◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/12(日) 01:01:06.59 ID:yk1FBVgO0<>このスレは、安価で決めた主人公・時系列・前提設定で進める長編多めの安価SSです。
各編で話につながりはありませんので、途中参加は大歓迎です。
全体的にシリアス傾向が強いけど実は作者は安価スレらしいカオス展開も大好きです。

【現行】あすみ編派生『かずみ』  :[24]>>849〜
・・・あすみの盗んだトランクに入ってたかずみが主人公の、見滝原周辺の外伝が全部入り混じった大変カオスな話。
・・・あすみ編の世界観および出来事、あすみのキャラ設定を引き継いでいるので、そちらについては下を参照。

【完結した話】
オリジナル主人公編(桐野巴編)【完結?】
・・・キリカとその幼馴染というだけのモブの物語。
・・・話の本筋と関係ないギャルゲのようななにかと、シリアスかつバッドエンドの現在二周。
・・・話の性質上、オリキャラと恋愛要素とかが苦手な人は閲覧注意になります。
・『キリカルート』[22]>>820〜[23]>>828
・『メインルート』[24]>>11〜>>530
あすみ編  :[21]>>465〜[22]>>680
・・・呪いから生まれた異端な魔法少女の話。
・・・願いにより復讐を遂げたあすみが見滝原の事情を引っ掻き回していく。
・『補完後日談』[23]>>847〜>>959
・『続編』[24]>>594〜>>748
キリカ編2  :[14]>>719〜[15]>>182,[17]>>927〜[21]>>426
・・・未契約キリカが黒猫と謎の少女に出会い、不思議な運命を知る話。
・・・前半はミステリー風シリアス、後半はほのぼの系。“トゥルーエンド”みたいなものを目指しました。
・『統合後(後篇)』 [18]>>846〜
杏子編  :[15]>>197〜[17]>>918
・・・マミの“先輩”な杏子のifストーリー。
・・・マミと仲直りしたり、色んな人と仲良くなったりする比較的ほのぼのなストーリー。
・After『マミさんじゅうごさい』:[17]>>436
なぎさ編  :[12]>>717〜[14]>>616
・・・謎の神様によって魔女化から助けられたなぎさが見滝原で奮闘する話。
・After『あすみ参入』:[13]>>953〜
メガほむ編 :[9]>>181〜[12]>>666
・・・非情になれないほむらの4ループ目、織莉子たちとの戦い。
・After『夜明け後の一週間』[12]>>93〜
アマネ編  :[7]>>807〜>>963,[8]>>5〜>>130(GiveUp)
・・・抗争に破れて見滝原に来た最弱主人公の野望の話。  ※オリ主※
キリカ編  :[7]>>309〜>>704,[8]>>475〜[9]>>151
・・・本編時間軸で織莉子が既にいない世界のキリカの話。話はほぼまどマギ本編寄り。
恭介編   :[6]>>815〜[7]>>240(BadEnd+)
・・・恭介の病院での日々と、退院してからの話。
Charlotte編 :[7]>>264〜>>285
・・・チーズを求めるCharlotteの小話。
ユウリ編様 :[5]>>954〜[6]>>792(BadEnd)
・・・契約したばかりのユウリが目的を達成するためにマミの後輩になる話。
QB編   :[2]>>198〜[4]>>502
・・・感情の芽生えたQBの話。
中沢編   :[練習]>>164〜[2]>>150
・・・まだ試運転。中沢が安価の導きにより魔法少女たちと関わっていく話。
さやか編   :[練習]>>8〜>>154
・・・マミの死後、さやかが魔法少女になって張り切ったり悩んだりする話
・・・試験作。かなりあっさりしてます。

【未完結の話】
Homulilly編 :[4]>>535〜>>686
・・・生まれたばかりの魔女Homulillyが時空を旅する話。
かずみ編  :[4]>>982〜[5]>>879
・・・ユウリのドジで見滝原に運ばれたかずみが織莉子とともに救世をめざす話。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534003266
<>オール安価でまどか☆マギカ 25
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/12(日) 01:04:36.92 ID:yk1FBVgO0<>
【注意】
*安価の内容について
★無効安価は自己判断で安価下。明らかに無効になりそうな内容は、その下に別の安価をしてくれるとスムーズに運びます。
★自由安価は基本的に主人公から起こす内容のみ。主人公以外の視点に移っている時はその場にいる人の言動まで可。
★『相談したい事がある』『話したいことがある』のみの安価は不採用とします。必ず話す内容まで書いてください。

*安価の取り方について
★基本的に連続で安価を取っても構いません。連投は1レスとして考えます。
★多数決は連続・連投無しです。
★多数決で同数に意見が割れた場合は指定内の最後のレス内容を採用。
★主レスは安価先を指定する数字に含まない。
★「下2レス」と書いた時には1時間以内に2レス目がこなければ「下1レス」に変更します。
 投下時間外は下2レス目があればそっちを優先。

*このスレの話について
★まどマギのほかに、おりマギ本編・かずマギ・漫画版まどマギ・TDS・PSP・劇場版のネタを含みます。
 それ以外からのネタは出さないか考慮しませんが、知ってるとより楽しめるネタはあるかもしれません。


・前スレ

『まどかマギカで安価練習』 :http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369643424/
『オール安価でまどか☆マギカ 2』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370979872/
『オール安価でまどか☆マギカ 3』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371835671/
『オール安価でまどか☆マギカ 4』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372909496/
『オール安価でまどか☆マギカ 5』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373645366/
『オール安価でまどか☆マギカ 6』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377690974/
『オール安価でまどか☆マギカ 7』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385884667/
『オール安価でまどか☆マギカ 8』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397729077/
『オール安価でまどか☆マギカ 9』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409071003/
『オール安価でまどか☆マギカ 10』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417014605/
『オール安価でまどか☆マギカ 11』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424792933/
『オール安価でまどか☆マギカ 12』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430323957/
『オール安価でまどか☆マギカ 13』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439045180/
『オール安価でまどか☆マギカ 14』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448012780/
『オール安価でまどか☆マギカ 15』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1461427177/
『オール安価でまどか☆マギカ 16』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475061935/
『オール安価でまどか☆マギカ 17』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483717207/
『オール安価でまどか☆マギカ 18』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491232637/
『オール安価でまどか☆マギカ 19』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497797899/
『オール安価でまどか☆マギカ 20』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1504964306/
『オール安価でまどか☆マギカ 21』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511090204/
『オール安価でまどか☆マギカ 22』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1516880466/
『オール安価でまどか☆マギカ 23』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523754962/
『オール安価でまどか☆マギカ 24』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527599223/

※『オール安価でまどか☆マギカ 21.5避難所』:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1516811060/
 脇道逸れた小話を書いたり本スレで出来ない安価募集をしたりする場所。次スレが見当たらないよ!という時にも覗いてみると情報があるかも。


☆随時募集

*安価で魔女を作ろうぜ*


 主に風見野や見滝原外などで登場するオリジナル魔女を募集中です。

 登場の機会があれば色んな物語に出させます。

 被りは一部再安価か統合。


・名前:【安価内容】の魔女(思い浮かんだものがあれば魔女名も)

・攻撃方法/見た目/特徴/性質/弱点/使い魔 など
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/12(日) 23:59:13.37 ID:yk1FBVgO0<>

かずみ「……何を言ってるのかはわたしには理解できない。でも、あすみちゃんはキュゥべえのことを殺したんだよね」

あすみ「そうだね。あ、私は謝る気はないから。私のことを改心させるとか、くだらない仲直りごっこなんて期待しないでね」


 そう言うと、あすみは軽い足取りで私たちに背を向けてドアに手をかける。


あすみ「巴マミ。本当は話し合いなんてする気はなかったんでしょ? アンタは最初から私を追い出すか殺す気でここに来たんだ」

マミ「……それも悪い人が相手なら仕方のないことだと思った。私の大事なものを守るために」

あすみ「ねえかずみ。巴マミみたいなやさしー人が、いつでも優しくて正しいと思う?」

あすみ「ああいう表面上常識人ぶった『いい人』ほど、つつけばどうなるかわかんないもんだよ」

あすみ「アンタのことも、アンタが自分に従順なイイコだから喜んでるとか」

かずみ「そんなことないよ! マミはわたしに居場所を与えてくれて、訓練までしてくれたのに……そんなこと言わないでよ」


 あすみは意地悪く言う。わたしはその言葉に反感を抱いた。

 なんでそんなことを言うんだろう。

 でも、勝手かもしれなくても私はあすみにも恩を感じることはあったから、やっぱり出来ればいがみ合うのを見るのは嫌だなとも思った。


あすみ「……――――あっそう。それと、気を付けて帰ってね?」


 あすみは扉を開くと、一言心配するような言葉を言ってからその中に消えていく。


 ……扉が閉まる音がする。それからすぐに鍵もかかる。


 わたしはさっきの言葉も含めて、その意味を考えていた。

 わたしが何も知らないのは当然。でももしかしたら、あすみはマミが知らない何か、知ってることでもあるの?
 
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/13(月) 00:22:10.65 ID:M5hQefFu0<>

マミ「私たちも帰りましょう。ティータイム、できなくてごめんなさいね」

かずみ「しかたないよ。こんな時なんだもん……」


 千歳家から離れていくと、マミのマンションに向かって歩き始めた。

 昨日別れるときには行く場所は決まってないようだった。あれからなにがあったんだろう。


 いつのまにか帰り道はすっかり暗くなっていた。

 ……さっき言われた言葉の意味を嫌でも感じ始めたのはすぐ、その途中だった。


*「おっとゴメン!」

マミ「!」


 いきなり自転車で後ろから走ってきた人が、横からぶつかって通りぬけていった。

 あきらかにわざとだった。荷物をひったくろうとしたみたいだけど、狙った通りにならなかったらしい。

 何も取られなかったかわりにマミは横に手をついて倒れていた。


かずみ「マミ、大丈夫?」

マミ「え、ええ。大丈夫だけど……」



 あれだけ意地の悪いことを言っていたのに、最後に取ってつけたような言葉。

 …………これも偶然、だったのかな。


――――
―――――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/13(月) 00:46:49.10 ID:M5hQefFu0<>

キリカ「……何猫かぶってんのさ。今更『さん』付けなんてしらじらしい」

織莉子「巴マミはこの地を仕切る魔法少女。周辺じゃ一番でしょう」

織莉子「彼女に目を付けられるのは得策ではないわ。貴女も気をつけなさい、“キリカ”」

キリカ「キュゥべえのことはこれから話そうと思ってた。でも、どうすんの? キュゥべえもいないのに魔法少女続けるなんて!」

織莉子「別に、どうもしないわ。何も変わりはしない」


織莉子「それより、あの『小さいほう』ね。あれは少し厄介だわ」



――――――
前日夜 風見野



杏子「――――……それとも、他人の空似だって言うつもりか? 双子でもいたとか?」

QB「君の考えはおおよそ当たっているよ。でも、『当たらずとも遠からず』だ」


QB「……少なくとも、近い存在ではあるかな」




――――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/13(月) 00:47:14.48 ID:M5hQefFu0<> ----------次回は14日(火)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/14(火) 23:08:42.64 ID:I5hyQC1C0<> 翌日



かずみ「――――マミッ! 朝ごはんできたよ」


 マミを呼ぶと、出来立ての料理を運んでテーブルにつく。

 器の中からはホカホカの湯気が立っている。今日の朝食はわたしが全部作っていた。


 マミが起きたのはさっきだった。昨日よりは支度もいくらかスローペースだ。


かずみ「どうかな?」

マミ「すごくおいしいわ。朝からありがとう」


 ……やっぱりキュゥべえの事でまだ元気がないのかな。

 静かに微笑むマミの顔を見る。



1今日は放課後どうする?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/14(火) 23:17:21.90 ID:AqRDcLOYO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/14(火) 23:18:50.18 ID:QzcsyLhP0<> 1+1人で自主訓練、下校時間になったら校門まで迎えに行く <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/14(火) 23:52:37.96 ID:I5hyQC1C0<>

かずみ「今日は放課後どうする?」


 マミも本調子じゃないかもしれないし、そんな気分じゃないかもしれない。

 そう思うと少し心配になった。


マミ「あ、そうね。また訓練もしないとね……」

かずみ「べ、別に無理にじゃなくてもいいよ! こんなときこそ、その……〜〜おいしいものを食べに行くとか!」


 でも、そう言うと笑われてしまう。なにかおかしいこと言ったかな?


マミ「おいしいものなら食べてるわよ。……あなたがいてくれてよかったわ。じゃないと私、今一人だったらどうしてるかわからなかった」

マミ「こんなときこそ、訓練しましょうよ。かずみさんはそのために来たんでしょう? それに、もっと息を合わせて戦えるように」

かずみ「う、うん! そうだね、がんばるよ」


 ……笑われても、マミが笑顔になったならいいや。でもその笑顔はやっぱり少し寂しそうで。

 わたしには、ずっとマミの傍に居たキュゥべえの代わりには完全になれることはないんだろうな。

 やっぱりそう感じてしまった。


 ――そんな笑顔を見ながら、昨日と同じ時間になるとマミを外に見送った。

 わたしはまた家で一人になる。


かずみ「んー…………」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/15(水) 00:22:00.16 ID:KqZuH1Hs0<>

 この時間はやっぱりちょっと退屈だ。

 自分のいない間まで部屋を貸してくれて、もうこれ以上ないほど贅沢なんて言えないけど……――


かずみ(もっと息を合わせて戦えるように、か)


 マミに会うまでは切羽詰まったような考えをしなくちゃいけないことばっかりだったから、

 そういうふうに考えて訓練するなら、なんかいいな……って思った。


かずみ(マミと行く前にちょっと自主練してこよう! 少しの間なら、大丈夫だよね…………)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/15(水) 00:22:40.10 ID:KqZuH1Hs0<> ----------------次回は15日(水)夜からの予定です <> ◆tHYtfyUBW.<><>2018/08/15(水) 15:38:12.80 ID:L0ciGIt40<> 楽しみ <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/15(水) 20:42:45.03 ID:KqZuH1Hs0<>
――――

――――


 お昼を食べてから、戸締りをして家を出る。

 まだ見滝原の景色は見覚えがないところばっかり。こうして一人で歩いてると軽く探検気分だ。


 ……訓練場所に向かう途中、ふと昨日も行った場所へと足を延ばした。

 『千歳』さんの家。外から眺めてみてもどこにも明かりはついてない。

 宣言どおり、本当にこの街を出て行ったんだろう。


かずみ(……あの『キュゥべえ』にまた会えることがあるの?)

かずみ(だとしたら、マミは……――――)


 ――だとしたら、マミはあすみを許せるのか。

 その場を見たわけじゃないし、なにがあったか詳しいことはわからない。

 ただ、あの時風見野に行くって言って別れてからキュゥべえを見ていないことは事実だった。


――――
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/15(水) 23:18:54.06 ID:KqZuH1Hs0<> 土手



かずみ「――――えいっ!」


 訓練場所に着くと、マミに見てもらった時のことを思い出しながら杖をそれらしく振り回してみた。

 これでも格闘の訓練になってるんだろうか?

 最初より少しは手に馴染んできた気がする。


かずみ「はっ! やっ!」


 その時視界の隅で何かが動く気配を感じ、瞬時にその姿を捉える。

 うん、今のわたしに死角はない。


かずみ「猫ちゃんよ……こっちにきて!」

「にゃー」


 杖を片手にポーズをとる。

 ……しかし、猫は気まぐれにどこかへ行ってしまった。ため息をつく。


かずみ「魔法でなんでも思い通りにはいかないものだなぁー――」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/16(木) 00:02:27.74 ID:2CGDY8fe0<>
かずみ「よしっ、そろそろ迎えに行ってみようか。見滝原中学校だよね?」

かずみ「――って、どこ!? そういえば場所知らないよ。マミが帰って、わたしがいなかったら心配するかも……」


 連絡を取る手段も、調べる手段も、今のわたしにはないことに気づく。


かずみ「お巡りさんか誰かに聞いたらわかるかなぁ……」


 ひとまず、土手から通りの方に出て歩き出した。

 でも知ってる道だけだ。一人であまり知らないところに踏み込んだら迷子になってしまう。


 その途中で、見覚えのある姿を見つける。


かずみ「ん?」


かずみ(あれは…………)
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/16(木) 00:30:29.79 ID:2CGDY8fe0<> ------------次回は16日(木)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/16(木) 23:18:30.74 ID:2CGDY8fe0<>

 その格好はマミと同じ『見滝原中学』の制服だった。

 思わずすごく助かった気持ちになって傍へと駆け寄っていく。


かずみ「キリカ!」

キリカ「…………昨日の。マミと一緒に居た子か」


 かたや、相手の反応は薄かった。


かずみ「ねえ、学校に居た人ってもう帰っちゃったかな!? マミを迎えに行きたいの!」

キリカ「案内してほしいってこと?」

かずみ「……報酬なら、払うよ」


 やっぱりタダじゃ嫌なのかと思って、昨日倒した魔女のグリーフシードを差し出してみる。

 しかし、キリカはそれを突き返した。


キリカ「いいよ、そんなのしまって。そんなの受け取ったの知られたらまずいし」

かずみ「え、どうして……?」

キリカ「とにかく、マミならさっき会ったよ。もう帰るとこだった。……ていうか、一個も持ってないのに無理するなよ」

かずみ「う」


 ……手の中のグリーフシードには既に黒いよどみが見えている。

 これは昨日使った分の残りだ。これじゃ交渉すらできないのかな。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/16(木) 23:38:07.34 ID:2CGDY8fe0<>
かずみ「やっぱり手遅れかぁ、どうしよ〜っ」

キリカ「今から行ってみれば間に合わないことはないかもよ」

かずみ「ホント!? じゃあ急がなきゃ!」


 ペコリとおじぎをして行こうとする。

 ……すると、キリカはこっちをまるで不思議なものでも見るようにしながら言った。


キリカ「……よっぽど好きなんだね」

かずみ「マミ? うん! だっていっぱい面倒見てくれてるし!」



1キリカも今度一緒に訓練してみたらいいんじゃないかな?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/16(木) 23:41:49.03 ID:V41cQLIHO<> 安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/17(金) 02:37:51.66 ID:PAQOXy9k0<> 1+やっぱりお礼はしたいのでふと目に入った屋台のたい焼きを買って渡してから別れる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/17(金) 15:01:10.32 ID:R/bUtYnPO<> キリカがたい焼きを受け取って喜んだり甘いもの好きだと察したら、キリカと友達になりたいとも話す

甘いもの(食べ物)が好きな人に悪い人はいないよ!
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/17(金) 22:10:15.19 ID:PAQOXy9k0<> 可能なら>>22も追加でお願いします <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 12:52:41.25 ID:/mLWRwFk0<>
かずみ「キリカも今度一緒に訓練してみたらいいんじゃないかな? せっかくキリカはずっと同じ縄張りにいるんだから」

キリカ「あー、そっか……キミは少ししたらここからいなくなるんだっけ?」

かずみ「うん。わたしはいつかあすなろに帰らないといけないから」

キリカ「……訓練はやめとくよ。それより早く行ったら?」

かずみ「うん、ありがとう! またね!」


 挨拶をすると、道を駆けていく。その途中で気になるものが目に入った。

 そして再び走って戻ってくる。


かずみ「はい! これお礼に!」


 近くで売っていた屋台のたい焼きを差し出すと、キリカは驚いてこっちを振り返る。

 キリカはおずおずと手を伸ばして、宙に手を浮かせたまま動きを止めた。


キリカ「お礼? 私なんもしてないよ」

かずみ「情報提供料、です!」

キリカ「……じゃ、そういうことならもらう! 今度からもグリーフシードよりそっちをお願いするよ」


 キリカはたい焼きを受け取って、上機嫌でかぶりつく。

 その様子を見るとわたしもちょっとうれしくなった。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 13:34:16.42 ID:/mLWRwFk0<>
かずみ「また今度、今度ね! 食べ物が好きな人に悪い人はいないよ!」

キリカ「その理屈はよくわかんないけど。……別にそんなに良い人じゃないよ、私は」

かずみ「悪人は自分で悪人ですなんて言わないよ。言うのは謙遜か、悪いことしてるって負い目がある人だけ」


 そう言うと、キリカは一旦食べる手を止めた。口の端にあんこをつけたまま。

 この人がどっちかなんてことは今探る気はない。


キリカ「じゃあ、悪い人は良い人のふりをして近づいてくる?」

かずみ「悪い人は食べ物を粗末にするの! 物語の中じゃ、その人は生きてエンドロールを迎えられないよ」

キリカ「なにそれ」


 キリカは言葉通りに複雑な顔をする。――なんだったかな。なにか覚えてる気はするんだけど。


 今度こそお別れの挨拶をすると、マミの家のほうに駆けていく。

 ……キリカはその姿を遠巻きに見ながら再びたい焼きにかぶりついた。



キリカ「……へえ、楽しそう。私もあっち側のほうがよかったかな」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/18(土) 19:43:14.68 ID:u9AJoqnY0<> お、いつの間にか続きが来てる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 19:46:21.99 ID:/mLWRwFk0<>


 マンションに向かっていると、ちょうど土手との中間くらいのところでマミと鉢合わせた。

 ――道の途中でマミの呼ぶ声が聞こえる。


マミ「かずみさん!」


 マミも息を切らして走っていた。わたしが思わず心配になるほどに。


かずみ「あれ? マミ、どうしてそっちから?」

マミ「家にはいなかったから、訓練場所や心当たりのある場所に行ってみようって思って……」


 マミはこっちに駆け寄ると、その場で息を整えて安心した表情を見せた。

 でもまだ心配がぬぐいきれないのか、それからわたしの両手を握って詰め寄ってくる。


マミ「……よかった。もしかずみさんまでいなくなっちゃったらどうしようって思った」

マミ「誰かに襲われたわけでも、嫌になったわけでもないのよね?」

かずみ「う、うん。大丈夫」

かずみ「ちょっとだけ先に訓練しようって思ってたんだけど、熱が入ったら遅くなっちゃって……」

かずみ「学校に直接行こうかとも思ったけど場所知らないし、心配かけちゃったね。ごめん」

マミ「それならいいの。……じゃあ、さっそく訓練に行きましょうか」


 二人で並んで訓練場所へと歩き出そうとして、マミの姿を改めて見てみる。

 今日はまだ制服のまま。その服や靴がところどころ汚れたり擦り切れているのが目に入った。


かずみ「……マミ、ここに来るまでにどうかしたの?」

マミ「あぁ、これは転んだだけ」


 マミは軽く言う。

 でもやっぱりわたしは、昨日からどっか『嫌な違和感』を感じていた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/18(土) 19:51:11.28 ID:u9AJoqnY0<> 書き込んだ直後に再開はうれしいw

マミさん、かずみに依存し始めてる?
キュウベェ早く戻って来い <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 20:13:34.12 ID:/mLWRwFk0<> ――――

――――



 かずみとマミが歩く通りのすぐ隣の通り、そこには人々の通る道の端に、ひっそりとした人の姿があった。



ユウリ「…………くっ。 一体なにがどうなってる? あれから魔法少女の情報すらなし、収穫ナシだ」

ユウリ「“アイツ”からの連絡も届かない――」

ユウリ「やることなすこと、まるで何かに妨害されてるみたいだ」


 人々の通る道の端で、その影はゆっくりと動き続ける。


 ……ずるりと何かを引きずるように歩いていた。


―――― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 21:18:23.68 ID:rBarl6byO<> ユウリ様は呪いのベルト装備中だからなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 21:52:54.75 ID:/mLWRwFk0<> ――――
土手



マミ「そう、もっと身体全体を使って! 重心を意識すれば動きやすいし威力も増すはずよ」

かずみ「わ、わかった!」


 ――土手に着くと、昨日と同じ通りマミは熱心に指導してくれていた。

 傍で見てくれて、相手もやってくれて、マミがいるのといないのじゃ全然違う。


 訓練に一区切りつけて休憩に入ると、芝生の上に座って身体を伸ばす。


かずみ「やっぱ一人でやってるよりずっとやりやすいよ! 上達できてるって感じする!」

マミ「お疲れ様。かずみさんは色んなことを素直に吸収してくれるから、私としても教えやすいわ」



1魔女狩りに行こう
2昨日からの違和感について
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 21:54:27.92 ID:VivMaUcf0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/18(土) 21:55:04.30 ID:u9AJoqnY0<> 2+1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 22:24:46.71 ID:/mLWRwFk0<>
かずみ「……ねえ、マミはなにか違和感ない?」

マミ「違和感?」


 今日のパトロールに出発する前に、ふと気になっていたことを聞いてみる。

 ……マミは気づいてないのかな?


かずみ「なんていうか、昨日からなんか変な感じ。言ってみると、偶然とは思えない嫌なことが起きてる……みたいな」

マミ「もしかして、この怪我のこと? ……きっと考えすぎよ。心配してくれてありがとう」


 そういうマミは、強がってるみたいにも見えた。

 もしかしたら気づいてはいるのかもしれない。でもきっと、わたしに心配をかけさせたくないんだ。



 休憩を終わりにして土手を出発すると、またマミと一緒に街を歩きだす。



かずみ「ところで、キリカや織莉子とは訓練いっしょにやらないの?」

マミ「あの二人と?」

かずみ「うん。キリカには今度どうかなって誘ってみたんだけど」

マミ「……あまり考えたことはないわね。そういうのを望む人ばかりでもないだろうし」


 それからすぐ、魔女の反応を感じ取ったマミが結界を探り当てる。


 ――わたしはまたその反応を感じ取ることができなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 22:47:25.31 ID:/mLWRwFk0<> ―お菓子の魔女結界



かずみ「わぁ、お菓子がいっぱいある」

マミ「油断しちゃダメよ。病院に現れる魔女は放っておいたらそれだけ被害も大きいんだから」


 大きなお菓子と病院の薬剤、奇妙な組み合わせが混ざり合って非現実的な世界を作り上げている。

 これはマミがグリーフシードの状態で見つけたものだ。出来たての結界を進む。

 こういうのは、結界からはぐれた使い魔がグリーフシードになったか、誰かが濁ったグリーフシードを意図的に捨ててしまったものらしい。


かずみ「使い魔が少ないね」

マミ「孵化したてだからでしょうね。それならそれで、このまますぐに決着をつけてしまいましょう」


 結界の中の扉をくぐっていくと、最深部には魔女の寝床がある。

 そこを囲むように使い魔が行列を作っていた。



マミ「まずは使い魔を!」

かずみ「うん!」



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:1個
・ヘヴィメタ[70/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


仲間:
マミ 状態:正常


敵:魔女Charlotte
  使い魔Pyotr×10 <-攻撃対象デフォルト

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 22:51:08.92 ID:rBarl6byO<> 3使い魔を魔翌力に変換
無理なら4 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 23:14:10.57 ID:/mLWRwFk0<>

かずみ(まずはこの前戦った時みたいに、数で対抗する!)


 結界の中にあるものから姿を変えて分身を作り出す。

 次々とお菓子が“わたし”になっていく!


マミ「これは……!」

かずみ「驚いた? これもわたしの魔法の応用だよっ!」

マミ「ええ、驚いたわ。考えたわね」

かずみ「んー、でも……わたしが考えたわけじゃないの」

マミ「え?」

かずみ「わかんないけど、記憶の中にあった気がするような……――」


 戦いの最中に考えていると、マミが手をひく。


マミ「さあ、行くわよ。まだ魔女が残ってる」

かずみ「うん!」


 そうだ。迫ってくる使い魔は片づけたと思ったけど、まだ魔女がいるんだった。

 けど全然暴れてる感じがしない。寝坊助なのかな? 最深部の中心に近づいてみると、拍子抜けする姿のぬいぐるみが落ちていた。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 23:16:35.26 ID:rBarl6byO<> 使い魔を魔翌力に変換するのは無理だったか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/18(土) 23:25:28.61 ID:/mLWRwFk0<>

かずみ「これが魔女……?」

マミ「恐らくね。魔力からしたって間違いないでしょう。気を抜いたら危ない。手を抜かず、速攻で倒すっ!」


 マミが小さな魔女の頭部に向けて発砲し、念入りに拘束する。

 さらにそこに向けて数発。まだ結界が崩れる気配がないのを見て、さらに大技で確実に仕留めようとする。


マミ「ティロ・フィナーレ!」


 大砲の口からは魔力の塊が放たれる。

 しかし魔女は――――ぼろぼろになった小さなぬいぐるみは、その中から人一人を飲み込むほどの“正体”を現した。



 マミはその瞬間、完全に放心していた。



かずみ「マミッ!」




かずみ 魔力[90/100]  状態:正常
GS:1個
・ヘヴィメタ[70/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


仲間:
マミ 状態:正常


敵:魔女Charlotte <-攻撃対象デフォルト
  使い魔Pyotr×3[近]
  使い魔Pyotr×5[攻撃圏外]
  使い魔【特殊】Pyotr×1[攻撃圏外]


1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 23:26:12.95 ID:M7G0HNlJ0<> 安価下 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 23:33:25.64 ID:rBarl6byO<> 2
魔女倒すのではなくマミへの攻撃を反らしたり防ぐ感じで
威力よりも速さ重視みたいな感じ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 23:44:26.85 ID:ilp8SjCm0<> そういえばクーほむ来ないね
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/18(土) 23:51:08.10 ID:rBarl6byO<> クーほむが来ないのもあすみの呪いの影響?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/19(日) 00:00:53.73 ID:Go1oCKFh0<>

 ――――戦いの運命に約束された勝利はない。

 不安定な天秤は些細なことでたやすくひっくり返り、敗者の命を奪っていく。


 マミにとってはここで、この状態でこの魔女が現れたこと自体が不幸の塊だった。

 それでも、“隣”に彼女が居たことは運より強い味方で、その出会いはなにより奇特な幸運の証だった。




 死に直結するほどの不幸ではない。

 それでもわたしには、ついにあの“違和感”そのものが……『死神の鎌』のようなものが振り下ろされた瞬間のように思えていた。



かずみ「っ!」


 杖を構え、その先から短く魔力のビームを散らして照射する。

 魔女は進行方向を捻じ曲げられ、狙いを変えた。


かずみ「こっちを向け! お前の相手はわたしだぁーっ!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/19(日) 00:20:52.05 ID:Go1oCKFh0<>

 魔女の横を回り込み、黒い胴体に杖を叩きつける。

 視界の端で魔女の動きを追いながら浅い突きを入れると、一旦距離を取った。


 そこに正面から魔女はかぶりつこうと突進する。


かずみ「よし――狙いはもうわかってる!」


 飛び上がって地面に魔女を突き倒すと、胴体の皮が破裂して新しい本体が出てきた。

 後ろを取ってもう一度素早く杖を突きだす。この時にも訓練の時にマミに言われたことは注意していた。


 もうこっちには向かせない。戦いのペースも掴んできた。


かずみ(なんだろう、この感じ……)

かずみ(身体が覚えてる)


 失った記憶。でも、戦いの感触は奥底に刻まれた本能のようにたしかに残っている。

 それを今はっきりと感じた。


かずみ「――今だ」


 静かに呟き、杖を振り上げる。

 その時、“何か恐ろしいもの”が脳裏をよぎって見えた。この前も見た片鱗――それを前よりもはっきりと。


かずみ(えっ……)


 少女たちの死体、何人もが倒れる血だまり。振り上げた杖が記憶と重なる。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/19(日) 00:27:00.06 ID:+50dhtaCO<> ここでその記憶ぶり返しちゃうのか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/19(日) 00:37:14.89 ID:Go1oCKFh0<>

 杖は魔力を放出することも振り下ろされることもなく、代わりに黄金の銃弾が魔女の皮を破った。

 ここで大技を使ってもまだ戦いは続いていたんだ。


マミ「待って、これは思ったよりも慎重に、そして素早く追い込んだほうがよさそうよ」

マミ「隙なら私が作り出す! かずみさんは確実に叩き込める時を狙って!」

かずみ「う、うん!」


 マミと二手に分かれて魔女を囲み、誘導しながら攻撃を当てていく。

 出てきたそばから交互に攻撃を打ち込み、次々に破る。

 大技の隙だって二人もいれば埋められる!


マミ「無限の魔弾よ、私に道を拓いて――!」

かずみ「――――リーミティ・エステールニ!」


 降り注ぐ銃弾とぶつけられる強力な魔力。

 魔女の動きを完全に塞いで、その存在を跡形もなく滅する。


 やがて魔力の鎮まった結界の中で、倒しきったことを確認するとやっと二人で安心した。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/19(日) 01:11:13.07 ID:Go1oCKFh0<>
かずみ「やった、倒せたよ!」

マミ「ええ! 必殺技、息ピッタリだった! 私たち、すごく相性のいいコンビよ」


 しばらくはしゃいでいたけど、それからマミは突然その場に崩れるように座り込んだ。

 マミの手元にあるソウルジェムが、これまで見たことのない暗い色に濁っているのに気づく。


マミ「……ごめんなさい、気を抜くなって言っておいた本人がこれなんて。気を抜いてたのは私のほうね」

マミ「あなたがいなかったら私、あのままやられてたわ。――でも、それでもいいかって。あの時ね、本当は少しだけ思っちゃった」

かずみ「マミ、そんな状態で戦ってたなんて! いざって時に魔法使えなくなったら大変だよ!」


 慌ててさっきの魔女のグリーフシードを拾う。

 わたしも座り込んで、ソウルジェムごとぎゅっとマミの手元を両手で握り込んだ。


かずみ「……よくないよ。マミがそんなこと思ったら、死んだ人も悲しむよ。わたしもマミとやりたいことまだまだいっぱいあるんだよ」

マミ「ええ、そうね。もし元のかずみさんに戻って街が離れても、師弟以外で私ともコンビやってくれる?」

かずみ「うん。わたしはマミの弟子だけど、その前に友達だし相棒だから」


 ……そう答えつつ、あのさっき過った“記憶の断片”が心に残っていた。

 いつか記憶が戻って、『元のわたし』になって――もしそれがマミの許せないような人だったらどうしよう?


 そんな不安が生まれる。それはまだ言えなかった。




マミ「本当に、あなたがいてくれてよかった」


――――
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/19(日) 01:12:14.69 ID:Go1oCKFh0<> -----------次回は19日(日)夕方〜夜から開始予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/19(日) 01:18:20.49 ID:+50dhtaCO<> 乙です
かずみとマミ、結構良いコンビですね
かずみががあすなろに帰ったらマミのメンタルが心配だなぁ……
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/19(日) 22:30:34.95 ID:Go1oCKFh0<> ------------ちょっと思ったより予定が長引いたので本日中止。
次回は20日(月)夜からの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/20(月) 22:10:55.74 ID:Csv0zB+h0<> ――――

――――


織莉子「……いらっしゃい、キリカさん。来るなら事前に連絡が欲しかったわね」

キリカ「したよ。メール」

織莉子「そう? 私が見ていなかっただけかしら……」


 豪奢な玄関を通され、中に足を踏み入れる。

 キリカはその雰囲気に“どこか覚えのある”作られたような違和感を感じていた。


織莉子『相手に認識されなければ意思が届いたことにはならないわ。返信も待てないの?』


 冷たい部分は空気の奥底に隠し、テレパシーで伝える。

 キリカはむすっとした顔をしたが、反論はせずに自分の“用件”を言った。 


キリカ「……巴マミから伝言。『この縄張りでの活動を控えろ。もし美国さんにも会ったら伝えておけ』だってさ」

キリカ「どうすんのこれから。てゆーか、言われるまでもなく“ゴミ箱”がいないんじゃ活動も控えざるを得なくなるのに」

織莉子「それならその通りにするしかないでしょう。私は彼女に目を付けられたくはないわ」

織莉子「でも、“回収係”なら心配しなくていいわよ。一応この前も言ったでしょう?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/20(月) 22:54:21.03 ID:Csv0zB+h0<>

 意味深な言葉を言う織莉子に、何を言ってるのかわからないとばかりに不審がるキリカ。

 織莉子はこの場の誰もいない場所に向かって声をかけた。


織莉子「キュゥべえ。まだ話は終わっていないわ。ほら、キリカさんも用事があるかもしれないし――」

織莉子「ところで貴方、マミさんの前にはいつ姿を見せるの? 彼女、落ち込んでいるんじゃないかしら?」

キリカ「は?」


 思わず聞き返す声が上がるが、そこには変わりのない姿があった。


QB「……用はあるかい?キリカ。使い切ったグリーフシードがあるなら今もらうよ」

キリカ「いや、だって! あの時目の前で……!」

織莉子「私は一足先に視えていたのよ、“この力”で」

織莉子「幸い、キュゥべえには代わりがいくらでもいる。記憶も意識もそのままだわ。これで安心してくれたかしら?」




織莉子『どこに行くの? 勝手な行動はやめなさいね』

織莉子『……これは命令よ。私が見込んだのは貴女の“そんなところ”じゃない』


織莉子『次に行くところは決まったわ』


――――


QB「家を知るくらいにまでなっていたとは。ずいぶんキリカと仲良くなったんだね」

織莉子「……――――そうかしらね。招かれざる客なら、教えた覚えもないのに外にたくさん来ているけど」

QB「……そんなに有名なのかい? 君の家は」


――――
―――― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/20(月) 22:58:01.85 ID:iYw5aQN60<> キュウベェ、何で織莉子のとこにいるんだ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/20(月) 23:57:12.54 ID:Csv0zB+h0<>

マミ「かずみさん、ケーキが出来たわよ。テーブルに運んで」

かずみ「どれどれ? わあ、めっちゃうまそう! 食べてもいい? 食べてもいい?」

マミ「ええ。召し上がれ」


 マミの家に帰ってくると、昨日の宣言通りマミがケーキを焼いてくれた。

 魔女狩りの時にはまだ本調子じゃなさそうだったから心配したけど、マミは張り切った様子だった。


 紅茶とケーキがテーブルに揃って『お茶会』がはじまる。


かずみ「マミ、もう大丈夫なの?」

マミ「やっぱりキュゥべえのことはまだ悲しいし、ずっと忘れられないと思うけれどね……」

マミ「でもなんていうか、『お祝い』とか『感謝』とかの気持ちを込めてこういうのをやりたかったのよ」

かずみ「ありがとう。甘くてふわふわで美味しいよ!」


 フォークを突き刺して、クリームたっぷりのケーキをほおばる。

 期待した通り、マミのお菓子作りの腕は確かだった。


マミ「……ねえ、明日は帰る前に少し買い物して行かない? かずみさん、朝起きてから寝るまでずっとそれを着ているでしょう?」

かずみ「え、でも……」


 わたしの持ってるお金は汚いのだけ。……マミが知ったら、やっぱり嫌がるかな。

 わたしもあの時最低限のものは買い揃えたけど、それ以上自分のために使うのは抵抗があった。


マミ「お金なら私が出すわ。必要なものでしょうし」

かずみ「で、でもそんなにしてもらうわけにはいかないよっ!ただでさえもうマミにはいっぱいお世話になってるのに」

マミ「でも、いくら魔法で変えられるっていっても大変じゃない?」

かずみ「うーん……それなら、明日はわたしがお菓子作るよ。またお茶会しよう!」

マミ「いいわね、それ。それなら明日も楽しみにしておくわ」


 わたしはお菓子作りはどのくらいできるんだろう。

 わたしも今から楽しみになってきた。



1そういえばキリカとは何を話したの?
2マミって帰国子女なの?
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/21(火) 00:01:35.91 ID:/bcCtBZ0O<> 1+2
安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/21(火) 00:14:10.94 ID:9tU4JvUPO<> ↑
追加でキリカが甘いものが好きなことを話して訓練に誘ってみようと提案

キリカ甘いもの大好きみたいだし、とても良い顔して食べるから素は悪い人じゃないと思うな
訓練のあとお茶会するって話せば乗って来ると思うよ!
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/21(火) 00:20:48.27 ID:Eis+48C20<> ----------ここまで。次回は22日(水)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/21(火) 17:05:08.32 ID:9tU4JvUPO<> どうせなら昼間のかずみとキリカの会話の内容も追加した方がよくない?
キリカにとって甘いもの>GSとか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/22(水) 21:02:44.48 ID:ZfgCWN2f0<>
かずみ「――あ! マミって帰国子女なの?」

マミ「どうして?」

かずみ「だって必殺技がイタリア語だったし……『最後の射撃』、でしょー?」

マミ「もしかしたら、かずみさんのほうがそうなんじゃないかしら?」

かずみ「えっ、わたしが?」

マミ「だから直感的にわかるし、そう思ったの」


 そう言われるとたしかに納得して、うんうんと頷いた。

 わたしは帰国子女かぁ。


 そしたら、マミがこそっと内緒話でもするように近づいてきた。


マミ「……ちなみに、リーミティ――って、どういう意味?」

かずみ「えっ」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/22(水) 21:06:49.35 ID:91JDfLN00<> リミットの外⇒最大の攻撃、だったけ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/22(水) 21:34:55.52 ID:ZfgCWN2f0<>

 ――――……お茶会は一旦中断。

 マミの家にあった辞書を一緒に見ていると、マミはどこか恥ずかしそうにしていた。


マミ「……ごめんなさい。このとおり、私は帰国子女でもなんでもないから」

かずみ「別にいいよ。わたしもなんか、ちょっとだけ自分の正体に近づけた気がしたし」


 本をしまって、カップに残ってた紅茶を口に含む。

 でも、わたしの正体ってまだまだ謎が多い。

 今日の戦いのときのことを考えると、知った方がいいのか――なんて疑問も心の隅にわきはじめていた。


かずみ「そういえば、キリカとは何を話したの? 訓練の前マミに会ったって」

マミ「……ああ、呉さんと話したことね」


 聞いてみると、マミはなぜか少しだけ話しにくそうにした。


マミ「この縄張りから出て行ってもらうように話をしたの」

かずみ「……あすみちゃんのことがあったから?」

マミ「そうね。家もこっちにあるみたいだし、引っ越せとまでは言わないわ。でも活動を許すかどうかは縄張りを仕切る私次第」

マミ「やっぱり、ああいうことがあると……これからははっきりさせたほうがいいと思った」

マミ「グリーフシードを優先する魔法少女とは一緒にはいられない」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/22(水) 21:45:35.59 ID:91JDfLN00<> 昼間キリカがグリーフシードよりたい焼きを優先した事も話したいね
キリカの姿勢は魔法少女としてはどうかと思うけど、普通に年頃の女の娘っぽい考え方してるって事だし <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/22(水) 21:58:55.93 ID:ZfgCWN2f0<>

 マミはいたって真剣な様子だった。

 大切な人を殺されたんだ。あんなことがあれば慎重になるのはわかる。


マミ「美国さんとも、話が合いそうなら受け入れてもいいと思ってるけど今は……」

かずみ「でも、キリカはグリーフシードより甘いものを優先してたよ?」

マミ「……えっ?」

かずみ「織莉子のことも、素性のわからない魔法少女だから怖いんだよね。良い人そうなら受け入れる?」

マミ「それはまあ、私と考えが合うのなら」

かずみ「でも本当に悪い人は、良い人のふりをして縄張りを握るマミに近づいてくるかも」

マミ「……それはそうね。神名さんだって礼儀は守ってきた。でも、そんなこと言ってたら誰も信じられなくなっちゃうわ」

マミ「だから…………こんなこと言ってるのかも」

かずみ「とりあえず、どっちも一度一緒にやってみればいいんじゃないかな? 訓練」

かずみ「キリカなら訓練のあとお茶会するって話せば乗って来ると思うよ! とても良い顔して食べるから素は悪い人じゃないと思うな」


 マミはきょとんとしてわたしの話を聞いていた。


マミ「善悪の基準、そこなの?」

かずみ「うん」

マミ「とても良い顔をして食べる悪人は?」

かずみ「〜〜そういうケースは居るだろうけど例外なの!」


 そう言うとマミは苦笑いをして、それから……

 ――どこか遠い表情をした。



1夕飯は何がいい?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/22(水) 22:02:10.05 ID:3647Sdt70<> 安価下 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/22(水) 22:02:29.03 ID:Gk0wSfbh0<> 1+そういえばマミ、あの絵が上手な桐野くんと付き合ってるて噂があるけど本当なの? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/22(水) 22:06:14.38 ID:91JDfLN00<> 1+マミに必殺技の話

そういえばティロ・フィナーレってカッコいいよね
マミの全てが詰ってるって感じだし
『ティロる、ティロるとき、ティロるなら、ティロフィナーレ!!』ってやつだね!

そういえば私の分身魔法って名前まだないんだよね
マミ、なんか良い名前あるかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/22(水) 22:22:59.33 ID:fUeyP46gO<> 安価↓だな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/22(水) 22:35:10.42 ID:ZfgCWN2f0<>
かずみ「ごちそうさま! 夜はまたわたしが作るよ! 夕飯は何がいい?」

マミ「まだお腹はすいてないわ。おやつもあったから少めでいいと思うけど……」

かずみ「えーっ? 」

マミ「わ、私のは、ね! かずみさんのはいっぱい作っていいから!」


 マミから許しをもらってキッチンに立つ。

 貸してもらったゴムを口にくわえて、手で長い髪を後ろに結うようにまとめる。ここから先は料理の戦闘モードだ。


かずみ「ティロ・フィナーレってカッコいいよね! マミの全てが詰ってるって感じだし」

かずみ「『ティロる、ティロるとき、ティロるなら、ティロフィナーレ!!』ってやつだね!」

マミ「そ、そうかしら……? そんなに褒められると照れるわ」

かずみ「えへへ」

マミ「そういえばあの分身の魔法はなんていうの?」

かずみ「あれは……――」

マミ「ないなら私がつけてあげる。『ネーロ・ファンタズマ』……でどうかしら?」


 その時、わたしは思わずマミの肩を両手でつかんで詰め寄っていた。 

 なんていうんだろう、わたしの中で何かが噛み合ったような感覚があった。


かずみ「そうなの! あれは……そうなの」

マミ「そ、そう。気に入ってくれたなら嬉しいわ」


 ……でも、何かが違うような。この感じはなんだろう?


かずみ(――――きっと、私が考えた技じゃないからだ)


 わたしの技は、誰かの使っていた技。わからないけどそんな気はする。

 ――……そう考えると、不思議と少しだけ納得ができた。



―4日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[20/100]
・お菓子[10/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5]  [体術Lv3] [射撃能力Lv20]
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/22(水) 22:40:08.35 ID:91JDfLN00<> 『ネーロ・ファンタズマ』、黒い亡霊か <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 00:13:16.92 ID:gXHmMS7u0<> ――――
見滝原中学校



マミ「呉さん、魔法少女のことで話があるのだけど」

キリカ「縄張りの事? あれから狩ってないよ」

マミ「一度、一緒に訓練をしてみたらどうかって」

キリカ「それ、かずみって子から?」

マミ「ええ」

キリカ「いや、悪いけど私はそういうのは……――」



マミ「……終わった後はお茶会をやるわよ? かずみさんがお菓子を作ってくれるんですって」

キリカ「!」


――――

――――…………
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 00:22:28.09 ID:gXHmMS7u0<> 放課後



マミ「…………というわけで、お菓子のことを話したらあっさりついてきてくれました」

かずみ「やっぱり思ったとおり!」

キリカ「なんか、安い人だと思われてる?」


 マミが帰るのを待っていると、今日はキリカを連れたマミがインターホン越しに現れた。

 それからいつもの土手に来て訓練に入ろうとするんだけど……――


キリカ「ま、それだけの得がなきゃ来ないよ」

キリカ「こんなメンドくさいことするんだから、たっぷり美味しいもの食べさせてよねー」


 わたしと二人だった昨日までとは明らかに雰囲気は違う。

 キリカは気にしてない様子で準備運動のように軽く身体を捻っている。


 こっそりとマミと二人で話す。


かずみ「……やっぱりマミには合わなそうだと思う?」

マミ「露骨に現金すぎて心配になってきたわ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 00:30:06.55 ID:gXHmMS7u0<>

 マミは昼に話した『続き』を再び思い出す。


――……


キリカ「どういう風の吹き回し? かずみのことは置いといてね、君には『嫌われたものだな』って思ってた」

キリカ「理由はわからないことはないよ。私と君は違うから」

マミ「ええ……そうね」


――――
――――


キリカ「……で、訓練ってなにすんの?」

マミ「まずはあなたの戦闘スタイルを見てからじゃないと」

キリカ「あ、そっか」



1キリカは魔法少女長いの?
2わたしとやろう!
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/23(木) 00:33:33.61 ID:ZuKH2dW40<> 1のあと2
あとキリカに必殺技があるかどうかも聞く <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 00:39:09.91 ID:MGUvBJGOO<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 00:40:34.94 ID:gXHmMS7u0<> --------------次回は23日(木)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/23(木) 00:42:08.48 ID:ZuKH2dW40<> 乙です

次回かずみが作るお菓子とか料理、安価で決めたいですねぇ
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 20:59:22.68 ID:gXHmMS7u0<>
かずみ「キリカは魔法少女長いの?」

キリカ「いや短いよ」

かずみ「じゃ、わたしとやろう! わたしも一応初心者だから」

キリカ「『一応』?」

かずみ「戦ってたことはあるみたいで、戦ってると感覚は覚えてて……――」


 一言で説明できることじゃない。考えてるとわけわかんなくなってきた。

 衣装に変身する。やっぱりわたしは考えるよりやるほう!


かずみ「とにかく、やってればわかるよ!遠慮しないでいいからね」

キリカ「手加減してよ、全力なんて出してやらないから!」


 相手も変身したのを確認して、杖を突きだす。

 キリカの武器は魔力で出来た暗い色の爪だ。キリカが私の攻撃を避け、黒色同士が重なり合う。


マミ「頑張ってー!」


 マミは声援だけ。でも、たまに鋭いアドバイスをくれたりする。

 今はキリカの戦闘スタイルを見るのが目的らしい。


かずみ「動きが甘いよ!見切ったかも!」

キリカ「――こうなったら!」


 キリカが何か力を込めるように足元に爪を振り下ろす。

 ――その瞬間、キリカが目の前から消えたように見えた。




かずみ「えっ……」

キリカ「あー……髪、しばっとけばよかったねえ。 ごめんよ? 悪気はないんだ」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/23(木) 21:02:09.37 ID:ZuKH2dW40<> あれま、髪切られちゃった?
これはかずみ散髪イベントかな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 21:06:56.39 ID:gXHmMS7u0<>

 少し硬く広がった髪の一房、わたしの一部だったものがパラパラと散った。

 地面に長い黒髪が落ちている。


 ……キリカはいつのまにかわたしの斜め後ろへと移動していた。


マミ「なるほどね、かずみさんはもう見切った気でいたでしょう? でもペースをつかんだと思ったらいきなり乱して隙を突いてきたの」

マミ「チェンジ・オブ・ペース。錐のように鋭い一撃。かずみさんの目には見切れなかったわけだわ」

キリカ「いや、そこまで考えてたわけじゃ……」

かずみ「すごいよ今の! 今の、名前は?」

キリカ「えっ!? 名前?」

かずみ「必殺技の名前だよ。ないの?」


 わたしが上機嫌で詰め寄っていくと、キリカは予想外のことが起こったみたいに慌てて目を逸らした。


キリカ「……名前? ないよそんなの。遊びでやってるんじゃないんだぞ!」

マミ「あら、それは私たちが遊びでやっているということ?」

キリカ「別にそうは言ってないじゃん! でも私はあんた達みたいのとは違う! ……あんたたちみたいに、好きでやってるわけじゃない」



 その言葉で、一旦この場の空気は静まった。

 どういう意味かわからなくてマミと顔を見合わせる。キリカは俯いてしまった。


かずみ「ないならわたしがつけてあげる。じゃあわたしと同じ『黒【ネーロ】』で……――」

キリカ「いらないし。ていうか、私が勝ったんだよね?」

マミ「正確にはさっきのは試合ではないし、おためしみたいなもの。これから細かいところまで指導してあげるわ」

キリカ「……試合の方がまだ楽だ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 21:40:19.18 ID:gXHmMS7u0<> ――――

――――


 ―――キリカはぼやきながらも訓練につきあってくれた。

 そうしていると、なんだかんだで少しずつ上達は見えてくる。それは本人も自覚しているようだった。


マミ「――……お疲れ様。呉さんも割と言ったことを素直に吸収してくれるからやりやすかったわよ」

マミ「ちゃんと訓練すればもっと伸びると思う。……問題はあなたの態度次第ね」

キリカ「はいはい……。わざわざありがとう、ちょっとだけ楽しかったよ。もうやらないけど」

かずみ「またお菓子があったら?」

キリカ「うーん……」

マミ「そこは迷うの?」

キリカ「お菓子の量と質次第!」


 キリカのこと、今日一日一緒にやってみてマミはどう思っただろうか。

 やる気なさそうに見えるのは事実。やっぱり変わらないかな。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 21:53:05.04 ID:gXHmMS7u0<>

 ――帰り道、お茶会の前に今日はショッピングをする約束の日だ。

 お菓子はちょっとの間お預けになるけど、キリカも終わるまで我慢してくれるらしい。

 ここまで付き合ってお菓子ももらえないんじゃ骨折り損だとか。


かずみ「あ、そうだ。別に隠してるわけじゃないから言うけど、わたし、記憶喪失なんだ」

キリカ「……へえ。じゃあ私と同じだ」

かずみ「え? でもキリカは学校にも通ってるんだよね?」

キリカ「自分がどこの誰かまで全部忘れたわけじゃないよ。別に私も隠してるわけじゃないから言ったけど」

キリカ「キミは契約した理由も覚えてないのに魔法少女なんてやりたいの?」

かずみ「それでもわたしはこの力で人を救えるなら救いたいと思う! わたしがわかってることって、それくらいしかないし」

かずみ「それがなくなったらなんにもなくなっちゃうよ」

キリカ「ふーん、君にも色々と事情はあるんだね」

キリカ「…………ごめん、同じなんて言って」


 ……お店を探すまでの間に少しだけ話をしてみていた。

 けど、余計に気まずくなっちゃったかも。


 それからはあまり雑談はなかったけど、服が囲む場所に到着するとやっぱりテンションは上がった。


マミ「かずみさん、いいのあった?」

かずみ「えーとね、悩んでるとこ」

マミ「これなんて似合うかも」

かずみ「えぇ、これじゃ園児服みたいだよ」


 ……こっちをちらっと見たキリカがくすっと噴き出した。

 ちょっとだけむっとしたけれど、少し考えてみる。


 わたしとマミがはしゃぎながら服を見るなか、キリカはずっと違う方向を眺めていた。

 服は見てるみたいだけど、キリカは楽しくはないのかな。


かずみ「――はい! キリカ、これとか似合うと思う」

キリカ「え?」



1(どんな服を提示した?)
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 21:55:51.35 ID:GkrNuxvX0<> 1 へそ出しルック <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/23(木) 21:59:38.57 ID:ZuKH2dW40<> ダーリンニットのVネックワンピース
色はチェリーピンク <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 22:23:57.66 ID:gXHmMS7u0<>

 洋服を目の前に見せてみる。

 するとキリカがこっちに振り返った。


キリカ「……可愛い」


 チェリーピンクのゆったりとしたダーリンニットのワンピースを見てキリカはつぶやいた。

 とりあえず、興味がなかったんじゃないことがわかって安心した。

 わたしが選んだのがキリカの好みから逸れてはいないことも。


キリカ「どこにあったの? 値段は……そんなに高くはないね」

かずみ「気に入ったなら試着してみてよ! わたしも候補がこれだけあるから」


 わたしも手元にはマミと選んでいた服がどっさりとキープしてあった。


かずみ「ねえ、キリカはどうしたらいいと思う? わたしもやっぱり、もうちょっと大人っぽく見られてもいいと思うんだよね」

かずみ「やっぱりこうオトナの色気っていうか……」

キリカ「衣装はいっぱい肌見えてたよ。色気があるかはわかんなかったけど」

かずみ「え?可愛いじゃん、わたしの衣装!」

キリカ「まあ本人がいいなら」

かずみ「キリカも“オトナの色気”にこだわるなら他にも見たら? このワンピース、肩だしのバージョンもあるの」

キリカ「こっちのがいいよ。これ、気に入ったから買うかも」


 わたしが持ってきたのは襟元がVネックになっている。

 ……キリカはしばらく服を見ていたが、それからわたしのほうを見た。


キリカ「……私の切ったところが不自然だね」

かずみ「髪のことは本当にいいよ! 切るから」

キリカ「え?」

かずみ「思い切って切っちゃおうと思ってさ。たしかに邪魔だったもん」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 22:52:47.31 ID:gXHmMS7u0<> ――――

――――


かずみ「じゃ、ちょっとだけ待っててねー。二人とも」

キリカ「それどのくらいかかるの?」

かずみ「心配ご無用。実は家出る前に下準備はしてきたからあとはひと手間だよ」


 用事を済ませてマミの家に戻ると、わたしはさっそくキッチンに向かう。

 あの長かった髪は、今はもう肩につかないくらいまで短くなっていた。


 わたしは新しいこの髪型を気に入っていた。動きやすいし、長い時よりも綺麗にまとまるから“こっち”って気がする。


 今日はもともと買い物の予定だったし、キリカもいるから魔女狩りはしていない。

 大きな紙袋に入った戦利品もあるし、今日は存分に外出を楽しんでいた。

 時間もそれの代わりと思えばちょうどいいくらい。



かずみの作っているもの(お菓子)
・自由安価

 下2レス <>
◆OBzaXJXIWo<>saga<>2018/08/23(木) 22:55:24.85 ID:fUxQAeenO<> チーズケーキ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/23(木) 22:55:31.19 ID:ZuKH2dW40<> ベリーモンブランのホール+紅茶orコーヒーのアフォガート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 22:55:38.24 ID:x/xe9Nty0<> 安価下 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 22:56:07.74 ID:JZCkEu7FO<> アイスティラミス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 22:58:21.62 ID:JZCkEu7FO<> ベリーモンブランとか本格的だな <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 23:18:36.25 ID:gXHmMS7u0<>

かずみ「生地は先に用意しておいたし、あとは……――――」


 ホールのケーキの生地の上にクリームを絞って盛り付けていく。

 ピンク色のクリームが渦を巻く。クリームは甘いベリーの香りだ。

 今日はとっておきにするつもりだった。


 それから完成間際になると、マミを呼んだ。


かずみ「ねえ、マミ。せっかくなら少し手伝ってほしいことがあるの」

マミ「あら、何?」


――――……


キリカ「わあ、待ちくたびれた! いい匂いするね!」

かずみ「わたしとマミの“とっておき”だから」

マミ「まさかそういうものを作ろうとしてたなんてね」

キリカ「え? 何? ケーキとアイス?」

かずみ「これをこうする」

キリカ「わーっ!」


 ……思わずキリカが声を上げた。

 ポットからその中身を垂らし、濃い紅茶の海にバニラを『溺れ』させていく。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 23:24:40.39 ID:JZCkEu7FO<> スタバのエスプレッソアフォガート旨かった <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 23:35:12.15 ID:gXHmMS7u0<>
かずみ「『アフォガート』っていうスイーツだよ。アイスの蕩けた感じと紅茶の香りが美味しいの」

かずみ「――っていっても、わたしは未体験。記憶にないからね。わたしも今から楽しみなんだ」


 テーブルについてスプーンを持つ。

 実はアフォガート用のポットは二つ用意してあった。


マミ「どうぞ。コーヒーも用意してくれたわよ。呉さんはこっちのほうが好きなのかと思って」

キリカ「え? なん……あ、そうか」


 キリカは何かに心当たりがあるらしく、納得したように言う。

 差し出されたエスプレッソをかけてキリカが一口スプーンですくって口に運ぶ。


キリカ「ちょっとほろ苦いけど美味しいよ! これだったら、紅茶のほうも食べてみたいかも」

かずみ「それじゃ、ケーキも分けよっか」

マミ「ベリーモンブラン? 良い匂い。見た目も綺麗だわ」


 ケーキにナイフを入れようとする。――……すると、玄関のチャイムが鳴った。


かずみ「んもー、こんなときに!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 23:42:42.51 ID:gXHmMS7u0<>

マミ「見てくるわね」


 マミが席を立つ。

 しかし、わたしはその前に室内のインターホンに映った姿を見てしまった。

 それは見覚えのある姿。


かずみ「杏子!」

マミ「……あなたたちはちょっと待ってて」



 そう言うと、マミ一人が玄関の方に行ってしまった。

 あくまで縄張りの仕切る魔法少女同士の話なんだろうか。

 ……溶けきらないうちにアイスをすくいながら、キリカが待ち遠しそうにこっちを見ている。


 そりゃわたしだって待ち遠しい。これから『いただきます』って時に。

 自分で完璧に作ったものを、人に食べさせるより先に自分で崩してしまうほどむなしいことはない。


1先食べてる?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 23:45:57.60 ID:JZCkEu7FO<> マミにせっかくだから杏子にも食べてもらおうと話す

難しい話はあと!今は美味しく食べようよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/23(木) 23:48:58.68 ID:ZuKH2dW40<> キリカにちょっと待っててと言ってから↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/23(木) 23:57:30.50 ID:gXHmMS7u0<> -----------次回は26日(日)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/24(金) 00:05:30.01 ID:rMd520Fn0<> 乙でした

前スレの展開予想がここできましたか
杏子がわざわざ見滝原に来たってことはあすみ絡みか、かずみ絡みかどっちかな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/24(金) 08:55:45.92 ID:d1i1JwcXO<> 乙でした
これ杏子も一緒に食べるのならキリカと杏子でケーキの食べる量を巡って取り合いになりそう <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/26(日) 20:48:06.97 ID:At7mlyR40<> 来ないね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 20:59:54.39 ID:ZusMfkvt0<>
かずみ「キリカ、ちょっと待ってて!」

キリカ「えー、結局お預けなの」

かずみ「多分、すぐ戻るから!」


 わたしも席を立って玄関のほうへと向かう。

 難しい話はわかんないけど、客が増えたならみんなで食べればいい話だ!


 話しているところに駆けていくと、二人はこっちに気づいて振り向いた。


かずみ「ちょっとお二人さん! 話しこんでないで今は美味しく食べようよ! ケーキならいっぱいあるから!」

杏子「!」


――――

――――



 ……『ケーキ』の話を出した途端、杏子は強引に話を切り上げてこっちに乗ってきた。

 食器を出す前に手づかみでケーキを食べはじめて、杏子は幸せそうだ。



杏子「かずみ、アンタいいところに来たな。ちょーどアンタとも話したかったんだよ」

マミ「あのね……偽物のグリーフシードについての情報交換なら歓迎するわ。でも私の相棒に変なこと吹き込むのはやめてくれる?」

杏子「ハイハイ、随分新しい相棒さんに御執心なようですねマミ先輩は!」

杏子「けど聞いといたほうがいんじゃないのか? そいつとこれから一緒にいるんならな」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 21:33:30.52 ID:ZusMfkvt0<>

かずみ「何のこと!? 杏子、もしかしてわたしのこと知ってるの!?」


 思わず身を乗り出す。

 ……テーブルの向かいでは、キリカが杏子を見て少し不機嫌そうな顔をしていた。


キリカ「…………誰?」

マミ「風見野の魔法少女よ。この周辺なら経験は長いほうになるわね」

キリカ「聞いてない! 取り分が少なくなるんだけど!」

杏子「お前こそ誰だよ。アンタも新しいマミの取り巻きか?」

キリカ「違う。私はお菓子がもらえるっていうからついてきただけ」


 その二人のやりとりを見て、マミは呆れたように言う。


マミ「似たような人たちね……」

杏子「一緒にするな、あたしは食いにきたわけじゃねえ! せっかく情報を持ってきてやったんだ」

杏子「……かずみ、単刀直入に聞く。アンタとミチルの関係は何だ?」

かずみ「ミチル……?」

杏子「ああ。『和紗ミチル』、あたしが前に魔女を追ってあすなろに攻め込んだ時に、一度だけ共闘した相手だ」

杏子「“食べ物が好きな奴に悪い人はいない”なんてふざけた理由で、グリーフシードを譲ってまで一緒に倒そうって言ってきた」

マミ「それは……まるでかずみさんそのものね」

杏子「だがミチルは死んだ。キュゥべえから聞いた。じゃあアンタは何者だ? キュゥべえからは近い存在としか聞けなかった」

杏子「アンタとミチルはよく似てる……髪を切ったら尚更だ」


 初めて聞いた名前。でも、それがわたしの“正体”に深くかかわっているなら。

 その話を聞いたら、『ミチル』という人がただの他人とは思えなかった。

 ……もしかしたら、それがわたしなんじゃないかとすら思ったほどに。


かずみ「わからない。でもわたし、記憶喪失なの」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 21:55:31.99 ID:ZusMfkvt0<>
杏子「自分のことなのに何もわからないのか? だからあの時も」

かずみ「でも、ミチル……その人がわたしのことを知る手がかりになりそうだね」


 こんな時キュゥべえがいてくれれば。

 キュゥべえはなにかわたしの知らないことを知っている。それは確かだった。


杏子「とりあえず、マミを嵌めてこのあたりの縄張りをどうにかしようってわけじゃないならいーよ」

杏子「グリーフシードモドキのことは進展なしか。まあまたこっちでも見かけたら報告するよ」


 ……その時、『ん』と二人の声が同時に重なった。

 ケーキの一切れに杏子が手を伸ばし、その上にキリカがフォークを突き刺している。


キリカ「……その手をどけてよ。人の肉なんて食べるの趣味じゃないからさ?」

杏子「そっちがどければいいだろ。あたしのほうが下にあるんだからあたしのモンだろ」

キリカ「大体なんで手掴みなんだよ汚いな! キミには美的センスってものがないの? 猿でも道具は使えるよ」

杏子「は? 目で飯が食えるわけないだろ! 口にいれればうまいかだけなんだよ」

かずみ「け、喧嘩しないで!」



1杏子にありがとうと言う
2半分こしよう
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/26(日) 21:58:00.54 ID:ngYHnpUfO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/26(日) 21:58:14.40 ID:AkJtk5K9O<> 2のあとに1
安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/26(日) 22:01:52.42 ID:L9mBLDIuO<> 1+キリカにケーキを譲るように話す

今日はキリカにご馳走するって話して来てもらってたの
二人ともケーキが好きなのはわかったけどそのケーキはキリカに譲ってあげてくれないかな?
代わりといってはなんだけど、ケーキの代わりにご飯作ってあげるから
マミとキリカもそれでいいかな?
キリカには次にまたお菓子作ってあげるから! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 22:23:10.87 ID:ZusMfkvt0<>
かずみ「……今日はキリカにご馳走するって話して来てもらってたの」

かずみ「二人ともケーキが好きなのはわかったけど、そのケーキはキリカに譲ってあげてくれないかな?」

かずみ「代わりといってはなんだけど、杏子にはケーキの代わりにご飯作ってあげるから」

杏子「…………ふん。そもそもなんのために仲間でもない魔法少女なんて連れ込んできてんだか」

杏子「聞いたら飯で釣ったみたいなもんみたいじゃないか。ナメられたって知らないぞ?」


 杏子が渋々手をどけて、そこについたクリームを舐めとる。

 結局ケーキはキリカが取っていったけど、キリカは杏子の手形がついたケーキをまだ機嫌悪そうに眺めていた。


かずみ「キリカには次にまたお菓子作ってあげるから! マミとキリカもそれでいい?」

キリカ「…………次、か。許してあげるよ。食い意地の汚い“犬”にでも噛み付かれたと思ってね」

杏子「それと、先輩への態度も躾けとけよ」


 まだ二人の間の雰囲気は刺々しそうだ。


マミ「わ、私は別にいいけれど……とりあえず今日はかずみさんにとっても有益な情報を持ってきたみたいだしね」

杏子「別に。あたしは『縄張り』が心配だっただけだよ」

かずみ「杏子、今日はありがとう」

マミ「あ、それとキュゥべえのことなんだけど…………佐倉さんはもう知っているかしら?」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 22:37:27.27 ID:ZusMfkvt0<>
杏子「何がだ?」

マミ「キュゥべえが死んだって」

杏子「……なんだと? そんな重大ニュース、なんで先に言わないんだよ!」

マミ「もう聞いているかと思ったの。あれから数日は経っているから」

マミ「殺されたわ。少し前に来て、ついこの前まで見滝原に居た神名あすみという魔法少女に……」


 マミが下を向いてぎゅっとスカートを握る。

 やっと落ち着いてきたところだったけど、この話をするときのマミはやっぱり悲しそうで、悔しそうだった。


杏子「ま、あいつも因果応報なんじゃねーの? こんな契約なんかさせて、恨むヤツならいるだろ」

マミ「あなた、なんてこと言うの! 死んだ人に向かって!」

かずみ「け、喧嘩しないで……」


 ケーキを巡った戦いが終わったと思ったら、こっちまで。

 慌てて止めに入る。けどさっきと違って、簡単に仲裁できるような雰囲気じゃない。


 するとその時、さっきまで黙々とケーキを食べていたキリカが立ち上がった。


キリカ「あの……!」

マミ「え?」


 しかし、キリカは不自然に口をつぐむ。


キリカ「…………いや、なんでもないよ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 22:52:02.96 ID:ZusMfkvt0<>

マミ「……佐倉さん、あなたの事情は知ってるし、気持ちはわかっているつもりよ。でも、私の前では二度とそういうことは言わないで頂戴」

マミ「あなたの最近の風見野での活躍ぶり、聞いているわよ。グリーフシード目当てに魔法少女を襲って、まるで賊じゃない」

マミ「本当に変わったわね…………昔のあなたとは」


 杏子はじろりとマミを睨む。

 それと同時に、キリカも重々しく口を閉ざしていた。……まるで、自分にも何か心当たりがあるように。


キリカ「…………」

マミ「あらごめんなさい、呉さん。あなたのことを言ったわけじゃないの。でも同じようなものなのよね、あなたも」

杏子「アンタなんかに簡単にあたしの気持ちがわかってたまるかよ。アンタこそ、そういう話二度とあたしの前でするんじゃない」

杏子「飯! 早く、用意してくれるんだろ!」

かずみ「う、うん……」



 ……二人の間になにがあったのかな。心配になりながらみんなを見る。

 今日は楽しくお茶会をするはずだったのに。



キリカ「……ごちそうさま。目当てが終わったからそろそろ私は帰るよ」



 キリカが自分の分のケーキを食べ終わって立ち上がる。



1こんな空気になっちゃってごめんね、謝っておく
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/26(日) 23:01:45.65 ID:L9mBLDIuO<> 1+キリカに何か心当たりがあるのか聞く

ねぇ、キリカ
キュウベエの事何か知ってるの?
何か知ってるのなら話して欲しいな……私達ってまだ信用出来ないのかな?

作るご飯は厚切りベーコンとしめじのペペロンチーノ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/26(日) 23:04:16.55 ID:8yQTctcT0<> ↑
追加でキリカに次のお茶会で食べたいお菓子があるか聞く <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 23:37:30.89 ID:ZusMfkvt0<>
かずみ「こんな空気になっちゃってごめんね……」


 ひとまずキリカを玄関まで送りに行く。

 しかしその帰り際、そこでもキリカは少し躊躇ったようにしていた。


かずみ「それと、何か言いたいことがあるなら話してほしいな。私達ってまだ信用出来ないのかな?」

キリカ「信用とか、そういうことじゃないんだよ。……ごめん」

かずみ「だったらなんで謝るの? さっきの話も、もし悪いことしてるんだったら……本当は自分で後ろめたいと思ってるんじゃないの?」


 前にたい焼きを食べながらした話を思い出した。

 ……悪人は自分で悪人ですなんて言わない。言うのは謙遜か、悪いことしてるって負い目がある人だけ。


かずみ「……次のお茶会は何か食べたいお菓子はある?」

キリカ「次も行っていいの?」

かずみ「だって、さっきそういう話もしたし……」

キリカ「キミはそうかもしれないけど、マミは私を歓迎しないと思うよ。私だって空気くらい読むよ?そこは」

キリカ「まあ、今日は思ってたより楽しかったよ。じゃあね」


 キリカはそう言って、手を振って去って行った。 

 ……マミ。マミは今日のことどう思ってるんだろう。やっぱり一緒にいるの嫌だったのかな。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/26(日) 23:58:47.35 ID:ZusMfkvt0<>

 でもキリカのことは、『一部』でも私と同じ記憶喪失って聞いちゃったから、余計に心配に思っていた。

 人のこと心配してる場合じゃないって言われちゃうかな。

 でも、わたしとは少し違っても、それってすごく辛いことだってわかるから。


マミ「かずみさん、呉さんは?」

かずみ「帰ったよ。ご飯、あんまり待たせないようにささっと作るよ」

杏子「で、何作ってくれるんだ?」

かずみ「厚切りベーコンとしめじのペペロンチーノ」

杏子「おお、いーじゃねえの!」



 材料を確認してキッチンに立つ。

 杏子も料理の話になると、さっきの空気を感じさせないような上機嫌に戻っていた。


 麺を茹で、ソースを作って炒めていく。



かずみ「はい、おまちどうー」

杏子「サンキュサンキュ、記憶はないのに料理はうまいんだな」

かずみ「身体が覚えてたっていうのかな? 料理はできたの」

マミ「まあ、記憶喪失になっても日常生活で必要なことは忘れないっていうものね……」

かずみ「どこの知識?」

マミ「一般的な話よ」



1料理の話
2二人のことについて
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/27(月) 00:07:12.03 ID:dqzCkgy10<> 1+杏子に『和紗ミチル』について聞く
あとユウリの事も話しあすなろの他の魔法少女について知っている事があれば教えて欲しいと話す
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/27(月) 00:21:33.48 ID:5HalNAo+O<> ↑
マミに今日のキリカの事を聞いてみる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/27(月) 00:23:42.33 ID:Zs4fdGOL0<> ----------------次回は28日(火)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/27(月) 00:26:05.58 ID:5HalNAo+O<> キリカの事は114にあるように記憶喪失なところがキリカの態度に表れているんじゃないかな?と話す
私にはマミが側にいてくれてるけどキリカにはそんな人がいないんじゃないかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/28(火) 22:13:58.61 ID:9XbvxqhT0<>

 オリーブオイルとニンニク、それにきのこの香りがたっぷり絡まったパスタをフォークで掬い上げる。

 マミは綺麗に食べているけど、杏子はずーっと啜って食べている。

 ま、おいしいなら食べ方は気にしないでいいか。


かずみ「ねえ杏子、『和紗ミチル』について教えて! あと、ほかにもあすなろの魔法少女のこと知ってたら!」

杏子「……教えてって言われてもな。本当に印象はアンタと被るよ。本人に言われてるような気分になる」


 杏子はわたしをじっと見つめてから言った。

 そんなにわたしとミチルは似てたんだ。…………でも、もう死んでしまった。会いたかったな。


杏子「なあ、もしかしてミチルは本当はなんかの形で生きてて、それがアンタってことはないか?」

杏子「それか姉妹か……、でもそこまで似た人間って、姉妹だってありえないと思うけど?」


 わたしがミチル。……もしそうなら、わたしの正体が少しだけ判明したってことになる。

 けど、今のままじゃなんともいえないか。わたしは自分のこともミチルのこともなんにも知らない。

 どんな人だったんだろう?


かずみ「……ミチルのこと知ってる人っていないかな?」

杏子「あとはあすなろでミチルのほかにあたしが会ったのは、『ユウリ』くらいだな」

かずみ「ユウリって、あの私を浚って街の人を魔女にしてた人……!?」

杏子「いや、多分違う。名前が被ってるだけだ。あいつはそんなことしねーよ。馬鹿みたいなお人好しだった」

かずみ「じゃあ、そのユウリに会えれば!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/28(火) 22:24:59.55 ID:9XbvxqhT0<>
杏子「ま、そっからはアンタが勝手にやることだね。あたしは今何してるかは知らないよ」


 それ以上面倒を見てやる義理はないとでも言いたそうだ。


 杏子が最後の一本まで麺を吸い取って、皿を置く。

 ……わたしとほぼ同時に完食した。まだ半分以上皿の中身が残っているマミが、びっくりした目でわたしたちを見ていた。


マミ「……早いわね」

かずみ「あっ、ゆっくり食べてていいよ!」

杏子「あー、うまかった! じゃあそろそろ帰るわ」

かずみ「もう行っちゃうの?」

杏子「飯食ったら眠くなってきた。遅くならないうちに今夜の宿を探すことにするよ」


 杏子は気楽な様子で玄関に向かって歩いていく。


マミ「宿って、まさかその辺で寝る気?」

杏子「なわけないって」

マミ「じゃあホテル? 中学生一人で泊まれるの? お金は?」

杏子「しょーがないだろ家がないんだから! 野宿で心配すんなら口出すなよな!」

かずみ「…………」


 マミはやっぱり、そんな杏子の答えに良い印象を抱かないようだった。

 ……でも行く当てがないって、その気持ちはよくわかる。


 杏子も心配すら突っ返してしまうのかな。マミが前言ってたのは、もしかして――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/28(火) 22:51:38.45 ID:9XbvxqhT0<>
かずみ「……ねえ、前言ってた一人で生きている人って、杏子にも当てはまるよね」

かずみ「杏子には何があったの?」


 乱暴に玄関の扉が閉まる音がする。――杏子が出て行ってからマミに聞いてみた。


マミ「あの子はね……元々は家族で教会をやってて、お父様のために『みんなが話を聞くようになってほしい』って契約した子だった」

マミ「一年ほど前のことだったわね。それから私と会って、一時期は今のかずみさんとみたいに師弟関係を結んでたこともあるんだけど」

マミ「悲劇が襲った。佐倉さんが魔法少女になったことが家族にバレてしまったの」

かずみ「バレたらまずいの? 杏子はお父さんのために願い事を叶えたのに!」

マミ「叶えてもらった本人が望まなかったのよ。その末に一家心中。佐倉さんだけが生き残った」

マミ「今でも後悔しているんでしょうね。その時から私との師弟関係も解消して、自分のためだけに魔法を使うようになってしまった」


 それが『前の杏子』から変わってしまった理由。

 そう思うと胸が痛んだ。今は悪いことするかもしれないけど、本当はいい人だったのに。


マミ「……本当は前みたいに戻れたらいいんだけどね。無理みたい」


 マミは悲しそうに言った。そんなの、一緒に居たマミだって辛くないわけない。


かずみ「今日の訓練はどうだった?」

マミ「少し、疲れちゃったわ。途中で佐倉さんも来たし……」

かずみ「二人とも、魔法少女を襲ったりしてたんだよね?」

マミ「ええ、佐倉さんのことは風の噂だけど、あの様子だと事実でしょう」

マミ「呉さんのことは神名あすみが私のもとまで連れてきた。返り討ちにしたんだそうよ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/28(火) 23:18:17.97 ID:9XbvxqhT0<>
かずみ「キリカも悩んでるから悪いことしたり、ああいう面倒くさそうな態度をとったりするんじゃないかな?」

かずみ「記憶がないのってやっぱり辛いよ。私にはマミが側にいてくれてるけど、キリカにはそんな人がいないんだよ」

マミ「そうね。でも、理由があったら悪いことをしてもいいの?」

かずみ「それは、そういうわけじゃないけど……」

マミ「あなたはそんな風には考えなかった。それはあなたの元々持つ強さよ」

マミ「もちろん、全員がそうはなれないのは仕方ないのでしょうけどね……」


 わかってはいるけど許せない。

 ――許すわけにはいかない。マミは見滝原を仕切る魔法少女だから。


 でも、そんなに難しく考えなくちゃいけないのかな。そもそもわたしは、やっぱり考えるのがニガテだよ。


かずみ「でも、杏子がわたしのこと教えてくれたからちょっとだけ前に進めた。それは本当に感謝しなくちゃ」

かずみ「ミチルとユウリ、かぁ。 ユウリにはどうやって会えばいいんだろう? もしかしたら今もあすなろで探してくれてたりするのかな?」

かずみ「本当にキュゥべえさえいてくれてたら……」


 叶うはずのない“もしも”にため息をつく。

 ――しかし、すると、もう見るはずのないと思ってた姿がこの場にひょっこりと出てきた。


「やあ、“僕”がどうかしたのかい?」


 …………その声に顔を上げる。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 00:02:42.00 ID:FOZHZV8P0<>
かずみ「きゅ、きゅきゅきゅキュゥべえ!? えっ、本物!?」

QB「うん、僕は正真正銘本物のキュゥべえさ」

マミ「そんな、どうして……生きていたの? ならなんで今まで姿を見せなかったのよ!」

QB「僕があすみに殺されたのは本当のことだよ。たしかに、厳密にいえば僕は『違う』のかもしれない」

QB「代わりがいるんだ。もちろん意識も記憶も前のままだ」


 マミはそれを聞き終わる前に、キュゥべえのその小さな姿を抱きしめた。

 うれし泣きの涙を流している。マミは私の前ではずっとお姉さんだったけど、こうしていると等身大の姿を見た気分だ。


QB「苦しいよ、マミ」

マミ「ごめんなさい。 今まで隠れていたのね? これからはもうあんなことがないようにするわ」

かずみ「あ、そういえばあすみちゃんに連絡しないと……」


 あすみちゃんは知ってたのかな。知っていてあんなことを言った……?


マミ「たしかにキュゥべえはまたこうして私の前に来てくれたけど、無事じゃない。殺されたのは事実だったのよ」

マミ「やっぱり、またあんなことがあったら……」

かずみ「そういえば、今日は怪我もしてないし何も悪いこと起きてないね……?」

マミ「そんなのもうどうでもいいわ。キュゥべえが帰ってきてくれたことがなによりの良いことよ」



1キュゥべえに今日のことを聞く
2マミの不幸について
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/29(水) 00:03:45.65 ID:zSHTGwdL0<> 1+2
安価下 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/29(水) 00:07:58.77 ID:MfeMHjHi0<> ↑
追加で今あすみはどこにいるのか、あとさっき杏子に聞いたあすなろの事も聞く <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 00:16:49.29 ID:FOZHZV8P0<> ----------次回は29日(水)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 21:42:49.27 ID:FOZHZV8P0<>
かずみ「そうだけど……やっぱりなんかおかしいような……」


 あれをただの偶然だと思っていいのかな。今になって不幸が減った意味は?

 ……マミの腕に抱かれているキュゥべえを見た。


かずみ「ねえ、キュゥべえ。話したいことがあるの」

かずみ「わたしの……――ミチルのこと。それから、『ユウリ』って人について。今日、杏子から聞いたの」


 すると、キュゥべえがぴょこんと床に降りる。


かずみ「……わたしはミチルなの? そうじゃないなら、どんな関係があるの?」

QB「杏子からも聞いたと思うけど、和紗ミチルは死んだ。君はあくまで別人ということらしいよ」

QB「君を“造った”人たちによるとね」


 キュゥべえの言葉に、私は考えが止まってそれ以上の言葉が出てこなくなった。


かずみ「つく……った……――?」


 何を言っているのかわからない。その言い方じゃまるで。

 わたしが作り物みたいな――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 22:09:00.53 ID:FOZHZV8P0<>
QB「それと、ユウリというのはこの前君を襲った人のことかい? そうでないなら、彼女もすでに死んでしまっているよ」

かずみ「……待ってよ! 私を“造った”ってどういうこと!? その人たちってなんなの!?」

QB「【プレイアデス聖団】。――――あすなろに行って、彼女たちに会えばきっとすべてわかるだろう」


 わたしのとなりで、マミも同じように驚いたまま固まっていた。

 キュゥべえに聞いたらわかると思ってた。全部わからなくても、手がかりはつかめると思ってた。


 ……でも余計にわからなくなった。

 ミチルでもない? 他の人でもない? 私は何? その人たちは、どうしてそんなことを――。


 マミは慰めるように言う。


マミ「かずみさん……焦らなくてもいいわよ。もしあなたが望むなら、ずっとここにいたって……」

かずみ「でもそれじゃ、わたしが何なのかずっとわかんない!」


 『あすなろに行けばすべてがわかる』。

 キュゥべえはそう言ったけれど、本当にそれでわたしが納得できる答えが得られるのかはわからなかった。



―5日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[20/100]
・お菓子[10/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5]  [体術Lv3] [射撃能力Lv20] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 22:25:40.34 ID:FOZHZV8P0<> 翌日


かずみ「…………」


 マミが出て行ってから、私はひとりでソファに腰掛けていた。

 視線の先にあるのはあの時あすみが書き残したメモ紙。

 わたしのことは考えてもわからないから、まずはこっちのことを考えることにしていた。


 見滝原から出ていったあすみは、気づかれないように風見野や周りの街を転々としてたってキュゥべえが言ってた。

 まだ完全に移り住むことはしていないそうだ。――それは、近いうちにわたしたちが連絡するってわかってたから。


かずみ(やっぱりあすみちゃんは知ってたんだ。キュゥべえに代わりがいるって……)

かずみ(でもそれって、前にも殺したことがあるってこと? それとも、死んだのを見たの?)


 わたしはその場にいたわけじゃないから詳しい状況はわからない。

 でも、キリカももう知ってた? じゃあなんで昨日教えるのをためらったの?


かずみ「―――あー、お腹すいた……」


 ……両手を広げて、仰向けに寝転ぶように深くもたれかかる。

 やっぱり、あすみのことはマミが許すにしても許さないにしても一回話したほうがいいと思うな。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 22:55:35.09 ID:FOZHZV8P0<>

あすみ「――……お久しぶりだね、お二人さん。いたいけな私をこんなとこに呼び出すなんて。この前のドリア美味しかったんだけどなあ」

マミ「今日は真面目に話をするつもりであなたを呼んだの。ふざけた態度はやめてもらえるかしら?」


 放課後、マミとも話してメモにあった番号にかけてみると、すぐにあすみの携帯に繋がった。

 待ち合わせの場所は人のいない街外れ。この場所を選んだのは、話を聞かれたくないという以上に何が起きても知られない場所という意味を感じた。

 あすみは相変わらず飄々としていて、対してマミは毅然とした態度を貫いている。


あすみ「出てきてくれたの?あいつ。思ったより時間かかったね」

マミ「あなたから隠れていたからでしょう? それで、これからどうするかよ。それを改めて話しに来たの」

あすみ「違うよ」

マミ「……え?」

あすみ「あいつ、あれからすぐに私のところには来てたよ。いつのまにか死体が消えてた。本当に私から隠れたいならそんな痕跡残すと思う?」

あすみ「もっと深く考えなよ」

マミ「何が言いたいの……!?」

かずみ「……あすみちゃん、どういうこと?」


 マミと同時に、わたしも聞き返す。

 あすみは悪い事はしてても、とんちんかんなことは言わない気がしていた。


 ――その時、あすみが私たちの“うしろ”に視線を向ける。



―――――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 23:28:54.49 ID:FOZHZV8P0<> ――――――
4日目 美国邸


織莉子『……次に行くところは決まったわ』

キリカ『どこ?』

織莉子『あすなろよ。ただ、私は気づかれないようにする。そこでまた前のようにグリーフシードを調達して、魔法少女がいたら襲ってきて』

織莉子『私達が組んでいることはもう感付かれたでしょう。風見野での活動は巴マミの耳に入る』


――――
――――



キリカ(あすなろ、か。かずみのいたところもここだって言ってたけど)

キリカ(……この街にはあいつのこと知ってる人もいるのかな)


 慣れない街を一人で歩く。あすなろという街自体には覚えはあるが、駅前と大通りを過ぎればほぼしらない街並みだった。

 軽く携帯の地図を見ながら歩いていると、目の前に立ちはだかった存在に気づいてキリカは足を止める。


キリカ「……織莉子?」

織莉子「調子はどうかしら?」

キリカ「どうもなにも、来たばっかりだよ」

織莉子「提案があって来たの。命令よ」

織莉子「この街を私たちの本拠地にしましょう、キリカ。そのためにあすなろの魔法少女チームを襲うの」

織莉子「……――倒すべき敵は『プレイアデス聖団』。この6人を狙って!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/29(水) 23:46:14.35 ID:FOZHZV8P0<>

キリカ「プレイアデス聖団……?」

織莉子「ええ。頼んだわよ」


 それから織莉子は踵を返して歩き出す。

 ……話が終わって一人になると、キリカもまたぶらぶらと歩きはじめた。


キリカ「もう、すぐ行っちゃうしさぁ……本当にあいつ…………――ん?」


 するとその時、手に持っていた宝石が光りはじめる。

 その光が強くなるほうへ向かって魔女結界へ入り込んでいく。



 ――――そして、もうすぐ魔女を倒し終わるという時になって、現れた気配に気づいた。

 力を込めた攻撃で魔女にトドメを刺して、その姿を正面から捉える。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/30(木) 00:18:07.68 ID:oyRLzHGG0<>

キリカ「……アンタが『プレイアデス聖団』?」

「ううん、違うよ。その子たちのことは知ってるけど教えてあげなーい」

キリカ「それとも、ママとはぐれちゃったのかな? お嬢ちゃん」

「そういうオトボケ、好きくないなあ」

キリカ「ああそうかい。うーん、まあ、でも――いっか。ここの魔法少女だったらどうせ同じだもんね」


 キリカは軽く唇の下に指を当て、戦闘態勢に入ろうとする。

 ――その時少女は、うっとりとした声で言った。


「綺麗な宝石」

キリカ「は?」

「透き通った青紫色。あなたのって一段と綺麗。今まで集めてきたのって薄汚れたのばっかりなのよね」


「――――……ねえ、それちょうだい?」


――――――
――――――



 ――――街外れの空き地に砂利を踏みしめる音が響き、わたしたちも背後を振り返る。

 そこにはあの私を浚った魔法少女、『ユウリ』の姿があった。


かずみ「ユウリ……!」

ユウリ「やっと見つけた……たっと辿りついた。ねえ、見てよこれ」


 ユウリは最初に見た時と変わらない姿をしていた。そのように見えた。

 しかし、次の瞬間にはその認識は覆る。


 魔法が解けたようにそこに現れたのは、腕や足があらぬ方向へ曲がってだらんと垂れ落ち、内臓が露出し、片目を失い、満身創痍となった姿だった。

 その長い金髪でかろうじて面影は残っている。しかし、これではまるでゾンビのような――――


ユウリ「……これが今のアタシの姿だよ。お前たちのせいでこうなった。お前に辿りつくために何度も死んだ」

ユウリ「だがこの程度で諦めてたまるもんか!こうなったのも全部お前たちのせいだ……全部、お前たちのせいだあああッ!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/08/30(木) 00:25:56.15 ID:KXI1PavN0<> 状況がカオスすぎる… <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/08/30(木) 00:25:59.95 ID:oyRLzHGG0<> ------------次回は1日(土)夕方からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 18:17:18.19 ID:R//CjTHR0<>

 思わず手で口を押さえる。マミもわたしと同じ反応をしていた。

 あまりの凄惨さに言葉を失う。……目の前でかろうじて生きているのを不思議に思わざるを得ない。


かずみ「……なにがあったの? どうしてそんなことに」

あすみ「随分とまあえらい目にあったねぇ。そんなんなってまでここまで来るなんて初めてだよ」


 マミに降りかかっていた『不幸』の正体。前にユウリを倒した時の違和感、嫌な予感。

 それらは元をたどればすべて同じものだった。

 マミのはまだ軽い怪我をする程度の不運で済んでいたほうだった。でもこれは正真正銘の『呪い』。

 もしかしたら、何かが違えばマミだって――――。


 この場に狂った笑い声が響いた。


ユウリ「アハハハハハハハハ、あははははハハハ!!」

ユウリ「ユウリを……“ユウリの姿”をこんなに傷つけやがってえぇぇえ!」

ユウリ「よかったなお前ら! 今のアタシにもう戦う力はないよ! けど、どオせ地獄から戻ってきた身だ……」



 その瞬間、目の前が真っ白に眩み、衝撃に吹き飛ばされそうになる。

 大きな魔方陣がわたしたちを取り囲んでいた。


マミ「避けて!」

かずみ「!」


 咄嗟にマミがリボンを目の前に張る。マミが呼びかけてくれなかったら今頃どうなっていただろう。

 それでも、みんな体勢を崩したまま。地面に手をついて、ユウリの姿を見上げる。


ユウリ「――地獄の底から道連れにしてやる!! アハハハハハハハハハ」


 がらんどうのお腹の上についたソウルジェムは真っ黒だった。

 ――――そこから、何かが『生まれる』。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 18:43:02.73 ID:R//CjTHR0<>

ユウリ「…………お前を造った『プレイアデス』によろしく、かずみィ――――ほら、“お前と同じ”だ」


マミ「な……――――!」

かずみ「どうなってるの!? なんでソウルジェムの中から魔女が出てくるの!?」


 響き渡っていた笑い声も消え、ユウリはもう動かない。

 ソウルジェムが自然に砕け、目の前に居るのは醜い心臓のような形をした『魔女』だった。


 そこに鎖と打撃の音が響いて、魔女が血を流す。


あすみ「イキがってんじゃないよ、ただの魔女に堕ちた奴が。私を殺せるとでも?」

あすみ「……何ボーっとしてんの? やらなきゃやられちゃうよ?」


 あすみは普段と変わらない様子で魔女と戦っていた。

 でも目の前で起きたことにわたしたちの心はついていけていない。



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[20/100]
・お菓子[10/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


仲間:
マミ 状態:【恐慌】
あすみ 状態:正常


敵:魔女Nie Blühen Herzen


1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
5なにもしない
6自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/09/01(土) 18:52:17.76 ID:gRkNkJIM0<> 恐慌状態のマミを落ち着かせる、場合によっては意識を奪う(当身を食らわせるとか魔法で眠らせるとか
そのあと4であすみを援護+マミの護衛
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/01(土) 18:55:51.11 ID:tCxsWlLjO<> ↑
とりあえずマミを落ち着かせないと『みんな死ぬしかないじゃない!』になりそうだからなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 20:10:29.76 ID:R//CjTHR0<>

かずみ「マ、マミ……!」

マミ「え、ええ、戦わなきゃね。……けど、思うようにいかないのよ!こんなの見せられたら!」


 マミも動揺してる。わたしもみんなと一緒に戦わなくちゃ。

 手中に作り出した杖を強く握って意を決する。


かずみ「大丈夫だよ、わたしも戦うから!――――『ネーロ・ファンタズマ』!」


 魔法を使い、わたしも分身とともに突撃する。

 半分は先に魔女を攻撃しているあすみの援護。もう半分はマミのことを守るために。


 鉄球と杖を振りかざしながら二人で飛び回り、魔女を追い詰めていく。

 すると、今度こそマミも狂いなくしっかりと魔女を狙って銃を向けた。


マミ「……ユウリさん、私もあなたを許すわけにはいかない。これも見滝原の平和を守るため」

マミ「――――……悪趣味で醜悪な『魔女』」


 銃声が響く。魔力の弾を撃ち込み、トドメに大砲を発射する。

 魔女を倒す。――――しかし、ユウリのソウルジェムが戻ることはなかった。


 結界が消え、その後には紛うことないグリーフシードが残る。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 20:32:08.83 ID:R//CjTHR0<>

あすみ「さすがに『倒す』となったら手際がいいね? 見滝原の管理者さん」

あすみ「別にあんなの私一人でも十分だったんだけど……――」


 あすみがそのグリーフシードを拾う。

 それは魔女の落としたグリーフシード。でも、元はユウリのソウルジェム。


かずみ「貸してっ!」


 わたしがそれを手から奪う。

 割れた破片とともに魔力を込めてみた。グリーフシードが元通りのソウルジェムになって、ホッと息をつく。

 ……しかしすぐにソウルジェムは表面から剥がれ、中身の黒さが露出して元の形に戻ってしまう。


 見かねたあすみがわたしの手からグリーフシードを奪い返す。


あすみ「無理だって、無理やり変えようとしたって。一度そうなったもん魔法ごときで戻せないよ」

かずみ「あすみちゃん……知ってたの……? 魔法少女が魔女になるって!」

マミ「嘘よ、これもあの魔法少女の魔法でしょう!? 冗談ばっかり言わないで!」

マミ「その魔法少女は街の人を魔女にしてた!でも私たちがみんなこうなるなんて……」

あすみ「あすみがいつ冗談を言ったって? 魔法少女のことで冗談言ったことなんてひとつもないよ」

あすみ「ちゃんとソウルジェムがグリーフシードになるとこを見たはずでしょう? いつまで現実逃避してんのさ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 21:29:59.71 ID:R//CjTHR0<>
マミ「そんなはずがないわ! 人が魔女になんてなるはずない! それじゃあ私は……私は一体なんのために戦ってたの…………」

あすみ「だからぁ……私らは『人』じゃないって」


 その時この場にどこからか声が響く。――……後ろ。わたしたちの足元だ。


QB「見た通りだよ。ソウルジェムが濁りきると魔女が生まれ、グリーフシードになる」

QB「大雑把に説明するならそれで合っているよ」

マミ「そんな……私を騙したの? 一体どうしてよ! ずっと一緒にいて、心が通じ合ってると思ってた! 信じてたのに!」


 いつもの平坦な口調。キュゥべえは変わらない様子で言う。

 マミの悲痛な叫びにもキュゥべえは呆れたような反応しかしなかった。


あすみ「キュゥべえはね――――巴マミ、アンタを“悲しませたかった”んだ」

あすみ「だから姿を隠してた。そうすればソウルジェムに呪いを生んで魔女に成ってもらえるかもしれないから」

あすみ「今になって出てきたのはその兆しがないから諦めたんでしょ」

マミ「あ……ぁ、……――ぁ」


 声にならない声をあげてマミが崩れ落ちる。

 ……今まで信じてきたものすべてが打ちのめされてしまったように。


かずみ「マミ……」

あすみ「その程度の絶望で魔女になるならなれば? そいつに騙されたまま哀れに死にたいならね」

あすみ「そのほうが私の取り分は増える」

マミ「……!」


 あすみはこの場から去ろうとくるりと背を向ける。

 その瞬間、発砲音が響く。



 ……――――その背に向けてマミが銃を撃ちこんでいた。



――――――
――――――

―――――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 21:47:46.52 ID:R//CjTHR0<>


キリカ「ッ!!」


 ――本当は自ら仕掛けるつもりだった。

 しかし、予想外の相手の言動に隙が出来てしまった。攻撃を間一髪で避けるが、完全に相手のペースだった。


「見てこの純白のドレス。お城にはぴったりでしょう?」

キリカ「随分と大がかりな攻撃をしてくるんだね。少女趣味拗らせて馬鹿じゃないの。でも、似合わないよアンタには」

「ひどいこと言うなぁ。私の名前は双樹あやせ。お近づきの印にいいもの見せてあげるねっ」


 あやせがソウルジェムの敷き詰められた箱を開く。

 しかし意に介することなくそこにキリカは爪を振るった。


「きゃっ、なにするのよ。こわーい、“大量殺人鬼”!」

キリカ「そんな石ころコレクションを壊されそうになったくらいで、なにが殺人鬼だよ! 悪趣味なアンタには言われたくない!」

「……あら、知らないの?」


 キリカは不意に飛んでくる炎を避けながら、大きな城の中をちょこまかと走り回るあやせを追う。

 接近戦に持ち込めればいい。しかし複雑な構造、しかも完全に相手に地の利を奪われての戦い。キリカにとっては苦手な相手だった。


 ――それとは別に、キリカの頭の中には思い悩むこともあった。……あやせのさっきの言葉。

 苛立ったような表情のままキリカは戦う。


キリカ「くっ……!」

「アヴィーソ・デルスティオーネ……ねえ、宝石が汚くならないうちに早く渡して?」

キリカ「そんなに欲しいならくれてやるよ、こんなもの! でもアンタの態度が気にいらない!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/09/01(土) 21:53:34.77 ID:gRkNkJIM0<> あっちもこっちも色々ありすぎて状況がカオスすぎる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 22:22:37.03 ID:R//CjTHR0<>
「意地悪するなら無理やり剥がして取ってくね! 身体のほうは別にどうなってもいいよ!」

キリカ「やれるもんなら……やってみろ!」


 キリカが離れた位置から爪を飛ばし、狙い込んだ攻撃を放つ。

 しかし、それもすぐに炎に迎え撃たれてしまう。


「あなたって、スピード任せな攻撃ばかりで手数そのものは少ないみたい。距離さえ保てば完封できる」

キリカ「きゃっ、あついっ! ……――っ、こんなことなら前から真面目に訓練しとけばよかったかな…………」


 キリカが燃え移った炎をはたいて腕を押さえる。焦がされそうな熱の痛さに涙が滲む。

 腕が使えなくなれば一気に攻撃手段を失ってしまう。熱や火傷によって長期戦で体力を奪われるのはまずい。


 追い詰められた状況の中、周囲を見て活路を探す。

 相手の攻撃パターン。動き。どうすれば攻撃を届かせられるのか。


 痛みを我慢してキッと睨む。


キリカ「でも、そっちだってその炎の攻撃ばっかだ。大して手数があるわけじゃない!」

「そうかしら? でもあなた相手なら“奥の手”使わなくてもよさそうかも」


 ――今の自分に足りないもの。確実に貫けるリーチと威力があれば。

 その思いを込めて、キリカは攻撃を繰り出す。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 23:08:44.95 ID:R//CjTHR0<>

 あやせの目の前を取り囲むように黒色の刃を連ねた鞭が舞い、その身体に幾筋の傷を刻んでいく。

 足止めされたあやせはいくつもの炎の塊を周囲に纏う。


「セコンダ――」


 ――――それが放たれる前に、一直線に伸びた黒い刃があやせの胸を突いた。


キリカ「はぁっ、はぁっ……」


 それは骨や内臓にまで達するほど深い攻撃じゃない。ちょうどソウルジェムを突き壊すくらいの深さだった。

 キリカは変身が解けて横たわったあやせを見下ろす。


キリカ「…………」


 戦いが終わったわずかな安堵と、罪悪感。

 あやせの言葉と今の状況は、今まで信じていなかった織莉子に教えられた真実の『答え合わせ』にもなっていた。


 キリカはそこに近づいて手を触れようとする。


「汚い手で触れるな」


 ――その時、あやせの目がカッと開いた。


キリカ「はは……っ、そうだよね。でももう魔法は使えなくしたんだ。降参しなよ」

「魔法を使えなくした? ソウルジェムの価値をまだその程度のものだと思っているとは……――笑止」


 その瞬間、“あやせ”はさきほどとは打って変わった黒い衣装に身を包む。


「わが名は双樹ルカ。あやせに非ず。私の大切なあやせを殺した罰を与えます。――――殺人鬼さん」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 23:35:45.24 ID:R//CjTHR0<>

キリカ「……何!?」


 キリカの腹には大きな剣が刺さっていた。

 込み上げた血液を口から吐き、キリカはうずくまるように地面に倒れ込んでルカを見上げる。


キリカ「―――がっ……」

ルカ「ソウルジェムは生命の輝き。だからこそ美しい。あなたのソウルジェムがあればきっとあやせも喜んだだろうに……」

ルカ「せめて仇をとって捧げることにしましょう」

キリカ「……ソウルジェムを取られた魔法少女たちは生きてるのか?」

ルカ「身体との接続が切れれば魔力がなくなって死ぬ。距離にすればどのくらいだったかな」

キリカ「わかっててやってたんだな、外道! それも何人分もあった! そっちのほうが殺人鬼じゃないか!」

ルカ「別に殺すために摘んでいるわけじゃありませんから。まあ、結果として死にはしますがね」

キリカ「ひとつの身体に、二つ――……多重人格の魔法少女だって……?」

キリカ「…………なんて奴ら……こんな奴らに……――――」


 こいつに“背”を見せるのはまずい。そんなことはわかりきってるのに、動けなかった。

 キリカのソウルジェムは背中側の腰にある。


 こんなやつに負けたくない。


 ――そこに手を伸ばされる直前、どこからか揃った掛け声が聞こえた。

 そして、迸る魔力の轟音。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/01(土) 23:49:26.57 ID:tCxsWlLjO<> また誰か来たのか?
今度は誰だ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/01(土) 23:59:15.14 ID:R//CjTHR0<>

「……間一髪ってとこか」


 この場に現れた少女たちは、またしても不思議な呪文とともにルカのソウルジェムを取っていく。


キリカ「……君たちは?」

「私たちは『プレイアデス聖団』。まずはその怪我を治すのが先か。そうしたら、少し聞きたいことがある」


 “6人”のうちの一人が近づいて魔法を使うと、刺し貫かれた傷がたちまち癒える。

 もとはといえば自分が狙っていたはずの魔法少女チーム。しかし、皮肉にも彼女たちに助けてもらう形になってしまった。


キリカ「あ、ありがとう」

「奴のソウルジェムは私たちが管理する。それから……そのソウルジェムも代わりに私たちが預かっていよう」

キリカ「―――……ッ!」



 …………キリカは魔法を使って脱兎のごとくこの場から離脱する。


 『チェンジ・オブ・ペース。錐のように鋭い一撃。かずみさんの目には見切れなかったわけだわ』

 ――訓練の時のマミの言葉が脳裏に浮かんだ。








「…………あ、逃げちゃった」

「表現が直接的すぎるから。そりゃあれの後だもん」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 00:14:16.15 ID:Mm0JlUunO<> プレイアデス、まだ6人いるのか
聞きたかったのはかずみの事かな?キリカが面識あるのは知らないだろうけど
それにしても双樹姉妹あっさり退場だったなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 00:27:23.65 ID:Kp0W2wz+0<> ――――――
――――――
マミの家 深夜



かずみ「……マミ、何も食べないの? それに寝ないと明日動けなくなっちゃう」

マミ「悪いけど、今は気分じゃないの。このままで居させてちょうだい」


 マミは家に帰ってきてから、ずっと部屋のベッドに座り込んでいた。

 会話もほとんど交わさない。ご飯も食べず、眠るでもなく何もせずにこの体勢のまま目を開いている。

 ……まるで抜け殻になっちゃったみたい。


 ――――あの時マミの撃った弾丸は当たらなかった。わたしがマミにしがみついたからだ。

 マミは自分が魔女になることすら利益として考えたあすみの言葉が許せなかったんだろう。

 わたしもそんなの想像なんてしたくない。


マミ「……醜い魔女。私が今まで倒してきたもの。……私たちもあんなふうになるのよね」

マミ「そう考えたら、なにもする気が起きなくなってきちゃった。かずみさんは怖くないの?」

かずみ「怖いよ。そりゃ怖いけど……」

かずみ「今は休もう。何かするのは、もっと色んなこと考えられるようになってからでいいよ」


 部屋の明かりを消す。

 ……マミはそのまま動かなかった。



1おやすみ
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 00:43:07.52 ID:Mm0JlUunO<> ねぇマミ
私達は生きてるんだよ。
だから心まで殺しちゃったら本当に人でなくなっちゃうよ?

今の私達みたいに魔女になることを知って絶望して魔女になった娘、何も知らないままま魔女になった娘
中にはマミみたいに魔法少女として誇りを持って戦っていた娘もいたと思う
みんな魔女になって誰かを傷つけたりしたかった訳じゃないと思うよ
だからさ、そんな娘達が安らかに眠れるように私達が送ってあげようよ?

それは理由を知ってる私達にしか出来ないことなんだからさ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 00:46:09.66 ID:rV6miaVY0<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 00:58:44.77 ID:Kp0W2wz+0<>

 わたしは布団に入ったまま横に座るマミに語りかける。


かずみ「……ねぇマミ、私達は生きてるんだよ。だから、心まで殺しちゃったら本当に人じゃなくなっちゃうよ?」

かずみ「今の私達みたいに魔女になることを知って絶望して魔女になった人、何も知らないままま魔女になった人――」

かずみ「中にはマミみたいに魔法少女として誇りを持って戦っていた人もいたと思う」

マミ「みんな、私たちと同じ魔法少女だったのよね…………」

かずみ「うん……みんな魔女になって誰かを傷つけたりしたかった訳じゃないと思うよ」

かずみ「だからさ、これから魔女と戦う時は、そんな人達が安らかに眠れるように私達が送ってあげようよ」

かずみ「それは理由を知ってる私達にしか出来ないことなんだからさ」


かずみ「おやすみ、マミ」

マミ「…………ええ、おやすみなさい」


 それから、マミの返事を聞いて目をつむった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 01:16:47.10 ID:Kp0W2wz+0<> ――――

――――


 ――――マミにとって、もう時間の感覚はわからない。どれほどそうしていただろうか。

 少しだけ外から明るさが見えてきた頃になって、マミはゆっくりと立ち上がった。


 長いこと動かしていなかった足を動かしてリビングへ向かう。

 テーブルの上にはラップのしてあるご飯とメッセージがあった。


 『おなかがすいたら食べてね。それはマミが生きたいって思ってるってことだから。 かずみ』


マミ「かずみさん……」


 ラップを開けてスプーンをすくってみる。

 口当たりの柔らかいリゾットは、冷めているが食べやすかった。



 ……マミは部屋に戻ると、少し変な体勢で寝ているかずみの顔を見ながら言う。



マミ「…………ありがとう」




―6日目終了―


かずみ 魔力[90/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[20/100]
・お菓子[10/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5]  [体術Lv3] [射撃能力Lv20] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 01:17:18.93 ID:Kp0W2wz+0<> -------次回は2日(日)夕方からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 18:38:17.61 ID:Kp0W2wz+0<>

 翌朝目を覚ますと、マミはまだ隣のベッドで横になって眠っていた。

 ……あれからちゃんと寝てたんだ。その寝顔を見て安心する。


かずみ(……朝ご飯作ってこようっと)


 マミを起こさないようにそっとベッドから出てキッチンに向かう。昨日作り置きしておいたご飯はなくなってた。

 この数日一緒にいて、マミの好みも少しずつわかってきた。


 今朝も食べてくれるかはわからないけど、せっかくだからマミの好きそうなものを作ってみることにした。


――――


かずみ「おはよう、マミ。今朝はごはん食べられる?」

マミ「食べられる分だけ。余ってもかずみさんはたくさん食べるでしょう?」

かずみ「うん。ところで今日は学校は?」

マミ「行くわ。それに、パトロールにも出かけないと。かずみさんもまだ手持ちのグリーフシード少ないでしょう?」

かずみ「そうだけど……マミ、もう大丈夫なの?」

マミ「このまま立ち止まってたら本当に魔女になってしまいそうよ。そうなるくらいなら自分で始末をつける」

マミ「……でも、それもやっぱりまだ嫌だって思ったから」


 マミの言葉を聞くとわたしもはっとした。

 わたしが居ることでマミを元気づけられたと思うと、わたしも勇気をもらえるようだった。


かずみ「うん! 放課後は一緒にいこっか」

マミ「ええ」


 二人で朝食を食べる。

 ――――……それから、いつもの時間になるとマミは今日も学校に行った。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 19:14:49.20 ID:Kp0W2wz+0<>

 わたしだけになる家。


 今の暮らしは楽しいし、マミともせっかく仲良くなった。わたしがマミのことを支えてあげられてる部分だってある。

 けど、わたしはいつまでここにいるんだろう?


かずみ(今までまだ危険だから……って思ってたけど、わたしを狙ってたユウリももういなくなっちゃった)

かずみ(『あすなろに行けば全部わかる』)

かずみ(…………行けない理由はもうない)


 部屋の隅にいる存在に気づく。

 生きてたって時はあんなに再会を喜んでいたのに、あれからマミとも話してはいなかった。

 見かけてもマミがすぐに追い払っていた。そこにわたしは語りかける。


かずみ「――……キュゥべえ。昨日のこと、ユウリが魔女になる直前に言った事」

かずみ「私と『同じだ』って、どういうこと?」


 わたしが『造られた』ってことはユウリも言ってた。


QB「それは君が『魔女から生まれた』存在だからだろう」

QB「プレイアデス聖団は魔女の肉からかずみを造り出したんだ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 19:36:39.51 ID:Kp0W2wz+0<>

 もう耳に入って、手遅れになってからやっぱり聞いたことを後悔した。


 『前のわたし』なんていなかった。戦いの中に感じた感覚は“破壊”と“殺戮”の本能。記憶。

 わずかな記憶に残された『本当のわたし』は、魔法少女よりもっとおぞましい――。


かずみ「じゃあ、わたしは…………魔女に“なる”どころか、魔法少女ですらないんだね」


 『醜悪な魔女』――――こんな時、よりによってマミの言葉が浮かんだ。

 マミがわたしのことを全部知ったらどう思うだろう。『そんなことない』って言ってくれる?

 知られたくはなかった。マミだって落ち込んでて、やっと元気になったって時に。


 心配かけさせたくはないから。


 ……わたしはその気持ちと知ってしまった真実に、蓋をした。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/09/02(日) 19:48:45.02 ID:U6hV1fk90<> かずみの事実が暴露されたのにプレイアデスは蚊帳の外か <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 20:20:12.16 ID:Kp0W2wz+0<> ――――
――――
見滝原駅前 放課後



かずみ「マミ、今日はどこから探すの?」

マミ「下調べをしてきたわ。ここから進んだ通りに事故が多発している場所があった」

マミ「これが魔女の仕業ならビンゴってところかしらね」


 マミの学校が終わると、人通りの多い駅前にまでやってきた。

 今日は最初からパトロールだ。マミの言う通りに道を進んでいくと、ソウルジェムが光り出す。


かずみ「お、光ったよ!」

マミ「ええ。乗り込みましょうか」



 結界の入り口を探して最深部を目指して進んでいく。

 その奥にたどり着くと、ヘルメットを被った魔女と使い魔の姿があった。



―穴掘りの魔女結界



 穴だらけの地面を駆けて魔女に近づいていく。


マミ「こっちの使い魔は捕えておいた!」

かずみ「おっけー! こっちもいけるよ!」



かずみ 魔力[90/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[20/100]
・お菓子[10/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


仲間:
マミ 状態:正常


敵:魔女Yumbo <-攻撃対象デフォルト
  作業員×5
  誘導員×3

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 20:39:07.58 ID:Mm0JlUunO<> 4のあと1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 21:06:23.56 ID:Kp0W2wz+0<>

かずみ「『ネーロ・ファンタズマ』!」


 その辺にある岩や土の塊から分身を作り出す。この戦い方はもう慣れてきたパターンだった。


 分身を先に行かせて道を確保してから、わたしも魔女に杖を突きだして追い打ちをかける。

 やられた分身は元の土に戻っていくだけだ。


かずみ「遅い、こっちっ!」


 魔女が大きなショベルを叩きつけた。わたしはその大ぶりな動作の隙にまわりこむ。

 戦いは順調にいっている。このままいけば倒せる。


 ――でもその最中にふと午前中キュゥべえから聞いたことを思い出した。


マミ「ティロ・ボレー」


 マミの銃弾の連撃が見えて、一瞬それた意識が戻る。

 マミが援護してくれていた。


かずみ「……っ!」


 振りあげた杖を思い切り下ろす。

 ……すると、魔女はグリーフシードを残して消えていった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 21:30:20.62 ID:Kp0W2wz+0<>

マミ「お疲れ様。今の分はかずみさんが持っていて」

かずみ「あ、うん」


 地面に落ちた黒い宝石を拾い上げる。

 ……魔法少女はソウルジェムが濁りきったら魔女になる。それなら元が魔女のわたしは?


 戦いの中にたしかにわたしの記憶はある。

 その真実を知ると、戦っているうちにいつか魔女の本能に飲まれてしまうんじゃないかって心配になった。


マミ「今日はまだ時間があるし次の場所に行きましょうか。 かずみさんは大丈夫? 疲れてない?」

かずみ「大丈夫だよ。行こう」


 大きな通りを後にして道を戻っていく。駅に近づくにつれて人通りも増える。

 すると、その中に見覚えのある姿を見かけた。


織莉子「……あら、マミさんとかずみさん――でしたかしら?」

マミ「美国さん。その、縄張りの話だけど…………」

織莉子「その話はこちらにも伝わっていますわ。今はこの街では活動は控えております」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 21:51:09.54 ID:Kp0W2wz+0<>

 織莉子はまだ制服を着ていた。

 わたしの知ってる見滝原中学校の制服とは違う制服だ。


マミ「それはもういいの。……私たちは今パトロールをしているところよ。よければ一緒にどうかしら?」

かずみ「マミ……いいの?」

マミ「一度話してみないとどんな人かわからないんでしょう? 私ももう何が一番正しいとは言えなくなっちゃった」


 マミはそう提案した時の織莉子の反応も見ているようだった。

 それに対して、織莉子は上品な笑みを浮かべて答える。


織莉子「そちらが良いのなら是非。私も契約したてですし、一人では不安なところでしたから」

マミ「それなら行きましょうか」


 わたしたちは一人加えてまた歩き出す。

 わたしは織莉子のことを見上げて見ていた。上品で物腰は柔らかい。マミとは似た雰囲気にも思えるけど、ちょっと違うような。


 織莉子がこっちの視線に気づく。


織莉子「……何か気になることが?」



1マミとは違う学校?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 21:52:58.37 ID:OECh4eDy0<> 2 どこから来たの? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/09/02(日) 22:01:39.98 ID:U6hV1fk90<> 1+織莉子の雰囲気にどこか違和感を感じたらつい一言洩らしてしまう

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/02(日) 23:26:10.41 ID:Kp0W2wz+0<>
かずみ「マミとは違う学校?」

織莉子「白羽女学院という学校に通っているわ。家はこの近くだけれどね、ここからは少し離れた学校よ」

マミ「良いところに通っているわね……私もたまに制服は見るけど、噂くらいでしか聞いたことがないわ。頑張ったんでしょう」

マミ「私は普通に近くの見滝原中学校よ」

織莉子「私にはそういう環境があった、それだけですよ。私からすればあなたたちのほうがうらやましい」

織莉子「……いえ、かずみさんはその言い方だと、マミさんとも違う学校に通っているのかしら?」

かずみ「わたしは……あすなろの学校だよ」


 それが私のつける精一杯の嘘だった。

 ……本当は学校なんて通ってなかったんだ。いけない、こんなこと考えたら暗くなっちゃうな。


織莉子「でしたら、あすなろの縄張りで何か問題が?」

かずみ「うーん……まあそんな感じ……」

マミ「かずみさんは悪い魔法少女に狙われてたから。それで、私と一緒に行動することになったの」

マミ「そしたら仲良くなって。もうその魔法少女は倒したんだけどね」


 マミがフォローに入る。この問題はそんなに簡単に話せることじゃない。

 昨日知った魔法少女の真実も、やっぱり誰にも話すことはできない。



1ねえ、この後お茶会は?
2自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/09/03(月) 00:29:35.84 ID:ElkEhfg30<> ---------次回は4日(火)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<><>2018/10/15(月) 21:22:12.61 ID:KpkwtZto0<> おーぷん避難スレでの採用内容抜粋

209 :名無しさん@おーぷん :2018/10/08(月)22:18:15 ID:TuC ×
1+織莉子と雑談するうちにふと笑顔に疑問を抱く

なんだろ…この人の笑顔は何か違う気がする
なんていうか無理して笑ってるような、悪い言い方をすれば『笑顔を作ってる』ような気がする
上品だけどなんか冷たい感じがする <>
◆xjSC8AOvWI<><>2018/10/15(月) 21:26:17.06 ID:KpkwtZto0<> 次回は16日(火)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2018/10/16(火) 01:49:39.69 ID:d4Hsz88D0<> 復活 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/16(火) 23:10:13.26 ID:ovrGolVjO<> 速報は復活したがスレ主はまだだったか…… <> ◆xjSC8AOvWI<><>2018/10/16(火) 23:30:17.51 ID:cM6qxtga0<> 今日はちょっと時間とれなさそうですね…
多分明日に。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/17(水) 21:10:49.85 ID:FOoPAzuM0<>
織莉子「そうでしたのね。……私はてっきり小学校のほうなのかと」

かずみ「もー、それどういうこと!?」


 頬を膨らませて怒る。けど私はなんにも知らないから完全に否定はできないや。

 ミチルはどんな人だったんだろう。どんな生活を送っていた? そう考えたけどやめた。……ミチルはわたしじゃない。


かずみ「ねえ、この後お茶会は?」

マミ「ええ、そうね。美国さんさえよければ。せっかく話せたんだし」

かずみ「マミはいつもパトロールや訓練のあと、お茶会をやってるんだよ!織莉子もどう?」

織莉子「そういうことなら是非。私も今日はこうしてマミさんやかずみさんと話す機会をいただけて嬉しいわ」

織莉子「もちろん私も、魔法少女になったからには一人でも多くの人を救えるよう尽力いたします」


 その時、マミは足を止める。

 一瞬織莉子の言ったことへの反応かとも思ったけど、どうやら違った。


織莉子「……どうなさいましたの?」

マミ「使い魔が近くに居るみたいよ」

織莉子「そう、使い魔が……?」

かずみ「ホントだ、光ってるよ! はやく倒しにいこう!」

マミ「そうね、美国さんもそれでいいかしら?」


 ソウルジェムを見てみると、確かに反応があった。

 ……やっぱりわたし、まだ魔女はこれ以外で察知できないみたい。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/17(水) 21:23:25.15 ID:FOoPAzuM0<>
織莉子「……ええ。私はお二人についていきます」


 織莉子も賛同してくれたけど、少し不思議そうにしていた。

 話を聞いているとマミと合う部分もありそうなんだけど、やっぱり使い魔を倒すのは普通じゃないことなのかな?

 グリーフシードを落とさないから……?


 もう一度織莉子の顔を見上げてみる。


織莉子「……何か?」

かずみ「ううん、でもちょっとだけ――――嘘くさいなって」


 ――……誰も見ていなかったけれど、織莉子はその瞬間険しい眼差しをしていた。さっきまで笑ってたのに。

 いや、笑ってたけど無理してるような……ちょっと冷たい感じ?

 わたしは気を取り直して、気にしないようにマミの進もうとしていた方向へ駆けていく。


織莉子「!?」

かずみ「いこ!」


―――― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/10/17(水) 21:34:30.46 ID:1W7UIrpH0<> かずみは直感的に嘘を見抜くからね
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/17(水) 22:32:28.19 ID:FOoPAzuM0<>
―ハコの魔女結界


かずみ「えいっ!」

マミ「そっちのはお願いね!」


 結界があったのは少し入り組んだところにある薄暗い小道だった。

 いつもどおりわたしとマミで使い魔を分担して、さらにわたしの後ろには織莉子もいた。


 織莉子は広範囲に放った光る水晶のようなものを当てて使い魔を倒している。


 ――やがて使い魔が片付くと、じっくりと織莉子の姿を見てみた。

 まるでドレスのような露出の少ないひらひらの白い衣装。変身前とは違う髪型。頭には変わった形の帽子……。


織莉子「片付きましたね」

マミ「ええ、さすがに三人もいると早くて助かるわ」

織莉子「そうですわね。ところで、かずみさんは何か私のことが気になるのかしら……?」


かずみ(……バケツ?)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/17(水) 23:04:56.50 ID:FOoPAzuM0<>

 狭い路地から出る前にみんな元の姿に戻る。私も合わせて変身を解いた。


かずみ「あっ、ううん!今日のお茶会のおやつはなにかなって!……たとえばバケツ――――に入ったプリンとか!」

マミ「プリン?作れないことはないけど、バケツいっぱいって相当な量になるわね」

織莉子「……本当に食いしん坊なのね」

かずみ「え?みんなはおいしいプリンをめいっぱい食べてみたくなることってない?素敵だと思うけどな」


 言ってみたら本当に食べたくなってきちゃった、プリン。

 パトロールが終わったあとのお楽しみにとっておこう。


織莉子「使い魔がいたってことは、魔女もどこかに潜んでいるのかしら?」

マミ「そうね、まだ残党がいないかチェックしましょう」


 ソウルジェムを見る。

 今のところわたしが反応を計れるのはこれしかない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/17(水) 23:37:45.00 ID:FOoPAzuM0<>

かずみ「――――残りの使い魔はいたものの、あの辺には魔女はいなかったね」

マミ「遠くから流れてきたのか、誰かが倒してくれたのかも」

織莉子「それはなによりだわ」

マミ「じゃあ、少し回り道しながら帰りましょうか。うちにはあまり大きい容器はないけど、プリンの材料も買い足しておきましょう」

かずみ「やったあー、プリン!」

マミ「私もかずみさんの話を聞いたら食べたくなっちゃったの」


 意気揚々と帰り道を歩き出す。

 マミ、昨日は食欲がなかったみたいだけど、こうして変わらずにパトロールをすることで前向きになれるならよかった。


 ――でもその途中で、手の中の宝石が光り出した。


かずみ「あっ、魔力反応! プリンのためにも早く倒して帰るよ!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/17(水) 23:48:08.44 ID:FOoPAzuM0<>

 魔女か使い魔か、結界を探して入っていく。

 このしっかりとした結界の感じ……


かずみ「……――これは多分魔女だね」

マミ「ええ。心してかかるわよ」


 って、準備をしたはいいけど、最深部に来てみるとどこにも魔女の姿がないよ!

 どうしよう?


かずみ「え? マミ、これどういうことなの?」

マミ「待って、魔女は隠れているのかも。うかつに動くのは危険よ。……気配を読み取るの。必ず動きはあるはずよ」


 そうしてる間にも、使い魔が襲い掛かってくる。

 まずはこれをどうにかしないと。



かずみ 魔力[75/100]  状態:正常
GS:3個
・ヘヴィメタ[20/100]
・お菓子[10/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:正常


敵:使い魔Anja×7

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/18(木) 00:42:25.35 ID:0/e5xWIa0<> 1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/18(木) 01:23:55.24 ID:eEb2fhjE0<> ------次回は21日(日)夜の予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>sage<>2018/10/21(日) 22:20:00.69 ID:bRCMKF7F0<>

かずみ「うん、まずはこっちだ……!」


 すばしっこく飛び回る小さな使い魔を散らすように杖を振るう。わたしが外したやつをマミの銃が仕留める。

 織莉子の水晶玉も見えたけど、わたしたちより一歩引いたところから放っているようだ。


織莉子「私には素早い動きの相手は得意ではありませんから……私が魔女に動きがないか見ています」

かずみ「うん、大丈夫!こっちはわたしたちだけでいけるよ!」

マミ「お願いするわね!私も気配には気を配っておくから!」


 杖の殴打で仕留めきれなかった使い魔を突き、数を減らしていく。

 それならわたしはこっちを倒すのに専念しよう――!


 そうしてしばらく使い魔と戦っていると、マミが声を上げた。


マミ「あ、あれ!」


 物陰で何かが動く。クレヨンのようなものを持って、地面に何かを描いているようだ。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/21(日) 22:29:56.02 ID:Gz75/aNd0<> 落書きの魔女か
<>
◆xjSC8AOvWI<>sage<>2018/10/21(日) 22:30:01.81 ID:bRCMKF7F0<>

かずみ「魔女だ……!」


 大きく不気味な子供のような姿。絵の描かれた床から使い魔が浮き出てきている。

 でも、今ならそっちに気が向いているから倒せるかも。


かずみ「気づいてないみたい。今のうちに縛っちゃえ!」

マミ「言われなくても!」


 魔女をマミのリボンが縛る。

 それからほぼ間髪入れずに織莉子の水晶玉がいくつかぶつけられ、魔女の頭を貫き落としていった。


 頭を失った魔女は声を出すこともできずに縛られたまま暴れ出す。――残った身体にはわたしがトドメを刺した。

 ……なんだか、魔女とはいえその痛々しい姿が見てられなかったから。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/21(日) 22:41:31.57 ID:bRCMKF7F0<>

織莉子「……」


 水晶を放ったままの前に手を翳したポーズのまま、織莉子は冷静な表情で前を見据えていた。


マミ「はい、どうぞ」


 マミが拾ったグリーフシードを織莉子に差し出す。

 でもマミだってさっきもわたしにグリーフシードをくれたし、そんなに余裕があるわけでもないのに。

 今までは何も知らなかったけど、魔法少女はグリーフシードがないと死んでしまう。いや、それよりもっと恐ろしいことになってしまう。


かずみ「マミ……いいの?」

マミ「ええ。ついてきてくれたお礼よ」


 ……それから、テレパシーが聞こえた。


マミ『……魔女になることを考えると本当は怖い。グリーフシードもないといけないけど、やっぱり私はこの活動をグリーフシードを目当てにはしたくないわ』

マミ『魔力が尽きるほど余裕がないわけじゃないし、絶望なんてしないから』
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/21(日) 22:53:29.92 ID:bRCMKF7F0<>

かずみ「マミ……」


 思わずつぶやく。

 マミの気持ちを思うと複雑な気分。


織莉子「……いいの? ありがとう」

マミ「ええ、どういたしまして」

かずみ「じゃ、早く帰ってプリンだ!」



 魔女を倒して再び帰路を歩き出す。

 途中で寄ったスーパーでプリンの材料を買うと、買い物袋を持って三人でマミの家に戻った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/21(日) 23:02:50.05 ID:bRCMKF7F0<>

マミ「……――――あとは冷えて固まるのを待つだけ。先に紅茶を淹れてくるわね」

織莉子「……すごい。お菓子作りって魔法みたいね」

かずみ「お菓子作りに関しては特にマミはわたしより上かもってくらいだからね」

織莉子「かずみさんも料理が得意なの?」

マミ「ええ。こう見えて特に洋食じゃ料理からお菓子までなんでもござれなのよ?毎日がレストランみたい」

かずみ「こう見えてって何よー!」


 プリンを準備してテーブルにつくと、マミの淹れてくれた紅茶に口をつけた。

 相変わらず優しい味だった。


織莉子「紅茶、よく飲まれるんですか?」

マミ「ええ。ティータイムがあるとほっと一息つけるの」


 織莉子も気に入ってくれるかな。

 ……マミはうまくやれてるみたい。私がちょっと気になってたのは、使い魔を倒すって時の反応だった。



1自由安価
2織莉子は家だとお手伝いさんがやってくれるとか?
3織莉子を見つめてみる

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/21(日) 23:13:07.98 ID:Gz75/aNd0<> 3+織莉子の笑顔に疑問を抱く

紅茶飲んでる時は違うけど、さっきの冷たい表情が気になるな
それに、この人の笑顔はやっぱり違和感がある……
美味しいものを食べる時のキリカや杏子の笑顔とは何か違う <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/21(日) 23:26:38.69 ID:YGhTK2TWO<> ↑
プリンを食べ終わったあと織莉子に問いただす
納得できる返答じゃなかったら織莉子が帰ったあとマミに注意喚起

ねぇ、さっき使い魔と戦う前に冷たい表情したのは何で?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/21(日) 23:52:14.62 ID:bRCMKF7F0<>
マミ「美国さんも紅茶はよくお飲みに?」

織莉子「そうね、私も……一息つける時間だったかもしれない」


かずみ(だった……――?)


 そう言って織莉子が見せたのは、さっきの笑顔とも違う過去を懐かしむような苦笑。

 何かはあるようなきがして。でも『今は違うの?』とも聞けなくて。


 気づいたら、織莉子のことを見つめていた。


かずみ「じーーー…………」

織莉子「あの、かずみさんっ? やっぱりなにか私、かずみさんから嫌われているのでは……」


 織莉子は気まずそうにわたしから目を逸らす。


かずみ「えっ!そんなことないよ! ただちょっと……考えてたの」

織莉子「考えていた?」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/21(日) 23:58:45.32 ID:bRCMKF7F0<>
かずみ「ね、織莉子はどーしたらオトナっぽくなれると思う? 考えてみたらわたしと織莉子の衣装って真逆」

かずみ「織莉子のは白くて露出がなくて。キリカはわたしの衣装セクシーかもって言ってくれたけど、織莉子はオトナっぽいでしょ?」

織莉子「そ、そうねえ……かずみさんは少し落ち着きを見せるといいんじゃないかしら?」

かずみ「落ち着きがないって言われたっ!」ガーン


 そんな話をして、マミは笑っている。


 ――って、そんなこと考えてたのは本当に半分。

 でもやっぱ今のもすこし気になった。また冷たい表情したんだもん。


かずみ「……そっかあ。織莉子も、無理はしないでね」

かずみ「なにかイヤなことがあったら言っていいんだよ? わたしたち、仲間なんだから!」

織莉子「…………」

かずみ「使い魔と戦う時、ちょっと嫌な顔したでしょ? 本当は戦いたくなかったんじゃなかったのかなって」

マミ「そうだったの? ごめんなさい、美国さんはああ言ってくれたし私は気づかなくて」

織莉子「……いえ、私は戦い方のせいかいつもあまり魔力がなくて。本当は少し渋ってしまったの」

織莉子「やっぱりあなたって鋭いわ。あなたはそのままでいいわよ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 00:12:29.30 ID:VOYfBl/p0<>

 織莉子も笑う。……でも、まだ心の奥が笑ってないよ。

 ――――そのとき、セットしていたタイマーがけたたましく音を鳴らした。


かずみ「わあっ、プリンの合図だ!」

かずみ「織莉子もプリン食べて元気になろ!織莉子はもっとはしゃいだっていいよ!」


 さっそく冷蔵庫を見に行った。

 冷蔵庫の中で特大の容器が冷えている。バケツほどじゃないけど、ボウルいっぱいのプリンも素晴らしい。




マミ「……たしかに少し落ち着きがあってもいいかもしれないわねぇ」

マミ「そうだ、美国さん。戦い方が気になるなら今度は私たちと訓練はどう?連絡先交換しましょう」

織莉子「ありがたい話ですわね。それならお言葉に甘えて……明日にでもお時間取れますか?」

織莉子「その前に少しお話したいこともあるのですけど」

マミ「今じゃ話せないこと?」

織莉子「縄張りのことですので、二人だと嬉しいですわね」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 00:30:43.84 ID:VOYfBl/p0<>


 大きなプリンをスプーンですくって口いっぱいに頬張る。

 織莉子はそんなに食べられないって小さめの容器にしていたけど……

 たくさんある上に味もおいしかった。これならいくらでも食べられそう。


かずみ「おいしい! これ大成功だよー」

マミ「子供の頃から一度は挑戦してみたくなる夢よね。食べてもなかなか減らないし、満足するまで食べられるわ」

かずみ「えー、まだまだ食べられるよ」

織莉子「本当に食いしん坊ね……」

かずみ「えー、織莉子はそれだけで足りるの?」

織莉子「私はこれで十分ですわよ? とても美味しいです」

マミ「口に合うようでよかった。かずみさん、これからは美国さんも一緒に訓練するって」

かずみ「そっか、じゃあこれからよろしくだね」

織莉子「ええ、よろしくおねがいしますわ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 00:37:19.84 ID:VOYfBl/p0<>

 ティータイムが終わって、遅くならないうちに見送る。

 織莉子は今一人で暮らしてるらしい。そこにもなにか事情があるのかもしれない。


 織莉子が帰ったあとお茶会の後片付けをしながら、あたまに引っ掛かったことを考えていた。

 ――とっさに浮かんだバケツプリン。なにか知ってることがあるようなないような……?


かずみ「マミ! ちょっと調べものしてもいい?」

マミ「ええ、どうぞ」


 マミにパソコンを借りて操作してみる。すると、やっぱり気になるものが出てきた。


かずみ「あった!」

マミ「何が?」

かずみ「あすなろのお店だよ。期間限定だけど、バケツプリンやってたんだって」

かずみ「ねえ、今度あすなろ行くときはこれ行こう!」


 今日の特大容器をさらに上回る特大のプリン。

 マミも驚いてたけど反応は良さそうだった。それ以外のメニューもおいしそう。


 …………そうやって楽しみがあれば、少し明るい気持ちであすなろに帰れるかな。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 00:56:11.72 ID:VOYfBl/p0<> ――――
――――


織莉子「……鋭い子だ。子供みたいに純粋で、厄介で、うるさくて落ち着きがないところも、その容姿も……――」

織莉子「本当に、貴女のような人は嫌いだわ」


 活発な言動はキリカとも少し似ているようで、性格は少し違うと思った。

 もっと純粋で馬鹿みたいに曇りがなくて、簡単に言いくるめられたりはしないだろう。


織莉子「でも、巴マミとの交流は予想外のチャンスだった。彼女は使えるわ。――彼女もすでに真実を識っている」


 暗くなった空。家への帰り道を歩く。『お帰りなさいませ』なんて言って待っていてくれる使用人なんかいない。

 一族からも切り離された私の家族は、世間で思われているほど上流階級なんかじゃなかった。

 私が小さい頃は家事に四苦八苦する私を見かねたお父様が雇ってくれたこともあったけれど、すぐにそれもやめさせた。

 私が説得したのだ。全て私がやると。赤の他人に全てやってもらうなど屈辱でしかない。私は絶対的に頼られる人にならなくてはいけなかった。


 ――何もできない子供なんかじゃなく、お母様の代わりになるために。


 私はキリカとも違う。かずみとも違う。他の子どもたちの誰とも違う。


織莉子(マミと一緒の魔女狩りは無駄も多いからあまり共にはしたくないけれど、今日はグリーフシードも手に入ったことだし計画は順調)

織莉子(……なのにこの胸騒ぎは何?)


 家の前に立つ人影に足を止める。――――知らない人物に前を立ちはだかられ、顔を上げた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 00:56:42.21 ID:VOYfBl/p0<> -----ここまで。次回は22日(月)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/10/22(月) 01:10:26.25 ID:PCXEBlM70<> 乙です

マミさん、織莉子と2人きりで会うのは危ないなぁ…篭絡されないといいけど
織莉子の家の前に居るのは誰だろ?あすなろの関係者かな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 21:56:13.59 ID:VOYfBl/p0<>

織莉子「……どなたです? ここで何をしているの?」

「…………」

織莉子「ここは私の家です。どいてもらえますか?」


 目の前に立つ人物は喋らない。

 あまり歳のいっていない女のように見えるが、パーカーのフードを深くかぶり、顔が分からなかった。

 ――見るからに怪しい。またいつもの不審者か?


織莉子「あまり付き纏うようなら警察への通報も考えます」


 うんざりしつつ携帯を取り出す。こういった不審者には毅然と接してやるのがいい。逮捕までされる覚悟のない人が大多数なのだ。

 ――そう思ったのだけど、今回は違った。


「……お前の企みは全部知ってるぞ」

織莉子「!」

「美国織莉子」


 影に隠れた顔で、意地悪く歪む口元が印象的だった。

 見透かしたような言葉。そんな私の反応まで楽しむように歪んだ口元は釣りあがる。

 でも何故?目的がばれるようなことはしていない。まさかカマをかけているのか?


織莉子「なっ、何を言っているの!?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 22:26:45.43 ID:VOYfBl/p0<>

「あぁ、いいね。自分で自分を優秀だと思ってる奴のそういう顔ってなかなか見ものじゃないか?」

織莉子「いいから質問に答えて――」


 女は焦らすようになかなか答えようとしない。ふつふつ怒りや焦りが湧き上がってくるのを抑え、次の言葉を待った。

 まだこいつの真意などわからないのだ。早まってここで動いたほうが負けだ。


 私から言わない限りは――――


「お前らよりも先にまどかを手に入れる」

織莉子「……!」


 思わず私は言葉を失って目を見開いていた。

 たったその一言が、一番知られてはいけない核心をズバリと言い当てていた。


 今までの私の考えはただの楽観だった。その場で固まる私にまだ意地の悪い笑みを浮かべながら、女は横を抜けて去ろうとする。

 この女は本当に全て知っている。ならばここで消さなければならない。私の前に姿を見せた今しかない。


 変身し、滾らせた殺意を水晶を撃ち込む魔力に変えて向けた。…………はずだった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 22:59:01.61 ID:VOYfBl/p0<>
織莉子「何故、魔法が使えない……?」

「そこでそうしてなよ。私はまだ君に危害を加える気はないんだからさ」

「Have a good night.」


 魔力がせき止められたかのように、私の思惑は何一つ顕現しない。

 女は手をフリフリ、何をすることもなく私の横を通り抜けて行った。


 ――扉を開けて、荒れた家の中を進んでいく。


織莉子「あああああぁッ!」


 叩き付けた花瓶が割れた。これはなんだったっけ。

 たしか、この前の英文スピーチのコンテストでもらった花束を飾っていた花瓶だったか。


 そんなことはどうでもいい。


織莉子「あいつは何者なの!なにがしたいの!」

織莉子「全部を知られている……?」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 23:24:56.28 ID:VOYfBl/p0<>

 ふと思い立って、握りしめていた携帯の連絡帳を開く。

 その中からある番号に電話をかけた。――その相手は数コール後に電話に出た。


織莉子「キリカ、貴女今何してるの!?」

キリカ『なにって、今は家だよ。こんな時間に呼びつけたりしないでよね』

織莉子「あれから私の知らない人と関わったりはしていないわね?」

キリカ『……』

織莉子「どうなの!」

キリカ『プレイアデス聖団になら会った。あと他の魔法少女とも』

キリカ『襲えって言ったのそっちでしょ? ……そのことはまた今度話しに行くから、もう今はほっといてよ』


 こっちの返事を待たずに電話が切れた。長く話したくないとでもいうようだ。

 ……いつもは勝手に切ったりしなかったのに。


織莉子「は…………?」

織莉子「“プレイアデス星団”……って、何?」


 キリカが当然のように言った言葉が、私にとってはまるで覚えがなかったのだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/22(月) 23:54:56.80 ID:VOYfBl/p0<>
 額から汗が垂れ、荒くなった息づかいが響いていた。

 絶対に知られてはいけなかったことを、自分の知らないところで知らない女に知られていた。


 『お前らよりも先にまどかを手に入れる』


 その言い方からして相手の狙いは鹿目まどか。でも殺すのではない。

 あの女は私に協力はしないだろう。それどころか私の計画とは――。


織莉子「私はなんで……そんな大事なことを予知できなかったの…………」


 初めて自分の力を呪った。不必要なことを予知し、必要なことを予知しない。前々から無駄が多いとは思っていた。

 ……恐らくはこの前から視えた、私を妨害する“守護者”ともまた違う立場の敵。


織莉子(このままだとまずい)

織莉子(この世界の未来があいつに奪われてしまう――――)




―7日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[0/100]
・お菓子[5/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5]  [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[???]
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/23(火) 00:05:24.47 ID:E/Mq008F0<> ――――――


 ――ある夜中、私の意識は暗闇の中で金縛りにでもあったように身体がうごかなかった。

 ドクンと鼓動が響く音が聴こえる。耳につけた鈴のイヤリングからじくじくと疼くように黒いものが広がってくる。


 それに飲み込まれたら私は私ではなくなってしまう、と、このとき私の意識はわかっていた。

 隣にはマミが寝ている。そうなってしまったらきっとマミさえも傷つけてしまうだろう。


かずみ(だから動いて、わたしの思い通りに動いてよ!)

かずみ(でも、わたしの身体は人間じゃないんだ、最初から――――)


 わたしは本当は魔女だから。わたしなんて人は本当はいなくて、ただの幻。

 景色が変わっていく。沸きだした血溜まりの中に倒れているのは、誰かはわからない人間たちの死体だった。


 これが本当のわたしで、これがわたしがやったこと。


 私は寝ているマミを――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/23(火) 00:11:09.57 ID:E/Mq008F0<>

かずみ「うわあああっ!?」


 布団から飛び起きると、その時部屋の扉が開いた。

 窓からは朝日が差し込んでいた。扉の奥にはもう制服に着替えたマミの姿。


マミ「おはよう、かずみさん。ぐっすり寝ているようだったから起こさなかったんだけど、朝食ならテーブルの上にあるから早めに食べてね」

マミ「なんて、言わなくたってかずみさんは食べると思うけど」

かずみ「も、もちろんだよ!ありがとう、でも家事はわたしの仕事だったのに……」

マミ「いいのよ。じゃ、行ってくるわね」


 今日はそんな時間まで寝てたんだ。

 布団を握りしめたまま考え込む。……夢だった。でも妙にリアルに感じられて、あの内容をまだ引きずっていた。

 わたしが魔女から作られたっていうのが本当な以上、あれもただの妄想じゃすまない。


かずみ「…………」

マミ「かずみさん?」

かずみ「あ、ううん! いってらっしゃい!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/23(火) 00:19:35.11 ID:E/Mq008F0<>

 マミを送り出してまた布団に俯く。

 いつもなら大好きな一日のスタートなはずの朝食も、今はなんだかあまり食べる気がしなかった。


かずみ「普段通りにしようって思ったのに、なんであんな夢みちゃうのかな……」


 気にしちゃいけないってわかってるのに。

 マミだってせっかく元気になって、今日は織莉子も訓練するって言ってくれて。

 あの真実をなかったことにすれば今まで通りに過ごせるって思ってた。


 でも、わたしは本当にわたしの正体を隠したままマミのそばにいていいの?

 あの夢みたいにいつかマミを襲ってしまったら? 罪もない人をたくさん殺してしまったら?


 ……考えなくたって不安は消えなくて、それが夢にまで現れた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/23(火) 00:21:05.52 ID:E/Mq008F0<> ---ここまで。次回は24日(水)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/24(水) 23:15:14.75 ID:RhP0u4Sg0<> ---すみませんが今日はむりそうです…次回25日(木)夜20時くらいからの予定 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 20:15:53.64 ID:bkw3J76y0<> ――――
――――
放課後


 学校が終わると二人はカフェで待ち合わせていた。

 先に来ていたマミが紅茶に口をつける。どちらも席につくとさっそく話が始まった。


マミ「それで、話って?」

マミ「今日は縄張りのことだから二人で、というのはわかるけど、ああ見えてかずみさんは私なんかよりずっとしっかり者よ」

織莉子「そうなの?」

マミ「ええ。何度も助けてもらっているもの」

織莉子「……でも、この話をあの子にするのはどうかしらね。実は至急協力してほしい事態があるのです」

マミ「協力してほしい事態?」

織莉子「マミさん、貴女は魔法少女が魔女に成ることを既に識っている」


 織莉子の表情の真剣さに、マミはごくりと唾を飲む。

 その言葉にマミは表情を変えて反応した。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 20:38:12.17 ID:bkw3J76y0<>
マミ「……美国さんももう知ってたのね」

織莉子「ええ。私は契約してすぐに識りました。けれど、そういう人ばかりじゃないでしょう?」

織莉子「貴女はそれを識っても変わらず魔女を倒し続けるの?」

マミ「ええ、約束したから。本当は恐い。でも私が魔女を倒せば救える人は居るもの。……魔女に成ってしまった人たちのことも」

織莉子「なるほど。魔女に成ってしまった人に対しては、せめて人を襲わないように殺してあげることが救いだと」

マミ「本当は誰かを襲いたいわけじゃないはずよ。もしかしたら、なにもかも嫌になって世間に恨みを抱いている人もいるのかもしれないけれど……」

マミ「それしかないのなら、私はそれも尊厳を守ることになると思ってる。……もしいつか私が魔女になったなら、迷わずそうしてほしいわ」


 マミの話を聞きながら、織莉子は静かに頷いた。

 マミにとってはその真実を受け入れることは簡単じゃなかった。それなのに、契約ばかりの新人である織莉子のほうは既に覚悟をしたような顔をしていたのだ。

 ――それも、契約してすぐに知っていたからだろうか?


織莉子「そうね。その考えは正しいのかもしれない。それなら……――」

織莉子「これから世界すら滅ぼす魔女と成る素体には、どう対処する?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 21:00:16.69 ID:bkw3J76y0<>
マミ「それは、もしもの話?」

織莉子「ええ。でも、変わらないでしょう? みんな何も知らずに魔法少女に、そして魔女に成る」

織莉子「人殺しはしたくないわ。けれどその規模が桁違いで、確実に絶望の運命を辿るとわかっているのならば」

織莉子「悲劇が起こる前に死んだ方が――或は、殺した方が。そう思うのかしら」

マミ「私なら……」


 マミが考えを浮かべていく。

 説得する、見張る、そんなもので解決できるのだろうか。――それとも殺す?

 最後に浮かんだのは一番直接的で短絡的な手段。いや、最初から考えてはいたが敢えて意識では最後に持ってきた。


マミ「……美国さんは、そんな思いを抱えて今までやってきたの?」


 マミは答える前に織莉子にそう問いかける。

 織莉子はわざと表情を変えないようにまっすぐにマミを見つめていた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/10/25(木) 21:03:24.37 ID:VA44wU9L0<> マミさん、織莉子に同調だけはしないでくれよ・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 21:17:11.13 ID:bkw3J76y0<> ――――


かずみ(マミ、遅いな……)


 いつのまにか少し遅めになってしまった昼を簡単に済ませると、二人がここにくるのを待っていた。

 こんなことってはじめてだ。いつもなら時間にならなくたってお腹はすいてたのに。……でもどうせわたし一人だったから。


 今日は少し用を済ませてから訓練にするって言ってた。

 マミが帰ってきてから一緒に出掛ける予定だ。


かずみ(……今日は織莉子もいるんだよね)

かずみ(わたしは今日はお休みさせてもらおうかな。やっぱそんな気分じゃないかも)



 リビングのテーブルに書置きを残して、外に飛び出していった。

 とくにあてもなくどこかへ歩いて、一人になれそうな場所で座り込んでみる。


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 21:22:35.71 ID:bkw3J76y0<>


キリカ「――――……“魔法少女の魂はソウルジェムで、それさえ壊されない限り死ぬことはない”?」

キリカ「“ソウルジェムが濁り切った時に魔女が生まれる”。あれが本当ならこっちも」

キリカ「あいつからとっくに聞かされてたはずなんだけど、実際に思い知らされるとなんか…………嫌になるな」

キリカ「私も……そうなんだ」


  人の気配から離れたところにぽつんと一人で座り込んでいた。

 手元には自身のソウルジェムを握り、それをただ見つめている。


 記憶や内面なんて不確かなものだけじゃなく、もはや人間としての根底の部分まで。

 以前とは決定的に変わってしまった。前の自分とも他の人たちとも違う存在になってしまっていた。自分も何も知らないうちに。


キリカ「前の私はそんなことする人じゃなかったかなぁ……」


 どこへでもなく呟く。

 ぼんやりと視線を遠くに飛ばして、それから“隣”の存在に気づいた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 21:52:24.55 ID:bkw3J76y0<>

 離れたところに座り込んでいた二人が『ン』、と声を上げて顔を向き合わせる。


かずみ「キリカ! どうしてここにいるの?」

キリカ「いやキミこそ。また訓練?」

かずみ「えっ、いやぁ今日はそういうわけじゃあー……」

かずみ「キリカは? ソウルジェムなんて持って何かむずかしそうな顔してたから」


 訓練って言葉に心当たりを感じて、咄嗟にごまかしちゃった。

 大きな声を出さなくても雑談できるくらいにまで近寄っていくと、キリカはどこか自虐的な雰囲気で話し始める。


キリカ「なんていうかさ、私って……なんなんだろうなって」

かずみ「記憶のこと?」

キリカ「『前と違う自分になる』って、それが私の契約した願いだって。だからか知らないけど、私はなんにも知らないんだ」

キリカ「魔法少女のことも、自分のことすらぽっかり穴が空いてるみたいで」

キリカ「正直最初は新手の詐欺にでもあってるのかと思ったよ。でもこんな力までもらっちゃって、さすがに信じないわけにもいかないじゃん?」

かずみ「…………そっかぁ」


 キリカの記憶喪失って、そういうことだったんだ。キリカも色々悩んでるのかな。


キリカ「……前の私と違うなら、私は所詮願いで生まれた偽物なのかな」

キリカ「どうせ変わるんなら、私はかずみみたいになりたかったよ。明るくてまっすぐで誰かを恨んだりもしない、そんな人になってたらよかったのに」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 23:07:28.70 ID:bkw3J76y0<>
キリカ「……君も早く自分のこと思い出せるといいね」


 キリカの言ったことにわたしは返事をかえせなかった。

 わたしの様子のおかしさにキリカが不思議そうにこっちを見る。


キリカ「んん?」


 ――そして、わたしはキリカの膝に泣きついた。


かずみ「うえぇ〜〜ん! うわぁ〜〜ん!!」

キリカ「ええっ!?」ビクッ
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/10/25(木) 23:13:28.52 ID:ifxx9lxIO<> かずみにはキツいな
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 23:22:55.55 ID:bkw3J76y0<>
かずみ「わたしだって、前のわたしがいると思ってた!なのにわたしは……ぐすっ」

かずみ「本当のわたしなんていなかった! 家族もいない、あすなろには友達もいない! 本当のわたしは、いつか誰か殺しちゃうかもしれない危ない魔女なんだよ!」

かずみ「そんなの隠したままみんなのそばになんていられないよ! こんなことならわたしのことなんて知りたくなんてなかった!」


 キリカはびっくりして扱いに困ったようにおろおろしながらも、突き放したりはしなかった。

 キリカがああ言ってくれたのはうれしかった。でもわたしもそんなに立派じゃないよ。


キリカ「えーと、と、とりあえず落ち着いてよ……なんか言っちゃったなら謝るから!」


 盛大におなかの音が鳴る。やっぱお昼、簡単に済ませすぎた……。


かずみ「うわぁん、おなかすいたよー!」

キリカ「……」


 キリカは困ったと同時に呆れたって顔してた。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/25(木) 23:35:14.92 ID:bkw3J76y0<>

キリカ「もう、しょうがないなあ。これ秘蔵のお菓子なんだぞ」

かずみ「ありがと、おいしい……」


 キリカは鞄の中を何か漁ったと思うと、箱入りのお菓子を渡してくれた。

 まだ涙は止まらないけど、やっぱりおいしいものって元気が出る。チョコレートとビスケットの甘さが優しい。


 ……キリカはじっとこっちを見ている。

 聞きたいことはあるけどまた泣き出さないか心配って感じなのかも。



1なにがあったか聞かないの?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/25(木) 23:58:19.56 ID:9/mgbcKs0<> 1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/26(金) 00:12:50.67 ID:3JKk489b0<> -----ここまで。次回は27日(土)18時くらいからを予定しております <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/26(金) 19:20:51.04 ID:3JKk489b0<> ---避難所のほう投下しておりますのでよければ
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539087062/
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/27(土) 19:35:14.75 ID:enVeIbEF0<>
かずみ「……なにがあったか聞かないの?」

キリカ「聞いてほしくないかと思った。話したいなら話していいよ」


 そう言われるとちょっと困って、押し黙ってしまう。

 やっぱり自分のことはあんまり話す気がしないけど。


かずみ「キリカの心はきっと偽物なんかじゃないよ。だって、好きなように作れるんだったら悩んだりしないはずだもん」

かずみ「その願いがキリカが言ったみたいな言葉通りに叶ってるなら、ホントーに何にも悩まない性格……になってるんじゃないかな?」

かずみ「でもそんなのっておかしいよ。悩んでることに気づいてないだけだもん。それじゃ心が壊れちゃうよ」


 わたしだって悩む。こうやって何もできなくなっちゃうことはあるから。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/27(土) 19:44:37.85 ID:enVeIbEF0<>

キリカ「だったら、今ここにいるかずみも『本当』なんじゃないかな? ……事情はよくわかんないけど」


 その言葉を聞くと、うるっときて涙が目からあふれた。

 キリカがまた慌てはじめる。


かずみ「……ぐすっ」

キリカ「!?」


 『ミチル』じゃなくても、元が魔女でも、わたしは本物。


かずみ「おかし……」

キリカ「はいはい、おかわりならあるよ……」



―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/27(土) 20:48:29.38 ID:enVeIbEF0<>

 マミの家のチャイムが鳴る。

 下で呼び出された時にも気になってはいたが、マミが気になったのは呼び出した人よりその後ろだった。


かずみ「くかー……すぴー」

キリカ「はい、お届け」

マミ「呉さん、それはどうしたの?」

キリカ「さあ? 早く受け取ってよ。小さいとはいえ一人背負うの重いんだから」


 前別れた時はあまり良い空気ではなかったが、これではマミも開けないわけにはいかなかった。

 マミがかずみを抱えて受け取ると、その時にかずみが目を覚ます。


かずみ「ふあ……? おうち?」

キリカ「おはよ、じゃあもう行くね」

マミ「待って! もう少しくらい話をしても……」


 しかし去り際、キリカの目には廊下の奥にいる織莉子の姿も目に入った。

 互いにその存在を確認して、ちょうど視線が交わる。



1そういえば織莉子も来てるの?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/27(土) 20:50:25.97 ID:6q/oGJD90<> 1
安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/10/27(土) 21:02:13.26 ID:+qz7606q0<> ↑追加でキリカにさっきのお礼がしたいと伝える、腕を掴むとか多少強引な感じで
その際に織莉子事はスルー(?)するような、でも注意は向けとく感じで
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/27(土) 21:41:23.97 ID:enVeIbEF0<>
かずみ「訓練終わったんだ……? そういえば織莉子も来てるんだっけ」

マミ「ええ。でも、いきなり書置きしてあったから驚いたのよ」

かずみ「ごめん……」

マミ「なにもないならいいけど、何かあるなら言ってほしいわ。これからまだ寝る?」

かずみ「いや、織莉子が来てるってことはこれはお茶会の予感! キリカもきてよ! さっきのお礼はここでするから!」


 キリカの手を取ってダッシュする。


キリカ「ま、待ってよ!まだ行くって言ったわけじゃ……」


 予感は的中で、テーブルには大きなシフォンケーキがあった。

 それを二人で切り分けて食べている。


かずみ「生クリームたっぷりのシフォンケーキだよ!」

マミ「かずみさんの分ももちろんあるわよ。」


 キリカがごくりと唾を飲んだのがわかった。

 けどキリカは、まだ乗り気じゃなさそうな反応をする。


キリカ「いや、悪いけどもう帰るよ。私の分は考えてないでしょ?」

かずみ「えぇ、でも……」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/27(土) 21:56:35.19 ID:X3AIjcsj0<> これは半分こかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/27(土) 22:40:24.18 ID:enVeIbEF0<>
織莉子「私のことでしたら、キリカさんも遠慮なさらず。みんなで分け合えばいいじゃない」

織莉子「用事があるのでしたら無理にとは言いませんけど……」

かずみ「ほら、織莉子もこう言ってるんだし!」


 先客の織莉子の提案に、キリカはしばらく考えこんだのちに返事を返す。


キリカ「…………わかった。マミがいいならいいよ」


 キリカがテーブルの前に座ると、マミはケーキをさらに切り分ける。

 でもやっぱりキリカはどこか、遠慮とも違う、なにか気になることがあるような顔をしていた。


かずみ「これすっごくおいしいよ!」

キリカ「おいしいね」

マミ「よかった。かずみさんもまた今度、一緒に訓練しましょうね」

かずみ「うん、それはもちろん。今度は参加するよ……」



1今日はどうだったの?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/27(土) 22:55:12.65 ID:9ucYmuLQO<> 1+キリカと織莉子の会話に違和感を感じたことを話す

ねえ織莉子
何でキリカのこと『さん』付けなの?
この間も言ったけど何か嘘っぽいよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/27(土) 23:29:36.17 ID:/PE333UK0<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 00:00:45.79 ID:uXYPtqg70<>
かずみ「今日はどうだったの?」

マミ「魔力のコントロールを特訓したわ。美国さん、使いすぎてしまうところがあると言っていたから」

キリカ「魔力のコントロール? そんなの練習して何になるのさ」

マミ「特訓をおろそかにしてはダメよ。契約する前は馴染みのない感覚だから、使わないと慣れないでしょう?」

織莉子「意識してみると難しいのよ。なんとなくで使っていたけど、まだ無駄は多いみたい」


 魔力を使いすぎることがなくなったら、一人でも使い魔も積極的に狩れるようになるかな?


かずみ「で、どうだった? マミ師匠から見て、織莉子の筋は」

マミ「そうね…………悪くはないんじゃないかしら」

織莉子「……」

キリカ「えっ、今の間なに? 本当はダメダメなんじゃないの?」

マミ「そんなことはないわよ」


 今朝やお昼はあんまり食べる気がしなかったけど、やっぱりおなかはすいて、

 キリカのくれたお菓子やマミの作るケーキはおいしくて。

 今だったらまた前みたいに食事も楽しめるって思った。……いつかわたしの恐ろしい本性が表に出て暴走してしまうかもしれなくても。


 ……でも。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 00:31:27.14 ID:uXYPtqg70<>

 ――――ケーキを食べ終わるとまた眠気が襲ってきて、わたしは途中でベッドに行ってしまった。

 昨日眠りが浅かったからかな。まだ疲れてる気がして眠り足りなかった。


 二人もお茶会が終わったら帰って行ったみたい。

 でもここに来てからのキリカには、その雰囲気に違和感を感じたんだ。


かずみ(なんか…………怒ってるみたいだった?)


マミ「……美国さん、制御は悪くないのだけどね」

マミ「それよりもっと根底の部分でどこか不安定なところがある気がするの」

かずみ「不安定なところ……?」


 わたしも織莉子には“何か”がある気がしてる。わたしたちが見てるのはまだ表面で、本当の織莉子を見ていない。

 今日悩んでたキリカも、わたしも、きっとみんな何か隠したいようなイヤな部分は抱えているけど……。


 マミには心当たりはあるみたいだった。


マミ(……やっぱりみんなが知らない真実を知ってたから? その意識の違いは大きい)

マミ(でも本当に“あの話”って、それだけでいいのかしら……?)


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 00:37:03.92 ID:uXYPtqg70<> ----ここまで。次回は28日(日)昼くらいにちょっとだけ。

織莉子は基本的に「名前+さん」(別編で敵意や嫌悪なく出会った時にはかなり年下のゆまにもさん付け)なので、
キリカを呼び捨てで呼んでるほうが違和感持つと思います。(その理由まではさすがにわからないので仲がいいのかなくらいでしょうが) <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 11:50:59.54 ID:uXYPtqg70<>

マミ「……私はそれを知った時、もう魔女になるために生きていたくなんてないとも思った。でも私は今を諦めたくないからこうしている」

マミ「きっとそれが『誰か』でも変わらない。その人だってそう思ってるんじゃないかしら」


 でもそれは『気持ち』を考えた話。

 実際に対処するなら話は変わってしまうだろう。綺麗事だけじゃ解決はできないから。


織莉子「同じことを直前にまで思っていられる?」

マミ「それは……わからないわ」

織莉子「そのきっかけはそれぞれ。魔力を失った時、自分の末路を識って最期に絶望するの」

織莉子「さあ、訓練に行きましょうか?」

マミ「ええ、そうね……」


――――



マミ(美国さん、どうして貴女はそれを識って平気でいられるの……?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/28(日) 11:59:26.01 ID:g7uwzTuMO<> 別に織莉子は平気なんじゃなくて本当の自分から目を背けて、救世にすがり付いてるだけだよね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 12:57:48.72 ID:uXYPtqg70<> ――――
――――


キリカ(泣き疲れてお菓子たべたら寝ちゃって、またお菓子食べて寝ちゃって……子供かっ)

キリカ(かんべんしてほしいよ。私も誰かの世話なんて得意じゃない)

キリカ(……でもまあ私も少し元気もらった気がするし)


 とりあえずあれから寝顔は元気そうだから安心した。

 横を歩く姿に目を向ける。マミの家を出てから今まで会話はなかった。


織莉子「今日は何があったの?」

キリカ「……別に。偶然会っただけ」

キリカ「あんたはかずみのことは知ってるの? 自分はいつか誰か殺すかもしれない魔女だって」

織莉子「魔女……?」

キリカ「どういう意味かわからないから聞いてるんだよ。知らないならいい」

キリカ「あ、それともまた『貴女は知らなくていい』ってこと?」

織莉子「……それはまた考えるわ。それより、今度話すと言っていたわね?」

キリカ「…………」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 13:19:12.05 ID:uXYPtqg70<>

 念入りに気配に注意を払って豪奢な家に足を踏み入れ、いつも使っている部屋に入る。

 二人とも険しく真剣な顔つきだった。


キリカ「――……あすなろのことは失敗したよ」

織莉子「負けたの? 誰に? 私の事は話してないでしょうね?」


 キリカごときが知っていることを洗いざらい話したとしても大した情報にはならない。

 見滝原であすみに倒された時も、そのために核心に迫る内容は何一つ教えていなかったのだ。


 でもそのつながりから主人のほうまで疑念を持たれることはある。

 織莉子は自身が探られて目的にまで辿りつかれたのだとしても、そのきっかけはキリカにあると考えていた。


キリカ「話してない。逃げたし」

織莉子「それならその後は何をしているの? 貴女にはあすなろに行くように頼んだはずよ」

キリカ「うるさい! こっちは殺されかけたんだぞ!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 13:39:17.01 ID:uXYPtqg70<>
キリカ「あすなろの魔法少女狩り。勝手な理由で魔法少女のソウルジェムを奪って集める二重人格の魔法少女だった」

キリカ「プレイアデス聖団が来なかったらその場で死んでたよ。でもそいつらにもソウルジェム奪われそうになった!」

織莉子「だからその“プレイアデス星団”とは何なの? 先に説明して頂戴」

キリカ「そっちが言ったんだろ!あすなろのプレイアデス聖団を襲って縄張りを奪えって!」


 織莉子は言葉を失って茫然とした。

 織莉子の考えは外れていた。キリカはきっかけなどではなく、すでに利用されていただけだったのだ。


織莉子「貴女……それは……」

キリカ「え……まさか」

織莉子「私はそんな事を言ってない。貴女は誰と話していたの?」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 14:18:49.86 ID:uXYPtqg70<>
キリカ「……し、しらないよ。あの時は確かに織莉子だと思った」

織莉子「あすなろでの活動はあくまでグリーフシードの確保と陽動。私はここを離れるつもりはないわ」

織莉子「なのに貴女は偽物なんかに騙されて、敵の思うままに動こうとしてたのね」

織莉子「結局貴女はなにひとつ私の言ったことを果たせていない」


 織莉子はため息まじりにキリカを責めるように言う。

 そんな織莉子を見ると、キリカは言葉には出さなかったが怒りにこめかみを震わせた。


織莉子「大体、魔法少女狩りなんてもの今更何を恐れることがあるの? 本当なら私と戦った時に貴女は死んでいたはずでしょう?」

織莉子「貴女にはこれから更に私の目的のために動いてもらう必要がある。人殺しくらいで怯んでいたら困るのよ」

キリカ「人殺しくらいだって? あの話聞いて何も思わなかったの?」

織莉子「貴女も人を襲うわりに、随分恐れているのね。私が見込んだのは貴女の“そんなところ”じゃない」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 14:39:56.86 ID:uXYPtqg70<>

 ――――その時、ついにキリカの雰囲気が変わった。

 険悪な空気に更に亀裂が走る。


キリカ「あんたに私の何がわかる?」

キリカ「あんた、私に人殺しでもさせたいの?」

織莉子「……見込みが違ったのなら、私のために、私が望むように変わりなさい」

織莉子「そうでなければ私の駒は務まらない。……貴女の考えや価値観なんてどうでもいい」

キリカ「否定しないんだ…………まあさっきから薄々感付いてはいたんだよね」

キリカ「自分の都合で人の命すらなんとも思わない人ばっかり……」

キリカ「このドクズ! みんなクズだ。もう誰かに利用されるのなんてまっぴらだよ! 私は都合のいい人形でも、駒でもない!」


 織莉子を強く睨みつけ、ソウルジェムに意識を向ける。――どうにかしてやろうか。そう考えもしたのだが人殺しとまともに戦うのも嫌だ。

 織莉子もすぐに戦闘態勢が取れるように『未来』に意識を向けていた。


キリカ「……二度と私に顔を見せるな」


 しかし、キリカはそのまま織莉子の家を出て行った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/28(日) 14:40:28.06 ID:uXYPtqg70<> ----ここまで。次回は29日(月)20時くらいからの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/28(日) 14:56:10.55 ID:g7uwzTuMO<> 乙です
織莉子とキリカ、遂に決裂ですか
ここまで織莉子に啖呵を切るキリカも珍しい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/29(月) 14:13:25.04 ID:iPwT+ywL0<> 一応あすみ編の派生なのにあすみが話に全然絡んでこないな
これってかずみが安価で行動しないとダメってことなのかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/29(月) 21:33:50.08 ID:IeZauCsb0<>

織莉子「…………」


 一人になった織莉子はしばらく茫然と開け放たれた扉を見ながら立ち尽くしていた。


織莉子「……どうして離れていくの?」


 苛立ちを覚えていた。予想すらしなかった謎の人物に宣戦布告された時から余裕をなくしている。

 そしてその苛立ちをきっかけに、また予想しなかった事態悪化への苛立ちへと。


 ……本当はあれほど責めたてるつもりではなかった。失敗を責める前に考えるべき策はいくらでもあった。

 しかしそのことに冷静さをなくした今の織莉子は気付けない。


 相手以上の力を見せつけ、絶対的な関係のもと獲得した駒。

 もしその関係を覆そうというのなら――――その時は命を奪うか、もう一度痛みを刻んでわからせるか。だがあの様子じゃ簡単に降伏はしないだろう。


織莉子「……前までならば迷わずそうしていたわね」

織莉子「今は味方が惜しい。尚更巴マミに協力してもらわないわけにはいかなくなった」



 そして、『謎の人物』にとって他の魔法少女が敵となるか、味方となるか――。



―8日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[0/100]
・お菓子[5/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5]  [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[???] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/10/30(火) 00:09:46.66 ID:huqXmIem0<> ---ちょっと先の話の書き溜めを書いていたらこんな時間に…
次回は1日(木)夜からの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/01(木) 22:11:56.44 ID:/2ZlFam+0<> ――――――
――――――


ミチル「――――今のすごい魔法! 分身いっぱいですぐに倒しちゃった!」

ミチル「ねえ、それなんていうの?」

杏子「は? なにが?」

ミチル「必殺技の名前!」


 名前なんてない、そう言おうとして杏子は考える。

 ……頭の中に、たしかに思い浮かぶものはあったのだ。


杏子「…………『ロッソファンタズマ』、かな?」

ミチル「『赤い幽霊』、だね! かっこいいよ!」


杏子(でも、マミさん以外にそんなこと言う人がいるなんてな)


ユウリ「お疲れさま、ちょっと身構えないで。すぐによくなるよ」

ミチル「ユウリは戦い以外でも怪我や病気に苦しむ人をこうやって治したりしてるの!」


 “ユウリ”と呼ばれた少女は大きい注射を構える。そこに魔力を込めると眩い光が溢れだした。


ユウリ「……怪我してたから。無理しすぎない方がいいよ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/01(木) 22:46:54.06 ID:/2ZlFam+0<>
杏子「ねえ、二人はなんであたしに協力してくれたんだ? ここはもうあんたたちの縄張りなのに」

ミチル「杏子がパンをくわえて結界に入るのを見たから」

杏子「?? ……それは見苦しいところを?」

ミチル「ううん、魔女を見つけてあせってても食べ物は粗末にしないんでしょ?」

ミチル「食べ物が好きなひとに悪い人はいないよ!」

杏子「なんだそりゃ……まあ協力してくれたのは嬉しいんだけどさ」

ミチル「あ、そうだ! あなたの名前を教えて。わたしはミチル。和紗ミチル」

杏子「佐倉杏子だ」



―――――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/02(金) 00:24:41.98 ID:AbMsnON40<> 風見野 翌日



QB「あすなろから来ていたユウリだけど、もういなくなったよ。“倒された”みたいなんだ」

杏子「……そうか」

杏子「まー人に喧嘩売り歩いてたんだから、やり返されても仕方ないわな」

杏子「それよりアンタが結局生きてたってことのほうが理解できないんだけど?」

QB「説明はしたはずだよ。あすみに殺されたけれど、僕には記憶を共有した仲間がたくさんいる。君たちにとっては差支えないだろう」

杏子「そう言われてもだな……」


 納得できなさそうな顔でキュゥべえを見ている。

 この前から、杏子の機嫌は悪かった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/02(金) 00:38:31.73 ID:AbMsnON40<>
QB「マミには会わないのかい?」

杏子「はっ? なんであいつのとこなんかに。それよりあたしは神名あすみのほうが気になるね」

杏子「そいつ、なんかいろいろと知ってそうじゃん? ユウリ倒したのもそいつが噛んでるんでしょ?」

QB「あすみもまた見滝原に戻ってきているよ。マミとはまだ口をきいていないようだけど……」

杏子「そのほうが都合がいい。なんか面白いコト考えてるならあたしも乗ってみちゃおうかなー」


 縄張りを奪う気でもあるようにニヤリと笑んでみせる。――けど、そんなことは本当は微塵も考えてはいなかった。


杏子「……何考えてんのかくらいはちょっと聞きに行ってもいいかもな」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/02(金) 00:48:03.15 ID:AbMsnON40<> -----少ないですがここまで。次回は4日(日)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/04(日) 22:46:35.01 ID:qN4BwScz0<> 来ないな
遅れるなら一言欲しいなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/04(日) 23:24:39.87 ID:UU49pwIc0<> ----ちょっと体調が優れないのでまたあした…次回は5日(月)20時くらいからの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/04(日) 23:26:58.12 ID:qN4BwScz0<> お大事に
無理はしないでくださいね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/05(月) 21:00:54.81 ID:PjUgp2Sd0<> ――――
――――


かずみ「ん〜〜っ……」


 朝、目を覚まして伸びをする。

 あれからは悪夢を見ることもなく寝られた。横を見るとマミがまだ寝ている。


かずみ(いつもよりも少し早い時間! 朝ごはん作りにいこう!)



――――


マミ「おはよう。今日も朝から豪華ね」

かずみ「うん。食べないと力でないからね」


 昨日は結局おなかすいちゃったし。


 ごはんを食べながら考える。もうわたしを狙う魔法少女はいないんだよね?

 あすなろにもわたしの帰る場所はなかった。いつかは行くべきなのかもしれないけど……。



1千歳家に行ってみる
2風見野に行ってみる
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/05(月) 21:05:03.41 ID:FiHCTpMmO<> あすみとのご飯を作るという約束を果たしにいく
材料があるかどうかわからないので食材は買っていく <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/05(月) 21:06:46.27 ID:V41hY1d+0<> ↑
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/05(月) 21:29:56.29 ID:FEJua24F0<> 何を作るかは安価で決めたいな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/05(月) 22:33:09.61 ID:PjUgp2Sd0<>

 まだ今はこの街を見て回りたいな。


かずみ「ごちそうさま! あーおいしかった!」

マミ「ごちそうさま。じゃあ、行ってくるわね」


 マミを送って、わたしも見滝原の街をぶらぶらと歩いてみる。

 ……今日も天気がいいな。鳥が鳴いてる。


 とくに目的なく歩いていて、ある家の前で足を止めた。


かずみ「あ……」


 『千歳』の表札。

 あすみがいた家だ。前まではホテルを転々としてたみたいだったけど、今どうしてるのかは知らない。


 ――マミがあすみの言葉に怒って撃とうとしたあの時。

 あれから会っていなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/05(月) 22:46:35.93 ID:PjUgp2Sd0<>

かずみ「……よし!」


 はりきって買い物に行く。

 目当ては食材だ。家があるならコンロだってあるはず!



 やっぱ、仲直りするにもおいしいものが一番だもんね。



作るもの
・自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/05(月) 22:58:42.72 ID:FiHCTpMmO<> 明太子スパゲティ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/05(月) 22:59:27.36 ID:FEJua24F0<> カルボナーラ、小海老のサラダ
デザートにマチェドニア <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/05(月) 23:02:01.83 ID:FiHCTpMmO<> マチェドニアってあんまり聞かない料理だな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/05(月) 23:41:25.09 ID:PjUgp2Sd0<>

 パスタと小エビと、フルーツもたくさん買っていこう。

 荷物を抱えてまた千歳の家に戻ってきた。


かずみ「ごめーんくださーい」


 チャイムを押す。すると、少しして扉が開いた。


あすみ「……何しにきたの? それ」

かずみ「料理だよ! 前作るって言ったよね? 仲直りにと思って!」


 あすみは表情を変えない。

 それから何も言わず行ってしまう素振りが見えて不安になった。


 あすみは後ろを向いて廊下の奥へと進もうとする。


あすみ「……入れば?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/06(火) 00:04:05.33 ID:wlagOggQ0<>

 一応通されたから、きょろきょろ見渡しながら入っていく。

 中にはあすみ一人みたいだった。


かずみ「あすみちゃんって、苗字は千歳だっけ?」

あすみ「違う」

かずみ「あ、そっか。前に来た時も『千歳さんはお留守』だって言ってたもんね」


 荷物を置いて食材を出していく。

 養子かなにか? それともまさか……


あすみ「ここの家の奴から奪ったのさ」


 あすみはわたしの考えを言い当てたように言う。


かずみ「……奪った?」

あすみ「うん。あんまり深入りしないほうがいーよー」


 ……それってこれ以上聞かないほうがいいってこと?



1あすみちゃんは普段料理とかするの?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/06(火) 00:19:14.30 ID:G/F3YRbGO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/06(火) 00:23:50.52 ID:mfpeNRbs0<> 1

……深入りするなって釘を刺されたから聞かないでおこう
今は料理を作ることに集中しなきゃ
今度こそあすみちゃんに美味しいって言わせてみせる! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/06(火) 00:29:14.91 ID:wlagOggQ0<>

かずみ(まあ、深入りするなって釘刺されちゃったしなぁ)

かずみ(今は料理を作ることに集中しなきゃ!今度こそあすみちゃんに美味しいって言わせてみせる!)


 キッチンに入っていく。

 綺麗で立派なキッチンだ。でもあんまり使われてないような。


かずみ「ちょっと冷蔵庫見るよー」


 開けてみると、変わったものはないけどそこそこ食材は入っていた。

 卵もあるしパスタはカルボナーラでいいかな。準備を始める。


かずみ「ねえ、あすみちゃんは普段料理とかするの?」

あすみ「簡単なものならね。外食なんて無駄に金かかるだけだよ」

かずみ「へえ。あすみちゃんって意外と……庶民的だね!」

あすみ「はあ?」

かずみ「あ、いや、家庭的っていみ!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/06(火) 00:33:16.87 ID:wlagOggQ0<> -----ここまで。次回は7日(水)20時くらいからの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/06(火) 00:35:04.12 ID:mfpeNRbs0<> 乙です

昼間だからゆまちゃんは学校かな?
ゆまちゃんにも食べてもらいたいところだけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/06(火) 00:40:51.80 ID:G/F3YRbGO<> 乙です
あすみんのコイバナがかずみにも炸裂したらどうなるか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/07(水) 21:56:17.93 ID:b90SXwyG0<>

 ――ほぼ同時に出来た料理から運んでいくと、テーブルに二人分の食事が並ぶ。

 あすみはその間も掃除したり、家事をしていたようだった。わたしのことは気にしてないみたいに。


あすみ「ん、できたの? なんだかシャレたの作ってるわね」

かずみ「カルボナーラと小エビのサラダ、それからデザートにマチェドニア。色合いもいいでしょ?」

あすみ「まー私には馴染みのない料理だけど。タオルから作ったサラダよりはいいんじゃない」

かずみ「あはは、あれは失敗だったから……」


 絶妙に半熟に火の通ったカルボナーラにフォークを絡める。

 うん、今日の料理もおいしい。そう自分で納得して、それからあすみの反応もうかがってみた。


あすみ「で、あんたの魔法って物を作り変えるとかでいいの?」

かずみ「たぶん。わたしがわかってる分にはそうかな……?」


 あすみが最初にしてきた話は魔法のことだった。

 ちょっと警戒されてる? こっちの正体を探ってるような――。

 そんなまなざしを感じた。



1堅苦しいのはなしにしようよ
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/07(水) 22:07:55.68 ID:diUiZsJwO<> とりあえず魔法少女の話はあとにしようよ
今日の料理はあすみちゃんの為に作ったんだから食べて食べて!
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/07(水) 22:15:26.31 ID:cOdn/8fb0<> ↑

追加であすみが美味しいとか悪くはないとか感想を洩らしたらまた作ると話す
食べたい料理のリクエストとかがないかも <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/07(水) 22:52:58.98 ID:b90SXwyG0<>

かずみ「とりあえず、魔法少女の話はあとにしようよ」

かずみ「今日の料理はあすみちゃんの為に作ったんだから食べて食べて!」

あすみ「食べるよもちろん。どんなものでも食べ物は無駄にはしないさ」


 そう言ってあすみもパスタを口に運ぶ。

 うまく掬えないままフォークを持ち上げて苦戦してるのが珍しい光景に見えた。こういうの、あんまり食べることないのかな?


かずみ「じゃああすみちゃんもホントは悪い人じゃないね」

かずみ「本当は美味しいって言ってほしかったけど! ねえ、どう?」

あすみ「食費浮いたのは助かったかもね」

かずみ「きびしい!」ガーン


 ……素直じゃない、んだよね?


 ごちそうさまして食事を終える。

 あすみも綺麗に食べていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/07(水) 23:09:12.55 ID:b90SXwyG0<>

あすみ「……あんたの考え当ててみよっか? マミと拗れたままなのがイヤだ、仲直りしてほしいってことでしょ。違う?」


 あすみはまたしてもエスパーみたいにわたしの考えを言い当てる。

 料理のことも前言ってたからっていうのはあるけど、本当の目的はそれだった。


かずみ「そ、そうだよっ! せっかく同じ縄張りにいてあのままなんて良くないよ」

あすみ「最低限ルールは守るよ。でも媚を売る気はないから。むしろ、今から顔つき合わせたほうが関係悪化するんじゃない?」

かずみ「媚とかじゃなくて、ちゃんと話せば……って」

かずみ「マミだってすごくいい人なんだよ! 魔女のこと知った時は落ち込んでたけど、今は乗り越えて頑張ってるし!」

あすみ「私も巴マミみたいな『いい人』って人種に見える?」


 あすみは薄く笑う。

 たしかにマミみたいなタイプじゃない。でもいい人とか悪い人とかって、そんなに表面的なものなのかな?

 杏子だって本当は家族のために契約してた。みんなを救おうと戦ってたのに。


かずみ「……キリカにも言ったけど、悪人は自分で悪人ですなんて言わないよ。言うのは謙遜か負い目がある人だけ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/07(水) 23:22:22.96 ID:b90SXwyG0<>

 あすみは呆れたようにため息を漏らした。


あすみ「アンタはもっと警戒心持ったほうがいいんじゃない。襲われてんのに」

あすみ「そんなんじゃあっという間に貞操失くしちゃうぞ」

かずみ「……て、ていそう?」

あすみ「でもね、私はあんたの素性のほうが気になる」


 そう言われるとわたしは反応する。

 わたしの素性――――わたしは全部知ってしまった。でもそれは簡単に話せることじゃない。


あすみ「少しは思い出したの? 自分のこと」

かずみ「う、ううん、なにも」

あすみ「利用されてくれるってんなら、精々私に利用されなよ。この時間ならたまに家にいるよ」

かずみ「!」


 それってまた来てもいいってこと?

 ……わたしだけでも関わることができれば少しはマミとの関係もよくできるかもしれない。



1またリベンジしにくるよ
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/07(水) 23:36:59.55 ID:cOdn/8fb0<> 1+あすみに質問

あすみちゃんが『美味しい』って言ってくれるまでリベンジするからね!
次はここの食材で何か作るから、リクエストがあれば考えておいて。

ところでさっき言ってたあすみちゃんに利用されるってどういう意味?
道具とか駒みたいな扱いはあんまりだと思うけど、何か困ってるんだったら手助けとかは出来るから!
私が出来る範囲でだけど・・・ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/07(水) 23:43:23.65 ID:diUiZsJwO<> ↑
あすみにキリカのことも聞く

さっきキリカの名前出したけど誰って言わなかったね
あすみちゃんはキリカのと知り合いなの? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/07(水) 23:47:36.31 ID:b90SXwyG0<> >>281については>>121であすみがキリカを倒してマミのもとに連れてきたことが話されています。
知った上であえてあすみにも聞く?それとも別の切り口にする?↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/07(水) 23:51:54.48 ID:diUiZsJwO<> あ、もうキリカのこと知ってたのか

じゃあ、キリカと何で戦ったのか、今も仲悪いのかとかを聞くにしてください
聞いてる最中に織莉子のことも口に出す感じで
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/07(水) 23:57:05.78 ID:cOdn/8fb0<> 織莉子のことは同じ縄張りに居る魔法少女だし口に出しても変ではない、かな?
あすみ編の流れだととっくに接触済みだけど、かずみは当然知らないよね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/08(木) 00:03:44.12 ID:yAXE9ibL0<>

 けどホテルで初めて目を覚ました時のことも思い出す。

 さすがにわたしだってそこまで危機感まったくないってわけじゃない!


かずみ「り、利用されるってどういう意味……?」

かずみ「道具とか駒みたいな扱いはあんまりだと思うけど、何か困ってるときの手助けとかなら! 私が出来る範囲でだけど……」

あすみ「わざわざ飯作りに来たのは利用されてると思わないの?」

かずみ「あ……なんだ、そういうことならいいの! わたしが来たかったから来たんだから!」


 恐る恐る聞いてみたけど、ホッとした。


あすみ「ま、必要な時は捨て駒にもするかもね」

かずみ「ちょっ!それはひどいよ!?」


 けど直後にあすみは恐ろしいことを言う。

 ……まあでも、本気なら堂々と捨て駒にしてやるなんて言わないだろうし。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/08(木) 00:19:46.90 ID:yAXE9ibL0<>

かずみ「……料理ならあすみちゃんが『美味しい』って言ってくれるまでリベンジするから!」

あすみ「美味しいって言ったら来なくなるなら言わないでおくけど」

かずみ「う、美味しいって言ってくれても作りに行くよ! 次はここの食材で何か作るから、リクエストがあれば考えておいて」


 あすみも料理しないわけじゃないみたいだから、冷蔵庫には何か料理を作れるくらいの食材はあるだろう。

 また買って行って留守だったらもったいない。

 むしろ、今日見てみたらその食材のバランスの良さに驚いたほどだった。


 ――そろそろマミの学校の終わる時間だ。

 席を立ちあがって、帰り際に話を振ってみる。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/08(木) 00:31:12.16 ID:9fgfa2D/0<> そういえばかずみってイタリアン以外の料理って作れたっけ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/08(木) 00:32:24.84 ID:yAXE9ibL0<>

かずみ「あすみちゃんは他の魔法少女とはどうなの? キリカとは戦ったんだよね。マミから聞いた」

かずみ「……キリカはなんで襲ってきたの? 今も仲は悪いの?」

あすみ「あー、あの猫? なんか不満あったんだって」

あすみ「あの程度の奴まともに敵視するほどじゃないよ。ただの新人」


かずみ(ね、猫?)


 あすみは軽くあしらうように言った。

 ……少なくとも、あすみはキリカを嫌ってるわけじゃなさそうかな。


 杏子は他の魔法少女を襲ってるって言ってた。キリカも『同じようなもの』って。

 杏子はグリーフシードのためらしかった。でも、キリカはやっぱり違ったんだ。


かずみ(不満…………この前の契約の話かな)


かずみ「じゃ、じゃあ織莉子とは?」

あすみ「あ、美国のことももう知ってんだ? 大した関わりないよ。今のところはね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/08(木) 00:36:54.70 ID:9fgfa2D/0<> やっぱり猫扱いか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/08(木) 00:39:49.15 ID:yAXE9ibL0<>

 しかし、あすみはそう言った後どこか考えるように間を空けた。


あすみ「あんな賊猫より気を付けた方がいい奴なんて他にいるんじゃない? 大体、アンタなんであの痴女に拉致られて襲われたかわかってんの?」

かずみ「ユウリのこと? それは……そういえば。わかんないや」

あすみ「だから素性が気になるって言ってるの。あんた自体にはなんとも思ってないけど、あんたがなんか厄介運んできやしないかって」

あすみ「忠告。もしかしたら何かまた襲ってくる――――かもよ?」



 そういえば、わたしの本当の正体っていうのがショックで考えたことがなかった。

 私を浚ったユウリが記憶を奪ったんだってずっと思ってた。そうじゃなかったなら、一体ユウリの目的はなんだったんだろう?


 …………そんな気になる助言を聞いて、『千歳家』を後にした。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/08(木) 00:41:15.61 ID:yAXE9ibL0<> -----ここまで。次回は9日(金)20時くらいからの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/08(木) 00:44:53.25 ID:9fgfa2D/0<> 乙です

そろそろあすなろに行かないとマズイかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/09(金) 22:41:29.97 ID:jODbYSNw0<> うーんこの20時から開始のあてにならなさ…(もうちょっとだけおまちください) <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/09(金) 23:06:41.73 ID:jODbYSNw0<>

あすみ「――――だからぁ、なんっでここにくんの。みんなしてあすみといえば千歳の家って情報漏れすぎじゃない?」


 それから少し後の同じくした場所。

 あすみの前には杏子の姿が立っていた。


杏子「キュゥべえの野郎から聞いたんでな。結果もビンゴだったってわけだ」

あすみ「あんまりホイホイ近づかれると困るんだよね。これからゆっくりしようと思ったところなのにプライベートもありゃしない」

杏子「で、なんで他人の家にいんの? ここに引っ越すために見滝原来たってわけじゃないんだろ」

杏子「誰かから奪ったか?」

あすみ「……」


 あすみは意味ありげに沈黙する。

 『読ませない表情』。それはいつものうすにやけたと評される顔だった。


あすみ「そーだよ? ここの家の奴ブッ殺して奪ったの」

あすみ「巴マミに告げ口とかはしないでほしいなっ。貴女もアイツに媚売るようなタイプじゃないでしょう?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/09(金) 23:36:39.34 ID:jODbYSNw0<>

 悪びれずに言ってのけるあすみに杏子はやや引いていた。

 さすがに同じように扱われるのは抵抗があった。杏子は積極的に、それも無関係な人間を殺したりしたことはない。

 冗談か腹を探ってるのかとも思ったが、背景がどうあれ言葉通りに受け取ったほうが納得できる部分は多かった。


杏子「そーか、来て早々にダイタンなことすんだな?」

杏子「まー告げ口はしないでやるよ。あたしも一々風紀委員みたいにねちねち報告したりする義理はないしさ」

あすみ「そのほうがいいよ。私は今の生活を気に入ってるんだ。乱されないためならなんだってする」


 あすみは瞬時に威圧感を感じさせるオーラを纏う。今度は脅しつけるかのような強い意思を含んだ言葉を放った。

 ……これは牽制だ。杏子はそれ以上踏み込むことはせず、本来しようと思っていた話に筋を戻す。


杏子「あたしは今日は挨拶に来たんだよ。どうやらアンタ、ベテランのあたしやマミより色んなこと知ってるみたいじゃん?」

杏子「片付いたらしいが、見滝原で何があったのかってのもちょっとだけ聞いておきたいと思ってな」

あすみ「そう。突然の訪問は困るけど、挨拶とは殊勝な心がけね」



 あすみは杏子のことを中に招き入れようとはしない。終始、話は玄関先で行われた。

 ――杏子が帰ろうとしたその時、小さい子供の声と姿をその奥に見たような気がした。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/10(土) 00:03:20.33 ID:rWRFqgQu0<>

 かずみと杏子、続けやってきた二人の訪問者が去った後、あすみは玄関の扉の内側で思案していた。

 そして、あることを決める。


あすみ(…………思ったよりこの場所が魔法少女に明らかになってしまった)

あすみ(インキュベーターにもバレてる以上もう少しも関わらせないことは難しいのかもね)

あすみ(キリカが来た後はゴタゴタ続きで機会がなかったけど、そろそろ話してやってもいいかな、一度くらいは)


あすみ(――――――乗ってやるよ。美国、アンタの提案に)



――――
――――


 杏子はキュゥべえからあすみの居場所を聞いた後、一通り街の中を見回してからそこに来ていた。

 ……千歳家からの帰り道、その中に違和感のある姿を発見していたことを思い出す。


杏子(“あいつ”、誰と話してたんだ?)


 人通りの少ない広い通り、そこは一見見つかりづらい場所だが高台から見下ろせば十分に目立った。

 そこに二人の人影が立っていた。


 それは白い魔法少女と黒い魔法少女の姿。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/10(土) 00:29:34.26 ID:rWRFqgQu0<> -----短いですがキリいいのでここまで。次回は11日(日)夕方からの予定です。 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/11(日) 18:43:56.20 ID:BRGFOukH0<> ――――
土手



かずみ「――――えいっ!」


 振りかざした杖で宙を貫く。

 マミの家に帰ってからみんなでここに来て訓練をはじめると、準備運動がてら基本の素振りをやってみていた。


織莉子「小さな体とは思えない力強さね」

かずみ「へへん、要は身体の使い方だよ! マミに教わったんだ! これでも瞬発力には自信があるからね!」


 わたしにとっては織莉子と一緒の初めての訓練だ。

 織莉子は身体を動かした素振りなどはしていない。その代わり、心を落ち着かせるようにゆっくりとストレッチをしていた。

 課題はやっぱり魔力のコントロールなのかな? マミはわたしたちを微笑んで見守っている。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/11(日) 19:06:12.97 ID:BRGFOukH0<>

マミ「美国さんもさっそく昨日の続きする? 訓練によさそうなことを考えてみたのよ」

マミ「私が銃を扱いはじめた時していた訓練なんだけど、私の銃って一度に一発しか撃てないでしょ? 攻撃を厚くするには銃の技術以外にも魔力でのコントロールが……――」

織莉子「まあ、ためになりますわ。本当にマミさんは努力家なのね」


 ……マミと織莉子はいくらか打ち解けた雰囲気だ。

 織莉子はキリカやあすみ、杏子みたいに目に見えて悪い事もしてないし、わたしたちのやり方を肯定してついてきてくれるから話しやすい。

 この前から一緒に行動するメンバーは決まってきていた。


かずみ(……そういえば、さっきはせっかく来て空気を悪くしたくなかったから聞けなかったけど、『奪った』ってどういうことだろう)

かずみ(やっぱり、言葉通りのこと?)

かずみ(あすみのことも誰かに相談したほうがいいんだろうけど、でもマミに話したりしたら余計に悪化するだろうし)


 杏子やキリカみたいな事情がある人はいる。わたしは悪いことしてるからって簡単に切り捨てたくはなかった。

 悪いことしてるなら説得してやめてもらうのが一番だ。でも取り返しつかないことしてたら?


 訓練に一区切りつけて、気付いたら織莉子のことを見上げていた。

 織莉子がそんなわたしに気づく。


織莉子「かずみさんもコントロールやる? 動いてばかりじゃ疲れたでしょう」

かずみ「あっ、うん。それはいいんだけど……ちょっとだけ後で話せないかな? お茶会のときでいいから」

織莉子「……?」


 少し不思議そうな顔をしたけど、またいつもみたいに穏やかに頷いた。


織莉子「ええ、構いませんわ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/11(日) 20:07:06.81 ID:BRGFOukH0<>

 ――――それから今日の訓練を終えるとマミの家でお茶会を開く。

 いつも紅茶の用意はマミがやってくれている。

 テーブルの前に二人で腰掛け、マミがお茶を淹れに行っている間に織莉子に訓練中に思い浮かんだ話をした。



かずみ「……あのね、織莉子。相談なんだけど」

織莉子「相談? 私になんて珍しいけど、もしかしてマミさんには話せないこと?」

かずみ「うん、まあ……マミと仲の悪い人のことで、ちょっと他の人の意見を聞いてみたくて」


 そう言うと織莉子もその相談を自分にする理由はわかってくれたみたいだった。

 少し真剣な表情でわたしを見ている。


かずみ「織莉子はわたしたち以外の魔法少女ってどのくらい知ってる? キリカとは会ってたよね」

織莉子「……ええ。キリカさんとは魔女を狩っている最中に偶然知り合ってね」

織莉子「他の魔法少女のことは少しだけ聞いたことはあるけど話したことはないわ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/11(日) 20:29:03.29 ID:BRGFOukH0<>
かずみ「わたしとマミは他にも知ってる人が居るんだ。でもその子は誰にも頼らずに一人で生きてて、生きるために悪いことしてるの」

かずみ「その子にはこの街に帰る家もなくて、でも今日聞いたら『奪った』、って言ってた。どういう意味だと思う?」

織莉子「それは……言葉通りに考えるなら住んでいる人を力で除いたのでしょうね。その人たちが無事ならまだマシ。褒められた行動ではないでしょう」

かずみ「やっぱりそっかぁ……」

織莉子「かずみさんはその子のことをどう思ってるの? そんな子を庇いたいの?」

かずみ「悪いことは許せないよ。でも同じ街に居るんだよ? だったらわたしたちだけじゃなくて、本当はみんなで仲間になりたいなって」

かずみ「でも……――ねえ、織莉子は悪いことしてる魔法少女に対してどうしたらいいと思う?」

かずみ「マミはこの縄張りを背負ってるんでしょ? このままだとまた争いが起きそうでそれはイヤなんだ」


 わたしが訴えると、織莉子は考える表情をする。


織莉子「マミさんはこの街を良くしたいって思っている。長い事一人でやってきたなら、それを見知らぬ他人に乱されるのは許せないでしょうね」

織莉子「どんな理由があったって受け入れられるかは別だわ」

かずみ「じゃあ仲直りできないのかな?」

織莉子「それはどうでしょうね」

織莉子「一致団結しなければいけない時が来れば、自然とそうせざるを得なくなるかもしれない」

かずみ「それって、どういう……」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/11(日) 20:42:02.17 ID:BRGFOukH0<>
マミ「紅茶、できたわよー」

かずみ「!」


 一致団結しなきゃいけない時?

 織莉子の言葉を疑問に思ったけど、それを聞く前にティーセットを持ったマミがやってくる。


織莉子「いい香り」

かずみ「うん、そうだね」

マミ「この前とは違う茶葉にしてみたの。わかるかしら?」

織莉子「ええ。いつものより甘い香りね。ミルクティにしても合いそう」

マミ「いいわね、今度やってみようかしら」


かずみ(甘い香り? わたしにはあんまりわかんないけど――)


 砂糖入れてないのに。

 そんなことを思いながら紅茶に砂糖を足していく。マミと織莉子は紅茶談義に花を咲かせていた。


 今日のおやつであるクッキーをお皿からつまむ。

 手作りもいいけどお気に入りのお店を見つけるのも楽しい。帰りにみんなで選んだものだった。



1紅茶詳しいんだね?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/11(日) 20:53:55.03 ID:z2Onz+Fk0<> 1
安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/11(日) 21:28:46.61 ID:lJYkbHlqO<> ↑
追加で織莉子にあすなろの事で何か知ってる事があるか聞いてみる


ねぇ、織莉子はあすなろに行ったことある?
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/11(日) 23:51:50.23 ID:lJYkbHlqO<> スレ主寝落ち?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/12(月) 00:07:37.12 ID:BJnHGkZ50<>
かずみ「紅茶詳しいんだね?」


 対してわたしは、美味しいものは好きだけど、そこまで紅茶に詳しいわけでもこだわりがあるわけでもなかった。

 踏み込んだ話をされるとそこは完敗だって思っちゃう。


織莉子「私は触れる機会も多かったから知識があるってだけね。マミさんのほうが生き生きと語っているわよ?」


 そう言われてマミを見ると、たしかにマミは楽しそうに笑っていた。

 ……じゃあ織莉子は違うの? マミとあんなに話してたのに?


マミ「そうかしら。でも私は美国さんと話せてよかったわ」

織莉子「……そう言ってくれるのなら嬉しいわね」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/12(月) 00:29:36.71 ID:BJnHGkZ50<>

かずみ「ねぇ、織莉子はあすなろに行ったことある?」

織莉子「あすなろ? そこまで離れているわけじゃありませんし、たまに行くことはありますが」

かずみ「今度マミと美味しいもの食べに一緒に行こうって話してるんだ! よかったら織莉子もどうかなって思って」

織莉子「お誘いは嬉しいけれど……なぜあすなろまで? かずみさんの縄張りのことで何か?」


 そういえば『あすなろの学校に通ってた』って話はしてたっけ。嘘ついちゃったけど……。

 関係ない人まで私の事情に巻き込むわけじゃない。その前に、ただマミや織莉子とも楽しい思い出を作りたかったってだけだった。

 でも、あすみに言われたことをはっと思い出す。――もしまだ私を狙う魔法少女がいたら?


織莉子「……何かあったの? あすなろの街で」


 わたしの考えてることが顔に出てたのか、いつしか織莉子のほうが真剣な顔してた。


かずみ「ううん、でもやっぱり何があるかわからないかも」

かずみ「織莉子もなにかあすなろのことで聞いたことがあったら教えてほしいな。行くのはもっと先でもかまわないから――――」


 わたしのせいで二人を危ない目に遭わせるわけにはいかないからそう答える。

 けどそれは、二人の胸に別の不安も生んでいた。


――――


織莉子(無理にあの街に攻め込ませるのはどうやら本格的に失敗策だったようね)

織莉子(あすなろからは――――どのみち撤退せざるを得なかった)


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/12(月) 00:34:55.33 ID:BJnHGkZ50<>

織莉子「なぜこんなところに居るの。私の命令はどうなったの?」

織莉子「頼んだでしょう? 貴女が狙うのはプレイアデス聖団よ」



 放課後、学校から帰ろうとするキリカを織莉子が呼び止めていた。

 織莉子はいつかと同じように冷たく命令を下すが、とっくに見破られた嘘を目の前にキリカは白けた目を送っていた。



キリカ「…………あんた誰?」

織莉子「アレ、馬鹿そーな駒だと思ってたけどさすがに気づいてたか」

織莉子「おっ死ぬ前に『ユウリ』の魔法をちょっと拝借。代わりにあいつから駒を奪ってまたプレイアデスへ嫌がらせしてやろうかと思ったのに」


 バレたとわかると目の前の織莉子は大げさにポーズをつけて言う。

 コミカルにくるっと回って舌を出す、本人ならば絶対にしないだろう言動。


 それもキリカは更に白けた思いで見ているだけだった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/12(月) 00:44:18.23 ID:BJnHGkZ50<>

キリカ「誰だか知らないけど、その姿でその台詞は違和感しかないよ?」

織莉子「お前なんかに本当の姿見せてやるかよ! あ、こいつお嬢様学校とかに通ってるんだっけ? おまけに渦中の汚職議員の残された娘とか」

織莉子「この姿で恥っずかしいコトでもしたらすっごい話題になるかもね。今度裸で街でも出歩いてみようかな。しょうもない万引きでもやらかすのもグッド」


 偽物はケラケラと笑う。しかし、一瞬だけシリアスに表情を暗くすると冷たくぼそっと呟いた。


織莉子「――…………いや、私に本当の姿なんてないんだな」


 キリカにはその意味はわからない。

 でも、一つだけわかっていることがあった。


キリカ「……どうぞご勝手に。織莉子が困ろうが私の知ったことじゃないし」

キリカ「見た目のギャップはひどいし何言ってるのかわかんないけど、でもやっぱアンタすごく似てるよ」

キリカ「私はもうあいつの駒でもなくなったから」



 そう言ってキリカは意に介さず去っていく。……偽物はその背をつまらなさそうに睨んでいた。




―8日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・ヘヴィメタ[0/100]
・お菓子[5/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [★格闘Lv2→4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/12(月) 00:46:15.32 ID:BJnHGkZ50<> -------ここまで。>>305 …はい、はじめたばっかりだってのに途中で寝落ちてました。
次回は13日(火)20時くらいからの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/13(火) 21:16:19.41 ID:T2EJE2kZ0<> ――――――



 放課後の時間になるとわたしとマミはいつも通りに活動を始める。

 その内容は大体が訓練かパトロールかだ。今日は織莉子が遅れて来るらしく、先にパトロールをしていたけれど……。


かずみ「思ったより魔女って見つからないんだね……」

マミ「そうね。最近は魔法少女も増えたし仕方ないのかも。でも使い魔は倒したのだからパトロールは順調かしらね」


 本当は、わたしたちもあまり余裕がないからグリーフシードがほしいとは思っていた。

 けどこういうのは運だし、なにより使い魔をほっとくわけにはいかない。


 決めていたルートを一通り回ってから訓練場所へと向かっていく。


 ――そこには思いもしなかった姿があった。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/13(火) 21:30:03.87 ID:S75y6X2QO<> 誰だ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/13(火) 21:35:40.19 ID:T2EJE2kZ0<>

あすみ「おひさしぶり、マミ先輩♪」


 織莉子の隣にはあすみが立っていた。

 驚きを隠せないわたしたちに対して、あすみはいたずらっぽく笑っている。


 織莉子は『大丈夫』と言うように穏やかにこっちを見ている。

 ……相談してからたった一日、まさかこの場に連れてきてくれるとは思ってなかった。


マミ「……神名さん、もしかして美国さんに何か言ったの?」

織莉子「いえ、ちょうどあすみさんが私に挨拶がしたいと言ってくれただけです。誘ってみたのは私」

マミ「でもその子は私達とは……」

織莉子「思想や行動が反するのはわかりますが、あくまで敵意は抱いていないようですわよ?」

織莉子「でしたら近くに住む者同士、いざという時もあるかもしれませんし、交流を深めておくことは悪いことではないのではないかしら」

マミ「でも……」

あすみ「お邪魔虫なら帰ろうか?」


 そう言われても、マミはやっぱり納得しがたいところはあるようだ。

 そんな態度を見かねてか、あすみはさっきの作ったふざけた顔をやめて冷めた声で言った。



1あすみによろしくね、とちょっと強引にも挨拶
2口を挟まないで見守る
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/13(火) 21:58:42.30 ID:TMCdTDd10<> 1+マミを説得

マミの気持ちもわかるけど、せっかく来てくれたんだから一緒に訓練しようよ
あすみちゃんも魔法少女としては筋を通すみたいだから、こっちからも歩み寄ってみなきゃ
想いは口にして行動しないと実現しないんだからさ
食べ物が好きな人に悪い人はいないんだし、杏子だって口ではあんなこと言ってるけど根っからの悪い人じゃないよ!
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/13(火) 22:02:20.20 ID:S75y6X2QO<> ↑
追加で織莉子にキリカは呼ばないのかと話す
織莉子が知らないと嘘を言ったら疑念を持つ

キリカは誘わなかったの?
みんなで訓練するならキリカも呼ぼうよ!
知り合いなら連絡とれないのかな?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/13(火) 23:11:03.86 ID:T2EJE2kZ0<>

かずみ「よろしくね、あすみちゃん!」


 前に出て強引に手を取って挨拶する。


かずみ「……マミの気持ちもわかるけど、せっかく来てくれたんだから一緒に訓練しようよ」

かずみ「あすみちゃんも魔法少女としては筋を通すみたいだから、こっちからも歩み寄ってみなきゃ。マミは見滝原の管理者、なんでしょ?」

マミ「そうだけど……本当に私たちとやる気があるの?」

あすみ「何よ、せっかく来てやったのに信じられないってわけ?」

マミ「また妙なことをすればいつでも行動を禁止することは出来るのよ。大体、私はあなたを信用してない」

あすみ「その妙なこと、あんたの勘違いだったけどね?」


 あすみもあすみで煽るようなことを言うから心配になる。


織莉子「まあまあ、あまり閉鎖的にしても仕方ないじゃありませんか」

マミ「美国さんとかずみさんがそう言うなら……」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/13(火) 23:23:40.51 ID:T2EJE2kZ0<>

 マミも渋々ながらも受け入れてくれて、みんなで訓練に移っていく。

 相変わらずマミはあすみのことをたまに疑うような目で見ているのがわかる。


 三人だけの時と違って、一人増えたこの場にはどこか警戒するような雰囲気が漂っていた。

 ――組手の最後、鎖に絡め取られてしりもちをつく。


かずみ「いててっ」

マミ「かずみさん、大丈夫?」

あすみ「転んだだけでしょ? まだまだだよ」

かずみ「マミは心配しすぎだよ。あすみちゃん結構マジメに付き合ってくれてるし、なによりわたしとしては接近戦の仲間がいるのはすごくうれしいから」

かずみ「訓練でちゃんと格闘の相手をしてくれたことなんて……――」


 そう言いかけて思い出した。この空気、前にも少し覚えがあったんだ。

 ……キリカが訓練に来てくれた時。あの時はたしか、キリカのほうが遠慮して来なくなっちゃったんだ。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/13(火) 23:55:29.17 ID:T2EJE2kZ0<>

かずみ「ねえ、あすみちゃん呼ぶならキリカもまた呼んでみない?」

かずみ「そうだ、織莉子はキリカとは仲良いの? 連絡先とか知ってたり……」

織莉子「いいえ……私も仲がいいとは」

かずみ「そっか……」


 織莉子にキリカのことを聞いてみると、何故か少し言いづらそうにした。

 もしかして喧嘩でもした?


かずみ「……よし、あすみちゃん、まだまだ負けないから!」

あすみ「はいはい!」


 話してるうちに完全に疲れが回復した。

 立ち上がって杖を構えてあすみと向き合う。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/13(火) 23:59:40.59 ID:T2EJE2kZ0<>

かずみ「ねえ、あすみちゃん呼ぶならキリカもまた呼んでみない?」

かずみ「そうだ、織莉子はキリカとは仲良いの? 連絡先とか知ってたり……」

織莉子「いいえ……私も仲がいいとは」

かずみ「そっか……」


 織莉子にキリカのことを聞いてみると、何故か少し言いづらそうにした。

 もしかして喧嘩でもした?


かずみ「……よし、あすみちゃん、まだまだ負けないから!」

あすみ「はいはい!」


 話してるうちに完全に疲れが回復した。

 立ち上がって杖を構えてあすみと向き合う。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/14(水) 00:00:26.65 ID:0JEPbwqp0<> ----すまん、コピペミス! <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/14(水) 00:01:12.90 ID:0JEPbwqp0<>

 その戦いの様子をマミが眺めていた。


マミ(……魔女との戦いや普段の口ぶりからベテランかと思ったけど、意外とかずみさんと互角に見えるわね)

マミ(出会った頃からかずみさんがどんどん成長しているっていうのもあるけど)


かずみ「えいっ! どうだっ!」

あすみ「……ふーん、意外とやるじゃない」


マミ(手を抜いているの? それとも――)


織莉子「マミさん、少しこっちに付き合ってくれる?」

マミ「え、ええ!」


――――
―――― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/14(水) 00:06:52.38 ID:VbLD6wcM0<> 悪意のない相手との訓練とかだと呪いも発動しないからね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/14(水) 00:08:16.50 ID:0JEPbwqp0<>

 何度か接近戦をやって、織莉子のほうを覗いてみて、訓練の時間を過ごしていく。

 マミは……やっぱり考えの合わない人とやるのはイヤだったのかな?

 でも避けてたら溝が広がっていっちゃう。あすみはせっかく応じてくれたんだし。



織莉子「今日はお茶会は?」

マミ「ごめんなさい、そこまではさすがに……」

あすみ「いいよー、早く帰りたいしメンドクサイ」


かずみ(……さすがにキリカや杏子みたいに甘いものでは釣れないか)



1また来るよね?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/14(水) 00:14:50.63 ID:VbLD6wcM0<> 1+あすみに何か食べたいものがあるか聞く

じゃあ、帰り道に何か簡単に食べられるもの買おうよ!
キリカはたい焼きで喜んでくれてたし、あすみちゃんは何が食べたい? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/14(水) 00:19:29.79 ID:9FuFTqp/O<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/14(水) 00:32:36.74 ID:0JEPbwqp0<> ---------ここまで
次回は15日(木)20時くらいからの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 20:28:14.75 ID:06tyiiIr0<>

 でも甘いものがないことで一番ガッカリしてたのはわたしだった。

 どっちかっていうと釣るより釣られるほうだよね、わたし。わたしだってご飯の前に甘いもの食べたい。


かずみ「お茶会ないの?」

マミ「かずみさんは家に帰ったら一息つくついでにお菓子も用意するわ」

かずみ「ホント!? じゃあ帰り道に何か簡単に食べられるもの買おうよ!」

マミ「ええ」


 マミが笑いかける。やっとマミが楽しそうにしたことに安心する。

 それから、あすみのほうも見てみた。


かずみ「あ、えーと……あすみちゃんも何か食べたいものある?」

あすみ「お菓子ィ? そんな無駄遣いするなら食費に回すよ」

かずみ「生活困ってるの?」

あすみ「は? そんなわけないでしょ。興味がないんだよ」

あすみ「いざとなったら手に入れる手段も奪う手段もいくらでもあるでしょ? アンタなら知ってると思うけど」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 20:57:47.67 ID:06tyiiIr0<>
かずみ「!」

織莉子「あすみさん……」


 意地の悪い言い方にマミは厳しい顔つきであすみを見る。

 少し困ったように織莉子がなだめようとした。


あすみ「あははっ、ごめんごめーん! マミ先輩、怖いカオでこっち見ないで?」

あすみ「冗談だよ冗談? そんなことしてないって。私ってばすっごくいい子なんだからぁ」

マミ「……その発言が本当とは思えないのだけどね」

あすみ「ま、とにかくこれからよろしくやってくんだからさ」


 あすみはにこっと笑って手を差し出す。

 マミが手を取らないのを見るとわたしのほうに手を伸ばしてきた。


かずみ「仕方ないのかもしれないけど……悪いことしてたらそれは許せないと思うよ」

かずみ「そういうのはやっぱりやめてほしいな……」


 わたしはあすみと握手しながらそう言った。わたしの言葉がどれだけ届いてくれるのかはわからない。

 あすみは変わらず笑みを浮かべている。――その笑顔は嘲りの意味でしかないのか。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 21:32:44.48 ID:06tyiiIr0<>
あすみ「……あんただって余裕なかったくせに、良いカモ見つけられてよかったね?」

かずみ「カモだなんてそんな!」

あすみ「だってそれ、アンタの金じゃないでしょ?」

かずみ「! だけど、でもそんなつもりじゃ……」

かずみ「ごめんねマミ、迷惑じゃない?」


 負担をかけてるなんて思ってなくてハッとした。

 わたしはいつのまにか頼ることが当たり前になってたんだ――。


マミ「かずみさんのことは、私がそうしたいからそうしているの」

マミ「あなたとは違うわ」


 でも、わたしが謝るとマミはきっぱりと言い放った。

 あすみもそれ以上言うことはなかった。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 21:40:32.99 ID:06tyiiIr0<>



織莉子「――――では、お気をつけて」

かずみ「あすみちゃんもまた来るんだよね?」

あすみ「うん、またね〜」


 訓練を終わりにして土手を離れると、それぞれの家路へと帰っていった。

 わたしとマミだけがまだ土手に残っている。


 マミはまだどっか考えたような表情だ。


かずみ「帰ろう。美味しいもの食べたらきっと元気出るよ」

マミ「ええ、そうね……」



1今日の訓練はどうだった?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/15(木) 22:01:21.05 ID:GV/34kcu0<> 1+買い物に駅前の屋台街に行ってみる

今日の訓練だけど私とあすみちゃんの方を結構見てたよね?
マミが上手く教えてくれたから結構接近戦も強くなってきたと思うんだけど、何か気づいたことでもあるの?

あ、そうだ
買い物は駅前の屋台の方に行ってみない? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/15(木) 22:07:02.98 ID:fBO2zmJEO<> ↑

屋台で杏子とキリカが食い物がらみでいがみ合ってるところに遭遇したらどうなるかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/15(木) 22:12:26.18 ID:GV/34kcu0<> あすみ編では仲良かった二人が、かずみ編では最悪の出会いをしてるからなぁ・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 22:39:12.13 ID:06tyiiIr0<>
かずみ「今日の訓練はどうだった?」

マミ「……魔法少女の付き合いっていうのはあっても、やっぱり『同じ』仲間は私達以外いないのかなって」

マミ「そうまでして付き合う必要があるのかも私にはわからなくなっちゃった」

マミ「キュゥべえのことがわかる前だけど、一人はもう縄張りから追い出してるんだものね」

かずみ「キリカのことはずっとそのままなの?」

マミ「…………」


 マミは答えなかった。マミの受け入れがたいって気持ちもわかる。やっぱり友達同士って雰囲気は変わっちゃうから。

 あせっても答えは出ないのかも。代わりに話を少しだけ変えていく。


かずみ「ねえ、今日のわたしの戦いぶりは? マミこっちのほうも見てたよね」

マミ「ええ、そうね。かずみさんはとても上達していると思う」

かずみ「マミの教え方が上手だからだよ。ほかは気になったことはある?」

マミ「あとは、神名あすみのほうね」

マミ「こういう言い方をするとアレだけど……――――思ったより、強くないのかなって」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 22:53:59.04 ID:06tyiiIr0<>
かずみ「強くない?」

マミ「別に、だからって油断はしないわ。あの子は私の知らないことを知っていた」

かずみ「……手加減してくれてたのかな?」

マミ「本気を出さなかった可能性はある。少し違和感を感じたのよ」


 マミの感じた違和感。その正体についてはわからない。

 でも、わたしはこれまでにあすみの力の一片を垣間見たから、格闘だけで強さは測れないのはわかる。


 少し訓練のことを話してから、わたしたちもやっと荷物を持って人の居る道へと出た。


マミ「さっきのことだけど、本当に気にしなくていいのよ? かずみさんはいっぱい私を助けてくれてるから」

かずみ「そうかな、ありがとう」

マミ「ええ。それに美味しい食材をさらに美味しくしてくれるんだもの! お菓子くらいねだったってバチは当たらないわ。私も食べたいしね」

かずみ「じゃあ、買い物は駅前の屋台の方に行ってみない? わたし気になってたんだ!」

マミ「いいわね。行きましょうか」


 行く場所が決まる。見滝原で一番賑やかな場所。見滝原の駅前だ。

 人の行き交うその場所では、ちょうど空も暗くなり始めてみんなおなかがすく頃合いのようで、

 いたるところから食欲をそそる匂いが漂ってきていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 23:36:13.59 ID:06tyiiIr0<>
かずみ「クレープ!」

かずみ「チュロス!」

かずみ「唐揚げ! たこ焼き!」


 甘いものからお惣菜まであらゆるものが空腹を刺激する。

 どれもおいしそうに見えてよだれが出そうになる。


マミ「どれにする? 紅茶に合うお菓子なら甘いものだけど、欲しいなら他のも買ってもいいのよ」

かずみ「わぁ、悩むなあー、悩むなあー!」

マミ「どれもおいしそうね」


 駅前や繁華街の大きな通りを見て回っていると、人混みの中植え込みの隅にぽつんと座り込む姿が目につく。

 大きなアイスのカップを膝に抱えていた。


かずみ「それ、スペシャルだね!」

キリカ「わっ……!」


 知ってる人だって気づいて覗きこんだ。

 すると、その人はこっちをカップを守るようにしてこっちを見る。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/15(木) 23:42:38.72 ID:06tyiiIr0<>

キリカ「あげないぞ!」

かずみ「えっ、と、とらないよ?」

キリカ「昨日はあの犬女にも取られそうになったんだから」

かずみ「いぬ?」


 そう言われて思い浮かべてみる。

 ……思い浮かぶのはキリカと杏子が来た時のお茶会のことと、この前あすみから聞いたキリカの話だった。


かずみ(あすみちゃんには猫って言われてたけどね……)


マミ「ここで何をしてるの?」

キリカ「は? なんでもいいでしょ」

かずみ「食べてるんだよね? わたしたちも食べに来たの!」

キリカ「そうだよ。見たらわかるじゃん」


1今日の訓練について話す
2杏子もこっちに来てるの?
3自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/16(金) 00:14:11.92 ID:v9RRdqNe0<> -------ここまで
次回は18日(日)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/18(日) 09:10:48.12 ID:LD/W7o220<> キリカにこの間のお礼を返す+2、みんな食べ終わって分かれる前に1
かずみが屋台で何を買って食べるかは安価で決めたいですね

あ、キリカ。この間はとっておきのお菓子をくれたよね?
お返しといっては何だけど、何か食べたいのある? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/18(日) 10:17:39.06 ID:KMsN8anxO<> ↑
追加でキリカにまた一緒に訓練しようと誘う
織莉子の名前が出てキリカが嫌がったら理由を聞く <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 19:01:06.36 ID:AGtZuOov0<>
かずみ「杏子もこっちに来てるの?」

キリカ「さあ、私も詳しいことは知らないけど」


 杏子の話が出るとわたしの隣に立つマミも興味を示すように反応する。

 難しい表情で考え込んでいた。


マミ「佐倉さん……なにをしにきたのかしら。まさか縄張りを荒らす気じゃあ」

かずみ「こ、こっちの人と仲良くしたかっただけかもしれないよ?」

キリカ「仲良くしたい人にタカろうとするの?」

マミ「どうかしらね。半分は当たっているかもしれないわよ。『誰か』と結託してこっちに攻め入る仲間を増やそうとした、とか」

キリカ「そんなつもりないよ。私があいつと手を組むわけないじゃん」

マミ「あなたが受け入れるかは置いといての話よ」


 キリカはかちんときたらしく、マミの言葉に言い返した。


 この前別れてから、マミと杏子の仲は険悪なようだった。

 それにまだキリカのことも信用してないみたいで、そんなマミにキリカも冷たい態度で返している。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 19:26:14.29 ID:AGtZuOov0<>

かずみ(……どうにかみんなトゲトゲしないでくれたらいいんだけど)


 でも、今のキリカはわたしから見てもここでただ食べてるだけには見えなかった。

 だって、こんなにたくさんの甘いものを目の前にしてるのにあんまり幸せそうな顔してないんだもん。


キリカ「んーっ、冷たい。頭痛くなってきたよ」

マミ「そんなに冷たいもの一気に食べるからでしょ……」

キリカ「……もうそろそろ帰ろ」

かずみ「あ、待って!」


 パーティサイズのアイスを食べきって立ち上がったキリカを呼び止める。


かずみ「わたしたちはこれから買うとこなんだ。この間はくれたんだから今日はわたしのも半分あげるよ!」

キリカ「お礼なら返してもらったよ。……くれるんならもらうけど」

マミ「そうよ、この前は結局何があったの?」

かずみ「……!」


 まだマミに言ってない秘密。キリカにも全部は話してない。

 ずっと知られるのが怖かった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 20:06:10.12 ID:AGtZuOov0<>

キリカ「詳しいことは私も知らないよ。ただ寝ちゃったから運んだだけ」


 ……わたしがキリカのほうを見ると、キリカは何か気まずい事情を察したのかごまかすように言った。


マミ「ほ、本当にそれだけ?」

キリカ「それだけ。それとくれるならもらうけど、同席するのは遠慮しとくよ」


 少し伏せるような視線の先。キリカが見ているのはやっぱりマミの方だ。

 訓練も同じ理由で来なくなっていた。……そこでわたしは今日のことを思い出す。


かずみ「……そうだ、今日はみんなで訓練したんだよ。織莉子があすみちゃんをつれてきて、これからも来るって言ってた」

かずみ「もうマミだけじゃないし、もしよかったらキリカも今度は――――」


 誘ってみると、キリカは思いがけないところで拒否感を示す。


キリカ「……織莉子? 織莉子と一緒にやってるの?」

かずみ「え?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 20:30:02.03 ID:AGtZuOov0<>
キリカ「悪い事言わないからあいつを仲間とは思わないほうがいいよ」

キリカ「腹の底じゃどうせ君たちのことどう利用してやろうかとしか考えてないんだから」

マミ「どうしてそんなことを言うの? 美国さんは私の大切な仲間よ。あなたみたいな人に悪く言われる筋合いない!」


 そういえば、織莉子にキリカの事を聞いた時も反応がよくなかったことを思い出す。

 でも、キリカが人のことをここまで悪く言うのははじめてだったから驚いた。

 杏子のことは愚痴っぽく言ってたけど、根拠もなく疑ったりはしなかったのに。


かずみ「喧嘩したんだっけ……?」

キリカ「喧嘩……? そんなもんじゃないよ。私は利用されてたんだから!」

マミ「そんなのあなたが逆恨みしてるだけじゃないの? いい加減にしてほしいわ。美国さんのなにを知ってるというのよ」

キリカ「あぁそう? じゃあ勝手にすればいいじゃん! でも私は君たちよりはあいつのこと知ってるよ!」


 キリカが怒鳴る。

 街中で発生した言い合いに、周りの人々はわたしたちを避けて通っていく。



キリカ「ていうか、織莉子があすみを連れてきたっていうけど、もしかして何か手を組んで企んでるんじゃない?」

キリカ「利益でも提示されなきゃ動かないタイプだよ、あすみも」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 20:41:03.77 ID:AGtZuOov0<>

 キリカはそう残すと、空のカップを力強く放り捨てて去っていく。

 これまでにないほど苛立った様子だった。


 ……やっぱりただここで食べていただけじゃない。何も考えずに頭が痛くなるほど冷たいアイスをかっこみたくなる衝動。

 わたしの頭の中に『ヤケ食い』の文字が浮かんだ。


マミ「……そんなはずないわよね?」


 マミが問いかける。言葉では強く否定していても、もしかしたらという疑念は生まれる。

 わたしだってキリカの言うことが全部だとは思いたくない。詳しい話を聞くまではなにがあったのかなんてわからない。


 せっかく仲良くなれそうなのに疑ったりなんてしたくない――――……。


――――
―――― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/18(日) 20:42:24.50 ID:KMsN8anxO<> ここまで聞いたんならキリカに利用されたってどういうことなのか問いただしてほしいな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 21:23:00.50 ID:AGtZuOov0<>

 帰り道。


 あすみの脳裏には昔聞いたなんてことない会話が浮かんでいた。

 ……そこに手を握るかずみの姿が被った。


*『――――じゃあ、帰り道に買ってこうよ!』

*『あれさ、新しい味出たんだって!』

*『あたしおまけ集めてるんだよねー。――ちゃん、もうレア持ってるんだよ』


あすみ『…………』


 周りでこういう話が出るとあすみはいつも我慢していた。

 断ってばかりじゃ付き合い悪いみたいだから、話を振られないようにそっと席を立つ。


あすみ(お母さんがんばってるのに、おやつを買うお小遣いがほしいなんて我儘言えないからね)


 他の人より我慢することがあったって構わない。物がなくても、慎ましく暮らしていれば幸せになれる。

 ……そんな考えが敗者の縋る幻想だったと思い知らされたのはそれから遠い事ではなかった。


 世の中所詮、正直者は馬鹿を見る。

 馬鹿を見ない正直者というのは勝ち組だけなのだ。でもそいつらは絶対に自分が恵まれていることには気づかない。



 そんな人間を――――あすみは心底憎んでいた。


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 21:40:54.90 ID:AGtZuOov0<>

織莉子「――――あなたも巴マミの前では対立を生みかねない言動は避けたほうがいいわよ」

織莉子「私があなたに『魔女』の情報を提供する。巴マミたちには使い魔しか渡さない」

織莉子「あなたはただ戦ってその報酬を受け取ればいい。悪い話じゃないでしょう?」

あすみ「そうだね。マミはともかくかずみは私の肩持ってるし」

あすみ「……そうやってすぐ他人を信じて利用されるなんて、馬鹿なヤツ」


 その話を持ち掛けたのは、放課後、あすみが織莉子の元を訪ねた時だった。

 あすみはもともと織莉子に用事があった。織莉子にとっても仲間を増やしたかった今は渡りに船だったのだ。


あすみ「でも、そうは言ってもさ。私が簡単に素直になったらそれこそ怪しまれるよ?」

織莉子「……そうね」


 あすみは織莉子を見透かすようにその姿を見る。

 背の高い織莉子の顔を見るには見上げないと覗けない。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 22:15:50.72 ID:AGtZuOov0<>

あすみ(巴マミに味方するフリしてグリーフシードを横取り、そうやって縄張りを乗っ取る魂胆か?)


 もともとあすみが好むのは善悪や感情論ではなく有益と有能。あすみが自分を指すなら『悪人』だと言うだろう。それは彼女自身の経験がそうさせていた。

 そんなあすみの評価としては、それは悪くない手段だと思っていた。

 少なくとも何の芸もなく打ち負かして手に入れた駒を派手に暴れさせるよりは理解も出来るし、合理的だ。


 しかし、織莉子はあすみが読むまでもなく自分の考えを漏らす。


織莉子「マミはまだ本当の意味で自分たちの運命を自覚していないのよ」

織莉子「だから真実を知っても今までと変わらない方法で『パトロール』なんて続けられるの」

織莉子「余裕がなくなればそうは言っていられない。考えも変わるはず」

あすみ「……なーるほーどねえ」


 織莉子が考えていることは、あすみの考えとは少し違った。

 そうまでしてマミをどうしたいのか。あすみは疑問を抱く。織莉子の考えでは、変える以前に壊しかねない嫌がらせだ。


織莉子「ねえ、人間の心って脆いものでしょう?」

織莉子「私には時間が無い」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 22:29:03.62 ID:AGtZuOov0<>


 織莉子はこの先に視えた未来を心配していた。

 未来の中で自分が幾度となく敗北してきた相手。その存在は相変わらず障害だが、同時に今となっては頼みの綱でもあった。


 だがもう視えてしまった。


 ――――あの正体不明の女がやってきたが最後、『守護者』は負ける。

 元より自分のことなど相手にすらされていなかった。あの女にとっては、その気になれば今にでも実行出来ることなのだ。


 些細な抵抗、無駄な足掻きだと嘲笑されてもいい。

 最後に世界が望む結末になれば…………!


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 23:20:27.42 ID:AGtZuOov0<> ――――
――――


 キリカが行っちゃった後、マミと二人で買い物を済ませてからそのへんで買ったものを食べていた。

 わたしはマミの元気な顔が見たくてここにきたのに。

 マミとキリカの仲は悪いままだ。それどころか、今日のことでさらに溝が出来てしまった。


かずみ「……マミ、そろそろ帰ろうか?」

マミ「ええ、そうね。紅茶のお供も買えたし、続きは帰ってからにしましょう」

マミ「なんだか今日は疲れちゃった」


 今日は訓練の時からいつもと違ってマミはずっと硬い雰囲気だった。

 わたしはもう少し織莉子やキリカに話を聞きたいけど、もし本当に織莉子が私達を利用しようとしてるんだとしたら、マミはどう思うんだろう?

 ……それだけマミには『仲間』が少なかった。


かずみ(ううん、わたしたちと一緒にいた織莉子が全部演技なわけない。あんなに紅茶に詳しい織莉子だって、絶対悪い人じゃないもん!)

かずみ(織莉子は冷静な人だから、いろんなこと考えてるんだろうし)



 わたしたちは賑やかな場所を離れて、マンションの立ち並ぶ住宅街のほうへと戻っていった――。



―10日目終了―


かずみ 魔力[90/100]  状態:正常
GS:1個
・ヘヴィメタ[0/100]
・お菓子[0/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/18(日) 23:23:09.96 ID:AGtZuOov0<> ------ここまで。次回は21日(水)20時くらいからの予定です。
【訂正】>>309は9日目でした <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/21(水) 21:19:51.72 ID:PrrTM/T80<> マミの家 朝


 マミの学校が休みに入って、今朝はいつもよりゆったりした時間を過ごしていた。

 休日でもパトロールに訓練、同じメンバーでやることは相変わらずだった。

 朝食のあと、マミは家の中のことを片づけながら、スマホを手に取るとこんなことを話す。


マミ「神名さん、今日は来ないって美国さんから連絡が。休日は付き合えないんですって」

かずみ「そっか。せっかくの休みだもんね……やりたいことでもあるのかも」

マミ「私たちも明日は訓練じゃなくてもいいわよ」

かずみ「マミはなにかやりたいことある?」

マミ「前言ってたあすなろに行くのはどうかしら?」


 その言葉が出ると、やっぱり思わず身構えてしまう。

 でも、前言ってたみたいに美味しいものを食べに行くっていう目的もあるんだ。


かずみ「うん、そうだね……考えてみる」

かずみ「今日はまた三人かぁ」

マミ「私はそのほうが気は楽だと思うけど……」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/21(水) 21:35:06.49 ID:PrrTM/T80<>

マミ「そういえば、前に少し美国さんには話したんだけど、実は私の通う学校にもう一人魔法少女がいるの」

マミ「その人のことももう少し知りたいって言ってたわ」

かずみ「へえ、じゃあその人も訓練に誘えないかな?」

マミ「あまり乗ってくれるとは思えないけど」

かずみ「お菓子は?」

マミ「お菓子で釣れはしないと思うわ……」


 苦笑いされる。

 でも、実際に釣れる人はいたんだもん。


かずみ(やっぱお菓子で釣れる人ばっかりじゃないか……)



(話したい事、出発前にやりたいこと、パトロールのついでに行きたい場所とか)
1マミはあすなろは久しぶりなんだっけ?
2魔力は足りてるか?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/21(水) 21:47:03.67 ID:uUni7OkA0<> 1+2
マミに織莉子の固有魔法って何だったけ?と聞く
もし予知の事が聞けたら2に結び付けて織莉子に魔女の居場所を教えてもらえるよう話してみようと提案

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/21(水) 21:49:56.47 ID:k3T9bWtDO<> ↑
追加で1人で散歩してくる
というのは建前でキリカに会いに行き、昨日聞いたことを詳しく知りたい為に <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/21(水) 22:26:42.80 ID:PrrTM/T80<>

かずみ「織莉子はこの街の魔法少女のことをよく考えてるんだね」

マミ「ええ……私の見ていないものを見ているんだろうな、って思う時があるわ」

マミ「……今まで私は正しいと思うことをやってきたけれど、もしかしたら私はわがままなのかもしれないわね」

かずみ「そ、そんなことないよ! わたしはできればみんなにギスギスしないでほしいけど、マミの考えもわかるし……」

マミ「ありがとう」


 マミは今訓練ではわたしたちに合わせてくれているけど、考えまではそう簡単に変えられない。

 一緒に訓練していても、ずっとこのまま監視するような関係のままなのかな……?


かずみ「織莉子は魔力を上手に使えるようにしたくて訓練してるんだよね」

マミ「そう言ってたわ。いつも使いすぎてしまってあまり余裕がないんだって」

マミ「だから一人だと使い魔まで気を回せないのよね……」


 訓練のときのことはわたしも見ていた。

 格闘の動きをメインでやってるわたしの横で、二人は難しそうな顔をして集中していた。

 武器の水晶とか、そこに魔力を纏わせるような訓練だったかな? 織莉子の戦い方はわたしとは全く違う。


 マミは複雑な顔をしている。

 今はわたしたちもあんまり魔力に余裕があるとはいえない状況だった。それでもマミは使い魔を見逃す選択は考えたくないようだった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/21(水) 23:44:58.95 ID:PrrTM/T80<>

かずみ「ところで、今日もパトロールだけどマミは魔力はある?」

マミ「魔女を倒す分くらいはあるわよ。仲間もいるし、十分だわ」


 マミはまだ大丈夫だとほほ笑む。

 グリーフシードは目的じゃない。魔女を倒せる分があれば。


 そう納得しつつもなぜだかわたしは……――ちょっぴり不安を感じていた。



かずみ「――――ごめん、ちょっと出かけてきていい?」



 まだ時間の早いうちに、簡単に荷物をまとめて外へ行こうとする。


マミ「どこへ? 一人で行くの?」

かずみ「散歩。大丈夫だよ、すぐ戻ってくるから」

マミ「そう、いいものがあったらお土産よろしくね」

かずみ「……なんでおやつ買いにいくことバレてるの?」

マミ「だってそうそう何もなしに散歩なんて行かないじゃない」

かずみ「えへへ」



・どこへいく?
1繁華街
2廃工場
3公園
4自由安価(知ってる場所)

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/21(水) 23:50:14.19 ID:OkgcyEdE0<> 安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/21(水) 23:53:21.50 ID:uUni7OkA0<> GSの処理も兼ねてキュウベェを呼び出しながら昨日の屋台街へ
キュウベェが来たらキリカの居場所を聞く <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/21(水) 23:54:37.76 ID:k3T9bWtDO<> 近くのスーパーマーケット <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/22(木) 00:15:31.06 ID:cIyjY98B0<>

 家を出ると、とくにあてもなく歩き出した。


 ……おやつもいいんだけど、今はちょっと違った。


 これからみんなでパトロールだ。でも、さっきの話を考えたらいてもたってもいられなくなって。

 マミやみんなのために何かしたかった。


かずみ「っていっても、なにができるわけじゃないしなぁ」


 とりあえず昨日帰りに寄った繁華街のほうへ歩いてみる。

 昨日と違ってまだ明るいけど、ここはやっぱり人で賑わっていた。



遭遇判定
下1レスコンマ判定
0~20 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/22(木) 00:16:33.19 ID:AtWy7LTB0<> コンマ運ないけど! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/22(木) 00:18:17.42 ID:mY0GOEGrO<> ↑
あるじゃんw <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/22(木) 00:26:20.06 ID:cIyjY98B0<> ---ここまで。次回は23日(金)夕方くらいからの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/22(木) 00:29:25.02 ID:mY0GOEGrO<> 乙です
誰と会うのかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 19:50:23.73 ID:2E/ewm3w0<>
かずみ「……ん?」


 広い通りを見回してみると、ふと目に入った姿が気になった。

 鮮やかな長い赤い髪。――よく見てみるとやっぱり知っている人だった。


かずみ「杏子!」

杏子「おう、かずみじゃん。一人か? うるさいマミがいなくてよかったよかった」

かずみ「やっぱりこっち来てたんだ」

杏子「やっぱり?」

かずみ「あ、この前キリカと会ったって聞いて」

杏子「ちょっと気になったことがあったから様子見に来た。それだけだよ」

杏子「それに風見野よりここのほうが遊べるとこも多いからな」


 杏子は片手にドーナツを持って食べながら歩いていた。

 その袋の中から杏子がわたしにドーナツをひとつとって差し出す。


杏子「食うかい?」

かずみ「もらう! ありがとう!」


 ……チョコレートのかかったドーナツにかぶりつきながら、この前のことを思い出した。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 21:29:20.34 ID:2E/ewm3w0<>
かずみ「キリカにもこのくらいすれば仲良くなれるのに」

杏子「あいつにはイヤだね。この前の礼を返してもらってない」

杏子「先にイイもんでもくれれば許してやってもいいよ。あたしも鬼じゃないし?」


 こんなの聞いたらキリカはまた反発しそうだ。そんなことを思いながらチョコレートの味を味わう。

 杏子は譲る気はないらしい。


杏子「そっちはどうよ。進展はあったか?」

かずみ「えっと、まあ少し……」


 曖昧にごまかすような言い方をすると、杏子は珍しいものでも見るような顔をする。

 でもそれ以上は聞いてくることはなく、違う話題を話し始めた。


杏子「……そうか。しっかしさぁ、ここも随分あたしの知らないヤツが増えてるな」

杏子「キリカといいあすみといい、あとまだいるんだろ?」

かずみ「織莉子?」

杏子「名前は聞いてねーけど、あすなろの厄介者の件は片付いたからいいとして受け入れるほうもほうだよな」

杏子「あたしだったらテキトーにいびって追い出すね」

かずみ「そ、そっか、厳しいんだ……」


 改めてわたしがいるのが優しいマミの元でよかったと思った。

 でもマミを紹介してくれたのも杏子だ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 22:19:36.02 ID:2E/ewm3w0<>

かずみ「でも、マミも警戒はしてるみたいで。わたしはもっとみんな平和に仲良くしてほしいと思ってるんだけど……」

かずみ「っていうと、杏子にも『甘い』って怒られちゃうのかな」

杏子「甘いな。あたしは今のやり方を変える気はないね」

杏子「あいつもあたしみたいなのが大嫌いだから。力ずくで追い出さないってだけで、誰でも喜んで受け入れるってわけじゃないだろうよ」


 杏子は愚痴を吐き捨てるように言う。

 でも、杏子もマミのことが気になるからこうやってたまに様子を見にきてるんじゃないのかな?


杏子「……ま、それだけ増えりゃ絶対なんかやらかすヤツは出てくるね」

杏子「マミはうざいけど、損しないこと考えるなら用心はしといたほうがいいかもしれないぜ」


 杏子はそう言うと、次の食べ物を求めてほかの店のほうへ歩いて行った。

 ドーナツはもう食べ終わったらしい。空の袋はその辺に捨てていっている。

 わたしは袋のごみを拾い上げてその背中を見る。


かずみ(……そういえばマミにもお土産買ってくって言ってたんだった)


 その前に、ソウルジェムを卵型に具現して観察する。

 光に変化がないことを確かめながら、周りのお店を見てから少し寄り道して帰ることにした。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 22:44:03.36 ID:2E/ewm3w0<>

QB「一人でパトロールか。珍しいね」

かずみ「パトロールじゃないよ、それはこれからするし……。おやつ買いに来ただけ」

QB「それならもっと家に近い道を通るんじゃないかい?」


 帰り道は久しぶりにキュゥべえがついてきた。あれからすっかりキュゥべえはマミの家に姿を見せなくなった。

 とりあえず使えなくなったグリーフシードを食べさせる。


 繁華街の通りから出て少し家路から逸れた方向に進んでいった場所で、まるで私を待ってたみたいに立っている人の影が目に入った。


かずみ「あなたは……?」

?「…………」


 私の前に現れた人影。二つに結んだ眩しい金の髪。

 その口元が笑みの形を描いた。


?「今度こそ質問だ、かずみ。アタシを覚えてるか?」


 忘れもしないその姿は…………。


かずみ「どうしてっ!? あの時魔女になったはず……!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/23(金) 22:50:47.19 ID:VB09wIZm0<> かずみに直接会いに来たか
おそらく彼女だよなぁ・・・・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 23:17:47.00 ID:2E/ewm3w0<>

かずみ「――――ユウリ!」


ユウリ「You've “HIT” it!」


 その瞬間、わたしの身体に何かが絡みつく。

 予想しなかったことに固まっていた身体がさらに身動きが取れなくなる。


 なんで……? どうして……? 本当は魔女になってなかったの?

 ユウリはそんなわたしの疑問に答えるように独り言を呟いた。


ユウリ「……だが、間違いなんだな。私は『偽物』の『ニセモノ』」


 絡み付いたケーブルのようなものを力強く引っ張られて身体ごと持っていかれる。

 ユウリの手元には透明な瓶と、あの時の歪んだグリーフシードモドキが握られていた。


ユウリ「巴マミがずっとくっついててうっとうしかったんだ」

ユウリ「この私が負けるわけないだろうけど、ユウリのこともある。さすがにベテランは相手にしたくないからね」

ユウリ「かずみにはあんな奴は相応しくない。もっと私たちにぴったりな世界に連れて行ってあげるよ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 23:32:19.43 ID:2E/ewm3w0<>

 この人はユウリじゃない? でもあれを持ってるってことは無関係なんかじゃない。

 あすみの忠告を思い出す。……そっか。ユウリの仲間はまだいたんだ。


 まだあの問題は片付いてなんていなかった。一人で出ていかずに予定通りマミや織莉子と一緒にいれば――――。


 どうしてわたしを浚おうとするんだろう。マミがふさわしくないってどういうこと?

 今この瞬間はっきりとわかったこと。

 それは、このままだとマミのもとには、今までの生活には二度と戻れなくなってしまうってことだった。


かずみ(そんな……――――そんなのイヤだよ!)


 その時、突如として割り込むように突き出された大きな刃によってわたしの身体を縛るものが切断された。

 地面に投げ出された私を割り込んできた手が掴む。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/23(金) 23:58:01.92 ID:2E/ewm3w0<>

かずみ「杏子! なんでここに!?」

杏子「そんなことは今はいいだろ!逃げるぞ!」


 杏子はわたしを抱えて走り去ろうとする。

 しかし簡単に諦めてくれるわけもなく、ユウリはものすごい形相でこっちを振り返る。


ユウリ「は? 何だお前は! 逃がすわけないだろ!」

かずみ「危ない! その鞭みたいなの……!」


 ユウリがさっき切断されたはずの鞭を伸ばして杏子に襲い掛かる。

 杏子は咄嗟に反応してなんとかそれを弾いてみせた。


杏子「ッ……!」

ユウリ「こっちにゃまだまだ手駒はあるんだ。お前も魔女になるか?」


 でも完全に隙が出来なかったわけじゃない。

 金の瞳をギラつかせ、ユウリが杏子にグリーフシードモドキを放った。


ユウリ「往来の真ん中で殺戮ショーでも演じてればいい!」

かずみ「そんなのさせない! 『ネーロ・ファンタズマ』!」


 駅前からは外れたけどここは通りの中だ。材料になるものはいっぱいある。分身を作りだして塞ぐ。

 さっきとは逆に、わたしは杏子の手を引いて必死に駆けていった――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 00:16:25.29 ID:VabPknMI0<>

かずみ「はぁ、はぁ――――」


 まずはとにかく遠くに離れることを目指して、それから人混みのなかに紛れてその隅に膝をついた。

 どこに行こうとは考えてなかったけど、無意識のうちによく知っている道を選んでいた。

 幸い家からはそう遠い場所ではなかった。


杏子「かずみ、お前…………髪どうした?」

かずみ「え? ……あれっ? ホントだ」


 この前短く切ったはずの髪が腰まで伸びていることに気づく。

 さっきまで変化はなかったのに。


杏子「それにこの距離、どう考えてもこの時間じゃ来られないはずだ」


 わたしはただ必死に走ってた。

 でも、どんなに速く走ったってここまで来るのにこんなに早く辿りつける距離じゃない。


杏子「……まあいい。それよりユウリだ。なんであいつがここにいる?」

杏子「しかもなんであんなことを……まさか偽物か?」

かずみ「わかんない。わたしもユウリ最期は見届けたんだ。あいつは『偽物のニセモノ』だって」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 00:31:44.79 ID:VabPknMI0<>

杏子「ひとついいか。アンタの言う『ユウリ』ってさっきの奴のことか?」


 杏子はわたしの言葉に眉をひそめた。

 話が噛み合わない――いや、噛み合ったらオカシイ。


QB「あれはユウリの魔法だ。正確にはあいりという。あいりはユウリになることを望んで契約したんだ」

QB「ユウリを殺したプレイアデス聖団への復讐のためにね」


 一部始終を見ていたキュゥべえが代わりに答えた。

 いつの間についてきたんだろう。それとも別の『代わり』とやらか。

 プレイアデス聖団はユウリを殺した?


杏子「だから偽物の偽物……か」


 わたしは前に杏子が話していたユウリの話も覚えている。


かずみ「本当のユウリはそんなことする人じゃなかったんだね」

杏子「復讐だかなんだか知らないがふざけてるな。直接ぶっ潰しに行ってるわけでもないし意図が見えない」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 00:59:07.38 ID:VabPknMI0<>

かずみ「じゃあ、さっきの人はもしかしてユウリ以外にも色んな魔法が使えるの?」

QB「そう思っていい。あのグリーフシードモドキも恐らくは彼女が作ったものだろう」

かずみ「キュゥべえはあの人の正体も全部知ってるの? だったら――――……」


 キュゥべえに詰め寄ろうとする。

 わたしが特別すぎる例なだけで、みんな契約したのはキュゥべえなんだ。

 キュゥべえはわたしのこともあの人のことも、どんなことをやってきたかくらい知ってるはず。


 しかし、その時いきなり杏子が苦しみだした。


杏子「う……っ!」

かずみ「杏子、大丈夫!?」

杏子「怪我はしてない。さっきの奴の変な魔法のせいか……?」

かずみ「ソウルジェムを見せて!」

杏子「ソウルジェムが濁ってやがるだと?」


 杏子の赤いソウルジェムのほとんどが黒で覆われていた。

 これでもうストックはなくなる。一瞬ためらったものの、持っていたグリーフシードを杏子のソウルジェムに当てる。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 01:13:18.37 ID:VabPknMI0<>

杏子「いいのか?」

かずみ「うん。わたしたちはこれからまたパトロールに行くし、助けてもらったから……」

杏子「……返さないからな」


 ……とにかく急いでいた。ためらったことで後悔するほうが怖かった。

 さっきキュゥべえがいた場所をもう一度見てみると、忽然とその姿がなくなっていた。


かずみ「……キュゥべえ」

杏子「逃げたか。どうやらさっきのヤツのことはあいつにとっちゃ話したくない情報らしいな」



1家に誘ってみる
2魔女探しのコツを聞いてみる
3自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 01:17:30.74 ID:VabPknMI0<> ------ここまで
ちなみに場所選択は廃工場なら織莉子、公園ならあすみが、その他や判定外れはマミが一緒に戦う予定でした。
次回は24日(土)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/24(土) 07:42:14.43 ID:lcGzFO1F0<> 早くこの変態たちを元の世界に返して!顔も見たくない!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/24(土) 07:46:10.61 ID:lcGzFO1F0<> >>380は誤爆です。気にしないで下さい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/24(土) 10:17:13.53 ID:l+nQIZso0<> 1+2
さらに杏子にしばらく自分達と共に行動するように説得

さっきの『ユウリの偽者のニセモノ』…ああ、ややこしい!『アイリのニセモノ』との件が片付くまで一緒にいない?
さっき魔女になれって例の偽GSを投げてきたから、この間の魔女モドキの真犯人はあの人なんだと思う
狙いはあたしだって言ってたし、マミにも敵意を持ってるみたいで杏子も顔を覚えられちゃったよね・・・・・・巻き込んじゃってごめんね
もう縄張り争いどころではない大事になってきてると思うし、もしマミとの事を気にしてるんだったら、私が『依頼人』で杏子は『請負人』ってことでどうかな?

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/24(土) 10:37:27.16 ID:IXUAkHTwO<> ↑
追加で杏子にキリカが言ってた織莉子に利用されてる云々の話をする
あまり織莉子のことは疑いたくはないけどキリカも嘘を言ってたように思えない
昨日ここでキリカがアイス食べてたけど、美味しく食べてたように見えなかったことも
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/24(土) 11:53:55.11 ID:IXUAkHTwO<> あとあいりの偽物がソウルジェムに直接影響を与える何らかの方法を持っているとマミやあすみ、キリカにも警告すべきだと提案 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 21:09:14.63 ID:tAN1Z3SE0<>

かずみ「ユウリやさっきの人、どうしてわたしを狙うのかわからないけど、マミにも敵意を持ってるみたいだった」

かずみ「杏子も、巻き込んじゃってごめんね……」

杏子「あたしはたまたま魔力の反応見つけて追ってきただけだし」

杏子「あいつらが何したいのか知らないけど、近くで飛び回られて思い通りにされるのは気に食わねえ。よそでやれってんだ」

杏子「ま、謝るなら今回は特別にさっきのグリーフシードでチャラにしてやってもいいけど?」

かずみ「うん、ありがとう。ねえ、せっかくだったらマミの家にも寄っていかない?」

かずみ「もう近所だし、さっきのこと話せばマミだってきっと杏子のことわかってくれるよ! わたしを助けてくれたんだから!」


 家に帰ったらさっきのことを話さないといけない。マミと杏子の仲を直すにはこれしかないと思った。

 しかし、マミの名前を出した途端に杏子の反応が悪くなる。


杏子「あ? あいつと話すのはパス。大体なんであいつにわかってもらわなきゃいけねーんだ」

かずみ「だって、このまま勘違いされたままなんてよくないよ! 杏子もいいところはいっぱいあるのに」

かずみ「今はもう縄張りから追い出されたキリカだって……」


 思わず口を滑らした。

 杏子はそれを聞くと、しらけたような表情で『ふーん』と聞き返すような相槌を打った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 21:25:33.58 ID:tAN1Z3SE0<>

杏子「ふーん? あいつついに追い出されたのか。マミ様の機嫌損ねたら追い出されるなんて怖い正義だねえ」

かずみ「あ、あの時はマミも友達が殺されて不安定になってて……」

杏子「でもあたしらみたいなのならあいつが今更許すわけない。それならあの態度も納得だよ」

杏子「あいつ今縄張りないんじゃない? ベテランじゃなきゃそれだと食いっぱぐれるな」


 そう言われてはっとした。

 キリカのことも、このままが続いたらやっぱりまずい。……でも、キリカの態度はそれだけじゃなかったんだ。


かずみ「キリカのことは織莉子とも何かあったみたいで、利用されたとか、まだよくわかんないしどっちも疑いたくないけど……」

杏子「あたしはそいつのことは知らないね。とにかくさっきのことはあれでチャラだ」

杏子「それとも、あれ以上に何をくれんの?」

かずみ「ええ……っと……」


 グリーフシードはもうない。いまのわたしがあげられるもの。

 頭の中を必死に探すけど思い浮かぶものはなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 22:03:07.80 ID:tAN1Z3SE0<>

杏子「何もないだろ? そもそもあたしみたいのになんでも簡単に差し出すもんじゃない」

かずみ「今はグリーフシードがないから」

かずみ「ところで、杏子もベテランなんだよね? 魔女探しのコツって知らない?」

杏子「マミから教わんなかったか? 人の集まる場所や逆に寂れた場所、人の負の感情が集まりやすいトコを重点的に探すんだよ」

かずみ「そういえばそんな話を聞いた気がする」


 実際にマミは杏子が言ったような場所に絞ってパトロールをしていた。

 わたしは大まかな方向は提案しても細かいことはマミに任せてる。杏子の言った方法はもう実践してたんだ。


杏子「……つっても、見滝原はマミの馬鹿が使い魔のうちに狩り回ってるから見つかりづらいだろうな」

杏子「つまり、卵産む前の鶏シメてるってことだぜ? だからあんなのやめろって言ったのに」

かずみ「じゃあもともと見つけにくいのは仕方ないってこと?」

杏子「そうだな。その上今は他の奴までいるんだ。ただでさえ少ない報酬の競争は激しくなるぜ」

杏子「他のやつもさぞマミのやり方には迷惑してるだろうねえ」

かずみ「迷惑……」


 魔女も使い魔も関係なく人を襲う。わたしたちなら使い魔は難なく倒せるけど、戦えない人が襲われたら死んでしまう。

 使い魔を倒すことで助けられる人がいるならグリーフシードなんて関係ない。わたしはマミの考えに賛同して尊敬していた。

 魔法少女の真実を知った今だってそう思う。


 ……それなのに。それって魔法少女にとっては迷惑なの?責められなきゃいけないの?


かずみ「…………そんなのおかしいよ」


 その言葉は使い魔を狩ることを否定する杏子に向けて言ったわけじゃない。

 そんな不条理なシステム。そんなものを生み出したキュゥべえに怒ってるんだ。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 22:39:31.22 ID:tAN1Z3SE0<>

杏子「そういやさっきの魔法、アンタ分身の魔法を使うのか?」

かずみ「うん、そうみたいだけど……」

杏子「どうせマミがつけたんだろ? 趣味の悪い事するよな。元弟子につけた魔法の名前つけるなんて」

杏子「上手くいかなかったあたしのことは忘れて新しく記憶を塗り替えでもするつもりか」


 あの必殺技の名前はマミがつけてくれた。

 でも違うよ。杏子が思ってるような意味でつけられたんじゃないはずなんだ。


 ――――意識の奥に映像と言葉の切れ端が映った。


  『今のすごい魔法! 分身いっぱいですぐに倒しちゃった!』


 これはいつのこと? 誰の記憶?


  『瓦礫から――なんて――――』

  『――――分身魔法だね! だったらいい名前があるよ。わたしを――――人が――――』



『ロッソ・ファンタズマ、でどうかな?』



杏子「……――い、おい! なんだよいきなりぼーっとして」

かずみ「あ……ごめん」


かずみ(……あの魔法も、わたしは元から知ってたんだ)
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/24(土) 23:43:22.98 ID:tAN1Z3SE0<>

かずみ「えっと、さっきの魔法少女のこと、マミ以外にもみんなに注意するように伝えたほうがいいかな?」

杏子「そうだな。グリーフシードモドキってやつ、噂には聞いてたがたちが悪い。ソウルジェムに影響する魔法なんて初耳だよ」

かずみ「うん、じゃあ出来るだけみんなに伝えておこうと思う」


 家の近くの路地で杏子と別れる。


 ――――かずみがマミの家の方向に去っていった後も、杏子はまだその場を立ち去らなかった。

 杏子にはまだ気になることがあった。



杏子「……織莉子って、あの時のあいつか? はぐらかされたけど」

杏子「それより、あれが『人を魔女にする魔法』ならなんであたしのソウルジェムが濁ったんだ?」


 浄化したばかりのソウルジェム。今はどこにも異常はない。

 しかしあのとき感じた嫌な予感が心に残っていた。考えるよりも先に本能で感じた悪寒。


QB「それは君の知らないソウルジェムの仕組みに関係があるよ。それをこの街の魔法少女は知っている」

杏子「……やっぱりまだいたんだな、キュゥべえ。それならもったいぶるな。話しに出てきたんだろ」

QB「君たち魔法少女はソウルジェムが濁りきると魔女になるからさ」


 杏子の頬に冷や汗が伝った。

 頭に浮かぶのはそんな運命を思わせないさっきのかずみの顔だった。

 いや、困ってはいたはずだった。だから自分にああして相談までした。


杏子「かずみもマミも知ってたのか?」

杏子「もう残りもないんだろ? そこまでして、それ知っててなんで人にやるんだよ」


杏子「…………本当に、馬鹿じゃねぇのか」


――――
―――― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/24(土) 23:47:14.71 ID:l+nQIZso0<> ここでキュウベェがばらすのかよ・・・・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 00:12:19.41 ID:jDuZHLGj0<> マミの家



 家に帰るとマミが驚いた顔で私を出迎えた。

 それから襲われたことを話して、ユウリの件がまだ片付いていないことを伝える。


マミ「……そんなことがあったのね」

かずみ「うん。でも、杏子が助けてくれたから」

マミ「今日はパトロールはどうする?」

かずみ「織莉子が来たらまた話そうと思う。パトロールはしないと」

マミ「これからは出来るだけ私も一緒にいる。かずみさんもあまり一人でいないようにしないと」

かずみ「これからはそうする……。あすなろにはまだ近づかない方がいいのかな?」


 本当は明日にでも行くつもりだった。

 でも、敵はわたしの近くにいるマミのことも狙ってるんだ。


 ……特に今は魔力がなかった。さっきだってわたしは魔法を使っている。

 マミは魔女を倒せるくらいの魔力はあるって言ってたけど、こんな時にまた襲われたりしたら……。


マミ「……行くときは万全の態勢を整えてから向かいましょう」

かずみ「そうだね」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/25(日) 00:15:55.14 ID:E3BNImq40<> これはかずみ暴走フラグか? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 00:36:38.13 ID:jDuZHLGj0<>

 少しして織莉子も家に来る。

 本当は待ち合わせる予定だったけど、最初に今日のことを話しあうために連絡して来てもらった。


マミ「ごめんなさいね、急にここまで呼び出したりして」

織莉子「いいのよ。大事な話があるんでしょう? とりあえず何があったかはもうマミさんから聞いているわ」

かずみ「うん。あすなろから来た魔法少女がまだいて、浚われそうになって……」

マミ「その魔法少女、『ユウリ』の姿で現れたと言っていたけど、他にも魔法を使えるのよね」


 マミが話した時、織莉子は厳しい表情をしていた。

 どこか青ざめているようにも見える。


マミ「……美国さん、大丈夫?」

織莉子「ええ。他には何か見た?」

かずみ「わたしを襲ったユウリが使ってた、人を魔女にするグリーフシードモドキもそいつの魔法だろうって」

織莉子「でも狙いは何? かずみさんを浚って何をしたいの?」

かずみ「わかんない……でも、わたしも自分のできることについてわかったことがあるかも。余裕があったら試したいことがあるんだ」


 長く伸びた髪を束にして指先ですくう。

 二人ともこれを見た時は不思議がっていた。わたしもいまだに不思議だけど、これはきっとわたしの力と正体の手掛かりになる。


かずみ「わたしの魔法は『ものを作り直す魔法』じゃないかもしれない」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 00:51:24.27 ID:jDuZHLGj0<>

 断片的に過った記憶。それは本当はわたしの記憶じゃない。

 ものを作り直す魔法もそれを応用した分身も本当は『誰か』のものだった。

 わたしの魔法はすべてが借り物で、まだ眠っている力があるということ――――そしたら、敵の底知れない力にも対抗できるかもしれない。


マミ「どういうこと?」

かずみ「みんなに黙っててごめん。わたしは本当は記憶喪失じゃないんだ」

マミ「え……!?」

織莉子「本当は記憶があるの?」

かずみ「ううん、ない。わたしは魔法で造られた存在だから」

かずみ「あるのはわたしの中に断片的に遺った“誰かの生きた証”だけ」


 二人は言葉を失った。なんて声をかけていいかわからないというように。


 じゃあ本当の正体は何か?

 ――――それはまだ言えなかった。本当の正体なんてわたしにもわからない。


 それでもわたしは『かずみ』だ。それだけは誰にも否定できない事実だって胸を張っていたかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 00:52:35.22 ID:jDuZHLGj0<> ------ここまで。次回は25日(日)夕方〜夜からの予定です。 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 20:14:49.67 ID:2Defdm3e0<>
かずみ「この髪は、とにかく『速く』離れなきゃって必死に逃げてたらこうなったんだ」

かずみ「そしたら本当に考えられない距離を移動してた」

マミ「……じゃあ、本当に誰かに造られたんだとしたら、それもその『証』の一つだというの?」

かずみ「うん……まだわたしははっきり自覚してるってわけじゃないけど、たぶんそんな気がする」


 ネーロ・ファンタズマは本当はマミが杏子につけた名前。

 マミはわたしを見て黒とつけたけど、杏子ならきっと【赤い幽霊】かな。


 その名前をミチルも知って、誰かに与えてまたわたしに巡ってきた。

 ……杏子はああ言ってたけど、そう考えたら素敵じゃないかな。

 わたしが今までこの技を使うたびに断片的に垣間見た既視感に、わたしは自分の中でそう理由をつける。


織莉子「……あすなろ市から狙いに来る魔法少女のことはかずみさんを造った人と関係してるの?」

かずみ「多分そうなのかも……」

織莉子「それならいつか、貴女の造られた場所に戻る時が来るのかもしれない」

かずみ「でも、無理矢理つれていこうとする人についていきたくないよ! わたしはわたしだから!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 20:37:19.59 ID:2Defdm3e0<>

マミ「かずみさん、前にも言ったけど焦らなくていいのよ。あなたがどんな事情で造られたんであれ、今どうしたいか決めるのはあなた自身なんだから」

かずみ「うん……織莉子も気を付けてね。あのグリーフシードモドキ、ソウルジェムにも影響させるような力を持ってるから」

織莉子「ええ、そうね……わかったわ」

マミ「さあ、そろそろ出発しましょうか。それが終わったらまた訓練の時間も取りたいわね」



 一通り織莉子にもさっきのことを話すと、外に出て、最初に決めた場所にパトロールへと向かっていく。

 ……マミは昨日までと同じようにしている。わたしも今は、みんなで歩きながら織莉子のほうを気にして見ていた。



1キリカと何かあったの?
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/25(日) 20:51:23.78 ID:E3BNImq40<> 1の事について口に出す前によく考え、結局口には出さない
あと今日のパトロールは自分に行き先を決めさせて欲しいとマミに頼む

正直キリカと織莉子との間に何があったのか聞きたい
マミは自分の考えに従ってくれてる織莉子の事を信用してるみたいだけど、だからってキリカの言い分を碌に聞かないで拒絶してるのはおかしいよね?
もしキリカの言ったことが本当で、織莉子が私達を『利用する』ために近づいてきてるのだとしたら・・・・・・

以前マミに『悪い人は良い人のふりをして近づいてくる』って言ったのは私
私自身に降りかかって来たのならそれは自業自得だけど、マミまで巻き込んで危険な目に遭うとなれば話は違う
まずは織莉子に聞く前にキリカから詳しく話を聞かないとね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/25(日) 20:59:58.75 ID:3z0RkdnkO<> 安価↑
追加であすみの家に寄って会えたら注意を促す
あと歩いてる最中マミに杏子は厳しいけど優しいね、と伝える

心のそこから悪人なら私を助けてくれなかったよね?
損得勘定だけで動くなら私の拘束を解かないで偽物さんに不意討ちかければよかったんだし
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 21:35:31.50 ID:2Defdm3e0<>

かずみ(……織莉子もいつもどおりに見えるよ。でも本当は悩んでたりするのかな?)


 キリカはやけ食いみたいにしてたけど、織莉子のほうは気になる素振りは見えなかった。


かずみ(キリカと織莉子との間に何があったのかは聞きたい)

かずみ(あの織莉子が誰かと喧嘩なんて想像つかないけど、すれ違いがあったなら仲良くしてほしいし……)


 織莉子はわたしたちともあすみとも、大抵の人とは上手く付き合えている。

 基本的にはわたしたちの側にいるけど、冷静で自己主張が強くないところがそうさせているのかもしれない。

 キリカともそうだった……ように見えた。


 そんなところもまたわたしには心配に思える。何も思ってないなんてこと本当はない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 21:55:11.66 ID:2Defdm3e0<>

織莉子「予定していたところには反応なしね。ここからはどちらに行く?」

マミ「ええと、そうね……」

かずみ「あ! 今日はわたしが決めてもいい? この街のことも大分わかってきたし、杏子にコツ聞いてきたから!」

マミ「コツ?」

かずみ「っていってもマミがいつもしてることだけどね。織莉子も知ってる?魔女は人ごみか寂れた場所にいるんだって」

織莉子「いいえ、初めて知ったわ。みんな物知りなのね」


 この場で問いただしたらどうなるのかな?

 どっちが悪いとかは思いたくない。でもマミはまたキリカのことを苦手に思うかもしれない。

 片方の言い分だけじゃ全部はわからないかもしれないけど、マミは織莉子を信じてるから。


かずみ「じゃあ次はこっち!」



・行先(自由安価)

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/25(日) 22:28:55.72 ID:NLCRt1GD0<> 廃工場 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/25(日) 23:20:39.50 ID:3z0RkdnkO<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 23:30:52.10 ID:2Defdm3e0<>

 わたしが先頭に立って、指さした方向に進んでみる。

 たしかこっちには工場群があったはず。近づくとその建物が見えてきた。


マミ「ここには今は使われていない建物もあるわね。確かにこのあたりはよく注意したほうがいい場所かも」

かずみ「反応は?」

織莉子「魔力の反応は見当たりませんわね」

かずみ「む、そっか〜、こっちが怪しいって思ったんだけどな〜」

マミ「場所の選び方は正しいわよ。自信をもって」

織莉子「次の場所に行きましょうか。次もかずみさんが選ぶ?」

かずみ「途中であすみのところにも寄って、さっきのこと話したほうがいいかな? 危ないかもって」

マミ「かずみさんのことが狙いなら、すぐに危険はないんじゃないかしら? 確か今日は予定があると言っていたのよね」

織莉子「『休日まで付き合っていられない』……だったかしら。単に気分の問題かもしれないけれど」

マミ「ユウリの件には関わっていたし一応連絡はしておきましょうか」


 この先は工場ばっかだ。方向を変えてまた歩いていく。

 その途中であすみからもらっていた連絡先に電話をかけて、さっきのことを伝えておいた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/25(日) 23:58:30.75 ID:2Defdm3e0<>

 ……そろそろお昼というにはギリギリの時間になる。

 今日は思ってたより帰るのも遅くなっちゃったから、お昼も食べる前に織莉子が来てそのまま話し合いとパトロールに行ってしまった。


マミ「今度はどこに向かっているの?」

織莉子「これはもしかして……」

かずみ「もうムリー! お腹ぺこぺこで歩けない!」


 レストランの前で行き倒れる。限界と同時にここに向かってたのは奇跡的で、本能みたいなものだった。


マミ「そういえば美国さんは何か食べてきてる?」

織莉子「私は出る前に家で済ませてきました。お二人がまだならもちろん付き合いますが?」

マミ「じゃあお言葉に甘えてランチにしましょうか」

マミ「ほら、店の中まで歩けば食べられるわよ! あとちょっとの我慢!」

かずみ「ごはんごはん……」


 ごはんの匂いにつられるようにふらふらと店の中に入っていく。

 お店の中は段々と人のはけていく時間だった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/26(月) 00:14:09.71 ID:KO3jmfPH0<>

 レストランといっても、ここはいつもあまり目に止めることのない場所だった。

 住宅街の中の店だ。さすがにさっき襲われた場所に近い駅の方は避けていた。


 ご飯が無事にテーブルに並んでくると一気に元気が戻ってくる。手を合わせてから料理を食べ始めた。


かずみ「あー、生き返るっ! やっぱり食べてる時がいちばん幸せ!」

マミ「私もそれはわかるわ。たまには外食もいいわね。普段食べないようなものを食べられて」


 この店は和食を中心に色んなものがあった。

 わたしやマミが作ると洋食やイタリアンばかりになっちゃうから、マミの言う通りこういうのもたまにはいいかも。

 美味しい料理を口に運びながら、杏子のことも考える。


かずみ「……杏子にもまたなにかごちそうしたいな。グリーフシードはもうないからあげられないけど、そういうのなら喜ぶと思うし」

かずみ「本当は優しいよね? 杏子。厳しいこと言うし悪いこともするけど、心のそこから悪人なら私を助けてくれなかったよ」

かずみ「損得勘定だけで動くなら、わたしの拘束を解かないで偽物さんに不意討ちかければよかったんだから」

マミ「そうね……それはわかってるわ。本当は根は悪い人じゃないのよ」


 寂しそうに言うマミ。組んでたことがあるマミが一番よく知っていた。

 それだけに今の杏子の行いを考えれば心が痛むんだろう。

 杏子は『昔の自分』とは違うって言ってたけど、本当は変わってないはずなんだ。根っこまでなんて変えられるわけがない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/26(月) 00:41:48.13 ID:KO3jmfPH0<>
かずみ「織莉子もどうだっ! さっきから見てたでしょ?」

かずみ「これすごくおいしいんだから! ここでまでお茶だけなんてもったないよ!」

織莉子「なら、少しもらっておくわ。あなたが随分と美味しそうに食べるものだからつい」


 一口分差し出すと、織莉子は穏やかにほほ笑む。……この笑顔も嘘なのかな。


織莉子「ついでにデザートとかも頼んでおこうかしらね……」

かずみ「デザートわたしも食べる!」

マミ「何があるの? 私も頼むからみんなで少しずつ交換しましょう」


 一旦パトロールのことは忘れてわいわいと食事の時間を楽しむ。

 戦いづめも疲れるけど、魔女を探して歩きっぱなしになるのも別の部分で辛くなるし、やっぱり心配は募った。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/26(月) 00:42:24.28 ID:KO3jmfPH0<> -----ここまで。次回は28日(水)20時くらいからの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/28(水) 21:39:21.58 ID:+FI3Nzrk0<>

マミ「…………そろそろ日が暮れてきたわね。今日は終わりにしましょうか?」

織莉子「ええ。お疲れ様」


 あれから私たちは戦ったのは、一回使い魔を見つけた時だけだった。

 織莉子もわたしたちと一緒に使い魔と戦ってくれてる。

 はじめて一緒にパトロールした時は、余裕がないから一人だとためらってしまうって言ってたっけ。織莉子はグリーフシード大丈夫なのかな……?


マミ「今日も使い魔が一度いただけね……」

織莉子「まあ、こうして街の平和を守れているわけですし」

マミ「ええ、そうね」


 マミは少しだけ何かを気にしたような様子で、織莉子の言葉に返事を返す。


 そうはいっても、魔法少女にとってグリーフシードはなくなったら生きていけない。

 マミは絶対にそれを言葉に出さなかった。


 『つっても、見滝原はマミの馬鹿が使い魔のうちに狩り回ってるから見つかりづらいだろうな』

 『その上今は他の奴までいるんだ。ただでさえ少ない報酬の競争は激しくなるぜ』

 ――――杏子の言葉が浮かんだ。使い魔を倒すならしかたない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/28(水) 21:41:08.59 ID:+FI3Nzrk0<>

かずみ(でも、本当にそれだけ……)



 本当はマミも、焦りを感じてきてるんじゃないのかな……?



マミ「ねえ、かずみさん。この後はどうする?」

かずみ「この後?」



・この後
1訓練がしたい
2お茶会がしたい
3早めに帰りたい
4自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/28(水) 21:45:53.10 ID:V3Pc6KAe0<> 魔女狩りを続行
その際にマミに最近魔女を狩れないの少し変じゃないかと話す
まるで誰かが先回りして狩ってるような気がする、もしくは使い魔だけと鉢合わせるように誘導されてるような・・・ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/28(水) 21:55:53.74 ID:2DoZtQlRO<> ↑
追加でマミに織莉子の固有魔法が何か知ってるか聞く <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/28(水) 22:33:45.77 ID:+FI3Nzrk0<>

かずみ「まだパトロール続けない?」

マミ「もう大体回ったと思うわよ?」

かずみ「うーん、まあそうだけど……」

マミ「まあ街を隅々まで見たわけじゃないしね。明日はお休みの予定だから、もう少し頑張ってもいいかも」


 そう言うと、またみんなで行先を決めて歩き出す。

 さっきは回らなかった場所に気を回していく。


かずみ「もう魔女はいないのかな? それとも、誰かが先に倒しちゃったのかも……」

マミ「それなら仕方ないわよ。この縄張りは私達だけじゃないもの」

マミ「でも、周りの人がどうしていようと私たちの目的は……」


 グリーフシードがほしいために他の魔法少女を縄張りから追い出す。

 そういうことはやっぱりマミはしたくないようだった。

 あすみや杏子のことを良く思わないのも、キリカに対して縄張りを追い出したのもそれが理由ではなかった。


 原因がこの街の魔法少女の『誰か』にある可能性もマミは感付いている。

 それでもマミは、他の人みたいにグリーフシードを理由にしてはいけないと思っているのかもしれない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/28(水) 22:52:11.15 ID:+FI3Nzrk0<>

織莉子「ええ、街の平和を守ること。ですわよね」

織莉子「でもたとえば誰かが過剰にグリーフシードを独占しようとしていたとして……もしそうならマミさんはどうするの?」


 他の魔法少女は使い魔は狩らない。

 その使い魔を代わりに倒すのは私達だ。でももしそれをやめたら…………


マミ「どうもしないわ。卑怯な手段でも使わない限りはね」

マミ「確実にすべての魔女を私たちより先に倒すことなんてできないのだし……結局は運よ」

織莉子「本当にそう言えるかしら?」


 底知れない魔法の使い手ならつい今日会ったばかりだ。

 まさかこれもあっちが絡んでる――?


マミ「いえ…………それもかずみさんを襲う人たちの仕業だというなら説明もつくわね」


 マミも同じことを考えたようだった。

 まだ決まったわけじゃない。考えたところでどうにもならないから、いったんは考えるのをやめてパトロールに専念する。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/28(水) 23:07:28.06 ID:+FI3Nzrk0<>

かずみ「マミ! 魔力の反応が!」

マミ「ええ、使い魔ね。さっき取り逃がしていた残りかしら……」

織莉子「倒しにいきましょう」


 織莉子が言う。しかしマミはためらったようにその場を動かなかった。


 使い魔を狩るのをやめれば魔女が育って、グリーフシードが手に入る確率が高くなる。

 そんなことはわかっていた。


織莉子「…………倒さないの?」

マミ「いえ、もちろん行くわよ!」



 使い魔の住み着く場所へと乗り込んでいく。三人もいれば決着はすぐにつく。

 織莉子が全体に放った水晶で動きを封じて、そこにわたしが踏み込む。距離の離れた使い魔はマミが仕留める。


 魔力の消費だって決して多くはない。――――でもそれは確実に次が手に入るという余裕がある時の話だった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/28(水) 23:55:32.77 ID:+FI3Nzrk0<>

 さすがに時間も遅くなって、今日はこのまま解散になる。

 帰り道も途中まで三人で歩く。そういえば、織莉子はよくマミの家に来てくれるけど、わたしたちは織莉子の家を知らなかった。


かずみ「……織莉子、今日訓練出来なくてごめんね。この前見て欲しいって言ってたのに」

織莉子「少しだけ操作のコツが掴めてきた気がしたから。でもいいのよ。使い魔相手とはいえ実戦で出来る事もあるもの」

織莉子「それよりかずみさんも言っていたでしょう? 余裕があったら訓練がしたいって」

かずみ「今はあんまり余裕ないから……。織莉子は器用だよね。魔力の操作も一通りはこなせそうな感じ!」

織莉子「それはかずみさんには言われたくないかもしれませんわよ? かずみさんはまだまだ知らない力を秘めているみたいですし」

かずみ「わたしの力……かぁ」


 今日見えた新しい魔法の片鱗。そのことを思い返していた。切る前と同じくらいに伸びた長い髪が今も残っている。

 わたしにしかできないこと。使えない力。たとえそれがすべて借り物だったとしても……。


マミ「美国さん、家はそっち?」

織莉子「ええ。ではまた今度」

織莉子「今度、うちにも機会があればいらしてくださいな」


 帰り道の別れ際、織莉子は手を振る。

 その言葉にマミは快く返事を返して別れた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 00:12:06.97 ID:4brtixiU0<>
かずみ「……髪、明日にでもまた切ろうかな」

マミ「訓練したらまたいきなり伸びたりしてね」


 二人だけになって、さらに家に向かってまっすぐに歩いていく。


かずみ「みんなその人にしかできないことってあると思う」

かずみ「わたしにはリボンも水晶も出せないし、二人みたいに器用なことできないもん」

マミ「そうね。私も契約したてのころは上手く扱えなくて悩んだりもしたけれど、今は自分にしかできないことがあるって思いたいわ」

マミ「この活動だって……」


 いつもだったら胸を張って言えるはずのことなのに、マミは今は少し迷いがあるようだった。

 もしこのままグリーフシードが手に入らずに魔力が減っていったら……そう思うと、今まで感じたことのない恐怖を感じていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 00:48:44.62 ID:4brtixiU0<> マミの家 夜



 いつもどおり夕食を食べ終わった後、食後をリビングで過ごす。

 明日も休みだからか、今日はすぐに寝る支度はしないようだった。


マミ「……かずみさん、今グリーフシード一つも持っていないって言ってたわよね」

かずみ「あ、うん。今日襲われた時に使っちゃったから」


 マミも譲れる分は持ってはいなかった。

 前からマミは魔女を倒した時、わたしに優先して回してくれていた。記憶もなくグリーフシードを一つも持ってなかったわたしを気遣ってくれてたんだ。


マミ「とりあえず今日の分はこれで浄化して」

かずみ「え? でも、そしたらマミのがなくなっちゃうんじゃ」

マミ「今日は私はそこまで使ってないわ。私も綺麗なのがなくて悪いけど……」


 マミからグリーフシードを一つ受け取って浄化する。

 でも、これで二人とも本当に今ある分しかなくなってしまった。


マミ「明日はなにがしたいかって決まってる?」

かずみ「うーん……」


 本当はあすなろに行くって話だった。でも、今の状態じゃ万全とは言い難い。

 悩んだ末、わたしはこう答えを返す。


かずみ「明日決めようかな」

マミ「そうね」


 マミはリビングのソファから立ち上がると部屋に向かっていく。

 ……その表情は、何かを決心するような重たい表情をしているように見えた。




―11日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:1個
・[20/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 00:49:25.33 ID:4brtixiU0<> -------ここまで。次回は29日(木)20時くらいからの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 21:21:59.43 ID:4brtixiU0<> ――――――



 ――――翌日、今日は休日二日目の日曜だ。



かずみ「ごちそーさま! 今日はこれからどうしようかな」

マミ「やりたいことは決まった?」


 朝ごはんを食べ終わると、わたしは鏡の前で軽く髪をとかして身支度を整えていた。

 まずはやりたいことをひとつ決めていた。


かずみ「今度はマミにこれ切ってほしいなって」

マミ「え……私そんなのやったことないわよ? 変になっちゃうかも」

かずみ「変でも大丈夫! また伸ばせるよ」


 『そういう問題かしら?』 とマミは控えめに笑う。

 魔法がなくたって髪なんていつかは伸びる。またその時もマミが一緒に居てくれればいいな……――なんて少し考える。


 鏡の前に、マミがハサミを手にして近づく。


マミ「……そういうことなら、やってみるわよ? 本当にいいのね?」

かずみ「うん。よろしくね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/29(木) 21:33:50.37 ID:RQCP1ARf0<> 虎刈りにならない事を祈る <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 21:38:45.10 ID:4brtixiU0<>

 シュキン、と髪を切る音が部屋に響いていく。

 クセのある長い黒い髪が落ちて、肩が軽くなっていくのを感じる。


 ……少しずつ短く形が整っていって、マミはその途中で手を止めた。


かずみ「……マミ?」

マミ「私じゃ前切った時とまったく同じには出来ないから、今度はこのくらいでもいいかと思ってね」

マミ「こういうのはどう? 気に入らないならもっと切ってもいいのだけど……」


 鏡を見つめた。今のわたしの髪は肩につくくらいの長さがある。

 杏子から聞いた“ミチル”はこの前までと同じような短かい髪をしていたらしい。

 わたしも昨日からこの前までと同じように短くするのしか考えてなかったけど、こういうわたし――。


かずみ「うん! いいと思う」

かずみ「じゃあそれから、それから……――――」


 わたしもマミが切ってくれた髪を気に入って、新しくなった髪型を誰かにお披露目したい気分になった。

 これからはなにをしよう?

 昨日のことがあったから、外に出るならマミにも一緒にいてもらわないといけない。せっかく今日は休みで一緒にいるんだし。


かずみ「……うーん、でも今日はホントにパトロール行かなくていいのかな?」

マミ「魔法少女のことは今は一旦忘れてもいいのよ? 魔法を使わないなら魔力も気にすることないんだから」

マミ「昨日もかなり回ったし使い魔も倒しておいたんだから、すぐには出てこないと思うわ」

かずみ「そっか、そうだね」



1どこかに行く(万全ではないので、あすなろ以外)
2織莉子に連絡してみる
3誰かを家に誘ってみる(※連絡先を持っている織莉子かあすみだけ)
4家で料理の研究
5自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/29(木) 21:50:58.15 ID:RQCP1ARf0<> 1駅前の屋台街
こんどこそ美味しい物食べようよ
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/29(木) 21:59:13.34 ID:xBU5R6rAO<> ↑
行く途中キリカも魔女狩りに参加させてあげたいとマミに頼む
このままだとキリカ魔女になっちゃうかも
私たちも余裕ないけどキリカはもっと余裕ないんじゃないかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 22:41:49.91 ID:4brtixiU0<>

かずみ「あーっ! そういえば昨日はあの偽物さんに買い物邪魔されたんだった!」

かずみ「今度こそ美味しいもの食べたいな。駅前のほう行かない?」


 あれから昨日は避けていた場所。

 とはいっても、また同じ場所で会うとは限らないだろう。……どこで会うかわからないからこそ怖い。


マミ「いいわね、行きましょうか」


 でもマミがいるから安心できる。

 あの偽物はマミのとこよりも自分といるべきだって言ってたけど、そんなのわたしが決めることだ。

 わたしはやっぱり今のままのこの街で暮らしていたかった。


 もし叶うなら、あすなろには帰らずにずっと――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/29(木) 23:04:31.56 ID:4brtixiU0<> 繁華街


かずみ「わぁ! 見て見て、これすごいおいしそう!」

マミ「本当。一人だと我慢して素通りしちゃうことも多いけど、こうして見ると美味しそうなものがたくさんあるわね」


 そろそろ朝からお昼の時間に近づいてきて、みんなお腹が空いてくる頃。

 少し見回すだけで食欲を煽るものがたくさん目に入って、通りがかるといい香りが嗅覚を刺激する。

 それに、友人や家族、もしくは一人で美味しそうに食べ歩く人たち。


かずみ「あれ買ってきていい?」

マミ「いいけど……って、先にいっちゃった」

かずみ「マミもはーやくー! 二つ買うから!」




買うもの
・自由安価

 下1レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/11/30(金) 00:03:37.09 ID:dVFTF0Ye0<> ---ここまで。次回は1日(土)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/11/30(金) 03:51:44.30 ID:oQ023dt50<> 納豆コーヒーゼリー生クリームクレープ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 12:13:27.68 ID:wcjZ0Q9BO<> ↑のクレープ、下北沢に本当にあるんだね
ちょっと食べて見たいかも <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 18:33:56.39 ID:7OeEoRW+0<>
マミ「クレープかぁ……いいかも」

かずみ「すいません! 納豆コーヒーゼリー生クリームクレープ一つ!」

マミ「えっ!」

かずみ「あ、マミも同じの食べる?」

マミ「いやぁ……えっと、そんなのあるの?」

かずみ「あるよ。さっき注文してた人もそれ頼んでたんだから」


 若干引き気味な顔をしているマミがベンチでクレープを食べている人たちに目を移す。


かずみ「これは期待できると思って。面白いものがあるんだねぇ」

マミ「期待していいのかしら……」

*「はいっ、うちの目玉ですよ!騙されたと思って!」グッb


 店員さんが自信満々の笑顔で言う。


かずみ「ねっ」グッb


 その迫力に押され、マミも同じものを頼むことに。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 18:46:22.83 ID:wcjZ0Q9BO<> 本当にどんな味なんだろうか……
生クリームが糸引いたりするのかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 19:45:23.61 ID:7OeEoRW+0<>

マミ「……意外と普通にコーヒーゼリーの香りがするわね。あ、でも糸引いてる。納豆が出てきたわ」

かずみ「納豆ってこういう食べ方があるんだねえ」デローン


 変わったクレープを受け取って早速かぶりついてみると、中からは濃厚な生クリームとコーヒーゼリー、少し遅れて納豆が主張を始める。

 ベンチも人がいっぱいなので、食べながら適当に移動していた。


かずみ「やっぱり一緒に食べるのはいいね!」

マミ「私も一人だったらこういうのは挑戦できなかったと思うわ」

かずみ「次はなに食べよっか〜?」



 食べ歩きながら次に食べたいものにも目を付けておく。

 そうしていくつか食べ物を買い歩いて、それから喉の渇きを潤すために喫茶店に入った。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 20:01:52.16 ID:7OeEoRW+0<>

 お店でもマミはいつものように紅茶を飲んでいる。

 わたしもマミが勧めるので同じものを頼んでいた。たしかにおいしい。


マミ「ここのお茶は気に入っていてね、参考にしているのよ」

かずみ「言われてみればマミの家で飲むのと少し香りが似てるかも。わたしはマミや織莉子みたいに紅茶のことは詳しくないけど……」

マミ「大体めぼしいものは食べ尽くしたかしら? このあたりはよく通るけどこんなに食べ歩きしたのははじめてよ」

マミ「次はどうする? なにか買いたいものはある?」

かずみ「ショッピングもいいけど、なんかもっと遊んだりしたいな」


 お店の窓から見える反対の通りを指さす。

 ぴかぴかとした色彩が派手に光る、繁華街の中でもひときわ賑やかなゲームセンターだった。


マミ「ゲームセンター?」

かずみ「プリクラとかとってみたいなって! 思い出を残したいんだ」


 まだマミとは一度も写真を撮っていない。

 それどころか、わたしは今まで誰かと写真を撮ったことがなかった。


 思い出。……それを求めてしまうのは、いつまでもはここにいられないことをわかっているからだろうか。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 20:31:22.55 ID:7OeEoRW+0<>



 ――――帰り道、マミと写ったプリクラと戦利品のお菓子を抱えて、

 わたしたちいは賑やかな通りから家のある住宅街へと戻っていた。


かずみ「今日は楽しかったね! たくさんお菓子が手に入ったし!」

マミ「ええ。私もこうして遊ぶのはどのくらいぶりかしら……」

かずみ「前は友達と?」

マミ「友達……か」


 何気なく聞いてみると、マミは少し言葉を詰まらせる。


マミ「違うかもね。昔組んでた頃の佐倉さんとよ」

かずみ「違うの? 今はそうかもしれないけど、昔は友達だったんでしょ?」

マミ「相手はそうは思ってなかったかも。あくまで師匠と弟子だったから」

かずみ「……師匠と弟子でもわたしたちは友達だよ」

かずみ「明日からはまたパトロールとか訓練とかするんだよね。それってやっぱりキリカも参加させてあげることできないかな」

かずみ「杏子が言ってたんだけど、縄張りがなくなったら新人じゃむずかしいって。わたしたちも余裕ないけどキリカはもっと余裕ないんじゃないかな?」

かずみ「このままだと魔女になっちゃうかも……」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 21:22:17.22 ID:7OeEoRW+0<>

マミ「どうかしら。魔法を使わなければ魔力も減らないわよ。だってあの子やりたくないんでしょう?」

マミ「もしかしたらむしろ、本当は今もここで狩ってるってこともあるかも。そうやって腹いせに私達に魔女が回らないように……」

かずみ「そ、そんな……」


 わたしだって魔女を見つけられない理由は考えたりした。今は魔女が少ないのかもしれないけどそれだけなのかって。

 あすなろの魔法少女のこともあるし、織莉子とキリカの間にあったすれ違いのこともある。

 でも、あまり誰が悪いんじゃないかって疑心暗鬼になるのはよくない気がする。


かずみ「……でも、魔法を使わなくても『呪いを生む』ことはあるかも」


 前に会った時からキリカは荒れていた。

 魔法少女は心が落ちこみすぎたらソウルジェムに呪いを生むことがあるって。……それを思い出した。


マミ「本人がやる気がないのに私たちにはどうにもできないでしょう。美国さんのことも悪く言ってたしね」

マミ「たとえ魔女が見つかって一つグリーフシードが手に入ったとしても、分けてあげられる分なんてないわ」


 私達と織莉子、あすみも入れたら五人分。

 魔女を倒すのに使う分の魔力もある。みんなで分けるには心許ない。――そして、その中には私達よりも魔女を倒している人がいるという疑念。


 ……でも、仕方ないとはいえそんなことを言うのはやっぱりマミらしくないって思った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 21:57:54.75 ID:7OeEoRW+0<>


 わたしが初めて目を覚ました日に見たものを思い出す。

 風見野のホテルで会った時、引き出しいっぱいに入っていたグリーフシードの山。


かずみ(あすみちゃんだったらいっぱい持ってるかも)

かずみ(簡単に人に譲ってくれないとは思うけど、ダメ元で頼んでみたら…………)


 同時に、私達が余裕がないのはあすみにも原因があることも思い浮かんだ。

 あすみは他人のことを考慮して魔女を狩ったりはしないタイプだろう。あのグリーフシードの山もそうして手に入れたものなの?


 でもそれは考え方の違いだ。マミの話では魔法少女の中では私達みたいな考え方のほうが特殊らしかった。

 キリカから聞いた話も一瞬頭を過ぎった。


 『――利益でも提示されなきゃ動かないタイプだよ、あすみも』


 頭に浮かんだそれを否定する。

 織莉子もあすみもキリカも、やっぱり私は誰のことも疑いたくない――――。



―12日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:1個
・[20/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 22:32:18.28 ID:7OeEoRW+0<> ――――――


 朝、ごはんを食べ終わるとマミは学校に行く前に準備を整え始める。

 その横で身支度をはじめるわたしを見てマミが尋ねてきた。


マミ「かずみさんもどこかへ行くの?」

かずみ「今日はわたしも途中までついていこうかなって」

マミ「……本当に大丈夫なの? あまり一人で出歩くのはよくないわ」

かずみ「大丈夫、行先にも魔法少女がいるから。パトロールはじまる時間になったら一緒にいくよ」


 マミは行先について思い当たったようで、心配そうな顔をする。


マミ「神名さんのところ?」

かずみ「この前も行ったことあるから」



 支度を終えて二人で家を出る。

 それから通学路の途中でマミと別れていった。



マミ「気を付けてね」

かずみ「うん!」


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 23:06:59.12 ID:7OeEoRW+0<> 千歳の家



 ……玄関のチャイムを鳴らすとあすみが出てくる。今日も一人のようだった。



あすみ「おー? いらっしゃい、また飯作りに来たの? それにしては早いと思うけど?」

かずみ「おはよう、あすみちゃん。ご飯も作るけど、今日はちょっと頼みたいことがあって……」


 内容が内容だけにいきなり言うのも気が引ける。

 言い方によっては即『帰れ』って言われかねない。


あすみ「何? 訓練かパトロールのこと?」

かずみ「……まあ、そうなるのかな。パトロールしてるんだけど、最近全然魔女を見つけられなくて」

かずみ「この前のあすなろの魔法少女とか、使い魔とも戦ってて魔力が余裕がないの」

あすみ「…………」


 あすみは探るように静かにただその先のわたしの言葉を待つ。


かずみ「それでお願いなんだけど……ご飯じゃ代わりにならないかもしれないけど、出来る事なんでもするからっ!」

かずみ「グリーフシード分けてくれないかな?」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 23:11:03.54 ID:wcjZ0Q9BO<> 帰れ!とかいわれそう <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/01(土) 23:18:27.52 ID:7OeEoRW+0<>

 頭を下げる。

 あすみはいつもみたいに薄い笑みを浮かべていた。


あすみ「ふーん? 今なんでもするって言った?」

かずみ「で、出来る事なら! 頑張るよ!」

あすみ「じゃあ服を脱げ」


 どことなく嫌な予感を感じながらもそう言うと、耳を疑う発言が飛び出してきた。

 いや、やっぱりといえばやっぱりって思ったけど……。


かずみ「…………えっ?」

あすみ「なーにー?そのくらいのことも出来ないの?なんでもするって言ったじゃん!」

かずみ「や、やるから! 女の子同士だし恥ずかしくないもんね」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 23:26:47.38 ID:wcjZ0Q9BO<> 玄関先で裸になるのは……
もしここでゆまちゃんが忘れ物取りに戻って来たらカオスになりそう <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 00:00:30.76 ID:eZ58WB6h0<>
かずみ「って、中に入ってからだよね?」

あすみ「なに甘えたこと抜かしてんだこら!初対面裸だったくせに!ほら早くそこに四つん這いンなるんだよォ!」

かずみ「ええええ!?」

あすみ「ばっちり撮ってやるからさぁ」


 スマホのカメラを構えるあすみ。

 もしかしてわたし、完全に遊ばれてる?


あすみ「――よし、じゃあ次は三回まわってワンと鳴いてね?」

かずみ「わ、わんわんっ!?」

あすみ「お手」

あすみ「お座り」

あすみ「おかわり」



 …………解放されたのは散々な目にあってからだった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 00:19:56.00 ID:eZ58WB6h0<>

あすみ「はいお駄賃。そんなに欲しいなら一つだけくれてやるから感謝しな?」

かずみ「あ、ありがとう……」


 グリーフシードを放り投げられる。

 ……こうして無茶ぶりの代わりに一つのグリーフシードを手に入れたのだった。


かずみ(まあでもこれで、あすみちゃんが満足してくれたなら……)


あすみ「待て」

かずみ「わんっ!?」

あすみ「……よし」

かずみ「……くぅーん」


かずみ(最後まで気を抜けない……)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 01:00:01.21 ID:eZ58WB6h0<>

あすみ「てかさぁ、グリーフシード無いなら使い魔倒すのやめれば?」


 あすみは無茶なことを言ってたさっきまではニヤニヤしてたのに、今は冷ややかにわたしを見下ろしていた。

 まるで、『そこまでする?』とでも言いたげに。


 あすみからすればこの宝石一つにそこまでプライドを折る価値はない。


かずみ「だけど……でも、街の平和を守るためのパトロールなんだし」

あすみ「大体『パトロール』ってなにそれ。魔女を倒すのは私達にとっちゃただの『狩り』に過ぎないんだよ?」

あすみ「ソレがなくなったら魔女になって死ぬってのに。だから今もここまで必死こいてたんでしょ?」

あすみ「やってること的外れすぎてウケる」


 あすみは冷笑を浮かべて、それからなんともなかったようにリビングのほうに向かってソファに腰掛ける。

 わたしもそれを追って廊下の奥へ入っていく。



1今日のパトロールについて
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/02(日) 01:01:42.43 ID:U42x3WDV0<> 1

安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/02(日) 01:17:52.52 ID:kqQVbhyX0<> 上+キリカのことも相談、あと今日の料理のりクエストを聞く

キリカの事なんだけど、マミはキリカは縄張りで魔女狩りすること許してなくて
このままだとキリカのSGに穢れが溜まっていつか魔女になっちゃうかもしれないのが心配で・・・
キリカも大切な友達だからそんな事になって欲しくないの <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 18:46:19.61 ID:eZ58WB6h0<>
かずみ「……あすみちゃん、今日のパトロールもついてきてくれるんだよね?」

あすみ「ついてくだけついていってもいわよ。でも使い魔は他の人たちだけでやってくれる?」

かずみ「あ、うん。それは無理にとはいわないけど」

かずみ「……わたしたちが使い魔を倒すのって、どう思ってる? 迷惑だって思ってる?」

あすみ「余計なことを、とは思ってるよ。でもそれが巴マミのやり方なわけじゃん」


 あすみはうんざりといったように話す。

 やっぱり良くは思ってないようだったけど、あすみはこう見えて争いを起こさないためのルールは守る人だ。


かずみ「それで……今日は何か食べたいものある?」

あすみ「別に何でもいい。またなんかよくわかんない洒落たの作るんでしょ?」

かずみ「なんでもいいならわたしが決めるけど、冷蔵庫には何があるのかな……?」


 あすみのいるソファの横を過ぎて、キッチンに向かう。

 カウンターの奥のほうに回りながらその姿を見ていた。


 ……ずっと見滝原にいた、ベテランのマミの力がそれだけ強いってことなのかもしれない。

 もちろんわたしとしても争いになるのはやめてほしい。――でも。


かずみ(――でも今はわたしたちもまた何度も使い魔と戦ってたら持たない。考え方の違いで済ませていいの?)

かずみ(あすみちゃんにも協力してもらえればって思うけどムリそうか)
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 19:33:26.97 ID:eZ58WB6h0<>

 一旦思考を切り替えようと、目の前の冷蔵庫の中身を見回していく。

 前にも思ったけど、変わったものはないけど食材はそこそこ入っていた。


 そんな時、リビングのほうからチャイムが聞こえて、あすみが立ち上がる。


あすみ「……あーごめん、やっぱ今日いいわ」

かずみ「えっ!?」


 後ろを振り返る。

 あすみが廊下に戻ってくると、その後ろには……キリカもいた。制服姿だ。

 手には制服に似合わない買い物袋も持っている。


キリカ「なんでいるんだよ」

かずみ「キリカこそ! 学校は!?」

あすみ「おさぼりらしいよ? いけないコだね」

あすみ「まあ許すわ! 今日は約束を果たしにきたようだからね」

キリカ「なんで君に許されなきゃいけないことになってるのか」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/02(日) 19:39:01.17 ID:qRguG5MC0<> キリカ無事だったか
また織莉子に始末されてないかと心配だった <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 20:23:11.21 ID:eZ58WB6h0<>

 キリカはソファの隣に鞄を置いてこっちのほうに向かってくる。

 キッチンの前で向かい合って立ち止まった。


かずみ「何を作るの?」

キリカ「生姜焼き」

あすみ「さあアンタは帰った帰った」

かずみ「えぇー」

キリカ「別に材料はあるんだからいいんじゃない? 一人増えても変わんないよ」

あすみ「アンタねぇ、こいつが普通の一人分で済むと思ってるの?」

かずみ「ちょっとは押さえるよ!? そこは!」



かずみ(……この二人って何かあったのかな?)


 面識があるのは知ってたけど、それ以上はあんまり想像がつかなかった。

 とりあえずキッチンから出て、すれ違いに入っていった二人の様子を眺めていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 21:00:41.18 ID:eZ58WB6h0<>

かずみ「約束ってなんなの? 生姜焼き作るのが約束?」

キリカ「この前いろいろあって料理本あげたんだけど、失敗したっていうから」

あすみ「そんな人聞きの悪いこと言ってないでしょー? ちょっと理想通りじゃなかっただけ」

キリカ「それ何が違うのさ」

かずみ「あすみちゃんもやっぱ料理するんだね。みんなで見てようか」

あすみ「……じゃーまあ勝手にしたら」


 キッチンにあんまりいても邪魔になっちゃうから、カウンターから身を乗り出して覗いてみる。

 あすみが料理するのはわかってたけど、それよりキリカもするんだってことにちょっと関心を持った。


かずみ(生姜焼きかぁ……。そういうののほうがいいのかな?)


 二人は何度か作りながら味を見ている。

 あすみがかなり厳しく注文を付けてるみたい。 

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/02(日) 21:02:28.57 ID:JHOe6H0H0<> かずみはイタリアン以外のも作れそうだからアドバイスとか出来そう <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/02(日) 21:33:01.42 ID:kqQVbhyX0<> かずみなら失敗分の処理係の担当になれそうw <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 21:37:36.83 ID:eZ58WB6h0<>

かずみ「わたしにも味見させてよ! おなかすいてきた!」

あすみ「なんのための味見かわかってるー? まだ出来てないからね。そっちのなら食べててもいいよ」


 調理をしている横で先に置いてある皿を手渡される。

 まだ温かくていい匂い。これは完成じゃないんだろうか?


かずみ「十分美味しそうなのに。まだ何か足りないの?」


 そう思ってキッチンを見てふと気づく。もしかして、使っている材料がかなり少ない?


 キッチンの周りに置いてある調味料は、しょうゆと砂糖、それからチューブの生姜だけ。

 和風の味付けの基本っていわれるとそんなに詳しくないけど、これだけで作れるのかな?

 イタリアンじゃオリーブオイルとニンニクと鷹の爪が三種の神器になるように、料理ごとに基本になる味付けはある。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 22:24:21.96 ID:eZ58WB6h0<>

キリカ「……やっぱ料理酒すらないんじゃ難しいって」

あすみ「仕方ないから買い足してくるか? それ入れたからって理想に近づくとは限らないんだけどなぁ」

かずみ「どんなのを作りたいの?」


 わたしにお昼を聞いた時はなんでもいいって言ってたけど、生姜焼きには相当こだわりがあるようだった。

 美味しいものが食べたいなら調味料を買い足してくればいい。でもそれだけじゃないらしい。


あすみ「……前食べた味、とだけ言っておく」

あすみ「でも家にあるもので作らなかったらもったいないじゃん。使うかもわからないし。『さしすせそ』っていうじゃない?」

かずみ「砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ?」

キリカ「別にあっても困ることないって」

あすみ「そーいえばそこになんかの酒が入ってたわね。使うなら使ってもいいよ」

キリカ「本当にそれ使って大丈夫……?」

かずみ「食べていいやつあったらわたしがどんどん食べるよ!」


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 23:15:47.96 ID:eZ58WB6h0<>

 それから試行錯誤したのちに、みんなで少し遅くなった昼食を食べていた。

 わたしは大分早くから食べてるけど、最後に完成したのは『理想の味』に出来たのかな。


かずみ「美味しい生姜焼きだね。材料あれだけでも上手く作れるって知らなかったよ!」

あすみ「まあ今日のことに関してはあいつを褒めてやったら」

キリカ「次からは君が作るんでしょ。美味しいって言ってもらえるといいね」

かずみ「誰かに作るの?」


 しかし、聞いてみるとあすみは良くない反応を返す。

 まるで隠したいものに触れられそうになったみたいな……。


あすみ「……猫、喋りすぎ。鳴きすぎよ」

キリカ「鳴きすぎってなんだよ!」

あすみ「あ、そういえば今日はかずみが犬になったんだった! あれもっかいやってよ」

かずみ「わ、わんっ!?」

キリカ「犬……?」


 ……条件反射で鳴いてしまった。

 そういえばキリカ、杏子のこと犬って呼んでたっけな。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/02(日) 23:35:55.14 ID:kqQVbhyX0<> 杏子が野良犬でかずみが飼い犬? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/02(日) 23:42:00.33 ID:eZ58WB6h0<>

かずみ「〜〜そうだった、キリカは魔力まだ大丈夫?」

キリカ「魔力? ……別に、まだそこまで使ってないし」

あすみ「アンタならそうだね、裸ネコミミにでもなって猫の集会にでも混じってくればグリーフシード恵んでやってもいいよ」

キリカ「いるか!」


 あすみは茶化したように言う。


かずみ「……マミはああ言ってたけど、わたしにとってはキリカも大切な友達だから」

かずみ「わたしはキリカが悩んでることも知ってるし」

キリカ「かずみ……」

かずみ「だからキリカにはわたしみたいな思いは……! うぅっ、そんなふうに汚れさせるわけにはいかないよ!」

キリカ「な、なにをされたんだろう……ていうかやらないから」

あすみ「猫のはもう写真に収めてあるんだけどね」

キリカ「」ビクッ



1あすなろの魔法少女について
2自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/03(月) 00:09:01.60 ID:FcDd5dB+0<> --------ここまで。次回は5日(水)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/03(月) 00:09:02.57 ID:IluVJJHl0<> 1+キリカに織莉子に『利用された』事について詳しく聞く

なんか不思議な魔法?を使ってきたの。偽GSを使ったりソウルジェムを濁らせる能力をもってるし
襲われた時は杏子が助けてくれたから何とかなったけど、杏子のソウルジェムも急に濁って危なかったから2人とも気をつけてね?

キリカ、織莉子に利用されたってどういうことなのか詳しく教えて?
マミは織莉子のことを信用していて聞く耳持たないって感じだけど、私はキリカが嘘であんな事を言ってるとは思えない
最近魔女が全然狩れてなくてマミも私も疑心暗鬼になってるのかもしれないけど、織莉子が私達を利用するために近づいたのなら・・・
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 00:28:08.55 ID:mh7EiNJuO<> ↑
追加でキリカに杏子と仲直りしないかと話す
初対面があんな感じだったから反目しちゃってるだけだよ。
二人とも面倒見が良いし甘いもの好きだし話せばきっと話が合うと思うよ?

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/05(水) 21:16:38.02 ID:VdlQT35K0<>

 キリカは引き気味にしてたと思ったら、いつのまにか白く固まってしまっていた。

 それより今伝えきゃいけないことをハッと思い出す。


かずみ「そうだ、キリカにも伝えておかなくちゃ!」

かずみ「今あすなろから魔法少女が来てるの。一応知り合いの魔法少女には伝えてるんだ。目的はわからないけどわたしを浚おうとしてるみたい」

かずみ「何人いるのかもわからなくてこの前また襲われて……。不思議な魔法を使ってたからキリカも気をつけて」

キリカ「不思議な魔法?」

かずみ「他の魔法少女の魔法を使ったり、グリーフシードみたいな形のもので街の人を魔女にしたり、ソウルジェムを濁らせたり……」

かずみ「杏子が助けてくれたから何とかなったけど、危なかった」

かずみ「だから、ごめんね……キリカとあすみちゃんもわたしと一緒にいたら狙われちゃうかも……」


 テーブルの上に置いた拳をぎゅっと握った。わたしといるだけでみんなを巻き込んでしまうかもしれない。

 厄介事運んできて迷惑だって思われちゃうかな。


あすみ「どっちみちその前からあの痴女は私に敵意向けてたじゃん。あれの仲間でしょ?邪魔するならそれ相応に対処するだけだから関係ないね」


 あすみはなんでもないことのように言う。その姿は自信に満ちていた。

 怖かったり不気味だったりするように見えることもあるけど、今はすごく頼もしく思える。思えば私が最初に助けてもらったのもあすみだっだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/05(水) 21:43:15.08 ID:VdlQT35K0<>

 次にわたしはキリカのほうを見やった。


キリカ「……おかしいよ」


 キリカはぽつりとつぶやく。

 キリカは魔女との戦いも嫌がってたし、あすみや杏子ほど経験や実力に自信があるわけじゃない。


キリカ「なんで謝るの? 別にかずみのせいじゃないじゃん」

キリカ「前泣いてた時のことと関係あるの? そいつら関係ない人にまで魔法使ってるんでしょ。かずみの意思を無視して襲ってくる奴らが絶対悪いよ」

かずみ「……うん! 二人ともありがとう」


 ……キリカが怒ったのはわたしに対してじゃなかった。


 今度こそ不満をぶつけられるかと身構えていたが、そんなのは杞憂だった。

 こうして改めて考えてみると、わたしの周りは恵まれてるなって思う。

 なのにグリーフシードや縄張りのことが絡むとみんなすれ違ってしまうのはどうしてなんだろう。 


キリカ「……けど、あすなろか。もしかしたら私、そいつ知ってるかも」

かずみ「えっ!?」


 キリカは私を励ましてくれた後、どこか思い当たることがあるらしく難しい顔をして考え込んでいた。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/05(水) 22:42:53.71 ID:VdlQT35K0<>
キリカ「マミからここで狩るのやめろって言われた後、一度あすなろに行ったことあるんだよね」

キリカ「その時とこっちでも一回、変な魔法少女に会った。素顔も素性もわからなかったけど」


 それを聞くとわたしも心当たりを感じた。

 この前の魔法少女はユウリの『変身』の魔法を奪ってユウリの姿になっていた。素顔がわからないというのが一致している。


かずみ「何かされた!?」

キリカ「私も最悪なちょっかいをかけられたけど、直接何かあったのは織莉子のほうだと思うよ?」

かずみ「!」


 話の中でキリカの口からその名前が出たことに驚く。

 キリカも織莉子と何かあったのは本当なんだ。でもなんでここで織莉子が?


かずみ「……よければ織莉子と何があったのかも聞かせてくれないかな?」

キリカ「君はあいつより私を信じてくれるの?」

かずみ「聞かないとなにもわからないよ。この前は話聞く前に遮っちゃったけど、もしすれ違いとかあるならなくしたいし!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/05(水) 22:53:39.13 ID:VdlQT35K0<>

キリカ「…………」

あすみ「…………」


 キリカは暗い表情で悩む。

 その隣で、あすみもいつものポーカーフェイスでテーブルに肘をついて私達を見守っていた。


キリカ「私が他の魔法少女襲ってたっていうのは知ってるでしょ? その前に八つ当たりであいつのこと襲ったんだよね」

キリカ「でも負けちゃってさ。おまけに結構やられ方も酷くって」

かずみ「織莉子からはパトロール中に偶然会ったとは聞いた……その前ってことは、その時は他と違うの?」

キリカ「うん。その時はもう死ぬかもって思った。でも私を助ける代わりに駒になれってさ。そこからは魔法少女を襲う理由も目的も変わるよ」

かずみ「……駒?」

キリカ「あいつのためにグリーフシードを調達してくるのが目的になった。まあ、戦ってる最中に手柄横取りしたり、直接脅かして奪ったり」

キリカ「でもそんなことしてたら、そこのあすみに返り討ちにされちゃって」


 あすみは肘をついたまま薄く笑みを浮かべる。


あすみ「そりゃ手当たり次第に襲っていつまでも勝てるわけないじゃん?」

あすみ「この縄張りには私やマミみたいのが居るんだし、最近急増したとかいう新人共が相手だってわからない」

かずみ「じゃ、じゃあキリカの言ってることはホントなの!? 織莉子がキリカに魔法少女襲わせてグリーフシードを集めさせたって!」


あすみ「それはどうかな」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/05(水) 23:04:45.90 ID:VdlQT35K0<>

 ――あすみは変わらない調子で言った。読めないポーカーフェイスだ。


キリカ「……え?」

あすみ「たしかに私は襲ってきたこいつを倒して巴マミに突き出したけど、だからって私に証言求められても知らないよ?」

あすみ「美国かこいつか、どっちを信じるかはアンタ次第だよかずみ」

あすみ「でもアンタとマミは美国と仲間なんだよねぇ? それ裏切っちゃっていいの?」

キリカ「…………」


 キリカは予想外のことが起こったみたいに目を見開いたままテーブルに視線を落とす。

 たしかに織莉子とは仲間で、いっぱい訓練もパトロールもお茶会もしてきた。そんなに簡単に疑えない。

 だからって、キリカの言ってることが嘘だって決めつけていいの? だってこんなの――――誇張やすれ違いになる余地もない。


 襲ってきたからって、キリカに死にそうになるくらいの怪我を負わせたの? それに駒? グリーフシードのために魔法少女を襲わせた?


キリカ「……わかってたよ。そんなに簡単に味方をしてくれないことは」

あすみ「話を続けなよ。まだあすなろに繋がってないよ」

キリカ「魔法少女襲ってたんだけど、あすみには負けたしマミからは活動止められるしもう続けられないでしょ?」

キリカ「だから今度はあすなろに移って襲えって言われたんだ。そしたらあすなろに着いたところでまた命令されたんだけどね……」

キリカ「……そいつが偽物だった。よくわかんないけど、“プレイアデス聖団”とかいうのに嫌がらせをしたかったらしい。魔法少女チームを壊滅させて縄張り奪えって」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/05(水) 23:06:03.93 ID:6aJOI6qz0<> あすみは織莉子の目的は知ってるはずだけど、どこまでバラすかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 23:14:46.83 ID:g9QlrG24O<> かずみって嘘を直感的に見抜けるんじゃ?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/05(水) 23:37:17.12 ID:VdlQT35K0<>

かずみ「プレイアデス!?」

キリカ「おかげで変な魔法少女には殺されそうになるし散々だったよ。さすがにムカついて織莉子に言ってやったんだけど、そこで言い合いになって縁切った」

キリカ「その話聞いてもまだ同じ命令してきたからね。あいつは人殺しの魔法少女相手にも何とも思ってないし、本当の目的はグリーフシードだけじゃない」

かずみ「じゃあ、本当の目的ってなんなの……?」

キリカ「わかんないよ、頑として教えられなかったし。でも人殺しすらなんとも思わないような駒が欲しかったんだ。それは否定しなかった」

キリカ「そのプレイアデスもヤバいよ。助けてくれたかと思ったけど、ソウルジェム奪われそうになったからね。あの街ヤバい奴しかいないんじゃない」

かずみ「…………」


 “プレイアデス”は私を造った人たち。

 でもその話を聞いたら怖くなった。――その人たちのことが。あすなろの街が。


 この前の魔法少女はキリカの話に出てきた魔法少女と同じだろう。同じように誰かの姿を借りて出てきたらしい。


あすみ「まだその話が本当とは限んないかもよー?」

かずみ「で、でもっ! この前見た魔法少女とも合ってるし、こんな話作れるかな?」

あすみ「嘘を吐くなら真実を織り交ぜて話すのは常套。例の魔法少女に会ってることは本当かもね」

かずみ「あすみちゃんは織莉子を信じてるの?」

あすみ「私は中立の立場でアドバイスしてるだけだけど?」



 ……ああもう、頭がこんがらがってくる。



1自由安価
2信じる、と伝える
3まだわからない

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 23:52:06.84 ID:GU5Q49Co0<> 3まだわからない
織莉子についてもっと質問してみる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/06(木) 00:35:35.30 ID:oxMTNJwj0<> ----ここまで
次回は8日(土)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/06(木) 00:52:07.74 ID:brFz0IX40<> 3
キリカと話してる時の織莉子の態度とかを詳しく聞く

私達と一緒にいる織莉子は冷静で激する様子なんてなかった、マミとは紅茶の話をしてる時は楽しそうだった
でも、織莉子の笑顔はなんか嘘っぽい感じがした。
キリカが美味しいものを食べた時の本当の笑顔なんかじゃない、どこか作り物のようなそんな感じがした <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/08(土) 20:24:24.36 ID:mr/AGVLf0<>
かずみ「キリカの前では織莉子は悪い人だったの?」

キリカ「さっきの話からどう取るかは自由だけど、私は本当のことしか言ってないよ!」


 誰かを犠牲にしてまでグリーフシードを求める姿勢。

 それは、マミが味方として認める、わたしたちと一緒にいる織莉子とは正反対だった。


かずみ「じゃあ、キリカは本当の織莉子を見たことがあるの?」

キリカ「……それはどういう意味? 本性ってことなら、マミの前では相当取り繕ってたけど?」

キリカ「いつも一方的な命令ばっかで、あんなに穏やかに笑いながら話してたことなんてないし!」

かずみ「キリカにはそう見える?」


 そう尋ねると、キリカはどういう意味かわからないって顔をした。


かずみ「キリカとは紅茶って飲んでた?」

キリカ「は? そんなことなんの関係が……」

かずみ「織莉子、すっごくお茶に詳しいの。マミと紅茶の話をしてる時は楽しそうに話してたよ」

あすみ「ああまたお得意のその謎理論。紅茶も食べ物に入るんだ?」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/08(土) 21:39:58.53 ID:mr/AGVLf0<>
かずみ「まだわからないけど」

キリカ「お茶出す時はいつも紅茶だったよ。家に行くと大体紅茶飲んでた」

かずみ「そっか」


 否定しにかかってるわけじゃないことがわかるとキリカは答えてくれたけど、まだ納得いかないようだ。

 キリカは焦れたようにわたしに詰め寄る。


キリカ「じゃあどっちを信じるの?」

あすみ「それアンタ一人で決められることかな? 巴マミに相談したところであいつが信じないなら何も変わらないよ?」

キリカ「大切な友達なら信じてよ。誰に対しても言うような八方美人ならいらない!」

あすみ「これからも三人仲間としてやってくのに、一人疑心抱いたままでいいの? しかもさっきの話が全然違ったら?」

かずみ「たしかにマミに話しても受け入れないと思う」

かずみ「わたしだって織莉子のことも……キリカのことも、どっちかが嘘ついてるなんて疑いたくない。どっちも友達だって思ってるから」

かずみ「でも、マミのことは心配なの。もしかしたらマミがひどい目にあうんじゃないかって――――」


 ――その時、あすみが俯いてどこか一点に視線を向ける。携帯の短い電子音だ。

 あすみは携帯を取り出して私達にその画面を見せる。


あすみ「……パトロール、今日やらないってさ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/08(土) 22:22:17.54 ID:mr/AGVLf0<>

 食べ始めたのは遅かった。それからもみんなもうとっくに食べ終わって時間が経っていた。

 あすみが空の食器を下げ始める。……時刻を確認してみると、いつのまにか学校の終わる頃になっている。


かずみ「なんで? 今は魔力がないんだから、パトロールしなくちゃ……」

あすみ「魔力がないからじゃない? 魔女と戦う前に使い魔と戦ったら結局減るでしょ」

あすみ「ほら、そろそろ行った行った。集まりがないなら私はここでゆっくりさせてもらうよ」


 片づけをしながら素っ気なく言う。

 織莉子はわたしの相談に乗ってくれた。あすみが今わたしたちと活動してるのも、織莉子がつれてきてくれたんだ。



 ……わたしはどこか違和感を覚えていた。



かずみ「……うん。じゃあそろそろ帰るね」

キリカ「ていうかさっきから聞きそびれてたけど、髪それウィッグ? エクステ?」

かずみ「ううん、本物だよ。本当はもっと長かったんだけどマミが切ってくれたの」

かずみ「あとさ、私はキリカのこと本当に友達だと思ってるから! 今日の話も信じてないわけじゃない」

かずみ「それと杏子とも仲良くしてよ。きっと最初が悪かっただけで、二人とも面倒見が良いし甘いもの好きだし話せばきっと話が合うと思うよ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/08(土) 22:38:41.05 ID:mr/AGVLf0<>

 ――――二人に挨拶をしてあすみの家を出ていく。

 ――――すれ違いに、小さい女の子の姿が目に入った。



かずみ(……あすみちゃんの家に入った?)




――――



あすみ「……なんで私がアンタとウシ乳AV女の関係知ってることかずみに言わなかったの?」

キリカ「今度はその下品な例えは誰?」

あすみ「一人しかいないじゃん! アンタの元ご主人様で、アンタと巴マミより乳のデケー奴!」

キリカ「そんなの……あんたに否定されたら終わりじゃないか。悔しいけどあんたに口の上手さで勝てる気はしてない」

あすみ「猫、アンタはかずみに信じてほしいって言ったけど、その割にアンタも人のこと信じてないよね」

あすみ「ていうか、他人にあんまり期待してないでしょ? 誰かが助けてくれることなんてないって思ってる」

キリカ「えっ?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 00:03:56.77 ID:GONJCl/j0<> ――――
――――
放課後・見滝原中学校校門



 学校帰り、校門を出るとマミは知り合いの姿に駆け寄っていく。


マミ「美国さん」

織莉子「ごきげんよう。ちょうど学校が終わったところかしら?」

マミ「どうしたの? わざわざこっちのほうまで来て。白女からだと近くはないでしょう?」

織莉子「特に理由はありませんわ。どうせこの後パトロールだから、こっちに寄ってみようかと思ったの」


 周りには他にもたくさんの見滝原の生徒が帰り道を歩いている。

 織莉子はマミと話しながら、それを気にするようにも目を向けていた。


マミ「もしかして、気になる? この前話したイレギュラーの魔法少女の話」

織莉子「一度挨拶をしたほうがいいんじゃないかと思いまして」

マミ「そうね……気難しそうな子だけど、そろそろちゃんと話してみたいわね。相手が応じてくれれば、だけど……」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 00:26:58.54 ID:GONJCl/j0<>
織莉子「では、そろそろ行きましょうか? あまり話し込んでいては、家でかずみさんがお待ちでしょう」


 織莉子が促すが、マミはまだ動かなかった。

 織莉子は急かすことなく隣に立ったまま待ち続ける。


マミ「……ねえ、美国さん。あんまりこういうこと頼みたくはないのだけどね、パトロールの前に少し話をしてもいいかしら?」

織莉子「ええ、どうぞ?」

マミ「美国さんって今どのくらいグリーフシードを持ってる? もし余裕があればでいいんだけど、少し分けてもらえないかと思って」

マミ「実は私もかずみさんも今手持ちがないの……」


 切り出しにくそうにしながら、後ろめたいことのようにマミは話し始める。


 これまで『平和』と『使命』を第一にグリーフシードのことを考えずにやってきたマミは、自然に手に入る分以上にそれを欲することは悪だとさえ思っていた。

 現に魔法少女の真実を知らなければ、この状況でも仲間とはいえ誰かに頼んだりすることなんてなかっただろう。

 マミにとってはそれほどまでに意を決する頼み事だった。


織莉子「最近パトロールをしてもグリーフシードが手に入らないから?」


 しかし、断るにしても受け入れるにしても、織莉子なら優しく返答してくれるという安心はあった。

 そんな時マミにかけられたのはどこか『冷たさ』すら感じる声。


織莉子「……どうしてもっと早くに言わなかったの?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 00:51:01.31 ID:GONJCl/j0<> -----------ここまで。次回は10日(月)夕方くらいからの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 17:39:05.14 ID:GONJCl/j0<>
マミ「余計な心配をかけさせたくはないし、美国さんにも負担になるでしょう? それにまだ大丈夫だと思ってたの」

織莉子「それで切羽詰まってから人に頼むの? 最初に貴女には話したはずよ」

マミ「……そうだったわね」


 マミは最初に出会った時織莉子と話したことを思い出す。

 元々魔力の消費が激しいらしく、魔力に余裕がないから魔力を扱う訓練をはじめていた。使い魔を倒すと言った時に織莉子が躊躇したのもそれが理由だったのだ。


 しかし、ずっと観察してきたマミは今思えばおかしいところがあることにも気づきはじめる。


 今までを思い返してみても、魔力の使い方が不器用だというふうには見えなかった。いくらか上達もしている。

 それでも減るのは、まるで魔力が漏れ出ているような――。もしくは、『何か別の事』に使われているとしか思えない。


織莉子「私に断られたらどうするの?」

織莉子「魔力がなくなれば私たちは魔女になるのよ」

マミ「!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 18:52:10.43 ID:GONJCl/j0<>
織莉子「悪いのだけど、私にも余裕はない。マミさん、貴女は……――私達にとってのグリーフシードを少し軽く考えているのではないかしら?」

マミ「ずっとそうしてきたの。街の平和のために戦うのが私の生き方で、それが使命だと思ってたから!」

マミ「私たちが魔女に成るって知っても、その前に死ねばいいって思った。その時が来るまでは今までと変わらずに生きてやるって……」

マミ「でも……いざそれが近づいて終わりが見えてくるとね。やっぱり嫌なのよ。死にたくないの」


 マミの甘い予想とは裏腹、織莉子は冷静にマミに釘を刺す。


 厳しい現実を突きつけられ、自ら口にした言葉に不安は極限まで高まる。

 今まで実感がなかっただけだった。今のマミには死ぬことも魔女になることも同じくらいに怖く思えた。


マミ「私はわがままなのかしら?」

マミ「でも私だけじゃないのよ。このままじゃかずみさんも……それに美国さんだって、みんな死ぬしかないじゃない」


 同時に、自分よりも重く真実を見ながら冷静に話す織莉子をやっぱり疑問に思った。


織莉子「いいえ、私はまだ死なない。マミさん、貴女もよ」

マミ「でもグリーフシードはないのよ? このままじゃ死ななくても魔女になってしまう」

織莉子「『平和のため』を望むなら、他に出来ることがあります。――それは目先の人助けよりも重大なこと」

織莉子「マミさん、実は私も今まで言っていなかったことがあるの」

織莉子「グリーフシードを得る手立てなら他にもある。それは貴方が選ばなかったもの。ですが、今は救世を遂げるために……共に別の『使命』を果たしませんか?」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/09(日) 18:55:31.77 ID:1rml4mTa0<> >>1が予定日より早めに予告なしにやるなんて珍しい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/09(日) 19:10:45.85 ID:rsCLgehJ0<> あれ?更新来てる?
明日じゃなかったの?? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 19:34:10.94 ID:GONJCl/j0<>
マミ「別の、使命……?」

織莉子「前に話した『世界を滅ぼす魔女』の話……あれは本当のことよ。この“力”でその未来を視た」

織莉子「私も街の平和を願うのはマミさんと同じ。それを阻止できなければ、どれだけ使い魔から人を救ったって無意味になる」

織莉子「もしも力を貸してくれるのなら、グリーフシードを譲ってもいいわ」


 前にカフェで話した時に聞いた話を思い出す。世界を滅ぼす魔女になる少女がいるなら――そんな例え話。

 その時は少女をどうするべきかと話していたのだったか。


マミ「……わかったわ。力を貸しましょう」


 差し出されたグリーフシードを、マミは受け取った。

 それは約束の代わり。


 ――――碧色の瞳は冷たくブレない。

 目の前の瞳が真実を前にしても平静でいられるのは、その『使命』がそうさせているのだと……そうマミは思った。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 19:35:37.48 ID:GONJCl/j0<> --------
予定日ミスってることに気づく…月曜に夕方からできないやん…
まず区切りのいいとこまで。人がいるようなら続けます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/09(日) 19:37:02.12 ID:1rml4mTa0<> 続けて下さい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/09(日) 19:38:36.38 ID:rsCLgehJ0<> スレ主、間違えは気にしてないので続けちゃってください! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 20:17:38.61 ID:GONJCl/j0<>

かずみ「マミ、遅いな……」


 マミの家に戻ってきても誰もいなかった。

 あのメールが来たのは放課後を少し過ぎた頃。それから少しずつ日が暮れてきてもわたしはまだこの家に一人でいた。


 しばらく一人で待っていると、ようやく玄関の扉の開く音がして出迎えに行く。


かずみ「あっ!マミ、おかえり」

マミ「ええ、ただいま。遅くなっちゃってごめんなさいね」

かずみ「いいのいいの。今日は何かやることあったんでしょ? パトロールは明日も出来るんだし」

マミ「そのこと……なんだけどね。これからは私たちも魔女だけを狩るようにしようと思うの」


 今までマミがずっと変えずに貫いてきたこと。

 この前にもマミは何かを決心したようだった。……余裕がないなら仕方ないのかな。


マミ「グリーフシードは大事よ。なくなれば魔女になるのだから。でも今死んでいる場合じゃないのよ」

マミ「世界を守らないと」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 20:48:56.55 ID:GONJCl/j0<>

 わたしはマミの雰囲気の違いに気づく。


かずみ「……世界?」

マミ「ええ。今日美国さんから聞いたの。このまだと世界が滅んでしまうそうよ。これから魔女になる一人の少女によって」

かずみ「それどういうこと!? なんで織莉子はそんなこと知ってるの?」

マミ「『未来を予知する力』……美国さんはその魔法を使えるんだって」


 その話も気になったけど、織莉子といえばまっさきに今日キリカから聞いたことが浮かんだ。

 予知の魔法が使えるなんて聞いてない。多分、マミが知ったのも今日のことなんだと思う。


 ……そう考えたら、どうしても疑念がわいた。


かずみ「……なんで隠してたのかな?そんな大事な未来のことも。最初からみんなで話し合えばよかったのに」

マミ「混乱を避けるためじゃないかしら?」

かずみ「本当に? あのね、今日キリカから織莉子のこと聞いたんだけど」

かずみ「織莉子はグリーフシードのためにキリカを駒にして魔法少女を襲わせてたんだって」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 21:48:15.84 ID:GONJCl/j0<>

マミ「……え?」

かずみ「それも本当かどうかなんてわかんなかったけど、でも…………」

かずみ「織莉子が今まで言わなかったことがあるなら、まだ知られちゃまずいことがあるんじゃないかなって」

マミ「そ、そんなのデタラメでしょう? 大体そんな嘘で私をどう利用しようというの?」

かずみ「とにかく明日にでも織莉子と話そう? 聞かないとわかんないよ。それに本当ならどうするか考えなくちゃ」

マミ「そうね……」


 ごそごそとポケットを探って、マミに一つのグリーフシードを見せる。

 朝あすみのとこに行って譲ってもらったやつだ。


かずみ「マミ、今日グリーフシードもらえたんだよ! あすみに無理言って譲ってもらったの!」

かずみ「だから、少しは余裕ができたよ? あんまり思いつめないで」


 明日からのパトロールは今までのような『パトロール』じゃなくなる。


 もしかして、それも織莉子から聞いた話とその決心と関係があるの?

 今は余裕がないのはわかるけど、やっぱりわたしはマミに変わって欲しくない。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/09(日) 21:52:15.18 ID:rsCLgehJ0<> まだかずみがストッパーになってるっぽい?
キリカ編の時みたいに振り切れたマミにはなってほしくはないなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 22:27:11.46 ID:GONJCl/j0<>
マミ「あの神名さんに? どうやって?」

かずみ「それは……えぇっと、わたしが無理言って」


 さすがにその内容までは言えないけど。


マミ「……でも一つでしょう? まだまだ余裕がないことには変わりはないわ」

かずみ「〜〜でもっ、0と1じゃあ全然ちがうよ」

かずみ「世界を守るのは大切だけど、わたしはそのために小さな犠牲を見逃すようにはなってほしくないかな……」

マミ「じゃあ、それはかずみさんがもってて。私も美国さんから一つもらってきたの」


 マミはキッチンのほうに回っていく。紅茶を淹れるようだ。

 わたしたちは元々多くグリーフシードを持っているほうじゃなかったし、今まではそれで余裕がないとは思っていなかったはずだった。



かずみ(マミ…………大丈夫かな)




―13日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/09(日) 23:26:01.74 ID:GONJCl/j0<> ---------ここまで。次回は12日(水)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/09(日) 23:34:55.13 ID:rsCLgehJ0<> 乙でした

状況が混沌としてきましたね
マミがどうなるか不安ですがかずみが傍に居れば大丈夫かな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/12(水) 23:38:56.97 ID:tDrJk3Sy0<> -----待ってた人には申し訳ないのですが、ちょっと今日は無理そうなのでまた明日にします。 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/13(木) 21:41:26.26 ID:+90Mtbwy0<> ――――――
放課後・美国邸


 その翌日、わたしたちは織莉子の家に集まっていた。


かずみ「わあ! 織莉子のおうちでっかいね!それに薔薇がいっぱいできれいー!」

かずみ「あれ? もしかして織莉子って相当なお金持ち……?」

マミ「私もこんなのはじめて見るからびっくりしたけど、白羽女学院ってお嬢様学校なのよ。美国さんもそんな雰囲気あるから」

かずみ「へえー」

織莉子「さあ、みなさんどうぞ入って」


 はじめて家を訪ねたわたしとマミはその豪奢な造りに驚く。

 内装も綺麗だ。みんなで集まるにも広く、高級そうで落ち着いた家具の揃った空間だ。


 この場にあすみも一緒にいる。

 あすみはお茶を淹れに行った織莉子に呼びかけて悪態をつく。


あすみ「私のはジュースでいいって言ったよねー。用意してあんの?」

織莉子「……スムージーでよければ」

かずみ「あ、わたしもそれもらおうかな」

織莉子「紅茶は?」

かずみ「どっちも飲む!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/13(木) 22:14:22.18 ID:+90Mtbwy0<>

 それからテーブルに紅茶とスムージーが出されてみんなが着席する。


かずみ「いいね、美味しそう!」

あすみ「気取ったのが好きじゃないんだって、フツーにその辺で売ってる安いのでいいんだけどな。気軽に飲めないじゃん」

織莉子「別に気軽に飲んでくれて構わないのよ? 必要なら追加を作ります」

マミ「でも確かにこれをジュースみたいに気軽に飲んでいたらカロリーが気になるかも……」


 フルーツの数種類入ったスムージーは、なんだかお洒落な朝食のお供みたいだ。

 グラスに口をつけてみると濃厚な香りがした。

 ……紅茶もいいけど、こっちのほうが飲みやすいかも。甘くて美味しい。


 こうして集まって、みんなの雰囲気はいつもと変わらない。

 強いて言うならどこか引っ掛かっていることは、あすみが当然のようについてきてくれていることだ。

 この前からホントは少し疑問に思っていたけれど――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/13(木) 23:15:16.90 ID:+90Mtbwy0<>

 あすみの横顔が一瞬だけ見えてからすぐに視線を織莉子のほうに移す。


かずみ「それで、昨日マミから少し聞いたんだけど……」

織莉子「世界を滅ぼす魔女の話?」

かずみ「そう、それ。それってどういうことなの?」

織莉子「マミさんに協力してもらいたいことがあったのよ。この街や世界を守ることについてね」




 話すこと
1グリーフシードのことについて
2キリカから聞いた話について
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/13(木) 23:27:07.53 ID:Zp8mpkee0<> 1グリーフシードのことについて とこれからマミと何をするのか訊く <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/13(木) 23:37:20.36 ID:rWg4Bs8h0<> 1+2

予知ができるなら魔女の出る場所とかも判るはずなのにどうして教えてくれなかったの?
織莉子は予知で知った情報を誰かに教えてたんじゃないかな?だとしたらGSが確実に手に入るわけだから利害関係は結べるよね

あと世界を滅ぼす魔女になるからってその子をどうする気なの?・・・まさか殺す気なの?
世界を救うからって小を切り捨てるなんて私は絶対に認められないよ
織莉子の言ってる事は産まれたばかりの赤ちゃんに『その子は将来人を殺すから、犠牲者を出さないために今殺しましょう』って言ってるようなものだよ

織莉子は予知で『結果』だけを見て『過程』を視てないじゃないかな
そもそも織莉子の予知って必ず当たるの?そうでないなら織莉子の考えは机上の空論に過ぎないよ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/14(金) 00:04:16.96 ID:NHbYqeq00<>

 織莉子は穏やかに話す。

 ……信じていいのかな?


かずみ「……昨日グリーフシードをくれたんだよね。これからはどうするの?」

織莉子「残念ですが……余裕がないのなら今は魔女だけに絞るべきかと。身を滅ぼしてはどうにもなりませんから」

織莉子「あすみさんは余裕は? 使い魔を見つけたら狩ったりしてくれる?」

あすみ「余裕はあるよ。でも使い魔なんて狩るわけないじゃーん」

織莉子「ということです。心は痛むのだけどね……」

かずみ「余裕がないから……」


 成長前の使い魔を倒さなければ魔女も増える。魔法少女としてはそのほうがいいことはわかってる。

 でも、わかってるけど、なんだかこれから以前とは変わってしまう気がして。


マミ「かずみさん、昨日も話したけどやっぱり仕方のないことよ」

マミ「それに、世界を救うことができればもっとたくさんの人を助けることが出来る」

マミ「前までのやり方に戻るのはそれから考えましょう。それが一番いいはずだわ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/14(金) 00:33:25.81 ID:NHbYqeq00<>
かずみ「世界を救うって、その未来予知?って魔法のことなんで黙ってたの?」

かずみ「その魔法があれば……そうだ、たとえばもっとパトロールの時にも役に立てられたかも!」

織莉子「少し不安定でね。思ったより自分に必要な情報は得られないのよ、これ」

織莉子「あまり頼りすぎていいものかわからないから簡単には口に出来なかった」

かずみ「それに、キリカから聞いた話は……――」

あすみ「お、それ本人に聞いちゃう?」

マミ「かずみさん。あの話なら突拍子がないし、気分のいい話じゃないわ……」


 あすみが口を挟み、続けてマミが制止する。

 その空気に押されて、わたしもこの場では一旦口をつぐんだ。

 そうするといつも通りの平穏は戻る。頼れる友達がいて、なんだかんだとついてきてくれるあすみちゃんがいて、そんな空間。


 ……いや、本当はいつも通りとはすでに違ってきている。


織莉子「私が今日みんなに話したいのは、その方法について。魔女の素体は見つけられたのだけど、まだ一筋縄ではいかないわ」

織莉子「私は窮地に立たされてしまった」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/14(金) 00:50:19.71 ID:NHbYqeq00<>
織莉子「他にその未来を識る者が居る。そして、彼女の狙いも素体となる少女――鹿目まどか。彼女はそれを『手に入れる』と言った」

織莉子「その彼女が、かずみさんを狙っている者よ」

かずみ「!!」


 突然わたしの話に繋がって驚く。

 それはキリカが言っていたこととも一致した。キリカも会ったと言っていた。確かその時は織莉子の格好をして……


かずみ「…………」

織莉子「だから、まずは一刻も早くその魔法少女を倒さないといけない。ぜひ、みんなの力を貸してもらいたいの」

あすみ「でもどうやってさ? 予知で片っ端から炙り出すってのが手っ取り早いと思うけど、姿変えてるならそれも意味ないでしょ」

マミ「それが難しいところね。街で見かけても私達には気付けるかどうか……」

マミ「狙いは素体と言うけれど、本当の目的はかずみさんでしょう? かずみさんの事情にも関わっているのだし、早く何とかしたいのはやまやまなのだけど」

あすみ「……そいつがなんで鹿目まどかを狙うかだね。世界を滅ぼしたい願望でもあるのか?」



 その後もいくらか話し合ってみたけど、これといった答えは出ない。

 情報を交換して整理して、一通り話した後に織莉子がこう言った。



織莉子「さあ、それじゃあそろそろ今日も『パトロール』に向かいましょう」



 同じように『パトロール』と言うけれど、それは前までとは違う意味になっていた。


 わたしは使い魔を狩るのを嫌がる人がいるのはしょうがないと思ってる。

 でも、使い魔まで倒してくれる人が誰もいなくなったらどうなるの?

 そう思うと、グリーフシードが欲しい魔法少女からは疎まれても自分がやめるのはちょっと抵抗があったんだ。



 ――――疑念は確信に変わった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/14(金) 00:52:13.92 ID:NHbYqeq00<> -------ここまで。次回は15日(土)夕方くらいからの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/15(土) 20:10:53.55 ID:h7N8NzIi0<>



 いつもみたいに散々街を歩き回る。

 その末に魔力の反応を見つけて、あすみが口を開く。


あすみ「……本日一匹目の使い魔出たけど?」


 やっと反応があったと思ったら使い魔。

 イヤリングから具現させたソウルジェムを見ているだけじゃ、わたしにはどっちのかは判別できない。

 マミと織莉子は敢えて反応しようとしてなかったように見えた。


あすみ「ま、スルーするならいいや。こっちもそのほうがありがたいし」


 戦わないと言ってたあすみが反応を言葉に出したのはわざとなんだろうか。

 それから更に歩き続けると、今度はみんなが一斉に魔女の魔力を察知して反応する。


 ――――喜ぶべきなんだろうけど、こんな時に限って。


マミ「……魔女がいるわよ」

あすみ「あぁ、昨日は私も魔女狩ってなかったからねぇ」

織莉子「戦いましょう。四人もいれば大丈夫よね」

かずみ「うん……」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/15(土) 21:22:42.82 ID:h7N8NzIi0<> ―影の魔女結界



 ……久しぶりの魔女戦。



かずみ「織莉子、どっちに進めばいいかってわかるの?」

織莉子「さすがにそこまで当てることは難しいかしら」

マミ「使い魔は出来るだけ避けていきましょう。いざとなったら私と美国さんで援護するわ」

あすみ「前衛二人に後衛二人だからバランスはいいよねぇ」


 白黒の結界を駆け抜けていく。

 そして、魔女の元までたどり着いた。

 白黒の中で目立つ赤い塔の建つ結界の奥には、一見無防備に見える魔女の背中がある。



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:正常
あすみ 状態:正常


敵:影の魔女Elsamaria <- 攻撃対象デフォルト
  使い魔Sebastian's(小)×20
  使い魔Sebastian's(大)×6

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
5自由安価

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/15(土) 21:30:23.79 ID:uHFtqrGiO<> あすみを援護するように1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/15(土) 21:34:28.00 ID:dKLM1VEX0<> ↑追加で戦闘中織莉子に注意を払う <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/15(土) 22:50:32.35 ID:h7N8NzIi0<>

 まずわたしとあすみが同時に走り出した。

 杖が届く至近距離まで近づいて振り上げると、背を向けたままの魔女に異変を感じる。


あすみ「私の前に突っ込むんじゃない。邪魔だどいてな」

かずみ「きゃっ!!」


 衝撃を受けて横に倒れる。後ろを魔女の背中から突き出した影の攻撃が伸びていった。

 あすみが鎖でわたしを払いのけて、影を絡め取るように壊して魔女本体まで狙う。


 走り出したのは同時だったのにいつのまにかあすみは途中で足を止めていた。

 鉄球が十分に届く程度に距離を取っている。


かずみ「ごめん、ありがとう! わたしもちょっと下がって援護するから!」

あすみ「いーらーないっての! 後ろのマミならともかく、アンタにちょろちょろされると邪魔!」


 あすみの攻撃に続くように打ち込まれた銃撃が見える。たしかにマミの狙いは正確だ。

 周りには織莉子の水晶も魔女を囲むように浮かんでいく。


 ……わたしはどうしようか? 役立てないのは悔しいな。 少し大技でも使う? わたしももっと後ろにいく?



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:正常
あすみ 状態:正常


敵:影の魔女Elsamaria
  使い魔Sebastian's(小)×20
  使い魔Sebastian's(大)×6

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6自由安価

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/15(土) 22:56:56.11 ID:lqhN9VGr0<> 6
あすみに言われたとおり後ろに下がって>>508 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/15(土) 23:24:38.95 ID:0khFVZw3O<> 何か技増えてる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/15(土) 23:29:57.29 ID:h7N8NzIi0<>

マミ「魔女の背後から伸びる攻撃にさえ注意していれば、あとは使い魔に気を払いつつ魔女を追い詰めるだけね」

織莉子「こちらも囲んだわ。一気に片を付けましょう」

あすみ「こんなのヨユウ!」


 マミの弾丸が魔女近くの使い魔を殲滅し、囲んだ水晶が一気に魔女を襲っていく。


 ……わたしはあすみに言われた通り後ろに下がって、その織莉子の横顔を見た。

 魔女に集中していてこちらに視線は返されない。その顔はいつも見る冷静で整った表情だ。



 そうして決着がついた。



かずみ「…………」

マミ「ちょっと、どうしてなにもしなかったの? こっち見てた?」

かずみ「ごめん」

あすみ「アンタ邪魔だとは言ったけどさー、色々出来ることはあるじゃん?」

かずみ「魔力使うと思ったから」

織莉子「まあ、そうね。無駄に魔力を使うことはないわ。今の戦いで消耗した人はいるかしら?」

マミ「私と美国さんは使っているでしょう? 残りはどうするの?」

マミ「ただでさえ余計に溜め込んでいそうな神名さんには必要ないと思うけど……」


 マミが不満の目であすみを見る。

 もう耐えられない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/15(土) 23:56:49.29 ID:h7N8NzIi0<>

あすみ「バッカ―、あすみも武器の状態いじんのにちょっとは使ってるんですー。消耗分は返してもらうから」

マミ「なら本当にその分だけよ。でもそんなに使ってないでしょう?」

かずみ「もうやめてよ! わたしが好きだったのはこんなのじゃないよ!」

かずみ「織莉子は…………予知や世界を滅ぼす魔女のことは本当なんだよね」

かずみ「嘘ならわたしを狙う魔法少女が織莉子とキリカに近づく理由がないもん」

織莉子「……何故あの子が出てくるの?」

かずみ「キリカから話を聞いたんだ。その時はキリカも目的はわからないって言ってた。織莉子の目的も知らないから」

かずみ「でも織莉子はあの魔法少女の目的を知ってた」


 織莉子は私の前ではじめて少しだけ表情を変える。


マミ「何を言ってるの?」

かずみ「織莉子は目的があってわたしたちに近づいたんだよね。グリーフシードを集めるのにキリカを駒にしたように」

かずみ「織莉子があすみちゃんをつれてきたのも、予知でわたしたちが出会う魔女のことを教えたから」

マミ「それは予知が万能に情報を集められるわけじゃないからって言って!」

かずみ「わたしとまどかを狙う魔法少女を倒したあとはどうするの?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/16(日) 00:05:52.57 ID:x4godrdBO<> かずみがオコ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/16(日) 00:24:03.86 ID:RFHnm4YS0<>

 そのままわたしは織莉子の様子を逃さないように見ていた。

 しかし、織莉子は思いがけないほどあっさりとわたしの話を認める。

 結界が消えた人気のない道の隅、わたしたちの間に流れる空気は凍てついていた。


織莉子「……その話は本当よ。救世を遂げるためにはグリーフシードが必要」

織莉子「魔力の扱いはこれでも努力した。それでも残念ながら私はこの魔法のせいで魔力の効率が悪く常に余裕はない」

織莉子「それを補うためには自分以外に魔女と戦える戦力も必要。そして、救世の魔女の前身を倒すためにも……」

マミ「え…………!?」

織莉子「私がもし失敗すれば世界が滅ぶのよ?」

織莉子「それほどまでに、迂闊に知られてはいけない。余力を持って挑まなくてはならない。作戦を実行するにも一人では攪乱も戦闘もできない」

織莉子「そして私はそれまでに死んではならない。絶対に遂げなくてはいけないことだというのはわかるでしょう?」


 織莉子は淡々と言う。その言葉は見苦しい言い訳とも違う。ただわたしたちに理解させるために。


 マミは信じていた人に裏切られ打ちひしがれていた。

 それをあすみが裏を全て知っていた傍観者のように笑い飛ばす。


あすみ「ていうか気づくのおそすぎ!」

あすみ「かずみもついに気づいて責めにきたかと思ったら、私のせいだってのにさ。よりによって私に懇願してきたからもう滑稽」

あすみ「必死すぎて面白かったから一個やったけど」

あすみ「あ、もしそれがなかったらゼッタイにあげないよ? この世界そんなに甘くないからね」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/16(日) 00:35:17.59 ID:RFHnm4YS0<>

かずみ「……やっぱりそうなんだ」

かずみ「わたしは織莉子のこともあすみちゃんのことも信じてたんだよ!」

かずみ「織莉子が友達になって相談に乗ってくれたのも、あすみちゃんが来てくれた時もうれしいって思ってたの!」

あすみ「まあオイシイ話があったら乗るしかないよね。あすみ別に『信じてくれ』なんて言ってないしー」

あすみ「そもそもアンタらに良いことした覚えもないし、信じて騙される方が悪い。これを機に学習したら?」


 わたしはただ悲しかった。でも黙って合わせてるより納得した。


かずみ「あすみちゃんは全部知ってたの?」

あすみ「いや? 私も目的とか聞いたのは昨日だよ」

織莉子「マミさんは理解できるでしょう? 同じ、人々を守る使命を誓う魔法少女なのですから」

マミ「私は…………」


 ……織莉子は言い訳するでもなく、当然のように言った。

 まるで試すように。


マミ「私は……――――そうね、人を守る魔法少女だわ」


 しかしその姿は力なかった。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/16(日) 00:45:32.94 ID:RFHnm4YS0<>
住宅街



「じゃーね、さやかちゃん」

「うん、また明日ねー」


 夕刻の住宅街、駅前から帰る途中の道で二人が手を振って別れる。

 その様子を少し離れた場所で見ている人物が居た。


「あれっ、ほむらちゃんもう帰ったんじゃなかったの?」

「……いえ、少しこっちに用があることを思い出しただけよ」

「そっか。ほむらちゃんも、じゃあ気を付けてね」

「ええ」



 『ほむら』と呼ばれたその人物は、別れてから彼女の方を振り向く。

 ……夕暮れの照らすその背中をじっと見ていた。



―14日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/16(日) 00:46:11.63 ID:RFHnm4YS0<> -------ここまで。次回は17日(月)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/16(日) 00:52:38.28 ID:yGHbW5FI0<> 乙です

マミさんメンタルボロボロだな
世界のために小を切り捨てるか、世界のために人に仇そうとする魔法少女と袂を別つのか
マミさんあどっちを選ぶのかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/16(日) 14:55:07.49 ID:x4godrdBO<> マミは織莉子につくのかこれまで通りかずみと一緒にいるのかどっちを選ぶかな?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 21:36:50.93 ID:ZfZcWNGF0<> ――――――
朝・マミの家



 マミが学校に行く前の朝、わたしが作った朝ごはんがテーブルに並ぶ。

 軽く身支度を整えたマミがやってきた。


かずみ「今日はどうするの?」


 ……朝ごはんを食べながら今日のことを聞いてみた。

 いつもならマミはどれも喜んでくれるメニュー。でも今朝はいつもよりフォークの手が遅い。


マミ「今日は……ちょっと私、一人で魔女を探しに行こうかなって」

かずみ「えっ?」

マミ「かずみさんはここにいてもいいけど、どうする?」

かずみ「えぇっと……」


 わたしがいけるのはあすみか織莉子の家くらい。

 でも、あんなことがあったのに……?

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 21:46:55.07 ID:ZfZcWNGF0<>

かずみ「マミは織莉子のことはどうするの? 今日もやっぱり、一人でも昨日みたいなパトロールをするの?」

マミ「……昨日の美国さん、すごく冷たい目をしていた」

マミ「私のことも……そういうふうにしか思ってないのかなって……」

マミ「でも、しょうがないじゃない? どんなに残酷でも大勢の命のかかった使命なんだから」


 話しているうちに手は完全にストップしていた。

 それに気づいたマミが時計を見て慌てる。


マミ「ごめんなさい、遅れないようにはやく食べなきゃね」

マミ「……じゃあ、行ってくるわ。お留守番よろしくね」



 珍しく慌ただしく出て行くマミを見て、

 わたしはやけに静かになった家の中でこれからどうしようか考える。



かずみ「…………」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/17(月) 21:48:53.86 ID:/0ahGyTK0<> マミは織莉子の救世に傾いてるのか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 21:50:33.36 ID:ZfZcWNGF0<>

かずみ「……――――よしっ! こんな時はたくさんごちそう作って待っていよう」

かずみ「もっと料理の勉強もするぞー! マミが持ってる本もいっぱい置いてあるもんね」

かずみ「あ、これマミが書いたメモだ。見てもいいかな? なになに?」




・作りたい料理(複数可)

 下1、2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/17(月) 22:03:50.28 ID:/0ahGyTK0<> 前菜に温野菜のサラダ・カラスミパウダー
メインにビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ
デザートにパンナ・コッタ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/17(月) 22:07:02.79 ID:GeaNKV3/O<> パンドーロ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 22:35:21.80 ID:ZfZcWNGF0<>

 キッチンの横に置いてある料理本やマミの書いたノートを読みふける。

 こんなところでもマミの努力家な一面は垣間見えていた。


かずみ「あ、これおいしそう。 へえ、マミはこんな隠し味を……」

かずみ「作りたいものがいっぱい出てきたなあ」


 勉強とイメトレが終わったら、次はさっそく実践だ!


かずみ「まずはお昼ご飯、つくってみよっと!」


 マミの切ってくれたセミロングの髪をまとめてキッチンに立つ。

 このくらいの長さだと色々とアレンジもしやすい。まとめているとパッと見、前と同じように見えるかもしれない。


 時間のかかりそうなものから先に仕込んでおこう。

 前菜にメインにデザートに、豊富な材料を使って料理を作っていく。

 練習がてら昼ごはん用にも作ってみて、それらが仕上がる頃には昼を少し回るくらいの時間になっていた。


かずみ「さて、そろそろお昼ごはんは完成かな?」

かずみ「……ん?」


 そろそろ完成ってところでインターホンが鳴った。

 前にも同じようなことがあったような。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 23:11:57.12 ID:ZfZcWNGF0<>

かずみ「なに? 杏子? いいタイミングで来たね!」


 カメラを確認して玄関の扉を開くと、杏子はなにやら深刻そうな顔をしていた。

 そして、わたしのこの呑気な挨拶が気にくわないというように――。


杏子「アンタ、へらへらしてる場合なのかよ!?」

かずみ「えええっ! なにが?」

杏子「何じゃねえ! あたしはこの前のグリーフシード返しにきてやったんだ!」

杏子「グリーフシードがなくなったら魔女になるんだろ? 一個もねえってのに無茶しやがって、まったくどこまでバカなんだよ?」

杏子「そんな時に他人に渡すか? あたしはあんたらとは違ってグリーフシードくらい持ってんだよ!」

杏子「あたしもそれ知ってて返さないほど外道じゃねえ。それで自分たちが魔女になんかなっちまったら意味ないだろうが……」

かずみ「あ、ありがとう……」


 捲し立てるように怒鳴る杏子に気圧されちゃったものの、そう言ってくれたことは素直にうれしかった。

 杏子、あんなにグリーフシードを優先してたのに……。


杏子「ついでに、姿を変える魔法を持った敵を相手にしてるってのに、ちょっと姿だけ確認して入れるのも不用心じゃないか?」

かずみ「うん、気を付ける。 でも本当にいいとこに来たよ! 上がって上がって!」

杏子「?」


 作り立ての料理。杏子も玄関まで漂うその匂いに気づいたようだった。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/17(月) 23:15:20.27 ID:/0ahGyTK0<> 杏子やっぱり良い奴だなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 23:42:26.02 ID:ZfZcWNGF0<>

かずみ「お昼ごはんいっぱい作ったから一緒に食べよ!」

杏子「おお! 一人だったのによくこんなん作るな。肉にサラダに、プリン? あとケーキ!」

かずみ「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナに、温野菜のサラダ・カラスミパウダ」

かずみ「それからパンナコッタに、パンドーロだよ」

杏子「また舌噛みそうな必殺技だな」

かずみ「必殺技? まあ、おいしいものっていくらでも食べられるからね!これは練習も兼ねてで本番は夜なんだけど」


 杏子をリビングに招き入れると、自慢の料理を出していく。

 わたしにとっても丁度いいタイミングだったみたい。やっぱり一人で作って一人で食べるより、誰かと食べたほうがいいや。


杏子「今夜はパーティでもやるのか? もう死にかけててもおかしくないかもって思ってたけど、意外と元気そうにしてんな」

かずみ「……実は逆なの。マミが元気なさそうだったから」

かずみ「マミ、変わっちゃったんだよ。パトロールのやり方も前とは変えたんだ」

かずみ「違う目標が出来たから。そのためにはもっとグリーフシードが必要なんだって。誰かを犠牲にしても……しょうがないんだって」

杏子「!」



・織莉子から聞いたこと、話す…?
1話す
2話さない
3自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/17(月) 23:57:09.73 ID:ZfZcWNGF0<> ----------ここまで。次回は20日(木)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/18(火) 00:02:42.67 ID:jClfJhZt0<> 1+杏子にマミと話し合って欲しいと話す

織莉子の話が本当でも私はそんなやり方は絶対に認めないし認めたくはない
一般人を害するなんて魔法少女の話し以前の問題だよ、そんなのただの人殺しだもん
産まれたばかりの赤ちゃんに『その子は将来人を殺すから、犠牲者を出さないために今殺しましょう』って言ってるようなものだよ

だからマミには考えを改めてもらいたい、そのためには杏子も一緒に話してもらいたいの
まだマミは迷ってるんだと思う。『魔法少女』の使命に縋ろうとと、いや逃げようとしてるように見える
マミは寂しがりやなんだよ、ずっと1人で戦ってきたんだもん・・・だから傍で支えてあげる人が必要なんだよ

その人は他人を駒扱いする織莉子なんかじゃない、ぽっと出の私でもない。初めてパートナーを組んだ杏子だと思うんだ。
だから一度マミと本音をぶつけて話し合ってみてよ。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 00:11:11.45 ID:cQ9iq34GO<> ↑
追加で杏子にマミと話す時は必ず自分を立ち会わせて欲しいと話す

杏子が一人で行ったらキリカ編の時みたいになりそうなので <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/20(木) 22:20:19.01 ID:+JNPiZzH0<> 今日は来ないかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/20(木) 22:39:27.43 ID:uepAHtoK0<>

杏子「……そうか。結局マミもかよ」


 ……てっきり、杏子なら『そのほうがいいだろ』とかマミの変化を肯定することを言われると思ってた。

 使い魔なんて見逃したほうがいいって、そう言ってたのは杏子も同じだった。

 でも、杏子はまるで投げやりみたいな反応を返す。その表情はどこか何かを諦めるように悲しげに見えた。


かずみ「でもね、その目標も人助けのためなんだよ。それっておかしいよね?」

かずみ「人を助けるのに人を犠牲にしてもいいなんて」

杏子「人助けだと? 今度は何の話だよ!」

かずみ「鹿目まどかっていうすごい素質を持った人がいて、その人が魔女にならないようにしないと世界が滅ぶんだって……」

杏子「それは本当なのか?」

かずみ「本当だと思う。……織莉子が言ってたの」

杏子「じゃあちょっとそいつに話を聞きに……!」

かずみ「待って!」


 勢い余って席を立とうとする杏子を止める。


かずみ「織莉子はわたしの友達なんだ。だから、これはわたしたちの問題にしたい」

かずみ「杏子は言いたいことがあるならマミと話してあげて」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/21(金) 00:00:00.25 ID:uepAHtoK0<>

杏子「わーったよ……、今はゆっくり腹でも満たしておくことにするよ」

杏子「夜になったらまた来る。あいつは嫌がるかもしれないけどな」

かずみ「うん! 料理たくさん作っておくよ!」


 杏子が席に座りなおしたのを見て、わたしもまた落ち着いて食事に戻る。

 ……杏子の反応はちょっと意外だった。


かずみ「マミは寂しがりやなんだと思う。わたしが来るまで、ずっと一人で戦ってきたんだもん」

杏子「……そうだな」

かずみ「だから、杏子も傍にいてあげてよ。今だったらきっと、二人とももう少し素直に話し合えると思うんだ」


 喧嘩して離れちゃっても、杏子も本当はマミのこと嫌いじゃないんだ。

 本当は根は変わってないんだってわかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/21(金) 00:14:56.85 ID:RCuwg6vg0<>

杏子「けど、あたしは誰かを助けるために誰かを諦めるってのは間違ってないと思うぜ」

杏子「誰もかも救うなんてできっこない。時に誰かを犠牲にしたり騙したりしてもな」

杏子「けど、それだって覚悟がいることだろ? 世界がどうのとか、大それたこと言ってても関係ない」

杏子「その真実を知ってるアンタらはさ、一体誰を助けたいんだ?」

かずみ「わたしは誰もかも助けたいよ」


 そう言うと、杏子はその言葉を笑い飛ばす。

 いつも見るような反応だった。マミとはそれで喧嘩することもあったけど――。


杏子「アンタって…………ほんっとーに、バカなやつ」

杏子「でもアンタもマミも、そうじゃないとやっぱ調子狂うんだよな」


 杏子は呆れたようにため息をつく。

 わたしもそんな杏子に『えへへ』と笑みを返した。


 ……馬鹿にされてもいい。やっぱり、出来ることなら私も私のやることに自信をもっていたいから。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/21(金) 00:15:27.02 ID:RCuwg6vg0<> --------次回は22日(土)夕方からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/22(土) 22:20:18.01 ID:ijW7LZE/0<> ----------用事が長引いたり色々あったので今日は中止にさせていただきます。
次回は23日(日)夕方からの予定です。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 18:59:04.94 ID:qqtuzxZ10<> ――――
――――
放課後・繁華街



 友達や恋人との時間を過ごす人。目的を持ってどこかへ往く人。

 その中で、人々の行き交う一番大きな通りを特に目的もなくふらふらと歩いていた。


キリカ(なんか……ツマンナイなー)


 キリカはさっき買ったお菓子を食べながら歩く。

 かといって純粋にお菓子を味わうために来たのかというとそれも違った。こんな行動を契約してから何日も繰り返していたような気もする。


 クラスの友達とも本当は一緒に遊びに行く話はたまに出ているのだが、今はあまり他人に気を回したくもなかった。

 そう言う気分じゃない。かといって、何をしたいのかと言われれば――それもわからなかった。


 人には囲まれているのに自分は一人。ここにいると周りの喧騒も遠くのことのように思える。

 ここにいる他の人たちが自分とは違う存在のように思えるのだ。

 誰も見知らぬ他人に注意を向ける人はいない。とはいえ、キリカからしても興味はなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 19:17:50.50 ID:qqtuzxZ10<>

キリカ(さすがに食べ歩くのだけじゃ飽きるし。買いたい物も今はべつにないんだよね)

キリカ(そんなにお金もないし……)


 街の景色を眺めながら、なんとなくゲームセンターのほうに目を向ける。

 派手な電子音が鳴り響くそこに、吸い込まれるように足を踏み入れていった。


 娯楽を提供してくれる機械。暇をつぶすなら絶好の場所。

 鞄から財布を取り出してみる。そこにはわずか数百円分のコインしか入っていなかった。

 予想外に少ないそれにキリカは茫然とする。


キリカ(……帰ろうか?)


 その発想は当然のもの。


 金がなくなってきたのはわかってたはずだった。

 だからさすがに自制して休日は家で寝てたし、毎日買い歩いてる場合じゃないとも思っていた。


 わずか数回分くらいのお金を全部使ってまでやることじゃない。馬鹿げている。

 ――――しかし、その時別の考えも浮かんだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 19:57:59.50 ID:qqtuzxZ10<>

キリカ(そりゃそうなるよねぇ、さいきん金遣い荒かったし……)


 その時浮かんだのは、ちょっとしたトラブルのせいで出会った時から嫌っているはずの杏子の声だった。


 杏子は利己主義の魔法少女。彼女ならこんな時どうしているか。

 あすみもそうだ。マミのような“例外”を除いて、彼女らが言うにはそれが魔法少女の『フツウ』。

 そうすればお金を気にする必要もない。食べたい物も買いたい物も全部手に入れることが出来る。



 考えてみれば、それを自分もできる“力”を持っている。たとえ見つかったとしても余裕で振り切る事も出来る。……恐れることはない。



 自分もすでにどちらかといえばそっちのほうに入りかけてるんだろう。

 魔法少女を襲ったりしてた時点で、今更そういう行動を取ることのハードルも低かった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 20:05:18.42 ID:qqtuzxZ10<>

 気が向かないときは学校にすら行ったフリで、放課後は遅くまで時間を気にせず遊び歩く。

 その遊ぶためのお金や商品を手に入れる手段は強奪や盗み。……そしたら立派な不良じゃないか?


 多分今まで自分が道を外すことなんて考えたこともなかっただろう。

 なのに意外なほど、ほんのちょっとしたきっかけでみんなそうなることがあるんだ。と、そんな考えがふと頭を過ぎって――――



 ――――キリカはまたどこかへ歩きだした。

 そして道端から見える店の前で立ち止まり、目に入ったものを手に取る。それを懐に入れるだけ。やってみれば意外と簡単に終わる。



「……なにをしているの?」

キリカ「!」


 キリカは手に持ってたものを落とす。

 小さなぬいぐるみのようだったけれど、別に欲しいと思ったわけでもなかった。



 声をかけられて気づいた。本当に、なにをしていたんだろう?


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 20:33:48.71 ID:qqtuzxZ10<>



マミ「…………」



 マミは何も言わずにじっと見つめていた。

 キリカを咎めるでもなく、落ちた商品を拾うでも店の人に言いつけるでもなく、その瞳はひたすら無感情だ。

 ……それがキリカには余計に怖く感じて焦った。


キリカ「お、怒んないの? なんで?」

キリカ「あんたならこんなことするの許せないでしょ! どうしてこんなことしたかとか聞かないの?」

マミ「……じゃあどうしてしたの?」

キリカ「自分でもどうしてだかわかんないんだよ! だから怖いんだよ」

マミ「怖い?」

キリカ「自分が、どんどん変わっていきそうで――――」


 確かに少し前までのマミなら万引きしようとした罪やこれまでの素行について厳しく責めていたところだろう。

 けれど、今はそんな魔法少女たちを矯正する気はなかった。自分だって人の事をいえなくなるからだ。


 店の前で騒いでいる声に奥の店員も気づいて寄ってくる。


*「アンタたちなにやってんの?」

キリカ「私は悪い事をしたんだから謝らなくちゃ……マミは関係ないんだからさっさと行きなよ……」


 逃げたかった。殴り飛ばして済むならそうしたかった。自分には出来るのに、怖い事なんかないって思ったはずなのに。

 でもそれじゃダメだと心の中に強く叫び声のように鳴っている。


 ……いつになく素直な態度を取る。キリカは異様に青い顔をしていた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/23(日) 21:41:48.51 ID:jU/n0xYg0<> やってることがエリカと同じだからか? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 21:55:18.17 ID:qqtuzxZ10<>

 ――――あれから繁華街から離れた場所を二人は歩いていた。

 未遂のうちに止められたからか、あの場では注意を受けて事は済んだ。

 マミも一言二言あったことを話したが、それ以上キリカを責めたり、不利になるようなことは言わなかった。


 とはいえそれから二人の間に会話はない。

 顔さえ合わさず、キリカは拗ねるようにそっぽを向いていた。


キリカ「……そんで、あんたは? パトロール?」

マミ「ええ、そうね」

キリカ「一人なの?」

マミ「今日は一人よ」


 再び会話が途切れる。


 キリカには以前、マミがこの街での魔女狩りを禁じている。

 念のためもう一度釘を刺しておいたほうがいいかとも考えたが、その時とは意味が大きく異なっている。


 やり方なんて関係ない。他人にグリーフシードを取られないためだ。

 しかしそう思ってからマミは、『キリカが織莉子に使われていた』ということも思い出した。とはいえ、今はその関係はなくなっているが。


 あれこれ思考を巡らせながら、マミはふと足を止めた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/23(日) 22:34:02.79 ID:jU/n0xYg0<> マミ、大分考え方が変わってきてるな
変な方向にぶっ飛ばなきゃいいけど <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/23(日) 23:35:39.56 ID:qqtuzxZ10<>

キリカ「どうした?」

マミ「いいえ」


 キリカも足を止めてマミのほうを振り向く。

 それから手元にソウルジェムを具現させて確認していた。


キリカ「倒しにいく? 別にとったりしないよ」

マミ「……これは使い魔よ?」

キリカ「じゃあ取るもなにもないね」


 キリカはそのまま明滅を見ながら居場所を探っていこうとする。


マミ「ちょっと待って。使い魔も倒すの?」

キリカ「魔女も使い魔も同じじゃない? 人を襲うんだから」


 キリカは不思議そうな顔で答える。

 それは昔、マミ自身が言ってきた言葉と被った。

 自分はもうやめてしまったのに、それを当然のものとして言っていることにハッとさせられた。それも今まで散々『自分たちとは違う』と敵視してきた人に。


 ……キリカはやる気はないが、この活動自体は紛れもなく正義の活動だと思っていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 00:14:03.39 ID:1F5t6m350<>

マミ「あなたはグリーフシードが欲しくはないの?」

キリカ「別に私は欲しいわけじゃない。ズルができる力も別にいらなかった」

マミ「グリーフシードがなければ魔女になるのよ?」


 一瞬失言したとも思った。しかし、特に驚いた反応は返ってこない。

 キリカはただうんざりしたような顔を向ける。


キリカ「……あぁ、あれか。もうみんな知ってるの?」

キリカ「なんでそんなことのためだけに必死になって魔女狩って、せこせこグリーフシード集めなきゃいけないんだ?」

キリカ「それって今までと変わらずに生きてるっていえるのかな。……そこまで人間捨てなきゃいけないのかな」



 『自分たちとは違う』は、言い換えれば『悪い人』ということだ。

 じゃあ、何が正しくて何が正義なのか?


 …………それが、マミにはわからなくなった。



―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 00:14:48.58 ID:1F5t6m350<> ----------ここまで。次回は24日(月)夕方からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 18:34:23.03 ID:1F5t6m350<> マミの家



マミ「……ただいま」

かずみ「おかえり! 早かったね」


 マミが帰ってきたのは、まだ夕方にもならないうちだった。

 夕飯用のご飯の準備もまだ整っていない頃。今日は驚かせようと思ってたけど、ちょっと裏側を見られちゃったような気分だ。


かずみ「パトロールしてきたの?」

マミ「ええ、一応」


 玄関まで迎えに行って、マミと廊下を進んでいく。

 そしてリビングに着くと、マミはそこにいる『来客』の姿を見て目を見開いた。


マミ「……佐倉さん」

杏子「よう」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 18:57:09.78 ID:ge2unE50O<> 杏子ずっとマミの家に居たんだ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 19:48:01.20 ID:1F5t6m350<>

マミ「なぜあなたがここにいるの?」

杏子「思ったより早かったな。こっちも早めに来て正解だった。本当はもっと言いたい事まとめる時間あると思ってたんだけどな」

マミ「……」

杏子「飯もないならもう面倒な前置きはなしだ。回りくどいことも今日はなしにする……つもりだ」

杏子「……アンタついに使い魔も見逃すようになったんだってな。誰かから奪ってもいいんだってな」


 杏子は言葉を選ぶように口を開く。

 いつもなら挑発するようなことばかり言ってマミと反発してきたが、今日の杏子の話し方は慎重だった。


 その言葉にマミも何が言いたいか気づく。しかし、その反応は穏やかなものではなかった。


マミ「……もしかしてあなた、私に説教でもしにきたの? それとも嫌味?」

マミ「だってあなたもやってきたことでしょう。私にもそうなればいいって散々馬鹿にしてきたくせに!」

杏子「説教なんてするつもりはない! あたしだって、そんな資格ないことくらいわかってるよ!」

マミ「じゃあ何をしに来たの?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 20:06:20.71 ID:1F5t6m350<>
杏子「あたしは……」


 自分の心の中から言葉を探る。自分の嘘偽りない気持ちを。

 だって、今日は嘘つかないって決めたんだ。


杏子(――――だって、そうじゃねえと)


 身体中の血が一点に上ってきたかのように、杏子の顔は熱くなった。

 いつもなら、こんなことでもなければ言えなかった。

 思ってたはずなのに、言葉を探ることもせず自分で気づくことすらしないでいた言葉を言う覚悟を決める。


杏子「……――あたしは、マミに変わってほしくなかったんだよ」

杏子「あたしは無理だったけど、マミにはあの時のままの青臭いヒーローでいてほしいんだよ!」


 ……でも、今になると、どうしてこんなことも言ってやれなかったのかと思ってしまう。

 思えば、去って反発して、馬鹿にすることしか言ってこなかった、そんな自分が追い詰めた責任だってあるのかもしれなかった。


杏子(今そうしないと、あたしの信じたかったものは全部なくなっちまうんだろ!?)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 20:28:47.62 ID:1F5t6m350<>

杏子「そうしたらちょっとはあの時のあたしも間違ってなかったって、ちょっとは救われるって思えるかもしれないだろ?」

マミ「……佐倉さん、私にそんな期待をかけているの? 自分は無理だったのに?」

マミ「私にだけそんな期待を背負わせるの?」


 口調だけは穏やかなままマミの顔は悲しげに歪む。

 杏子にとっては必死の願いだが、マミにとってはそれは重くのしかかり縛りつける鎖にもなる。

 ……マミは杏子の思いに、そんな卑怯さを感じ取ってしまったのだ。


マミ「私も同じ気持ちだったわ……私もあなたが去って行った時、同じ気持ちだった」

マミ「あなたに変わってほしくなんかなかったのよ。信じてたのに、私を置いていってほしくなかったのよ」

かずみ「な、ならマミも杏子も仲直りできないかな? どっちも気持ちがわかるなら辛い思いしないようにするべきだよ!」

マミ「でも、安心していいのよ。あなたの思いは裏切られない。私は変わらないの」

マミ「ヒーローをやめる気はないし、使命を捨てるわけじゃない。あなたと一緒ではない……のよ」


 マミはまるで与えられたセリフを読むように喋る。しかし最後まで言うのを躊躇い語尾につれて言葉は失速した。

 それは自分の言葉ではないみたいな――。


 少し前だったら心から信じられたそれが言い切れなくなっている。迷っている? あの使命を聞いて、仕方ないって諦めたのに。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 21:23:45.85 ID:1F5t6m350<>
杏子「世界を救う云々とかいう話か? そりゃあたしは詳しいことはなにもしらねーけど!」

杏子「……使命なんて言葉でごまかしてんだろ?」

杏子「なんでそうなるんだよ!? グリーフシードが足りないからなのか? そこまで思いつめることないだろ!」

杏子「まだ足りないならやるよ、ほら!」


 杏子がポケットに手を突っ込んでから手を開くと、バラバラと黒い宝石が床に転がる。

 マミは言葉を失ったまま床と杏子を交互に見た。

 あの杏子がそこまでしたことが信じられなかった。いや――今の自分の言動でそんなことをさせていることが。


杏子「……だってそんなのは、あたしと同じだ。何も見えてないで人を犠牲にしようとしてんなら自分のためと同じだろ」

杏子「それに気づけないなら偽善者、あたしがイチッバン反吐の出る野郎だ」

杏子「そんなの今までのマミとは全然違うじゃんか」

マミ「……私は、見えてない?」


 自分ですらずっと心に引っ掛かりながらも気づかなかったことを言い当てられたような。

 マミはただ、驚いていた。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 22:09:27.72 ID:1F5t6m350<>

かずみ「大丈夫だよ。これだけあればわたしたちは魔女になったりしないよ」

マミ「今まで魔女に出会えなかったのは神名あすみのせいだったのよね?」

かずみ「うん。それと……織莉子のせい」


 裏切られたなんて思いたくない。

 言葉にするのは辛いけど、あえてはっきり言葉にした。だってそれが事実なんだ。目を背けてたってなんにもできないから。


マミ「これからは本当に大丈夫なの? それがなくたって元が少ないのには変わりないのよ」

かずみ「思いつめないで。きっとこれからなんとかなるから。救世のことだって、もっとみんなを助けながらだって出来るはずだよ」

かずみ「どうしようもなくなったらみんなで助け合おうよ! 諦めるのはそれでも無理だった時だけにしよう!?」

かずみ「だから、杏子もこれからは仲間になってくれるよね?」

杏子「あ……――ああ、そいつの返事次第だけどな!」


 思いがけなかったところで話を振られて、杏子は戸惑ったように返事を返す。

 その時はまた少しだけ素直じゃない様子に戻っていたが……――

 口にしてから杏子は少し心配になって、その返事を待った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 22:11:48.22 ID:1F5t6m350<>

かずみ「マミは人助けをしたいんだよね? 世界を救ったっていう“英雄”になりたいんじゃないんだよね?」

かずみ「最初から諦めたり傷つけたりなんかしてたら、杏子の言う通り何をやっても偽善者になっちゃう」

かずみ「わたしも……そんなマミはいやだ」


 真剣な目でマミを見つめる。

 ……すると、マミは力なく顔を伏せてしまった。


マミ「本当に……佐倉さんに説得されちゃった。今まで間違ってるって、自分が正しいからって思って威張ってきたのに」

マミ「呉さんのこともそう」

マミ「神名って子、本当に人の本質を見抜くのが得意なのね。私だって気づきたくなかった」


 マミの脳裏にはいつかした会話が過ぎっていた。


 あすみ『――ねえかずみ。巴マミみたいなやさしー人が、いつでも優しくて正しいと思う?』

 あすみ『ああいう表面上常識人ぶった『いい人』ほど、つつけばどうなるかわかんないもんだよ』

 あすみ『アンタのことも、アンタが自分に従順なイイコだから喜んでるとか』


マミ「……すべて、その通りになってるじゃない」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:35:57.66 ID:e0AE2tqG0<> あすみはなぁ
読心はあるけど人の汚くて醜い部分を嫌というほど見てきたから・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 23:14:13.49 ID:1F5t6m350<>
マミ「私ってそんなに嫌な人だったの?」

杏子「お、おい……」

かずみ「わたしはマミに助けてもらったし、マミのこと好きだよ。これからのことはどうにでもできるよ!」


 どうにか杏子と私の言葉は伝わったみたいだけど、マミはどこか自信を失くしてしまったようだった。

 杏子はどう声をかけたらいいか迷っている。わたしも完璧な答えなんてわからない。
 

マミ「私は佐倉さんが思ってるほど立派な人じゃないのよ。そんな弱さを必死に隠して……」

マミ「でもそれすらなくなったらこんなに弱いの」

かずみ「……そのグリーフシードをどれだけ受け取るかはマミが選んで」

かずみ「わたしはご飯の準備の支度に戻るね。今日は豪華なんだよ!マミのために作ってみようって思ったの!」


 わたしは再びキッチンのほうへ回って準備にとりかかった。そこから二人を眺める。

 とりあえず杏子も傍についてるなら安心できるかな。この二人はわたしの知る前から一緒に魔法少女やってたんだから。



1これからの活動について
2二人の会話を眺めている
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 23:30:37.88 ID:e0AE2tqG0<> 料理しながら2、1は食事中か後に
あとマミにさっきキリカのこが口に出た理由も聞く

マミも杏子ももっと素直になっていいと思うんだ
今マミが言ったように弱いとこ見せたって良いんだよ、誰だって弱いとこがあるんだから杏子に甘えてもいいと思うよ?
杏子も今は不良さんみたいだけど大事なのはこれからなんだから!
これまでのことがあって素直になれないっていうのなら・・・あれかな?ツンドラってやつ?

さっきキリカのこと話してたけどキリカと何かあったの?
杏子もキリカと仲直りしてね?マミと出来たんだし2人共甘いもの好きだからきっと気が合うと思うよ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:35:17.14 ID:ge2unE50O<> 安価↑
マミがキリカの事を悪く言わなくなってたら、明日学校でパンドーロを渡してと頼む <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/24(月) 23:54:26.99 ID:1F5t6m350<>
杏子「……たしかに、あたしはアンタに期待かけすぎてたんだろうな」

かずみ「!」

マミ「……」


 作業をしながら聞こえてきた言葉に耳を傾ける。

 失望とかそんなふうにも聞こえるけど、杏子の言いたいことはそれともちょっと違った。


杏子「結局甘えてたんだ。マミならどんなふうに当たっても強いから大丈夫だって」

マミ「素直じゃなさすぎて全然甘えてるようには見えなかったけど……」

杏子「まあ……あれだよ、反抗期みたいなもんだよ」

杏子「さすがに本当の親父やおふくろにはやることなかったけど、マミのことも【家族】みたいに思ってたからさ」

マミ「佐倉さん…………」

マミ「……前は父さん、母さんって言ってなかったっけ? 反抗期?」

杏子「なっ! それは関係ないだろ!」

マミ「今度はそういう甘え方じゃなくて、ちゃんと甘えてよ。じゃないと、また裏切るみたいに去られるのはいやよ」


かずみ(…………こっちはこっちで集中しよっと)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/25(火) 00:10:38.18 ID:rMwdvhr30<>


 ―――料理の仕上げを終えて、出来上がったものからテーブルに運んでいく。

 いつのまにかリビングのガラスのテーブルには料理の皿がところ狭しと並んでいた。



かずみ「さぁて、今日はおいしいもの食べて元気出そ!」

マミ「……ええ」

かずみ「マミも杏子ももっと素直になっていいと思うんだ。弱いとこ見せたっていいんだよ。マミも杏子に甘えたっていいと思う」

かずみ「誰だって弱いとこがあるんだから……」


 それはわたしもそうで、マミもそうで、杏子もそうで……。

 ――――それに、わたしたちを裏切った織莉子も。


かずみ「杏子も今は不良さんみたいだけど、大事なのはこれからなんだから!」

杏子「ケッ、どうせ不良だよ」

マミ「これからなんでしょう?」

かずみ「これまでのことがあって素直になれないっていうのなら……あれかな?ツンドラってやつ?」

杏子「おう? 寒そうだな」


 杏子がぶるりと震えるような身振りをとる。

 マミは意味を知ってか知らずか、苦笑いのようなものを浮かべていた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/25(火) 00:15:55.23 ID:XrVeZ00e0<> ツンデレとツンドラを素で誤字った・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/25(火) 00:30:54.51 ID:rMwdvhr30<>

かずみ「……そういえば、さっきキリカのこと話してたけどキリカとは何かあったの?」

マミ「少し魔女狩りの最中に会ったのよ」

マミ「結局今日は魔女は狩ってないわ。使い魔一匹倒しただけ」


 使い魔をもう狩らないと決めていたはずのマミが――それを聞くと違和感を覚えて、それから少しだけなにがあったかを理解した。

 今日のキリカとの出会いがマミに何かの影響を与えたんだということを悟る。

 それから杏子も反応する。この前は一応心配するようなことを言っていたけど……。


杏子「あいつのことか」

かずみ「あ、杏子もはやいとこキリカと仲直りしてよ? マミとも出来たんだし、二人とも甘いもの好きなんだからきっと気が合うと思うから!」

杏子「またそのことかよ。アンタもなんでそんなに仲良くしてほしいんだよ?あいつとは仲良かったことないっつの!」

かずみ「だって二人ともわたしの友達なんだもん!」

かずみ「マミも、今日少しでも良い印象に変わったならお礼でも持っていってよ。残りのパンドーロひとかけ包むから」

杏子「残すのかよ?」

かずみ「杏子もそこくらいは譲ってくれるとうれしいなぁ〜……」

マミ「かずみさんからってことで渡してほしいのならまあいいわよ」

マミ「……私のお礼は私が用意するから」

かずみ「うん!」


 二人の心がこうして解けたように、冷たくいがみあってた魔法少女たちもこうして少しずつ理解し合っていくことができるのかもしれない。

 温かい料理とみんなとの騒がしい談笑に、そんな小さな希望が胸に灯っていく。


杏子「結局あいつが話に出てきたせいで分け前減るじゃねえか、ここにいないくせに」

かずみ「…………」


 ただ、こっちの溝はまだ深いのかな〜……って、思った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/25(火) 00:31:49.02 ID:rMwdvhr30<> ------------ここまで。次回は26日(水)夜からの予定です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/25(火) 00:36:07.42 ID:XrVeZ00e0<> 乙でした

マミが元に(?)戻って杏子が仲間になった、のか?
キリカと杏子の溝は深そうだ、流石食い物の恨みw
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/25(火) 23:18:06.03 ID:rMwdvhr30<> ---------*避難所にてクリスマス小話投下中*
https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539087062/ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/26(水) 22:09:46.26 ID:V47tosXV0<>
――――……
――――…


織莉子「…………」


 静寂の部屋、目の奥に映るは騒がしく楽しげな声。

 ……瞬間、彼女は薄い碧の瞳を鋭く絞る。



「――――……んにちわっ、お嬢さん?」


織莉子「!」






 ――――それは、また別の時間の別の場所だった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/26(水) 22:29:29.86 ID:V47tosXV0<>


 軽く舞うようなステップを踏むと、彼女は唯一人相の見える口元に薄く邪悪な笑みを浮かべる。

 しかし、それすらも彼女の本当の顔かはわからない。


「……何の用?」


 正体不明の女に、黒髪の守護者は平静を崩さず問いかける。

 目の前に居るのに眼中にないような、まるでお前のことなど興味がないとでも言いたげな目をそこに向けていた。


「まあまあ、そんなに睨まないでくれないかな。君にイイこと教えてあげにきたんだ」

「君の大切な人を狙っている人がいるよ」

「!」


 その言葉を聞くと、守護者ははじめて目の前の人物を目に入れる。……その言葉には、心当たりがあったから。



「――……美国織莉子。君の大切な人を殺さんとする魔法少女の名だ」


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/26(水) 23:42:32.79 ID:V47tosXV0<>



 大きな粒をした汗が、その陶器のように更に血の気をなくした白くなった頬を一筋伝った。




――――
――――


 豪勢な夕食を終えて杏子も帰ると、部屋の雰囲気はどこか寂しくなったように思えた。

 でも、わたしにはマミがいる。これまでと変わらない……いや、これまでともまた違った道を歩もうとするマミが。

 そう思ったらなんだかこの静かになった空気にも落ち着いた気分になった。


かずみ「……ねえ、マミ。わたしも自分のこと話そうと思うんだ」

マミ「どうしたの? 急に」

かずみ「わたしも弱いから誰にも言えなかったことがあったんだ」

かずみ「でも、今日マミや杏子を見てたら、苦しいことずっと一人で抱え込んでるのってやっぱりダメだなって思って……聞いてくれる?」

マミ「……ええ、もちろん。話してくれる決心がついたのなら」

かずみ「わたしの本当の正体はね……――――」



 キュゥべえから聞いた、今までわかっている自分のことを全部話した。

 わたしが魔女だってことがバレたら嫌われちゃうかもって思ってた。自分でも嫌だったから、言いたくなかった。

 そうやって明るいところだけを見せようとして……。でも、わたしもちゃんとマミのこと信じるから。


 きっと、甘えたり弱音を吐くのだって強さなんだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/27(木) 00:08:38.62 ID:3HFiGV9c0<>

マミ「……そうだったの」


 マミはわたしの話を静かに聞いてくれた。

 わたしの本当の『成り立ち』を。わたしがどうやって、『何』を材料にして造られたのかを――ついにすべて知られてしまった。


かずみ「前にわたしが『造られた』存在だってことは言ったよね。そういうことなんだ」

かずみ「今まで隠しててごめん。マミはそれがわかっても一緒にいてくれる? 嫌わないでいてくれる?」

マミ「当たり前じゃない。だって、私の目の前にいるのは魔女なんかじゃないわ。ミチルって人でもない」

マミ「私だってソウルジェムが濁れば魔女になるのは同じ……」

マミ「……でも今までの思い出まで否定したくないから、これからの未来も信じてみようと思うの」

マミ「私もかずみさんも、そう簡単に魔女になんてならないって」

かずみ「うん。わたしもそう思ってる」



 わたしもやっと、心から思うことができた。



かずみ「信じてればきっと大丈夫だよ。希望を持っていれば絶望になんて負けないから」




―15日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:5個
・[20/100] ・[100/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/27(木) 00:09:34.64 ID:3HFiGV9c0<> -----ここまで。次回は28日(金)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/27(木) 02:39:56.41 ID:3HFiGV9c0<> -------避難所更新&安価出しました。サツバツとした本スレの後の甘ったるい口直しにどうぞ。 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/28(金) 22:30:36.73 ID:t+jLups80<> ――――――


マミ「おはよう、かずみさん」

かずみ「マミおはよう。朝ごはんもうできるよ! 座って座って」


 食卓に料理を並べ、マミとテーブルを挟んで座る。

 朝食の準備が整うと、他愛もない会話をしながら食べはじめていた。


マミ「昨日は本当においしかったし、楽しかったわ。佐倉さんとも久しぶりにちゃんと話せて。ありがとうね」

かずみ「うん! あ、パンドーロも忘れずに持っていってね」

マミ「そうね。また釣れるかもしれないわね。……今日は訓練するでしょう?」




 ――――昨日、パーティの最後にこんな会話をしたことを思い出す。


かずみ「これからどうしようか?」

杏子「これから?」

かずみ「マミと仲直りしたってことは、杏子もわたしたちの仲間になってくれるんでしょ!?」

マミ「グリーフシードも手に入ったし、そろそろ訓練もしたほうがいいわね」

マミ「今のままじゃまたかずみさんを狙う魔法少女に襲われた時に対抗できないかもしれない」

マミ「前言ってたでしょう? かずみさんの力について。まだ調べたいことがあるって……」

杏子「……あぁ、あの時のか。たしかにまだわかってない力があるみたいだな」

杏子「それが解決するまでは、訓練には付き合ってやってもいいよ」

かずみ「わたしの力……」


 杏子も納得するように言った。

 杏子はあの時一緒にそれを目の当たりにしている。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/28(金) 23:26:45.37 ID:t+jLups80<>

かずみ「杏子も呼ぶんだよね」

マミ「正確には、佐倉さんも携帯を持っていないから『来てくれる』ってところね」

マミ「佐倉さんも場所は知っているわ。前に一緒に訓練してたことがあるから」

かずみ「そっか」


 今日からは杏子が来てくれる。キリカのことも、もし来てくれるなら受け入れる気はあるようだ。

 前と同じ『訓練』なのに、織莉子やあすみとやっていた頃とは面子も雰囲気もずいぶん変わったように思えた。


 ……これからもうマミはあの二人に関わらないつもりなんだろうか。


かずみ「でも、あの魔法少女をなんとかしないとってこともそうなんだけど、まどかのことはいいの?」

マミ「そうね…………それもまた考えないといけないわね」


 まどかを狙う人をなんとかしても、それだけじゃまだ契約する未来は残ってる。

 それにこのままなら、その魔法少女のことが解決した途端に織莉子が何をするかわからないんだ。


かずみ「じゃあ、マミ。またあとでね」

マミ「ええ。行ってくるわね」



 ――……そんなことを考えながら、ひとまず学校に行くマミを見送った。


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 00:19:19.80 ID:DGfwoHzz0<>
――――
――――
放課後・土手



 放課後の時間、マミと一緒に訓練場所に向かうと杏子はすでに土手で待っていた。

 約束してたみんなが揃って、さっそく魔力の衣装に身を包む。


 ……軽く力を込めるようにぎゅっと握った手に目を落とす。マミと杏子もわたしを見ている。

 今日のメインはわたしのようなものだ。

 でも、今まで使おうと思って使ってきた魔法と違って、『どうしたらいいか』がまったくわからなかった。


杏子「どーだ? ニセモノヤローから逃げてきた時のは使えんのか?」

マミ「何故か髪が伸びていた魔法よね。出来そう?」

かずみ「うーん……」



1もう少し粘る
2再生成のほうの新技を試す
3再生成・『髪が伸びた魔法』とはまったく違う魔法を試す

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 00:28:27.81 ID:grDSVnIYO<> 1
ところでキリカは来てないのかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/29(土) 00:29:08.68 ID:7jqvxkfQ0<> 1でうまくいかなかったら3

この間テレビで見た魔法を気晴らしにやってみる「テレポート!」 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 00:38:29.41 ID:DGfwoHzz0<>

かずみ「……ムリ! わかんないものはわかんない!」

マミ「その時の感覚とかまったく覚えてないの?」

かずみ「あの時は夢中だったんだよ」

マミ「その時は『逃げるため』に使ったのよね。どうしてそれで髪が伸びたのかを考えてみるのはどうかしら?」

杏子「どうしてなんだよ?」

かずみ「わたしも知らないよ!」



1その時の状況を再現してみるのは?
2もっと考える

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 00:42:22.49 ID:grDSVnIYO<> 2かな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/29(土) 00:44:52.38 ID:7jqvxkfQ0<> 2 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 01:09:14.25 ID:DGfwoHzz0<>

 うーんと唸りながらもう一度頭を捻ってみる。


 ……わたしは今まで魔法を考えて使ってなかった。あの時も咄嗟だった。

 でもきっとなにか理由とかつながりはあるはずなんだけどな……。

 実際に、“速く逃げられた”のと関係ないはずの“髪が伸びる”っていう不思議現象がおきてるんだし……。


かずみ「……速くする魔法、だったんじゃないかな」

マミ「速くする魔法? 呉さんの逆みたいな?」

かずみ「すごく極端な話だけど……」

杏子「ちょっと速くした程度でそんなに伸びるかよ。速くするにしたって、歩いて大体せいぜい数十分の距離だぞ?あの伸び方は年単位はあるぞ」

マミ「でも歳までは取ってないでしょう?」

かずみ「速くしたのは時間じゃなくて、身体だけってこと?」

杏子「わかるのはありえないくらい速く動いたってだけだな」


 イメージとしては、身体を活性化させる魔法ってことでいいのかな?


かずみ(……でも、なんかむずかしいな。考えたら余計に使えなくなりそーな……)



1再生成・『髪が伸びた魔法』とはまったく違う魔法を試す
2その時の状況を再現してみるのは?

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 01:14:12.71 ID:grDSVnIYO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/29(土) 01:15:19.08 ID:7jqvxkfQ0<> 1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 01:21:10.32 ID:DGfwoHzz0<>
・成功判定

 下1レスコンマ判定
0およびゾロ (選択肢から)安価指定可能
1~20 習得フラグ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 04:24:08.71 ID:grDSVnIYO<> 成功! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 21:42:06.07 ID:DGfwoHzz0<>


 あれからほかにも別の魔法を色々試してみたけど、ダメだった。




杏子「あん時の状況を再現してみるのはどーよ?」

マミ「いいかもしれないわね」

かずみ「きゃーっ!」


 ……ひたすら武器と魔法で襲い掛かってくる二人から逃げ回る鬼ごっことかもしたけど、目ぼしい成果をあげることはできなかった。

 ただ、普通に訓練らしくちょっと体力はついたかな。攻撃の気配とか、回避のコツとかが掴めてきた気がした。



★[格闘Lv4]→[格闘Lv5]

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 21:44:15.37 ID:grDSVnIYO<> そろそろ魔翌力コントロールも上げた方がよくないかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 23:09:47.15 ID:DGfwoHzz0<>

かずみ「やっぱりもっと明確な目的意識がないと使えないのかな?」

マミ「そうなのかもしれないわね。魔法少女の力の源は『願い』だから」

マミ「……でもかずみさんには願いがあるわけじゃないのよね」


 杏子はどういうことかと訝しむような顔をしてた。

 そういえばまだ杏子には言ってなかったっけ。


かずみ「わたし、魔法で作り出された存在なんだ」

杏子「は?」

かずみ「記憶喪失じゃなかったんだって。わたしはミチルから作り出されたけどミチルじゃない」

かずみ「だからキュゥべえとも契約してないんだ。生まれた時から魔法が使えるの」

杏子「……よくそんなこと平気な顔して言えるな」


 杏子は驚いてたけど、同時に感心もしていた。

 でもわたしだって最初から受け入れられてたわけじゃない。

 わたしが受け入れられたのは、マミやキリカ、色んな人がいてくれたからだ。


かずみ(もう少しなにか……手がかりがあれば)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/29(土) 23:56:43.85 ID:DGfwoHzz0<>

マミ「今日の訓練はこのくらいにしましょう。あまり一度に根を詰めすぎても好転しなさそうね」

杏子「まああたしらもさすがにかずみ追いかけ回して疲れてきたしな」

かずみ「絶対逃げてたわたしのが疲れてると思うんだけど……まあ力にはなったからいいや」

杏子「もう解散か? ならあたしは帰るぞ」

マミ「私達も帰りましょうか」

かずみ「待って!」


 家の方向に歩き出したマミを止める。


かずみ「帰る前に寄りたいところがあるの」

マミ「……?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/30(日) 23:29:25.60 ID:2DF/Azzg0<>


 その後、わたしたちが向かったのは織莉子の家だった。



――――
――――
美国邸


 チャイムを押すとすぐに織莉子が出てきて、わたしたちを迎え入れてくれた。

 しかし、織莉子は目を逸らしたまま口を利かなかった。あの時みたいに客人を迎える紅茶もない。

 やがてこれ以上の沈黙は無駄と判断したのか、織莉子が尋ねてくる。いつもより少し淡々とした口調だ。


織莉子「……何をしにきたの? 今日は何も連絡は無かったはずだけど」

かずみ「急に押しかけてごめんね。でも話したいことがあったから」


 いや、用があったのはわたしだけだ。マミにはついてきてもらっただけ。


かずみ「まどかのことについて話し合おうと思って。その作戦会議」

織莉子「そう、まだ私と組むつもりなのね?」

マミ「かずみさん、それは……」

かずみ「もちろんだよ! 世界を守るために、わたしも協力する! わたしもこの世界好きだもん!」

かずみ「一緒にこの世界のみんなのこともまどかのことも助けてあげよう!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/30(日) 23:57:23.27 ID:2DF/Azzg0<>

 織莉子は驚いた顔をする。

 しかし、それからまた呆れたように肩を落とした。


織莉子「何を言うかと思ったら…………世界も鹿目まどかも救うですって? 」

織莉子「そんなだから、本当はもっと内密に動くつもりだった。貴女なんて仲間にしたくなかったのよ」

織莉子「マミも同じ考えなの? これも貴女のせいで」

かずみ「え……」

織莉子「世界を救うための最善手が鹿目まどか、及びその守護者の始末なの。彼女を狙う魔法少女を倒してそれを行う。それが今私たちのすべきことよ」

織莉子「どちらも救うなんて現実的じゃない。どうしてそんなこともわからないの?」

織莉子「甘い事を言ってどうにかなると思っているの? まるで子供の我儘だわ」

織莉子「だから私は貴女が嫌いだった……! 私の仲間になると言うのなら、その覚悟くらいしなさい。私はとっくに覚悟をした」


 織莉子は今度こそ冷たい眼で睨んでくる。

 その視線は研ぎ澄まされた刃のように鋭く、向けた人を圧倒するほどの冷酷なオーラと恨みのようなものを醸し出していた。


 でもわたしは引かない! そこに同じくらい強い意志を込めて見つめ返す。

 すると織莉子はわずかにみじろぐ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/31(月) 00:50:27.21 ID:nwZpV9pG0<>
かずみ「織莉子は……たとえば“将来大犯罪者になる”って人がいたとして」

かずみ「生まれたばかりのその子のことを殺そうと思うの?」

織莉子「その例えならそうでしょうね。自分の意思で悪質な犯罪を犯すような人格も、育つ環境も、そう簡単に変えられるものじゃない」

織莉子「でも、鹿目まどかは生まれたてですらない。もう猶予は残されていないの」

かずみ「まどかとは話せるんだよ。 織莉子はまどかがどんな人か知ってるの? 悪い人なの? 自分の意思で世界を滅ぼしちゃうほど?」

織莉子「そうだとしたら貴女はどうするの?」

かずみ「それでも話して思い留まってもらう。無理かもしれないけど最初からあきらめたりしない」

かずみ「織莉子がもしそれすらも知らないなら――まずは確かめてみようよ!魔女になるまどかだって被害者なんだよ」

かずみ「何も知らずに殺すなんて、そんなのって後味悪いよ。だって、無事終わったらたくさん美味しいもの食べてパーティするんでしょ?」

かずみ「またみんなでお茶会しよう?」


 ――マミと紅茶のことを話す織莉子は楽しそうだった。

 わたしにはちょっとついていけなくなるくらい。

 あの光景を思い出して懐かしさが滲んだ。


織莉子「……貴女何を勘違いしてるの? あぁ、まだあの根拠もない絵空事のことを言っているのかしらね」

織莉子「だったら私、紅茶が好きなわけじゃないって言わなかったかしら? 私はただ“詳しいだけ”」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/31(月) 01:10:51.57 ID:nwZpV9pG0<>
織莉子「わかっているの!? 貴女は最初から騙されていたのよ。私に騙されて、裏切られたの。そんな私のことをまだ……」

かずみ「あのね……織莉子が嘘ついてるのはわかってたよ。あの時、最初に一緒にパトロールに行った時から」

織莉子「……なんですって」


 織莉子の目は、冷たい眼差しから徐々に感情の籠った眼差しへと変わっていた。

 凍てつくような冷たさの奥にあったのは激情。ともすれば狂気にも思えるようなそれが剥き出しに見えてくる。


かずみ「何か無理してるって気づいてたの。織莉子とはせっかく友達になったんだ。それなのにこのまま見捨てたくないんだ」

かずみ「私はまだ織莉子に本当の笑顔をさせてあげられてないのに……!」


 作られた笑顔の奥にあったのは?

 今のわたしにはその答えが少しだけ見えてきたけど、すべてをわかってはあげられなかった。


マミ「ねえ、美国さん。あなたは本当はかずみさんにも知らせずにもっと内密に動く予定だったって言ってたわよね」

マミ「それなのに他人に知られるリスクを冒して神名さんやかずみさんに話したのはどうして?」

マミ「……それほど余裕がなくなっているからじゃないの?」

織莉子「…………そうね」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/31(月) 01:41:45.04 ID:nwZpV9pG0<>
織莉子「神名あすみに話したのは理想的な協力者の資格を満たしているからよ。マミも駒として扱えると思った」

織莉子「……でもかずみ。貴女はいらなかった。私の駒じゃなくなったキリカも」

織莉子「駒を降りられた時点ですでに警戒心を持たれていたから難しいかもしれないけれど、それでもリスクを考えればすぐにでも殺すべき人だった」

織莉子「でもそれじゃ、今までの私のやり方じゃもう未来が見えなかったのよ!」

織莉子「だから……最悪みんなにバレても、いざとなったらあいつに立ち向かってくれそうな魔法少女の『数』がどうしても必要だった」

かずみ「それでもあきらめちゃダメなんだよ! 今までのやり方でダメだったなら違うやり方を試せばいいじゃん!」

かずみ「そのためにわたしはここにきたんだ!だって織莉子とみんなの目的は同じなんだよ?」

織莉子「……違う、貴女は何もわかってない」


 わたしたちがここに来た時から相当追い詰められていたんだろう。

 どん詰まりの状況に陥った織莉子は見開かれたその瞳に絶望の色を映していた。ついに剥き出しの『本性』が暴れ出す。


 ――ドン、と拳を叩き付ける大きな鈍い音が響く。


織莉子「このままじゃアイツに世界を奪われてしまうのよ? どうしてそれなのに貴女達はわかってくれないの!」

織莉子「みんなそうよ。私の手から離れていったキリカも!あんなの所詮、私に敗北したただの駒のくせに!」

織莉子「鹿目まどかも救う? ……そんなこと考えたこともなかった。考えたくもなかった」

織莉子「あの子がもし良い人だったら? それでも防げなければ殺すしかないのに」

織莉子「……誰も『私達』のことを理解してくれない。だから私が守るしかないの。私の世界を。その世界に鹿目まどかは不要な人。それだけだわ」


 テーブルを叩いた弾みに空のカップが転げ落ち、音を立てて割れていた。

 織莉子はそれを視界の端に捉えると、さきほどの狂気から一転、悲しげな表情をする。


かずみ「…………そっか」

かずみ「織莉子は、まどかが『もし良い人だったら』殺せなくなってしまうから怖かったんだね」

かずみ「だから考えようとしなかったんだ。やっぱり織莉子は悪い人じゃないよ。でもそれだって“逃げ”だよ?」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/31(月) 02:17:11.15 ID:nwZpV9pG0<>
織莉子「これでも私を『良い人』ですって?」

織莉子「嬉しいなんて思わないわ。私は悪逆の道でも構わないと覚悟をしてきたのよ」

織莉子「……紅茶に詳しいのもそういう『環境』があった。ただそれだけ」

かずみ「逃げたり諦めたりするのは覚悟じゃないよ」

かずみ「わたしは織莉子のこと、根っから悪い人とは思わないけど……思ってたよりも『弱い人だったんだ』って思った」


 織莉子は衝撃が走ったように言葉を失い、息を飲む。

 ……それから驚きの表情が怒りへと変わっていく。


織莉子「私が……弱い?」

織莉子「『悪人』なんかより、そんなふうに言われることの方が不愉快だッ!」

織莉子「どうしてお前なんかにそんなことを言われなければいけない!? そんなはずはない! 私はいつだって……!」


 ――――その時、無防備にしゃがみこんだわたしの身体に伸ばされた織莉子の手がわずか数センチというところで空中に止まる。

 この場に湧き起こった二つの魔力。……手を上げようとした織莉子をマミのリボンが縛り上げていた。


マミ「言っておくけど……このまま武器を出したりなんてしたら私もこれ以上を考えなきゃいけなくなるわよ?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/31(月) 02:29:52.78 ID:nwZpV9pG0<>

 わたしは床の破片を『再生成』の魔力で組み直す。

 ……鈴の音が響くと、壊れたカップは元に戻っていた。それを拾って織莉子の目の前に差し出した。


かずみ「はい。大事なものなんでしょ」

織莉子「……!」

かずみ「織莉子の言う『私達』……守りたい人のものかな。もう落としたりしないでね」

織莉子「…………もういないのよ。お父様は、もう……」

織莉子「守れなかったの」


 もう抵抗の意思は消えていた。

 たとえ戦ったとしたって事態は好転もしない。織莉子も無意味なことはわかっていたはずだった。

 様々な感情を映した目から今度は涙が伝う。いつのまにかリボンも消え、支えるものもなくなった織莉子はその場に崩れていた。



【※今回はマミ視点でも安価可能です。1や指定がない場合はかずみになります】
1織莉子の見た未来について教えて
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 03:14:44.31 ID:YvKHBfdU0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 03:43:30.93 ID:9S2KzgbCO<> 1+織莉子に頼れる人はいなかったかどうか聞く

ねぇ、織莉子。弱さは悪い事じゃないんだよ?
織莉子が守りたかった大切な人を失ってから何があったかはわからない。
でも、織莉子のことを気にかけて声をかけてくれてた人はいると思うんだ。
そんな人はいなかった?
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 21:42:24.33 ID:opdSy8yD0<> スレ主、ここ最近〆で次の予定が抜けてるので書いてほしいです
目安がないのは困るので、お忙しいかと思いますがよろしくお願いします <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2018/12/31(月) 23:23:53.51 ID:nwZpV9pG0<> ---------
更新しようと思ってたのが気付いたら夜になってしまった…
今日も深夜にちょっと投下すると思います <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 00:50:55.84 ID:V/mOuVbX0<>
かずみ「ねぇ、織莉子。弱さは悪い事じゃないんだよ?」

かずみ「織莉子はお父さんのことが好きだったんだね」

かずみ「家族を失うって辛いと思う。わたしには家族がいないから想像しかできないけど……信じてた支えがなくなるってことだから」


 ……微笑みかけながら話すわたしを、織莉子は不思議そうな目で見上げる。


織莉子「どうしてそんなことを知りながら笑っていられるの? 所詮貴女が『作り物』だから?」

かずみ「…………」

マミ「美国さんッ!」

かずみ「お父さんがいなくなってから何があったかはわからない」

かずみ「でも、織莉子のことを気にかけて声をかけてくれてた人はいると思うんだ」

かずみ「わたしには居た。だから前を向いて笑えるようになった。わたしは造られた存在だけど、わたしの心は……作り物なんかじゃないよ」


 それを知った時は自分でも信じられずに迷ったと思う。

 でも今なら胸を張って言える。……それは、誇らしいことなんだ。


織莉子「……住む世界の違う貴女達は知らないでしょうね。私が世間からどんな目で見られているか」

織莉子「お父様は名の知れた議員だった。これまで私は才ある美国の娘として慕われてきたのに、父の汚職からその羨望の眼差しはすべて軽蔑へと変わったの」

織莉子「その『才』は自分で努力して得てきたつもりだったのにねぇ……他の人はそうは思ってくれてなかったのよ」

織莉子「まあ、そんな人たちの事はどうでもいいわ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 01:37:22.29 ID:V/mOuVbX0<>
織莉子「私、お父様以外の家族は嫌いなの。ちなみに母もとっくに死んでるから。今テレビに出ている伯父さんは世間の同情を集め、葬式にも来なかった」

織莉子「今も周りには嫌がらせをする者が現れ、学校に行けば陰口が聞こえてくるのよ。そんな人いるわけ――――」


 諦めたような様子でただただ淡々と自分の置かれた“惨め”な状況を話していく織莉子だったが、途中でその言葉を途切れさせた。

 ――どこか自分の言葉に引っ掛かるところでもあったのだろうか?


 崩れ落ちたまま下を向く織莉子にわたしは手を差し伸べた。


かずみ「いなくってもわたしがなるから!」

かずみ「織莉子に必要なのは悪逆の道に進む覚悟なんかじゃないよ! 一緒にみんなを助ける仲間になろう!」

織莉子「……わかったわ。ありがとう」



 織莉子はついに、その手を掴む――――。





織莉子(本当にそんな温い考えが上手くいくの? いえ、どの道このままでも未来はないのだから…………)

織莉子(わざわざまた仲間になってくれるというのならせいぜい利用すればいい)

織莉子(でも……醜いところを曝け出して、否定されて、それでも手を取ってくれたのがわたしは嬉しかったの)

織莉子(そんな人が他にもいるかしら? “友達”ではないけれど――)
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 01:59:29.56 ID:V/mOuVbX0<>

かずみ「ねえ、織莉子の見たこれからの未来について教えてもらってもいいかな?」

織莉子「……貴女や鹿目まどかを狙う魔法少女を倒しても、鹿目まどかには守護者が居る」

かずみ「守護者?」

織莉子「遠くないうちに、その人が私の事を殺しに来るでしょう」


 『殺しに』――その言葉に背筋にゾクッと寒気のようなものが走った。

 せっかく本当に友達になれそうなのに。



織莉子「既に私の計画はバレているの」


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 02:14:44.72 ID:V/mOuVbX0<>


 ――――それから織莉子の家を後にし、わたしたちは今度こそ家路についた。



マミ「『仲直りしにいく』なんて言った時、驚いたのよ。まさか自分を裏切った人のことも許す気なんて」

かずみ「織莉子も言ってたとおり仲間は多いほうがいいよ。それに、隠してたとこがあっても友達だったんだから」

マミ「じゃあ、神名あすみのことは?」

かずみ「あすみちゃんか……」


 織莉子がグリーフシードを集めるのはあくまで目的があってのことだった。

 その目的に至る考え方と行動は到底許せなかったけど、話し合って解決することができた。

 対して、あすみは純粋に自分が得をするためだけに私たちを裏切っていた。


 それとは割り切って、あすみは自分に利益があることなら組んでくれるだろう。

 救世の計画に乗り気だったのも損得が理由だった。わたしたちの考え方に賛成してくれるかもその実現性によるだろう。

 ……あとは、それをマミが許せるかどうかだ。


かずみ「今度話しに行ってみようよ」


 マミはまだ織莉子のことも完全には信頼を置いていないようだった。


マミ「でも…………本当に彼女のことは信じられるのかしら?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 02:45:28.03 ID:V/mOuVbX0<>
――――
――――



織莉子(私はマミが土壇場でかずみの側についたのは、神名あすみが私に協力すると言っておいてかずみにグリーフシードをやったせいだと思っていた)

織莉子(協力者としては理想的だったけれど、あの子は気まぐれが過ぎる)



――夜・『千歳』の家


あすみ「……ほら、そろそろ寝ないと。【ゆま】」

ゆま「うん」


 ゆまと呼ばれた小さい少女は素直にうなずく。

 あすみは少女が眠ったのを確認すると、こっそりとベッドから身体を起こした。


あすみ「さて、ちょっと片づけたら私も寝るか」


あすみ(……ウシ乳の奴、あれから何の連絡も寄越さないな。猶予はないんじゃないのか?というより、本当にこのままどうにかする気があるのか)

あすみ(その猶予すら相手に握られてるなら、完全に遊ばれてるようなものだ。そんなのは気に食わない)


あすみ「――――オイシイ話には乗っただけで、あいつに利用されてやるとは言ってない」

あすみ「私は紅茶は好きじゃない。特にあいつのは気取ってるみたいでムカつくんだよね」



―16日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:5個
・[20/100] ・[100/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv5]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3] <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 02:47:02.80 ID:V/mOuVbX0<> -------ここまで
次回は1日、多分夕方くらいから <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/01(火) 03:13:36.70 ID:V0gmc5BtO<> 乙 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 20:11:29.73 ID:V/mOuVbX0<> ――――――
朝・マミの家


 マミは支度を整えて玄関の前に立ち、スマホを片手にたった今受信したメッセージを確認していた。


マミ「美国さんもう電車の中なのね」

かずみ「それでなんて?」

マミ「放課後には来るんですって。その後どうするかは置いといて、私もその時には帰らないとね」

かずみ「なんかお土産あるかな!?」

マミ「どうかしら……」


 今日の放課後には織莉子もうちに来る。

 まどかを殺す計画を知られて命を狙われている以上、自分の家にいるよりはうちにいるほうが安全だろう。


 今まで嫌がらせを受けながらも平常通りに登校し“いつも通り”を装っていたのは、素体の存在、異常事態をキュゥべえに悟られないためらしい。


 といっても命を狙われてはさすがに平常通りを続けてはいけなくなった。


、しかし鹿目まどかが学校に通っているなら守護者も放課後までは動けない。

 それならばまだいつも通りに学校には行ってからにする……と言っていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 21:21:17.17 ID:V/mOuVbX0<>

マミ「じゃあ、私は行ってくるわね。お留守番お願い」

かずみ「うん、いってらっしゃい」


 マミがこちらに手を振りながら玄関の外に消えていき、扉が閉まる。


かずみ(居候が増えたらこうして見送る人も増えるのかな?)


 それはそれで楽しそうだけど理由が理由だけに喜んでいられないかな。

 閉まった後の扉を見ながら、そんなことを考えていた。



――――
――――
見滝原中学校 教室内


マミ「はい。今日はちゃんと来てるのね」

キリカ「?」


 唐突に自分を呼ぶ声と目の前のプレゼントのような物に、キリカは不思議そうに顔を上げる。

 差し出されると一応受け取ったものの、まだどうしていいかわからないようにラッピングを見回していた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/01(火) 23:20:39.31 ID:V/mOuVbX0<>
キリカ「またかずみから? そりゃ嬉しいけどもらえる理由がよくわかんないっていうか……」

マミ「……それは一応私から。理由は『お礼』や『お詫び』で納得してくれるかしら?」


 マミはわずかに気まずそうにもじもじとしている。

 いつもきっぱりとした言動で仕切ってきたマミにしては珍しい姿だ。


キリカ「じゃあ開けるよ。……わあ、クッキー?」

マミ「昨日はクラスメイトから渡してもらったでしょう? その分だとちゃんと手元に渡ったみたいだけど」

キリカ「……だって、他にいくとこないし」

キリカ「もうサボるのもやめた。学校がキライなわけじゃないよ。ただちょっとだけ気が向かなかっただけ」

マミ「そういえば、もう訓練はやる気はない? 魔女狩りのことももう制限しないわ」

キリカ「結局織莉子とはどうなったの?」

マミ「一応まだ仲間をやってるわ。でも、これまでとはやり方を変えるって」

マミ「あなたの言う通り、騙されてて裏切られたんだけどね……かずみさんが説得をしたのよ」

キリカ「……どーでもいいよ。死なないうちには狩りに行くから心配しないで」


 一応用件は達成して、話したいことは話せた。

 マミは教室を去っていく。


マミ(やっぱりむずかしい……か)
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 00:17:22.52 ID:6qxYbQY+0<> ――――
――――
放課後



かずみ「織莉子、いらっしゃい!ねえ、なにかお土産は?」

織莉子「何もないわ。対価が欲しいなら家賃を渡してもいいけど……」

マミ「べ、別にそこまでしてもらなくても! そんな何万もかかるわけじゃないんだから!」

かずみ「お金とかじゃなくってさ……せっかく集まったんだからみんなでおやつ交換とかしたら楽しいかなって思っただけだよ」

かずみ「あっ、でもいつものとこ行かないと杏子が待ちぼうけしてるかも!杏子も連絡手段持ってないから!」

マミ「そうね……」



1織莉子も訓練に連れていく
2織莉子には待っててもらって訓練
3杏子もここに連れてくる
4自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/02(水) 02:28:16.94 ID:y0H0y7kzO<> 訓練馬車に着いたら自分はキリカを探しに行く
見つからなかったらあすみのとこに行ってみる
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/02(水) 06:41:30.53 ID:PuSJnl9x0<> ↑
織莉子に学校はどうだったか、声を掛けてくれる人はいたかどうかを聞いてみる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/02(水) 09:24:46.61 ID:y0H0y7kzO<> ↑↑ですが1が抜けてました
あと出来ましたら↑も追加をお願いします <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 14:11:08.21 ID:6qxYbQY+0<> ----夜再会 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 21:13:39.56 ID:6qxYbQY+0<>

マミ「美国さんは外に出さないほうがいい?」

かずみ「うーん、でも織莉子だけ残しておくのも危険かも」


 杏子には織莉子のことを話してない。

 計画のことはちょっとだけ話したけど、ちゃんと話して挨拶もしたほうがいいかな――。


かずみ「今日の訓練、杏子にも会わせたいから織莉子も一緒に来て!」

織莉子「わかったわ。いつもの土手に行けばいいのね?」

かずみ「うん、いざとなったら私たちも守るからさ。おやつタイムはそれからにしよっか。杏子もとっても食いしんぼうなの」


 ……織莉子は大体納得した様子だったけど、家を出る前にどこか悩むように疑問を呟いた。


織莉子「かずみとどっちのほうが……?」

マミ「そうね……どっちもどっちじゃないかしら……」


かずみ(なんだ、そういうことか……)


 わたしたちはみんなで土手に向かった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 21:38:30.13 ID:6qxYbQY+0<>

 その場所にはすでに杏子が来て待っていた。


杏子「……そいつは?」

かずみ「紹介するね。わたしたちの仲間の織莉子」

杏子「前に話してたヤツか……」


 杏子は織莉子のことを見定めるように見る。多少警戒しているようだ。

 織莉子はそんな杏子の目の前に出る。


織莉子「美国織莉子です。……よろしくお願い致します」

杏子「……あぁ、よろしく」


 まだ若干硬い雰囲気だ。でも、そのほうがいいんじゃないかと思う。

 だって私は、織莉子の嘘の笑顔を知ってるから。


かずみ「緊張しなくていいよ! 一緒に訓練しよ!」

杏子「それより気になることがあるんだよ。世界を救う話はどうなった?こいつが情報元なんだろ」

織莉子「話の真偽を疑っているのならその話は本当よ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 21:58:42.95 ID:6qxYbQY+0<>
かずみ「杏子にもそのことで一緒に手伝ってほしいんだった。杏子はもちろん手伝ってくれるよね?」

杏子「そりゃマジなら世界と一緒に滅びたいわけねーけど。使命がどうとか人助け以前の問題だし……――」

かずみ「ね? みんな手伝ってくれるでしょ?」

かずみ「じゃあわたし、ちょっと他の人にも仲間を呼んでくるよ! みんなはさき訓練はじめてて!」


 みんなにそう言い残すと、わたしは街のほうに走り抜けていった。


 ……そしてこれはその後の取り残された人たちの会話。




杏子「……で、アンタは何ができんの?」

織莉子「単純な遠隔操作可能な飛び道具と予知の魔法を少々」

マミ「美国さんは前から私が見てたから。前の続きからやりましょうか」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 22:05:11.45 ID:6qxYbQY+0<> ----【訂正】
かずみ「じゃあわたし、ちょっと他の人にも仲間を呼んでくるよ! みんなはさき訓練はじめてて!」 ↓
かずみ「じゃあわたし、ちょっと他の人も呼んでくるよ! みんなはさき訓練はじめてて!」
------------ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 22:11:59.49 ID:6qxYbQY+0<> ――――


 繁華街の通りを駆けて周りを見回す。

 しかし知り合いの姿はない。いつもだったらこのあたりをうろついてそうなキリカも見かけなかった。


かずみ「あれ、いないや……」

かずみ「――――まあいいや、もう一人呼ぶつもりだったし!」


 再び走り出して、あすみの――『千歳』の家を目指す。

 家の前に着くとインターホンを押してみた。


かずみ「ごめーんくださーい」

あすみ『あら、アンタが来るなんて。何の用?』


 機械越しに声が聞こえてくる。


かずみ「今一人?」

あすみ『……一人じゃないけど』

かずみ「誰かいるんだね。もしかしてキリカがいる?」

あすみ『違うよ。アンタには関係ない人だ。それよりわざわざアンタが訪ねてくるのはなんのつもりかって聞いてんだけど?』

あすみ『この前騙された意趣返しか説教なら受け付けてないから』

かずみ「そんなことじゃないよ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 22:42:05.91 ID:6qxYbQY+0<>
あすみ『……は?』

かずみ「今みんな集まってるから訓練場所に来てほしいんだ!あすみちゃんは救世の計画も知ってるし織莉子とも仲間でしょ?」

かずみ「たったさっき仲間も増えたから顔合わせしたほうがいいかなって」

あすみ『……意味はわかるけどアンタが来る意味がわかんないな』

あすみ『でもそういえばアンタは破壊的なレベルの能天気のお人好しだったわ』

かずみ「のーてんき!?」

あすみ『ちょっとだけ待ってなさい』


 機械の声が一旦切れて、あすみの言葉を信じてしばらくその場で待っていると出てきてくれた。

 さっそく訓練場所へと向かって戻っていく。


あすみ「まさかとは思うけど、美国のことは許してまた組んでるってことでいいのよね。また騙されるとは思わないの?」

かずみ「ちゃんと話し合って仲直りしたから。前のやり方とは違うよ。もう目的のために誰かを傷つけたりしない」

あすみ「やっとなんか動き出せるの? その為に私の力が必要とか?」

かずみ「いや……まだあの魔法少女のことはわかってなくて、むしろ追い詰められてるところなんだけど……」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/02(水) 23:08:07.37 ID:6qxYbQY+0<>
あすみ「追い詰められてんの? 私の力が必要ってそっちの意味?」

かずみ「織莉子が今命を狙われてるんだ。まどかを守ろうとしてる人がいて、その人に織莉子のことがバレたからって」

あすみ「……そんなの自業自得じゃん。殺そうとしてたんだから」

あすみ「『人を呪わば穴二つ』って言葉知らないの?」

かずみ「で、でも今は違うよ!」


 今まで話しながら歩いていたが、土手に着くまでの途中であすみは一度足を止める。


あすみ「ねえ、私を連れてみんなで集まるって言うけどさ。マミは私のこと許してんの?」

あすみ「アンタが他人に激甘なお人好しなのはこの際ツッコまないけどさ、他の人も同じとは限らないんだよ?」

かずみ「それはそうかもしれないけど……でもわたしはできるだけみんな仲良くしてほしいって」

あすみ「さっきキリカの名前出してたけどさ、あいつの事は?」

あすみ「理由知ったところでどうかね。これから美国とつるむならアイツは誘っても来ないと思うよ。なあなあには出来ないよね」

あすみ「そんなに早く心変わりしてくれるとも思えないし」



1それでも信じる
2どうしたらいいかな?
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/02(水) 23:21:21.94 ID:w54kzGKJ0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/02(水) 23:23:29.64 ID:PuSJnl9x0<> 2であすみの考えを聞いてから3

そんなに簡単に心変わり出来るとは私も思ってないよ
今まで信じてきた事、それが間違いだと判ってもその事実に向き合う事は簡単には出来ないと思う
人は誰だって弱いから・・・それを認めたくないから自分に嘘をついたり誤魔化したりする

でも、誰かが傍に居てはっきりとそれは間違いだって言い続けないといけないと思う
そのためにはまずは話し合って本音をぶつけ合わないと!
キリカは織莉子の事は許せないと思うけど、それでも心の整理は・・・ケジメはつけなきゃいけないと思うんだ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 00:40:38.41 ID:BRwgNkSW0<>
かずみ「……どうしたらいいかな?」

あすみ「そんなの知らないよ。救いようのない奴は救えない。信用ならない奴なら見放せばいいんだ。そしたら安泰でしょ?」


 あすみに助言を求めてみるが、あっけなく突き放される。

 厳しい物言いだけど、あすみは自分の事も言ってるのかもしれない。

 彼女は苦い現実を突きつけるけど、それをどうにかしたいとは考えていないんだ。


 だったらわたしが考えないといけない……。

 織莉子と本当に分かり合うためには。みんなで仲良くしてもらうには。


かずみ「……たしかに、簡単に心変わりはできないかもしれないっていうのはわかるよ」

かずみ「でも間違ってるなら、誰かが傍にいて、はっきりとそれは間違いだって言い続けないといけないと思う」

あすみ「人によって何が正しいと思うかなんて変わるからね。相手はそれが正しいって思ってるんだと思うよ?」

かずみ「それでもちゃんと話せば変わることも分かり合えることもあるよ。そのためにもまずは話し合って本音をぶつけ合わないと」

かずみ「キリカは織莉子の事は許せないと思うけど、それでも心の整理は……ケジメはつけなきゃいけないと思うんだ」

あすみ「はぁ……わかったよ、アンタが学習とかしないってことは。元からわかってたことだけどさ」

かずみ「あっ、待ってよ!」


 あすみはため息をついてから足早に歩き出す。

 ……わたしも置いていかれそうになって慌てて後を追った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 01:15:10.59 ID:BRwgNkSW0<>
かずみ「みんなー、あすみちゃんも連れてきたよ」

あすみ「ヤッホー、ここにみんなが集まってるんだって?この私を省いて先にはじめてるとはいい度胸ねっ」


 わたしが土手に戻る頃には、三人は訓練をしていた。いつもの魔力を扱う訓練らしい。

 さっきのシリアスな忠告とは打って変わって、あすみは妙に明るいキャラを作ってそこに駆け寄っていく。


マミ「貴女……よく私の前に来られたわね」

あすみ「だって呼ばれてきてやったんだし?」


 マミの鬱陶しそうな目もお構いなしだ。開き直っているかのように図々しい態度。

 ……わたしはそれを見て、やっぱりあすみもわたしたちに『本当』なんてほとんど見せていないんだと思った。

 でもあすみは織莉子以上に掴みどころがない。


あすみ「気づかないほうが悪いんだから。でもこれから同じ目的に向かう仲間なんだから、力は貸してやるよ」

杏子「アンタも仲間か。じゃあ、揃ったんなら昨日の続きでもするか?」


 杏子はあすみのことは受け入れてくれそうだ。


1活性?の魔法の習得を試みる
2再生成・『活性?』とはまったく違う魔法を試す
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 05:13:16.13 ID:xiCRnWN4O<> 魔翌力コントロールの訓練 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/03(木) 08:10:16.47 ID:i+T6bUzT0<> 1や2をする前に魔力コントロールLV1だしね
上げれば補正付くかも? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 20:01:32.35 ID:BRwgNkSW0<>

かずみ「うーん……でも、アレかあ……」


 前回やった時はまったく糸口が見えなかった。それを思い出すと、このまま同じことを続けることへの不安が沸き起こる。

 そもそも『続き』ってなにをすればいいんだろう?

 すると、みんなもわたしの迷いを察したらしい。


杏子「ニセモノヤローへの一番の対抗手段がソレなんだろ?」

マミ「ねえ、かずみさんも今日はこっちに加わってみる? 魔法も魔力の扱いが元なんだし、上手になれば出来ることも増えるかも」

かずみ「そうだね、じゃあそうしてみようかなー……」


 今日は織莉子と一緒に訓練をしてみることにした。


 人に教えられるレベルの魔法少女も増えている。

 織莉子の様子も隣で見ていると、前みたいに武器の水晶の扱いを考えた訓練のほかに、魔法の精度を上げることも試しているみたいだった。

 集中している織莉子の目には今何が見えているんだろう……。




★[魔力コントロールLv1]→[魔力コントロールLv2]

★[??]習得フラグ

★[????]習得フラグ
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 20:35:53.30 ID:BRwgNkSW0<>

マミ「魔力の扱いも慣れてきたわね。どう?」

かずみ「うん、まあ最初よりは」

杏子「で、なんか新技の手がかりは掴めそうか?」

かずみ「いやぁそれは全然だけど……」

あすみ「あれ、もうこんな時間。じゃー私はそろそろ帰らせてもらうから」


 あすみは一人時計を確認して、一足先に訓練を終わりにしようとする。


 ……帰る時も身勝手な振る舞いだった。


 日が落ちかけている。たしかにそろそろ切り上げるにはいい頃だろう。

 昨日も杏子が言ってたけど、格闘も魔力操作も一度に長くやりすぎると効率が下がってしまう。

 特に今は消耗しきってたらまずい事情があるわけで――。


マミ「まったく本当に自由気ままよね……」

杏子「まあでも、そろそろいい時間なんじゃねーの。あたしも腹減ってきたしな」


 杏子は杏子でまた勝手で、いつのまにか持ってたお菓子を食べ漁って空腹を満たそうとしていた。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 21:02:24.12 ID:BRwgNkSW0<>
かずみ「あっ、いいな!」

杏子「仕方ないな、ほらよ」


 わたしも羨望の眼差しを向けてねだって杏子のお菓子を分けてもらう。

 『お茶会』というほど優雅じゃない、小さなおやつタイムがここではじまっていた。


 ……最早演技の必要もなくなった織莉子の見る目は、“呆れ”だった。


織莉子「いつのまにかおやつの時間が始まってしまったけど……私たちも帰ります?」

マミ「そうね……ところでまた何か危険な予知は見えてない?」

織莉子「さっきも訓練中に使っていたけれど特には……」


 あすみが歩き出す。杏子も『そろそろ行くか』とお菓子を持ったままどこかへ行こうとする。

 最後に、私達もさっきまで訓練をしていた場所に背を向けて道に向かおうとする。

 わたしも少しだけ遅れてそれに着いていこうとするが、その時何かものすごい“イヤな予感”がした。


かずみ(…………え)


 何が見えた気がした。それは理由のあるイヤな予感。

 その光景が、確かに“自分たちがこれから見ることになるもの”だとわかりきっているような――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 21:20:01.77 ID:BRwgNkSW0<>

マミ「どうしたの? 帰ったらまた紅茶淹れて何か作るから行きましょうよ」

かずみ「あ、うん。……本当に大丈夫なんだよね」

マミ「美国さんも特になにも視えなかったって言ってるんだし、大丈夫でしょう」


かずみ(じゃあ気のせいかな……?)


 彼女の予知はしばしば、自分にとって重要な破滅のきっかけとなる未来を映さない。

 そんな特性はわたしは知らなかったけど、意識して特定の未来を探るには十分に信頼の出来る精度を持っていた。




1杏子を呼ぶ
2あすみを呼ぶ
3このまま帰る

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 21:28:47.09 ID:jpkYcwBE0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/03(木) 21:34:17.28 ID:i+T6bUzT0<> 2 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 22:03:53.31 ID:BRwgNkSW0<>

 わたしは走り出していた。もう随分と離れてしまった姿を追って。


かずみ「あすみちゃん!」

あすみ「……何?私早く帰りたいんだけど。『お茶会』とかくっだらないことなら勝手にやっててくれる」

かずみ「そうじゃなくて……」

あすみ「じゃあ何さ」


 一番に帰ろうとしていた彼女。

 呼び止めてから焦れたようなイライラが伝わってくる。


かずみ「……マミとも話し合ってよ」

あすみ「だから許さないっつってるモンは無理だって。あすみが謝る気もないし」

かずみ「……」

あすみ「あと一人だけふざけたすんの呼び方やめてよね。私のほうが格上なんだからさぁ。実質歳もアンタ赤ちゃん同然だっけー?」

あすみ「私の事“ちゃん付け”していいのは私だけ。ナメられるのが一番嫌いなんだ」


 あすみは小悪魔的な笑いを浮かべ、再び背を向けて歩き出す。

 ……あすみがキュゥべえを殺した事件の時から、二人はずっと険悪だ。でも呼び止めた理由はそれだけじゃない。

 本当は何が言いたかったんだろう。――突き動かしたのは根拠のない勘だった。それを理由とするにはあまりにも脆すぎてまとめることができない。


 しかし――これだけは心の中ででも言い返したい。


かずみ(あすみちゃんが呼んでるみんなへの呼び方のほうが絶対ふざけてるよっ!)

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 22:27:49.05 ID:BRwgNkSW0<>

 それからわたしはマミと織莉子のほうへと戻り、帰り道はみんなで雑談をしていた。


かずみ「そうだ、織莉子、学校はどうだった?」

織莉子「変わったところはないわ。これでも平常を続けるためにきちんと毎日通っているの」

マミ「明日からはどうするの? うちから通うの?」

織莉子「私がマミの家に居るという時点ですでに異常な状況は作られているわ。そこだけ取り繕う必要もないでしょう」

かずみ「明日からは学校も行かないんだね……織莉子にとって辛いだけならそのほうがいいのかな」

織莉子「まあ……そうね」

かずみ「?」


 わたしは少しだけその言葉に違和感を覚える。それは織莉子が一瞬言いよどんだように見えたからだ。

 その時ちょうどマンションについて、マミの部屋の前へ立つ。


 マミがカギを開けると、私たちは廊下を進んだ先に驚くべき“光景”を見た。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/03(木) 22:34:08.78 ID:i+T6bUzT0<> 何が起こった? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 22:43:46.61 ID:BRwgNkSW0<>

 消灯したリビング。

 誰もいないと思っていた部屋には“誰か”の姿があった。


 その上それは、見覚えのある“光景”だった。


かずみ(さっき見た人! あれはやっぱり……!)


 あやふやな勘と切り捨てたもの。照明をつけて、闇の中から輪郭が浮かび上がる。


マミ「こんな暗い中に客人がいたとはね。歓迎が出来なくてごめんなさいね? ――暁美さん」


 銃弾とリボンが衝突したのはマミの言葉と同時だった。

 しかし目の前にはすでに人はいない。


織莉子「!」

ほむら「貴女たちが“美国織莉子”と組んでいるのは聞いているわ」

ほむら「まず私が用があるのは彼女よ」


 どうやって回り込んだか、黒光りする拳銃は素早く織莉子を狙って突きつけられていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 23:05:38.25 ID:BRwgNkSW0<>
マミ「それで待ち伏せしてたのね……?」

かずみ「えいっ!」


 わたしが魔法を使うと、拳銃と織莉子の間に巨大なぬいぐるみが現れる。

 覚悟してなければこんなに速く反応して動き出すことは出来なかった。

 しかしそれは直後に撃ち込まれた数発の弾丸によってボロボロに砕け散る。


ほむら「抵抗するなら仕方ないわ」

かずみ「待って! 話を聞いて!」


 今度はわたしを狙って弾丸が飛んでくる。鉄壁の『守護者』たる暁美ほむらは攻撃をやめない。

 彼女の目は冷たさを増す。聞く耳を持たない猛攻だった。

 また再生成で遮蔽物を作り出すことは出来るが、それでも全部防ぐことはできない。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 23:08:27.08 ID:1ykFxxkN0<> ガチで殺しに来られたら既に全員死んでるんだよな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/03(木) 23:10:52.48 ID:i+T6bUzT0<> 時間停止は初見殺しどころではないしね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/03(木) 23:32:17.68 ID:BRwgNkSW0<>

 血の噴き出す肩を押さえながら織莉子を呼ぶ。


かずみ「とりあえず織莉子は逃げて!」

織莉子「やはりこうなりますか……」

ほむら「いいえ、逃がさない。この場に居る誰もよ」


 ほむらはまた見えない動きで姿を消し、いつのまにか武器を持ち替えていた。

 背後から連続した発砲音が聞こえる。


 ……振り向くと血塗れの姿が目に入る。

 織莉子はギリギリのところで急所のソウルジェムだけ守るように防いでいた。




かずみ 魔力[80/100]  状態:負傷(右肩)
GS:5個
・[20/100] ・[100/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:負傷(中)


敵:暁美ほむら

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6自由安価

 下2レス ※強制的に攻撃をやめさせないと落ち着いて会話はできません <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/03(木) 23:58:43.41 ID:i+T6bUzT0<> うーん、良い選択肢が思い浮かばないけど・・・

5+目に捕らえにくい糸のようなものを絡み付ける
もしくはドサクサ紛れでタックルとかかけて組み伏せる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/04(金) 00:17:56.08 ID:cDBxd4en0<> --------ここまで
次回は5日(土)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/04(金) 00:18:53.73 ID:6ozl966nO<> ↑
追加でほむらに警告

織莉子の事をあなたに教えた人もまどかを狙ってるんだよ!?
今あなたがこんなことしてるうちにまどかを誘拐してるかもよ! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 18:45:00.49 ID:2+PEG7AY0<>
かずみ「『ネーロ・ファンタズマ』!」


 次にわたしが仕掛けるのは数の暴力だ。

 相手に襲い掛かるように。また、負傷した織莉子を庇うように。


 しかし、前にユウリと戦った時と違って傷を治せるような暇はなかった。

 無機物から生まれた分身はフェイクの意味を持たない。加えてもう一つ弱点があった。


かずみ(数が少ない……)


 瓦礫や土などの使える材料がたくさんあった外とは違い、ここは無駄な物もほとんど置かれてない部屋の中。

 分身も攻撃に向かうよりも前に小銃の掃射で動きを止められ、ダメ押しに的確な一点集中の攻撃によって速攻で撃破される。


 身体を動かす要所を破壊されたわたしと同じ姿の人形たち。あれが分身でなかったらと思うと寒気まで感じる。

 ただすでにわたしの想像を現実にすべく、暁美ほむらの標的はこっちに移り始めていた。


 ――紫の目に捉えられる。それだけで射抜かれたも同然。

 その次には踏み出し銃を向ける課程すら飛ばして襲いかかるのだとわかっていた。


かずみ「インヴィズィービレ・アッビンドラメント!」


 だがその直前に、すべての分身を再び“違うもの”へと生成し直した。

 パッと見、消えてしまったようにしか見えない。わたしは間に合えたんだろうか。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 18:52:14.09 ID:2+PEG7AY0<>
ほむら「やってくれたわね」


 彼女の若干不健康なほどに白い皮膚の何箇所かから血が噴き出していた。ほむらは冷たいながらも忌々しそうな怒りの表情を湛えている。

 わたしが再生成したもの、それはほむらを中心に取り囲むように張り巡らせた透明なワイヤーだった。

 しかしそれも……――――


かずみ(もう切られてる……?)


 傷つけることには成功したが、決して深い傷を負わせられるものではない。

 せめて動きを制限できたらと思っていたが、こんなに早く全部切られてしまうなんて……?


かずみ「……っ!」


 銃を構えるほむらに向けて、捨て身のタックルをかけてみる。

 もう策がない。銃の射線をすり抜け、なりふり構わず懐へと飛び込もうとする。


 足を踏み出した一瞬で、肩の負傷のせいかバランスを崩してしまったことに気づく。

 銃弾は飛んでこなかったものの、膝で蹴り上げられ軽くあしらわれてしまう。


 もちろんその隙を狙って二人も動いた。マミが銃弾を撃ち込み、別の方向からは織莉子の水晶が吹雪のように襲う。

 しかし、その次の瞬間にはまた忽然と姿を消す。挟み討つような攻撃の嵐が虚しく虚空を通り過ぎ去っていった。

 そして次に現れた場所がまずかった。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 18:58:24.03 ID:2+PEG7AY0<>
マミ「ッ……! くぅ……」


 わたしの時と同じ、利き手を狙ったものだったのだ。

 それからほむらはすぐに反対の腕も狙い、銃を扱うマミの手を封じようと動く。


 彼女は的確に不意を突く位置を取ってくる。それこそ未来でも見えて初めて対処が出来るくらいに。

 ただ、対処はできても間に合わない。出来て、やっと一番当たってはいけない攻撃を防げるくらいだった。

 それだってもちろん何度も耐えられるわけではなく……私達じゃ時間稼ぎにしかならない?


ほむら「まず貴女には大人しくなってもらうわ」


 銃使いなら近距離の格闘は苦手――――とは限らないことはこの前のユウリとの戦いで思い知らされている。

 しかしこれはあまりにも自分の知る魔法少女たちとは別格だった。


 ……いや、別格だと思ったのはもう一人居た。


かずみ「織莉子の事をあなたに教えた人もまどかを狙ってるんだよ!?」

ほむら「だとしても両方殺すわ」


 返ってきたのは揺るぎない一言だけ。バッサリ切り捨てられる。

 こんなことじゃ見逃してくれない。話している暇もない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 19:05:46.23 ID:2+PEG7AY0<>

 まともに戦って勝てる相手じゃない。

 三人がかりなのにも関わらずだ。これなら織莉子が諦めるのも納得がいく。

 ベテランとして努力も怠らず、実力に自信のあったマミでさえそう思った。


 狙われているのは織莉子。なら、それだけ差し出してしまえばいいんじゃないか――――?

 脳裏に浮かぶ考え。特にマミはそれを色濃く思っていた。


マミ(……美国さんを許したのは、かずみさんが優しすぎるだけだわ)

マミ(大体、私たちは騙されたのよ? 鹿目まどかを守るのなら暁美さんの決意も間違いじゃない。庇う義理なんてないじゃない)


 最初に計画を聞いた時、犠牲を進んで出すような織莉子の方針に乗ったことも棚に上げ。


ほむら「貴女達の事も」

マミ「!」

ほむら「やはりまどかのことも知ってるのね。協力者ならあとの二人もどのみち殺すしかない」

マミ「ッ……」


 『そんなの理不尽だ』とマミは思った。

 結局のところ、仲間だと思われているから、行動を共にしているから自分のことまでそんなふうに見るのだ。


 自分は被害者だ。騙してた時は決して見せなかった酷い一面を見た。

 正直に言って、マミは織莉子の事を許せておらずまだ疑っていた。その疑念から胸の内の黒い影が広がっていく。


マミ(私たちは仲間だからついでで殺される……? 仲間意識なんてないのに……?)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/05(土) 19:31:05.77 ID:MnGVTLAu0<> 家の中メチャクチャだろうな、これじゃあ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 19:50:13.16 ID:2+PEG7AY0<>

 ほむらは今度こそ執拗に正確に織莉子を狙う。


 血染めのドレスの、宝石の付いた胸元だけを押さえて織莉子は見上げる。

 押さえた手も真っ赤に染まっている。そして、攻撃に使わない腕の代わりに封じたのは足だった。

 といっても、織莉子が万全に動けたとして、目に見えぬ動きで消えては現れるように移動するほむらには狙うのになんら障害にはなり得なかった。

 この状況からわかるのは、ただただこれ以上ないほど『追い詰められている』ということだけだった。


 それでも織莉子は命乞いもせず強気のままほむらに問いかける。


織莉子「……私を殺して貴女に救えるの?」

織莉子「私を殺せば貴女は何も為せずに死ぬ。鹿目まどかは魔女に成り、貴女は踊らされたまま――――」


 ほむらは言葉を聞き終わることも待たずに引き金を引く。

 そこにわたしは――。


かずみ「待てって、言ってるでしょうがーっ!!」


 鳴り響く鈴の音。

 ――織莉子のほうへと踏み出したはずだったわたしは、その目の前へと移動していた。


ほむら「!?」

かずみ「くっ……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/05(土) 19:52:34.16 ID:MnGVTLAu0<> かずみも時間停止?それともテレポート? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 20:09:55.79 ID:2+PEG7AY0<>

 ついにほむらはその冷たく固まった表情に驚きの感情を表した。

 庇った代わりにわたしは胸にいくつもの弾丸を受けていた。

 血が勢いよく噴き出し続け、鼓動の響きがいつもより大きく身体を揺らしているように感じる。


 ……これ、『普通の人間』だったらもう駄目だったのかな?


マミ「かずみさん!」

かずみ「大丈夫……!」


 それでもわたしはまだしっかりと両足でそこに立っていた。

 『大丈夫』と言ったのは、怪我のことだけじゃない。まだ負けない意思が、そして不思議と勝てる自信まであったからだ。

 以前あの魔法少女からわたしと杏子を守ってくれた魔法。今度こそ、今のわたしは誰よりも素早く動けるって確信したから。


 ……それはまるで今わたしたちと対峙しているほむらが使う、『瞬間移動』のようだった。

 でも本当は仕組みは違う。さっきワイヤーを張った時、全部同時に切られていたことを思い出した。


かずみ「それより、今のわたしに触れちゃダメだよ」


 これを相手よりも速くぶつければ――。


 火花が散る。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 20:53:32.87 ID:2+PEG7AY0<>

 その決意の“瞳”に、この時ほむらも何かしようとしたんだと思う。

 私は相手が『それ』をする前にわたしは全力でほむらに跳びかかり、そのまま身に纏う電撃に焼いた。


ほむら「ッ!」


 強大な光と音、それから鋭い悲鳴が上がる。

 この場のみんなが驚愕していた。


ほむら「ッぐ……ぁ、あなた……一体――」


 電撃が収まると、ほむらが掠れた声で問う。指の一本も動かない。もう攻撃できる状態ではなかった。

 この一瞬にして逆に追い詰められたほむらが抱いたのは、紛れもなく『恐怖』だ。

 わたしたちは戦いに勝てたんだ――――。


かずみ「……――――」


 ……それを知って、気が抜けたと同時にわたしは気を失ってしまっていた。


――――
―― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/05(土) 20:59:45.09 ID:MnGVTLAu0<> かずみが眼を覚ましたらほむらが既に処分されてた、なんてことにならなきゃいいが・・・
といってもそうされても文句は言えない事やらかしてるからなぁ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/05(土) 21:04:17.26 ID:SFzaeFZMO<> 電撃って事はサキの魔法か
恐れてるプレイアデスの魔法に救われるとか皮肉だな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 21:51:15.12 ID:2+PEG7AY0<>

 鈴の音が絶え間なくわたしの意識の中で鳴り響いている。


 誰かの姿が見える。

 この魔法も確かに……わたしに残された“記憶”の一部だった。


――――
――――



ほむら「――……なら、二人はまどかを殺そうとはしてなくて美国織莉子も今は考えを変えたと?」

ほむら「そんなの信じられると思うの!?」

マミ「信じてもらえないのなら仕方ないことよ。どちらかが敵意を向けるなら、戦いの末に殺してしまうしかなくなる」

マミ「……でもそれって、悲しいことだとは思わない?」

ほむら「勘違いで済ませるには根拠がないわ」


 聞こえてくる声とともに夢から現実に意識が切り替わり目を覚ます。

 気付けば、わたしは部屋の片隅に横たえられていた。身体の傷も、出血の酷い胸を中心に応急処置程度に治癒されていた。


織莉子「私たちは今なら簡単に貴女を殺せるわね。痺れて指一つ動かせなかったたさっきなら尚更」

織莉子「それをしないことが証明にはならないかしら」

ほむら「……」

かずみ「そ、そうだよっ!」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 23:05:18.68 ID:2+PEG7AY0<>

 少しだけ様子を見守ってたけど、飛び起きるとみんなの視線が集まった。


かずみ「名前は“ほむら”でいいんだよね。わたしたちもまどかのこと助けたいって思ってるんだ!てことはわたしたち目的は同じでしょ?」

かずみ「ほむらも協力してくれたら心強いよ!だってすっごく強かったし」

ほむら「貴女は本気でそう思っているの?」

かずみ「うん! でしょ?」


 みんなに返事を求めると、二人は肯定の言葉を口にする。

 ほむらは詰め寄った時からやや押され気味だ。……しかしクールな表情は変えなかった。


ほむら「……貴女たちのことは信じたいわ」

ほむら「でも所詮他人。貴女達はまどかのことを知っている。その危険性も。そして……少なくとも彼女は一度は覚悟しているはずよ」

ほむら「『救えない』と判断したら意見を変えるかもしれない……そんな可能性を残すわけにはいかない」


 ほむらの言う『彼女』はもちろん織莉子のことだ。でも疑ってるのはそれだけじゃない。

 その視線に、さっきの戦いの最中のように鋭さが増す。


ほむら「薄っぺらい言葉じゃないか、覚悟を見ないと信じられない」

ほむら「それに、『今なら私を簡単に殺すことが出来る』と本当に言っているの?」

ほむら「こんなリボンで私を封じられると思う? やっと治した利き手は応急処置程度。……私の魔法なら抜け出すことは容易だわ」

織莉子「だ、だから私たちは言っているじゃない……貴女に敵対しない……と」

ほむら「どんな時でも私の優先順位は常に変わらない。貴女が一番に優先する人は誰?」



1協力の必要性を説く
2みんなが大事
3優先順位なんてない

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/05(土) 23:18:58.15 ID:MnGVTLAu0<> 1+3
誰かを助ける事に順番なんてないよ
誰かを守る事はみんなを守ることだし、みんなを守るのは誰かを守る事だから
助ける必要がある誰かがいたら全力で助ける!それだけだよ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/05(土) 23:21:33.11 ID:SFzaeFZMO<> ↑
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/05(土) 23:53:33.38 ID:2+PEG7AY0<>
かずみ「誰かを助ける事に順番なんてないよ。誰かを守る事はみんなを守ることだし、みんなを守るのは誰かを守る事だから」

かずみ「助ける必要がある誰かがいたら全力で助ける!それだけだよ!」

かずみ「それと、さっき質問に答えられなかったから今答えとくね。わたしの名前はかずみ。苗字はない、『かずみ』っ!」

かずみ「あなたの目的、わたしにも手伝わせてもらえないかな?」


 マミにリボンをほどかせて、手を前に差し出す。

 それはマミや織莉子でさえ多少の躊躇いや戸惑いはあったようだけど……

 ――……ほむらの表情からは冷たさが消え、ただ驚いているようだった。


ほむら「……本当に信じていいの?」

かずみ「うん」


 急かすことはしない。

 『信じたい』と言っていた、その気持ちに答えられるように――ほむらがこの手を取るまで待っていた。


かずみ「…………ありがとう。よろしく」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/06(日) 00:32:55.39 ID:pM1srIJq0<>
マミ「暁美さん、そういうことならよろしく。私もずっとあなたのことは気になっていたのよ」

ほむら「そうね……私も出来ればあなたを殺したくはなかった。『殺す』覚悟よりも信じる覚悟をしてみてもいいかと思ったの」

織莉子「元はといえば私が悪いのです。なのにお二人にまで迷惑をかけてしまって……こんな私を信じろと言う方が難しいとは思いますが、宜しくお願いしますわ」


 散らかった部屋の中に、今までなかった穏やかな雰囲気が流れ始める。

 争って、互いに血を流して、ようやく手をつなぐことが出来たのだ。


かずみ「マミのリボンを魔法で抜けられるっていうのは嘘だよね」

かずみ「ほむらは私の張ったワイヤーを一瞬にして全部切ってた。『瞬間移動』じゃないと思う」

ほむら「貴女は私のハッタリに気づいていて……」

かずみ「うん。それでもやることは変わらないよ。それとね、わたし色んな魔法が使えるんだ。今わかってない魔法ももっと使えるものがあると思う」

かずみ「さっきのは電気を操る魔法!生命活動まで操ることができる電撃を出せるんだ。これで速く動くこともできる」

かずみ「といっても、わたしもさっきちゃんと気づいたんだけど……」

マミ「新しい魔法ね!すごいわ!」


 この前と同じ『活性』を二回使ったけれど、どちらも距離が短いからか今度は特に身体に変化はなかった。

 戦いの中で使うくらいなら、前ほど負担はかからないだろう。


 そうしていると、不意にインターホンが鳴る。マミによると隣人のようだった。


マミ「……弁解してくるわ。とりあえず、暁美さんもこれ片づけるの手伝って頂戴ね」


 ……個人宅が舞台にされた戦いの終幕の後は、その後始末まで大変だった。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/06(日) 00:37:42.79 ID:sP042tph0<> 銃声とかは時間停止中だから響かなかったのかな?
聞こえてたら警察沙汰だしね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/06(日) 01:18:17.57 ID:pM1srIJq0<>

 散らかったものをみんなで元の位置に戻して、壊れた家具や壁は再生成の魔法で修繕する。

 応急処理程度だった治療も落ち着いて完治させた。ここでもかずみは大活躍だった。


 隣人のおばさんには、銃声はリアルなゲームの音だと言って信じてもらった。打撃音はその時についやってしまったと謝った。

 遊びがヒートしすぎた中学生たちを叱りつけながらも、おばさんは最後には『最近のゲームはおっかないねぇ』などと残して帰っていった。

 ……苦しい言い訳だが、まさかR-15をやっと見られるようになった(?)くらいの少女たちが、ゲームみたいな戦いを実際に繰り広げていたとは思わないだろう。


 死者も出ず、痕跡は跡形もなくなったからこそそう言い張れた。

 しかし、ほむらが変身を解いても薬莢が消えないままだったことには三人は疑問を抱いた。それも本人の口からすぐに語られることとなる。


ほむら「……かずみの考察は正解よ。私の魔法は『時間操作』。時間を止めているうちに自分で動く必要がある」

ほむら「それに魔力で作れるのはこの盾だけ。銃は本物だわ」

マミ「えっ……それ本物だったの?」

かずみ「じゃあ、ほむらも本当は迷いはあったんだ」

ほむら「え?」

かずみ「問答無用で殺すことはしないでくれたんだなって。本当は私達に姿も見せないで殺しちゃうことも出来たんでしょ?」



 自分の力を知られることは敗北や死へとつながる。今回ほむらがここまで圧倒できたのは、相手がなにも知らなかったからだ。

 マミほど実力があり機転の利く魔法少女ならば、『時間停止』の仕組みを全て知っていれば弱点を押さえて対抗することも出来ただろう。

 逆に言えば、何も知らない状態ならほぼ勝ち目がないほむらの実力の高さにもなるのだが――。



 目の前の、自分の仲間になると言ってくれる人を信じたかった。信じられる仲間が欲しかった。

 けれど、『信じる』ことも勇気が要るんだと――――ほむらはそれをこの時理解した。


 誰にも頼らず、まどかを最優先にするために、ここに来るとき障害となる物を『殺す』勇気と覚悟を決めたからこそ、

 信じることがこんなにも難しいものなのだと実感していた。


 ……けれど、本当はどちらの勇気を出せば最終的に目的につながるのか。その正解はわからなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/06(日) 01:58:24.05 ID:pM1srIJq0<>

ほむら「そういえば、私に美国織莉子のことを教えた女のこと……あれは動揺を誘うための誤魔化し?」

かずみ「あっ、そうだ! 嘘じゃないよ。織莉子のほかにもまどかを狙ってるっていう人がいて……」

かずみ「あいつも色んな魔法を使うんだった!とにかく気を付けて!」

ほむら「ええ。私がまどかの傍で彼女を守るから」

かずみ「明日はまたみんな集めて対策会議しよっか。まだ協力してくれる人はいるんだ」

織莉子「…………」


 かずみやマミの二人とはどこか違う視線を受け、ほむらは見つめ返してその意味を思案する。

 綺麗に元通りになった部屋を出る時、ほむらは去り際に言った。


ほむら「……私はまだ貴女のことは本気で信じたわけじゃない」






ほむら(この選択でよかったのかしら)

ほむら(元々存在を知った時からまどかを殺すつもりだったという美国織莉子……彼女はまだ合わせている可能性はある)

ほむら(……でも、全部知ってて同じ目的を持ってくれる仲間なんてなんて初めてだわ)



―17日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:4個
・[0/100] ・[20/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]

ほむら
[魔力コントロールLv4] [体術Lv2] [射撃能力Lv6]
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/06(日) 02:00:54.85 ID:pM1srIJq0<> ------ここまで。次回は6日(日)夜からの予定です <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/06(日) 22:57:43.05 ID:pM1srIJq0<> ――――――
朝・マミの家


 目を覚ますと、まだ誰も起きてこないリビングの中を見回してみる。

 昨日暁美ほむらとの戦いを繰り広げていた部屋だ。

 あれ以降大掃除の時以上に大改造したものの、表面的な外観はさほど変わっていない。

 むしろ、普段手の付けられない場所の埃がなくなって以前より綺麗になっているくらいだった。


かずみ(早く起きちゃったなぁ……)


 今日が休日だということを忘れていたにしても、時計を見てみればいつも以上に早い。

 あまり物音をたてて他の人の安眠を妨げても悪いけど、とりあえず朝起きた時から感じている欲求をお腹の音とともに確かめる。


かずみ(おなかすいた)


織莉子「あら、起きてたのね。おはよう」


 そうしてると声をかけられた。

 誰も起きてこないと思って相当ぼけっとしてたところだったのでちょっと驚く。


かずみ「おはよう、織莉子!」


 織莉子の居候はほむらから身を隠すための提案だったけど、

 折角用意を済ませてしまったので昨日はそのまま泊まっていくことになったんだった。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/06(日) 23:36:53.68 ID:pM1srIJq0<>

かずみ「織莉子っていつもこんな早いの……? それともよく眠れなかった?」

織莉子「普段から早起きなだけですわ」

かずみ「織莉子もなんか食べる? わたしなんかお腹すいちゃったよ」

織莉子「でしたら、飲み物だけお願いできるかしら? まだあまりお腹は空いてないので」

かずみ「飲み物かぁ。マミみたいに紅茶は出せないけどなんか用意するよ」


 マミが起きて朝食を食べる頃にはまたおなかがすいてるだろう。

 朝食よりも前の軽食を用意して、わたしも織莉子の居るテーブルに向かい合って座った。


織莉子「『軽』食……?」

かずみ「? うん。軽食だよ?」


 ただ、織莉子にはこれが軽食には見えなかったようで。

 優雅にミルクを飲む織莉子に珍しいものを見るような目を向けられていた……。


 早朝のリビング。雰囲気はとても静かで穏やか。


1ほむらの件すぐ終わっちゃったね
2みんなをどう思うか?
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 00:02:48.73 ID:ZlWk9L4m0<> 1+2 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/07(月) 00:26:23.26 ID:lP2Fm0k40<> -------ここまで
次回は10日(木)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 20:03:27.83 ID:dce97rm4O<> 安価↑ ↑
追加で織莉子に学校で話しかけてくれる人の事を詳しく聞いてみる
あとキリカに謝る用に話す

織莉子の事情を知ってて話しかけてくるならその人なりに織莉子の事気にかけてるんじゃないかな?
あとキリカに会ったらごめんなさいしようね?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/10(木) 23:24:22.77 ID:umLRN00K0<> ------深夜の迫る時間の連絡ですみませんが、本日は中止で次回は11日(金)夜からにさせていただきます。 <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/11(金) 23:04:39.38 ID:f0iB1xT80<>
かずみ「ほむらのこと、思ったよりあっさり終わっちゃったね」

織莉子「ええ。私も驚いているわ。それに、まさか仲間に取り込めるとは思っていなかった」

織莉子「……わからないものね。私一人なら問答無用で確実に殺されていたでしょう」

かずみ「織莉子と暮らすのも楽しみにしてたんだけどなぁ。もう織莉子は帰っちゃうんだよね?これからは学校はどうするの?」

織莉子「問題は解決し、マミの家での居候も“異常”を察せられるような規模ではなくなった」

織莉子「ならば、また平常を装うことに越したことはないでしょう」

かずみ「でも、行きたくないんじゃないの?」


 淡々と話す織莉子の言葉には感情がない。だからわたしはあえて織莉子自身の感情を問いかけてみた。

 ……それはきっと、場合によっては残酷なことなんだろう。理性で固めた思いを揺るがそうとしている。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/11(金) 23:59:44.59 ID:f0iB1xT80<>
織莉子「別にそんなことはないわ。……言ったでしょう? 私は周りの中傷など気にしていない」

織莉子「私や計画にとって意義の無い時間ではあるかもしれないけれど、それだけよ。余計な事は気にせず最善手を取らせて頂戴」


 前に友達だった時と比べて、織莉子の言動にはこういう硬くて冷たいような感じの言葉が増えた。

 こういうとこは、隠していた織莉子の本当の部分なんだろう。でもきっとそれだけじゃないはずなのにって、そう思った。


かずみ「そうだね。じゃあ、友達になれそうな人を探してみるのはどうかな?」

織莉子「……言いにくいんだけど、貴女私の状況を分かって言っているの?」

かずみ「うん。でもわたしも前に言ったでしょ?」

かずみ「もしかしたら、イヤな人ばっかりじゃなくて織莉子のことわかってくれる人だっているかもしれないから」


 得意げな笑顔で返す。

 そうすると織莉子は少し驚いた反応でわたしを見る。


 “何故そうまで自信を持って前向きでいられるのか”……それが織莉子には本気でわからなかったのだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 00:53:53.49 ID:rh0ptX3J0<>
かずみ「織莉子は今はみんなのことどう思ってる?」

織莉子「貴女の望む答えはわかっているつもりだけどね。ひとまず言わせてもらうなら……『味方』と言っておくわ」

かずみ「味方?」

織莉子「ええ。少なくとも貴女は私を裏切ったりしない。でも、他の二人に関してはまだわからないわ」

織莉子「疑心は残っているはずよ。あの二人は“貴女に”ついてきている。誰もが割り切れるものではない」


 織莉子の言葉に、あすみに言われたことを思い出した。


織莉子「神名あすみに至っては完全に“利害の一致”よ。こちらがなんと思おうと、向こうはそう思っているはず」

かずみ「そう、だけど……やっぱ全部がそうだとは思わない」

かずみ「あすみの言うことってなんだかんだ的中すること多いし、あすみにも感情はあるから利害だけじゃない行動だってあるよ」

織莉子「『気まぐれ』の範囲内だわ。……まあそれを友情と呼ぶならそうなんでしょう」

かずみ「じゃあキリカは? キリカにも今度謝ろうよ」

織莉子「謝って許してくれるかしら?」

かずみ「許してくれなくても。このままじゃどっちにもよくないと思う」


 ミルクを飲み干して、織莉子が空のカップを置く。

 わたしもそろそろちょうどよく腹ごしらえができて、早くに起きすぎた代償の眠気が復活してきていた。


1自由安価
2もう一眠り

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 00:55:04.31 ID:rh0ptX3J0<> -----次回は12日(土)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/12(土) 01:19:00.44 ID:IWMMRtWR0<> 織莉子の登校についていく
その後は久しぶりにあすみの家に料理を作りに行き、夕方は見滝原中に行く

ここで寝たら牛になりそうだから頑張って寝ないようにしよう
あ、織莉子の学校見たいから付いて行っていいかな?ていうか眠気覚ましの散歩がてらに行くから!
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 01:22:26.81 ID:rh0ptX3J0<> >>680 この日は休日です… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/12(土) 01:29:00.19 ID:IWMMRtWR0<> >>681
おっと失礼、休日でしたか
では登校云々は止めて織莉子かマミにキリカの連絡先を聞いて知ってたら教えてもらう、に変更で
連絡が取れたらあすみの家で一緒に料理をしないかと誘う <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 01:47:44.10 ID:TjzbZmFuO<> ↑
帰ろうとした織莉子がここでも二人の前でドジをやらかすを追加で
かずみが悪意のない慰めで織莉子の心をグサグサ抉り泣かすような感じで
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 20:29:05.76 ID:rh0ptX3J0<>
かずみ「織莉子! キリカの連絡先って知ってる?」

織莉子「勿論持っているけれど?」

かずみ「じゃ、教えてよ!わたしが料理の腕を振るうからさ、みんなで集まろ!その時に織莉子も一緒に行こう!」

織莉子「でもそうまでして関わりたいと思うかしら。元々関係のない人だったのよ。災難に巻き込まれないほうが相手にとっては幸せでしょうに」

かずみ「これから仲良くなればいいじゃん!もうまどかを殺さないんでしょ!」

かずみ「悪く思われたままじゃ友達のわたしがイヤなんだ。織莉子が変わればきっといつかは受け入れてくれるよ」

かずみ「だから、さ……」


 なんとか頼み込んでみる。

 織莉子は最初乗り気じゃなさげだったけど、熱心な説得に織莉子も折れてくれたようだ。


織莉子「……わかったわ。そこまで言うのならいいでしょう。計画の仲間も多い方がいいものね」

かずみ「それじゃあ織莉子、わたしはちょっとまた寝てくるよ。ごはん食べたらまた眠くなっちゃった」

織莉子「……私は少し読書でもしているわ」


 織莉子が自分の荷物から本を取り出す。

 暇つぶし用にいくつか持ち出してきたみたいだけど、分厚くて見るからに難しそうで、私には馴染めそうになかった。

 “罪と罰”と書かれた表紙だけが印象に残る。


 大きく欠伸をした口元に手を当てながら、わたしはマミの居る部屋に戻っていった。

 いつもなら鳴るはずの目覚まし時計も鳴らない。昨日の戦いでマミも疲れてるんだろう。

 マミの穏やかな寝顔を確認して、そっと隣の布団に入った。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 20:39:59.91 ID:rh0ptX3J0<>

 ――――静けさを増したリビングで、ページをめくる音だけがやけに響く。


織莉子「望んだ通りに殺し、世界を救えたとして、その後に私が受ける“罰”は――――」

織莉子「あすなろに行ったキリカは魔法少女と殺し合いをした。相手は殺人鬼。手加減をしては戦えない相手」

織莉子「けれどもキリカは生き残った。あの時から私の教えた真実に対する疑念が消え去っていた。私達の命の法則を断言形で言った」

織莉子「口には出さなかったけれど、一人格とはいえあの子はもう私より先に人の命を奪ったのね」


 もしこれを普通の社会に当てはめたとして、未成年であることを除いて考えても、正当防衛の条件には該当する。

 政治家であり元弁護士であった父の真似をして、書斎にあった法律の本を幼少期から熱心に読みふけっていた織莉子は、その項に書かれた文面を想起した。

 しかし相手と状況のおかげで薄れるとはいえ、実際に死を目撃する心への負担はそれと無関係なところにある。


織莉子「……いえ、あの子は戦いが常に命懸けであることを知らなかった。あの攻撃性も、全ては私の見込み違いだった」

織莉子「もし何かが間違って事故が起こったとしても、あの子はこの小説の主人公にもなれなかった」


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 21:37:33.34 ID:rh0ptX3J0<>

 学校のある日より遅めに起きてきたマミと一緒に朝ごはんを食べた後は、連絡のつく人には全員に連絡をしてお昼の約束を取り付けていた。

 とはいっても、連絡がつく人って織莉子から教えてもらったキリカとあすみくらいだ。

 昨日ほむらと話していた集まりにもそのまま行っちゃおうって考えだった。……けど、キリカがそこまで来てくれるかはわからない。


 キリカには『なんで私の連絡先知ってるの?』って返されて、織莉子から聞いたことは言った。

 でも織莉子が一緒なことは言ってなかった。言ったら来てくれなくなる気がして。あすみや織莉子の話も聞いて、簡単に許すことが出来ない気持ちもわかっていた。

 騙すようで悪いけど、無理にでも会ってもらわないと謝るチャンスすらなくなってしまう。


 あすみは『約束の集合時間には行くんだからいいでしょ』とのことだった。

 あからさまにそれ以外に時間を割きたくなさそうだ。あすみの家でやることも提案しようとしてたけど、最早言う前に拒否されてしまった。


かずみ「……昼食会の場所はいつも通りここになりそうかな。マミはいい?」

マミ「私は構わないけど」


 で、昼食会のメンバーはわたしとキリカとマミと織莉子の四人。

 わたしが腕を振るうって言ったけど、折角これだけ居るんだからわたしだけが頑張るのももったいない。

 みんなで協力して料理を作ろうってことで、親睦を深めるのが狙いだった。


かずみ「後で知れたら杏子はガッカリしそうだなぁ……。なんとか伝えられたらよかったんだけど。それとほむらの連絡先も聞いとけばよかった」

マミ「今回は仕方ないわね」

織莉子「……それと心配なのは、私が見えた途端にキリカが気を悪くして帰らないかってことね」



1まだ心配なの?と励ます
2待つ
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/12(土) 21:49:43.37 ID:IWMMRtWR0<> 1+杏子に連絡用の携帯を持たせたら?と提案

多分キリカは怒って帰っちゃう可能性が高いと思うから、そのときは私が追いかけるね
織莉子もキリカにどんな風に謝ればいいかわからないんだよね?
まずはキリカに織莉子の『謝罪したい』気持ちを受け入れてもらわないとね
許す許さないはキリカの意思次第だけど、心の区切りというかケジメをはっきりつけてもらわないとね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 21:57:41.69 ID:TjzbZmFuO<> ↑
作る料理とデザートについて二人に相談
マミの腕前はわかっているけど織莉子は料理出来るの? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 22:39:36.21 ID:rh0ptX3J0<>
かずみ「まだ心配なの?」

織莉子「心配というより、その可能性のほうが高いと思うわよ」

かずみ「そのときは私が追いかけるよ!」

かずみ「……織莉子もキリカにどんな風に謝ればいいかわからないんだよね? まずはキリカに織莉子の『謝罪したい』気持ちを受け入れてもらわないと」

かずみ「許す許さないはキリカの意思次第だけど、朝も言ったみたいにいつかは信じてもらえるかもしれないから」

かずみ「心の区切りというかケジメをはっきりつけてもらわないとね」

織莉子「ケジメ? 私じゃなくて向こうに?」

かずみ「もちろん織莉子もなんだけど……。キリカにも受け入れてもらわないと」


 織莉子を励ます気で言ったけど、心配してるのはわたしもだった。

 しかし織莉子は、冷たく落ち着いた響きを持ってわたしに話す。


織莉子「貴女はよく『受け入れないと』、『みんな仲良くしないと』と言うけれど……それは押し付けね」

織莉子「関わらなくて良い相手とは無理に付き合わないほうが互いに良い思いをすることもある」

織莉子「貴女はなんでも信じようとしてしまうから。貴女が信じ、強制したそれがのちに不和や悪い結果を生むこともあるかもしれないわよ」

かずみ「……この前みたいに?」

織莉子「ええ。この前みたいに」


 織莉子とあすみの二人から騙されていることを知った時には、たしかにすごく悲しかったし怒りだって沸いた。

 その気持ちはわかる。でも、それでもわたしは信じたかったし救いたいと思った。

 押し付けって言われたらどうしようもないけど、悪い結果にならないように正面から向き合って食い止めたいって思った。

 ……それで結果的に不和を生み、悪い結果を食い止められなかったとしても?


 織莉子は忠告じみたことを言った後、ふっと雰囲気を柔らかくする。


織莉子「……まぁ、いいわ。私も善処しましょう」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 22:58:13.18 ID:rh0ptX3J0<>
かずみ「ねえねえ、デザートは何作る?」

マミ「えっ……あぁ、そうね……無難にケーキとかならみんな喜ぶんじゃないかしら?」

かずみ「マミはケーキ作りもプロ級だからね! ちなみに織莉子は? 料理したことある?」

織莉子「ええ、大体一通りは。これでも小さい頃から一人で家事をやっていたので」

マミ「意外だわ。てっきりお嬢様だから、料理なんてメイドさんに任せてるかと思ってた」


 マミがそう零すと、明らかに織莉子は気分を害したような表情をする。

 しかし、すぐに取り繕った。


織莉子「……そんなことはないわよ。うちはそこまで裕福じゃないしプライドがあるの」

かずみ「そっか、せっかくの団欒の時間だもんね」


 織莉子の言うプライドがなんなのかは今なら少しわかる。

 マミには悪気はなかったけど、苦労を馬鹿にされたように思われて怒ったのかも。


織莉子「今はもう無い話だけれどね。それでも何不自由なく暮らしているわけではないわ」

マミ「そ、そう……それは悪かったわね」


 少しだけぎこちない雰囲気が流れる。


かずみ「それじゃあ、何のケーキ作ろうか!みんなで作るならショート?」

マミ「ショートケーキかぁ。シンプルだけど悪くないわね。それに呉さんも料理できるとは限らないでしょう?」

かずみ「キリカも別に心配しなくていいと思うよ!この前お世話になったから」

マミ「お世話……?」


 ――その雰囲気を変えるように、再びお菓子の話題を広げていくことにした。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/12(土) 23:34:04.72 ID:rh0ptX3J0<>

 食べ物の話は想像してるだけでおなかがすいてくる。

 特にキリカが来るなら、もしかしたら怒った時にもちょっとは機嫌が良くなるかもしれない。


かずみ「……で、じゃあメインは何を作る? イタリアン?和食?それとも中華?」

マミ「私はなんでもいいけど、二人だと洋食かイタリアンが多いわよね」

かずみ「キリカも来てから決めればいいかな? ちょっと冷蔵庫チェックしてくるね」


 キッチンの方に駆けだす。

 冷蔵庫を開けてみると、朝も見た通り何でも作れそうなくらいには揃ってる。


マミ「どうだった?」

かずみ「昼食会の前に買い出しに行く必要はなさそうかな。みんな来たら何が食べたいか聞こう」



 そうしてあれこれ話をしながらしながら待つことにした。

 出来るだけみんなが楽しくなるような話題を探す。お泊りはもう終わりでも、せっかく前みたいに三人揃ってるんだから。


 ……でもまだ、織莉子の口数は少なかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 00:36:05.24 ID:KoNlUbET0<>



 ――――来客を知らせるチャイムが鳴ったのはお昼の時間。

 インターホンごしにマミが出て、まずは二人で玄関で出迎える。


かずみ「おお、久しぶり! よく来てくれたね」

キリカ「ん、まあヒマだったし……」


 キリカはじとっと目線を逸らして頬をかく。

 わたしと、隣に居るマミの姿を見てから誘われるままに上がっていく。

 マミとは仲が悪かった時があるからか少しぎこちない。しかし廊下から広いリビングが見えた時、もう一人を見てキリカは顔を上げた。


 マミ相手のぎこちなさとは違う、まずいものでも見たようなあからさまな警戒の表情をしている。

 ……危険を生むものと知っている、天敵に向ける表情だ。


キリカ「……こいつも一緒だったの?」


 予想外の人物との対面。気まずそうかつ忌々しそうだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 01:08:23.32 ID:KoNlUbET0<>

キリカ「あー……、未だに仲間やってるっていうのは知ってるよ。そういうことねえ……」

キリカ「悪いけどやっぱ私はパス! もしくはこいつを帰らせてくれない?」

キリカ「ていうか、もうつるまないほうがいいって!騙されたんでしょ?忠告もしたのにさ!」


 キリカにとって、最大の妥協点は自分と織莉子の交換だった。二人そろって居合わせることがなければいいということ。

 最初は気まずげだけどまだ穏便な口調を保っていた提案が、『なぜ一緒にいるのか』――という怒りに変わる。


 ……今言わなきゃ。わたしは織莉子にサインを送る。


織莉子「……これまでのことは謝るわ。あの時のことも言い過ぎだった。後悔はしているわ」

キリカ「後悔?駒を逃がしたことへのかい? ……それとも、本当に今になって考え変えたとでも言い張るつもりなのか?」

織莉子「ええ。もう前みたいなやり方はやめにした。もう貴女の事を『殺人の道具』なんて見ていないわ」

キリカ「それは……私が使えないからじゃないの?」

織莉子「いいえ。今度こそちゃんとやり直すためよ」

織莉子「私の本当の目的も教える。貴女の力も私と、そしてかずみさんやマミさん、みんなのために貸してほしい」

織莉子「最悪私を許さなくてもいい。そのためにもどうか……私にやり直せるチャンスを与えてくれないかしら?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 01:28:22.63 ID:KoNlUbET0<>

 キリカはひとしきり疑心の表情で織莉子を見る。

 さっきまでは正面に入れたくないような目の逸らし方をしていたけど、今度は探り睨み負の感情をありのままにぶつけて見定めるようだ。


キリカ「……かずみはどうなの?」


 そして、二択の最後の意思決定。それは意外にもわたしに委ねられることになる。


かずみ「たしかにキリカの話は本当だったし、忠告は全部当たってたよ。織莉子とあすみが手を組んでるかもしれないって」

キリカ「……そこまで当たってたんだ」

かずみ「うん。キリカはみんなのことよく知ってたんだね。それにわたしより現実を見てたんだと思う」

キリカ「そこまで言うのにどうしてまだ一緒にいようと思った?」

かずみ「だって……友達だから。信じたいから。見捨てたくないって思った。間違ってるなら傍にいて正してあげればいいんだよ」

かずみ「それに織莉子がやろうとしてたことだって、やり方を変えればたくさんの人を救えるから」

マミ「……美国さん個人のことはともかく、みんなに関係ないとは言えない問題よ」

マミ「仲間は私たち以外にもいる。それも、このあたりの魔法少女がおそらく全員」

マミ「協力するかしないかはあなたの意思を尊重するけど、あなた一人が無関係とは言えないでしょうね」


 マミがフォローに入り、そこまで言われてはキリカもこの場から動けなくなった。

 ……そうしてやっと、わたしや織莉子が心配していた『怒って帰る』という事態は避けられたように見えた。


1今日の料理について
2自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 01:39:11.93 ID:KoNlUbET0<> ------ここまで。次回は13日(日)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/13(日) 09:54:09.95 ID:xGmoNaN50<> キリカに色々と話したあとに1

織莉子のことはすぐに結論を出せないと思うし、心の整理もふんぎりも簡単にはつかないと思う
だから今は織理子のことを信じると言った私を信じてくれないかな?
私達を心配して忠告してくれたキリカを私も信じる!それにキリカともっと一緒にいたいし! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 10:53:56.91 ID:wqyo0hkVO<> ↑
作る料理を和洋中イタリアンの4種類作ろうと提案
あと作った料理を杏子とあすみに渡す分を包んでおく
あすみはともかく杏子は絶対に文句を良いそうだから <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/13(日) 15:56:42.88 ID:xGmoNaN50<> ↑

1人1種担当だとこんな感じかな?

和・キリカ
洋・織莉子
中・かずみ
イタリアン・マミ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 22:43:04.39 ID:wqyo0hkVO<> こないな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 23:16:38.10 ID:KoNlUbET0<> ----ちょっと続きに時間がかかった!かかりすぎた!
ちょっとだけ投下します。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 23:17:13.20 ID:KoNlUbET0<>
かずみ「……やっぱりすぐに結論は出せないかな?」

キリカ「本当にそいつのやろうとしてたことがみんなに関係あんの?」

かずみ「うん。やろうとしてたこと自体は間違いじゃないよ。だからって簡単には織莉子のこと許せないかもしれないけど……」

かずみ「心の整理やふんぎりがつかないなら、今は織理子のことを信じると言ったわたしを信じてほしい」

かずみ「私達を心配して忠告してくれたキリカをわたしも信じる!それにキリカともっと一緒にいたいし!」

マミ「詳しいことはこれから他の仲間も一緒に集まる予定だから、その時に話しましょう。ついてきてくれる?」

キリカ「……そこまで言うなら、一応行ってあげるよ」


 キリカは渋々の返事を返す。そこには自分の見たことのない、意外なまでの冷めた表情。

 わたしはその様子を少しだけさみしく感じながら見る。



 ――話を聞くことは決めつつも、キリカが心の底で思ったのは『みんなしてこいつに騙されてたら』という可能性だった。



 そして、最近になって自覚していたことがあった。あすみにも指摘されたことだ。

 それは『人のことを信じていない』ということだった。心の底で誰にも期待をしていない。誰かが助けてくれることなんてない。


 それが今まで好印象がなく、一度信頼を失っている人なら尚更だった。

 敵でも悪人でも、最後には切り捨てずに無条件で手を差し伸べるのがかずみの性質。キリカの根底にある考えはかずみの信じる性善説とは程遠い。


 この場から一歩引いて見ていた。それだけキリカからの織莉子に対する信用は低い。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 23:31:52.41 ID:KoNlUbET0<>

かずみ「それじゃ、料理は何にする? わたしもうお腹すいちゃった!」

マミ「実は美国さんだけじゃなくて、私もこの機会にちゃんと話せたらと思って。呉さんは食べたいものはある?」

キリカ「えっと……」

織莉子「……キリカさん、改めてよろしくお願いしますね」


 しかし、基本的に流されやすいのも彼女の性質だった。


 疑心もぎこちなさも全て置いて流れは変わっていく。

 本題だった料理、そして今みんなの抱える空腹の解消へと。


キリカ「……はあ。ここに来る前考えてたこと全部飛んじゃったよ。美味しければなんでもいいよ。あと甘いもの」

かずみ「ケーキ一緒につくろうね」

キリカ「そういえば、他にも仲間がいるならなんで私だけなの?」

マミ「神名さんは時間を割きたくないみたい。佐倉さんは携帯がないから。あとはもう一人いるけれど連絡先を聞いてないわ」

かずみ「杏子にも通信機っていうか、なんか連絡取れるものがあればなぁ。その前にわたしもか」

マミ「その気になればインターネットを使えば通信は出来るかもしれないけど、佐倉さんが使いたがるかしらね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 23:43:17.70 ID:wqyo0hkVO<> コードレス糸電話なら杏子でも使えるだろ
通話距離数メートルだけどw <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/13(日) 23:45:30.95 ID:KoNlUbET0<>

かずみ「これだけいるし、みんな料理できるんでしょ? どうせならもう欲張って和洋中イタリアン四種類は作ろうよ!」

かずみ「杏子とあすみに渡す分も作っとく? あすみはともかく杏子は絶対に文句言うよね」

キリカ「この場にいないし労働もしてない人に分けてやる必要あるわけ?」

かずみ「それ杏子も同じようなこと言ってた!」

キリカ「はぁ!?」

マミ「まあまあ、そのおかげで呉さんにお菓子を渡すことになったのよ」


 そう言われると何も言えない。

 ……キリカはそんなふうにしばし黙り込む。


キリカ「……あすみに渡すなら二人分にしたほうがいいよ。なくても文句は言わないだろうけど、多分喜ばれるから」

かずみ「二人? どうして?」

織莉子「『妹』と二人暮らしだから、でしょう?」

かずみ「えっ!? あすみはあの家を乗っ取ったって……――」


 そこまで言って失言に気づく。

 織莉子には前に相談した。でも訳知り顔の織莉子を除いて二人、マミとキリカは怪訝に顔を歪ませた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 00:12:49.88 ID:ZVr+WF800<>
キリカ「乗っ取ったってどういうこと?」

マミ「……まさか、その子のことを魔法で洗脳でもしているの? それなら親は?」


 対象は変わるが、再びこの場に差した大きな疑心の影。

 わたしだって受け入れがたいほどの疑心を覚えたそれを今思い出してしまった。


 あすみは深追いしないほうがいいと言っていた。

 私はその時言われるまま引き下がったけど、一緒にいるという子があの家の子なら親はもう殺されている可能性が高い。

 ……あすみともまたうまく付き合っていかなきゃって思ってた矢先、その事実はさすがにわたしにも堪えた。


キリカ「……いや、でも、ないって。ていうか子供の世話なんてそんな面倒臭いこと好む性格に見える?」

マミ「子供までは殺さなかったってだけかもしれないわよ? 子供は従順だから殺さなかった。でも大人の方はもう……」

キリカ「あれが洗脳には見えないけど……」

かずみ「で、でも、二人暮らしってことはやっぱり親は殺してるんだよね?」


 そんなわたしたちの暴走を抑えるように声をかけたのも、やっぱり訳知り顔の織莉子だ。


織莉子「……殺したのは事実だけど、あまり悪いようにばかり考えなくてもいいかと思うわよ?」

かずみ「織莉子はなんか知ってるの!?」

織莉子「私の口から語ることは控えさせてもらうわ。彼女から恨まれそうだしね」


 織莉子だけはケロっとしていた。それは全部知ってるからなんだろうか?

 その言葉を信じて今は一旦追及しないようにする。……本人がいない場所で言ってても仕方ない。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 00:46:09.16 ID:ZVr+WF800<>

 ――――料理の準備に取り掛かる。

 何を作るか決める前に、それぞれ得意料理を発表していった。


マミ「私は……最近パスタに凝っているわね。カルボナーラやペペロンチーノも簡単に見えて奥が深いのよ」

かずみ「パスタ美味しいよね! さっと作れるし。でもわたしは得意料理っていう得意料理が思い浮かばないなぁ。記憶がないから……」

かずみ「手が動いたらインスピレーションで作れちゃうって感じ! 食べたいものならたくさんあるなぁ。ビーフストロガノフに、グラタンに、オムレツに」

キリカ「なんだろ……しいて言うなら魚の煮つけとか」

かずみ「織莉子は?」

織莉子「……和洋中イタリアン、だったわね。レシピがあれば大体作れるんじゃないかしら」


 一人一種作るって決まったわけじゃないけど、みんなの発言を総合して考えると決まったようなものだった。


かずみ「この流れだと中華任せたいね!」

織莉子「はぁ……中華ね」

かずみ「よし、作ってこう!」



・今日のメニュー

 下2レスまで <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 00:51:34.99 ID:MQo6ZDrk0<> 茶―ハーン、回鍋肉、餃子 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 00:52:16.46 ID:MQo6ZDrk0<> >>707はスルーしてください。↓2だと勘違いしていました。
安価↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/14(月) 00:56:57.48 ID:2zP/yCy60<> ぶりの照り焼き、一口ハンバーグ、八宝菜、たらこスパゲッティ
あと杏子達用におにぎり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 01:01:09.86 ID:CY3kt+e2O<> 青椒肉絲
オムライス
ラザニア
鯖味噌煮 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 01:02:45.67 ID:CY3kt+e2O<> おっと、もう決まってたか
みんな旨そうだ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 01:27:46.57 ID:ZVr+WF800<>

 料理はインスピレーション! 深く考えず、みんなで食べたいものを挙げて作っていく。

 手が空いたら他を手伝って、そうやってキッチンを所せましと回る。


かずみ「そろそろラザニアも出来上がる頃かな? ブリ照りも良い匂いしてきたね!」

キリカ「ハンバーグもそろそろ焼きはじめてもいいんじゃない」

マミ「たらこのソースもそろそろ作る?」


 時間のかかるものから取り掛かる。

 なんといっても出来上がったものが冷めすぎないようにタイミングを計るのが大変だった。


 ……それより、ここにきてドジ(?)が発覚した人もいた。


マミ「美国さん、それまだ早くない?」

キリカ「あれ? ここに置いといたソースは?」

かずみ「織莉子、それ入れてる調味料違うー!」

マミ「……大体何でもできるって言ってなかったかしら?」

織莉子「レシピを見ればなんでもとは言ったけど、忙しすぎるのよ。それに表現が曖昧すぎる……」


 とまあ、こんな感じで調理は完成へと進んでいく。ひとまずこれだけいるからフォローは問題なかった。

 ちなみに、まったくもって悪い意味で織莉子がさらに本領を発揮したのがケーキ作りの時間だったのも、

 またまた予想外だったんだけど……。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/14(月) 01:35:21.97 ID:2zP/yCy60<> ん?ラザニア? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 01:38:17.24 ID:CY3kt+e2O<> イタリアンだけ二品か <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 02:10:30.19 ID:ZVr+WF800<>

 ――なんとか料理はすべて完成する。

 いつもマミと二人だけのテーブルは今は人も増え、料理でいっぱいだ。


マミ「これだけ数があるとまるでビュッフェみたい」

かずみ「オムライスも卵とろとろだよ! アツアツのうちに召し上がれ」

かずみ「でも何でもできるって言ってた織莉子が失敗だらけだったのが一番の収穫かな。ごまかさないで答えて。本当の得意料理は?」

マミ「昨日のプライドの話は一応嘘じゃないんでしょう? 作ったことのある料理を挙げて欲しいわね」


 そういえば、これじゃプライドはずたずたなはずだ。

 今も、みんなから見栄を張ったか、自信過剰だったかって目で見られていた。


織莉子「……一番自信があるのは『目玉焼き』よ」

かずみ「目玉焼き?」

織莉子「簡単な料理って思ったんでしょう?」

織莉子「一人の間に見様見真似で包丁と卵を持って腕を奮った。でも小さい私は何度も失敗した」

織莉子「最初は形にすらならなかった。なんとか形になってもお父様好みの目玉焼きにならなくて」


マミ(目玉焼きに包丁……?)


織莉子「そのたびに絶対に知られたくなかったからこっそり処分もしてたけど、最初にきちんと作れたのがそれだった」

織莉子「お父様は気づいてたんでしょうね。ゴミ箱の中の卵のこと。でも美味しいと言ってくれた」

かずみ「そっか……頑張ってたんだね。今日もどうせなら目玉焼き作ればよかったのに」

かずみ「でも、食べ物捨てちゃダメ! 物語の中だったら、織莉子は生きてエンドロールを迎えられないよ」


 わたしは真剣な表情で織莉子を見る。

 ……織莉子は無表情にわずかに苦笑の表情を浮かべた気がした。



1料理についてみんなに話を振る
 aマミ
 b織莉子
 cキリカ
 d全員に向けて
2自由安価

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 02:11:00.79 ID:ZVr+WF800<> -------ここまで。次回は14日(月)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/14(月) 02:35:00.38 ID:2zP/yCy60<> 1cのあと1d

キリカは和食が得意なんだねー、煮付け以外にもいろいろ作れるの?
私もマミもどっちかというとイタリアンと洋食がメインだから、今度和食作りのコツを教えてほしいな

やっぱり料理は自分で食べるために作るより、誰かに食べてもらって「おいしい」って言って貰える事がうれしいよね!
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 19:42:19.09 ID:ZVr+WF800<>
かずみ「まあいいじゃん! 上手く出来たんだし。このちょっと和風版な八宝菜も新鮮でいい感じ」

かずみ「味付けはキリカが作ってたソースで出来上がってたんだよね。この前の生姜焼きの時といい、キリカは和食が得意なんだねー」

キリカ「そんなにカッコいい料理があんまり浮かばないだけだよ」

かずみ「煮付け以外にもいろいろ作れるの?」

かずみ「私もマミもどっちかというとイタリアンと洋食がメインだから、今度和食作りのコツを教えてほしいな」

マミ「美国さんよりは頼れそうね……」

織莉子「…………」


 次から次へと箸が、スプーンが、フォークが進む。

 マミもキリカも食事は堪能しているようだ。

 表情だけはいつもどおりのまますっかり無言になってしまった織莉子も、食べる手は変わらなかった。


かずみ「やっぱり料理は自分で食べるために作るより、誰かに食べてもらって『おいしい』って言って貰える事がうれしいよね!」

マミ「私は今まで一人だったから、かずみさんが来てからは特に感じるわ。呉さんも、今日のはどう?」

キリカ「うん。なかなか良いものは食べられたよ。私は普段は家族がいるからあんまり気にしたことないけど」


 それから、あれだけあった料理がなくなると次は冷ましておいたケーキが登場する。

 ――デコレーションはまだ未完成だ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 20:49:46.44 ID:ZVr+WF800<>

織莉子「器用なものね……」

かずみ「プロ級って言ったでしょ?」

マミ「あんまり見られてると落ち着かないわよ?」


 マミが最初に全体にクリームを塗っていく。

 それからみんなで順番こにクリームを絞ってデコレーションしていって、フルーツを飾り付けていった。


マミ「ケーキまであるなんてすごいわよね。これから訓練って気が起こりにくくなるけど、動かなきゃ消費できないから頑張らないと」

かずみ「まさかもうおなかいっぱいなんてことないでしょ? 甘いものは別腹って言うし……」


 ケーキを切り分けると一つ分皿に取る。

 真っ先に手を出したのがキリカだ。わたしの視線にも気づかずもくもくと食べているキリカに話を振ってみる。


かずみ「ね、キリカ」

キリカ「もぐ?」

かずみ「甘いものは別腹って」

マミ「あと訓練も頑張ろうってこと」

キリカ「あー……まあ、そーだね」


 キリカは曖昧に唸って、口の中のものを飲み込んでからそう言った。


キリカ「私はまだ話を聞くとしか言ってないよ」

かずみ「……うん、今はそれで十分!」



 ……約束の集合時間まで、わたしたちは長いお昼とデザートのひとときを楽しむ。


 一見同じ場所で同じことをしているように見えるみんなだが、心の中にある見えない隔たりまではわからない。

 でも、いつかはもっとこの場所に集まる人を増やしたい……と思った。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 21:00:04.77 ID:CY3kt+e2O<> 織莉子のドジは料理だけか?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 21:20:07.33 ID:ZVr+WF800<>

かずみ「そろそろいこっか。 みんなへのおみやげも用意してあるよね?」

マミ「ええ、詰めたわよ。おにぎりと料理を少しずつ。けど、あの神名あすみの話…………」

かずみ「……聞いてみるしかないよ。わたしたちがあれこれ考えてもしかたないし」


 荷物をまとめて集合場所の土手に向かう準備をする。

 これで居候――とまではならなかったお泊りもおしまいだ。織莉子はうちに来るときに持ってきた大きな荷物を持っていた。


キリカ「それでどこに行くの? 前のとこ?」

かずみ「うん、まあついてきてよ」


 キリカも今は何も聞かずにわたしたちと一緒にその場所へとついてくる。

 『そのために今までここにいた』――その目的を達成しないと意味がない。


 ……キリカは、他のひとに気づかれないようにそっとマミの袖を引き、自分と同じ列の後ろの隣へ誘う。

 そうして四人で並ぶのに自然な形に分かれた。キリカとマミにはかずみと織莉子の凹凸の大きい二人の背が前に見えている。


キリカ「君も心からかずみと同じように信じて和解してるのかい?」

キリカ「だとしたらそれは嘘だ。君は疑り深い人間だよ。……警戒心があるって言ってもいいかもね」

マミ「ええ……そうね」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 21:54:42.52 ID:ZVr+WF800<>
マミ「私は簡単には許すことも信じることも出来ない。まだ警戒はしてる」

マミ「けど、私はそれよりも『使命』を優先したいと思ってる。……これから話すことね」

キリカ「そんな大げさなこと……」

かずみ「――ねえマミ! ちょっとこれ見て」

マミ「なにかしら?」


 隣にいたマミの意識が前のほうへ向く。

 ……一人残されたキリカは心の中で叫ぶ。


キリカ(……この状況、私がおかしいんじゃないよね!?)

キリカ(まあ『使命』ってゆーのが本当で、これからやらかさないんならいいか……)


 そして、マミも本心では限りなく近いものを持っているということには気づいた。

 この周辺の魔法少女全員。個人単位というよりはチームの結束のほうが大きいのかもしれない。


 と――。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 22:22:55.27 ID:ZVr+WF800<> 昼下がり・土手



 ちょうど日差しと風の心地よいこの時間帯、そこには暇を持て余して立ち尽くす二つの影があった。

 早く来てしまったものは仕方ない。あすみは一人しか居ない話し相手に声をかけることにしていた。


あすみ「この時間に先に来てるのが二人だけなんてねー」

あすみ「かずみたちはどーせ一緒に来るんだろうけど、まだ話せてないイレギュラーさんとかと濃い話もしたかったのに」

あすみ「どうせだからアンタとも親睦を深められる話をしよっか! ――で、アンタって処女?」

杏子「しょっ……――――はぁ? どういう意味だよ? 質問の意図がまったく見えないんだけど?」

杏子「も、もしかして…………宗教的な意味かなんかか!? どうせあたしなんて穢れてるよ。聖女や楽園とは程遠い身さ」

あすみ「? しゅーきょーとかよくわかんないけどキョーコは経験豊富っと。よければその体験談も聞かせてほしいわね」

あすみ「ドロッドロで生々しい奴!初めては好きな人とできたのかしら?それとも犯された系ー?」

あすみ「杏子って遊んでそうだもんね。互いの体験談でも語って親睦を深めましょうか。まずは私が話したほうがいい?」

杏子「聞きたくねえよ!あと勘違いすんな!そういう経験はねえ!」


 一旦は除外した『まさか女の子がそんなこといきなり聞いてくるわけないよな』からつながった勘違いを、杏子は必死に否定する。

 草をかき分けてこちらに迫る足音が響いたのはそんな時だった。


マミ「こんにちは。珍しい二人で話が弾んでるみたいね?」

杏子「あっ、マミ!――――……ッ助けろ!こいつが気持ち悪い!」

あすみ「あら今日はよくお揃いね。みんな聞いてよ、杏子は経験豊富だって」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 22:41:19.35 ID:ZVr+WF800<>

かずみ(経験……?)


かずみ「……ああ! 杏子は経験豊富だって思ってたよ」

杏子「なんで!?」

マミ「し、しいて言うなら今までの行いや言動じゃない……?」

かずみ「そんなの今更だよ! でもマミはもっと経験豊富だよね」

マミ「えっ! いや、そんなことはないわよ!」

あすみ「待ってなんか純粋なアホの子がいる」

かずみ「だって二人とも強いもん!たよりになるし、そりゃ経験も努力もいっぱいしてきたんだってわかるよ」


 ……なぜかわからないけど、マミと杏子がホッと肩の力を抜いたのが目に見えた。


あすみ「こんの! 今時カマトトキャラなんて流行らないんだよアホ毛揺らしやがって!」

かずみ「えー、なんで怒ってるの? かみのけつかまないでよ痛いー」

杏子(あたしってそんなに遊んでるみたいに見えるのかな……)


 しばらくアホ毛を掴まれたりで暴れてたりしてたけど、改めてあすみを見るとさっきまで聞こうとしてたことを思い出す。


あすみ「なにさ突然静かになって?」

かずみ「……あすみちゃん……あすみに聞きたいことあるんだ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/14(月) 23:44:16.28 ID:ZVr+WF800<>
かずみ「今住んでる家の本当のことを教えてよ。その家の人のこと殺したの?」

あすみ「うん、殺したね」

かずみ「どうして殺したの!?その家の子とは一緒に住んでるんでしょ?」


 ふざけてた時のままの体勢で固まる。そこにある空気はいたって真剣だ。

 他のみんなも厳しい目であすみを見ていた。


あすみ「深入りしないほうがいいって言ったじゃん。みんなして恐い顔しちゃって、何この話さないと許してくれない雰囲気」

あすみ「……私と被ったからだよ。あの子の親のことは、殺したいから殺したの」


 あすみのほうもいつのまにか今までにない真剣さを持った表情をしている。


織莉子「それで伝わるのかしら。とはいえ殺したのなら罪は罪。貴女はまだアレとこのまま一緒に居るつもりなのよね」

あすみ「黙れウシ乳女狐」

織莉子「牛なのか狐なのか狼なのか、一つにしてほしいわね……」

あすみ「アンタにゃそれで充分だ。許しませんってんならそれでもいいよ。帰るし。でも世界の滅亡はなんとかしなきゃだろ?」

キリカ「世界の滅亡……?」

あすみ「あれ、いつのまにかなんも知らない猫ちゃんが増えてるね。さっさとこいつにも説明して訓練はじめたほうがいいんじゃない」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/15(火) 00:18:08.50 ID:rCESW0XF0<> ------ここまで。次回は19日(土)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 00:22:48.86 ID:rBv9Smb6O<> 乙です
あすみとの関係、これからどうなるかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/19(土) 20:39:30.73 ID:+h5ULZui0<>
かずみ「でもまだほむらが来てないよ?」

あすみ「これだけ揃ってるんだから先に始めててもいーでしょ」


 周りを見回す。

 今ここに居るのは、わたしと一緒に来たマミと織莉子とキリカ、それからわたしたちよりも先に来てた杏子とあすみの六人。

 あと一人だ。このまま何もせず待つ必要もないけど、みんな動き出そうとしつつもまだ納得いかない空気は残ったままだった。


キリカ「そいつも含めたら、これでこの辺の魔法少女が全員?」

あすみ「なわけないじゃん! そいつが契約させた新人が大量にいるんだから」

マミ「え……何? どういうこと?」

あすみ「アンタも? 元々アンタの街なのに知らなかったとかダサくない?」

織莉子「鹿目まどかを隠すために私が仕掛けた囮よ」

かずみ「囮……!?」

あすみ「インキュベーターの目を鹿目まどかから逸らすために候補者探して紹介して契約させたの」

あすみ「おかげでグリーフシードもとりにくくなってこっちは大迷惑だけどね。ま、何人かはグリーフシードになってるかもしんないけどさ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/19(土) 21:33:00.85 ID:+h5ULZui0<>

  あすみ『そりゃ手当たり次第に襲っていつまでも勝てるわけないじゃん?』

  あすみ『この縄張りには私やマミみたいのが居るんだし、最近急増したとかいう新人共が相手だってわからない』


 そういえば――前にあすみがそんなことを言ってた気がした。その時はそこまで考えられなかったけど。

 魔法少女の真実はいつだってショックをもたらし心を蝕む。

 わたしたちも一度は実感をもって味わった。何人も契約させて、その中でもし競争に敗れた人がいたら――。


かずみ(魔法少女の契約はそんな運命へと誘うもの。……それを織莉子が)


織莉子「……そのおかげで実際に鹿目まどかの存在すら気づかれないままでここまでやってこられた」

かずみ「そんなの間違ってるよ!上手くいったかもしれないけど、間違ってる!」

織莉子「そんなことはわかっているわ。まあ……――過ぎてしまったことは仕方ないでしょう?」

織莉子「それより、そろそろ隠しておくのも限界。候補者も無尽蔵にいるわけじゃない。これからのほうが大変だわ」

あすみ「うん、まあ確かにそれは現実的で一理あるよね。間違ってるだの合ってるだの気にしてる場合じゃない」

あすみ「最後に目的が達成できる事、それが正解だ。かずみの言う倫理を気にして世界が滅びちゃ間違いにしかならないね」

かずみ「それは、そうかもしれないけど……」


 そんなやり方じゃダメだって言いたいのに。それがなかったらってことも考えると間違いだって言い切れない。


 そしてあすみもやはり現実的な損得に即してそれをあっさりと言い捨て、それを肯定している。

 ――――かに見えたが、あすみの主張はまだそれだけでは終わらなかった。


あすみ「……けど、やられるほうはたまったもんじゃないよね」

あすみ「倫理を気にして世界が滅びちゃ間違いだとは言ったけど、人の感情を軽く見て怒りを買って、目的も達せずに殺されたらそのほうが間違いになる」

あすみ「そのうえ呪いだけ振り撒いてんだから性質が悪い」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/19(土) 21:43:42.97 ID:hDRUJbMx0<> あすみ編でもそうだったけど、あすみは織莉子の本質を見抜いてるから織莉子に対して容赦ないよね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/19(土) 22:25:05.30 ID:+h5ULZui0<>
あすみ「で、実際イレギュラーからは一度殺意を向けられて殺されかかったわけだ?」

織莉子「…………」


 二人の間に入り込めない微妙な空気が生まれる。

 互いに向けられた目は冷ややかさを感じさせた。

 あすみの視線は冷静さを持っている。冷ややかだけど冷徹ではない。ただまっすぐと現実を見ている目だ。


織莉子「まあ、どちらも昔のことですわ。これからは変えていけばいいでしょう……みなさんの納得する通りに」


 織莉子はあすみから目を外して自分からその空気を崩しにかかる。

 この場では引いたようだ。


かずみ「そうだ、これからどうするかも考えないと! まどかのことも助けるし、これからは違う方法を考えよう!」

キリカ「……なんか、話が見えてこないんだけど?」

かずみ「その前にキリカにも話さないとね。そしたら、私達とも一緒に考えて欲しいな」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/19(土) 23:24:01.59 ID:+h5ULZui0<>


 ――――……まどかのことについに、わたしたちの知ってることのすべてを話していった。

 改めて話していくうちに、計画と呼んでいたもののまだそういうふうにも呼べない段階だったことに気づく。

 これから考えなきゃいけないこともいろいろ出てきたが、それよりキリカはまだ実感わかなそうにわたしたちの話を頷きながら聞いていた。


マミ「困ったわよね……まずは話してみるしかないと思うけど」

キリカ「……ていうかその前に、まずはあの変な魔法少女倒さなきゃいけないってことでしょ?」

あすみ「私たちもそうは思ってたんだけどねぇ。そろそろ他の事考えなきゃいけない段階でしょ。そいつさえ倒したら万事解決するわけじゃないんだから」


 ここから先の話はこれからどうしたいかの話。まどかを助けるというのはあすみにも初めて話すことだった。


杏子「話しかけるなら同じ学校の奴らが話すしかないんじゃねえの。イレギュラーとマミとキリカ、あんたらは同じ学校なんだろ」

織莉子「本人に事情を話すの?」

かずみ「うん!だってそれしかないよ!話せばきっと契約しないでくれるだろうし、わたしもまどかを助けたい!」

あすみ「これまでの美国のやってきたこととは正反対のスタンスだねー。まあ妥当じゃない?」

あすみ「コソコソ妨害続けるのも無理あるし、殺害なんて企てたらイレギュラーに殺られるから現状なしね」

杏子「ていうか本人の性格にもよるけど、フツー最初に考えるべきはそっちじゃね? それとも無理な理由でもあんのか」

織莉子「……」


 織莉子は重く押し黙る。それから口を開くと淡々と忠告のように話しだした。


織莉子「その時はわかってくれたつもりでいても、願い事に頼らざるを得ない状況が生まれたら?」

織莉子「真実を知っていれば警戒されるわよ。そして契約されれば私たちに勝ち目はない」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/19(土) 23:32:38.07 ID:hDRUJbMx0<> あすみ編ではあすみがほむらの事も含めて暴露したけど今回はかずみも居るしどうなるかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/19(土) 23:36:16.78 ID:0zITTMjDO<> カンナもまどかを狙ってるしな
ていうかあすなろの方は今どうなってるんだろ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/19(土) 23:47:17.76 ID:+h5ULZui0<>
かずみ「願い事に頼らざるを得ない状況って?」

織莉子「貴女は願い事がないから実感がわかないのね」


 織莉子の救世の目的はお父さんへの想いが元になっている。契約したのもお父さんの悲劇がきっかけなのかな。

 わたしとキリカ以外のみんなは少なからず思い当たるところがあるようだった。


織莉子「自身や友人、家族の悲劇。それらが突発的に人生に舞い込むことはままあることよ」

マミ「……単純だけど、もし大怪我でも負ったらどうしようもないわよね」

マミ「戦いを生きてきた今の私ならともかく、契約して魔女になったら世界が滅ぶからって潔く死は選べないかも。家族や友達の事故ならもっと受け入れられない」

杏子「それでもくらだないことで契約することはなくなるだろ?あたしなら知ってれば契約してないよ。あたしもくだらなかったからな」

かずみ「それならまどかを守らなきゃいけないね。でもその役割ってたしか――――」

織莉子「ええ。イレギュラーこと暁美ほむらが守護者よ。でも彼女だけでは不足だわ」

織莉子「これからワルプルギスの夜が来る。この街を滅ぼすほど超弩級の大型魔女よ。あと一週間弱……といったところかしら」

かずみ「大型魔女!?」

織莉子「戦いになれば鹿目まどかが手空きになる。護衛をつけるとしても戦力は分断されるわ。その時にでも襲撃者に来られれば……」

あすみ「まさしく一巻の終わり、だねぇ」

織莉子「そして、彼女がそんなチャンスを狙わないわけがない。少なくともその日まで彼女を生き残らせておくわけにはいかないわ」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 00:20:41.35 ID:IXMuZ1Vh0<>

 また織莉子の口から恐ろしく強い言葉が出た。わたしはそれに少し表情をこわばらせる。


かずみ「生き残らせてはいけない……って、織莉子は殺す気なの?」

あすみ「世界を滅ぼそうとしてる上、アンタ狙われてるんでしょ? しょうがなくない? 手加減できる相手でもなさそーだし」

かずみ「でもなんにも知らないんだよ。ねえ、みんなはどう思う?」

キリカ「あぁ……ごめんなさいさせて諦めてくれればいいんじゃない? 進んでやりたくはないね」

杏子「そんな簡単にごめんなさいさせられっかよ。そんなんだと足元掬われるぞ?」


 荒れだす議論を見て織莉子は再び押し黙る。


 ……この話題を置いといても、わたしは織莉子が立ちふさがるものをすぐに殺すことに結びつけようとするのは、不器用だからなんじゃないかと思った。


 織莉子はなんでもこなせてしまう器用な天才肌に見えて、実はとても不器用だ。

 料理も一ミリ一秒、『どうやって』『どのくらい』が正確に決められていないと失敗するし、何度も失敗を積み重ねてこなさないと上手くなれない。

 前に言ってた才というのも、全部努力で伸ばした結果なんじゃないかと思える。


 ……おそろしく不器用だけど、努力は出来る人だ。

 そうしていつのまにか誰よりも強い才能に発展させられる、それも才能だと思った。

 でも、その努力が正しい方向に向いてくれればとても心強い。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 00:25:42.55 ID:S3xBcJXF0<> 織莉子は自分から目を背けて自分に嘘をついてる内はまともにはなれないんだけどね <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 00:39:35.77 ID:IXMuZ1Vh0<>

かずみ「……とりあえず、訓練しない? 後のことはほむらが来てからまた話し合おうか」

かずみ「ずっとまどかの傍に居るのはほむらなんだし、わたしたちだけで考えるよりいい案が浮かぶかも」

織莉子「そうね……それに賛成するわ」

杏子「じゃーそれでいいよ。今日は最初は誰が相手だ?もうこれだけ増えたしな」

マミ「呉さん、見てもらったら?」

キリカ「えー…………わかったよ。私もちょっと実力が足りないとは思ってたところなんだ」


 ちょっと面倒くさそうにしてたキリカもなんだかんだで意気込んでいる。


 杏子、あすみ、キリカの三人はみんなで格闘の訓練をやるみたい。

 でもわたしは、対ニセモノさんを考えるとやっぱり格闘より魔法の習得を急いだほうがいいのかな?

 なんにしても、超弩級の魔女――ワルプルギスの夜が来るまでになんとかしなきゃいけないのは決まってる。



1今まで使ってきたものとはまったく違う魔法を試す
2自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 00:44:39.93 ID:S3xBcJXF0<> 前回使った電撃魔法の訓練、と見せかけて瞬間移動の魔法が使えないか試す
無理なら魔力コントロールの訓練 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 00:49:03.31 ID:OIana3sjO<> ↑
追加で訓練終了後に対ワルプル用に合体魔法みたいなの出来ないかどうか提案 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 00:57:05.12 ID:S3xBcJXF0<> キリカ編でやった結界みたいのかな?
あれが出来れば街への被害も抑えられるし、メガほむ編の速度停止も出来ればなお良いな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 01:03:50.99 ID:IXMuZ1Vh0<>
 ……とはいえ、なにもないところから手がかりを掴むのは難しいところだ。


かずみ(わたしは電撃の使い方を訓練してみようかな……)


 電撃を放つという単純な魔法だからこそ強い。身体を超高速化させての瞬間移動は消費も大きいけど、他にも出来る事はあるかもしれない。

 それにすでにわたしは他の魔法も使うことが出来る。

 せっかくならその多彩さを活かしてもっとうまく魔力をコントロールできるように頑張ってみよう。


 魔法を切り替え、魔力を切り替える。わたしの中には何人分もの想いが蓄積しているようだ。

 本当はこれだけじゃない――。


かずみ「……………………あ」


 ――その時、ふと頭に映像が浮かんだ。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 01:27:57.47 ID:IXMuZ1Vh0<>
杏子「……よわっちいな。いくら新人ってもこれじゃ骨がなさすぎるんだけど。いつまで寝てんだ?」

キリカ「ッ……勝った気でいるなよ!倒すまでは決着ついてないんだから!」


 一方、格闘訓練のほうでは息一つ乱さず余裕で直立する杏子と、その足元に倒れるキリカの姿があった。

 黒い衣装が砂で白く汚れている。それも気にせずにキリカは立ち上がる。


あすみ「お、やる気出てきたね。杏子がやる気出させるの上手いの?」

キリカ「だって悔しいじゃん、こんなやつに!すっごい馬鹿にしてくるんだよ」

あすみ「うわー、単純。まあ、どっちもどっちでお似合いだよね」

杏子「どういう意味だっての!」

あすみ「ちょっと、いきなりこっちにくんのやめてよ」

杏子「もうお前らまとめてかかってこい!相手してやるよ!」


 キリカは少し真剣な光を眼帯に隠れていない片方の瞳に灯す。

 その心の中には、自分の実力を思い知ったあの外道な多重人格少女との戦いのことが過ぎっていた。


 ……乱闘が一区切りついたところでわたしは話しかけた。


かずみ「ねえみんな、ちょっと思いついたことがあるんだ!」

杏子「なんだ?かずみも身体動かしたくなったのか?」

かずみ「ううん、違うの!でもちょっと見てたけど、みんな頑張ってるんだね」

キリカ「多分このままじゃあの魔法少女にもワルプルギスにも勝てないだろうから、ちょっと真剣にやってみようかなって」

キリカ「私はもう関係ないし関わらないって思ってたけど、そうも言ってられなくなったし」

キリカ「かずみのためにも世界を救うためにも出来る限りのことはするよ。役に立てないかもしれないけどさ」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 01:33:44.96 ID:S3xBcJXF0<> >>かずみのためにも世界を救うためにも

このキリカは『愛』に生きてはいないけど、世界よりも先にかずみが先に来てるのがらしいというかなんというか・・・
というかこれってある意味告白では?w <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 01:37:44.94 ID:OIana3sjO<> 杏子とキリカの組み合わせはお互いにムキになるな
ある意味似た者同士だからか? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 01:44:00.90 ID:IXMuZ1Vh0<>
 キリカの言葉がじーんときた。


 キリカも協力してくれるし、あすみもまどかを助ける提案を受け入れてくれた。

 これならきっと、みんなで世界だって救える。


かずみ「……うん!みんなで頑張ろう!」

かずみ「それでね、みんなで合体魔法を試してみるのはどうかって言いにきたんだ!みんなの魔力を一つにして強力な魔法にするの」

あすみ「……そんなことできんの?」

杏子「合体魔法って言ってもなぁ……簡単に言うけど難しいと思うぞ?見たこともない」

かずみ「ううん、できるよ!」


 みんなが難色を示しているけど、わたしには断言できるほどの自信があった。

 なぜならば、その光景はさっきわたしの目に映ったからだ。


かずみ「見たから。魔法少女が力を合わせて魔法を使えるって」

あすみ「前世の記憶とやら?」

かずみ「うん。わたしじゃないけど、ミチルと仲間は一緒に戦ってたよ。やろうと思えばできないことはない」

杏子「そうか。ならあっちの連中も呼んでやろーぜ。あたしも魔力の扱いは慣れてるんだし、やってできないことはないだろ」


 そう言って杏子はマミと織莉子を呼びに行った。

 自信満々な背中がなんとも頼もしい。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 01:50:28.96 ID:IXMuZ1Vh0<> -----ここまで。次回は20日(日)夕方からの予定です

>>745
「かずみのため」が最初にきたのは、かずみが狙われてることを最初に知ってたからですねー。
実はまどかを狙ってることを知るよりも前に発言する予定だったセリフなんですけど、
世界のほうが圧倒的に規模はでかいものの、問題としてそれほど大小なく捉えていることと、知った順番でこうなりました。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 01:51:18.97 ID:IXMuZ1Vh0<> 失礼、↑は>>744宛てでした <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 01:54:15.81 ID:S3xBcJXF0<> 乙でした

解説ありがとうございます
言われてみればかずみが悩みを打ち明けたのはキリカが最初でしたね
かずみの事情を一番知っているのはキリカだとマミさんが知ったら嫉妬しそう
まぁ、マミには杏子がいるからいいかw <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 01:58:30.11 ID:OIana3sjO<> 乙です
合体魔法がどうなるか楽しみ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 18:45:19.05 ID:IXMuZ1Vh0<>

 それから魔力の扱いに集中していた二人も杏子に連れられて、みんなが六人で陣を組むように囲んで一か所に集まる。


織莉子「私たちも聞いたわよ。みんなの魔力を合わせて魔法を使うんですってね……」

マミ「合体魔法なんて私も盲点だったわ。今まで魔法の研究はしてきたつもりだったけど、一人が染みついてると考え付けないものね」

マミ「でも、どんな魔法にするの?」

かずみ「うーーん、そうだなぁ……」


 どんな使い方でも、やってできないことはない! とは思うけど……

 ――まず最初に試すのはどうしよう?




1攻撃魔法【エピソーディオ・インクローチョ】
2防御魔法
3自由安価 ※個人の持つ魔法の特性を強化したような能力に特化した魔法も可能

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 18:49:04.79 ID:9jVLky/s0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 18:51:05.97 ID:S3xBcJXF0<> 1+>>741にあるようなイメージの魔法
速度停止はほむらが来てから相談 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 19:05:49.03 ID:IXMuZ1Vh0<>

かずみ「まずは敵を倒すのに使える必殺技かな!複雑なこと考えるよりはすぐにできそう」

マミ「攻撃魔法ね。いいと思うわ」

杏子「合わせてぶつけりゃいいんだな?」


 それぞれが武器を高く掲げ、魔力を込めるポーズをとる。

 そこからは、魔力を足していくように一つにして集めていく感覚が研ぎ澄まされた。


 みんなが力を一つにする光景を見てわたしは思う。今ここに居る人数は6人。陣を組んだ中心に魔力が増幅していく。

 わたしじゃないわたしとよく似た少女は、前にもこうして力を合わせていた。

 その仲間たちには、誰もが互いを心から信頼し合える絆があったと思う。


 ――でもまだあと一人が足りない。


 それはこの場に居ないほむらを思ったのか。それとも別のわたしの中にある記憶か。

 ふとそう思った時、集められた魔力が相いれず反発し合うように火花を散らした。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 19:22:17.73 ID:IXMuZ1Vh0<>
かずみ「わっ! あぁッ!」


 爆発する。それが分かった時、先に動いたのは誰よりも魔力の扱いが上手いマミだった。

 細かい縺れからいよいよ拗れてこの場で暴れ出した魔力の根源の密度を散らして掻き消す。


 ……幸い、陣を囲んだ6人の間に暴風が吹き荒れるのみで済んだ。

 みんなしりもちをついている。


マミ「何が起きたの……?」

杏子「途中まで上手くいってたのになんでだよ。あたしはしくってねぇぞ!」

キリカ「なんだよそれ。私たちが悪いっていうの!?」

織莉子「まあまあ、落ち着いて。確かに魔力の扱いに熟達していない私が足を引っ張っている可能性も否定はできません……」

あすみ「私はそこのガチ初心者共よりは魔力の扱いは長けてるけどさー、ベテランならもっとフォローして合わせてやってもいいんじゃない?」

キリカ「一緒くたにしないでよ」


 みんなが言い合いを始める中、わたしは自分の中に出てきた結論を口に出す。

 記憶の中の光景との違い。それはみんなで仲良くしたいと思ってたわたしには信じたくないことだけど……。


かずみ「…………絆、じゃないかな」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 19:36:03.02 ID:IXMuZ1Vh0<>

 みんなが一斉にわたしのほうを見る。

 ハッとしたような表情で。


かずみ「みんなの心がバラバラだから、合わないんじゃないかな。……ちょうど今みたいに」


 失敗の原因を擦り付け合う、そんな行動もそれを表していた。

 この6人は一緒にいるけど、本当の意味で一緒じゃない。


マミ「無意識のうちに合わせるつもりがないから反発したってことね? ともかく練習は必要ね。今は一緒に戦う仲間なんだから」


 マミもみんなもわたしの言ったことを納得したようだった。

 マミは草と土を払って立ち上がると、何事もないようにまたさっきと同じ位置に着く。


かずみ「みんなでやるのはまたほむらが来てからやってみない?攻撃以外にもまた色々考えたいし」

織莉子「そういえば彼女、遅いわね……集合時間からどのくらいになるかしら?」

あすみ「イレギュラーさんって時間にルーズなんだねぇー」


 あすみは軽く言ったけど、それだけとは思えなかった。

 無論あすみ自身もふざけた態度の下で考えてはいるだろう。


 まどかの守護者であるほむらが来ない。そのことが示す可能性を。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 19:45:04.51 ID:IXMuZ1Vh0<>

あすみ「……鹿目まどかに何かあった?」

織莉子「…………もしくは………………」


 二人が表情を重くする。その時、草を揺らす音が響いた。

 その音は迫る。ゆっくりゆっくりと踏みしめるように、不規則なリズムを立てて。


 やがて、その音の主はわたしたちの前に姿を現す。

 長い黒髪はまばらに乱れて垂れ下がり、いつも堂々と胸を張る細い身体はバランスも保てずに折れ曲がっている。


 その傷だらけの姿はわたしたちの前に立ったと思うと地面に倒れ伏した。


かずみ「ほむら!?」



 ――――そう。もしくは、何かあったのは両方か。ということだった。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 19:54:52.83 ID:S3xBcJXF0<> 先手を打たれたか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 19:59:06.76 ID:IXMuZ1Vh0<>

 ほむらの怪我は最初に駆け寄って行ったマミが治した。

 他に治療の得意なメンバーがいなかった。わたしも自分の回復には特化してるけど、他人に使うにはそこまで向いていないようだ。

 ほむらが死んでいなかったのは良かった。とは思うけど……。


織莉子「……答えなさい。鹿目まどかはどうしたの?」


 治療が済んでまともに口を利けるようになったほむらに、織莉子が一番に問いかけた。


ほむら「……――……れたわ」


 しかし、俯いたまま発せられるほむらの言葉は弱弱しくて聞き取れない。

 もう傷は治したはずなのに。


織莉子「はっきりと喋りなさい。どんな屈辱的で受け入れがたい事でも、それが真実なのだから」

ほむら「浚わ……れたわ。…………私が勝てなかった」


 織莉子が厳しく問い詰めると、ほむらは昨日の戦いで聞いた以上に無感情な抑揚のない声で言った。

 予想はできていた。けれど、この場に居るみんなが驚愕に目を見開いた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 20:18:39.46 ID:IXMuZ1Vh0<>
かずみ「何があったの!?」

マミ「……どうして負けたのか、詳しく教えてくれるかしら?」


 実際に殺意すら持っているほむらと戦ったことのある私たちからすれば信じられなかった。

 そして、織莉子はその事実に苛立ちを感じているようだった。

 姿を偽っての騙し討ち。不意打ちでの拘束。考えられる手はあるけど、あんなふうに傷だらけになるように嬲るにはどうにも違和感がある。


ほむら「わからない……わからないのよ。隙を突かれた?とにかく私の一切の攻撃が通用しなかった」

ほむら「……時間停止も含めてね」


 ほむら自身が一番に混乱している。

 けれど、その中から対策となるものを改めて見つけ出そうとする。


ほむら「それどころか……私の予想では相手も時間を止めていたように見えた」

ほむら「なにより、正面きって戦ったのに勝てなかったのよ。私はそんな相手とも戦ったことはあるわ。でも、こんなのあまりに納得できない……!」


 ほむらは涙混じりに語り、やる瀬ない気持ちを発散するように握った拳を細い足へと下ろした。

 もちろんこんなことで発散できるわけもない。更にやる瀬なさが増すだけだった。
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◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 20:54:23.17 ID:IXMuZ1Vh0<>
織莉子「何を泣いているの? 泣いてどうにかなると思っているの? あれだけ鉄面皮を気取っておきながら内面はまるで幼子」

織莉子「私はこうなることを識っていたわ。貴女はあの魔法少女にもワルプルギスの夜にも負けると」

織莉子「でもどうにもできなかった。それは私を殺し、鹿目まどかを守る運命を選んだ貴女に責任がある」

織莉子「貴女は世界の誰より鹿目まどかのほうが大事なんでしょう? その極めて自分勝手な執着が皆を危険に晒した」


 織莉子は今まで実際に顔を合わせる前からほむらに抱いていた怒りをぶつける。

 涙は止まらずにほむらは強く歯を噛み締め、そこから嗚咽が漏れる。

 織莉子が鉄面皮と言ったように、対峙した時少しだけ見ただけのほむらのクールそうなイメージではこんな姿は想像もできなかった。


マミ「美国さん……何もそこまで言わなくても。暁美さんだって十分悔やんでいるはずよ」

織莉子「でも事実こうなったのよ? 貴女達は本当に今起きていることの重大さをわかっているの?」

キリカ「……それ、最初からこの人がまどかを守らずに自分が殺していればってことだよね」

あすみ「ぶっちゃけウシ乳の言うことも一理あるよ。でもそんなこと言ってる場合じゃなくね」

織莉子「……諦めるにはまだ早いわね。今ならどうにか出来ることはあるはずよ」


 ほむらへの糾弾から現実に引き戻したのもあすみの一言がきっかけだった。

 現実的な議論に移ることで一旦落ち着いたかのように見えた。それから織莉子は場をまとめたつもりだったが、まだ疑念は噴出する。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 21:24:16.31 ID:IXMuZ1Vh0<>

杏子「おいおい偉そうなこと言うけどよ! 負けるってわかってたならなんでそんなこと黙ってたんだよ!」

杏子「いつやられるかわかってりゃどうにか出来たかもしれねぇだろ?」

織莉子「ええ。でもそれが視えたのは前なのよ。その時とは状況も変わったし、それがいつ起こるかまではわからなかったわ」

織莉子「それからは一切その予知は視えなかった…………何故?」


 もちろんその未来が回避できたわけでもない。現に最悪の状況は今起きている。

 そして、織莉子は自分の力に裏切られたもう一つの場面を思い出して茫然とする。


織莉子「そういえば私は昨日も、自身の重大な危機を予知できなかった」


 その魔法がどうでもいい事ばかりを予知して、重要な事を知らせないことはこれまでもあった。

 鬱陶しさと魔力の消費、両方の面で織莉子が契約した時からこれまでずっと悩んでいることだ。

 それを直すために今もこうしてマミに習って訓練をしている。


 それでも立て続けに役立たずを発揮されると疑念が沸いた。今回ばかりは少しおかしい。

 昨日もマミに聞かれ、かずみにも念を押されてはっきりと答えただけに自分の力が信じられなくなる。


 予想もしない未来ならともかく、昨日も今日も気を張っていた。意図して探っても出てこないのは異変だった。

 使い勝手は少々悪いが、近未来の意図した予知であれば、その精度の恐ろしさはその魔法にやられたキリカもよく知っているものだった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 21:43:09.67 ID:IXMuZ1Vh0<>
キリカ「……アレってそんなに使えない魔法だったっけ?」

マミ「私は詳しい性能は知らないけど……美国さんは魔法が上手く使えなくて悩んでいたんだったのよね」

キリカ「冗談言うなよ。戦いの中で私が床に落ちてた携帯を見た時の数秒、それを引き当てて狙えるくらいは精度があるよ?」

織莉子「待って……貴女は今日、あの女との戦いで時間停止を使えなかったのよね」


 キリカやかずみの前でも使ったという変身魔法に気を取られていたが、

 織莉子は自分もあの女と対峙した時、魔法どころか魔力さえ使えなかったことを思い出す。


 変身魔法は借り物。本質はそっちだ。そこから導き出されるのは一つ。


ほむら「……あの魔法少女は私たちの魔法や魔力に干渉が出来る?」


 ――――コネクト。


 魂を拘束するように縫い付けられた、その見えない糸に気づく。

 操りの糸はこの中の誰もに結び付けられているかもしれない。


マミ「他人の魔法を奪うのもその一種ね……そして厄介な予知の魔法は制限された」

かずみ「でも、わたしは……見えたんだ。昨日、ほむらがマミの家で待ち伏せて襲ってくるっていう光景」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 22:15:19.93 ID:IXMuZ1Vh0<>
かずみ「予知のできる織莉子が『何も起きない』っていうから気のせいかなって思ったんだけど……」

織莉子「実際に襲撃は起きた。貴女は昨日、私と一緒に訓練をしていたわね。もしかしてそのせい?」


 かずみがおずおずと喋り出す。

 そこに織莉子は例の魔法少女とは別種類での『他人の魔法を奪う性質の魔法』の可能性を見出した。

 今やそれだけがここから状況を巻き返す希望だった。


かずみ「それって、じゃあ……わたしも他人の魔法が使えるってこと?」

織莉子「……今はかずみのほうが正しい。そして、恐らく敵も未来を見て私達の動きを探っているのでしょう」

あすみ「なんていうか……本当に厄介な敵だな。ホントに時間ないよ。どうする?」


 あすみまでもが余裕のなさそうなシリアスなトーンで話す。

 まどかは連れ去られてしまった。今も例の魔法少女が彼女に何をしているかわからない。


かずみ「……たとえ今世界が滅ぶ未来が見えてもあきらめないよ」

かずみ「ニセモノさんはわたしが欲しいんでしょ? わたしが囮になってなんとかする! きっとそうすれば出てくるはずだから」

かずみ「まどかのことも助けだしてくるよ。ねっ?」


 かずみの心にあるのは屈さない強い意志だった。

 そうして涙に崩れた顔のほむらに笑いかける。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 22:34:32.38 ID:IXMuZ1Vh0<>

ほむら「あなたは…………」

かずみ「え?」

ほむら「……どこかまどかに似ているわ。代わりになんて思えないけどね」


 ――――そう言われて、わたしはきょとんとする。

 話したこともないからわたしが似てるかなんてわからないけど、ほむらを見てたら絶対に助けなきゃって思った。


 ほむらの顔は少しだけ穏やかになっていた。まどかはそんな顔をさせられる人なんだろうから。



★技習得
 解析 :魔法や魔力に使うと性質や弱点を解析できる。魔法を観察することでその魔法を真似ることが出来る。
     本来は読み取るための媒体が必要だったが、その魔力の性質のみ受け継いだため実質本家より魔法が強化されることになった。

 未来予知 :数秒〜一か月程度を予知することができる。近い未来の方が精度が高く、対象がピンポイントなほど消費が大きい。基本的に自発使用のみ。

★魔法の習得条件解放。


かずみ「ニセモノさんはわたしも狙うつもりなんだから、一人になれば絶対に来るよ。戦わなきゃいけないのは同じだから」

マミ「……すぐに向かうの? あなたまで負けてしまったら元も子もないわ。準備くらいは整えたほうがいいんじゃないかしら?」



・準備
1解析させてもらう
 Aマミ
 B杏子
 Cほむら
 Dあすみ
 Eキリカ
2今まで使ったことのない魔法の習得(選択式)

3囮作戦決行
4自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 22:40:39.39 ID:S3xBcJXF0<> 1D、あすみが拒否したらE
3の前にキュウベェを呼んで来たらまどかの場所を聞く

キュウベェ、まどかを浚った魔法少女の事教えて?
まどかに死なれたら困るはずだよね? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 22:44:02.08 ID:OIana3sjO<> ↑
追加で連絡手段が欲しいので誰かから携帯を借りる
あと囮作戦の前に杏子とあすみに料理を渡す <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 23:04:57.46 ID:IXMuZ1Vh0<>

かずみ「わかった。じゃあ行く前に、あすみの魔法を解析させてくれないかな? 駄目なら他の人にするけど……」

あすみ「こんな命のかかった局面で拒否るほど馬鹿じゃないよ。でも何の魔法かも知らずに選んでいいの?とんだハズレ引くかも」

かずみ「そんなに役に立たない魔法じゃないと思う。だってあの時はマミも大変だったんだから……」


 わたしはあすみの使う魔法を詳細に知ってるわけじゃないけど、その片鱗は見ている。

 ユウリがあんな姿になったのもマミが不幸続きになったのもその魔法の効果だ。あれを見て甘く見られるわけがなかった。


あすみ「……ソイツがアンタに悪意を持ってるんだったら効くよ。不幸に突き落としてやれ」


 悪意を持ってるなら……か。

 目的はわからない。まどかを浚ったのは世界を滅ぼすためなのか。わたしを浚うのは何のためなのか。



・習得技選択
1死神の鎌 :問答無用でクリティカル確定・相手の攻撃分のダメージを返す。悪意のない相手に効果が薄いのが欠点。
2読心 :心を読む。
3やっぱ他の人にする
 Aマミ
 B杏子
 Cほむら
 Dキリカ

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 23:12:15.70 ID:OIana3sjO<> カンナはかずみ大好きだから1は効果ないかな?
2で <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 23:13:21.24 ID:S3xBcJXF0<> 目的を探るなら2かな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/20(日) 23:33:23.35 ID:IXMuZ1Vh0<>

かずみ「悪意を持ってなかったら……?」


 人さらっといて悪意がないなんてあるのかとは思う。

 けど、あすみの限定的な言い方が気になった。


あすみ「……ま、そんときゃそれなりに利くっしょ。大した戦力にはならないかもしれないけど」


 そう言うあすみの後をついていった。

 全部は一気に覚えられないから、まずは二人だけでその魔力を観察する。


――――
――――


★技習得
 読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?


かずみ「ありがとうっ!」

杏子「そういやコイツの魔法ってなんだったんだ?」

あすみ「さてね。私の口からは言わないわ。かずみの口から聞くのは教えた以上しょうがないとは思うけど」

あすみ「……やっぱ似合わないな、コイツに」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/20(日) 23:43:22.69 ID:S3xBcJXF0<> 里美みたいに動物と心を通わせる事もできそう <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/21(月) 00:10:09.07 ID:VkJpeZkO0<>

マミ「かずみさん、もう行くのよね?」

かずみ「うん、あんまり時間かけてられないから」

マミ「念のため私の携帯を貸しておくわ」


 マミのスマホを受け取る。それを握りしめて、ポケットに入れた。

 あの魔法少女を倒せたら連絡しよう。そして、全部終わったら返さないと。


マミ「……無事で帰ってきてね。かずみさんがやるのはあくまで囮よ」

マミ「例の魔法少女にとっても狙い目だろうけど、注意を引いて倒しに行くんだものね」

キリカ「ああ言ったのに、結局なにもできないのはつらいな。負けないでね。もし機があったらみんなで駆けつけるよ」

杏子「アンタはなんだかんだみんなの心配も期待も背負ってるな。無事帰ってきたらどうせお茶会やるんだろ?なんか食わせてくれよ」

あすみ「私の魔法までやったんだから勝ってこいよ。エグいことには使えるから」

かずみ「そんなにエグい使い方はわたしには無理だと思うよ!?」

織莉子「命運は貴女が握っているわ。恐らく対抗できるのも貴女しかいない」

ほむら「気を付けて。そして、まどかのことも……」

かずみ「うん! 連れて帰ってくる!」


 ここを離れる前に、荷物を探ってあるものを取り出す。

 お昼に詰めた料理だ。今のうちにこれを渡しておかないと。


かずみ「それと、はいこれ!わたしとマミと織莉子とキリカで作ったの!今日の夜ごはんにでも!」

杏子「へえ、気が利くじゃねーか」

かずみ「あすみのはちゃんと二人分あるよ。キリカから聞いたんだ。そのほうが喜ぶって」

あすみ「……もー、あの猫は余計なことを。今日あんなこと聞いてきたのってそれが原因でしょ?」

あすみ「でもまあ確かに嬉しいっちゃ嬉しいわ。助かるし。気が利くわね」


 キリカの言った通り、たしかにあすみは喜んでくれた。

 そんな貴重な不気味さを含まない笑顔を見て、みんなに手を振って別れを告げる。


 これまでは一人にならないようにしてきた。

 そこを敢えてみんなと離れていく。

 日の落ちてきた空と慣れてきた見滝原の街並みを眺めながら、わたしは単身土手の外に繰り出していった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/21(月) 00:10:41.48 ID:VkJpeZkO0<> --------ここまで。次回は26日(土)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/21(月) 00:15:48.70 ID:i96pSNCF0<> 乙です

かずみとカンナに一騎打ち、どうなるかな?
選んでおいてなんですが、読心より呪いの方がよかったなんてことのならなきゃいいけど
次は土曜?いいとこなのに時間空くなぁ・・・自分もそうだけどスレ主さんも忙しいのかな?

久しぶりにイラストのリクエスト
マミがカットしてくれた今のかずみの髪型のイラストをお願いします <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/21(月) 00:23:26.59 ID:VkJpeZkO0<> モノローグでもヒント程度に出してますが、例の魔法少女さんが善意しかないので呪いが効きにくいは正解です。
あの描写で呪いのが有効だったら作者性格悪ッ!ってなると思います。
今週はちょっと残業が多そうです…。予想を裏切って時間ができたら避難所のほう更新するかもしれないけどあんまり期待はしないでください。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/21(月) 00:48:04.22 ID:i96pSNCF0<> 自分も棚卸し等で残業続きですよ・・・
イラストの方はお時間があるときにでもお願いします
お互いお仕事頑張りましょう! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/26(土) 21:24:18.79 ID:a09F8Y7G0<> ――――
???


 どこかの研究所のような鈍色の壁が覆う無機質な建物内。周りにはカプセルのようなものがたくさんあった。

 その異質な空間を見渡す余裕もなく、二人向かい合ううちの小さな少女は怯えと絶望に目を見開く。


「…………ぁ……」


 桃色の瞳は揺れ、喉からは声にならない声が漏れる。


「だーかーらー、見てただろ? 次はキミの番。これから私はお友達を殺して家族を殺して、最後にキミを殺す」

「どうしてほむらちゃんがひどいことされなきゃいけなかったの?なにも悪いことしてないのに!」

「んー? 強いて言うなら、君が君であるから、かな」

「……え?」


 見知らぬ女から告げられたそれは、まどかからすれば滅茶苦茶な理由だった。

 まどかはこの性質の悪すぎる悪夢に涙する。


「あなたがこんなことする意味がわからない……こんなの夢だよね?」


 いきなり訪れた非現実を受け入れられるはずもなかった。


 まどかは普通の少女。お金や権威、家柄があるわけでもない。ずば抜けた才能があるわけでもない。一言でいえば、平均・平凡に埋もれるような人だった。

 母は一般企業のOL。父は専業主夫。それを友達に話すと珍しがられることはあるが、とはいえ特に一般的な家庭と違うところはない。

 それどころか、その自身の平凡さはむしろまどかのコンプレックスにもなるほどだった。


 ――狙われる訳がわからない。そう思っていた。自分の破格の素質をまどかは知る由もない。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/26(土) 21:54:47.42 ID:a09F8Y7G0<>
「ノンノン、現実逃避しないでほしいな!夢じゃないよ。まあ、いっこだけ回避する方法があるけど。

 さっきのは魔法。キミの友達が使ったのも魔法……まあ、にしてはなんだか硝煙くさかったけど」

「そうだ……なんでほむらちゃんがあんな武器持ってたの……?」

「さあね。盗んだんじゃない? お得意の魔法で」

「魔法って……」


 どこまでも現実感のない言葉に、まどかは目を背けようとする。

 しかしまどかの目を背けた先には、この残酷さに似合わない容姿の見たこともない白い獣が佇んでいた。


「やあ、はじめましてだね。【カンナ】から聞いているよ。君が鹿目まどかか。

 ボクはキュゥべえ。魔法の使者さ。キミも僕と契約さえすれば魔法を使えるようになれる」


 否が応にも目が合う。小首を傾げた生物の持つまんまるの赤い瞳は、透き通ってまどかの姿を反射している。

 まどかは目に涙をにじませたまま何も答えられずにいた。


「安心していいよ。契約ってそんなに難しいことでも怖いことでもないんだ。

 ただ君が意思を示してくれればいいんだよ。君の願い事が契約の意思になる。それさえ決まれば、僕がそれを叶えよう。それで契約は完了だ」


 ただ実感がわかなくて怯えて悲しむばかりのまどかの首を無理やり掴むと、魔法少女は強引に自分に目を向けさせた。

 そこに送り込まれるのは強烈なイメージ。

 荒れ狂った学園を巣食う怪物たちがクラスメイトや先生を貪り、教室に死体の山を築き上げる光景。

 我が家が血に染まり、大好きな家族みんなが無惨に引き裂かれた光景。


 まどかは顔を覆って叫びをあげる。


「……一人一人殺していくよ。でも絶対にキミは最後になるまで殺してやらない」


 たとえこれがただの悪夢だとしてもこんな続きは一度だって見たくない。絶対トラウマじゃすまないことになる。

 でもこれはただの夢妄想では終わってくれない、そう思える生々しさがあった。

 まどかにとって一番残酷な映像は、嫌な現実感を伴ったまま脳裏に焼き付いて離れない。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/26(土) 22:46:46.92 ID:a09F8Y7G0<>
「わたしの……願い事……?」


 平凡で、どんくさくて、どこにいても何の役にも立たなくて。そんなだからいつも自信がなくて胸を張れない。

 でも家族も友達もみんな大好きで、誰かの役に立ちたい。……死なせるなんて絶対に嫌だ。


「契約しよう、まどか。みんなも助けられるよ。こんなことで屈したらダメだ!」


 キュゥべえはまどかの思いに付け入るように誘う。

 もっともらしく味方のように振る舞っているが、これも魔法少女が用意した舞台でしかなかった。

 茶番のような勧善懲悪の形だけ取った劇。ここにはまどかを助けてくれる人などいない。


 しかし、まどかは何かが正しくて誰に助けを求めればいいのかさえすでに錯覚を起こし始める。






 …………それから魔法少女は一人でこの場所を出て行った。

 壁のカプセルたちを一瞥して、そこに冷たい視線を送る。


「……箱庭の結界はもう崩れた。ここももう残骸だな」


―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/26(土) 23:27:08.44 ID:a09F8Y7G0<>

かずみ(……こうやって一人で出歩くのってひさしぶり)


 風見野で目を覚まして、最初は自分のことがわからなくて一人だった。

 あれから今のわたしにはたくさん仲間がいる。一人が新鮮なのもそのおかげだ。


 一応気は張りつつ、散歩のように景色を見回してみる。

 敵はいつくるかはわからない。でも相手も未来を覗けるならそのチャンスも絶対に見てるはずだ。


 敵は一人とは限らない。偽物さん以外の人が襲ってくるっていう可能性もありえる。そしたらどうしよう。

 ……けど、どんなに注意深くしてても、そもそも偽物さんの姿もわたしたちは知らないんだから見た目じゃわからない。

 危険なことが起こるかもってことだけ気を付けているしかない。


 キュゥべえはもうまどかと出会ってしまったのだろうか。

 織莉子がたくさんの人を囮にしてまで隠してきたもの。

 なにもできずにまどかが契約してしまったらその人たちの犠牲はどうなるのか。



 川沿いを進み、町はずれってほどでもない程度に人通りのすくないほうへと行ってみる。

 日常の空気が広がる街の中、誰もいない小さな公園にぽつんと人影が見える。

 わたしを見ると、人影はまるで待っていたように手を振った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/26(土) 23:51:16.71 ID:a09F8Y7G0<>

「やあ」


 穏やかに笑う人影。見たことのない少女の姿だった。

 みんなの証言みたいに顔や正体を隠しているわけでもなく、ロングのパーカーについたフードは後ろに垂れている。


かずみ「……あなたがわたしを浚おうとしてる人なの?」

「やっと挨拶が出来るよ。これからよろしく、かずみ。私のことは【カンナ】とでも呼んでほしい」

かずみ「これが本当の姿なの?」

「それはどうかな」


 わたしは警戒心を向けてるのに、カンナと名乗る少女は親しい友人にでも話しかけるように喋しかけてくる。

 でもこの問いかけに対してはどこかごまかすように意味ありげな答え方をした。

 それが少し気になった。


「今日は私に会いにきてくれたんだろ?やっとみんなと離れる決心がついたんだ」

かずみ「それは違う!」

かずみ「わたしはみんなと一緒に過ごすためにここに来たの!まどかは今どこにいるの!?まどかを返してあげて!」

「……まどか?」


 そして、わたしがそう言うと、カンナは一気に機嫌が下がったように表情を消した。

 暖かさを感じさせていた笑みが消えると、その表情は冷たく背筋が凍りそうになる。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 00:44:12.43 ID:9b8F80D40<>

「そう。まどかといえば、私のほうも準備を済ませてきたんだ」

かずみ「準備っていったいなんのこと!?」

「あとは君だけだ。君がくればすべてが完成する」


 カンナはわたしに向けて手を差し出す。顔に穏やかな笑みは戻っている。

 しかしさっきの表情を知ると、どこかその奥が冷たい――――。


 底知れないものを感じて警戒を強める。もちろん手を取るわけはない。

 その場からは動かず、代わりに風に揺られてもいないのに鈴の音が鳴った。


かずみ「――――……!」


「アレー……どうしたの?」


 その心を覗くべくあすみからもらった魔法を使ってみた。

 そこで知った内容のおそろしさにわたしは絶句する。


かずみ「う、嘘だよね……あなたは……!」

「……私の心を読んだの? あの仲間の一人の魔法か。あの小さくて生意気そーなヤツ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 01:04:16.96 ID:9b8F80D40<>

 わたし以外の人の話をする時は、いつだってカンナは忌々しそうに表情を歪ませる。


「君の周りことはずっと見てたよ。私が見てるのがウシ乳のお嬢からコピーした未来だけだって思ってた?」

「私は魔法も魔力も、思考や感情さえも思いのままに干渉することができる。君たちの行動なんてあんな予知使わなくたって筒抜けなんだよ」

「君さえこっちに来たら、人類は一匹残らず滅亡させてやる。そのための舞台装置はまどか、例の絶望の魔女の素体だ」

「そうすればわたしとかずみだけの世界になる」

「あんな奴らのことは私が忘れさせてあげるよ。だから――――……“ヒュアデスの世界<こっち>”においで、かずみ」



 差し出された手の本当の意味を知る。



 本気でそんなことを考えてるの?

 思ったよりもずっとおぞましい気持ちになった――本当にそんな魔法が使えるの?


 自分で魔法を使った結果なのに疑って動揺してしまった。

 相手の考えていることがわかれば、少しは理解が出来るかもしれないって思った。隙をつくこともできるかもって思った。

 でも頭がいっぱいになって、とてもじゃないけどこれ以上探ることも隙をつくこともできなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 01:17:35.38 ID:9b8F80D40<>

「こないならこっちからその手を取りに行くよ!」


 ――――来る。

 この前ユウリの姿で襲ってきた時にも見覚えのあるケーブルを伴って。


かずみ「わたしは行かない! 決着をつけに来たんだ!」



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:3個
・[0/100] ・[0/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:カンナ

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 01:37:46.72 ID:BASsHc+P0<> 6で牽制 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 08:51:14.96 ID:xj/qxOIiO<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 18:54:33.37 ID:NHHeGOio0<>

かずみ「だってそんなさみしい世界いやだよ!どうしてそんなことを考えてるの!?」

かずみ「それに世界を滅ぼす魔女なんて生まれたらあなただって危ないのに!」


 こちらに伸びるケーブルを焼き尽くさんと電撃を放つ。

 熱と光が収まると、その奥にグリーフシードを持つ手が見えた。

 ……この前杏子を襲った歪んだ形の偽物じゃない、あれは正真正銘本物の『魔女の種』だ。


「……かずみ、私はキミをあまり傷つけたくはなかったんだけどな」

「私は魔女だって操れる。使い終わったらガラクタの装置はグリーフシードにでも還ってもらうさ。君が心配することじゃない」

「こんな身近に私の望みを叶えるのに丁度いい駒がいてくれたなんて……私はツイてるなぁ」

「――――魔女を手に入れた私は無敵だよ。私はこの世界のみんなが大嫌いなんだ。等しく絶望して死んでほしい」


 カンナは恍惚と、正気とは思えない答えを返した。

 そして間もなく、誰もいない小さな公園が異界に包まれた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 19:12:52.54 ID:NHHeGOio0<>

かずみ(結界……!)


 目の前に双頭の大きなぬいぐるみが現れる。

 よく見れば、その隣にも奥にもまた違う姿の影があった。


「持ってきといてよかった。一匹だけじゃないよ。降参しないかい?」

かずみ「しない! 魔女もあなたも倒してまどかを助ける!」

「……そっか。残念だよ。まだあんな奴らに騙されてるなんて。それなら無理矢理にでも断たせてやる」


 魔女たちが動き出す。改めて杖を構えた。


「かずみの気持ちがわかるのは私だけなんだ」

かずみ「……――!?」



かずみ 魔力[95/100]  状態:正常
GS:3個
・[0/100] ・[0/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:カンナ
  魔女×3…特に特徴のわからない魔女。比較的大柄なものが揃っている。<-攻撃対象デフォルト

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/27(日) 19:28:22.80 ID:v9fX6vn80<> 8をかけながら6
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 19:54:42.78 ID:YO29C7NzO<> ↑
追加で相手が最後に言った事の意味を問いただす <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 20:33:29.01 ID:NHHeGOio0<>

 前方広範囲に電撃を流し、襲い掛かる魔女を痺れさせる。

 そうしながらも、わたしの意識は別のところにあった。


かずみ「どういうこと!?」

「だって、私はかずみと『同じ』なんだから」

かずみ「わかんないよ! それって……!」

「また私の心を読んでもいいよ。同じ人類になら、君になら読まれてもいい」


 カンナの顔は慈しみすら感じさせる憂いを帯びていた。

 本心を言えば、知りたい。でも、きっとさっき以上の衝撃が待ってるんだろう。


 魔女もこのまま待ってはくれない。



・読心…
1使う
2使わない

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 20:36:22.10 ID:YO29C7NzO<> 2
私はあなたの口から直接聞きたいの! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 20:49:57.35 ID:mjNvoGD70<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 21:34:24.90 ID:NHHeGOio0<>

 放電を止めると予知に見えた動きの隙を縫って、一番前の魔女から杖で突き倒す。

 同じ姿のぬいぐるみ二つが牙を剥いたまま大きな唸り声を上げて倒れ、続いて動いた騎士を落馬させる。


 わたしにはこれまででマミや杏子に教わった格闘の腕がある。それにわたしの中に蓄えられた魔法がある。

 このくらいの魔女なら同時にこられても注意深く見ていれば――。


かずみ「……ううん、今はしない。あなたの口から直接聞かせてもらうから」

「OK.それなら全部聞かせてあげるよ。後でゆっくりとね」



かずみ 魔力[82/100]  状態:正常
GS:3個
・[0/100] ・[0/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:カンナ
  魔女×3…特に特徴のわからない魔女。比較的大柄なものが揃っている。<-攻撃対象デフォルト

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 21:48:33.64 ID:C1iC+8eaO<> 再び安価790 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/27(日) 21:54:33.54 ID:v9fX6vn80<> 8+5 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 22:26:50.11 ID:NHHeGOio0<>

かずみ「『ネーロ・ファンタズマ』!」


 声高らかに必殺技を叫び、分身を作り出す。

 魔女に向けて攻撃を繰り出しにかかる分身たちを眺めながら、わたし自身も目の前の敵へと杖を振りかぶっていった。


かずみ「それにね、あなたはわたしの気持ちなんてわかってないよ。それだけは読まなくたってわかるから」

「なんでそんなこと言い切れる?」

かずみ「マミは素性のわからないわたしを受け入れてくれた。わたしの正体を知っても受け入れてくれた!」

かずみ「他のみんなだって友達なの!苦しい時には支えてくれた人がいた!今だってそうだよ!」

「あのチビも言ってたじゃないか。巴マミは自分に従順な人間が欲しかっただけだ!それにあの二人はかずみを裏切ったんだぞ?」

かずみ「最初はそういう気持ちもあったのかもしれない。あすみと織莉子のことも、確かに許す必要はないんじゃないかとも言われた」

かずみ「でも……――みんなとはわたしが居たいから一緒にいるんだ!」


 鋭く杖が魔女を突き刺す。

 三体のうち一体を倒した。それだけでも少し楽になる。

 こうして一体一体を確実に狙っていくか、一網打尽を狙うか。


かずみ「!」


 しかし、未来のビジョンが知らせるのは休む間もない次の攻撃。


かずみ 魔力[69/100]  状態:正常 【使用中魔法:ネーロ・ファンタズマ】
GS:3個
・[0/100] ・[0/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:カンナ
  魔女×2…特に特徴のわからない魔女。比較的大柄なものが揃っている。<-攻撃対象デフォルト

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/27(日) 22:34:21.91 ID:v9fX6vn80<> 8+1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/27(日) 22:42:27.19 ID:C1iC+8eaO<> ↑
まずは魔女を倒すのに集中した方が良いかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 23:21:52.32 ID:NHHeGOio0<>

 避けるだけで精一杯だ。でも分身たちは違う。

 まだ十分に戦える戦力がたくさん残っている。一つ避けてしまえば、あとは他の分身が隙を作ってくれる。

 杖を握り、再び身を翻して攻撃に向かう。


 ……闘いの風景を、カンナは一番奥に鎮座しただ眺めていた。

 この結界には使い魔がいない。魔女三体を同時に相手するのは厳しいけど、集中して魔法を惜しまなければ倒せない相手じゃない。

 もし気まぐれに彼女が戦いに参加しにくれば、一気に戦いの行方はわからなくなるだろう。でもそうする気配はなかった。

 その理由は――――わたしを傷つけたくないから?


 人をさらおうとしておいて悪意がないなんてありえないって思った。

 でも、彼女がわたしに向けているものは悪意じゃなかった。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 23:22:20.86 ID:NHHeGOio0<> ――――
土手



 かずみが去った後も6人はまだみんなでこの場所に揃っていた。

 この間にも自分たちに出来ることはあるんじゃないか、という思いはあった。


杏子「……なあ、自己紹介もしないまま話してたけどさ。アンタ名前は?」

ほむら「暁美ほむらよ」

杏子「そうか。あたしは――」

ほむら「佐倉杏子」

杏子「……って、知ってんのかよ」


 杏子が言う前にほむらは名前を言い当て、杏子はなんともいえなさそうな反応をする。

 続いて他の初対面のメンバーもほむらの前に出る。


あすみ「私のことは知ってる?イレギュラーさん。ちなみに私は貴女の名前は知ってたわ」

ほむら「……いいえ」

あすみ「この私が佐倉杏子より知名度ないっての?まあいいや、この街じゃ新参だものね。神名あすみ。覚えておいて」

キリカ「じゃあ私は?」

ほむら「知らないわよ。……誰でも知ってるわけじゃないわ。大体は把握しているつもりでいたけれど」

あすみ「その猫も新参だからね。それも本当の新参」

ほむら「……猫、というのね」

あすみ「そう。猫キリカといいます」

キリカ「違うよ!苗字が変わってるし!まったく、誰が猫か」


 キリカがムキになってあすみに噛み付き、むすっとため息をつく。

 この場に居るメンバーの半分は互いに初対面だ。

 ほむらはちょっとした違和感を考えるように俯いたものの、すぐに考えを切り替えた。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 23:38:57.77 ID:NHHeGOio0<>
ほむら「……思ったより態度が柔らかいわね。あなたはもっと粗暴な人だと……聞いていたわ」


 その言葉は、この場で対面するよりも前からほむらが知っていた人物へと向けたものだ。


杏子「誰からだよ」

ほむら「噂よ」

マミ「最近少しだけ軟化したのよ」


 もちろん杏子は“イレギュラー”という存在だけは耳にしていたものの、その人物像など知らなかった。

 杏子からすれば自分のことを勝手な印象で語られているように思えて、少々の苛立ちも沸き起こる。

 しかしそれは一旦抑えてスルーした。敢えて突っかかる意味はないと冷静に思った。


杏子「ほむらが来る前の話でわりーけど、心がバラバラだから失敗したって言ってただろ?」

杏子「失敗擦り付け合ったのはまあ悪かったよ。このままじゃどうしよーもねえとは思ったからさ」

杏子「気にくわねえヤツとも今は最低限付き合っていくことにしてやろうぜ」


 マミとの確執を解消した杏子は、この中では一番どのメンバーとも大きな対立がなく、偏った感情を通さずに全員を見ることが出来た。

 少しは軟化したとはいえまとめる役割なんて似合わないが、それ故の冷静さが杏子とみんなをわずかでも歩み寄らせたのだった。


 それは、まずは杏子が他の対立からすればとてもちっぽけな対立を起こしていた、犬猿ならぬ犬猫(?)の仲からはじまる。

 ……杏子は珍しくも自ら妥協する。割と純粋な善意を持って。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/01/27(日) 23:42:24.13 ID:v9fX6vn80<> 杏子とキリカ和解するのかな?
なんだかんだいってかずみの存在が大きいなぁ、やっぱり <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/27(日) 23:52:48.16 ID:NHHeGOio0<>

 元々些細な意地の張り合いからを引きずっているだけだ。特段思想の相違などはないのだ。

 そもそも互いを深く知らない。マミから聞いたこれまでの行動や態度から、漠然と自分に近い雰囲気の人種かと思っていたくらいだ。

 とはいえ、深く知れば許せないような相違があったとしても、マミと和解をして忌々しい昔の価値観も許せるようになった今の杏子ならもう受け入れられるだろう。


 差し出された手をキリカはぱちくりと見つめていた。

 ――――パシッという乾いた音が響いた。杏子も、見守っていたメンバーともども灰色に固まる。


キリカ「……なにこの手。お手なら君のが似合うよ?」

杏子「てんめえっ!アクシュってもんも知らないのか!それともその肉球じゃ猫パンチしかできないか!?」

キリカ「え、握手? してほしかったの?」

杏子「するか!仲良くする気も失せた!」


 結局、今までと変わらない犬猫の仲が続くだけだった。

 犬猿というほどの対立でもない、字面通りむしろ微笑ましいかもしれないレベルの喧嘩の風景。


キリカ「……ごめん、怒んないでよ。わかんなかったんだよ。いきなりだったからびっくりして。なんか君のイメージにも似合わないし」

杏子「うるせえ。もう二度とやるか」


 ……しかし、さきほどのやりとりを見ていても、本当に危うい亀裂を持っているのはほむらと織莉子の二人だと杏子は考える。

 亀裂だらけのチーム。騙された利用されたの不信や恨みも問題だが、その二人の主張の違いはこれから先の未来に大きな混乱を呼び込む気がする。

 偏った目がないからこそ傍から観察していてその危険さがわかる。この亀裂を内包したままでいいのか。

 人の本質や考えはそう簡単に変わらない。本当はどちらかを切り捨て“選ぶ”べきなんじゃないのかと。


 それでも、魔法少女との戦いが終われば次にワルプルギスの夜も待っている。戦力は多いに越したことはない――それも事実だった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/28(月) 00:32:54.71 ID:y4M+lbeL0<>

マミ「……ねえ、訓練の続きをやらない?」

マミ「さっきの合体魔法の練習。暁美さんも来たし、まずは少人数からでいいから力を合わせられるようにするの」

あすみ「同意ー。そのほうが建設的ね」

杏子「やることもないしな。失敗したままってのも癪だ」


 マミの提案により意識を現実に戻される。

 そうしてかずみ抜きでの訓練がスタートした。

 すぐにうまくいったのは昔組んでいたマミと杏子の二人だけ。まだ課題は残る。自分たちにも確かに訓練は必要だ。


 これが待つだけのみんなが出来る事だった。訓練に集中していれば余計な心配も紛れる。


 ……しかし、マミはその途中でぽつりと呟いた。

 小さな体で勇ましく繰り出していった姿を思い浮かべながら。


マミ「……かずみさん、本当に大丈夫かしら」


―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/28(月) 00:51:30.68 ID:y4M+lbeL0<> ――――


「――――……そろそろかな」


 残る二体のうちの一体を撃破できそうになったところで、彼女はそう言った。

 その言葉を聞きつつ、眼前の敵を見る。そして未来へと向けて意識を傾けてみた。


かずみ「え……!」


 そこで視えた未来に思わず目を見開いた。

 結界が消える。さっき視えた通りに。正確には結界だけが――――だ。未だ魔女を残したまま。


 そこには人が集まっていた。ふらりと立ち寄った街の人たち。小さな子供まで。

 みんな虚ろな瞳をしていた。


「結界の中とは言えさぁ、こんな誰か通りそうなところで戦ってたら誰かは来るよ」

かずみ「街の人を操ったの!?」

「集めておいたんだ。魔女の口づけを利用してね」


かずみ「きゃっ!」


 魔女はまだ目の前に居る。

 最低限の受け身しか取れずに攻撃を食らう。視えたのにどうにもできない。

 もっと恐ろしい、カンナが街の人を人質にするのが見えたからだった。


 …………あの魔女との戦いは時間稼ぎだったんだ。


かずみ「みんなを……どうするの?」

「ここの人間が人質だ。……ついて来てくれ、かずみ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/28(月) 00:59:01.36 ID:y4M+lbeL0<>

 その問いの答えを待つ間、魔女はピタリと動きをとめている。


 人類を滅ぼそうとするカンナ。

 ついていってもきっとこの人の思い通りになるだけ。でも抵抗すればここに居る人たちはこの場で死んでしまう。


 ――――どちらを選ぶ?


かずみ「……わたしは…………」


 非情な選択肢が突きつけられる。

 人類が滅ぶよりはマシだってここで見殺しにしたら、もう織莉子のやり方を責めることもできなくなる。


 ……いやだ。みんなと離れたくない。


かずみ「わたしは、ついていく……」


 彼女の口角が上がるのが見えた。本当に嬉しそうな顔で笑っている。

 そして今度こそ手が触れた。


 しかしその時、カンナの笑顔は唐突に崩れ去り、動きを止めた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/28(月) 01:02:32.50 ID:y4M+lbeL0<> -------ここまで
次回は30日(水)夜からの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/01/31(木) 00:56:03.48 ID:2h2LtTIx0<> --------お待たせしましたが、次回は2日(土)夕方からの予定とさせていただきます <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 18:03:21.27 ID:YNHsdjB70<>

「……あの人間共、もうこの場所に感付きやがったな」


 織莉子の予知だろうか。みんながわたしのことを探ってくれている。

 戦いでこっちに意識が逸れたから制御が鈍ったのだろうか? カンナは懐から瓶を取り出す。


「来てくれかずみ。決戦の場所を変えよう――――……私たちにとって心底忌々しい、“君の始まった場所”だ」


 それはどういうこと――。


 疑問を問いかける暇もなくわたしは瓶に放り込まれた。

 分厚いガラスを隔て、景色の何もかもが大きく見える。

 とてもじゃないけど人の入れない大きさの瓶。その中にわたしは小人のようになって詰められている。


 そして、見慣れた街並みに別れを告げて…………あすなろの街へと連れられて行った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 18:24:32.22 ID:YNHsdjB70<> ――――


マミ「もう予知は使えるの? かずみさんの居場所はわかったの!?」

織莉子「ええ、確かに見えたわ……これが“偽物”じゃなければね」

織莉子「でもまた変わった。敵も気付いたのか移動したみたいよ。さっきまでの場所には魔女しかいなくなっている」

あすみ「偽物じゃなくても罠ではあるかもねー。わかっててまた封じないんだから」

杏子「罠でも行くしかないだろ!?このままかずみまで連れ去られて相手の思うままにさせてられっかよ!ただでさえそれ以外に情報がねえんだ!」

キリカ「助けられるなら助けるって言ったもんね」

ほむら「追う場所がわかっているのなら時間をかけない方がいいわ。そのほうが襲撃が出来るでしょう。可能ならそのまま仕留める」

織莉子「貴女は魔法を使えるの?」

ほむら「一気に全員分の操作は出来ないとみるわ。それが出来るのなら常時全員私たちの魔法を封じておけばいいものね」

ほむら「貴女のことはよほど注意してたんでしょう」

あすみ「なんでもいいからさっさと行くよ。イレギュラー、魔法のことは任せるわ。今は一瞬が勝負よ」

ほむら「ええ。みんな、掴まって」


 ほむらはみんなに手を差し出す。その仕組みを理解していないみんなは戸惑ったものの、言われた通りに一列に手をつなぎ始めた。

 全員がつながった状態になってから魔法を発動する。それからほむらはもう一つ忠告をした。


ほむら「絶対に手を放しては駄目よ。放れるとその人の時間も止まってしまう。止まった人を運ぶなんて面倒なことはしたくないわ」


 さきほど手を跳ねのけられ、『二度とするか』と言っていた二人も今は手をつないでいる。

 もちろん緊急事態にそんなことは言ってられないのだが、その『二度』の機会は予想よりも大分早くなったのだった。


キリカ「あすなろだよね? 詳しい人いるの?」

あすみ「猫、アンタは? 一回あすなろ行ってたんでしょ」

キリカ「そうだけど……ちょっとだし聞いたことないよ。そんなとこ」

マミ「学校の遠足でも回ったけど私もわからないわ。その時は呉さんも居たわよね」

キリカ「あぁ、そうだね」

織莉子「あまり表立った施設ではないのでしょう。今探っているわ。案内は私が出来る」


 織莉子は予知を頼りに先頭を歩いていく。

 相手の行動を詳細に追う予知。意図してのピンポイントな魔法の使い方は精度は高いが、消費も激しい。


 移動中の時を止めるほむらも道を探る織莉子も、二人とも魔法をフルに使っていた。


織莉子「…………」

マミ「どうかしたの? 何かわかった?」

織莉子「いえ……」



 ……――織莉子の顔は険しかった。


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 18:32:06.98 ID:YNHsdjB70<>

「どうだこの街。見覚えはあるか」


 街を歩きながらカンナは小さく問いかける。

 初めて見る景色のはずだった。もちろん見覚えなんてない。――なのに、どこか懐かしい感じがする。

 それは私の生前と言っていいのか前世と言っていいのかもわからない、ミチルの記憶がそうさせているのか。


 カンナは迷わず足を進めていき、どこかの建物の内部へと入って行く。

 そこは左右いっぱいにカプセルの並ぶ不思議な場所だった。その中には人の身体とソウルジェムが浮いている。

 なにかの生体実験的な場所だということは想像がつく。しかし、カプセルはいくつか割れていた。


 この施設は今も使われているのだろうか?


「プレイアデス共はこうして魔法少女の身体とソウルジェムを分離して、いつか元の人間に戻せる方法が見つかる時まで保管するつもりだったらしい」

「馬鹿なことにそのせいで自滅したんだけどね」

「キミは和紗ミチルのグリーフシードとプレイアデス共の魔法をもとにこの場所で創られたんだ。

 魔法少女の運命を破る、奴らの嘆いた『最初の犠牲者』の代わりという勝手な運命を背負わされてね」


 私の中に眠る魔法に思いを馳せる。それらは私を作った人たちの想いだ。

 私が知らずに使ってきた『再生成』『活性』『解析』……もっとあるかもしれない。それらが組み合わさって私という生命を作り上げた。

 前にキュゥべえからも聞いていたけど、みんなが私に望んでいた想いを知った。それをこうして遠くはないだろう関係者の口から語られるとまた複雑な気分になる。


「ところで私はカンナと名乗ったけどさ、アレ嘘なんだよね」

「私は本当の『カンナ』じゃない。名乗れる名前がそれしかなかったんだ」

かずみ「カンナ……もしかしてあなたはやっぱり…………」

「十年ほど前カリフォルニアで起きた銃の暴発事故。死者2、負傷者1。生き残った娘の名は聖カンナ」

「トリガーを引いた少女の名も聖カンナ」

「そいつの外見は私と同じだよ。十年ほど前っていうと、何歳になるかわかる? その頃から少女は笑顔を捨て、贖罪の日々を送った」

「幼い日の罪がなければ自分はどれだけ幸せな人生を送れただろうと夢見ながら……でもその妄想は現実になった。『奇跡』によってね」


 彼女の言わんとすることは理解できてしまった。そう言う意味でわたしと同じ。

 本物のカンナと彼女の境遇は悲しい。

 ――――だからって彼女はわたしの気持ちはわかってない。



 その時、豪快に扉を破る音が響いた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/02(土) 18:48:32.07 ID:G0ouNYMx0<> 決戦の場はあすなろになるか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 19:14:33.49 ID:YNHsdjB70<>

あすみ「そう、そして私が本物の『神名』でーす!」

あすみ「お前人と名前が被っとるんじゃボケ!物語なら何かの因果関係でもないとありえない事態だよ!?」

あすみ「まあこれは現実だしソイツと私は何の関係もないんだけどね。私はそんな虚しい願い事してないよ」


 不敵で勝気でちょっとふざけたあすみの声。

 マミ、織莉子、杏子、キリカ、もちろん他のみんなも。―――そして一人離れたほむらはカンナの背後に居た。


ほむら「追跡がてら貴女の事情も見させてもらっているわ。そこの美国織莉子を通じてね」


 ソウルジェムを掴みあげ、ほむらは容赦なくそれを手中に握りつぶす。


ほむら「だから、何? 同情する余裕はないわ」

「なるほどお前らの魔法はチート揃いだな。……だから何?」

ほむら「!」


 ソウルジェムを失い崩れ落ちるはずのカンナは、上体を伏せ身体を捻ると流れるように背後に向けて蹴りを放った。

 ほむらが鋭い声を上げる。――――崩れ落ちたのはほむらのほうだった。


「そんなんデコイに決まってるじゃん!」

「普通コピーってのは劣化するもんなのにねぇ。この魔法、未だに使いこなせないそこのメンヘラお嬢より私が使ったほうが真価が発揮できるんだよね」

「コイツは本来優秀な魔法だよ。私にはちゃんとその危機を教えてくれたからね」


 自身を貶められた織莉子が歯噛みする。

 みんなすでにここに現れた時の余裕の表情はなくなっていた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 20:01:45.46 ID:YNHsdjB70<>

 しかし、やることは変わらない。みんな一斉に武器を向ける。

 わたしはただの人質じゃない。彼女がわたしを傷つけないことがわかってるから出来る事だ。


織莉子「人類の敵である貴女とは宿敵となる運命だったようね。私はこの世界を守る。貴女の望む世界になんてさせない」

織莉子「『逃げ』から創られた虚構ならば無に還るのが定め」

杏子「ああ、そんなら正面からぶちのめすだけだ!」


 最初に動いたのは織莉子。織莉子が水晶を放ち、続けて杏子が水晶の間を縫って槍を突き出す。

 水晶から現れた刃がカンナにいくつもの切り傷を刻む。

 しかし、ボロボロになったカンナに槍の先が差し込まれそうになった時、杏子は背後に異変を感じ取った。


マミ「後ろっ!」


 マミが急いで背後に向けて銃を生成して乱射する。

 そこに現れたのは数体ものカンナだった。狙いの定まっていない銃弾は数発しか当たらずすり抜けていく。


 その中の一つが杏子の近くで挑発的に囁いた。


「……残念、これもデコイラン。『再生成』じゃないぞ? お前の魔法だよ、佐倉ぁ!」

杏子「ッ!」


 杏子は槍を振るう軌道を変え、目の前のカンナごと新しく現れたカンナの姿に振るった。

 刃が通った跡が二体のカンナの姿を揺らし、虚しく消えさっただけだった。代わりに上がるのはマミの悲鳴。


 みんなが傷つきながら戦ってるのを見てるだけなんてできない。

 ――わたしは勢いよく瓶を割って飛び出していた。



かずみ「わたしもみんなと一緒に戦うよ!」



かずみ 魔力[66/100]  状態:正常
GS:3個
・[0/100] ・[0/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


仲間:
マミ 状態:負傷(中)
杏子 状態:正常
織莉子 状態:正常
ほむら 状態:負傷(小)
キリカ 状態:正常
あすみ 状態:正常

敵:カンナ <-攻撃対象デフォルト

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/02(土) 20:08:59.83 ID:G0ouNYMx0<> 毎度おなじみ8+5
分身は主に仲間へのサポートメインで <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/02(土) 20:16:27.12 ID:COwz+l7EO<> ↑
カンナにプレイアデスがどうしたのか問い詰める
さっき自滅したとか言ってたけどどういう事!?
あなたが願いで生み出されたのならその願いをした人はどうなったの? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 21:07:36.59 ID:YNHsdjB70<>

 こっちも対抗して数を増やす。分身は主にみんなのサポートのためだ。

 分身だけで本体まで倒せるとは思っていない。


かずみ「プレイアデスが自滅したってどういうことなの!? あなたが願いで生み出されたのならその願いをした人は!?」

「あんな奴らのことが心配なのかよ!? どうだっていいだろかずみ! 生きてたって死んでたって、どうせこれから全滅する人類のことだ」

かずみ「全滅なんてさせない!わたしも自分が創られたって知った時は恨みもしたけど、人類みんなを恨むなんて間違ってるよ!」


 未来予知を使うと“次”に狙う人も視えてきた。


 マミを狙ったカンナは分身を収束させると次にキリカの目の前を塞ぐ。

 その顔には意地の悪い笑み。


「おいそこの。ちょっと違うけど、君も私の仲間に入れてやってもいいよ? 願いから生み出された哀れなまがい物さん」

「アンタも考えようによっちゃifの存在だよな。人に裏切られた嫌な過去がなかった自分」

「何故自分が偽物にされなきゃいけないのか。自分の知らないところでそんなことを願ったオリジナルが憎い。全部覚えのある感情だろ?」

キリカ「そんな誘いに乗るか!」


 キリカはすぐに爪を振るおうとする。

 しかし、自身の核心を突くことを言われ揺さぶられていた。それもその内容はキリカ自身も知らないこと。

 突き出した腕の動きは鈍い。


「なら残念だ」


 冷徹な顔とともに残酷な死刑宣告のように下ろされる手刀。

 そこにわたしの分身が割り込んだ。


かずみ「させないよ!」


 攻撃を代わりに受けた分身はすぐに壊れてしまう。

 すぐにカンナは怒りに顔を歪めて指先から伸ばしたケーブルを辺りに振り回した。


 分身だけじゃ間に合わない。わたしはみんなを守るように駆けだした。


 ――……一瞬で距離を詰める。みんなへの攻撃は私が全て防いだ。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/02(土) 21:19:39.90 ID:G0ouNYMx0<> カンナがキリカを襲わなかったのはシンパシー感じてたからか
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 21:44:03.21 ID:YNHsdjB70<>

 しかし、その代わりに一瞬にして身体のあちこちが悲鳴を上げる。

 息が切れている。身体には痛みと疲労以外の嫌な感覚も滲んでいた。それは意識を鈍らせるものであり、どこか獣じみた本能でもあった。


 ……公園での戦いの時から、魔力を消費しすぎた。回復しないと。しかし目の前のカンナがそれを許してくれない。


「なんでおまえがそうまでしてこんな奴ら守るんだよ……そんなにボロボロになってまで」


 いつのまにか周囲にはガラスの破片が散らばっている。

 カンナが狙ったのはみんなに向けてでもあったが、本当の狙いは違うところにあった。


 魔方陣の上にあるグリーフシードだ。

 カプセルの中で休眠状態におかれた魔法少女たち。それらの魂。公園で見たのはここから持ち出したほんの一角だったことに気づく。

 全てがすでに濁りを溜め込んでいた。


「言っとくけど浄化の暇なんてあげないよ、かずみ。メンヘラ嬢もすでに魔力切れらしいな」

「そして今からこいつらを全部孵化させる。……おまえらはこれに勝てないよ」

マミ「あなた……なんてことを!それじゃあプレイアデスがなんのために彼女たちをここに集めたの!」

「知るかよ!みんなを殺すためだ!プレイアデスは大量殺戮者だ!結果的だけどさぁ、そもそも救える方法すら知らないくせにやってたんだからなぁ!」

キリカ「違うだろ!お前が殺すんじゃないか!」


 プレイアデスは魔法少女を襲ってソウルジェムを奪っていた。キリカも取られそうになったと言っていた。

 でもその真意はみんなを助けようとしてたからだったんだ。

 ここでみんな魔女にされてしまったらプレイアデスのその想いは裏切られてしまう。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 21:46:21.99 ID:YNHsdjB70<> 【訂正】>>821
誤:魔方陣の上にあるグリーフシードだ。 → 正:魔方陣の上にあるソウルジェムだ。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 22:08:25.43 ID:YNHsdjB70<>
「そうだ、美国。お前の魔法ももう制限はしない。どう足掻こうが変えられない未来でもよく見て絶望するといいよ」

織莉子「あ、貴女……何を…………!」


 織莉子は目を見開いた。攻め入る隙を教え、危険から身を守り手のうちを識る、敵からすれば厄介な魔法。

 しかし織莉子は契約からずっとその魔法が制御が出来ずに悩まされていた。


「自力で制御も出来ないんだもんな」

織莉子「やめなさい……やめて……――――やめろ!!」


 見開いた瞳の奥に勝手に映像が流れ込む。

 自分の意思に反して使われてしまう魔法。それによって魔力を削られ魔女に堕とされるというのは皮肉なものであった。


杏子「おい、今すぐソウルジェムを離せ!自分で出来ないなら誰でもいい!」

ほむら「……やむを得ないわ」


 仲間も助けられる方法がないとわかると見捨てる事まで考え始める。


 その内容は見たくもない未来。破滅と絶望の未来。

 …………しかし、その時織莉子は未来を悲嘆するのをやめていた。


あすみ「それで本当にいいの? 今ここの魔女を孵化させたらアンタが死ぬよ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/02(土) 22:37:40.00 ID:YNHsdjB70<>
「……なんだと?」

あすみ「複数人の魔法を操れないのはマジみたいだね」

あすみ「アンタからすれば常に見張るほど警戒してるのは一撃必殺の魔法を持つほむら、その次に私だろ? ついでに予知も使いたい」

あすみ「それでさらに複数体の魔女の制御まで目を向けるのは無理だ。どっかに穴が出来る」

あすみ「ほむらを見逃せば次こそ木端微塵だし、魔女の制御を失えば食い殺される。……無論、私を見逃してもだ。どっちに転んでも貴女は詰むよ?」


 あすみの牽制により、カンナは引きさがった。

 その隙にわたしは杖を目の前に向けて突き出す。


かずみ「でやぁっ!」


 続いてあすみが鉄球をぶつけ、キリカも爪を振るう。

 みんなはまだ誰も諦めていなかった。みんなが前に出て攻撃する間にソウルジェムを浄化する。

 それから未だ膝を屈している織莉子のほうに目を向けた。


かずみ「……はい。織莉子も」


 真珠色の宝石にグリーフシードを当て、黒色を吸い込ませていく。

 驚いた表情を浮かべる織莉子に笑みを返した。



かずみ 魔力[100/100]  状態:負傷(大)
GS:2個
・[0/100] ・[0/100]
・[10/100] ・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


仲間:
マミ 状態:負傷(中)
杏子 状態:正常
織莉子 状態:正常
ほむら 状態:負傷(小)
キリカ 状態:正常
あすみ 状態:正常

敵:カンナ <-攻撃対象デフォルト

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/02(土) 22:55:34.67 ID:G0ouNYMx0<> 8+5
攻撃・サポートは分身にまかせマミとほむらを治療 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/02(土) 23:07:08.78 ID:COwz+l7EO<> ↑
さっき感じた嫌な感覚について考える <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 00:07:07.74 ID:H0B3nMSc0<>

 再び分身を作りなおして立ち上がる。


かずみ「傷ついたマミやほむらも治さないと……」

織莉子「貴女が一番ボロボロじゃない。……さっきは酷いものだったわよ。身体まで真っ黒だった」

かずみ「身体……が?」

織莉子「貴女はソウルジェムの代わりに身体が濁るの?」


 私の身体は傷だらけだけど、さっき感じた嫌な感覚は消えている。

 人間じゃない。魔法少女でもないからこその無茶はみんなよりできる。


かずみ(魔法少女じゃない……か) 


かずみ「わたしはまだ動けるよ」

ほむら「私だってまだ動けるわ」


 銃を構えたほむらが凛と敵を見据えながら言った。


ほむら「どうせ大したことのない傷よ。自分を優先して」

ほむら「ただでさえ魔法の使えない私が出来ることは少ない。ここで動かなかったらどうするというの?」

かずみ「……わかった!」


 自分の傷を治し、それからマミのほうへと向かう。

 マミは傷を庇いながら戦っている。このままじゃ次はトドメを刺そうとしてくるだろう。


 マミの前に分身を行かせ、自身も駆け寄っていく。


かずみ「マミ!」

「さ……せるかぁっ!」


 カンナの放った攻撃はマミに向けてのものだ。

 そこに杖の先を振りかざし真っ向からぶつけ合って相殺する。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 00:35:56.38 ID:H0B3nMSc0<>

マミ「何やってるの……? 私なんかのためにまたボロボロじゃない」

かずみ「また治すよ!今は杏子たちに任せよう!」


 杏子たち前衛組とほむら、織莉子も加わった戦いを見る。単調な動きながら分身だって向かわせている。

 魔女の使役という企みも使えない今、少し戦況は押し返せたように見えた。でもそれはほんの少しの間だった。

 誰かを庇うようにして癒しても傷つけられ、また癒しても傷つけられる。


 ……それに、もしこのままみんなに任せて勝ってもきっとわたしは後悔する。

 わたしもマミも回復を終え、わたしはある考えを固めていた。


かずみ「……マミ、合体魔法を撃とう」

マミ「合体魔法ですって? さっきは失敗したじゃない。そんないきなり本番なんて」

かずみ「わたしとマミなら大丈夫だよ!やろう!カンナを倒す!それで……伝えたいことがあるの」


 わたしの言葉にマミは頷いた。 

 足元にそれぞれの魔方陣を描き、魔力の光に身を包んでいく。


 技を放つときはかっこよく必殺技を叫ぶんだ。


『メテオーラ・フィナーレ』


 ――――ぶっつけだって大丈夫。なぜなら、わたしたちは一番のコンビだから。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 00:42:28.44 ID:H0B3nMSc0<> -------ここまで。
次回は3日(日)夕方からの予定です。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 18:33:34.47 ID:H0B3nMSc0<>

 先に予知をしたカンナが目を見開く。

 上空から一直線に灼きつける光。逃げようにもその周りを囲む魔法少女たちがいる。


 わたしたちの魔法が炸裂する。


 眩い光が収まった後、カンナの目の前にいるのはわたしだった。

 カンナは二人分の魔力の直撃を受け、さすがに満身創痍の様子だった。それでもこの世への憎悪に満ちた表情は変わらない。


「…………かずみが私を殺すのか? 皮肉だな」

かずみ「ううん、殺さないよ」

「それでおまえの仲間が納得すると思ってるのか?」


 私たちを見守るのは冷静な視線だった。

 人類そのものへの敵対の考えを曲げないカンナに対するのは、最早殺すしかないと覚悟を決めた目。

 それも織莉子やほむら、あすみ、杏子……普段からドライな考え方をする人たちだけではなかった。私以外のこの場に居る全員だ。


かずみ「それでもわたしはあなたにもこのままで終わって欲しくない。この世界に希望をもって欲しいんだ」

「希望だって? ……そんなものないよ。ここは人間たちの世界だ。私の世界じゃない」

かずみ「変わらないよ。あなただってこの世界で幸せになっていいんだよ。この世界に居場所はあるの」

「作り物の私にそんなものがどこにある!?家族も友達も人の思いすら全部偽物じゃないか!私を本物だと思ってるから騙されてただけじゃないか!」

「かずみは本物を知らない人たちに囲まれたからわからない!?全部がごっこ遊びだってわかってて続けるのなんて虚しいだけだろ!」


 カンナは激情に任せて叫ぶ。

 確かにわたしはわたしを見てくれる人に恵まれた。でも、その気持ちは痛いほどわかった。

 だからわたしはあすなろに、自分の生まれた場所に行く決心がなかなかつかなかった。……自分を産み出した人たちに会うのが怖かったんだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 19:30:38.92 ID:H0B3nMSc0<>

かずみ「カンナは本当はこの世界のみんなのこと大好きだったから悲しかったんだよね」

かずみ「あなたの心は本物だよ。あなたが人を思う気持ちも、みんながカンナを思う気持ちも騙されてただけじゃなくてきっと本物だから」

「そんなの綺麗事だろ……」

かずみ「大好きな世界を壊したら絶対に後悔する。だからわたしはそんなことはさせない!」

かずみ「わたしはあなたのこと偽物だなんて思わないよ。本当のカンナはきっと、逃げたかったわけでも自分の理想を眺めたかったわけでもないと思う」

かずみ「何もかも捨ててでもあなたを本物にしたかったんだ」


 憎悪と激情に歪められていた瞳から一筋の涙が溢れる。


かずみ「魔法で心なんて作れないんだよ」

かずみ「あなたも、わたしもキリカもみんなそう。変わらないの」


 その言葉は、目の前で泣くただの少女に。いつの日か悩んでいたわたしに。

 そしてあの日勇気づけてくれた、今は後ろで重い顔をして俯いているキリカにも向けていた。


かずみ「だからカンナも一緒にきてよ。世界を壊すんじゃなくて、守ろう」


 わたしはカンナに向けて手を差し出す。

 しかしその手が取られることはなかった。カンナの手にはソウルジェムが乗っていた。


「……けど、その手は取れない。すまないが、これが最後になりそうだ」

「ありがとう、かずみ。君の言葉はいつだってココロにくるね……」


 その色はどす黒い黒。……カンナの魂は急激に濁っていた。


「かずみ…………私は反省するには取り返しのつかないことをした」

「何人もの人を死に追いやった。そして――――人類滅亡の種は既にある」


 憎悪が消えた表情に残るのは恐怖。カンナは震えていた。

 自分の思いに気付いたが故に、ただ消えない罪と過ちの大きさに打ちひしがれて崩落する。

 皮肉にもその感情は、銃の暴発により人を殺めたカンナが幼い日から抱いてきたものによく似ていた。


 そしてその罪悪感以外に、純粋な絶対的な力という絶望への恐怖が加わってカンナの身体を震えさせていた。

 それが世界にどれほどの破滅をもたらすかをカンナはすでに知っていた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/03(日) 19:38:18.15 ID:xkNsHc9rO<> カンナはもう駄目なのか
あとまどかも手遅れなのか? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 19:56:07.22 ID:H0B3nMSc0<>

「それが嫌なら今のうちだ。今殺してしまうしかない」

キリカ「早くそれ浄化してよ!なんでこのまま死のうとしてるんだよ!」


 カンナのソウルジェムから聞こえる小さな破裂音は、溢れようとする黒によって無数に罅が入る音だ。


 キリカは焦った様子でグリーフシードを手に駆けつける。キリカはカンナに向け最大限の速度低下をぶつけ、手中の黒い宝石を同じ色をした宝石に押し付ける。

 わたしもそこにグリーフシードは当てていた。けれど、無理だとわかった。本当の『絶望』の前には抗えない。

 穢れを押し付けることすら拒むかのように黒みは減らない。


キリカ「死ぬなよ!あんた私のこと全部知ってるんだろ!だったらせめてその前に、本当の私を教えてよぉぉ!」

かずみ「カンナ!小さい頃から罪を背負ったカンナは逃げなかったからあなたを創った!だったらあなたが逃げたら駄目だよ!」



 魔女は孵らなかった。

 その代わりに音を立てて宙で小爆発を起こす。わたしたちは咄嗟に腕で顔を覆った。



 ――――――希望を知り、絶望に沈んだ。



 罪の運命を背負った本当の自分に苦しむ少女と、願いによって生み出された偽りの自分の苦しみが引き起こした悪意。

 ようやく決着がつき、全てが終わった。

 しかしそれはこの場にいる魔法少女たちを掻き乱し、あまりにも多くの傷痕を遺していった。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 20:34:43.74 ID:H0B3nMSc0<>

ほむら「まどかは……? まどかはどうしたの…………!?」


 ほむらは半狂乱で壊れたカプセルの並ぶ施設内を見回すと、奥へと進んでいった。

 何人かの仲間がその後をついていく。


 ……その時わたしは床に倒れる息をしていない魔法少女の身体を抱きかかえていた。

 彼女たちの身体を保存しておける器はもう壊されてしまった。

 みんなを救うための行動が裏目に出ないように、その意思を継いでプレイアデス代わりにこの人たちのことは助けてあげたい。

 でも今手元にはみんなのソウルジェムを浄化するだけのグリーフシードはなかった。

 すぐに魔女化はしないとはいえ、彼女たちが奪われたものは決して元通り以上にはならない。わたしたちができるのは現状をさらに悪化させないようにすることだけだった。


ほむら「そんな……――――!」


 みんなの行った通路の奥からほむらの声が聞こえる。

 わたしもそっちへと足を進めていった。すると、そこにあったのは…………。


織莉子「……最悪の結果ね」


 まだ壊されていない一番奥のカプセルの中で眠る少女。

 ほむらはそのガラスの表面に手を触れながら、“まどか”と力なく呟いた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 20:57:05.35 ID:H0B3nMSc0<>

 まどかの身体の傍には、この施設内で唯一穢れのない桃色のソウルジェムが置かれている。

 ――カンナを倒した後わたしたちに迫られたのは、施設内に保管されていた少女たちとまどかの処遇だった。


 誰もがやりきれない苦々しい空気を発する中、最初に重い口を開いたのは織莉子だった。


織莉子「さっきのカンナは魔女と化した鹿目まどかを操って自分たち以外を滅ぼさせるつもりだったのでしょう?」

織莉子「彼女が生きていれば万が一の時にも管理ができたかもしれなかったものを……本当に最後の最後で役目を果たさずに逃げたわね」

織莉子「どうするの? このまま無事にここで保管し続けられるとは限らないわよ」


 ただし、その発言は重い空気を更に重くした。

 『もしも』は言っても仕方のない事だ。望んではいけないもしもを願ってしまった悲劇を知っているからこそ殊更そう思う。


かずみ「プレイアデスはみんなを魔法少女の運命から解放させようとしてたんだよね……」

かずみ「まどかを魔女にさせない方法ってないのかな?」

あすみ「そんな方法見つからないからこんなことになったんでしょ。現実を見なよ」


 いつも通りのあすみの冷たく厳しい言葉。

 今考えられる選択肢は、まどかを目覚めさせるか、殺してしまうか、このままにするか――ただしこのままにするのも問題の先送りにしかならない。

 そんな時、意外なことに一番決定的な決断を下したのはほむらだった。


ほむら「……この場で殺してしまうべきだと思う」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/03(日) 21:09:54.48 ID:xkNsHc9rO<> やっぱり手遅れだったか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 21:44:50.84 ID:H0B3nMSc0<>
かずみ「それでいいの!?」

マミ「暁美さんは彼女の友達なんでしょう?ずっと守ってきたんでしょう?それなのに殺すなんて……」

ほむら「友達だからよ。こんなカプセルの中でまどかの人生も奪ったまま、いつか魔女になるリスクだけを抱えるのならここで殺したほうがマシ」

ほむら「魔女になってしまうことはまどかが一番望まない事……せめて何も知らないうちに」

織莉子「……私も意外だわ。でも貴女がそう言うのなら、それで決まりね」


 でも、私はどうしてもそれが一番の選択肢だとは思えなかった。


かずみ「待ってよ!まどかに魔法少女としてわたしたちの仲間になってもらうこともできるんだよ!?」

ほむら「まどかの素質は強すぎる。特にこれからワルプルギスの夜と戦えば……彼女に頼り切りにならざるを得なくなる。そうすれば彼女の魔力は尽きてしまう」

かずみ「そうならないようにわたしたちが戦うんでしょ!?契約したから見捨てるなんておかしいよ!」

ほむら「たとえ魔女にさせずに勝っても、もう普通じゃなくなる。これからずっと魔法少女の運命を抱えていくのよ?」

ほむら「そして最後には…………結末は変わらないわ。魔女になって世界を滅ぼすか、その直前に私達の手で命を砕くことになる」


 ほむらの暗い覚悟。ほむらはあれだけまどかのことが大好きだったんだ。相当な決心をしてこんなことを言ってるのはわかる。

 だからこそ、ほむらにはそんな選択をさせたくない。

 わたしがここに来る前にほむらとした約束は、まどかが魔法少女になっても破れてしまったわけじゃない。


かずみ「そんなの……いつか魔女になるからって殺すなら織莉子と何も変わらないよ!ほむらは全部知っててもまどかのこと守ってきたのに!」

かずみ「まどかも希望を願って契約したはずなのに、このまま殺したらまどかは救われない。そんなのはイヤなの!ここに居る魔法少女たちのことも!」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 22:01:59.75 ID:H0B3nMSc0<>
杏子「たしかに……契約したからっていきなり殺したほうがいいってのはおかしいな」

マミ「そうよ。魔法少女の運命を背負ってても私達は生きてるのよ。別に不幸じゃない。仲間も友達もいる」

ほむら「貴女達は何も知らないから言ってるんじゃない!」


 ほむらが叫ぶ。

 ……意見は真っ二つに割れる。わたしの意見に同調する人も出てきた。


 でもほむらがなんでそこまで頑なに言うのかわからない。


かずみ「……じゃあ教えて。ほむらは何を知ってるの?」

ほむら「………………」


 ほむらは拳をきつく握りしめたまま言葉を詰まらせる。

 言うか言わないか迷うような顔をしていたけれど、漸く話し始めた。


ほむら「……私、未来から来たのよ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 22:32:45.48 ID:H0B3nMSc0<>
ほむら「私がまどかと最初に出会ったのは私から見て四か月ほど前だった」

ほむら「長い入院生活を終えて見滝原中学校に転校してきた日、慣れない学校に戸惑って上手く振舞えずにいた私を救ってくれたのはまどかだった」

ほむら「まどかは友達としても魔法少女としても私を救ってくれたの。……けれど、その末に死んでしまった。ワルプルギスの夜に殺されてね」

ほむら「私が契約したのはまどかのためなのよ。私は時間を遡ってまどかを助けるために魔法少女になった。でもそう簡単にはいかなかった」

ほむら「仲間としてワルプルギスの夜と戦ったまどかは最後、一度は魔女になって死に、もう一度はその直前に私が殺した」

ほむら「その時まどかは、インキュベーターに騙されて魔法少女になる前の自分を救ってほしいと私に言ったわ……」

ほむら「……だから私はまどかが最後に本当に望むことがわかる。そしてもしこの世界では無理でも、その約束を守らなくちゃいけないの」


 ほむらは静かに自分の見てきた『四か月』を語った。

 ほむらの話を遮る人はいなかった。……誰一人そんなことはできなかった。

 しかしその話が終わった後、わたしはほむらに詰め寄り叫んだ。いつのまにかわたしの目にも涙が溢れていた。


かずみ「……それでも、まどかを殺しちゃ駄目だよ。まどかはまだ魔女になってない」

かずみ「まどかの死ぬところをたくさん見てきたんだよね。ほむらは時間を戻れるから、次の世界があるって思うことで自分をごまかしてるんじゃないのかな?」

かずみ「ほむらからしたら何度目かのまどかでも、ここにいるまどかは一人しかいないんだよ」

かずみ「友達ならどんな時でもまどかが幸せになれるように頑張らなくちゃ……今見捨てたらほむらは戻れなくなる。きっと後悔しちゃうよ」

ほむら「あなた……泣いているの? 私の話を聞いて?」

かずみ「ほむらだって泣いてるよ」


 ほむらは驚いたように自分の頬に手をやる。その涙は止まらない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 23:07:30.27 ID:H0B3nMSc0<>
ほむら「私だって……まどかを殺したくない…………!」

かずみ「うん……」

ほむら「仲間としてまた一緒にいられるなら、そうしたい」

かずみ「うん……そうしよう。みんなはどう思う?」

杏子「このまま殺すんじゃ寝覚めが悪いしな。多分その過去じゃあたしもまどかと仲間だったんだろ?」

マミ「まだ想像はできないけれどね。きっと仲良くすることもできると思う。戦力として考えれば心強そうだけど、戦わせるのは危険かしら?」

キリカ「私もそれでいいと思う」

織莉子「みんな、本当にいいの?」

あすみ「導火線が短くなったってところかしらね。みんなが言うなら、いざという時どうにかできるならそれでもいーけど……そんならそれで作戦練りなおしたほうがいいね」

織莉子「……」



 そうしてわたしたちはまどかのカプセルを割る決断をした。

 その身体にソウルジェムを触れさせると、まどかは目を覚ます。


 倒れていた魔法少女たちも、魔女化寸前のものは出来る限りソウルジェムの穢れを取り除いてから接続させ、抜け殻となった施設を後にした――――。


 帰り道、まどかはわたしたちと一緒に居る。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/03(日) 23:11:07.91 ID:PthoPlSI0<> 追い詰められていたまどかがどんな願いで契約したのか気になるなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/03(日) 23:22:20.16 ID:H0B3nMSc0<>

まどか「カンナって人にさらわれて、あれからなにがあったか覚えてなくて……わたし、契約したんだよね。あれ、やっぱり夢じゃなかったんだ」

ほむら「ええ。今まで隠していたけど……あなたは私達と同じ世界に来てしまった。来てしまったからには仕方がないわ」

ほむら「貴女がなぜ狙われたのかもちゃんと話すわ」

あすみ「これから魔法少女の基礎についても叩きこむからね。アンタには一番に気を付けてもらわなきゃいけないんだから」


 まどかにはほむらが事情を話していた。

 ……わたしは誰と話そう。



(この場に居る人と話す マミ/杏子/織莉子/あすみ/ほむら/キリカ/まどか)
・選択安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/03(日) 23:30:17.05 ID:xkNsHc9rO<> 複数でもOKですか?
OKならマミと織莉子、駄目ならマミ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/03(日) 23:33:35.68 ID:PthoPlSI0<> キリカとまどかの手芸部組 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/04(月) 00:22:53.47 ID:48RhDPwm0<>

 ひとまずわたしもほむらたちのほうに行って、まどかに挨拶をしてみることにした。


かずみ「はじめまして、まどか!わたしはかずみっていうんだ。よろしくね」

まどか「あぁ、うん。よろしくね。でも、魔法少女って小さい子たちまでこんなに……」

かずみ「え!あすみはともかくわたしは年齢的には多分……うぅ」

まどか「あっ、ごめんなさい!わたしも言えたことじゃないのに……」


 言われたわたしだけじゃなくて言ったまどかまで、二人してがっくりきていた。

 それをしら〜っと見ているあすみ。

 そういえばほむらがわたしをまどかに似てるって言ってたのを思い出す。……こんなところでもなんか共通点を感じた。


かずみ「まどか、巻き込んじゃってごめんね。いきなりこんなことになって不安じゃない?」

まどか「不安はあるけど……わたしの願ったことは本当だから、それが叶うなら後悔はしてないよ」

かずみ「まどかの願い事って?」

まどか「家族や友達が幸せでいること。あの時は脅されてだったけど、その気持ちはこれからも変わらないから」

まどか「ほむらちゃんから聞いたけど、魔法少女って魔女を倒して人を助けてるんでしょ?魔力を使いすぎたらまずいのはわかったけど、魔女にならないくらいでなら……」

ほむら「契約はしてしまったけれど、戦うなんてやめておきなさい。あすみも言ってたけど、貴女は人一倍気を付けないといけないのだから」

まどか「でも………… !」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/04(月) 00:47:57.78 ID:48RhDPwm0<>

 ほむらはまどかを仲間にしたいとは言ったけれど、やっぱり戦わせたくはないらしかった。

 それに対して、まどかは納得していなさそうだ。

 それからまどかは何かに気づいたようにキリカの傍に寄っていった。


まどか「あの!同じ部活ですよね?手芸部の」

キリカ「え?」

かずみ「あれ?知り合い?」


 聞いてみたけど、知り合いというにはぎこちない間が流れる。


まどか「わからないですか……あんまり顔出してなかったからしかたないかな」

キリカ「いや……確かに手芸部だし見覚えある気がするよ」

キリカ「……ねえ、君は私のこと見てたんだよね。じゃあ私ってどんなだった?」

まどか「えっ?」

キリカ「撤回、やっぱなんでもない。変なこと聞いてゴメンね。私も大して行ってなかったのに」

まどか「でも、わたしが見た時は周りが遊んでても気にせずにひとりで黙々と作業してました」

まどか「だから本当に手芸が好きなのかなー、って。自分の世界があるって感じがしてすごいと思います」

キリカ「…………」


 キリカはまどかの言葉の意味を考え込むようにして俯いた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/04(月) 00:48:40.24 ID:48RhDPwm0<> ------ここまで。次回は5日(火)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/04(月) 00:58:23.40 ID:2OyWU4iY0<> 乙でした

まどかに魔女化の事情を話したのならさやかにも話とかないと危ないかも? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/05(火) 20:28:50.16 ID:reVl99hA0<>
かずみ「やっぱり、カンナに願いのこと聞けなかったのがショックだった?」

キリカ「魔法で心は作れないって、かずみがそう言ってくれたのは私も嬉しかったよ」

キリカ「今の私も本物なんだって思えたし、私以外にも悩んでる人はいるっていうのもわかる。かずみもちゃんと乗り越えられたんだね」

かずみ「うん。キリカやみんなのおかげ」

キリカ「……でも、やっぱ気になるんだ。自分のことだから」


 ずっと浮かべていた浮かない表情の意味がわかった。

 やっぱりキリカもあの戦いで心揺さぶられていたんだ。


キリカ「カンナはさ……望んだ自分になれたのかな」

キリカ「理想の自分を願ったはずなのに、世界を恨んで結局また罪を背負って後悔して、本当のカンナもあんなことになるなんて思わなかったんじゃないかな」

キリカ「それに気づいたから絶望したんだ」

かずみ「そうだね……それはすごく悲しい。でも、カンナも本物のことを知るまでは望んだ通りの普通の暮らしの中で生きてたんだと思う」


 ……最後に元のカンナに戻れただけ救われたといえるのだろうか。

 それでも起きてしまったことを変えることはできなかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/05(火) 20:47:16.65 ID:reVl99hA0<>
キリカ「……カンナも嫌な過去があって辛いなら自分を変えちゃえばよかったのに、今の自分を消さなかった」

キリカ「でも私は逃げたんでしょ?」

キリカ「何やらかしたのかな。裏切られたとか言ってたけど、カンナの長年の苦悩に比べたらたったそれくらいでさ」


 責めるような冷たい言い方だった。

 キリカが向けていたのは『軽蔑』だ。その相手は見知らぬ自分自身。


キリカ「なんかそう思うと、自分を信じられる気になれないんだ」

かずみ「その弱さも含めて自分だよ。受け入れるしかないよ」

キリカ「そうだね……所詮自分自身だもんね。でも、今の私は前とは違うの?」


 キリカは否定してほしいんだろうか? 肯定してほしいんだろうか?

 軸が定まってないからこんなことを聞くんだと思う。



1わからない
2自分を認めるところからはじめてみよう
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/05(火) 21:15:56.29 ID:Y2AXJlEW0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/05(火) 21:17:45.45 ID:aKT4NOMN0<> 2+自分の出生をキリカに話す

キリカは今の自分を責めすぎだと思うよ?
私は焦ってキュウベェに自分のこと聞いて後悔したから

キリカにも話しておくけど・・・・・・私ね、死んだ和紗みちるを模して魔女の肉から作り上げられたんだって
最初にそれをキュウベェから聞いた時は後悔と不安しかなかったし、その事実をみんなに知られて拒絶されるのが怖かった
でも、マミはその事実を知っても受け入れてくれた、『私は私』だってね
私はかずみ!みちるではなくかずみ!今はそれが誇りなの!

だからキリカはキリカなんだし、これから意識を前向きに変えていこうよ?焦らずにゆっくりと!
不安でも私が傍に居るから! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/05(火) 22:35:44.31 ID:reVl99hA0<>
かずみ「契約する前の自分がどんな自分でも、自分を認めるところからはじめてみよう。自分を嫌いにならないでほしいかな」

キリカ「……考えてても仕方ないっか。今の自分がやりたいようにやるしかないんだもんね」

かずみ「うん。キリカは自分を責めすぎだと思うよ?」

キリカ「結局……今の自分が偽物なのか、同じなのか定まってないからどうしたらいいか迷ってるんだと思うよ。目的もわかんないし」

キリカ「自分を責めてるんじゃなくて、誰かのせいにしたいんだよ」

かずみ「今の自分も前の自分も責めちゃだめ。わたしは焦ってキュゥべえに自分のこと聞いて後悔したから」

かずみ「キリカにはまだ話してないっけ……わたしね、死んだ和紗ミチルを模して魔女の肉から作り上げられたんだって」

かずみ「最初にそれをキュゥべえから聞いた時は後悔と不安しかなかったし、その事実をみんなに知られて拒絶されるのが怖かった」

かずみ「でも、マミはその事実を知っても受け入れてくれた。『私は私』だってね」

かずみ「わたしはかずみ!ミチルではなくかずみ!今はそれが誇りなの!」

かずみ「だから、向き合い方は色々あるけどキリカはキリカなんだし、これから意識を前向きに変えていこうよ。焦らずにゆっくりと!」


 自分のことが解決できて、やっとこうして人を励ますことができた。

 それはわたしにとっては大きな進歩だった。カンナは元に戻せたけど絶望からは救えなかった。

 だからこうして、今いる仲間が困ってるなら救いたい。間違わないうちに。もう悲しい思いをして死んでいく人が出ないようにしたいんだ。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/05(火) 23:17:18.61 ID:reVl99hA0<>
キリカ「うん。なんか……かずみのが深刻なのに私ばっかり愚痴っちゃってごめんね」

かずみ「人の悩みに大きいも小さいもないよ。わたしは前に甘えさせてもらったから、キリカも甘えられる時は甘えてよ」

かずみ「不安でも、私が傍にいるからさ」


 キリカの顔にやっと穏やかな表情が戻る。やっぱ、怖い顔してたらそれだけで幸せも逃げちゃう。

 ああ見えて人一倍繊細なの知ってるから、少しずつでも前向きになってもらわないと。


 窓の外に見える景色は移り、扉から踏み出せばもういつもの見慣れた駅だ。

 私達の街に戻ってくる。解散の時間が近づく。


 ――しかし、あの戦いで心揺さぶられた人はまだ他にもいた。

 ――考えなきゃならないこともたくさんあった。


あすみ「ひとまず、明日また集合ね。時間は今日と同じ午後から。文句ないよね?」

マミ「ええ、私達も問題はないわ」

ほむら「私はみんなに合わせられるけれど」

まどか「わたしも明日はなにもないかな。……大事なことなんだよね?」

あすみ「そうだよ。特にアンタは重要。じゃあそれでー、解散」


 決まったように見えたが、それからあすみはわたしたちにテレパシーで語りかけた。


あすみ『……その前にマミんとこ集まるから。昼から空けといて』


 その提案を、いつも休日になると時間を惜しそうにしていたあすみが。

 まどかを狙っていた魔法少女――カンナを倒しても、もう余裕がないということを表していた。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/05(火) 23:58:53.35 ID:reVl99hA0<> ――――
――――
夜 マミの家



マミ「今日は大変だったわね……」

かずみ「うん。なんかもうホント疲れたかも」


 家に帰ると、今日の夕食はマミが作ってくれた。

 色々なことがあった一日だから、ゆっくりと食べるご飯の時間が特別に思えた。


 ……わたしはここに帰ってこられたんだ。

 ソファにごろんと身体を預ける。隣にはマミも居た。


かずみ「合体魔法、できたね」

マミ「二人だけだけどね。やろうとしたら、思ったより不安はなかったみたい」

マミ「相手がかずみさんだったからね。任せられるって思えたの」



・会話
1魔法のことについて
2訓練について
3まどかについて
4カンナについて
5自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/06(水) 00:10:14.65 ID:7cHBeQzY0<> 2+3

そういえばプレイアデスの人たちどうなったんだろ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/06(水) 00:25:16.21 ID:MkYZzphx0<> ↑ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/06(水) 00:26:53.22 ID:zuiIMAU3O<> ↑
どうせなら1と4も追加で <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/06(水) 00:56:46.94 ID:r3OmI6sN0<>

 それに、ついにあすなろの街を見た。

 わたしの生まれた街――。


かずみ「ついにあすなろに行ったね……」

マミ「狙われてたからって、なんだかんだでずっと行けなかったものね」

かずみ「もう少し前から覚悟はしてたはずなのに。こんないきなりつれさられて行くことになるなんて思ってなかったよ」

マミ「それはそうよ。……でも、全然行動する時間は取れなかったわね。あの施設にはプレイアデスってチームの人もいなかったし」

かずみ「うん……」


 あの施設の本当の持ち主はプレイアデスだ。

 でも、結局その人たちがどうなったのかはわからずじまいだったな。


かずみ「マミはまどかのことどう思ってる? これから訓練はどうしたらいいと思う?」

マミ「やっぱり、ワルプルギスの夜との戦いを中心に考えていったほうがいいと思う。合体魔法ももっと練習したいわね」

マミ「それにグリーフシードも必要だわ」


 今日の戦いと、保管されてた魔法少女たちの浄化でグリーフシードは使い切ってしまった。

 マミは杏子と和解してからグリーフシードを最優先にはしなくなったけど、もっと前のようにグリーフシードの必要性を軽視することもなくなっていた。

 ……前より現実を見るようになったっていうことなんだろう。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/06(水) 01:22:59.78 ID:r3OmI6sN0<>
マミ「……ワルプルギスの夜と戦うのも、ただ勝つために頑張るってだけじゃなくなったわね」

マミ「契約しないように見張る必要がなくなった代わりに、鹿目さんのことをどうするか考えないといけないといけなくなった」

かずみ「マミはどうしたらいいと思うの?」

マミ「仲間の戦力としては十分だと思うけど、使える魔力の量にもよるかしら」

マミ「私としては、戦えるなら一緒に戦えればより安全になるんじゃないかとは思うけれど……暁美さんの話だと今までに二度魔女になっているのよね」

マミ「暁美さんは戦ってほしくないようね。むしろ安全を考えればそうするべきなのかもしれない」

マミ「まあ、それは……明日鹿目さんのことを見てから考えましょう? 暁美さんの経験も詳しく聞きたいし、他の人も意見があると思うわ」


 マミはワルプルギスの夜に向けて現状で出来ることを考える。

 しかし、最後にぼそりと少し不安そうに呟いた。


マミ「契約、してしまったのだものね…………」


 してしまったものはしょうがない。それはわたしもほむらもわかっている。

 けど、どうしてもそれは悔やまれるし、不安材料になるのだ。


マミ「さ、遅くなると明日が辛いし今日も大変だったんだから、そろそろ寝ましょうか。今週は休日返上ね」

かずみ「うん」


 明日からの気合いを入れ、苦笑いで返事を返す。

 一つの目標を倒したわたしたちには、もう次の目標が高くたちはだかっていた。



―18日目終了―


かずみ 魔力[61/100]  状態:正常
GS:なし

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]

ほむら
[魔力コントロールLv4] [体術Lv2] [射撃能力Lv6]

キリカ
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv2]

あすみ
[魔力コントロールLv4] [格闘Lv7]
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/06(水) 01:23:40.34 ID:r3OmI6sN0<> ------ここまで
次回は9日(土)夕方からの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/09(土) 21:17:32.36 ID:izgBC94K0<> ――――――



 私を狙う魔法少女カンナとの決戦を終えた翌日、マミの家に約束通りみんなが集まっていた。

 時刻は正午を少し過ぎた程度。誰も大幅に遅れて来る人はいなかった。

 早めにお昼を食べておいて正解だったと思う。……みんなも食べてきてるみたいだから。昨日みたいに昼食会にしようって言える雰囲気でもなかった。


かずみ「それで、まずは何を話し合うの?」

あすみ「さすがにわかってると思うけど、わざわざ鹿目まどか抜きの場を設けたのはアイツにどうやって接していくか話すためだよ」

あすみ「あの場では生かしとく方針で起こしたけどさ、ヤバくなったのは事実なんだよ?」

あすみ「今までと違ってどっかの拍子で濁り切れば一発でアウトなんだ。無策で迎え入れることはやっぱりできないし、他と同じようには扱えないよ」

マミ「訓練をするしかないんじゃないかしら。私たちもワルプルギスの夜に向けてもっと鍛えたいし、鹿目さんも私達が見ていれば安全なはずよ」

あすみ「そうはいっても、これから狩りに行く組と分かれる必要があるでしょ。強敵と万全に戦うにはグリーフシードもキツくなってきたはずだ」

あすみ「……ていうか、アンタ達グリーフシード持ってんの?こんな時に死にかけのヤツらなんかに使っちゃうから。言っとくけと私は分けてやったりしないよ」

マミ「今は仲間でしょう?私たちの目的はワルプルギスの夜を倒すことのはずよ。一人だけ持ってても勝てなかったら……」

あすみ「なんで私までアンタらの甘ちゃんぶりに巻き込まれなきゃいけないのさ。自分犠牲にしといて後で他人頼るならそんなことやるべきじゃないっての」

かずみ「うん。……あすみは気にしなくていいよ。わたしがやりたくてやったことだから」


 やっぱりあすみはまだそれに不満をいだいていた。

 わたしもこう言ったからにはこれでどうにかするしかない。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/09(土) 21:27:19.82 ID:izgBC94K0<>
あすみ「とにかく強敵と戦うには余裕がなくなったってわけ」

ほむら「だからってまどかには頼れないわよ。ワルプルギスの夜の時には避難所で待機してもらうわ」

マミ「暁美さん。鹿目さんの性格上、私たちが苦戦していたら大人しく待っていてくれると思う?」

ほむら「…………いいえ」


 昨日から続くどこか緊張感のある重い空気が漂う。

 待機を提案したほむらに否定されては信用できるはずもなかった。


織莉子「……やはりあの場で決断をするべきだったのでは」

キリカ「それって、殺すってこと?」

あすみ「アンタ、もうちょっと考えてよ。私もそれは思ったけどさ、そしたらインキュベーターはどうすると思う?」

あすみ「あいつの周辺に別の素質持ちがいないとも限らない」

あすみ「きっと私たちの事まどかを殺した悪魔の集団だって、あることないこと吹聴した上で生き返らせようとするよ。そしたらどうすんの?」

あすみ「もう鹿目まどかも私達もインキュベーターに目を付けられてるんだ。迂闊なことはできない。結局こうするしかなかったんだ」



1わたしたちを信じてもらうしかない
2まどかの意思を尊重したい
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/09(土) 21:42:48.39 ID:Xydvh7ta0<> みんなに見滝原周辺で面識のある協力してくれそうな魔法少女が居ないかどうか、ほむらにはあすみの言ったまどか以外に素質持ちがいないか聞く
最後にいざという時は自分が契約してまどか(と自分)を人間にする、という願いで契約すると提案

ほむらはこの時間を繰り返してるんだよね?
まどかの周辺にまどかの行動に影響を与えそうな素質をもった子っていないかな?
いるならまどかも含めてその子にも話をしていた方がいいと思うんだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/09(土) 21:49:22.65 ID:HIZ4zTm8O<> ↑
追加でほむらがさやかの事を話したらこの後連れてきてもらう

ワルプル来るまで後何日だっけ?
前の話の時みたいに訓練組とGS回収組に分かれて行動したいな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/09(土) 23:12:35.67 ID:izgBC94K0<>

 ……わたしはそこまで先のことを考えてたわけじゃないけど、あすみの言うことには納得したし恐ろしいと思った。

 カンナやユウリのように復讐に生きることになるのは悲しいことだ。二人とも憎悪に狂って最後には死んでしまった。

 それにあすみには『呪い』があるけど、まどかどんな行動に出るかまではわからない。


織莉子「過ぎた事を言っていても……仕方有りませんか……」

かずみ「それなら……ほむら、あすみが言ったみたいな素質のある子って本当にいないかな?いるのなら逆に味方につけたい」

ほむら「いるにはいるけど……その子にまで関わらせるの?」

ほむら「インキュベーターにはワルプルギスの夜という切り札がある。恐らく今彼女には狙いは向かないはずよ。下手に接触されたら厄介が増える」

かずみ「ワルプルギスの夜を倒した後は危ないなら、今から話しておいてもいいと思う」

かずみ「他にも魔法少女はいるんだよね?その人たちには頼めないかな?」

あすみ「あいつら使うの?あと四日でまともに訓練なんてできると思う?足手まといになるだけだって。大勢で挑んでも犠牲者が出れば混乱の原因になる」

杏子「ワルプルギスの夜が来るっていう情報自体広がれば混乱を招くかもな。現地で合流したら拒みはしないが……」

ほむら「……まどかの友達には連絡をしておくわ。他の魔法少女のことは保留ね。でも、無理にでもまどかには待機していてもらうわよ」

ほむら「元は私一人で戦うつもりだった……。苦戦もしなければいいんだわ」


 そう言うほむらの顔は未だ苦い。まるで強がっているようだ。


かずみ「……大丈夫だよ。いざとなったらわたし、契約するよ!」

ほむら「何を言っているの? 貴女はもう魔法少女でしょう」

かずみ「でもわたし、契約はしてないんだ」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/09(土) 23:34:36.84 ID:Xydvh7ta0<> >>それにあすみには『呪い』があるけど、まどかどんな行動に出るかまではわからない。

まどか『が』どんな行動に出るかまではわからない。 ですかね?
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/09(土) 23:58:07.92 ID:izgBC94K0<>
かずみ「わたしは生まれた時から魔法少女だった。わたしが使う魔法は私を造った人たちの魔法なんでしょ……魔女になったミチルを含めて」

かずみ「だから、もしかしたらわたしはまだ契約ができるんじゃないか――――って」

マミ「そうなの!?」

杏子「そういや契約はしてないのか。希望も絶望もないから希望が願える……ねぇ」

織莉子「それで?鹿目まどかが人間になることを願うの?」

かずみ「まどかと……それから合成魔法少女として造られたわたしを」

かずみ「でも、やっぱりそれは願いたくないな。まどかの願いを否定することになるから」

かずみ「まどか、あんな状況で契約したのに自分の願い事を後悔してないんだよ。それどころか、誇りに思ってるの。魔法少女になって、人を助けられるかもって」

ほむら「そんなこと…………わからないじゃない。あなたが本当に契約して魔法少女になれるのかどうかなんて」


 そう言われたらどうしようもない。

 確かめてみることは本当にいざとなった時にしかできないから。やっぱりそんな時は来てほしくはなかった。

 でも、もしできるならわたしはみんなと同じ本当の魔法少女に――――……そんなことを考えたけど、やっぱりそれを望むのはやめた。

 心は本物。今だってみんなと何も変わらない。……そう思ってきたんだから。


織莉子「それで、結局これからの訓練はどうするの?」

マミ「今日は一旦みんなで集まって訓練をする。鹿目さんには魔力の使い方を重点的に教えていきましょう。私が面倒を見るわ」

マミ「グリーフシードは……私の分はこれからは多分かずみさんに任せることになるけど」

かずみ「うん、マミの分まで戦ってくるよ。出来ることをしたほうがいいし、実戦だって大事だよね?」

マミ「そうね。それでいいかしら?」

あすみ「まあいいんじゃない?でも、ワルプルギスのとき鹿目まどかを待機させておく説得は考えておいてよ」


 ひとまず訓練の前の話し合いが終わる。

 ほむらはさっき言ってた人に連絡をしていた。ほむらもよく一緒に居る人らしい。

 訓練の途中あたりで来るだろうということだった。何の用事か言葉で説明するよりも、実際に見てもらうほうが早いということだ。


 ――そうしていつもの場所に向かう。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 00:31:35.09 ID:xZUtK3IS0<> 土手



 みんな揃って土手に着くと、張り切った表情のまどかが居た。

 少し早く来てイメージトレーニングをしていたらしい。ほむらとの約束は守って実際には魔力は使わずに。

 そんな自主訓練で使っていたノートをわたしたちに見せてくれた。


マミ「……絵?」

かずみ「魔法少女の姿だね?まだ変身はしてないの?」

まどか「うん。想像なんだけど、そういうとこから考えてみたほうがイメージ沸きやすいかなって……」

あすみ「まったく。本当にわかってんでしょうね?この世界のこともアンタ自身の置かれた状況もさ」

まどか「ごめん……」


 桃色の衣装を身に着けたまどかの可愛らしいイラストがノートの一面にあった。

 ノートを訓練に使うのはマミも同じだけど、まどかのはまた全然違った。

 あすみに怒られてまどかは少し落ち込んだ表情になる。でも、ほむらは小さく笑っていた。


ほむら「あなたらしいわ。魔法少女になってもまどかは何も変わらないのよね……」


 まどかはまどかでわたしたちの役に立とうとしている。

 だから何もしないでいてほしいと言うしかできないのが辛かった。


あすみ「それはどういう意味なの?アンタが最初に会った時から契約してたんでしょ」

ほむら「一瞬でも切り捨てようとしたことを悔やんだの」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 01:06:26.62 ID:xZUtK3IS0<>

ほむら「ありがとうね、かずみ。私も本当に捨ててはいけないものを見失わずに済んだわ」

かずみ「うん!」

マミ「じゃあこれからはみんな揃って本格的に訓練だし、変身してみて。イメージトレーニングの成果を確かめなくちゃね」

まどか「はい。やってみます!」


 まどかが桃色のソウルジェムを天に掲げる。

 そこから光が身体を包み、幻想的な輝きをもって、足、スカート、胴、両手へと徐々にまどかの身に着けていたワンピースは桃色の衣装へと換装されていった。

 最後に光った手に握られているのは花で飾られた杖――そこから更に、花開くように展開し弓へと形を変えた。


かずみ「さっきの格好と同じだ!」


 光の粒を散らして現れたのは、驚くことにさっき見たノートと同じ衣装だった。

 まどかは魔法少女の自分に明確なイメージを抱いていたんだ。


マミ「杖、いや弓? どちらにも使える武器かしら。どちらをメインにするかは本人の資質と相談ね」

かずみ「いいじゃん、その衣装!可愛いよ」

まどか「えへへ……ありがとう!」


 ……本来の意味で『魔法少女』らしいきらきらとした雰囲気に白けた視線を送る人もいた。

 あすみはやっぱこういうの、ふざけてるって思うのかな。


あすみ「……浮かれてないで訓練したら?」

キリカ「『魔法少女』、ね…………」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 01:06:59.90 ID:xZUtK3IS0<> ----------------
ここまで。次回は10日(日)夕方からの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 18:19:31.69 ID:xZUtK3IS0<>


 ――みんなも変身して訓練に取り組み始める。

 ここに来る前の話し合いで言っていたように、まどかのことは主にマミが見ているようだ。

 他の人は自分の訓練がある。誰かと一緒にやっている人もいれば、一人で何かを考えている人もいるようだけど……。



かずみ(わたしはどうしようかな?)



・話しかける (『*』は習得済の魔法の数)
1マミ・まどか
2杏子
3ほむら
4キリカ
5まどか
6*あすみ
7*織莉子
8自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/10(日) 18:46:42.98 ID:6it8YfID0<> 4+8

まどかは成り立てでマミは指導役で忙しいだろうしほむらの時間停止は教えてもらっても習得できないかな?
キリカに杏子と仲直りが出来てない事がわかったら、2人を訓練or魔女狩りのあと強引にでも買い食いに誘う <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/10(日) 18:52:45.27 ID:Har5jEPxO<> ↑
行くなら納豆クレープの店にして欲しいな
あと織莉子に知り合いに魔法少女がいないかを聞くを追加
出来たら小巻も仲間に加えたいから <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 19:57:16.27 ID:xZUtK3IS0<> 技はまどかを除き全員分習得可能です
------------------------------------


かずみ「……ねえ」


 見つけると、そろっとキリカのほうに近寄ってみる。

 変身した後、動き出したみんなから少し遅れたのかまだ一人でいるようだった。


キリカ「どうした?一緒に格闘の手合せする?それとも魔法のこと?」

かずみ「キリカの衣装も可愛いよ!みんな可愛いのに」

キリカ「え、またその話?私はまどかみたいな感じの可愛いのとは違うでしょ」

キリカ「魔法少女で喜ぶ歳でもないしさ……あすみも言ってたけど浮かれてるみたいでなんかこっ恥ずかしいよ。どうせ似合わないだろうし」

かずみ「えー、キリカは魔法少女恥ずかしいの?せっかくなら楽しもうよ!もう魔法少女になっちゃったんだから」

キリカ「……そこまで開き直れればね。だからまあ、私のはこれでいいのかもね。まどかは自分の思い通りになってたみたいだし」

かずみ「そうだっ、みんな違ってみんないいんだよ!だからキリカも誇りを持とう!」

キリカ「あんまり『魔法少女』には誇りは持てないけど……」


 少し周りを見回してみる。他の人は何をしているんだろう?

 まどかを見てるマミ、そこにあすみも一緒にいるようだ。

 織莉子はいつも通り魔力の訓練をしている。……それから、杏子も一人でいた。


かずみ「……そっか。今日はあすみがあっちにいるし、杏子も一人だから格闘に誘われてないんだ」

キリカ「ああ、そうだね。あいつなにしてんだろ?」

かずみ「気になるなら声かけてこようか?」

キリカ「別にいいよ。なんかやりたいことがあるから一人でいるんじゃないの」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/10(日) 20:02:00.04 ID:6it8YfID0<> マジですか?
キリカとほむらから教えて貰ったらかずみ一人で速度停止できるじゃないか! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 20:35:37.39 ID:xZUtK3IS0<>
かずみ「……そうかな。じゃあ、キリカの魔法教えて」

キリカ「うん。私のでいいんなら。かずみにはもっと素早く動ける魔法があるみたいだし、パッと強さが実感できる魔法でもないと思うけど」


 ――今日はキリカと魔法の訓練をすることにした。

 キリカが戦闘でいつも使っている『速度低下』の魔法を解析させてもらう。前に手合せしたときはこれで負けたっけ。


 本人も言う通り攻撃力はないし、派手な効果もないけど、使いやすいほうには入ると思う。

 電撃での『活性』は消耗が激しく持久力がない、一点集中の魔法だ。キリカに合う魔法……なのかな……――?



★技習得
 速度低下(魔力-7/1ターン) :一定範囲内に自分や仲間を除く物の速度を落とす魔力を流す。
 b重(魔力-10/1ターン) :適用範囲は前方のみに狭まるが効果をより強力に。



かずみ「覚えたよ!……これって、二人合わせて使ったらどうなるのかな?」

キリカ「うーん……? あ。ねえちょっと!」


 キリカは何かを思いついたように、一人で訓練している杏子のところに駆けて行った。


杏子「なんだよ。アンタたちか」

キリカ「ちょっと実験台になってくれない?」

杏子「は?」

キリカ「手合せだよ、手合せ。ただし二対一だけどね。私達の倍以上やってるんだからヨユーでしょ?」


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 21:00:44.24 ID:xZUtK3IS0<>

杏子「――――こんなの認めるか!ただの格闘ならまとめて叩き潰すけど?あたしは“魔法”の実験台なんて聞いてないぞ!」

マミ「どうしたの?」

かずみ「気づいたら負けてたのが相当悔しかったみたい」

杏子「だってこりゃ反則だよ」

マミ「佐倉さん。戦いに反則もなにもないわよ?……それ昔も言ってたわ。変わってないわね」

キリカ「そうだよ!動き止められようが時間止められようが反則なんてないんだよ」

ほむら「……どうかしたの?」


 いつのまにか背後から声がした。


キリカ「いや!やっぱり時間止められるのは反則……だよね?」

ほむら「別に私は手合せなんてしないわよ。見てくれるというのなら、魔法なしじゃないと意味がない」

杏子「さすがに本当に強い奴の言うことは違うな」

キリカ「えー。それどういう意味」


 ……杏子を的にした実験の結果、二人分の効果が足されると相手をほぼ完全に足止めできるってことがわかった。

 今は一人に的を絞って範囲を削ったけど、もっと広くしても十分な効果は感じられるだろう。


 キリカもこうして見ると少しみんなとも馴染めたのかな……?

 元々付き合いにくい人ではないし、こうやってみんなで協力し合うきっかけがあれば上手くやれると思う。

 杏子にも遠慮なくぶつかってるみたいだ。それはそれで悪くはない……のかも。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/10(日) 21:05:21.24 ID:6it8YfID0<> ほほう?現段階で速度停止みたいのが出来るようになったのか
速度低下と何を組み合わせたんだろ? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 21:27:31.96 ID:xZUtK3IS0<>
キリカ「とにかく私たちが勝ったんだから。もう偉ぶるなよ」

杏子「二人の力だろうが。魔法いくつも使えるかずみが強いのは認めるよ。けどアンタ一人だけなら魔法有りでも勝てるっての」

キリカ「言ったね?今は魔力に余裕がないからやめとくけど、今度は……」

マミ「はいはい、今日はこれで勝負がついたってことで納得しましょ!」


 ……悪くはない、のかなあ。


かずみ「相変わらず杏子とはムキになるんだね……」

キリカ「……なんか不思議だね。前は戦うのイヤに思ってたのに」

マミ「ねえ、みんな。一旦自主訓練はやめてまた合体魔法をやりましょうよ。この前失敗しちゃったでしょう?」

かずみ「わたしとマミは出来たよね!」

マミ「またいきなり全員でやるのは難しいかもしれないから、分かれてやりましょうか」

まどか「あの……わたしは?」

マミ「悪いけど、今は休憩ってことで見ていて。みんな、鹿目さんも見てるんだからこの前みたいにカッコ悪いところは見せられないわよ」



・合体魔法チーム分け(マミ/杏子/ほむら/キリカ/あすみ/織莉子)
 ※一緒に組む人を選んでください(マミを選ぶ場合は二人以上選択)
 ※成功すれば合体魔法を習得できます。成功失敗には好感度が関わります。
 ※失敗しても好感度が少し上がります。

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/10(日) 21:33:17.27 ID:Har5jEPxO<> キリカ、あすみ、ほむらとのくろすけチーム <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/10(日) 21:35:34.23 ID:Har5jEPxO<> 失礼、2人以上はマミの時だけみたいですね
安価下
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/10(日) 21:43:40.87 ID:6it8YfID0<> 速度停止みたいのが出来たみたいなので、完成を目指してキリカ

>>811も試してみたいなぁ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 22:16:27.33 ID:xZUtK3IS0<> ----------------------
あ、マミを選ぶ場合は【必ず】二人以上選択という意味でした。
>>881も可能です。
----------------------

下1レスにて再判定 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/10(日) 22:19:52.37 ID:Har5jEPxO<> では881でお願いします <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 23:09:38.23 ID:xZUtK3IS0<>
 そう言われると、みんな戸惑った様子だった。

 やりやすそうな人とやるのがいいか、あまり関わりのない人とやるのがいいか。

 幸いわたしは誰ともそこそこ喋ったことのあった。けど……残った人たちはどうだろうか。


かずみ「じゃ、やろっか」


 わたしが声をかけたのはキリカとあすみとほむらの三人だった。

 特に反発はしていない人たちだ。


キリカ「この前と同じく攻撃に使うやつ?」

あすみ「結局アンタと一緒なのね。それとイレギュラーさんか」

ほむら「あなたたちは昨日もやっていたわね。かずみがいなかった時」

かずみ「そうなの?どうだった?」

あすみ「まあ一応、失敗はしなかったよ」

かずみ「わたしはキリカとあすみの魔法は解析してたから、なんとなく合わせられる気がするんだ」

ほむら「私は足手まといにはならないかしら?」

かずみ「そんなことないよ。まずは試してみないと」

かずみ「いつかは全員で魔法を完成させられたら嬉しいけど、わたしたちだから出来る事もあると思う。まずは自由にやっていいんじゃないかな」


 四人で陣を描く。

 一人分からみんなへと広げていき、一つの大きい魔法へと魔力は形を変え――――……


かずみ(今度こそ……!)


 わたしたちの魔力は確かにまとまっていた。結束し、強いものになっていた。

 ……けど。
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/10(日) 23:40:56.99 ID:xZUtK3IS0<>

ほむら「く……!」


 自分以外の強い魔力によって、ほむらの額には汗が浮かんでいた。

 溶けきれなければ性質の違う魔力は異物にしかならない。


 その場に起こるのは風。

 淡い紫から深い黒の色に彩られた強い衝撃波。


かずみ「『ネーロ・ボアート』――でどうだっ!」

キリカ「どういう意味?」

あすみ「だから、必殺技に名前とかダサいからやめてよね!」

かずみ「“黒い衝撃波”だよ」


 わたしたちの魔法が完成した時、その圧に耐えきれずほむらは倒れ込んでいた。

 その手を引く。


かずみ「ほむら、大丈夫?」

ほむら「え、ええ……」

かずみ「ほむらもまた次があるよ。こうやって一緒に出来てよかったと思う」



★合体魔法『ネーロ・ボアート(かずみ・あすみ・キリカ/かずみ・キリカ/キリカ・あすみ/で使用可能)』を習得しました。

★このチーム内とほむらとの仲が少しだけ深まりました。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/10(日) 23:50:19.78 ID:Har5jEPxO<> ほむらだけ弾かれたのか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 00:14:24.37 ID:U1RMLz0w0<>

 もう一方では、真っ先に杏子がマミに声をかけていた。


杏子「マミ、やるか」

マミ「ええ」


 あっさりとした誘いと返事。二人はごく自然な流れでチームを組む。

 一悶着あって絆を深めた元師弟のコンビだ。間違いはない。そこにもう一人が加わる。


杏子「……アンタとやるのははじめてだな」

織莉子「ええ、そうね。貴女達のようなベテランに混ざるのは恐縮だけれど」

杏子「まあキツいことは言わないよ。あんまり硬くなんな。アンタ実はそんなに謙遜するほうでもないだろ?」

織莉子「……」


 静かに表情が交わる。

 マミはそんな織莉子を見ながら何かを思案し、しかし次にはそれを表には出さずに声をかけた。


マミ「……仲間だものね。力を合わせなくちゃ勝てないわ。その練習はしないと」


 三人も同じように陣を組む。

 それから何度か練習をしていた。 

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 00:16:20.50 ID:U1RMLz0w0<> ----------------
ここまで
次回は11日(月)夕方からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/11(月) 00:23:34.14 ID:09DpwYYo0<> 乙でした

マミと織莉子はまだ不信感が残ってそう
というか、織莉子と合わせられそうなのって、この中だとかずみぐらいしかいないような?
ネーロ・ボアードはかずみとあすみではまだ使用不可ってことは、あすみからの高感度が低いからなのか・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 18:12:54.25 ID:U1RMLz0w0<> ----------------------------
※>>880時点でぶっつけ成功基準を超える好感度の組み合わせ一覧
矢印が双方向に重なる組み合わせなら成功確定。全てが重なってなくとも過半数が成功確定なら残りが失敗確定の好感度でない限り成功する。

かずみ→マミ、かずみ→杏子、かずみ→ほむら、かずみ→キリカ
かずみ→あすみ、かずみ→織莉子

マミ→かずみ、マミ→杏子

杏子→かずみ、杏子→マミ

ほむら→マミ、ほむら→杏子

キリカ→あすみ

あすみ→キリカ


---------------------------- <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 18:21:39.21 ID:U1RMLz0w0<>

かずみ「お疲れ様。どうだった?」

マミ「難しいわね……」

かずみ「そっか、うまくいかなかったかぁ。まあまだこれからだよ」

マミ「でももう今日を逃したらあまりみんなで集まれないでしょう?それに、訓練に魔力を使いすぎるわけにもいかない」


 今日の分で更に濁りの溜まったソウルジェムを見る。

 もうストックはない。このまま使いすぎるとまずいのはわかってる。……特にわたしは。昨日、すごく嫌な感覚を感じたんだ。


マミ「……鹿目さん、いい子よね。危険な人だって聞いて、関係ないってわかってたつもりだったけど多分やっぱりわかってなかった」

マミ「どうしても彼女の持つ素質のほうが先立って、私達と変わらない人間だって、当たり前のことが考えづらくなってたんだと思う」


 『それが嫌なら今のうちだ。今殺してしまうしかない』――――そう言ったカンナの言葉が胸の内に響く。


 マミは訓練後のみんなを労うまどかを眺めていた。

 誰よりも強力な素質も、世界を滅ぼす未来もあるようには見えない。今私達と居るまどかはただの素朴で心優しい少女だった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 19:41:54.04 ID:U1RMLz0w0<>

 一息ついて、ほむらは自分の鞄を探ると携帯片手にみんなに呼びかけた。


ほむら「呼んでた候補の子、近くまで来てるみたいよ。まどか、迎えにいきましょう」

まどか「えっ?候補の子って……」

ほむら「……行けばわかるわ」


 ほむらはまどかにもあの昼の話し合いを伝えていない。

 二人で土手を飛び出していった。


マミ「鹿目さんの友達にはなんて伝えるの?」

かずみ「うーん、まずは魔法少女のことを。それからまどかのこと。知っておいたほうがいいと思うんだ」

マミ「もしも契約してしまったら……?」

かずみ「……わたしね、契約すること自体は間違いだとは思わないんだ。ただ、後悔したり希望を失ったりしてほしくないの」



 それから少しして、ほむらとまどかが呼んでいた人を連れて戻ってくる。

 この場に今までにない快活な声が加わった。


「土手ってこっちかー。探しちゃったよ。あっちじゃ小学生が野球やってたしさ」

「で、なにやってるの?」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 20:01:26.32 ID:U1RMLz0w0<>

 空色の短い髪。高い背丈。

 声から連想するものと違わない明るさを持った瞳がわたしたちを見回す。


さやか「1,2,3,4,5,6……野球じゃなさそうだねえ。何の集まりだかぜんぜんわかんないんだけど」

ほむら「野球がしたいなら小学生の中に混ぜさせてもらってきなさい。それより、自己紹介だけしてもらえる?」

さやか「んー、じゃあはじめまして。あたし、美樹さやかっていいます」


 さやかは知らない人ばかりの中でも委縮せずに名乗る。

 こういう人でよかったのかもしれないと思った。とはいえ、やっぱり疑問は抱いているようだった。


まどか「さやかちゃん、えっとねぇ……」

ほむら「知ったばかりのあなたが言うより、他の人を見たほうが……」

さやか「あ、わかった。仮想大会だ!」

かずみ「え」


 さやかはわたしを見て言った。

 今は変身してる人と解いた人と半々くらいだ。それよりなんかあらぬ誤解を招いた気がする。


さやか「いや、ていうかコスプレ?なんかのコンパニオンとか?つまりそういう集まり……?いやあたしはそういうのはちょっと」

さやか「あたしの分の衣装とか用意してあったりするの?」


 さやかはやっぱり誤解をしていた。

 それから、本当のことよりもよっぽど現実的な誤解をわたしがなんとか解いて説明をしていった……。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/11(月) 20:13:40.14 ID:fbk4N5nvO<> さやかには下手に隠さず全部打ち明けないと後で絶対に揉めるからな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 20:27:32.08 ID:U1RMLz0w0<>

 言葉での説明、それから魔法の一部を見たさやかは一応信じてくれた。しかしまだ夢見心地だった。

 というより、信じるしかないって感じだ。素敵な非日常への誘いなどではなく、突きつけられたのは警告。

 そして、その危ないものに自分の親友までなっている――という事実をさやかは知ってしまった。


かずみ「……ていうわけで、わかった?」

かずみ「わたしたちはさやかには安易な気持ちでは魔法少女になってほしくないし、あとまどかのことも……頼みたいんだ。友達のあなたに」

さやか「わかんないよ」


 ここに来た時の明るく快活な声はもうなくなっていた。


さやか「あんたたちの魔法ってのは見たよ。信じるよ。人とは違う人たちなんだって。……でもなにそれ。あたしがなるって?ふざけないでよ」

さやか「休みの日なんだよ?なんでこんなとこに呼び出されてそんな話聞かされなきゃいけないの」


 怯え、怒り、不信。

 さやかの反応は普通の反応だった。


杏子「そう思われんなら、まあ……仕方ないな。アンタはこんなバケモンになるなよ」

マミ「…………」

キリカ「……仕方ないね。もっともだよ」

さやか「言われなくてもならないし。もう帰っていい?」



1無理に話してもしょうがないか
2引き留める
3自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/11(月) 20:58:18.89 ID:09DpwYYo0<> 1+さやかが帰ったらほむらにさやかが契約した場合の理由を聞く

突然魔法少女の事を話されて混乱してると思うから、少し時間を空けてからまた話してみようよ

ほむら、今までほむらが繰り返してきた時間でさやかが契約した事はないの?知ってるなら教えて欲しいな
もしかしたら私達で対処できるかも知れないし、何とかする事ができるなら契約する理由をなくす事ができるから <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/11(月) 21:08:56.84 ID:fbk4N5nvO<> ↑かな?
ここで引き留めても反発を強めそうダシナ
追加でキュウベエの動向にも注意する <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 21:44:28.59 ID:U1RMLz0w0<>

かずみ「混乱してるだろうし、無理に話してもしょうがないか……」


 わたしもさやかを引きとめることはしなかった。

 しかし、この場には二種類の感情があった。どこか悲しげな表情を浮かべている人と、厳しい視線を送っていた人だ。


あすみ「……あの調子じゃわかってないんだろうね?自分の行動がまどかにも関わるって。まだ当分は狙われることないのが幸いか」

まどか「あの……、さやかちゃん呼んだのってわたしのためだったの?」

マミ「それもあるわ。友達になにかあればあなたも悲しむだろうし、誰にも絶望してほしくないの」

かずみ「でも悪いことしたかな。嫌われちゃったね……」

ほむら「さやかがソウルジェムの真実を受け入れられたことはなかった。自分じゃなくてもこうなるのは当たり前だったのかもね。考えてつけなかった私のミスだわ」

かずみ「そんなことないよ。また後で話してみれば変わるかもしれないしさ」

織莉子「彼女はいざという時に友達を助けるまどかのために契約したりできるのかしら?」

かずみ「そういえば、前の世界だとさやかはなんで契約したの?」

ほむら「幼馴染の怪我を治すためね。願いの元はすでにある。インキュベーターの視界には入ってしまったし、狙われれば契約する状況は整ってるでしょう」

キリカ「でも契約しないって言ってたよ?」

ほむら「一時的な感情よ。縋るしかないと思えば簡単に変わるわ」

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 22:23:32.13 ID:U1RMLz0w0<>

かずみ「怪我が治せればいいんだね……?」

ほむら「魔法で治せることは期待しない方がいいわよ。私たちの魔法では回復専門の人は居ない」

ほむら「あなたに眠る魔法の中にそれがあるのならいいけれど……」


 わたしの中の魔法。

 わたしは考え、そして鈴に聞いてみた。涼やかな音に意識を集中して目をつむる。


かずみ「…………」


 心にひっかかるものはない。直感だけど、わたしの中には“無い”と思った。


織莉子「……彼女の契約は切羽詰まっている問題ではないわね。それとも、彼女が契約したからまどかさんが魔女になったことはあったのかしら?」

ほむら「いいえ……ないわ。まどかはいつだって強かった。諦めたり争ったり疑心暗鬼を呼ぶのは周りの私達だけ」

まどか「そんな……でもわたしだってさやかちゃんが悲しむことはいやだよ」

織莉子「逆に言えば、かの悪魔がさやかさんを契約に誘うのは、貴女を絶望させるか負担をかけて魔力を使い切ってもらうためなのよ」

織莉子「私たちはもう真実を知り、手を組んでいる。今から面識のない彼女に何らかの悲劇が起きても私たちには諦めも争いも疑心暗鬼も起きないわ」

織莉子「インキュベーターは見込みのないことはしない。私たちの考えることじゃないわね」

織莉子「……それより彼女の危険はもっと違うところにある」



 ――――どこかもやもやの残る空気の中、わたしたちは訓練を終了した。


<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 22:37:02.65 ID:U1RMLz0w0<> ――――



 さやかは土手から出て誰もいない川沿いの道のほうへ駆けていく。



さやか(なんだったんだよ……タチの悪い夢)

さやか(まどかやほむらが化け物の仲間だって?ありえない)

さやか(こっから離れたらこんな意味のわかんない悪い夢もきっとさめるんだから!)



 しかし夢から覚める気配はなかった。

 何に怒ってるのかわからないまま身体を動かす。


 もやもやと広がる苦い気持ちを拭うことはできなかった。


――――
―――― <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 23:11:29.43 ID:U1RMLz0w0<>

 訓練が終わると、マミは帰り道とは違う方向に歩き出そうとしていた。


かずみ「マミ、どっか寄るの?」

マミ「パトロールに行こうと思って。かずみさんは先に帰っていてもいいのよ?」

かずみ「ううん、わたしもいくよ!わたしもグリーフシードないから。一人じゃ危険でしょ?」


 わたしもマミに並んでついていった。

 スマホで情報収集をしながら歩いていくけど、なかなか目ぼしい情報も反応もなかった。


かずみ「……さっきのさやかのこと、きっとわたしの言い方が悪かったんだと思う」

かずみ「良いところも悪いところも全部話さなきゃって思ってたんだけど、よく考えて味方にってどころの話じゃないよね……」

マミ「まあね……いきなり言われたらああなると思う。やっぱり普通の人から見るとそう見えるんだなって、ちょっと思っちゃったけど」

かずみ「魔法少女だって人間だよ。わたしのことは話さなかったけど、知ったらさやかはなんて思うのかな」

マミ「……そうね。ごめんなさい。あなたの前でこんな話」

かずみ「――――あっ」


 期待していた反応に、思わず声を上げる。

 マミもすぐに気付いたようで、結界を探して乗り込んでいった。


 すると、見覚えのある魔女の姿があった。……昨日カンナが残した“置き土産”。

 魔力がなくても、探した末に辿りついたのがそれだったなんて。


 まあでも、すぐに回収できてよかったのかな。昨日はそんな余裕もなかったから。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 23:26:06.68 ID:U1RMLz0w0<> マジシャンの魔女結界



 目がチカチカするような結界の中、小さなステッキを持った機械仕掛けの使い魔たちが出迎える。

 ただ、その出迎えはステッキや胴から展開される円状の刃を振り回す手荒なものだ。


 昨日は魔法で強制的に目覚めさせられていたからか、使い魔まではいなかった。

 一日かけて完全な結界へと成長したんだろう。


マミ「魔力はあまりないわ。使い魔は基本魔力を使わずに薙ぎ払って、協力して魔女を倒しましょう」

かずみ「うん!」



かずみ 魔力[40/100]  状態:正常
GS:なし

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


仲間:
マミ 状態:正常

敵:魔女Paladin-Lite <-攻撃対象デフォルト
  使い魔Mr.Clown

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10速度低下(魔力-7/1ターン) :一定範囲内に自分や仲間を除く物の速度を落とす魔力を流す。
 b重(魔力-10/1ターン) :適用範囲は前方のみに狭まるが効果をより強力に。

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/11(月) 23:37:04.38 ID:09DpwYYo0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/11(月) 23:37:10.24 ID:UN4dpJMb0<> 1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 23:53:15.95 ID:U1RMLz0w0<> --------------ここまで。
次回は15日(金曜)夜あたりに。
その前にこれからバレンタインな話を避難所に投下予定。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/11(月) 23:56:49.35 ID:09DpwYYo0<> 乙です

>>892でかずみ以外誰も織莉子に→なくてその織莉子も誰にも→ないのがなんともはや・・・
あとキリカ→かずみがないのは意外でした
バレンタインな話楽しみです! <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/11(月) 23:59:45.86 ID:U1RMLz0w0<> ----------------------
>キリカ→かずみ
あ、忘れてました。そこは有りですね。でないと過半数超えず三人で成功しないです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/12(火) 00:08:55.91 ID:6slWVqS50<> お、抜けてただけですか
キリカとは仲良さげだったので何でないんだろ?と思いましたが、あってよかった・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/15(金) 23:18:25.32 ID:Ya+pYrIs0<> 今日は無理なので、次回は16日(土)夕方の予定で。
ハッピーバレンタインな小話も投下したのでよかったらみてください。
(避難所)https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539087062/ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/16(土) 19:49:26.90 ID:mLLD9gj10<>

 まず杖を構えて使い魔に突進する。

 それから魔女の姿を捉えると、投げつけられる大きな炎のついた輪っかの隙間を抜けていった。

 少し目指してた方向とは逸れたけど近づけた。


かずみ「わわっ!」


 ――そう思った矢先、大量の鳩がバサバサと飛んできて腕で顔の前を覆う。

 たくさんの魔法を使えば倒すのも簡単だけど、杖だけで立ち回れる距離を保つのも困難だ。


マミ「かずみさん!ナイフの対処は私がするわ。かずみさんは魔女の後ろへ回り込んで!」


 魔女の横からマミが銃弾を撃ち込む。この結界に入ってから銃を使っているのを初めて見た。

 その時魔女は30cmはあろうかという大きなナイフを帽子から出し、次のマジックの準備をしていた。

 魔女からすればジャグリングの出来るサイズだが、あれに貫かれればひとたまりもない。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/16(土) 20:05:07.82 ID:mLLD9gj10<>

かずみ「わかった!」


 わたしは魔女の後ろを目指してまた駆け出そうとする。

 魔女の目の前ではマミがリボンを操り、いくつかのナイフを先手を打って縛り上げていた。

 次の瞬間には飛んでくるナイフをリボンを張り巡らせた結界でなんとか耐え切り、魔女に向けて余裕の言葉を放つ。


マミ「まったく。投げナイフっていうのはね、人には当てないからすごい芸なのよ」


 わたしも途中で飛びかかる使い魔に驚きながらも杖で薙ぎ払い足を進めていく。

 ――マミのおかげで背後を取れた。



かずみ 魔力[40/100]  状態:正常
GS:なし

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


仲間:
マミ 状態:正常

敵:魔女Paladin-Lite <-攻撃対象デフォルト
  使い魔Mr.Clown

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10速度低下(魔力-7/1ターン) :一定範囲内に自分や仲間を除く物の速度を落とす魔力を流す。
 b重(魔力-10/1ターン) :適用範囲は前方のみに狭まるが効果をより強力に。

 下1レス ※どこかを狙う場合は、狙う部位も追記 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/16(土) 20:19:04.95 ID:cDSwXf6G0<> 帽子を狙って1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/16(土) 20:39:07.43 ID:zteVV9/I0<> ↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/16(土) 21:15:02.00 ID:mLLD9gj10<>

かずみ「……いまだぁっ!」


 精一杯跳びあがり、魔女の頭めがけて杖を投げつけた。

 しかし杖の先が突いたのは帽子。さっき鳩やナイフが出てきたあのシルクハットだ。

 シルクハットがぽすんと音を立ててマミの居る魔女の正面の地面に落ち、魔女が首をひねってこっちを振り向こうとする。


かずみ「ゲッ、怒らせちゃった!?」


 同時に振りかぶられるのは魔女の持つ杖だ。そこから花が咲き乱れる。しかし、ちょっと綺麗だと思ったそのマジックも攻撃だ。

 花はこっちに迫ったタイミングでいつのまにか刃に変わる。わたしは杖を横に構えてそれをふせぐ体勢を取る。

 まともに攻撃を食らえば力じゃ勝てない。そのままの体勢で吹き飛ばされた。


かずみ「いたっ」


 地面に落ちたシルクハットは、粉まみれの煙を中から噴き出して消えた。

 マミは咳き込みながらも強気な笑みは崩さない。そして、魔女に向けて特大の銃を構えた。


マミ「でも注意は引けたわよ。今度はこっちが隙を突くから」


 わたしのほうを振り返っていた魔女は、まだ気づかずに優雅におじぎするとどこからか現れた帽子をかぶりなおす。

 そんな魔女にマミの必殺技が直撃していった――――。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/16(土) 21:42:59.67 ID:mLLD9gj10<>

 景色は元の場所へと戻る。

 結界の中のような華やかさなんてない地味な路地だ。


 さっきの魔女の攻撃はマジックを模したものだった。その手数の多さがなによりも厄介な相手だった。


かずみ「ゴメンね、マミも魔力ないのに大技使わせちゃって。やっぱ魔法使わないとうまくいかないね……」

マミ「格闘というより投擲かしら?なかなか手ごわい相手だったわね」

マミ「倒しきれないって思ったら、無理に押し通すより少し大きい技を使って短期決戦を仕掛けたほうがいいこともあるから」

マミ「かずみさんの魔法は強力だしいざというときは頼りになるけど、まだ新人なんだから。焦ることはないのよ」


 そう言うマミのソウルジェムは暗い濁りを宿していた。

 その濁りをさっきの魔女のグリーフシードが吸い込んでいく。……その様子をじっと見ていた。


マミ「どうしたの? 残りはかずみさんも使って。戦う前から魔力は減っていたでしょう?」

かずみ「あの魔女の攻撃、マジックばっかりだった。マジシャンになるのが夢だったのかな。きっとその頃は人を楽しませるためにやってたんだろうな」

かずみ「あの魔女のもとになった魔法少女もあすなろにいたんだよね。だから感謝しなきゃって思って」
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/16(土) 21:52:14.89 ID:mLLD9gj10<>

 わたしはグリーフシードに向けて両手を合わせた。


かずみ「……ありがとう。あなたのおかげでわたしたちは生きられます」

マミ「そうやって向き合ったうえで戦えるんだからやっぱりかずみさんはすごいわよ」

マミ「私はやっぱり全部知っても小さい頃に見た魔法少女みたいに、自分が悪者を倒す正義のヒロインなんだって思っていたい」

マミ「だから戦いのときもそのイメージを崩したくなかった。そうすれば勇気をもらえる気がするの」

マミ「でもずっとはき違えたままじゃいつか間違いを犯してしまうから。倒した後くらいは、私もかずみさんと一緒に向き合えるようになるわ」


 ……マミが魔女と戦う最中に痛みや恐怖に歪んだ表情を見せないのはそんな理由もあった。


 二人で祈りを捧げる。

 それからわたしたちは、やっと帰路についた。



 …………さっきの魔女のグリーフシードも二人で分けたら使い切ってしまった。それでも完全には浄化しきれなかった。

 魔力にはいまだ、余裕はない。



―19日目終了―


かずみ 魔力[70/100]  状態:正常
GS:なし

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]

ほむら
[魔力コントロールLv4] [体術Lv2] [射撃能力Lv6]

キリカ
[魔力コントロールLv1→2] [格闘Lv2]

あすみ
[魔力コントロールLv4] [格闘Lv7]

まどか
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv0]
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/16(土) 22:16:15.79 ID:mLLD9gj10<>

 翌朝、マミは制服に学生鞄を持って学校へと出て行った。


 これから放課後まで一人の時間だ。わたしももう一人で出かけてもいいんだ。

 今までよりずっとできることは増えた。でもいざそうなるとなにをしようか悩む。


かずみ「今日はどうしようかなぁ……」



1あすみの家に行ってみる
2訓練場所に行ってみる
3魔女狩りへ出かける
4自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/17(日) 03:21:02.85 ID:h0zkGSGB0<> 3+夕方になったら夕飯を作りに1
マミにはその旨のメモを残しておく <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/17(日) 07:58:42.28 ID:pjImZNRiO<> 安価↑ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/17(日) 11:49:32.37 ID:pDTW309/0<> ワル夜まで放課後まで自由時間+その後訓練となります
-------------------------------------------------


 ……昨日の続きにでも行こう。

 放課後も行くかもしれないけど、その時にも場所がある程度絞れるし。


かずみ「そうと決まったら!」



 さっと準備を整えてわたしも外に出ていった。



・行先
1住宅街
2駅前
3工業地帯
4自由安価(知ってる場所)

 下2レス <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/17(日) 12:13:44.49 ID:pDTW309/0<> -----------------------
次回は18日(月)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/17(日) 12:36:27.49 ID:pjImZNRiO<> カンナと最初に戦った公園周辺
昨日みたいにあの時戦った魔女の残りがいるかも? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/17(日) 13:48:28.54 ID:h0zkGSGB0<> ↑

あとお昼時になったら材料買ってあすみの家に行ってみる <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/18(月) 22:44:18.25 ID:7hnw18ko0<>

 マミの家は見滝原の中心に近い位置だ。そこから住宅の並ぶほうを歩く。

 駅前のビル群と比べると背の低い建物の多い午前中の住宅街には、駅前とは違う雰囲気の人の行き交う姿が見える。


かずみ(さて、パトロールパトロール)


 散歩中のワンちゃんとご老人にぺこりとおじぎをして、彼らを守るんだと意気込んだ。

 その途中でふとカンナが待ち伏せていた公園を覗いてみる。


 そこには元気に遊ぶ親子の姿。

 ……あれからあの時ここに集められたあの人たちはどうなったんだっけ。


 みんなに口づけをつけた数体の魔女は回収され、カンナは残りを“置き土産”として残していった。

 問題の残りの数までは思えてなかった。カンナの手から離れた魔女は統率を失う。あの時の魔女もすでに移動していた。

 ひとまずあの時とは違う平和な光景に安堵しつつ、またパトロールに足を進めていった。



 下1レスコンマ判定
0~50 いた。
51~75 いた、けど…。
76~99 いない <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/18(月) 23:02:06.44 ID:vFE+/n8R0<> てぃ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/19(火) 00:10:04.03 ID:r5XmLQpA0<> ―怪獣の魔女結界


 結界を見つけて入っていく。


 ギェーという咆哮とともに地面が揺れ、上を見上げる。

 魔女の姿を探すまでもなく、大きな音、姿、振動……存在感を持って闊歩していた。


かずみ「こんなの……いたっけ――?」


 いない。こんなのがいれば気づく。どう考えてもカンナが持ってきたのとは別のやつだろう。

 結界の中は異界というよりは、もし突然取り込まれれば現実のことと見まがうような普通の街。それが怪獣が身体を動かすたびに壊されていた。

 大きな姿を前に、杖を構えて覚悟を決めた。


 一人でもやってみせる。昨日の挽回をするためにも…………。


かずみ(……今日は一人なんだし、倒しきれないと思ったら少し大技を使ってでも決着をつけたほうがいいこともあるのかな)

かずみ(ここぞという時には惜しまないでいこう)



かずみ 魔力[70/100]  状態:正常
GS:なし

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:魔女Fredegunde <-攻撃対象デフォルト
  使い魔『ドーターズ』×4

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10速度低下(魔力-7/1ターン) :一定範囲内に自分や仲間を除く物の速度を落とす魔力を流す。
 b重(魔力-10/1ターン) :適用範囲は前方のみに狭まるが効果をより強力に。

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/19(火) 00:21:21.07 ID:ugV1QBnd0<> 1 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/19(火) 00:38:49.52 ID:r5XmLQpA0<>

 広い結界、大きい相手だからこそすべてを相手しなくても自由に駆け回れる。


 使い魔?のまとまった赤ちゃん怪獣は動かない。

 少しだけ近づいてみると大きな口を開けて噛み付こうとしてきたので、振り払って魔女のほうに走っていった。


かずみ「はぁっ!」


 まずは足に一撃。杖の打撃でどれだけ通じるかって思ったけど、さすがにビクともしなかった。

 次に腹を狙う。装甲のある足よりはこっちのほうが突きやすい。

 するとその直後に魔女の目がギョロリとこっちを見た。


かずみ「うわぁぁぁっ、いちじひなんー!」


 魔女が口から炎を噴き出した。炎が消えた後もまだこっちまで熱気が残っている。

 しばらくは逃げ回る戦いになりそうだ。

 とりあえず正面を脱する。なら後ろは!?


かずみ「ええっ!背中からもビームとかそんな怪獣いるの」


 こっちも退却。魔女は爪やら炎やらビームやら、ありとあらゆる攻撃をぶつけようとする。

 避けてもどこかで破壊音が起こる。この空想の街が壊れた音だ。……この魔女は怒ってるんだ。この世界そのものに?

 足元に留まれば踏みつけられそうになる。わたしはちょこまかと走りながら攻撃の隙を探し、ペースを掴もうとしていた。



 下1レスコンマ判定 戦況
0〜(劣勢) < 99(優勢)

+一桁0クリティカル(劣勢時は相手、優勢時は自分)
+補正 自[格闘Lv5]*3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/19(火) 00:42:32.70 ID:VXniMx6D0<> 優勢 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/19(火) 00:48:44.42 ID:ugV1QBnd0<> ↑
お、クリティカル? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/19(火) 00:53:38.67 ID:r5XmLQpA0<>

 ――まず、この杖で肉を抉ったりして深手を負わせるような攻撃をすることは不可能だ。


 だから少しずつでいい。

 少しずつ狙った場所を突いて、バランスを崩させる。


かずみ「これで……どうだっ!」


 腹、足と突いていき、片足が地面から離れたところで狙う。

 ドシンと大きな音を立てると、魔女は街の瓦礫の上に横に倒れていた。


かずみ「……わっ」


 なんとかうまくいったと思ってたけど、魔女はもがく。まだ倒したわけじゃない。

 けどそれ以上は動くことはできない。今がチャンスだ。



・どこを狙って、どんな攻撃をするか


かずみ 魔力[70/100]  状態:正常
GS:なし

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:魔女Fredegunde(行動不能) <-攻撃対象デフォルト
  使い魔『ドーターズ』×4

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10速度低下(魔力-7/1ターン) :一定範囲内に自分や仲間を除く物の速度を落とす魔力を流す。
 b重(魔力-10/1ターン) :適用範囲は前方のみに狭まるが効果をより強力に。

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/19(火) 00:58:00.90 ID:ugV1QBnd0<> 頭を狙う感じで開いてる口のなかに6 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/19(火) 00:58:02.66 ID:VXniMx6D0<> 眼に4 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/19(火) 01:13:54.27 ID:r5XmLQpA0<>

 怪獣は首を動かし、正面にわたしを捉えて炎を吐こうとする。

 そこにすかさず杖を深く突き出してから身をかわした。


 鈴の音を響かせる。


 杖の先に集中すると、自分の使う魔力とプレイアデスからもらった電撃を一つに絡ませ、内側から至近距離の攻撃を放った。



かずみ 魔力[65/100]  状態:正常
GS:1つ
・怪獣[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5→6]
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/19(火) 01:17:02.79 ID:r5XmLQpA0<> -------ここまで。次回は20日(水)夜からの予定です
前募集した中から怪獣の魔女採用したんですが、この頃シン・ゴジラとか流行ってたんだなぁとなつかしくなりました。
背中からビームを出す怪獣ってそれしかしらないです。強い。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/19(火) 01:19:37.60 ID:ugV1QBnd0<> 乙です

シン・ゴジラは良かったですが、自分的に怪獣といえばベムスターかな? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/20(水) 20:55:17.35 ID:bmJMnUcv0<>

「……ふーん、順調そうね」


 魔女を倒して一息ついた矢先、後ろから声が聞こえて『誰か』が姿を現した。


あすみ「ちょっとでも苦戦してたら私が手助けして手柄奪おうかと思ったのに」

かずみ「あすみ!奇遇だね。あすみも魔女狩り中なの?」

あすみ「そだよー。多分この時間に動いてるのって私達だけだろ?杏子は風見野の縄張りがあるし。早起きは三文の徳ってやつだね」


 いつからいたんだろう。様子を見てたのかな。

 あすみはわたしに挨拶だけするとすたすたと歩きはじめた。


かずみ「危なくなったら助けてくれるつもりだったんだね!あすみも一緒に行く?あすみがいたら心強いし」

あすみ「やだよ、分け前減るじゃん」

かずみ「待った!でもわたし、予知魔法もあるし!」


 そう言うとあすみが足を止める。

 わたしも今気づいたんだ。これもうまく使えれば役に立つって。


あすみ「……むしろ魔法で消費しすぎなきゃいいけどね」


 そこまで集中して使ったことがないから、どれだけ魔力がかかるかはわからない。

 でもこれからみんなが戦える分まで確保しようと考えれば、街に居る魔女を探り当てるには適した魔法だと思う。

 ……どうしよっか。



1使ってみる(魔力-20)
2まずは使わずに散策

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/20(水) 21:03:18.50 ID:zEUrMxxw0<> 2
余裕がないうちは控えた方がよさげかな?
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/20(水) 21:09:49.47 ID:Y5uymZJFO<> 1
<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/20(水) 21:58:41.29 ID:bmJMnUcv0<>
かずみ「それもそっかあー……いいこと考えたと思ったんだけどな。でも、少し自分の分に余裕が出来たら必要だね」

あすみ「その役割は元々魔法持ってるウシ乳にでも任せとけばいいじゃーん。てことでばいばい」

かずみ「じゃあ協力して!回った場所と魔女や使い魔が居るか居ないかを連絡し合ってくの」

かずみ「そうすれば二人で無駄なく探せるでしょ。どっちのほうが見つけてもうらみっこなしだから」

あすみ「……それ、さ。私が使い魔見つけた場合もアンタが倒すの?」

かずみ「うん。やっぱほっとけないよ」

あすみ「余裕ないのに?まあ私は使い魔見つけてもわざわざ連絡なんてしないから」

かずみ「えっ!してくれないの!?」


 ……あすみと二手に分かれることにした。

 また一人になって街を散策しはじめる。


下1レスコンマ判定 遭遇
0~30 使い魔
31~50 魔女

5の倍数 連絡 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/20(水) 22:02:08.26 ID:zEUrMxxw0<> こい!

ところで>>939は下1レスの間違いですかね? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/20(水) 22:03:46.61 ID:Y5uymZJFO<> あれ、予知使わないの? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/20(水) 22:05:47.48 ID:bmJMnUcv0<> -----------------------
素で↑と見間違えてました
>>942はなかったことにします <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/20(水) 22:09:15.69 ID:zEUrMxxw0<> スレ主の身間違えでしたか
これは何かのフラグなのか・・・? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/20(水) 22:23:16.00 ID:bmJMnUcv0<>

かずみ「やってみるよ」


 覚悟を決める。魔力を使ってでも必要だ。

 鈴を鳴らし、求めているものと探る範囲を明確に浮かべて意識を集中する。


あすみ「どう?見えた?」


 あすみが珍しく興味津々に覗きこむ。


 ――――確かに見えた。

 今この街に潜む魔女、使い魔の大体の数。場所。その特徴まで捉えるには更に魔力を使うけど、やろうと思えばできるだろう。

 たしかにこれは使いこなせれば優秀な魔法だ。あと魔力さえあれば……。

 でも織莉子は思うように使いこなせていないらしい。カンナが干渉したほうが使いこなせるって言ってた。


かずみ「……この縄張りに魔法少女って何人くらいいるんだっけ?」

あすみ「んー、私は詳しく知らないよ。10人くらいはいるのかな?」

かずみ「そっか。使い魔を倒してくれる人は?」

あすみ「だから知らないって。多分アンタたちだけ」

かずみ「……そう」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/20(水) 22:32:01.10 ID:zEUrMxxw0<> 織莉子が予知を使いこなせないのは未来に希望を持ってないからかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/20(水) 22:37:12.91 ID:Y5uymZJFO<> ↑
かずみはもちろんだがカンナも自分が望み作ろうとする未来に希望は持ってただろうしな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/20(水) 22:56:22.29 ID:bmJMnUcv0<>
 わたしは見えた場所へと歩き出した。


あすみ「おっ、倒しにいく?」

かずみ「今わたしが倒す魔女はあと一体だけ。訓練の時間になったらまたチームで行こうと思う」

あすみ「わざわざ使い魔まで倒しにいくのかよ」

かずみ「うん。それ以上倒したら他の人の分が足りなくなっちゃう」

かずみ「そういうことがないようにするためにもちゃんと知っておくことが必要だって思ったんだ」


 ……そう言うと、あすみは盛大にためいきをついた。


あすみ「はぁー、まったくアンタってやつは。その魔女の情報で独り占めしようと思えばできるんだよ?」

あすみ「その魔法元々持ってたどっかのウシ乳さんは駒を顎で使って集めさせるか、アンタへの嫌がらせしかしなかったってのに」

かずみ「別に他の人がどうするかまで縛るつもりはないよ。ただわたしがこうしたいだけ」


 ワルプルギスの夜と戦うためにたくさん魔力は必要だけど、誰かを犠牲にしてまでは競争したくない。

 杏子がマミに望んでたみたいに……わたしも納得できる方法で人を助けたかった。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/20(水) 23:30:42.33 ID:bmJMnUcv0<>

 あと一つ。そう言ったけれどあすみはわたしについてきていた。

 あすみは二人で行って分け前が減るのを嫌がってたはずだ。あすみに譲ってしまうこともできるけど……。


かずみ「……あすみ、これから倒す魔女のグリーフシードだけどね。やっぱりマミにも持って帰ってあげたいんだ」

あすみ「まあいいんじゃない。アンタが見つけたんだし」

あすみ「今回は全部知ってるアンタに従っといてあげるよ。私もそこまでグリーフシードに飢えてないからね」

かずみ「ありがとう」

あすみ「ただし、足手まといになったら助けてあげる代わりに没収」

かずみ「頑張るよ!」



 そうこうしてるうちに、結界の場所に近づいてきた。


・戦う魔女選択
1武者
2砂
3階段

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/20(水) 23:38:23.15 ID:3unm80wh0<> 3 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/21(木) 00:07:06.40 ID:bRJobvLq0<> -------ここまで。
次回は21日(木)夜からの予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/21(木) 00:10:07.87 ID:tBUyVn7m0<> 乙
今、過去スレを見直したら怪獣の魔女は俺だったわ
約2年前だからすっかり忘れていた。

未だにビーダマンの魔女が出ないのは落選したからかな?
ネタ度強いのは分かっていたけど、悲しい…どうせなら〇イブレードの方も作っておくんだった…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/21(木) 00:30:47.97 ID:YJPyg8Ck0<> その26がR版に立ってたけど、あっちでやるの? <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/21(木) 00:40:42.68 ID:bRJobvLq0<> CGIエラーになったのがRのほうに立っている…?
その後立てなおそうとしたら「立てすぎ」って怒られて立てられなかったので明日でいいかと思ったんですが。
Rに立つバグ、聞いてはいましたが…うーん、あっちに移るつもりはなかったなあ。
後日立て直すかも。 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/21(木) 00:58:47.18 ID:bRJobvLq0<> どうやら専ブラからなら大丈夫らしいです。ご迷惑おかけしました。 <> ◆xjSC8AOvWI<>sage<>2019/02/21(木) 01:22:15.70 ID:bRJobvLq0<> 次スレです つ『オール安価でまどか☆マギカ 26』
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1550679451/

バグの26は依頼出しときました。前に話し出てたギャルゲ風はともかくR18な内容前提の話は書ける気がしない… <>
◆xjSC8AOvWI<>sage<>2019/02/21(木) 22:42:01.42 ID:bRJobvLq0<> ―階段の魔女結界


 変身をしてマークの中へと乗り込むと、街は消えそこにあるのはひどく閉鎖的な空間。

 目の前には不規則に螺旋状に並べられた板がある。筒のような結界は『上』へ続いていた。

 見上げて足場の隙間から目を凝らせば魔女の姿も遠くに見えた。


 しかしその途中には使い魔も多くいる。


かずみ「……こっから狙えないかな?」

あすみ「んー、私は無理だね。アンタもそうじゃない?」


 再生成でミサイルのようなものを作れば――とは思ったが、遠距離専用の武器じゃないと難しそうだ。

 それにわたしには狙うための技術もない。


かずみ「素直に上るしかないかぁ」


 意を決して板に足をかける。

 二つ跳びでさくさく進んで行こうとするが、その途中で足を滑らせて盛大に後ろへと倒れ込んだ。


かずみ「あわわっ!」

あすみ「もうー、なにやってんのよ!」

かずみ「うぅー、だって今……」


 一段下に居たあすみが押しつぶされて不満を漏らす。

 なにもなくこうなったわけじゃない。足を置いた途端につるりと滑ったのだ。

 その瞬間、あすみのほうを見て恐ろしいことに気づく。


かずみ「あすみ、それ……!」

あすみ「うん? 何?」


 あすみは面倒くさそうに身体を捻ってわたしの視線の先を見る。

 ……足場に接しているあすみの背には血が滲んでいた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>sage<>2019/02/21(木) 23:11:12.16 ID:bRJobvLq0<>

あすみ「あらほんと。めんどくさー」


 登ってた時にはなにもなかった足場から突起が伸びてあすみの背中へと突き刺さっていた。

 あすみは痛がる素振りも見せずに身体を起こす。引っ掛かった衣服が破れる音がした。


かずみ「治療しなくちゃ……!」

あすみ「いいからこのくらいで大げさなこと言うなよ。治す必要なんかない。上からも来てるんだからモタモタしてたらこれじゃ済まないよ」


 あすみに言われて階段の先を見て、ボールのような使い魔が何体も転がり落ちてくるのに気づく。


かずみ「うわっ!?」

あすみ「こいつら蹴散らすからどいて!」


 そう言うとあすみがわたしの前に出た。武器の鉄球で狙いづらい状況でも素手で相手をしている。

 小さいけど力強く頼もしい背中。


かずみ(――――あれ?)


 服が破れて少し肌が見えているそこには、血を流しているさっきの怪我のほかにもいくつも傷があった。
 
<>
◆xjSC8AOvWI<>sage<>2019/02/21(木) 23:27:22.29 ID:bRJobvLq0<>

 敵を蹴散らすとまた上へと進んでいく。

 トラップと不意に訪れる使い魔のせいで一進一退だ。

 武器で狙いにくい転がり落ちてくる使い魔は素手でも力の強いあすみが、飛行する使い魔はわたしがと分担をしながら階段を駆け上がって行った。


 頂上に佇む魔女の姿は近づいてくる。



かずみ(そろそろ狙える……? それとも至近距離まで近づく?)



かずみ 魔翌力[100/100]  状態:正常
GS:1つ
・怪獣[65/100]

◆ステータス
[魔翌力コントロールLv2] [格闘Lv6]


仲間:
あすみ 状態:負傷(小)


敵:魔女Spile

1もっと近づく
2リーミティ・エステールニ(魔翌力-25):杖から魔翌力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0〜15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔翌力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔翌力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔翌力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔翌力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔翌力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔翌力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10速度低下(魔翌力-7/1ターン) :一定範囲内に自分や仲間を除く物の速度を落とす魔翌力を流す。
 b重(魔翌力-10/1ターン) :適用範囲は前方のみに狭まるが効果をより強力に。

 下1レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/22(金) 00:03:39.83 ID:JhOIuQWQ0<> 1 <>
◆xjSC8AOvWI<>sage saga<>2019/02/22(金) 00:12:50.62 ID:R0kxnsjk0<> --------ここまで
次回は23日(土)夕方からの予定です <>
◆xjSC8AOvWI<>sage saga<>2019/02/23(土) 16:11:05.13 ID:fC3MbkPy0<>

かずみ(いや……標的まではもうちょっと!)


 目指すは最後の足場、魔女の居る頂上。杖を構えて次の段を駆け上がろうとする。

 敵までの距離はもう少し。しかし、直接攻撃をしにいくということは相手からも攻撃を受ける可能性は増えるということでもある。


 頂上から私達を見下ろす不動の魔女と目が合った。


かずみ「ッ!」


 再びボールのような使い魔が放たれたのは次の瞬間。

 ちょうど魔女本体へと気が移っていたところだ。使い魔を迎撃する準備は整っていない。



 下1レスコンマ判定 被害
0~99
※0=100 <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 16:26:03.11 ID:fC3MbkPy0<> あげ↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 16:34:24.96 ID:ZrNHHlVYO<> 低い <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 16:34:59.06 ID:ZrNHHlVYO<> すまぬ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 16:37:25.46 ID:0Xt3bkbr0<> あ <> ◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 16:51:27.04 ID:fC3MbkPy0<>

 上から体当たりだけして奈落へと落ちていく単純な使い魔だが、高低差のあるこの階段ではバランスを崩すだけでも痛手になる。

 数体の体当たりを足元に受けて足を止められる。


 ここで後ろに倒れたらあすみまで共倒れになってしまう。

 わたしたちはどちらも小柄だ。攻撃をいくつも正面から食らって衝撃に耐えらえるほど強くない。 


あすみ「!?」


 ――――だから、身体を逸らして避けた。後ろに居るあすみをまた押しつぶさないように。

 それからわたしは、役目の終わった使い魔と同じ奈落へと――――。


 まっさかさまに引っ張られていった。


あすみ「は……? なにそれ、アンタばかなの!?」

かずみ「あすみ……あとよろしくね」


 再生成で下に溜まった使い魔たちをまとめてクッションにする。

 もふもふの塊だ。意外と心地は悪くない。


 あすみは魔女のほうに向きなおると、舌打ちをひとつ鳴らし鉄球を放った。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 17:33:26.16 ID:fC3MbkPy0<>

あすみ「どうしても近づけさせたくないようね」


 距離を保ったまま階段の上へと鉄球部分だげが真っ直ぐに飛び、頂上の魔女にぶつかる。

 背の高い立派な椅子ごと落ちてくる。


あすみ「アンタが倒してよ。足手まといになったら没収って言ったでしょ」


 もちろんわたしはもうあすみに譲るつもりだった。

 二人そろって危険な目にあわせるかもしれないなら、あすみに任せたほうがいいって思ったから。


 でも、任せてくれるなら。わたしは再び杖を握る。


かずみ「わかった!」



 クッションと使い魔の残骸を踏み越えて魔女に駆け寄ると、今度こそ床に倒れる魔女に向けて深く貫いていった――――。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/23(土) 18:05:23.38 ID:f66YdVYl0<> あすみん、譲ってくれるとは・・・ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 18:16:02.32 ID:fC3MbkPy0<>

 やがて景色は元の場所に戻る。

 グリーフシードを拾うと、あすみが後ろから覗きこんだ。


あすみ「……私の手柄7割ってとこかな。やっぱただじゃあげられないなー」

かずみ「えっ!」


 あすみはひょいとわたしの手からグリーフシードを取り上げると、自分のソウルジェムを浄化してからわたしの手に返した。


あすみ「これじゃ全然足りないね。私に借りを作ったって覚えときなさいよ。もちろん利子つきで」

かずみ「増えるの!?」

かずみ「あ、じゃあさ……7割ってほどじゃないかもしれないけど、怪我を治すよ。ちょっと見せて」


 ……途中のトラップで怪我を負っていたのを思い出す。あすみの背中はやっぱり痛々しかった。

 もとはといえばあれもわたしがもっと慎重にいかなかったせいだ。

 でもあすみは怪我のことに触れると嫌そうな顔をする。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 18:35:20.61 ID:fC3MbkPy0<>
かずみ「……あすみは痛みを消して戦ってるの?」

あすみ「だからいいよ。治さなくて。痛くないし、同じでしょ?」

あすみ「やーん、あすみの衣装の露出度があがっちゃった。見せてなんてエッチだなー。まあアンタのには負けるけど」

あすみ「よく見たら大胆な格好してるもんね。それもやっぱ趣味なの?」

かずみ「べ、べつに露出がシュミなわけじゃないよ!? たしかに他の人と比べたら肌が見えてるほうかもしれないけど……」


 自分の衣装は気に入ってるんだけどな。


あすみ「じゃ、私はこの後の慈善事業には付き合う気はないから。ばいばーい」


 ……あすみは衣装を戻すと、手をふりふり去っていく。

 グリーフシード分の魔力なんかよりももっと恐ろしい借りを作ってしまったかも。

 それと同時に、あすみの今まで見えなかった側面も少しだけ見てしまった気がした。




かずみ 魔力[85/100]  状態:正常
GS:2つ
・怪獣[65/100]
・階段[90/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv6]

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 19:24:54.16 ID:fC3MbkPy0<>

 予知で視てきた使い魔だけの結界を一人で倒して回る。

 さすがに完全な結界じゃないから、大体は苦戦もせずに終わらせることができた。


 それからあすみの家に寄っていった。


かずみ「もう帰ってるかな?」


 玄関のチャイムを押す。ちょうど今はお昼時だ。


あすみ「アンタか。何?慈善事業は終わったの?」

かずみ「使い魔ならちゃんと倒してきたよ。もうおなかすいちゃって!そっちもお昼がまだなら二人で食べない?」

あすみ「それがアンタの考えた『借り』の返し方ってわけ? ……単純だなー、まあいいけど。アンタそれくらいしかできなさそうだし」


 その言い方はちょっとひどいなぁ……。

 でもたしかにわたしが一番自信があるのは料理と食べることかも。



昼食のメニュー
・自由安価

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 19:37:46.15 ID:ZrNHHlVYO<> あすみ編の定番、野菜炒めカレー
既にあすみが挑戦していて不可なら安価下 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/23(土) 19:41:06.60 ID:f66YdVYl0<> ↑
生姜焼きと野菜炒めカレーははもうあすみが作ってるかな?
とりあえず塩ベースの五目あんかけ焼きそば5人前(あすみ1・かずみ4) <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 20:17:39.17 ID:fC3MbkPy0<>

 キッチンを見てみてると、料理の本が置いてあった。

 付箋のついているページを開いてみる。


かずみ「これ作ったの?」


 『野菜炒めカレー』だって。どんな料理だろう。


あすみ「ああ、気になるの? じゃあそれでもいいよ」

かずみ「うん。それならこれ作ってみるね」


 レシピを見ながら作るのって初めてかも。

 材料を切って、手順通りに調理していく。


 『早くてカンタン』ってレシピにある通り、本当にささっと作れた。


かずみ「おまたせー。野菜炒めカレー出来たよ」


 お皿をテーブルに持っていく。

 ほかほかで美味しそうだ。カレーの匂いが食欲をそそる。


あすみ「もう出来たのか」

かずみ「いいね、これ。本当に早くて簡単に作れるし美味しそう!いただきまーす」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 20:29:59.49 ID:ZrNHHlVYO<> そうきましたか <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 20:52:43.31 ID:fC3MbkPy0<>

 大きく一口をスプーンですくって食べる。もやしと白菜のシャキシャキがカレーに合う。

 わたしはおいしいものが食べられて満足だったけど、あすみはどこかそんなわたしを不満げな目で見ながら食べていた。


かずみ「あすみはおいしくないの?」

あすみ「おいしいよ。『ね、簡単でしょう』ってか」

かずみ「?」


 ……フライパンいっぱいに用意したのに、あっという間に食べ終わってしまった。

 あすみもおいしいって言ってくれたからまあ成功かな。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/23(土) 20:56:16.61 ID:f66YdVYl0<> あすみん、作るの失敗した後かな?
それをこんなにあっさり作られたら、あすみんからしたら面白くわないわな <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 21:15:25.36 ID:fC3MbkPy0<>

かずみ「このあとも訓練で一緒でしょ?」

あすみ「そうだけど、それまでここに居座るつもり?」

かずみ「うん。一緒に行こうかなって」

あすみ「まだ時間あるじゃん。ここでだらけられても困るんだけど」

かずみ「家事とかやりたいことがあるなら手伝うよ」

あすみ「大体、アンタもこの前から私のこと疑ってたんじゃなかった?なんでそう普通に接することが出来るのさ」

かずみ「それは……そうだけど」


 あすみのことも、織莉子のことも、許せないことをしたからって人まで嫌ったり遠ざけたりしたくない。

 何か理由はあるのかもしれない。それに今は仲間なんだから。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 21:20:31.99 ID:fC3MbkPy0<>

かずみ「よし、じゃあ次はデザートつくろっか!」

あすみ「もういいって。アンタと違って大食いじゃないし、そんなにお腹すいてないよ」

かずみ「とっておけるようにするからさ。小さい子がいるんでしょ?その子の分まで作れば喜んでくれるよ」

あすみ「…………」


 あすみはまだ何か言いたいことがありそうな顔だったが、しぶしぶ飲み込んだように再びキッチンに行く私を見ている。


 ドルチェに使えそうな材料はほとんどなくて、棚の中にあったのは小麦粉くらい。

 これと卵と牛乳と砂糖、それから少しの材料と手間を加えてなにか作れないかな?



・つくるもの
1クッキー
2シフォンケーキ
3ドーナツ
3ほか(自由安価)

 下2レス <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/23(土) 21:33:40.92 ID:f66YdVYl0<> 2
粉砂糖をまぶしたシンプルなシフォンケーキ
甘い飲み物(ココアとか)と合うような感じで <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 21:36:37.75 ID:HWzc3ByT0<> ↑ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/23(土) 21:37:32.23 ID:ZrNHHlVYO<> 3
パウンドケーキみたいな硬めな感じのオーソドックスなドーナツ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 22:33:22.07 ID:fC3MbkPy0<>

かずみ「シフォンケーキつくろう」

あすみ「うちにあるので作れんの?材料も道具も。料理はともかく、お菓子作りなんてしたことないよ」

かずみ「うん。作ろうと思えば作れるよ」


 まずはメレンゲを作るために、腕まくりして卵白をかきまぜる。

 型とオーブンは炊飯器を使って代用する。さらに砂糖を細かくなるまですり潰して粉砂糖をまぶせば完成だ。

 今までマミの家じゃ材料にも道具にも困ることはなかったけど、工夫すればシンプルなシフォンケーキは作れる。


かずみ「あとは待つだけ……」


 炊き上がった生地を炊飯器から出して一息つく。

 ……すると、玄関のほうから声が聞こえた。

<>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 22:38:23.94 ID:fC3MbkPy0<> ------------------------------------------------------------------
次スレ立てなおしました
『オール安価でまどか☆マギカ 26』 :
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1550928877/
------------------------------------------------------------------ <>
◆xjSC8AOvWI<>saga<>2019/02/23(土) 22:51:37.63 ID:fC3MbkPy0<> 次スレに移ります。
残り1000までで…といってももう終盤ですが、かずみ編でやりたいこととか↓ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/02/23(土) 23:10:18.26 ID:f66YdVYl0<> かずみが魔女戦でかっこよく変身してきめ台詞+決めポーズ!
でもスカートがなくパンツ丸出しだった、原作でやってたのを仲間の前でやらかす <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2019/02/23(土) 23:30:02.05 ID:ZrNHHlVYO<> 夕方訓練場所に行く途中で織莉子が同じ制服を着た女子と一緒にいるのを目撃、話しかけてみる
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/24(日) 10:12:19.93 ID:MsbWxrTl0<> キュウベエからかずみの情報を聞いたプレイアデスの生き残りが(いたら)見滝原に来る
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/24(日) 16:57:23.60 ID:LH3zcfErO<> かずみが魔女狩りが終わって訓練場所に戻る前にみんなに差し入れを持って行く
買ったのはかずみは気に入った納豆コーヒーゼリークレープ
1人で買いに行ったのでマミ以外皆見かけに騙される <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2019/06/23(日) 23:19:02.14 ID:NKy5lk3A0<> a <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/07/09(火) 18:34:10.15 ID:LDLtpXk10<> *ある世界の果ての未来*

 ―数年後の話―



 筆をもち、大きなキャンバスに色を走らせる。

 この現実とは違う世界、引きこまれるような青の世界が紙の中だけで完成しようとしていた。


 今は自分以外に誰もいない。一人で集中しているとまるで現実から遠ざかるようだ。

 自分の趣味の詰め込まれた自室は今まで以上にアトリエのようになっていた。



「きりのん」


 張りつめた空気の中に、キリカの明るい声が部屋が心地よく響く。

 部屋には二人になり、少しだけ現実に戻る。さっきまでが静かすぎた。


桐野「どうした?あれ?今何時?」

キリカ「もうお昼だよ。ご飯できたから食べてよ。今が出来たてだから!」

桐野「わかった、今行くよ」

キリカ「あ、その絵……」


 キリカがキャンバスに注目する。キリカも経過は見たことがあったはずだ。


キリカ「今度美術展に出すんだよね。すごく良いと思う!」

桐野「もうすぐ完成するんだ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/07/09(火) 18:34:37.16 ID:LDLtpXk10<> キリカ「まだ完成じゃなかったんだ」

桐野「仕上げが残ってるよ。ほら、こことかもっと深みを表現したいし……」

キリカ「へえ? 私には想像がつかないけど楽しみにしておく」

キリカ「展示が始まったらみんなで見にいこっか。お義父さんに、お義母さんに、おじいちゃんに、おばあちゃん、私のお母さんとお父さんも誘って」

桐野「大人数になるな」


 僕の家は大家族だ。おじいちゃんの頃からみんなはこの家に住んでいて、それから母さんが来て、僕が生まれて。

 だから、同じようにしたら僕は一度もこの家を出ることなくこれからもみんなと一緒に住むことになるんだろうか。

 キリカの家もすぐ近所だから、離れる理由もあまり見つけられない。

 今ではキリカとほぼ一緒に暮らすようになっていた。こうして料理を作ってもらったり……もうキリカも家族みたいなものだ。


キリカ「やっぱりみんなが出かけてると、家が大きく感じるね」

桐野「いつも昼間はオレたち以外に三人はいるからなぁ。キリカが家事やってくれるようになって、母さんは大分楽そうだよ」

キリカ「私はまだちょっと手伝いしてるみたいなものだよ。おやつはきりのんやおばあちゃんが作ってくれるし」

桐野「じゃあ今日もデザート作ろうか。何がいい?」

キリカ「羊羹がいいな。あ、でも、和菓子もいいけど生クリームとかもいっぱい食べたい!」

桐野「和洋折衷か。そういうのもいいね」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2019/07/09(火) 18:35:05.90 ID:LDLtpXk10<>
 キリカの作ってくれた昼食を完食し、それからデザートを用意する。

 こうしていると毎日のんびりしているようだけど、遊んでばかりいるわけじゃない。僕が目指す画家というのは大変な職業だ。

 やったらやるだけ金にもなるし力にもなる。ついこの間に念願の美術系の高校を卒業したばかりの今は、一番時間があった。

 普通よりもお金はかかったし、時間があるときこそ浪費はしていられなかった。


 とはいっても、せっかく愛しい人と一緒にいる時間だ。それも大切にしたい。


キリカ「おいしい!和洋折衷でも合うよこれ。クリームだけでも大好きだけど羊羹があってこそっていうか!」

キリカ「さすがおばあちゃんのレシピ。小さい頃から教えてもらってたんだもんね」


 生クリームをたっぷりと添えた羊羹がデザートだ。

 四角くカットした羊羹をフォークで突き刺してクリームをすくう。これはこれで合うし、見た目もお洒落だ。


桐野「そうだなぁ。おばあちゃんも昔ひいばあちゃんから教えてもらったんだって」

桐野「もしオレたちにも子供ができたら、次はオレたちも……」

キリカ「…………さすがにはやすぎるよ。でも、考えてみたらそんなに先のことでもないか」

キリカ「そうやって受け継いでくんだね。これから先にもきっと、色んなことを」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/07/09(火) 18:35:41.54 ID:LDLtpXk10<>
 まだ明るい時間の午後、ソファの上で二人並んで手を握る。


キリカ「このあとはまた絵を描きに戻るの?」

桐野「うん。もうすぐ完成だから」

キリカ「最近は街で似顔絵とかも描いてるんだよね」

桐野「今はとにかくたくさん描かないと。美術高校を出たからって、美大を出たからって、画家として成功するわけじゃない」

桐野「似顔絵はキリカが喜んでくれたのがきっかけだよ。人と関わるのとか苦手だけど、今は少しだけ克服できてきたし……」

桐野「でも……今はもう少しこのままでいいかな」

キリカ「!」

桐野「キリカと一緒にいるよ。家で二人きりってなかなかないからね」

キリカ「うん、私ももう少しこうしてたい」


 そう言うと、キリカが僕のほうにぎゅっとくっついてくる。

 隣で触れ合う柔らかさ、なんともいえない良い匂い。冬の肌寒い部屋には互いのぬくもりがちょうどよかった。


キリカ「……♪」


 二人で一緒に居る時、キリカが甘えてくる時の定番のスタイルだ。

 こうしているとひとりじめしているような気がするらしい。

 落ち着いた穏やかな表情を見せている。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2019/07/09(火) 18:36:13.18 ID:LDLtpXk10<>
 なめらかな黒い髪を撫でる。少し前までは随分伸ばしてたっけ。

 けど、肩につくくらいの長さの髪のほうが小さい頃からよく見ていた『キリカ』って感じがする。


桐野「……なかなか二人きりになれないよね。キリカはこの家から出てみたいとは思う?」

キリカ「どこかに家を持つってこと?みんなきりのんのこと大事にしてるし、みんなやきりのんの意思に任せるけど」

桐野「もちろん今すぐにはちょっと厳しいんだけどさ。バイトくらいしか稼げてないし学費があるし……」

キリカ「でも今は二人だけだよ」


 手を髪からうなじへと下に這わせて撫でる。

 小さい頃から見てきた身体。最初会ったころは幼稚園。付き合いはじめたのが15の時。


桐野「……胸、また大きくなったよね」

キリカ「んもう、そんなとこばっかり見てるんだから。……そのほうが嬉しい?」

桐野「え、まあでもそれだけじゃないよ。全部好きだから」


 苦笑する。

 曲線を描くしなやかな身体。キリカの容姿はとても魅力的に映るし、スタイルは文句なしに良いと思う。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2019/07/09(火) 18:36:43.42 ID:LDLtpXk10<>
 魔法少女とか魂がどうとかで悩んでたこともあったけど、それは関係ない。もうどちらも気にしてはいなかった。

 毎日顔を合わせているとわからないけど、今まで絵にしてきたキリカを見ると、少しずつやっぱり美しく成長しているのがわかる。


 写真で思い出を残すのもいいけど、絵にはそれ以上に筆に込めたその時の思いがある。

 そう思うと僕はこの特技を持っていてよかったと思う。


桐野「そうだ、今度はまた久しぶりにあの衣装を着た姿でも描かせてよ。前とは雰囲気変わるだろうから」

キリカ「えー、久しぶりだな。……いいよ、まだ着られるなら今度描かせてあげる」


 そういえば、さすがにもう魔法少女としては活動してないらしいけど……

 あのとき受賞した絵は思い出深い。あれなら今でも十分似合うと思う。



 これからも絵は増え続けるだろう。けれど、まずはそれより今目の前にいて触れ合えるキリカとの時間が大事だ。

 今は少しだけ筆休め。

 みんなが帰ってくるまでの間、二人で過ごすことにした。



―桐野編 END― <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2019/07/09(火) 18:37:09.64 ID:LDLtpXk10<> オール安価でまどか☆マギカ・避難所
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539087062/l50 <> 1001<><>Over 1000 Thread<>                     ___, - 、
                    /_____)
.                    | | /   ヽ || 父さんな、会社辞めて小説で食っていこうと思うんだ
                    |_|  ┃ ┃  ||  
                   (/   ⊂⊃  ヽ)        /  ̄ ̄ ̄ \
                   !   \_/  !        ( ( (ヽ     ヽ
                   ,\ _____ /、       | −、ヽ\     !
   ゝ/  ̄ ̄ ̄ \     /. \/ ̄\/   .\     | ・ |─ |__   /
   / _____ヽ    |  |  _┌l⊂⊃l  |  |    ┌ - ′  )   /
   | | /  ─ 、−、!    |  |  / ∋ |__|  |  |    ヽ  /   ヽ <
   |__|─ |   ・| ・ |    |  /`, ──── 、 |  |     ` ─┐  ?h ̄
   (   ` ─ o−i    ヽ /         \ .ノ_      .j ̄ ̄ |
    ヽ、  ┬─┬ノ / ̄ ./            ヽ- 、\    /   ̄ ヽ\
  // /ヽ─| | ♯|  /   i              | ..) ) \  i  ./   |\\
  | |  /  `i'lノ))┘/ , ─│             !-l⊂⊃l┐__ヽ__/\ / |   | |
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   |/ ヽ── |______\  l二|^|二二|^|二l 丿______ |_丿 \|
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<> 最近建ったスレッドのご案内★<><>Powered By VIP Service<>【デレマス】ちひろ「ノーパンしゃぶしゃぶですか?!」?「っ!」ガタガタッ @ 2019/07/09(火) 12:11:30.41 ID:AIjfx1BDO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562641890/

ファイアーエムブレム >>2の>>3 @ 2019/07/09(火) 00:30:19.22 ID:ptoea9WCO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562599819/

野明「俺たち」遊馬「入れ代わってる!?」【パトレイバー】 @ 2019/07/09(火) 00:29:58.36 ID:NVDX2Cnr0
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【シャニマス】あさひ「ひよこシュレッダーで検索するっすよ!」 @ 2019/07/09(火) 00:05:08.90 ID:RWEf3Fe30
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562598308/

勇者見習い「今日は洗礼の日。」 @ 2019/07/09(火) 00:04:43.01 ID:lZLG1qxa0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562598282/

【ミリマス】育「ドラマ おおかみ姫」 @ 2019/07/09(火) 00:02:07.45 ID:zmX2O7Gg0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562598127/

【劇場版安価】神裂「Symbol of LIFE」 守護神の唄 【禁書】 @ 2019/07/08(月) 23:19:23.15 ID:8sJftSi30
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562595563/

にこ「真姫が一人で温泉に入ってる」 @ 2019/07/08(月) 21:24:18.43 ID:XtD1rZkD0
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