◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 00:11:32.60 ID:7PdYJbZAO<>
◆H0UG3c6kjA改め◆2/3UkhVg4u1Dです。


・魔神オッレルスさんと右方のフィアンマさんのお話

・時間軸曖昧、22巻後半からの捏造スタート

・基本はほのぼの進行…だと思われます

・キャラ崩壊注意

・>>1は(安価スレの割に)遅筆


※注意※
安価次第で著しく展開が変わります。
エログロ展開の可能性があります。
暴力描写、所謂DVネタを取り扱います。
小ネタを挟む可能性があります。


感想・雑談・考察・予想はお気軽にどうぞ。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1356793892
<>オッレルス「……」フィアンマ「…安価で、お前をまともにする。したい」 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:12:32.27 ID:AgZm64Su0<> o <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:13:55.91 ID:XZireLUBo<> 男「まずこのssにて注意していただきたいことが」

1、>>1はss初心者。「いくらなんでもこれはないわ」とか「キモ過ぎる」
とか思った人はブラウザの戻るを押してください。
2、メタ発言があります。ご容赦ください。
3、更新が遅くなります。

男「まあこんぐらいか。あとは…まぁキャラの設定としては>>1の知り合いなどが使われている。
  ちなみに主人公の設定はほとんど作者だ。」

男「次から口調かわる」

男「じゃぁ温かい目で見てやってください。はじまりはじまりー」
<> 設定説明 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 00:14:06.45 ID:GThBX//g0<>
□オーディン

一人称は『私(公的)』『俺』。

原作世界の"オッレルス"とは違い、猫を見捨てて『魔神』になった。
原作世界におけるシルビアとは知り合いですら無い。
文中では魔神『オーディン』と呼称される。
隻眼で黒い毛皮のコートの中に灰色の装束を着ており、物々しい眼帯を左目に着け、鍔広の帽子を被っている金髪の青年。
純粋な魔神と化しており、完璧な存在であるが、完璧であるが故の弱点も抱えている。
即ち、文字通り『無限の可能性』を持つが故に、あらゆる物事に対して、成功する可能性と失敗する可能性の両方を抱えている。
確率が完璧に五分五分であるがゆえに予想がつかず、非常に厄介なことになっている。
人身売買組織を倒して子供を拾い、教会や児童養護施設等に預け任せている(他称)お人好し。
主神の力を思うがままに振るえる。
暴力を振るって言う事を聞かせた後、泣きながら謝る等、所謂DV気質。
人間らしさが欠如しているため、食欲・性欲・睡眠欲を忘れる時がある。
代わりに一度でも興味が向くと執着してしまう傾向がある。メンタル不安定。

魔神の『なり損ない』たるオティヌスに命を狙われ、戦わざるを得ない事もしばしば。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:14:29.15 ID:7PdYJbZAO<> + <> 設定説明 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 00:14:48.01 ID:GThBX//g0<>
□フィアンマ

一人称は『俺様(公的)』、極々稀に『俺』。

ローマ正教禁断の組織『神の右席』所属の魔術師。
赤を基調とした服装に、あまり鍛えている様には見えない身体で、髪型はセミロング。
二つ名は『右方のフィアンマ』。対応している天使は『神の如き者(ミカエル)』。
目的のためには他人の命などどうとも思わない傲慢な性格だった。
現在も尊大ではあるものの、『神の子』を指針とし、人の悪意・理不尽を受け止めようと頑張っている。

敗戦後、上条当麻によりコンテナに乗せられ、脱出。
上条の言葉を聞くも、『世界』はやはり穢いと捉えている。
脱出後、突如出現したアレイスターに不意打ちで右腕を切られ大幅に弱体化。
わずかに残された"第三の腕"の力で戦闘となるも敗北。
雪原にて倒れ伏し、今にも息絶えそうな所で、魔神オーディンに保護された。

薄める原罪を取捨選択することで、ある程度『知恵の実』を残してある。
故に、神の右席としての力に加えて『人間用魔術』も火属性に限られるが使用できる。
加えて"一つの属性を操るということは、広義において他の属性に影響を与えることである"という理論に基づき、
火属性を介して他の属性を操作することで、実質的にあらゆる属性の魔術を行使できる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:14:49.03 ID:7PdYJbZAO<> + <> 安価について 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 00:15:15.58 ID:GThBX//g0<>
○連続取得・連投は良識の範囲内でご自由に
○基本的に雑談等の時は最後に『kskst』や『安価下』と付け加えていただければ嬉しいです
○どうしても捌けない場合のみ、適宜安価下や最安価で対応していきます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:15:17.20 ID:7PdYJbZAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 00:16:11.83 ID:GThBX//g0<>

右肩から大量の血液を溢れさせながら、フィアンマは未だ雪の降り続ける空を見上げた。
走馬灯として振り返るものがないから、白昼夢に浸っていた。
何が間違っていたかといえば、何もかもが間違っていたのだろう。
だけれど、あの時、自分は最善の選択肢を選んでいた筈だ。

あの男が救った世界を守る事は、出来た。
失血が酷いせいで、もう寒いも痛いも、感覚が無い。あるのは、蟠った吐き気だけ。
気持ちが悪い。
こみ上げるままに吐きだしたそれは、胃液混じりの血液。

かひゅ、と冷たい空気を吸い込み、フィアンマは数度咳き込む。
その度に血しぶきが雪に広がり、染み込んでいく。
冷たくて、鉄臭いベッドだ、と笑った。

げほ、とまた血液を吐き出して。
力の入らない身体で、どうにか雪面に手をつき、のろのろと起き上がる。
世界にたった一人、残されたかのような気分だった。

ぺた、と雪の上に座ったフィアンマは、白い息を吐き出してうなだれた。
気持ち悪い。

ざくざく、と雪を踏み込んでゆっくりと歩く音が近づいてくる。
立ち向かう気力も、立ち上がる体力も無い。

フィアンマ(…ここまでか)

不意に、近づいてきた足音が、自分の少し前で止まった。
目を開け、見上げた先に居たのは、一人の青年。

黒い毛皮のコート、灰色の装束。
物々しい眼帯に、鍔広の帽子。
どこか虚ろな瞳をした、金髪の青年。

彼はフィアンマの周囲に何かを撒いた。
計算して撒かれた液体により、陣が描かれる。
それは、治癒行為を行う為の術式だった。

?????「…立てるかい?」

二時間程経って、彼はそう問いかけた。
フィアンマは立ち上がろうとして、そのまま、倒れた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 00:16:12.99 ID:7PdYJbZAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 00:16:57.17 ID:GThBX//g0<>
次に目を覚ますと、横たわっている場所が変わっていた。
意識を喪う前、自分は雪原に倒れていた筈だ。

フィアンマ「…ん…?」

平凡な、アパートメントの一室。
そう判断しながら身体を起こそうとしたフィアンマだったが、うまくいかなかった。
大量出血をしたせいなのか、思考も上手く働いてくれそうにない。

フィアンマ「……此処は…何処、だ…?」

かり、とベッドシーツを引っ掻いた。
頭が痛い。全体的に怠い。
意識を喪う前、謎の男に会った気がする。
だとすれば、警戒すべきかもしれない。

ガチャリ、と。
何の前触れも無く、ドアが開いた。

?????「…寝ていれば良かったのに」

物々しい眼帯をした、一人の青年だった。
フィアンマは警戒心を露に、下がろうとする。
完治どころか、ロクに傷の塞がっていない右肩が、ズキズキと痛んだ。

フィアンマ「ぐ、…誰だ、貴様は」

オッレルス「…オーディン。そう呼ばれているよ」

北欧神話の神を名乗るということは、魔術師。
右肩の痛みに脂汗をかきながらも距離を取ろうとするフィアンマに、彼は苦く笑った。

オッレルス「…手負いの獣みたいだな」

フィアンマ「何の為に俺様を此処まで連れて来た…」

息を荒げながら、フィアンマは問う。
対して、魔神は何ということもないように答えた。

オッレルス「>>14」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/30(日) 00:57:21.40 ID:GFe3hor30<> 暇つぶし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 03:01:08.03 ID:iQS0QXHSO<> ちょっと面白そうな玩具を見つけたからつい拾ったんだよ

俺とゲームしよう。

今から可愛い…いいか、美形タイプの最高に『可愛い』猫を探してこい。誰かのものなら飼い主を殺してでも連れてくるんだ

拒否しても構わないし、連れてこれなくても構わない。但し、その時はお前を酷い目に合わす。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 16:27:53.51 ID:+6WpJPn30<>
オッレルス「ちょっと面白そうな玩具を見つけたから、つい拾ったんだよ」

玩具。
面白そうな、玩具。
右方のフィアンマをそう称せる程、この男は高みに居る。
物見高い性格をしているのか、彼はうっすらと笑む。
感情の伴っていない笑みだった。

オッレルス「俺とゲームしよう」

ゲーム。
不穏な響きに、フィアンマは眉を潜める。
ひとまず、敵意や殺意は感じられない。
そう判断しながら少しだけ警戒を解くフィアンマが落ち着くのを待ってから、オーディンはルールを口にした。

オッレルス「今から可愛い…いいか、美形タイプの、最高に『可愛い』猫を探してこい。誰かのものなら飼い主を殺してでも連れてくるんだ」

フィアンマ(……美形の、猫?)

オッレルス「拒否しても構わないし、連れてこられなくても構わない。但し、その時はお前を酷い目に遭わす」

言いながら、オーディンはフィアンマの右肩へ視線を向ける。
たったそれだけの動きで、他者へ恐怖を与えられる事を、知っているのだろう。
フィアンマは三秒だけ沈黙した後、聞き返す。

フィアンマ「増血剤を寄越せ。貧血の症状が治まり次第、捜して来ると約束しよう。……だが、そんな事をして何になる? 俺様に得が無い」

言外に、放てば帰って来ないとの宣言。
オーディンは少し迷った素振りを見せてから、言葉を返した。

オッレルス「君の身の安全と住処を保障する。といっても、此処だが」

フィアンマ「……」

オッレルス「せっかく生き延びたんだ、死にたくはないだろう?」

確かに、今のフィアンマを、処刑や復讐以外の理由で欲する者は少ない。
片手で数えられる程にしか、存在しないことだろう。

フィアンマ「…美形の、可愛い猫。…で、良いんだな?」

オッレルス「何度も言わせないでくれ」

財産を切り崩して生活するにも、厳しいものがある。
それよりは、この男に身を委ねてみるべきか。
どうせ、一度は死んだようなものなのだから。

フィアンマ「増血剤。実行は、それからだ」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 16:35:48.06 ID:7PdYJbZAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 16:35:52.82 ID:+6WpJPn30<>
増血剤の苦い錠剤を噛み砕き。
ふらふらと、フィアンマはミラノの街中を歩いていた。
頭が痛い。貧血が完全に治まった訳ではないのだ。
このまま逃げ出しても、どうせいつかは死ぬ。
誰に殺されるかが変化するだけで、自分は死んだようなものだ。
もはや、自分という人間に価値はほとんど無い。
思いながら、しかし憂鬱になるでもなく、彼はふらふらと歩いた。

フィアンマ「…猫、…」

互いの価値観に齟齬があっては正解が出せないので、きっちりと話はしてきた。
単色で、毛並みが良くやや人懐っこい、愛らしい顔立ちの、可愛い美形の猫。
そこまでの厳しい条件ともなれば、野良ではそうそう居ない。
だからこそ、オーディンは『誰かのものなら飼い主を殺してでも連れてくる』という条件を出したのだろう。

フィアンマ「……」

口の中は薬品臭さに満たされている。
少し熱が出ているのか、今にも意識が絶たれてしまいそうだ。
左手を、路地裏の冷たい壁に沿わせる。
ふと、視界に一匹の仔猫が目に入った。

毛並みが良い。
真っ黒な色。
耳が垂れ気味なのは、スコティッシュフォールドの血でも混ざっているのか。
瞳は硝子玉のように丸っこく、可愛らしい。
且つ、細身。

調度、条件に合致した仔猫だった。
後は、捕まえてしまうだけ。

フィアンマ「…幸運、か」

だが、黒猫と遭遇してしまう辺りが、自らの未来を暗示しているような気がして。
苦々しい思いを胸に宿し、彼は仔猫を誘いこんだ。

仔猫「みー」

母猫とはぐれて間もないのか、目が開いているかどうかも怪しい。
ごろごろと喉を鳴らす幼い仔猫の顎下をくすぐってあやし、抱き上げる。
そして、再びふらふらとしながらも、道を引き返した。 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>sage<>2012/12/30(日) 16:36:14.87 ID:7PdYJbZAO<> 書き漏らしましたが、多分ホモスレです。 <> ◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 16:40:33.90 ID:+6WpJPn30<>
この猫なら、文句無いだろう。
どこからどう見ても可愛い猫だ。
人懐っこい性格をしているのか、仔猫はフィアンマの胸元に頭を擦りつけている。
ひっきりなしにごろごろと喉を鳴らす様は、とても愛らしい。
どこかのペットショップから逃げ出した、所謂純血種<ブランド>なのかもしれない。

仔猫「にゃー」

フィアンマ「……、…」

飼うつもりなのだろうか。
貧血の症状は治まってきたものの、やはり、頭はうまく働かない。
本来であれば、客観的に考慮して、自分は寝ているべき人間だ。
にも関わらず、このような無理をすれば、倒れてしまうだろう。
その時はその時、殺されるならばそれも仕方が無い。
こんな汚らしい世界に、救いなどありはしない。
何せ、自分の救済を拒んだような世界なのだから。

フィアンマ「…」

ガチャ、どドアを開ける。
合鍵は受け取っていた。仔猫を抱えたままでも、手先の器用さを活かせば、開けられる。
中に入ると、オーディンは悠々とソファーへ腰掛けていた。
もしかすると、自分の様子を何らかの方法で見ていたかもしれない、とフィアンマは思う。

フィアンマ「…お望み通りの、可愛い猫だ。俺様の勝ちだ」

オッレルス「>>21」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 18:12:39.14 ID:tujNJWXM0<> 可愛いといえば可愛いか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 18:18:49.84 ID:iQS0QXHSO<> おめでとう。君の勝ちだ

では、ゲームの勝利者に3つ賞品をあげよう。受け取り拒否は許さない。

一つめは君の生活の安寧。

二つめはこの『仮面』。
…この仮面は元々、太古のとある部族が他部族を呪い殺して潰す呪術を使う時に用いていた物だ

それを俺が調整、加工した、絶対服従させる物だ。つけろ。拒否は許さない。


3つめ、その猫だ。文字通り、好きに料理しろ。それが君の今日の晩御飯だ

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 19:58:44.19 ID:qzxxhYnU0<>
オッレルス「おめでとう。君の勝ちだ」

右方のフィアンマの勝利を認め、彼は頷く。
フィアンマはふらつきを感じながら、仔猫を床に降ろした。
猫はごろごろと喉を鳴らし、フィアンマの足元へまとわりつく。

オッレルス「では、ゲームの勝利者に3つ賞品をあげよう。受け取り拒否は許さない」

悪意を感じさせない悪意ある声音に、フィアンマは寒気を覚える。

フィアンマ「……、」

オッレルス「一つめは、君の生活の安寧」

ゲーム開始時に約束していたもの。
つまり、住処や身の安全の保障だ。

オッレルス「二つめは、この『仮面』」

彼が見せたそれは、一般的な仮面とは少々違った。
言うなれば、モノクルのような。

オッレルス「…この仮面は元々、太古のとある部族が他部族を呪い殺して潰す呪術を使う時に用いていた物だ。それを、俺が調整、加工した、絶対服従させる物だ。つけろ。拒否は許さない」

許さない、という声色は厳しい。
フィアンマ個人への悪意は、感じられない。
きっと彼は誰に対してもこのような事をするのだろう、とフィアンマは思う。
そして、もう一つ思った。
こんな手段を使う時点で、この男は臆病者だ。

オッレルス「三つめ、その猫だ。文字通り、好きに料理しろ。それが君の今日の晩御飯だ」

さらりととんでもない事を言って、魔神オーディンは時計を見やる。
調度、夕飯時の時間だった。

フィアンマ「そうか」

対して、フィアンマは怯えない。まして、反論もしなかった。
だって、する必要が無い。このゲーム契約には、穴だらけなのだから。

フィアンマ「生活の安寧に関しては、そのまま受けよう。『仮面』も着用する。…ただし、いつ着けるかは俺様の気分次第だ。拒否はしないがね。それで、この猫が俺様のものということに、一切文句は無いな?」

オッレルス「あぁ」

フィアンマ「そうか。俺様の物なら、俺様の好きにする。夕飯と言ってはいたが、猫以外の食材は適当に使わせてもらうぞ」

告げて、彼は仔猫を伴ってバスルームへ消えた。
ぬるめのシャワーを出し、仔猫の身体を洗う。
洗うとはいっても、人間用の石鹸は刺激が強い為、使わない。

フィアンマ「…どうするか」

飼うか、逃がすか。
フィアンマは、よしよしと猫を撫でる。

フィアンマ「……」



1.飼う

2.逃がす


判定>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 20:01:02.61 ID:iQS0QXHSO<> 1 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 20:06:16.68 ID:iEGNbe9AO<> 1 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 20:17:10.07 ID:qzxxhYnU0<>
フィアンマ「…俺様の物だしな」

念は押しておいた。
勝手に殺されることも無いだろう。…と、信じたい。
だから、飼う。
フィアンマはしばらく仔猫を洗い、バスルームから出、タオルで身体を拭く。
猫砂は明日にでも買わなければ、と思いつつ、仔猫を解放して。

彼は次に、台所へやって来た。
猫を調理するつもりは微塵も無い。
弁解するための文句も、既に考えてある。

フィアンマ「……」

冷蔵庫を開けた。
中には、あまり物が入っていない。
戸棚等も漁り、発見したのは牛乳、小麦粉、人参。
肉のようなものもあったが、詳細が恐ろしくて、まだ聞けない。

フィアンマ「……俺様の分には塩を足して、コイツの分には足さなければ良いのか」

呟いて、彼は牛乳を煮詰め始める。
そこに小麦を投入して、ルーを作った。
人参はすりおろし、同じく鍋に入れてコトコトと煮込んでいく。
ポタージュスープに等しい、ホワイトシチューだ。
人参のすりおろし効果か、大体がオレンジ色をしているが。

皿を一つ出し、ぬるま湯程度の温かさのシチューをよそう。
まだ塩コショウで味を整えていない為にあまり美味しくはないが、猫の餌には調度良い。

フィアンマ「………」

仔猫「みー」

仔猫はくんくんと匂いを嗅いだ後、ぴちゃぴちゃと舐めて食べ始める。
フィアンマは時々貧血の症状にシンクへ手をつきながら、後でまた増血剤を貰おうと考えた。

塩コショウを足し、煮込む。
もう一度戸棚を漁り、発見したコーンの缶詰の甘い汁を切り、投入した。
コーンと人参のシチュー。
非常に子供向けのメニューだったが、贅沢を言える程、そもそも食材が無かった。

フィアンマ「…それで、お前は食わんのか」

オーディンは一瞬、誰に話しかけているのかと眉をひそめた。
次に、自分に向かって話しかけているのだと気付いて、今更ながら食材はあの猫しか無かっただろうにと首を傾げた。
彼は料理が出来ないので、食材はそのままのものとしてしか見られない。
故に、小麦粉と牛乳でシチューを作るという発想が無かった。

オッレルス「>>27」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 20:25:43.68 ID:iQS0QXHSO<> 本当なら仮面についても逃げ道はあったんだが…

毛布、服、紙とかの、何らかの物を顔につけてその上から仮面をつければつけても外せる

あるいは、『誰につけるか』を限定してないから、オッさん自身につけるか、猫につけるかでも回避できた

安価↓ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 21:20:39.35 ID:tujNJWXM0<> 腹は減ってない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 21:29:16.47 ID:qzxxhYnU0<> 《>>26様 利根川さんしか出てこなかった、その方法もあったか…》


オッレルス「腹は減ってない」

フィアンマ「そうか」

別に無理やり食べさせるつもりもないので、フィアンマはただ一言だけ相槌を打った。
自分だけが食べるのであれば、自分好みに味付けてしまおう。
もう少しだけ塩を足して調整した後、フィアンマは静かに皿へシチューをよそった。
シチューと呼ぶには、具材が少なすぎてあまりにもお粗末な代物だったが。

彼はオーディンの向かいに座り、軽く食前の祈りを済ませて、黙々と食べた。
思っていた以上に腹が減っていたらしい、フィアンマは自分でも驚く程がっついて食べていた。
そんなフィアンマの膝上へ、ちょこんと子猫が乗っかる。そして、丸まって目を閉じた。
彼はそんな仔猫を見やり、問いかける。

オッレルス「…使わなかったのか」

フィアンマ「うっかりしていた。入れ忘れだ」

しれっと言いながら、フィアンマは食事を続ける。
今後も、何か生き物を夕飯にしろと言われたら、こうするつもりだ。
オーディンは退屈なのか、フィアンマの手元を見つめている。
コーンと人参の入った、とろとろとした白濁の食べ物。
そこはかとない牛乳の甘くて良い香りが漂っているが、オーディンの食欲を刺激するには能わず。

オッレルス「……」

フィアンマ「…後で増血剤をくれ。足りん」

オッレルス「…わかった」

食事を終え、フィアンマは仔猫の背中を撫でる。
仔猫は眠ったまま、心地良さそうにごろごろと喉を鳴らした。

フィアンマ「…毎日ハンティングに行けというつもりは無いだろう? …食材が足りなすぎる。これでは生活出来ん。そして、生活出来ない場所は住処とは言えん。俺様の生活の安寧を保障するのであれば、最低限の食材、調味料の確保、加えて日用品を購入する資金を寄越せ」

養われる立場となりながらも、フィアンマは尊大だった。
彼は仔猫を床に降ろし、皿を片付ける。
オーディンは黙ったまま、しばらく考えを巡らせていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 21:36:28.18 ID:7PdYJbZAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/30(日) 21:37:08.66 ID:qzxxhYnU0<>
オーディンから貰った今回の増血剤は、錠剤ではなかった。
非常に不味い飴タイプである。
キャラメルを模しているのかブドウ糖キャンディなのか、とにかく不味い。
不味い不味いといったところで、食べなければ貧血に悩まされる。
体調が万全に整うまでの辛抱だと思い、フィアンマはぼりぼりとキャンディを噛み砕いた。
仔猫は増血剤のパッケージの箱に興味を示しているが、触らせない。

フィアンマ「……」

仔猫「みっ」

適当に見つけた紙袋が霊装の類でないことを確認した後、フィアンマは猫の遊びに用いている。
がさがさと鳴る紙袋が気になるのか、仔猫はうずうずとしていた。
更にがさりと鳴らせば、耐え切れず仔猫は飛び込む。しばらくがっさごっそと蠢いていた。
何ヶ月だろうか、と首を傾げ、フィアンマは要求の仕方を変えた。
何故かというと、先程の金銭要求に彼が答えをくれなかったからだ。

フィアンマ「…俺様に金を渡すのが不服だというのなら、購入してくれても構わん」

オッレルス「……、」

オーディンは異常者だが、そのことを自分で自覚している。
それを治さない辺りは怠慢だが、その事によって人から嫌われる事は把握していた。
故に、フィアンマが金銭の要求を繰り返すのではなく、現物支給で良いとの発言をしたことに、驚く。
だからといって、顔には出ない訳だが。

フィアンマ「外に出ると死ぬ訳でもあるまい。…腕一つでは足りん。お前も来い」

挑戦的だ。
家主に対するそれとは思えない。
だが、居候としての義務は果たすつもりらしく、家事は済ませていた。

フィアンマ「そうして退屈しているのなら、気晴らしの散歩だとでも思って」

オッレルス「>>32」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/30(日) 21:50:18.02 ID:tujNJWXM0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 02:00:26.61 ID:Z2fQ2dgAO<> ……解った <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 02:49:16.59 ID:CcGljY4AO<>
オッレルス「……解った 」

渋々、といった様子で、オーディンは頷く。
フィアンマは満足そうな表情を浮かべ、ひとまず、例の『仮面』を片付けた。
子猫はよほど紙袋が気に入ったのか、がっさごっそと遊んでばかりで出てこない。
好奇心旺盛なのかと結論付けて、ついでに、フィアンマはまた要求を付け足した。

フィアンマ「奴を飼う道具一式も、だ」

オッレルス「……」

ちら、とオーディンは子猫を見やる。
見計らったかのように、子猫はひょこりと紙袋から顔を覗かせてうみゃんと鳴いた。

オッレルス「…あれには何も必要ないだろう」


フィアンマ「俺様の生活に必要だ。私物の手入れ道具位、良いだろう」

オッレルス「…」

そう言われてしまうと、言い返しにくい。
オーディンは静かに折れ、ここもやはり頷いてやるのだった。

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 02:50:06.01 ID:CcGljY4AO<>
朝が来た。
フィアンマは目を覚まし、昨日の残りをうまく塩抜きし、子猫に与える。 大量の牛乳が犠牲になったが、今日買い出しに行くので、問題は無いだろう。
増血剤のがぶ飲み(或いはドカ食い)が効いたのか、身体はだるくない。心なしか、フィアンマの思考はすっきりとしていた。
子猫の頭を撫で、皿を片付け、簡易ケースを組み立て、入れておく。
買い出しに行けば手は塞がる為、連れて行くつもりは無かった。
空腹は覚えたものの、食べる物が無い。
買い出しに行った際に適当な出来合いでも購入してもらうか、と思いながら、フィアンマはオーディンの身体を軽く揺さぶった。
この魔神は、ソファーで寝ていたのである。

フィアンマ「起きろ」

オッレルス「…」

ん、とやや間の抜けた声を漏らして、オーディンは目を覚ます。
のろのろと手を伸ばし、テーブルに置かれていた眼帯を着けると、帽子を被った。
少々目立つが、いつものスタイルの方が落ち着くのだろう。

オッレルス「…買い出し、だったな」

フィアンマに確認するというよりも、自分に言い聞かせるかの様に呟いて、彼は体を起こす。
まだ頭が寝ているのか、だるそうな起き上がり方。
しかし、どうにか立ち上がったオーディンは、フィアンマを伴い―――家を出た。

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 02:51:01.20 ID:CcGljY4AO<>

女と違い、男の荷物は少なくて済む。
しかし、使い回せない下着や、最低限、何着かの服は必要だ。
歯ブラシなども含め、使い回せないものは、購入するしか無いのだ。
そんな訳で、フィアンマは容赦なく買い物カゴの中に服等を入れていく。 全店共通レジがあるので、歯ブラシなども次々と入れていく。
猫を飼育する為の一式もカゴに入れ、残るは調味料等も含め、食料品のみ。
正直、右方のフィアンマは腹ぺこなのだった。
そして、腹ぺこな人間はやっぱり容赦がない。
正確には、容赦をしている余裕が無い。
そもそも、フィアンマはあまり容赦をしない性格でもあるのだが。

オッレルス「…長く住むつもりなのか?」

フィアンマ「悪いのか?」

オッレルス「…いや」

自分の異常さをわかった上でか、とオーディンは思う。
あの『ゲーム』は篩いの役目もあったのだが。
フィアンマは食材等をカゴへ入れ、思い出したように菓子パンも入れる。 キャラメルクリームの入った甘ったるいパンだが、しかし、他に販売している菓子パンは全てキワモノだった。故に、消去法で選ぶ事となった。
これで一週間は問題無い、と頷くフィアンマは、栄養食品に視線をやる。対して、オーディンは何に興味を向ける事もなく、しいていえばフィアンマに注目して、問いかけた。

オッレルス「…そんなに食べるのか」

フィアンマ「そうではない。お前が料理を食べそうにないから、適度なカロリー及び栄養を摂取出来るものを見ていたんだ」

オッレルス「…私の為に?」

フィアンマ「…死なれては困る」

オッレルス「そういえば、そうか」

フィアンマは、適当に、栄養食品をカゴに入れた。

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 02:51:50.16 ID:CcGljY4AO<>
ほとんどをオーディンに持ってもらう形で、フィアンマは帰って来た。
まだ住処として馴染んでいない以上、戻って来たというのが正確な表現なのかもしれない。
フィアンマは帰るなり、食材や調味料を適所にしまい込み、慌ただしく家事をする合間、子猫の世話もしていた。
オーディンはそんな青年の様子を無感動に眺め、葡萄酒を口にする。
蜂蜜を混ぜたそれは、安物のブドウジュースの如く甘かった。
漸く家事を済ませ、フィアンマは菓子パンを口にくわえたまま、オーディンの向かいに腰掛けて子猫をあやす。

子猫「みぁ」

フィアンマ「…昼寝はせんのか」

子猫「み」

フィアンマ「…」

ごろーん、とする子猫はマイペースだ。
簡易ケースから出た子猫は、のびのびとしている。
フィアンマは空腹だった事もあって、さっさと菓子パンを食べ終える。
ゴミを捨て、彼はそのままバスルームへ消えた。 まだ傷口が痛むので、直接シャワーを浴びる事は出来ない。
だから、濡れタオルで体を拭いて清潔にする。
隻腕では、その苦労が、健常者のそれに比べて数倍だった。

<>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 02:53:20.10 ID:CcGljY4AO<>
一週間経った。
フィアンマの右肩の傷口は幸運にも膿んでしまう事無く塞がった(とはいえ、やはりまだ触れば痛い)。
オーディンはというと、時々フィアンマの料理に手を出しながらも、ほとんどを葡萄蜜酒で過ごしている。
何はともあれ、これでようやく入浴出来る。
根が綺麗好きであるフィアンマは、チャンスを逃さずにバスルームへ入った。
多少の苦労はあったが、『第三の腕』の力も借り、どうにか無事入浴を終える。

興味を持った相手には、とことん執着し、虐げ、愛でるのがオーディンという男だ。
そういった訳で、彼は珍しく自ら事を起こした。 フィアンマの髪を乾かすべく、ドライヤーを手にしていたのである。

フィアンマはどうにか身体を拭いて服を着、洗濯をせねばならないか、と思いながら、リビングへ来て。
壊れていないかどうかを確かめるべく、謎の機械から自分の手に何かを浴びせているオーディンを発見した。

フィアンマ「…」

オッレルス「……おいで」

有無を言わせない声。
フィアンマは警戒しながら近寄り、少しばかり怯えた。
何を隠そう、彼は世間知らずである。
オーディンはフィアンマをソファーへ座らせ、ドライヤーのスイッチを入れ直す。

フィアンマ「…、…なん、…何だ、…それは。……『ブオーン』といっているが」

小さく震えている。
かなり怯えているらしい、とオーディンは判断した。

オッレルス「>>39」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/12/31(月) 14:46:30.19 ID:PN1py7p70<> 化学兵器だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/12/31(月) 14:51:55.29 ID:PN1py7p70<> 危ないものではない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 15:35:49.29 ID:ugx0Bv9A0<>
オッレルス「危ないものではない」

フィアンマ「……」

無害有害というよりも、彼は得体の知れないものに警戒するようだ。
フィアンマの価値観に対してそう判断を下して、オッレルスは温風をフィアンマの髪にかけ始めた。
ドライヤーを手にしているのとは反対の手で、わしゃわしゃと髪をかきあげる。
セミロングの赤い髪はそのことによって段々と水気が飛んでいく。
乾き、かきあげるごとに、シャンプーの良い匂いが香った。

フィアンマ「…髪を乾かすものか」

オッレルス「ドライヤーと言う。…君は今までどうやって乾かしていたんだ?」

フィアンマ「…術式の応用だが」

オッレルス「…そういえば、燃える赤<フィアンマ>だったな」

言いつつ、オッレルスは丁寧に乾かしていく。
骨董品の手入れでもするかのように、慎重に。
やがて乾かし終わり、ドライヤーを片付けるオーディンを見やり。
フィアンマは、礼の言葉を述べるべきかどうか、迷った。

フィアンマ「…、…」

良好な人間関係を望むのなら、言っておくべきだ。
だが、この男はまともな人格をしていない。
優しい部分はあれど確実に破綻しているし、いつか自分にも被害をもたらすだろう。
しかし、嫌いかというと違う気がする。交渉の余地を持たせる辺り、少し抜けているし。
加えて、命令や脅迫でばかり従わせるのだから、臆病な性格をしている。
自分も他者のことを言える程、まともな性格はしていない(と思う)。
となれば、多少なりとも感謝の意を表したところで問題無いだろう。

フィアンマ「オーディン、」

オッレルス「…ん?」

フィアンマ「…ありがとう」

オッレルス「……、ああ」

礼の言葉に慣れていないのか、オーディンは視線を逸らした。
台所に立ったので、料理をするのかと思いきや、葡萄酒を取り出す。
また葡萄蜜酒を作るつもりらしい。そろそろ病気にならないか本気で心配するレベルだ。

フィアンマ「…術的な意味があるのか、個人的な趣味か、どちらなんだ。後者の場合は健康状態に問題が起きるぞ」

オッレルス「>>42」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 15:38:16.36 ID:CcGljY4AO<> >>40
×オッレルス
○オーディン

安価下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 18:30:31.50 ID:PtBEFkYSO<> 食事は必要ではない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 19:54:04.22 ID:MiVmWr3o0<>
オッレルス「食事は必要ではない」

フィアンマ「…必要では、ない?」

怪訝そうな表情を浮かべるフィアンマを一度見やり、オーディンはスプーンでゆっくりと酒をかき混ぜる。
赤い液体と黄金の甘い汁が、とろとろに混ざっていった。
酒も蜂蜜も、市場で手に入る中でも最も価値が高いものである。

オッレルス「術的な意味でもあるし、趣味…というよりも、性格でもある」

主神オーディンとしての儀式、『葡萄酒のみの摂取』。
加えて、食事にあまり興味が無いということ。
人間の身体と言い切れないフィアンマ以上に、人間味が欠けている。

魔神とは、魔物の中の神という意味ではない。
魔神とは、『魔術を極めすぎて、神様の領域にまで足を突っ込んでしまった』人間のことだ。
故に、オーディンの身体も、本当は人間である―――筈なのだが。

右方のフィアンマが、『原罪』を可能な限り薄めたことにより、人の限界を超えた神・天使クラスの魔術を行使することが可能であるように。
つまり、人間というよりも天使に近しい身体を持ち合わせているように。
魔神である彼もまた、特別な体質なのかもしれない。
そもそも、数多くの魔道書の原典を閲覧・解読して理解した上で、特殊な方式の力を振るう時点で普通の人間ではない。

喉が焼け付くような味になった上等な葡萄酒を呑み込み、オーディンは息を吐く。
蜜に染められた吐息は甘い。が、アルコール臭い。

フィアンマ「……だが、完全に神ではあるまい」

オッレルス「勿論、そうだが」

空になったグラスを水桶に浸し。
彼は振り向いて、フィアンマの瞳を見る。

そして、唐突に。

本当に、突如として、烈火の如き怒りを見せた。

オッレルス「…何だ、その目は」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 20:07:17.92 ID:CcGljY4AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !red_res<>2012/12/31(月) 20:07:20.47 ID:MiVmWr3o0<>
完全に、やつ当たる形で。
酒を呑んだ割には、動きにふらつきは無く。
オーディンは、思うがまま、暴力を振るった。
右肩を掴まれ、塞がったばかりの傷口へ触れられた痛みに、フィアンマの身体が強ばる。
そんな細身の身体を、オーディンは床へ押し倒した。
手を使ったのではなく、蹴って力を抜けさせた上、『説明の出来ない力』で引き倒した。
いうなれば、『北欧宮殿(ヴァラスキャルヴ)』とでも言おうか。
どこまで逃げれば回避したことになるかもわからない強力な力に倒され。
フィアンマは痛みを堪えながら手を伸ばして床に何かを描こうとし、その左手を一度強くオーディンに踏まれる。
びき、と骨が軋む音がした。絶叫する程ではないが、痛い。

「ッ、」
「…そんな目で、俺を見るな」

男の手が、顔に近づく。
フィアンマは咄嗟に、魔術を使う事も忘れ、痛む左腕を使って抵抗した。
このまま眼窩に触れられれば、確実に眼球を潰される。
何故だかはわからないが、そんな気がした。だからこそ、必死に抵抗する。
細腕一本でも、男の手だ。まして、オーディンの腕も細い。
純粋な腕力同士では、そこそこに良い結果を見せる。つまり、オーディンはフィアンマの目を潰す事を諦めた。
代わりに、何度も腹部を蹴り、殴りつける。
げほ、と噎せると共に、血液が吐き出された。赤黒いそれが、床に広がる。

「は、」

『聖なる右』を使おうにも、弱体化している為、分が悪い。
どうにかして反撃しなければ、とフィアンマは周囲に視線を向けた。
葡萄酒には手が届かないが、果物ナイフなら。
手を伸ばし、掴んで、それを投げるのではまったく効かないだろうと判断して口に咥え、手首を切った。
どくどくと溢れる血液を用い、床に小さな陣を描く。
魔術記号を数点足せば、そこから黄金の剣が現れた。
ぐいと引き抜いて、ふらふらとしながら、フィアンマは剣をオーディンに向ける。
訳がわからないが、反撃しなければ、戦わねば、死あるのみ。

しかし。

増血剤を使って貧血を抑えていた病み上がりの身体が、大量出血や内臓のダメージに立っていられる筈もなく。
フィアンマは耐えようとしたものの、その場に膝をついた。
段々と意識が遠のいていく。緩やかな死。


「……、」

こんな汚らしい世界に、救いなどありはしない。
何せ、自分の救済を拒んだような世界なのだから。

思って、目を閉じた。
身体が倒れた事を自覚しても、起き上がれは、しなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 20:07:21.39 ID:CcGljY4AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 20:12:40.26 ID:MiVmWr3o0<>
目が覚めた。
口の中には、増血剤の錠剤の味。
苦々しくて不味い液体を唾液で中和しながら呑み込んで、フィアンマはそっと目を開けた。
横たわっていたのはベッドで、左手に違和感。
きつく縛った後で縫合をしたのか、切った跡には、包帯が巻かれていく。

巻かれていく?

現在進行形に疑問を覚えたフィアンマは、自分の左手首に包帯を巻いている手を見る。
男の手だ。青年の手である。
そのまま腕の元を辿っていく。視線をズラしていけば、そこにはオーディンが居た。
彼の周囲には医療箱と思われる箱が二個程ある。
その中から消毒液や簡易縫合セットを出したのだろう。

フィアンマ「……」

先程暴力を振るっている人物と同一人物であるとは、とてもとても思えなかった。
丁寧に手当をしている彼は、情けない事に、ぐすぐすと鼻を啜っている。
どうやら泣いているようだ。それも、演技ではなく本気で。

オッレルス「っ、…っ、…」

物々しい眼帯をしている左目ではなく、右目からぼろぼろと涙を零し。
時に肩を震わせている辺り、本気で後悔して泣いているのだろう。

フィアンマ「……何故泣いている」

オッレルス「>>49」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 20:29:40.68 ID:Hf6jNJ6DO<> うるさい…黙って巻かれていればいいんだ…グス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 21:17:21.08 ID:Em8k/F7W0<> 解らない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 21:46:06.57 ID:ZK4Lgpit0<> 《>>47 ×振るっている ○振るっていた》


オッレルス「解らない」

ただ、後悔が胸の内を渦巻いて。
手当をしなければならないという使命感に駆られて。
どうしても、涙が止まらない。

フィアンマ「……」

オッレルス「……、」

謝罪を紡ぎ出せば、或いは楽になる。
そんな発想すら浮かばないまま、魔神は涙を零した。
少なくとも、フィアンマを殺したい訳ではないようだ。
口の中の増血剤は気絶をしている最中に突っ込まれたものだろうし、手当も丁寧で。
フィアンマは何となく、眼前の人物がどのような人格構造なのかを理解した。
別に、多重人格の類ではないのだろう。心を病んでいる事は確かだが。
大切にしよう、愛でよう。壊してしまおう、傷つけたい。
その両方を極端に両立させているのが、この青年なのだ。
じくじくと傷跡が痛むのを感じながら、それでも迅速な手当に膿はしないだろうなと思い。
手当を終えて逃げようと、或いは去ろうとする青年の手首を、フィアンマは掴んだ。

フィアンマ「待て」

オッレルス「……、…」

フィアンマ「…」

視線が合う。
睨み付けるフィアンマに対し、オーディンは僅かばかり怯えているように見えた。

フィアンマ「謝れ」

フィアンマは敢えて、責めなかった。
たった一言、謝罪の催促をする。
オーディンは目を見開き、数秒黙った後、言い慣れない声色で応える。

オッレルス「…すまなかった」

フィアンマ「…それで良い」

相槌を打ち、それでも、フィアンマは手を離さない。

あんなにも一方的に暴力を振るわれたのに。
怒りよりも先に、哀れみの心が、遺った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 21:57:07.06 ID:CcGljY4AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 21:57:22.92 ID:ZK4Lgpit0<>
ダメージがいつまでも後を引き、ほとんど起き上がれない。
そんな体たらくのフィアンマを、オーディンは甲斐甲斐しく世話した。
料理に関しては出来なかった為、口に栄養食品を銜えさせる程度だったが。
毎日包帯を換え、消毒をし、増血剤を適切に投与する。
責任を感じて、というのが主な理由だろう、とフィアンマは推測している。
しかし、オーディン自身はどうして自分がこんな行動をしているのか、自分でもよくわかっていないようだった。
ただ、フィアンマの世話をしている方が落ち着くらしい。
けれど、興味が向かない猫の世話には目を配れないらしく、フィアンマが指示をしてようやく餌をあげていた。
仔猫は優秀で、既にトイレの場所等をきちんと覚えている。
消毒臭いというのも理由の一つだろうが、フィアンマにあまり近寄る事もしなかった。

オッレルス「…だいぶ塞がってきたな」

彼がそう呟いたのは、フィアンマの左手首の傷に関して、だ。
縫合の糸をするりと抜いたそこには、不気味な穴と痛々しい傷。
フィアンマの肌が白い事も、傷の見目の痛々しさに拍車をかけた。

オッレルス「……まだ、痛い?」

フィアンマ「…全体的に、な」

水を飲ませる為に、オーディンはフィアンマを抱き起こす。
そのやり方は優しく丁寧だった。不慣れな様子ではあるが。
グラスを傾けられ、少しずつ水を飲みながら、フィアンマは彼の様子を窺う。
顔色は悪かった。フィアンマが怪我をして以降、飲まず食わずだからだろうか。

オッレルス「…昔から、こうなんだ」

何かに興味を向けると、執着してしまう。
執着はやがて衝動に変わり、傷つけ、そうして後悔する。

フィアンマ「……」

オッレルス「……」

オーディンは水を入れていたコップを片付け、フィアンマの隣に戻る。
ずっとこの調子で、葡萄蜜酒にも手を出さない。

フィアンマ「…そのままでは、死ぬぞ。…葡萄酒すら呑まない様では」

オッレルス「>>54」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 22:11:52.89 ID:Em8k/F7W0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/31(月) 22:53:16.85 ID:PtBEFkYSO<> 構わない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2012/12/31(月) 23:04:12.01 ID:ZK4Lgpit0<>
オッレルス「構わない」

フィアンマ「…、」

オッレルス「…別に、俺が死んだところで喜ぶ人間は居ても、悲しむ人間は居ない。そんな人間が生きていたって仕方が無い」

卑屈になっているのではなく、現実を見据えた上で。
冷静な様子で、オーディンはそう述べた。
死んだところで泣いてもらえない人間に価値などない。
だからこそ、ここで自分が死んでしまっても構わない。
そもそも感じない食欲を我慢することなど、いくらでも出来る。
それは、言外にこのまま死んでしまいたいと述べているようにも思えた。
フィアンマは黙ってしばし考え込み。
やがて、オーディンに栄養食品が食べたいと告げた。
彼は逆らうでもなく、素直に持ってくる。本当に甲斐甲斐しい。
フィアンマは開封してもらったそれを手にし、唐突に手の甲でオーディンの頬を叩いた。
急な出来事、しかも敵意の無い攻撃にきょとつくオーディンの口が僅かに開いたのを確認して、フィアンマはぐいと栄養食品を突っ込んだ。
クッキー状のそれは、オーディンの口の中をパサパサにしながら侵入していった。

オッレルス「むぐ、」

フィアンマ「食べろ」

オッレルス「む、」

フィアンマ「やかましい。食え」

有無を言わせず、ぐいぐいと押し込む。
歯が欠けたくなければ咀嚼して呑み込む他無く、オーディンはむぐむぐと口を動かした。

オッレルス「、…何をするんだ」

フィアンマ「お前が死ぬと困る。言った筈だ」

オッレルス「…金なら漁れば見つかるよ」

フィアンマ「そうではない」

オッレルス「……」

フィアンマ「大体、俺様の世話が原因で死なれては寝覚めが悪い」

オッレルス「……、…」

フィアンマ「良いか、死ぬな。…俺様以上に、死んでも悲しむ人間が居ないヤツなど存在するものか」

オッレルス「……」

フィアンマ「死ぬなよ。…げほ」

オッレルス「………」

フィアンマ「…返事は」

口の中に溜まった血液をゴミ箱に吐きだし、フィアンマは恐ろしい形相で問いただした。
彼なりのルールか何かに引っかかったらしい、とオーディンは理解する。

オッレルス「…>>57」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2013/01/01(火) 02:57:40.06 ID:3CHPj5cM0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2013/01/01(火) 02:58:32.73 ID:3CHPj5cM0<> でも、無理だ
俺は猫を見殺しにした
そんな俺が生きていいわけがない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/01(火) 03:14:26.61 ID:i149joDy0<>
オッレルス「…でも、無理だ」

目を伏せ、口の中を埋めるチョコレートのパサついた味に何度も唾液を呑み込みながら、オーディンは溜息混じりにそう言った。
過去の事案が気にかかっている。
見過ごしたが故に成功を手に入れ、故に失敗した。

オッレルス「俺は、猫を見殺しにした」

震えていた、仔猫だった。
フィアンマが今飼育している猫とは正反対に、真っ白な猫だった。
泥にまみれながらふらふらと歩いていたところを、車に轢かれてしまった。
死にかけで、それでも動物病院へ連れて行けば、助かったかもしれない。
だが、その日は調度、一万年にあるかないかの、魔神へ至る儀式の実行日だった。
故に、自分はか弱い仔猫を見捨てて、そのまま儀式場へ向かった。
きっと、あの猫は死んでしまった。そしてそれは、自分のせいだった。
恐らくあの白い猫は、残虐非道の限りを尽くしてきた自分の、最後の良心だったに違い無い。
それを見殺しにした時点で、自分という人間は滅茶苦茶になってしまったのだ。

オッレルス「そんな俺が、生きていい訳がない」

だから、死んでしまいたい。
しかし、自発的に死を志すのはあまりにも悲観的過ぎるし、あの猫にも失礼だ。
故に、何かの目的の為、仕方なく死んでしまいたい。
そしてその目的は、自分が死んでしまえる程に大きなものでなくてはならない。

オッレルス「…俺は、本当は魔神の器じゃないんだ」

なり損ない風情が、妥当。
そんなマイナス思考の積み重ねで、日々呼吸してきた。
死にぞこない。生者にして、死人のようなもの。

オッレルス「俺が生きて何になる」

何も生み出さない。
強いて言えば、壊すだけ。
そんな人間が、呼吸をしていて、一体何が良いことなのか。
どん底まで堕ちこんでいく彼へ、フィアンマはぴしゃりと言い放つ。

フィアンマ「馬鹿馬鹿しい」

オッレルス「…何?」

思わず、魔神は聞き返した。
一瞬、また暴力を振るいかけて、フィアンマの眼光に、怯む。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 03:24:44.93 ID:rNgp4k1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/01(火) 03:24:48.08 ID:i149joDy0<>
フィアンマ「全ての人間が目的があって生きている訳ではない。お前一人が特別だという訳でもなかろう」

オッレルス「……」

フィアンマ「なるほど、お前が生きているべき人間ではない。魔神の器でもない、それらは認めよう。だから何だ」

認証した上で、吐き捨てる。

後ろを向いたオーディンが失敗したように。
前を向いて生きてきたフィアンマもまた、失敗したのだ。

オーディンが魔神の器ではないことくらい、わかる。
フィアンマもまた、救世主の器ではない。わかった。

だが、世の中全てがお堅い理論・正論で動いている訳ではない。
道徳やお綺麗な理論で全てが成り立っているのなら、悲劇など起こる筈もない。
オーディンが抱え込んでいる罪悪感だって、そもそもはその猫を轢いた人間が諸悪の根源である訳で。

フィアンマ「たったそれだけの事で死んでどうする」

フィアンマは、オーディンと自らを同一視している。
少なからず、それは彼自身の認めるところである。

フィアンマ「器に見合っておらずとも、お前は魔神になった。悪いとは思いつつも、お前は仔猫を見捨てた。そして、魔神の座という成功を手に入れた。誰かの差し向けでそうなったのであればともかく、自分の選択には胸を張れ。……別の考えでも構わん。その仔猫は、お前でない誰かに救われたかもしれん」

オッレルス「……」

その発想は無かったのだろう。彼は、黙った。

フィアンマ「お前には自尊心が欠けている。だから狂人なんだ。…お前をまともにする。したい」

オッレルス「…まとも?」

フィアンマ「お前だって、今現在の自分をこよなく愛している訳ではあるまい。……自分の人生位、自分で擁護しろ」

オーディンを死なせる事は、自分を否定することと同義であるような気がして。
フィアンマはキツくそう言うと、無理やり起き上がった。
血圧が非常に低い為、思わず吐きそうになる。こらえた。
慌てて支えようとするオーディンの手を突っぱね、フィアンマは敵意無く睨みつけた。




フィアンマ「………俺様を生かす為に、お前は生きろ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 03:24:49.15 ID:rNgp4k1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/01(火) 03:35:43.99 ID:i149joDy0<>
自分が生きて何になる。意味が無い生なら、死んでしまったところで変わらない。
誰も泣いてくれないのなら、生きていたって仕方が無い。自分なんて、消えてしまえばいい。

それは逆説的に言えば、人生に意味が欲しいということだ。
だから、フィアンマは傲慢に言い放った。
生きる目的を与える側は、凛としていなければならない。

オッレルス「…君を、生かす為に?」

フィアンマ「そうだ。不服があるのか?」

オッレルス「…いや、」

何かに興味を向けると、執着してしまう。
執着はやがて衝動に変わり、傷つけ、そうして後悔する。

生きながらにして死者と同じであることは自分も同じだ、とフィアンマは思う。
だからこそ、この魔神の様に弱気にはならない。
純粋な魔神が興味を持つ程に、自分は素晴らしい人間だと実感したから。

別の言い方であれば、それは自己催眠、或いは自己暗示なのかもしれない。
この関係性は傍から見れば共依存と呼ばれるもので、忌避すべきなのかもしれない。
だが、当人達にとってそうでないのなら、違う。

フィアンマ「『俺が死んだところで喜ぶ人間は居ても、悲しむ人間は居ない』、お前は今しがたそう言ったな」

オッレルス「…ああ」

フィアンマ「なら、俺様が悲しむ。お前が死んでしまったら、泣きに泣いて世を儚む。…これで良いな。死ぬ理由が他にあるのか?」

オッレルス「……」

フィアンマ「第一問、お前が生きて何になる。答え、俺様の生活の安寧の守り手になる。第二問、意味がない生なら死んでしまっても変わらない。答え、俺様にとってお前の生が意味を成す。第三問、誰も泣いてくれないのなら、生きていても仕方が無い。答え、俺様が世を儚んで泣き濡れる。……お前がこの世から消える必要は無くなったな。認めろ」

言いながら、フィアンマはのろのろと立ち上がる。
顔色は非常に悪かったが、それでも彼は歩んだ。

フィアンマ「……喉が渇いただろう」

呟いて、彼は台所に立った。
だるく感じながら、葡萄酒に蜂蜜を混ぜる。
オーディンがどの程度の割合で混ぜていたかは、もう識っている。

酒に対して、蜂蜜が多すぎるのではないか、程度。
甘ったるいそれは、とてもではないがフィアンマの口に合わない。

フィアンマ(…個人を救う役目は、俺様ではないはずなのだが)

それでも、あの少年を真似てみよう。
右方のフィアンマは、そう思う。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 03:45:14.23 ID:rNgp4k1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/01(火) 03:49:35.64 ID:i149joDy0<>
傷口がどこかにぶつかってしまわないよう、慎重にグラスを持つ。
そして、透明な中に紫の液体が揺れるそれを、差し出した。
オーディンは大人しくそれを受け取り、ごくりと呑んだ。
舌に親しむ液体を呑み込む度、口の中のパサつきが自然と流れ消えていく。

オッレルス「ん、…」

フィアンマ「……」

最後の一滴を飲み干すまで、静観する。
そんな態度のフィアンマの視線に急かされるまま、オーディンは酒を呑み込んだ。
アルコールと蜂蜜が、ぐじゅぐじゅと喉を灼く。
空になったグラスをひったくり、フィアンマは二杯目を作って再び差し出した。
わんこそば職人も驚きの速さで提供される酒に、渋々といった様子で、魔神は酒を飲んだ。
三杯目のお代わりは無く、フィアンマは水を一杯呑んだ後、戻って来る。
まだ体調が万全とは言い難い。彼の顔色はやはり、悪いままだ。

オッレルス「…フィアンマ」

魔神が、何かを言いかける。
フィアンマはそれに耳を傾けようとして―――倒れた。
身体的ストレスに、熱を出していたためだ。道理でバランス良く歩けない筈である。
前に倒れた為、自然とオーディンの身体に被さる状態で、フィアンマは気を喪う。
結局、何が言いたかったのか、聞けず仕舞いなままに。




目が覚めた。
この展開を何度繰り返せば平穏になるのか、と思いながら、フィアンマは目を開けた。
横たわってはいない。座っているようだ。
周囲にぐるりと視線を向ける。どうやらリビングらしい。

フィアンマ「……、」

冷たい何かが、胸元に触れている。
何だろうかと視線を下げれば、服の中にオーディンの手が突っ込まれていた。
彼の右手のひらが触れているのは、調度フィアンマの心臓の上。胸板だ。

オッレルス「…目が覚めたのか」

フィアンマ「…何を、している」

表情がひきつるのを感じながら、フィアンマは問いかける。
泣き濡れるなどとは言ったが、それはあくまで友人兼同居人として。
ソドムの仲は、ゴメンだ。

オッレルス「>>66」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 22:12:23.38 ID:laAo0/yc0<> かそく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage sage<>2013/01/02(水) 00:10:38.53 ID:6T1XnYj70<> ……温かかったから、つい <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 00:19:25.65 ID:8pCkgoQx0<>
オッレルス「……温かかったから、つい」

フィアンマ「…つい?」

オッレルス「…つい」

悪気は無かった、とばかりに手が引き抜かれる。
冷源が無くなり、フィアンマは熱っぽい吐息を漏らした。
性的な意味合いのそれではなく、純粋に発熱しているが故のそれだ。
ガンガンと痛み始める頭を、オーディンの肩にもたれる。
調度、オーディンを椅子にする形で、フィアンマは座っていた。
身体がだるい。力が入らない。

フィアンマ「…怠い」

オッレルス「熱が出ているからだろう」

フィアンマ「わかってはいるが」

愚痴ってみたところで、熱は下がらない。
効果的な方法はいくつかあるが、期待しない。
どのみち、今のフィアンマにやるべき事など無いのだから。
正確にはオーディンを更生させることだが、ただそれだけ。
この家から出なくても、生きていくに何の支障も無い。

フィアンマ「…、…お前の知識で何とかならんのか」

オッレルス「緩和はしたよ。その結果が今だ」

ということは、本来高熱であるべきらしい。
内臓のショックを鑑みれば、不可抗力だ。

フィアンマ「…お前は料理は出来んのか」

オッレルス「出来ない」

フィアンマ「…そうか」

食事に興味の無い人間が出来る訳もないか、とフィアンマは肩を落とす。
欲を言えば、お粥か何かが食べたかった。柔らかくて味の薄い何かが。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 00:55:35.95 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 00:56:04.10 ID:lQ/XtAKT0<>
現在家の中にある食材を思い出そうとしてみたが、頭が働かない。
とりあえず、何かを食べたい。料理は期待しないが、一工程なら任せられるだろう。
そう判断して、フィアンマはだるそうに要求した。

フィアンマ「…すりおろしたリンゴを食したい。だが、林檎は無い。すり下ろす道具はある、作業は任せた。買ってこい」

オッレルス「…一つで良いのか?」

フィアンマ「構わん」

フィアンマの返事を聞き、オーディンは彼の身体を横にズラして立ち上がる。
眼帯の位置を僅かに直した後、鍔広の帽子を被って出て行った。
きっと林檎を買ってきてくれると信じ、フィアンマは目を瞑る。





一時間程で、オーディンは帰って来た。
ガチャリとドアの開く音に、フィアンマは目を開けた。
甘い熟した林檎の香りがする。
良い匂いだ、とぼんやり思いつつ視線をズラすと、まずオーディンが見えた。
次に、彼の後ろから性別問わず多くの少年少女が顔を覗かせている事に気がつく。

フィアンマ「……」

オッレルス「…」

フィアンマ「……」

フィアンマは、ざっと三○人程の少年少女から、視線をオーディンに向ける。
彼の表情は変わらない。手にある小さな紙袋の中身は、恐らく林檎一個だろう。

フィアンマ「…俺様は林檎の購入を頼んだだけなのだが。人身売買でもしてきたのか。何かの儀式に使うのか? それとも、全寮制の学校でも作るつもりなのか」

ジト、と睨まれ、オーディンはやや視線を逸らし気味に答える。

オッレルス「…、>>71」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 01:16:42.30 ID:AM/Txd8AO<> >>69
×多くの少年少女
○多くの子供達 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 01:20:20.32 ID:ffvHMUdu0<> 拾った <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 01:31:04.21 ID:lQ/XtAKT0<>
オッレルス「…、拾った」

フィアンマ「後先も考えずに、か?」

オッレルス「…何も考えていない訳ではない」

フィアンマ「………」

オッレルス「……、…」

フィアンマ「…このアパートメントがまるごとお前の所有である事は知っているが、…それにしても」

オッレルス「……ほんの数日だ」

フィアンマ「その間に教会等と話をつけられるのか?」

オッレルス「無理矢理にでもつけてくる」

フィアンマ「…この部屋以外の部屋の掃除は?」

オッレルス「していない。…本人達にさせれば良い」

フィアンマ「こんな年端もいかぬ子供がまともに掃除など出来るものか」

ため息をつき、フィアンマは子供達を見やる。
どこか怯えた様子だ。フィアンマに、というよりも、周囲そのものに。
何らかのトラウマを抱えているのかもしれない。

子供「……」

子供2「…にゅー」

フィアンマ「…上で寝てくれ」

言いながら、フィアンマは子供達を先導することにした。
正直、熱で具合は悪いが、そうも言っていられない。




掃除を済ませ、子供達を部屋それぞれに割り振って寝かせ。
フィアンマは、部屋のリビングまで戻って来た。
そんな彼に、スプーンを突っ込んだ皿が差し出される。
どうやらこちらが動いている間に、林檎をすっておいたらしい。

フィアンマ「……ん」

受け取り、フィアンマはソファーに腰掛けてのろのろとリンゴを口にする。
程よい甘みと酸味が、口の中いっぱいに広がる。
オーディンもフィアンマもお互い礼を言うでもなしに、向かい合って座っている。

フィアンマ「………」

オッレルス「………」

子供達から聞かされた話によると、オーディンが彼らを人身売買組織から救ったらしい。
猫を晩飯にしろと言った男と同一人物とは、やはり思えない。
これでいて乖離性人格障害ではないのだから、驚かざるを得ない。

フィアンマ「…寄り道か」

オッレルス「…ああ」

フィアンマ「……」

随分と凄い寄り道をするものだ、とフィアンマは思う。
それが彼の本質だとするならば、やはり更生の余地が、ありそうだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 01:43:03.88 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 01:43:06.38 ID:lQ/XtAKT0<>
全快した。
その一言でフィアンマの身体状態を表現する為に、丸々一ヶ月もかかってしまった。
もうすぐ12月。
子供達は最後の一人まで、どうにか行き先が決まった。
二人きりの生活に戻って、しかし寂しさなど無いまま、二人の魔術師は暇を持て余していた。
子供達が居た時には、遊んでやったりして気を紛らわしていたのだが。

オッレルス「…義手を着けるつもりは無いのか」

フィアンマ「無いな」

オッレルス「現実を受け入れがたいから、か?」

フィアンマ「いいや。……単純に、リハビリが面倒だ」

オッレルス「……」

フィアンマ「体裁を整えたところで、ほとんど外に出ないのであれば関係無い」

右肩は、未だ時折ズキズキと痛む。
どこかにぶつければ、泣きこそしないものの、酷い痛みを負う事になるだろう。

フィアンマ「……お前は、不完全な状態なんだろう。純粋な魔神は、無限の可能性に縛られる」

オッレルス「その通りだ。…だが、『主神の槍』を用いて完全な状態になろうとは思わない」

フィアンマ「何故だ。完璧であれば、世界すら敷けるというのに?」

オッレルス「世界を支配したところで、何になる? 例えば、水道水がオレンジジュースへ変わる世界に"変更"したとしても、生活が充実する訳じゃない」

フィアンマ「……、」

オッレルス「君を傍に置いている今現在の俺の成功率は、約60%。それで大概は成功出来る。そもそも、大魔術を使う必要性も無い」

野望など無い。
だから、ここで燻っていても問題無い。
安寧に見せかけた堕落だ、とフィアンマは思う。

フィアンマ「……」

オッレルス「…大方、君は俺に世界を救わせたいんだろう。君の救いを一度拒んだ世界を救って何になる?」

思惑がバレ、フィアンマは黙り込む。
オーディンは、やや沈んだ声で付け足した。

オッレルス「俺は、何に対しても興味を向けられない。精々、今興味を向けていられるのは、君が精一杯だ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 01:43:07.56 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 01:50:56.72 ID:lQ/XtAKT0<>
沈黙の数時間が続き。
オーディンは思い出したように、フィアンマを誘って家を出た。
寒い空気の中を歩く事で、頭をすっきりさせたかったのかもしれない。
フィアンマは、何故あんなことを持ちかけたのだろうかと自問自答していた。
他力本願という言葉とは程遠いフィアンマという人間が、オーディンに甘えようとしたのか。
そうだとしたら非常に情けない、と思いながら、フィアンマは歩く。

そして、ふと。

フィアンマとオーディンは、同時に足を止めた。
『人払い』の術式にはたと気がついたからである。
誘われていたのか、周囲は廃墟ばかり。
散歩にしてはやたらと足が妙な方向へ向くとは思ったのだ。
だが、オーディンが無言でやって来た辺り、彼はそれでもいいと思ったのかもしれない。

フィアンマ「…誰だ?」

オティヌス「……」

細身の少女だった。
医療用眼帯を右目にしており、隻眼の眼光は鋭い。
彼女はフィアンマとオーディンを静かに見据える。

オティヌス「右方のフィアンマ、か。何の為に迎え入れた。何かをするつもりか?」

どう答えたにせよ、殺す。
言外に雰囲気にてそう述べながら、彼女はオーディンを睨む。

酷い爆音がした。

正確には、一つ一つの攻撃が相殺しあい、それが一瞬の音として纏まった。
見えない力同士が、お互い拮抗したらしい。

オッレルス「…お前に私は殺せない。力の量が違う」

言いながら、虚ろな瞳に、珍しく彼は殺意を灯した。

オティヌス「だろうな、忌々しいことに。……右方のフィアンマを手放せ」

オッレルス「>>78」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 02:31:08.28 ID:ad7dMPaDO<> なぜだ?
…というより、たかがなり損ない風情が私に指図とは、何様のつもりだ?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 07:35:26.98 ID:3Idl5TGSO<> …フゥ……断る。『これ』があると便利だし、特にこれといって渡す必要性を感じない。←説明の出来ない力で、オティヌスを周辺の地理ごと吹き飛ばす

…大体、出来損ないのクズごときが、誰に向かって口をきいているかわかっているのか?←オティヌスにあえて全力の反撃をさせ、受け、少し本気出して反撃ごとオティヌスをうつ伏せ状態で地面に縫い付ける

俺は『魔神』だ。


もう一度、その躯に教育〈わからせて〉やろう←オティヌス頭を丹念に踏みつけ、靴の裏を顔にすりつける

『魔神の機嫌を損ねるとどうなるか』。

なぁ?ウジムシ?←オティヌスの頭に気絶させる程度の電流を流し続け、魔術を使用不可状態にする→オティヌスの衣類のみを全て切り裂き、全裸に剥く→そのまま逆さ釣り状態にして、オティヌスの足に槍を突き刺して木に縫い止める→暫く殴る蹴る等をする→魔術で周辺の住民を呼び、オティヌス目掛けて罵倒と石を投げつけさせる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 08:38:27.19 ID:CSEWuQVz0<> >>78
セリフだけにしろ
行動までは書く必要は無い <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !red_res<>2013/01/02(水) 11:35:23.14 ID:T2pUjB1U0<>
「…ふぅ、……断る。『これ』があると便利だし、特にこれといって渡す必要性を感じない」

右方のフィアンマに関して言及された。
たったそれだけの事案で、驚く程自分が不愉快になっていることを、オーディンは自覚する。
その不快を解消するべく、暴力に転化した。
説明の出来ない力―――即ち『北欧宮殿』を用いて、廃墟全てを巻き込みながら、彼はオティヌスを吹き飛ばす。
これだけで死んだとは思えないし、これで死なれては拍子抜けだ。

「…大体、出来損ないのクズ如きが、誰に向かって口を利いているか…わかっているのか?」

嘲弄に呼応するかの様に、攻撃が飛んできた。
目視すら出来ない彼女の全力の反撃に、オーディンは抵抗しなかった。
敢えて、受ける。拮抗させずに。
そうして攻撃が的中したと油断したところを、突いた。
加減の度合いを弱めることで、力の出力を上げる。

「ッぐ、」

呻くオティヌスの様子を眺め、オーディンは淡々と、彼女の身体を地面へ縫い付けた。
上からかかる重圧に、彼女は細い指先を蠢かせる。
俯せの状態で圧力がかかれば、内臓が圧迫されて呼吸が狭まる。

「私は『魔神』だ」

決まりきった世の常識を述べる。
そこには暴力性しか存在しない。
フィアンマに見せた、柔らかくて脆い部分は無い。
かの子供達に見せた、善意と呼ばれる類のものは無い。

「もう一度、その躯に教育して〈わからせて〉やろう」
「げほ、」

噎せ込むオティヌスに、オーディンは歩み寄る。
そして無造作に無慈悲に、オティヌスの頭を踏み付けた。
苦しそうな声を漏らす彼女の顔面に、靴裏を擦り付ける様にして、ダメージを重ねる。
たまらなく不愉快だった。
きっとこの不快感は、玩具―――否、大切な道具を手離せと言われたからだ。
そう、結論付けて。囁くように、魔神は言葉を紡ぐ。

「『魔神の機嫌を損ねるとどうなるか』。…なぁ? 蛆虫?」

嘲笑して、彼は指先を動かした。
初めて見せた、説明の出来そうな動き。
たったそれだけで適切な魔術記号を記し、彼は術式を行使する。
陣地という形で支配下に置かれたオティヌスの頭に、気を喪う程度の電流が流れた。
魔術師というものは、頭が働かなければ術式を行使出来ない。
故に、魔術が使えないオティヌスは、意識の無いまま、地面へ無様に倒れているまま。
オーディンはちらりと廃墟の建物(だった残骸)に目を向ける。
残骸は的確に形を変え、組み替えられ、儀式用霊装となった。
正確に言うならば、『木』の形に変わる。

「ルーンの秘密でも知り得たら良いな」

完全に他人事といった調子でそう言って、彼はオティヌスの衣服を引き裂く。
素手ではなく、圧倒的な力によって、あまりに一方的に。
一糸まとわぬ姿の少女に哀れみをかけるでもなく、彼はその身体を逆さに吊る。
懐から取り出した揮発性の高い蒸留酒を撒き、その飛沫によって陣を造り。
まるで旅行鞄から携帯電話でも取り出すような手軽さで、彼は槍を引っ張り出した。
『主神の偽槍(グングニル・レプリカ)』。彼がかつて作り出した、『主神の槍』のレプリカ。
それを用い、先程儀式場として用意した『木』へと、オティヌスの身体を縫い止める。

調度、人間サンドバッグが出来上がった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 11:35:24.05 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !red_res<>2013/01/02(水) 11:35:41.76 ID:T2pUjB1U0<>
血液の臭いがしない。
思っているフィアンマの前で、暴力は苛烈さを増す。
少女の身体はオーディンの素手による(常軌を逸した)力で、痣だらけだ。
やがて直接叩く事にも飽きたのか、彼は暗号化した呪文を口にする。
操られるまま、路地裏の住人と思われる人間が虚ろな目で現れた。
彼等は手に鋭さを持った石を所持している。
そしてそれを、口々に罵倒しながら、彼らは投げた。
オティヌスの身体は凄惨たるものだった。だが。

(…臭いが伴わない)

ここまで怪我をしていれば、多少なりとも血液の臭いがあるはずだ。
不審に思ったフィアンマは、後ろを向く。
服の端を焦がしただけでほぼ無傷の魔神候補が、そこには居た。

「……一度頭に血が上るとダメだな、ヤツは。やはり、魔神には私が相応しい」
「……、」

言いながら、槍が跳んできた。
『聖なる右』の自動防御は、最早ほとんど働かない。
だからといって、みすみす殺されるつもりも無かった。
フィアンマは姿勢を低めて槍を避け、省略化した呪文によって黄金の剣を握る。
右手で握れば全力が発揮出来るのだが、生憎便利な右手はもう存在しない。
だが、右方のフィアンマは別に『聖なる右』一辺倒という訳でもない。
剣を振るって槍を防ぎ、フィアンマはそのままオティヌスを斬り捨てようとする。
しかし、届かない。
寸前で、彼女の持つ見えない力―――『北欧玉座』に吹き飛ばされる。
ギャリギャリギャリ!! という凄まじい音を立てながら剣を犠牲にすることで、フィアンマは耐える。
オティヌスがこちらに集中したことで幻覚空間が崩れたのか、オーディンは舌打ちしながらこちらを向いた。

「……やめておけ」

苛立った声だった。
拮抗する爆音が響き、オティヌスは槍を手に二歩後退する。
再度投げられたそれは、僅かにフィアンマの頬を掠って壁に突き刺さった。
オーディンの持つそれとはまた特色の違う『主神の偽槍』らしい。
目標を仕留めるまで、何度でも動き、彼女の手元に戻る。
フィアンマは痛がるでもなく頬から流れる血液を人差し指で掬い、後ろ手で壁に何かを綴る。
『天使の力』を一定の流れに沿って流す事で、廃墟の一部を自らの手足とする。
路地裏の住人を見やり、フィアンマは彼らを利用するか一瞬だけ逡巡した。
そして三度程壁を叩くと、彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。
オティヌスはもう一度、槍を投擲した。
敵を貫くのに最適な速度を保って、それは放たれる。
民衆を逃がす方へ気を向けてしまったフィアンマは、咄嗟に廃墟の一部、『仮天使』を行使しようとした。

間に合わない。

そんな右方のフィアンマの前に、オーディンが立った。
彼は素手で槍を掴み、手のひらに裂傷が出来る事も構わず、そのまま握って折る。
金属で出来ている槍はボロボロに錆びていた。
二人が再度前を向いた時、オティヌスは見当たらなくなっていて。
取り残された両者は、面倒な事になる前に逃げるのだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 11:35:43.01 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 11:37:08.29 ID:T2pUjB1U0<>
オッレルス「……、ッ」

フィアンマ「……、…」

帰ってきて、まずフィアンマはオーディンの手当をしていた。
彼の右手のひらは槍を食い止めた裂傷で滅茶苦茶だった。
擦り傷に切り傷を加算して、かき回したような。
そこに容赦なく消毒液を垂らすフィアンマは、少しだけ怒っていた。
怒るというのは、少し違うのかもしれない。

フィアンマ「…何故庇った。軌道をずらせば良かっただろう」

オッレルス「…咄嗟に動いていたんだ」

フィアンマ「…ふん」

不愉快そうに、フィアンマは消毒液を清潔な脱脂綿で拭き取った。
そこへ、丁寧にガーゼを宛てがい、これまた丁寧に包帯を巻いていく。
左腕しか無いフィアンマは数度口を使う事になり、苦戦しているが、だからといって頼らない。
隻腕であることを忘れさせる程に、彼の行動は自立していた。

フィアンマ「…『純粋な魔神』に、『世界的戦犯』。……個々であればともかく、セットで存在することが問題なのだろう。どう見ても、お前が何かを企んでいるようにしか見えないからな」

殺す為の大義名分には十分過ぎる。
ローマ正教の陰のトップとして君臨してきたフィアンマだからこそ、その恐怖を知っている。

オッレルス「……、い゛、っ…」

ぐ、と縛った包帯が傷口に食い込み、オーディンは思わず呻く。
まったくもって情けない、とばかりにフィアンマは鼻を鳴らした。
そして自分の頬の軽傷を適当に手当しながら、彼は冗談混じりにぼやく。

フィアンマ「……いっそ、世界征服してしまった方が安全かもしれんな? 今後も共に居るのであれば」

オッレルス「>>86」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 12:37:48.21 ID:zJ4PVtwO0<> …『上』に立つ器じゃないよ、俺は
それに、どうせすぐ壊してしまう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 13:25:11.51 ID:Oz7ijiESO<> ……悪くない <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 13:51:10.67 ID:j8Hgrzi/0<>
オッレルス「……悪くない」

存外真面目な声音に、フィアンマは思わず手当てをする手を止めた。
血液に濡れた消毒綿をピンセットで持ったまま、オーディンを見やる。
彼の緑の瞳は、いつもの磨硝子のような無気力さに満ちてはいなかった。
どこか楽しげなのは、どうやら自分の発言を真に受けてしまったらしい。

オッレルス「…世界征服、か」

男なら、誰でも少しはその語句に憧れる。
最低でも、それを阻止する側か、起こす側に分かれて。
そしてオーディンはかつて、後者に憧れた。
自分の思うままに世界を壊せたら、どれだけ気分が良いだろう。

世界を救う事に興味は湧かない。
だが、世界を貶める事なら。

自分が興味を持って大事に思うフィアンマの安全を守る為になら、世界を貶めることも悪くはない。
虚ろで気まぐれなオーディンはそう思い、フィアンマと視線を合わせる。

オッレルス「企んでいても企んでいなくても前者と認められるなら、いっそ前者になろうか」

フィアンマ「…お前が言ったんだぞ? 『世界を支配したところで、何になる?』と」

オッレルス「そうだが、…理由があれば、別だよ。俺という人間が今現在、君を生かす為に生きているように」

誰かの為なら。
そう言外に述べるオーディンに、やはりこの男は臆病だなとフィアンマはうっすらと思う。

そして。

この世界に救いなど無いのなら、いっそ救う事を諦めてしまおうか、とも思える。
アレイスターから世界を守った時、自分は確実にあの雰囲気にあてられていた。
そして、自分が正しいと思って執り行った事は、全て間違いだった。
ならば、もう正しい事などしなければいい。間違ったことをすれば良い。

あの世界救済に失敗した時点で、右方のフィアンマという男は―――死んだのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 13:51:11.89 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 13:51:23.25 ID:j8Hgrzi/0<>
純真。愚直。
清らかさとは、時に罪である。
そしてフィアンマは、どこか純粋なところを持っていた。
上条のように、内側から沸き起こる正義に従っていれば、幸せになれると思っていた。
だが、結果は違った。
完膚なきまでに否定され、何もかもを失った。
元より大切なものを持たない者は、非常に容易く揺れる。
フィアンマが偶々一緒に居た相手がオーディンだったということも、災いしたのかもしれない。
世界を救えないのなら、いっそ壊してしまおう。
不完全な気持ちの悪いものを見続けている位なら、ぐちゃぐちゃにしてしまえば良い。
そんな破滅的な考えに流れてしまったのは、フィアンマもオーディンも、大事なモノの無い人間だったからかもしれない。

上条当麻の対極に位置すると言える右方のフィアンマだが、彼は上条と違い、暗部の人間だ。
何人でも犠牲にするし、やりたいことのためには努力を惜しまない。

オーディンは、フィアンマの言葉なら従いたいと思った。
もちろん、全部が全部という訳ではない。
だが、自分に生きる目的を寄越した大切なモノだとは思っている。
故に、フィアンマを傷つけられると不愉快だった。

最早この二人を引き離せる人間は、存在しなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 13:51:24.06 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 13:51:56.68 ID:j8Hgrzi/0<>
世界を救う事と、世界を破壊することはまるで正反対のように見える。
実際には、大体似ていた。
要は、力の使い方の問題なのだ。
正しい事に使えば善だし、正しくない事に使えば悪だ。
善悪など、所詮は一般論と個人の感性・価値観の集まりによって判断されるもの。

ひとまずは、力がなければ始まらない。
絶対の力を持たなければ、何も出来ない。

オーディンに頼る・甘えるという方法を獲得したフィアンマは、彼と共に動いていた。
魔術師を集めなければならない。
それも、恨みや憎悪、戦乱への愛車くを持っている魔術師達でなければならない。
術式の応用によっては千里眼すら持ち得るオーディンには、人員の見極めは容易だった。
問題は、フィアンマの装いである。
術式からバレてしまう分には誤魔化しが利くが、見目からバレるのはいただけない。
戦争がきっかけで世界に恨みを持つ人間達の場合、右方のフィアンマを憎んでいる場合があるからだ。
身分を隠すにあたって、呼称は適当に用意するとしても、それだけでは足りない。

オッレルス「…という訳で、服を変えよう」

フィアンマ「…それは、構わんが。どんな服だ」

用意したらしい服を、差し出される。
魔術的な意味合いの含まれた衣装だった。



どんな服(衣装)?>>+2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/01/02(水) 14:58:25.90 ID:5UpQm3qO0<> ksk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 17:05:21.24 ID:XGkYxJyYo<> 白ラン <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 18:20:11.06 ID:Ha9x3WbZ0<>
差し出された服は、畳まれていた。
受け取って広げてみる。
真っ白な、どこまでも真っ白な詰襟。上下揃えの白。
ともすれば、それは日本国では白ランと呼ばれるものだったことだろう。
実際、白ランに酷似している。

だが、ボタンは全て純金で出来ており、これは魔術記号を組み込む為。
北欧神話の光神・バルドルの偶像崇拝によって恩恵を得た、防御術式霊装。

フィアンマ「…罪なくして一度死んだ後に復活する。……俺様に合わせてきたのか」

オッレルス「普通、霊装はその本人ごとに合わせるものだろう?」

フィアンマ「…調整はなされているのか?」

オッレルス「俺はそんなに抜けてないよ」

光神バルドル。
彼は、主神オーディンの息子にあたる。
逸話としては、こんなものがある。
バルドルは神々の中でもっとも美しく万人に愛された。
ある日から悪夢を見るようになると、これを心配した母フリッグは世界中の生物・無生物に彼を傷つけないよう約束させた。
そのため、いかなる武器でも彼を傷つけることは出来なくなった。
だがこのとき実は、たった一つ、ヤドリギだけは若すぎて契約が出来ていなかった。
傷つかなくなったバルドルを祝い、神々はバルドルに様々なものを投げつけるという娯楽にふけっていた。
だが、ヤドリギのことを知ったロキが、バルドルの兄弟で盲目のために遊戯の輪から外れていた神ヘズをたぶらかし、ヤドリギを投げさせた。
これにより、バルドルは命を落としてしまった。

ヤドリギによって殺される運命にある神の力を借りるのだから、自然とフィアンマの弱点もヤドリギとなる。
その辺りはカバーすれば問題無いだろう、とフィアンマは考えた。

フィアンマ「……それで、俺様にこれを用意するということは、俺様が死んだらお前も死ぬのか?」

小さく笑って揶揄する。
バルドル、即ち光を喪った世界<ラグナロク>で、主神オーディンは死ぬ事になっている。
その歴史的事実を踏まえた上での揶揄だった。
対して、オーディンは白い衣装に着替えているフィアンマを見つつ、うっすらと笑う。

オッレルス「…そうだな。それも、悪くないとは思っているよ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 18:20:17.40 ID:AM/Txd8AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/02(水) 18:20:58.81 ID:Ha9x3WbZ0<>

そんな訳で、フィアンマの名前が変わった。
オーディンと同じように『デンマーク人の事績』から名を取得し、改めたのである。

フィアンマ「バルデルス。…違和感があるな」

白い衣装に身を包み、フィアンマは小首を傾げる。
調整が完璧なこれは、ありとあらゆる物理的攻撃を受け流す。
ただし、精神的な攻撃や呪術には対応していないので、その辺りはフィアンマが準備しておかなければならない。
弱体化したとはいえど、『聖なる右』はそちらの防護に対応している。
だから、フィアンマ―――もとい、バルデルスは何を心配する必要も無かった。

そして二人は、場所を移動してきた。
里親を見つけようとしたバルデルスの思惑とは裏腹に、仔猫は離れない。
どうせ、拠点はあのアパートメントにするつもりなのだ、問題は無いのかもしれない。
現在、バルデルスはオーディンがメンバーを獲得するまで暇を持て余していた。
傷や暗い部分に漬け込む形で、人員を増やしている。
今は使い捨て要員を補充しているところだ。確か、サローニャといっただろうか。
出身がエカテリンブルクの、細い少女だったように思う。

フィアンマ「……話はついたのか」

オッレルス「ああ。…アパートメントを多少改造しようかな」

フィアンマ「そちらの方が効率的で良い」

オッレルス「そうだな」

フィアンマ「…ところで、魔術結社…というよりも、組織か。名前は決めたのか」

オッレルス「>>98」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 19:15:10.34 ID:ad7dMPaDO<> グレムリン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/02(水) 22:40:25.10 ID:3Idl5TGSO<> Reich〈ライヒ〉 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/03(木) 03:47:00.89 ID:8cEX4h4F0<>

オッレルス「Reich〈ライヒ〉」

フィアンマ「……『神々支配せし領域広き帝国<ライヒ>』、といったところか」

目的が、世界征服。
加えて魔神オーディンがリーダーを務める組織なのだから、妥当な名だろう。
オーディンはそう組織名を述べると、バルデルスを伴って歩き始めた。
もう数人程使いすて要員を補充しなければならない。
世界征服というのはなかなかに大きい夢であり、野望だ。
故に、沢山の人間を使いすてなければ達成出来ない。

正規メンバーには北欧神話系のコードネームを与えた。
彼等はそれを受け入れ、各々の目的に従って、組織目的も尊重する(お題目としては世界の正常化、だ)。
そうした共通項を持つことで、魔術組織というものは形成される。

二人は家に帰って来た。
これからこの場所は"家"でなく、拠点と呼ばれることになるだろう。

オーディン、バルデルス、ウートガルザロキ、トール、投擲の槌、マリアン=スリンゲナイヤー、シギン、ベルシ。
以上八名が正規メンバー。

サローニャ=A=イリヴィカ、サンドリヨン、他数名が使い捨て要員として補充した人間だ。
後者はいくらでも換えが利くので、危惧する必要は無いだろう。

バルデルスの存在はオーディンの無限の可能性、即ち成功確率を高める為に欠かせない。
なので、彼と、リーダーたるオーディンを除いた人間が最低でも斥候となる。

チェスで例えるならば。

オーディンはキング。
バルデルスはクイーン。
トール・投擲の槌はナイト。
ウートガルザロキ・シギンはビショップ。
マリアン=スリンゲナイヤー・シギンはルーク。
他メンバーがポーンとなる。

そう仮定してしまえば、後は妨害との頭脳勝負だった。
そしてそれは、バルデルスの得意とするところでもあった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 03:47:02.08 ID:rvwOzJjAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/03(木) 03:47:19.83 ID:8cEX4h4F0<>
対して、そういった動きに反応したオティヌスも、人員を集めた。
相手方に対応するべく、強力な人間を、必要な分だけ。
その中には、かつてバルデルス―――フィアンマを倒した、上条当麻も含まれていた。
上条を拾い上げたのはバードウェイであり、そのバードウェイと組んだのがオティヌスだった。
眼前の隻眼の少女に、上条は警戒心を漂わせている。

オティヌス「少々強引な方法を取らせてもらったが、協力してくれ」

上条「……協力してくれって態度じゃねえな」

オティヌス「まぁ、聞け。…ラジオゾンデ要塞の一件は知っているだろう?」

上条「…ああ」

誇る事ではないと考えているが故に言わないが、上条が墜落を阻止したものだ。
謎の組織『神々支配せし領域広き帝国』がアイスランドより浮上させた大型施設。
縦横の長さがおよそ20kmに及ぶ巨大な十字架型をしており、高度5万2000mを浮遊しながら移動する。
外観や内装は『建築様式の違う、複数の聖堂や神殿をかき集めて作られた』様に見える。
実際には新たに用意した石材等を『そういう形』に似せているだけ。
形状や材質、スケール感、空中に浮遊する性質などから、その存在を知るものには『ベツレヘムの星』を想起させる。
実際、上条も『ベツレヘムの星』を思い返し、思わず戦慄した。

オティヌス「あの件には、右方のフィアンマが関わっている」

上条「アイツが?」

オティヌス「今は名前を変えているらしいが、…まず、魔神について話そうか」

徹底的に人格が破綻した、とある男のことを。
そう述べて、オティヌスは丁寧に説明を始める。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 03:47:21.03 ID:rvwOzJjAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/03(木) 03:48:12.92 ID:8cEX4h4F0<>
『生還した上条当麻の所在確認』。

それを行おうと最初に言い出したのは、バルデルスだった。
目的が目的故、彼は必ず止めに来る。だから確認しておきたい。
結果によって難易度が変わるから、というのは半分程建前で。
実際には、自分を変えようとした男の生死が気になっていただけだ。
右方のフィアンマは実質変化することなく、むしろ堕ちてしまったのだが。


  おかえりなさい、ヒーロー   ライヒより
 『 Welcomehome,hero. 』 『 From“Reich”』


かの男に送った文面を思い返しながら、バルデルスは暴力を受けていた。
別に戦場で劣勢、という訳ではなく、オーディンの腹いせである。
精神不安定な状態にきっかけが加われば、彼はバルデルスへ暴力を振るう。
散々追い詰めて甚振って、そうしてようやく、周囲の怯えた視線に気がつく。
殺すつもりはないのだろうと判断しているバルデルスは、敢えて抵抗しなかった。
この方が周囲に恐怖を与えると知っていたから。
そういった恐怖政治状況下を作る以外にも、哀れみという感情もある。
別にマゾヒストではないし、勿論痛い事も嫌いだが、ある程度は仕方が無い。

怯え、或いは黙り込むメンバーを捨て置き、オーディンはバルデルスを連れて部屋に来た。
お優しい絆を築かずとも、利害の一致で彼らはついてくる。

この部屋は、主に二人が暮らしている場所だ。
改造して作り出した拠点と同じ建造物内にして、住居。
みゃーんと呑気に鳴く仔猫の頭を撫で、バルデルスはゆっくりと息を吐きだした。
ベッドへ腰掛けた彼の身体を、オーディンは抱きしめる。
そうしてようやく、後悔の涙を流して肩を震わせた。
治療出来る場所は片腕を伸ばして治療し、もう一方の腕では抱きしめたまま。

オッレルス「ッ、……ふ…」

フィアンマ「……嫉妬でもしたのか? オーディン」

俺様が、上条当麻に固執したから。
揶揄する調子を混ぜ、ピリピリと痛む口端に歯を食いしばって、彼は問いかける。

オッレルス「…>>105」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/01/03(木) 09:30:41.64 ID:fe6kC4BSO<> かそく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 10:15:32.67 ID:K0n30AXk0<> 嫉妬…? <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/03(木) 14:10:45.90 ID:2CcATj6p0<>
オッレルス「…嫉妬…?」

親しみの無い単語に、オーディンはぐすぐすと泣きながら眉を潜める。
この無感動な自分が、他者に対して―――嫉妬?
バルデルスは大人しく手当をされながら、今回オーディンが怒った原因を模索している。
二度同じ事を繰り返さなければ、恐らく彼は暴力を振るわないだろうと予測出来るから。
口端を消毒される痛みに眉を寄せて耐え、バルデルスは首を傾げた。

オッレルス「…俺が、…嫉妬を……?」

フィアンマ「…てっきりそうなのかと思ったのだが。違うのか?」

オッレルス「……、…」

オーディンは、バルデルスに執着している。
それは、彼が内包する力に呼応した幸運体質があるから。
もう一つは、彼が生きる理由をくれたから。
反対に、オーディンはバルデルスへ生きる目的を与えたのだが。

執着しているものが他の人間に興味を向けるには、気に入らない。
調度、一生懸命世話をしているペットが顔見知りにしかなつかなければ不服であるように。
自分が目をかけている妾が、他の男に興味を示せば面白くないように。

オッレルス「…そうか。…俺は、嫉妬したのか」

自分の感情すら正確に判断出来ないオーディンは、なるほどと頷く。
そしてようやく泣き止み始めながら、バルデルスの手当を終え、指先で彼の毛先を遊んだ。

オッレルス「……嫉妬させるな」

フィアンマ「善処してやっても良い」

自分の感情すらセーブ出来ない男の様子は愉快で、バルデルスは少しだけ笑った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 14:10:50.27 ID:rvwOzJjAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/03(木) 14:11:24.46 ID:2CcATj6p0<>
上条「それで、その『ヤツら』…『ライヒ』ってのは、何か目的なんだ?」

オティヌス「恐らく、『主神の槍』の完成だろう」

粗方説明を終え、上条とオティヌスは『ライヒ』について話していた。
新しい国を名乗り、暗躍している不気味な組織のことを。

上条「『主神の槍』が完成したら、…どうなるんだ?」

オティヌス「オーディンの成功率が、現時点のフィアンマの効果60%を飛び越して100%になる」

上条「全部のワガママを確実に押し通せるのか」

オティヌス「そうなるな。大義名分は世界の正常化だが、魔神の力とはその反対を行く」

例えば、水道水をオレンジジュースにしたり。
例えば、不幸と幸福の観点を真逆にしたり。

思うがままに世界を歪めて理想を現実化するのが、魔神の力。
オティヌス曰く、オーディンはわざわざ力を追求する人間ではなかったらしい。
おかしくなったのは恐らく、右方のフィアンマと出会ってから。
つまり、右方のフィアンマは魔神の力を用いて、何か恐ろしい事をしようとしている。
例えばそれは、世界征服。
せっかく元通りになってきた世界に、汚濁をぶちまける行為。

上条「……何で」

上条が知る右方のフィアンマは、確かに悪人だったかもしれない。
ただ、それは世界的に見た場合の話であって。
彼はやり方を間違えていただけで、人を救おうとしていただけなのだ。

上条「……アイツ、本当は世界を救いたいだけだったんだ。やり方は間違ってたと思うし、犠牲も出したけど、無闇に破壊行為を行おうとするヤツじゃない」

オティヌス「…共感、…いや、共振したんだろう。右方のフィアンマはお前に敗北したことで、生きる目的を喪った。元より、魔神オーディンには生きる理由が無い。自尊心と自己愛が徹底的に叩きのめされた破綻者同士が出逢えば、ロクな事にならないだろう」

そして、とオティヌスは付け足す。
冷静な声は、いやに上条の耳に残った。

オティヌス「ヤツらは必ず、お前を殺す」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/03(木) 14:11:25.39 ID:rvwOzJjAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/03(木) 14:11:49.91 ID:2CcATj6p0<>
ハワイでの『炉』の調達。
『素体』の確保。
図面の盗難。
上条当麻、即ち幻想殺しの消去―――抹殺。

落雷・マグマ・氷・塩害・暴風・爆炎・洪水などを自在に引き起こす『主神の槍』。
それを持つ事で魔神としての属性も確かなものとなり、オーディンはいかなる悲劇をも起こせるようになる。
その為には、上記の出来事が必要不可欠だった。
『炉』の調達に関しては、使い捨て要員を騙して働かせている。
心配せずとも、簡単に手に入れられることだろう。
『素体』の確保は、最後に行うべきこと。
図面は既に、精神的な術式に長けたバルデルスが盗み取り、オーディンに与えている。
全ての準備が終わった時、オーディンは世界を確実に握り潰す力を所有することとなる。
オーディン自身は、その力にあまり興味は無い。
彼は恐らく、バルデルスが言うままに世界を壊していくだろう。

フィアンマ「………」

酷く暴力的で退廃的な思想を抱きながら、バルデルスはぼんやりとしていた。
上条当麻は止めにくるだろうか。
来て欲しい訳ではない。どうせ、止めに来たところで殺す事は確定している。

吐きだした息は、寒さによって白く昇華された。

フィアンマ「…全てを統べる力を持って、何かしたいことは無いのか」

近頃オーディンの人間味がうっすらと取り戻されてきたことを思って。
彼は、暇潰しがてらそう問いかけた。

オッレルス「>>112」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 15:19:58.30 ID:fCUTGI070<> 安価下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 18:39:35.33 ID:9BAlJWKSO<> 人間でスカイタワー作ったり空から猫が降ってくるようにしたり、巨神兵の肩に乗って、世界中が焼き尽くされて浄化されいくのをぼんやり眺めたり…


後は…昔喧嘩別れした友人と仲直りしたい <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/04(金) 22:32:25.07 ID:Y/iLTo+B0<>
オッレルス「人間でスカイタワーを作ったり」

早速もって物騒な返答だった。
何でもないことのように、彼はのんびりと話す。
まるで、田舎に引っ越して農耕生活を始めるかのような口ぶり。

オッレルス「空から猫が降ってくるようにしたり、巨神兵の肩に乗って、世界中が焼き尽くされて浄化されいくのをぼんやり眺めたり…」

ある意味においてスローライフだった。
世界を救う事より世界を滅ぼす方へ天秤の傾いたバルデルスは咎めもせず、黙って聞く。
彼個人としては、空から猫が降ってきて且つ衝撃で死なない猫まみれの世界はなかなかに良いと思えた。

オッレルス「後は…昔、喧嘩別れした友人と仲直りしたい」

フィアンマ「喧嘩別れ?」

オッレルス「随分と昔の話だ。……どうでも良い事から喧嘩の内容が発展して、酷い事を言って、……謝れないままさよならをしてしまった」

どこか夢見がちな表情で。
或いは、回想するように。

オッレルス「……彼女に、謝りたい」

フィアンマ「…女の友人なのか?」

オッレルス「そうだよ。…調度、君と同じ綺麗な赤い髪を持っていた。流れるように長くて…いや、やめておこう」

語ったところで何になるものでもなし。
そう断じて、オーディンは立ち上がる。
いつものように、食事代わりの葡萄蜜酒を呑む為だ。

オッレルス「…君は、何か無いのか」

何でもしてあげるよ。
その言葉がまるで悪魔の囁きの定番句のようで、バルデルスは少しだけ笑った。

フィアンマ「……そうだな―――」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 22:32:26.22 ID:PGU3JsSAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !蒼_res<>2013/01/04(金) 22:33:35.15 ID:Y/iLTo+B0<>
『ぼ、ぼくじゃないもん…』

(疑うしかなかった)

『…ならだれがやるというんだ』

(あの時、彼女に嫌疑をかけるのが当然だと思った)

『…ぼくじゃない』

(泣きそうな顔をしていた)

『じゃあだれがやったんだ』

(意地を張っているように思えた)

『しらない』

(それに腹が立った)

『……、』

(思わず、彼女に背を向けた)

『ぁ、まって、』

(伸ばされた手が僅かに服を掠った事を、知っていた)

『きみなんかきらいだ!』

(振り返って叫んだ時、彼女は今にも泣き出しそうだった)

『…ぁ……』

(謝れ、の二文字で脳内を埋め尽くされていた)

『……、…きらいだ、…』

(酷いことを言った。酷い事を言った。…ひどいことを、いった)

『………うる…』

(ごめんね、と言う前に)







(君はもう、その教会には居なかった。何処かへ行ってしまった。終ぞ、謝れなかった、俺はきっと、君の事が大好きだった)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 22:33:36.51 ID:PGU3JsSAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/04(金) 22:34:11.10 ID:Y/iLTo+B0<>
学園都市で決着をつける。
そう聞かされた時、上条は思わず耳を疑った。
だが、被害を食い止めるには学園都市で戦うしか無い。
それより何より、学園都市の中の『素体』を盗まれれば、後は世界が滅ぶだけ。
どちらを選ぶかといえば、上条は危険を堪えて戦うしか無かった。
禁書目録や御坂美琴といった日常の住人は巻き込まないように気をつけて。
要するに、『ライヒ』の中でも魔神オーディンと右方のフィアンマを倒せば良いのだ。
ただし、その難易度は他『グレムリン』メンバーを倒す何倍も厳しい。高い。

上条「…その素体ってのは、物…なのか?」

オティヌス「…ああ」

オティヌスは、さらりと嘘をつく。
傍らのシルビアという女性を上条は見やったが、彼女もまた、淡々と頷いた。
彼女達にとって素体―――フロイライン=クロイトゥーネと呼ばれる人間は、物扱いなのだ。
人の形をしていたところで、モノはモノ。
オーディンやフィアンマがそう考えるように、彼女達もそう思う。

オティヌス「先手を打って"壊す"。そうすればあちら側は動けない」

上条「代替品とか、無いんだよな?」

オティヌス「無いだろう。あるなら、直接出てこない。…まぁ、私たちがメンバーを削ったというのもあるが」

バゲージシティで『戦乱の剣』が抜かれても尚、オーディンとフィアンマはその姿を現さなかった。
もしかするとオティヌスが現れたからかもしれないが、それにしても慎重な動きを見せている。

それは魔神としての無限の可能性という名の拘束を恐れて。
上条当麻の殺害が確実となるタイミングを狙って。

或いは。


オティヌス「…オーディンが、右方のフィアンマを喪う事を極端に恐れている」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 22:34:12.12 ID:PGU3JsSAO<> + <> 小ネタ:お酒はほどほどに 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/04(金) 22:34:40.40 ID:Y/iLTo+B0<>

フィアンマ「…蜂蜜は要らんが呑ませろ」

オッレルス「ん、…ほら」っグラス

フィアンマ「……」ごく

オッレルス「……」

フィアンマ「……」っ空グラス

オッレルス「……ん、…」っグラス

フィアンマ「……」ごく

オッレルス「……」

フィアンマ「……」っ空グラス


〜一時間経過〜


フィアンマ「…おか、わり」っ空グラス

オッレルス「…構わないが、そろそろ顔色が、」

フィアンマ「呑ませろ」じと

オッレルス「……」っグラス

フィアンマ「……」ごく

オッレルス「……」じー

フィアンマ「…おでんー…おーでん……」ぎゅう

オッレルス「…おでん……?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 22:34:43.33 ID:PGU3JsSAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/04(金) 22:35:19.51 ID:Y/iLTo+B0<>
上条は一旦オティヌスと離れ、夕食を摂るべくファーストフード店に居た。
一番安いハンバーガーセットを購入し、だらだらと食べる。
そんな上条の向かい席に、一人の少女が腰掛けた。

美琴「席空いてるし、良いでしょ?」

上条「あぁ、いいけど」

一瞬迷うも、どちらにせよ座るのならば、と思う上条。
少女―――美琴はにこりと笑うと、机に置いたセットの内、チーズバーガーを口にする。

上条「…あれ、この前此処のチーズバーガーは嫌いって言ってなかったっけ?」

美琴「気のせいじゃない?」

上条は不審感を露に、彼女の顔へ右手で触れた。
途端、現れる一人の少年。
上条は思わず、焦って立ち上がる。

上条「だ、れだ…?」

トール「大体お察しはついてることと思うがね。『神々支配せし領域広き帝国』直接戦闘担当―――雷神トール。ちょいとお話があるんだ、大人しく座れよ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 22:35:20.92 ID:PGU3JsSAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/04(金) 22:35:47.56 ID:Y/iLTo+B0<>
廃墟の屋上。
一件無防備に転落防止用の柵へと腰掛けているバルデルスは、退屈していた。
オーディンが腰掛けているのは、彼の向かい側の柵。
別に考えなしに身体をもたれているという訳ではなく、この位置に人間が立っていることに意味がある。
退屈ではあったものの、精神的作業を実行している為、離れられない。
何を行っているのかというと、麻痺させる要素の込んだサーチ術式。

オッレルス「…引っかからないな」

フィアンマ「…マリアンとトールが動いているんだろう?」

オッレルス「ああ」

フィアンマ「…『死者の軍勢』で引き止めてあるとはいえ、マリアンは半抜け殻。トールは個人行動が目立つ。…そもそも、近代における大体の魔術師とは個人行動ばかりなのだが、それにしても別格だ。……もし『素体』が駄目になった場合、どうするんだ? 『主神の槍』を造るのはかなり厳しくなるが」

オッレルス「んー…>>125」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 22:56:27.20 ID:9BAlJWKSO<> 『素体』がダメになった場合、幾つか手は考えてある。

破損でとどまった場合、直せる範疇ならばどんな手を使ってでも修復。それこそ、多少の損傷程度なら死体になっていたとしても黄泉から『連れ戻す』。

素体として使えんlevelまでの消滅、破壊までされた場合は、多少年月はかかるだろうが、霧散した魂をサルベージ、また肉体を科学技術による『再構築』を行う。

その他、どんな形であれ、破壊、損失ならばある程度復旧できる。

無傷で手に入れられるのが最高だが、一番厄介な『隠蔽』をされた場合が困るな…サーチ魔術に引っ掛からない場合でも、少なくとも地球上でありさえすればサーチ対象を変えていけば割り出す事はできる。

が、例えば地中深くとか海底だとか、素体を生かしたまま宇宙空間に放流等の、『人間が生存、行動不可』の領域に隠されたとなると… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/04(金) 23:21:03.66 ID:qtImY0FSO<> 諦めて、別に何か探す <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 00:26:17.28 ID:Rg377bM30<>
オッレルス「んー…諦めて、別に何か探す」

楽観的なのは、成功を信じているからだろうか。
些細な事にさえ無限の可能性が適応される彼は、努力を諦めているのかもしれない。
或いは、考えがあっても敢えて答えないのか。
いつも通り、磨硝子のように透き通り過ぎて、かえって曇を見せている瞳からは、何も読み取れない。

オッレルス「……『主神の槍』にこだわらずとも、他に方法があるだろうしね」

オーディンは半分成功を祈り、半分失敗を望んでいる。
バルデルスと動くこの時間を、長く長く長引かせたい。
それでいて、バルデルスに告げた世界征服もやり遂げたい。
バルデルスの願いを叶えてやりたいとも、思っている。
そして何もかもを叶える絶対の力を有した上で、『彼女』に会いに行きたい。
もし彼女が死んでいたのなら、蘇らせてでも、たった一言。

『あの時嫌いと言ったのは嘘だよ。ごめんね、大好きだよ』

その一言を伝えられたのなら。

きっと自分は、人間に戻る事が、出来る。
魔神になるべくして喪った代償を取り戻すことだって、きっと――――。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:26:18.38 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 00:26:37.56 ID:Rg377bM30<>
トールの話によると、『素体』は人間、しかも少女である。
そして彼女は、オティヌスの方へ渡されれば"壊され"て。
オーディン達の方へ渡されれば、"使われ"る。
どちらにせよ、人間の尊厳を現時点以上に踏みにじられるのだ、と彼は説明した。
信用に足らない、と言った上条は、トールと素手で喧嘩することとなった。
敢えて殺害という手段に走らないトールに、上条は信用を預ける。
信頼ではない。お互いの思惑が達成した時点で、裏切る盟約。
だが、それでもフロイライン=クロイトゥーネという少女だけは守りぬくと、二人は誓った。

トール「"本番"は夕刻から。…ってことで、敵対するも協力するも、お前の自由だ」

ただし、あの少女だけは救え。
そう言い残して、彼は店内を出て行った。
残された上条は警備員から逃げられる筈もなく、時間をロスする。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:26:38.53 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 00:26:57.27 ID:Rg377bM30<>
サーチに引っかからない。
だが、学園都市内に居る事は間違い無い。
だとすれば、『窓のないビル』内に居る筈だ、とオーディンは踏んだ。
その上で、彼は手を出さない。トールの不審な動きを知ったからだ。

フィアンマ「…阻止しなくて良いのか?」

オッレルス「『彼女』を外に出す作業は、任せてしまっても良いだろう?」

時間外労働はご自由に。
そんな軽い態度で、彼は全てを見下ろす。
その瞳には裏切られたという怒りも悲しみも、かといって加虐的な喜びも無い。

オッレルス「…漁夫の利で良い」

『素体』を制御しきる自信があるオーディンは、淡々と言う。
廃墟屋上に綴った白墨を靴底でぐしゃぐしゃと消した。

オッレルス「こちらはこちらで、マリアンを使うつもりだ。…投擲の槌も居る事だし」

緑の隻眼が、ようやく光を灯す。
宵闇は、魔性と死者の時間だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:26:58.13 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 00:27:13.61 ID:Rg377bM30<>
警備員から解放され。
どうにか約束の時刻に間に合った上条は、トールと協力してフロイラインを『窓の無いビル』から脱出させる。
だが、それが限界。
彼等はフロイラインの『特別な力』によって体内へ異物をぶち込まれ、倒れた。
その間に、彼女は街中をふらふらと彷徨って何処かへ行ってしまう。


上条「ご、…っぐ…」

トール「は、…か、っぁ…」

二人が目を覚ましたのは、三十分後。
正確には、トールが雷で体内の異物を壊したのだ。
彼女を放っておけば、直に大変なことになる。

上条「は、やく…」

捕まえなければ。守らなければ。
救わなければ、彼女は酷い目に遭わされる。
トールと上条は走り、罠を仕掛けるべく努力しながら動き始めた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:27:14.54 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 00:27:41.34 ID:Rg377bM30<>
マリアンやトール、上条当麻、バードウェイが奮闘している中。
二大トップとも言えるシルビア&オティヌスとオーディン&フィアンマはそれぞれ息を潜めていた。
タイミングを窺わねば、迂闊に近づく訳にはいかない。
思わぬ行動を取られたオティヌス達に対し、あくまで予想内の動きと判断しているオーディン達は余裕だった。

オッレルス「…バードウェイに上条当麻がやられた、か」

フィアンマ「…罠だろうな」

走り回るバードウェイの様子を眺め、男二人はうっすらと笑った。
そうしてオーディンは、思い出したように、彼の肩を見やる。
何も存在しない、右肩。

オッレルス「……君に贈るものがある」

遅くなった、と彼は言った。
そんな魔神の瞳には、信頼の色があった。

彼の懐から取り出されたひんやりとしたものに、バルデルスはよくよく見覚えがある。

フィアンマ「…俺様の、」




右         
     腕。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:27:42.46 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 00:28:14.07 ID:Rg377bM30<>
バードウェイを脅迫した結果、攻撃を受け。
病院で目を覚ました上条は、痛みに耐えて起き上がった。
身体中が悲鳴をあげている。
腕に刺さっているのは、輸血用の針だろう。

上条「う……」

それでも、騙す事には成功した。
願わくば、まだフロイラインがオーディンやオティヌスに捕まっていないことを。
そして、バードウェイやマリアン=スリンゲナイヤーが迷走していることを。
トールがうまいことやってくれていると良いが、と思いながら、天井を見つめた。
全面ガラス張りのICU。
バードウェイを脅迫したところを警備員に見つかった為、拘留はやむを得ないだろう。

そして、何よりも。

此処を出て無理矢理に動けば、死ぬ恐れが高い。
普通の高校生に、死というものは馴染みが薄い。
だが、上条はひしひしとそれを感じ取っていた。

上条「ぁ…」

酸素マスクの中で、くひゅ、と息を呑み込んだ。
そして彼は、視線をズラす。
そこに、一人の男が立っていたことに気がついた。
ICUなのに。雑菌防護マスクも何もせず。
だというのに、その侵入者に、何故だか医者達は気づかない。
だが、上条はこの男をよく知っている。この赤い髪を、金色の瞳を。
彼も体調が悪いのかどうか、右肩を左手で押さえ、彼はうっすらと笑む。
存在しないはずだった彼の右腕は、きちんと接続されている。

上条の右手がギリギリ届かない範囲に居る辺り、魔術によって身を隠しているのだろう。

『右方のフィアンマはお前に敗北したことで、生きる目的を喪った』
『ヤツらは必ず、お前を殺す』

殺される。
その四文字がリフレインして、しかし叫ぶ訳にもいかず、上条は固まる。

上条の知る彼とは違い、その装いは真っ白だった。
ともすれば、白い学ランのような。だが、少し違う。
どちらかといえば軍服に近いようなデザインだった。

上条「…なん、で…お前…世界…救う、…って…どうし…破壊…?」

お前は世界を救うと言っていたのに、どうして破壊などという目的を得たのか。
どうしてそんな、こんなことをしようと思ってしまったのか。
魔神オーディンに組みして世界を壊し、あるいは支配し、どうしたいのか。

途切れ途切れの言葉。だが、読み取った。
右方のフィアンマ―――もといバルデルスは、首を傾げる。
疑問ではなく、何故そのような愚問を投げかけるのか、といった体で。

フィアンマ「>>138」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:43:04.27 ID:wWV5MsgSO<> かそくした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 00:47:33.66 ID:kV5Hb30SO<> 何を言っている?俺様は俺様が思う世界の救済を行っているだけだが

まぁそんなことはいい。…ついでだ。右手を寄越せブチブチッ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 01:04:35.39 ID:Rg377bM30<>
フィアンマ「何を言っている? 俺様は俺様が思う世界の救済を行っているだけだが」

例えそれが破壊だとしても。
支配して、破壊するだけの行為だったとしても。
惨めに生きるよりは浄化されて滅びた方が良い。
その発想でいけば、バルデルスは確かに世界を救おうとしている。
そしてそのことに、オーディンが賛成してくれただけだ。
きっちりと言い切って、そうしてようやく、思い出したように彼は言葉を付け加える。

フィアンマ「まぁ、そんなことはいい。…ついでだ。右手を寄越せ」

得体の知れない手が、伸びる。
上条は逃れる事も出来ないまま、右手を無理矢理に引きちぎられた。
当然、バイタルは恐ろしい数値をたたき出す。
医者がすっ飛んでくる中、バルデルスは上条の右手を器として自分の右肩に分解して馴染ませ、ようやく息を吐きだした。
やがて器は劣化するだろうが、ひとまず、これで自分の体調はどうにかなるだろう。
上条は失血、及び右手を切断されたショックで、びくつき、震える。
その腕の断面からは何かが露出していたが、その何かからの攻撃は、バルデルスの衣装に阻まれた。

フィアンマ「…どうせ、元に戻るんだろう?」

何の思いやりも無く。
顔色の良くなったバルデルスは、ICUを出て行った。
此処に来た理由は二つ。

まるで栄養ドリンクを摂取するように、上条の右手―――器を少し貰って、右腕を馴染ませること。
もう一つは、そのことによって上条当麻を病院から出さず、邪魔をさせないこと。

流石にここまでされれば動けないだろう。
そう考えながら、彼は病院を出て、消える。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 01:04:43.14 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 01:05:03.89 ID:Rg377bM30<>
オティヌス「…上条当麻…」

不味いことになった、と彼女は思う。
上条が病院に来たと知って来てみれば、これだ。
何者かに右手を切断されて、再度生えてきたのだろうが、出血ショックが酷い。
もはや話も出来ないままぐったりとしている上条に、オティヌスは悩む。
こちら側の人間は少ない上に、バードウェイはかく乱されている。
今更気づいたところで、どうしようもない。
一刻も早くフロイライン=クロイトゥーネを始末せねばならない。
思いながら、オティヌスは病院を出ようとして―――振り返った。

オティヌス「……、…また、巻き込むだろうな」

呟いて、今度こそ彼女は、病院を出て行く。





トールはどうフロイラインに接触しようか迷っていた。
下手に接触をすれば、また異物をぶち込まれる。
彼女を追い込むにも、追い込む為の拘束陣を築けない。
何しろ、トールには味方が居ないのだから。
最早、裏切りの約束された盟友すら。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 01:05:04.87 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 01:06:22.17 ID:Rg377bM30<>
バルデルスは、オーディンの下へ戻って来た。
血まみれになった両手を、猫の様に舐める。
その度に彼の舌が赤く染まり、口の中は鉄の味に侵されていった。

オッレルス「…お帰り」

フィアンマ「ただいま」

オッレルス「"収穫"は?」

フィアンマ「もう消えたよ。だから、"元に戻った"んだろう。ただ、まぁ、多少なりとも楽にはなったがね」

オーディンの知恵によって右腕を接続され。
具合の悪かったバルデルスは、上条の右腕を使う事を思いついた。
力の源を削られる苦痛にだけ耐えれば、かえって楽になる。

そしてそれをすんなり成功させ、しれっと戻って来た。
自分と同じ血液型である上条の血を舐めとり、バルデルスは廃墟の窓枠に腰掛ける。
オーディンは磨硝子のような緑の隻眼で、バルデルスの手を見つめた。

オッレルス「……」

フィアンマ「…カインの末裔の気持ちはわからんな。不味い」

オッレルス「てっきり美味しいから舐めているのかと思ったんだが」

フィアンマ「まさか。鉄分を補給しようと思っただけだよ」

大方綺麗にはなったものの、血なまぐさい唾液に濡れた手。
真面目に洗うべきかと悩む彼の手首を、オーディンが掴む。
そして引き寄せると、その形の良い指先を舐めた。
血液と、バルデルスの唾液との混ざった味がする。

フィアンマ「……、…」

オッレルス「…>>144」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 01:11:59.54 ID:kV5Hb30SO<> …鉄分を補給しようと思っただけだよ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 01:32:52.17 ID:Rg377bM30<>
オッレルス「……鉄分を補給しようと思っただけだよ」

ふい、と視線をそらす。
まるで悪いことをして咎められたかのような態度。
以前の様に気持ち悪い、怖いと思うでもなく、バルデルスは笑うだけで済ませた。

掴まれたままの手首、振りほどこうとも思わない。

フィアンマ「……唾液はまずくなかったのか?」

オッレルス「唾液も血液も、似たようなものだ。特別嫌悪感は覚えないな」

言って、彼は地面に陣を描いた。
水のルーンによって小さな泉が展開され、バルデルスは大人しくしゃがみ、そこで手を洗う。
オーディンは口の中に残る血液と、彼の唾液の味に目を細める。
鉄臭さは気に入らないが、この甘さは悪く無い。
酒の甘さに似ている。ハマってはいけない方の甘さ、だ。

丁寧に泉にて手を洗い。
バルデルスは自分の右腕がおかしくないことを確認してから、きちんと立ち上がる。

フィアンマ「…行こうか」

オッレルス「…そうだな」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 01:32:52.90 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !蒼_res<>2013/01/05(土) 01:33:35.32 ID:Rg377bM30<>

『ぼ、ぼくじゃないもん…』

(彼の大事なものを借りたのに、壊されてしまった)

『…ならだれがやるというんだ』

(きっと、教会に居た他の子供達がやったのだろう。しかし、俺様は雄弁ではなく、言い訳を並べられなかった)

『…ぼくじゃない』

(泣きそうになって、たった一語を繰り返した)

『じゃあだれがやったんだ』

(当然のことながら、彼は怒った)

『しらない』

(震える声で、それでも壊した覚えは無かったから、否定した)

『……、』

(背を向けられた。拒絶、された)

『ぁ、まって、』

(伸ばした手が僅かに服を掠って、しかし届かないままに)

『きみなんかきらいだ!』

(叫ばれ、思わず呼吸が止まった。彼には、嫌われたくなかった)

『…ぁ……』

(謝らなければ。気づいたところで、謝罪は胃液に溶けていく)

『……、…きらいだ、…』

(もう一度、その言葉が繰り返される。思わず、身体が震えるのを感じた)

『………うる…』

(ごめんね、と言う前に)







(俺様はその日の夜、その教会から移動した。遠くの、遠くの教会へ。終ぞ、謝れなかった、俺様はきっと、お前の事が大好きだった)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 01:33:36.57 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 01:34:06.09 ID:Rg377bM30<>
フロイライン=クロイトゥーネは、ぼんやりと歩いていた。
時折、興味の向いたものに対して、ぐるり、と眼球が向く。
そうしてようやく、トールがタイミングを窺って彼女の前に出た時。
オティヌスの拘束術式が働き、彼女を捉えた。
彼女は一瞬自分の状態を把握できず、ぐるりと眼球を動かす。

トール「ッ、フロイライン!!」

思わず、トールが叫んだ。
そんな彼に、見えない攻撃が加わる。
咄嗟に防ぎながら、彼は煙幕の向こうを見据えた。
一瞬にして『人払い』を撒いたのは、魔神になりそこなった少女。

オティヌス「…『神々支配せし領域広き帝国』の雷神トール、か」

ならば、殺しても胸は痛まない。
呟いて、彼女は槍を手にする。
シルビアには遠方からの攻撃を頼んでいた。

絶体絶命。

その四文字が頭を過ぎりつつも暴力で切り抜けられるか、と構えるトール。
そんなトールの背後に、二人の青年が現れた。

一人は、魔神。
一人は、希有な『神の子』の性質を持つ者。

フィアンマ「…こんなところで三つ巴、か。……トールの方には一人足りないようだが」

どれから潰そうか、と彼は視線を巡らせる。
フロイラインは既に術式を突破しようとしていた。

フィアンマ「…殺しておくか? それとも、素体だけ持っていくか?」

オッレルス「>>150」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 01:49:32.02 ID:kV5Hb30SO<> 素体確保が最優先だ。私が全力で奪取、確保する。

お前は敵対勢力、及び奪取確保を妨害する奴全てを殲滅しろ <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 01:59:41.80 ID:Rg377bM30<>
オッレルス「素体確保が最優先だ。私が全力で奪取、確保する」

言いながら、彼はフロイラインに目を向ける。
トールとオティヌスは別々の目的でありながら、フロイラインを守った。
舌打ちこそしないものの、彼は淡々と告げる。

オッレルス「お前は敵対勢力、及び奪取確保を妨害する奴全てを殲滅しろ」

フィアンマ「殲滅、で良いんだな?」

彼の右肩から乖離する、巨人の腕のようなもの。
かつて得た知識によって制御こそされてはいるが、完全ではない。
だが、それでも『聖なる右』。
遠方からの攻撃対象も視野に入れて、彼は右手を振った。
今までのように必倒ではない。必殺の方の、出力。
しかし、右腕を繋いだばかりでは、いまいち全力が出る訳もない。
故に、意識を刈り取るには十分。手加減ではなく。

トール「ぐ、」

持ちこたえようとする。
トールは懸命に堪えようとして―――不可能だった。
フロイラインの出力を超えたのか、彼女は意識を喪う。
ただ一人、オティヌスだけは倒れない。
流石は魔神のなり損ないというべきか。
彼女はオーディンの攻撃に自らの攻撃をすべり込ませることで拮抗しながら、フロイラインに歩み寄る。


フロイライン=クロイトゥーネの身体に、双方の手が伸びた。








>>+1のコンマ一桁で展開決定(01:34:06.0『9』なら"9")


0〜6 オーディンの手が届く(奪取成功)

7〜9 オティヌスの手が届く(奪取失敗)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 02:24:49.31 ID:kV5Hb30SO<> んっふ。流石は団長です <> 小ネタ:こっとんきゃんでぃー 
◆2/3UkhVg4u1D<>sage saga<>2013/01/05(土) 02:32:09.11 ID:D5ZyKw1AO<>
オッレルス「……」

フィアンマ「……」もふもふ

オッレルス「……綿…?」

フィアンマ「いや、綿飴だ」もふもふ

オッレルス「……」

フィアンマ「……ん」もぐもぐ もふもふ

オッレルス「……」

フィアンマ「……」っ綿飴

オッレルス「……」もふもふ

フィアンマ「……」もぐもぐ

オッレルス「……じゃりじゃりするな」もぐもぐ

フィアンマ「口の中で溶かし過ぎているんだろう」もふもふ

オッレルス「……」もふもふ





《今夜はここまで お疲れ様でした》 <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 17:22:30.73 ID:Zk+d5ngq0<> 《>>152 02:24:49.3『1』 結果:オーディンの手が届く(奪取成功)》




伸ばされた手。
届いたのは、男の手だった。
彼はフロイラインを掴み上げ、満足そうな笑みを浮かべる。
猫の子でも抱えるようにフロイラインを掴んだまま、オーディンはオティヌスに攻撃を加えた。
当然の事ながら、オティヌスも反撃することで拮抗する。
そうやってぶつかり合っている間に、バルデルスがオーディンへ近寄り、彼の身体を軽く抱きかかえる。
そのまま一歩踏み出し、三人の影は闇に消えた。
味方の残っていないオティヌスの完敗だった。
本来、オーディンの奪取成功率は50%の確率、失敗する恐れだってあった。
だが、それが成功したのは恐らく。

オティヌス「…右方のフィアンマの確率操作…ッ、」

上条当麻が不幸であるように、不運であるように。
反対に、右方のフィアンマは絶対の幸運を所有している。
その彼を傍に置けば、当然ながらオーディンの成功率は底上げされる訳で。
あまりにも実力差がある、と歯噛みしながら、彼女はとある病院へ向かった。


上条当麻の眠る、病院へ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 17:22:31.65 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 17:22:48.84 ID:Zk+d5ngq0<>
直線上に遮蔽物が無い限り、バルデルスはどこまでも一瞬で平行移動が出来る。
無事根城としている廃墟に到着したバルデルスは、オーディンを解放した。
オーディンは淡々とフロイラインを拘束し、欠伸を噛み殺す。

オッレルス「私はマリアンとトールを回収してくる。頼めるか?」

フィアンマ「構わん」

返事をする彼に少しだけ笑んで、オーディンは外へ出た。
『素体』は回収した。後は加工を施すだけだ。
正確には、加工するのはマリアンなのだが。
なので、彼女に死なれてしまっては困るのである。
気を喪い、目を開ける事すら許されない程に拘束されたフロイラインの様子を、バルデルスは退屈そうに眺める。
彼は弱者だからといって容赦はしない。
やりたいことの為に他者を犠牲にしても、仕方が無いと思っているから。
バルデルスが救うと決めたのは、現時点においてオーディンだけだ。
それ以外は、必要なだけ壊す。例えそれが世界であっても。
世界を壊すことで救うと考えているのだから、彼のことは誰にも止められない。

フィアンマ「………」

バルデルスは無言のままに、自分の右手を見やる。
幸運の約束された、特別な右手。

フィアンマ「…『計画』が成功したら、ヤツは俺様を殺すかね」

ふと、呟く。
オーディンは今現在、バルデルスを傍に置いている。
それは、幸運の恩恵を得て成功率を高める為だ。
だから、全てが終わった時、自分は殺されるだろうか、とバルデルスは思う。
だが、もはやそれでも構わない。
やりたい事は伝えてある。それだけを達成出来たのなら、死んでしまっても、いい。

元々、自分は死んだようなものなのだから。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 17:22:49.71 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 17:23:29.20 ID:Zk+d5ngq0<>
オティヌスは、病院へとやって来た。
どうにか体調が元に戻ったのか、上条はぼんやりとしている。
意識が戻ったとはいえ、輸血がまだ足りていないのだろう。
思考が働かないのか、虚ろな瞳でオティヌスを見上げている。
魔術師がICUに入るのは簡単なのか、と場違いな事を、思う。

オティヌス「…お前が無駄に動いたせいで、…とは言わんが。……『素体』を盗られた」

上条「……ひゅ、…」

オティヌス「……お前には酷だと思うが、立ってはもらえないか」

上条「…は、……嘘、…ついた…じゃねえ、か…」

オティヌス「一応は人間だと言えば、お前は協力しないだろうと思ったからな」

上条「………」

オティヌス「…『加工』が終わるまでに、約一週間。それまでに阻止出来ねば、世界は破壊される」

ぼんやりとしながら、上条はゆっくりとオティヌスの言葉を理解していく。

オティヌス「何も、お前だけに協力しろとは言わない」

上条「………、」

オティヌス「イギリス清教の『騎士派』<いちぶ>、…他にも数組織に協力は頼んでみた。世界的危機だからな。協力は得られることだろう。だが、」

彼女は冷たい手を、上条の頬に沿わせる。

オティヌス「……右方のフィアンマに勝利出来るのは、恐らくお前位なものだ」

酸素マスクの中、浅い呼吸が繰り返される。

オティヌス「お前にしか、ヤツは変えられない。右方のフィアンマをどうにかしない限り、オーディンもまた、変わらない」

魔神になり損なった少女は、上条が沢山の人を変えてきたことを識っている。
だから、彼女は彼に賭けている。
絶体絶命の状況でこそ、彼の強さは発揮されると。

オティヌス「…頼む」

上条「…俺、…俺、は…」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 17:23:30.63 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 17:23:50.20 ID:Zk+d5ngq0<>
『素体』の聖別行為が済むまで、オーディン達は退屈だった。
マリアンはベルシ―――『死者の軍勢』を眺め、投擲の槌と戯れ。
トールは拘束され、バルデルスを見上げている。

フィアンマ「…ご苦労。だが、何故単独で動いたんだ?」

トール「…バゲージシティ、…いいや、ハワイの時から思ってた。テメェらは無駄な事ばかりしやがる。……俺は、弱いものいじめは好きじゃねえ」

フィアンマ「…なるほど」

相槌を打ち、バルデルスは暇そうにトールの様子を眺めた。
片手には、蜂蜜の入っていない葡萄酒の注がれたグラス。

フィアンマ「…それで、逆らったところでどうする。……もう『素体』は準備に入っているしな」

トール「……別に。俺はその時正しいと思ったことをした。魔術師なんざ皆そうだろ」

フィアンマ「そうだな」

渇いた喉をアルコールで灼き、バルデルスはぼんやりとした表情を浮かべる。

彼がやりたいことは三つ。
それ以外はもう揺るがない。

一つは、この歪んだ世界を壊す(=救済する)こと。
一つは、オーディンをまともにすること。
もう一つは、……『あの日』別れた友人に、再会すること。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 17:23:51.07 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !蒼_res<>2013/01/05(土) 17:24:35.88 ID:Zk+d5ngq0<>
よく晴れた日だった。
曲りなりにも貴族の家だった俺の家は、近くの教会によく寄付をしていた。
それこそが貴族のなすべき行為であり、自尊心を高める手段でもあったから。
父親に言われるまま、近くの教会へと足を運んだ。
父親がその教会を担当している神父と話している間、俺はどうにも退屈で。
半ば大人から逃げ出す形で、教会の敷地内の庭へ出た。
数人がボール遊び、数人が話をしていて。
ただ一人、彼女は日陰に座り込んで絵を描いていた。

『ねえ、』
『…わ』

声をかけると、スケッチブックを抱きしめた。
少し、怯えているようにも思えた。
やや垂れ目気味の、アーモンド型の瞳。
瞳色は金色、あるいは橙色で、赤い髪は彼女の尻に届く程長かった。

『…きみはあっちであそばないの?』
『、…なかまにいれてもらえないもん』

十数年以上も前。
まだ、差別が強かった時代。
赤毛である彼女が嫌われていたのも、納得出来る。
だが、その時は何故仲間に入れてもらえないのだろうかと首を傾げ。
きっと彼女が細くて白いからだろうと、勝手に結論付けた。

『…なにかいてるの?』
『…えを、かいてるの』
『なんのえをかいてるの?』
『……ねこさん』

彼女が指差した先。
迷い込んできた野良と思われる猫が、丸まって眠っていた。
真っ黒だったので、気づかなかった。
彼女の傍らには幾つものクレヨンがあり、それで描いていたようだ。

『……どうせもやされるか、びりびりにやぶられるんだけど』

残念そうに笑って、彼女は目を伏せる。
それが所謂『いじめ』であったことに、俺は気付けなかった。

『…じゃあ、おれにくれないか?』
『……ひとにあげられるほどじょうずじゃないよ』
『そんなことないよ』

その年頃の子供の、平均的な画力。
スケッチブックから一枚破ってもらったそれを、貰い受けて。
今はもう、何処にも無いのだが。

『……えっと、…なまえ、なんていうの?』
『んー、んー…うる、でいいよ』
『うる?』
『うる』
『うる!』
『きみは?』
『ぼくは、…えっと…』

彼女は迷って悩んで、適当で良いと言った。
俺が名乗った名前もまた、『デンマーク人の事績』から取ったものであったから、名前にこだわりは無く。


そうしてその日から、俺達は交流を始めた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 17:24:36.89 ID:D5ZyKw1AO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/05(土) 17:25:11.38 ID:Zk+d5ngq0<>
上条は学園都市から離れ、オティヌスの住む隠れ家に居た。
上条が生きている限り、『幻想殺し』は世界に干渉する。
世界を思うがままに歪め、破壊したい『神々支配せし領域広き帝国』にとっては都合が悪い。
故に、上条を殺さなければ計画は半ば失敗する。
そんな彼の身柄を守るべく、何十人もの魔術師が配置されていた。
輸血のチューブはそのままに、上条はゆっくりと息を吐き出す。
まだ怪我は治っていないものの、走る程度なら問題無いだろう。

上条「…アイツ等が何処に居るが、検討はついてんのか?」

オティヌス「勿論だ。…だが、時期を窺わねばなるまい」

上条「…『儀式』が済む前に、俺を殺しに来るのか?」

オティヌス「読みが正しければ」

上条「…勝算って、あるのか…?」

オティヌス「>>165」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/05(土) 23:48:08.79 ID:EvCshERz0<> そうだな、せめて……オーディンの成功率を今までの50%に引き下げられれば、あるいは

気休めかもしれないが、五分五分の方がまだ望みはある <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 01:12:54.96 ID:moyAIJB70<>
オティヌス「そうだな、せめて……オーディンの成功率を今までの50%に引き下げられれば、あるいは」

質問ばかりを投げかけていた上条は、そうしてようやくオティヌスの真剣さに気がつく。
そして、シルビアや、協力させた人間に申し訳なさを覚えていることも。

オティヌス「気休めかもしれないが、五分五分の方がまだ望みはある」

上条「…成功率を上げてるのは、フィアンマの存在、か」

オティヌス「ああ。…以前と違い、右腕がある。故に、成功率は70%程を誇るだろう」

上条「…ちなみに、俺が居ても大丈夫なのかよ。……俺の性質は、フィアンマとは真逆だし」

オティヌス「それについては問題無い」

オティヌスは純粋な魔神ではない故に、力量こそ足りないが、可能性の制約は無い。
だからこそ、上条を傍に置いても問題が無い。

オティヌス「…同じ場所にお前が居れば、足されている分が引かれるやもしれん」

一番の方法は勿論、右方のフィアンマをオーディンから引き剥がしてしまうこと。
そうすれば、確率は50%に下がる。

上条「でも、ぴったりくっついてる訳じゃないんだろ? 具体的にどうすればアイツの幸運効果って消えるんだ?」

オティヌス「お前がヤツに触れていれば良い。それか、」

上条「それか?」

オティヌス「……殺しておけば、確実だ」

上条「………それは」

オティヌス「賛成出来ないか? ヤツはお前を殺すのに?」

上条「……」

上条は、黙り込む。
それでも、殺すことは賛成しかねた。
出来る事ならば、死んで欲しくはない。

だが。


上条「…アイツの服が、変わってたんだ。関係あるかどうかはわかんないけど、話しておく」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:12:56.49 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !蒼_res<>2013/01/06(日) 01:13:21.31 ID:moyAIJB70<>

鬱陶しい程に晴れた日だった。
教会の子供たちにいつも蚊帳の外とされていた俺様は、退屈だった。
誰にも迷惑をかけないよう、端の木陰に座り込んだ。
丸まっている猫を見つけ、絵を描くことにして。
一人で遊んでいたところ、声をかけられた。

『ねえ、』
『…わ』

思わず怯え、スケッチブックを抱きしめた。
罵倒されると、思った。
見上げる。綺麗な、金の髪。
緑とも青ともつかない、美しい色の瞳。

『…きみはあっちであそばないの?』
『、…なかまにいれてもらえないもん』

十数年以上も前。
まだ、差別が強かった時代。
当然、嫌われていた。
どうして仲間に入れてもらえないか、などと愚問を問うものだから、戸惑った。

『…なにかいてるの?』
『…えを、かいてるの』
『なんのえをかいてるの?』
『……ねこさん』

指差した先。
迷い込んできた野良猫が、丸まって眠っている。
俺様が模写していた、真っ黒な猫。
傍らに置いたクレヨンで、描いていた。

『……どうせもやされるか、びりびりにやぶられるんだけど』

集団というものは残酷で。
赤毛だから、たったそれだけの大義名分で。
卑屈に言えば引くだろうと思いきや、違った。

『…じゃあ、おれにくれないか?』
『……ひとにあげられるほどじょうずじゃないよ』
『そんなことないよ』

その年頃の子供の、平均的な画力があったかどうかすら自信が無い。
スケッチブックから一枚破り、渡す。喜ばれたのは、初めてだった。
この少年なら、俺様を毛嫌いしないでくれるかもしれない。
思わず期待をして、問いかけた。

『……えっと、…なまえ、なんていうの?』
『んー、んー…うる、でいいよ』
『うる?』
『うる』
『うる!』
『きみは?』
『ぼくは、…えっと…』

迷って悩んで、適当で良いと言った。
あまり名前を呼ばれた事が、無かったから。
そうか、と彼は笑った。優しい笑みだった。


そうしてその日から、俺様達は交流を始めた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:13:22.46 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 01:13:40.70 ID:moyAIJB70<>
聖別が終わる前に、邪魔なものを消しておこう。
そういった結論に至り。
トールをどうするか迷った結果、マリアンの意向に任せ。
オーディンはラッキーアイテムよろしく、バルデルスを連れて外へ出る。
オティヌスと上条が居る場所については、既に探ってある。
後は向かって、予定している通りに殺してくればいい。
『素体』の確保が済んでいる以上、最早何に遠慮をする必要も無い。

オッレルス「……」

フィアンマ「…その友人に謝れると良いな」

オッレルス「…謝るよ」

きっと、探し当てて。
あるいは、蘇らせてでも。
言外にそう呟いて、オーディンはゆっくりと歩く。
タダで済むとは思っていない。
こちらの思惑はある程度読まれているだろうし、『幻想殺し』は厄介だ。
だが、成功率が70%を少し上回っている今なら。
オーディンは一度だけ、バルデルスを見やる。
肩過ぎにまで伸びた彼の赤い髪に、ふと、『彼女』を思い出す。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:13:41.71 ID:xJNzxSgAO<> + <> 小ネタ:甘くて茶色いもの 
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 01:14:06.93 ID:moyAIJB70<>

オッレルス「…チョコレート?」きょと

フィアンマ「ああ。嫌いか?」

オッレルス「どちらでもないが」

フィアンマ「そうか」っひとかけら

オッレルス「……」もぐもぐ

フィアンマ「……」かり がり

オッレルス「…噛んで食べるのか」

フィアンマ「ん、…噛んで食べる方が落ち着くからな」もぐもぐ

オッレルス「…ん…」

フィアンマ「…お前は舐めて食べるのか」

オッレルス「柔らかくしたら、噛んで食べるよ」もぐ

フィアンマ「なるほど」

オッレルス「……」

フィアンマ「…チョコレート臭いな。空気が」けほっ

オッレルス「…予測可能、回避不可能、か…」がり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:14:07.97 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !蒼_res<>2013/01/06(日) 01:14:55.08 ID:moyAIJB70<>
交流を深めていく中で、俺は、彼女とずっと一緒に居たいと思うようになった。

鈴を転がす様な愛らしい声。
真っ白で、透けてしまいそうな肌。
橙と金の混じった、綺麗な瞳。
穏やかな赤い色の長い髪。
細い指先、照れた笑顔。

全てをこの手に納めたいと、思った。
今思い返してみると、それはもはや友人に抱くそれではなかった。
恐らく、一般的には初恋と呼ぶべき感覚だったんだろう。
けれど、関係性としては、あくまで友人の、まま。

『けっこんしてください』 
『け、けっこん?』
『おれがおおきくなったらでいいから』
『…ぼくは、かみさまのおよめさんになるから…だめ』

彼女が身に纏っているのは、修道服だった。
彼女は、将来的に聖職者になるのだと言った。

『じゃあ、おれがかみさまになったら…およめさんに、なってくれる?』
『うるがかみさまに? …うん、ならいいよ』

どこか釈然としない表情で、彼女は頷いていた。

さよならをしてしまった後。
嫌いだと言った後、彼女を捜して。
気付けば、魔術の勉強へとシフトしていた。






魔神―――神様の領域に足を踏み入れれば、彼女とまた会える様な気が、した。
 
けれど。

猫を見捨て、人を殺し、魔神になって尚、暴力を振るう俺に。

もう二度と、二度と、彼女は微笑みかけてなんて、くれないんだろう。

だからせめて、    あやまりたい。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:14:56.22 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 01:15:59.00 ID:moyAIJB70<>
たどり着いた場所には、何十人もの魔術師。
『騎士派』、小さな魔術結社、他にも何種類か、区分出来る程。
これだけの人数をよくも集められたものだ、とオーディンは思う。
隠れ家の中から姿を現した上条の前には、魔神のなり損ない。
オティヌスは冷徹な眼差しでオーディンを見据える。

「…どれだけの人員を用意しても無駄だ」

「先に殲滅するのは、伝えた通りだ」

オティヌスの言葉に呼応して、武器が構えられる。
剣、刀、聖書、杖、天秤―――数え切れない程の、武器。
大型や中型、多種多様な武器が、オーディンとバルデルスに向けられる。
対して、バルデルスが行った事は簡単だった。
ある意味、セオリー通り。『聖なる右』による払拭。

「邪魔だ」

向けられた武器から攻撃が放たれるより早く、彼の右手が振られる。
一撃にして何十人もの、それなりの実力を持っている筈の魔術師が倒れる。
その代償として、『聖なる右』が僅かに、不気味に揺れた。
空中分解するかもしれないな、とフィアンマはうっすらと思う。
制御は出来ているのだが、それでも何度も使えば、一度休ませねばならないようだ。
右腕自身が一度切断されているのだから、不可抗力である。

別に、オティヌスも上条も、魔術師達に守ってもらおうとは考えていない。
彼らが排除しようとしたのは、右方のフィアンマだ。
オーディンを丸無視で眼前に現れた敵に、バルデルスは一歩下がる。
『聖なる右』で対抗しようにも、弱っている。受け止め切れるだろうか。

「フィアンマ、」

彼は視線を寄越し、『見えない力』を発揮する。
『北欧宮殿』に対し、上条は右拳を突き出す。
パキィン、という甲高い音。『北欧宮殿』が消された。
バルデルスにまで危害の加わらないよう力の調整をしていたオーディンは、当然のことながら、焦る。
上条の脇腹を掠る形で、『主神の偽槍』が跳んできた。

オーディンのものは拘束に。
オティヌスのものは殺害に。

向いている。

そして、オティヌスの方のそれは、以前のものと違った。

「や、どりぎ…?」

死の予感に、喉が干上がる。

「お前が一度上条に接触したのは、間違いだったな」

ヤドリギの粘り気が纏わされた、槍。
それを投げられれば、当然、防御霊装であっても貫かれる。
ましてや、光神バルドルの伝承を元にしている、バルデルスのものでは。

回避しきれるか、とバルデルスは自分で自分の体勢を崩す。


間に合えば、勝利。
間に合わねば、敗北。






>>177-179の多数決によってルート決定。番号指定、1IDにつき一票でお願いします


1.避け切れた(勝利→世界征服ルート)

2.避けきれなかった(敗北→後追い自殺ルート)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 01:27:54.51 ID:nB0HJgMSO<> まぁ間に合わんだろうな

2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage sage<>2013/01/06(日) 02:25:34.06 ID:zPkCPsSQ0<> 2 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:08:54.45 ID:nB0HJgMSO<> オッさんはまた救われないままくたばっちまったなww <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !red_res<>2013/01/06(日) 03:43:05.85 ID:moyAIJB70<> 《ご投票ありがとうございました。 結果:避けきれなかった(敗北→後追い自殺ルート)  >>179様 でも珍しくフィアンマさんが先に死ぬルートですよ!》








ともすれば、避け切れたように思えた。
身を挺してどうにか庇おうとしたオーディンは、しかし届かず。
けれども、バルデルスの体は、確かに槍を回避していた。
だが、只の槍ではなかったことが、唯一の誤算。
オティヌスは手を出す。槍は、彼女の手元に戻るべく、動きを変えた。
一度は避け切れた、しかし、その槍は、背より襲いかかる。

「ご、…っぐ、…ぅ、…ぁ」

彼の口からは、血液が溢れた。
服を突き抜けた槍に内臓を傷つけられ、激痛と、激流の血液が、こみ上げる。
槍が貫通し、右側の肺が使い物にならなくなったことを自覚しながら、バルデルスは後退した。
体勢を変えて平行移動した彼は、オーディンの隣に立った。
血液を吐いて激しく咳き込みながら、治癒を行おうとする。
だが、間に合わない。血液が流れ出ていくと共に、段々と意識が薄らいでくる。
止めを刺そうとしたオティヌスや上条を見やった後、オーディンは一度だけ、足を踏み鳴らした。
地面から生まれた人間のなり損ない<ゴーレム>が、彼らを襲う。
その間に、オーディンはそっとバルデルスの身体を抱えて逃亡した。
まだ治癒すれば、間に合うかもしれない。そう思ったからだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:43:54.61 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !red_res<>2013/01/06(日) 03:44:13.08 ID:moyAIJB70<>

根城としている場所に攪乱・隠蔽の為の術式を施しながら、中に入る。
失敗を先んじて伝えたからだろう、マリアンはトールや投擲の槌と共に引き上げていた。
『素体』はどうしたのか知らないか、マリアンが持っていったのかもしれない。
どれだけ酷使しても壊れない、死なない『材料』は、興味深かっただろうから。
だが、最早そんなことはどうでもいい。オーディンが一心に考えていたのは、フィアンマが死んでしまわないか、どうか。

「フィアンマ、まだ意識はあるか?」
「…どうにか、な」

返事をしているが、その声量も低い。
オーディンは自らが所有し得る全ての霊装や知識を使って、彼の身体を治そうとした。
その間にも、血液はどんどんと溢れ、床を汚していく。

「……、」
「…しな、ないでくれ…まだ…」

声が、震えている。
泣きそうな声だ、とフィアンマは思った。
最初に会った時は、人間味の欠片も無かったクセに。
自分の作った食事を口にして、自分の意見に反応して。
段々と人間味を取り戻していった辺り、もしかすると、この男には、誰か隣に居てやる人間が必要だったのかもしれない。
幾度も暴力を振るわれたが、その度に泣いていたように思う。
多分、執着と好意がイコールになる性格をしていたんだろう。

意識がぼやけていくのを感じながら、そんな事を思った。

「…一つは、達成出来た、か。お前を、まともに…できた…」

世界を壊す事は、救う事は、出来なかった。
あの日、嫌われてしまった友人に『ごめんね』とも言えなかった。
だが、この男を真っ当な感性の持ち主には、出来たらしい。

「……、…」
「…まだ、困る。…君に死なれると、…困る…」
「…何も、…困らんだろう。…元の生活に…戻るだけじゃ、ないのか…?」
「…俺は、君に生きる理由を貰ったんだ。言っただろう、君が死んだら、俺も死ぬと」
「……そう、だったか…? …俺様は、お前に生きる目的を、貰った」

嗚呼、思い出せない。血液が足りない。
思考出来る程の余裕が、無い。

血まみれの手が、視界の端で懸命に動いているのが見えた。
だが、最早生きられないことを、フィアンマ自身は知っている。
今から病院へ駆け込んだところで、きっと助からないだろう。
何せ、貫通してしまったのだから。内臓は滅茶苦茶だ。

そっと、手を伸ばす。
そして、悪あがきをする、彼の手に触れた。
精々が数時間の延命行為。どのみち、死に至る。
手首を掴んで、首を横に振る。

「もう、…いい」
「…何が、」
「…どうせ、助からない」

だから、もういい。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:44:13.91 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 03:44:34.11 ID:moyAIJB70<>
呼吸が苦しいのは、肺が一つ駄目になったからだろう。
咳き込む度に、血液が飛び散った。
頭が痛い。視界が明滅している。

「…フィアンマ、…嫌だ……」

一緒に居てくれ。

道具に言う言葉とは、思えなかった。

「……君が居なくなると、俺には生きる理由が、また、なくなる」
「……俺様以外にだって、…お前が死ねば、泣いてくれる人間が、居る…」

例えば、友人だとか。
謝れなかった友人が居るのだろう、と笑う。
ぼろぼろと涙を流しながら、オーディンは首を横に振った。

『けっこんしてください』 
『け、けっこん?』
『おれがおおきくなったらでいいから』
『…ぼくは、かみさまのおよめさんになるから…だめ』
『じゃあ、おれがかみさまになったら…およめさんに、なってくれる?』
『うるがかみさまに? …うん、ならいいよ』

「ウル……約束を、破ってしまった…」

最期に。
きっとこの世界の何処かでまだ生きていると信じたい彼に、言う。

「…うる、…ごめんね…」

謝りたかった。
ずっと、謝りたかった。
終ぞ、その願いは叶わなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:44:34.95 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 03:45:22.00 ID:moyAIJB70<>
「…うる、…ごめんね…」

ウル。
同名かと、思った。
思いながら、フィアンマを見つめる。

真っ白で、透けてしまいそうな肌。
橙と金の混じった、綺麗な瞳。
穏やかな赤い色の長い髪。
細い指先、照れた笑顔。

「……今更、…いまさら…」
「…オー、ディン…?」
「今更、…気付いて、……」

何だ。
こんなところに、居たのか。
ずっと、傍に居たのか。
俺の傍に、居てくれたのか。
彼女は、ずっと。

否。

彼は、ずっと。

「結婚して、ください」

掠れた声で、言う。
覚えがあるのか、フィアンマは反応した。

「…ウル…?」
「俺が、大きくなったらで…いいから…」
「ぁ……」
「俺が神様になったら…お嫁さんに、なってくれる…?」
「……今更…、…クソ、……」

魔神―――神様の領域に足を踏み入れれば、彼女とまた会える様な気が、した。

事実、会っていた。だが、気づかなかった。
フィアンマは力の入らない手を伸ばし、俺の頬に触る。
生ぬるい血液が、頬を汚したことを、感じた。

「ウル……あの日は、…ごめんね……ご、めん…」
「いいや、謝るのは俺の方だ…ごめん…ごめんね……」

世界を壊さなくても、支配しなくても。
願いは叶った。
代償があまりにも大きすぎるのは、神罰なんだろう。

俺みたいな人間が神の領域へ足を踏み入れたり、したから。

抱きしめる。
血液を喪ったショック症状により、彼の身体は少し痙攣していた。
苦しそうに呼吸を繰り返しながら、抱きしめ返される。
せっかく謝れたのに、仲直り出来たのに、此処でまた別れるのか。

「お前の、…貸してくれた、…すなどけい。ずっと、…大事にして、…いたんだ。…それで…他の、こどもたちに…壊されて、しまった…だが、…うまくいえなくて、…知らないの、一点ばり…すまな、かった……」
「……そんな気は、していたんだ。なのに、嫌いだと言ってしまった。嫌いなんかじゃない、俺はずっと、ずっと君が好きだった」
「…俺様も、……俺様、…も。……お前のことが、すきだった…。…ずっと、…いじめられていた、おれさまに…初めて、声をかけてくれて、…いっしょに、あそんでくれて、優しく…してくれ、て…そんな、…お前が……だいすき、だった…いま、も…」

嫌いだ、ただその一言で、どれだけ傷つけただろう。
悔やんで尚、許してはもらえないだろう、嫌われただろうと、思っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:45:23.08 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 03:45:48.10 ID:moyAIJB70<>
「っ…は……ほん、とうに…神、様に…なったん、だな…」

困ったように笑って、フィアンマが俺の唇を撫でる。
唯一、血液に汚れていない指の、部分で。

「そうだよ。……君にもう一度会いたくて、…あいたくて、結ばれたくて、謝りたくて、何でもした、何でもやった、魔神にもなった……」
「そう、か…」

相槌を打ったフィアンマの顔色は、悪い。
青白くて、血液を失っていく途中だと、よくわかった。
彼は幸せそうに、笑ってみせる。
あれだけ傷つけて、振り回して、それなのに。
それでも、俺を好きでいてくれた。

「……さきに、逝って。………まってる」

だから、また会いに来てくれ。

そう述べて、彼はとうとう意識を途絶えさせた。

待ってる。

「……待ってる、か…」

きっと、俺も君も、地獄に堕ちるだろう。
それだけのことをしてきている。
そうしたら、会えるだろうか。

「…ちゃんと、逝くよ。……今度は、…君に、きちんと会いに行く…」

だって、結婚しなくちゃいけないから。
もう少しだけ、待っていて欲しい。
準備をしたら、すぐに迎えに逝くから。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:45:49.18 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga !桜_res<>2013/01/06(日) 03:47:02.64 ID:moyAIJB70<>

冷たい死体に、黄金を組み込む。
死体の腐敗を防ぐ為だ。

『死者の軍勢』。

攻撃や労働力などの手段以外で使う事になるとは、思わなかった。

「…これで、いいかな」

手は血まみれだったが、気にしない。
フィアンマの手に、果物ナイフを握らせる。
虚ろな瞳をして起き上がる彼は、まるで救世主だった。
この言い方は、失礼かもしれない。
何せ、彼は本当に救世主の素質があったのだから。

「……愛しているよ。…結婚しよう、フィアンマ」

ナイフの輝きが、祝福のように見えた。
痛みは怖くない。死ぬ為なら、怖くない。

『………俺様を生かす為に、お前は生きろ』
「…もう、生きる必要は、無いな」
『……さきに、逝って。………まってる』
「…今、逝くよ。……指輪は無いけど、事実は変わらない」

死体になって尚、綺麗だと思うのは、惚れた欲目というヤツだろうか。
何も映らない磨硝子の様な金色の瞳を、愛おしく思う。
笑みを浮かべ、受け入れた。

ナイフが、首に食い込む。
激痛が走ったが、そのまま軽く首を動かした。
動脈が切れ、勢い良く血が溢れ出す。
多量に血液を失って死ねば、彼と同じ死因になる。
それがほんの少しだけ、嬉しかった。
噴出した鮮血が、既に酸化しているフィアンマのものと、混ざった。
術式の解けた死体が、横に膝をつき、倒れる。
意識が遠のいていくのを感じながら、彼の身体を抱きしめた。
冷たいし、柔らかみは無い。だが、安心感は与えられた。

「好きだよ」
『俺様も、お前が好きだよ』
「……ああ」

目を閉じる。
これから逝く先が、地獄だとしても。
婚約者の待つ天国なら、怖く、なかった。





 

                                   


                                                           ―Happy end―
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:47:04.54 ID:xJNzxSgAO<> + <>
◆2/3UkhVg4u1D<>saga<>2013/01/06(日) 03:47:49.42 ID:moyAIJB70<>
まともって何だっけ。
幸せって何だっけ。

となりながら書いてました。
以上で終わりです。
お付き合いありがとうございました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/06(日) 03:50:08.66 ID:nB0HJgMSO<> 乙。泣けるラストだったな!流石>>1だっぜ
まともじゃない俺にはまともの定義が未だにわかんねーわww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/07(月) 02:50:15.69 ID:ntLx/s1DO<> 風邪で寝込んでるうちに終わってた……乙です
切ないながらも本人達は幸せな終わりでしたけど、相変わらずオッさん報われないなぁ
なんか世界よりもオッさん達が救われれば良いのに…
このままホモでも実は女の子でしたでも良いから、生存イチャラブendが見たい気もする…けど、それだと今回のendを否定することになるからそれはそれで嫌だなぁとか面倒な事を考えてみる

何はともあれ乙でしたー(2回目) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/10(木) 03:07:46.99 ID:PhiKnsxt0<> フィアンマさんと魔神オッレルスさんの関係に萌えて泣いたわ・・・
良いオレフィアだったよ
乙レルス! <>