランが謝った。


「え?」


「痛かったでしょ? 怖かったでしょ? いきなり変なこと言ってごめん」


 マミは、ぎゅっとフランを抱きしめた。
<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:03:06.16 ID:tBTFEEvm0<>  痛かったけれど、快感を得られたし、恐怖はそこまで感じ無かった。
乱れてしまった情けない自分は恥ずかしいが、フランの謝ることではない。
この子がそうしたいって言うなら、自分は精一杯応えてあげるだけだ。

「いいのよ。吸血鬼なんだから、仕方ないことでしょ」


 それに、フランと一緒になれて嬉しかった。


 とても口に出せない一言を、そっと心の中で付け足した。




 それを言ってしまうと、このささやかな関係が終わってしまうから。
だから、本音を隠してでもこの関係を続けたい。
本音で語り合えば、あっという間に崩れ去ってしまうような、脆いガラス細工のような気がした。

「明日も、いい?」

「ええ。いいわよ」

 思わず顔がほころんだ。
意外な提案に、マミは舞い上がる。


<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:04:51.29 ID:tBTFEEvm0<>








 フランが何を思ったのかは知らない。
でも、今のこの関係を彼女も望んでいることは分かる。



















 その瞬間、パキリと、何かにひびが入る音がした。















 それはマミの根幹を支える大事なもののはずだ。



 決して傷ついてはならないもののはずだ。




 なのに、マミが愉悦を享受することを受け入れてしまったことで、それは傷ついてしまった。









<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:08:05.68 ID:tBTFEEvm0<>



















 だが、それでもいいと、巴マミは思う。



















<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:09:12.33 ID:tBTFEEvm0<>














 私は、今を生きる。今しかないから。














 未来のことなんて誰にも分からない。







 いや、私に未来は、きっとない。







 過去のことは変わらない。







 どんなに嘆いたって、家族は戻ってこない。







 明日をも知れぬ戦いの中に生きていけば、いつかは戦死する。







 今まで戦ってきたからこそ、それは分かる。






<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:10:27.29 ID:tBTFEEvm0<>











 それでも魔女の脅威から人々を守ると誓った。









 けれど、マミは15歳の少女なのだ。



 誓いを立てたって、使命を背負っていたって、それを下ろしたくなってしまう女の子なのだ。



 だからそれは仕方のないことだ。










<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:11:06.29 ID:tBTFEEvm0<>






















 一番重要なのは、過去でも未来でもなく……。今しかないじゃない!
























<> 1<>saga<>2013/01/16(水) 01:23:17.56 ID:tBTFEEvm0<>


ウワッマミサンエロイ



※フランがマミさんの血を吸ったのは↓な意味があったのではなく、魔力補給と言う意味です。
きっと魔女戦の影響でしょうね・・・・・

>>478
何となく変形の方が分かりやすいな〜とは思いますが、どっちでもいいんでしょうね。


>>479
フランちゃんからしたら、ストーキングすんなファック!!って感じですかねぇ。

>>480
少女たちの他愛ない言葉遊びです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 01:32:33.99 ID:UKlbM3aO0<> 乙
ウワッマミサンエロイ

原作以上のフラグを建築しつつある気がするのは錯覚だと信じたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 01:33:44.67 ID:SGb5yMva0<> 乙
愉悦を快楽を感じた程度でSGって濁る仕様なのか?
だとしたらどれだけ穴が多いシステムなんだよ、実生活も不便すぎるだろ
それとも血を魔翌力を吸った事で魔翌力の源のSGにヒビが入ったのか?
それからフランはマミを魔法少女の問題をどうにかしようとは今の所思っていないのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 01:42:30.13 ID:lY4Oa10AO<> 乙
マミ幻想入りの可能性が微レ存か? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 01:45:02.42 ID:b2IJ168DO<> 乙
あれでマミさんの状態はどう変わるのか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 01:45:47.88 ID:aeHmP8Qs0<> 幻想入りの条件は誰からも忘れられるか自[ピーーー]る時にスキマが出るかだろ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 02:02:25.07 ID:UKlbM3aO0<> >>504
ヒビが入ったのはSGじゃないですよ?
ヒビが入ったのはマミさんを支えていたものです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 04:10:16.84 ID:RA/OTM1DO<> >>507
守矢組(少なくとも早苗)は完全に忘れられてた訳じゃないし、
マミゾウさんはぬえの要請で幻想郷まで自ら来てたからなんとも言えん

あとはBBAが戯れに(ピチューン! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/01/16(水) 08:35:31.93 ID:2mWy4JHIO<> ≫509
命を大事にしなさい!


そしてフランちゃんうふふ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2013/01/16(水) 21:57:28.81 ID:5kJyEwEF0<> ふぅ・・・乙
それにしてもマミさん原作以上に恵まれてるな
このの流れでパックンチョされたら阿鼻叫喚どころじゃない気がするw
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/16(水) 22:15:51.73 ID:WALkJvIio<> 乙
阿鼻叫喚どころか絶望で俺らのソウルジェムが真っ黒け <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/17(木) 02:21:13.50 ID:bQm25rSfo<> 乙
思わず一気に読んでしまった…

今更だがちょいと気になったので
>>96で小春日和とあるんだが、これは秋の陽気な日を表す言葉で春に使うのは誤用だぞ
気づいてたならスルーしてくれ

ともかく続きを楽しみにしてる <> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:21:01.65 ID:hPSbjs++0<>



>>503
マミさんは一級(脂肪)フラグ建築士


>>504
SGじゃないです。>>508の言う通りです。
そこは>>1の描写不足ですね・・・・すみません


>>509
無茶しやがって・・・・・



>>513
何ということでしょう!!?
日本語不自由で申し訳ないです。
スルー推奨でお願いします。


今日からいよいよ三話に入ります。
シャル戦のあと、一区切りしますので、本編第4話からが次の章になります。 <> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:22:52.22 ID:hPSbjs++0<>



             *





「ティロ・フィナーレ!!」




 叫ぶ。光る。爆発する。

 光るアメーバのような形をした使い魔は木っ端みじんに吹き飛び、暗い結界が解除される。
魔女ではないが、これも必要な役目だ。

「いやー、やっぱマミさんってカッコイイねえ!」

 公園のベンチの陰からさやかがそう言いながら出てきた。
肩にはすっかり私物化した金属バットを乗せている。
その後から、まどかも続いて出てくる。そして、フランドールも。


<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:23:46.23 ID:hPSbjs++0<>
「もう、見世物じゃないのよ。
危ないことしてるっていう意識は、忘れないでおいて欲しいわ」

 少し咎めるように言いながら、マミは街灯の上で変身を解いた。
それから軽やかに飛び降りる。
変身をしていない状態でも、魔法少女は身体能力が上がっているようだ。


「いえーす」

 バットを掲げながら、さやかは全く自覚していなさそうな返事をした。
どうにも本人たちの自覚は薄いようだ。
それは、華麗に魔女や使い魔を退治してしまい、二人に危機感を持たせられないマミにも責任があるのだろうが。
<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:24:51.65 ID:hPSbjs++0<>

 この魔法少女体験コースも、マミの提案で始めた。
だから、その責任は果たさないといけない。


 キュゥべえによれば、初陣で倒れてしまう魔法少女はとても多いのだという。
マミ自身や、かつてその元にいた弟子は運がいい方なのだ。


 それはそうだろう。


 昨日今日までごく普通の少女だった彼女たちが、いきなり魔女と殺し合えと言われても、
そんないきなりで出来るはずがない。
覚悟も経験も、何もかも足りない。
それらは、命のやり取りをする戦場で磨いていかなければならない。
当然、ある程度の経験を積む前に死んでしまう子が多い。


 だからこそ、マミは後輩の二人を危ないと分かっていながらも、体験コースに連れ出したのだった。
二人ともキュゥべえに選ばれた以上、魔法少女になる可能性はある。
なら、もしなった時に少しでも魔女や使い魔との戦いを知っていれば、死亡率は下がるのではないかと考えたからだ。
<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:25:55.13 ID:hPSbjs++0<>  実際、今でこそ卒なく戦えるものの、マミの初陣は散々だった。
よく生き残れたと思う。
その時は碌に銃は使えなかったし、リボンを振りまわして何とか戦ったのだ。
今でも散々な思い出だが、あの時は本当に死ぬかと思った。

 それからの戦いも、自分のやり方が見つかるまでは何度も死にそうな目に遭って来た。


 魔女と戦う恐怖は、誰よりも分かっているつもりだった。
まして、戦う力を直接持たない今の二人が、自分以上の恐怖を抱いているのは判り切っている。


 それでいい。これに慣れてはダメ。
なのに、どうも最近は慣れてしまったのか、二人は余り恐怖を感じ無くなったみたいだ。
なんとかしなければと思うのだが、あまりいい手は思いつかないし、思い切った手も使いたくない。
フランは脅すぐらいのことはした方がいい、と言っているが、そういうのは性格上できなかった。

<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:26:46.32 ID:hPSbjs++0<>
 過剰な恐怖は体を硬直させるだけだが、適度であれば緊張感を生み、慎重にさせる。
むしろ、恐怖を感じなければ油断や慢心が生まれ、その結果が死につながる。
ここは、そういう世界なのだ。


 さらに、本音を言えば、契約する気のないフランをもう連れて来たくはなかった。
確かに、一度は使い魔退治に連れて行ったが、それは一応魔女退治の様子を知っておくべきだと考えたからだ。
元々、フランは魔法少女についてあまり興味がないみたいだったし、ないのなら関わらなければいい。
それが安全で、幸せなのだから。


 でも、なぜかフランはどうしても付いて来た。
まだ日があるうちでも、無理やり起き出して傘を差し、必ずマミに付いて行った。

 やんわりと止めているのだが、フランは頑固だった。
<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:28:09.99 ID:hPSbjs++0<>

「あ、グリーフシード落とさなかったね」


 走って向かってくるキュゥべえを見ながらまどかが言う。
キュゥべえはそのまままどかの体を螺旋を巻くように駆け上がり、その肩に収まった。


 さも当たり前のようにまどかの肩に乗ったキュゥべえに、マミは小さな不満を抱くが、
それは仕方のないことだと割り切っているので、顕わにはしない。

「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持っていないよ」

「魔女じゃなかったんだ」

 キュゥべえを肩に乗せたまどかは残念そうに言う。それにさやかが肯いた。

「なんか、ここんとこずっとハズレだよね」

「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば、分裂元と同じ魔女になるから」

「使い魔が成長した魔女もグリーフシードを持つのよね」

 フランが尋ねる。もう辺りはすっかり暗くなっているので、昼間よりも元気なようだ。

「そうよ。ただ、そのために何人もの人を襲うから、早めに退治しておかないといけないの。
グリーフシードは手に入らないけど、人命には代えられないしね」

「うんうん。さすがマミさんは正義の魔法少女だね」

 さやかが大袈裟に首を振る。
まどかやフランはそれを見ても呆れた視線を送るだけだったが、マミは少し顔を陰らせた。

<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:29:37.80 ID:hPSbjs++0<>

 仄かに胸にもやもやしたものが広がる。


 後輩二人は日を追うごとに自分への憧れを強くしていっている。
きっと、そう遠くない未来に二人は契約するだろう。
そうなれば、マミと一緒に戦うことに、必然的になると思う。

 その時に、自分の化けの皮が剥がれるのが怖くないと言えば、それは嘘になる。
もともと、家族を失い友達も満足に持っていなかったマミ。
魔法少女として戦う仲間ができたら、それに甘えてしまうのは目に見えていた。


 ちゃんと先輩でいなきゃいけないのに、二人の憧れの対象でいなきゃいけないのに。
きっと、情けない醜態をさらすことになってしまうだろう。
自分はそういう人間だ。


 現に、マミはもうすでにフランと堕落した生活を送っていた。
互いに互いを求めあい、本能をむき出しにして乱れる。
どうしようもなく、ふしだらだった。


<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:30:49.57 ID:hPSbjs++0<>


 正義は犯された。不浄の華びらに乱され、私たちは理性の鎖を解き放ち、堕ちていく。
どうしようもなく堕落し、どうしようもなく背徳的だった。
今この瞬間も、首に滴る血が幼い舌でなぞられていく快感が蘇って来るのだ。



 だから、二人の純真で清らかな眼差しは、ひたすらに荷が重いだけ。
自分は憧れるような人間じゃない。羨望される資格なんてない。
あなたたちが見ているのは、見てくれだけは整えた腐った人形。
本当は見る価値もないゴミ。


 でも、それはどうしようもなく心地良かった。
一人じゃないって思うと、舞い上がってしまいそうだった。



 私は身勝手な女。
フランには快感を求め、後輩たちからは快楽を享受する。
自らの欲望のために三人を利用する。
それはまさに悪魔の所業で、抗えないほど気持ち良かった。



<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:31:25.26 ID:hPSbjs++0<>





「さあ、行きましょう」






 醜い自分を無理やり隠し、マミは憧憬されるような微笑みを浮かべる。
自分の醜悪さを自覚しながら。








<> 1<>saga<>2013/01/17(木) 09:36:35.62 ID:hPSbjs++0<>

ここでいったん区切ります。
三話冒頭のこのシーンは、次のさやかの相談のシーンとひと続きですが、
それは次回に投下します。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/17(木) 10:43:37.50 ID:Nt5e9emAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/01/18(金) 14:31:07.03 ID:Bn+Q1itIO<> 乙
マミさん魔女化しそうで怖い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/18(金) 14:51:42.60 ID:jQ1ZEAME0<> 思考は人間なんだから、やりたい事をやれば良いだろうにな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/18(金) 18:55:02.07 ID:V8fjFUJr0<> 乙
今更ですけど、ここにまどマギor東方初心者の人がいる前提でコメントした方がいいですかね?
初めての方達の為にもネタバレに類するコメントは控えた方がよろしいでしょうか?

>>513
なん……だと……? <> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:09:24.60 ID:+W4pqbwf0<>


復旧してた〜w

急に入れなくなってびっくりしましたw


>>526
まどマギのシリアス系二次創作って基本的に
いつか誰かが魔女化するんじゃないかっていう不安感っていうのがありますよねw
そして大抵はその通りになるという・・・・

>>527
やりたいことを自由にやれるってなかなか貴重なことだと思います。

>>528
一応、初心者でも分かるように書いているつもりです。(もしかしたらできていないかも・・・)
>>1はネタバレはしません。
今後の展開の予想レスについては、特に制限しません。
が、それに対するレスは>>1はしません。
<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:11:40.27 ID:+W4pqbwf0<>


                *



 公園からの帰り道。マミは尋ねた。

「二人とも何か願い事は見つかった?」

「んー……まどかは?」

「うーん……」

 悩む二人にマミは仕方ないというふうに笑う。

「まあ、そういうものよね。いざ考えろって言われたら」



「マミさんはどんな願い事をしたんですか?」



 まどかがマミを見た。ついでにその肩に乗っているキュゥべえも赤い瞳を向けてくる。


<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:14:01.12 ID:+W4pqbwf0<>

 不意に立ち止まるマミ。
その様子に、拙いことを聞いたと悟ったのか、まどかはあわてて取り繕う。

「いや、あの、どうしても聞きたいって訳じゃなくて」








 思い出されるのは凄惨な事故現場。



 ひしゃげて原形を留めていない乗用車。

 横転して荷物を蒔き散らしているトラック。

 路上に投げ出された人形。

 ガソリンの臭いが鼻腔によみがえる。



 父は運転席で押し潰され、母の身は何処と知れず、マミ自身も瀕死の重傷。
ただ、激痛に呻き、死を待つだけの時間。






 そこに現わるは白き獣。迎えの死神には思えず、マミは必死で“彼”に手を伸ばした。








『助けて……』








 契約は完了。今までの激痛とは別種の痛みが体を走り、胸元から金色の結晶が現れた。










「考えてる余裕さえなかったってだけ。
後悔している訳じゃないのよ。
今の生き方も、あそこで死んじゃうよりはよほど良かったと思ってる。
でもね、ちゃんと選択の余地がある子には、キチンと考えた上で決めて欲しいの」


<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:16:07.71 ID:+W4pqbwf0<>



 マミは再び歩み出す。

「私にできなかったことだからこそ、ね」



「ねえ、マミさん」



 さやかがマミに追いすがるように声を掛けた。



「願い事って自分のための事柄でなきゃダメなのかな?」



「え?」

 その微かに、しかし確かに、切実な響きが籠った声に再び足を止めてマミは振り返る。

「例えば、例えばの話なんだけどさ、私なんかより余程困っている人が居て、その人のために
願い事をするのは……」

「それって上条君のこと?」

 思わず口を挟んだまどかにさやかが抗議する。恥ずかしいのか、耳が赤くなっている。

「たた、例え話って言ってるじゃんか!」

 するとそこでキュゥべえが口を開いた。

「別に契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例も無い訳じゃないし」

 さやかの願いは、その少年を助けることなのか。でも、それは……。



<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:17:40.95 ID:+W4pqbwf0<>




「それって」





 今まで黙っていたフランが、マミが言う前に口を挟んだ。



「そいつのために願い事をするってこと?」



「そいつって……。
まあ、あくまで例え話だから、そういう契約の仕方もアリなのかなって思っただけ」

「じゃあ、仮の話をしよ。
仮に、他人のために契約した少女が居るとして、
その子は果たして自分を犠牲にして他人を救いたいのか、
他人を救っている自分に酔いたいのか、あなたはどっちだと思う?」


「それは……」


 難しい問いだ。自分の望みをはっきりさせていないさやかには答えられないだろう。
そして、マミにも答えられなかった。


 少し前なら、自分は前者だと言えた。
でも、今は、本当は自分が身勝手で我が儘だと分かった今は、答えることができない。



 ダメだ。これじゃあ悩んでる美樹さんにアドバイスしてあげられない。



<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:19:57.65 ID:+W4pqbwf0<>

「前者は献身。後者は独善よ。ちなみに私は、別にどちらでも構わないと思うけどね」


「な、どうして?」






「さやか。どうして、『どうして』って聞くの?」






 自分とはまったく違う価値観において判断するフラン。
その違いに、まだまだ人生経験の浅いさやかは言葉を失った。
今までのさやかの考え方からすれば、ありえない価値観だった。
だから、純粋にその理由を問うたのだ。

 それに対して、フランはその問いに、同じく純粋な疑問を返す。

「え? だって……独善って、独りよがりってことでしょ? それは、悪いことじゃない」

「悪いことかしら? 
人間、いや人間に限らず、生き物ってそういうものでしょ? 
身勝手で、自己中心的で、自分本位。
それでこそ、私たちなのよ。
献身が悪いこととは言わないわ。
でも、身勝手な独善が悪いこととも言わない。
どちらか好きな方を選べばいいのよ」



 これが妖怪の考え方だ。
基本的に自分本位、他者より自分を優先するのが妖怪の性。
自分さえ良ければいい。
今が楽しければいい。
それこそ、妖怪たちの楽園、幻想郷の文化的価値観。



 故に、そこでは献身も独善も受け入れられる。



<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:21:29.75 ID:+W4pqbwf0<>

「そんな……」


 さやかにはその考えは理解しがたいだろう。もちろんまどかもだ。


 だが、ある程度汚れたマミには痛いほどよく分かった。献身だけでは生きていけない。



 今まで自分を抑え続けて献身してきた分、ここにきて反動が返って来た自分を見れば、
フランの考え方も分かる。


「ひ、ひどいよ……その考えは」

「じゃあ、もし自分の献身が裏切られたら、相手が振り向いてくれなかったら、
あなたは相手を恨まずにいられるの? 世界を呪わずにいられるの?」


「う……」


 真の意味で他人に尽くすなら、裏切られても他人を恨まずに尽くし続ける精神力が求められる。
独善と献身を履き違えたまま行くと、裏切られたときに本当の自分を受け入れられず苦しむことになる。
今のマミのように。



 だけど、初めから自己満足で人助けをするんだと分かっていれば、
例え世界を恨んでもいずれは自分の中で割り切ることができるだろう。


<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:22:40.64 ID:+W4pqbwf0<> 「そうね。フランの言うことも一理あるわ」

 自分が言えたことではないけど、助言を求められた以上答えないといけない。
それに、自分自身にも言い聞かせるために。

「美樹さん、あなたは彼に夢を叶えて欲しいの? それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

「マミさん……」

「そこを履き違えたまま先に進んだら、あなたきっと後悔するから」

 少し逡巡するようにさやかは目線を反らした。
やがてマミと目を合わせると、取り繕ったような笑いを浮かべた。

<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:23:35.27 ID:+W4pqbwf0<>

「そうだね。私の考えが甘かった。ごめん。あとフランちゃんも。アドバイスしてくれてありがと」


 フランは気恥ずかしいのか、プイとそっぽを向いてしまった。
でも、耳が赤い。照れているのが丸分かりだ。

「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきではないわ」

「僕としては、早ければ早い程いいんだけど」

「ダメよ。女の子を急かす男子は嫌われるぞ」

 マミがおどけてそう言うと、三人は笑い出した。






<> 1<>saga<>2013/01/19(土) 01:25:18.51 ID:+W4pqbwf0<>


今日はここまで。




さやかの相談の回でした。
実はマミさんの回想シーンで初めてさやかのテーマが使われていたりする・・・・・

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/19(土) 01:51:11.96 ID:RdulGfkDO<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/19(土) 01:55:56.78 ID:E00Y6dpDO<>
流石幻想の住人
物言いがオブラートに見えてストレートだww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/19(土) 11:41:04.86 ID:kC1KQRwH0<> 乙
清濁あわせのめると、大人な魅力がUPだぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/19(土) 22:08:48.22 ID:gqsbGzmMo<> 考えさせられるなぁ・・・
乙 <> 1<>saga<>2013/01/20(日) 00:52:06.18 ID:4y5GXriz0<>


>>540
www
さやかちゃんにはちょっときついかなぁw

>>541
つまりマミさんはヤラシクなっていってるんですね///
<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 00:53:02.98 ID:4y5GXriz0<>



                *





 目の前に噴水がある。


 深夜の公園。マミは噴水に向かって下っていく階段を下りていた。
傍らにはこの時間元気なフランの姿もある。



 後輩二人を家に帰した後も、マミとフランは魔女探しを続けていた。
人々が寝静まる夜中は、魔女も活発には動かない。
マミも、もうそろそろ帰ろうかとフランと相談していたところだった。


<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 00:54:28.71 ID:4y5GXriz0<>



 その時に、突然顕れた何かの気配にマミとフランが反応する。
マミはソウルジェムを指輪の形に戻し、フランはマミのスカートの端を握った。

 気配はするが、その源は分からない。二人は警戒するように神経を研ぎ澄ました。






 唐突に背後に人影が現れる。








 フランは、この現象にデジャヴ覚えながら、ゆっくりと振り返った。
マミは前を見つめたままだった。


 同じ制服を着た濡れ羽の黒髪が街灯の光を反射する。
深い紫の二つのアメジストがこちらを睨む。



<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 00:56:01.59 ID:4y5GXriz0<>









「分かっているの? 貴女は無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」










 現れた暁美ほむらにフランは鋭い視線を送り、マミも振り返った。



「彼女たちはキュゥべえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ」


「貴女は二人を魔法少女に誘導している」


「それが面白くない訳?」


 煽るようにマミが聞き返すと、ほむらは即答した。


「ええ、迷惑よ。特に鹿目まどか」


「ふぅん」




 マミは笑う。いつもの優しい笑みではなく、挑発的な笑み。






「そう、あなたもあの子の素質に気が付いていたのね」






<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 00:57:19.52 ID:4y5GXriz0<>



「彼女だけは、契約させる訳にはいかない」




 静かな声で、しかしはっきりとした意思を込めてほむらは言った。
だが、マミはその意思を履き違えたみたいだ。


「自分より強い相手は邪魔者って訳? いじめられっ子の発想ね」


 ほむらは何も言わない。


 マミとほむらの間に緊張が走る。二人はしばらくそのまま睨み合っていた。





 やがて沈黙を破ったのはほむらでもマミでもなく、それまでほむらを睨みつけていたフランドールだった。










「そんなに契約させたくないなら、直接本人に言えばいいじゃない。何でマミに言うのさ」










 ほむらはマミからフランドールに視線を移し、反論する。


<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 00:58:35.12 ID:4y5GXriz0<>

「あの二人は巴マミに憧れを抱いている。そうさせたのは巴マミ自身。
なら、二人の契約を止められるのも巴マミだけなのよ」



 その言葉にマミは奥歯を噛みしめる。
ほむらは正しいとは思わない。
けれど今の言葉はマミの心にナイフとなって突き刺さった。



 クスクスとフランドールは嗤う。


「なあに、それ。マミにあの二人の契約を止めて欲しいの? 
それなら、土下座して靴でも舐めながら頼んだら? 
そんなところに立って偉そうに物を言っても、聞き入れられる訳ないじゃない」


「そういう訳じゃないわ。巴マミ、貴女は自分の為にあの二人を魔法少女にしようとしている」


 ほむらが再びマミを睨む。
マミは視線を反らさないようにするので精一杯だった。


<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:00:36.54 ID:4y5GXriz0<>


 耳の痛い言葉だ。図星なのだから、何を言っても言い訳にしかならない。



「だから私たちを付け回すの? 
はっきり言って、あなたのやってることって、逆効果よ。
徒に反感を買い、敵を増やすだけ。
現に、さやかはだいぶあなたのこと嫌ってるわよ」


「構わないわ。契約を止めることができれば」



 再度、ほむらとフランが睨み合う。



「あなたに、あの子たちの契約を止める権限なんてないわ。
あなたの身勝手の為に、あの子たちの権利を踏みにじるのはやめなさい」



 とにかくこいつを追い払わなければ。

 マミはそう思ってただ口を開いた。



「貴女は何も知らない。何も分かっていない。契約するということが。
それが、どういう意味を持つのか。どういう運命を背負うのか。まるで分かっていない」


「あなたは、分かっているというの? 
だから、自分には二人の契約を止める資格があるとでも? 
屁理屈ね。私たち先輩の魔法少女に出来るのは、ただ私たちがどういう存在か伝えることだけよ。
その上で、契約するか否かを判断するのは当人たちなのよ」




 苛立つ。本当に苛立つ。




「ええ。そうね。
でも、あの子たちは魔法少女の光の部分しか見ていない。
目の前に奇跡という餌を吊り下げられて、それに飛びつこうとしている。
その後どうなるかも考えずにね」


<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:03:35.35 ID:4y5GXriz0<>

 言っていることは正しい。マミが二人を誘導しているのも図星だ。
でも、だからこそ、マミはほむらの言い分を認める訳にはいかなかった。認めたくはなかった。



「だったら、教えればいいじゃない。その、魔法少女の運命とやらを」



 フランドールは馬鹿にしたように鼻で嗤った。
その言葉に、さらにほむらがムキになったように抗弁する。



「あの子たちは私の言葉に耳を貸さない。特に美樹さやかは」


「それは、あなたの態度が悪いんじゃない。
今までもっと友好的に接していれば、また違ったかもしれないのに。
自業自得よ、自業自得」



 今度はほむらが図星を突かれて黙りこむ番だった。




 フランドールの言う通り、ほむらは言っていることは正しくても、やり方が間違っている。
キュゥべえを襲うなど、暴力的な手段に出て力ずくで契約を阻止しようとし、
時々不意に現れては思わせぶりなセリフを吐き捨てて去って行くだけ。
それでは自分の言い分など聞き入れてくれるはずもない。


 最近、やたらフランドールが冴えている。
いや、もともと聡い子なのだから、ある意味当然なのだろう。








「貴女に、何が分かるの……」





「さあ? 分からないわ。あなたの目的なんか。
そもそも私には関係ないし、知ったこっちゃない…………だけどねえっ!!」

「ッ!?」





<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:08:35.31 ID:4y5GXriz0<>
 
 そうフランドールは叫ぶと、一気にほむらの元まで跳躍した。
そして宙に浮かびあがったままその胸元を掴む。




 七対の宝石が輝き、フランドールの全身から放出される禍々しい不可視の力。



 ほむらの視界を吸血鬼の顔が覆い尽くした。



 蛇の様に裂けた笑い顔が口を開く。
白く並びの良い歯と、その中で一際存在感を放つ小さな八重歯。
血よりも紅い舌が艶かしく動き、空気の震えが言霊となってほむらの耳に伝わる。






「付け回さないでもらえるかしら? 気持ち悪いの」







「……!!」






<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:09:32.78 ID:4y5GXriz0<>







































「コワスヨ」







































<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:10:45.80 ID:4y5GXriz0<>

 ほむらの目が限界まで開かれる。その瞳に、はっきりと狂気に歪んだ真紅の眼が映る。







「貴女は……」







「私をそこらの餓鬼と一緒にしないことね。
次にストーキングしているのを見つけたら、ミンチにするから。
内臓曝して死にたくなかったら、気をつけてね」





 そう言うとフランはほむらの服を離し、マミの元に戻った。


 余りの迫力に、ほむらはもちろん、マミですら固まっていた。
それは、人間が本能的に持っている恐怖故のもの。


 フランは吸血鬼。人間の捕食者であり、その上位に位置する存在。
いくら人間らしいところがあるとはいえ、本質的には人間とは違う生き物。
それを、二人は思い知った。


<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:12:31.88 ID:4y5GXriz0<>
「どうしても契約を止めたいなら、脅せばいいじゃない。
今私がやったみたいに。
あなたにはその力があるんでしょ? 
話が聞いてもらえないと嘆く前に、他にするべきことがあるんじゃないの? 
諦めてどうにかなるなら、皆とっくにそうしてるわ」


 そう言ってからフランはマミの手を取り、「行きましょ」と声を掛けた。



 茫然自失していたマミはその言葉で我に返り、一瞬ほむらを見ると、
フランに引っ張られるままに去って行った。




 残されたほむらはただその場に立ってその背中を見送るしかなかった。






<> 1<>saga<>2013/01/20(日) 01:18:44.41 ID:4y5GXriz0<>


このシーン・・・・

精神的に不安定になっていたところでほむほむに図星を突かれてカッとなったマミさんが
ほむほむを刺殺するという火サス展開を考えましたが没にしましたw




ほむらは割と損な役回りが多いかも <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 02:27:13.37 ID:rWHgXMxro<> ホムラチャン・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 03:34:21.37 ID:wxsDo4VR0<> 何その魔女化直行ルート <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 12:09:04.36 ID:GGbe2XNi0<> 乙です
フランちゃんの威嚇描写を脳内再生したら凄く興奮した(厨二的な意味で)

>>ほむらは割と損な役回りが多いかも
割と……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 12:38:47.73 ID:ZD1TgeVL0<> ”ほむらは割と損な役回りが多いかも”って。いつものこっちゃん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/20(日) 20:59:36.79 ID:0gd/hlT/0<> これから起こることを知ってしまっているが故に冷めた口調になりがち
それ故に他人にはそれを不遜な態度に思われていらぬ反感を買ってしまう
真実を口にしたせいで悲劇が起きた前科があるから、下手に弁明することもできない

結局周りから白い目で見られ続けるしかないほむほむかわいそう

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 10:30:14.89 ID:kWPWua7DO<> しかしフランにここまで言われて(やられて)なお本編と同じ行動を採るなら完全にバカだそ。
魂レベルで震え上がらされたのに、数日で元通りだった日には流石に……


まあ、恐怖感とか動物的勘とか、色々鈍りまくってる現代中学生らしいと言えばらしいけど
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/21(月) 17:20:26.13 ID:Q7s2SlIzo<> というかそれでもほむらはやるでしょ
己の恐怖<<<越えられない壁<<<まどか
なんだから
現状だとほむらの敵対者が一名増えているだけ…というかほむらの今まであった中で相当過酷な敵対者が増えてしまった状況だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/22(火) 17:37:00.11 ID:5uau9pDIO<> このマミさんかわいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/24(木) 21:04:47.11 ID:/Xz9UmhZo<> フランちゃんかわいいよフランちゃん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/24(木) 22:19:22.19 ID:AXIXoARlo<> ウ

フ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/25(金) 14:55:36.47 ID:BluQLvGio<> こんなSSあったのか
頑張って完結させてくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 00:32:14.64 ID:yZuBYJs4o<> うふふ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 01:43:17.96 ID:jDWPo+Hn0<> 更新、最近どうしたのかな?
ほぼ毎日投下していやだけに不安になる・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 07:00:23.06 ID:rWXKWKQIO<> う

ふ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 07:14:55.19 ID:L/d2xDZEo<>

二に() <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 11:51:34.16 ID:yZuBYJs4o<> きっとリアルが忙しいんだよ

いつか戻ってきてくれるさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:30:35.47 ID:cs/r+PC80<>

I have returned.


一瞬、>>558が危ない人に思えてしまったw
幼吸血鬼姉妹にハァハァすると銀色のナイフ持った方がいらっしゃるのでご注意ください。

>>559>>560
ほむほむは人生ハードモード?
ループ中はルナティックですよねw

>>563
流石、よく分かってらっしゃるw
いい酒が飲めそうだなw

>>566
ありがとうございます!
頑張らせていただきます。

>>568>>571
ええ、全くそのとおりで、今週は忙しかったです(笑)
1はシューry





シャル戦まではもうしばらくお待ちください…………………… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:33:01.10 ID:cs/r+PC80<>



            *





 気が付くと薄暗い部屋の中に居た。

 部屋を照らすのは、僅かばかりの蝋燭の燈火。
ゆらゆらと風も無いのにその小さな火が揺らいでいる。
そのせいで、黒ずんでボロボロになった石の壁に映る影が不安定に躍っていた。


 ゆらゆら。ふらふら。まるで私の心みたい。


 曖昧で、不安で、暗くて、捉えどころのない心。
蝋燭の火は消えた。
そうして、真っ暗になって、私の心も真っ暗になった。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:34:53.59 ID:cs/r+PC80<>





「どうして火を消すのよ」






 暗がりから声がする。
私が火を消したことを非難する声だ。
私に向けられた声だ。
何百年ぶりかに私に掛けられた懐かしい声だ。

 忘れる訳がない。記憶の隅の隅に追いやられてしまっても、決して忘れることのない声。
他のどの声よりも渇望し、待望していた声。私の、唯一の人の声。



 なのに、ずっと待ち望んでいたのに、ちっとも嬉しくないのはどうしてだろうか。
それどころか、私は、この声に怯えてすらいる。


 どういうことだろうか?


 この声は、私が聞きたかったもの? この鼓膜を振るわせたかったもの?




 否。こんな声じゃない。これは声じゃない。私の知っているあの愛しい声じゃない。




 声ではなく、ただの音。ただの空気の振動。

 どこまでも無機質で無感情。
私を非難しているのに、その声にそんな響きはなく、文句があるはずなのにまるで無欲で無反応な
気がする。
ただ台本に書いてあるセリフを棒読みしたような、そんな声だった。







 姉の声だった。でも、姉の声ではなかった。








<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:36:03.74 ID:cs/r+PC80<>


「どうしたのかしら? 何か言いたいことがあるの?」



 普通、疑問文の最後は発音を上げる。
そうすることで疑問があることを相手に伝える。
しかし、姉はそんな発音はしなかった。
一瞬、訊かれているのか訊かれていないのか判断が付かなかった。
また、台詞の棒読みのような声だった。


 フンと小さく鼻を鳴らす音がした。

 次にパチンと指を弾く音ともに、先程私が消した蝋燭に再び火が灯った。
お蔭で、またゆらゆらとピエロみたいに影が壁で踊り始めることとなる。

 私は、その明かりに照らされて目の前にある人形の顔を見た。



「何かしら? 言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい」



 人形が口を動かして音を出した。
その音は連続していて、こんな意味を持っていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:37:10.93 ID:cs/r+PC80<>



 それにしてもこの人形、昔私が大好きだったお姉様によく似ているわ。




 人形は、座っていた。私も座っていた。私たちはテーブルを挟んで座っていた。



 白い、この暗くてじめじめした地下室には似合わない、眩しい木のテーブル。
その上には、何も乗っていないトレーと二人分の紅茶にそのポット、そしてブリオッシュが二つ、
お上品に並べられている。



「何でも聞くわ。どんな誹りでも受ける覚悟はある。それだけのことをしたのだから」



 人形の小さく可愛らしいお口が開いた。
そこから、そんな音が漏れ出た。
まるで喋っているみたい。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:38:32.08 ID:cs/r+PC80<>
 私は、この薄明かりの中でもはっきりと分かるほどその赤い唇に囲まれた小さな暗闇が口を開けるのを眺めながら、
一人呟いた。



「私の、お姉様はどこに行ってしまったのかしら?」



 嫌味? 皮肉? あてつけ? ううん。違う。
私は思ったことを口にしただけ。
本当にそう。私のロビンはどこに行ってしまったの?


 目の前の人形は、魔法で動く姉の偽物だ。
本当の姉はどこか別の所に居る。
だから、どこにいるか、疑問を呟いてみたのだ。
ひょっとしたら、この人形が無機質な声で答えてくれるかもしれない。





 人形は動きを止め、口を開きっぱなしにし、ガラスの目玉で私を凝視している。

 私はガラス玉を見つめていた。
その奥に何があるのかを見透かすように。ただ、じっと。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:41:12.08 ID:cs/r+PC80<>
「何を……言っているの?」

 人形は僅かに眉を顰める。

「私はここに居るじゃない。見えないの? 声が聞こえないの?」

 人形が言葉を返してきた。なんと、人形と会話が成り立った。





 でもね、あなたは違うのよ。





「だから、お姉様はどこ?」

「言っている意味が分からないわ。私はここに居る。
ここに居る私以外、貴女の姉はどこにも存在しない」





 ううん、と私は首を振った。あなたじゃない。あなたはただの人形。





「私のお姉様はあなたじゃない。あなたは姿形のよく似たお人形さん。
お姉様はそんな冷たい目をしていない。
お姉様はそんな空っぽの声で話さない。
お姉様はもっと温かく笑ってくれる。
お姉様は、もっと、暖かくて、優しくて、柔らかいの」



 それが私のお姉様。遠い記憶の彼方にあって、その姿は霞んでしまっているけど、
確かに覚えている。
その温もり、その笑顔、その柔らかさ。



 優しく髪を撫でてくれた。
明るく笑ってくれた。
ぎゅうって抱きしめてくれた。
一緒に遊んでくれた。
手を繋いで抱き合いながら寝てくれた。


 「ねえフラン」って言って私に話し掛けてくれたんだ。
その後は面白いお話、悲しいお話、楽しいお話、いっぱい語ってくれた。





 全部覚えている。

 忘れない。

 私の、大切なお姉様との、大切な思い出。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:43:14.94 ID:cs/r+PC80<>

 目の前の人形は、初めて人形らしくない仕草を見せた。


 少し悲しげな表情を見せて、唇を噛みながら黙り込んでしまう。





「貴女は……」





 人形は絞り出すような声で言った。
何だか、さっきとは随分変わってお姉様らしくなった。








「気でも触れてしまったの?」








 その声には、はっきりとした感情が込められていた。










 怒っていた。人形のくせして怒っていた。



「私はここに居る。
私が貴女のお姉様よ! 
何を血迷ったことを言っているのよ! 
いい加減に目を覚ましなさい。フランドール!!」



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:44:43.78 ID:cs/r+PC80<>  人形はテーブルを思いっきり叩いた。
バンッとすごい音がして、木のテーブルは真っ二つに割れてしまった。


 紅茶のカップやら、お菓子の乗ったお皿やらが床に落ちて派手な音を立てて砕け散る。
美味しかったのに、もったいない。











 何で。と呟く声が降って来た。












 見上げると、立ち上がって私を睨みつけている人形と目が合った。














「何で……どうして……」












 呻くように呟いた人形は、突然糸が切れたように椅子に座り込んだ。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:46:05.10 ID:cs/r+PC80<>

 私は声を掛けなかった。人形も声を掛けて来なかった。


 私たちはしばらく無言で向き合っていた。










 蝋燭は揺れない影を作り出している。
物音一つしない静謐な空間。温かくも寒くもない。
必要な物以外、すべて取り除かれてしまったような気がした。
音も、温度も、僅かな空気の流れも、何もかも……。





 動きが無くなった。全てが静止している。
今の私が呼吸をしているのか、自分でも分からない。
流れる血が止まっている気がした。
瞬きすらせず、肺も心臓も止まってしまった。











<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:47:34.06 ID:cs/r+PC80<>








 でも、たった一つ動いているものがある。








 この私の思考だ。













 私は、考えることを止めない。観察することを止めない。感じることを止めない。





 無音を聞き、無臭を嗅ぎ、無味を味わい、無限に触れる。
そして、見るのだ。
蝋燭の明かりに照らし出されて闇に浮かび上がる人形の顔を。






 全くの無表情。先程と変わらない。やっぱり人形だ。


 彫りが深い顔に、蝋燭の明かりが影を作る。
白磁のように白い肌に、鼻梁や目の窪みが作った影が落ちて、不気味なほど整った、
美しいコントラストを作る。
そこに浮かび上がるルージュを塗ったような赤い唇と、ルビーのような瞳の収まった目。
そして、その輪郭を縁取る青紫の柔らかな絹のような髪。


 私は絶世の美貌を備えた人形をただ見つめていた。
赤と黒と白で描かれた肖像画を眺めている気分だった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:48:49.47 ID:cs/r+PC80<>













「フランドール・スカーレット」













 不意に人形の口が動き出し、私の名前を紡いだ。



「貴女の幽閉を解くわ。
これから、この館内限定だけれど、自由に出歩くことを許可する。
何なら、部屋を変えてもいいわ。
いつまでもこんな暗くてじめじめした部屋、嫌でしょう?」

 淡々と空気を震わせ、静謐を破る言葉。
私は何の反応も見せることなく、ただそれに耳を傾けていた。

「希望があればいつでも言ってくれればいいわ。
貴女もここの住人。
好きなことしてを暮らしていける権利がある。
今さらだけど、ね」













 今さらだね。私、自由ってよく分かんないわ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:50:23.10 ID:cs/r+PC80<>





 人形は立ち上がった。





 そして、足元に散らばるテーブルの残骸や割れたカップとお皿に気を留めることすらなく、
そのまま闇に消えてしまった。




 青紫の後頭部が闇に隠され、遠ざかっていく気配を感じながら、私の心は寂寥に覆われていた。













 抱きしめてくれなかったから。
抱きしめて、人形じゃないって、言って欲しかったのに。
触れてくれさえしなかったから。














 いなくなってしまった私のロビン。


 もう二度と歌うことはない。


 もう決して青空を舞うことはない。












<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/26(土) 12:50:59.12 ID:cs/r+PC80<>


 その後、私は床に落ちたブリオッシュの食べ掛けを口に入れた。


 紅茶が浸み込んだお菓子は、埃っぽくて、血の味がした。


 陶器の破片で口の中を切ってしまったみたいだ。



















<> 1<>saga<>2013/01/26(土) 12:54:05.63 ID:cs/r+PC80<>

名前が1じゃなかったorz


the レミリア☆イジメ
妹に嫌われて涙目になるおぜうさまもいいですねw




そしてフランちゃんウフフ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 12:56:38.60 ID:yZuBYJs4o<> フランちゃんウフフ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 13:04:23.33 ID:VMatfApSO<> 乙

咲夜辺りがとばっちり受けてる気がして不憫でならない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 18:27:19.26 ID:ivxgeSUIO<> うふふ、フランちゃんウフフ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 22:26:51.16 ID:TMC9227T0<> 乙
なにこれこわい
フランちゃんウフフ
>>1はまどマギ勢だけじゃなく東方勢の内面にもライトを当てる気と見た <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 01:44:44.37 ID:BHFXIY0G0<> 人形じゃなかったのか?それとも回想だから薄っぺらいだけとか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 15:55:07.73 ID:/RdUsbtJo<> 記憶の中の姉と目の前に居た姉が違うもんで色々壊れそうだったから
人形とでも思わないとやってらんないってだけなんじゃん?
まぁ>>584見る限り本人と分かっててわざと人形呼ばわりしてたようだけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 17:38:11.77 ID:Jeai8ZY1o<> ロビンってなにかと思った
魔女狩り的なあれなのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 20:21:19.54 ID:DDXrWVeio<> マザーグースの駒鳥の話じゃね
クックロビン

なんか有名なオーエンのアレンジのフレーズに出てきた気がする <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2013/01/27(日) 21:54:50.24 ID:JnohjztNo<> クックロビン誰が殺したのって奴だろ、お姉様は誰に殺されてここに居るのはだれってことじゃない? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/28(月) 00:15:35.23 ID:BnKkfL82o<> なんだそっちか
ウィッチハンターだと微妙に違和感だったからすっきりした <> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:29:48.51 ID:KOHPBgSn0<>









             ☢Caution!!☢


          ※R17,9の内容が含まれています。
           必要な方は、ティッシュペーパーとゴミ袋(orゴミ箱)をご用意ください。


<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:30:46.31 ID:KOHPBgSn0<>








 ムニ。




















 ムニムニ。


















 ポヨン。












<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:31:52.76 ID:KOHPBgSn0<>






 弾力のある、柔らくて温かい何かが顔を圧迫している。
気持ちがいいので思いっきり押さえ付けてみる。
すると、確かに押し返してきた。
グニッという感じで、もう一度押さえてみる。
柔らかい何かがまた押し返して来る。














「ふ、うぅん」







 頭上から悩ましげに喉を鳴らす音がした。
やたら大人の色香を感じさせる音だ。
異性なら飛び掛かってしまいそうなほど。


<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:33:46.64 ID:KOHPBgSn0<>  ゆっくりフランが目を開けると、視界いっぱいに真っ白な峡谷が飛び込んできた。



 淡いパステルイエローのパジャマの胸元が肌蹴て、しっとりと寝汗に濡れた深い谷間と、なだらかな双丘の麓が露わになっている。






















 それはそれは見事な谷間だった。











 顎下から喉元、首にかけて柔らかなラインがなだらかな肩と鎖骨の窪みまで広がっている。
真っ白い肌に浮かび上がった鎖骨は、それだけで欲情をそそる艶かしさを湛え、今すぐにでもそこにキスをしたくなった。












 そして、その鎖骨から下の広がり具合もまた素晴らしい。





 マミの、それなりにしっかりと鍛えられている大胸筋の上部が形作る緩やかな白い美肌の平原が女性の象徴たる双峰の山麓まで滑らかに続いていて、これまた劣情を催すような、それでいて清楚で繊細な美しさを兼ね備えている。大胸筋の上に付いた大きな脂肪の塊は、なだらかな平原から富士の山体のような急坂な斜面を形作り、頂上部に近付くにつれ、徐々に緩やかになり、お椀を伏せたような形の良い乳房を形成している。

 その乳房は、頂上部を始め、大部分を寝間着に隠されているが、それが返って目に見えない範囲の想像を駆り立て、危険な香りを匂わせている。
<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:34:56.55 ID:KOHPBgSn0<>  また、その首元には、四つの赤い点が付いているのにも注目だ。






 それは、悪魔が噛みついた跡であり、彼女がこの悪魔の虜である証であった。
そしてその跡さえ、この魅惑的な少女の首元にあっては、それが当然の様に調和している。
まるで元からそこにあるように。そこになければ完成しない芸術のように。
さも当たり前のようにその存在をマミの首元に納めているのだ。










 首元の赤い点から再び胸元に目線を移す。
<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:36:19.39 ID:KOHPBgSn0<>


 今、フランとマミはお互いに体ごと向き合ってベッドに横たわっている。
フランは体の右側を下に、マミは左側を下にして、密着していた。

 二人の上には掛け布団が掛けられているが、それも今はマミのお腹の辺りまで下げられている。
よって、マミとフランは完全に胸から上を布団の外に出していた。





 お蔭でよく見える。





 パジャマの胸元が肌蹴ている。





 少女らしいパステルイエローのパジャマには、黄色で描かれた花の模様が描かれている。
裾の辺りは白い小さなフリルが付いていてふわふわとした女の子らしさ全開だった。

 そんな寝間着と不釣り合いな――むしろ寝間着のほうが不釣り合いな――成熟した胸元がよく見える。
パステルカラーのパジャマは、裸婦画のように、その白く甘美な素肌を縁取り、浮き立たせる背景と化していた。

 そして、その中心にはっきりとした暗い影を形作っている谷間が走っている。


 もともとバストが大きく谷間の深いマミだが、今はさらに、横になって両腕に挟まれた豊かな乳房が圧迫されて、いつも以上に深い谷間を作っていたのだ。



<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:37:35.86 ID:KOHPBgSn0<>

 マミの寝室は、電気がつけっぱなしだ。


 昨日の晩は、フランが一昨日と同じく寝る前に吸血行為をして(その跡が首元の赤い点だ)、例の如く乱れた。互いに相手を求め合い、血を吸う快感と吸われる快感に身を任せて嬌声を上げた。



 その結果、二人ともいつの間にか寝付いてしまったらしい。
だから、マミの胸元は開きっ放しだし、電気が付きっ放しなのだ。





 部屋の天井から蛍光灯の光が降り注ぎ、マミの白磁の肌を照らし出す。
僅かに肌に浮かぶ寝汗が、蛍光灯の光を反射して、きらきらと輝いている。
それは宛ら、葉に付いた朝露が日光を浴びて煌めいているかのようであった。






 だからこそ、谷間に目が行くのだ。





 淡い黄色の背景に、純白な胸。

 その間に黒々と横たわる深い峡谷。

 二つの峰から急激に落ち込むように作られた谷間に、ついつい視線が引き込まれてしまう。
フランの目はそこに釘付けとなった。

<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:38:52.59 ID:KOHPBgSn0<>





















 恐らくこの光景は一生忘れないだろう。
例えマミの顔を忘れても、この谷間だけは永遠にフランの記憶に残り続けるだろう。
そして、これから胸部の谷間を目にする度に、この谷間を思い出すのだろう。











 それほど強く網膜に焼きついたのだ。それほど強烈に脳に刻みつけられたのだ。
















 なぜだろうか? どうして今のこの「谷間」がこれほど目に付くのだろうか?












 マミの谷間なら何度も見たことがある。その魅惑的な谷間に何度も目を奪われた。
にもかかわらず、初めて見たかのように記憶に刻まれた。



 だが、そんなことはどうでもいい。そう思ってしまう程、この谷間には強力な魅力があったのだ。





<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:40:27.16 ID:KOHPBgSn0<>




























 完璧だ。かつてこれほどまでに完璧だった谷間があっただろうか。









































――――――――――――――――――――――――――いや、ない。







<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:41:14.66 ID:KOHPBgSn0<>


 素晴らしすぎて思わず反語を使ってしまった。



































<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:42:20.09 ID:KOHPBgSn0<>






 パジャマの肌蹴具合から、汗の光る肌、コントラストが鮮やかなマミの体。















 それだけではない。





 マミの匂いがする。

 汗の匂い。

 シャンプーやソープの香り。

 それらが濃厚なマミの匂いとなって、フランの鼻腔を満たすのだ。

 更に、それだけに留まらず、その匂いは鼻腔に繋がる神経から直接脳へと伝わり、フランの脳細胞をざわめかせるのだ。












 あっという間に脳の中はマミの匂いが充満し、思考の全てが谷間と匂いに奪われてしまった。

 もう抵抗する力はない。
ただ、この飛び込みたくなるような谷間と、肺いっぱいに吸い込みたくなる匂いに支配されることしか考えられない。



<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:44:27.42 ID:KOHPBgSn0<>










 あゝ、欲しい。欲しいよ、マミ。







 もはやフランにこの衝動を抑える理性は存在しない。








 我は悪魔。純白な乙女の貞操を犯し、我欲の趣くままに蠢く異形。
神に唾棄し、美徳を蹂躙し、倫理を一笑に付す。




 色欲は七つの大罪の一つ。
今、それを閉じ込めていた扉の閂が弾け飛び、リビドーは鉄砲水のように飛び出した。




















「い、頂きます!!」














 おはよう代わりに元気いっぱい、大きな声でフランは挨拶した。
主に食事、その他の行事を始める際にする挨拶を。






 チュッと胸元にキスをした。
<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:45:25.19 ID:KOHPBgSn0<>




「ひゃああ」






 それまで寝ていたマミが素っ頓狂な声を上げて飛び起きた。


 いきなり胸元へのキスで叩き起こされて、状況をよく分かっていないマミに、その胸の谷間に、フランは顔から突っ込んだ。






 二人はそのままベッドに倒れ込む。



 その拍子に、貌全体が柔らかな肉と女のニヲヰに包まれ、フランは極楽を見た。


 驚いたマミがフランを引き離そうとするが、もはや性的衝動の塊となったフランを留めることは叶わない。

 そのまま二人は、発情したカップルよろしく、朝のお楽しみに突入した。









<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:46:26.25 ID:KOHPBgSn0<>





















 が、幸か不幸か、それはすぐに終わりを告げる。


 なぜなら、マミが時計を見たから。


 時計を見て、悲鳴を上げたから。











































 9時だった。
<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:47:25.06 ID:KOHPBgSn0<> マミ!マミ!マミ!マミぃぃいいいわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!マミマミマミぃいいぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!巴マミたんのブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
原作3話のマミたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
映画新曲決まって良かったねマミたん!あぁあああああ!かわいい!マミたん!かわいい!あっああぁああ!
the different story3巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!the different storyなんて現実じゃない!!!!あ…原作も映画もよく考えたら…
マ ミ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!見滝原ぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のマミちゃんが僕を見てる?
表紙絵のマミちゃんが僕を見てるぞ!マミちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のマミちゃんが僕を見てるぞ!!
映画のマミちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはマミちゃんがいる!!やったよまどか!!ひとりでできるもん!!!
あ、the different storyのマミちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ杏子ぁあ!!ほ、ほむら!!さやかぁああああああ!!!キュゥべえぇえええ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよマミへ届け!!見滝原のマミへ届け!

<> 1<>saga<>2013/01/30(水) 00:50:46.57 ID:KOHPBgSn0<>










朝起きたらとなりでマミが寝ていた。



そんな展開。
ぶっちゃけ読まなくていいですww話の筋には何の関係もありませんのでw
このフランちゃんにはきっと誰かが乗り移ったんだよ!よ!









上のルイズコピペは↓↓から・・・・

http://azunyan.sitemix.jp/kunkakunka/kunkakunka.php



こんなものあるんですねw
知らなかった^^;
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/30(水) 00:51:44.25 ID:ghkkr6m3o<> うん、きめぇや(>>1が)
乙 <> 1<>saga<>2013/01/30(水) 01:02:21.74 ID:KOHPBgSn0<>

レス返します。

>>591
>>592にある通りです。フランちゃんはレミリアを認識したうえで「人形」と呼んでいるのです。


>>593>>594>>595>>596
文中の「ロビン」は、
マザーグースの「誰がコマドリを殺したのか?」からです。
「クック・ロビン」じゃないのは、それだと「オスのコマドリ」になってしまい、
文中の「ロビン」は男ではないので、あえて「クック」を入れてません。

元ネタ? は「U.N.オーエンは彼女なのか?」のボーカルアレンジ曲の「Who Killed U.N.Owen」から。
好きな曲なので淹れてみたかっただけ。ほんとにそれだけ。
ちなみに、他にもオーエンアレンジ曲の歌詞(そのままじゃなく)を変えた文を紛れ込ませているので、
好かったら見つけてみてください。
すでに「Sweets time」と「Sweet little syster」のは出てます。






次から真面目な話に戻りますんでw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/30(水) 02:44:50.90 ID:5mN8v6LN0<> 正直>>1がこんな奴だなんて思ってなかったよ……



いいぞもっとやれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/30(水) 07:16:32.78 ID:YTqPIBGAO<> キモイ(ほめ言葉) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/30(水) 07:45:13.96 ID:99cGjeJ0o<> sweet little sisterの不浄の花びらに乱されては気づいたwwww

sweets timeは気づかなかったな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/31(木) 16:42:06.21 ID:oWHTjed10<> パタリロのあの歌がww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/31(木) 20:07:02.33 ID:H+M0ZcNlo<> フランちゃん




ふ <> 魔理沙「うふふ」<>saga<>2013/02/01(金) 10:54:34.70 ID:EOu/ldb00<>


>>613>>615>>616
まあ、今の内ですからねw
はっちゃけられるのww


>>617
sweets timeはかなり分かりづらいと思います。
サビの部分ではないので・・・・

>>618
だ〜れがころした クックロビン♪
名曲ですw
<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 10:58:48.87 ID:EOu/ldb00<>





                   *




 ばたばたと慌ただしく学校へ行く準備をしたマミが、「行ってきまーす」の掛け声共に韋駄天の
如く飛び出していったのが、つい数分前。



 フランは一人部屋に残された。



 しばらくマミが出て言った玄関のほうを見つめていた。
本当に、何をそんなに慌てているのか、と問いたくなるほど大騒ぎの朝だった。
人間たちにとって、定刻に間に合わないというのはそれほどまでに重大な罪なのだろうか? 
終始のんびりとした空気に包まれている幻想郷から来たフランには、なかなか理解しがたい考えだ。



<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:00:01.86 ID:EOu/ldb00<>

 それはともかく、いつものようにフランは、マミの、甘い匂いのする小洒落たお部屋に残された。
時刻はただいま9時40分ちょっと前。37分ぐらい。
さて、何しよう? マミのお気に入りのあの「マンガ」という絵付きの本でも読もうか。
いけ好かないナチどもを偉大な吸血鬼の伯爵と愉快なその仲間たちがぬっ殺していくやつ。

 そう思い立って、フランはマミの本棚から勝手にその「マンガ」を取り出して来たが……。
もう全巻呼んでしまったので少々飽きが来ている。

 それにしても、どうしてマミはこんな「血なまぐさい」物を買ったんだろうか? 
あんまり女の子向けの「マンガ」ではないと思うし(だって少女向けの「マンガ」もある)。
婦警にシンパシーを感じたのだろうか? 
金髪・巨乳・銃という共通点があるから。
<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:03:01.99 ID:EOu/ldb00<>





 うぅ……。やっぱり暇だぁ…………。






 本来夜行性である吸血鬼は、昼間はお休みするのだが、フランは生憎昨晩ぐっすり眠ってしまったために、
今は全く眠くない。
おメメはパッチリ、頭もはっきり。……困ったことに。






 一人取り残された部屋の中。がらんとして寂しい。






 一人でいるとどうしてか思い出してしまう。あの、暗くじめじめした地下室を……。






 おおよそ300年前までは、その地下室がフランの全てだった。
彼女の世界はそこしかなかった。


<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:05:28.33 ID:EOu/ldb00<>






 太陽がなかった。風がなかった。川がなかった。山がなかった。

 家がなかった。お金がなかった。人もいなかった。犬も猫も鳥も虫も花も、なかった。

 そこにあったのはいつも湿っている石の壁。
錆びついた燭台と赤い蝋燭、壊れた木の棚。読み尽くしてボロボロになった絵本。
カビが生えて臭くなったベッド。
綿と布の残骸と化したぬいぐるみ。





 閉じ籠ったのではない。閉じ込められたのだ。





 みんなフランを恐れた。その力を恐れた。それが外に出るのを恐れた。



 多くは自分が「壊される」ことを恐れた。
別のある者はスカーレットの家名に泥が塗られるのを恐れた。
また別の者は、その力が制御不能であることを恐れた。








 フランは全てを壊せるのだから、それを恐れるのは当然だ。








<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:06:33.25 ID:EOu/ldb00<>

 右手を開く。そして握る。
それだけで、たったそれだけで、何でも壊れてしまった。
メイドの種なし手品でもここまで奇抜なことは出来ない。
そんなふざけた力なのだ。



 今までこの力で得したことなんてほぼ無かった。
唯一思い出せるのは、紅魔館の頭上に降って来た隕石を爆破したことぐらいか。






 それですらこの力は必要なかった。姉なら隕石の一つや二つ、軽く粉砕できるだろうから。
ただ、フランの能力を使った方が楽なだけ。
だから、姉はフランに隕石を「壊す」ように頼んだ。



<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:08:20.46 ID:EOu/ldb00<>
 フランと悪魔の姉の関係はそんなものだ。

 結構ドライで、ある程度の距離を保ちながら、互いに互い、不必要な干渉をしないように常に
相手のことを窺っている。
もっとも、そもそもの話として、フランと姉が出会うことはほとんどないが。






 昔はそんなことはなかった。
もっと仲が良くて、距離の近い姉妹だったはずだ。
フランに優しくしてくれた。
お菓子を作ってくれたこともあった。
一緒に寝てくれたこともあった。
いつも抱きしめてくれた。





 姉の歌う子守唄が大好きだった。

 姉の話すお伽噺が大好きだった。

 柔らかくて温かい笑顔が大好きだった。






 しかし、それはフランが隔離されるまでの話。







 産まれて10年もしないうちにフランは地下に閉じ込められた。
その後、約200年間地下に幽閉されていた。



<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:10:18.64 ID:EOu/ldb00<>





 状況が変わったのは300年前。

 ある日、お姉様が二人分の紅茶とお菓子を持って来た。
自分で作り、自分で淹れた自信作だったそうだ。




 味はあんまりよく覚えていない。
ただ、お姉様が冷たかったのは記憶に残っている。
まるで人形の様だと思ったのだ。







 結局その日のお茶会がスカーレット姉妹の決別の時になった。


 その日以来地下室を出歩けるようになったフランは、一通り館を見回り、両親や家来が
いないことを知った。
居たのは、姉と妹。たった二人だった。
















 姉は遠い世界の住人となってしまった。








 姉は抱きしめてくれなくなった。
歌も、お話もしてくれなかった。
何より悲しかったのは、姉が笑わなくなっていたことだった。









 笑う、という行為はよくしていた。
けれど、それはフランの求める慈愛に満ちた女神のようなものではなく、誰かを嘲り、何かを見下し、
己の中の凶暴な衝動の表現の手段として、また自分の心を隠す愛想笑いであり、
詰まる所、かつての優しい姉はそこにはいなかったということだ。



<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:12:27.38 ID:EOu/ldb00<>





 だから、図書館に入り浸るようになったのも当然の帰結なのかもしれない。







 館の中は退屈だった。地下室ではすることがなかった。外には出ることが出来なかった。

 結果、地下室に近く、暇を潰すのにもってこいの書物が山のようにある図書館に籠るようになった。





 そこにはありとあらゆる本が置いてあった。
代々のスカーレット家の住人が長年に渡って世界中から集めてきた知識の宝物庫。
この世の全ての英知が詰まっているのかと思ったほどだ。



 多くは魔法に関する本だった。
呪いの掛け方から、使い魔や上位悪魔の召喚の仕方、他人の魔法への干渉の仕方、魔法の薬の作り方等々。






 フランは取り憑かれたように本を読み漁った。
そこに書かれていることを片っ端から覚えていった。
それが自分の運命であるかのように。
それが己の意義であるかのように。








 長年抑圧されていたストレスが、ここにきて好奇心という形で解放されたのかもしれない。
気が付けば、フランは本に引き込まれていた。
寝る間も食べる間も惜しみ、ただひたすらに、狂ったように本を読み続けた。
姉はそんなフランに社交辞令のように声を掛けるだけだった。


<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:13:59.46 ID:EOu/ldb00<>  そんな調子で本を読み続けたても、蔵書は有り余っていた。
読んでも読んでも減らない未読の本。 
おかげで、100年くらい丸々読書に費やしてしまった。
そして、一通り読み終えると、今度は読み返し始めた。









 そんなふうに毎日を過ごしていたから、あの姉が門番を連れてきたことに気付くのに10年ほど
掛かってしまった。
何しろ、当時のフランは、1年間図書館から一歩も出ないこともあったぐらいだから。












 続いてやって来たのが、魔女だった。






<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:15:27.50 ID:EOu/ldb00<>  魔女は呆れるほどたくさんの本と共に図書館に住み着いた。











 彼女が初めて図書館に入って来た時のことはよく覚えている。
かなり姉と親しげに話しながら、図書館の蔵書に感動している魔女を物陰から伺っていた。













 その魔女と仲良くなるのに時間は掛からなかった。





 筋金入りの引き籠りで、他者とまともに会話すらしたことがなかったフランだが、口下手なりに
なんとか魔女と話をするようになった。
そうなれば、あとは尽きることのない話題を話せばいい。









 フランに初めてできた友人。共通の趣味を持ち、共に魔法に詳しい。


 本を読み合った。本の内容について、意見や考察をぶつけ合った。
そして、フランに新しい趣味ができた。



 それが、魔法実験。



 今まで溜め込んで来た知識を生かし、二人は数えきれないほどの実験を繰り返した。


<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:16:35.82 ID:EOu/ldb00<>



 図書館に魔女が住み着いて以来、フランの性格は明るい方へと変わって行った。













 無我夢中だったのだ。ただひたすらに熱中したのだ。











 初めて人と話すことが楽しいと思えた。
自分の意見を口にし、相手に聞いて貰えることの快感、喜び。
そして反論が来る楽しさ。





 気が付けば、魔女がどんなことを言うのかを待っていた。
それが楽しみだったのだ。
そして、魔女の言葉に自分の考えを乗せた言葉で言い返すことがなんと気持ちのいいことか。





<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:21:02.42 ID:EOu/ldb00<>






 流石は「知」の魔女。







 流石は七曜の魔法使い。






 彼女は七つの属性魔法を得意としていた。
その上、賢者の石も作り出していた。







 魔法を知る者からすれば、それがどれほど規格外なのかがよく分かる。
流石に、その名に「ノーレッジ」を冠するだけある。
恐らく、世界で五指に入るほど強大な魔法使いだろう。
こんな大物を連れてきた時点で、姉の人を見る目はなかなかのものだ。
もっとも、その姉自体が超大物なのだが。


















 パチュリー・ノーレッジ。














 それが彼女の名前。フランドールの、掛け替えのない親友の名前。
決裂してしまった彼女と姉を再び姉妹にした素敵な魔法使い。
そして、恐らく今回の"事故"の引き金を引いた魔女。







<> 1<>saga<>2013/02/01(金) 11:23:16.26 ID:EOu/ldb00<>


今日はここまで!


書き込みオソス

調子悪い? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/01(金) 13:04:41.79 ID:k/EJx7OIO<> >>633
大丈夫だ、問題ない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/01(金) 18:06:07.30 ID:kyIfzlFto<> 乙

ぱっちぇさんうふふ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/01(金) 21:10:52.65 ID:lrb/HQUU0<> オアチュリー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 01:47:58.73 ID:1wZaEEKg0<> 乙

まさかのHELLSING
確かフランと伯爵て歳同じくらいだっけ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 01:57:43.35 ID:j26PE9vbo<> フランは一応495年以上生きてるらしい、伯爵は少なくとも550年以上生きてるらしい
まあここまでくると大して違わないが全然同じじゃないね、ちょっとしたお爺ちゃんと孫娘レベルだね
ま、乙 <> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:00:18.52 ID:No79wl770<>

>>635>>636
おっぱちゅりーうふふ。


>>638
人間レベルの年の差ですねw
妖怪とか、爺と孫の年の差なんか数百とかあたりまえなんだろうな〜w


では、昨日の続きから。
今日はあの方が登場しますw <> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:04:35.83 ID:No79wl770<>









                    *







 事の発端は紅魔館の住人ではない。その外部から来たモノ。
館の外と内の境界を曖昧にし、いつの間にか住人同然の顔で館の中を物色しているアイツ。





























 スキマ妖怪。妖怪の賢者。永遠の少女。















<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:05:36.61 ID:No79wl770<>


 そのスキマ少女様は、彼女たちにあることを頼んだ。








 それが結界干渉の魔法開発。






 すなわち、幻想郷を幻想郷足らしめている二重の結界の一つ、常識の結界に作用するような魔法を
作ってほしいという訳だ。
<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:06:43.59 ID:No79wl770<>

 その話を聞いた時のフランと魔女の反応は同じだった。




 まるで訳が分からなかったからだ。
幻想郷の結界に干渉する術を他人が持つことをスキマ妖怪が望むとは思えなかった。
しかし、どうしてか彼女はそれを望んでいるみたいだった。


 その理由は一応、こう語られた。










 曰く、保険、と。








<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:09:46.48 ID:No79wl770<>

 つまり、八雲の管理者が何らかの原因で結界の管理をできなくなった場合、信頼できる第三者に
それを一時的に委託する保険が欲しいらしい。
そんなことはまず起きないと思うが、それでもないよりはあった方がいいと言うのだった。

 その信頼できる第三者と言うのが、スキマ妖怪の友人でもある紅魔館の主である。
けれど、彼女だけでは荷が重いから魔法のスペシャリストである魔女とフランにも話が回ってきた
ということだった。




 その話を聞いた時、果てしなくきな臭いと思ったのはフランも魔女も同じだった。
筋は通っているが、まるで作ったかのような理由だ。


 なにしろ、結界の管理というのは八雲の専売特許だ。
その技術を、いくら友人とは言え、「ないよりはあった方がいい」程度の理由で他者が持つことを
あの大妖怪が許すとは思えなかったからだ。
一応その理由は、守矢神社の件を絡めて説明された。


<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:11:57.09 ID:No79wl770<>  彼女が言うには、守矢神社の一件は、厳密には異変ではなく事変だったらしい。

 守矢は信仰を求めて幻想郷にやって来た。
そして、その祭神は軍神である。
つまり、守矢が幻想郷で信仰を得るために、力を誇示する懸念があった。
しかも、場所が場所である。







 一歩間違えれば、戦争が起こっていたという。






 実際には、守矢の軍神はそこまで愚かではなかったが、スキマ妖怪は彼女たちに幻想郷のルール、
すなわちスペルカードを教え、何とか異変の体裁を形作った。
ただ、面白くないのは妖怪の山の連中で、スキマは山と守矢の仲裁に追われた。











 一方で、結界の方も大変なことになっていたらしい。




 なにしろ、「神」という強大な存在が通過したのだ。
その乱れ様はかなり深刻なものだったらしい。
それを、八雲の式神が任されていたのだが、彼女では少々役不足だった。
なので、スキマは交渉の合間を縫って、それを手助けしなければならなかった。





 その上、守矢の風祝が独断で博麗の巫女を挑発したことで事態はさらにややこしくなってしまう。
結果、スキマが考えていたよりも早く巫女が「異変解決」に来てしまった。





 その後の顛末は周知の通りで、巫女の行動が結果的にはいい方向に転んだそうだが、
スキマは八雲の管理システムの強化の必要性を痛感したのだそうだ。




<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:13:08.22 ID:No79wl770<>  それであの依頼である。



 無暗に反対する理由を持たないフランたちはそれを受けることにした。
八雲の結界に興味があったという理由もあったのだが。







 実験の準備は滞りなく進んだ。







 時間と空間を操る女中の力も借りつつ、それは極秘の中で行われた。
まあ、公表出来はしないだろう。
そんなことを言えば、妖怪の山辺りがまたうるさく言ってきそうだったからだ。











 それはともかく、何とかフランたちは実験に漕ぎ着けた。




<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:14:11.74 ID:No79wl770<>


 その実験の核として、フランが宛がわれた。
この魔法を境界を操る程度の能力に例えるなら、フランはスキマ妖怪自身の役割を果たす訳である。

 魔女は魔法実験の観測と発動の補助など、サポートに回った。
というのも、何が起きるか分からない実験なので、直接魔法を発動させるのは、
より体が頑丈で力の強いフランの方が向いていたからだ。
魔女の持病である、喘息の調子が優れなかったというのもあったけど。




































<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:15:21.57 ID:No79wl770<>

















 それがこのザマである。
































<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:18:33.39 ID:No79wl770<>  実験の初期フェーズは滞りなく進行した。
そして、問題が発生したのは実際に境界を操る段階に入ってからだ。













 原因不明の術式の動作不良により、魔法の崩壊にフランは巻き込まれた。



















 世界が反転した。










 何だかよく分からないうちに、視界がぐるぐると回り始めたのだ。
内臓も血肉も、全て一緒くたになってシェイクされるような、今思い出しただけで吐き気が
こみ上げてくるような気持ち悪い感覚とともに、フランの視界は暗転した。
ただ、その直前に目にした魔女の、絶望と慟哭の顔は決して忘れることはないだろう。











 いつも眠たげだった目が濡れていた。
日焼けを知らない白い肌が蒼白だった。
物を食べる時も言葉を話す時もほとんど開かない口が喉の奥が見えるまで開いていた。
いつもブスッとした無表情の、それでいて笑うと可憐な顔が啼血しそうなほど歪み、
断末魔のような絶叫を上げていた。
けれど、その悲痛な声は聞こえなかった。
もう既に、彼女とフランの間には絶対の境界が横たわっていたから。



<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:19:54.15 ID:No79wl770<>


















 そうして気が付いたら、見知らぬ場所に居た。















 半舷の月が夜空に浮かんでいた。
時刻は、丁度真夜中位だろうと思った。





 フランが居たのは公園。マミと出会った公園だった。










 それからフランはここが何所か、そして帰る方法を探すために、あちらこちらを彷徨い歩いた。
そう、歩いたのだ。飛べなかったから。



<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:21:13.89 ID:No79wl770<>












 最初、その事実に気が付いた時、愕然とした。自分は吸血鬼としての力をほとんど失ってしまっていたからだ。
そして次にフランを襲ったのが、深い絶望とパニックだった。















 力が無ければ、フランは見た目相応の幼子でしかない。
力が無ければ脅威に対処できない。
幻想郷に戻ることすら叶わない。













 パニックになり、絶望から逃げるように焦り出したフランは、とにかく駆けずり回った。
力を失っている時点でここが外の世界だという、簡単な推測すら立てられないほどに焦ったのだ。








 半ベソをかきながらコンクリートの森を駆け回った。
車という見知らぬ機械に怯え、昼間のように明るい街に恐怖しながら、
ここはどこか、帰る方法はないのか、ただひたすら意味も無く、あてもなく彷徨ったのだ。



<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:22:49.26 ID:No79wl770<>













 疲れ果てて道端で休むころにはだいぶ思考も落ち着いてきた。

 このまま彷徨っても帰れないこと。
ほとんど外に出たことがないのに外の世界の見知らぬ街で生き延びることは絶望的であること。
力をほぼ失った状態では長くは存在を保てないこと。
それでも生き残るためには僅かばかりの可能性に賭けて、運命に身を任せるしかないこと。






 とは言え、希望が全くない訳じゃない。
朝になれば人間たちが活動し出すし、なんとか彼らの助けを得られればすぐには死なないかも知れない。
うまくいけば、外の博霊神社に連れて行って貰えるかもしれない。そうすれば帰れる。




 一旦落ち着けば、フランの思考は希望を探し出していた。
正直、気休め程度だが、この気休めが心を支える欠かせない柱だったのだ。

















 フランドールは、500年もの間、ほぼ屋敷の地下で過ごし、友人は同じ穴の狢である魔女だけ。
話したことがあるのは両手の指で数えられる人数だけという、筋金入りの引き籠もりで、
内向的な少女だが、本来は明るくポジティブな性格で頭も聡い。
しかも、都合のいいことにフランはお気楽な思考回路をしていて、まあ何とかなるだろうと楽観的に構えていた。



<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:23:50.70 ID:No79wl770<>





 故に、この絶望的な状況にもめげず、元の公園に戻るために動き出したのだ。



 だが、肝心の道筋は覚えていないし、現在地も分からない上、その公園の名前すら知らなかった。

 仕方がないので、勘を頼りに歩いていたら、たまたま元の公園に戻って来れたのだ。
まさに僥倖と言うべき運の良さで、フランは喜んだがそれで何かが解決した訳ではない。
結局、朝までその公園で休み、人間が起き出してから彼らの助けを求めようとするしかなかった。





































 そして、マミと出会った。





<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:25:12.56 ID:No79wl770<>






                *






 フランにとってマミは命の恩人だ。
彼女がいなければ今頃野垂れ死んでいただろうし、彼女の血を吸ったおかげで妖怪として存在が
消えることを回避できた。
感謝してもしきれない。あの血はすごい不味いけれど。









 それはともかく、マミの傍は暖かい。心地良くて、安心していられる。
だから、ついつい居心地が良過ぎて長居してしまうのだ。
そろそろ帰らないといけないというのは、フランも分かっていた。
だけど、そのための踏ん切りがつかない。


<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:26:40.27 ID:No79wl770<>  優しいマミはきっとフランが帰るために助力を惜しまないだろう。
自分の寂しい気持ちを押し籠めて、無理やり笑顔を浮かべながら、温かく笑って送り出してくれるだろう。





 だから、フランは一歩を踏み出せないのだ。




 それは、寒い冬の朝、温かい布団から抜け出せないような気持ちだ。
余りの気持ち良さに、ついつい怠けてしまってそこから動き出せなくなる。
よくあることだ。マミの傍は、まさしく温かい布団だった。




 まるで、もう一人の姉が出来たみたいなのだ。
きっと、マミに妹がいたら今の自分とマミのようなやり取りをするに違いないと思う。













 年齢的にははるかに年下なのに、気質というか性格というか、マミはお姉さんぽいので、
フランもなんとなく妹ポジションに収まってしまっていた。
世話見が良く、優しくて、頼りになるお姉さん。
だから、思いっ切り甘えたくなる。

<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:28:26.62 ID:No79wl770<>





 それは、久しく忘れていた懐かしい感覚だった。







 遥か昔。能力が開花する以前、まだ実の姉が姉であったころ。
妹に優しくて、温かかったころ。
今とは違う、本当にフランが好きだった姉だったころ。




 まだ自分がコロコロと笑えていたころ。





 マミと一緒に暮らすようになってフランはよくマミに甘えるようになった。


 我が儘を言ってマミを困らせたり、マミと一緒に漫画を読んだり、マミに思いっきり抱き着いてみたり。






 マミはそんなふうにフランが甘える度に、ニコニコ笑ってくれたし、怒ったりしなかった。
フランを受け入れてくれた。
抱き返してくれた。
マミの体は抱き心地がいい。
柔らかいし、暖かいし、いい匂いがするし、優しい心臓の鼓動も聴こえる。
それは、昔の姉を思い起こさせた。

<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:30:05.37 ID:No79wl770<> だからだろうか? フランがひたすらマミに甘えてしまうのは。








 だがそれもいつまでも続かない。
家には、帰らなければならない。
自制が出来ないほどフランは子供ではない。
この温かい布団を抜け出し、冷気に身を晒さなければならない。




 何より、姉も親友も心配しているだろう。





 特に、魔女はかなり辛い思いをしているに違いない。
きっと責任を感じていることだろう。









 無愛想で、無口で、素っ気無くて、目付きの悪い彼女だが、本当は不器用で優しい子なのだ。
フランも、渾名で呼び合う姉も、両方とても大切に思っていることは、その言動の節々から分かる。



 そんな彼女が辛くないはずがない。
相当取り乱しているのが容易に想像できる。
ひょっとしたら、持病の喘息が悪化して入院したかもしれない。
あり得ない話ではない。


 だからこそ、一刻も早く帰り、親友を慰めてやらなければならない。
大切な友が苦しんでいるのだ。
いつまでも堕落し続ける訳にはいかない。

 マミと別れるのは辛い。
けれどこれが当然の結果であり、いずれこうなる運命なのだ。
<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:31:18.20 ID:No79wl770<>





 パチュリーもマミも大事だ。







 パチュリーは話が合う親友だし、マミは姉みたいな親友だ。
二人とも大好きだ。
けれど、どちらかを選ばなければならない。
そして、どちらを選ばなければならないのかは、明白だった。




















 いや、あるいは……。
























<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 13:33:48.05 ID:No79wl770<>

という訳で、スキマなあの方が登場しましたw

まあ、名前すら出て来なかったですけどねww




また、夜に来るかもしれません。(来ないかもしれません)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 13:36:48.54 ID:/id+yUWSO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 15:45:26.93 ID:ljGgaEg90<> 乙

少・・・・・・女・・・・・・? 無理すn(スキマ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/02(土) 17:26:28.15 ID:r+lEmLYr0<> 乙
マミさんの未来が楽しみですね <> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:47:33.70 ID:No79wl770<>

>>649訂正
半舷の月→もうすぐ満ちる月

そんなに重要じゃないけど時系列がおかしくなるので。 <> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:51:06.49 ID:No79wl770<>

>>660
無茶しやがって・・・・・・


>>661
そうですね^^;
頑張って生き残ってほしいんですけどねえw
<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:53:35.15 ID:No79wl770<>



               *






 午後。

 学校が早くに終わったとかで、日が傾く前に家に帰ったマミは、何だかんだしながら日中ずっと
起きていたフランと一緒に午後のティータイムを愉しんでいた。






「昨日は本当に驚いたわ。あれが、本来のあなたの力?」

 マミが言うのは、昨夜、暁美ほむらと対峙した時のことである。
その時にフランは、力を解放し、ほむらを恫喝したのだ。

「あんなの、1%も出せていないわ。はったりもいい所よ」

 フランは静かに首を振る。
まだ日があるので余り元気はないし、落ち着いた様子だ。


 どうやら、魔力を含んだマミの血を吸い出したことにより、フランの力が徐々に戻って来ている
らしかった。
完全には力を取り戻した訳ではないが、最悪、存在が消えてしまうということは避けられている。
<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:55:03.32 ID:No79wl770<> 「そうなの? 随分と恐ろしい感じがしたけど」

 マミがそう言うと、フランはすまなそうな顔を向けた。

「ごめんなさい。怖かった?」

「あ、い、いや、そういう訳じゃないのよ。ただ、ちょっとびっくりしただけで」

 慌てて両手を振るマミ。
それを見てフランは小さく笑みを零した。

「普通の人間は吸血鬼を恐れるものだけどね。まあ、マミは普通じゃないか」

「そういうんじゃないわ。私は、多分魔法少女じゃなかっても、フランを恐れないわ」

「どうして?」



「知っているもの。フランが、こんなに可愛くていい子だってことを。
昨日だって、私を庇ってくれたんでしょ? 嬉しかったわ」



 フランが俯いて赤くなる。
急に縮こまって、何とも可愛らしい。



「マミのバカ」



「バカなのかもね」

 嬉しいのが丸分かりだ。
素直に認めればいいのに、必死に隠そうとするから恥ずかしい思いをする羽目になる。
けれどそんなフランが愛おしい。
<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:56:05.48 ID:No79wl770<>






「ねえ、マミ」



「何かしら?」





「私は……このままここにずっとい続けてもいいの?」





 フランの、心の奥底に溜まった思いを絞り出すような声。
ずっと溜め込んでいた願望を吐き出す。










 それは――――――それは、駄目だ。










 頷きそうになるのを必死に堪えて、マミは唇を噛み締めながら首を振った。
<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:57:38.51 ID:No79wl770<> 「ダメよ。あなたには、家族が居るんでしょ? 
きっと心配しているわ。
それに、幻想の存在であるあなたが、いつまでもここにいられるのかしら?」

 うん、やっぱりそうだよね。小さく頷くフラン。




 本人だって分かっているのだ。
帰らねばならぬことを。
けれど、先延ばしにしたいのは、二人とも同じだった。






 その後、ふと漏らされた小さな一言。











「……マミは、幻想郷に来ないの?」










<> 1<>saga<>2013/02/02(土) 23:59:10.95 ID:No79wl770<>










「え?」












 その発想はしたことがなかった。



 幻想郷。そこがどんな場所か、余り話を聞かなかったマミには分からない。
フランは、妖怪たちの楽園だけど、人間も住んでいる、と言っていた。


 マミはゆっくりと首を横に振った。

「私、余り知らないから。でもね、私にはこっちでの生活があるわ。
魔女は人が居る限り生まれ続けるし、それを退治しなきゃいけない。
ごめんなさい。あなたの提案は嬉しいけど……」


「そっか。仕方ないね」




 寂しそうに手元の紅茶を見下ろすフラン。
熱々だった紅茶はだいぶ温くなってしまったようだった。
その紅茶のカップを両手で支えながら、フランは親指だけを動かしてカップの表面をそっと擦っている。



 その姿がどうしようもなく哀愁漂っていて、マミは思わずフランの傍に寄り、その小さな体を抱き締めた。
さりげなくフランがカップを置き、その両手が空く。



<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:00:17.62 ID:No79wl770<>



「大丈夫。帰るまで、あなたとずっと一緒にいるから。
いずれ別れなきゃならないけど、それまで楽しい思い出いっぱい作りましょ。
別れた後でも寂しくないようにね」






 優しくフランを撫でる。




 絹のような柔らかな金糸の髪。
触り心地がいい。
鼻孔をくすぐる仄かな匂いに酔いしれる。
背中に小さな両手が回され、きつく抱き締められた。



 もう二人で過ごす時間は僅かしかない。
なら、今を流れる一分一秒を大切にしよう。


 フランと過ごす、貴重な時間だ。
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:01:57.14 ID:gyaU6URD0<>










「そう言えば、あなたはどんなお家に住んでいるの?」




 このまま無言で抱き合っているのもいいが、折角なのだし何か話をしたい。
という訳で、マミは話題を振ってみた。




「赤い館よ。紅魔館っていうわ」

「大きいの?」

「このマンションよりは小さい」



 それは比較対象がおかしい。それにクスッと笑う。





「へえ。お金持なのね」

「中はこの建物より広いのよ」

「どういうこと?」

「変なメイドが居るの。時間を操作できるメイドが」

「時間……操作?」

 大変な能力を持った妖怪も居たみたいだ。
時空繋がりで空間も広げられるとか?



「言っとくけど、そのメイドは人間よ。
昔私の家に攻め込んできたヴァンパイアハンターだったらしいけど、それがいつの間にかメイドになってたの」



 呆気にとられているマミを見てフランは小さく口元を綻ばせる。





 それにしても、なんかよく分からない話だ。
何で攻め込んできた者がメイドになる?


<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:03:16.53 ID:gyaU6URD0<> 「そこら辺の事情はよく分からないわ。何しろ、その時私は寝てたんだしね」

「自分の家が攻められている時に寝ていたの……」

「お姉様がなんとかするって思ってたからね。お姉様は強いし、家主なら当然迎撃するでしょ?」



 姉が家主? ということは……、



「ご両親はいらっしゃらないの?」

「うん。いつの間にか消えていたわ」

「いつの間にかって……」

 どうやら、フランの家庭は少々複雑な事情を抱えているようだ。
吸血鬼の一般家庭がどういうものか知らないが。







「私ね」




 そう言ってフランがマミを見上げた。その瞳は真剣そのもの。












「495年間、屋敷の地下に閉じ籠もっていたの」





<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:04:38.07 ID:gyaU6URD0<>



 その言葉の意味を解するのに少し時間が掛った。
そして、意味が分かってから言葉を失った。





 495年と言えば、彼女の人生の殆どだ。
その間(ずっとかどうかは分からないが)閉じ籠もっていたというのだ。
筋金入りの引き籠もりどころではない。
明らかに何かがおかしい。





 一体何があってそんなことになったのだろう?





「だから殆ど外のことは知らない。最近、やっとお外に出るようになったのよ」


「その間、何していたの?」


「本を読んだり、魔法の研究をしたりしていたの。
何十年か前から、家の図書館に魔女が住みついていて、一緒に研究をしたりしてたわ」



「魔女?」



 思わずあの化け物たちの姿を思い浮かべた。
だが、もちろん違う。




「魔法使いよ。あんな化け物じゃないわ。ちゃんと話も通じるし」




<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:06:16.97 ID:gyaU6URD0<>




「そうよね」




 何馬鹿なこと考えているんだろう。








 フランに友達が居るのは、いいことじゃない。私が唯一の友達じゃなくていい。












「つい何年か前、お姉様が紅霧異変を起こして、妖怪みたいに強いっていう巫女と魔法使いがやって来てから、
私の生活は変わったわ。
その二人に会おうとしたら、パチュリー――図書館の魔女に止められて、向こうからやって来たのよ」





 いきなり話が分からなくなった。
コウムイヘンって何? 
巫女に……また別の魔法使いが出て来た?





「ちょっと待って。順番に話してくれない? あなたのお姉さんは何をしたの?」



 きょとんとした仕草で首をかしげるフラン。
それはそれで可愛らしいのだが、今はそれを気にしている余裕はない。
まず、話の意味を理解するのが先だ。
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:07:31.73 ID:gyaU6URD0<> 「何って、紅霧異変よ。こ・う・む・い・へ・ん!」

「それが何か分からないのよ」

「『紅』って言う字に『霧』と書いて『紅霧』。後は普通に『異なって変わる』で『異変』。
お姉様が、太陽を隠すために妖力で作った霧を播いたの。
それで巫女と魔法使いが止めるためにやって来たのよ。
あれは、魔法を扱えない人間には毒だったからね」



 スケールの大きな話だ。
というか、吸血鬼はそんなことができるのか。








 無敵じゃない!









<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:08:54.96 ID:gyaU6URD0<>




 太陽を隠して昼間も闊歩できるなんて、それこそ人間に安全な時間が無くなる。





「何で、そんなことを?」

「昼でも散歩するためよ」

「散歩って……」

 てっきり、人間を襲うためだと思ったのに、随分アレな理由に、思わずマミは言葉を失った。
それなら、フランのように傘を差せばいいのでは?



「ていうか、昼まで吸血鬼が歩けるようになったら、それこそ敵無しじゃない?」

「そうでもないわ。前にも言ったと思うけど、弱点が多いの。特に銀と流水は、ね。
雨の日なんかお外に出られないし。それは傘を差しても無駄だもの」


「いろいろ制約があるのね。でも、散歩の為って言うのは、ねぇ。夜じゃダメなの?」

「昼間に散歩したくなったんじゃない? 気まぐれで我が儘だから」

「そうなのね。で、どうなったの? その、紅霧異変は」

「お姉様が巫女と魔法使いに負けて終了したわ」


<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:11:00.38 ID:gyaU6URD0<>






 マミは驚いた。








 フランの言葉から察するに、その巫女と魔法使いはなんとなく人間な気がする。
それが、仮にも吸血鬼に勝つなんて。
昨日のフランを思い出せば、いかに吸血鬼が強大な存在か分かる。
妖怪並みと、フランは言ったが、その妖怪の中でもかなり強い部類に入るはずの吸血鬼を倒すなど、
その巫女と魔法使い、唯者ではない。





 何処か勘違いしているマミに、フランは「違う違う」と手を振って笑った。




「弾幕勝負をしたのよ。本気の殺し合いじゃないわ」




「弾幕勝負?」




「そう。
今ここで見せられないけど、魔力や妖力で作った弾をばら撒いて、相手に当てた方が勝ちっていう、
遊びよ」

「遊びなの? さっきの話を聞いていると、本気のような気がするんだけど」


「うーん」

 フランは少し考え込むような仕草をした。
それから人差し指を立てて説明し始める。


「ほら、こっちには、スポーツってあるでしょ? あれと同じようなものかしら。
遊びは遊びだけど、本気の遊び。
揉め事が起こったときに、いちいち妖怪同士が本気で戦ったりしたら、幻想郷は崩壊してしまうわ。
それこそ、私が一晩暴れ続ければ壊滅しちゃうくらい小さな世界なの。
それに、妖怪が起こした異変を人間が解決できなくなっちゃうからね。
幻想郷は、人間と妖怪が共存する世界。
本気の妖怪に太刀打ちできる人間なんてほとんどいないわ。
だから、揉め事が起こった時にそれを穏やかに解決する方法が必要だったの。
それが弾幕ごっこ。
正確には、スペルカードルールと言うのだけど」


<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:12:47.19 ID:gyaU6URD0<>







「スペルカードルール?」








「そう。妖怪と人間が対等に戦うための決闘方法で、異変解決の手段。これを見て」








 そう言ってフランはどこからともなく一枚の紙を取り出した。
実際にはカードと言った方がいいような赤地の厚紙で、そこには”Cranberry Trap”と書かれてあった。




「これがスペルカード。実際は、技に対する契約書みたいなものよ。
ただし、これはあくまでただの紙切れよ。
実際の技は私自身が出すのだから、相手にちゃんとスペルの宣誓をしないといけない。
これを提示して、これからこの技をやりますって、相手に知らせるの。
そのためのスペルカード」

「一枚しか持てないの?」

「予め使うスペルカードの数を決めておくの。
ルール無用の殺し合いじゃないから、制限を設けておくのよ。
そうでないと、人間対妖怪の戦いは勝負にならないわ。
どう考えても体力は妖怪の方が上だもの。
妖怪同士でも実力の違いが大きいし」


<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:14:07.79 ID:gyaU6URD0<>  なるほど合理的だ。
でも、わざわざ決闘をしないといけないのだろうか?



「必要よ。妖怪は人を襲うモノ。
でもね、狭い幻想郷でそれをやってしまえばあっと言う間に人間が居なくなってしまうわ。
逆に、人間が妖怪退治を続けて行けば、妖怪はどんどん減っていく。
それに、私たちは時々力を使わないとどんどん弱っていっちゃうの。
そこで考案されたのがスペルカードルールよ。
本気の殺し合いでもなく、単なるお遊びで妖怪も力を使えるし、人間も妖怪に気軽に挑める。
擬似的に妖怪が人間攫いを行い、人間は擬似的な妖怪退治を行う。
そうすることで人間と妖怪のバランスが保たれるの。
そう、重要なのはバランス。
天秤がどちらかに傾いてもダメ。
釣り合って初めて保たれるのよ」




「なるほどね。
だから、あなたのお姉さんは『昼間に散歩したい』という理由で異変を起こしたのね? 
戦えれば、もとい遊べれば、理由は何でもいい。
そこまで真剣になるようなことでもない。違うかしら?」



 フランは嬉しそうに破顔する。



<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:15:59.11 ID:gyaU6URD0<>

「正解よ。異変なんて、所詮お遊び。
異変を起こせば参加者はみんな弾幕ごっこで遊べる。
異変の首謀者は妖怪、解決に行くのは巫女や魔法使いといった人間。
だから、人間対妖怪という図式も守られる。
異変が無事解決したらみんなで一緒に宴会を開くの。
そこで異変を起こした側も解決した側も、入り混じって飲み合う。
そこに恨みとか憎しみなんてない。
そうやって交流を深めるの」


「何だか、楽しそうね」


「楽しいわ。弾幕ごっこの最中はとっても夢中になれるの。
いかに相手の弾幕を理解するか、いかに弾幕を美しく魅せるか。
それが弾幕ごっこの真髄。
やっている方も、見ている方も楽しめるのよ。
相手を殺すために攻撃を合理化する必要はないの。
むしろ、どれだけ無駄な弾を撃って、どれだけ美しく魅せるかが重要なのよ」







 フランの顔も瞳もキラキラと輝いている。
それは、本当にそう思っているからだろう。
本当に、フランは弾幕ごっこが好きなのだろう。














 それは殺し合いからかけ離れたお遊戯。
自分もそんなことができれば、きっと楽しいだろう。







 人と妖怪と言う、まったく異なる者同士が穏やかに共存していくための工夫。
それでいて遊びを追及する。よく出来たシステムだ。





<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:17:44.93 ID:gyaU6URD0<>

 マミは具体的に幻想郷がどういう場所か知らないが、得意気に弾幕ごっこや異変の説明をする
フランを見ていると、それなりに素晴らしい場所なんだと察することが出来た。


 毎日異形の化け物を相手にしている自分からすれば、楽しく生きていける幻想郷は魅力的だった。





「でも、気をつけなきゃいけないこともある。
飛んでくるのは『弾』の形をした物だけじゃないわ。
巫女はお札を飛ばすし、うちのメイドに至ってはナイフを投げてくるの」

「危ないわね。お札はともかく」

 マミは眉を寄せた。だが、フランは首を振る。


「私にとってはナイフよりむしろお札が脅威よ」


「どうして?」

「だって、そのお札には博霊の霊力がしこたま込められているのよ。
当たったらかなり痛いわ。
まあ、ナイフも銀でできてるから、それなりに痛いのだけどね」


「結構痛いものなの?」








「うん。人間は、当たり所が悪ければ死ぬかもね」








「え……」






 実は命懸けだった。


 ひょっとして、危険な遊びなのでは?
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:19:10.08 ID:gyaU6URD0<>





「当たらなければどうということはないわ」






「いや、そうだけど。実際、死んだ人はいるの?」

「さあ?」

 フランは肩をすくめた。

「それでも、本気の殺し合いよりは万倍ましよ」


「負けたらどうなるの?」

「負けを認めて相手の言うことに従う。
無茶な命令をされないだろうから、そんなに心配することじゃないしね。
プライドの高いお姉様も、人間に負けて屈辱的だ、とか言ったりしなかった。
所詮暇潰しだから」


「ふーん」



 かなり話が逸れてしまったので、そろそろ路線を戻すことにする。






「その紅霧異変の後に、あなたは引き籠もりを止めたのね?」

「まあね。今じゃ、時々宴会に行くこともあるし。でも、未だにお姉様の過保護が治らないわ」


 はあ、と困ったようにフランは溜息を吐いた。



<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:21:16.97 ID:gyaU6URD0<>

 マミには何となくフランの姉の気持ちが分かった。
こんな可愛い妹なら、過保護になってしまうのも仕方がない。
変な虫が付かないだろうかとか、危ない目に合わないだろうかとか、いろいろ心配するだろう。










 そう、フランの姉は現在進行形で心配をしているかもしれない。











「異変って、他にもあったの?」




 またネガティブな方向へ向かい始めた思考を紛らわせるために他の質問をしてみる。




「スペルカードルールが使われた異変は紅霧異変が最初。
それから異変にそのルールが使われるようになったの。
紅霧異変の後には、春雪異変、永夜異変、大結界異変などなど、いろいろあったわ。
私が参加したのは紅霧異変だけだけど」

「外に出るようになったんじゃないの?」

「異変解決は人間の仕事だもの。
妖怪はそれをサポートすることはあっても、直接解決に赴かない。
むしろ、積極的に参加して引っ掻き回すだけよ」

「なんか、いいわね、そういうの。私の居るところは、殺伐としているから、憧れちゃうわ」




「幻想郷は全てを受け入れる。
こちらの世界の常識を捨てて非常識を受け入れれば、あなたもきっと楽園に誘われるわ」








「何時か、行けたらいいのに……」








 ダメだ。どうしても別れることを考えてしまう。






<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 00:22:48.63 ID:gyaU6URD0<>






 認めよう。フランは、もう私の家族なのだ。
だから、こんなにも別れが悲しい。
あるいは嫉妬しているのかもしれない。
これから、こんな世界よりずっと楽しそうな元の居場所に帰るフランに対して……。




「マミ……」



「寂しいわ。でも、仕方ないこと」



 いつの間にか目頭が熱くなる。瞬きが多くなる。眉が顰められる。



「会いに来たかったら、いつでも会いに来て。だから……」




 フランは優しく囁く。














 ――泣かないで。














<> 次からいよいよお菓子の魔女戦<>saga<>2013/02/03(日) 00:27:53.01 ID:gyaU6URD0<>

レミリア「私の妹がこんなに可愛いわけがない」

※当ssでは、咲夜さん元ヴァンパイアハンター説を採用しております。




やヴぁい。
マミさんにフラグが立ち過ぎだw


もうマミさんは間違いなく一級(脂肪)フラグ建築士ですねwwwキリッ










おや?
こんな時間に誰か(ry


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 00:31:09.16 ID:en2N+ouHo<> >>1、ヤムチャしやがって…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 00:32:36.81 ID:en2N+ouHo<> あ、乙
連レススマソ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 04:04:50.03 ID:DgNpn6bDO<> 立て過ぎて肥えたフラグは自らの重さに耐えかねて折れるらし(ピチューン! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 12:40:44.85 ID:MtS/uIK30<> 乙でした
>>1、ムチャシヤガッテ……
PSPではマミさんが「あたしって、ほんとバカ」になっちゃうこともあるんだっけ?wktk

てかここまでまどっち空気過ぎワロt……ん?なんか空が桜色に(ry <> 1<>saga<>2013/02/03(日) 21:58:11.12 ID:gyaU6URD0<>


ふぅ・・・・

どいつもこいつもフラグばっか立ててピチュりやがって(´・д・`)

>>686
ドウゾドウゾ
イッパイレスシテクダサイw


まどかは・・・・・

っていうか、今はマミフラチュッチュがメインなので、
まどさやほむあとあんこには次の章からスポットが当たります。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 21:59:40.66 ID:4OPY7NaJ0<> 乙
正念……いや燃焼場? <> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:00:53.18 ID:gyaU6URD0<>




               *




「落ち着いた?」








「うん。ごめんね。迷惑だったでしょ?」



 少しばかりべそをかいてしまったマミの頭をフランが優しく撫でる。






 見た目も妹っぽいフランに大人っぽくてお姉さんキャラのマミだが、今この場では姉妹関係が
逆転しているように思えた。
フランはまるで、姉が妹に接するように優しくマミを慰めた。

 そこには、わざわざ口に出すまでもない信頼と深い情があった。
それは、マミとフランが出会ってから、短期間ながら共に一つの屋根の下で過ごし、徐々にだが確実に
築き上げて来たものだった。
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:02:34.23 ID:gyaU6URD0<>


「ううん。そんなことない。泣いてるマミ、可愛かったし」



 ボフンという音が鳴った気がした。
マミの顔が真っ赤になる。
こうやって赤くなったところをからかわれるのは、フランもマミも同じだった。


 相手を愛おしいと思っているからこその小さく、他愛のない戯れ。
だけど、二人にとっては、この時間が何よりも幸福で換え難いものなのだ。



 出来ればこのまま一緒に居たいし、出来るならマミが幻想郷に入って、紅魔館で共に生きていきたい。
だが、出来ないのが現実だ。

 その現実を受け入れるように、寂しさを振り切るように、フランはマミから離れた。


「私、着替えてくるね。もうすぐ行く時間でしょ」


 何を、と言うまでもない。
そろそろ日が傾いてきて、魔女が出没しやすくなる時間だ。



 フランドールは、Tシャツに下着といういつもの部屋着から、外出用の赤いドレスに着替え出した。
マミは目尻の涙を拭き取り、使った食器の片付けを始める。












<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:03:36.84 ID:gyaU6URD0<>


























 と、ピンポーンというドアチャイムの音が部屋に鳴り響いた。





























 マミは洗い物を中断し、タオルで手を拭いて「はーい」と返事をしながら玄関に向かった。






















<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:06:26.64 ID:gyaU6URD0<>




















「マミさん!!」




















 マミが戸を開けるのも待たず、後輩が飛び込んで来た。鹿目まどかだった。







 相当走って来たのか、かなり息が上がり顔も汗ばんでいる。
そのただならぬ様子に、マミは不吉な予感を覚えた。


「鹿目さん。何があったの?」


「た、大変なんです」


 余程のことなのだろうか、まどかは膝に手を付き、荒い呼吸を整えもせず、無理やりに喋り出そうとした。
だが上手く喋れないのか、掠れた音が、金魚のようにパクパク開閉する口から漏れ出すだけだった。

 マミはまどかに近寄り、背中を擦ってやる。
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:07:39.39 ID:gyaU6URD0<> 「取り敢えず落ち着いて」




「そんなゆっくりしてられません!!」





 彼女にしては珍しい、強い口調だった。
その様子に、マミは何か緊急を要する事態が起こっていることを察する。







「び、病院に、グリーフシードが、魔女が、孵化しかかってて、さやかちゃんが、見張ってるって……」

「分かったわ」

 まどかが言っていることは要領を得なかったが、大体の事情を悟ったマミは、急いでフランを呼ぶ。


「フラン! 急いで。すぐに行くわよ」

「ええ!?」

 部屋の奥から慌てた様子でフランが走って来る。
どうやら着替え終わったらしいが、急いでいたのか服装に乱れがある。



<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:09:15.21 ID:gyaU6URD0<>



「傘持って。早く行かないと、美樹さんが危ないわ!」


「う、うん……」

 フランは傘を持ち、マミは鍵を掛けるのも忘れて二人を連れて走り出した。





「鹿目さん、大丈夫?」


 既に全力で病院から走って来たであろうまどかをマミは気遣うが、まどかは力強く頷いた。
しかし、へとへとなのは誰が見ても明らかだ。

「何が起こってるの?」

 身長が低いせいで二人と比べて足の短いフランは、必死に走って付いて来ていた。
それでも息切れもせずに喋れるのは、ある程度力を取り戻していたからであろう。

「美樹さんとキュゥべえが魔女の結界に取り込まれたのよ。
孵化しかかっている魔女を見張るために。
ほんとに……無茶なことを」

「ご、ごめんなさい」

「いいのよ鹿目さん。謝らないで」










 三人は先を急ぐ。
フランは傘を持ちながらなので、走りにくそうだった。
見かねたマミがフランを抱き上げることを提案したが、フランはマミに負担を掛けたくないと言って断った。
代わりにマミは少し魔力を使ってフランとまどかの身体を強化した。
これで二人とも全力で走るマミに付いて来れる。












 そうすることで何とか早く病院にたどり着いた三人だった。












<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:11:01.73 ID:gyaU6URD0<>






 傾き始めた太陽に照らされた駐輪場。
来院者の自転車が雨避けやその周りにずらりと並べられている。
それは、それだけ多くの人がこの病院に訪れており、さらに多くの患者や職員がいることも示していた。
故に事態は深刻であり、マミはこの場所にたどり着いて改めてそれを認識した。








 この自転車置き場には先客がいた。
といっても人ではない。












 カラスが直接地面に立っていた。













 カラスは病院の壁を見ていた。
その黒曜石のような真っ黒で光沢のある瞳がそこにある魔界への入口を反射している。
それが見えるのか、あるいは何かを感じているのか、カラスは目を離す様子はない。
だが、マミたちが現れたのに気が付くと、すぐに飛び立って行ってしまった。





 真っ黒な鳥はあまり縁起がいいものではない。
特にマミは割とそういうことを気にしたりするタイプなので、少し不安になった。
けれど、すぐにカラスのことも縁起のことも意識から外す。
今はそんなことを悠長に考えている暇は無いのだから。




「ここね」

 壁には魔女の結界に通じる亀裂が走っていた。
マミは指輪の形にしたままのソウルジェムを結界に近付ける。
すると、魔女の結界への入口が現れた。
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:12:51.15 ID:gyaU6URD0<> 「キュゥべえ、状況は?」

「まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ」

「さやかちゃん、大丈夫?」

 まどかが心配そうにテレパシーを送る。

「平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう」

 さやかはまどかに心配をかけさせまいと、あからさまな空元気を発した。
その、冗談交じりの返答に、まどかは少し安心したような顔をする。

「むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がマズい。
急がなくていいから、なるべく静かに来てくれるかい」

「わかったわ」

 三人は躊躇うことなく結界の中に入った。









 中は例の如く迷路だった。
以前、廃墟にいた魔女の結界よりもカオスな空間だ。
場所が病院だからだろうか、メスや鉗子、縫合針や血管をイメージしているような青い管と赤い管がある。
それらに混じるように、棒付きキャンディや巨大なプリン、クッキーなどが散らばっている。
全く意味の分からない空間だった。




 マミはフランとまどかと手を繋ぎながら二人を引っ張るように進んだ。

「間に合って良かった」

「無茶しすぎ……って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。
これなら魔女を取り逃がす心配も……」







 そう言いながら振り返ったマミが何かに気付いて立ち止まる。
つられてフランとまどかも振り返る。





<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:14:52.29 ID:gyaU6URD0<>



「え? あっ」




 背後から近付いてきたのは、暁美ほむらだった。
マミとフランの視線が険しくなる。



「付け回さないでって警告した筈だけど? そんなに死にたいのかしら?」



 真っ先にフランが口を開く。
最早、その口調には敵意しかなかった。
加えて、フランには容赦をするつもりも無かった。










 暁美ほむらがどんな力を持っていようが構わない(大体見当がついているけれど)。
ここなら能力を使えば一瞬で粉砕できる。
今までマミの前ではその存在すら匂わせなかった自分の能力はあまり使いたくはなかったが、
フランの予想が正しいとすると、ほむらはかなり厄介な力を持っている。
だから、一刻を争う今この場ではさっさと握り潰して無力化するべきなのだ。




「今回の獲物は私が狩る。貴女たちは手を引いて」





 フランを無視してほむらはマミに言い放つ。

 むっとしたフランだが、魔力の使用を控えるようにキュゥべえに言われたのを思い出し、
なんとか力の行使を思い留まった。
<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:16:10.65 ID:gyaU6URD0<> 「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」


「その二人の安全は保障する」


「お姉様が言っていたわ。髪の長い魔法少女の言葉は信用するなって」


 フランが、例の人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべてほむらを見つめる。
ほむらは若干怯んだような様子を見せたが、すぐにフランを睨み返した。











 あら、強気だこと。










 昨日の恫喝を受けても睨み返せるほむらの度胸には素直に褒められるべきものだろう。
まあ、だからといってやることは変わらないが。


「そうね。信用すると思って?」


 そう言ってマミは余り魔力を使わないように、指輪の形にしたままのソウルジェムを輝かせた。





 すると、ほむらの足元から何本かのリボンが飛び出し、あっと言う間にほむらを縛り上げてしまう。



<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:17:29.90 ID:gyaU6URD0<>





「ば、馬鹿。こんなことやってる場合じゃ」






 突然のことに対応できなかったのか、なすがままにされたほむらが呻く。
どうやらこのままの状態ではあの力も使えないようだった。


「もちろん怪我をさせるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ」


「今度の魔女は、これまでの奴らとは訳が違う」


 必死のほむらの抗弁も聞き入れられなかった。
そこには今までとは違う、何かが含まれていることにフランは気が付いた。
それが何かは分からないが、好くないものの予感がする。




 だが、気付いてないのかマミは無視して、

「大人しくしていれば帰りにちゃんと解放してあげる」


<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:18:47.45 ID:gyaU6URD0<>









 それは同時に勝利を確信した宣言だった。
負けるはずないから安心して、と言うように。



 その一言に、フランは一抹の不安を抱いたが、すぐに振り払った。
魔法少女として確かな実力を持っているマミがそう簡単にやられる訳がない。
それに、ここには自分が居る。




 だから問題ない。
暁美ほむらも、きっと演技をしているのだろう。
気にすることはない。



「行きましょう、二人とも」

「え……はい」

「うん」




「待っ……くっ……」




 リボンに締め付けられたほむらが何か抗議するが、すぐに黙った。








 まどかは一瞬ほむらを心配そうに見てから、先を行く二人の後を追った。





<> 1<>saga<>2013/02/03(日) 22:24:53.32 ID:gyaU6URD0<>


今日はここまで!



ほむらは例の如く縛りプレイですw



そして、安心と信頼のフラグ建設者:マミさんww








そう言えばTDSゲットしたったw
名にあのエグイ物語・・・・・

結局餡子ちゃんがどうなったかよく分からんかったが、取り敢えず聖女で安心したw

@QB
何が「叶えた願いの対価を受け取る権利はあっていいはずだよ」だよぉぉぉぉぉぉぉッッ!!
お前にゃ権利なんて(*´・д・)(・д・`*)ネーんだよおおおおおお


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 22:26:51.99 ID:1n+ZsC2Ro<> 劇団乙カレー

フラグとフランって似てるよな・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 22:28:24.39 ID:DgNpn6bDO<> マミフラグと同時に、シャルロッテ(と序でに病院)に「キュッとしてドカーン!」フラグが立ちました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 23:45:11.12 ID:xRp7Eu3to<> ただあっさりフランがマミ助けちゃうと、ほむら永遠に和解できんな…

マミさんには少しだけ痛い目に合ってもらおう(ゲス顔) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/03(日) 23:58:17.65 ID:4OPY7NaJ0<> どうあろうと結局、叶う願いが本人の求める形に納まらないからね…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/04(月) 01:23:39.18 ID:/eV6e2jDO<> >>706
マミ死亡

ブチ切れフランがキュッとして(ry

ほむほむ「あれ?私の出番は?」

の可能性が微レ存 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/04(月) 16:54:08.69 ID:lcljD0ZZo<> 本文は面白いけど外野含めてそれ以外が寒すぎる
これがss速報クオリティです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/04(月) 19:41:08.95 ID:/Ps6NjASO<> >>709
別に楽しんでる所にわざわざ冷や水を浴びせる必要はないだろ
面白いのさえ書いてくれたらそれで良いじゃん <> 1<>saga<>2013/02/05(火) 00:51:08.07 ID:kLBfc1VC0<>

>>707
魔法少女は、契約した時点で破滅が決定されたものですからね。そりゃあ、満足いくようにはならないでしょう。


>>709
失礼。羽目を外し過ぎました・・・・・ <> 1<>saga<>2013/02/05(火) 00:53:57.11 ID:kLBfc1VC0<>







 統一感のない、暗い通路を進む。



 時々現れる使い魔から身を隠しながら、三人は徐々に奥に向かって歩いていた。






「ふぇ……。あの……マミさん」





 辺りはビーカーだらけの空間。
様々なビーカーが宙に浮き、その中にはいろいろなお菓子や、何故か使い魔も詰められている。

 そんな意味不明な空間に入った時、不意にまどかが口を開いた。



「なあに?」

 優しくマミが反応する。
マミはまどかとフランの手を握っていた。







「願い事、私なりにいろいろと考えてみたんですけど」

「決まりそうなの?」

「はい。でも、あの……もしかしたら、マミさんには考え方が甘いって怒られそうで」

 自信なさげにまどかは言う。



 自身がないならそれを持てるようになるまで言わなければいいのに、とフランは思ったが、
口には出さなかった。
<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 00:55:34.43 ID:kLBfc1VC0<>

「どんな夢を叶えるつもり?」

「私って、昔から得意な学科とか、人に自慢できるような才能とか何も無くて。
きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって。
それが嫌でしょうがなかったんです」












 それまで沈んでいたまどかの顔が変わる。
明るい、快活な少女らしい笑顔に。














「でもマミさんと出会って、誰かを助けるために戦ってるの、見せてもらって。
同じことが、私にもできるかもしれないって言われて。
何よりも嬉しかったのはそのことで。
だから私、魔法少女になれたらそれだけで願い事は叶っちゃうんです。
こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら、それが一番の夢だから」




「大変だよ。怪我もするし、恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃうよ」


「でも、それでも頑張ってるマミさんに、私、憧れてるんです」

 嬉しそうに、期待を込めて言うまどか。


<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 00:59:28.82 ID:kLBfc1VC0<>








 マミは立ち止まる。









「憧れるほどのものじゃないわよ、私……」









 悲しそうに呻くマミ。








「え?」



「無理してカッコつけてるだけで、怖くても辛くても、誰にも相談できなかったし、
一人ぼっちで泣いてばかり。
さっきだって、ちょっと悲しいことがあって泣いちゃったのよ」


 マミの目に小さな滴が浮ぶ。






「いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」







 思わぬ先輩の素顔に軽く驚くまどか。

 けれど、まどかは安心した。

 この先輩は、やっぱり自分と同じ等身大の少女で、後輩の前で見栄を張ろうとして無理しちゃうカワイイ人なのだ。
そんなことで幻滅するはずないし、むしろ親近感が湧いただけだった。



 良かった。私が魔法少女になることで、真っ先にマミさんが喜んでくれる。
マミさんを支えてあげられる。やっぱり決意して良かった。



 まどかは小刻みに震えるマミの背中に優しく声を掛けた。 <> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:01:14.97 ID:kLBfc1VC0<> 「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです。
それに、ここにはフランちゃんもいるじゃないですか。
私とフランちゃんで、マミさんを支えてあげます」




 フランは俯いている。
その体は小さく震えていた。






「……そうね。そうなんだよね」






 マミはまどかに背を向けたまま、微かに湿った声で呟く。



 そして、唐突に振り返ってまどかの両手を取る。


「本当に、これから一緒に私と戦ってくれるの? 傍にいてくれるの?」



 これではフランがまどかに置き換わるだけだ。
だけど、動き出した欲求は止まりそうになかった。



 甘えてしまいたい。



 そういう思いがマミを支配していた。





「はい、私なんかで良かったら」





 嬉しい。涙が止まらない。




 ダメだ。今日は泣いてばかりだ。
私、いつの間にこんな泣き虫になっちゃったんだろ?




<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:02:52.68 ID:kLBfc1VC0<>




「マミ」





 静かにフランが呼んだ。






「フラン……」




 マミはフランドールを見下ろす。


 金髪を覆う帽子が見えるだけで、俯いたその表情は伺えなかった。




「善かったね。私が居なくなっても、淋しくなんかないよね」


「違う! そういう意味じゃないの!」


 マミは慌ててフランを抱きしめる。
だが、フランは抱き返して来なかった。





「誤解しないで。私は怒っている訳じゃないの。
マミが私の友達であることに変わりはないわ。
それは、例え離れ離れになっても、同じよ。だからね」






 フランはマミと向き合う。
そして、今までで一番の笑顔を浮かべて言った。






<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:04:06.62 ID:kLBfc1VC0<>


















「別れた後もマミが寂しい思いをせずに済みそうで、私は嬉しいの。
まどかと一緒に頑張って。時々私を思い出してくれればいいから。
私も、あなたのことは忘れないから」
















 マミの心のダムが決壊し、怒涛のごとく濁流が目から溢れ出した。




 耐えきれなくなったマミは、思いっ切りフランを抱き締めた。






 華奢な体。でも、優しい温もりがあって、確かに生きている証が聞こえてくる。
小さな腕が背中にまわされる感触がして、目からさらに涙が溢れた。










「ありがとう。ありがとうね、フラン」








<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:05:33.83 ID:kLBfc1VC0<> 「マミさん……」

 詳しくは知らないまどかでも、なんとなく事情は察せた。
きっと、もうすぐフランはここを去るのだ。
本来の自分の家に帰るのだろう。
そしてそこは、マミには容易に会いに行けない場所なのだ。



「参ったなぁ」




 そう呟いてマミはフランを離した。

 目尻に残っている涙を拭き取りながら湿った声で、嬉しそうに言う。

「まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのになぁ。やっぱり私ダメな子だ」

「マミさん」

「でもさ。せっかくなんだし、願い事は何か考えておきなさい」

「せっかく……ですかねぇ、やっぱり」

 まどかは照れたように頭に手を当てた。

「契約は契約なんだから、物はついでと思っておこうよ。
億万長者とか、素敵な彼氏とか、なんだっていいじゃない」



<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:07:14.88 ID:kLBfc1VC0<>














「いやぁ……その……。あ、じゃあ、こういうのはどうですか?」




















 まどかはマミとフランを交互に見て言う。



















「マミさんとフランちゃんが別れても、また会えるような願い事」
















「それは……」





 一瞬マミは嬉しそうな表情を浮かべた。
けれどすぐにフランの様子を窺う。 <> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:08:45.96 ID:kLBfc1VC0<>  フランは首を振った。


「まどかの気持ちは嬉しいよ。
でもね、それは、私たち二人で頑張って達成する目標なの。
誰かの奇跡を使ってまで叶えるようなことじゃないわ。
それに、まどかの奇跡なのよ。
まどかの為に使った方がいいわ」


「あ、そっか。ごめんなさい」

 シュンと落ち込むまどかにマミが優しく声を掛ける。

「謝ることないわ。あなたの気持ちは十分に伝わったから。
だから、こうしましょう。
この魔女を倒すまでに願い事が決まらなかったら、その時は、キュゥべえにご馳走とケーキを頼みましょう」

「ケ、ケーキ?」

「そう。最高におっきくて贅沢なお祝いのケーキ」

「ふぇ」

「それで、みんなでパーティするの。
私と鹿目さんの、魔法少女コンビ結成記念よ。
それならフランもオッケーでしょう?」

「もちろんよ。月まで届くぐらい大きなケーキをお願いするわ」

 フランは嬉しそうに両手を上に向かって伸ばした。



 こーんなおっきいの。




<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:09:53.23 ID:kLBfc1VC0<>


「私、ケーキで魔法少女に?」



「嫌ならちゃんと自分で考える」

 歩き出したマミは、ぴしゃりと言った。
その言葉に、まどかは項垂れて「はい……」と言うだけだった。
それを見てフランも可笑しそうに笑う。



「ちゃんと考えた方がいいわ。最初で最後の奇跡なんだから」

「そうだね。頑張って考えるよ」


 まどかも笑って頷いた。


<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:11:34.71 ID:kLBfc1VC0<>







 その時、緊迫したキュゥべえの声が三人の頭の中に響いた。



「マミ! グリーフシードが動き始めた! 孵化が始まる。急いで!」



「オッケー、分かったわ。今日という今日は速攻で片付けるわよ」





 かなり気合の篭もった声でマミが宣言する。

 その声に僅かに不安を覚えたまどかが戸惑う。

「ええ……そんな……」







 マミはその場でポーズを決めて変身すると、一瞬二人の方に笑い掛けた。






 とても嬉しそうな、輝くような笑顔。
その場で軽くはね、嬉々として使い魔の群れに突撃していく。
まどかとフランを結界で守るのも忘れない。




















 そこからは圧巻だった。




<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:13:32.62 ID:kLBfc1VC0<>






 黄金色の銃士はマスケット銃を地面に突き刺し、

 射的の的に手足が生えたような使い魔を次々と撃ち抜いていった。



 自分に向かってくる使い魔を、

 時に銃弾で、

 時に銃本体で迎撃し、

 その場で回転しながらあっという間に駆逐していく。






 それはまさに魔弾の舞踏。





 背後から飛び掛かってくる使い魔もまるで見えているかのように撃ち抜き、

 両手に銃を持ちて乱舞する。



 クルリクルリと回りながら銃を生み出し、

 時に垂れ下げたリボンにぶら下がり、

 時に巨大な注射器の上に立ち、

 使い魔を掃討し制圧して行く。




<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:14:39.29 ID:kLBfc1VC0<>





















          少女は踊る。 























<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:16:06.98 ID:kLBfc1VC0<>









 その仕草一つひとつに幸福と自信が現れていた。




 命のやり取りをする戦場。




 その中で、少女の足はなお軽く、

 ステップを踏めば楽しげな音が響き、

 クルリと回ればスカートがふわりと舞い上がる。





 その下の日焼けを知らないような白い腿が躍動し、

 少女は黄金色の風となって異形の空間を吹き抜けた。








<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:17:24.71 ID:kLBfc1VC0<>










 体が軽い。

 今ならどんな苦難も乗り越えられる気がする。

 例えこの先辛い運命が待ち受けていようとも、私は踏み出せる。















 真実へ、踏み出せる。













 こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて。














<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:18:22.29 ID:kLBfc1VC0<>














 少女は駆ける。




 黄金の銃士は魔物の中で謳い、

 希望の光がチーズの探索者たちを撃ち抜いていった。



















<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:19:17.31 ID:kLBfc1VC0<>








 今までこれほどまでに彼女が輝けたことがあっただろうか。













 長い間孤独に耐えてきた彼女がこんなに幸福を感じたことがあっただろうか。















<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:20:45.60 ID:kLBfc1VC0<>












 最愛の家族を失い、一人奇跡で生き残ってしまった。

 それに対する負い目から、正義の魔法少女を目指した。

 でも、怖かった。殺されるかと思った。

 実際に死にかけたことだって何度もあった。

 目の前で幼い少年を守れなかった時は悔しくて悔しくて仕方がなかった。

 己の無力さに打ちひしがれた。














 だから誓った。

 そして、頑張った。

 必死に戦った。









 呪いの魔手に襲われた無辜の人々を守れた時、
自分が生きていて良かったと感じられた。

 天にいる父と母に胸を張ることができると思った。







<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:22:51.51 ID:kLBfc1VC0<>













 弟子ができた時は嬉しかった。

 こんな自分に憧れ、目を輝かせながら付いて来てくれる赤いあの子。

 ホントは友達になりたかったあの子。

 とっても可愛くて、家族に囲まれ、貧しいながら幸せに生きていられるその姿にちょっぴり嫉妬したりもした。












 その後、その子はとても辛い目にあって、決別してしまった時は、自分のことのように悲しかった。

 それに、また一人になるのだと思うと、とても怖かった。
















 だけど、挫けていられない。

 自分には使命がある。

 人々を助けなければならない。

 そのせいで友達がいなくなっても、他のみんなみたいに遊べなくなっても。

 誰かを守ることができたなら、それは嬉しいことだし、幸せになれるのだから。









<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:24:27.54 ID:kLBfc1VC0<>













 でも、それは違うと、今は言い張ることができる。




















 
 人は一人では生きていけない。




 ずっと孤独に耐えていたから、

 仲間ができること、

 一緒に暮らす人がいることがどんなに幸福で、

 どんなにありがたいものか良く分かるのだ。




 もう、孤独に苦しむ必要はない。




 友達がいなくて寂しいと思うこともない。







<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:25:32.34 ID:kLBfc1VC0<>








 これから一緒に戦ってくれる後輩がいる。



 例え離れ離れになっても確かな絆に結ばれた親友がいる。























 だから、もう何も怖くない!!
























<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:26:41.58 ID:kLBfc1VC0<>












 粗方使い魔を掃除し終えたマミは、待っている二人の前に軽やかに戻って来た。
宣言した通り、相当な早さだった。
マミの実力の高さに、残された二人は舌を巻いた。
強いし、何よりも美しく華麗だ。
















 私、一人ぼっちじゃないもの。


















 マミはフランを片腕で抱き上げると、もう片方の手でまどかの手を取り、奥に向けて走り出した。
この先には大切なもう一人の後輩と長年の友が待っている。





<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:27:58.80 ID:kLBfc1VC0<>



 さあ、早く行こう。こんな魔女はさっさと倒して鹿目さんのお祝いをしなきゃ。




 お菓子の城のような空間を走り抜け、ついに魔女のいる最深部に繋がるドアの前に立つ。





 

 この魔女はさしずめ「お菓子の魔女」といったところか。
ケーキやクッキーは大好きだけど、こんなところでも見たくはない。







 丁度視線の高さが合うマミとフランは互いに目を合わせた。














「行くわよ」













<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:29:10.91 ID:kLBfc1VC0<>

 ええ。


 フランが微笑む。



 素敵よ、マミ。
あなた、今とっても輝いているわ。
今のあなたなら、きっと最高の弾幕を張れるでしょうね。


 フランはマミの首にまわした手に力を込めた。








 負ける気がしなかった。








<> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:33:40.95 ID:kLBfc1VC0<>

という訳で、今回がマミさんの死亡フラグの回でした。
前々回辺りから乱立している気がしますが、一応今回が本命です。



「もう、何も怖くない」を言わせるためだけに、一生懸命書きました(笑)

ある意味、マミさんの全てを表す言葉ですのでw







あと、
そろそろリアルが忙しくなるので、更新がががががが、
ということになります。
ご了承ください。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 01:35:24.28 ID:Qcl6V2ZAO<> 乙

先行きが不安しか感じない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 01:35:54.80 ID:pcaVnDLKo<> 乙
おいおい、ちょうどここからじゃないか…… <> 1<>saga<>2013/02/05(火) 01:49:45.95 ID:kLBfc1VC0<>
誤字発見!
>>712
「自身がないなら〜」→「自信がないなら〜」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 01:58:45.82 ID:qlUczSmbo<> マミさん、いい女(ヤツ)だったよ…
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 02:10:56.90 ID:S3jWnUW10<> スキマは言っている

ここで死ぬ運命でないと

閻魔は言っている

全てを救えと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 04:05:59.35 ID:aaGKJnxDO<>
某亡霊「あら、冥界ライフも馴れればそれなりに愉しいわよ?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 10:23:01.39 ID:HTYpCVZfo<> >>742
果たして物質化された上モグモグされた魂は冥界に行けるのか
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 15:04:30.39 ID:N15aQwnH0<>
某庭師「>>742様、ソウルジェムは所有者の魂そのものですので砕けたり変質しては元も子もないかと」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 16:07:16.31 ID:ipnEHwMM0<> 呪い撒く魂の残滓……それは幻想郷風に言えば、怨霊という所なのではないだろうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/05(火) 17:42:59.66 ID:8w9DisH1o<> じゃあ魔法少女は肉体を操れる亡霊みたいなものなのか

さやかにこんなこと言ったら魔女化しそうだが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/02/05(火) 18:04:53.94 ID:nHmX4uCIO<> レス付き過ぎワロタw

SGを東方的に捉えるとどうなのか? で一つSS書けそうですねw


時間が空いたら夜来ます。 <> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:16:44.56 ID:1UECCVLY0<>






                *




 あんまり食べられそうにないわ。




 そこに入ったフランの頭にそんな考えが浮んだ。



 魔女の部屋には、雑然とお菓子が散らばっていた。
それだけでなく、壁や床もクリームやらパイ生地やらスポンジやらでできている。
しかも、そのお菓子の一つ一つが人間よりも大きい。



<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:18:04.42 ID:1UECCVLY0<>


 三人は、その中で巨大ドーナッツの陰に隠れているさやかとキュゥべえを見つけた。


「あっ」


 フランを床に下ろし、マミはさやかの横に身を寄せた。まどかも続く。



「お待たせ」



 先程の空元気はどこへやら、さやかはほっとしたように大きな溜息を吐いた。

「はぁ間に合ったぁ」

 だが、ゆっくりしていられる暇も無く、キュゥべえが鋭く叫ぶ。


「気を付けて! 出て来るよ!」








<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:19:33.65 ID:1UECCVLY0<>










 正面にやたら足の高いテーブルと二脚のイスがあった。
テーブルの上には何もない。
片方のイスには、使い魔だろうか、女装した射的の的が座っていた。
そして、もう片方のイスに、この結界の主が天孫降臨する。














 大きさは少し大きい人形ぐらい。形も人形のようだった。


 キャンディのような形の頭に、首には赤玉の水玉模様をしたドーナッツ、手は見えないが、小さな
足とその区切りがはっきりしない胴体に、大きなマント。








 先日の魔女に比べればだいぶ形容しやすい姿だった。
このお菓子だらけのファンシーな空間の主らしく、その姿は一見して可愛らしい人形のようだった。
















 イスに降り立った魔女だが、いきなりバランスを崩して落下する。
マミが椅子の足を折ったのだ。
<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:21:08.89 ID:1UECCVLY0<> 「マミ! 気をつけてね!」


 フランが声をかける。
それにマミはウィンクで返した。



「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて……もらうわよ!」



 マミは体を一回転させて、落下してきた魔女を持っていたマスケット銃で打撃する。




 大リーガー顔負けのフルスイングだった。
魔女は特大ホームランのように盛大に打ち上げられ、放物線を描いてスタンド……ではなく壁に叩きつけられた。


 激突した魔女はさらに追い打ちとばかりに数発の魔弾で撃ち抜かれ、落下する。


 落下したところマミは踏みつけて、頭をぶち抜く。
そして一歩離れると、魔女は細い金糸で拘束され、高々と持ち上げられた。



「やったぁ!」



 勝利を確信し、拳を振り上げるさやか。
まどかもほっとしたようだった。
マミも三人に安心させるように、勝利を疑わない顔で微笑む。
いつもの必勝パターンだ。





 ここまでくればもう終わったも同然だ。
ちょっと歯応えの無い相手だったけど、今回は弱くて助かった。
さて、さっさと止めを刺して、パーティをしましょう。




<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:23:36.13 ID:1UECCVLY0<>









 ――だが、その時になってフランはある違和感を感じ取った。











「マミ!!」


 と、フランは警告のつもりでその名を呼んだ。
けれど、ああ、なんということだろうか。
マミはそれを声援と勘違いしたようだった。
















おかしい。先日の魔女はあれだけ凶暴だったのに、こいつは今まで一方的になぶられるだけだった。
弱い魔女なのかもしれないが、それでも無抵抗はおかしい。どう考えても誘っているようにしか見えない。



















 脳みそが急激に冷えていくような感覚。
背筋を不快な何かが走り抜け、フランは思わず身震いした。







マミは、油断してる!




<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:26:02.33 ID:1UECCVLY0<> 「終わりよ。待っててね!」


 フランたちにそう叫んだ時には既に彼女は銃を構え終わってしまっていた。















 何もかも遅すぎた。今からあの魔女の「目」を握るのは間に合わない。










 フランの能力は強大だがいくつか弱点があるのだ。その一つが、タイムラグがあるということ。
なにしろ、対象の「目」を能力を使って探し出し、右の掌に移植しなければならないからだ。
握るのは簡単だが、探査と移植というプロセスを経るせいでタイムラグが生じてしまうのだ。
僅かな時間だが、今はそれが決定的な要因だった。



 今から向かえば間に合う? 




 だけど、悲しいかな。
長い間引き籠もり、碌に戦った経験のないフランドールに、初めて遭遇した咄嗟の事態で動ける
ような反射神経はなかった。
いくら運動能力が高くても、いくら強大な力があっても、それを生かすのは彼女の脳。
そして、そのためには「慣れ」と言うものが必要だったのだ。





 だから、ぎりぎりでフランの体は動かない。
硬直し、馬鹿みたいに突っ立ったまま目の前の悪夢を見続けるしかない。












 マミはついに手に持っていたマスケット銃を巨大化させる。
いつもの、リボンを練って作ったものではなく――魔弾で標的を木っ端微塵に砕くタイプではなく――
その弾丸が金糸に変化するマスケット銃を元にした巨砲だった。



<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:27:16.29 ID:1UECCVLY0<>






















「ティロ・フィナーレ!!」

























 高らかな勝利の宣言。轟音と共に光の筋が射出される。



 魔弾はリボンとなって魔女の胴体を貫通し、ギチギチに締め上げる。
人間がそんな目に合えば、胃の中に入っている物を吐き出すように……
案の定、魔女の口から何か出て来た。




<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:28:55.61 ID:1UECCVLY0<>




























 それはあっという間に伸びて来て、マミに迫った。
























<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 02:29:36.14 ID:AsKsg2dBo<> イヤー <> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:30:12.72 ID:1UECCVLY0<>











 黒い体に赤い水玉模様、












 手足はなく、












 巨大な蛇のようで、











 その顔はピエロの如く、












 頭には赤と青の羽根が一対。













<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:31:15.91 ID:1UECCVLY0<>
























 その口には、顔に似合わぬ鋭い歯が並んでいた。
























<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:32:22.89 ID:1UECCVLY0<>



























「あ」













 砲撃の反動か、




 勝利を疑わずにいたために咄嗟に反応できなかったのか、




 マミは間抜けな声を出すだけで、




 その場で硬直していた。













<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:33:24.97 ID:1UECCVLY0<>




























 その眼前で魔女の、青色の舌が嘲笑う。





























<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:34:37.51 ID:1UECCVLY0<>






















「マ……」





















 走馬灯のように流れる光景。少女の体はやっと動き出した。




















 ……ミ……。





<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:35:49.35 ID:1UECCVLY0<>














 けれど、もはやその手が友を救うことはない。


















 油断大敵。奢れる者も久しからず。敗者には死を与えよ。







 戦いをおざなりにした愚かな銃士に、死の制裁を。






 無慈悲なギロチンが、マミに向かって落とされ……、


















<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:39:08.87 ID:1UECCVLY0<>





































 ――――――――――――――――――――――――――――――――――パキン。






































<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:39:58.32 ID:1UECCVLY0<>



















 何かが壊れる音が聞こえた気がした。






















<> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:42:20.45 ID:1UECCVLY0<>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、、


案の定、やっちまいましたね
マミさん、、、、、、、




では、また。

おやすみなさい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 02:43:26.59 ID:AsKsg2dBo<> ??
??????[

?л?????? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 02:44:16.03 ID:AsKsg2dBo<> 文字ばけしおった


おやすみー

マミサンヤッチマッタナー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 02:44:32.81 ID:2OiMNYNFo<> 乙
あー…… <> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:45:31.95 ID:1UECCVLY0<>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、、


案の定、やっちまいましたね
マミさん、、、、、、、

予定通りと言うか、運命と言うか……
マミさんと言えばマミる。マミると言えばマミさん。


ちなみに、フランちゃんの能力には制限を加えました。
さすがに、あの能力を素直に解釈しちゃうと、強すぎてバランスブレイカーになるのでw
何でもかんでも、握りつぶして終わりですからねww



あと、>>747は1です。


では、また。

おやすみなさい。 <> 1<>saga<>2013/02/06(水) 02:47:46.30 ID:1UECCVLY0<>
oi、ミス
>>765は見なかったことにしてくだしぃ(泣) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 02:51:08.29 ID:O3/5KZ5O0<> ??「ああ、やっぱり今回も駄目だったよ
アイツは油断するとフラグが乱立するからね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 02:56:16.06 ID:Rzg5YSMw0<> マミった… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 13:04:19.41 ID:582FtM8e0<> 乙
なんだかんだで誰一人欠けずに終わりを迎える。そう思っていた時期が私にもありました。


フランちゃんの能力は『月姫』の直死の魔眼で見える線を右手に集約するようなものだと思ってるんですが、それで合ってます?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 17:41:52.65 ID:UKDFvN+W0<> >その一言に、フランは一抹の不安を抱いたが、すぐに振り払った。
魔法少女として確かな実力を持っているマミがそう簡単にやられる訳がない。
それに、ここには自分が居る。

経験者の言葉を聞かないとは、フランもまだまだ子供だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 22:47:41.12 ID:5+Yb5BDX0<> フランの能力は物の壊れやすい点を見極めて、それを手元に持ってきて握りつぶすことで対象を破壊するというもの。
型月風に言えば、直死の魔眼をフル稼働してようやく見える死の点を、自分の思うように移動させることができる。
ぶっちゃけチート以外の何物でもないわな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/06(水) 23:13:50.75 ID:FyV/IHh30<> でも、ここから先はまだ分からない……よな?クロスなんだし(震え声 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/08(金) 23:17:19.38 ID:9eeUOgc70<> 彼女の持つ「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」とは、打撃による破壊活動ではなく
全てのものには力を加えれば破壊できる「目」が存在しており
離れた「目」を自身の手の中に移動させ、強く握ることで破壊(爆破)してしまう能力だとされる。
『文花帖(書籍)』では巨大隕石を破壊したことが示されており、本人曰く「きゅっとしてドカーン」。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/08(金) 23:20:07.98 ID:1h+U7T/9o<> まあ要するに距離が関係ない爆砕点穴だと思えばいいわけだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/09(土) 20:29:15.42 ID:PtUhhJIj0<>

>>773>>775
直死の魔眼と似ているとは言われて初めて気が付きましたw
似てるんかなあ?
まあ、直死の魔眼と一つ、決定的に違うところがありますけどね。
それはまたおいおい・・・・

>>776
え?

>>777
おめでとう
トリプルセブンだ
<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:31:18.39 ID:PtUhhJIj0<>




              *








 カチン。














 鍵が外れるような小さな音がして、暁美ほむらを縛っていたリボンが緩む。









「んっ、まさか」










 ほむらが軽く身じろぎすると、呆気無く拘束から解き放たれた。
それまでほむらを縛っていたリボンが音も無く落下する。





<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:32:18.99 ID:PtUhhJIj0<>








 予想した通りだった。








 ここの魔女は再生と復活を繰り返す厄介な難敵だ。
その性質上、単発式のマスケット銃と、リボンによる拘束、そして反動の大きな大技をメインに戦う
マミには相性が悪い。














 そしてこの状況。
このリボンは、巴マミからの魔力供給で対象を縛る物。まず間違いなくマミはやられた。
少なくとも、余分な魔力も使えないほどの危機に陥っている。
つまり、それはほむらにとっての最悪に直結する事態だった。













 まずい。まどか(とさやか)が危ない!!













<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:33:22.94 ID:PtUhhJIj0<>



 焦ったほむらは能力を発動し、先を急いだ。





 あの綺麗好きの先輩が残らず掃除していったのか、途中の経路には塵の一つも落ちていなかった。
とはいえ、ほむらがいた入り口付近から、魔女の部屋までそこそこ距離がある。
その間、能力の効果をずっと続けることはできない。
一回の発動時間が限られているためだ。
なので、何度か能力を繰り返し使いながら、出来るだけ早く結界の奥に進む。











 ほむらは焦る。
マミという戦士がいなくなれば二人の命が危ないし、何よりあの狡猾なエイリアンが契約を結ぶかもしれない。

















 ほむらは魔法で体を限界まで強化し、全速力で最深部へ走った。
<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:34:12.48 ID:PtUhhJIj0<>













 そして、魔女の部屋へ続く扉の前に立つ。
能力を解除し、息を整える間も惜しんで勢いよく中に突入した。

































 刹那、























<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:35:18.47 ID:PtUhhJIj0<>

























 轟!!


























 瞬間襲ってきたのは爆風。それも、顔が焼けるような熱を伴っている。思わず顔を腕で庇う。










 一体何が?








<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:36:23.82 ID:PtUhhJIj0<>












 顔を起こして見ると、信じられない光景が広がっていた。


















 お菓子だらけの部屋は、まるで空爆に遭ったかのようにそこら中が穴だらけで、いろんな物が燃えていた。
砕け散ったお菓子の破片が辺りに散乱し、紅蓮の炎が視界を覆い尽くす。

















<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:37:27.00 ID:PtUhhJIj0<>









 目に見えるところにまどかは居なかった。さやかやキュゥべえも見えない。










 どこに? まどか!?











 先程から積っていた焦燥感が、一気に心の中を覆い尽くしていく。













 慌ててまどかたちを探し出そうと、一歩を踏み出した時だった。
































<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:39:25.97 ID:PtUhhJIj0<>




















 その凄惨な戦場の中で、ほむらは確かに聞いた。
魔女ではない、まどかやさやかの声でもマミのそれでもない、甲高い、背筋が凍りつくような狂気の笑い声を。































 不意に炎の向こうから黒い巨体が飛び出す。
あれは、ここの魔女だ。



 魔女は何かから逃れるように、上空へ逃げるが、虹色の弾に撃ち抜かれて墜落して行った。




















<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:41:05.97 ID:PtUhhJIj0<>





















 そして、笑いながらそれが姿を現す。





























 ――――――――――――――――――――――――――真紅の悪魔が。

























<> 1<>saga <>2013/02/09(土) 20:44:22.06 ID:PtUhhJIj0<> 今日はここまで!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/09(土) 21:13:35.97 ID:icigkqgQ0<> 乙

残りレスは200ちょい

ちょうど1スレくらいで終了させるのかな?
それともまだまだ続きが存在?

いずれにせよ最後まで見届けますので
>>1が納得できる結末をお願いします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/10(日) 19:02:57.78 ID:DM50F+X00<> さぁ、どうなる?

間違いなく言える事は、 シャル乙。 という事だけだが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/10(日) 19:47:46.70 ID:WPUx5p/50<> なんか、普段の投下する文章量が多いだけにもの凄く物足りなく感じる……
どうなるのか微塵も想像がつかないですが、>>1のやりたいようにやってください期待してます

>>791いや、そうとも限らんぞ? <> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:31:46.22 ID:Zmb4z1ho0<>

>>790
まだあんこちゃん出て来てないから終わらないよ!よ!
3スレは確定です・・・・・


だいぶ投下した気がするんだけど、まだ書き駄目の半分も行ってないんだよね……・・ <> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:33:46.10 ID:Zmb4z1ho0<>





                *




 何が起こったのか、何が起こっているのか分からなかった。








 視界がぐらついたと思った時には、衝撃で吹っ飛ばされていた。


 不思議なことに痛みを感じない。
だが、首から下の感覚がないのはなぜだろう? 
首も動かないし、自分の体の状態を確かめることもできない。
仰向けに倒れたマミの目に映るのは、魔女の部屋の天井だけだ。








 と、視界に見慣れた姿が現れた。フランだ。



<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:34:36.20 ID:Zmb4z1ho0<>




「マミ? 大丈夫? 生きてる?」






 フランは無表情でマミを見下ろしながら、これまた感情を感じさせない平坦な声で言った。








 ええ、生きてるわ。死ぬかと思った。



 あれ? 声が出ない。ていうか、息ができない。く、苦しい










<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:35:16.81 ID:Zmb4z1ho0<>

 マミが焦って呼吸をしようと、必死に口を開閉させていると、さらに三人のフランが現れる。
合計四人のフランがマミを取り囲み見下ろしている。
その容姿に寸分の違いも見受けられない。



 状況がさらに理解できなくなって、マミの口が固まる。思考も止まる。




<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:36:23.42 ID:Zmb4z1ho0<>




「あーん。大丈夫よ。魔法で治してあげるわ」



 一人が喋った。



「ウフフ。お家に帰ったらパーティしなきゃ」



 別の一人が笑った。



「これって、パチュリーに頼めば治してくれるかしら?」



 また別の一人が首をかしげた。



「ここにパチュリーはいないわ」



 さらに四人目が首を振る。












 いったいどういうこと? 自分は夢でも見ているのだろうか?












 マミがあっけにとられている間にも、フランたちは会話を続ける。










<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:37:39.76 ID:Zmb4z1ho0<>







「じゃあ、永遠亭のお医者さんに頼めばいいの?」



「ここは幻想郷じゃないわ」



「うわーん。どうしよぅ。お姉様ぁ」



「もったいないわ。私の大好きなクランベリージャムがこんなに零れちゃってる」



「クランベリーよりアプリコットのほうが好きよ」



「そんなこと言ってる場合じゃないわ。大変よ。マミが死んじゃうわ」



「クランベリーじゃないわ。マミは蜂蜜の色をしてるの」



「でも中身は真っ赤。私と同じ色」



「キャハハハハ。マミが壊れちゃった」



「何で壊れたの?」








 一人が問うと、別の一人がこちらの様子を伺っている魔女を指した。
すると、ほかの三人も一斉に魔女の方を向く。
そして、口々に言い出すのだ。
<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:39:08.04 ID:Zmb4z1ho0<>







「あいつが壊したのよ」



「あいつを壊せ。あいつが悪い」



「壊せ。フラン」



「壊せ」



「壊せ」



「コワセ」



「コワセ」



「コワセ」



「ジャア、コワシテクルワ」



「イッテラッシャイ」



「イッテラッシャイ」



「イッテラッシャイ」



「マミノチリョウヲオネガイネ」



「ラジャー」



「ラジャー」



「ラジャー」







<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:40:10.80 ID:Zmb4z1ho0<>





















 意味が分からない。






 どうしてフランが四人もいるの? 
この子たちは何を話しているの? 
魔女はどこ? 
鹿目さんと美樹さんとキュゥべえは大丈夫なの?

















 四人のフランのうち、一人が去っていく。
正確には視界から消えた。
それを残る三人のフランがおどけたように敬礼をしながら見送っていた。


 残った三人は、私を見下ろした。






<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:41:29.54 ID:Zmb4z1ho0<>








「タイヘンヨ、フラン」



「ナニカシラ?」



「マミガコマッテイルワ」



「オシエタホウガイイカシラ」



「ソウネ」



「ソウシヨウ」



「アノネ、マミ」



「コレハ」



「Four of a kind」



「ッテイウノ」



「ポーカーノフォーカードノコトヨ」



「ソウダ、カエッタラポーカーシマショウ」



「ワーイ」



「マドカノケーキモアルノヨ」



「タノシミネ」









<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:42:21.90 ID:Zmb4z1ho0<>





 一人の提案に、別の二人が両手を上げてハイタッチしながら喜ぶ。




 傍から見れば、異常としか言いようのない光景だった。
別々に話す三人のフラン。
見ているだけで気が狂いそうな光景だ。
おまけに言っていることも支離滅裂で、全く理解できない。












 怖くなったマミは、体を動かそうとするが、手足が動かない。
目だけ動かして、自分の体を見下ろそうとした。
<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:44:14.79 ID:Zmb4z1ho0<>




 何だろう? 違和感がある。いつも見慣れている……胸がない……。


 あるはずのものがない。






 中学生にしては発達した、大人びたマミの雰囲気もあって、時々高校生に間違われる原因である、
見慣れた体の一部が視界に映らない。






 同時に脳裏に浮かぶ、魔女の鋭い牙。その向こうで踊る青い舌。















 つまり……………………………………、
















 いやああああああああああ!!














 マミは声にならない悲鳴を上げた。








<> 1<>saga<>2013/02/10(日) 23:49:39.64 ID:Zmb4z1ho0<>

自分の胸が見えなくて、自分の体の異常に気付くマミさんまじマミマミwww

同じ姿のょぅl゛ょに囲まれるとか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/10(日) 23:58:02.74 ID:JjpyJ4Au0<> あのマミさんの豊満なお胸を貪ったと言うのか!?

おのれシャルロッテ! ゆ゛る゛さ゛ん゛!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/11(月) 00:20:00.06 ID:5VKWIqkw0<> 分かってると思うけど、頭側から見た食われた描写っしょ?

まぁ、先ずは胴と頭をくっつけてあげようぜ <> ◆jPpg5.obl6<>sage<>2013/02/11(月) 00:52:24.38 ID:6G4uUxGj0<> ということは、マミさんは首を噛み切られただけで咀嚼はされてないのか
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2013/02/11(月) 01:08:54.50 ID:fJd0U4WOo<> 体側を食われたのでは <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/11(月) 02:55:23.45 ID:gCZL4Sbbo<> ジオングマミさん
ゆっくりマミさん
鋼鉄ジークマミさん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/11(月) 07:23:04.55 ID:j19EDqy00<> 魔女の中から胴体を引っ張りだして縫製しとけば治りそう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/11(月) 07:47:46.25 ID:DEOb3yr40<> 乙
なんだこのもどかしさは……続きが気になるのに見れないとか……
原作最終話待機組はこんな心境だったのか

>>810
あれ?けど前の投下でシャルって撃ち抜かれ(このコメントはスキマ送りにされました <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/11(月) 10:27:07.37 ID:41kwhewIO<> >>801
まどかのケーキ… <> 1<>saga sage<>2013/02/14(木) 06:05:34.63 ID:21a8Psf+0<>

こっそり灯火。



マミさんのお胸をムシャムシャしてやったシャーロットちゃんにはお仕置きです。 <> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:07:02.84 ID:21a8Psf+0<>





              *





「あ……あ……」







 まどかとさやかは互いに体を抱きしめ、恐怖に震えていた。





 二人はキュゥべえと共に一部始終を見ていた。








 魔女に食いつかれる直前、マミの体に赤い弾丸が当たり、マミがよろめいた。
そのせいでマミの頭を狙っていた魔女の口が外れた。
けれど、巨大な口から完全に逃れられることはなく、
無残にもマミは胴体のほとんどを食い千切られてしまった。

<> R-18G注意<>saga<>2013/02/14(木) 06:08:40.88 ID:21a8Psf+0<>
























 衝撃で吹っ飛ばされ、壊れた人形のように床に叩き付けられた先輩。

 いまやマミは脇腹の僅かな肉で上半身と下半身が繋がっている状態で、肺や胃、腸、肝臓のほとんどと、、
それに心臓までも失っていた。
意識を保っているのが不思議な状態で、傷口からはおびただしい量の血と、肉や内臓が飛び出していた。
真っ赤なそれに混じって見える白いものは骨だろうか。







 それを認識した二人はその場に蹲り、胃の中身を吐き出した。
酸の混じった苦い液が口と喉を焼き、ツンとした刺激臭が鼻を刺す。
















 限界だ。こんなマミは見ていられない。
いや、こんな人体は見たくない。












 しかし、この悲劇はこれから始まる狂気の舞台の前章に過ぎなかった。






<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:09:51.04 ID:21a8Psf+0<>












 尚もマミに追撃を仕掛けようとする魔女だが、突然横からの衝撃で吹き飛ばされた。
そのまま部屋のお菓子の山に突っ込む。
















 衝撃の正体は、フランドールだった。
だが、二人の知っている「フランちゃん」ではなかった。














 全身から馬鹿げた量の禍々しい妖気を放ち、羽根の宝石はネオンサインのように煌々と輝いていた。
顔には狂気の笑いが浮かび、その目は真っ赤に光っている。

















 不意になんの前触れも無く、フランが四人に分裂した。
四人のフランはそのままマミに近付くと、何事かを話し始めた。
フランとフランとフランとフランが会話し、どういう訳か笑い声を上げている。







<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:11:10.39 ID:21a8Psf+0<>



やがて、そのうち一人がその場を離れ、お菓子の山から怒りに顔を歪ませて鎌首を持ち上げた魔女
と相対する。





 残った三人のフランは、ボロボロのマミを慎重に持ち上げ、羽根を動かしながら宙を浮んで
こちらに向かって来る。
傷口から血と骨と肉の混ざった塊がぼたぼた落ちるのを見て、再び二人は胃の中身をぶちまけた。













 その間に魔女と相対したフランが戦い始めた。














 真っ先に魔女が大きな口を開けてフランに向かって行く。



「キャハッ」




 ふわりと空中に浮かんだフランドールの宝石が一際明るく輝く。
周囲の空間に何の前触れもなく浮かび上がった、魔法陣からばら蒔かれた赤と青の玉はそのまま魔女
に向かって収束するようにぶつかっていった。
それはさながら、水に浮いた果実を掬うように。





<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:12:40.76 ID:21a8Psf+0<>  魔女が避ける隙間などあるはずも無く、ただひたすら魔女は無数の魔弾に撃たれていた。



 悲鳴を上げてのたうちまわる魔女。
だが容赦なく弾幕は魔女を襲い、ついに魔女は口から新しい体を吐き出した。
それでも攻撃は止まず、フランドールは弾幕を張り続けた。








 不覚にもまどかはそれを美しいと思ってしまったのだが、その魔弾一つ一つにとんでもない量の
魔力が込められているのは分かった。
あんなもの、掠っただけで人体が消し飛ぶだろう。

















「ソンナンジャアヨケラレナイヨオオオオオオオオ!!」


 フランドールが絶叫する。
既に辺りは破壊され尽くされ、弾幕が消えたころには壊れた魔女が床にボロボロの体で横たわっていた。



















 しかし、



















「マダダヨォォォォォ!! モットワタシトオドリマショッ!!」
<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:14:19.11 ID:21a8Psf+0<>






 いつの間にかフランドールの手には黒い棒のような何かが握られていた。

 くにゃりと曲がった細い棒に、先端にはトランプのスペードのようなものが付いている。
あるいは曲がった時計の長針とも言えるかもしれない。














 フランドールはそれを掲げた。













 瞬間、その棒から真っ赤な炎が噴き出した。
そして、恐るべきことに、竜の吐息のようなそれは一本の巨大な大剣の形になり、その先端は天井に
まで届くほど巨大な物になったのだ。













空気が悲鳴を上げて膨張する。
目の前にいる魔女よりもさらに巨大で、すさまじい轟音を立てて燃え盛っていた。

 脱皮して新しい体になった魔女が危険を察知して逃げる。
同時にフランドールは巨大な炎剣を躊躇なく魔女に向かって振り下ろした。
魔女はその巨体に似合わぬスピードでかろうじて回避するが、その余波は避けきれなかった。









 轟!! という音がして炎剣が床にぶつかり、お菓子の山が大爆発を起こして炎上する。
魔女の体に爆風が叩き付けられ、数十メートルはある巨体がぼろ布のように吹き飛んだ。


 怯んだ魔女にさらに炎剣が直撃する。




<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:15:35.73 ID:21a8Psf+0<>



 フランドールは狂笑を上げながら二度、三度炎剣を魔女に叩き付けた。
その度に大爆発が起き、炎が撒き散らされた。
魔女の部屋を崩壊させてしまうのではないかと思うほどの轟音と爆風。
まるで目の前でタンクローリーが吹き飛んだかのような衝撃。



 また爆炎が膨れ上がり、真っ黒なきのこ雲が天井へと昇って行く。



 それでも魔女が死ななかったのは、単に脱皮という再生能力を持っていたからに過ぎない。
普通の魔女なら既にグリーフシードすら残っていなかっただろう。











 破壊、破壊、破壊の嵐。一方的に加えられる暴虐。
この結界の主は蹂躙され続けていた。
なす術も無く魔女はやられ、まどかたちには止めることなどできはしなかった。

















「まどか! さやか! このままじゃ君たちの身が危ない。早く僕と契約を!」

 この期に及んで契約をキュゥべえは要求してくるが、二人には今のフランが止められるとは思えなかった。
下手に手を出したら一瞬で消し炭になるのは火を見るより明らかだったし、
そもそもこの無茶苦茶すぎる光景に二人とも頭がフリーズしいた。
何かを考える余裕はなく、ただ圧倒的な暴力という恐怖に震えていることしかできなかった。




<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:16:40.18 ID:21a8Psf+0<>





 魔女がほうほうの体で炎剣の連撃から逃れる。
だが、フランドールはそれを見逃すほど甘くなく、逃げる魔女の背に虹色の魔弾が集中的に撃ち込まれた。
魔女がまたノーバウンドで吹っ飛んで行く。








 フランドールは炎剣をぶら下げたままゆっくりと上昇し、ある程度の高さに留まると、
背中から生えた宝石を輝かせた。

 七色の宝石からそれぞれの色をした魔弾が飛び出し、前周囲に撒き散らされる。
それは、まどかたちの所にも襲ってきた。




「きゃあ!」




 悲鳴を上げてまどかとさやかがドーナッツの陰に隠れるが、弾幕が襲ってくるようなことはなかった。
<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:17:42.14 ID:21a8Psf+0<>  すぐ近くで爆竹が弾けるような音が連続している。

 恐る恐る顔を覗かせると、さっきまでマミの傍にいたフランの一人がこちらを守るように魔法陣を
展開していた。
その足元には、マミと……。





























 まどかとさやかはマミを見て我が目を疑った。
正確には、マミの傍にいる二人のフランを見て、だ。





二人のフランと魔法陣を張った三人目のフランは、それぞれマミの体に齧り付いていた。
咀嚼する訳でもなく、ただ噛み付いたままだ。





 まどかたちが戦いに目を奪われているうちに、このフランたちは何をしていたのだ?





 三人のうち二人の顔が血で真っ赤に塗れていた。
それがさらにフランの顔を狂ったものに映す。
<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:18:34.56 ID:21a8Psf+0<>





「い、いやぁ。もういやぁぁぁ」








 まどかは尻もちをついて後退りして泣き出した。
さやかはその場で硬直して震えるだけだった。















 もう耐えられない。もう嫌だ。ここは、おかしい。誰か、助けて……。
















「まどか!!」












「あ、ああ……」


 まどかが振り返ると、そこには息も絶え絶えのほむらの姿があった。










<> 1<>saga<>2013/02/14(木) 06:20:36.00 ID:21a8Psf+0<>



……いろいろやっちまった勘がしますが、まあ良しとします。

フランちゃんの行動、よく考えれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・


となっております。



(弾幕書くのムズイッ!!) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/14(木) 06:22:24.87 ID:doJNVdLTo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/14(木) 08:01:09.10 ID:JCQXyFGAO<> さすがQBぶれない
営業マンの鑑 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/14(木) 08:23:24.88 ID:v1M6z4mIO<> そこに痺れも憧れもしないけどな

そしてフランちゃんナーイス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/15(金) 20:46:28.74 ID:qttgJmg60<> マミさんは……”なっちゃった”んでしょうかねぇ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/16(土) 06:06:57.16 ID:nKzYc3OIO<> あぁ…相対的にマミッたか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/16(土) 22:16:58.69 ID:S+SJBdrU0<> 乙です

マミさん、某金髪婦警みたいになるのかな・・・? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage sage<>2013/02/17(日) 00:57:15.09 ID:SMYY1+Qg0<> 乙
暫くぶりに身にきたがマミさん生きていたか
何はともあれ生きてて良かった、良かった(棒)
まどかとさやかもフランが助けてくれて何よりだね(震え声) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/20(水) 15:47:59.74 ID:H/TFSQJt0<> もうすぐで一週間か……
流石にストックが切れたか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/02/20(水) 19:15:30.03 ID:T+8QpE1IO<> 続きを期待してます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/20(水) 19:28:36.02 ID:H/TFSQJt0<> >>833
なんでageてるんだよ……
>>1が来たと思って楽しみに開いたのに……

罰として今日から一週間、コイツを枕にして眠りやがれ

                  , '⌒ ~}         ヘ  ゝ
                 /    }          `、i
                /       }      へ、  i ',
               /         }         ヽ ハ ',
              /           }  / `ゝ    )', ',
             /             }ノ    /ヽ ソ  ', ',
            /               ノ     /_ノ   i i
        ん~,               /./     /ー- 、  i i
      /    }          / /       へ   \  i i
     /      }        /  /     /   ' 、  ∨/
   /        }       /               i   ' ;  
  /         }     /         _       l    ', 
/            }    / ,.`ヽ     イ ,r;.、`ヽ    :l    ', 
           ,}  / i ヾツ !        ゞ゙ン  |  ::l     ',
          人ノ     --ノ´       ヽ ._ 、   ::::l::::     ',
        /i {       ヽ  、         :::::l:::::.    ',
       /  l :{     _ ノ_ ,          :::::l::::::     ',
     /   l l::.',    { 、_,、丶         ::::::l::::::      ',
    /     l l::::\   冫ー 'ヽ、 __      .::::::::l:::::::       l
  /       l l::::::::::::≧、 ` ー__‐     .......::_::; イ::::::        l
./        l l::::::::::::::::l   ̄ 7¬==¬  ̄i ̄   l::::::       l
         l l:::::::::::::::::l   /:::::::::::::::::::::::: ' ' l    l::::::       l <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/20(水) 21:19:24.60 ID:PNRqkthk0<> 顔wwww <> 833<><>2013/02/21(木) 16:19:33.44 ID:+ueVLMIIO<> やってやろうじゃねぇか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/21(木) 19:33:38.61 ID:4h9pn8nIo<> ageんなって言われてんだろタコ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/25(月) 08:43:01.38 ID:mw0TXJZIO<> 保守 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/25(月) 18:13:11.11 ID:z88e4OuC0<> >>838
ここは一か月間保守しなくても平気ですよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/26(火) 07:49:47.01 ID:ELr72t4Zo<> 末尾IO
……ふーん
末尾IO <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/26(火) 08:35:35.09 ID:/+U8Qiy90<> >>840
何かあるの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2013/02/26(火) 15:29:38.41 ID:AeNyCmZFo<> 末尾に反応することによって自分は雑魚ですって言ってるんだよ <> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 13:58:23.45 ID:FD68hcNN0<>
こっそり登場


リアルが忙しくてしばらく放置してました。
すんません・・・・・

投下していきますね〜
<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 13:59:39.88 ID:FD68hcNN0<>






              *





 訳が分からない。それに、この空間は狂ってる。

 見た目十才にも満たない幼女が巨大な魔女を一方的になぶるなんて。
彼女は魔法少女?

 巴マミと行動を共にしていたからその可能性はある。
だけど、客観的に考えればそうだけど、昨晩のあの異常なプレッシャーは、
到底同業者の出したものとは思えなかった。

 あれは、あの時の感覚は、初めて魔女に襲われた時のそれに似ていた。
すなわち、人外の化け物に遭遇した恐怖。
<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:01:41.89 ID:FD68hcNN0<>



 彼女は、人間なのか?





 あの背中の不思議な宝石は、どう見ても人間のものではない。
あれ自体がソウルジェムと似たような働きをしている。
間違いなくこの世に存在するはずのない物質だ。











 ほむらは、フランドールの撒き散らす弾幕を避け、恐怖に怯えるまどかたちの元に駆け寄った。
可哀想に、まどかは腰が抜けて、後退りしていた。
その可愛らしいお顔はひどく恐怖に歪み、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。



「大丈夫。助けに来たわ」



 震えるまどかを優しく抱き留める。
今はとにかくこの子の安全確保が最優先だ。
あの狂人は後回しだ。
戦っても勝てるとは思えないが、あれが外で暴れたら大変なことになるのは間違いないから、
止めなければならないだろう。
<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:02:58.48 ID:FD68hcNN0<>


「ほ……ほむ……ほむ……ほむら、ちゃん」



 まどかはまともに呂律も回らないのか、ほむらの名前を呼ぶのにも苦労していた。

「大丈夫。行きましょう」

 まどかを連れて行こうとするが、まどかは首を振って動こうとしない。

「さやかちゃんと、マミさん、た……助けて」

 この状況でも他人を心配するまどか。
だが、今のほむらに三人連れて逃げること等できない。
せいぜい出来て二人だ。

 見ると、さやかはその場で硬直して銅像のように動かなかった。
その足元には水溜まりができていた。
本人は気が付いていないのか、その場で小刻みに震えるだけだった。

<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:05:26.55 ID:FD68hcNN0<>

 そして、巴マミの姿を探す。

















 居た。けれど、あれは……。














 ………………アケミサン………………。

















 その余りに惨たらしい姿にほむらは思わず吐きそうになり、口を手で押さえた。


 何が、どうなってるの?


 胴体の殆んどを抉られたマミ。
そこに三人のフランが群がり、そのうち二人はマミの首や腕に噛み付き、
残る一人は……傷口、丁度心臓や左肺があっただろう部分に両手と頭を突っ込んでいた。

 だが何よりほむらを戦慄させたのは、マミと目が合ったことだ。
その目には、生気があった。
死人特有の濁った目ではなく、まだ生きている者の目。






 魔法少女は、あんな姿になってもまだ生きていられるのか!!






<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:06:54.31 ID:FD68hcNN0<>






 理論上、間違ってはいない。
だがそれを感覚的に受け入れられるかと言われれば、そんなはずがなかった。
これではいつぞやにさやかが言っていた「化け物」と同じだ。
















「ソウルジェムガハイラナイワ」




「シカタナイワネ」




「ダイジョウブ。ナントカナルワ」














 三人のフランが会話している。異常過ぎる光景だった。





 状況が違えば可愛らしくも思えただろう。
だが、原形を失った人体を囲み、全身を血で真っ赤にして狂った笑みを浮かべながら話している姿は、
まさに悪魔そのものだった。


<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:08:29.50 ID:FD68hcNN0<>




 ふとまどかを見ると、気を失っていた。
それはそうだろう。
こんな状況で正気を保つためには、気を失うしかない。
きっと美樹さやかもそうだろう。








 巴マミは諦めるしかない。



 ズシィン、ズシィンと、腹を揺さぶるような地響きが伝わってくる。



 燃え盛る炎で様子は分からなかったが、その向こうではきっとフランドールが魔女を殴りつけているのだろう。
見なくて良かった。








 ほむらはのっそりとした動きでさやかの肩を掴んだ。

 さやかがゆっくりと振り向く。
意外なことに、彼女はまだ意識を保っていた。









「て……てんこう、せい」




「行くわよ」




 さやかの両脇に手を入れ、無理やり引っ張って行く。さやかは抵抗しなかった。
<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:09:41.59 ID:FD68hcNN0<>

「歩ける? まどかも連れて行かないといけないから、歩けるなら歩いてほしいんだけど」

「う、うん」

 さやかは小さく頷き、生まれたての子牛のようによろよろと歩き出した。




「ま、マミさんは?」

「助けられると思う? 私にはあいつらを止めることなんて無理よ。それに、あの傷じゃもう長くは持たない」


 さやかは反論しなかった。
いつもの意地っ張りで中途半端な正義感もここでは鳴りを潜めているようだった。


 早くここを離れよう。
ほむらがまどかを抱え上げ、さやかを促してこの場を離れようとした時だった。























<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:12:53.80 ID:FD68hcNN0<>































 ――――――――――――――――――――カツン――――――――――――――――――――――――――。














































<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:15:01.32 ID:FD68hcNN0<>























 先程までの魔女を殴りつける轟音や、燃え盛る炎の音に比べてそれははるかに小さいもの
だったが、その音にほむらは敏感に反応した。
気がつけば地響きも止んでいる。







 背筋が凍りつく。
全身から嫌な汗が噴き出し、体温が急に氷点下になった気がした。






















 それは……グリーフシードが落ちる音。







 魔女が居なくなれば、あいつらはどうなる? 
マミを喰らい尽くして、次は誰に目を向ける? 
その狂気は、どこへ向かう?










<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:16:28.45 ID:FD68hcNN0<>









 走らなきゃ。そう思うのに体が動かない。
それどころか、意志に反してゆっくりと首が回っていく。
























「キャハハ。マジョヲヤッツケタヨォ」




 爆炎を吹き飛ばして、破壊し尽くされた部屋の中からフランドールが現れる。





「コチラモオワッタワ」



「ソウルジェムヲトカスノニクロウシタケド、モンダイナカッタミタイ」



「ハジメテダッタケド、ウマクイッテヨカッタワ」










 残りのフランが戦っていたフランを迎える。
そして、四人のフランは一人に収束した。











<> 1<>saga sage<>2013/02/28(木) 14:17:47.70 ID:FD68hcNN0<>








「今治してあげるわ、マミ」










 その言葉と共にフランの片手が分裂し、そこから無数の黒い蝙蝠が現れた。
その蝙蝠は、マミの胴体に殺到し、瞬く間に彼女の血肉となった。
そうして、傷一つない、白い彼女の体が姿を現す。
同時に、フランの片手も生えて来て、元に戻った。












「やったぁ。元に戻ったわ」






 そう言って血みどろのまま無邪気に喜ぶフランドール。










 同時に結界が崩れ出した。
魔女がやられてしまったからだ。
そして、日の光が凄惨な少女の体を照らす。






















<> 1<>saga <>2013/02/28(木) 14:18:52.44 ID:FD68hcNN0<>



色々とヒドイwwwwwww




さやかェ………… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/28(木) 15:09:47.47 ID:xfB7JYOSO<> 乙
待ってた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/28(木) 16:58:49.55 ID:jLyR01ob0<> 乙
舞ってました
みんなたすかってよかったなー(棒)

次回からの投下もこれくらい間隔空きますか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/28(木) 20:11:12.18 ID:Oq21N3vr0<> 乙

人外驚異の治療法やね。凄いね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/28(木) 20:58:44.85 ID:8AXxzqj4o<> いつも*がアナルに見えて仕方がない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/28(木) 22:01:29.13 ID:BpWWlQIJ0<> 乙
マ、マミさん。い、生きていてよかったな…(震え声)
しかし、自分のこんな状態を知覚していて、よく精神崩壊起こさずにSGが濁らなかったな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/01(金) 00:02:01.24 ID:Mp2xU68AO<> 乙
シャルすごい耐久力だったな…
暴走状態の妹様相手にここまでもつなんて <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/01(金) 00:59:10.75 ID:Z6RedNoo0<> >>861
ヒント:それでも弱体化 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/01(金) 13:46:07.19 ID:p3CSFauXO<> ほむらちゃん優秀 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/02(土) 22:59:40.14 ID:y42r3n5n0<> もしや、このまま
黒翼ほむvs暴走フランちゃん、な展開になったりして <> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:47:34.02 ID:csFbEpyV0<>
誰も青い子のおもらしに触れないのね><

>>857
リアル事情によってかわってくるともいます。今月と来月も忙しい時があるので……

>>859
つ箱ティッシュ

>>860
ご都合主義という・・・・・

>>861
よく考えれば・・・・・・
ヒント:魔女が死ねばフランちゃんはどうなるのか、それによってどんな不都合が起きるのか

>>863
ほむほむは優秀です。
さすが俺の嫁ドヤァ <> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:52:01.81 ID:csFbEpyV0<>




                *
               (|)
                ・





「ぎゃああああああああああああああ!!」


「熱いぃぃ」




 恐ろしい叫び声を上げてフランがのたうちまわる。同時にマミも。


 二人の体から、白い煙が出ていた。
いや、もっと言えば、フランとマミの体は焦げていた。肌がだんだん黒くなり、崩れていく。




 もうほむらの頭は一杯だった。
事態は完全に彼女の理解能力を超越し、理解しようとする気も失せた。
<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:53:19.74 ID:csFbEpyV0<> 「ん……あれ?」

 悲鳴を聞いたまどかが覚醒する。





「ほむ……マミさん!」

 まどかも現在進行形で焦げていく二人を認識したらしい。
だが、近付こうとはしなかった。
信じられないようなものを見る様な眼で二人を見つめるだけだった。






 フランとマミは、そのまま地面を這うようにして、自転車置き場の雨避けが作る陰に入っていく。
陰に入ると、マミの体はみるみるうちに修復していった。
既に変身が解け、制服姿になったマミが自分の両手を見る。
そして、傍らで苦しそうに浅い呼吸を繰り返しているフランを見下ろす。



「フラン!!」




 マミが声を掛けると、フランは目だけを動かしてマミを見た。
そして、小さく口元を引きつらせる。
<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:54:13.09 ID:csFbEpyV0<> 「マ……ミ……。よ、かった。パー、ティ、しなきゃ……ね」

「フラン!! いや! 死なないで」

「死なない、よ。ちょっと、回復が……遅いだけだから」






 それを見て、ほむらは意を決して二人に近付く。







 あの幼女は危険だ。
だが、何故か知らないが弱っている今なら倒せるかもしれない。
マミには悪いが、ここで始末する。












 ほむらは変身を解かず、左腕に装着された盾から拳銃を取り出し、装填しながらマミとフランの
傍に立った。
<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:55:57.25 ID:csFbEpyV0<>





「あけみ、さん?」

 ほむらに気付いたマミが顔を上げるが、それを無視して彼女は無言で時を止める。









 時間がすべて停止した世界。黒光りする拳銃をフランに向け、躊躇なく引き金を引いた。



 一発、二発、三発……十発撃ち込み、時間停止を解除する。








 そして、












 ガキン、という音がしてすべての銃弾が弾かれた。
それに驚愕し、思い切り目を開くほむら。
全く意味が分からない。
何故? という思考がほむらの頭を埋め尽くす。




 実際、ほむらだけでなく、さやかやまどか、近くで見ていたマミにすら分からなかった。




 何が起こったのか分かっていたのは、フランとキュゥべえだけだった。
<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:56:55.71 ID:csFbEpyV0<>

「何、が?」



 動揺のあまり、一歩下がるほむらに向かってフランは嘲笑を浮かべた。


「ばーか。あなたの……種なし手品のトリック、は、とっくに分かってる……のよ」


 さらに強い動揺がほむらに走る。
そして戦慄する。その言葉の意味を理解して。







 まさか……そんなはずは……。







「何? どういうこと?」


 隣で状況を理解できていないマミが首をかしげる。
黄金の瞳が忙しなくフランとほむらの間を行き来する。





<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:58:14.65 ID:csFbEpyV0<>


「フランドール・スカーレット」




 不意にキュゥべえがは口を挟んだ。











「君は、やっぱり人間じゃない。
この世界で、とうに忘れ去られた存在。
この国の言葉で言えば、君は妖怪――それも、吸血鬼という種族だ」












「ええ!?」

「き、吸血鬼?」

「な……」




 三者は驚愕する。
だが、先ほどの狂気に染まった空間を思い起こせば、それもあり得ないことではない。





 なぜなら、フランドールはマミの体に直接齧り付いて、血肉を啜っていたのだから。







 それに対し、フランは鼻で嗤っただけだった。



<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 02:59:12.80 ID:csFbEpyV0<>


「今さら、気が付いたの? 遅過ぎる、わね」


「君に関しての情報が少な過ぎたからね。
その上マミも抱き込んでいただろう? 手掛かりは殆ど無かったよ」


「そう。ま、そんなこと、どうでも、いいわ」


「君は危険だ。さっきの君は、完全に狂人だったよ」


「だから?」


「自覚があるのかい? なら、尚のこと君を何とかしなければならないね」


「この場にいる、吸血鬼は、私だけじゃないわ」





 え!? と全員が反応する。









<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 03:00:23.17 ID:csFbEpyV0<>
 そして、フランはマミのほうを向いて、打って変わった態度で、すまなそうに謝った。
















「ごめんなさい、マミ。












あなたを、助けるために…………あなたを眷属にしちゃいました」












 顔を伏せるフラン。マミは、恐る恐るフランの両肩を掴み、確かめるように尋ねた。



「どういう、こと?」




 フランは、顔を上げ、マミの目を見る。








<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 03:00:56.52 ID:csFbEpyV0<>


























「あなたは、吸血鬼になったのよ、マミ」
















<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 03:02:04.51 ID:csFbEpyV0<>




                    完











ふぅ、やっと終わったお。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 03:03:25.33 ID:vB3LDwVMo<> えっ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 06:07:00.53 ID:9TKOE6acO<> どういうことだってばよ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 08:03:10.71 ID:4lhJO+Gg0<> 乙でした……が、>>1よ……>>866ではっちゃけ過ぎだ(誤爆?)
SGがどのようになっているか期待半分不安半分

>>876>>877
「勝ったッ!第3話完!」ってことでしょwwwwww
……ですよね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 08:07:37.28 ID:4gPmRjy20<> 乙
レミリアは相手を眷属にできないほど少食だけどフランにはそう言った描写は無いし、
殆ど血を失ってるマミさんだったら血を吸い尽くして吸血鬼にするのも不可能じゃないよね

まぁ、魔法少女の時点で既に体はゾンビみたいなものだったから気にすることはないと思うよ(棒) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 12:07:34.56 ID:qtbc7rpF0<> 乙乚

>>865
さやかちゃんの水溜りは泣き過ぎたかまた吐いていたのかと思ってたから特に触れなかった <> 1<>saga <>2013/03/03(日) 13:16:31.70 ID:csFbEpyV0<> あ、第一章完という意味です。

次から第二章に入ります。
みんなの大好きなあの人も登場します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 13:18:56.34 ID:0GYy5a07o<> すげえびっくりしたわ、まだ続くのね
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 13:22:57.67 ID:qtbc7rpF0<> つまり新スレですね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 15:55:51.12 ID:j799CBsAo<> なんだ脅かすな
完結目指して頑張ってくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 18:58:02.98 ID:4ln0GfqM0<> 乙

誰も欠けることは無かったけど、心の傷が深刻だね
しばらくの間、気まずい関係が続きそう・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 19:50:32.71 ID:0dVXn1Sr0<> まどマギ終了後が楽しみなマミさんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 20:58:08.68 ID:iXx5r+JCo<> >>865
ほ、ホモじゃないやい! <> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:10:45.41 ID:csFbEpyV0<> なんかびっくりさせてしまったみたいでごめんなさい。
長かった第一章が終わって変なテンションで書きこんだら誤解を招くような表現になってしまいモスた。

>>879
獲物の血を胃袋に入れるのと、眷属を作るのはまた違うと思ってその辺りの設定は考えています。
(フランも小食じゃない?)

>>882
まだまだ続きます。
まだ起承転結の起です。

>>884
失礼しました。
今は長すぎて途中で飽きられないか心配です。


区切りがいいので、ここらで今までのあらすじを書いておきます。 <> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:27:45.11 ID:csFbEpyV0<>

〜〜〜あらすじ〜〜〜



 ひょんなことから、幻想郷から見滝原に飛ばされてしまった妹系ロリ吸血鬼のフランちゃん。
そこで魔法少女のマミさんと出会って、マミさんのお家に居候することに。
マミさんのお家にはキュゥべえという魔法の妖精さんが居て、「魔法少女、やらないか」と誘われたけど、
先にコワ〜い魔女のことを知っておいた方がいいと思ったフランちゃんは丁重にお断りしました。
それからマミさんと一緒に魔女退治に行ったり、マミさんの後輩のまどかとさやかと出会い、さらに
謎の魔法少女ほむほむとも遭遇。
マミさんとほむほむはなんだか仲が悪い様子。ほむほむはマミさんとフランちゃんを脅してきました。
その危機を乗り越え、マミさんとキャキャウフフしていたところに、まどかが慌ててやってきました。
「さやかちゃんが大変!」と訊いて、慌てて病院に行くとそこには恐ろしい魔女が・・・
まどかの決心とフランちゃんの想いを聞いたマミさんは、今までにないくらいいい調子で使い魔をやっつけ、
魔女を倒しかけます。
が、その時魔女の反撃が!!





あわやというところでフランちゃんがマミさんを助け、吸血鬼パワーで魔女をやっつけました。
めでたしめでたし






このお話は、東方のフランちゃんとまどマギのマミさんがチュッチュする、心温まるハートフルコメディです。










<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:28:27.24 ID:csFbEpyV0<>







第二章









<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:29:57.05 ID:csFbEpyV0<>








                  *








「三番線、列車の扉が閉まります。ご注意ください」

 想像していたようなけたたましいベルの音ではなく、電子音のちょっとしたメロディーが鳴る。
さほど耳に煩い音ではない。
人間は、環境に配慮するぐらいは賢くなったということか。







 灰色のプラットホームから何人かが走りながら金属の箱に飛び込んだ。
間髪入れず空気が抜けるような音がし、バタンとドアが閉まった。

 モーターに電気が流れ込み、電車はゆっくりと動き出す。
最新式のシルバーの車体は静かなものだ。
現代社会は音に敏感なようだ。
まるで滑るように振動も無く電車は走り出す。


 ホームを抜け出し、複雑に線路が入り組む交換線に入る。多少揺れながら、さらに進む。

 そこを抜けると徐々に加速し始めた。景色が後方に飛んでいく。
時折対向の列車とすれ違い、時に駅を猛スピードで通過する。
<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:30:57.77 ID:csFbEpyV0<>






 窓ガラスに移る車内を見ると、背後で何人かがこちらをちらちら見ているのが目に入った。
制服を着た学生や、スーツ姿のビジネスマン、お洒落な私服の若い男、地味な服装の老婆と中年の女のグループ。
いろんな人間たちがこちらを見ている。


 特に気にはならない。目立つのは承知の上。むしろ、こちらは目立ってなんぼだ。
流石に警察に話しかけられると厄介だが、その時はその時だ。







 窓ガラスに映る自分の姿を見つめる。
反射した感情が伺えない冷たい目と視線が交差する。
自分でも陰気な顔をしていると思う。
その上この格好だ。好奇の目で見られるのも仕方ない。


<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:32:05.11 ID:csFbEpyV0<>


 青いメイド服に白いエプロン。スカートはひざ丈。袖は半そで。
白のブラウスに、同じく白いフリル付きのカチューシャを装備。

 銀色のボブはややくすんでいて光沢は鈍い。
両方のもみあげを短い三つ編みをリボンで縛るという珍しい髪形をしている。
伊達眼鏡を掛けて、顔の印象を分からなくしている。




「何あの人、コスプレ?」

「コスプレかなぁ? ガチっぽくない?」

「え? ほんとにメイドなの?」




 聞こえていますよお嬢さん方。




 背後にいる二人組の少女がひそひそと喋る。
当人たちは聞こえないように小声で喋っているつもりだろうが、耳の良い私にはよく聞こえる。


<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:33:01.47 ID:csFbEpyV0<>

 目立つのは容姿ばかりじゃない。持ち物だってそうだろう。



 大きなスーツケースに、“柄の形が特殊な”蝙蝠傘を持っているメイド姿の少女。
これを奇抜と言わずしてなんと言うのだろうか。









 がくんと車体が揺れる。急なカーブに差し掛かったのだ。








 その時、背後の人が立った。







<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:34:17.11 ID:csFbEpyV0<>





 いや、人ならさっきからずっと後ろに立っている。
だが、今私の背後に立った人――くたびれたスーツを着た中年の男――はやけに近いのだ。
今しがた、カーブに入り車体が大きく揺れたので、その時にさり気なく私の背後に来たのだろう。


 そう言えばこの国では窮屈な空間の中で女の体を触る「痴漢」という変態行為が流行っているらしいが、
どうもこの男はそれが目的ではなさそうだ。
気配が良くない。顔色も――私が言えたことではないが――暗い。
今にも死にそうな雰囲気だった。
世の中のすべてを恨み絶望し、自殺をしようとする人間の顔は、この男のようなものなのだろう。






 絡まれたらどうしようか。


























 私はそんなことを考えた。
彼の、首筋にある見たこともない不気味な……タトゥーのような模様に目を向けながら――――。










<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:35:24.41 ID:csFbEpyV0<>





 あれは通常では決してできないもの。
この男がタトゥーを彫るようにも思えない。
それにこの男からはかすかに魔力の匂いがする。
しかも、よく嗅ぎ慣れた匂いだ。
狗だけあって、嗅覚には自信があった。


















 電車のガラス越しに男が懐からカッターナイフを取り出したのが見えた。




 カチチという小さな音がして、刃が出される。
男の目は完全に正気を失っていた。
ただ何かによって狂わされ、壊れた機械のように暴走し出す。
















 ――そして、男は刃を出したカッターナイフを振り上げた。
何事かと、周囲に居た他の乗客たちが振り向く。





















<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:38:48.03 ID:csFbEpyV0<>






 カチッ…………。















 挙手をしたような格好になった男は、思わず挙げていた方の自分の手を見つめる。




 ――――手には何も握られていなかった――――。




 不思議そうな顔をした男は、周囲を見回すがあるはずの物は見つからなかった。
目の前の奇抜なコスプレ少女以外の乗客たちが、迷惑そうに男を見る。




<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:40:06.57 ID:csFbEpyV0<>



 そうこうするうちに、電車は減速し、駅に到着した。
優等列車が停車するそこそこ大きな駅だ。
どうやら、別の路線と合流する場所のようで、人の流れが激しい。



 ドアが開かれ乗客が押し出されるように車外に出る。
メイド服の少女も降りる人の流れに乗り、電車から出るがすぐにドアの脇に寄り、人の流れから身を躱した。

 少女の後ろにいた男も電車を降り、そのままふらふらとホームの反対側に歩いて行く。



 ホームを挟んで反対側の線路へもうすぐ列車が到着することを知らせるアナウンスが聞こえた。
忙しない場所だ。


 メイド服の少女は降車客が居なくなると、乗車客と共に電車に乗り、元いた位置に戻った。
<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:41:12.95 ID:csFbEpyV0<>



 男を目で追う。





 彼はホームの端まどたどりつくと、躊躇することなく反対側の線路に飛び降りた。
その周りにいた何人かがギョッとしたように彼を見て
……ああ、彼らは可哀想なことに、一生残るであろう残酷な記憶をその脳に刻みつける羽目になってしまった。





 けたたましい警笛と金属同士が擦れる不快な音が鳴り響き、そこに電車が走って来た。



 ――ドンッ――。





 悲鳴、ブザー音、警笛、絶叫。




 電車はすぐに止まれない。
そのまま男の体を何度も巨大な鉄輪で踏み潰し、衝突から数秒遅れてやっと停止した。



 パニックになった人々はただ叫ぶだけ。




<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:42:31.31 ID:csFbEpyV0<>  何が起こったか見ていなかった人々は、戸惑いながら騒ぎの方向に振り返る。


 すぐに駅員が現れ、人々を宥めすかす。
年輩の駅員は随分と手慣れているようだった。
落ち着いた動作には戸惑いも躊躇いも無い。
こういうことは何回も経験しているのかもしれなかった。




 その間、少女は表情を変えることなく一部始終を眺めていた。
周囲の人々が非常事態に混乱しているのに、彼女は顔色一つ変えずただ観察を続けるだけ。
はっきりとそこだけ浮いていたが、誰も気にしなかった。





 なるほど。やはりあれはそういうものなのね。







<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:43:44.71 ID:csFbEpyV0<>


 少女は一人納得し、懐に仕舞ってあるカッターナイフに触れた。











 これはあの男の遺品である。
何かの力に操られ、自ら命を絶ってしまった哀れな男の残した忘れ物である。
きっと、誰もこのカッターナイフのことを覚えていないだろう。
その本来の持ち主はいなくなってしまったし、それを気にする第三者もおるまい。



 故にこのカッターナイフは幻想の住人になる。



 だから少女はこのカッターナイフを持つ。



 彼女もまた、幻想の住人なのだから。










 それから電車は、反対側のホームで起こっていることなど見て見ぬふりをするかのように出発した。





「次は終点見滝原。見滝原。この電車は次の駅までです」







 車掌がアナウンスした。その声には些かの動揺も無かった。













<> 1<>saga <>2013/03/03(日) 22:48:19.83 ID:csFbEpyV0<>

という訳で第二章が始まりました。
第一章までは、フランとマミに焦点があてられていましたが、第二章からは登場人物も増え、
焦点もマミやフラン以外に当てられていくことになります。



それはそうと、皆さん電車への飛び込みはやめましょう。
こないだもJRが人身事故で遅れて大変だったんですからね!!





































???「ロード・レミリアの名に誓い、すべての不義に鉄槌を」









<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 22:50:53.72 ID:4gPmRjy20<> 乙
ついにハートフル物語第二章が始まりましたね(棒)
どんな平和な日常が書かれるのか楽しみだなぁ(震え声) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/03(日) 22:54:53.99 ID:LVSt/2hX0<> 偽乳特戦隊結成k(ry <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/04(月) 12:06:48.69 ID:d0PCt95F0<> 咲夜さんのほぼ無制限時間停止にほむほむまたも涙目?
>>1さんに好かれ過ぎるってのも大変だねぇ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/04(月) 14:12:28.03 ID:b6p2BfYT0<> さくほむバトル中のヤムチャ視点さやか「い、一体何が起こってるって言うの……?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/05(火) 08:46:55.90 ID:L/Ce16F90<> 乙でした
あらすじェ……
そういえば、さやかってこの後どうやって帰宅したんd(ry

>>904
さっき瀟洒なメイドと黒髪の中学生が「屋上に来てくれ」って言ってたぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/05(火) 09:03:23.40 ID:4PxnXumT0<> 乙です
おかしいな……、咲夜さんに別のメイドがダブって見える……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/06(水) 01:37:15.78 ID:Oh7OLj0AO<> 咲夜さんが女ターミネーターメイド長に思えたのは気のせいだよなw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/06(水) 01:49:18.18 ID:YIJzpyo6o<> どう考えてもフローレンシアの猟犬さんとかぶるのですが… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/06(水) 07:31:32.40 ID:wxfgWPqTo<> しかしメガネ装備咲夜さんか……
……いいな <> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:41:34.78 ID:Uai6Tunb0<>
こんばんわ!
何故か知らないけど皆さん、電車乗ってたメイドの方を398って呼ぶんですよね〜
言った記憶ないのに・・・・・




>>904
なんてことを……
ご冥福をお祈りします。


>>905
それ以上に涙目なキャラが出(ry


>>906
ヤムチャ言うなwww


>>908>>909>>910
参考画像??
http://fc01.deviantart.net/fs24/f/2008/002/4/2/Roberta_by_jerremy7.jpg


>>911
そこに気が付くとは・・・・・
今度飲みに行きましょうw


<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:42:55.76 ID:Uai6Tunb0<>




                *







 昼休み。




 まどかとさやかの二人は学校の屋上に来ていた。
だが、二人の手元に昼食は見当たらない。
二人は、食べるためにここに来たのではなかった。



 なんとなく、静かな場所に居たかったから。



 階下では、生徒たちが元気に、楽しそうに笑いあい、おしゃべりしている。
そこに、本来居るべきはずの人が一人居なくても、彼ら彼女らはいつも通りに過ごすだろう。
何も変わりなく、何かが変わったことを知ることもなく。


 だから、学校が自分の知らない、どこか遠くにあるような気がした。
ここは自分たちのなじみのある学校で、今現在も昨日と同じように通っているというのに。


<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:44:36.92 ID:Uai6Tunb0<>


 空は抜けるような碧さで、気持ちが良くなるくらい晴れていた。
むしろ、何でこんな時に晴れているんだろうと、憎らしく思ってしまうような快晴だ。
雨や曇りが好きな訳じゃないけど、今の自分たちにはふさわしくない天気だ。





 お空はブルー、心もブルー。同じブルーなのにどうしてここまで違うのかな?






 二人は屋上のベンチに座って呆けていた。
まどかはただ空を見上げ、さやかはその辺に視線を漂わせていた。




「何か……違う国に来ちゃったみたいだね」まどかがポツリと漏らす。
「学校も仁美ちゃんも、昨日とは全然変わってないはずなのに、何だかまるで、知らない人たちの中に居るみたい」





「知らないんだよ、誰も」






 ひどく平坦な声でさやかが答える。

「え?」

「魔女のこと、マミさんのこと、吸血鬼のこと、あたしたちは知ってて、他のみんなは何も知らない。
それってもう、違う世界で、違うものを見て暮らしているようなもんじゃない」

「さやかちゃん……?」

 さやかなりに昨日のことで思うことがあったのだろう。
普段のうるさいぐらいの元気の良さは鳴りを潜め、ただ淡々とさやかは語る。

<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:46:09.32 ID:Uai6Tunb0<> 「とっくの昔に変わっちゃってたんだ。もっと早くに気付くべきだったんだよ、私たちも」

「う、うん……」





「まどかはさ」さやかがまどかの方を向く。
「今でもまだ、魔法少女になりたいって思ってる?」





「ん……」

 さやかの問いに答えられず、まどかは視線を反らす。

 それを見たさやかも同じように視線を足元に落とした。

「……そうだよね。うん、仕方ないよ」

 そう言ってまどかの肩に手を添える。


 その華奢で細い肩は小刻みに震えていて、さやかはそっと手を離した。






「ずるいって分かってるの……今さら虫が良過ぎだよね。でも……無理……」






 まどかの声は震えていて、目から大粒の雫が零れ落ちた。


「私、あんな目に遭うの、今思い出しただけで息が出来なくなっちゃうの。怖いよ……嫌だよぅ」



 泣き出したまどかを、さやかは優しく抱いてやる。


<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:47:36.13 ID:Uai6Tunb0<>




 フラッシュバックするのは、あの時体を抉られたマミの無残な姿。
むせ返るような血の臭いとともに強烈に頭に刻み込まれていた。
笑うフラン、爆発する魔女、血まみれのマミ。



 見ているだけで頭がおかしくなりそうな狂気の空間。
よく五体満足で帰ってこれたと思う。
だけど、その代償に私たちは心に傷を負い、マミさんは……人ではなくなった。

「マミさん、ごめんなさい。本当に優しい人だった。命を助けてもらった。なのに、私は……」












 あなたを見捨てようとしました。













 あの時、あれだけの傷を負って尚こちらに助けを求めるような目を向けて来るマミから、
さやかは逃げようとした。
あれじゃ絶対に助からない、そう判断し、勝手に諦めた。


 あの時の目が忘れられない。あの、救いを求める目が。




<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:49:02.89 ID:Uai6Tunb0<>


「ねえ、キュゥべえ」

 さやかは少し先でこちらを眺めているキュゥべえに声を掛けた。

「マミさんは、どうなっちゃうのかな?」

「何とも言えないね。
もしフランドールの言う通り、マミが本当に吸血鬼なる存在に変わったのだとしたら、
もう彼女は日常生活を歩むことは出来ない。
君たちも見ただろう? 日の光を浴びて煙を吹くマミの姿を」


 そう。あの時、マミの肌は黒く焦げ、煙を吹いた。
日焼けというレベルではない。完全な重度の火傷だった。




 吸血鬼は、日光に弱い。夜の怪物だから。





 マミは、もう人間ではなく吸血鬼だったのだ。
理解しようとしても、出来るはずも無かった。










 思えば、不自然な所は幾つもあった。

 フランドールは、日があるうちは必ず傘を差していたし、そもそもあの子の背中に生えていたあれは、
人間の物とは思えない物だった。




 そのフランドールに、噛まれたのだ。吸血鬼になってもおかしくはない。




<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:50:36.07 ID:Uai6Tunb0<>

「もう、戻れないってこと? マミさんは、魔法少女として戦えないってこと?」

「それも分からないね。
吸血鬼はどうやら強い力を持っているみたいだ。
フランドールが魔女を一方的に攻撃し続けたように、マミも吸血鬼として大きな力を手に入れ、
魔女と互角以上に戦えるかもしれない。
だけど、これはあくまで可能性の話だし、そもそも昼間は外に出歩けない彼女には、少々厳しいかもしれない。
ソウルジェムが無くなれば、魔女を探すことすら叶わなくなるからね」

「もし、マミさんがもう魔女と戦えなくなったら、この町はどうなるの? 
マミさんの代わりに、これから誰が魔女から護ってくれるの?」

「長らくここはマミのテリトリーだったけど、空席になれば他の魔法少女が黙ってないよ。
すぐにも他の子が魔女狩りのためにやって来る」

「でもそれって、グリーフシードだけが目当ての奴なんでしょ?」

「確かにマミみたいなタイプは珍しかった。
普通はちゃんと損得を考えるよ。誰だって報酬は欲しいさ」

「じゃあ……」

「でも、それを非難できるとしたら、それは同じ魔法少女としての運命を背負った子だけじゃないかな」




 はっと気が付く。





 キュゥべえの言ったことは正論で、二人には反論の余地すらなかった。
<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:52:16.59 ID:Uai6Tunb0<>
 結局マミのやっていたことはただのボランティアであり、それを無理強いする権限など二人には無い。
あの時、マミを助け出そうとしなかったから、尚更だ。





「はぁ、君たちの気持ちは分かった。
残念だけど、僕だって無理強いは出来ない。
お別れだね。
僕はまた、僕との契約を必要としてる子を探しに行かないと」



 キュゥべえは残念そうな、そうでないような声で言う。
その表情はいつもと変わらず、真意は定かではない。




「ごめんね、きゅべえ」

 さやかに抱かれたままのまどかが謝る。
もう泣いてはいなかったが、つらそうに眼を閉じている。



「こっちこそ、巻き込んで済まなかった。
短い間だったけど、ありがとう。
一緒にいて楽しかったよ、まどか」


 そう言って、白い魔法の使者はこちらに背を向け、歩き去っていった。














「ごめんね」















 まどかはもう一度、心から謝罪した。















<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:54:00.88 ID:Uai6Tunb0<>



 ふがいない。情けない。




 あれだけマミを持ち上げておいて、いざ現実を知ると怖気づいてこの様だ。
マミと一緒に戦うという言葉を、まどかは自分の手で嘘にしてしまった。






 結局、自分は何も見えていなかった。
魔法少女の、光の部分しか見ていなかった。
影の部分から目を反らし、それについては考えていなかった。
覚悟なんて、初めからしていなかったのだ。



 今ならほむらの忠告も身にしみる。
魔法少女は、部活感覚で始めるものじゃなかった。














 マミは死ななかった。代わりに人間ではなくなった。







 魔法少女、魔女、吸血鬼。



 異形の者が、非現実なモノが、これほど身近にいるとは思いもよらなかった。
マミは結局その中から人間に戻ることは出来なかった。
これから先、どんな顔をして会えばいいのだろう?
















<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 00:57:59.42 ID:Uai6Tunb0<>
今日はここまで!


この辺は4話と同じ。
3話の展開が違うので、それに合わせてセリフは多少変えてあります。

これから先もしばらく4話と同じような展開が続きます。



何気にさやか視点は初めて???




何はともあれ、これからしっかりまどマギをやっていきたいと思います。
テンション上げていきましょう↑↑

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 02:41:21.80 ID:u17ypSo9o<> シリアス路線のまどマギssって時点でテンション↓だよ
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 04:53:51.52 ID:wIL7znLt0<> 乙です
しかしやけにあっさりキュウべぇが退いたな。
それほどにまどか達が魔法少女になりそうにないのか、まだ何か企んでるのか……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 08:16:53.17 ID:JI8Lvm96o<> べぇさんの行動はほぼ原作と同じだけど心境は多少違っているかもしれんね

あと>>1乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 09:31:52.57 ID:xpB9M8gDO<> 久しぶりに来たらえらいことになっとるwwwwww
まさしくハートフル(ボッコ)ww
格が違い過ぎてハッピーなんだかバッドなんだかワケワカメwwwwww



それとどーでもいい事なんだけど、電車が人身事故やらかしたら反対側だろうと全列車運行停止します。
二次災害起こしかねないし、轢かれた人が生きててる可能性もあるので、寧ろ勝手に走って行ったら方が大問題になります。

大問題を起こしたいとは微塵も思わないので線路への飛び込み、無理な横断は絶対にやめましょう。
以上、鉄道会社の中の人よりどーでもいい一言でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 13:00:19.97 ID:YJWlDFWK0<> 乙

>>921
>>382 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 19:27:51.21 ID:l5HjIZdd0<> マミさんは背中からドリルヘアーでも生えるんですかね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/03/07(木) 20:38:54.56 ID:DnSnxjMv0<> マミさんのソウルジェム無くなってもうたん? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 21:17:19.68 ID:l5HjIZdd0<> 溶かしたつってたからなー。形は魂に戻ったんじゃね? <> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:29:20.98 ID:Uai6Tunb0<> 乙乙


なんかいろいろミスってるみたいで恥ずかしい|彡サッ!


>>925
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ミスったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!


失礼しました。
島型ホームだからいいのかなぁって思ったけど、止めちゃうんですね。
遭遇したことないので想像で書いちゃいました><
脳内修正おねーしゃっす

書き直しておかないと・・・・・・

>>926
忘れてた(´・д・`)
ワロスwwww

ワロス・・・・・・・・



さやかちゃんごめんお(視界の端に青い影)


>>927
コーヒー吹いたwwwww
別の意味で化け物だわwwww <> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:33:07.13 ID:Uai6Tunb0<>





                   *







 巴マミと書かれた表札の前に立ち、インターフォンを押す。


 返事はない。辺りは不気味なほど静まり返っている。
街の喧騒がずいぶん遠くに聞こえた。




「マミ……さん……? いますか?」





 恐る恐る声を掛けるが、やはり返事はない。

 居ないのか、あるいは出たくないのか。

 恐らくフランも一緒のはず。昨日、二人はあれから傘を差して帰っていった。
吸血鬼は夜行性なのだから、太陽が出ている今はまだここに居るはずだが。

 ひょっとしたら、今にもフランが狂笑しながら壁を突き破って飛び出してくるかもしれない。
ふと、そんな想像が頭をよぎって、まどかはかぶりを振った。そんな想像、してはいけない。



 確かに昨日のことは恐ろしかった。いや、そんな言葉じゃ言い表せない程の恐怖だった。
あんな狂い切った空間に居るなんて、もう二度とごめんだ。
だけど、同時にフランをそんな対象に見るのも嫌だという気持ちも強かった。







 フランのしたことは、結果はどうあれ、マミを助け、悪い魔女をやっつけたのだ。
あの小さな体にあれだけの力があったことは驚きだが、魔女や魔法少女を知った今は吸血鬼が居ると
言われても、頭ごなしに否定する気は起きなかった。





<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:35:06.76 ID:Uai6Tunb0<>

 グロテスクで、悍ましい光景。
昨日の今日で、忘れられる訳がない。
今でもあの時の魔女部屋がフラッシュバックする。



 自然、まどかの片手がその口元に行く。
胃の中身を吐きそうになって、懸命にそれを戻した。
喉の奥が焼けるような痛み。
でも、マミが味わった痛みはこんなものじゃないはずだ。




 結局、自分は臆病で優柔不断な性格なんだ。そうまどかは思う。
あの時契約すれば良かったのだ。
マミを助ける方が、ケーキなんかより余程役に立つ願い事だった。
そうすればフランがあんなふうに壊れることは無かったし、マミが吸血鬼になることも無かった。
それで万事円満に解決。誰も泣かないし、まどかは自分の望みを叶えることができた。
魔法少女になれるのだから。






 だけど、その選択をしなかったのは他でもない、自分自身だ。








 こんな様で、誰かの役に立ちたいなんて、いったいどんな顔で言っていたのだろう? 
情けない自分に腹が立つし、とても恥ずかしい。
でも、本当に怒るべきはまどかではない。

 本当にまどかを責める権利があるのは、自分が裏切ってしまったあの人だ。
今も、この扉の向こうで苦しんでいる先輩だ。













「最悪だ。私」








 ぽつりと、誰にも聞かれない呟きが漏れる。






<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:36:24.27 ID:Uai6Tunb0<>



 なんて言って謝ればいいのだろう? どうやって償えばいいのだろう?






 今のまどかにできることは一つ。奇跡を起こせばマミは元に戻るに違いない。


 だけど……、





「何で……」







 こんなにも心が震えている。あの恐ろしい光景が蘇って来る。


 使い魔より遥かに恐ろしい紅蓮の炎と引き裂かれた真っ赤なマミの体。
甲高く響き渡る狂気の笑い声と耳をつんざくような爆音。
鼻腔を満たす血の臭いと何かが焼ける異臭。
火傷するんじゃないかと思うほど熱い爆風が肌を焼き、口の中の水分はすべて消え失せ、
代わりに誰かの血の味がする。


 昨日の恐怖はまどかの五感に刻み込まれてしまっていた。
だから、どうしても心が、体が怯える。



 まるで、まどかの決心を揺るがすように。




<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:37:52.41 ID:Uai6Tunb0<>





「何でよッッッ!!」








 どうして躊躇うの? どうして逃げようとするの?





 怖い。でも、魔法少女なら、それを乗り越えられるはずなのだ。
だって、魔法少女だから。希望の担い手だから。みんなを守る正義の味方だから。




 恐怖なんかに負けたりはしない!!







 だというのに、どうして一歩を踏み出せないの? 












 昼休みが最後のチャンスだったのかもしれない。だけど、キュゥべえは去ってしまった。



 まどかは、泣きそうになるのを堪えて、しばしマミの部屋の前で佇んでいた。


 けれど、そろそろ帰らないといけない。それに、返事もない。
そんな暇はないのか、あるいはこんな自分とは話したくないのか。
目の前の扉の向こうからは、一切の反応がない。











 やがて、まどかは踵を返して帰ろうとした。
だがその時、不意にインターフォンがしゃべり出した。






<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:39:18.15 ID:Uai6Tunb0<>


「まどか?」






 声の主はフランだった。
昨日よりだいぶ落ち着いているみたいだ。
心なしか、疲れているようにも聞こえる。


「フランちゃん?」


 慌ててインターフォンに近寄るまどか。
返事があった以上、一刻も早く二人の状態を知りたかった。



「マミは、寝ているわ」

 フランは、まどかの目的を察したのか、素っ気無くそう呟いた。
その様子に、昨日のような狂気は伺えない。
むしろ、落ち着いていて、理知的な雰囲気がする。
これが普段の彼女なのだろうか? 

「大丈夫なの?」

「うなされているの。
今は落ち着いているけど、あんまり寝られなかったみたいだから、悪いけど今日のところは
お引き取り願うわ」



 淡々とした抑揚のない口調には、しかしマミを労わるような優しい響きがあった。


 その優しさにまどかはほんの少し、安堵する。



<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:40:36.21 ID:Uai6Tunb0<>

「そっか。フランちゃんは、大丈夫?」

「私は、大丈夫。昨日は、お見苦しいところを見せてしまって、ごめんなさい。怖かったでしょ?」

 インターフォン越しだが、丁寧な口調だった。
そして、形だけでなく、ちゃんと謝意も込められていた。

「ううん。謝ることないよ。
私の方こそ…………ありがとう。
魔女を倒してくれたし、マミさんも、結果的にはあれだけど、助けてくれたんだよね」

「ふふ。まどかは優しいね」

 まるで、大人の女の人と話しているみたいだ。


 フランは見かけによらず、随分と大人っぽいらしい。
こうして話していると、自分が子供であることが浮き立ってしまう気がした。


「そんなこと、ないよ……」


 優しかったら、あの場ですぐに契約してマミを助けていたと思う。
それが最善だったと思う。
やらなかったのは、自分が優しさより自分を大切にしたから。
自分が馬鹿で臆病で情けない子供だったから。






<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:41:51.84 ID:Uai6Tunb0<>




「マミはね」






 唐突にフランが喋り出した。






 少し驚いたまどかだが、その声に耳を澄ます。







「今、体が人間のそれから、吸血鬼のそれへと変化していっているの。
要するに、人間から妖怪へと変わっていっているのよ。
でね、その過程で、結構な痛みと苦しみを伴うの。
マミは、さっきまですごく苦しそうだった。
痛みで寝られなくて、何も食べられなくて、見ていられなかった」





 まどかは息を飲む。あまりに残酷な事実に、小さくないショックを受けた。






「これは、私の罪。
……やむを得なかったとは言え、マミをこんな目に遭わせた私の……咎よ。
他にもっと方法はあった。
マミと一緒に戦うこともできた。
そうしていたら、あんなことにならなかったはず。
でも、それをしなくて、割を食ったのはマミだったわ」



<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:45:02.75 ID:Uai6Tunb0<>




 それは懺悔と言うのだろう。












 まどかは神父や牧師ではない。人の罪を清めることなんてできない。
だけど、聞いてあげることぐらいはできる。
何にもできない自分だけど、とっても愚かな自分だけど、こんな自分相手でもフランが話したいなら、
それはちゃんと聞かなきゃならない。

 それは義務だ。まどかの、なさなければならないことだ。



















「だからね、まどか。契約して、願いの力でマミを元に戻そうなんて、考えないでね」











「え……?」












 どうして? 小さな音が口の中で響く。




 それはまどかに許された唯一の贖罪のはずだ。マミを裏切ったまどかが、彼女にできるただ一つの償いだ。
未だ恐怖は抜けないけれど、出来るならすぐにでもやるべきことだ。


 だけど、じゃあ何でフランは否定した?
<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:46:06.64 ID:Uai6Tunb0<>




「これは、私が作った罪。
だから、償うのは私。
罰を受けるのも私。
あなたがマミのために契約すると、私はあなたにも償いをしなきゃならないの。
分かる? あなたを、あの残酷な運命に、巻き込んでしまうから」











 分からない。フランの言っていることが分からない。












「でも、それが一番いいと思うの。だから……」


「ダメ」








 まどかの言葉を遮ってフランは言った。
静かに、しかし力強く断固とした意思を込めて、拒絶する。




<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:47:23.12 ID:Uai6Tunb0<>



「魔法少女に、救いはないの。
マミは吸血鬼になることによって、皮肉なことだけど、その運命から解放されたわ。
だからって、マミを苦しませてしまっていることを肯定する訳じゃないけど、
もうマミを戦わせたくないから。
あなたが契約すれば、マミはまたその運命に巻き込まれてしまうから。
私は、ただ罪を重ねるだけだから。
だからお願い。こんなことで契約しないで」















 哀願するように、フランは静かに悲しみを込めて、吐露する。














 そんな声で言われたら、もう従うしかなかった。
それに、改めて自分の考えの浅さを思い知らされたようで、反発する気など起きなかった。

















 フランも同じなのだ。
彼女もまた、マミに対して罪の意識を感じている。
何しろマミを吸血鬼にした張本人だ。
それ相応の責任を感じているのは当然のことなのだろう。
そして、マミに真っ先に謝るべきなのも、またフランである。









<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:49:00.57 ID:Uai6Tunb0<>







「ごめんなさい……」




「いいよ。謝る必要は、ない」

「はい……。あの、マミさんに、頑張ってくださいって、私が言ってたって。後、ごめんなさい、も」

「うん。伝えておく」

「ありがとね」

「気を付けて帰ってね」


 今度こそまどかはドアから離れた。











 そのままとぼとぼと歩いて、エレベーターで降り、マンションを出る。
















 夕暮れに赤く染まるマンションの入り口前。そこに一人の少女が佇んでいた。












 暁美ほむらが居た。












<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:50:41.73 ID:Uai6Tunb0<>






                  *








「あっ……ほむら……ちゃん……」












 どうしてこの場所を知っているのだろうか? 
マミと対立していた彼女がどうしてその家が分かったのだろうか?







 驚いて立ち止まるまどか。ほむらは表情を変えない。







<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:51:33.51 ID:Uai6Tunb0<>











 カツン。















 何も言わずほむらが一歩踏み出し、まどかに近付いて来た。



「えっ……?」




 思わず身構えるまどか。今度は何を言われるのだろう?




























「貴女は自分を責め過ぎているわ。鹿目まどか」











<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:52:42.88 ID:Uai6Tunb0<>













「え?」

























「貴女を非難できる者なんて、誰も居ない」



 まどかの目の前で立ち止まり、ほむらは続ける。























「居たら、私が許さない」










<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:53:34.01 ID:Uai6Tunb0<>










 さっきと同じだ。静かだけど、確かに強い意志が込められた言葉。
そこには、冷たさはない。
いつもの平坦で感情の感じ取れない声ではなく、優しさが含まれている。
















 ほむらちゃん……私のために……。


















<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:54:49.35 ID:Uai6Tunb0<>






「忠告、聞き入れてくれたのね」










「……うん」





 そのまま二人は一緒に通学路を歩いた。
橙色の光が二人を染める。
前を行くほむらの黒髪が、艶やかに光を反射していた。
余程丁寧に手入れされているのだろう。
しっとりとしていて、触り心地も良さそうだ。






 髪質がいいな、とまどかは思う。








 それにしても、不思議な雰囲気のする子だった。
一見冷たいけど、本当は優しい性格なのかもしれない。




<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:55:48.89 ID:Uai6Tunb0<>






「私がもっと早くにほむらちゃんの言うことを聞いていたら」




「それで、巴マミの運命が変わった訳じゃないわ」


 相変わらずの淡々とした、諦めの入った声。
けれど、その中に僅かに悔恨が混じっているような気がした。
























「でも、貴女の運命は変えられた。それだけでも、私は嬉しい」





















 思いがけぬほむらの言葉に、まどかははっとする。
これは、ほむらの本心なんだろう。
本当にグリーフシードが目的なら、こんなことは言わないはず。


 嬉しいなんて言われて、まどかの落ち込んでいた気持ちが少し暖かくなったし、
ほんのちょっとだけほむらとの距離が縮まった気もした。

<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:57:04.23 ID:Uai6Tunb0<> 「ほ……ほむらちゃんはさ、何だかマミさんとは別の意味でベテランって感じだよね」

「そうかもね。否定はしない」

 まどかは次の言葉を発するのを躊躇った。
もし、イエスと返ってきたらどうしよう。
それは、ほむらが恐ろしい目に合ってきたということだ。




「昨日みたい……誰かが大怪我するところ何度も見てきたの?」





 結局、間が持たなくて尋ねてしまった。




「そうよ」




 短く、答えが返ってくる。




「……何人くらい?」




「魔法少女をしていれば、魔女に殺されかけることなんて、いくらでもあるわ。
それだけじゃない。実際に、殺されることもある」




「えっ……」




 予想以上に辛い答えにまどかは思わず息をのんだ。

「じ、じゃあ……ほむらちゃんは、人が死んじゃうところも、見てきたの?」

「数えるのを諦める程に」



<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 22:58:36.66 ID:Uai6Tunb0<>








 まずいことを聞いちゃったなあ。









 ほむらにとっては辛いことがいっぱいあったのだろう。
それを掘り起こすような質問をしてしまい、まどかは後悔した。








「ほむらちゃんはさ……マミさんはどうなると思う?」

 ほむらはしばらく答えなかった。








 が、やがて、小さな声で呟いた。







「分からないわ。でも、もう人として生きてはいけないでしょうね。
そもそも、生きているのかさえ怪しい」


「そんな……」


「吸血鬼っていうのは、私も初めてよ。
けど、伝承にある通りなら、それは……人間の生き血を啜る化け物よ」





「ひどいよ……マミさん、可哀想だよ」





<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 23:00:04.66 ID:Uai6Tunb0<>







 だから、罪なんだ。












 自分でそう言ってまどかはフランの言っていたことを理解した。




 マミは、悪くない。
落ち度があったとすれば、それは油断してしまったことだろうけど、マミはそのツケは
既に支払っていた。
なのに、彼女は未だに苦しんでいる。
それは、フランがマミを吸血鬼にしたからで、フランの過ちのせいだった。






 そして、フランにはそれが分かっていて、罪は自分で背負っていくと言った。
だから、まどかに契約するなとも釘を刺した。




 言っていることは正しいことなのだろう。
でも、どうしても何もしないなんてできなかった。
命を救ってくれたマミに、恩返しがしたい。
マミの助けになりたい。
また素敵な顔で笑って欲しい。
それに謝らなければならない。
償いをしなければならない。
罪は、まどかにもあるのだから。











 そう思うことは、悪い事なの?













<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 23:01:49.94 ID:Uai6Tunb0<>

「そうね。巴マミには同情するわ。でも、これも魔法少女の運命なのよ」






 運命って……何それ……。




 思わず反発しそうになるが、その前にほむらが口を開いた。







「貴女は、魔女の結界の中で死んだ魔法少女がどうなるか、分かる?」










「え……」

 唐突な質問に、まどかの思考は停止した。

 言葉に詰まって、何も言わずにいるとほむらは勝手に答えを言った。









「向こう側で死ねば、死体だって残らない。こちらの世界では、その子は永遠に行方不明者のままよ。魔法少女の最期なんて、そんなものよ」






 残酷な事実。諦めの込められた最後の言葉。心臓が急激に冷えていくような気がした。



「そんなの……ひどすぎるよ……」




「そういう契約で、私たちはこの力を手に入れたの」










 ほむらが立ち止まり、急に振り返った。まどかもつられて立ち止まり、二人は向かい合う。





<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 23:03:02.96 ID:Uai6Tunb0<>











「誰のためでもない、自分自身の祈りのために、戦い続けるのよ。
誰にも気付かれなくても、忘れ去られても、それは仕方のない事よ」














「マミさんも、あの時死んじゃってたら、そうなってたの? ほむらちゃんも……」

「ええ。そうよ」








「私は覚えてる」








 余りに悲しい現実に、泣きそうになりながらもまどかは力強く言った。
今は、それぐらいしかできないから。








「マミさんのことも、ほむらちゃんのことも、二人とも頑張ってたのを、覚えてる。
誰かのために、戦ってたのを忘れないよ」



 一歩踏み出してほむらに近付く。






「マミさんのことも、昨日ほむらちゃんが助けてくれたことも、絶対に忘れないもん!!」





<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 23:04:09.84 ID:Uai6Tunb0<>






 ほむらは拳を握り、俯いた。その表情は、長い前髪に隠れて窺えない。









「……ほむらちゃん?」





















「貴女は優しすぎる」

















 そう言ってほむらは顔を上げる。



「忘れないで、その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」





 そして、踵を返して歩き出した。

 まどかはただそれを見送るだけだった。










<> 1<>saga <>2013/03/07(木) 23:07:13.26 ID:Uai6Tunb0<>

今日は4話でまどかがマミの家にノートを置くシーンとその後のほむらとの会話のシーンです。


もちろんマミさんはご存命でいらっしゃるので、家の中には入っていませんが・・・・・

その後のほむらとの会話も多少変えてあります。







そろそろ次スレの季節ですね。
1スレの間に第二章に入れて良かったです。

スレ立ては次の投下の後に



<> VIPにかわりまして?がお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 23:11:57.04 ID:lHsp36oeO<> おつだかんね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 23:25:37.72 ID:fVn+SCW20<> 乙
正直な話、人間じゃないというなら魔法少女も妖怪も同じ様な気がするが
それならまだ戦わなくてもいいし絶望して魔女になる事もなく
生命力も高い妖怪の方が遥かにマシな気がする
無論デメリットはあるだろうけど魔法少女のそれと比べたら・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 23:51:36.26 ID:kvOveAw30<> 違いは、理性や意思のある化け物になるか否かってだけだけど、どうせならあった方が良いよね

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 00:02:58.06 ID:HQxF9nMAO<> 乙です。
ほむらはまどかがどんな場所にいても現れるスキルを持ってるけど青い子は大抵ノーマーク。だから見てないところで契約して波乱がおきちゃうんだよね。
まどか以外にさやかちゃんを気に掛けてくれる人がもう一人ぐらいいてくれればな…(途中参加の杏子と恋に悩んでた仁美は除く) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 00:20:01.01 ID:sN8Cdv3J0<> >>956>>957
肝心な事が頭から抜けていないか
妖怪の主食って人間なんだぜ?
マミさんがそれに耐えられるというか受け入れられると思うか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 00:21:55.79 ID:ej5f5eSF0<> 最早、青の幸せ展開なんて最初から捨てて見てる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 00:22:56.73 ID:C6dTo3Efo<> 受け入れられないなら[ピーーー]ばいい、無理なら諦めて食うしかない
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 00:28:09.93 ID:sN8Cdv3J0<> >>961
それTDSと同じ自殺やん… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 00:58:50.33 ID:C6dTo3Efo<> でも化物になるってそういうことだぞ、今までと同じには生きられないんだから <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 02:05:26.51 ID:NWg2UHwC0<> 主食人間でも食わなければいいだけじゃね
日本人だって米食わなくても生きていけるし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 02:53:32.98 ID:hdb5Z6PAo<> 吸血鬼のデメリットもなかなかキツイと思う
日光に弱くて流れ水を渡ることが出来ず鰯の頭と折った柊の枝に近づけなくて炒った豆を投げられると火傷するんだぜ
あと招待されなきゃ人の家に入れないってのと銀製品に弱いってのもあったりなかったり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 08:07:08.29 ID:gkfJUObXo<> 伝承とかでよく知れ渡ってる妖怪のデメリットに比べて
魔法少女のデメリットが一見わかりづらいってだけのような気もするが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 08:41:26.46 ID:TcJWEJwx0<> 魔法少女が人間を[ピーーー]魔女のグリーフシードを使わないと生きていけないって事は
極論かもだけどそれはもう人間を食わないと生きていけないのとほぼ同じだと思うのよね
もちろん俺の主観だし魔法少女がどう考えるかはわからんが

吸血鬼だとまだ我慢すれば人間食べるの我慢すれば良さそう?だから幾分良心的じゃないかな
ただ魔法少女は日常生活をまがりなりにも送れるけど吸血鬼はおそらく無理なのがでかいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 08:44:29.36 ID:eVzrE5kZ0<> 人間というかそれの血だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 09:25:22.12 ID:Ds6G6V3+o<> 乙です
もうマミさん魔法少女じゃないんだし、魔法少女システムについてゲロってしまったほうが・・・
といっても、ほむらもこんなイレギュラーな状況じゃタイミングが見つけられんな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 09:31:08.01 ID:lyuZ/rZ10<> 乙でした
主食はあくまで血液だからそこまで気にする必要ないんじゃない?それこそヤクルト感覚
昼夜逆転してる人間なんて今時珍しくもないし人生で川とか渡る機会なんて殆どないし、招待されないのに他人の
家に入ろうとする人なんてふつういないし……
というか、そもそも魔女に理性が無いなんて設定あったっけ?

ってなんだこの考察スレみたいな流れは
>>1の次の投下の前にスレが終わりそうじゃないか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 09:32:44.16 ID:PXKNXCOEo<> >>1乙

魔法少女システムの実態を知ってればまだ妖怪の方がマシと思うこともありうるだろうけど
現段階ではなかなかそうは思えないだろうな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 11:19:55.34 ID:ALJBjbqZo<> 本来なら完全に死ぬところを、吸血鬼とはいえ生き残れたんだから
最終的には感謝こそすれ、恨むようなことはないだろ。今は精神錯乱状態だけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 12:07:19.27 ID:tE5y4uOAO<> >>967
TDSでマミが自決を選んだ理由の一つはまさにそれ>GS使用は間接的な人食い
吸血は我慢できるとしてもマミにとっては可能性だけでもアウトかもな
魔女化知った時点で死のうとしたし <> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:08:08.61 ID:OBTKenHo0<>

議論が活発なのは大変よろしいですが、埋まってしまいそうなので早めに投下しに来ました。


マミさんが歩むのは修羅の道(きっと・・・)
<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:08:43.07 ID:OBTKenHo0<>





               *






 病院。





 昨日グリーフシードを見つけた場所。






 お見舞い。







 今は無性に恭介に会いたかった。だから、病院の廊下を駆ける。







<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:09:48.92 ID:OBTKenHo0<>  目当ての病室の扉をあけると、そこの主はこちらに後頭部を見せていた。
夕焼けで燃える空を見ている。
その色は、昨日の炎を思い起こした。


 恭介は黙ってイヤホンを耳につけ、音楽を聞いていた。静かにCDが回転している。





「何を聴いてるの?」



「……『亜麻色の髪の乙女』」



 声に元気がない。さやかは無理やりに元気な声を出した。励まそうとして。

「ああ、ドビュッシー? 素敵な曲だよね」

 恭介は微動だにしない。間が持たなくて、さやかは強引に話を始めた。

「あ、あたしってほら、こんなんだからさ、クラシック聴く柄じゃないだろってみんなが思うみたい
でさぁ、たまに曲名とか言い当てたら、すごい驚かれるんだよね。
意外過ぎて尊敬されたりしてさ。
恭介が教えてくれたから。でなきゃ私、こういう音楽ちゃんと聴こうと思うきっかけなんて、
多分一生なかっただろうし」






<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:10:43.12 ID:OBTKenHo0<>









「さやかはさぁ……」

 今までにないほど低く沈んだ声で彼が言った。


 唐突に口を開いた幼馴染に、さやかは軽く動揺しながらも努めて明るい声を出した。

「なーに?」































「さやかは、僕を苛めてるのかい?」



























「え?」


<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:11:45.65 ID:OBTKenHo0<>













 全く予想だにしていなかった言葉。さやかの表情が凍り付く。



 元バイオリニストの少年はゆっくりイヤホンを外しながらさやかの方を向いた。
冷たい、凍えるような目で、さやかを睨む。







「なんで今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?」







 確かに怒りを込めた声で、彼はさやかに当たった。その言葉に、さやかは息を飲む。






「だって恭介、音楽好きだから……」







「もう聴きたくなんかないんだよ!」








<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:12:52.43 ID:OBTKenHo0<>  突然彼は怒鳴った。
怪我をした左手を額に当て、いら立ちを隠しもせずに叫ぶ。
その声にはあらゆる感情が込められていた。



 理不尽に自分の大好きなものを奪われえたことに対する怒りや悔しさ。
もう二度とバイオリンを弾けなくなったことへの嘆きと悲しみ。
絶望、悔恨、憤怒、悲嘆、それらがごちゃまぜとなって彼の心の中で荒れ狂い、
その捌け口としてさやかにぶつかったのだ。










「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて……僕は……僕は……っ!」










 彼は、力の限り傍らのCDプレイヤーに左手を叩き付けた。


 ガラスの割れるような音がして、CDやケースの破片が手に突き刺さり、橙に染まった白いシーツに赤い血が飛び散る。






 さやかは慌てて立ち上がった。その拍子にイスが倒れる。
<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:13:56.85 ID:OBTKenHo0<>





 彼は尚も左腕を振り上げ、叩き付けようとする。
さやかは身を乗り出して彼の腕を掴んだ。















 しばらく病室に二人の泣き声が響く。













「動かないんだ……もう、痛みさえ感じない。こんな手なんて!」



 思いを、悔しさや怒りを吐き出すように。











 どんなに懸命に動かそうとしても、左手の指はピクリとも反応しなかった。
それは、さやかから見てもはっきりと分かった。




「大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか……」





 それでも、さやかは現実を認めたくなくて、嘆く恭介を見たくなくて、慰めにもならない気休めを吐く。
それでどうにかなるなんて、自分でも思っていなかった。
<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:14:56.60 ID:OBTKenHo0<>






「諦めろって言われたのさ」







 恭介は泣いていた。いろいろな感情が混ざった涙を浮かべていた。

「もう演奏は諦めろってさ。先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって」

 僅かに自嘲も含まれていた。


 もう何もかも諦め、無慈悲な現実に絶望し、理不尽への激情を理不尽に他人にぶつけ、
自嘲するしかない、哀れな声。
それが、今の上条恭介の、バイオリンを奪われたバイオリニストの、全てだった。











「僕の手はもう二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り治らない」











<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:16:06.37 ID:OBTKenHo0<>















 奇跡。魔法。


















 一度は諦めたそれを、現実に怖気づいて逃げ出した自分が、今さら求めるのは虫が良過ぎるだろうか?




 恐怖がないと言えば嘘になる。狂気が怖くないと言えば嘘になる。






 あの時、絶望的な状況の中で、それでもまだ息をして、さやかに助けを求めてきた黄色い双眸。
恐ろしさのあまり失禁した上、そこから逃げ出したどうしようもなく無様な自分。
何も分かっていなかった、救いようも無い程馬鹿なあたし。







 一晩自分を責め続けた。
決心なんてつく訳なかった。
恐怖なんて乗り越えられる訳がなかった。
弱っちくて、みっともなくて、ちっぽけな自分が、契約していいのかすら分からなかった。










<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:17:06.19 ID:OBTKenHo0<>






 だけど、今なら……今なら決心できる。






















 他の誰でもない、恭介のために。














 私は戦う。
それがあの時逃げ出したことへの贖罪になるなら、それで一人の少年を救えるなら……。
魔女と戦う恐怖。吸血鬼の狂気。


 そんなもの、乗り越えられる。























 一つのシルエットが夕日をバックに浮かび上がる。





<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:17:55.23 ID:OBTKenHo0<>






















「あるよ」



「え?」

















「奇跡も、魔法も、あるんだよ」



















 青い瞳に映る“彼”の影。


 私は今、奇跡を必要としてる。





<> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:21:02.99 ID:OBTKenHo0<>

ちょっとかっこよくさやかちゃんを書いてみました。


要らない子とか不憫とか安定とか言われてるけど、さやかちゃん頑張ったんだよ!!




という思いを込めて、ヒロイックなさやかちゃんになればなぁと・・・・・・・









次スレです↓↓
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362722680/


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 15:22:25.20 ID:C6dTo3Efo<> 全力でフラグ建てに行ってるさやかマジアホ
乙 <> 1<>saga <>2013/03/08(金) 15:24:39.01 ID:OBTKenHo0<>

あ、こちらのスレはぼちぼち埋めちゃってください。






ところで、1000レス行ったら、HTML化の依頼はしなくていいんですかね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 15:40:44.21 ID:/Bi332VN0<> 乙

青ェ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 16:04:22.41 ID:1hQ7xVdSO<> 乙
やっぱりさやかは自分の理想に殉ずる姿が似合……ま、まだ死んでないから(棒)

1000いったら依頼しなくて良いよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 17:26:29.90 ID:eVzrE5kZ0<> おつうめ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 17:50:30.87 ID:PXKNXCOEo<> 乙カレー空間 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 18:50:55.43 ID:zio8J9d70<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 19:27:30.16 ID:ftGRvzls0<> 埋めさせてもらう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 19:50:40.45 ID:J4poxUUyo<> うめ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 19:50:53.41 ID:hdb5Z6PAo<> どうあがいても絶望 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 20:31:21.92 ID:JHuPdMnx0<> てわけでもない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 20:50:52.69 ID:C6dTo3Efo<> 埋め <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 21:38:51.69 ID:zio8J9d70<> 縺繧 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 22:56:34.26 ID:qxtQA1XDO<> 頑張れさやか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 22:58:34.47 ID:C6dTo3Efo<> >>1000ならマミさんが幸せになる <> 1001<><>Over 1000 Thread<>               /|\
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