◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:04:54.15 ID:DQfsw9tR0<>
陸軍大尉 「暇だ」
大尉(軍大学を卒業してはや5年)
大尉(配属されたのは東の僻地、隣の帝国との国境線)
大尉(国境と言えども、有刺鉄線があったり巨大な壁があったりするわけじゃない)
大尉(目の前にあるのはただ広大な森、森、森!)
大尉(こんな手柄も昇進も糞もない土地……なはずなのだが、俺の階級だけはどんどん上がっていった)
大尉(少尉から始まり、中尉、そして去年の秋には大尉)
大尉(特に何の苦労もなく、トントン拍子で昇進)
大尉(それもこれも、俺の父親が『中将殿』であるから……)
大尉(つまり、親の七光り)
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<>大尉 「ボンクラどもと戦地に向かうことになった」
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:11:57.07 ID:DQfsw9tR0<>
大尉(俺自身には、親に頼ろうとかいう考えはない……一応)
大尉(事実、士官学校の入学権も自力で勝ち取ったし、軍大学だって次席で卒業した)
大尉(だが)
少尉「隊長!これ!この服マジヤバくねーすっか?」←貴族の息子
准尉「少尉殿、その本僕の私物なんですが」←コネ入隊
曹長「おぉ……俺の腰が」←慢性ヘルニアマン
伍長「……」←何考えてるかわからない女
大尉(俺の中隊に集められたのは役立たずばかり)
大尉(どうしてこうなった)ジーザス!
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:17:24.40 ID:DQfsw9tR0<>
大尉(幸いなのは、今が戦時中ではないってことだ)
大尉(東の帝国……我が国はほんの30年前まで、奴らと戦争していた)
大尉(俺が生まれたのは、戦争が終わった少しあと)
大尉(これが一昔前の戦争末期時代なら、俺はまず間違いなく死んでいただろう)
大尉(それくらい、帝国は圧倒的で……そして、我が国はあらゆる手を使い、辛勝した)
大尉(ってことを、親父から耳が腐るほど聞いた……平和でよかったぜ)
大尉「もっとも、いつ戦争が始まるともわからん状況だがな」
副官「なに一人でぼそぼそ言ってるんですか、隊長」
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:21:01.45 ID:DQfsw9tR0<>
大尉「中尉!いたんなら声かけてよ」
副官(中尉)「最初からいましたよ……ていうかそれより、少佐殿がおよびです。何でも火急の要件だとか」
大尉「ンー了解、今日もかわいいよ、中尉」
副官「……はやく行ってください」フイッ
大尉「うぇ、つめてぇなぁ……あー少尉!俺の机の上の書類、見といてくれ」
少尉「了解っす!ちなみにこれは?」
大尉「前言ってたお前の小隊の再編成案だよ。通しといたから」
少尉「マジっすか!たいちょおぉぉぉ!」ダキツキー
大尉「暑苦しいから離れろ」ペッペッ
中尉「かわいい……かわいい……」ウフ
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:24:31.96 ID:DQfsw9tR0<>
准尉「た、隊長……」モジモジ
大尉「お前、何で女性用の制服着てんの……?」オトコダロ?
准尉「ぐ、曹長さんが……」
大尉「曹長ォ!」
曹長「はっ!」
大尉「よくやったぁ!」
曹長「ありがとうございます!」
伍長「……変態が二人」
大&曹「変態ちゃうわ!紳士と言え!」
中尉「隊長。時間」サメタメー
大尉「はっ!?」
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:27:06.39 ID:DQfsw9tR0<>
大尉(中尉……彼女もまた、大臣のご令嬢とかいう金持ちだ)スタスタ
大尉(だが、彼女はほかのボンクラ(皆いい奴ではあるのだが)どもとは少し、いやだいぶ違う)テクテク
タイチョウ!オハヨウゴザイマス オウ、オハヨーウ
大尉(端的に言えば、非常に有能なのだ)スタスタ
大尉(まぁ、この部隊に送られてきた以上、何かしら問題があるのだろうが)ウィーン
ピタッ
大尉 コンコン
少佐「入れ」
大尉「失礼します」
大尉「部隊番号223-34中隊隊長 大尉、只今参りました」
少佐「うむ、まぁかけてくれ」
大尉「はっ」
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:29:45.30 ID:DQfsw9tR0<>
少佐「……君の中隊は確か、少々変わっている子が多かったかね?」
大尉「は、はぁ……。確かに特徴のある部下も数名在籍しておりますが」
少佐「ふむ、そうか」
大尉「……」
少佐「……」
大尉「……大隊長殿?」
少佐「あー、上からのお達しでね。ちかじか東の帝国さんと平和条約を結ぶらしい」
大尉「あの軍事強国とですか?にわかには信じがたい話ですが」
少佐「わかっている。上も彼らが何を考えているのかをしりたいようだ」
少佐「そこでだ。君の中隊は帝国さんの動向を探ってきてほしい」
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:33:09.67 ID:DQfsw9tR0<>
大尉「中隊規模でですか!? しかし、それでは侵攻と何ら変わりがないのでは」
少佐「帝国は、条約を結ぶといって相手を油断させ、その後奇襲をかけるのがお得意のようでね」
少佐「我が国もそれをやられてはかなわんだろう?」
大尉「それは……我が国は彼らとまさか」
少佐「大尉、口を慎みたまえ。これは特級の軍事機密だ」
大尉「ですが! あまりにもリスクが大きすぎます! これでは……死にに行くようなものです!」
少佐「大尉!」
大尉「ッ!」
少佐「すでに、先行偵察隊が帝国に入国している。賽は投げられたのだよ、大尉」
大尉(それはつまり、俺らに戦争の先駆けになれという事)
少佐「やってくれるね?大尉?」
大尉(俺ら掃きだめ中隊は、死をもって先制攻撃の矢を放て、という事)
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:35:03.20 ID:DQfsw9tR0<>
大尉(なんてこった)
大尉(平和だ平和だ、なんて思ってたら一寸先は地獄だったでござる)
大尉(てか、出発は明日って何だよ!準備もさせねぇきかあのハゲチャピンめ!)
曹長「隊長、どうしたんだろうな」
准尉「大隊長殿の部屋から戻ってきて以来、かれこれ2時間くらいぼーっとしてるますね」
少尉「ここは一発、俺が発破かけてやりましょう!」
准尉「葉っぱ?焼き芋焼くの?」
曹長「お!いいねぇ。みんなで食うか」
少尉「じゃ、曹長のおごりで」
伍長「……芋、食べる」
大尉「はぁ……死んだなこりゃ」
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 01:39:49.22 ID:DQfsw9tR0<>
ほのぼの戦記ssです。 書きためではないのでゆっくり進みます。
どうぞ最後までお付き合いください。
今日はここまで <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/21(日) 03:38:25.73 ID:sS+vHxavo<> ほのぼのだったのか
皇国の守護者みたいなものかと思ってた
とりあえず乙 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/21(日) 13:19:17.69 ID:UEzLT+K4o<> 何人生き残るか <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/21(日) 14:25:38.62 ID:kqUWfvEeo<> 乙
なかなか面白そう <>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 19:02:53.25 ID:DQfsw9tR0<>
〜中隊詰所〜
ザッ
大尉「えー、というわけで諸君」
大尉「我が第三連隊所属第34中隊は、帝国との国境付近に広がるアルヌの森に偵察に出ることになった」
大尉「繰り返すが、これは偵察任務だ。各自隠密行動を心掛けるように」
大尉(さすがに、「これは奇襲先制攻撃(死亡率100%)任務でぇーす」なんては言えんからな)
少尉「でも隊長ぉ、偵察任務なのにこんな大勢……200人も連れて行って大丈夫なんですかぁ?」
大尉(無駄に鋭いなこいつ)
大尉「確かに、今回の任務は異例だ。人数が多すぎる……。」
大尉「だが、これには訳があるんだ」
准尉「先行偵察がすでに行われているのでは?」
大尉「その通りだ、准尉」 <>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 19:04:02.15 ID:DQfsw9tR0<>
大尉「先行の部隊より、当該地域に敵影なし、との報告が来ている」
大尉「つまり我々の任務は」
曹長「散開して帝国さんがやらかしてないか徹底的に確認、ってことですかい」
大尉「そういうことだ」
大尉(実際は、散開する前に遭遇戦になる可能性が高い)
大尉(もし敵さんがこっちに奇襲攻撃を考えてるなら……おそらくこちらの反攻を防ぐために工作隊を送っているだろう)
大尉(問題は、いつ、どこで会敵するかなのだが)
大尉「では今回の編成だが、いつも通り4小隊4分隊だ」
大尉「各小隊内の分隊編成、及び分隊長任命はそれぞれの小隊長に任せる」
大尉「決まったらいつも通り俺のところに報告に来てくれ」
大尉「じゃ中尉、後は頼むわ」
中尉「了解しました」ハッ
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 21:50:49.25 ID:DQfsw9tR0<>
〜第二小隊詰所〜
中尉「……」ハァ
軍曹1「中尉殿、なんか難しい顔してんな」
軍曹2「隊長殿のところから帰ってきてからずっとああだぜ……またセクハラか?」
軍曹1「そんなまさk……隊長ならやりかねんな」
軍曹2「中尉殿もいじはってないで素直になりゃいいのになぁ」
軍曹1「バッカお前、いじはって顔を赤くしてるのが可愛いんだろう?それなのに……それなのに……」
軍曹3「ちくわ大明神」
軍曹2「中尉殿は隊長に、大尉殿に恋してるときた……」
中&軍12「「「はぁ……」」」
軍曹3「つっこめや」 <>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 21:53:05.60 ID:DQfsw9tR0<>
中尉(中隊が集まる1時間ほど前、私は隊長に呼ばれた)
中尉(とうとうプロポーズか、と思ってたら違った)
中尉(隊長は、到底信じられないような話を私に語った)
中尉(私たちは明日、死にに行くのだ、と)
中尉(隊長はいつものように、なんでもなさそうに言った)
中尉(それが隊長の優しさであることも私は知っていた)
中尉(だから……だからこそ私は)
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 21:58:19.65 ID:DQfsw9tR0<>
〜第三小隊詰所〜
少尉「というわけで、俺がこの隊の新しい隊長だ」ヨロシク
兵長A「なんだあいつ……例のボンボンかよ」キゾクキモー
兵長B「前の隊長も大概だったが……あいつもなぁ」ナイワー
兵長C「いつもチャラいしねぇ……信頼できへんわ」アリエナイッショ
少尉「……」
少尉(こマ?俺の隊バラバラじゃねえか)
少尉(前任の中尉がとんでもない無能だったから追い出したんだが……こりゃ隊の内部も相当荒れそうだなぁ)
少尉(……まずは俺自身だ。隊のみんなに認めてもらわないとな)
少尉(まぁ、言うて隊長は偵察任務っつてたし、これから少しずつ打ち解ければ大丈夫だろ)
少尉(この任務で、俺が無能じゃねぇってことを見せつけるんだ……見てろよクソ親父)
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 22:00:37.36 ID:DQfsw9tR0<>
〜第四小隊詰所〜
曹長「どう思う?」
准尉「どうって……なにがです?」
曹長「さっきの隊長の話だ。おかしく思わないか?」
准尉「確かに、疑問に思うところはありますが……だからと言って、我々がどうこうできる話でもないでしょう」
曹長「そういうことじゃねぇんだ……俺は……前の戦争と同じ匂いがするっつってんだ」
准尉「曹長さんはたしか、先の帝国との戦争に参加されたんでしたっけ?」
曹長「あの時の俺は招集されたばかりの一兵卒だったがな。戦争末期は本当にひどかった……血で血を洗う戦争よ」
曹長「その時と……あの地獄と同じ感じがするんだ」
伍長「……気のせいでは?」
准尉「気のせいだとしても、歴戦の曹長さんの言う事です。私が小隊長殿に進言しておきましょう」
曹長「よろしく頼む。……ところで小隊長は?」
伍長「……あそこで酒を飲んでいる」
オラーゴチョードコイッター! サケノカワリヲモッテコーイ!
准尉「……チッ、あの無能め」
伍長「……准尉?」
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 22:03:29.59 ID:DQfsw9tR0<>
=翌日=
大尉「おはよう諸君」
大尉(結局大した準備もできないまま出撃か……)
中尉「……」
少尉「ファ~」ネム
准尉「結局小隊長殿には会えずじまいだった……」ハァ
曹長「」キッ
伍長「」ダラーン
大尉「では、出発しようか」
大尉(俺たちの地獄へ)
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 22:19:55.06 ID:DQfsw9tR0<>
〜アルヌの森(帝国側)〜
准尉「中尉殿ぉ〜お腹減りましたよぉ〜」ザッザ
中尉「我慢してください、っていうか2時間前にたらふく食べたでしょう……」ザッ
准尉「あれじゃ足りませんよぅ」ザッザ
少尉「どんだけ食うんすか……」スタスタ
曹長「俺の飯の2倍は軽く食ってたぞこいつ」ザッ
大尉(今のところ隊は順調)ザッザ
大尉(無論、油断はできない)ザッザッ
大尉(というより俺の予想では、おそらくもう)ザ
キラッ
大尉「!! 全軍伏せろォ!」
中尉「!」
ババババババババッ タタタタタタタ
曹長「軽機関銃だと……隊長!」バッ
大尉「全軍停止!直ちに迎撃態勢に入れ!」
少尉「敵影なしなんじゃなかったのかよぉ!」フセッ
大尉「落ち着け!敵の数は?」
伍長「およそ大隊規模」サッ
大尉(大隊規模だと!? 連中の頭はイカれてやがんのか!)
大尉「各隊散開!地形を生かしてゲリラ戦闘に努めつつ、ポイントαまで走れ!」
大尉(ここで……こんなところで死ぬわけにはいかない!) <>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 22:23:39.67 ID:DQfsw9tR0<>
帝国少佐「あちらさんの規模は?」
帝国大尉「中隊規模です。おそらく偵察任務中かと」
帝国少佐「中隊規模で偵察だと? 野郎、喧嘩を売りに来たって訳か」ヤレヤレ
帝国少佐「全軍に通達。これは敵の先制奇襲攻撃である」
帝国少佐「完膚なきまでに叩きのめせ」ニヤ
大尉(数の上ではあちらのほうが圧倒的に上)タタタタタッ
大尉(囲まれては終わりだ)トマルナ!ハシレ!
大尉(幸いにもここは森の中……少数でのゲリラ戦が有効)バババババッ
大尉(となると)フム
大尉「第一小隊、行くぞ」
大尉(犬死にする様な犬でも噛まれりゃ痛いもんだぜ)ニヤ
<>
◆wrb7PeLp8M<>saga<>2017/05/21(日) 22:26:29.97 ID:DQfsw9tR0<>
今日はここまで
平日は更新速度落ちると思います <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/21(日) 22:40:53.70 ID:UEzLT+K4o<> 平日は仕事だからね
仕方ないね <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/21(日) 23:10:39.40 ID:8Rz/m3aq0<> 言わば日本のサラリーマンもまた、高度経済成長期以来続く「経済戦争」を戦い抜く兵士なのだ <>