◆PTBqDr2ckY<><>2014/05/31(土) 02:49:16.53 ID:HByTijjK0<> 口元の違和感で目を覚ます。明らかに俺のものではない物音がする。
 ぼんやりと目を開ければ、目の前に妹の顔があった。
 なんだ、夢か。そう判断するまで時間はかからなかった。
 俺の頭はまだ正常に動き始めていなかった。

妹「……おはよう」

 もぞり、と妹が動く……耳元で彼女の声がする。
 夢にしては随分リアルな感覚。
 むくり。俺の中で何か暗いものが首がもたげる。
 まずいな、と思うと同時に、このもどかしさをどうにかしたい気持ちも強く動いた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401472156
<>兄「妹にベロチューで起こされた話」
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 02:49:56.29 ID:HByTijjK0<> 兄「なにしてんの」

 かすれ声で呟く。返事はなかった。
 妹の吐息を頬に感じた。何か熱いものがその頬を撫ぜた。
 妹の舌だった。
 汚いだろうに、無精髭を生やした俺の頬を、妹は何度か繰り返し舐めた。

兄「なに、やってんだ」

 何が起きているのか理解できない。
 ようやく動き始めた頭が、ぶっ飛んだ現状を把握しようと努力している。
 これは夢じゃないのか。じゃなかったとしたら、妹はなぜここにいるのか。
 ぐねりと動く舌を離し……妹は俺と目を合わせた。

妹「夜這い」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 02:51:30.59 ID:HByTijjK0<> 兄「夜這い、て」

妹「もしくは、目覚まし」

兄「目覚まし?」

妹「そう」

 唇を何かが覆った。何か。
 考えなくとも分かったが、それを理解するのは酷だった。
 おはようのキス。普段は聞いただけでぶん殴りたくなるような単語が、頭のなかに飛来する。
 妹の鼻息。湿った熱さ。唇を僅かに吸われたかと思えば、妹の舌が俺の唇を舐めた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 02:52:27.56 ID:HByTijjK0<> 貪るような舌の動きが、依然として燻ぶる暗いものに触れる。
投げ出していた右の手を持ち上げ、妹の背中に回した。
柔らかい。ぐっと力を込めれば、応えるように妹は身を寄せてきた。
淫らな水音。それを発しているのが自分と妹だと思うと、やはり夢の中にいるような感覚に陥る。

兄「……ぁ」

妹「……苦しい?」

兄「大丈夫、だけど」

妹「……舌、出して」

言われるがまま舌を突き出す。間を開けずに、妹が舌を絡めてきた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 02:54:27.97 ID:HByTijjK0<> 熱い。ざらざらとした舌と舌が触れ、絡み合う。
妹は目を閉じていた。その頬はこの薄暗さでも分かるくらい紅潮していて、珠のような汗が伝っている。
暑い。窓を閉ざした部屋は、停滞した空気で満ちていた。
再び唇が触れる。妹の舌は別の生き物のように動き、俺の口内を犯す。

妹「……ぷは」

やがて、永遠のような口付けが終わる。
口元に垂れたよだれを、妹はそっとパジャマの裾でぬぐう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/05/31(土) 02:54:31.58 ID:yKUTWVJb0<> 繝代Φ繝閼ア縺縺 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 02:55:15.89 ID:HByTijjK0<> 妹「目、覚めた?」

兄「起きたよ。そろそろどいてくれない?」

妹「……重かった?」

兄「そうでも」

ふん、と鼻を鳴らし、妹はベッドから降りた。
妹の柔らかな重みがふっと消える。
どうも名残惜しいと感じてしまう自分がいた。

妹「私、部屋戻るね」

兄「おう……あ、ちょっと」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 02:56:52.17 ID:HByTijjK0<> くるりと妹が振り返る。長い黒髪が揺れる。
はだけたパジャマと、汗でしっとりと濡れた肌。 
開いた口が乾く。

妹「なに?」

聞くべきかどうか躊躇われた。
だが、ここで聞かなければいつまでも聞けないだろう。

兄「なんでこんなことした?」

単純明快な問い。その答えもやはり簡単なもので。

妹「兄のことが好きだから」

俺は何も言えなかった。そう反応すると分かっていたのだろう。
ばたん、と音を立てて部屋の扉が閉じる。残ったのは、俺と、
今もまだ唇にある、柔らかな妹の感触だけだった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/05/31(土) 03:01:24.91 ID:HByTijjK0<> 何も考えてないけどもう少しだけ続けたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/05/31(土) 05:08:55.39 ID:mlrDxPpUo<> よかろう
続けたまえ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/05/31(土) 13:17:29.25 ID:d/YBQG6L0<> よっしゃ、全裸待機は風邪ひくから靴下はいて待ってるで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/05/31(土) 14:38:22.07 ID:Fkr3iqYoo<> せめてパンツ被れよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<>sage<>2014/05/31(土) 23:12:48.67 ID:MWZYP8PG0<> ほ〜  パンツ畳んで正座して待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/06/01(日) 15:23:32.93 ID:uEeTvSKn0<> 描写が艶かしい
既に臨戦態勢に入っている <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/01(日) 16:01:32.58 ID:zTxNoKLO0<> 馬鹿野郎お前ら、それじゃ風邪引くだろパンツ2枚重ねで上に着とけ <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:30:21.94 ID:lO/wK3iO0<> 妹は昔から無口だった。いつも無表情だけど、美味しいものを食べると顔を綻ばせる。
何を考えているのか分からなくて、たまに突拍子もないことをやりだす。
今朝のように。

妹「いただきます」

兄「……いただきます」

食卓に並んだのは俺と妹だけだった。母は既に仕事に出かけていた。
いつもの朝食のはずなのに、どうしても今朝の出来事が頭にちらついて、手が進まない。

兄「……美味い、これ」

妹「……そう」

よかった。ぽつりと呟いた言葉はやけにしんみり聞こえた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:31:04.57 ID:lO/wK3iO0<> 兄「今日遅いんだ」

妹「知ってるよ」

兄「そか。洗濯頼むな」

妹「うん」

言葉少なな会話。今の俺にはこれでも精一杯だった。
ご馳走様、と席を立ち食器をシンクに入れる。
壁にかけた時計は七時を指していた。まだ、待ち合わせの時間まで余裕は――
と。

妹「……」

いつの間にか妹が側に来ていた。
ぎゅ、と腕を掴まれ、危うくまだ持っていた食器を落としかけた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:33:49.92 ID:lO/wK3iO0<> 兄「な、え、どうした」

俺はすっかり動転する。
手に持った食器か隣の妹か、どちらに気を向けるべきかなんて訳の分からないことに迷った。

妹「……ごめん、兄」

兄「ごめんって、なんだよ、今朝の……」

妹「それもあるけど、そうじゃなくて――」

妹は背が小さくて、隣に並んでも頭一個分は差が出る。
そんな妹の顔が、ぐいと伸びてきて、
俺は再び唇を奪われた。つま先立ちの妹に。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:34:37.52 ID:lO/wK3iO0<> 今朝の体験が鮮烈に甦る。ぞわぞわと胸の奥が痛い。
この感覚はなんだろう。あまりにも後ろめたい、背徳的な感覚。

妹「……」

兄「……」

口付けは短かった。妹は最後にぐっと押し付けてから、ゆっくりと顔を離した。
紅潮した頬。蠱惑的な目。目が合うと、ますます赤くなって俯いてしまった。
俺は食器をシンクの中に放り込んだ。
掴まれていた腕に、力がこもった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:35:24.65 ID:lO/wK3iO0<> 妹「ごめん」

繰り返すように妹は呟いた。向き合おうにも腕を掴まれていて動けない。
妹に右肩を向けたまま、俺は目のやり場に困って壁時計を見ていた。
気まずい沈黙だった。何を言うべきか分からなかった。

兄「なんかあった?」

口をついて出たのは、そんな在り来りな言葉だった。
びくりと大きく肩を震わせ、妹は俯いたまま首を振る。

兄「無理すんな」

妹「……ごめん」

兄「何度目だよ、それ」

妹「……迷惑だった?」

俺は言葉に詰まった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:36:29.19 ID:lO/wK3iO0<> 妹は顔を上げて、俺を見ていた。真っ直ぐな目だった。相変わらず頬は赤いけれど。
妹の震えが、掴まれた腕を通して伝わってくる。

兄「……ううん」

妹「……嘘つき」

兄「嘘じゃないって。でも……」

妹「うん。分かってる。分かってるから……言わないで」

兄「……ごめんな」

妹「……悪いのは私だよ」

そう言って、妹は口元を歪めた。
真っ直ぐな目が揺らいで、じわりじわりと、光の反射が増えていく。
彼女の瞳に映った俺の顔は、光に歪んで馬鹿みたいな形をしていた。

声も出さずに、妹は静かに泣いた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/02(月) 12:37:25.83 ID:lO/wK3iO0<> 甲高いインターホンの音がした。はっとする。もうそんな時間か。
妹は空いた右手で目元を拭って、顔を上げた。

兄「……妹」

妹「……待たせちゃ悪いもんね」

赤く腫らした両の目を閉じて、妹は一度頷いてみせた。

妹「ありがと。わがままに付き合ってくれて」

そう言って、妹は俺の腕を離した。柔らかい圧迫が消える。
それで、お終いだった。

兄「……行ってくるよ」

妹「……うん」

妹「いってらっしゃい」 <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/02(月) 12:40:00.37 ID:lO/wK3iO0<> おわり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/02(月) 13:03:03.97 ID:IyR6yP8SO<> え?! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/02(月) 13:05:12.69 ID:ltMyRaWFO<> アーッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/02(月) 14:24:41.46 ID:rdaUTu0DO<> (-ω-)…










(゜Д゜)え…終わり? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/02(月) 16:36:44.16 ID:UNYHBtjbo<> 良いプロローグだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/06/03(火) 00:28:49.62 ID:NAkAGQSyO<> おい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/03(火) 00:31:39.54 ID:E1jl6gc50<> なんだプロローグか(納得) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/03(火) 01:13:35.18 ID:48d8NWADo<> 続きはよ <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/03(火) 01:50:48.98 ID:CyuBamgO0<> 兄「……ん」

奇妙な夢を見た。
妹が俺の腕にしがみつき、泣き出す夢。
今朝の出来事のせいだろう。二度寝早々、夢に影響を及ぼすとは。

枕元の時計を確認する。午後一時。
軽く部屋の扉が叩かれた。

妹「……まだ寝てるの?」

ゆっくりと扉が開き、妹が顔をのぞかせた。
夢で見た時のしおらしさはどこへ行ったのか。いつも通りの無表情だった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/03(火) 01:51:21.43 ID:CyuBamgO0<> 兄「今起きた」

妹「不健康」

兄「日曜だし……」

妹「せっかく、起こしてあげたのに」

兄「あれは……」

妹はするりと隙間から体を滑り込ませ、後ろ手で扉を閉めた。
そのまま近づいてくるのを見て、俺はつい体を起こす。

妹「寝てていいのに」

兄「どっちなんだよ」

妹「もう一度してあげようかと」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/03(火) 01:51:59.08 ID:CyuBamgO0<> ぎしり。ベッドの上に膝を乗せ、妹は勢い良くカーテンを開いた。
窓を開くと、外の街の喧騒が遠巻きながら聞こえてくる。
平和だ。ぼんやりそんなことを考えた。

妹「今朝は承諾なしだったから」

足をベッドの脇から投げ出して、妹は俺の隣りに座った。

妹「今度は許可とって、やる」

兄「……もう勘弁かな」

妹「……そう」

どうにも言葉に困り、頬をかいた。妹との距離感がつかめない。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/03(火) 01:52:39.71 ID:CyuBamgO0<> 妹「……残念」

兄「……俺が困る」

妹「もっともっと、困ればいいと思う」

兄「なんで……」

妹「好きだから。困らせたい」

兄「……軽々しく好きなんて言うもんじゃない」

そう言うと、鼻を鳴らしてそっぽを向く。
変なところで意固地だ。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/03(火) 01:53:06.11 ID:CyuBamgO0<> 妹「……じゃない」

兄「え?」

妹「ん……なんでもない。そろそろお昼ごはんだよ」

妹は立ち上がった。
着替えてきてねと残し、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
残された俺は、しぶしぶ普段着に着替え始める。

妹「あ、そうだ」

がちゃり。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/03(火) 01:53:48.89 ID:CyuBamgO0<> 兄「……」

妹「今日母さん遅くなるって」

兄「……」

妹「買い出しお願いだってさ」

兄「……おう」

妹「うん。じゃ」

ばたん。

上半身裸のまま静止していた俺は、ため息をついて用意したシャツに袖を通す。
からりと晴れた、暑い日だった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/03(火) 01:56:12.08 ID:CyuBamgO0<> きっと続けたいと思ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/03(火) 03:05:19.31 ID:dn4x5sp8o<> ならば、待つだけだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/03(火) 03:25:34.63 ID:/aKjkTM3O<> 信じてた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/03(火) 09:12:30.26 ID:RFAD+VhDO<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)<>sage<>2014/06/03(火) 09:48:49.40 ID:6IaYf7vo0<> 待ってるぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)<>sage<>2014/06/03(火) 12:24:34.44 ID:BPRILxjhO<> 期待して待ってる <> ◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 01:59:19.31 ID:zGeD4Zem0<> 俺には幼馴染みがいる。
妹は「お姉ちゃん」と慕い、幼馴染みもまた妹を実の妹のように見ていた。
そんな幼馴染みの部屋にお邪魔している。けして邪な理由ではなく。

幼「ここのところなんだけど」

兄「うん。……んー、文法おかしくないか?」

幼「だよね、だよね。どうすればいいかな?」

兄「そうだな……この接続詞はいらんだろ。主語と述語をはっきりとさせて……」

同じ大学の同じ学部、学科は違ったが、被っている講義が多いこともあって顔を合わせる機会は多かった。
その内の一つがレポート提出の課題。
早々に書き上げた幼馴染みに添削を依頼され、ここにやってきていた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 01:59:51.71 ID:zGeD4Zem0<> 幼「ありがと。こんな感じでどうだろ」

コピーされたレポートに目を通す。
細やかな字で、問題に上がっていた箇所が修正されていた。
いいんじゃないか、と頷き一息ついた。

幼「よかったー、見てもらって」

兄「役に立てたならなにより」

幼「お礼におやつあげる」

兄「もらう」

市販のクッキーを手渡される。ふわ、と芳香が鼻をくすぐった。
妹とはまた違う女性の匂い。
部屋のものと似た匂いではあったが、こうして距離を詰めて嗅ぐと未だに穏やかではない。

幼「なにどぎまぎしてるの」

即バレだった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:00:42.61 ID:zGeD4Zem0<> 幼「私らの付き合いも長いわけじゃない? そろそろ慣れたらどう?」

心打ち砕かれるような正論だった。
妹の前だったら情けなさで憤死していたところだろう。
俺は動揺を押し隠し、幼馴染みから少し距離をとった。

兄「苦手なんだって。お前でもさ、女子なんだし」

幼「私は悲しいよ」

兄「……なにが?」

幼「なんでも」

幼馴染みはぴらぴらとレポート用紙を弄っている。
俺は言葉が見つからず、用意された自分のジュースを飲む。

幼「まだ彼女いないの」

危うくカルピスを吹き出すところだった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:01:09.84 ID:zGeD4Zem0<> 兄「なに、いきなり」

幼「そんな女子の匂い嗅いで動揺するってことは」

兄「……お前にゃ関係ない」

幼「ひどい言い草だ」

兄「うるせーやい」

幼「火1のノート見せてあげないよ?」

兄「んぇぇ」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:01:43.30 ID:zGeD4Zem0<> ほんとーに出来ないわけ。
幼馴染みは随分しつこく話題を変えようとしなかった。
妙な眼力の強さに、俺は少しうんざりする。

兄「そう簡単に出来るもんじゃないだろよ。お前と違ってさ」

幼「私だっていないよ」

兄「あれ? この前、サークルの誰それと……」

幼「変な噂立ってたね。嘘だよ嘘。なんもない」

兄「浮気がバレた時に言うセリフみたいだ」

幼「マジに今日の兄は失礼だね」

ノートで頭をはたかれた。わりと痛い。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:02:20.64 ID:zGeD4Zem0<> 俺は咳払いを一つして、空気を変えるために立ち上がった。

兄「トイレ、借りるな」

幼「あい。いってらっしゃい」

扉を開けて廊下に出ると、部屋の匂いはふっと消える。
トイレで用を足している内に、慌ただしかった心の内はなんとか落ち着きを取り戻した。

兄「らしくない」

と、思う。妹と言い、幼馴染みと言い。
もしかしてまだ夢の中なのか。
だとすれば、とんだバカな夢があったもんだ。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:02:50.80 ID:zGeD4Zem0<> それから暫く他愛もない雑談をして幼馴染みの家を辞した。
午後六時を少し回ったくらいで、まだ外は明るかった。遠く夕暮れの色が漂っているのが見えた。
徒歩一分で自宅に到着する。こう言う行き来の良さは幼馴染み同士の強みだろう。
ただいま、と言いながらドアを開いた。

返事はなかった。
この時間なら妹も家にいるはずだが、部屋にいるのだろうか。

兄「音楽でも聞いてんのか」

大して疑問にも思わず、俺は靴を脱いで自室に向かった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:03:34.04 ID:zGeD4Zem0<> がちゃり、と部屋の扉を開けてまず鼻を突く、匂い。
平素の俺の部屋では決してしない奇妙な匂いだった。
そしてそれは、不思議と、今まで嗅いだことがないにも関わらず、何の匂いなのかすぐに分かった。

「……ん、ぁ……っ」

くぐもった声が、部屋の奥、ベッドの上から――こんもりと山になった布団の中から聞こえてくる。
声に合わせて、白い山はもぞもぞと震動する。
入り口にいる俺には気付いていないのか、その動きは徐々に激しさを増していく。

「ぅ……にい、さっ……兄さんっ……」

不意に目眩がした。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:04:37.16 ID:zGeD4Zem0<> 額に手をやった。熱い。風邪でもひいたのだろうか。
頬に手をあてる。熱い。ああこれは風邪だろう。
俺は右肩をクローゼットの扉に預け、妹の情事を観察する。

「ん、んあっ……あっ……」

ぎしっ。ぎしっ。ベッドが軋む音がする。
蠢く白い布団の山は、端から見れば丸まった虫のようで――なんとも、言えない。

ふと、一際大きくベッドが揺れ、白い山の動きが止まった。
やってくるのは、耳が痛いほどの沈黙。

静かにベッドに近づく。荒々しい声が布団越しに聞こえてくる。
俺は覚悟を決め、妹に被さっていた布団を勢い良く退けた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:05:22.20 ID:zGeD4Zem0<> あ、と妹の口が開く。熱に浮かされ潤んだ目と視線が交錯する。
妹は服を着ていなかった。真っ白な肌に付着した汗が、夕日に照らされ扇情的に輝く。
丸まった両足の付け根――彼女の秘所はとろりと濡れていて、ベッドのシーツを湿らせていた。
喉がからからだった。言おうと考えていた言葉が、喉につっかえて出てこなくなる。

妹「……」

兄「……」

お互い沈黙する。真っ赤だった彼女の顔は、今や首まで赤みがさしている。
俺は相変わらず言葉が見つからない。
どうにか平和的にこの場を切り抜けるための。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/05(木) 02:06:10.88 ID:zGeD4Zem0<> ふと、妹がゆっくりと体を起こす。その動作を追う。
身丈にあった小ぶりな双丘の頂を目にした途端、俺は言われようのない罪悪感に襲われ目を閉じた。

妹「……今日」

暗闇を妹の言葉が裂いた。

妹「母さん、遅くなるって」

兄「……今朝、聞いた」

妹「……うん。言った」

妹と目が合った。夕日をバックに、彼女の瞳は強い色を滾らせている。
その色は――なぜだろう、先程見た幼馴染みのそれと似通っている気がして。

妹「兄さん」

やはりまだ夢なんじゃないか。
そんな感覚が拭えない。 <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/05(木) 02:07:50.26 ID:zGeD4Zem0<> つづく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/05(木) 02:22:11.55 ID:PbIGQisXo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/05(木) 03:16:36.61 ID:mKmQwErDo<> おつつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/05(木) 05:59:24.92 ID:lY/V74sLo<> 乙つつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/05(木) 08:54:23.88 ID:qPTLcbjCO<> 本番もあるのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/05(木) 12:25:08.47 ID:F4FKM7bDO<> 本番はまだかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/05(木) 14:05:07.67 ID:ZSWpLASeO<> はよはよはよはよはよはよ <> ◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:26:05.70 ID:CTpJuQTL0<> 先に目をそらしたのは、俺だった。
拭われた布団の側に妹の衣服が丸まって置かれていた。淡い色の下着が見える。

兄「服、着な」

呟いた言葉は現実味が無くて。
このまま踵を返して部屋の外に行けたらどんなにいいことか。

妹「……」

妹は返事を寄越さなかった。服を着ようともしない。
寒いだろ、と付け加えるように言うと、ようやくのろのろと動き始めた。

兄「……」

ここにいるのもどうかと思い、俺は黙って部屋の外に出ようとした。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:27:12.90 ID:CTpJuQTL0<> 妹「待って」

兄「なに?」

妹「いてほしい」

兄「服着るんだろ。邪魔だろ」

妹「それでも。お願い」

妹の言葉が背中に刺さった。
俺は少しだけ迷ってから、振り返ってベッドの隅に座った。
ぎしり、と俺の重量をベッドのスプリングが伝える。

妹「ありがと、兄」

いつの間にか、妹の呼び方は「兄」に戻っていた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:28:06.63 ID:CTpJuQTL0<> 服を着終えた妹が俺の隣に座る。
俺はぼんやりと時計を見ていた。
そろそろ夕飯の準備しないとな、とか、そういや買い出しまだだったな、とか。
そんなことばかりが頭に浮かぶ。

妹「引いたよね」

沈黙を破ったのは妹だった。
どう応えるべきか迷ったが、考えるのは今更な気もした。

兄「……うん」

妹「……気が付かなかった」

兄「夢中だったな」

妹「うん」

頬を赤くして、妹は俯いた。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:28:55.62 ID:CTpJuQTL0<> 妹「いつもはしてないから」

兄「え。あ、そう」

妹「ほんとに……」

兄「うん。信じるけど……今日が初めて?」

妹「……」

兄「なんか言ってくれ」

妹「……三回目くらい」

兄「……」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:30:26.08 ID:CTpJuQTL0<> 妹「今朝のことを思い出しながら、今日は……」

兄「分かった……別に説明しなくていいから」

妹「……ごめんなさい」

素直な言葉だった。俺は曖昧に頷いてみせる。
謝罪は聞けたけれど、この感情の行き場が分からない。

妹に対して抱くこの感情を言語化するなら、疑心、だ。
なぜこんなことをするのか。
なぜいきなりしだしたのか。
なぜ、俺なのか。
それがさっぱり分からなかった。
分からなかったから――その理由を蔑ろには出来ないから、俺は直接聞くことにした。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:33:00.51 ID:CTpJuQTL0<> 兄「なぁ」

妹「なに?」

兄「……俺が好きって言ってたよな」

妹「うん」

兄「本当に?」

妹「冗談でこんなことしないよ」

兄「……なんで俺なんだよ」

妹「それは……」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:33:27.91 ID:CTpJuQTL0<> 妹の答えは、突然響いたチャイムによって遮られた。
こんな時間に誰だろうか。俺は妹を一瞥する。

兄「行ってくる」

妹「うん。お願い」

兄「……部屋戻ってていいよ」

妹「……」

妹は黙って頭を振った。
そか、とだけ残して、俺は部屋を出た。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/08(日) 01:36:33.95 ID:CTpJuQTL0<> 家のドアの向こうにいたのは、数十分前に別れたばかりの幼馴染みだった。

幼「さっきぶり〜」

ふざけた様子で、ビニール袋を持った右手を持ち上げてみせる。

兄「俺なんか忘れ物した?」

幼「そーじゃなくて。今日うち母さんたち遅くてさ、一人でご飯食べてって言われてたんだけど」

兄「あー……それって」

幼「鍋の具材」

ああ。

幼「一緒にどう?」

いたずらめいた笑顔で、幼馴染みはそう言った。 <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/08(日) 01:38:35.50 ID:CTpJuQTL0<> つづく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/08(日) 01:49:55.20 ID:vaa8VL9Ro<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/08(日) 05:39:34.36 ID:54e4bxF/o<> あくしろよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)<><>2014/06/11(水) 09:33:34.22 ID:ydu/Tni60<> まだかよ <> ◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/12(木) 00:46:20.24 ID:HpOCm48g0<> 明日の夜に。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/12(木) 01:33:41.77 ID:u2EZfPW+o<> 待ってる! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/12(木) 05:11:45.66 ID:FuqpQOAso<> 舞ってる <> ◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/13(金) 00:51:32.86 ID:Gfhkp6Ut0<> 幼「三人で鍋なんていつぶりだろうね〜」

陽気な調子で、鍋に次々と食材を投入していく幼馴染み。
中学校以来かな、と同調しながらてきぱきと食器を配膳していく妹。
その様子を眺めながら、頬杖をつく俺。

三者三様。居心地が悪い。

幼「そんな湿気た顔してないでさ、手伝ってよ」

兄「一人で十分だろ」

幼「分かってないねぇ、こう言うのは協力が大事なんだよ」

兄「お前が食べたいだけ入れればいいんじゃないかな」

幼「お肉ばっかになるよ」

兄「そこはさ……」
<>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/13(金) 00:52:00.32 ID:Gfhkp6Ut0<> ふと顔をあげると、席についた妹と目があった。
無表情なその感情の色は読み取れない。不機嫌そうにも、いつも通りにも見える。

兄「どうかしたか」

妹「ん。お箸」

兄「ああ……」

さんきゅ、と言って青い模様が差した箸を受け取る。手元においてから、鍋の中を覗き込んだ。

幼「お肉一番は私だよー」

兄「野菜もちゃんと取ろうな」

幼「ベジタブル担当は、お二人に任せるよ」

兄「あのねぇ……」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/13(金) 00:52:32.59 ID:Gfhkp6Ut0<> 妹「お姉ちゃん」

幼「ん? なに?」

妹「私もお肉欲しいな」

幼「ん……あ、うん。勿論、独り占めなんてしないよ」

ありがと、と息をつく妹。
端から聞いていれば平素の会話にも思えるそれが、あんなことの後ではどうしても意味深げに聞こえてしまう。
この場合、変に想像を働かせる俺が悪いのか……。

幼「兄ぃ。お茶取って」

兄「ああ」

幼「ありがと。そろそろ行けそうだね」

兄「お、それじゃあ――」

幼「あーっ、お肉は私だってー!」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/13(金) 00:53:04.99 ID:Gfhkp6Ut0<> そんなこんなで腹も膨れ、時計は八時を回った。
母から今日は帰れないとの連絡を受け、俺たちはいつも通り風呂を沸かす。
一方幼馴染みの両親は既に帰宅しているはずなのだが、幼馴染みは一向に我が家を出ようとしない。
そしてあろうことか、

幼「今日泊まろっかな」

なんてことを言い始めた。

兄「着替えは?」

幼「取ってくるよ。すぐそこじゃない」

妹「……私の部屋で寝る?」

幼「いいの? 久々に妹ちゃんと濃厚なトークがしたかったんだぁ」

妹「……私も!」

兄「あ、そう……別に構わんけど……」

妹が良いと言うなら、俺がぐずる意味も無い。
翌朝の賑やかさが少し増すだけだ。
それならそれで、それだけなら――良かったのだが。 <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/13(金) 00:53:36.71 ID:Gfhkp6Ut0<> ノロノロ運転で申し訳なす <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/13(金) 01:26:56.34 ID:kNBNPBYAO<> ええんやで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/13(金) 01:27:51.19 ID:uQwjSnLA0<> やばい盛り上がってきた
C <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/13(金) 01:49:33.31 ID:DaF1LhL90<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<><>2014/06/18(水) 08:38:55.02 ID:uBX9PXc80<> まってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/06/18(水) 14:16:01.39 ID:cjDCqLmio<> マダー? <> ◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/26(木) 00:29:56.72 ID:gw4LyM3B0<> ご無沙汰してます
妹が泊まりに来たりなんだりで慌ただしくしてました
明日更新したい したい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/26(木) 00:56:32.97 ID:K9ZvaUMfo<> え?妹にベロチューされた?(すっとぼけ) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/06/26(木) 16:05:03.73 ID:hb+OFAUF0<> 妹が泊まりに来てあんな事やこんな事だと… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/26(木) 16:21:46.85 ID:cwxPGghAO<> 幼なじみもいたりして <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/26(木) 18:52:44.33 ID:+1UlyapaO<> 何を言っているんだ、妹とならナニ一択に決まってるじゃないか <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:27:15.05 ID:QAa4NbNg0<> 風呂が沸いたタイミングで、幼馴染みは一度家に帰った。

妹「先にお風呂入ってくるね」

兄「ああ」

順番は特に気にする必要もないだろう。
まさか妹と一緒に入りたいなどと、あいつが言い出すとも思えなかった。
妹が洗面所に消えたのを見て、俺は自室に戻った。

短い休日も終わり、明日からまた学校が始まる。
幸い明日は午後からだが、一通りの予習は済ませておきたかった。
鞄から指定された教科書を取り出し、パラパラとめくる。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:27:45.24 ID:QAa4NbNg0<> こんこん、と部屋の扉が叩かれたのは、それから数分後のこと。

兄「はい」

幼「入っていい?」

幼馴染みだった。今帰ってきたのか。
リビングに誰もいないと見て、俺の部屋にやってきたのだろう。
短い予習を終え、俺は椅子を立った。

幼「おじゃまするね。妹ちゃんがお風呂?」

兄「うん」

幼「そっか。兄の部屋に来るの久々かも」

兄「逆は多いんだけどな」

幼「そーね」

ぼふ。何の躊躇いもなく、幼馴染みは俺のベッドにダイブした。
薄いピンクのスカートが揺れる。少しは恥じらいを持った方がいい。
<>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:28:16.12 ID:QAa4NbNg0<> 幼「あー。久々」

のびのびとした口振りで幼馴染みは呟く。
俺は扱いに困り、とりあえず元の椅子に座る。開いたままの教科書を鞄に投げ込んだ。

兄「お前も風呂入ってきたら?」

幼「妹ちゃん嫌がるよ」

兄「どーだろ」

幼「まーいいの、たまにはさ」

何がいいのか、俺には分からなかったが。

幼「兄の部屋で二人になるの、貴重だしね」

幼馴染みは満足しているようなので、特に口出しはしなかった。
<>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:28:48.96 ID:QAa4NbNg0<> 幼「兄はさー」

兄「うん?」

幼「将来の夢とかあるの」

兄「……なんだいきなり」

随分とまた突拍子もないことを言う。
見れば、口元に酔っぱらいのような笑みを浮かべて、幼馴染みは天井に目を向けていた。

幼「なんか昔のこと思い出しちゃって。男の部屋久しぶりだから」

兄「ふーん……夢ねぇ……?」

幼「小さい頃は宇宙飛行士だったよね?」

兄「やめろよ恥ずかしい」

ほじ返されたくない過去だった。小学校低学年か、そこらの。
そんな夢は、中学に上がる頃には捨てたはずだった。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:29:15.27 ID:QAa4NbNg0<> 幼「あん時は大真面目だったのにぃ」

兄「お前だって、なんだっけ? こっ恥ずかしいこと言ってたろ」

幼「んー? まあね」

兄「自覚あるのかよ」

幼「うん。恥ずかしいけど。でも、まだその夢は捨てたつもり無いよ」

兄「……へぇ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/27(金) 02:29:31.69 ID:+1Tdduz5O<> ジャイ子 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:29:50.64 ID:QAa4NbNg0<> 意外だった。
幼馴染みの夢、と言うわけではなく、小さな頃に抱いた夢を今も捨てずに持っていること自体が。

幼「……覚えてないの?」

兄「ああ……なんだっけ。せっかくだし、教えてくれよ」

幼「……」

数拍の間が、妙に長く感じた。
幼馴染みはぐっと上半身を起こし、俺と目を合わせた。
あれ、と思う。何か地雷を踏んだだろうか。彼女の表情は見るからに強張っていて、頬は僅かに赤みがさしていて――

やがて、幼馴染みは目をそらした。

幼「やだ。教えない」

兄「……そうか」
<>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:31:05.84 ID:QAa4NbNg0<> それから妹が風呂から上がり、幼馴染みが入った。
俺の入浴は最後だった。当然といえば当然のことだ。
浴槽に身を沈めて、ふうと息を吐く。

今頃二人はどんな話をしているのか。
興味はあったが、そこに混ざる勇気はなかった。どうせ適当にからかわれて終わりだ。
なるべく時間をかけてゆっくりと体を洗い、俺は風呂を出た。

二人は早々に妹の部屋へ引き上げていったらしい。
小さな話し声が壁越しに聞こえてきた。

兄「妹、上がったぞ」

「うん」

兄「もう寝るから」

「分かったー」

間延びした返事。
どうやらお楽しみのようだった。おじゃま虫はとっとと部屋に戻るとする。
少しだけ明日の予習をしてから、俺はベッドに潜った。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:31:55.20 ID:QAa4NbNg0<>

――また、だ。


俺は生ぬるい感覚で目を覚ます。
暗がりの中で、定まらない視界がぼんやりと妹の顔を映した。
俺が目を覚ましたのに気付いてか、妹はぴたりと動きを止めた。

妹「……起こしちゃった」

兄「……」

予想はできていた。だが、想定していた言葉は喉から出なかった。
ああ、と乾いた呻き声が漏れた。

妹「……」

兄「……なに?」

妹「……怒ってる?」

兄「あんまり……」

まだしっかり物を考えられなかった。前回よりも意識は鮮明だが、頭が深い思考を放棄している。

妹「……よかった」

小さくはにかむ妹が、何故だかとてもいじらしく見えた。
<>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:32:28.61 ID:QAa4NbNg0<> 妹「……兄?」

兄「ん……」

妹「……キ、ス。して、いい?」

兄「……」

言葉が出なかった。どう応えるべきか。応じていいものか。
長い沈黙に不安になったのか、妹はそっと俺の上からどいた。大きなベッドの隣に寝転がって、きゅっと腕をつかむ。
少し震えてる気がしたが、これは俺の鼓動がうるさいからか。

兄「……好きにすればいいと思う」

結局出せた言葉は、そんな責任逃れの一言だった。

妹「……しない」

妹は小さく頭を振った。寝返りを打つと、妹は躊躇いがちに頭を俺の胸に押し付けてきた。

お互い何も言えなかった。
<>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/27(金) 02:33:12.58 ID:QAa4NbNg0<>
妹「……好きなんだ。兄のこと」

兄「……うん」

妹「……返事は?」

兄「……」

妹「……しつこいのは嫌い?」

兄「何……」

妹「嫌だったら、嫌って言ってほしい。そしたら、もう、しないから」

妹「こんなこと、普通はしちゃいけないんだけど」

自嘲するような口振りだった。俺が身を捩ると、妹は顔を上げた。
暗闇の中でも、妹の顔はよく見えた。
潤んだ目尻。赤みのさした頬。大きな黒い目に、吸い込まれそうな錯覚を覚える。
俺は……。

兄「俺は、」



がちゃり。


<>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/27(金) 02:34:20.17 ID:QAa4NbNg0<> 続く。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)<><>2014/06/27(金) 05:46:22.67 ID:/pBLr8+F0<> よいですね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/27(金) 06:40:22.86 ID:RnddpxCbO<> 羨ましい妹だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/27(金) 12:16:20.27 ID:Qi6aA4X6O<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/27(金) 17:18:24.92 ID:A4nMk/6XO<> ジャイ子言ったやつ絶許 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/27(金) 18:26:17.94 ID:pNNu3NkDO<> 兄が大学生で妹高校生とか?それとも両方大学生? <> ◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:17:50.57 ID:apxjM5fa0<> 兄「……」

妹「……」

幼「……むにゃ……ん……」

兄「…………」

妹「…………」

幼「……部屋間違えた……」

ばたん。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:18:19.81 ID:apxjM5fa0<> ……はあ。
肩で大きく息をつく。

妹「気付かれなくてよかったね」

兄「……と言うか、あっちの部屋に戻ったら分かるんじゃないか? お前はここにいるんだし……」

妹「たぶん……大丈夫。細工はしてきたから」

兄「あ、そう……」

ふと顔を向ければ、妹がこちらを見ていた。

妹「兄。あのね」

兄「うん……?」

妹「どうして、私が兄を好きになったか……話してなかったと思って」

兄「……聞きたいな」

妹「うん。言わないと、だよね」

妹は一度目を瞑る。
その瞼がもう一度開かれるまでに、俺は様々な想像を巡らせる。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:18:52.77 ID:apxjM5fa0<> 妹「ずっと、ずっと前のことだから、覚えてないかもしれないけど」

妹「二人で星を見に行ったの。覚えてる?」

俺は思い出す。星の見える丘へ、二人で行った夜のことを。

もう六年は前のことだ。俺は中学生で、妹はまだ小学生だった。
妹は幼い頃、体が弱かった。
些細な怪我がきっかけで病院に行ったりしていた。身長なんて俺の腹くらいまでしかなかった。持ち上げれば、あまりの軽さに驚くくらいで。

ある日、妹が「星を見に行きたい」と俺に言った。
昔からやけに冷めていたが、どこか夢見がちなところもあった。
俺達は満月の日を選んで、夜こっそり家を出て丘を登った。夏だったのに少し肌寒くて、帰ってから妹が風邪を引いたのを覚えている。

満天の空を見上げ、俺達は願い事を言い合った。
俺は、妹の体が丈夫になるように。
妹は、もっと身長が伸びるように。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:19:30.36 ID:apxjM5fa0<> 実際妹が健康になるのはそれから何年も経ってからで、未だに身長は俺の肩辺りまでしか無い。
願い事はそう上手く叶わなかったけれど、妹にとっては貴重な体験だったそうだ。

妹「変なことを言うけど……あの日兄に連れて行ってもらえなかったら、私は今も病気に弱いままだったと思う」

兄「そうか……?」

妹「うん。だって、丘の上まで手をひいてもらって、すっごく安心できたから。
  兄が私のために願い事をしてくれて、私はとても嬉しかったから」

妹「兄のおかげで、私は前向きでいられたんだよ」

兄「……」

妹「……あの時から」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:19:59.39 ID:apxjM5fa0<> 妹「あの時からずっと、兄は私の憧れだった。大好きな人だった」

妹「この気持ちは、一度も揺れてないよ」

兄「……妹」

妹「……私はね。自分に嘘はつけないから、ずっと正しいことをしてるって思いながら生きてた」

妹「兄のことが好きなのも、私にとっては正しいことだって……」

妹「でも……」

妹「兄にとって私の気持ちは……迷惑じゃない?」

兄「……そんなこと、ない」

俺は腕を回して、妹を抱いた。一度離れていた距離が、再びゼロになる。
妹の柔らかさが、心臓の音が、触れた肌を通して伝わってくる。 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:20:27.69 ID:apxjM5fa0<> は、と妹が息を呑んだ。腕を掴んだ手に力がこもる。
鼓動が早い。震えているのは、俺も同じだろう。

妹「……いいの?」

兄「うん」

妹「……ごめんね」

兄「なんで謝るんだよ?」

妹「だって、私、」

兄「……今までのことなら、もういいさ。お前がそこまで、とは、知らなかったし……。
  俺も踏ん切りがついてなかった」

妹「……ありがとう」

兄「うん」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:20:54.95 ID:apxjM5fa0<> 妹「兄。こっち、見て」

兄「ん……」

思っていたより近くに、妹の顔があった。お互いの吐く息が感じ取れる距離。
俺達は暫し無言で見つめ合う。

妹「本当に……いいんだよね」

兄「うん」

妹「兄に正面から好きだって言って。いいんだよね?」

兄「今更な気もするけど」

妹「兄に大丈夫って言ってもらえるだけで、ぜんぜん違うよ」

兄「そういうもんか?」

妹「そういうもの」

兄「そうか」

妹「うん。好き。大好き」

兄「……割と照れるな」 <>
◆PTBqDr2ckY<>saga<>2014/06/29(日) 02:21:22.98 ID:apxjM5fa0<> 妹「……ねえ」

兄「……今度は何だ」

妹「キスして欲しい」

兄「……俺から?」

妹「うん……ずっと、私からだったから」

兄「そりゃ、そうだろよ……」

妹「……だめ?」

兄「……ちょっと待って」

目と鼻の先に妹の唇がある。物理的な距離は極わずかだ。
だが、その距離を自力で埋めるのに、どれだけの覚悟がいるだろうか。

妹「……ん」

妹が目を閉じる。言外に覚悟を決めろと言われている気がして、俺は余計に焦る。
はて、うちの妹はこんなに可愛かっただろうか。やはりこれも夢なのではないか。

思考回路が焼き切れるより早く、俺はなけなしの勇気を振り絞った。 <>
◆PTBqDr2ckY<>sage<>2014/06/29(日) 02:22:11.81 ID:apxjM5fa0<> 地の文が力尽きそう
一応続くよあとちょっと <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/29(日) 07:12:11.88 ID:SNsEJ0Gxo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/06/30(月) 02:01:38.51 ID:732BrFVVO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/07(月) 05:42:33.60 ID:OJxAW7Pj0<> 支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/20(日) 23:48:50.55 ID:8l01r+2hO<> まだか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/27(日) 01:03:45.11 ID:vU9Nw/6Mo<> 待ってるぞなもし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<><>2014/08/10(日) 09:53:11.34 ID:RuXDxe/B0<> わたしは
いつまでも
待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/10(日) 12:58:23.30 ID:twTcbz1DO<> 来たかと思ったじゃねぇかsageてくれよ
はよ <>