以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:18:41.18 ID:40gKhmM0<>ホロ「この状況、いかように考えておる」

ロレンス「お前からそういう言葉を聞くのは久しいな」

ホロ「たわけ、今は遊んでる場合でない」

余裕があるとは言っていないが、囲まれている人数は7人だ。

ホロ「なんとかなる、と?」

ロレンス「心を読むな」

ホロ「読んでほしそうじゃったからの」<>ホロ「ぬしよ」 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:19:54.17 ID:40gKhmM0<>ホロ「しかしいきなり襲い掛かってくるとはの、よっぽど警戒されてるの」

ロレンス「うさんくさい話だったんだ、これくらいは覚悟してるさ」

ホロ「錬金術士というのはこれほど血気盛んなものなのかや?」

錬金術士「『粉』を返せ」

ロレンス「なに?」

錬金術士「お前たちが持っているのはこちらも承知している!」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:20:35.24 ID:40gKhmM0<>ロレンス「どうやらあたりらしいな」

ホロ「欲をかくのはこの場を切り抜けてからにしてほしいの」

ロレンス「商人なんだ、欲だけは四六時中かいてるさ」

ホロ「一流の商人ならば、かようなリスクまで計算してほしいものじゃ」

やれやれといった表情でホロが首元の麦に手をのばした。

ホロ「こやつらの前ならば平気じゃろ」

ロレンス「助かるよ」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:21:37.34 ID:40gKhmM0<>狼となったホロが走り抜けるその様は、いつみても圧巻だったが、町外れとはいえ路地で見るのは初めてだった。

ロレンス「あの焦り様、間違いなくこの粉は本物だ」

ホロ『やつらをまいたら、いったん別れたほうがよさそうじゃの』

ロレンス「夜に、宿で落ち合おう」

昔なら考えられないようなやりとりだ。



-狼と銀色の粉-<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:21:58.10 ID:40gKhmM0<>夜になり、宿に戻ると、先にホロのほうがベッドにいた。

ロレンス「すまない、少し酒場で話していて」

ホロ「雄を待つのは雌のつとめとは言うが」

ロレンス「?」

ホロ「退屈させぬのは雄のつとめ、なんじゃろうな」

ロレンス「ホロ・・・」

ホロ「よい。退屈した雌には、選ぶ権利があるからの」

ロレンス「悪かったよ」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:22:54.93 ID:40gKhmM0<>ロレンス「まず、状況を整理しよう」

ホロ「わっちにも、誰かさんにもわかりやすいようにしてくりゃれ」

ロレンス「誰かさん?」

ホロ「なんでもありんせん」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:23:38.31 ID:40gKhmM0<>ロレンス「辺境の村で俺たちはあるうわさを聞いた」

ホロ「銀色の粉、じゃな」

ロレンス「そうだ。どのような難病に伏した患者でも、たちどころに回復させるという魔法の粉。調べてみると、どうやらこの町からうわさが広まってるらしい」

ホロ「やれやれ、最初に聞いたときはたいそう訝しげな面をしとったくせに、いざ眼前にかまえてみると、これじゃ」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:24:31.04 ID:40gKhmM0<>ロレンス「本当に最初は町に寄るついでだったんだ。それにまだ完全に信用したわけじゃない。だから、取引についても、効果を実践してからと念を押して仕入れた。薬に関しては根も葉もないような嘘がよく出回るからな」

ホロ「ぬしよ、話が飛んでおる」

ロレンス「ああ、そうだった」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:26:00.63 ID:40gKhmM0<>ロレンス「たまたま懇意になった酒場の店主から紹介された先が錬金術士の塒だったのは意外だったな。もちろん俺一人ならそんな危ない場所には行かないが、俺たち二人なら話は別だ」

ホロ「その言い方じゃと、まるでぬしが頭をめぐらせていたような描写じゃが、実際はわっちに甘えただけじゃろ」

ロレンス「・・・認めるよ。まさか本当にあんなことになるとは思わなかったけどな」

ホロ「その割にはあせってなかったの」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:27:35.86 ID:40gKhmM0<>ロレンス「お前を信用してるからな」

ホロ「言葉は便利で、難しいものでありんす。信用と信頼は別物じゃ」

ロレンス「ホロ、話が終わらないんだが」

ホロ「おっとすまぬ、ぬしを『信用』しておるから、つい」

ロレンス「・・・・」

ホロ「続けてみよ」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:29:12.64 ID:40gKhmM0<>ロレンス「紹介された錬金術士から手渡されたのがこの粉。最初はただの塩かと思ったが」

ホロ「ふむ」

ロレンス「この町で塩を仕入れるのは大変な苦労なんだ。もしこの粉が本物だったときの値段と、この町で仕入れる塩の値段とを照らし合わせても、向こうにとっては損が出る。前に話したとおり」

ホロ「海から離れれば離れるほど、価値があがり、最後には宝石のような、とかいうくだりかや?」

ロレンス「その通り。それに対してこういう代物はな、最初の価値はきわめて低いんだ。効果が実践され、人々から認められてこそ、はじめて価値があがる」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:31:47.84 ID:40gKhmM0<>ロレンス「あの錬金術士がいってたこと、覚えてるか?」

ホロ「侮るでない。たしか・・・こうじゃろ。

『製法については我々しか預かり知らないもので、かつその価値が明らかなら、あとはどうやってそれを世に広めるか。残念ながら我々という存在は、外界からはきわめて疎まれる存在であるゆえ、価値あるものを市場に広める手段がない。ならば、外界において信頼できる人間に、信頼できる人間を選ばせ、この価値を広める手段とするのが道理』、

じゃったか」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:33:23.63 ID:40gKhmM0<>ロレンス「そうだ。ちょうどあの酒場の主人がその信頼できる人間、だったわけだが」

ホロ「その主人に選ばれたぬしもまた、信頼できる人間、ということじゃな?ふむ、ぬしよりは言葉を選べているようじゃ」

ロレンス「そういうお前は言葉を選びすぎなんだよ」

ホロ「ほう、では言葉ではなく、別のものを選ぶとしよう。良き雄、とかの」

ロレンス「・・・雌の特権か」

ホロ「うむ」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:35:14.93 ID:40gKhmM0<>
ロレンス「動機についても、損得勘定についても、取り扱ってみる価値はある。おそらく金銭的な面での被害はないだろう。ただその上でも、うさんくさい雰囲気は最後までぬぐえなかったがな」

ホロ「ぬしが一番ひっかかっておる部分をあててやろう」

ロレンス「うん?」

ホロ「あの粉を出されたとき、結晶を舐めて確かめようとしたぬしを、あの錬金術士は止めていた。たしか、『健康な人間にとっての薬は毒以外の何モノでもない』、とかなんとかいっての。そこじゃろ?」

ロレンス「ああ。正直、本当に毒なんじゃないかとも思ったりはした」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:36:54.76 ID:40gKhmM0<>ロレンス「しかしよくよく考えれば、もしも毒ならばうわさになる方がおかしい。火のないところに噂は立たないようにな。この粉に効用があるかどうかはわからないが、よもや害があるならば、俺のような人間はあの女のところにたどり着けないはずだ」

ホロ「たしかに、悪評と好評は相容れぬ。たつのはどちらか一方じゃ」

ロレンス「それに加えてあの襲撃だ。おそらく錬金術士の間で何かしらの協定が結ばれていたに違いない」

ホロ「あの女と共犯という可能性はないのかや?」

ロレンス「まずないだろう。預かったのは少量だ、相手側のメリットがない」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:39:31.54 ID:40gKhmM0<>ホロ「そう思わせるのが目的だったとしたら?」

ロレンス「ほう、お前も、考え方が商人のそれになってきたな」

ホロ「ぬしのせいじゃ、たわけ」

ロレンス「ハハ、仮にそうだとしても」

ホロ「相手方が取引を要求するという根拠を裏付けるだけ、じゃろ?」

ロレンス「・・・まあ、そんなところだ」

ホロ「くふ、商人とは負けず嫌いな生き物のようじゃ」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:44:59.47 ID:40gKhmM0<>ロレンス「とにかく、以上の情報から、俺としては前向きに検討するつもりだ。前向きというのは、つまり」

ホロ「儲け話として扱う、ということじゃな?」

ロレンス「そのとおりだ。それに、いくら頭を回したところで、情報のない品物を扱う上でリスクはつきものだ。商人にとってのリスクというのはつまり、金銭の損失を意味する。この場合、儲けることはあっても失うものはないからな」

ホロ「ま、理屈は通っておる」

ロレンス「何か言いたいのか?」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:51:06.43 ID:40gKhmM0<>ホロ「まず、ぬしはひとつ見落としておる」

ロレンス「?どこにだ?」

ホロ「気づいておらんのかや?なるほど、こういうこともあるんじゃの」

ロレンス「含んだ物言いはやめてくれ」

ホロ「ぬしのプライドをこれ以上傷つけてしまってはことじゃろう?」

ロレンス「お前な」

ホロ「怒るでない。仕方ないの」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/01(火) 23:55:45.87 ID:40gKhmM0<>ホロ「ときにぬし様よ、商人にとって大切なこととはなんじゃ?」

ロレンス「お、お前な、いくらなんでも馬鹿にしすぎだぞ!」

ホロ「言ってみよ」

ロレンス「・・・多々あるが、そうだな、契約を守る、取引先との関係を大事に・・・・・・あ」

ホロ「気づいたかや?」

ロレンス「お前、最初からこれを言わせる気だったのか・・・」

ホロ「はて?なんのことか」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:06:08.75 ID:f7V1wfE0<>ロレンス「信頼・・・・」

ホロ「うむ、ぬしは先ほど、この話のリスクとして金銭の損失をあげていたが、ぬしが扱うこの粉のいかんによっては、目にも見えないそれが損失となることもあろう?」

ロレンス「もともとうわさからはじまっている儲け話だ、俺が扱えば瞬く間に町に広がる」

ホロ「ぬしはわっちが見る限り、良き商人じゃ。金銭ならば今まで何回も取り戻してきた。が、信頼というのはそう簡単に戻せるものではありんせん。それこそ壊れるときはあとかたもなく、の」

ロレンス「この町にも商会はあるからな・・・」

ホロ「目に見えるものだけを損失と考えるのは、いささか軽薄じゃの。ぬしならば当然心得ているかと思っていたんじゃが」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:07:31.24 ID:f7V1wfE0<>
ロレンス「だが、それを知ったところで、だな」

ホロ「わかっておる、リスクとしては計れぬところもあろう?それに、良き商人であるぬしが考えてもこの話は信頼性が高い。しかしな、いざ粉を扱うそのときに、ぬしの判断材料にはなるはずじゃ」

ロレンス「ホロ、お前はどうなんだ」

ホロ「どうとはなんじゃ」

ロレンス「その・・・どう思うんだ、この話」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:17:22.02 ID:f7V1wfE0<>ホロ「正直に言っていいかや」

ロレンス「もちろんだ」

ホロ「嫌な予感はしておる」

ロレンス「なぜ?」

ホロ「・・・・わっちゃぁ賢狼じゃ。ぬしらよりはるかに長い人生を送る。その中で、病気にかかって死ぬのも、寿命で死ぬのも、結局は一緒じゃ」

ロレンス「?」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:21:02.31 ID:f7V1wfE0<>ホロ「・・・・万病を治す薬なんぞ、この世にはありんせん。それこそぬしらが言う、神とやらの所業じゃ。その粉は何かに効くのかもしれぬが・・・・同時に差し出すような対価がある気がしてならぬ」

ロレンス「それも信頼、か?」

ホロ「違うの。何の根拠もないが、おそらくもっと直接的な損失、じゃ」

ロレンス「ますますわからん」

ホロ「今の段階ではわっちにも判断できぬ。感覚の問題じゃからの。しかしぬしさまよ、油断だけはしないでくりゃれ」

ロレンス「そうだな・・・覚えておく」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:28:42.03 ID:f7V1wfE0<>

ホロ「さて、わっちはそろそろ寝る」

ロレンス「あ、ああ。もう遅いから、明日は少し予定をずらそう」

ホロ「ぬしよ」

ロレンス「うん?」

ホロ「わっちが今、この話に反対したら怒るかや?」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:29:46.40 ID:f7V1wfE0<>ロレンス「・・・そんなに、するのか、嫌な予感とやらは」

ホロ「・・・」

ロレンス「おいホロ」

ホロ「忘れてくりゃれ。雄にあれこれ文句を言うのは、雌の悪い癖じゃな。自分のことならば責任が持てるのじゃが、皮肉なもんじゃ」

ロレンス「・・・・」

ホロ「くふ、その顔が見たかっただけじゃ」

ロレンス「お前な!」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:38:14.66 ID:f7V1wfE0<>ホロはそれっきり、口を開くことなく眠りについた。

今まで儲け話にたいして助言があることは少なくなかったが、それを止めるということはなきに等しい。

どうもそれが腑に落ちなくて、その日はなかなか眠れなかったのを記憶している。

しかしおそらくリスクに関わらず、この時の俺ならば商談に望んでいただろう。それが性というものであり、誰にも止められない衝動として、大商人になるならば何度も向き合うことになる気持ちだ。


それでも、結論からいうなら、このときのホロの判断は正しかったのだ。

儲かるとか、そういう話ではなかった。信頼とか、いや、そもそも商人という形ですらない。

そういうわけでこれは失敗談である。

おそらくこれから先、何年経ってもこのエピソードを忘れることはないだろう。

否、忘れてはいけないのだ。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 00:38:45.65 ID:f7V1wfE0<>導入はおわりです
需要があれば続き書きますおやすみなさい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2010/06/02(水) 01:17:56.57 ID:eGCquADO<>今ssはパー速じゃなくて製作速報ですよん<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2010/06/02(水) 17:13:04.54 ID:8yLxKVM0<>失礼しやした!ww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2010/06/02(水) 23:35:04.18 ID:2RbaKAwo<>製作に移行した都度を下記のスレに報告してこっちのスレをHTML化依頼をしてくだしあ

過去ログ化依頼スレッド【旧HTML化】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1264679279/<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2010/06/05(土) 13:47:52.78 ID:WcXl/NQo<>このスレの移転先

ホロ「ぬしよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1275466713/


それと処理を忘れているようなので勝手ながらパー速の方のスレはHTML化依頼出しときました<>