VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:37:35.66 ID:zJ3GdvMS0<>
 春香はいつか、自分にこう言ったよね。
 孤高が強いんじゃない、って。

 その意味は全然分かっていなかった。しかも、何言ってるんだコイツ、って聞こうともしなかった。

 でも――いま分かったよ。

「プロデューサーさん! 私達、勝ったんですよ!」

「落ち着け春香! まだ舞台の上なんだから!」

 結束が人を強くする。人はひとりじゃ、いられない。


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<>響「リスタート」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:38:04.33 ID:zJ3GdvMS0<>
 ――――
 ――

 クリスマスの合同ライブから一日が経った。
 同時に、961プロを解雇されてからも一日、経った。

「……寒い」

 お気に入りのコートを着て、ひとり外に出る。
 寒さを和らげるのはこのコートと、変装用のマスクだけ。
 特に何をするわけでもない。散歩ってやつだ。

 家族は連れてきていない。なんとなく一人になりたかったから。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:38:43.29 ID:zJ3GdvMS0<>
 なんとなく電車に乗って、適当な場所で降りる。
 電車に乗るだけで良かったのに、地下鉄では景色が見えなかった。

「なんか食べながら歩こうかな」

 駅から少し離れたところにあるコンビニに入った。

『自由な色で……描いてみよう……』
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:39:35.21 ID:zJ3GdvMS0<>
 思わず身体がこわばる。

 店内で流れていたのは『Colorful Days』。
 765プロが全員で歌った――自分たちに勝利した曲だった。

「……肉まん、ひとつください」

 本当はジュースなんかも買おうと思っていたけれど、すぐにレジに向かってしまった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:40:06.99 ID:zJ3GdvMS0<>
 コンビニを出て、マスクを外す。
 自分はもうアイドルじゃないんだから、変装なんて必要ないんだ、とゴミ箱に捨てた。

「風が強いな」

 これからどうしようかな。トップアイドルになると言って飛び出した手前、すぐに戻るわけにもいかないぞ。
 いろいろと考えながら肉まんの包み紙を剥がして、思いっきりかぶりつく。
 つもりだった。

「……響ちゃん!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:40:39.45 ID:zJ3GdvMS0<>
 肉まんから顔を上げた時、丁度反対方向から歩いてきたのは、昨日自分たちに勝った相手。
 センターの天海春香その人だったからだ。

「響ちゃん、どうしてここに居るの?」

「は、春香こそどうして」

「えっ? だってここは、ほらっ」

 春香に手をひかれる。

「ちょっ、ちょっと」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:41:12.22 ID:zJ3GdvMS0<>
 すぐに大通りに出てきた。
 春香が指をさした先にあった小さなビル。その窓にはガムテープで「765」と文字が作られている。

「私達、765プロの事務所があるからだよっ」

 こんなところにあったのか。

「知らなかった」

「え、美希に聞いたりしなかったの?」

「うん。あんまり765プロの話は、しなかったからな」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:42:22.09 ID:zJ3GdvMS0<>
「だ、だよねぇ」

 春香は申し訳無さそうに笑う。

「それに……社長の方針で、あんまりプライベートで会っちゃいけなかったんだ」

「……そうだったの?」

 春香が765プロの方向へ歩き出す。真横とはいかないまでも、春香の少し斜め後ろについた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:42:53.22 ID:zJ3GdvMS0<>
「うん。王者は孤高だから、って」

 ふと、我に返る。
 なんで自分は春香にこんなことを話してるんだ?
 春香はライバルなんだ。黙ってりゃいい。帰ればいい。

 どうせ春香だって、今まで戦ってきたアイドルと同じだ。同じなんだ。
 961プロと自分たちをひたすら貶して、蔑んで、泣きながら帰っていく。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:43:45.55 ID:zJ3GdvMS0<>
 自分の弱みなんかを話したら、つけこまれて――。

「……響ちゃん、無理してたんだね」

 あいていた右手を、握られる。
 ……強がっていた、春香の気持ちを無碍にしかけた自分の心が、ずきんと痛んだ。

「私、全然気づかなくて……ごめん、ごめん響ちゃん」

 ……ライバルだった、だけだ。自分はアイドルじゃなくなった。
 無理に虚勢を張る必要はないんだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/12/31(火) 23:44:11.48 ID:zJ3GdvMS0<>
「……春香」

 春香の横に進んでいく。肉まんをまた包みなおして、鞄にしまった。

「自分、春香と友達になりたい」

 そんなことを言って、ちょっと笑ってみる。
 この娘は、たぶん。

「――――私なんかで、響ちゃんの友達がつとまるかな……?」

 アイドルである前に、ひとりの女の子だ。
<> 以下、2014年まであと861秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:45:40.16 ID:zJ3GdvMS0<>
「あらためて、よろしくね。響ちゃん!」

 春香はそう言って笑顔で自分のことを抱きしめてくれた。
 沖縄から東京に出てくるときに母親にもらった以来のぬくもり。

 ユニットのメンバーと仕事はしても、気持ちはひとりのままだった自分には、あまりにも、温かくて。

「響ちゃん……どうして泣いてるの?」

「……え」
<> 以下、2014年まであと782秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:46:58.33 ID:zJ3GdvMS0<>
「ご、ごめんっ、私響ちゃんになにかしちゃったかな……」

 春香の優しさで、視界が揺れる。
 喋ろうとしても、うまく言葉が出てこなかった。

 でも、一言だけちゃんと伝えることが出来た。

「ありがとう」、って。
<> 以下、2014年まであと724秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:47:56.77 ID:zJ3GdvMS0<>
 春香は自分の手をとって、765プロへと招いてくれた。
 そこは今まで見下していたアイドルのみんなが、優しく自分を迎え入れてくれる場所で。

 あんなに酷いことをしたのに。酷いことを言ったのに。
 そんなこと気にすんな、って頭を撫でてくれた。

 だから自分は、いま――。
<> 以下、2014年まであと634秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:49:26.49 ID:zJ3GdvMS0<>
「いけるか、響?」

「えへへ、任せておいてよ!」

「なら大丈夫だな。なにぶん初めてのカウントダウンライブだから、大きな舞台の経験者じゃないと、って」

 12月31日のアイドル事務所合同カウントダウンライブ。
 765プロは年越しの前、1分前から始まるカウントダウンの直前の時間を託された。

 本当は春香がセンターだったんだけど……緊張でちょっと空回りしちゃって。
 それで大舞台の経験が豊富な自分が抜擢された、ってわけ。へへっ。 <> 以下、2014年まであと525秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:51:15.52 ID:zJ3GdvMS0<>

「みんな、ちょっといいかな」

 舞台袖で自分は、765プロのみんなを集めて言った。

「どうしたの、我那覇さん?」

「ちょっと言いたいことがあって。……大丈夫、すぐ終わらせるから」

 一度咳払いをして、気持ちを落ち着かせる。
 自分だけじゃなく、美希と貴音も迎えてくれたみんなに、どうしても伝えたいことがあった。
<> 以下、2014年まであと327秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:54:33.80 ID:zJ3GdvMS0<>
「自分、今年は本当に忙しない年でさ」

 美希、真、やよいが真面目な顔で自分を見つめている。
 伊織も、あずささんも、亜美も真美も、じっと聞いてくれていた。

「961プロをクビになって、どうしようもないときに、765プロに入れてもらって」

 ――春香を見る。
 自分の手を、最初にひいてくれた人。 <> 以下、2014年まであと160秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:57:20.63 ID:zJ3GdvMS0<>
 美希と貴音が頷いた。
 フェアリーがこうしてユニットとしてやっていけてるのは、みんなのおかげだ。

「本当に、本当に……みんなには感謝してる」

 してもしきれない。
 千早の、雪歩の、律子の、ぴよ子の瞳が、自分の背中を後押ししてくれる。
<> 以下、2014年まであと32秒。。。<>saga<>2013/12/31(火) 23:59:28.72 ID:zJ3GdvMS0<>
「だから……自分、センターとして本気で、みんなに恩返しするつもりで演りたいんだ!」

 言えた。
 恩返しは、最高のステージで魅せたい。

 円陣を組んだ時も、一言頼むとプロデューサーに託された。
<> 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします<>saga<>2014/01/01(水) 00:00:02.70 ID:7PWndSay0<>
「みんな、ありがとう! 全力でやろう、輝きの向こう側へ!」

 さあ、リスタートだ! <> ◆K8xLCj98/Y<>saga<>2014/01/01(水) 00:00:41.11 ID:7PWndSay0<>
 今年もよろしくお願いします。
 お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。 <> 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします<>sage<>2014/01/01(水) 00:25:48.86 ID:8hVjuOt1o<> あけまして乙! <> 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします<>sage<>2014/01/01(水) 12:23:51.94 ID:WVpZrJYBo<> あけ乙 <> 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします<>sage<>2014/01/02(木) 13:18:10.30 ID:SPCF0x9Qo<> 乙乙 <>