VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 16:31:21.20 ID:2LQWz22w0<>
地の文ありです。二次創作、エログロはなしの方向で
テーマ >>2
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379835080
<>安価でSSを書く
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/09/22(日) 16:33:15.57 ID:2PI+EVIio<> ライダースーツの彼女 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 16:34:30.98 ID:2LQWz22w0<>
では「ライダースーツの彼女」で書いてきます。
即興なので遅いですがすみません。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 16:59:58.44 ID:2LQWz22w0<>
今の時代にライダースーツなんてのを着ているのは、彼女くらいだ。
もうバイクなんて危ない乗り物は無くなったし、というと語弊か。
そう言うと近未来のようだけど、ただ、交通網が発達しただけだ。
それで、たまたま安全性の低いバイクが街から消えていっただけ。
僕は、バイクは嫌いだ。でも、ま、バイクに乗る彼女は好きだけど。
今日は、平成三十年の十一月二十五日。母さんが死んだ一年前だ。
母さんが亡くなって、少なくとも父さんは変わっちゃったと思う。
最近は、いつも何かを気にしてる。言ってしまえば、挙動不審だ。
「ねえ、父さん。いつも、何をそんなにきょろきょろしてるの?」
「え? ああ、別に。何でもないよ。お前も気にしなくていいよ」
そう、と僕が何でもなさげに返事をすると、いつも胸を撫で下ろす。
「何かあるな」と思っていても、どうにも父さんの考えが読めない。
早く家に入るんだ、なんて急かされて、僕までも落ち着けやしない。
そのとき、隣の家でバイクのメンテナンスをしている彼女を見た。
ああ、またやってるのか、と思う。せいぜい跨がるくらいなのにな。
でも、そんな彼女を見ていると、何だか微笑ましくなってくるんだ。
それで、母さんが死んだっていうのに、僕はこうも思っちゃうんだ。
また、誰もが普通にバイクに乗れるようにならないかな、とか。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 17:09:35.65 ID:2LQWz22w0<>
僕の家には、いつも父さんがメンテナンスしてるバイクがまだある。
と言っても、それは父さんのじゃない。父さんはまず免許がない。
母さんのだ。僕より小さい母さんが、あんな大型に乗るなんてな。
人は見かけによらない。それに乗りそうな性格とも思えないけど。
『あなたより大きくなったわよ。すごいでしょ。乗りたくない?』
『僕はいいよ。怖いし。こけるのも怖い。母さん、傷だらけだし』
『こんなものは乗っていれば当たり前よ』と、母さんは笑っていた。
それでも楽しそうに日々乗っていたのだし、それは当たり前なのか。
バイクも傷だらけと言えばそうなんだけど、なんていうか味がある。
「ほら、どう? お前も乗らないか。父さんは跨ってれば満足だ」
「あ、もう、そろそろ時間か」なんて言って、父さんは出て行った。
僕はもう、今日の学校の帰りに墓参りに出て、花を添えてきてある。
行って、父さんは何を思うんだろうな、なんて僕は思い悩んでいた。
帰ってくるまで時間あるし、と思って、僕はテレビをつけてみた。
どのテレビをつけても最近はもっぱら同じニュースしかやってない。
もう見飽きた。それに僕にはあまり関係ない。どうにもならないし。
それに、またか、と思うほど最近は連日で事故のことも取り上げる。
「また、事故です。これで、今月に入って十件目です。場所は――」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 17:24:00.85 ID:2LQWz22w0<>
なんだか聞き慣れた地名が出てて、僕はいつの間にか見入っていた。
隣の区じゃないか。物騒だな。家に突っ込んだりしないだろうな。
というか、まだバイクに乗ってる人もいるんだな。好きなんだな。
こういうニュースを見ていると、バイクが恐ろしいものと分かる。
そこまで考えて、僕は母さんがむかし言っていたことを思い出した。
『ルールを守れば、何も危なくないわよ。事故は、自らの責任よ』
と。実際そうなのだろうが、こうして連日、事故を目にしている。
けれど、こうも言っていたな。ええと、何だったかな。確か……。
『相手が不注意の場合もあるわよ。それか、考えたくはないけど』
ないけど、何だっただろうか。その頃の僕はよく聞いてなかった。
『わたしは――』と続くはずの母さんの言葉は、何だったっけな。
お腹の音で我に返った僕は、一応、父さんにメールを送ってみた。
> ねえ、父さん。いつ帰ってくるの? そろそろお腹すいた
> ああ、もうすぐ帰るよ。スーパーに寄るけど何かいる?
> 別になにも。とにかく今はご飯が食べたい感じなんだ
と、すぐに返信が帰ってきたようで、僕は心のどこかで安心した。
そう。父さんがどこかでこういう事故に巻き込まれてないか、と。
杞憂だったか。僕は空腹をしのぐため、しばらく眠ることにした。
「……ああ、何でいなくなっちゃったんだろうな、母さんは……」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 17:35:44.21 ID:2LQWz22w0<>
次に僕が目を覚ましたのは、父さんがすべて料理を並べたあとだ。
「帰ってたのなら言ってよ」と僕は少し不満を漏らし、言った。
すると「最近、疲れてるみたいだから」と父さんは笑って言う。
「お前のことだから、寝てるだろうって思ったし」とも続けた。
何とも見透かされやすい性格をしているのかもしれない。残念だ。
父さんの料理は何だか味が普通の味なのだが、それでも美味だ。
家庭の味、と言うのか。どうにも、変えるつもりはないらしい。
料理を口に運びながらも「そういえば」と切り出して、言った。
「そういえばさ、父さん、疲労で倒れたとこだったはずでしょ」
「うん。ま、大丈夫だったけど。病院にはあとでお金を払うよ」
「それは当たり前だけど。大丈夫なの? 仕事も出られるの?」
「大丈夫」を繰り返すばかりの父さんは、明らかに疲れている。
あの日から。そう、あの日から、ずっと父さんは憑かれている。
今もずっと、気付かれないように窓の外をちらちらと見ている。
「ねえ。そこには誰もいないよ。ちゃんと鍵もかけてあるんだ」
「うん。そうだな、いや、ちょっと、虫が飛んでた気がしてさ」
「いるとしたら、せいぜい、この時間を邪魔するおじゃま虫だ」
そう、適当に答えを濁しておいた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/09/22(日) 17:45:15.77 ID:2LQWz22w0<>
次の朝になると、父さんは眠ったせいか、活気を取り戻していた。
昨日病院を抜けだして、今日、早速仕事とは忙しすぎるだろう。
あるいは、意図的に仕事を入れているか、だとか。そうだろう。
「倒れても見舞いには行けないよ」とだけ軽く釘を刺していた。
「ま、とにかくさ、父さんは行ってくる。学校でも会うかもな」
「そうかも。ま、会うことはないんだろうけどさ。頑張ってよ」
「ああ」と父さんは元気よく手を振り、駅の方へ歩いて行った。
すると後ろから「おはよう」と声が聞こえるので、振り向いた。
やはりというか、予想通りというか、とにかくは彼女であった。
「おはよう。お父さん、退院されたそうじゃない。死ぬ気なの」
「じゃないかな。じゃなきゃさ、あんなに仕事したがらないよ」
「……まだ、忘れられないのかしら。わたしも辞めるべきかな」
暗に母さんのことを指しているのだと、僕は、すぐに理解した。
「彼女は母さんにそっくりだな」と父さんも笑って言っていた。
彼女を見るとどこか面影が重なるから、と言いたいのだろうな。
「君は君で、母さんは母さんだ。やりたいことはやるべきだよ」
「ありがとう。でも、お父さんが気にしてるようなら、言って」
<>