以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(栃木県)<><>2011/05/02(月) 23:31:20.23 ID:8G/DguPa0<>科学の発展と共に忘れ去られた同胞達よ!
妖怪、変化、退魔の狩人
人の間に暮らす者、人知れぬ山奥に隠れし者
人を喰らいて生きる者、彼らより人を護る者、そして、人と共に歩む者
草木も眠る丑三つ時、忍ぶ人目もありゃしない
今宵こそ、失われた力を思う存分振るうがいい!
避難所(雑談、設定投下などはこちら)
ttp://jbbs.livedoor.jp/internet/10398/


次スレは>>980が立ててください
<>【妖怪と人間】ここだけ妖怪世界part6【新規歓迎】 窮奇、波旬<>sage<>2011/05/03(火) 22:48:39.84 ID:ANZhIbPXP<> 前スレ>>1000

「あっはっはーーゴメンね! この子、私と違って口が『悪い』んだぁー」

 諌めるような動作で、ポンポンと波旬の頭を叩く。
 当の波旬は怖ろしく無関心な顔で織理陽孤を見据えている。

「・・・童、ですか? 下位の神性の分際で生意気です」

 怒りもなく、ただつらつらと言葉を吐き出す波旬。
 かつての魔王たる傲慢さは、衰えるどころか窮奇によってさらに悪化させられている。

「ところでさぁー! そこに隠れているみんなー!」

 ニタリ、と不快感を心の奥から引きずり出すように微笑む窮奇。

「今からこの織理陽孤さん! 圧し折って『良い』かなぁ!!」

 言うが終るのが早いのか。
 波旬は右腕を異形の半月刀に変化させ、織理陽孤の首を討とうとしていた!

「気に食わないのです、欲望の顕現たる私を前にして。
 “望みを叶えたい”などというキミの魂の形が気に食わないのです!!」

 この波旬も心を読む力・・・
 否! 魂の奥底や望みを見抜く力を有していた!! <> 送り妖怪衆<>sage<>2011/05/03(火) 23:08:22.22 ID:sPLVgXISO<> >>2
「気に喰わぬか? それは悪かった、波旬」

まるで氷のような少女に向けて名前を言い直す。
波旬――窮奇と同じ顔をした、その名に悪魔を持つ者。

唐突に投げ入れられた窮奇の朗らかな声に、織理陽狐の背後にいた送り妖怪たちが体を強張らせた。
奥の結界に守られた妖怪たちにも、その声は届いている。
力なき彼らは、ただ窮奇たちに怯えることしかできない。

東雲が咄嗟に、織理陽狐を援護しようと飛び出そうとする。
迫る波旬の半月刀。
しかし、織理陽狐は動かない。
じっと波旬を見据えるだけだ。


《欲望の顕現か、》


半月刀が織理陽狐に襲いかかる寸前。
ちか、と彼の周囲が輝き瞬く。
そして突然に、織理陽狐から三叉の狐の尾を模した巨大な狐火が上がった。
狐火の尾はうねり、盾のように半月刀から織理陽狐を守る。
同時にもう1つの尾が、波旬を捉えようと襲い掛かった。 <> 窮奇、波旬<>sage<>2011/05/03(火) 23:34:22.86 ID:ANZhIbPXP<> >>3

「・・・ッ!」

 狐火によって刃を止められ、拮抗する間に炎に包まれていく波旬。
 一本目の狐火を切断するが、二本目に防がれ、三本目になぎ払われる。

 炎に包まれ、地面を滑る。

「あららー、やっぱり織理陽狐くんの相手は早かったかなぁー?」

 ニタニタと笑い、波旬を見据える窮奇。
 しかし波旬は炎に包まれたまま何事も無かったように起き上がり、窮奇に言う。

「そうやもしれませぬ母上、私がこの狐に挑むのは・・・5秒ほど早かった」

 突如、身に纏う炎を吹き飛ばし! 波旬の背から織理陽狐のモノと同じように炎が上がる!
 しかしその炎はおどろおどろしき紫色、そして織理陽狐の倍の数・・・6本!!

「他化自在とも呼ばれた私を甘く見ないでください、クソ以下のカスが」

 6本の焔は唸りを上げ、織理陽狐を焼き尽くさんと襲い掛かった! <> 送り妖怪衆<>sage<>2011/05/03(火) 23:56:45.64 ID:sPLVgXISO<> >>4
「ンなっ……」

同じ炎を真似たばかりか、それを上回る力で反撃してくる波旬に、東雲が戦慄する。
今彼が援護に行ったところで、せいぜい盾になるのがいい所だろう。

四十萬陀も他の妖怪たちも、驚愕の表情を隠す暇もない。
加勢することすらできず、呆然と立ち尽くす。

他化自在の術により生み出された、
形の同じ、しかし本質の違う紫の焔が織理陽狐に襲い掛かる。
不意に、狐の唇が動いた。

「本所七不思議、送り提灯」

――ぼぼぼっ!!
炎が上がる音が三つ。
織理陽狐の周囲に、三つの提灯が浮かび上がる。
そしてその次の瞬間……紫の焔が、織理陽狐の体を包み込んだ。

ゆらり。
炎の中で、優男の姿が揺れる。
それは陽炎のようにして――紫の中に融けていった。

織理陽狐の妖気が一瞬、どこかへと消える。
次に現れたのは、山道の端にそびえる巨木の頂だった。
下駄を履いた片足を乗せて、ゆらりと白い着物を揺らしている。 <> 窮奇、波旬<>sage<>2011/05/04(水) 00:24:13.05 ID:m6Rp4/EkP<> >>5

「・・・」

 イライラ、と辺りを見渡す波旬。
 圧倒的な力を持つはずの自分が、いまいち上手く動けないのことに苛立っていた。

 窮奇は、その様子を見かねたように。
 指を鳴らして提案する。

「波旬ー、もう『良い』や。私の真似しなくて」
「!?」

 窮奇はニタニタとしながら呟く。

「遠慮なく前の姿に戻りなよ、私はもう帰るからさ」
「えっ・・」

 土の塚が膨れ上がり、窮奇を包み込んで消えていく。
 悪意が消え、圧倒的な容器こそ残っていれど・・・空気は澄んでいく。
 後にはただ呆然とした波旬が残されていた。

 プルプルと震えだす波旬。
 屈辱か、悔しさか・・・。その鋭い目には涙を一杯に溜めていた。

「よくも・・・手間取らせてくれたなぁ・・・。
 よくも私に・・・微妙な印象のキャラ付けをしてくれたなぁ!!
 よくも私の初陣をパッとしない戦いにしてくれたなぁああああ!!」

 大地が震え始める、空気が裂け始める。
 はるか遠く山のてっぺんを睨みつけ、織理陽孤にむかって憎憎しげに吐き捨てた。

 あっさり過ぎる、短絡的過ぎる、沸点が低過ぎる。
 おそろしく短気な思考、そして過ぎたる力!!
 自分の思い通りにならなかったのことが、あっさりこの天魔の沸点をオーバーした。

「お前がおとなしく! 首を刎ねられとけばこんなことにはならなかったんだぁあああ!!
 この汚らしくて微妙なスカした低次元のカスどもがぁああああああああああああああああああああ!!!」

 人らしかった形はあっさり崩れ、そして本来の姿を現す波旬。
 それは・・・見上げるような、小山ほどあるような、雲のように大きい。

 巨大な六方星だった。

 いきなりの全力。
 “空を落とす” これが波旬の・・・天魔としての特性!!


            【ほしをおとす魔法】


 突如、空から・・・巨大な熱線が降り注いだ。
 熱線は空気すら焼き、地面に触れた瞬間・・・爆音と共に炸裂する! <> 送り妖怪衆<>sage<>2011/05/04(水) 00:59:41.35 ID:xSYr4ypSO<> >>6
「!!」

波旬の真なる姿――巨大な六方星を見上げる。
空を覆い隠すほどのそれから伝わる、圧倒的な力。

次の瞬間、織理陽狐は木から飛び降りて送り妖怪たちの元へ降り立った。

「織理陽狐君!」

半ば悲鳴に近い声で、四十萬陀が彼の名前を呼ぶ。
空から降り注ぐ熱線。
まともに受ければ全員命はない。もちろん、この場にいる全員ではなく。
奥の結界に隠れる妖怪や、周辺に身を隠す妖怪たちの、全ての命だ。
東雲の障壁も、今この場では何の意味もなさないだろう。

守りきれる可能性があるのは、彼しかいない。

「っふ……、――――!!」

織理陽狐が構え、妖気を高めさせる。
ごう、ごうごうごう!!
激しい音を立てながら、送り提灯がその数を増やしていく。
そして、それらは熱線が降り注ぐの範囲を囲うように四方へ散っていった。

それぞれの提灯が動きを制止する。
熱線は炎の放物線を描きながら、今にも地面に落ちようとしている。

そして――


「“狐之結界”ッ!!」


送り提灯がその器すら焼いて燃え上がった。
同時に炎と炎の間が金の光で繋がれ、織理陽狐の結界が生み出される。

ドオオオォォンッッッ!!!!

熱線が結界に触れた瞬間、爆音と共にそれが爆発した。
続けざまに起きる爆発。
その衝撃に、結界も震える。

「ぐ……」
「織理陽狐君!」
「狐ッ!!」

まるで体全体に重しが乗っかっているように、全身が鉛のように重い。
しかし潰されてしまえば、皆命はない。

織理陽狐は、がくりと震える体を抑えて顔を上げた。
そして、六方星――波旬の心へ語り掛ける。

「――……お主は、自らを欲望の顕現と言ったな」

静かに、穏やかな心で。

「儂は顕現などではないが……っ、儂が叶えたい、っ願いや想いも……欲望ではないか……?」

心を、魂を読める少女になら分かるだろう。
彼の言葉に、嘘偽りが何一つ無い事。彼の心は、『良い』も『悪い』も関係なく引っ括めて等しく見ている事。
仲間の送り妖怪も、波旬も、窮奇も。

「似た者同士、じゃろっ……のう、儂の友にならぬか……?」

――例え届かぬ言葉でも。 <> 波旬<>sage<>2011/05/04(水) 01:24:21.39 ID:m6Rp4/EkP<> >>7

 狐の声を聞き届けたか、六方星は形を歪め・・・窮奇に似た姿へと再び戻る。

 静かにその場に降り立ち、狐の前に歩み寄る。
 辺りを一瞬で地獄絵図に変えたであろう、その力を防いだことにただただ驚きながら。

「・・・なるほど、母上が執心するわけです」

 深い闇を湛えた瞳で、織理陽狐の目を見据えた。
 しばらく黙った後、口を開く。

「欲望と・・・望み、それは確かに同じ物です」

 しかし、と再び言葉を連ねる。
 その言葉には若干の揺らぎがあった。

「キミと私は似た者同士ではあるけど、同志ではないのです。
 私はキミの言葉が理解できません」

 やはり無邪気で、小ばかにしたような笑みを浮かべた。

「私の存在は、欲望を破滅に導くモノですからね。
 望みを『良い』モノとしてキミが捉えている限り、永遠に友達にはなれないです」


 空間に六方星が浮かび上がり、波旬を包み込んで・・・消えた。 <> 送り妖怪衆<>sage<>2011/05/04(水) 02:05:49.47 ID:xSYr4ypSO<> >>8
「……そうか」

残念じゃ、と織理陽狐が寂しげに口籠もる。

「お主の母にもよろしく頼むぞ」

ふわりと微笑むと、
東雲はそう言って願いを集めてきた。 <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 20:54:21.54 ID:bDsNHDNfo<> 探しものの蛇はまだ見つからない。
携帯電話を片手にいらいらしつつ、人に化けた蛸は街中を不機嫌に歩き回っていた。

「ちょっと休憩するか」

蛸は何か飲もうと自販機に硬貨を入れた。
最近缶コーヒーの味を知った衣蛸は、いずれ全種類飲んでみたいと思っていたのだ。
その姿は営業周り中に一休みするサラリーマンと変わらない。

(まだ見たことない缶の…コレだ)

点灯したボタンをぽちっとな。

(む?)

硬貨が引っかかったのか商品が引っかかったのか、自販機は硬貨を飲み込んだまま
うんともすんとも言わない。

(む?む?)

蛸は怪訝な表情でぽちぽちと自販機のボタンを連打した。

「うぬぬぬ…」

(こういうとき、どうしたらいいのだ?) <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/04(水) 21:05:35.26 ID:IWBnmfM3o<> >>10
叡肖の後ろの歩道を、黒いセーラー服の少女が通り掛かる。
自販機の前に立つ彼の姿に気付いた四十萬陀は、ひょいと体を叡肖の方に向けた。

「そこの自販機、壊れてるから使わないほうがいいよ〜」

背後から声を掛ける。
が、叡肖の指は既にボタンを連打するばかりであった。

「……って、少し遅かったじゃん?」

この歩道を少し先へ歩けば、
風に飛ばされた「故障中」と書かれた張り紙が見つかるだろう。 <> 丑三夜中<><>2011/05/04(水) 21:11:06.06 ID:P6RfWK+DO<> >>10
「ヘイヘーイ!ヘイパース!」

困った自体に見舞われた妖怪がいるそのすぐ傍で、軽快な声で叫ぶ男がいた
そろそろ暖かくもなる季節、季節に似合わない白いニット帽を被った男が、小学生の集団とサッカーをして遊んでいた

「ヘイヘーイ!ヘイパァァァァンッ!!!」

…と、思えばパスされたボールが男の顔面にヒット、そのまま吹っ飛んだ男は件の自販機の横っ腹に後頭部をぶつける
物の見事なコンボをくらった男は、べしゃりとそのまま崩れ落ちた <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 21:20:41.14 ID:bDsNHDNfo<> >>11>>12
「そうか、壊れているのか」

ならば張り紙くらいしておいてくれれば良いのに、と思って少女の方を振り返ると
その少し先の道に「故障中」の張り紙が落ちていた。

「ああ、風で剥がれたのか」

それならば、と取り出した筆の先を舐めて、自販機そのものにでかでかと
衣蛸は『故障中』と達筆に墨書きした。これならばもう風が吹いても剥がれる心配はない。

「人間相手じゃないから、買い易くて便利だったんだけどなぁ。
 これって俺ら妖怪には、すごく便利じゃないかい?」

筆を収めながら潮の香りを纏った衣蛸が少女に言った。
彼女が持つ妖気を感じ取っての台詞だ。
衣蛸が名乗ろうとしたそのとき、自販機に特攻して崩れ落ちた男にさえぎられた。

「なんだこいつ?あ」

衣蛸にはその男に見覚えがあった。

「おい、お前。あの後落ち着いたか?」

男の片耳を摘んで持ち上げようとする。

「…子供と遊ぶ程度の余裕はできたみたいだな」

こちらへ手を振る小学生の集団をみて衣蛸は呟いた。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/04(水) 21:31:39.12 ID:IWBnmfM3o<> >>12
「じゃんっ!?」

ガツーンッ!!
突然謎の物体が自販機に吹っ飛んできたことに、四十萬陀が肩を跳ねさせた。
……ずる、べちゃ。
崩れ落ちた人物をおそるおそる覗き込むと、

「う、丑三君……」

四十萬陀は引きつった笑みを浮かべた。
彼の足元にはサッカーボールが転がっている。

と、ガランガランと音を立てて自販機の中から音がした。
先程の衝撃で、中の商品が出たのかもしれない。

>>13
豪快に自販機に墨書きされた文字の達筆ぷりに、四十萬陀が「おおー」と感嘆の声を漏らす。
だが達筆とはいえ、人間にしてみれば「なんじゃこりゃ!」というモノなのだが。

「凄い便利じゃん。近くに確か食べ物売ってるのも……アレ、丑三君の知り合いじゃん?」

丑三の片耳を摘まもうとした叡肖に話しかける。 <> 丑三夜中<><>2011/05/04(水) 21:41:26.75 ID:P6RfWK+DO<> >>13
「ん…おお、お前こないだの」
「いやーその節はどーもどーも、おかげさまで友人も止められましてねー」

耳を引っ張り上げられたまま、叡肖に視線を向けて呑気に答える
あの後あってはならない無くし物があったり、真意を隠す性格だったりするのだが、身体的にだけは大分回復したのが解る

>>14
「よー、そっちも久しぶりだな、元気だったか?」
「俺は元気だぞ、変わらずな」

近くにいた七生にも気付き、声をかける
先程あんなダメージをくらった様子なのにこの軽さ、元気なのは間違いなさそうだ

遠くから『おっさんパス呼ぶ癖に取るの下手すぎなんだよー』とか『変人のおっさんボール持って来いよー』だとか、小学生達の声が聞こえている <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 21:49:37.00 ID:bDsNHDNfo<> >>14>>15
「ほう、叩けば物は出てくるのか」

いや違う。
しかし衣蛸は商品が出てきたことで満足はしたらしく、丑三を放して缶コーヒーを取り出した。

「丑三?ああ、この男とは前にちょっと会ってな。名前は今まで知らなかったが。
 俺は叡肖、衣蛸だ」

叡肖はついでに四十萬陀に名乗った。
役職が絡まない場ではざっくばらんな口調である。

「で、丑三とやら、あの後はなにも問題なかったんだろうな?」

どうみてもヤバイ状態の友人だったが、こちらに関わってこなければ問題ない。

「やれ百鬼夜行だの、あの暴れ黒鬼だの。
 こっちは馬鹿蛇が見つからなくてタダでさえ手一杯なんだ。
 めんどくさい事のとばっちりは御免だぜ」

黒蔵に持たせておいた携帯のGPSサーチが途絶えていたのは、街中のとあるホストクラブ。
そこへ行って辺りの妖気を探ってみたものの、徒労に終わったところなのだ。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/04(水) 22:00:02.53 ID:IWBnmfM3o<> >>15
(変人のおっさん……)

確かに相変わらずなようだ。

丑三と逢魔の一戦は、某狼も狐も四十萬陀に話していないため、
この夜雀が知っていることは何一つ無い。
つまり彼女の中での丑三は、「変な人」ポジションから微動だにしていなかった。

「私も元気じゃん。ハイ、ボール」

四十萬陀は前屈してボールを拾い上げると、それを丑三に手渡した。

「サッカー苦手じゃん? それとも、子供相手に手加減してるだけ?」

>>16
「あ、中身出てきたじゃん。丑三君ナイス!」

ぐっと親指を立てる。
怪我(自販機に後頭部から突っ込むことを怪我と呼ぶのかは定かではない)の功名だ。

「私は夜雀の四十萬陀、名前は七生じゃん。よろしく叡肖君」

叡肖がどんな人物であるか知らない四十萬陀は、
彼が馬鹿蛇と呼んだ人物がまさか黒蔵であるとも気付かない。 <> 丑三夜中<><>2011/05/04(水) 22:14:07.95 ID:P6RfWK+DO<> >>16
「はンぶっ!!」

今までそれだけで支えられていた叡肖の手、それがいきなり放された物だから丑三の頭は落下し地面に頭をぶつけた

「…ああ、俺は丑三夜中、よろしく」

「あーいてー」と頭をさすりながら立ち上がり、改めて名乗る

「あの後は…まあ、まだ♂スもないな」
「いやー実はあの後肝心の鬼の部分を忘れちゃってさー、すぐに探したけど無くなっちゃってたんだよねー」

笑いながらとんでもない失敗を暴露する丑三、「うしちゃんったらドジなんだから☆」とか言っていられる神経の図太さだけは褒められた物か

「まあとばっちりはこないとは言えないって事で」

>>17
「あー、元気なのはいいことだ、妖怪も人間も元気が一番だな」
「後、べつに俺はサッカーが下手な訳じゃないぞ、少し張り切り過ぎただけ…だッ!!」

受け取ったボールを蹴って、小学生の集団へと渡す
…つもりだったのだろうが、蹴られたボールはまったく別な方向へ飛ぶ超キラーパス、小学生達の声(罵声)をバックにドヤ顔の変なおっさん

「ん?ナイスガイ?いやだな七生ちゃん、俺がナイスガイなのは生まれたときから変わんないって」

そして聞き間違いかわざとか照れる
本人はまさか自販機にぶつかった事で問題が解決してるとは思ってもいないだろう <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 22:22:10.54 ID:bDsNHDNfo<> >>17>>18
「七生?夜雀?もしかして袂山?」

ぎらり、と蛸の目が熱を帯びて光った。

「君、黒蔵って蛇の居場所を知ってないですかねぇ?」

この夜雀が露希の言っていたとおり黒蔵の想い人ならば、その居場所を知っている可能性が高い。
衣蛸は詰問しながらずいっと詰め寄り、少女の頭の上から今にも覆いかぶさりそうな勢いである。
そこへ丑三の脳天気な「とばっちりあるかも発言」。

「鬼をなくしたぁ?」

一瞬、ぶっとい青筋が蛸の額に浮かんだが、直ぐに四十萬陀に向き直る。

「今そいつが行方不明でね。急いで探してるんだ」

逃げた鬼がまた暴れだす前に、なんとしても黒蔵は捕まえて置かなければなるまい。
衣蛸は熱心に、手がかりである四十萬陀に食い下がった。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/04(水) 22:33:12.03 ID:IWBnmfM3o<> >>18
「…………」

キレイな弧を描き飛んでいくサッカーボールの行方を目で追いかける。
視線が横へ流れていって、ボールがぼんっと地面で跳ねる。
……直後、少年たちのブーイングが耳に届いた。

「あ、やっぱさっきの取り消しで」

四十萬陀は冷たい目で丑三を見ると、ナイス発言を無かったことにした。

>>19
「え、あ、うん、そうだけど……」

突然叡肖の眼つきの変わる。
四十萬陀は少し怯えたように頷いた。

「黒蔵君、の居場所?」

少女の表情が変わる。
といっても、覆いかぶさりそうな勢いの叡肖に押され気味なのは変わらない。

「ゆ、行方不明……!?」

四十萬陀は目を丸くした。その表情が、彼女にとっても初耳であることを語っていた。
行方不明だなんて東雲からも聞かされていない――のは当然だ。
何せ黒蔵が行方を晦ましているのはあの狼が原因であり、
本人がその事をひた隠しにしているのだから。

「初めて知ったじゃん。犬御もそんな事一言も……あ、そうだ!」

四十萬陀がぴーんと指を立てる。


「犬御なら知ってるかもしれないじゃん!」


――今、東雲の自爆フラグが立った。 <> 丑三夜中<><>2011/05/04(水) 22:45:05.57 ID:P6RfWK+DO<> >>19
「ヘイヘイにーちゃん、いきなり女の子に近付いちゃ駄目だぞ、駄目駄目」
「うらやま…じゃない、怖がられるだろーに」

いきなり七生に詰め寄る叡肖に面白おかしく話し掛けながら、間に割って入ろうとする
その途中、叡肖の怒りの問いはともかく出た名前に反応した

「大丈夫大丈夫、またひょこっと出て来る…かも…ん?」
「黒蔵…あれ、聞いた事あるよーなないよーな、あ、あるわあるわ」

ま、俺に聞かれたとしても解らないから別にいいか、とそれについての思考をする事は取やめた

>>20
「おいおい俺にはよく解らないが随分と楽しそう…もとい大変そうじゃないか」

詰め寄る叡肖と、それに対する七生の反応を見て楽しそうにニヤリと笑う
この笑みは、明らかによくない事を考えている悪役のような笑み

「俺も、俺も話に混ぜてくれよ」
「こう見えてもついこないだ心霊探偵に職を変えたんだ、役に立てると思うぜ?」

と、本人は言うが、役に立つ立たない以前に危ない香りがぷんぷんする勧誘だ
とりあえず首を突っ込みたくなる衝動がここで発動した <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 22:51:58.06 ID:bDsNHDNfo<> >>20
「やっぱり知りあいか。あいつが消えてからもう数日経っているんだ。
 …犬御?どっかで聞いた名だな」

衣蛸は記憶を手繰る。
平日は一緒に病院勤務であるのだから、日数的にどう見ても犬御君が疑われる。
そこは四十萬陀次第、であるが。

「丑三、お前の携帯番号教えろ。俺のもやるから」

衣蛸はここで丑三のほうに呼びかけた。四十萬陀の番号は、聞かない。
もっと色っぽい相手なら丑三も喜んで応じるだろうが、生憎この誘いは官吏の冷たさである。

「逃げた鬼の情報が入ったら教えてやる、だからお前もこっちに情報だけは寄越せ。
 どうせとばっちりが来るなら、事前に判ってたほうがマシだ」

逃げた蛇の足取りは辿れそうである。しかし逃げた鬼のほうはどうだろう?

「俺はこないだっから、罪かぶりの蛇探してんだ。
 お前も手伝うならとばっちりの一つや二つ、文句言わずに拭ってやらぁ」

自分も混ぜろという丑三をこき使う気満々で、衣蛸は誘いをかけた。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/04(水) 23:05:17.35 ID:IWBnmfM3o<> >>21
「君、退魔士じゃなかったじゃん?」

ニヤリと悪い予感を感じさせる笑みを浮かべる丑三に、
四十萬陀がたらーり汗を浮かべる。

「……心霊探偵って、退魔士とあんまり変わってないじゃん!」

しかも、かなり怪しいし。
余計に彼女の中で丑三の変人度が上がる。

>>22
「犬御、今怪我してるから……私が聞き出しておくじゃん。
 最近私に何か隠してるみたいだったし、何か黒蔵君について知ってるかも……」

何かどころか、超本人である。
東雲としては四十萬陀にこの事を知られたくはなかったのだが、
こうなってしまってはもうどうしようもないだろう。

四十萬陀が、ふと表情に陰を落とす。

「黒蔵君……どこにいるんだろう……」

胸に当てた手を握りしめる。
もし黒蔵に何かあったら、そう考えるだけで、不安で心臓が跳ねる。 <> 丑三夜中<><>2011/05/04(水) 23:14:36.73 ID:P6RfWK+DO<> >>22
「携帯…番号…だと?」

この時、丑三は雷に打たれたが如く固まった
携帯番号、それは久しく聞いた言葉、それはいつしか求めなくなっていた物
自分の携帯に入っているそれはずばりラーメンとピザの出前用、他は仕事で数える程しか使っていない番号だ
そんな物が今、久しぶりに手に入る、それだけで最早男女は関係無い、妖怪だけど

「オーケー、早速電話番号を交換しよう」
「お前の欲しい情報をこと細かく電話で伝えてやる、足跡が見付かっただけでも電話してやる」

スッと携帯(スマートフォン)を取り出すと、若干興奮気味に差し出した

>>23
「そりゃー退魔士ってだけじゃやっぱ依頼も中々こないからなー、探偵とでもいれりゃ若干は客が増えるもんよ」

事務所の看板を心霊探偵にしただけでそれなりに依頼が入るようになった、と本人談。真意の程は定かではない
「名前一つで取っ付きやすくもなるもんだ」、と付け加えた

(…ふーむ)
(思ってくれる奴がいるってのに、ねえ…うらやま…けしからんな) <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 23:21:48.93 ID:bDsNHDNfo<> >>23>>24
「相手は怪我人か…。今直ぐ聞き出しにいくのも無粋に過ぎるな」

衣蛸はポケットを探って、小さな包みを一つ取り出し夜雀に差出した。
黒蔵に作らせている薬のうちの一つだ。

「傷によく効く飲み薬だ。これを代償に、犬御とやらから聞き出すのを君に頼もう」

そして丑三があっさり差し出した携帯と自分の携帯との間で、
番号やメールアドレスのデータを交換する。
丑三の退魔師という言葉を聞いて

「退魔師が鬼と友人だと?そっちの経緯も色々訳ありのようだな。よければ詳しく聞こうか」

協力することになったからには、隠し立ては無し。
そんな官吏特有の堅い雰囲気を纏って、衣蛸は促した。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/04(水) 23:29:43.27 ID:IWBnmfM3o<> >>24
「そういうものじゃん?」

興味本位で依頼、というのもあるのだろうか。
その気持ちは四十萬陀にも分かる。
考えてみれば、逆にこの怪しさが本物っぽいのかもしれない。(実際本物であるわけだし)

沈鬱とした表情で下を向く四十萬陀。
と、隣で丑三が嬉々としてスマートフォンを取り出す。
それが目に止まった四十萬陀は、

「……ぼっtいやなんでもないじゃん」

ぼそりと言ってすぐに目を逸らした。

>>25
「うーん……渡してはみるけど……」

四十萬陀は気難しい東雲の顔を思い浮かべる。

「受け取るとは限らないじゃん?」

恩や貸し借りを重んじる彼は、だからこそ誰かに借りを作るのを嫌がる性質がある。
せっかく叡肖に貰ったものだが、東雲が飲むとは限らないだろう。

「ま、どっちにしろ聞き出すことには変わりないじゃん」

むん、と四十萬陀が張り切るように拳を握る。
黒蔵の事とあっては、いくら東雲が怪我人とはいえ聞き出さない訳にはいかない。 <> 丑三夜中<><>2011/05/04(水) 23:43:48.99 ID:P6RfWK+DO<> >>25
「あ?聞きたいの?つまんねー話だよ?」

携帯に登録した番号を名前別に分けたりしてから、携帯をポケットにしまう
口から飴の棒を取り出して、話しはじめた

「まず最初に言っておくが、あいつは鬼じゃない、鬼に憑かれはしていたが人間だ」
「あいつは昔、俺と一緒に組んで探偵紛いの事をしていたんだ」
「…そうだな、たった一人の友達だった、俺とあいつは」

「あいつには妹がいた、俺も詳しくは知らないが、あいつにとってはたった一人の肉親なんだと」
「その妹も病弱でな…まあ不治の病さ、でもその妹は明るく、俺もあいつにも元気をくれた、自分はもう死ぬってのにな」
「俺はその子に貰った元気に答える為に自分も明るく振る舞った、でも、あいつはそのままではいなかった」
「…あいつ、なんて言ったと思う?」

話を途中で打ち切ると、焦らすように叡肖に問い掛けながら新しい飴を取り出す
その飴をくわえながら、続きを言った

「…死が免れないなら、生き返らせる…って言ったんだ、冗談を言ってるような表情じゃなくてな、それが昔、2年くらい前の話」

はは、と小さく笑いながら、そう言った

>>26
「おい今何を言おうとした?場合によっては女の子でも躊躇わんぞマジで」

あぶない!その言葉は禁句だ!

「俺だって友達を作ろうと思えば作れるんだからな!」

その言葉はぼっちの言い訳だ! <> 叡肖<>sage<>2011/05/04(水) 23:58:31.99 ID:bDsNHDNfo<> >>26
「ぼっち?」

夜雀の呟きをいぶかしげに繰り返す衣蛸。
それが丑三の心にぐっさり突き刺さる言葉かもしれないとは、思いもしない。

「ああ、もしその男が黒蔵のことを知っているようなら伝えてくれ。
 奴は水界の罪人だ。罪人を匿うと自身も罪に問われることになる、と。これは警告だ」

四十萬陀に告げるその声が冷たい響きを帯びた。

(捕まえたら、あの蛇めに逃げたことを後悔させてやる)

黒蔵が捕まらなければ、逃がしてしまった叡肖自身も立場がまずくなるのだ。

>>27
「生き返らせる、と?ふーん。時期と場所が悪かったなー」

昔ならそれはできない相談ではなかったのだが、と衣蛸は思い返した。
水死してあの世には行かず、そのまま竜宮に仕えた人間もいた。
そして許可さえ得られれば、彼らはまた肉体を与えられ地上に戻ることもあったのだ。

(あの頃は地獄の沙汰も金次第、十王庁も腐ってたからなー)

その頃の話は確か「聊斎志異」に載ってるので、気になった人は読んでみよう。
今は閻魔翌様もガチガチに仕事に厳しくなっているので、生き返る人間は滅多にない…筈。

「で、ぼっちって何のことだ?」 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/05(木) 00:08:11.19 ID:rP2ZgbkBo<> >>27
「ななななんでもないじゃん」

ぶんぶんと首を振る。
危ない危ない。思わず言ってはいけない台詞を――

「自爆したッ!?」ガーン

それは友達いないって公言しているようなものじゃん……、
と四十萬陀がいたたまれなさに再び目を背ける。

>>28
「ええと、その……」

続けざまにぼっちを連呼されて、丑三は果たして大丈夫だろうか。
が、心配する前に、

「……罪人……」

少し前に、黒蔵と会ったばかりの時、その話を聞いたことがある。
だけれどちゃんと聞いたことはないし、
四十萬陀の知識としてあるのは、黒蔵の過去に何かがあったということだけだ。

(でも、こういうことは、ちゃんと黒蔵君から聞きたい)

犬御から居場所を突き止めて、黒蔵に会えたその時は、今度こそちゃんと聞こう。
四十萬陀はそう心に決めた。 <> 丑三夜中<><>2011/05/05(木) 00:18:10.38 ID:CNwI15GDO<> >>28
「最初に一回、反魂の術をしようとした時は殴って止めたんだがな、それだけじゃ足りなかったみたいだ」

たった一人の肉親が死んだ、本人にとっては大きいのだろうが、それだけで人はああもなれるのだろう
愛ってものは怖いな、と思いながら、気になった事を一つ呟いた

「気になるのは、あんな物をどっから手に入れたのかって事なんだよなー…」

あれ程の妖刀をどこでいつ手に入れたのか、どうやってその刀の力を知ったのだろうか
ただの嫌な予感、ですめばいいのだが…

「ぼっちじゃねえよ!![ピーーー]!」

そしてこの反応である、そこまで言われたくないのか
>>29
「くっそ…!ぼっちぼっち言いやがって!」
「俺だって霊感が無ければ友達くらい普通にできたやい!!」

彼は言う、自分がぼっちなのは霊感のせいだと
確かに彼の霊感は物凄く強く、普通ならば生活に支障を来す程の物、それを幼い頃から持っていれば避けられるのも無理はない
…が、本当に問題はそれだけと言えるのだろうか?とくに性格面を見て <> 叡肖<>sage<>2011/05/05(木) 00:32:37.91 ID:64af5ocfo<> >>30>>31

(…あの夜雀の反応は、まだそれを知らなかったということか)

確かに、想う相手に罪を告げられるほどの根性は、黒蔵にはなさそうだ。
衣蛸はあえて自分の口から言うのは避けた。
この夜雀が犬御と一緒に黒蔵を匿ってしまうようなことは、なんとしても避けたいのだ。

そして丑三に衣蛸は頷いた。

「殴られた程度で諦めが付くのなら、そもそも反魂の術なんか使わないだろうからな」

そこまで死人に執着するのなら、自分も後を追うほうが手っ取り早いのだ。

さらに両者の様子を総合して、衣蛸はぼっちについて判断を下す。

「なるほど、ぼっちとは丑三のことなのか」

いや違う。だがこの蛸のことだ、察した上でわざと取り違えている可能性もある。

「それなら霊感封じは試してみたことあるのか?」

丑三のことだから、既に試しているかもしれないが、衣蛸は尋ねてみた。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/05(木) 00:37:52.46 ID:rP2ZgbkBo<> >>30
「ごめんごめん」

必死に力説を始める丑三を宥めるように、四十萬陀が謝る。
本当に怒らせて滅せられたりしたらたまらない。

「大丈夫じゃん。丑三君の友達なら目の前にいるじゃん!」

えっへん、と四十萬陀が得意げに胸を張った。

>>31
「……そういえば、叡肖君と黒蔵君はどういう関係じゃん?」

四十萬陀は首を捻った。 <> 丑三夜中<><>2011/05/05(木) 00:47:11.82 ID:CNwI15GDO<> >>31
「それ以上言うな、言えばお前は瞬時に俺の酒のツマミとなっているだろう」

そこまでしてぼっちと言われたくないのか、先程嬉々として電話番号を交換した仲だと言うのに

「そんなもんが効いてりゃ今頃俺はお前らと話してはいないだろうな」

その口ぶりから、既に試しているのだろう
どうやら失敗している様子ではあるが

>>32
「え゛ー!?友達ー!?友達止まりなんだー!?」

七生が折角フォローしてくれたと言うのにこの男はふてぶてしい表情で詰め寄る、最低だ

「ま、嘘でも嬉しいけどね」

す、と無表情になり七生から離れて、飴の棒を捻る <> 叡肖<>sage<>2011/05/05(木) 00:52:57.19 ID:64af5ocfo<> >>32
「俺?あの蛇の…そうだな、仮の身元引受人兼監視役、かな。
 本来はミナクチがやる仕事なんだが、今あいつ神格侵されかけて動けないし」

実は窮奇の手で既に神格の破壊は免れているのだが、ミナクチよりも格上の蛇神、
ヤマタノオロチの巴津火によってその動きは封じられている。

「窮奇の討伐が済むまでの間は、俺があいつの上役みたいなもんだな」

討伐が済んだら鳴蛇として黒蔵は死罪になる筈だ。そこを貰って喰おうという魂胆は隠して
衣蛸はへらっと笑う。

>>33
「良かったな、ぼっちじゃないって証明して貰えたじゃないか」

ぱんぱん、と慰めるように丑三の肩を叩く衣蛸。

「喜んでもらえるなら嘘でもつこうかな。丑三。
 番号も交換したし俺もお前の友達だよ。はっはっは」

自分であっさり嘘と言い切る叡肖。
しかし友達という名の腐れ縁、がここから始まるのかも知れない。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/05(木) 01:00:44.90 ID:rP2ZgbkBo<> >>33
「うわっ!?」

ずかずか詰め寄ってくる丑三に驚いて数歩後退する。
丑三が離れた後、「何するじゃん!」と四十萬陀は文句をいいながらぶすっと頬を膨らませた。

「? 嘘でもって、丑三君と私って友達じゃなかったじゃん?」

四十萬陀が小首を傾げる。
確かに彼女の中で丑三は「変な人」に振り分けられているが、
何度かあって言葉を交わして、もう四十萬陀の中では十分に丑三は「友達」だった。

「まー別にいいけど。
 あ、友達が欲しいならうちの神社に来るといいじゃん! 変わりものの狐君がいるから」

四十萬陀が提案する。
対逢魔戦の時に織理陽弧が丑三と会っていることを、彼女は知らない。

>>34
「……つまり黒蔵君の上司ってことじゃん?」

よくわからない説明を頭の中でスキップして簡潔に纏める。
蛸の隠された魂胆は四十萬陀の知らぬところだ。 <> 丑三夜中<><>2011/05/05(木) 01:15:19.37 ID:CNwI15GDO<> >>34
「はっはっは嬉しいよ、お前が可愛い女の子だったらもっと嬉しかったんだけどなはっはっは」

渇いた…というか張り付いたような笑いで答える
何処か似ているような全く違うような二人の仲、果たしてこれからどうなるのか…いい予感はしない

>>35
「うたぐり深い性格なもんでな、本当にそう思ってくれてんならうれしーよ」

飴の棒を弄りながら言う丑三
余り嬉しそうに見えないその様子は、彼の戸惑いから来ている
それは単なる友達ができたことによる戸惑い、だけではなく、妖怪と人間と言う存在の違いから来るような物

「狐…狐かあ」
「そういやこないだ、犬御の知り合いらしき狐らしき奴がいたような…いなかったような…」

狐と聞いて、何かを思い出しそうになるも記憶に靄がかかっている
なんとも曖昧で、頼りない記憶能力である <> 叡肖<>sage<>2011/05/05(木) 01:18:56.05 ID:64af5ocfo<> >>35>>36
「そういうことー。
 だから、早いとこ行方不明の部下は保護しなくちゃいけないんだよねー」

衣蛸は部下思いのいい上司、な表情で四十萬陀に頷いてみせた。
そしてどこか、心当たりのある単語が転がってくる。

「変わりものの狐?」

確かあの時も狐が居たよな、と丑三のほうを見れば、なにやら思い出せず悩んでいる様子。

「あの時確か、提灯もった狐が居たよな?」

衣蛸には、その狐が丑三の背中に札らしきものを貼り付けていた記憶がある。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/05(木) 01:26:52.00 ID:rP2ZgbkBo<> >>36-37
「?」

人間性――主に脅威であるかないか、で関係を判断する四十萬陀は、
種族の違いに関してはドライな考え方を持っていた。
退魔士である丑三も最初こそ警戒していたが、今となっては「変な人」なだけで十分友人の域だ。

「……もしかしてそれ、こう、白い着物着た、短い金髪をぐしゃぐしゃ〜ってした人じゃなかったじゃん?」

そう言って二人に尋ねる。
東雲の知り合いで、丑三と会う機会のある狐といえば。
四十萬陀の知りうる中では彼しかいない。
というか提灯持っているという時点で、あの狐さんしかいない。 <> 丑三夜中<><>2011/05/05(木) 01:41:11.76 ID:CNwI15GDO<> >>37>>38
「あー、そいつだそいつ、だんだん思い出してきた」
「確か狐火とか出したり、札はったりしてた」

二人の問い掛けでようやく思い出してきたらしく、「そうそう」と話し出す

「あー、あいつかー!確かに犬御がどーの言ってた気がするけどあの時は考える暇なかったからなー!」
「…ん、って事は、犬御の代わりにあいつが来たって事だよな」

思い出す最中、そういえば、と思い付く
犬御は逢魔との対決の時に来るとかなんとか話していたが彼は来ず、代わりに犬御の知り合いの狐が来た
と言う事は、犬御は対決があるのは解っていたが何か理由があって自分じゃなく代わりをよこした事になる

「あれ?じゃあなんで犬御は自分じゃなく狐を俺の所に?」
<> 叡肖<>sage<>2011/05/05(木) 01:47:17.04 ID:64af5ocfo<> >>38
「んぁ、そいつだ。白い着物の尻尾3本の金毛の狐な」

この少女も犬御という男も、あの場に居合わせた狐の縁者か。
それならあの狐に蛇のことを聞いても良かったかもしれない。
無駄に時間を費やしてしまった、そう衣蛸は思った。

>>39
「確かその男、今は怪我人だってさっきその子が言ってただろ。
 きっと自分では動けなかったんじゃないか?」

話を聞くに、犬御と丑三とは既に知り合いらしい。
それなら丑三のほうからも犬御を辿って、蛇の居場所を探れるかもしれない。

(嘘でも友達って言っておいて良かったー) <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/05(木) 01:55:31.86 ID:rP2ZgbkBo<> >>39-40
「二人が織理陽弧君……あ、その狐君のことじゃん。その人といつ会ったのかは知らないけど……」

叡肖の言った言葉に同調するように、四十萬陀は頷く。

「犬御の代わりに織理陽弧君が来たのは、犬御が怪我してたからだと思うじゃん」

東雲は簡単に約束を破るような男ではない。
多少の怪我なら体を押してでも出向くはずだ。

「今、犬御大怪我負ってて、療養中なの」

腹に開けた二つの大きな穴。
とはいえ、無理は禁物だがもう歩けるほどには回復しているのが驚きだ。


「やば、もう行かなきゃ」

その東雲の看病も残っている。
四十萬陀は駆け足しだすと、くるんっと後ろを向いた。

「袂山に来れば織理陽弧君と犬御もいるから、いつでも待ってるじゃーんっ」

一回転し、再び走り出す。
そのまま四十萬陀の姿は見えなくなった。

//お先に落ちます。ありがとうございましたー <> 丑三夜中<><>2011/05/05(木) 02:06:12.05 ID:CNwI15GDO<> >>40>>41
「大怪我…か」

怪我で来れない代わりに他の妖怪をよこすという事はあの日の前日には怪我をして、手配していたと考えられる
そしてその怪我がまだ癒えていないとすれば、かなりの大怪我だ
犬御がどれ程の強さか、妖怪の治癒能力はどれくらいかは解らないが、その怪我を負わせた者はただ者ではないと見た

「…ただの喧嘩、じゃないな」

喧嘩でそんな大怪我を負うはずもない、何か理由があって戦ったのか
そして犬御の見た感じからして、何かを壊したり襲ったりするとは思えない、寧ろ逆?

「絡んでるなあ…」

七生を見送った後、小さく呟くとくつくつと笑う

「…んじゃ、俺も行くわ」
「互いに何かありゃ、情報よこす、な、じゃあ」

ふ、と思い立ったように叡肖に言うと、ふらりと風に吹かれたように歩いていく <> 叡肖<>sage<>2011/05/05(木) 02:13:15.96 ID:64af5ocfo<> >>41
「袂山か。そういや水占であの馬鹿の居場所、山って出てたんだよな」

犬御という男がまだ療養している間に、袂山を探ってみよう。
あの馬鹿なら、どこに隠れようがその妖気を完全に隠すことは出来まい。
そこまで考えて、はた、と叡肖はあることに気づく。

(袂山って、どこだ?)

>>42
「お前の知り合いが大怪我してるなら、見舞いとか行ったほうが良いんじゃないか?」

共闘を約束するほどの仲なのだ。
ある意味、叡肖よりも犬御は、丑三の近しい友達と言っても良いのではないか。
そう思って一応、丑三の背中に呼びかけては見る衣蛸。
しかし彼はもう行くつもりらしい。

(丑三が見舞いに行くのなら便乗しようと思ったんだが、まあいいか)

それならどこかで地図を手に入れねばなるまい。
よし、書店を探そう。
そう思って衣蛸も歩き始めた。 <> 平次郎狸<>sage<>2011/05/05(木) 19:44:19.54 ID:vxekXejRo<> 唐突に感じた悪寒。
それは実感できる形として頭に響き渡った。
初めて聞く女の声。それは姿は見えねどもおぞましいものだった。
戯けた口調で語られる謎のアナウンスは平次郎狸の堪忍袋に緒を簡単に引き千切った。

「こいつが……一連の騒動の下手人、窮奇……か」

頭に響きわたる声から感じ取る妖気にわいらが纏っていたものを感じた。

「あいつの言っていた女が窮奇……、なるほど話が見えてきたぜ」

何かを確信した平次郎狸は今一度、わいらと戦いを繰り広げた地へと向かうのだった。
今度は死闘になるとも確信しながら。 <> わいら<><>2011/05/05(木) 19:54:04.10 ID:xlrWKv/BP<> >>44

「・・・」

 件の逆巻くような巨大な妖気渦と共に、土くれの中から頭をもたげるわいら。
 その眼ははるか遠くに居る頃から・・・ずっと自然の摂理からはみ出した狸を見据えていた。

「・・・来たか」

 前回の決闘の後、窮奇の使い走りにされているとき以外。
 わいらは何度もこの場所で待ち伏せていた。

 何かを期待していたのか。
 何かを待っているのか。

 ゲコリ、と。地鳴りのような低い音で喉を鳴らすわいら。
 おのれの目前に歩いて来た平次郎を見下ろし、諭すように語りかける。

「あの女・・・窮奇は既に、百鬼の主となった。
 残念だが貴様の戦いも、貴様等小さき者共の幸せとやらもここまでのようだの・・・!」

 諦めたような、勝ち誇ったような、それで居て寂しくて、後ろめたそうな声。
 戦いは終り、ほぼ勝利といっていいのに・・・なぜこの大蝦蟇の眼はこんなにもギラギラと光っているのか。

「・・・相変わらず小さき者よ」 <> 平次郎狸<>sage<>2011/05/05(木) 20:10:57.07 ID:vxekXejRo<> >>45
居た。
予想と違わずそこに居た。
それがなんとも嬉しくて可笑しくて笑ってしまった。

「お前の言う通り俺は小さいなぁ。俺は今、あの女の勝手な宣言にイラつきながら来たんだぜ?その癖、お前が此処に居てくれて嬉しいんだ。なんだかなぁ……」

笑いながら最初は言うも最後はしみじみと言った。

「なんかさ……、そんなことはそうでもいい気がしてきたんだよ。たった今だけどさ。お前に会った途端、全てがどうでもよくなった」

そう言って微笑む僧形の狸。

「気付いてたんだよ、俺は。大悟してたんだ、俺は既に。ただただ心が曇っていただけだ。あの闘いの最中に一新したあの志。あれが全てだ」

――利他行――

穏やかな顔で語る狸だったが突如として、顔を引き締める。

「しかしッ! それを知った上で貴様に戦いを挑むッ!! 全てを救う我が志、貴様の上にも降り掛かると知れ! 救いを求めよ! 浄化されよ!
 色即是空、空即是空! 全ては空だ! 揺らぐ心に拘っちゃならねぇ!」

叫び終えると不動明王に化ける狸。最初から本気で行く覚悟が窺える。 <> わいら<><>2011/05/05(木) 20:33:41.71 ID:xlrWKv/BP<> >>46

「・・・そうか」

 煌々と輝く不動明王の姿に、目を細めるわいら。
 全てを救う・・・コイツじゃ無理だろうなぁ・・・、などと頭をよぎらせる。

 相変わらずの阿呆、相変わらずの戦闘狂、相変わらずの口ばかり。
 こちらの方の事など、なにも考えていない様子。

 ・・・だが、まぁわからないなら教えてやれば『良い』。
 自分にも相手にも言葉があるのだから。
 少なくとも、今はそう思う。

「お前が此処に居てくれて嬉しい」、そんな安っぽいたった一言で。
 あっさりと、肥大し意固地となった己の慢心を捨てる。
 こんなザマだから窮奇に引き込まれたのだろうなぁ・・・、などと懐かしそうに自嘲する。

「色即是空・・・相変わらず、大きいのは口だけだな平次郎よ!!」

 突如! 火山の噴火や、地震の如く!!
 地上に降り積もっていた妖気が大きく震えだした!!

「某を救うだと? 某に戦いを挑むだと? やってみろ子狸がぁ!!
 某は不幸で幸福を凌駕する風潮! 紫狂のわいらである!!」

 大地が唸る! 山が胎動する!!
 地盤を捻じ曲げる、飲み込むような大いなる大地の力!!!

「窮奇は某の最後の友人よ! 窮奇の願いは某の願い!!
 貴様ごときに覆されてなるものか!! 己の小ささを知れ、平次郎!!」


             【北越奇談・槍ヶ岳】!!


 以前と同じように! 地盤は螺旋と化してわいらを巻き込み!!
 巨大な岩盤の尖塔と化して平次郎を串刺すというよりも、叩き潰そうとする!!

 いや・・・以前とは明らかに違う!
 大きさは二回りも大きく! なにより岩盤が圧縮され、金剛の様な強度と化している!!

(避けもせぬだろう、潜ることも思いつかぬだろう! 山や大地と相撲を取るような・・・無謀さであっても!!) <> 平次郎狸<>sage<>2011/05/05(木) 20:55:25.07 ID:vxekXejRo<> >>47
――私を信じてはくれないか? 大言壮語に聞こえたとしても根本は変わらない――
――救いを、安らぎを――
――嘘もデタラメも真実も全て認めてしまえば苦しみは無くなる――
――信じてはくれないか?――

目の前に迫る山のような尖塔に怯まずに、滔々と語る。語り続けた。
いまや、それは己が体を潰さんとするその瞬間、
光が弾けた。
不動明王としての体自体を贄とし、その体自体を前方に向け、浄化の炎として爆散させたのだ。
しかし、いくらか勢いが落ちるも、未だにそれは脅威として残り続けている。

「あぁ、綺麗だ……」

目の前に迫る、それに向け一言。
己の体を削ろうとするそれにむけて呟きが零れた。
浄化の炎に包まれながらもまだ、この身に向かい続けるそれが美しく、愛おしくて堪らない。

「心は消え、魂は静まり、全ては此処にある。全ては空だ」

炎に蝕まれていた体が一瞬にして光球に包まれる。
それは結界だった。境界を作り上げ、また一瞬、小山の異様を推し留める。
しかし、それは防御の為ではなく、なにかを生み出す、子宮を彷彿とさせるものだった。
いまだ光球には攻撃が触れていないもののじわじわと包みつつある。 <> わいら<><>2011/05/05(木) 21:11:15.32 ID:xlrWKv/BP<> >>48

 浄化の焔との衝突、そして炸裂。
 爆音と共に岩盤は爆解するが、それにも劣らぬ勢いで迫り来る!

「・・・貴様を信じぬわけではない、認めぬわけではない。が!」

 尖塔は更に膨れ上がり!
 轟々と勢いを増して、平次郎を叩き潰そうとする!!

「某はそれでも貴様等を叩き潰したいのだ!
 思い上がり、捨て去り、忘却しようとする自然から逸脱した妖怪共をな!!」

 叶わぬ願いと解っている。
 自分はもう、時代遅れなのだということも理解している。
 それでも止めぬ理由にはならない、それでも鎮まる道理は無い。

 己は紫狂、不幸へと鼓舞する者共なのだから!

『どうせ時代遅れなら、どうせ無用の長物なら。一発ドカンとすごいことしよう!
 辺りに不幸ばら撒いて、気に入らないヤツを叩き潰して・・・派手に終ってやろうよ!!』

 窮奇がわいらを誘った言葉だった。
 目の前の者のように、ただ自由な妖怪が妬ましくて疎ましかった。


「・・・!?」

 いきなり手応えが変わったことに驚愕する。
 コレは何だ? 何だコレは!?

 大きくも小さくも、『良い』訳でも『悪い』訳でもない・・・訳のわからない状態だ!!
 ・・・知ったことか、叩き潰してやる!! <> 平次郎狸<>sage<>2011/05/05(木) 21:34:14.15 ID:vxekXejRo<> >>49
尖塔が結界に触れた、触れてしまった。
次の瞬間、先程の爆発とは比にならないほどの光が辺りを埋め尽くした。

――苦しみも辛さも全てはいい加減な幻――

光から姿を現したのは――

――貴方の思いも、私の思いも全ては空――

千手観音だった。坐した状態で前を見据えている。法具を持っているはずの手は徒手空拳だ。
その代わりしっかりと握られており、一つ一つが殴りかかれる状態になっている。
その威光は問答無用で、目の前の全てを救う力を持ってしまっている。
いかな煩悩も慈悲で救ってしまう境地に至っている。
その境地に平次郎狸は至ってしまったのだ。
しかし、物理法則までは曲げられぬ。
目の前のそれは胴を貫きつつあった。

――この痛むすら貴方の思い、その思いを救いたい――

観音はその手で山の尖塔を殴り始めた。
一つ一つが重く、浄化を促していく。

――あなたのその思いを浄化してみせる――

わいらの蓄積されてきた妬み、怨み、全てをその手で包み込む。
いくら窮奇に毒されたとしてもその思いはわいらの思い。
全てを認め、許し、受け入れる。
もはや、平次郎狸は妖怪という枠組みをはみ出し、違う次元、神仏と同じ境地に己が心を持っていってしまったのだ。 <> わいら<><>2011/05/05(木) 21:45:31.13 ID:xlrWKv/BP<> >>50

「!?」

 あまりの展開に唖然とするわいら。
 馬頭観音ではないのか、とかそういう考えもまったく浮かばない。

「いや、な・・・え? なんだと!?」

 尖塔が問答無用で無力化され、山崩れのような勢いで瓦解していく!
 ただの土くれへと戻り、山のようにふり積もっていくそれに・・・草芽が生えていく。

「ば・・・馬鹿な! いや、まだだ!!
 某には歪められたとはいえ! まだこの世に縛り付ける神格が・・・!?
 こんな時に限って!! そういえば忘れていたぞぉおおお!!」

 ボロボロと崩れていく神格の因子を身体で感じる。
 観音など出なくても、元よりこの一撃は・・・最後のあがきであることは覚悟していたはず。

「ぐ・・・あぁあああああああ! おのれぇええええええ!!」

 眩く、白く、優しい光に包まれ。
 浄化され、無力化し、魂が昇華していくわいら。
 ・・・まぁ、これだけ派手に逝けたのだから本望だろう。 <> 平次郎狸<>sage<>2011/05/05(木) 22:01:01.28 ID:vxekXejRo<> >>51
腹を串刺しにされることは阻止できたものの、妖気・体力共に酷使した平次郎狸に生命活動を維持できる力は残っていなかった。
狸の姿に戻り倒れ伏した平次郎狸の胴からは致死量の血が流れ出していた。
もはや物を言う気力すら残らず、思考も纏まらず消えるだけ。

(あ……、約…束………が)

いや、一つ思い残すことがあった。
ミナクチ様と交わした百鬼夜行の主となるあの約束である。
しかし、もはやその願いもこの身では叶いそうに無い。
ならばと思った平次郎狸は、消えそうになる魂と死に往く体を必死に造形し一つの形を作り出した。
それは金の球体であった。
仏性を宿し、浄化の力を持ったその球体は、然るべき人物の手に渡り、その者の思うが侭の形となってその人物を助けるだろう。
百鬼夜行の主になるという一念の元に。 <> ?<><>2011/05/05(木) 22:12:57.36 ID:xlrWKv/BP<>
 戦いの、犠牲の後の荒れ果てた地に。

 一匹のひき蛙がひょっこりと起き上がった。
 蛙は己の抱える最後の一念から、金の珠に少し目配らせし、水かきのついた前足でペチリと触れる。

 後は全てを忘却し、今居る場所に多少混乱しながらも。
 本能に従い水のにおいの流れてくる川辺へとのそのそ這っていく。



 なんだか長い長い冬眠だった気がするが・・・、
 今はただ来る春の喜びに身を震わせていた。 <> 丑三夜中<><>2011/05/06(金) 21:11:22.36 ID:NFx38Z3DO<> 何時しか、三度ここに来てしまった
最初は、馬鹿な友人を張り倒す為に
二回目は、見付からなかった忘れ物を探しに
そして、三度目は―――

「流石にないよな…いやでも気になる」
「多分無いだろうとは解っていてもあるかもしれないと気になる、そんな気持ちありません?」

誰もいない虚空に一人話し掛けるのは、何か気持ちを紛らわせる為か
崩れかけた、屋根も壁も無いも同然の廃寺に、また男は足を運んでいた

「…あったらいいなあ…マジでどうしよあれ」
「妖怪化はまだしも、変な奴に拾われてたりしないだろうな…」

口にくわえた飴の棒を上下に揺らしながら、彼は寺の広間に入った
無くなった天井から差し込む月の光が照らすのは、巨大な仏像と彼の姿、だけだろうか…? <> 窮奇<><>2011/05/06(金) 21:17:28.75 ID:fSuwneoZP<> >>54

「探し物はなんですか〜、見つけにくい物ですかぁ〜♪」

 その瞬間、天井から差し込む月明かりの梯子の向こうから。
 吐き気を催すような、気持ち悪いプレッシャーが流れ込む。

 しかし・・・今までとは明らかに違う。
 少しでも気を抜けば、その気持ち悪さに依存してしまいそうな・・・中毒的な魅力。

 ギシリギシリと朽ちた板戸を踏み鳴らしながら歩み寄ってくる何か。
 そのニタニタと笑った顔が、月明かりに照らされた。

「やっほー、おはこんにちばんはー! それより踊ったらどぉ?」

 まるで棒切れのように、白い刀を振り回しながら現れた邪悪。 <> 丑三夜中<><>2011/05/06(金) 21:32:34.36 ID:NFx38Z3DO<> >>55
「まーたお前か、ボスキャラみたいな登場しやがって」

歌と共に現れた窮奇を見付けると、その場で立ち止まる
のしかかるプレッシャーも嫌な雰囲気もものともせず(見えるように耐えて)、ニヤッと気持ち悪い笑みを見せた

「悪いがダンスはアニソンの物しか知らないんでな、それでいいなら踊るぞ?レパートリー全部、夜が明けるまで踊り狂うぞ?」

「まあ、冗談はともかくだ、俺に会いに来てくれたって事は何か用があるんだろ?」
「鼻糞ほじりながら聞いてやるよ、女神様」

余裕を見せ付けるように笑みを浮かべたまま、舐めきった態度で応対する
彼女の危険度はそれなりに解っているつもりだ、挑発はしても油断はしない <> 窮奇<><>2011/05/06(金) 21:54:56.51 ID:fSuwneoZP<> >>56

「ん? いや別に」

 ケロッ、とした態度であしらう窮奇。
 白い麻の天衣が妙に禍々しく感じる。

「それよりさぁ、ほらっ! これ君が探してた物だよ!!
 中身抜いたら、なぜか白くなっちゃったけど・・・正真正銘の妖刀・黄泉切りだよぉ!!」

 ポイッ、と。まるでおにぎりでも渡すように投げ渡す。
 くるくると回った白い刀は、板戸に突き刺さることも無く音を立てて転がる。

 切れ味が・・・完全になくなっている。
 棒切れのようにではなく、本当に棒切れになっていたのだ。

「すごい人だよねぇーー、キミにも見せたかったなぁ!!
 私がちょっと手助けしただけで・・・鬼の怨霊を逆に取り込んじゃうんだもん!!
 しかも腕という少ない質量に残された残留思念だけでねッ!!」

 ニタニタと、心を覗き込む逆心。
 その表情は・・・プレゼントの箱を空ける子供のように愉しそうだった。

「キミにとってボスキャラは、もう倒しちゃっただろう?
 まぁ、私に言わせると『はいはいハッピーエンド乙(笑)』って感じかな」

 両手を広げ、囁きかける。

「だから・・・エクストラステージを用意してあげたよ。
 “思念や媒体を元に妖怪作る術”・・・青行燈の見よう見真似だったから自信は無かったけど。
 案外できるもんだね! 劣化コピーならわりと簡単にさ!!」

 パチリと指を鳴らした。

「ご登場だよ、キミのダンスパートナーだ」

 病院患者のような格好をした男が現れた。全身を包帯やギプスで覆われている。
 だが闇の中でも、包帯越しでも解る。
 あの男だ妄執に燃えた・・・かつての親友だった。

 あの男だ。

「やぁ・・・。この前は世話になったなぁ、丑三ぅ」

 しかしその表情は。穏やかで、満たされていて・・・狂気的だった。 <> 丑三夜中<><>2011/05/06(金) 22:09:54.22 ID:NFx38Z3DO<> >>57
「成る程、つまり隠しボスか」
「ボス倒してイベント見たらやっぱりやり込まないといけないもんな、うん」

投げられた黄泉切りを右手で拾い上げ、左手の指で刃をなぞる
切れ味がなくなり等になまくらとなったそれは、指の皮を切ることすらしない

「その様子じゃ、お前が黒幕か、あいつに刀寄越したのも、あんな風にしたのも」

普通、こういう場合は憎しみを込めた目をするものだが、彼は違う
ただいつもの様に、寝不足でテンションがぶっ壊れかけた人間のような目を窮奇に向けている

「あー…」

「久しぶり、ひとし君だっけ?こないだ貸した二万まだ返して貰って無いんだけど」

思念や媒体を元に妖怪を作り出す、劣化コピー…偽物か、と見知ったそれをあしらう
<> 窮奇<><>2011/05/06(金) 22:24:27.02 ID:fSuwneoZP<> >>58

「ははは・・・酷いな。逢魔だよ、黄昏逢魔。
 まぁあんなことをした後じゃそりゃ当然か・・・」

 あの男は、少し落ち込んだように呟く。
 窮奇は更にニタニタと笑いかける。

「おいおい『悪い』ことはなんでも私のせいかよぉ!
 ホント、酷い偏見だよねぇーーー!!」

 気持ち悪さが、悪意が・・・更に伝播していく・・・。
 背後の仏像が、悟りを開いたような顔ではなく、気色の悪い笑みを浮かべていた。

「うん! まぁ、正真正銘の偽者だよ!
 おまけに少し不恰好になっちゃったけど・・・大事なのは心が篭ってるかだろ!?」

 あの男は丑三の前に歩み寄って口元の包帯をめくった。
 奇形児のように歪な唇である、おそらく歪なのは口だけではないのだろう。

「丑三、悪かったよ。本当にすまなかった。あの時の俺は・・・どうかしていた」

 そう・・・一番大事なのは心が篭っているか・・・。

「なぁ、やり直せないか? 前のように3人で笑い合える様な仲に戻れないか?
 あぁ、この身体じゃ・・・前のように、とはいかないかな」

 自重するように苦笑する。
 この男は・・・偽者でありながら、完全に同じ!
 残留思念を再構成し! それを元に作られた・・・黄昏逢魔そのものだった!!

 窮奇がニタニタニタニタと愉しそうに笑っている。
 エクストラを前に・・・彼がどう動くのか。 <> 丑三夜中<><>2011/05/06(金) 22:44:56.02 ID:NFx38Z3DO<> >>59
「…逢魔…お前…」

どんなに形が悪くても
例え偽物だったとしても
今目の前にいるのはたった一人の親友、黄昏逢魔そのものだ

あのムカつく女神が作り出した存在、だが、思念をかき集めて作られたそれは完璧なまでにそのまんま
声、雰囲気、記憶、すべてがあの男、何かが狂う前の友人
そんな物を前に、正気でいられるはずがない

「…俺は…!」

姿を直視出来ないとばかりに俯き、黄泉切りを持つ右手に痛いくらい力を込める
思いを飲み込もうとして歯を食いしばる、だが、耐えきれるはずもない
男は顔を上げ、友人の傀儡を見る、そして―――




「―――だっしゃおらあぁぁぁぁ!!!!」

思い切り、黄泉切りをぶん投げた

ヒット確認もせずに左手の中指を立てて相手二人に向ける

「前ッッッからてめーに言いたい事が山ほどあったんだよクソ優男がァァァッ!!!!」
「イケメン面の癖しやがってシスコンでいんじゃねーよドカス!!ぬぁーにが甘い物≠ヘ嫌いだからあげるだ!?日出ちゃんのは俺からも取るくらいに食ってた癖しやがって!!!」
「そのイケメン面も今となっちゃ顔面マグマダイバーかぁ!!?いい気味だっつーの!!」
「再開した時から言ってやりたかったが空気読んで言わないでやったのにノコノコ顔出しやがって[ピーーー]野郎!!黙って墓に埋まってやがれ!!!」
「この際だから埋める前に罵倒しまくってやる!!シスコン!変態!アホ!馬鹿![ピーーー]!五回[ピーーー]!!」

口から次いで流れ出るは罵詈雑言の雨霰、口から雨が飛び出さんばかりに唾を飛ばして罵りまくる
本気の憎しみを今になって込めたマジの罵倒、友人だから言わないでおいた文句をチャンスとばかりに乱射した


「……はぁ…はぁ…ちょ、休憩させて…」

その後、一気に話した反動で体力を消耗して息切れを起こす <> 窮奇 & 黄昏兄妹<><>2011/05/06(金) 23:09:40.87 ID:fSuwneoZP<> >>60

 思い出し始めた友人。
 狂ったまま、歪なまま、腐ったまま癒着していく心の傷口を・・・逆心の触手が嘗め回す。

「丑三・・・」

 ただ言葉が出せないまま・・・。
 静かに丑三へ歩み寄っていく。 

「うわっ!」

 いきなり投げつけられるナマクラを左手で受ける。
 度肝を抜かれ、そのまま尻餅をつく。
 投げかけられる罵詈雑言に、ただキョトンとしながらも・・・懐かしそうに笑い出す。

「はははははっ! 『悪い』『悪い』・・・そんなこともあったな! ・・・だが」

 目付きを鋭くし、ゆらりと立ち上がる。

「埋められるのはゴメンだね、せっかくやり直せそうなのにさ」

「なぁ、丑三・・・俺はな。もうどうだって『良い』んだ。
 前は妖怪を恨みもしたが・・・皮肉なことにそこの妖怪である窮奇に助けられてね。
 もう妖怪でも人間でも『良い』んだ。わかるか? もうお前と僕の戦いは終ったんだよ」

 語りだす、諭すように、頼み込むように・・・説得するように。

「もう本物でも偽者でもどっちでも『良い』、僕には日出さえいればもう何もいらない。
 憎くないし辛くない。なぁ丑三、僕達は死にたくないけどお前とも戦いたくないんだ。
 お前が僕と僕達を維持している窮奇さえ見逃してくれれば・・・、
 僕はもう2度とお前の前に現れないことだって認める。なぁ丑三、もう戦う必要なんてないだろう?」

 命乞いをするように、騙しこむように・・・・。
 その瞳には僅かな紫の光・・・。

「僕には日出さえいれば・・・それで『良い』んだ」

 その心は確かにまごうことなき本物。
 しかし・・・紫色の悪意に絡めとられ、どこか狂っていた。 <> 丑三夜中<><>2011/05/06(金) 23:27:48.77 ID:NFx38Z3DO<> >>61
「うん、うんうん、そうだな」
「確かにお前は日出ちゃん一筋だった、偽物だろうとそれは変わらないだろう」

うんうん、と頷きながら話を聞く
にしては頷くタイミングが早いというかなんというか、聞いていないのが丸解りで寧ろ隠そうともしていない

「よし解った、そういう事ならさっさと消えな」



「…なぁぁーんて言うかとでも思ってんのかぁぁあん!!?」

やはり、話も聞いていないし条件を飲み込もうともしない
背中から二本の木刀、左手には普通の木刀《柄楠狩刃》を、右手には白い木刀《煉切》を持つ

「お前の言い分なんか関係ねーんだよ、ていうか似せるならもっと上手く似せろ」
「あいつは昔っからプライドだけは高かった、お前みたいなヘタレた台詞は客はまだしも俺には言わねーよ」
「こんな劣化レプリカを見逃したとあっちゃ逢魔≠ノ祟られちまうからな、不良品は処分だ処分」

豪、と白い木刀が燃え上がり、木刀は真っ白い焔に包まれた刀となる
右手の刀の切っ先を、友人の傀儡に向けて言った

「曲がりなりにも逢魔≠セろ?それ相応の対応をしてみろよ」

そう言うと、相手の返答も待たずに飛び掛かり、左手の木刀で殴り掛かる
容赦等微塵も感じられない、どこまで似せていようと知った事かと力を込めた一撃だ <> 窮奇 & 黄昏兄妹<><>2011/05/06(金) 23:51:25.34 ID:fSuwneoZP<> >>62

「・・・!」

 いきなりの一撃、直後身を翻して飛びのく。
 その瞳は完全に紫濁した。

「ククク・・・プライドなんてだいぶ前に失ったよ。そうだね、僕はレプリカ。
 日出を慕う心とお前との他愛ない思い出以外・・・全部食われてしまった!!
 だけどな・・・それでも『良い』んだよ! いやそれでこそ黄昏兄妹なんだっ!!」

 両手で入院患者のような服を引き裂く。
 その胸中には・・・

「ぎゃ・・・はは・・・ぎゃはははははっ!!」

 記憶の中から再現された、黄昏日出の顔が埋め込まれていた!!
 腐った肉液を目や口から垂れ流している。

「僕は・・・日出さえ笑ってくれていれば!
 気持ちも真実も善悪も幸せも不幸もどうだって『良い』!!」

 バキリバキリと、骨格を変えていく・・・。
 物理的だけではない・・・存在すらも2つで1つにされていた!!

「さぁ、もう離さないよ・・・もう死なせはしないよ日出!
 丑三・・・、わかるだろ? 日出を傷つけるものは・・・お前でも許さない!!」

 腕が朽ちた翼へと変化していく。
 足が退化し・・・床から50cmほどの高さで浮翌遊し始める。
 背からは太く長い、2本の蛇の尾が伸びた。

 それは片翼しかない朽ち果てた2羽の、比翼の人面鳥だった。
 2羽はお互いに足りない翼の部分で癒着し合い、お互いに合わせて一対の翼にしている。

「見せてやるよ・・・これが僕達二人の力だ!!」
「ぎゃ・・・ははははははははッ!!」


=妖怪目録=
【以津真天 -いつまで- 】

 死者に集る人面の怪鳥、「いつまで、いつまで」と鳴くという。
 日本において“死”そのものを現す妖怪は鳥の姿をしていることが多い。


「送り火・デッドフレア!!」

 骨だけの翼をはためかせ、赫々に燃え上がる焔を撃ち出した!!
 その炎は烏のような形に変わり、滑空と旋回をして時間差で襲い掛かる!!
<> 丑三夜中<><>2011/05/07(土) 00:14:28.58 ID:WTK2qHzDO<> >>63
「…成る程、それがお前の真の姿か」

完全に化け物の化したかつての友人の姿
最早それは形すら人とは言えない、元にしただけの怪物だ

「ご丁寧に日出ちゃんの姿まで使っちゃって、本人は今頃ブチ切れてんじゃないか?」
「つーか、俺自身も流石にブチ切れだわこれ」

ガリッ、と固い音がして、続いて飴の棒を脇に吐き捨てる
怪物を見る目はとうに据わっていた

「なーにがそれでこそ黄昏兄妹だ、勝手にあいつらを語るな成りそこない」
「…つーかさあ」

迫り来る焔の烏をかわす事が難しいなら、受け止めるまで
必ず自分を狙っているのならば、武器を大雑把な方向に構えるだけでいい、それ程難しくはない
右手の刀で焔の烏を受け止める、交差させるように木刀で刀の背中を押して補助をする
流石に距離が近いためチリチリと体や主に手を熱気が襲う、しかしそれよりも熱く静かに燃える憤りがそれを感じさせない
そのまま受け止めた焔の烏を、地面にたたき付ける様に受け流した

「…もうちょっと姿も性格も似せたままやるべきだったな、窮奇」
「…久々にキレたぞ」

燃える床を跨いで、ゆらりゆらりと怪物へと歩む

不思議なのは、こんな状態ならば、普通はあるはずの物が殆ど感じられない所か
普通ならキレる以前に戦いでこれを出さない者はいない、しかし彼は極端にそれが薄い
殺意が殆ど無い、全く無≠フ敵意≠発して、歩いていく <> 窮奇 & 黄昏兄妹<><>2011/05/07(土) 00:24:30.76 ID:UddtX4gnP<> >>64

「・・・はぁ、つまんないなぁ。逆心解除」

 何かが飛び散るような音がした。
 何かがボタボタと、液状のものが飛び散る音がした。

 丑三の背後に、怪鳥の姿は既になく。
 ただ訳のわからない肉と妖気の塊が転がっていた。

「そーいうのは違うんだよねぇ・・・私が求めてるモノとさ。
 はいはい蛇足でごめんなさいね、ボーナスダンジョンはお仕舞い。お疲れ様でしたー」

 肉塊を踏みつけながら、窮奇は悠々と廃寺から出て行こうとしていた。 <> 丑三夜中<><>2011/05/07(土) 00:43:07.62 ID:WTK2qHzDO<> >>65
「……………」

据わった目で、崩れた肉塊を見ていた
去っていく窮奇も、体を向けるもただ何もせず見ていた

攻撃しようと思えば出来る、しかしそれはしない
心なしか解っているから
奴を倒すべきは自分では無いのだろうと、気付いていたから
男はただ、虚しくそこに立っていた <> 黄昏兄妹<><>2011/05/07(土) 01:00:27.13 ID:UddtX4gnP<> >>66

「グッ・・・はは、チクショウ。
 やっぱり・・・信用ならない女だったなぁ」

 生きていた・・・、いや。
 まだ死んでいないという方が正しいのか。

 ズタズタの身体を起き上がらせ、目を見開く逢魔に似ていた顔。
 
「日出・・・まだ、飛べるね?」
「・・・は、は」
「そうか、よかったよ・・・」

 ニッコリと笑った後。ギョロリ、と毀れた目玉が丑三を見る。
 その腐りきった視神経には・・・まるで出口を塞ぐ壁のように見えた。

「じゃあ、行くよ・・・どこまでも行けるから。いつまでも一緒だから!!」

 黄泉の炎が身体を覆った。
 燃え上がる、紅蓮の焔!!

「邪魔だよ・・・どけよ丑三!!」

 それはまるで・・・成りたくても成れなかったような。
 あこがれても、求め続けても・・・絶対に届かなかったような。


       【トワイライト・フェニックス】


 炎の鳥が、丑三を挟んだ出口へと突進した!! <> 丑三夜中<><>2011/05/07(土) 01:18:44.35 ID:WTK2qHzDO<> >>67
「逢魔…いや、違うか」
「…まあ、お前にとってはそうなんだろうな」

飛んで来る焔の塊に体を向けて、もう聞こえてはいないと思うが語りかける
このまま逃がしてももう長くは持たないだろう、だが

「もう頑張るな、お前はもう十分だ」

「真・煉切」

刀に燃える白い焔が、一段と強く、煌々と燃え上がる
まるで刀を延長させるが如く燃えるそれを、振り上げて

なんてこと無く、ただ偽物の怪物に振り下ろした
刀はその身で斬るのではなく、持ち主が悪と決めた物を焔で焼き切る
煉獄の焔で全ての罪を罰として焼き、地獄へと送らんと <> 黄昏兄妹<><>2011/05/07(土) 01:38:35.38 ID:UddtX4gnP<> >>68
『やぁ、おはこんにちばんわー!!』

『おめでとう、黄昏くん! キミは生き返ったんだよぉ!!』

『そうだよね! 死人が生き返って妖怪になることもあるのに・・・
 キミ達が生き返れないのは不公平だもんね!! それじゃあキミ達の名前は今日から“黄昏兄妹”だ!!』

『うん? ほら・・・居るだろう? キミの胸の中に!!』

『そう、少し不恰好だけど二人一緒だ! 嬉しいだろ? 嬉しいよね!!
 それじゃあ、ずっと生きたかったらさ・・・私を守ることだ。私の力で生き返ってるんだから、ね?』

『なぁに心配要らないさ! 二人一緒なら、なんだってできるはずだよぉ!!』



 白い炎は赫々と燃え上がる赤い炎を飲み込んだ。
 浄化と破壊で・・・消滅していく、妖怪・以津真天の身体。

「の・・・で、もう・・・はな・・・さ、ない」

 やがて骨の髄までに白い火が移り、辛うじて形を残していた妖気は霧散していく。

「・・・いつまでも・・・一緒・・・」

 おもちゃが壊れるように、絵本に火が移るように。
 ただ燃えて崩れ落ち、動かなくなってく。ただ風に消えていく。

 魂など、ありはしない。                           エクストラ
 この怪物は、ただバラバラになった残留思念を組み立てただけの追加品なのだから。

 文字通り、跡形も残さず。
 できの悪いおもちゃは、消滅した。 <> 丑三夜中<><>2011/05/07(土) 01:44:35.77 ID:WTK2qHzDO<> >>69
燃える白い焔が燃やす物が、元の形が無くなるまで見届ける
そのあと、刀から焔が消えて白い木刀に戻った
二本の木刀を背中に仕舞い、何処か顔を逸らす

「…後味が悪いな、全く」

そう呟くと、新しい飴を取り出し包み紙を開く
パクリと飴をくわえると、一瞬だけ悲しい偽物の残骸に目を向けてから立ち去った <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 21:45:10.57 ID:HYpK2xUXo<> 吾輩は陰摩羅鬼である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でギャーギャー鳴いていた事だけは記憶している。

冗談はさておき、陰摩羅鬼は電信柱の上で暇をしていた。
死体の無念の気から生まれる彼は基本的に供養を欲している。
しかし、今までこの町でせかせかと死体を捜して供養をしていた人物が居なくなってしまったため、
陰摩羅鬼のような存在が生まれて、成仏することが出来ないで居るのだ。
結局、彼はそのような人物が現れるまでのんべんだらりとこの町で過ごすと決めてしまった。

今日も今日とてやることも無く上から人の流れを眺めているのだった。
巨大な黒い鶴の異様は遠くからでもよく見え目立ってしまっている。 <> メリー<><>2011/05/07(土) 21:45:38.22 ID:7t+fO0Z90<> お昼が過ぎた、静かな時間帯のとある公園。

そこに一人の幼女が砂場で遊んでいる。

「できたんだよー!メリーの城なんだよー!!」
麦藁帽子をかぶって、白いワンピースを着た金髪の幼女が、元気いっぱいの笑顔で《出来上がった城》を眺めてる。

なんか本格的に小さなお城が砂場に出来上がっていた。

ょぅじょ すごい <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 21:54:12.89 ID:HYpK2xUXo<> 吾輩は陰摩羅鬼である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でギャーギャー鳴いていた事だけは記憶している。

冗談はさておき、陰摩羅鬼は空の上で暇そうにしたを眺めていた。
死体の無念の気から生まれる彼は基本的に供養を欲している。
しかし、今までこの町でせかせかと死体を捜して供養をしていた人物が居なくなってしまったため、
陰摩羅鬼のような存在が生まれて、成仏することが出来ないで居るのだ。
結局、彼はそのような人物が現れるまでのんべんだらりとこの町で過ごすと決めてしまった。

ふと、視界を掠める金の髪、その傍らにはクオリティーの高い城が見える。
なにやら人外の気も感じ取れたため、陰摩羅鬼は接近を試みるのだった。

「こんにちは、お嬢ちゃん。立派なお城だね」

幼女の目前に瞬間移動し、男のような、女のような、老人のような、若者のような捉えどころの無い不思議な声で語りかけた。 <> メリー<><>2011/05/07(土) 22:03:15.53 ID:3Y1zJSWu0<> >>73

「こんにちはなんだよー」
クルリと振り向き、元気一杯に答える幼女。

そして、なんか陰摩羅鬼を不思議そうに眺めて

「鳥さんなのー?」
キョトンと首を傾げた。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 22:09:50.89 ID:HYpK2xUXo<> >>74
「こんにちは」

背丈は幼女と同じ程で向かい合う形になった。
灯火の眼を一層強く灯らせて幼女を凝視する陰摩羅鬼。

「あぁ、私は鳥さんだよ。珍獣といってもいいかな。捕まえたら高く売れるだろうさ」

っくっくと笑いを溢す。いったいどこから笑い声が出るのだろうか。

「それはそうと、君もなんだか人と違うのかな? そんな年頃でこんな立派な物を作れるとは恐れ入るよ。天才かなにかかな?」 <> メリー<><>2011/05/07(土) 22:19:35.19 ID:DfvdtDA90<> >>75

「そうなんだー。けどメリーは売らないんだよー」エヘン
ない胸をはりながら、幼女は元気よく答える。

「メリーは妖怪なんだよー」
「えへへ。自慢の作品なんだよー。田中お兄ちゃんに作り方とコツ教えてもらったんだよー」
少し、自慢げで嬉しそうに話す。
とても可愛いらしい仕種だ。

「鳥さんも妖怪なんだよー?」 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 22:29:36.04 ID:HYpK2xUXo<> >>76
「売らないでいてくれるのか。ありがとう」

子供らしい純真な心に笑みが溢れた。

「君は妖怪さんか。そうかそうか、名前は……メリーちゃんだね」

まだ自己紹介もしていない相手の名前を呼ぶのは失礼だと思い、躊躇われたが結局呼ぶことに。
妙なところが紳士的だ。

「その田中お兄ちゃんはとても良い人のようだね。君のような良い子が慕う人なんだ。さぞかし好人物なんだろう」

灯火の眼を細めて言った。

「鳥さんも妖怪さんさ。幽霊と言ってもいいかもね。幽霊は怖いかい?」

優しげな灯火でメリーの眼を覗き込む。 <> メリー<><>2011/05/07(土) 22:43:42.89 ID:YD1thSBN0<> >>77

「そうなんだよー。メリーはメリーって言うんだよー」
「鳥さんはなんて名前なんだよー?」
キョトンと首を傾げ、貴方の名前を尋ねる。

「霊感なくってなんか変わってるけど、良い人なんだよー」
「………メリーは良い子じゃないんだよ…メリーが田中お兄ちゃんを殺そうとしたのに、田中お兄ちゃんはメリーの事を普通の人間だと思って叱ってくれて、メリーを家族みたいに受け入れてくれたんだよー」
「…本当にお人よしで優しいんだよー」
どこか悲しそうで、嬉しそうで、複雑そうな表情で話す。

「怖くないんだよー。鳥さんは優しそうな目をしてるんだよー」 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 22:51:53.13 ID:HYpK2xUXo<> >>78
「鳥さんの名前はまだ無いんだよ。名付けてくれる人がいなかったからね」

陰摩羅鬼の生まれを祝福し、歓迎し、名前をつけてくれる人など居るわけが無かった。

「不便なことが無いからね。きっと名無しのままでいいのさ」

結局一人で自己完結していた。

「自分が良い子では無いと、しっかり認識できているじゃないか。しかも、その眼から見るに自分の行いに後悔もしているんだろう?罪悪感もしっかり感じているようだし。君は良い子だよ。たとえそうじゃなかったとしても良い子になれるさ。それに私みたいな化け物の眼を優しいと言ってくれるんだ。悪い子な訳無いじゃないか」 <> メリー<><>2011/05/07(土) 23:04:54.66 ID:PD8rjJwZ0<> >>79

「田中お兄ちゃんや夜お姉ちゃんなら、名前考えてくれそうなんだよー」
「けどメリーには名前が思いつかないんだよー…」
しょんぼり(´・ω・`)としながら、そう答え

「鳥さんは名前なくって不便じゃないんだよー?」

「……鳥さん…」
驚いたように、陰摩羅鬼を見つめる。
けど、その後に花が咲いたような笑顔に変わり

「ありがとうなんだよー」
御礼をいった。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 23:15:36.32 ID:HYpK2xUXo<> >>80
「ありがとう、でもいいんだよ。私に名前は無くてもね」

名前とはその個体を識別するための呼称。そんなものをつけてしまうと陰摩羅鬼の存在が固定され成仏しにくくなってしまうだろう。
彼の本心は成仏にあるのだから、きっと名付けられるのは不本意な筈だ。
そんな益体の無いことを考えながらもメリーの笑みに釘付けにされる。

「どういたしまして。いやぁ、純真な子を見るとそれだけで供養された気分になれるよ」

心なしか体の色が薄くなっている気がする。
しかし、直ぐに元の状態に戻ってしまった。
これはこの町に渦巻く無念の気がそれだけ大きいことを現していた。 <> メリー<><>2011/05/07(土) 23:24:40.68 ID:rYs72KR70<> >>81

「そうなんだよー?」

「あわわわ!鳥さん消えちゃうのー?」
慌てたように身体の色が薄くなった陰摩羅鬼を見るが

「あれ?戻ったんだよ?」
再び元に戻った陰摩羅鬼を見て、幼女は首を傾げる。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 23:35:33.64 ID:HYpK2xUXo<> >>82
「あぁ、この体の変化かい? まぁ、これは仕方の無いものなのさ」

実際に成仏しかけたとか恥ずかしくて言えやしない。

「私の能力の一部とでも考えておくれ」

そう言うと前触れも無く公園内をあちらこちらと瞬間移動し始めた。
誤魔化す作戦に出たようだ。 <> メリー<><>2011/05/07(土) 23:46:24.44 ID:7t+fO0Z90<> >>83

「なるほどだよー」
納得しちゃった!!

「凄いんだよー」
「メリーもできるんだよー。けど電話やパソコンにしか移動はできないんだよー」

きゃっきゃっと楽しそうに、テレポートを見る。
首をあっちこっちに回し、無邪気に笑う。

そして、メリーの場合は電波や電線を通って移動する事ができるらしい。
《メリーさんの電話》から派生され新しく作られた噂―――《メールのメリーさん》で産まれた妖怪らしい能力だ。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/07(土) 23:54:41.95 ID:HYpK2xUXo<> >>84
「そうか、分かってくれたか」

冷や汗を掻きながらもまたもとの位置に戻る陰摩羅鬼。
顔には全く持って焦りを出さないのは流石だ。いや、読み取りにくいというのが正解だろう。
落ち着いた陰摩羅鬼はやっと冷静になってメリーの能力を分析してみた。

「君も出来るとはね。それに限定的ながらも凄い力じゃないか」

現代においてパソコンや電話への依存は大きい。
情報を扱うそれらを行き来できると言うのはとても脅威ではないのだろうか。 <> メリー<><>2011/05/08(日) 00:04:47.05 ID:d6s+I6OU0<> >>85

陰摩羅鬼の焦りなどに、まったく気付かず彼女はキラキラとした純粋な瞳で貴女を見つめる。

「そうなんだよー。けどこういう場所にはケータイ持ってる人がいないと移動できないんだよー」
ちょっと子供らしく、自慢げに話す。

「そろそろメリーは帰るんだよー」
「鳥さんはどうするんだよ?」

作ったお城を次の人が遊べるように崩しながら。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/08(日) 00:10:29.15 ID:hvLp8+Keo<> >>86
(なるほど……、制限もあるのか……)

何故だか能力の分析をしてしまう。きっと彼を形作った気の持ち主はそういった気性の人だったんだろう。
思考に深く陥りかけたが、メリーの声で引き戻された。

「あっ、あぁ、私もそろそろ帰るとするよ」

といっても帰る家は無いのだが。

「今日は私と話をしてくれてありがとう。とても楽しかったよ」 <> メリー<><>2011/05/08(日) 00:19:25.44 ID:wT5QFoXU0<> >>87

「メリーも楽しかったんだよー」
ニパーッと笑顔になり、テクテクと歩きだし、クルリと陰摩羅鬼の方を向き

「バイバイなんだよー」
元気よく別れの挨拶しながら幼女は去っていった。

/お疲れ様でしたー <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/08(日) 00:27:27.30 ID:hvLp8+Keo<> >>88
「あぁ、さようなら」

黒い鶴の怪鳥はそこに立ち尽くしながらメリーの姿が見えなくなるまで見送った。
姿が見えなくなると、大きく一回翼をはためかせ、瞬間移動をするのだった。

「この町は本当に興味深い。これ程に色濃く渦巻く死体の無念の気にも驚きだが、それ以上に此処に存在する妖怪達に驚きだ。きっと彼らがこの気の元凶なんだろうからな」

上空から町を見下ろして呟く。

「あぁ、この澱んだ気を祓い、私を、いや、私達を飛び立たせてくれる人が現れるのはいつなんだろうか……」

空を飛ぶ陰摩羅鬼の周りに大小様々な大きさの陰摩羅鬼が集まってくる。
それらは一つの固まりとなり、大きく膨らんだかと思うと次の瞬間には姿を消しているのだった。

/お疲れ様でしたー&ありがとうございましたー <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 21:00:49.68 ID:epUhkooDO<> 高い高い山の上、その天辺よりも更に高く、どう足掻こうと到底手の届かない場所からソイツは皆を見下ろしている―――
俺は子供の時に聞いたんだ、月の兎に会いに行った地の兎がいるって話―――
お伽話と誰もが笑う、だけどその兎がいるかどうかも誰も知らない、行けるかどうかも試してない―――
だったら、試してみなきゃ解らない―――



「―――ぬ、わ、あ、あああああああああああああああああああ!!!!!」

月が見下ろす夜の空から、白い何かが落ちてきた
地面にズドンと落ちたそれは、端から見れば空から降ってきたかのようでいて、そうではないけど落ちてきた
裸の上に白い長ランと鉄下駄と言う一昔前の番長スタイル、髪も白く、ズボンの黒と瞳の赤が一層に目立つ青年だ
彼は頭から落下した衝撃をものともせず立ち上がると、土をほろって空を見る
頭に生えた長い兎の耳が後ろにふわりと垂れて、彼は月を瞳に写して言った

「…もーちょい助走が必要か…」 <> クロコ<><>2011/05/09(月) 21:09:25.56 ID:JwQxAhjp0<> >>90

その近くを今日は一匹で散歩している犬が通り掛かる。
赤い首輪をつけ、茶色い毛並みの犬……いや、狼だ。だが犬。

鼻息をたてながら気分よさそうに散歩している。飼い主が今日は稽古にいって、幼女はパソコンを《探検》している。
だから、今日は気ままにゆっくり散歩。

その時、上から何かが落下してきて

「わう!?《ナンナンダ?インセキ カ?》わんわん!?」

犬は驚いたように、それを睨む。

「がうがう!!!《オイ!アブネエダロガ!?》ガルル!!」 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 21:17:11.74 ID:epUhkooDO<> >>91
ピクン、と耳が跳ねた

「あん?」

犬のようでいて、それなのに人の言葉を話す妖怪に彼は振り向く
メルヘンな耳に反して柄の悪い反応と目付きで、そこにいた犬の妖怪を見た
そして、彼は

「…っかしーな…確かに今人の声がしたはずなんだが…」

まさかこの犬が話す訳が無い、と、失礼極まりない反応を示した <> クロコ<><>2011/05/09(月) 21:28:54.01 ID:JwQxAhjp0<> >>92

プチッ!

犬から何かが切れる音が聞こえ、額にあおすじを浮かべている。

「………ガウ《オイ》………」
低くくぐもった鳴き声。
見れば、犬が獲物を睨むような眼でそちらを見上げ、鋭い牙を見せ

バキボキバキバキメキャッ!!
そんな生々しい音を立てて、犬の姿が人型に変化する。
尖った犬耳を生やし、茶色のロングヘアーで、尖った犬歯がチャームポイントの、赤い首輪をつけて着物を着た女性だ。

「何なめくさってんじゃぁぁあ!!!ゴラァァァァアッ!!!!」
貴方の襟首を掴もうとし、メンチを切ろうとする馬鹿犬。完全にチンピラだ… <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 21:42:03.70 ID:epUhkooDO<> >>93
また話し声がした、と思ったらなんと目の前の犬が生々しい音を立てて変化するではないか
流石に「うおっ」と声が漏れて驚いた表情を見せる

次いで息をつく間もなく襟首を捕まれ、耳が揺れた

「なんだてめー?いきなり何すんだよ?」

メンチを切られ、こちらも負けじと睨み返す <> クロコ<><>2011/05/09(月) 21:51:04.51 ID:ygj33M8s0<> >>94

「それは、こっちの台詞だろうがっ!?あっ!?」
メンチを切りながら、鋭く尖った犬歯を見せ、襟首を掴む力を強く握る。

「人が気持ち良く散歩してるのに、上から落ちくるんじゃねえよ!!ゴラァッ!!!下に人がいたらどうするんだ!!」
「周りをちゃんと確認にして落ちろやっ!!!!」
「んで!当たりそうになったのに詫び一つもいれねえのか?テメーは?あっ?」

………言い方は悪いが、なんか説教し始めました。 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 22:00:36.36 ID:epUhkooDO<> >>95
相手の説教に五月蝿いと言わんばかりに耳を塞ぐ
そのあとで、ばつが悪そう頭を掻きながら目を逸らして

「…今回こそは行けそうだったんだよ」

「俺だって落ちたくて落ちた訳じゃねーよ、もうちょっとで行けそうだったんだ」

ふん、とそっぽを向いたまま答える
これだけ聞いたとしても、事情が解らない者からすればちんぷんかんぷんな答えだ <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 22:01:00.91 ID:epUhkooDO<> >>95
相手の説教に五月蝿いと言わんばかりに耳を塞ぐ
そのあとで、ばつが悪そうに頭を掻きながら目を逸らして

「…今回こそは行けそうだったんだよ」

「俺だって落ちたくて落ちた訳じゃねーよ、もうちょっとで行けそうだったんだ」

ふん、とそっぽを向いたまま答える
これだけ聞いたとしても、事情が解らない者からすればちんぷんかんぷんな答えだ <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 22:01:51.60 ID:epUhkooDO<> >>95
相手の説教に五月蝿いと言わんばかりに耳を塞ぐ
そのあとで、ばつが悪そうに頭を掻きながら目を逸らして

「…今回こそは行けそうだったんだよ」

「俺だって落ちたくて落ちた訳じゃねーよ、もうちょっとで行けそうだったんだ」

ふん、とそっぽを向いたまま答える
これだけ聞いたとしても、事情が解らない者からすればちんぷんかんぷんな答えだ <> クロコ<><>2011/05/09(月) 22:09:08.18 ID:JwQxAhjp0<> >>96

「あっ?何処にいけそうだったんだ?」
「まずは詫びれよ!兎!」
「話はそれからだ!」
相手に目線を合わせようと、動き、襟首を掴んでる。

グルル…っと呻きながらまずは謝らせようとする。 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 22:15:37.87 ID:epUhkooDO<> >>99
「…うっせーな…当たらなかったんだからいいじゃねーか…」
「…あー、悪かった、これでいいか」

めんどくさい奴に絡まれた…と言う気持ちが見て取れるような独り言を発して
それから、耳を垂らして謝る

「どこに行きたかったなんて…そりゃ決まってんだろ」
「兎が行く所なんて一つだ、月に決まってんだろ」 <> クロコ<><>2011/05/09(月) 22:24:41.75 ID:ygj33M8s0<> >>100

「そういう問題じゃねえだろうがっ!」
「それでいいんだよっ!」
襟首を乱暴に離し、相手を鋭い眼で睨み、チッと舌打ちをする。

「月だぁっ?」
「テメーは玉兎か?」
ヤンキー座りをしながら、相手を睨むように見上げる。

玉兎――月に住むと言われる兎の妖怪の事である。または伝説の生き物。 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 22:35:40.80 ID:epUhkooDO<> >>101
「ああ、月だ」

襟首を正しながら答える
ちなみに襟はきっちりピンと立てている

「ちげーよ、俺は生まれも育ちもこの星だ」
「…昔、この星から月へ跳んだ兎がいるんだ、その兎と同じ事を、俺もしたい」

話を聞けば聞く程、信じられない話だ
地球から月へ跳ぶなんて全く持って有り得ない、彼はお伽話を信じる子供と同じくらい純粋なのかもしれない <> クロコ<><>2011/05/09(月) 22:44:12.02 ID:52QzdSGT0<> >>102

「なるほどな…」
その話を聞き、ピクリと犬耳を動かす。

「つまり月を目指す訳か……デケー夢じゃねえか!」
彼女は犬歯を見せるように笑いながら、立ち上がり、彼の背中を叩こうとする。

馬鹿にしてるわけじゃない…ただ単に彼を尊敬しそう笑う。 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 22:50:53.43 ID:epUhkooDO<> >>103
「ありがとよ、てめーも犬の癖にいい奴じゃねーか!」

相手に夢を応援され、すっかり気をよくした彼は相手の背中を叩き返す

「おい、お前名前は?」
「俺は満月、宇佐田満月ってんだ」

親指を立てて自分を指差しながら相手に名乗る <> クロコ<><>2011/05/09(月) 22:56:44.86 ID:EoZhzDK60<> >>104

「へっ!男はデケー夢を持つもんだろう」
楽しそうに笑い、機嫌良さそうにする。

「私はクロコ。真神のクロコだ」
「よろしくな!満月」 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 23:06:40.51 ID:epUhkooDO<> >>105
「クロコか、よろしくな!」

ニカッと笑い、自己紹介に答える

「なあクロコ、ここら辺にどっか高い場所知らないか?」
「高い場所から跳んだらもっと行きやすくなると思ってよ」 <> クロコ<><>2011/05/09(月) 23:12:53.06 ID:52QzdSGT0<> >>106

「高い場所か……山はどうだ?」
「この当たりは山があるしな!」

ビルとかよりは山の方が高く跳べるだろう。そう思いクロコは答えた。

「ところでよ…少し疑問があるんだが…息はどうするんだ?」
宇宙には酸素がない。なら月にいったら彼はどう息するのか?
彼女は疑問だった <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 23:28:30.00 ID:epUhkooDO<> >>107
「山か…ここいらの山は大体登り尽くしたしな…」
「そうだ!世界一高い山に登りゃいいのか!!」

ポン!と手を叩いてアイデアが浮かぶ、しかしそのアイデアは極端すぎやしないだろうか
これまでの言動等で解る人は解るだろう、こいつはアホだと

「息?んなもん行ってみねえとわかんねえだろ!」
「月に空気があるかもしれねえし、無かったらその時考える!頭の回転には自信があるからな!」

そしてちっとやそっとのアホではない、物凄いアホだ
別に彼はふざけたり冗談で言っている訳ではない、大まじめである <> クロコ<><>2011/05/09(月) 23:35:37.81 ID:xt4yLWYg0<> >>108

彼のその発言に彼女はツッコミを入れなかった。

何故なら……

「なるほどな!確かにそうだ!」
コイツは馬鹿だからだww

「なかったらなかったで、サッサッと帰ればいいしな」 <> 宇佐田 満月<><>2011/05/09(月) 23:53:22.66 ID:epUhkooDO<> >>109
「そうだろー?」
「あ、でも空気が無かったら月の兎はどうやって生きてんだろうな、宇宙服着てんのか?」

随分とアホらしい事について割と真剣に悩んでいる

「…ま、それも行ってみりゃ解る事か」
「そう考えたら次こそ行けそうな気がしてきたぜ、もっかいチャレンジだ!」

何故か解らないが気合いが沸いて来たようで、ザザッと土を蹴って走る構えをする

「じゃ、ちょっくら跳んでくるぜ!」
「月に行けたら土産たっぷり持って来てやんよ!じゃーなクロコ!達者でやれよ!」

右手を挙げて「じゃーな」と言うやいなや、雄叫びを挙げながら山の頂上の更に頂点へと走って行ってしまった <> クロコ<><>2011/05/10(火) 00:02:40.77 ID:0m3yKWZ70<> >>110

「妖力かなんかで補ってんじゃねえのか?」
首をキョトンと傾げ、こちらも真面目に考える馬鹿犬。

「おう!!頑張れよ!満月!」
「じゃあな!」
こちらも手を振り、彼を見送った。

/お疲れ様でしたー
/絡みありがとうございます <> 波山 & そこらへんの子供<><>2011/05/10(火) 20:31:20.41 ID:57Z+eoS1P<>
 初夏の近づきを示すような、少し暑い日より。
 モンシロチョウの舞う平和な公園、平日の午前8時故に人は少ない。
 ニワトリの叫び声が聞こえる。

「ガキこらぁああああ!! アイスよこせぇえッ!!」
「やだー、ニワトリは鳥の餌でも食ってろよー」
「ザけんな! あんなもん食えるかぁアアア!!」

 つい先日、猫にも負けた中級妖怪(笑)波山。
 今度は何をしているのかと思えば・・・

「テメェ! いい加減にしねぇとぽっぽ焼きにするぞぉおお!!」
「いやだって言ってるだろー! なんでお前にあげなきゃいけないんだよー。
 僕のおこずかいで買ったんだぞー!」

 近所の子供からアイスをカツアゲしようとしていた。
 ちなみにこの子供、霊能力者でも退魔師の一族というわけでもなく。
 ごくごく一般の、強いて言うならデュエルマスターズが好きな子供である。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/10(火) 20:40:41.27 ID:tGbAEh+ko<> >>112
黒い鶴のような体に灯火の眼を持つ怪鳥、陰摩羅鬼はいつものように空から町を見下ろしていた。
自分を成仏させてくれる人を探すための行為だが、いつしかそれはただの町の観察になっていた。

(なにか面白そうなことはないのだろうか?)

自分自身が異常な存在の癖にぬけぬけとそんなことを考えている。
その灯火の眼を一層灯らせ下を凝視すると、眼に映ったのは子供と鶏。

「こんな街中に鶏……。しかも子供となにやら言い争っているとは……」

これはおもしろそうだ。
そう判断した陰摩羅鬼は自分の体を構成する気を一端崩壊させ、公園の辺りに漂う無念の気で体を再構成した。
一瞬にしてその場に現れた怪鳥が諌言を発する。

「そこの鶏さん、いくらなんでも子供から菓子を奪おうとするのは大人気ないのでは……」

心なしか眼の灯火も呆れた風を醸し出している。 <> 波山 & そこらへんの子供<><>2011/05/10(火) 20:57:19.94 ID:57Z+eoS1P<> >>113

「うわっ! 増えた!!」

 いきなり妖怪二羽に挟まれるおガキ様。
 これがもしリバーシだったら、彼ももれなく妖怪化である。

「あん!? なんだとゴルァ!! なにモンだテメェ!!」

 ギロリと睨む波山。
 いや、眼球は動かせないから首ごと振り向くんだけどさ。
 しかし諌めるような、言葉を聞くとやっぱりメンチを切り出す。

「ニワトリだぁ!? テメェーー死臭が酷い分際で何様だーー!!」
「そうだそうだー、大人気ないぞーー」
「ガキ、テメェ!! どっちの味方だ!!」
「たぶんお前の敵だよ!?」
「なんだと見損なったぞ!!」
「リスペクトしてた相手からアイス取ろうとしてたのかよーー!」

 ギャースカギャースカ騒ぎ立ててるうちに、子供はハッと思い出したように駆け出す。

「あっ、ご飯の時間だ。じゃあ帰る」
「あっ! 待てコラーーー!! 朝飯あるならアイス置いてけぇええええ!!」

 しかしいくら子供の足とはいえ。
 人間以外の二足歩行の速度では追いつけるはずもなく、3歩歩いて諦める。

「コノヤローー!! 多分、というか絶対お前のせいだぞーーー!!」

 なにが誰のせいなのか。
 そんな疑問をマッハで置き去りにして、波山は陰摩羅鬼に拳大の鬼火を撃った。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/10(火) 21:10:44.21 ID:tGbAEh+ko<> >>114
「こわがらなくても良い。とって食べたりはしないから」

子供には優しく語り掛ける。やはり灯火は心情を反映するのか穏やかなオレンジだった。

「何者だ……と聞かれても。私は陰摩羅鬼。無念の気の集合体。この町で生まれたようだ」

自分でも一つ一つ思い出しながら語っていく。無念の気の持ち主の生前の常識を用い、自分の種族を類推している。
しかし、いいのだろうか?自分の記憶という確固とした物を持つときっと陰摩羅鬼は……

「し、死臭!? そんな……。ちゃんと毎日の水浴みは欠かさないのに……」

あんまりな発言にショックを受け、思考も止まり子供が去るのにも気付かない始末。やはりこの陰摩羅鬼、人間味が強すぎる。
それだけ無念の気が大きいということだとも読み取れてしまう。
それはともかく、何処か抜けてる陰摩羅鬼は鬼火の存在に気付くも手遅れの状態だった。

「あ、体を崩壊さ――――」

ポフンッという音を発生させながら陰摩羅鬼の頭が吹き飛んだ。回避が間に合わなかったらしい。
どうやら供養されて成仏するほかに、単純な方法として力尽くで陰摩羅鬼の存在を消すこともできるようだ。
頭が無くなった体はへにゃりと崩れ落ち、痙攣をしている。 <> 波山<><>2011/05/10(火) 21:22:52.23 ID:57Z+eoS1P<> >>115

「ぎゃはははははは!! ざまぁああああぁぁぁ・・・」

 ボトリ、と落ちる首無しの鳥。
 ピクピクと痙攣する死臭の身体。

「おぎゃあああああああああ!!!」

 腰を抜かして、震える翼で指を差す。
 いや、チキンだから既に腰は抜けてるけど。

「うわぁあああああ!! すまねぇええええええ!!
 まさかここまで安い妖怪だとは思わなかったんだよぉオオオオオ!!!」

 慌てて、首無しに近づく波山。
 あたふたあたふたと対応に困る。

「えぇっとたしか・・・! あっそうだ!!
 こういう時は人工呼吸と心臓マッサージだよな!!」

 翼で心臓の辺りを圧迫しては、離すを繰り返す。
 ちなみに素人は人工呼吸はせずに心臓マッサージだけしていたほうが成功率は高いらしいよ。

 そして15回繰り返し、いよいよ人工呼吸。
 波山の安っすいファーストキスが今・・・

「・・・頭、ねぇええええええええええええええええ!!!」

 それ以前にクチバシでどう人工呼吸するつもりだったんだ。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/10(火) 21:37:41.47 ID:tGbAEh+ko<> >>116
陰摩羅鬼の周りであたふたする波山を余所に、周囲を大小さまざまな大きさの怪鳥が集まってきた。
どこからともなく、一羽、二羽と飛んできたり、或いはふいに現れたりと方法は別だが、続々と数は増えている。
その一団は誰からと言う訳でもなく異様な鳴声で合唱を始めた。
それに共鳴するかのように陰摩羅鬼の体の震えは大きくなっている。
どんどんと震えは増大し、もはや爆発するのではないか――と危惧するほどの最高潮に達すると周りの怪鳥に変化が起きた。
一斉に宙に飛び出たのだ。
その一群は空高く飛び上がったかと思うと今度は陰摩羅鬼の体に向けて、加速をつけて、飛び込んできた。

はて?本来なら聞こえるはずの肉が飛び散る音がしない。
それもそのはず、地面にぶつかり弾ける筈の体が陰摩羅鬼の体と同化しているのだ。
どんどんと同化し、肥大し、黒い肉塊と化す陰摩羅鬼の体。
辺りの怪鳥全てが飛び込むとその肉塊は収縮し始め、どんどんと小さく纏まっていった。
後に残ったのは最初と変わらぬ陰摩羅鬼の姿。

「ふぅ……、酷い目にあった。死という感覚は何回味わっても慣れないものですね」

発言からすると、死んだものからできた身の癖に何度も死んだ経験があるようだ。

「あの子達がまた、私を助けてくれたようだ」

どうやら陰摩羅鬼という妖怪は個にして群らしい。一つの種がそのまま一つの妖怪なのだ。
この強い自我を持つ陰摩羅鬼をブレインのように思っているらしく、この町の全ての陰摩羅鬼はこの一体を中心とした群体のようになっている。 <> 波山<><>2011/05/10(火) 21:46:59.32 ID:57Z+eoS1P<> >>117

「うわぁああああ!! なんだよ、テメェ等!!
 仕返しに来たのか!? いいぞやれよこのヤローーー!!!」

 集まってくる鳥達にいきり立つ。
 しかしその後の行動と現象に・・・

「うぉッ!!・・・お?」

 どんどんと膨れ上がり、あっさりと復活を遂げた死鳥。
 ・・・なんだか無性に恥ずかしくて腹立って着たご様子。

「・・・ついでにもう一回死んで来いこのヤローーーー!!」

 一瞬だけあの巨大なニワトリに変化し、
 幻覚の巨大な火柱が陰摩羅鬼を飲み込む。
 妖気も熱もない、痛さと熱さだけの火柱である。

 直ぐに変化をといて、いつものニワトリに戻る。

「あぁ、なんか起こったら余計ハラ減った・・・帰ろうっと・・・」

 トコトコと公園の雑木林を抜け、山へと続く裏道へ帰っていった。 <> 陰摩羅鬼<>sage<>2011/05/10(火) 21:57:08.81 ID:tGbAEh+ko<> >>118
復活を遂げた後、体の調子を窺うように全身を動かしていたのだが、鶏の唐突な叫び声と共に火柱が身を覆い尽くした。

「あぁ! まずい! 死ぬ! 復活してそうそう死んでしまう! あつつつっ――――」

また死ぬのか――というのが思考が断線する前の最後の考えだった。
余りの身を焼く熱さと痛みにより気を失ってしまったのだ。
今度ばかりは仲間が集まる道理も無く、そのまま公園で放置され気絶したままの陰摩羅鬼だった。 <> 露希&黒龍<><>2011/05/11(水) 22:10:04.40 ID:AN6qdPMv0<> 「今日の夜ご飯、何を作ろうかな。黒龍は御要望ある?」

『そうだな…苺のミルフィーユ(わくわく)』

「それデザートだよ!!まぁ、いっかぁ。じゃあ材料探さなきゃね。」

制服姿の中学生程の女の子と高校生程の男性が歩いている。
忙しそうな零と黒龍が、珍しく家でご飯を食べると言うので繁華街に買いに来たのだ。 <> 夜行集団<><>2011/05/11(水) 22:18:09.89 ID:tRV6pA650<> >>120
そんな二人を街の中で見つけ、やれやれというように呆れながら歩いてくるホストは、
その今日はセットされていない銀髪の髪をぼさぼさと乱しながら牛乳を飲んでいた。

「おいおい・・・露希ちゃん
 俺は別にいいんだけどよ、もうちょっとあいつの馬鹿さ加減分かってやってくれっていう。
 その光景だけ見たらまたアイツトランスするだろ」

手に持たれた牛乳は、もはや都市伝説へと昇華されようかという謎の乳製品、
『美味しいフルーツ牛乳(果汁100%)』であった。 <> 露希&黒龍<><>2011/05/11(水) 22:29:19.39 ID:AN6qdPMv0<> >>121
「黒龍でも駄目ですか…。確かに人間化したの見たこと無いですしね。」

『(あの牛乳、なんで果汁が100パーセント!?もう牛乳じゃない気がするんだけど。)』

一人納得する中学生と、牛乳に興味を持ち始める高校生。

『虚冥さん、その牛乳なんですか?

フルーツジュースですよね、きっと?』 <> 虚冥<><>2011/05/11(水) 22:38:06.71 ID:tRV6pA650<> >>122
「妖気を探ればそりゃあいつも分かるだろうけどな?
 その前にキレて判断のしようもなくなるのがオチだろうなっていうwwwwww」

氷亜には露希に関する事でマジでキレる五秒前などと言う悠長なものは存在しない。
ただ1か0で飛び出してしまうほど、もう既にヤンデレの病気はヤンデレすらも超えつつあった。

「?
 当たり前だろフルーツ牛乳なんだから。果汁は100%だがな。」

気になるなら試してみるか?とすすめた虚冥の様子を見ると、
どうやらその言葉の矛盾には気づいていないらしい。もしかするともう既に気付いていて、と言う事もあるのだが。

「てかなんで突然その龍が変身できてんだ?」

最近の露希の身の上は知らない虚冥だから、彼にとっては変身できるのならなぜ最初にしなかったんだ?
という疑問が浮かんでしまった。 <> 露希&黒龍<><>2011/05/11(水) 22:53:27.88 ID:AN6qdPMv0<> >>123
「なんかボク、いけないことしちゃった気がします。

後で謝っておこう…。」

その通り。
露希が普通にしていればこうならなかった筈なのに。
ヤンデレへの引き金はこの魔王だ。

『や、フルーツ牛乳で果汁100パーセントって言うのがおかしいんですよ!!
牛乳なんですか?フルーツの絞りたてなんですか!?』

危険な物に不用意に手を出すのは危険だと知っている黒龍はそれを断った。

「あ、それ気になってた。白龍は薬の効果が影響したんだけど。」

『は…恥ずかしかったんだよ、人間の姿が///////

だっ、第一、龍が人間なんておかしいだろ/////

い、今だって露希とか番飯とかの為に人間になってる訳じゃないんだからな///////』 <> 虚冥<><>2011/05/11(水) 23:03:22.49 ID:tRV6pA650<> >>124
「そうだな・・・一応黒龍が人に化けれた、ってのは言っておいてやった方が皆の為だっていう。
 むしろこっちの方が謝らなくちゃいけねえ気がするけどな。
 うちの氷亜があんなかんじでスイマセン的な感じで」

少しばつが悪く、誤魔化すように苦笑いを浮かべた虚冥。
彼等も治せたなら治すのだが、今まで氷亜のあの感情が浮かんだ事が無かったので、
夜行集団も夜行集団で扱いに困っているというのが本音である。

「いやいや、フルーツの果汁を全部、つまり10割入ってる牛乳だろ。
 なに言ってんだ?大丈夫か?」

怪訝な顔で黒龍の顔を覗き込む虚冥に、むしろ心配されてしまった。
龍と言う稀有な存在ゆえにストレスが溜まっているのだろうと、虚冥はそっとしてあげる事にした。

「薬って・・・そんな青い狸みたいな事に・・・
 ていうか俺には人間になって初めてこいつがツンデレ属性なのに気付いたっていう」 <> 露希&黒龍<><>2011/05/11(水) 23:15:49.46 ID:AN6qdPMv0<> >>125
「そういえば氷亜さんってあんなに純粋でしたっけ?

ホストやってるからてっきり慣れてるのかなぁと。」

意外と気づかない物なのである。
彼女の癖に、彼氏の誕生日知らない的な感じで。

『ツンデレ!?』

「虚冥さんは黒龍のツンデレ見るのが初めてかぁ。ちょっと見てて。

黒龍って零のこと好きでしょ?」

『なっ、ばっ、そ、そんな訳ない!俺男だぞ!?』

「え、だって一緒に寝て『言うなー!!!』」

虚冥はこれをどう解釈するだろうか。
黒龍の意外な一面が明かされてしまった!! <> 虚冥<><>2011/05/11(水) 23:26:00.94 ID:tRV6pA650<> >>126
ポカンとしている露希の顔を見て、ああ、と思い出したように話し出す。
そういえば氷亜の精神面は話した事が無かったなと思いながら。

「そりゃあいつもプロのホストだから?もちろん女性の扱いには長けてるっていう。
 てかむしろあいつは雪男。雪女とかのやり方見ればどれだけ魅了に特化しているか分かるだろ?」

「おう、マジかっていう」

まさかの薔薇展開に虚冥は気持ち数歩下がる。
女性のたしなみとして水面下で暗躍していることは知っていたが、穂産姉妹もその方に学があったが、
実物を見ると流石に男の虚冥からするとやはりあれなのだ。

「まあ・・・生きてりゃ色々あるし?俺もとやかく言うつもりはないけど?
 で、どうなんだ?どこまで進んでるんだっていう?wwwwww」

そしていつもの悪ノリが始まった。 <> 露希&黒龍<><>2011/05/11(水) 23:37:24.10 ID:AN6qdPMv0<> >>127
「うんうん、魅了するのは得意なんだね。

で、それ以外がアレなんだ。」

携帯を取り出すと、それをメモして保存した。

『てかマジで違うから////////

虚冥さんも止めて…。』

「え?黒龍、何が違うの?普通に零が好『うわぁぁぁぁん!!』」

露希と虚冥に色々言われ、半べそかいてしまう。
もうちょっと責めると壊れてしまうので、一歩引くことにした。 <> 虚冥<><>2011/05/11(水) 23:46:18.61 ID:tRV6pA650<> >>128
「そうそう、むしろ得意だからこそ氷の心だったあいつにはちょうど良かったんだっていう」

うんうんと両手を組んで頷く。
にしても初めてにしてもあの暴走っプリはやばいよな、と空を見上げて笑う虚冥の顔には冷や汗。

「そこまで泣かいでもwwwwww」

限界に行った黒龍におもわず関西弁で突っ込んだ。
しかし今が引き際なのを察したのでそれ以上追求することはなかった。
それでも虚冥にとっては面白い話なので、また後日聞きだしてみようと心に決めていた。 <> 露希&零&黒白龍<><>2011/05/12(木) 00:04:47.09 ID:K48b776c0<> >>129
露希「そっか。氷亜さんの事大切にしなきゃ。」

にこっと笑うと、近づいてくるある気配に気づいた。

白龍「ああ、こんなとこに居た…。帰りが遅いから心配したんだよ。」
零 「虚冥さん、こんにちは。」
黒龍「零ォ、露希と虚冥さんがいぢめたぁぁぁ」
零 「黒龍っ…。いくら虚冥さんでも…黒龍を泣かせるなんて……

ホストの女性陣達に姫コンのことばらしますよ…?(ニコッ」

零は黒龍に溺愛…とまでは行かないかもしれないが好きなのである。
嫌な笑顔で話す零はちょっぴり怖いかもしれない。

露希「零も黒龍も五月蝿いよ!!虚冥さんごめんね、うるさくて…。

ボク帰ります、氷亜さんによろしく伝えてください。」

繁華街を後にして、四人は帰って行った。

/お疲れさまでした&ありがとうございましたー!! <> 虚冥<><>2011/05/12(木) 00:11:44.55 ID:cAutaPaM0<> >>130
ぞろぞろと登場してきた二人に虚冥は多勢に無勢で若干気押された。
そして零と黒龍のその会話を見ていると何も言う事はなかったが、
いやむしろこれが本物の薔薇なのかと、初めて見たその光景に言葉を失くしていて、
姫コンについてゆすってきた零にさんざ言われぱなしであった。

「お・・・おう、じゃあな!!」

しかし我に帰り、取ってつけたような感じで別れる虚冥。

/ありがとうございました <> 橘 美月<><>2011/05/12(木) 22:00:03.50 ID:aVDojJze0<> とある街の人通り少ない道。

「まったく、先輩の馬鹿…」
「私の趣味の邪魔をしたあげく、買い物にいかせるなんて…」
ブツブツ文句を言いながら歩いてる一人の影と三つの小さな影。

眼鏡をかけた、黒いショートヘアーの若い巫女。
それと三匹の黒い小鬼だ。

小鬼達はそれぞれ、野菜や魚が入った袋を持っている。

「はぁ…何処かにカワイイ男の子はいないかな?」 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/12(木) 22:03:57.97 ID:hVYP/aWko<> >>132
禁止されると余計にやりたくなる、というのは何も人間に限ったことではない。
蛇神の代理として預かった水沢城址公園の泉がずっと気掛かりだった黒蔵は、
近づくのを禁止されていたその泉へ、衣蛸の居ない今のうちに様子を見に行こうとしたのだった。

そして道中のその姿が、変態巫女の前をてけてけと横切ることになる。
巫女に黒蔵の妖気を感知する能力があるかどうかは、判らない。

目の前であの寝顔写真と同じ生き物が、今、現在進行形で起きて動いているのだ。
おそらく彼女にとってはそれだけで、行動を起すのに十分な理由となるだろう。 <> 黒児<><>2011/05/12(木) 22:10:42.90 ID:VzZ/vGDDO<> >>132
ガコン!と普段は聞き慣れないような音がして、見慣れないような事が巫女の目の前で起こった
なんと、目の前のマンホールがいきなり、中からの力で開かれるではないか

そこからずるずると鈍い動作で、深緑の何者かがはい出て来た

「……………」

薄汚れた深緑のレインコートを来た、暗い目の青年がマンホールを閉めながら辺りを見回す
青年の目が巫女の小鬼を捕らえた時、ぐうぅと腹が鳴った <> 橘 美月<><>2011/05/12(木) 22:23:14.72 ID:A3HLBZua0<> >>133

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

彼女の横を通りすぎた瞬間…感じるだろうか?
蛇に睨まれた蛙…はたまた、ライオンの群れの中にいるシマウマのような…この威圧感を……

ショタコン
魔 王の気配が…

「お持ち帰り〜〜〜☆」
いきなり、《変態》は《子供》にむかい、神速のようなスピードで抱き抱えようとするだろう。

もちろん…普通コレは犯罪だが……

あ…あの子カワイイ→よく見たら露希ちゃんが探してた子→なら誘拐していいよね?→答えは聞いてない


>>134

『なんだなんだ?』『妖怪だ。妖怪』『なにかようか?ようか?』
三匹の小鬼はザワザワとマンホールから現れた青年にざわめく。

だが腹からなった音を聞き、彼らは理解する。

『腹減ったのか?』『オイラたちマズイよ』『なら、やるか?食うか?』
マシンガンのごとき鬼達はしゃべると、右の小鬼がビニールから魚肉ソーセージを取り出すだろう。
そしてクロコに渡そうとする。 <> 橘 美月<><>2011/05/12(木) 22:29:15.42 ID:aVDojJze0<> >>135訂正
クロコ→黒児
です <> 黒蔵<>sage<>2011/05/12(木) 22:31:50.28 ID:hVYP/aWko<> >>134
「ん?」

黒蔵は立ち止まった。
普通は聞き慣れない筈のあの音に、黒蔵は聞き覚えがある。
黒蔵自身も時々逃げ込んだりひっそり移動するのに使う、地面の丸いあの蓋が動く音だ。

(何か出てきたー!?)

もしかして同属な気配?
否、爬虫類なのと何でも喰うのは同じだが、ついてる足が蛇足か、そうじゃないかが違う。

>>135
マンホールから現れた人物に気を取られ足を止めたので、
黒蔵はあっさりと巫女に追いつかれた。

「え?な?ちょっ…!?」

露希から寝顔写真が出回っていることなぞ知らない黒蔵は、
危ない気配を纏った見知らぬ人間にいきなりとっ捕まった。

(ええええ?えええええええええ?)

むにっと柔らかい感触に、しばしの思考停止。 <> 黒児<><>2011/05/12(木) 22:41:27.04 ID:VzZ/vGDDO<> >>135
「……………」

犬のおすわりのようなポーズで暫く小鬼達をじっと見詰める青年
喰うか喰うまいか、味よりも腹を満たす事を重点的に考える彼はとりあえず今、腹が猛烈に減っていた

「ッ!!」

そこで小鬼が餌なんて出すものだから、彼は目の色を変えて素早く動いた
次の瞬間には、口に小鬼から奪い取った青年が小鬼を挟んで先程の反対側にいた
>>137
「うめぇ…けど少ねぇ」

魚肉ソーセージをフィルムごともしゃもしゃ食べる青年が、おねショタな騒ぎに気付くのは数秒あってからだった

(…この臭い)

抱き着かれてうろたえる少年を見て、彼は何かを…

(…そっちの家、晩飯はカレーか)

感じ取った訳ではなかった <> 橘 美月<><>2011/05/12(木) 22:51:14.90 ID:mFcrQjZl0<> >>137

「カワイイよ!!この子カワイイ!!《実物》の方がカワイイよ!!」ハァハァハァ///
荒い息を立てながら、抱き抱えるように黒蔵をモフモフと触れ、胸を無意識に黒蔵の顔に押し付けてる。

……ああ、モテない男たちからモゲロと言われそうな状況だ。


>>138

『うわ!?』『速い!?はやっ!』『腕ある?腕ある!?』
余りのスピードに慌てながら、後ろを向く。

『どうする?』『どうしよう?』『どうした?』
そんな会話をしながら三匹の小鬼は会議をし始める?

「ところで、貴方はお腹空いてるの?」
《ショタ》をモフモフしながら《巫女》は、《鰐》を見るだろう。
その顔は普通に優しいお姉さんだが……… <> 黒蔵<>sage<>2011/05/12(木) 22:57:04.60 ID:hVYP/aWko<> >>137-138
「放せー!放せってばー!」

ふと我に返って、じたばたと暴れ始めるショタ。
その顔色からは、身の危険を感じたというよりも、
往来でおねーさまに抱きつかれ撫で回された羞恥心のほうが強かったことが伺える。

そしてこのショタ、結構見た目によらず力は強いのだ。
人間の巫女が黒児に気を取られた隙に、その手を振りほどくと走って逃げ始める。

しかし、その足は俊足ではなく蛇足!あまり早いわけではない。
ついでに持久力もあんまりない。
ちょっと前まで放置プレイとかされてたせいで、今はスタミナもろくに付いていない。

そして街並みの向こうには、こんもりと緑が見えている。

(あそこに逃げ込む!)

逃げ込むなら人家よりは森の中を選びたい。
その選択は妖怪にとっては普通だが、今回その選択は裏目にでる。

その緑は牛神神社周辺の森だった。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/12(木) 22:57:43.21 ID:hVYP/aWko<> //安価ミス、>>138-139でした。 <> 黒児<><>2011/05/12(木) 23:05:59.77 ID:VzZ/vGDDO<> >>139
「…足りね」

ペロリとソーセージを飲み込むと、慌てる小鬼達に目を向ける
興味と食欲と色々が混ざった、複雑に危険な目だ

「減ってるな、ゴミでも漁ろうとしてたんだが…」

>>140
「あ、逃げたぞ」

黒蔵が逃げた事を、興味なさそうに伝える
そんな事はいわれなくとも解るだろうが <> 橘 美月<><>2011/05/12(木) 23:20:44.11 ID:A3HLBZua0<> >>140

「あ!カワイイ男の子!!」
一瞬の隙をつかれ、逃げられる。
しまった…と思い、追いかけようとするが。
彼が逃げた先は、うちの周辺の森。

ニヤリと笑う巫女。

「さあ…《鬼》ごっこの始まりよ…ショタちゃん♪」
彼女は、袖から6匹の赤い小鬼を出すと、小鬼達が追いかけ始めるだろう。地の利をいかして、牛神神社まで誘導させようとするだろう。


>>142

『オイラ達まずくね?』『まだ、やりたいエロゲあるのに』『奇跡も魔法もないんだよ』
《鰐》にターゲットされた《小鬼達》はまずくね?まずくね?と相談している

「なら、ここから先に神社があるので来てください」
「そこならお供え用の肉や魚がありますから、《姫》なら多分分けてくれますよ」
どうしますか?と彼に聞くだろう。

もし彼が承認するなら神社に案内するだろう。

「それなら大丈夫。ふふふ……」
悪魔のごとき、悪い笑顔でそう言う。
ショタ関係がなければ普通のお姉さんなのに…このダメ巫女 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/12(木) 23:30:35.97 ID:hVYP/aWko<> >>142
(あの男も追っ手ー?!)

背後から聞こえた男の声に、うひぃぃぃぃぃぃ、と逃走速度をあげたショタ。
しかしそれは同時に、早くスタミナが尽きることを意味する。
背後の魔王の気配と、時折素早く飛び掛ってくる小鬼達に追い立てられて、
森の入り口に着いたときは人の姿を保っていられないほどバテていた。

人目に付かない所まで来ると、倒れこむようにショタは大蛇の姿となり森の奥へと逃げ込む。
蛇毒を含む妖気を隠すだけの気力も思考も、こんな状態ではありゃしない。

(やだ!もうやだ!)

半べその大蛇は森を抜けて、最初に目に付いた隠れ場所、社殿の床下へと潜り込もうとする。
しかし追いついてきた小鬼6匹が、そうはさせまいとその尾に取り付いて一斉に引っ張る。
床下の柱に巻きついた蛇と、6匹の小鬼との、力のせめぎ合いは膠着状態となった。

騒動と気配を察知して他の巫女たちが現れるのが先か、
魔王と3匹の手下が追いついてくるほうが先か、
それともその前に蛇が力を使い果たすのか、この先のルートは一体どれだ? <> 黒蔵<>sage<>2011/05/12(木) 23:35:12.17 ID:hVYP/aWko<> //安価ミス、>>142-143です。 <> 黒児<><>2011/05/12(木) 23:38:49.90 ID:VzZ/vGDDO<> >>143>>144
「……………」

ワイワイ相談する小鬼達を見て、何を思ったか不意に一番油断している小鬼をつまみ上げる

「あー、そこいきゃ飯食わせてくれんのか?なら行くわ」
「言っとくが俺、めちゃくちゃ喰うぞ」

摘んだ小鬼を見ながら、そこへ行こうと同意する

(…なんか知らんがご愁傷様)

追い掛けられる黒蔵の事を思って、深く意味は解らないが同情した <> 巫女軍団<><>2011/05/12(木) 23:55:39.28 ID:A3HLBZua0<> >>144

このまま彼は《魔王》の魔の手に落ちるのか…

否!!

天は彼を見捨てなかった…

巫女A「はぁ…アイツはなにやってんのよ…」
そんな溜息と共に、やってくる一人の巫女。
黒髪を後ろに結んだ、ワイルドな感じの巫女がやってくる。

『『『『『『!?』』』』』』
やべぇって顔をして6匹の小鬼は去っていくだろう。

巫女A「大丈夫かしら?あの馬鹿が何かしたみたいね…もしかして人間の姿は子供なのかしら?」
蛇にむかい、しゃがみ込みそういう巫女A。

しばらくすると、やべぇ…って顔をした巫女Bと黒児が見えるだろう。

>>146
『ぎゃぁぁぁあ!!』『『ジョンソォォォォォン!!!』』
一匹捕まり、残りニ匹が叫び声を上げる。すごい賑やかです。

巫女B「大丈夫。大丈夫」

そういいながら歩いてると

巫女B「……ちっ!先輩に邪魔された!!」
急に頭を抱え、しゃがみ込みダメ巫女。

だが、すぐに彼女は諦めたように神社にいくだろう。

しばらくすると、黒蔵と巫女Aの姿が見えるだろう <> 黒蔵<>sage<>2011/05/13(金) 00:04:28.91 ID:95rRRUPpo<> >>146-147
「ふぇぇぇ…もう駄目。力はいんない」

小鬼達からは救われたが、大蛇はヘトヘトで動けない。
巫女Aの呼びかけにも、情け無い声を返すばかりだ。

「出してぇ…」

巫女Aの顔色を伺いながら、恐る恐る近寄った小鬼達が丸太の如き大蛇を床下から引き出した。

全身が墨色の大蛇の背中に、赤い輝きが一つ張り付いている。
なにやら文字を記した木の葉のようにも見えるそれに好奇心を持ったのか、
一匹の小鬼が近づいて小さな爪で突っついた。
他の小鬼達も、何だ何だと集まってくる。

「それ触っちゃ駄目ぇぇぇ!!」

その赤いのは巴津火封じ、別名、別のショタが出るスイッチ。
巫女Aさんには、それが何やら神聖なものらしい、というのが判るかもしれないが、
剥がすかどうかは小鬼次第である。 <> 黒児<><>2011/05/13(金) 00:11:47.07 ID:XV5ZeFLDO<> >>147>>148
「……………」

巫女の後ろをついて歩く途中に、持ち上げた小鬼を観察
臭いを嗅いだりよく見たり、舐めたり、とにかく物凄くよく観察する

「…ん?どうした?」

急に頭を抱えた巫女を見て自分も立ち止まり、声をかける

「お、ついてるじゃねーか、早く行こうぜ」

しかし神社についてるのが解るやいなや、小鬼をポイと群れに投げ捨て歩いていく

「…なんだあのでかい蛇」

なんかいるでかい蛇(黒蔵)を見た感想:腹一杯になりそう
もしかしたらこれが件の食い物かも、と考えると、思わずよだれがでる <> 巫女軍団<><>2011/05/13(金) 00:26:33.42 ID:WzpFmTC40<> >>148
巫女A「……ったく!オイテメーら!止まれよ。余計な事したら風通しをよくしてやるからよ」
ドスの聞いた声で拳銃を小鬼たちに向ける。

明らかに、何か神聖なモノを感じるソレを剥がそうとする小鬼達を止めようとする。

小鬼達は慌てながら、お供えモノを持ってくる作業に戻るだろう。

巫女A「……っで、美月…弁明あるか?」チャカッ
巫女B「ちょちょちょ!!待ってください!私は露希ちゃんから頼まれて彼を保護しにきただけですよ!!!」ダラダラダラダラ
銃を向けられ、冷や汗を流しながら弁明し始めるだろう。
果たして黒蔵は露希の名前に反応するか?

>>149

匂いを嗅いでみるとわかるが、どうやら式神みたいなモノらしい。味はそれほど美味しくないかも

巫女B「なんでもない…」
巫女B「あの蛇は違うよ?さっきのショタっ子だよ」
妖気で判断してるのか彼女はそう言うと、小鬼6匹に命令し、お供え用のモノをもってくるだろう。

大きな魚などの海の幸。焼き豚や鳥の丸焼き。果物の山。
と次々と黒児の前に持ってくるだろう。

ついでに《姫》は小鬼達から事情をきいてすぐOKをだしたようだ。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/13(金) 00:37:18.44 ID:95rRRUPpo<> >>149
空腹な妖怪にとっては、この蛇は物凄く美味しそうな匂いがする。
これまで食べた妖怪の妖気をしこたま詰め込み、かつ毒牙も抜かれて丁度食べ易くなっている。
今なら神格一個とさらに半分がその中にある。
これが目の前で動けないでいるのに、食べちゃいけないなんてちょっと残念な話でもある。
しかし目の前には食べていい物もあるのだ。黒児はどうするだろう?

>>150
「え?露希と知り合いなの?手回しが早すぎるよ…」

泉にこっそり戻ろうとしたのを見つかったのだと思っている大蛇は、がっくりとうな垂れる。

「判ったよ。今日は大人しく帰る」

少し休んで疲れが取れると、大蛇はまたショタの姿に化けたが、
帰り道を歩けるようになるにはもう少し時間が必要そうだ。

「でも、もうちょっと休ませて」

化けただけで身体が既に重く、黒蔵は大の字でひっくり返った。 <> 黒児<><>2011/05/13(金) 00:49:55.73 ID:XV5ZeFLDO<> >>150
「ショタ…ああ、さっきのガキか」
「あんなでかい蛇になれるなんてなー…大分身が詰まってそうだな」

料理を運ばれた端から食いまくりながら話す、なんとも行儀が悪い

「なあ、そのさっきから言ってる姫って誰だよ?」

>>151
「んー…」
(なんか自棄に美味そうなんだよな…)

食欲の本能か黒蔵の美味さに気付いたようだ
かと言って今は食いつくつもりもなく、目の前の料理をひたすら食いまくる

「おい、お前も食うか?」

更に自分の物でもないのにいっちょ前に食わせてやる発言 <> 巫女軍団<><>2011/05/13(金) 00:59:36.54 ID:bBeVkni80<> >>151
巫女B「ふふふ…彼女とは同士だからね」
《魔王》の気配を出しながら、怪しげな笑みをする。

そしてショタになり倒れた黒蔵に向かいルパンダイヴを……
巫女A「おっと…そこまでな」チャカッ
巫女B「……イエッサー」
銃を突き付けられできなかった。

>>152

巫女A「ここの神社に奉られてる神の役割を持ってる妖怪よ」
代わりに答えるは、ワイルドな巫女さん。

巫女B「一般的にわかりやすくいうなら《牛鬼》。少し難しく言うなら《牛御前》よ」

姫「そうそう。簡単に言うと《毒の塊》ね」
AB「!?」
いつの間にか、長い黒髪に、クマさんのバジャマを着たおしとやかそうな女性がいるだろう。

牛御前――顔が鬼で、牛の角が生えた人から産まれた妖怪。巨大な牛鬼に変化でき、猛毒を身体から放つ凶悪な妖怪だ。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/13(金) 01:04:05.58 ID:95rRRUPpo<> >>152-153
「うん、喰う」

そう答えて、黒児の傍にルパンダイヴから逃れた美味そうな妖怪が近寄ってきた。
魚をぺろりと飲み込んでいるが、一匹丸ごとでいけるのはやはり蛇だからだろうか。
黒児のほうがしっかり噛んでいる分、身体には良さそうな食べ方である。

「姫?牛御前?」

丸呑み派は呑み込んでからじゃないと喋れないので、
黒児のように頬張ったまま喋ることにはならないようだ。

「毒なら俺も持ってる。だからかな、俺、毒は食っても平気だ。姫さんもそうなの?」

こちらも毒は持っていても、それを扱うための毒牙はもう無いのだが。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 21:47:59.90 ID:CN4mubwTo<> 人気のない白昼の公園に一人、少女が佇んでいた。
真っ黒いセーラー服に黒曜石のような瞳。
けれどあどけない風貌はヒトを化かす為のもの。その正体はヒトを夜に惑わせる夜雀、
なのだが。

「ぽっぽっぽー、はとっぽっぽー、ま〜めがほっしいっか♪」

上機嫌に童話を口ずさみながら、鳩餌の袋をがさごそ言わせるその姿は、
全くそんな妖怪には見えない。

四十萬陀は袋を開けると、足元でくるっくーくるっくーと鳴く鳩に餌をやるかと思いきや。
……鳩餌を自分で食べ始めた。

「や〜らな〜いじゃん」モグモグ

四十萬陀も雀なのであった。 <> 露希<><>2011/05/13(金) 21:57:57.12 ID:xydZdrtq0<> 「わぁ、酷い☆」

にこにこしながら現れたのは白い制服の少女。

「久しぶり、七生ちゃん!!」

元気良くあいさつすると、近くのベンチへ腰かけた。
そして鞄の中から煎餅を取りだした。

「しょっぱい物美味しいよ。一緒にどう?」もぐもぐ <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 22:05:06.63 ID:CN4mubwTo<> >>156
「ろきくん」モグモグ・・・ゴクン「久しぶりじゃん!」

口に含んだものを飲み込むと、手の中で余った鳩餌を適当にばら撒いた。
足元の鳩たちが我先にと餌を突きはじめる。
袋の口を閉じてから、露希の隣に腰掛けた。

「元気してた? あ、煎餅じゃん!」

欲しい欲しいー、と目を輝かせる。 <> 露希<><>2011/05/13(金) 22:13:08.01 ID:xydZdrtq0<> >>157
「たくさんあるから遠慮しないでね〜。」

と言って袋を渡す。
鳩がバタバタとしてる中、露希はため息をついた。

「ええとね、元気だったんだけど…」

黒蔵の失踪事件、蟲に巻き込まれる、氷亜がトランスする…etc
考えただけで再びため息が漏れる。

「はぁ…」

そう言うと頭を七生の方へごろんとする。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 22:21:31.79 ID:CN4mubwTo<> >>158
「ありがとじゃん♪」

渡された袋の中から煎餅を一枚拝借し、かりっと一口噛む。
鳩餌も美味しいけれど、人の焼き菓子も捨てがたい。
頬を緩ませながら煎餅を噛み砕いていると、露希が溜め息をついた。

「?」

四十萬陀が首を傾げると、再び溜め息が落ちる。
頭をこちらに寄せてきた露希に「わわっ」と慌てるが、
すぐに心配そうに眉を下げて尋ねた。

「何があったじゃん?」 <> 露希<><>2011/05/13(金) 22:29:36.36 ID:xydZdrtq0<> >>159
「黒蔵君のことなんだけどね。

訳ありで一緒に住んでたんだ。でも黒蔵君が急に居なくなちゃって…。

あ、でも見つかったんだよ。
ただ叡肖さんに頼まれたのに約束を守れなくて、情けないなぁって。」

露希があんなことやこんなことをしてなければ、こうならなかったはず。
煎餅を食べる手が止まり、落ち込む。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 22:41:23.81 ID:CN4mubwTo<> >>160
ピシッ

露希のよりかかる少女の体が、一瞬石化した。

「………………………そ、そうなんだー」

完全に棒読みである。
だらだらだらだらだらだら。
四十萬陀の全身から汗が噴き出し始めた。

急に居なくなった、というのはアレだ。東雲が縛っていたことだろう。
露希の言う通りそれは解決した、の、だが。

(いいい一緒に住んでたってどーいうことじゃん……??
 いや!! 露希君も訳ありって言ってるし!! 決してあんなことやそんなことをしてる訳じゃないんだろーけど!!)

とはいえ、落ち込む露希を質問責めにすることなどできない。
四十萬陀は大きく深呼吸をすると、露希の頭をぽんぽんと撫でた。

「た、大変だったね……。大丈夫じゃん、露希君は情けなくなんかないじゃん」

実際、黒蔵が急に居なくなったことに関しては、露希単身でどうこうできることではなかった訳だし。
という思いを込めながら、露希を慰める。 <> 露希<><>2011/05/13(金) 22:48:32.39 ID:xydZdrtq0<> >>161
「う…ん…。

あっ、そうだ。七生ちゃん、黒蔵君と住んでみたら?

白龍が叡肖さんに会いに行く予定だからその時に話しておくけど…。どうする?(ニヤニヤ)」

黒蔵と七生に何があったかは全く知らないが、二人には結ばれてほしいのだ。
(犬御君ごめんなさい。)
それに、黒蔵にとっても七生にとっても+になると思ったからだ。 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 22:58:57.90 ID:CN4mubwTo<> >>162
「そーそー、落ち込んでちゃ可愛い顔が台無し――

 ってえぇえ!!? ……ええぇ!?」

驚いて裏返って喉から飛び出した声に、自分で愕いた。
突然の提案の意味を、数秒のタイムロスを持って頭が理解していく。
それと並行して、だんだんと四十萬陀の顔が林檎のように赤くなっていく。

(そ、それって「あっ、そうだ」で言い出すようなことじゃん!!??)

招き猫のように持ち上げた両手が虚空を掻く。
少し経って落ち着いたのか、四十萬陀は両手を膝に落として、

「ダメだよ。私には、袂山の仲間がいるじゃん」

冷静に露希に言った。 <> 露希<><>2011/05/13(金) 23:05:20.08 ID:xydZdrtq0<> >>163
「どしたの!?」

急に驚かれたためか、こちらも少し驚く。
そして、表情を見る限り黒蔵が好きと言うことはばればれである。
ちなみに露希、フェイント(?)が得意(!?)である。

「で、でも黒蔵君をその仲間だと思うのは…?

きっと黒蔵君、喜ぶと思うよ?」 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 23:18:07.95 ID:CN4mubwTo<> >>164
露希からの誘いに対して、
四十萬陀はゆっくりとかぶりを振った。

「私の中で、袂山の仲間は何よりも大切じゃん」

彼らは全員で一匹。
弱い下等妖怪であるからこそ、家族より強い絆で結ばれているのだ。

(……でも同じくらい黒蔵君も大切だから、私には選べない)

「だから離れるなんてできないよ。せっかくだけど、ごめんね、露希君」

四十萬陀は困ったような笑顔で、そう答えた。 <> 露希<><>2011/05/13(金) 23:27:14.01 ID:xydZdrtq0<> >>165
「ううん、大丈夫。
七生ちゃんは本当に仲間のことを強く思ってるんだね。

七生ちゃんのそんなところ、ボクは凄く好きだよ。」

(仲間―瞳は元気にやってるのかな…?)

にっこりと笑い、再び煎餅を食べ始めた。

「袂山の妖怪達は元気?」 <> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 23:32:45.88 ID:CN4mubwTo<> >>166
「にゃははー、そう言われると照れるじゃーん」

けらけらとおどけたように笑い、
煎餅の袋から二枚目を拝借する。
がりっと噛み砕き、露希の方に目を移した。

「相も変わらず元気じゃん!
 えーっと、露希君は皆に会ったことあったっけ?」

和戌姉妹、翠狼に狢奈、送り雀コンビ……。
袂山に住まう送り妖怪の種類は様々だ。 <> 露希<><>2011/05/13(金) 23:45:55.51 ID:xydZdrtq0<> >>167
「翠狼君には会ったけど、他の皆には会ったこと無いないかも…。」

露希にとって、彼の印象はとても濃い。
理由としては子づく(ry
それが軽くトラウマになってたりなってなかったり…。

「黒龍から袂山の子達の話はよく聞くんだよ。

皆、優しい子だってね。」

<> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/13(金) 23:54:17.64 ID:CN4mubwTo<> >>168
「あ、そうだね。翠狼とは会ったことあったね」

あのときは四十萬陀も一緒に居たのだった。
他の仲間たちにも近々会わせたいな、とくすくす笑う。

「黒龍君はよく遊びに来てくれるじゃん。
 狢奈がすっごく黒龍君のこと気に入ってて、よく話聞くじゃん〜。
 露希君もまた袂山においでよ」 <> 露希<><>2011/05/14(土) 00:04:02.73 ID:eybUSoSi0<> >>169
「え、あの黒龍が!?

(だからあんなにてれてれしてたおかぁ。)」

一人で腕を組み、納得している。

「うん、白龍と一緒に行くね。
その時はよろしく〜。」

<> 四十萬陀 七生<>sage<>2011/05/14(土) 00:13:07.31 ID:rylhXgsno<> >>170
「んっ、歓迎するじゃん!」

四十萬陀はひょいっと立ち上がると、煎餅の最期の一欠けらを噛み砕いた。
鳩餌を再び取り出し、適当に地面にまく。

「それじゃ、私そろそろ戻るじゃん。
 またねー露希君!」

ぶんぶんと手を振り、四十萬陀は公園から足早に去っていった。 <> 露希<><>2011/05/14(土) 00:19:45.47 ID:eybUSoSi0<> 「ありがとう!!

七生ちゃんもまたね♪」

彼女の元気そうなところを見れてとても安心できた。
これなら心おきなく遊びに行けるだろう。

お茶を一口飲むと、手を振って七生を見送った。

<> セツコ<><>2011/05/14(土) 22:08:36.35 ID:tnUKuEff0<> とある街中。
夕方の商店街にて、買い物をする人達の中に一際目立つ恰好の人がいた。

「今日は大根が安いんですか」
「あ…人参と玉葱が確か切れていましたね」
巫女服を着て、長い黒髪をポニーテールにし、頭に藤の花を模した縮緬のつまみ花かんざしが挿して、右手に竹箒、左手に買い物袋を持ってる女性が
あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと、買い物をしている。

商店街の人達も彼女の恰好に慣れてるのか普通に接している。 <> 白龍<><>2011/05/14(土) 22:16:49.14 ID:eybUSoSi0<> その街中で、挙動不審な女性が一人。
どうやらお使いを頼まれたらしいが、一人で人前に出ると言うのは慣れていないらしい。

「ええと、豚肉と人参とじゃが芋を…。」

迷子の子供さんの様な、そんな感じに見える。 <> 瞳<><>2011/05/14(土) 22:27:32.00 ID:KCiYd4vAO<> (わかる…決戦が近づいているのが…
落ち着かないが、こんな時こそ冷静にいつもどうりに過ごすことが必要なんだろうな…)

買い物途中の少女。内心では、色々考えているが見たところは普通にしている。
彼女が下げている買い物袋の中には、線香や花が入っている。墓参りにでも行くのだろうか。 <> セツコ中<><>2011/05/14(土) 22:31:21.42 ID:yD0btSR60<> >>174
フッと感じた事ある妖気だな?っと八百屋の前で止まるセツコ。

貴女を見て、二三回首を傾げ

「こんにちは……何かお困りですか?」
おどおどと声をかける。


>>175

そんな時、フッと貴女の姿が目に入った。

「あ!!!貴女は…ご無事でしたか!!!!」
急にそんな大きな声を出しながら、今にも泣きそうな目でそちらを見るだろう。

商店街の人や買い物客はビックリだ。 <> 白龍<><>2011/05/14(土) 22:44:33.57 ID:eybUSoSi0<> >>175
「こんにちは、瞳様。」

和らぐ様な声で挨拶する白龍。
それは瞳に掛かるプレッシャーをなんとかしようとする思いからの行動である。

『(心配で着けてきたけど…なんで皆いるの?)』

後ろの電柱にはストーカーが。多分気づかれる。

>>176
「セツコ様、こんにちは。

ちょっと店が良く分からないのです…。」

どうやら本人は向こうが気づいていると思ってるらしい。
なので普通に挨拶。気づいてくれるのだろうか。
<> 瞳<><>2011/05/14(土) 22:47:59.10 ID:KCiYd4vAO<> >>176
「あ!あなたは!良かったあなたこそ無事だったんだな…」

安心したような表情で走りよって行く。

「あの時は巻き込んでしまったみたいで本当にすまなかった…」

と、悲しそうな表情で頭を下げる。


>>177
「おや、白龍じゃないか。今日は露希は一緒じゃないのか?」

少しは落ち着いた様子で尋ねる。 <> セツコ<><>2011/05/14(土) 22:59:08.01 ID:kOa4q7Gn0<> >>177

「ふえっ?」
どうして、私の名前知ってるんだろう?ってまだ涙目の顔でスットンキョンな声をあげ
同じ妖気の方を過去に当て嵌めていき

「白龍さん?」
疑問系で彼女に言い、首を傾げる。

「お買い物ですか?よろしければ手伝いましょうか?」
涙を吹きながら彼女は言う。


>>178

「は…はい!おかげさまで」

「大丈夫ですよ。私は無事でしたし、なんともなかったので」
本当はアレ以来、キュウちゃんがトラウマになりかけたり、キュウちゃんのターゲットの一人にされたり、自分が住んでる神社に来られたりしたのだが、それは伏せておいた。

彼女を心配させないために。

「ところで、貴女もお買い物ですか?」 <> 白龍<><>2011/05/14(土) 23:10:26.51 ID:eybUSoSi0<> >>178
「ええ、お使いに頼まれまして、この状況です。」

現状を軽く説明する。
まさかこの歳にもなって買い物が出来ないなんて、人間は思わないだろう。

>>179
「へ?そうですよ?あ!すいません、人間の姿見せるの初めてでしたね。」

やっと白龍本人も気づいた。
買い物を手伝う?と聞かれて、眼を輝かせた。

「はい、是非お願いします!!」
『白龍、セツコさんにしっかりと教えて貰うんだよ。』
「露希!?」
『セツコさん、瞳、こんにちは♪心配で着けてきたの。』

ここでストーカー本人の登場&着けてきたことをカミングアウト。 <> 瞳<><>2011/05/14(土) 23:17:24.59 ID:KCiYd4vAO<> >>179
「ああ、ちょっと買い物にな…」

と、言い手に持った線香と花が入った買い物袋を見る。


>>180
「お使いか。頑張ってるな。」

と笑いかける。

「って、露希!いたのか。」

親友に会えたことで嬉しそうな表情を見せる。 <> セツコ中<><>2011/05/14(土) 23:23:51.79 ID:W4vuD2Rj0<> >>180

当たってよかった…っと彼女はホッと息をはき

「ほえっ!?いたんですか!?」
現れた露希にちょっと驚く。

「そ…それで何を買うんですか?」
ついでに八百屋の前である。

八百屋のおっちゃんは彼女達が話してる内容についてツッコミなどはしなかった……
何故なら彼は若い女性が自分の店の前で集まってるから『いや〜、若いね〜』な視線で見てるだけだからだ(キリッ


>>181

「えっと……御墓参りの準備ですか?」
恐る恐ると、買い物袋の中に見えるものを見て彼女は聞く。

「そういえば名前名乗ってませんでしたね」
「私はセツコと言います」
ペコリとお辞儀をする。 <> 白龍&露希<><>2011/05/14(土) 23:34:13.62 ID:eybUSoSi0<> >>181
「うん!電柱の後ろにいたよ。

瞳は何を買ったの―」

今日一番の笑顔を見せて、尋ねる。
が、その中身を察したらしく、少し暗くなる。

「風月さん…のだね?」

>>182
「あは☆隠れてたんだぁ。」

『今夜はシチューを作るので、じゃが芋と人参を買おうかなと。

あ、あれ?八百屋さん、ここだったんですか。ちょっと買ってきますね。』

女性がおっちゃんに話しかけた。
その女性を見て、おっちゃんはどうなってしまうのか―。値引きとかしてくれるんかなぁ。

<> 瞳<><>2011/05/14(土) 23:39:58.76 ID:KCiYd4vAO<> >>182
「ああ、大切な人のな…
不安になったり、落ち着かない時はいつも墓参りに行くんだ。」

笑顔の中に少し寂しさを秘めた表情で言った。

「私は、瞳。よろしくな、セツコ。」

と言って、握手を求める。


>>183
「ああ、おそらく紫狂との決戦も近いと思ってな…
その前に風月のところへ行っておきたかったんだ。」

その意図は、これで最期になるかもしれないから行こうなどという後ろ向きな気持ちではなく、絶対に勝って再び風月の墓へ行こうという前向きな気持ちだ。 <> セツコ<><>2011/05/14(土) 23:53:44.44 ID:W4vuD2Rj0<> >>183

「そ…そうですか」
ちょっと怖いな…とハハハと笑い

「頑張ってください」
「(おじさん)」
『(わかってるよ。セツコちゃん)』
なんかセツコと八百屋のおっちゃんはアイコンタクトをすると

『へい!いらっしゃっい!』
『お嬢ちゃん。今日は人参とジャガ芋が安いよ〜。何をお求めだい?』
現在の人参とジャガ芋の値段は安い。ここで値下げをするか、どうかは白龍しだいだ

なおおっちゃんの視線は胸にいってる(笑)


>>184

「……そうですか」
少し申し訳なさそうにし

「瞳ですね。はい!よろしくお願いします」
コロコロと表情を変え、嬉しそうに握手に答えるだろう。 <> 白龍&露希<><>2011/05/15(日) 00:07:01.35 ID:h3kvADIf0<> >>184
『ボクも…風月さんの所に行ってもいいかな…?

風月さんのお陰で瞳が居て、そしてボクが居る。きちんと感謝したいんだ…。』

それは露希自身、驚く返答だった。
今まで通りならば話を切るはずだが、瞳や皆が、露希をこうさせたのかも知れない。

>>185
「じゃが芋と人参を買いに来たんです。

その二つを下さい。」

にこにこと話す。
勿論、健全な女性が気づく訳もなく、見られている。(胸?) <> 瞳<><>2011/05/15(日) 00:11:54.79 ID:hDr6YKoAO<> >>185
「ああ、よろしくな。」

こちらも嬉しそうな表情で握手をした。

>>186
「え?ああ、いいよ。露希なら大歓迎さ。」

予想外のことを聞かれと少し戸惑ったが、すぐにいいという返事を返した。 <> セツコ<><>2011/05/15(日) 00:20:04.95 ID:F7EB8p7U0<> >>186
『(ナイスおっぱい)』
『おうおう!嬢ちゃんはカワイイ(いい胸してる)からちょっと値段はオマケしてやるよ』

そう言いながら値段を更に少し下げてくれて、ジャガ芋と人参を売るだろう。

……あ、おっちゃんの後ろで奥さんが鬼のオーラを出してる。


>>187

「はい!」
握手を終え、名残惜しそうにし

「(二人とも仲がいいな…)」
少し羨ましそうに、瞳と露希を見てるだろう。 <> 白龍&露希<><>2011/05/15(日) 00:29:23.62 ID:h3kvADIf0<> >>187
『ありがとう…!』

断られたらどうしようかと思ったが、すぐに安堵した。

>>188
「いいのですか?はい、○○円。」

とりあえず成行きのままにお金を渡す。
この後おじさんがどうなったかは白龍は知らない。

『買い物終わった?』
「うん、凄く安くしてもらった。セツコ様、ありがとうございました。」

無事に目的を達成出来た白龍は、御礼を言った。 <> 瞳<><>2011/05/15(日) 00:45:13.56 ID:hDr6YKoAO<> >>188
瞳と露希は、励まし合い助け合った仲の親友。
二人の仲の良さからも、そのことがわかるかもしれない。


>>189
「実は、私も露希に来て欲しかったんだ。風月の墓の前で何度も露希の話しをしたからな。」

自分を支える親友の存在が、瞳を変えた。それは、瞳自身もわかっていた。
それが嬉しかったから、墓の前で話したのだろう。
<> セツコ<><>2011/05/15(日) 00:48:53.92 ID:LFKyGPey0<> >>189>>190

白龍が去った後、おっちゃんの悲鳴が聞こえたような、聞こえなかったような…

「いえいえ、私は何もしてませんよ」
「(……おじさん)」
そう言いながら、微笑み、心の中でおじさんに謝った。

「さて…じゃあ私はそろそろ行きますね」
「今度、牛神神社の方に遊びに来てください」
そう言うと三人にペコリとお辞儀し

「それではさようなら!」
元気よく手をふり、去って行くだろう

/お先に失礼します
/お疲れ様でしたー。ありがとうございます <> 白龍&露希<><>2011/05/15(日) 00:56:54.41 ID:h3kvADIf0<> >>190-191

「本当にありがとうございました。」
『うん、セツコさんもまたね!』

露希はセツコが見えなくなったのを確認すると瞳を見た。

『…風月さんが亡き今、彼の変わりには成れないけど。

ボクは最後まで瞳の戦いを見届ける―。』

そしてこの後、風月の墓へと向かうのだった。

/私も落ちます。
お二人方、お疲れさまでした!! <> 瞳<><>2011/05/15(日) 01:15:56.51 ID:hDr6YKoAO<> >>191
「ああ、今度お邪魔するよ。
じゃあな。」

と、手をふりかえして見送った。


>>192
「ありがとう。露希。私、絶対に勝つからな。」

静かな口調だが、強い意志を込め言った。

「それじゃあ行こうか、露希。」

そう言って歩きだした。



/お二人とも、絡み乙&ありがとうございました。 <> 夜行集団<><>2011/05/15(日) 22:55:28.07 ID:AkSTASVP0<> ここは街から外れ、人の喧騒から離れ、とても穏やかな静寂が支配している山のふもと。
その山に入る前の、まるでそれが入り口の門であるかのようにたたずむとある神社。
そこは誰からの信仰もなくなり、そこにいた神格からも見捨てられた廃墟と呼ぶべき存在。

廃神社など、本来特筆すべきものではないほどにどこにでもあって、いくらでもあるものだ。
しかしこの空間は。この現在の空間だけは違った。どこにもなかった、ひとつしかなかった。

「どうしよう、きっと虚冥が探してるよ」

そんな唯一の価値をこの神社が持った理由は一つ、この妖怪、
絶望の囚人や氷の心、神崩れや尊大な間違いなどの妖怪が一か所に集う理由となったこの妖怪によるものだった。

その空間には窮奇とは丁度真反対、どこまでも反対の、
希望、歓喜、安堵などのあらゆる正の感情が満ち満ちていた。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/15(日) 23:16:10.73 ID:Zn5kLnQSO<> >>194
漆塗りの朱鳥居の奥に佇む、古い気倉の社の上で、唐突にかたんと音が立った。
それは、木下駄が社の屋根を叩く音。
陽射しの眩しい白昼に参拝客は居らず、鳥居と社へ繋がれた提灯以外目につくもののないがらんどうとした神社に、
白い着物を纏った、一人の優男が姿を現した。

「いい天気じゃのう」

狐目を更に細く瞑って、うーんと伸びをする。
彼の名は織理陽狐。袂神社に祀られる送り狐だ。

かっ、と下駄を弾ませて、織理陽狐は石畳へ降りる。
とそこで、「……む?」と何かに気付いたように首を伸ばした。
彼の視界が捉えたのは、少女の姿をした妖怪。
その周囲を正の感情のみで作り上げる彼女を見、織理陽狐はつかつかと近付いていく。

「どうした? お主、迷子か?」

そうして、軽い感じで声を掛けた。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/15(日) 23:17:01.60 ID:Zn5kLnQSO<> >>194
漆塗りの朱鳥居の奥に佇む、古い気倉の社の上で、唐突にかたんと音が立った。
それは、木下駄が社の屋根を叩く音。
陽射しの眩しい白昼に参拝客は居らず、鳥居と社へ繋がれた提灯以外目につくもののないがらんどうとした神社に、
白い着物を纏った、一人の優男が姿を現した。

「いい天気じゃのう」

狐目を更に細く瞑って、うーんと伸びをする。
彼の名は織理陽狐。袂神社に祀られる送り狐だ。

かっ、と下駄を弾ませて、織理陽狐は石畳へ降りる。
とそこで、「……む?」と何かに気付いたように首を伸ばした。
彼の視界が捉えたのは、少女の姿をした妖怪。
その周囲を正の感情のみで作り上げる彼女を見、織理陽狐はつかつかと近付いていく。

「どうした? お主、迷子か?」

そうして、軽い感じで声を掛けた。 <> 桔梗姫<><>2011/05/15(日) 23:28:16.49 ID:AkSTASVP0<> >>196
ふっと聞こえた声に反応して顔を見上げると、そこには羽毛のような、たんぽぽの綿毛のような、
ふらりふらりと重さの感じさせない、しかし重みのある妖怪が目に入った。

「うん、少しここに住む子たちが哀しそうだったから、
 すこし元気にさせてあげようとしたらね。みんなからはぐれちゃった」

そう言って自分が迷子だと話す桔梗姫の様子は、どこにも恐怖心などなく、
優しく笑いながらこの状況すらも楽しんでいるような節の感じる、そんなどこまでも前向きなのどかさがあった。

「あなたは誰?ここには神様はいなかったけど」 <> 桔梗姫<><>2011/05/15(日) 23:28:48.73 ID:AkSTASVP0<> >>196
ふっと聞こえた声に反応して顔を見上げると、そこには羽毛のような、たんぽぽの綿毛のような、
ふらりふらりと重さの感じさせない、しかし重みのある妖怪が目に入った。

「うん、少しここに住む子たちが哀しそうだったから、
 すこし元気にさせてあげようとしたらね。みんなからはぐれちゃった」

そう言って自分が迷子だと話す桔梗姫の様子は、どこにも恐怖心などなく、
優しく笑いながらこの状況すらも楽しんでいるような節の感じる、そんなどこまでも前向きなのどかさがあった。

「あなたは誰?ここには神様はいなかったけど」 <> 桔梗姫<><>2011/05/15(日) 23:29:33.02 ID:AkSTASVP0<> >>196
ふっと聞こえた声に反応して顔を見上げると、そこには羽毛のような、たんぽぽの綿毛のような、
ふらりふらりと重さの感じさせない、しかし重みのある妖怪が目に入った。

「うん、少しここに住む子たちが哀しそうだったから、
 すこし元気にさせてあげようとしたらね。みんなからはぐれちゃった」

そう言って自分が迷子だと話す桔梗姫の様子は、どこにも恐怖心などなく、
優しく笑いながらこの状況すらも楽しんでいるような節の感じる、そんなどこまでも前向きなのどかさがあった。

「あなたは誰?ここには神様はいなかったけど」 <> 桔梗姫<><>2011/05/15(日) 23:30:54.30 ID:AkSTASVP0<> >>196
ふっと聞こえた声に反応して顔を見上げると、そこには羽毛のような、たんぽぽの綿毛のような、
ふらりふらりと重さの感じさせない、しかし重みのある妖怪が目に入った。

「うん、少しここに住む子たちが哀しそうだったから、
 すこし元気にさせてあげようとしたらね。みんなからはぐれちゃった」

そう言って自分が迷子だと話す桔梗姫の様子は、どこにも恐怖心などなく、
優しく笑いながらこの状況すらも楽しんでいるような節の感じる、そんなどこまでも前向きなのどかさがあった。

「あなたは誰?ここには神様はいなかったけど」

<> 織理陽狐<>sage<>2011/05/15(日) 23:44:34.29 ID:Zn5kLnQSO<> >>198
金色の髪はぐしゃぐしゃと乱れているが、まるで狐の毛並みのように柔らかいのが見て取れた。
ふんわりと微笑むと髪の毛が僅かに揺れる。
織理陽狐は細い指先で、どこまでも優しく笑った少女の頭を軽く撫る。

「ほうほう、それは良い行いじゃな」

誰、と尋ねられて、織理陽狐は胸に手のひらを重ねた。
陽射しに当てられる狐は、少年のように幼くもあり、仙人のように浮き世離れしていて、掴み所がない。

「儂は織理陽狐。願いを叶える狐じゃ。
 ああ――ここに神はおらぬよ。この神社に祀られておるのは儂じゃが、神格は持っておらぬしのう」 <> 桔梗姫<><>2011/05/15(日) 23:53:41.84 ID:AkSTASVP0<> >>201
彼のそれと同じほど、またはそれよりもかと感じさせるくらいに、
桔梗姫のその柔らかく軽い髪が、織理陽孤の撫でる手によって色々な形にほぐされる。
そして手が離れてからまた自然に元の形に戻る彼女の髪の毛に、一つのかんざしが。

「えへへ、でもあの子たち桔梗が居なくなったらまた哀しくなっちゃう。
 ここにはあの子たちの大事なものが無いんだって」

すこし悲しげに話すその桔梗姫の頭を飾り付けるそのかんざしは以前、
穂産姉妹が彼の神社に訪ねた際、彼女達が夜行の願いを願ったことで織理陽孤から願いの結晶として貰ったかんざしである。
穂産姉妹はもどってから、そのかんざしを姫にあげ、その時から姫の髪にはこの飾りがついている。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/16(月) 00:05:13.44 ID:JI5Nv1hSO<> >>202
柔らかな髪をくしゃり、くしゃりと撫でていると、織理陽狐はふと桔梗の簪に気が付いた。
見覚えのあるそれは、彼の指先が動くと、ちりりんと涼やかな音を鳴らした。
視線が、自然と簪に奪われる。

(これは……あの姉妹の「想い」ではないか)

どうりで、この少女に初めて会った気がしなかった。
目の前の彼女は、百鬼夜行の主候補でもあるわけだ。
織理陽狐は一人納得した。

「大事なもの? どういうことじゃ?」

しゃがみこみ、金色の瞳で桔梗を覗き見る。 <> 桔梗姫<><>2011/05/16(月) 00:14:58.42 ID:yQ+v3HC00<> >>203
うーんとそのなめらかで、そしてなによりも優しい声で考え事があるかのように唸る。
どうやらその小さなあごを人差し指で支えて、自分でもすぐには分からなかった物について考察してるようだ。

「氷亜のところはね、氷亜がそこの偉い人をやってるけどその他に、神様っていうのがいるんだけど。
 ここにはあなたはいても、その神様みたいなのがいないの。」

桔梗姫は、織理陽孤が氷亜と言う者を知らないであろう事も関係なく、
この山に、神格と呼べる存在がいないことに疑問を抱いていた事を説明し続ける。

姫が言う事を要約すると、自然どこにでも神は宿り、その『どこにでも』で、この自然の自然たる所以は存在するのだ。
しかしこの山にはその神格がおらず、木々がその不在感にすこし寂しさがあるという。

「たまにそんなところがあるんだけど、ここはなんで神様がいないの?」

そんな事、織理陽孤も分かるはずもないであろうに。
しかし姫はその細い首をこくんと傾げながら彼に質問した。 <> 織理陽狐<><>2011/05/16(月) 00:25:36.07 ID:JI5Nv1hSO<> >>204
「なるほどのう……」

こくりこくりと頷く。
桔梗の言葉の意味を、理解はしているらしい。
しかし、織理陽狐は難しそうな顔をした。

「すまぬが、この山に神格がない理由は儂にもわからぬ」

彼自身、いつの間にか神と祀りあげられていた存在だ。
袂山に存在する神社も、この場所一つしかない。
織理陽狐はわからぬ理由に、うーんと少女と同じように唸って首を傾げた。 <> 桔梗姫<><>2011/05/16(月) 00:31:54.37 ID:yQ+v3HC00<> >>205
神社の鳥居の下で、金髪の不思議な雰囲気の男と幸福感を絵に描いたような橙色の少女。
そんな不思議なとり合せの二人が、首を同じように傾げているというそのなんとも言えない光景がしばらく続いた。

そしてそんな状況を終らせたのは姫の方であった。
くすくすと笑いながら、後ろに両手をついてのんびりとした格好になった桔梗姫は

「確かに森は寂しそうな感じがしたよ。
 でもでも皆がみんな言っていた『あの人が来てからそれも少しましになった』て言ってた。
 そのあの人ってあなたの事なのかな?」 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/16(月) 00:44:20.41 ID:JI5Nv1hSO<> >>206
二人がいる空間は、それはそれは和やかな雰囲気で満ちていた。
この場にいさえすれば誰でも幸せな気持ちになれる、と思わせるほどに。
それは橙色の姫様、桔梗の力が大きいだろう。
向日葵のような少女が、溶けてしまいそうな笑みでいう。

「む? そうなのか?」

唸るのをやめた織理陽狐は、きょとんと目を丸くさせる。
二、三度狐目を瞬かせ、それから、ふにゃりと気の抜けるような笑みを浮かべた。

「そうならば――それはとても嬉しいことじゃ」

嬉しくて堪らない、と、語らずとも判るような微笑む。
織理陽狐は腰を上げると、片手に携えた提灯を揺らした。
何かを思い付いたようだ。

「そうじゃ、お主、少し手伝ってくれるか?」 <> 桔梗姫<><>2011/05/16(月) 00:53:34.06 ID:yQ+v3HC00<> >>207
「そうだよ」

笑う狐と座敷童子。
しばらくその神社が笑う優しい声に包まれて、そこから風に乗ったのかなににのったのか、
幸福感がそこの一帯に広がりこれぞハッピーエンドなのだと良い締めるほどの光景に仕上がった。

「桔梗はなにを手伝うの?」

そういってしゃらんと軽くかんざしを鳴らし、織理陽孤の方へぽやんとした視線を送る。
しかし彼が立ち上がっているのに気付いたのか、桔梗姫もふらりと立ち上がって彼の前に立つ。
その様子だと彼女はやる気満々の様だ。 <> 瞳<><>2011/05/16(月) 21:16:47.55 ID:IEMU/51AO<> いつもの修行場。いつもの風景。いつものように黒い着物の少女。
しかし、その空気はいつもとは違った。淀んでいる。張り詰めている。

「いつ来ても…おかしくはないよな…
風月…見ていてくれ…私は、絶対に…」

緊張した空気の中、少女が呟く。
決戦の時が近づいているのをその肌で感じる。
<> 道切り地蔵<><>2011/05/16(月) 21:35:16.40 ID:CeuD+RZQP<> >>209

「だ〜れかさ〜んのしゃれこうべ〜♪」

 聞き覚えのある唄、記憶にある声、案の上の妖気。

「あ〜かいべべ着て包丁も〜って、かわいい顔したわらべをき〜ざ〜む〜♪」

 亜空の狭間より、うっすらと。
 しかし確実な悪意と妖しさを携えて現れる妖怪・道切り地蔵。
 その存在意義か本能か。少女を付け狙うその本質は変わっていない。

「遠くで呼んでる百舌の声〜♪ ゲタゲタゲタ、久しぶりだなぁ・・・瞳よぉ」

 霊験を湛えた風の向こうから、その正体を露にする。
 見た目は瞳よりも年下の少年のような体躯。
 しかし肩から翼の様に拡がる白樺の枝と、顔や手に浮かんだ木目のような模様が。
 その存在は人に有らざる者だと主張しているかのようだった。


 妙なモノだと考える。
 自分は人の考えなど、欠片も持っていなかったはずだ。
 妖怪は自然現象の一端であり、そこには人の理など入る余地など無いと疑わなかったはずだ。
 自分など、自分の思考など。ただ本能に従い、理に従い。
 境界を踏む人、特に少女を食うだけの・・・ただの発露だと思っていたのに。

「考えなんて・・・変わるモンだなぁ。俺は一番ケダモノで田舎者だったはずなのによぉ・・・。
 紫狂に居る間に、キチガイ共に囲まれてる間に・・・いつの間にかマトモな考えなんて持っちまった。
 人の考えることも、想うことも・・・なんとなくわかるようになっちまった。嫌だねぇ、都会ってのはさ・・・」

 誰に語るわけでもなく、誰に説くわけでもなく。
 ただポツリポツリと言葉を紡ぎ出す、妖怪。

「なぁ・・・瞳よぉ。今の俺ならアイツの・・・春花の言うことも、ちったあわかると思うか?」

 その眼孔はあいも変わらず紫濁していたが、とこか穏やかで。
 遠くを見つめているような様子だった。 <> 瞳<><>2011/05/16(月) 21:43:43.22 ID:IEMU/51AO<> >>210
「……来たか。」

ゴクリと息を飲む。

「――道切り地蔵。」

狭間から現れた道切り地蔵を見据える。
恐れがないわけではない、しかしそれを抑える。

「春花の言うことが?」

にわかには信じがたい。しかし、信じたい言葉。

「それは、本当か?本当なのか?」

驚きを隠し言う。もし、本当なら争う必要は……
<> 道切り地蔵<><>2011/05/16(月) 22:04:51.51 ID:CeuD+RZQP<> >>211

「ちゃんと問いに答えろよ、もしお前が人だったら今すぐ食っちまってるぞぉ?」

 少し顔を伏せ、クククと含み笑いをする。
 顔を上げて、目を見合わせたとき。やはりこの妖怪の眼は深い紫に覆われていた。

「だがよぉ・・・どの道俺の答えは変わらねぇ。
 始めから春花が人の事になんぞに興味を示さなかったら死なずに済んだんじゃねぇのか?
 風月ってヤローが春花を別の存在だと考えていたら・・・あんなことにならなかったんじゃねぇのか?」

 袖をはためかせる。
 紫の眼光の奥にはもう迷いも狂気もない。

「人と妖怪は近くなりすぎた、いや・・・お互いにお互いの存在の事を軽く見すぎなんだよ。
 お前等『良い』妖怪が仲良くしてる一方で、俺達『悪い』妖怪はガンガン退治されてんだ・・・」

 ただ言い放つ、覚悟を決めるように。
 遠くに居る誰かにはき捨てるように。

「現の百鬼の主様は・・・まぁ何一つ信用ならねぇが、何一つ妬ましくねぇ存在だ。
 綺麗で、強くて、カッコよくて、プライドが高くて、都合の『良い』・・・他の奴等よりは」
 ずっとマシだ、俺のしょーもねぇ命とプライドかけても『良い』くらいにな」

 歪みながらも、腐敗しながらも。
 迷い無き、揺ぎ無き魂が凛として言い放った。


「俺は人と妖怪が仲良くできない、共存できない世界の為に戦うぜ」
<> 瞳<><>2011/05/16(月) 22:16:58.85 ID:IEMU/51AO<> >>212
「それは違う。春花も風月も間違ってなどいない。
妖怪と人間の間には、深い深い溝があるのは確かだ。だけど、人間だから妖怪と仲良くしちゃいけない、妖怪だから人間と仲良くしちゃいけない、そんなのはおかしいじゃないか。」

ただまっすぐに、風月への想いを乗せ主張する。

「心は誰しもが持っている。その点では、人も妖怪も変わらない。だから、私は人間と仲良くしたい!」

右手を刀に変え、それを向ける。

「私は、私の想いをぶつける!
人間と妖怪が共に笑いあい、共存する世界のために!」 <> 道切り地蔵<><>2011/05/16(月) 22:32:35.21 ID:CeuD+RZQP<> >>213

 ただはためいていた両袖から、白く太い木の幹が飛び出した。
 腕のように、手のように・・・その幹で腹を抱えて笑い出す。

「ゲタゲタッ! やっぱりテメェとはお話にならねぇなぁ!!
 ・・・今に始まった話じゃねぇがよぉ! −異天空間・道切りの果て−!!」

 白い枝が空を切ると、空間に線が引かれるように。
 山野に別世界が上書きされていく。

 首の落ちた地蔵や、朽ちた鳥居が跋扈するあの世界だ。

「じゃあ俺は俺の想いをぶつけてやるよぉ! 鬼火・星蛍!!」

 肩から生えた枝振に、まるで新芽が芽吹くように。
 無数の白い焔がポツリポツリと燈っていく。

 それはある程度数を揃えると、急に膨れ上がり生き物のように弾き飛んで瞳に飛び掛った!
 冥界の送り火を燈した白い蛍が襲い掛かる。 <> 瞳<><>2011/05/16(月) 22:37:46.68 ID:IEMU/51AO<> >>214
(あの空間か…)

瞳に緊張が走る。

(落ち着け…ここは…)

呼吸を整え、左の腕も刀に変える。

「双転瞳斬!!」

そのまま、両腕を広げ回転。炎を防ぐ。 <> 道切り地蔵<><>2011/05/16(月) 22:43:27.58 ID:CeuD+RZQP<> >>215

 刀が空を裂いた、その凪の刹那に。
 木目の走った顔がすぐ近くまで飛び込んでいた。

 ニタリと一瞬笑ったかと思えば、はためく袖を銃口のように瞳に向ける。

「ヂャッ!!!」

 空っぽの袖の中から白く太く鋭い幹が噴出す!
 白い幹・・・かつて露希の白竜を毒した冥界の指先である。

 不気味に風を切る音と恐ろしの妖気が迫る。 <> 瞳<><>2011/05/16(月) 22:50:22.10 ID:IEMU/51AO<> >>216
(なんだっ!?)

その妖気に恐れる。しかし、怯むことなく次の行動に

(触れるとまずそうだな…ならば…)

「星霊瞳牙!」

右手の刃に退魔のオーラを纏い、袖口に向け突きを放つ。幹にぶつけ、オーラで破壊しようとの考えだ。
突きからは、5メートル程退魔のオーラが伸びる。 <> 道切り地蔵<>道切りの果てまで残り6レス<>2011/05/16(月) 23:06:14.13 ID:CeuD+RZQP<> >>217

「!」

 白い枝が吹き飛ばされ、退魔のオーラに包まれる道切り。

「チッ、うだうだやっててもはじまらねぇなぁ」

 道士服で顔などをガードしていた。
 はためく袖は破れ、空っぽの中身を晒して揺れる。

「・・・そうだな、1つ『良い』こと教えてやる」

 辺りがざわめき始めた。
 朽ちた鳥居にこびり付いたコケが光り、首の無い地蔵が悲しげに泣き始める。

「この−道切りの果て−の奥義・・・いや。本来の役割が間もなく動き出す」

 破れた袖をひらめかせ、挑発するように話し出す。

「ここに迷い込んだものは“どこでもない場所”、強いて言うなら死の世界に弾き出されるのさ。
 そこにいきゃあ神も人も妖怪も関係ねぇ・・・どうなるかは言わなくてもわかるだろぉ?」

「俺は死んでもテメェを出す気はねぇからよぉ! 死にたく無けりゃ・・・」

 世界が大きく胎動した。
 あちこちが流砂のように蠢き、暗い闇へと流れ落ちていく!

「俺を殺してみな!!」 <> 瞳<><>2011/05/16(月) 23:13:20.65 ID:IEMU/51AO<> >>218
「なにっ!?
あなたを殺さなくては出れないのか…?」

できれば、殺したくはなかった。いつか、分かり合える日がくると諦めていなかったからだ。
だが、本気で行かなければ殺される。

「くっ!滅鬼瞳斬!」

右手に再びオーラを集め、今度は斬りかかる。どこかためらいと焦りが見える攻撃だ。 <> 道切り地蔵<>道切りの果てまで残り4レス<>2011/05/16(月) 23:23:08.54 ID:CeuD+RZQP<> >>219

 迷いある斬戟を易々と飛び退いてかわし。
 破れた袖を振り乱す。

「ゲタゲタゲタッ・・・! 生い上がれ、黒手の樹!!」

 瞳の足下から黒々とした大樹が幾本も伸び始める!
 その太い枝や幹は人の手の形となり、瞳に掴みかかった。

「前にも言ったがこの世界は俺自身だ。この世界の崩壊は俺の崩壊さ。
 おそろしの神格がそろそろ押さえが利かなくなってきてなぁ・・・
 まぁせいぜい喜べよ、脱出失敗になっても無駄死ににはならねぇぞぉ!!」

 ニタニタと嫌味で自棄になったような笑みを浮かべる。
 世界の崩壊は思ったよりも早い・・・すでに瞳が最初に立っていた場所は深遠に飲み込まれていた。

「憎っくき恩人の恋人の敵で、人に敵対する妖怪を道連れにできるんだからよぉ!! ゲタゲタゲタ!」
<> 瞳<><>2011/05/16(月) 23:38:23.52 ID:IEMU/51AO<> >>220
「くっ!飛晶…だめだ!技を使うには多すぎる!」

右足を刀にし、振り回す。大樹が多すぎて技を放てないのだ。

「させない!生きてやる!約束したんだっ!絶対に勝つって露希と約束したんだ!また墓参りに行くって風月と約束したんだ!
そして、いつの日か妖怪と人間が共存する世界を創るんだ!風月が夢見た世界を創るんだ!」

右足を人間のものに戻す。同時に退魔のオーラが瞳の全身に集まってくる。

「だから、私は負けるわけにはいかないんだぁ!!」

両腕を刀に変化させる。

「瞳幻流奥義!退魔連瞳斬!!」

そして、その空間を切り裂くように空に連激を放つ。 <> 道切り地蔵<>道切りの果てまで残り2レス<>2011/05/16(月) 23:55:48.62 ID:CeuD+RZQP<> >>221

「あがくなぁ・・・ゲタゲタゲタ」

 大樹の半分ほどが破壊され、ざんげ樹が空を穿つが・・・。
 それも崩れ逝く世界の前には無意味なことだった。

「生きてやる・・・ねぇ。アイツもそんな風に言ってくれりゃあ、他の道もあったのかなぁ・・・?」

 ぼんやりと瞳を閉じる。
 コイツは何処か似ている・・・かもしれない。
 無様で、非力で、カッコ悪くて、プライドも何もあったモンじゃない、非情な現実にあがきやがる。
 自分は目の前のこの妖怪と、春花を重ねていたのか。

 ・・・いや、やっぱりそれはないな。
 全然似てねぇし、そもそもそんな風に考える自我なんて持ってねぇし。
 そもそもそんな人みたいなこと、俺に考えられるわけねぇしな。

 世界の崩壊は直ぐそこまで迫ってくる。
 道切りの果ては、まるで二人を残した安物の舞台のようだった。

「・・・やっぱりテメェは、俺の手で殺しておきてぇなぁ!!」

 消えかけながらも膨大な妖気が渦巻き、1つの形となって降り落ちる!
 最後のスポットライトか、舞台幕に張られた日の出かのように。
 虚無の空から黒い巨大な腕が迫ってきた!!


         【大葬呪・柳緑花紅】!!!


 その腕の上では花が芽吹き、枝が繁茂し、凄まじい勢いで死んでいく。
 自然の摂理を示した最後の巨大な大技だった!! <> 瞳<><>2011/05/17(火) 00:13:37.02 ID:BS29lwXAO<> >>222
「あいつ…!?それは…
!?」

言いかけたところで迫る最後の大技。

「く…駄目だ…打つ手がない…」

こんな大技、退魔連瞳斬でも無意味に終わる。瞳からオーラが消えていく。

「これで…終わりなのか…?」

そのあまりにも強大な力の前に諦めかけたその時、瞳の脳裏に自分を信じて逝った恩人の顔と瞳の勝利を信じて待っている親友の顔が浮かんだ。

「そうだ!諦めちゃだめなんだ!」

瞳に再びオーラが集まる。さっきよりも、沢山のオーラ。
風月を信じ、仲間を信じることにより勝利への想いが強くなり、瞳にオーラをもたらした。

「これでっ!!終わらせてみせるっ!!
瞳幻流新奥義!!春風共瞳斬!!」

その技は、瞳を信じ夢を託した風月の想い、風月が強くなったきっかけであった春花の想い、瞳の夢である共存への想い、共に戦い支え合ってきた親友の露希や仲間達への想い、すべてを内包した技だ。
すべての想いを刃に宿し、巨大な斬激としてその腕に放つ。
<>   <>道切りの果て<>2011/05/17(火) 00:21:39.74 ID:/xD9LVELP<> >>223

 光りの斬戟は黒い手を穿ち、虚無かと思われた空を撃ち抜いた。
 空へと響くような炸裂音と共に、闇が砕かれ光りが差し込む。
 ガラスが砕けるように黒い天蓋が崩れていく、破片は風へと消えていく。

 やがてあの世界も深遠も、この世界の光りに薄らぎ、消えていった。
 空は白み始めている、煌々と差し込む朝日が紫色のような空を染め抜き、透き通るような青へとグラデーションになっていった。

 道切りは消え、2つの世界は1つに交わっていく・・・。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(関東)<><>2011/05/17(火) 00:28:48.60 ID:BS29lwXAO<> >>224
「はぁ…はぁ…道切り…地蔵…死んだのか…?」

消えていくあの空間を見つつ呟く。その目は、どこか悲しみを含んでいた。

「…風月。ありがとう。生き残れたよ…」

息切れしながら言った。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/17(火) 22:03:34.19 ID:wWGAaXYDO<> 場所は山、時間は夜
黒い夜空にぽっかり浮かぶお月様、月を遮る小さな影が一つ
人のように見えて、人でないような長い耳を持ったそれは雄叫びをあげながら空高く飛んでいて

かと思えば、ある高さで勢いを無くし真っ逆さまに落ちた
視点は、彼の者に移る

今日こそはいける、根拠は無いがそう思った
だから、今までで一番の助走、今までで一番の力、今までで一番の気合いを込めて、月へと跳んだ
それでも、世界は揺れてそれを拒む、淡い期待を奪い去る

「ぬぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

彼は今まさに絶賛落下中、真っ逆さまに頭を地面に向けて落ちていく
いつもの様に何もなければ、いつもの様に彼の頭は地面に突き刺さっているであろう <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/17(火) 22:21:27.05 ID:9Mp+fkHYo<> >>226
傷もほぼ回復したため、一ヶ月無断欠勤していた病院に復帰した東雲は、
上司である医者にこってり絞られながらも、なんとか一日目の仕事を終えたところであった。
背丈2mほどある、白衣を着崩した大男が、袂山の暗い山道を登っていく。

まだ仄かに冷たい風が頬を撫でる。
ふと思い立って月を見上げた東雲は、真っ暗闇に輝くそれを遮る影を見た。

「あァん?」

怪訝な声を出して首を捻る。
月に……人間、な、ワケはないだろう。ではうさぎ、にして大きすぎる。

(なんだありゃあ……って、)
「――はああ!??」

上空に大声を木霊させながら、不可思議な影は月から姿を消した。
その代わり、とんでもない勢いで地面にまっさかさまに落下していく。
全く掴めない現状に焦る東雲であったが、考えるより先に体が動いた。
白衣をはためかせながら、落下地点と思われる場所へ走っていく。

影はだんだんと大きくなり、地面に直撃するのは時間の問題。
そこへ、東雲が滑り込むようにして突っ込んだ。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/17(火) 22:35:39.23 ID:wWGAaXYDO<> >>227
「ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!」

上空高くから彼が落ちて来る事で、声が段々と近くなる
良く見れば彼は白を基調とした服装をしていて、髪までもが真っ白である
そしてその頭には白くて長い耳が…
あったかどうか見てる暇がないくらい、勢いよく落ちてきた

そして彼は頭から着地、石頭と東雲というクッションのおかげでダメージは大きくないようだ
とはいえ、あの高さから落ちたからか地面に一度倒れ、いててと土を払いながら立ち上がる

「うーん、もーちょっとタイミングが早かったらなー…」

立ち上がるやいなや礼も言わず月を見上げて独り言
失礼…いや、この様子、気付いていない
頭に生えた長い兎の耳を揺らしながら、能天気極まりないような妖怪がそこにいた <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/17(火) 22:49:28.16 ID:9Mp+fkHYo<> >>228
上空から何者かが降下するのに比例して大きくなっていく声。
その人物を、東雲は割とはっきり見ていた。
それはいわゆるスローモーション現象というやつで。
滑り込んだ東雲が視界に捉えたのは、真っ白な服に、真っ白な髪、真っ白でふわふわした長い耳。

(……やっぱうさぎ、か?)


ずっどーんっ!!


大きな音を立てて、東雲の下に兎の妖怪が落ちてきた。
その衝撃で、顔がずっぽりと地面に埋まる。
しかし、立ち上がった妖怪はこちらにすら気付いていないらしく。

「……………………………おいテメェゴラァァァァアアア!!!」

兎が発した能天気な言葉に、狼はブチイッと血管をぶった切ってしまった。
がばっと腕で起き上がり、人を殺せるような睨み方で宇佐田を見る。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/17(火) 22:57:15.79 ID:wWGAaXYDO<> >>229
「…ん?なんだお前?」

空ばかり見ていた彼には地面の東雲は全く見えていなかったらしく(それでも落ちた感触で解りそうな物だが)、怒鳴られてようやく気付く
長い耳をピクッと動かして東雲に赤い目を向ける
白い長ランに白い髪、耳、赤い目…見れば見る程、兎を連想させる色合いだ
ズボンの黒と鉄下駄は、兎のイメージとは程遠いが

「なんだお前、泥だらけじゃねーか」
「喧嘩でもしてきたか?いくら腕っ節に自信があるからって相手は選んだほーがいいぜ?」

土に塗れた東雲の姿を見て、その理由を勘違い
怒っているのも、因縁を付けていると勝手に脳内変換して軽くあしらう <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/17(火) 23:13:56.83 ID:9Mp+fkHYo<> >>230
兎の赤い瞳と、狼の紅い瞳がかちあう。
一方はきょとんと丸くなって、もう一方は激しい敵意をぎらつかせて。

「あァァ!? テメェが落ちてきたからッ……あああ゛あ゛あ゛ァアアクソッ!!」

東雲は低い声を激しく唸らせると、突然に体を制止させ、

「もういい。とりあえず一発殴らせろ」

拳をごきごきばきっと鳴らして、宇佐田の目の前に立ち上がった。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/17(火) 23:14:36.66 ID:9Mp+fkHYo<> >>230
兎の赤い瞳と、狼の紅い瞳がかちあう。
一方はきょとんと丸くなって、もう一方は激しい敵意をぎらつかせて。

「あァァ!? テメェが落ちてきたからッ……あああ゛あ゛あ゛ァアアクソッ!!」

東雲は低い声を激しく唸らせると、突然に体を制止させ、

「もういい。とりあえず一発殴らせろ」

拳をごきごきばきっと鳴らして、宇佐田の目の前に立ち上がった。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/17(火) 23:24:56.53 ID:wWGAaXYDO<> >>231
「あ?何言ってんだお前?」

言ってる意味がよく解らないとばかりにキョトンとした表情
目の前のこいつが何故こんなにも噛み付いて来るのか解らない、と、根本的に間違った思考を巡らす
だがしかし、敵意を向けられれば好戦的な本能が意識外で疼き、体毛が逆立つ

「ああ、解った、成る程」

迫る東雲を見て、ようやく理解したようで、ピン!と頭に電球を光らせる

「俺が気付くのが遅かったな、悪い」
「お前、俺と喧嘩したいんだろ?やっと解ったぜ」
「でもお前も悪いぜ、それならそうと言ってくれねえとな」

ビッ、と東雲の鼻先を指差して盛大なる勘違い
どうやら、一から説明でもしない限り彼が事を理解するのは難しそうだ <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/17(火) 23:37:09.39 ID:zhv7iHiSO<> >>233
鼻先を指差された東雲は、いよいよ怒り心頭といった様子で顔を歪めた。
何か根本的に誤解をしているようだが、それを正すような気の長さを東雲は持ち合わせていなかった。
相手が好戦的ならば余計に好都合。
今日やっと職場に復帰ということなど、東雲の頭からはとうの昔に吹き飛んだ情報だ。
泥だらけの白衣が風にはためくのを合図に、

「ブッ[ピーーー]」

短い言葉。
予備動作もほとんどなしに、狼はいきなり兎に殴りかかった。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/17(火) 23:47:30.70 ID:wWGAaXYDO<> >>234
「ぬごっ!!」

至近距離で放たれた東雲の拳が顔面を捕らえ、左頬を殴られる
その衝撃を逃がす様に体を大きくスピンさせながら振り向いて―――

「お返しッ!!」

右足でカウンターの上段後ろ回し蹴りを放つ
<> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/17(火) 23:58:01.35 ID:zhv7iHiSO<> >>235
「ぐっ!? っこの……」

振り向きざまに放たれた上段への蹴りは、東雲の肩に深く突き刺さった。
反動を利用した力に、僅かに呻きを上げる。
だが、肩にヒットした宇佐田の脚を、東雲はがっちりと掴み上げた。

「やりやがったな兎野郎!!」

掴んだ脚を左腕で思い切り引き寄せて、
その勢いに重ねて、右拳を宇佐田の顔に放つ。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/18(水) 00:10:13.41 ID:GYesEKpDO<> >>236
「うおぉっ!!?」

片足を高い所で掴まれた為にバランスが取れず、なすがままに引き寄せられる
次の瞬間には拳が顔面に迫っているのが見え、咄嗟に顔の向きをずらして拳を鼻先に掠らせるようにしてかわした

「なめんなっ!」

直ぐさま反撃、足を掴む東雲の左腕に掴みかかり、残った足も跳んで東雲の左腕一本に体を組み付かせる
自分の重さで諸とも崩れ落ちる前に素早く体全体を捻り、間接を決めながら地面に引き倒そうとした <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/18(水) 00:29:48.30 ID:vtSasy1SO<> >>237
「チィ!」

拳が鼻先を擦り、東雲は憎ったらしげに舌打ちする。
視線はそのまま宇佐田へ。
兎が左腕に組み付くと、彼の鉄下駄の重さも手伝って、ぐんと東雲の体が左に傾いた。

「っ、させるかよ!!」

地面に倒れこむ前に、間接を決めさせまいと両手をがっちりと組んだ。
どさり! とそのまま土に崩れ落ちる。
だが体を相手と直角にしなければ、肘を取られることはない。

「らあァ!!」

最後は、力押しだ。
ぐぐぐぐ……と込めれるだけの力を込めて、宇佐田ごと体を持ち上げようとする。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/18(水) 00:36:37.64 ID:GYesEKpDO<> >>238
「くぬっ!!」

東雲ごと、地面に体を落とす
引き倒すのには成功した、しかし手応えがない

「んのっ…!力、つえぇ…!!」

ただの怪力で体が持ち上げられそうになる
とてもじゃないが、関節技を続行するのは無理だ

そう判断した彼は、自分が不利な状況に陥る前に腕を振り払い距離を取ろうとする
十分な距離を取れば、立ち上がって構え治すだろう <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/18(水) 00:42:27.59 ID:vtSasy1SO<> >>239
「ぐ、のぉお……っ!!」

ぱっと宇佐田の体は振り払われ、持ち前の脚力であっという間に距離を取られてしまう。
東雲もすぐに立ち上がり、宇佐田に向かい合うようにして構えなおした。
再び、二つの赤い視線が交差する。
だが東雲の瞳には、先程までにはなかった感情が混じっていた。

(こいつ……兎のくせになかなかやるじゃねーか……)

兎のくせに、は余計かもしれない。 <> 宇佐田満月<><>2011/05/18(水) 00:56:16.89 ID:GYesEKpDO<> >>240
「お前、なんだかよくわかんねーがやるじゃねーか」
「でも、喧嘩したからには勝ちを譲る気は全くねーからな」

耳をヒョコヒョコ揺らし、赤い視線を交差させ、東雲を認める様な事を言いながら鉄下駄を脱ぐ
素足で立ち、大分身軽になった様に見える姿は、これまでとは違う雰囲気に見えた

「お前、名前は?」
「俺は宇佐田満月、いつか伝説を証明する男だ」

キリッ、と鋭く東雲を見詰めて、名前を問う
右足を下げ半身になるようにして構えた彼の体に、月の光が降り注ぎ微かな黄金の妖気が光っていた <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/18(水) 01:05:13.15 ID:vtSasy1SO<> >>241
「……テメーもな」

渋々ながら東雲は「そりゃあこっちの台詞だ」と呟く。
宇佐田が脱いだ鉄下駄が、どさりと地面に音を立てて落ちた。
素足になった宇佐田は、ひょいひょいと体が軽そうだ。

(何か仕掛けてくるな……)

東雲は既に土に汚れた白衣を脱ぎ捨てると、
ぶわりと周囲につむじ風を吹かせた。
牙や爪にいつでも鎌鼬を生み出せるように。

「東雲 犬御。……袂山の送り狼だが」

<> 宇佐田満月<><>2011/05/18(水) 01:16:27.89 ID:GYesEKpDO<> >>242
「狼かよ、兎の天敵だ」
「まあ今はそんな話は無し、だ」

引いた右足で、土を抉らんばかりに蹴る、蹴り上げる
打ち出される様に跳んで、一歩二歩、素早く距離を詰めて、犬御の目の前で急に止まり右足の裏を向ける

次の瞬間にはそれを目にも留まらぬ速さで犬御へと打ち出す
その前蹴りは鉄下駄の重さが無い分軽く、威力は低い
しかしその威力が落ちた分以上に、速い
その速さ、この一度の蹴りが当たれば実に八発分の蹴りの衝撃が連鎖の様に襲う程 <> 江口 恭介<><>2011/05/18(水) 20:19:00.68 ID:dhmxODOqP<>
「Take the wave 〜♪ 描いーたー 夢ーを、
 今こーのー手ーにして 君の側(方)ーへー♪」

 ご機嫌な唄を歌いながら歩くエロス、江口。
 露の切れ間にたまに来る晴れの日、湿気が肌に纏わりつくというのに彼の表情はすこぶる快晴であった。
 ご機嫌な蝶になって、煌めく風に乗って、今すぐ誰かに会いに行きそうな勢いだ。

「いやっふーーー!! とうとう来たぜぇーーー、この季節!!
 夏服か冬服か迷っている女子ッ! どちらに転んでもおいしいぞぉーーーー!!」

「夏服ならば! 湿気によって若干透ける、薄手の生地!!
 俺の眼ならばッ! その下を見抜くことなど容易いことなのだッ!!!」

「暖を手放せない春服ならばッ! 正午の日差しによって湿気を保ったまま気温が上昇する!!
 蒸れた女子の芳香をッ!! すれ違いざまにクンカクンカできるという季節なのだぁああアアア!!!」

 天下の公道で何を言っているのか。休日とはいえ人通りは居ない訳ではない。
 「何を言ってるんだコイツは」という白い目と、「まーた言ってるよ江口」という冷めた目の半々だった。

「やっふぅーーーーい!! 止まんねぇ! 俺は止められねぇぜぇえええええ!!」

 そのままダイナモのように全力疾走。
 彼の行く先に会うのは鬼か蛇か妖か。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2011/05/18(水) 20:35:22.12 ID:ilkOaG8eo<> >>244
「んー……これとこれ!」

鬼?否。
この少女は、鬼のように怪力を持ってはいない。

「あっ忘れてた!それもお願い!」

蛇?否。
この少女は、蛇のようにニョロニョロしてはいない。

「これがないと締まらないよねっ!
 あっさっきのは無しで、その分それを!」

妖?否。
この少女は、妖怪のようで妖怪では無い。

「んー買った買った!
 今一つ食べて残りは帰ったらにしよっ♪」

――――天人。
少女は、それと同じ、人で非ず

そんな少女は、和菓子屋でみたらし団子を購入していた。
それはもう抱えるぐらいの量、というか事実抱えている。
そしてその内一本を口に咥えていた。
天人が人間界の食べ物食っていいのかおい っていうか天界の食べ物の方が美味いだろ絶対。

「さてさて、食べたら帰ろうかなっtぐはぼぉっ!」

店から出た矢先、『江口と衝突』した。
手持ちのみたらしは宙に舞う 少女も宙に舞う。
唯一口に咥えていたみたらしだけ難を逃れそうであるが、果たしてどうなるのか。
天人も前途多難である まる <> 江口 恭介<><>2011/05/18(水) 20:44:12.61 ID:dhmxODOqP<> >>245

 どっしーーん☆

「ぐはぁっ!」

 案の定正面衝突、勿論尻餅をつくだけで終わらないのが江口である。

「ぐぅああああああああああ!!!」

 頭から次々と降ってくるみたらし、
 甘くてトロトロの醤油ダレは江口の服や頭に絶妙に絡まり濃厚なハーモニーをうんたらかんたら。

「・・・いつつ、ぬぉッ!?」

 そして“衝突”し目の前に“倒れこむ”であろう少女の一連の動作に見惚れ、しっかりと心の動画に焼き付ける。
 ちなみに江口ニューロンの動画容量はテラバイトに達する。

 そして自分の状況、目の前の少女。
 江口は一切の迷いも無く言い放つ。


「俺を食べてくださいッ!!!」 <> 天王寺院 緋那/なんで名前抜けてるん<>sagesaga<>2011/05/18(水) 20:57:42.93 ID:ilkOaG8eo<> >>246
ズザザッザザザァァァ
不意に来た、抵抗をする暇も無い、つまり吹っ飛ぶ。
数m吹っ飛んだ後、そこで動作を停止した。

「いたたた……一体何が……?」

顔だけ起こし、辺りを見てみる。
……咥えているものだけを残し、それ以外は全て散乱しているみたらし団子。
如何にも「あー」という言葉が聞こえてきそうな表情。
パッパッと軽く付いた砂を払い、立ち上がった。

傷は一つも無い。
そう難しいことではない、ぶつかる瞬間無意識に衝撃を吸収しただけである。
モグ、モグと団子を平らげ串を投げ捨てる。

「……は?」

《「俺を食べてくださいッ!!!」》?意味が分からない。
バカかコイツ、頭イカれてるのか。
然し上品な私は顔に出さず、華麗にスルーする。

「……大丈夫?
 凄い容貌だけど……」
『みたらし弁償しないと殺す。
 っつか死ぬほどの苦痛味わわせる』

『』内は脳への直接介入、つまりテレパシー。
三人称視点と江口視点ではえらい違いである。 <> 江口 恭介<><>2011/05/18(水) 21:08:16.08 ID:dhmxODOqP<> >>247

「えぇっ! もう全然大丈夫です!!」

 いや、残念ながら頭の方は大丈夫ではない。
 非常に今更なのだが。

「・・・! て、天の声がッ!!!」

 当たらずとも遠からずである。
 妙なポーズでテレパシーを受信する江口、その様はトランス状態に入ったシャーマンのようである。

 でもまぁ気にしない。
 1000年に1度の天啓より、目の前の煩悩に走るのがこの男である。

「それよりお怪我はありませんか?」

 おいしそうな匂いのする江口がベトベトの顔をキリッとさせた。 <> 天王寺院 緋那<>sagesaga<>2011/05/18(水) 21:21:48.67 ID:ilkOaG8eo<> >>248
「そ、れ、よ、り?」

覇気、辺りのポリ袋等の軽いものが空へ羽ばたく。
イライラ度65%、まだ我慢できる。

「……私が怪我なんかするわけ無いじゃないの。
 さっきから思ってたけど、あんたバカじゃないの?」
『天の声じゃない、私の声。
 マジで死ぬほどの苦痛味わわせるわよ?』

中も外も酷い言い方。
何のことはないさ、どうせ相手は江口だ。

『……あなたの名前は江口恭介。
 周りからは白い目、冷めた目で見られており、エロスを求めることを生き甲斐としている。
 ……あなたの背後霊から聞いてみたのだけど、どう、当たってる?』

名前以外自分では分からないだろう、というのが中の人の見解。
江口君がどう答えるのか楽しみである、というのも中の人の見解。 <> 江口 恭介<><>2011/05/18(水) 21:30:29.03 ID:dhmxODOqP<> >>249

「それはよかった!!」

 ベトベトの手で、天王寺院の手を握る。天の声などまったく意に介していない!!

 説明しよう!!
 江口は女性と会った際、脳内の交感神経や分泌物を制御することでッ!
 目の前の女性に130%の脳力を発揮することができるのだッ!!

 つまり、余計な情報はシャットアウト!
 集中した人間は傷の痛みすら感じないようにッ!!
 江口の耳には!! 感覚を司る視床下部は!!
 天王寺院しか認識していない!!!

 彼にはッ! いや、彼の脳にはッ!!
 神通力やガブリエルの天啓すらも跳ね除けるッ!!
 ・・・否、跳ね除けるのではない。
 入ってきたとしても“認識”することができないのだッ!!!

「む・・・! 天が俺に『エロス』という単語を囁いた!?」


※特定の単語のみ反射的に認識します。 <> 天王寺院 緋那<>sagesaga<>2011/05/18(水) 21:48:28.84 ID:ilkOaG8eo<> >>250
「うわっ!きもっ!」

素の声が出た。
普段からそんな言葉遣いしているのだろうかこの天人。
本気で手を振り払い、軽蔑の目で見つめ。

「……変態?」

なぜ疑問符がついているのか、恐らくいらない。
あまりにも酷いためちょっと目に涙を浮かべているが、気にしたら負けである。

イライラ、イライラ。
波動、江口にのみ感じられるであろう殺気。
神通力による有り得ない衝撃波。
江口へ、江口のみへ。

「っ――――――死ねぇっ!!」

涙声で言い放つ。
本当に死んだら困りますけどね。
あくまでもそうなって欲しいなという願望を口にしているだけです。

江口君は何もしなければ普通に吹っ飛ぶだろう。
その程度が数m程度であるか、数十m程度であるかは江口君の運次第である。 <> 江口 恭介<><>2011/05/18(水) 21:58:25.74 ID:dhmxODOqP<> >>251

「たっはー、流石にグイグイ行き過ぎたかなー?」

 手を振り払われるがテヘへと悪びれる様子はない。
 なんなんだお前は、どこからその余裕が来る?

「変態・・・? いいやただのスケベさ!! スケベは変なことなんかじゃないッ!!」

 もう飽きてきたぞこのテンション。
 ようやく殺気を感じ始め、少し冷や汗を流す。

「あれ・・・? なんかヤヴァいふんい――ブヴァアアアアア!!!」

 衝撃波をモロに受け、綺麗な放物線を描きながら何処かへ飛んで行く江口。
 いや、何処かって言うか20〜30m先の道路なんですけどね。

 タレと泥に塗れ、ピクピクと痙攣する江口を道行く人は邪魔そうに避けて歩いていましたとさ。
 めでたしめでたし。 <> 天王寺院 緋那<>sagesaga<>2011/05/18(水) 22:14:55.39 ID:ilkOaG8eo<> >>252
「――――あっやばっ。
 おばちゃん!みたらしあるだけ!」

みたらしご購入。
少女は意気揚々と地を蹴り飛ばす。
空へ舞い上がる、人驚く。

「……江口恭介、死なないでいて。
 死んだら私が悲しむ」

何とも自己中心的な考えであろうか。
ぽすっと空の彼方へ消えたかと思うと、見えなくなった。

/結構遅れてしまいましたすまない
/お疲れ様ですありがとうございました <> 田中 夕<><>2011/05/19(木) 21:52:43.91 ID:p0rENWXC0<> 烏が鳴く夕方頃。
とある大きな病院の前。

一人の高校生が、暗い表情をしながら、病院から出て来る。

ボサボサの黒髪で、どこにでもいそうなごく普通の顔立ちの少年。

「…………ごめんなさい」
ポツリとそう呟きながら、人がいないのを良い事に、しゃがみ込み始める。 <> 露希<><>2011/05/19(木) 21:57:34.71 ID:Y/IKRlwa0<> >>254
ふとそこを通りがかる少女。

「あの、大丈夫?」

何か訳のありそうな少年に話しかける。
<> 田中 夕<><>2011/05/19(木) 22:06:55.23 ID:uOLijumA0<> >>255

ビクッ!!

《少女》の声が聞こえ、肩を大きく震わせた。

「アハハハハハ!!すいません。お腹が痛くって座ってました」
いつものように笑い、心配させないようにし、立ち上がり少女を見る。

若干、赤くなった目で、彼女を見つめ、「アッ」と声を漏らす。

偶然だろう。彼は《都市伝説のなりそこない》に刺された、《普通じゃない普通な高校生》だ。 <> 露希<><>2011/05/19(木) 22:18:06.54 ID:Y/IKRlwa0<> >>256
「…そんな風には見えなかったけど、本当に大丈夫?」

見ただけで分かってしまうのだ。
先程の【ごめんなさい】も聞こえていたし。

彼女自信、かなり心配しているようだ。 <> 田中 夕<><>2011/05/19(木) 22:27:06.64 ID:6eqtSx860<> >>257

「大丈夫ですよ!ホラッ!」
「ハハハ!!なんか心配かけさせちゃってごめんね」

彼的には、自分は大丈夫だと、サムズアップしながら微笑む。
だが、少女からは無理してる感じがヒシヒシと伝わるだろう。

「久しぶりだね。元気だった?」
「ホラ?メリーとメリーのおじさんと一緒にいて、君に消毒液をかけられた」
まるで、話をそらすように、話題を変える高校生。

何故、彼が病院から出て来たのか?アレ程、病院は嫌だと言っていた彼が…
そして、「ごめんなさい」という意味は?

疑問が疑問を呼ぶだろう。 <> 露希<><>2011/05/19(木) 22:42:18.35 ID:Y/IKRlwa0<> >>258
「そういえばあの時の…。

え、いやでも…。(矛盾してる!!)ボクには話せないことなのかな?

もしよければ相談に乗るよ?」

あの時、服を引っぺがされた少年だ。
不思議でしょうがないので、出来るところまで聞きだそうとした。 <> 田中 夕<><>2011/05/19(木) 22:56:57.42 ID:tOuh36IP0<> >>259

ビクッ!!

『ボクには話せないことなのかな?』
そんな言葉に、彼は再び肩を震わせた。

《あの時》と重なる光景。《彼女》が《悪戯っぽく笑う》
『ねえ?夕。それは何?え?秘密?』
『ズルイな…ボクには教えてくれないのかな?』

「(――――)」
彼は心の中で、《幼なじみ》の名前を叫んだ。
その顔は辛そうで…泣きそうで……怒られてる子供のような表情で…………

「……ちょっと、愚痴聞いてくれませんかね?」
「近くに公園があるんで、そこで話しませんか?」
ギュッと、左手で《右手》を掴みながら、辛そうに笑い、歩き始める。 <> 露希<><>2011/05/19(木) 23:01:49.63 ID:Y/IKRlwa0<> >>260
「ボクなんかでよければいいよ。」

彼が何を思っているのかは分からない。
でも、少しでも気が楽になれるのなら。自分が役に立てるなら。

そんな思いを抱きながら、公園へと向かった。 <> 田中 夕<><>2011/05/19(木) 23:06:53.65 ID:p0rENWXC0<> >>261

公園につき、彼はベンチの前にいき

「どうぞ。先に座ってください」
女性に優しくを心掛け、彼女に先に座るように促す。

もし彼女が座ったら、彼女の横に座るだろう。

「……そういえば、きちんと自己紹介してなかったけ?俺は田中 夕」
「君は?」 <> 露希<><>2011/05/19(木) 23:14:05.31 ID:Y/IKRlwa0<> >>262
「ありがとう、優しいんだね。」

にっこりと笑って御礼をする。
ここまで他人に気を使う人は久しぶりに見た、としみじみ思う。

「ボクの名前は露希。よろしくね、田中君。」

ベンチにゆっくりと腰かけた。 <> 田中 夕<><>2011/05/19(木) 23:23:16.89 ID:BP7IdocK0<> >>263

「コレくらい普通だよ」
「露希だね。よろしく」
ニコリと彼は微笑む。

「……あそこの病院にね。俺の幼なじみが入院してるんだ」
そして、彼は悲しそうな表情で話し始める。

「けど………4年間、眠ったままなんだ」
まるで教会で懺悔するように

「俺のせいでね……」
罪を告白する。 <> 露希<><>2011/05/19(木) 23:28:15.64 ID:Y/IKRlwa0<> 「…ねぇ、4年前に何が起きたの?

田中君は、その幼馴染の子に何を―?」

辛そうな表情で、自ら責め始める田中。
彼のその行為は、いつしかの親友に似ているようであった。
その光景を見てしまったら助けない訳にはいかない。

<> 田中 夕<><>2011/05/20(金) 00:00:50.66 ID:6jWxIMx+0<> >>265

「…………」
彼は目をつぶり、語り始めた。

4年前――彼が小学6年生の時の話。

彼は、幼なじみの《姫崎 琴葉》と彼女の家族と一緒にとある山までドライブしにいった。

ここから、だいぶ離れた山。その時、季節は秋。
紅葉が綺麗で有名なスポットで、その日は彼女の父親に誘われ、彼は一緒に行ったのだ。

彼女の家族と田中の家族は知り合い同士。だから親も許したのだろう。
それに田中は、彼女にいつも一緒にくっつくようにいた。

彼は、彼女に連れられ、彼女の両親とは別行動をとった。
山の探検である。紅葉のスポットとは少し離れた岩場。
そこまで彼らは探検した。
楽しかった。楽しかった。楽しかった……

……今の彼が、その時の自分に会えたら、彼はそれを止めていただろう。

何故なら……

「俺は、彼女と一緒にそこを探検してたんだ」
「先に行く彼女に、俺は着いていって……フッと崩れた岩場に隠れて、小さな祠を見つけたんだ」

そう言うと、一旦話をくぎり、辛そうに深呼吸をした。

彼はそして話を続ける。

その隠れてる祠――大人なら見つけられなそうなその場所に、彼は彼女からソッと離れそこへ向かった。

どうして、そこに向かったか……彼にはわからなかった。けど…まるで明かりに釣られる羽虫のように彼は行った。

そこで…彼は見つけてしまった…

不思議な形をしたモノを……それはまるで《剣》のような形をしたモノ。
変わってるのは丸い円盤状のモノを中心に、右に三つ、左に三つの柄のような棒。上下には、剣の刃なのがついてる部分と、その刃とは反対に位置する場所に持ち手の柄がある。変わった青銅剣が…祠に刺さっていた。

「……俺はソレを興味半分で抜いて、持ち帰ったんだ」
ソレがいけなかったのかな?……いや、そうだ

彼は苦しそうにそう言った。

ここで一旦、彼は話を区切った <> 露希<><>2011/05/20(金) 00:11:30.61 ID:+h+CRupq0<> >>266
「………」

4年前の彼の過去を黙って聞いていた。
今まで、誰にも話さなかったのだろう―悲しい思いが伝わってきた。

「…興味半分ね…。」

お供え物や置いてある物を無断で持っていくと言うことは、昔から何か起こると良く聞く。
でもそれと幼馴染に何が関係しているのか、今の露希には全く分からなかった。

<> 田中 夕<><>2011/05/20(金) 00:38:35.82 ID:/Y1oYsag0<> >>267

もし…露希に大昔の日本の神器について知識があるなら、彼が抜いたモノの正体がわかるかもしれない。
《十種の神宝》が一つ。《八握剣》
行方がわかならない神器の一つだ。

「ああ…もし…もし…俺がアレを抜かなかったら…琴葉は…おじさんは…おばさんは………」
震えながら、彼は話を続ける。

彼は、そのモノをリュックにいれ、彼を探してた彼女の元へ行った。
何かを隠す彼の様子に彼女は質問攻めしたが、彼は内緒にした。
家についたら、彼女に見せて驚かすために…
それは……今も叶わなかった。



おじさん達の元に彼女と一緒に戻り、車に乗り、彼らは山を出た。

異常が出たのはソコからだった。

『ニク――…ニ――イ……』
『ワタ――……ヲ……フ――イン……シタ……――ノ…ソ――……ヲ……モ――モノ……』
急に、彼の頭に途切れ途切れで声が響いた。まるで男のような…女のような…老人のような…子供のような声が…

それは彼にしか聞こえなかったようで、急に震える彼に、彼女と彼女の家族は心配しただろう。

そして声は段々とハッキリと聞こえてきた。

『コロス…ニドト…ジャマサレヌヨウ…モチヌシゴト……』

そう聞こえた瞬間、彼の視界は反転した。





「気付いたら…俺は潰れた車の中にいたよ」
「崖から落ちたらしくってね……」
「おじさんとおばさんは……もう顔がわからないくらいに…」
「けど…俺は《右手》以外は無事だったんだ……」

何故?何故だって?

「俺は…自分に覆いかぶされる感触が…あったんだ……」

俺のせいだ……俺のせいだ……俺が……俺が……

「助けてくれた…救急隊員が……言った言葉が聞こえたんだ……」

やめてくれ…やめてよ……

「『《彼女》がクッション代わりになって、破片や衝撃が彼にいかなかったみたいだな……彼は奇跡的に右腕の負傷だけですんだ』だと……」

ああ……なんで、俺が生きてるだ……… <> 露希<><>2011/05/20(金) 00:54:25.09 ID:+h+CRupq0<> 「その剣ってまさか……」

露希は八握剣のことを知っていた。
邪悪な物や罪のある物に対し、天罰を下す―と聞いたことがある。

きっとこの場合、勝手に抜いて持ちかえったことが罪、事故が天罰と言うことになるか。

「…田中君。ボクからは言えることは少ないけど…。

祠には謝罪の気持ちを込めて謝って。勿論、剣も返してね。

その幼馴染も、きっと起きてくれるはずだから…。」

当然のことを言ったまでだが、受け止めるのは田中次第。

「また愚痴を零したくなったら、またこの公園に来て。

ボクは田中君を応援する。」

そう言うとベンチから立ち上がり、どこかへ消えた―

/ここで落ちます。ありがとうございました! <> セツコ中<><>2011/05/20(金) 01:06:16.46 ID:DFRMtKdi0<> >>269

「………わかってます」
「……けど…わからないんだ…その山がどこにあるのか……」
そう震えるように声を出す。

そして…コレは大事な事だ…
何故ならその剣は……

「見つからないんだ…リュックの中に…母さんの話だとリュックの中は俺が持っていった物だけなんだ……」

何故…彼の右腕だけ怪我をおった?
何故…彼は右腕を平気に動かしてる?
剣の行方は?

…………彼も露希も気付かなかった…
一瞬だけ、彼の右手の甲に《丸い円に八つの棒が生えてる模様》が浮かび上がったのを…


そして…果たして、アレは天罰のせいなのか?
《声》の正体は……

……謎が謎を呼び…ソレに気付かず…彼は彼女に手を振り、月を見上げた。

三日月は…まるで彼を嘲笑ってるようだ。

/お疲れ様でしたー <> 夜行集団<><>2011/05/21(土) 10:46:14.34 ID:KLtrUQvL0<> ここは繁華街の中心に近い場所。
そこにある特殊な空間の中に、夜行集団の者たちが経営する『Perfect incompleteness』はある。
時刻はもう既に午後の7時は過ぎて、この店の開店時間になっていた。

この店の中は、まだ開店してから時間がたっていないのにお客でにぎやかであった。
単純に楽しみに来た客、自身の悩み相談に来た客、面白い話が手土産の客など多種多様。
その店内に黒蔵指導で、黒蔵の指名が来るまで待機している銀髪の彼がいた。

「おい、お前いつ指名されても大丈夫なようにしとけよっていう」

少しこの事に関しては頼りない黒蔵に心配していた。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 10:50:41.41 ID:lIS0CljQo<> >>271
「は、はいっ!」

緊張でカチコチに固まって虚冥にくっついている黒蔵は、借り物の服のなかで棒でも飲んだように
真っ直ぐ立っている。

人間で一杯な病院より、夜行集団の本拠地での仕事ならまだ何かあっても安心だから。
と何とか蟹を説得して仕事に出た筈なのだが。

(…着いて来るっていうし)

夜行集団に渡すよう言い含められていた、巴津火憑依の経緯を記した紙と
その封じの為の予備の赤龍の鱗が入った封書は、仕事前に虚冥に渡してある。

「頼むから、俺の髪変な風に切らないでね。あと仕事中は服の中に隠れててね」

小さな鋏で黒蔵の襟の後ろで髪の束をしっかり掴み、沢蟹ほどの大きさの青い蟹は黙ったままでいる。 <> 虚冥「」 お客『』<><>2011/05/21(土) 10:58:35.13 ID:KLtrUQvL0<> >>272
そうして二人で待っていると、ついにその時が来た。
しかし指名されたのは黒蔵ではなく虚冥なのだが、
それでも虚冥と一緒にいなくてはいけない黒蔵は、つまりバーターとして呼ばれた。

「オイ行くぞっていう」

そして仕事スイッチをONにした虚冥が黒蔵の手を引く。
この店の入り口に立っている彼等を指名したお客はこの店の常連で、
赤でまとめられたドレス風の服に身を包んだマダム風の美人であった。
この人は単純に楽しみに来た客だ。

「(おい、お前も自己紹介しろっていう。この前練習したあれだ)」

小声で彼女に聞こえないように黒蔵に虚冥は指示した。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 11:11:07.21 ID:lIS0CljQo<> >>273
「…はい!」

ぴりりと引き締まった虚冥の雰囲気に引きずられて、黒蔵も慌てて後を追う。
青い蟹はするりとスーツの襟に隠れた。

「いらっしゃいませ、お嬢様。
 新人の黒蔵と申します」

丁寧に頭を下げながら、一瞬、本当の名前を名乗ってしまったことに黒蔵は自分でも慌てた。
真名ではないが、それでも人間に名前を呼ばれるのは古い妖怪にとっては呪縛の意味も持つ。

(…やっちった。普段あんまり人と関わらないのがこういう時に裏目にでる)

少々青ざめつつ、どうかお見知りおき下さいますように、と続けた。 <> 零<><>2011/05/21(土) 11:17:52.83 ID:iNPDIpmN0<> 「奥様方、こちらになります。今日も楽しい時間を過ごしていってくださいね♪

ちなみに今日のお勧めは―」

と、零は他のお客の接待をしている。
なぜか黒蔵と虚冥が一緒に居ることに疑問を感じ、話しに耳を傾けていた。

「(ショタ君、焦ったら終わりだよ。普通にだよ、普通に。)」 <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 11:19:03.66 ID:KLtrUQvL0<> >>274
『あら?この子は新入りかしら?
 私は恭子。恭さんと呼んで欲しいわ』

落ち着いた雰囲気の彼女は黒蔵に興味を示した。
見る所どう考えてもこの店で働ける年齢には見えないし、
それに紹介の仕方がうまい具合にショタだ。

『この子は法律的にありなの?』
「心配いりませんっていうwwwwwwこいつかなりの童顔でwwwwww実は20くらいなんすよwwwwww」

黒蔵のヘマの罰として彼のお尻をばれないようにつねる虚冥。

「おいおいwwwwwwそれは違う人の名前だろっていう!!wwwwww
 すいませんね、こいつドジなもんで」 <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 11:23:13.74 ID:KLtrUQvL0<> >>275
恭子を席に案内している最中、彼女には気づかれないようアイコンタクトで

「(場合によっちゃあお前にもヘルプ入ってもらうからなっていう)」

と伝えた。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 11:32:44.24 ID:lIS0CljQo<> >>275
聞き覚えのある声に、少しだけほっとした。
そうだ、ここは人間の客が来る店だが、それでも店のメンバーは仲間の妖怪達なのだ。

(そうだ、焦らずに居なくちゃ)

しかし焦るよりも落ち込みスパイラルに嵌る方がよっぽど多いのだが。

>>276-277

「申し訳ありませんお嬢様。私のことは明とお呼びください。
 恭子様、ですね、ではお言葉に甘えて恭さんと呼ばせていただきます」

源氏名と言うものは良く判らないけれど、付けてもらったので抓られながらそれを口にした。

「見た目が幼いとは良く言われます。でもお酒はちゃんと飲めますよ」

(ううっ、俺だってもう少し背丈が欲しいよ…)

名を呼ばれることの束縛からは逃れても、違う方向からのダメージはあったらしい。
青い蟹に襟の後ろからちょんと突付かれ、黒蔵は慌てて虚冥と客を案内した。 <> 零<><>2011/05/21(土) 11:41:45.83 ID:iNPDIpmN0<> >>277
「(了解☆)」

ウィンクをすると、再び眼の前の客と会話をし始めた。

「そうだ、今日は奥様方に良い物を持って来たんだ。

ほら、私の親戚がフランスに住んでてそのワインを―ry」

>>278
「(あー、やっぱり身長と見た目を突かれたかぁ。

低身長でショタがこんなとこに居るんじゃ疑われるよ。)」

内心こんなことを思ったり。
零は慣れているのか、余裕ぶちかました状態で接客中 <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 11:46:50.65 ID:KLtrUQvL0<> >>278、>>279
最早執事喫茶かと突っ込みそうになる衝動を虚冥はぐっとおさえ、
お客と自分、そして黒蔵を席に座らせた。

『そうよ、恭さん。なかなかあなた可愛いし賢いわね。
 明ちゃんね、覚えた。でもそんなに堅苦しくせずにリラックスしてもいいのよ?』

座席に座った恭子はその優しい目で緊張に飲まれている黒蔵に話しかけた。
○○カクテルを頂戴。と言ってから虚冥に聞く。

『この子はなにかしら、あなたとはどんな関係なの?
 一緒に立ち会ってるんだから、あなたとの縁でこの子は来たんでしょうよ』
「え?・・・えー、っと・・・」

出会いとかの話の作りこみまではできていなかった為、返答に窮する。
まさか引きつける力をもつ妖怪なので誘いましたとは言えない。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 11:54:45.02 ID:lIS0CljQo<> >>279
零のあの卒の無さは見習わなくてはならないだろう。
そう、話題を膨らませるにはまず、人間のことをもっと知らなくてはならない。

>>280
「そんな風に褒めて頂いて、恐れ入ります。
 実はこちらの先輩と私とは、遠縁に当たるんです。それでこのお店にお世話になることになりました」

襟の後ろから蟹がそっと囁くとおりに、黒蔵は話をでっち上げた。

(恭子さん、ってどんな人なんだろう)

まず目の前の客人をそっと観察し始めた黒蔵は、その女性のハンドバッグから
零れてぶら下がるものに気を止めた。

(ん?)

目を擦る。良く見る。
黒く毛の長い何か、うっかりすればバッグの飾りのタッセルのようにも見える、それが瞬きした。

(あれ、多分辛いやつだ)

あれは前にも喰ったことがある。嫉妬とかの感情をを寄せられることで生じた障り。
黒い毛のなかから細い足を数本動かしたそいつは、女性のバッグの中にもぞもぞと入っていった。 <> 零<><>2011/05/21(土) 12:02:07.20 ID:iNPDIpmN0<> >>280-281
「(ぶふっww

先輩とか遠縁とか、容姿に凄く合ってる気がするwwww)」

黒蔵は真面目にやってるのにも関わらず、完全に茶化している。
しかし、そんな零も見た目的にはギリで危ないだろう。
人間で言う青年期ってやつで大人でもなく子供でもなくモラトリアムとかなんとかってry

「あ、こちらの奥様は初めましてですね☆

私は友夜っていいます、呼び方は自由でいいよ♪」 <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 12:07:51.20 ID:KLtrUQvL0<> >>281
へぇ、と恭子は両手を口の前で合せ、驚いたリアクションをした。
そして自分の顔を黒蔵の顔にグッと近づけ、まじまじとじろじろと観察した。

『あなたに遠縁なんていたのね。初耳。
 それにしても似てないわね〜、髪だけじゃなく顔も、やっぱり遠縁なのかしら。』

そして満足したのかまた自分の場所にもどって座る。
今まで黒蔵を見ていたのでバッグのもぞもぞなど知る由もなく、
また霊感もない為自分のバッグに今何かがいるのかも知らなかった。

「(おい、今のはなんだっていう。)」

しかし虚冥はそれに気づいて黒蔵に耳打ちする。
見たところまだ恭子に変化はないがやはり心配なのだ。

>>282
話しているととなりから零が。

『あら、はじめまして友夜ちゃん。
 この子は明ちゃんとはまた違って活発な子なのね』

キラッと登場した零に恭子の意識は向けられる。だから余計に障りには気づかない。

『あなたはでもあまりみたことがないわ。
 最近に入ったのかしら?』 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 12:19:10.96 ID:lIS0CljQo<> >>282-283
(あれ?俺何かへました?)

零の笑いの雰囲気を感じ取って、おろおろしだす黒蔵。
そこへ恭子の顔が近づいて、余計におどおどする。

「あの、カクテルは…」

しかしまじまじと見つめられて逃がしてもらえない。
赤面してへどもどしているうちに、さっさと恭子は席に戻ってしまった。

「すみません、カクテルについて私はまだあまり詳しくないものでして」

そっと虚冥を引っ張って、裏へいける?、と目配せした。
今は零が恭子の相手をし始めたので、場を離れるチャンスはあるだろうか。 <> 零<><>2011/05/21(土) 12:25:44.52 ID:iNPDIpmN0<> >>283-284
「貴方が恭子さんですね?噂には聞いていましたよ!!

ちょっと家庭の用事でなかなか来れなかったものですから。」

(何かするならば今のうちですよ。)

その場を読んで、二人に目配せした。
離れるならば、今のうちだ。

「明君って凄く照れ屋で可愛いから、優しくしてあげてくださいね。」 <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 12:35:00.71 ID:KLtrUQvL0<> >>284
そでを引っ張った黒蔵の目から、どうやら単純なものではないらしい。
恭子の鞄に入ったソレについてここですぐ話せないと裏に誘う黒蔵に、
分かった、とアイコンタクトをしておもむろに恭子に話しかけた。

「スイマセン恭さんwwwwwwちょっと席空けて良いっすか?
 ちょっとこいつうちの一番に挨拶行かせなくちゃいけなくて、」
『いいわよ、氷亜ちゃんはそんな子に見えないけど、
 まあ礼儀は必要よね。待ってるわ』

恭子はマダムな風格があるだけに二人の事はあっさり認めた。
そして手振り二人を行かせた。

>>285
二人は立ち上がった。スタッフルームと言うようなところだ。
そして裏にいきがてら虚冥は零に、

「スマン友夜wwwwwwということで後は頼むっていうwwwwww」

と言い残していった。

『あら何の話かしら?
 私としてはあまり派手な事はしたつもりはないけど』

恭子は零の話に食いつき、自分が何かしたかしらと思いだしている。
派手ではない?それはもちろん間違いだ。
調子に乗った商法の会社が彼女によって買収された事は一度や二度の事ではない。
業界では彼女は≪破壊女神≫と揶揄される人物なのだ。

『明君可愛いらしい子ね。ああ、もちろんあなたも可愛いわよ』 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 12:47:50.06 ID:lIS0CljQo<> >>285
(男の零に可愛いって言われる俺って一体…)

しかも初対面の客人の前でだよ?もうどんな顔したら良いのか判らないじゃないか。
襟の後ろで何かが震えてるのは多分、蟹が堪え笑いしてる。

>>286
色んな意味で心のあっちこっちをへし折られながらも、裏へ向かった黒蔵は、
話せる場所に来ると虚冥にまじめに向き直った。

「あれは取った後に必ずまた次のが居るんだ。そういう性質の奴だから。
 あの女の人の周りに、あれを産む親の蟲を寄生させてる誰かが居る」

餌にする黒蔵には非常に都合が良い性質の障りではある。
あの人何時も来るお客さん?だったら何時も食べれるのは嬉しいけどね…。
黒蔵は、人間にとってはあまり嬉しくない種類の笑みを浮かべた。

親を寄生させている人物は、大丈夫なのだろうか。
そしてそんな人物が周りに一人以上いたら、恭子もいずれ無事ではすまないだろう。 <> 零<><>2011/05/21(土) 12:54:43.94 ID:iNPDIpmN0<> >>286-287
「いってらっしゃ〜い♪」

二人を無事に離れさせることは出来た。
後はこの恭さんの相手である。
なんか雰囲気的にタダものじゃないことは分かっていた。

「え、私が可愛いって…凄く照れるじゃないですか/////

そんな恭さんにはサービスですよ♪」

そう言うと恭子の手を取り、ちゅっとキスをした。
アレ、普通のホストってこんなことするの?と中の人は思うのだった。

<> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 13:03:15.41 ID:KLtrUQvL0<> >>287
蟲、式神的なものなのかとあごに手をやり話を聞いていく。
しかしその原因となる人物がいると黒蔵が話した時に、
虚冥はその手を上にやって頭を掻く。どうやら困った事態の様だ。

「親・・・ねえ・・・。
 あの人、あんな見た目だけどやる事はやる人でな、
 心当たりのある人物なんてそれこそ数えられんほどなんだっていう。」

恭子は一方からは好かれているものの、買収された方はそれこそ恨み骨髄である。
だからすぐに解決できる問題ではないようだ。

「・・・とりあえず、今回のあれはお前が喰っといてくれ。
 親の方は俺が探しとくからっていう。もちろんばれんなよ?」

>>288
謙遜する零の表情を満足げに見つめる恭子。
どこか隠しているような節が感じられるが、その事に気にしていても意味がないと判断して、
この目の前の目の保養に勤めていた。

そうしたらこの零の手への口付けだ。

『あらあら、とても積極的な子ね。この店でもそんなことする子は基本いないわよ?
 でもありがとう。これで10歳ばかし若がえった気がするわ
 こんな30のおばさんでごめんなさいね。』

零の口付けに驚いたもののまんざらではないようで、
彼女が少し照れくさそうに笑った。
しかし少し落ち着いたように

『でもそれはあまり安売りしない方がいいわ。
 そういうのはもっと進んでから。ここぞって時にすれば、それはもう最強兵器よ』 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 13:15:58.29 ID:lIS0CljQo<> >>288-289

「うん、とって喰うだけなら簡単だから直ぐできる」

俄然やる気の出た黒蔵は目を輝かせた。
人と関わらない黒蔵は親の蟲とは滅多に出会わないけど、その美味しさは知っている。
どうやらこの仕事の違う意味での楽しみを見つけたらしい。

「虚冥さんがカクテル出すときに気を引いてくれたら、俺、蟹に手伝ってもらって
 あの人の荷物から障りを取るよ」

打ち合わせが済むと、グラスをトレイに載せて戻る虚冥に付いていく。
青い小蟹は、黒蔵の袖の中でこっそりとスタンバイ。
隙があればバッグに取り付いて、障りを放り出す手筈だ。

そして戻ってくれば零が客人と妙に甘い雰囲気である。

(げっ、俺もいつかあれやんなきゃ駄目なの??)

虚冥さんはどう反応するんだろう?とドキドキしながら様子を伺った。 <> 零<><>2011/05/21(土) 13:23:09.95 ID:iNPDIpmN0<> >>289-290
「恭さん、一つ勘違いしてますよ。

私が皆にこれをやると思いますか?恭さんだからやったんです。

ここに来て、嫌な気分を少しでも和らいで貰えるよう、お呪いをかけたんです。

それに私、恭さんのこと凄く好きですから☆」

なんかもう凄いことになってる気がする、いやなっている。
そうこうしているうちに二人が戻ってきた。

「二人ともお帰りー。これならもう大丈夫だね。

私には別の接客あるんでまたー♪」

二人が戻ってくればもう安心。
零は三人に手を振って、別の接客へと取り組み始めた。

/お二人とも、ありがとうございました!&お疲れさまでした! <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 13:27:15.43 ID:KLtrUQvL0<> >>290
OKっていう、と言ってから虚冥はあるドリンクを手に取りトレイに乗せた。
黒蔵は確かにドジっ子属性が付加されているが、
ことさら食事に関してのヘマはめったにしない。
しかしそれは黒蔵に言うと皮肉になってしまうので虚冥は黙っておいた。

「恭さん、ちょっと試し飲みして欲しい奴があるんすよwwwwwwwwただでいいので是非!!
 恭さん別にチェリー酒とか苦手じゃないですよね?wwww」

そういいながら恭子の零とは違う方の隣に座ってカクテルを進める。
恭子はなにかしら、とそれに興味心身なため、バッグには全く気が行っていない。

>>291
『ふふふ、そこまでできるのなら心配はいらないわね』

くすくすと口を手で隠しながら上品に笑った恭子。
そして他の席に移る零にありがとう、と軽くチップを払い虚冥の方に向きなおる。

その虚冥の方は少し苦々しい顔で、
過剰接客は危ないぞ、とあいつに少し小言をやらなくちゃなと思っていた。

/こちらこそありがとうございます <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 13:41:23.85 ID:lIS0CljQo<> >>291
(できねぇ。俺には絶対あんなの出来ねぇ…)

零のマダムキラーぶりに若干引き気味である。
零のことは暗黒物質の製造者、というイメージを持っていた黒蔵だが
この件でそのイメージは大きく変わりそうである。

しばし固まっていた黒蔵の袖の中で、つんつんと蟹が注意を促した。

>>292
食べることにかけては失敗しないが、食べる対象の選別となると話は別だったりもする。
ヒダル神とか暗黒物質とか葛根湯の瓶とかいろいろあったなぁ…流石ゲテモノ喰い。

虚冥が恭子の気を引いている間に、黒蔵はそっと手をバッグに近づける。
蟹が袖から走り出てするりとバッグにもぐり、鋏になにかを摘んで戻ってくる。

(え?ちょっとまって?)

色とりどりのもっさり蟲。しかも蟹さん何往復かしてるし。

(多すぎる、多すぎるよこれ?)

食べる黒蔵には嬉しい悲鳴であるが、これほど色の種類が豊富なのは、
やはり親の蟲が一匹や二匹では済まないのだろう。
ひくひくと痙攣するもっさり蟲で黒蔵の袖とポケットの中を一杯にすると、
青い小蟹はまた黒蔵の襟の後ろへ隠れた。

(…あとで食べよう、これ)

流石に客人の前では頬張れない。 <> 虚冥「」 恭子『』<><>2011/05/21(土) 13:50:37.60 ID:KLtrUQvL0<> >>293
黒蔵が傍から見ても当人から見ても明らかに不自然な行動をしていたが、
恭子の方は全く気付かず、新作に舌鼓をうっていた。

『〜♪
 私としてはもうすこし甘さは抑えた方がいいと思うかしら』
「そ・・・そうっすかっていう・・・」

しかし虚冥の方はがっつり見ていた。
恭子の鞄から大量の蟲の塊が出てきたところを。少し気分が悪くなった、流石に。

そうこうしていると恭子の鞄がなった。
それは蟲ではなく単純に携帯が鳴っていた。

『あらごめんなさいね。

 はい、恭子だけどなにかしら?』

そして恭子は携帯の向こうの相手と話しだす。
その話の内容はなにかの商談のようで彼女もまたスイッチがなった。

『ごめんなさい、私用事が出来ちゃったからもう帰るわ。
 また来た時はうんと注文してあげるから許してね。それと急いでるから送らなくても良いわ』

携帯閉じてから恭子はそう言って店から去った。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/21(土) 14:02:32.68 ID:lIS0CljQo<> >>294
「どうかお気をつけてお帰り下さいませ。またのお越しをお待ちしております」

虚冥を一緒に恭子を見送った後、黒蔵はポケットを押さえて裏へ戻る。
そろそろ蟲が回復して袖の中で暴れ始めていたのだ。

「だーッ!何なんこれ?こんなん見たこと無いよ??」

わしわしと蟲を頬張る黒蔵、多分虚冥はどん引きだ。
黒蔵のような貧乏人とは縁遠い金持ちの世界には、まだまだ多くの蟲が潜んでいるようだ。

「でもこの仕事っていいね虚冥さん、美味しい!」

しかしそのもっさり蟲はどう見ても美味しそうに見えないのだ。

『お前、可愛いって言われてたけどなww』

喋るのを我慢していた蟹が、ようやくここで初ツッコミを入れる。

「折角忘れてたのに…」

小さな蟹は黒蔵の髪の毛を掴んで、首の後ろで大笑いしていた。 <> 虚冥<><>2011/05/21(土) 14:12:21.13 ID:KLtrUQvL0<> >>295
裏へいそいそと走って行った黒蔵の後を追った虚冥は、
こんなことなら待っておけばよかった、と捕食シーンを見せられ後悔していた。
色とりどりの虫達が彼の口の中で砕かれる。バキバキ、カサカサ。
彼の顔からは血がさっと引いていた。

「・・・本来ホストは・・・旨くはねえんだけどよっていう・・・」

若干吐き気が出てきた虚冥は、それを誤魔化すために強めのお酒をショットグラスで飲み、
黒蔵に引きながら突っ込んだ。

「これがこいつの売りなんだよ蟹wwwwww
 でもナイスプリティーだったぜ、恭さんに覗きこまれてるときなwwwwww」

そして虚冥はまた指名されても良いように準備をしてから、
少し休憩を取る事にした。

/僕もこれで落ちにします!!絡みお疲れさまでした!! <> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 21:34:27.50 ID:JOQw9nFL0<> とある山の中。

街から少し離れたその場所に、場違いな人間がいた。

ボサボサの黒髪で、どこにでもいそうなごく普通の顔立ちの高校生くらいの少年。

服装は、高校のジャージである。

「この山じゃないな…」
「岩場…紅葉が綺麗な隠れ家的なスポット」
霊感も妖気もない普通な高校生…けどここまで来るのに息一つみだしてない普通じゃない人間。

彼は一体何しに来たのだろう。 <> 瞳<><>2011/05/21(土) 21:45:03.98 ID:qaSl4srAO<> >>297
そのすぐ近く、黒い着物の少女が通りかかる。

「おや、珍しいな。こんな山中に…学生かな?」

登山者という訳でもなさそうだ。瞳は、目的が気になり話しかけてみる事にした。

「あなた、ちょっといいかな?どうして、こんな山中に?もしかして、道に迷ったのか?」

<> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 21:53:50.36 ID:FXNXfB4q0<> >>298

「ん?」
「こんにちは」
声に反応し、そちらを見ると、頭を下げ挨拶をする。

普通、こんな山の中で着物を着た人物に会ったら普通は怪しむか驚くだろうが…彼は普通に挨拶した。

「師匠みたいな世捨て人かな?」
心に思った事を、ついつい声に出しながら彼女を見る。
そんな人はこの現代にいないだろうってツッコミが来るだろうが…

「少し思い出の場所を探してたんです…」
「……この山じゃなかったみたいですけど」
ハハハ…と少し悲しそうに笑いながらそう説明する。 <> 瞳<><>2011/05/21(土) 21:59:39.45 ID:qaSl4srAO<> >>299
「師匠?それに世捨て人って…まぁ、こんな格好だからな。
思い出か…」

何か訳ありそうだなと察する。

「大切な思い出なんだな…」

<> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 22:08:52.24 ID:JOQw9nFL0<> >>300

「はい。俺に武術を教えてくれてる師匠です。たまに、(殺人衝動が抑えられなくって)暴走しますけど…」

ハハハ…と苦笑いをする。
()内がなんか危険な気がするが……


「………………大事。うん。大事だね」
「…俺は忘れちゃいけないんだ……」
すごい悲しそうに空を見上げ、彼は言う。
どうやら悲しい思い出のようだ。 <> 瞳<><>2011/05/21(土) 22:16:11.58 ID:qaSl4srAO<> >>301
「ぼ、暴走!?」

(なんだ?危ない人なのか!?)

危ない言葉に驚いてしまった。

「よほど大切なんだな…」

その表情を心配そうに見つめる。

「なあ、もし良かったらでいいんだが、その思い出の話しを聞かせてくれないか?
もちろん、話したくなければいいんだ。」

自分に話すことで、少しでも彼を助けることができたらいいと思い、尋ねてみる。 <> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 22:26:23.01 ID:58yekT1h0<> >>302

「まあ…普段は優しくって、良い人なんですけど。最初の頃、師匠が暴走した時は俺、全身骨折しましたから」

ハハハ!と楽しそうに笑いながら彼は言う。
うん…笑い事ではないね。

「…………まあ、いいですよ」
そして彼は語り始める。
詳しくは>>266>>268の話を…

「……祟りなんですよ…きっと」
「だから…俺だけ生き残って…彼女の両親は死んで…彼女は眠ったままで…」
「……その剣みたいのは、リュックの中にはなかったけど…」
「その場所を探して…謝りたいんです……そうすれば…彼女は起きるかも……」

……余りにも重い話になったが…疑問があるだろう。

剣の行方
声の正体
そして……それは本当に天罰だったのか? <> 瞳<><>2011/05/21(土) 22:42:56.07 ID:qaSl4srAO<> >>303
「祟り…か…」

悲しそうな表情をする瞳。
大切な人を失うのはあまりにも悲しいこと、それを瞳はよく知っていた。しかし、その彼女はきっとまだ助けることができる。

「私にも手伝わせてくれ。」

瞳は、悲しんでいる人間は見たくなかった。だから、彼の力になりたいと思ったのだ。
<> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 22:48:21.40 ID:jBWrgEiP0<> >>304

「え?……いいんですか?」
彼女の提案に、目を丸くさせ驚き、恐る恐る彼女に聞く。

なお…その剣みたいの正体。
《十種の神宝》の一つ《八握剣》だと彼女は気付くだろうか? <> 瞳<><>2011/05/21(土) 22:59:32.76 ID:qaSl4srAO<> >>305
「ああ…もちろんだよ。
妖怪のせいで、悲しんでいる人間は見たくないんだ。私は、妖怪と人間の共存を望んでいるから…」

と、悲しそうな表情で言った。

(しかし、剣か…山を探すのも大切だが、その剣についても調べてみた方がよさそうだな…)

剣の正体については、残念ながら瞳にその知識はなかった。

<> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 23:13:38.53 ID:JOQw9nFL0<> >>306

「妖怪?」
その言葉に彼は疑問を持つ。
霊感もない普通の高校生だ。現に目の前の彼女が妖怪とも思ってない。
だが、普通ならその言葉を怪しむだろう。

……普通なら…だが……

「もしや…貴女は世捨て人で、自然と平和を愛する霊媒師なんですね!」
……なんか凄い勘違いをし始めた。

「祟りって妖怪の仕業なんですか?………謝って許してくれるのかな…」
妖怪の存在は信じてるようだが…彼は妖怪に何回も会ってるがそれが妖怪とは一回気付いてない…

つまり彼女の正体も全然気付いてないのだ。

なお『八握剣』はその珍しい形の為、調べたらわかるかもしれない。 <> 瞳<><>2011/05/21(土) 23:23:11.38 ID:qaSl4srAO<> >>307
「実は、私も妖怪なんだ…なんて、信じられないかな?
まぁ、平和な世界を作りたいとは思っているがな。」

とりあえず、本当のことを話してみる。

「祟りの正体は、私にもまだわからない。だけど、調べてみるよ。」

許してくれるかどうかには答えられなかった。
なんの根拠もなしに軽はずみな気持ちで、きっと許してくれるなどとは言えない。かといって、許してくれないかもなどとも言えない。
今は、なんとも答えられなかった。それが辛くて、少し悲しそうな顔をした。 <> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 23:37:09.71 ID:N3BXiQVl0<> >>308

「なん…だと…!?…」
流石の彼でも、目の前の彼女の妖怪発言には驚いたのか
ぷるぷると震え、恐怖におののく…

「さ…」
恐怖に…

「サイン下さい!!!」
…………………………
( ゚Д゚)
(゚Д゚ )
(゚Д゚)

何処からともなく色紙とサインペンを出し彼女に言う。

「初めて妖怪見た!やっぱり妖怪っているんだ!凄いな!」
……反応が普通じゃなさすぎた。
まあ、彼の家に妖怪が二匹いるのだが…それも彼は気付いてないんだが…


「そうですか…」
「……そんな悲しい顔しないで下さいよ」
「ホラッ!」
ニカッと笑いサムズアップしながら彼女に言う。
…本当は彼が1番辛い筈なのに… <> 瞳<><>2011/05/21(土) 23:44:51.36 ID:qaSl4srAO<> >>309
「サ、サイン!?まぁ、いいが…私のサインなんて価値ないと思うぞ…
そもそも、妖怪はそう珍しいものじゃないよ。人間と共に暮らしている妖怪だってたくさんいる。きっと、あなたの近くにもきっといると思うぞ。」

言いながら色紙にサインをする。色紙には、わりときれいな文字で『瞳』と書かれている。

「ははっ…そうだな。」

と、笑ってみせた。
しかし、心の中では

(辛いはずなのに…強い人なんだな…)

と、思っていた。 <> 田中 夕<><>2011/05/21(土) 23:53:29.01 ID:jPHkOzkT0<> >>310

「ありがとうございます!」
サインを嬉しそうに受け取る。

「そうなのか?俺会った事ないのに…」
「その代わり、鶏で腹話術する人や珍しい鳥や通り魔のサムライとかには会った事あるんだけどな」
田中くん…それら妖怪や。

「そういえば名前言ってませんでしたね」
「俺は田中 夕と言います。貴女の名前は……瞳?」
サインの名前を見て、不思議そうに聞く。

「そういえば瞳はなんて言う妖怪?」
少し不思議そうに首を傾げながら <> 瞳<><>2011/05/22(日) 00:06:05.39 ID:sUQbT9fAO<> >>311
「それは妖怪じゃないのか?まぁ、会ってみなくちゃわからないが。」

と、軽くツッコミを入れる。

「ああ、私は瞳だ。よろしくな、夕。
あ、私は九十九神だ。九十九神って知っているか?物が魂を持って妖怪化した存在のことだ。私は、刀の九十九神なんだ。」

右手を刃に変化させ、それを見せる。そして、すぐに元に戻した。

「まぁ、こんな感じのことができるんだ。」
<> 瞳<><>2011/05/22(日) 00:07:31.10 ID:sUQbT9fAO<> >>311
「それは妖怪じゃないのか?まぁ、会ってみなくちゃわからないが。」

と、軽くツッコミを入れる。

「ああ、私は瞳だ。よろしくな、夕。
あ、私は九十九神だ。九十九神って知っているか?物が魂を持って妖怪化した存在のことだ。私は、刀の九十九神なんだ。」

右手を刃に変化させ、それを見せる。そして、すぐに元に戻した。

「まぁ、こんな感じのことができるんだ。」
<> 田中 夕<><>2011/05/22(日) 00:15:59.84 ID:P+ozta4W0<> >>312

「いやいや、もしかしたら違うかもしれないじゃん。妖怪って言ってないんだからきっと妖怪じゃないんだよ」
「それに父さんみたいに毎朝バスと走って勝負して勝つ人だっているし」
……なんか、馬鹿っぽい理屈だが、気にしたら負けかな?
……というか彼の父親……

「おお!凄い!」
「九十九神か…」
なんかジロジロと見ながら、関心してる。

<> 瞳<><>2011/05/22(日) 00:28:18.19 ID:sUQbT9fAO<> >>314
「そうだな、人間だっていろいろな奴がいるからな。本当に人間かも…
バ、バスと競争して勝つ!?そ、それはすごいな…」

色々な人間を見てきたが、バスより速い人間なんて初めてだった。

「そんなに凄いか?」

<> 田中 夕<><>2011/05/22(日) 00:36:49.78 ID:aGB7a04F0<> >>315

「まあ、父さんの趣味が忍術という名の運動だし、俺も母さんに銃火機の使い方やサバイバル技術を叩き込まれたし」
…………なんか…妖怪と同レベル?


「だって凄いじゃないですか?刀から人になるって事は持ち主だった人が貴女に余程思い入れがあったりしたんじゃないんですか?」
「それにカッコイイじゃないですか」
目をキラキラ輝かせながら彼女を見る。 <> 瞳<><>2011/05/22(日) 00:45:34.14 ID:sUQbT9fAO<> >>316
「忍…術…?銃火機…?日本には、まだそういった人々が存在していたんだな。」

昔は、忍などもたくさんいたし、戦時中は銃火機も多く使用されていた。しかし、まさか現在も存在したとは思わなかった。瞳は、驚きを隠せない。

「ああ…私の持ち主だった人は素晴らしい人だったよ。今の私がいるのもあの人のおかげなんだ。」

どこか遠い目をしながら語った。 <> 田中 夕<><>2011/05/22(日) 00:54:42.95 ID:ev1om2RO0<> >>317

「まあ、友達とかに言っても『面白い冗談だな』って流されるけど」
そりゃあ、今の時代そんな人は滅多にいない。
だから彼の友達が信じないのは無理もないし彼女が驚くのもしょうがない。
ただ彼はその普通じゃない環境を普通だと思ってしまっている。だから妖怪とかも信じるのだろう。

「そうなんですか…」
「さぞ素晴らしい人なんですね」
瞳の様子を見て、ちょっとまずかったかな?…と苦笑いし

「さて…じゃあ俺はそろそろ帰ります」
「母さん達も心配するだろうし」 <> 瞳<><>2011/05/22(日) 01:03:53.53 ID:sUQbT9fAO<> >>318
「ああ…素晴らしい人だったよ。私が、人間と妖怪の共存を目指すきっかけになった人なんだ。」

再び遠い目をした。

「帰るのか、気をつけてな。」 <> 田中 夕<><>2011/05/22(日) 01:11:24.23 ID:rFBoiXno0<> >>319

「はい!」
「さよなら。瞳。人間と妖怪の共存…俺、応援してます」
爽やかに微笑み、手を振ると、彼は山を降りていった。

/お疲れ様でしたー <> 瞳<><>2011/05/22(日) 01:17:28.35 ID:sUQbT9fAO<> >>320
「ありがとう。私もあなたに協力するよ。それじゃあな。」

と、手を振りかえし見送った。



/絡み乙&ありがとうございました。
<> 露希&白龍<><>2011/05/22(日) 14:29:05.82 ID:i0lI3nXDO<> 「・・・なんか危ない感じがする・・・。」

『露希、戦闘の準備を。』
ある山奥を歩いているときだった。何か怪しげな妖気を感じ、警戒体制に入る。 <> 波旬<><>2011/05/22(日) 14:44:22.68 ID:dioVZR0pP<> >>322

 人の欲望を掻き立てる、怪しく明るい満月の夜。
 高い高い一本杉の真上に、その巨大な月の光をハロのように携えた一人の存在が現れ、直後に消える。

 邪悪で、莫大な妖気が現れたと思った瞬間!
 露希のすぐ前に降りたった・・・邪悪で巨大な存在。

「あははぁッ!!」

 本物の・・・魔王。
 異常なほどに明るい月明かりが、その姿を映し出す。
 古の神子のような服を来た・・・窮奇をそのまま幼くしたような姿だった。

 貪欲の波長が露希の心を写し取り、奪い去っていく。

「はじめまして、私は紫狂の波旬と申します」

 恭しく、まったく敬意を感じさせずに頭を下げるその存在。

「さっそくですが・・・」

 しかし再び頭を上げたとき、その顔は露希とそっくりになっていた。
 いや・・・顔だけではない! 妖気の質! 雰囲気!!
 全てが露希の生き写しと成っていた!!

「この顔で貴女の好きな殿方を・・・嬲り殺しても『良い』ですかぁ?」 <> 露希&白龍<><>2011/05/22(日) 14:51:16.68 ID:i0lI3nXDO<> 「なっ!?」

自分の前に迫り来る恐怖、それに驚きを隠せない。

そして真似された力、要はクローンと言うべき存在。それをどうすれば良いのか考えていた。

「ボクは露希。ボクの真似は良いけど・・・氷亜さんや瞳に何かするのは許さないよ?」

『・・・流石、と言っておきましょう。』 <> 波旬(ver露希)<><>2011/05/22(日) 15:03:43.23 ID:dioVZR0pP<> >>324

「キミの話なんか聞いてないよぉ!!」

 いきなり眼前に迫る、威圧する魔眼。
 それは自分の生き写しということを差し引いても、
 おぞましく波打つ欲望が浮き彫りになっている!!

「私がやりたいと欲したからやるんだぁ・・・」

 ニタニタと微笑むその笑顔に秘められた物は・・・悪意ではなく、無邪気。
 右掌を露希の胸にあてる・・・その手の甲には竜紋のようなものを浮かべて!!

「デュアルクロス・アルエット」

 突如、巨大な白竜の衝撃波が露希を撃ち抜いた。
 幾許もの落雷が一箇所に落ちたような爆音と共に!
 辺りの森は白い閃光に照らされ、真昼のような明るさになる!!

 しかも・・・恐るべきことに!
 この魔王は、本来の威力を“倍化”させていたのだ!!

「あははははッ!! なかなか便利な力だねぇ!!」 <> 露希なか<><>2011/05/22(日) 15:12:21.82 ID:i0lI3nXDO<> 「なんでーー」ザシュッ

鈍い音で露希の声は掻き消された。

そのまま、後ろの方へと吹き飛ばされ意識を失いそうになる。

「な・・・なんでそんなことを・・・?ボクには理解できない・・・・・・ガハッ」

胸を抑えながら、吐血。
その血は地面と剣を染めていく。

「ゲパルド・ドラゴーネ!」
作り出された刃が波旬へと飛ぶ。 <> 波旬(ver露希)<><>2011/05/22(日) 15:26:04.79 ID:dioVZR0pP<> >>326

「なんで・・・? あはははははっ! キミ達は理由が無いと一々動けないのかい!?」

 狂気を浮かべた笑顔が露希に向かって首をかしげる。
 その顔は露希と寸分違わないが、誰が見ても明らかに露希のものではなかった。

「やりたいからやる! 壊したいから壊す! 戦いたいから戦う!
 それで『良い』じゃないか!! 何が『悪い』んだい? キミ達妖怪なんて大抵そうだろう!!」

 作り出された刃を平然として、叩き壊す。
 相手の力を、長所を、いいとこ取りだけで写し取る特性“貪欲”・・・。
 この力に当てられた時点で、露希の全ては知り尽くされ、上回られてしまった!

「じゃあ、とっとと退場願うよ。この顔が二人も居たらめんどくさいからねぇ」

 竜紋の浮かんだ右手を翳し、そこから莫大な妖気が渦巻いていく!
 やがてどこからとも無く、白い羽が月下に舞い散った。
 あろうことか。純白のあの力さえも倍化され、写し取られてしまう・・・。

「双頭龍戟・アブソリュートスパイラル」

 凄まじい量の力を放つ、2頭の巨竜が辺り一面を真っ白に照らした。
 2頭は螺旋のように絡み合い、力無き少女に向けて猛進する・・・ <> 露希&白龍<><>2011/05/22(日) 15:39:03.82 ID:i0lI3nXDO<> 「そんな・・・っ・・・。お願いだから止めてっ・・・、皆大切な人たちなんだ!!お願い・・・」

しかし、その願いは叶わず・・・。残酷な現実が目の前にあった。

「白龍・・・ごめんね・・・・・・新たな命を貰えても、ボクは何も出来なかった・・・。せめて君だけは・・・!」

『露希、それはーー』

こちらへと向かい来る龍とは逆へと剣を投げ捨てる。
「・・・ありがとう。」

そう言い残すと、2匹の龍に飲み込まれた。

その月夜に残されたのは生死不明の無惨な体と、凛々しさを無くし錆びれた剣だった・・・。 <> 波旬(ver露希)<><>2011/05/22(日) 15:51:40.60 ID:dioVZR0pP<> >>328

 轟音が、辺りに鳴り響いた。
 地面は抉れ、辺りの木々は消し飛び。

 そこには辛うじて人の形を止めている露希が倒れている・・・。

「あはっ! あはははははははは!!
 愉しいなぁ・・・他人の欲しいモノを壊すのはさぁ・・・!」

 狂喜を映す笑顔が露希に語りかける。
 その背後から・・・あの黒く、おぞましい逆心の触手が表れた。
 あらゆる者から力を写し取る・・・窮奇すらも例外ではなかった。

「さぁーて、身体は程よく壊したし・・・次は心だ!」

 その眼は紫に濁り、窮奇のそれとまったく同じ色になっていた。

「愉しみだなぁ・・・、身体も心もグッチャグチャになったキミを見たら・・・。
 零くんはなんて思うんだろう!? あはははははははははははははははははははッ!!!」

 満月の下に、聞くものを戦慄させる笑い声が響き渡る。
 抵抗のできない露希。その心を、見えざる黒い触手が掻き毟り始めた・・・。 <> アリサ<><>2011/05/23(月) 21:40:25.08 ID:FntzXI5t0<> クスクスクスクス…

夜の繁華街。
満月が夜空に輝き、月光に負けない街のネオンが鮮やかに色どう街。

そこに、通り行く人々が皆、振り向く程の《美女》が歩く。

誰もが振り向くような美貌。
露出度が高いセクシーな服とはちきれんばかりの胸。
風に靡かれ、月夜に照らされる美しい金の長髪は、まるで男を誘うように踊る。
赤い瞳は、まるで宝石のように輝き。その潤った唇は、何かを求めるように色っぽい。
コツコツと音を鳴らす、赤のハイヒールは男を呼ぶ合図のように…

クスクス…と女は通り行く人達を品定めするように見ているが、誰もその様子に気付かない。

「見つからないわねぇ…やっぱりこの街は広いわね」
「いっそ適当に誰か捕まえようかしら?」ゾワッ
女から《呪》のようなおぞしましい《魅了》を出し、目が不気味に輝く。

妖怪や霊感のある人間ならわかる…《危険》だと。
だがこの女も馬鹿ではない筈だ…こんな人が多い場所で暴れては面倒になる事を…

コレは恐らく、妖怪などが反応し自分に近づかせる為の《餌》だ。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/23(月) 22:04:18.80 ID:HFKKgZtlo<> >>330
眩い程に絢爛としたネオン街。
人混みでごった返す道の中、一人分の頭が突き出していた。
2mを超える背丈に、黒いシャツを着た大男。
生温く、湿気た不快な空気を肌に感じ、東雲は不愉快そうに顔を歪めた。
だが、それ以上に虫唾が走るのは、

「……」

人々が振り向く視線の先には、美貌の女性。
しかし、それは『人ならず』、危険な存在。

東雲はじり、とコンクリートを踏むと、魔女のほうへ足を向けた。
『餌』に、自ら食い付く為に。 <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/23(月) 22:09:14.39 ID:e36Kz7uIo<> >>330
制服のスーツ、ホストクラブから使いを言いつかってのその途中。
上着は脱いで、黒いシャツとズボン姿の小柄な少年は、足早に繁華街の人の流れを横切っていた。
その襟元にしがみつく小さな青蟹が、先に妖気に気づく。

〔おい、何か居るぞ!気をつけておけ〕

一息置いて、少年も気配を感じて立ち止まるとあたりを見まわす。
何時もの並木に、店のネオン看板、コンビニの明かり。
遊びに来た客、仕事帰りの人、派手な服の女性も珍しくは無い場所だけれども。

「あの人かな?」

少年はこっそりと蟹に囁く。
邪眼持ちの蛇の一族故に《魅了》には掛からなかったが、武器になるものは生憎今は持っていない。

>>331
と、そこで見知った人影が、雑踏の向こうに頭を突き出しているのを少年はみた。
匂いか妖気で感づかれでもしない限り、あの狼はホスト姿の少年には気づかないかもしれない。
少年は人波を抜けて、そちらへ急ごうとした。 <> アリサ<><>2011/05/23(月) 22:27:16.17 ID:DBE4fDw40<> >>331

まずは一人…餌がかかった。

「あら?お兄さん。そんな顔してどうしたのかしらぁ?」クスクス
艶っぽい声を出し、顎に左手をつけ色っぽい仕種をしながら、犬御をその瞳で見る。
ドロドロとした、《呪》のような、その《魅了》は犬御に纏わり付こうと動きだす。

「質問…いいかしらぁ?」
脳内にこびりつくような、男を誘惑するその声は、不気味でどこか愛しく、まるで媚薬のような甘い。
《魅了》にかかれば、貴方は《魔女》をまるで恋人のように愛しく感じ、その《言葉》に従わないといけないという錯覚に陥るだろう。

だが……それはすぐ解かれた。

何故なら……

>>332

二人目……いや三人目の餌が来た時、《魅了》は引っ込んだ。

この《蛇》には効かないわね…やれやれ
と肩をすくめながら女は妖艶に嗤う。

「あらあら。随分カワイイ子ね。お姉さんタイプだわ」クスクス
《魅了》の力は使わなくとも、男が好むような仕種をするこの《魔女》は《邪眼の蛇》に怖じけづくことなく会話を進める。

「質問いいかしらぁ?」
粘りつくような甘い甘い蜜のような声を出し、蛇と蟹に問いかける。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/23(月) 22:45:41.85 ID:HFKKgZtlo<> >>332-333
周囲の視線が集まるのも気に掛けず、東雲は魔女の目の前に立った。
白々しくも艶やかな声。だが、その外見や動作に東雲はただ不快感を募らせた。
どろりとした、《魅了》を纏った声が東雲を誘う。
それを激しく拒絶するがごとく、鋭く紅い瞳はアリサを睨みつけた。

「その前に、俺の質問に応えろ」

「テメェは何者だ」――そう続けようとした時、《魅了》が突然引っ込んだ。
怪訝な表情を浮かべた東雲は、直後に背後に現れた妖気に気付いた。
振り向いた東雲は、更に怪訝な顔になるのだったが。

「……ンだ、その恰好は」

ホストの制服を着た黒蔵を見るのは、東雲にとって初めてなのだ。
驚きと、拭えない違和感に、狼は変な顔をする。 <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/23(月) 22:51:26.54 ID:e36Kz7uIo<> >>333-334
「今仕事中なんだよ、知り合いの店で。あんま突っ込むな」

アリサに警戒しつつ、恋敵の犬御へもつっけんどんな黒蔵であるが、
ねっとりと見つめられ、少々怯む。

(うっ。こういう女の人、苦手…)

自分の魅力に自信たっぷりなこういう女性は、店でホスト見習いを始めたここ3日のうちに
何度か会っている。

「質問…よくない」

硬くなった声が答える。緊張でこくりと喉がなる。
客相手じゃないのだから、今は逃げても良い筈だ。

一方、襟から袖を伝い、蟹は少年の手の中へと移動した。 <> アリサ<><>2011/05/23(月) 23:08:13.49 ID:Zf0TXZ2E0<> >>334

クスクスクスクス…クスクスクスクス…
笑う。笑う。嗤う。嗤う。ワラウワラウワラウワラウワラウワラウワラウワラウ

ああ…なんて反抗心の高い子かしら?
壊したいわ。壊して壊してコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテコワシテ
私無しでは生きていけない躯にしてあげたいわぁ。
そんなドロドロとした欲望を心に収めながら、妖艶に微笑む。

「クスクスクスクス…そんな怖いしちゃダメよ?」
「貴方の質問なにかしら?私のバストサイズ?好きな男性のタイプ?好きな食べ物?趣味?ドSかドMか?私の名前?好きな体位?」
まるで、犬御をからかうようにツラツラと言葉を並べながら、愛しそうに貴方を見つめる。

>>335

「あらあら?ダメよ?」
「ホストなら女性の扱いを知っておかなきゃ?」クスクス
女性はケモノなのよ?っとつけ加えながら、フワリと吹く風のように、犬御が反応できない速さで、黒蔵に近づこうとする。

そして、その果実のような胸を押し当てようとしながら、その細腕で愛しそうに抱きしめようとする。

「硬くならないの…リラックスしましょ?」
黒蔵の耳元に甘く囁く。
そこらのホストの客なんかと比べられない程の《女》

「貴方も…暴れないでね?」
甘い甘い甘い声を蟹に向かい囁く。
……気付いてる。気付いてる…… <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/23(月) 23:19:41.91 ID:HFKKgZtlo<> >>335-336
「ハン、仕事はいいが翌日に引っ張んじゃねーぞ」

復帰した当日に喧嘩し、翌日傷だらけで出勤した狼には言われたくないものである。
東雲が睨むアリサは、美しい貌に不気味は嗤いを浮かべていた。
欲望が溢れだしそうに満ち満ちた瞳に、東雲は背筋をぞくりとさせた。
その禍々しさは、窮奇とはまた違う種類の。

「くだらねェ。俺が知りてーのは一つ、テメェが『何者』か、それだけだ」

愛しげな視線を向けるアリサに向かって、吐き捨てるように言う。
東雲にとって彼女の魅了に対抗する術は、心の隙を見せず、ただ拒絶することだけだ。
――だが、

「!?」

気付けば、魔女は背後の、黒蔵の前にいた。
ぐるりと慌てて振り向く東雲の視界には、アリサの後ろ姿。 <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/23(月) 23:23:37.02 ID:e36Kz7uIo<> >>336
獣の犬御に反応できない速度には、蛇も反応しきれない。
逃げようとしたときにはもう、アリサの腕の中に掴まっていた。
黒蔵の手の中から蟹が地面へ零れて落ちる。

「なっ!!!」

何をされているのか理解するまでのほんの一瞬を置いて、黒蔵は逃れようと暴れ始める。
人に化ければ小柄だが、その本性は丸太の如き大蛇。腕の力はその見た目によらず強い。
アリサの拘束力が見た目どおりの女の力ならば、簡単に振りほどけるはずだ。

一方、地に落ちた蟹は尻餅をついた人の姿に成って、立ち上がると軽く埃を払った。
そのスラックスと青いシャツは、白龍が街中では甲冑代わりにこれを、と
気を利かせてくれたものである。

『やれやれ』

面長な男は、呆れたようにアリサに抱きすくめられてもがく黒蔵を見ていた。
このまま膠着するなら、アリサから引き剥がすつもりではある。 <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/23(月) 23:24:14.27 ID:e36Kz7uIo<> //安価ミス >>337まで含みます <> アリサ<><>2011/05/23(月) 23:43:58.74 ID:/Q+creqo0<> >>337>>338

「あらぁ?どうしたのかしら?」クスクス
クルリと、犬御に振り向きながら、ニコリと柔らかくも、まるで男を誘うような微笑みを見せる。

「私はアリサ。親しみをこめて、アリサと呼んで欲しいわ」
ドロリ……ドロリ…
不気味で、どこか愛しくも感じる艶の声を響かせながら。

「もう…つれないわねぇ」クスクス
彼女の力は普通なのか…簡単に黒蔵に振りほどかれ、フワリと三人に囲まれるような形の位置に移動する。

急に静かな程に静まりかえる。
気付けば貴方達以外の人間達はいない……いや、まるでそこだけ避けるようにいないのだ。
遠くをみれば確かに人はいるのだが……

いつの間にか人払いの結界をはられたようだ。

「妖怪としての種族は秘密♪貴方達で推理してみるのも面白いわよ?」クスクス

「わからなかったら《魔女》でもいいわよ?」

「そこのお兄さんも質問いいかしらぁ?」
そして、解峯に色っぽい仕種を見せながら、クスリと嗤う。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/23(月) 23:50:25.56 ID:HFKKgZtlo<> >>338-340
「チッ……」

余裕のある口振りと仕草に、東雲が不愉快そうに舌打ちする。
黒蔵に振り解かれたアリサは、三人が囲む中央に降り立った。

突如訪れる静寂。
東雲は横目で周囲を見ると、

(人払いの結界か)

それは彼にとっても好都合だ。
これで人間を気にすることなく、暴れることが出来る。

「魔女、だァ?」

ふざけた調子だが、このままでは完全に相手のペースだ。
とはいえ《魅了》の力を使う妖怪は多々いるし、推理しようにも情報が足りない。
東雲の頭に血が登りきれば、それこそ推理どころではなくなるだろう。 <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/23(月) 23:59:19.53 ID:e36Kz7uIo<> >>340
「…蟹ちゃん。俺、なんだか汚された気がする」
『判ったから泣くな、俺にしがみつくな』

どうやら蛇には精神面でのダメージが大きかったらしい。

「なにアレ飛縁魔とか女郎蜘蛛?もし蛞蝓だったら俺はしぬ!」
『まーだ生きてるだろが、ちゃんと』

蟹は、ツッコミ役らしい。

『俺に質問か?しても良いけど、答えは期待すんなよ』

犬御に戦いの気配を感じつつ、蟹はまだ静観中である。

〔もーちょっと硬い女なら好みなんだけどな〕

ああいうお色気系を喜ぶのは、蛸だろう。 <> アリサ<><>2011/05/24(火) 00:11:29.61 ID:o9XESZTg0<> >>341>>342

「正解よ〜♪ご褒美にキスしてあげようかしら?」
チュパッと投げキスを、黒蔵に放つだろう。
なんか黒蔵くんは色んな人に好かれる体質なのか?

「改めまして、飛縁魔のアリサよ」
「みんな、好みでお姉さん目移りしちゃう」
ドロリ…ドロリ……ゾワッ!!!
膨大な不気味で邪悪な気配が《魔女》から溢れだす。先程の《魅了》とは比べられない程の《呪》そのものの《魅了》。
その眼は《獲物を狙う野獣》のようにギラリと輝く。

……が

「なんてね♪」
パァーンっとその気配は飛散する。

「私は今日は《探し物》を捜すだけなのよ」
「だから質問しちゃうわぁ」
クルリと辺りを見回し、妖艶に嗤う。

そして《一番の笑顔》で《魔女》は言う。

「《十種神宝》の場所を知らないかしらぁ?」ゾワリ <> 東雲 犬御<>sage<>2011/05/24(火) 00:29:47.70 ID:KiXjkKXSO<> >>342-343
「飛縁魔……」

袂山に生きる彼が実際目にするのは初めてだ。
だが彼女の強い《魅了》の力に、その正体は納得だ。
魔縁。男を滅ぼす魔性の妖怪。

「……っ」

魔女、もとい飛縁魔から溢れだす呪いのような《魅了》に、東雲が僅かにたじろぐ。
……底の知れない妖怪だ。
魅了が飛散したことに安堵しつつ、東雲は再びアリサを睨む。

彼女の捜し物だという十種神宝といえば、八握剣や辺津鏡といったものがあるが、
その行方を東雲が知るはずもない。

「知らねぇな。十種神宝をどうするつもりだ」
<> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/24(火) 00:32:29.16 ID:KnQFkJ1Fo<> >>343-345
投げキスとアリサの台詞に、ぞわり、と黒蔵の背中が震える。
蟹は、あーあやれやれ、とその頭をぽふぽふ叩いている。

『あんまりそういう性質の悪いからかいはしないでやってくんね?
 こいつ60年前に磯女にそんな風に絡まれてな。
 それ以来あからさまに色を押し付けてくる奴には怯えるようになっちまったんだ』

どうやら黒蔵は好かれるというより玩具にされやすいようではある。
特に血や精気を吸う性質の妖怪にとっては、共食いして妖力を蓄えた黒蔵は
美味しそうに見えるかもしれない。

『十種神宝?そんなもん探してどうするんだ。黄泉返らせたい男でも居るのか?』

飛縁魔はいわゆるサゲマン妖怪である。
恋仲に成って死なせてしまった男は山ほど居るだろう。
その中に、本気で飛縁魔が惚れた男が居たとしても不思議ではない。 <> アリサ<><>2011/05/24(火) 00:47:57.89 ID:K591nHCC0<> >>344>>345

「それは秘密よ。秘密」
「女性は秘密があればあるほど美しくなれるのよ」クスクスクスクス

何に使うかに対し、答えを言わず、愉しそうに嗤う。
黒蔵の様子を見て、舌なめずりをしながら愛しそうに見入りながら。

だがコレだけは言える…《蟹》が言ったようなそんな恋愛物語のような目的ではない…

「そうそう。私にあまり構わない方がいいわよ?」

「どこかで《私の知らない妖怪》が《青行燈が形式状に手を組んでる今の百鬼の主》の《仲間》にやられてるみたいよぉ?おかげで青行燈は《準備》に使う《餌》が自然に貯まっていくし」
「今も《私の知らない誰か》が危ないんじゃない」クスクスクスクス

………………… <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/24(火) 00:59:06.27 ID:KnQFkJ1Fo<> >>346
『それなら俺も答えは《秘密》ってことにしておくかな』

この竜宮の一武官が宝物の行方を知っているか、知らないか、さてどうだろう。
心当たりのありそうな人物を辿ることもできるかもしれない。
或いは先に見つけて手に入れることも…無いとは言い切れない。

『秘密は女が占有するものじゃないからな』

解峯が後ろに庇ったこの蛇も、中に隠されているものがある。
その存在を抑え、あるいは護る事。それがこの蟹に課せられた使命。
蟹の硬さは忠義の硬さでもあり、使命の為なら《魅了》にも流されない剛直さを持つ。

『生憎、俺は百鬼夜行には咬めない立場でね。主争いで誰かが危なくても、
 何ができるわけでもないし、アリサ、あんたにも構う気はない』

俺はそういう立場じゃないんだ。と蟹は肩をすくめて答えた。 <> アリサ<><>2011/05/24(火) 01:07:15.09 ID:j09+hNLi0<> >>347

「あらあら硬い人♪下が硬くなったらいいのに」クスクス
下ネタを加えながら、彼の態度に艶やかに嗤う。

「貴方には関係なくっても、もしかしたら《貴方達の知り合い》が犠牲になってるかもねぇ」クスクスクスクス
まるで不安を煽らせるかのように黒蔵と犬御の耳にまとわりつくような声を響かせる。

「《友達の安否確認》って大事よぉ」
ボワッ!!!
急にアリサが燃え上がり、クスクスクスクスと嗤いを響かせながら消えていった。

不安を…恐怖を煽らせるように……

/皆さんお疲れ様でしたー
ありがとうございます <> 黒蔵「」 解峯『』<>sage<>2011/05/24(火) 01:23:09.38 ID:KnQFkJ1Fo<> >>348
『下が硬くって言われても。俺、こいつらと違ってそういう種族じゃないし』

蛇と狼を指差しつつ言う蟹さん、節足動物。
そしてアリサが消えた後。

『…あの女、妙に煽ってったな。
 自信たっぷりなのか、それとも何か隠すためにああいう振る舞いをしてるのか。さてね』
「…蟹ちゃん、急いで帰ろう」
『だから、蟹ちゃんって言うな…ん?』

黒蔵はまだ少し震えている。こちらは蟹と違って何か感じるものがあるらしい。

『どうした?』
「なんか嫌な予感がするんだ。気のせいなら良いけど。狼も袂山の皆を、頼む」

特に夜雀の事が気掛かりだった黒蔵は、犬御にもそう頼んだ。

『判った、走るぞ』
「うん」

そして彼らが誰も居なくなったホストクラブに戻ったのは、そのほんの少し後のことである。

//お二人とも、お疲れ様&ありがとうございましたー! <> 澪<><>2011/05/25(水) 21:23:28.51 ID:EVDSWOHDO<> 彼はとある妖怪を探していた。少しだけくれた時間で、思いを伝えるために。

今日は最後の3日目。

「三凰・・・、どこにいるんだ・・・・・・?」

中々見つからない、その為か、焦りが見られる。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 21:34:44.98 ID:rTWr/x4AO<> >>350
「フッ…人探しをしているようだな。」

上空から声がする。

「いったい誰を探している?」

巨大な蝙蝠が地上に降り立ち、その姿を人間のものに変える。

「僕に教えてくれないか?」

澪の目の前に降り立ったその妖怪。
それは、宝玉院三凰だった。 <> 澪<><>2011/05/25(水) 21:43:02.93 ID:EVDSWOHDO<> >>351

「三凰・・・?」

何が起きたのか分からず、キョトンとする。

そして、自分の前に降り立つ三凰を見て我に返る。

「・・・君を探してた・・・。三凰、すまなかった・・・・・・。」
地面に座ると、土下座をした澪。彼なりの謝り方のようだ。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 21:49:05.12 ID:rTWr/x4AO<> >>352
「頭を上げろ。そんなことをしても許されることではない。
なんせ、僕に怪我を負わせたんだ。それ相応の事をしてもらわなければ気がすまないな。」

そう言うと、自らの服をめくり上げ、まだ肌に残った傷跡を見せつけた。
<> 澪<><>2011/05/25(水) 21:54:17.03 ID:EVDSWOHDO<> >>353
「ッ・・・・・・」

左腕から、金属音がガリリとなる。見るからに生々しい傷。
それを負わせてしまった自分が嫌になる。

「本当にすまない・・・僕が君に出来ることはこれしかないんだ・・・」 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 22:00:51.43 ID:rTWr/x4AO<> >>354
「情報だ。情報を提供しろ。何か知っているんだろ?百鬼夜行の主のことを。」

そう言い放つ。

「それと、貴様のことも気になる。あの時、貴様の身に何が起こっていた?とても、正気に見えなかったが…」

ずっと気になっていたこと。彼の身に何があったのか?
それを問い詰める。 <> 澪<><>2011/05/25(水) 22:10:30.57 ID:EVDSWOHDO<> >>355
「窮奇のことか・・・、分かった、話すよ・・・。」

窮奇のことや、部下の二人がやられたこと、先日自分や夜行集団を襲った相手など・・・。


「僕は、その窮奇に心をえぐられたんだ・・・。皆や、三凰を殺したくて堪らなかったんだ・・・」

「もう、三凰とは合わせる顔がないな・・・」

涙を零し・・・自分のやったことを後悔した。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 22:16:14.45 ID:rTWr/x4AO<> >>356
「なるほど…全て窮奇の仕業という訳か…情報、感謝する。」

くるりと後ろを向き言った。

「…貴様が気にすることではないんじゃないか?僕は、貴様を恨むつもりは無い。」

悪いのは窮奇、と言いたげに言った。 <> 澪<><>2011/05/25(水) 22:23:35.25 ID:EVDSWOHDO<> >>357
「・・・いや、それに刃向かえなかった自分も悪いんだ・・・」

首を横に振った。もしも、澪が窮奇に会わなかったら、もしその逆手に逆らえる心を持っていたら・・・

「三凰・・・僕達、友人になれたのかもね・・・。」 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 22:29:00.46 ID:rTWr/x4AO<> >>358
「あまり自分を責めるな。それは、愚かな行為だ。自分に自信を持て。」

三凰は、そう思っていた。三凰の自信は、こういった心構えからくるのだろう。

「それと…諦めるのも愚かだと思うがな。」

振り向き、何か言いたげな表情で言った。 <> 澪<><>2011/05/25(水) 22:36:40.95 ID:EVDSWOHDO<> >>359
「三凰は偉いな・・・。自分に自信を・・・か・・・・・・。」

しかし、その直後に言われたことで前の内容はどうでも良くなった。

「三凰、それどういう意味?だって、それは三凰が望まないと不可能なんだよ?」

三凰の方を掴み、眼を見て話した。辺りの草木が風に揺れ、心地好い空気に包まれる。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 22:41:53.03 ID:rTWr/x4AO<> >>360
「…なあ、澪よ。仲間ってどう思う?」

はぐらかすように突然質問する。
その質問は、彼がここ最近の戦いで変わっていったことを表すものだった。
<> 澪<><>2011/05/25(水) 22:49:40.45 ID:EVDSWOHDO<> >>361
予想外の質問に驚いた。

「仲間・・・か?自分を支えてくれたり、自分を高めてくれたり、自分を大切に思ってくれる人じゃないか・・・?」

でも、今の澪にはそれが出来ない。刻々と過ぎる時間。それはいつもより、時の流れを早く感じさせる。

「(もうじき、僕は三凰の前から消えるんだな・・・)」 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 22:58:53.95 ID:rTWr/x4AO<> >>362
「そうか…父上と似たような答えだな。」

それを聞いて、納得したような決心したような表情をする。

「澪、僕の仲間になれ。」
<> 澪<><>2011/05/25(水) 23:04:52.22 ID:EVDSWOHDO<> >>363
純粋に嬉しかった。なのに・・・それは不可能なことだった。

「・・・それは出来ない。僕は三凰に謝罪と別れを言いに来たんだ・・・・・・」

その表情はとても悲しみに包まれて、どこか切ない思いがあった。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 23:11:35.32 ID:rTWr/x4AO<> >>364
「別れだと?貴様に拒否権は無い。どんな事情があろうとな。僕がもう決めたことだ。」

強引なことを言う。
三凰は、性格的に仲間になってくれそうな者が限られる。だから、焦っているのだ。
<> 澪<><>2011/05/25(水) 23:18:52.05 ID:EVDSWOHDO<> >>365
「僕だって、三凰の仲間になりたかったよ!!でも・・・」

人や妖怪を虐殺し、ただで済む訳がない。そのために罪を償いに行くのだ。

待つものは死かも知れない。だが、澪はその道に進むしか残されてないのだ。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 23:25:05.97 ID:rTWr/x4AO<> >>366
「なんなんだ!話してみろ!貴様にどんな事情がある?」

怒鳴り始める。
そろそろ感情が抑えきれなくなってきている。 <> 澪<><>2011/05/25(水) 23:32:44.21 ID:EVDSWOHDO<> >>367
「僕の湖で起こしたことを見兼ねた悪魔が、罪を償えと・・・・・・」

訳を話しはじめる。
場合によっては三凰はキレるかも知れない。

「それで・・・その前に三凰には謝りたくて、時間を貰った・・・。ただ、今日が最後の日・・・。」 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 23:41:25.64 ID:rTWr/x4AO<> >>368
「…確かにあれは許されることではないな。
だが、その前に償うべき罪があるんじゃないか?」

そう言って、再び傷を見せる。

「それに、僕には……いや、なんでもない…」

<> 澪「」&フォード『』<><>2011/05/25(水) 23:50:33.58 ID:EVDSWOHDO<> 『お主は確か、あの時の青年だな?』

「え・・・とあれ・・・?おじいさん・・・?」

『二人共こんばんは。話は聞かせて貰ったぞ。』

ふと現れる謎の老人、それは温かな眼で二人を見つめた。

「そちらの三凰とやら、この青年を本当に仲間にしたいのか?信頼できるのか?」 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/25(水) 23:57:47.48 ID:rTWr/x4AO<> >>370
「なんだ貴様は?信頼だと?できるに決まっているだろ。でなければ、まず仲間に誘うようなことはしない。」

現れた老人に驚きと苛立ちを表しながらも言った。 <> フォード『』&澪「」<><>2011/05/26(木) 00:04:05.09 ID:71x0zyPDO<> 「あの・・・おじいさんは一体・・・・・・」

『あの悪魔の知り合いだよ。何も心配するな。』

澪には、優しく声を掛けた。だが、三凰には違った。
『ならば三凰に問う。お前はこの青年をなんだと思っている?』

威厳のある、圧力の掛かる言葉。三凰が答えたとき、新たな道が開かれるだろう。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/26(木) 00:10:44.23 ID:bRKJ24hAO<> >>372
「正直に言おう。
なんとも思っていない。」

険しい表情で言った後、口を閉じる。
しかし、しばらくして再び口を開き

「今はまだな。だが、これから僕にとって大切な存在になると信じている。」

そう、父が語ってくれた仲間のように―― <> フォード『』&澪「」<><>2011/05/26(木) 00:20:11.29 ID:71x0zyPDO<> 『そうか、良かったな青年。』

「・・・え?でも罪が・・・」

『あの悪魔にはわしから説明しておく。だが、条件つきでな・・・。』

『普段はわしと共に行動すること。それと三凰、この青年を大切にな。』

よく言った、とでも言うような表情で満足していた。そして、老人は闇夜に消えた。
「三凰・・・僕・・・・・・」

澪は本当にいいの?と言いたげな顔をしている。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/26(木) 00:25:04.88 ID:bRKJ24hAO<> >>374
「フッ…そういうことだ。」

当然だというように言った。

<> 澪<><>2011/05/26(木) 00:32:10.89 ID:71x0zyPDO<> >>375
「三凰・・・ありがとう・・・」

澪は三凰を抱きしめ、そして泣いた・・・。

こんな夢のようなことがあるのか、と疑うと更に涙が込み上げる。

こうして、新たな澪の物語の幕が開いたのだった。

/澪をありがとうございました!&絡みお疲れ様でした!! <> 宝玉院 三凰<><>2011/05/26(木) 00:35:18.27 ID:bRKJ24hAO<> >>376
「フッ……」

三凰は、その場で満足そうに笑った。

(父上、僕はこれから…)



/こちらこそ、ありがとうございました&お疲れ様でしたー
<> 伊吹<><>2011/05/26(木) 22:58:01.05 ID:GfZHfJEeP<>
 瀬戸内海・・・日本神話において国産みの始まりとされる場所。
 鳴門の渦の介間より、そこに映る異天の地。

 竜宮、日本の蛇神信仰においての最重要拠点である。

 その竜宮の最奥にて。
 静かに目を閉じ座る、男性。
 見た目は30代に届くか届かないないか、という若さだが。
 何処か大樹や鍾乳洞のような、深遠さと久遠の雰囲気を滲み出していた。

 瞳をそっと開ける、ただ穏やかに静に言葉を連ねた。

「気付いてないとお思いでしたか?」

 神棚に掲げられた水晶をそっと指でをなぞった。

「叡肖さんと黒蔵を読んでください、くれぐれも内密に」
『心得ました』

 伊吹の右腕たるミズチが地脈の内部を走った。
 ミズチを見送ると、再び目を閉じて耳を澄ませる。

「いい風ですね、春も近いのでしょう」

 はるか海底の中、竜宮の最奥からでも海原を駆ける風を感じていた。
<> 黒蔵「」 叡肖『』 解峯〔〕<>sage<>2011/05/26(木) 23:06:31.81 ID:q4jexs8mo<> >>378
「何なの?一体これはなんなのさ?蟹ちゃん、頼むから説明してよ!」

まだ夜行集団のメンバーの回復さえも見届けていないのに。
衣蛸が夜行集団の本拠地へ、大量の薬を持っていきなりやってきたかと思えば、
薬を置くなり上からの命令だから、と黒蔵を連れ出したのだ。
連れて来られたのは竜宮。
ここまでは見当が付いたけれど、どうやら行く先は罪人置き場でも処刑場でも無いようだ。

「叡賞さん、どういうことなの?何で誰も何も教えてくれないの?蛇神は?ねぇ!」

なぜか着替えさせられ、竜宮の奥の大きな扉の前に連れてこられても、
黒蔵の欲しい答えはまだ誰もくれない。

〔中に入ったら、頭、下げておけ。あんまりきょろきょろするなよ?〕

黒蔵の直ぐ後ろについた蟹の武官、解峯が小声でそう耳打ちをした。
彼は扉のうちには入らずに、その前で控えている役割らしい。

『叡肖および黒蔵、ただい参りました』

扉の前で叡肖が入室の許可を求めると、扉が開いた。 <> 伊吹<><>2011/05/26(木) 23:31:48.18 ID:GfZHfJEeP<> >>379

 竜宮の一室、そこは伊吹の友人たる伽耶野姫による異天空間・蛟河が展開され。
 その場所だけは断世とも言うべきほどに、完全に隔離された空間となっていた。

 その幾許かの部屋らしき面積以外、
 周りは磯菊の咲き乱れる白い浜辺に変貌している。

「そう畏まらないでください、務めお疲れ様です」

 ニッコリと微笑む眼鏡をかけた男性。
 白い薄手の着物が磯風にはためいている。
 どの時代にも該当しないような、強いて言うならば研究者の白衣にも似たその服装はとても政人には見えない。

「ところで・・・」

 三日月のように細くなった瞳孔が二人を見据えた。
 その目は日暮れのように淡い橙の光を湛えている。

「色々と話さなければなりませんね、まずは黒蔵の猶予の件ですが・・・」

 ニッコリと微笑む、その瞳の奥にはそこが見えない深遠だった。

「真面目にやってるんですか? 聞くところ状況はますます悪化の一途をたどっています。
 叡肖、監督不届きで貴方にも責任の一端がありますよ・・・」

 圧を掛けるが、責める様な響きは無い。
 何かを探っているような様子だった。 <> 黒蔵「」 叡肖『』<>sage<>2011/05/26(木) 23:44:05.69 ID:q4jexs8mo<> >>380
『確かに私の不始末です、その事についての申し開きは致しません』

恭しく頭を下げた叡肖は、忌々しげに唇を噛む。
巴津火から半分とはいえ取り戻した筈だったのに、あのミナクチの奴は何をしたやら。
竜宮の神格名簿に表記されたミナクチの名の墨色が薄くなったのは、
その取り戻した筈の半分がまた失われた事を示していた。
文官である叡肖はそれを見て、あの時の、別れの挨拶に来たかのようなミナクチを
恨めしく思い返したのだった。

(こいつが本物じゃなければ、今すぐにもその腹を割いてやりたい)

まだミナクチの残り半分は黒蔵の、巴津火の中に囚われたままなのだ。

『先に報告申し上げましたとおり、この黒蔵が内に紫狂の巴津火を封じて御座います。
 主はこれを如何なさるおつもりですか?』

ミナクチをその贄である筈の黒蔵に取られたままなのが、叡肖にはどうにも癪なのである。 <> 伊吹<><>2011/05/26(木) 23:59:03.58 ID:GfZHfJEeP<> >>381

「そうですね、これからはもっと真面目に取り組んでくださいよ。
 くれぐれも務めの合間に、下らぬ密事や色事に傾けませんよう」

 見透かしたような口調で語りかける伊吹。
 優しく、柔らかな表情を作るが・・・目はまったく笑っていない。

 巴津火の件について触れられたとき、
 その形だけの笑顔は一瞬で消え去り、途端に冷たい口調になる。

「・・・わざわざこんなにも隔離した場所に呼んだ時点で。
 私の考えなどとうにお分かりでしょう?」

 再び笑顔を作る。
 その嘘くささはもはや隠す気もさらさら無いようだった。
                             . . .
「その妖怪の存在など、私は貴方に知らされて初めて知りましたよ」

 しかしてこの伊吹も、その心無い役人の一人でしかなかった。

                         . . .. . .  . . .. . . . . . . . . . .
「なので私は正確な指示を出せません、然るべき措置を出来るだけ迅速に貴方の判断で行ってください」 <> 巴津火「」 叡肖『』<>sage<>2011/05/27(金) 00:19:42.00 ID:WeKL22Slo<> >>382
『では、ご随意に』

(やっぱ爺ィと同じだ)

腹の中で、けっ、と悪態をつきながら、叡肖はきょろきょろと物珍しげに辺りを見回していた黒蔵を
指定した場所に跪かせるとその上衣を脱がせ、背中の封印をひき剥いだ。
途端に黒蔵の纏う気配が変わる。
どろりと濃厚な、険悪な妖気が辺りに広がった。

「何だよここは?」

うーんと一つ伸びをして、巴津火は辺りを見回した。

「よう、蛸!お前に逢うのを楽しみにしてたんだぜ♪」

ニイッ、と唇を吊り上げるなり、巴津火は雷光を纏った。
薄紫の光が全方位に広がり無差別に周囲を襲い、白く弾けた。

しかし叡肖も負けては居ない。既に巴津火の足元に陣を書いている。
雷光は陣の縁からは出てくる事が出来ないようだ。

「何クソっ!」

雷が効かないことに気づいた巴津火が動こうとしたその時。

『八蜘蛛の陣!』

地に描かれた陣そのものが、8本の腕で巴津火をからめ取った。

「うがぁぁぁぁっ!!」 <> 伊吹 & <><>2011/05/27(金) 00:32:04.09 ID:5b/yE3ElP<> >>383

「決まりですね・・・」

 ニッコリと微笑む。
 その笑みは保身を図る役人の笑みではなく・・・。

「伽耶野、解いて下さい」

 途端に当たりの空間が砕け散った。
 そこは竜宮のとある広間であり、辺りには多くの役人が参列している。

 海牛や蜃、そして叡肖の祖父である古蛸すら見受けられる・・・。

「わざわざ封印を解き、私の争魂の分身たる巴津火に刃を向けました。
 この叡肖の逆心と反目においての皆様の判断を仰ぎたいと思います」

 そして・・・その参列者の一番奥には。
 ニタニタと、悪意の妖気を完全に隠し切った・・・あの邪悪の笑顔があった。

「お見事だよぉ! やっぱり奸臣は裁かなきゃ政治は腐っちゃうよねぇ!!」 <> 巴津火「」 叡肖『』<>sage<>2011/05/27(金) 00:42:48.62 ID:WeKL22Slo<> >>384
『主、お言葉を返すようですが、私は巴津火に刃は向けておりません』

古蛸は全てをじっと見ている。
そもそもこれは叡肖が祖父から教わった術なのだ。

『この通り主に危害が及ばぬよう、押さえ込んでいるだけに御座います。
 この陣が無くば、この場にいる皆様方も無事には済みますまい』

ぬけぬけと衣蛸は言ってのけた。
確かに陣に囚われた巴津火は、その中から動けないだけで元気に暴れている。

『私は主の身の安全を守りつつ、巴津火の目通しを致したのみに過ぎません。
 これが逆心や反目となるのでしょうか?』

言いながら叡肖は、窮奇を面白そうに見つめた。

(ミナクチの仇を討つくらいは出来そうだな) <> 伊吹 & 窮奇<><>2011/05/27(金) 00:52:47.16 ID:5b/yE3ElP<> >>385

「・・・なるほど、したたかですね。流石は古蛸様の知恵をよく継いでおられる」

 窮奇はニタニタと眺めている。
 竜宮の主と書官の蛸、負けたほうが失脚する後生を賭けた知恵比べである。

「では何故封印を解きました? わざわざ貴方が封を解かなければあの雷撃が襲うことも無かったでしょう」

 衣に入れた水晶を取り出した。
 途端に広間の床に水が張り、その瞬間の情景が映し出される。

「私は貴方の判断で対処してくださいとお願いしました。
 なぜわざわざこの場で巴津火を呼び出し、そのように押さえつけておいでなのです?」 <> 巴津火「」 叡肖『』<>sage<>2011/05/27(金) 01:11:38.57 ID:WeKL22Slo<> >>386
『先ほど申し上げたとおり、この巴津火を主に目通りさせるためには封印の解呪が必要でした。
 私にはそれしか巴津火を呼び起こす手段がありませぬ。
 主は私に私自身で判断し行動するようお命じになられましたので、私は命に従ったのみで御座います』

すっと衣蛸は目を細めた。

『巴津火が第二王子殿下か否か、それを知るには主に目通りさせる他の術が私には御座いません。
 全ては主の判断を仰ぐためのものであり、主と殿下のために最善と判断したに過ぎませぬ』

衣蛸の舌が、言葉を紡ぐ。

『主にお尋ね申し上げます。なぜ、主は私に判断を委ねたのでしょう?
 そして何故巴津火が現れてから、主ご自身で異天の解呪を伽耶野にお命じになったのでしょうか?
 わざわざこの場で、とおっしゃるが、私は『この場』で巴津火を呼び出したわけでは御座いません。
 私が主の命に従ってもこのような形で糾弾なさるのでは、そもそも最初からその意図があっての
 ご命令であったということなのでしょうか?』

主の矛盾をつく問いが返され、ざわり、と場がざわめいた。 <> 伊吹<><>2011/05/27(金) 02:05:27.76 ID:5b/yE3ElP<> >>387

 相も変わらずニコニコとしているが、
 その眼の奥は明らかに血走って苛立ちが見られている。

「貴方の報告を聞いての事ですよ、拷問を加えたなどはまぁ必要なことでしたし見逃しましょう。
 内容から見れば、貴方は充分巴津火の危険性を承知していたはずです。
 しかし私自身は巴津火と対面するのは初めてなので判断を貴方に仰いだのは当然の事・・・とかいい加減苦しくなってきたな」

 目を見開く。

「てゆーかさっきからピーチクパーチクうるせぇぞ雑魚共」

 いきなり豹変する伊吹。
 その眼は紫に淀んでいた。

「どいうつもこいつも俺をそっちのけで政治しやがってよぉ・・・。
 知らねぇと思ってんのかコラ、権力振りかざして好き勝手やりやがって。
 今竜宮ドンだけ傾いてると思ってんだよ」

 はぁーあ、と手を翳してため息をつく。

「こんなんだから前のウチは潰されたんだろうなぁ・・・。
 建前、権力、こじつけ、頓知・・・。そういうのいいから手と足動かせよ」

 目つきが変わった。
 その目は偉大な竜宮の主などではなく、ただのキレた若者である。

「兄者、そこのタコ。あの時裏切った奸臣に似ててすげぇムカつくんですよ。
 食いちぎっちゃってください」

 突如、叡肖の背後よりノコギリの様なアギトが現れ!
 食いちぎらんと迫りくる!!

「あぁ・・・よーく思い出した。我等の通古斯-ツングース- の三千年の悲願・・・今こそ取り戻すとき!!」

 伊吹が兄者と呼んだその怪魚は、莫大な妖気を放ちながら竜宮を泳ぎ回る!!


−妖怪目録−
【 悪樓 -あくる- 】

 悪路王などとも同一視される瀬戸内海に住む怪魚。
 ヤマトタケルノミコト、またはスサノオに倒されたといわれる。
 その正体はヤマタノオロチ同様、鉄器製造に長けたツングース一族の寓意だという。


「笑っちゃうよなぁ! 俺達を滅ぼした奴等のために!
 俺達が神としてひーこら汗流してんだからよぉ!!!」

 ギョロリと、巴津火に向き直る。

「はぁあああつびぃいいい!! お前も来い!!
 こんなくだらねぇ場所潰して、我等が一族を復興させようじゃないか!!」 <> 叡肖『』 古蛸「」<>sage<>2011/05/27(金) 02:41:49.90 ID:WeKL22Slo<> >>388
(主様よぉ、俺ぁ悲しいぜホント)

衣蛸は、祖父が指を動かして部下に何やら指示を出したのを目の端に見た。

(そして感謝するわ、爺ィや皆の目の前で俺の事吊るし上げてくれてさ。
 やっぱり俺、神格なんて持たなくって良かったって思える♪)

『私は窮奇の討伐を支援せよと命じられました。窮奇が竜宮の破壊を目指すものだからです。
 しかし今その窮奇がここにいるのは何故でしょうか。
 この私が糾弾される場において、かような者がいるのは、この糾弾そのものに何がしかの
 裏が潜む事を示していると思われます』

既に衣蛸の言葉は豹変した主に向けたものではない。

『巴津火殿の目通りも済み、この通り主ご自身による認知も目出度くなされたというのに、
 今この宮は窮奇の姦計に堕ちんとしております。
 我、叡肖はそこでこの場の皆様にお願い申し上げる!主と殿下を、御守り致せ!!
 あの場にいる、窮奇を捕らえよ!!!』

衣蛸が窮奇を指差した。蟹の近衛は豹変した主を抑えんと駆けつける。全ては同時であった。

「主様を、窮奇の影響からお救い申せ!!」

蛸の大臣の号令が轟き、もはや十分衣蛸に煽られていた周囲は一斉に動き始めた。
伊吹が誘いをかけるが、巴津火はまだ八蜘蛛の陣のうちである。

『生憎だったな、まだ殿下はそっちへ渡すわけに行かんのよ』

叡肖にとっては大事な駒である。
陣に囚われたままの巴津火にさっき剥がした封印を再び貼り付けると、
黒蔵はくたりとその場に蹲った。解峯がそこへ駆け寄り抱きとめる。

「主様や、手と足でしたら動かすには十分ありますでのぅ。ほほっ」

古蛸が膨らみながら赤く輝きはじめる。辺りが照り返しで夕日に照らされたように染まる。

「あの八蜘蛛陣は元々、わしの術でしてな。孫は上手く使いよりましたわ」

叡肖に迫った悪樓の顎を、古蛸の赤く輝く腕が力強く薙ぎ払った。
顎はそらされて通り過ぎる。

「おぬしの相手はわしじゃ。しかし、ぬしとはどこかであった気がするのぅ?」

派手な赤い衣の大臣は今は大蛸の姿となり、好戦的に眼を輝かせて悪樓に向きなおる。
その様子に、顔色を変えたのは衣蛸であった。

(うわやべぇ、爺ィが悪乗りしやがったっ!!逃げろ!)

解峯に黒蔵を抱えさせると、叡肖はどさくさに紛れて逃げ出そうとしている。

「わしも名乗っておこうかの。
 今はただの古蛸じゃが、昔は北の海でアッコロカムイとか呼ばれておった者じゃ」

ほほっと枯れた風に笑いながら、大章魚とも呼ばれるかつての暴れ神はまだまだ大きく膨れ上がる。
かつて北の地を荒らした大蜘蛛は海に引き取られて蛸となり、海や空を赤く染めて暴れまわったのだ。 <> 伊吹 & 悪樓 & 窮奇<><>2011/05/27(金) 03:02:09.31 ID:5b/yE3ElP<>
 悪樓は巨大な触腕に殴られ、体制を崩す。
 しかし泳ぐように体位を整え、膨れ上がる獲物を睨みつける。

「な・・・なんだと・・・? 畜生が!
 どいつもコイツも・・・ッ!! 畜生・・・ふざけるな!!
 スサノオの海なんて全部ぶっ壊してやる!!」

 取り囲まれているにも拘らず、窮奇は腹を抱えて笑っている。

「あっはっはーー! 相変わらずザマァないね、伊吹!!
 だからキミは何回やっても何回やっても勝てないんだよぉ!!」

 悪樓は水面を揺らすような低い音で唸ると、
 辺りは巨大な水の渦で次々と吹き飛ばされた!

 鳴門の大渦、かつて国産み、神産みとも呼ばれたその神聖なる力!
 大きく唸りを上げ、先ほど殴りかかった足の一本を捻じ切るように食いちぎる。
 巨大な広間ですらも狭しと暴れまわる、海の怪物同士の戦いが勃発する。

「舐めるなよぉ・・・雑魚共! こっちにはアレがあるんだ!」

 白い蛟が天業雲を咥えて泳ぎ寄ってくる!

「さーて、百鬼の主も甘く見られたものだねぇ」

 ニタニタ笑いながら取り囲まれる相手の一人一人を眺めていた。 <> 叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕<>sage<>2011/05/27(金) 03:16:51.79 ID:WeKL22Slo<> >>390
蟹は仲間の屍を喰らいながら進み、龍神をも倒す兵である。
しかもその数が多いのだ。それが一斉に伊吹を取り囲み押さえ込もうとする。

〔スサノオの海ねぇ。どんな海だろうが、そこに住む俺らの海だよなー〕
『ちんたらすんな、もっと逃げろってのおい!爺ィのケツに潰されんぞ!』

アッコロカムイの大きさは、足を広げれば1ヘクタールにも及ぶ。
しかもこの蛸の大臣は、もともと謀略よりも戦いのほうを好む性質なのだ。

「主様と違って、顎は一つなんじゃろ?おぬし?」

一本を食いちぎっている間に、赤く輝く2本の太い触腕が
悪樓の身体に吸盤で吸い付きからめとろうとする。捕まったら仕舞いだ。
足の中央の口に運ばれて喰われてしまう。

「昔は主様とも相撲をとったりしたのぅ」

振り回された古蛸の触腕が、蟹たちに囲まれた窮奇のほうへも
鞭のようにしなりながら飛んできた。
<> バトー<><>2011/05/27(金) 20:35:31.54 ID:MsbAZR5DO<> 夜、鬱蒼とした山中に響く、唸り声のような何か
連続して短く聞こえるその声は、よく聞けば低い人の声、誰かが力を入れて何かをしているような声だ
しかしその声は異常なまでに力強く、ずっと響いて聞こえるので、有り体に言えば不気味な声だ

「ふんっ!ふんっ!」

恐れ知らずにもその声の元まで近付いた者には、更に不気味な場面が目に入る
馬の被り物を被った大男が、背中に大岩を担いでスクワットをしている姿が <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 20:44:03.02 ID:i3LE+91Zo<> >>392
「馬……?」

いつのまに近付いていたのだろうか?
馬男の傍には、幽鬼のような雰囲気を漂わす青年が立っていた。
興味深そうに馬男を見つめる顔は涼しげな容姿と相俟って様になっていた。

「筋トレですか?」

更に身を乗り出して問う。
鼻の良い人物ならば気付くかもしれない。
彼から匂う血の生臭さを。 <> バトー<><>2011/05/27(金) 20:57:39.90 ID:MsbAZR5DO<> >>393
「ああ…体が鈍るといかんからな」

ただ前を真っ直ぐ見たまま、スクワットをしながらいきなり現れた青年に、まるで予想していたかのように答える
その馬の表情は無表情のまま変わらないが、青年から漂う血の匂いを嗅ぎ取っていた

「ふんっ!」

最後に立ち上がると、これくらいでいいだろう、と言わんばかりに岩を放り投げる
ズシン、と重い音が地面を揺るがした

「そういうお前はこんな時間にこんな所で何をしているんだ?」
「血生臭い匂いを漂わせて、人に余り近付く物じゃないぞ」

くるり、と青年に振り向いて、汗一つ垂らさず見詰める
地獄の血の池で嗅ぎ慣れた匂いが、この青年からも確かに嗅ぎ取れる <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 21:04:50.64 ID:i3LE+91Zo<> >>394
「そうなんですか……」

自分から聞いた癖に興味なさげに青年は頷いた。

「血の匂い? あれ、最近食べてない筈なのに……。ま、いいや。
 僕はー、あれです。ほら、あのー、えーと、あっ! 闘い! 闘いにきました!
 あなた力強そうですし、勝ったらだいぶ百鬼夜行の長に近づけるかなーと思って」

一転して、嬉しそうに語り始める青年。何処となく精神の不安定さを、語り口から感じられるはずだ。

「はやく強くなって僕は《あの子》に会わなきゃいけないんです」 <> バトー<><>2011/05/27(金) 21:16:34.96 ID:MsbAZR5DO<> >>395
「…闘いに、か」
「何を以って俺を嗅ぎ付けたのか…それは気にする事ではないか」
「闘いたいと言うのなら断りはしない、だが覚悟する事だ」

静かに、力強さが増していく
膨れ上がる力が強大になっていく中で、殺意を沸かさないようにコントロールする

「俺は、強いぞ?」

そして、右手を軽く握って腰を落とし、構えを取って青年に立ち向かった

「俺を倒せば百鬼夜行にも、会いたい者にも、お前の願う事が叶うとは限らない」
「それでもまだ闘いを願うと言うのなら……来い」
「地獄の馬頭鬼、バトーが相手になろう」

豪、と力が男から吹き出た、ように見えた <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 21:30:36.77 ID:i3LE+91Zo<> >>396
「強いからいいんじゃないですか。だから探してきたんですよ」

そう。この男はある人物との出会いの後、その人の助言に従い自分よりも強そうな相手に喧嘩を売ってきたのだ。
人の、或いは妖怪の間で強者の噂を聞くと、それはもう子供のように眼を輝かせその人を探し出し、闘いを挑む。
勝てることはまず無かったが、それでも戦うことを青年は止めようとしない。

狂気に犯され居ないはずの《あの子》に縋る彼には、闘いが《あの子》と再開する方法だと刻み付けられてしまったのだ。

「願いは叶うさ。《あの子》に僕が会えない訳が無いッ! 僕の名前は……名前は? 忘れちゃった。まぁ、いいさ! 恋する男の子とでも呼んでよ。
 それじゃあ   始   め   よ   う  !」

バトーから吹き出る威圧感に青年は笑みを深める。
嬉しいのだ。噂どおりの強者であったことが。

直立した姿勢から、青年はいきなり殴りかかった。
殴り方もその辺のチンピラと変わらぬテレフォンパンチ。
手を大きく後ろに引いての打撃。
ただ、通常と異なる点があった。異常に拳速が速いのだ。
それもその筈、彼は鬼の筋力を持っているのだ。それをフルに発揮して襲い掛かる。 <> バトー<><>2011/05/27(金) 21:43:14.32 ID:MsbAZR5DO<> >>397
「…ほう」

面白い、と、彼は笑みを隠せなかった
自らの名前も、探す相手の名前も忘れた、それなのに闘いの後にそれを見る
闘いがただ好きなだけ、とは違う、自分とは違う戦闘中毒者を見た気がした
それが、彼にはとても嬉しかった

ズガン!と音が鳴る
青年の打撃が胸に当たる、それに伴って鳴った音、それはまるで鉄球を岩石にぶつけたかのような激しい音だ
その攻撃を受けた彼は、その場に突っ立ったままでいる、だが次の瞬間
握った拳をカウンターとばかりに青年に突き出す
攻撃を完全に受けきってからのカウンター、それは到底技術とは言えないごり押しそのものだが、彼からすれば十分理にかなった最善の反撃行動だった <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 21:59:22.06 ID:i3LE+91Zo<> >>398
当たった。かなりのクリーンヒットである。流石に食人鬼も顔に笑みを浮かべた。

(初勝利貰えるか!?)

しかしその期待も霧散してしまう。
バトーが喜色を浮かべたかと思うと、あろうことかそのまま反撃してきたのだ。

「っぶ!? がっ! っふぅ!」

綺麗に胸に入ったのその一撃は軽々と青年の身を吹き飛ばした。
声を上げながら青年は地面を幾度も転がっていく。

「う……。ふっ……。あんた……最高だ! なんて出鱈目なんだ! 凄いよ!」

血を吐き出しながらも嬉しさを前面に押し出しながら叫んだ。
無論、体へのダメージは甚大だ。しかし、今までに喰らった人の生命を使い急速に体を再生させていく。
未だ再生しかけの体を酷使し、走り始める。
吹き飛ばされた分の距離を使い、助走をし青年は多くの子供が夢見た幻想を紡ぎ出した。

「ラ○ダーーーーキーーーーックッッ!!」

名ばかりのラ○ダーキック。青年自身のヒーロー像から生み出された技である。
まぁ、彼はライダージャケットを身に纏っているため、案外間違いではないのだが。
ラ○ダーキック改め、突っ込みどころ満載のただのドロップキックはバトーの胸目掛け繰り出された。 <> バトー<><>2011/05/27(金) 22:10:06.29 ID:MsbAZR5DO<> >>399
攻撃を受けた胸と、攻撃した拳からシュウゥ…と煙が立ち上る
構えを直しながら、青年の安否を確認するように視線を向けた

「ほう、再生か…」

こちらは強大な力と防御、対して相手は力と再生
こちらが耐え切れなくなるのが早いか、あちらが再生出来なくなるのが早いか、それまでの力比べとなる

(同じ箇所を狙って来たか…!)

いくら防御が堅牢であろうと、同じ場所を突かれ続ければいずれ砕ける
青年はそれに気付いているのかは解らないが、それをみすみすさせる程お人よしでもない

「ならば俺は、グランドスラムを狙うか!!」

両手を合わせ、祈るように指を重ね合わせる
しかしその手は祈る為に有らず、振りかぶって…
青年の蹴りの到達に合わせ、それに向けてぶん回すッ!
<> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 22:22:34.89 ID:i3LE+91Zo<> >>400
宙に飛びながらも相手を見据えているとどうやらカウンターを狙ってきていることが分かった。
しかし、浮かんだ身ではどうしようもない。
自分に訪れるであろう激痛を覚悟するしかなかったのだ。
そして、グランドスラムは見事に炸裂してしまう。

「かひゅっ……。ごほッ!」

強大鉄球が上から堕ちてきたような衝撃に地面に叩きつけられる食人鬼。
しかし、それは想定内の事態でもある。
四肢の再生を最優先にし、その脚でスプリングキックを頭目掛けて繰り出した。
跳ね起きの要領で体を使い、蹴る技だ。
腹筋、背筋、腕力を最大限を用いた蹴りが迫りくる。 <> バトー<><>2011/05/27(金) 22:35:59.67 ID:MsbAZR5DO<> >>401
攻撃は見事に成功した、しかし何か違和感がある
この程度の無茶はどうという事も無いはずだ、そのはずである
だが、自棄に左腕だけに痺れと痛みが残る

(…?)

その僅かな違和感を感じている間に、攻撃への対処が僅かに遅れた

「ぬッ…!?」

下方から顔面を物凄い力で蹴り上げられ、その巨体も浮き上がる
綺麗に入ったその蹴りは、彼の体を打ち上げ、後方の茂みの中まで吹き飛ばす
ズン、と重い音が、バトーが地面に落ちたのを解らせるだろう <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 22:43:59.79 ID:i3LE+91Zo<> >>402
「よっ……ごぼッ!? ごふごふっ! よっしゃあ!」

蹴った勢いで立ち上がった食人鬼は血に咽ながらも歓喜の声を挙げた。
ようやっと口周辺の再生も落ち着いたようである。
うっすらと体から蒸気が発生している。
異常なまでの再生力により新陳代謝が激しくなり、熱が生じているのだ。

「   追   撃   だ   !」

いつまでも喜んでいるほど食人鬼も阿呆ではない。
茂みに向かって走り始めた。倒れているであろうバトーにスタンピングを狙っているようだ。 <> バトー<><>2011/05/27(金) 22:53:50.38 ID:MsbAZR5DO<> >>403
スタンピングを狙い、落とされた青年の脚
その脚が一度バトーの肉体を踏み付けた所で、右手がその脚をむんずと掴んだ

「ふん…っぬらぁああ!!!」

掴んだその脚を、振り回してぶっきらぼうに脇に投げ捨てようとする
眠った体制のままでも、その怪力はまだ健在のようだ <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 23:01:58.31 ID:i3LE+91Zo<> >>404
「しまっ……!? うわぁ!?」

焦ったところでもう遅い。がっちり掴まれた脚はほどこうにもびくともしなかった。
そのまま食人鬼は投げ捨てられることになる。
弧を描き宙を飛ぶ体。
そのまま木に激突し、ずるずると落ちていった。

「ごほっごほっ!」

幸いなことに背中を打ちつけただけで怪我はしていないようだ。
咽ながらも立ち上がる。その瞳からは衰えぬ闘いへの執着が垣間見える。 <> バトー<><>2011/05/27(金) 23:15:16.07 ID:MsbAZR5DO<> >>405
「…俺も甘くなった物だ、わざわざ後手に回るとは」
「再生が切れるのを待つ前に、再生が間に合わない攻撃をする考えが浮かばないとは」
「そうだ、攻めこそが鬼の真骨頂、真の闘い方だったか…」

ゆっくり、鈍重な獣が立ち上がる様に見えるくらいのスピードで起き上がる
その体には今まで受けたダメージの跡、体の周囲には鬼の力を見せ付けるような覇気を纏っていた

「まだ闘気は潰えていないか?辞めるなら今のうちだ」
「ここから先は、俺からも攻めさせてもらうぞ」

赤黒い地獄の炎が如き妖気と覇気を沸き立たせ、彼は青年に目を向ける <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 23:21:06.02 ID:i3LE+91Zo<> >>406
「こいこいこいこいこいこいこいこいこいこぉぉぉぉおおおおおおい!」

大見得を切って見せる。たとえ相手が幾ら強大でも怯んではいけないのだ。
そうでなければ《あの子》に会えないのだから。

「あなたを真正面から打ち倒さなきゃあ意味が無いんだッ!」

仁王立ちして、バトーの瞳を見据える。
食人鬼が咆えた。

「掛  か  っ  て  来  いッッ!」 <> バトー<><>2011/05/27(金) 23:36:32.29 ID:MsbAZR5DO<> >>407
「よくぞ言った、名も知れぬ戦士」

賛辞を言葉で贈るのは、少々にして
右手を強く強く握ると、腕から腰から脚の先まで、全ての間接を限界まで捩って溜める

「その闘いの果てに目指す物があるのなら、この拳、受けきってみせろ」
「ただ無意味に闘いに臨む力を、思いの力で覆してみせろ」

力を入れる体中の筋肉が盛り上がり、服をパンパンに膨れ上がらせる
覇気が螺旋に渦巻き、右腕に集中し、亡者の悲鳴のような音が鳴る


「死 ぬ 気 で 受 け ろ」

全ての間接を順番に逆方向に捻りながら、大きく跳ぶように踏み出し距離を詰める
全ての回転は右腕の拳一つに伝わり、螺旋に廻る覇気を纏う拳を力任せにたたき付ける
何も特殊な力は無い、ただ力任せの、その上を行く力の篭ったコークスクリューパンチ
何も特別な思いは無い、あるのはただ、喧嘩相手に向けて振るう力だけ <> 食人鬼<><>2011/05/27(金) 23:54:04.21 ID:i3LE+91Zo<> >>408
力が溜まりつつあるバトーの右腕を凝視する。
隆起する筋肉。溢れ出る覇気。

「凄い……・」

既に圧巻とでも言うべき力がそこには渦巻いている。

「でも……やらなきゃ」

自分に言い聞かせるように呟いた。

「あなたのその拳を、受けきってみせる」

左足を軽く出し半身を切る。
同じように右腕を腰溜めに引き、迫りくる拳を見つめる。
迫り来るは圧倒的に絶対的にこの身を破壊せんとする暴力そのものだ。
それに対し、食人鬼は静かに拳を突き出した。
その形は正に正拳突き。空手に置ける究極の一である。
素人の一撃だが、載っている思い、力、全て一級品である。

拳と拳がぶつかり合う。
そこに拮抗は生じなかった。
食人鬼の拳が弾け飛ぶ。バトーの一撃にそれは比肩し得なかったのだ。
バトーの拳はそのまま勢いを殺さずに――――

「ぅ…………」

食人鬼の胸に風穴を空けた。
しかし、食人鬼は微笑んでさえいた。口元に血の化粧をしながらである。
凄絶ではあるが美しくもある。

「受け……きり…ま……した……よ……」

そう、食人鬼はその一撃を喰らい地に伏せることも、意識を失うことも無く見事、立ったまま耐えることが出来たのだ。 <> バトー<><>2011/05/28(土) 00:05:03.55 ID:XGnw6Y9DO<> >>409

グ、と一瞬感触を確かめるように溜めてから、肘を動かし、その次に体を引くようにして拳を引く
青年の拳は拮抗すらしなかった、しかしその拳がぶつかった一瞬が、彼の脳裏には深く焼き付いていた
あの一瞬、青年が拳に乗せた思いが、力が、伝わった全てが、とても重く感じられた、自分の拳等、石ころかのように思えるくらいに

「…そうか、受け切られたか」
「…俺の負けだな、名も無い男」

最大の攻撃を受け切られた、それだけで負けとなるには十分だ
思いの力の強さを知り、身の程を知る
握っていた右手を開くと、ポンと軽く青年の肩を叩いた <> 食人鬼<><>2011/05/28(土) 00:14:25.47 ID:J4zuW8EKo<> >>410
腕を抜かれた傍から再生が始まる。
半ば朦朧としながらも食人鬼の耳は言葉を捉えた。

「あぁ、じゃあ……僕勝てたんですね……」

笑みがより深くなった。まるで華が咲くような笑みだった。
自分を讃えてくれたバトーの右手が触れた瞬間、気が抜けたのだろう。
後ろに向かって仰向けにどうと倒れてしまった。

「あぁ……ありが…ぅ……ござぃ……まし……た……」

そう、一言言うと、とうとう気も失ってしまったようだ。
穏やかな顔をして、すぅすぅと寝息を立て始めた。

彼の見る夢はきっと《あの子》と再開し、幸せに浸る夢だろう。
これからも彼はその破綻した夢を追い続け、闘争に明け暮れるだろう <> バトー<><>2011/05/28(土) 00:23:40.23 ID:XGnw6Y9DO<> >>411
青年が倒れ、眠ったのを見ると、腕を降ろして一息つく
まだ少し左腕に違和感がある、まるでそこだけ力が弱まったようだ
原因と言えば…思い浮かばないでもないのだが

「…闘いの目的、思い……か」

ふいに呟いたそれは自分には無い物、でも無理にそれを見付ける気はない
思いの力で差を埋める物がいるなら、それが無い自分はその差を引き離すくらいに力をつければいいだけだ
ただの暇潰し、力試しで闘う自分に、まだ目的は必要ない
そうして、夜が更けるまで休んでいた <> 田中 夕<><>2011/05/28(土) 21:50:49.21 ID:RV+GfSi40<> 満月が輝く夜の公園。

ある少女と約束した場所。
時間帯などは決めなかった為にとんでもない事をしてる《普通じゃない普通な高校生》がいた。

……いや……

「夜食準備OK」
「防寒用の毛布OK」
「ダンボール……準備OK」

ダンボールでできた小屋(いや…なんかダンボールか?)ってものが公園にそびえ立っている。何故かビニールでできた窓つきだ。
そして、そな前には、ボサボサの黒髪で、どこにでもいそうなごく普通の顔立ちの高校生がいた。

………待つ為とはいえ普通じゃないね(笑) <> 露希<><>2011/05/28(土) 21:57:32.28 ID:FTV3PoEDO<> >>413
月が美しい、夜の公園。人が居ないので、翼を出した少女が歩いていた。

「流石に田中君は居ないよね。・・・なにあれっ?」

ダンボールの家発見!!
ホームレスかなと想いつつ、驚いていた。 <> 瞳<><>2011/05/28(土) 22:11:07.39 ID:SF9AKhlAO<> >>413,>>414
黒い着物の少女、瞳。今日は、重そうなカバンを手から下げている。その中にはたくさんの本。

「ふぅ、少し借りすぎたかな…」

実は彼女、以前田中から聞いたあの剣について図書館で調べていたのだ。

「ちょっと、休憩しよう。」

ベンチに座ろうと公園に立ち寄る。

「ん?なんだこのダンボール…」

そのダンボールの前でぽかんとして立ち止まる。 <> セツコ中<><>2011/05/28(土) 22:20:41.29 ID:Sq2Gi9D70<> >>415

「あ!露希!!こんばんはー!」
そんな彼女に向かい、笑顔で手を振る彼がいた。

ダンボールハウスのドアを開けながら。

………ダンボールハウスは彼が犯人だった…

露希の翼には気付いてるのか?

>>416

「あ!瞳!こんばんはー!」
そのダンボールハウスの前には田中くんがいた…

「あれ?その本は?」 <> 露希<><>2011/05/28(土) 22:28:42.27 ID:FTV3PoEDO<> >>415
「瞳っ!!会いたかったよ〜!」

・・・つい先日会ったのだが。ゆっくり話をしたかったらしい。

「ところで、その本は?」

瞳を見る目は、キラキラと輝いていた。

>>416
「田中君っ」ガビーン

ダンボールの正体がこの人だったとは・・・ア然。
普通じゃない彼には中の人も驚きを隠せない。

「今、夜だよ?ボクを待ってた・・・?」

翼をぱたぱたさせながら、聞いてみた。 <> 瞳<><>2011/05/28(土) 22:33:18.14 ID:SF9AKhlAO<> >>416
「夕!?え?まさか、ここにすんでいるわけじゃないよな?」

驚くが、ちょうどいいタイミングだ。

「ああ、ちょうど良かった。この本はな、例の剣のことについて調べていたんだ。」

カバンの中を見せる。十種神宝についての本がたくさん入っている。


>>417
「露希。私もだよ。」

そう言って微笑んだ。

「ああ、この本は彼から聞いた話しが気になって…って、もしかして露希も彼に協力を?」

話している田中と露希を見てそう思った。 <> 田中 夕<><>2011/05/28(土) 22:46:45.23 ID:50MdgkjD0<> >>417

「ハハハ。。時間を約束してなかったし、女の子を待たせちゃたら男としてダメだと思ってね」
右手で頭をかきながら、彼は爽やかに笑う。

「だから三日くらい前からスタンバってたんだ」
…………え?

「あれ?その翼…」
おや?気付いたか?

「凄い…なんて綺麗な翼なんだ!まさか…天使のコスプレして夜な夜な悪を裁く正義のヒロイン!?」
…こやつは何を言い始める?

>>418
「ハハハ。住んでないよ」
「ちょっと彼女と待ち合わせの場所がここだったから、公園の管理人さんに土下座してしばらくの間設置の許可をもらって…」
………………
うん。彼は変わった人間だったね。

「瞳……ありがとう!」
彼は彼女に向かい、深く…深く頭をさげた。

「それで…何かわかったんですか?」


「ところで…二人とも知り合いだったの?」 <> 露希<><>2011/05/28(土) 22:53:59.57 ID:FTV3PoEDO<> >>418
「そうだよ、田中君に協力したくて・・・。でもダンボールは凄いよね。」

ダンボール家を見ながら苦笑していた。

「ボクもその剣には興味あってね、知り合いに頼んだらレプリカを作ってきてくれるらしいよ。」

>>419
「え・・・・・・。」

本人も翼があることをすっかり忘れていた。・・・にも関わらず、偽物と勘違いされる。

「田中君、騙すつもりじゃなかったの。ボクは妖怪だよ。」

田中はどう思うのか。待っていた少女がこんなことを言うなんて、信じられるのか。受け入れられるのか。
不安そうな表情で、瞳を見た。 <> 瞳<><>2011/05/28(土) 23:07:57.88 ID:SF9AKhlAO<> >>419
「ああ、そうだったのか。ま、まぁ、ちゃんと許可をとってるんだったら問題ないな。」

多分問題ないだろうと、強引に納得する。

「ああ、あの剣の特徴から十種神宝という神宝の内の一つ、八握剣の可能性があるみたいだ。
ただ、十種神宝はいずれも行方がわからないらしく、剣があった山などの有力な情報は掴めなかった…」

と、少し申し訳なさそうに話す。やはり、図書館の本ではこのあたりが限界だろう。

「ああ、露希と私は親友なんだ。」


>>420
「そうか。露希が協力してくれるとなると頼もしいな。」

露希が親友であることと、露希の親友であることに対し誇らしげに笑った。

<> 田中 夕<><>2011/05/28(土) 23:17:50.63 ID:RV+GfSi40<> >>420

「え?」
その妖怪って聞いた瞬間の彼の行動は速かった。
なんかサインペンと色紙を何処からか出していた。

「驚いた…瞳の言う通り、妖怪って身近にいるんだ」
キラキラとした目で、露希を見ている。
それはまるで芸能人にあった人のような感じだ。

「……けど妖怪ってより天使みたいだな」
なんか、もう塗しすぎるくらいな尊敬の目で見ている。

「ところで、レプリカを作ってどうするの?」


>>421

「《十種神宝》?《八握剣》?」
聞いた事ない言葉に彼は首を傾げる。


「けど、名前がわかっただけでも良いよ」
「ありがとう!瞳!!」

ニコリと、嬉しそうに笑う。

「親友か……確かに仲良さそうだね。恋ばなとする仲とか?」
ちょっとふざけたように言いながら。 <> 露希<><>2011/05/28(土) 23:27:38.42 ID:FTV3PoEDO<> >>421
「瞳ぃ〜。」

目の前に健全な少年がいるにも関わらず。スキンシップをとり始める。
まずは、いつものハグから。もふー。

「瞳が作られたのと、その剣が作られたのはどっちが先かな?」

妖刀の瞳と比べ、何かヒントを出せるかと考えたらしい。

>>422
「えっと、天使なんだよね・・・。(大丈夫なのかな。)」

そういうと、筆記体でRokiと書いた。文字は小さめである。

「田中君に思い出させる為でもあるし、レプリカがあれば探すのにも楽かなぁって。」

レプリカはレプリカ。本物になるのは不可能。しかし、限りなく近く作れることは出来る。 <> 瞳<><>2011/05/28(土) 23:41:45.08 ID:SF9AKhlAO<> >>422
「図書館の本では、そのくらいが限界みたいだ。今度は、また別の方法で調べてみるよ。」

とはいえ、瞳はパソコンなど使い方がわからないし、誰かから聞くくらいしかなさそうだ。

「あ、いや、そういう話はあまりしない…かな。」

どことなく答え辛そうに言う。


>>423
「露希。」

優しく露希の頭を撫でてあげた。

「私が作られたのは約500年前で、確か十種神宝はそれより遥か昔の神話の時代に作られた物だから、剣の方がずっと前に作られているな。」

確かめるため、カバンから一冊本を取り出して言った。 <> 田中 夕<><>2011/05/28(土) 23:47:02.94 ID:8GY7IfTS0<> >>423

「えっ?天使って妖怪なの?」
驚いたように、ポカーンと彼女とローマ字を見つめる。

(…なんだろう。女子同士って抱き着き会うのがコミュニケーションなのかな?)
イチャイチャしてる二人を不思議そうにしながら

「なるほど…その為のレプリカなんだ」
「あれ?もしてかして、そのレプリカ作る人も妖怪?」


>>424

「お願いします!」
「スイマセン…俺の問題なのにこんなに迷惑かけて」
少し申し訳なさそうにしながら。

「あ…そうですか…」
ちょっと、まずかったかな?っと困ったように苦笑いする。 <> 露希<><>2011/05/28(土) 23:58:12.25 ID:FTV3PoEDO<> >>424
「温かくて、いい匂い。」

着物越しに瞳の優しさが伝わってくる。剣のことはとても大切だが、この時間もとても大切だった。

辛そうな親友の顔。それみ見る露希も辛そうになる。
露希は天使として、一つ出来ることがあった。【夢の中で、逝ってしまった人に会わせる】こと。

しかし、それは忘れていた過去などを思い出させてしまうデメリットもあり、中々話せなかった。

露希は悩んでいた・・・。

>>425
「どうなんだろう。自分でもよく分からないけど・・・。」

そもそも天使は神の使いらしいが、妖怪としては扱われるのか?

「その人もそうだよ。でも・・・どうなんだろう?」

普段何気なく接しているため、あまり気にしたことが無かった。それに彼自身も隠している部分があるらしいし。 <> 瞳<><>2011/05/29(日) 00:06:41.43 ID:gKeoRxOAO<> >>425
「迷惑なんかじゃないさ。あなたの大切な人を助けたいというのは、私の意思だからな。」

田中に、悲しい思いをさせたくない。そんな考えからのことだった。
大切な人を失う悲しみを知っている瞳だからこそできることなのかもしれない。

「ああ、あまり気にしないでくれ。」

苦笑いする田中に心配や不安を持たせないようにしようと言った。


>>426
「どうしたんだ、露希?もしかして、私の心配を?
大丈夫だよ。私は、強くなれた。前よりずっとな。」

露希の表情から察したのか、瞳は自分は強くなったと伝えた。
事実、露希やたくさんの妖怪や人間と関わっていくうちに瞳は強くなれていた。 <> 田中 夕<><>2011/05/29(日) 00:12:07.58 ID:EW3rXEG/0<> >>426

「う〜〜ん……まあ、難しい事はいいか!露希は露希だしな」
「俺の友達に代わらないからな」
なんかいつもまにか彼に友達認定されてる!?
しかも彼は純粋に微笑みながらそう言う。

「今度その人に会ってみるか…一応俺が直接頼まないと何か悪いしな」

>>427
「そうか…ありがとう」
「瞳も何か悩みがあったら俺に相談してくれないか?」
「友達なんだしな」
少し彼女を心配してか、ニカッと笑いながら彼女に言う。 <> 露希<><>2011/05/29(日) 00:23:30.17 ID:GdQoDPRDO<> >>427
(そうだった、瞳は弱くない・・・。この力は、本当に必要な時に使おう。)

露希は瞳に笑って見せた。
「あははは☆」

抱き着いた後はぷにぷにしたりぷにぷにしたり・・・つまり、好き勝手にやっている。

>>428
「友達・・・そうだね・・・。」

嬉しいはずなのに・・・。こんな表情したく無かったのに・・・。眼から一滴、涙目が零れた。

「あぁ・・・なんで泣いてるのかな、ボク・・・。大丈夫だからね!」

慌てて、ニコリと笑い帰した。 <> 瞳<><>2011/05/29(日) 00:28:08.17 ID:gKeoRxOAO<> >>428
「ああ、わかったよ。辛いときや苦しいときに支え合い、助け合うのが友達だもんな。」

瞳は露希や他の友人達と助け合い、支え合ってきた。彼とも、そんな関係になれたらいいなと心から思うのであった。


>>429
「お、おい露希…さすがにちょっと恥ずかしくなって来たぞ。夕もいるし、そろそろ、な。」

と、顔を赤らめながら言った。

「って、露希?どうした?」

涙を流した露希に心配そうに声をかける。 <> 田中 夕<><>2011/05/29(日) 00:34:11.00 ID:6lOcd8ld0<> >>429

「ど…どうしたんだ!?」
「俺なんかマズイ事言っちゃった?」
「とりあえずコレでふいて」
露希の涙を見て、彼は慌てて、ハンカチを取り出し彼女に差し出すだろう。

「大丈夫ならいいけど…無理とかダメだぞ?」
彼女の頭を優しく撫でようとしながらそう言うだろう。

>>430

「ああ!俺みたいな《普通な奴》にできる事は限られるかもしれないけど、できる限り力になるからな」
ニカッと笑いながら、安心させるようにサムズアップをする。 <> 露希<><>2011/05/29(日) 00:45:36.95 ID:GdQoDPRDO<> >>430
「あっ・・・ちょっとやり過ぎたかも・・・。ごめんね。」

赤らめてしまい、これ以上はかわいそうなのでやめた。

それに・・・瞳にも言えないことはあった。絶対に・・・

「ボクよりも田中君だよ。一緒に助けようね。」

>>431
『露希、女の子は笑顔じゃなきゃ。泣いちゃダメ!』
脳裏を遮る言葉、その口調は似てないけど・・・雰囲気が似ていた・・・。

「あ、りがとう・・・。また田中君に迷惑掛けたね。」

涙を拭くと、いつもの露希がいた。 <> 瞳<><>2011/05/29(日) 00:54:40.04 ID:gKeoRxOAO<> >>431
「ああ!」

(ん?普通…?普通、なのか?)

力強く返事をしたが、普通という部分に疑問を持った。


>>432
「…ああ、そうだな。一緒に助けよう。絶対に。」

強い意思を込め言った。 <> 田中 夕<><>2011/05/29(日) 01:07:15.83 ID:iIaQaHZy0<> >>432

「なに。俺の方が迷惑をかけてるから、気にしないで」
柔らかく、微笑み、彼は撫でるのをやめる。

「さて…今日はダンボールハウスで寝て片付けは明日にしようかな…」
ふわぁ〜っと欠伸をしながら、彼はケータイを取り出す。

「そういえば、ケータイはある?あったら連絡先を交換しない?」


>>433

そんな、瞳の疑問を露知らず。彼は微笑む。

……おや?気のせいだろうか…
一瞬だけ…一瞬だけ、彼の右手から《丸い円に八つの棒が生えてる模様》が浮かび上がった…

だが彼は気付いていない。
果たして彼女は気付くか?だが気付いたとしても、すぐ消えるから気のせいととらえるかもしれない。

「そういえば瞳はケータイ持ってる?あったら連絡先を交換しない?」 <> 露希<><>2011/05/29(日) 01:16:47.78 ID:GdQoDPRDO<> >>433-434
「携帯?(待てよ、氷亜さんのをメアド知る前に普通の男の子のを知るのはまずいよね?)」
「持ってきてないや。次にあったら交換しようね。」

今日、露希から見た田中の印象は大きく変わった。

「じゃあ、ボクはおいとまするよ。二人とも、またね!!」

そう言うと、てくてくと歩き、家へと戻って行った。
/私はこの辺で落ちます。
絡みありがとうございました! <> 瞳<><>2011/05/29(日) 01:18:51.15 ID:gKeoRxOAO<> >>434
(ん…?)

その模様、見間違いかと思い目をこする。再び見た時にはもう消えていた。

(見間違い…か?)

と、特に気に止めなかった。

「ああ、すまん。私は、機械はどうも苦手でな、だから携帯は持っていないんだ。」


>>435
「ああ、じゃあな。」

と手を振って見送った。 <> 田中 夕<><>2011/05/29(日) 01:29:57.59 ID:uaLcF8lR0<> >>435
「わかった。じゃあ次の機会でね」

「じゃあ、またね!露希!」
手を振り彼は見送るだろう。

>>436

「そうですか…」
「じゃあ一応コレ。うちの場所なのでなんかありましたら来てください」
そう言いながら、懐からメモとペンをとりだし、住所を書くと彼女に渡そうとするだろう。

「じゃあ、俺は今日はここで寝ます」
「またね。瞳」
そう言いながら彼はダンボールハウスに入るだろう。

……そして冷静に考えると少し気になる事がでるだろう…
さっきの《模様》と《八握剣》…なんだか形が似ていたような…
……果たして?

/皆さんお疲れ様でしたー
/絡みありがとうございます <> 瞳<><>2011/05/29(日) 01:38:14.70 ID:gKeoRxOAO<> >>437
「ああ、わかったよ。ありがとう。」

と言い、メモを受け取る。

「ああ、じゃあまたな。」

そう言うと立ち去って行った。

(うーん…やっぱり気のせいか…?しかし、あの模様…どこかで…)

借りた本に載っていた剣、それが答えだ。瞳は、気づくのだろうか…?



/お疲れ様でしたー
絡みありがとうございましす。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/29(日) 22:13:54.78 ID:DCqw5Tmdo<> 日没後。

竜宮から戻ってきたばかりの黒蔵は、一人で城址公園の泉に来ていた。
今回は叡肖に許可を貰っている。
泉の水は無事に沸いていたが、注連縄を張った岩に腰掛けて、
黒蔵の気持ちは重く沈んだままだった。

(蟹ちゃん…)

巴津火が出てきている間の記憶は無いため、竜宮での記憶は途切れ途切れであるが、
あの騒ぎの中で友人が死んだ事だけは聞かされている。

黒蔵の掌の青磁色の欠片に、ぽつりと水の雫が落ちた。 <> 零「」&白龍『』<><>2011/05/29(日) 22:19:51.37 ID:7wYMt9tw0<> 「白龍には言ってなかったけど、君が居ない間に色々なことが―」

誰も通らないような道を歩きながら、白い龍と悪魔が話をしていた。
勿論、その中には竜宮の話もきちんと。

『か…解峯様が?』
「噂だから分からない…真実を知る物に聞かないと。」

それを聞く限り、白龍は酷く落ち込んでいた。
(あんなに元気だったのに…服を渡した時は笑顔で受け取ってくれたのに…。)

気づけば城址公園へと足を運んでいた。

「黒蔵君…」 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/29(日) 22:26:29.25 ID:DCqw5Tmdo<> >>440
「白…龍…?」

暗がりの中に白が浮かんでいるのを黒蔵は見た。

「零」

くしゃ、と袖で涙を拭って黒蔵は岩から飛び降りた。
この暗がりで泣いた顔は見られないと判っていても、重く俯いたままだった。
その首からは守り袋と、新しい携帯電話がぶら下がっている。 <> 零「」&白龍『』<><>2011/05/29(日) 22:32:49.25 ID:7wYMt9tw0<> >>441
「話しにくいかもしれないけど…詳しく教えてくれない?

全部とは言わないけど、君の話せるところまで…。」

思い空気が辺りを支配する。
零には見えなかったが、白龍にはしっかりと見えた。黒蔵の泣き顔が。
出来ることならずっとあのまま封印されてれば…と思った。

『…』 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/29(日) 22:46:43.24 ID:DCqw5Tmdo<> >>442
「俺の中に他の誰かが居るんだ。それが、どうやら偉い奴みたい」

竜宮で一番偉いというその人に会わされるまで、黒蔵にはそれが巴津火と名乗っている事しか
知らされていなかった。

「その巴津火をもっと偉い人に会わせる為に俺が呼ばれた、んだと思う。
 そいつが出てきている間のことは記憶が無い。気が付いたら周りで戦いが起きてた。
 ずっと蟹ちゃんが俺を庇ってくれてて、その後は安全な場所へ移されたからどうなったかは後で聞いた」

もう一度、黒蔵の表情がぎゅっと歪んだ。

「蟹ちゃんが死んだって、この欠片を渡されたんだ。嘘じゃないんだ」

青い甲冑の欠片には、解峯の血と妖気が薄くこびり付いている。

「それで、俺は陸に戻れって言われた。叡肖さんが今、こっちで住む場所を探しに行ってる」

さらに泉を指して

「蛇神は生きてるみたいだけど、頼んでも会わせて貰えなかった」

この泉が湧いている限りは、ミナクチは生きているのだ。 <> 零「」&白龍『』<><>2011/05/29(日) 23:01:39.91 ID:7wYMt9tw0<> 「(やはり巴津火は…。コイツはしっかりとマークしないと。黒蔵の為にも。)」

零は軽く黒蔵の頭を撫でた。
意識が戻った途端、友達の死を告げられた黒蔵があまりにも可哀そうだった。

白龍はその甲冑の欠片を見ると、その場にしゃがみ込んでしまった。
顔は見えない、でも泣いていた。声を出さずに。

「そっか。実は露希のことなんだけどさ。

紫狂の一人に殺されたらしいんだ。だけど、本人曰く、ミナクチ様に助けて貰ったらしくて。

ミナクチ様は無事なんだね。」

ミナクチの件はよく知らなかったが、生存が確認できほっとしていた。

<> 黒蔵<>sage<>2011/05/29(日) 23:09:38.69 ID:DCqw5Tmdo<> >>444
「露希が生きてる!?
 俺、アネさんアニさんには、露希が波旬にやられたってことだけ聞いたんだ」

夜行集団に聞いたときは、まさかと思った。

「氷亜さんに知らせないと!」

それなら泣いている場合ではない。
あの凍りついた氷亜に、夜行集団がどれほど悲しんでいたかを黒蔵は見ている。
露希が生きているなら、どれほど彼らには救いだろうか。

黒蔵はいまにも駆け出していこうとする。 <> 零&白龍<><>2011/05/29(日) 23:18:11.22 ID:GdQoDPRDO<> >>445
「落ち着いて!!氷亜さんは助かったよ。」

「露希が自ら助けに行って、今は元通り。」

それは露希自信が言っていた。凄く笑顔で、喜んでいた。

「ところで、困ってることはない?竜宮のことでもなんでもいいの。して欲しいこととか。」 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/29(日) 23:33:05.91 ID:DCqw5Tmdo<> >>446
「氷亜さんが無事?ああ、露希も無事なんだし、そうか」

そうだ、あの露希なら真っ先に氷亜の所へ向かったことだろう。

「困ってること…?」

黒蔵はできれば蛇神に、もっと欲を言えば解峯に、もう一度会いたかった。
でも黒蔵に判らないことが多くあり、叡肖にもあまり勝手な行動はするなと言われている。
何が勝手な行動で、何が大丈夫なのか、それが判らなければ踏み出すのにも躊躇する。

「俺、わからないことが多過ぎるんだ。紫狂についてもよく判らないし…」

そうだ、自分は零や露希についても実はよく知らないのだと黒蔵は思い返した。

夜色の目が真っ直ぐに零を覗き込んだ。

「露希と袂山で初めて会ったとき、露希は会ったことも無い俺の罪状を知っていた。
 そう広く噂になるようなことでも無いはずなのに。
 零も露希も、何を、どこまで知っているの?」

蛇の邪眼は「一体何を隠している?」と零に問うていた。 <> 零&白龍<><>2011/05/29(日) 23:45:48.83 ID:GdQoDPRDO<> >>447
「分からないこと・・・かぁ。私が知ってることなら教えるけど・・・。」

黒蔵に問われた。何をどこまで知ってるか、と。
それを訴える眼は別のことも指している気がした。

「詳しくは言えない。例え黒蔵でも。ただ、俺の組織では個人の情報も扱ってたりする。」

「だから、露希が黒蔵を知っていても珍しくもなんともない。」

人が変わった様に話す零。彼の情報収集力は量り知れず、また情報の扱いもかなり慣れている様子。

「例えば、白龍。君が以前、神格を持ってたのも知ってるよ。隠してたかも知れないけど。」 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/29(日) 23:59:28.72 ID:DCqw5Tmdo<> >>448
(零の組織は何のために、俺なんかの情報を集めたんだろう?)

身近にいる白龍の隠したい情報も握っておいて、今の今までそれを隠していたようだ。
黒蔵は少し零兄妹を薄気味悪く感じた。

「その組織は、何のための組織?」

特に何もしないくせに何もかも知っている、ということはありえないだろう。
その時々に流れてくる風聞とは違い、二百年も昔の事は集めるつもりで知りえたものだろうし
組織というのは目的を持って生じるのだから。

「零、君達は何を企んでいる?」

黒蔵の言葉には、不信感が滲んでいた。 <> 零&白龍<><>2011/05/30(月) 00:12:09.16 ID:DYHM4v5DO<> 「さあてね、君が知る必要はないよ、黒蔵。知ったとこでどうする?」

『零っ、止めて下さい!黒蔵君は聞いてるだけで・・・』

「・・・・・・。」

白龍によって止められたが、零は微笑している。

普段見てきた零が本性なのか、時々見せるのが本性なのか、知るものはいない。
『黒蔵君、解峯様のこと好き?君のその想いが本物なら、きっと何か起こるよ。』 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/30(月) 00:28:14.41 ID:yfnl1dcZo<> >>450
「どうするかは、知ってから決める」

黒蔵の声は硬い。その零の言い様には小馬鹿にされているように感じた。
そこに決定的な言葉が投げ込まれた。

「蟹ちゃんのことは言うな!」

零、お前がそれを言うな。そんな風に、生々しい心の傷に塩を刷り込むような事を。

解峯との想い出、それすら零に覗き見られているように感じて、黒蔵の語気は荒かった。
黒蔵の掌に青い欠片が食い込んだ。

「そんな風に、知っている事を仄めかして零は何がしたいんだ?
 何もかもを知っていると相手に知らせて、楽しいか?」

黒蔵の中で、零への気持ちが完全に壊れた。 <> 零&白龍<><>2011/05/30(月) 00:40:43.22 ID:DYHM4v5DO<> >>451
「・・・っ!」

零は黒蔵の胸元を掴み、突き飛ばした。

「黒蔵、お前・・・・・・」

近くにある木に蹴りを入れると、零はどこかへと消えてしまった。
白龍は、そこに残された。
『黒蔵君・・・。』 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/30(月) 00:50:23.47 ID:yfnl1dcZo<> >>452
突き飛ばされた黒蔵は泣いていた。
最初に出来た友人と、最後に出来た友人とを失ったのだ。

「白龍、ごめん」

優しい白龍を辛い立場に置いてしまったことに、黒蔵は気づいた。

「もう俺は、露希達の家には戻れないんだね」

起き上がって服を叩くと、黒蔵は解峯の欠片を守り袋に入れた。

「露希に、ごめんねって伝えておいてくれるかな」

新しい携帯電話にはまだ、叡肖の番号しか登録されていない。
それで良かったのだ。零達にはもう、会わないだろうから。
そう決めて黒蔵は歩き始めた。


//この辺で落ちます。絡みありがとうございましたー。 <> 白龍<><>2011/05/30(月) 00:57:46.09 ID:DYHM4v5DO<> >>453
『く・・・ろくら・・・君?』

自分がいたのに、黒蔵と零の仲は壊れてしまった。

あまりに悲しいことで、自分が無力過ぎて惨めだった。

白龍は、待って、と言いたかった。でも、それは不可能だった。

壊れたものは二度と復元できないのだ。

/ありがとうございました!&お疲れ様でした!! <> 黒蔵<>sage<>2011/05/30(月) 21:40:46.88 ID:yfnl1dcZo<> 冷やりと心地よい森の朝の空気。袂山には霧が掛かっていた。

昨夜黒蔵は衣蛸が借りた家で、気の重い夜を過ごした。
布団で眠ったのに酷い夢を見たのは、零と仲違いしたからか蟹を失ったせいなのか。

(織理陽狐さんでも、四十萬陀でもいい。ほっとする誰かに会いたい)

友達を立て続けに失って、黒蔵の足は自然と袂山へと向かっていた。 <> 織理陽弧<>sage<>2011/05/30(月) 21:49:31.55 ID:XQSqiYqpo<> >>455
薄霧に包まれた袂神社。
白く染まるなかに、朱鳥居と橙色に灯る提灯は嫌に存在感があった。
独特の静けさの中に、森の遠くのどこからか、鳥のさえずりが聞こえてくる。
それに聞き耳を立てながら、織理陽弧は朝の気配を全身に感じていた。

下駄で石畳を叩いて、今まで腰かけていた鳥居から降りる。
石段をのぼってくる気配に向けて、霧の中から、狐は声をかけた。

「……今日はえらく沈んでおるのう」

想いを乗せる提灯を傾けて、

「黒蔵」

織理陽弧は、優しく、柔らかく名前を呼んだ。 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/30(月) 21:59:07.19 ID:yfnl1dcZo<> >>456
ふわりと目の前に降りてきた、優しくて温かい陽だまりのような気配。
石段の上に立つ織理陽狐に、黒蔵はその腕の中に駆け込んで行きたい衝動に駆られた。

「織理陽狐さん」

ふっと笑って見上げた顔のその目が赤い。
昨夜の夢見の悪さと泣きはらしたのと、隠したつもりで隠せなかった。

「友達をなくしちゃったんだ」

狐に貰った守り袋の中には、今は翡翠の輪ではなく、死んだ友人の一欠けら。

「一人は死んじゃった。でももう一人とは、喧嘩になって別れちゃった」

鳥居の下にしゃがみこみ、黒蔵はぽつりと言葉を落とす。 <> 織理陽弧<>sage<>2011/05/30(月) 22:09:12.86 ID:XQSqiYqpo<> >>457
「……そうか」

それは、辛いな。
大事な人をなくす辛さは、彼にも痛い程分かる。
織理陽弧は黒蔵を見下げるように膝を付くと、彼よりも少し大きな掌で、頭をくしゅりと撫でた。

黒蔵が狐の顔を見上げたなら、今にも泣きそうに微笑んでいる織理陽弧が見えるかもしれない。

「死は、……どんな者に対しても、常に平等じゃ。儂にも、お主にも、お主の友人にも。
 残されたものは、辛い。もう二度と会えぬのだから、当然じゃ」

妖、という存在自体、黄泉から蘇ったものもあるが、
もう一度戻ってしまえば、もう二度と会うことは叶わない。

「じゃがのう、黒蔵。死者への最高の手向けはなんだと思う?」

織理陽弧は、優しく頭を撫でる。

「それは悲しみではなく、感謝なのじゃよ」 <> 黒蔵<>sage<>2011/05/30(月) 22:25:53.91 ID:yfnl1dcZo<> >>458
「うん。蟹ちゃんには感謝してるんだ」

蟹にも昔、言われたのだ。
命が一つ失われたとき、その命に支えられたものが存在しているのなら
それだけでその失われた命は無駄にならずにすむ、と。

「でも俺はずっと庇ってくれてた蟹ちゃんに、ありがとうを言う暇も無かった。
 零にだって色々助けてもらってたりしたのに、喧嘩しちゃった」

織理陽狐の掌が温かく、心地よくて黒蔵は目を瞑る。
穏やかな陽だまりのような織理陽狐の気配。
黒蔵は、今なら怖い夢を見ないで眠れそうな気がした。
逃げる黒蔵の足首を切れた手首がつかんでいた夢、その後ろから幾つもの目にじっと見つめられていた…。

「気持ちが痛くてぐちゃぐちゃで、昨日は酷い夢ばかり見てたんだ」

あたたかな掌に撫でられる感触に、黒蔵はそう呟いた。 <> 織理陽弧<>sage<>2011/05/30(月) 22:42:12.00 ID:XQSqiYqpo<> >>459
「怖い夢を見るのは、お主が自分を責めているからじゃないかの?」

友人が死んでしまったことも、
友人と喧嘩してしまったことも、
どこかできっと、黒蔵は自分を責めているのだろう。

「心を痛めるのは、仕方ないことじゃ。
 だけど、それは、お主が苦しみから逃げていない証拠じゃよ」

痛みも苦しみも、織理陽弧は肯定する。

「それに、喧嘩ならば、まだ必ず元通りになれる。絶対にな」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/30(月) 22:50:30.82 ID:yfnl1dcZo<> >>460
「そうかな、そうだといいな。織理陽狐さんにそう言って貰うと、なんだか凄く安心す…る…」

ことり、とその頭が織理陽狐にもたれた。
眠ってしまったかのような黒蔵の、その丸まった小さな背中が発する気配が不意に変わった。

どろりと濃い、帯電したような緊張感のある強い気配。
その中心で目覚めたものは、自分の頭を撫でている掌に気づくと
紫色の瞳で怪訝そうに織理陽狐を見た。

「何だここは?」

自分が小さな子供のように愛撫されていることに気づき、その困惑した表情にさっと羞恥の色が差した。

「何だお前は?ボクに何をしてる!?」

黒蔵だった筈のものは、慌てたように身を起した。 <> 夜行集団<><>2011/05/30(月) 22:53:11.76 ID:whjhoVU90<> >>460、>>461
神社の鳥居をくぐるのは悲しみにくれる黒蔵だけではなかった。
彼の境遇など知らずに、おそらくその心境の真反対の心持ちでやってくる少女(少年)。
その格好はどういう因果なのか、全身黒の着物で見を包んで、喪服姿であった。

「どこかで音楽を求めている気がします。
 そんな予感に胸が高まりますね。」

とことこと軽い足どりで織理陽孤と黒蔵に近づき、静かな微笑みをたたえている。
あきらかに今の空間に笑顔は似合う事は無いはずなのだが、奏でる為の理由が出来る、
その事に少し楽しみな感情があって笑顔な為に、傍から見れば不幸で笑って見えてしまうかもしれない。 <> 織理陽弧<>sage<>2011/05/30(月) 23:01:45.11 ID:XQSqiYqpo<> >>461
「お?」

眠ってしまった――かと思われたが、
顔を赤くしながら立ち上がった黒蔵を、織理陽弧はきょとんとした顔で見上げる。

「前会った時と何か違うと思ったら……お主がいたせいか」

それから、納得したように頷いた。
巴津火の気配が彼の中にあったせいで、どこか違和感があったのだと。

「初めましてじゃのう。儂は織理陽弧じゃ。黒蔵の悩みを聞いておったのじゃよ」

織理陽弧は慌てもせずに、にこりと微笑む。

>>462
「おや?」

喪服姿の少女の姿を見て、織理陽弧は小首を傾げた。
しかし相手が笑顔なため、狐も反応するように笑顔になる。

「お主は、お客さんかの?」

これで参拝客ならば、さらに幸せいっぱいなのだが。 <> 巴津火<>sage<>2011/05/30(月) 23:10:47.35 ID:yfnl1dcZo<> >>462
(なんだこいつ?何をそんなににやけている?)

一瞬の警戒の後、黒い喪服の相手の妖気から対した脅威はないと判断した巴津火は、
尊大な態度を取り戻す。

「何だお前?」

本来ならお前こそなんだ、とツッコまれるところではある。

>>463
「織理陽狐?ふーん、ボクは巴津火だ」

偉そうに胸を張ってみせるが、その印象は黒蔵よりも幼い。

「お前が先に名乗ったから、覚えておいてやろう。
 あと、ボクを撫でるのは許してやるから感謝しろ」

ふふん、と偉そうに織理陽狐の横に座るが、単に撫でろというおねだりである。
ちろっと上目遣い様子を伺うが、目があうとぷい、と逸らしてしまう。 <> 夜行集団<><>2011/05/30(月) 23:19:18.45 ID:whjhoVU90<> >>463
「残念ですがむしろあなた達がお客さんなのですよ。」

いきなり言いだされても、知らない者からしたらなに言ってるんだこいつ状態な事を言い切り、
ぐん、と胸を突き出して少しイバリ気味な華音は、
彼等にビシッと指差し、

「あなた達が今求めているのは音楽”、でしょ!!」

と割と大きな声を張り上げた。
華音が歌う歌の為、極限まで調律と洗練のなされた、澄んだ声が神社に反響する。

>>464
自身の反響にしばらく自己審査していた華音は自分に
「今日は調子が良いですが、40点が良いところですね」
と評価を下してから巴津火のかけた声に反応してした。

「華音はあなたに!!みんなに!!世界に!!
 音楽と言う幸福運ぶ、no music no Kaonな華音です!!」

そして巴津火には以前氷亜たちがしていたような、
ホストやそう言った接客業の人がする、あの紹介を見よう見まねながらもやってみた。 <> 華音<><>2011/05/30(月) 23:19:25.69 ID:whjhoVU90<> >>463
「残念ですがむしろあなた達がお客さんなのですよ。」

いきなり言いだされても、知らない者からしたらなに言ってるんだこいつ状態な事を言い切り、
ぐん、と胸を突き出して少しイバリ気味な華音は、
彼等にビシッと指差し、

「あなた達が今求めているのは音楽”、でしょ!!」

と割と大きな声を張り上げた。
華音が歌う歌の為、極限まで調律と洗練のなされた、澄んだ声が神社に反響する。

>>464
自身の反響にしばらく自己審査していた華音は自分に
「今日は調子が良いですが、40点が良いところですね」
と評価を下してから巴津火のかけた声に反応してした。

「華音はあなたに!!みんなに!!世界に!!
 音楽と言う幸福運ぶ、no music no Kaonな華音です!!」

そして巴津火には以前氷亜たちがしていたような、
ホストやそう言った接客業の人がする、あの紹介を見よう見まねながらもやってみた。 <> 織理陽弧<>sage<>2011/05/30(月) 23:26:41.75 ID:XQSqiYqpo<> >>464
「巴津火じゃな。よろしくの」

にこーと笑って、相変わらずくしゃくしゃと頭を撫でる。

「ところで巴津火よ。お主はなぜ黒蔵の中にいるのじゃ?」

柔らかな黒髪を撫でながら、巴津火に尋ねる。

>>466
「そうなのか?」

少ししょぼんとしたが、すぐに目を丸くする。
音楽などの芸術は織理陽弧も大好きなのだ。

華音の歌声が神社に響き渡る。
耳に心地よい旋律。胸が暖かくなる歌声。
織理陽弧は目を瞑って聞き入っていた。

歌が終わると、ぱちっと織理陽弧は目を開いた。
ぱちぱちぱち! と思いっきり、鳴り止まない拍手を鳴らす。

「素晴らしい! 素晴らしいぞ!
 のーみゅーじっく……? というのは分からんが、とにかく、お主は華音というんじゃな」

ぱあっと顔を明るくし、

「お主の歌、素晴らしかったぞ華音!」 <> 巴津火<>sage<>2011/05/30(月) 23:33:59.30 ID:yfnl1dcZo<> >>466-467
「華音?奏でるのはいいが、静かなのにしろ」

オンステージ的な華音の自己紹介は、陽だまりでうたた寝したい気分の巴津火には少しばかり
煩わしかったようだ。
しかし声を張り上げた自己紹介の後の音楽は、巴津火にも心地よさを与えた。
織理陽狐ほどの判りやすい賞賛ではないが、「いい喉してんな」と、ぽそっと呟いたあたりに
その意が現れていた。

「あぁ、コイツが実に具合良かったからさ」

織理陽狐の掌と、華音の音楽に気を良くした巴津火は、ケケケと笑って織理陽狐の問いに答える。

「コイツの中には、入りやすかった。それだけだ」 <> 華音<><>2011/05/30(月) 23:38:58.20 ID:whjhoVU90<> >>467
歌い終えたあと、さっきまで自信満々にしていた華音だったが、
織理陽孤の拍手を受け褒められてた時には、少し照れくさそうにほほに手をやっていた。

しかし、と織理陽孤の方へ手のひらを向け、待ったのポーズをとる華音。
その眼からは何か言いたい事がある様で。

「どこかに僕が必要とされてた気がするんです!!
 でも今さっきなぜかなくなったんです、なんで・・・?」

首をかしげ、ななめ上の方へ眼をやる。
確かに華音が曲を奏でる良い口実があったのだが、それは今は存在していない。

>>468
巴津火にちょっとお小言を頂いてしまったので少し華音はしょんぼりとした。
しかし彼の言葉に少し見え隠れした賞賛に、華音の顔はぱあっっと明るくなる。

「ではこれなどどうでしょう」

そう言って華音は手入れの良くされているバイオリンを取り出した。
そこから華音の目つきは少し真剣なものとなり、華音によってバイオリンの弦がなる。

華音が演奏するのは夜想曲(ノクターン)、まさしく夜静かな所に丁度良い曲。 <> 織理陽弧<>sage<>2011/05/30(月) 23:46:10.28 ID:XQSqiYqpo<> >>468-469
「そうかそうか」

くしゅり、と掌を置いたまま「しかし人の体じゃから、あまり悪さするなよ」と軽い調子でいう。
彼の紫の瞳が何を表しているのか、織理陽弧には分かっているはずなのだが……。
華音の疑問に対し、

「それは――」

ちらり、と黒蔵、の体を借りた巴津火を見た。
おそらく華音の音楽を必要しているのは、黒蔵だったのだろう。

しかしそれを言う前に、華音が夜想曲を奏で始めた。
織理陽弧は静かにバイオリンに身を任せる。
朝の静けさが、美しい旋律と重なって心地よい。 <> 巴津火<>sage<>2011/05/30(月) 23:51:26.54 ID:yfnl1dcZo<> >>469-470
「必要とされてた?」

どういう意味だ、と怪訝そうな巴津火。しかし楽器を取り出した華音に、

「歌だけじゃなく楽器も使えるのか。よし、上手かったらボクの屋敷に来るのを許してやる。
 雇ってやってもいいぞ」

幼くて尊大な竜宮の主の息子はやがて、織理陽狐の膝枕で、華音のノクターンに
健康な寝息を立て始める。
元々黒蔵の身体もひどく疲れていたのだ。華音は音楽で巴津火を鎮めることに成功したようだ。

同じ頃、神社から少し離れた場所で、携帯を片手にタクシーから降りたものが居た。
人の姿でスーツを着込んだ衣蛸の叡肖である。

(携帯電話を持たせておいて正解だったな)

GPSサーチは今回は有効であったらしい。
まもなく朝霧の中から、石段を登ってくるその姿が見えるだろう。 <> 華音<><>2011/05/31(火) 00:01:03.52 ID:GiOgHu4y0<> >>470、>>471
引き終えられたバイオリン、その弦が震え切り曲が終った後は、
神社のこの空間は4分の4の長さで言う、二分休符ほどの静寂が生まれた。

そしてその静寂を初めに破ったのは織理陽孤や巴津火で無く華音であった。
それは華音の華音たりえる音楽の特化という特性により敏感になった耳が、
階段を登るある男の足音を捉えたからである。

「織理陽孤さん、もしかしたらお客さんかもしれませんよ」

笑顔で織理陽孤に話しかける。


「ありがとうございます!!」

褒められた上に雇っても良いとまで言った巴津火に、
その態度が偉そうであってもありがたそうに頭をぺこっと下げ礼をいった。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/31(火) 00:07:04.31 ID:9xhJU3WSO<> >>471-472
(可愛らしいのー)

黒蔵を膝枕しながら、子供を寝付かせるように背中を一定のリズムで叩く。
華音の奏でる心地よい夜想曲で、織理陽狐まで眠たくなってきた。
演奏が終わると、狐が眠たい目を擦る。
ついでに、ちゃんと夜想曲は聞いている。

「うむ、やはり素晴らしいの」

ぱちぱち、と夜想曲にあわせて今度は控えめな拍手。
だが気持ちはしっかりと籠もった、心からの拍手だ。

「……おや」

霧の奥に見えた人影。
織理陽狐はさも嬉しそうに「今日はお客が多いのう」と言った。
<> 巴津火 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 00:19:03.63 ID:g1dnkJuoo<> >>472-473
「ほう」

織理陽狐の膝で大人しく寝入っている巴津火に、叡肖は簡単の声を上げた。
この凶暴な幼い主がこんな風に寝入っているとは予想もしなかったのだ。

陸へ戻ってからの巴津火は、あの拷問の件で一度手酷く叡肖に噛み付いてきている。
しかし「よく覚えて無いんですが、何かありましたっけ?」と他の従卒の前でわざと尋ね返した叡肖に、
生みの苦しみを味わわされたとは言えなかったプライドの高い巴津火は、そこで黙らざるを得なかったのだ。
そんな前提があるため、巴津火が暴れる覚悟はしていた叡肖だった。

「これは見事だ。主を眠らせたのは、どちらのお手柄かな?」

鳥居の下で二人の妖怪をかわるがわるに見て、叡肖がそう尋ねる。

「私の名は叡肖、今はこの主に仕える衣蛸です」

朝霧の中に、海の香りが混じった。 <> 華音<><>2011/05/31(火) 00:23:27.84 ID:GiOgHu4y0<> >>473、>>474
すっとバイオリンをしまった華音は目の前の初対面な男性を見つめている。
なんとなく音楽は好きそうだが、それよりもそれを口説く手段に使っていそうな見た目。
偏見にも満たないただのカンなのだが、そんな雰囲気の叡肖をじとっとした目で見つめていた。

「(嫌いと言うのではないですが・・・好きにはなれなさそうです・・・)」

「華音は華音です。よろしくお願いします。

 手柄は織理陽孤さんです。絶対にこの方です。
 それに巴津火さんはもともと眠たかったのですよ!!」

そう言い切る華音の顔は少し真剣で、声が若干荒げられている節があった。
それは華音からすれば当然で、自分の演奏中眠られてしまうという事は、
曲目が夜想曲であっても結構屈辱なのである。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/31(火) 00:32:52.72 ID:9xhJU3WSO<> >>474
「巴津火の知り合いかの?」

膝の上で寝息を立てる巴津火と、叡肖を見合わせる。
巴津火を眠らせたのは華音の夜想曲による効果が一番だろうから、織理陽狐は「華音の音楽のおかげじゃ」と答えておいた。

しかし、衣蛸とは。
磯の芳しい薫りが鼻につく。
織理陽狐は叡肖を見ると、はて、と小首を傾げた。

「……というか、お主、儂とどこかで会っておらんか?」

>>475
「はは、謙遜するな華音。巴津火が気持ち良く寝ているのはお主のおかげじゃよ」

黒髪を撫でながら、華音に微笑む。

「いい音楽というのは自然に眠くなるものじゃ」

それが証拠というもの。
心地よい音楽であるからこそ、こうして快適な眠りについているのだ。 <> 巴津火 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 00:41:11.27 ID:g1dnkJuoo<> >>475-476
「お二方の協力によるものでしたか。
 華音さん、織理陽狐さん。主を鎮めてくださったことに感謝します」

叡肖はそっと巴津火を抱きおこし、膝が痺れてしまったであろう織理陽狐に目礼する。
なにやらもぐもぐと呟きながら、眠ったままの巴津火は大人しく叡肖に背負われた。

(こっちの喪服の子には嫌われたっぽいな。まあいいや、子供は対象外だし)

そういう視線の含む意味は容易に察せる遊び人の衣蛸。
その服には数種類の香水の移り香がある。
昨夜黒蔵が布団の中で泣いている間、どうやら夜遊びをしていたらしい。

「あの廃寺ではどうも。あの後、俺は丑三に会いましたよ」

衣蛸はそつなく頭をさげた。
多少口調が砕けたのは、今は主が眠っているのと織理陽狐とは既知の中だからであろう。 <> 華音<><>2011/05/31(火) 00:42:25.97 ID:GiOgHu4y0<> >>476、>>477
「華音はそうは思ってな・・・」

うーん、とうずくまり、頭を抱えて悩む。
織理陽孤に賛成するべきかせざるべきか、普通から見れば当然賛成しても支障無いのだが、
夜想曲初心者だった時の華音は当時、お客はむしろ真面目に聞かず、ただの子守唄にされたトラウマがあるのだ。

「寝たいなら初めから子守唄と・・・」

ぼやきたい華音であったが、しかしぶつくさと言い続けても栓が無いと思いなおし、
はいっ、と大きく手を上げ自分の手柄であるとアピールした。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/31(火) 00:50:22.98 ID:9xhJU3WSO<> >>477
「疲れているようじゃ。起こさぬよう、なるべく静かにしてやってくれ」

叡肖にゆっくりと黒蔵の体を渡してから、人差し指を唇に持っていく。
大人びた、それでいて幼い表情。

「おお、そうか。して、どうじゃった? 元気じゃったか?」

あの後会う機会もなく、東雲の知らないという。
織理陽狐も心配していたのだ。

>>478
うんうん、と織理陽狐は満足そうに頷く。
そもそも悪い音楽なら、子守唄にすらならないのだ。

「お主の音楽は素晴らしいのじゃから、自信を持て。今度また演奏に来てくれんか?」

きらきら、と瞳を輝かせながら、織理陽狐がいう。
本心から、また演奏が聞きたいと思っているのだろう。 <> 巴津火 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 00:58:23.07 ID:g1dnkJuoo<> >>478-479
手を上げた華音に衣蛸は頷いて頼んだ。

「もしよければ、時折来て、主のために奏でてはもらえないかな?
 もちろん報酬ははずむ。場所はここなんだが」

衣蛸は腕を新しく出して、メモ帳をポケットから取り出した。
巴津火を背負ったままで、蛸の触腕は住所と電話番号を記してページを破り、
それを華音に差し出した。使える手が多いのってこんなとき便利である。

実のところ、巴津火が暴れたときには手を焼くのである。
今のところは人間界の珍しい食べ物で釣ったり、酒を飲ませて眠らせたりしているのだが、
巴津火がそういつも空腹とも限らない。

「あの男は元気でしたよ。今は連絡も取れます」

織理陽狐に答えた衣蛸は、丑三の電話番号とアドレスを持っている。

「何かあったときは連絡が来ることになってます。こちらにもその際はお知らせしましょうか?」 <> 華音<><>2011/05/31(火) 01:01:39.07 ID:GiOgHu4y0<> >>479
織理陽孤に向けてとても嬉しそうな笑顔を向けた。
本日二度目のぱあぁである。

「はい!!ぜひです!!
 今度はたくさんのお客さんが来るようにもっと頑張りますね!!」

すると華音は懐からメモ帳とHB鉛筆を取り出し、

「では次に奏でさせてもらう時ですが、どの曲がお望みですか?」

と言った。
どうせ奏でるのならば、楽しむのは自分だけでなく相手も、そしてその相手の曲で奏でたい。
そんな華音の真っ直ぐな歌への情熱があった。

>>480
紙切れを受け取る時に、あ、この方は蛸なんだ、とかどうでもいいような事を考えていた為、
報酬などの音楽とは関係の無い単語は聞き逃していた。
なんとも調子のいいノイズキャンセリングである。

「もちろんです!!この方の好きな音楽は無いのですか?」

そして先ほど織理陽孤にしたのと同じ質問をした。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/31(火) 01:15:21.77 ID:9xhJU3WSO<> >>480
「それはよかった……」

ほっ、と一安心。
これで胸の突っ返えの一つが取れたというものだ。

「そうじゃな。あやつのあの後のことも気になる……何かあれば、ぜひ伝えてくれ」

儂はいつでもここにおる、と頭上の朱鳥居を指差す。
織理陽狐自身は、あまりこの神社から出ることがなかった。
たまに、人があんまり来ない時は出ていくが、基本はお留守番なのだ。
だから少し寂しい日があったりも、しないでもない。

>>481
華音の音楽に対する情熱に、織理陽狐は素直に感心していた。
真っ直ぐに何かを大切にできるのは、素晴らしいことだ。

「そうじゃのう……やはり、琴や尺八かのう……」

昔ながら、という感じの楽器を上げる織理陽狐。
バイオリンの音は素晴らしいが、やはり聞き慣れているのは日本の楽器だ。 <> 巴津火 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 01:21:00.20 ID:g1dnkJuoo<> >>481-482
「見ての通り主はまだ幼いんだ。その癖一度暴れだすとなかなかに鎮めるのは大変でな。
 子守唄や気分の静まるものであれば我々も有難い」

難しい曲はおそらく巴津火にはまだ早いのだろう。
覚えやすい旋律の穏やかなものが良さそうだ。
そして織理陽狐の答えを聞いて、衣蛸も思いつく。

「なにか主の興味を引くだろう珍しい楽器でもあったら、それを頼みたい。
 華音どのに完全に任せてしまうことになるが、それでも良いだろうか?」

昔ながらのものも良いが、巴津火のように過去の記憶も残しつつまだ幼い魂には
何か目新しいもののほうがいいだろう、との判断である。

「ではあの男から連絡があったら、こちらにも使いを寄越しましょう」

そう織理陽狐に約束をした。
華音の返事を聞いたら、叡肖たちはそろそろ屋敷に戻らねばならない。 <> 華音<><>2011/05/31(火) 01:28:50.68 ID:GiOgHu4y0<> >>482、>>483
「雅楽系ですね!!」

お任せあれ、と強くその小さな胸に、どんと拳を叩いて自身の程を示す。
琴や尺八は当然の事、琵琶ですらもう何十年前にはある程度人に見せる琴の叶うレベルになっているのだった。

雅楽、特に琴・尺八、とメモ帳に書き記す。

>>483
「・・・じゃあマトリョミンですかね?」

何故にそれをチョイスした、と突っ込みたくなるようなセンスの筈仕方をしながら、
叡肖のあげた項目もメモ帳に書き記す。
―童謡の様な雰囲気、南方の楽器なら珍しいかも―

>>ALL
そしてメモ帳を懐にしまってから、華音はまたその鋭敏な耳で何かを聞きつけた。
どこかで音楽を求めるような雰囲気を感じたのだ。
その為いてもたってもいられず、その方向へと走って行く華音。

「みなさんさよならです!!今度の曲はみなさんを興奮のドツボに巻き込んでみせますよ!!」

と去り際にそう言い残し階段を走り下って行った。 <> 織理陽狐<>sage<>2011/05/31(火) 01:32:47.77 ID:9xhJU3WSO<> >>483-484
「ありがとう」

織理陽狐は言った後、叡肖にも微笑み掛けた。

「お主もなにか悩みがあれば、また今度は参拝にくるとよいぞ。力になるぞ!」

去っていく華音を見送り、背中に向けて手を振った。

//お疲れさまでした <> 巴津火 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 01:36:57.73 ID:g1dnkJuoo<> >>484
「最近の陸の音楽についてはまだ良く知らないんだ。
 だが、君が来てくれるなら屋敷の皆が助かるよ」

興奮のドツボにはまった巴津火がどうなるか、ある意味カオスな予感もするが。

>>485
「最近の悩みといえば、この主が暴れる事ですかね。はは。
 ではまたいずれ」

織理陽狐の言葉を冗談として聞き流した衣蛸は、
走り去った華音と違い、背中の主を起さないようゆっくりと石段を下る。
そして待たせておいたタクシーに乗り込むと、車は走り去っていった。 <> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 21:20:29.64 ID:g1dnkJuoo<> とある街中のコーヒーショップ。
昼日中に陸を出歩いている海の妖怪は、あまり居ないだろう。

順応性のあるこの海の生き物は、ごく短い間に人間社会に上手く馴染んでいた。
ごくごく普通のビジネスマン、といった風を装って、衣蛸の叡肖はカップを片手に
表通りに面した席に陣取っている。

今日は図書館に立ち寄って、資料を幾つか仕込んできたところである。
コンピューター関連の雑誌を手にとって見ているあたり、
どうやらインターネット環境を手に入れようとしているらしい。 <> 白龍<><>2011/05/31(火) 21:27:09.42 ID:3ofccl0DO<> >>487
「ハァハァ、叡肖様はどこにいるのだろう・・・。」

急ぎながら、とある人物を探す女性が一人。
肌から服、ほとんどが白である女性は、少し美しい雰囲気があった。

ふと視線を反らした先のコーヒーショップに、彼はいた。
顔が笑顔になり、その中へと入って行った。

「叡肖様・・・!」 <> 丑三夜中<><>2011/05/31(火) 21:35:49.05 ID:t7xp00TDO<> >>487>>488

「いやー、参った参った、鼻血が口から出るくらい参ったなー」

ちゃぽん、ちゃぽん、コーヒーに角砂糖を入れながらその男は新聞を読んでいた

「最近、何か色々と大変そうだし、こっちもこっちで大変になりそうだしなー」

その男は叡肖の右隣の席に座って、左手に持った新聞を読みながらホットコーヒーに角砂糖を入れている
ちゃぽん、ちゃぽん、ちゃぽん、ちゃんぽん、ちゃぽん
音を聞くだけでも解る、入れすぎだ

「妖怪も妖怪で、大変そうだって聞くしなー」
「そこん所、どうなの?」

かと思えば、その男はいきなり叡肖に話し掛けてきた <> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 21:41:01.62 ID:g1dnkJuoo<> >>488
「やあ」

ニッコリと爽やかに微笑んで、白龍に片手を上げた衣蛸。
傍目には彼女と待ち合わせでもしていたかの様である。

「どうしたのかな?そんなに慌てて。
 まず何か飲んで落ち着きませんか?よければ奢らせて貰いますよ」

雑誌を置いて立ち上がると、叡肖は隣の椅子を引いて白龍に座るよう勧める。
さらに叡肖の呼んだウェイトレスが、白龍の前にメニューを持ってきた。

>>489
「おお、丑三か。
 居たなら早く声かけろって、飯くらい奢ったのに」

笑いながら丑三の肩を叩くなれなれしさは、親しい男友達に対する態度である。

「そりゃ、こっちはこっちで色々大変よー。
 でも男ならまず自分の事より、こっちの彼女の大変な話聞いてあげないとな」

急いだらしく息を切らした白龍のほうへと、衣蛸は片目を瞑ってみせた。 <> 白龍<><>2011/05/31(火) 21:48:31.77 ID:3ofccl0DO<> >>479
「(アレ・・・?この人確か・・・?)」

少し見覚えのある顔だとは思った。
しかし、砂糖を入れまくる行動を見て、知らない人、と判断した。

>>480
「あ、えっと・・・エスプレッソください。」

ひとまずは叡肖の隣に座って、飲み物を頼んだ。
そして叡肖を見て、すまなそうな顔をした。

「先日の黒蔵君の件、本当に申し訳ございませんでした。」

はて、彼は知っているのか。白龍は、先日、叡肖が遊びに行っていたことなど知らない。 <> 丑三夜中<><>2011/05/31(火) 21:55:10.32 ID:t7xp00TDO<> >>490
「ノンノン、今日の俺は羽振りがいいからな」
「こないだこれで儲かってな」

嬉しそうに笑いながら持ってる新聞を軽く叩いて叡肖に見せる
よく見ればそれはこんな店には似合わない競馬新聞、どうやら一山当てたようだ

「そりゃそーか、大変じゃない筈ないよなー」
「なんだお前、あんな可愛い女の子の知り合いなんか持っちゃって、俺に紹介しろよー」

とことん機嫌が良さそうに気持ち悪い笑みを浮かべながら、砂糖の塊を大量にぶち込んだコーヒーを一口
考えただけでも気分が悪くなるようなそれを何とも無いように飲んで、カップを置く

>>491
「黒蔵…っつーと、こいつが探してた奴だっけ?」
「見付かったの?俺は見てないっつーか探してすらいないけど」

白龍の話に出た名前に聞き覚えがあると、身を乗り出すようにして話に首を突っ込む
<> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 22:06:25.58 ID:g1dnkJuoo<> >>491-492
「羽振りがいいのはあぶく銭か。丑三らしいなww
 紹介するよ、白龍ちゃん。こっちは退魔師の丑三夜中。で、丑三、この子は白龍ちゃんだ。
 彼女は俺の主の恩人の縁者、ってとこだな」 

簡単に紹介を済ませると叡肖は白龍に事情を聞いた。

「あいつ、何かあったらしいね。
 君らの家にはもう行かない、って他には詳しいことは何も言ってなかったけど、
 やたらメソメソしてたな。何か君が知ってる事があれば教えてくれるかい?」

そして丑三が話にかんでくると、

「そう、そいつだよ丑三。実はな…」

そして事情を知らないであろう丑三に、黒蔵が見つかった事と、白龍も知らないであろう、
その蛇に取り付いていた竜宮の主の凶暴な息子のことをかいつまんで二人に説明した。

「そう言うわけで今、俺はそいつの監視役からお守り役に立場が変わってるわけだ。
 巴津火は百鬼の主、窮奇の駒として呼び起こされてるんで、正直俺も手を焼いてる。
 ある意味じゃ、白龍ちゃんたちからアイツが離れたのはもっけの幸いって奴だと思うね」

話の最中、ウェイトレスがエスプレッソのカップを白龍の前に置いた。 <> 白龍<><>2011/05/31(火) 22:16:33.32 ID:3ofccl0DO<> >>492
「丑三」と聞いたと途端、白龍の表情が微かに変わった。
「(丑三様ってこんな人でしたっけー?)」

心の中で叫んでいる。
白龍が丑三を見たときと言えば、高速道路の戦闘の時だ。
あの時は真面目(?)に闘っていて、少し尊敬していたのだが。

「丑三様・・・だったんですね。」

>>493
「・・・実は、零が・・・。」

と、すべてのことを話し始めた。黒蔵の涙を思い出すと、胸が締め付けられた。
そして、話し終わると、叡肖の話に耳を傾けた。

「叡肖様・・・とても大変なようですね。私でよければ、叡肖様の手助けをさせていただきたいです。」

「例えば・・・そうですね、住む場所とかは見つかりましたか?」 <> 丑三夜中<><>2011/05/31(火) 22:26:07.70 ID:t7xp00TDO<> >>493
「たまにやってみりゃこんなもんよ、ま、才能だな」

調子に乗ったのが見て取れる、こんな奴がギャンブルで失敗するのである

「成る程な、俺が他の事調べたり遊んだりギャンブルしたりしてる間にそんな事がな…」
「ていうか窮奇っての、百鬼の主なのか、どーりで半端ない訳だ」

「参った参った」と言いながらコーヒーをグイッと飲み干し、ウェイトレスにお代わりを頼む

「ま、俺って難しい事苦手だし、その事まで考えると頭パンクしそーだ」
「簡単な事なら手伝えるんだけどねーん」

>>494
「はい、丑三様ですよー」
「ていうかあれ、誰だっけ?」

白龍に向けて首を傾け、顔をしかめる
あの時は結構必死であった為に記憶が曖昧で、よく覚えていない
<> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 22:31:17.73 ID:g1dnkJuoo<> >>494-495
「なんだ?知り合いなのか?」

丑三を思い出した白龍の様子に、陸って狭いな、と思った衣蛸。
そして白龍の話を聞き終わると

「正直俺は、零君に感謝するよ。お蔭で黒蔵と君達との距離が置けたからね。
 巴津火が暴れるたびに、電化製品やら家のあちこちが壊されるんだ。
 もし露希ちゃんに何かあったら、俺の立場は非常にめんどくさいことになる」

俺もこんなだよ、と袖をめくって見せた叡肖の手首には、がっぷりと生々しい咬み傷の跡。
点々と並ぶ歯型の傷口が青いのは、蛸の血が青いせいである。

「ああ、住む場所は心配ない。今は郊外の別荘を借りてそこにいる。
 紫狂とはいえ俺らの主だからね。警護や雑用の手も連れてきているし、心配は無いよ」

白龍に笑って見せた叡肖が、丑三の言葉には眉をひそめた。

「窮奇に会ってるのか?お前も?よく生きてたな、丑三」

窮奇が竜宮に現れたとき、叡肖はつるし上げられ、主の伊吹は狂わされ、
なんやかんやと引っ掻き回されたのだ。 <> 白龍<><>2011/05/31(火) 22:41:02.47 ID:3ofccl0DO<> >>495
「露希、と言う女の子は知ってますか?その子の武器です。」

確かに、人間時の白龍を見るのは丑三に取っては始めてなので無理はない。

そして、白龍はギャンブルやらにまで手を出す丑三に軽く絶望していた。

>>496
見るからに痛々しい傷。そんな子を相手にする叡肖を改めて凄いと思った。

「露希も、その子も責任持って私がお守りします。ですから、私に面倒を見させて頂けませんか?」

白龍は自らの意思を貫こうとしている。少しだけでも・・・助けたいのだ。

「なるほど、それなら安心ですね。」

エスプレッソを啜りながら、ニコリと笑った。 <> 丑三夜中<><>2011/05/31(火) 22:55:09.02 ID:t7xp00TDO<> >>496
「知り合い、らしいねえ」

うーん、と、まだ思い出せない様子で頭を捻りながら答える
人の事を忘れるなんて失礼極まりないのだがそれを全く隠す様子も無い

「そう簡単に死にはしねーよ、俺も命は惜しいからな」
「最初は倒れた奴が二人いたのもあって逃げたけど、二回目はあっちから逃げてったな」
「あんな命の価値も解ってないような奴、俺は嫌いだ、人だろうと妖怪だろうと命を軽く見るもんじゃねーっての」

真剣に語る彼の首筋に、季節の少し早い蚊が留まる
それを叩き潰し、血を拭いながら白龍に目を向けた

>>497
「武器?あー成る程」

白龍の説明を聞いてようやく納得がいったようで、ポンと手を叩く

「死神とか職人とかって奴?」

しかし全く違う、勘違い甚だしい解答が出た

「いやーしかし、武器、武器かー、俺の武器も可愛い女の子になったりしないかなー」 <> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 22:58:50.22 ID:g1dnkJuoo<> >>497-498
「いいかい、白龍ちゃん」

いつもへらへらしている叡肖が、少しだけ真剣な表情になった。

「巴津火を守ることに関しちゃ、竜宮がきっちりやってるんだ。
 それを信用できないと陸の者に思われたら、水界の者が面白くないのは君も判るだろ?
 君には、露希ちゃんという守るべき存在が既にある。
 片手間に巴津火を警護できるもんだと思ってるのかい?なにより今は窮奇がいるんだ」

こちらのことはこちらに任せておいて欲しい、とコーヒーの湯気越しに衣蛸は言った。
その真剣な目がふっと緩んだのは、丑三のお蔭である。
命が云々と言いながらも、平気で矛盾した行動を取る丑三が、実に人間臭く感じられたのだ。

「なんならお前の木刀に『女体化』って書いてやろうか?」

どんな姿になるかは持ち主である丑三次第だが、どうせ直ぐに元に戻ってしまうことだろう。 <> 白龍<><>2011/05/31(火) 23:07:13.74 ID:3ofccl0DO<> >>498
「(私・・・死神扱いされたの始めて・・・)」

なんか地味に落ち込んだっぽい。本当のことを言うか迷ったが、止めておくことにした。

>>499
「・・・分かりました。叡肖様が言うのならば問題無いですよね。露希にはそう伝えておきます。」

彼と話せて、心が軽くなった気がした。
何かもやもやとした物が掻き消されたかのような気分だった。 <> 丑三夜中<><>2011/05/31(火) 23:17:40.43 ID:t7xp00TDO<> >>499>>500
「いいなそれ、どうせなら服から眼鏡まで全てに書いてくれ」

目の前に置かれた新しいコーヒーにまた角砂糖を入れながら、ニヤニヤとして答える

「そうだ、ちょいとお二人さん、話し込んでる所悪いんだが、調査の協力を願えませんかね?」

右手で眼鏡を上げ、光の反射でキラリと光らせて真剣な雰囲気を作る

「体を全く傷付けず、毒の反応も無しに、まるで眠ったように人を[ピーーー]方法…あると思うか?」

口から出した飴でコーヒーを掻き混ぜ、コーヒーから上げたその飴を二人に向ける
顔を寄せ、回りに聞こえないような小さな声で聞いた <> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 23:21:59.76 ID:g1dnkJuoo<> >>500-501
「白龍ちゃんにはこれを渡しておこうか」

叡肖は鞄の中から紙の束を取り出した。
あの蜘蛛の陣を書いた札である。

「君達と巴津火がどこかで出くわすかもしれない。
 あいつが暴れているとき、一時的にならこの札で足止めができる。その間に逃げろ」

札は10枚ある。叡肖自身が陣を書いて発動を促す場合とは違い、
この小さな紙切れではほんの一時しのぎの力しか持たない。それでも無いよりはマシだろう。

「なら後で書きまくってやるよww」

笑いながら丑三に答えた叡肖に、丑三からさらに問いが投げられる。

「あるね」

叡肖は即答した。
単に低体温で凍死させることでもその条件は満たせるし、妖怪であるなら尚の事難しくは無い。 <> 白龍<><>2011/05/31(火) 23:29:18.90 ID:3ofccl0DO<> >>501-502
「叡肖様、ありがとうございます。もしもの時には使わせて頂きます。」

快く受け取ると、丑三に怪しい質問を問われた。

「アルコールなどの過剰摂取・・・はダメですね。」

中々答えが導き出せないため、とりあえず聞くことにした。 <> 丑三夜中<><>2011/05/31(火) 23:39:57.00 ID:t7xp00TDO<> >>502
「ハーレムが出来るよ!やったね俺!」
「あ、でも眼鏡と帽子は困るな、あと生活費とか…」

意外と本気で考え始めた、女ならなんでもいいのか

「それ、人間に可能な事だと思う?」
「一時間程前までは元気に同僚と飲んでたような人間を、そうする事」

叡肖の答えに、ニヤニヤ笑いながら質問を重ねる
どうして、そんな事を聞くのだろうか

>>503
「成る程、急性アルコール中毒、その線もある」
「因みに、その人はその死因という事にされている≠轤オい」

「実際、そこまでアルコールは取ってないし、さっき言った通り外傷も、薬物反応も、死に至る持病も無い」
「本当に眠るようにして発見されたらしい、不思議な話だと思わないか?」

怖い話を子供に聞かせるように雰囲気を持たせて二人に話、グイッと甘ったるいコーヒーを一気に飲み干した <> 叡肖<>sage<>2011/05/31(火) 23:50:14.26 ID:g1dnkJuoo<> >>503>>504
「そんな札使う機会がないのが一番だけどな」

受け取る白龍にそう言いながら、叡肖は丑三の本気度に溜息をついた。

「こんど一緒に夜遊びにでも行くか?」

なんだか丑三が気の毒にも思えてきたので、その手の店につれてゆこうかと思ったのだが。

「人間に可能かどうかなら、それは条件次第だな。氷点下にならずとも凍死はできる。
 で、そんな死に方でも頻発してるのか?」

わざわざ丑三がにやけつつ尋ねてくるのだから何かしらの裏でもあるのだろう。

「お前が遠まわしに喋るなら、俺も延々と遠まわしに答えるぞ丑三」

ニヤニヤと笑う叡肖。多分いま暇。 <> 白龍<><>2011/06/01(水) 00:00:18.59 ID:3qwALDdDO<> >>504-505
「でもなぜそんなことを?丑三様は多分、殺 さないですし・・・」

なぜ、こんな質問をされたのか。見当も付かなかった。エスプレッソを再び啜り、怖い話を聞く子供の様に丑三に寄り添った。 <> 丑三夜中<><>2011/06/01(水) 00:17:39.97 ID:Hw6RmGeDO<> >>505>>506
「妖怪の世界にもそういう店あんの?」

案外興味津々と言った風に食いつく
以前、妖怪が集まる歓楽街と言うのを見たことがあるが、そういう店があるかは純粋に気になった

「遠回しに話しつづけて、暇潰しもいいかもな」
「ぶっちゃけ、さっさと解決させて依頼料の残り底上げしてもらいたいからそんな暇ないんだけどな」

「お前の言う通りさ、変死体が二人、二夜連続だと」
「どっちも外傷、薬物反応無し、眠る様に死んでいて、全く死因が掴めないで結局急性アルコール中毒だのとされたみたいよ」
「『こういう不思議事件はお前の領分だろう』と言われたんだけどね、それで調べてる訳」

「ま、当然ながら妖怪の仕業って線が有力だわな」
「つーこって、お二人含め妖怪さん達は大変みたいだけど、人間世界も軽く大変だって話よ」

「よっこいしょういち」と立ち上がると、二人に顔を向ける

「ぶっちゃけこっち側≠ノ影響が無い限り俺も余りそっち側≠ノ無闇に首突っ込む訳にはいかない、何か影響を及ぼすなら俺はそれを向かえ打っている訳だ」
「だから俺は今回、こっち側≠フ事ばかりで余りお前らの力にはなれないかもしれない…」
「…って、違う世界の存在気取っちゃいるけど、まあ、力になれそうなら何時でも首突っ込むぜ、その時はよろしくな」

「じゃな」と言って手を振ると、競馬新聞片手に店から出ていく <> 叡肖<>sage<>2011/06/01(水) 00:30:22.68 ID:Yce/5/0No<> >>506-507
(お、いい雰囲気。白龍ちゃんやるねー)

叡肖は白龍にくっつかれた丑三をニヨニヨと眺めている。
特に妬むでもなく、さあどんな反応をするだろうとつぶさに観察していた。
しかし丑三は生身の女性よりも話の方への食いつきが良かった。

(その反応はなんか残念だな)

「ああ、そう言う店はあるさ。
 だがそっちはそっちで忙しそうだな。夜遊びする暇はまだ無いと見える。
 俺も実質子守だし突発的に暇にはなるから、必要なら手を貸してもいい」
 
店を出て行く丑三の背に、やばいときは連絡寄越せよ、と声をかけると
叡肖も残ったコーヒーを飲み下す。

「さて、それじゃ白龍ちゃんも落ち着いたみたいだし、俺も戻るとするかな。
 そろそろ海上臈の買い物も終わるころだろうし。
 また何かあったら電話して。俺の番号は変わってないから」

白龍ちゃんなら何時でも歓迎、と愛想を振りまくと
カードで会計を済ませた衣蛸はコーヒーショップを出て行った。 <> 白龍<><>2011/06/01(水) 00:38:44.03 ID:3qwALDdDO<> >>507-508
「人間の世界も大変なんですね・・・。(なんで叡肖様、にやけてるのかな)」

軽く気になる面もあったが、丑三の話を聞いて納得していた。

「叡肖様、色々と助かりました。頑張ってくださいね。」

本当に感謝している、と言わんばかりの笑顔。
二人が店から出ると、白龍も店を出た。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/01(水) 21:49:54.14 ID:Yce/5/0No<> あの四角い建物を見るのは随分久しぶりな気がする。
そして、こんな大金を持っているのも初めてだ。
今までにホストクラブで貰ったお金と、蓄えてきた大量の小銭を両替してもらった札束は
銀行の封筒に入っている。

(でもまだ半分にもならないな)

ここまで溜まった分で治療費を一部返済しようと、久しぶりの出勤ついでに持って出たのだ。
だぼだぼの作業服のポケットに警護の平家蟹を一匹忍ばせ、
GPS追跡用のキッズケータイと共に黒蔵は病院へやってきた。 <> 零なか<><>2011/06/01(水) 22:05:36.04 ID:3qwALDdDO<> こんばんは〜 <> 東雲 犬御<><>2011/06/01(水) 22:08:08.47 ID:NjxR6/2Qo<> >>510
白を基調にした、清潔な総合病院の入り口。
そこから少し離れた、職員用出入り口を足で押し開いて、白衣をものぐさに着た犬御が出てきた。
片腕に段ボールと、使い捨ての医療用具が詰まったゴミ袋を引っさげている。
鋭い目つきの物騒な顔には、頬や鼻頭にガーゼがべたべた貼られていた。

「あ?」

荷物を捨場に持っていこうとすると、ふと正面入り口から妖気を感じて、犬御は視線を投げた。
癖のように眉間に皺を寄せて、ゴミ袋を道端へ投げる。

「あのヤロ……やっと来やがったか」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/01(水) 22:18:44.18 ID:Yce/5/0No<> >>512
「う」

予想はしていたものの、眉間に皺を寄せた犬御に黒蔵の目が泳ぐ。
見たところ、喧嘩直後のこの狼の機嫌の悪いときにかち合ってしまったらしい。

「…仕事、しに来た。あとこれ、まだ全部には足りないけど、今払える分」

犬御の目の前に、ぐい、と押し付けるようにして札の入った封筒を差し出した。
その拍子に、捲り上げた作業着の袖口とそっぽを向いたその首元に、
点々と並ぶ赤い痣が覗いた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福岡県)<><>2011/06/01(水) 22:29:17.68 ID:NjxR6/2Qo<> >>513
突き出された封筒と、黒蔵の横顔を一瞥する。
開いた片腕で頭を掻いて、東雲は面倒そうに溜め息をついた。

「……そーいうのは俺の管轄じゃねェ。あのクソ医者に渡しやがれ」

黒蔵の肌に浮かび上がる痣を除くと、東雲は訝しむように目を細めた。
段ボールも同じように道端に寄せると、出てきたばかりの扉に踵を返す。

「仕事しに来たんなら余計にな」

ドアノブの手を掛けながら、僅かに振り返る。

「何だ、その痣」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/01(水) 22:38:20.90 ID:Yce/5/0No<> >>514
「俺もよく覚えてない。中の奴が出てた時のだから」

巴津火が暴れた時に、それを取り押さえた叡肖の吸盤の跡である。
黒蔵が気が付いたときは、借りている家の壁がぶち抜かれて辺りにはきな臭い匂いが漂い、
電化製品は全部ショートしていた。
ちょっぴり焦げ臭い衣蛸が、やたら殺伐とした笑みを浮かべていたのを覚えている。

「でも奴は一度暴れるとしばらくは出てこないから、今日は仕事しにきた」

巴津火の力を十分に振るうには、黒蔵の器はまだ小さすぎるのだ。
その為一度暴れると休眠するかのように、数日は巴津火が出てこない。

「お医者さん、今いる?これ先に渡してから仕事に入る」

黒蔵は、犬御の背中に問いかけた。
会計のカウンターで渡せばいいのだが、黒蔵は支払いの手順がまだよく判っていない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福岡県)<><>2011/06/01(水) 22:47:56.34 ID:NjxR6/2Qo<> >>515
「あのアホガキか……」

静かな廊下を歩きながら、東雲は渋い顔をして呟いた。
背中を向けているからその表情は見えないだろうが、声が不快感を露わにしていた。
東雲の中で巴津火は、黒蔵以上の「ガキ」であった。
「ここで暴れ出さねーだろうな」と問おうとした東雲は、その言葉を喉に引っ込めた。

「待ってろ」

流石に自分の口座なんて持っていない東雲の代わりに、借金は勝手に医者が納めているらしいので(本当に払ってるのか?)、
彼もその辺りあまり詳しくないのだ。

東雲は携帯を取り出すと、医者に電話を掛けた。
廊下を進み続けながら、何か会話をしているようだ。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/01(水) 22:59:43.76 ID:Yce/5/0No<> >>516
なんだかんだ不機嫌ながらも、何時もの犬御なのに黒蔵はほっとした。
今の棲家では、警備も世話係もいるし、食事や寝床の快適さでは公園の泉より遥かに上だ。
しかし周りに居る水妖たちは「巴津火」としてしか黒蔵を見ないのだ。
何をするにも不自由はないのだが、時折、いつしか自分がどこにも居なくなってゆく過程にいるような
そんな不安にも駆られるのだ。

(ここではちゃんと、「俺は俺」なんだな)

犬御は黒蔵を黒蔵として扱ってくれる。多分、氷亜達もそうだろう。

「狼」

この仕事場があってよかった、と黒蔵は思った。
借金を返すためであっても、まだ、ここでなら黒蔵は黒蔵で居られる。

「ありがとな。ここに連れてきてくれて」

犬御の背中への小さな呟きは、聞こえないかもしれない。
いくら狼の耳であっても今は電話での話中である。
聞き取られなくてもいいのだ。黒蔵は、そう言いたかっただけなのだから。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福岡県)<><>2011/06/01(水) 23:08:14.55 ID:NjxR6/2Qo<> >>517
「……」

黒蔵の言葉が、届いたのかは分からない。
ぎゃんぎゃん携帯に向かって吠える横顔からは、それを察することはできなかった。

不意に「今から行くから首洗って待ってろ!」と物騒な声が廊下に響いた。
すれ違った看護士が「またアイツか」みたいな目でこちらを見る。
東雲は乱暴に携帯を畳むと、いつものしかめっ面で黒蔵の方を振り向いた。

「3階の診察室だ。行くぞ」

フン、と鼻を鳴らして、また背中を向ける。
東雲が足を向けた先にはエレベーターがあった。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/01(水) 23:17:58.70 ID:Yce/5/0No<> >>518
「えぅ…、あれ乗るのか」

正直、エレベーターは苦手だ。
胃袋を捕まれてずずーんと引っ張られるような感覚と、不意に投げ出されるような感覚が
どうにも黒蔵には馴染めない。
一人のときはなるべく階段を使う事にしている黒蔵だが、今回はそうも行かない。

ためらううちに犬御はずんずんと進んでエレベーターのボタンを押してしまう。
腹を立てているためか、その足取りは黒蔵が小走りにならないと付いてゆけないほどだ。
犬御の後から一緒に乗り込んで、心地悪さに辟易しつつも3階へ、
そして診察室へと黒蔵は向かった。

(ずっと仕事サボってたし、お医者さんに怒られるかなぁ)

そしてまた新たな心配が湧いてくるのだった。 <> 東雲 犬御<><>2011/06/01(水) 23:30:45.10 ID:NjxR6/2Qo<> >>519
嫌そうな声を無視して、エレベーターのボタンを押す。
降りてくるのを待つ時間が嫌いなため、実は東雲もあまりエレベーターには乗らないのだが、
いつも階段を使っているのを見ていた黒蔵に対する、ちょっとした腹いせであった。
……変なところで、妙に子供だ。

開いた扉から出ると、すぐ先に診察室のプレートが見えた。
ノックもせずに、東雲はがらりと白い引き戸を開く。
中には、回転椅子に座ってカルテを眺める、医者の姿があった。

「ノックくらいしてくれませんかねぇ、東雲さん」
「うるせー」

ぶっきらぼうに言って診察室に入ると、簡易ベッドに腰を降ろす。
「相変わらずっすね」と困ったように医者がいう。
それから、扉の前に立っている黒蔵に目配せした。

「久しぶりすね、黒蔵さん」

にっこり、その表情はほほ笑んでいる。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/01(水) 23:37:26.32 ID:Yce/5/0No<> >>520
「どうも」

喉がからからになる。こういう得体の知れない微笑みは苦手だ。
叡肖も時折こんな風に笑うが、そう言うときの黒蔵は物凄く不安になる。
緊張した黒蔵はおずおずと部屋に入り、扉を閉めた。

「勝手に休んでしまって、ほんと、すいませんでした」

途切れがちにそう言って、黒蔵は深く頭を下げた。
そして封筒を医者のほうへと差し出す。

「まだ足りないけれど、今払える分を渡しに来ました」

封筒の中身はようやく30万。まだ返済額の半分にも満たない。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/06/01(水) 23:52:11.01 ID:6HT+4TISO<> >>521
緊張した様子で頭を下げる黒蔵を、眼鏡の奥から、何を考えているのか知れない瞳で覗く。
くるくる、カルテに乗せた片手がボールペンを回転させる。
東雲も、何故だか険しい面持ちをしていた。

封筒を差し出された医者は、意外そうな声を上げた。

「おや、他に働き手が見付かってたんすか? まあ性格的には、東雲さんよりまともっすからね」

僅かに毒を含んだ言葉だ。
「腰掛けて」と笑顔でパイプ椅子を勧める隣で、東雲が苦い顔をして「うるせぇ」と膝に頬杖をつく。
医者はくつくつと笑うと、突然、無表情になって、回転椅子の背もたれにぎしりと背中を預けた。

「一ヶ月の無断欠勤の理由……は聞かないでおきましょう。君たちに常識は通用しないみたいっすからね。今回は不問とします。その代わり……」

眼鏡の奥を光らせる。ガラスが黒蔵を映した。

「君の血液を採取させてもらってもいいすか?」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/02(木) 00:00:45.05 ID:wvHMZBFSo<> >>522
ここをサボって他所で働いていたのか、と射たい所を突かれた黒蔵は
居心地悪そうにパイプ椅子の上で座りなおす。
その際に頼みの綱の犬御をそっと盗み見たが、その表情は芳しくない。

(俺終わったかもしれない)

医者の表情の変化は、あきらかに何か嫌なものを隠している。
一度だけ竜宮で見た伊吹様も、こういう冷たく光るガラスを使っていたっけ。

(叡肖さんが眼鏡かけて無くてよかった)

「へ?」

血液って何だっけ?

「血?」

そうだ、血だ。

「なんだ、そんなでいいのか。俺てっきり、肉とか骨とかとられるかと思った。」

黒蔵はなんだか自分が物凄く間抜けなような気がした。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/06/02(木) 00:10:31.34 ID:s8prxhxSO<> >>523
「ははは、患者さんにそんなことはしないっすよ」

患者さん、という表現は今においては違和感がある。
回転椅子から降りずに少し移動すると、医者は棚から湿布を取り出した。

「痣、仕事するんすから、貼っておいて下さい」

そんなことをしなくても、黒蔵なら自然に治ってしまうだろう。
だが、医者もそれを分かっての行動だった。

「血液採取は今日の仕事が終わった後で、時間ありますか?」

にこ、と小首を傾げる。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/02(木) 00:18:22.25 ID:wvHMZBFSo<> >>524
「そうなの?」

患者にはしないのか。俺患者で良かった。
ほっとしながら湿布を受け取った黒蔵は、なんだろうとその匂いを嗅いで涙目になる。
妖怪にはちょっと刺激が強い。

「これ貼り薬なんだ?」

痣にはるように言われたので、素直に上着を脱いだ黒蔵の上腕と肩、首の周辺には
次第に大きくなりながら2列に並ぶ赤い痣の点が、うねりながら数本の筋になってついていた。

「血をとるのなら、別に今でもいいよ?」

仕事の前でも大丈夫、と肩の後ろに張ろうとした湿布をくしゃくしゃにしながらそう答えた。 <> 東雲 犬御<>sage<>2011/06/02(木) 00:27:37.90 ID:s8prxhxSO<> >>525
「いえいえ、後でゆっくりと……ね」

医者が軽くウィンクする。
東雲は、話は終わっただろうとばかりに立ち上がった。
パイプ椅子を避けて扉を開けると、背中越しに黒蔵を呼ぶ。

「おい、行くぞガキ」
「ああ東雲さん」

呼び止めた医者は、二人を見合せながら、

「黒蔵さんと第1病棟の3階、04号室の整理してて下さい。あそこ人いなくなっちゃったんす」

東雲は短い返事をすると、たったか廊下に出た。
引き戸を閉めて、廊下を歩いていく。
第1病棟へ繋がる渡り廊下に差し掛かったあたりで、東雲はげんなりした声で言った。

「お前、後で後悔すんなよ」

……それは、血液採取のことだろうか。

//眠気がきたので先に落ちます。すいません; <> 黒蔵<>sage<>2011/06/02(木) 00:32:48.18 ID:wvHMZBFSo<> >>526
「わかった、今行く」

今貼り付けたばかりの湿布に苦労しながら上着を引っ掛け、犬御に声をかける。

「お医者さん、色々ありがと」

肩越しに礼を言うと、急いで犬御の後を追いかけた。

「後悔って?何で?」

さっきまで不機嫌だったこの狼がなぜ急にげんなりしているのか、
黒蔵にはさっぱり判らないのだった。

//お疲れ様です。丁度終わろうと思ってたところなので、ありがとうございました。 <> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 21:39:52.87 ID:g7Cqns/V0<> 『澪よ、今日はどんな晩飯が良い?』

「え…?きょ、今日は僕が作るんでフォードさんは休んでてください…!」

『そうか?ならばよろしくな。』

緑色のパーカーの青年と、白髭の老人が歩いていた。
見たところ、祖父と孫…のような感じだが、実際は違う。

空はオレンジ色に染まり、遠くで烏の鳴き声が聞こえる。 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 21:50:31.71 ID:xR2+qsnAO<> >>528
三凰(ふぅ…結局、父上もじいも何も教えてくれなかった。それどころか、僕を戦わせないつもりみたいだ…
まぁ、それほど危機的状況ということか…だが、僕は僕のやり方で全力を尽くすだけだ。いけるはずだ。)

夢無(三凰様…またなにか?)

とか、考えながら歩く三凰。後ろには、夢無が隠れながらついてきている。
三凰を心配するあまり、ストーカー化しているようだ。
<> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 21:57:28.53 ID:RN2gVh0DO<> 「あっ、三凰っ!」

見たことあるなぁ、と思った人は三凰だった。
彼を見る限り、走って彼に近寄った。

「また・・・会ったねっ。今日はどうしたの?」

フォードは気づいていた。そのストーカーを。心配なのは解るが、あまりに挙動不審で警察に世話にならないか心配だった。

『(夢無さん・・・貴女一体・・・)』 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 22:05:43.89 ID:xR2+qsnAO<> >>530
「ああ、澪か。ちょっと考えをまとめたくてな、それで屋敷の中じゃ落ち着かないんでな。」

と、ここまで来た理由を話す。

「澪こそどうした?」


夢無(あ、またあの妖怪。三凰様と本当に仲が良いんですね。)

と、隠れながら微笑ましげな表情を浮かべる夢無。知らない人から見るとちょっと怪しいく見える。
<> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 22:11:30.49 ID:RN2gVh0DO<> >>531
「僕?フォードさんの家に向かうとこ。そろそろ晩御飯だし・・・。」
「あっ・・・、三凰も来ない?フォードさん、いい・・・よね?」
『うん、大歓迎だ。夢無さんもどうだ?』

老人は笑顔で話しかけた。澪は全く気づいてなかったようだが、三凰はどうなのだろう。 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 22:22:40.32 ID:xR2+qsnAO<> >>532
「そうだな。家の食事にも飽きてきたし、行かせてもらおう。
って夢無だと!?」

『あ…バレてましたか…すみません、三凰様。』

姿を現し、三凰に頭を下げた。

「貴様、いつからつけていた?」

『三凰様が屋敷から出るところからです…』

「!?最初からじゃないか…くっ、使用人の追跡に気づかないとは…不覚だった…」

怒るかと思いきやヘコんでいる。考え事に夢中で気づかなかったらしい。 <> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 22:32:05.76 ID:g7Cqns/V0<> >>533
『………(この二人、面白いな。)』

なんか、二人を見て面白がっている老人。
そんなこんなで、山の奥に少し寂れた家があった。
元は真っ赤だったはずの屋根は、色が薄れ、庭の手入れも余り行われていなかった。
では、中はどうだろうか?

「三凰、入って。今日は僕が晩御飯作るから、食べたいのあったら言ってね。」

中はとても奇麗だった。
洋風の家で、廊下にはカーペットが引かれている。
両脇には蝋燭のシャンデリアがあり、奥へと導いてくれそうな温かさがある。 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 22:43:43.82 ID:xR2+qsnAO<> >>534
「ここか…言っちゃ悪いがボロだな。」

言っちゃった。しかし、宝玉院家と比較したら並大抵の家はボロに入ると思われる。

「ほぅ…中は僕の家にも負けてないかもな。
そうだな、貴様達がいつも食べているような物でいい。普段、そういった物は食べないのでな。」

中を見回しながら言う。

『あ、あの…もしかして、私もよろしいんですか?』

「貴様は帰れ。」

三凰は夢無を帰らせようとする。しかし、それを決めるのは三凰ではない。 <> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 22:55:05.27 ID:g7Cqns/V0<> >>535
澪は台所へと行き、残った2人は大広間に案内された。
暖炉があって、8人程腰かけられるテーブルと椅子、テレビがある。
そして、壁には無数の武器が置いてある。

『三凰、まぁまぁ。夢無さん、今日はわしが招いたんだからゆっくりしていきなさい。』

フォードはきっと、温かく受け入れてくれるだろうう。

「ご飯、出来ました…。主食はチーズフォンデュ、フランスパンと一緒に召しあがって下さい。

おかずは魚のムニエル、バター風味のポテト、それから僕特製のサラダ。

デザートは葡萄のミルフィーユになります。……って三凰のコックさんは言うのかな…?」

おい澪、どこでそんなの教わった。
突っ込みどころのある洋風の物しかないが、どれも美味しそうだ。 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 23:06:57.36 ID:xR2+qsnAO<> >>536
『あ、ありがとうございます。』

「しょうがないな。夢無、余計な事はするなよ。」

『はい!大丈夫ですよ。』

と笑顔で言う夢無に、「本当に大丈夫か?」と不安を隠せない三凰であった。

「まぁ、そんな感じだ。」

そっけない態度だが、内心は喜んでいた。

『凄い!これ全部、澪さんが作ったんですか?』

夢無は、嬉しそうに目を輝かせている。 <> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 23:13:52.15 ID:g7Cqns/V0<> >>537
「あ、はい。今日はお二人がいるし、少し奮発しました…!」

『澪、お前も休んでいいぞ。せっかく、三凰が来てるんだ。』

「フォードさん、どうもです。ところで、三凰、考えって何?」

先程の考え、と言うことが気になっているようだ。
やはり、お父様のことかな…と予想はしていた。 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 23:31:12.68 ID:xR2+qsnAO<> >>538
『凄いです!尊敬しちゃいますよ!
あの、今度でいいので、少し料理を教えてくれませんか?』

夢無は、料理が上手ではない。ちなみに、掃除などもできるとは言い難い。
そのため、三凰は彼女を役立たずだと言うのだろう。本人は、あまり気にしてないように振る舞っているが実は結構気にしている。そのためこのようなことを言ったのだろう。

「ああ、それはな…父上は近々大規模な戦いが起こると予想しているんだが、その戦いに僕を参加させるつもりがないらしいんだ。
だが、僕は僕のやり方で戦いに参加しようと思う。もちろん、父上を説得して許可はもらうつもりだがな。」

真剣な表情で自分の考えを語った。
<> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/02(木) 23:41:29.17 ID:g7Cqns/V0<> 『夢無さん、料理ならわしが教えるぞ。洋風でも和風でも中華でも、なんでもいいぞ!』

フォードが澪に料理を教えたので、きっと良い料理が作れるはずだ。
そしてフォードは、三凰の話に耳を傾けた。

「…三凰はやっぱり闘うんだね…。」

戦うと言うことは殺し合い、それに三凰が参加するのは気が進まなかった。
しかし、未来の主が言うのならば、従うのが当然だろう。

「…僕も、君のお父様にお願いするよ。それで、三凰を守る…」 <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/02(木) 23:51:48.00 ID:xR2+qsnAO<> >>540
『本当ですか?では、今度お願いしますね。』

夢無は嬉しそうに返事をした。

「ああ、もちろん戦う。
父上に?それに貴様が僕を守る?悪いが、百鬼夜行に関しては僕一人の力で…
って、もうそんなことを言っている場合ではないな。父上も言っていた、百鬼夜行の主決めなんて枠に収まる戦いではないとな。
だから、頼むぞ。期待しているからな。」

再び真剣な表情で言った。 <> 澪「」&フォード『』<><>2011/06/03(金) 00:03:57.11 ID:k8RVXN8Q0<> 「三凰ッ…」

とても嬉しかったのだ。期待され、頼られたから。それも三凰に。
そんな時間は速く過ぎて、外は真っ暗になっていた。

『おお、もうこんな時間だ…。夜は遅いし泊まるなり帰るなり、好きにしていいぞ。

わしらはちと出かけて来るな、澪、行くぞ。』

「あ…じゃあね三凰!(ありがとう)」

最後の言葉は聞こえただろうか。
聞こえなくても、それはいずれ行動で見られるはず。
フォードと共に、澪は出かけて行った。

//この辺で落ちますね。絡みありがとうございました!! <> 三凰「」&夢無『』<><>2011/06/03(金) 00:15:37.64 ID:NsayDawAO<> >>542
「帰ることにしよう。父上に心配はかけたくないしな。」

『今日は、本当にありがとうございました!』

2人とも満足そうな表情で家を出た。

「また会おう、澪。
さて、帰るか。」

『はい。帰りましょう!』

そう言うと、三凰は巨大なコウモリに姿を変えて飛び去って行った。
一方、夢無は…

『…置いてかれちゃいました……』

取り残されていた。
滑空でしか飛べない夢無は、一人歩いて帰っていったのだった。



/お疲れ様です。絡みありがとうございました!
<> 東雲 犬御<>sage<>2011/06/03(金) 22:13:42.87 ID:6j5VNB99o<> 広い敷地を持つ総合病院の第1棟、3階に位置する一室に、大きめの眼鏡を掛けた男がいた。
この病院の外科医を担当する彼は、この場所で働く東雲たちの雇い主でもある。
回転椅子の背もたれに体を預け、カルテを片手にL型デスクに向かう彼は、
思い立ったように、机の上に置かれたスマートフォンに手を伸ばした。

「もしもし。東雲さんっすか?」

電話を掛けた相手は、今日も雑用として働いているであろう送り狼だ。
人間である医者は、そのことを知らないだろうが。

「僕の診療室に黒蔵さん呼んでくれます? ええ、……お願いします」

マイク越しに目を細めて、医者は通話を終了した。
再びスマートフォンを机に投げると、頬づえを付く。
その表情には、何か企みを感じさせるような微笑が浮かんでいた。



「……つゥわけだ、行ってこい。場所はこないだ行ったところだ」

携帯をポケットに突っ込んだ東雲は、作業着を着た黒蔵のほうを振り向いた。
偶然一緒の作業を行っていたのだ。
手間が省けて楽だ、と東雲は心中思いながら、作業に戻る。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/03(金) 22:21:49.58 ID:5kxTccwTo<> >>544
「え?行ってこい、って俺一人で?」

犬御をキョトン、と見上げながら汗を拭ったその額に横一列、
綺麗に並んだ吸盤の跡がある所をみると、昨日も巴津火は衣蛸と取っ組み合いをしたらしい。

「なんだろ、珍しいな」

小走りに階段へ向かう少年の姿は、作業ズボンに白いTシャツ姿。
上着のほうは作業中にそこらへ脱いで置き忘れたままのようだ。
必然的に、ポケットの中の警護の平家蟹もそこへ置いてきぼりとなる。

「黒蔵です。入ります」

3階まで駆け足で上がり、診療室の扉の前で一声かけて
小柄な少年はその白い部屋へと入っていった。 <> 医者<>sage<>2011/06/03(金) 22:37:48.43 ID:6j5VNB99o<> >>545
「やあ、いらっしゃい黒蔵君」

扉が開いて、回転椅子でぐるりと方向を変える。
医者の顔にはいつもの柔らかな笑顔が浮かんでいる。
片手に握られたカルテには、黒蔵の名前が書かれていた。
しかしその内容は診療録ではなく、採血の結果だ。

「……調子はどうっすか?」

昨日の採血を行った後の調子を尋ねているのだろう。
黒蔵から採ったのは、東雲より甘く採血量は少なくしたが、
それでも普通の人間なら貧血で動けなくなってもおかしくない量だった。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/03(金) 22:46:02.30 ID:5kxTccwTo<> >>546
「うん?あの後?ちょっと疲れたくらい?だったかな。
 でも、飯喰って寝たら今朝はもう戻ったし、今は平気」

階段を駆け上がる軽い足音が、この部屋の医者にも聞えていただろう。
黒蔵が貧血気味だったから、昨夜の巴津火は以外にあっさりと引っ込んだのかもしれない。
少なくとも今朝の衣蛸は何の怪我もしていなかった。

「それで、先生。俺に何か用?」

以前試してみた事があるが、あの眼鏡のせいか、黒蔵の魅了もこの医者には効きが弱い。
いざという時に誤魔化しが聞かないのは、黒蔵にとっては少し困るところでもあった。 <> 医者<>sage<>2011/06/03(金) 23:00:55.70 ID:6j5VNB99o<> >>547
「そうすか、それは良かったっす」

にこりと笑う医者の顔にこれといった変化は見られない。
しかし、ガラスの奥に隠れた心中は、穏やかなものではなかった。
――有り得ないのだ。そんなことは。

東雲の時もそうだった。
そもそもこの採血は、毎日顔に傷をつけて出勤してくる東雲を懲らしめるついでに思いついた「実験」だった。
明らかに普通の人間とは違う、彼の血を調べるために。
勘のいい東雲はそれはもう暴れたものだが。

そして結果は、医師の予想を超えるものだった。
採血量とその後の状態も異常ながら、「血の中身」が問題なのだ。

「ああ、ちょっと、黒蔵君に聞きたいことがありまして。
 東雲さんから聞き出すのは難しそうっすから……」

くい、と医師が眼鏡を引き上げる。

「黒蔵君、君たちは何者っすか?」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/03(金) 23:18:47.12 ID:5kxTccwTo<> >>548
「え?」

脱いだ上着ごと警護も置いてきてしまって、今更ながら1対1であることに後悔していた黒蔵に
ずばりと医者から質問が切り出された。

(今のところ尻尾は出してない…よな)

「何者って。ただの、そこらにいるようなこういう…」

…人間。
ではないのだ。

(そう言えば『君たち』ってことは狼も含むんだよな、てことは先に尻尾出したのは狼か?)

ううむ、これどうしよう。
医師の前で言葉につまり、黒蔵は激しく視線を泳がせる。
乏しい人間社会についての知識、どういったものがあるか夜行集団に3日漬けで
叩き込まれた筈のそれを引っ掻き回して回答を見つけようとする。

「ええと…宇宙人?」

ワレワレハウチュウジンデアル
そんなSFな概念が創作物であることまでは黒蔵はまだよく知らない。

(多分、妖怪って言わなきゃいいんだよ。うん)

一々記憶を探って答えてるあたり、嘘をついていることはばれてしまっているのだが、
黒蔵本人は嘘を突き通せたつもりのようだ。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/03(金) 23:21:00.57 ID:5kxTccwTo<> >>548
「え?」

脱いだ上着ごと警護も置いてきてしまって、今更ながら1対1であることに後悔していた黒蔵に
ずばりと医者から質問が切り出された。

(今のところ尻尾は出してない…よな)

「何者って。ただの、そこらにいるようなこういう…」

…人間。
ではないのだ。

(そう言えば『君たち』ってことは狼も含むんだよな、てことは先に尻尾出したのは狼か?)

ううむ、これどうしよう。
医師の前で言葉につまり、黒蔵は激しく視線を泳がせる。
乏しい人間社会についての知識、どういったものがあるか夜行集団に3日漬けで
叩き込まれた筈のそれを引っ掻き回して回答を見つけようとする。

「ええと…宇宙人?」

ワレワレハウチュウジンデアル
そんなSFな概念が創作物であることまでは黒蔵はまだよく知らない。

(多分、妖怪って言わなきゃいいんだよ。うん)

一々記憶を探って答えてるあたり、嘘をついていることはばれてしまっているのだが、
黒蔵本人は嘘を突き通せたつもりのようだ。 <> 医者<>sage<>2011/06/03(金) 23:31:36.05 ID:6j5VNB99o<> >>549
黒蔵の必死の嘘を聞くと、医者はぱちくりと目を瞬かせ、
「……あはははは!」と腹を抱えて笑い出した。
いつも微笑んではいるが、こんなに笑う姿を見せるのは珍しい。
笑い終わると、「はー」と息を吐いて顔を上げる。

「正直、こっちとしては信じたいくらいなんすけどねぇ」

首をもたげた医者の眼は、笑っていなかった。

「黒蔵さん、あんまり嘘上手くないっすね」

ぎしり、と背もたれが音を鳴らす。
眼鏡の奥の瞳が、真っ直ぐ黒蔵を見詰めている。

「東雲さんがあんなに採血を拒むくらいですし、隠したいというのはわかります。
 っすけど、お二人が「そこらにいるような人間」じゃあないのは分かりきってるんすよ。
 身元不明、常識不足、回復力etc.……そして、これが決定的な証拠っす」

医者がカルテを差し出す。
が、中身を見たとしても理解できるものではないだろう。
だが、詳細部分にかかれた一文に、黒蔵にも理解できる文字が一つあった。
それは――「蛇」という一文字の漢字。 <> 医者<>sage<>2011/06/03(金) 23:33:09.34 ID:6j5VNB99o<> >>549
黒蔵の必死の嘘を聞くと、医者はぱちくりと目を瞬かせ、
「……あはははは!」と腹を抱えて笑い出した。
いつも微笑んではいるが、こんなに笑う姿を見せるのは珍しい。
笑い終わると、「はー」と息を吐いて顔を上げる。

「正直、こっちとしては信じたいくらいなんすけどねぇ」

首をもたげた医者の眼は、笑っていなかった。

「黒蔵さん、あんまり嘘上手くないっすね」

ぎしり、と背もたれが音を鳴らす。
眼鏡の奥の瞳が、真っ直ぐ黒蔵を見詰めている。

「東雲さんがあんなに採血を拒むくらいですし、隠したいというのはわかります。
 っすけど、お二人が「そこらにいるような人間」じゃあないのは分かりきってるんすよ。
 身元不明、常識不足、回復力etc.……そして、これが決定的な証拠っす」

医者がカルテを差し出す。
が、中身を見たとしても理解できるものではないだろう。
だが、詳細部分にかかれた一文に、黒蔵にも理解できる文字が一つあった。
それは――「蛇」という一文字の漢字。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/03(金) 23:43:19.54 ID:5kxTccwTo<> >>552
笑い出した医師に一瞬、上手く誤魔化せたと思った。
しかしこちらに向けて示した紙面の、その指が差す文字を見て黒蔵の表情は凍り付く。

 どくん

心臓が跳ねた。跳ねてそのまま走り出した。
二人の間に落ちた沈黙が、長かったのか短かったのか、それは黒蔵には判らない。

「俺が、蛇、だと思うのか?」

問い返すことしか出来ない黒蔵の、恨めしげな視線を医師の眼鏡は冷たく照り返す。

(くそっ、あの眼鏡が無ければ) <> 医者<>sage<>2011/06/03(金) 23:55:12.77 ID:6j5VNB99o<> >>553
「……本当に黒蔵さんは嘘が下手っすねえ」

しばらくの沈黙の後、医者は答えた。
くつくつと肩を揺らしているものの、相変わらず医者の目は笑っていない。

「その質問も顔も、認めてるようなもんすよ?」

強張った黒蔵の表情は、「図星」と見て間違いはないだろう。
しかし、まだ核心を付いていない
更に聞き出そうとするように、医者は身を乗り出した。

「蛇……と思うわけじゃないっす。
 ただ黒蔵さんの血液から、普通の人間からはありえないものが検出されてるのは事実っす」

ペンを持ち上げ、先端を黒蔵に向ける。

「蛇の「毒」っすよ」 <> 夜行集団<><>2011/06/04(土) 21:10:38.63 ID:6dyy3N6a0<> 時は夜。
日が落ちてから時間は経つものの、今だ夜遅くとは言えない時間のこの街に、
いつも通り、全く同じように牛乳を堪能しているホストが一人で散歩していた。

彼から現在とても上機嫌な雰囲気が発されているのは、その口元を見れば一目瞭然である。
それは現在製造ライン大量増加確定の、とある乳製品会社の久方のヒット作、
『人類はこれを求めたいたのではないか?今ここに我が社が多大なる自身をもっておくる、
 空前絶後、前人未到の最強の乳製品。
 超激ウマに巨匠が唸った究極の一品牛乳。』
のためであった。

「名前が究極に推敲も足りないし添削もしてないしで長いけど、
 限りなくうまいっていう!!」

この品は彼の数少ない究極の乳メニューに追加された。 <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/04(土) 21:26:38.65 ID:BL4poN770<> >>555

『ほう…そんな上手いのか?《主婦》としては気になるな』
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

『小さなあずかりの娘と成長期の息子を持つ私にとっては《牛乳》は《朝》に《かかせないものだ》』
『《安全面》《値段》《美味しさ》』
『食材を選ぶのにも慎重にならないといけない』コツコツ
革靴の音を響かせ…黒いロングコートを靡かせ、近づいてくる《普通の人間》。

『ぜひ、《主婦》としてその《牛乳》について知りたいな』
右目あたりに酷い火傷の痕をおった、長い黒髪を後ろに結んだ女性だ。
……なんか《オーラ》が…ただものではない…うん……つうか、怖い!どこのマフィアのボス!?あんた主婦じゃないだろ!!って感じ。

「ママさん待ってなんだよ〜〜」トテトテ
そして聞き覚えのある幼女の声が彼女の後ろから聞こえるだろう。 <> フォード<><>2011/06/04(土) 21:27:39.05 ID:ZNW8mEgj0<> 夜の街を歩く老人が一人。
片手には携帯を持ち、耳にはイヤホンを付けている。

「うん、最近の技術は発達していて凄いんだな。」

と独り言を言いながら、カチカチと携帯をいじっていた。 <> 虚冥<><>2011/06/04(土) 21:39:48.83 ID:6dyy3N6a0<> >>556
怪我の療養と言う名目のもと、ホストの仕事からはお暇を取って、今現在散歩している虚冥の背中に、とある主婦の声。主婦?
そう、主婦だ。

「そりゃあ上手いのなんのっt」

振りかえった先!!虚冥の目には!!驚愕の事実が!!
主婦がいる!!彼女が真実であれば主婦がいる!!しかしその黒いコートがその事実を否定している!!
圧倒的!!圧倒的なまでのどこが主婦やねん状態!!

虚冥はその事実に動揺した!!その眼は大きく広がり!!その顔には冷や汗が!!

「・・・ち、ちーすっていう」

取り敢えず虚冥は挨拶するしかなかった。

>>557
そして驚いていると老人がこの現場に近づこうとしているではないか。
なんというタイミングの悪さだろうか、このじいさん。そう虚冥は思った。

「じ・・・じいさん!!(今スグ逃げろ!!主婦が!!主婦がいる!!)」

少しおかしい気もするが、虚冥はそんな事にかまっている暇はない。 <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/04(土) 22:10:34.37 ID:zDDZnRVQ0<> >>557

『ん?』ギロリ
鋭い眼光が老人を射ぬく。
まるで《獲物》を《視線》だけで《しとめる》ような《狩人》のように!!!!

『おい……』
ドスの聞いたような声で老人の肩を叩く《主婦》!!

『ケータイいじりながら音楽聞いてちゃ危ないわよ?おじいちゃん?』

…………………………………
…………………………………
…………………………………!?

以外に優しそうな感じで老人を気遣うように、フォードに注意をかけた。


>>558

『………ちぃっす?』
ドスの聞いた声で、そう返し、貴方の瞳を見るように睨み返す。

『こんばんはって言いなさい。《挨拶》はきちんとするのが《礼儀》ってならわなかった?』
まるで近所の子を仕付けするように主婦は注意する。

話せば以外に《普通》だが…怖い…なんか怖い…銃とか持って…………今一瞬コートの裏に《何か》見えたが気のせいだ。うん。

『改めまして、こんばんは。その《牛乳》について』
「ママさん!おいてかないでなんだよ〜〜」
『あっ…ごめんね。メリーちゃん』
《主婦》はやってきた《幼女》に謝りながら、頭を優しくなでる。
なんだろう…端から見たら違和感全快。


「あっ!」
そしてメリーは貴方に気付いた!多分このあと「お父さんなんだよー」って言うだろう。

だが…………その後の主婦の反応がわからない…だって…仮にもメリーを娘として預けてるのに…彼の恰好はホスト…………
更に一回も田中家に顔を出してない…いや出せないのが正しいだろうが……

田中母の反応が怖い!!どう対応する!? <> フォード<><>2011/06/04(土) 22:19:29.85 ID:f4G34LdDO<> >>558-559
「おぉぅ!?」

急に肩を叩かれてビクリと肩を震わせた老人。老人を驚かせちゃいかんぞ☆
・・・にこっ☆
その恐怖を前に、ただ笑顔で微笑んでいるではないか。
「こんばんは、奥さんとお兄さん。マナーがなってなかったな。」

言い終えると、携帯をパタリと閉じ、メリーを撫でた。 <> 虚冥<><>2011/06/04(土) 22:26:16.97 ID:6dyy3N6a0<> >>558、>>560
「いや、礼儀っていうのは守らない主義を守っているもんで」

ここで虚冥喰い下がる。
ジトっとした目で主婦を睨んだ。

「・・・すいません、こんばんは」

しかしそうは言っても彼の今の格好は、人間。
しかも接待業であるホストの一員である彼が、街で横暴かつ愚かな行為をするのは、
あきらかに店の評判も落とす上に彼女が店に来た時(万が一、億が一の可能性出来た時)、
顔を合せた虚冥は気まずい事この上無しな直下がしたので、
素直に謝ってみた。

「え、ああ牛乳の事?なんだどこの機動隊かと思ったていう。
 これはあっこのスーパーで・・・」

乳製品を飲むものに本質的な悪はいない。
そんな心情から虚冥は見ず知らずの、しかもあきらかエージェントな主婦に、
ご丁寧にもソレの売ってあるスーパーを紹介しようとした時、

幼女は来た。そう、幼女だ。

「おっすメリ

 ・・・。

 ・・・?

 !?」

今さっきまで忘れてしまっていた設定、この子の父は自分を思いだし、戦慄した。

父親のくせに他人に娘をあずけるダメ人間。
本来は違うのだが、設定としては主婦どころか女性ならぶち切れしそうな状態だ。
主婦が狩夫になりかねない。

そしてぎこちない様子で主婦の方へ、ガガガ、と音のなってしまうような首の動かし方で、
彼女と目を合せた。

刹那、虚冥は走り去ろうとする。
そのスピードは異様に早く、恐怖とはまた違って説教される、
そんな雰囲気が虚冥の背中を押す。 <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/04(土) 22:50:23.29 ID:0LnE7dmb0<> >>560

『こんばんは。わかってくれてよかった』
『次からは気をつけてくださいね』ニコリ
《老人》に微笑みながら《主婦》は言う。

「こんばんはー!なんだよー」エヘヘ
《老人》に撫でられ《幼女》は嬉しそうにしながら、挨拶をする。


>>561

『あっ?』ギロリ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

その虚冥の態度に、睨む。人が出せないような《戦場の中心に武器なしで置かれた》ような威圧感をだしている!!
主婦?主婦です!主婦の威圧感だ!!多分……

だが!ちゃんと挨拶を返した瞬間、その威圧感は消えニコリと微笑む。

『ふふふ…失礼しちゃうわ。私はただの《主婦》よ』
『そうそう。その…』
「お父さんなんだよ〜」
『!?』

《牛乳》の話をしようとした瞬間、《幼女》が無意識の爆弾投下!!

《主婦/元・裏家業の住人》は

『ちょっと』
《バーゲンセール/ゲリラ戦》等で鍛えた、《肉体》で

『待って』
《襲い掛かる主婦たちを避けた/飛び交う銃弾を避けた》事がある自慢の《脚力》で距離を詰め

『くれないか?』
《妖怪と素手で渡り合った人》が《主婦とは思えない握力》で彼の肩を掴もうとする。

『メリーのお父さん?』ニコリ <> フォード<><>2011/06/04(土) 22:58:52.19 ID:ZNW8mEgj0<> >>561-56
(この男は確か、あの時の夜行集団の一人らしいが…)

彼と主婦のやり取りを見る限り、とてつもなく危ない予感がした。
気がつけば彼は逃げ、幼女は爆弾を投下し、主婦は……。ァァ怖い。


とりあえず、物事が大変なことが成らぬよう、フォードはメリーに話しかけた。

「お嬢さん、君のお父さん達は大事な話をするそうだから、わしと何かしよう。」

と言うと、自ら髭を手に取り、くるるっとロールを掛けた。
次は髭を軽く結び、ツインテールにしてみたり。
そんなことをしながら彼らを見守る(?)だろう。 <> 虚冥<><>2011/06/04(土) 23:06:58.50 ID:6dyy3N6a0<> >>562
『待てと言われて』
調査のためとはいえ、他人父親と騙った事に後悔しながら

『だれが』
この繁華街において、ある程度の知名度を誇るホストは走り

『待つかよおおおおおおおおおお!!??』
とある主婦にあっさり捕まった。

いともたやすくあっさりである。
例えるならば三日酔いの朝でも、するりと食べれてしまう程のあっさり加減だ。

確かに彼女の脚力が化物じみて(もはや化物)いるのも虚冥の捕まった要因の一つだが、
なによりもまず虚冥の運動神経は、特筆すべき要項も何もないほどに普通で、
本当に夜行集団の主戦力の一角なのか?と疑ってしまうほどだ。

「は、はい〜?なんでしょうか?」

本人も意識しない程に自然に顔にへばりつかせられた苦笑が、
今先ほど色々な事を無視した主婦へと向けられる。
一般の女性ならば何笑っていると怒るところだが、彼女はどうだろうか?

>>563
向こうで遊んでいる老人と少女の方に、
特に老人の方に視線を送る。

「(助けてくれっていう・・・お前この前戦闘中いただろ?
  そのよしみでどうにかしてくれよ・・・」

その内容は言いようもなく懇願で。
その顔にはひきつった笑顔と困り困った感情が明らかであった。 <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/04(土) 23:17:10.61 ID:0LnE7dmb0<> >>563

「?」
とうの幼女は、なんで虚冥が逃げ、ママさんが追い掛けてるのかわかってない。
寧ろ爆弾投下も気付いてない。

「わかったんだよー。おじいちゃん」ニパーッ
幼女スマイルでおじいちゃんを見ながら、その提案に答える。


>>564

「……少し言いたい事がある」
あ…彼女の後ろから鬼が見えた気がした。










「借金取りから娘を守るなんて偉いじゃない」

…………えっ?

「うちの旦那から聞いたわ!借金を抱えて、娘を質にいれさせようとした裏の人をボコボコにして、娘を隠すために息子に匿うよう頼んだって」
えっ?えっ?

「大丈夫よ!メリーちゃんは見ての通り大丈夫だから」
……………恐らく《飼い犬》が《旦那》に話をあわせるよう頼んだのだろう…

……《飼い犬》に感謝だね☆ <> フォード<><>2011/06/04(土) 23:26:02.74 ID:ZNW8mEgj0<> >>564
(すまぬ、わしには何が何だかさっぱりだから…。)

お父さんだとか何だとかっていうのはフォードはよく知らない。
だからどう対応していいか分からず…てあれ?
なぜか話が思わぬ方向へと行って、戸惑う。これでいいのか?

>>565
「うん、良い子だ。(撫でっ)

そうだ、甘い物はお好きかな?良い物があるぞ。」

取りだしたのは…子供を釣るのに用いられるアレだ。
紙に包まっていて、丸っこくて、とっても甘いやつ。
と言うと、メリーに手渡してあげた。

<> 虚冥<><>2011/06/04(土) 23:30:12.86 ID:6dyy3N6a0<> >>566
「(薄情者――!!
  末代先まで祟ってやるっていう!!)」

それはそれは仁王の様な形相で、それでも主婦にはばれない様にフォードを睨んだ。
しかしフォード相手にアイコンタクトを取っていたと覚られない様、
さっと首をもどして田中母に向き直る。

>>565
もう完全につかまってしまい、逃げ場も等に消滅し、
もはやこれまで南無三、と呆れめた虚冥だったが、
天は彼に、いや、犬は彼に味方したようで目の前の主婦の説教攻撃は免れた。

「へ?・・・

 ああ!!そうそう!!
 本当にありがとうございました!!こんな甲斐性の無い父親で」

しばらく状況がつかめずポカンと口を開けたままだった。
しかし咄嗟に好奇来れり、と判断した虚冥は必死に話しに合せようとする。

「(どこの誰か知らねえが助かったぜっていう!!)」

「で、でもぐずったりしなかったか?
 あんまり人見知りするような奴じゃないんだけど」

とあたかも娘の心配をする父親の体を装った虚冥だが、
実は彼女から、このメリーのなりそこないの都市伝説がその後、
なにか異変などが無かったのかという情報収集の為の行動であった。こんな状況でもしたたかに。 <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/04(土) 23:42:35.25 ID:ShpmEO590<> >>566

「えへへ…」
撫でられて、気持ち良さそうに目をつぶる幼女。
なんか和む。癒される。

「わぁい!ありがとうなんだよー!」
お菓子を貰い嬉しそうに受け取る。
そして包んでる紙をあけ、お菓子を口にし幸せそうな表情をする。

ああ……平和だね〜〜


>>567

……説教攻撃?物理攻撃の間違いだろう(えっ?

『大丈夫よ。メリーちゃんはいい子よ』
『うちの飼い犬といつも遊んでくれるし、うちの娘とクッキー焼いてくれたりしてるのよ』
普通の主婦は、ニコニコと微笑みながらそう答える。

『銃の使い方も上手いし』
!? <> フォード<><>2011/06/04(土) 23:52:49.76 ID:ZNW8mEgj0<> >>567-568
(わし、悪いことしたのかな。)

なんか睨まれた。ちょっぴり悲しくなる老人だった。

「お嬢さん、きちんとお父さんとかの言うことを聞くんだぞ。

良い子にしていたら、わしがまた遊んでやるからな☆」

元気のいい子供のような表情を見せると、老人は繁華街へと姿を消した。

/すいませんが、ここで落ちさせて頂きます。
お二人とも、絡みありがとうございました! <> 虚冥<><>2011/06/04(土) 23:56:19.07 ID:6dyy3N6a0<> >>568
外面は娘の安全にほっと胸を撫でおろした父親をしながら、
内面ではメリーについての推察をある程度、何も変化が無いという事から進めていた。

そしてその一瞬彼女にはばれなかったかもしれないが、考え事をしていた夜行集団の調査忙殺の任がある虚冥が、
胸に片手をあててへらへらと笑っている父親の筈の男性から、ほんの少しにじみ出ていた。

ふんふん、とある程度聞き流していた虚冥の鼓膜も、
流石に流すにしては大きすぎる単語を捉えていた。

「え?え?」

流石に耳を疑い、その顔を主婦に近づける。
しかしそんなことある筈がない、と、
虚冥は一つの結果を出した。

「あ、ああ・・・
 獣ね。獣の扱いね。」

だって犬とメリーは中いいんだもん、と虚冥は心の中でダダこねた。

>>569
「あ、てめえ逃げんのかよっていう。
 上手い事だまくらかしやがって」

とは言えず。
口惜しそうに去っていくフォードの後ろ姿を見送る。

//こちらこそありがとうございました!! <> 虚冥<><>2011/06/04(土) 23:57:17.57 ID:6dyy3N6a0<> >>568
外面は娘の安全にほっと胸を撫でおろした父親をしながら、
内面ではメリーについての推察をある程度、何も変化が無いという事から進めていた。

そしてその一瞬彼女にはばれなかったかもしれないが、考え事をしていた夜行集団の調査忙殺の任がある虚冥が、
胸に片手をあててへらへらと笑っている父親の筈の男性から、ほんの少しにじみ出ていた。

ふんふん、とある程度聞き流していた虚冥の鼓膜も、
流石に流すにしては大きすぎる単語を捉えていた。

「え?え?」

流石に耳を疑い、その顔を主婦に近づける。
しかしそんなことある筈がない、と、
虚冥は一つの結果を出した。

「あ、ああ・・・
 獣ね。獣の扱いね。」

だって犬とメリーは中いいんだもん、と虚冥は心の中でダダこねた。

>>569
「あ、てめえ逃げんのかよっていう。
 上手い事だまくらかしやがって」

とは言えず。
口惜しそうに去っていくフォードの後ろ姿を見送る。

//こちらこそありがとうございました!! <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/05(日) 00:06:56.66 ID:IIzjbG3d0<> >>569

「はーい!なんだよー」
「バイバイなんだよー!おじいちゃん!」

幼女は元気よく手を振り老人を見送った。

/お疲れ様でしたー
/絡みありがとうございます


>>570

『……今何考えた?』
一瞬の違和感に《主婦》は虚冥を見つめる。
それは《裏の住人》の《瞳》

『………あんた。《危ない仕事》してないよね?』
その違和感を《裏の世界》と結びつけそう聞く《破壊人》

相手が妖怪とは気付いてないが……


『そう。銃の扱い。護身用に教えてるのよ。包丁やナイフだけじゃ心細いと思うから教えてるのよ。いつ危ない人に襲われるかわからないでしょ?』
……おい!この主婦なに教えてる!? <> 虚冥<><>2011/06/05(日) 00:18:17.35 ID:ekQN0+Iv0<> >>572
「っと」

うっかりしていたのか、自分でも素が出かけていた事に気付かず、
主婦が虚冥に感じた違和感により、その体に少し帯びたあっちの世界の雰囲気、
陰や陽の区切りともまた違うあっち”の雰囲気に当てられた虚冥はようやく自分のヘマに気付いた。

「いやいやwwwwww俺の職種はホストだっていうwwwwww
 たしかに女性の逆恨みもあるような危ない職業だが、そこまで警戒するもんじゃねえよwwwwww」

だがヘマとは言ってもまだまだはぐらかす事が出来る。


「確かにな!!ナイフより強そうだもんな!!」

無理やりメリーへの認識を、獣使いに移そうとする虚冥。
意地でも認めるものか。仮にも、何にもそんな主婦いてたまるか。
彼には確固たる決意があった。 <> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/05(日) 00:34:04.12 ID:LQfMXpLC0<> >>573

『………ならいいわ』
深くは追求せず、雰囲気を消し、そう言う《主婦》

ただ言える事……その《眼》にびびらなかった虚冥に対し、疑問を感じてるだろうが…

『ふふふ…私は旦那一筋だからホストなんて縁がないわ。今度娘を行かせてみようかしら?』

『将来が楽しみよ?メリーちゃん。筋がいいしね』
「お話終わった?なんだよー」トテトテ
メリーが笑顔でそちらに向かってくる。
本当…妖怪とは思えないくらいに……

『あら…ごめんね。話長くなっちゃったわね』
『じゃあ、明日貴方が行ってたスーパーに牛乳買いに行くわ。ついでに娘に貴方のお店行くように言っておくわね』
ふふふ…っと主婦は笑いながら幼女の頭を撫でて言う。 <> 虚冥<><>2011/06/05(日) 00:41:13.83 ID:ekQN0+Iv0<> >>574
何か言いたいことの一つや二つありそうな態度であったが、
しぶしぶでも彼女が納得したため、気付かれないようにふうっとため息をつく。
そんな虚冥の顔には、焦ったような冷や汗も作り笑いもなく、本当にただの一般人のような風体になっていた。

「そうそう、言ったって普通な奴が危ない仕事に関係することなんてないっていう。
 特に俺みたいな ヒ ョ ロ イ だ け な奴にはな。」

へらへらと、そんな大嘘をついて見せる虚冥。
しかしこの主婦には油断が出来ない、と警戒しながら。

「娘さんか・・・でもいいのか?普通娘をホストクラブには行かさないぞ?
 まあ俺たちの店は良心的な所だから、
 親がここに送り出しても問題無く安心していいけどなっていう。」

<> メリー「」&田中母『』<><>2011/06/05(日) 00:54:51.46 ID:ES5fl02E0<> >>575

『ふふふ…人は見た目によらないって言うわよ?弱そうに見えて実は強いのなんて沢山いるぞ?私は山ほどそんな輩を見て来た…』
『《私》はか弱いけどな』キリッ
……それはギャグで言ってるんですか?

まあ…深くは追求はしてこないから大丈夫だろう。



『大丈夫。大丈夫。今年24になるのに男の影もなく、喫茶店営の娘だ。たまにはそんな経験させるのも親の役目だ』
『ソレに私の娘だ…《護身術》くらいは学ばさせてる。もし娘が何かされたら《私》と《旦那》が黙ってないしな』
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


『さて…じゃあ行くか。また会おう』
「またね〜だよー!お父さん(私も今度遊びにいくんだよー)」
手を振りながら去って行った。

……主婦って怖いね

/お疲れ様でしたー <> 虚冥<><>2011/06/05(日) 01:06:05.22 ID:ekQN0+Iv0<> >>576
「そんな設定は中学生で終了していて欲しいなっていうwwwwww
 でも安心しろよwwwwww俺は見た目から判断していい奴だからな」

見た目、所作では最も判断してはいけない男はそう言った。

ビシッと親指を立てて、自分が弱いというのにそれを全く恥じてない残念な男、
を演じてみせる虚冥。その笑顔はいつもつかう営業スマイルだ。

そしてあえてお前が言うな、の突っ込みはしないでおいた。

「しねえよ。仮にそんな事する奴がうちにいたらコロ・・・」

口は噤んで胸を張って自分の店の潔白さを自信もって宣伝しながら、
去っていく主婦と幼女を手を振って見送った。

そして二人の姿が見えなくなった時、虚冥は夜行集団の本部へとくるっと踵をかえし、
話している途中に浮かんだやらなくてはいけない事があるため、虚冥は寄り道せず帰る。

やらなくてはいけない事、それは、
国語辞典で【主婦】と言う単語の意味を改めて確認しておくことだ。

//絡みありがとうございました! <> 零<><>2011/06/05(日) 14:02:51.40 ID:vaRS+uXv0<> 城址公園へと続く道を、ゆっくりと歩いている者が一人。
近づくにつれ、起こった悲劇が鮮明に思い出される。

途中、気が重くなり立ち止まることもあった。
だが行かなくてはならない。彼の元へ。
許されなかったとしても、きちんと謝るんだ―。

「…黒蔵、いるか?」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 14:10:58.96 ID:SUG8tJAwo<> >>578
「…零?」

あの声に名を呼ばれて、まさかと思った。
驚いて、岩の横から立ち上がって、もう一度目をぱちくりさせる。
何故、どうしてまたここに、と聞こうとした言葉は舌の根に張り付いて、音にならなかった。

「今日は、どっちの君、なの?」

冷たく笑う悪魔の貌と、のほほんと食べられない食べ物を作るうっかりシェフと、
その両方の顔を持つ相手に、一つ頭の蛇はそう尋ねた。 <> 零<><>2011/06/05(日) 14:19:10.38 ID:vaRS+uXv0<> 「…どっちでも、私は零。」

少し声は擦れていたが、きちんと聞きとれるだろう。
そう言うと、暗い顔を下へと下げ、お辞儀の様な体制になる。
垂れた髪の毛で顔は見えないだろうが、そこから零れ落ちた雫は見えてしまう。

「ごめん…黒、蔵……」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 14:30:44.35 ID:SUG8tJAwo<> >>580
「零、どうして零は俺に謝る?」

何に謝っているのか、それをはっきりさせたいと思った。

「俺にあの時、蟹ちゃんの事を言った事を?それとも何かを隠しつづける事を謝るのか?」

零の涙は、溝の大きさを黒蔵に感じさせた。
友達じゃなくなった今なら、心が遠い距離であるならば言える事もあるのだ。

「言えない事なら、別に言わなくてもいいさ。
 でも隠したい事のある相手にわざわざ人前で、その秘密を知っていると暴露しなくてもいい筈だ」

白龍には白龍の理由があって、神格の事を隠していた筈だ。
きっと黒蔵の前で、あんな風に隠し事を暴かれたくは無かっただろう。

「零、俺には謝らなくて良い。でも、白龍にはきちんと謝ってほしい」 <> 零<><>2011/06/05(日) 14:44:27.13 ID:vaRS+uXv0<> 「…君の気持ちも分からずに取った態度、隠す為に取った行動、すべてに。」

ぎゅっと手を握り、泣き叫びたい気持ちを堪えた。

「白龍にはきちんと謝った。

でも白龍達と私達は家族、と言ってもいいくらいの存在。なのに隠していたことが悔しかった。

どうして言ってくれなかったのって…。」

人前で言う必要も、絶対に無かったはず。
でも零のその気持ちは、人前で言ってしまう程まで心を動かしていた。

「…」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 14:57:48.71 ID:SUG8tJAwo<> >>582
「零?」

俯いて黙ってしまった零に、どう言おうかと黒蔵は逡巡した。
誰にだって隠し事は、ある。いえない理由もきっとそれなりに。

「零だけの隠し事ってないか?家族にも言えない、むしろ、家族だから言えないこと。
 俺には、あった」

でももう、その家族は居ない。何もかも黒蔵が喰らった。

「俺には謝らなくて良い、って今言っただろ。
 そもそも俺は罪人だ。誹謗中傷、憎しみ、八つ当たり。何をぶつけられても弁明は出来ない」
 
罪人置き場では黒蔵に住処を毒された河童や亀、鯉や鯰達によくボロボロにされたっけ。

「白龍はきっと、家族だから零にああいう風に言って欲しくなかったと思うよ」

ぽんぽん、と自分よりずっと背の高い零の、丸まった背中を慰めるように黒蔵は叩いた。 <> 零<><>2011/06/05(日) 15:14:10.05 ID:vaRS+uXv0<> >>583
「……うん。」

溢れ出る涙は隠せず。
叩かれながら、ずっと下を俯いていた零はどこか純粋な物だった。

「…黒蔵には組織のこと、話さなくちゃ。

私たちの組織は個々の情報を扱い、困っているような妖怪、人間を手助けする役目があるんだ。
例えば住みかが無くなったとか、食べ物が無い…とかね…。」

ここまでは普通に喋れた。
だが―次の言うことは少し躊躇してしまう。
黒蔵に言っていいことなのか、それは分からなかった。

「…もう一つ。大罪を犯した妖怪を…抹消すること。
判断をする基準とかは勿論ある。でも、その基準を満たしてしまった物は…消える。」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 15:23:11.32 ID:SUG8tJAwo<> >>584
「抹消、か」

自分の名はその抹消対象リストに載っていたのか、と黒蔵はどこか納得した。
いつかは黒蔵も消されるんだろう。
彼らの手によってか、それともまた別の存在にか判らないが。

「白龍と黒龍は、その組織のもう一つの役目の事を知ってるの?」

黒龍はともかく白龍は、あの優しい心の持ち主は、そうと知っていたら
抹消対象リストにいる黒蔵とこの兄妹の接近を快く思わなかっただろう。
いつかこうして、壊れるときが見えているのだから。 <> 零&白龍<><>2011/06/05(日) 15:36:17.70 ID:vaRS+uXv0<> >>585
「…うん、知ってるよ。」

がさり、草むらが動いた。
草むらをよく見れば分かると思うが、白い尻尾がぴょこん、と出ていた。
流石に隠れきれないと思った白龍はおどおどとその場に顔を出した。

「…聞いてたの?」
『二人が心配だったから…。』

すると、白龍は黒蔵に視線を合わせるように屈みこんだ。

『黒蔵君は消されないよ、少なくとも私たちには。

君を裁くのはミナクチ様や竜宮の方達。流石にそこまでは私達も入れないよ。

だからね…温かく見守らせて欲しいんだ。』

穏やかな表情で、白龍は黒蔵を見つめた。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 15:44:10.68 ID:SUG8tJAwo<> >>586
(後ろ指差されるのは平気だけど、温かく見守られるのとか、俺、慣れてない)

白龍の穏やかな頼みと零の何時に無い泣き顔は、黒蔵を窮地に立たせた。
この二人に言おうか言うまいか、しばらく悩んだ末に。

「俺、今は巴津火の器なんだ。
 温かく見守っても居られないかもしれないよ?」

黒蔵に判るのはいつか自分が居なくなって、巴津火が代わりに存在するようになるだろうという事、
そしてそれが竜宮には期待されているということ。
そして、巴津火はミナクチよりもずっと強大なのだ。
なるべくこの事は考えないようにしているが、思い返しただけでどっと気持ちが疲れる時もある。 <> 零「」&白龍『』<><>2011/06/05(日) 15:54:00.20 ID:pr39uYpDO<> >>587
『その、もう一人の子の器とか関係ないよ。私たちは黒蔵君の味方だからね。』
以前、叡肖に渡された紙を思い出した。
黒蔵の中の者はそうとう強大な力を持っているに違いないのだ。
だからこそ、黒蔵にはこの紙を使いたくない。

「・・・黒蔵。やり直せないか?私、黒蔵を友達として接したい・・・」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 15:59:50.42 ID:SUG8tJAwo<> >>588
今度は黒蔵が俯いた。
髪が顔の半分を隠し、引き結んだ口元だけが覗く。
やがてそれがふっと笑った。

『友達か。
 それならボクも大歓迎だよ。君たちには恩があるしね』 <> 零&白龍<><>2011/06/05(日) 16:12:57.17 ID:pr39uYpDO<> >>589
「・・・・・ボク?」

『(黒蔵君、何か変わった・・・?)』

しぃん、と辺りが静まり返った。
確か、黒蔵は俺だったはずでは・・・?

「巴津火様?」

零は怒らせぬよう、そっと聞いてみた。 <> 巴津火<>sage<>2011/06/05(日) 16:21:40.00 ID:SUG8tJAwo<> >>590
『なぁんだ、ばれちゃったか。こっそり仲を取り持とうと思ったのに』

言葉と共に濃厚な妖気が辺りに広がった。
黒蔵のものとは明らかに異なる、ちりりと背中の毛逆立つような気配。

『じゃあ、ボクの口から直接言うよ。零君、君に感謝するよ。
 君が傷付けてくれたお蔭でね、コイツの心の中の「隙」が広がったんだ。
 それでボクはずっと居心地がよくなった』

クスクスと楽しそうに、黒蔵の声がそう言った。

『解峯の死でようやく、魂の半分くらいまで食い込めてたのだけどね。
 君への信頼が壊れたお蔭で、ボクが占有する領域のほうが広くなったんだ』

本当にありがとう、と、黒蔵ではないものは零への感謝を述べた。 <> 零&白龍<><>2011/06/05(日) 16:33:06.43 ID:pr39uYpDO<> >>591
「巴津火様、喜んで頂けて光栄です。」
(ちっ・・・・・・どうしよう。)
まさか、だ。こんなことになるなんて。
零自身、予想してなかったことだった。

『巴津火様とは、貴方ですか。よろしくお願いします。』

突然のことに驚いた二人の取った行動は、巴津火の友達になりすますことだった。 <> 巴津火→黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 16:38:56.11 ID:SUG8tJAwo<> >>592
『ふふ、上手いねぇ君たち。まるで竜宮の官吏たちみたいじゃないか。
 何とかボクの機嫌を取って、上手く思い通りに転がそうとする』

その言葉の後半にはほんの少し、悔しさが滲んでいた。

『君たちの望まないボクはもう消えるよ。黒蔵を返すから、こいつをヨロシクね』

現れたときと同じように、すっと巴津火の気配が引いた。
黒蔵の唇が、震える。

「…俺」

ぽつり、と言葉と共に雫が落ちた。 <> 零&白龍<><>2011/06/05(日) 16:49:58.77 ID:pr39uYpDO<> >>593
「・・・巴津火君、ならば次からは普通に接することにするよ。」

やはりばれていた。
彼ほどにもなれば、嘘は簡単に見破れるのか、それとも周りの人間がそうしたのか。

「・・・黒蔵、大丈夫。なんとかなるよ。君は黒蔵、巴津火じゃない。もっと自身を持て。」

黒蔵になんと言葉を掛ければいいか、分からなかった。
しかし、黒蔵は黒蔵なのだ。必ず、巴津火から解放させねば。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/05(日) 17:00:42.16 ID:SUG8tJAwo<> >>594
零の言葉に黒蔵は首を横に振った。

「巴津火じゃないと、俺は生きていられないんだ。
 黒蔵は、窮奇の討伐が済んだら多分…」

処分される。

その言葉は口に出せなかった。
この恐怖を拭ってくれるはずのミナクチとは、ずっと会えないままだ。
今はただここで、泉が無事湧いていることでしかその存在を確かめる術が無い。

「零、白龍。友達なのにごめん。しばらく一人にしてくれる?」

岩にもたれかかって、黒蔵は蹲った。 <> 零<><>2011/06/05(日) 17:07:32.62 ID:pr39uYpDO<> >>595
「・・・分かった。頑張ってね・・・。」

ただただ、言われた通りにするしか出来なかった。
黒蔵の背中をとん、と叩き、二人は戻っていった。

/この辺で終了ですかね。
絡みありがとうございました&お疲れ様でした〜 <> ☆☆【新参の風祝】 山の新人神様 Lv54<>sage<>2011/06/06(月) 00:11:49.06 ID:WEhOl8Sso<> 【夜の深まった時間帯である。人間の時間ならば夜十時を回ったところか。
 辺りは闇に包まれ、昼の町の賑わいもすっかりと今や完全に静寂に包まれている。
 ただ、街灯の明かりと、まばらで少ない人家から漏れる光だけが光源となっていた】

「……今日はあの猿みたいなのに出くわさなきゃいいけど」

【夜の闇の中に浮かぶ、一つの光条。それは一人の少女が手にした懐中電灯だった。
 少女はぼやきながらコンクリートで舗装された道を歩いている――街灯の下に出ると、異質さが露になった。
 巫女の装束に、腰間に帯びた一振りの刀。俗に言うコスプレのような姿格好なのである】

「今日は眠いからあんまり戦いたくないのよね」 <> 田中 夕「」&クロコ『』<><>2011/06/06(月) 00:24:33.68 ID:2D7ub8wf0<> >>597

貴女が前を見ると
犬を連れた普通の高校生がそちらに向かい歩いてくる。

ボサボサの黒髪で、どこにでもいそうで、ジャージを着た、ごく普通の顔立ちの高校生。普通だ!霊感も妖気もない普通な人だ!!

普通、貴女みたいな恰好を見たら好奇の目で見るか、不審な目で見るだろう……

だが…

「こんばんはー!女の子一人じゃ夜道は危ないですよ?」
彼は普通に挨拶し、普通に心配し、普通に接した。

……そして彼が持ってるリードに繋がれた犬。
リードに繋がれた赤い首輪をした、茶色の毛の犬……いや狼だ!!けど犬だ!!
しかも…その犬……

『わんわん!《ダイジョウブ ダ アルジ ソイツ タイマシ》わんわん!!』
妖怪だ!!しかも《真神》だ!!
ついでに《》内は霊感を持つ人や妖怪にしか聞こえない……

ついでに彼は聞こえてない!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 00:34:03.52 ID:WEhOl8Sso<> >>598
「ん、ああこんばんは……」

【少女は面食らっていた。こんな不可思議な格好をした人間に出会って普通に挨拶する人間は少ない。
 こんなに元気のいい挨拶は久しぶりだったので、少女も少し驚いていた】

「なんだ、普通の人間か……貴方こそ危ないわよ。この辺りは夜きけ……。
 あ、貴方! すぐにその犬から離れなさい!」

【言いかけて、言葉を飲み込む。次の瞬間には、少女の手は腰間の刀の柄に伸びていた。
 聞こえてきた声――それは、霊感のある人間にしか聞こえなかったが、少女には届いていた。
 判断も一瞬だった。この犬は、妖怪に違いない――。鳶色の瞳が険しさを増す】 <> 田中 夕「」&クロコ『』<><>2011/06/06(月) 00:46:00.88 ID:hlQHkKNZ0<> >>599

「う〜ん…俺は大丈夫ですよ!男の子ですから」ニヘラ
不思議と安心させるような柔らかい笑みを浮かべながら《巫女》に言う《高校生》

「それにクロコもいるし……ってどうしました?」
キョトンっと彼は首を傾げる。

『グルル……《ナンダ?ヤルキカ?タイマシ》ガルルル!!!』
彼女が戦闘体制に入ると《飼い犬》は妖気を溢れ出させ、鋭い牙を向け、貴女に威嚇し、一触即発しそうな雰囲気に……



が!!!

「コラッ!!クロコ!!!人に威嚇しちゃダメだろ!」グッ
『キャン!?《グヘッ?……ワタシ ワルクナイ……》くぅ〜〜ん……』
なんと…《高校生》がリードを引っ張り《真神》を止めた…

「ごめんなさい!クロコはいい子なんです!急に威嚇するなんて……本当にごめんなさい!!」
『きゅ〜〜ん…《ケンカ ウッタ ノ アッチ。ワタシ ワルクナイ》くぅ〜ん』(´・ω・`)

……この高校生…普通だけど普通じゃない!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 00:59:46.57 ID:WEhOl8Sso<> >>600
「いや、そういうことじゃなくて……とにかく危険なの!」

【少女は迷っていた。飼い犬のように扱っているあの妖怪が、いつ牙を剥くかもと戦々恐々だった。
 鞘を持つ手の親指の腹を唾に押し当て、鯉口を切る用意をする。鳶色の瞳が犬を睨む。
 相手が唸って戦闘態勢に移行すれば、巫女の少女もまた霊力を集中させて戦闘に備えた。が――】

「……貴方、すごいわね。色んな意味で」

【この一見普通の少年が、妖怪を完全に御している。目の前の光景に少女は驚いた。
 柄に伸びた手も離れ、完全に弛緩した空気が漂う。呆れた様子で少女が告げた】 <> 田中 夕「」&クロコ『』<><>2011/06/06(月) 01:10:07.37 ID:OZlbBRH50<> >>601

「?」キョトン
「何が危険なんですか?」
不思議そうに首を傾げながら、《飼い犬》のリードを引っ張り大人しくさせてる。

「このくらい《普通》ですよ!」ニヘラ
「それよりその刀…」
!?
大変だ!彼が刀に気付いてしまった!!
《普通》なら「コレ本物?」とか「うわぁ!危ない人だ!!」などの反応が……

「護身用ですか?けど…持ち運び大変じゃないですか?」
…………《普通じゃない》!!!

『わん……《ケンカ ウッタノ アイツナノニ……》』
《飼い犬》はまだ貴女をジト目で見ながらブツブツ言ってるが… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 01:21:25.40 ID:WEhOl8Sso<> >>602
「あ、いや……こ、このワンちゃんちょっと吼えてきて怖いなーって……。あはは……。
 この刀はその……そ、そうよ。護身用なの! 私剣道やってるから!」

【どうやらこの男には妖怪の気配などは通じていないようだった。
 それを利用して巫女の少女は作り話をでっち上げる。少年の疑問を氷解させ、場を納める為に。
 我ながら無理のある言い訳ではあると思うが、他に手段がないのである】

「ごめんね……」

【膝を折って、少女は犬の妖怪と目線の高さの差をなくすと、手刀を顔の前に出すようにして、
 小さく、犬に向かって呟くのであった。その呟きは、それこそ妖怪でもなければ聞き取れないほどの
 蚊が鳴くような声であるが、伝わったのだろうか。これで溜飲が下がってくれればいいのだが――】 <> 田中 夕「」&クロコ『』<><>2011/06/06(月) 01:43:04.89 ID:JT2ulf+W0<> >>603

「あ……ごめんなさい。うちのクロコが…」
深く頭を下げる《高校生》
そして普通に信じてしまう高校生!
多分、「私は秘密警察です!」とか「魔法少女です!」って言っても信じるぞ!

「なるほど!けど気をつけてくださいね?俺、前に《侍》に遭遇して喧嘩売られましたけど、貴女は刀持ってるから危ないですよ?」
心配そうに…気遣うように……貴女を見つめる。
彼が会った《侍》…それは最近、《最近、作られた怖い噂》が次々と《妖怪》になり、《噂通り》に襲いかかる《現象》(原因は青行燈だが貴女は知らないかも)の一つ――《辻斬通り》なのだが…彼は妖怪とは気付かず、なんとか逃げたようだ。
というかよく無事だったのか……

まあ…この高校生。以外に妖怪との遭遇率は高い。更に言えばこの《飼い犬》といい、姉が営む喫茶店の《姉以外の従業員》といい、彼の家に預けられてる《幼女》が実は妖怪……なのだが、彼は気付いていない。
唯一、《妖怪》だと知ってるのが二人いるが、彼は《普通》に接している…

貴女も彼と話してるとわかるが、《普通じゃない普通の高校生》だとわかるだろう。


『……わん《ワカレバイインダヨ ッタク……》』プイッとそっぽを向きながら照れ隠しする《飼い犬》だった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 01:55:26.92 ID:WEhOl8Sso<> >>604
「あ、大丈夫大丈夫。侍……ねぇ。まさか同業者じゃないわよね。ちょっと注意しておきましょう。
 っていうか、貴方は無事だったの? その……侍に襲われたのに」

【笑顔を取り繕って少年に応えるも、巫女の少女の鳶色の瞳には少し真剣味が増していた。
 もしかしたら隠しているだけで、この少年は妖怪なのかもしれない。あるいは、同業者か。
 じーっと少年の顔を凝視するが、やはり妖力や霊力の類は感じられなかった――】

「こんなに生活に溶け込んでる妖怪は珍しいわね……」

【人間臭い台詞を吐く犬に向けて少女はポツリ、と呟くのだった】 <> 田中 夕「」&クロコ『』<><>2011/06/06(月) 02:11:19.98 ID:6gCGvtPm0<> >>605

「ハハハ!!軽く脇腹斬られちゃった」
笑いながら言ったぞ!コイツ!?

「けど大丈夫!母さんに山篭りさせられた時に熊と戦った事や武術の師匠に全身骨折させられた事に比べれば平気さ」
笑顔でサムズアップしながら言う台詞じゃないぞ……
うん…普通じゃないね…


『わんわん《ワルカッタナ…コレ デモ カイイヌレキ ハ ナガイゾ》わんわん』
そう言いながら《飼い犬》は説明する。
この《真神》。元は神として崇められてたが、人間に山を荒らされ、行き場を失い、人の勝手により命を狙われてたのだが…

当時、高校生だった田中くんの母親により倒され、《妖怪と知らず》に現代まで飼われてたのだ…
一応居場所をくれた恩として《飼い犬》として生活し、現代の主《田中くん》を見守ってるのだ。
唯一、田中家の中でクロコを妖怪だと知ってるのは田中父と田中姉だけである。田中くんと田中母はクロコが妖怪だと知らないのだ……


ついでに田中母は《霊感はない》が《元・裏家業》の人間である。が、ソレはクロコは言わなかった。


「さて、夜も遅くなったし、俺達はそろそろ行きますが?」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2011/06/06(月) 02:22:47.27 ID:WEhOl8Sso<> >>606
「た、大変じゃない! 大丈夫なの!?」

【軽く告げられた事実に、驚愕を隠せない巫女の少女であったが――】

「へ、へぇ……なんだ、心配いらなかったわね」

【その後にまた軽い調子で告げられた説明に、少女はもはや驚くよりも呆れていた。
 語っている内容が確かならば、この少年は自分よりも厳しい修練に耐えていたことになる】

「……ま、そのままの調子でずっと大人しくしていてよね。仕事を増やさないように頼むわよ」

【再び小声で、少女は呟く。普通の人間にはぼそぼそと語る独り言にしか聞こえないが、
 妖怪、それも犬型ならばこの程度の声量を聞き取るのに苦労はしないだろう】

「ん……そう。気をつけてね。……そいつがいるなら、大丈夫だろうけど」

【巫女の少女は懐中電灯を持ち直した。柔らかい笑顔を浮かべると、その場から手を振って立ち去る。
 少女の背中は段々と小さくやみに溶けていき、懐中電灯の光もやがて見えなくなった】

/これにて落ちます。お疲れ様でした <> 田中 夕「」&クロコ『』<><>2011/06/06(月) 02:29:08.48 ID:EaJFjQRY0<> >>607

「大丈夫!大丈夫!このくらい《普通》だから」
グッとサムズアップしながら、笑顔を向ける。

『わんわん《ケンカ ウラレタラ ベツ ダケドナ》わんわん』
とりあえずわかったよ…って感じで軽く返事する《飼い犬》

「君も気をつけてね!」
そう言いながら手をふり見送る。

/お疲れ様でしたー!絡みありがとうございます <> アリサ「」&巫女C『』<><>2011/06/06(月) 21:08:07.47 ID:lFnPjspT0<> クスクスクスクスクスクス



《牛神神社》
先日、《紫狂》の渾沌が率いる変質者達により痛手を負った。主力メンバー二人が負傷し、この神社の神である姫さんが命の関わる重傷を負い、土地のバランスを崩してしまった。

だが……神社を狙っている輩は他にもいた。


神社近くの林の一部……だった場所。そこは焼け野原になっていた。
そこに二人の影がいる。

『ぐっ………何故じゃ!?何故、御主が……』
背が低く、鈴の髪飾りをつけた白髪の巫女が酷い火傷を負いながら倒れている。

『何故じゃっ!?姉上!!!何故妖怪変化になっておる!?』

「クスクス……それは何百年前の話かしら?…《生まれ変りの貴女》は私とは関係ないわ……それにもう貴女の姉じゃないのよ?」
その前に立つは一人の《魔女》

誰もが振り向くような美貌。
露出度が高いセクシーな服とはちきれんばかりの胸。
風に靡かれ、月夜に照らされる美しい金の長髪は、まるで男を誘うように踊る。
赤い瞳は、まるで宝石のように輝き。その潤った唇は、何かを求めるように色っぽい。
彼女を包む《赤黒い炎》は、彼女の歪みを表すようで……
膨大な妖気を放ちながら、嘲笑うように巫女を見下してる。

「大人しく《アレ》を渡しなさい?そしたら命だけは」
『だ…誰が渡すものか…!』
「そう……残念ね」
すると《魔女》が指先を巫女に向け、《炎の束》を放とうとする……

果たしてコレを止める人物は!? <> 丑三夜中<><>2011/06/06(月) 21:18:47.44 ID:eMHnR54DO<> >>609
それは、そいつは、空から降ってくるでもなく、何も無い虚空から現れるでもなく、地面から生えるでもなく、ただごく普通にやってきた
林を歩いてきたせいで少し疲れはあるが、それでも急いで来たという訳でもなく、散歩でもするかのように歩いてきて、厚かましいにも程があるくらいに乱入してきた
その男は、ゆっくり横切るように歩いてきたかと思うと、間で止まって魔女を向く

彼は口の中で飴を転がし舐め回し、舐めた態度でにんまりと笑うと背中から何かを引き抜いた

「どや?」

左手に木刀を、右手に白い木刀をそれぞれに、左手の木刀を肩に担いで白い木刀の先端を魔女に突き付けながらしたり顔

「どや?」

そして振り向くと、巫女にもしたり顔

これが救いだとしても、これを救いと見る事が出来る者はいるのだろうか <> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/06(月) 21:23:46.79 ID:b9xSqggAO<> >>609
「確か、この辺だったよね神社。」

『ああ、えーと確かこっちの林を…』

神社で何が起こったか、そして神社で今何が起こっているか、何も知らない少年と狐。
少しずつ神社に歩みを進めて行く。

『あ?ここ何で焼けてんだ?』

狐は周囲の焼け野原を不振そうに見る。

「あ、あれって…」

震えた声を出す少年。二人に気づいたのだ。

『あの神社の巫女じゃねぇか!それに…なんだよ、あいつは!』

「七郎!」

『分かってる!
てめぇ!何やってんだコラァ!』

七郎は直感で分かっていた、アリサの放とうとしている炎が自分の炎の何倍も強い事を――
しかし、躊躇している暇などなかったのだ。七郎は、アリサの指先に向け炎の球を放つ。 <> 零「」&黒龍『』<><>2011/06/06(月) 21:24:17.47 ID:jNKFni1f0<> >>609-610
「ねぇ、黒龍。さっきから何そわそわしてるの?」

『な…なんでもないっ!!』

神社へと続く道を歩く一人の少年と漆黒の龍。
では、なぜ龍がそわそわしてるのか。

彼らの妹は毎日のように戯れているからだ。それが羨ましかったらしい。
今日は予定とかが入って無かったので、零と戯れるつもり…らしいが、タイミングが掴めない。

気づけばとある神社に来ていた。
そこで、何やらやっているではないか。

「黒龍〜、行ってみよ〜。」

『え、ああ、うん。』

彼らはきっと間に会わない。 <> アリサ<><>2011/06/06(月) 21:52:13.46 ID:6gCGvtPm0<> >>610>>611

自分に向かってくる火の球を《陰陽師が使うお札》を持った別の手で、《結界》を作り防ごうとする。
……何故、妖怪が《陰陽術》を?

「……邪魔よ」ニコッ

《歪んだ愛のミサンガ》

丑三に向かい、空気を焼きながら《邪悪な炎の束》が襲い掛かるだろう。
もし貴方が避ければ後ろの巫女が……

そして、スッと貴方達から距離をとる《魔女》

……青行燈と同じような妖気と悪意を感じるかもしれない

『……主ら…は……』
巫女はそう言い意識を手放した。

>>612

感じるだろう…《魔女》の気配が
感じるだろう…《邪悪な妖気》が……

速くしないと…… <> 丑三夜中<><>2011/06/06(月) 22:07:56.52 ID:eMHnR54DO<> >>611-613
「そんなの解ってるに決まってるじゃないの、邪魔しに来たんだもの」

舐めた風に口を利いて、余裕をこいて魔女を見据える
右手に持った白い木刀が燃え上がり、それは白い炎を燈す刀となった

「いきなりそれは不躾なんじゃあないのかい!」

その右手の刀で打ち出された炎を切り払い、打ち払う

「ちょっと神社の様子見に行こうとしたら何か妖気をビンビンに垂れ流してるみたいだったからなあ、まさかこんな事があったなんてなあ」
「こりゃ仕事所じゃないっすよ!ねえ!?ってあれぇ!?気絶しとる!!」

後ろを振り向いていきなり話を振るが巫女は気絶、一人空回りする男がいた <> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/06(月) 22:14:04.17 ID:b9xSqggAO<> >>612
いまだ彼らには気づかない。しかし、少し進んだら、うずくまっている少年と危機迫る表情をした狐が見えてくるだろう。


>>613
『なっ!?俺の炎が!?あいつ…妖怪だよな…』

妖怪…?そういえば、この妖気どこかで…?

「うっ…!?」

アリサに接近したことでその妖気に耐えられなくなった十夜。青行燈の時の用にうずくまってしまう。

『十夜!!まさか…てめぇは…』

うずくまった十夜を見て思い出す。似ている――青行燈の妖気に

「青…行燈…!?」

苦しそうに十夜が言う。
違う、目の前のそれは青行燈ではない。
じゃあ一体…?

『畜生!てめぇ、一体何なんだ!!』

怒りに満ちた表情で七郎が尋ねる。


>>614
『丑三!マジでいいところに来てくれたな!』

「丑三…さん…お願いします…巫女さんを…助けてあげてください…」

苦しそうな声で途切れ途切れに話す。

『俺からも頼む!力を貸してくれ!』

七郎一人では勝てるはずのない相手。しかし、丑三がいれば―― <> 零「」&黒龍『』<><>2011/06/06(月) 22:20:20.81 ID:jNKFni1f0<> >>613
「あちゃー、派手にやってるね。お姉さん、そんなことしたら捕まっちゃうよ?」

のほほんとした少年はにこにこと話していた。
以前とは違うのほほんさで。
だが…彼はいつ変わるか分からない。本物の悪魔に。

それにするかしないかはアリサ次第である。

>>614
「頑張れ、丑三さん〜」

『えっ、お前戦わないの!?』

なんかめっちゃのんびりしてる。
とりあえず倒れた方を端に寄せ始める。

>>615
『零、あの少年…うずくまってるぞ?』

「と、十夜君?…助けないと。」

零と黒龍は十夜に駆け寄って、肩を貸し、立たせてあげた。

「大丈夫?とりあえず向こうで休んでて。」

そう言うと、倒れてしまった女性の元へ運ぶだろう。

<> アリサ<><>2011/06/06(月) 22:36:50.11 ID:9cgjKUPe0<> >>614

「そんな態度じゃモテないわよ?」クスクス
男を魅惑するような動きをしながら、その真紅の瞳で貴方を見つめる。

炎は貴方により掻き消され、巫女は無事だ…


>>615

「ええ♪妖怪よ」
「あらあら…大丈夫?ボウヤ」クスクス
大きな胸を揺らしながら、彼女は嘲笑う。

「青行燈?残念だけど私は違うわよ」
「アイツの仲間だけどね」クスクス

明らかに青行燈ではない……なのに似てる妖気を放ってる。

コイツは《何者》だ!?
何故、《人間が使う陰陽術》を使う?何故、《青行燈に似た妖気》を放つ?


>>616

「あら?いつかのお兄さんじゃない」クスクス
「今日は《狂って》ないのね。つまらないわね」クスクス
「捕まる?それは無理ね100%」

どうやら今回は本気のようなのか《青行燈》みたいな不気味な重苦しい妖気を放っている。


>>全員

巫女は零により端に寄せられる。

三人は気付くか…巫女はどこと無くアリサに顔立ちが似ていると……

「せっかくのお仕事なのに、なんで邪魔するのかしら?《妹》といい、貴方達といい」クスクス
妹?
そういえば先の会話で言っていた…
《何百年前》
《生まれ変わり》
《姉上》
《妖怪変化》

……何やら彼女らの関係はただ事ではないが…
事実ならアリサは《何百年か前に彼女の妹だった巫女》を躊躇いもなく殺そうとしたのだ。

ついでに巫女は人間だ。

推理すれば二人の関係はなんとなくわかるだろう。

「……っで、貴方達も《コレ》みたいな目に会いたいのかしら?」
《呪》そのものの《魅了》を発しながら、自分の周りに10個の不気味な炎の球を浮かばせ、《魔女》は笑う。 <> 丑三夜中<><>2011/06/06(月) 22:54:34.06 ID:eMHnR54DO<> >>615
「おいおい、頼ってくれるのは嬉しいが頼られっきりも辛いんだぞ」
「俺からしても不明瞭な力を相手取るのはきついんだ、せめて妖怪だとしたらどんな種類か解れば対策も立てられるかもしれないけどな」

両手の武器を構え、背後の巫女を守る様に魔女と相対
やはり余裕を表面に表すが言わばこれは威嚇やハッタリのようなもの、内心は少しこの戦況を辛く見る
動けない者が少なくとも二人、相手の力は不明瞭、七郎がいるが二人掛かりでどうにかなるのか解らない

(せめて守りながらじゃなければどんだけ楽か…)

カリ、と咥内で飴を噛んだ
>>616
「おお!零!」

零に声を掛けられ、半ば反射的に返事をする
…そして、ここで丑三閃く!

「おい零!観戦ついでにその二人頼めないか!?」
「守るのが嫌なら安全な場所まで運ぶだけ!運ぶだけでいいから!!」

>>617
「はっはっは、うるせー!ぬっ[ピーーー]ぞ!!」

モテないの一言でキレ芸炸裂、一気に殺意が沸き出した

「よく関係は解らないが妹を殺そうだなんてとんでもない姉じゃないか」
「一万年と二千年前からどんな因果があろうと、俺に見付かったからにはそれも終わりだ」

<> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/06(月) 23:01:36.64 ID:b9xSqggAO<> >>616
「ありが…とう…」

かすれた声で呟くように言った。消耗が激しいようだ。
だが、端に寄せられアリサから少し離れたため、少し収まった。

『あんたは、いつかの!すまねぇ、恩に着るぜ!』

零の方を向いて、礼を言う。その表情からは、深い感謝の気持ちを感じるかもしれない。
そして、すぐにアリサの方へ向き直った。


>>617
『チッ…奴の仲間かよ!青行燈といい、お前といい、十夜をよくも…』

七郎の体が炎に包まれる。

『マジで許さねぇ!!』

七郎にとって十夜を苦しめるモノは全て敵。七郎が文字通り怒りに燃える。

『あ?妹…?まさか…』

「もし…かして…」

十夜も七郎も気づいた。目の前の奴は、自分の妹を殺そうとしたのだと――

『てめぇ…』

七郎が呟く。

『許さねえよ!マジで許さねえ!
妹とか弟ってのは守るもんだろうが!!それが、姉や兄の勤めじゃねぇのかよ!!』

炎に包まれた七郎の姿が人間のものになる。白髪、長身の男だ。

『ふざけてんじゃっねぇっ!!狐炎爪!!』

炎を両手の爪に纏い斬りかかる。


>>618
そんな丑三の考えを聞かずに、アリサの妹を殺そうとした行為に本気でキレた七郎は一人飛びかかっていってしまった。

「僕…またみんなに…」

十夜は、再び自分がいたせいでみんなに迷惑がかかったのだと思い。悔しそうな、悲しそうな表情で涙を流した。
<> 零「」&黒龍『』<><>2011/06/06(月) 23:11:07.28 ID:jNKFni1f0<> >>617
『何笑って―「いいよ、黒龍。」』

その態度が気に喰わなかったらしい黒龍を零は止めた。
黒龍の頭をゆっくりと撫でながら、零は口を開く。

「今日は真面目なんですね〜。

でもそんな妖気出しちゃっていいんですか?貴女が狂ってるように思われますよ。」

>>618
「運んだよ。すっごい安全です。

もう大丈夫ですね、私も少し遊びたいです。」

ニコニコと笑いながら、戦闘に乱入するつもり。
でも黒龍を武器化していない。
つまり…舐めている。完全に。

>>619
しかし、七郎のアリサに放った言葉で、零は少し俯いた。

「妹を守るのは兄の務め……か。」

……零は何を考えたろう。手に、あの時の柔らかな肉の感触が蘇る。
しかし、これではかつて窮奇にされたことと同じである。
殺してしまったが、今は生きている。今、守ればいいじゃないか…!

「…よし、アリサさん。私と遊ぼう」ニヤリ


<> アリサ「」&巫女C『』<><>2011/06/06(月) 23:32:22.69 ID:rHR4mw9e0<> >>618>>619

ナニヲ アイツラ ハ イッテル ?
イモウト ナド ナンビャクネンマエ モ ハナシ
アレ キオク ヲ ヒキツイデ ウマレカワッタ ダケノ ベツジン
ナゼ ソンナ オコッテル?

イモウト マモル? アネ ギム? アレ? ナンダ? コノ カンジ ハ?

ナンダロウ オモイダセナイ

アリサの脳内でそんな思考を出しながら、アリサは首を傾げる。

「図星かしら?」クスクス
丑三に対し、そんな挑発を放ち

「馬鹿な子ね…《止まりなさい》」
ドロドロとした《呪そのものの魅了》が攻撃してきた七郎を捕らえようとする。
もし捕らえられたら、《その命令》に従わなければいけないという思考に支配されるだろう。まるで呪いのように…


>>620

「あら?私は《元々》よ」クスクス
「真面目?ふざけてるの間違いでしょ?」クスクス

残念だわ…《私達側》に引きずりこみたかったのに…今の貴方はつまらないわ

そんな事を思いながら、右手をあげる。


>>全員

「じゃあ、私も《遊んで》あげるわ」クスクス

《それは愛欲に溺れるような流星群》
丑三、十夜、七郎、零、黒龍に向かい、二つずつ炎の球が弾丸のように放たれる。

だが…七朗は《魅了》により動けないであろうが……
『は…らえ……』
巫女が意識を取り戻したのか、《セツコのような掃いの力》を七朗に放ち、動けるようにする。

コレで七朗は炎の球に対応できるだろう。 <> アリサ「」&巫女C『』<><>2011/06/06(月) 23:35:34.92 ID:lFnPjspT0<> >>618>>619

ナニヲ アイツラ ハ イッテル ?
イモウト ナド ナンビャクネンマエ モ ハナシ
アレ ハ キオク ヲ ヒキツイデ ウマレカワッタ ダケノ ベツジン
ナゼ ソンナ オコッテル?

イモウト マモル? アネ ギム? アレ? ナンダ? コノ カンジ ハ?

ナンダロウ オモイダセナイ

ソレ ヨリ アイシアイタイ

アリサの脳内でそんな思考を出しながら、アリサは首を傾げる。

「図星かしら?」クスクス
丑三に対し、そんな挑発を放ち

「馬鹿な子ね…《止まりなさい》」
ドロドロとした《呪そのものの魅了》が攻撃してきた七郎を捕らえようとする。
もし捕らえられたら、《その命令》に従わなければいけないという思考に支配されるだろう。まるで呪いのように…


>>620

「あら?私は《元々》よ」クスクス
「真面目?ふざけてるの間違いでしょ?」クスクス

残念だわ…《私達側》に引きずりこみたかったのに…今の貴方はつまらないわ

そんな事を思いながら、右手をあげる。


>>全員

「じゃあ、私も《遊んで》あげるわ」クスクス

《それは愛欲に溺れるような星々》
丑三、十夜、七郎、零、黒龍に向かい、二つずつ炎の球が弾丸のように放たれる。

だが…七朗は《魅了》により動けないであろうが……
『は…らえ……』
巫女が意識を取り戻したのか、《セツコのような掃いの力》を七朗に放ち、動けるようにする。

コレで七朗は炎の球に対応できるだろう。 <> 丑三夜中<><>2011/06/06(月) 23:51:02.02 ID:eMHnR54DO<> >>619
「十夜」

歎く十夜に、背中を向けたまま声をかける

「俺も最初からこうじゃなかった、ゆっくりとこうなっていったんだ」
「大きな力が無い事を悲しむな、今出来る事からでいい」
「人はいきなり強くはなれないが、強くなりたい気持ちがあるならなれる」

そういうと、帽子を深く被って眼鏡を上げ、アリサへ向かって歩いていく

>>620
アリサへ向かい歩く、その足の動きは段々と早く、歩行から走行に

「よし、フルボッコかけんぞ、責任は俺が持たない!」

>>621
「随分攻撃の手が薄いな、数が多いと辛いか?」

飛んでくる火の玉二つ、何て事の無いかのように一つをかわし、一つを刀で切り払う
すぐにでも反撃に出られる―――と思ったが、それに気付いた
もう二つ、目の前から飛んでくる火の玉は何を狙っている?自分にはギリギリ当たるような向きではない、このまま行けば通りすぎ―――後ろ!?

「やべっ!!」

あの火の玉は十夜を狙った物か、と気付くのは少し遅かった
今から前に出て切り払うのは間に合わない、十夜の様子からして咄嗟にかわせるのを過信は出来ない

次の瞬間、彼は声を上げる事もせず十夜を狙う火の玉にほぼ横から当たるように飛び込んだ
刀で切り払うでもなく、他に防御をした訳でもなく、ただ両手を交差した粗末な防御姿勢で肉の盾となって火の玉をその身に受けた

<> 丑三夜中<><>2011/06/06(月) 23:51:57.58 ID:eMHnR54DO<> >>619
「十夜」

歎く十夜に、背中を向けたまま声をかける

「俺も最初からこうじゃなかった、ゆっくりとこうなっていったんだ」
「大きな力が無い事を悲しむな、今出来る事からでいい」
「人はいきなり強くはなれないが、強くなりたい気持ちがあるならなれる」

そういうと、帽子を深く被って眼鏡を上げ、アリサへ向かって歩いていく

>>620
アリサへ向かい歩く、その足の動きは段々と早く、歩行から走行に

「よし、フルボッコかけんぞ、責任は俺が持たない!」

>>621
「随分攻撃の手が薄いな、数が多いと辛いか?」

飛んでくる火の玉二つ、何て事の無いかのように一つをかわし、一つを刀で切り払う
すぐにでも反撃に出られる―――と思ったが、それに気付いた
もう二つ、目の前から飛んでくる火の玉は何を狙っている?自分にはギリギリ当たるような向きではない、このまま行けば通りすぎ―――後ろ!?

「やべっ!!」

あの火の玉は十夜を狙った物か、と気付くのは少し遅かった
今から前に出て切り払うのは間に合わない、十夜の様子からして咄嗟にかわせるのを過信は出来ない

次の瞬間、彼は声を上げる事もせず十夜を狙う火の玉にほぼ横から当たるように飛び込んだ
刀で切り払うでもなく、他に防御をした訳でもなく、ただ両手を交差した粗末な防御姿勢で肉の盾となって火の玉をその身に受けた

<> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/07(火) 00:02:21.10 ID:IJ1BvHDAO<> >>620
なりふり構わずに突撃する七郎は、零が参戦することすら気づかなかった。
それほどまでに、七郎は怒りに満ちていたのだった。


>>621
アリサに炎がとどく寸前でその動きが止められる。

『ぐっ…てめぇ…!』

動けない、ただ睨みつけることしかできなかった。

『や…べぇ…!』

と、そこへ迫りくる炎の球。

『くそっ!どうにかならねえのか!
あっ…』

動けるようになった。七郎は、巫女の方を見て言う。

『あんたが助けてくれたのか…助かった…』

礼を言った後、駆け出した。
炎に向かってではなく、十夜の方へ向かって――

『十夜ーっ!!』


>>623
「ゆっくりと…?僕でも…僕でも強く…」

十夜の強くなりたいという気持ちは確かなものだった。
そして、十夜はこの人に弟子入りしたいと今まで以上に思った。


『丑三!?』

十夜をかばおうと走っていた七郎よりも先に丑三が十夜をかばった。

「丑三さんっ!!」

<> 零「」&黒龍『』<><>2011/06/07(火) 00:15:08.28 ID:Ua/SbqJY0<> >>622
「へぇ、炎が使えるんだ。なるほどね。」

零はその炎を身軽にかわし、黒龍は炎を切り裂く。

「確かにふざけてるね。

自分で分かってるのにやるって余計酷いよね。」

>>623-624
「丑三さん!?」

十夜に放たれた炎をまともに受ける丑三。
彼は人間、あんな物をまともに受ければ普通では済まない。

『黒龍ッ!!』

直ちに双刀となる黒龍を操り、七郎の分の炎も切り裂いた。

「アリサ…覚悟した方がいいんじゃない……?

やってくれたじゃん……。だったら仕返しが必要かなぁ…?」

双刀を組み合わせ、両刃薙刀に変形させると同時に、零の背中から黒い翼が現れる。
それは零を本気にさせたことであり、怒らせたことでもある。

にこり、と笑った悪魔はゆっくりと…アリサへ近づいていく。 <> アリサ<><>2011/06/07(火) 00:32:24.49 ID:cW2z0TGq0<> >>623

「あら?そんな事ないわよ?」クスクス
そう笑いながら、彼女は右手から丑三に札を投げる。

するとソレは犬くらいの大きさの蜘蛛のような式神に変わり丑三に襲い掛かる。

その牙で貴方の胴体を噛みちぎろうとする。


>>625

「チッ……柚梨の力ね」
『…ワシが…できるのは…《ソレ》を掃う…ことしか…できぬ…』ゴホッ
自分な《魅了》を消され、忌ま忌ましそうに《魔女》は言う。
巫女は口から血を吐きながらそう言う。

「あら?何処向いてるのかしら?」
《魔女》は容赦なく七朗に向かい、《十字型の炎刃》を放つだろう。


>>626

「そうそう…ソレが見たかったの」クスクス
本気なった零を見て、アリサはそう笑いながら思う。

ナニ オコッテルノ? タニン ガ キズツイテ? リカイ デキナイ

そう思考しながら、丑三達に更に追撃するアリサ。

《飛縁魔の力の炎》と《陰陽術でつくった炎》をそれぞれの腕に作り、混ぜる。
更に《呪のような魅了》も混ぜ、巨大なまがまがしい赤黒い邪悪な太陽が作り上げられる。


《世界の終末(ラグナロク)》
大地を焼き崩し、酸素を奪い焼きつくし、光さえも入らない《黒い太陽》が襲い掛かる。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 00:44:39.21 ID:Me9iMYRDO<> >>625>>626
「うろたえるな」

燃えるジャケットを脱ぎ捨て、木刀を杖代わりにして立ち上がる
いくら怪異に舐めてかかる強靭な心があろうと、怪異を伏せる力があろうと、結局の所彼は人間だ
人間の体は鍛えようと限界がある、炎に焼かれればいくら痛みに慣れてようと関係の無いダメージも受けるのだ

「よ、よゆーよゆー…ちょっと熱かったけどな…」

体中、見えない所にも出来た火傷がジンジンと熱を持つ、そんな体に鞭打ち立ち上がる

>>627
(ちょっとカッコつけ過ぎたな…余り長くは立っていられないか)
(せめて倒れる前に、一撃くらい…)

「えぇい!邪魔だ!蜘蛛の存在はアシダカしか認めん!」

噛み付こうとする蜘蛛の牙を左手の木刀で防ぎ、逆手に持ち替えた刀を振り上げる
そしてその刀を振り下ろし、蜘蛛に突き刺した

それで終わりではない、そのまま刀を地面まで突き刺し、蜘蛛を引きずりながら刀で地面を擦り、アリサの方向へ刀を引きずる

「ぬおおぉぅ…ふんっ!!」

白い炎を上げ、地面に炎の残り火を残しながら引きずる刀、それに力を込め、振り上げる
蜘蛛の体を切り裂きながら、地面をえぐる様に飛ぶ三日月状の白い斬撃を真っ直ぐ黒い太陽に放つ
その斬撃は刃だが、その刃を作るのは白い炎、それは悪しき物を焼き付くし浄化する地獄の炎で出来ている <> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/07(火) 00:51:55.99 ID:IJ1BvHDAO<> >>626
怒っているのは、零だけではなかった。

『丑三!』

「七郎…お願いがあるんだ…
僕に憑依して…」

『なっ!馬鹿言ってんじゃねぇよ!そんな体で憑依なんてしたら…』

十夜の体に多大な負担がかかる。しかし、十夜は――

「お願い…」

そう言う十夜の目を見て、七郎は言う。

『わかったよ。ただ、少しだけだ。
少し――あいつをぶっ飛ばすだけだからな!』

そう言い終わると十夜と七郎の体が光に包まれていく。

光が消え七郎の姿も消えた後、ゆっくり立ち上がる十夜。
その髪は白く変化していた。


>>627
「許せない。君は丑三さんや巫女さんを――僕の大切な人達を傷つけた。」

それは、今までに無い“七郎ではなく十夜の意思が前面に出された憑依”だった。

アリサの方を振り向き言う。もう目の前に十字の炎刃は迫ってきている。
しかし、臆することなく右手を炎刃に向け――

「狐炎大螺旋!!」

巨大な螺旋状の炎を放つ。その火力、七郎単体の時の3倍…いや、4倍はある。
本来の憑依状態では2倍程度だが、七郎と十夜のアリサに対する許せないという思いが共鳴し、火力を倍増させたのだった。


>>628
「ごめんなさい…僕のせいで…」

申し訳なさそうな表情で言う。

『十夜…大丈夫だ…お前は強くなれる。』

そんな十夜を慰めるように七郎の声が響く。

<> 零「」&黒龍『』<><>2011/06/07(火) 01:07:41.87 ID:Ua/SbqJY0<> >>627
どうしようもない力が零たちに迫ってきた。
本当に…【どうしようもない】力が。

零は笑っていた、あの冷たい、冷酷な笑みで。

「貴女が炎を使い、闇を司る魔女で本当に良かったぁ……ねぇ、黒龍……!?」

神話上語られている通り、雄のドラゴンには炎の力が司るとされている。
今の黒龍に炎を出すなんてことは不可。が、無にすることは不可でない。

そしてドラゴンは魔女に従えていた。それに対応する力を黒龍は持っていた。

…もう一つ。悪魔の力だ。魔女にも負けない黒い闇は、同時に打ち消し合うだろう…。

「龍斬・クロノスドエスペランザ」

黒いドラゴンは、太陽目がけ放たれた。
きっとそれは互いに打ち消し合い、絶対的な太陽は【壊される】。

>>628-629
その三人の思いは強く、更に強くなっていた。
この太陽が壊れた時、三人の想いはアリサへとぶつかるはず。

<> アリサ<><>2011/06/07(火) 01:50:19.77 ID:cW2z0TGq0<> >>628

「無駄よ…ソレは壊れないわよ」クスクス
蜘蛛は引き裂かれ、黒い太陽に白い刃を《飲み込む》がビクともしてない。
……いや、僅かに皹が入ったがアリサは気付いていない


>>629

リカイデキナイ リカイデキナイ
ナニ ヲ オコッテル ?
キズツケタカラ? アレ? ナンダ? ナニカ ワスレテル ヨウナ
マア イイヤ

「アラ?中々の威力ね…けどタイミング悪いわね」
十字の炎は破られるが、零に向かってる《黒い太陽》が《飲み込む》。
だが…彼女は気付かない。黒い太陽に更に皹が広がったのを……


>>630

「何をいって………なっ!?」
初めて…初めて《魔女》は驚愕した。

《ドラゴン》が《黒い太陽》を飲み込み一つになった。
ソレは……アリサに牙を向く!!
/続きます <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(関東・甲信越)<><>2011/06/07(火) 01:50:46.45 ID:FBdIOpiA0<> >>全員

更に三人の《思い》が起こした奇跡なのか…
黒い太陽が飲み込んだ筈の《丑三の白い斬撃》と《十夜たちの炎》が《ドラゴン》が吐き出しアリサに襲い掛かる。

「ありえない…ありえないわっ!!!!」
当たる直前にアリサは叫ぶ。

理解できない!!何故私が負ける!?

《色欲》に《支配》され、《純粋な愛》や《友情》に《人の心》を忘れてしまった《大罪者》は叫ぶ。

《三人の攻撃》によりアリサは崩れさった…

「………思い出した……」
身体が消えかけアリサは呟く…

「私は…妹を守る為に身体を売ってたんだ…」
思い出すは何百年前の話。

昔々ある村に仲の良い姉妹がいた。


二人は村の神社の巫女であり、村人達からも信頼されていた。

特に姉はとびきりの美人で、村の男たちから告白されたり、わざわざ彼女の為にくる武士などもいたが、彼女は全て断っていた。妹と離れたくないために……

ある時、村は流行り病に犯されてしまった。
それは……妹にも牙をむいた…

村に医者はおらず困ってると、とある城主が彼女にいった「私の嫁になれば腕の良い医者達を村に連れていこう。そうすれば貴女の妹も助かるぞ」っと

姉はソレに応じ、嫁にいった。
……しかし、それは嘘だった。
ただ自分の嫁にしたいが為についた…《色欲》により産まれた嘘。

彼女が事実を知ったのは………《村が病で滅びた》後、《聞かされて》知っただった……

女は悲しんだ…自分の《色》により惹かれた《男》に騙され…私は《村》を《妹》を見捨ててしまった…っと

ソレから女の復讐は始まった。《色》を使い、城主の弟を誘惑し、[ピーーー]ように仕向けた。それだけじゃない、更に別の男を惑わし、また別の男を惑わして、《村を見捨てた連中》《その城主の国》を破滅させていった……

「………ごめんね…ごめんね………」
『……姉上……』
《魔女》は……いや《哀れな姉》は泣きながら消えていく……

だが待て!!

何故、彼女は《村の真実》を知ったんだ?
誰か彼女に《真実》を教えた?



きっひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!!!

突然、聞こえる笑い声
次の瞬間アリサの身体は消滅した……


「あ……姉上!!!!!」
<> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 01:58:40.77 ID:Me9iMYRDO<> >>629-632
「…まあ、なんとかなったみたいだな…」

一時はどうなる事かと冷や冷やした、攻撃がすべて吸収された時はもう本当に逃げるしかないと考えていた
まあ、奇跡か魔法か、なんとかなったようで、落ちたアリサの姿を見る

彼女に何があったかは知らないし、知りたいとも思わない、聞くだけ無駄で、思い出させてしまうだけだ
そんな事よりも今は自分が先決で、体中が焼け付いて痛む、早く水でも浴びてしまおう、今日はろくに寝れなさそうだ

刀が白い木刀に戻り、武器をしまって帰ろうとした、その瞬間

「…こういうバッドな展開、嫌いなんだけどなあ」

歎く様に言いながら、笑い声に顔を向けた <> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/07(火) 02:04:56.63 ID:IJ1BvHDAO<> >>631,632,633
『おい!マズいぞ十夜!』

「大丈夫だよ。」

黒い太陽に恐れる七郎の声。しかし、十夜には見えていたその太陽に皹が入っていたことを


『やったのか…?』

「そう…みたい…」

憑依が解ける。あれだけの力を使ったのだから、無理もないだろう。
七郎が姿を現し、十夜の髪が黒に戻る。

「ねぇ、七郎…あいつもあの巫女さんにとっては大切なお姉さんだったのかな?」

『さあな…お前が気にすることじゃねぇよ。』

十夜の表情は、どことなく悲しいようだった。


そんな中、聞こえる笑い声。

「この声…!」

『まさか……』

二人に戦慄が走る。
<> 零&黒龍<><>2011/06/07(火) 02:12:56.55 ID:VcjoSzZDO<> >>632
「アリサさん、本当は貴女、いい人だったんですね・・・・・・。」

響く笑い声、同時に消えるアリサ。

「・・・誰だか知らないけど、今日のところは触れないでおこう・・・」

何か不快感を与えられたような気がした零は、立ち去ることにした。

>>633-634
「丑三さんも、十夜君も、またどこかで・・・」

力を尽かした零は、ヨタヨタと戻っていった。

//すいません、ここで落ちます。絡みありがとうございました!! <> 妖魔「」&巫女C『』<><>2011/06/07(火) 02:17:18.21 ID:TQEVKnu+0<> >>633>>634>>635

「きっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!お前らのおかげで《辺津鏡》が手に入ったよぉっ!それに《アリサ》が長年集めて貯めてた《色欲》も解放されて良い《杭》が完成したよぉっ!!」

声は聞こえるが、姿は見えない。

「まあっ!目的は果たせたからなぁっ!じゃあなぁっ!!!!きっひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!!!」
そして声は消えてった……

『………主ら…スマナイ…礼を言う……ワシは…しばらく一人にさせてくれ……』
巫女は立ち上がりしゃがみ込み、泣き始めた。

/大変長くしてスイマセン…お疲れ様でした!!
/長い時間絡みありがとうございます! <> 十夜「」&七郎『』<><>2011/06/07(火) 02:43:08.25 ID:IJ1BvHDAO<> >>635
「また…ね…」

つらそうな状態だが、しっかり別れの挨拶を言った。


>>636
『あ?何言ってやがる!?』

「どういう…こと?」

青行燈の言葉は二人にとって訳のわからないことばかりだった。

『ちっ…なんだってんだよ。』

青行燈に対し不快感と恐怖を表した。そして、声だけで本人が現れなかったのに安心する。
そして、今度は巫女の方を向き

「謝らなければならないのは僕たちの方です…あなたのお姉さんを…
ごめんなさい…」

泣きそうな声で謝った。

『俺からも…すまねぇ…』

つらそうな表情で、ただそれだけ言った。

『じゃあな。丑三に巫女。』

「さようなら。」

七郎(ホントはようがあったんだがな…今日はな…)

そう言うと、七郎はつらそうな十夜を背負った。

『弟子入りの話はまた今度にしような。
今は、そんな気分じゃねぇだろ。』

背中の十夜に話しかける。

「うん…ごめんね、七郎。」

『謝んなよ。お前はよくやった。』

七郎(ホントによくやったよ。それに比べて俺は……情けねぇな。)

そんなことを考えながら、少年を背負った狐は去って行った。


/皆さんお疲れ様でした。遅くまでありがとうございました。
<> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 21:26:16.28 ID:eIQvgZBPo<> すっかり辺りが暗くなり、仄かに一つ二つと蛍が川岸に飛ぶ。
人里と山とをわける橋の上に、蛍とは違う光が一つ、静かに光って浮いていた。
水の音に混じり、特徴のある麝香の香りが湿った暗闇から漂ってくる。

「約束どおり迎えに来たわよ。いるんでしょう?丑三」

暗がりに光るそれは牡鹿の一つ目。
橋のこちら側にしかない街灯の灯りの中に、その巨大な角の持ち主が現れた。
本性のままの姿を現した理由は、その背に乗せて客人を運ぶつもりだからである。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 21:35:40.64 ID:Me9iMYRDO<> >>638
「はいはい、約束通りお迎えにあがりましたよっと」

ゆら、と浮かんで揺れる煙の様に、夜に保護色となるような色合いの服の男が出て来る
黒い服装に目立つ白いニット帽子…の筈が、今回は少し白が多い

「いやー、昨日危うく焼肉になる所でさー」

はっはっはー、と冗談を言う風に言う彼の首を初めとした体中に、包帯が巻かれていた
<> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 21:42:33.29 ID:eIQvgZBPo<> >>639
「なにそれ酷いわネェ。やんちゃでもしたの?」

牡鹿は鼻先をそっと丑三の肩の辺りに寄せて、薬の匂いを嗅いだ。
その時に牡鹿の左目が、ざくりと抉られているのが丑三にも見えるかもしれない。
額から左目にかけて、何かの爪痕のように並行した傷が走っていた。
丑三の知らぬところでこの牡鹿もまた、一暴れしていたようである。

「お互い、生きてて良かったわね。さあ、アタシの背中に乗んなさいな」

牡鹿は膝を折ってその背を低く沈めると、丑三に自分の背中に乗るようにと勧めた。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 21:50:44.45 ID:Me9iMYRDO<> >>640
「そりゃお互い様ってもんじゃないか?」

何も見てないようでしっかりと見ているその目が、当然鹿南の左目も見た
自分よりも重症に見えたが、その理由を聞くのは野暮だろうと止めた

「ま、そうだわな」
「何があろうと生きてりゃまあいいのよ」

笑いながら言いながら、鹿南の背中に腰掛ける
馬ではないが、気分は白馬の王子様…いや

「…タタリ神とか出て来たら怖いな」

何かの作品の主人公な気分になった <> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 21:57:16.46 ID:eIQvgZBPo<> >>641
「タタリ神ねぇ。久しく会っていないわ、そういう神には」

昔ながらの力ある神は、一体いずこに行ったやら。

「しっかり掴まってなさいね」

丑三を乗せた金色の牡鹿は風のように走り出す。
その巨体に似つかず軽やかに跳ねて、一寸先も見えない筈の森の暗闇の中を
確かな足取りで駆けてゆく。
途中でぼうと淡く光る霧を抜け、谷川を大きな跳躍で飛び越えて、どれほど走ったろうか。
白い土壁の屋敷の門で、牡鹿は足を止めた。

「ここがアタシの屋敷なのね」

門を牡鹿がくぐり入ると、それまで灯り一つ無かった屋敷にぱっと明かりが灯り
その古びた庄屋の屋敷にも似た佇まいをはっきりと見せた。
中庭で牡鹿は再び膝を付き、丑三が掴まって降り易いように角を片方そっと差し出した。

『帰ってきたよー』『お客さんだー』

屋敷からは賑やかな声が聞えてくる。
幾つかの気配が駆け出して、軽い足音はこちらへやって来るようだ。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 22:15:36.72 ID:Me9iMYRDO<> >>642
「うおっ、激しっ!!」

枝に引っ掛かっておいてけぼりにしないように右手で帽子を抑え、左手で鹿南に掴まって体を支える
軽やかに飛び跳ね夜の山道を進む鹿南に乗っているのはかなりスリルがあった、ご飯六杯くらい

「へえ、鹿なのに立派な家だな、俺の家(事務所)より立派だ」

緩やかなスピードになった鹿南の背中で、ほう、と興味深そうに屋敷を見遣る
迷い家という例えがピッタリだと自分勝手に納得しながら、鹿南から降りる

「これ、俺が御馳走になる…なんてオチはないよな?」

足音と声がする方向を見ながら、鹿南に確認をする
当然、そうなれば大人しくする筈は無く間違い無く彼はその場の妖怪が全ていなくなるまで大立ち回りを演じるだろうが <> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 22:25:46.68 ID:eIQvgZBPo<> >>643
「ご馳走?それはアンタのために用意されてる筈よ。
 紹介するわ丑三、これがアタシの娘達よ」

派手な着物を着崩した男の姿に成った牡鹿が、駆けてきた少女らに纏わりつかれながら丑三を招きいれる。

『お帰りなさいー』『いらっしゃいませ』『はじめましてー』

下は3,4才から上は15才くらいだろうか。
よく似た顔立ちの少女達が22人、玄関から庭までわらわらと溢れる。
色とりどりの彼女達の着物が、淡い灯火の下で目を楽しませる。
妖怪も人間も、少女というのはいずれも同じで、そのお喋りを賑やかと取るか喧しいと聞くか。

玄関ではもっとも年嵩に見える、17歳ほどの少女が丑三の木刀を受け取ろうと手を差し出した。
この少女だけは他の娘達と違って、ブレザーにハイソックスの学生服姿である。
校章をデザインした服のエンブレムも、現実の人間の学校のもの。
浮世離れしたこの迷い家のなかで、この少女だけが妙に現実臭かった。

「美雪、その木刀はお客様の大事なもんだから、そのままで良いのよ」

おそらくまだここでは丑三がそれを手放すまい、と読んだ鹿南は制服の少女に声をかけた。
玄関の奥からは、美味そうな食べ物の匂いが漂ってくる。

「さ、丑三は入って寛いで。直ぐに食事がでるから」

立ち止まっていると後ろから少女達に押されて、家の中へわいわいと押し込まれるかもしれない。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 22:40:53.39 ID:Me9iMYRDO<> >>644
「へー、随分と子沢さ…多っ!」

いくら子供が多いとは言えまあこれくらいだろう、と先に出て来た数人を見て言った
が、それを言い終わる前に玄関にわらわらと出て来る大量の娘達に面食らう
多い、多いよ、どんだけ奥さん頑張ったのと冗談を飛ばすのを躊躇うくらいに子供、子供、子供である

コロコロと鈴が鳴るような高い声の喧噪と、色とりどりに揺れる着物の模様、そして何よりその景色
妖怪や怪異、不気味な山中等に慣れきった彼の目や耳にそれは一気に染み渡り、そこに異世界のような、現実とは隔絶された空間を感じさせた

少し呆けていたが、手を出す少女に気付いて目を向ける
この少女はまた違う、歳からくる物もあるが、服装や雰囲気からして何か他の子供達とは別の物を感じた

「あ、うん、これはぁぁあああああああああ…」

鹿南に制止された彼女、美雪と呼ばれた少女に自分の口からも断ろうとしたが、沢山の少女達に押し込まれそのまま波に流されるように屋敷の中へと送られてしまった <> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 22:51:58.49 ID:eIQvgZBPo<> >>645
「ふふ、ホントはもっと沢山居るのよ?
 大きい娘達は他所へ嫁いでって、ここに居るのはまだ小さい子供達だけね」

妻が複数居るが故の、子沢山である。

広々とした奥座敷には、既に客人のための設えがしてあった。
丑三が座布団に座すると直ぐに、着物姿の年増な女達が酒肴を運んでくる。
山菜にヤマメ、芋、茸など、山のものが膳に並ぶ。
流石に肉類は無いが、それでも酒は香り良い。

「好きにやっちゃいなさいな」

鹿南はすっかり寛いで、膝に小さな娘を一人乗せてあやしながら盃を傾けている。
丑三にも、あの、美雪と呼ばれた少女が酌をしにきた。

『盃をどうぞ』

他の小さな子供達には年上の少女達が一緒について、食事の面倒を見てやっているようだ。
時折好物の取り合いなのか、喧騒があがるが、すかさず窘められている。

『あまりお怪我に障りの無いように、お酒はきつくない物を選んできました』

にこっと、名前の通りに色白な美雪は丑三を見て微笑んだ。
妖気も無く、ごく普通の人間といった感じの彼女とは、色々話を出来るかもしれない。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 23:05:21.43 ID:Me9iMYRDO<> >>646
「……………」

座布団に胡座をかき、運ばれた豪華な料理を見る、どれも超美味そう、料亭かよ、と
ついでに酒、その上酌をしてくれるのは可愛い女の子

「ああ、どうも」

その子も凄く気が利くし、笑顔が眩しいし、可愛い
こちらも笑顔になって、盃に酒を注いで貰う

だが、別に何かした訳でもないのにいい思いをすると疑ってしまう物で
罠にかかった鹿を助けた訳でもないし意地悪夫婦から鹿を助けた訳でもない、それなのにこんなに歓迎されるのは少しやり過ぎではないのか?
彼女らがそういう事が好きだとか色々理由も考えられるし、勿論喜ぶべきでもあるが、人間という物はそこまで純粋でもない

(…ま、いいか)

そして、丑三夜中という男はそこまで深く物事を考える男でもない
ぐいっと一杯、酒を呷った
<> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 23:19:44.23 ID:eIQvgZBPo<> >>647
「美雪はね、アタシの一番下の娘なのよ」

ほんのりと酒で頬を染めた鹿南が丑三にそう言った。
どう見ても一番年上なのだが、美雪自身も頷く。

「アンタをここに招いたのは、この子に会って貰うためでもあるの」

鹿南は丑三に話し始めた。
ガンゴジという妖怪の役割、親の言いつけに背き道から堕ちた子を喰らい、
悪の芽を積むためのその存在はたった一人しか存在しないことを。
この美雪は、産みの親の言いつけに背いた人間の子供である。しかし…。

「アタシが喰わなかった悪い子供が育っちゃうと、この子の産みの親みたいになっちゃうわけね」

雪の夜、外に出ていろと放り出された5才の美雪は、子喰いの鹿に拾われて養い子になった。

「この子はいずれは人間の世界に帰さないといけないわけね。
 だからアタシもこの子を育てるのに、人間の中でこっそり育てたわ」

今もアパートを借りて、そこから学校へ通っている事にしているらしい。
戸籍やら税金やらPTAやら、色々大変だったわーと笑う鹿南は、それでも子育てを楽しんだようだ。
その表情はふと真剣になり、丑三を鹿の片目がじっと見据えた。

「いずれアタシはこの子と別れることになる。一人立ちした人間を、こっち側に置いたままには出来ないわ。
 でも、この子のこっち側とあっち側の生活の両方を知っている誰かが、あっち側、つまり、
 人間の世界にも居てくれると親としては安心できるのよ」

恋人や夫婦とならなくてもいい、いざという時の相談相手であれば良いのだ、と牡鹿は言った。 <> 丑三夜中<><>2011/06/07(火) 23:40:45.88 ID:Me9iMYRDO<> >>648
「成る程、子供だけど血が繋がっている訳じゃないのか」

こういう時、避けて言うべき言葉をそのまま言ってしまう
デリカシーが全く無いのは彼を知っている者なら誰でも解る、事実だからと包み隠さず簡潔に美雪と鹿南の関係を整理した

「まあ、あれだ」
「こんな可愛い女の子と関係が持てるんなら断るなんて事はしないね、むしろこっちからお願いをしたいくらいだ」

それは同情の気持ちでもなく、責任感を感じる言葉でもない
断る理由もないからとか、別に困る訳じゃないとか、そんな感じの気持ち、ネガティブでもないし、ポジティブでもない

「そんで、具体的に俺は何をしてやりゃいいんだ?」

<> 鹿南<>sage<>2011/06/07(火) 23:51:45.67 ID:eIQvgZBPo<> >>649
「今はこの子もあっち側で過ごす時間が長くなってるわ。アルバイトも始めたしね。
 だから普通に、ご近所付き合いでもしてくれたら十分よ。
 男女の仲については、いずれなるようになれば良いわ」

娘の前でこんな話をして良いのだろうか?しかし鹿南も美雪も全く気にしない。

「アタシと一緒に居たせいでこの子もちょっと人間離れしてきちゃってね。
 人間にしては妙に感が良すぎたり、人から見たら奇妙に見える行動を取ったりもしちゃうのよ」

美雪は妖怪に育てられたのだ。
人には見えないものを見たり妖怪と喋れたりするだけで、もう十分に人間の世界では浮く。

「アタシだって何時までも生きるわけじゃないの。アタシの母はただの鹿だった。
 アタシが生まれたときに、この屋敷がどこからとも無く現れたと聞いたわ。
 だからアタシが[ピーーー]ばこの屋敷も消えて、あの娘達もただの鹿に戻るの。
 そうなった時に、この子のその先の生き方が苦しくならないように支えてくれれば御の字よ」

役割を継ぐ息子は居ない、たった一頭だけの存在は、だから丑三に娘の先を託すのだ。

「そろそろ遅い時間だけど、アンタが泊まれるように仕度はしてあるわ。
 食事が済んだら、お湯を使うも、寝るも、辺りを見て歩くも自由よ」

牡鹿は娘と丑三をとろんと柔らかな視線で見た。そろそろ眠そうな気配である。 <> 丑三夜中<><>2011/06/08(水) 00:06:51.52 ID:4EcZq2gDO<> >>650
「ご近所付き合いか…まあ、妥当だろうな」
「その男女の目の前でその発言は流石の俺でもどうかと思うけどな」

「何よそれ、結構責任重大じゃない」

一頭のみの存在に託された、一人の娘の未来
なんだか物凄く重い物を乗せられたようで、それでも今更取り消す訳にはいかない
しょうがないか、と彼は腹を括るのであった

「ああ、そりゃ御丁寧にどうも」
「たまにはソファー以外で寝たいし、今晩は甘えさせてもらうかな」
「…の前に、庭の散歩でもさせて貰うわ」

よっこいしょ、と立ち上がりのたのたと玄関へと向かっていく
あまりゆっくり見れなかったこの屋敷の外装をよく覚えておきたい、そう思うくらいにここは魅力的な建物だ <> 鹿南 美雪<>sage<>2011/06/08(水) 00:17:50.60 ID:IEngWqI3o<> >>651
「美雪、お客様をご案内なさいな。足元が暗いから、明かりを十分にね」

アタシはもう寝るわぁ、とあくびをする父親に、はいと答えて立ち上がった美雪は
灯火を一つ持って丑三に続く。
玄関で靴を履いて、少女はひんやりと涼しい外の空気の中へ、
足元を照らしながら丑三を案内した。

『急にあんな風に頼まれて、きっと驚かれたでしょう?』

庭の紅葉のまだ青い葉が、さらさらと夜風に涼しい音を立てていた。
明かりを抱えて鹿の屋敷は、夜の中にどっしりと佇んでいる。
壁は白く、磨きぬかれた梁や柱は黒光りして、手入れのよさと経てきた時間を示していた。
緑の苔がしっとりと庭土を包み、歩く足元が柔らかい。 <> 丑三夜中<><>2011/06/08(水) 00:27:03.70 ID:4EcZq2gDO<> >>652
「んー?まあねー」

両ポケットに手を入れて、外の空気を感じながら屋敷の象を眺める
春は桜、夏は蛍、秋は紅葉、冬は雪、どの季節でも綺麗な景色が見えるだろうと夢想する

「でも出来ない事じゃないし構いやしないよ、俺はね」
「君はどうなんだ?自分が任される相手が俺で不満は無いの?」

ニヤッとした笑みを浮かべ、美雪に顔を傾けて問う <> 美雪<>sage<>2011/06/08(水) 00:38:19.53 ID:IEngWqI3o<> >>653
『話を聞いたときは、びっくりしました。まさか父が婿候補を選ぶなんて思いもしなくって。
 でも…』

切りそろえられた少女の髪がさらりと風に馴染む。

『実際に会ってみて、父が貴方を選んだ理由がわかるような気がします』

変人と見られることをあえて選ぶ丑三。
その下に照れくさくて出せない、弱さや恥ずかしさなどと共に隠された、
真っ直ぐな何かの存在をこの無駄に勘のいい少女は気づいていた。

『お友達からお願いしても、良いですか?
 私は一応、今風の女の子のつもりなんですけど、丑三さんはどこか古風な人みたいですし』

あ、そうだ。ケータイ番号きいとこ、とポケットからやたらストーンやシールでデコられた
携帯電話を取り出す辺りは、確かにありふれたそこらの女子高生だ。
操作する親指の動きはやたらと早い。

『番号交換は、嫌ですか?』

丑三を見上げて首を傾げる美雪。
下手すると流れはこのまま彼女に良いように持っていかれそうだ。頑張れ丑三! <> 丑三夜中<><>2011/06/08(水) 00:48:17.28 ID:4EcZq2gDO<> >>654
「そうなんだ、俺にはなんで俺が選ばれたかわかんねーや、最初食われると思ってたし」

冗談めかして笑う、その笑顔にも何かを隠しているのだろうか
だが、今それについてながったらしく書くのも野暮と言う物だ

「そんなに古風か?こんな今風な物だって持ってるんだぜ?」

ニヤッと笑いながら取り出すのはスマートフォン、確かに今風だ

「番号やアドレスの一つや二つ、交換したって構わないさ」
(ていうかアドレス帳スッカスカ過ぎて道行く人に土下座してでも交換したい」

笑顔に隠れた、悲しい思考が漏れていた <> 美雪<>sage<>2011/06/08(水) 01:01:56.14 ID:IEngWqI3o<> >>655
『父は大人は食べませんってば』

本来なら草食である鹿が、その役割故に人の子を食う化け物でなくてはならない皮肉に
美雪は笑みながらにそっと思うところを隠した。

『持ち物が今風でも、気の持ちようは違ったりして』

あっけらかんと笑う様は、繁華街を友達とあるくごく普通の少女である。

『スマートフォンは私も欲しいんだけど、まだお金が足りなくてガラケーで我慢なんですよ。
 あ、丑三さんのアドレス帳に載る最初の女の子だったらいいな』

番号等の交換は無事済んだようで

『これで何時でもメールできますね』

美雪はケータイを軽く振って、ご機嫌なようである。

『そろそろ夜風も冷たくなってきましたし、中へ戻りませんか?』

丑三の酔いは、程よく覚めただろうか。 <> 丑三夜中<><>2011/06/08(水) 01:09:55.99 ID:4EcZq2gDO<> >>656
「あーガラケー、ガラケーもいいよね、ほら、ガラって感じのがさ」

解らないのに無理に話を合わせようとして訳が解らない言葉になる
ガラケーの意味が解らないとなると古風というかおっさんに近いのではないだろうか

「お喜びを、初めての女の子だよ(業務用を除く)」

アドレス帳にしっかりと登録したのを確認していると蛸男の電話番号が目に入った
嫌がらせで酔いと嬉しさに任せた電話でもかけてやろうかとしたがそんな事をしても意味が無いので止めた

「ん、そうするか」

携帯をポケットにしまい、両手をポケットにいれてまたのたのたと歩き出した <> 美雪<>sage<>2011/06/08(水) 01:18:30.03 ID:IEngWqI3o<> >>657
『ほんと?やったね!
 結婚するなら私、遊んで無い人が良かったんだー』

美雪は嬉しそうであるが、もててない男と遊んで無い男の違いはまだよく判らないのかも知れない。

『あ、お風呂はさっき薬湯にしてもらうよう頼んでおきました。
 火傷の具合によっては、無理に使わないほうが良いかもしれないんですけど。
 後で薬と新しい包帯を、お部屋のほうに届けますね』

はきはきと必要な事を丑三に伝えながら、美雪は屋敷に戻っていった。
明日はまた、鹿南が橋のところまで丑三を乗せて送ってゆくのだろう。


//この辺が切りが良いかな。絡みありがとうございましたー。
<> 丑三夜中<><>2011/06/08(水) 01:26:34.31 ID:4EcZq2gDO<> >>658
(もう結婚前提かいな…結構お店で遊んでたりはしたんだけど…)

ちょっと女遊びは自粛した方がいいだろうか、真面目に検討する丑三であった

(ていうか最初は無口だと思ってたけど結構喋るのね、人見知りって奴?)
「…まあいいや、風呂入って寝ましょー」

大きな欠伸をしながら屋敷を眺め、中に入る
今夜は久々に、事務所のぼろいソファーなんかで寝るより格段に、いい夢が見られそうだ

/お疲れ様でした <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/08(水) 22:45:05.85 ID:XxrhJvNUo<> 住宅地の裏路地を、黄色い着ぐるみに身を包んだ少年が歩いている。
目深に被ったフードから、短い茶髪と、頬から首へ続く奇妙な文様が覗く。
地面を踏む足を守るものはなく、小さな裸足は土で汚れている。

――バチバチッ、パチっ。
微かに漏れる、火花が散るような音。
茶髪が少しだけ浮かぶ。青白い光がちかちかと少年の周囲で発光する。
少年は足を止めると、不意に空を見上げた。
建物と建物の間から覗く青空。少し雲が出てきたように見える。

「……」

無表情のまま正面を向くと、少年はまた歩みを始めた。 <> 招き猫<>sage<>2011/06/08(水) 22:51:56.22 ID:IEngWqI3o<> >>660
最近、店主の健康状態が悪化して住んでいるクリーニング屋は次第に客が減りつつある。
それを反映してか、一時よりちょっぴり痩せたもののまだまだ丸い三毛猫のミケ子は今日も
普通の猫のふりをして散策中であった。
単に九十九神の中でも比較的低級で、人型に成れないってだけなのだけれど。

「雨が上がって良かった。昨夜の雷はほんと酷かったわぁ」

雨で出来た水溜りをどすん、と飛び越えたとき、猫の毛皮がぶわわわっと広がった。
毛の全てがぴん、と立ち上がり、触るもの全てとパチパチ絡み合う感覚がある。

「何これ雨上がりに静電気ぃ?!」

ありえない、と思ったときに三毛猫は歩く奇妙な少年を見た。

「ちょっとそこの裸足の子、貴方でしょ?この電気パチパチしてるの?」

丸く膨れて既に猫だか毛玉だか良く判らなくなったミケ子は、そう声をかけた。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/08(水) 22:59:43.63 ID:XxrhJvNUo<> >>661
声を掛けられた少年が振り返る。
視線の先にいるのは、喋ること以外は、一見普通の猫なのだが。

「……?」

少年は不思議そうに目を瞬かせると、てくてくとミケ子に近付いた。
じいっと見つめて、そっとミケ子に手を伸ばす。
小さい指先からは、相変わらず電気がパチパチしている。 <> メリー<><>2011/06/08(水) 23:00:21.36 ID:pGTf8q7V0<> >>660>>661

ぴちゃぴちゃ、と水溜まりを踏んでる音が聞こえてくる。

見ると、麦藁帽子をかぶって、白いワンピースを着て、黄色い長靴をはいた、金髪の幼女がステップを踏みながら、楽しそうに遊んでる。

「面白いんだよ〜〜」
そんな《幼女》が二つの影を視認する。

「猫さんなんだよ〜。あと誰なんだろ〜?」
《猫》と《着ぐるみ》の姿を見て、首を傾げながらトテトテと近づいてくる。

「こんにちはー!!なんだよー!!」ニパーッ <> 招き猫<>sage<>2011/06/08(水) 23:06:04.51 ID:IEngWqI3o<> >>662
「ふみ゛ゃっ!!!」

ばちーん!と小さな雷がミケ子の鼻と少年の指先を繋いだ。

「ふっ、ふぐみゃっ!ふぎゃーーっ!」

鼻の頭を短い前足で抑えて悶絶するミケ子。
かなり痛かったのか、緑の目にはうるうると涙が盛り上がっている。

「酷い、酷いわッ!」

ようやく人語で抗議できるようになったとき、ミケ子の鼻の頭は黒く焦げていた。

「あなた雷小僧か何かでしょ?その力、少しは抑えられないの?」 <> 招き猫<>sage<>2011/06/08(水) 23:09:47.28 ID:IEngWqI3o<> >>663
「メリーちゃん、来ちゃ駄目!そこの男の子に触っちゃ駄目よ!」

(メリーちゃんが危ない!ああもう、こんな時にあの護衛のワン公は何してんのよっ!!)

慌てて彼女の接近を止めようとミケ子は声を張ると同時に、心中でクロコに悪態をつく。

「感電するわよ!気をつけて!」

しかしメリーはすぐ傍に来ていた。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/08(水) 23:15:28.13 ID:XxrhJvNUo<> >>663
「……こんにちは」

雨上がりの空のような晴れやかな笑顔を浮かべるメリーに、
少年はオウム返しのような挨拶を返した。
その表情は、またどこか不思議そうだ。
楽しそうに表れた幼女に対しての疑問ではなく、まるで言葉の意味が分かっていないように見えた。

>>664
涙目で抗議されて、少年はおろおろしながら後ろに一歩下がった。
フードに隠れた困り顔が覗く。
少年はふるふると首を振ると、

「雷獣……」

と少し落ち込んだような声色で呟いた。
<> メリー<><>2011/06/08(水) 23:25:31.48 ID:8yBALX350<> >>665

「ふえっ?どうしたんだよー?ミケ子?」キョトン
不思議そうに首を傾げながら、トテトテと近づく。

「よくわからないけど、あの子は悪気があったわけじゃなさそうなんだよー」
「怒鳴らないであげてなんだよー」
しゃがみこみ、ミケ子の頭をナデナデする。

あ…何処かで犬がクシャミをした。


>>666

「どうしたんだよー?」
不思議そうにしてる少年を見て、首を傾げる幼女。
こんにちはの意味を知らないとはわからず、こちらも不思議そうだ。

「雷獣なんだよー?私はメリーって言うんだよー」
「あなたもミケ子に触ろうなんだよー」
おいっ!ミケ子の注意聞いてたのか?幼女!

まあ、笑顔でパタパタと手招きをする。 <> 招き猫<>sage<>2011/06/08(水) 23:28:56.64 ID:IEngWqI3o<> >>666-667
「雷獣?それじゃ、昨夜落っこちてきたの?」

(帰り道判るのかしらこの子?見たところまだ大分幼いわよねぇ)

「あなた名前はなあに?おうちへは帰れそう?」

この場に居るうちで一番の年長者として、ミケ子はこの雷獣に尋ねた。
その時、この子供の着ているものが以前に店に持ち込まれたものと類似しているのに気づく。

(雷獣が電気鼠の着ぐるみ着用って、これギャグ?ねえ、突っ込むところなのこれ?)

「……って、ちょっとぉぉぉぉぉ!メリーちゃんあなたあたしの話聞いてたぁー?!」

結局、ミケ子が突っ込むのはメリーに対してであった。
招き猫はこのまま幼女に捕獲され、雷獣にモフモフされてしまうのだろうか。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/08(水) 23:40:07.18 ID:XxrhJvNUo<> >>667-668
「メリー、ミケ子……」

手招きに誘われるまま、一歩踏み出す。
まだ先程抗議されたことを思ってか、ミケ子には少し遠慮気味だ。
俯き気味になると、フードの様子がよく分かる。
赤いほっぺ、黄色のシャツ、ギザギザ模様のボクのベスry
少年はミケ子のほうをチラチラと見ながら、「わからない」というように首を振った。
だが、少年はおもむろに腕をまくると、文様の描かれた腕を二人に見せた。

「アマツキ」

その腕には、手首の辺りに、「天ッ堕」と文字か描かれていた。

「アマツキは、アマツキ」

天ッ堕、天から堕ちると書いて、アマツキ。
それがこの少年、雷と共に落ちてきた雷獣の名前である。 <> メリー<><>2011/06/08(水) 23:52:29.12 ID:UlQb7PGX0<> >>668>>669

「聞いてたんだよー。けど仲間はずれはダメなんだよー」
「ダメ?」ウルウル
ミケ子の頭を撫でながら、おねだりするメリー。
本人には悪気は一切ありません。

「アマツキなんだよー!よろしくなんだよー!」ニパーッ
ミケ子から離れ、トテトテと近づきアマツキに、右手をさしだす。

だからミケ子の話を聞いてたのか!?
果たしてメリーの運命は? <> 招き猫<>sage<>2011/06/08(水) 23:56:22.33 ID:IEngWqI3o<> >>669
「アマツキ君ね」

(どうせなら住所とか電話番号とか、親の連絡先も書いておいてくれれば良いのにぃ)

「お父さんとお母さんは?」

親がこの子供を探し回っていてくれる事をミケ子は願った。
天ッ堕が触って来る気配の無いことにほっとしたミケ子だったが。

>>670
なんと、メリーが雷獣に手を差し出しているではないか!

「だから触っちゃだめぇ!!」

(ああもうなんであたしってばこんなことしてるのよ今日は貧乏くじの日なのねきっと)

メリーの右手を遮るように、ミケ子が割って入る。
天ッ堕の手がメリーに触れる事の無いように、とそうしたのであるが…。
<> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 00:09:43.86 ID:udgsVL1Po<> >>671
捲った裾を戻して、天ッ堕は青い空を指差した。

「父様は、うえにいる」

天ッ堕のいう父様は、空の上にいる雷神なのだが、それを説明する能力が彼にはなかった。
真上を見上げようと大きく頭を逸らすと、ぱさりとフードが取れた。
ちらりと見える首には、奇妙な文様が所狭しと描かれている。
正面に顔を戻すと、天ッ堕はそっとフードを被った。

>>670
「よろしく」

差し出された右手を覗き見ながら、またオウム返しする。
しばらく手とメリーの顔を交互に見ていたが、
やっと何をすべきか感じ取ったらしく、自分も右手を差し出した。
だが、指先からはまだパチパチを電気が放たれている。
火傷まではしないだろうが、触れれば痛みを感じるだろう。
……だが、その間にミケ子が割って入った。

「ミケコ」

電気を纏った指先が、ミケ子に触れかける。 <> メリー<><>2011/06/09(木) 00:17:22.54 ID:dJVnNkvI0<> >>670>>671

「うゆ?」
握手しようと、触れ合おうとする手と手…

メリーは恐れず、仲良くなりたい一心でのばした右手。

しかし、メリーの為に犠牲になるミケ子…
ミケ子よ…君の犠牲は忘れない。

「あわわ!!!!ミケ子大丈夫なんだよー!?」
心配そうにミケ子を見る。

「アマツキはお家に帰れるんだよ?」
そしてフッと気になる。 <> 招き猫<>sage<>2011/06/09(木) 00:25:08.05 ID:eX2N0HxNo<> >>672-673
「に゛ゃぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、あ゛あ゛あ゛っ」

メリーと天ッ堕の間で、ミケ子は奇妙な踊りを踊っている。
毛皮を青い放電が這い、ぴりぴりと針で刺すような痛みを味わう。
しばらくくねくねと動いた後、ようやく放電が一息ついたところでぐったりと三毛猫は伸びた。

「だから、ね、メリー、ちゃん。触っちゃ、駄目、って言った、のよ」

電気椅子ってこんな感じなのかしらん。
途切れがちになら話せるが、まだちょっと痺れたような感覚が残る。
その代わりメリーは無事だったらしい。

そして雷獣が指すとおり、親が上にいるのは予想していたが。

「で、ひとりでちゃんと、お空に帰れるの?アマツキ?
 高い場所を、探して、上らなくちゃならないんじゃ、ないの?」

ミケ子は、雷獣は高いところに上って天に帰ると聞いたことがあった。

(でも、あたしの方が先に昇天するかと思ったわ) <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 00:37:32.60 ID:udgsVL1Po<> >>673-674
「!!」

ミケ子と天ッ堕がE.Tした途端、
びりびりびりっと二匹の間に電気が走った。
奇妙な踊りとミケ子の叫びに驚いた天ッ堕が、ぴょんっと三歩後退する。

放電が収まり、ぐったりとするミケ子に、
おろおろした天ッ堕の両手が、所在なさげに空を掻く。

ミケ子とメリーに同じ事を問われた天ッ堕は、
まだ困ったような顔をしたまま、小首を傾げた。

「おおきくなったら」

天ッ堕は、まだ落ちてきたばかりの雷獣。
どうやら帰るためには、もう少し成長する必要があるらしい。 <> メリー<><>2011/06/09(木) 00:49:48.20 ID:Mt0Wv6l70<> >>674>>675

奇妙な踊りをしてしまったミケ子。
それに驚き下がるアマツキ。

「うにゅ……わかったんだよー」
自分がアマツキに触ろうとしたらミケ子に迷惑がかかる。
だからアマツキに触るのは諦める事にした。

「うゆ?じゃあ何処で寝たりするんだよー?」
心配そうにアマツキを見るメリー。いくら雷獣といえども、この妖怪が蔓延る街で幼い彼が一人で大丈夫なのか?っと

もし…ないなら田中家に誘おうかな?と思うメリーだった。
居場所がなかった自分を住ませてくれた《普通じゃない普通の一家》に… <> 招き猫<>sage<>2011/06/09(木) 00:50:14.11 ID:eX2N0HxNo<> >>675-676
「大きくなるまでに、どのくらい掛かるのかしらこの子」

ミケ子は頭を抱えた。
この無作為無差別放電攻撃があるのでは、ミケ子の店に引き取るのは難しい。
この雷獣に銅線でも尻尾のように結びつけて、常に地面にアースしておくようにでもしなければ
安全に触れる事もできないだろう。

「小さい子の面倒みれるほど手は無いのよね、うち」

頭数ならある。
しかしその頭と繋がる手の一つは鳥の羽、もう一つは猫の手である。
店主が寝込んでいる今は、ヨーコが一手に店を引き受けているのだ。
どうみても幼い雷獣の世話が出来る手数はない。

「交番に連れて行く訳にも行かないしねぇ」 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 00:58:12.69 ID:udgsVL1Po<> >>676
「そこ」

天ッ堕が指差した先は、路地裏の壁に沿ってゴミの様に捨てられた段ボールだった。
所どころ濡れたり、焼け焦げているところを見ると、どうやら昨晩はここで寝ていたらしい。
一見分からないが、どこで拾ってきたのかも知れない電気鼠の着ぐるみの下には、何も着ていなかったりする。
昨晩から誰にも見つからず、通報されなかったのが奇跡的だ。

「……」

本人は一向に気にしていない様子ではあるが。
ピカチ●ウのフードを弄りながら、グラスのような瞳で、どこか遠いところを見ている。

>>677
「……??」

交番が何か分からずに、天ッ堕は首を捻る。
何の知識もないため、子供というより赤ん坊に近かった。大人しくて大きい赤ん坊だ。 <> メリー<><>2011/06/09(木) 01:06:04.66 ID:bT6XgrAn0<> >>677>>678

ダンボールを指差され、流石にメリーも唖然とする。

「だ…ダメなんだよー!」
「アマツキ!メリーが住んでる田中家に一緒にくるんだよー!ここで一人じゃ危ないんだよー」
そう提案するメリー。
確かに田中家なら受け入れてくれるだろう「しかし雷獣である彼が入ると家電とかダメになるような気がするが……

アマツキが「嫌」というならメリーはしぶしぶ諦めるだろうが… <> 招き猫<>sage<>2011/06/09(木) 01:09:17.43 ID:eX2N0HxNo<> >>678>>679
(ちょ…野良猫でももうちょっとマシな寝床で寝るわ)

ダンボールはまだいい、しかし濡れているのは頂けない。

「まるで大きな赤ん坊ね。人型になれる分、あたしよりは格上な筈なのに」

世の中って不公平、と三毛猫は呟いた。

「メリーちゃんの家は、この子を引き取っても大丈夫そうなの?」

もしかしたら幼女なメリーのほうが、この生まれたての赤ん坊のような雷獣の子どもを
世話できるかもしれないとミケ子は思った。
メリーは幼いけれど、結構しっかりしている。あの犬もいるのだから、危ない事は無いだろう。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 01:16:38.57 ID:udgsVL1Po<> >>679-680
「……?」

心配されていることが分からない天ッ堕は、きょとんとした表情で瞬きをする。
けれど、再びオウム返しした言葉に、

「メリーといっしょ?」

天ッ堕は僅かにだが表情を緩ませた、ような気がした。
この大きな赤ん坊は、自分の興味のある言葉や、何かを感じる言葉をオウム返しするようだ。
一緒に行く、という意味自体はよく分かっていないが、
行為自体を嫌がっている様子は見られない。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 01:17:33.02 ID:udgsVL1Po<> >>679-680
「……?」

心配されていることが分からない天ッ堕は、きょとんとした表情で瞬きをする。
けれど、再びオウム返しした言葉に、

「メリーといっしょ?」

天ッ堕は僅かにだが表情を緩ませた、ような気がした。
この大きな赤ん坊は、自分の興味のある言葉や、何かを感じる言葉をオウム返しするようだ。
一緒に行く、という意味自体はよく分かっていないが、
行為自体を嫌がっている様子は見られない。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 01:20:03.70 ID:udgsVL1Po<> >>679-680
「……?」

心配されていることが分からない天ッ堕は、きょとんとした表情で瞬きをする。
けれど、再びオウム返しした言葉に、

「メリーといっしょ?」

天ッ堕は僅かにだが表情を緩ませた、ような気がした。
この大きな赤ん坊は、自分の興味のある言葉や、何かを感じる言葉をオウム返しするようだ。
一緒に行く、という意味自体はよく分かっていないが、
行為自体を嫌がっている様子は見られない。 <> メリー<><>2011/06/09(木) 01:23:01.68 ID:ZXwngV9j0<> >>680

「多分大丈夫なんだよー。パパさんとママさんと夕と夜お姉ちゃんとクロコなら受け入れてくれるんだよー」フンス

少し胸をはりながらそういう。

「けど、電気対策はどうしようなんだよー?ゴム手袋で大丈夫かな?だよー」
キョトンと首を傾げながら


>>681

「そうなんだよー!一緒に暮らそうなんだよー」
手をパタパタとしながらそう言うメリー。 <> 招き猫<>sage<>2011/06/09(木) 01:28:23.90 ID:eX2N0HxNo<> >>683-684
「アマツキは一緒に行きたいみたいね」

雷獣にその気があるのはいいが、困るのは電気対策である。

「そうねー、メリーちゃんのお姉さんならいい案があるかもね。ワイヤー使いでしょ?
 あと、そうだ。アマツキはどのくらいで大きくなれるの?
 そのびりびりを自分で抑えられるように成るにはどのくらいかかるのかしら」

ミケ子は駄目元で雷獣に聞いてみることにした。
あまり長くかかるようなら、メリーの家だけに負担がかかるのはミケ子としても心苦しい。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 01:40:15.34 ID:udgsVL1Po<> >>684-685
「……」

こくん、と天ッ堕が控えめに頷く。
これで天ッ堕は田中家にお世話になることになったようだ。
しかし常識の知らない天ッ堕が、田中家でどんな事をしでかすか、予測は不可能だ。

ミケ子から尋ねられて、天ッ堕はまた首を傾げた。
意味を理解するのに時間がかかっているようだったが、
しばらくすると「どのくらいで……」と言葉を反復しだした。

「雷、食べる」

天ッ堕が自分を差しながらいう。

「そしたら、アマツキはおおきくなる」

落雷や電気などを食べることで、天ッ堕は成長するらしい。
それにしたがい、知識の増加や力の制御もできるようになるのだろう。
そして大きな落雷と共に、空へ帰っていく、というわけだ。 <> メリー<><>2011/06/09(木) 01:53:02.81 ID:ZXwngV9j0<> >>685>>686

普通じゃない普通である田中家なら多分大丈夫だろう。常識は田中母や田中姉が教えてくれるだろう。
お父さん忍者だし。

「パパさんと夜お姉ちゃんは妖怪について知ってるから問題はないんだよー。ママさんと夕お兄ちゃんは妖怪じゃなくって静電気体質の子って思うし大丈夫なんだよー」
「うん!夜お姉ちゃんに聞いてみるんだよー」
元気よく言いながら、ぴょんぴょん跳ねる。

「雷?だよー?」
「つまり電気を食べれば大丈夫だよ?」 <> 招き猫<>sage<>2011/06/09(木) 01:55:44.92 ID:eX2N0HxNo<> >>686-687
天ッ堕は無事田中家へ迎えられそうである。

「雷がご飯なのかー」

しかしお蔭で田中家の電気代は嵩みそうでもある。
雷を使える妖怪でも居れば良いのだろうが、生憎ミケ子の知る限りには居ない。
田中家に縁のある妖怪に、そういう妖怪でも居れば良いのだが。

「今度雷が鳴るときには、アマツキを屋上とかなるべく高いところに連れて行ってあげてね。
 そしたら、アマツキもご飯を食べれるみたいだから。
 でもその時、メリーちゃんはすぐ傍には居ないほうが良いわ」

今のミケ子には、メリーにそういい含める事しか出来なかった。

「それじゃ、決まったみたいね。あたしはそろそろ帰らないと」

(どうかなるべく早く無事に育ちますように)

託す先が見つかってほっとしたミケ子は、まだちょっと足を引きずりながら去っていった。


//この辺でおちます。絡みありがとうございました。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/09(木) 02:02:42.58 ID:pp1sdPtSO<> >>687
こくこくこく、と何度も頷く。
しかし、どのくらい成長すればいいのか、電気はどの程度食べる之か、天ッ堕自身も分かっていないため、
やはりまだまだ先は長そうだ。

「ミケコ、」

まだ少し足を引きずり気味などミケ子が別れを告げる。
こういう時、何といえばいいのだろうか。
それは分からないけれど、去っていくミケ子の背中を、名残惜しそうにずうっと見ていた。

//では自分も。お疲れ様でした <> メリー<><>2011/06/09(木) 02:08:15.93 ID:h8bpDc6P0<> >>688>>689

「またねー!なんだよー!ミケ子!」
手を降りながらミケ子を見送るメリー。

「じゃあ行くんだよー。アマツキ」

トテトテとアマツキがついてくるのを確認しながら田中家へ向かった。

……アマツキの被害にあったのは田中くんなのは言うまでもないが。

/二人ともお疲れ様でしたー <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 20:41:01.36 ID:WtYc9HBDO<> 山奥の人が滅多に入らなそうな場所で、何かをしている子供が一人。

「998、999、1000っ!!終わった!!」

どうやら剣の修行をしているらしく、調度終わったところだった。
身につけている甲冑を脱ぎ、ぺたんと座り込んだ。

「拙者、上手くなってるのでござろうか?」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 20:45:35.43 ID:eX2N0HxNo<> >>691
「熱心なのもいいけど、こーんなところうろうろしてると食べられちゃうわよ?」

派手な着物を着くずして、女言葉の男がふらりと木陰から現れた。
その片手には金色の宝珠を弄んでいる。

「甲冑つけて拙者ってことは、元は人間なのね?」

座り込んだ子供を覗き込みながら、男もしゃがみ込む。
ふわりと辺りに麝香が香った。 <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 20:51:52.15 ID:WtYc9HBDO<> >>692
「あっ・・・こんにちは・・・」

自分の仲間以外の妖怪に会うのは初めてな為か、緊張している少年。

「元・人間でござるよ。拙者、夷磨璃と申します。」

威厳さは全くなく、普通の子供とさほど変わらないだろう。だが、礼儀はしっかりとしていた。 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 20:59:19.45 ID:eX2N0HxNo<> >>693
「あたしは鹿南。ガンゴジって言う、悪い子供を食べる妖怪よ。
 あんたは良い親御さんに育てられたのね」

この子の親は、この子供が成仏せずここにいる事を知っているやら知らぬやら。
掌でぽんぽんと夷磨璃の柔らかな髪を撫でながら、鹿南は親の性ゆえの思いを馳せる。

「あんたは一人ぼっちなの?それともここで誰かを待ってたりするの?」

裏返された親としての立場で子供を見守る妖怪は、元・子供の妖怪にも興味を引かれたらしい。 <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 21:11:13.07 ID:WtYc9HBDO<> >>694
「鹿南殿と言うのでござるか。よろしくでござる!」

やはりまだ子供、撫でられることは大好きなようだった。

「・・・拙者、父上も母上も助けられなかった。何もせずに死んだ自分が悔しくて・・・。」
「だから僕、強くなりたい!!・・・あ、すまぬ・・・拙者・・・・・・」

礼儀は父上に教えて貰った。それを守るため、口調も武士のようにしていたのだろう。
だが、未熟故、直ぐに本心が出てしまうのだ。

「拙者は修行していたでござる。」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 21:19:42.33 ID:eX2N0HxNo<> >>695
「あたしの前では、僕、でも良いわよ。あたしは元人間でも無いし、身分も何も関係ないしね」

あたしの本性はこの通り獣だからね、と鹿南は大きな牡鹿の姿になった。

「助けられなかったっていうけど、その年齢じゃ本来なら助けてもらう側でいいのよ?」

この子供は強さを求めて迷っているのだろうか。
それなら、強くならねば成仏も出来まい。

「でもずっと一人で修行を頑張っていたのね、偉い偉い」

牡鹿の鼻先が夷磨璃の頭に寄せられた。 <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 21:31:31.93 ID:WtYc9HBDO<> >>696
「鹿南・・・さん。母上は病弱でいつも寝込んでいました。父上達も忙しくて、誰も僕を構ってくれなくて・・・・・・」

「だから、僕、しっかりしなきゃと思って・・・」

鹿南の変化に、わぁと目をぱちくりさせ、驚いていた。

「くすぐったいよぅ!今日は、澪さんがいないから一人なんだ。」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 21:39:06.63 ID:eX2N0HxNo<> >>697
「澪?」

この子の家族の名前だろうか。
両親が居なくとも夷磨璃が一人ぼっちでは無いらしいことに、鹿南は安心した。

「じゃあ、今日は一人でお留守番なのかしら?
 あたしの家は子供がいっぱい居るからね。どうもこういう子供はほっとけないのよ」

再び人の姿になると、ひょい、と夷磨璃を抱き上げようとする。 <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 21:46:55.22 ID:WtYc9HBDO<> >>698
「ひゃぅ・・・鹿南お姉ちゃん・・・・・・恥ずかしいよ。」

なんか勘違いしてるっ!その人、女じゃないよ!!

抱き抱えられたのはかなり久しぶりで、嬉しさと恥ずかしさが入り混じっていた。

「あ・・・の、お姉ちゃんの子供と仲良くなれるかな?僕、友達いない・・・から。」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 21:54:39.95 ID:eX2N0HxNo<> >>699
ん?お姉ちゃん?

「ははは、あたしは男よぉ、口調には突っ込まれる事多いけど」

夷磨璃を抱える鹿南の腕も胸板も声も、なにより顎の髭のざらつきも、
ちゃんとおっさんのそれである。
夷磨璃に赤い鞠を渡そうと、鹿南は腰の袋を探った。

「あたしの子供は女の子ばっかりよ。それでも良ければ何時でも遊びにおいで。
 ほら、この鞠をあげるわ。これを転がして後をついてゆけば、あたしの家に導いてくれるから」

丑三と違い妖怪であるならば、自分の足で鹿の屋敷に遊びに来れるだろう。
赤い鞠と一緒に金平糖も一包み、夷磨璃の手の中に置いてやる。
<> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 22:03:20.69 ID:WtYc9HBDO<> >>700
「え・・・?お兄ちゃん?す・・・いません・・・。」

ちょっと申し訳ないと思った。彼は気にしてなさそうだが、本人は軽く落ち込んだ。

「僕、甘い物は大好きなんだ!鞠はやったことないから、教えてください!!」

鞠と金平糖を貰うと、にこやかな表情で微笑んだ。
夷磨璃は金平糖を一粒掴み、そっと鹿南の口に入れてあげた。 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 22:12:13.71 ID:eX2N0HxNo<> >>701
「はは、気にしないで良いのよ。…うん?ありがと」

金平糖は、大人の舌にも優しく甘い。

「鞠の使い方は鞠に聞くのが一番よ。決まりは無いわ。
 それに、うちに遊びに来れば、娘達が遊びながら教えてくれるでしょう」

そうだ、夷磨璃に気を取られていたが、鹿南もこの謎の宝珠の力を試そうと思ってここへ来たのだ。
そっと夷磨璃を降ろして頭を一つ撫でてやり、鹿南は宝珠を取り出した。

「あたしもこいつに使い方を聞こうとしてたんだったわ」

山の神わいらと戦った平次郎狸の残した力であるが、しかしその由来は拾った鹿南には判らない。  <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 22:20:07.55 ID:ILxDPHiz0<> >>702
「鹿南お兄ちゃん、なんですか、それ?」

それが何なのか全く見当もつかないが一つだけ分かることがあった。
誰かの願いが込められた物、と言うこと。
勿論、その誰かが平次郎狸とは知る訳もない。

「どんな力が秘められているのでしょうね?」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 22:25:47.32 ID:eX2N0HxNo<> >>703
「さぁねぇ。あたしの角に取り付いてきて、芽吹いたり、簪の形をとったりしたのだけれど、
 きちんと妖力を与えたらどうなるかは、まだ試してみてないのよ」

鹿南は掌の宝玉にぐっと力を込めた。
しばらく何も変化がない、と思われて鹿南が力を抜いたその時。宝玉が成長した。

「おや、こういう形になったのかい」

鹿南の掌に載っていたのは一本の金扇。

「この物として使え、ってことなんだろうねぇ」 <> 夷磨璃<><>2011/06/09(木) 22:34:37.74 ID:ILxDPHiz0<> >>704
「奇麗ですねぇ。

この金扇から、何か温かい様な物が感じられます。」

きっと、その温かい物は平次郎の生き様なのだろう。
この少年ですら感じられるこの不思議な扇子は一体…。

一方、先程の修行をしていた近くの場所で。

「夷磨璃君〜。どこ〜。……いない。」

鹿南には聞こえただろうか? <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 22:39:30.91 ID:eX2N0HxNo<> >>705
「うーん、そうね。もしかしたら山神様の残したものかと思ったのだけど、
 これは山神様の気配とは全く違うわね」

実はほんの少しその期待をしていた鹿南だった。
ほう、と落胆の溜息を漏らした鹿の、鋭敏な聴覚が風に混じる呼び声を拾った。

「夷磨璃、誰かあなたを探してるわよ?お家の人じゃない?」

探しているのはさっきの澪、という者だろうか。 <> 夷磨璃&澪<><>2011/06/09(木) 22:50:58.11 ID:ILxDPHiz0<> 「山神様?やっぱり居るのかな、神様。」

もし会えることなら、一度くらいは会ってみたいと思った。
なぜなら、神ならなんでも願いを叶えてくれるかもしれないから。

ふと、そこに現れたのは左手が義手の青年。

「夷磨璃君、ここに居たのか……。向こうに甲冑が置きっぱだったから、探したんだよ。」

「ぼk…拙者がこの方と喋っていたからでござる。すまなかったでござるよ。」

「ところで、貴方はどちら様ですか…?」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 22:56:31.49 ID:eX2N0HxNo<> >>707
「あたしは鹿南、ガンゴジよ。貴方は澪ね?
 こんな小さい子が一人健気に鍛錬してたもんだから、つい話し込んじゃってね」

澪の手と同じく、この牡鹿は左目が無い。
だから義手だと見て取りはしても、話題には載せない。

「山神様はきっとどこかに居るわよ。眠ってはいても、山が山である限り必ず居るの」

夷磨璃の柔らかな髪を掌で撫でて、鹿南はそう答えた。 <> 夷磨璃&澪<><>2011/06/09(木) 23:12:58.50 ID:ILxDPHiz0<> >>708
「はい、澪です。(なんで知ってるんだろう?)

夷磨璃君は毎日練習してますよ、偉いですよね。」

なぜ名前を知られているかは聞きたくなかった。
もしかしたら、あの大量虐殺で知れ渡ったのかもしれないので。

「鹿南お兄ちゃんも会えると良いね、その山神様に。

もしも会えたら、僕に教えてください!」

「夷磨璃君、今、僕って言った?ござるもなかったよね…?」

「そ、それは…あの……」 <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 23:20:09.66 ID:eX2N0HxNo<> >>709
(夷磨璃には和まされっぱなしね)

しどろもどろな夷磨璃に、鹿南は可笑しそうに微笑んだ。

「そうね、もし会えたら、きっと知らせるわ」

この約束の果たせる時は、この少年の精一杯の背伸びが結果を出している頃だろうか。
今よりはきっと強くなっていることだろう。

「夷磨璃のお家の人がお迎えに来たから、あたしはそろそろ帰るわ。
 うちへ遊びに来るときは、澪にちゃんと断ってからお出でなさいね」

でないと今みたいに澪が探し回ってしまうから、と言い置いて、鹿南は金色の牡鹿の姿になる。 <> 夷磨璃&澪<><>2011/06/09(木) 23:29:04.61 ID:WtYc9HBDO<> >>710
「帰っちゃうの?・・・うん、きちんと伝えておくよ!」

「鹿南さん、夷磨璃君をよろしくお願いします。で、なんで拙者じゃないの?」

「ぁぅ・・・それは・・・・・・、あ、鹿南お兄ちゃん、また会いましょう!!」

愛くるしい笑顔を見せた、白髪の少年は澪と手を繋ぎ、帰って行った。

//絡みありがとうございました&お疲れ様でした! <> 鹿南<>sage<>2011/06/09(木) 23:33:26.41 ID:eX2N0HxNo<> >>711
手を振る少年に答えて角を振り一声鳴くと、牡鹿は木々の間に飛び込んだ。

(あの子が遊びに来たときに、あたしも娘に混じって子供の姿で
 迎えに出てみようかしら)

吃驚するであろう夷磨璃の表情を予想して、
楽しげに牡鹿は笑いながら森の中を跳ねていった。


//お疲れ様でした&ありがとうございましたー <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 21:16:12.30 ID:L7ixT+DF0<> 山奥で、修行をしている少年が一人。
彼は毎日、ここで鍛錬しているようだ。

長刀をぶんと振り、標的を切っている。
手先からは血が滲み出ているのが分かる。

「ふぅ、今日の練習はここまでにしようかな。」 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 21:21:06.51 ID:M8Xi1MbAO<> >>713
「おや?あなたも修行か?」

黒い着物の少女が話しかける。

「随分と熱心じゃないか。」

感心したようにまじまじと見つめる。
<> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 21:27:34.67 ID:L7ixT+DF0<> >>714
「わぁっ!!」

急に話しかけられた為か、大きな声で驚いてしまった。
振りかえれば、黒い着物のカッコいい少女が。

「拙者も修行でござるよ。

剣の使い方が分からない故…。」

甲冑を脱いで、気に掛けてある青い着物に着替えようとする。
<> 瞳<><>2011/06/10(金) 21:32:33.93 ID:M8Xi1MbAO<> >>715
「ああ、すまない。驚かせてしまったようだな。」

少し申し訳なさそうにする。

「剣か…刀だったら教えられるぞ。とは言っても、私の刀もまだ人に教えられる程のものではないが…」

<> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 21:37:45.63 ID:L7ixT+DF0<> >>716
「大丈夫でござるよ。

えっ?刀を教えてくれるでござるか?ありがとうでござるっ!!」

元気そうな少年は、瞳にニコッと笑った。
教えてくれると言うので、再び甲冑を着た。

「拙者は夷磨璃と申す。どうかよろしくでござる。」 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 21:49:10.90 ID:M8Xi1MbAO<> >>717
「あ、いや、私の剣術は我流でな。あなたの剣術を崩してしまう恐れもあるんだ。基礎も学んでいないし、型もめちゃくちゃなんだ。
そもそも、私自身が未熟だから…」

と言うが、夷磨璃のその笑顔を見て

(これは…断れないな。…少しくらいなら問題ないかな。)

「ま、まぁ、期待には答えられないかもしれないが…
あ、私は瞳だ。よろしくな、夷磨璃。」

と、笑顔で返した。 <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 21:59:01.86 ID:L7ixT+DF0<> 「瞳殿と言うのでござるか。

拙者自身の剣術はまだ形が成ってないでござる。

瞳殿に教えて頂き、拙者なりの剣術を身につけようとおもうでござるよ。」

夷磨璃は、背中に身に付けてある長刀を取りだした。
彼の身長は130p程だが、剣の刃だけで150cmはある。

「これが拙者の刀でござる。瞳殿の刀はどれでござろう?」

この少年、瞳が武器になるなんて思ってもない。
武器になった瞬間、彼は再び驚くだろう。 <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 21:59:50.68 ID:L7ixT+DF0<> /表記ミス。剣×
     刀○ <> 瞳<><>2011/06/10(金) 22:05:24.02 ID:M8Xi1MbAO<> >>719
「なるほど、じゃあ、あなたの参考になるようにしなくてはな。
おお、随分と大きい刀だな。」

この刀を生かした戦い方を考えようと、頭を捻る。

「私の刀というか、私自身が刀なんだ。九十九神って知ってるかな?私は、刀の九十九神なんだ。」

そう言って、右手を刀に変化させて見せた。 <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 22:14:14.10 ID:L7ixT+DF0<> >>721
「刀の九十九神でござるか?…えぇっ!?

瞳お姉ちゃん…どうなってるのコレ!?凄いよ、カッコいいよ!!」

余りに感動したあげく、口調が戻ってしまっている。
本人は気付いてないのだが。

「この刀、長さの割に軽いから、僕は扱いやすいんだけど…。

…あっ、また僕なんて…すいません//////」

かぁっと頬が赤くなり、恥ずかしがっている。 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 22:20:10.29 ID:M8Xi1MbAO<> >>722
「そ、そうか?そんなに誉められると照れるな…」

嬉しそうな表情で言う。

「やはり、良い刀なのか?
いやいや、気にしなくていいと思うぞ。その方が、年相応で似合っているよ。」

と、恥ずかしがっている夷磨璃に笑顔を向ける。 <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 22:27:53.79 ID:L7ixT+DF0<> >>723
「ぁぁ…///////

なら…普通に喋りたいと思います///////」

恥ずかしがってるのに、見つめられたら余計恥ずかしくなる。
色白の彼が、真っ赤になる瞬間だった。

「良い刀かどうかは分かりませんが、不思議な力を持っているんです。

少し前、雨の日に妖怪に襲われました。その時、この刀を振ったら、

水の様な斬撃が繰り出せたんです。なんででしょうね?」 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 22:35:35.10 ID:M8Xi1MbAO<> >>724
「好きな方で話せばいいさ。もし、話しにくかったりするのなら、無理はする必要はないしな。」

恥ずかしそうにする夷磨璃を気づかっているようだ。

「水のような斬撃か…
うーん、雨の日という所がポイントかな?もしくは、私のように何らかの退魔の力か…」

瞳なりに推理をめぐらす。 <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 22:44:59.43 ID:L7ixT+DF0<> 「天候によって変わるのかなぁ?

退魔って魔を退ける力ですよね?」

夷磨璃も、頑張って考えてみる。
しかしまだまだこの刀のことを知らないようだ。

「瞳お姉ちゃんなら、この武器をどのように使う?」 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 22:54:08.05 ID:M8Xi1MbAO<> >>726
「雨と水で何か関係があると思ってな。
ああ、そのとおりだ。私は退魔の力を持った妖刀でな、その刀もそういったものの類とも考えられるんだ。」

自分の考えを出してみた。確信的なことは出ていないようだ。

「私?うーん…私は武器を持ったことが無いからなぁ…
まぁ、まずは刀の事を調べるかな。本や誰か詳しい者に聞くとかな。
そういえば、その刀はどうやって入手したんだ?」

<> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 23:05:23.01 ID:L7ixT+DF0<> >>727
「妖刀ですか…。本当に凄いよ、お姉ちゃん。ししょーって呼ばせてくださいっ!!」

九十九神であることに、お姉ちゃんであることに、強いことに、
すべてを尊敬していた。
結果、ししょーと言う考えに辿りついた。

「この刀はね、鍛冶屋のお爺さんに作ってもらったんです。確か…どわーふ?って言ってたよ。

僕に作ってくれる時、二つの刀を見せてくれたんです。

一つは、持つと気分が上がって戦いたくなるような武器だった。

もう一つはこれ。持っていると優しい感覚に包まれたような感じになるんです。

そして、これを渡された時、こんなことを言ってました。

――この武器は、夷磨璃と共に成長して強くなる――と。」 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 23:18:41.98 ID:M8Xi1MbAO<> >>728
「良いけど、私はそんなにたいした存在じゃないぞ。まだまだ未熟な妖刀さ。」

少し戸惑い気味に言う。尊敬されたりするのは、慣れていないようだ。

「うーん…だとすると、その方に聞くのがいいのかもな。作った本人なら、作られた目的もわかるはずだしな。
共に強くなる、か…抽象的だな。そのヒントから考えるに、聞いたりせずに答えは夷磨璃自身が見つけるべきなのかもな。
ところで、夷磨璃は強くなりたいようだよな?どうして、強くなりたいと思ったんだ?」

修行の事、そして共に強くなるというヒント、何か気になるので聞いてみる。
<> 瞳<><>2011/06/10(金) 23:19:35.54 ID:M8Xi1MbAO<> >>728
「良いけど、私はそんなにたいした存在じゃないぞ。まだまだ未熟な妖刀さ。」

少し戸惑い気味に言う。尊敬されたりするのは、慣れていないようだ。

「うーん…だとすると、その方に聞くのがいいのかもな。作った本人なら、作られた目的もわかるはずだしな。
共に強くなる、か…抽象的だな。そのヒントから考えるに、聞いたりせずに答えは夷磨璃自身が見つけるべきなのかもな。
ところで、夷磨璃は強くなりたいようだよな?どうして、強くなりたいと思ったんだ?」

修行の事、そして共に強くなるというヒント、何か気になるので聞いてみる。
<> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 23:28:20.42 ID:L7ixT+DF0<> 「でもっ、僕にとっては立派なししょーだよっ!!」

未熟な妖刀、それを否定するように夷磨璃は首を振る。
例え何があろうと、この人は自分を分かってくれる気がしたのだ。

強くなりたい理由を聞かれ、表情が笑顔から少し悲しそうな表情に変わった。

「僕はね、とある武士の子供だったんだ。でもね、皆は忙しいし、
母上も病気だったから、いつも一人ぼっちだった。

ある時、敵が攻めて来たんだ。でも向こうが優勢で、僕も戦おうとした。
…でもね、駄目だった。直ぐに殺 されちゃった。父上も母上も守れなかったの。

それから、自分の弱さを憎見続けたら妖怪になれた。だから強くなろうとしたの。
目的は無いけど…ただ、強くなりたいんだ…。ししょーは分かってくれる?」

ぽろぽろと涙を零していた。
幼い彼には辛すぎる現実だったのだ。 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 23:38:10.36 ID:M8Xi1MbAO<> >>731
「あ…すまない。辛いことを聞いてしまったかな…?」

申し訳なさそうに謝る。

(だけど、同じだ…)

瞳の中で、夷磨璃が春花を守れなかった風月と、そして風月を守れなかった自分自身と重なった。

「わかる…わかるよ…」

つられてなのか、過去を思い出したからなのか、瞳は涙を流す。
夷磨璃の気持ちは痛いほどよくわかった。

「大丈夫、あなたなら必ず強くなれるよ。」

袖で涙を拭き、力強く言う。
<> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 23:41:51.50 ID:L7ixT+DF0<> >>732
「ありがとうございます、ししょー……!」

きっと彼女にも辛い過去があったのだろう。
なんとなくだが、夷磨璃にも感じ取ることは出来た。

「ししょー、これから先、僕と修行してくれませんか…?

迷惑はかけないようにするから…。」 <> 瞳<><>2011/06/10(金) 23:48:12.15 ID:M8Xi1MbAO<> >>733
「ああ、もちろんいいよ。
迷惑だなんてとんでもない!夷磨璃と修行して、私自身も強くなれると思っているからな。だから、一緒に強くなろうな!」

と、笑顔で語りかける。 <> 夷磨璃<><>2011/06/10(金) 23:53:01.87 ID:L7ixT+DF0<> >>734
「ししょー…!」

嬉しさが言葉を失わせた。
自分の前に現れた師匠、それは彼にとって大切な存在の一人となるだろう。

「僕は毎日修行します。どうかよろしくお願いします、ししょー!!」

ぺこりとお辞儀をすると、何処かへと走って行った。

//絡みお疲れさまでした!! <> 瞳<><>2011/06/11(土) 00:03:52.02 ID:1Rfv+owAO<> >>735
「私も毎日とはいかないが、できるだけ行くようにするよ。」

これから、何が起こるか分からないが、瞳にとっても大切な存在となるだろう。

「こちらこそ、よろしく。それじゃあ、またな。」

嬉しそうな表情で手を振って見送った。


/お疲れ様でしたー <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/11(土) 22:08:43.81 ID:P4OjtV1g0<> とある街中の商店街。
そこにひっそりとただずむ喫茶店。
少し古びた感じのする、その喫茶店は何処か昭和を感じさせる。
店の前には、『ノワール』と看板が立てられている。

フッと中を見ると、カウンター席があり、テーブル席がいくつかある。
店内にはクラッシクが流れていて、気分を落ち着かせる。

ただ今はお客さんがいない時間帯の為、店員は少し暇そうにしてる。

その店員たちも個性的だ。

病弱そうな青白い肌に、藍色の瞳で、長い銀髪の店員――雪女。

少し焼けた小麦色の肌に、ネコっぽい目の茶色の髪の店員――猫又。

黒髪を目元まで下げた、地味そうな店員――のっぺらぼう。

そしてカウンターの向こう側で、カップを洗ってる。長い黒髪に、細い目に眼鏡をかけたおしとやかそうな店長――田中 夜。

服は全員、Yシャツに黒いズボン。そして黒いエプロンをしている。 <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/11(土) 22:10:36.27 ID:K7+o4+Cio<> >>737
喫茶店の前に2人連れが現れた。
一人はスーツ姿の青年、いかにも仕事中の服装だが肩の力の抜けたその雰囲気や
遊び人風の表情はどう見ても「休憩中」のようである。
もう一人は酷く小柄な黒髪の少年。
中学生らしい学生服の黒ズボンに半袖シャツ姿、しかし両腕には包帯を厚く巻いている。

「あのねぇ坊ちゃん?一応言っとくが、あんたの舌にゃコーヒーはまだ早いと思うよ?」
『だから、坊ちゃんって言うな!ボクの機嫌を悪くしても、お前に良いことは何も無いぞ』
「はいはい、殿下。まずはその怪我が治ってから威張りましょーね」

この二人の間に一瞬本物の火花が散ったのは、気のせいじゃないかもしれない。
店に入る前に、青年は少年に人差し指を立てて最後の駄目押しをする。

「今日は美味しいもの目当てで来たんだよね?店ぶっ壊したら何も食えないって判ってる?
 良い子にしてないと、お兄さん何も注文してやんないよ?坊ちゃん注文の仕方知らないでしょ?」
『……。』

駄目押しされてぶすっと不機嫌にそっぽを向いた少年と対照的に、青年のほうは愛想のいい笑みを浮かべて
喫茶店に踏み込んだ。

(この香り♪)

店内に漂う焙煎香に、青年は機嫌よく目を細める。

「こんちわー。俺ら2名なんだけど、良い席ある?」

ウインクを一つ飛ばしながら、ナンパでもするかのように衣蛸の叡肖は店員に声をかけた。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/11(土) 22:25:19.65 ID:eHXvJPXg0<> >>737-738
『夷磨璃君、修行も大変でしょ?子供なんだしさ、たまにはゆっくりしようよ。』

「そうでござるね。ところで澪殿、それでどこに行くでござるか?」

『喫茶店だよ。…行ってみたかったんだぁ。』

ぽわぽわしている緑パーカーの青年と、青い着物の少年が手をつないで歩いていた。
今日は時間の合間を見て、休憩タイムをとるようだ。
扉を開けるとカラン、と音がなった。

『こんにちは。あの…空いてる席ありますか…?』 

「わぁ、奇麗な店でござるね。」

辺りを見渡すと、先客が。
夷磨璃は誰だか知らないが澪はよく知っている。
<> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/11(土) 22:37:56.42 ID:7TDDj0Mz0<> >>738>>739

カランコロン♪

雪・猫・の・夜「「「「いらっしゃいませ(♪)(にゃ〜〜)(……)(〜〜♪)」」」」
……あらビックリ。店長以外、みんな妖怪です。約一名隠す気ないだろ……

雪「二名様ですね。ではこちらのカウンター席でいかがでしょうか?ちょうどエアコンも近いですし、店長とも話やすいので」
ひんやりとした空気を纏いながらはつびー達に接客する雪女。コイツも隠す気ないだろう。

雪「おタバコは御吸いになりますか?」
一応、確認の為に聞く。

猫「二名さまかにゃ?カウンター席、テーブル席どちらも開いていますにゃ。おタバコは御吸いになりますかにゃ?」
の「……先輩…《にゃ》がついてますよ……まぁ、お客さんは気にしないと思いますが…」ボソボソッ澪たちに接客する猫又。隣でのっぺらぼうが注意する。


夜「あらあら〜〜。カワイイ子たちね〜〜ゆっくりしていってね〜」ノホホーン店長はカップをふきおわり、食器入れに置くと笑顔を四人に向ける。

夜「あら〜〜?ドア開けっ放しね〜」サッ
バタン。カランコロン♪
………何をした?
わかる人にはわかるが、袖からワイヤーを出し、ソレをドアノブにひっかけ閉めたのだ。
だが早過ぎるし、普通の人間が使う技でもない……人間だけど <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/11(土) 22:50:00.95 ID:K7+o4+Cio<> >>739-740
〔妖気〕

店に入るなり不機嫌そうだった少年の表情が変わる。
表情は驚いた様子のそれだが、眉間には皺が寄ったまま、紫濁の瞳が油断なく辺りに向けられる。
叡肖がその肩を軽く叩いた。

(こういう店もあるんだよ。俺らは客だ、警戒は要らない)

「タバコは吸わないよ、カウンター席?いいね、いつもとは気分が変わる」

店員に案内されてカウンター席に着き、叡肖がメニューを開いたその時。
新たな客が店に入ってきた。

 ガタッ

椅子を鳴らして荒々しく立ち上がったのは、巴津火だった。
澪を見据えて口が裂けそうな笑みを浮かべ、その掌に紫色の雷光が集まりはじめる。
それを抑えたのは叡肖だった。
澪をちらりとみて一瞬驚いたように眉を片方跳ね上げたが、巴津火の手首を押さえたまま囁く。

「だから店まで壊すなっつの。俺らは客、あっちも客。今は戦いっこ無し。判るな?
 俺がいる以上坊ちゃんには指一本触れさせやしないよ」
『…ふん』

叡肖の手は振り払ったが、巴津火は大人しく席に戻り、不機嫌そうに窓の向こうへ視線を投げた。
クロコや氷亜との戦いで負った傷がある以上、巴津火も積極的に戦う気はないのだ。
やれやれ扱いの大変な坊ちゃんだよ、といった風に叡肖は手を広げて、一瞬だけ澪に肩をすくめてみせた。
そして店長に向き直ると、注文に戻る。

「俺にはアイリッシュコーヒー、こっちの坊ちゃんにはミルクと軽い食事…なにか店のお勧めを頼む」
『ボクにもコーヒー』

注文する横から巴津火が不機嫌そうに口を挟む。妖怪だらけと判って勝手に振舞う事にしたらしい。
衣蛸はやれやれ、といった風に頷いた。

「坊ちゃんにもコーヒー一つ。ただしカフェオレでね」

メニューを戻して叡肖は店員にも目配せしながら、困った風に溜息をついて見せた。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/11(土) 22:59:38.33 ID:eHXvJPXg0<> >>740
『煙草は吸いません〜、カウンターの方でお願いします〜。』

余りにのんびりし過ぎている為か、不自然なことに気づいていない。
勿論、夜のワイヤー技も。

「澪殿、拙者、ここで何するかよく分からないでござるよ。」

『初めてだもんね。…僕もだけど。何か飲んだり、食べたりするんだよ。』

>>741
「そうでござるか。なるほど。」

『お勧めの甘い飲み物二つと、とびっきりに美味しい食べ物二つください〜。』

妖気に気づき、澪はふと客の方を見た。

『……………(巴津火!?黒蔵かな?でも謝らないと!!あぁ、でもどうしよう!!)』

顔を青くしてダラダラと冷や汗を垂らす澪。
とりあえず立ち上がり、巴津火の隣へと近寄った。

『あ…の……ごめんなさいっ!!』

そして、直ぐに自分の席へと戻った。 <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/11(土) 23:23:51.28 ID:NqORc/kQ0<> >>741>>742

雪「わかりましたー。ではこちらの席にどうぞ」
二人をカウンター席に案内し、メニューを二人の前に置く。

夜「お客さ〜ん。店内では暴れないでくださいね〜」ノホホーン
はつびーの態度にのんびりと微笑みながらいう店長。

夜「暴れたらこの服着せちゃいますよ〜〜♪」サッ
………………………おい。何処からフリフリの黒いゴスロリを取り出した?店長?というか客に何してる?

夜「アイリッシュコーヒーとカフェオレですね〜。軽い食事はホットサンドでいいでしょうか〜〜?」ニコニコ

猫「かしこまりましたにゃ〜。ではこちらの席にどうぞにゃ〜」
猫又はそう言いながら澪たちをはつびー達の隣のカウンター席に案内する。

夜「オススメね〜。じゃあ抹茶フロート二つとフワフワ卵のオムライス二つにする〜?」ニコニコ
のんびりとした口調で二人に言う。 <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/11(土) 23:26:18.90 ID:7kSXC96o0<> >>741>>742

雪「わかりましたー。ではこちらの席にどうぞ」
二人をカウンター席に案内し、メニューを二人の前に置く。

夜「お客さ〜ん。店内では暴れないでくださいね〜」ノホホーン
はつびーの態度にのんびりと微笑みながらいう店長。

夜「暴れたらこの服着せちゃいますよ〜〜♪」サッ
………………………おい。何処からフリフリの黒いゴスロリを取り出した?店長?というか客に何してる?

夜「アイリッシュコーヒーとカフェオレですね〜。軽い食事はホットサンドでいいでしょうか〜〜?」ニコニコ

猫「かしこまりましたにゃ〜。ではこちらの席にどうぞにゃ〜」
猫又はそう言いながら澪たちをはつびー達の隣のカウンター席に案内する。

夜「オススメね〜。じゃあ抹茶フロート二つとフワフワ卵のオムライス二つにする〜?」ニコニコ
のんびりとした口調で二人に言う。 <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/11(土) 23:35:01.06 ID:K7+o4+Cio<> >>742-743
『は?…ああ、まあ、いいぞ。許してやる』

一体何を謝られたのかは判っていないが、思いがけない澪の謝罪に驚いている様だ。
叡肖は、「ほらな、喧嘩は要らないだろ?」と毒気を抜かれた巴津火の肩を叩いた。
反対側の手は軽く上げて澪に挨拶する。

(おkおk、大丈夫だよそっちの蛇君。心配はいらない)

そして店長の取り出した服をみて、叡肖が吹き出した。

「ああ、ホットサンドに追加注文していいかな、プリン・ア・ラ・モード一つ坊ちゃんに追加で」

衣蛸は笑いすぎて涙を零している。

『何だそれ、美味いの?』

なぜ叡肖が笑い出したかよく判っていないが、巴津火も食べ物には期待しているようだ。
ちなみに席の並びは、澪たち二人、叡肖、巴津火の順である。
万一のことを考えて叡肖はその位置に席を取ったのだ。
<> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/11(土) 23:36:23.12 ID:K7+o4+Cio<> >>742-743
『は?…ああ、まあ、いいぞ。許してやる』

一体何を謝られたのかは判っていないが、思いがけない澪の謝罪に驚いている様だ。
叡肖は、「ほらな、喧嘩は要らないだろ?」と毒気を抜かれた巴津火の肩を叩いた。
反対側の手は軽く上げて澪に挨拶する。

(おkおk、大丈夫だよそっちの蛇君。心配はいらない)

そして店長の取り出した服をみて、叡肖が吹き出した。

「ああ、ホットサンドに追加注文していいかな、プリン・ア・ラ・モード一つ坊ちゃんに追加で」

衣蛸は笑いすぎて涙を零している。

『何だそれ、美味いの?』

なぜ叡肖が笑い出したかよく判っていないが、巴津火も食べ物には期待しているようだ。
ちなみに席の並びは、澪たち二人、叡肖、巴津火の順である。
万一のことを考えて叡肖はその位置に席を取ったのだ。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/11(土) 23:42:41.78 ID:eHXvJPXg0<> >>743
『お、お願いしますっ!』

「澪殿、さっきから冷や汗が凄いでござるよ?」

『え!?そ、そうかな、はははは…。』

かなり動揺している。
さっきのリラックスタイムはどこへ行ったのやら。

「店長殿、拙者、抹茶もオムライスも大好きでござる!

ありがとうでござるよ☆」

夷磨璃は店長が気に入ったらしく、純粋な笑顔で見つめていた。

>>744
澪は叡肖の隣へと腰掛けている。
とりあえず許してもらえたので安心し、再びリラックスタイム突入。

『ぇぇと、貴方は巴津火の…お父さんですか?』

んなわけあるか。
ただ、向こうのことは一切知らないのでしょうがない。 <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/11(土) 23:59:02.41 ID:NqORc/kQ0<> >>745

雪女とのっぺらぼうがカウンター内に入り、デザートと料理を作り始める。

夜「あらら〜♪どうしたのかしら〜?」ニコニコ
夜「こっちの方がいいかしら〜?」サッ
だから!そのネコミミメイド服は何処から取り出した!?

夜「かしこまりました〜」ノホホーン
夜「お待たせしました〜」ハヤッ
手慣れた手つきでアイリッシュコーヒーとカフェオレを作り、二人の前に置く。
珈琲の匂いが食欲を誘うようだ。カフェオレも子供が飲みやすいようにしてある。
砂糖とミルクは御自由にどうぞっと取りやすい位置においてあるだろう。


>>746

夜「カワイイわね〜。お姉ちゃん張り切って美味しいの作るわよ〜〜」ニコニコ
夜「そこのお兄さんもリラックスして〜〜」ニコニコ
のんびりとしながらも、夷磨璃きゅんに癒される店長。
ショタコンだったら飛び付きそうだが、残念ながらショタコンではない。変人であるが

夜「おまたせしました〜」
そして慣れた手つきで抹茶フロートを作り、二人の前に置く。

ご丁寧に抹茶フロートのソフトクリームが食べやすいようにスプーンも一緒に置く。



夜「みんなカワイイわね〜。お兄さん達もカッコイイね〜〜」
夜「お兄さん(叡肖)は執事服が似合いそうね〜。そっちのお兄さん(澪)は浴衣が似合いそうね〜。貴方たちは…」

の「……店長…悪い癖出てますよ…」
夜「ごめんなさいね〜。料理とデザートはちょっと待ってね〜〜」ニコニコ
店長が何処からか服をとりだすのを、のっぺらぼうが止めに入る。 <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/12(日) 00:07:01.40 ID:1iIvQUsNo<> >>747-748
澪の言葉に笑いを含んだ叡肖の目が一瞬、ぬらりと輝いた。

『馬鹿言うな!この蛸はボクの…』
「はじめまして、私は巴津火殿下の目付け役兼教育係の叡肖と申します」

巴津火の声を遮って、叡肖は澪に慇懃に挨拶して見せた。

「貴方のほうも、随分早くに出来たお子と見えますね」クスクス

澪の子というには夷磨璃は大きすぎるのを見越しての台詞だ。
普通なら兄弟と見るほうが自然なところを、あえてそう言う冷たい嫌味である。
髪を撫で付けた叡肖が細縁の眼鏡でもかけていたなら、ノワールの店長は大喜びするかもしれない。

そして湯気の立つカップが運ばれてきた。

『コーヒー』

カフェオレを一口飲んで巴津火が顔を顰める。

「だから坊ちゃんにはまだ早いと…。ほら、砂糖」

砂糖入れを巴津火のほうに押しやりながら、練乳たっぷり甘さマッ○スコーヒーで試させれば良かった、と
叡肖は思った。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/12(日) 00:19:25.78 ID:ZvVD9pAx0<> >>748
『「いただきます!」』

早速、頼んだ抹茶フロートを口へと運ぶ。
その口にとろけるような甘さと冷たいひんやり感に二人は満足している。

「このちょっぴり苦いところが堪らないでござるよ〜。」

頬っぺたを口で抑え、幸せそうな表情を見せる。
姉がショタコンだったら、多分抱きしめられている。

『浴衣ですかぁ…。今度来た時は浴衣で来てあげますよ。』

>>749
『へぇ、巴津火には凄い人が付いてるんだね。驚いたよ!
よろしくお願いします、叡肖さん。』

馴れ馴れしく二人に話しかける澪。

『やだなぁ、叡肖さん。僕の友達ですよ。』
「夷磨璃と申します。」

マイペース過ぎる澪は嫌味には聞こえなかったらしい。
冗談と受け止め、笑っていた。

<> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 00:30:11.48 ID:94D5QD0W0<> >>749>>750

夜「あらあら〜?カフェオレ美味しくなかった〜?カフェオレも立派なコーヒーなのに……」ショボーン
はつびーの反応に(´・ω・`)な顔でジーッと見つめてくるよ!なんか罪悪感がわきそうな程見つめてくるよ!!

夜「あらあら〜〜」ガタッ
浴衣を着てくるというのに反応し身を乗り出しそうになる店長。
残念!ショタコンではないが変人だ!

の「(美月さんが来てなくってよかった…いたら………酷いね…)」
溜息を掃きながら、のっぺらぼうはそう思った。

雪「お待たせしましたー。ホットサンドとプリンアラモードです」
はつびーの前に食欲をそそるような匂いをかもちだすホットサンドとプリンアラモードを置く。
どれも美味しそうだ。

猫「お待たせしましたにゃー♪フワフワ卵のオムライスになりますにゃー」
そして澪と夷磨璃の前にこれまた美味しそうオムライスを二つ置く。ケチャップでネコさんが描かれている。 <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/12(日) 00:37:53.20 ID:1iIvQUsNo<> >>750-751
『ふん、ボクのほうがずっと凄いんだ…あ、甘ければ平気だぞ』

巴津火は不満げにつぶやくも、ホットサンドが運ばれてきたのでそちらに注意が向いた。
ショボーンとした店長には砂糖を入れながら答えるが、機嫌を取るようなことはしないツンな巴津火。

「そうですか、友達の夷磨璃君ですか。
 ところで貴方とうちの坊ちゃんは知り合いのようですが、一体どういう経緯で?」

巴津火と同質の気配を持つ澪に、叡肖はカップを傾けながら探りを入れる。
コーヒーの温かさとまた別の熱さとが喉を滑り落ちてゆくのを味わいながら、衣蛸はこの場を
自分流に楽しむ事に決めていた。

巴津火は運ばれてきたホットサンドを平らげている。
それを横目で見て叡肖はカトラリーの中から新しくスプーンを一本取った。

先ほどメニューを見たときからこの蛸は企んでいたのだ。
運ばれてきたプリンを巴津火のほうへ押しやるふりをしながら、素早く黄色い一欠けらを掬い取ると
それを澪がオムライスに気を取られている間に澪の飲みかけの抹茶フロートにこっそり落とす。
黄色は緑の中に沈み込み、直ぐに見えなくなった。

片目を瞑りながらそっと人差し指を唇に当て、「秘密ね」と見ていた店員に目配せすることもぬかり無い。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/12(日) 00:59:25.79 ID:ZvVD9pAx0<> >>751
『でもほら、浴衣って…胸の部分が少し見えませんか…?少し恥ずかしいですよね//』

少し、ほんの少しだが、普通のシャツよりかは胸辺りの肌の露出度が高い。
夷磨璃の場合、引っ張れば上半身がはだk(ry

「わぁ、可愛いでござるね。頂きます〜。」もぐもぐ

ケチャップの効いたチキンライス、卵の焼き加減、可愛い猫さん。すべてにおいて満点である。

>>752
『え、巴津火って何者?』

教育係より凄いってことは…?何が凄いんだろう。

経緯を聞かれ、手が止まった。

『黒蔵が…鳴蛇だった時に初めて会ったんです。
それから紫狂のアジトで巴津火と会って…。
ま…まぁ、色々あったんですよ……。』

心を抉られた気がした。
そして、すべて読まれているような気がした。

話終えると、飲みかけの抹茶フロートを飲む。
………え?味が変わった気がする…。妙に甘い様な…。これ、プリンか?
不自然に思い、巴津火を見た。……多分こいつか? <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 01:06:10.07 ID:xjkDiP0B0<> >>752>>753

夜「それならよかった〜。偉いのね〜〜。凄いわね〜〜」ニコニコ
のんびりとした口調で、はつびーが自分は偉いんだ発言に普通に凄いわねと褒める店長だった。

夜「(あらあら〜〜♪)」ニコニコ
の「(食べ物は…粗末にしないでくださいね…)」
見ていた二人はそういう風に叡肖にアイコンタクトをとる。

夜「それがいいのよ〜〜♪」ニコニコ
澪に向かい、優しく微笑みながら言う。

の「(…っていうか…普通の店であんな会話していいの?…)」コソコソ
雪「(店長は気にしないからいいんじゃない?)」コソコソ
猫「(子供はカワイイにゃ〜。里の妹たちは元気かにゃ〜?)」コソコソ <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/12(日) 01:13:42.62 ID:1iIvQUsNo<> >>753-754
『これ美味い。お代わり』

ホットサンドの次にプリンに取り掛かった巴津火は、あっという間に平らげてお代わりを要求した。
卵の好きな蛇にとっては、プリンやオムライスは実に良いメニューなのだろう。
その様子に「してやったり」とほくそ笑みつつカップで笑いを隠す叡肖。

この昭和風味な店のメニューに乗っていた写真の中で、メロン、チェリーなどと一緒にプリンに添えて
盛られていた黄色……それは黄桃であった。
蛇の性、ろくに噛まずに飲み込んだ巴津火はその存在に気づきもしなかった。
そして澪は本物のヤマタノオロチである。
効果が現れるのは巴津火よりかなり遅れるだろうが、抹茶フロートに混入したほんの僅かの桃の汁でも、
邪気を祓う桃の効き目は強い蛇の妖怪ほど効果は大きくなるのだ。

「ほう、紫狂ですか。あれにはちょっと我々も手を焼きました。
 しかし見たところ、貴方は足を洗ったと見えますね。一体どうやって…?」

叡肖が澪に探りを入れていたその時。

 かしゃーん

お代わりを待っていた巴津火がカウンター上に崩れ、ついで椅子から転げ落ちた。
飲みかけのカフェオレがひっくり返り、カウンターから黒いズボンへと茶色の流れを作る。

「おや、どうしました殿下?服が汚れますよ?着替えなくてはね。
 もしもし、聞えます?……どうやら桃酔いしたらしい」

真っ赤な顔でふらふらしている巴津火はどう見ても酔っ払いである。
そしてその呂律の回らない巴津火を抱き起こし、頬をぺちぺち叩きながらニヤついている叡肖は、
どうみても確信犯(誤用)です本当にあ(ry。

「すみませんねぇ、店長さん。何か着替えを借りても良いでしょうか?」

実は衣蛸も酔いが入っている。それでも悪巧みできる程度に頭は回っているのだが。
アイリッシュコーヒーはウイスキーを入れるのだ。

(さて、あっちの蛇は何時効き目が出ますかねぇ) <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/12(日) 01:28:20.39 ID:ZvVD9pAx0<> >>754-755
桃が含まれているとは気付きもせず…。それを飲んでしまった。
少しづつ、効果が表れて来る…!!

『どうヤ…ッテって……ソレは……ハァハァ///////』

「れ、澪さん!?どうしたの!?」

体が熱い、やられたな―と思った。
立つこともままならなくなった澪は、叡肖に縺れかかった。

『叡肖…さ……ちょ…果実イレt………ゥァ…!!』

挙句の果てに床へと倒れこんでしまう。
効果は抜群だ!! <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 01:37:04.05 ID:ntu8aXFb0<> >>755>>756

雪「かしこまりましたー」
ニコリと雪女はプリンアラモードのお代わりを用意する。

の「!?」
猫「んにゃ!?お客様大丈夫かにゃ?」
慌ててのっぺらぼうと猫又が零れたカフェオレを拭き、怪我してないかどうかチェックする。

夜「あら〜?桃で酔っちゃったのね〜」
夜「は〜〜い♪」サッ
…………………店長!!!アンタも知ってたろ!!っていうくらいに《お姫様が着るようなピンクのフリフリドレス》を用意しやがった!!!

夜「あら〜?大丈夫〜?」ニコニコ
店長がカウンターから出て澪をお姫様抱っこしようとする。力はかなりあるぞこの店長……あれなんか少し息が荒いぞ?

雪・猫・の(((絶対確信犯だ……そして店長!!!!!)))
……店員たちの気持ちは一致したww

猫「……君はこっちに避難するにゃ。コレはサービスにゃ」
とりあえず猫又は夷磨璃きゅんを二人の魔の手から遠ざけさせる為に奥のカウンター席に移動させながら、チョコアイスを差し出す。

の「(本当に美月さんがいなくってよかった…)」
雪「(プリンアラモードどうしましょ……)」 <> 叡肖「」 巴津火『』<>sage<>2011/06/12(日) 01:45:47.28 ID:1iIvQUsNo<> >>756-757
(ほう、なかなか店員の連携が良い店ですね)

澪を運ぶ店長の後を、巴津火を抱きかかえた叡肖も付いてゆこうとする。
まさかこの場所で着替えさせるつもりでもあるまい、と読んでの行動である。
もちろんこの蛸には店主を止めるつもりは無い。

「そのプリンは夷磨璃君に食べさせてあげてください。
 桃酔いが覚めるまで時間がかかりそうなら、他にも何か俺の奢りで彼に食べさせてください」

親切で子供に優しい良い人の仮面を被って、悪巧みの主犯が雪女に頼む。
この女性に印象付けようという下心もあっての行動だ。

そしてもし美月さんが店に入ってきたら、面白い事にもなりそうである。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/12(日) 01:54:36.53 ID:ZvVD9pAx0<> >>757-758
「アイス……。ありがとうです。」

夷磨璃きゅん、口調戻ってる。
ここはお店の人に任せた方がいいと思い、成り行きのまま奥のカウンター席へ案内された。
澪が居なくなったことで、少し暗くなってしまっている夷磨璃。
美月さんのような方が励ましてくれるとありがたいのだが…。

一方で、お姫様抱っこされてる澪。
顔が真っ赤なのは勿論、軽くアへ顔で涎を垂らしている。
自分自身では何もできないので、すべては店長に掛かっている。
<> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 02:06:08.31 ID:ohZ390si0<> >>758>>759

澪を店内の奥にある個室(お客さん用)に運び、ソファーに寝かせる。

夜「さあ〜、御着替えしましょうね〜♪」
叡肖さんにさっきの《お姫様が着るようなピンクのフリフリドレス》を渡し、女装セット(化粧品など)を用意する。

そして……なんて事でしょう。
匠の技で澪は《和服美人の大和撫子》に女装されるだろう。カツラとメイクはバッチリです♪


一方、夷磨璃きゅんには

猫「そんな淋しそうな顔しないにゃ?お姉ちゃんが一緒にいてあげるからにゃ?」ナデナデ
猫又さんが代わりに隣に座り、夷磨璃きゅんの頭を優しくナデナデしてくれてる。まるでお姉ちゃんのように。

雪「はい。プリンアラモードもどうぞ」コトッ
猫「お姉ちゃんが食べさせてあげようかにゃ?」
雪「……奈々?頼むからコレ以上ボケを増やさないで…」はぁ…
の「………」
やったね!夷磨璃きゅん!ただいまハーレム状態だよ!!

猫又が若干危ないが…… <> 叡肖「」 巴津火→黒蔵『』<>sage<>2011/06/12(日) 02:12:43.20 ID:1iIvQUsNo<> >>759-760
全ての不幸は澪が叡肖の隣に座ってしまったことに始まる。
この蛸の隣の席は絶対に、夷磨璃にしておくべきだったのだ。

『……うぅ』
〔蛸やめろ、触るな、離せ、ちくしょう!〕

しかしこの蛸、ノリノリである。
そして意識だけはあるものの、今の巴津火には抵抗出来ないのだ。
ただ一つ、黒蔵と入れ替わることを除いては。

〔くっ、癪だが止むを得ん。お前が出ろ〕

着替えさせられ化粧筆で顔を撫でられながら、紫濁の瞳がとろんと眠そうな黒に変わる。
結局嫌な事は全部、黒蔵に押し付ける巴津火だった。

〔うーーー、身体が熱い。頭がふわふわする。何これ?叡肖さんどうしたの?
 凄い楽しそうな顔なんだけど〕

黒蔵が状況把握するまで、あと1分30秒。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/12(日) 02:21:43.83 ID:ZvVD9pAx0<> >>760-761
本人はこれを見てなんと言うだろうか?
意識既になし、写真を取って、後で見せてあげよう。

中の人的には美味しかったです♪

「や…あの髪は…//////」

柔らかな白髪が撫でられ、とても照れている。
なぜ自分がこうなったのか理解してません。

「あの…こんなに一杯……食べれない…。」

次から次へと出て来る料理を前に、若干涙目になっていた。
(ししょー、助けて…) <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 02:28:13.22 ID:DbJBalJm0<> >>761>>762

田中姉…自分の力作に満足しています。
あっ!パシャパシャと二人の写真とったよ。


猫「あ…ごめんにゃ」ションボリ
雪「まあ、しょうがないわね。食べれない分は私たちが食べるから」
の「…迷惑かけて…ごめんね…」
別に悪気があった訳じゃないが、夷磨璃が困ってるので反省する三人。
……とばっちりだね <> 叡肖「」 黒蔵『』<>sage<>2011/06/12(日) 02:34:50.01 ID:1iIvQUsNo<> >>762-763
中身が黒蔵に入れ替わり、叡肖の方もより遠慮が無くなる。
ひとくくりに結んであった後ろ髪は解かれ、それらしく髪型も整えられてゆく。

『……うひあっ』
〔首は触んないでぇぇ!〕

嫌な場所を触られた一瞬の覚醒で自分の状況を把握したものの、黒蔵に何が出来るわけでもなく
写真撮影は終了してしまった。
店主は出来栄えに満足げであるが、上機嫌な衣蛸にも頼めば衣装くらい着てもらえたかもしれない。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/12(日) 02:41:16.27 ID:ZvVD9pAx0<> >>763
「ぅぅ…ごめんなさい……」

なんか謝られてしまって、こちらにも罪悪感が沸いて来る。
結局、謝ることしか手段の無い夷磨璃は黙り込んでしまった。

>>764
『(あれ…巴津火の妖気が…変わった?)』

ちょっぴり意識は戻ったが、まだ動けずに寝かされている。
そして、再び意識を手放した。 <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 02:46:58.67 ID:ntu8aXFb0<> >>764>>765

夜「あらあら〜♪カワイイわね〜」ニコニコ
夜「さ〜て、じゃあ戻りますか〜♪」
再び、澪を抱っこし叡肖に戻るように言う。

猫「んにゃ。そっちが謝る事ないにゃ。気にするにゃ」
安心させるように微笑む。

雪「そうそう。子供は笑顔が1番なんだから」

の「……店長戻ってきた……そして予想通り…」ハァ…
そして頭を抱えるのっぺらぼうだった。 <> 叡肖「」 黒蔵『』<>sage<>2011/06/12(日) 02:54:21.35 ID:1iIvQUsNo<> >>765-766
「これはまた、いい化けっぷりで。…おっと、落ちたか」

叡肖は意識を失った澪を冷笑しつつ見つめていた。
これはさっき澪に巴津火のお父さん呼ばわりされた意趣返しである。
面白いことの為なら主も手玉に取り、竜宮に辞表を叩き付けることすら吝かではないのだ。

店主の見込んだとおり、執事服はこの蛸に似合うだろう。
悪魔の魚、デビルフィッシュ。
この頭足類は、そう呼ばれるに相応しかった。

「また面白いことがあったら、一枚噛ませて貰いたい物ですね」

店主の気の済むまでコスプレ撮影に使われた黒蔵は、その後叡肖の呼んだタクシーで帰ることとなる。

//ではここらで落ちます。 <> 夷磨璃&澪<><>2011/06/12(日) 03:00:46.96 ID:49uJBkjDO<> >>766-767
「・・・・あれ?澪さんは?」

戻ってきたはいいが、彼が見当たらず、変わりに綺麗な女性がいた。

この女性が澪だということに、そして本人が目覚めるのにどれくらいの時間を必要とするだろうか?

まぁ、そのうちに目覚め去って行くだろう。楽しいリラックスタイムが幕を閉じた

//この辺で終わりですね。絡みありがとうございました!! <> 喫茶店《ノワール》<><>2011/06/12(日) 03:06:43.92 ID:unRabhsy0<> >>767>>768

夜「あらあら〜♪いいですよ〜♪」ニコニコ
のんびりとしながらも《魔王》は《悪魔》に言った。

猫「にゃ…多分その人がそうにゃ…」

二人が起きたらお詫びとこの喫茶店の《コーヒー無料券》と《お好きな料理一品無料券》をくれるだろう。


/お疲れ様でしたー
/おやすみなさい <> 宇佐田満月<><>2011/06/12(日) 21:52:22.71 ID:vqOwsMPDO<> 少し山から離れた所の、ビルが建ち並ぶ街中
少し裏通りに入ればネオン輝く歓楽街、ここは打って変わって少し静かな表通り
道行く人々も少なくなってきた夜の街を、目立つ白色の服が歩いている

「ここら辺で一番高い所から跳んだら行けるかな…?」

夜空…月を見上げて歩くその青年の頭には、ゆらゆらと白い大きな兎の耳が揺れている
傍から見れば変わり者にしか見えないその青年は、頭を真っ直ぐ上に向けて前方不注意極まりない歩き方で歩いていた <> 叡肖<>sage<>2011/06/12(日) 21:57:36.34 ID:1iIvQUsNo<> >>770
閉店間際の書店から出てきた人に化けた衣蛸は、目立つ姿に目を留めた。

「ん?なんだありゃ、バニーボーイの酔っ払いか?」

あの格好のお姉ちゃんなら時折その手の店にいる。その男版だろうか?
しかしあの男兎は何をするつもりかと、その危なっかしい姿をしばし後ろから見守る叡肖だった。

<> 夜行集団<><>2011/06/12(日) 22:02:27.42 ID:bXYzYS7O0<> >>770
叡肖がいて、宇佐田の歩く通りから少し離れた曲がり角から、普通の人間には気づかないような紫の靄が。
その発生源たる男がぬっとそこから出てくるが、徐々にその肉も皮も無い白骨だった体が、
彼らの目につく所に来た時にはいつもの、銀髪のあのホストの姿があった。

しばらくすると目の前にいる叡肖に気づく。
その今まで完全に精神が闇に沈んでいた顔が、叡肖との対面で色気づく。

「あっ!!この前のタコヤローじゃねえかっていう!!」 <> 宇佐田満月<><>2011/06/12(日) 22:10:17.04 ID:vqOwsMPDO<> >>771>>772
ふらふらと歩いていた足がピタッと止まり、ゆらゆらと揺れていた耳がピクッと跳ねる
上げたままの顔をギギギ…とゆっくり動かし、出て来た男に向ける

「だ れ が タ コ ヤ ロ ー だ ぁ …?」

赤い目をギラギラ光らせ振り向いた先にいる男二人を睨みつける
体も振り向き、手の間接を鳴らしながら足首を回す

「おい、今どっちが言った?言わなかったら両方蹴っ飛ばす」

どうやら彼は酷い勘違いをしているようである <> 叡肖<>sage<>2011/06/12(日) 22:14:31.92 ID:1iIvQUsNo<> >>772
「やあ、元気そうで何より。
 その様子だと俺の持って行った薬は効いたようだね。良かった良かった」

夜行集団と波旬との戦いの後、巴津火を竜宮で目通りさせる直線に、
蟹の手紙に頼まれて大量の薬を夜行集団の元に持参して行ったのは叡肖自身である。

今、狂骨へと返したその不穏な笑みは、「あ?恩人に向かってタコヤローだと?」と言外に示していた。

>>773
「そりゃもちろんコイツが行ったのさ」

すかさず銀髪のホストを指してみせる叡肖の手は、吸盤の付いた蛸の触腕。
蛸が自分をタコヤローと言うわけは無いのだ、と見た目でもわかり易い。

(なかなか威勢のいいバニーボーイだな)

面白くなりそうな展開に、叡肖は内心わくわくしている。 <> 虚冥<><>2011/06/12(日) 22:19:28.37 ID:bXYzYS7O0<> >>773
半ば怒気を混じらせながら大声で叡肖に吠えた虚冥であったが、
それに虚冥よりも怒気のある大反応を示した宇佐田に、見ず知らずの者に話しかけられてことも相まって、
完全に先ほどの勢いが失せ、面食らっている。

「お前じゃねえよ!!
 お前はただの○ーターラビットじゃねえかよwwwwww」

「じゃあお前の頭のそれはなんだよwwwwwwお馬鹿さんかwwwwww」

しかしそこは虚冥である。
相手が喧嘩腰にも関係なく、ただひたすら逆鱗にローキックするような事など言ってしまう。

>>774
「お、おう・・・・。
 あ・・・ありがとう、な」

以前の仁王となった虚冥の件など露知らずな態度の叡肖に、
こちらの方でも面食らい、若干顔が赤くなりながら目そらして礼を言った。

<> 宇佐田満月<><>2011/06/12(日) 22:30:21.26 ID:vqOwsMPDO<> >>774
「本当だな?嘘だったら死んでも蹴るぞ?」

怒りをふんだんに塗した声色で叡肖を睨み、釘を刺す
兎の耳が生えた青年がいくら凄もうと、耳のせいで帳消しになってしまう気がするがそんなことは産まれてこの方考えた事が無い

>>775
「よーし解った、てめーは一億回蹴る、土に体が埋まるまで蹴る」

どうやら逆鱗にきっちりクリーンヒットしたようで、というかそれどころじゃ済まないくらいに青筋をビキビキ浮かばせている

「喰らえやゴルァ!!」

相手の返答を待つ事無く、ジャンプで飛び込み右足で跳び回し蹴りを放った <> 叡肖<>sage<>2011/06/12(日) 22:35:36.34 ID:1iIvQUsNo<> >>775-776
(おや?意外な反応だな。やっぱ面白可愛いなぁこの元人間)

虚冥が聞いたら大声で罵倒しつつ逃げ出しそうな事を思いながら、衣蛸はその笑いをさっきまでよりも
悪戯っぽいものに変えた。

「氷亜殿にはこちらも恩があるからな。彼の身内になら竜宮も出来る事はするさ」

そして兎と骨の応酬を横目で見ながら、蛸はそっと考える。

(案外こいつらは、似ている気がする)

喧嘩っ早さもだが、案外わかり易い竹を割ったような部分は叡肖には無いものだ。
この二人は拳で殴り合って理解するタイプ、かも知れない。

「一応俺も薬は持ってるが、派手な怪我はするなよお前ら〜?」

触腕を振りつつ声援だけ送って、衣蛸は観客ポジションについた。
そして二人の周りの地面に筆で大きく輪を書いて、この街中に人払いの結界を張る。

「人間の邪魔は入らないようにしとくぜ、存分にやりな」

蛸の張った結界は、二人が派手なことをやるには十分な広さがある。 <> 虚冥<><>2011/06/12(日) 22:46:16.75 ID:bXYzYS7O0<> >>776
自分の予想通りに言い反応をした宇佐田ににやにやした笑いを浮かべ、
いつ相手が突っ込んできても良いように戦闘態勢ではないが、
ただひたすら回避出来るような回避体勢になった。
しかし。

「ちょwwwwww早いwwwwww」

自分の予想のかなりの範囲外のスピードでやってきた宇佐田に軽く戦慄する。
笑ってはいるが結構冷や汗ものである。

「お前カルシウム足りてねえだろwwwwwwニンジンの前に牛乳の飲め牛乳wwwwww」

そしてそれでも彼の蹴りを紙一重で避けてから、
懐から取り出した500mlばかりの牛乳パックをその方向に投げつける。
もし宇佐田が反射的にそれを蹴ろうものなら、あの美味しくとも零すと臭う、
あの白濁の液体が彼に降り注ぐだろう。

>>777
今の叡肖の心の声など露知らず、ただ紳士的な対応の彼に虚冥は目を丸くしている。
驚いているのだ。あの時はあんな奴だったのに、と。
しかし宇佐田の攻撃もあるのでずっと見ているのにいかず、彼の攻撃の応酬に対応するため、
目をそらした。

すると後ろから聞こえてきた太っ腹な声掛け。
もうそのときすでに虚冥の中でも虚冥の印象は変化していた。

「おお!!サンキューな!!
 お前蛸ヤローじゃなくて良い蛸野郎だなっていうwwwwww」

確かに蛸も野郎も、野郎の方は男と言う意味では悪口ではないのだが、
どう聞いても違いがあまり見られない。
しかし虚冥にとってはかなりの変化の事、ニュアンスは大事なのだそうだ。 <> 宇佐田満月<><>2011/06/12(日) 22:58:50.43 ID:vqOwsMPDO<> >>777>>778
「るっせええええ!!かわすんじゃねえよおお!!」

とてもとても理不尽な事を叫びながら、かわされた状態を立て直す
すると何かが飛んできたのが見えたので、すかさず左足を上げ―――

「―――あめぇよ!!」

それを蹴り上げる
と同時に、ドパンとそれは破裂して当たりに撒き散らされる白濁液
これがもし、彼が彼女≠セったら随分といい風景となっただろう、しかしそんな事はifの話
破裂した牛乳は服を汚す所か見開かれた目に入る、途端に彼の目は真っ白になった

「ぐああああああああ!!!目があああああ!目があああああああ!!!」

ゴロゴロと両目を抑えて地面を転がるウサ耳男、一般人が見たとしたらどういう状況か理解に苦しむレベルだろう
<> 叡肖<>sage<>2011/06/12(日) 23:06:49.78 ID:1iIvQUsNo<> >>778-779
虚冥も驚くあの時のあんな奴と今のこんな奴が、実質同じである事は間違いない。
一見表面は紳士的でもその実、腹の中は墨色一色なのは変らないのである。
そして虚冥の投げた牛乳パックに、少々衣蛸は驚いた。

「この季節に乳製品を 懐 に入れて持ちあるくだと?!」

しかし思い返せば、狂骨である虚冥に下すような腸は無いのだ。
真夏日であっても他の人が飲むので無い限り心配は要らない。多分。
そして良い蛸ヤロー、のニュアンスを汲み取った叡肖は虚冥への返礼に片手をあげた。

「ここはドクターストップ、でいいのか?」

蛸は胸ポケットから清潔なハンカチを取り出し、地面を転がる兎に声をかける。
実に紳士的だ。

「ほれ、ハンカチはいるか?」

しかしハンカチの色は敗北の白である。 <> 虚冥<><>2011/06/12(日) 23:15:05.76 ID:bXYzYS7O0<> >>799
「まんまと馬鹿がwwwwww」

適当にやった奇襲がいとも簡単に、
しかもトップクラスナイスリアクションに笑い転げる。

>>780

「馬鹿か買ったばかりだよてっていうwwwwww」

蛸の心配余所に笑う虚冥。
一応だめなもの食べたらお腹が破壊されます。

「おお、おれの大勝利だっていうwwwwww」 <> 宇佐田満月<><>2011/06/12(日) 23:27:36.96 ID:vqOwsMPDO<> >>780
「ぬあああああああ!!地獄に仏ええええ!!!」

叡肖の手からハンカチを受けと…奪い取ると、ごしごしと顔を拭く
ハンカチが後でかなりの臭いを放つのは誰にも想像出来る事であろう

>>781
「馬鹿じゃねえボケっ!!」

なんとか視界を回復させて立ち上がると、あろうことか人から借りたハンカチを投げ付けた

「そして俺は負けてもいねえ!この馬鹿!馬鹿って言う方が馬鹿だ馬鹿!!」

やいのやいのと騒がしく捲し立てる
大分頭の弱さを露呈している言動だ <> 叡肖<>sage<>2011/06/12(日) 23:34:23.18 ID:1iIvQUsNo<> >>781-782
「落ち着けバニーボーイ、そのハンカチはくれてやる。直ぐカッとなると次も負けるぞ?」

その笑みからして、蛸に第二ラウンドを止める気はないようだ。
そして爆笑している虚冥には、

「いくら買ったばかりでも、懐に入れて持ち歩くのは色々問題があるだろう」

そんなところに牛乳を入れておいて、うっかりパッケージが破損して零れたら面白い事になる。
虚冥のポケットの内側に蛸が「入れたら腐る」の落書きをしたら、きっと困るだろう。
この蛸ならやりかねないのだ。
<> 虚冥<><>2011/06/12(日) 23:51:56.56 ID:bXYzYS7O0<> >>782
「お前どんなほどの馬鹿だよwwwwww
 辞書で馬鹿の項目あったら間違い無くお前ピットインしてるぞっていうwwwwww」

宇佐田の投げたハンカチをさらっと受け取りながら、
懐からまた違う種類の牛乳を取り出した。

「しかも何処の馬の骨だか知らん奴に馬鹿呼ばわりされたくねえよwwwwww
 あ、でもお前兎かwwwwwwスマンスマンwwwwww
 でもお前馬鹿だから馬なのか鹿なのか兎なのかわかんねえよっていうwwwwww」

と混乱させるような事を言いながら、
今度は投げたりせずにストローをそれに突き刺して飲み始めた。
単純に自分用らしい。

>>783
「お前、俺の乳製品好きみくびんなよ?っていうwwwwww
 これ見ろ!!」

ばっ、とスーツを開いたそこに見えるのは、
裏ポケットが改造され、一リットルパックでも入れれるようになっている裏地であった。

しかもそこにはねつ○まシートも完備で、夏の炎天下でも万全な仕込である。 <> 宇佐田満月<><>2011/06/13(月) 00:02:40.79 ID:vh1T7UBDO<> >>783
「うるせー!俺は負けちゃいねー!!こんな奴に負ける訳がねー!!」

ビシッとこんな奴=虚冥に指差し叡肖を怒鳴る、人に指差しちゃいけません

「あとハンカチありがと!!投げたけど!!」

怒ってても礼は忘れない、根はいいやつ?

>>784
「うるせー!馬鹿馬鹿言ってんじゃねえ馬ぁぁ鹿!!!あとかわすな!!」

「笑いながらよくわからない事言ってんじゃねえええええ!!!!」

理不尽な事を言ったり理解出来ずに怒ったり、とにかく騒がしい
と思ったらダンダン!と助走して、真っ直ぐ仮面なんちゃらのような飛び蹴りを放った <> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 00:06:47.85 ID:kFTOcp4Ao<> >>784
「いやお前、そんなもん見せられたらお前こそ牛乳馬鹿って言われても言い返せないだろ」

ね○さまシート@小林製薬は飲料を冷やすに向いていない。きっと、パ○チクールのほうが向いている。
と内心突っ込みながら、あえて言わない衣蛸。
なぜなら黙っておいたほうがきっと、これからの季節に面白いことになるからだ。

>>785
衣蛸は傷薬なら持っているけれど、馬鹿につける薬は持っていない。
さっそくの第2ラウンド、のようである。

「…やっぱお前ら似てるわ」

ありがとう、は忘れないが、喧嘩の前にちょっと考えるのは出来ないらしい兎に、
衣蛸は牛乳飲んでる途中に蹴り喰らうのってきついよなーなどと考えながらそう呟いた。 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 00:19:29.86 ID:L7kCauFN0<> >>785
できれば喋ってるうちに混乱してたら面白かったのに、
宇佐田の必死な叫び声に馬耳東風しながら考えていた。
彼が走り出す。しかし虚冥の方は未だに牛乳をストローで堪能しているので、
直情的な彼からすれば、とてつもないチャンスに思えるだろう。

「ところでな。
 俺、牛乳好きじゃん?美味いし、カルシウムもあるっていう黄金の飲み物じゃん?
 いや、白いけど。」

しかし最初は早さに驚き、かわす事くらいしか目立った事は出来なかったが、
今は相手が頭に血が上り、攻撃が直線的なために、
さらっとよけた後にもう一つアクションを咥える事が出来た。

「後、食べ物で遊ぶなって言うじゃん?
 でもさ、牛乳の場合は溢してこそ発揮する底力ってあると思うんだっていう」

それは簡単な事。
ただ単に突っ込んでくる彼の目の前に飲んでいるパックを、ちょうど直線状においておくだけ。
しかし其の事によって、彼が回避できなければまた、あの白濁の再来である。

>>786
「牛乳馬鹿は良いんだよwwwwww牛乳馬鹿はwwwwww」

冷蔵保存の欠陥には全く気付いていない虚冥。
だがそれの腐臭の花が咲くのは夏。
高校球児が汗を流す中、彼はポケットで牛乳を腐らせるのであろう。

「だってそんなこと言ったらwwwwww
 牛乳作ってる農家の人だって牛乳馬鹿じゃねえかっていうwwwwww」

そしてこれからおこるバイオハザードには全く気付かないで、
あきらかに農場の人に失礼極まりない言動をほざく牛乳馬鹿であった。 <> 宇佐田満月<><>2011/06/13(月) 00:27:09.30 ID:vh1T7UBDO<> >>786>>787
「ぬぁお―――」

そして世界は―――白に染まる―――
正確には、彼だけが

「」

何処からか仏壇のアレのSEが聞こえてきそうな位に見事に、白濁に塗れて地面に倒れ伏すうさ耳男の姿があった
二度牛乳に塗れたその体からは、既に異臭が漂っている気がしないでもない

「ぬ…ぐ…まだ……まだあ…」
「こんな所で…こん…な…ところ…で……俺…は……負けるわ…け…には…」
「俺は……お…れは……」

大分ダメージをくらい満身創痍に見えるが、やられた事は牛乳をかけられただけである、しかも全て自滅
<> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 00:33:47.41 ID:kFTOcp4Ao<> >>787
某ゲームの世界なら腐った牛乳も持ち運ぶうちにヨーグルトになったりしたのだが。
高校球児駆ける夏、虚冥の腸も下り最速を記録するのだろうか。

「ああ?零したミルクに涙を零すなってか?」

何となく次に起こる事は予測できた。
衣蛸はジャケットを脱いで触腕を2本だす。同時に筆も2本出した。
さっき書店で手に入れたこの紙袋の中身は、白い飛沫から守らねばならないのだ。

>>788
しかし、蛸の予測に反して白く染まったのは兎だけであった。

「おい、まだ勝ち負けに拘るのか?もういっぺん、自分の本来の目的考えてみろ?」

本当に喧嘩をしたかったのか、何故最初に怒ったのか、どうして意固地に勝ちに拘るのか。
おそらくこの兎は目の前のことしか見えず、全体の把握は出来ない性質なのだろうと思った蛸は、
原点を振り返るよう薦めてみた。 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 00:39:42.19 ID:L7kCauFN0<> >>788、>>789
「愚痴も零すなってことだっていう。」

「てか兎、おまえ牛乳に買ってどうするんだよ」

そろそろ牛乳の本領が発揮されそうなため、マスクをしてから虚冥は手短に突っ込んだ。
ついでにこのマスクは汚臭腐臭99,99%カットの代物である。
そしていくら言いがかりで殴りかかられたにしても牛乳ニ連発はやりすぎたかな、
と宇佐田の隣にしゃがみこんでから少し反省した虚冥。

「大丈夫か〜っていう。
 いやもう牛乳にまみれた時点でもう色々終わってるけど。」

ストローの先端で宇佐田の顔をつつきながら安否の確認である。
これでも彼なりの情けなのだろう。 <> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 00:44:24.36 ID:kFTOcp4Ao<> >>789-790
「あっちの先に、確か公園があったな。あそこの水道は使えるんじゃないか?」

紙袋の中身が無事なのでそれほど機嫌が悪くならなかった衣蛸が道の先を示した。
遊具2つの小さな児童公園だが、ペリカン型の水道がそこに確かあったはずだ。
顔を洗うならそこだろう。
流石に身体を洗うにはまだ水は冷たいかもしれない。

「おい、バニーボーイ、公園まで歩けそうか?」

歩けなかったら転がしていこうか、とか蛸は考えていた。 <> 宇佐田満月<><>2011/06/13(月) 00:51:22.79 ID:vh1T7UBDO<> >>789>>790
「うぐ…俺は…俺…は……」
「……はっ!?」

叡肖の一言で脳内をようやく整理、ビビッと頭に電気が走りピースがぴったりと当て嵌まる
そうだ、自分はこんな事をしたかったんじゃない、自分が本当にしたかった事は…

「月!!」
「月に行く為に高い所を探してたんだ!!」

ガバッと元気よく立ち上がり(そんな元気があったのかと言う突っ込みは野暮とする)、思い出したかのように月を見上げる

「てめーら見たいな奴らに構ってる暇なんてねーんだよ!俺は忙しいんだ!!」

元より自分から始めたのだがそんな事は当然忘れていて、虚冥と叡肖の二人を叱り付ける

「そうだそうだ!思い出した!俺は月に行くんだ!!」
「いよっしゃあああああ!!!いくぜええええ!!!」

猪突猛進、この言葉がこれ程似合う兎がいただろうか
本来の目的を思い出してすぐさまそれを始めようとする
まずは高い所を探し走り出した、体中から臭う牛乳臭を撒き散らしながら <> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 00:54:57.28 ID:kFTOcp4Ao<> >>792
「……おさわがせしております、って言葉はああいう奴のためにあるんだなきっと」

走ってゆく兎男の後姿をしばし見送り、ぽつりと蛸は呟いた。

(子守からしばし開放されたと思えば、これか)

衣蛸は人払いの結界を解き、ジャケットを羽織る。

「もうちょっと派手にやるかと思ったんだけどな」 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 00:55:42.91 ID:L7kCauFN0<> >>791
自分が宇佐田にブービートラップを仕掛けたときも、
あの時、牛乳が叡肖の方にかからなかった時も、
大事そうに持っていたあの本。そんな叡肖の行動に目ざとくも気付いていた虚冥。
こんなよく分からない奴が買う本なので、とてもその内容が気になったらしく、
唐突に質問を繰り出した。

「ところでお前、
 なんのエロ本買ったんだ?wwwwww」

外堀を埋める行為もせずド直球に。

>>792
「月っていう?」

突然フル稼動になった宇佐田のテンションに着いて行けず、オウム返しをしてしまう。
そしてその後もただひたすらハイテンションな彼を、ぽかんとしながら見つめるだけであった。

「うわぁー・・・怖い怖い怖いっていう!!」

しかし流石にこの異様さには恐怖は感じずにはいられなかった。 <> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 01:01:02.44 ID:kFTOcp4Ao<> >>794
「おお?察しが良いなwwお前も見るか?」

お察しの通り、金髪美人のグラビアが載ったエロ本だった。
蛸はニヤッと笑いながら一冊を虚冥に差し出した。
好みの傾向から見て、ラビットヘッドがマークの某雑誌が休刊中なのは
蛸にはきっと悔しいことだろう。 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 01:09:10.41 ID:L7kCauFN0<> >>795
「いやいやそこは違うっていう流れだろうがwwwwwwこのエロ蛸wwwwww」

外堀とかいろいろな躊躇は考えはしたけど、関係無かった。
しかし虚冥は笑いながらもかっちりと、叡肖の性的嗜好は記憶に刻み付けた事だろう。

「いらねえよっていうwwwwwwそんな姫じゃない奴にどうやって興奮するんだよwwwwww」

そしてここででた虚冥の姫コン。
叡肖は虚冥からにじみ出る、その嘘の混じっていないマジの心境にすこし恐怖するかもしれない。
なぜなら本当に虚冥は姫でなければ女性としての興味が無いのだ。 <> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 01:15:46.87 ID:kFTOcp4Ao<> >>796
「お前相手に取り繕ってどうすんだよ、このロリコンが」

夜行集団の姫が普段は幼女であることは情報として得ている。

「それに男がいろんな女に興味があって何が悪い」

このエロ蛸、ふっと鼻で笑いやがったよ。

「でもだからって一人に執着する奴を馬鹿にはしないさ。それぞれだからな」

虚冥の姫コン程度、この蛸には所詮エロの一形態でしかないのだ。 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 01:23:30.42 ID:L7kCauFN0<> >>797
「ロリコンじゃねえよ馬鹿野郎wwwwwwそれとペドフェリアでもねえぞっていうwwwwww
 お前ちゃんと見てみろwwwwwwお前でも姫は見てたら虜になるからっていうwwwwww
 まあでもwwwwwwお前が手出したらマジにやってしまうから止めろよなwwwwww」

夜行の仲間からは散々言われてきたセリフなのでそれが切れるきっかけにはならないが、
それでも彼は自信の体面的に反論しておいた。

「女に興味あんのは良いけどよwwwwwwお前どうすんの?wwwwwwww
 そう言う奴って結構修羅場になってボロボロに去れるってのが流れなんだけどっていうwwwwww」

ホストと言う職業の特性上、お客からそういう話はよく聞くもので、
だいたいは三股四股の末に泣かれる、というのが大概の落ちらしい。
<> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 01:32:01.00 ID:kFTOcp4Ao<> >>798
「お前、ホストやってるのに判んない?
 プロと遊ぶから、後腐れなくて良いんじゃないか。
 本気にならないから、遊び相手のお前らの商売が成り立ってんだよ」

修羅場になるのは、本気になるからである。
ある程度割り切った考えが出来なくては遊び人は務まらないのだ。

「本気になったら、その時捕らえに行く的は必然的に一つになるだろ?」

遊びなら、一人と別れたら次に手が回せる、と蛸は笑った。 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 01:39:28.19 ID:L7kCauFN0<> >>799
「はっ!wwwwwwさすが蛸だなwwwwww手は回し放題かっていうwwwwww」

手まねで蛸の足の真似をして冷やかす虚冥。
馬鹿笑いをしながらまた牛乳を、今度は少し小さめの物を取り出し、飲み始めた。

「てかwwwwwwお前絶対にホストになったほうがラクできるっていうwwwwww
 一辺働いてみてくれねえ?wwwwww」

と断られることは承知でなんとなく誘ってみた。
魅了を司る氷亜や黒蔵ならともかく、何もその気が無いのにこんな遊び気のある奴は始めて見たからだ。 <> 叡肖<>sage<>2011/06/13(月) 01:50:07.16 ID:kFTOcp4Ao<> >>800
「お前馬鹿かwwwwwwww遊ぶ側だから楽しいんだよwwwwwwww
 遊ばせる側の苦労知っててお前がそれ言うのかよwwwwwwwwwwww」

金を払う側がその見返りに楽しみを享受できるのだ。
金を貰う側はその見返りに楽しみを提供しなくてはならない。
そしてこの蛸、遊ぶ金にはちっとも困っていないのだ。

笑い転げていた蛸が不意に真面目な表情になり虚冥を覗き込んだ。

「ホストになって楽ができる?はっ、冗談言っちゃいけないやお兄さん。
 そういう言い方は他の水商売で働いてる連中にも、そこで楽しみを買うために
 真っ当に働いてる連中にも、すげー失礼だと思うぜ」

一瞬のどす黒い表情の後、衣蛸はころりと態度を一転させた。

「なーんてなwwwwwwwwwwホストに説教しちゃったりしてなwwwwwwwwww
 俺もう帰るわー。あの蛇にコレ見せて困らせる遊びが待ってるんでwwwwwwwwww」

エロ本の入った紙袋を虚冥へ振りながら、けらけらと笑いながら夜の中を帰っていった。 <> 虚冥<><>2011/06/13(月) 01:59:27.07 ID:L7kCauFN0<> >>801
「ただ酒はうめえぞっていうwwwwww」

とへらへら笑っていたのもつかの間、
相手の蛸がその軟体な体には似つかわしくない重みを持ち始めた。
突然の変容に眉間にしわ寄せて困惑する虚冥だったが、
叡肖のからかいかと知ってはあっと溜息をついた。やはりこの蛸は虚冥には疲れる様だ。

「楽で良いんだよwwwwww
 どうせ享楽の一時の夢だろwwwwwwこちらもある程度楽しまないと嘘じゃねえかっていうwwwwww」

笑いながら、今回は珍しく蛸にいらいらしなかったなと思いながら、
虚冥は手を振って去っていく叡肖の背中を見送る。

「さて」

そして未だに笑いながら、彼の出てきた曲がり角に戻って行くのであった。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/13(月) 21:31:10.22 ID:CvbYLCNf0<> 修行帰りの山道、一人の少年と一人の青年が歩いていた。

『あの…夷磨璃君、僕のこと見てどう思った……?』

「ぇぁ…えぇと……凄く可愛かったでござるよ?」

『………』

なんか先日のことで結構落ち込んでるらしい。
桃汁の入ったフロートを飲んで酔ったあげく、女装だれたのだから無理もない。

「澪殿、元気だすでござるよ!!」

ちっこいのがフォローするもほぼ効果なしである。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 21:39:51.97 ID:iJJJztLAO<> >>803
木の枝に座る三凰。静かに呟く。

「ふぅ…父上も忙しそうだし、僕も頑張らなくてはな…
ん…?あれは、澪と誰だ?」

ふと、下を見ると見慣れた顔と見慣れぬ顔だ。

「よっと…澪。そいつは誰だ?」

木から飛び降り尋ねる。 <> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 21:41:17.67 ID:zMnPVBy40<> >>803

「あらあら〜♪かわいかったからいいじゃないですか〜」ガサッ
突然、近くの木の上から足でぶら下がった状態で、長い黒髪に、細い目に眼鏡をかけたおしとやかそうな女性……あの店長が現れた!!!

「けど、傷つけちゃたかしら〜?ごめんね〜」
「ついつい可愛くって〜♪」ニコニコ
ぶら下がった状態でう〜〜んと考えながら謝る。


…………………人間ですよ?間違えても妖怪ではありません <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/13(月) 21:52:06.46 ID:CvbYLCNf0<> >>804
『あれ、三凰…?』

木の上にいたらしいので、もしかしたら見られてたかもしれない。
とりあえず、この話から逸れようとして夷磨璃の話を出すことにした。

『友達の夷磨璃君。一緒に修行してたんだ。んで夷磨璃君、この人は三凰。僕の尊敬する人。』

「夷…磨璃です。(なんか…怖い人…)」

なぜか見ただけで怯える夷磨璃。何が怖かったのだろうか?
すぐに澪の後ろに隠れてしまった。

>>805
『「て…店長さん!?」』

え、なんでここにいるの?とばかりに驚いている。

『えっと…ご迷惑をお掛けしました……。
ちょっと女装するなんて聞いてないもんでしたから…』

「(なんでぶら下がってるの!?)」

夷磨璃は、その凄い行動に気づいたようだ。人間…ですか?本当に。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 22:03:41.86 ID:iJJJztLAO<> >>805
「な…!?誰だ、貴様!いつからそこに!?」

気づいていなかったらしい。
すごく驚いている。

>>806
「修行仲間、と言った所か…」

(子供は苦手だ。まぁ、こいつはまだおとなしそうだからマシか…)

三凰は子供が苦手なようだ。それは、過去の情けなかった自分を思い出すからかもしれない。

「僕は、宝玉院三凰。百鬼夜行の主になる男だ。」

しかし、いつものように自己紹介。
<> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 22:12:10.08 ID:nLlvIGTx0<> >>805

「あらあら〜?」
「迷惑かけちゃったのはこっちの方よ〜?」
「お詫びにコーヒーと好きな料理を無料にしてあげるから〜?」ニコニコ

……なんかぶら下がりながら会話してくる女性ってシュールですね。

人間です…………タブン


>>807

「こんにちは〜。30分くらい前かしら〜?」ニコニコ
「いつの間にか眠っちゃったみたいなの〜?」ノーンビリ

逆さまにぶら下がったまま、笑顔で挨拶する。

「喫茶店《ノワール》の店長やってます〜。田中 夜です〜」ニコニコ
「百鬼夜行の主になる方ですか〜〜。凄いですね〜〜」
人間ですよ?彼女は人間ですよ?

「よっこいしょ〜」
両手に付けてる皮手袋からワイヤーを出し、近くの木々にひっかけ、クルリと回りながら地面に着地する。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/13(月) 22:19:00.40 ID:45WHniLDO<> >>807
「ぇ・・・・百鬼夜行の主・・・・・・?三凰殿は強いでござるか・・・?」

主になるというのだから、実質的強さ、心の強さは強いと思ったんだろう。
少し怯えつつ、顔を覗かせた。

『三凰はね、凄く優しいの。僕を助けてくれたんだ。ね、三凰?』

>>808
『あ・・・・そんな、いいですよ・・・・・・。また行かせてくださいね。』

女装させられたが、雰囲気も料理も満足だった様子。また一つ、澪に行く場所が増えた。

『そうだ、たまたま浴衣持ってきてますが・・・着ますか//?』

パーカーで修行は暑くなるので、浴衣でやっていた。浴衣でやるのもどうかとおもうが・・・・ <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 22:30:03.46 ID:iJJJztLAO<> >>808
「僕が来るより前じゃないか…しかも、貴様人間か…」

妖気を感じないので、そう判断。

「フッ…そう僕は百鬼夜行の主になる男だ。凄いのは当たり前だ。」

三凰は、調子に乗っている。

「だが、貴様も凄いと思うがな。人間とは思えん。」

素直な感想を述べた。


>>809
「ああ、僕は強い。とは言え、まだまだだがな。だが、これからもっともっと強くなって見せる。
そして、いつかは父上のように…」

強いのかと聞かれただけなのに、少々語りすぎている。

「まぁ、な…」

逆に澪に対しては、言葉が少ない。
強いや凄いなんかは言われ慣れているが、優しいとはあまり言われないため、照れているようだ。

<> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 22:38:24.89 ID:5UNjHRFB0<> >>809

「ありがと〜♪」
「君もまた来てね〜」ニコニコ

澪にそう優しく微笑み礼をいい、夷磨璃にも優しく微笑み頭を撫でようとする。

「ぜひ〜♪」
笑顔で即答したよ!!


>>810

「あらあら〜♪夕がいたらサイン頼みそうね〜」ニコニコ

「お父さんから忍術習っててね〜。お母さんから色んな護身術(という名の戦闘技術)を子供の頃から教えてもらったから〜」

「あ♪お近づきの印にあの子の女装写真見る〜?」
澪の女装写真(和服美人の大和撫子)を数枚とりだしながら <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/13(月) 22:45:44.32 ID:45WHniLDO<> >>810
「拙者も・・・・・・強くなりたいでござるよ・・・・。貴方のように、もっともっと・・・・」

真面目な表情で話す夷磨璃。きっと三凰と自分は似てる、と思ったのだ。

『あれ?三凰・・・顔、赤いよ?どうしたの?』

鈍い澪は、三凰が照れているのを気づかず、そこを着いた。
一般人から見れば、デレた人をおちょくる最低なry
>>811
「拙者、またあのオムライスが食べたいでござるよ〜。」

『ちょっと着替えてきます・・・・・・//』

といい、草むらへ。30秒ほどして、緑の浴衣の澪が現れた。
澪の浴衣は少しぶかぶかで、軽く引っ張ると肩が見えてしまうほどである。
しかも三凰もいるので、ヘマした瞬間、彼は死ぬ(え <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 22:52:07.88 ID:iJJJztLAO<> >>811
「なかなか楽しそうな家庭のようだな。」

褒めてるのか、貶してるのかわかりにくいが、多分褒めてるのだろう。

「女…装……?まさか…澪にそんな趣味が……?」

なんか勘違いして、唖然としている。
唯一の友人に女装趣味があるという勘違いは、三凰を複雑な気分にした。


>>812
「常に強くなりたいと思い続ければ、強くなれるはずだ。父上はそう言っていた。」

父の言葉を使いアドバイス。本当に父を尊敬しているようだ。

「な、別に何でもない!」

拗ねたように澪から視線を逸らす。
<> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 22:59:57.44 ID:nLlvIGTx0<> >>812

「じゃあ、また食べさせてあげるわ〜」
「楽しみにしててね〜♪」ニコニコ
夷磨璃のリクエストに応え、次に喫茶店に来たらオムライスを作ってくれるだろう。


「………凄くいい〜」
おいっ!なんか凄い顔を赤くしながら恍惚とした笑顔で浴衣の澪を見てるぞ!


>>813
「違うわよ〜?私の趣味よ〜?」
………なんかカミングアウトしたぞ!?

とりあえず、澪にそんな趣味がないというのがわかるだろう。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/13(月) 23:06:40.62 ID:45WHniLDO<> >>813
「思ってる・・・・強くなりたい。それで、澪さんも、ししょーも僕を手助けしてくれてるんだ。」

凄く嬉しそうな顔をしていた。今まで一人だったが、皆の支えがあったからだ。
『え・・・・ごめん・・・・・・』

なんか怒らせたかもしれない、そう思って謝った。

>>814
『てん・・・・ちょーさん?』
凄い視線わ感じ、胸元を隠すような格好になる。
だが、澪は赤らめ、その格好も微妙にセクシーである。

・・・・店長、後は任せた! <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 23:12:24.81 ID:iJJJztLAO<> >>814
「な、なんだ。貴様の趣味か…」

ホッとため息をつき、一安心した。
安心していいのだろうか?


>>815
「なら、せいぜい修行に励むんだな。」

純粋な者は苦手なようで、顔を背ける。

「別に貴様が謝らなくても…」

顔を逸らしたまま言った。
<> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 23:21:52.07 ID:RbUC6eNv0<> >>815>>816

「貴方も女装似合いそうね〜〜」ニコニコ
……三鳳さん逃げてー!!

「………ちょっとだけ…ちょっとだけ……肩を…」ブツブツ
フラフラと澪に向かい歩いて行く。

どうやら少し肩をはだけさせようとするのだろう。

三鳳は彼女のさっきの言葉を聞き、澪の危険(?)を感じるかもしれない。 <> 夷磨璃「」&澪『』<><>2011/06/13(月) 23:30:55.57 ID:45WHniLDO<> >>816-817
『やっ、あ、なに・・・・?』
よたよたと近づく店長に軽く不信感を抱く・・・が時既に遅し。
きっと三凰も間に合わぬだろう、澪は開けさせられるのだ。

「皆・・・どうしたの・・・・・・」

目の前の異様な光景を見て、唖然とする少年。

『店長さ・・・・////』

さらに胸元を抑え、いかにも誘っているような声を出す。
本人は(やめて、見ないで、近づかないで!)なのだが。 <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 23:36:21.71 ID:iJJJztLAO<> >>817
「な、何を言っている…?
僕が女装?似合うわけないだろ!」

決して逃げはしない。人間相手に逃げることなど、三凰のプライドが許さないのだ。

「おい、ちょっと待て!澪に何をする気だ!」

逃げるどころか近づいていった!


>>818
「澪…貴様……」

友人のこんな姿、見たくなかったような、むしろ見たかったような。なんとも複雑な気分だ。
<> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 23:42:24.98 ID:ZjdHCC2g0<> >>818>>819

「うん♪やっぱりコレの方がセクシーね〜♪」ニコニコ
はだけた澪を見て満足する夜。
……あっ!カメラを取り出した。

「似合うわよ〜!きっと似合うわ〜♪」

三鳳の方を見ながら、のんびりとした笑顔で言う。
けど女装道具を持ってきてない!!……くっ!

「今度、私のお店に来たらメイクしてあげるから〜♪」 <> 田中 夜<><>2011/06/13(月) 23:43:35.97 ID:ZjdHCC2g0<> >>818>>819

「うん♪やっぱりコレの方がセクシーね〜♪」ニコニコ
はだけた澪を見て満足する夜。
……あっ!カメラを取り出した。

「似合うわよ〜!きっと似合うわ〜♪」

三鳳の方を見ながら、のんびりとした笑顔で言う。
けど女装道具を持ってきてない!!……くっ!

「今度、私のお店に来たらメイクしてあげるから〜♪」 <> 澪<><>2011/06/13(月) 23:49:55.41 ID:45WHniLDO<> >>819-820
開けさせられ、触られ、写真を撮られる。白い冷たい肌が、むにむにと触られる!

『三凰ぉ、助け・・・・・・てっ・・・・////』

なんかもうダメ見たい。三凰に涙目で助けを求める姿は、本当にあの時の大蛇か?と思うほどの物だ。

『ぁ・・・・でも三凰の女装・・・・・・・・・・見たい。』

そして、おかしくなった彼は変なとこに食いついた! <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/13(月) 23:56:44.62 ID:iJJJztLAO<> >>821
「似合ってたまるか!」

似合う、似合わない以前に三凰にとっては女装など屈辱でしかない。
だからこそ、似合わないと否定する。

「全力で遠慮しておこう。」

もちろんメイクも屈辱になると考えている。


>>822
「助けてと言われてもだな…」

もはや、どうすればいいのやら。

「な…!僕は、断固女装などしないからな!」

<> 田中 夜<><>2011/06/14(火) 00:02:05.02 ID:NIwkLFvD0<> >>822>>823

「ふぅ〜♪満足したわ〜」ホクホク
写真を撮り終わり、幸せそうな顔をする夜。

「似合うと思うのにな〜」ショボーン
「じゃあ、執事服着てくれないかしら〜♪」
今度はコスプレを三鳳に頼んで来たぞ! <> 澪『』&夷磨璃「」<><>2011/06/14(火) 00:13:07.22 ID:7DIyMy9DO<> >>823
『三凰・・・・・・酷いよ・・・嫌いだ・・・』

もちろん嫌いじゃない。けど、助けてくれなかったから言った。

「澪さん・・・」

そして再びちっこいのがフォロー。

>>824
『・・・・・・』

意識が軽く飛んでます!
既に開けた胸元は放置し、ぶっ倒れていた。

「ぇぇ・・・・・・僕、澪さんを家に連れていきます・・・・。ぁぅ、さようなら・・・・」

家は近いので、彼でもなんとかなるはず。ずりずり引きずって行った。

//すいませんが、ここで落ちます。絡みありがとうございました&お疲れ様でした! <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/14(火) 00:16:46.77 ID:47BY8GfAO<> >>824
「執事服だと?そんなものは、家の使用人共に着せればいい。」

三凰にとっては、執事服は格下が着るものらしい。
つくづくプライドが高い妖怪だ。


>>825
「くっ…すまんな、澪。」

澪が行ってしまった後に小さく呟く。
女装でもしなければ許してもらえそうにないのだろうか? <> 田中 夕<><>2011/06/14(火) 00:23:11.44 ID:OcXx6Yql0<> >>825

「あらあら〜?どうして倒れちゃったのかしら〜?」

コイツ…自分が原因と気付いてないぞ?

「またね〜♪」


>>826

「むぅ〜〜。似合うと思うのに〜」
少し残念そうにしながら、彼を見る。

「じゃあ、私も帰るわ〜」
「またね〜〜」
手を降りながら彼女は山を降りていった

/二人ともお疲れ様でしたー <> 宝玉院 三凰<><>2011/06/14(火) 00:29:44.17 ID:47BY8GfAO<> >>827
「似合うわけないだろう。」

不機嫌そうに歩いていく三凰。
その表情には、疲れが見られたという。

/お疲れ様でしたー <> 黒蔵<>sage<>2011/06/14(火) 22:16:54.34 ID:6vISwrSno<> 月は雲に隠れて、夜は暗さを増している。
流れる川は黒々とした水面に、街の明かりを反射している。
明かりの届かない橋の下で、ぱしゃりと水の音がした。

(帰れない)

水の中から鼻より上だけを出して、黒蔵は困っていた。
蛸に鍛錬と称して扱かれまくった後、風呂から上がってみたら
服が全て女物に刷り返られていたのだ。

蛸 『お前がこれ着てれば殿下も暴れ出さないね♪』

確かに巴津火は、「ボクが女物なんて着られるか!」と言って出てこなかったのだが。
とりあえず褌だけは確保して蛇の姿で逃げ出したまでは良かったものの、
行き先が無く川の中で黒蔵は立ち往生しているのである。

袂山に行っても黒蔵が着られる服は無いだろうし、
夜行集団の本拠地に行くにしても蛇の姿やほぼ裸で街中をうろつく訳にも行かない。
巴津火は巴津火で、「ボクが褌一つなんかで出歩けるか」と言って出てこない。

(どこにも行き場が無い)

結局、川の中で頭だけ出して水につかっているのだ。 <> 田中姉弟<><>2011/06/14(火) 22:31:04.31 ID:rLYmLkaD0<> >>829

そこに歩いてくる二人の人影。

一人はもしかしたら見覚えがあるかもしれない。
長い黒髪に、細い目に眼鏡をかけたおしとやかそうな女性――田中 夜。
ニコニコと微笑みながら、もう一人と手を繋いでいる。

?「ね…姉さん…?」
夜「な〜に〜?夕?」ニコニコ

ゴスロリを着て、肩まで伸びた黒髪で黒目の美少女がオドオドしながら姉と手を握りながら上目使いで言う。

夕「なんで、俺女装されてr」
夜「なんとなく〜♪」ニコニコ
夕「ひどっ!?なんとなくで!?なんとなくでなの!?」

……なんともう一人は女装された田中くんだった!?
声も中性的で女性にまちがえられそうだが…
だが、黒蔵は彼の声を知ってるはずだ!

夜「あら〜?」クルリ
そして、なんか視線を感じ夜が蛇の方を見た。 <> いちゃらぶカップル(?)<><>2011/06/14(火) 22:37:14.15 ID:ok+59/ln0<> >>829-830
『なんかお前さ…最近べたべたしすぎじゃないか?』

「だって今は夏だよ?黒龍ってひんやりしてて気持ちいいから♪…嫌だった?」

『な…ま、まぁ特別に許してやるよっ////』

中学生くらいの少年と高校生くらいの少年が歩いている。…と言うか、いちゃついてる。
きっと人通りが少ないし、暗いからだろう。

ふと、川の中で微かな音がした。零は気付かなかったが、黒龍は気付いた様子。
なんだろう、と思い橋下を覗いた。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/14(火) 22:42:13.51 ID:6vISwrSno<> >>830-831
酔っ払い中だったので、店長のことはあまりよく覚えていない。
それに喫茶店で黒蔵の着せ替えを担当したのは、衣蛸だったのだから。
しかし、田中君の声は判った。

(あの声!ってことは、犬もいる?)

氷亜・クロコと戦った時、途中で巴津火と入れ替わっていた黒蔵は、クロコの怪我の状況を知らない。
慌てて水面下につぷん、と潜る黒蔵。水中でしゃがみこむ形になる。

…そしてしばらく待つ。普通の人間ならとっくに溺れてしまっている筈の時間、潜水して待つ。

(もう流石に、通り過ぎて行った頃だろう)

そうっと頭を水面に出して上の様子を伺おうとしたところ、ばっちり田中姉さんと目が合った。

「何でいるの!!」

動揺して、少し大きめに水を跳ねさせてしまった。
橋の上から黒龍に見られている事には気づいていない。 <> 田中姉弟<><>2011/06/14(火) 22:52:22.71 ID:NIwkLFvD0<> >>831

夜「あらあら〜♪ラブラブですね〜♪」ニコニコ
夕「姉さん…大きい声でそう言わないで…もしかしたら、ただの友達同士かもしらないじゃん」

そんなカップル(?)を見て姉は優しく微笑みながら見守り、弟(女装)はそんな姉に注意する。

流石、田中くん!人が来たらオドオドしたら怪しまれる為に堂々と女性になりきってる!!


>>832

夜「あらあら〜♪こんにちは〜♪」
夜「なんで〜?なんででしょ〜?」ニコニコ
蛇の質問に首を傾げながら、マイペースに話をする姉。

夕「あれ?今声が聞こえたような?」キョロキョロ
そして田中くんは黒蔵くんに気付いてなく、辺りを探してる。
蛇の状態の為、気付いてないよ!! <> いちゃらぶカップル(?)<><>2011/06/14(火) 23:01:49.09 ID:ok+59/ln0<> >>832
『えーと……黒蔵?』

田中姉弟と黒蔵の一部始終を見てしまっていた。
その余りの黒蔵のドジっ子さに軽く同情している。

>>833
「友達同士?そんな訳ないですよ。私たちは『こっ、こんばんはー!!』」

零が何か問題発言をしようとしたので慌てて口を押さえ付ける黒龍。
その慌てっぷりと顔が赤いのを見れば、二人がどんな関係か…分かりますね?

『ところで、そちらの方はなぜ女装を?』

うわぁぁぁぁ!!田中君、せっかく成り済ましていたのに…。
黒龍はそんなこと気にせず、ストレートに言ってしまった。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/14(火) 23:05:07.10 ID:6vISwrSno<> >>833-834

(まだ他に誰かいる?)

目の前の姉弟が見ている相手、それは知った妖気の持ち主だった。

(あの二人なら、助けてくれるかな)

田中姉にも普通に話を返されたので、仕方なく人の姿になって黒蔵は水から顔を出す。
首から下は、服が無いのでまだ水の中に隠している。

(暗いから蛇なのは多分、見えてない筈……でなきゃ、返事とかしないよな普通)

彼らが普通じゃない姉弟であることを、黒蔵はまだ知らない。

「黒龍?零もいる?ちょっと助けてほしいんだ」

呼びかけた声は、物凄く安堵した様子だった。 <> 田中姉弟<><>2011/06/14(火) 23:12:54.58 ID:/OkTsVEu0<> >>834>>835

夜「あらあら〜〜♪ラブラブね〜〜♪お幸せに〜♪」ニコニコ

おめでとう 田中姉 は 貴方 たち を カップル と 認識 しました ▼


夕(き……気付かれた……不幸だ……)ズーン

黒龍 の 攻撃 ▼
田中くん に 4649 の ダメージ ▼
田中くん は OTL に なった ▼

夜「私の趣味よ〜?」
夜「貴方も女装しますか〜?」ニコニコ

夜「あら〜?蛇さ〜〜ん?もしかして〜蛸さんとお店に来た方よね〜〜」
夜「貴方の女装可愛かったわよ〜〜♪」ニコニコ

残念!!姉は空気読まなかった!!
しかも、この暗さで見えてるようだ。

夜「また女装しますか〜?今日は服用意してますよ〜♪」ニコニコ

…………………黒蔵くん…一難去ってまた一難…


田中くんはまだ立ち直ってなかった… <> いちゃらぶカップル(?)<><>2011/06/14(火) 23:21:56.39 ID:ok+59/ln0<> >>835-836
『居るよ。零、黒蔵が助けてって。』

「黒蔵君が?」

ちょっぴり慌てた様子で零が駆け寄る。

『ラ…ラブラブだってぇ!?そ、そんな訳ないじゃないか//////』

認識されたことで黒龍は赤くなった▼
そして考えもおかしくなってしまった▼

『女装…(女装すれば、零とくっついてても問題ないよな…?今だけだし、いいよな////)

……する/////』

田中君がOTLと言う状態異常になったのはほっとき、姉に依頼した黒龍。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/14(火) 23:25:26.22 ID:6vISwrSno<> >>836-837

「ばれてる!じゃなくて、知ってた!?」

だんだんと、ぼんやりと、黒蔵は店長のことを思い出す。
確かあの時この人は、こっちにカメラを向けてニコニコしてたような気がする。
そして、「女装」というキーワード。

……確定。

この人の悪戯が発端で、衣蛸が新しく巴津火の暴力封じの方法を思いついてしまったのだ。
立場上不可能な封印ではなく、単なる悪趣味な嫌がらせという、巴津火のプライドの高さを逆手に取った方法で。

「女装は嫌ぁぁぁ!普通の男物の服貸して!」

しかし真っ当な服装では巴津火が出てきてしまうのだが。

「黒龍助けて!」

こうなったら頼みの綱は、黒龍と零である。

「実は…服が無いんだ。叡肖さん達にも今追われてて…帰れなくて」

GPS追跡用のキッズケータイも置いてきてしまったのだ。
何時までも水中に居たら、衣蛸以下、巴津火を探しているであろう水妖達に見つかるのは時間の問題である。
しかし今黒蔵が身に着けているのは、褌と、狐に貰った守り袋のみなのである。
それを知ったら、田中姉さんのスイッチが入ってしまうかもしれないのを、黒蔵は知らない。

「だから頼れるのは君たちだけ…って、黒龍ぅぅぅ?!」

そして、その肝心の頼みの綱は、たった今ぷつりと切れたところらしい。 <> 田中姉弟<><>2011/06/14(火) 23:38:20.84 ID:xVLd0yZ60<> >>837>>838

夜「あらあら〜♪」
夜「じゃあ、ちゃっちゃっとやるわよ〜♪」

何処からか紙袋を取り出し、そこから《女子高生の制服》とカツラと化粧道具を出した。

抵抗がなければ、一瞬の神業で黒龍を《カワイイ女子高生》に変身させるぞ♪


夜「服が……ない?」ピクッ
黒龍を女装させ中にそんな単語が聞こえ……
凄い笑顔で黒蔵を見た!!

……黒龍の女装が終われば、凄い勢いでそちらに向かうだろう。

夕(あ……病院の前にいた人だ…)
そして田中くんが立ち直り黒蔵をみた。
見れば姉が彼を女装させようとする光景。

夕「ご愁傷様です…」(´・ω・`)
田中くん は 仲間 を 見るような目で そちら を 見てる ▼ <> いちゃらぶカップル(?)<><>2011/06/14(火) 23:46:27.84 ID:ok+59/ln0<> >>838-839
「黒蔵君、私が今持ってるのは、クッキーしか無いんだ…。」

田中君と黒蔵君が仲間になりそうなのを見透かしたように、それは準備されていた。
分かるだろうか、見た目はごく普通のクッキー。しかし、これ。悪魔の手作りだ。
田中君が知らないのは勿論、黒蔵君も覚えているのだろうか?

「別に黒蔵君が女装しても黒蔵君なんだしさ、裸よりはマシだと思うよ?
大丈夫、誰にもばらさないし、クッキーもあげるからさ。」

『これが…俺?』

一瞬で女子高生に変身してしまった!!
きっと、原型が男なの?と思えるぐらいのものだと信じている。 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/14(火) 23:57:45.54 ID:6vISwrSno<> >>839-840
「零!黒龍が?!」

黒蔵は水の中に立ち上がる。水深は腰までの深さの場所だ。
零が傍に来てちょっぴり安心したものの、その隙に田中姉の黒龍女子高生化は素早く完了してしまった。

(ああ、黒龍があっち側へ旅立ってしまった…)

とか、悲しく見ている場合じゃない!
あの女の人怖い笑顔でこっち向かってくる!逃げないとヤバイ!
と、そこに突きつけられた、クッキーという名の暗黒物質。

「…え?」

その匂いにトラウマを抉られて、一瞬石化したように黒蔵の全ての動きが停止する。
零のお蔭で黒蔵は、あっさり田中姉に捕獲された。

(酷いや、零。やっぱり君は悪魔だ…裏切りモノォォォ!)

……黒蔵に記憶があるのは、ここまでである。

〔おい、お前勝手にひっこむなよ〕
(無茶言うな、俺だって嫌だ)
〔ボクはもっと嫌なんだぜ〕
(ならどうするんだよ)
〔仕方が無い、このまま気絶でもしておこう〕

そういうわけで、田中姉は活きた着せ替え人形を手に入れた▼

このまま店へお持ち帰りしますか? Y/N <> 田中姉弟<><>2011/06/15(水) 00:08:29.57 ID:o8JC0Zpo0<> >>840>>841

夜「ふふふ♪カワイイわ〜♪やっぱりよく似合うわ〜♪」ニコニコ
夜「コレで彼とラブラブイチャイチャできるわよ〜♪」
言わなければわからないほどのカワイイ女子高生である。

ぐぅ〜♪
そして、田中くんの悪運が発揮した!なんとお腹をすかし、腹の音を立ててしまった!
そして零が一見美味しそうなクッキーをもってる。

夕「…スイマセン…そのクッキーわけてくれませんか?お腹空いてしまって…///」
田中くんは知らずに自ら不幸のロードを走っていった!

食べればどうなるか……今はわからない……

夜「ふふふ〜♪さあお着替えしましょうね〜♪」
このまま田中姉に連れてかれ、黒蔵くんはネコミミメイド服の美少女にされてしまうだろう… <> いちゃらぶカップル(?)<><>2011/06/15(水) 00:16:40.91 ID:Z8yx49CK0<> >>841-842
「黒蔵君〜?(クッキーの美味しそうな余り、気絶しちゃったのかな?)」

いや、なんか違うと思う。
ふと黒龍を思いだし、後ろを振り返ると…女子高生VERの黒龍が。

『ぜ…ろ…////////』

「どうしたの!?可愛いよ、黒龍!!(抱き)」

『ぅぁ…///////』

効果は抜群だ▼
黒龍は倒れた▼

田中姉のお陰で、いちゃいちゃできたぞ!!

ちなみにそのクッキー、見た目だけ。
食べた瞬間、口の中で蕩け、ねばねばとした感触が広がります。
味としては正に『発行したヨーグルトを腐らせた物+ドライアイスが個体化した物』風味だ。

「うん、いいよ。私は零、よろしくね。」 <> 黒蔵<>sage<>2011/06/15(水) 00:22:48.60 ID:wCxBDWJNo<> >>842-843
昼間の運動でいい加減草臥れていたところである。
いちゃらぶカップルの熱にも、田中君の不幸にも気づかずに、
気絶した、というかすっかり眠り込んだ黒蔵は結局巴津火との争いに負けて
翌朝にはやたら可愛らしい服装で目覚める事になる模様だ。

ネコミミメイドということは、その姿のまま、喫茶店ノワールで働かされる事になるのだろうか?
田中家で居候となると、タダメシを喰らうわけには行かないだろう。
おそらく本人は、「せめて普通のボーイとして働かせて!」と懇願するだろうが、
全権を握る店長は田中姉さんなのだ。そして妖怪についてくれる人権派弁護団は無い。

そしてその頃も、

蛸 「あれー?腹が減ったら戻ってくると思ったんだけどなー。当てが外れた」

引き続き、巴津火と黒蔵は捜索されているものと思われる。 <> 田中姉弟<><>2011/06/15(水) 00:36:31.84 ID:0/t2/OBK0<> >>843

夕「ありがとうございます!俺は田中 夕です」ニコッ

あぁ…目の前が露希のお兄さんと知らずに、御礼と自己紹介をする女装田中くん……
こうして彼は不幸ロードを突っ走っていくのだった…

夕「では俺はコレで…さようなら!」
こうして彼は先に黒蔵を拉致って帰った姉を追い、去っていった。

……帰りにクッキーを食べ、死んだ幼なじみの両親が見えたのは…誰も知らない(笑)


>>844

目覚めれば、田中家――ではなく隣の喫茶店《ノワール》二階の従業員用の移住スペースで、寝てる田中姉に抱き枕にされてる状態だろう……

まあ、ここに住むかは黒蔵次第だ。
働くにしても、Yシャツ、黒ズボンに黒いエプロンの衣装だ。……ただしたまに女装されるだろうが

ついでに隣は田中家の為、クロコが重傷だと聞くだろう

はてさて黒蔵きゅんの行く先は………



/ではここら辺で
/二人ともお疲れ様でしたー
/絡みありがとうございます <> いちゃらぶカップル<><>2011/06/15(水) 00:43:45.36 ID:SmW4akdDO<> >>844-845
「よろしく、夕君!」

ちなみに、露希は彼のことを一切話してない。
だから、零も知らない。

「うん、また会おうね〜。」
にこりと微笑んだ悪魔は、女子高生を抱えたまま帰っていった。 <> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 21:30:16.68 ID:rPOeQvLDO<> 一人の男が、山近くの散歩道、街灯が照らす舗装された道を歩いている
少し道を反れれば山中の鬱蒼とした森の中に行けるような、自然がとても近い道、朝昼は散歩道として人気は高いが、夜となると少し不気味だ

「はにゃーん」
『ニャア』

男が歩く度、その足元でシャラシャラと鈴の音がついていき、男が声を出すとそれも鳴く
歩く男の足元には、首輪に鈴を付けた猫が着いて歩いていた

「何なんだお前、餌ならやらんぞ」
『ニャー』

歩きながら猫に話し掛ける男、それに答えるように鳴く猫
その猫はどう見ても猫なのだが何処か異質…毛色が紫とピンクの縞模様という、異質な体色をしていた <> 七郎<><>2011/06/15(水) 21:39:20.10 ID:UXhdVuuAO<> >>847
「おいおい、それホントにただの猫なのかよ。」

と、ただの狐ではない奴が話しかける。

「よぅ、奇遇だな丑三。」

猫の隣に行き、猫をまじまじと見つめる。
よほど気になるのだろうか。
<> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 21:47:04.61 ID:rPOeQvLDO<> >>848
「ん?おう、お前が言えた事じゃないだろ」
『ニャア』

七郎の声に立ち止まり、「よう」と右手を挙げる
同じように猫も止まり、鳴き声をあげた

「そりゃお前、こんな姿形は猫以外有り得ないだろ、トカゲに見えるか?」
『ナァ?』

丑三が首を傾げると猫も首を傾げる、真似をしているようだ
答え方が根本的にズレてるような気がする <> 七郎<><>2011/06/15(水) 21:55:46.31 ID:UXhdVuuAO<> >>849
「いやいや、そこじゃなくてよ。そんな模様の猫っているのかって思ってよ。
まぁ、猫の種類に詳しい訳じゃねぇけどよ。」

そんな七郎から見ても、この模様と色は普通じゃ無さそうだと思った。

「まぁ、猫は猫なんだろうけどな。」

<> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 22:04:49.74 ID:rPOeQvLDO<> >>850
「ほら、最近は品種改良もすごいらしいしこんなんもいるんじゃないか?」
『ニャーン』

どう見ても有り得ない体色なのだが丑三自身はそこまで気にしていないようである
猫の方も、色以外はただの猫だ

「それより、お前今日は十夜と一緒じゃないのか?」

右手を眉の上に、遠くを見るような大きな仕種で周りを見渡す <> 七郎<><>2011/06/15(水) 22:15:23.96 ID:UXhdVuuAO<> >>851
「うーん、そんなもんなのかもな。つーか、怖ぇな品種改良ってのはよ。」

同じ動物(妖怪だけど)だから怖いようだ。

「ああ、今日は一緒じゃない。もう夜も遅いしな。
俺だって、たまには一人になりたい時もあるしな。」

<> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 22:21:46.97 ID:rPOeQvLDO<> >>852
「夜遊びしないなんてあの子も真面目ねえ」
「あらあら、なーに七郎ちゃん、センチメンタルかしら?何かいい事でもあったぁん?」

くねくね気持ち悪い動きと女言葉でおどける

『ニャア…』

それを見た猫が呆れたように鳴いた

/すいません、次のレス少し遅れます <> 七郎<><>2011/06/15(水) 22:28:34.66 ID:UXhdVuuAO<> >>853
「気持ち悪いからやめろっての。
大したことじゃねぇよ。ただちょっとな、俺も成長しなきゃなと思ってな。」

と、空を見上げ真面目な表情で言う。



/了解です。 <> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 22:49:54.48 ID:rPOeQvLDO<> >>854
「成長ねぇ、そりゃアレか?精神的に〜とか、もっと強く〜みたいな?」
「背の話だったらもう諦めた方がいいと思うぞ」

右手を顎にやる仕種をしながら、七郎を見て語る
背の話ではないのは解りきっている事だが、それでも言うのがこいつの性

『ニャッ』

猫も七郎の大きさを見て、フンと鼻から息を漏らした

/ただいま帰りました <> 七郎<><>2011/06/15(水) 23:01:05.60 ID:UXhdVuuAO<> >>855
「どっちもだな。ずっと、十夜に成長して欲しいって願ってきたけどよ、あいつあれで意外と成長してきてるみてぇなんだ。
真に成長すべきなのは俺だったんじゃないかってな。」

頭を軽く掻きながら話す。

「背はな、人の姿になりゃ結構あるからな。これ以上は必要ねぇよ。」

と、言って人の姿になって見せた。
そして、猫の頭を撫でてみる。
<> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 23:10:34.17 ID:rPOeQvLDO<> >>856
「ふーん、かっこいい事言うねえ」
「でも、それなら尚更一人では駄目なんじゃないのか?」

口の中で転がしていた飴を右手で引き抜き、七郎にマイクのように向ける

「お前ら、二人で協力したりするようなスタンスの癖にバラバラに成長なんかしたらそれこそ協力が上手くいかないだろ」
「そういう時こそ、二人一緒に同じように成長していくべき…だと俺は思うけどなあ」

「ま、個人的な意見よ」と最後に付け加え、飴をまたくわえる
頭を撫でられた猫は気持ち良さそうに目を閉じた <> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 23:11:22.26 ID:rPOeQvLDO<> >>856
「ふーん、かっこいい事言うねえ」
「でも、それなら尚更一人では駄目なんじゃないのか?」

口の中で転がしていた飴を右手で引き抜き、七郎にマイクのように向ける

「お前ら、二人で協力したりするようなスタンスの癖にバラバラに成長なんかしたらそれこそ協力が上手くいかないだろ」
「そういう時こそ、二人一緒に同じように成長していくべき…だと俺は思うけどなあ」

「ま、個人的な意見よ」と最後に付け加え、飴をまたくわえる
頭を撫でられた猫は気持ち良さそうに目を閉じた <> 七郎<><>2011/06/15(水) 23:21:04.37 ID:UXhdVuuAO<> >>857
「やっぱり、あんた凄いな。十夜が尊敬するのも分かるぜ。」

その言葉に心底感心する。

「そうだよな、俺と十夜は互いに歩んできたんだし、これからもそうしないとな。」

そう、一人ぼっちじゃなくなった日から彼らは共に歩んできた。お互いに良い所を学び成長してきた。
そして、これからもそう歩んでいくのが良いのだろう。
<> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 23:30:59.83 ID:rPOeQvLDO<> >>859
「尊敬されてんの?嘘つくなよHAHAHAHAHA」

褒められるのが性に合わないのか、笑い飛ばしてはぐらかす

「人と妖怪だ、存在も何もかも全く違うし、通じ合うのは難しいと俺は思ってる」
「でも、今は無理だとは思わない、いつか俺が泣いて考えを改める位のコンビになれりゃいいな」

人間と妖怪は通じ合わない―――そう考えていた、少し前までは
いつからだろう、考えを改めたのは、いつからだろう、全く違う者同士も通じ合えるかもしれないと思うようになったのは
恐らくは、目の前の管狐のような妖怪や、そんな様々な者達を見てきたからか

「話は戻るけどやっぱ猫にこんな体色は有り得ないよな、化け猫じゃね?こいつ」
『ニャ?』

脈絡も無く話をぶった切ると、思い出したかのように猫の話題
足元の猫を持ち上げると、ゆらゆらと揺らしてそう言った <> 七郎<><>2011/06/15(水) 23:42:52.11 ID:UXhdVuuAO<> >>860
「いやいや、マジだって。つーか、俺も危うく尊敬しちまうとこだったぜ。」

と、冗談混じりに言う。しかし、十夜が丑三のことを尊敬しているというのは間違いないだろう。

「なってやるよ。俺と十夜ならできる。そんで、お前を泣かしてやるよ。」

先ほどまでと違い、真面目な表情になり、強い意志を込めて言う。

「いまさらかよ。まぁ、確かに自然にこんな色になるなんて考え難いな。」

再び猫を見つめる。やはり、自然にこんな色にはなりそうにない。 <> 丑三夜中<><>2011/06/15(水) 23:50:56.12 ID:rPOeQvLDO<> >>861
「はっはっは、泣かしてみろ泣かしてみろ、その前に俺が更なる高みに上がっているかもしれんけどな」

七郎の真剣な表情に冗談めかして笑って返す

「よく見りゃ首輪付きだし、誰かに飼われてたのか?」
「にしてもこんな色の猫を飼うなんて趣味の悪い奴もいたもんだ、化け猫かもしれないし」
『ニャー…』

持ち上げた猫を観察しながら酷評、ボロクソに言われた猫は少し不満そう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/15(水) 23:52:12.99 ID:s5/a2FNbo<> >>860-861
【物陰で、控えめに翻る紺のスカート】
【長い髪の少女が、物陰からそっと猫を見つめている】

【……ようにも見えるが、顔には口元まで長い黒髪が垂れ下がり、実際に何を見ているのかは伺えない】

【時折、うずうずと体を揺らすが、すぐに気配を消そうとでもいうように、じっと動くのをやめる】
【そしてまた、うずうずと物陰から体を乗り出し、猫のほうを見つめる】

【少女の体からは、小さいものの、明らかに妖気が放散される】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 00:06:23.30 ID:E7LHWDRAO<> >>862
「いや、意外とこんな色もかわいいんじゃねぇか?染められてたりしたらたまったもんじゃねぇけど。
もし俺がこんな色にされたら、しばらく落ち込んでるぜ。」

と、猫に目線を合わせ言う。
なんか、他に普通じゃない部分がないかなーとか考えている。


>>863
(あん?妖気?随分小せぇけど、どこからだ?)

妖気を感じ取ることはできたが、七郎には居場所まで特定することはできなかった。 <> 丑三夜中<><>2011/06/16(木) 00:12:03.82 ID:8xsHroCDO<> >>863
「…はっ!女の子の気配!?」
(ついでに妖気!)

ピキーン!とニュータイプ的な勘が働き何か存在をキャッチ、猫を手放す

>>864
スタッと地面に着地した猫は、よく観察すれば目が金色なのが解るが、変わった所はそれくらいだろう
いや、根本的に変わった色なのだがそれが余りにも大きすぎる

「染めてたら虐待ってレベルじゃないわな」
「首輪か何かに名前も書いてないようだし、本当によく解らん猫だ」

近くの気配を気にしながら地面に降りた猫を見て言う
猫はその場で呑気に毛繕いをしたり、丑三の足に擦り着いたりする <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/16(木) 00:21:27.98 ID:VApxHwaGo<> >>864-865
【2人のこちらを探すような動きに、びくうっと全身で飛び跳ねると、慌てて踵を返す】
【長い髪で視界が遮られているせいか、走っているにしてはかなり慎重な足取り】
【それでいて時折、顔を両手で隠しながら後ろを振り向くものだから、まるっきり前に進みやしない】

【夜中、顔を隠してうろつく女子高生のことを、高校生たちは自殺した少女の霊と噂している】
【慌てて逃げてゆく姿は、まさにその噂のものとそっくりにも見える】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 00:31:51.00 ID:E7LHWDRAO<> >>865
「十夜がいたら、迷子かもしれない、飼い主を探そうって言うんだろうな。」

十夜がこの場にいたら、間違いなく言うだろう。

「…飼い主でも探してみるか?帰巣本能ってのもあるだろうし、問題ねぇと思うけど。」

すっかり普通の猫扱い。
目が金色なのは気づいていたが、そこと毛の色と模様以外は普通なので無理はない。


>>866
「そんなところにいたのか。」

(って、何やってんだ?顔隠して…ん?顔を隠した女子高生って…まさかな…)

七郎の耳にもその噂は伝わっていた。
十夜は中学生だが、体質が体質なためそういった噂には人一倍敏感だ。だから、高校生の間の噂も知っていた。そして、十夜の兄のような存在の七郎にももちろん伝わる。

<> 丑三夜中<><>2011/06/16(木) 00:39:35.33 ID:8xsHroCDO<> >>866
「ほう…逃げる気が…しかしこちらにも手はある」
「いけ!ゆかりん!あの女の子を捕まえるんだ!!」

逃げる少女を見て、ビシッと指を指しながら猫に命令、ついでに勝手に命名
当然、猫はそんな命名には従わず大きな欠伸をした

>>867
「…そうだな、暫く内で預かるか、一応探偵業もやっているし、もしかしたら迷い猫を探す依頼でも来るかもしれん」
『ニャン』

とりあえず、この猫は自分で預かる事にした、ペット禁止でもないので苦情はこないだろう
それ以前にいつの間にか自分にずっとついて来たのだから、そうしなくても家までついて来たかもしれない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/16(木) 00:48:35.69 ID:VApxHwaGo<> >>867-868
【後ろを振り向きながら走り、横道へと向かう】

『ごすっ』

【曲がった地点は丁字路にはわずかに足りず、鈍い音と共に顔を壁の角にぶつける】

〜〜〜〜!!!

【顔を押さえて、ばたりと倒れこむ】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 00:54:00.30 ID:E7LHWDRAO<> >>868
「それがいいな。あんたに懐いてるみたいだしな。」

と、猫の様子を見て言った。


>>869
「お、おい…大丈夫か?」

痛そうだなと思いつつ言う。 <> 丑三夜中<><>2011/06/16(木) 00:59:12.78 ID:8xsHroCDO<> >>869
「ドジッ子かよ!」

よくわからない無駄な突っ込みをいれながらも、素早く少女に駆け寄っていく

「お怪我はありませんかお嬢様?この悪い壁は朝にでも破壊して二度と頭をおぶつけにならないようにしましょう」

少女の近くに片膝を着いてふざけた口調で話し掛ける
気になるようで、猫が興味津々な様子で少女の顔を覗き込んだ

>>870
「おーい、お前もこっち来てくれー」

余りに怪我が酷かった場合、一人で対応も難しいので七郎を呼ぶ
多分人間の姿にもなれるだろうし、いざと言う時の手にはなるだろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/16(木) 01:04:28.63 ID:VApxHwaGo<> >>870-871
大丈夫です……ちょっと目測を誤っただけなので!
ほんと大丈夫ですから気にしないで下さい!

【幽霊にしては明るい声で、焦ったように答える】
【その間も、両手で顔を覆ったまま――ぶつけた場所を押さえるというよりは、顔全体を隠すように】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 01:12:30.78 ID:E7LHWDRAO<> >>871
「ああ、今行く。」

走って七郎が、そちらへ向かう。

「大丈夫そうか?」

>>872
「なら良いけどよ。気をつけろよ。」

(顔のことは聞いちゃまずいか?)

と、顔を隠す行為を不思議に思った。 <> 丑三夜中<><>2011/06/16(木) 01:19:55.73 ID:8xsHroCDO<> >>872>>873
「…ほう、そうか…」

大丈夫だ、とこんなに元気に言うなら大丈夫なのだろう、そう判断する
そうと解れば他が気になるこの男、好奇心と悪戯心が彼をつきうごかす

両手を広げワキワキと動かしたかと思うと、容赦なくその手を少女の腋に
くすぐる事で腕をどかし、顔を顕わにすると同時に女の子におさわりすると言う正に一石二鳥な作戦に出た <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/16(木) 01:25:20.04 ID:VApxHwaGo<> >>873
はい……ご迷惑をかけました、気をつけ……!?

>>874
【慌てて、くすぐる手を払う】
【あまりに慌てたものだから、手だけではなく、顔に被っていた髪も乱れて払われ……】

【ぎょろり、とした大きな目が、顔の中心から1つだけ覗いていた】

【少女の口の表情が、しまった、とでもいうようにこわばる】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 01:32:45.29 ID:E7LHWDRAO<> >>874
「おいおい…」

(一応警戒くらいって、必要ねぇか。妖気の量も大したことはなかったし、噂ってのはあてにならないしな。)

警戒くらいした方が、と言いかけたが必要ないと判断し口を閉じた。


>>875
「うおっ!」

(ほ、ほらな、噂ってのはあてにならない。噂とは関係のなさそうな妖怪だしな。)

少し驚いたが、すぐに冷静さを取り戻した。
<> 丑三夜中<><>2011/06/16(木) 01:37:44.77 ID:8xsHroCDO<> >>875>>876
少女が腕を動かすと、ヒョイッと手を離す
表れた顔を見ると驚く所か合点が行ったように頷いた

「成る程、一つ目小僧か…あれ?小僧?」

女なのに小僧とはこれいかに、いやもしかしたら女装少年かもしれない

「まあそれはそれとして、さっきから何を見ていたか教えて貰おうか」

こんだけ怖がらせてからじゃ教えて貰おうも糞もない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/16(木) 01:48:23.00 ID:VApxHwaGo<> >>876-877
【大きな目の目尻が、今にも泣き出しそうに充血する】

【が、自分の顔を見てもそう驚かない2人を見ると、最早顔を隠すこともなく、不思議そうに2人を交互に見つめる】

ああ……なんだ、お仲間さんだったんですね【ほっと一息】

何を見ていたって、ほら……さっきかわいい猫ちゃんがいたじゃないですかー
あまりにかわいかったもので、つい……
ほら、でも私ってこんなでしょ? 驚かせちゃ悪いなあって思って物陰から見てたんです
けど結局、驚かせちゃいましたけどね? でもまあ今回は結果オーライですね!
こういう事がないように、いつもは人のいない時に出歩くんですけど、
やっぱり自分から出て行っちゃったら意味ないですよね、失敗失敗!
【安心したのか、饒舌に喋り出す】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 01:55:53.22 ID:E7LHWDRAO<> >>877,>>878
「一つ目ねぇ…初めて会うな。
俺は、確かに妖怪だし、こいつは信頼できる人間だから安心しろよ。」

と言って、笑いかける。

「しかしまあ、急によく喋るな。」

<> 丑三夜中<><>2011/06/16(木) 02:02:53.14 ID:8xsHroCDO<> >>878>>879
「おおう、よく喋るな」
「ちなみに俺はお仲間じゃないけどな、慣れちゃってるけど一応人間、退魔師やってるよん」

フヒッ、と気味悪い笑みを浮かべてピースサイン

「猫か、やっぱ猫か、俺じゃないのか、畜生猫になりたい」

「…そういや、あいつはどこ行っ―――」

その刹那、である
何処に隠れていたか例の猫が、油断した丑三から帽子をくわえて奪い取った

「―――なん…だと…?」

余りにも一瞬、ほんの数分の一秒
丑三の大切なそれを盗んだ猫は、ちらりと振り向くと走り出す

「…んまてぇぇぇええい!!」

無くしてはいけないそれを盗られる訳にはいかないと、その場の挨拶も無しに猫を追い掛け走り出す丑三
瞬く間に、一人と一匹がその場から消えた

/すみません、先に落ちさせていただきます
/お疲れ様でした <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2011/06/16(木) 02:12:18.47 ID:VApxHwaGo<> >>880
えっ……あっ、えっと退魔師さんもかっこいいですよ!?

【どう聞いても取ってつけたようなフォロー……をした頃には、既に丑三は駆け出していた】

>>879
【路上から起き上がると、ぺこりと会釈】

面と向かって話せる相手なんて少ないですから、つい……

【頬というか瞼の下というかをすこし赤くする】
【口には出さないものの、安堵と嬉しさの入り混じった目で見つめる】

まあでも、今日はこの辺で失礼します
あんまり長話してると普通の人に見つかるかもしれないので……
また、お会いする機会があったらお会いしましょう、では!

【髪を整えて顔を再び隠すと、またふらふらと危なっかしく去ってゆく】 <> 七郎<><>2011/06/16(木) 02:18:01.88 ID:E7LHWDRAO<> >>880
「猫速ぇな…まぁ、猫と仲良くなー!!あと、今日は色々とサンキューな!
聞こえたか?」

走って行く丑三に向かい、大きな声でそう言った。


>>881
「そうか、もっと話せる相手が増えるといいな。ま、俺でよけりゃ話し相手くらいにはなってやるよ。
じゃあな。」

と、手を振り去って行った。

<> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 21:09:08.40 ID:Gz6W3ZJEo<> 田中家に引き取られてから数日が経過していた。
某電気鼠の着ぐるみの中にきちんと服を着るようになった天ッ堕は、
梅雨明けを目前に控えた雨上がりの空を見上げながら、てくてくと商店街を歩いていた。

「……」

水溜りを踏むと、ぱしゃりと飛沫が跳ねる。
以前までは裸足であったが、やはり引き取られてから貰った黄色い靴が、小さな少年の足を守っている。
しかし、道行く人が、天ッ堕と同じタイミングで水溜りを踏むと、

「あでっ!? ……??」

びくりと体を跳ねさせて、一体何だと周囲を見渡す。
まさか目下を素知らぬ顔で通り過ぎる少年が犯人だとは思いもしないだろう。
幼い雷獣の漏電癖が治るのには、まだまだ時間がかかりそうだ。 <> 夜行集団<><>2011/06/16(木) 21:16:33.72 ID:JhsOthjP0<> >>883
雨の日に片方は黒の、とてもシックでシンプルな様相の傘を差し、
片方はピンクで、ふりふりなどがあしらわれたお嬢様風かつキュートな様相の傘を指している、
まるでカップルのような二人組みが天ッ堕の方に歩いてくる。

しばらくして2メートル程のところに近づいてみると、
二人は一人きりで歩いている少年にようやく気付いたようで、辺りに居るはずの親を探した。

しかしそれに該当しそうなものは居ない。

「僕?おとうさんか」
『おかあさんはいないの・・・?』

治安はそこまで悪くなくとも、心配を掛けてしまうのは彼女達の癖なのだろう。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 21:27:45.84 ID:Gz6W3ZJEo<> >>884
二人組に話し掛けられて、天ッ堕は歩みを止めた。
顔を見上げて、「?」と小首を傾げる。
透明なガラス玉のような茶色の瞳が、日子神と雨子神を映した。

一人で居るということは、もしかしたら黙って家から抜け出したのかもしれない。

「父様は、上」

雲の多い青空を指差す。
天ッ堕のいう父様とは雷神のことだ。
この言い方では、一般人には何かと誤解を招きそうではあるが。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/16(木) 21:36:57.74 ID:JhsOthjP0<> >>885
天ッ堕は振り返る。
その時に姉妹は、この目の前に居る子供がもしかしたら、自分達の心配も要らなかったのではないかと思った。
二人は彼のその妖気を感じ取ったのだ。
しかし妖の子とはいっても子供は子供、そのため二人の天ッ堕に対する保護欲は刺激されている。

「上・・・?」
『と言う事は・・・空の妖怪か・・・』

二人とも天ッ堕の種族は知らないので、そのワードによって浮かんだイメージは雛であった。

『お父さんは迎えに・・・来ないのか・・・?』

そして巣から落ちた雛と言う、当たらずも遠からずな結果に落ち着く。

雨子神がそう言ったのはこの子が雛だと思っていて、それだったら母性父性の強い鳥なら、
まず一目散に探しに来るだろうと思ったからだ。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 21:52:58.13 ID:Gz6W3ZJEo<> >>886
天ッ堕はこくんと頷く。

「アマツキが大きくなったら帰る」

雷と共に落ちてくる雷獣は、力を蓄えて雷と共に帰る。
しかし、自分がどういう種類の妖怪であるか伝える術を、今の天ッ堕は持たなかった。

すると突然、青白い光が、ぱちぱちと天ッ堕の着ぐるみから放たれた。
一抹の小さな稲妻が、隣を通り過ぎた女性にぶつかる。

「きゃっ!? な、なに??」

女性は慌てて辺りを見渡し、疑問符を浮かべながら再び歩いていった。
天ッ堕自身は漏電したことを分かっておらず、やはり素知らぬ顔だ。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/16(木) 22:05:05.16 ID:JhsOthjP0<> >>887
「大きく・・・?」
『ああ・・・雷獣だったか・・・ゴメン・・・』

大きく、と先ほどの小さな発電、その符合によってようやく穂産姉妹は天ッ堕の正体を知った。
だが別に知ったからといって対応に何か変化があるのでもないが、
そこはちゃんと知っておいたほうが話しやすいので、二人は少し安心する。

「って危ないですよ!!」

と女性にではなく天ッ堕に少し焦ったように叱る日子神。
子が可愛いと言っても、叱る事もするのが親と言うもの。だから母性の強い二人も、
甘やかすだけでなくしっかり叱る事はできるのだ。

『・・・子供だからしょうがないところはある・・・
 でも・・・そのいき過ぎな静電気は困ったものだ・・・』
「なにかゴムのような絶縁体のアクセサリーを買ってあげてはどうかしら、雨子神?」

天ッ堕の正体が静電気一つで発覚してしまっても困ると、対処法を思案していた雨子神に、
日子神は明るくゴム手袋などの減雷効果のあるもの買い物を勧めた。

『それはいい・・・僕・・・?
 これから僕達と一緒にお買い物に行かないか・・・?』

それから雨子神は天ッ堕の目線まで腰を下ろし、笑いながら話しかけた。

/スイマセン次のレスは遅くなります <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 22:18:36.38 ID:Gz6W3ZJEo<> >>888
「!?」

突然声を上げられて、驚いた天ッ堕は思わず一歩飛びのいた。
天ッ堕としては、何故怒られたのか分からないのだから、当然といえば当然だ。
怯えたように眉尻が下がっている。

「……かいもの?」

腰を降ろした雨子神からの提案に、天ッ堕が反応を示す。
家で買い物という単語を聞く時は、いつも皆楽しげなのを覚えているからだ。

「ん……」

少し控えめに、天ッ堕は頷いた。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/16(木) 22:35:11.46 ID:JhsOthjP0<> >>889
「決まりですね!」
『では僕の手を握って付いて来て・・・』

日子神はパンッと胸の前で両手で軽く拍手を打った。
そして雨子神の方は、天ッ堕に先ほどの笑顔のままで右手を差し出す。
手を繋ぐ役目は日子神もやりたかったようで、しばらく言い合いに為ったが結局、
天ッ堕の両手をそれぞれが繋ぐということになった。

それに伴う静電気問題は心配御無用である。
なぜならとあるゲーム風に説明すると、効果は無いようだ・・・、だからだ。

そしてしばらく歩いていたらあるホームセンターについた。
減電用具は何処にあるかは見当もつかないものの、
ここならある程度のものなら揃っているだろうという判断である。

「お目当てのものを探す前にですね、なにか飲みたいものはありますか?」
『近いとは言え・・・その体では疲れると思う・・・』

ゴムなどのコーナーに良く前に二人は天ッ堕にそう聞いた。
先ほど叱る事もできるナントかカンとかいっていたものの、甘い事は甘いのだ。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 22:45:21.10 ID:Gz6W3ZJEo<> >>890
右手を差し出された天ッ堕は、くるっと目を丸くした。
地上に来てから、手を握るという行為の意味はなんとなく覚えたのだが、
漏電癖があるため、以前のメリーの時のように、天ッ堕はそれをすることができなかったのだ。

だから、雨子神に手を差し出された時、天ッ堕は戸惑ったような反応を示した。
けれど繋いでみても、二人に変わった様子は見られない。

「♪」

初めてできた、手を繋ぐという行為。
二人の手の暖かさに、天ッ堕は上機嫌そうな顔をした。


ホームセンターに辿り付くと、二人の真ん中にいる天ッ堕は、大きな建物を見て目をキラキラさせた。
雷獣の本能ともいうべきか、大きい建物や高い物を見ると、反応してしまうようだ。
興奮気味の天ッ堕に、二人が尋ねる。

「??」

すぐに中に入りたいのか、天ッ堕はふるふると首を振った。
自身の体力の限界が分からないのは、子供ならでであるが。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/16(木) 22:57:12.74 ID:JhsOthjP0<> >>891
目を輝かせる天ッ堕を見ながら、穂産姉妹には込み上げて来るものがあった。

「『(ギュ、と抱きしめたいな〜)』」

それは母性から来るものなのか、それとも別のパトスなのかは分からないが、
それでも露希のような大胆さが無い二人にとっては、ただその手を強く握るだけである。

あまりにも興味津々な天ッ堕に、二人がこの建物を建てた訳ではないのだが、
とは言っても少し誇らしげに、ドリンクコーナーが設置されている場所に向かう。
なにが好物かは知らないので、電気つながりで炭酸飲料を手に取り、天ッ堕に聞いた。

『なにが飲みたい・・・』
「好きなのを選んで良いんですよ〜」 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 23:08:32.00 ID:Gz6W3ZJEo<> >>892
ドリンクコーナーの設置された棚へ出向く。
ひんやりと漂う冷気が、湿気た空気で蒸した着ぐるみを着る天ッ堕は心地よい。
色とりどりのペットボトルが並んでいるのを、天ッ堕は目を瞬かせながら眺める。

と、棚の中段にある黄色の炭酸飲料に目を引かれたらしく、天ッ堕はぐいっと背伸びをした。
腕を伸ばすも、身長が足りず、それには届かない。

「んっ、むーっ」

眉をしかめながら、ぴょんぴょん飛び跳ねるその姿は、ただの幼児だ。
特徴的な耳のついたフードもいつの間にか取れて、ブロンドの短髪が露わになる。
感情が高ぶっているためか、その指先から僅かに電気が漏れ出しはじめていた。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/16(木) 23:17:07.47 ID:JhsOthjP0<> >>893
届きそうで、届かない。
そのペットボトルと自身との切ない距離に翻弄されている天ッ堕の姿に、
穂産姉妹両名ともハートを打ち抜かれていた。

二人ともいつも同じペースの息が荒く吐かれ、その目はらんらんとしている。
そして今まさに飛びかかろうとする時、天ッ堕の静電気だ。

「ほら、私がとってあげますよ」

さらっと優しくその容器を取りだして、笑顔で天ッ堕に渡そうとする日子神の顔も、
その裏ではまだ見つめていたかったなと見れんたらたらである。

『じゃあ・・・これを先に買って・・・そろそろ目当てのコーナーに行こう』

雨子神はそれでも本来の目的は果たす事は忘れていないようであった。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 23:30:24.85 ID:Gz6W3ZJEo<> >>894
お目当てだった炭酸飲料の容器を手渡され、天ッ堕は「!」とそれにしがみ付いた。
小さな腕で抱え込みながら、日子神の目をまっすぐ見つめる。
こういう時、なんといえばよかったのか。
それが思い出せずに、天ッ堕はずっと黙っていたのだが。

頬の辺りまで描かれた文様を隠すように、天ッ堕は再びフードを被り直した。
買ってもらった炭酸飲料を一口飲むと、その刺激に驚いたのか、また目を丸くさせる。
しかし、ピリピリくる感覚は嫌いではないらしく、こくこくともう三口程飲むと、
ペットボトルを袋に納めて、自分の腕に掛けた。

「……」

そして、今度は自分から、二人に手を繋いでほしいと催促するように両腕を上げた。
二人を見る期待で満ちた目は、きらきらと純粋に輝いている。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/16(木) 23:43:21.28 ID:JhsOthjP0<> >>895
穂産姉妹はしばらく、天ッ堕の炭酸デビューをただ黙って見守っていた。
いや、ただ黙っていたのではなく、ひたすらににやにやとしそうになる自身の表情筋と戦っていたのだ。
しかしそれもどうやら今回は勝利を収めたようで、にこやかな笑顔であった。

大事に取っておくのか飲みきれなかったのか、どちらにしても炭酸をしまい、
こちらに手を差し出す天ッ堕の姿に、本日3度目のビッグウェーブが到来した。
天ッ堕は電撃を使っていないというのに、二人の頭の中には雷が落ちていた。

「じゃ、じゃあ」
『手・・・繋ごうか・・・』

息は荒くなり、目はふたたびらんらんとしていても、穂産姉妹が襲い掛かったりするような事は無かった。
なぜならふたりともお互いの二の腕を、あらん限りの力でつねっているからだ。
痛みにより色を打ち消す。
まるで禅宗のような事をする、涙ぐましい神崩れの姿がそこにはあった。

そしてなんやかんやで目当てのコーナーに到着である。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/16(木) 23:54:41.82 ID:wNGVl1RSO<> >>896
二人がビックウェーブに耐えていることなど露知らず、再び三人の手が繋ながれる。
一見カップルに見えるような二人と、電気鼠の着ぐるみをきた小学生ほどの幼児。
奇妙な三人組だが、見ようによっては、親子にも見えるかもしれない。
まだ上手く言葉にはできないが、心地よい感覚に、天ッ堕は嬉しそうに腕を揺らした。


目当てのコーナーに着く。
大きな陳列棚の一角にあるその場所には、耐電ゴムや電気絶縁マット、手袋・長靴といった絶縁製品が並べられていた。
どれも見たことのない商品を、天ッ堕はしげしげと眺める。
思わず指先から静電気が放出されたが、絶縁マットはそれを消してしまった。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/17(金) 00:04:45.23 ID:HwiIa6U20<> >>897
絶縁マットの効果に満足した日子神は、軽く天ッ堕の頭を撫でながら、
その中にあるいくつかのものを取りだした。
それはゴム手袋だったり、リストバンド状のものだったりと様々だが、
どれも天ッ堕の静電気対策には一役買ってくれそうな代物ばかりだ。

『さて・・・このマットが一番よさそうだけど・・・』
「日常からそれを体に巻くというのも・・・」

「何のキャンペーンかと思いますね」『何のキャンペーンかと思う・・・』

「僕はこの中でなにが良いですか?」

そして日子神は手にとってそれらを天ッ堕に見せ、
気に入ったものを取らせようとする。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/17(金) 00:16:25.07 ID:HBf571DSO<> >>898
天ッ堕はどれも興味深そうに商品を覗いていたが、不意に一つの手袋を手に取った。
ゴム製の絶縁グローブだが、指先が出ているタイプで、これなら手も動かしやすそうだ。

「……」

それをじーっと見つめたり、ぺたぺた触ったりしている。
何故か分からないが、どうやら気に入ったらしい。

子ども用サイズの物を手に着けてみると、静電気もきちんと押さえられていた。
恐らく電気が指先に伝わるまでの間に遮断されるのだろう。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/17(金) 00:28:09.62 ID:HwiIa6U20<> >>899
ただ見つめている様子なので、これが一番気に入ったのだろうと二人は判断して、
本当にこれで良い?と最終の確認をしてから二人はレジへと向かう。

その途中、ふと聞いておかなくては行けない事を思い出した日子神。

「ところで、どこにすんでいるの?」 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/17(金) 00:40:58.84 ID:HBf571DSO<> >>900
相変わらず二人に手を引かれながら、レジまで歩いていく。
日子神に思い出したように尋ねられて、天ッ堕はぴたりと足を止めた。

「どこにすんでいるの」

言葉を鸚鵡返しした後はしばらく黙っていたが、
何を聞かれたのか、何と返せばいいのか迷っているためだろう。
やがて、天ッ堕は口を開いた。

「メリー、と、ユウのところ。……タナカ、たくさん」

はっきりしない口振りで、もごもごと応える。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/17(金) 00:48:22.38 ID:HwiIa6U20<> >>901
一瞬天ッ堕が固まったので、穂産姉妹はすこし冷や汗が浮かぶ。
もしかしたら自分達は地雷を踏んでしまったのかと思ったからだ。
しかしゆっくりと話し始めたので安心しながら聞く事ができ、
知った名前、まだ確定はできていないが公園であった少年、そしてその少年の家にいるという少女、
そして凡庸ながらも決して普通さの見せない田中という苗字に、
ふたりの記憶野は反応した。

「よかったですよ」
『多分知り合いだ・・・このまま知らないで育て親を探す事に・・・専念しなければいけないと思った・・・』

そしてできれば内に招きたかったなと思いながらも、安心してレジでお金を払う。
会計は、別に細かくは必要はないが、どちらにせよ二人は天ッ堕に興奮させてもらったので、
決して損になるようなことはなかった。

「じゃあ、田中君の所に行きましょうか」 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/17(金) 01:01:46.48 ID:HBf571DSO<> >>902
買ってもらった絶縁グローブをさっそく手に嵌める。
赤色のそれは、黄色い電気鼠の着ぐるみによく似合っていた。
それに、静電気も無事抑えられ、道行く人たちに放たれることもなくなった。
会った時より上機嫌そうな天ッ堕は、二人に手を繋がれ、今や自宅である田中家を目指す。

炭酸飲料も、ペットボトルの三分の一程がなくなった頃、
天ッ堕は不意に足を止めた。
なにやら、通行人の声に耳を傾けているようだ。
商店街で買い物をする人たちの声に。

そして、何かを思い出したように、はたまた今気が付いたかのように。
天ッ堕は曇りのない真っ直ぐな瞳で二人を見上げると、

「ありがとう。アマツキ、ふたり、好き」

感謝を述べる時の言葉を、二人に送った。
そして、好意を述べる時の言葉も添えて。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/17(金) 01:10:01.68 ID:HwiIa6U20<> >>903
突然止まるとは思っていなかったので天ッ堕の少し前に行ったため、
振り返ってみる形になった穂産姉妹に飛び込んできたのは、
純真で、まったく濁りの無い言葉。

「『どういたしまして』」

そしてその言葉に二人はふっとやすらかな笑みを浮かべ、二人が包み込むような形で、
天ッ堕を優しく抱きしめる。
その時の心にあったのは今までのものとは違い、どこまでも純真な母性であった。

そしてその耳元でふたりは

「今から話す事は偏見と」
『愚かな憶測に満ちた事だから・・・覚えなくても分からなくてもいいけど・・・』 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/17(金) 01:18:33.88 ID:HBf571DSO<> >>904
「……!」

ふわり、と抱き締められ、
天ッ堕の鼻を、甘いにおいがくすぐる。
それは、天ッ堕にとってはあまり感じたことのない、「母親」の愛。
ケーキみたいに甘く、太陽のように暖かい、とても心地よいもの。
それがくすぐったく、天ッ堕は思わず腕の中で身をよじった。
くしゃくしゃの短髪が、着ぐるみの中で揺れている。

二人の純粋な母性に、目を閉じ、体を預けながら、

「……?」

天ッ堕は二人の声に耳を傾ける。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/17(金) 01:29:02.19 ID:HwiIa6U20<> >>905
「『穂産姉妹が死ぬまでは神にはならないで』」

それだけ言うと二人は天ッ堕の体から、もの惜しげに、寂しそうに離れる。
その時の顔も笑顔であったが、優しい雰囲気はしっかりとそこにあったが、
その薄皮一枚先にあるモノは、天ッ堕は感じることはできなかったかもしれない。

「アマツキ、ちゃんでしたっけ?」
『君に・・・これを・・・』

日子神と雨子神は、天ッ堕の手を優しく手にとって、
口付けするかと思うほどに近づけてから、そよそよと天ッ堕には聞こえないような声で言霊を発し始めた。
<> 天ッ堕<>sage<>2011/06/17(金) 01:34:38.18 ID:HBf571DSO<> >>906
「……??」

その言葉の意味や、寂しげな顔や、
笑顔の奥に隠された真意も、
今の天ッ堕には感じ取ることができなかった。
ただ真っ直ぐな瞳のまま、首を傾ける。

手を取られても、何をされるか知らない天ッ堕は、抵抗のないままだ。
不思議そうな顔をして、二人を見ている。
決して目は、離さなかったけれど。 <> 穂産姉妹<><>2011/06/17(金) 01:43:33.81 ID:HwiIa6U20<> >>907
言霊の唱え終えると、二人ともあの時買い物に誘った時と同じように、
天ッ堕の目の高さまで腰を下ろし、笑顔で話しかけた。

『まだ・・・その言葉の意味も知らないと思うけど・・・』
「私達が今あげたそれは、児童安全、と言うのですよ」

先ほどの言葉の時とは違って、今はなんの裏も意味もない優しい雰囲気が二人にはある。

「アマツキちゃんの前に恐ろしいものが来た時に」
『僕達の力は・・・絶大的な力と、愛でもって・・・君を守ってくれる・・・』

そしてやりたい事は終えた様で、すくっとそのまま立ちあがった二人は、
また天ッ堕に手をお互いに差しだし、帰り道を行こうとしていた。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/17(金) 01:48:23.23 ID:HBf571DSO<> >>908
「……?……」

やはり、言葉の意味が分かっていない天ッ堕は、首を傾げるばかり。
けれど二人の優しい気持ちは、しっかりと受け取っていた。
差し出された手を握りしめ、明るい茶色の瞳を瞬きさせる。
そして、今日一番の微笑みをみせると、
三人で帰り道を歩き出した。

//絡みありがとうございました <> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 21:31:47.98 ID:cke3hte6o<> 黒いズボンに白いシャツの小柄な少年が、食料品の買出しに街を歩いていた。
居候中の喫茶店、ノワールの店長にお使いを言いつかって店を出てきた黒蔵である。

「…コーヒーシュガー、業務用のを2つ。あと、ぱるめざんちーず?」

お買い物メモを覗き込みながら、これから買うべきものを確認しているようだ。

『買い物の帰りに公園に寄りましょう。久しぶりに泉の様子も見たいんです』

黒蔵のシャツの胸ポケットから小さな姿が話しかけている。
人とすれ違うときにはポケットに隠れ、人目が無ければ顔を出す
それは掌サイズの小さな蛇神だった。 <> 澪<><>2011/06/17(金) 21:37:49.27 ID:YlibldwH0<> >>910
緑色のパーカーに、青いジーンズを着た青年がよたよたと歩いていた。

「………(気持ち悪…)」

なぜよたよたしているのか?それは彼の手を見れば分かる。
彼が持っていたのは桃水。
以前、叡肖に桃汁を飲まされよたよたになっていたので、桃に慣れようとしたらしい。

ふと感じた妖気に足を止め、木の陰に隠れて様子を見る。 <> 瞳<><>2011/06/17(金) 21:49:26.62 ID:h/muxT8AO<> >>910
「黒蔵…と、もしかして…」

歩いていた黒い着物の少女。立ち止まり、驚いた表情で黒蔵の方を見る。

「蛇神様!蛇神様ですよね!?」

驚いているが、嬉しそうな表情をしている。


>>911
嬉しさのあまり周囲には気がまわらなかった。
妖気すら気づかないだろう。

<> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 21:53:05.53 ID:cke3hte6o<> >>911
《なんだかおかしな妖気を感じますね?敵意はないようだけれども…》

ミナクチは胸ポケットから顔を覗かせて、あたりを見回す。
買い物メモを睨んでいる黒蔵のほうは、隠れた澪に気づいていない。

「…こんでんすみるく?って何だろうコレ」

こういうよくわからないものを買うときは、店員に聞かなくてはならない。
ヘマをしないと良いのだけれど、とちょっぴり憂鬱になって黒蔵は溜息を付いた。

>>912
「あれ?瞳?」

名前を呼ばれてあたりをきょろきょろと見回した黒蔵は、歩いてくる黒い着物の少女に気づく。
その胸ポケットから覗いたミナクチも、彼女のほうへ手を振って見せた。

『瞳さん、お久しぶりです』

小走りに黒蔵が瞳の傍に駆け寄る。
澪の隠れた木の傍を通りすぎたとき、ちらり、とミナクチが澪のほうを見た。

《あの人、かな?》 <> 澪<><>2011/06/17(金) 22:00:10.03 ID:YlibldwH0<> >>912
「……(黒い着物…?夷磨璃君の言ってたししょーってやつかな?)」

出方を見ているようで、未だに瞳を見ている。
ストーカー、というべきである。
>>913
自分の傍を通り過ぎて行く妖気。
それは、澪にとっては決していい物とは思えない物だった。
どこか同じような、正しくて、神々しくて、透き通ったような…。
それは一瞬にして神格と分かる物だった。

酔っている為に気づかないが、凄い量の妖気が出ていた。 <> 瞳<><>2011/06/17(金) 22:06:45.79 ID:h/muxT8AO<> >>913
「おお!やはり、蛇神様でしたか!お久しぶりです!
あ、蛇神様が元に戻ったということはもしかして…」

紫狂との決着がついたのだろうかと、尋ねてみる。


>>914
「妖気!?こんな街中で!?
何者だ!」

喜んでいてもさすがに大量の妖気は感じる。
その妖気に向かって、叫ぶ。
<> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 22:11:49.83 ID:cke3hte6o<> >>914
木の傍を通り過ぎた時、黒蔵は寒気がするような妖気を感じた。

「…澪?」

妖気の質に覚えはある。けれど…。

〔なんだ、アイツか?〕

「いいいいま仕事中だから、出てきちゃ駄目絶対。猫耳つけるよっ」

澪の妖気を感知した巴津火に言っているのだが、瞳の目には
黒蔵が不意に変な事を口走っているように見えるかもしれない。

>>915
『決着といっていいのかは判りません、紫狂は少し存在が変わったようなのです。
 誰かは知りませんが、窮奇との主争いに勝利したかあるいは彼女を止めたのでしょうね。
 窮奇は生きているのですが、もう百鬼夜行の主ではないようです…おや』

瞳の問いに答えていた蛇神は、彼女が澪に呼びかけるのを見守った。

『流石に、黒蔵も貴女も彼に気づきましたか』 <> 澪<><>2011/06/17(金) 22:18:59.24 ID:YlibldwH0<> >>915-916
ちらり、と木から顔を覗かせ皆の前に現れる。

「……気付かれました…か。」

頭を下げて、挨拶する。敵意は無い。
しかし、頭を上げた時、少しだけミナクチを睨んでいた。
怯えたような、警戒したような眼は、桃水を飲んだにも関わらずミナクチをきちんと捉えていた。

「……お二人は誰?」

瞳とミナクチに問いかける。 <> 瞳<><>2011/06/17(金) 22:27:11.66 ID:h/muxT8AO<> >>917
「私は、瞳。妖刀さ。」

敵意はないとみて、落ち着いて自己紹介。

「あなたこそ何者なんだ?凄い妖気だったが…」

若干の警戒と不信感を表し、聞いてみる。


>>916
「あの窮奇を…それに変わったとは…
にわかには信じられないような話ですが、蛇神様が元に戻っているのですから確かなんですね。」

ともかく、もう紫狂と争う必要が無いのだと安心した。

(良かった…窮奇に勝ったという者が気になるが、終わったんだな。
でも、これからも妖怪と人間の共存できる世界のために頑張らなくちゃな。
それに、夕の助けになってあげたい。後は、夷磨璃の師匠としても頑張らなくてはな。)

まだまだ、瞳のやらなくてはいけない事は多い。
だけど、きっと大丈夫。以前と比べ瞳は大きく成長したのだから。
<> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 22:35:07.88 ID:cke3hte6o<> >>917-918
ミナクチは胸ポケットから出て、黒蔵の肩に立って澪と向き合った。

『私は蛇神のミナクチと申します。黒蔵は貴方の事を存じ上げているようですね』
「澪、この蛇神が俺の…抑えでもあり、俺が仕えてる水神なんだ」

ミナクチの言葉に頷いて、黒蔵がそう付け足す。

『少なくとも、紫狂についてはもう安心して良いと思いますよ』

ミナクチは瞳にそう保証した。

「ねえ蛇神。澪の手を返して上げられないかな。
 実は俺が鳴蛇だったときに、澪が自分の手を食べさせてくれたんだ。
 それが無かったら俺、また大事な人を食べるところだった」

黒蔵が、そう言って表情を翳らせた。沈んだ視線の先は、澪の義手である。

(桃…?)

澪の手にあるペットボトルの文字に、黒蔵が気づいた。

「澪、まさか桃飲んだの?自分で!?」

黒蔵には自殺行為としか思えない。 <> 澪<><>2011/06/17(金) 22:44:00.24 ID:YlibldwH0<> >>918
「あぁ…やっぱり師匠さんか……、夷磨璃君の友達の澪です。

話は夷磨璃くんからたくさん聞いてます…。まぁ気にしないでください…。」

師匠さんだから警戒する必要ないかな?と思って、にこりと笑った。

>>919
「蛇神……。」

予想は的中していた。
だから、怖かった。少し前まで殺戮を繰り返していた自分に何かするんじゃないかと。

「…いや、手はいいよ。結構コレ気に入ってるし…。

え、うん…。やっぱり桃水でもきついね、凄く気持ち悪い…。」

義手の方は使い慣れてきたみたいで、擦れる金属音も聞こえないほどにまでなっていた。 <> 瞳<><>2011/06/17(金) 22:54:07.48 ID:h/muxT8AO<> >>919
「そうですか…本当に終わったんですね。良かった…」

再び安心し、安堵のため息をした。


>>920
「夷磨璃の友達か…なるほど。なら、安心だな。」

(それにしても私、夷磨璃には随分気に入られてるみたいだな。なんだか嬉しいな。
しかし、黒蔵とも知り合いなのか…友達という雰囲気でもなさそうだが、一体どんな関係なんだ?)

<> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 23:00:50.62 ID:cke3hte6o<> >>920
『そんなに怯えなくて良いのですよ。私は貴方に何もしません。
 黒蔵の言うように、貴方は良い事をしてくれましたから』

他に罪を背負っていても、今その重みから逃げようとしていないのなら
それを咎め立てるのはこの蛇神の役割ではない。
澪の罪を裁き、代償を課すのはまた他の者の役割である。
そう、たとえば零のような。

『手は良いのですか?では別のものでお礼をしましょう』

黒蔵に澪の手を取らせると、蛇神はそこで澪に触れた。
黒蔵の掌から蛇神に呼び出された水が溢れて零れる。

『貴方の桃酔いを肩代わりしましょうか』

澪にミナクチがそう提案した。
黒蔵のほうは、瞳と澪の話に興味を惹かれたらしい。

「師匠って瞳が?夷磨璃?
 瞳と澪は、その人で縁があるんだ?」

夷磨璃と巴津火とは一度喫茶店ノワールで会っているのだが、
黒蔵は巴津火が酔っ払った後の着せ替え中からしか出てきて居ないので
夷磨璃が誰なのかを知らない。 <> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 23:01:22.38 ID:cke3hte6o<> //安価ミス、>>921まで含みます。 <> 澪&???<><>2011/06/17(金) 23:10:21.74 ID:YlibldwH0<> >>921-922
「……お願いします。」

ふぅ、と安心し、ミナクチに対する警戒心が弱まった。
ミナクチに再び頭を下げて、お願いした。

一方で…白い髪の青い着物の少年が道に迷っていた。

『(酔った澪さんを付けてきたのに迷っちゃったよぅ…)』

半べそをかいた少年がこっちへと近づいて来る。

<> 瞳<><>2011/06/17(金) 23:15:25.52 ID:h/muxT8AO<> >>922
「ああ、この前夷磨璃という少年の師匠になってな。それで、彼は夷磨璃の友達らしいんだ。」

と、簡潔に説明する。


>>924
「ん?噂をすれば…夷磨璃か?
おーい!」

と、こちらに気づいてもらえるよう手を振る。
<> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 23:20:15.03 ID:cke3hte6o<> >>924-925
黒蔵の掌から雫が滴り落ちる。
そこに浸った澪の指先に、ミナクチがそっと触れた。
水面が膨らみ、溢れて零れた。

『…ちょっと飲みすぎたようですね』

すっかり乾いた黒蔵の掌で、頬を赤く染めた小さな蛇神が笑いながら澪を見上げた。
立ち上がろうとするも、ぺたん、と座り込んでしまうミナクチを黒蔵はそっとポケットに
滑り込ませる。

『私達蛇にとって、桃は飲みなれたら飲めるってものじゃありませんから、
 どうかお気をつけて』

胸ポケットから覗く小さな赤い顔が、そう注意を促した。

「あの子が噂の?」

黒蔵は瞳の小さな弟子を良く見ようとしゃがみ込んだ。
その弟子のほうはきっと黒蔵を、いや、巴津火のことを見知っているに違いない。 <> 澪&夷磨璃<><>2011/06/17(金) 23:32:46.95 ID:YlibldwH0<> >>925-926
「すいません…。
前に叡肖さんって言う人に桃汁を飲まされてへろへろになった時があったんです。
それで、桃に強くなろうと思ったんですが…。」

凄く反省している。
桃には絶対勝てないのを知っていても、それでも澪はやるのだから凄い。

『あ…ししょー…!!』

走って駆け寄り、ぎゅむっと縋り付いた。
着物を通して、瞳の温かさが伝わり気持ちいい。

『あれ?澪さんもプリンの男の子もなんでここに?』

プリンを喰ってぶっ倒れたのでプリンの男の子…らしい。
それに、実際は自分より遥かに年上。男の子ではなく…おz(ry <> 瞳<><>2011/06/17(金) 23:41:10.49 ID:h/muxT8AO<> >>926
「そうそう、彼が夷磨璃だ。」

夷磨璃に会えたのが嬉しいのか笑顔で説明する。


>>927
「夷磨璃、相変わらず元気だな。」

と言って、頭を優しく撫でた。

「ん?あれ?黒蔵の事を知っているのか?」

でも、黒蔵には覚えがなさそうだ。変だなと思いつつ聞いてみた。
<> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/17(金) 23:43:48.64 ID:cke3hte6o<> >>927-928
『叡肖さんですか。確かにあの人ならやりかねないですね。
 でもそれで桃に強くなろうとするのは、あの人の思う壺なのでやめたほうが良いですよ』


あの蛸が澪のこの状況を知ったら大喜びするだろう。
つい昨日、蛸と喫茶店店長に一寸姫にされたミナクチは胸ポケットの中から苦笑する。
いずれは「蛸被害者の会」でも結成できそうだ。

「プリン?なんだそれ?」

随分小さいなー、などと自分の事は棚に上げた感想を漏らした黒蔵は面食らった。

「俺は、この子とは初めて会うよ?」

ちなみに黒蔵はプリンをまだ食べていないので味を知らない。
ノワールでの食事時には何時も巴津火が出て、美味しいところは全部先に食べられてしまうのだ。
人参だのピーマンだの玉ねぎだの、巴津火が嫌いなものはしっかり皿に残されているので、
黒蔵にはそれを食べることしか出来ない。
ショタ爺ィな黒蔵と違い、まだ赤ちゃんの巴津火の舌はえり好みが激しいのだ。
<> 澪&夷磨璃<><>2011/06/17(金) 23:58:08.86 ID:YlibldwH0<> >>928
『知ってるよ、あの子ね、プリン食べて倒れちゃったんだ。』

桃のせいだとも知らず、話す。
巴津火ー君はこれを聞いて何と思うのだろう?

>>929
「分かりました…
でも、あの人のせいで…女装までされたんですよ…僕。」

確かに奇麗だったが、大和撫子風にされた時、絶望していた。
そして今も…絶望している。

『お兄ちゃん、プリン食べてたよね?僕とも会ってたよ?』

自分よりも大きいのでお兄ちゃん…だそうだ。
彼はまだ巴津火と黒蔵の二人が居ることを知らず、少し混乱している。 <> 瞳<><>2011/06/18(土) 00:03:30.55 ID:EPa9z4+AO<> >>930,>>929
「だよな。じゃあ、人違いならぬ妖怪違いか?」

不思議そうに黒蔵に言う。まさか黒蔵の中にもう一人いるなんて思わないだろう。
そのためこう思った。

「プリンを食べて倒れた?どういうことなんだ…?」

なんだかよくわからない。
<> 黒蔵→巴津火「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/18(土) 00:11:26.78 ID:DrWGrpxno<> >>930-931
「おっと、その先を言うならお前の舌を貰うぞ」

一瞬で黒蔵と入れ替わった巴津火が夷磨璃の口を塞いでにやりと笑った。
しかし冷たい紫濁の瞳は一欠けらも笑いを含んでいない。
どろりと溢れ出た妖気は先ほどの、桃に酔っていた澪のものと比べても遥かに濃い。

『殿下、おやめ下さい。それでは弱いもの虐めですよ』

ミナクチに制止されて、巴津火は一瞬面白くなさそうな表情になる。
流石に弱いもの虐めは格好悪いと思ったのか、夷磨璃の耳元でこう囁くに止めた。

「ボクとコイツは裏表一体なのさ。判ったらボクを怒らせるようなことはやめておけ」

実際に手出しはしないものの、夷磨璃が警告を聞かなければ何時でも雷は落とすつもりである。
その喧嘩っ早さにミナクチは重い溜息をついた。

『澪さんも叡肖さんにはだいぶん悩まされたようですね。
 その叡肖さんも手を焼くのが、実はこの巴津火殿下。我らが主の名を告ぐ方なのですよ。
 今は黒蔵が器となって、その身体を共有しているのです』 <> 澪&夷磨璃<><>2011/06/18(土) 00:19:04.89 ID:d+uno8j90<> >>931
『ううん、それは無いと思う…。

でもそんなのより、ししょーに会えて嬉しいよッ!』

まだ出会ってから少ししか経ってないのにも関わらず、瞳にはかなり懐いている。
透き通った水色の瞳を向けて、言った。
この場に天使が現れた場合、瞳に災いが降りかかるだろう…と予想する。

>>932
『むぐっ!?』

急に何かをされたかと思ったら、優しそうな子の性格が変わった。
そして、その器が喋ることをただただ聞いて、少しだけ納得したようだ。

「巴津火が…ですか。」

ミナクチの言葉を聞き、少し何かを考え始めた。
そして、何か思いついたように話した。

「はつびー、なんで黒蔵の体がキミとぴったりだったのだと思う?」 <> 瞳<><>2011/06/18(土) 00:22:33.37 ID:EPa9z4+AO<> >>932
「な…黒蔵…?いや、違う!誰だあなたは!?夷磨璃に何をする!」

明らかに黒蔵の妖気でない。いや、妖気以外も黒蔵とは違う。

「な…そんな奴が黒蔵の中に…」

その妖気を恐れつつ、とんでもないことになったなと思うのであった。


>>933
「大丈夫か?夷磨璃。」

口を塞がれたときに怪我でもしていないか心配になり聞いてみる。
<> 巴津火「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/18(土) 00:30:33.93 ID:DrWGrpxno<> >>933
「ああ?どうやら黒蔵が、お前の手を食べていたせいらしいな。
 夢の中でこの器の精神を追い詰めるのに使わせてもらったよ」

巴津火は知っていた。
しかもそれを使って黒蔵の心を苛み、自分の居場所を広げて今は立場を逆転している。
この器を使うのが巴津火か、黒蔵か、それを決定するのは巴津火のほうなのだ。

>>934
「ボクに向かってそんな奴とは酷い言いようだな、元・紫狂」

怒りを含んだ眼の色は、瞳にも見覚えがあるだろう。

「窮奇は主争いから降りたらしい。でもボクはまだ戦いをやめる気は無いね。
 百鬼の主の座に興味はないが、戦う口実になるのなら狙うのもいいかもな」

唇の端をゆがめて巴津火は瞳をねめつけた。 <> 澪&夷磨璃<><>2011/06/18(土) 00:39:55.39 ID:d+uno8j90<> >>934-935
『ぷはぁっ、僕はだいじょぶ…。』

少し息を荒くしてそう答えた。
これ以上言うと、何かされそうなので黙ることにした。

「うん、そう。知ってるんだ。ならば話は早い…。

僕と友達になろう。」

それに深い意味があるかはどうかは分からない。
それを知っているのは澪だけ。 <> 瞳<><>2011/06/18(土) 00:43:44.54 ID:EPa9z4+AO<> >>935
「な、なぜそれを…いったい、窮奇とどういう関係なんだ…?」

その眼とそのセリフに怯む。無理もない。瞳にとって思い出したくない記憶なのだから。

「蛇神様!彼は危険なのでは!?」

巴津火自体も危険だが、巴津火の器となった黒蔵も危険にさらされるのではないかと思い尋ねる。


>>936
「そうか…怪我はなさそうで良かったよ。」

とはいえ、安心はできない。巴津火の正体や、黒蔵のことが心配で気が気でないのだ。

<> 巴津火→黒蔵「」 ミナクチ『』<>saga<>2011/06/18(土) 00:59:36.34 ID:DrWGrpxno<> >>936-937
《ああ、頭の痛いことだ。桃酔いのせいじゃありませんね、これは》

胸ポケットでミナクチが頭を抱えている。
巴津火を何とかして抑えねばならないのだが、力ではできない。

「友達ごっこは黒蔵とだけやってくれ。戦いならボクも歓迎するが馴れ合う気は無い」

ふん、と偉そうに顔を背ける巴津火にだけ聞えるよう、ミナクチが囁いた。

『殿下、あの写真を叡肖さんが手に入れてましたよ。大人しくしないと…』

巴津火が眼を剥いた。その一瞬、今まで見せた事の無い凶猛な表情になる。

「あの蛸ぶっ殺す!」『だから今は引いてください、叡肖さんには内緒にして置きますから』

ミナクチを握りつぶしたい、とでもいうように拳がきつく握り締められ
それが再び脱力すると黒蔵が戻ってきた。

「ん?瞳、どうしたの?」

『危険はむしろ無いんです。巴津火の器で居る限り、黒蔵の安全は保証されるのですよ』

瞳に答えて蛇神は、ほっと溜息を付いた。

『窮奇が呼び起こした我が主のレプリカが巴津火です。
 そして我らが主は窮奇によって毒され、倒れました。
 主が今際の際にその名を継ぐ存在として、殿下を守るように遺言したのですよ』 <> 澪&夷磨璃<><>2011/06/18(土) 01:10:41.62 ID:d+uno8j90<> >>937-938
「馴れ合い?キミがそんなこと好まないことくらい知ってるよ。

要するに…戦ってあげるって言ってるんだよ。前の決着はついてないしね…。

気が向いたらよろしくねー。」

(にしてもはつびー、すっごい単純だ…。

これは面白いなぁ……。)

そして、今まで黙っていた夷磨璃だったが瞳が何かされたと思い、不快な気持ちになっていた。

「ミナクチ様…でしたね、時折、巴津火と遊んでもよろしいでしょうか?

周りには被害を及ばないようにしますから。」 <> 瞳<><>2011/06/18(土) 01:19:08.68 ID:EPa9z4+AO<> >>938
「え?あ、黒蔵!戻ったのか…」

ちゃんと黒蔵であるため、落ち着いて一安心。

「なるほど、逆に安全なんですか…
そして、蛇神様達にとっての主。
厄介そう…ですね…」


>>939
「あ、夷磨璃。私は大丈夫だから、な。」

何かして、怪我でもしたら大変だ。そもそも、黒蔵が器になっていることがわかっていないようだ。
黒蔵も危ないかもしれないし、止めるのは瞳しかいない。 <> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>saga<>2011/06/18(土) 01:26:00.62 ID:DrWGrpxno<> >>939
『戦いですか。確かにそれは、殿下の発散には必要なのでしょうが、しかし…』

澪の提案に、ミナクチは考え込んだ。
今のところ巴津火の暴力の発散相手はあの叡肖なのだ。
その仕事を共に担おうとしてくれるもう一人がいるのは、蛸も歓迎するであろう。

『その戦いというか遊びの場には、叡肖さんが付き添うことになるんですよ?』

不安げなミナクチの表情が意味するものが、澪に伝わるだろうか。
澪は巴津火の暴力の他に、あの蛸の精神攻撃も相手にしなくてはならないのだ。
もちろんそれは、巴津火にも等しく向けられるのだろうが。

《澪さん、大丈夫でしょうか…》

>>940
「うん?俺大丈夫だよ…ってもしかして今、巴津火だった?」

瞳の表情に、驚かせてしまっただろうかと黒蔵は、おずおずと夷磨璃にも手を差し出した。

『ええ。大変に厄介で、そして頭が痛い問題なのです』

巴津火が居る限り黒蔵の罪の償いは出来ない。
何か他の代償が黒蔵に課されなくてはならないのだが、それを決める上層部からの音沙汰が無く
ミナクチにも先の判らない不安な状況が続いているのだ。 <> 澪×夷磨璃<><>2011/06/18(土) 01:40:14.05 ID:/rQIWWcDO<> >>940-941
「叡肖さん・・・・・・!!」

思い出した、巴津火には教育係の彼がいることを。
彼からは以前、酷いことをされたし、この先も何をされるか分からない。でも・・・・

「・・・・・・頑張って見ます。ミナクチ様、時には愚痴に付き合ってくださいね?」

自ら悲惨な道を選んでしまった !!

『・・・・・・』

まだ、いつ代わるか分からないから、喋れなかった。
と同時に、黒蔵×巴津火は夷磨璃にとって危険な存在となってしまった。

『ししょー、ごめんね、僕が何もしてあげられなくて・・・・』

「ひとまず僕達は戻りたいと思います。3人とも、また会いましょう。」

警戒心は無くなり、爽快な顔をしていた澪は夷磨璃を引き連れ、どこかへと消えた。

//ここで落ちます。
お二方、絡みありがとうございました&お疲れ様でした!! <> 瞳なか<><>2011/06/18(土) 01:45:28.71 ID:EPa9z4+AO<> >>941
「ああ、まさか中にあんな奴がいたなんて驚いたよ。」

まだ、落ち着かない様子で答えた。

「なんというか…お気の毒です…」

黒蔵がどんな状況に置かれているか、詳しくは知らないが相当厄介なことが起こっているのだと実感した。


>>942
「いや、夷磨璃は気にしなくていいんだよ。
それじゃあな。夷磨璃、またあとでな。」

と、別れ際に夷磨璃を元気づけようとした。



/お疲れ様です。絡みありがとうございましたー。 <> 黒蔵「」 ミナクチ『』<>sage<>2011/06/18(土) 01:55:05.57 ID:DrWGrpxno<> >>942
『判りました。貴方に殿下の相手をお願いすることにします。
 もちろん愚痴は聞きますよ。怪我した場合に備えて、その時は私も立ち会うでしょうし…』

その悲惨な道を澪が選んだ時点で、ミナクチもまた道連れにならざるを得ない。
そして関わる人数が増えるほどに、あの蛸が何か悪戯を仕込むことは容易くなるのだ。

《叡肖さんが悪巧み始めないといいんですが…》

今日の桃酔いが抜けたとしても、ミナクチの頭痛は当分の間治まらない模様である。

>>943
「瞳…!ごめんね。あとそっちの子も…」

巴津火は相当だったらしい。
黙りこくったままの夷磨璃に、黒蔵は居心地の悪さを感じつつ
黙って二人を見送るしか出来なかった。

(俺、いっそ居ないほうが良いんだろうか…)

そんな思いに捕われた黒蔵を、巴津火が心の底でしてやったりと嘲笑っていた。

//お二人ともありがとうございましたー。 <> 瞳<><>2011/06/18(土) 02:05:06.83 ID:EPa9z4+AO<> >>944
「黒蔵。黒蔵は悪くないんだし、あまり気にするな。私は、この通り平気だからな。」

(それに蛇神様もいる。きっと、大丈夫だろう。)

と、思い笑顔を向けた。

「それじゃあ私はそろそろ帰るよ、じゃあな、黒蔵。」

そう言うと静かに去って行った。



/お疲れ様でしたー。 <> 田中 夕「」&《神もどき》圓坐『』<><>2011/06/18(土) 21:00:27.48 ID:FfYxRdUk0<> 《怨霊》が去って、少したった。

まるで、嵐が来たかのような、木々が倒れ、遊具が破壊されてる荒れ果てた公園。

そして……倒れた木の一つの近くに、赤い水溜まりができていた。

「……………」

その《水溜まり》の原因は、ボサボサの黒髪で、どこにでもいそうなごく普通の顔立ちの高校生だった。
頭から血を流し、左頬から斬り傷ができ、制服もズタズタに切り裂かれ、黒い筈の制服は赤かった。
ただ不思議なのは、どこも傷だらけなのに《右腕》だけは無傷だった。

そして、《人間》に近づく一人の影。

『フォフォフォフォッ!!!《怨霊》の考えるところはよくわからんのう!』
紳士のような格好をした初老の男が、ダンディーなヒゲを触りながら、近づいてくる。

『わざわざ殺さず、《八握剣》も奪わずに、自分の楽しみとして見逃すとはのう…ワシには理解できんわい』
難しそうな顔をしながら《神もどき》は右腕を鋭い爪をもった猿のような腕に変えた。


『だから、こやつの《知識》と《八握剣》はワシがいただくかのう』
それで田中の命を狩ろうとする。

誰か…誰か…この《暴食》を止める者はいるのか? <> 零&黒龍<><>2011/06/18(土) 21:11:46.09 ID:/rQIWWcDO<> 「夕君、大丈夫?」

破壊された公園に声が響き渡る。次の瞬間、漆黒の龍が舞い降りた。

そして、その龍に乗る悪魔は焦ったしていた。

「黒龍、夕君の応急処置をお願い。早くしないと彼が死ぬ。」

『もう大丈夫だ、俺達がいるから。』

黒龍は田中を止血するため、包帯などを取りだし始める。
一方で悪魔は、ダンディな方へ近づきに行く。

「こんばんは。どうしました?」 <> 田中 夕「」&圓坐『』<><>2011/06/18(土) 21:25:49.81 ID:b9HF0+w50<> >>947

振り下ろそうとする《猿の腕》は、《黒龍》に阻まれた。

「………ゴホッ…」ドバッ
返事はない。だが息はしてるようだが、動かした時に口から血を吐いた。
骨も色々折れていて、出血もマズイ……生きてるのが奇跡に近い。
だが……右腕だけは無傷なのが不思議だが…

『フォフォフォフォッ!!こんばんは。はてさて、御主は…待て待て。今《記憶》をたどっているからのう
……ああ!《魔女》を殺した一人ではないかのう?フォフォフォフォッ!』

『なかなか美味しそうではないか。ワシらの事も知ってるみたいだし…さぞ、知識も豊富だろう』
紳士的に挨拶する《暴食》の《大罪》を持つ《神もどき》―――猿神の圓坐だが、零の事をアリサの記憶から思い出し、舌なめずりをした。

それは紳士とは掛け離れた、獰猛な笑みだ。 <> 零&黒龍<><>2011/06/18(土) 21:39:51.45 ID:/rQIWWcDO<> >>948
『今はゆっくり休んでろ、良く頑張ったな。』

高校生が、ここまでボロボロになるのは有り得ないこと。
きっと田中は、何かの為に頑張ったのだ。
頭を優しく撫でると、痛みを抑える薬を飲ませてあげた。

「元気のいいおじさんは好きです。でも私を食べても美味しくないですよ。」

悪魔は優しく笑いかける。そして、アリサと関係のあることを知ると更に笑みが零れた。

「私の前に、このクッキーをどうぞ。」

そういい、なぜかクッキーを渡す。彼に悪気はないはずだが、それは危険物質だ。 <> 田中 夕「」&圓坐『』<><>2011/06/18(土) 21:56:56.04 ID:iQ3shxVc0<> >>949

「………こ…と…h……ご……m……ん…s…ゴホッ!!」
頭を優しく撫でられると、無意識に泣きそうな声で、何かを言うが…更に口から血をはいてしまう。
そして薬を飲ませられる。
だが血の量がマズイ…血を止めても、無くした量は多すぎる。速く病院とか治癒ができる所へ行かないとマズイ…


『フォフォフォフォッ!!遠慮しとこう。主は食わせ者のようじゃからのう。
主のペースには乗らないでおこう』
そう言いながら後ろを振り向き、歩いていこうとする。

『ちょいと、ぶが悪そうじゃからのう。ワシ《も》帰るかのう』
……《も》?
つまりコイツ以外に誰かいたのか?

『そこの龍よ。この人間は《我ら》に狙われておる。せいぜい《美味しそうな連中》を集めておくことじゃのう』
ニヤッと笑いながら振り向き、あえて敵をふやすような挑発をいう。 <> 零&黒龍<><>2011/06/18(土) 22:03:50.55 ID:d+uno8j90<> >>950
『零ッ、夕の体がやば過ぎる!速く家へ連れて行こう!!』

「分かった、……おじさん、詳しく教えてくれない?

狙われてるって何?それに、この場に誰かいるとでも?」

彼らには謎が多すぎる。
つい最近、アリサと接触し彼らの存在を知って以来必死に情報を探した。
…が、全く分からないのだ。 <> 田中 夕「」&圓坐『』<><>2011/06/18(土) 22:21:25.80 ID:L5228E7t0<> >>951

『フォフォフォフォッ!!折角じゃサービスで教えてやろう』ニヤリ
振り向き、獰猛に嗤いながら、口を開く。

『窮奇というのにお主らが意識してたおかげで《青行燈》の計画の初期段階は終了した』
『ワシら《七罪者》はこの街に集結し、とあるのを狙っておる』

『《十種神宝》……聞いたことあるじゃろう?ちょうどこの街に運よく集まっておる。』
『そして、《罪深いモノら》や《負の感情》が沢山ある………フォフォフォフォッ!!』
『ヒントはここまでじゃ…』
『あと《誰がいた》?ワシらの中の《危険人物》じゃよ
《傲慢》の《大罪》を背負う《怨霊》がのう』ニヤリ
……《怨霊》。名前はない。
恐らく《七罪者》の資料を見ればわかるだろう。
凶悪で楽しみながら多くの人や妖怪を殺したモノ。

妖怪の種族としては――――《土蜘蛛》
ただし虫の妖怪の《土蜘蛛》ではない。
はるか昔、朝廷や天皇に逆らった土蜘蛛一族や人々の怨念で集まった《土蜘蛛》

………凶悪な怨霊だ。 <> 零&黒龍<><>2011/06/18(土) 22:32:08.25 ID:d+uno8j90<> >>952
「……へぇ、そうなんですか。

何だか…面白そうですねェ!?」

一瞬、零の表情が変わる。
残虐そうな、例え用のない顔に。
しかし、直ぐに笑顔に戻った。

「情報ありがとうございます、おじさん。では、また会いましょう。」

急いで田中を黒龍に乗せると、マンションへと向かう。
リビングの広い場所に田中を寝かせ、治療の準備をした。
包帯、絆創膏、消毒液、黒蔵から貰った薬多数、などがる。 <> 田中 夕<><>2011/06/18(土) 22:43:31.95 ID:FfYxRdUk0<> >>953

『フォフォフォフォッ!!いい顔じゃのう。アリサが気に入るわけじゃ』
零のその表情を見て、楽しそうに嗤う。

『《また》会おうかのう。その時は、主の《知識》ごと喰らってやろう』

そう言うと、《神もどき》は消えていった。



零のマンション

「うぅ…………ハァァァァア!!!!!」ガタン!!
治療が済まされ、しばらく時間があった時、彼は起き上がった。

その表情はいつもの優しい雰囲気はなく、怒りと悲しみをおびた表情で、人間にしては強いパンチを放ちながら起き上がる。

「…………あれ?」
気付けば、あの《怨霊》はいない。そして見知らぬ部屋。
彼は、いつもの雰囲気を出しながらキョロキョロと辺りを見回す。

ところで黒龍は今は人間状態? <> 零&黒龍<><>2011/06/18(土) 22:54:54.17 ID:d+uno8j90<> 『うぉわっ!!大丈夫か?』

間一髪、パンチを避けれた黒龍。
彼は現在、漆黒の龍で人間でない。

『ここは零の家、たまたま公園を通りかかった時に夕が倒れていたんだ。

傷も酷くて……いったい何があったんだ?』


夕と黒龍が会った時は、黒龍が人間だった。
だが今は違う。なぜ、自分の名前を知っているのか、と疑問を抱くかもしれない。



<> 田中 夕<><>2011/06/18(土) 23:09:29.85 ID:ZWuh4ctB0<> >>955

「………えっ?」
見れば、黒い龍がいる。
普通の人間が見たら、卒倒ものなのだが…

「黒い大きい蜥蜴?しかも喋った?」
「……ああ、夢か」
なんか聞いた事ある声だと思い、龍を蜥蜴だと勘違いし、普通じゃない高校生は二度寝しようとするが、全身の骨が危険な状態な為、ピキッと嫌な音がした。

「いたぁぁぁぁぁあ!!!夢じゃない!!!!!!」
倒れてる状態で、涙目になりながら、黒龍を見る。

「あっ……黒龍。おはようございます」
着ぐるみか腹話術かな?って思い。高校生は声で黒龍と気付き、
霊感もない普通な人間だが…やはり普通じゃなく、普通に彼に挨拶する。

上手く身体が動かせない……酷くやられたな。っと彼は思う。

「零の家?………あっ!…《アイツ》は!?俺と同じ歳くらいの闇のような黒い瞳の灰色の髪の奴は!?………ぐっ!!」
慌てたように再び起き上がろうとするが、全身が痛む。叫びそうになるほどに <> 零&黒龍<><>2011/06/18(土) 23:24:21.97 ID:d+uno8j90<> >>956
『お、おい、夕…。蜥蜴って……。俺だよ、零と一緒に居た…。』

そう言うと人間に化けて見せた。
しかし恥ずかしいので直ぐに戻ってしまったのだが。

『アイツ?俺が見たのは黒い髭のじいさんだったが…。
しかもソイツ、何か不審なことを言ってたんだ。お前が狙われてるとかなんとかって。』

無理に起きあがろうとする夕を優しく寝かせる。
大人しくしてて、と言うと先程のことを話し始めた。
その内容は全く理解できない、変な話だった。

その頃、キッチンでは零が何かを作っていた。

「(あのじじぃの言ってたことが分からない…。
虚冥さんに相談するべきか?)」 <> 田中 夕<><>2011/06/18(土) 23:42:20.03 ID:ZWuh4ctB0<> >>957

「……………………………………………………………………OK。変身できる蜥蜴だったんだ。黒龍」
本人は少し頭を押さえながら考え、普通に会話する。
けど、龍だとは気付いてない。黒龍を名前だと思いこんでるのも原因だが……

「いや、俺が戦ってたのは…さっき言った人だけど…」
「……そのおじいさんは知らない…」

「………そうですか。……理解したよ…なんで狙われてるか…」
そう言いながら彼は《無傷な右腕》を見る。
どうやら彼は原因に心当たりがあるようだ。

「………全部……俺のせいじゃん……やっぱり………」 <> 零&黒龍<><>2011/06/19(日) 00:03:49.15 ID:jN20Szho0<> >>958
『……え?(俺、いつから蜥蜴になった?)』

見た目は確かに蜥蜴だが、大きさが全然違う。
指摘しようとするが、それは今言う必要はない。
今言うことは…。

『夕、俺はお前に何があったかは知らない。ただ、深く落ち込むな。

物事を反省して、後悔することは良いことだが、次に活かせなきゃ意味が無いんだ。

俺と零が協力するから、今は体を治すことに専念しろ。』

寝かせてある夕の腹を揺する。
体は冷たいが、暖かい物が伝わっただろうか?
その言葉をどう受け止めるかは夕次第。

「夕君、おはよう。おかゆ作ってたよ。」

キッチンからおかゆを持ってきた零。
消化のいい物を作ったのだが…。どんな味だろう? <> 田中 夕<><>2011/06/19(日) 00:18:57.30 ID:E6Jb2Dpv0<> >>959

「黒龍………ありがとう」
その言葉は彼に深く刺さった。
みんな…優しいな……
目から涙を流し、彼は微笑む。

「………十種神宝…ソレを狙ってるって言ってましたよね?」
「俺が戦ってたアイツも…《八握剣》を狙ってました。
最初は理解できなかった。だって《八握剣》は俺が探してたのに…
だけど…聞いて驚くかもしれないけど……アイツは人間じゃないんです。
……多分、俺は《4年前》に会った事ある…」
黒龍が妖怪と知らずにそう話す。むしろ彼らが露希の関係者とも知らない。
そして、狙われてる理由を話してる途中に零が来た。

「あ……おはようございます。零」
「迷惑かけてすいません」
ペコリと彼に頭をさげる為になんとか上半身だけ起き上がる。

「ありがとうごz…」
そして彼は固まる。
なんだろう?自分でもわからない。しかし身体がなんか拒絶してる。
俺は何かを忘れてるような……なんだっけ?
確か……彼らに初めてあった時にクッk
………あれ?なんだろう?記憶がががががががが

田中くんは本能的に危機感を察した。
しかし、身体は動かせない。しかも脳が少しショートしてる。

食べさせるなら……今だ!!! <> 零&黒龍<><>2011/06/19(日) 00:36:53.39 ID:jN20Szho0<> >>960
『八握剣ってあの…。』

こくこく、と頷きながら話を聞いている。
なぜ彼らは十種神宝を狙っているのだろう、疑問は次々と浮かんでくる。

『まぁ、とりあえず怪我が治るまではここで安静にしてた方がいいかもな。

お姉さんには電話しておくから、電話番号教えて。』

「あ、そっか…体、痛いよね。食べさせてあげるよ♪」
『あ、零止めッ!!』
「あーん。」

黒龍は止めたが、残念ながら…イーティングされてしまった。

『ぎゃぁぁぁ!!夕、お前なんともないか、大丈夫か!?』

そしてこの後、黒蔵と同じようにマイッチングになってしまうだろう。
流石、不k(ry <> 田中 夕<><>2011/06/19(日) 00:53:14.83 ID:NIY97uBP0<> >>961

「ソイツに会って知ったんです……《八握剣》はソイツの一部を封印してたみたいなんだ…4年前……俺が抜いて…」
そして話す。自分の過去を
それが原因で、幼なじみの両親が死に、幼なじみは植物状態。しかも《怨霊》に会って知った真実は……幼なじみには《呪い》をかけてあると。

「……《八握剣》はソイツに会う前から探してたんだ。《友達》にも手伝ってもらって………だけどソイツに会ったおかげで場所はわかった。俺は………ずっと持ってたんだ」
なんとか頭のショートを抑えて説明していると

口に入る《暗黒物質》

「……………………………………」
へんじ が ない ただ の しかばね の ようだ▼

こうして彼は本日二度目の生死の境をさまよった。
大事な所は聞けなかったが…それは彼が起きれば聞けるだろう。

そして偶然にも、彼のボロボロな制服から傷だらけのケータイが黒龍の近くに落ちた。
しかも偶然にもアドレス帳で家族のが開いてある。

コレを頼りに姉に連絡できるだろう。


/この辺ですかね?
ありがとうございます!お疲れ様でしたー!! <> 零&黒龍<><>2011/06/19(日) 01:03:15.77 ID:jN20Szho0<> >>962
『そうか…。話してくれてありがとな…って…夕?』

「きっと疲れてたんだよ。おかゆを食べたら安心したんじゃないかな?」

『夕?うわぁぁぁぁぁ!!!
(零、あんた悪魔だよ、鬼畜だよ!また一人被害者が出ちゃったじゃん!!)』

そんなこんなで、携帯を拾い、連絡をするだろう。
怪我が治るまでだが、夕を預かることとなった。
夕の運命はどうなるのだろうか?

//絡みありがとうございました!! <> 巴津火<>sage<>2011/06/19(日) 22:30:46.71 ID:9y93/hg7o<> 「ボクは自由だーっ!」

黒いズボン、白いシャツ、今日は猫耳もお目付け役も付いていない小柄な少年は
街中で自由を満喫していた。
さっきの食事で好物をたらふく詰め込んだばかりで、機嫌も良い。
きっと今頃慌てているであろう目付け役二人のことを思い浮かべてクスクスと笑う彼は、
自分のポケットの中のGPS追跡用ケータイの存在には気づいていない。

(さて、何を仕出かしてやろうかな)

道行く人間に雷でも落っことしてやろうかとも思ったけれど、それでは一瞬で楽しみが終わる。
あたりを見回して、まずは一番高い建物に登ってやろうと思った少年は、
高圧線の鉄塔に目を付けて、その周囲に巡らされた金網を乗り超え始める。

(このごちゃごちゃした人間どもの住処は、どこまで広がっていやがるんだ)

金網を越えたら鉄塔の天辺までよじ登るつもりである。 <> 夜行集団<><>2011/06/19(日) 22:37:55.80 ID:6W9ovM/Y0<> >>964
フェンスから少し離れた所から、ゆっくり焦るでもなく歩いてくるホストは、
銀の髪色のあのホストであった。
彼がまっ直ぐそこに向かっているという事は、目の前にいる巴津火に注意しようとしているらしい。
そしてその予想通りに彼は

「おいこら!!てめえどこいってんだよっていう!!
 お前の特性上すぐ感電死するだろうがボケ!!」

と言いながら彼は、1000人アンケートの結果、全員が微妙と答えた奇跡の乳製品、
『牛の乳汁』がその手には持たれている。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/19(日) 22:54:11.40 ID:6M/OsKrSO<> >>964
巴津火がよじ登ろうとしている金網の向こう側に、先客の少年が立ち尽くしていた。
某電気鼠の着ぐるみと、手に絶縁グローブを付け、頬から奇妙な文様が覗く、
見掛け小学生ほどの、不思議な少年が、鉄塔を見上げていた。
瞳はぼんやりと眺めているようにみえるが、微動だにしない所を見ると、鉄塔に夢中なようだ。

「……」

その為、背後で巴津火がガシャガシャ金網を鳴らしても、
銀髪のホストがそれを大声で注意しても、全く気付く様子がなかった。
あるいは気付いているのかもしれないが、注意を向ける様子が見られなかった。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/19(日) 22:55:18.44 ID:6M/OsKrSO<> >>964
巴津火がよじ登ろうとしている金網の向こう側に、先客の少年が立ち尽くしていた。
某電気鼠の着ぐるみと、手に絶縁グローブを付け、頬から奇妙な文様が覗く、
見掛け小学生ほどの、不思議な少年が、鉄塔を見上げていた。
瞳はぼんやりと眺めているようにみえるが、微動だにしない所を見ると、鉄塔に夢中なようだ。

「……」

その為、背後で巴津火がガシャガシャ金網を鳴らしても、
銀髪のホストがそれを大声で注意しても、全く気付く様子がなかった。
あるいは気付いているのかもしれないが、注意を向ける様子が見られなかった。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/19(日) 22:56:22.90 ID:6M/OsKrSO<> >>964
巴津火がよじ登ろうとしている金網の向こう側に、先客の少年が立ち尽くしていた。
某電気鼠の着ぐるみと、手に絶縁グローブを付け、頬から奇妙な文様が覗く、
見掛け小学生ほどの、不思議な少年が、鉄塔を見上げていた。
瞳はぼんやりと眺めているようにみえるが、微動だにしない所を見ると、鉄塔に夢中なようだ。

「……」

その為、背後で巴津火がガシャガシャ金網を鳴らしても、
銀髪のホストがそれを大声で注意しても、全く気付く様子がなかった。
あるいは気付いているのかもしれないが、注意を向ける様子が見られなかった。 <> 巴津火<>sage<>2011/06/19(日) 23:01:23.27 ID:9y93/hg7o<> >>965-966
「あ?感電死?」

一度、何行ってんだこいつ?という表情でホストを見た少年は、
相手の妖気に暇つぶしが向こうから歩いてきた事を知って、満面の笑みを浮かべた。

「てめぇとは何だコラ!誰がボケだこのカス!」

楽しそうに笑い返して、少年はフェンスの上からホストを指差す。
びしっと相手に向けた指先に、ブゥンと静かに唸るような音と共に薄紫の雷光が小さくともった。
一瞬の後、放たれた細い雷光が走る。そこに殺意は無い。
その向かう先はホストではなく、彼の手にした『牛の乳汁』である。
あっさりこのホストに再起不能になられたら、少年のこの先の楽しみがなくなってしまうのだ。

「ボクは上るぞ!」

辞めろといわれたら余計に上りたくなるものだ。
雷光を放ってからフェンストップの鉄条網を潜ると、少年はフェンスの内側に身軽に飛び降りる。
そして鉄塔を上ろうとして、そこに気ぐるみの少年が居あわせるのに気づいた。

「なんだこのチビ?」

この少年も十分チビではあるが、さらに先客はチビだった。 <> 虚冥<><>2011/06/19(日) 23:12:25.56 ID:6W9ovM/Y0<> >>968
怒っているという事でもないので、その自分たち付近にその少年がいる事に虚冥も気付く事が出来た。
今まで大声を張り上げていた虚冥も、その少年の素朴さに思いがけず目を細め、
天ッ堕の様子を探ってみたが何も変化が無く、余計に目が細まる。

「(なんだっていう・・・あいつ・・・
  てかこの鉄柱がなんだっていう・・・子供にはそんなに魅力的なのか・・・?)」

>>969
そうやって天ッ堕に気を向けていたのでいきなりの大声には大きく反応し、
しかもその上いつもの黒蔵のその口調から全速力で掛け離れたその態度に、
虚冥の疑問符はさらに増量した。

「おいwwwwwwてめえどこ狙ってやがんだwwwwww
 この牛乳こぼしたらなんか、あれだぞっていうwwwwww微妙な事になるぞっていうwwwwww」

さらっとその雷撃を避け、虚冥は巴津火に何とも微妙な表情で登る巴津火に大声を浴びせた。

「登っても良いけどよをwwwwwwお前死ぬぞwwwwww」 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/19(日) 23:20:55.91 ID:6M/OsKrSO<> >>969
「…………」ジィー…

よほど鉄塔が気に入ったのか、金網を登りきった巴津火にも意識を向けようとしない。
それもそのはず。
高い鉄塔、加えて高圧線のエネルギー。
雷獣としての天ッ堕の本能が、揺さ振られないはずがない。

「むー……」

問題は、少年が鉄塔の登り方を知らないこと。
そして電気エネルギーがどこにあるか知らないことだった。

「!」

しかし、巴津火が電撃を放った瞬間、初めて天ッ堕が反応を示した。
ゆるりとした動作で自分よりも少し大きい少年の方を見ると、鉄塔に向けていた視線と同じものを彼に送る。

>>970
巴津火と会話をしていたからだろうか、その視線が虚冥にも向けられた。
透き通るような茶色の瞳は、何も書かれていない白紙の本のように何もなく、
とても純粋無垢な、赤ん坊の瞳をしていた。 <> 巴津火<>sage<>2011/06/19(日) 23:28:32.25 ID:9y93/hg7o<> >>970-971
「微妙な事?なれwwwwどんどんなれwwwwww
 上から見物しててやるぜーww」

ホストを挑発するような笑みを浮かべて、この少年は完全に悪ガキモードに入っている。
少年はホストへ金網越しにぺろり、と二股の舌を出してけらけらと笑って見せた。
それでも蛸に言わせれば、まだ今の巴津火は機嫌が良いだけ扱いやすいのだ。

「お前も登りたいのか?チビ?」

足手まといになったら置いてくぞ、と言いながら、丁度良い子分を見つけた巴津火は天ッ堕に手を差し出した。
雷獣である天ッ堕ならこの手がつながれた瞬間、術として発動されていなくとも、
巴津火の内にあるエネルギーを感じるかもしれない。それは天ッ堕にとっての「ご飯」である。

天ッ堕の純粋無垢な瞳に、巴津火は一切の警戒をしていない。 <> 虚冥<><>2011/06/19(日) 23:37:46.73 ID:6W9ovM/Y0<> >>971
巴津火と一悶着しつつも、ずうっと視界に入り続けている天ッ堕に、
虚冥はなぜか言いしれない何かを感じていた。

「(なんだ・・・この感情はっていう・・・
  これがもしかして父)

 うなことあるかいっていうwwwwwwキュンと来るのは姫だけだっていうwwwwww」

しかしそう自分に突っ込んではいても、どこか、彼の心に残るものがあった。
その為なのか常識的になのかは分からないが、虚冥は天ッ堕に聞こえるような声で、話しかける。

「おい!!そこの小さい奴!!
 あの変な奴の近くに行くなっていう!!そいつ何でもかんでも噛みつくぞっていうwwwwww」

決して優しくはないけれど相手に恐怖心を与えないような態度であった。
ついでに巴津火(虚冥にとっては黒蔵)に挑発する事も忘れていない。

>>971
明らかに日常の黒蔵とは違う黒蔵の姿から発せられた言葉に、
虚冥はもはや驚きも困りもしていなかった。
いや、正直まだどういうことかと、疑問がぐるぐると頭に飛び交ってはいるのだが、
こんな変な事も起こるよな、あの黒蔵だもん、と納得していた。

「おい、あいつが変な事になったら取り押さえといてくれっていう」

虚冥の体から知らぬうちに発生してきた紫の靄の一つに、
そちらのほうに視線は送らずに、しかし命令は告げた。
<> 虚冥<><>2011/06/19(日) 23:39:30.21 ID:6W9ovM/Y0<> >>971
巴津火と一悶着しつつも、ずうっと視界に入り続けている天ッ堕に、
虚冥はなぜか言いしれない何かを感じていた。

「(なんだ・・・この感情はっていう・・・
  これがもしかして父)

 うなことあるかいっていうwwwwwwキュンと来るのは姫だけだっていうwwwwww」

しかしそう自分に突っ込んではいても、どこか、彼の心に残るものがあった。
その為なのか常識的になのかは分からないが、虚冥は天ッ堕に聞こえるような声で、話しかける。

「おい!!そこの小さい奴!!
 あの変な奴の近くに行くなっていう!!そいつ何でもかんでも噛みつくぞっていうwwwwww」

決して優しくはないけれど相手に恐怖心を与えないような態度であった。
ついでに巴津火(虚冥にとっては黒蔵)に挑発する事も忘れていない。

>>971
明らかに日常の黒蔵とは違う黒蔵の姿から発せられた言葉に、
虚冥はもはや驚きも困りもしていなかった。
いや、正直まだどういうことかと、疑問がぐるぐると頭に飛び交ってはいるのだが、
こんな変な事も起こるよな、あの黒蔵だもん、と納得していた。

「おい、あいつが変な事になったら取り押さえといてくれっていう」

虚冥の体から知らぬうちに発生してきた紫の靄の一つに、
そちらのほうに視線は送らずに、しかし命令は告げた。
<> 天ッ堕<>sage<>2011/06/19(日) 23:47:47.00 ID:6M/OsKrSO<> >>972
手を差し出される=握ると記憶している天ッ堕は、こくこく頷きながら巴津火の手を握る。
すると、突然に天ッ堕が驚いたような顔をした。
食い入るように巴津火を見る。
そしてぐいっと距離を詰め、髪の毛や顔、首や体まで、すんすんと匂いを嗅ぐ。
再び顔を上げると、ガラスのような瞳を爛々と輝かせて、
ぎゅうーっと巴津火に飛び付いた。

「ごはんっ」

……正確には、巴津火の「電気」が、なのであるが。

>>974
「?」

こてん、と不思議そうに首を傾げる。
虚冥の言うことの意味が、よく分かっていないのだろう。
しかしその一挙一動作。
とても、保護欲というか、そういうものを掻き立てる何かがあった。 <> 巴津火<>sage<>2011/06/20(月) 00:00:56.53 ID:fs/dBR+lo<> >>974-975
「変なのはお前だ!笑ってないと喋れないのか?
 そんなにボクに噛みついて欲しけりゃそこで待ってろ」

虚冥に向かって突っ込み返すのは忘れない。
その時、天ッ堕の手が触れた。

「何だっ!?」

匂いを嗅ぎまわられた事による一瞬の驚きの後、
巴津火は飛びついてきた天ッ堕の身体を片腕で受け止める。
ちょっぴりムッとしながら、巴津火はもう一度天ッ堕をまじまじと見つめる。
そして空いた方の手を伸ばすと着ぐるみのフードを外し、天ッ堕の顔とその頬の文様とを露にした。

「その文様…お前、雷っ子か?」

にやり。
さっきの悪戯な表情とはまた違う笑みを浮かべて、巴津火は天ッ堕に手を差し出した。
透き通った茶色の瞳と、紫に濁った瞳が視線を間近で交し合う。

「ボクの手下になれ。そうすればこれを欲しいだけやるぞ」

純粋無垢な子供を誘惑してさらってゆく悪魔めいた笑みを浮かべる巴津火の掌では、
卵ほどの大きさの薄紫色の雷光が、安定した輝きを放ちながら乗っている。
天ッ堕にそれを差し出すその様子は、後戻りできない契約めいていた。 <> 虚冥<><>2011/06/20(月) 00:07:01.98 ID:QcDvlvqq0<> >>975
「(うん、今ここにアネさんアニさんがいたら、
  尋常じゃないくらい五月蠅かったんだろうなっていう)」

虚冥でも感じる事が出来たその愛くるしさに、
心の中で穂産姉妹なら見知らぬ少年にジュースなぞ買い与えてしまっているかもしれないと思った。

ぼーっと眺めながら虚冥は、天ッ堕には言葉が通じていないのだと判断し、
またぼそっと後ろの靄の一つに命令を下した。
それは天ッ堕のボディーガード、巴津火が余計な事をしても大丈夫なようにという考えである。

ちなみに霊的な存在関しては、電気と言うものは密接に関係しており、
その関係性は電気が霊を活性化させるというものでつまり、
彼が命令した山崎さんの死霊は電撃を浴びても、スーパー山崎さんになるだけであり、全く問題はない。

>>976
「笑ってねえと喋れねえんじゃなくてwwwwww喋ってても笑っちまうんだっていうwwwwww」

と何という事もない返事を返していると、
虚冥の目の前でよくは分からないが確実に、巴津火が天ッ堕に向かって悪だくみをしていた。

「なんだあれ?

 とにかく山崎、松井。
 あの玉横どってこっちによこして来いっていう。」

そして虚冥が命令すると、その言葉通りに二つの紫の霊は巴津火に向かい、
手に持った紫の正体不明のソレを奪い去ろうとする。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/20(月) 00:16:28.14 ID:pFmYgIRSO<> >>976-977
文様を隠す為の覆いが取り払われ、ブロンドの短髪が露になる。
頬から首へ掛けて繋がる文様は、着ぐるみの奥で見えなくなってしまうが、全身に描かれたものだ。

頭に疑問符を浮かべて、フードを外した巴津火と向き合う。
今の天ッ堕には、目の前の少年は「ごはん」としか映っていないだろう。
それでなくとも、巴津火の瞳の奥にあるものは、天ッ堕に到底見抜けるはずもないが。

「……!」

巴津火の手のひらの雷光に、幼い雷獣は釘付けになる。
喉から手が出るほど欲しいエネルギーだ。
それが将来自分の行く末を決めるようなものとは露知らず、天ッ堕はそれに手を伸ばそうとする。 <> 巴津火<>sage<>2011/06/20(月) 00:27:40.77 ID:fs/dBR+lo<> >>977-978
「邪魔をするな!」

邪魔に入った2つの霞を、怒りを含んだ邪眼が睨む。
中身が黒蔵なら精々人間を操る程度だが、今その邪眼を使っているのは最上級の蛇神である。

「お前には新しいのをやろう。頼むから泣くなよ。ボクは煩く泣く子供が嫌いだからな」

しかし二体の霊が奪った雷球を虚冥の元へ運んでゆく間に、巴津火は
奪い取られた雷光の代わりをまた新しく掌に載せると、それを腕の中の天ッ堕に与えた。
雷獣の子供にも食べやすい、静かに光を放つ上質の雷球である。

「子供の目の前から飴を取り上げて楽しいか?」

巴津火の虚冥に向けた視線には、うっすらとした軽蔑と、虚冥がその雷球をどう扱うだろうかという
興味の両方が含まれていた。 <> 虚冥<><>2011/06/20(月) 00:38:26.53 ID:QcDvlvqq0<> >>978
偉くパンクな子供だな、と見つめていた虚冥であったが、
彼の紋様はロックなそれではなく、
その妖気も雷という属性を持つ事からある程度、天ッ堕についての種族を把握する。

「(あ〜、それであいつがご飯か、納得。
  つくづくあいつは食材という言葉に縁があるよなっていう。

  でもあいつ、雷撃とか使えたっけか?)」

しかしある意味余計に謎が深まっただけの様な気がしたホストであった。

>>979
「そんな簡単にだせるんかい」

二体の霊が任務を完遂した事に安心していたのに、
巴津火はさっさとまた新しい物を持っていた。
虚冥はもう本気で止めようと思ったら、黒蔵と戦闘になるしかないと予感してしまったので、
二霊から雷球を受け取り、そのまま二人を虚冥の体に戻させた。

「飴より牛乳の方が上手いに決まってるだろ馬鹿蛇。
 お前はあのカルシウムから受ける情熱を知らねえのかっていうwwwwww物知らずがwwwwww」

ばっと軽蔑した目の巴津火に、先ほど避けて事により九死に一生を得た牛乳を突き付ける。
でもこれは微妙だけどな、と付け足して。

雷球の方は巴津火の期待とは外れて、普通に虚冥の懐に片づけられてしまった。
どうやら帰った後、これを新たな意味の理解できない悪戯に使う予定らしい。

「ありがとうな、これは珍重させてもらうっていうwwwwww」

そういった虚冥の顔は、その目的とは違ってとても晴れやかであった。 <> 天ッ堕<>sage<>2011/06/20(月) 00:44:26.54 ID:pFmYgIRSO<> >>979
手が雷光に触れるか、そう思われた瞬間、
二匹の手によって、それは天ッ堕の目の前から消え去った。
結界そのことが幸か不幸かは分からないが、天ッ堕にとっては、今にも手に入り掛けた「ごはん」がなくなってしまったことに、落胆せざるを得なかった。

「……」

しょぼんと眉を下げる天ッ堕の前に、
巴津火によって、新しい雷光が用意された。しかも上質の。

「!」

天ッ堕は、今度こそ取られる前にとそれに飛び付いた。
まるで餌を食べるように、巴津火の手のひらに直接食らいつく。
電気を口の中で租借し、飲み込むと、
ぱああっと天ッ堕の体中、正確には文様が光を帯びた。
しばらくすると消えてしまったが、天ッ堕は気にする様子もなく、

「ありがとう」

まだ馴れない口振りで、若干片言気味ながら、そう巴津火に述べた。

>>980
巴津火の腕の中で居心地良さそうにしながら、
ふっと、虚冥の方に目を遣る。
そして彼が前に突き出した、不思議な牛乳に注目した。
田中家で時折飲んだりするものの、パックが違うため牛乳とは分かっていないが。

「……」

電気は圧倒的だが、人間の体を維持するために、普通の食事も意外によかったりする。
じいい、と牛乳を見つめる。 <> 巴津火<>sage<>2011/06/20(月) 00:55:03.81 ID:fs/dBR+lo<> >>980
「いいのか?そんなものそんなところに入れて」

そもそも巴津火の作った雷球である。
いつでも好きなときに炸裂させられる事は内緒にしておいたほうが面白そうなので、
そのことはニヤニヤしつつも黙っておく事にした。

>>981
「お、少し喋るようになったな」

くしゃっと天ッ堕の金髪をかき回しながら、満足げに巴津火が笑う。
これで天ッ堕の味覚への刷り込みは完了したのだ。

「ん?あれが欲しいのか?でもきっとあれの持ち主と同じくらい微妙だから
 味に期待するのはやめとけ」

天ッ堕が牛乳を見る視線に巴津火も気づいた。
金網のほうへ歩むと、ひょいひょい、と天ッ堕を抱えたままフェンスを越えようとする。

「ああ、うっとおしいな!もう!」

一人で越えたときと違い、フェンス上部の鉄条網に阻まれて、
イライラしながら巴津火は鉄条網を掌に握りこんで溶かす。
蝋細工のように邪魔な針金は溶けて、巴津火と天ッ堕がフェンスのこちら側に降り立った。
これで天ッ堕は微妙な味の乳製品を手にする事が出来る。

そして巴津火と近づいた事で、虚冥のほうも相手が黒蔵じゃないことに気づくだろうか。 <> 虚冥<><>2011/06/20(月) 01:02:43.26 ID:QcDvlvqq0<> >>980
こちらの方へジトっとした視線を送る天ッ堕の思っている事は、
流石にこの距離は遠すぎる+飴の方が好きなのかよとすねているので、さっぱり理解されず。
虚冥は天ッ堕へ自分から牛乳を上げる事はなかった。

ただ虚冥はその眼に、
俺は間違った事はしてねえ、と思いながら牛乳をすするだけであった。

>>982
「いいだよっていう。
 むしろお前がここで炸裂しても俺的には」

得します、ということである。
彼の妖怪とは言えその根本にあるのは、
妖怪となってしまうほどのありえない怨念の塊、憎悪の結晶の悪霊なのだ。
その為ここでもし彼に雷撃が与えられたとしたら、
一層そのテンションは高まり、芝は増え、そのテンションを持ち越した虚冥に夜行集団はストレスが増える事になるだろう。

「このデラックスな俺も、これ飲んだら確かに微妙な感じになったっていう」

これまた微妙な表情で巴津火に突っ込む虚冥。
近づいた時に誰なのかと思ったが、見た目はあまりにも黒蔵、
そのためこいつのある程度の境遇を探るためまだ反応はしなかった。

それでも警戒心一つ彼には見せず、天ッ堕にその微妙な乳製品を与える。 <> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 21:23:32.30 ID:kvSnkn8E0<> 暗くて、視界の悪い山奥にて。

「瞳は居るかなー?」

と呑気に探している少女が居た。
手には重そうな袋を持っていた。

ふと探していると、素振りの音が聞こえる。
そうっと覗けばそこには……甲冑の少年が居た。

『1874、1875…あれ、何回でござったっけ…?』

キラン、と少女の目は光った。 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 21:30:57.45 ID:hYX9dBVAO<> >>984
「やぁ、夷磨璃。頑張っているな。」

覗いている少女には気づかずに少年に話しかける。

「調子はどうだ?何か刀についてわかったこととかあるか?」

優しげな口調で尋ねる。 <> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 21:38:47.09 ID:kvSnkn8E0<> キランと光った。確かに光った。
だが、少年よりも格上の存在が現れそちらを標的にし、再び目を光らせる。

『あっ、ししょー。今日も来てくれたんですね!』

「瞳ー!!ボク、会いたかったよ!」

二人が瞳に抱きついたのは、奇跡的にも同じタイミングだった。
少年はしがみ付く様に、ぎゅっと。
少女は持ってた袋を投げ捨て、体当たりでもするかのように抱きついた。

…とても可哀そうな瞳であった。 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 21:45:43.24 ID:hYX9dBVAO<> >>986
「うわっ!露希!?いたのか…
私も会いたかったよ。もちろん、夷磨璃にも。会いたかったが、ちょっと離してくれないか?身動きが取れない。」

二人に抱きつかれて、驚いた顔をした瞳。だが、すぐに嬉しそうな顔をする。が、その顔もすぐに変わり困ったようになった。
<> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 21:53:18.22 ID:kvSnkn8E0<> >>987
「え?ああ、うん。」

『ししょー、ごめんなさい…。』

顔を見れば凄く困っているではないか。
二人はそんなこと考えないでやっていたせいか、少し済まなそうにしていた。

「それでね…『瞳(ししょー)、このショタ(方)誰(誰ですか)?』」

自分以外の瞳に抱きつく存在、お互いにその存在が気になっていた。

<> 瞳<><>2011/06/20(月) 21:59:11.63 ID:hYX9dBVAO<> >>988
「いやいや、二人とも気にしないでくれ。」

と、逆に申し訳なさそうな顔になってしまう。

「あ、ええと、まず夷磨璃、こちらの彼女。」

と言い、露希の方へ手のひらを向ける。

「彼女は、露希といい私の親友だよ。
それで、露希。彼は、夷磨璃。私の弟子さ。ついこの前弟子になったばかりだけどな。」

と、今度は夷磨璃の方へ手のひらを向けた。
<> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 22:10:15.99 ID:kvSnkn8E0<> >>989
『ししょーの親友様ですか、こんばんは。夷磨璃です。』

「こ…こんなに可愛い子が…瞳の弟子……?あっ、ボクは露希。よろしくね、夷磨璃ん。」

『夷磨璃ん!?』

ぺこりとお辞儀をした夷磨璃と、驚きを隠せない露希。
瞳に弟子が居ることに驚いていたが、彼の可愛さにも驚きである。

そう、黒蔵にはないショタ属性(?)を含んだコイツ。
見るからに僕っ子だし、ちっこいのに甲冑付けるとか(以下、露希の妄想

『ししょー、この親友様は、どのようにして知り合ったのですか?

それに、ししょーの親友だから強いのですか?』

不意に、露希がヒートしてる間に尋ねた。 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 22:28:25.32 ID:hYX9dBVAO<> >>990
「最初に会った時か…えーと、確か一番最初に会った時はあまり話さなかったな。
偶然出会ったに過ぎなかった。その後、友達になったんだ。私は露希に何度も助けられたし、私が露希を助けた事もあった。そうやってお互いにかけがえのない親友になったんだ。
今思えば、偶然なんかじゃなく運命だったのかもな。露希がいなかったら、恐らく私はこの世にいなかったからな。」

瞳は、目をつぶり露希との思い出を思い出す。
肉吸いに敗北し、自分のやっていることに疑問を感じていた時も、滝霊王に恐怖していた時も、紫水晶の呪縛に心を縛られていた時も、瞳のそばにいて支えてくれたのは露希だった。

「ああ、強いよ。多分、私より全然強いんじゃないかな。」

露希の強さは知っている。その強さへの素直な評価だ。 <> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 22:38:25.74 ID:kvSnkn8E0<> 『ししょーにそんなことがあったのですね…。露希様は凄いお方なんですね。』

「へ?ううん、ボクは凄くないよ!?
瞳はね、自分の意思を貫こうと、いつも努力していた。
その姿に感動してね、瞳に何かできないかなって思って行動に移したまでだよ。

ボクの強さは…瞳から来ている物なんだっ!だから、ずっとボクは瞳の親友として居るよ♪」

そして、露希は再び瞳に抱きついた。
その姿を見て、少年は何と思ったのだろう…。

『(戦うだけが強さじゃないんですね、ししょー。)』
「あ、そうだ。瞳にお手合わせ願いたいんだけど…いいかな?」 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 22:45:06.50 ID:hYX9dBVAO<> >>992
「いや、十分凄いさ。親友の私が言うんだ間違いない。
私だって、ずっと露希の親友さ。」

二人は、お互いに助け合い支え合ってきた。だからこそ、親友と言えるのだろう。

「ん?私と手合わせ?そういえば、以前に約束していたな。
ああ、もちろんいいよ。夷磨璃の勉強にもなるかもしれないしな。」
<> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 22:55:52.78 ID:kvSnkn8E0<> 『ししょーと露希様が…』わくわく
「夷磨璃ん、様は止めて…。なんか…慣れてない…。」
『…露希…お姉ちゃん?』
「うん、それでいいよ♪(よし、終わったらスキンシップ…)」

「じゃあ、瞳、お願いします!」

お辞儀をすると、腰から二本の双刀を取り出す。
月光が白龍の妖気と一体化して、美しさが増している。

双刀を構えると、瞳の元へと走ってゆく。 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 22:59:18.00 ID:hYX9dBVAO<> >>994
「お願いします。よし!来い、露希!」

(まずは、様子見。露希は本当に侮れないからな。)

そう思い、右手を刀に変化し構える。
今回は慎重に行くようだ。
<> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 23:06:54.47 ID:kvSnkn8E0<> >>995
がきぃん、と音が響く。
右手の一本を瞳の右手に当て、残った左手を瞳の体目掛けて狙う。

ただ、こんな単純なことで引っ掛かる彼女では無い。
絶対に、何か仕掛けてくる、と警戒しながらの攻撃だ。 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 23:12:12.63 ID:hYX9dBVAO<> >>996
急いで左手も刀にし、露希の左手の剣を受け止める。
そのまま、力を込めググッと押していく。
押し勝てれば隙が生じる、そう思っての行動だ。 <> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 23:18:31.61 ID:kvSnkn8E0<> 「ぐ…強いッ…」

力では押し切られてしまう。
一度、瞳と距離を置き、別の方法で接近することを試みた。

まずは双刀から直剣へと変化させ、先程よりも重い一撃を当てようとする。 <> 瞳<><>2011/06/20(月) 23:26:08.25 ID:hYX9dBVAO<> >>998
(くっ、マズいな。両手を使っても防げるかどうか…)

両手を顔の前で平行に構える。
そこに退魔のオーラを流す。こうでもしなくては、止められないど見込んでの行動だ。 <> とある少女と少年<><>2011/06/20(月) 23:29:44.21 ID:kvSnkn8E0<> 「(きたっ!)」

重い一撃は、行動するための行為でしかなかった。
その一撃を当てた時、剣を支えに飛んだ。

そして瞳の頭上を飛び、後ろを突こうとする。
しかし、飛んでいる時には隙がありすぎる。
狙うならここがチャンスだ。 <> 1001<><>Over 1000 Thread<>
 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
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ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

<> 最近建ったスレッドのご案内★<><>Powered By VIP Service<>安価で次立てるSS決める @ 2011/06/20(月) 23:29:13.58 ID:rMTIUPYZo
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久しぶりにやっちゃう? @ 2011/06/20(月) 23:19:28.44
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ガンダムサンドロックだけはイヤだ @ 2011/06/20(月) 23:14:10.35 ID:MLBRYtl0o
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キチガイどこや @ 2011/06/20(月) 23:06:13.10 ID:DSdHJicGo
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上条「安価で変わる凄い右手?」 @ 2011/06/20(月) 23:03:29.22 ID:518qErKH0
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上条「大覇星祭前日だ!」 @ 2011/06/20(月) 22:48:35.72 ID:bwZNEwu00
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【もしカミ】もし能力の使用ありの学園都市で上条たちが野球をしたら @ 2011/06/20(月) 22:29:04.99 ID:BmwR8zr20
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液晶にゴミが付いてるかと思ったら、ただの句読点でワロタww @ 2011/06/20(月) 22:17:44.84 ID:1wcA9RMWo
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