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HTML化した人:lain.
【作者は3年】ガンダムの世界にのびたたちが迷い込んだら・・・【待たせたのだ!】
1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 18:47:17.26 ID:VdfoLAo0
今度こそ……!!

まとめサイト
http://www22.atwiki.jp/nobita/
2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 18:52:07.66 ID:VdfoLAo0
 以下、今までの内容を知らない人&忘れてしまった人の為のまとめ


■プロローグ

 その日も、のび太にとっては同じ日常だった。
 だらだらと昼寝をして、外へ遊びに行くのも何となくかったるい。
 空は真っ青に澄みわたってるけど、胸の中には霧のようなもやもやがある。
 そんなのび太を見かねて、いつものように[たぬき]は彼を諭すが、その言葉も彼にはなんだか虚しかった。
 どうせ僕には何も出来ない。
 [たぬき]に助けてもらうたびに、心のどこかで自分のダメさ加減を感じてしまう。
 道具に頼ってばかりいても何の解決にもならない。
 そんなことは分かってる。
 でも、どんなに努力をしたって今まで報われてこなかった。
 テストはいつも0点だし、ジャイアンやスネ夫にいじめられてばかりだし、外を歩けば犬に追い掛け回される。
 のび太はもう、努力すら諦めかけていた。

 そんな時、ジャイアン達が突然のび太の部屋を訪れてくる。
 [たぬき]に未来の世界を見学しないかと誘われたのだ。
 しずかや[たぬき]に一緒に行こうと手を引っ張られると、嫌々ながらのび太も未来へついていくこととなった。
 途中で出来杉も加わり、ドラミに案内されて未来の世界をまわる[たぬき]一向は、一日中未来の世界を堪能したのだった。
 その帰途、タイムマシーンで亜空間を航行中に、突然巨大な時空乱流が起きてしまう。
 [たぬき]はとっさに回避しようとするが、既に遅かった。
 [たぬき]達はなすすべなく、そのまま時空乱流に巻き込まれてしまった。
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 18:53:09.86 ID:VdfoLAo0
青狸になることを忘れてた・・・
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 19:06:47.93 ID:VdfoLAo0
■そして、物語が始まる

 時は宇宙世紀79年。
 その世界では地球連邦軍とジオン公国とが未曾有の大戦争をしている真っ只中だった。
 北米のとある町に住むホライ=ゾーンは、金と名声を得る為にジオン軍の軍人になることを夢見る青年だった。
 そんなある日の夜、ホライが街を散歩していると、彼は道端で倒れている2人の子供を見つける。
 この辺りでは見慣れない東洋人の少年と少女に、ホライは複雑など事情を感じ取り、どうしようかと頭を悩ましていた。
 しかし、ホライは結局2人の子供を自分の家へ連れて行くことにしたのだった。
 2人の子供はノビタとシズカと名乗った。
 ホライの父曰く、どうやら2人は日本人らしかった。
 そこでホライの父は大学時代の級友であり、日本語の達者な友人ジョルジュの助けを求めに行く。
 ジョルジュはそれに快く応じ、のび太達をもてなした。
 そして彼はのび太達からタイムマシーンで遭難したという話を聞く。
 それはジョルジュには信じられない話だったが、彼はのび太達の力になることを約束するのだった。
 やがてジョルジュはのび太たちをリラックスさせようと、のび太達を地下室へ連れて行った。
 そこにはゲーム機と称された無骨な機械があり、ジョルジュはその機会にのび太達を乗り込ませ、ゲームで遊ばせるのだった。

 だが、ジョルジュは軍需産業であるツィマッド社のMSの開発者だった。
 のび太が乗せられたゲーム機は、実は新型MSのコックピットであり、2人はMS操縦のシミュレーターをゲーム代わりに遊んでいたのだ。
 そこでジョルジュは目を疑う光景を目にする。
 遊びのつもりでシミュレートを行なわせたのび太のスコアは、ジオンのエースパイロットである黒い三連星をも上回っていたのである。
 その夜。
 ジョルジュは研究者としての純粋な探究心から、のび太達のデータを本社へ送るのだった。
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 19:13:57.62 ID:VdfoLAo0
 やがてジョルジュに対し、データに目をつけたツィマッド本社からのび太の本社への協力を要請せよとの社命が下る。
 その社命にジョルジュは嫌悪感を覚えるも、結局彼はのび太としずかをネバダ州第13基地へと連れ出してしまう。
 ジョルジュはそこで後輩の研究者と共に、のび太のデータ解析を行なった。
 そのデータもやはり類稀なものだった。
 そんな時、突如として連邦軍が第13基地に対して攻撃を開始したとの情報が入った。
 そして成り行きから、のび太はジョルジュと共に試作型のドムで出撃しなければならなくなってしまう。
 恐怖に震えるも、しずかを守らなければと出撃を決意するのび太。
 その戦いで、のび太はMSパイロットとしての才能を十二分に発揮するのだった。
 のび太とジョルジュは第13基地を防衛した。
 しかし、その武勇に目をつけた基地の指令により、のび太は軍のパイロット養成学校へと送られることとなってしまう。
 ジョルジュは自分のせいでのび太を軍人の道へ歩ませてしまった責任をかみ締めるが、動き出した歯車をとめることが出来なかった。

 そしてホライの家で過ごす最後の夜。
 ホライはのび太に「必ずこの戦争を終わらせる」と約束する。
 次の日の朝、軍の車両がのび太を迎えに来ると、しずかとホライ達のもとから連れて行かれるのであった。
 そして訓練学校での生活が始まったのだった。
 MSの操縦こそ才能を発揮していたのび太ではあるが、そこはやはりのび太である。
 兵士としての基礎訓練やMSパイロットとしての訓練で、のび太はとても辛い訓練で今にも崩れそうだった。
 そんな彼に手を差し伸べる生徒は殆どいなかったが、ただ一人、フレンド=リーだけは級友としてのび太を支えていた。
 そうして厳しい訓練に耐えていく中、のび太を含む6人の選抜の生徒が、第13基地へ実機訓練の為に行くこととなった。
 しかし、そこで悲劇が起こる。
 オデッサ作戦を目前に控えた連邦軍が、作戦隠蔽の為に北米のジオン領に対して大規模な攻撃を行なったのである。
 その連邦の部隊は13基地にも迫っていた。
 そうして否応無くのび太達は実戦に巻き込まれる事になる。
 激しい戦いの末、のび太達は勝利を収めるが、彼らは級友であるサイゾーを失ってしまうのだった。
 そんな彼らを、メディアや軍は若き英雄として目をつける。
 特にのび太はニュータイプの可能性が高いとして、フラナガン機関から引き抜きの要請が出るのであった。
6 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 19:41:50.28 ID:VdfoLAo0
■仲間達

 ジャイアンとスネ夫は中国にいた。
 警察に保護されてはいたが、自分達の話をいくら警官に説明しても全く自分達の話を信じてもらえない。
 このままでは[たぬき]達を探すどころかここから身動きが取れなくなると踏んだジャイアンは、スネ夫をつれて街へ飛び出すのだった。
 しかし、闇雲に探したところで[たぬき]達が見つかることも無く、お腹ばかりがすいていく。
 空腹でどうしようもないが、お金も無い。
 そこで2人は食い逃げをすることに決める。
 2人は街の定食やでお腹一杯に食事を平らげ、逃走を図った。
 が、2人は定食屋の店主、ムキムキマッチョの男、ホイ=コーローに捕まってしまう。
 2人に科せられた罰は一ヶ月のタダ働きだった。
 やがて2人は連邦派のゲリラの争いに巻き込まれ、ホイと共にジオンのジープに乗り逃げる事になる。
 そうして長い間ジープで逃げた先で最終的にたどり着いたのは連邦軍、コジマ基地であった。

 [たぬき]が飛ばされていたのはフランスだった。
 この世界の情報を少しずつ集めるながら街を歩く[たぬき]。
 一刻も早くのび太たちを探しだしたかったが、頼りの綱の四次元ポケットは何故だか機能しない。
 ひとまず[たぬき]は活動するための資金が必要だった。
 そして[たぬき]は職を求めて町の電気屋の戸を叩いた。
 電気屋の店主であるジョンは、[たぬき]を全く信用していなかったが、その技術力を目の当たりにすると[たぬき]を自分の店で働かせることを決める。
 順調に電気屋として働く傍ら、どらえもんは着実にのび太たちを探す準備をしていた。
 そんなある日、いつものようにTVをみていたどらえもんに一大ニュースが飛び込んでくる。
 連邦軍のオッデッサ作戦である。
 いままでジオンに対して劣勢であった連邦軍が、遂に大々的に攻勢に転じたの。
 それにより、こう着状態にあった戦局が、再び世界中を巻き込んだ激戦になるのは必死だった。
 それを知ったどらえもんはのび太たちを探す旅にでる決心をする。
 どらえもんは修理に手を焼いていた四次元ポケットから無理やり尋ね人ステッキを取り出すことにした。
 そうて尋ね人ステッキを取り出す事に成功はしたどらえもんだったが、四次元ポケットはその際に完全に壊れてしまう。
 しかし、もはやそんなことは気にしていられなかった。
 いまは一刻も早くのび太たちの下へ行かなければならない。
 明日、どらえもんは廃車を改修したジープで出発するのであった
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 19:43:19.23 ID:VdfoLAo0
 出来杉は南米カラカスの難民キャンプに居た。
 持ち前の秀才ぶりを発揮し、混沌とした難民達の中でもなんとか生き抜いていた彼だが、日に日に精神的に逼迫していく。
 そんな彼の唯一の救いの存在が同じ難民の女の子のアリアであった。
 自分と同年代の子供であり、両親をなくして孤独な女の子であるアリア。
 しかしそんな境遇を感じさせない彼女の優しさに、出来杉は安らぎと、彼女を守りたいと言う強い決意を覚えていた。
 だがやはり、難民キャンプでの生活が厳しいことに変わりは無かった。
 そんなある日、出来杉は連邦の兵士に難民の健康状態の検診という名目で難民キャンプから連れ出される。
 そこで一通り検診を受けた出来杉だが、彼はどうも検診の無いように疑問を覚えていた。
 そんな中、出来杉は検診を行なっていた白衣の男に声をかけられた。
「重大な話がある」
 そういう男に連れられ、出来杉は連邦軍の軍事基地であるカラカス基地につれらた。
 それも司令室へ、である。
 そこで出来杉は、彼がニュータイプの素質があることを告げられる。
 そして同時に軍への協力を要請されるのだった。
 最初、出来杉は軍への嫌悪からその話を断った。
 しかし、見知らぬ世界で一人の身である彼に、軍という権力に抗う事は出来なかった。
 結局出来杉はカラカス基地の司令であるスカルチノフに説き伏せられ、連邦軍への協力を承諾するのであった。
 そうして軍に徴収されたNTは彼だけではなかった。
 なんと、アリアも出来杉と同じくNT適正者として軍に見出されていたのである。
 さらに2人は連邦軍のNT研究組織でツンという少女とも出会い、3人で日々の訓練をこなしてゆくのだった。

 ――そして物語は地上から宇宙へと移ろうとしていた
8 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 19:48:57.97 ID:VdfoLAo0
ここまでが大まかなまとめです。
くそー青狸め!
9 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 19:50:52.14 ID:UT4WR9.o
乙。
懐かしいな。もう三年も経ったんだ……
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 20:04:24.26 ID:VdfoLAo0
>>9
ありがとうございます。
人がいてよかった!
本当にあの頃が懐かしい……
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 20:09:36.83 ID:VdfoLAo0
「むー」
 研究員が部屋を出て行くと、アリアは残念そうにそう唸る。
「私、MSの操縦なんてやだ」
 そう言うアリアを見ると出来杉はそんなアリアを励ました。
「いいんだよ、気にすることは無いさ」
 実際出来杉はそう思った。
 むしろ「MSの操縦なんてやだ」と言ったアリアを嬉しいとさえ思う。
 アリアはとても純粋な性格をしている。
 そんな彼女に、MSなんて兵器を好きになって欲しくは無いのだ。
 アリアに笑顔を投げかける出来杉。
「ほら、元気を出してアリア」
 そんな出来杉にアリアも少しだけ明るさを取り戻す。
「うん」
 小さく頷くアリア。
 そんな彼女にツンも声をかける。
「確かにシミュレーターの結果なんて気にする必要ないわ。あんなものはNTの素質と何にも関係ないもの」
 そう言ってアリアに向き合うツン。
「NTの能力は人と深く共感しあう事の出来る力なのよ。あんなコンピューターのMSを撃破するシミュレーションなんて、本質的には関係ない事よ」
 ツンが言うと、出来杉もそれに同意する。
「僕もそう思う」
 そう言って少し難しい顔をする。
「そもそも、NTの能力は戦争になんて使われるべきじゃないんだ」
 その出来杉の言葉を聞くと、ツンとアリアも複雑な表情をした。
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 20:14:18.56 ID:UT4WR9.o
キャラクターの名前が当時のvipだもんなww
のび太がドムに乗った時は本当にわくわくしたよ
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 21:20:39.91 ID:VdfoLAo0
 地球連邦軍統治下のタイ国境。
 ここにジャイアン達を連れてたどり着いたホイは、翌日には自慢のその料理の腕で定食屋で働いていた。
 その店はホイの専門である中華料理の店ではなかったが、ホイにはどんな料理でも作る自信がある。
 実際、店長はホイの作った料理を試食すると即採用を決めた。

 昼になって店が込んでくる時間帯になると、厨房は大忙しになる。
 決して大きな店ではないが、それでも40人程度の客は入れるし出前もある。
「本当にホイ君がうちの店に来てくれてよかったよ」
 休む暇なく料理をしてるホイをみて店長がそう声をかける。
「手際がいいし腕も確かだ。客の間じゃホイ君が来てからウチの料理が美味くなったって評判だ」
 そう笑いながら話す店長。
「いえ、お礼を言うのは僕のほうですよ。こんな世の中で俺みたいな男を雇ってくれる人なんて店長くらいなもんです」
「ハッハッハ。こんな時世の中に、か。むしろこんなご時世だからこそ君を雇ったんだよ」
 そう言いながら店長は料理を一品作り終え、それを皿に盛り付けた。
「お〜い、タケシ! この品をアッチのお客さんに持って行ってくれ!」
 店長がそう言うと、カウンターからジャイアンが入ってくる。
 店長はそんなジャイアンに皿を渡すと、客の居るテーブルを指差す。
 それに分かったと頷くと、ジャイアンは皿を持って歩いていった。
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 21:49:56.61 ID:VdfoLAo0
「やはり子供だよ。頭がやらかい。なんだかんだで言葉もすぐに飲み込んじまう。あの子達は確か日本人だっけか?」
「えぇ、そうです」
「日本の方じゃあ結構な激戦だそうだからな。島国だけにでかい戦闘が起こると逃げ場が無い。この辺りにもかなり日本人が逃げてきたが、口をそろえて酷い惨状だったと言ってるよ。あの子達もきっと相当な苦労をして来たんだろうな」
 そう言いながら悲しそうな顔をする。
「日本に限ったことじゃねえ。戦争ってのは子供だろうと容赦はしてくれん。そんで、いつだって一番辛い思いをするのはなんの罪も無い子供達だ。だからこそ大人がしっかりして子供を守らなきゃならんというのに」
 そういうと店長は何かを思い出すような遠い眼をしてた。
 ホイにはその眼がとても悲しそうに見えて、きっとこの人にも何か辛い過去があったのだろうだろうなと彼は思った。
「子供を守るどころかこんなご時世じゃ自分一人食いつなぐどころか精一杯だ」
 店長は乾いたように「ヘッ」と笑った。
「精々、こうしてフライパンをひっくり返すくらいしか出来やせん」
「店長、そんなことなんて無いです。俺はそれはとても素晴らしいことだと思います。現に俺もタケシもスネオも、そしてここのお客さん達だってみんなこの店に助けられてるんですから」
「ありがとうホイ君。そう言ってくれると本当に嬉しいよ」
 そういうと店長は寂しげに笑顔を作った。
「だけど、俺は自分の息子が殺されたとき何も出来なかった。ただ銃撃とか砲弾の爆発に怯えてただけだったんだ。俺はたった一人の息子さえ守れない糞野郎だ」
「店長……」
 ホイは店長の肩にそっと手を差し出した。
 店長の目には涙が浮かんでいた。
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 22:25:27.35 ID:VdfoLAo0

 連日ホイ達は忙しなく働いていた。
 タイ国境の周辺には数え切れないほどの難民が集まっていたが、軍から至急される食料は明らかに不足している。
 その為食料を求める人達は数多くおり、殆ど原価と変わらない値段でメニューを出しているこの店にはひっきりなしに客がやって来ていた。
 気が付けばあっと言う間に閉店の時間というのがホイ達の毎日だった。
 店長は客が全員帰ったのを確認すると、いつものようにジャイアン達に店の掃除を命じた。
 ふと思い出したように店長が「そう言えば」とホイに話しかけた。
「ホイ君。君も聞いてると思うが最近ここいらは大分治安が悪い。兵隊の目を掻い潜って薬やなんやで商いしてる連中が増えた」
 そう言って顔をしかめる店長。
「難民の多くには職もなければ金も無い。連中はそういう人達に付け込んで利用しようとする。君にも妙な話を持ちかけてくる人間が居るやもしれんが気をつけてな」
 そう言う店長にホイは頷いた。
 こういった事情は何処にいても同じなんだな、と思う。ホイが住んでいたシーエンは、確固とした統治が無かった分もっと酷かった。
 戦争はあらゆる物を奪う。
 財産を奪い家族を奪い、人の心も奪う。
 誰だって生きるだけで精一杯になって、食っていくためには善も悪も言ってられなくなる。
 そういう人間たちをマフィアが顎で使って、麻薬や覚せい剤をばら撒く。
 そして最後にはチンピラや難民の命そのもので金を稼ぐ。

 それはきっと何処に行ったって変わらない。
 今は世界中が戦争で荒廃している。
 真っ当に生きられるほど優しい世界じゃない。

 だからこそだ、とホイは思う。
 不意に掃除しているジャイアン達をホイは見つめた。
 ホイにはいま4人の子供の命が圧し掛かっている。
 だからこそホイが真っ当に生きなければならなかった。
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/28(土) 22:43:39.74 ID:VdfoLAo0
 キャリフォルニア第一MSパイロット養成学校の校長室で、校長は椅子に座りながら軍から送られてきた書類に目を通していた。
 そして資料に一通り目を通すと、書類を両手でトントンと揃える。
 資料は全てのび太達訓練生による第13基地防衛戦に関するものだった。
「訓練生のノビタ=ノビを送り出す件だが、どうやら一週間後という事で決定したらしい。それも月へではなくフラナガンの本部があるサイド6にだそうだ。わざわざ本国より通達が来たよ」
「なんですって」
 初学年Aクラスの担当教官は驚きのあまりついそう漏らした。
 そんな彼を尻目に、校長は話を続けた。
「あの活躍だ、軍が固執するのも無理は無い。何せ今のジオンにとってもっとも足りないものは人的資源だからな。その上彼は”若き救世主”としてジオン全土から注目を浴びつつある。ここから送り出すには彼は若すぎるが、この流れを我々が止めるなどできんよ」
 校長は教官をなだめるように、優しげに話す。
 しかし、教官の眼光は厳しかった。
「ですが学校長、ノビをフラナガンへ送り出すのはせめて基礎訓練を終えてからという条件だったはずです!」
 教官は厳しい口調でそう言った。
 校長はその教官の顔を見て、若いな、と思う。
 生徒を想う情熱は理解できるが、しかしそのような情は時としては組織を乱し、瓦解させる。
 教官とてそのくらいの事は百も承知だろう。
 その上でこのようなことを口走ってしまうのは、やはり彼がまだ若いからに違いない。
 だが校長として、彼はそんな甘さを容認するわけにはいかなかった。
 校長は複雑な気持ちで一度だけため息をついた。
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 02:33:43.10 ID:wfvQbqU0
「君の気持ちは分かるがね、作戦というものも命令というものも流動的なものだ。我々はその歯車のひとつでしかない」
「しかし校長。彼にはまだ戦士として生き残る術も、志も、まだ何も教えられていません。いくら操縦技術に秀でていたところで、このままでは彼は――!」
「それ以上は慎みたまえ」
 怒りの感情をあらわにする教官を、校長は鋭い目つきで睨み付けた。
「分が過ぎるぞ。君は一人の人間である以前にジオンの兵士だ。君も私も所詮は軍の資源にすぎん。それは生徒とて同じことだ」
「では、みすみす犬死させろと? エースなどとはやし立てられたところで、その実情は常に苦しい任務に回されるだけの、いわば上層部の尻拭い役ではないですか! そんな役をあんな年端も行かない子供に担わせろと?」
「黙らんかっ!!」
 教官の言葉に、今度は校長が激昂した。
 その剣幕に、教官も一瞬怯んだ。
「慎めと言っただろう。上層部の決定は絶対だ。それに逆らうというのなら、ジオンに逆らう反逆者と同義。一介の兵士風情に許されたことでは無いぞ」
 怒りのこもった校長のまなざしに、教官は俯く。
 教官は怒りをかみ締め、強く腕を握った。
「――、すみませんでした校長」
 教官は顔を伏せながらそう言った。
 彼にはそう言うしかなかった。
「分かればいい。このご時世どこで誰が聴いているかもわからんぞ。売国奴のレッテルを貼られたくなければ今後も口には気をつけることだ」
「はい」
「それでは、ノビタ=ノビの件は後はこちらで処理する。君は準備だけさせておけばそれでいい」
「はい。それではノビタ=ノビには、サイド6への移動の件を早速伝えます」
 そう言うと教官は敬礼した。
 その表情はひたすらに厳しかった。
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 02:34:55.23 ID:wfvQbqU0

 のび太がサイド6へと移送されることを聞いたのはつい先日のことだった。
 その日の朝、のび太は一時間目の訓練が始まる前に突然教官に呼び出された。
 そして突如一週間後に宇宙へ行ってもらうと告げられたのだ。
 当然のび太は驚いたが、教官はそんなのび太を労わる様子も無く、早々に荷物をまとめておけ、とだけ言ってのび太を返した。
 教室に戻るなり、のび太は早速フレンやライ達にそのことを打ち明けた。
 みんな複雑な表情だった。
 フレンやマグは「宇宙行きはジオン兵にとって光栄なことだよ」とのび太を称えたが、その顔はやはり寂しげだった。
 みんな口々にのび太を勇気付ける言葉を口にする。
 最初はこのクラスでのび太を認めているクスメートなんて居なかった。
 しかし今はみんながのび太を仲間と認めていた。
 特にフレンやライ達にとってのび太はただの友達ではない。
 共に命を懸けて戦った戦友なのだ。
 それはのび太にとっても同じである。
 のび太は感情を抑えきれず涙を見せた。
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 02:37:15.19 ID:wfvQbqU0

 それが昨日のことだった。
 のび太は自室のベッドの上でそのことを思い出していた。
 窓からは朝日が差し込んでいて、意識もしっかり起きている。
 だけど、のび太はどうしても起き上がる気になれなかった。
 授業は明日まで通常の訓練を受けるが、明後日からは宇宙への打ち上げに際するを教習を受けなければならない。
 つまり、これまでのようにみんなと授業を受けられるのは明日で最後なのだ。
 それを考えると胸が張り裂けそうだった。
 もともとこの学校だって来たくて来た場所じゃない。
 それでもフレンやライ、そしてマグ、ナー。それ以外のたくさんの生徒達と友達になれた。
 そんな仲間達が居たから今まで頑張ってこれたんだ。
 その仲間達と離れるのは本当に辛かった。
 まして、今度の行き先は宇宙である。本当の孤独だ。
 いくら[たぬき]だって、宇宙まで探し当てるとなると簡単な事じゃない。
 もしかしたらもう[たぬき]達に合うことも、もとの時代に戻ってパパやママに会う事もできないのかもしれない。
 そう思うとのび太は嗚咽を漏らした。
 しかし、そんなのび太の悲しみを砕くように、今朝も部屋の中へ授業開始を告げるブザーが鳴る。
 のび太は目から溢れた涙を袖でぬぐうと、教材を鞄に詰めて部屋を出た。
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 02:38:56.52 ID:wfvQbqU0
 教室に入る。
 生徒達は一瞬のびたへ視線を向けると、すぐに教官へ視線を戻す。
 教官がのび太に厳しい目つきで「また遅刻だぞノビ! 罰として腹筋300回!」と怒鳴る。
 いつもと同じ光景だった。
 MS戦術の基礎を説く授業は、いつも通りに坦々と進められる。
 なのに、クラスの皆、教官までもがどこか悲しげな顔をしていた。

 今日の教習と実技訓練が全て終わり、のび太は自室に戻った。
 部屋の明かりも付けずに、ひとまずベッドの上に転がる。

 二時間目の軍事近代史も。
 三時間目の身体訓練も。
 昼食の時間も。
 四時間目のMSシミュレートでも、皆がのび太を気遣って優しく声をかけてくれる。
 そしてのび太の宇宙行きを喜び、寂しがってくれている。
 その度のび太はやっぱり皆と別れるのがとても辛くて、怖くて、考えるだけで泣きそうになってしまう。
 だけど、とのび太は思う。
 こんな僕でも皆は認めてくれた。
 僕は胸を張って宇宙へ行かなくちゃいけないんだ。
 のび太は心に誓った。
 僕はもう泣かない、と。
 窓の外を見る。
 日は既に傾いていて、月が美しく輝き始めていた。
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 02:57:09.20 ID:wfvQbqU0
また明日以降に投下しようと思います!
22 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/03/29(日) 22:38:40.84 ID:f71wFoAO
ちょwwwwwwwwww作者来てたワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/03/31(火) 01:51:39.53 ID:ho2zyYs0
ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお 


kabaさん久しぶり! あのときは受験生で、・・・もうずっと待ってた。

楽しみにしてます
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/02(木) 10:38:53.26 ID:Ijlg3pk0
作者降臨!作者降臨!3年目の正直ktkr
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/02(木) 20:23:38.32 ID:Vd80RME0
ちょwwwwwwwwwwwwマジかwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
待ってて良かったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/03(金) 20:36:13.62 ID:RaJzdbU0
乙、がんばってください。

27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 06:00:18.61 ID:ZveaP5E0
復活まじ!?たまたまみてたらwwwwww
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 23:43:22.52 ID:pt78.Ak0
みんなありがとうございます!
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 23:44:52.87 ID:pt78.Ak0
 養成学校の食堂では、生徒達が一斉に昼食を取っていた。
 食堂の席は自由席であり、基本的にどこに座っても良い。
 しかし、食堂の中央の席は食堂のテレビモニターが見えやすく、常に上級生達が占領している。
 下級生は細々と隅の席で昼食を取るのが一種の慣例になっていた。

 ガヤガヤと、食堂のあちこちから生徒達の話し声が聞こえる。
 彼らの視線は一様に食堂の中央の席に注がれていた。
 生徒達の注目を一身に受ける生徒は、まだ初学年の生徒、ライ=バールだった。

「おいおい、あいつ一年の癖に何であの席座ってんだよ。あそこは4年お気に入りの溜まり場だぜ」
「俺ら3年でも絡まれるのがこえーから近づけねえってのに。隣の4年めっちゃくちゃアイツのこと睨みつけてんじゃん」
 食堂での座る席にこれといった規則は無いが、学年ごとで固まる場所は大まかだが暗黙の了解があった。
 しかし周りの生徒達の言うように、ライは4年生ばかりが固まっている席に座っていた。
 それも4年に臆する姿勢など全く見せず、堂々と昼食をとっているのである。
 その行動は4年生への挑発以外の何者でもなかった。
30 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 23:46:23.92 ID:pt78.Ak0
「あの一年馬鹿じゃねーの」
 ぶっ飛ばされるぜ、と飽きれたように笑う生徒。
「いやでも、アイツあれじゃん? あの13基地防衛の」
「おっ、マジだ。あの有名人が相手じゃ4年とはいえ簡単にシメるわけにはいかねえよな」
「確かにそうだけどよ、あいつまだ一年だぜ? 調子乗っていいわけじゃねーだろ」
 教室のあちらこちらで、そんな会話が繰り広げられている。
 しかし、当の本人であるライは涼しげな顔で、むしろ注目を浴びて喜んでいるようだった。
 その隣では、4年生が今にも胸倉に掴みかかりそうな剣幕である。
 そんな4年をライは完全にシカトしていた。
 生徒の誰もがこれからどうなるのかと固唾を呑んだとき、ついに一人の4年生がライに声をかけた。
「おい一年。英雄だか何だかしらねえがよ、ここは学校なんだよ。ここで大人しく生活がしてえならここの規則に従え」
「は? 規則? なんだそれ」
 4年生の言葉をライは鼻で笑った。
「俺が知る限り食堂の席はどこに座ろうと自由な筈だけどな」
 4年生を嘲笑するように言うライ。
31 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/05(日) 23:50:16.39 ID:pt78.Ak0
「舐めてんじゃねえぞ。一年は一年らしく隅にいりゃいいんだよ!」
 4年生は怒りに任せてライの襟首を掴んだ。
「気にいらねえな」
 今まで余裕めいた表情を浮かべていたライだったが、一転して鋭い目で4年生を睨む。
「ここは4年しか座れねえって誰が決めたんだ? 年上なら実力が無くてもでかい態度取れんのかよ」
「実力が無い? 誰に向かって口きいてんだ、コラ」
「お前に決まってんだろ?」
「てめえっ!!」
 そう怒鳴ると4年生は高々とこぶしを振り上げた。
 しかし、ライは自分の胸倉にある4年生の手を取ると軽々とそれを捻った。
 そしてそのままライは赤ん坊の体を操るように、相手の体を地面に倒した。
 信じられない、という目つきでライを見上げる4年生。
「どうした先輩? 俺のことボコボコにしてくれんじゃねえのか」
「うおおおおおお!!」
 4年生は起き上がると、またもや力任せにライに殴りかかった。
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/06(月) 00:00:11.74 ID:7hJyjA.0
おお!来てる〜! 頑張って
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 00:04:56.98 ID:FKsi6WM0
 しかしライは涼しい顔でそれを避けると、4年生の足元に自分の片足をスッと伸ばす。
 4年生は空振りした勢いのままライの足に躓き、前のめりに地面に倒れた。
「その程度か雑魚。お前四年間何やってきたんだ? 格闘の基礎がまるでなってないぞ」
 そう言うとライは4年生の襟元を掴んだ。
「おい、立てよ」
 拳を振り上げるライ。
 だがそれを制するように、フレンが2人の間に割って入った。
「ライ、もう止めろ」
「あ? 邪魔すんじゃねぇよ!」
 ライは興奮した様子で言った。
「落ち着くんだ、ライ」
 フレンはそんなライをなだめた。
「ライ、確かに規則に席の規定なんて無いさ。だけど無理に4年の中に割って入る事もないだろう」
「うるせえ! どこに座ろうがそんなもん俺の勝手だ。俺の邪魔する奴は4年だろうがぶっ潰す! 例外なんてねえ。俺の足ひっぱんならお前もぶっ飛ばすぞ、フレン」
 そう言うとライはフレンから顔をそらし、食堂全体を見渡すようにして口を開いた。
「いいかお前ら! ここのトップは4年じゃねえ。MSの操縦でも、殴り合いでもこの学校のトップはこの俺だ! 年齢なんて関係ねぇ。俺がお前らのリーダーだ。 文句ある奴は直接かかって来い!!」
 大きな声でそう叫ぶと、ライはそのまま食堂を後にした。
 フレンが慌ててその後を追う。
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 00:05:53.49 ID:FKsi6WM0

「ライ、いくらなんでもさっきのはやり過ぎだよ。あれじゃあ4年生に後で何されるかわから無いぞ」
 廊下を歩くライに併走しながら、フレンがそう言った。
「そうしたらその度に返り討ちにしてやるだけだ。問題ねえよ」
「一対一ならいいさ。だけど集団で来られたらいくらライでも太刀打ちできないぞ」
「それでも俺は負けねえし、仮にその時やられてもその後で10倍返しにしてやんよ」
「ライ、頭を冷やせ」
 フレンのその言葉を聴くとライは足を止めた。
「わかってる。わかってるよ!」
 ライは悲痛な声で怒鳴った。
「本当は4年なんざどうでも良いんだ」
 ライは今までとはうって変わって、静かな声で話し始めた。
「俺は、一度もノビタにMSのシミュレーションで勝てやしなかった。あんな馬鹿でノロマなガキにだぜ? こんな屈辱は俺の人生で初めてだ」
 そう言うライの顔はとても悔しそうだった。
「俺はもっとあいつと一緒に戦いたかった。このままあいつが宇宙に行っちまったら、俺は、俺は……」
 ライの表情は辛そうだった。
 フレンもまた寂しげな表情でそんなライを見つめた。
「フレン、お前はどうしてそんなに冷静で居られんだよ」
「僕だって辛いさ。だけど一番辛いのはノビタ君本人だろう? 僕達が動揺したらノビタ君に余計辛い思いをさせてしまう。だから僕達のやるべき事は、笑顔でノビタ君を送り出す事だ。違うか、ライ」
 フレンがそう言うと、ライはそれ以上何もしゃべらなかった。
 フレンもただそんなライを見つめることしか出来なかった。
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:17:19.07 ID:FKsi6WM0
 朝。
 いつものクラスの朝礼の後、担任の教官がのび太を呼んで教壇の前に立たせた。
 ゴホン、と一度だけ教官が咳払いする。
「みんなも知っていると思うが、ノビが皆と授業を受けるのは今日で最後になる。宇宙行きの栄転だ。みんな拍手で送ってやれ。おめでとうノビ!」
 そう言って教官が拍手をすると、クラス中が大きな拍手を贈った。
「ノビ。お前はもともと皆よりも遅い入学で、、年齢も他の生徒よりずっとも年下だ。勉強はてんでダメ。体力も無いし、そもそも言葉を覚えるので精一杯だった。MSの操縦は素晴らしいが、それ以外は全くダメ」
 教官はそう言いながらしっかりとのび太の目を見据えた。
「正直言って、続きはしないだろうと思っていたよ。だが、ノビ。お前は今日までひたむきに頑張ってきた。必死に食らいついてきた。そんなノビを、俺は誇りに思う。ノビは我がクラスを代表する生徒だ!」
 教官の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「宇宙へ行っても頑張るんだぞ」
 のび太の肩を強く握る教官。
 のび太はそれに「アリガトウゴザイマス」と一言会釈して返した。
 やがて、生徒の代表としてフレンが花束とみんなのコメントが寄せられた色紙を渡すと、のび太は必死に涙を堪えながら皆に「アリガトウ」と言った。
 そうして朝礼が終わる。
 教官はいつもの表情に戻ると「最後だからといって特別扱いはしないからな、ノビ」と言って授業を開始した。
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:18:17.95 ID:FKsi6WM0

 最後だと思うと、何もかもが大切だった。
 いつもは長く感じる訓練も、今日は驚くほど時間が早く過ぎてゆく。
 気がつけば、最後のMSシミュレーションの授業になっていた。
 のび太にとってこの学校での本当に最後のシミュレーションとなる。
 教官が次々と今日のペアを発表していく。
 生徒の誰もが、のび太の対戦相手は誰なのか固唾を呑んだ。
 そして遂にのび太のペアが発表された。
「次、ノビタ=ノビ。お前はライ=バールと組め。使用するのは8番シミュレーターだ」
 瞬間、生徒達が沸いた。
 何せ、のび太の最後を飾る相手としてこれ以上ふさわしい相手はいない。
 生徒達が喜ばないはずが無かった。
 これ以上望むことの無い組み合わせである。
 しかし他のどの生徒達よりも喜んでいたのは本人達だ。
 のび太は決意のこもった目でライを見つめた。
 それをみてライはヘッ、と鼻を鳴らす。
「いい眼する様になったじゃねえか、ノビタ」
 ライは胸の中に沸く喜びと躍動、そして闘争心を隠し切ることが出来なかった。
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:19:04.79 ID:FKsi6WM0
「言っとくけどよ。俺はわざと負けて笑顔でお見送りなんて小ざかしい真似をする気はねぇ。今日こそは絶対にお前をぶっ倒す!」
 前面に戦士としての気迫を押し出すライ。
 だが、内に秘める戦士の血を隠しきれないのは、のび太にとっても同じことだった。
「ボクハ、マケナイ」
 のび太はそう言うと、シミュレーターに向かって歩き出した。

 もうのび太はシミュレーターに乗り込むのも手馴れたものだった。
 ボタンを押してハッチを開くと、座席に腰を下ろし体を固定するためのベルトをしっかりと括り付ける。
 そしてMS起動準備の操作を行うと、モニターに光が入り、『機種選択』の画面が現れた。
「今日はMSを自由に選べるのか」
 のび太はMSの一覧を順に見ていく。
 今回のフィールドは森林。故に使用されるMSは地上でも使用可能なものに限られる。
 ザクUJ型、グフ、ドム。そしてイフリートという機体もある。
 しかしのび太にとって、機種選びは考えるまでも無かった。
 運動性・耐久力、そして武装。
 それらのどれをとってもドムが秀でていた。
 イフリートもまたドムに引けを取らない非情に高性能なMSではある。
 しかしイフリートは近距離戦闘を主眼に置いた機体であり、遠距離戦闘を得意とするのび太とはあまり相性が良くない。
 さらに操縦システムも他の量産型とは異なり、資料いわく扱いづらい機体との事だった。
 のび太は使用MSをドムに設定すると、次の操作へと移った。
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:20:03.75 ID:FKsi6WM0
 
 
 シミュレーターのハッチの中で、ライは静かに震えていた。
 のび太との戦いへの喜びと高翌揚、そして興奮。
 この学校の生徒なら誰もが知っている通り、ライは自信家であり好戦的な性格でもある。
 今までこうして震える時、その原因はそんな彼ゆえの武者震いであるとライ自身思っていた。
 現に、今までのどの戦いでもそれは正しかった筈だ。
 しかし、この戦いは今までに明らかに違っていた。
 ライの胸に広がっている感情の正体。
 それは戦いへの喜びではなく、まして勝利への高翌揚でもなく、のび太と戦えなくなる事への悲しみと、そして負けることへの恐怖だった。
 ライ自身、その感情の正体にうすうす感づいていた。

「俺は……負けねえ」
 小さくそう呟くライ。
 俺は負けない。
 俺は誰にも負けない。
 俺は。
 俺だけは、誰よりも強くなくちゃいけないんだ。
 俺だけは、誰にも負けちゃいけないんだ。
 俺だけは、誰にも負けないと誓ったんだ!
 心の中で何度も反芻する。
 もしここで負ければ、おそらくはもうのび太とやり合う事は無いだろう。
 つまり、ここで負ければ俺は永遠にのび太を超えることが出来なくなっちまう。
 それだけは絶対に許され無い。
 ライはフィールドをマップで確認し、MS選択に移る。
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:21:33.73 ID:FKsi6WM0
「さて、どうするか」
 射撃を得意とするのび太がドムを選んでいる事は予想に難しくない。
 射撃が得意でなくとも普通ならドムを選ぶだろう。
 性能的には運動性能の高いイフリートが並ぶが、この機体は量産機ではなく、熟練したパイロットでなければ扱いづらい機体だ。
 本来ならば訓練生風情で性能を活かしきれる機体ではない。
 普通の生徒からすれば扱いなれている分、グフの方がいい結果を出せるはずだ。
 が、しかしそれは並みの訓練生の話である。
 俺様は誰だ?
 自問するライ。
 イフリートの運動性能はドムと比較してもずば抜けている。
 格闘戦主体という特徴もライの好みだ。
 何より相手に接近しての格闘戦というのが唯一ののび太への攻略法なのである。
 ライはイフリートに機種を設定させると、具体的にどのような戦略をとるべきか思案した。
 単純に考えてとるべき道は3つ。
 正面突破か回り込みか、待ち伏せか。
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:23:29.89 ID:FKsi6WM0
 正面突破は普通に考えて無謀だ。
 が、イフリートの運動性能を加味しても、のび太の射撃を正面からかわすことは不可能に近い。
 ならば回りこみはどうか。
 これは選択される地形により多きく左右されるが、今回の地形は森林。
 標高400m程度の小さな山もある。
 この山をうまく利用し相手の背後へ回り込む戦法は悪くない。
 待ち伏せはどうか。
 これもやはりこの山がキーポイントだ。
 また、木々が生えてる事も待ち伏せの戦法には有利に働くだろう。
 どの戦法で行くべきか思案するライ。

 答えは単純だ。
 その全ての戦法全てを扱えなければ実戦じゃ使い物にならない。
 要は、回り込んで、待ち伏せて、頃合が来たら突撃する。
 それだけの事。
 ライが心の中でそう呟くと、戦闘開始の合図のブザーがシミュレーター内に響いた。
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:24:08.53 ID:FKsi6WM0
 瞬時にパッシブソナーの適用範囲を最大まで広げつつMAPの確認をするライ。
 MAPは3km四方の地形であり、その中央よりやや北に標高500mの山がある。
 ライのイフリートが居るのはMAPの中心より西へ1kmほどの地点だった。
 次いでデジタル望遠であたりの様子を探る。
 思ったよりも山の丘陵は大きく、あたりにはなだらかだが幾重にも高低差があった。
 木々の高さもあり、丘陵の谷間に入ればMSの姿を隠せる。
 それを確認すると、ライは相手のパッシブソナーに感知されない程度のゆっくりとした動きでイフリートを進めた。
 ひとまず北東へ向かい、山頂手前の丘陵に隠れることにした。
 本来なら山の裏まで回りたいが、下手に動き回って相手に捕まってしまっては意味が無い。
 ソナーには相変わらずのび太機の姿は映らなかった。
 ライは「チッ」と舌打ちする。
 互い相手の姿を発見できなければ対応のしようが無い。
 それもこのまま相手が動かないのなら不利なのはライのほうである。
 のび太からすれば長大な射程を誇るジャイアントバズを持っているのにわざわざ自分から動く必要が無いのだ。
 見晴らしのよい場所に陣取り、ひたすら相手を待てばそれでよい。
 相手が接近してくれば、ソナーでそれを探知できる。
 あとはそれを射撃するだけの話だ。
 ならば、今の時点でこちらの作戦はただひとつ。
 どっちが先に動くか根競べだ。
 ライは丘陵の谷間にイフリートをかがませひたすらに待った。
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:25:40.76 ID:FKsi6WM0
 のび太もまたドムに乗り、谷底でライが動き出すのを待っていた。
 ライがどんな機体に乗っているかは分からないが、先に見つけてさえしまえばこのマップ程度の範囲ならすぐさま対応できる。
 のび太が居るのはMAPの中心より東北へ1,2kmの地点。
 MAPのほぼ端である。
 機体の後方にライが居ない事はデジタル望遠で確認していた。
 ならば注意を向けるべき方向は自然と限られる。
 のび太とて、もっとも注意すべきなのがマップのほぼ中央にあるあの山である事くらい分かっていた。
 だが相変わらずソナーにも視界にも反応が無い。
 そのままどれほどの時間が経ったのか。
 先に痺れを切らしたのはライだった。

 ドンという大きな音がMAP上に鳴り響いた。
 明らかに射撃翌用武器の攻撃音。
 ジャイアントバズともザクマシンガンとも違う音だな、とのび太は思った。
 こんな時はどうするんだっけな、と今まで授業でやってきたことを思い出すのび太。
「そうだ、音声解析だ」
 そう呟くと、のび太は先ほどの攻撃音を音声解析にかけた。
 結果はイフリートという機体専用のショットガンの銃声音。
 つまり、ライが乗っている機体はイフリートということになる。
43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:26:13.57 ID:FKsi6WM0
 イフリートといえば格闘戦主体の機体だ。
 今までほかのどの生徒も試みてきた事だが、ライもやはり格闘戦で仕掛けてこようというのだろう、とのび太は思った。
 しかし、それは要するにこのまま射撃を構えていれば絶対に勝てるという事だ。
 のび太は音の聞こえてきた方向に照準を合わせた。
 しかし、やはりライは出てこない。
 変わりにまたもやショットガンによる攻撃音が鳴り響いた。
 今度はさっきよりもやや西側から発せられたようだった。
 おびき寄せようとしているのだろうか。
 そうでなければああやってわざわざ自分の居場所を教えるようなことをしても何のメリットもない。
 そもそもライは正面きって敵とぶつかりたい、そういう男なのである。
 のび太はその事を十分承知だった。
 またもやショットがんの音が鳴り響く。
 ライはまたさらに西へ動いていたようだった。
 相手の挑発に乗るべきかどうか思案するのび太。
 だがこれは真剣勝負、なにも相手の思惑通りに突撃して行って格闘戦に持ち込む気は無い。
 だけど、のび太はこのまま引き分けに持ち込む気も無かった。
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:27:02.97 ID:FKsi6WM0
 
 ならばどうすればいいか。
 単純に考えて相手が格闘戦に持ち込めない距離を保ちながら、こちらが射撃できる位置まで回り込めばいい筈だ。
 のび太は相手が最後に発砲した位置を確認すると、そこへ回りこむべく大きく北へ回りこんだ。
 その時だった。
 突如北側の丘陵影からイフリートが飛び出してきた。
 それはのび太が予想していたイフリートの位置よりも遥かに東だった。
「やられたっ!」
 とっさに迎撃運動をとるのび太。
 しかしイフリートが現れると同時に発砲してきたショットガンがのび太のドムを直撃した。
 イフリートとドムの間に距離があった為、散弾の性質上たいしたダメージではない。
 しかしその衝撃でジャイアントバズの照準がずれた。
 そのちょっとのズレを見透かしたかのように、イフリートはとっさにのび太の砲撃をかわし、突撃してくる。
「俺がまだ西に居ると思ったか? 甘いんだよ!!」
 西に移動し待ち構えていると見せかけ、東に戻る。
 単純と言えばあまりに単純なその策にまんまと嵌ったのび太をライは一喝した。
 しかもどうやら、偶然にもショットガンによる攻撃はジャイアントバズの照準器を破壊したらしい。
 これならば格闘戦に持ち込める。
 イフリートの機動性をもってすればヒートサーベルで切りつけられる距離までもう少しだ。
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:28:42.91 ID:FKsi6WM0
 だが後一歩のところでのび太のドムの胸部から激しい光が迸った。
 ドムの胸部に内蔵されている拡散ビーム砲である。
 出力が弱い為それにより敵機を破壊する事は出来ないが、直撃すればモニターを焼きつかせる眼くらましにはなる。
 だが、ライはコックピットの中で不適に笑った。
「お前の動きなんざお見通しなんだよ!」
 ライのイフリートはとっさに片手で頭部のメインカメラをかばっていた。
 これによってメインモニタの焼きつきを防ぐ事が出来る。
 しかしそうする半面で、ライはそんな必要も無いと考えていた。
 ライにはのび太の次の動きも分かっていたのだ。
 ライの予想する次ののび太の動き。
 それはライを拡散ビーム砲で足止めし、即座に自分のドムを後方へ退避させる。
 そしてジャイアントバズの射撃が可能な程度距離をとると、照準黄による自動ロックではなく視認によって射撃をしてくるつもりだ。
 並みの生徒が相手なら、ライにとってそんな攻撃をかわすのは余裕である。
 がのび太にはそれを驚異的な早さで行なうだけの射撃センスがある。
 のび太に撃たせれば、避けるのは容易くない。
 ならば、なにも相手の好きにさせなければいいのだ。
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:29:38.23 ID:FKsi6WM0
 このまま前進し、ヒートサーベルで切りつける。
 それでのび太のドムは終わる。
 何も拡散ビームの光がやむのを待つ必要も無い。
 モニターなど頼らずとも、目の前の敵を切りつけることなど”俺にとっては”造作も無い。
 ライは迷うことなくイフリートを前に踏み込ませた。
 大丈夫だ、俺はやれる。
 ライには確信があった。
 例えどんなにのび太が射撃の天才だろうと、そんな事では揺らぐ事の無い確固たる自負。
 そう、のび太が射撃の天才と言うのなら


 ――紛れも無く、俺は格闘の天才だ。


「堕ちろっ!!」
 ライはそう叫ぶと拡散ビームの光の中でヒートサーベルを一閃した。
「何っ!!」
 ライはとっさにそう漏らした。
 ヒートサーベルがドムを切りつけたらしき手ごたえが無いのだ。
 拡散ビームの光が落ち、視界が戻る。
 やはり目の前にドムは居なかった。
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:30:37.65 ID:FKsi6WM0
「横に回りこんだのか!」
 おかしい、とライは思った。
 射撃に移るなら絶対に後方に下がるはずなのに、何故。
 しかしその思い込みこそがライの命取りだった。
 確かにのび太は射撃の天才である。
 しかし何ものび太はスナイパーというわけではない。
 MSが行なう白兵戦とはありとあらゆる局面が想定される。
 当然射撃だけをすればいいというわけじゃない。
 それはのび太とて同じである。
 ライがヒートサーベルを持った背後のドムに気づいたときには、すでにメインカメラへのヒートサーベルの一撃は避け切れなかった。

 のび太がシミュレーターから降りると、生徒達から歓声が沸いた。
「流石だぜのび太。やっぱりライに勝てるのはお前しかいない!」
「まさかのび太がヒートサーベルでライを倒すとはな!」
「よっ、エースパイロット!」
 のび太はそんなみんなに笑顔で返した。
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:31:20.50 ID:FKsi6WM0
 そんなのび太の前に、同じくシミュレーターから下りてきたライが現れた。
 ライは無表情な顔つきでのび太の眼を覗き込んだ。
 ライそのままのび太をジッと見つめている。
 回りの生徒達は皆次にライがどんな態度をとるのか固唾を呑んで見守った。
 なにせあのライの事だ。
 負けた事に逆上して怒りだしかねない。
 だけどのび太には分かっていた。
 ライはそんな事をする為に自分の眼を見つめているのではないと。
 お互い、同じ死線を越えたもの同士の通じる何かがあった。
「完敗だ」
 一言ライはそう言った。
 その目は何かを認めるようにのび太を見据えている。
「いいかのび太。宇宙に行っても絶対誰にも負けるな。お前が負けるって事はお前に負けた俺も負けるって事だ。そんなことは絶対に許さねぇ。いいか、いずれお前を倒すのは他でもねえこの俺だ」
 ライはのび太を見据えたままそう言った。
「約束しろ。誰にも負けるなよ」
 ライは厳しい口調だったが、ここに居るだれもがそれが恨み言なんかではない事を分かっていた。
49 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:31:54.97 ID:FKsi6WM0
「マケナイヨ」
 のび太は真顔でそう言うと、少し沈黙をおき再び口を開いた。
「ライニモネ」
 のび太は笑顔でそう付け加えた。
「なめやがって」
 ライもそれに笑顔で返した。
 そんな2人に周りの生徒達も大きな拍手を送った。
 教官もそんな彼らを優しい眼で見守っている。
「頑張れよ」
 ライはのび太にしか聞こえないくらいの小さな声でそういった。
 のび太もやっぱり小さな声で「うん」と答えた。

 そうしてとうとう訓練学校を出発るする日になった。
 いつもよりも随分と早い時間に起きて宇宙へ持っていく荷物を改めて確認するのび太。
 そうしている内にのび太の部屋へ教官がやってきて、のび太はそのまま校長室に案内された。
 校長室にのび太が入ると、校長は笑顔で彼を出迎えた。
 そして「君は本校始まって以来の逸材だ」と褒め称え、本来学校を主席で卒業するものだけに与えられる金の鷹勲章をのび太の胸へかけた。
 そうして色々と校長は話をしたが、のび太はあまりその話に興味をもてなかった。
 そんな事よりも、のび太はフレンやライ達のことばかり考えていた。
50 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:32:46.81 ID:FKsi6WM0

「アリガトウゴザイマシタ。シツレイシマス!」
 のび太はそう言うと一礼してから校長室を出た。
 そんなのび太の背中に「がんばりたまえ」と校長は声をかけて見送った。
 教官はいつものように感情を表に出さない顔でのびたを案内する。
 しかし内心では校長や上層部への怒りをひたすらに耐えていた。
 だがこれも仕方が無いことなのだ。
 軍という流れの中で、一人の人間の力など無力といっていい。
 教官には己の職務を全うする以外の選択肢は無かった。
 そうして教官はそのままのび太を軍用のジープへ乗せる為、屋外の駐車場へと連れ出した。
 この駐車場は軍用のヘリやMSの搬入も想定されている為にとにかく広い。
 言うなればコンクリートの平原だ。
 そんな駐車場を埋めるほどの数の車両が止まっているわけも無く、ジープの数はまばらだった。
 その中のひとつのジープの周りにだけ、なぜだか人だかりが出来ていた。
 のび太には顔をみずともそれが誰かなんて分かっていた。
 もちろん全員初学年A組の生徒である。
51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:33:13.09 ID:FKsi6WM0
 のび太がジープへ歩いていくと、みんな「おめでとう」という言葉と共に拍手でのび太を迎えた。
「ミンナ、ホントウニアリガトウ」
 皆の前に立つと、のび太は心のそこからみんなにそう言った。
 みんな各々にのび太へ応援の言葉を返す。
 そんな中、フレンが一人前へ出た。
 その手には花束を持っている。
 ゆっくりとフレンは口を開いた。
「ノビタ君、例えどこにいようと君は僕達の親友だ。絶対に忘れないよ」
「アリガトウ。ボクモゼッタイニワスレナイ」
 そういってクラスメート一人一人を見渡すのび太。
 みんなひとりひとりと思い出がある。
 こうして最後にみんなに会えて本当にのび太は嬉しかった。
 ただ、ライの姿だけここには無くて、それもまたライらしいなとのび太は思った。

 そうしてのび太は皆に見送られてジープに乗り込んだ。
 みんなはのび太のジープが見えなくなるまで、ずっと「ジークジオン」と声を張り上げていた。

52 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/06(月) 22:36:59.13 ID:FKsi6WM0
今日はここまでです!

あと何度もしつこいけど皆本当にありがとう!
スレたった当時受験生だった人が今は大学生とかなんか感慨深いです。
あれから色々変わったなぁ…
53 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/07(火) 13:32:43.15 ID:BUG7QyYo
乙!!どんどん頼む!
54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/08(水) 13:03:47.09 ID:4.oPkNU0
作者様!お待ち申し上げておりましたっ!
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/11(土) 20:00:08.83 ID:xjiYhv20

 ジャブロー。
 それは南米アマゾン川流域の地下に広がる地球連邦軍の大本営である。
 巨大な鍾乳洞を無数に連結させた巨大な基地には地球連邦軍総司令部が入っており、大本営の名に恥じぬだけの防衛能力を備えている。
 また、上空からの視認ではその入り口を見つけることが出来ないほど巧みにカモフラージュされており、ジオン側はその進入経路の解明に躍起だった。
 さらにジャブローは兵器の開発・生産能力や食料自給能力まで備えており、名実共に地球連邦軍の最大かつ最強の要塞である。

 そのジャブローの潜水艦用ドッグにこの日もまた一隻のU型潜水艦が入港した。
 即座に2人のジャブロー守備隊の兵士がドッグの橋渡し部の前に走りこんでくる。
 片方の兵士が手に持ったトランシーバー様の通信機器でU型潜水艦の所属を確認した。
「ただいま貴艦のドッギングを確認。貴艦はカラカス基地所属のU32514で間違いありませんか」
 兵士の言葉に対し、トランシーバーから応答が帰ってきた。
『U32514で間違ありません』
「了解です。それではどうぞこちらへ」
 兵士がそう言うとジョウコウの上部ハッチが開いた。
 中から出てきたのは5人の人間で、その内3人が子供だった。
 残る2人の大人も一人はいかにも兵士らしい風情だが、もう一人の方は兵士にしては頼りない痩躯で肌も白い。
 それでも肩章を見たところ大尉であるらしかった。
 おそらく、兵士は兵士でも技術士官といったところだろう。
 変わった連中だな、と守備隊の兵士達は思った。
 ジャブロー守備隊の2人には、カラカス基地からやってきた彼らについての情報は殆ど与えてられていなかったのだ。
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/11(土) 20:09:08.48 ID:xjiYhv20
「やあ、出迎えご苦労。私はカラカス基地司令部所属のショー=ボーン大尉だ。よろしく頼む」
 色白の大尉はそう名乗ると笑顔で右腕を差し出した。
「はっ、こちらはカーバ一等兵であります」
 ジャブロー守備隊の一人はそういって手をとった。
「同じくホーア二等兵であります」
 もう一人の守備隊も同じく手をとる。
 そうして互いに眼を合わせると、ふと兵士の目が少年達へと向けられた。
 守備隊の兵士が少年達について尋ねようかと一瞬だけ戸惑った瞬間、色白の大尉の方から口を開いた。
「君はこの少年達について何か聞かされているかね」
 守備隊の兵士はそう言われ、男に連れられてきた3人の子供を見た。
 東洋人らしき黒髪の男の子と、貴族のような髪型をした金髪の女の子と、明るい茶色をしたショートヘアーの女の子。
 正直、兵士にはただの子供にしか見えなかったし、そもそも子供達がこの潜水艦に乗っている事すら聞かされていなかった。
「いえ、私は皆様が重要な任務に携わる方々という事意外は何も聞いておりません」
 兵士は一瞬言葉に窮したが、正直にそう答えた。
「そうか」
 そういうと大尉は子供達の肩に手を置きニカッと笑った。
「それなら覚えておくといい。この子達はいずれアムロ=レイをも超える救国の戦士になるかもしれないのだからね」
「は、――戦士、ですか?」
 元気良く返事を返したもの、兵士にはいったい何の事だか分からない様子である。
 そんな兵士の察するように大尉はまた笑った。
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/17(金) 23:06:04.33 ID:K1uY0bs0
何だこの空気………
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/18(土) 12:43:59.61 ID:UkmjMwDO
久しぶりにまとめサイト覗いたら復活してるしwww
支援
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/18(土) 23:40:38.21 ID:byccGHU0
始まってたのかwwww
支援するww
60 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:42:02.91 ID:myFL5KE0
「ははは、ピンとこんかね。ニュータイプなんだよこの子達は。君もニュータイプという名前くらい聞いたことくらいあるだろう。わが軍ではあのアムロ=レイもニュータイプだ」
「ニュータイプ、ですか」
 兵士は戸惑った様子で相槌をうつ。
 そんな彼らの様子を見かねたように、大尉に付き添ってカラカスからやってきた兵士が大尉を小突いた。
「いいんですか大尉。そんなにベラベラと話してしまって」
 小さな声で耳打ちする。
 なにせNTの少年達に関する情報は軽々しく口にするなとスカルチノフ司令からの直々の御達しなのだ。
 しかしそんな事を大尉は全く気にしていないようだった。
「いいんだよ君、例え今隠したところですぐに世界中がこの子達の才能に気づくことになるのだから」
 そう言ってガハハと大尉は大きく笑った。
「それではそこの君、早く我々を案内してくれたまえ」
 大尉がそう言うと、防衛隊の兵士は「はっ」と返事を返し彼らを基地の内部へと案内した。
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:42:56.42 ID:myFL5KE0

 どれほど歩いただろう。
 とにかく、ジャブローというのは巨大な基地である。
 すでに出来杉達は車両を用いて10分ほど移動し、車両から降ろされたと思うとその上さら10分ほど歩かされている。
「さっきまで酷い揺れの潜水艦に乗せられて、今度はウォーキング? もう無理。疲れたわ」
 ツンは心底疲れた様子でそう言った。
「ね、あなた達もそう思うでしょ? エイサイ、アリア」
 ツンはそう言って2人の顔を覗き込む。
「あたしも疲れたよー、ツンちゃん」
 アリアもへばった様子で言った。
「きっともうすぐだよ。もう少しだけがんばろう」
 出来杉はそんな二人に笑顔を見せながらそう励ます。
「もう、エイサイはこんな時まで優等生ぶるんだから」
 ツンはそんな出来杉に不満げの様子だった。
「いい子ぶるのなんて必要な時だけでいいのよ。こういう時は自分に正直になりなさい」
「ツンちゃんの言うとおりだよ、エイサイもたまには『疲れたー』とか、『だるいー』とか文句言わなくっちゃ」
 そんなツンとは対照的に、アリアは優しい口調で返す。
「はは、なにも優等生ぶってるつもりじゃないよ。我慢が少しだけ得意なだけだよ」
「その口ぶりが優等生だってのよ」
 ツンはやはり不満げだった。
62 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:46:48.84 ID:myFL5KE0
「ところで、ねぇ、カーバ一等兵さんでしたっけ? あとどれくらいで目的地に着くのかしら」
 わざとらしく大人ぶった口調で、ツンは守備隊の兵士にそう尋ねた。
「え、あ。そうですね、あと10分ほどで着くと思いますよ」
「いやあ〜! あと十分も歩かなきゃならないなんて」
 やってらんない、と嘆くツン。
「デーレラ、少し静かにしていたまえ」
 そんな彼女を見かねてショー大尉がツンを諌めた。
 それに「チェッ」と拗ねた様子のツン。
 守備隊の兵士には、とてもこの子供たちが救国の戦士などとは信じられなかった。

 ようやく目的の場所に着いたのは軍用港から移動を始めて30分以上が経過していた頃だった。
 ふと、基地施設の狭い通路の行き止まりで兵士は歩くのを止めた。
「こちらです皆さん」
 そう言って彼が案内したのは基地施設の中の小さな扉だった。
 扉の外見を見るに、とても他の基地からきた人間をもてなすような部屋には見えない。
63 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:47:54.52 ID:myFL5KE0
「やれやれ、天下のジャブローだから大理石のオフィスに出迎えくらいはしてくれると思ったのだが」
 などと冗談交じりに大尉が文句を垂れる。
 ここには大理石どころか鉄とコンクリートしか見当たらなかった。
 守備隊の兵士が部屋の扉の通信ボタンを押す。
 すると通信機器のスピーカーから『はい』という言葉が聞こえた。
「Dブロック防衛中隊所属のカーバ一等兵と申します。ただ今カラカス基地からお越しいただいたショー=ボーン大尉とそのお連れ様を案内してまいりました」
『ご苦労。扉のロックを開けるから中にお連れしてくれ』
「はっ」
 そういうと先方は通信の回線を切った。
 それと同時に扉のロックが解除されたようだった。
「どうぞ中へ」
 兵士が扉を開き大尉たちを案内する。
 大尉たちは誘われるままその中へと入っていた。
64 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:49:28.26 ID:myFL5KE0
 部屋の中には背の高い男がいた。
 見たところ30代くらいの、まだまだ若さを感じさせる体躯の良い男だ。
「皆さん始めまして。私がこのジャブローでNT研究の責任者をやっている、グン少佐です」
「ショー=ボーン大尉であります。こちらこそよろしくお願い致します」
 ショーに続いて彼の付き添いの兵士が敬礼をした。
「レーマー軍曹です。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
 そう言ってグン少佐は2人に改めて笑顔を送った。
「それで、この子達が件の」
 グン少佐は今度は出来杉達に目をむけて言った。
「はい、NT適正者の子供たちです」
 ショー大尉がそういうと、出来杉たちも順に挨拶をした。
「流石にNTの素質があるだけあって皆良い目をしているね」
 グンがそういうと、出来杉達はグンに真剣なまなざしを向けた。
「そう緊張しなくてもいいよ、遠慮せずそこへかけたまえ。大尉と軍曹もどうぞ座ってください」
 そう言ってグンは全員をソファーに座らせ、自らもソファーに腰を下ろした。
65 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:52:46.99 ID:myFL5KE0
「せっかく足を運んでもらったのにこんな小汚いところで申し訳ないね」
 グンは苦笑交じりににそういった。
「まったくですよ少尉。なにせカラカスは殆ど難民キャンプみたいになっとりますからね。ジャブローなら高級ホテル並みのもてなしを受けられるんじゃないかと思ってましたが」
 ショーがそう言うとグンは高々と笑った。
「それは失敬した。いやなに、確かにジャブローには高級ホテル並の施設もあるけれどね。しかしそういう処は全て総司令部の幹部達に占有されてしまっているよ。私みたいに幹部から疎まれている人間にはこの程度の施設しか与えられないんだ」
「疎まれてる、とはどういうことです。今回のNT研究はレビル将軍直々の計画だと伺いましたが」
 レビル将軍と言えば、今大戦の実質的総指揮官だ。
 そのレビル将軍直下の士官が左遷的な扱いを受けるのはおかしい、とショーは思った。
「確かにレビル将軍の勅命で私は動いているが。しかしジャブローも一筋縄じゃない。ジャブローに篭っている将校達と第一線で指揮を執り続けているレビル将軍とではだいぶ認識の差があるんだ」
 そう言ってグンは自虐的に笑った。
「認識の違いといいますと」
 ショーが尋ねる。
「要するにジャブローの古株はNTなんて信じていないのさ。レビル将軍のように広い見地を持った将官は稀だよ。MSの量産計画が軌道に乗っただけまだマシだが、まったくレビル将軍のような将官がいなければ我が軍はどうなっていたか」
 グンの表情は険しかった。
 その表情からも、総司令部の内部がショーの想像以上に混乱しているのが見て取れる。
「ま、そういう訳もあって我々は片隅でほそぼそNT資質者を収集しているわけだ。本部からは正式にNT研究機関を設立するほどの金も権限も回ってこない。実際、現状ではレビル将軍やレビル派の高官の名で出される特務として活動するのが我々の限界だ。無論、いつまでもこのまま黙っているつもりも無いがね」
 そこまで言ってグンはその場に出来杉達が居る事を思い出した。
 苛立ちながら話をしている自分に気づき、グンは熱くなりすぎた自分を恥じた。
66 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:55:06.77 ID:myFL5KE0
「すまないね君達。若干口が過ぎた。確かに現状の連邦ではNT研究に対する体制が整っていないが、しかし必ず時は来る。君達は何も不安になる必要は無い。君達は私が責任を持って必ず送り出す」
 そう言うとグンは書類を取り出した。
「私達は互いに時間が無い。迷っている暇は無いんだ。ジオンに決定打を打たれる前に我々が先手を取らなければ、連邦に未来は無いのだよ」
 グンはショーや出来杉達を真剣な眼差しを向けた。
「本題に入ろう。件のルナツー行きだがね、君達にはここに2日ほど滞在してもらった後ルナツー行きの戦艦に乗ってもらう事になる。君達が搭乗する船については極秘事項の為詳細は控えさせてもらうが、頑丈な船だ。ソラへ行くに当たっての心配はない。ルナツー到着後は向こうの責任者から改めて説明があるだろう。今のところはルナツーに長期滞在する事になると思うが、場合によってはサイド7へ移るかもしれないな。とにかくだ、君達の本格的な訓練がそこから始まるという事だ」
「あの」
 アリアがおもむろに口を開いた。
「何だい」
 グンが優しく返した。
「訓練というのは具体的にどのような事をするんですか」
「ふむ」
 それを聞くとグンは考え込むように腕組をした。
「実NTについて我々は分からない事だらけだ。はっきりと言えばどのような訓練を施すべきか手探り状態だ。君達は宇宙での生活に慣れることだけ考えればそれでいい。それがひと段落すれば君たちの先輩であるWB隊のデータを参考にシミュレート訓練を行なうだろう。しかし、それはもう少し先の話だ」
 彼の説明を聞いても、アリアも出来杉もツンも不安を払拭できなかった。
 むしろ釈然としない説明に不安が増すばかりである。
「大丈夫だ、我々が全力で君達のバックアップを行なうから。君達は安心して空へ行けばいい」
 しかしグンがそう言ってもアリア達の顔は一向に晴れなかった。
67 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:57:35.92 ID:myFL5KE0

 それから30分ほどグン少佐によりルナツーへの移送手順を詳しく説明され、出来杉達はそれぞれ分厚い報告書を手渡された。
 グンからは各自それらを読んでおくようにと言われると、出来杉達はそれぞれうんざりしたように苦笑いを浮かべた。
 そうしてそろそろグン少佐の施設から出る頃合という時、グンの無線が鳴った。
「こちらグン少佐」
 そういって無線をとると、グンはいくつか無線と言葉を交わし、驚いた表情をした。
「本当に手配が出来たのか。よかった、WBがジャブローに到着していたのは知っていたが、彼らは多忙だからな」
 そう言ってグンは再びいくつか言葉を交わすと無線をきった。
「いい知らせだ」
 グンは出来杉達へ顔を向けると笑顔でそう言った。
「もうすぐここに連邦を代表するNTが来てくれる」
「NTというとまさか」
 ショー大尉は興味深げな顔で言った。
 それにグンは得意げな表情で返した。
「そうだ、アムロ=レイだよ」
68 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/19(日) 23:59:03.55 ID:myFL5KE0
今日はここまでです。
不定期で申し訳ない!
69 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 00:43:52.95 ID:lrwMcvwo
乙です!!
70 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 02:38:51.65 ID:N67Fvsoo
。あなた方は覚えていないのか。 819 わたしが五千人の間で五つのパンを裂いた時

顔を左右に動かし、妹の頭を抱える様にしながらしばらくそうして唇を擦り合

だ。

またのの字を描く。

やんっ、あっ、やぁっ激し、あんっ激しいよぉ、ああっあんっ、

みたいに、気持ち良くなりたいんだろ?



あっ、あっ、ああっあんっ、あんっ、ああんっ



かせはばらばらに壊されてしまったからである。だれも彼を従わせる力を持っていな
                 
71 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 03:35:34.65 ID:a8SmOj6o
あれから自分の部屋に戻った司郎は、これからどうすべきか悩んでいた。

りつかれていた人,レギオンを宿していた人が服を着て,正気で座っているのを見た

に、突入した。速くなる。凄くなる。





あふっ、あっ、ああんっ駄目、あんっ駄目だよぉっやっ、やぁっ

の言うことを聞いて,理解しなさい。 715 人の外から入って来るもので,彼を汚す

,五十人ずつ,また百人ずつまとまって座った。 641 彼は五つのパンと二匹の魚を

の不信仰のために驚き怪しんだ。

あっ
                  
72 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 04:38:03.68 ID:Ds2pqwso
この方はどなただろう。

―それは淫儀であった。

へと近づけて行く。

みんなは彼を死に値するものと決定した。 1465 ある者たちは彼につばをかけ,顔を

―それは淫儀であった。





無効にしている。あなた方はこうした事柄を数多く行なっている。

った。極上の巨根を、ぬるぬるの洪水の中に挿れられた。牝淫水の泉に、入って

水の流れる音が止まり、風呂場のドアが開く。
       
73 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 05:24:45.27 ID:MMblxXMo
妹が甘い声を上げながら、体をピクピクと震わせる。

を追い出し,大勢の病気の人に油を塗って,その者たちををいやした。 614 ヘロデ

そう思うと立ち上がり、妹の部屋へ向かう。

そうだっ俺はっしてるぞっ

う言った。村に入ったり,村のだれかに知らせたりしてはいけない。

言った,あなた方は,自分たちの伝統を保とうとして,実にうまく神のおきてを拒

それに入れるまでは気持ち良さそうによがってたあれだけ感じてたく

柔らかい何て柔らかいんだ

そう言いながら妹が腰掛けているベッドに近づいていく。

激しく擦れ合う肉と肉が快感を呼び起こしていく。
                 
74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 06:56:28.68 ID:5l0pWVYo
あっお兄ちゃんもっとぉっあぅっ、あっ、や

それは神に捧げる肉感であった。

いいじゃないかっ俺は真奈美が大好きだぞっ

ねない超丈夫な不死の体。――究極の生命体。

胸がプクッと膨れ、全体的に肉が付き、抱いたら凄く柔らかそうだった。

、プラズマさえを生じながら、成層圏を突き破り、飛

530 すぐにイエスは,自分から力が出て行ったことを自分の内で気づき,群衆の中で

アナルに恒星来る!マ○コに超新星来る!はひぃ!ブラックホール生じちゃう

またのの字を描く。

とてもではないが自立して生活はできない。
            
75 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 07:44:31.58 ID:zs435sIo
司郎は腕を掴むと、力を入れて広げようとし、妹も負けじと隠そうと逆らう。

1517 紫の衣を彼にまとわせ,イバラの冠を編んで彼にかぶせた。 1518 彼にユダ

彼らに汚れた霊たちに対する権威を与えた。 68 彼らに,旅のためにつえ一本のほか

だった。

さ、触りたい舐め回したい胸を揉みたい

ば,わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになったのですかという意

うぐっ、いっ、いやっ、うぅっ



と言っている。 712 こうして,あなた方はもはや,その者が自分の父や母に何もし

はひっ!!!!
           
76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 08:32:15.07 ID:oKWElQko
ていた。 56 彼は,遠くからイエスを見ると,走って来ておじぎをし, 57 そして

ああ何て何て気持ちいいんだぁ

妹は以前の様に苦痛の声は上げていない。

ロケットより凄まじく、素晴らしく超的に、ぐんぐん急加速し、大気を引き裂き

た右に、といった具合に両方の乳首を忙しく吸いたて

彼らは彼に尋ねた,わたしたちが出かけて行って,二百デナリ分のパンを買い,彼

れこんでいくのだった。



究極の魂がそこへ帰還した。

その心はわたしから遠く離れている。
         
77 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 09:21:44.07 ID:TVJ6L/Yo


多分ずっとそういう生活が続くと思う

あっイっちゃうぅっああああんっ!



いんだ俺、お前に夢中なんだよぉ



,盗み, 722 強欲,邪悪,欺き,みだらな欲望,よこしまな目,冒とく,うぬぼれ

真奈美ぃっ真奈美ぃっ

終わってしまうと、妹を対象にしてオナニーしている事に嫌悪感を感じる。

が欲しいわけじゃない。お兄ちゃんに苦しんでもらう
            
78 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 10:12:55.72 ID:hd/hnjIo
子供の手を取って,タリタ,クムと言った。これは訳せば,少女よ,あなたに

慌てて妹の肩に手をかけ尋ねる。

い集めた。 89 食べたのはおよそ四千人の者たちであった。それから彼は人々を去ら

以前した時は泣いていたのに、今度は平気そうな感じなのでホッとする。

よぉっはぅっ、あっ、いやぁんっ

わたしに還ってくる。

がせて,もとの衣を着せた。彼らは彼をはりつけにするために引いて行った。 1521



代はしるしを求めるのか。本当にはっきりとあなた方に告げるが,この世代には何の

もっと感じさせ、絶頂に導きたい。
                
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 12:22:29.27 ID:vffJrdIo
時刻も遅くなった時,弟子たちが彼のもとに来て,こう言った。ここは寂しい場所

何にせよ家族が不幸になる事は確かだ。

自分も服を脱いで裸になると、のしかかかっていく。

宙に達した。大宇宙との合一。その極限を果たし、究

やっぱり謝るしかないよなひたすら

上に倒れこんだ。

ず,ただ少数の病気の人たちの上に手を置いていやしただけであった。 66 彼は彼ら

妹が残念そうな声を上げた。

今日もいつもの様に、妹に睨まれながら部屋の掃除をさせられている。


               
80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 16:22:45.59 ID:VK5lwUIo
妄想の中でさんざんしてきた行為がグルグルと頭の中を駆け巡る。

水の流れる音が止まり、風呂場のドアが開く。

あんっ、やっ、はぁんっしたくないよ、やぁっ

に対して哀れみを抱く。彼らはもう三日もわたしと共にいるのに,食べる物を何も持



ことができるものは何もないが,人から出て行くものが人を汚すのだ。 716 聞く耳





腰を強く叩きつける。

うんふっ!!はわあ!あぁんああ〜〜〜〜!!!!
                
81 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 19:41:33.91 ID:tsYmUfAo
始める時は興奮して気にならないが、

ははっ真奈美は可愛いっ最高だっ
は,敬われないことはない。 65 その場所では一つも強力な業を行なうことができ
たは三度わたしを否認するだろうとイエスが自分に言った言葉を思い出した。それ
たちと律法学者たちは彼に尋ねた,あなたの弟子たちが年長者たちの伝統によって
妹は必死に体を後ろに動かして逃げようとする。
                    
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/20(月) 22:10:39.29 ID:Qmw4p02o
どった。
それを妹は荒々しく跳ね除けた。

ます。健康になって生きられるよう,どうかおいでになって,娘の上にあなたの手を

言葉で否定しても、隠しきれない快楽の声が認めてしまっている。
だがそれでいい。

とした。
そんな事はどちらでも良かった。
真奈美ぃっ真奈美ぃっ
――真っ白になる感覚――
              
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 01:01:14.65 ID:XMSAPUso
うことも信じなかった。

ズブズブと肉棒が奥へと入り込んで行く。
それに、こんな気持ちのいい所から抜いて射精するなど考えられない。
られて、それも舌と唇にしゃぶられる。嬲られる。責めは、肉も魂も、両方だ。
る濡れる溺れる壊れる産まれる廃れる溶ける膨らむ勃起する!!!!大量射精!
、やぁんっもうイく、あっもうイくのぉ、あ
ち、違うっ違うもんっ
舌を押し込み、妹の小さな舌を見つけると絡め、吸い上げる。
視線を胸に向けると、以前自由に揉みしだいたつつましい膨らみがシャツを持ち上げており、
太ももに唇を押し付けると、チューっと吸い、舐め上げる。
             
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 02:37:59.02 ID:vDhyo02o
>>68
ディも何も練り溶かされてゆく。全身が生殖器だ。肉
だ。
郎は自分が限界に達したのを認識した。
に連れて来た。人々は,その人の上に手を置いてくれるようにと懇願した。 733 イ
ディも何も練り溶かされてゆく。全身が生殖器だ。肉
腰を強く動かす。

ボンヤリとした声で妹が尋ねてくる。
来ると,すぐに汚れた霊に取りつかれた男が墓場から出て来て彼に出会った。 53 こ

くる。性器に入ってくる。
          
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 04:08:27.56 ID:y60FAK2o
>>24
胸がプクッと膨れ、全体的に肉が付き、抱いたら凄く柔らかそうだった。
で、何かが胎動している。
そして神との最終合一。究極融合。超合体――娘は神を呑み込み、あるいは神に
そう言って乳首に吸い付くと、舌でレロレロと転がす。
はわたしであり犯される者もわたしであった。わたし
               
86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 05:33:42.91 ID:7zXnbTQo
それは悲しいことだ。
妹は驚いているようだ。
バタつかせても、ただもう蕩けるだけ。人の形を失うほど、快楽は凄まじい。ボ
む。握り締める。いや、片手では到底掴み切れない
612 彼らは出て行って,人々が悔い改めるために宣教した。 613 彼らは多くの悪霊
とがおできになります。この杯をわたしから取り除いてください。それでも,わたし
越えて、封印を解いて、宇宙レベルの巨神へと超巨大
621 すると,都合の良い日がやって来た。ヘロデが自分の誕生日に,自分の高官たち
ああ何て何て気持ちいいんだぁ
自分に起こったことを知り,恐れて震えながら,やって来て彼の前にひれ伏し,すべ
る。噴射している。漏らしている。母乳が、乳腺が爆
指についた愛液を妹の目の前に見せ付ける。
              
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 06:56:32.50 ID:R.z3lwEo
以前した時は泣いていたのに、今度は平気そうな感じなのでホッとする。
彼に飲まそうとして,彼をそのままにしておけ。エリヤが彼を降ろしに来るかどう
唇を離して体を起こすと、名残惜しそうにこちらを見上げる妹のせつなげな顔が見えた。
起き上がると頭を下げる。
らである。 1615 彼は彼らに言った,全世界に出て行って,全創造物に福音を宣教
その事に興奮が高まった司郎は、最後とばかりに腰を激しく動かしていく。


おにぃちゃん止めてお願い
            
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/21(火) 08:29:22.86 ID:EdSlvU.o
>>12
ろうか。 1464 あなた方は冒とくの言葉を聞いたのだ!あなた方はどう思うか。
ロデ自身が,自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのために,人を遣わして,ヨハネを
や水差しや銅器や寝いすを洗うことなど,他にもたくさんある。 75 ファリサイ人
え?
人たちと共に座っており,たき火で身を暖めていた。 1455 さて,祭司長たちと最高
同時にゾクリとした興奮も覚えた。

星の聖泉で禊みそぎを済ませた裸体は、処女肉とは思えぬ豊かな張りがあっ
られて、それも舌と唇にしゃぶられる。嬲られる。責めは、肉も魂も、両方だ。
              
89 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/04/25(土) 10:55:52.45 ID:o.fwG0ko
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwww
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/26(日) 03:19:36.90 ID:Dz2vK6AO
復活してやがるwwwwwwなんてこったwwwwww
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/04/27(月) 00:35:55.67 ID:PzL4mMAO
ジャブローちゅうことはアッガイたん大活躍ってことだよな
92 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/02(土) 22:38:06.99 ID:8Gd22/Mo
ついに宇宙へと旅立つノビタ
時を同じくしてニュータイプとの邂逅を果たすデキスギ
運命は2人をさらに過酷な境遇へといざなう

次回、機動戦士ガンダムのび太の一年戦争
「○○○○○」

君は生き延びる事ができるか?
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/04(月) 12:51:52.31 ID:fGGW7d.o
復活してたwwwwめでたいwwwwwwwwww
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/05/10(日) 10:27:41.67 ID:MrgQtbQo
支援
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/11(月) 04:31:33.19 ID:VLuGcMAO
また三年の眠りについたか?
96 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/05/11(月) 16:00:55.45 ID:ngNdzbgo
今書きため中だと思いたい
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/05/14(木) 04:23:47.63 ID:pb7uewDO
ようやく追い付いた。
さて、また最初から見ようかなw
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 02:20:30.83 ID:mnMWaFs0

 どれほど経っただろうか。
 施設のドアの通信機のブザーが鳴った。
 グンがそのブザーに出ると、施設のドアが開いた。
 施設の中にいる全員がその方向に視線を向ける。
 ドアの前に立っていたのは守備隊と思しき兵士と、彼に連れられて来た青い軍服の少年兵だった。
 栗毛色のパーマがかった髪に、十代らしいあどけなさのある顔をしている。
「WB隊所属のアムロ=レイ曹長です」
 そう言ってアムロは頭を下げた。
「ようこそアムロ軍曹。僕はここの責任者のグン少佐だ。そしてこの子達が……」
 そう言ってグンは出来杉たちを手のひらで指し示した。
 とっさに出来杉達は姿勢を正す。
「この子達が君と同じ素質を秘めた子供達だ。君達、自己紹介をしたまえ」
 グンがそう言うと3人とも「はい」と答えた。
「エイサイ=デキスギと申します。よろしくお願いします」
「アリア=シェイナーです。どうぞよろしくお願いします」
「私はツン=デーレラです。よろしくお願いします」
 3人がそう言うと、アムロは戸惑ったような表情をした。
「よろしくお願いします」
 アムロもまたそう返す。
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 02:24:52.85 ID:mnMWaFs0
「今回君達を引き合わせたのは他でもない。NTであるアムロ君と同じ素質を持ったこの子達を合わせることで互い何か感じるものがあればと思ってね」
「はあ。感じるもの、ですか」
 アムロは一応相槌を打ち、少年達を見渡した。
 NTと言われて紹介されたのはまだ10歳前後の子供である。
 アムロはここにいる兵士達に言いようの無い嫌悪感を覚えた。 
 アムロ自身、民間徴用された十代の少年兵である。
 しかし、彼はここに来るまでに数多くの仲間の死を体験してきている。
 多くの敵兵を殺し、リュウやマチルダなど多くの仲間も失った。
 そうして凄惨な戦いを生き抜いてきた彼に与えられた称号は何か?

 ――ニュータイプ、だ。
 マチルダさんやレビル将軍はNTを認識力の向上した人間、つまり人類の革新と説明した。
 だがアムロは知っている。
 軍人達の殆どが、NTというのをMS戦闘の便利屋程度にしか考えていない事を。
 彼らにとってNTとは戦車やMSのと同じ様に兵器の一種に過ぎないのだ。
 そんな彼に、グンは目の前にいる少年達にもNTの素質があると言った。
 それがどういうことか、わざわざ説明されなくてもアムロには分かる
100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 02:29:31.73 ID:mnMWaFs0
「みんな、まだ随分若いようですけど」
 毒づきたくなる衝動を抑えながらアムロは言った。
 そうして3人の子供達に視線を向ける。
 その瞬間、アムロは不思議な感覚に襲われた。
 少年達にとっても同じだったのだろう。
 少年達もまたアムロの目を真っ直ぐに見つめた。
 互いに瞳を覗き込む。
 その間、彼らにはまるで時間の流れが止まっているように感じられた。
 懐かしいような、それでいて斬新な不思議な感覚。
 ふと、アムロの脳裏に不思議な情景が浮かんだ。
 花園に佇み花の中に埋もれる甲冑の青年と、その周りを遠巻きに飛び回る一羽の小鳥の姿である。
 しかし、それはまるで霞む蜃気楼のように朧であっという間にそのイメージは消えてしまった。
 アムロにはそれが何を意味するのかは分からなかった。
 ただ、アムロの経験上こういう感覚を感じたときはあまりよくないことが起こる。
 今の情景がそういった予知的なものでは無ければいいのだが、とアムロは思った。
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/05/16(土) 02:31:15.24 ID:qmowjQAO
こんなスレがあったのかww
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 02:31:25.71 ID:CRSOOPgo
おお、支援
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 02:47:32.97 ID:mnMWaFs0

「何だろうこの感じ」
 アリアは小さく呟いて出来杉を見た。
 アリア達もまた、アムロと同じように不思議な感覚に襲われていたのだ。
「分からない。なんだろう、これは――」
 アムロと出来杉達は初対面である。
 しかし出来杉達はアムロに対して、なぜか昔から知っているような親近感を感じていた。
「どうだい、君達は互いに何かを感じるかい」
 アムロ達の様子がおかしくなったのを見て、グンが声を発した。
 しかしグンの問いかけには4人とも答えなかった。
「私としてはぜひ、NTたる君にこの子達の感想を聞きたいのだが」
 グンがアムロに急かすように尋ねた。
「そうですね」
 グンの言葉にアムロはゆっくりと口を開いた。
「NTかどうかはわからないですけど、利発そうな子達だと思います」
 アムロの言葉にグンは笑顔を見せた。
「利発そう、か。君がそう言ってくれるとこの子達を送り出す私としても安心だよ」
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 02:49:25.94 ID:mnMWaFs0
「あの」
 アムロが小さく呟いた。
「この子達と4人だけで話をしたいんです。少しの間だけこの子達を連れ出してもいいですか?」
 アムロがそう言うと、グンとショーが視線を合わせた。
「少佐にお任せいたします」
 私は構いませんという風にショーは言った。
 グンもまたそれに頷く。
「もちろんかまわんよ。ぜひこの子達を連れて行ってくれたまえ」
 グンがそう言うと、ショーが出来杉達の背中を押した。
「さあ、エイサイ、アリア、ツン。アムロ曹長に着いて行きたまえ」
「はい」
 ショーの言葉に、3人とも元気よく返事をした。
 3人ともアムロと話せることが楽しみだった。
「護衛に着きます」
 3人を連れ出すアムロに守備隊の兵士が声をかけた。
 しかしアムロは「すぐ戻るのでお構いなく」とそれを拒むと、そのまま施設の外へ出た。
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 03:23:24.77 ID:mnMWaFs0

 施設の外にはバギー車が停車していた。
 アムロはバギーの運転席に座ると出来杉達に向かってシートを指差した。
「さあ、乗って。こんな場所で話すのもなんだろう」
 アムロがそう言うと、お礼を言いながらツンが助手席に陣取り、出来杉とアリアもそれに続いて後部座席に座った。
 エンジンをかけると、アムロはバギーを発車させた。
 基地内、といってもジャブローは広大な基地であり、岩場が剥き出しの鍾乳洞の中を道路が網の目の様に走っている。
 スピードを出すと風が出来杉達を吹き抜けた。
「気持ちいいわ」
 ツンはそんな風の流れを楽しんでいる様子だった。
 アリアもまた気持ちよさそうに髪の毛を風になびかせている。
 アムロはそんな彼女達の様子に優しく笑みを浮かべた。
「君達はどこから来たんだい?」
「僕達カラカス基地から来たんです」
 出来杉が答える。
「カラカスって南米の北の端っこにあるんだけど、アムロさん知ってる?」
 それに付け加えるようにツンがはしゃぐ様子で言った。
「僕はあまり地理に詳しくないんだ。どういう所なんだい? カラカスって」
「なーんにも無いとこよ。あたし基地に閉じ込められてたし、その前は違うところに居たから詳しくは知らないけど。エイサイとアリアの方が詳しいわよね?」
 そう言ってツンは後部座席に振り返った。
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 03:24:05.04 ID:mnMWaFs0
「ね、2人とも。カラカスって連邦軍の基地と瓦礫以外に何かあるの?」
「うーん。僕達もずっと難民キャンプに居たからね、あまり詳しい事は……」
 出来杉は片手をあごに当てて考えてみた。
 思えばあの日、[たぬき]のタイムマシーンがワープ空間の中で渦巻きに巻き込まれた後、出来杉が意識を取り戻したのがカラカスの郊外だった。
 地理的に北米に近い為か、カラカスは頻繁にジオンからの空爆やミサイル攻撃の対象にされていた。
 その為にカラカス基地の周辺は瓦礫の山だった。
 そうして周りに人をみつける事も出来ず、途方にくれながら瓦礫の山を彷徨った。
 時より人々の亡骸を目にしても、生きている人は見つけられずにいた。
 そうしてどれほど歩いたか、初めて出合った人間は巡回中の連邦軍の兵士で、そのまま出来杉は有無を言わさず難民キャンプ送りにされたのだ。
 出来杉にとってのカラカスの街での思いではそれしかない。
 だから基地とガラクタ以外にあるものと問われても出来杉もツンとさほど知識は変わらない。
「仮に何かがあったとしても、今はもう残っていないと思いますよ」
 何かが残っているとすれば、それは戦争で命を奪われた人々の怨念くらいだろう。。
「そうか」
 アムロは小さく返した。
 まるで出来杉の心に同調するような声だった。
「デキスギくんにアリアちゃん、そしてツンちゃんと言ったね」
 アムロはそういうと、3人が頷く間をとって話を始めた。
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 03:24:54.77 ID:mnMWaFs0
「君達とは出会ってばかりだけど、君達が才能ある子供ってことは分かるよ。ニュータイプだなんて言われるのも無理はない。ただね、僕も君達と同じようにニュータイプだなんて言われてるけど、やってることは毎日MSに乗って戦うことばかりさ。僕はそんなのってニュータイプのあるべき姿でもなんでもないと思う」
 今までの優しい口調に打って変わり、真面目な口調でアムロはそう言った。
 そんな彼の言葉に出来杉達も静かに耳を傾けた。
「それを皆分からないんだ。皆NTを殺し合いの道具としか考えていない。このまま軍にいれば君達もそういう扱いをされる」
 アムロの言葉に3人とも黙り込んだ。
 重たい空気がバギーの4人の周りに立ち込める。
 アムロが再び話し始めた。
「だけど君達が望むなら僕は君達をここから逃がしてみせる。君達はこんなところに居るべきじゃない」
 そう言うとアムロはバギーの速度を緩め、道路脇に車を止めた。
 アムロはこの言葉を言う為に出来杉達を連れ出したのだ。
 カツ、レツ、キッカの3人が出来杉達の姿に重なったのもあるし、NTとしての自分の境遇と3人を重ねたのもある。
 とにかく、アムロは出来杉達のような子供が軍に利用されるのは我慢がならなかった。
 純粋にこの子供達を救いたいのだ。
 しかし、出来杉達は相変わらず緊張した面持ちで何もしゃべろうとしなかった。
 そのまま沈黙が流れた。
 そんな彼らの横に一台のバギーが止まった。
 バギーには2人の若い兵士が乗っている。
 一人は小柄の東洋人で、もう一人は紫がかった髪の細身の青年である。
 アムロを見ると、紫がかった髪の青年が口を開いた
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 03:25:41.83 ID:mnMWaFs0
「よお、アムロ。なにこんなところで油売ってんだよ」
「カイさんこそ。どうしたんですこんなとこまで」
「何お気楽言ってんだ。こっちはキッカ達が居なくなっちまって必死で探してるってのによ」
 カイという名の青年は皮肉っぽく毒づいた。
 そしてアムロから出来杉達へと視線を移すと興味有り気な表情をした。
「どうしたんだそのガキどもは。なんか訳ありか?」
「いえ別に。それよりカイさん、キッカ達が居なくなったって」
「ああ、このあたり一周したけど見つからねぇんだ。アムロも探すのを手伝ってくれ」
 アムロは一瞬戸惑った。
 しかしキッカ達を探さないわけにはいかない。
「わかりました。キッカ達がどの方向へ行ったのかは分からないんですか?」
「さっぱりだ。あいつら何かやらかしてなきゃいいんだけどよ」
「大丈夫ですよ。キッカ達はしっかりしてますから」
 そう言うとアムロは出来杉達に振り向いた。
「ごめん。子供が3人ほど行方不明になってしまったんだ。悪いけど、君達にもこのまま探すのを手伝って貰ってもいいかな」
「僕達でよければ」
 出来杉は快くそれに頷いた。
 アリアとツンもアムロに頷いて返す。
「ありがとう、恩に着るよ。さっきの話は後でまた話そう」
 そう言うと、アムロは隣のジープの2人に声をかけた。
「どうだいアムロ、どっちを探せばいいと思う」
 運転席に座っている小柄の青年がアムロにそう尋ねた。
「たぶんあっちの方角だと思う」
 アムロはそう言って指差した。
「よお、アムロ。そりゃニュータイプの勘てやつかい?」
 カイは微笑を浮かべながらそう行った。
「からかわないで下さいよ」
 アムロがそう言うとカイは「うひゃひゃ」と大きな声で笑った。
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 03:26:15.99 ID:mnMWaFs0
今日はここまでです。

不定期で申し訳ない!
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/16(土) 03:35:22.12 ID:mnMWaFs0
一月前の自分のコメントが全く同じじゃないか。。。
なんという固い頭
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/17(日) 15:33:57.74 ID:688zD2o0
応援してるぜ!
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/05/17(日) 15:56:37.68 ID:43Rgs1I0
おお、新作が!
応援してます。
113 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/21(木) 00:02:06.95 ID:aoyB7rA0
期待支援!
114 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[sage]:2009/05/21(木) 18:26:42.18 ID:1GeYfJwo
頑張れ作者
115 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:22:47.85 ID:TCSZU0U0
みんなありがとう!
116 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:23:13.34 ID:TCSZU0U0

 アムロの指差した方向を進むと、程なくして前方に巨大な倉庫のような建物が見えてきた。
 しかしその建物以外には何も無い。
 カイはそれを見て、探す場所を間違えたのだろうかと思った。
 しかしアムロはその建物を見つめると、小さく「あっ」と呟いた。
 瞬間、倉庫の入り口のをぶち壊して一台の軍用車両が飛び出してきた。
「うおお、なんだありゃあ!」
 その車両の勢いにおどろいたカイがそう漏らした。
「あれに乗ってるのはキッカ達じゃないか」
 運転席の小柄な青年が言った。
「よし、ハヤトあの車の横っちょにつけろ」
「おっけーカイさん」
 ハヤトと呼ばれた小柄の青年は、そう言うと思い切ってバギーのハンドルを切った。
 アムロもそれに続いてバギーのハンドルを切る。
「おーい、お前ら! 車のブレーキを踏め!」
 カイが大きな声で飛び出してきた車両にのっている子供に叫んだ。
「だめだよー! この車止まんない! それより大変なんだ。僕達さっきのとこでジオンの爆弾見つけたんだ!」
「ジオンの爆弾だあ!?」
 そう言ってカイは子供達の乗っている車両の後部座席を見た。
 すると10個はあろうという時限式の爆弾らしきものが確かにあった。
117 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:36:32.66 ID:TCSZU0U0
「げぇっ! マジじゃねえか。よーし、まってろよ! 今から俺がそっちに行くからな! ハヤト、もっと車寄せろ。飛び移るぞ」
「はいっ」
 そう言うと早とはギリギリまで車間距離をつめた。
「いいぜハヤト。それとアムロ! 危ないから、おまえはいったんここから離れろ! 誰だかしらねえけど、その子供達にケガさせるわけにはいかねぇだろ!」
 ハヤトが大きな声でそういうと、アムロは頷いて返した。
「分かりましたカイさん。すぐにまた戻りますから」
「ああ、こっちのことは俺達にまかせとけ!」
「はい!」
 アムロはそう言うとバギーの進路を変更し、来た道を戻っていった。
 そして少しすると、基地施設の通路近くでバギーをとめた。
「この通路をずっと行けば、君達がさっきいた施設へ戻れる。君達は施設へいったん戻るんだ。いいね?」
 アムロがそう言うと、ツンが不満げに言い返した。
「アムロさん、私達も手伝うわ!」
「だめだ」
「でも!」
 食い下がるツンの言葉にアムロは耳を貸さなかった。
118 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:37:20.86 ID:TCSZU0U0
「また後で君達のところに行くよ。それまでは施設に居るんだ」
 そういってアムロはバギーを発進させた。
 そんなアムロのバギーを見送ると、ツンは怒鳴った。
「なによあの人! 私達を何にも出来ない子どもみたいな扱いしてた! あんな人ほかの大人と変わらないわ!」
「ツン、アムロさんは僕達のことを気遣ってくれてるんだよ」
 出来杉は優しくそう行ったが、ツンにかえって逆効果だった。
「そんなこと分かってるわよ! でもね、私は誰かに守られる為にここに居るんじゃないの。誰かの言いなりになる為にここに居るんでもないのよ!」
 ツンは泣きそうな顔で言った。
「ツン――」
 そんなツンになんて声をかければいいか、出来杉にもアリアにも分からなかった。
 そうして戸惑っているとき、基地内に大きな爆発音が響いた。
「何かしら?」
 アリアがそう呟いた。
「アムロさん達が行った方向みたいだけど」
 爆発音のした方向を心配そうに眺めるアリア。
「心配ないよ。きっと爆弾の処理に成功したんだ」
 そんな彼女の心配を和らげるように出来杉が声をかけた。
「そうだよね」
 アリアがそういって笑ったとき、今度は基地内に緊急事態を知らせる警報が鳴った。
119 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:43:12.90 ID:TCSZU0U0
「今度は何?」
 アリアが心配そうな口調でそういった。
 警報が鳴ると、とたんに基地中が騒がしくなり、どこからともなく「敵襲だ!」という怒号が飛んできた。
「敵襲?」
 ありえない、と出来杉は思った。
 他の基地ならいざ知らず、ここは難攻不落のジャブローである。
 間違いなく地上に存在する軍事基地の中で最強の防衛力を誇る。
 そのジャブローにこのような奇襲をかけて来る敵など考え難かった。
「なにかの間違いじゃないのか」
 そう呟く出来杉をあざ笑うかのように、再び基地の中に大きな爆発音が鳴り響いた。
 しかも爆発は一度ではなく、まるで敵のMSと交戦しているかのような連続した爆発音である。
 まずい、と思った。
 そう思っている間に、今度はさっきよりも近くで爆発音がした。
「ここにいるとまずい。アムロさんの言うようにさっきのところに戻ろう!」
 出来杉が沿う言った時、ツンが「あっ!」と叫んだ。
「どうした、ツン?」
 出来杉の言葉にツンは爆発のした方角を指差して言った。
「見てエイサイ。今の爆発、さっき子供達が飛び出してきた格納庫みたい。ねえ、あの格納庫の中から連邦軍のMSが見えるよ」
 ツンの指先を見る。
 確かにそこにはツンの言うように連邦軍の量産型MS『ジム』があった。
 そのMSはシミュレーターで何度も使ったことがあるので、すでに出来杉達は見慣れていた。
120 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:47:28.63 ID:TCSZU0U0
「ねえ、エイサイ、あのMSに乗って戦おう。私このまま逃げるなんてイヤ!」
 ツンが叫んだ。
 しかし出来杉はそれに頷くわけにはいかなかった。
「だめだ、危険すぎる」
 そんなツンを止める為に、出来杉もまた声を張り上げた。
 しかし、ツンは聞かなかった。
「嫌よ! 私はう人形に戻りたくないの! 私は私でいたいの! 私は戦うわ!」
 ツンの様子は明らかに普通の彼女ではなかった。
「ツン落ち着いて。僕達と一緒にいこう、ね?」
「嫌よっ!」
 そう言うとツンは走り出した。
「ツン、待って!」
 すぐさまそんな彼女をアリアと出来杉が追いかける。
 しかしツンの走るスピードが早く、なかなか彼女に追いつけない。
 結局2人がツンに追いついたのはツンが格納庫に到着し、ジムの前に立っている時だった。
 ツンはジムの前に立ってはいたが、彼女の目線は足元に伏せている連邦の兵士に向いていた。
 パイロットスーツを着ているところから、その兵士がジムのパイロットであることが見て取れる。
「この人さっきの爆撃に巻き込まれちゃったみたい」
 ツンはそう言うと、その兵士の体を探った。
121 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 05:53:36.61 ID:TCSZU0U0
「死んでるわ」
 そう言って彼女が兵士から手を離したとき、彼女の手には兵士の亡骸から奪ったキーらしき物が握られていた。
「ツン、止めろ!」
 出来杉の言葉にツンは首を振った。
「ここで逃げたくないの。私が私である為に、私の力でジオンを倒すわ」
 そう言うツンの目には決意の色があった。
 こうなるとツンはテコでも動かないことを出来杉は良く知っている。
 はあ、とため息をつくと出来杉は降参した。
「分かったよツン。君がジムに乗る事には反対しない。その代わり、僕も一緒にジムに乗る」
 そう言う出来杉にアリアも続いた。
「アタシも乗るわ」
 決意の篭った瞳でツンを見つめるアリア。
「エイサイ。アリア……」
 そんな2人を前にして、ツンの胸にこみ上げるものがあった。
 泣きそうなのを堪え、出来杉とアリアにツンは笑って返した。
「冗談じゃないわ。あの狭いコックピットに3人で乗る気? 一人の方がマシよ」
 フン、と顔を背けると、ツンはジムのコックピットへ乗る為に歩き出した。
「シミュレーターと実機は違う。一人で行かせるわけには行かない」
「そうよ。私達仲間じゃない」
 そう言ってアリアと出来杉はツンの傍に駆け寄る。
「――仕方ないわね。せいぜい足手まといにならないでよね!」
 そう言うツンの声はどこか嬉しそうだった。
122 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 06:04:01.74 ID:TCSZU0U0

 そうしてジムのコックピットに3人で押し入った。
「シミュレーターと大分仕様が違うじゃない」
 入るなりツンが呟いた。
 確かにジムのコックピット内はシミュレーターのものとは大分異なっていた。
 慌てるツンに出来杉が微笑んで返す。
「大丈夫、基本的な操作は同じはずだ。ツン、ロック解除用のキーを貸してくれ」
「うん!」
 そう言うとツンは出来杉にキーを手渡した。
「ありがとう」
 出来杉はそれを受け取ると、シートに座りGMの起動準備にとりかかった。
「ここが各種エネルギーの調節で、こっちがメインシステム起動用の装置だな。それならここをこうして……と」
 そう言いながら出来杉がコックッピットを弄ると、正面のメインモニタにヴンと光が入った。
 メインモニタをみると、『システム正常起動』と表示されている。
 どうやらジムの起動に成功したようだった。
「さっすがエイサイ!」
「ふんっ、ありがと」
 アリアとツンは二人して笑顔で言った。
「喜ぶのは早いよ二人とも」
 出来杉が言った瞬間、モニタのレーダー部分に敵機の反応が映った。
 レーダーを見るに敵機はこちらに向かって来ている。
123 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 06:04:37.76 ID:TCSZU0U0
「この距離、やるしかないみたいだな」
 出来杉は覚悟を決めると、機体の基本操作用の調整を始めた。
「僕は機体の基本操作をするからアリアとツンは武器の照準と攻撃をやってくれ!」
「わかった」
 そう言ってアリアはすぐさま左の操縦桿を取った。
「右は私に任せて」
 そう言ってツンは右の操縦桿を取る。
「よし、それじゃあ行くよ!」
 3人の駆るジムは急速に敵方向へ旋回し、敵を正面に捕らえた。
「あの機体、シミュレーターでは見たことがないな」
 メインモニタに映る敵機を目にした出来杉がそう呟いた。
「ほんとだ。なんだか丸っこくて可愛いね」
 アリアはクマのぬいぐるみでも見るようにそう漏らした。
「何が可愛いよ。言ってる傍から攻撃してきたわよ!」
 アリアが怒鳴った。
 敵のMSはこちらに腕を向けると、その腕に内臓されているミサイルを発射してきた。
 出来杉は咄嗟にバーニャの推進を使って回避を行なう。
「かわいい顔して怖いね!」
 アリアが面白そうにそう言った。
「緊張感ないわね」
「だってかわいいんだもん」
 出来杉は苦笑しつつもこんな状況で余裕を失わない2人が頼もしくもあった。
 と同時に抜かりなく相手のMSをデータ照合させる。
124 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 06:05:31.77 ID:TCSZU0U0
「水陸両用のMS、アッガイか」
 データを見ながら出来杉が呟いた。
「水陸両用? どうりで変な形なわけだわ」
「えー、変じゃないよ。かわいいじゃない。ツンちゃんはアッガイ嫌いなの?」
「あんたねぇ、相手は敵なのよ、敵! かわいいとかかわいくないとそんなのはどうでもいいのよ!!」
 そんな2人のやり取りにわって入るように出来杉が口を開いた。
「2人とも、次にあのアッガイの攻撃を避けたら相手に突撃しようと思う。2人はそれと同時にビームサーベルで切りつけて欲しい。いいね」
 出来杉がそう言うと2人とも頷いた。
「大丈夫、私達ならやれるわ」
「うん、ツンちゃんと私に任せてエイサイ」
「頼もしいな」
 出来杉が2人の言葉に返した瞬間、アッガイがまたもやミサイルを発射してきた。
 瞬時にミサイルを回避する運動を取らせる出来杉。
 そしてそれと間髪入れずにバーニャの推進をフルに活用しアッガイへと突撃する。
 アリアとツンはその動きにあわせて操縦桿を使い、GMの両手にビームサーベルを持たせた。
「アリア!」
 ツンがそう叫んだ。
「うんっ!」
 アリアもまたそれに大きな声で応えた。
125 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 06:06:26.95 ID:TCSZU0U0
『せぇ〜のっ!』
 2人の声が重なる。
『いっけええ!』
 瞬間、ジムは両手を振り下ろし、×の字にアッガイを切り付けた。
 アッガイはなす術なく両断され、爆発した。
「やったねツンちゃん!」
 へへん、と得意げにアリアが言った。
「ま、このくらい当然ね」
 たいした事じゃないわね、と言いたげな表情でアリアが返す。
「ね、ね、今のに何か名前つけよう!」
「何バカなこと言ってるのよアリア」
「えー」
 なんて言って2人はぶーぶー言い合っている。
 出来杉はそんな2人に笑顔になった。
 だが、気の緩みは厳禁である。
「2人とも。まだ敵はいるんだ、気を抜いちゃいけない」
「わかってるわよ。あ、エイサイ見て」
 そう言ってツンはレーダーを指差した。
「あっちでMSの戦闘があるみたい。私達も援護に行きましょう」
「わかった」
 出来杉が応える。
「必ずジオンを滅ぼしてみせる。私の力で」
 ツンは得意げに言った。
126 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[sage]:2009/05/24(日) 07:20:50.46 ID:J2XtERMo
作者応援
127 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 23:28:43.86 ID:TCSZU0U0
 しかしジムを移動させ、友軍の援護に向かった瞬間、コックピットの中に張り詰めた空気が広がった。
 3人とも一様に何か不穏なものを感じ、顔を曇らせている。
「ねえ、なんだかやな感じがしない?」
 アリアが少しだけ怯えるような声で言った。
「ニュータイプがいるんだわ、きっと」
 ツンが呟いた。
 その顔は3人の中で最も険しい表情を浮かべている。
「ニュータイプってことはアムロさんなのかな」
 ツンの言葉にアリアが問いを返す。
「違うわね。あの人よりももっと歪な感じ。ねえ見て」
 ツンがそういった瞬間、モニターに映る景色の奥の方に交戦している友軍のジムの姿が見えた。
「あの機体を援護しないと」
 しかしツンがそう言った次の瞬間だった。
 突如として彼らのモニター内に通常のMSとは比較にならないほどのスピードで動くMSが現れた。
 全体的に丸いフォルムをしているMSで、両手にはカニを連想させるようなクローを備えている。
 なにより機体の全身に施された真っ赤なカラーリングが出来杉達の目を引いた。
128 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/24(日) 23:39:45.50 ID:TCSZU0U0
 その機体は瞬く間にジムの胴体ををクローで突き刺していた。
 途端に突き刺されたジムが爆発する。
「な、今の敵の動きは――!?」
 出来杉は絶句した。
 今のMSはアッガイとは違う種類のMSだが、恐らくはアッガイと同じく水陸両用MSと見て間違いない。
 にも関わらず、その動きの速さは陸専用MS以上のスピードで動いていた。
 その動きの裏には当然MS自体の性能があるだろう。
 しかし、あのMSの動きが性能の問題だけではない事は明白だった。
 驚異的に熟練した操縦技術を持つパイロット――。
 何より機体全体に施された赤いカラーリングがそのパイロットがエースであることを証明している。
 赤い機体を駆るジオンのエースパイロット。
 そんなパイロットはそう居ない。
 3人とてその名前を思い浮かばない筈がなかった。
「まさか、赤い彗星なのか?」
「嘘でしょ……」
 出来杉の言葉にツンは硬直した。
 それもその筈である。
 赤い彗星に出会うと言うことは連邦兵にとって死神に出会うことと等しい。
129 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 00:46:27.18 ID:0OaZLSQ0
※128下の数行だけ訂正

「まさか、赤い彗星なのか?」
「嘘でしょ……」
 出来杉の言葉にツンは硬直した
「よりによって赤い彗星だなんて」
 ついてないわね、と舌打ちをするツン。
 その表情には焦りと戦慄の混ざりあったものだ。
 自信家であるツンがそのような表情を浮かべる事は本来は珍しい。
 しかし今回は仕方の無い事だった。
 赤い彗星に出会うと言うことは連邦兵にとって死神に出会うことと等しいのだから。
「あのMS、なんだか嫌……」
 アリアが言った次の瞬間。
 赤いMSは腕に内蔵されたメガ粒子砲を発射すると、それと同時に頭部からミサイルを放ちながら突撃してきた。
「来るっ!!」
 出来杉はとっさにバーニャの推進と、機体運動によるフットワークで攻撃を避ける。
 それに合わせてツンは右手にもたせているビームサーベルを捨てた。
 と、同時に背部にラックされていたビームスプレーガンを腕に持たせる。
「上等だわ。赤い彗星なんて私が潰してあげる。――当たれっ!」
 ビームスプレーガンを連射するツン。
 しかし、赤いMSはその全てを紙一重で避けると再びメガ粒子砲を発射してきた。
「くっ!」
 またも機体運動で敵の攻撃を避ける出来杉。
 しかしその動きは相手に読まれていた。
130 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 01:03:13.52 ID:0OaZLSQ0

 出来杉たちのジムを翻弄する赤いズゴック。
 そのコックピットの中では一人の男がほくそ笑んでいた。
 敵の本拠地であるジャブローに乗り込んでおきながら、男はパイロットスーツでは無く赤い士官用の軍服を着用している。
 それだけで十分に特異であるが、なにより顔の眼より上を仮面で隠しているのが眼を引いた。
 仮面で顔を隠し、赤い軍服を身に纏うパイロット。
 彼が誰であるかは聞くまでも無い。
 赤い彗星、シャア=アズナブル。
 言わずと知れたジオン軍最強のMSパイロットである。
 シャアはモニターに映る”ガンダムもどき”を見ながら不敵に笑っていた。
「なかなかいい動きをするパイロットだな」
 他のガンダムもどきが反撃する間もなくシャアに撃破されていったのに比べ、この相手の動きは目を見張るものがある。
 何よりシャアは相手に対して何か特別なものを感じていた。
「ガンダムのパイロットが乗っているというわけではないだろうが、あるいはニュータイプやもしれんな」
 確信ではないが直感的にシャアはそう思った。
 が、相手が敵であることに代わりは無い。
 むしろ相手が本当にニュータイプだとするのなら、ガンダムのパイロットのように巨大な壁となる前にその芽を摘むべきである。
 シャアは自分の動きをここまで避けた相手を称えつつも、次の攻撃で勝負を決めるべく再びジムへの突撃を試みた。
131 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 01:05:02.39 ID:0OaZLSQ0
「大した腕だ」
 シャアは賞賛と苛立を込めてそう言った。
 今の攻撃でシャアは確実にガンダムもどきをしとめる筈だったのだ。
 しかしズゴックのクローは相手の右腕をもぎ取るに留まり、自らも逃げる形で距離をとらざるを得なかった。
 屈辱である
 相手を仕留めそこなったところでシャアの有利に揺るぎは無い。
 だとしても、己の調子を崩された事はシャアにとって屈辱である。
「ジャブローにああいうパイロットがいるとはな」
 シャアは次こそ確実にしとめるべくズゴックをスタンバイさせる。
 この攻撃は絶対に外してはならない。
 相手が非凡な操縦技術をもつパイロットであっとしても、赤い彗星との間には越えられない壁があるのだ。
 目の前のガンダムもどきを仕留めることは確信を超えた、いわば決められた未来と言ってよい。
 そのような予定調和を乱すイレギュラーは”ガンダム”だけで十分なのである。
 だからこそ、自らが赤い彗星たる為に、目の前のジムは次の刹那には倒されねばならない。
132 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 01:05:59.81 ID:0OaZLSQ0

 しかし、その自信を揺るがすイレギュラーであるからこそ、奴はやはり白い悪魔なのである。
 突如レーダーに一機のMSが現れた。
 そのMSは瞬く間に間合いを詰めてきたかと思うと、電光石火の速さでシャアのズゴックへとビーム射撃を行なってきた。
 その攻撃は前回奴と戦ったときよりも”また一段と”素早くなっていた。
「くっ!」
 咄嗟にその攻撃を避けるシャア。
「してやられたか」
 怒りのあまりシャアは眉間に皺を作った。
 赤い彗星ともあろうものが背後を取られる形で奇襲を受けたのだ。
 並みのパイロットなら間違いなく被弾していただろう。
 シャアがその攻撃を避けたとはいえ、相手の攻撃に対して後手に回った形である。
 当然、シャアにとって面白いことではない。
 第一、問題なのは増援として現れた連邦のMSである。
 それは間違いなくあの”白い悪魔”ガンダムだった。
「また会ったな、ガンダム」
 愛憎をこめてシャアはそう呟いた。
 状況はシャアにとって芳しくない。
 相手はガンダムであり、そしてニュータイプかもしれないパイロットの乗ったガンダムもどきである。
 が逆に考えれば好機である、ともシャアは思った。
 今度こそガンダムを仕留め、そしてこれから連邦のエースになるかも知れない芽を摘み取る事が出来るのだ。
133 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 01:08:33.22 ID:0OaZLSQ0
「ちぃぃっ!」
 呻くシャア。
 だが怯むことなく咄嗟に体勢を整える。
「堕ちろっ!!」
 シャアはそう吐き捨てると、さらにビームサーベルで突き刺されたクローを前へ突き出した。
 力任せに自分のクローごとジムの左腕をもぎ取る。
 だが、その隙にズッゴクの後ろからガンダムがビームライフルを発射した。
 シャアは瞬時にそれを避けようとしたが、遅かった。
 ガンダムによって放たれたビームの閃光が、ズゴックの残りのクローに命中する。
「ぐっ!」
 シャアは歯を食いしばった。
 彼の乗るズゴックは両腕をもがれた状態である。
「まさかこの私がクローを両方やられるとはな」
 シャアは苛立ちの表情を浮かべた。
 もはやこのまま戦っても勝ち目はない。
 シャアはこの戦況に見切りをつけると、この場から撤退すべく推進力を最大にして大きくジャンプした。
 すぐさまガンダムがそれを追い、出来杉達のジムもそれに続いた。
 だが、ジャブローの地形は非常に複雑である。
 その地形はMSの操縦技術に勝るシャアにとって有利に働いていた。
 ズゴックとガンダムとの距離が開く。
 その瞬間ズゴックの頭部に内臓さえているミサイルが連射され、ジャブローの天井部に直撃した。
134 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 01:09:37.24 ID:0OaZLSQ0
「しまった!」
 アムロが叫んだ。
 ズゴックのミサイルによって天井部から瓦礫が崩れ落ち、ガンダムとジムの行く手を阻んだのである。
「逃げられたか」
 間に合わない、と判断したアムロは深追いする事をやめ、ジムに対して通信を行なった。
「大丈夫ですか」
 アムロは通信を通してそう呼びかけた。
 一体どのようなパイロットが乗っているのだろうか。
 アムロがそう思ったとき、モニタに映ったジムのパイロットは彼にとって驚愕だった。
 ガンダムのモニタに出来杉達の顔が映る。
 3人ともバツの悪そうな顔をしていた。
「君達は!」
 アムロは驚きのあまり一瞬言葉を詰まらせた。
「なぜ君達がMSに」
 出来杉達の危険な行為を嗜めるように、アムロはモニター越しに厳しい視線を向けた。
 そんな彼を察して、出来杉が口を開いた。
「ごめんなさい、アムロさん。約束を破ってしまって」
 そう言って頭を下げる。
「でも僕達は後悔してません。僕達は逃げたくないんです」
 そう言って出来杉はアムロを見据えた。
135 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/25(月) 01:15:32.01 ID:0OaZLSQ0
「デキスギくん」
 アムロは一瞬言葉を失った。
 しかし少し間をおくと笑顔を作った。
「シャアを撃退できたのは君達のおかげだ。ありがとう」
 アムロがそう言うと、3人の表情が途端に明るくなった。
「こちらこそ助けていただいてありがとうございます」
 出来杉が言う。
 しかし、その直後出来杉の表情が再び曇った。
 しばしの沈黙の後出来杉が口を開いた。
「アムロさん、僕達はルナツーに行きます。僕は皆を守る力を手にたい」
 その言葉を聴いてアムロは俯いた。
 もはやアムロには戦士として3人を認めることしか出来なかった。
「頑張って」
 アムロは優しい表情をした。
「幸運を祈ってるよ」
 アムロは別れ際にそう言い残した。
「アムロさんも」
 そんなアムロに、出来杉もそう返した。
136 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[sage]:2009/05/25(月) 07:53:24.79 ID:ZfJu7QDO
やっぱおもしれぇな。続き期待
137 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/28(木) 23:54:47.52 ID:oLAdtIo0
支援は必要ないが支援
読んでるよ!
138 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/29(金) 00:15:43.42 ID:wmeZR.g0
>>136
>>137
読んでくれてありがとう!
完結させられるように頑張ります


あと、いつも書き溜めてから修正しつつコピペして投稿してるんですけど、
今回コピペし忘れてる場所がありました。
誤字脱字といいこんなんばっかで申し訳ない…
139 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/29(金) 00:20:20.04 ID:wmeZR.g0
コピペわすれ1
>>132>>133の間
以下


 互いに隙を伺うように、一瞬の沈黙が流れた。
 そんな沈黙を突き破ったのは一機のファンファンだった。
「なんだ」
 シャアが呟いた。
 シャアは知る由もないが、それは婚約者をジオンに殺された連邦士官の決死の突撃だった。
 だが当然、そんな勢いだけの攻撃が赤い彗星に通ずるはずもない。
「冗談ではないぞ」
 そう言うとシャアは瞬時にクローを振り下ろし、ファンファンを叩き落していた。

「ウッディ大尉!」
 そう叫んだのはガンダムのコックピットの中のアムロだった。
「シャア!!」
 怒声と共にアムロはズゴックに切りかかった。
 だが、その攻撃を予想していたとばかりにシャアのズゴックはそれを避ける。
 しかし、その先に出来杉達のジムが先回りした。
「邪魔だ!」
 シャアはクローでジムを一突きにしようと操縦桿を操作する。
 が、そのクローの動きに合わせるように、ジムは左腕のビームサーベルを突き出した。
 不味い、とシャアは思った。
 ズゴックのクローにビームサーベルが突き刺さる。


140 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/29(金) 00:23:04.39 ID:wmeZR.g0
わすれその2
>>130>>131の間
以下


「これは避けられまい」
 相手のガンダムもどきはとっさにビームスプレーガンで迎撃の構えを見せた。
 しかしその動きもシャアの想定内である。
 シャアの駆るズゴックは微妙な回避で相手の射撃線上から逸れる。
 ”ガンダムもどき”の射撃はズゴックの真横で機体を掠っただけだった。
 このままクローで胴体を突き刺して終わる、とシャアは思った。
 しかし次の瞬間、ガンダムもどきは上半身を捻ると左手のビームサーベルを振り上げた。
 その動きにシャアは驚いた。
 普通のパイロットならああも射撃と格闘武器を同時に使いこなせない。
 このまま突撃すれば切られるのはシャアの方だった。
 シャアは機体のバーニャ推力に微調整を加えた。
 刹那、シャアのズゴックはガンダムもどきの右腕の下方に潜り込んだ。
 ガンダムもどきのビームサーベルは空振りし、同時にズゴックのクローがガンダムもどきの右腕をもぎ取っていた。
 が、間髪おかずもなくガンダムもどきは体勢を立て直す。
 そしてもう一撃ズゴックへ切りかかった。
 シャアは反射的にズゴックを前方に大きく跳躍させ、その攻撃をかわす。
 着地し、間をとったままシャアは相手を見据えた。
141 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/29(金) 00:24:50.58 ID:wmeZR.g0
以上です(おそらく)

まさかウッディの散り際を忘れるとは。
もう自分が信じられない
142 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[sage]:2009/05/29(金) 00:25:22.92 ID:KZqx6j.o
たまたまパー速を見ていたら懐かしいスレが見えて
きていたら復活とか……もうなにを言っていいのかよく分からんが
これからもがんばってください
あなたのおかげで俺はVIPを見るようになりましたから
143 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/05/29(金) 00:50:43.84 ID:wmeZR.g0
>>142
ありがとう!
これからも頑張ります。

VIPを見るきっかけを作ったのは責任を感じるなあ…
144 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[sage]:2009/05/30(土) 02:43:02.20 ID:BaJozc2o
うおお、あいかわらず面白いぞ!
ゾック出るかと思ったけど出なくて、ちょと残念だww
145 :92修正2009/05/31(日) 22:26:13.49 ID:u4tqcZMo
ついに宇宙へと旅立つノビタ
時を同じくしてニュータイプとの邂逅を果たすデキスギ
偶然の出会いはデキスギを必然の戦闘へと駆り立てる

次回、機動戦士ガンダムのび太の一年戦争
「ジャブロー攻防戦」

君は生き延びる事ができるか?
146 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/06/01(月) 03:00:47.56 ID:I1JtX0oo
おお、また来てたのか
嬉しいのう
147 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv2009/06/01(月) 23:58:17.91 ID:w9hOzOA0
うはwwwwwwwwwwwwwwww
帰ってきてたのかwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
148 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[sage]:2009/06/05(金) 07:49:13.10 ID:etyn5sDO
kabaさんおかえりなさい。
期待してます。
149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/06/15(月) 00:41:11.10 ID:RSHiA7Y0
作者支援
150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/18(木) 10:10:13.07 ID:dKkk.Y.0
また3年間、潜伏するのか?
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/06/18(木) 23:39:00.10 ID:dfDt09so
かんべんしてくれよ俺社会人になっちまうぜ
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/06/19(金) 19:52:47.40 ID:lz0Y0ADO
俺なんか親父になっちゃった(´・ω・`)
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/06/26(金) 18:45:48.25 ID:v868Ixo0
おおおおおおおおおやべぇ!!!
戻ってきてたのか!!
154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/06/28(日) 14:25:47.33 ID:9dr6ogDO
綾辻行人ばりの遅筆だなおい

楽しみに待ってます
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/04(土) 14:21:39.63 ID:5fX5OR20
「それで、これからどうするの?」
 ガンダムがジムのレーダー圏外になった頃アリアが呟いた。
「どうするって……」
 アリアの言葉を聞いて難しい顔をするツン。
 その表情には不安が見て取れる。
 それもその筈だった。
 例え3人がNT適正者として特別待遇を受けているとはいえ、許可無くMSを操縦した罪は無い。
 当然、何かしら罰せられるのは目に見えていた。
 しかしツンはそれ以上その事を考えなかった。
 フン、と一度鼻を鳴らすツン。
「どうするもこうするも無いじゃない。私は私のしたいようにするだけよ」
 ツンは自分がジムに乗った事を全く後悔してはいなかった。
 それだけじゃない。
 ツンは出来杉とアリアが自分について来てくれた事が凄く嬉しかった。
「もう、ツンちゃんはほんとに考えなしなんだから」
 アリアはやれやれというようにそう言った。
「でも私、ツンちゃんのそういうところが大好きだな」
 満面の笑みを浮かべるアリア。
「そんな言い方されても素直に喜べないわよ」
 そう言うツンの顔もまた笑顔だった。
 出来杉もまたそんな2人をみて笑顔になった。
 タイムマシーンの事故に遭ったあの日。
 あの日以来、突然今までと違う世界に紛れ込んだ出来杉は、難民キャンプではその日を生きるだけで精一杯だった。
 毎日不安と孤独に押しつぶされそうで、笑顔を見せる余裕なんてあるはずも無い。
 そんな彼がこうして笑顔を取り戻せたのは紛れも無くアリアとツンのおかげなのだ。
 出来杉は2人が傍に居てくれることが本当に嬉しかった。
156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/04(土) 14:23:06.30 ID:5fX5OR20
「でも、確かに勝手に乗った事がばれたら面倒ね」
 そう言うツンに出来杉は微笑んで返した。
「ジムに乗った事なら大丈夫さ。今回は事が事だからね。ジムのパイロットが死亡していた事を説明した上で、”ジャブローの防衛を最優先考慮した上で最良と思われる措置を講じました”、とでも言っておけば注意勧告くらいで済むと思うよ。もしもそれでも済まなかったらアムロさんを頼ってもいいし」
 そんな出来杉の言葉に、ツンも微笑んで返した。
「そうよね。むしろシャアを撃退した功績で勲章くらい貰えるかも」
「そうだよー。アッガイもやっつけたし!」
 ツンの言葉にアリアが嬉々として付け足す。
 そんなアリアにあきれたように、」ツンがため息をついた。
「本当にアッガイが好きなね」
「だってかわいいんだもん」
「そんなにかわいいかしら」
 よく分からないわね、とツンが首を傾げる。

 そうやって3人がやりとをしていた時、突如コックピットに無線の音が響いた。
『緊急報告! 緊急報告! 現在ジャブロー上空にジオン軍攻撃空母が複数接近中! 繰り返す、現在ジャブロー上空にジオン軍攻撃空母が複数接近中!』
 その無線を聞くとツンは顔を引き締めた。
「私は戦うわ。もちろん2人とも着いてきてくれるわよね?」
「うん」
 出来杉とアリアは2人とも頷いていた。
 そして3人は地上でのジオン軍の迎撃にむけて機体を発進させた。
 ふと、出来杉は思う。
 僕は苦しむみんなを救う為に僕は軍に入った。
 その決断が間違いだったとは思わない。
 だけど、誰しも救う事なんて不可能な事くらい分かってる。
 だからせめて、この2人だけは何があっても守り通す。
 出来杉はそう決意していた。
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/04(土) 14:26:24.94 ID:5fX5OR20

 UC0079 11月7日

 ゴオオオオオオ

 高速航行するガウ攻撃空母の中では風の音が鳴り響いていた。
 そのガウに格納されているのは2機のグフと1機のドムである。
 各機とも迫り来る出撃に備え、既にパイロットが乗り込み機体の最終調整を行なっている最中だった。
『君達053小隊には先陣を切ってもらう事になる。この戦いの命運は君達に懸かっていると思ってくれ』
 ガウの艦長から直々の入電が入る。
「はっ、任せてください」
 小隊の隊長であり、ドムのパイロットであるドムカッテ=ハ=ゲール中尉が小隊を代表してそれに答えた。
『期待しているよゲール中尉。北米で荒野の狼とまで呼ばれた君の実力、遺憾なく発揮してくれたまえ』
 そう言うと艦長は通信回線を切った。
 完全に通信回線がオフになったことを確認すると、ゲールは頭の後ろで腕を組みシートに背中を預けた。
「気楽な事を言ってくれる」
 艦長の言葉が彼は気に入らなかった。
 いや、艦長というよりは今回の作戦を立案した上層部の人間が気に入らなかった。
 オデッサでの敗北以来、ジオン軍は地上での劣勢を強いられている。
 その形勢を一挙に逆転すべく敵の大本営であるジャブローに大打撃を与える。
 それが今回の作戦だった。
 作戦の重要性から今作戦には、地上の主力部隊の大半が回されているという。
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/04(土) 14:26:43.83 ID:5fX5OR20
 しかし、だ。
 ジャブローは連邦の隠蔽工作によりその殆どが秘密のベールに包まれている。
 よってジャブローがどれほどの防衛能力を備えているかは未知数である。
 だが、どれほどジャブローの防衛力を過小評価したとても、ジャブローを落とすには戦力不足なのは明らかだった。
 上層部とてそんなことは百も承知である。
 よって実際に各部隊に出されている命令はジャブローの宇宙船ドッグの破壊だった。
「まったく、馬鹿らしいな」
 要するにこの作戦の目的は連邦の宇宙侵攻の時間稼ぎという事だ。
 ジャブロー攻略作戦と銘打たれた割りに、あまりに陳腐な内容である。
「第一、水陸両用機は別として。地上を歩く事しか出来ないMSをガウから投下させてその後はどうする? 相手はジャブローだというのに」
 もとよりこの作戦にはMSの回収など考慮に入れられていない。
 ゲールは前世紀の戦争における特攻隊という言葉を思い出していた。
 そう考えるとゲールの怒りは収まらなかった。
「我が軍はこんな無意味な作戦の為に地上戦力の大部分を失おうというのか」
 怒りを鎮める為に彼は瞳を閉じた。
 グフに乗っている2人の部下の事を思う。
 2人とも死ぬにはまだ若すぎる。
 やるせなかった。
159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/07/04(土) 19:26:16.74 ID:j/Nd47ko
>ドムカッテ=ハ=ゲール中尉
懐かしい名前が出てきたな、おいwwwwwwwwwwww
彼は元気にしてるんだろうか
160 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[age]:2009/07/05(日) 01:14:24.04 ID:bCT8S2DO
盛り上がってまいりました
161 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/07/05(日) 14:03:17.75 ID:yOYb/mco
やべえなんか来てるうううう
162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/07/13(月) 20:33:55.68 ID:hXxAnQDO
終結までにどれ程多くの命が消えて逝くのだろう
163 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/07/20(月) 19:10:21.67 ID:fu.eFLI0
作者様復活!?
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおう!!!
おかえりなさい!
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:04:49.37 ID:BWZqNqE0
いつもながら間を空けて申し訳ない!
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:06:18.79 ID:BWZqNqE0
『もうすぐ降下ポイント上空に差し掛かります。各機降下準備に移ってください』
 オペレーターからの通信が入る。
「1番機、既に準備は完了している」
 ゲールがそう応答すると、続いて『2番機、準備完了です』『3番機も準備OKっす』と通信を返した。
 その声を聞いてゲールは意を固めた。
 少し間をおいて、ゲールはMS間の秘密回線を開いた。
「お前達、作戦のことよりも生き残る事だけを考えろよ」
 それは彼の正直な気持ちだった。
 部下達はその言葉を聞いて少しの間黙っていたが、やがて「はい」と答えた。
 ちょうどその時ガウのカタパルトハッチが開いた。
 オペレーターから再び通信が入る。
『降下ポイントまであと10…08…06…04…02…各機、出撃してください!!』
「1番機、出るっ!」
 ゲールがそう言った瞬間、カタパルトが勢い良く加速し彼の乗るドムは中空に放り出された。
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:07:35.40 ID:BWZqNqE0
 澄み渡った青空と、熱帯雨林の緑がモニター一杯に映る。
 とても美しい景色だった。
 その美しさに彼は一瞬だけ目を奪われた。
 もしも。
 もしもこれが戦いの最中でなければ、どれほど美しい景色なのだろう。
 そんな言葉が頭を掠めたが、すぐさま彼は気持ちを切り替えた。
 彼に続いて2人の部下達も順調に降下を開始している。
 今考えるべきは、どう生き残るか。
 そして自らの部下をどのように生き残らせるか。
 それだけだった。
 それだけを考えて、ルウム戦役から今日まで彼は生き残ってきたのだ。
 だがしかし、自分の力だけではどうする事も出来ないこともある。
 それもまた、今日まで生き残ってきた彼の教訓だった。
167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:08:31.22 ID:BWZqNqE0

 それまで沈黙を守り通してきたジャブローの対空防衛網が突如として火を噴いた。
 ゲール達の母艦であるガウは一瞬にしてその弾幕の餌食となった。
 黒煙を上げたかと思うと急速に高度を落とし爆発したのだ。
 ジャブローの対空砲火はガウだけでなくMSも襲っていた。
 既に何十機もの友軍のMSがジャブローに降下を始めていた。
 だが、その3割ほどがすでに降下途中で爆破しているのが見て取れる。
 こればかりは神に祈るしかなかった。
「どうか、地上にだけは降ろしてくれよ、神様」
 その祈りが叶ったのか彼のドムは無事ジャブローの地に降り立った。
 すぐさま戦闘の構えを取り、計器に表示された各種の情報を確認する。
「問題は無いな」
 そう呟いて、もうすぐ降下してくる筈の部下の姿を確認しようと空を見上げる。
 そうして部下の乗る2番機と3番機の姿を確認した瞬間だった。
 2番機がジャブローの対空砲火に被弾し、爆発した。
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:09:29.38 ID:BWZqNqE0
「!!」
 ゲールは険しい表情のまま固まった。
 そうして何も言わずその爆発を見つめていた。
 パイロットが脱出した様子は無い。
 あれほど急な出来事だ、脱出できるはずが無い。
 そもそも、敵地に降下しようとする兵士が脱出の準備などしているはずも無かった。
 ゲールはただ黙っていた。
 彼は今まで何度も仲間を失ってきたが、仲間を失う辛さに慣れることは無かった。
 胸が張り裂けそうな思いに苛まされる。
 だがしかし、彼は小隊長である。
 3号機が地上に降下する。
 その機体に乗っている部下の命運は自分に懸かっているのだ。
 その責任が彼を冷静にさせた。
 しかしまだ若い3号機のパイロットはそうはいかなかった。
「ちくしょおおおお、よくもシーラを!!」
 そう言って3号機のパイロットはコックピット内の壁を拳で力一杯殴った。
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:38:23.89 ID:BWZqNqE0
「落ち着けシンゴ!」
 ゲールがそう言っても、彼の怒りは収まらなかった。
「落ち着いていられるわけ無いじゃないすか! シーラが殺されたんですよ!!」
「分かってる。だが、だからこそ今は冷静になるんだ。さもなくば次はお前が死ぬことになるぞ」
「っ!!」
 3号機のパイロットは言葉に詰まった。
 ゲールの言葉がどういうことか分かっているからだ。
「とにかく今は目的を遂行することだけに集中しろ」
 ゲールがそう言うと3号機のパイロットは静かに頷いた。
「それでいい。俺達には迷っている暇は無いんだ。無心で突っ込むぞ!!」
 そういうとゲールはドムをホバー走行させた。
 彼の部下もまた「はいっ!」と返事をし、その後を追った。
170 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 02:45:35.54 ID:BWZqNqE0

 ゲールがドムを走行させてから程なく、ドムのレーダーは敵機の存在を告げていた。
「この反応からするに……さてはMSか」
 レーダーの反応を見ながらゲールはそう呟いた。
 嫌な予想だった。
 物量に勝る連邦に対してジオン軍が今まで戦ってこれたのはMSという兵器のおかげだ。
 そのMSを連邦軍が量産し始めていたとすれば、ジオン軍にとって致命的な仇となるのは目に見えている。
 敵の反応がMSでないことを祈りながらゲールと彼の部下はその反応へ向かって突撃を開始した。
「ちっ、やはりMSか」
 ソナーより敵機の駆動音がMS特有のものであることを確認するとゲールは舌打ちした。
「まぁいい、相手が誰であろうと打ち倒すだけだ!」
 そう言うと、ゲールは部下に通信を入れた。
「いいか、相手はMSだ。気を抜くなよ」
「はいっ!」
「我々ジオンの底字から、連中にとくと思い知らせてやるぞ」
「ええ、連中を血祭りにあげてやりますよ!」
 そう言うと、ゲールとシンゴという名の部下は機体のバーニャ推進を最大にした。 
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 03:00:45.82 ID:BWZqNqE0
「死にやがれ連邦の糞野郎おおおおっ!!」
 先行したシンゴのグフが左手に内臓されたフィンガーランチャーを乱射しつつ右手にヒートサーベルを持たせる。
 白熱化したサーベルが煙を纏いながらぼんやりとした光を放った。
 シンゴのグフのモニターに連邦軍の量産型MS『ジム』の姿が映ったのはその時だった。
 即座にフィンガーランチャーの標準をジムに合わせる。
 5連のランチャーの射撃は見事にジムに命中した。
 だが、フィンガーランチャーの威力だけではジムを大破させるには至らなかった。
 咄嗟にシールドを構えるジム。
 大型のシールドを装備するジムは、いったん防御体勢をとると前面に隙が無くなる。
 そしてまた、グフのフィンガーランチャーでそのシールドを打ち貫くのは困難だった。
「チッ! 防御しか能が無ぇのかよ!!」
 モニター越しにジムを睨み付けるシンゴ。
「だったらこいつでぶった切ってやるぜええええええ!!」
 そう叫ぶとシンゴは、ジムに対して突撃したままヒートサーベルを振り上げた。
 シンゴの動きに対して、ジムも咄嗟にシールドを捨てビームサーベルを抜こうとする。
 だが、遅かった。
 ジムがランドセルからビームサーベルを抜く前に、シンゴのグフがジムの頭部にヒートサーベルを振り下ろしていた。
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 03:01:55.40 ID:BWZqNqE0
「これがジオンの力だ!!」
 シンゴは怒涛と歓喜の入り混じった表情で声を張り上げた。
 しかしゲールは彼が勝利の余韻に浸ることを許さなかった。
「たかが一機潰したくらいではしゃぐな、シンゴ。次の敵が来ているぞ」
「はいっ!」
 シンゴはそう返事を返すと、レーダーで敵影を確認する。
 レーダー上の反応では戦車の部隊が近づいてきているようだった。
「戦車、か」
 小さくそう呟きながらシンゴはグフを戦車部隊の方向へ走らせる。
 戦車部隊との距離はかなり近い。
 みるみる内にその距離が縮まってゆく。
「蹴散らしてやるよ!」
 そう言ってフィンガーランチャーを連射する。
 被弾した戦車たちが次々と大破していった。
 瞬く間に4台の61式戦車がその餌食となっていた。
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 03:11:48.18 ID:BWZqNqE0
「ハハハハハハハハハハッ! ざまあみろっ!!」
 フィンガーランチャーの連射する音。
 61式戦車の砲撃音。
 そして大破し爆破する音。
 それ以外にもジャブロー一帯から激戦を示す絶え間なく鳴り響く。
 それらの音に半ば洗脳されるかのように、シンゴは恍惚の表情を浮かべていた。
「シーラの恨み! いや、これはスペースノイドを虐げてきた貴様ら地球連邦への正義の鉄槌だ。死んで償えっ!」
 そう言いながらシンゴの顔は怪しい笑みを作る。
「アハッ! アハハハハハハハハ!!」
 61式戦車が大破するたびにシンゴが笑い声を上げた。
 しかし、それが隙を生んだのだろう。
 彼は突如現れたジムに気がつくのに一歩遅れた。
 ジムのビームスプレーガンがグフのコックピットを狙う。
 だがしかし、ジムがビームスプレーガンのトリガーにマニュピレーターをかけた瞬間、大破したのはジム自信だった。
174 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 03:17:45.73 ID:BWZqNqE0
 シンゴには何が起こったのか一瞬分からなかったが、レーダー上で自機の後方にいるゲールのドムを確認したことで、それがドムのジャイアントバズによる射撃の結果である事を知った。
「周囲への注意を怠るな」
「……はい、すみません」
 ゲールからの無線に浮かない表情で答えるシンゴ。
 自信の気の緩みで招いた危機。
 その危機を自分の力でなく、他者の力により免れた事。
 シンゴの表情にはその事に対する苛立ちが見て取れた。
 彼には、自信の未熟さを認められ無かったのだろう。
 そんなシンゴを若いな、とゲールは思う。
 恐らくは劣等感の裏返しから来る怒り。
 自信を向上させるモチベーションにはなるが、実戦に置いては激情を呼び起こし冷静な判断を失わせる感情でもある。
「いいか、相手に勝利する事は確かに重要な事だが、最も大切な事は自分自信が負けない事だ。それを忘れるな」
 ゲールはシンゴをなだめるべくそう言った。
 シンゴは時間を置いてから小さく「はい」とだけ返した。
 明らかにゲールに対して不服を持っている返事だった。
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 04:24:13.29 ID:BWZqNqE0

 出来杉達は無断で搭乗していたジムから降ろされ、グン少佐の下へ召集されていた。
「無断でのMSの搭乗、そしてその機体を中破され、なおも新しい機体に乗り換えて出撃しようとしていたそうだな」
 グンは出来杉達3人に厳しい目を向ける。
「そのような事は本来許される事ではない、それは君達も分かっているな?」
 強い口調でそう問いかけるグンに、出来杉は小さく「はい」と返した。
「しかし今回は緊急事態だ。十分な操縦技術をもったパイロットが不足している我が軍において、十分な訓練を積んでいる君達は子どもとはいえ重要な戦力足りえる。私とて無意味な軍規を振りかざすつもりは無い」
 軍は少しの間、沈黙のまま出来杉達を見据えた。
「そういう訳だ。改めて君達に出撃命令を出そう。各人、ジムに搭乗しジャブローに侵攻してきた敵機を撃退せよ」
『はい!』
 3人が息をそろえて返事をした。
 そしてすぐに踵を返すと、それぞれが支給されたMSへ向かって駆け出した。
 出来杉がジムに乗り込みシステムを起動すると、すぐさまアリアから無線が流れてきた。
「凄いね。私たち1人1人にMSなんて」
「うん」
 出来杉は微笑みながらそれに返す。
 するとツンが無線に割り込んできた。
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 04:29:30.47 ID:BWZqNqE0
「ま、当然のことよね。NT適正者である私たちは常に最新鋭のMS操縦訓練を受けてきてるんですもの。並みのパイロットとは訳が違うのよ」
 そういうツンはとても得意げだった。
 そんなツンのことがアリアは大好きだった。
 弱気な性格なアリアあなだけに、ツンの強気な性格に惹かれるのだろう。
「うん。そうだよねツンちゃん。私たちNTの種だもんね」
 そう言ってアリアは笑顔を作った。
「ええ」
 ツンはそう相槌を打った。
 そう、まだ私たちは種に過ぎないのだ、と彼女は思う。
 だからこそ彼女はMSに乗ってより多く戦わなければならなかった。
 MSでの戦いこそがNTの能力を強化する要素である、というのが彼女達の教わった事だったからだ。
 一機でも多く敵と戦わねば。
 それはもはや脅迫に近い彼女の義務感だった。
 ”わたしをメチャクチャにして”、”私を利用した奴らをやっつける”為の力を手に入れること。
 それこそがツンを支える原動力だった。
「私はアムロさんだって超えてみせるわ」
 ツンは誰にも聞こえないようにそう呟いた。
 そうしている内に3人のコックピット内にグンからの無線が入った。
『それではこれより各機、B−126−Dブロックへ向かい敵機を迎撃せよ』
『了解!』
 3人は同時にそう答えると目的地へ向かって移動を開始した。
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/07/25(土) 13:46:05.24 ID:j0CAZKoo
作者来てたああああああああああああひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおうううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!1
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/07/25(土) 21:45:25.58 ID:39nN75Mo
シーラ・・・名前からして、おにゃのこだったのかな・・・
きちょまん
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/07/26(日) 00:43:10.62 ID:v3j8iwDO
相変わらずの誤字にワロタw
続きを期待してます。
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/08/06(木) 21:05:00.65 ID:76JNoYDO
いつの間に・・・

kabaさん頑張って下さい
181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/08/17(月) 23:15:46.49 ID:pjo5ySI0
盆過ぎたけど俺は一日一回見てるよ!
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/03(木) 00:24:20.90 ID:5TaOBADO
早く書けよ。。。



嘘です。ごめんなさいm(__)m
書いて下さい。。。
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/04(金) 21:47:29.33 ID:XUy9q7oo
懐かしい。復活してたのか
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/06(日) 17:33:38.73 ID:du/ZShso
なんとなくミクシイあさってたらこんな神スレにたどり着いた。




3年間何やってたんだ俺
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/07(月) 01:06:09.04 ID:Evmr0zQ0
毎度おまたせして申し訳ないです!
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/07(月) 01:16:02.48 ID:Evmr0zQ0

 最初の敵であるザクUを発見したのはツンだった。
 ザクよりも早く相手を察知し、すぐさま射撃し、危うげなく撃破したのだ。
 そんな彼女を筆頭に出来杉とアリアも次々に敵を発見し撃墜してゆく。
 間違いなく、出来杉達の操縦技術は並みのパイロット以上のものだった。
 そして本人達はあまり意識してはいなかったが、3人は互いに上手く連携を取り合い、互いが互いをカバーしていた。
 ツンが3機の戦闘を行き、そしてそれぞれが互いの死角を補い合いながら着実に敵機を捕捉し撃破する。
 彼らが1人1人であればあるいは彼らの能力は並以上で終わっていたかもしれない。
 しかし、例えばジオンの黒い3連星がそうであるように、彼らは3人であるからこそ発揮できる能力を持っていた。
 そして3人で能力を発揮すれば、その力はエースパイロットと呼ぶにふさわしいものだった。
 敵機の迎撃を開始してからそれほど経たない内にすでに出来杉達は合わせて10機のMSを撃破していた。
 明らかに他のジム達とは動きが違う。
 必然的に出来杉達は敵機の多いエリアへと食い込んでいた。
「私たちが先陣を切れば後続の友軍も動きやすくなる。だからどんどん切り込んでいくわよ!」
 そう言うツンに出来杉とアリアがすぐさま無線で返す。
「OK!」
「サポートは私にまかせて!」
 そうしてまた敵機を撃墜してゆく。
 ツンはもちろんの事、訓練では敵機を撃墜することを躊躇していたアリアまでもが躊躇うことなく戦っていた。
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/07(月) 01:19:31.84 ID:Evmr0zQ0
 ふと、出来杉の心の中で何かが引っかかった。
 これでいいんだ。
 これでいいはずだ。
 だから何も考えるな。
 自分にそう言い聞かせる出来杉。
 しかし彼は心に浮かぶ思いをぬぐい切れなかった。
『僕は、僕達はただの兵器に成り下がっているのではないか?』
 ただ、無性に胸が苦しかった。
 もはや選んでしまった道。
 引き返せないのだとしたら、後は貫き通すしかない。
「うおおおおお!」
 出来杉はビームスプレーガンで一機のグフを撃墜したかと思うと刹那にバーニャを最大出力でジャンプし、今度は別のザクをビームサーベルで真っ二つに両断していた。
 爆発し、炎上するグフとザク。
 連続で2機のMSを撃墜しておきながら、出来杉には何の感慨も無かった。
 ただ、このままずっとジオンを倒し続ければ少しでも戦争の終結に近づくのかもしれないと思うと、少しだけ救われた気がした。。
 だが、それ以上のことを考える時間は出来杉には無かった。
 間髪置かずに出来杉達の下へ2機のMSが突進してくる。
 すぐさまレーダーとソナーの情報を解析する出来杉。
「この反応、先行してるのがグフで、後方がドムか」
 格闘戦主体のグフを先陣に後方から長距離射程を誇るジャイアントバズで砲撃する。
 定石にして厄介な戦法だ。
 ジャイアントバズの砲撃のせいで突撃してくるグフに狙いを定める事が出来なかった。
 だが、これ以上グフを接近させるわけにもいかない。
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/07(月) 01:22:58.54 ID:Evmr0zQ0
「ツン! アリア! 一先ずスプレーガンで先陣のグフを倒そう!」
 出来杉がそう言うと2人から『了解』と無線が返ってくる。
 3人が一斉にグフに集中砲火を浴びせた
 しかし、このグフのパイロットは手強かった。
 グフはその攻撃を何とか避け、突撃を続けてくる。
 グフの固定武装であるフィンガーランチャーを装備した左腕を破損し、シールドも吹き飛ばされた。
 だというのにグフは全く臆することなく、右腕に持ったヒートサーベルで切りかかれる距離まで間合いを詰めてくる。 
 気がつけばグフはツンのジムに切りかかっていた。
「私に喧嘩売る気? 上等じゃないっ!」
 すかさずビームサーベルをバックパックから引き抜き応戦するツン。
 ツンのジムとグフは剣道の鍔迫り合いの様に、互いの剣を交えたまま拮抗している。
「やるわね……、でもMSの出力はこっちの方が上なのよっ!」
 そう言った瞬間、ツンは機体とビームサーベルの出力を瞬発的に最大値まで引き上げた。
 グフのヒートサーベルがビームサーベルの磁力に弾かれる。
 ツンはその隙を逃すまいと間髪置かずにグフに切りかかった。
 しかしグフのパイロットも非凡な操縦技術を持っているのだろう。
 本来ならば直撃するはずのツンの一閃を、ギリギリのタイミングでヒートサーベルで受け止める。
「くっ!!」
 敵を仕留め損なった怒りで顔をゆがめるツン。
 しかし、相手のグフは今の攻撃を防いだ事で再び大きくよろめいていた。
 今度こそいける。
 そう確信した。
 だが、ビームサーベルで切りかかろうとしたその時、ツンの目にグフのバーニャに火が灯るのが映った。
 ツンの次の動きをグフのパイロットも読んでいたのだ。
 グフはバックスッテップでツンの攻撃をを避けようとしていた。
 私のビームサーベルじゃ間に合わない、ツンはそう悟った瞬間に叫んでいた。
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/07(月) 01:25:47.52 ID:Evmr0zQ0
「出来杉っっ!!」
「わかってる!」
 ツンの言葉に応じて、出来杉はビームスプレーガンの照準をグフにセットする。
「当たれええええ!」
 出来杉がそう言ってトリガーを引こうとした矢先だった。
「ダメッ!! 避けて、エイサイ!!」
 アリアの声が聞こえた瞬間、出来杉はその言葉を理解するより先にジムにサイドステップを取らせていた。
 次の瞬間、出来杉のジムのコックピット内に爆音が響いた。
 その音の激しさに直撃を覚悟した出来杉だったが、機体の揺れからして被弾していないのは確かだった。
 モニターを見れば、先ほどまで出来杉のジムが立っていた場所にもくもくと黒煙が立ち込めていた。
 出来杉は咄嗟にそれがドムの砲撃によるものである事を理解すると、ドムを索敵しセンターに見据えた。
 ドムはジャイアントバズの一撃目から二撃目へ移行する間の僅かな隙を見せているところだった。
 その隙を逃すわけにはいかない。
 ビームスプレーガンでドムを射撃する。
 が、その攻撃を予知していたようにドムはそれを避けた。
「大丈夫エイサイ!?」
 アリアが出来杉を心配して通信を入れた。
「うん、大丈夫だよ。だけどあのドム、シャア程じゃないにしても相当な力量だ」
 そう出来杉は返した。
 だが、そうして2人がドムに気を取られた隙にグフは体勢を立て直し再びツンのジムへ切りかかってきていた。
「しつこいわねっ!!」
 グフの一撃を避けるツンのジム。
 と、同時にビームサーベルで反撃を試みた彼女だったが、まるで流れるような動きを見せるグフはそれを避け、切りかかってきた。
190 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/07(月) 01:27:28.10 ID:Evmr0zQ0
「なっ」
 グフの見せた動きは見事としか言いようのない物である。
 ツンとて驚嘆の声を漏らさずに入られなかった。
 だが、それ以上に敵が憎い。
 ツンはバーニャの推力を使い何とかその斬撃を交わそうとした。
 だが、ほんの一瞬間に合わなかった。
 ビームサーベルを手にしていない方の左腕がグフの餌食になる。
 モニターに損傷率が映し出される。
 損傷率は軽微。
 こんなのは屁でもない、と彼女は思う。
 そもそも、例えそれが致命傷だったとしても、このまま引き下がるツンではなかった。
 ツンはカウンターとばかりにもう一撃グフに斬撃を見遣った。
 並みのパイロットでは繰り出せない、気合の一撃。
 その攻撃は確かにグフに届いた。
 ツンの一閃はグフの右肩に直撃していた。
 しかし、その攻撃も甘かった。
 幸運だったのは、それはヒートサーベルを手にしている右の肩であることだ。
 それによりグフは、ヒートサーベルを使用する事が出来なくなっていた。
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/07(月) 02:00:31.27 ID:KdSwPu.o
まさかこの時間で投下に立ち会えるとは思わなかった
シンゴなかなかやるじゃないか!ゲール中尉もかっけぇ!
192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/07(月) 20:49:39.83 ID:4G.1IIDO
続きみてぇえぇえええ!
193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/08(火) 00:28:31.19 ID:J19AjoDO
作者キターッアッー!!!!
194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/08(火) 01:34:37.23 ID:IG6BkJso
うおわっと!
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/12(土) 00:06:04.72 ID:WRLEaww0
 追撃を防ぐべくグフはバーニャを噴射させ大きく跳んだ。
 当然ツンもその後を追うが、地上での機動性にはグフの方に軍配がある。
 グフはジムを一定の距離まで引き離すと、不意に立ち止まった。

 グフのパイロットであるシンゴは怒りのあまり歯を噛み締めていた。
「くそっ! くそおおおおおおおおおお!」
 両腕を破損され、フィンガーランチャーもヒートサーベルも使えない。
 シンゴは連邦の兵士に負けた自分が許せなかった。
 だが怒りの激情に流される彼を、ドムに乗るゲールは冷静に見つめていた。
「拡散ビームで連中の目を眩ます。その隙に下がるぞ」
 ゲールがシンゴ機にそう通信を入れると、シンゴは悲痛な叫びを上げた。
「嫌です! ここで下がるくらいなら連中もろともっ!」
「馬鹿を言うな!」
「ゲール隊長、あんたはいつもそうだ! そうやっていつも逃げることばかり! それでもあんたは軍人なのか!?」
「シンゴ……今のは口が滑った程度に受け取ってやる。だがそれ以上の戯言は聞かん。もう一度言う、下がれ」
「負けるから引き下がれと言うのか!」
「そうだ」
 その言葉に、シンゴはゲールが上官である事すら忘れてしまった。
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/12(土) 00:11:57.83 ID:WRLEaww0
「この腰抜けがっ!!」
「シンゴ、隊長である俺の命令がきけないのか?」
 シンゴを睨み付けるゲール。
 モニター越しにもその気迫は伝わっていた。
 ゲールはそれ以上何も言わなかったが、何よりグフに標準を合わせたドムのジャイアントバズが物語っていた。
 それがどういう意味なのかシンゴはよく分かっていた。
 ”命令を聞けないのなら[ピーーー]”
 そのメッセージは間違いなく本気のものだ。
 短い期間ではあるが、ゲールの下で働いていたシンゴには彼がどういう男なのか分かっていた。
 ゲールはジオンの北米攻略作戦の際、その働きから”荒野の狼”とまで恐れられた男である。
 敵を倒す事よりも、自らとその仲間を生き残らせる事を優先するゲールには似つかわしくない称号にも思える。
 だが、そんな呑気な主義を今日まで貫き通してこれたのは、彼が己の主義に反する人間を徹底的に排除してきたからに違いない。
 そしてその彼を指して、人は彼を荒野の狼と呼んだのだろう。
 養成学校を優秀な成績で卒業したシンゴとて、ゲールと戦って勝利する自信は無かった。
 まして、両腕が破損しているMSになど乗っていては話にならない。
「――命令に従いますよ、ゲール隊長。それでいいんでしょう?」
 シンゴはモニター越しにゲールを睨み付けながらそう言った。
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/12(土) 00:14:39.76 ID:WRLEaww0
ありゃりゃ…。
[ピーーー]のところは”ころす”です
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/12(土) 00:15:52.48 ID:WRLEaww0
「そうだ。分かったらさっさと退避の準備をしろ」
 そのゲールの言葉には何も答えずゲールはバーニャの推進剤の残量などのメーターをチェックする。
 次いでレーダーを確認する。
 ジムがすぐ傍まで追って来ていた。
 改めて考えてみる。
 連中はゲールが”負ける”と言う程の力量を持っている敵だ。
 実際、手ごわい相手だというのはシンゴ自身がよく分かっている。
 武器も何も無い自分が真っ向勝負を試みても、玉砕どころか一方的に狙い撃ちをされて終わりだろう。
 そう考えると、やはりゲールの命令に従うより他にないとシンゴは思った。
 ジムの追撃が激しさを増す。
 もはや一刻の猶予も無かった。
 バーニャの出力を最大限引き出して、一気に敵を引き離す。
 シンゴがそう決めたまさにその時だった。
 ゲールの搭乗しているドムが1機のジム目掛けて砲撃を開始した。
 ジムは何とか砲撃を避けたが、後退を余儀なくされる。
 そして、その一機が足止めを食らった事で、他の2機の連携も乱れた。
 ゲールはその隙をみて、ドムの胸部に内臓されている拡散ビーム砲を発射した。
 強力な光が辺りを包み込む。
 ビーム砲というよりは、強力な照明といったものではあるが、敵の目くらましには非常に有用な武器だった。
 その一瞬の隙を突いて、シンゴはグフを大きく跳躍させた。
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/12(土) 00:37:48.97 ID:PSOX0cDO
リアルタイムktkr
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/12(土) 19:02:31.52 ID:ighUa5Eo
ニュータイプの革新が見えるぞ
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/12(土) 23:48:11.90 ID:WRLEaww0
 その姿を見届けると、ゲールはシンゴへ通信を入れた。
「ここから南東方向へ1700の地点にファットアンクルがいるそうだ。お前はそいつに拾って貰え」
「お前はって……隊長は?」
「俺も頃合を見計らってここを脱出するさ」
 ゲールの言葉を聞いて、まさかとシンゴは思った。
 だが、シンゴが次の言葉を吐き出す前にゲールは最後の言葉を言った。
「シンゴ、シーラの分まで生き延びろよ」
 そう言ったきり、ゲールはあらゆる通信回線を遮断していた。
 シンゴが何度通信を入れなおしても彼からの返事が返ってくることは無かった。

 一方のアリアとツンはドムの拡散ビームに驚いた様子だった。
「大丈夫、ただの目くらましだよ」
 そんな2人をなだめるように出来杉が言った。
 ただ、それでも不安そうにアリアが口を開いた。
「でも、モニターが真っ白で何にも見えないよ」
「落ち着いて。時間を置けば機能は回復するはずだ。それまで計器の情報を確かめるんだ」
 そう言って出来杉自身もソナーやレーダーの数値を確かめる。
 瞬間、出来杉は叫んでいた。
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 00:31:23.32 ID:9VIYmMg0
「来るぞっ!!」
 レーダーには一機のMSが出来杉機に突撃してくる様を伝えていた。
 ただし敵機の反応は一機だけ。
 どうやらもう片方の機体の方はこの場から退避したらしかった。
 問題なのはドムとグフ、どちらの機体が突撃してきているかだ。
 ただ、十中八九答えは分かりきっていた。
「モニターの回復はまだか」
 視界が徐々に戻ってきてはいたが、未だモニターの機能は不十分だった。
 ひとまず時間を稼がなければならない。
 出来杉機は右サイドへ跳び、間髪おかずバックスッテップを行なった。
 ただし、不鮮明なモニター画像と計器の情報だけでは思うような動きが出来ない。
 必然、その動きは精細さを着ていた。
 その後を敵機が追う。
 どうやら敵は最初の標的を出来杉に定めたらしかった。
 あっと言う間に差が縮まる。
 逃げ切れない。
 そう悟った出来杉は咄嗟に迎撃体勢を取った。
 無論、ぼやけたモニター画像では圧倒的不利である。
 但し戦わないわけには行かなかった。
 敵を見据えロックオンをかける。
 敵はどうやらドムのようだった。
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 00:59:48.68 ID:9VIYmMg0
「喰らえっ!」
 そう言って出来杉はビームスプレーガンを発射した。
 しかし敵はその射撃を裕に避けた。
 敵は速度を緩めることなく出来杉に突撃してくる。
 不味い。
 そう思った時だった。
 一機のジムがドムに格闘戦を仕掛けていた。
「エイサイッ!」
「アリアかっ!」
 アリア機のビームサーベルが一閃される。
 だが、ドムはヒートサーベルでその斬撃を真っ向から受け止めていた。
 必然、ドムは出来杉からアリアへ標的を変更する。
「アリア、モニターは大丈夫なのかっ!?」
「うん、私は大丈夫! だから出来杉はモニタが直るまで下がってて!」
「だけど!」
「大丈夫だから。間違えてあたしに攻撃があたったら大変でしょ? だから、ねっ!」
 明るく弾んだ声でそう言うアリア。
 その言葉を聞き、出来杉はことばに詰まった。
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 01:14:12.96 ID:9VIYmMg0
 ただし、アリアのコックピットのモニターもまた出来杉のものと同じ状況だった。
 だからこそ彼女は自分が前に出たのだ。
 出来杉もまた自分と同じ状態なのだとしたら、彼にそんな危険な戦いをさせるわけにはいかない、と。
「あんたなんかにやらせないんだからああああああ!」
 先ほどのツンを真似るようにビームサーベルの出力を最大にするツン。
 だが、今度はグフの時のようにはいかなかった。
 パワーや推力はドムの方が上回っているのだ。
 拮抗していた鍔迫り合いは、徐々にドムが有利になってゆく。
 だけどアリアは負けたくなかった。
 自分を支えてくれた大切な人を、出来杉を守りたいのだ。
 アリアは不鮮明なモニター越しに敵を見つめる。
 負けるわけにはいかない。
 エイサイもツンちゃんも、あんたなんかに傷つけさせない。
 でも、力で押されてしまうならならどうすればいいのだろう?
 わからない。
 私はエイサイみたいに頭が良くないから。
 だから、難民キャンプでもずっとエイサイに助けてもらって。
 だから、いつか恩返ししなきゃって。
 私がエイサイを守らなきゃって。
 それが今なのに。
 それが今なのにっ!
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/13(日) 01:23:39.24 ID:A3ZTW0so
まさか・・・
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 01:27:55.62 ID:9VIYmMg0

 ――お願い、神様。力を下さい。 
 
 心の底からそう願った。
 今まで生きてきた中で一番強く願ったんじゃないかというくらい。
 だから本当に神様に願いが通じたのかもしれない。
 不思議な感じだった。
 なんだか急に頭が冴えた気がした。
 要するにに敵の攻撃に当たらなければいいんだよ。
 そんな言葉が思い浮かんで、そんな自分の言葉に自分で納得する。
 そうだよね。
 全部避けちゃえば負けないもんね。
 そうすれば絶対勝てるよね。
 だけど、全部よけるなんて流石に無茶かな。
 ま、でもいいか。
 だって、なんだか今は避けれちゃう気がするし!

 アリアは最大推力で横に跳んだ。
 それが予想外の動きだったのか、ドムの反応が一瞬遅れた。
 その隙にねじ込むようにアリア機がドムを切りつける。
 が、その狙いはあまりに甘かった。
 ドムはその攻撃をヒートサーベルで受け止めた。
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 01:28:59.75 ID:9VIYmMg0
 ドムはその攻撃をヒートサーベルで受け止めた。
「ちぇっ、やっぱりモニタがこんなんじゃダメかー」
 そう言いつつバックステップを取らせるアリア。
 攻撃が甘かったとはいえ、その動きはモニターへのダメージなど微塵も感じさせなかった。
 ”感”が冴えていた。
 モニターが見えなくても、アリアにはなんとなくどういう操縦をすればいいのかが想像出来た。
 勝てる。
 なにせ私には守らなきゃいけない人がいる。
 勝たないわけにはいかないんだ。
 それは守るべきものがあるからこその決意。
 それは決意から生まれる強さ。
 年端もいかない少女ながら、アリアは己の中に生まれたそんな”強さ”を実感していた。
 ただ、その強さを知ったからこそ生まれる脆さもある。
 アリア機は大きくドムへ向かって踏み込んだ。
 同時に敵の肩から腰目掛けてビームサーベルを振り下ろす。
 絶妙なタイミング。
 確実にしとめる筈の一撃。
 だがしかし、その一撃は再びドムのヒートサーベルに阻まれていた。
 またも鍔迫り合いの状態で拮抗する両機。
 強い。
 アリアは改めてそう思った。
 そしてその敵の強さの由来はきっと、自分と同じものであることを彼女は感じていた。
 あのドムのパイロットにだって守りたいものがあるのだ。
 それが何だかなんて分からないけど、きっととっても大事な人なんだ。
 ねえでも、それってもしかして大変なことじゃない?
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 01:31:04.92 ID:9VIYmMg0
>>204
ああああああああ間違えた!
> 先ほどのツンを真似るようにビームサーベルの出力を最大にするツン。



> 先ほどのツンを真似るようにビームサーベルの出力を最大にするアリア。

です!
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 01:47:24.96 ID:9VIYmMg0

 ――ふっ、と。
 時が止まったように時間がゆっくりになって、思考だけが物凄い速さで駆け巡った。
 例えば私がこのドムを倒せば、ドムのパイロットの人は誰かを守れなくなるのだろうか?
 そうすればこの人は悲しむのだろうか?
 この人が守ろうとした人は悲しむのだろうか?
 きっとそうだ。
 でもね、それは私もおんなじだよ。
 エイサイとツンちゃんが傷ついたら私もすごく悲しいよ。
 2人だって私が死んだらきっと悲しむんだよ。
 ねえ。
 だったらなんでこんなことをやってるの?
 やめようよ。
 こんなことやめようよっ!

「馬鹿っ! あんた何ぽけっとしてんの!」
 ツンの通信の声でアリアはハッとした。
 気づけば敵のドムは力でジムのビームサーベルを振り払い、続く2撃目を繰り出そうとしているところだった。
 咄嗟に後方にジャンプするアリア機。
 だが遅かった。
 アリア機の両脚は丁度間接部分の辺りでドムのヒートサーベルで切断されてしまった。
 そのままアリア機は着地する事が出来ず、本体ごと地面に激突した。
「きゃあああああああ!!」
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 02:02:25.70 ID:9VIYmMg0
 その衝撃に叫び声を上げるアリア。
 だが、何とか気を取り直してモニターを見つめる。
 すると丁度ドムが追撃の一閃を振り下ろそうとしている画面が彼女の目に映った。
 恐怖のあまり叫び声もあげる事が出来なかった。
 死ぬと思った。
 だが、ドムのヒートサーベルがアリア機をきりつける事はなかった。
「大丈夫かアリアっ!?」
 出来杉の声がアリア機の中に響く。
 アリア機のモニターにはドムの一撃をビームサーベルで受け止める出来杉のジムの背部が映っていた。
「私なら大丈夫だよエイサイ。だけどごめんね、モビルスーツはもうだめみたい」
「MSなんてどうでもいいよ! アリアが無事ならそれでいい」
「エイサイ……」
 アリアの胸に色んな感情がこみ上げた。
 色んな事を言いたかった。
 だけど状況がそれを許さなかった。
「ありがと」
 一言そういうだけでアリアには精一杯だった。
「エイサイは平気?」
「うん、モニタの機能も大分回復した。アリアのおかげだ」
「よかった」
 アリアはそう言って笑顔を作った。
「ちょっと! 私を忘れないでよねっ!」
 そんな2人の通信にツンが割ってはいる。
「このドムも呑気にやってんじゃないわよっ!!」
 出来杉と剣を交えているドムの後方へツンが回り込む。
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 02:05:28.81 ID:9VIYmMg0
「このドムも呑気にやってんじゃないわよっ!!」
 出来杉と剣を交えているドムの後方へツンが回り込む。
 ドムはツン機の動きを確認すると、片腕で出来杉のビームサーベルを受けつつもう片方の腕に腰部に取り付けてあった90mmマシンガンを持たせ、射撃をおこなった。
 その射撃は直撃こそしなかったが、見事にツン機の牽制に働いていた。
 だが、2機を同時に相手にしようとすれば機体の出力的にもパイロットの技量的にも能力は低下せざるを得ない。
 この隙にとばかりに出来杉は力でドムを押し切ろうとした。
 だが、ドムのパイロットはその動きを読んでいた。
 真っ向からジムの攻撃を受けるのではなく、あえて引き、まるで一回転するようにカウンターを見舞ったのだ。
 ジムに押される力を逆に利用した形である。
 背後から切りつけられる状況となったため、出来杉は瞬時に前進へ突進した。
 ドムのヒートサーベルがジムのバックパックを掠める。
 間一髪で致命傷を避けた出来杉機だが、しかし未だ背後を取られている状況は変わっていない。
 背後はMSの最大の弱点だ。
 故に背後を守るべく、ドムへ振り返り、同時にビームスプレーガンを射撃した。
 しかし、その攻撃はドムの90mmマシンガンによる射撃と重なった。
 出来杉のジムは全身にその攻撃を被弾し、ドムもまた90mmマシンガンを持つ腕にビームスプレーガンの直撃を受けた。
 相打ちではあるが、損傷率はジムの被害が大きい。
 ドムは直撃により体勢を崩したが、再びジムへ格闘戦を挑むべくヒートサーベルを振りかざした。
 今度突撃していれば、次こそドムが勝利するはずだった。
 だが、ドムがヒートサーベルを振りかざした直後、ドムは背後からビームスプレーガンで胸部を射抜かれていた。
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 02:40:15.38 ID:9VIYmMg0

「直撃……か」
 ゲールはモニター画面に映し出された機体の損傷情報をみて静かに呟いた。
 損傷した部位と損傷度から考えて、この機体がもう幾ばくも持たないのは明白だった。
 瞳を閉じる。
 己にとっての戦いとは何だったのだろう?
 今までの己の軌跡を振り返る。
 全ては己を守る為に。
 己の大切なモノを守る為に。
 あくまで俺は利己的に戦ってきた。
 正義とか、国家とか、そんな漠然としたモノに身を捧げてきたつもりはさらさら思いはない。
 だが思えば、戦えば戦うほど守るべきモノとは何か分からなくなってしまった気がする。
 多くの戦いの中で守るべき戦友を幾多失った。
 守るべき故郷も失った。
 己の命すら守りきれず終わろうとしている。
 だったら、俺の戦いとは一体なんだったのだ。
 ゆっくりと瞳を開く。
 モニターに映るジムを、ゲールは複雑な思いで見つめていた。
「連邦の兵士さんよ、顔もしらねえ俺たちが何で殺し合いなんてしてるんだろうな」
 皮肉っぽくゲールは笑った。
 ふと、頭の中に部下であるシンゴのことが思い浮かんだ。
 あいつはそろそろファットアンクルまでたどり着けただろうか。
 せめてあいつが生き延びてくれればいい。
 最期の願いが叶うなら、それが俺の願いだよ、神様。
213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 02:41:28.64 ID:9VIYmMg0

 出来杉のモニターには直撃を受けたドムが微動だにせず固まっている姿が映っていた。
 まるで何かを訴えるかのようにモノアイを出来杉のジムへ向けたまま、数秒のあいだドムは静止していた。
 やがてバリバリと全身から火花を放ち、そうして突然ドムは爆発した。
「勝った……のか?」
 出来杉は思わずそう呟いた。
「そうよ、私のおかげでね」
 そんな出来杉の呟きにツンが返す。
 ドムを仕留めた射撃を放ったのはツンのジムだった。
「ありがとうツン。ツンの射撃がなかったら僕は今頃」
「勘違いしないでよね。私は自分のやるべきことをしただけよ」
 薄く頬を赤らめながらツンはそっぽを向いた。
「それより大丈夫アリア?」
 ツンはそう言ってアリアに通信を入れた。
「うん、怪我もしてないし大丈夫だよ」
「今そっちに行くから私のジムに乗りなさい」
「ありがとツンちゃん」
 アリアはそう言って笑顔を作った。
 機体のハッチを開く。
 アリアのジムは丁度仰向けに倒れており、アリアはコックピットから出るとジムの胸部に降り立った。
 景色を見渡すと、出来杉とツンのジムがこちらへ歩いてくるのが見えた。
 その光景がなんだか嬉しくて頼もしくて、そしてなんだか少しだけ切なかった。
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 02:43:06.78 ID:9VIYmMg0

 それから僅か数十分後、連邦軍司令本部よりジャブローにおけるジオン軍の掃討が完了した旨の通信が連邦兵たちの下へ流れた。
 ジオン地上軍の総力を結集し発動されたジャブロー攻略作戦は、本作戦に投入されたジオン軍戦力の壊滅という形で幕を閉じたのだ。
 戦いを終えた後、出来杉達3人はジャブロー司令部の高官の下に招集された。
 MSに無断で搭乗した罪は重い。
 3人は厳しい処分がされることを覚悟したが、意外にも言い渡された内容は処分不問というものだった。
 その理由として有事における緊急処置としてジムに乗り込んだのは仕方の無い対応である事。
 また、3人がNT適正者として正規のMS訓練を受けている事。
 そして、アムロからの口ぞえがあったからという事だった。
 中でもアムロの口ぞえが今回の処分不問という結果に繋がったらしい。

 オデッサ作戦以降、地上において連邦軍へミリタリーバランスはだが、もはやその差は歴然となった。
 事実上、ジオン軍は地上における主戦力を失ったのだ。
 地上におけるゲリラの掃討戦はこれからも続いてゆくだろう。
 しかしこれからの本格的な戦場は宇宙へと移ってゆくことになる。
 既に、ジオン軍の宇宙要塞への大反抗作戦は動き出していた。
 その作戦の根幹をなすのがルビコン計画である。
 宇宙における戦力の再編をすべく大量のMSと戦艦を生産する重要な計画であり、既にその目標とする戦力は殆ど生産が完了してた。
 そしてそれらのMSを搭載した戦艦群はジャブロー防衛戦を機に次々と宇宙へ打ち上げられていった。
 出来杉達3人もまたショー大尉に連れられ、そんな戦艦の一隻へ搭乗する事になった。
 目前に迫るジオンの宇宙要塞攻略の為に建造されたマゼラン級のうちの一隻である。
 数多くの戦艦や巡洋艦が群れをなして打ち上げられてゆく。
 そんな中、出来杉達の乗るマゼランもまたルナツーを目指し地上を発ったのだった。
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/13(日) 02:49:41.36 ID:9VIYmMg0
これで前編は終わりです。

これからはやっと宇宙が舞台になっていく後半が書けます。
本当はここからの展開が書きたくてノリで書き始めた物語だけど、
その最初のノリだけで突っ走り続ける事が出来ずみんなをリアルアナベル状態にできずほんとにみんなにはなんと言っていいやら…

ひとまずここまで読み続けてくれたみんな本当にありがとう。
遅筆の上誤字脱字多いですけどこれからも頑張ります
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/13(日) 11:18:18.99 ID:1OFVW6DO
最後まで書き続けてくれさえすれば誰も文句いいませんよw
GJです
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/13(日) 12:40:33.80 ID:A3ZTW0so
>>215
マスター、いい酒だった。
これからも頼む。
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/13(日) 12:45:43.85 ID:lnsuBM.o
ガンバレー
219 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/15(火) 22:21:23.20 ID:nxycgsg0
待ちに待った時がきたのだ
220 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/16(水) 12:40:48.37 ID:9YuFWd6o
いよいよ巡りあい宇宙か
ジャイアンとスネ夫と[たぬき]はどんなルートで宇宙に上がってくるのやら
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/16(水) 23:26:45.01 ID:fQl0yh.o
特殊なマゼランってのが引っかかるな。
レビルの後期座乗艦のフェーベとか?
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/18(金) 21:38:28.54 ID:lJuIkKso
舞台は宇宙か……
次回もwwktkがとまらねえぜ!
223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/18(金) 23:50:00.45 ID:8xqCkFgo
だれもーひとりではー生きられないー
224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/21(月) 16:54:18.00 ID:v20ShgDO
作者さん乙
完結まで何年かかっても
待ってるよ〜
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/24(木) 19:32:35.84 ID:y6Du6QDO
これからどうなるのかとても楽しみです。
kabaさんゆっくりで良いので続きを書いて下さいm(__)m
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/09/26(土) 00:49:18.81 ID:yc4RBCA0
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/26(土) 18:03:32.48 ID:Sbf6P6DO
まとめを誰か更新して下さいm(__)m
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/09/28(月) 11:28:15.36 ID:TPh.Gq2o
まとめ更新しといた
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/03(土) 22:16:18.06 ID:dUTURf20
まとめ更新お疲れ様です
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/06(火) 13:25:46.74 ID:R55veMDO
>>228
お疲れ様です
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 01:08:11.92 ID:Qcw87XE0
読んでくれてる人、そして更新してる人、本当にありがとうございます!
絶対完結させます!
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 01:15:32.23 ID:Qcw87XE0




 スペースコロニー。
 それは宇宙空間に佇む巨大な人工島である。
 基本的に密閉されたシリンダー様の形態をとり、その中では100万〜200万人程度の人々が居住している。
 それらが密集したコロニー群はサイドと呼ばれ、現在宇宙には7つのサイドがあった。
 月面都市と共にコロニニーこそが宇宙における人々の生活拠点であり、故郷でもある。

 そんな7つのサイドの内の1つ、サイド6。
 今回の戦争において連邦軍にもジオン軍にもつかず完全中立を宣言したサイドである。
 その為サイド6は戦禍を免れ、今回の戦争の中では比較的被害の少ないコロニー群でもあった。

 サイド6に属する密閉型コロニー『パ・ア・ソーク』。
 このコロニーもまた、戦争による被害の少ないコロニーの一つだった。
 密閉型のコロニーの全てがそうであるように、パ・ア・ソークの中もまた人工照明により照らされており、人々はその光により生活している。
 照明は時間によりそれぞれ朝、昼、夜を再現しており、地球や開放型のコロニーと同じように1日がある。
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 01:19:53.33 ID:Qcw87XE0

 そんなパ・ア・ソークの中で、居住区から離れた産業区の一角にとある施設があった。
 一見地味で目立たないが、堅牢な壁に守られ屈強な警備員の姿も見れる。
 その施設の、幾重にも張り巡らされたセキュリティーの奥にある一室。
 そこに一人の少女がいた。
 見たところ十代半ばの、雪の様に真っ白な長髪が印象的な少女である。
 また額で切りそろえられた前髪が個性的だった。

 部屋は彼女の私室と言うにはあまりにも簡素だった。
 ベッドと机と本棚は置かれているが、それ以外のものは何もない。
 必要最低限のものしか置かれておらず、天井も壁も真っ白なその部屋にはひたすらに冷たい空気が漂っていた。
 少女の部屋らしい華やかさなど微塵もない。
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/15(木) 01:22:58.55 ID:Eg.gJbAo
まとめ乙
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 01:23:30.11 ID:Qcw87XE0

 少女は窓のヘリに腕を置いて外を眺めていた。
 しかし外とはいえ見えるものなどのビルの群れだけである。
 密閉型のコロニーの性質上、開放型のコロニーの様に巨大な天窓から宇宙が覗くことも無い。
 上を見上げれば、巨大な天井に逆さ釣りになった街が見えるだけである。
 もしも地上生まれの人間がある日突然このコロニーに移り住んできたとしたら、きっと気が滅入るだろう。
 実際、地上帰りの研究員がこっそり辛気臭いコロニーだとぼやいていたのを彼女は覚えていた。
 ただコロニーで生まれ育った彼女にとっては日常の光景であり、何の違和感もなかった。
 それでも、彼女はふと思い出してしまう事がある。
 かつて見た宇宙空間いっぱいに広がる全方位の星空を。
 あのなんともいえない開放感と充足感を。
 それはさほど遠い思い出ではなかったが、彼女にとってはまるで前世の記憶の様に感じられた。
 それほど今の彼女の生活はかつてとは変わってしまったのだ。
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/15(木) 01:25:35.53 ID:Eg.gJbAo
リアルタイムktkr
作者に期待
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 01:37:00.03 ID:Qcw87XE0

 せめてここが開放型のコロニーならよかったのに、と彼女は思う。
 このコロニーを出て何処か別の世界へ行く事が出来たのなら。
 そんなことを心の中で願ってしまう。
 しかし彼女にはこのコロニーはおろか、この施設からも自由に出ることが許されていなかった。
 人工照明の明かりが暮れてゆく。
 彼女は窓の外から目をそらすとベッドへ腰掛けた。

 目を瞑る。
 脳裏に昨日実験に連れて行かれた仲間の顔がよぎった。
 他の仲間がそうであったように彼もまたこの施設へは帰ってこなかった。
 彼は大丈夫だろうか。
 仲間の無事を願う反面、彼女にはその仲間が永遠に戻ってこないことが分かっていた。
 一体これで何人の仲間がこの施設から居なくなったのだろうか。
 数ヶ月前まではこの施設には沢山の仲間が居たのに、今となっては数えるほどしか居ない。
 中には無事にここから巣立った仲間も居るが、しかしここを出た所で行き着く先は軍か、それに属する研究所だ。
 戦わさせられるか、モルモットにされるか。
 彼女にとってそんな事は些細な差でしかなかった。
 どちらにせよ他人の意図で操られるだけの人形にすぎない、と彼女は思う。
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 01:59:35.31 ID:Qcw87XE0
 ふと、今度は別の仲間の顔が思い浮かんだ。
 妹の様に可愛がっていた、まだあどけない少女だ。
 この状況を打開するにはあの子のようにここから逃げ出さなければいけないのだろう、と彼女は思った。
 だけど私にはあの子のように出来そうに無い。
 私はただここから救い出してくれる誰かを待つばかりで、それさえ叶わぬ願いと諦めている。
 天井を眺める。
 胸の中に大きな穴が開いたような気持ちだった。
 その感覚がすごく虚しくて、恐ろしくて、彼女は思考を閉ざす。

 そうして眠りに落ちてゆく。
 せめて夢の中に祈りを託そう。
 そしてまどろみの中に落ちていった。






 何の明かりも無い暗闇だった。
 その暗闇は果てしなく続いていて、上も下も左右も分からない空間だった。
 ひたすらに怖かった。
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/15(木) 02:19:35.51 ID:/OUXXDMo
おお、投下されてる!毎日見に来ててよかった!
いよいよ舞台は宇宙か…wwktkだぜ
240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 02:27:13.73 ID:Qcw87XE0
『誰か!』
 そう叫ぼうとして声を張り上げる。
 だけど口から出てくるのは「キィ」という鳴き声だけで、言葉にならない。
 私は余計に怖くなって、誰かの姿を求めて彷徨った。
 必死に探し回った。
 それがあまりにも必死だったせいだろう。
 最初は気づかなかったが、私は走っているのではなく暗闇の中を羽ばたいていた。
 ふと、俯瞰した自らの姿が見えた。
 どうも私は鳥になっているみたいだった。
 それで気がついた。
 これは夢なのだ。
 いつも見る同じ夢。
 だからこの先の結末も分かる。
 だからこそ怖かった。
 ぽろっ、と腕、いや翼に不快な違和感を感じた。
 咄嗟にその翼を振り返る。
 闇のかなたに飛んでゆく一枚の羽が見えた。
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 02:47:50.32 ID:Qcw87XE0
 それを皮切りにボロボロと、羽ばたく翼から無数の羽が抜けてゆく。
 次から次へ、ボロボロ、ボロボロ。
 それと同時に私の体は浮翌力を失い、暗闇の中へ落ちてゆく。
 景色は変わらぬ暗闇。
 なのに、ひたすら奈落へ落ちてゆく感覚だけが肌を伝う。
 気が狂いそうなほど恐ろしかった

 そこで目が覚めた。
 いつも通りの無機質な天井が瞳に映る。
 本当だったら好きになれないはずのこの天井でさえ、今は安堵感を与えてくれた。
 しばらくの間、そのまま天井を眺める。
 そして上半身だけをおこす。
 全身冷や汗をかいているようだった。
 そして何の気なしに窓の外を眺める。
 やはりいつもと同じ無機質な景色。
 それを眺める彼女の心も、いつもと変わらぬ、大きな穴が開いたような虚無感に支配されていた。

242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 03:19:04.29 ID:Qcw87XE0


 フラナガン=ロム博士は自らが所長を務めるの研究所の所長室で資料の束を読みふけっていた。
 彼は、ニュータイプ研究の第一人者にしてフラナガン機関の設立者である。
 フラナガン機関とは、ジオン公国軍突撃機動軍司令キシリア=ザビ少将の権限の下に設立されたニュータイプ研究機関だ。
 ニュータイプの軍用兵器への応用が研究の主眼に置かれ、中でもNT特有の脳波を増幅させる装置”サイコミュ”がその研究の根幹を成していた。

 サイコミュをMSやMAに搭載すれば、より早く敵を察知し、より機敏に機体運動を行い、より正確に敵への攻撃を行なう事が出来る。
 それがフラナガンのサイコミュ理論だった。
 しかしその実用性に対して、彼は軍の高官達から懐疑的な目を向けられてきた。
 特に彼にとっての逆境は、ジオン公国総帥であるギレン=ザビもまた、NTの軍事転用に懐疑的な者の一人だったという事である。
 キシリアの庇護の下にあるとはいえ、ギレンに機関の解散を命じられればなす術は無い。
 また、ジオン公国の中で政治的・軍事的影響力を拡大しようとしているキシリアの要求もあり、彼には早急に結果を出す必要があった。
 その為に彼はなりふり構わず、あらゆる手段を使って研究を進めた。
 その結果、遂に彼の研究は実を結ぶ所まできていた。
 NT用のMAの試作は既に完了し、NTの搭乗試験によりその強大な能力も実証されたのだ。
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 03:49:04.58 ID:Qcw87XE0
 キシリアの構想であるNT部隊の創設。
 その為にはサイコミュを搭載した兵器を量産し、それに搭乗できるNTパイロットを多く揃える必要があった。
 NT用MAの試作機が完成した今、サイコミュ兵器の量産の実現は秒読み段階に入ったと言える。
 ただし問題はパイロットの方にあった。
 既にララア=スン、クスコ=アル、シャリア=ブルなど優秀な能力をもつニュータイプを手に入れていはいたが、同機関だったがその数はまだまだ不十分だった。
 その為、各地からNT適正者を掻き集めては来たが、機関が要求するだけの能力を持っているものは殆どいなかった。
 そこで彼はサイコミュの研究に並行し、ニュータイプ能力そのものを開発する研究にも力を入れる事となる。

 フラナガンが目を通していた資料は、その研究に関するものだった。
 その脇では彼の助手と見られる若い研究員が顔面蒼白のまま立っている。
 時よりフラナガンは資料と若い研究員の顔を交互に見つめた。
 その表情は明らかに激怒している。
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 04:02:57.18 ID:Qcw87XE0
「Cランク以下の適正者54体への”能力開発”の結果、38体が廃棄か。散々な結果だな。」
 低い声でフラナガンは若い研究に呟いた。
「だが、それはまだいい。問題は分かっているな? 能力開発の結果、有意な能力向上が見られた被験体4体の内、コードネームNT-004が失われたというのはどういうことだ」
 そう言って若い研究員につめよるフラナガン。
 若い研究員は余計に顔面蒼白になりながら、焦って弁解した。
「どどど、どうやら施設内に連邦のスパイが紛れ込んでいたようでありまして、それで、そのスパイに、あの、その。え、え、NT-004を奪われたようでありまして……」
 その研究者のセリフを聞いてフラナガンの怒りが爆発した。
「この馬鹿者がっ! 我々の研究の結晶を、みすみす連中に奪われるとは、貴様、ただで済むと思うな」
「ももも、申し訳ありません所長! もも、もう二度とこのような失態は致しません!」
「黙れ。そして、今すぐ私の部屋から出てゆけ!!」
「はっ、はひっ!!」
 そう返事すると若い研究者は一目散に所長室を後にした。
「無能めが」
 そう言ってフラナガンは頭を抱えた。
 自らが心血を注いできた研究の成果を敵に奪われたのだ。
 これが軍の上層部に知れれば大問題となる。
 これでは何のために己が研究を続けてきたのかも分からない。
 そう考えると怒りが収まらなかった。

 それでもなんとか気持ちを落ち着かせ、もう一度資料を見る。
 不幸中の幸いといえば、能力開発に成功した適性者がまだ3体手元に残っているという事だ。
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 04:31:34.88 ID:Qcw87XE0
 連邦に奪われた被験体も含め今回実験に成功した4体にはそれぞれNT-001〜004のコードネームが与えられていた。
 その内NT-004を連邦に奪われた訳だが、それ以外の001〜003を基調にデータを取れば研究も飛躍的に進むだろう。
 そうすれば念願のNT部隊も創設できる。
 その暁にはMS開発でも、NT研究でも後手に回っている連邦など敵では無くなるだろう。
 そうに違いない。
 そうでも思わなければフラナガンはやっていられなかった。

「資料上は、この4体の結果は良好だな。特に001のレイラ=レイモンドは数値的にはクスコ=アルに匹敵するレベルにある」
 ふむ、と一人頷くフラナガン。
「001は実戦でのデータ収集も兼ね、キシリア様の下へ手土産として送るとしよう」
 そう言ってフラナガンは002と003のデータに目を通す。
「あとはこの002と003をここで調節するとしよう」
 そう決めるとフラナガンの肩が少しだけ軽くなった。
「そうだ、これでいい。地上でも新たに適正者が発見されたというしな。ふん、プロトタイプの一体くらい塩として送ってやるわ」
 フラナガンは笑みを浮かべた。
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 04:33:07.55 ID:Qcw87XE0
「さて、それでは早速プロトタイプの視察をするか」
 そう言うと彼は所長室を出て歩き始めた。

 フラナガンは施設の厳重なロックを幾つか解除し、被験体の収容されている部屋の前で立ち止まった。
 その扉には「NT-003」と記されている。
 フラナガンは電子ロックを解除する。
 部屋に入ると、中には白い長髪の少女が佇んでいた。
 少女の顔を覗き込む。
 フラナガンを見つめ返す端正な顔の少女の表情は、恐怖でゆがんでいた。
 そんな彼女を嘲笑するように、フラナガンは笑顔で口を開いた。
「やあ、クー=スーナ。いや、NT-003と呼んだほうがいいかな?」
 そう言ってフフフ、と笑うフラナガン。
 クーの瞳には、そんな彼が底なしの闇として映っていた。
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 10:11:17.75 ID:zdfYCEoo
急展開ktkr
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/15(木) 12:27:46.76 ID:706xJUDO
どうなる?
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 15:21:02.46 ID:Qcw87XE0


 ――また、私は闇の中にいた。
 誰もいない世界。
 恐ろしくて、寂しくて、私は必死に羽ばたく。
 そしていつもの様に羽は抜け落ちて、私は闇に吸い込まれてゆく。
 苦笑する。
 私はいつもこれを夢だと思っていた。
 しかし、これは夢なんかじゃない。
 現実もまた、この夢と同じ闇なのだ。
 夢にまどろんでいても、目が覚めても変わらない。
 いや。
 もういっそこのまま夢の中で闇に溶けてしまいたいと私は思う。
 それでも、朝が来る。
 望まなくても。
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 15:29:56.34 ID:Qcw87XE0

 そしていつもと同じように、無機質な天井がクーを迎えた。
 彼女は額に手を当てたままベッドから起き上がる。
 やはり全身に汗をかいていた。
 この2ヶ月、毎日同じ夢を見ているのに、恐怖心は一向に薄れる事はなかった。
 むしろ、現実世界にいっそうの恐怖を覚えている点で、彼女の恐怖心は大きくなったといえる。
 窓の外を見る。
 いつもの様に、シリンダーの中に形成された町並みが目に映った。
 その光景になんとなく、彼女は巨大な檻を連想していた。

 やがて彼女は窓の外から視線を逸らした。
 そして寝巻きから被験者用の白衣に着替え、部屋の中でただ呆と本を読む。
 やがて定時になると研究員が部屋のブザーを鳴らした。
 本を閉じ、インターホン越しにそれに答える。
 そしていつもと同じ研究室に誘われた。
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 15:31:03.06 ID:Qcw87XE0
 そしていつもと同じ研究室に誘われた。




 11月中旬

 様々な機器に囲まれた研究室の中に、2人の被験者がバイタルチェエク用の機器を体に取り付けられ座っていた。
 フラナガンはその二人の様子を黙って眺めている。
 フラナガンがキシリア少将の下へNT-001を送り出してからの既に一月以上が過ぎていた。
 その実戦データを基軸に、NT-002とNT-003にはそれぞれ異なった調整が行なわれていた。

 能力開発を行なわれた適正者には特有の情緒や能力の不安定性が見られる。
 中でもNT-002は激情的で、能力の不安定が著しかった。
 その為、NT-002には個性を抑える事で情緒を安定させ、同時にNT能力を安定化させるための調整が行なわれていた。
 それに対しNT-003の能力は比較的安定していた。
 その為フラナガンは彼女に対し、更なる能力を引き出すべく調整を行なっていた。

 フラナガンは資料に目を落とす。
 一ヶ月に及ぶ調整はそれなりの成果を挙げたが、それでもフラナガンの要求する水準には達していなかった。
 フラナガンは被験者への調整を次の段階へ進めるべきか悩んでいた。
 このまま能力開発のレベルを上げていけば、その分被験者への負担は増加する。
 もしもそれにより被験者の精神や肉体が崩壊してしまえば、今までの努力は水泡に帰してしまう。
 所有する適正者の数が僅かである現状で、それは最も避けたい事態だった。
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 15:32:22.61 ID:Qcw87XE0

 だからと言ってこのまま悠長にやっている暇も無い。
 地球方面軍が総力を挙げて決行したジャブロー攻略作戦の失敗以来、軍の要求は過剰になっていた。
 このまま被験者を実戦に耐えうる水準まで調整できなければ、計画そのものが凍結される恐れもあった。
「やはり、ララァ=スンやクスコ=アルのレベルまでは難しいかも知れんな」
 傍らに立つ助手にそう呟いた。
「そうですね。NT-003は希望をもてますが、002はこのままでは」
「ふむ。かと言って我々に失敗は許されん。この際不本意だが、保険に頼るしかなかろう」
「保険と言いますと」
 助手は不思議そうな顔でそう返した。
「準サイコミュとEXAMの実用化だ」
「EXAMシステム……、例のクルスト博士の」
「そうだ。君はクルストの下で研究をしていたから多少は知っているだろう」
「えぇ、オールドタイプにニュータイプと匹敵する認知能力を与えるシステムですよね」
「そうだ。オールドタイプでも扱える点に着目した点では準サイコミュに類する装置と考えていい」
「しかしEXAMの研究資料は全てクルスト博士に奪われたのでは」
「奴の研究の基礎的な部分は未だ残されている。それを元に新たなるシステムを作る」
 フラナガンの言葉に助手は戸惑った様子だった。
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 15:35:06.54 ID:Qcw87XE0
「ですが所長。準サイコミュはともかく、EXAMはあまりに癖のあるシステムです。あれを実用化するというのは」
「私が着目したのは、奴の研究の主眼がビットなどのサイコミュ兵器ではなく、機体運動の補助と認識力の拡大に置かれていた点だ。その点でのみ、奴の研究を利用する価値がある」
 助手はフラナガンの話に聞き入り、フラナガンもまたそのまま話を続けた。
「つまり、サイコミュによるオールレンジ攻撃という選択肢をあえて捨て去り、ニュータイプの持つ力を索敵や機体操作のみに振り分けるのだ。NTから引き出す能力を一定まで制限し、そのサポートデバイスとしてEXAMを用いるのだ」
 フラナガンがそう言うと、再び沈黙が流れた。
「君がクルストの研究を毛嫌いしていたのは知っているよ」
 フラナガンがそういうと助手は俯いた。
「安心したまえ、私も奴の研究は好かん。私が目指しているのはあくまでもEXAMの部分的流用にすぎん。EXAMの名を出したのは君に分かりやすく説明する為だ。このシステムの名称はサイココントロールシステム(PCS)とするつもりだ」
「サイココントロールシステム……」
「そうだ。PCSはランクC以下の適性者の能力でも扱える。専用に高機動化させたMAやMSと組み合わせれば、既存の兵器と一線を画すだけの性能は発揮するだろう」
「そこにNTでなくともオールレンジ攻撃を行なえる準サイコミュを組み合わせる、と」
「察しがいいな。その通りだ。PCSと準サイコミュを組み合わせる事で、戦闘の面に関してはCランク以下の適性者であってもAランククラスの強力な力を発揮する事が出来る」
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/15(木) 15:37:02.93 ID:Qcw87XE0
「なるほど、両者が実現できれば適性者の強化計画の担保としては完璧ですね」
「保険を用意するのは早いに越した事は無い。ジオニック、ツィマッド、MIPに準サイコミュの共同計画を持ちかけろ。3社を競合させ、より優秀な開発プランをキシリア様へお持ちする」
「れではサイコミュの情報が彼らに流れてしまいますがよろしいのですか」
「構わん。連中に渡すのはあくまで一部の情報だけだ。本来のサイコミュ開発と適性者の能力開発は我々が独自で続行する」
「了解です。それでは早速準備に移ります」
「頼んだぞ」
 そういうと再びフラナガンは被験者達に目を向けた。

 PCSや準サイコミュでも確かにサイコミュの代替はできるだろう。
 しかしそれらであっても、フラナガンの期待する性能が得られるとは限らない。
「全ては適性者の力を引き出すことさえ出来ればよいのだ」
 嘆願するようにフラナガンは呟いていた。
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/15(木) 21:30:23.11 ID:/OUXXDMo
まさかNT-004はマリオン=ウェルチなのか?!
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/15(木) 22:45:15.66 ID:z7Qbysgo
いや、たしかジオンの病院で意識不明のハズだ。
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/17(土) 23:37:39.77 ID:XJVan2E0


 バイタルチェックが終わると、クーとNT-002の青年はベッドに拘束されていた。
 頭部には顔の上半分をすっぽりと包むヘルメットのような機器が取り付けられている。
 四肢を見れば幾つかのチューブが腕に突き刺さっていた。
 ヘルメット様の機械は脳波をとるためのもので、チューブはNT能力を引き出す為の薬物を投薬する為のものだった。

 クーの視界は脳波測定用の機器を取り付けられているために真っ暗だった。
 彼女の最も嫌いな時間だ。
 嫌悪感と恐怖でいつも気持ちが一杯になる。
 ただ、そんな感情も四肢の血管へ薬物が回ってゆく度に薄れてゆく。
 意識そのものが呆っとして、まるで酩酊しているような感覚だった。
 そうしている内に心が真っ白になっていく気がした。
 リラックスしている、というのとはまた違う。
 例えるなら、無理やり心を漂白されているような感覚だった。
 そこに安堵感や心地よさを感じる事はなかったが、恐怖も嫌悪感も感じない。
 やがてそんな心にあわせるように、真っ黒な筈の視界が段々と明るくなっていく気がした。
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 00:30:23.00 ID:iSoyGsA0


「博士。NT-002、NT-003共に感応状態に入った事を確認しました」
 被験者2人の脳波状況を映し出すモニターを見ながら、研究員の一人が言った。
「よし、レベル1でサイコミュを起動しろ」
 フラナガンがそう言うと、研究員は「はっ」と返しサイコミュを起動させた。

 ふと、真っ白だった視界に色が生まれた。
 薄い、流動的な色。
 オーロラのような光景だった。
 無感になっていた心に初めて安堵感が生まれる。
 色はやがて光の様に輝いて私を包む。
 心地よい温かさを感じた。

『やあ』
 ふと、知っている声が聞こえた。
「カインさん?」
 クーはそう言って辺りを見渡した。
 実際にはそうした訳ではない。
 意識の中の彼女自身のイメージがそうしたのだった。
 ただ、彼女はそこにカインの姿を見つけることは出来なかった。
 見えるのはオーロラのような光だけだ。
『クー、元気にしてるかい』
 カインと呼ばれた何者かは優しげな声でそう言った。
 クーは黙した。
 正直に言って、彼女の精神は日々磨耗していた。
「ううん」
 クーは素直にそう答えた。
『クー……』
 それに返すクーの声は悲しげだった。
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 00:50:13.98 ID:iSoyGsA0
 ふと、クーは彼女を取り巻くオーロラの輝きが増したように感じた。
 それと同時に強い安堵感が心に広がる。
 その心に、ふとカインの感情が入ってくるのをクーは感じた。
 様々な感情が入り混じって。
 言葉には言い表せないが、しかしその全てをクーは理解していた。
『クー、君が感じている通り、僕の心は日々壊れていってる。ここでの僕がはっきりしていくほど、ぼくは――』
 カインの言葉にクーは何も返せなかった。
 NT-002という被験者であるカインは、研究室で会うたび虚ろになっていた。
 かつて何十人もいた被験者の子供達の中で、20歳の彼は最年長だった。
 そんな彼は子供達の兄のような存在であり、時に父のようでもあった。
 みんなカインのことが大好きだった。
 だけど、研究室で会う現実の彼は、死に隣したようにやつれて、かつての面影は微塵もなかった。
「カインさん、私、どうすれば……」
 張り詰める思いで、クーはそう言った。
 途端、オーロラの輝きは一層増した。
『クー、君に僕の力を託す』
「えっ」
 クーは絶句した。
 その言葉だけでカインが何を言っているのか分かってしまったのだ。
「だめ、それじゃあカインさんが」
『そうすれば君は科学者達の手を借りなくても力を発揮できる』
「そんなのいい! 私は!」
『僕はもうだめなんだ、クー』
 カインは悲しげな声で話を続けた。
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 00:52:16.31 ID:iSoyGsA0
『ここに居た皆が苦しんで、僕はそれを守れなかった。そんな僕だけがまだここに残っている。だからせめて今の僕に出来る唯一の事を、僕の願いを君に託させて欲しい』
 カインの感情がクーの心に突き刺さる。
 カインの気持ちは痛いほど分かっていた。
 子供達の中で比較的年長であったクーも、妹や弟のようだった子供達を守りたくて、だけど守る事が出来なかった。
 だからこそ、カインの言葉が何より辛い。
「私を一人にしないで下さいっ!!」
 それをどうする事も出来なくて。
 クーは我が侭だと知りながらそう叫んでいた。
 そんな彼女を癒すかのように、光がクーを包み込む。
 クーの頬を涙が伝った。
『耐えるんだクー。きっと時が来る』
 最後にそんなカインの声が聞こえたかと思うと、クーの意識は光の中に溶け込んでいた。



「どうしたというのだっ!!」
 突如NT-002とNT-003の2人の脳波が異常値を示したのを見て、フラナガンが叫んだ。
「わかりません! サイコミュの出力をレベル3まで引き上げた途端に――」
「今すぐサイコミュを切れ! すぐに2人の処置をしろっ!!」
 研究員の返答にフラナガンが怒号を飛ばした。
 すぐに救護班がNT-002とNT-003の治療を行なう。
「いやあああああああああ!!!」
 NT-003の錯乱し、泣き叫ぶ声が研究室中に響いた。
「鎮静剤を打て」
 救護班のチーフがそういうと、NT-003の腕に精神を沈静化させるための薬剤が注射される。
 鎮静剤の効果があらわれるまで、クーは力の限り泣き叫んでいた。
 
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/18(日) 01:43:31.56 ID:8M.0YgAo
ktkr
まで始まるアニメ見てたらいきなりかよ!!
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 03:03:06.47 ID:iSoyGsA0

 サイド6、パ・ア・ソークコロニーに向かう一隻の船が宇宙を航行していた。
 小型の一般的な貨物船である。
 だが、その船は貨物船の他にもう一つ裏の顔を持っていた。
 それはジオンの密輸船としての顔である。
 サイド6は中立のコロニーであり、特別な許可が下りない限り連邦・ジオンの両軍の軍人の渡航は禁止されている。
 無論、表向きにはサイド6内に両軍の軍事施設は存在しない。
 しかし実際には、サイド6の中立地域という立場を利用すべく、一般の組織に偽装した軍事施設がサイド6内には存在していた。
 パ・ア・ソークにあるフラナガン機関の研究所もそのひとつである。
 このような組織へ軍関係者が赴く場合、貨物船などに乗り密航するか、偽造パスポートを使うしかなかった。
 その為、フラナガン機関へ向かうのび太もまた、この貨物船の船員にカモフラージュし乗船しなければならなかった。

 のび太は貨物船の窓からコロニーを眺めていた。
「君は宇宙に出たのは初めてだから、コロニーを生でみるのも初めてだろう。どうだい、でかいだろコロニーってのは」
 普通の貨物船の作業員服に身を包んだジオン兵がのび太に語りかけた。
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 03:06:48.30 ID:iSoyGsA0
「ハイ」
 そう答えたのび太は素直にその光景に感動していた。
 そして同時に、昔[たぬき]達と宇宙に出て様々な冒険をした時の記憶を思い出していた。
 みんなで改造したプラモの戦車で、ちっちゃな宇宙人の王子様を助けたりしたっけな、と思い出にひたる。
 あの頃にはもう戻れないかもしれない、とのび太は思った。
 地球を発って、宇宙に浮かぶこんな人工島のもとまでやってきてしまったのだ。
 [たぬき]だって、そんなのび太を見つけるのは難しいだろう。
 [たぬき]どころか、ホライやしずちゃんとも会えないかもしれない。
 それが辛くないはずは無い。

 しかしそんな気持ちとは裏腹に、のび太は既に自分を飲み込んでいる運命を受け入れつつあった。
 例え[たぬき]が助けてくれなくても生き延びなければならない。
 助けてくれないからこそ、自分の力で生き延びなければならないのだ。
 状況はのび太がジオン兵として生きざるを得ないように追い込んだ。
 だから、のび太は兵士として強くなるしかないのだ。
 自分を守る為に。
 そして、自分を送り出してくれたライやフレン達の為にも。
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/18(日) 03:11:47.39 ID:ElGsXwko
お、久しぶりに来たらやっているじゃないかwwww
メール欄にsagaって入れてみて下さい
[たぬき]や[ピーーー]が変換されずに通常表示されます
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 03:16:39.60 ID:iSoyGsA0
何故かたぬきの表示に今更わろたww

今日はここまでです!
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/18(日) 03:17:35.64 ID:ElGsXwko
乙です!
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/18(日) 03:17:56.19 ID:iSoyGsA0
>>264
おお、情報ありがとうございます!
さっそくやろう
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/10/18(日) 03:21:45.54 ID:ElGsXwko
ちょwそれはsageですw
こうすれば多分解除されてますよ

ドラえもん
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/10/18(日) 03:26:44.33 ID:iSoyGsA0
ふふ…

ふふふ……

ドラえもん
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/10/18(日) 03:28:49.73 ID:iSoyGsA0
本当だ!
ありがとうございます。

は、恥ずかしくなんかないんだからねっ!
そしておやすみなさい
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/18(日) 03:30:53.91 ID:ElGsXwko
おお、[たぬき]がついに……
これからも頑張って下さい
お休みなさい
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/10/18(日) 10:21:27.76 ID:cXlgmqwo
しずかちゃんやホライは今どうしてるんだろうな
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/19(月) 10:07:08.87 ID:oeruRyco
サイド6で貨物船てことはまさか・・・いやフラナガンは別のはずだし・・・

第一時期が違いすぎるか。
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/27(火) 21:51:36.90 ID:sN27STAo
続きが気になる・・・
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/28(水) 08:35:16.79 ID:FXHLhwDO
俺も気になる
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/10/29(木) 18:20:52.34 ID:pnKvwoSO
気にすんなよ
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 21:41:46.67 ID:GINqAm.o

 のび太をのせた偽装船は無事にパ・ア・ソークへの入港を果たした。
「よし、無事に入港手続きが終わった」
 通信でパ・ア・ソークの入港管理局とのやり取りを終えると、船長が安堵の声を漏らした。
「ったく、こん時ばかりは毎回ヒヤヒヤしちまうぜ」
 そう言うと船長は近くに居る部下に声をかけた。
 貨物船員に扮したジオン兵が、貨物を船から降ろす。
 のび太もまたそれを手伝った。

降ろした貨物を、全て輸送用のトレーラーに積み込み終わると艦長がのび太の肩に手を回した。
「それじゃあな」
 さっぱりとした、だけど力強い声だった。
 艦長とて、自分の任務をよく承知している。
 こうしてこのコロニーにNT適性者を運んできたのも一度や二度じゃない。
 いちいち感慨に浸っていてはこの仕事が勤まるはずもなかった。
 励ましてどうにかなる事でもないことは分かっている。
 だから彼は「頑張れよ」の一言は飲み込んでいた。
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 22:10:50.27 ID:GINqAm.o
「君もあのトレーラーに乗っていくんだ」
 艦長はトレーラーを指差しながらそう行った。
 はい、とのび太はそれに頷く。
「その間暇だろうから、これでも食いな」
 そう言って艦長はのび太にスナック菓子を差し出した。
「アリガトウ」
 のび太は笑顔でそれに答える。
 艦長は複雑な気持ちだった。
「ほら、トレーラーの運ちゃんが呼んでる。早くいきな」
「ハイ。ココマデハコンデクレテアリガトウ!」
 そう言ってのび太はトレーラーに向かって駆け出していた。
 艦長は細い目でその背中を見送った。

279 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 22:28:54.52 ID:GINqAm.o



 NT研究所の所長室ではフラナガンが高級なチェアに腰掛けていた。
 その表情は怒りを堪えられない様子だった。
「何故だ。何故こうも計画通りに進まん」
 小さく呟く。
 NT部隊創設。
 その計画の成就まであと一歩なのだ。
 ダというのに、その一歩がどうしても進まなかった。
 すでにサイコミュを搭載した試作機は完成している。
 プランとしては量産化を考慮した、低コストのサイコミュ搭載機も完成しているのだ。
 ララア・スンを筆頭に能力の高いNTも数体揃っている。
 後はNT能力を持つ人材の収集と養成がもう少し進めば良いだけなのだ。
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 22:37:47.17 ID:GINqAm.o

 だと言うのに、NT能力の人為的強化はことごとく失敗の連続だ。
 Cランク以下とはいえ、貴重な適性者を数十体も犠牲にし、得た成果は僅か4体。
 それすらも1体を連邦のスパイに奪われ、。
 残りの3体の内の2体も実験中に発作を起こし、1体は植物状態、もう一体も精神的に不安定になり病棟で療養を余儀なくされている。
 唯一良好な状態を保っているNT-001はキシリア少将の下に送った為に手元にはない。
 そもそもここまで適性者の数が減ってしまえば、強化実験の計画そのものが遂行出来なかった。
 よもや、NT適性者の強化計画は断念せざるを得なかった。
 苦渋の決断だが仕方ない。
 今は、残りのNT達のみを戦力として、それを一つも欠くことなく保持することが最大の目標であった。
 一人、黙するフラナガン。
「まあいい」
 ぽつりと呟く。
 そう、すでに起こった結果を悔やんでいる場合ではない。
 今は、ララア=スン達の高次能力者の力を存分に発揮させること。
 その為にサイコミュの完成度を高め、それに応える高性能機を完成させることが命題なのだ。
 そしてそれと並行してPCSと準サイコミュによる、新システムのNT用兵器の開発も行なわなければいけない。
 だが、こちらの計画も非常に難航していた。
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 22:38:51.75 ID:GINqAm.o
 唯一彼にとって救いと言えるのは、新しく今日ここへ配属されるNT適性者の存在だった。
 事前の資料によれば、その適性者はアースノイドの為現在はNTとしての確証があるわけでは無いと報告される。
 しかし、その資料が示す適性者のパイロット特性は十二分に期待できるものだった。
「まだ諦めたわけではない」
 そう言ってフラナガンはイスの背もたれに体重を預ける。
 丁度その時、机の上の通信装置が鳴った。
 それが部下からのものであることを確認すると、フラナガンはすぐさま通信ボタンを押した。
 モニターに部下の姿が映る。
「お忙しいところ失礼致します、所長」
「どうした」
「民間に共同開発を持ちかけた例の準サイコミュとPCSに関する事なのですが」
「どうかしたのか」
「はい。それが、各社から開発におけるデータ不足との連絡が入っておりまして」
「ほう、それで連中は何を欲しがってるんだ」
「NT適性者のテストパイロットを回して欲しいとの陳情が――」
 部下がそこまで言った途端、フラナガンは厭きれた様に声を出した。
282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 23:15:45.06 ID:GINqAm.o

 コジマ基地の勢力下であるタイ国境であっても、 大量の難民の流入によって治安は大分悪い。
 そんな難民キャンプの中でも半ばスラムと化している一角があった。
 人とは不思議なもので、似た様な境遇同士の人間が自然と集まって共同体を作る。
 簡単に言えば、そこはゴロツキ達の居場所だった。

 そんなスラムの片隅で、青年と言うにはまだ早い少年がひとり佇んでいた。
 少年はただ人並みを見つめている。
 反吐が出そうだ、と少年は思う。
 マフィアの下っ端だの、兵隊崩れだの、こいつらはゴミみたいに生きてきた連中だ。
 そんな連中が嫌いで、そんな連中が集まったこの場所が大嫌いで、そしてそんな場所でしか生きられない自分がもっと嫌いだった。
 
 少年がしばらくの間辺りを眺めていると、彼の前に初老の男が歩み寄ってきて声をかけてきた。
 その男の頭は無残に禿げ散らかっている。
 少年はこの男と知り合いだった。
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 23:19:27.98 ID:GINqAm.o
「ようワン。随分暇してるみてぇだが、仕事の方は順調なのか」
 男はそう言うと、笑いながら片手の人差し指をクイクイと折り曲げた。
「いや、このあたりじゃもう金目のもん持ってる奴はいないよ」
 ため息混じりにワンと呼ばれた少年はそう答える。
「だったらこんな所で呑気にしてる場合か? 検問所の方のキャンプの連中は色々と持っとるだろ」
「冗談。あっちじゃ兵隊の監視が厄介だってのはアンタに教わったことだぞ」
「そりゃそうだがな……で、どうする? このまま餓死する気か?」
 半ば冷やかすような口調で言う男にワンは冷めた表情で返す。
「そのつもりはねえよ」
「かと言って他に方策もねえんだろ?」
 男の言葉を聞くとワンは黙ってしまった。
「そんなこったろうと思ったわ。だが、それも仕方ねぇ。お前の世話してくれてたアンちゃん、殺されちまったんだろう?」
 口を真一文字に結んで黙ったままのワンを尻目に男は話を続ける。
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 23:21:05.57 ID:GINqAm.o
「俺もそんなお前を不憫に思ってよ、今日はもうけ話を持ってきてやったんだ。どうだ、乗るか?」
 もうけ話、という言葉に反応してワンは少しだけ顔を上げた。
「乗るかどうかの前に話の中身を教えてくれよ」
「勿論だ。だがこの話は絶対に漏らすんじゃねえぞ。コイツは相当なシノギだからな。そこら辺のチンピラにでも知られりゃただじゃすまん」
「何を今更。チンピラのシノギなんて今までに幾度となく首を突っ込んできただろ、あんた」
「今回はそんなレベルじゃないんだよ。もの凄い量のヤクだ。それもこんなド田舎じゃまず手にはいらん代物のな。それをタダ同然の値段で腐るほど仕入れた」
「ヤクをタダ同然で?」
 それはワンにとって信じられない話だ。連邦の検閲の厳しいこの難民キャンプに薬を持ち込むのはとても難しい。それでも少量の薬を持ち込んでくる人間はいるが、売値は非常に高騰していた。
「一体どこから」
「それは言えんな」
 男の様子から仕入れ先はそこら辺のチンピラで無いことは確実だった。
「ワン、お前はとにかく薬をばら撒いてくりゃいいんだ。他のことは知る必要は無い」
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 23:22:20.06 ID:GINqAm.o
 きな臭い、とワンは思う。
 しかし金は必要だった。
 世の中は明日の命も分からない人間で溢れている。
 特に難民の未来なんて絶望的だ。
 神にすがったって生活は良くなんてなりはしない。
 すがりつけるものが何も無いから、ここでは薬がよく売れる。
 死体を貪るハイエナみたいな稼業だ。
 だがその分この商売に手をつけたら最後。
 いつ、誰に殺されるかわからない。
 この稼業は足を突っ込めば突っ込むほど命の価値が安くなる。
 実際シノギのいざこざでゴミみたいに死んでいった人間をワンは嫌と言うほど知っていた。
 しかし選択の余地なんてものは無い。
 ワンは男から薬の売り手を引き受けると、男と共に人ごみの中へと消えて行った。
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/01(日) 23:24:26.32 ID:GINqAm.o
今日はここまでです。

おやすみ!
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/02(月) 10:07:05.82 ID:nJibbHso
キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
のび太の今後が気になるぜ
ジャイアンとスネ夫にも怪しい気配が・・・・
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/11/02(月) 21:19:01.87 ID:qHn1Faw0
おいおい、どうなっちゃうんだよ
続きwwktk
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/02(月) 22:44:34.39 ID:pB42Taw0
281と282の間が抜けてました…
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/02(月) 22:46:22.79 ID:pB42Taw0
「馬鹿を言え。今、この研究所のどこにそんな余裕があるというのだ!」
「それは重々承知しております。しかし、先方からはNT適性者が回されない限り準サイコミュおよびPCSの開発は行なえない、と言われておりまして」
「連中め、足元を見おって……」
 軍に尻尾を振るしか能の無い軍需企業が、こんなときだけいい気な顔をする。
 そのことがフラナガンにとって非常に腹立たしかった。
 そもそも、現状で研究所のNTを外へ出せるわけが無い。
 だが、彼は軍需企業にNOと突きつけるわけにも行かなかった。
 PCSと準サイコミュの完成を頓挫させるわけにはいかないのだ。
「仕方があるまい」
 フラナガンは心底残念そうに言った。
「連中が提示しているプランの中で、一番まともな物を出しているのはどこだ」
「五十歩百歩で、なんとも言いがたいのですが」
「チーフとしての君の能力を信用している。思ったとおりに言ってくれ」
「恐らくはツィマッド社のプランが一番具体性の高いものかと」
 その言葉を聞くと、フラナガンはふむ、と頷いて間を取った。
「ならばツィマッドの連中に通達しろ。完全なNTでは無いが、適性の高いNT候補者を1人送ってやるとな」
「了解です」
「だが、向こうに送るのにはまだ時間がかかるとも伝えておけ。詳細なデータを送るのにも最低で1週間はかかるだろう」
「分かりました」
「頼んだぞ」
 そう言うとフラナガンは部下との通信を切った。
「――まったく、気に食わん」
 そう呟くフラナガンの表情は怒りをかみ殺していた。
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/02(月) 22:49:01.42 ID:pB42Taw0
以上です。

いつもの事ながらほんと申し訳ない!
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/02(月) 23:51:27.12 ID:Ilg.EEDO
投下お疲れ様です

展開が読めなくてワクワクしてきたぞ

293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 02:27:50.93 ID:r516qBM0


 タイ国境付近の荒れた道路を走る一台のジープがあった。
 ドラえもんの運転するジープである。
 余程荒れた道を走ってきたのだろう。
 傷だらけの車体は厳しい長旅を物語っている。
 しかし、それももう限界なのだろう。
 ジープのエンジンからはガスンガスンという音が鳴り響き、その度に車体が大きく揺れる。

 ガスンッ!!

 一際大きな音を立てて、急速に減速する。
 エンジン部分から黒煙が立ち込めると、とうとうジープは動かなくなった。
 すぐさま運転席からドライバーが降りてきてくる。
 ドラえもんはエンジンをチェックすると顔をしかめた。
「今まで騙し騙し乗って来たけど、こりゃあもうダメだぞ」
 ジョンの電気屋を出発して以来、長旅の中でこのジープが故障する事は幾度となくあった。
 その度何とか修理してきたドラえもんだった、流石に限界が来ていた。
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 02:38:25.06 ID:r516qBM0
「仕方ない、ここからは歩いていこう」
 そう言うとドラえもんはジープの荷台からリュックサックと一本の杖を取り出した。
 リュックサックを背負い、杖を地面に突き立てる。
 ドラえもんは緊張した面持ちで杖を見つめていた。
 その杖は言わずもがな、たずね人ステッキである。
 この世界でたった一つ、ドラえもんとのび太達をつないでくれる道具だ。
「頼むよ、たずね人ステッキ」
 そう言っていつもの様にステッキを倒す。
 カランと音を鳴らしてステッキの倒れた方角をドラえもんは眺めた。
 その先は木々の茂る険しい道である。
 しかし逃げるわけには行かなかった。
 今この瞬間も、のび太やしずちゃんやジャイアン達はドラえもんの助けを求めているのだ。
 この世界に迷い込んでから一月もの間苦しい思いをしている皆を思えば、それ以上の辛さなど彼には無かった。
 少しの間、決意を固めるようにステッキの先を眺めると、ドラえもんは黙々と歩き出した。

295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 02:57:54.29 ID:r516qBM0


 もう半日は歩きとおしただろうか。
 日はとうに落ちたが、道は更に険しくなり、殆ど森の中のような状態だった。
 これ以上歩く事は危険と判断したドラえもんは、今夜はもうこの場に野宿しようと決めていた。
 適当に落ちている枯れ木を集め、火をつける。
 焚き火の前に腰を下ろすと、ドラえもんは水筒の水を呷った。
 ドラえもんは憔悴しきったように焚き火を見つめる。
 ゆらゆらと揺れる炎だけがドラえもんを照らしていた。

 一体こんな夜を何度すごしたのだろう。
 ドラえもんの胸は強い不安に覆われていた。
 果たして、こんな事をしていて本当にのび太たちを見つけることが出来るのだろうか?
 ジープが壊れ、徒歩になってしまった今となっては、改めて途方も無いことに思える。
 唯一のたずね人ステッキの性能も、的中率は70%。
 こうして歩いている道が正しいという確証も無いのだ。
 そもそものび太達が同じこの世界に居るとも限られない。
 もしかしたら亜空間で離れ離れになって、全く別の世界に飛ばされている可能性もある。
 再び水筒の水を呷る。
 水筒の水も尽きようとしていた。
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 03:16:55.42 ID:r516qBM0

 こんな事を考えるのは止めよう。
 考えたってどうしようもない事じゃないか。
 僕に出来る事は、最善を尽くす事だけ。
 弱音なんて吐いてる場合じゃない。

 それにしても静かな夜だった。
 パチパチと、焚き火の燃える音だけが辺りに響く。
「それにしてもおなかが減ったなあ」
 ドラえもんの呟きとほぼ同時に、彼のおなかがグ〜と鳴る。
「まだ保存食が少しあったかな」
 そういってリュックサックを漁る。
 そこで、ん? とドラえもんは呟いた。
 なにか触りなれない感触のものがあったのだ。
 触ったところ、ひも状の物のようだった。
「なんだこれ」
 そう言ってリュックの中からその”何か”を摘み上げるドラえもん。
 ドラえもんが見たのは、彼の手に尻尾をつままれ、乾パンをかじりながら宙ぶらりんに鳴っているねずみの姿だった。
「う」
 一瞬世界中の空気が凍りついた。
 そして……、

「うぎゃ嗚呼ああアアア汗rtfxcgsふぇういいdrftgy藤子l@sdふぁえ!!”!!W?!!!!??!?!??”えwq!!!」

 まるでビックバンのような叫び声をあげてドラえもんは駆け出していた

297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 03:32:17.93 ID:r516qBM0


 昼間は有象無象の難民達で賑わうこの難民キャンプも、夜の帳が落ちれば静けさに包まれる。
 そんな難民キャンプの片隅を、少年は全力疾走していた。
「くそっ、しくじった!」
 そんな少年の100mほど後ろをライトを持った兵隊2〜3人が追いかけている。
 少年は手に持った札束をギュッと握り締めた。
「せっかくこんだけ稼いだのに捕まってたまるか!」
 それは麻薬を売り捌いて得た収入だった。
 少年のズボンのポケットの中にも札束が顔をのぞいている。
 一見して相当な金額である事は間違いない。
 よほどの数が売れたのだろう。

 ただ少年にとって捌く商品が多すぎたのは逆に不運だったと言える。
 いつもなら麻薬は品薄で、一人のバイヤーが捌く薬の量は精々7〜8人分。
 それがなんと、50人分も手に入ってしまったのである。
 おかげで大金は舞い込むだろうが、反面リスクも大きい。
 それだけの数を捌けば、周りの目に付く可能性も高まるのだ。
 おかげで少年は麻薬を売る場面を兵隊に見つかってしまった。
 普段はスリや万引きで生計を立てているこの少年には荷が重すぎたのだ。
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 03:37:38.71 ID:r516qBM0

「ちっくしょおお! なめんなよ! こちとら走りだけは自信があんだ!!」
 そう言って少年は走るスピードを更に速めた。
 少年の走るスピードは、確かに目を見張るほど速かった。
 武装した兵隊達は、徐々に少年に引き離されてゆく。
 すると少年はすぐさま、建物の陰に隠れた。
 少年は走りだけでなく、土地勘でも兵隊達に負ける気はしなかった。
 なにせこの難民キャンプの裏道や隠れ家を少年は殆ど全て熟知しているのだ。
「くそ! あのガキどこへ行きやがった!!」
「ちょこまかとすばしっこい野郎だ」
 兵士達は少年が隠れた場所辺りで足をとめ、辺りをキョロキョロと見渡した。
「ちっ、逃がしたか」
「だが、諦めるわけにはいかん。あんなガキがあれだけの量のヤクを持ってるなんて尋常じゃない。間違いなく裏には巨大な犯罪組織がある」
「マフィアとかか?」
「さあな、ともかくあのガキを捕まえて全てを吐かせる事だ」
「そうだな。よし、俺はあっちの方を探す」
「じゃあ俺は反対側に行くよ」
 そう言うと兵士達は散り散りに走り出した。
 少年は少し間を置いてから、物陰からその様子を覗き込む。
 既に兵士たちは何処かへ行ったようで、そこには誰も居なかった。
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 03:41:21.68 ID:r516qBM0
「ふう、どうにか命拾いしたぜ」
 片手で腰の辺りを叩きながら、物陰から出てくる少年。
 両手を夜空に掲げ、んーっと間延びをする少年。
「だけど、厄介なことになったぞ」
 少年は考えこむ。
 この様子じゃ明日から難民キャンプ中の監視は大変な事になるだろう。
 ここの難民キャンプはかなり巨大だが、所詮は閉鎖された空間だ。
 永遠に逃げ切れるものでも無いだろう。
 そう考えながら、少年は夜空を見上げた。
 もう潮時かな、と夜空に浮かぶ月を見上げながら少年は思う。
 家族はみんな戦争で死んだし、自分を可愛がってくれた兄貴分の青年もいざこざに巻き込まれて死んだ。
 今仲間と思えるのは犯罪を斡旋してくるじじいだけだ。
 そもそも仲間と言ったって、そこにはお互い情なんて有りはしなかった。
 生きる為に、ただ互いを利用しあっていただけなのだ。

 いい機会だ、と少年は思う。
 もうこの難民キャンプを出よう。
 ラッキーなことにとりあえず金だけはあった。
 これだけの金があれば当分は困らないだろう。
 そう決意すると、少年は秘密の抜け道を通り、難民キャンプの外へと逃亡したのだった。
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 03:42:35.38 ID:r516qBM0
今夜はここまでです!
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/03(火) 03:47:08.90 ID:r516qBM0
しかし我ながら誤字脱字が酷すぎるな…
302 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/03(火) 11:07:46.91 ID:u.aPruso
[たぬき]駄目すぎるwwww
303 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/03(火) 13:53:16.92 ID:UljSVYDO
誤字脱字があっても読めるから良いよ(*^^*)
304 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/11/03(火) 21:00:20.00 ID:EkU3vTo0
ふと思ったのだが、のび太の射撃能力を最大限生かすなら、ビグロのような射撃戦主体のモビルアーマーか、あるいはジオングの両腕をメガ粒子砲にしたような機体が良いんじゃないかなあ。
オールレンジ攻撃は、通常の射撃とは感覚的に違ってしまうため、のび太には向かないような気がする。
305 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/03(火) 22:02:45.68 ID:RVW5Qjko
そもそもまだ本当にNTなのかすら分かってないからなぁ
306 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/03(火) 22:53:29.65 ID:u.aPruso
ツィマッドのプラン云々と伏線張られてるし、のび太は然るべき所に落ち着きそうだよな
それよか北米に置き去りの静香ちゃんはどうなっちゃうんだろ?
シミュレーターでもそこそこの成績は出せてたからパイロット適正はあるっぽいが
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/04(水) 21:26:00.87 ID:Yv1xS2DO
予想しても書き込まないで欲しいですm(__)m
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/04(水) 23:31:31.68 ID:JgNOJFw0
少しだけになると思うけど投下始めます!
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/04(水) 23:35:37.25 ID:JgNOJFw0

 難民キャンプも静かだったが、キャンプの外は余計に静かだった。
 荒れ果てた道を歩いてゆく。
 勿論、少年には行くあてなどなかった。
 ずっと歩き続ければいずれは何処かへたどり着くだろう、その程度の考えで少年は歩き続ける。
 考えなしではあったが、たどり着く場所がどんな場所だって少年には生きてゆく自信があった。

 そうしてしばらく歩いていると、少年は「う〜」という何かの鳴き声を聞いた。
「……野良犬か?」
 咄嗟に身構え、耳を澄ます少年。
 しかし、その声は野犬の鳴き声と言うには随分弱々しかった。
 なんというか、弱って誰か助けを求めているような、そんな声だった。
 少年はなんだかその声の主が気にかかった。
 同時に、厄介ごとに巻き込まれたくない、とも思う。
 その声を発するのが何者なのか。
 確かめようか、確かめまいか、少年は少しだけ考え込んだ。
「まあ、あんな弱ってる声の奴じゃなんかあってもすぐに逃げられんだろ」
 そう思うと少年は声のする方向へ歩き出した。
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/04(水) 23:59:40.04 ID:JgNOJFw0

「なんだ、人の声かこれ?」
 近づいてゆくにつれ、少年にはその声が人のうめき声のように聞こえていた。
 歩けば歩くほど、その確信は強まっていく。
 そして、遂に声の主の目の前に到着し、少年は絶句した。
「な、なんだコイツ!?」
 少年が驚くのも無理は無い。
 少年の目の前に倒れているのは、予想外のものだった。
 そこに居るのは明らかに人間ではなかった。
 かといって、それは少年の知るどの動物とも違う。
 肌は毛が全くなくツルツルしていて、そして真っ青だった。
 少年は何かのロボットかとも思ったが、ロボットにしてはやたらと有機的すぎる。
 少年にはこの生き物が何なのか全く見当がつかなかった。
 あえて例えるなら、耳の無い青狸と言ったところだろうか?
 しかし、例えそういう動物だとしても、明らかにこの生き物は人の言葉のようなものを呻いている。
 人の言葉を操るツルピカ青狸。
 果たしてそんなものがこの世に存在してもいいのだろうか?
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:07:50.69 ID:t0YRNO60
「ま、まさかUMA!?」
 そんなことを呟きながら、少年は不思議な生き物を眺める。
 しかし不思議な生き物は依然として唸るばかりで一向に起き上がる気配が無かった。
「お〜い、大丈夫か」
 そう言いながら、少年は小枝で不思議な生き物をつっつく。
「おあdじえごぇ@おぃ……ムニャ」
 不思議な生き物は何か寝言のようなものを呟いた。
 しかし、少年にはその意味が分からなかった。
「起きないなら俺は行くぜ」
 少年はこの不思議な生き物に興味を引かれてはいた。
 ただ、どうすればいいのかも分からない。
 ま、あの変な生き物も目が覚めれば自分の力でどうにかするっしょ、きっと。
 そんな思いで、不思議な生き物に背を向ける。
 その時。
「ウニャムニャ……ノビタ……ノビタ……クン…ムニャ」
 そのうめき声だけがやけに寂しそうで、少年はその生き物に振り向かずには居られなかった。
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:19:15.63 ID:t0YRNO60



「ワン、これはどういうことだ。説明しろ」
 そう言ったのは昼間ワンに仕事を斡旋していた男だ。
 男は深夜に自分の隠れ家へやって来たワンを睨み付けながら言った。
「オメエ、今日の昼間に兵隊どもにヤク捌いてるところをバレたらしいじゃねえか」
「すまねぇ」
「すまねぇで済むかボケェ! てめぇ一人のミスでここいらの仲間全員の足引っ張る事になったんだぞ!」
 そう言って男は鋭い眼光でワンを睨み続けた。
 無言のまま時が流れる。
 ふと、男はワンから視線を逸らし、彼の足元に倒れている青い狸のようなものに目を落とした。
「それに、そこにいるわけの分からん青狸は何なんだ? 着ぐるみか?」
「いや、それは俺にも分からねぇんだ。たぶん生き物だと思うんだけど……」
「生き物ぉ? そんな気持ち悪い生きもんがいるわけねぇだろ!」
「本当なんだ、信じてくれ」
 ワンは真剣な眼差しで男を見つめた。
「コイツ、さっき人間の言葉みたいのをしゃべってたんだ。寝言みたいで何言ってるか分かんなかったけど、凄い寂しそうだった。きっと仲間と逸れたんだよきっと!」
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:41:59.25 ID:t0YRNO60
「仲間って、狸仲間とか? 赤狸とか」
「たぶん……」
「バカらしい」
 ワンの事は早熟な子供だと思っていたが、所詮はちょいと擦れただけのガキか。
 そんなことを思いながら、男はため息混じりに背を向ける。
 しかし、ワンは男の背中にしがみついた。
「なあ、頼むよジジイ! この青狸をジジイの家で匿ってくれよ!!」
「だめだ」
「頼むって! 金ならあるから!!」
「生憎。稼業以外でガキから金巻き上げるほど腐ったつもりはねぇよ」
「お願いだよジジイイイイイイイ!!」
「静かにしろ! 兵隊に怪しまれんだろ!!」
 男はワンに振り返って怒鳴りつけた。
 しかしそれでもワンは怯まない。
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:44:22.27 ID:t0YRNO60
「コイツが元気になるまででいいんだよ」
「しつけぇな! 大体おめぇはなんでそこまでコイツに――」
 そんなに肩入れしてやがるんだ。
 男はその言葉を言おうとして、それを飲み込んだ。
 ワンの瞳を見れば、それは聞くまでも無いことだった。
 きっと、戦争で親を亡くしてさまよっていた自分を、この青狸と重ねているのだろう。
「チィッ」
 男は舌打ちすると、片手で頭を掻いた。
 ただでさえ禿げ散らかった頭が、余計に無造作になる。
「しかたねえな。少しの間だけだぞ」
「本当!? ありがとうジジイ!!」
 ワンは本当に嬉しそうな顔をして男に抱きついた。
 そんなワンとは対照的に、俺も焼きが回ったもんだぜ、と男はため息をついていた。

315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:46:03.64 ID:t0YRNO60



『おーい! みんなー! 助けに来たよー!』
 ドラえもんは真っ暗な闇の中でそう叫んでいた。
『のび太くーん! しずちゃーん! ジャイアーン! スネ夫ー! 出来杉くーん!』
 そう叫んでも、何の返事も無い。
 ドラえもんの声だけが虚しく響き渡る。
 それでもドラえもんは叫び続けた。
『おーい! みんなどこだー! おーい!』
 必死で叫ぶドラえもん。
 するとその願いが通じたのか、ふと遠くの方にのび太らしき姿が見えた。
『おーい、のび太くーん!!』
 ドラえもんは渾身の力で叫んだが、のび太はその声に気づいていないようだった。
 のび太はそのままドラえもんに背を向けると、何処かへ向かって歩き出した。
『待ってえ〜!!』
 ドラえもんは全力でのび太を追いかける。
 しかし走っても走っても何故だか距離は近づかず、のび太の姿はどんどん遠ざかっていく。
 ドラえもんはもう一度大声で叫んだ。


『のび太く〜ん! ここだよ!!!! 僕はここに居るよ!!」


 ドラえもんはベッドから飛び起き、そして辺りをキョロキョロと見渡した。
 そして「あれっ?」と呟いた。
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:48:51.41 ID:t0YRNO60

「――のび太くん?」
 しばし呆然と辺りを見渡す。
 ここにはのび太はおらず、あるものといえば汚い生活用品とガラクタのようなものばかりだった。
 見たところ、どうも廃品などを利用して作られたテントのようである。
 その光景を見て、自分が見ていたのが夢であった事に気づく。
「…のび太くん」
 寂しそうにそう呟いて、ドラえもんは再び部屋を見渡した。
 見覚えの無い場所だった。
 何故こんなところに居るのだろう。

 必死に記憶を手繰る。
 僕はずっとジープに乗って皆を探してて。
 そうだ、ジープが壊れて僕は徒歩で旅を続けてたんだ。
 そして、夜になって歩きつかれて、焚き火をして、それで――。
「そうだ、ねずみ!」
 ドラえもんは、思い出した! というように両手をポン、と叩いた。
 次いで絶叫した。
「居ないっ!?!? ここにはねずみ居ないっ!?!?」
 慌てて布団から這い出て、血眼で辺りを探るドラえもん。
 しかしあたりにねずみの姿は見つからなかった。
「ふぅ……良かった」
 ほっと胸をなでおろすドラえもん。
 しかしこれでドラえもんは合点がいった。
 僕はねずみに驚いて急いで走り出したのだ。
 そして何かに足をとられて転んだんだった。
 きっとその時に気を失って、そこを誰かに助けられたのだろう。
 そうしてドラえもんが自分の置かれた状況を飲み込みつつあった頃、テントに一人の少年が入ってきた
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/05(木) 00:51:08.49 ID:t0YRNO60
今日は以上です
318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/05(木) 14:36:53.95 ID:OMGZAwDO
間隔の短い投下キタ━━━━
319 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/05(木) 20:35:49.04 ID:ikQ9FqQo
いよいよドラちゃん本格始動か
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/06(金) 01:57:07.29 ID:GeV4MWYo
理論的にはプロセッサ直接接続できる筈だから[たぬき]パイロットにしたら恐ろしいと思われ
321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/06(金) 04:53:48.21 ID:khn66ISO
>>320
スターウォーズを思い出してしまったwwww
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/11/07(土) 21:41:37.04 ID:AvZdv1w0
のび太の射的能力は瞬間で5本以上の鉛筆を撃ち抜く訳だから、それを再現できる機体なら
相手のファンネルを無力化できそうだけど。
3年越しの乙が出来るなんて、恐悦至極にござりまするって奴だ
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/08(日) 01:06:24.74 ID:a1TE71go
>>322
NT縛りがないならMS-14Jかアクトザクあたりが最良だとおもうが・・・数がないんだよな数が。
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/08(日) 01:07:19.37 ID:a1TE71go
>>322
NT縛りがないならMS-14Jかアクトザクあたりが最良だとおもうが・・・数がないんだよな数が。
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/13(金) 08:12:36.62 ID:VIJm7YDO
kabaさん乙です。
続きを続きを楽しみにしてます。
頑張って下さい。
326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/16(月) 09:13:30.50 ID:XpOKZ6DO
続き読みてーwktk
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/11/24(火) 12:16:49.96 ID:0Zx.fc.0
気長に待つよー
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 00:16:49.28 ID:kBiZAMMo
いつもありがとう!
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 00:46:15.17 ID:kBiZAMMo

 年頃で言えばのび太達とさほど変わらない少年だった。
 服は擦れてあちこちに穴が開いており、頬にも大きな傷跡がある。
 そして、子供とは思えない眼光の鋭さがその少年の歩んできた人生を物語っていた。
「やあやあ、君が助けてくれたんだね。どうもありがとう」
 ドラえもんはそう言うと笑顔で握手を求めた。
 そのドラえもんの様子に少年も安心したのか、少年もまた安堵の表情を見せる。
 しかし、それでもまだドラえもんを警戒しているのだろう。
 少年は少しドラえもんから距離を取っていた。
 しかし、そんな少年の反応にドラえもんは慣れていた。
 どうもこの世界では、MSなんていう巨大なロボットが居る割に、ドラえもんのような家庭用ロボットが普及しているわけではないのだ。
 おかげで行く先々で彼は奇異な視線に晒されて来た。
 まぁ、そもそもそれは20世紀でも同じ事だったのだが……。
「ぼく、ドラえもんて言うんだ。よろしくね」
 少年を安心させようと、ドラえもんはニッコリ笑った。
「そうだ、助けてもらったお礼に何かプレゼントをあげないと。まあプレゼントなんて言っても、乾パンくらいしかなんだけd――」
 ドラえもんはその先を話そうとして、絶句した。

 ――無い。
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/25(水) 00:50:27.62 ID:2CnLALko
よこあいからいきなりとかもう

・・・いけず(はぁと
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 01:00:26.88 ID:kBiZAMMo
 ――無い。

 無いのだ。
 リュックも。
 その中に入っていた食料も、工具も。
 そして、”たずね人ステッキ”も、何もかもみんな無いのだ。
 ショックのあまりドラえもんはしばし固まってしまった。
 食料や道具だけならまだ良かった。
 そんなものは何かしらで代えはきく。
 しかし、たずね人ステッキだけは無くすわけにはいかなかった。
「あ、あの! 僕が倒れてた辺りにスッテキなかった!?」
 少年の両肩を掴んで思い切り前後に揺する。
 すると少年は驚いた様子で何かをドラえもんに訴えた。
 ドラえもんには『何言ってんだかわからないよ!』と少年が伝えようとしているのが分かった。
「ほんやくこんにゃくがあれば……」
 そう言ってみたところで、ドラえもんの四次元ポケットは完全におしゃかだ。
 困惑のあまり、表情が曇る。
「しかし、本格的に困ったぞこれは」
 とにかくたずね人ステッキだけでも探し出さなければ。
 そう思い、自分が倒れていた場所を問いただす。
 だが、どんなに説明しても少年には意図が通じないようだった。
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 01:04:55.65 ID:kBiZAMMo
>>330

/// )
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 01:18:34.56 ID:kBiZAMMo
「仕方ない。こうなったら一人で探そう」
 ドラえもんは少年に助けてくれたお礼を言うとテントの外へ出ようとした。
 しかし丁度その時、外から一人の男が入ってきた。
 薄毛の初老の男だ。
 男がジロリとドラえもんを睨む。
「やあー、どうも! ここはあなたとあの子のテントなんですか? お世話になりました」
 すかさずドラえもんはフレンドリーな口調で話しかけた。
 しかし、男の表情はかなり不機嫌そうである。
(うーん、このおじさんにはも嫌われてるみたいだなぁ、どうも)
 男を怒らせないように愛想を振りまきつつ、後ずさりするどらえもん。
 しかし、男はあっさりドラえもんから視線を逸らすと、少年に向かって口を開いた。

「青狸のヤツ目が覚めたみてぇだな、ワンよ」
「うん。ジジイのおかげだ!」
 少年は純粋な笑顔を作る。
 男は咄嗟にワンから視線を逸らした。
 子供のこういう表情は苦手だ、と思う。
「お前の言ってた通りだな。この青狸、本当に言葉を話すみてぇだ」
「だろう? でも外国語みたいで俺には何言ってるか分からないんだ。ジジイは分かる?」
「俺にもよお分からん。だが、日本語じゃねぇか? 難民キャンプの日本人達のしゃべり方に似てる」
「へぇー。じゃあコイツ日本人なんだ」
「日本人……ねぇ」
 どっちかってーと”日本狸”って感じだがな、と内心男は思う。
「まぁそんな事はどうでもいい。コイツが何狸だろうと俺の知った事じゃねぇからな」
 男は咳払いした。
 そして改めて鋭い眼差しをワンに向ける。
「ともかくだ。青狸も元気になったみてぇだし、ソイツ連れてとっとと出てってくれ」
 男の言葉に、ワンの表情は一気に暗くなった。
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 01:20:13.55 ID:kBiZAMMo
「もう少しだけ頼むよ」
「ダメだ」
「お願いだよジジイ!」
「ダメだったらダメだ」
「ジジィ〜〜!!」
「もうその手には乗らねぇぞっ!」
 男は突き放すように言った。
 俯くワン。
 ドラえもんはそんな2人を、なす術なく見守っている。
「こちとら手前の生活があるんだよ。兵隊に顔割れてるお前と、そんな訳の分からねぇ青狸に居座られたんじゃ稼業にならねぇ」
「でも!」
「”でも”じゃねぇ。ガキだからって駄々こねんな。いいか、これだけは覚えとけ。このご時世ガキだの、弱者だの、そんな事で助けて貰えると思うな。今はどいつもこいつ自分一人守るんで精一杯なんだよ。ガキだからって甘えてると、野垂れ死ぬのはお前自身だぞ」
「……」
 ワンは黙ったまま考え込んでいるようだった。
「……分かったよ」
 ワンは寂しそうにそう言った。
 そしてドラえもんに振り返ると、手で『ついて来い』と合図した。
「今までありがとうな、ジジイ」
 ワンはテントを出る間際にそう言った。
 しかし、男はワンに背を向けたまま返事をすることは無かった。
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 01:22:40.97 ID:kBiZAMMo


 ジュージュー!
 カシャンカシャン!

 強力な火力と、豪快なフライパン捌きの織り成す調理音が今日もホイ達の店に鳴り響いていた。
 フライパンで炒めたチャーハンを、サッと手早く皿に盛り付ける。
 そのボリューム感たるや難民キャンプで店を構えてるとは思えないほどである。
「マスター、ご馳走さま!」
 客の一人の男が大きな声で言った。
「あいよ!」
 店主が気のいい笑顔でそれで返す。
「どうもありがとうございます」
 調理をしている店長に代わってホイが客から代金を預かる。
 それを清算し釣りを手渡す。
「しかし、この店の存在はほんと有難いよ」
 ホイから釣りを受け取りながら客が言った。
「ここに来ると昔の生活を思い出せるんだ。なにせ、こんな状況だろ? 前の生活と何もかも変っちまった。金なんて殆ど、紙くずに鉄くずみてぇなもんだ」
「いえ、大事な御代ですよ」
 ホイはそう言って頭を下げた。
「本当だよ、店員さん。だからこそ嬉しいんだ。こうして金払って、飯を食って。そんな当たり前の生活も、ここに来ねぇと忘れちまうんだわ」
「僕もそうですよ。こうしてお客さんと接していると活力が沸くんです」
「まったく、まだ一年も経ってねぇって言うのにねぇ」
 客はそう言うと深刻な顔をした。
 しかし、すぐに思い直したように笑顔を作る。
「っと、すまねえな店員さん暗い話しちまって! 俺も頑張るから店員さんも頑張ってよ! この値段設定じゃ自転車操業だろうけどさ」
「はは、全くですよ。またお待ちしてます!」
 笑顔で帰っていく客をホイは見送った。
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2009/11/25(水) 01:23:38.91 ID:kBiZAMMo
短いけど今日はここまでです!
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/25(水) 01:41:58.83 ID:yRVtdQSO
お疲れ!続き楽しみにしてる!
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/26(木) 12:40:24.09 ID:6.m.mUDO
kabaさん乙です。
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/11/26(木) 18:19:00.33 ID:Cjujh7Mo
たずね人ステッキも無くしちまって・・・・
どうなるんだよ、これから
続きが待ち遠しいなあ
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/12/02(水) 12:19:27.68 ID:Ez0xXUDO
今後の展開が楽しみ。
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2009/12/24(木) 08:48:23.68 ID:OI5WW/k0
このまま年越しかな?
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/12/25(金) 12:21:18.26 ID:o54dskDO
気長に待とうぜ
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[[sage]]:2009/12/26(土) 18:58:58.14 ID:gmGBkmM0
続きが楽しみだ。
344 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ![sage]:2010/01/04(月) 12:32:22.58 ID:8vKRP2DO
遅くなったけどあけおめ
345 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ![sage]:2010/01/04(月) 13:40:49.54 ID:XhZHkuMo
便乗してあけおめ
346 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ![sage]:2010/01/10(日) 03:20:29.22 ID:wlqX9TEo
ことよろだぜ
347 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ![sage]:2010/01/15(金) 22:09:43.83 ID:lhRJsYDO
気長に待つつもりだが更新が無いと寂しいのう・・・
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/01/18(月) 20:20:58.74 ID:4atYiTo0
すみません。誰かこのスレのdatを持ってないでしょうか?
【忘れられた男】機動戦士ガンダム のびたの一年戦争【by出来杉】
ttp://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1162865611/
変換機は使ったのですけど、トロイが仕掛けられてたり、無かったりでダウンロードできませんでした。
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/01/19(火) 17:39:34.51 ID:qDxoeBAo
さすがに4年前のログは残ってねーわ
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/01/19(火) 18:29:35.21 ID:CQAVdzoo
●なら700いくらくらいまでレス出てきたけど
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/02/27(土) 13:15:47.09 ID:7UlhqyM0
まだ終わらんよ
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/02/28(日) 02:56:33.53 ID:5Tk3x56o
●なら
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/03/11(木) 10:34:42.25 ID:TjLfocDO
ほしゅー
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/03/13(土) 12:35:07.02 ID:AWypSoDO
そして誰もいなくなった
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/03/27(土) 16:21:00.25 ID:vN35oMSO
週一回は見に来てる。
続き待ってるよ
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/04/10(土) 00:53:48.48 ID:Gv61kQQ0
作者が無事であることだけ祈っている
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/04/21(水) 10:40:35.44 ID:6mpjH.DO
おれはずっと待ってるぞー
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/05/19(水) 12:49:16.56 ID:vbLYgsDO
続き見てー
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/05/24(月) 08:02:15.51 ID:8TkWoYDO
過疎化してるね(´・ω・`)
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/05/27(木) 23:04:10.05 ID:R8nuzcAO
来るのが週1から月1になりましたが見てます。
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/06/08(火) 02:37:29.95 ID:3w/fu4s0
俺はまだ居るぞ!
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/06/20(日) 13:29:43.26 ID:I35eoxs0
次は4年後?
わたしまちましたわ
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/06/25(金) 13:39:19.02 ID:YS3cVgAO
ニコ動に動画がwwwwww
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/06/25(金) 15:26:47.02 ID:6uysrDso
冗談だと思ったらマジだったwwwwwwww
すげー
365 :sage2010/07/16(金) 14:32:28.57 ID:LgWj.J60
保守
366 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/07/27(火) 01:59:01.96 ID:ryBbv5Ao
まちませう
367 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/07/27(火) 11:45:26.77 ID:X4Cr3UUo
おいおいデラーズどころかグリプス突入しちまうぞ
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[age]:2010/07/30(金) 09:00:05.19 ID:yguG32DO
なんとなくageてみた
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/08/10(火) 15:09:12.11 ID:nnY/pzoo
また続きが読みたいものだ
370 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[age]:2010/09/09(木) 21:01:29.74 ID:HqrkqwDO
挙げてみる
371 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[lfyul]:2010/09/10(金) 23:06:47.89 ID:snkxHto0
ほす
372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2010/09/27(月) 10:39:56.63 ID:XfSAxbgo
まだだまだおわらんよ
373 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2010/10/29(金) 00:02:54.00 ID:RoIrFwAO
>>372
四年前も同じレスがあった後三年待つことになったな
よ〜し気合いいれて待つか
374 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 23:11:34.64 ID:Q2ksDeko
保守
375 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/30(木) 23:06:26.34 ID:b9kR91k0
保守
376 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/03(月) 18:27:01.51 ID:cf8ArX60
保守
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2011/01/29(土) 15:04:47.63 ID:AXHyWdMs0
あしあと4年ぶりに実に来たらいろいろあったのね
378 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2011/01/29(土) 22:16:51.30 ID:G+FOyng7o
三年周期か……
379 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2011/02/09(水) 22:24:46.03 ID:ifx73+cDO
保守
380 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2011/03/03(木) 16:11:52.54 ID:j8UUrDaF0
ここまで来たのだ。最後まで見させてもらう!
381 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県)2011/03/25(金) 14:53:57.02 ID:FDq23Ox80
名作保守
382 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(滋賀県)2011/04/27(水) 01:23:41.21 ID:jcqOzX+g0
保守
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2011/05/05(木) 23:33:39.84 ID:t/XWWcSDO
保守的
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2011/05/24(火) 12:23:57.06 ID:xn3pfhbDO
あげほしゅ
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2011/05/24(火) 15:17:18.34 ID:B3vgMieu0
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都)2011/06/13(月) 02:38:36.13 ID:iM3yaRf/0
作者は無事なのかなぁ
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2011/07/15(金) 09:29:26.35 ID:qzvb/Q2DO
保守
388 : [sage]:2011/08/15(月) 12:40:13.40 ID:o9EcDlQAO
保守
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage]:2011/08/27(土) 11:06:17.48 ID:8KTlstia0
久々に来たらちょっと更新されてた!
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新鯖です)[sage]:2011/12/04(日) 10:49:13.27 ID:6ChkFxKSO
もう師走か…
391 :以上パー速にかわりましてアニソンスレがお送りしました[sage]:2012/01/14(土) 05:18:31.80 ID:NVf6o6ZDO
今でもたまに見に来てしまう。未練よな

遅くなりましたがあけましておめでとうございます
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/02/11(土) 15:40:42.54 ID:ceOhNXmmo
HUNTER×HUNTERも連載再開されて結構経つし、こちらもそろそろ再開してくれると嬉しいんだが…
もうすぐ[たぬき]がジャイアンとスネ夫に会えそうなのに
393 :kaba2012/02/24(金) 20:50:40.33 ID:AEbH2p9AO
お久しぶりです!

近々再開しようと思います!!
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/02/29(水) 18:05:10.18 ID:qX8jQ5lSO
>>393

待ちくたびれたぞ!
とりあえず生きててよかった…
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/03/09(金) 16:20:52.20 ID:Vvu0MHH70
胸が熱くなるな。
もう一度読み直してこよう。
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/03/11(日) 09:59:16.66 ID:Ui3R9BSYo
>>393
待ってました!!
最初から読んどこ
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/03/18(日) 22:52:58.41 ID:ZWrdBp8DO
楽しみです(´・ω・`)
398 :kaba2012/03/22(木) 19:43:46.04 ID:55VhCkTAO
何やかんや書き始められてなくて申し訳ない…。

必ず完結させるつもりなのでよろしくです!
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/03/25(日) 23:54:42.44 ID:1BvwT+dDO
まちます(^-^)
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/03/26(月) 06:58:23.53 ID:/M+Y4dDio
>>398
待ってるよ
401 :kaba2012/03/27(火) 15:54:23.35 ID://t9fVXY0
ありがとう?
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/03/29(木) 10:37:26.58 ID:VNNf7xUDO
どっちも偽物?



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