◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 22:41:28.43 ID:jhJhzsou0<>ゆゆゆの友奈と東郷さんss
百合 アニメで東郷さんが壁ぶっ壊す直前くらい
書きためなし
その時の私に見えていたこと。
自分の中で出した結論。
ほんの少しの救いもない。
きっと、後々になって、全く知らない誰かが言うのかもしれない。
『こうすれば良かったのに』とか『なぜ、ああしなかった』と。
仕方がないじゃない。
そうするしかなかった。
後、があるかは分からない。
けれど、後を作るつもりはもうない。
瞼の裏の桜吹雪が、色鮮やかに舞っていた。
それは、ただの思い出に過ぎない。
遠い、遠い日々の。
目の前でくうくうと寝息を立てる少女の髪を撫でる。
「ん……」
春も夏も彼女の傍にいて、
甘いぼたもちを作ってあげたかった。
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<>東郷「言い訳」
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 22:52:37.28 ID:jhJhzsou0<> ただ、今になって思う。ぼたもち、と言うのは神仏や先祖への供物とされていた。
そんなものを、友奈に食べさせ続けていたこと。
なんて、滑稽なのだろう。
まるで共食いだ。
ぼたもちが悪いわけではない。
全て、神樹様が悪いのだ。
全て、大赦が悪いのだ。
全て、バーテックスが悪いのだ。
全て――。
私は持っていた包みを机の上に置いた。
重箱を取り出す。
勇者部の部室には誰もいない。
窓から差し込む陽気があまりにもうららかで。
友奈が眠ってしまうのもしょうがない。
「友奈ちゃん……」
起こすのも可哀相かと思ったが、
これが最後ならば、
せめて彼女が口にして、
はにかむ顔を見るくらいは、
咎められることはないだろうか。 <>
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 23:03:07.02 ID:jhJhzsou0<> 「ん……」
彼女の口の端が、ぴくりと動いた。
ついで、人差し指が机を掻いた。
目をこすりながら、
「おはよう……東郷さん」
「こんにちは、友奈ちゃん……。疲れてる所ごめんね」
「あ、違うよッ。お昼食べた後だったから……あれ、他のみんなは」
「まだ、来てないみたい」
頭を重そうに揺らして、友奈ははっと重箱を見やった。
「あれ……それ」
「ぼたもちよ」
彼女は目を輝かせた。 <>
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 23:13:20.07 ID:jhJhzsou0<> 他の部員を待とうかとも考えたが、昼休みはそう長くはない。
それに、二人きりの時間を大切にしたい。
早く友奈に食べてもらいたくて、私はお茶を淹れる。
昼下がりのティータイムに、友奈が舌鼓を打った。
「おーいしー!」
大げさなくらいの賛辞を述べる。
これが聞きたいから、作っていると言っても過言じゃない。
「お茶もどうぞ」
「うんッ」
彼女は優しくて。
私は心が痛い。
臆病な私。
彼女の本当の感想を聞くのが怖い。
けれど、あえて彼女は言うのだ。
私も分かっているから。
彼女の欠損部位のこと。
他の部員がいなくて、ほっとしているのはお互いなのかもしれない。
気を遣わせてしまうかもしれないから。
<>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2014/12/23(火) 23:22:09.19 ID:BdpGyhSio<> 期待 <>
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 23:29:04.63 ID:jhJhzsou0<> 「友奈ちゃん……」
「なあに?」
口の端に着いたあんこを友奈がぺろりと舐めとった。
「私ね、友奈ちゃんのこと好きよ」
彼女は目を瞬く。
「うん、ありがとう! 私も好きだよ!」
彼女は呆気らかんと言って、私の瞳を見て、
「……東郷さん?」
首を捻る。
「ごめんねッ……ありがと。これからもずっと、友奈ちゃんの隣にいたいなって思ったの」
「任せて! 私も、東郷さんの傍にいるからね」
威勢が良い。
誰にでも、彼女は優しい。
でも、可能だろうか。
いや、無理だろう。
このまま、乃木園子のように、
ぼたもちみたいに、
神への供物として、
祀られる。
あの、大赦の奥へ安置される。
幾度、そんなことを繰り返してきたのか。 <>
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 23:41:51.49 ID:jhJhzsou0<> これから、幾度繰り返される予定だったのか。
それにだけは抗いたいと思う。
それだけは耐えられない。
敵は誰だ。
親友を傷つける者は一体何なのか。
私たちはなんのために、
あの化け物を排除してきたのか。
いつか救われる。
全ての希望のために、勇者になった。
彼女を守るために。
「ねえ、友奈ちゃんはどうして勇者になったのか……覚えてる?」
今さらになって、
こんな質問に、
ぱっと答えてくれるのは、
彼女だけだろう。
「それは……親友を守りたいって思ったからだよ」
「そっか……」
その言葉に迷いはなかった。
<>
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/23(火) 23:54:27.53 ID:jhJhzsou0<> 「東郷さんは覚えてる?」
「私は……」
どうだったのだろう。
お国のために、使命を全うしたかったのか。
この身を神樹様に捧げたかったのか。
それでも、最初は戦う意思なんてどこにもなかった。
愛国心は忠義は弱さに隠れてしまった。
「最初……怖くてたまらなかった。勇者になんてなれないって思ったわ」
「東郷さん……」
「臆病者だった……一番最初のこと覚えてる?」
「うん……でも、東郷さんは頑張ったよ」
それは、あなたがいたから。
勇者システムという存在があったから。
本当の私は――。
システムは、きっと心もどこか狂わせてしまうのだ。
人間の臆病な部分を一時的に忘れさせてしまうのだ。
麻薬のようなものだ。
痛みも、恐怖も、死も。
神樹様が、奪っていった。
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◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/24(水) 00:09:16.34 ID:ucTpAZWH0<> 「そうね。でも、私は、友奈ちゃんのような勇気はなかった……」
「私だって、そんなのないよ……」
「勇者になんてならなければ良かったって、思う……今考えると、なんて無謀だったのかしら」
裏切られた悔しさは、
まだこの国にこの国の神に、
未練があるからなのか。
否、未練があるのはたった一人だけ。
「東郷さん……私たちは、私たちしかできないことを勇んでやってるんだ。無謀かもしれない……だから、たまに怖くなって逃げ出したってかまわない。それも勇気なんじゃないかな……」
「逃げてもいいの……?」
「うん」
友奈は少し間を置いて微笑んだ。
温かくて、涙が出そうになった。
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◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/24(水) 00:21:37.39 ID:ucTpAZWH0<> 逃げたい。
彼女と共に。
彼女と生きるために。
たった二人だけ、生き延びることになろうとも。
たった一人だけ、生かすことになろうとも。
全て無くなっても。
この生き地獄から彼女が解放されるなら。
「それでも東郷さんは、この役目を誰かに押し付けることはしないでしょ?」
「……」
「誰もができることじゃないから、私たちはいる。バーテックスと戦うことは、犠牲なんかじゃないよ。私たちにしかできないことだからやるんだよ」
彼女の言っていることは、私には理解できない。
理解した所で、彼女と同じ心境になれるだろうか。
無理だ。
きっと。
私の世界は、あなたが中心なのだ。
彼女の世界は――。
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◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/24(水) 00:30:56.58 ID:ucTpAZWH0<> キンコーンカンコーン。
「予鈴だね……」
彼女が言った。
「ええ、行きましょうか」
「よっと……」
誰かがやらなければならない。
誰もそれをやりたがらないだろうけれど。
車輪のロックを外す。
キイキイと車椅子の車輪が音を立てた。
車椅子を押す彼女の顔をもう一度、見た。
「なあに?」
「ありがとう……いつも」
「な、なに、改まって、照れるなあ。好きでやってるんだからいいの!」
「うん……」
私も。
あなたが好きだから。
大胆にも、臆病にもなれる。
勇気をくれるあなたがいたから。
終わり <>
◆/BueNLs5lw<>saga<>2014/12/24(水) 00:32:41.50 ID:ucTpAZWH0<> 東郷さんの豆腐メンタルを守れるんは友奈さんだけ <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2014/12/24(水) 04:02:37.80 ID:p4zOMecwo<> 乙
どうかハッピーエンドになってほしい <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2014/12/24(水) 08:53:38.00 ID:3ekqjS+go<> おつおつ <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2014/12/24(水) 14:27:50.92 ID:cfII04tWo<> こんなに反旗を翻したはずの東郷さんに同情しかできないのは
あまりに弱くて優しすぎるせいだな
ずっと銃を構える手の震えてる東郷さんを見てそう思った <>