◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:04:52.49 ID:v1CXitZN0<>前の
藍子「ゆっくり止まっていく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474813680/

よしのんとか、ひじりんとか、歌鈴ちゃんとか、神様ちひろさんとか出ます。寺生まれのPさんは出ません



この辺を読んでおいたほうがいいかも

聖「私の歌を聞いてくれる人」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455549520/

芳乃「かみさま」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1457097186/

歌鈴「私の中の神様」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459093019/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479207891
<>瑞樹「過去へ還る道」
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:06:18.82 ID:v1CXitZN0<> ちひろ「さあ、つきました。ここが今日泊まる旅館ですよ」

聖「わぁ……!」

歌鈴「大きい……!」

芳乃「……こんなに高そうな場所で泊まって大丈夫なんでしてー?」

ちひろ「ふふ、心配後無用です」

ちひろ「皆さんにはゆったり休憩してもらって、明日からのお仕事もがんばってほしいので♪」

芳乃「……ほー」

ちひろ「あら、不信感?」

ちひろ「嫌でしたら、芳乃ちゃんが想像しているような旅館に泊まることにしてもかまいませんけど」

芳乃「いえ、なんでもありませぬー」

芳乃「早く中に入りましょー」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:07:10.78 ID:v1CXitZN0<> ちひろ「それじゃ、私は受付してきますので……その辺で待っててください」

歌鈴「あ、はいっ!」

芳乃「では、あちらに座っておりますー」

ちひろ「わかりましたー」

芳乃「では参りましょー」

聖「うん……」

歌鈴「ほわぁ……中もすごい綺麗ですねぇ……」

歌鈴「あの壷とか、掛け軸とかも高そうで……」

歌鈴「……ち、近寄らないようにしなきゃ」

芳乃「そこまで心配なさらずともー」

歌鈴「う、うん……でも私、ドジだから」

歌鈴「いつコケるかもわからないで……ひゃっ!」ガシッ

聖「きゃっ!?」

歌鈴「あっ……ご、ごめんなさい、聖ちゃん!」

聖「いえ、私は大丈夫ですが……」

歌鈴「うぅ……こ、こんな風にコケてつぼとか割っちゃったら……って思うと」

歌鈴「うぅ……怖い……」

聖「……あの、よかったらこのまま肩を掴んでますか……?」

聖「そしたら……こけないでしょうし……」

歌鈴「あ……」

歌鈴「……お、お願いします」

聖「いえ……」

芳乃(……奇妙な構図でしてー、ふふー) <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:07:47.88 ID:v1CXitZN0<> 歌鈴「よいしょっ!」

歌鈴「ふぅ……座れば一安心です……」

歌鈴「ありがとうございますっ、聖ちゃん」

聖「いえいえ……わっ、やわらかい……!」

芳乃「おぉー……」

芳乃「これは気持ちいい蕩けてしまいそうでしてー……」

歌鈴「うん……このまま溶けちゃいそう……ふにゃぁ……」

聖「このまま椅子になっちゃうかも……ふふっ」

芳乃「はぁ……」

歌鈴「ひぃ……」

聖「ふぅ……」

芳乃「……」

歌鈴「……」

聖「……」

ちひろ「受付終わりましたよ三人とも……あら、みんな幸せそうに蕩けちゃってる」

ちひろ「……写真とっておきましょう、ふふっ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:08:45.84 ID:v1CXitZN0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ちひろ「ここが私たちの部屋ですね」

芳乃「おー」

聖「部屋もすごく広い……!」

歌鈴「見てください! 窓の外も!」

聖「わぁっ……!」

芳乃「絶景かな絶景かなー」

ちひろ「うふふ」

ちひろ「……今日のロケもお疲れ様でした」

ちひろ「夕飯までは自由にしてていいですよー」

芳乃「わかりましてー」

聖「自由……何しましょう……?」

歌鈴「んー……」

ちひろ「この旅館、結構色々あるみたいですからねー」

ちひろ「探検してきてもいいんじゃないですか?」

聖「探検……!」

芳乃「……ちひろ殿ー、地図はありましてー?」

ちひろ「はい、どうぞ♪」

歌鈴「わっ、手早い……」

ちひろ「ふふっ、きっと必要だろうなって思ってましたから」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:09:16.14 ID:v1CXitZN0<> 芳乃「ふむー……」

歌鈴「……本当に色々あるんですね」

歌鈴「温泉とか、庭園とか……」

聖「……カラオケルームもあるんだ……」

芳乃「行きたいのでしてー?」

聖「あっ、いえ、別に……その……」

聖「……ちょっとしか」

歌鈴「ふふっ」

芳乃「……しかし、カラオケはいつでもできるゆえー」

芳乃「ここの旅館でしかできないことをしたほうがよいかとー」

聖「あ……うん、そうだよね……」

歌鈴「このロケ終わったら行きましょうね、聖ちゃん!」

聖「う、うんっ……!」

芳乃「わたくしはー?」

歌鈴「あ、もちろん一緒に行きましょう!」

歌鈴「あと、茄子さんと、朋ちゃんと、みくちゃんと……」

歌鈴「それに、ちひろさんとお兄さんも一緒に!」

ちひろ「あら」

芳乃「事務所勢揃いのカラオケでしてー」

聖「楽しそう……ふふっ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:11:33.77 ID:v1CXitZN0<> 聖「じゃあ……えっと……ここでできること……」

歌鈴「それなら……ここの庭園でも散策してみましょうか」

聖「……そうですね」

芳乃「では、それで決まりでしてー」

芳乃「……夕飯は何時でしてー?」

ちひろ「7時ですよー」

歌鈴「7時……」

聖「……まだ、だいぶ時間がありますね」

芳乃「ふむー……」

芳乃「……なれば、散策後にでも、温泉に行きましょー」

芳乃「庭園近くに温泉があるゆえー」

聖「あ……いいかも……」

歌鈴「じゃあ着替えも持っていかなきゃでしょうか……?」

芳乃「ふむー……持ちながら歩くのも面倒ゆえー、一度戻ってきた方がよろしいのではー?」

ちひろ「ああ、それなら私が持っていきますよ」

聖「……ちひろさんが?」

ちひろ「ええ。用意さえしてくれれば」

芳乃「ふむー……」

歌鈴「それなら、ちひろさんも一緒に来ませんか?」

ちひろ「いえ、私はまだやることがありますので」

歌鈴「あ……そうなんですか……」

ちひろ「本当ならプロデューサーさんにやってもらう仕事なんですけどね」

ちひろ「今は朋ちゃん達の方についてますから。私がやらなきゃ」

歌鈴「……大変ですね」

ちひろ「いえいえ。これで皆さんがアイドルを続けられるならなんてことないですよ」

ちひろ「それに、給与もちゃんと貰えてますし、ふふ」

芳乃「……なればこそー、私たちに着替えなど届けず、お仕事をしていてはー?」

ちひろ「いえいえ、そのくらいなら大丈夫ですよ。温泉の前にちょっとテレポートするだけですし」

聖「テレポート……」

ちひろ「三人には明日以降も楽しく、素敵なアイドルをしてもらうためにも、できる限り休んで欲しいですしね」

歌鈴「……それなのに、探検に行ってきていいんでしょうか……?」

ちひろ「じっとしているだけが休むことじゃありませんから」

ちひろ「まあ、変なことは考えず、至れり尽くせりを受けてください♪」

芳乃「……まあ、ちひろ殿がそうしたいならそれでいいのでしてー」

芳乃「それでは、用意した後散策に参りましょー」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:12:02.91 ID:v1CXitZN0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

芳乃「庭園につきましてー」

歌鈴「あ……靴履き替えるんですね……よいしょ」

聖「……ふふ。それじゃ歩きましょうか」

芳乃「うむー」

歌鈴「……綺麗ですねー」

聖「うん……」

聖「……うまく言葉にできないけど」

聖「……素敵です」

芳乃「こういったものを風情がある……というのでしょー」

芳乃「心が癒されましてー」

歌鈴「そうですね……はわぁ……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:12:40.13 ID:v1CXitZN0<> 芳乃「……おやー?」

聖「どうしたの、芳乃お姉ちゃん……?」

芳乃「いえー、こちらを少し登った先に祠があるそうでしてー」

聖「祠……?」

歌鈴「あ、本当だ……『還りの祠』……?」

歌鈴「……どんな祠なんだろう?」

芳乃「……行ってみましてー?」

聖「まあ……せっかくですし……」

歌鈴「ちょっと登るのは疲れそうですけどね……あはは」

芳乃「この後温泉に入るゆえー、少し汗をかくのもよいかとー」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:13:17.96 ID:v1CXitZN0<> 歌鈴「よい……しょっと」

聖「ふぅ……つきましたね」

芳乃「うむー」

芳乃「……しかし、たくさん歩いたわりには小さな祠でしてー」

歌鈴「た、確かにそうですけど……あまりそういうのは言わないほうが……」

芳乃「……ふむー、失言でしてー」

聖「……祠の説明とかないんでしょうか?」

歌鈴「……本当ですね」

歌鈴「どこにも看板らしきものがない……」

芳乃「……むー」

芳乃「これではただのくたびれ儲けでしてー」

歌鈴「で、でも! ほら、お参りしたらお願いかなえてくれるかもしれませんし!」

聖「……でも、どんなことを叶えてくれる神様がいるんでしょう……?」

歌鈴「それは……うーん……還りって名前だから……うーん……」

芳乃「……」

芳乃(仮に願いが叶うとしてもー、あの神様のように対価を要求されなければよいのですがー……) <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:13:47.81 ID:v1CXitZN0<> 聖「……」

歌鈴「……」

聖「……ふぅ」

歌鈴「よしっ……っと」

芳乃「……結局何をお願いしましてー?」

聖「あ、えっと……」

聖「……無くしたボールペンが私の下に帰ってこないかなって」

歌鈴「あっ、私も同じ感じですっ!」

芳乃「……そなたらー」

歌鈴「うぅ……還るってあまり思いつかなくて……」

聖「うん……『かえる』ってのですぐに思いついたのが若返る……だったけど……それはあまり……」

芳乃「いえ、責めてるわけではないのですがー」

芳乃「……まあよいでしょー」

芳乃「お参りがすんだのなら、また散策に戻りましょー」

歌鈴「あ、そうですねっ」

聖「……ボールペン戻ってくるといいなぁ」

芳乃「……優しい神様であれば、きっと見つかるでしょー」

芳乃「きっとー」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:15:58.06 ID:v1CXitZN0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


芳乃「温泉につきましてー」

聖「……本当にちひろさん着替え持ってきてくれましたね」

聖「それも、ついた瞬間にテレポートしてきて……」

歌鈴「……私たちがここにいるってどうやってわかったんでしょう」

芳乃「ちひろ殿は神様ですゆえー」

芳乃「なんでもありなのでしょー」

歌鈴「……神様ってすごいなぁ」

聖「うん……」

歌鈴「……その力で、お仕事も早く終わらせられなかったのかな?」

聖「さあ……?」

芳乃「……まあ、ちひろ殿にもちひろ殿の考えがあるのでしょー」

芳乃「神様のことなんて気にしたところで、所詮わたくしたちにはわかるはずもなくー」

聖「……」

歌鈴「……」

芳乃「……しかし、今はわたくしたち以外は誰も客がいないようでしてー」

歌鈴「あ、本当……」

芳乃「ふふー、温泉で泳げましてー、聖殿ー」

聖「……な、なんで私を見ていうんですか……!」

芳乃「別にー、ふふー」

聖「……むー」

歌鈴「ふふっ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:16:26.67 ID:v1CXitZN0<> 聖「わぁ、広い……!」ガラガラ

歌鈴「露天風呂もあって……ほ、本当に私たちだけで使っていいんでしょうか……!?」

芳乃「……別に貸切というわけでもないのでー」

芳乃「いえ、現状貸切のようなものなのですがー……」

聖「ふふ……」

聖「……早く体を洗って入ろう……?」

芳乃「うむー」


………………

…………

……


歌鈴「ほわぁ……」

歌鈴「気持ちいいぃ……」

芳乃「でしてー……」

聖「うん……ふわぁ……」

芳乃「……ふふー」

芳乃「わたくしたちー、この旅館で蕩けてばかりでしてー」

聖「あ……そうかも……」

聖「さっきはソファで……今度は温泉で……」

歌鈴「……次は布団で蕩けちゃいそうですね……」

芳乃「でしてー」

芳乃「はー……」

聖「はぁ……」

歌鈴「はわぁ……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:17:48.08 ID:v1CXitZN0<> 芳乃「……しかしー」ジー

歌鈴「……?」

聖「ど、どうしたの……?」

芳乃「いえ……」

芳乃「……」サスサス

歌鈴(……あっ)

芳乃「……わたくしもー、しっかり成長していればー」

芳乃「四年の歳月がー……神になりかけた四年の歳月がなければー……」

芳乃「わたくしもー……今頃ー……ぐぬぬー……」

聖「だっ、大丈夫です、芳乃お姉ちゃん……!」

聖「その……こっ、これから、これからきっと成長しますから……!」

聖「ほら……えっと、四年分成長が止まってたなら……その分、これから、きっと……!」

芳乃「……慰めていただくのはありがたいのですがー」

芳乃「それでもー……やはりー、聖殿が羨ましくー……ぐぬぬー……」

聖「……」

歌鈴「……」

歌鈴「あっ、あにょっ……芳乃ちゃん!」

歌鈴「……あうぅ」

芳乃「……どうしましてー、歌鈴殿ー?」

歌鈴「え、えっと……その、こんなときに聞く話かわからないんですけど……」

歌鈴「神になりかけた四年の歳月……って……?」

芳乃「……あー、そなたにはまだ話しておりませんでしたかー」

歌鈴「うん……聞いてない……」

芳乃「ふむー……あたりに人もいないゆえー、確かに話す機会かもしれませぬー」

芳乃「あまり面白くない話ではありますがー――」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:19:55.35 ID:v1CXitZN0<> 芳乃「――以上でしてー」

歌鈴「そ、そんなことがあったんだ……」

歌鈴「芳乃ちゃんも大変だったんですね……」

芳乃「いえいえー、そなた程ではありませぬー」

芳乃「わたくしはー……おそらく思考すらも消えてしまっていたゆえー」

芳乃「ある種の苦痛はほぼ感じなかったのでー」

歌鈴「ううん……私も……ほとんど寝てたから」

歌鈴「神様が体にいた時のことはぜんぜん覚えてませんし……」

歌鈴「……私たち、似た状態だったかもしれないんですね」

芳乃「意識を手放していたという点では、確かにそうかもしれませぬー」

歌鈴「変な共通点ですね、ふふ」

芳乃「……でしてー」

歌鈴「……もしかして、聖ちゃんもそういう話があったりするんですか……?」

聖「あ、いえ、私は……そんなことはないです……」

聖「ただ……歌っていたら、皆が聞いてくれていただけだから……」

歌鈴「そうなんですか……?」

聖「はい。えっと――」

芳乃(……)

芳乃(口止めされているゆえ、まだ話してはおりませぬがー)

芳乃(……聖殿もまた。自らの記憶に無いところで、数々のことが起こっていた者でしてー)

芳乃(……その点だけ見ればー、わたくしもー、歌鈴殿も、同様でありー)

芳乃(……)

芳乃(……どうやら私たちは、本当に変な共通点を持ってるみたいでしてー) <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:24:07.81 ID:v1CXitZN0<> 聖「――ってことがあったんです……」

歌鈴「そうだったんだ……」

歌鈴「わ、私も聖ちゃんの歌好きですよっ!」

聖「わぁ……ありがとうございます、ふふっ」

聖「私……みなさんに出会えて本当によかったです……」

聖「みなさんと出会えたから……だから、今がこんなに楽しい……!」

歌鈴「……うん、私も……」

歌鈴「出会ってなかったら今頃どうなってたんでしょう……」

聖「どうなってたんだろう……」

歌鈴「……」

聖「……」

芳乃「……」

芳乃「……そなたらー」

芳乃「のんびり話すのもよいのですがー、せっかく露天風呂があるのですしー、そちらにもいきましょー」

歌鈴「あっ、そうですねっ!」

聖「内風呂だけでのぼせちゃうのは、もったいないです……」

芳乃「うむー」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:24:45.47 ID:v1CXitZN0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


歌鈴「露天風呂もたくさん種類がありますねー」

芳乃「うむー……どれに入るのか迷いましてー」

聖「そうですね……一つ一つ効能違うのかな……?」

芳乃「おそらく形が違うだけでしょー」

芳乃「あちらは岩に囲まれてー、こちらは寝風呂だったりー」

聖「あ、なるほど……」

歌鈴「となると……どこがいいでしょう……?」

芳乃「ふむー……」

聖「あ……ジャグジーの出る露天風呂だって」

聖「芳乃お姉ちゃん、行く……?」

芳乃「なんで私に聞きましてー」

聖「さっきの仕返し……ふふ」

芳乃「むー……」

歌鈴「ふふっ」

歌鈴「……それじゃ、とりあえずあの岩風呂のところに行きましょうか」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:25:11.66 ID:v1CXitZN0<> 歌鈴「ふわぁ……こっちも気持ちいい……」

芳乃「うむー……」

聖「……私、露天風呂の方が好き……」

聖「ちょっと暑くなっても……風ですぐひんやりして……また温泉に入れるし……」

芳乃「ほー」

聖「それに……景色も楽しいから……ほら、あっちとか……」

芳乃「一理ありましてー」

歌鈴「うん……そう言われると私もこっちの方が好きかも」

聖「……」

歌鈴「……」

芳乃「……」

歌鈴「……黙っちゃいましたね」

芳乃「景色に心を奪われていたゆえー、仕方なくー」

聖「……」

芳乃「……聖殿などー、まだ奪われていましてー」

歌鈴「本当ですね……ふふっ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:25:54.31 ID:v1CXitZN0<> 歌鈴「……芳乃ちゃんこの後サウナ行きますか?」

芳乃「サウナでしてー?」

芳乃「わたくしはいくつもりはありませぬがー」

歌鈴「あ、そうなんだ……」

芳乃「ふむー? 歌鈴殿は行きたかったのでしてー?」

歌鈴「あ、いえ、そういうわけじゃありませんけど……」

歌鈴「どうなんだろうなぁ……って」

芳乃「ほー」

聖「私は……サウナは暑いから苦手です……」

歌鈴「あ、聖ちゃん。戻ってきたんですね」

聖「うん……ただいま……?」

芳乃「お帰りなさいませー」

歌鈴「じゃあ、みんなサウナに行きたくはないんですね」

芳乃「そうみたいでしてー」

歌鈴「……よかったぁ」

聖「?」

歌鈴「あ、いえっ! 私も……ちょっとサウナ苦手だから」

歌鈴「みんなが行くってなったときにどうしようかなって思ってて……」

芳乃「ふふー、その心配は無いみたいでしてー」

??「わからないわ」

歌鈴「ふひゃっ!?」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:26:33.58 ID:v1CXitZN0<> ??「確かにちょっと暑いかもしれないけどね。サウナっていうのは美容に本当にいいのよ?」

??「まずは、体が温まることで新陳代謝が活性化されるの」

??「すると疲労回復や冷え性の改善にも有効だし、何より脂肪も燃焼しやすくなるのよ」

??「それだけじゃなく。サウナに入ると暑くて汗をかくでしょう?」

??「すると、体の中の老廃物が汗と一緒に外に出るじゃない」

??「そうしたら、毛穴の掃除もされて美肌にもいいのよ?」

??「だから苦手なんていわず行っておいたほうがいいわよ……むしろ行くべきね」

芳乃「……」

歌鈴「……」

聖「……」

??「……あら?」

芳乃「急に会話に入ってこられたら誰しもこのような反応になりましてー」

??「ああ、そうよね。ごめんなさい」

??「でもみんな本っ当に覚えておいたほうがいいわよ。サウナは美容にいいって」

??「この先絶対大切になってくるんだから……」

聖「はぁ……」

??「若いっていいわねー……」

歌鈴「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:27:23.11 ID:v1CXitZN0<> 芳乃「……」

聖「……」

??「……もしかして私警戒されてる?」

芳乃「当然ではー?」

??「ふふっ、ごめんなさいね」

??「せっかくの温泉だったんだもの。一人で話すより誰かと話してリラックスして入るほうがいいじゃない?」

??「だからつい話しかけちゃったの」

芳乃「……とはいえ、あの会話への入り方は警戒せざるをえないものだったのでしてー」

聖「うん……びっくりした」

歌鈴「私なんて変な声あげちゃったし……」

芳乃「とても可愛らしい声でありましてー」

??「わかるわ」

歌鈴「あうぅ……」

??「……ねぇ、仕切りなおして私とちょっとお話してくれないかしら?」

??「なんてことの無い他愛の無い話をしてリラックスしたいのよ」

聖「私は……いいけど……」

歌鈴「私も、いいですよ」

芳乃「……わかりましてー」

??「ふふ、よかった。みんな優しい子で嬉しいわ」

瑞樹「私は川島瑞樹っていうの。よろしくね」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:27:59.83 ID:v1CXitZN0<> 瑞樹「三人は旅行?」

芳乃「……まあそのようなところでしてー」

歌鈴「あと一人いますけどね」

瑞樹「あと一人……?」キョロキョロ

聖「あ、いえ……ここにはいませんけど……」

瑞樹「ふーん……」

瑞樹「いいわよねー……友達同士の旅行……」

瑞樹「私もよくやったわー……」

歌鈴「そうなんですか?」

瑞樹「えぇ。仲のいい子たちとこうして温泉に来たり、海に行ったり……」

瑞樹「……あ、友達に会いに山登りしたこともあったわね」

歌鈴「やっ、山登り……!?」

芳乃「……友達は山の上に住んでたのでしてー?」

瑞樹「えぇ」

聖「仙人か何かなのでしょうか……?」

瑞樹「やーねぇ、そんなもんじゃないわよ」

瑞樹「あとは……そう、この前は山奥の村にも行ったわね」

瑞樹「森の中を歩いてようやくついたっていうのに、ぜんぜん歓迎してくれないのよ、みんな」

瑞樹「もう、ひどいと思わない?」

歌鈴「は、はぁ……」

芳乃「……ずいぶんとアグレッシブでしてー」

瑞樹「呼ばれたからいっただけよ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:29:06.47 ID:v1CXitZN0<> 瑞樹「でも、ここの温泉もその村の人から教えてもらったのよ」

瑞樹「おかげで、こんな素敵な温泉に入れたわ」

瑞樹「……知ってる?」

瑞樹「ここの温泉って入った人のお肌がまるで若返ったようにツルツルになるそうよ」

聖「へぇ……」

瑞樹「……なんて。あなたたちにはまだ関係ないかしら」

瑞樹「みんな若いし……特に……」

芳乃「……なんでわたくしを見るのでしてー」

瑞樹「あら。だってあなたが一番若いでしょう?」

瑞樹「まだ12歳だし」

聖「!」

芳乃「16でしてー!」

瑞樹「えっ、本当?」

芳乃「むー……失礼千万な奴でしてー!」

芳乃「ぷくー!」

瑞樹「ふふ、ごめんなさい」

聖「……あ、あの。瑞樹さん……」

瑞樹「ん、なあに、聖ちゃん?」

聖「どうして……芳乃ちゃんを12歳って思ったんですか……?」

瑞樹「ふふ、何でだと思う?」

聖「えっ……えーっと……」

瑞樹「なーんて。ただの勘よ勘」

聖「勘……ですか……?」

瑞樹「ええ。乙女のね、ふふっ」

聖「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:29:59.18 ID:v1CXitZN0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


瑞樹「それで――」

聖「――ふぅ」

瑞樹「……あら?」

歌鈴「聖ちゃん、大丈夫……?」

聖「うん……まだ……」

瑞樹「ごめんなさい。話しすぎちゃったかしら?」

聖「いえ……」

芳乃「……そろそろあがりましてー?」

歌鈴「そうですね……ご飯もそろそろですし……」

瑞樹「あ、もうあがるのね」

瑞樹「楽しかったわ。歌鈴ちゃん、聖ちゃん、芳乃ちゃん」

歌鈴「私たちも、楽しかったですっ!」

芳乃「うむー。人と話すことはやはりよきものでしてー」

瑞樹「そうよね。私も若い子とたくさん話せたから若返った気がするわ」

芳乃「……そういうものでしてー?」

聖「さあ……」

瑞樹「そういうものよ。若い子パワーは本当に偉大なんだから」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:30:42.32 ID:v1CXitZN0<> 瑞樹「でも本当に楽しかったわ」

瑞樹「……だからね。私そのお礼をしたいのよ、みんなに」

聖「お礼……ですか?」

瑞樹「ええ。みんなは庭園に行った?」

歌鈴「あ、はい。この温泉に入る前に……」

瑞樹「そう……じゃ。還りの祠にも行ったかしら?」

芳乃「いきましたがー……それがどうしましてー」

瑞樹「夕飯食べた後にそこに来なさい」

瑞樹「そうしたら、あなたたちの知りたいことが知れるわ」

聖「……知りたいこと?」

瑞樹「知りたいでしょ。自分の記憶にない自分を」

芳乃「!」

歌鈴「!」

聖「……?」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:34:01.77 ID:v1CXitZN0<> 瑞樹「すごいわよねぇ……3人とも自分が知らない自分がいたなんて」

聖「えっ……」

瑞樹「ふふっ、愉快な組み合わせねぇ」

歌鈴「……」

芳乃「……」

瑞樹「やーねぇ、警戒しなくてもいいわよ、もう」

瑞樹「裸で話した仲じゃない」

芳乃「その言い方はやめていただきたいのですがー」

瑞樹「あら……」

聖「……」

瑞樹「まあ、あなた達が知りたいなら来ればいいし、私が怪しいと思うなら来なければいいわ」

瑞樹「ただ、私はあなた達が覚えてない時のことを知る機会をあげようと思っただけよ」

瑞樹「たっくさんの若者パワーをもらったお礼にね。みんなだって知りたいでしょう?」

芳乃「……」

瑞樹「本当はこの場でやってあげられたらいいんだけどね」

瑞樹「でもあなたたちも心の準備が欲しいでしょ?」

聖「……」

瑞樹「それに、ここよりもあの祠の方がやりやすいのよ……やろうとしてることと性質が一緒だからね」

瑞樹「だから、夕飯後に祠に着てくれたら、教えてあげるわ。あなたたちの知らないあなたたちを」

歌鈴「……」

瑞樹「……そのまま立ってると湯冷めしちゃうわよ?」

瑞樹「それにこのままだと夕飯の時間に送れちゃうわ」

歌鈴「それはそうだけど……」

芳乃「……これ以上ここにいても意味はないでしょー。おそらく瑞樹殿は何も話してはくれぬゆえー」

瑞樹「ええ。話すのは夕飯の後で」

芳乃「であればー……瑞樹殿の言うとおり、湯冷めする前に帰りましょー」

聖「う、うん……」

瑞樹「じゃあね。歌鈴ちゃん、聖ちゃん、芳乃ちゃん」

瑞樹「また後で……かしら?」

芳乃「……」

聖「……」

歌鈴「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:35:50.08 ID:v1CXitZN0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


芳乃「……どう思いましてー?」

聖「瑞樹さん……のことですよね……?」

芳乃「うむー」

歌鈴「あの言葉……どういう意味だったんでしょう……?」

聖「内湯での私たちの話を聞いていたとか……?」

芳乃「いえ……あたりには誰もいなかったはずでしてー」

歌鈴「だとしたらどこで……」

聖「それだけじゃない……」

聖「瑞樹さん、芳乃お姉ちゃんが12歳って……」

芳乃「わたくしは16でしてー!」

芳乃「本っ当に遺憾でしてー!」

芳乃「ぷんぷんでしてー!」

歌鈴「あはは……」

聖「でも、体の年齢は12歳……ですよね……?」

芳乃「……それはー、まあー、そうなのですがー」

聖「瑞樹さんは……勘で当てたって言ってたけど……」

聖「ピンポイントで当たるものなのかな……?」

芳乃「ふむー……」

芳乃「……加えるならばー、瑞樹殿は名乗りを聞かずとも、わたくしたちの名前を知っていましてー」

聖「あ……!」

歌鈴「そういえば……!」

芳乃「……わたくしも、今ふと気がついたのですがー」

芳乃「しかしー……お二人の言うことと合わせるとー……」

聖「……」

歌鈴「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:52:15.92 ID:v1CXitZN0<> 聖「……あの、芳乃お姉ちゃん」

芳乃「なんでしてー?」

聖「瑞樹さんの……3人とも自分が知らない自分がいる……って」

聖「きっと芳乃お姉ちゃんは神様になりかけてたとき……歌鈴さんはちひろさんを降ろしてた時のことを言っていると思うんですけど……」

聖「……私にも、あるんですか?」

聖「そういうの……?」

歌鈴「私は知らない……けど……」

聖「芳乃お姉ちゃん……?」

芳乃「……わたくしが何を言おうともー、それで聖殿は納得しないでしょー」

聖「……」

芳乃「ゆえに、わたくしも瑞樹殿と同じことしか言えませぬー」

聖「……知りたいなら、夕飯後に、って……?」

芳乃「うむー……」

芳乃「……彼女が怪しいのは確かではありますがー」

芳乃「先ほどの、怪しかった点も、彼女が人ならざるものであると考えればある程度納得のいくものでありー」

芳乃「人ならざるものであるならばー、わたくしたちの知らないことを教えることができるのかもしれませぬー」

聖「……」

歌鈴「……どう、しましょうか?」

聖「私は……」

聖「私は…………行きたい、です」

聖「本当に、そういう何かがあるのなら……知りたいから……」

歌鈴「私も……本当は気になっているんです」

歌鈴「助けてもらって……今が楽しくて……深くは考えてませんでしたけど」

歌鈴「でも、気にはなっているんです」

歌鈴「私が眠っている間に、何があったのか……気になって……だから……」

芳乃「……ならばともに行きましょー」

芳乃「わたくしも気にならないといえば、嘘になるゆえー」

歌鈴「……それじゃあ、ご飯食べた後に向かいましょう」

聖「うん……」

芳乃「……ちひろ殿にも、一応話しておきましょー」

歌鈴「そうですね。勝手にいなくなっちゃうのもダメですし……」

芳乃「うむー」

芳乃「そして、万が一のことがあればちひろ殿がー――」

芳乃「――」

聖「……芳乃お姉ちゃん?」

芳乃「――いえ、なんでもありませぬ」

芳乃「きっと、わたくしたちに何かありましたら助けてくれるでしょー」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/15(火) 20:53:10.77 ID:v1CXitZN0<> 芳乃(……)

芳乃(……)

芳乃(……わたくしは聖殿の身に起きていた話をかの者に口止めされていましてー)

芳乃(しかし、聖殿自身が自ら知ろうとした場合はどうすればよいのでしょー)

芳乃(それに、今のように避けようの無い場合はー)

芳乃(……)

芳乃(……いえ)

芳乃(遅かれ早かれ、口止めは破かれていたでしょー)

芳乃(生涯知らぬ存ぜぬを突き通すことはできなかったはずでしてー)

芳乃(……)

芳乃(それに、知らねばならぬことでもある……そう、わたくしは思いましてー)

芳乃(聖殿が知りたいと願うならばー、なおさらー)

芳乃(……)

芳乃(……言い訳はもうやめましょー)

芳乃(あのように返答してしまったのならー、もう時を巻き戻せるはずはないのでしてー)

芳乃(……)

芳乃(……願わくばー、良き道へと進むことをー) <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga sage<>2016/11/15(火) 20:53:39.22 ID:v1CXitZN0<> とりあえずここまで
続きは近いうちに <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:11:54.25 ID:G+elQ5am0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


歌鈴「はぁ……よい……しょっ……!」

聖「ふぅ……」

聖「……また汗かいちゃった」

芳乃「また後で温泉に入りましょー」

芳乃「入っていない湯もまだあるためー」

聖「……うん」

瑞樹「いらっしゃい」

歌鈴「……あ、瑞樹さん」

瑞樹「ふふっ、来てくれて嬉しいわ」

聖「……」

歌鈴「……」

芳乃「……」

瑞樹「あら、みんな怖い顔」

瑞樹「もっとリラックスしていいわよ」

瑞樹「ほら、深呼吸……すってー――」

芳乃「――その前にー」

芳乃「そなたの正体を聞かせてもらってもー?」

瑞樹「正体……ねぇ」

芳乃「普通の人間ではないのでしょー?」

瑞樹「そうねぇ……あなたたちの言葉に合わせるなら」

瑞樹「神様よ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:12:26.08 ID:G+elQ5am0<> 聖「神様……?」

瑞樹「ええ」

瑞樹「特に、時に関することなら右に出るものはいないわ」

瑞樹「……いないはずよ」

芳乃「そこは自信がないのでしてー」

瑞樹「八百万の神、なんていうでしょ?」

瑞樹「私の知らない神様だって、きっとどこかにいるもの」

芳乃「ほー……」

瑞樹「で、私は時に関することなら何でもできるし、何でも叶えられるわ」

瑞樹「時を巻き戻すことも、早送ることも、止めることもできるし」

瑞樹「その人が歩んできた時を知ることもできる」

瑞樹「……だから、3人の名前も、年齢も……そして、知らない自分がいることもわかったの」

瑞樹「ふふっ……さっきまで疑問に思ってたでしょう?」

芳乃「……一気に説明してくれるとはー」

瑞樹「リラックスして欲しいもの。疑問に思ったことは解消しなきゃ」

芳乃「なれば、先ほどの温泉のときに全て説明して欲しかったのでしてー」

瑞樹「ああやって何か謎を残したほうがちょっと若くない?」

芳乃「ほー?」

瑞樹「若い行動を心がければ、体も若くなっていくもの」

芳乃「……まったくわからないのでしてー」

瑞樹「そのうちわかるわ」

芳乃「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:13:12.48 ID:G+elQ5am0<> 歌鈴「あっ、あの、瑞樹さん!」

瑞樹「ん、なーに?」

歌鈴「瑞樹さんも……あ、いえ、神様も……誰かの体に降りてるんですか?」

瑞樹「いいえ。私は人間の姿に顕現してるだけよ」

瑞樹「この体も誰かの借り物ってわけじゃないわ」

歌鈴「あ、そうなんだ……ほっ」

瑞樹「ふふっ、優しいのね」

瑞樹「……さて。みんなの疑念は解けたかしら?」

芳乃「……ひとつ聞かせて欲しいのですがー」

瑞樹「なにかしら?」

芳乃「どうして、このようなことをするのでしてー?」

瑞樹「言ったじゃない。お礼よ、お礼」

瑞樹「あなたたちと話しているの楽しかったし。その恩返しよ」

芳乃「……」

瑞樹「……それでも納得できないなら……そうねぇ」

瑞樹「そんな気分になったからよ」

瑞樹「神様は気まぐれ……って覚えておきなさい」

芳乃「……ほー」

瑞樹「別に変な対価を取ったりしないわ……あなたたちの知ってる誰かと違ってね」

聖「……」

歌鈴「……」

瑞樹「それに、若者パワーだってたくさんもらったんだから」

芳乃「それが一番わからないのでしてー」

瑞樹「いずれわかるわ……いずれね」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:14:14.67 ID:G+elQ5am0<> 瑞樹「……さて、今度こそ大丈夫かしら?」

芳乃「……」

聖「……」

歌鈴「……」

瑞樹「もう……まだ顔が固いわよ」

瑞樹「ほら、深呼吸……すってー、吐いてー、すってー、吐いてー……」

聖「すぅ……」

歌鈴「はぁ……」

芳乃「……もう大丈夫でしてー」

瑞樹「……ん、そうみたいね」

瑞樹「それじゃ。始めようかしら」

聖「……あの」

聖「記憶にない自分を知る……って、どうやって……?」

瑞樹「もう一度その時のことを見れば知ることができるでしょ?」

聖「……」

瑞樹「どうやってやるんだ……って顔してるわね」

瑞樹「簡単な話よ。その時に還ればいいのよ。皆が忘れたその時に――」

瑞樹「――この穴を通ってね」スッ

聖「!」

歌鈴「す、すごい……空間が割れたみたいに……!」

瑞樹「みたいじゃなくて、割ったのよ。時を越えるためにね」

聖「時を越える……」

瑞樹「これは過去へ還る道……ええっと、右から聖ちゃん、芳乃ちゃん、歌鈴ちゃんのよ」

瑞樹「この穴に入ってまっすぐ進めばあなたたちの知らないあなたたちを見ることができるわ」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:15:13.66 ID:G+elQ5am0<> 芳乃「……本当でしてー?」

瑞樹「本当よ。神様を信じなさい」

芳乃「……」

瑞樹「……まあ、過去に還る形になるから、あなたたちの知らない時間のすべてを知ることはたぶんできないわ」

歌鈴「……そうですよね」

芳乃「うむー……わたくしの場合は4年ありましてー」

瑞樹「過去へ還った後に4年分すごすなら知れるけどね」

芳乃「するわけありませぬー」

瑞樹「まあそうよね」

瑞樹「だから。みんなが一番知りたいだろう時間に還れるようにしたわ」

聖「一番知りたい時間……」

瑞樹「ええ」

瑞樹「……ただ、ひとつだけ約束して欲しいことがあるの」

歌鈴「約束……ですか?」

瑞樹「ええ」

瑞樹「この先に何があっても、モノに触れたらダメよ」

聖「モノに……?」

瑞樹「ええ……あ、もちろんだけど人にもよ」

芳乃「……」

瑞樹「この穴を通った後、あなた達は誰にも見えないようになっているわ」

瑞樹「それに、声だって聞こえなくなってる」

瑞樹「だから、どれだけ近くで見ても大丈夫だし、騒いでも大丈夫よ」

瑞樹「……ただ。あなた達がモノに触れてしまった」

瑞樹「その結果、過去が変わってしまった……なんてことになったらもうお手上げ」

瑞樹「あなた達はここへ戻れなくなるわ」

瑞樹「だからモノには触れないように……過去を変えるようなことをしないようにね」

瑞樹「ちょっと触れるくらいなら大丈夫と思うけど……でも保障はできないわ」

芳乃「……戻れなくなったらどうなるのでしてー?」

瑞樹「さあ? 誰にも見えないまま今とは変わった世界でを一生過ごすんじゃないかしら」

歌鈴「一生を……」

聖「……やだな」

瑞樹「でしょ? だから気をつけてね」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:15:50.66 ID:G+elQ5am0<> 瑞樹「帰るなら通った穴を戻ってくればいいだけ」

瑞樹「あなたたちが過去を変えない限り消えることはないわ……ね、簡単でしょ?」

聖「……うん」

瑞樹「さて、これで説明はおしまい。後はあなた達次第よ」

瑞樹「あっ、通る穴を間違えないようにね」

瑞樹「3人それぞれのために作ったものだから、別の人のに通ると変なところに飛ばされるかも」

歌鈴「わ、わかりました……」

歌鈴「ええっと……私が一番左……ですよね?」

芳乃「でしてー。そしてわたくしが真ん中で、聖殿が右でしてー」

聖「うん……」

芳乃「……」

芳乃「……聖殿ー、歌鈴殿ー」

聖「……なに?」

歌鈴「な、なんでしょうか……?」

芳乃「……心を強く持ち行きましょー」

聖「えっ……?」

芳乃「……わたくしたちは一人ではありませぬー」

歌鈴「……そうですねっ!」

聖「うん……!」

聖「それじゃあ……行ってきます」

歌鈴「私も……行ってきますっ」

芳乃「……わたくしもー」

瑞樹「三人とも、いってらっしゃーい♪」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:16:17.31 ID:G+elQ5am0<> ========================


芳乃「……ここはー?」

芳乃「おや、わたくしがいましてー」

芳乃「ふむー……なるほどー……」

芳乃「……どうやら、神へ至ろうとしていたころのわたくしのようでしてー」

『……』

芳乃「……ふーむ」

芳乃「わたくしは、このようにして座っていたのでしてー」

芳乃「こうして自分で自分を見るのは不思議なものでありますー」

『……』

芳乃「……まったく、動かないのもー、われながら不気味でしてー」

『……』

芳乃「……かの者らに出会うまでー、私はずっとこのままだったのでしょー」

芳乃「……」

芳乃「ふむー……動かぬ自分の姿を見ているだけというのもつまらないですしー」

芳乃「もう戻りま――」

芳乃「――!?」

芳乃「何でしてー、今の音はー……?」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:16:51.62 ID:G+elQ5am0<> 芳乃「ふむー……扉の向こうから聞こえましたがー」

芳乃「……聞き耳をー」

芳乃「……」

『……ふぅ』

『これで本当に生贄になるの?』

『ああ。この社の入り口で殺せば、そいつらの魂が中の奴に吸われるらしい』

『で、神様になるための贄になるそうだ』

『へぇ……』

『中に入ることはできないからな。実際どうなってるかは知らないが』

『仮に入れたとしても魂が吸われてるかどうかなんてわからないわよ』

『そりゃそうだ』

芳乃「……」

芳乃「……なるほどー」

芳乃「私の贄はこのようにして与えられていたのでしてー」

芳乃「この扉を開けばー……」

芳乃「……」

芳乃「……まさか当時疑念に思ったことがこのような場所で解決するとはー」

芳乃「……」

芳乃「申し訳ございませぬー」

芳乃「わたくしが、そなたらの魂を奪ってしまったのでしてー」

芳乃「……」

芳乃「……おこがましいかもしれませぬがー」

芳乃「わたくしはそなたらのことを忘れずー」

芳乃「そなたらの分まで、わたくしはこれからを生きましょー」

芳乃「ゆえにー」

芳乃「……」

芳乃「……安らかにお休みくださいませー」

芳乃「……」

芳乃「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:17:22.14 ID:G+elQ5am0<> ==========================


芳乃「……ふー」

瑞樹「あら、お帰りなさい」

瑞樹「早かったわね」

芳乃「想像していたものと代わりなくー。また、動きもなかったゆえー」

瑞樹「そうね。芳乃ちゃん自身はじっとしていただけだしね」

芳乃「うむー」

芳乃「……まあ、長らくの疑問も解決したのでよしとしましょー」

芳乃「……代わりに新たな疑念が生まれましたがー」

瑞樹「……」

瑞樹「……芳乃ちゃんの考えてることは杞憂よ」

芳乃「ほー?」

瑞樹「今芳乃ちゃんの中には誰の魂も残ってないもの」

瑞樹「あなたが解放されたとき。一緒に成仏されたから」

瑞樹「だから、あなたの祈りはみんなに届いてるわ」

芳乃「……」

芳乃「……本当に私の歩んだ時を見ているのでしてー」

瑞樹「言ったじゃない。そういうのは得意なのよ」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:18:38.59 ID:G+elQ5am0<> 芳乃「さて……」

瑞樹「あら……そっちは聖ちゃんの通った穴よ」

芳乃「知ってましてー」

瑞樹「入るの?」

芳乃「……見ているだけでしてー」

瑞樹「そう」

芳乃「……」

芳乃「……もし、聖殿が中で人に触れたとしたら、この穴はどうなるのでしてー」

瑞樹「さっきも言ったでしょ、閉じるわ」

瑞樹「だから、開いているうちはまだ大丈夫よ」

芳乃「ほー」

芳乃「……」

芳乃「……」

芳乃「……わたくしも、聖殿と一緒にここを通ればよかったかもしれませぬー」

瑞樹「……あのねぇ、さっきも言ったけどこれは聖ちゃんのために開いたものよ」

瑞樹「聖ちゃん以外の子が入ればどこにいくかわからないし、まして一緒になんて入ったらどうなるかもわからないわ」

芳乃「ほー……」

芳乃「……」

瑞樹「……心配?」

芳乃「……それはー、もうー」

瑞樹「ふふ、大丈夫よ。私にはわかるわ」

芳乃「……根拠はー?」

瑞樹「あなた達の歩んだ時を見てそう思ったの」

瑞樹「それじゃ、足りない?」

芳乃「……」

瑞樹「あなたもお姉ちゃんなら信じて待ちなさい」

芳乃「……ふむー」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:20:11.50 ID:G+elQ5am0<> ==============================


聖「……ここは?」

聖「夜の公園……あ、私がいる」

聖「じゃあ、これは……みんなと出会う前の……一人で歌ってた頃」

聖「……あれ?」

聖「でも……夜、みんなと出会うまでは誰も来てくれなかったのに」

聖「いなかった……よね……?」

『〜♪〜♪〜♪』

聖「なのに……今は聞いてくれてる人がいる……」

聖「なんで……?」

『〜♪〜♪〜♪』

聖「……」

聖「……あれ?」

聖「私の隣の誰か女の人は――」

『――――!』

聖「ひっ……!」

聖「お、女の人が……聞いてた人の首を飛ばして……っ!?」

『――――!』

聖「たっ、食べてる……!?」

聖「ひぃっ……!」グッ

聖(……怖くて思わず、目を閉じちゃった)

聖(でも……あの、首を飛ばされる瞬間が何度も脳裏をよぎる……)

聖(……何か、音が聞こえる……何の音かはわからないけど……)

聖(気になる……けど、目を開けられない……だって……怖い……)

聖(怖い……怖い……!)

『〜♪〜♪〜♪』

聖(……そんな中でも、私の歌が聞こえてくるのが、余計に……) <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:22:36.16 ID:G+elQ5am0<> 聖(……)

聖(……音が、消えた)

聖(……お、終わったのかな……?)

聖「……」ソッ

聖「……あ」

聖「何も……ない……聞いてた人の体も……飛び散った血も……」

聖「……夢?」

聖「ううん、違う……あれは、夢なんかじゃ……」

聖「だって、瑞樹さんも知らない自分だった時に還るって……」

聖「じゃあ――」

『〜♪〜♪……ふぅ』

聖「じゃあ、私の知らない私って――」

『……来てくれなかった』

『わかってたけど……ちょっと寂しい、かも』

聖「――!」

聖「ちっ、違うっ、違うの……!」

聖「本当は聞きに来てくれてっ、でもっ、でも私が……っ!」

『……帰ろ』

聖「ま、待って!」ダッ

聖「いたのっ! 聞いてくれてる人が……いたの……っ!」

聖「待って、ねぇ、待って!」

聖「待っ――」

「――心を強く持ち行きましょー」

聖「!?」ビクッ <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:24:15.52 ID:G+elQ5am0<> 聖「よ、芳乃お姉ちゃん……!?」クルッ

聖「……あれ、いない」

聖「……気のせい……かな……?」

聖「でも……」

聖「……」

聖「そうだっ、私は……っ!」クルッ

聖「あ……もういない」

聖「追いかけ……ううん」

聖「今、追いかけて……もし私に教えることができても……」

聖「私のせいで死なせちゃったことは……変わらないし……」

聖「それに……」

聖「……」

聖「……これが」

聖「これが、私の知らなかった私の真実……なんですね……」

聖「……本当は、いろんな人が聞きに来てくれてたんだ」

聖「なのに私は……」

聖「……知らなかった」

聖「……」

聖「……謝って許されることじゃないかもしれませんけど」

聖「……ごめんなさい」

聖「ごめんなさい……」

聖「ごめんなさい……っ!」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:24:54.60 ID:G+elQ5am0<> ===========================


聖「……」

芳乃「!」

瑞樹「あら、お帰りなさい。聖ちゃん」

聖「……」

芳乃「……聖殿ー?」

聖「芳乃……お姉ちゃん……!」ダキッ

芳乃「わぷっ!」

聖「怖かった……辛かった……っく」

芳乃「……ふむー」

芳乃「よくがんばりましてー」ナデナデ

聖「芳乃お姉ちゃん……ひっく……!」

芳乃「辛かったでしょー」

芳乃「もう大丈夫でしてー、安心なされよー」

聖「う……うわぁん……っ!」


………………

…………

…… <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:25:23.20 ID:G+elQ5am0<> 聖「……っく……ひっく」

聖「もっ、もう……大丈夫……っく」

芳乃「……まだ嗚咽交じりでしてー」

芳乃「落ち着くまではわたくしがこうして抱擁してましょー」

聖「……芳乃お姉ちゃん……!」

芳乃「ふふー」ナデナデ

聖「……ありがとう……っく」

芳乃「いえいえー」

芳乃「そなたのお姉さんであるゆえー」

聖「……」

聖「芳乃お姉ちゃんは……っく、知ってた……?」

聖「ううん……知ってたんだよね……?」

芳乃「……うむー」

芳乃「わたくしたちも襲われましたゆえー」

聖「そうだったんだ……っく」

聖「……ごめんなさい」

芳乃「気に病むことはありませぬー」

芳乃「元々聖殿のせいではないゆえー」

芳乃「それに、元凶は既にかの者により成仏されていましてー」

芳乃「今後こういったことも起こることもありませぬー。心配せずともよろしくてー」

聖「……うん」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:26:25.39 ID:G+elQ5am0<> 聖「でも……私、私のせいで……いろんな人が死んじゃってた……んだよね……?」

芳乃「……過去は過去。そう切り替えるのは難しいかもしれませぬがー」

芳乃「しかし、起きてしまった事象は変えられませぬー」

聖「……」

芳乃「まして、わたくしたちはそのおかげで今を生きているようなものでしてー」

芳乃「わたくしはー、贄がなければ生きることはかなわなかったでしょうしー」

芳乃「そなたもまた、そなたに憑りついた霊がそなたに人を集める力がないと判断すればー、用済みとして捨てられたでしょー」

聖「人を集める力……」

芳乃「そなたの歌い導く力はー、そのようにしてはぐくまれたものあるのでしょー」

聖「……うん」

芳乃「……このようにー、わたくしたちの命はー、数多の命のおかげで生きておりますー」

芳乃「なればこそー……わたくしたちはー、彼らのためにも、生きねばならぬのですー」

芳乃「強く生きねばー……とー」

芳乃「わたくしはそう思いましてー」

聖「……うん」

聖「……」ギュッ

芳乃「……」ギュッ

聖「……芳乃お姉ちゃんも、こんな気持ちだったの……?」

芳乃「うむー」

芳乃「わたくしだけでなくー……おそらく朋殿もー、茄子殿もー」

芳乃「……歌鈴殿もー」

芳乃「みな、自らのあずかり知らぬところで人を死なせてしまっているゆえー、同じような思いに駆られたでしょー」

聖「……そうなんだ」

聖「……」ギュッ

芳乃「……」ギュッ <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:28:46.77 ID:G+elQ5am0<> 聖「……」

聖「……もう大丈夫」

芳乃「本当でしてー?」

聖「うん……ありがとう。芳乃お姉ちゃん」

聖「芳乃お姉ちゃんがいたから……私、戻って来れた……」

芳乃「ほー?」

聖「……実は、もうちょっとで私に……あっ、昔の私に触っちゃうところだったの……」

聖「ダメだって聞いてたけど……無我夢中で……どうしても私に知って欲しかったから……」

聖「でも……その瞬間……芳乃お姉ちゃんの声が聞こえた気がして」

聖「ふっと、止まって……落ち着けて……」

聖「……みんなと別れるの……嫌……って」

聖「そう……思えたから……帰ってこれたんです……」

聖「……きっと芳乃お姉ちゃんが『心を強くもたれよ』って声をかけてくれたから……」

聖「だから……ありがとう、芳乃お姉ちゃん」

芳乃「……うむー」

芳乃「……わたくしもー、聖殿が心配でしたー」

芳乃「わたくしも、聖殿の通った穴に入り追いかけようとしたほどにー」

聖「そうだったの……?」

芳乃「瑞樹殿に止められましたがー」

芳乃「……それほどまでに心配だったゆえー。聖殿が戻ってきて安心しましてー」

芳乃「わたくしの言葉がそなたを引き止めたならこれほどうれしいことはありませぬー」

芳乃「戻ってきてくれてありがとうございましてー、聖殿ー」

聖「うん……」

芳乃「……」

聖「……ふふっ」

芳乃「ふふー」

瑞樹(……若いっていいわねー) <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:32:29.88 ID:G+elQ5am0<> 聖「……」

芳乃「……ところで、いつまでわたくしは抱いていればいいでしょー?」

聖「もうちょっと……」

芳乃「……ふふー、わかりましてー」

聖「……」

芳乃「何なら今日は一緒の布団で寝てもかまいませぬー」

聖「な、なんで……?」

芳乃「夢に見てしまうのではー?」

芳乃「どのようなものを見たのかは知りませぬがー、辛いものだったのでしょー?」

聖「それは、そうだけど……」

聖「でも、夢に見るなんて……そんな……」

聖「そんな、ことは……」

聖「……」

聖「……そっ、それより……歌鈴さんは、まだ……?」」

芳乃「うむー……戻って来ませぬー」

聖「大丈夫かな……?」

瑞樹「大丈夫よ。私にはわかるわ」

聖「瑞樹さん……?」

芳乃「……うむー」

芳乃「瑞樹殿の言を借りるならばー、わたくしたちの仲間を信じましょー」

芳乃「歌鈴殿は強いお人でしてー」

聖「うん……そうだよね……」

聖「……」

芳乃「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:33:25.90 ID:G+elQ5am0<> ===============================


歌鈴(……ここは)

歌鈴(私の家の神社……)

歌鈴(……あっ)

歌鈴(私と……お父さん)

歌鈴(……ううん、あれは神様……ちひろさん……なんだよね、きっと)

歌鈴(お父さんがいるってことは……降ろしてすぐの頃……?)

『うーん……1円ですか』

『なら、1円分の範囲だけで願いを叶えましょう』

『人って100年もたたないうちに死んじゃうんですよね』

『それに、もしかしたらその蒸発しちゃったその人ももう死んでいるかもしれませんよね』

『……だから』

『黄泉の国に行けばいつか会えますよ♪』

歌鈴(……っ!)

歌鈴「お父さん……っ!」

歌鈴「……あっ」

歌鈴「……」

歌鈴「お父さんが……」

歌鈴「……」

歌鈴「……」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:34:25.32 ID:G+elQ5am0<> 『……よいしょっ』

『ふぅ……これで歌鈴ちゃんも意識の底に封じ込めたし……』

『後は力を取り戻すだけですね』

『人間に降ろされちゃうと力が制限されちゃうから不便なんですよねー』

『……まあ勝手に降ろされた対価はいただきましたけど、ふふ』

歌鈴「……」

『……さて。何しましょうか』

『とくにやりたいことが決まってるわけじゃないんですよねー』

『んー……とりあえずはこの体でも以前と同じくらい動けるように、もっと糧を手に入れなきゃですね』

『その間にやりたいこともきまってるでしょう♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「……そっか」

歌鈴「ちひろさんの言ってた『お父さんはお母さんに会いに行った』ってこういうことだったんだ……」

歌鈴「……」

歌鈴「お父さん……」

歌鈴「……」

歌鈴「……」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:35:29.30 ID:G+elQ5am0<> =============================


歌鈴「……」

聖「あ、歌鈴さん」

芳乃「お帰りなさいましてー」

歌鈴「あ、うん……ただいま……」

芳乃「……歌鈴殿ー?」

歌鈴「あ、ごめん、大丈夫ですっ!」

芳乃「……ならよいのですがー」

瑞樹「……これで全員帰ってきたわね」

瑞樹「どうだった? 望んでたものは見れたかしら」

芳乃「……」

聖「……」

歌鈴「……」

瑞樹「あら、スルー? ミズキ悲しくなっちゃうわ」

芳乃「……見たいか見たくないかといえば見たくないものでしたでしょー」

芳乃「しかし……おそらく、見ておかなければならないものだったとは思いましてー」

聖「……うん」

歌鈴「見ておかなければいけないもの……うん……そうなんだよね……」ボソッ

瑞樹「……よかった、ちゃんとお礼になってたようね」

瑞樹「役に立てたのなら神様としてうれしいわ」

芳乃「……どこかの神様とは違いましてー」

ちひろ「あら、どこかの神様って誰のことですか」

聖「きゃっ!」

歌鈴「っ!」

芳乃「……相変わらず後ろに立つのが好きでしてー」

ちひろ「ふふ、皆さんの反応がかわいいので」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:36:01.36 ID:G+elQ5am0<> 瑞樹「ちひろちゃん。久しぶりね」

ちひろ「……本当に瑞樹さんだったんですね」

ちひろ「こうして会うのはいつぶりでしょうか」

瑞樹「そうねぇ……いつぶりだったかしら……」

聖「二人は知り合いなの……?」

ちひろ「ええ。神様同士ですから」

聖「そういうものなんだ……」

歌鈴「……うぅ」

芳乃「……歌鈴殿?」

歌鈴「あ……ううん、大丈夫」

歌鈴「大丈夫……」

芳乃「……?」

芳乃「本当に大丈夫でしてー?」

歌鈴「ほ、ほんとに大丈夫ですっ……」

歌鈴「……」

芳乃「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:37:50.40 ID:G+elQ5am0<> ちひろ「さて……迎えに来たみたいですけど」

ちひろ「みんな大丈夫みたいですね」

芳乃「でしてー」

聖「はい……」

歌鈴「……」

ちひろ「知らない自分を知る……んでしたっけ?」

ちひろ「目的は果たせましたか?」

芳乃「……うむー」

ちひろ「それならよかったです。皆さんには気持ちよくアイドルしてほしいですからね」

ちひろ「もやもやが無くなったらなによりです♪」

歌鈴「……」

ちひろ「それじゃ、部屋に戻りましょうか」

瑞樹「あ、ちひろちゃん。ちょっと待って」

ちひろ「はい?」

瑞樹「ちひろちゃんに話したいことがあるのよ……ちょっと残ってくれる?」

ちひろ「……わかりました」

ちひろ「ごめんなさい3人とも。先に部屋に戻っててください」

ちひろ「これ、鍵です」

芳乃「ありがとうございましてー」

芳乃「それでは、いきましょー、聖殿ー、歌鈴殿ー」

聖「うん……」

歌鈴「……」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:39:58.16 ID:G+elQ5am0<> ちひろ「……それで、話って何ですか?」

瑞樹「んー……簡単に言うとね」

瑞樹「私この前、新しい神様作っちゃったのよ」

ちひろ「……はい?」

瑞樹「というよりは神様にするのを早めちゃったのよ」

瑞樹「芳乃ちゃんみたく、神様を作ろうとしてたみたいで……時間がないから早めてくれって頼まれちゃってね」

瑞樹「小さくて、お人形みたいな可愛い子だったわ」

ちひろ「はぁ……」

ちひろ「……ちゃんと対価はもらってるんですか?」

瑞樹「もちろん! おかげでここの温泉を知れたわ!」

ちひろ「……温泉好きですねー」

瑞樹「大好きよ。そのために人の姿に顕現してるようなもんだもの」

瑞樹「それに、この姿で美容に良いことたくさんしたら、神の姿に戻っても影響はあるもの」

瑞樹「いつまでも若々しくいられるわ」

ちひろ「はぁ……そうですか」

瑞樹「ちひろちゃんもそういうのちゃんと考えなきゃダメよ?」

ちひろ「別に、それなりには考えてますよ」

ちひろ「……それで、その神様がどうしたんですか?」

瑞樹「ああ、そうそう。その神様ね」

瑞樹「きっと近いうちにあなたたちに会うことになるから覚悟しておきなさい」

ちひろ「はぁ……」

瑞樹「あら、信じてないわね」

ちひろ「いえ、別に信じてないわけじゃなありませんけど……」

ちひろ「……別に、生まれたての神様くらいなら。私がいれば何とかなりますし」

瑞樹「……」

ちひろ「……なんですか、その意味ありげな無言」

瑞樹「別に、なんでもないわよ」

瑞樹「……ふふっ」

ちひろ「なんですか、その意味ありげな笑い」

瑞樹「べっつにー、なんでもないわよー」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:40:32.00 ID:G+elQ5am0<> 瑞樹「ま、そんな感じよ」

瑞樹「これから大変だろうけどがんばってね、ちひろちゃん」

瑞樹「面白おかしく見守ってるわ」

ちひろ「助けてはくれないんですね」

瑞樹「ちひろちゃんが私の立場だったら助ける?」

ちひろ「いいえ」

瑞樹「でしょ?」

瑞樹「そんなもんよ。神様なんてね」

瑞樹「……みんなそんな身勝手な存在に翻弄されちゃうのよね」

ちひろ「……」

瑞樹「ふふ、大変だと思うけどがんばってね、ちひろちゃん」

瑞樹「さっきの話の神様だけじゃなくて……例えば歌鈴ちゃんとか」

ちひろ「……面倒なことしてくれましたね」

瑞樹「私も神様だからね」 <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:40:58.78 ID:G+elQ5am0<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


歌鈴「……」

聖「……」

芳乃「……歌鈴殿ー」

歌鈴「……」

芳乃「歌鈴殿ー?」ポン

歌鈴「ひゃいっ!?」

芳乃「おー……そこまで驚かれるとはー……」

歌鈴「あ、ごめんなさい……考え事してて……」

聖「……考え事?」

歌鈴「うん……」

芳乃「……ふむー」

芳乃「あまり抱え込みすぎることなきようー」

歌鈴「うん……ありがとう……」

歌鈴「……」

聖「……」

芳乃「……」
<>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:41:40.67 ID:G+elQ5am0<> 歌鈴(……ちひろさん)

歌鈴(修行に付き合ってくれたり……)

歌鈴(私たちを助けるためにお仕事してくれたり……)

歌鈴(……)

歌鈴(……でも……そうだよね)

歌鈴(対価とはいえ……私の体をとられていろいろやってたみたいだし……)

歌鈴(それに、お父さんを……)

歌鈴(……)

歌鈴(……どうしよう)

歌鈴(私……ちひろさんとどう接すればいいのか……)

歌鈴(……わかんない)





おしまい <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga<>2016/11/16(水) 22:44:06.81 ID:G+elQ5am0<> 時を司る神様瑞樹さんとかよしのんとひじりんの姉妹っぽい関係性とか歌鈴ちゃんとかちひろさんとか書きたかったのを混ぜました。

誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました <>
◆6QdCQg5S.DlH<>saga sage<>2016/11/16(水) 22:45:17.86 ID:G+elQ5am0<> 最近書いたの
ありす「フレデリカさんがポッキーをくわえて寝ています」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478869305/

智絵里「クローバーが喋ってくれない……」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478612420/

乃々「まゆさんが迷子です」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478102061/

よかったらこちらもよろしくお願いします <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/16(水) 22:49:31.57 ID:UsXoclbJo<> 生まれたての神様が情報少ないのに誰だかわかってしまうのー
乙! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/17(木) 20:44:45.66 ID:NTp7ls3E0<> 芳乃お姉ちゃんいい・・・
次も楽しみにしてます乙でしたー <>