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HTML化した人:Kastanie
水木聖來「えっ?肇ちゃんウインク出来ないの?」
1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:50:03.04 ID:LHm+04df0
SS VIP初投稿です。
よろしくお願いします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1472601002
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:50:38.24 ID:LHm+04df0
肇「はい…」

驚いた聖來さんに、私は肩を落としながら答える。

「ウインクが出来ない」

それは、日頃からビジュアルレッスンで、「表情が固い」とトレーナーさんに指摘される私の、特に苦手な課題。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:51:35.02 ID:LHm+04df0
最近ようやく、笑顔は自然になってきたと言われるようになったものの、未だにウインクだけは克服できなかった。

ポップなアイドルの曲では、当然振り付けにウインクも含まれていて、避けては通れない。

今日のレッスンでも怒られてしまい、戻った事務所で大きなため息をついたところを、たまたま居合わせた同僚たちに見られ、相談に乗ってくれたのだけど…
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:52:17.04 ID:LHm+04df0
聖來「なるほどねぇ…」

いつき「うーん、ウインクかぁ…特に意識しなくても出来ちゃってたからなぁ…」

紗枝「うちもやなぁ。肇はん、こないな感じに、ぱちこーんって、出来へん?」

いつきさんも紗枝ちゃんも、パチンと、いとも簡単に見事なウインクをきめる。

うん、とてもかわいい。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:53:27.47 ID:LHm+04df0
肇「…頭の中でイメージは出来るんです。でも、思うように瞼が動かなくて…」

いつき「うーん、難しく考えすぎなんじゃない?もっとらく〜に考えてみようよ!」

聖來「んー、確かにそれはあるかもね。まぁ、肇ちゃん真面目だし、そこが可愛いところでもあるんだけどね。」

そう言って聖來さんも素敵なウインクをきめる。

うぅ、優しいフォローが今は痛いです…
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:54:02.74 ID:LHm+04df0
紗枝「ちなみに肇はん、苦手いうんはどこまでなもんなんやろ?」

いつき「あーそうだね。とりあえずちょっとやって見せてよ。」

肇「いいですけど…ほんとに出来ませんよ?」

聖來「まぁまぁ。何かアドバイス出来るかもしれないし。試しに、ね?」

肇「わかりました…」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:54:29.66 ID:LHm+04df0
確かに、出来る人にアドバイスをもらうのが一番かもしれない。

軽く息を吸って、覚悟を決める。

肇「じゃあ、いきます。」

3人の視線を受けながら、私なりのウインクをする。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:55:06.60 ID:LHm+04df0
肇「…………」

3人「…………」

肇「…………」

いつき「……あー」

聖來「……これは、なかなか強敵だね…」

紗枝「……あらぁ…」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:55:36.28 ID:LHm+04df0
三者三様の反応。

そのどれからも、何とかフォローしようという空気を感じる。

うぅ…だから言ったのに…
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:56:02.37 ID:LHm+04df0
肇「……えっと、どう、でした?」

紗枝「……想像以上やったわぁ。」

グサッ

思わずこぼれたであろう、紗枝ちゃんの一言が刺さる。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:56:46.97 ID:LHm+04df0
思ったことをはっきりと言ってくれる。

この子のいいところなんだけれども、今回はもうちょっと、オブラートに包んで欲しかった。

彼女の場合は八つ橋に…?

いや、それだと周子さんか。

そんなくだらないことを考えて、何とか心の平静を保つ。

大丈夫、まだ頑張れる。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:58:29.56 ID:LHm+04df0
聖來「えーっと、とりあえずは、どっちかの目を開けるといいんじゃないかな?」

肇「これでも一応開いてはいるんです…」

いつき「えっ、うそ。どっちが?」

肇「……左が。」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 08:59:00.89 ID:LHm+04df0

いつき「……あれでかぁ。」

紗枝「……両方瞑ってはるようにしか、見えへんかったなぁ。」

グサグサッ

今度は、二人からの本音。

あ、ちょっと挫けそう。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:00:34.77 ID:LHm+04df0
聖來「ま、まぁ、一応は開けられるんだし、少しずつ、もっとぱっちり開くように練習しよう!ね!きっと出来るよ!」

聖來さんの言葉で、折れかかった心が何とか踏ん張る。

肇「うぅ、でも、具体的にどうやったら…」

いつき「あっ、あれは?視力検査みたいなやつ!」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:02:50.54 ID:LHm+04df0
聖來「閉じる方の目を押さえてみる方法ね。ちょっとやってみようか。利き目は左?」

肇「えっと、開けられているのは左なので、左目かと。」

紗枝「……うっすら」

肇「もう!紗枝ちゃん!」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:03:41.54 ID:LHm+04df0
聖來「はいはいからかわないの!いつきも笑わない!」

そういう聖來さんも、少し笑いを堪えている。

……そんなに変だったのかなぁ。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:04:51.09 ID:LHm+04df0

聖來「こほん!で、左が利き目だから…ちょっと右目押さえてみて。」

肇「わかりました。」

軽く、右の瞼を指で押さえる。

左目は、パッチリと開いている。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:05:43.13 ID:LHm+04df0
聖來「あら、ちゃんと開くじゃない。」

肇「まぁ、今まで視力検査はこなせてきてましたので。」

いつき「やっぱり、難しく考えすぎだったんじゃない?案外簡単に出来そうじゃん!」

肇「確かに、なんか出来そうな気がしてきました。」

聖來「じゃあ離してみよう!」

肇「はい!」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:07:16.33 ID:LHm+04df0
ぱっと、指を離す。

その瞬間、右目もパッチリと開く。

そのままぱちくりと、二度三度と瞬きを繰り返す。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:08:04.42 ID:LHm+04df0
3人「……………」

肇「……………」

3人「………(プルプル」

肇「……どうぞ、笑ってください…」

紗枝「な、なんでやの……(プルプル」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:08:32.10 ID:LHm+04df0
紗枝ちゃんがちっちゃい肩を震わせながら尋ねてくるけど、そんなの私が知りたい。

なんでこの瞼は言うことを聞いてくれないのか。

いつき「肇ちゃん、意外と不器用なんだねぇ」

肇「手先には、それなりに自信あるんですけど…」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:08:58.51 ID:LHm+04df0
結局、その後も数回試しはしたものの、結果は全部同じ。

どうも、この方法はダメみたい。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:10:09.16 ID:LHm+04df0
聖來「……なら、逆を試してみましょ。」

肇「逆、ですか?」

聖來「開こうとするのを押さえるのがダメなら、閉じようとする方を押さえてみるの。」

いつき「あー、目薬さす時にやるような感じ?」

肇「なるほど…」

左目を指で開かせながら、右目をぎゅっと瞑ってみる。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage]:2016/08/31(水) 09:10:16.40 ID:uC7FZFNgo
>>彼女の場合は八つ橋に…?

(薄い餅みたいな八つ橋の皮のことやったら求肥って言うんやで)
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:11:00.94 ID:LHm+04df0
紗枝「……なんや、もう左目がぷるぷるしてはるけども…」

いつき「……そういう紗枝ちゃんも、もうぷるぷるしてるよね…」

紗枝「いつきはんかて……」

聖來「……二人は気にしなくていいから。肇ちゃん、指を離してみて。」

肇「はい…」

変なツボに入ったのか、既に笑いを堪えている二人をよそに、そっと指を離す。
すると――
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:11:48.37 ID:LHm+04df0

聖來「出来てる!出来てるよ肇ちゃん!あーでも左目どんどん細くなってってる!」

肇「う〜、そ、そんなこと言われても〜」

紗枝「あかん!あかんよ肇はん!ここで目ぇ閉じたらあかん!ほら!うちを見て!しゃっきりしぃ!」

いつき「なんで雪山で遭難したみたいになってるの!っていうか肇ちゃんも見なくていいから!」

聖來「ちょっと!すごい顔になっちゃってるわよ!アイドルがしちゃいけない顔になってる!」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:13:03.96 ID:LHm+04df0
そう言いながら、3人とも笑ってる。

もう、釣られて私まで笑っちゃって、結局この方法でもダメ。

しばらく4人で笑いあって、落ち着くまでに10分くらい掛かった。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:14:05.16 ID:LHm+04df0
肇「はぁ…結局無理なんですかね〜…」

この日、何度目かになるため息をつく。

いつき「……まぁ、あれで出来たとしても、自然にできるようにならないとダメだよね〜」

聖來「最初は感覚を覚え込ませてって思ったんだけどなぁ…あとは表情筋を鍛えるってのがあるみたいだけど。」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:15:14.59 ID:LHm+04df0
紗枝「……地道〜にやるしか、あらへんのかなぁ。」

肇「……まだしばらくは、レッスンで怒られるのかな〜」

すっかり諦めムードで落ち込んでしまう。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:15:44.83 ID:LHm+04df0
ふと、開いていた窓から、びゅーっと、強めの風が。

顔にまともに受けてしまって思わず目を閉じる。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:16:29.55 ID:LHm+04df0
肇「痛っ…」

紗枝「どないしたん?」

肇「左目に、埃が入っちゃったみたい…ゴロゴロする…」

いつき「あー、今目薬持ってないや。瞬きしたほうがいいよ。」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:17:17.64 ID:LHm+04df0
いつきさんに促されるまま何度か瞬きをする。

繰り返すうちにじんわりと涙が出てきて、埃を洗い流してくれた。

肇「んー、取れた、かな。いつきさん、ありがとうございま……?」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:17:52.54 ID:LHm+04df0
ハンカチで涙を拭いて顔を上げると、3人ともポカンとして私を見ている。

なんだろう、涙で目でも腫れちゃったんだろうか。

肇「えっと…?」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:18:23.93 ID:LHm+04df0
紗枝「肇はん!出来とった!ういんく、出来とったよ!」

肇「……は?」

紗枝ちゃんに言われて、今の行動を思い返す。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:19:31.76 ID:LHm+04df0
いつきさんに促されるまま、涙を流そうと瞬きを繰り返した。

無意識のうちに、埃の入った、左目だけを。

それは、今まで散々苦労しても出来なかったことで――

肇「――あっ」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:20:19.82 ID:LHm+04df0
やっと、出来た。

出来てしまえば、なんてことはなかった。

なぜこんなことが出来なかったのか、不思議に思えるくらい、あっさりと。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:21:08.51 ID:LHm+04df0
いつき「なるほどねー、そういうことかー。」

聖來「利き目が逆だったんだね。どうりでやりづらいわけだよ。」

紗枝「よかったなぁ、肇はん。」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:21:36.22 ID:LHm+04df0
でも、よかった。

これでレッスンもこなせる。

やっと、次のステップに進める。

じんわりと、安堵と、感謝の気持ちが、胸にわいてきた。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:22:32.77 ID:LHm+04df0
肇「みなさん…ありがとうございます!」

いつき「いいっていいって。そんな大したことはしてないし。」

紗枝「せやなぁ。結局うちもあんましお手伝い出来へんかったんに、そんなお礼なんてなぁ?」

肇「……えっ。」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:23:06.39 ID:LHm+04df0
いつき「そうだねー。まぁクレープ辺りが妥当かなー。」

肇「えっ、あのっ。」

聖來「そういえば、この前駅の近くに美味しそうなお店がオープンしたんだってね。そこにしようか♪」

肇「あれ、聖來さんまで。」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:25:42.89 ID:LHm+04df0
いつき「…肇ちゃん、最近元気なかったからちょっと心配してたんだよ。」

聖來「なんとなく、上手くいってないのはわかったしね。」

紗枝「うちらで、なんとか元気づけられんかなーって、話しとったんよ。」

肇「えっ、あっ…」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:28:03.53 ID:LHm+04df0
ポカンとしているうちに、3人は私を置いて足早に歩いて行ってしまう。

照れ隠し、なんだろうか。

……なんだか結局、振り回されっぱなしだ。

もっとも、相談には乗ってもらったし、ありがたいことに、解決まで付き合ってくれたけども。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:28:54.68 ID:LHm+04df0
先にいった3人は、振り返ると早く来いと言わんばかりに笑って手招いている。

……まぁ、このくらいはいい、かな。

苦笑しながら息を吐く。

今度は、ため息ではなかった。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2016/08/31(水) 09:30:02.85 ID:LHm+04df0
以上になります。
ありがとうございましたー。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage]:2016/08/31(水) 10:55:11.09 ID:SLCJDZ9w0
乙乙
両目ともウインクできんわ
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage]:2016/08/31(水) 11:25:51.53 ID:JNkF6/uOO
乙です。
可愛いなぁ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage]:2016/08/31(水) 12:14:42.39 ID:jz+ZC95gO
>>45
両目でウィンクすればよくね?
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage]:2016/08/31(水) 18:47:43.81 ID:yfRN6qoho
紗枝「こやろか?」グギギ
周子「思ってた百万倍くらいへたくそやな」

のイラスト思い出した



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