以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:28:02.35 ID:6FI0ECN90<>

海の家の住み込みバイトなんてなかったら〜 なお話


はた魔SS初なんで読みにくかったらごめん
ソースはアニメと原作4巻まで
あとちょっと長いかも


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447489681
<>真奥「家も仕事もねぇとか…」 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:30:55.33 ID:6FI0ECN90<>

真奥(マッグが店舗改装で休業、さらにはガブリエルとの戦いで開いた大穴の修繕ついでに家屋全体の補強工事が入るときた)

真奥(ヴィラ・ローザ笹塚201号室に届いた大家からのビデオテープをちーちゃんの家で見たけど映っていたのは『アノシャシン』に引けを取らない露出度の大家だけで、ベリーダンスとやらで盛んに腰を振る姿を見るや否や俺は失神してしまったらしい)

真奥(芦屋に連れられ、穴を一時的に自転車カバーで塞いだ自宅へなんとか帰還を果たしたはいいが…)



真奥「家も仕事もねぇとか…」

芦屋「まさに不測の事態ですね。このような時のための資金の備えが無いわけではありませんが……さすがに3人分の食住をそう何日も賄うには心許ない額かと」

真奥「ああ。俺も前芦屋がやってたみたいに一応ヘソクリがあるにはあるんだが、バイト2週間分には到底及ばねぇし、家に至ってはいつまでかかるか教えられてねぇし」

芦屋「最低でも1週間は見たほうが良いでしょう。ただ全体を補強するとなると、それも2週間か、下手したらひと月程かかる可能性もあります」

真奥「だよなぁ。漆原、どこかいい場所見つかったか?」

漆原「連泊が安いカプセルホテルとかいろいろ調べてるけど、やっぱけっこうかかりそうだねー。あ、コーラなくなっちゃった。おかわりある?」

芦屋「あるわけないだろう。というか目下我々の日本生活至上最大の危機なんだぞ! これ以上無駄遣いするんじゃない!」

漆原「わかったようるさいなー…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:33:31.73 ID:6FI0ECN90<>

真奥「まあ家具は鈴乃と同じとこに預けられたし、仕事は登録してる日雇い派遣とかで繋いでいけんだろ」

芦屋「そうですね。こうなっては私も魔力調査よりも稼ぎを優先せざるを得ませんのでアルバイトをしようと考えていますが…」

真奥「住むところがネックなんだよなぁ」

漆原「あーダメだこりゃ。芦屋、この辺りで食住合わせて1日2000円はやっぱ無理があるよ。シャワー付きのネカフェも見てみたけど、いろいろ込みでそれじゃ絶対足りない」

芦屋「もっとよく探せ。どこかあるだろう、破格の物件が。いわくつきでも構わん」

漆原「えぇー僕そんなとこ嫌だよ。ネット環境もなさそうだし…… もうさ、エミリアか佐々木千穂んとこでよくない?」

芦屋「馬鹿者!! 勇者に屈して雨風を凌ぐなど言語道断!! 佐々木さんにしても日がなお世話になりっぱなしなのだぞ、これ以上迷惑はかけられん」

真奥「つーかそもそも、ほとんど面識のない男3人を期間不定で泊めてくれるとは思わないけどな」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:35:55.43 ID:6FI0ECN90<>

漆原「でもそんなこと言ったって、今日中に決めなきゃいけないんだろ? 他にアテがあるの?」

芦屋「それが無いからお前に調べさせているんだろう。無駄口たたく間にもっと調査したらどうなんだ」

漆原「僕は一応候補あるんだけどなぁ」

芦屋「なに…? あるのか? 何故それを早く言わない」

漆原「いやまだ分かんないし、それに、仮に僕はよくても真奥と芦屋はダメだからさ」

芦屋「なんだと? それ以前に、お前に我々の関与しない外交があるのか? 今は一大事なんだ、隠さず話せ」

漆原「全員関与してるし別に隠すつもりもないけど…」

真奥「まあまあ芦屋。こんな時だけど、あんまプライベートまで深入りすんのはやめようぜ」

芦屋「魔王様!」

真奥「どっちみち俺と芦屋はダメってんだから仕方ねぇだろ。まずは現状打破を考えるほうが先だ」

芦屋「それはそうですが…」

真奥「うし、じゃあ一旦休憩な。外の空気でも吸ってリフレッシュしよう」

漆原「こんな蒸し暑い夜に外出てリフレッシュも何も無いんじゃない?」

真奥「気分だ気分。行かないなら留守番でいい。よし行くぞ、芦屋!」

芦屋「は、はぁ… かしこまりました」

漆原「いってらっしゃーい」


ガチャ
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:36:54.81 ID:6FI0ECN90<>

ツカツカ


真奥「漆原の言う通り外は外で蒸し暑いな」

芦屋「まったくです」

真奥「でもせっかくだ、ちょいと駅近くまで散歩すっか」

芦屋「あの…… 魔王様、なぜ?」

真奥「あ? まあ深い意味はねぇけどさ。考えても埒があかないような時は一旦考えるのを放棄するのも手段ってもんだろ」

芦屋「いえ、そうではなく先の漆原の件です。プライベートに踏み込むななどというのは…」

真奥「あーそれか。いや、それも別に深い意味はないっつーか」

真奥「なんだろうな。たぶんだけど、お前らを自由にさせてやりたいってのが俺の中にあるのかもな」

芦屋「自由、ですか?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:39:24.75 ID:6FI0ECN90<>

真奥「ほら、日本での暮らしって、元の世界の時に比べりゃいろんなものに制限かかってんだろ?」

真奥「今まで面を気にして外出を控えさせてた漆原にしろ、家事や家計を任せっきりにしてた芦屋にしろ、かなり窮屈な思いをさせてきたからな」

芦屋「そんなことは…」

真奥「無論、今後の計画ために身内の情報共有は必要だ。けど、それとは別に個人的にできた繋がりまで縛るのは違うと思うわけ。せめて一部のプライベート関係くらいは自由にやってほしいんだよ」

芦屋「魔王様……」

芦屋「しかし、先ほどの漆原の件は現在抱える我々の問題に関係あることだったように思います」

真奥「あー… それに関しちゃ勢いでやっちまったとこあるな。すまん、帰ったらもう一度聞いてみっから」

芦屋「いえ、それでしたら良いのですが」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:40:19.12 ID:6FI0ECN90<>

真奥「芦屋はそーいうのねぇの?」

芦屋「はっ? 魔王様の存じない他者との交流…ですか? いえ、特に私は今のところ」

真奥「だよなー。お前の場合出かけるっても近所の買い物か、遠出でも情報集めか派遣バイトくらいだもんな」

芦屋「………」

真奥「芦屋? どうかしたか?」

芦屋「あ、いえ……ひとつ思い当たると言いますか、いずれお会いするかもしれない方がいるのを思い出しまして」

真奥「え、何かあんのかよ」

芦屋「ただ魔王様も一応面識のある方なので、完全に他者というわけではありませんね」

真奥「俺とも面識あるっつーと…派遣先のやつか?」

芦屋「ええと、もう少し身近な方なのですが、その…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:43:16.43 ID:6FI0ECN90<>

真奥「歯切れ悪いな。それこそ無理に教えなくてもいいぞ?」

芦屋「そういうわけでは…… ただ我々との関係で言うならば、敵の仲間ということになってしまうので…」

真奥「お前それほぼ敵じゃねーか。あれか、決闘でもしに行くのか」

芦屋「それも違います。なんですか、決闘って」

真奥「知らん。じゃあ誰なんだよ」

芦屋「鈴木さんです」

真奥「……すまん、誰?」

芦屋「魔王様としては七夕の頃に一度マッグでお会いした女性ですね」

真奥「七夕? わりと最近だな。七夕ってーと、俺が店長代理はじめた頃だよな」

芦屋「エミリア……遊佐恵美の同僚であり、良き友人です。なんとなくこう口にするのは憚られるのですが」

真奥「ああ! あのおせっかいヤローか。思い出した」

芦屋「野郎などと! 魔王様、僭越ながら彼女に対しそのような物言いは改めていただきたく存じます」

真奥「な、なんだよ急に。いきなり人のこと観察して勝手に評価して見極めるだのなんだののたまう奴だったぞ?」

芦屋「そうでしたね。たしかにあの場面での印象は良くないものであったかもしれませんが…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:45:28.89 ID:6FI0ECN90<>

芦屋「ですが魔王様、彼女は少しばかり好奇心旺盛なだけで、冷静に物事を捉えて本質を見抜くような高度な観察眼を持っています」

芦屋「加えて、あの若さでありながら、過去に相当な苦労をした経験もあるとのことです」

真奥「いや知らねぇけど…」

真奥「それよか、なんだってお前が散々忌み嫌ってる恵美の友達となんかプライベートで関わってんだ? それ以降も会ったりしてたのか?」

芦屋「っ! そ、それは!」

真奥「あれあれー? アルシエルくぅん? どうしたのかなー? 顔色わるくなーい?」ニヤ

芦屋「違うのです! 偶然たまたま……いやその、約束してお会いするようなことはまだ無くてですね…」

真奥「まだ無いっつーことはー? これからそんな予定があるってことだよなぁー?」ニヤニヤ

芦屋「くっ…… 魔王様! 先ほどプライベートは深く詮索しないと仰ったばかりではありませんか!」

真奥「おまっ…都合良く持ち出してんじゃねぇよ! んな意味深にタメてから言われちゃあ気になるに決まってんだろうが!」

芦屋「と、とにかく私は現状を連絡する必要がありますので!」ダッ

真奥「は!? ちょっ、どこ行くんだよ!」

芦屋「公衆電話を探して参ります! 魔王様は先にお帰りください!」

真奥「なっ… ま、待て! 芦屋ぁああ!!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 17:48:02.59 ID:6FI0ECN90<> まだまだ書き溜めあるけど
明日から書く時間ないので少しずつで。

ちなみに恵美や鈴乃が好きな人は得しない予定 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 17:54:01.56 ID:5f+Jv9zdo<> あまり出ないということ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 18:07:23.70 ID:Kk2+9M2IO<> はたま懐かしいな、期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 19:15:19.33 ID:rHczzlrQO<> わた…佐々木さんが勝利するんですね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 19:16:20.73 ID:A81qCV3K0<> >ちなみに恵美や鈴乃が好きな人は得しない予定

……俺の2番目に好きなキャラと3番目に好きなキャラの出番が少ない、ということか?
まあ1番好きな真奥を中心に書いてくれそうだからいいけど
期待して待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:23:52.73 ID:v+7Rh2xPO<>

真奥「行っちまった。芦屋のやつ、ちゃんと今日中に帰って来るんだろうな…」


真奥(にしても鈴木…だっけか。経緯は知らねーが、恵美の同僚と芦屋に接点が生まれてるとは)

真奥(バイト以外は基本芦屋と居るし、芦屋の人間関係は把握しきってるつもりだったんだけどな。世の中何が起きてるか分からねぇもんだ)


真奥「さてと。だいぶ来たしそろそろ戻るか…… ん?」


『ソフトクリーム 全種100円セール!』


真奥(……ソフトクリームか。芦屋がいたら迷うことなく素通りするんだろうけど、せっかく外に出たしなぁ)

真奥(それに今日は体力と精神力を浪費したもんだから甘い物がやけに美味そうに見える。何より暑い)

真奥「うーむ…」

真奥(俺の稼いだ金だ。コンビニで100円使うくらいいいよな)



ウィーン


シャッシャシャシャッシャッセー

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:24:43.11 ID:v+7Rh2xPO<>

店員「っしゃっせー」

真奥「あー、ソフトクリームひとつ。ミックスで」

店員「100円でーっす。ッィーポイントカードっちっすかー?」

真奥「ないな。これで」パチ

店員「ちょうどっかりっしゃーす。っつくりしますんで少々っちくだあっせー」

真奥(何つってんだよこのモジャ頭…)

店員「ったせっしたーっちらミックスでーす。お次の方っぞー」

真奥(おお、マッグのソフトよりだいぶでかいな。バリエーションも豊富だし、なんか負けた気がするのは職業病ってやつなんだろうか…)クル


ドンッ


「きゃっ!」

真奥「うお!? あ、あぶねっ…」サッ

真奥(……ふう、ソフトは無傷)

店員「っ客さん、大丈夫っすか?」

真奥(ってソフトはじゃねえ! そうだ相手の人!)

真奥「すいません! 俺の不注意で…」

「いえ、私はなんとも……あらっ? 真奥さん?」

真奥「……えっ?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:25:56.43 ID:v+7Rh2xPO<>

店の外


真奥「本当すいません。服汚れたりしてないですか?」

里穂「ぜーんぜん! それにしてもすごい偶然ですねー、お知り合いになったその日の夜に街で再会するなんて! もしかして…運命の相手かしら」

真奥「あはは…からかわないでくださいよ……えっと、お母様」

里穂「まーお母様だなんて。素敵な響きだけどちょっと堅苦しいし、里穂さんって呼んでくださいな」

真奥「え、いいんですか?」

里穂「はいっ♪」

里穂「それより真奥さん、体調はもう回復なさって?」

真奥「あ、はい。もう全く何ともないですね。その節も誠に申し訳なく…」

里穂「あーいいのいいの、真奥さんが元気なら。あと、だから、そんなに堅くならないでいいんですよ? こちらも娘がいつもお世話になっていますし」

真奥「そんな、こちらこそちーちゃ…千穂さんには常々お力添えいただいている身で頭が上がりませんよ」

里穂「そうなの? うふ、よかった。千穂もちゃんと人のお役に立てているみたいで」

真奥「千穂さんは…その、本当に素晴らしい娘さんだと思います」

里穂「えっ?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:32:04.58 ID:v+7Rh2xPO<> あ 里穂は千穂の母親です
原作読んでない人ごめんなさい
俺も原作4巻までしか読んでないんでなんか矛盾あったらごめんなさい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:32:45.88 ID:v+7Rh2xPO<>

真奥「仕事を教えていたときに愛想や器量が良いのはすぐに分かりましたし、誰にでも自然と気配りができていました」

里穂「…まぁ」

真奥「喋り方は明朗快活で棘もなく、話をしていても女子高生としては人並み以上に常識や礼儀なんかを弁えている様子が伺えます」

真奥「なにより裏表のない千穂さんの笑顔は老若男女あらゆる人を魅了するんです。笑顔で人を幸せにするというのはこういうことなんだなって、僕自身が何度も実感しましたからね」

里穂「それはそれは…」

真奥「さらに言えばですね、千穂さんは誰に対してでも」

里穂「ま、待って待って! 待ってくださいっ」

真奥「あっ! す、すいません。僕なんかが差し出がましく…」

里穂「い、いえ……」

里穂「もー、褒めすぎですよ真奥さん! 私が恥ずかしくなってきてしまいました…」パタパタ

真奥「でも事実ですし。あ、ソフトクリーム融けてきてますよ!」

里穂「えっ? まぁ、大変!」ペロリ

真奥(うおっ…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:33:23.26 ID:v+7Rh2xPO<>

里穂「セーフ♪ 危うく手についちゃうところでした」

里穂「……って真奥さん、どうかしました? もしや私の顔にクリームついてたりします?」

真奥「あ、いや…… 里穂さん大人の女性ですけど、そういう無邪気なところもあるのが可愛くて素敵だなって」

里穂「…………へっ!?」

真奥「あ! また俺勝手なことを…!」

里穂「な、な……ま、まま真奥さん…!?」

真奥「その、変な意味じゃなくって! 純粋にそう感じたというか……って、俺のも融けてる!」ペロ

里穂「〜〜っ!! もう! もうっ! 大人をからかうのはやめてください!」

真奥「いや、本当すいません! なんというか……えーっと……」

里穂「うぅー… もういいですよ。一応、褒めてくれたのは伝わってますし」

真奥「……すいません」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:33:57.89 ID:v+7Rh2xPO<>

里穂「そ、それよりほら、やっぱり暑い日に食べるソフトクリームは格別ですよね」

真奥「あれ? そういえばこの前千穂さんから、里穂さんもお父様もあまりアイスは召し上がらないと聞いた気がするんですけど」

里穂「あらそう? 主人はともかく私は…」

里穂「ああ、でもたしかに家ではそうかも。家はほら、夏場でもエアコンがあって涼しいでしょう?」

真奥「えっ? あー、まぁ…」

里穂「あっ……ご、ごめんなさい! 真奥さんのお家はエアコンがついてらっしゃらないものね…って、この言い方もなんか失礼じゃ……」

真奥「いやいや、単なる事実なんで気にしないでください。きょうび都内でエアコンのない住居自体がもうおかしいんですから」

里穂「そんなことはないと思いますけど…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:34:41.87 ID:v+7Rh2xPO<>

里穂「そうだ真奥さん。お家といえば、避難先はもう決まったんですか?」

真奥「あー、それが目下全力捜索中でして。ここまで歩いて来たのはちょっとした気分転換だったんですよ」

里穂「あらあら道理でうちの近くのコンビニまで…… えっ?」

真奥「やっぱり一時的とはいえ職を失ったことが響いて、資金的に住まいが中々見つからないんですよねぇ」

里穂「あの、それってかなりまずい状況じゃありません?」

真奥「まあぶっちゃけた話、相当ピンチです。2週間くらいの住み込みアルバイトでもあれば万事解決なんですが、明日の退去までにというのは現実問題厳しいかなーと」

里穂「それは……」

真奥「知ったのが前日ってのが痛いですね。せめてもう2、3日猶予があれば何かしら手の打ちようがあったと思うんですけど……かと言って今さら仮定の話をしても益体ないですし」

里穂「……」

真奥「あっ、すいません愚痴みたいに。まあなんとかしますよ! 以前はもっと絶望的だった状況を乗り越えた経験ありますし!」

里穂「真奥さん」

真奥「はは、つい立ち話しちゃいましたね。それじゃ俺はそろそろ失礼します! 里穂さんもお気をつけて! それと千穂さんによろしく……」

里穂「あの、真奥さん!」

真奥「?」

里穂「私から…ご提案があります!」

真奥「……はい?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 20:37:52.11 ID:v+7Rh2xPO<>
恵美や鈴乃はあまり出ないどころかたぶん出ない
メインは真奥とちーちゃん(と里穂)と思ってください

では短いけどまた明日 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/11/15(日) 21:03:18.59 ID:ugVvAvJO0<> 面白いです
原作は赤ちゃん子供が出てきてからちょっとなー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 21:18:59.40 ID:fb5CbpFNo<> なんでや夫婦してる真奥かわいいやろ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:23:38.11 ID:4sQa/GrQO<>

魔王城ことヴィラ・ローザ笹塚201号室



真奥「……」

芦屋「……」

漆原「……」


漆原「……いや、なんなの二人共。同時に帰ってきたと思ったらどっちも黙りこくっちゃってさ」

真奥「えっ? あ、ああ…」

芦屋「その……ちょっと…な」

漆原「……」

真奥「……」

芦屋「……」

漆原「……だからなんだよ!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:24:40.94 ID:4sQa/GrQO<>

真奥「なんつーの? 別に悪い知らせじゃねぇんだけど」

漆原「知らせ? いい物件でも見つかった? 悪くないなら早く教えてよ。そしたら僕もさっさと動画サイト巡りに戻れ……あっ」

芦屋「漆原、貴様……私と魔王様が外出中、住まいの捜索もせず呑気に動画サイトを漁っていたのだな?」

漆原「い、いいだろ別に! 真奥と芦屋だって休憩がてら外行ってただけなんでしょ!?」

芦屋「まあ、それもそうか。お前を咎める必要は無かったな……すまない」

漆原「え?」

漆原(なんだよ芦屋のやつ、あっさり引き下がっちゃったぞ。てっきり拳骨の一発でも喰らうと思ってたのに)

漆原「えーっと、それで? 真奥のほうの知らせっていうのは?」

真奥「あー……悪くないどころか俺にとっちゃすげぇ良い知らせなんだが……若干言いにくいっつーか」

漆原「なにそれ?」

芦屋「ま、魔王様もですか?」

真奥「あ? 芦屋も?」

漆原「……はぁ?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:26:49.74 ID:4sQa/GrQO<>

漆原「どういうこと? 二人とも勿体ぶってないでとっとと話してよ」

真奥「あ、芦屋からでいいぞ」

芦屋「いえいえ、臣下の者が君主に先んじるわけには参りません。ここはひとつ魔王様から」

真奥「ばかやろ、俺を立てるってんならトリを回せ。先鋒に長を寄越すなんざまともな団がやることじゃねぇ」

芦屋「そういうわけにはいきません。君主たるもの、前線に赴き皆の手本となるようであってこそ」

漆原「どっちでもいいから早くしろよ!!」

真奥「いや、だってさぁ…まじで言いにくいんだもん」

芦屋「私とて同じです。なぜこのようなことになってしまったのか…」

漆原「あーもう! じゃあせーので一緒に言えばいいじゃん!」

真奥「あ?」

芦屋「おい、ちょっと待っ」

漆原「はいはーい! いくよー、せーのっ!!」

真奥「ばっ、まだ心の準備が…」

芦屋「あ……えっと……」

漆原「……」イラ


漆原「せぇーーーのっ!!!」



真奥・芦屋「「俺(私)だけ住む場所が見つかった」」



漆原「………」


漆原「ハァ?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:27:49.28 ID:4sQa/GrQO<>

猿江「ふはーっはっは! 堕天の邪眼光を有する大天使であるこの僕が、3大宇宙ゴミ(勇者・談)である彼らの状況をわかりやすく解説してやろう」


猿江「まずは魔王サタン(真奥)。彼はどこぞやの鈍感朴念仁主人公別名ツンツン頭を彷彿させる天然タラシっぷりを熟女相手に発揮したおかげ(?)で株が急上昇↑↑」

猿江「その結果、なんと彼を見かねた母親自らの提案にて、バイト先の後輩JKの自宅への仮入居が決定したのであった!」

猿江「具体的な制約はないものの、住まいやアルバイト、理想としては住み込みアルバイトの目処が立つまでを期間とし、仮住まい中はそれらの成就に全霊を注ぐこと条件としている!」

猿江「佐々木家の父親? 妻と娘の尻の下で版画と化している(であろう)警察官など知らん! ご都合主義のもと地方遠征にでも飛べ!」



猿江「そしてアルシエル(芦屋)。真奥の追求から逃れ公衆電話に辿り着いた彼はなけなしの小銭を投入し、最大の敵であるはずの勇者エミリア、日本における遊佐恵美のテレアポ同僚かつ親友である鈴木梨香のもつ携帯へと回線を繋いだ」

猿江「もとは梨香に携帯電話の購入を指南してもらう約束を取り付ける予定だったが、芦屋は電話口にて住居修繕・補強に伴う自らの状況を説明。今はまだ日時が定められないことを伝える…だけのつもりであった」

猿江「しかしながらお人好しかつ阪神大震災を経験している梨香は、被災した恵美のケアに尽力したことからも想像できるように、芦屋に対しても詳細を聞き出し、あまつさえ梨香が一人暮らしをするマンションへ避難するよう誘導した」

猿江「人間社会において紳士である芦屋は当然断ったものの、芦屋にひとめぼ恋慕のような感情をもつ梨香(錯乱)は強制ゴリ押しで芦屋をイエスマンに変態させ、真奥同様、事態の解決に精力を尽くすことを条件(とはよく言ったもので実際は建前)に、数日間の同棲の約束まで漕ぎ着けられてしまったのであった!」




猿江「そして残された最後の宇宙ゴミ、ルシフェル(漆原)はと言うと………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:28:41.42 ID:4sQa/GrQO<>


漆原「なんだ、よかったじゃん」



真奥・芦屋「「……は?」」


漆原「話きく限りじゃ数日稼いだだけだけど、少なくとも二人とも腰を据えて現状打破にかける居場所ができたってことでしょ?」

真奥「いやまあ」

芦屋「それはそうだが…」

漆原「なら後は明日からがんばれーってだけじゃん。ベルはともかくエミリアが知ったら卒倒しそうな話ではあるけど、だからといってすぐさま自分の友人の家に押しかけてドンパチ起こすほどエミリアは馬鹿じゃないだろうし」

真奥「いやまあ」

芦屋「それはそうだが…」

漆原「さっきから同じ台詞しか喋ってないけど大丈夫? 手抜き?」

真奥「あ? いや、なんつーかさ」

芦屋「お前はもっと動揺するなり焦燥に駆られるなりするものと思っていたのだが…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:29:50.99 ID:4sQa/GrQO<>

漆原「動揺? 焦燥? …僕が? なんでさ」

真奥「だってお前、俺らがいなくなって家もなくなって、どうするわけ?」

芦屋「そうだぞ。ネット回線もままならない環境下のお前の存在なぞ吹けば飛ぶはおろか、吹いた瞬間粉微塵に弾け飛ぶシャボン玉のようなものだろう」

漆原「前から思ってたけど芦屋さ、だんだん僕をディスることに生き甲斐を見出してきてない?」


漆原「だから、さっき言ってただろ。僕には一応アテがあるんだって」

真奥「そういやなんか言ってたな。帰ったら聞こうと思ってたんだが、自分のエピソードの衝撃が強すぎて完全に忘れてたわ」

芦屋「私も同じです魔王様。正直いまでも自らの今後を思うと漆原の今後が取るに足らないものに思えてやみません」

漆原「なんだよそれ! ムカつくなぁーお前ら!」

芦屋「で、そのアテとやらは一体なんなんだ?」

漆原「結局聞くのかよ…… 隠すつもりもないけど、なんか教える気失せてきた」

芦屋「なんだと?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:31:02.54 ID:4sQa/GrQO<>

真奥「まさかとは思うが漆原、またオルバが絡んでんじゃねぇだろうな」

芦屋「お、オルバ!? オルバだと!? 漆原、貴様っ…」

漆原「違うから。奴はいまだ服役中。第一仮にシャバにいたところであんな奴と組むなんて二度とごめんだよ」

芦屋「ならばなんだと言うのだ。勿体振らずにさっさと話せ!」

漆原「あーうるさいうるさい。もう完全に話す気失せたね。残念でしたー」

芦屋「なにっ!? 漆原、いい加減にしないと貴様だけ今回の生活資金をゼロにするぞ!」

漆原「いーよ別に、くれなくたってある程度は生き延びられる保証あるし」

芦屋「な、ど、どういうことだ!?」

真奥「落ち着けよ芦屋。言ったろ、あんま個人的なことに深入りすんなって」

芦屋「魔王様! ですが…」

漆原「そーそー。プライベートは守られなくちゃ」ムク

芦屋「くっ…」

漆原「僕はもうパソコンと自分の服だけまとめたから、明日の午前中にでも出るとするよ。それじゃあおやすみ〜」ノソ


ピシャッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:32:27.38 ID:4sQa/GrQO<>

芦屋「漆原め…… 魔王様、あんなニートが服着て歩いているような奴になんの繋がりがあるとお考えでしょうか」

真奥「知らん。ま、なんとかなったんならそれでいいじゃねぇか。それよか今は自分のことに集中しろ。いまだ危ういのはむしろ俺らっぽいぞ」

芦屋「……仰る通りですね。このままでは対症療法はおろか、わずかな頓服を処方されたに過ぎません。どうにか生計を立てられるだけの収入と居住地を拵えなければ」

真奥「ああ。けどこの与えられた頓服はデカい。まじでちーちゃん家とその恵美の友達には感謝だな」

芦屋「当然です。最上の御厚意を無碍にせぬよう、全力で窮地脱却のための対策を尽くすと共に、いずれ自分の持てる全てを費やして恩をお返しする所存です」

真奥「芦屋、お前のことは信用しちゃいるが、くれぐれも……最悪、間違いのないように頼むぞ」

芦屋「はぁ、間違い…といいますと?」

真奥「あーなんだ、その、失礼のないようにな」

芦屋「…? 無論、心得ております」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 19:34:32.02 ID:4sQa/GrQO<> 次からやっとちーちゃん登場でござ
また明日 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/16(月) 20:17:11.78 ID:9jM/gzjko<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/16(月) 23:14:07.75 ID:4SUcPuZno<> 乙でした <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:31:15.77 ID:G8Pd+6mk0<>

翌日 佐々木家



千穂「ふあ…… お母さんおはよー」

里穂「おそよう千穂。もうお昼近いわよ?」

千穂「あうっ、ごめんなさい。ちょっと寝つけなくって」

里穂「最近暑いものね。まぁ、たまにはお寝坊さんもいいんじゃない。夏休みなんだし」

千穂「あははー」

里穂「とりあえず顔洗ってらっしゃいな。朝ごはん…というよりブランチかしら? 用意しておきますから」

千穂「はぁーい」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:34:09.61 ID:G8Pd+6mk0<>

千穂「あれ? お母さーん、バターもう空っぽー」

里穂「あらそう? たしか冷蔵庫にマーガリンなかったかしら、チューブの……ないわね」

千穂「ないなら大丈夫だよ。ジャムだけでも食べるから」

里穂「ごめんね、なくなりかけてるのは気づいてたんだけど。昨晩コンビニに行ったときに買えばよかったわ」

千穂「ううん。コンビニって、牛乳でも買いに行ったの?」

里穂「よく分かったわねー。これがその牛乳。はい、バターの代わりじゃないけど、これで我慢してね」トクトク

千穂「ん、あいあほー」モグ

里穂「どういたしまして。でもちゃんと飲み込んでから喋らないと喉に詰まるし、お行儀悪いですよ?」

千穂「おえんあはーい」モグ

里穂「もう……」

里穂「あ、そういえばそのコンビニで真奥さんに偶然会って、今日からうちに泊めてあげることにしたの」

千穂「ふぅーん………んっ!!? むぐっ!! うぶっ……!!」ドンドン!

里穂「ほら言わんこっちゃない。牛乳飲んで流し込みなさい」

千穂「んーっ、んーっ!!」ゴクゴク


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:37:52.16 ID:G8Pd+6mk0<>

千穂「うぇはっ!!」

千穂「ま、ままままお真奥さんにお泊まりうちが今日お母さんん!?」

里穂「千穂、日本語が変になってるわよ」

千穂「いやいやいやっ、聞いてないよ! えっ、なんで!?」

里穂「だから、昨日の夜に偶然コンビニでお話したの。そしたらいまだに家もお仕事も決まってないって、すごく深刻そうにしてたから」

千穂「だからって…」

里穂「ほんの数日、避難先の目処が立つまでよ。ちょうどお父さんも今週はお仕事でいないし…… もしかしてイヤだったかしら?」

千穂「う、ううん全然!! イヤとかじゃないけど!」

千穂(むしろお母さんグッジョブ! だけど急すぎるよぅ… それならいろいろと準備しなきゃなのに!)

里穂「じゃあ問題ないわね♪」

千穂「うー… 」

千穂「それで、真奥さんはいつ頃来るの?」

里穂「さぁいつかしら。お昼すぎに来る?って聞いたらそうしますって言ってたけど」

千穂「お昼すぎかぁ。まだ朝だしそれならまだ時間ある…」


ピンポーン


千穂「あれ……お昼……?」

里穂「あら。はいはーい、どちら様ですかー?」ピッ



里穂「千穂、真奥さんいらっしゃったみたいよ」

千穂「きゃああああああああ!!!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:40:28.73 ID:G8Pd+6mk0<>

ガチャ


里穂「こんにちは、真奥さん♪ いらっしゃーい」

真奥「あ、どうも。こんにちは里穂さん。この度は急に押しかけてしまって申し訳ないです」

里穂「いいのよー私からお誘いしたんですもの。ささ、上がって上がって!」

真奥「すいません、ありがたくお言葉に甘えさせてもらいますね。お邪魔します」


ガタン! バタン! ドドドド……


里穂「……」

真奥「……あの、この2階からの物音と、さっき玄関越しに聞こえた断末魔については触れてもいいんでしょうか?」

里穂「う、うふふ。なんでもないから気にしないでねっ?」

真奥「はは… わかりました」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:43:08.27 ID:G8Pd+6mk0<>

里穂「紅茶を淹れようかと思うんですけど、その前に真奥さん、お昼ごはんはもうお済みで?」

真奥「あー、今日は退去日ってことで少しバタバタしてたもんで、実はまだ朝食も取れてないんですよね」

里穂「あらそうなの? それじゃあとってもお腹が空いてるでしょう」

真奥「そうですね。とりあえずは荷物を置かせていただいてから、適当に買いに行くつもりでした」

里穂「なるほど。けど、それならちょうどよかったわ」

真奥「はい?」

里穂「ちょうどいまお昼を作り始めたところなの。真奥さんも一緒にどうですか?」

真奥「えっ!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:54:44.77 ID:G8Pd+6mk0<>

真奥「いやそんな、居候の身で悪いですよ」

里穂「いーえ、ちっとも悪くありません。主人がいない分を真奥さんにいただいてもらうと思えば量としても変わりませんし」

真奥(えっ? ちーちゃんの父親今日いねぇの?)

真奥(…いや、昼は出勤中だからいないってことか)

里穂「というより寝床だけ差し上げて食事はご自分でーなんて、こっちが嫌ですもの。だから遠慮なく召し上がってくださいな」

真奥「そういうことなら……すいません、何から何まで」

里穂「うふふ。あと30分ほどしたらできますから、お好きにくつろいでいてください」

真奥「はい! ありがとうございます」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 19:58:40.68 ID:G8Pd+6mk0<>

真奥(ちーちゃんの家は昨日に続き二度目だけど相変わらず綺麗だな)

真奥(たぶん広さは平均的な一軒家なんだろう。けど6畳一間の魔王城に比べりゃ遥かに広いし、設備とか家具も比にならないほどに充実してる)


『続いてのニュースです。著名人男性の中で独身最後の砦とまで言われた福山雅水台さんの結婚(仮)によるショックは依然として…』


真奥(ちゃんとテレビもあるし……画面でけぇなしかし)

真奥(どうでもいいような内容の報道も多いが、裏を返せば自分の興味ない情報をも得られるってのが強みだよな)


ガチャ


千穂「……」チラ

真奥(魔王城にもどうにか設置したいが、そこまでの余裕はないよなー。つーかそもそも地デジ対応してねぇし)

千穂(うわぁ… ほんとに真奥さん来ちゃってる。なんて声かけたらいいかな…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 20:03:48.47 ID:G8Pd+6mk0<>

千穂(…はっ!)

千穂(大慌てで部屋片付けたはいいけど、そういえば私寝巻きのまんま!? しかも髪ぼさぼさだ!)

千穂(あぶなっ! お昼すぎてもこんな姿だなんて、真奥さんに見られたら幻滅されちゃう。いったん部屋に戻らないと)ソロー


ゴンッ


千穂「あたっ」

真奥「ん?」

千穂「あっ……」

真奥「あ、ちーちゃん」

千穂「あ……あの……!」カァァ

真奥「はは、えっと、お邪魔してます」

千穂「えと、ちが、その…これは違くって!! ほんと、たまたま! たまたまなんです!!」

真奥「えっ、なにが!?」

千穂「ほんとですっ! ほんとなんです真奥さん! いつもはこんなじゃなくって……」ペタ

真奥「ごめんちーちゃん、全然意味が分からないんだけど」

千穂「ほんとなんですぅー………信じてください真奥さぁん…」ジワ

真奥「えええ!? ちょっ、よし信じる! 信じるから! だから泣きそうな顔しないで!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/17(火) 20:29:00.32 ID:G8Pd+6mk0<> 二期やらんかな
また明日デース <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/17(火) 22:08:28.50 ID:iBitrUod0<> お疲れ様です。月連載より週間連載よりも毎日連載と、明日も楽しみにしてます。2期、スポンサーいなければ円盤次第な時代ってことなのかなぁと <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:28:31.99 ID:qnNhrQRl0<>

千穂の部屋


千穂「ひとまず荷物はここに置いてください。真奥さんのお部屋とかは後で決めればいいですよね?」

真奥「ああ。つーか部屋まで用意してもらっていいの? 俺としては床でも十分すぎるくらいなんだけど。普段から畳で雑魚寝なわけだし」

千穂「そういうわけにはいきませんよ。そもそもフローリングは畳よりずっと固いですし、そんなところで寝てたら休むものも休まりません」

真奥「そっか。気遣ってくれてありがとな」

千穂「いえいえ。その、なんだったら私の部屋でも……」ボソ

真奥「え?」

千穂「な、なんでもないです! あははははー!」

真奥(いや聞こえてたけど……うん、聞かなかったことにしよう)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:33:36.08 ID:qnNhrQRl0<>

千穂「あの、真奥さん、さっきはごめんなさい。取り乱しちゃって」

真奥「まあ夏休みだしさ。俺だってバイト無い日とかは昼まで寝てたりするぞ?」

千穂「うぅ、でも恥ずかしいです」

真奥「そうか? あの黄色いパジャマ、ちーちゃんによく似合ってたし可愛かったけどな」

千穂「っ! ほ、ほんとですか!?」

真奥「ああ。学校やバイトの制服だったり、私服も何度か見たことあるけど、パジャマってやっぱそうそう見れねぇじゃん?」

千穂「あ、たしかに。そう考えると結構とんでもない姿見せちゃったような…」

真奥「かもな。そもそも俺はパジャマっつー服があることすら最近知ったくらいだ。いやー、いいもん見せてもらったわー」

千穂「もーやめてください真奥さん! あとそれ、ちょっとオヤジくさいです」

真奥「まじ!? なんてこった…… ん? でも俺実際500歳くらいだし、別にオヤジでいいんじゃね?」

千穂「えぇー、なんですかその斬新な開き直り」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:37:34.15 ID:qnNhrQRl0<>

「千穂ー! 真奥さーん! 降りてらっしゃーい!」


千穂「あ、はーい! いま行くー!」

真奥「できたっぽいな。俺、ひと息ついたらすっげー腹減っちゃってさ」

千穂「お母さんの料理は私のなんかよりずっと美味しいですから、期待してください!」

真奥「おお! そりゃ楽しみだ」

千穂「ほんと、すごいんです。私も意外とがんばってお手伝いしたり、お母さんのレシピ真似して作ってみたりしてるんですけど… 全然追いつける気がしなくって。あははー」

真奥「へぇ? 作る人でそんなに変わるもんなのかね」

千穂「変わりますよ。もちろん、好みもあるので一概には言えないですけどね」

真奥「なるほどね。でも、俺からすりゃちーちゃんはもう十分一人前だと思う」

千穂「…えっ?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:42:18.47 ID:qnNhrQRl0<>

真奥「ほら、この前ちーちゃんが俺に弁当作ってくれただろ?」

千穂「あ…はい。そういえば」

真奥「あれさ、ちゃんと感想言ってなかったけど、めっちゃうまかったんだよ」

真奥「お店の味〜みたいなのとはまた違くて。ただ、味も見た目も栄養バランスも、全部が俺に合わせて作ってくれたって感じでさ」

千穂「あはっ、そ、そんな大袈裟なー」

真奥「なんつーか、ちーちゃんが俺のこと思いながら頑張って作ってくれたんだなーってのが弁当から伝わってきて、すげぇ嬉しかった」

千穂「……!」

真奥「そんで食べながら思わずニヤけちまったんだよなぁ。今思うとあの時の俺ってはたから見てだいぶ……」



千穂「あ……ぅ……真奥さぁん…」ポタポタ

真奥「って、ちーちゃん!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:46:24.20 ID:qnNhrQRl0<>

真奥「わ、悪い! 気持ち悪かったよな弁当食いながらニヤけてるとか、しかもそれ本人に言うとか…」

千穂「ぐすっ… い、いえっ、違うんです!」

千穂「私の……真奥さんに作ったお弁当に込めた私の気持ちが、ちゃんと伝わってたって……それが嬉しくて」

真奥「え、それでちーちゃんは泣いてるわけ?」

千穂「……前にも言いましたよね、嬉しい時に涙が出るって」

千穂「アラス・ラムスちゃんが無事だって分かったとき、真奥さんも実感したじゃないですか」

真奥「あ、ああ。そうか、そうだったよな」

千穂「はいっ。だからこれは、幸せの涙なんです」

真奥「ちーちゃん…」


真奥(幸せの涙…ねぇ)

真奥(俺は何百年もの間、涙なんつーものの存在すら忘れてたわけだが)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:50:33.85 ID:qnNhrQRl0<>

千穂「真奥さん」

真奥「ん?」

千穂「人間って…素敵じゃないですか?」

真奥「……」

真奥「まあ、ちーちゃんが言うなら、そうなのかもしれねーな」

千穂「ふふ、違います。私が言わなくても、そうなんです」

真奥「……なら、そういうことにしておくっきゃないか」

千穂「はい♪」

真奥(はぁ…ちーちゃんには敵わねーな)



真奥「さ、ちーちゃん。里穂さんが待ってる。下に降りようぜ」

千穂「はいっ!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:53:03.39 ID:qnNhrQRl0<> キリいいけどもうちょいいくか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:55:50.02 ID:qnNhrQRl0<>

「「「ごちそうさまでしたー!」」」


里穂「そして、お粗末様でした〜」

真奥(死ぬほどうまかった…… 芦屋の作る飯が残飯に思えるのは素材と調理環境のせいだと信じたい)

里穂「真奥さん何回もおかわりしてくれて、作った甲斐があるってものですよ」

真奥「いや本当に御馳走でした。里穂さん、お店開けるんじゃないですか?」

里穂「そんなまたまたー! 褒めたって千穂くらいしか出ませんよ?」

千穂「んなっ!? お、おかーさーん!!?」

真奥「あはは…」

里穂「うふ。じょーだんじょーだん」

里穂(ま、冗談じゃなくてもいいんですけどね♪ なーんて)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 22:59:00.59 ID:qnNhrQRl0<>

千穂「じゃあ、洗い物は私がやるから」

里穂「あーこらこら。置いときなさい、私がやりますから」

千穂「いいよー、作るのも手伝ってないし。これくらいやるよ?」

真奥「あ、俺もやりますよ。食器拭く程度ならたまに芦屋の手伝いで…」

里穂「だーめ。千穂はともかく真奥さんは却下です。お客さんなんですから」

真奥「えぇ……」

千穂「そーですよ? 真奥さんはゆっくりしてなきゃダメです!」

真奥「ちーちゃんまで!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 23:02:00.32 ID:qnNhrQRl0<>

里穂「あ・な・た・も・よ、千穂! まだ真奥さんはうちに慣れてないんだから、一緒についていろいろ案内して差し上げなさい!」

千穂「あ、案内って、うち別にそんな広くないじゃん!」

里穂「いーいーかーらっ! 言うこと聞かない子は晩ごはん抜きにしますよ!」

千穂「えぇー!? なにそれお母さん! 横暴! 理不尽! サザエさん!!」

里穂「サザエさんを悪口みたいに言うんじゃありませんっ! 本当に晩ごはん抜きにしていいの!?」

千穂「ぬぬぬぬぅ……!!」

真奥「えーと…」

真奥(まずい、完全に蚊帳の外だな俺。正座してるしかねぇ)


真奥(……あいつらは大丈夫なんだろうか。漆原はともかく、芦屋がどういう心境で居候すんのかまるで想像がつかん)


里穂「こんの…! おっぱいオバケ!!」(※台詞はイメージです)

千穂「るっさい! ぶりっ子ババァ!!」(※台詞はイメージです)


真奥(……ちょっと帰りたい)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 23:04:38.27 ID:qnNhrQRl0<>

千穂の部屋



千穂「はぁー……」

千穂「たった2時間足らずなのに、真奥さんに佐々木家のみっともないとこばかり晒しちゃってます…」

真奥「そうか? 部屋は綺麗だし飯はうまいし、さっきのも喧嘩するほどなんとやらってやつじゃねぇの?」

千穂「うーん、親子ゲンカはなんか違う気がします。それに喧嘩の理由がしょうもなかったですし」

真奥「まあいいじゃん。お互い本気で怒ってたわけじゃなし、漫才やってたようなもんだろ」

千穂「それはそれで複雑ですけど……」

千穂「でも、そうですね! 暗くなってても役に立ちませんし、気持ちを切り替えます!」

真奥「おおっ、その意気だちーちゃん!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 23:06:35.92 ID:qnNhrQRl0<>

千穂「ところで、真奥さんはこれからどうするんです?」

真奥「俺? そうだな、ちーちゃん家に居座る条件だからじゃないけど、ひとまず本分を果たさないことには始まらないよな」

千穂「お家とお仕事を探すんですね。やっぱり住み込みのアルバイトが第一希望ですか?」

真奥「ああ。それでいて2週間限りのがあればベストだな。問題はまずどうやって探すかだが…」

千穂「とりあえずインターネットじゃないですか?」

真奥「パソコンは漆原が持ってっちまったからなぁ。昨日コンビニ行ったときに求人情報誌持って帰ればよかった」

千穂「よかったら私のノートパソコン使います? それなら暑い中外に出なくても、うちで出来ますし」

真奥「えっ? ちーちゃんパソコン持ってんの?」

千穂「はい。高校入学と一緒にお父さんが買ってくれました。といってもほんとにインターネットとiTunesくらいしか使い道ないんですけど」

真奥「……すげぇな、高校生が個人持ちって」

千穂「えっ? 学校の友達もけっこうみんな持ってますよ?」

真奥「日本の高校生怖いわ。時代はそこまで進んでいたのか…」

千穂「いや真奥さん、まだこっちの世界にきてちょっとしか経ってないじゃないですか」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 23:12:41.28 ID:qnNhrQRl0<>

千穂「はい真奥さん。首都圏中心のジョブサイト開いたので、好きに使ってください」

真奥「おー! サンキュな!」

千穂「いえいえ。何かあったら呼んでくださいね」

真奥「あ……ちーちゃん、早速なんだけど」

千穂「はい?」

真奥「えっと、調べ方がよく分からなくて」

千穂「あ、そっか。真奥さんってマグロナルドの求人も本で調べたんですもんね」

真奥「めんぼくねェ」

千穂「ここから条件を付けて候補を絞って行くんですよ。場所だったり業種だったり、時給なんかも範囲決めたりできます」

真奥「な、なるほど」

千穂「ワード検索なんかもできますし、人気ランキングみたいなのもあります。住み込み系だったら… えと、これかな?」カチカチ

真奥「……」

千穂「あったあった。真奥さん、これとか……真奥さん?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 23:18:16.53 ID:qnNhrQRl0<>

真奥「……」

千穂「まーおーーさん?」

真奥「あっ? あ、ああ、なに?」

千穂「どうかしました?」

真奥「え? いやその……えっと、わ、分かりやすくてさ!」

千穂「へっ?」

真奥「ちーちゃんの説明! おかげでやり方がよく分かったぞ!」

千穂「…そうですか?」

真奥「ほ、ほら、マッグじゃ俺が教える立場だから知らなかったけど、ちーちゃんって教えるのも上手なんだなって! ちょっと感心しちゃったな〜」

千穂「ええっ!? そ、そんな………えへへ…」

千穂(うわうわ、真奥さんに褒められちゃった!)

千穂(たしかにお仕事じゃいつも教えてもらう側だし……うわー、なんかすごい嬉しい!)

真奥「それでそれでちーちゃん! ここもちょっと分かんないんだけど」

千穂「ええー? もー仕方ないですねー真奥さん! どこですかぁー?」ニコニコ

真奥「この、端っこの方に出てるバナーをクリックっていうやつで…」

千穂「ふむふむー」ニコニコ



真奥(……ふぅ。なんとか誤魔化せたな)



真奥(ちーちゃんの良い匂いとおっぱいが近すぎてトリップしかけてたとか、死んでも言えん)

真奥(バレたら半日経たずしてホームレスデビューするとこだった。いや危なかった…)



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/18(水) 23:19:38.65 ID:qnNhrQRl0<> よし切る
また明日っぱい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/19(木) 01:54:40.77 ID:gkbzU75T0<> おつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/19(木) 14:45:19.68 ID:qS8X0fvAO<> 真奥って300歳位だろ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:09:25.75 ID:3N7H36mMO<>

1時間後



真奥「っあー、ダメだ見つからん」


真奥(ネットで探し始めてからそろそろ1時間か)

真奥(極力住み込みに絞ってるからか理想にかなう案件はなし。惜しいのはあったが、最低1ヶ月だとか、女性限定だとか、そんな条件のせいで応募できなかったし)

真奥(やっぱさっさと日雇いの仕事をして、住居は別に安いところをあたるほうが現実的かもな)


真奥「ごめんちーちゃん、もうちょっとだけパソコン使わせてもらって…も…」クル


千穂「……」スゥ


真奥「ありゃ」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:10:38.45 ID:yIHVHK8e0<>

真奥「おーい、ちーちゃーん」

千穂「……」スゥ スゥ

真奥「だめだ、完全に寝ちまってる……ん?」

真奥(これは…英語か。たしか学生には夏休みの宿題ってのがあるんだっけ。たぶんそれだろうな)

真奥(俺がちーちゃんの机占領してるからベッドの上なんかで……言ってくれりゃどいたのに。首痛めるぞー)

千穂「……」スヤスヤ

真奥(にしてもよく寝てんなぁ)

真奥(しかもペン握ったまま。刺さったらあぶねぇし取っとくか)ヒョイ

真奥(解答中だったのか? 丸っこい字でなんか書いてあるな)



『Fight ! King of Devil』



真奥「おお……」

千穂「ん……むにゃ……」

千穂「まお…さん………がんばって……」

真奥「ちーちゃん…」

千穂「……」スゥ

真奥「……」

真奥(その書き方じゃあ、『闘え! 悪魔番長』みたいになっちまうんじゃねぇかな)

千穂「……へへー……まおしゃーん…」二へ

真奥「……」

真奥(タオルケットだけ掛けとくか)ファサ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:11:25.41 ID:yIHVHK8e0<>

タン タン


真奥(結局、調べれば調べるほどどうすりゃいいか分かんなくなっちまった。情報誌取りがてらいったん街に出て様子見てみるか)

里穂「あら?」

真奥「うおっと」

里穂「真奥さん? お手洗いは二階にもありますよ」

真奥「あ、いや… 少し駅周辺をうろつこうかなと」

里穂「あらそうなの? ちょうど、千穂の部屋にこの紅茶とバウムクーヘンを持っていくところだったんですけど」

真奥「そうなんですか。でもいま千穂さんは眠っちゃってますよ」

里穂「ええっ? あの子ったら、お昼まで寝てたくせしてお昼寝するなんて……真奥さんもいるのに、ごめんなさいね」

真奥「いえいえ。まあ、その、たまの休みくらい大目に見てあげてください」

里穂「えっ?」

真奥「俺が言うのもなんですけど、日頃バイトに手伝いにいろいろ忙しくて、疲れが溜まってるんじゃないですかね」

里穂「そうなのかしら…?」

真奥「だから里穂さん……ねっ?」ニコ

里穂「うっ……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:12:11.85 ID:yIHVHK8e0<>

里穂「ま、真奥さん! そういう笑顔はずるいと思います」

真奥「はは。なんせ魔王ですからね」

里穂「……へ?」

真奥「別に。それじゃ里穂さん、俺は…」

里穂「あっ、あんまり遅くなっちゃダメですよ? 遅くとも夕食までには、ですからね?」

真奥「夕食もいいんですか?」

里穂「当たり前です。もう、お昼にも言ったでしょう?」

真奥「あー、そうでした。なら、またお言葉に甘えさせてもらいます」

里穂「うふふ。あの、真奥さん」

真奥「はい?」

里穂「ここにいる間は、あなたも家族の一員だと思ってくださいね」

真奥「は、はぁ…… 家族ですか」

里穂「はいっ!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:17:52.33 ID:udUKxbUg0<>

里穂「少なくとも、私はそのつもりで接しちゃいますから。ちゃんと行き先が見つかるまでは、逃げようったってそうは行きませんよ?」

真奥「逃げるだなんてそんな。むしろ追い出されないよう必死ですよ」

里穂「そんな心配は要りません。家族を追い出すわけないじゃありませんか」

真奥「そりゃなんとも……ありがたいお話で」

里穂「だからそれまでは、真奥さんも佐々木家の一員です。佐々木真奥…… あ、大真奥佐々木のほうが不思議となんかしっくりきますね」

真奥「語呂の似たメジャーリーガーがいたからじゃないですかね」

里穂「ああ! そうかもしれません」

真奥(つか、下の名前は貞夫なんだけど…… まあどうでもいいか)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:18:31.57 ID:udUKxbUg0<>

真奥「じゃあちょっと出てきます」ガチャ

里穂「はい。道中、気をつけてくださいね? 特に車に気をつけるんですよ?」

真奥「さすがに子供じゃないですし。分かってますって里穂さん」

里穂「お母さん、ですから。今だけは」

真奥「はは…」


里穂「それじゃ、いってらっしゃい、真奥さん」

真奥「はい、里穂さん」

里穂「ぶぶー」

真奥「えぇー…」

里穂「やーりなーおしっ。いってらっしゃい、真奥さん!」

真奥「……いってきます、里穂さん」

里穂「はいっ♪」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:19:13.32 ID:udUKxbUg0<>

行間 芦屋と梨香



芦屋「…………………」


梨香「…………………」


芦屋「…………………」


梨香「…………………」



梨香「あのっ」

芦屋「は、はいっ」

梨香「……もう一杯いかがですか?」

芦屋「あ、ええと……いただきます」

梨香「……」トクトク


梨香「……粗茶ですが」

芦屋「ど、どうも」


芦屋「……」ズッ

梨香「……」

芦屋(うっ、これで3杯目……何か、何か話さなければ……しかし何を話せばよいものか……)

梨香(覚悟してたけど、やっぱ緊張するー! 勢いで半ば強制的に連れ込んじゃったし……はしたない女とか思われてないかな…大丈夫かな…)


芦屋「…………………」

梨香「…………………」


芦屋・梨香((どうしよう……………))


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/19(木) 21:22:00.44 ID:udUKxbUg0<> たしかに300だったかも 痛恨のミス
500は芦屋だっけ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/19(木) 21:40:53.94 ID:qS8X0fvAO<> 漆原 まだ5桁にはいってない
芦屋 1500歳位
真奥 300歳位
鈴乃 20代
恵美 17
千穂 16 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:15:46.26 ID:TYX5F0AL0<> あざす <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:40:50.92 ID:TYX5F0AL0<>

真奥「暑いなちくしょう…」

真奥(町や駅のあちこちにある掲示板の中に求人広告……懐かしいな、芦屋と手分けしてこういうの漁ったこともあったっけか)

真奥(思惑通りネットで引っかからない類の求人はあるが、これまた案の定俺が探してるようなもんは全くねぇな)


真奥「お、公園だ。日陰でちょっくら休憩すっか」


真奥(もう慣れたけど、相変わらず人間の体力の無さは尋常じゃないな。陽射しでダウンしてベンチ休憩する悪魔とか日本映画の吸血鬼かっての)


ワイワイ キャイキャイ


真奥(子供多いな。小学生も夏休みだもんな)


真奥(………俺、何してんだろ)


真奥(っ! この表しようのない虚無感はあれか、昼下がりの公園でぼけーっとしてるとリストラされたばかりの会社員のような気持ちになるっつー…)

真奥(マッグのあいつらが話してたのは本当だったんだな。実質俺いま無職だし)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:43:53.26 ID:TYX5F0AL0<>

夕方



真奥(ずいぶん街中を彷徨ったものの収穫はゼロ。強いて言うなら住処の候補に24時間銭湯を見つけたくらいか)

真奥(畳の休憩室もあるっぽいし安価で快適に過ごせるとは思うが、連泊が店員にバレたらまず出禁は免れん。せめて2週間くらい安定して過ごせないと意味ねぇし)

真奥「はぁ… そろそろちーちゃん家に戻んねぇと」


真奥(いやしかし、里穂さんが招いてくれなきゃ今頃路頭に迷ってたかも知れないんだよな)

真奥(帰る場所があるってのは実際心強いもんだ。おまけに飯の心配もない)

真奥(いずれ俺の支配する世界が完成した暁にゃ、佐々木家に一帝国まるごと贈呈してやるくらいのことはしねぇと)


「あれ? もしや真奥ちゃんじゃないの?」


真奥「あっ?」

渡辺「ああやっぱり! こんな所で偶然だねぇ」

真奥「ナベさん! ナベさんじゃないですか!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:44:29.27 ID:TYX5F0AL0<>

渡辺「久しぶりだね。会うのは七夕以来かな?」

真奥「ですね。電話でも話しましたけど、あん時の笹の葉まじで大人気で。 ほんとナベさんには感謝ですよ!」

渡辺「はっはっ! そりゃ僕も鼻が高いよ。またいつでも呼んでくれ」

真奥「はい、機会があったらぜひ!」

渡辺「ところで真奥ちゃん、こんな町外れのとこまで何か用事? いつもならアルバイトの時間だろ?」

真奥「あー、えっと、それがですね…」




渡辺「な、なるほど、それで家も仕事もなくなったってわけかい」

真奥「今はその、友達の家に仮住まいさせてもらっていて。でもいつまでも邪魔するわけにもいかないんで、家と職探しの旅途中って感じで」

渡辺「そりゃ災難だなぁ…」

真奥「一番手っ取り早いのは住み込みのバイトなんですけどね。そううまくは転がっててくれないんですよ」

渡辺「まあねぇ……… ん?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:45:48.03 ID:TYX5F0AL0<>

渡辺「ちょっと待って真奥ちゃん」

真奥「はい?」

渡辺「その話、もしかしたら解決できるかもしんねぇ」

真奥「えっ? ど、どういうことですかナベさん!」

渡辺「あんまり自信ないんだけどね。真奥ちゃん、小さい子供は好きかい?」

真奥「子供…? まぁお客さんで家族連れも多いんで慣れてますし、好きか嫌いかで言ったら好きだと思いますけど」

渡辺「いやね、昨日昔の友人が千葉から遊びに来て、酒屋で一杯やったんだよ」

渡辺「その時の話で……あ、そいつ千葉の市原市にある『こどもたちの国』の人事なんだけどね。繁盛期なのにアルバイトスタッフが急に5人ほど食中毒で倒れたらしいんだ」

真奥「まじですか」

渡辺「原因はその人らが集まって食べた牡蠣だとかなんとか。個人的なものだったしお客さんに感染した可能性はないから、営業そのものには今のところ影響ないみたいなんだけど」

渡辺「大きい施設とはいえ、仕事内容の近い者同士だったから人手不足で、かといって今さら募集してすぐ来てくれるバイトなんていなくてね」

渡辺「持ち場を動かしてなんとか対応してるみたいだけど、現場はもうてんてこまいだーって……延々愚痴垂れてたのさ」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:47:00.35 ID:TYX5F0AL0<>

真奥「そりゃ人事からしたら頭が痛いことで……え、じゃあもしかして、そこで人員を急募してるってことですか?」

渡辺「んにゃ、そういう話はしてなかったなぁ。ただ口ぶりから察するにちょうど真奥ちゃんくらいの年頃の男性スタッフが欲しそうではあったから、もしかするとと思ってね」

真奥「その人、まだこの辺りにいますか!? いるなら俺……」

渡辺「ああ、本当は有休で初孫の顔を見に2泊ほどする予定だったらしいんだけどねぇ。そんなことがあったから昨日の半休だけ取って、夜呑んだらすぐ帰って行ったのさ」

真奥「そ、そんなぁ」

渡辺「だからちょっと待ってよ。いま携帯にかけてみるから」

真奥「えっ、本当ですか!」

渡辺「運がよければ出て……」


渡辺「あ、もしもし? 僕だけど」

真奥「!!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:49:39.33 ID:TYX5F0AL0<>

渡辺「ああ、ごめんね忙しいだろうに。ただ悪い話じゃないんだ、そっちのアルバイトがって件でさ……うん……そうそう……」

真奥(頼む! 千載一遇のチャンスかもしんねぇんだ!)



渡辺「そう? あ、それなら今ここに……ちょっと待って」

渡辺「真奥ちゃん、そいつが詳しく知りたいっていうからさ、代わりに直接話してもらってもいい?」

真奥「っ!! は、はい! もちろん!」

渡辺「ん。ああ、お待たせ。オッケーみたいだから今替わるね」

真奥(こいつはひょっとすると……ひょっとするかもしれねぇぞ!)

渡辺「はい、真奥ちゃん」スッ

真奥「ナベさん、ありがとうございます!」


真奥「お電話代わりました。私、真奥貞夫と申します!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 08:51:00.45 ID:TYX5F0AL0<> 32時半ってことでさーせん <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 13:02:02.32 ID:xwZYkYRRO<> 乙。はたま二期やって欲しいよなぁ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 18:28:59.24 ID:w7vjClAMo<> >>69
やり直し出来てないじゃん <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 08:50:39.45 ID:YGMWitQq0<> いってきますを言わせたつもり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 08:52:28.54 ID:YGMWitQq0<>

佐々木家



里穂「真奥さん、まだ帰ってこないわね」

里穂(まだ心配するような時間じゃないけど。そういえば真奥さんのお家ってお夕飯いつ頃なのかしら?)

里穂(早く作りすぎちゃったかな… できたてを食べて欲しいし、とろ火にしてゆっくり煮込むのも手よね)

里穂(真奥さん褒め上手だし、何よりすごく美味しそうに食べてくれるからがんばっちゃうわぁ〜)


里穂(まだ知り合って間もないとはいえ、千穂が惚れるのも納得ね。仕事熱心で、容姿もそれなりに好青年で……あら? いつの間にか私まで惚れちゃってる!?)

里穂(い、いけないわ! 私には主人というものが)グツグツ

千穂「おかーさーん、煮えてる煮えてる」

里穂「ひゃっ! ち、千穂!? あなたいつからそこに…ってきゃあああ! おいもが崩れちゃう〜!」

千穂「なにしてんのもう…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 08:54:36.67 ID:9fBzpVIZ0<>

里穂「あ、危なかったわぁー」

千穂「料理中にぼーっとしちゃダメだよ。何考えてたの?」

里穂「えっ? 別に? なにも?」

千穂「んー? お母さんなんかあやしい」

里穂「そ、そんなことなくてよ? おほほほ」

千穂「まぁいいけど。 はぁ……」

里穂「あらやだ千穂、まだ落ち込んでるの?」

千穂「だってー…せっかく真奥さんがいたのに…」

里穂「自業自得です。生活を不規則にするから、体がリズムに乗れなくて変な波ができちゃうの。わかりましたか?」

千穂「はぁーい…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 08:56:10.03 ID:+ItPo+eMO<>

里穂「ま、今日はまだ初日なんだし落ち込むのは早いわよ。これからこれから!」

千穂「んー…たしかに、そうだよね! これからこれからー!」

里穂「千穂、お母さんは応援するわ。攻めの姿勢が大事よ! このあとお風呂もベッドもあるんだからねっ!」

千穂「ちょっ、な、なな何言ってるのお母さん!?」

里穂「えっ? 真奥さんともっとお近づきになりたいんじでしょ?」

千穂「そ、それは……」

里穂「大丈夫よ。なんならお母さん、今日はお友達のお家に泊まりに行こうかしら?」

千穂「そーゆー問題じゃなーい! ってゆーか、いきなりそんな……真奥さんと夜にうちでふたりきりなんて……」カァァ

里穂「もー、真っ赤になっちゃって。かわいいんだから。このこのっ♪」

千穂「うー! お母さんのえっち! 仮にそうなっても、真奥さんはそんな人じゃないもん!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 08:57:27.12 ID:9fBzpVIZ0<>

里穂「それはもちろん……いや、どうかしら?」

千穂「へ?」

里穂「ふふふ…… 千穂はまだ知らないかもしれないけどね、男の子はみーんなオオカミさんなのよ?」

千穂「お、おおかみ!?」

里穂「真奥さんだって盛んなお年頃だもの。千穂はだーいぶ良い獲物を持ってるし、飢えたケモノにはさぞ美味しそうに見えてるんじゃないかしらぁ?」

千穂「なっななななななっ! どこ見て言ってるのっ!?」

里穂(うふふふふふ。ピュアな子ってどうしてこうもからかい甲斐があるのかしら)

千穂「もう! もうもうっ! お母さんのバカ! いんらんっ!」

里穂「あー、親にむかってバカとか淫ら……って千穂!? 今なんて!? あなたそんな言葉どこで」


ピンポーン


里穂「っと……真奥さんかしら」

千穂「真奥さんっ! 私、玄関あけてくるね!」ダッ

里穂「あっ! ま、待ちなさい千穂っ! まだ話は終わってませんからねー!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 08:58:23.20 ID:9fBzpVIZ0<>

千穂(もーーお母さん、変なことばっか言って! 真奥さんはそんな人じゃないのに!)ズンズン

千穂(そりゃ、もしそんな風になったとして、相手が真奥さんだったら…好きな人だったら……いいかなーってちょっと思っちゃったりもするけど)


千穂(うん。もし、もしそうなっても…… 私、真奥さんになら……)




真奥『ちーちゃん。ごめん、いきなりこんなこと』

千穂『あ、あの…』

真奥『でも俺、どうしても我慢できなくなっちまったんだ。ちーちゃんが……あまりに魅力的なせいで』

千穂『ひどいです真奥さん… 人のせいにするなんて』

真奥『ああ…わかってる。けど事実なんだ……無理なお願いとはわかってるけど、こんな外道な俺を許してほしい』

千穂『……ふふ。わかりました、許してあげます』

真奥『ちーちゃん…いいのか?』

千穂『もちろんです』

千穂『だって真奥さんは……魔王さんですから』ニコッ

真奥『っ!! ちーちゃん!!』ガバッ

千穂『ひゃっ、ま、まお…さん! そんないきなり……っ!!』





千穂「……へへ……えへへへー」


真奥(あれ、誰も出ないな。押しが甘かったか? 早く成果報告してぇんだけどなぁ)ウズウズ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 09:01:25.57 ID:+ItPo+eMO<> できればまた深夜に
はらいてぇ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 14:43:10.53 ID:svD0zOG6o<> >>83
この文脈だと「お母さん」と呼ばせようとしているように見えるぞ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:44:47.00 ID:flm3gi2mO<> なるほど
というか実際最初はそうだったんだけど真奥がお母さんって言うのに違和感強すぎて訂正したのよね…
他の部分ももっと変えるべきだったっすすまんす <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:45:57.26 ID:flm3gi2mO<>

ピンポーン


千穂「……はっ!」

千穂(私なんてこと…しかも真奥さん待たせちゃってる!)

千穂「は、はーいっ、今開けまーす!」カチッ

千穂(うわーうわー、いま真奥さんに会うのにどんな顔すればいいんだろ)

千穂(ん、でも待って? お母さんの言葉に惑わされて恥ずかしい妄想しちゃったけど……冷静に考えて、真奥さんに限ってそんなことあるのかな?)

千穂(これまでの経験からすると……)

千穂(………)

千穂(いやいや、万が一ってことも)

千穂(………)

千穂(………)

千穂(ダメだ……そんな雰囲気どころか、少しでも桃色な展開になる要素がどこにもない………)ガクッ


千穂「はぁ………」


ガチャッ


千穂「ひゃあっ!?」グラッ

真奥「ありゃ? 開いちまっ…ととぉ!?」


ギュ


千穂「わ」

真奥「あっぶねーびびった…… ちーちゃん?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:46:54.79 ID:flm3gi2mO<>

千穂「ご、ごめんなさい真奥さん!」

真奥「いや俺は別に… それよりちーちゃん大丈夫?」

千穂「あ、はい。真奥さんが受け止めてくれたので……」

真奥「そっか。ならよかった」

千穂(あれ? もしかしなくても私、いま真奥さんと抱き合ってるんじゃ……)

千穂「っ〜〜〜!!」ボンッ

真奥「そうだ! 聞いてくれちーちゃん!」

千穂「ええっ!?」

千穂(このままで!? いやいいですけど、いいですけどっ!)ガーン

真奥「俺、見つかったんだよ!」

千穂「はい? 見つかったって…」

真奥「住み込みのバイト! 千葉で! 明日から!」

千穂「……」

千穂「……えっ?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:48:30.82 ID:flm3gi2mO<>

真奥「ほら、ナベさんいるだろ? 七夕の笹くれた人。あの人に紹介してもらってさ!」

千穂「へ、へぇー。よかったじゃないですか」

真奥「いやー、実は俺も住み込みは半ば諦めてたんだけど」

千穂「わーすごーい。さすが真奥さん」

千穂(あれ…なんでだろ… なんか、あんまり嬉しくない)

真奥「暑い中歩き回った甲斐があったなぁー。まじ吸血鬼じゃないけど溶けるかと思ったぜ」

千穂(いいこと…なのに。真奥さんが家と仕事両方みつけられて、安心できるはずなのに)

真奥「まさにあれだな、捨てる神あれば拾う神ありってな。拾う神がナベさんってのもなんだか変な……って、ちーちゃん聞いてる?」

千穂「あ、はい…… その、おめでとうございます」

真奥「おう… あ、ありがとう……?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:49:55.71 ID:flm3gi2mO<>

千穂「………」

真奥「……ちーちゃん?」

千穂(そっか私……真奥さんに………)

真奥(なんか、ちーちゃんの様子が変だな。やけに元気ないっつーか)

千穂(……最低だ………私………)


千穂「あの…真奥さん」

真奥「ん、なに?」

千穂「………ごめんなさい」

真奥「えっ? な、なんで?」

千穂「今は……聞かないでください」

真奥「ええー……?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:51:41.13 ID:flm3gi2mO<>

千穂「その代わり、じゃないですけど」

千穂「もうちょっとだけ…このままでいてもいいですか……?」ギュ

真奥「はっ…?」

千穂「………」

千穂「………」グスッ

真奥「!」

真奥「……分かった。いいよ、ちーちゃん」

千穂「……ありがとうございます……真奥さん」




里穂「………」チラ



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:52:58.55 ID:flm3gi2mO<>

里穂(あれれー? どうして二人とも抱き合ってイチャイチャしてるのかなぁー? おっかしいぞぉー?)


里穂(………なーんて、茶化してあげるつもりだったのに)



千穂「……えぅっ……ぐすっ……」

真奥「………」

千穂「ごめんなさいっ……ごめん……なさい……」

真奥「………」ナデナデ




里穂(どうやらそういう感じじゃなさそうね。よくわからないけど)


里穂(ごはん、できましたよー…)
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/23(月) 21:55:35.28 ID:flm3gi2mO<> なんで自分のSSはヒロインがすぐ泣くのか疑問 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/23(月) 22:08:36.00 ID:Ht8Rjj0n0<> それはお前が泣いてる女の子が好きだからなんやで <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/24(火) 12:20:27.81 ID:XYOXtgbgo<> 泣けば許されるのもあるし
泣かせときゃなんとかなるだろ、死なせときゃ悲しくなるだろとかそういうのなんじゃね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:50:26.67 ID:EKTuPBYl0<> なるほど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:51:15.33 ID:EKTuPBYl0<>

夕食後



真奥「はー……幸せだ。仕事は見つかるし、飯はうまいし」

里穂「ふふ。まあもともとが不幸でしたし、これも巡り合わせですよね」

真奥「ですかねー。でも不幸中の幸いにしちゃあ具合がよすぎるといいますか」

里穂「はい?」

真奥「正直なところ俺、里穂さんのご飯が食べられただけで家に穴あいてよかったと思ってますもん」

里穂「っ…… ま、真奥さん? もしかしてわざとやってません…?」

真奥「え? どういう意味ですか?」

里穂「……なんでもありませんー」プク

千穂「ごちそうさま。お母さん、私お風呂掃除してくる」

里穂「あ、はーい」

千穂「ついでにお湯はっておくから。真奥さんもいるし、入浴剤使ってもいいでしょ?」

里穂「えっと…そうね。ありがとう千穂。お願いします」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:52:07.91 ID:EKTuPBYl0<>

里穂「……」

里穂「…あっ! あの真奥さん、苦手な香りなんてあります?」

真奥「いえ、たぶん無いですね」

里穂「千穂ー! 入浴剤、千穂の好きなやつ使っていいわよー!」


「はぁーい」


里穂「ふぅ…」

真奥「ちーちゃ…じゃなかった、千穂さんどうしたんですかね」

里穂「どうしたんでしょうねぇ。真奥さんもご存知ないんですか?」

真奥「さっきは何でも無い、と。あと、泣いたら少し落ち着いた、とだけ言ってましたけど」

里穂「ほかに心当たりは?」

真奥「さぁ……ただ、俺が家と仕事が見つかったことを話したあたりから、急に様子が変わったかなとは思いましたけど」

里穂「あら、それは本当に?」

真奥「うーん、そんなに自信はないです」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:54:47.97 ID:EKTuPBYl0<>

里穂「……真奥さん、たぶんそれです」

真奥「え?」

里穂「千穂の様子が変わった理由です」

真奥「えっと…… もしや、俺の移転先が決まったからですか?」

里穂「はい。母親として…いえ、女性としての勘もそう言ってます」

真奥「…まじです?」

里穂「まじです」

真奥「まじですか…」

里穂「真奥さん。ちょっとだけで構いません……あの子の気持ちを汲んであげてはもらえませんか…?」

真奥「………」

里穂「真奥さん…」

里穂(千穂はどうしてもあなたに……)


真奥(ちーちゃん…)

真奥(全然気づかなかった……まさかそこまで俺のこと……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:55:31.05 ID:EKTuPBYl0<>

真奥「分かりました」

里穂「!」

真奥「そういうことなら、すぐにでも行かなきゃですね」

里穂「真奥さん…!」

真奥「短い時間でしたけど、本当にお世話になりました」

里穂「………」

里穂「えっ?」


真奥「それじゃ俺、千穂さんの部屋に荷物置いちゃってるんで取ってきますね」ガタッ

里穂「ちょっちょっ! ま、真奥さん! 待ってください!」

真奥「なんでしょう?」

里穂「えっ? えーっと…? なにを仰ってるんですか?」

真奥「なにって、今すぐ荷物をまとめて出ていかないとですよね?」

里穂「………はああ!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:56:04.85 ID:EKTuPBYl0<>

真奥「り、里穂さん?」

里穂「あ…… し、失礼しましたわ、おほほほ…」

里穂「じゃなくて、真奥さん! なんで出て行こうとしてるんですか!?」

真奥「ええっ? いや、だってそこまで千穂さんに嫌がられたら、すぐさま出て行くべきじゃないですか」

里穂「………すみません、真奥さんがなんでそう判断したのか、私には全然わかりません」

真奥「なんでもなにも、嫌な対象には居なくなってもらうのが一番で……あ、でもそうですね、一言だけでも謝ってからのほうがいいですよね」

里穂「そっちじゃありません! 真奥さんが千穂に嫌がられてるっていうほうですよ!」

真奥「えぇっ!? そこですか?」

里穂「当たり前です! 何をどう考えたらそうなっちゃうんですかもう……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:57:00.76 ID:EKTuPBYl0<>

真奥「いやいや、それこそ自明じゃないですか」

里穂「どうしてですか…一応聞きますけど」

真奥「だって俺の家と仕事が見つかったのって喜ばしいことじゃないですか、少なくとも俺にとっては」

里穂「そうですね」

真奥「でもそこで千穂さんが気を落としたってことは、それが残念ってことですよね」

真奥「言い換えれば、千穂さんは本心じゃ、俺に家と仕事を見つけてほしくなかったってことです」

里穂(ここまでは合ってるわね)

真奥「それはつまり…」

里穂「つまり…?」

真奥「俺のこと、家なんて見つからずに野垂れ死ねって思うくらい嫌ってるってことじゃないですか」

里穂「なんでやねーんっ!!!」バシンッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:57:55.80 ID:EKTuPBYl0<>

真奥「里穂さん!? 関西弁でツッコミって…急に性格変わってますけど!?」

里穂「この際どうでもいいです! もうほんとなんでやねんですっ!!」バシバシ

真奥「いたたっ! ちょっ、やめて下さいよ!」

里穂「はぁ…はぁ…」


里穂「真奥さん、あなたは私を怒らせましたよ」

真奥「ええー…… 全然意味が分からないんですけど……その、すいません」

里穂「わからないなら謝られてもちっとも嬉しくありません」

真奥(そもそも謝られて嬉しいってのがなんか違う気がするが……そんな指摘をする空気じゃねぇな)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:58:29.11 ID:EKTuPBYl0<>

里穂「さっきの真奥さんの説明、全体的には理論が立っていて非常にわかりやすかったことは評価します」

真奥「はあ、どうも」

里穂「ですが最後の最後、あそこだけどうしてそんな解釈をしちゃうんですか! 論理の飛躍もいいとこです! ぶっ飛びすぎてアームストロングさんもびっくりです!」

真奥「里穂さん、その例えは如実に年齢が出るんじゃ…」

里穂「はっ!」

真奥(あ、やべ。空気読めなかった)


里穂「と、とにかくですね! 真奥さんはもう一度最初からやり直しです!」

里穂「いいですか? ちゃんと女の子の気持ちになって、千穂の思ってることを推理するんですよ?」

真奥「と言われても……俺男なんですけど」

里穂「い・い・か・らっ」

里穂「少なくとも千穂は、真奥さんに今すぐ出て行ってほしいなんて思ってませんから。だから席に着いてください」

真奥「は、はい」ストッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/24(火) 23:59:34.51 ID:EKTuPBYl0<> 徐々に追いついてきたな…
またでし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/25(水) 00:51:24.06 ID:RqwHHWqI0<> おつ
真奥が鈍感系キャラって少し違和感あるな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/25(水) 01:00:09.36 ID:mi4nfNPlo<> 乙でした
まあ魔王だしなぁ、好意なんて縁が無いんじゃね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/25(水) 02:03:34.18 ID:Ik3LgA940<> 乙でございます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:34:31.42 ID:NWXtYfej0<>

ガチャ


千穂「はー…あつー…」

真奥「あ、ちーちゃん」

里穂「ごくろうさま。アイスあるけど食べる?」

千穂「食べる!」

千穂「……あ、でも、お風呂あがってからにしようかな」

里穂「わかったわ。あとで用意しておきますね」

千穂「真奥さん、お先にどうぞ。あと10分くらいでたまると思うので着替え持ってきてください」

真奥「えっ? 俺が最初でいいの?」

千穂「お客様ですから。一番風呂は真奥さんです」

真奥「客ってか居候だけどな。いいよ悪いし、俺は最後で」

千穂「もぉー、そんな遠慮しなくていいんですって」

真奥「んん…でもなぁ」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:35:17.68 ID:NWXtYfej0<>

千穂「…それとも真奥さん、私とお母さんの入った後のお風呂のほうがいいってことですか?」ジト

真奥「えっ? い、いやいや! そんな意味で言ったんじゃないから!」

千穂「へー? ほんとですかー? へー? なんかあやしいなぁー真奥さん。へー?」

真奥「わかった、わかったからちーちゃん! へーって3回も言わないで!」

千穂「わかってくれればいいんです」

里穂「ほら、だから真奥さん、千穂の気持ちを考えてあげなきゃですよ」

真奥「うっ……そうでした」

千穂「うん? なんの話?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:36:01.47 ID:NWXtYfej0<>

里穂「千穂は、真奥さんが入った後のお風呂に入りたいって言ってるんです」

千穂「……」

千穂「なあっ!?!?」

真奥「え……そうなの? ちーちゃん」

千穂「ち、ちちち違います違います!! そんなこと、これっぽっちも考えてませんっ!」

真奥「だ、だよなぁ。安心した」

千穂「やめてよもーお母さん! 真奥さん来てからそんなんばっかじゃん…」

里穂「ふふふ。だってー。千穂、真奥さんのことになると面白いんですもの」

千穂「はぁ……」

真奥「じゃあ失礼して、先にお風呂いただきますね。着替えとってきます」

里穂「はーい」


千穂(でも、そっか)

千穂(言われてみれば、真奥さんが先に入るってことは逆に………)ゴクリ

千穂(ってわああ! じゃないじゃない! バカバカ私のバカー!)ポカポカ

里穂(ほんと、面白いわねぇ〜)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:36:38.50 ID:NWXtYfej0<>

チャポ


真奥(かーっ! やべぇめっちゃ気持ちいい)

真奥(今日はだいぶ歩いたからか、湯の心地よさが全身に染み渡るぜ……)


真奥(しかしこれが家庭の風呂か。間取りは知っちゃいたけど入るのは初めてだな)

真奥(いつもの銭湯に比べりゃ狭いが、一人で浸かる分にはむしろちょうどいいんじゃねぇか?)

真奥(おまけに湯が白い。入浴剤の匂いもいいし、疲れが徐々に吸い取られてるような感じがする)

真奥「くぁあ……」

真奥(……)コク

真奥(っと、まずいまずい。眠気が……)


コンコン


千穂「あ、あのー、真奥さーん」


真奥(………)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:37:57.48 ID:NWXtYfej0<>

千穂「えっと、すいません、バスタオル渡すの忘れてました。着替えの上に置いときますねー」


真奥(………)ブク


千穂「……?」


真奥(………)ブクブクブク


千穂「……真奥さーん? 入ってますよね? 真奥さ」

真奥「ぐぼっ!? あぼっ……えぼぼぼっ…!!」

千穂「!?」ビクッ


真奥「ぶはっ!! がほっ、おぼっ……があああっ…!!」

真奥(いってえええ!! 目と鼻と気管に水がああ……っ!!)

千穂「ま、まま真奥さん!? どうしたんですか真奥さんっ!?」

千穂(すごい叫び声…! それにすごい苦しそうな…)


千穂(っ! まさか……)


千穂(エンテ・イスラからの刺客!?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:39:07.52 ID:NWXtYfej0<>

真奥「はぁっ…はぁっ……げほっ!!」


千穂(もしや真奥さん、また何か不思議な力で攻撃されてるんじゃ…!?)


真奥「うげほっ! ごほっ…がほげほっ…」


千穂(た、助けなきゃ! 真奥さんにもしものことがあったら……私……っ!!)


バンッ!


千穂「真奥さんっ!! 大丈夫ですかっ!?」ドーン

真奥「くっそ……あー…しんど…… 鼻は痛ェよ、鼻は」

千穂「…………」


千穂「あ、あれー?」

真奥「えっ? ちーちゃん!?」

千穂「あ……」

真奥「なんで中に…?」

千穂「わわ! あわわあわわわわっ!!!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/25(水) 22:42:08.25 ID:NWXtYfej0<>

千穂「だってま、まおさんっ、いま何かに襲われて…」

真奥「は?」

千穂「その、叫び声とか、むせ返ったりとか」

真奥「……ああ! えっと、ちょっとウトウトしちまって、湯船で溺れそうになってさ」

千穂「へ…… あっ、そ、そうですよね!」

真奥「いろんなとこに水入って死ぬほどむせてた。ややこしい真似してごめんな」

千穂「あーなるほどー。それであんな苦しそうに……」


千穂「ってぇ!! す、すすすいません私こそすごい勘違いしちゃって! すぐに出ますから……っひゃん!?」ズルッ


ベシャ!


真奥「ちーちゃん!?」ザバッ

千穂「うー……いたた、すべっちゃいました」

真奥「大丈夫か? 手ぇ捻ったりしてない?」

千穂「は、はい。たぶんケガとかは………」

真奥「そっか、よかった」

千穂「………………」

真奥「ん? ちーちゃん、どうかした?」


千穂「あ………ああ…………ああああ……」カァァ

真奥「え……?」


真奥「あ」(全裸)


千穂「へぁ……」クラリ


バタッ


真奥「おわあっ! ちーちゃーーーん!! り、里穂さぁーーーん!!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/25(水) 22:46:29.23 ID:frfOsug6O<> いいぞもっとやれ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/26(木) 00:05:25.71 ID:28u8z8kT0<> やっぱ魔王サイズなのかな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:18:04.64 ID:fOZZgBgv0<>

ガチャ


真奥「お風呂どうもでした」

里穂「おかえりなさい真奥さん。お湯加減はよろしかったですか?」

真奥「あ、はい。すごく気持ちよかったです。それで……」

里穂「千穂なら自分のお布団に寝かせましたよ」

真奥「大丈夫なんですか?」

里穂「はい。一旦は目覚めましたし。ぼやっとしてて、着替えさせたらそのまま横になっちゃいましたけど」

真奥「そうですか…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:18:40.69 ID:fOZZgBgv0<>

真奥「あの、里穂さん」

里穂「なんですか?」

真奥「……怒ってないんですか?」

里穂「そうですねー。さすがにちょっと叱ってあげなきゃとは思いましたね」

真奥「ですよね……」

里穂「ただ今はあの子もけっこう参ってたみたいですし。叱るのは具合が良くなってからでもいいかなーって」

真奥「えっ? いや、千穂さんじゃなくて。俺ですよ、俺」

里穂「はい?」

真奥「普通、自分の一人娘があんな目に遭ったら、親としては気が気じゃないんじゃないですか?」

里穂「うーん、まあ主人だったら問答無用で怒り狂うかもしれませんけど」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:19:14.75 ID:fOZZgBgv0<>

里穂「今回はどちらかといえば真奥さんが被害者なわけですよね。なら、真奥を怒る理由なんてありません」

真奥「でも元はと言えば俺が溺れて叫んだりしたのが原因みたいですし」

里穂「それだって、わざとじゃないんでしょう?」

真奥「それは…」

里穂「それとも真奥さん? 千穂がいるのを知ってて、やましいことを狙って声をあげたって腹なんですか?」ジト

真奥「ち、違いますよっ! ほんとに気がついたときにはお湯の中で、呼吸もままならなかった状態で…」

里穂「ほうら。それじゃあ真奥さんを起こるのはお門違いです」

真奥「うむむ」

里穂「というより、様子が変だからって真奥さんのいるお風呂場にいきなり突撃した千穂がおかしいんです!」

真奥「あー、まあ…」

真奥(ちーちゃんだから、だと思うけどな。俺らの件に関わってなきゃそんな突飛な行動には至らなかっただろうし)

里穂「意外と度胸の座ってる子なのは知ってましたけど……まさかまさかです……ほんとにすみません…」シク

真奥「いやいや! やめてくださいよ里穂さん、頭を上げてください!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:19:55.23 ID:fOZZgBgv0<>

真奥「とにかく、溺れた俺にも非はありますって」

里穂「真奥さん…」

真奥「だから今回はおあいこってことにしませんか? 千穂さん本人がいないのに取り決めるのも変な話ですけど」

里穂「……真奥さんがそれでいいなら、そうさせてもらっちゃおうかしら」

真奥「はい。千穂さんには俺からちゃんとお詫びしますんで」

里穂「ふふ」


里穂「本当に、お優しい方ですよね。真奥さんって」

真奥「いやいや、そんなんじゃないですよ」

里穂「まだ出会って間もないですけど、わかります。真奥さんが……人の心を大切にできる方だっていうこと」

真奥「………えっ」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:20:28.30 ID:fOZZgBgv0<>

里穂「私だって、そこまで人生経験が豊富ってわけじゃありません。まだまだ多くの面で未熟者です」

里穂「でも何十年も生きて……人として生きて、人と接して」

里穂「そうしているうちにですね、少しだけ分かるようになったことがあるんです」


里穂「いま自分がお話している人が、ちゃんと人の心を見ることのできる人なのか」


真奥「……」

里穂「そういうのって、表面をぱっと見ただけじゃわからないんです」

里穂「一見誰かにいいことをしている優しそうな人でも、それを名誉や体裁のために行っているとき、その目は相手の心を見てはいません」

里穂「どこか遠く… あるとも分からない、欲望の中にある自分の理想像を見つめているんです」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:21:00.35 ID:fOZZgBgv0<>

里穂「反対に、本当に人の心を見て、それを大事にできる人…… その人を判断するのに行動は必要ありません」

里穂「そういう人っていうのはですね、ただただいっしょにお話しているだけで分かってしまうものなんです」


里穂「どんな話でも構いません。笑顔になるお話、涙が出るお話、昨日の夕食のお話」

里穂「ほんとに何だっていいんです。ただそのお話をしているときに、その人から伝わってくるんです」

里穂「あっ、この人は、ちゃんと私の心を見つめてくれてるんだな……って」


真奥「里穂さん…」

里穂「なーんて。ごめんなさいねぇ、こんなフワフワしたこと得意げに喋っちゃって。お恥ずかしいわぁ〜」

真奥「いえ、そんなことは」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:21:35.79 ID:fOZZgBgv0<>

里穂「でも、本当なんですよ。だから分かっちゃうんです。真奥さんがそういう人だってこと」

真奥「……」


真奥(人の心を大切にできる、ね)

真奥(そういや、いつしか魔王城で恵美に似たようなことを言われたっけか。ニュアンスは全然違うが)

真奥(今の俺が本当にそうなんだとしたら………なんつーか、皮肉なもんだな)


里穂「一言で言ってしまうなら、思いやりがあるってことですね」

真奥「そんな出来た人間じゃないと思いますけどね。でも里穂さんにそう言ってもらえて、嬉しいです」

里穂「うふ。だって分かるんですもの。真奥さんにもあるんじゃないですか? そういう、少し不思議な力みたいなもの」

真奥「不思議な力…」



真奥「……ちょっとよく分かんないですね、そういうのは」

里穂「くすっ。ですよねー」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/26(木) 22:23:09.75 ID:fOZZgBgv0<> 久々にアニメ見返して里穂が微妙に出ていたことを知り
そしてイメージが違いすぎてびくっりした <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/28(土) 02:27:04.00 ID:xj/S2ExiO<>

里穂「なんだか脱線してしまいましたね。何のお話でしたっけ?」

真奥「えっと…… あ、そうだ。ちーちゃ…千穂さんに謝らなきゃなって」

里穂「そうでしたね」

里穂「あの、ちーちゃん、で構いませんよ? そっちのほうが呼びやすいんですよね?」

真奥「まぁ、いつもはそうやって呼んでるんで。いいんですか?」

里穂「もちろんです。なんなら、いっそ千穂って呼び捨てにしてあげてもいいと思いますよ!」

真奥「はは。それじゃ結局呼びにくいじゃないですか」

里穂「んー… そーいうことじゃないんですけど」

真奥「えっ?」

里穂「いーえ。なんでもないでーす」


里穂「でも真奥さん。私が思うに、逆にあの子のほうが延々と謝ってくると思いますよ」

真奥「あー…それはなんか想像できますね」

里穂「そうなんですか?」

真奥「だって、ちーちゃんはそういう子じゃないですか」

里穂「あら? やっぱり、真奥さんも分かるんじゃないですか」

真奥「いやいや里穂さんみたいなのとは違いますよ。バイトの研修もほとんど全部俺が見ましたし、一般人のうちじゃ一番付き合いもありますしね」

里穂「それは………って、一般人?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/28(土) 02:27:58.88 ID:xj/S2ExiO<>

真奥「あ、いやその……バイト先以外での交流って意味です!」

里穂「そういうことですか。一瞬、真奥さんが有名人か何かなのかと思っちゃいました」

真奥「すいません、ややこしい言い方しちゃって」

里穂「いえいえ。ちょっと安心しましたし」

真奥「え? 安心ですか?」

里穂「あ……えっと、これ言っちゃダメかもしれないんですけど……」

里穂「千穂、今回真奥さんの家がなくなるって知って少し焦ってたんです」

真奥「はあ」

里穂「もし真奥さん達が笹塚にいられなくなって、遠くへ行ってしまったらって」

里穂「それで、まぁちょっと違うんですけど、もし実は真奥さんが有名人だったらです。そしたら、そういう人って一般人の千穂にとっては手の届きにくい存在じゃないですか」

真奥「…そうですね」

里穂「……これ以上は千穂に怒られちゃいますね」

里穂「でも、だから真奥さんがそういう遠い世界の人じゃなくて安心したってことです♪」

真奥「里穂さん…」

真奥(俺、実は魔王なんです)

真奥(とか、いつかこの人に明かす日が来るんだろうか)
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/28(土) 02:28:35.61 ID:xj/S2ExiO<>

里穂「あの、真奥さん。別に重たい意味じゃなく、素直に聞いてほしいんですけど」

真奥「はい?」

里穂「これからも、千穂のことよろしくお願いします」

真奥「……」

里穂「真奥さん?」

真奥「あ、いえ。もちろんです。俺に任せてください」

里穂「まあ!」

真奥「ちーちゃんは大事なクルーですからね。どんなミスやトラブルがあっても、必ず守ってみせますよ」

里穂「ああー……」

真奥「?」

里穂「うん、まあ。今のところはそれでお願いしますね」

真奥「あ、はい」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/28(土) 02:29:20.46 ID:xj/S2ExiO<>

里穂「真奥さん、もうそろそろ寝ますか?」

真奥「まだ21時にもなってないじゃないですか。いまどき小学生でもそうそう寝てませんよ」

里穂「そう言いますけど、近年は大人こそ早寝だったりもするんですよ?」

真奥「それにしても早すぎじゃ…… あ、でもちーちゃんの部屋には行ってみようかなと」

里穂「あら? あらあらあらー?」ニヤ

真奥「なんですかその含みのある笑顔…」

里穂「えっ? なーんでもっ?」

真奥「言ったじゃないですか、後でお詫びするって。そもそも俺の荷物もちーちゃんの部屋に置いたままですし」

里穂「うふ、分かってますよ」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/28(土) 02:30:09.27 ID:xj/S2ExiO<>

里穂「よかったら千穂の様子を見てきてくださいな。私は先にお風呂に入ろうと思うので」

真奥「あ、はい。伝えておきますね」


里穂「それと、真奥さん!」

真奥「うわっと…… なんです?」

里穂「私、お風呂が大好きなんです」

真奥「はい?」

里穂「なので、少なくとも1時間くらいは出てこないと思います」

真奥「ああ、分かりました。それも伝えておきます」

里穂「千穂は知ってますよ。じゃなくて真奥さん」


里穂「ご・ゆ・っ・く・り ♪ 」ニコ


真奥「だからなんですか、その含みのある顔…」

里穂「べっつにー? じゃあ、行ってきまぁーす」



真奥「はぁ……」

真奥(ほんと時々無邪気だよな、里穂さん)

真奥(さてと、ちーちゃんの部屋行くか)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/29(日) 15:09:41.46 ID:SvMQojhmo<> 鈍感力 <>