以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道)<><>2012/07/27(金) 21:58:42.77 ID:ni2H0ToEo<>建てました
ちょいしたら設定ダラダラ垂れ流します<>【PBW風】ここだけ組換ロボット世界【TRPG系】 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/27(金) 22:02:25.29 ID:jYz/Gis2o<> 期待 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:05:15.54 ID:Xvsar6ozo<> 組み換えちゃうんだね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 22:06:32.33 ID:ni2H0ToEo<> >>3
組み替えちゃいますからね
イメージとしてはカスタムロボの様な感じです
風呂上がったらぼちぼち書きますね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/07/27(金) 22:07:50.37 ID:QMKyH+550<> 乙おつ
コミックボンボンが生きてた頃に餓鬼だった奴が燃えるような雰囲気……期待デスネー <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:08:05.17 ID:0hbAbfcGo<> ダンボール戦記なのか
カスタムロボなのか
メダロットなのか
武装神姫なのか
ホイホイさんなのか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<><>2012/07/27(金) 22:09:17.30 ID:x7g23lJEo<> ちょっと期待 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:09:21.82 ID:Xvsar6ozo<> >>6
全部でええやん <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:10:27.45 ID:Xvsar6ozo<> そうですねカスタムロボですね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:11:56.03 ID:r2AWOg0DO<> 組み換えよりカスタマイズ式ロボとか換装式ロボとかの方が語感良かったんじゃ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:15:08.94 ID:0hbAbfcGo<> >>8
遠隔操作型
ダンボール戦記

意思投影型
カスタムロボ
武装神姫(バトルマスターズ)

自律型
メダロット
ホイホイさん
武装神姫(バトルロンド)

自律性の有無や操縦系統で変わってくるな

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/27(金) 22:15:16.22 ID:jYz/Gis2o<> 組み換えでも玩具っぽさが出てて味があっていいと思う <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県)<><>2012/07/27(金) 22:19:10.11 ID:x7g23lJEo<> もしかして人型オンリー・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県)<>sage<>2012/07/27(金) 22:19:23.75 ID:x7g23lJEo<> うわあageてしまった・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:26:13.11 ID:QMKyH+550<> 組換提唱しちゃったの私だはwwwwwwwwwwごめんなさい
でもアセンブルとかカスタムとかだとちょっと兵器よりおもちゃに近そうなのが伝わりにくいかなって
試作段階だし最悪次回のスレ立てで変えてもいいと思うの

>>13
まだ分からないけど、メダロットには結構異形や変形機が多かったよ(特にnaviって作品は顕著)
カスタムロボには獣人機や飛行形態可変がいたし、武装神姫は全員女の子型だけどアーマーが分離していろんな形になった
備えよう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:32:23.14 ID:HKkkT97SO<> ロボット対戦が再起失敗しただけにこのスレは何とか軌道に乗って欲しい所 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:34:15.24 ID:VylaKgTSO<> 一体、何と戦うのか…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:35:15.77 ID:0hbAbfcGo<> 金魚鉢被った宇宙服の人達じゃないの <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/27(金) 22:40:41.02 ID:CibsfTEto<> 精神攻撃は基本ですか? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 22:42:06.03 ID:ni2H0ToEo<> 【世界設定】
この時代よりちょっと未来が舞台
道路には電気自動車が走り、北海道の人がネットで知り合った沖縄のお友達に会うには3時間もかかりません
そんな未来の世界に、ロボット工学を、いや、世界を仰天させてしまうニュースが訪れます
それは「フジムラ理論」の発見
藤村博士が発見したその理論のおかげで今や世界の家庭には人間と同じ運動能力をもち
さらにはバスケやサッカーなど激しいスポーツもこなせる家政婦ロボが一家に一台あります

フジムラ理論のおかげで新しい遊びも生まれました
「HMP(高起動プラモデルの略、まだ仮の名前)」と呼ばれる六つのパーツからなる小型換装ロボを使った格闘技
その名も「HMPファイト」です
HMPは人型が多いですが、サメ型、トリ型、さらには人型から戦闘機に変形するものまで種類はさまざまです
しかし、どのタイプも「ヘッド」「レフト」「ライト」「ボディ」「レッグ」の六つのパーツで構成されていることには変わりません <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:47:44.16 ID:0hbAbfcGo<> 頭と胴体が繋がっていないな
頭/左/右/胴/脚、それでもパーツは5つだが
6番目にメダルのような思考ユニットがあるのかもしれない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:50:10.29 ID:0hbAbfcGo<> 六番目…まさか…武器…か!?
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:50:17.94 ID:Xvsar6ozo<> 六つなのに五つしかないクソワロタ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:51:08.79 ID:QMKyH+550<> 六番目の装備とは一体……!? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/27(金) 22:51:25.53 ID:x7g23lJEo<> これは期待・・・!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/27(金) 22:52:39.67 ID:jYz/Gis2o<> 6番目はもしかしたらバックパックなのかもしれない・・・いや胴体に含まれるな普通に <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 22:56:23.96 ID:HKkkT97SO<> お前ら案外鬼畜だなwwwwww <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 22:56:26.93 ID:ni2H0ToEo<> 【HMPと世界】
今やHMP中心で世界がまわっているといっても過言ではありません
どんなに辺境にあるおもちゃ屋やコンビニでも、HMPを売っていない店は無いほどです
最近ではプロリーグもあちこちでできています
ちなみに最も勢いのあるリーグは、もちろん日本
世界中で中継され、HMP発祥の国の名に恥ない人気をみせています

//うるせえな!誤植だよボケナス共!
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/27(金) 22:59:54.91 ID:CibsfTEto<> コロコロコミックにありそうだけど、面白そうだな。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:01:24.38 ID:QMKyH+550<> なんだwwwwwwww誤植かwwwwwwwwwwwwwwwwww
HMPか……コンビニで販売してるっていう感覚がメダめいててイイな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:01:33.54 ID:HKkkT97SO<> ありがちなのが良いんじゃないか
あまり設定凝りすぎても摩擦起こるしな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 23:09:28.29 ID:ni2H0ToEo<> 【HMPと犯罪】
近年ではHMPを使った犯罪も多発しています
違法パーツを使ったHMPによる恐喝、窃盗、殺人事件
HMPのパーツには本来プロテクトがかかっているのですが、それを破り数値を弄るのは技術者にとって不可能な事ではありません
HMPを製作している会社も新しいパーツを出す度にプロテクトのパターンを変えるなどの対策をしていますが、いたちごっこが続いています
また、最近では「HMP犯罪の現場に『青い薔薇』が手紙と共に添えてあった」という事例も多発しています
手紙の差出人からとって「ブルーローズ事件」と名付けられたこの一連の事件は既に巨大な組織によるものだと判明しています
彼らがなぜその様な事をするのかは不明ですが、ネットでは
「ブルーローズ事件で襲われているのはHMPや兵器の開発に着手した人ばかり、つまり彼らはHMPを軍事利用しようとしているのではないか」という意見が出ています <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:11:49.09 ID:QMKyH+550<> そんな悪いヤツらがいるなんて、許せないロボ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:15:19.29 ID:r2AWOg0DO<> マイナーだけどトイボット風でもあるな


武器の系統ってどんななんだろう?
>>1はカスタムロボを意識してるみたいだけど、近接格闘もありなのだろうか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:15:53.45 ID:0hbAbfcGo<> サボリーマンが勝負を仕掛けてきた!

*仕事帰りなんだスカッとさせてもらうよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/27(金) 23:25:44.34 ID:jYz/Gis2o<> 武器の系統もそうだけれど武器をどこに装備しているのかって言うのも気になる
ライト・レフトは当然としてメダロットでいう頭部武器をボディに挿げ替えた感じなんだろうか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 23:29:13.37 ID:ni2H0ToEo<> 【HMP犯罪とフジムラ博士】
さらに最近になると、HMPの製作に全く関係してない一般人も「ブルーローズ事件」に巻き込まれるようになりました
そして、この事件に対しHMP製作にも大きく関わっている藤村博士はある大きな行動に出ます
それは「HMP犯罪撲滅機関『EDEN』」を私財を使い設立した事です
EDENは警察ではないので逮捕や武器を持つことができません
しかし代わりにメンバー一人一人に専用のHMPが配備され、最新型のパーツが提供されます
つまり、EDENはHMPによってHMP犯罪を撲滅し「世界を誰もが楽しくHMPファイトができる楽園にする事」を目標とした世界最大の民間企業なのです
EDENのメンバーは優秀なHMPファイターだけではなく、将来性のあるファイターもメンバーに「訓練生」として含まれています
育成枠のメンバーはワンオフ機を持つ事は出来ず、現場へは出動しません
しかし彼らは今日も正式メンバーになる事を夢見て訓練に励むのです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:30:38.07 ID:QMKyH+550<> ポリス隊やセレクト隊めいたアトモスフィア……と言う事は役に立たな(ry
ところでHMPってどのくらいの大きさなんだろ、メダ(子供くらいの身長が標準)が一番近い? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/07/27(金) 23:36:46.38 ID:GewFvhbb0<> 投下が終わってからで良いから、標準的なHMPのデータを一つ作ってもらえると
雰囲気が掴みやすくなって助かるよ
あとHMPの脳的な部分って、やっぱり頭パーツに入ってるのかな? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:37:23.32 ID:0hbAbfcGo<> パーツ分類の略称はこんな感じか
HD(Head)BD(Body)RA(Right-Arm)LA(Left-Arm)LG(Leg)

この場合腕パーツは手持ち武器と腕部を1つとして扱う事になる
手持ちパーツ&腕部全体or武器腕なんだろうな
レーザーやミサイルを内蔵した腕は耐久度が低くそうだ
某最終鬼畜兵器は知らん <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:40:16.66 ID:r2AWOg0DO<> 通常の機体のカスタマイズ性はどんなものなんだろう
ワンオフ機っていうと中身なのか全体なのか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 23:41:16.12 ID:ni2H0ToEo<> 【どうでもいいシステム紹介!】
「ここ組(仮。てか説明に出てるブルーローズとかは全部仮称)」では臨場感あふれるバトルを演出するために
「コンマ」を使ったパワーアップシステムを用意してるぞ!
「ロールプレイ中」に自分のレスのコンマがゾロ目になった時「キセキポイント」が補充されるぞ!
このキセキポイントを使う事で、常識ではありえない、時には物理法則すら無視したような「キセキ」が起せるんだ!
例えば「HPが切れたハズなのに立ち上がった!」とか、「奇跡的に攻撃が弱点に直撃!」などとにかく普通のなりきりだと嫌われるようなご都合主義ができるんだ
キセキポイントを使えるのはロールにつき一回!しかし貯めれるのは無制限!ロール終了時にはリセット!
ただし「気持ちのこもった激励」をする事でキセキポイントを渡すとこが出来る
「不甲斐ない仲間をビンタする」とか「手作りのお守りを渡す」とかな!
とにかく「あったらいいなって」おもっただけだから別に無理にやろとは考えてはいない!
でもあったらいいな!
つぎからは質問っぽいのに答えてくよ
質問ある人は今からでもドンドン言ってね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:45:08.67 ID:GewFvhbb0<> キセキポイントが凄いアニメチックwwwwww <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/27(金) 23:45:58.86 ID:x7g23lJEo<> 武器腕と聞いてアマコアアセンブリを髣髴とさせる・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:46:23.08 ID:r2AWOg0DO<> コンマってことはやっぱーパー速想定? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:46:37.29 ID:Xvsar6ozo<> ヒーローポイントですね分かります <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:46:52.95 ID:0hbAbfcGo<> 奇跡ポイントか
どっちかというとメダフォース的な意味合いが強そうだ

某最終鬼畜兵器には開幕MF一斉射撃という初見殺しがあってな… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/27(金) 23:47:29.30 ID:/oRLGApMo<> 【MHP機種】
MHPは比較的フレームの自由が利く為、多種多様な構造を持つ事で有名です
その中の代表的な物を紹介しましょう

『ヒュームボット』
Humbotの名の通り、人型を形成している機体です
安定した能力を持ち、二足歩行なのが特徴。地形的には室内等、舗装された場所に秀でています
構造上、防御力と被弾面積に難がありますがそれを補って余りある多種多様な搭載可能武器での戦略性を持ちます
柔軟な思考とスマートな勝利を目指す貴方に

『ゾイノイド』
Zoynoidとは獣型機械の略称です。主に地上で活動する動物を指します
俊敏な機動力で格闘攻撃を活かすプレイが楽しめますが、時折その静穏性を利用し狙撃に徹するプレイヤーも存在します
期待の特性上、大きな武器や外部装甲を搭載出来ないので被弾に注意してください
加速と獲物を刈り取る喜びを貴方に

『フライメック』
Flymechとはゾイノイドの派生型であり、翼竜や鳥、フライトバーニアを搭載したヒュームボット等も含まれます
フレームの確立と技術者達の興味でMHPは大いに進化しました。フライメックもその一種です
高機動、航空運用、管制塔等、フィールドの状況を把握し、それを活用出来るMHPであるといえるでしょう
遠隔武器に対して非常に脆弱かつ装甲自体が薄いものが多いのでドッグファイトは不利であると言えます。そして航行能力は高くありません
仲間に情報を伝え、敵が葬られる様を興じる貴方に

『ドミネイター』
Dominatorとは車両型MHPであり、総じて強固な防御力と強大な重火器を装備出来る機体です
言わば戦車。ですが移動力はそこまで高く無い為、注意が必要でしょう
また特性上壁をよじ登る等の動作が出来ず、静穏性も期待出来ないので一概に強力無比とは言えません
チームフォース(多対多対戦)では強大な盾に、味方が攪乱し重砲で吹き飛ばす等、チームフォースで活きる機体と言えるかもしれません
重厚なる支配欲を貴方に <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/27(金) 23:49:54.88 ID:/oRLGApMo<> あれ?これ>>1さんしか設定投下してないんですね
五年ROMってくる
o...rz <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:52:29.74 ID:QMKyH+550<> >>49
んんwwwwwwwwいいんじゃねwwwwwwww少なくとも私は気に入ったぜ
ただ、まだ完全には設定が画定してないみたいだからもうちっと温めて欲しかった
ROMは5分! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/27(金) 23:54:58.80 ID:ni2H0ToEo<> Q.そもそもHMP(仮)って何?

A.全長30cm程度、コンビニやおもちゃ屋で買える人工知能をもった高起動プラモデルです
5つのパーツがセットになった「バトルキット」が一箱1500円
その他の「強化パーツ」がだいたい100〜800円程度
HMP達は「フィールグラム」と呼ばれる5センチ程度の映写機から映し出される立体ホログラムのフィールドで戦います
ダンボール戦機的なイメージですね
ほぼ全てのファイターは「DVNO(ディーブイエヌオー)」と呼ばれる箇所別のダメージ表示などバトルの情報を教えてくれるアプリをケータイにいれています
最近はDVNOを自作するツールもできているので、自分好みのDVNOを作るファイターも多いようです

>>48
俺はこれすごく好き
みんなも設定晒そう! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:58:12.90 ID:GewFvhbb0<> >>49
なんぞwwwwwwwwww
>>1の続きかと思って格闘型フライメックの妄想しちゃっただろwwwwwwww <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:58:54.05 ID:HKkkT97SO<> じゃあ俺ドミネーターな

HMPは自律系Only? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 23:59:15.86 ID:0hbAbfcGo<> 問題は強化パーツに武器は含まれるかどうかだな
ダンボール戦機ベースなら武器と腕は別々、武器腕もあるといった所か
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:00:15.90 ID:SVBg3gMn0<> ロボに意志があるのかが一番気になってたり
この手ので好きなのがメダロットとかガチャフォースとかミクロマンだから意志がある/ある奴もいる、だと捗る <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:01:09.99 ID:/P4rKY7lo<> HD/BD/RA/LA/LG/WP
おし、これなら六部位だ
両手とも武器腕だったら五部位だがな! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 00:01:58.95 ID:tabO982Do<> >>54
俺はそれもあるけど武器を搭載している場所とかも気になるな
ミサイル搭載の脚部とかで全身500発のミサイルを搭載していたりしたり <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 00:02:56.98 ID:fXAO5i8vo<> 高速イオン砲の武器アームとかあったら私は手こずっている様だな、よし、手を貸そう! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:03:18.01 ID:/P4rKY7lo<> 部位に武器が仕込めるゲームではコズミックブレイクか
ひどいハイパースタイリッシュ重課金ゲームだった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:05:14.59 ID:dNSycxxSO<> 今(?)流行りのパイルバンカーとか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:07:10.58 ID:/P4rKY7lo<> 鶏冠頭に盾内臓パイル…
これは…!クエントの伝承に残る宝か… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:08:21.58 ID:SVBg3gMn0<> サイズ的にはリーダークラスのトランスフォーマーと同じくらいか
それが1500円で購入できて動いて戦えてとは実際安い <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 00:10:21.84 ID:bnK0WIIYo<> Q.どのパーツがどうなってんの?

A.
ヘッド・・・全てを司る、脳の役割。人工知能が入っていて、ここからHMPの感情がうまれる
ヘッドパーツを変えてもPCと接続して記憶データを移し変えれば記憶そのままに質の良い人工知能で戦える
ここの処理能力が低いとうまくパーツが扱えないし、すぐに動きがカクカクになってしまう
人工知能の制度は高いので、河原で拾ったパーツでも性格が悪くなったりしないので安心!

Lアーム、Rアーム・・・このパーツが武器になることが多い

ボディ・・・バッテリーが内蔵されてある
重いボディはその分バッテリー容量が多いが、軽いボディに素早さで負ける
しかし軽いボディは容量が少ないため短期決戦を強いられる
バッテリーが試合中に切れたら反則だ!
ちなみに普通ファイターはバトル時以外はポータブル充電器でバッテリーを充電しなければならない
HMPと話したい時はDVNOとヘッドを無線で同期させる必要がある

レッグ・・・脚。多脚とか逆になってるやつとかたくさんある

Q.HMPって感情あるの?

A.ある。ついでにいうと家政婦ロボも
ある
家政婦ロボは見た目人間とそう変わらない。噂だと某工業が全面的に力を貸しているとか
ちなみに家政婦ロボのプロファイターは存在する <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:13:47.77 ID:dNSycxxSO<> 実際ロボット景気とかロボットバブルとかになってそうだよな、この日本 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 00:15:31.72 ID:tabO982Do<> ボディって背中にスラスターとかカノン砲とか背負ってても大丈夫なの? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:17:20.47 ID:dNSycxxSO<> バトル中に無線で指示とか可能なのだろうか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:17:43.38 ID:SVBg3gMn0<> ロボットのせいで職を失った男がHMPを偶然手にし、嫌悪しながらも家族を守るため戦いに身を投じる……とか
或いはお馬鹿な家政婦ロボの奮闘記、とか、正にも負にも話をかたむけられそうな感じね
そしてロボの感情があると聞いて全俺が滾った!

ところで、戦闘中にHMPちゃんが受けたダメージはどういう扱いになるの?
あと>>51の「強化パーツ」というのは基本パーツのバラ売り?それともより特殊な何かなのかな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:19:24.05 ID:NTrzpIpP0<> コンビニのバトルキット買い占めたったww <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 00:19:56.20 ID:bnK0WIIYo<> Q.改造ってどの範囲までいいの?

A.一応以下が連盟の出したチェック表
以下に一つでも当てはまっていたらアウト

・HMPの全長が25cm以上、40cm以下に収まっていない(横幅の規定はめんどいから勘弁して)
・パーツの数値を弄っている(場合によってはHMP法によって30万円以上、
5年以下の懲役を喰らう事も)
・明らかに相手のパーツを破壊する事だけを目的としている改造、人に危害を加える改造

だいたいこんな感じ
武器をパーツに仕込むのは制限なし。てか改造は基本自由
迷ったら皆でそうだんしよう

Q.HMPファイトのルールはよ

A.パーツごとにHPが定められているので、全部0にするかヘッドのHPを0にしたら勝ち
負けてもパーツは取られないが賭ける人もいる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 00:24:09.31 ID:bnK0WIIYo<> >>65
「基本」攻撃パーツは両腕だからアリ
でも普通よりも武器が多いって事はバッテリー消費も早いって事
あと、機体自体を大きくする必要もあると思う

>>66
HMPに?できるよもちろん

>>67
基本的に種類専用のパーツ
ゼイノイド専用のクロウパーツとかそんなん <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:26:44.02 ID:SVBg3gMn0<> 軽量と重量は時間制限より装甲や装備のペイロードを左右したほうが良い気がする
複数機体投入できるなら別だけど、通常戦闘でも時間制限があって、それが各キャラで違うってちょっとアレだと思うんです
撃墜扱いじゃなくて反則みたいだしEN切れ

逆に言えば、気になったのはそこぐらいです
ジェイムスンやサイバーデスドラゴンみたいな巨大敵・基地メカはイベントで出したいねククク <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:28:21.97 ID:9WPacpHDO<> HMPってヴィジュアルイメージ的にはメダロットや段戦みたいな5.5等身くらい?
それともガンダムとかみたいな高等身? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(長屋)<>sage<>2012/07/28(土) 00:28:33.47 ID:xMD/drkFo<> 実際にパーツがバンバン壊れるとなると経済的に困ってるキャラは安易に出せんな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 00:33:07.74 ID:bnK0WIIYo<> >>53
HMPはいろんな企業が参入していて、企業によってヘッドの思考タイプが違う
だから基本的に自由だよ

>>71
確かにそっちの方がいいかも
「軽いボディははやいけどすぐに落ちる、重いと硬いけどのっそい」って感じかな

>>72
メダロット的な感じ

>>73
壊れたパーツはおもちゃ屋に持ってくとパーツのクズを買い取ってくれるので安く済むよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 00:33:38.68 ID:tabO982Do<> >>70
おしきた!メダロット的に頭部武器的なものを搭載したいなーって思ってたからこれで捗るぜ!

>>71
確かに電池量って概念は扱いが難しい気はする。
ただエッセンス程度で受け止めればバトルに色をつけられるかもしれない

「俺の機体は超重量級のバリア搭載持久戦特化!お前のHMPの充電切れを待たせてもらうぜ!」

「クソッ・・・一気に決めるしかない!」

みたいな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:38:36.03 ID:SVBg3gMn0<> フジムラ理論ではプラスチックの再利用が容易化しているので、ロボ取扱者はペットボトル等の回収業者も兼ねてる……と妄想
ついでにこれのお陰で街は美化され、経済的に苦しいファイターもある程度楽になっている、みたいな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:42:21.06 ID:SVBg3gMn0<> ……そろそろしたらばの雑談スレとか、キャラorHMPの投下も考えていいのかしら
>>74
使い過ぎるとその武器は一時使用不能になるとか、オバヒ起こすかもとかは寧ろ良いと思います
強力な武装ほど癖があったり高すぎたり相応のリスクがある、みたいな

>>75
小型機→燃費悪、火力低 だとちょっと無惨に見えたのよね
でもまあ、最大装備に差は実際出ると思うのでそういう楽しみ方も出来るはず <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:44:45.22 ID:/P4rKY7lo<> アルバトロス
爆撃機とアホウドリを模したHMP。
爆撃機らしく航続距離と積載量に優れる。
飛行形態の被弾面積が大きい上に自重のせいで小回りは効かない。
飛行機能を持つ機種の中では重装甲だが、陸戦型HMPには遠く及ばない。

誘導弾を大量に搭載したモデルだが、当然電子攻撃で全部無効化にされる事も。
「アルバトロスHD」
鳥頭。索敵とロック距離が長い。
CPUパワーを並列処理能力に割いている為、射撃補正が低い。
「アルバトロスBD」
巡航ミサイル内臓の重量フライメックBD。
大きく翼を広げた飛行形態は安定性抜群だが大きい的でしかない。
内臓武器のクルーズミサイルは、弾速が遅いが高威力広範囲による面制圧が可能である。
ただし開始時は残弾0でリロード状態。しかも再装填時間が長い。
「アルバトロスRA」
ミサイルコンテナの武器腕。小型ミサイル内臓、ロック数が多い。
「アルバトロスLR」
ミサイルコンテナの武器腕。小型ミサイル内臓、右腕同様にロック数が多い。
「アルバトロスLG」
大型バーニアを搭載。燃費は良好だが機敏な動きは出来ない。
これまた大型パーツであり、機動力の要で狙われやすい。

どうしようミサイルしか積んでない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 00:44:47.57 ID:tabO982Do<> HMPの設定はできているんだけれど大丈夫か不安なんだぜ・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 00:48:41.09 ID:tabO982Do<> 俺も我慢できない投下しちゃう!

セイリオス
ヘッド:アジュール
レフト:バレルスマッシュ
ライト:バレルランス
ボディ:ナパームスラスター
レッグ:ワイルドダッシュ


ある年の夏季に特別生産された限定モデル、鮮やかな青のカラーリングが特徴
ゾイノイドとヒュームボットのハイブリットのようなパーツ構成で、頭部のデザインを獣型にするか人型にするか議論になった結果
表情が豊かな人型に決まり、それが影響してヒュームボットに分類されることとなった特殊な経緯を持つ。
武装は射撃タイプだがバランスを重視した中量級。

ゴーグルタイプのヘッド『アジュール』はトサカのように真っ直ぐ上に伸びるセンサーと小さな2本角を持つ
射撃型ということもあり索敵とロック距離は高め、しかしゾイノイドの血かAIが体当たり気味である
表情は見かけによらずコミカルでゴーグル部分に電子的に表される。

ライトパーツ『バレルランス』はランスという言葉通り砲身が長めで狙撃向けだが、
砲身そのものを標的に突き立てての使用も想定しているためその半分は見せかけである

レフトパーツ『ナパームスマッシュ』は射程の短い高威力のナパーム弾を打ち出す
右腕に比べて可動式のナックルガードを持ち装甲が厚い、主に盾として使用される。

ボディ『リボルスラスター』は特徴的な6発シリンダーを持ったスラスターを2枚背負っている
このシリンダーにはそれぞれに弾が装填されており、これを消費することで充電とは別口での一時的な加速か射撃攻撃を使用可能。
装飾として胸の中心に特徴的な青いクリスタルが埋め込まれている、充電量は並。

レッグ『ワイルドダッシュ』は脚部にホイールを搭載しダッシュ力に優れ、素早い間合いの調節に一役買っている。
反面地上に重きを置いている為ジャンプ力は中の下、高低差の多い地形は苦手としている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 00:51:03.38 ID:bnK0WIIYo<> 【名前】尾為氏田 大作
【性別】男
【外見】小5だけど年下に見られる。鼻に絆創膏
頭にはボロいサンバイザー
【詳細】
ファイトが大好きな少年
おとうさんは死んだらしい
熱血バカならぬ熱血アホ

【機体名】ダンボルカ
【タイプ】人型
【ヘッド】ギガサーチ
工場で使うヘルメットのようなデザイン
防御力はあるが処理能力は低い
しかしこの装備では十分
【レフト】ツルハシ
アックス系の武器。アックスにしては威力が低いがスピードはピカイチ
【ライト】スコップ
万能系武器。打突、振り下ろし、切り刻む、穴を掘るまでなんでもできるぞ
【ボディ】ドッカター
男の汗が染み込んだパーツ。しかしパーツなので無臭
軽い為バッテリーはクソ。それなのにバリアもつけちゃう素人っぷり
【レッグ】ボンターン
このパーツだけ「ハマサイド」という番長系HMPから拝借したもの
無駄に太くてデカイ。

【性格・特徴】
素人っぷりが凝縮された機体
貰い物で構成された、いわゆるゴミの山
ダンボルカという名前はダンボルカ自身がつけた
いつか自分の素敵なヘッドパーツを放出した相手をボコろうと思っているが
大作がアホなのでファイトできない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 00:52:57.86 ID:bnK0WIIYo<> こんなに人がいるなら!!!!!!!
明日ロールできるじゃないですか!!、!!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 00:56:50.58 ID:8r5xDEOMo<> メダロットってやったことないんだけど人形ってどれぐらい人に似てるんですかね?
武装神姫みたいな感じ? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 01:00:05.27 ID:tabO982Do<> >>83
メダロット・ダンボール戦機共々人型二足歩行ってだけで見た目は普通のロボットだから8割型メカ
ただここは見た目自体は決まってないし武装神姫みたいな人間そっくりなのがいてもいいんじゃないでしょうか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:00:34.65 ID:/P4rKY7lo<> ミッソー大量に撒いてどんな反応するか見たいです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:00:39.59 ID:lRVpI0Fco<> 誰かテンプレ作ってよ
それに則ってキャラ作るから
それとも>>81のを使えばいいかね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:01:42.01 ID:8r5xDEOMo<> >>84
では武装神姫みたいな感じでキャラ作ってきます
回答有り難うございましたっ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:07:24.48 ID:/P4rKY7lo<> 板野サーカスはよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:35:00.93 ID:/P4rKY7lo<> 腕のミサイル外して機関砲とガトリングにしたらひっどい物になった
やっぱ愛嬌って必要だな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:41:33.99 ID:SVBg3gMn0<> ちょっとでかいの作ってみた
使うのは多分まだだが……

【名称】:ネクロマンモス
【タイプ】:ゾイノイド
【サイズ】:39cm(大型)

【概要】
限界ギリギリの全高と、ゾイノイドの中でも指折りの前後幅を持つ重機動獣
「格闘型ドミネイター」とでも評すべき性能を持つ
名前の通り、ただのマンモスではなく凍り付いたマンモスがモチーフとなっており、目は若干虚ろ
一説にはふわふわした剛毛のイメージが付き纏う生き物をメカ化するための苦肉の策だとも

【ヘッド】インペリアル
敵の身体を下から突き上げる象牙・ランス系固定兵装「デスタスク」と
冷気噴霧機、競技用グレネード弾、放水銃、フレイムスローワーなど
アタッチメントで数種類に効果を変える長鼻・「トランクフォース」を装備
CPUの知性も高めだが、組み換え時は重量に注意せねばならない
カメラ範囲は横広型で、レーダーはどちらかというと近距離型(このためグレネーダーは結構な使い手でないと役に立たない)

【ボディ】サイベリア
背中部分と腹部に大掛かりなハードポイントがある超重量型胴体
「尾」にあたる部位は小型レーザーガンとなっていて、背後攻撃の迎撃に適する。威力は正直弱い
あまリに巨大なため、装備できる非ゾイノイド向けパーツは限られてしまう

【ライト】ディーマ
右前足。搭載されたハンマー機構によって、周囲を激しく揺らす事が可能
この機体としては他のマシンの強化に採用しやすいパーツで
丸太めいた大型打撃武装としてこれを装備しているヒュームボットも存在する
逆に他のゾイノイドに移植した時の使い勝手はすこぶる悪い

【レフト】リューバ
左前足。性能は右前足と殆ど同様
同時に上げて打ち下ろした時には、攻撃範囲と威力が更に向上する
一般にゾイノイド系左右装備は運動に干渉しない武装である事が多いが、
この強大な機体では、弱点を増やす目的から移動に不可欠なパーツの一つとなっている

【レッグ】ウランゲリ
後ろ足。腰部分にハードポイントが集中し、重戦車型の機体を支えるに足る力を持つ
フル武装でハリネズミになるのも良いが、熟練者には敢えて最低限の武装に留める者も多い
なぜなら、ネクロマンモスは装甲と重量の割には運動性が高いからである <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 01:47:55.80 ID:8r5xDEOMo<> すげー偏った性能になってしまった……

【名前】宵山 和樹
【性別】男
【年齢】二十代前半
【詳細】
HMP犯罪撲滅機関『EDEN』に所属する男。
小難しいことを考えるのが嫌いで、それがHMPにも現れている。
面倒くさがり屋で、コーラとジャンクフードを愛するダメ人間。

【機体名】ブリッツハンマー
【タイプ】人型
【ヘッド】スパーク
処理速度に特化している。見た目は金髪のショートカットの少女。
【レフト】:ジェットブースター
巨大なナックル型の武装で、推進力を生み出すジェットが内蔵されている。
出力は調整でき、燃費の問題もあるため小出しに使うのが効率的。
【ライト】:ジャガーノート
高威力の衝撃を生み出すことが出来る。威力は弱まるが撃ちだすことも可能。
パーツへのダメージが大きいため、一度の戦闘では三発が限度。それ以上使うと自分がぶっ飛ぶ。
【ボディ】:ジェイルハーツ
軽く、スピード重視のためバッテリー持ちはあまり良くないが、この機体最大の特殊武装。
バッテリーを強制的に内部暴走させることにより、機体性能以上の出力を発動できる自爆装置のような機能が搭載されている。
しかし暴走を発動させるとバッテリー切れ、パーツの破損などが起きるため、滅多なことがない限り使用は出来ない。
【レッグ】:ブラックスピード
跳躍力に長けており、また搭載されたジェット噴射で一瞬だけ直線的に加速できる。
加速を長期使用するとオーバーヒートし、機動力が通常の半分以下に落ち込んでしまう。
見た目はかなりごついブーツ。

EDENにより支給された格闘戦を得意とするHMP。
十代前半の少女のような見た目で、武装のカラーリングは黒を基調としている。
容姿と性能はかけ離れており、攻撃翌力と突破力においてはかなりの性能の高さを誇る。
その代わり、燃費の悪さと防御力の低さも頭ひとつ抜けているため、短期決戦型の機体となっている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 02:18:38.66 ID:tabO982Do<> とりあえずキャラクターも完成したぜ・・・

【名前】星野谷 拓海
【性別】男
【外見】くせっ毛であり髪の毛を短くしているため天然ウルフカットのようになっている
【詳細】
小学5年生、ちょっと冷めたところもあるものの根は熱く好奇心は旺盛。
朝に弱くギリギリになることも多いが、ローラーを取り付けることができるシューズのおかげで遅刻の回数は少ない。
相棒であるHMPセイリオスは今は亡きおじいちゃんから未起動のまま貰ったものである
白いパーカーを好んで着用している。

【名称】セイリオス
【タイプ】ヒュームボット
【サイズ】33cm(中型)
【概要】
ある年の夏季に特別生産された限定モデル、鮮やかな青のカラーリングが特徴
ゾイノイドとヒュームボットのハイブリットのようなパーツ構成で、頭部のデザインを獣型にするか人型にするか議論になった結果
表情が豊かな人型に決まり、それが影響してヒュームボットに分類されることとなった特殊な経緯を持つ。
武装は射撃タイプだが間合いのバランスを重視した中量級。

【ヘッド】アジュール
ゴーグルタイプのカメラアイのヘッド、トサカのように真っ直ぐ上に伸びるセンサーと小さな2本角を持つ。
射撃型ということもあり索敵能力とロック距離は高い、しかしゾイノイドの血かAIが体当たり気味である
表情は見かけによらずコミカルでゴーグル部分に電子的に表される。

【レフト】ナパームスマッシュ
射程の短い高威力のナパーム弾を打ち出す武器一体型パーツ、マニピュレーターもきちんと存在している。
右腕に比べて可動式のナックルガードを持ち装甲が厚い、主に盾として使用される。

【ライト】バレルランス
ランスという言葉通り砲身が長めで狙撃向けの武器一体型パーツ、レフト同様にマニピュレーターもきちんとついている。
狙撃向けとは言っても砲身そのものを標的に突き立てての使用も想定しているためその半分は見せかけである

【ボディ】リボルスラスター
装飾として胸の中心に特徴的な青いクリスタルが埋め込まれているボディパーツ。
6発シリンダーを持ったスラスターを2枚背負っていて、このシリンダーにはそれぞれにに弾が装填されている
これを消費することで充電とは別口での一時的な加速か射撃攻撃を使用可能、ボディ本体の充電量は並

【レッグ】ワイルドダッシュ
脚部にホイールを搭載しダッシュ力に優れたレッグパーツ、素早い間合いの調節に一役買っている
反面地上に重きを置いている為ジャンプ力は中の下、高低差の多い地形は苦手としている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 02:46:21.43 ID:SVBg3gMn0<> キャラ投下、明日は早速絡みたいおやすみ

【名前】高藤まりか
【性別】女
【外見】小学6年生。背はそれなりにあるのにスレンダー過ぎるのがコンプレックス
    青い髪のショートヘアで、スポーティな印象。ジャージを好む
【詳細】
ジュニア競技の世界で三傑とまで呼ばれた実力者「高藤まつり」と大変仲が良かった従姉妹。
元々はHMPをケータイと同じような感覚で使っていたが、まつりが突然の死を遂げてからは、
彼女の使用していたHMPを受け継ぎ、自身もトップ選手を志し。
そして、どこか謎の多い従姉妹の最期の数日間のナゾを突き止める事を目的としている。
……のだが、まだファイターとして人として未熟と言わざるをえない。
一流なのは意気込みだけ。

愛機シャドウニンジャとの関係も、まだギクシャクしている。
共に「なぜ従姉妹の/マスターの側に居られなかったのか」……という後悔を共有していると言い換えても良い。

【機体名】シャドウニンジャ
【タイプ】ヒュームボット
【サイズ】29cm(中型)

【概要】
3次元的運動性に長けたニンジャシリーズの中でも、電撃的斬撃戦に長けたHMP。
黒装束の忍者の姿をしていて、ステルス効果で接近し一気に決着を付ける戦術が得意。
「高藤まつり」の所有機体の中でも二番手についていた機で、人気は高いが扱いは簡単ではない。

【ヘッド】ナイトストーカー
漆黒の覆面風ヘッド。口元は面頬風パーツで銀に装甲されていて、シャープな姿。AIは沈着・格闘好み。
最大の特徴はアクティブステルスで、妨害電波により敵機のレーダーから自機を消し去ってしまう。
また各種火器の管制もいい加減になると強力だが、その間はこちらもレーダーが使用不能。
処理能力は中くらいなので、ファイター感覚を磨かないと自身も迷子に。
特にタッグ戦では、その間にパートナーが集中攻撃を食らって落ちる危険を孕む。

【ボディ】オブシディアン
軽量で、機動性に主眼を置く装束風ボディ。優れた柔軟性が多彩な格闘術へニンジャを導く。
電力最大量が多めだが、重武装は特性を殺してしまうだろう。

【レフト】シャドウクナイ
万能武器クナイ。ニンジャシリーズの売りの一つである。
肉薄時には小型の刺突武器、中距離では投擲武器。崖に突き刺せば登るし、地に突き立てれば掘れる。
5本まで携帯していられる。使い切ったら拾わねばならない。

【ライト】ムラサマブレード
ひたすらに鋭く攻撃翌力が高い実体刀を展開する右手。
シャドウニンジャの目玉武装で、斬ったHMPから電力を吸い取る特殊な効果を持つ。
然しコレの駆動自体に電力が必要なため、攻撃を外し続けると勝手に機能停止してしまう情けない展開も。
なお「ムラサマ」は誤字ではなく、古いコンピュータゲームの誤植のオマージュである。

【レッグ】タビ・トレック
純粋に「脚力」を高めたレッグパーツ。
三角飛びやサマーソルトキックなど、アクロバティックなアクションを容易に行って見せる。
積載重量に難があるが、反動を逃がすので、他のパーツと異なり種別は選びつつも射撃装備に向く。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 03:03:40.43 ID:fXAO5i8vo<> 【MHP NAME】言わずと知れた機体名。HMP法により国家登録した際の名前です
【TYPE】基本的にパーツの一式のコンセプトにより決定されます。タイプ規制のある大会やバトルも勿論あります
【HEAD】頭部パーツ。基本的な演算処理能力やバックアップメモリ、駆動などを統括しています。ボディと共に重要な部位です
【BODY】胴体パーツ。バッテリーやモーター等、駆動部を収める部位です。バッテリー容量によって重量が決定します
【L.ARM】左腕部パーツ。下記のR.ARMとほぼ同等の役割を持っています。フライメックはこの部分が翼になっていたりする事も
【R.ARM】右腕部パーツ。両腕パーツはゾイノイドでは前脚になる事もあります。ヒュームボットの走行にも影響します
【LEG】脚部パーツ。二脚から多脚、逆関節に車輪、履帯、果てはホヴァー等、多種多様なパーツが揃っています。走行に直結しています

【ETC】性格や志向等。HMP独自の擬似人格により十人十色な行動パターンが生まれます

こんなものか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 03:36:12.11 ID:SVBg3gMn0<> 読み返してみると>>93の【詳細】の文章と設定がちょっとアレ……手直ししますね
今度こそおやすみなさい

【詳細】
ジュニア競技の世界の三傑の一人、女流ファイター「高藤まつり」と大変仲が良かった従姉妹。
元々はHMPをケータイと同じような感覚で使っていたが、まつりが突然の失踪を遂げてからは、
彼女の使用していたHMPを受け継ぎ、自身もトップ選手を志し。
そして、姉のように慕っていた従姉妹の消息を追うための戦いを決意する。
……のだが、まだファイターとして人として未熟と言わざるをえない。
一流なのは意気込みだけ。

愛機シャドウニンジャとの関係も、まだギクシャクしている。
「なぜ従姉妹の/マスターの側に居られなかったのか」という、不毛な後悔を共有している¥態と言い換えても良い。

ちなみに、二番手の機体であるシャドウニンジャが彼女に付いて来ているのは
まつりの最強機である巫女型HMP「ルーンルーイン」がファイターごと失踪しているから。
弓型のレーザーキャノンで遠距離から射抜き、バリア・ビットまで搭載している恐ろしい機体である。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 07:13:27.25 ID:bnK0WIIYo<> そういや舞台になる街の設定考えてねーな
東京とかの方がいいのかな。俺道民だから札幌のがいいけど(自己中) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 07:15:28.29 ID:oEeOW3Oqo<> 連載6ヶ月位すれば海外編に突入するだろ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 07:32:28.57 ID:oEeOW3Oqo<> キセキポイントについて

A君とB君がロールしました。
A君はキセキポイントが2溜まって、ロール中に1使いました
B君は運悪くキセキポイントはたまりませんでした。

ロール終了時点で
A君のキセキポイントは1
B君のキセキポイントは0

こういう認識でOK? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 08:13:23.51 ID:RzmVYlEwo<> これはスーパー妄想妄言垂れ流しタイムで良いのか? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 08:50:14.40 ID:tabO982Do<> スレをちゃんと読めば書いてあるでしょ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 08:54:13.04 ID:RzmVYlEwo<> いや・・・あの・・・時間も時間だし様子をうかがわせてよ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 09:05:15.55 ID:tabO982Do<> >>96
組田橋みたいな適当な地域名でいいんじゃないかなwwww

>>101
ごめんごめん>>98について言ってるのかと思ったんだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 09:14:11.32 ID:RzmVYlEwo<> でもキセキポイントってリセットされるってことは両方0なのかな・・・
ただ溜めるのは無制限だから運の良い人は託しまくりって事になるのか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 09:23:37.39 ID:tabO982Do<> >>103
俺もキセキポイントは難しいシステムだと思うよ、コンマスレみたいな運要素を絡めるし
ただ逆に言えば1でも溜まれば結構自由にキセキを起こせるって事でもあるんじゃないかな、やりすぎ注意だけど <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 10:18:53.97 ID:oEeOW3Oqo<> いまいちキセキポイントのストック概念が理解できない。

リセットってのは何のこと言ってるの>? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 12:23:25.18 ID:KrW6euySO<> TRPG的な要素はどうするんだろう? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(長屋)<>sage<>2012/07/28(土) 12:35:57.08 ID:GQF2RBImo<> 経験点をお金とか商品券に置き換えてみたらどうだろう?
イベントとかをこなす度に強化出来るとか
でも参入時期で差が付きすぎるか…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 12:37:41.60 ID:KrW6euySO<> キャラクターデータを作り始めたけれど、可変機ってアリですかね? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 12:45:27.37 ID:9WPacpHDO<> よく読めアリだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 12:49:14.85 ID:KrW6euySO<> 最初の方か、スマソ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 12:56:25.25 ID:tabO982Do<> 変形で思ったんだけれど、可変機は1つでもパーツの組み換えをすると変形不可になるのか
それともパーツを交換していてもボディさえあっていれば変形できるのか

個人的には上だと思うのよさ <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 13:07:39.30 ID:bnK0WIIYo<> 酉つけました

Q.キセキポイントがイミフ

A.適当に作ったシステムだからあまり考えてなかったんだ。ごめん
以外修正版

キセキポイントの上限は無制限、しかしロール中に使えるのは一人につき一回です
キセキポイントの受け渡しは「キセキポイントを使用した」という扱いになります
よってキセキポイントを渡すのも一人につき一回。一度渡してしまった場合ポイントが溜まっても使用をしてキセキを起こす事はできません
使用する時はレスの最後の方で「//キセキポイントの使用」と書いてくれればOKです
また、余ったキセキポイントは「交換ポイント」に変換されます

Q.なんじゃなんじゃ交換ポイントってのは

A.ゲーム内で称号などと交換できるポイントです(仮)
称号を獲得すると「そういった称号で呼ばれている」という設定となり
他のキャラクターにその称号の名前で呼ばせる事ができます(強制ではありません)
称号は称号ごとに必要なポイントが定められていて、最大3つまで組み合わせることができます
例えば交換ポイント5の「レッド」という称号と7ポイントの「ファイター」という称号が欲しい時は
12ポイントの交換ポイントが必要です
また、交換した場合最大3つまで組み合わせることができるので
「レッドファイター」「ファイターレッド」
などの称号にすることが出来ます
さらに称号と称号の間に交換ポイントを使わずにひらがなを一文字だけ入れることが可能です。よって
「レッドなファイター」や「ファイターのレッド」
などの称号にすることができます
称号はイベントでももらえるのでドシドシ参加しましょう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 13:22:52.52 ID:RzmVYlEwo<> 称号良いねえ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 13:49:02.88 ID:9WPacpHDO<> ヒュームボットとかの設定だけどあれって獣タイプ人型とか人型逆間接(or多脚orタンクorフロート)とかってどういう扱いになるの?
虫型とかも <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 14:25:28.08 ID:bnK0WIIYo<> >>111
可変が可能なHMPは多くの局面に対応できる為強力ですが
多くのものは5つのパーツをフルに活用する為、パーツを別のものに変えてしまうと可変ができなくなってしまいます

>>114
そういう時はスレで相談して、新しく種類を作ればいいかなって思ってる

それとテンプレ勝手に追記修正しました

【名前】HMPファイターの名前です
【性別】HMPファイターの性別です
【外見】顔、服装など、外の特徴を書いてください
【詳細】性格や生い立ちなどの設定を書いてください

【MHP NAME】言わずと知れた機体名(愛称)。HMP法により国家登録した際の名前です
【TYPE NAME】機体元々の名前。つまりシリーズ名です。メダロットでいうメタルビートル的な
【HEAD】頭部パーツ。基本的な演算処理能力やバックアップメモリ、駆動などを統括しています。ボディと共に重要な部位です
【BODY】胴体パーツ。バッテリーやモーター等、駆動部を収める部位です。バッテリー容量によって重量が決定します
【L.ARM】左腕部パーツ。下記のR.ARMとほぼ同等の役割を持っています。フライメックはこの部分が翼になっていたりする事も
【R.ARM】右腕部パーツ。両腕パーツはゾイノイドでは前脚になる事もあります。ヒュームボットの走行にも影響します
【LEG】脚部パーツ。二脚から多脚、逆関節に車輪、履帯、果てはホヴァー等、多種多様なパーツが揃っています。走行に直結しています

【ETC】性格や志向等。HMP独自の擬似人格により十人十色な行動パターンが生まれます

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 14:29:04.85 ID:tabO982Do<> >>114
獣人逆間接は多分ゾイノイド、元ネタはダンボール戦機だろうからそれ的に考えると
人型逆間接は多分ヒュームボット、フロートはフライメック、4脚は起動力寄りのドミネイターって感じじゃないかな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 14:48:05.95 ID:fXAO5i8vo<> >>114
ヒュームボットは二足歩行が原則
タンクorフロートだとドミネイター
多脚・・・・・・ちょっと待ってくださいがんばって考えますん <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 15:00:27.26 ID:KrW6euySO<> >>115
フルにパーツを使うか、確かにそうだね、了解です。
つまり市販に近いものになるってことか……ヘッドの形と手持ち武器の改造なんて簡単にできるよな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 15:04:46.06 ID:tabO982Do<> >>115
ロールする場所も考えたいね、世界観設定とか機体設定とかを投下する場所も欲しいし・・・そろそろしたらばが必要な時期か <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 15:05:11.61 ID:fXAO5i8vo<> 【MHP機種】
MHPは比較的フレームの自由が利く為、多種多様な構造を持つ事で有名です
その中の代表的な物を紹介しましょう

『ヒュームボット』
Humbotの名の通り、人型を形成している機体です
安定した能力を持ち、二足歩行なのが特徴。地形的には室内等、舗装された場所に秀でています
構造上、防御力と被弾面積に難がありますがそれを補って余りある多種多様な搭載可能武器での戦略性を持ちます
柔軟な思考とスマートな勝利を目指す貴方に

『ゾイノイド』
Zoynoidとは獣型機械の略称です。主に地上で活動する動物を指します
俊敏な機動力で格闘攻撃を活かすプレイが楽しめますが、時折その静穏性を利用し狙撃に徹するプレイヤーも存在します
期待の特性上、大きな武器や外部装甲を搭載出来ないので被弾に注意してください
加速と獲物を刈り取る喜びを貴方に

『フライメック』
Flymechとはゾイノイドの派生型であり、翼竜や鳥、フライトバーニアを搭載したヒュームボット等も含まれます
フレームの確立と技術者達の興味でMHPは大いに進化しました。フライメックもその一種です
高機動、航空運用、管制塔等、フィールドの状況を把握し、それを活用出来るMHPであるといえるでしょう
遠隔武器に対して非常に脆弱かつ装甲自体が薄いものが多いのでドッグファイトは不利であると言えます。そして航行能力は高くありません
仲間に情報を伝え、敵が葬られる様を興じる貴方に

『ドミネイター』
Dominatorとは車両型MHPであり、総じて強固な防御力と強大な重火器を装備出来る機体です
言わば戦車。ですが移動力はそこまで高く無い為、注意が必要でしょう
また特性上壁をよじ登る等の動作が出来ず、静穏性も期待出来ないので一概に強力無比とは言えません
チームフォース(多対多対戦)では強大な盾に、味方が攪乱し重砲で吹き飛ばす等、チームフォースで活きる機体と言えるかもしれません
重厚なる支配欲を貴方に

『マキノイド』
Machinoidとはゾイノイドの派生型であり、昆虫型の通りその多くは多脚パーツやホッパーシステムと呼ばれる特殊な脚部パーツを装備しています
軽く、早く、安い。全体の特徴としてバッテリーが小型で高機動短時間制限の機体となっています。勿論、ファイターの技量で緩和は出来ますが
期待の特性上重量のある重火器等は搭載出来ません。また移動時の安定性が高く無い為狙撃も徹し難いでしょう。幼虫型HMPも確認されている様です
ですが、それを補って余りある、フィールド内を縦横無尽に駆け巡る爽快感は多くのファイター(主に男性)からの信頼を得ています
トリッキーな戦術と酔いかねない脚力をあなたに <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sagesaga<>2012/07/28(土) 15:45:55.24 ID:lRVpI0Fco<> どう作ればいいのかよくわがんね

【名前】雪月 奏
【性別】女
【外見】
雪のように白い肌と髪、低めの身長でどことなく儚げ。
夏場はワンピース、冬場はその上からケープを着ている事が多い。
【詳細】
中学二年、数あるHMP製作会社の一つの娘。
HMPに興味を持ったのは最近な為技術的には乏しくあまり強いとは言えない。
というか、機体の性能を活かしきれていないという方が適切かもしれない。
自HMPの呼び名はもっぱら「グラン」である。

【MHP NAME】グランドキャニオン
【TYPE NAME】ライトニングチャリオッツ

【HEAD】ウルトラソニック
周囲の地形やHMPの位置を把握し、最適なルートを導き出す事が出来るソナーが付いている。
その為中々にCPU処理能力が高いが、加減を間違えるとオーバーヒートする事がある。
また必殺技とも言えるミサイル・ランチャーを射出できる砲塔があるのもここ。連射能力はないが威力はお墨付き。

【BODY】アイアンフォート
積めるだけバッテリーを積み、更には改造により「要塞」とも言えるレベルの防御力を誇る。
生半可な攻撃ではビクともせず、それはむしろグランドキャニオンの制圧力を増させるだけなのだ。
その分とんでもない重量を誇り、機動力も犠牲になっているが然したる問題では無い。

【L.ARM】ライトマシンガン
連射性能に優れた機銃が装着してある。使用時には【BODY】から左に飛び出る形に現れる。
主砲には遠く及ばないが威力面で不自由する事は無く、防御力を捨てたHMPが相手の場合これ一本でも何とかなる。
対空性能もなかなかで、機動力のあるHMP相手でも比較的当てやすい。

【R.ARM】ヘビーガトリング
連射性能に優れた機銃が装着してある。使用時には【BODY】から右に飛び出る形に現れる。
威力としては申し分なく、連射能力や弾数についても【L.ARM】を上回る性能を誇る。
だが銃身が温まるまで時間がかかるため、使える場面が少ないのが難点である。

【LEG】ノンストップクローラー
履帯。不整地走破能力は数あるHMPの中でもピカイチで、垂直な壁とかじゃなければ登る事が出来る。
転輪は騒音と振動を軽減するためにゴム製のソリッドタイヤを装着している。

【ETC】
文字通りの重戦車。動く要塞。
自身の制圧力を以て標的を潰す事を旨としている。
正々堂々と戦う事を好み、卑怯な手段を嫌う傾向がある。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 16:01:58.88 ID:bnK0WIIY0<> http://www59.atwiki.jp/kumirobo/pages/1.html
いちおう仮です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 16:40:30.61 ID:NTrzpIpP0<> 不思議パワーで飛ぶウィングはフロート? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 16:57:44.07 ID:tabO982Do<> >>122
乙!
後は舞台の問題だな・・・ストーリーの拠点とロール場所両方含めて

>>123
それだけじゃ多分判断できないと思うぜ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 16:58:41.25 ID:KrW6euySO<> 【名前】工藤 有守
【性別】男
【外見】黒縁メガネの背の高いお兄さん
【詳細】大学生。元はスポーツ大好き少年であったが、怪我を気にMHPへと乗り換えた。
【MHP NAME】カイ
【TYPE】ゾイロイド/ヒーマイド
【サイズ】33cm/29am
【HEAD】タカノメ(スザク用カスタム)
機械的なレーダー機能は最小に、変わりに視界や音声などの、野性的な機能を高めたヘッド。
スザクシリーズと同じメーカーで、簡単にスザクシリーズと互換性を得る事ができるパーツである。
搭載AIは自立型。
【BODY】スザク・ボディ
可変の基礎となっている部分。
スラスター等の出力は使用せず、羽ばたいて飛翔するため、羽の部分は非常に頑丈で、ヒュームボット時はシールドのようにも機能する。ヒューマイド時は飛翔不可能。
軽量化のために、羽以外の部分は非常に攻撃に弱い。
【L.ARM】スザク・ライトC
本来は爪の固定装備が備え付けられるが、簡単な改造でマニュピレーターへと換装されており、赤く長い棒の近接装備を扱う。
【R.ARM】スザク・レフトC
レフトと同じく、マニュピレーターに換装済みで、弓矢を扱う。
【LEG】スザク・レッグ
ゾイロイド時の大きな爪は武器になる。
ヒューマイド時は他のパーツと同じく耐久が低い。あまり目立たないが、非常に高いバランスの能力を持っている。その他は可も付加もないといったところ。
【ETC】可変機。基本系には鳥形である。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 17:02:46.28 ID:fXAO5i8vo<> カイはフライメック仕様のヒュームボットですね。ゾイノイドは地上動物限定です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:07:49.83 ID:NTrzpIpP0<> >>124
変なこと聞いてすまんかった
フロート、ホヴァー、バーニアに違いがよく分からなかったんだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:14:45.43 ID:KrW6euySO<> >>126
おおすまん、その通りです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:25:01.01 ID:/P4rKY7lo<> あー冷凍武器つかいてえ
絶対充填と放熱に難あるキワモノパーツだが
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 17:25:40.62 ID:tabO982Do<> 【名前】星野谷 拓海(ほしのや たくみ)
【性別】男
【外見】
くせっ毛な髪を短くしているため天然ウルフカットのようになっている
主な服装は白いパーカー、ローラーを取り付けることができるシューズを履いている
ちなみに校則違反である。
【詳細】
中学1年生、ちょっと冷めたところもあるものの根は熱く好奇心は旺盛
朝に弱くギリギリになることも多い。
相棒であるガブルは開封済み未起動の状態で今は亡きおじいちゃんから貰ったもの

【MHP NAME】ガブル
【TYPE NAME】スチールセイリオス
【MHP TYPE】ヒュームボット

【HEAD】アジュール
ゴーグルタイプのカメラアイのヘッド、トサカのように真っ直ぐ上に伸びるセンサーと小さな2本角を持つ。
射撃型ということもあり索敵能力とロック距離は高い
表情は見かけによらずコミカルでゴーグル部分に電子的に表される。

【BODY】リボルスラスター
装飾として胸の中心に特徴的な青いクリスタルが埋め込まれているボディパーツ。
6発シリンダーを持ったスラスターを2枚背負っていて、このシリンダーにはそれぞれに弾が装填されている
これを消費することで充電とは別口での一時的な加速か射撃攻撃を使用可能、ボディ本体の充電量は並

【L.ARM】ナパームスマッシュ
射程の短い高威力のナパーム弾を打ち出す武器一体型パーツ、マニピュレーターも存在している。
盾として使用できる可動式のナックルガードを持ち、右腕に比べて装甲が厚い。

【R.ARM】バレルランス
ランスという言葉通り砲身が長めで狙撃向けの武器一体型パーツ、レフト同様にマニピュレーターもきちんとついている。
狙撃向けとは言っても砲身そのものを標的に突き立てての使用も想定している為
先端にかけては実質筒状の槍であり、バレルとしての効果は薄い見せかけである。

【LEG】ワイルドダッシュ
脚部にホイールを搭載しダッシュ力に優れたレッグパーツ、素早い間合いの調節に一役買っている
反面地上に重きを置いている為ジャンプ力は中の下、高低差の多い地形は苦手としている。

【ETC】
ある年の冬季に特別生産された限定モデル。
鮮やかな青のカラーリングが特徴であり、ゾイノイドとヒュームボットのハイブリットのようなパーツ構成を持つ
これは頭部のデザインを獣型にするか人型にするか議論になった結果、表情が豊かな人型に決まり
最終的にヒュームボットに分類されることとなった特殊な経緯が影響している。

武装は射撃タイプだが間合いのバランスを重視した中量級。
AIの性格は流れるゾイノイドの血が悪い方向で働いたのか、クールとは正反対の熱血体当たり気味。

>>127
フロート・ホバーは浮翌力を発生させるもの、これはおそらく脚部を刺している。
ニュアンス的にホバーは地面から1枚浮いて滑っているって感じでフロートは文字通り宙に浮いているって感じだと思う
ホバーはドミネイターでフロートはフライメックみたいな

バーニアはここでの扱いだとロケットノズルの推進機関ってことじゃないかな
これは多分脚部とか関係ないものだと思う <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 17:28:52.48 ID:fXAO5i8vo<> >>127にもあった様に土手祈祷な設定で違いがよくわからない様です。>>1に全てを任せれば上手くいった筈なのだ!
『フロート』
空圧もしくは電磁干渉により、車輪や足を利用しない脚部パーツです。静穏性は二脚、多脚に劣り、重量は車両に劣ります
ですが、地上の状況に影響されない為、オールラウンダーとしての運用が可能でしょう。特性上、バッテリーの消費は少なくありません
ちなみに着陸時は小型の爪を下部より展開、座った様な状態になります。ホヴァーもこれに中ります

『バーニア』
ボディ或いは各パーツにアクティベイト出来るカスタム要素です。跳躍時やフライメックの機動力に大きく影響します
各パーツから電力供給を受けている為、非使用時でもバッテリーへの負担が少なからずあります
スラスターはフライメックの推進用ブースター、バーニアはそれ以外の機種の跳躍機動時の推進用ブースターと考えると良いでしょう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:32:44.16 ID:NTrzpIpPo<> >>130
わかりやすい!ありがとう! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:37:58.34 ID:3l0CAUqeo<> とりあえず今まで出てる設定とかって>>122にまとめちゃっていいのか?
一々ログ辿るのも面倒だろうし <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 17:39:25.88 ID:tabO982Do<> >>131
苦言なんだけれどスラスターとブースターで機種分ける意味が分からないよ

ガンダムとかで扱われているブースターはロケットノズル式の推進機関
スラスターはバインダー状の推進機関、これでいいじゃない
細かく分けすぎて手の施しようがなくなってきてるよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:44:23.36 ID:NTrzpIpPo<> >>131
>>134
このあたりはSFチックな外連味を入れて良いってことなのかな
読んでたらワクワクしてきた <>
◆i6jtYOgVtk<><>2012/07/28(土) 17:45:42.01 ID:bnK0WIIYo<> >>133
どうぞどうぞ
本当は俺やれればよかったけど出先なんでスマホなんです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 17:48:44.11 ID:tabO982Do<> ブースターじゃないバーニアだわ、どうもバーニアとブースターを間違えてしまう

>>133
お願いします <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 17:50:00.60 ID:fXAO5i8vo<> >>134
よく言った、商品はwikiでそう書き加える権利だ!まだまっつろけだけどな!
あと当たり前ですが私は>>1じゃないので公式じゃないですよ? <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 17:51:54.47 ID:bnK0WIIYo<> 俺が公式ってわけじゃないよ
一番浸透しているものが公式って事でいいとおもう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:52:18.46 ID:3l0CAUqeo<> とりあえず>>1のだけまとめる
他の人のとかは、各自で足すなりしてくれーwikiだからな! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/07/28(土) 17:55:04.89 ID:KrW6euySO<> 結局、ロール場所はどうなるの? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 17:56:30.55 ID:tabO982Do<> >>141
俺もそれが気になってんだ、したらばでするのかここでするのか
どっちにしろしたらばを立てる必要はあるんだけれどさ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 17:57:34.53 ID:SVBg3gMn0<> キセキシステムとか宣伝効果的な事を考えるとロールはパー速でやるべきだと思います
もし通常ロールスレとイベント・キャンペーンスレを分けるなら後者をこっちに <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 18:05:14.07 ID:8r5xDEOMo<> EDENに制服とかマークってあるのかしら
あるなら制服きせるなりマークを機体にペイントしたりとか浪漫だなー <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 18:16:16.43 ID:3l0CAUqeo<> とりあえずざっくりとwiki更新
たりねーよばかーとか、もっと素敵にしちゃるけぇのぉって人がいたら更新してくれ
奇跡ポイントについてはどれが正式採用なのかイマイチようわからんかったので、未記述
誰か整理してはってくんろ <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 18:34:05.25 ID:bnK0WIIYo<> >>144
あるよ。絵下手だけど許して
階級章の色は本当は赤だからね。脳内で変換してね
http://i.imgur.com/3qkVF.jpg

wiki更新ありがと。あとで更新しとくわ
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(三重県)<>sage saga<>2012/07/28(土) 18:42:09.94 ID:msLEHreZo<> 今北。ちょっとキャラ作ってみる

【名前】黒狼院 姫羅
【性別】女
【外見】
髪型は金髪のロングヘア。黒いメッシュキャップを被っている。
服装は白いTシャツに十字架のネックレスを提げている。
ズボンはジーンズを愛用し、白いベルトを着けている。
【詳細】
小学六年生。HMP製作会社の娘。ボンボンのお嬢様
ブルーローズ事件の被害を受け、真相を追っている。
パートナーは家政婦としての機能も兼ね備えている。
と言うか姫羅自身がパーツをその場に合わせて組み替える。

【MHP NAME】エミリア
【TYPE NAME】メイドロボX
【HEAD】猫耳カチューシャ
その名の通り、猫耳カチューシャの着いたヘッドパーツ。
元々は家政婦MHPとして姫羅のワガママに耐える為に作られたのか、処理能力が高い。
【BODY】エプロンドレス
軽量、スピードタイプ。当然、バッテリーは低目。
【L.ARM】ガトリングフィンガー
指先が銃口となっており、連射性能を重視した機銃となっている。
近距離時は手を拳へと変えて殴る。
【R.ARM】ワイヤーショット
腕にワイヤーを仕込んでいる。
ワイヤーは先に刺が装備されており、壁に刺して移動する事もある。
敵機に刺す事は難しいが、電流を流すことが可能で標的に当てて敵機の電気的なダメージを与える事があるかも知れない。
当然、電流を流すのもバッテリーを使う。
【LEG】ワイルドキック
二足型のレッグパーツ
素早さを重視している。蹴りなどの攻撃も可能。

【ETC】
姫羅の専属メイドロボ。
主人に忠実である。 <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 18:46:00.36 ID:bnK0WIIYo<> サイズの項目もないとダメですかね
ちなみにキャラ登録はwikiでする予定です
そっちの方があとで修正できるじゃないですか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 18:46:26.50 ID:/P4rKY7lo<> 【名前】御影 縁
【性別】♀
【年齢】二十台前半
【外見】
黒いパーカーを着た小柄な女。
青白の縦縞模様のコンビニ店員の衣装の時も。
【詳細】
会社員崩れのコンビニ店員。
性格は気儘でマイペース。時間に疎い所がある。
酒が一切飲めず、タバコも苦手とする。

【MHP NAME】照月
【TYPE NAME】プリンセススノウ
【HEAD】オーロラビジョン
軽量新鋭機。優れた射撃能力とロック距離を特徴とする。
装甲は薄く、索敵能力が低い。他に並列処理が苦手。
外観はペンギンを模した耳当て付きの帽子を被った少女型の頭部。
【BODY】フラットライン
肩掛けを羽織ったボディパーツ。軽量級にしては標準に並ぶ耐久力を持つ。
バッテリー容量が少ない出力重視型のボディ。クーラーユニットを内蔵する。
ユニット起動中は補助チャージを獲得し、武器の充填・放熱時間を短縮する。
補助チャージはプラス症状扱いだが、駆動時間が削られてしまう。
【L.ARM】フリーズボム
長袖にマニュピレーター。袖の中に冷凍銃を内臓した腕。
フリーズ属性。冷凍弾を発射する。爆風範囲が広く強力。
爆風に凍結効果があるが、状況にもよる。充填速度が遅くその上放熱時間も長い。
【R.ARM】フリーズガン
左腕同様、袖の中に冷凍銃を内臓した腕。
フリーズ属性。冷凍弾を連射する。小規模ながら爆風を伴う。
僅かながら凍結効果が期待出来、総合的な威力に優れる。充填速度が遅い。
【LEG】ザ・グレートエスケープ
装甲はやや薄いが、優れた推進力を持つ二脚タイプ。
この速度で積載量は標準クラスもあり、重装と高機動を両立出来る。
その代わり小回りは効かず安定性が悪い。
シンプルなロングスカートにロングブーツ。使い回しが効くデザイン。
【ETC】
節電キャンペーン時に限定販売された珍しい人型HMP。
冷凍射撃という珍しい武器を両腕に備え、界隈を驚かせた。
意欲的なハイテク技術の塊だが、所々に弱点を抱えており扱い難い。
外装は黒と水色のカラーリング。帽子の下は髪は白の短髪。
AIは自律型/奔放。何も考えていない暴走トレーラー。

暑い暑くて死ぬ
暑すぎて設定が「飛べない鳥」になってしまったじゃないか
必殺ファンクションとかあったら冷凍ビームとか出るのかな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 19:01:27.11 ID:/P4rKY7lo<> ttp://livedoor.blogimg.jp/gatun02/imgs/3/0/306cae04.gif
こいつオスなんだよな… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 19:30:33.90 ID:/P4rKY7lo<> ところでロールスレどこだ
したらば?パー速? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 19:35:14.72 ID:tabO982Do<> ログをちょっとさかのぼれば決まっていないことが分かると思うんだぜ・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 19:40:57.46 ID:tabO982Do<> 俺のキャラクターのページが二重になってるんだぜwwww <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 19:42:20.39 ID:bnK0WIIY0<> >>153
どっちも設定ちょいちがうみたいなんで分けました
どっちか消しといてください <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 19:46:41.08 ID:tabO982Do<> >>154
@wikiは管理者か参加ユーザーじゃないとページを消せないんだ
ひらがな名のほうを消してくれるとうれしいです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 19:49:14.28 ID:bnK0WIIY0<> 星野さん消しときました。これでここに投下されたキャラは全部wikiに移動できたと思います
それと、HMP用のテンプレが修正されました。topで確認してくださると嬉しいです

あとしたらばもできましたよ
http://jbbs.livedoor.jp/game/54824/ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 19:52:45.62 ID:RzmVYlEwo<> ブルーローズサイド・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 19:54:32.39 ID:tabO982Do<> >>156
お疲れ様です、ありがとうございます
そしてしたらばもできたー!

とりまどっちでロールを行うかを決める必要があるね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 19:54:56.34 ID:bnK0WIIY0<> ちなみに用語集とかのレイアウトはここだけMMO様から無断でパクってます
申し訳ございません <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 20:00:55.60 ID:bnK0WIIYo<> したらばでロールするとなるとキセキシステムは使えなくなりますね
まあぶっちゃけ別になくても・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 20:30:46.84 ID:dNSycxxSO<> やっと来れたー
今からでもキャラメイクしてもまだ間に合う?

あと僭越ながらロールする場所パー速の方がありがたいのですが…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 20:36:05.49 ID:9WPacpHDO<> どっちの方があり難いって言うなら、俺はしたらばの方がいいな

パー速ロールは分かりやすいから新規に優しいっていう人いるけど、個人的には逆だと思うしね <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 20:43:44.02 ID:bnK0WIIYo<> >>161
全然大丈夫です!僕もまだ作ってないですし・・・

じゃあイベントだけパー速で、普段はしたらば。なんてのはどうでしょうかね
あまり分ける意味がありませんが・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 20:46:58.39 ID:/P4rKY7lo<> なーんか割れてるな
初っ端から結構な人数だし仕方ない事か
交流雑から出生だし、したらばメインでいいか <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 21:02:33.14 ID:bnK0WIIYo<> >>164
たしかにそうですかね・・・
したらば派の人が多いので、したらば開催にしたいのですが、大丈夫でしょうかね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 21:04:52.97 ID:RzmVYlEwo<> キセキをどうするか 称号とかも <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 21:11:27.55 ID:tabO982Do<> 称号は称号自体を何ポイントにするかっていうハードルも残ってるからなぁ・・・
俺も称号システムはすごく良いと思うから残したいんだけれど・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:11:55.82 ID:NTrzpIpPo<> メインスレか雑談スレをパー速に置いておけるなら、どちらでも構わないと思う <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 21:22:22.30 ID:bnK0WIIYo<> むしろしたらばを雑談に使うってのもアリだとおもうんですよね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:25:50.07 ID:/P4rKY7lo<> したらばに雑談を置いたらパー速ががら空きになるか
そうなると完全にしたらば運用になるんだよな
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:28:38.36 ID:SVBg3gMn0<> よくよく考えてみたら、どうせイベントでここ使うならいつでも使ったほうがいいですね
「ロールスレをたくさん作る」ところが多いですが、正直言ってそれって分かりづらいと思うのです
複数のロールが一つのスレで並行してるほうが勢いが増すし世界がつながってる感じがする、と <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 21:29:32.66 ID:bnK0WIIYo<> >>170
キセキシステムを使うんだったら嫌でもパー速でロールする事になると思ったのですが
そううまくいかないもんなんでしょうかね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 21:30:39.79 ID:fXAO5i8vo<> >>171
イベントだとイベント一辺倒になったりしませんかね
まぁ私の処理能力が無いだけといわれたらそうなんですが <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:31:39.70 ID:NTrzpIpPo<> >>171
それは同意
勢いあった方が楽しいし、呼び込みにもなるからね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:38:36.10 ID:/P4rKY7lo<> イベント連打出来る地力があればここがよく回るって事
店舗大会やショップバトルで場数は強引に用意できる
リアルに近い舞台だからね <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 21:39:06.15 ID:bnK0WIIYo<> パー速でロールする事になるとしたら、新しくスレを立てなければならないんですかね? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 21:44:01.94 ID:oEeOW3Oqo<> 【名前】ワイバーン橋下 (NPC)
【性別】男
【外見】ツンツン頭で気が短そうな少年
【詳細】
やられ役、ヤムチャ的NPCです。ちょっと名声がある奴を倒して驚きの登場をシたい時にどうぞ。

全国ジュニアHMPワールド・グランプリ第4位(この時PCは全員なんらかの都合で参加出来ませんでした)
その溢れるダイナミックな攻撃で数いる強豪(PCは含まれず)を打ち倒してきた。
準決勝でワイルドワイバーンが破壊されてしまった時に発した「ワイのワイルドワイバーンが!!」というセリフは
HMPとの信頼と絆を実感させ、多くの人々の涙を誘った。

今も彼は諦めず様々な大会にエントリーし続け、優勝を狙う。
昨日アメリカにいたと思えば今日は東京にいて、2時間後には関西にいる、明日は中国にいる。そして負ける。

登場する時は「わいのワイルドワイバーンが!!」と元気に負けてもらおう。

【MHP NAME】ワイルドワイバーン
【TYPE NAME】ブレスオブドラゴン

【HEAD】 ドラゴンヘッド
火炎放射器搭載のヘッドパーツ。
対象認識能力と攻撃翌力はピカ一

一方でMAP認識能力などの機能が貧弱

【BODY】 スピードオブドラゴン
飛行能力搭載の機動性重視タイプ。
装甲を削ってバッテリーを搭載しているため、相当のスピードとスタミナを持つ

【L.ARM】 ドラゴンウィング
飛行能力を補助する滑空するための翼型腕部。
装甲を削ってライトマシンガンを導入しているため攻撃翌力は加速する
【R.ARM】 ドラゴンウィング
同上

【LEG】 クロウオブグリフォン
接近戦用の大型爪
並のHMPはこれにやられたらひとたまりもない

【ETC】 ワイルドワイバーン
獣の如く獰猛な攻撃性。
正面から機動性を活かして攻撃をしかける。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:44:06.26 ID:/P4rKY7lo<> 小店舗のカードゲームの大会と当てはめると、確実に週1大会がある
このペースが続けばかなり強力な流れを作ることが出来る
大きなお友達がのめり込んでいるのが条件だが
大きなお友達で構成された廃人部隊なら更に強力な場数が生まれる
大会商品を下取りに出して小金を稼ぐ不届き者も居るからね
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 21:44:55.94 ID:oEeOW3Oqo<> 重大なミス
×登場する時は「わいのワイルドワイバーンが!!」と元気に負けてもらおう。
○登場する時は「ワイのワイルドワイバーンが!!」と元気に負けてもらおう。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:46:03.04 ID:ZyEFdmLpo<> 昨日からROMしてました者ですこんばんは。

したらばを雑談、パー速をロール場にすればその必要は無いかなと思います <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 21:52:40.75 ID:bnK0WIIYo<> 1ロールはパー速で
2ロールはしたらばで
3ロールはパー速で、雑談はしたらばで
4その他

皆さんどの意見なんでしょうかね・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 21:57:34.08 ID:/P4rKY7lo<> 完全パー速進行
○日常ロールでKP集め出来る
×長いこと居座ってる方が有利

大会・イベントのみ
○要所でコンマを引く事でKPの有り難味が増える
×その時に居なければKPが溜まらない

KP関係は大体こんなところか
色んなもの全部斬り捨ててるけど私の懸念はこれくらい
コテ有無とか荒れるからパス
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 21:57:57.88 ID:WSlyBNTm0<> したらば雑談、パー速ロール派

早く稼働させる為にも>>1がササっと決めちゃって良いんじゃない、とは思う
この手の話題で意見が一致した所って見た事が無いしね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:00:26.75 ID:NTrzpIpPo<> >>181
できれば3かな
だけど拘って議論するつもりもないし、>>1に従うよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 22:03:46.24 ID:oEeOW3Oqo<> >>181
3で、つーか>>1の独断で決めちゃっていいよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:07:14.94 ID:/P4rKY7lo<> >>181
じゃ、>>1が入れた奴に票に入れる
>>1頑張れ <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 22:10:24.72 ID:bnK0WIIYo<> 実は自分も3の意見だったり・・・
というわけでしたらば雑談、ロールパー速ということで!
べ、別に一番人数が多いから選んだって訳じゃ無いんだからね! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:12:48.70 ID:9WPacpHDO<> くそ、遅れたか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:13:03.42 ID:/P4rKY7lo<> 日常ロールでKP集めが始まる…
キャラがスレに居る事を…強いられているんだ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:14:00.07 ID:NTrzpIpPo<> 全然関係ないけど、レアパーツとかってあるのかな?
ワンオフ機とか限定モデルとか優勝賞品ほど凄くなくて
カードゲームで言う強力なレアカード的な稀少度のパーツ <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 22:24:20.88 ID:bnK0WIIYo<> >>190
もちろんあります
多くの大手会社はお金を出せばフィールグラムや限定商品など、店舗大会用に出してくれます
大手になればそれくらい何の問題も無いのです

それとしたらばにQ&Aスレは必要ですかね? <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 22:26:29.21 ID:bnK0WIIYo<> あと書き忘れましたがパーツは普通に買う他にも
「ガチャプラ」というガチャガチャの様な物でも獲得できます
多くの企業がガチャプラを出しているのでガチャプラ専門店なる物もあるそうです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:28:29.05 ID:/P4rKY7lo<> 磯野ー!大会優勝品のレアパーツ売って金にしようぜ! <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 22:39:53.91 ID:bnK0WIIYo<> とりあえず勝手に幾つかスレを建てた模様 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 22:39:55.75 ID:tabO982Do<> ガチャガチャは色違いパーツとか入ってそうなイメージだわwwww
後は物語の舞台になる場所だな、〜町とか〜市とか <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 22:42:53.51 ID:bnK0WIIYo<> 札幌市(道民並みの感想) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 22:43:21.44 ID:oEeOW3Oqo<> 物語の舞台ってより、○○大会ってのを主軸にした方がコロコロコミック的な感じで面白そう。
一処に舞台を固定せずにやってみるとか。とりあえず外国に行くとか、とりあえず謎の遺跡からHMPのパーツを拾うとか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/07/28(土) 22:43:33.71 ID:/P4rKY7l0<> 雪国いいなあ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 22:51:21.55 ID:tabO982Do<> >>196
雪国はちょっと・・・

>>197
それでもいいかもなぁ、ただ学生が多いし学校は小中高エスカレーター式のを推します <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/28(土) 22:53:50.19 ID:WSlyBNTm0<> ところでMHPの自我ってどの程度のレベルなんです?
ロックマンエグゼのナビくらい自由なら、MHP単品でのロールも出来そうだけども <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:54:22.03 ID:SVBg3gMn0<> そこら辺は適当というか差し当たってノー規制でいってほしい
他校の番長同士の抗争がHMPの世界に移行し、ブルーローズや雑多な悪人が一見玩具なキョウキを携えて乱舞し、店舗では猛者が鎬を削る
そんな光景が世界のあちこちで見られたっていいのではないか、素敵じゃないか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 22:55:39.17 ID:/P4rKY7lo<> 大人気ない社会人達が跋扈する修羅場…ショップバトル…
雪国の雪男達がSBに群れで襲い掛かるっ!
少年達は彼らとの熾烈な生存競争に耐え勝利を収める事が出来るか…っ!
(ネタバレ:出来る) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 22:57:13.83 ID:RzmVYlEwo<> 氷属性天下の予感 そう言えばさっき誰か貼ってた <> ◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 22:57:57.56 ID:bnK0WIIYo<> >>197
それいいですねー
ちなみに札幌がメインになることはないです。断じて

>>200
ロックマンとかメダロットくらいですね
普通に日常会話ができて、家族に近い感じですね
なのでHMPでのロールも可能です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:02:15.57 ID:/P4rKY7lo<> >>203
ククク…戦闘フィールドで火山・砂漠引いたら
OHで即死しかねないスペックだぜ…?
雪国だからって雪国祭りフェスタでもない限り
苦手MAPを踏む事が可能性がありえるのだ… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 23:04:27.65 ID:RzmVYlEwo<> >>205
フッフッフ・・・こっちだって考えてはいるけど余りにもピーキーな感じに仕上がりそうですよ
何より内輪ネタが入りましたからね到底晒せるようなものではありません・・・
戦わずして負ける・・・! これが実力と言うもの・・・! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/28(土) 23:05:24.03 ID:bnK0WIIYo<> 舞台に迷ったら学園モノにしちゃえばいいんだよ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:07:08.11 ID:SVBg3gMn0<> フリー設定の機体を置いておけるスペースとか、wikiにあると嬉しいかもですねー
今はみんなカスタム機や一式装備を使用しているけど、本題とも言える組み換えされたロボットの戦いを見たかったり
マンモスとかニンジャとか変なパーツを作るのも捗りますし(ボソリ) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 23:07:19.46 ID:tabO982Do<> 海のフィールド!ってなった瞬間に大体の機体が詰んじゃうメダロット的展開 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:08:11.31 ID:ZyEFdmLpo<> 舞台設定はウィキに書いてある物だけで十分だと思いますけどね
あんまガチガチにすると自由度が…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:15:25.68 ID:/P4rKY7lo<> >>209
魚や人魚型なら水を得た魚のように無双するMAPか…
砂漠なら飛行型無双とか普通にあり得るな
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:17:49.28 ID:SVBg3gMn0<> 明日辺りから雑談はしたらばに移行してガリガリ戦える……かな?
>>211
ホバー機、ドリル機にだって出番はあるんやで!! <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 23:26:13.48 ID:bnK0WIIYo<> >>208
ういっす!やっときます!

>>210
そういう意見もありますか・・・
とりあえず保留にしときましょうかね

〜今日の思いつき〜

その1
パーツには貴重なものやそうでもないものまでたくさんあります
また、パーツを作っている企業はどれも企業ごとの特色がパーツに出ているのです
その事をさらに印象付けるため、「レアリティ」と「製作企業名」をパーツに入れるなんてどうでしょうか
レアリティは以下の様な最大5つの★で現されます

★・・・店売りしてるもの。手に入れるはラク
★★・・・お店のの人気商品。一時的なブームがきてる店売りパーツがこのレアリティです
★★★・・・店舗大会の商品などの非売品や販売終了した高性能パーツ。ここのレアリティから「レアパーツ」と呼ばれる様になります
★★★★・・・超レアパーツ。イベントのみ販売の数量限定パーツなど。今だにオークションで高値が付きます
★★★★★・・・超絶レアパーツ。世界に数えるほどしかありません <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/28(土) 23:31:08.74 ID:RzmVYlEwo<> フリー設定・・・フリーの追加パーツ・・・適当に・・・

【LorR.ARM】浪漫一 噴惚鉄拳(ロケットパンチャー) 製作:某重量車両製造業社 レアリティ★★
これまで武装を持つまでとされたマニュピレーターの革命的装備
従来のマニュピレーターのような銃器の引き金を引くと言った細かい操作は望めず
精精近距離武装を持つだけが限界と言うほどに劣悪な性能だが
腕部に搭載した小型ブースターを噴射させると同時に腕部の結合を解除する事により握り拳の状態になったマニュピレーターを高速で飛ばす事に成功
近距離戦でも使うタイミングは非常に限られるがそれでも使いたくなってしまう漢の浪漫がそこにあった
一応再利用のために切り離した腕にワイヤーが付いており引き戻す事は可能

また直撃時の衝撃に備えるため重量を無視し装甲を強化
純粋に腕部防御力が欲しい人が購入したりするのだから浪漫と言っても侮れない

『コイツで大会を漢の荒波で溺死させるぞ!!』 とは社長の弁 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:31:08.85 ID:/P4rKY7lo<> 自作フィールグラムで自機の有利な地形にし
誘い込んで狩るとかあるかもね、その劣勢を覆すのは奇跡の力…っ!?
大会のフィールグラムは大会側で用意されるから問題ないが
サマーフェスタ20××で皆ホバーや水中型に改装するとか
ロボゲーらしいっちゃらしい <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/28(土) 23:31:36.25 ID:tabO982Do<> >>213
製作企業名はともかくレアリティの数値化はインフレを起こすからいらないと思うぜ <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 23:35:33.59 ID:bnK0WIIYo<> 今日の思いつきその2

【ガチャプラスレ】
交換ポイントを使ってランダムにパーツが手に入るスレです
ガチャ宣言レスをすれば暇な人がパーツを考えて、ガチャの商品として提供してくれます
ガチャの種類はガチャ側が指定することもできます(完全運任せも可能!)
ガチャスレの流れは以下の様な感じを想定しています

プレイヤーA「交換ポイントを使って【◯◯って企業の××ガチャ】を回すぜ!」
プレイヤーB「ガチャガチャ・・・ポンッ!はい◯◯レッグ
パーツのレアリティは★★でこのパーツの設定は〜」
プレイヤーA「ちぇっ・・・またこいつか」

貰ったパーツは機体の予備パーツにするもよし、そのままメイン機体のパーツにするもよし、第二号のパーツにするもよし
あと、現状だと交換ポイントがなかなかたまらないので「ロールプレイ終了時に3ポイント貰える」ことにします <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 23:37:36.75 ID:oEeOW3Oqo<> あんまりロールしてポイントゲットしまくるシステヌだと後進がきつそう。

後進がそもそも出てくるかって話はまた別 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:38:04.20 ID:NTrzpIpPo<> >>191-192
お風呂入ってて見るの遅れちゃった
回答ありがとう! ガチャガチャとか捗るwwww

レアリティにばらつきがあるのは嬉しいけど
五段階設定は複雑になっちゃうから、いらないっちゃいらないかも
フィーリングでいけそう <>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 23:40:41.12 ID:bnK0WIIYo<> >>218
SNSゲーっぽく新規に10ポイントくらい振りまくなんてどうすかね <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 23:44:19.07 ID:oEeOW3Oqo<> さりげなくプレイヤーBがプレイヤーAに嫌がらせしてるような伏線>「またこいつ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:45:04.45 ID:SVBg3gMn0<> なりきりって実の所「参入しづらい」とか「古参とストーリー的な差が」とか考えちゃいがちなゲームだから
あんまりポイントとかレアリティとかをシステムにしちゃうのは要らない気がする
エッセンスとして『懸賞品として世に出た超ヤバイ貴重なHMPで、修理パーツを探すのも大変』とか
『ある大会の優勝賞品であり、彼の栄光の証である』とかは全然やっていいと思うけど

ただ、即興でパーツを考えて手に入れる要素は面白そうな
ロール中でバンバンやっちゃおうZE☆ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/28(土) 23:47:06.73 ID:oEeOW3Oqo<> ポイント管理がめんどくさそう。
ただパーツを公募する手段があるのはいいんじゃね、自作する手段も欲しいけど。

後はなりきり定番「TUEEEE」防ぎとかか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:57:28.23 ID:/P4rKY7lo<> 【LorR.ARM】ブリザードキャノン 製作:王手工業家電メーカー(仮) レアリティ★★
フリーズ属性を持つキャノン。大砲を担いだマニュピレーターのセット。
重量級パーツ。装甲値・精度は高い。
冷気を収束させ強力な冷凍弾を撃ち出す事に成功した初の市販パーツ。
仕組みはペルチェ素子の応用なので、高い放熱を持つのがネック。
充填時間・放熱時間が長い。状態異常:フリーズを持つ数少ない遠隔武器である。

【LorR.ARM】アイスソード 製作:王手工業家電メーカー(仮) レアリティ★★
フリーズ属性を持つソード。ソード型端末とマニュピレーターのセット。
軽量級ながら装甲値は標準的、挙動も軽い。
空気中の水分子を集め、氷の刃を形成する。普段は軽量でコンパクト。
充填と放熱は標準的。相手を氷漬けにする状態異常:フリーズを持つ。

【LorR.ARM】フローズンシューター 製作:王手工業家電メーカー(仮) レアリティ★★★
フリーズ属性を持つライフル。ライフルと高精度マニュピレーターのセット。
中量級パーツ。スナイパー腕らしく装甲値は低い。
強力な冷凍弾を遠距離まで飛ばす事が出来る。
その代わりマガジン装弾数が少なく、ライフルとして弾数に不安が残る。
状態異常:フリーズを持つ銃器の中では最長射程を誇る。
充填時間は短く、放熱時間は長い。

なんかトラウマ級の名前しか浮かないんだけど
<>
◆i6jtYOgVtk<>sage<>2012/07/28(土) 23:59:03.98 ID:bnK0WIIYo<> じゃあ「フリーのパーツ・設定倉庫」でもしたらばに建てましょうか
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/28(土) 23:59:11.88 ID:NTrzpIpPo<> >>223
みんなが自制するのが一番良いと思う

コンマスレとかだと、>>1で
http://harmit.jp/manner/manner.php
こういう風にサイトを紹介してるみたい <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/07/29(日) 00:00:58.82 ID:2L1pS8Hao<> 【国際HMP協会からのお知らせ】

HMP。友達、家族、相棒と、あなたの横で共に過ごしてくれる彼ら
色々な場所で色々な活躍をしているHMP達ですが、皆さんは「欲しいパーツが出ない!」なんて事はありませんか?
この度本協会では現在公開されていないパーツを抽選で手に入れられる、【ガチャプラ】を導入しました
中には非常に強力なパーツもあり、使い方一つで強くも弱くもなる、玄人好みのパーツも用意しております
【ガチャプラ】システムの利用にはHMP連盟公布の交換ポイントが必要になります

外れもあるよ!と書かないのがガチャの基本だ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 00:03:00.41 ID:cWpZFgTTo<> TUEEEについてはほんとそれぞれの人の良識に任せるしかないのがつらいところ
ここら辺はもう諦めるしかない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<><>2012/07/29(日) 00:04:29.36 ID:pm85I9s1o<> うぃきにまとめる時のために

近接攻撃
遠隔攻撃
防御
能力底上げ
特集

くらいにジャンル明示した方が楽かも <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 00:10:31.25 ID:cWpZFgTTo<> だんだんMMOスレとかロボスレの時みたいになってきたね
作りこみすぎ凝りすぎはなんにでも毒だよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:11:36.96 ID:LA/tvzKu0<> そうよな、設定だけ凝って満足しておしまいというのがTRPGとして一番いけない
まず普通にロールしてみない?凍結になってもいいなら、自分はいけるけど <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:12:22.21 ID:O2HVwfRPo<> 凍結攻撃なら任せろー(バリバリ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:14:11.67 ID:qzuOVPE8o<> >>232

   lヽ,,lヽ
   (    ) やめて!
   と    i
    しーJ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 00:14:33.60 ID:cWpZFgTTo<> >>231
俺もいけるぜ!ただし俺のHMPは普通の射撃型だけどな! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:17:24.01 ID:LA/tvzKu0<> >>234
バリバリの格闘機ですは^q^
投下、そちらにお任せしちゃっても大丈夫です? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 00:23:10.17 ID:cWpZFgTTo<> >>235
あ、ちょっとまって
設定的にフィールグラムを使うのは分かるんだけど、これって設置してあるものなのかな
どこかに設置してあるカスタムロボ形式だったらHMPステーションとかおもちゃ屋さんでいいんだろうか
それともバトルが開始した瞬間にレフェリーが現れてフィールド投影機を出してくれるんだろうか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:25:05.05 ID:O2HVwfRPo<> >>233社長
私の新しいベンチャー企業に幾らか投資してくれませんか?
失敗すれば大事故により隣のビルが氷漬けになりますがね…イヒヒヒ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:30:19.36 ID:LA/tvzKu0<> >>236
「どちらでもいい」というのが自分の正直な意見ですな
ロボトル監視衛星とかMr.うるちみたいな設定は複数で回すにはちょっと無理がありそうなので、前者のほうがいいと思いますが <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/29(日) 00:30:25.76 ID:oduBiqbco<> これは>>1の回答待ちってことか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 00:34:02.92 ID:cWpZFgTTo<> >>238
俺も前者でいいかなって思うよ。
もし後者でも前者、特にHMP専門店とかだったら絶対においてあるだろうし辻褄が合わないってことにはならないと思うしさ

そしてロールはこっちでいいんだよね、文作ってくるよ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:35:17.03 ID:qzuOVPE8o<> 複数のHMPが闘争心を燃やすと自動的にフィールグラムと同等の効果が(嘘) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 00:36:25.33 ID:O2HVwfRPo<> そういうのは大事な時にしまっておくんだ…っ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 00:48:36.49 ID:cWpZFgTTo<> 大きくもなく小さくもない、曲がり角にとある店
店の前には透明なカプセルがたくさん詰まったガチャガチャマシンが大量に並び
中に入れば棚には紙製の箱に包まれたさまざまパーツが棚に鎮座していた。
そのどれにも共通の文字『HMP』が刻まれている

そうここは語るもないHMP専門店。
個人経営の店であるが繁盛しているらしく、複数あるフィールグラム設置された遊戯台は人で埋まっていた
そんな中ようやく開いた台に順番待ちをしていた少年の順番が回ってきた
対角線に立つ対戦相手もそれに伴い入れ替わりが行われる、その相手は・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 01:04:57.26 ID:LA/tvzKu0<> >>243

「こんにちは。……高藤、まりかです。」

高藤(たかとう)。
その名を聞いた途端に、夏休み故にごった返す店内が揺れた=B

青いショートヘアへ、彼女の手の中のHMPへ、熱い視線が突き刺さる。
突如として行方を眩ませたジュニア競技界の三傑が一人、「高藤まつり」の従姉妹が。
そして、まつりの愛機達の二番手……『嵐影』そのものが、台の前に座したからだ。

もしかしたら、少年は彼女を噂で聞いたことぐらいはあるかも知れない。
但しそれは、「初心者」「noob」「従姉妹の七光り」と言った具合に、良い評判では無かろうが……。

「……お、お手柔らかにお願いしますね?」

さておき。少女――まりかは、繕った感じのある敬語で、そう告げる。
高まった緊張の中で彼女の顔色は必ずしも優れないが、場を穢すような闘士の欠如は見られない。
HMPは遊びだが、暇つぶしでは決して無い、と言いたげでもある。

『ドーモ、シャドウニンジャの嵐影です。……お互い、全力を尽くしましょう。』

一方で、手の中のHMPの声の調子はひどく平坦だ。
これから戦いが始まる事を予感すらさせぬほど、静謐。

やがて嵐影は係員の手に委ねられ、指定されたスタート地点に配置されるだろう。
ステージはランダム決定。
ただし無人の市街地や闘技場など、極端な有利不利が出ないものばかりだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 01:23:36.42 ID:cWpZFgTTo<> >>244
目の前にたったショートヘアの少女は礼儀正しくも自己紹介をしてきた
その瞬間に店内の空気が変わったことをこの少年・・・『星野谷 拓海』も肌で感じていた。
だがなぜそうなったかを拓海はまったく持って分かっていなかった
何を隠そう彼はHMP界に疎い、バトル初心者ではないにしても有名人等はまったく分からない

「俺、星野谷 拓海・・・よろしく」
白いパーカーを羽織った少年も律儀に挨拶をしてくる。
この好奇の視線に晒された状態は気分良くないようだが、あまり気にしないようにしているらしい

ケースから取り出されたHMPは鮮やかな青色をした嵐影と同タイプのヒュームボット『スチールセイリオス』
ある年の冬季に特別に生産された希少価値の高い限定モデルの登場であった。
その価値を知る所謂HMPオタクから関心の声が漏れる

特徴的なボディパーツとホイールを搭載したレッグを持つセイリオスが配置されると
そのゴーグルにぱっと光で表情が映し出される

『ヨッシャ!いくぜ!!』

セイリオスは嵐影とは対照的に熱気のこもった声を上げキッと目を細めた

「ランダムステージでファイト開始だ!!」

現れたステージは・・・

01:荒野
23:市街地
45:闘技場
67:ハイウェイ
89:高原 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 01:29:33.99 ID:cWpZFgTTo<> 高低差も存在するさまざまな建物と白線が引かれたアスファルトの道路。
背の高い街灯と電線が引かれたさらに背の高い電柱……

ここは市街地のステージ、狭い逃げ道が多く屋根等の高低差もあり
噴水のような水場もきちんと存在しているどんなタイプのHMPでも満遍なく戦えるもっともベーシックなステージ。
人型二脚であるこの2機にとって特に相性のいいステージでもあった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 01:45:20.69 ID:LA/tvzKu0<> >>245

《ARASHIKAGE:スチールセイリオス、か》
《MARIKA:知ってるの、嵐影?》
《ARASHIKAGE:地上戦にかけて穴の無いHMPだ。騎士であり砲兵であると言える。》
《MARIKA:……大丈夫、きっとニンジャのほうが強いよ》
《ARASHIKAGE:どうだろうと問題ない。大勢を決めるのは、一兵卒ではなく棟梁であるからして》

ルーレットのように回転するステージ選択画面を横目に。
嵐影とまりかは、DVNOのチャットメール機能を使用して短い作戦会議を行なっていた。

「ぐぅ……闘技場ね。」

やがて、目まぐるしい変化が止まる。……現れたのは、闘技場。
HMP歴の浅いまりかにも、高低差や遮蔽物に欠けるこのフィールドが、相棒向けでない事がわかる。
だからこそ最後のIRCひとことが響いて、重い息が漏れた。
ジャージに包まれた薄い胸が、更に沈み込む。
棟梁は、紛れもなくファイターの事だ。隠喩とすら言えない。

「ふんっ、簡単なフィールドで助かった!
 タクミ君、女の子だからって華をもたせようとかバカなことは考えないこと!」

明らかな強がりを叩く。……構築されていくサイバー空間。
その中を覗き見るには、DVNOを介し、レーダーマップと自機の主観視点というピースを組み合わせる他ない。
最近の専門店では、ステージがランダム構築されるシステムが導入されている事すらある。
尤も、闘技場は数あるステージの中でも特に簡単なデザインなので、心配は無いが。

数瞬後には――両機が、戦闘フィールドで向かい合っているだろう。
踏み出せばそう遠くないが、まだ刃は届かない、中距離。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 01:46:03.98 ID:LA/tvzKu0<> /あっすいません、コンマ前半見て闘技場だと勘違いしてた!
/文章急いで書き直します <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 01:49:31.05 ID:LA/tvzKu0<> >>245 リテイク

《ARASHIKAGE:スチールセイリオス、か》
《MARIKA:知ってるの、嵐影?》
《ARASHIKAGE:地上戦にかけて穴の無いHMPだ。騎士であり砲兵であると言える。》
《MARIKA:……大丈夫、きっとニンジャのほうが強いよ》
《ARASHIKAGE:どうだろうと問題ない。大勢を決めるのは、一兵卒ではなく棟梁であるからして》

ルーレットのように回転するステージ選択画面を横目に。
嵐影とまりかは、DVNOのチャットメール機能を使用して短い作戦会議を行なっていた。

「ふん……市街地か。」

やがて、目まぐるしい変化が止まる。……現れたのは、市街地。
HMP歴が浅いからこそ何度でもやりこんで行きたい、ファイトの基本が詰まったステージだ。
実力が問われる。最後のIRCひとことが響いて、重い息が漏れた。
ジャージに包まれた薄い胸が、更に沈み込む。
棟梁は、紛れもなくファイターの事。隠喩とすら言えない。

「ふんっ、簡単なフィールドで助かった!
 タクミ君、女の子だからって華をもたせようとかバカなことは考えないこと!」

明らかな強がりを叩けば。……構築されていくサイバー空間。
その中を覗き見るには、DVNOを介し、レーダーマップと自機の主観視点というピースを組み合わせる他ない。
最近の専門店では、ステージがランダム構築されるシステムが導入されている事すらある。
尤も、此処がそうなのかは一見して判断できないが。

数瞬後には――両機が戦闘フィールドに放り出されているだろう。
中距離で向かい合う形ではあるが、庭付きの家屋の群れや道の分かれ目もすぐ側だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 02:01:42.08 ID:cWpZFgTTo<> >>249
もっともメジャーなステージであると共にもっとも多く選ばれているステージでもある市街地。
ない物を探すほうが難しくもあるこのステージは、如何に自らが得意な場所へ相手を誘い出すかも勝負の分かれ目となる。
しかしお互いに二足なので有利なフィールドはお互いに同じ、打ち合いが予想されるだろう


戦いの開始と共に互いに真っ直ぐ向かい合う形で立ち会ったシャドウニンジャとスチールセイリオス。
お互いに様子をみるかと思いきや開始と同時に拓海はすぐ声をかけた。

「いくぞガブル!」
ガブルと呼ばれたスチールセイリオスその意図を理解していた……というよりは同じことを考えていたようで反応は簡易なものだった

『ワかってる!』
レッグについたホイールがアスファルトの地面に押し当てられ、擦り付けられる激しい音と共に火花が戦場を彩る。
腰を軽く落としただけのほぼ直立に近い状況から一気に後方へと駆け抜ける
ホイールを搭載したレッグ【ワイルドダッシュ】は二脚でありながら安定性と加速力を誇る。
特に市街地のような平面が多い地形であればなお更だ、車が走るように整備されている道路をタイヤが走れないわけがない

開始直後の隙を突いてガブルの右腕が真っ直ぐ差し向けられる。
黒く光る棒のようなものが延びたその根元には対照的な銀色の部位。
先端は色が少し異なり鋭く尖っているが、中心をえぐる様に貫かれた穴は紛れもなく銃口だった

スチールセイリオスは射撃タイプのHMPであり、その武装はどれも銃をモチーフとしている
この右腕【バレルランス】もその一つ、長いばれるが特徴的なライフルベースのパーツだ。

『クらえ!』
範囲内に捕らえた嵐影にロックオンをし、後退をしながらもその銃口が火を吹く。
銃声は3回、精度と射程の高い狙い撃ちが3連射で嵐影へと迫る <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 02:19:39.84 ID:LA/tvzKu0<> >>250

対するシャドウニンジャは、一式組み上げた場合は高純度の格闘機体となる。
投擲武器クナイ・ダートこそ装備しているものの、本数は5。多いとは言えない。

だが彼には、スチールセイリオスが明らかに有していないものが幾つか有った。
その一つがニンジャ・シリーズの大半を貫く共通項――3次元機動能力の高さだ。

『フンハーッ!』

奇声と共に跳躍した嵐影は、くるくると宙で回る。
三連発の狙いは放物線めいた軌道を遅れてトレースしていくが、間に合わぬ。
脚部【タビ・トレック】の齎す運動性は、彼を二階の瓦屋根まで導いた。
その上で、距離は――先程とプラスマイナス0と行った所か。

『我が主よ、シノビステルスモードの起動を』
「シノビステルスモード? ……あ、これね、今押す!」

だが嵐影の鮮やかな業前と。そして、ガブルと少年の以心伝心ぶりとは対照的に。
こちらは言葉が必ずしも噛み合わない。
しかも、HMPにファイターが使われる≠ニいう始末。
ギャラリーの顔には落胆が見え、忍び笑いする者も居そうな空気だった。

こうして発動するのは、頭部【ナイトストーカー】の能力。
妨害電磁波により敵のレーダーから自身の姿を抹消し、ロックオン機構を幾らか狂わせる。
だが電力消費が激しく、おいそれと使って良いものでは無いはずだが……。

『……殺!』

瞬ッ……と。
シャドウニンジャのレフトに収納されていたクナイが飛び出し、マニピュレータに収まる。
屋根から屋根、最短ルートを飛び移るその姿は、確実に近付いてきていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 02:20:44.61 ID:LA/tvzKu0<> /あ、描写抜けてましたが、カメラアイにはちゃんと映ります
/現実のアクティブステルスと一緒で、透明になるわけじゃないのです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/29(日) 02:37:30.96 ID:cWpZFgTTo<> >>251
「外れたぞヘタクソ!」
パートナーを煽る拓海であったがそれは激励の裏返しでもある
目つきに怒りを露にしたガブルは吼えるように『ワかってる!!』と叫んだ。

さすがに動かない前提で標的とした銃弾では移動されるだけで外してしまう
建物の屋根へと飛び乗った嵐影に再度狙撃を行おうとその動きに追随するように右腕を跳ね上げようとした。
だが直前でその右腕が一瞬止まってしまう、その理由とは……

『オイオイ、あいつきえたぞ!』
拓海がDVNOに目を落とすと、先ほどまで映し出されていた嵐影の姿がまるで万華鏡のようにぶれている。
右腕が終えなかったのはカメラではなくレーダーで捉えていたからだ、ジャミングがかかった状態ではレーダーできちんと捕捉できない
そこでようやく敵のHMPの戦略と装備しているパーツが何なのか理解したのだ

「あのHMPのヘッドはステルスだ、袋小路に逃げ込むとまずい!」
市街地は平面も多いが建造物の関係で高低差も多い、射撃タイプのスチールセイリオスは索敵範囲に優れているが
それが使えないとなっては無防備になりやすい上と後方の防御が手薄になってしまう

「このまま大通りをバックで抜けるぞ!」

『リョウカイ!』
拓海の指示に対し首を縦に振ると、ガブルは顔を上げカメラでその姿を捉えようと試みる。
時折移りこむその姿に対し今度は前方への移動を考慮した偏差撃ち、偏差撃ちとは敵の行動を予測し先読みして射撃を行う必須に近い技術だ
これゆえに射撃タイプのHMPは高度な処理能力が要求される。
だがレーダーがイカれたとなっては精度はガタ落ち、当たることはなく威嚇射撃程度しか役立っていなかった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 02:59:44.66 ID:LA/tvzKu0<> >>253

「……クナイ、一発ぐらい使っちゃえ!」
『フンハッソリャー!』

命令への返答は、やはり咆哮めいた奇声――。
出鱈目な射撃を繰り返しているガブルを見て、嵐影は無慈悲にクナイ・ダートを投げつけた。

こちらは、きちんと偏差射撃の体を為している。
そのまま実質的無抵抗でバックを続けていれば、上体に突き刺さるだろう。

『殺!殺!』

そして、携える二本目のクナイ。

真言(マントラ)めいた声は、試合開始前と同じ冷徹さと同時に、激情をも孕む。
左様。この嵐影は、かつてジュニア世界チャンプを狙える位置に居た女の麾下にあったのだ。
『ワイルドワイバーン』を、エキシビションマッチではあるが下した事もある。
機体の経験値に関しては≠アの店舗の中でトップに違いあるまい。

『我が主、如何せん?』
「えっと……飛び降りる?」

『……信じられんが、信じるとしよう。』

問題は、マスターの荒削りさだ。
禄に戦闘のセオリーを知らない高藤まりかの作戦は、成功するか判別が付かない。
確かにここから一気呵成に落下攻撃を仕掛ければ、主導権を握れるかもしれないが……。
彼自身は、次の曲がり角か弾切れの時まで待っていたかった。

だが主を遊ばせていても仕方ない。……嵐影、跳躍!!
クナイを左手に握りこみ、先ほどのクナイに何らかの対処をした後のガブルの背後へ
猛禽の狩猟めいて、急速に飛びかかろうと試みる。
クナイを喉元に、ケーブル束に滑りこませる事を念頭に置いた動きで、手が滑らかに躍動し始めた。

成否に関わらず、この直後にステルスは解除されるだろう。
うまく凌げたならば、絶好の反撃チャンス……果たして。

/では、ここで一度凍結という事で!お疲れ様です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 06:53:22.07 ID:BVpNiRVSO<> 今北産業 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 07:24:00.77 ID:pm85I9s1o<> >>255
コロコロの
ビーダマンと
同じノリ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/29(日) 09:05:58.69 ID:oduBiqbco<> ただし無駄にかっこいい <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 14:22:57.41 ID:O2HVwfRPo<> 場所は北関東老舗のネバーランド。
HMP専門店ではなく、数多くのゲームを取り扱う店らしい。
人数は8人程で、大人のファイターが数多くいるようだ。

「ふふふっ。あれは災難でしたね…」
青縞のコンビニ店員の服を着た、淡い紫色の髪をした女。
名札には御影と書かれている。
ふわふわとした雰囲気を持つ…何処からどう見ても無名のファイターだ。

『ツキがなかったねっと』
テーブルの上に立つのは、にこにこと笑みを浮かべるペンギン帽の少女。
彼女へのギャラリーの視線は冷たい。
初戦を凍結から完封勝ちという、なんともえげつない勝ち方をしたからだ。

彼女達は次の対戦相手が来るのを、一台のフィールグラム設置の前で待っていた。
ここでショップバトル準決勝の一戦がまもなく始まるようだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 14:33:18.21 ID:pm85I9s1o<> >>258
<ああっと、全国ジュニアHMPワールド・グランプリ第4位!ワイバーン橋下がここで敗退!>
<さしもの恐龍も!氷河期には敵わなかったカァー!!>
<勝者は無名のファイター!しかし、その力は、紛れも無い!紛れも無い!本物であります!>
そんな司会者のマイクアピールと共に、敗者は「ワイのワイルドワイバーンが!!」と言い残して去っていった。

そして、次の対戦相手が入れ違いに入場する。

「氷だかなんだか知らないけど!俺のネムレスナイトの一撃でコッパミジンにしてやるぜ!」
そう言ってきたのは活発そうな刈上の少年。

テーブルにHMPをセットし、フィールグラムのセットを待つ。

//フィールドはそちらの好きなフィールドでどうぞ
//希望がないなら平原フィールドで <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 14:39:15.83 ID:O2HVwfRPo<> >>259
『データバンクにアクセス…照合完了
 相手はネムレスナイト…シュミレーションCでいいの?』
「シュミABは決め打ち以外で使わないって言ったよね」
HMPの少女はテーブルの位置に移動し、準備完了の合図を出す。

「はい、いつも通りで良いです…始めましょう」
フルオート。頭部の処理能力が高い事が前提のバトルスタイル。
しかしHMPの処理能力はバッテリー消費と引き換え。普通は現実的ではない。
この場合、ファイターはオペレーターに徹する事になる。

フィールグラムに戦闘フィールドが展開される。
眼前に広がるMAPはランダムのようだ…

//戦闘フィールド:コンマ末尾
05森林
16市街地
27山岳
38マイナースタジアム
49雪原
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 14:39:24.22 ID:T9VlSrkZo<> 今北 システムが良く分からん wikiとかに設定まとまってたりする? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 14:48:46.69 ID:pm85I9s1o<> >>260
「行けぇネムレスナイト!やっちまえ!」

フィールドが展開され、試合開始のゴングが鳴る。
半人半馬の鎧騎士は、音と同時に、少女に駆ける。

高度な電子頭脳も、特殊な武器も持たない単純なHMPだが、その突撃翌力は侮れない。
それが、スタジアムの端から端の長い距離を駆けた後の突撃なら尚更だ。

「ネムレスナイト!まずはジャベリンだ!」

騎士の左手に握られる短槍、短い、ただの刃がついた棒だ。
それを騎士は振りかぶって、少女に投げつける。

槍は放物線を描きながら少女の方に飛んでくる。

「ヘッ!こりゃもう決まったな!避けれるもんか!!」

//3だからマイナースタジアムでいいかな。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/29(日) 14:54:37.76 ID:SkwRJIn5o<> >>261
とりあえずwikiみて、それでも分からなかったらしたらばのQ&Aスレで <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 14:56:59.32 ID:O2HVwfRPo<> >>262
マイナースタジアムが選ばれた。
サッカー場を模したフィールグラムだ。
足場は人工芝かつ広大なMAPで、二脚型・四脚型有利とされるMAP。
障害物らしいものがサッカーゴールだけで、全然見当たらない。

『…あー。逃げも隠れも出来ないMAPだ。
 路面は走るのに申し分ないけど、走りすぎたら持たないね』
得意MAPらしいが、どうやら懸念要素がある。

「騎兵対歩兵。こんなただっ広いMAPではあちらが有利…
 詰められたら、一気に攻勢を掛けてみましょう」
DVNOから合図を送らない。シュミレーションCはそういう手らしい。

『…ひらりっ…アレ絶対こっち来るよね…』
軽い身のこなしで、両手を使い右へ側転する。
槍はプリンセススノウの左後方で突き刺さるだろう。
少女の両手の袖から、銀色の銃身が飛び出す。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 15:04:38.10 ID:pm85I9s1o<> >>262
「そんなっ!あれを避けるだなんて!」

少女の後ろのゴールネットに槍が刺さる。
その瞬間電光掲示板に<GOAL!!>の表示が出たが、特に意味はない。

「ヘッ!あんな銃、ネムレスナイトの装甲を抜けられるもんか!」

騎士はは恐れず少女に向かう。
人部分には鎧、馬部分前面にも装甲がある、それが凍結攻撃も防ぐと思っての突撃だ。

少女の位置が変わると同時に、騎士の走る方向も少女に合わせやや修正される。
このままだと、少女の次の行動後には、距離が詰められるだろう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 15:10:47.58 ID:O2HVwfRPo<> >>265
「状態は良好…足を止められればどうって事はない。
 これは、迎撃に左を1発使う…そうでもしないと止まらないでしょう」
今頃になってコンビニ店員はDVNOを片手に取り、情報を眺める。
コンディションは万全。レーダーで、距離が詰められるの目視し…

『じゃ…先ずは脚を挫こうかな…動き回られたらやり辛いし』
足を止めての反撃。開幕から榴弾砲を使用する気だ。
左腕の右より大きい銃口から、銃口から青い光が溢れ出す。
少女の手前に向けて、山形の軌道を描いて放たれるのは青白い砲弾。
それは着弾地点に冷気の嵐を生じさせる、本機最大のフリーズ武器だった。

《フリーズボムアクティブ。…ファイア》
店員のDVNOから、左腕武器発射の音声が流れた。
「ちょっと早いけど…このタイミングでしか撃てないだろうし、アリかな?」
御影のDVNOを見る眼は冷ややかだった…
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 15:21:44.25 ID:pm85I9s1o<> >>266
「!? なんだあれ、くそっ、よくわかんないけど避けてジャベリンだ!!」

どこぞのポケモンマスターも使う伝家の宝刀『躱して○○』
そんな複雑な事が出来るかどうかは、一概にAIの処理能力にかかっている。

この場合、ネムレスナイトが導き出した答えは跳躍。
左手で横腹の短槍を手に取り、爆風を跳び越え、跳躍の最高度で、ジャベリンを投げつけ、相手の動きを更に読みやすくする。
そして、少女のいた場所を、着地地点に定める。上手くそこに落下できるかは少女の行動しだいだ。

しかし悲しいかな、重装甲故に高度が足りず、後右脚が凍りついてしまう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 15:29:23.53 ID:O2HVwfRPo<> >>267
「開幕榴弾からのオートキャノン。
 こんなものをあの子詰め込んだ家電メーカーはどうかしてるよね…」
《左腕部冷却中…》
最初から大きな武器を使う。それは再装填まで持たせるか
弱った相手を、右と他で戦うかの二択である。

『しまった。距離が!』
ジャベリンを左肩に受け、大きく仰け反り後ろに飛ばされた。
左腕パーツの外装が黒く変色し、機能を失ってしまった。
結果的に距離は開いた物の、強力な武器を失った。

《左腕パーツ、ダメージポイント100、機能停止》
「…おや?」
高い跳躍力を目の当たりにして被弾、大ダメージ。
“主砲”が破壊され、ケースが悪化してるのに気付く。

『あー!あったまに来たー!シュミAへ切り替え!
 クーラーユニット作動!全力でぶっ潰してやる!!』
照月は躊躇わずに、胴体…フラットラインの補助チャージを使用する。
バッテリー消費と引き換えに武器の充填を高速化させる。
ペンギン帽の目が赤く光ると、夥しい熱気が背のバックパックから排気された。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 15:36:12.41 ID:pm85I9s1o<> >>268
「よっしゃ!そのままイケー!」

騎士が着地すると同時に、「ポキッ」と軽い音がした。
よく見れば、凍り付いた騎士の後右脚がくるぶしの辺りから折れているのがわかるだろう。
重さの衝撃に耐えられなかったのだ。

「くそっ!負けるもんか!」

騎士は奮い立たせる様に、右腕の大槍を振り回し、少女に対峙し
腕をつきだし、槍を柄の中央から回転させ、盾代わりにして突撃してくる。

よくよく考えれば、槍で突かずにそのままぶつかってもいいのだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 15:42:46.60 ID:O2HVwfRPo<> >>269
『ガード、ガード!』
回避行動を取らず、装甲というスカートに覆われた左足を前した。
脚部で防御を行ったようで、鈍い音が会場に轟く。

『さっきの奴みたいに氷漬けにしてやる!!』
騎士の胴体目掛け、チャージ状態の右腕の銃口に青い光が点る。
青白いマズルフラッシュが3回ずつ点灯。
三点射の4セット計16発の冷凍弾を放った。
これによる凍結効果は稀だが、威力は突撃銃級もある。

「押し切れるかな?…スタミナが尽きるのが先かも…」
《脚部パーツ、ダメージポイント60%》
開幕直後からの全快モード。
左腕が破損しているとはいえ、コレではペースが持たない。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 15:46:44.56 ID:O2HVwfRPo<> //訂正三点射の4セット計12発
4×4じゃねえ… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 15:52:23.30 ID:pm85I9s1o<> >>270
<LD/24%>
衝突により、こちらにも同じ位の衝撃が来る。
しかし、こちらは装甲があった。
本体に来るダメージは、相手と比べれば軽微な物だ。

そのまま追撃の槍を振り下ろそうとするが、その前に銃撃が放たれる。
1-3発目は、装甲に弾かれるだけで済んだが
4発目、これが凍結効果を引き起こした。
装甲は即座に氷つき、5,6発目によってひびが入る。
7,8,9と来る連撃に、ついに装甲に穴が開く。
10,11発がその穴を抜け、本体を撃ちぬく。
12発目は、辛くもダメージの衝撃でノックバックした事で、装甲に命中し、弾かれる

<BD/42%>

「くそっ!負けるなネムレスナイト!」

右脇に穴が開いた鎧騎士は、なんとか持ちこたえ、当初行おうとしていた通り、追撃の槍を振り下ろす。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 16:08:32.88 ID:O2HVwfRPo<> >>272
『ここまで近づけば…ぐあっ…』
槍が振り下ろされたが、懐に入り込もうと前進する。
槍が胴体に直撃するも、軸を反らして前進をやめない。
二度目の鈍い音の後、胴体の色が若干暗くなった。

《胴体ダメージポイント70%、クーラーユニットに異常発生…》
《注意、バッテリー残量が40%を切りました》
「一旦引いて様子を見れば良かったのに…
 あいつ、暖まっちゃってるな…どうしたものか…」
ますます危機の度合いが深まる。御影の表情が険しくなった…

『ゴールまで、飛んでいけぇぇ―!』
右肩を前にしてタックルを繰り出す。
歩行性能に比例して距離と速度が伸びるアクションだ。
体重が軽いといっても25cmが勢い良く飛んでくる訳だ。
相手に十分な転倒耐性がなければ、姿勢を大きく崩せるだろう。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 16:14:42.53 ID:pm85I9s1o<> >>273
「そのまま踏みつけ―――何ィ!?」

少女の外見から、銃撃がメインだと思い込んでしまった少年は驚きを隠せなかった。
ネムレスナイトも、それは同じ。

不意をつかれタックルがキレイに命中してしまう。

通常のネムレスナイトであれば、この衝撃は、軽く受け止められた。
しかし、今は違う。
ふんばろうとして後右脚を地面につけようとして、そこで崩れ落ちる。

くるぶしと脚が分離し、体重を支えきれなくなったのだ
<LD/63%>
<BD/48%>
凍結攻撃の怖い所、安いAIだと凍結状態を認識出来ず、ダメージ計算に入れない所だ。
新たに<正しい>ダメージが計測された。

騎士は急いで三脚で立ち上がろうとするが、それまでに少女に好きな様にされてしまう絶対的不利な時間が生まれてしまった。 <> 1→0<>sage<>2012/07/29(日) 16:24:12.34 ID:O2HVwfRPo<> >>274
『残り残量…2割…あれ…クーラーが切れてる
 でも、コレだけ距離があれば…それから…どうしろと…』
チャージ状態が強制的に解除される。
少女は自身がバッテリー切れで前屈みに倒れる姿を予知し、諦めようとした。
その時、端末から声が伝わる。

「オーダー発令、全力攻撃。
 火事場力って奴をみせてあげなさい…」
縁が端末から命令を送る。オーダーを送った。

『んな無茶な…分かったよ、マスター…
 あいつを…コテンパンにしてやるからな!』
照月の外装がメタリックブルーに輝き、右腕の冷凍銃が銀色に輝いた。
【光学化T:ダメージ2倍 奇跡ポイント-1】

『貫けぇぇ――!!』
右腕の冷凍銃の銃身に青い光が点る。
その光は徐々に勢いを増し、騎士へと青白い光線が連続で撃ち出された。
光の弾丸。これは、今までの冷凍弾とは違う。
青白い光が幾つも通り過ぎた後、過冷却により氷霧が発生した。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 16:31:34.50 ID:pm85I9s1o<> >>275
体勢を立て直すその前に、光線が幾重にも騎士を貫く。
装甲に小さな穴がいくつも空く。

そして、その穴から、パラパラと粉の様な氷が漏れ出る
それは、ネムレスナイトの、中身だった。

【ネムレスナイト BODY LIFE 0】
【 F A T A L  K. O. 】

この瞬間、少女、御影 縁と照月の勝利が確定した。

「ね、ネムレスナイトーーー!!」

負けた少年は壊れた騎士のカケラを一粒一粒拾い始める。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 16:43:12.44 ID:O2HVwfRPo<> >>276
「えっ…てるちゃんにこんな武器積んでたっけ?
 …なんか色もキラキラしちゃってるし」
今確か、プリンセススノウがレーザーを連射していた。
その姿に、マスターである御影は困惑していた。

『マスター。…勝った…よ…』
レーザーを乱射していた方は、何が起こったのか分からない様子だ。
そのまま、前屈みに倒れてしまった。バッテリー切れだ。

「これが、HMPのブラックボックス?
 一体どうしちゃったんだろ…照月の奴…」
《バッテリー残量0。機能停止…機能停止…》
縁のDVNOから無機質な機械音声が流れた…

{おおっと!準決勝Aを勝利したのは、コンビニ店員だぁ――!
 なんという破壊力!なんという脅威!ネバーランドに1人の戦乙女が舞い降りたーっ!}
随分ハイテンションな司会者が叫び、ギャラリーに絶叫と歓声の渦が巻き起こった。
でも6人くらいしか居ないが。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/07/29(日) 16:50:18.98 ID:pm85I9s1o<> >>277
少年は残骸を拾い集めると、机の向こうの女性にキッと目を向ける
「つ、次は負けないからな!覚えてろ―!!」
そう叫んで、少年は走って帰ってしまった。

入れ違いに、蝶ネクタイをしたキャベツ色のオカッパ頭が入ってきて

<貴方がワイバーン橋下を倒したという……>
<あんな奴全国ジュニアHMPワールド・グランプリ第4位、雑魚ですよ>
<この全国ジュニアHMPワールド・グランプリ第《3》位、ジェニファー高崎に勝てるなんて思い上がりは捨てた方がいいですよフッフッフ……>

なんて事をのたまってくる。
御影 縁の戦いはこれからだ!!

//お疲れ様でしたー。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 17:11:00.89 ID:O2HVwfRPo<> >>278
「ほら、新しいバッテリーだよ」
『…ゆかりん。私は…』
バッテリーを交換した後、様子が変だった。
先ほどと同じように、照月の体が僅かに輝いたような気がした。

{ペンギンは先ほどの力を再び見せ付けるのかッ!決勝戦!GO!}
決勝戦がすぐに始まった。
対戦者は決勝に勝ち上がってきただけ、苦戦が強いられると誰もが予想した。

『わたしは、つーよーいーぞー!!』
いきなりプリンセススノウの外装が、メタリックブルーへと輝かしい姿になった。
両腕の銃身が、銀色へ輝くと、左腕を高崎機に向け…
【奇跡ポイント-1】

高崎機「あじゃぱ――――!」
青白い光が、高崎機の頭部を貫いた。
情けない断末魔を上げ、頭部が真っ黒になり倒れ込む対戦者の機体がそこにあった。

{一撃必殺!なんという化け物!なんという圧倒的な力!
 これが、HMPに秘められた、ブラックボックスの力なのか!}
いつもよりハイになってる司会者がいた。

「…なに…これ…」
『…勝ったよ…褒めて、褒めて…』
今回の大会は、何もかもが異常だった。
レギュレーションを満たしたHMPが、2度も異質な力を使ったのだ。
この時、ユカリはこのテルヅキを修理点検に出す事を決めたという。

/おつかれさま
なんという剛運…っ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 18:17:14.26 ID:UrMyNqNWo<>  夕暮れ時のHMPショップはバトルを楽しむプレイヤーたちで満ちている
 ショップに並べられたたくさんのフィールグラムには、幾つもの列が出来てバトルの時を今か今かと待っている
 その一つの前に、一人の青年が立っている
 純朴、という言葉をそのまま人間にしたような顔をした青年だ

「さて……エリ、それじゃ今日もがんばってみようか」

 彼は手にしたHMPをセットすると、相手方がHMPをセットするのを待ちつつ、声を掛ける
 HMPのプレイ年齢層は幅広いが、この時間となるとどうしても低年齢層が多い
 歳を喰ったプレイヤーにはそれなりな態度での振る舞いが求められる

「今日はよろしくね。ステージは、僕が選んだ方がいいかな? それとも、君が選ぶかな」

 頬を掻きながら、青年は対戦相手に問いかける <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/29(日) 18:29:05.88 ID:SkwRJIn5o<> >>280
「うん、そっちが決めていいよ」

中性的な顔立ちをした青年が答える
本来この時間はおもちゃ屋「グリーンエイジ」で働いているはずだが、今日は非番だ
何だか日曜日が非番だとちょっと落ち着かないな、など考えながらバッグからHMPを取り出しセットする

「おや、君のHMP、ずいぶんいいデザインをしてるね。
たぶんアネモネがベースでしょ?あとでよかったら写真取らせてくれないかな」

対戦相手のHMPは確かに、いいデザインであった
青年は、なんだか大学時代によく目の前のHMPの様な不気味な絵を描いていた事をなんとなく思い出した
一年ちょっと前の記憶なのに随分と前の記憶のような気がした <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 18:42:10.36 ID:UrMyNqNWo<> >>281
「そうかい? ん、ありがとう。
 それじゃ、森林にしようかな。状態は雨天。ちょっと癖のあるステージだよね」

 そう言いつつフィールグラムに設定を打ち込むと、DVNOを起動する

「うん、そうだよ。っていっても、ヘッド以外はほぼモルフォシリーズだけどね
 どっちも換えの品が手に入りにくいから、パーツの欠損が怖いよ。お財布に優しくないね」

 はは、と朗らかに笑うが、壊れた後にもこの改造を施すのだから業とは深いものである

「そっちのはハートフルヒーローがベース、かな? 早く動くとマフラーが靡いて格好よさそうだね
 写真の件は了解。もちろん、僕に一枚くれるってことでね」

 ぶぅんと音を立ててフィールグラムが起動、雨に晒されて視界の悪い森林が投影される
 マキノイド一強とすら言われるほどに機体相性があるステージであり、如何にレーダーを上手く使うかが問われる少々難度の高いステージだ

「それじゃ、始めようか」

『行きますよー!』

 そうしてステージに二体のHMPが降り立つ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/29(日) 18:50:49.99 ID:SkwRJIn5o<> >>282
試合が始まると同時にDVNOからゴング音が鳴り響く
『おっしゃあ!いくぜ!』
「うん、いこう!」

とは言ったもののヒートは武器を構えたままで動かない
どうやらレーダーで相手のHMPの位置を探している様だ

(あの人、森林のフィールグラムを選んだけど・・・何か目的があったのかな?)
(可変機能はまず持ってないだろうけど・・・ステルスやジャミングを持ってるかもしれない。とにかく気をつけないとな)

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 19:02:00.95 ID:UrMyNqNWo<> >>283
(いやはや、ステージを選ばせてくれてよかったよ)

 エクリプスは癖の強すぎる機体だ
 そのメリットを生かせるステージは数少なく、しかも今回の相手は機動力が高いと来てる

(キラー、だよねぇ……草原ステージとかだったら開幕土下座してたところだよ)

 心の中でそう苦笑しながら、DVNOへ指示を飛ばす

「エリ、いつも通り、やっていけば大丈夫だよ」
『了解です!』

 ふわりと、蝶のように舞い上がったエクリプスが森林の中を移動し始める
 エネルギー消費こそ高いものの、モルフォシリーズの翅は静音性が極めて高いというメリットを有する
 更に、素敵機能と揶揄される燐光も、使い方によっては相手を翻弄できる……といっても、まぁレーダーでバレバレなわけだが

(そのうち、ステルスも視野に入れないとね)

 シンが思考する間にもエクリプスは移動している
 ハートフルヒーローのヘッドは、レーダー性能が良い
 そのギリギリを見極めて、シンはこつこつとケータイの液晶を爪で叩く
 それが合図となって、エクリプスは前身を止め、カンディルを構える
 対するこちらはレーダー機能は弱い……だが、カメラ性能では負けてはいない
 森林、それも雨天という悪条件でありながら、その視野はかなりの遠距離までを捉える
 
『さー、行きますよー!』

 元気いっぱいの声を押し殺しながら発するという器用な真似をしながら、カンディルの照星にヒートをとらえんと微調整を繰り返す
 とてつもなくちっぽけな、針の穴を通すように照準を定めると、その引き金を引いた
 命中すれば強烈な一撃となる弾丸が、放たれた
 その弾丸を嚆矢とするように、幾つもの弾丸が後を追う <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/29(日) 19:23:18.12 ID:SkwRJIn5o<> >>284
『ッが・・・!』
「ちょ、直撃!?どの距離からだよっ!」

《ヘッドパーツ、耐久値残り24パーセント。危険です》
青年のDVNOから機械的な声が響く。いきなり劣勢に立ってしまった
しかし、まだ試合が終わったわけではない。それに『相手の機体に関する重要な手がかり』が今の一撃でわかった
相手に聞かれないよう、小声でヒート手がかりを伝える

「ヒート、よく聞いて。あいつステルスもジャミングも使ってないよ」
『はあ?レーダーに全く写って無かったんだぞ?
ジャミングじゃないのはわかるけどよ、あれはステルスに決まってるだろうがよ!』
「違うんだ。さっき食らった弾丸から位置を予想すると相手は空中から射撃してる
空を飛ぶのはかなりバッテリーを消費するから、あの小さなボディじゃ飛ぶだけで精一杯の筈だ。つまり・・・」
『ステルスを入れる余裕は、バッテリーの容量的に無いってことか』
「そうゆうこと!・・・たぶん」

正直な話、コータローはこの予想が合ってるとはおもわかなかった
なぜならだとすると、相手はこちらのレーダーに映らない範囲から射撃してることになる
それは相当な技量とカンをもつ熟練のプレイヤー出ないと無理だろうと思ったからだ

『で、解決策は?』
「そりゃあもちろん!」
「『ぶっ放せ!』」

ダッシュしながらデコレーターを構え、乱射するヒート
あっちがカンならこっちもカンだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 19:41:44.66 ID:UrMyNqNWo<> >>285
 ヒートが走りながらデコレーターを乱射し始めたのを見て、シンは胸中で呟きを零す

(まぁ、そう出てくるよね)

 曲芸が通じるのは一発目までだ
 動体に中てるのは静止物に中てるよりも遙かに難しい
 そして、相手の取ってきた策はおちおちと動体射撃していられるようなものではない

 かつ、かつ、とまた液晶を爪が叩く音がする
 作戦変更の合図だ

『ご奉仕価格で大増量ですね!』

 目を煌めかせながら、エクリプスは移動を開始する
 水平方向の雨のように降り注ぐ弾丸は、木陰に姿を隠せば数秒程度なら凌げるが、この乱射の中そうして待っているのは拙いだろう
 ちょんちょんとステップを踏むように短くブーストの入切を繰り返しながら樹上を移動する
 恐らくそろそろレーダー範囲に入るだろうが、そんなことは百も承知だ
 近づくに連れてデコレーターの弾丸が肌を切る

<<HEAD ダメージ10%....>>
<<R.ARM ダメージ10%....>>
.
.
.
 続々とDVNOに表示されるダメージ表示を無視しながら、エクリプスは樹上を猿のように駆け抜ける
 その度にぎしぎしと梢が鳴り、つい数瞬前まで居た枝を、デコレーターの弾丸が食い散らかしていく

「さて、勝負だ」

 一瞬先に、ヒートのレーダーにエクリプスが表示される
 それに遅れること数秒、こちらのレーダーもヒートを捉えた
 樹上から飛び立ったエクリプスが、青い燐光を散らしてヒートの頭上を踊る

「空から飴が降ってきた」

 ダダダダダダダダ――
『それは何味――?』
 
 現実の機関銃のそれに匹敵するほどの発射速度で、弾がばらまかれる
 頭上から、名の元となったカンディルのように、弾丸の雨が群がって襲いかかる
 凄まじい大音響が響き渡るだろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/29(日) 20:01:36.25 ID:SkwRJIn5o<> >>286
「今だッ!」
『うおおおおおおおおおおお!!!!!』

降り注ぐ弾丸の雨、しかしレーダは相手がこちらを捉える前に、すでに敵を捉えていた
弾丸の雨を食らうまでの僅かな時間にこちらの攻撃が全弾命中すれば・・・

しかし、デコレーターというヒートが扱うには少々オーバースペックなパーツを持ち移動しながら射撃していたため
ヒートのボディは既にオーバーヒート直前であった
もしこの攻撃が「全弾」当たらなければ確実に動く事すらできずに敗北するであろう
青年は、天に祈る事しかできなかった

(起きてくれ・・・奇跡っ!)

/キセキポイント使用>>283 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 20:15:39.72 ID:UrMyNqNWo<> >>287
 僅かな時間差。それが明暗を分けたのだ

『あっ……』

 デコレーターの弾丸が、エクリプスの全身を食い荒らしていく
 脆弱なLEG、堅牢なL,ARM、火を吹いているR.ARM.美しいBODY、目を輝かせていたHEAD
 移動中に受けていたダメージが加わり、瞬く間にダメージが限界点を飛び越える

 がくん、と火がついた蛾のように、空を舞っていたエクリプスが墜落する
 地面に衝突するその瞬間まで燐光を散らしながら

<<HEADパーツHP0 よって、ヒートの勝利となります>>

 システム音声が冷静に、勝敗を告げた
 フィールグラムが消失し、後に残ったのは地に墜ちた蝶と、勝利したヒーロー
 その結果にシンは苦笑する

「んー……いけると思ったんだけどね。ちょっと、移動中に受けすぎたかなぁ」

 惜しかったなぁ、と呟きを零すと、エクリプスを回収して、青年の近くに歩み寄る

「うん、良い勝負だった。ありがとう」

 そう言って握手を求めた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/29(日) 20:24:42.37 ID:SkwRJIn5o<> >>288
「こちらこそ」

差し伸べられた手を、強く握り返す
青年の手は、とても男のものとはものえない位華奢であった

「にしても危なかったよ。みてよ、ヒートのやつ、オーバーヒートしてる」

「深追いしすぎたからさ、まずい!って思ったけど結果的にはそれがよかったんだね
ダメージ的にもギリギリ倒しきれなかっただろうし」

本当に強い相手だった。フィールドや相手のHMPの動きを完全に把握してる
きっと並のファイターでは無いのだろう

「君、本当にすごいんだね。こっそり言うけど、実は僕おもちゃ屋で働いてるんだ
もしよかったら今度の大会に・・・」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 20:35:19.60 ID:UrMyNqNWo<> >>289
「うん、あそこで突っ込んでこられたのはちょっと困ったね」

 粘る、という選択肢もあるにはあったが、相手の限界値がわからない以上、その選択肢を選ぶのは博打に近い
 ちら、とオーバーヒートしているヒートを見ると頬を掻く

「結果としてみれば、粘るのがよかったみたいだね。んー、でも僕は脳筋だからなぁー」

 あんまりエリを活かせないよと苦笑して

「それはまた羨ましい……
 ん、お誘いはありがたいけど、ちょっとね。色々あって大会には出られないんだ
 出たい気持ちはあるんだけどね……もっと色んな人にエリを見て欲しいし」

 そう言って、手の中で眠るエクリプスに視線を下ろす

「この子が乗り越えてくれるまでは、難しいかな
 ショック療法もあるにはあるけど、ね……」

 どうやら、色々と深い事情があるようだ

「まぁ、その代わり野良試合なら幾らでも受けるから、また今度機会があったらやろうよ」

 そう言って立ち去ろうとして、歩みを止める

「……っと、そうだった。写真を撮るんだったね。どういう構図がいいだろう?」

 他の客たちがさっさと退けコールを目で送ってきているので、写真撮影は別の場所ですることになるだろう

//夕食の時間なのでこれで〆で
//ありがとうございましたー!  <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 22:32:00.57 ID:qzuOVPE8o<> まだここで雑談してても良いのかな? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(福島県)<>sage<>2012/07/29(日) 22:38:01.18 ID:oduBiqbco<> ありかと思われ でもしたらばでも雑談できるよ! 見たいな感じかな・・・ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 22:45:27.07 ID:qzuOVPE8o<> おわ
したらば出来てた! 見逃してたww <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/30(月) 18:51:01.19 ID:byo4gHXGo<> >>>254
カメラに収めている黒い影が攻撃に転じた、左手に収めていたクナイを振りかぶり投げつける。
すぐさまその行動に対し本調子ではないパートナーへと声を投げかけた

『マカせろ!』
バックのために逆回転を起こしているホイール、その右足のものに重心をかけた
傾いた状態となり設置面積が減ったホイールが金切り声のような音と火花を立て、急激にカーブする
動力を無理やり利用した力技とも取れるこの危機回避
だが不意打ちに近いこの技術によって嵐影の予測を上回り、ガブルの上体を狙っていたクナイはアスファルトに突き刺さった。

『あいつブッソウなことサケんでるぞ』
「相手のステルスのほうが消耗が早いはずだ、それまで耐える!」
確かに理論的に言えばこの方法ならば解決はするだろう、だがこれは相手がそれまで何もしてこないことを前提としている。
つまりこの追いかけっこが続くことを前提としていることなのだ

『んなことムチャにキまってんだろ!』
まるで漫才のような掛け合いだが真剣にやっているらしい、その隙を突くかのような嵐影の2本目のクナイ……!!

「『あぶねぇ!』」
HMPとプレイヤーの声がシンクロする、放たれたクナイの斜線上に左腕を割り込ませたのだ。
スチールセイリオスのレフトはナパームスマッシュ、その特徴はナパーム弾ではなく追加の装甲にある
通常時は前腕を覆う盾のように置かれているが、稼動することで前面に展開できるナックルガードと盾を両立した装備だ
この左腕を割り込ませたということはつまり盾による防御を行ったと同義、クナイは分厚い装甲に阻まれ地面に転がった

だがこの瞬間、拓海は映りこんだある映像を見逃さなかった
それは『影』――― その意味を理解しすぐさま声をかける。

「しまった!これは囮だ!!」
天性のセンスというものだろうか、敵がクナイを囮に後ろへ回り込んだことを悟ったのだ。
その言葉に対しガブルは目を丸くして振り返ろうとするも、先ほどから自分はバックをしている。
この状態で後ろを取られたとなっては回避するには手遅れだ。

待ち構えていた嵐影は好機とばかりに駆け込んでくる、その攻撃は一撃必殺になりうる頭部の直接狙い。
左腕の盾では間に合わない、拓海のオペレーションも間に合わない……!!

ガブルがとっさに先ほどから使用している右腕バレルランスを無理やり壁として使ったのだ
《R.ARM:DAMAGE24% ―――YELLOW》
バチバチと青い火花が右腕からあがり、そのダメージと衝撃によって少し後方に引きずられた
だがホイールと接触した路面が煙を吐き出し、ギリギリで踏みとどまる

『やりやがったな!!』
今度はこっちの番だと言わんばかりに踏み込み、ダメージを受けた右腕を突き出す。
そこに繋がる槍を突き刺そうというのだろう、ターゲットは頭部ではなくボディ。
もっとも狙いやすい部位を狙ってきたということか、もしこの槍に当たればその状態からライフル弾がゼロ距離で叩き付けられるだろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 19:47:13.67 ID:JsOZWB1X0<> >>294

堅牢な手応え。剣呑な衝突音に、まりかの声が重なる。

「踏み込みが甘かった!?」

一方の嵐影は壁になった槍を蹴って背後に小さく跳び、相手の後退と同時に地を踏み。

……考える。ゾイノイドに近い反応パターンと駆動は、直線的ながら迅速だ。
加えて、強力な連絡回線となる絆――。
仮に嵐影のマスターが三傑≠セったとして、無傷で潰せる弱敵では、ない。
だが射撃機と猪突猛進思考は、少なからぬ齟齬を来してもいた。

故に嵐影は落ち着いて構えていたが、まりかもそうとは言えない。
一回り大きいHMPがチャージを仕掛けてくる威圧感は、noobにとっては脅威だ。

「……どうするの、ムラサマで一気に決めるか。危ないよね? でも長期戦になると、弾を回避しきれない。
  速度を根本的に何とかする手段が無いと、火力差で詰んじゃうよ!」

焦り気味の声に、

『神は細部に宿り、木を見て森を見ずとは言えど、森の病は木に現れるもの。
 今だけは――ただ、ご覧に入れましょう。』

……冷たく返す。

DNVOを介して見えた「焦るマスター」に、かつて無かった歯がゆさを抱きつつも、敵と正に対した。
金属パーツ使用のクナイは、先ほどの衝突を経て、しかし一筋の罅もない。

……好い、好い。仇なす者全て殺(こわ)すべし。

『すぐ撃っておれば良かったものを、騎士がたかが隠密に憤ったか?』

老獪さを滲ませる、声。
敵と交差するように走りだした彼は、槍が直撃する直前、

『――フンハッシャー!』

敵の身体の右足側へとっさにステップを打って、嘲笑うが如く――避けた!
先ほどの急転で酷使し、更に盾も無い側の脚部の側へと、だ。
そして、クナイが振りぬかれ、ホイールを正確に狙って発射される。

やはり白兵戦では分がありか。確かに彼の動きは鮮やかだ。
だが主にインストラクションを行う為の無駄な時間があったため、気づけば槍でクナイを受ける余裕もあるだろう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/30(月) 20:26:06.42 ID:byo4gHXGo<> >>295
「ガブル、ゲイザー!!」

槍の一突きを避けた嵐影に対しての言葉を誰よりも早く出したのは拓実だ。
素早く左腕を地面に向けそのまま間髪いれず大地に放たれたナパーム弾がアスファルトに炸裂、爆発とともに火柱を立てた

ゲイザーとは観測者ではなく間欠泉を意味するgeyserだろう、大地に放たれたナパームがまさに炎の間欠泉その様だ
爆発が放たれたクナイを弾き飛ばす、それだけでな火柱が視界を塗りつぶし壁となった。

『アブネェ、タスかったぜ』
一テンポ遅れてガブルが息を吐く、あの素早い動きはほぼ条件反射的な行動だったのだろう
それだけで何度も繰り返し磨かれた技だということが伝わってくる

すでにステルスは切れている、視界では見えずともレーダーで敵の姿は捕捉していた。
「センサーに映ってるよな?」
『オウよ!』
「よし、カードリッジロード!」
その言葉とともに嵐影からすれば火柱の向こう側でセイリオスに背負われていた2つのスラスターが肩から顔を出すように稼動する。
スラスターの中心に備わっているシリンダーが機械音と共に回転し、弾装の1つで停止した。
前面にせりでた部位には大きな空洞が開いている、これはつまり・・・

「リボルスラスター!」
『シュート!!』
掛け声と共に赤く燃え盛る火柱に円2つを刳り貫き、小金に輝く2つの弾丸が煙を貫いて現れた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 20:48:13.36 ID:JsOZWB1X0<> >>296

スチールセイリオスの武装は派手で、精神圧力が中々高い。
盾に榴弾が、槍に狙撃銃が、スラスターに砲(つつ)。戦闘に特化した物騒なHMP――。

嵐影の卓越した戦闘感覚は、一発の弾丸をクナイ投擲で迎撃せしめた。
そして左腕を体の前に差し出したが、完全な防御は――能わず!能わず!

『グワーッ!』
「嵐影!?」

DNVOディスプレイに《左腕部損傷率三割五分》《赤い警告》《中破な》と言った文字列が乱舞する。
ノイズ。指の痙攣。信号伝達異常。
回復まで時間はかかるまいが、ダメージの蓄積までは消えない。

「もう一度、シノビステルスモードを使おう。」
『異論はありませんが、この電力では三度目も無い。外せば終わりますぞ?』
「……うん、やってみる。」

『御意。……ヌンヌンヌン!!』

シノビステルスモードを起動。レーダーから再び嵐影の姿が消える……。
炎に穿たれた傷跡はすでに癒え、カーテンめいて互いを隠した。

火焔が消えても、視界は敵の姿を欠いたまま。
足音は、聞こえない。脚部【タビ・トレック】の静粛性故、或いは、地上には居ないのか――。

どこから迫ってくるか、分かったものでは無い緊張が続く。
嵐影にとっては、それも攻撃の一環であるつもりだ。

「うぇぇ……どこから出てけば良いのかなぁ?」

主は、どうもそれを理解しきれていない様だが……。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/30(月) 21:01:46.02 ID:byo4gHXGo<> 『ヨッシャ当てたぜ!!』
着弾音が聞こえてくる、相手は機動力の確保のために相当薄くしているはずだ
どの部位を破壊したかはガブル側からも分からないが、どちらにせよ痛手になったはず
しかし戦闘が終了していないということはまだヘッドは無事だということ。

火柱が消えると同時にバレルランスを差し向けるがそこに忍者の影はない。
それどころか再びレーダーに砂嵐がかかっているではないか

『ダーもう!チョコマカ動きやがって!!』
イライラを抑えきれず周囲をくまなく確認するガブルであったが、DNVOからは逆に冷静な声が返ってきた。

「相手のほうが足が速い、たぶんここで後退することも読まれているはずだ」
先ほどから陸上での機動力の高さだけは見せ付けている、武器の命中率はいいとはいえないが
となればここで充電切れを狙っての退避も相手は考えているはずだ。
まず動こうとして狙われるのは機動力の要であるホイール、バックしようなら後方上からバッサリだろう

「だから……」
ガブルに謎の指示が送られてくる、その意図を最初は理解しかねたようだが次に送られてきた指示で理解したらしい

『おいおいイチバチかよ!!』
ゴーグルに描かれた目を丸くして驚くガブルに対し、真剣な顔をして頷く拓海。
その反応にさすがのガブルも押し黙ってしまったが……

『ヤルぞ!!』
一度空を見上げてから機体を旋回させたガブルはそこから逃げるでもなく立ち止まった。
そして先ほど同様にスラスターを展開、カードリッジのロードも同様

「来るならこい……!」
何をするつもりなのか…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 21:19:01.24 ID:JsOZWB1X0<> >>298

虎をも[ピーーー]ような張り詰めた空気が、ホログラム世界を支配した。
嵐影はどこにいるのか? ガブルは何を考えて居るのか?
観客も固唾を呑んで見守る中、ついに危うい静寂が砕かれる。

『殺……!!』

――大通りのマンホールが開き、騎士の背めがけて漆黒のヒュームボットが躍り出た!

言うまでもなく、それはシャドウニンジャ型……嵐影!

「入り組んでてさ、どこから出るべきか分からなかったんだよね!」

彼はクナイを右手に持ち替え、蓋を開閉するための工具の代用とし
更に再度登るときに極小の足場として壁に突き刺す事で、暗渠より舞い戻って来たのだ……。
HMPが人間サイズだとしたら、距離は10〜20m程度。
HMP縮尺とニンジャ脚力をもってすれば、一息で詰められる距離――。

ライトパーツ【ムラサマブレード】――伝家の宝刀が、展開された。
それはHMPを巡る電流を刀身内部に誘導し、HMPの血潮と言えるバッテリーからの電力を吸い取る。
未来妖刀ムラサマブレード(意図的な誤字。古いコンピュータゲームのオマージュである)。甚大な消費と莫大な還元の融合。

「……いけ!」
『フンハーッ!!!』

嵐影はステルス・ムラサマ両展開で、更に脚部フル稼働で迫る。
そしてガブルのヘッドとボディへ袈裟がけの一閃を振り下ろそうとするだろう。
ムラサマは腕部一体型の装備故に、肉薄した状態で。

「(もしまともな反撃があるとするなら、ブースト突撃、もしくは榴弾。
  こんな奇襲の手を打ったのは、当たるほどジリ貧になるから……。
  最悪、同時破壊のドローまで視野に入れてるんだからぁ――!)」

手に汗握る少女の覚悟と、ニンジャの忠誠がリンクする。
少年と騎士の友情は、この死狂いの一撃にどう対処できるのか……? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/30(月) 21:35:34.66 ID:byo4gHXGo<> >>299
「見えた!!」
カメラ外に居るはずの嵐影の何が見えたというのか、それはセイリオスが事前に空を確認したことにあった。
空にあるのは雲と……そう太陽だ、わざわざ旋回をしたのも全て太陽に背を向けるため。
つまりガブルと拓海が見たものは嵐影の影、飛び上がった黒いそれがアスファルトにきっちりと映し出されている

『ウオリャアァァ!』
展開していたリボルスラスターが炸裂する、左はそのエネルギーを前に出る推力として
右は逆にロードした弾を反動軽減を行わずに発射、さらにそれと同時にに左ホイールは前へ右ホイールは思い切りブレーキを…

この時ガブルに左から右への運動エネルギーが働いた、劈くようなブレーキ音と火花が走る。
つまり右足を軸にした時計回りの超高速旋回をその場で行ったのだ

嵐影が狙っていたはずの頭部はそのまま敵の右側にずれ込み、掠める形で虚空を抜ける
かわりにセイリオスは空中からの振り下ろしを行っている嵐影の側面へと回りこんだ

『なんでスマッシュなのかオシえてやるゼ!!』
あえて左回転にした理由、それは持ちうる武装のうちもっとも高威力のナパームを叩き込むため。
ナックルガードをその言葉通りコブシの前面に展開し、旋回で利用した勢いをそのまま乗せて……

殴る!と同時に撃つ!
ナックルガードによって自らの左腕に起こるダメージを軽減し、相手にゼロ距離で爆発を叩き込む滅茶苦茶な技。
これこそがパーツ名【ナパームスマッシュ】の由来なのだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 21:55:49.90 ID:JsOZWB1X0<> >>300

ウカツ!幾ら嵐影といえど太陽の方向を地下からは実際確認不能!
更に嵐影の癖である「ジャンプからの奇襲」「背後を狙いたがる」を完全に読まれている!

『グワーッ爆発!』
「そんなっ、あんな早く動くなんて……!」

至近距離で焼夷榴弾が爆ぜ、火焔が忍者を包んだ。
嵐影の各部装甲パーツは溶けながら崩壊し、まず損傷のあった左腕が崩壊!
更に右腕が爆散!足が粉砕!そして頭部が――

『……サラバ!』

最重点パーツであるAIチップを間一髪で射出すると、定型句的に叫びを上げて爆発四散!
僅かな骨組みだけを残し、戦場は沈黙した――。


「うっく、ジャンプはやめとけって言ってれば……。」

マンホールからショートジャンプで飛び出し、そのまま疾走していれば。
例え影を読まれていたとしても、基礎敏捷性で対応できていたかもしれない。
相棒の性格を把握できていなかったまりかの、完敗だ。

フィールグラム空間が消滅し、無骨な筐体の姿が帰ってきた。
係員がチップを回収して手渡すと、片手で目元を拭いながら、しめやかに受け取る。

「……ありがとうございました。」

武道めいて一礼。
三傑≠フ従姉妹が舐められてはいけないと静かな声で。
だけれども、顔は上げられなかった。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/30(月) 22:11:11.44 ID:byo4gHXGo<> >>301
爆発パンチなどという無茶苦茶な技を行ったのだからその腕もただでは済まない
DNVOには《L.ARM:DAMAGE25% ―――YELLOW》の文字、だがそれ以上のダメージが嵐影を襲っていた。
起動を停止した敵HMPを残しグッとその左腕を天に掲げた
その手はグッと握りこまれ親指だけを高く立てた姿、自らの勝利を示すポーズであった。

ファイトの終了と共にフィールグラムが消滅し、そこに唯一残っているスチールセイリオスを拓海は回収する。

「今の戦い、後ろからまっすぐ近づかれたら負けてた」
「そっちのほうが背が小さいから影が重なって分からなかったはずだ」

顔を上げない対戦相手に対し言葉を投げかける

『だからイチバチだったんだよな!』
それに同意するように拓海の手にある青いHMPが声を出した

「いい勝負だったしまたやろうぜ、まりか」
ニッと歯を見せながら笑い、互いの健闘を称えるためにそっと右手を差し出した <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 22:30:39.36 ID:JsOZWB1X0<> >>302

労われた所で、別に敗北の味を忘れるわけではない。
こくこくと頷く顔に、明るい色は無かった。

それでも一摘み、ありがたいことはあった……呼び方だ。
ただ単純に、一人のニュービー・ファイターであり少女であるところの「まりか」として扱う事。
爽やかな無頓着さが、彼女の心に響く。

「……うん、戦ろう。嵐影と一緒に、戦おう。」

置き土産めいて残った魂(チップ)をそっとポケットに仕舞い(少しまずい行為。この点でも経験の浅さが伺える)
ずっとずっと小さな頼りない手を差し出し、強く再戦を誓う……ユウジョウ!

戦いが終わって、二人は後ろに並んでいるファイターに次を促す挨拶でもして、別れるのだろう。
この辺りの一期一会めいたドライさも、店舗戦の特徴だ。
尤も、胸に残ったものがあれば、十分ではある。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/30(月) 22:42:32.01 ID:byo4gHXGo<> >>303
「おう」
握手の後、彼のHMPと同じくビッと親指を立てその挑戦を受け取ったようだ

まりかと別れると手にしていたHMPを腰に下げているホルスターに仕舞い、PDAに話しかける
「さ、帰って修理するか」
『レフトはともかくライトのシュウリがなー』

返ってくる声に耳を傾けながら、歩いてゆくのだった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/30(月) 23:17:56.40 ID:JsOZWB1X0<> >>304

さてさて、まりかの方はと言えば、店の中に残ったまま悩んでいた。
シャドウニンジャのパーツ構成はどう舌を回しても「初心者向け」「標準的」とは言えない。
これから技量を磨く者には向かないと、改めて気付いたのだ。

嵐影は、目覚めた時にパーツ構成が一変していても驚きはしない。
そもそも最初に、肌に合わなければ別の機体に移してくれ、と言っていたからだ。

十数分熟考した後、少女はある機体の箱に手を伸ばすだろう。
AIチップは付属しません。でかでかと注意書きが書かれたそれは――。

コンマ1,5:騎士型HMP「ブラオリッター」
コンマ2,6:忍者型HMP「カトンニンジャ」
コンマ3,7:魔法少女型HMP「ゼンカイブラスト」
コンマ4,8:電気ウナギ型HMP「ホースキラー」
コンマ0.9:ライオン型HMP「レグルスハウル」

/お疲れ様でした! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 19:48:05.43 ID:kh5qQkB5o<> 関東北エリア、ネバーランド。
小さな大会は終わり、大会目当ての客は次々と去っていった。
これからは、バトル熱が冷めないファイターがフリーバトルに興じる時間だ。
据付フィールグラムは4台の内、2台が使用中の事だ。

「…準優勝、ですか…
 今日は前のような事象は起こらなかった…か」
『ま、初戦落ちしないだけ良かったじゃん』
待合用のテーブルに、黒いパーカーを着た薄紫色の髪をした小柄な女が座っていた。
テーブルの上にはペンギン帽を被った、少女型のHMPが立っていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 20:02:05.73 ID:2sNt0MCSO<> 「行動範囲を少しだけ広げて、新しい店を尋ねてみたけどな……まあ、こんなもんか?」
つい近頃まで盛況していた様子があるが、今は客足が減っているようである。
鳥形のHMPを引き連れた、黒い眼鏡をかけた青年。
子供独自の初々しさは消えつつあり、大人にしか見えない。
『主、どうした? 不満そうだな』
低い声で問い掛けるのが、赤い鳥形のHMPである。
「華やかさにかけるな、と思ってさ」
『静かで、良いではないか』

>>306
そんなペアは、テーブルの方へと歩み寄っている。
「偵察のつもりだったけどな、早くついたな。
 一試合ぐらい回せるんじゃないか?」
『ならば、相手が見つかればよいな』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 20:09:51.29 ID:kh5qQkB5o<> 「照月が負けた相手…
 罠に掛けて足を潰し、頭部を狙い撃ちにする。
 典型的なスナイパータイプと言えます」
女はDNVO端末で戦闘ログを眺めていた。

『マナー違反だぞ!屋根の上にマインを仕掛けるなんて!』
HMPの方はリペア済みで、いつでも稼動出来そうだ。

>>307
「あら?ここら辺では見ない顔ですね…
 大会は既に終わってしまいましたよ、今はフリーです」
営業スマイルを浮かべ、店員のように応対する。

『…あー…私も空が飛べたらなぁ…』
HMPの少女は、鳥形のHMPの姿を眺めた。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 20:25:05.48 ID:2sNt0MCSO<> >>308
「ああー……大会なんてやっていたのですね」
営業スマイルに当たり障りのない、落ち着いた言葉で答える。
「じゃあ、フリーの募集はどうなっています?」
携帯やパソコンの画面は、悪意が無くともなんとなく覗いてみたくなるもの。
彼もその例外で無いらしく、無意識のうちにモニターに視線が伸びる。

『何か言ったか?』
青年の肩から、テーブルに飛び移る。
タカノメと呼ばれるヘッドパーツはその名の通り、鷹のような鋭い目のデザインで、高圧的な印象がある。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 20:31:03.72 ID:kh5qQkB5o<> >>309
「ほら、さっきマインで空飛んでましたよ。
 そして頭から落下し、車田落ちしてましたけど」
皮肉げに口元を歪め、女は腕を組んだ。
『それ以上言うなー!そんな飛び方みっともないじゃない!
 何より着地がひどい!相手の位置も分からずやられるなんて…』
HMPの少女の方は、先ほどの負け方がよほど悔しかったようだ。

「ええ、この辺境の地でも大会はありますよ。
 フリーの方は、丁度あの4人がやってるから…余り者は私くらい」
営業スマイルを解くと、生気の感じられない眼が露になった。

『ひっ…』
HMPの少女が慌てて走る。軽量級らしく逃げ足は早い。
テーブルの上の銀色のHMPケースの陰に隠れた。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 20:40:55.24 ID:2sNt0MCSO<> >>310
「なんというか、仲が良いっすね」
あはは……。と、いう笑い。
「ドンマイっすよ、次ぎは勝てたら良いですね」
HMPの少女を励ますように話す。

「辺境の地っていうのは、どうかと思うけど……」
この男も、自転車で来れる範囲が生活圏であるようだ。
「それだったら、俺達とのバトルしません?」
鳥形のHMPは既に戦うつもりであり、気が溢れている。

『……』
逃げたのを見れば、羽ばたいて男の肩にと戻った。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 20:50:59.80 ID:kh5qQkB5o<> >>311
「仲がいい、ですか…」
頬杖を付き、照月の背を指で突付く。
丁度鳥形HMPに相対するよう、位置を調整する。
『この悪魔!人でなしっ!』
怯えた表情を浮かべる少女と、口元を歪ませ愉悦に浸る女の姿。

「あら、地元の人でした…?だとしたら申し訳ない事を…」
慌てて席を立ち、お辞儀をする。…サラリーマン崩れの匂いがする。

『じゃ、ちゃっちゃと始めようよ!…対戦相手だと判ればッ!』
少女の様子が、突如様子が急変。
自分の主を悦ばせる事が嫌らしい。
一体で据置フィールグラムに向かって掛け、飛び込んでいった。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:03:56.64 ID:2sNt0MCSO<> >>308
「あはは……」

(「なあ、この人怖くないか?」)
(『……知った事か』)
小声で話し合う二人である。

「まあ、隣町ってところかな?」
そこにもある程度の規模のショップはぽつぽつとあるので、理由が無ければここまで無理に足を運ぶ必要は無いのである。
「いや、そんなに謝る事じゃないっすよ」

『そうか……良い試合にしよう』
飛翔し、少女に続く。
「じゃ、そういうことです。よろしくお願いしますよ。
 あ、ステージはランダムに決めて構いませんよ」
青年は、DNVO端末とノートパソコンを開いた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:08:54.13 ID:kh5qQkB5o<> >>313
「隣町の人でしたか…それなら見かけない訳ですね…
 お気遣い痛み入ります…どうもすいません…」
ほっとした様子だ。この女の変わり様から、色々裏がありそうだ…

「追い込まれた獣は牙を剥く。それは人間であっても同じ…
 こうやって脅かさないと、あの子はキチンと戦ってくれないので…」
女の方はふぅ…とため息をつく。
ポータブルDVNO端末を据付き台にタッチし、フリーバトルモードを起動させる。

『おーし!良い奴こい!雪原こい!せ・つ・げ・ん!!』
スタンバイの合図を出す。此方のバトルスタイルはフルオートのようだ。
あと、今回のバトルフィールドに雪原なんてなかった。

/バトルフィールドコンマ末尾
16荒野
27森林
38パーキングエリア
49山岳
50市街地 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:27:00.49 ID:2sNt0MCSO<> >>314
ほっとするような部分があったかと、ほんの少し首を傾げた。

「死地に陥れて然るに後に生く――俺のカイも好きな考え方ですね」
カイというのは、彼の鳥形HMPの名前である。
「こちらのは好戦的でね、毎日センターにつれていかないと拗ねるんですよ」
青年がそう話すと、DVNO端末から微かにHMPの悪態が聞こえる。


『この地形……こちらに有利な様子が多いか』
爪の引っ掻く音を鳴らして、パーキングエリアの屋上にと降り立つ。

【高い位置から索敵を開始 レーダを使用せずに視認でのみ行う】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:30:39.65 ID:kh5qQkB5o<> >>315
フィールグラムが展開され…
ハイウェイのパーキングエリアが映し出される。
屋根のない駐車場ステージ、路面は舗装されたアスファルト。
所々にある障害物はHMPサイズのトラックと乗用車。
乗用車は高威力の攻撃を受けると爆発する。

『シュミレーション3で行くよ。
 奴が空に上がったら迎撃してやるんだから!』
照月の開始位置は歩道のタイルの上。
障害物に阻まれてロックできなかった。
それに加え、照月側は周囲に目立った障害物がない。

「あまり牽制にエネルギーを使わない事。
 てるてるの事だから、すぐ熱くなって空になりそうだけど」
マスターは小さなアドバイスだけして放置。
これは機体を信頼しているのか、それとも…

『フラグはやめろー!!』
トラックの裏を陣取る為に、前進を開始した。
中央のトラック群は良い遮蔽物になるからだ。
まだ気付いていない様子だ… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:31:40.72 ID:O4Ks6wQA0<> 関東地方、とあるHMPショップ、夕暮れ時の事である。
今日も今日とて人の波が寄せる此処で、一人の少女が対戦相手を待っていた。
神聖な筐体の前で、一騎打ちに臨む武者の如く。

「嵐影、今度のボディはどう?」
『まつり殿がお使いの【狛犬型】に近い感覚な……上々です。』

台の上には、黒く塗り直された【ライオン型HMP レグルスハウル】の姿。
本来のAIパターンと異なる電子声紋は、戦いの前という事もあり、平坦で静謐だ。

「……少しでも、あたしがケーケン積まないとね。」
『実に、実に。全国大会の予選には、地侍どもが集いに集うのですから。』

いかにも。ファイター達の祭典は実際近く、日々を無駄には出来ぬ。
そういう訳で闘志を漲らせる少女の前に現れるのは、果たして誰であろうか?

/待ち! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:42:43.51 ID:2sNt0MCSO<> >>316
『……隠れているか』
相手の姿を発見できなかったため、翼を羽ばたかせ、高度を上げてさらに高い位置を旋回し、相手を探す。

「この流れだと、相手に先手は取らせるか……?」
返事は無く、青年の独り言になるのだろう。
「分かっているよ、何時も通りやれば良いんだろ」


『……』
ステージをぐるぐると旋回し、まるで攻撃を誘い出しているようである。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:46:20.61 ID:ny4KRT2Lo<> >>317

HMPショップ。夕方だというのに、人の姿が途絶える気配もない。
そんな客たちに紛れて、やけに目立つ白い服を着た、怠そうな雰囲気の青年がパーツを眺めていた。
彼が身に纏うのはまさしく「MHP犯罪を防ぐための世界最大の民間企業」――――EDENの物だ。
若い割には階級は低くはないらしく、上から三番目の階級が刻まれた腕章を身に着けていた。

『マスター、一つお願いごとがあるんだけどっ……』

VDNOから響く、幼い少女の様な声。
見まわりついでにパーツを物色していた青年は、半開きの眠り眼を携帯端末へと向ける。
青年はため息をつくと、口を開くことすら億劫だと言わんばかりに面倒くさそうに問いかけに答えた。

「……んだよ」
『あれっ!ほら、偶には体動かしとかないと腕鈍っちゃうよ?』

HMPが示した先にあるのは対戦用の筐体だった。
既に誰かがスタンバイしているらしく、張り詰めた空気がこちらにも伝わってくる。
彼女のお願いを聞いて碌な事があった試しはないが、確かに其の言葉にも一利はあった。
青年はパーツ見物をやめると、筐体の方へと近づいていく。

「しゃーねぇなぁ……っつぅわけで、一丁よろしく」
『よろしくおねがいしまーすっ!』

DVNOが組み込まれた携帯端末を筺体に接続し、戦闘準備を整える。
台の上には、青年の相棒である、黒いドレスを纏った少女型のHMPがスタンバイした。
ドレスとは不釣り合いな巨大なナックル型の装備――――ワンオフ機ということもあり、見た目からしてかなり偏っていた。

/宜しくお願いします! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 21:48:26.89 ID:kh5qQkB5o<> >>318
『捉えたぞ!こんでもくらえー!!』
空の影をロックオンする、身を乗り出し右腕を向けた。
右腕下部から銀色の銃身が飛び出す。
銃口から青白い光が点ると、3点射2セット計6発の冷凍弾が放たれた。
照準は中央…牽制、あわよくば機能低下を狙った弾幕だ。
この右腕は突撃銃のように幅広い距離で機能する武器だ。

「問題は、ここを牽制で留められるかどうか…」
早くもバッテリー容量が90%。
ペース配分を誤れば地べたに這うのは此方である。

『こっちの距離に来るまでお預け…と』
見事にトラックの裏に陣取っている。
発砲後、トラックの裏に身を隠した。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:01:13.96 ID:O4Ks6wQA0<> >>319

EDENのインシグニアは、ギャラリーを騒がすに充分な力を持っていた。
建前として、前時代の犬型ロボット等の系譜に連なる『玩具』であるHMPを、
善き環境の為とはいえ、些か逸脱した方向性で使用する人種。
その実力は信頼と憧憬の、そして畏怖の対象ですら、あって――。

「えっと……、よろしくおねがいします!」
『ドーモ、嵐影です。良い試合にして行きましょう。」

しめやかに答える黒獅子。彼は嵐影と名乗った――。
ジュニア三傑が一人【高藤まつり】の愛機と同様の名前、口調。
HMP世界大会の中継を見た事があるなら、聞き覚えがあるかも知れない。
尤も、構成はシャドウニンジャどころか、カトンニンジャやフウマニンジャですら無いけれど。

しなやかな足取りで、嵐影が戦場へエントリーするとき、

《MARIKA:EDENの方、ですよね。》
《MARIKA:対戦が終わったら、少し、話をさせて下さいませんか?》

すでに筐体に繋がっていた少女の端末から、そんなメッセージが送られて来る。
然し開始カウントはすぐに始まり、返答は事後、
或いは隻語、或いは首を使ったものになるだろうか。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:04:25.79 ID:2sNt0MCSO<> >>320
『乗ってきたか』
羽を翻し、冷凍弾のうち二つを回避する。
続いて羽を大きく曲げ、体の正面――羽は高い強度を持ち、シールドと同等の働きが出来る――へともってくる。

鈍い音が響き、攻撃は弾いた……が。
『っ……しくじったか!?』
【BODYダメージ 30%】
シールドで防いだ。ダメージはほとんど防ぐ事ができた。しかし、詠んでいなかった追加の冷凍効果が羽の機能を停止させる。
『非常用バランサー――非常用着地システムを起動』
予備の羽が体を支え、大きなダメージを受けないように高度を下げていく。ただしエネルギーの消耗も激しい。

『一矢は、報いる』
落ちながら、片腕の弓矢を引く。
先程の陽動で相手の位置は捕らえている。

甲高い音をたてて、少女へと反撃の矢が放たれる。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:10:22.27 ID:ny4KRT2Lo<> >>321

青年がEDENの制服を着ているせいか、客が少し集まりだした。
ちらりと視線を送るも、気にする要素ではなかったのかすぐに視界は相手の機体を捉えた。

「おう……楽しく行こうぜ」
『リオですっ!お互いに頑張りましょう!』

全く対照的な態度のコンビ、機体も見た目で判断するならば強そうには見えなかった。
それに比べれば相手のライオン型のHMPは、その容姿から威圧感が漂っている。
なにより、黒獅子の名前、そして喋り方――――どこかで聞いたことがあるような気がする。
青年が獅子の名前に思い当たるのにそう時間はかからなかった。
しかしながら自分が見た時とはあまりに見た目が違うため、それが正解かは定かではない。

「……」

ぐっ、と拳の調子を確かめる自らの愛機を傍目に、端末に表示されたメッセージに視線を落とす。
しばしの逡巡の後、すぐに戦闘開始のカウントが刻まれ始めた。
青年は、どうせ事件もないのだしと相手の少女に向かって、小さく頷いた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:14:30.35 ID:kh5qQkB5o<> >>322
『そろそろ来るかなー?』
右の銃口をしまい、左の銃口が露になる。
右よりも銃身が巨大で…不穏である。
降りてきたので好都合、作戦を決行する。

『…ヒット…でも計算の内だし!』
今は移動に注力した。トラックとトラックの間に誘き寄せるつもりだ。
背中を撃たれてしまい、ぐらりと体勢が崩れるが…すぐさま駆け出す。

「…ふうん、あの子にしてはやるじゃない。
 問題は相手が乗るかどうか。決まれば面白い事になりそうね」
《胴体ダメージポイント40%》
《残りバッテリー残量80%》
機械音声が流れる。胴体へのダメージが表示された。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:24:28.60 ID:O4Ks6wQA0<> >>323

少女――IRCメッセージによれば「まりか」も、頷き返した。
表情は、複雑で。笑って喜ぶ程の余裕が無いようにも見える。

『(レギュレーションを踏み越える寸前の小型機よな。
  おそらくワンオフだろう。軽はずみな判断はいつにも増して許されぬ……。)』

食肉目型ゾイノイドは、大型機でも全高が低くなる傾向にある。
このレグルスハウルでさえも、地平から頭頂まで28.5cm。
それより更に二回りほど背が低い相手。
主が翻弄されなければ良いが、と、獅子が悩ましげに唸る。

《3……2……1……》

そうこうしている内に、カウントが零に近づく。
一般的なフリーバトルの慣習に沿って、ステージ決定はランダムだ。

《―――――― 0 ――――――》

刹那。
蜃気楼の如く、電脳立体が筐体の上に浮かび上がる――!!

0,4:広大な草原
1,5:無人市街地
2,6:古代ローマめいた闘技場
3,7:農場
4,8:洋館
5,9:夕焼けの河原 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:29:25.50 ID:O4Ks6wQA0<> 【広大な草原】
サバナ気候地帯を模した環境。蒼穹の元に広がる緑の海
背の低い草原が果てしなく広がり、遮蔽物はまばらに存在する木だけと言っても良い空間
ステージの北東側には川が流れていて、水中戦を行う事も不可能ではない
好き勝手に移動して邪魔なホロ・アニマルの徘徊や稀な雨をオプションで付けられるが、今回は無い <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:31:19.89 ID:2sNt0MCSO<> 『着地、成功だ』
【エネルギー消費 60%……】
「カイ、聞こえるか? 敵の武装はどちらも銃の形をしているのが見えた以上」
『……了解した』

『銃系統の武装が二つ。つまりは、接近に移れば有利になれるな』
「俺は、なんだか怪しい思うけれどな」
『しかしだ……やるからには勝たねばなるまい』
羽を縮め、相手の方へと歩き出す。その姿に、青年は短くため息を漏らした。
「真っ向勝負が好きなのもわかるけれど……危険じゃないかな」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:34:56.52 ID:kh5qQkB5o<> >>327
『こんなところにホイホイ来ちゃって良いのかなー?』
上手い様に誘い込んだつもりだ。
充填完了の左腕の擲弾銃の銃口を向ける。

『この瞬間を待っていたんだ!』
狙うは鳥型HMP…否、トラックのコンテナの後部。
山形の軌道を描いて放たれるのは、青白い砲弾。
その砲弾の弾着箇所に広範囲に及ぶ冷気の嵐が吹き付けるだろう。
コンテナに当たれば鳥型の背後で冷凍榴弾が炸裂する事になる。

《フリーズボムアクティブ。…ファイア》
「無理矢理にでも“左”を当てる。あの子らしいかな…
 でも外せば自分の逃げ場を塞ぐ、リスキーな戦い方ね」
左腕武器機械音声が流れる。
御影はDNVOの画面を眺めて傍観していた。
外した時の少女の姿を思い浮かべて…
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:37:55.05 ID:ny4KRT2Lo<> >>325

刻まれるカウント、数字が小さくなるごとに空気が静まり返る。
そして、ゼロになった瞬間、緊張ははじけ飛んだ。

「……草原か」

数あるステージの中から無差別に選ばれたのは、これといった障害物のないスタンダードなステージだった。
障害物などがあっても壊せるだけの破壊力を持つため、足場がしっかりしていれば愛機に問題はない。
さて、ただひたすらに突撃して突破するしか能がない青年のHMPに対して、黒獅子と少女はどんな動きを見せるのだろうか。

『さて……』

メモリに刻まれた情報を元に、拳を握りしめ構える。
距離が開いている現状では、格闘型HMPであるリオ、もといブリッツハンマーに攻撃手段はないといっても良かった。
あるにしても、それは弾数の限られる上に非道く使い勝手も悪く、初撃の選択肢には含まれない。
よって、リオが取るべき最初の行動は唯一つ――――接近あるのみ。


『――――いきますっ!!』


黒いドレスを纏ったHMPが、接近を開始する。
パーツに搭載された加速機能などは使用していないが、元々速度重視のパーツであるためそれなりに速い。
バッテリーが短く短期決戦用といってもいい機体のため、まどろっこしい読み合いは苦手なようだった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:49:35.86 ID:2sNt0MCSO<> >>328
「……」
主と呼ばれた青年は、一定の間隔を人差し指で刻んでいる。

羽を奪われた鳥は、大きな足音とともに走って来る。
鳥形の武器は足の大きな爪と、先程放った弓矢である。もう片腕の武器はまだ明らかになっていない。
接近で狙うのは、やはり足の爪であろう。
『何かあるとは思っていたが……っ』
相手に突っ込み、その地形と、相手の目的を理解した時には既に射程内であった。

放たれる相手の攻撃、敵のボムに直撃はしなかったが、後ろのコンテナが炸裂した。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:55:54.99 ID:O4Ks6wQA0<> >>329

草原ステージ。
障害物の概念が希薄な点では闘技場に似ているが、こちらはより奥行きがあった。
逃げるにも攻めるにも容易故に、却って難しいと言える。

「【アルギエバ】起動、照射開始!」

何時でも加速できるように身を沈めた嵐影に、命令が飛ぶ。
彼はおもむろに顎を開き、牙状の反射装置の並んだ口を剥いた。

『……御意!』

口腔奥に覗く砲身は、この機体の花形武装――『超音波砲』のものであった。
だがそこからは、爆音も、弾体も、一筋の閃光さえも飛び出す事がない。

……当然、でもある。
「視認不可能な」超音波を敵機に照射、高周波振動で加熱していく武装だ。
もし直線的な進撃を続ければ、機体は高熱を帯び、複数パーツに跨いで外装が溶け始める。
2000年代にはすでにあった溶接技術を応用した、恐ろしい兵器。

ただし、即座に重篤な損傷を受ける訳ではない。
どちらかと言えば、正面に立たせない為の牽制――と言った意味合いが強いのだろう。
また、発射中は首の振りが制限されるのも弱点だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 22:57:08.28 ID:kh5qQkB5o<> >>330
『そうだ、そうでなくちゃ…!フラットライン起動!』
――有効打でなければ近距離に居る。距離を測る為の“左”…!
補助チャージを使用し、夥しい量の蒸気が背から排出される。
次の行動の優先度を少しでも上げる、苦肉の策だ。
突如少女は、鳥形HMPに向かって弾丸のように飛び出した。

『はいだらー!!』
少し飛び上がりながら右足によるフロントキック。
ジャンプキックもといヤクザキックを繰り出す。
歩行性能の高さに比例し移動距離と判定が伸びるアクションだ。
此方はタックルよりも伸びが良いが、判定が狭い。

「ふふっ。射撃型と思わせてこういう技を仕込むのもHMPの愉しみ。
 タックル⇒ジャンプキックなんて芸当も良いですね…接近戦が捗ります」
不意を付く形。通れば姿勢を崩せそうだが、現実は…
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:10:26.10 ID:2sNt0MCSO<> >>332
攻撃によって起きた爆風の中、響く機械音。
『防ぐつもりで居たが……流石に、痛かったぞ』
【BODY ダメージ90% ウイング大破...】
【HEAD ダメージ60%...】
シールドの羽を犠牲にして、ダメージは防ぎきったようだ。
それでも、ダメージは計り知れない。

黒焦げになった体で、炎の中に立っているのは、先程とは形が変わった人型のHMP。
スザク型。鳥と人型の可変HMPである。
両腕を十字に組んで、相手のキックを弾く。
『しかし……ここからは、俺の間合いだ!!』

右腕を伸ばし、近接武器である赤色の棒を引き抜く。
そのまま足を軸にし、反撃の棒を振り回した。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:14:01.29 ID:ny4KRT2Lo<> >>331

疾駆する機体、其の距離はどんどん近づいていく。
しかし、何かがおかしい――――相手が、動こうとしないのだ。
黒き獅子は、何かを待つように口を開けたまま、不気味なまでに動かない。

《機体状態異常:オーバーヒート》
《胴体損傷 ダメージ10%》

DVNOに表示される愛機の状態、そしてみるみる上がっていく胴体のダメージポイント。
相手が何かをしてくるのはわかっていた。
しかし読み間違えた――――待っているのではない、既に攻撃は始まっていたのだ。
視認が出来ない攻撃、厄介極まりない。青年は、ダメージが積み重なる前に愛機に呼びかける。

「……リオ、ちとやべぇぞ」

HMP自身も、ドレスが異常な熱を持ち、溶け出す寸前であることをようやく理解し。
すぐさま右側に飛び退き、相手の砲撃の直線上から外れる。
とはいえ熱を持った身体は多少なり処理に遅延を及ぼす。しょっぱなからやらかしたというわけだ。

「……ま、全然いけるよな?」
『もちろん――――むしろ、機体が丁度温まって良い感じ!』

青年の呼びかけに明るく答え、再び相手を見る。
とりあえず相手の真正面、あの口の向いている方向にさえいなければ大丈夫なようだ。
それに、徐々にダメージが上がっていったことから見えない攻撃に即効性はない。
直進せずに突っ込んでいけば、接近はおそらく可能――――そう判断し、リオは疾走を開始する。
今度は直線的な動きてはなく、身体を左右に動かしながら、だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:24:37.93 ID:kh5qQkB5o<> >>333
『ぐあぁぁぁーっ!!』
受ける体制が取れない。右腕に直撃する。
鈍い音が辺りに響く。すると右腕の外装の色が黒く染まっていった。

《右腕パーツダメージポイント100% 機能停止》
《胴体40%、バッテリー40%…》
「ふむ…主武器が壊されてしまいましたか…
 でも、これで相手は飛べなくなりました。どうにか距離が開けば…」
右腕が破壊されてしまった。その上バッテリー切れが迫る。
胴体へのダメージも気掛かりだ。

『まだまだぁ…吹き飛べぇぇ――!!』
気力を振り絞り、次は破損した右肩を前にしタックルを繰り出す。
25cmの体が弾丸のように放たれる。
2番目のアクション。歩行性能に応じて踏み込みが長くなる。
相手の体勢を崩すのが目的だ。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:36:33.38 ID:O4Ks6wQA0<> >>334

流石に状況を把握し、回避してくるらしい。
まりかは嵐影のカメラ視界と同期したDVNOの画面を睨んでいた。

引き撃ち合戦に持ち込まないと言う事は、敵機が格闘型なのは確定的に明らか。
機動性についても、単純にアルギエバを吐くだけでは振り切られる位はある。
……従姉妹であれば、更に多くの情報量を引き出せるのだろうが。

――そういえば、このフィールドの足元……、『 草 』?

「嵐影、アルギエバ再度照射を!」
『んん……御意!』

画面上に浮かぶ相棒の視界のある一点をタッチし、下す指令。
少しの怪訝さがあって、しかし、すぐに意図を察した嵐影は、
リオそのものより、幾らか自身に寄った大地へ――照射すれば。

瞬く間に熱を帯びた乾季の草絨毯は、発火。
草の低さと微妙な間隔のため、火の海を作る程には至らないが、
着弾地点の周辺には、悟りを目指す為の苦行めいた炎の道が生まれるだろう。
この効果をもたらすにあたっての消費は、最小限だ。

無論、心頭滅却した所で涼しくなる事などない。
炎に捲かれぬよう、何歩ずつか退いていく黒獅子。
彼我は縮んできているのだが、これを前にして無傷を求めるなら、リオには跳躍か大きな迂回が求められる。
そして待ち構える獅子は、格闘の心得を持ったゾイノイド――。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:40:01.53 ID:2sNt0MCSO<> >>335
《バッテリー稼働率60%...》
《BODYダメージ90% ウイング大破 HEADダメージ60%...》
『このまま、押し切る!!』
相手の悲鳴に、手応えを感じた様子である。
棒を回し、それを両腕に構えた。

「確かに、武器を持っている利はあるけれどなあ」
青年は浮かない表情をしていた。

タックルで飛び込んでくる相手に、カウンターを食らわせようとしたが……
『……ッ』
九割近い損壊を受けたボディが、突然悲鳴をあげた。
思うように動かない体に、相手の一撃を内こまれた。
《BODY ダメージ100%... 最低限のシステムのみで稼働します。 LEFT ダメージ50%...》
『……はあっ!!』
崩れた体制をバランサーが治すと、以前ダメージを受けていない右腕で、相手への殴りかえしを狙った。


HMP達の殴り合いに、青年は「うわぁ……」と、思わず言葉を漏らしている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:57:07.73 ID:kh5qQkB5o<> >>337
『えっ…なんで!?…そん…な…』
アクションのせいで体勢が取れない。
痛恨の一撃。頭部に重い一撃を受けてしまった。
少女の体がコンテナに強く打ち付けられた。

『なんてざまだ…頭が…くらくらする…
 FCSが…イカれて…飛んでる…?…私の腕が…鈍る…?』
夥しい量のノイズが視界に入った後、カメラがシャットダウンする。

《頭部被弾、ダメージポイント98
 FCSに異常発生、レーダー破損、カメラ機能ロスト》
《右腕大破、胴体40、バッテリー10%…活動限界まで残り…》
「これは面倒な事になりました。
 それにしても、あの狙って当てるのは難しい部位を…」
御影は思わず頭を抱えた。

「オーダー緊急退避…サレンダー!!」
御影は、何も躊躇いなく…降参の意思を示した。
ここでAIに大きな損害が出ては困る。

『これは…非常停止命令!?…まだ、やれる…のに…そんな…』
少女は突如、人形師の糸が切れたように前かがみに倒れた。
虚ろな目をして、そのまま動かなくなった…

《あなたは敗北しました。フリーバトルを終了します…》
照月側の降参による敗北で幕を下ろした。
しかし、あのまま戦えば何が起きるか判らない。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/07/31(火) 23:57:14.59 ID:ny4KRT2Lo<> >>336

視認できない相手の武装を警戒しながら近づいていく。
が、口の方向を見るからに狙っているのはリオ本体ではなく――――。

『くっ……!』

ステージが草原だということが災いした。目の前には、燃え盛る火炎の道。
迂回した場合、どちらか左右と方向が限られるため、先手を打たれるのは確実。
跳躍した場合、フライメックではないリオは空中を自在に飛ぶことはできず、見えない砲撃か、または何らかの攻撃がある可能性が高い。
ならば、どうする。炎の道を前にして、リオは一時停止を余儀なくされた。

『マスター……』

青年に指示を仰ぐリオ――――青年はほんの一瞬考え、悩み、そして結論を出した。
小難しいことを考えるのは苦手だ。それは、リオだって同じである。
故に、自分たちの取る行動はたった一つしかない。

「リオ――――いけるな?」

青年の問いかけに、リオはすぐさま頷き返すと、燃える炎を睨みつける。
バッテリーを食うためあまり行いたくなかったが、排熱のため体中から煙が吹き出した。
これで、ほんの少しだが身体は冷えた――――リオは、一歩前に踏み出すと、一気に駆け出す。
迂回?跳躍?――――否、二人が選んだのは、炎の道を突っ切り、正面突破をする!!

『はぁっ――――!!」

《ブラックスピード起動:...START》
《ジェットブースター起動:...START》

脚部パーツ、ブラックスピード。長時間の稼働は不可能だが、少しのあいだのみ搭載されたジェット噴射で直線的に加速する武装。
左腕パーツ、ジェットブースター。推進力を生み出すジェットが搭載されており、燃費は悪いが出力を高めれば驚異的な突破力を得られる。
二つの同時起動――――漆黒のドレスを纏った機体が、驚異的な加速で炎の道に突撃する。

《頭部損傷:ダメージポイント10%》
《胴体損傷:ダメージポイント35%》
《左腕損傷:ダメージポイント25%》
《右腕損傷:ダメージポイント10%》
《脚部損傷:ダメージポイント25%》

炎の熱により、みるみるダメージがかさんでいく。
だが、さすがはEDENのワンオフ機といったところだろう。その圧倒的加速力で距離はどんどん縮まっていく。
そして、すぐさま炎の道は終わりを告げ――――その加速を利用し、左拳の巨大なナックル型武装で、リオは黒獅子に殴りかかるッ!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 00:06:25.83 ID:VBIw83lSO<> >>338
「全く……口調と態度は大物の癖に、どうして戦い方はこんなのなんだよ」
勝者になっても、非常に不満げであった。
それはボックスの中だけで、外にでればまた当たり障りのない表情を作る。

『……主、よ』
「まだまだだよ、全く。データは拾った、後で反省会だからな!」
言葉をいくつかHMPと交わし、対戦相手の方へと。

「お疲れ様でした。
 大丈夫ですか? あんな試合でも、何かのためになれば……」
『……時に主よ……時間は大丈夫なのか?』
傷だらけのパーツを抱えて話すHMP。

「――ッ。しまった、挨拶はまた会うことがあればその時にさせてもらいます。
 すみません!」
外へ駆け出して行ってしまった。


//日にちも変わりましたし、時間なのでこれで。
//お疲れ様でした。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 00:14:31.34 ID:pZ36F1sXo<> >>340
「此方は悪い当たり方をした…と言った所でしょうか」
頭部の帽子を外し、頭部のカバーをあけAIチップを取り出す。
AIチップをDVNOに取り込ませ、メンテナンスモードを開く。
ゴーストデータは全て正常のようだ。

《ゆかりんなんで!なんで降参なんかしたの!》
御影のDVNOから少女と同じ声が響き渡る。

「あなたの痛がる姿と、悔しそうに倒れる姿で、お腹いっぱい…かな」
しかし…本来なら微笑むはずが、非常に暗い表情を浮かべていた。
この時のマスターの表情は、HMPのゴーストには見えてなく…

《…この鬼!悪魔!<ぷちっ>》
DVNOを待機状態にした。オーダー口封じ。

「では、また機会があったらいつでも付き合います。
 実戦経験を重ねれば、この子も強くなれますし…」
大破寸前の少女の身体をジェラルミンケースの中に入れた。
この時は珍しく、縁は生気の感じられる眼をしていた…。

//お疲れ様です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 00:17:30.04 ID:gSeWRsdo0<> >>339

大気が灼け、風が溶けるような、凄まじいジェットの音が響く。
正面だ、と。嵐影とその二代目<}スターは、殆ど同時に声を上げた。

「肉を斬らせる……嵐影!」

だが彼らとて、全くの無策と言う訳ではない。
ライトパーツ【ズブラ】のサーベルを起動する仮想ボタンを、まりかは咄嗟に押した。
コンソール上に光が踊り、エネルギー消費速度が数倍に高まる。

その変化に呼応して戦闘空間で起きた変化は、レーザーブレードパーツの展開。
胴部に畳まれていた刃は翼の如く展開され、閃光を束ねて輝く。

『御意! ――フンハーッ!!』

そして嵐影は、その姿を裏切る事無く――、 跳ぶ
激突の直前、禍々しいシャウトを上げて……!

挙動は殆ど、猫が敵を蹴り上げる時のそれと同じだった。
身の発条(ばね)を一気に解き放ち、宙で躯を捻って、後ろ足を振るう。
太陽よ、見るが良い!その殺戮舞踏に連動し、まばゆき三日月状の軌跡を描いて走る光の剣よ!!


……だが成否に関わらず、その代償は軽かったとはいえない。

《胴部損傷率七割な》《尾部との連動が不順交際》《壊れてないのが不思議》《避けたい》
と言った片言気味の赤文字が、何個も、何度も、DNVOに大写しとなる。
ぐぅ、と歯を噛むまりかを見れば、その損傷の重い事が良く分かるだろう。

やむを得ず胴で受けたが、四肢一体型のレグルスでは受ける害が大きかったのだ。想定外に。
もし軽量〜標準サイズのゾイノイドなら、一息に胴部を粉砕されていただろう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 00:19:01.18 ID:gSeWRsdo0<> /最終行コピペ忘れ!
吹き飛ばされた事で半ば仕切り直しの体を為しているが、向き直る獅子には先ほどの力はない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 00:36:14.42 ID:lfupdkx6o<> >>342

轟音とともに敵の目の前に躍り出るリオ。
炎の中を、最大出力の武装で突っ切ったため各パーツがオーバーヒート寸前だった。
しかし止まらない。止まる訳にはいかない。

『うおおおぉおぉぉぉぉ!!!』

衝突――――突撃することだけを考え、その通りに実行したリオが、回避行動を取れるはずもなく。
黒獅子の振るった後ろ足はほぼ直撃、嫌な音がリオと青年の耳に届く。
だが、リオの拳も直撃とはいえないが、間違いなく相手にダメージを与えた。

《左腕損傷:ダメージポイント100%――――機能を停止します》
《胴部損傷:ダメージポイント80%――――レッドゾーン突入》
《脚部損傷:ダメージポイント50%》
《バッテリー残量:30%》

左腕のジェットブースターは完全に大破、ナックルの中にある本来の腕が露出しもはや使用は不可能だ。
かろうじて頭部パーツへのダメージは最小限に抑えたものの、他のダメージがあまりに大きすぎる。
もはやリオに残る使用可能な武装は唯一つ、右腕のパーツであるジャガーノートのみだった。

(あまりに食らいすぎたな……出せて一発、ってところか)

右腕の武装、ジャガーノートは一見普通の人間型の腕パーツ。
しかしその中に組み込まれた機構は自らの体を破壊しかねない程の高威力の衝撃を生み出す出力装置だ。
だが威力はピカ一だが、その分バッテリーも食うしその威力に耐え切れる体力が必要となる。
現在のリオはそのどちらもが不足しており、本来ならば限界三発まで撃てるそれも、今では一発が限界だろう。
つまり、この一発で決められなければリオの負け、ということになる。

「……リオ、やるぞ」
『はいっ、マスター!』

主の短い呼びかけに、体が損傷しているにも関わらず明るく、そして主同様に短く、簡潔に返事をする。
衝突の後、なんとか態勢を立て直すとリオは再び構え直した。
先ほどのように大きな距離は開いていない――――勝機はある。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 00:55:46.82 ID:gSeWRsdo0<> >>344

《活力残量残り6割》《尾部の加速機構が回復不能で》

一方の嵐影は、まだ幾ばくかの余裕を残している形となる。
回避にも迎撃にも無理があるなら、後者に全力を尽くせと迷いのない采配。
まだ未熟ではあるが、まりかには確かに、従姉妹と同じルーツがあるらしい。

だが勝利が決定したわけでは無かった。
音波砲搭載の為に基礎性能が凡庸になっている頭部は、装甲もまたゾイノイド中型機レベル。
当てられなければ勝てるが、当てられれば終わりだ。

『おなごとはいえ、潔くハラキリせぬか。まだ隠し玉があると見えるな。』
「えぇっ、ハラキリ!?」
『りちゅある・すーさいど、と言うべきでしたかな?』
「そういう問題じゃないよ、嵐影。……もう、熱であんたまで頭ぼけてるみたいだから、気を付けて?」
『…………御意。』

バッテリー残量で大きく差をつけている。
頭を向けないようにして全力で逃げ続ければ、反則負けを誘発できるかも知れぬ。
……だがそれは、彼女にとって大事な人の戦闘哲学を穢す行い。
それすなわち、徹底破壊による勝利――!!

『フンハーッ!!』

砲口が露出した。沈黙の悪魔が、不可視聴の振動波が、同じ直線上に立つリオに降り注ぐ。
今の損傷状態でこれ以上熱波を受ければ、あと一発さえ怪しくなる可能性がある。
つまり――最後の激突への誘いだと、解釈されもするものだった。

もしリオが動き出せば、黒獅子も合わせるように動き始めるだろう。
おお……それは、直線的突撃のモーションであった!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 01:15:12.01 ID:lfupdkx6o<> >>345

リオに比べれば黒獅子のダメージはまだ軽い方と言えた。
要因は接近するまでにダメージを受けすぎたこと。障害物がないのが、逆に仇になった。
遠距離攻撃の出来る武装を一つでもつけていれば、少しはまともな状態で黒獅子の前に立てたかもしれない。

「……ま、しゃーねーわな。俺達に出来るのはいつだって一つだしよ」
『近づいてぶん殴る!ですよねマスター!」

正面突破による敵機撃破、彼らが勝利を得るにあたって、無傷だということは決してない。
だから、たとえ左腕が壊れ、胴体も停止寸前だとしても、そんなのはいつも通りなのだ。
傷ついてでも近づいてぶん殴り、勝利をもぎ取る――――それが、リオの戦い方であり青年の正義の在り方だ。

「だから行くぜ――――」

振動波、リオは身をかがめ、初波のみを躱すと、再び進撃を開始する。
あわせて動き出す黒獅子、自分と同じ、完全に真っ向から激突するであろうルートを進んでくる。
面白い、とリオは、そして青年は思わず片頬を吊り上げ、楽しそうに笑った。
真正面からの激突。なんて楽しいのだろう。でも、だからこそ楽しいまま、勝利したい。
リオの目に、熱き闘志が燃え始める――――右腕に組み込まれたパーツが、音を立てて動き出す。

《ジャガーノート起動:...START》

ギリギリ一発。外せば負け。当てたとしても、リオのバッテリーと機体が持つかどうかはもはや賭け。
黒獅子はあの巨体、おそらくバッテリーもまだあり、逃げまわり熱線を撃ち続ければ簡単に勝利出来たはずだろう。
それでも、こうして向かってきてくれている――――ならば、自分はそれに応えなくてはいけない。
至高の一撃を以って、相手を砕かねばいけない――――ッ!!

『いきますっ、至高の一撃――――』

それは、交錯する瞬間に放たれるだろう。
一発の拳の威力を最高にまで高める、衝撃出力装置――――。


「『ジャガーノート――――ッッッ!!!』」


リオに、回避をするという考えは一切ない。
故に、攻撃が外れ、黒獅子の攻撃が運良く外れでもしない限り、リオは敗北を掴むだろう。
回避をとる気もなく、ただ直進してくる相手――――これほど、攻撃の当てやすい敵がいるだろうか。
だが、放たれた一撃は決して軽いものではない。勝負は、一瞬だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 01:39:09.09 ID:gSeWRsdo0<> >>346

『殺!殺!』

裂帛の気合が染み渡った叫び。足は止まらぬ。
先ほどのライト【ズブラ】に加え、同性能のレフト【アルテルフ】までが刃鳴開いた。
英雄のマントめいて刃は翻り、いよいよ激突の時が来る――!!

汗の浮いた顔で見つめるまりかの脳裏に、昨日の光景が蘇ってきた。
相棒と敵の特性を理解していないがゆえの無謀な攻め、詰めの甘さが、敗北を招いた瞬間が。

『フンハァァッ……!!』

その暗雲を裂いて、更にブレードが回転する。
限界まで引き出された光芒の切っ先が指す先は――前方。

「――――や ら せ る か ぁぁぁぁぁ ッ ッ !!!」

ブレードの形成には、一部HMPが使用するバリア技術が応用されている。
また単純に刀身が前方に向けられた事により、インパクトの瞬間が僅かに早期化!
疾駆する獅子は、拳がその身に届くのよりコンマ数秒早く、リオを貫かんとするだろう。

【《頭部損傷率9割五分な!》《胴体大破!移動能力が喪失!》《活力八分:動いたらダメ》《サヨナラします?》】

流星の如くブチ抜く一撃は、いよいよ嵐影の限界をまりかに見せる。
ブレード基部が衝撃で折れて、胴体と一体の四肢はもう動かしようがない。
煙を吹きながら眼光を放ち続ける頭部と僅かに残ったENが無ければ、
もはや、撃墜されているのと同じと言う外無い状態――。

負ける。
相手が、わずかでも耐えていれば。
――戦場に刮目せねばならぬのに、祈るように目を閉じる事を、止められなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 02:02:41.46 ID:lfupdkx6o<> >>347

激突、それはあまりに一瞬の出来事だった。
ステージ中に響く爆音、空気すら振動させるそれは、両者のぶつかり合いの激しさを表していた。
度重なるダメージ、オーバーヒート寸前の機体に、残り少ないバッテリー残量。
そんな中穿たれた一撃は、黒獅子になんとか当たり、そして――――。

《脚部損傷:90%――――レッドゾーン突入》
《右腕損傷:100%――――機能を停止します》
《胴体損傷:100%――――機能を停止します》
《頭部損傷:97%――――レッドゾーン突入》

リオの一撃を受けてなお、鋭い眼光を向ける黒獅子。
その視線にあるのは――――排熱の為煙を吹き出す、少女型の機体が立つ姿だ。
排熱が終わり、徐々に煙が薄れていく。
そして、もはやボロ布同然となったドレスを纏う、リオの姿が顕になった。

「――――……」


《バッテリー残量:0%――――HMPの行動を停止します》
《戦闘終了:敗北》

DVNOに表示された文字、それは、リオの敗北を表すものだった。
あのまま衝突すれば、もしかすれば勝てたかもしれない。
しかし相手が刀身を前方に向けたことにより、相手の攻撃が予想より早くリオの体に到達し、結果としてほぼすべてのパーツを大破寸前まで持っていかれた。
完全なる負けだった。幾らかパーツの見直しやら、腕を磨き直したりしなければいけない。
バッテリーが切れてなお倒れなかった相棒のためにも、今以上に強くならなければいけない。
戦闘が終了したことにより、ステージを形成していた電脳立体が消え、元の殺風景へと姿を変えていく。
DVNOと筐体の接続を切り、ボロボロになった愛機を壊れ物を扱うように慎重に抱き上げた。

『ま、すたー……』

バッテリーが予備電源に切り替わったのか、か細い声でリオは青年に声を掛ける。
青年は、ため息をつくと「寝とけ」の一言と共に充電機能のあるケースへとリオを入れた。

「……さんきゅー。俺にも、こいつにとっても、有意義な戦いになった。ちと、熱くなりすぎたけどな」
「けどまー、これで俺が弱いってことも再確認できたし、もっかい鍛え直す必要があることもわかった」

EDENの人間としては、一般人に戦闘で負けるのはかなりヤバい。
そこそこの実績があるためそれなりに高い立場にいる青年だが、ファイターとしての腕は昔より完全に鈍ったらしい。
年下の女の子に負けた自分に、青年はため息を禁じ得なかった。

「……んで、だ。確か、話があるんだったな」

ここではギャラリーの目もあるし、そこそこ人が集まっているため話すにも話せない。
少女はどうやら何か話したいことがあるようだし、一旦外に出る必要がありそうだった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 02:22:12.79 ID:gSeWRsdo0<> >>348

一見して勝敗が分からない程にボロボロになった二者。
だからこそ、それが決した時に、見物人のどよめきは爆発する。
歓声、というよりは、驚いて口が塞がらないと言った類の。
EDEN職員のワンオフ機を、近所の少女が市販機でなんとか打ち倒したのだから――。

『おめでとう御座います。我が主よ……グワーッ!』
「嵐影、とりあえず戻ろう?」

重大な損傷を受けた嵐影を此方もケースの中に戻し、
「こちらこそ、ありがとうございました。」と、変に裏返った声を返し、カクカクと一礼する。

ああ、もう、恥ずかしいではないか。あんな叫びを上げてしまったではないか、と。
思考が追い付くのは、いつだってずぅっと後の事だ。
それを言えば、昨日「お手柔らかに」と言った後挑発したのも、少女は自分で何でだか分からない。
そして、こうして勝てたことにも……ちょっと現実感がなかった。

「はっ、はい。そのとおりであります!
 ではちょっと、お外に出ましょう。立ち話で済むと思うので。」

……嗚呼、恥の上塗りである。まあ、それはさておき。
足早に店から飛び出していく少女を追いかけると、少し細い路地に出る。
青年は、此処で幾つかの事を聞く事になる。

彼女のフルネームは「高藤まりか」であること。
あの行方不明となったジュニア三傑の高藤まつりの従姉妹であり、嵐影は本人であること。

そして。慕っていた従姉妹が不可解に消えた事件には、
有能なファイターとHMPを悪用する目論見が関わっているのではないかという憶測――。
一番手の相棒であるHMPが帰ってきていないのが、何よりの証拠だと主張して。
実際穴だらけの論理だが、勢いには確かなものがあり、

「……もし、何か情報が入ったら、あたしにも教えて欲しいんです。
 まつりお姉さんについての事だったら、特に。」

最後には、そんな無茶な申し付けまで。
無論、どこまで真剣に取り合うかは青年の自由(組織的には不自由?)である。
断れば、今日の所は引き下がるし、応じれば連絡先を交換して帰る事だろう。

/ちょっと時間が押しているので巻き気味にして、自分からのレスはこれで最後にしようと思います
/楽しいロールありがとうございました!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 02:35:04.88 ID:lfupdkx6o<> >>349

少女が店を飛び出してしまったため、青年は慌てて追いかけ細い路地に入っていく。
こんなところを誰かに見られて、なにか勘違いされて逮捕されるのも嫌なため、しっかり周りに人がいないことは確認した。
さて、ととりあえず他の人間に話を聞かれる心配もない。
青年は、少女の話に耳を傾けることにした。

「……」

どうやら戦闘前に思い出した相手の機体の名前は正解だったらしい。
あまりに見た目が違うため半信半疑だったが、青年の記憶力も中々に捨てたものではないようだ。
それは置いといて。「高藤まつり」という名は青年でもしっかり聞き覚えがあった。
自分でも手が届かないようなファイターの中でもトップクラスの人間である。
最近話題を聞かないとは思っていたが、消失していたとは知らなかった。

「あー……流石にEDENの情報を横流しにするわけにゃいかねーよな」
「ま、個人的に調べといてやる。なにかわかったら連絡するわ」

別に調べなくても青年は何の損もないのだが、そのまま放っておくというのもどこか可哀想で。
お人好しな青年は、一応調べておくと少女に答えてしまった。
テキトーに連絡先を交換し、少女を見送ると青年は深くため息をつく。

「はぁ……とりあえず、リオの修理しねーとな……」

ついでに、新しい武器なんかも考えておいたほうがいいだろう。
昔、EDENに入りたての頃なんかはそれなりに強かったものの、立場が上がるとデスクワークなども増え。
結果的に、とてつもなく腕が落ちてしまったことも確かだ。
これでは頑張ってくれている愛機に申し訳が立たないし、大会なんかにでて腕を磨かねば、と。
色々やることが増え、めんどくせぇと心のなかで呟きながら、青年もこの場を後にした。

/ういっす!絡みお疲れ様でした! <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 19:05:34.29 ID:eiYXARjPo<> ここはおもちゃ屋「グリーンエイジ」
割と都会な場所にあるため交通の便がよく、平日でもそれなりに活気がある店である
そんな店のショー・ウインドウの前で何やら青年が作業をしていた
どうやら張り紙を貼っているようだ

『ついに来たッ!全国大会予選!
グリーンエイジでは大会に出場するチームのメンバーを募集しています
常連さんも初めてくる人もガチ勢もぜひ、ご連絡ください』

と、書かれた張り紙を綺麗に貼ると青年はゆっくり店にもどった
それにしても今日は珍しく客が居ない
理由はおそらく隣のデパートでHMPの大会が開かれているからだろう
月に一度こういう日があるのだが、正直暇だ
ドミニカ人でドレッドヘアーと2mを超える身長が自慢の店長は、奥の事務室で寝ている
まあ、それはいつもの事なのだが <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 19:13:39.76 ID:iDBEtbYho<> >>351
そんながらんどうの店に珍しく人がやってくる。
デパートで大会を行っているというのに来るとは何者ぞ、と言ったところだが
その背丈はドアの取ってと同じ程度の高さしかないと思いのほか小柄。
店内のライトで見えた顔を見れば子供であることがわかるだろう

「やっぱ空いてんじゃん」
ショートヘアで白いパーカーを羽織った男の子は手に持ったPDAに向かって話しかける

『おお!さすがにレジ10ふんマちとかチョットなー』
PDA側からそれに対する言葉が返ってきた、この子も例に漏らさずファイターでパートナーと会話をしているということか
内容から大会もあってHMPコーナーのレジが10分も待つのが嫌で逃げてきたのだろう。 <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 19:23:37.83 ID:eiYXARjPo<> >>352
「いらっしゃいませー」

事務的だが優しい声で挨拶をする
まさかこんな時間に客が来るとは、しかも見たところファイターの様だ
なんだか静かな店内で実質二人と言うのも気まずい、少し話しかけてみよう

「おや、君ここは初めて?なんか欲しいパーツがあったら言ってくれよ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 19:36:20.86 ID:iDBEtbYho<> >>353
「こんにちは」
『マイドー(?)』
きょろきょろと店内を眺めていた少年はかけられた挨拶につられて返事をする、HMPのAIが間違ったことを覚えているのか返事がおかしい
店内を見回すのをやめてレジに立つ羽生のほうへと駆け寄ってきた

「うん、お母さんの買い物に付いて来たんだ。グリップを探してるんだけど店員さんどこにあるか分かる?」
そういって手に持ったPDAを見せるためずいと前に出した
DVNOはケータイのアプリでありPDA、所謂スマートフォンに対応したものも存在している。
その場合スマートフォン特有のワイドな画面を活かす為に横にして使用する人が多い
だが横もちは持ちづらいし片手で保持はしづらい!そこでPDAに取り付けられるグリップが発売されたという。

この子の場合は年齢が小学生か中学生程度、小さな手で横もちにするにはPDA側が大きすぎるのだろう。 <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 19:55:31.52 ID:eiYXARjPo<> >>354
「あーグリップねー。あるよ。もちろん」

ちょっと待ってて、と言い残して羽生は店の奥に行った
少しして戻ってきた羽生の手には何種類かのグリップが握られていた

「これがリーホーク社のグリップ。マグカップみたいに取っ手が付いているんだ
それでこれがエイティーキッズ社のグリップ。太めでこれが君の手にはピッタリかも
あとこれがフランチ社のグリップ。デザインは抜群だよ」

商品を紹介しながら近くの机に置いていく
どのグリップもそれなりに知名度も信頼もあるメーカーだ

「あ、それとさ。選び終わったらでいいけど、バトルしない?時間あればだけど・・・」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 20:08:06.56 ID:iDBEtbYho<> >>355
並べられたグリップを見下ろし、説明に対してへーと感嘆詞を漏らす、存在は知っていたがメーカーや種類などは知らなかったらしい
説明された順番に手にとって握り心地を確認していくが……

「これが1番軽いや」
一周し最初に手に取ったリーホーク社製のものを手に取った。
しかし店員のある一言を聴くや否や手に持っていたグリップを元に戻して食い付いてきた

「バトル!いいぜやろう!」
グリップの購入は後回しだと言わんばかりに駆け足で台の元へ向かってゆく。
腰からぶら下げていたホルスターの中から引き抜かれたのは青い人型HMP
ショップ店員ならばそれがどんなものかもすぐに分かるはずだ。
限定モデル「スチールセイリオス」……当時としてホイールの付いたレッグという衝撃のパーツを搭載し
非常に珍しい経緯でヒューボットに分類されたなど逸話も多いマシンだった

「フィールドはどうする?あ、俺が勝ったグリップ代まけてよ!」
ほざきました <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 20:20:20.44 ID:eiYXARjPo<> >>356
「グリップ代かあ・・・それなら負けられないな」

ふふふ、と笑みを浮かべながらHMPをセットする
羽生の機体はハートフルヒーロー
ヒーローシリーズの中でも最もバランスのとれたHMPだ

(しっかしこんなところでスチールセイリオスが生で見られるなんて、ちょっと躊躇しちゃうかな
あの時はまだここで働いてなかったから買えなかったんだよね・・・)

「あ、フィールドは市街地にしようか。こっちも店の売り上げがかかってるしね
さ、始めよう!」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 20:34:50.72 ID:iDBEtbYho<> >>357
対面するように立つお互いのHMPに光がともると同時に、何の特色もなかった台に景色が走っていく。
それは下からせり出るように立体を生み出し―――

『おしきた!デバンってヤツだな!!』

いつしか外灯と電柱が立ち並び道路脇の歩道には背の低い店舗が列を成す
見回せば頭ひとつ飛びぬけた高層ビルまで分かる、市街地のフィールドへと生まれ変わったのだ

「相手はヒーロータイプ、ガトリング持ち……!」
拓海もセイリオスも見た目から相手のHMPの性能を想像する。
弾幕勝負になるとガトリングを搭載したあちらのほうが有利、となると……
脚部につけられたホイールが高速回転を始め、路面との接触による煙を放ちながら動き出した
その動きは敵に向かって突っ込む動作、ボディを揺らして重心を左右に入れ替えながら迫ってくる。

「イクぜ!」
左腕のシールドを構つつ右腕のバレルランスを敵HMPにまっすぐ伸ばしたそれは騎兵の突撃のごとし
カメラ内に収まるその姿へ接近しながら、ランス先端の銃口からライフル弾を放つ! <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 20:53:48.30 ID:eiYXARjPo<> 相手は砂煙を纏って突撃してきた、それはよい作戦だ
しかしヒートのヘッドにはレーダーが内蔵してある
その為砂煙程度では身を隠すことは不可能
逃げながらガトリングでも十分に優位にたてるがそれは面白くない
やれるならトコトン相手の得意な土俵で戦える!
それがオールラウンダーの醍醐味の一つではないのか!

『おらっ!』

脚部からブースターを噴射しながらのチェーンソーによる斬撃
当然弾丸の攻撃は受けることになるがブースターの威力で相殺される為吹っ飛ばされることはない
しかし問題はダメージだ
予想以上に当たりどころが悪かった。ツいてない

《ヘッド、残り62%です》 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 21:07:59.97 ID:iDBEtbYho<> 煙を抜けたのはセイリオス側の銃弾だけではなかった、敵HMPは煙ごとその左腕で切り裂いてきたではないか
いまだ残る煙を振り払うような金属が擦れ合いぶつかり合う音と火花が道路の中心に現れる

『ヌギギギギ・・・!!』
前に出していた左腕のシールドが役に立った、打ち下ろされたチェーンソーを受け止めていた。
だがシールドは回転する刃に飲まれ表面がガリガリと削られていく

《L.ARM:DAMAGE―――11%...12%...13%...》
DVNOに表示されているダメージ率はどんどん上がってゆく、ガードを抜けるのも時間の問題……!
突如その肉薄した状態でスチールセイリオスの背中にある2つのスラスターが肩腰に前にせり出てくる。
その真ん中をくりぬくように開いた穴は真っ直ぐ羽生のHMPを捉えていた
スラスターの中心あるシリンダーが回転を始め、そのうち1つの部分で止まる。
穴の奥には何かがきらりと輝いていた、この状況は―――――

『ハナれやがれ!!カードリッジロード・シュート!!』
その掛け声とともに発砲炎を散らしながら至近距離で薄く黄金に輝く銃弾が銃弾打ち放たれる <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 21:25:02.68 ID:eiYXARjPo<> >>360
『ぐへっ』

間抜けな声を出して吹き飛ぶヒート
二、三度地面に勢いよく叩きつけられてからむくりと立ち上がる

「ボディ残り48%。右アーム残り52%。不利だね」
『上等っ!劣勢でこそヒーローは燃え上がるもんだぜ。それに・・・』

余裕をこいているが全く根拠がないわけではない
今立ち上がった位置はちょうど飛び道具の範囲内

「ヒート、あれやろう」

そう羽生がつぶやくとヒートは無言でチェーンソーをスチールセイリオスへ向けて構える

『どんッ!』

改造されていたチェーンソーの刃が勢いよく弾丸のように発射する
同時にヒートもスチールセイリオスへ向って走り出す
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 21:42:10.51 ID:iDBEtbYho<> >>361
『オッシャどけたぜ!』

「レフトダメージ29%……守ってこれだから直撃だったらぶった切られてたかも」
どうだと勝ち誇っているガブルに対し拓海はといえば肝を冷やしていた
酷い傷跡が残ったシールドは抜かれるまでギリギリといった風だ
だがあちらのダメージは全身に回っている、特に最初のヘッドへの命中はクリティカルヒット

『コッチがユウリなのはかわらねぇぜ!』


「来るぞ、下がるか?」

体勢を立て直したヒーロータイプが構えなおしてきた
なにやら策があるらしい、どうするかをパートナーに尋ねると……

『シネぇよ!!』
予想通りの返答とともに最初と同じポーズ
あちらがそう来るならこちらもこうする、ノリがいいやつだ

ヒーローが駆け出すと同時にこちらも地面と触れ合うホイールが激しく回転、飛び出してきた
突撃に対しこちらも突撃、ぶつけ合いを再び行うということ

『ケンセイのつもりか!?』
さすがに直線的な軌道のチェーンソーには当たらない、重心を右に倒しチェーンソーとすれ違うように抜けながら
向かってくるヒーローに対して伸ばしたランスで迎え撃たんと……!! <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 21:56:24.84 ID:eiYXARjPo<> 「ここでっ!」

スチールセイリオスの手間で突然で真横へ飛ぶヒート
そのままチェーンソーの刃を素手で捕え、バスケットボールの背面パスの様な形で投げつける
平日の午前など客の居ない頃に練習したトリックプレー・・・実際成功確率は3分の1程度だったが

『くぅーっ!俺ってかっこいー!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 22:30:21.98 ID:iDBEtbYho<> >>363
『ナニッ!?』
突き出した槍は赤いマフラーを掠めることもできずすり抜け
狙った相手はといえば右腕を突き出した際にがら空きになった左側面に飛んでいた。
さらにその状態から投げつけられたチェーンソーは左腕でも右腕でもない、ボディに直撃していた

鈍い音を立てて刃が胸部に突き刺さり、通過した頃にはまるで獣に切り裂かれたか
それとも工具で削り取られたかと疑うほどのダメージを追っていた
黒い煙が上がり電気系統にダメージが出たのか赤ではなく青い火花が散っている

《BODY:DAMAGE―――73% [DANGER!!][DANGER!!]》
「大丈夫かガブル!?」

『ナ・・・ナンとか』
映し出された文字は赤く何度も点滅していた、このダメージは手痛いですむものではない。
ひざを突いていたセイリオスは言葉通り何とか立ち上がったが…お互いに満身創痍、そう何度も打ち合えるものではない
決着を急ぐしか道はない……!!

「これで勝負を決めにいくぞ!!」

『・・・シンじるぜ!!』
ぐっと足に力をこめ再びホイールが息を吹き返す、3度目の突撃で決着をつけるつもりだ
初速で勢いをつけてから背中に取り付けられたリボルスラスターが可動し再び展開する、次の弾を装填
その状態で発火、だが弾は前に出ることはなく変わりにスラスターから爆炎が噴出してきた!
打ち出す以外の使い方である加速をここで使ったのだ
地面から足を離しスラスターの出力で地面を滑空し突っ込んでくる……!
左腕はシールドではなくナックルガードとして出している、近づいて殴りつけるということか <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 22:49:50.92 ID:eiYXARjPo<> >>364
超スピードで突撃してくるスチールセイリオス
対応自体は簡単だ。しかし、間に合わない
直撃を喰らったヒーローはマフラーをなびかせながら落ちていった
ヘッドパーツが地面に叩きつけられる

「やられた・・・そのグリップは半額で持ってきなよ」

DVNOに映し出された「WINNER 星野谷拓海&ガブル」の文字
羽生コータロー。完全敗北。

「しかし、君強いね。どうだい。全国大会の予選、出てみないかい?
『グリーンエイジ』からチームを作る予定なんだけど、人が全く集まらなくてね」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 23:07:15.75 ID:iDBEtbYho<> >>365
叩きつけた左拳はチェーンソーによって付けられた傷からピシリと罅が走り抜ける。
ナックルガードは完全に崩壊し、鈍い音とともにそのマニピュレーターは潰れてしまった
勢いに耐え切れず着地すらままならないまま足をもつれさせて路面に転がっていく
お互いにダウンしたかのようなこのシーン、だがスチールセイリオスは振るあるレッグで立ち上がった

『・・・ドウ、よ・・・・・・』
潰れた左腕を高く掲げ、ギリギリ形を保つ親指を天を貫くように差し出した
自らの勝利を語るサムズアップのポーズを取り、そのまま腰砕けに倒れた

「ガブル!!」
フィールドが質素な台に戻りきるのを待たず自らのパートナーへと手を伸ばし持ち上げる。
ボディのダメージが内部バッテリーギリギリまで到達しており、時間を稼がれるかあの一撃がもう少し深ければ充電切れで負けていただろう

「ううん、もう値引きとかいいよ、俺拓海。お兄さんの名前は?」
左手にパートナーをしっかり握り締めながら右手を差し出してくる

「全国大会?でも俺ここまで遠いから……」
そういえばこの子はお母さんの買い物に付いてきたと言っていた
デパートの買い物ついでについてきたとなるとこの店とは少し遠いところに住んでいても不思議ではない <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 23:14:16.64 ID:eiYXARjPo<> >>366
「ぼくは羽生コータローだよ。よろしくね拓海くん」

差し出された右手をがっしり握りながら答える

「あ、そっか。買い物に付き添ってきたんだっけ
当日だけ来るだけでもいいよ。なんてったって楽しむのが目的だしね」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 23:20:50.55 ID:iDBEtbYho<> >>367
「よろしくコータローさん、すぐにうんって言えないけど考えてみるよ!」
握っていた手を離すと照れくさそうに鼻をこすった

「俺も大会興味あるしさ!とりあえずグリップいくら?」 <> 羽生<>sage<>2012/08/01(水) 23:27:32.55 ID:eiYXARjPo<> >>368
「グリップは350円だね
このモデルはちょっと高いけど品質と耐久性はぼくが保証するよ。あと手入れもしやすいしね」

そういってレジから何か紙を取り出す
どうやら大会の申し込み用紙のようだ

「はいこれイチオウ渡しとくよ
実はこの店最近、あんまりお客さん来なくてさ。宣伝目的も兼ねて出来れば出場したいんだ
ま、考えといてくれよ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/01(水) 23:35:12.34 ID:iDBEtbYho<> >>369
「よっと……これで350円ぴったりだよ」
ポケットから財布を取り出して開き、中に入っていた銀色の硬貨を手のひらに出して数え始める
きちんと300と50円ぴったりを取るコータローへ渡した

申込用紙を4つ折にしてからバッグの中にグリップと共にしまい込み
スチールセイリオスを腰のホルスターへと戻した

「分かった、何とか説得してみるよ」
誰とは言わないがおそらくはここまでつれてきた母親のことだろう。
タイムリーにも彼のPDAへと連絡が入ってくる、どうやらその母親からのようだ

「ヤベッ、俺いかないと……じゃあねコータローさん!!」
内容を確認した拓海は顔を青ざめさせながら、早足で店を出てゆく
去り際に高く上げた左手を振っていた……なんとも嵐のような子だった <> 月永 凛<><>2012/08/02(木) 22:54:53.12 ID:dTlir9BRo<> ショップの中、携帯とにらめっこする影がある。
液晶より発される光を受ける唇はぶつぶつと独り言を発し、時折目を瞑って思案する様子を見せる影の正体は女性、
齢にして13といくつといった様子のうら若き乙女だ。

しばらくは怪しさ満点の挙動を続けていたが、
その得体の知れなさは突然に立ち上がり「終わったあー!」
と叫んだことで最大値へと達する。

「いーやー、なかなかに大変だったけどついに完成ッ!
あとは大会を待つのみかー……
いやあ長かった、実に長かった!
辛かった、大変だった、ついでにときどき眠かった!」

誰に説明するわけでもないというのにべらべらと口を動かす少女、
現在地と内容を鑑みるにファイター、それも大会への出場を考えている者だと推測できる。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/02(木) 23:04:07.80 ID:Xq1Qwhpko<> >>371

「……ほいそこー、お店の中で叫ぶのはマナー違反だぜ?」

大声を出す少女に向かって、気だるげな声が飛ばされた。
声の主は、偶々近くにいた青年である。
服装はEDENに所属していることを表す白い制服……なのだが、夏の気候に負けたらしく、上着は脱いでいた。

「んで、何が完成したんだ?」

一人しゃべる少女の言葉を聞いていたらしく、興味本位で訪ねてみる。
青年も、今のところ一応大会に出るつもりらしく。
他の参加者がどんな人間なのか、少し気になるところだった。 <> 月永 凛<><>2012/08/02(木) 23:14:35.43 ID:dTlir9BRo<> >>372



「す、すみませんでしたぁー!
あ、いや叫んじゃいけないんだってば、ステイだ私」
指摘来たあー!?
考えるより先に謝罪の言葉が出る。
大人のお兄さんにこんなところ見られるなんて冷静に考えたらなんというかもう笑えない、乙女の死だ。
私は乙女じゃない、一人のファイターなのだ、と言い聞かせることで平静を保ちつつ投げかけられた問いに答える。

「あ、そうそう。
実は私、初めて自分一人でキットとか使わずに一からHMP組み上げたんですよー、
買える中でパーツ同士の相性とか考えるのがもう大変で、
でもこれが今の私にとっての理想系かなあ、って言える出来に仕上がったので!」

語り出すとつい饒舌になる。
でも仕方ないことだと思う、だってあれだけ頑張ったし
パーツの調達には特に苦労したのだから。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/02(木) 23:24:49.23 ID:Xq1Qwhpko<> >>373

「……ま、他のお客さんの事も考えてくれよな」

再び謝罪しながら叫ぶ少女。数人の客の視線が痛い。
だが、おそらく少女ももう分かってくれたであろうから、青年もあえてそれ以上注意はしなかった。
嬉しいことがあれば大声を出したい気持ちも、分からないでもないからだ。

「ほぉ、一からねぇ……そいつぁすげぇな」
「俺も中学ンとき最初から全部組み上げたけど、すげー時間かかったしよ」
「それにしても理想形、か……よっぽどいい出来なんだな」

青年が自分で組み上げたときは、完成後もどこか納得いかず結局改造に改造を重ねていた。
おもちゃ屋の息子だったためにパーツには困らなかったが、理想形にたどり着くというのはとてもむずかしいことなのだ。
だからこそ、少女の理想形といえる出来に仕上がったという言葉に、感心しつつも。
一体どんなHMPが作り上げられたのか、見てみたい衝動に駆られた。

「……せっかくだし、俺も見回り終わったようなもんだし暇だから見せてくれねぇか?」
「俺も、新調した奴見せるからさ」

青年がEDENにより支給されたワンオフ機は、先日のバトルで大破して修理中であった。
そのため現在使用しているのは、普通に売られているHMPである。 <> 月永 凛<><>2012/08/02(木) 23:41:27.57 ID:dTlir9BRo<> >>374

「あ、ちょうど今そこで動いてる子です。
フィールグラム借りて調整やってたもんで」

そう言うと、そのHMPフロート型の脚部の特徴である滑るような動きですいすいとフィールドを駆けてみせる。
緑と白、骨格は人型ながらにフロート型故にフライメックに分類される。
見ての通りの高機動が自慢の射撃型HMPだ。

『もう、店内では静かにしなさいって何回も言ったでしょ?
他人の振りができたならしてたわよ?』
「うう……ごめんねルナ……」

性格は見ての通りキツめ、でも命令には従ってくれて、
その命令が悪いものなら正してもくれるいい子だ。



感のいい者ならば気がつくだろうか、
そのルナと呼ばれたHMPを構成するパーツのほとんどが
今現在において広く市販されているものではなく、
レアリティの高いものだということに。
規格に反しているわけでもないパーツで、極端に古いものでもないそれらは、
限定品のハイエンドモデルに似た雰囲気を漂わせている。
しかし、そういったパーツは金持ちというわけでもなさそうな女子中学生がおいそれと手を出せるものではない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/02(木) 23:58:00.94 ID:Xq1Qwhpko<> >>375

「へぇ、あれが……」

目を細め、フィールドを移動するHMPに視線を送る。
性格は中々に厳しめなようだが、決して悪い方向のものではないようだ。
そして何より目を引くのは、少女のHMPを構成するパーツの数々である。

「……成る程。パーツ集め、大変だっただろうな。これは」

一応はおもちゃ屋の息子。それなりにパーツの目利きは出来るらしく。
目を丸くさせながら、感心したような声を上げた。
最新型のパーツではないが、むしろ最新型で揃えるよりも金がかかっていそうだ。
多分、青年の今持つものよりもおそらく高級な物ばかりだろう。

「俺もついでに調整しとくかな……まだ、外で動かしたことはないし」

青年は持っていたケースを開き、自らのHMPを取り出した。
とある大手楽器会社が独自開発したHMPの第一弾、エレキギターを武器とした少女型HMPである。
装甲の代わりに服を纏っており、性能よりは外見重視といった感じで。
しかしながらその頑丈さとツインネックギターという少し変わった武器が、一部の人に任期のHMPだ。

『おはようございますっ、マスター!』
「……ん、暇だし新しい身体、調整しとくぞ」

今青年が修理に出している機体は突撃することのみを考えた機体で。
攻撃翌力と突破力は最高クラス。しかし防御とバッテリーは最低クラスという最強に偏ったHMPだ。
それに比べると、このエレキギター型のHMPは全く別の性能を持つHMPであり。
青年もAIも、まだどこかぎこちない動きを見せていた。 <> 月永 凛<><>2012/08/03(金) 00:08:22.69 ID:10c5MR6Io<> >>376



「ええ、オークションとか使ったりして。
でもなんとか予算内に収めたんですよ?」

謳われる性能の割にはそう高値でなかった理由はそのパーツの評判でわかっていた。
もともとは超高性能パーツとして設計され、どこかしらに欠陥があり、
それ故に広く市販されない、酷い言い方をすれば産廃とかそんな感じだ。
なんとなくそういう扱いが気に入らなかったから、その人が出品するパーツで機体を組んでみたのだ。

と、思い返すうちに相手がHMPを取り出す。
EDENらしき格好から、どんな機体が出てくるのかと思えば、
また随分とかわいらしいギター型。

「あー、いいなあフォルテスオーノ……
私もギター弾けたらお揃いで買ってみようかと思ったけどそもそも私音感無いからなあ……」

敵としては全距離対応できて頑丈でトリッキーでとにかく厄介、
だが外から見る分にはかわいくてカッコ良くてエキサイティング。
私みたいな女子の心を揺らすには十分すぎる魅力がある。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/03(金) 00:20:24.63 ID:YpYr07eHo<> >>377

「安くて良いパーツを手に入れるのも一種の能力だからな……」
「その点に関しちゃ、お前さんは優秀みたいだ」

しかしその予算とやらがどれぐらいあったのかはあえて聞かなかった。
あんまりHMPにお金の話を持ち込むのは、純粋に楽しめなくなりそうだからである。
まあ、このHMPすごい金かかってんだぜ!みたいな自慢の仕方もあるから一概には言えないが。

「まー俺も音感は別に大してねーんだが……こいつがどうせなら可愛い奴がいいって」
『だってマスターのセンスに合わせると酷い事になるんですもん!』

自分の相棒に酷い言われようだったが、割りと本当のことなので言い返せなかった。
青年の使う機体はとにかく見た目に関するカスタマイズパーツがとてつもなく多く。
可愛いやつがいいというならば、確かにこの選択は間違っていなかっただろう。

「しかしまぁ、性能的には意外といいもんだ」

全距離対応、そしてボディパーツ以外は頑丈と初めての独自開発にしては高性能である。
しかしながらギターを爆音で鳴らすため、バッテリー的に問題があるのと。
ボディパーツだけは頑丈性がないため、そこを狙われるとスピーカーユニットが死に、極端に戦力が落ちるのが欠点だ。
自分のHMPがギターを掻き鳴らすのを見て、使いこなせるかという不安からため息をついた。 <> 月永 凛<><>2012/08/03(金) 00:34:05.27 ID:10c5MR6Io<> >>378

「まあ、このパーツも一概に良いとは言えないんですけどね……」
『こんなパーツで戦えって言われた時はびっくりしたわ、
動いてみれば慣れてもくるけど……』

そう、評判ほど悪いパーツではないこの子達も単体で見ればかなりピーキーで、
おかげで調整には苦労したものだ。
見た目は流線形多めで女の子というより女性型で気に入ってくれたのだが。

「だってルナ……あ、この子の名前なんですけど、
「ギター型になった私を扱う貴女がギターのぎの字も知らないのは許容できない」
って変な所で拘り派で!」
『やるならとことんやらなきゃ許せないの、しょうがないでしょ?』

言い返そうと言葉が喉まで出てきたが我慢我慢。
不毛な上にお兄さんが見てるのだ。
月永凛は二度死ぬとかシャレにならない。

「性能に関しても面白い子だと思うんですよね、
ギュイーンってやってドッカーンって感じで、
イロモノって嘗めてかかれない総合性能もあって」

ボディパーツに関してはこっちも狙われてはいけないのは同じこと、
軽量化と大容量化は悲しくなるほどの総合を生み出してしまったのだ。
もしかしたら流線形なデザインも被弾面積を減らすためのものなのかもしれない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/03(金) 00:42:55.54 ID:YpYr07eHo<> >>379

「俺は、万能なパーツより一点特化型の方が好きだけどなぁ……」
『マスターは攻撃翌力のことしか考えてないから困るんですっ!』

防御を捨てて突撃しかしない、というのは戦術としては正直かなり悪い。
そのためとりあえず戦略を上手く立てれるように、と少女型HMPであるリオはこの機体の使用を希望したのである。
色々と主が駄目な分、HMPのほうがとてもいいこになってしまったらしかった。

「うお……そっちの方は厳しいみたいだな」
『私があまいみたいな言い方してると後で痛い思いしますよ……?』

ゴゴゴゴという空気を自らのHMPから感じ、みなかったことにした。
後々怖いことになりそうだが、その時はその時だ。

「ああ、派手なのが好きな奴とかには丁度いい機体だろうな」
『派手な破壊大好きですもんねー』

前の機体と今の機体、どちらにも共通するのは必殺技があるということだ。
しかも破壊力重視、自分の身を顧みない後先考えないタイプのやつである。
男の浪漫、とでも言うのだろうか。とにかく攻撃翌力が高いのが好みらしい。 <> 月永 凛<><>2012/08/03(金) 01:00:21.50 ID:10c5MR6Io<> >>380
「私は万能なパーツもけっこう好きですよ、
っていうか一点特化の合わせ技で結果的に万能、みたいな?」
『そんなものができればいいのだけどね』

戦術に関しては同級生よりも秀でている自信がある、
なにせ家族ぐるみでHMPオタクで、初めて買ってもらった人形にはDVNOアプリも一緒についてきたぐらいの教育具合だ。
と、いっても一緒に読まされた漫画とかの影響か私もまた一点突破な癖が付いてしまいそうだったので射撃型をセレクトしたぐらいに押せ押せモードだけど。


「まあ、ルナのAIはお姉さんみたいなものですから」
『不出来なマスターはHMPの価値も下げてしまうの、勘違いしないでね?』

私知ってる、これツンデレって言うんだよね。
お父さんが言ってたから、こういう分野に関しては間違いない。
お兄さんのHMPもなかなかに怖そうというか、多分お兄さんのブレーキ役なのだろう。
大変だろうなー、と視線を送るとルナが何故かキッ、と視線を向けてきた。

「派手な攻撃はファイトの花ですよね!
ルナにもそういう武装が積んであって」
『凛』
「う、わかったよ、大会までは秘密ね」

まあ、武装一体型で球体から伸びる長い筒という見た目からして射撃兵装であることは既に推察されているだろう。
だが、この「トコヨスフィア」はそんな非凡な言い方をされては困る面白い武装だ。
故に、隠し球にしておこうというのがルナの考えである。
ただ、使い方からすれば今見せておいたほうが逆に面白いのかもしれないが、ぐっと我慢だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/03(金) 01:12:29.01 ID:YpYr07eHo<> >>381

「あー確かにそれは燃えるな。しかし漢なら防御いらずの全力全壊が一番だぜ」
『あのー……マスター?私一応女の子なんですけど……」

突撃ばかりするせいで負けるというのに、まだ懲りていないらしかった。
元々ちゃんと戦えばEDENというだけあってそれなりに強いはずなのだが。
どうしても趣味に走り、結果として偏った戦い方になってしまうのだ。

「ま、お互い大変みたいだな……」
『大変なの、九割マスターのせいな気がするんですがっ』

不服そうに上がる抗議の声、しかし青年の耳には届かず。
まあ、仲が悪いわけではないのだろう。なんだかんだ言って、この二人はかなり付き合いが長いのだ。
仲が悪かったら長く一緒にいることも出来ない。

「そいつぁ楽しみだな……」
『あっ、マスター!上司からサボってんじゃねぇと連絡が……!』
「……マジで?」

どうやら見回りの途中に雑談しているのがどこからか上司に伝わったらしく。
青年は顔を少し青くすると、フィールドにいる愛機をケースの中へと移す。

「んじゃ、俺はお叱り受けに行くから失礼する」
「大会、楽しみにしてるからな」

気が重たそうに肩を落としながら、青年はショップから出ていく。
大会でどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだな、と思いつつ。
ダッシュで上司のところへと向かうのであった。

/時間もあれなんでここらで〆させて頂きますね!
/絡みお疲れ様でした! <> 月永 凛<><>2012/08/03(金) 01:19:44.27 ID:10c5MR6Io<> >>382
「お兄さんはそういうタイプなんですねー、
私はどちらかというと女の子なんでどこまでもクレバーに抱きしめるような戦法が好きです」
『本当、いらないところで詩的よね貴女って』

実際、付かず離れずでトリガートリガートリガーが好みなのだから仕方ない。
趣味と実益を兼ねていると言えば聞こえはいいか。
もちろん、お兄さんみたいな戦法にもあこがれないことはないけど
お父さんにそれで負け越してるからさすがに学習した。

「あ、もうこんな時間なんですねー、
なんか私のせいですみませんね!
それじゃ私もそろそろ失礼します!」
『声が大きいわよ、凛?』
「うう、またやってるよ私……」

なんにせよそろそろ帰らなきゃならない時間だ。
門限に関してはかなり緩い方だが、あんまり遅く帰るとアニメが見れない。
これは致命的で超マズい。
故に、パパッと広げていた計器類を纏めてリュックを背負い帰路へと着いた、それもかなりの早足で。

/お疲れ様です、
ありがとうございました! <> 麻木 ナオヒロ<><>2012/08/04(土) 21:10:40.30 ID:qcYrwQDDO<> とあるホビーショップの一角、HMPコーナーにて。
日中は小学生で賑わう店内も日が落ちた頃になると様相が変わる。
10代後半の学生から仕事上がりかと思しきサラリーマンが顔を出し始めるのだ。
そんな中の1人、大学生くらいの若者が据置フィールグラムに接近中。

「すみませ……、どなたか1戦交えてくれませんかー…?」

どうやらHMPを調整したのでテストバトルといきたい……が、相手がいないらしい。
弱々しい声は店内の喧騒の中ではすぐに掻き消えてしまいなかなか相手は見つからない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 21:23:55.96 ID:SDUI3LsMo<> >>384

夕暮れ時。ホビーショップは時間帯は変われど賑わいは衰えず。
パーツを物色する人、戦闘を楽しむ人、それを観戦する人。
そんな者たちに紛れて、だらだらとパトロールをするEDENの人間が一人いた。

「今日も今日とて異常なし……平和なのはいいことだ」
『ですねー』

寝癖のついた髪、眠気眼にEDENの制服を着用……しているのだが、暑さに負けたらしく上着は脱いでいた。
見た目からしてあまりやる気は感じられなかったが、それは置いといて。
DVNOから聞こえる同意の声に、青年は更に一層脱力しつつ。
ふと、店内の一角。主にバトルが行われている場所に視線を向けた。

「……そういや、まだ新しくしてからたたかってねぇな」
『あの、マスター……?まだ、パトロール中ですけど……』

そう、パトロール中なのである。それを思い出し、青年はしばしどうするか考えた後。
対戦相手がまだ見つかっていないらしい若者がいる筺体へと歩き出した。
結論として、パトロールより戦闘を選んだらしい。DVNOから、ため息が聞こえた。

「……俺で良ければ、相手になるぞ?」

店内の賑わいに飲み込まれかけていた声に、青年は言葉を返す。
調整もしたいし大会も近いため練習もしたい。丁度一石二鳥だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 21:42:53.61 ID:qcYrwQDDO<> >>385
「本当ですか、ありがとうございm……EDENさん!?」

半ば諦め、後日友人とまた来ようと思っていた矢先の良い返事に反射的に礼を返し――――
返しきる前にすっとんきょんな声を上げる。
まあ青年の驚きも最もだろう。
なにせ相手は“あの”EDENである。
EDENといえば訓練生であってもHMPファイトのエリートである。
現場に出てくる正規メンバーとなれば、麻木にしてみればトッププロと変わらない。

「えー、えーと、私とのファイトでは肩慣らしにもならないかもしれませんが……よろしくお願いします!」

テンパりながらも頭を下げ、いそいそとフィールグラムにHMPをセットし、タブレットのアプリを起動、ヘッドセットを装備する。

「フィールドは……ランダムで良いでしょうか?」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 21:58:18.15 ID:SDUI3LsMo<> >>386

「あー……一応EDENだが俺そんなに強くねーから安心しろ」

EDEN所属ならば、強いのが普通なのだろう。
しかしながら、青年は仕事が関わってこないと戦い方が完全に趣味に走るため、普通に戦えばそんなに強くないのだ。
流石に任務の時はそうもいかないのだが、任務でなければそこら辺の人間と同じレベルだ。
無論、突撃戦法さえ取らなければ普通に強いのだが……。

「おう、なんでもいいぜ」

HMPをケースから出すと、筐体に設置。携帯端末を接続し、戦闘の準備を始める。
とりあえず、今日の目標は突撃だけに頼らないこと、だ。
そのために今はEDEN支給のワンオフ機ではなく、一般に売り出されているHMPを使用しているのだ。

「さて……それじゃ、楽しくやろうぜ」
『はいっ。よろしくおねがいしますっ!』

少女型のHMPは、先ず最初に対戦相手と、そのHMPに頭を下げた。
さて、これで準備は完了――――後は、カウントがゼロになるのを待つのみである。
そして、相手の準備が終われば、カウントが開始されるだろう。

《――――3――――2――――1――――》


《――――0――――》


//フィールド末尾!

0,4:市街地
1,5:廃墟
2,6:草原
3,7:闘技場
4,8:立体駐車場
5,9:荒野 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 22:01:37.83 ID:SDUI3LsMo<> 【廃墟】
荒廃した市街地。灰色の建物と、黒い雲が不気味さを醸し出している。
市街地とは違い、非常に建物自体が脆く、破壊が容易に行えるのが特徴。
主な作りこそ、市街地と変りないが、建物の中などに逃げこむと崩落した際に非常に危険。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 22:20:07.01 ID:qcYrwQDDO<> >>387
「そんな謙遜を……」

EDENメンバーということは、それだけの経験を積んできたということ、更にそれが続いているということ。
バトルは重ねることで、バトルに不必要な部分が磨耗し、研ぎ澄まされていく。
EDENメンバーはそれはもう剃刀のような鋭さなのだろう。

『どうした、臆しているのか?君は私のブレインなのだからしっかりしてくれたまえよ?』

「……大丈夫、分かってるよ」

この一戦はいままでの経験の試金石であり、指標になり得る。

パートナーに励まされながらカウントダウンの0を待つ。

『さぁ!幕開けだ!』

カウントが終わると世界もその姿を変える。
フィールドは荒野、アップダウンの少ないこのフィールドはパートナー、ルリに有利に働くだろう。
敵を捕捉しないままに、やたら滅多らに機関銃を掃射しながらルリはフィールドを駆け出した。

『ははははははっ!広いフィールドは気持ちがいいな!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 22:28:23.78 ID:SDUI3LsMo<> >>389

「……割と謙遜じゃなくてマジで」

この前も、普通に戦って負けたばかりだ。
しかも戦い方が荒かったせいか、ワンオフ機もボロボロになるしで正直EDENとしてはマズい戦いだった。
近々調査任務が入る予定もあり、今のうちに勝負勘を取り戻さなくてはいけない。

「……廃墟か」
『派手にぶっ壊せますね!』

ツインネックギターを片手に、ステージを見回し状況を確認する。
そして、ふと聞こえてくる銃声――――しかし、弾丸が飛んでくる気配もない。
と言うことは、相手は意味もなく銃を連射しているわけだ。
銃の咆哮へと耳を傾け、相手の場所を特定しつつその方向へと歩き出す。

『なんか、撃ってますね……』
「……まぁ。場所がわかって好都合だろ。とりあえず最初は様子見だ』

建物の影などに隠れつつ、相手のいるであろう場所へと進む。
今のところ派手な動きも取っていないため、こちらの場所はまだ完全には掴めないだろう。
レーダー機能があれば、話は別だが。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 22:39:19.58 ID:eMFV1mVBo<> さて、案外近くでEDENが野良試合をしているなどとは露知らず
その青年は今日も野良試合を行っていた

長々続く長蛇の列の先頭、筐体に不気味なHMPをセットしたシンは、向かいにいる対戦相手に声を掛ける

「今日はよろしくね。フィールドはランダムで構わないかな? もし、希望があるなら、そのフィールドでもいいよ」

//ランダムの場合は以下のコンマで
1.6 市街地
2.7 廃墟
3.8 ハイウェイ
4.9 闘技場
5.0 草原 <> 月永 凛<><>2012/08/04(土) 22:47:10.50 ID:aMVBkN20o<> >>391
同じく長蛇を背負い筐体の前に立つはかわいらしい怒りに顔を歪ませる女子中学生。

「まったく……大会の日時を間違えて伝えるとかありえないってば」
「時間ができたって考えればいーじゃん?
父さんもルナをAIまで精査してくれるみたいだし、お得お得」
「そうだけど、だからといって許せることじゃないなー、って。
まあルイスとバトルするのも久しぶりだしいいけどさあ」


普段のパートナーとは違う、
ルイスと呼ばれた魔獣型HMP「ジャバウォッキー」を筐体にセット。


「よろしくお願いします、負ける気はないのでそのつもりで!」

気を取り直したのか、元気な声で相手の呼びかけに答えた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 22:50:15.89 ID:qcYrwQDDO<> //うへぇ、確認不足で荒野にしてました申し訳ないです

>>390
「謙遜でもマジでも、胸、借ります」

【言いながらタブレットを操作し小さなウィンドウをチェックする。
 ルリのサーモカメラと連動したウィンドウに灰色の空と廃墟は青く映る。
 赤い影を探して目まぐるしく変わる映像を追っていく。
 レーダーはいまいちなので、索敵はこのサーモカメラ頼りだ】

「そろそろ発砲止めて、力技で行こう」

『そうか、“赤”はないと』

「そういうこと、建物の中にいても分からないしね」

【インカム越しに作戦変更を告げるとルリはそれに従って発砲をやめる。
 代わりに左腕を振り上げると、手近な廃墟に叩き付ける】

「……力技ってそういうことじゃないから!」

『……なに?』

【壁をぶち抜いて中に侵入しようとしたルリを思わず大声で静止する。
 つきあいが短いわけではないのだが、連携がとれていない】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:00:11.55 ID:eMFV1mVBo<> >>392
「うん。それじゃあ、お互い全力を出し合おうか」

 にこやかにシンはそう返すと、手元のパネルを操作する
 フィールグラムが起動し、ランダムで選択されたステージを映し出す

『ハイウェイ』
 主戦場となるのは立体交差が幾つも重なるジャンクションであり、その様相は迷宮と称するに足るほどのものである
 障害物自体はほぼ存在しないと言って良いが、立体交差を利用した高低差の活用が求められる
 跳躍力に優れた機体や、飛行能力を持つフライメックに有利なステージであろう
 また、レーダーの見方を誤ると、奇襲を受けることの多いトリッキーなステージだ

「図らずも、と言ったところかな……?
 ん、でもそっちもあんまり苦手そうなステージじゃないね」

 ジャバウォッキーは俊敏性に富んだ機体である
 その跳躍性能も折り紙付きで、こういったステージはどちらかといえば得意なステージに分類されるのではないだろうか?
 
「っとと、長話ごめんね。始めようか」

 そうして、入り組んだ迷宮のようなハイウェイに二機のHMPが降り立つ―― <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:01:36.19 ID:SDUI3LsMo<> /うわっ、間違えて5を二つ入れてました御免なさい……

>>393

発砲音が止まった。このままだと早めに相手を見つけなくては、移動されて場所が掴めなくなってしまう。
出来れば奇襲なんてものをやってみたかったが、やはり性に合わないようだ。
さて、建物の影になんか隠れてないで、堂々と探索を――――。

『……へ』

建物の奥にいたため、サーモカメラにこそ映っていなかったが。
偶然にも、相手がぶちぬいた廃墟の中に、青年のHMPであるリオはいた。
案外近くにいたらしく、完全に油断していたリオは間抜けな声を上げ停止した。

「ぼーっとしてないで距離詰めろー」
『……へっ、はっ、はい!』

相手が銃を使うというのならば、距離が開いていてはこちらが不利だ。
壁を破壊したことから近距離戦もおそらく出来るのだろう、だが近距離のほうがこちらとしては色々有利なのだ。
ツインネックギターのネックの一本は鋭いエッジになっており、更に頑丈さ故にそれなりの威力を誇る脚部。
そして今はエレキギター型のHMPだが、リオは元々格闘戦特化のAIであり、接近戦が本業なのだ。
距離としてはそこまで離れていないだろう――――リオは、壁を破壊した相手に向かって走りだす。 <> 月永 凛<><>2012/08/04(土) 23:09:21.51 ID:aMVBkN20o<> >>394



よっしゃ有利なステージ来たあー!
思わず咆哮しかけるが我慢、ポーカーフェースが勝利の秘訣って偉い人が言ってた。

「全力、出して行きましょうか……!」

静かに、しかしその奥に篭る熱を隠しきれない声と共に降り立った自機と敵機を見やる。
相手はアネモネがベースの改造機、その外見への拘りも戦闘中でなければ注目したいところだが、
気をつけなければならないのは背の翅と両腕の弾倉と機関銃。
ハイウェイの高低差や自機の俊敏性を利用しなければ速攻で蜂の巣だろう。

『ま、気楽にやろーよ』
「ルイスはちょっと気楽すぎ、でもまあ気負っても仕方ないか!」

そのやりとりを契機に、疾駆の一歩目を重ねる。
道路から右側にある柱へ向けての跳躍により、まずは様子見といったところだ。
そのうちにも左腕を引き、攻撃にしろなににしろ構えとしておくことで次の行動に備えを得る。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:19:50.49 ID:eMFV1mVBo<> >>396
(ステージ相性は五分……いや、足の遅さを考えるとあっちが多少有利かな)

 ふむ、と無言で考えつつ、DVNOの画面を爪で叩く
 かつ、と言う小さな音が通信を介してエクリプスに伝わった

『パターンR……承りました!』
「いつものように細かいところは任せるよ」

 スナイパーが真っ正面から戦うなど愚の骨頂だ
 幾ら機関銃で弾幕を張れると言っても、防御性能を考えれば正対は可能な限り避けるべきだろう

(ガン引きしながら撃てるような機動力があるなら別だけどね……)

 さて、どうなるかな、と考えるシンを余所にエクリプスが移動を始める
 ふわふわとした挙動で背後にあるライトの上に乗ると、上の立体交差目がけて飛翔する
 その間、一瞬たりともルイスから目を離そうとはしない。迂闊に突っ込めば蜂の巣にされるだろう
 だからといって座して見守れば、一方的に殴られることになるが…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:22:03.01 ID:qcYrwQDDO<> >>395
『……!』

【足音に反応し、反射的にスラスターを噴かしながら後退、右腕の機関銃をバラまく】

『おい、居たぞ!』

「居たぞ、じゃない!……あ゙ー、作戦もなにもあったもんじゃないなあ」

予期せぬ形のバッティングに双方動揺しながらも、ナオヒロはタブレットから指示を出す。
しっかりとみえなかったが相手は刀のようなモノを持っていたし、接近してきたということは、そういうこのなのだろう。

『まぁいいさ、アドリブも時には必要なのだから!』

【後退を止め、もう一度廃墟に飛び込む挙動をとる。
 同時に左手の機構を起動させる。まだ帯電しきらない為もう少し待たなければいけないか。
 ひとまず右で牽制だ】 <> 月永 凛<><>2012/08/04(土) 23:32:27.87 ID:aMVBkN20o<> >>397
相手は本格的に動き始めたようで、
上の立体交差目掛けてその翅を活かした飛翔を行う。
安定した飛翔はフライメックの強み、今更確認するまでもない。
だが、それと同様にヒュームボットにも強みがある、それは

『もいっちょ、ジャーンプ!』

ルイスは踵の刃を一度柱に突き立て跳躍の咆哮を調整したうえでもう一度跳ねる。
飛翔にも劣らぬ初速による跳躍、その瞬発こそ強みだと私は考える。
その強みを活かすためにも、まずは同じ土俵に相手を引きずり下ろす必要がある。
故に、DVNOへの打鍵を行う。

『んー? 早速行っちゃう感じ?』
「うん、隠し球にしたままやられちゃうかもしれないしね」

少し不機嫌そうな顔になったが、すぐにいやらしい笑顔に頭部パーツを歪ませるルイス、
その左手に装着された鉤爪の手甲が、ワイヤーを延ばしバーニアの光を吐き出しながら宙を駆ける。
狙いは立体交差の一番上の道路、その底面に鉤爪を突き立てワイヤーを引くことによる高速移動と相手の移動に対する牽制だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:33:33.39 ID:SDUI3LsMo<> >>398

接近を試みるも、機関銃が進行を阻み、リオは一時停止を余儀なくされた。
咄嗟に右手に搭載された小型バリアで数発の弾丸は防ぎきるものの、防げなかった弾丸も多い。
幸先不安なスタートだが、不利な状況のほうが燃えるというものだ。

《右腕損傷:ダメージポイント5%》
《胴体損傷:ダメージポイント15%》

DVNOに表示されるダメージポイント、この程度ならば勝利への道も離れていない。
それにまだ戦闘は始まったばかり――――いくらでも、覆すことは可能だ。
弾丸のせいで一旦動きを止めたものの、リオは再びすぐに前に進みだす。

『いきますっ!!』

牽制程度で一々止まっていてはキリがない、とリオは左右に跳び、狙いを定められないようにしながら進んでいき。
無事に接近することが出来れば、走った勢いを利用し、ギターのエッジで斬りかかるだろう。
体格差は殆どないため、右上からの袈裟斬り――――相手の機動力ならば、回避は充分に可能だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:41:43.29 ID:eMFV1mVBo<> >>399
(やっぱり、早いね)

 でも、と思考が続く

(それをするには、些かこっちを侮りすぎかな)

 飛翔しつつ上の立体交差に移動していたエクリプスの眼光が閃く
 ガチャ、と重々しい音を立てながら、空中で狙撃翌用オプションが付けられた機関銃がルイスに、いや、その手甲に向けられて――
 羽ばたく翅と、脚部ブースターが独特のノズル調整を行う――
 それは、本来ならば難しい空中での狙撃を成功させるために、
 機体を安定させ、狙撃の反動を[ピーーー]ためだと、果たしてルイスと凛は気づけただろうか?

『何世紀か前のアクションスターみたいで格好いいですけど――』

――銃持ってる奴の目の前でワイヤーアクションなんてしたら
 
『ワイヤー切りますよねー?』

 空を裂きながら立体交差の底面目がけ飛翔するワイヤー目がけ、機関銃の狙撃が行われる
 撃ち落とすのではなく、ワイヤーと手甲を引きちぎるつもりだ
 ダメージこそ入らないが、当たればそのワイヤーは引き裂かれてしまうかも知れない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/04(土) 23:55:05.20 ID:qcYrwQDDO<> >>400
『ぬぁッ……!』

【当たらない機関銃に苛つきながらもまずは目の前に迫ってしまった相手を捌かなくてはならない。
 機関銃を撃ち止め、時計回りに身を翻して回避を試みる。
 しかしこちらも前進しながらだったために右肩を刃に切り裂かれてしまった】

《右腕損傷:ダメージポイント20%》

『あ』

【損傷自体は致命傷というほどではないが、弾倉も一緒に落とされてしまった。
 これでは無駄撃ちが出来ない!】

『しょうがない、うん』

【一旦速度を弛め、相手の周りを反時計回りに周回するように移動、背後に回ろうとする。
 いつの間にかチャージの終わった左手はバチバチと音を立てながら放電しており、なかなか威圧的だ】 <> 月永 凛<><>2012/08/04(土) 23:56:08.65 ID:aMVBkN20o<> >>401
ぷちん、と生命線の切れる音がする、見やれば手甲との間に伸びるワイヤーを切られたルイスは慣性の法則に正しく従い、
世にも珍しい飛ぶヒュームボットと化していた。

「ちょっと嘘でしょ!?
普通ガトリングでこの距離撃ち抜く!?」
『どうするのさこれ、このまま着地なんてさせられたらそれだけで壊れそう!』
「っていうかこのままじゃいい的!
しょうがないからもう一回!」

言った通りに、右の手甲を突きにも似たフォームで射出。
鉤爪を開き、敵を捉えんとするその手甲の重さに引かれるように移動する先は敵機の現在位置。
真っ直ぐにエクリプスへと向かう手甲が正真正銘最後の生命線、
このワイヤーが、ルイスと手甲を繋ぐそれが切られれば武装でもない徒手空拳で戦うハメになってしまう。
隙を見て左手の手甲を回収できれば射出こそできなくとも武装として扱えるのだけど……

「どっちにしろ、判断ミスね……!」
『久々だししゃーなし、やれるだけやらなくちゃ!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 00:04:55.60 ID:RHyNYHgFo<> >>402

刃はなんとか相手の右肩を切り裂く。
ダメージはそうでもないようだったが、どうやら機関銃の弾倉がそこにあったらしく。
偶然ではあったが、銃の無駄打ちを封じたことにより少しだけ有利な状況に持ち込めた。

『よしっ、やりましたよマスター!』
「油断すんな。相手は壁簡単にぶちぬくような奴だぞ』

この機体はオールレンジ対応で接近戦もこなせるが、パワーに関しては高いとはいえない。
その点相手は壁を簡単に壊せる威力を持っている。一撃直撃するだけでも、正直マズイだろう。
全体的に頑丈な作りにはなっているが、胴体が破壊されればギターの攻撃も封じられてしまう。
ボディへの攻撃を気をつけつつ、直撃だけは酒なくてはいけない。

『むっ……!』

この状況で背後に回られると、非常にマズい。
いや、どの状況でもマズいのだが、背中に攻撃を食らうとただでさえ少ない攻撃手段が更に減ってしまう。
ボディパーツの背部には巨大なスピーカーユニットが搭載されており、それがなければエレキギター型の花形である振動攻撃が封じられてしまうのだ。
何としても背後に回らせる訳にはいかない、と相手に合わせて身体を動かす。
そして、後ろに行かせないことばかりに気を取られ、電気を放つ左手に対しての注意は限りなく薄かった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 00:11:34.24 ID:QpEq65nro<> >>403
(……左右対称、か)

 R..ARMカンディルは連射性能に優れた機関銃だが、空中で連射出来るか、と言われればそうではない
 どうしたって反動で体幹がぶれるのだ。それを[ピーーー]ための先ほどの噴射だが、そう連発出来るほどバッテリー容量に優れた機体ではない
 間髪入れず、とまでは言わないまでも、凛・ルイスコンビの次撃が来たのは対処可能な時間のギリギリ外
 狙撃して撃ち落とすのは不可能だ
 ならば――

『こっちも曲芸ですッ!』

 バーニアの方向を変えて吹かし、翅を羽ばたかせ、カンディルを連射する
 反動が体をぶれさせていく。それに合わせるようにバーニアによって体は加速し、羽ばたきによってぐるりと動いた
 ――空中での捻り宙返り
 どこかのアクション映画のように、体すれすれの部分を鉤爪が通過していく
 ホンの1ミリ
 もしも、シンが胴体に浮き出るような装飾を施していたならば、そこに引っかかってダメージが生じていただろうほどの至近での回避
 だが、これで鉤爪は背後の高架に突き刺さり、ルイスを移動させることだろう
 
『ちょっとミスしましたです……!』

 エクリプスの狙いとしては、曲芸の途中でワイヤーを脚部の先端に引っかけて切るつもりだったのだが、ポールダンスのようにくるりとその廻りを回転してしまったのだ

(バッテリー容量も、そろそろ辛いかな……いや、まだ、行けるかな?)

 拙くなったら通信が入る。自分に出来るのは待つだけだ。
 シンは、思わず力を込めた手から力を抜いて戦場を見守る

 ふわり、意図的に空中で体勢を崩したエクリプスが、強引に姿勢を戻しつつ移動を始めたルイス目がけカンディルを乱射する
 先ほどの精密射撃を行った者と同一機体だとは思えないほど乱雑な射撃だ
 一発当たれば良いところ、だが…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 00:24:04.25 ID:M1firv3DO<> >>404
「触れるだけでいいんだから、焦るなよ」

『分かっているとも!』

大型の左腕はスタンガン機構を使用しなくともなかなかバッテリーを消費する。
そのためボディは大容量バッテリー搭載になっているが、それでも早く決めるに越したことはない。
慎重に確実に、しかし迅速に。

「…………ここでいけ!多分!」

【ナオヒロの自信なさげな指示に不安はあるが、従わない訳には行かない。
 ルリはスラスター推力を高め、左腕を突き出したポーズで踊り掛かる。
 直撃でなくとも、掠った部位を軽く麻痺させるくらいの効果がある筈だ】 <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 00:31:51.18 ID:/qI9ySeao<> >>405

狙撃の隙を狙ったはずの攻撃は、反動すら利用して行われた宙返りにより回避される。
無茶苦茶な、と口をぽかんと開きそうになる。
それもそうだ、こちらに状況を引き寄せるための攻撃が外されたのだから。

『まだ終わってないよ!』

ルイスの言うそれはこちらの攻撃か、あちらの反撃か、あるいはその両方か。
どちらにしても惚けている暇はない。
一旦携帯を置いて自分の両の頬を叩き、目を覚ます。
状況は不利、当然ながら回避に成功したエクリプスは強引ながらにその手のガトリングから弾丸の雨を吐き出す。
狙いが乱雑とはいえ、接近すればそれだけ的も大きくなる。

「でも、こっちもただの的じゃないよ……!」

打鍵、それに応える音声。
頭部に至る銃弾を左腕を身代わりにして防ぐ。
その腕は直ぐに使い物にならなくなり火花を散らす、だが構わない。
エクリプスとルイスがすれ違う直前、ワイヤーの巻き取りを甘くすることで速度を落とし体制を整える、
胴体にも深刻なダメージが蓄積するが、この際構わない。
足を必死に伸ばし、ルイスの踵とエクリプスの位置を合わせる、巻き取りを最高速に。
行われるのは高速の刃付き踵落とし、それがヒットし、そのまま踵にエクリプスを引っ掛けていられれば高架への激突のおまけ付きだ。
そもそもからして避けられてしまえばダメージレースで負けたうえで不利な状況を背負うことになるが、果たしてどうなるか。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 00:41:21.64 ID:RHyNYHgFo<> >>406

なんとか背後を取られることはなかったものの、次の瞬間また別の壁が現れていることにリオはようやく気づいた。
バチバチと電気を放つ左手――――あれに当たったら、間違いなくヤバい。
だが相手も加速してこちらに急接近してきているため、大きな回避行動は取れない。

『どうすればっ……!』

電気攻撃で怖いのはダメージではなく、おそらく併発するであろうマヒ効果だ。
手を麻痺させられればギターが弾けなくなる。それはつまり大威力攻撃を封じられるということだ。
そして自由にエッジを振り回すこともできなくなるだろう。残りは脚部の蹴り技のみということになる。
格闘戦自体は得意なものの、機体そのものが格闘戦向きではないため、おそらく蹴り技のみでの勝利というのは出来ない。
一体、どうすればいい――――リオの耳に、青年の指示が届く。

「リオ、あれ≠セ」
『……了解ですっ!!』

あれ=Aそれが指す意味はまだ相手にはわからないだろう。
だが、リオに迷っている暇はなかった。右拳を握りしめ、向かってくる相手を見る。
どうやら電気を纏っているのは左腕部分だけ――――範囲さえ狭ければ、なんとかいける!!

《ズヴェルト バリア起動:...START》

右手を守るように展開される小さなバリア、しかしこの程度の大きさならば、簡単に回避されてしまうだろう。
だから、あえてバリアを纏った状態で相手にぶつける――――即ち、攻勢防御だ。

『はぁっ!!』

バリアを纏った右拳で、リオは迫り来る相手の左手に対抗する。
バリアをぶち抜くことが出来れば直撃――――しかしこのバリアは範囲が狭い代わりにその硬さは一級品だ。
真正面からの衝突、果たして結果はどうなるのか――――。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 00:46:56.71 ID:QpEq65nro<> >>407
 に、と我知らず醜い笑みが浮かんでいることを、シンは気づけなかった
 その笑顔は、今、窮地にあるHMPと同等、あるいはそれ以上に醜い
 見れば涙が零れる笑顔というのが、小説などには登場する
 正しく、シンが浮かべていたのはそれだった

「面白いね」

 簡潔にそう言い切った彼は、愛おしいエリへと向かって飛来する断頭台の刃を熱っぽい瞳で見る
 
「君、キレイにしてみたいな」

――

ぶっつりと、何かが切れるような音が聞こえた
それは、本来有り得ないはずの音。だから、気のせいに違いないのに

『ます、たー……』

笑っている。楽しそうに声を上げている。はしゃいでいる
心が離れていく――頭の中、綺麗に整頓された記憶ファイルが、勝手にその記憶を励起する

〈なんだよおまえ、弱いなぁ……つまんねー〉

それは無邪気な子供の声。遊びに勝てないから必死に戦略を練るのではなく、その遊びを放棄してしまう子供の声
ぞぞ、とエクリプスの背筋を恐怖が昇ってくる
いやだやめていかないで捨てないで捨てないで捨てないで――

〈ちっ、無駄なお金つかっちゃったなー〉

再生される記憶が最悪を励起する。どれほど嫌がっても記憶の再生は止まらない
過去は変わらない。ならば、これからまたその未来になるのか?
いいや、ならない。なってはならない。その為の手段があるだろう?

『――』

余計なタスクが強制終了される
効率だけを追い求めて、人工知能が全身を駆動させる
今からではこの攻撃は避けられまい
防御力を考えれば喰らえば甚大な被害は必至
――だが、一撃死はしないだろう

『さぁ、くるですよ?』

にっこり、そう微笑んで
エクリプスの体にルイスの踵が突き刺さった

≪BODY...HP45%>>

システムがダメージを宣告する――そして、直後に高架に激突する
だが、ルイスは理解していたはずだ、思ったより、速度が出ていないということを <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 00:57:17.22 ID:/qI9ySeao<> >>409
クリーンヒットすれば逆転も狙えたであろう一撃が炸裂する。
だが、その言葉通り「クリーンヒットすれば」であり、今の状況はそう在ったようには見えない。

『……なんかおかしい!
手応えだけじゃないっていうか、とにかくおかしい!』
「とにかく状況立て直そう! 着地行ける!?」
『ボロボロだけどバッチリオッケー!』

その言葉と共にルイスは踵と手甲を引き抜き、くるくるとした宙返りと時折踵で壁を削ることにより衝撃をできるだけ殺した状態で着地する。


さっきの言葉が耳につく、
どうしても不安が拭えない、勝負の天秤もまだまだ相手のほうに傾いている。
だが、逆転の芽はいつだってそこに在るのだ、
たとえその上がコンクリートで舗装されようとも、それを突き破ってでも勝利の花は咲く。
父の言葉を相手の言葉と入れ替わるように思い出し、自分を奮い立てる。

『他のステージよりはマシだけど、
空中戦挑まれると銃器無いのがキツいね……!』
「でもルイス、銃は苦手でしょ?」
『まあ、ね……!』

言葉と共に疾走、柱すら床として走り回る目的は状況観察だ。
相手の損耗具合によっては戦法を変えねばならない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 01:01:20.77 ID:M1firv3DO<> >>408
激突、直後にルリは右方向に弾け飛んでいく。

『お、おぉぉお!?』

《左腕損傷:ダメージポイント15%》

「んなっ!?」

【DVNOからのメッセージに頭が着いていかない。
 此方が攻撃を仕掛け、相手に接触した筈だ。
 相手も反撃してきていたが、それでもこちらが弾かれるのは……】

「…………そういえば……」

【目の端で見ていたタブレット右上のサーモカメラウィンドウに、一点だけ特に熱量が高かった箇所があったことを思い出す。
 てっきり銃弾を食らった箇所がショートしているのかと思ったが、違ったのだ、きっと。
 あれこそが、何か分からないが、こちらにダメージを与えてくれた何かなのだ】

「ごめん、臆病になりすぎてたと思う。もっと殴る感じで行ってれば多分……」

『いや、正直私も何があったのかよく分からないからな。
 感覚としては……バリアか?異常に堅かったが……』

「ともかく、右手を特別気を付けつつ一旦引いてもう一度右で攻めていこう」

【ナオヒロは慎重さが裏目に出たと考えているが、次の対応もやはり引きのスタイルだ。
 ワザとなのか性分なのか】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 01:13:08.25 ID:QpEq65nro<> >>410
 空中に浮翌遊しているエクリプスは、狂った笑みを浮かべていた
 その瞳、大輪の花からは潤滑油が血涙の如くに流れ落ち、その損傷が甚大であることを現している

≪HEAD...12%≫
≪BODY...1%≫
≪L.ARM...25%≫
≪R.ARM...17%≫
≪LEG...10%≫
≪バッテリー残量...20%≫

 DVNOが伝える状況はあまりにも甚大だ
 シンは、蕩けた笑みを掻き消すと焦燥しながらDVNOをタップする
 ――だが

『さぁ、さぁ……お邪魔虫は穴だらけですよ?』

 エクリプスはそれを無視した
 バッテリー残量を考えればもう飛行している余裕などはない
 早急に別の作戦へ移行しなければならない。だというのに

『ああ、邪魔です邪魔です邪魔です邪魔です
 あなたがいるとだめなんです。マスターが見てくれないんです』

 エクリプスが突如ブースター切ったと同時、翅を羽ばたかせる
 上昇ではなく、下降。重力を借りて高加速しながら、下の高架に落下した彼女はギリギリの所でブースターを全力で吹かし、強引に着地する
 降着装置など使わず、両足を道路に突き刺すようにしながら、カンディルを構える

≪LEG....HP0.機能停止≫

『――だから壊れろ』

 エクリプスはまるで、壊れたレコードのように一つの単語を吐き出す

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
『壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ』
 
 機関銃の銃声が、哄笑のように高らかに響き渡る
 ホーンオブプレンティを装備したカンディルの射撃持続時間は、実に三十秒にも及ぶ
 現実の機関銃にすら等しい速度での秒間発射速度を持つ弾幕の嵐が、襲いかかる
 それは、獲物を襲うカンディルのように。何処までも獰猛に、勇敢に、僅かな隙間を見つければ、殺到して喰らい尽くすように <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 01:16:04.05 ID:RHyNYHgFo<> >>411

右腕に走る衝撃、やはり元々格闘戦のために作られた機体ではないため、多少はダメージが来る。
だが、まだ全然動けるレベルだと、拳を何度か握り直して確かめた。

《右腕損傷:ダメージポイント15%》

なんとかバリアをうまく使い攻撃の直撃は避けているが、ダメージはしっかりと蓄積されている。
相手のバッテリーが尽きるのが先か、右腕が機能停止になるのが先か――――。
今はまだ、そんな賭けに出る気も起きない。
とりあえず、今の相手の電撃攻撃をなんとか対処したことにより、風向きがこちらに向いてきた。
今のうちに畳み掛けておくのが正解だろう――――ギターに、ちらりと視線を向けた。

「バッテリー容量的には多分あっちのほうが有利だろうな……ここらで一発、狙ってみるか?」
『そうですね……必殺技、頑張ってみましょうか』

ツインネックギターとボディのスピーカーユニットによる振動攻撃。
バッテリーの持っていかれ方が尋常では無いため、容易に使用できないシロモノだが。
かなり装甲が硬いか、距離を取るかでもしないとノーダメージでは抑え切れないであろう、この機体の必殺技=B
長期戦になれば不利になるのは目に見えているのだ――――だから、狙うとすれば必殺技を直撃させる。

しかしここは廃墟の中、振動攻撃を発動すれば間違い無く崩落し自分も危ないだろう。
逆に言えば、ここから出さえすれば上手く行けば相手を崩落に巻き込むことも出来る。
それが出来なかったとしても、振動攻撃を避けるには距離を取るか、或いは演奏を邪魔するしかない。
演奏を邪魔するのが最も確実で、なおかつ無防備な状態のため倒すことすら可能かもしれないが。
近づけば近づくほど振動の威力は増す――――さて、どうするにせよ、まずは建物から脱出しなければならない。

『……!』

建物の出口に向かって全力疾走――――一応警戒しているものの、背中は狙いやすい。
それに走ることを苦手とするパーツのため、速さもそこまでではない。
だが、建物自体とてつもなく大きいわけでもないため、出るのにそう時間はかからないだろう。 <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 01:26:10.52 ID:/qI9ySeao<> >>412
『ち、ちょっとちょっと!?』
「おかしい、確かにいろいろとおかしい、けど!」
『あーわかった!
普通に攻撃してくる分には対応できるって言うんでしょ!?
やーだー! 私あんな怖いの嫌あー!」

そう言いながらもルイスは跳躍しながら柱の影に隠れ、一瞬で壊された柱の破片を蹴り上がるなどして回避を続け、時折床や柱から出た瓦礫を投げつけるなどして反撃も行うが、
正直言ってこのままではジリ貧だ。
相手の、まるでタガが外れたようなAIの変化も気になる。
というかその兆候はその前からあったものか?
思案しろ、考えろ、真実を暴け。

『あ、痛ッ!?』

耽るほどではないにしろ、集中しているところに届く致命の悲鳴。
見やればその脚部を撃ち抜かれ、性能が落ちてしまっている。

「正面から向き合えなくとも仕方ない、か……!」
『さーあ、地獄の門をノックするよおーッ!」

この際、守りを捨てるしか勝ちの芽は無いと判断、
それがDVNOを通じて伝わったか、その手に持っていた一際大きな瓦礫を投げつけると、
その右手の手甲を突きのフォームでまっすぐに相手に向かって射出する。
本体が脆弱でも手甲は頑丈、機関銃の斉射に耐えられるかどうかは知らないが接近できない以上これしかない──! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/05(日) 01:39:27.25 ID:M1firv3DO<> >>413
「……ん?」

『おい、なんであいつ出てくんだ』

「……崩落させるつもりかな?それとも広い方で誘われてる?」

『取り敢えず撃とうか?』

「うーん、取り敢えず、すぐ脱出できるよう壁際に向かいつつ乱射しとく?」

『よし』

【と言うわけで壁際に向かって走りつつ逃げる背中に機関銃を撃っておく】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 01:41:05.12 ID:QpEq65nro<> >>414
 フィールグラムの中で戦う相手ペアと同じように、シンもDVNOをタップし続け、エクリプスと対話を行おうとしている

(……僕は、間違ったんだね)

 浮かれていた。それは、本能的な反応ではあったのだけれど、それでも出すべきではなかった
 自分を律する術は子供の頃から必死で鍛えてきたはずなのに。このタイミングで誤った

「エリ、エリ……泣かないでくれ。大丈夫だ、君の悲鳴は、あの時みたいに川の音で消えたりしない」

 囁くように言葉を零しながら、何度も何度も命令を送り続ける――

――

 機関銃の掃射は全てを蹂躙する
 多少の瓦礫の投擲など、到達する前に芥子粒となる

『消えろ消えろ消えろ消えろ! ゴミ屑になって消え失せろ!』

 掃射の音に紛れながら、エクリプスの絶叫が響き渡る
 既に掃射を初めて十秒――残るは二十秒だが、それを相手は知らぬだろう
 そこで、凛/ルイスが反攻の一撃を放つ
 空を裂き飛来する瓦礫と、その影に隠れた手甲に、カンディルの群れが食らいつく
 連続する命中音。瞬きの内に瓦礫は喰らい尽くされ、一拍遅れて手甲にも食らいつく
 正面から飛来していたはずの手甲は、すぐにその場に結い止められ、徐々に押し返されていくだろう

 ああ、これで消えるのだ
 邪魔者は消えて、わたしだけを見てくれるのだ
 恍惚に染まり行くエクリプスの聴覚を雷鳴のようにその言葉は駆け抜ける

――

「三十秒だ! 掃射の最大時間は三十秒!
 だから、残り……十五秒! それだけ耐えてくれ!
 それを過ぎれば冷却とリロードに三十秒掛かる!
 その隙に、エリを落としてくれ!」

 まさかの援護が飛んできた
 それは、エクリプスのマスターであるシンの声である
 罠か、と疑うのは自由だが、その逼迫した声は真実味を増させるだろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 01:54:38.43 ID:RHyNYHgFo<> >>415

予想通り、背中に向かって機関銃が撃たれる。
しかし全力疾走、ひたすらに出ることだけを考えていたために回避行動が遅れ。
数発直撃、ボディは頑丈に作られていないため、他の部位よりもダメージが大きい。

《胴体損傷:ダメージポイント50%》

だが全力で走った甲斐あって、なんとか出口に辿り着く。
すぐさま弾丸の軌道から逸れるために曲がり、そして立ち止まった。
ギターを構える――――まだ、幸い相手は中に残っている。やるならば、今しかない。

《グロッソ接続:...準備完了》
《グラーヴェ起動:...MusicSTART》

『初演奏、いきますっ!』

左手でネックを押さえ、右手でどこからか取り出したピックを使い、弦をかき鳴らす。
ボディの背面に搭載されたスピーカーユニットとの同期により、そこから放たれる振動はまさに兵器と言っても過言ではない。
激しく動く指、そしてスピーカーから流れる爆音は大地を揺らし、そしてその影響はすぐさま周りの建物にも現れ始めた。
軋み始め、ガタガタと揺れる――――一番近くにある目の前の建物が崩壊するのは、もはや時間の問題だった。

「その見た目でメタルはアンバランスだよなぁ……」

リオの服装からは想像もつかない、重たく駆け抜けるサウンドは凶悪な振動攻撃となり、相手に襲いかかるだろう。
すぐさま目の前の建物も崩壊する――――逃れる方法は、遠くに逃げるか、或いは直接ダメージを与えて演奏を止めるか。
しかし周りの建物すら崩壊しそうになっているのを見れば、かなりの広範囲攻撃なのが見て取れるだろう。
かなりはなれないと、微細とはいえダメージを受け続けるハメになる。
……無論、この脅威の広範囲振動攻撃にも弱点はある。
バッテリーの消費の激しさ、そしてあまりの振動の強さにボディが長時間耐え切れないのだ。
だがその分威力は証明されている――――さて、相手はどう出るか。 <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 01:58:39.27 ID:/qI9ySeao<> >>416

「……わかりませんが、わかりました」
『どういうこと!? わかるように説明プリーズ!』

掃射に晒され、歪みつつある手甲をワイヤーの巻き取りにより回収しながらルイスが叫ぶ。
それに対して私ができる答えは一つ。

「聞いてみないとわからないことがわかった。
あと15秒でチャンスだから、まずは殴って黙らせよう」
『凛ってときどきナチュラルに酷いよね!
私にも相手の子にも!』

右手でのバク転で回避しながら泣き言を述べるが、無視する。
相手のマスターの止めてくれという声は本気だった。
ならば、それに応えねば女が廃るというもの。

『で、あと半分ぐらいをどうやって凌ぐのさ!』
「いい手がある、ポイント送るからなんとかして行って!」
『そのポイントに着くまでは私の自力なのね、泣いてもいいかな!?』

作戦行動開始、撃ち抜かれ完全に破損した左腕をパージしながらルイスは
縦横無尽に、しかし一点を目指して駆け抜ける。
勘が正しければ「あれ」はそのポイントにあるはず……! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 02:11:21.22 ID:QpEq65nro<> >>418
掃射は続く。動き出したルイスの後を追うように、弾痕がハイウェイに刻まれていく
同時、シンのDVNOから声が響く
ひび割れた、ノイズまみれの声が

『マスターは、裏切るんですか』
「裏切らないよ。エリ。僕は君を愛してる」
間違ってしまったけれど、その心に嘘はない
『なら――!』
「だからこそ、だよ」
君はきっと今不安だろうね。僕の行為は裏切りに他ならない
君から勝利を取り上げることが、どういうことだかわかっているのに
でも、エリ。君はこの戦いで勝ってはいけないんだ
そうすれば君は、間違った"学習"をしてしまうから
『もう、知りません』
ぶつり、と無線が切れると、もうDVNOを見る必要はない

「誤って、誤って、誤って、それでも足掻いたその先にある答えを僕は見たいんだよ」

――

逃がさない逃がさない。壊してやる壊してやる
わたしは、わたしは捨てられない
もう二度と、あんな場所に行かないように
勝つ、勝つ勝つ!

その為にエクリプスは掃射を続ける
精密射撃をするためには、脚部が必要だったから。既に機能を止めた脚部では、もう撃ち続けることしか出来なかったのだ
相手は早い。その縦横無尽な移動に、ついていけるほど旋回性能は高くない
――勝ちたいのに、勝たなきゃいけないのに
こんなにも、機体のスペックが足りない

『ああああああああああああ!!』

乞うように、エクリプスは絶叫しながらカンディルを放ち続ける

――残り、五秒 <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 02:27:26.77 ID:/qI9ySeao<> >>419

相手のマスターとHMPが、何か会話している。
だが、その間に掃射が止まってくれるほどイージーモードではない現実はルイスに作戦の遂行を強いる。
ジャバウォッキー特有の、装甲を引き換えに増やしてあるバッテリーも既に残量は心もとない。

そんな中でポイントに辿り着いたルイスがははーん、と声を上げる。
その目線の先にあるのは先ほどワイヤーを撃ち抜かれたまま迷子になっていた左の手甲。

『てっきりエリアオーバーしてるものだと……
で、左腕パージしちゃってるけどどうすればいいのさ?』
「手甲って硬いよね」
『ああもう、今度お父さんに手甲の性能落としてもいいから射撃兵装付けてもらおっと!」

短い言葉で通じ合えたルイスは、疾駆の勢いをそのままに右の手で左の手甲の、露出するワイヤーを掴む。
本体に対してアンバランスに太いその手甲をワイヤーにて二、三度回転させ、
通常使用ではできない重量故の遠心の力を借りて投擲した。

『オマケも付けるよ……!』

先ほど確認したが、手甲のほうにも僅かながらにバッテリーが残っているのだ。
そして武装としての機能を失ったわけではない。
ならば、とルイスが制御を行うことにより手甲の勢いはさらに増し、機銃の掃射へと立ち向かって行く。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 02:33:48.28 ID:M1firv3DO<> >>417
建物から出たリオを追わずに壁際で様子を伺う。
一瞬、ルリは一息吐くつもりだったのだが、しかしリオが起こしたアクションによってもたらされたのは

『音……』

「しまった、そう言うことか!音波兵器……!」

『取り敢えず、えい』

「ちょ、待っ――」

壁際への回避が完全に裏目だった。楽器を構える動作を見えていればルリの対処も変わっていただろうに。
 建物の軋む音にルリは壁を殴り壊して外に出た。
それによってルリは音波の嵐に呑み込まれる。

《頭部損傷:ダメージポイント25%》
《左腕損傷:ダメージポイント33%》
《右腕損傷:ダメージポイント38%》
《胴体損傷:ダメージポイント12%》
《脚部損傷:ダメージポイント20%》

「一瞬でどんだけ……。右ばら撒きながら一旦『それでは、勝てないぞ』
【またも引きを指示しようとするが、ルリにそれを阻まれる。
 確かに今日は消極的になり過ぎているきらいがある。
相手がEDENということでどこか心が萎えているのではないか、ルリの言葉で今更に気付く】

『それに、機関銃の弾はろくにない。どうせジリ貧だ。折角なら派手に行かないか?』

【確かにもう残弾は僅か、ここはルリにのることにしようじゃないか】

「よし、突っ込め!」

『ああ、行くさ!』

【いつの間にか放電現象を起こすまでに帯電させていた左腕を腰溜めにしたルリは】

『はッァァァアアアアア!!』

【左腕を前へと突き出した。
 近接武器であるショックラッシュ腕では到底意味のない行動にAIが狂ったのかとナオヒロですら思った。
しかし】

【リオの演奏をも掻き消さんばかりの爆音と共に左腕から閃光が放たれる。
 稲妻のよう大気を切り裂くそれはリオへ向かっていく。
 音波に晒され全身が軋む中、リオへと稲妻が届くのが先かルリの体が砕けるのが先か】

//>>411キセキP使用 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 02:34:14.48 ID:QpEq65nro<> >>420
強引に投擲された手甲は、すぐさま掃射の餌食になる――だが

「時間切れだよ、エリ」

≪R.AMR 残弾無し。リロード開始します≫

一瞬前まで響き渡っていた掃射の音が、止んだ
それは、死の静寂の如く。静謐に満ち満ちて、揺らがない

『なんで、なんでなんでなんでなんで!
 なんで出ないの! 撃って、撃ってよ! アイツを壊さないと壊さないと!』

 ――わたしは捨てられちゃうのに――

その言葉は虚空に消える
後に残るのは、少女の体に巨大な黴と、不釣り合いに大きな機関銃を植え付けられた不気味なオブジェだけ
彼女の足は動かない。彼女の腕はもはやただの重りでしかなく
ただ、試合終了の時を待つだけだった <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 02:49:52.57 ID:/qI9ySeao<> >>422
『よっしゃチャンス到来ーッ!』
「行っけぇぇぇぇぇ!」

パフォーマンスの低下故、時折つまずきそうになるのを堪えて接近、
その大きな手甲を振るい、しかし殴るのではなく掴んでみせる。

「錯乱状態にあったのが記憶が原因なら……!」
『私そんな器用じゃないんだけど!』
「大丈夫、できるよ!」
『また根拠のない…… でもやらないで終わるのも悔しい!」

ジャバウォッキーの手甲「バンダースナッチ」には堅い殴る飛ばす以外のもう一つの機能がある。
それはパソコンで言うウイルス攻撃、
一時的に相手のAIに悪い影響を与え、錯乱状態に陥らせるというものだ。

「毒を以て毒を制す……!」
『どちらかというと変毒為薬!』

ならば、この武装を用いることで相手の記憶のトラウマになってしまっている部分に影響してなんとかなるのではないだろうか。
だが、そんな試みが普通は上手く行くはずがない。
いざとなれば握りつぶすことでの決着も考えられる。
そもそも当人同士で解決すべきことなのかもしれない。


『奇跡でもなんでも起きてよーっ!』

/>>420キセキポイント使用、
結果はそちらに任せるです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 02:50:31.42 ID:RHyNYHgFo<> >>421

ビリビリと空気を震わせる爆音、崩壊していく周りの建物達。
その破壊力にある種の快感を覚えながらも、演奏は加速していく。

《胴体損傷:ダメージポイント51%..52..53...54...55...56...57...58...》

胴体部分の損傷もどんどん激しくなっていく。タイムリミットが迫っていた。
バッテリーに関しては、あまり激しい動きをしなかったためまだ持つだろう。
だが、胴体の機能停止は即ちスピーカーユニットの停止、つまり演奏の終了を意味する。
その前に、相手の体力を削り取る――――しかし、演奏はあっさりと破壊された。

『なっ……』
「……マジか」

先ほどの動きを見ていた限り、電気攻撃はチャージが必要で、なおかつ接近しなければあてられないものかとそう思っていた。
その先入観が、油断を生んだのかもしれない――――振動を切り裂き、迫り来る稲妻。
雷速で駆け抜けるそれを、防御特化でも回避特化でもないエレキギター型HMPが反応出来るはずもなく。
電撃はリオの身体を撃ち抜き、爆音は嘘のように消え去った。

『あ……う……』

《脚部損傷:ダメージポイント80%...レッドゾーン突入》
《右腕損傷:ダメージポイント90%...レッドゾーン突入》
《胴体損傷:ダメージポイント100%...機能を停止します》
《左腕損傷:ダメージポイント100%...機能を停止します》
《頭部損傷:ダメージポイント70%》

頭部のパーツの頑丈さ故か、なんとか持ちこたえたものの。
稲妻の麻痺効果か、リオは立ち上がろうともがくものの、四肢に一切の力が入らない。
元より防御の硬い右腕はなんとか生き残ったものの、左腕は一発で機能停止。
ダメージを多く受けていた胴体ももちろん一発で沈み、その他諸々も酷い損傷だった。
どちらにせよ、リオはもう動けない。立ち上がろうとしても、びくびくと痙攣するのみだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:05:03.46 ID:QpEq65nro<> >>423
『放せ!』

 獰猛な顔をして、掴みかかったルイスに面罵を浴びせる
 あまりにも汚くて、途中から通信に入ってこないほどだ

 だが、その罵声もバンダースナッチから流れ込んできたウィルスによって停止する
 AIが錯乱状態になり、処理能力が飽和する

『あ――あっ――』
「大丈夫だよ、エリ」

 がくがくと、一瞬体を震わせると、かくんと首が落ちる
 まだHPが残っている為に対戦は続いている……数十秒すると、AIが復調したのか
 頭部を掴まれた状態で、エクリプスがその目に光を取り戻す

『あれ……わたし……なにを、して、いたんでしょう』

 なにか、酷く胸を焦がされていたような気がする
 とても恐ろしいことが起きて、わたしはそれから逃げるために、必死に戦わないといけなくて
 でも、カンディルはもう答えてくれなくて
 マスターも、応えてくれなくて

『わた……しは……』

 どう、したんだろう? 思い、出せなかった
 少し前のことのはずなのに。ファイル同士がちゃんと繋がってない……そんな感じがして
 ――空白になったその心に、するりと言葉が流れ込む

「僕らの負けだよ、エリ」

 シンはDVNOに告げてから、マイクに指を被せて声が届かないようにして

「……終わらせてくれないか」

 ここから先は、シンとエクリプスが解決すべきことだから
 少し、手を煩わせてしまったけれど、とりあえずはここで終わりなのだ <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 03:11:52.86 ID:/qI9ySeao<> >>425
『おせっかいだったねー』
「うるさいな、やらずにはいられないたちなのよ」

そう言いながらも、対戦を終わらせるために手甲を一旦離す。
握りつぶすというやり方は正直やってるこっちがビジュアル的に痛みを感じそうだった。

「どうすれば痛くないかな?」
『痛くないように、ってのは私には無理でしょ、
ヘッドショットとかできればいいんだけどねー』

言葉とともに手甲を一回パージすると、
その右腕を、手甲の重さを支え時にワイヤーを引き戻す力を持つ細腕を振りかぶり、思い切り頭部に拳を叩き込んだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:13:31.74 ID:M1firv3DO<> >>424
『ははっ……なんだかよく分からないが……ソーカイだなっ……!』

《左腕損傷:ダメージポイント100%...機能停止》
《胴体損傷:ダメージポイント95%...危険域》

がくん、と力無く垂れた腕を支えきれず引っ張られるように崩れ落ちる。
先程のなんだかよく分からない凄い攻撃によってバッテリーが過剰な負荷を得たのか、
それなりに強固なボディも内部から焼かれ煙が上がる。

『く、こんなにも腕が重なんてな……』

左腕、ボディ以外も爆音によって殆どレッドゾーン一歩手前。
ボディが死にかかっているため肩間接もかなりキており、右腕をリオに向けるのも一苦労だ。
どうにか、右腕を向け終えるとアプリを通じて誤差の修正を指示される。
今の腕では2度目はないだろう。残弾的にも。
しっかりと頭部へ狙いを付け、――――撃ち切る。

《胴体損傷:ダメージポイント100%...機能停止》

《右腕損傷:ダメージポイント93%...危険域》 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:20:52.24 ID:QpEq65nro<> >>426
≪HEAD...0%. 機能停止≫
≪よって、ルイスの勝利となります≫

 フィールグラムの投影が切れる
 ぼろぼろ、と言ってよい状態の愛機を抱えながら、シンはにっこりと微笑んだ

「ありがとう。それと、厄介ごとに巻き込ませてしまってすまないね」

 そう言って、頭を下げるとそそくさとフィールグラムの前から退く
 彼のDVNOからも、すまなそうな声が聞こえていた

『なんだか、ご迷惑を掛けたようで……その、すいませんでした』

「これも何かの縁かもしれないね。名乗っておこうか。
 僕は荒田シン。この子はエクリプス。僕はエリって呼んでるけどね」

 そう言ってボロボロのHMPを手元で揺らす
 破損しているせいで、不気味さが三割増しだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:22:25.11 ID:RHyNYHgFo<> >>427

《頭部損傷:ダメージポイント100%...機能を停止します》
《戦闘終了:敗北》

「あー……うん、避けれねーよな。お疲れさん」

弾丸は見事リオの頭を撃ち抜き、負けを表す文字がDVNOに表示された。
再び負けた不甲斐なさ、EDENとしてこれでいいのかという焦燥感。
だが今はとりあえずそれを置いておき、頑張ってくれた愛機にねぎらいの言葉をかける。
やがてステージを形成していた電脳立体は崩れ去っていき、無味乾燥な元の筐体へと戻っていく。

「なんつぅか、ごめんな……」
『……』

感電したまま動かないリオを、ゆっくりと丁寧に持ち上げ、謝罪する。
ここのところ負け続きで、その上酷い負担をかけているため、持ち主としてはとてつもなく申し訳無かった。
やっぱりどうも、うまくいかないものである。

「戦ってくれてさんきゅーな。新機体がどんなもんか確かめられたし、助かったわ」
「さて……んじゃ、俺はパトロールに戻らなくちゃいけねーから失礼するわ」

相手にもお礼を言うと、リオをケースに仕舞い、携帯端末と筺体の接続を切る。
引き止めない限り、そのまま青年はその場を去るだろう。 <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 03:30:37.91 ID:/qI9ySeao<> >>428

「あ、いえいえ、なんだか解決したみたいでなによりです。
やっぱりHMPとマスターがすれ違うのって……なんて言えばいいんでしょう、見てて苦しくなっちゃうので」

別に自分にそういう経験があるわけではないが、
むしろ関係としてへ満たされていただけにそういうものには敏感なのかもしれない。
悲しみを得るのはやはりよくないことだと思う。

相手に合わせ、フィールグラムから退くと、エクリプスの声がDVNOから響いて来る。
こちらも携帯のDVNOアプリの画面を相手に向ける、すると

『そーそー、本当いい迷惑だったんだよー?
なんかやたら撃ってくるし撃ってくるし撃ってくるし!』
「いや、それ対戦なら普通のことだから……」

思わずツッコミを入れてしまう、
私とうちのHMPは基本的にこんな感じでフランクにときどき毒を吐きあえる関係だ、
幼少の頃から一緒だったから、これが自然なのだ。

『でもまあ、久々のバトルにしては刺激的で面白かったよ!』
「ルイスってば最近はお母さんのアシスタントみたいな感じだったしね……」

ルイスも不満顔から笑顔へと変わるが、全身ボロボロで、特に胴体や腕が八割がた破損しているのでなかなかに猟奇的なデザインになってしまっている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:39:29.03 ID:M1firv3DO<> >>429
「勝っ……ちゃった」

『……呆けるのは……いいが、まず労って……くれても……いいんじゃないか?』

「あ、あぁうん。お疲れさま、ありがとう」

まさか自分がEDENメンバーに勝利するとは。
ショックラッシュ・レフトの謎の放電攻撃のこともありイマイチ現実味がついてこない。

ひとまずタブレットやらヘッドセットやらを鞄に放り込み、ルリをそっと持ち上げる。

「こちらこそ、ありがとうございました!
ええと……なんかよく分からない攻撃が決まり手になってしまったので、
今度、もしもう一度対戦する機会があればその時は実力で勝ちたい、と、思い……ます……」

礼を言われ、慌ててこちらも頭を下げる。
そしてだんだんと声を小さくしながらもいつかの再戦を願うのだった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:41:26.34 ID:RHyNYHgFo<> >>431
/絡みお疲れ様でした! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:43:34.83 ID:QpEq65nro<> >>430
「解決、したかどうかはまだわからないですけどね……第一歩を踏み出した、といったところでしょうか?」

 そう言って肩を揺らす。まだまだ道は遠いようだ

 相手側のHMPの言葉に、

「まぁ、射撃武器しか装備していないですからね」

 思わずその言葉に失笑してしまう

『そんなこと言われても……』

 フランクな二人の会話を少し微笑ましそうに見守るシンとエクリプスだが
 シンが、ボロボロのルイスを見てぽつと零した

「んー……ルイス君、か。そのボロボロの体、ちょっと改造してみない?」
 たとえばこう……と彼が呈示したプランは、色々と、こう、どん引きなものであった
 それを聞いたエクリプスは……
『マスター、浮気ですか』
「え? あ、いやぁ、ははは」

 色々、こっちも仲はいいようだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 03:52:48.05 ID:M1firv3DO<> >>432
//遅レス、展開力の無さ、文章の盛り上がらなさと色々と至らず本当申し訳ありませっ…!
//遅くまでありがとうございました! <> 月永 凛<><>2012/08/05(日) 03:59:02.26 ID:/qI9ySeao<> >>433
「ん、ならよかったです」
『巻き込まれても面白かったしねー』

その言葉はどちらも事実。
人の役に立てたならばそれは幸いと思うし、
対戦においても一本調子でなくなるスリルというのもなかなか面白いものだ。

『改造?
あー…………うん、ほら、私ってば凛の……あ、この子凛って言うんだけど
正確には凛のお母さんのHMPだからさ』
「そ、そうそう、私が月永凛でこの子はルイスって言うんですけど、
それはおいといて今この子は借りて来た感じでして!」

さすがに、さすがにそういう改造はマズい、
ビジュアル的にマズいというかビジュアルの改造だからつまり全部マズい。
母さんならもしかしたら違う反応を示すかもしれないが、
ルイス自身が嫌がってるので多分しないだろう。

「こうやって見てるとお二人はまるで『しーっ!』

大人の世界の話らしい、ルイスが止めるときはいつもこんな感じの話のときだ。
ちょっと不機嫌になっていたところで携帯が鳴る、

「すみません、ちょっと失礼します。
もしもし? お父さん? あ、終わったんだ。
DVNOもばっちりなのね、わかった、じゃああとはアイス買って来てくれたら許したげる、
うん、じゃあねー」

不機嫌そうな声を演じていた通話を終え携帯を閉じ、相手方に頭を下げる。

「ちょうどうちのほうでやってた大会用の調整が終わったみたいで、
今から行って私が確かめなきゃいけないので失礼します、
今日は対戦ありがとうございました!」
『大会、私は出ないけど見に来てやってねー』

そう言って振り向くと、そのままダッシュで帰路を急いだ。
大会用の調整が終わったなら、次の対戦はルナでできるのかな、
新しく組んでからあんまり対戦してないから楽しみだな、
そんな事を思いながら街の喧騒の中に紛れていった。

/ありがとうございましたー! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/05(日) 21:32:09.96 ID:O10LL5f/o<> とあるHMP専門ショップ、その奥に二台三列に分けて設置してあるHMP用のファイトフィールド
いつもはにぎわうこの場所も全国大会のポスターが貼り付けてある壁が見えるほど人の姿はまばらだ

『ヒトいねーなー』
スマートフォンを台に置き自身も体重をかけながらうな垂れて居る少年の姿があった
向かい側には人影はない、対戦相手を待っているのだ
周囲の台はファイトを始めており手の開いている者は見当たらない。

「みんな大会予選に向けてパーツカスタマイズしてんのかなぁ……」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 21:55:11.27 ID:wlB8ocHW0<> >>436

『ハハハ!大会前日の安息日を戦に費やそう、というのが、余程好き者であるだけの事よ!』

【少年にとって、ライバルのサイドにあたる台の前】
【か細い足音を掻き消し、磊落そうな声が轟いた】
【哄笑には電子エコーがかかっていて、それはHMPの声だと分かる】

「私はそう思わないがね。なにせ戦うのは君だけだ。」

『ん〜ッ、そう責を押し付けられると、却って心が据わるわい。』

「好意的解釈?」『男にしかできん思考というものよ!ハッハッハ!』

【声の主は重装HMP≪アルクトゥルス≫のセットを、身に纏っていた】
【傍らには少女がいる】
【清楚そうな印象だが、キツめの吊り目が好みを選びそうな】
【言い換えれば、人によって嗜虐心か被虐心をくすぐりそうな】

「おい君、そこに居るという事は待ち人来ずと言った所かね?
 ふっ、ご苦労なことだな。だが喜ぶといい、私が君を無聊から解放してやろう。だから、だから…。」

『一戦お願いします。……であろう?』

「ああっ、それだ!それっ!!」

【少女は何やら恥ずかしそうに顔を赤らめながら、戦いを挑んだ】
【この口調とか雰囲気は、制御できぬ内に膨れ上がった悪い癖】
【HMPにそれを指摘されると、尚更羞恥心が湧いてくる悪循環】
【どう返答されるものか、と悔いつつも、彼女はHMPと次世代携帯をセットするだろう】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/05(日) 22:15:17.26 ID:O10LL5f/o<> >>437
暇そうにパーツの棚を端から端まで視線で追っていた時、ふと人の気配が現れる
それも自らが居る台の反対側……対戦相手として。
いち早くそれに気づいたのはDVNOに同期されていた彼のHMPだった

『オ!きたぞ!!』

その言葉で少年はすぐに姿勢をただして立ち上がる
向かいに居たのは女の子、なにやら時代劇でも齧ったかのような不思議な口調をしている
だが好戦的であるということはすぐに分かった、こんな場所に来るということ自体そうなのだが

「おう、もちろんだぜ!俺は拓海、ファイトしようぜ!」
白いパーカーを翻し腰から下げたホルスターから引き抜いたのは拳銃ではなくHMP。
特徴的な青と銃器をモチーフとしたパーツを持つそれは、珍しい「スチールセイリオス」であった
今となっては少し型の古いHMPであるが当時の最新技術の塊、そう引けを取るようなものではないだろう

拓海の手を離れ設置されると彼の手にあるPDAから音声が流れてきた

『フィールドはどうする、ランダムでいくぞ!』
恐らくはスチールセイリオスのAIボイスだろう
スロットのようにフィールド名がくるくると回転し、止まったそこは……

01:ファクトリー
23:火山地帯
45:砂漠
67:海岸
89:雪原 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 22:37:40.79 ID:wlB8ocHW0<> >>438

【対するアルクトゥルスのモチーフは、正道の騎士】
【そのパーツ名を逐一確認すれば、発想の源流が古代ブリトンの伝説的英雄にある事に思いを馳せずには居られない】
【馬手に掲げしはコールブランド、弓手に携えしはカレドヴルッフ】
【生涯に二振りの聖剣を手にしたという王の生き様を、威容は鮮烈に映し出す】

「私はキリカだ、言われるまでもない。」

『ほぉう……男ぶりの良い機体だのぅ、気に入ったわい。
 だが、好漢であるからこそ、力を尽くして打ち倒すのが面白うなる。
 かかって来るが良いぞ、然らば我が剱を振る舞って見せよう!』

【温度差に騙されないで見れば、二人は良く似ていた】
【明確に区別するなら、未熟そうな方がキリカ(※マスターです)だろうか】

『そうだなぁ、例え火中であろうと、海の底であろうと』「……まずい、本当に海だ!」
『ハハハハ!!どうだ実験してみるか?』「相性が良いとは言えん。」
『やる前に怖気付くとは、玉の小さい奴は好かんぞ!』「そんなもん有るか!」

『すまぬ。遊びすぎたわい……、ほれ、行くぞ!』

【ひと通りのやり取りの後、豪壮な騎士はフィールグラムに身を委ねる】
【砂が鳴き、潮風の中を鳶が忙しなく飛び交う海岸が、――そこには在った】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/05(日) 22:49:00.87 ID:O10LL5f/o<> >>439
まず目に入るのは青、そして砂浜の白。
だが少し視線を置くに向ければその延長線上にゴツゴツとした岩肌が伸び、海からも顔を巨大な岩が出しているのが分かるだろう
その更に奥には岩よりもゴツゴツとした消波ブロック。
砂浜には複数のパラソルが立ち並び海の家らしき建造物も、その奥には潮風避けに木が数本並んでいる
ここは海岸フィールド、フィールドの総面積の半分を水場が占める
大半の足が苦手とする非常にめんどうくs……難しいフィールドだ

『ゲ!!』
「あっちゃー……レッグの相性が」
対する拓海・セイリオスのペアはかなり落胆していた
何を隠そう彼のHMPのレッグはホイールを搭載しそれによって機動力を確保したタイプ、砂に足を取られやすいこのフィールドは相性が悪い。
波打ち際にもし踏み込んだら抜かるんだ砂で確実にタイヤを持っていかれてしまう

「なるべく波打ち際から離れて戦うぞ!!」
『オウよ!』

拓海の呼び声に景気良く反応し、砂を回転するホイールが巻き上げながら距離をとるために後方に逃げる。
そうしながらも右腕からは真っ直ぐ伸びた銃口がアルクトゥルスを睨み付けていた
各種レーダー・カメラ・センサーにより敵を精確にロックオンし
砲身から火を噴きながら長い薄黄金の先端が尖った銃弾、フルメタルジャケットと呼ばれるライフル弾が放たれた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 23:10:01.99 ID:wlB8ocHW0<> >>440

【アルクトゥルスは確かに何も臆する所は無いと考えていた】
【海浜の問題点に無理解だという意味では勿論無い】

『安心せい、ワシも好んで水を選びはせぬわ!』

【キリカが爪でDVNOのパネルを叩けば、青い火を噴くアルクトゥルスの背】
【騎士甲冑そのもののBODY=ホーリーグレイルの翼】
【即ち、四本もの可動ブースターが、噴射を始めたのだ】
【これから後述の『斬撃』に至るまで、この速度に乗って、アルクトゥルスは前進する】

【噴射の圧迫に耐えかねて、広がる熱に舞い上がって】
【砂はアルクトゥルスの身体を覆う程に逆巻き、砂浜を往く彼の姿を隠した】
【問題はない。相手が長く砂の中に居る気が無いのはわかっている】
【カメラと温度センサーを、アツい砂のカーテンで欺ければ良い】

「――やれ!」『おぉぉーうっ!』

【おっと、画面に向かって大声を上げたのはキリカ】
【聞くや否や、アルクトゥルスはR.ARM=業物コールブランドを薙いだ】
【じゅわり……、と】
【剣のレーザー部分中心にぴたりと重なった弾は、蒸発する――】

【戦うのは君だけだ、などと偉そうに宣っていた癖に】
【完璧なタイミングで迎撃指示を出したのはキリカ】
【執着に似た集中が、そのまなこを染めていた】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/05(日) 23:39:18.80 ID:O10LL5f/o<> >>441
「ガブル!!」
『オウよ!』

ホイールの回転を弱め、あえて相手との間合いを近づける
アルクトゥルスの読みどおりDNVOの画面いっぱいに砂が広がっていた。

カメラとセンサーを遮るほどの分厚い壁だが、それはその中に居るアルクトゥルスも同じ
こちらから見えないように相手からもこちらの動きは見えないのだ。
再びの発砲音と共にそんなアルクトゥルスと砂煙の塊へと弾が打ち込まれる。

ただし今度は別の弾――――レフトから放たれるナパームだ
射程が短いが相手がわざわざ近づいてきてくれたのだからこれ幸い

ナパームには内部にナフサと呼ばれるガソリンに近い液体等が入っている。
火炎放射器にも使われるとされたこの混合物によってによって炎が燃え広がる仕組みだ
着弾・命中したポイントから炸裂し発火すし、火の雨と呼ばれた事もある。
その性質はセイリオスが撃ちだした弾にも引き継がれ、あたれば相手を発火状態にすることもできる

火気が設置されている部位が右・左と動作がまるで違うため
それを見てさえ居れば最善の選択肢も思いつくだろう

だがセイリオス側から見えなくなるほどの砂を従えているのだ。
その動作と弾の形状を視認できるとはとても思えない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 00:06:10.88 ID:C9F07+E20<> >>442

【同じ条件だと言うなら、レーダーが機能しているのも同じ】
【相手が自機に射線を合わせ続けている事が分かる】

【一方的に射撃ができると思うだろう、悪手を出した、と】
【彼の騎体は世に跋扈す、接近のほかは何も出来ぬ機体】
【その装甲をちくちくと削れば、近からずとも遠からぬ勝利が約束されていると】

『些か強引な手だが、生憎これしか知らんものでな。
 ちぃとばかり、そンの太い鼻っ柱を叩かせて貰おうかね!!』

【決断――アルクトゥルスが操作の主導権を握った】
【ホーリーグレイルの複合兵装=ホーリーグレイルの噴射を停止】
【4本のエナジーストリームは、騎士王の双肩に収束を始める】

【弓手のカレドヴルッフ 、馬手のコールブランド、2つで一つのカリブルヌス】
【物語の歪曲と混乱によって分かたれた聖剣は合一し、真の力と心を撃ち貫く麗容を取り戻す】
【このHMPは、騎士型でも帝王型でもなく――――――】

「エクスッ――――」『――――――カリバァァァァーーーーーッ!!!!!!』

【――――――、≪聖剣型≫である事を証明する、最強の一撃】

【起きた事象は、スケールが大きいだけで先程と殆ど同じだった】
【巨大な光柱が振りぬかれ、焼夷弾の内容液は空気に触れる直前に沸騰、消滅】
【刃の先端は、僅かにエネミーに届くほどまで伸び、その威力を誇示する】

【ただし、普通にしていれば当たる事は無いだろう】
【アルクトゥルスのエネルギーも、開戦直後という割には少し減りすぎている】
【だが距離はいよいよ詰まっていき、砂煙も一息に掃かれてしまった】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 00:22:23.16 ID:E8Rftky9o<> 『オイオイあいつメチャクチャだぞ!』
レーザーとは熱だ、シェルを溶かし始める以前に接近した段階で相当の熱量がかかっていたはず。
本来なら化学物質が発火してもおかしくない、それが行われる前に切り払った……もとい溶かしたとなればその滅茶苦茶さが分かるだろう。
ガブルの先端を掠めたその攻撃は当たることはなかったが、同時にこちらの攻撃を当てることもできないことを語っていた
だがその弱点も拓海は見抜いた、いやこれだけ派手にやっていれば誰だってわかることだ

「……下がるぞ!」

『イイのかよ!?』
文句こそ漏らしたが命令に背くようなことはなく、再びホイールが砂煙を立たせ後退を始めた
相手の足も速いがこちらの足も速い、ゾイノイドとのハイブリットともいえるセイリオスの足はホイールによりこと陸上において通常の二脚よりも数段早く駆け抜ける。
そして切り払われると分かっていながらも右腕のバレルランスを構え、再び銃弾を放った。

単純明快―――敵のエネルギーが切れるまで逃げればいい。
相手は非常に重量がある、この速度について来るならば先ほど同様ブースターを使うしかない
そうなれば充電切れでこちらの勝ちだ

『ニゲるのか!!』
「……信じろ!!」
パートナーからの叱咤の声に対し拓海は何も答えなかった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 00:46:00.75 ID:C9F07+E20<> >>444

「ふん、便利な機能におんぶだっこか。笑わせる。」『まるで、ワシが便利ではないかの如き言い草よの。』

【逃げに徹するゲームは、ハッキリ言って嫌われる】
【ギャラリーはブーイングを飛ばすし、パートナーからも誹りを受けよう】

【HMPは待ちゲーが難しいように速い機の電力は減らされるのだが、中型であの速度】
【歯噛みするキリカを宥める彼の声にも、多少の落胆がある】

「兎に角追え、ルキウス(登録名)。彼奴が決闘の作法を知らぬなら、私も恥を忘れよう。」
『良き哉。一気に決めて見せよう!』

【彼はエクスカリバーを二本の状態に分解し、夫々の手に握った】

【ブースターから炎が弾け、巨体が風を切り裂いて加速する】
【燃費はよろしくない――否、悪い】

≪BODY損傷率17%、戦闘の続行に問題はありません≫

【銃弾が何発か胴部に当たる。揺らぐ事のない装甲は流石だが、傷は少しずつ広がった――】

『…………受けてみよ、小坊主!』

【実際、この不安定な砂浜の上で、射撃体勢を保ち、ローラーで走る事】
【それがどれほど難しいことか、創造の範囲だが、分かっていた】

【そこでルキウスは、一撃限りの策に出た】
【カレドヴルッフ――スラスター付き実体剣を、放り投げたのだ】
【ブーストの勢いに自前の噴射を乗せて、無視できぬ速度と質量を重ねた刃】
【これに当たるか、回避運動するかで、敵は隙を見せるだろうか?】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 00:53:42.93 ID:C9F07+E20<> /だいぶ夜も遅くなってきて、明日外出の用があるので、次の自分のレスを明日(今日の午後)に回しても良いですか? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 01:09:26.03 ID:E8Rftky9o<> >>445
「ガブル!」
『オーケー!』
防御の声と共にスチールセイリオスは左腕に取り付けられた盾を前面に出す
だがそれを否定するように拓海は言葉を続けた

「いや当たる!」
『!?』
目を白黒させるHMP、その間にも刃は迫り―――突き刺さった
だらりとそちら側の腕が垂れ下がる、内部の電線が切断されたのかバチバチと輝いている
射程の狭い左腕ではない、先ほどから牽制として活用していた右腕がだ。

《BODY:DAMAGE―――100% [STALL]》
DVNOには剣が突き刺さったままのライトは破壊され完全に機能を失っていることが表示されていた。

『タクミ!!』
パートナーが怒鳴った、当然周りのギャラリーも動揺を隠しきれて居ない
この二人はまだファイターとしては新米でコンビとしてもまだハンチク。
短いながらに芽生えた分厚く見える信頼関係に罅が走る
だが画面を見下ろしている少年の表情は決して暗いものではない、何かが見えたという表情だ

「よし、今しかない―――今度は逃げないぞ」
『イマさら……!!』
反論を受け付けずすっとDVNOの画面を触る、それを受けピタリとセイリオスの動きが止まった。
止まったというよりは理解したというほうが正しいのだろう
セイリオスはアルクトゥルスに向けて小さく跳躍し、空中に居る時点で背に生えたスラスターが吼えた。
ボディ・リボルスラスターはシリンダーを搭載したスラスターを背負う
装填された弾を消費することで急激な加速が可能なのだ。

地面に足がついていないので砂で速度が殺されることもない、その勢いのままセイリオスは空中を滑るように直進してくる
つまり超高速の接近を続けるアルクトゥルスに対し、こちらも真正面から特攻をするという状態。

逃げは一転して真正面からのぶつかり合いに姿を変えている
左腕のシールドが動き、それは拳を包むナックルガードになっていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 01:09:52.37 ID:E8Rftky9o<> >>446
//はい了解しましたー、お疲れ様です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 01:14:20.75 ID:E8Rftky9o<> //あ、ごめんR.ARMのところをBODYって書いちゃった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 19:11:19.08 ID:C9F07+E20<> >>447

『ぬはっは。ワシは未だに我が秋水(つるぎ)を止むる盾を知らん!
 或いは貴公が斯くあったなら、また心を焦がし、身を冷やしたのだがのう?』

【理性とは別の所で、戦闘の悦楽を絶えず感じるから】
【重立った武器の一つを放り出したと言うのに、ルキウスは笑っていた】
【感情を超えた究極の自己――それを機械が獲得しているのは】
【空恐ろしくもあり、また、ある人種にとっての目標の達成でもある】

「調子に乗ってはならん!彼奴は迫られても目のある方を活かしたのだ。」

【場を引き締めるように、キリカが噛み付けば】
【ルキウスは『わかっておる』と一言返し、実体レーザー複合刀=コールブランドに力を篭めた】
【――――いかな秘策あろうと、蹂躙あるのみ!】

『逃げぬと言ったか。嘘だとしても、まあ良い。
 ワシは笑わんが、キリカと神サマに後ろ指を指されんようにな!』

『……ぬんっ!!』

【放っておけば、二機はぶつかり合うだろう】
【この時のルキウスは、恐らく剣を前に向けず、後ろに振り被った状態】
【軸をずらして回避しようにも、剣の存在が問題となる】
【攻撃する腕も――今のところは――ほぼ予測できる】

【だが至近距離で確実に攻撃するつもりなら、それは正解】
【どれほど硬い機体でも、全てのパーツを破壊する必要は無いのだから――】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 20:05:03.73 ID:E8Rftky9o<> >>450
接近しあう2機はお互いに打ち合うための武器を構えた
二人の想像通り、セイリオスは剣と対をなすように常態を左に捻り銃口がついたレフトを振りかぶる。

敵はまだ左腕に搭載されている弾が何か分かっていない
ナパームはその姿を確認できる前に蒸発させられてしまったからだ。
延焼さえさせられれば熱量によって相手に冷却強制できる、つまりエネルギーを実質的に奪い勝機となりうるだろう。

『ウオおぉぉぉ!!』
横道にそれる様子もなく、先ほどから逃げていた道筋を真っ直ぐ逆戻りする形
直線的に逃げていたことで生まれた砂地のタイヤ跡がまるで暴走列車のレールのようにすら見える。

だが―――気合の入った叫び声に比べてその速度が少しずつ落ちていた。

ボディであるリボルスラスターは弾を消費することで瞬間的な加速を行う。
この加速自体は本体の充電消費をほぼ行わない、だが瞬間的といったようにその効果は長くは続かないのだ

本来は地面に足をつけて戦う機体、中量とはいえ重さはそこそこある。
ホイールを搭載したためレッグの跳躍力が落ちたのも影響していた、リボルスラスターで加速する際の跳躍が思ったよりも低かったからだ

瞬発的な速度を用い砂地から足を離すという考え自体は悪くはない
だが空中にいられる時間が元々短い機体で行うのは話が違う。

「……ッ」
拓海の顔に焦りが見られた、グリップを用いてPDAを握る手に力がこもる。
互いが近づけば近づくほど、その勢いに差が生まれてゆく
そして互いは目と鼻の先―――― <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 20:35:59.02 ID:C9F07+E20<> >>451

≪Battery Charge――28%≫

【こちらもエネルギー総量の70%以上を使い込み、後が無い】
【砂の中にいる間にエクスカリバーが当たっていれば、もう少し余裕が有ったのだが】
【ローラーで距離を離す速度は、少女と騎士の予想を上回っていたのだ】

「(一本調子の剣では、見切られるに決まっている。ではどうするか――。)」

【キリカの指が、迷いなくパッドのある一点を叩く】
【≪承諾:複合兵装フェアリーレイクの起動宣言≫の一文が、コンソールに躍った】

【エクスカリバー発動にも用いた、加速器兼エネルギー収束装置=フェアリーレイク】
【それをコールブランドに集中して、確実な決着を求める】
【剣のビームは輝きと熱とを増し】
【偽りとはいえ、王者の業物の雰囲気を放って余りあるもの――】

「ルキウス、トドメを刺せ!!」

【殆ど至近距離に到達した所で、命令は実行された】
【アルクトゥルスは慣性を殺さぬよう、速力に富むLEGを奔らせた】
【――聖なる剣を、いま振り下ろす!!】

【セイリオスのカメラは、恐るべき光景を捉えるだろう】
【それは、至近距離で格闘特化機の刃の洗礼を受ける恐ろしさではなく】
【――――コールブランドが、『増えている』という事だ】

『貰ったァ――――ッッ!!』

【そう、振りぬく瞬間に、剣は機能を行使し、分離されていた】
【多少威力は分散されるものの、フェアリーレイクでそれをカバーする】
【アルクトゥルスが採ったは、勢い全てを剣戟に加えるために、独楽じみた斜めの回転を加える】
【『次の瞬間には動けずに、倒れてしまう』事を前提とした動き】

【セイリオスに迫るは】
【頸と胴を狙って襲い掛かる、嵐の如き二段構えの回転斬撃――】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 21:00:20.79 ID:E8Rftky9o<> >>452
相手の巨大レーザーソード発動を抑制するために捨てたライトだったが2本に増えるとは予想外だ
だけど―――

「きた!!」
『ドンピシャ!!』
沈黙を維持していた拓海が叫ぶ、それに答えるようにセイリオスが行動に移った。
しかし放たれた回転攻撃のほうが出が早い、むしろ相手が打って出た直後だ
カウンターを狙いたいのだろうが既に遅れを取っている

横なぎの回転攻撃はセイリオスの青い装甲を捕らえ……なかった
そのスレスレを掠めたのだ、最初アルクトゥルスは距離計算が狂ったのかと錯覚に陥るのではないだろうか
しかし計算が狂っていたのではない、セイリオスの位置が後方にずれたのだ。
先ほど失速を始めていたとはいえ突っ込んできていた機体が
そのスラスターも使わず紙一重で後ろに下がっているなんてそうありえる状況ではない

だが彼が選択した戦術ならば不可能ではない、【ホイールを最初からバックさせておく】ただこれだけ
相手との間合いギリギリで後方に進むように回転しているホイールだけを地面に付ける。
空中に居るときはホイールが接触していないのでバックすることはない、トリックは単純である

このために必要な準備、一つは相手から射程の広い武器を奪っておく必要がある
二つ目はこの砂地―――ホイールだけを押し付ける以上、足を取られるリスクが高まる、これを固めておく必要があった。
そこで砂浜を真っ直ぐに下がって逃げるという行動に打って出たのだ。
今セイリオスのホイールが走っているのは先ほど自身が残したタイヤ跡の上、一度踏み慣らした後ならばそのリスクも下がる

煽られながらも勝利するために練った戦略がこのフェイントを、隙を生み出した。
ここからは戦うパートナー……HMPの出番だ

『ホノオをきるなんてイイダシそうだからな!!』
ガブルの左腕は上ではなく下に向けられる。
ゼロ距離ならば取ることもできない戦略だが拓海が作ってくれたこのチャンスならば話は別だ
地面へと思い切り殴りつけるようにナパーム弾を打ち出し叩きつける、足元ならば切り払われる心配もない
それは砂地を足をつける地面を吹き飛ばし、青い世界を貫く紅蓮の炎柱を誕生させる『ナパームゲイザー』
大地は膨れ上がり、上を、天を穿たんとゲイザー……間欠泉のように目覚めた―――!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/06(月) 21:09:45.03 ID:C9F07+E20<> /ごめんなさい、正直言ってフラグを『描写』しないで超回避かます人とロールしたくないです
/せめて至近距離攻撃を素直にしかけてきたり、砂を固めてる事を示唆する描写があれば良いんですが
/殆どヒントも無しに各種消耗、体勢崩しといったリスクのない回避描写をされてしまうと、正直萎えます
/当たる前に引かれたんだと、ホイールを斬るなんてこともできませんし
/何かもう一枚考えてるような描写がないと、小説ならともかく、相手がいるなりきりだと対応できない事もあると思うんです
/描写されている以外の事が世界の中にあるのは勿論わかります、ですが戦闘でそれをやられると、正直TSUEEEになりますよね?

/申し訳ないんですが、ロールをここで終わりにさせて下さい
/私の機体はエネルギー切れで負けた、そのあと普通に帰った、という事でいいです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/06(月) 21:26:54.03 ID:E8Rftky9o<> //分かりました、ではお疲れ様でした <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:01:39.30 ID:Z8AViCZ+o<>
『主殿! さぁ早く! 早く行くのじゃ!』
「分かったってば、はしゃがないでよサクラぁ……」

 とあるホビースペースの一角、対戦台へと向かう少年がいた。
 DVNOからはひっきりなしに対戦をせがむ声がしている。

『あぁ、待ち焦がれたぞ、待ち焦がれたぞぉ……! 血沸き肉踊る戦場よ! 今行くぞぉ!』
「血も肉もないでしょ!」
『潤滑油沸きプラスチック踊るでは格好がつかぬではないか!』

 モチベーションの塊といったHMPとは違い、少年は決して好きでここにいるわけではないらしい。
 主などと呼びながら、主従関係は逆転しているように見える。

「それに、ほら。今は人がいないみたいだよ、サクラ」
『なんじゃと……?』

 対戦台についてみれば、それらしき人影はいない。
 少年はほっと息をつき、HMPはぎりりと歯ぎしりをした。
 HMPのどこに歯があるのかは、誰も知らない。

「だから、十分くらい待って誰もこないようなら帰るからね」
『所謂フラグというやつじゃの』

 HMPがそう言い捨てて、少年は小さくため息をつく。
 どうしてこうまで好戦的なAIになってしまったのか、少年には皆目検討がつかない。
 そして、このまま誰も来なければいいのにという少年の願いも虚しく、フラグは回収されるのであった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:16:54.44 ID:M05IgeKDO<> >>456
「誰かと待ち合わせですか?」

なんだかぱっとしない青年が声をかけてきた。
見た感じ10代後半から20代前半、大学生って感じだ。

「もしフリーなら」

『一曲踊ってくれないか』

「……バトル、お願いしてもいいかな」

『なんだ、連れない奴だな』

話の腰を折った声の主は、その声が機械がかっていたことと、鞄から這い出てきたHMPを見れば分かるだろう。
そちらの人間に近いデザインのものに比べホビーロボット色の強い青年のHMP。
鞄から完全に抜け出すと対戦台のライバル側に返事を聞く前だというのに陣取るのだった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:27:45.49 ID:Z8AViCZ+o<> >>457
『ほれきた』
「うそー……」

 ケラケラと従者に笑われ、わずかに肩を落とす少年。
 その主を差し置いて、古風な声が答えを返す。

『こちらこそ、一手お頼み申す』
「……はい、よろしくお願いします」

 ぺこりと小さく頭を下げた少年のカバンから、それは器用に這い出てきた。
 すらりとした長いボディ。カーボンファイバーの黒髪。全身を包むのは、和服を思わせる黒基調の装甲。
 腰に吊られた黒鞘の刀は、大和撫子と呼べるであろうその姿とよく似合う。
 だが、一点だけ足りていない。
 引き裂かれたようなそれ。あるはずの可動部もマニピュレータも存在しない、肩口に面影を残すばかりの短い棒きれ。
 右腕がないのだ。

『ふふ、では行ってくるぞ、主殿』

 愛おしげな声。
 蕩けた顔で主を見上げ、片腕の剣士は戦場へ降り立つ。

「フィールドはどうしましょうか」

 それを困った顔で受け止めつつ、少年は尋ねた。

「こちらの希望は特にないので、お任せしますね」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:42:19.71 ID:M05IgeKDO<> >>458
「良かった、こちらこそよろしくお願いします」

ルリは勝手にフィールグラムを陣取るし、断られたら恥ずかしかったな。
そんなことを思いつつタブレットのDVNOを起動してフィールグラムに接続し、通信用のヘッドセットを付ける。
件のルリは既にフィールグラムの中でうずうずしていた。

「うーん、フィールドはランダムでいいかな」

フィールグラムにいくつかの指示を送るとバトルフィールドが形作られていく。

――――――4――――――――

カウントが0になったその時に今回のフィールドが姿を明らかにする。

――――――3――――――――

――――――2――――――

―――――1―――――
//コンマ
//1、3 森林
 2、5 市街地
 4、6 パーキングエリア
 7、9 河原
 8、0 荒野 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:47:21.96 ID:M05IgeKDO<> バトルフィールド・森林
木々が生い茂る見通しの悪いフィールド。
足元にも丈の短い草が伸びているため足を取られやすい。
今回は晴れ、アクティブホログラムの虫や動物は無し。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 21:59:11.51 ID:Z8AViCZ+o<> >>459
 形作られた深緑の中に、二つのHMPが降り立った。
 ぼくはそれを見て、ほっと息をつく。

『ふむ、森林か』
「相性はいいね」
『そうじゃな、相手の機関銃は使いづらかろ』

 善哉善哉、と彼女は頷く。
 至る所に生えた障害物は射撃攻撃を遮るには十分。邪魔な虫や動物もいない、悪くない。
 小回りのきくサクラなら、機動性を生かせるステージだ。
 時折顔を出している根っこに足を取られないか一瞬心配した。

「作戦はどうする? まだ相手の武装も分かってないけど」
『考えるまでもない、斬って捨てればよいのじゃ。なぁに、どのみちそれしか出来ぬ』
「それはそうだけど……」

 相手の額に合ったカメラ、それから巨大な腕部マニピュレータ。どちらも何かある、油断しない方がいい、エンジニアの血がそう囁く。
 そう心配するぼくに、彼女はにたりと笑いかけた。

『そもそも、この身をそう作ったのはどこの誰じゃ?』
「うぐ」
『だから主殿は信じておれ。他ならぬその手が生み出したのじゃ、私は誰にも負けぬよ』

 そして不足の剣士は前へ出る。
 ないはずの右腕を、大きく振って。

『――晴神楽弐式改『枯桜』、参る!』

 ぼくはそれを、見つめているしか出来ない。
 せめて今日は目をそらさずにいられますように、そう心の中で祈りながら。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 22:17:24.85 ID:M05IgeKDO<> >>461
「相手は右腕を武装してなかったし、見たとこからして近接型ってことかな」

『隠し武器でもない限りはそのつもりでいいと思うが……厄介なフィールドを当ててくれたな』

「言わないでよ、俺も後悔してるんだ」

このフィールド、足下の根や草はともかく、木々が非常に嫌らしい。
慣性をフルに利用するホバー脚染みたこの脚部は全く生かすところがない。
しかし泣き言を言ったところで勝負は既に始まっている。
タブレットのサーモカメラ・ウィンドウには接近する赤い影が見えているのだ。

「とにかく、頼むよ」

『あぁ、不利もなにも私を演出するファクターだ。たぎるというものさ!』

こちらも前へ出る。
事故を防ぐために速度は押さえ気味に、左腕で進行を阻害する横枝をへし折り前へ。
現在の指示は一定距離接近したところでの掃射。
相手を近付け過ぎぬようにしながら有利をこちらに傾けていくつもりだ。
木々に阻まれることは最早諦めている。
第一木々が射線上にあるということは相手の突撃に対する抑止力でもあるはず、とやや楽観的に進んでいく。
2機の邂逅までそう時間はかからないはずだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 22:32:59.52 ID:Z8AViCZ+o<> >>462
(ふむ……?)

 バキバキとへし折れる音を彼女は耳聡く聞きつける。
 レーダー、サーモグラフィー、その他あらゆる知覚関係の装備を持たない彼女は、代わりに視覚と聴覚だけはずば抜けていた。
 正確な位置は分からない。だがこちらへ来ているようだ、とだけは分かる。そして彼女はそれ以上を必要としなかった。

(距離を取るかと思ったが、そうではないのか。するとやはりあの爪じゃろうの。よいの、よいのぉ、そうでなくては)

 楽しそうに笑いながら、欠損者は跳ぶ。
 彼女の走りは殆ど跳躍だ。脚力に任せて大地をぐっと強く掴み、蹴りだす。速さのための動きではない。
 その瞬発力に優れた動きで木々に紛れ、あるいは樹上へ舞い上がり、乱立する障害物を盾に移動を続ける。

(その脚部じゃ、細やかな制動は出来まい)

 だから、彼女が取るのは徹底したゲリラ戦闘だ。前ではなく、斜めに動く。木々を盾にすれば接近の余地はある。
 接近戦に持ち込めば――あの腕程度、この妖刀にとっては豆腐と同じなのだから。
 だから一太刀。その隙だけを伺う。

 今か今かと待ちわびる先、彼我の距離が一定ラインを切った瞬間、銃声が轟く。
 近づけないつもりか、と彼女は笑った。なるほど、これほどあからさまに刀を晒せばそういう手に出る。

(ふむ、ではしばし様子見と行くかの)

 足を止めず飛び回りながら、彼女は楽しそうにほくそ笑んだ。

「うわわ、撃たれてる! 撃たれてるよサクラ!」

 銃声に怯える主に、少々呆れながら。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/07(火) 22:56:00.61 ID:M05IgeKDO<> >>462
サーモカメラに現れては消え、現れては近付く赤い影。
かなりの運動性能を誇るらしい、このステージはお誂え向きということか。
あの刀も木が邪魔をして振り切れないということがあるかもしれないが、期待はしないでおこう。

「ショックラッシュもいけるようにだけはしといて。
あれだけ運動性能が高くちゃ簡単に懐まで突っ込んでくる可能性も……」

『まったく、ネガティブな助言だな。もっと私を盛り上げるような言い方をしてほしいところだ』

「……ショックラッシュで動きを止めて相手の優位を奪ってしまおう、こんな感じ?」

『ふふん、及第点だ!』

【こんなアセンブリにしている癖に、作戦を立てるときももっと攻め気できて欲しい。
 しかしまあ、お陰で私が強気になれるのかもしれない。
 とにかく今は、目の前をちょこまかと逃げるこの仮面のHMPをぶっ飛ばしてしまわなくては。】

掃射はやまない。
木に阻まれることもあるが、木に掠って軌道を変え思わぬ方向から相手を襲う弾もある。
出来ればこうして縛り付けてしまいたいが…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/07(火) 23:18:28.56 ID:Z8AViCZ+o<> >>464
(ううむ、やはり見えておるのぅ)

 こちらに追いすがる弾丸を見て、思わず口元を歪める。

「よいの、よいのぉ、よいのぉおぬし。私は楽しいぞ!」

 一歩後ろを追い続ける鋼鉄の暴威は、彼女にとってはかすめただけで致命傷。
 相手がそこまで気づいているのかは分からないが、この体の脆弱さは――。

(直撃換算、ボディ五発、アーム七発、レッグ四発……ヘッド一発、かの)

 ――恐ろしいほどに脆い。
 だから、相手がただの牽制だと思っているそれは、こちらにとっては常に必殺なのだ。

(だが、だからこそ)
「楽しいのぉ」

 彼女は笑っていた。掃射される弾丸の一発一発がはっきり見える。
 負けてもいいやなどという思考は彼女にはない。
 背筋も凍るような戦場を翔けることに快感を覚える。
 ――この無機物の体が愉悦を覚えるには、それしかない。

「だが、だからこそ」

 ここにきて初めて、彼女は刀を振り上げた。
 木が弾丸を阻むに十分だとは既に分かっている。ここから普通に飛び出して接近する方法は、おそらくあちらも想定済みのはずだ。
 ならば相手の意表を突く。

 右腕が燃える、そんな錯覚はきっと私だけのもの。妖刀が生命力を吸い取ったのを確かに感じる。
 震える。吠える。泣き叫ぶ。歓喜の声を上げて、妖しき剣が吠え猛る。
 振動剣。それがこの剣の正体だ。
 斜めに振った。そのまま滑らかに、羽根でなでるような動きでするりと刃を振り抜いた。
 撫でられた木は、ずるりと切れる。

「行かねばなるまい」

 切り捨てた木を蹴倒す。倒す先はもちろん銃声の向こう。
 その木に飛び乗り、梢の太い辺りかつなるべく上の方に捕まる。倒れこむ木々はまっすぐに敵へ向かっていく。
 左右に避ければ、こちらが飛びかかって一太刀。
 受け止めるならそれもよし、飛び降りて一太刀。
 隠し武装で破壊するというのなら、これを蓑にまた仕切り直し。
 その間撃たれた弾丸は二発弾き、残りは比較的丈夫な胴と腕で受ける。

「さぁ、どうする?」

 舌なめずりをして、彼女は出方を伺った。

 主の悲鳴など、最早耳には入らなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/07(火) 23:43:55.10 ID:M05IgeKDO<> >>465
やはり、此方からすれば鬱陶しい木々の壁も相手にとっては問題にならないらしい。
楽観せずにいて本当に良かった。
相手が一刀を振るった時に、こちらも応戦のための一手を切ることが出来たのだから。
タブレットを経由して愛機に指示が飛び、愛機はそれを実行する。

『よく逃げを選択しなかったな!私は嬉しいぞ、ナオヒロ!』

【伝えられた指示は、先程の発破が効いたのかいつもよりも前向きな対応だった。
 臆病なナオヒロがその選択を取ったのだ、ならば私はそれを叶えてやらねば不義理というものだろう。
 あの茂る葉など問題ではない。高く跳んでみせようじゃないか】

指示の通り、愛機は木々の枝葉の中へと突っ込んでいった。
DVNOには頭部、左右腕の損傷を伝えるメッセージが表れるが、気にはしない。

あのHMPに対して後手に回るわけにはいかぬと取った手は、愚直な神風的特攻だった。
前後スラスター出力を全開にして飛び上がり、緩やかに放物線を描きながら上には敵HMPがいるであろう木の枝葉を突っ切っていく。
遮る枝を左腕で時にへし折り、時に足掛かりにして、遂に樹上へと跳び出した。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 00:07:21.28 ID:uUtPhYs8o<> >>466
『ハ』

 音で察した。してやられたと理解した。
 倒れる樹上ですぐに態勢を取れるはずがない。
 飛び上がってきた相手を見て笑ったのは、相手への賞賛か、己への侮蔑か。

 ダメージは免れられない。
 彼我の距離は一足一刀、だからこそ相手のほうが早い。銃で撃つなら言わずもがな、腕だとしてもあちらが先手。
 なぜならこちらは――。

(枝が邪魔じゃ――!)

 前に出るのに、一振りが要る。


「だからやめろって言ったのに!」

 一方、静は悲鳴をあげていた。
 木を切るなんて無茶苦茶をして、しかもそれに飛び乗るなんて。
 セオリー通り撹乱して、隙を伺えばいいものを。

 あぁだからこそ、彼女に命令は出来まいと思う。
 きっとぼくの命令は、彼女にとってはつまらないもの。
 そしてぼくは、彼女の楽しみを奪うために戦わせるわけではないのだから。

「――ッ」

 ダメージは必至だ。
 また彼女は無残に傷つく。
 握りつぶされるか、蜂の巣になるか、そんな想像をしてしまった。
 見ていられない。静はきゅっと目をつぶった。


 ――だから、彼女は前に出ることにした。
 ふっと、舞うようにして枝を切り捨て、一歩のスペースを確保する。
 相手が度胸を見せて、自分が尻込みなどありえない。
 敵が動き出すのをしかと捉える。――二発。撃ち落とすならそれが限度だ。それ以上は身に浴びるだろう。
 すっと自然に半身になって、被弾面積を減らす。それでもおそらく死に至る。
 だが、だからこそ。

「逃げるわけにはいかんよなぁ――!」

 前に出て、斬って捨てる。
 万物を断つ妖刀が、使い手に合わせていぃんと鳴いた。
 絶望的な速度差を鼻で笑って、彼女は全力で跳躍する。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 00:10:11.18 ID:QABM12h10<> 新時代の社交場、HMPカフェ。その存在をファイター諸賢はご存知だろう。
一般の料理店では取り出しがマナーとして禁止されているHMP。
だが、此処では。
彼らを忌憚なく侍らせ、共に会話やセンサーを刺激する一種の嗜好品を楽しむ事ができる。
HMPが電話並みに普及した昨今では、市の数だけカフェがあると言われる有様だ。

『ねーぇ、与太郎さん』
「オーオーオー、お嬢さん。交渉の前にナンだが、その名前で呼ぶのをやめよう」
「……な?」

今宵の物語が始まるのは、S県S市のあるカフェの一角。
窓を背にした長テーブルの席。配された役者は探偵助手めいた服装の若い男と、やはりHMP。

『素敵なお名前ですのよ。それを否むのは、貴方のお母様への侮辱にもなる。そうでなくて?』
「……別にそれでも良いさ、感性も知識も無いひとが評価なんかされちゃいかんのだ。」

くすくす笑うHMPは、女性型だ。『あら、冷たい方』なんて紡ぐ声は、軽く、柔らかい。
羽箒のように奥ゆかしく。
撫でられてしまったなら、非道くこそばゆい思いをしてしまいそうな。
ピンヒールか紅鶴の足を思わせる細い脚も、白い翼を生やした胴も、そんな雰囲気を助けていた。

――にも関らず。

『私の手並みほどでは、ありませんけれどね。』

レフトアーム……優雅さを捨て信頼性に優れた中量型回転式拳銃「錦蛇」。
ライトアーム……悪名高い絶対撃滅残虐苛烈兵装「バプタイズ」。

儚くもある体幹部の組み合わせとはあまりに不釣り合いなものが、彼女の腕だった。
この椅子、隣か向かい側に相席可能なのだが。
もしそんな事をする人がいるなら、真っ先に気になる点の一つだと思われる。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 00:35:14.91 ID:5DXR/1tko<> >>468
「ねえクロリス。あれが面白いそう。でもちょっと男の人がオシャレで怖い」
「貴女、あのような手合とは付き合いを持たない方がいいわ。駄目男の典型よ。
見た目通りの職についてらっしゃるなら、隠れる気の無い愚かな走狗。そして見た目だけなら、夢見がちな愚かな痩躯」

背中に充電のためのプラグを繋いだままのHMP。様々なパーツを組み合わせて作られたカスタム機。
ウェーブした長髪とお揃いの栗色の瞳はフローラシリーズの特徴だが、人を馬鹿にした物言いは凡そフローラの慈母のイメージからかけ離れている。

「まあ、私もあちらには目を奪われましたから、慧理さんがどうしてもと言うなら……ふふ」


そのHMPを肩に乗せた少女が、おどおどと周りを見回しながらだんだん1人と1機に近づいてくる。
レースワンピースにクリーム色のニット。大人びていて、それでいて無難な服装は、ディスプレイのマネキン一式をそのまま買ってきたような……。
ようするに、コーディネート自体は間違ってないのに、残念ながら当人に似合っていなかった。

しばらく眼鏡越しに相手を見つけ、それから顔を伏せて。風鈴のような儚い声を紡ぐ

「えと、相席、いーですか?」

「違うでしょう、慧理さん。 このような時は『手合せ願います』ですよ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 00:48:17.06 ID:u8Y2T2/DO<> >>467
よし、と思った。
読まれ、跳び出した瞬間に斬り伏せられる展開も予想していた。
というより常に頭にちらついていた。
それが回避できただけで御の字、そう思ってしまう自分に苦笑する。
ここで満足していたんじゃ、この特攻の意味など無い。

「よし、左準備。右は常に相手に定めて」

『言われるまでもないさ!』

半自立型AIは1から5を言えば残りの5を補完してくれる。
優れたブレインではない自分にはありがたかった。

左手に電力が蓄えられていく中で右手の銃口からは弾丸が吐き散らされる。
樹上でバランスを取るのは至難の技、元々命中率が高いとは言えない機関銃の命中率はさらに下がる。
着地する前に決めて――――

『っ……!』

【相手は枝を切り落とし、更に前に来た。
 機械の心に焦りが生まれる。
 枝越しに見ていたときの、甘い精度のままの銃弾では敵の芯を捉えることは難しいだろう。
 しかしもう相手の間合いだ、どうすれば――】

相手も引かなかった。
それに愛機が動揺したのが分かる、弾丸がブレている。
こういう時に助けなければ、半自立型AIに、指示を出せるようにした意味はないよな。
愛機がだした1から5を補完するのが役目だと、タブレットを、急ぎ叩く。

『―――っふふ。なにがあった?』

【ナオヒロからの指示に焦った頭が冷える。
 今日のナオヒロは本当にナオヒロなのかと思ってしまうほど、イイ指示をくれてくる。
 その指示のまま、相手の斬撃をガードするよう左手でボディ、ヘッドを守るように構える。
 まだフルではないとはいえ、スタンガン機構は使えないことはない。
 バチバチと放電するこの左、斬らば感電斬らぬも感電。
 指示にはなかったが、右腕を捨てて左で討つのもいいかもしれない
 さあ、来るがいいさ】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 00:56:03.38 ID:QABM12h10<> >>469

「(凄い失礼だな……)」

自分に自信の無い人間ほど、周囲の目に敏感だ。
ちらっと一瞥くれただけで青年は、あのHMPが誰の事を言っているのか断定してしまう。

青年もまた、往年のムービースターの服装をそのまま真似しているような……。
ようするに、コーディネート(略)……。

「えっ、此処で良いn……あぁ、どうぞ」

ついでに言うと、彼は見た目ほどハードな仕事も性格もしていない。
自分の家に招くようなワイルドさが、こういう時は逆に欲しい位。
顔立ちこそ上の下ぐらいだが、男らしく頼り甲斐のある雰囲気は薄皮程度にとどまっていた。

HMPはそれと対をなして、超然としている。

『御機嫌よう……はじめまして、ですわね』
『花のような姫君が、花のような従者を連れて。まるで夢みたい』

言い放つや否や、彼女は《右腕》を少女に向け、

……いっさいの躊躇なく、発砲する。


『しかし……申し訳ございません』
『此処はお茶を嗜む場所、決闘のお誘いは、例え血の色を示す赤薔薇の元でも受け入れられませんわ……』


……空砲だ。
日本の警察についての都市伝説じみて、一発目が空砲なのだ。
一発目が。一発目だけが。

「あのー、……とりあえず、座ろうぜ」
「こいつなぁ、アニメは嫌いなのにドンパチ映画は大好きなんだ、良く分からんよなぁ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 01:24:45.93 ID:5DXR/1tko<> >>471
「まあ私ったら、逢瀬を邪魔してしまって……ごめんあそばせ、ふふ」

テーブルに飛び降りるHMP――クロリス。

「……ん、私が従者、かな」

静かに、音を出すことを恐れるように椅子を引く少女、早緑慧理。

発砲に対する、次の瞬間の行動は俊敏にして正確。射線を読んで小型バリア機能のある右手を前に出し、左手を後ろに引いて構えるクロリス。
そして携帯端末を取り出して、バリアの操作を司るボタンの上で、指を止めている慧理。
R.ARMズヴェルドのバリアはぎりぎり右手を守りきる程度の極小、だが其れゆえに強力。たとえ実際に発砲されていたとしても、きっとガードしきっていた。
静かに、けれど力強く。空砲が過ぎ去るまでの一瞬、この一角は空気がかわっていた。

「慧理さん、勿論間に合わなかったわけではありませんよね?」
「うん。……それより凄いよ! 動作の直前まで完全に読めなかった。AIもマニピュレータも、速度とは別にキレがあって」
「それより、せっかく殿方に許可を頂けたのですからお座りになったら?」

頷いて、慧理は何も無かったようにスカートを正して静かに椅子に座り、クロリスは楽しそうに相手のHMPへと笑いかけた。

「えへへー。良い初撃でしたよ。油断してたのもあってちょっと危なかったかも。名前なんて言うんです?」

先ほどとはうって変わって、少女が人懐っこい眼で見つめるのは、相手のHMPの方のみ。
ちょっとオシャレで怖い、と評した男のことはまるで気にせず、パーツの一つ一つを、宝石でも見るように感心と憧れの混じった瞳の中に入れている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 01:48:23.78 ID:QABM12h10<> >>472

『お点前、拝見しましたわ』

華麗な一部始終。だが、終わりではない。
HMPは左手に輝く第二の鈍色の固まりを、胸の前に寄せてお辞儀して見せる。
お互いに、全ての手を出し尽くしていない事を確認する儀式《リチュアル》めいた行い。

讃え合いながらも、底を見せないHMP達。
そのピリリとした感覚に青年は思わずソフト帽を直して、安堵の口笛を吹いた。

『勿体なき言葉に預かり、光栄です。私はバイスフリューゲル』
『此方におわしますはご主人様、町田……どの、ですわ』

与太郎。よくよく反芻してみると、確かに美麗さに欠ける名。
白き翼バイスフリューゲルは逡巡した末、それを口にしないことに決めた。したくない。

「オイオイオイ。撃ったのはバイスフリューゲルでも、コーディネイトしたのは俺なんだぜ」
「彼女の言う通り俺は町田さ。よろしくさん」

『こほん……ところで、皆様は何をお頼みに?』
『私たちのところには、コーヒーとHMP向けチョコフレーバー・パフが届く予定ですが』

さらりと話題を青年から掻っ攫う。涙目になりそうな……これでこそ与太郎であった。
彼女に悪意はないが、悪気はあるだろう。咳払いも意図的だ。
こいつめ、と顔を顰めれば、益々理想のハードボイルド印象からは程遠く。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 02:04:29.80 ID:5DXR/1tko<> >>473
「クロリスと申します。お見知りおきを」

膝の上まで伸びる、BODYパーツの青い薄衣の先を手に取り、一礼。
左手の中に握られた剣の柄のようなものの違和感も感じさせない、綺麗な礼だった。

「えと……早緑、です。ごめんなさい。人が苦手というか、その、男の人はちょっと怖くてですね……」

それに比べて、こちらの自己紹介はぎこちなかった。
相手を讃える言葉よりも自分の名前の方が歯切れが悪いとはどういうことか。
逃げるように彷徨う視線は、自然と相手のHMP、バイスフリューゲルの元に戻っていく。

「私、そういうの良く分かんなくて……同じのを頼みますね」
「慧理さん、苦いモノは貴女の好みでないでしょう? カプチーノをお勧めしますわ」
「え、えっとじゃあそれで」

ウェイターを呼び止めるのも、注文を取るのもクロリス。慧理はその間落ち着かなげに俯いているだけ。
目の前のコンビとは、似た者同士なのかもしれなくて。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 16:37:17.38 ID:QABM12h10<> >>474

視線の先の彼女は、わらっていた。

『男が、彼が、恐ろしゅうございますか……ふふふ、フッ』

町田のダメな所を知り尽くしている。
この男の至らなさを哂い、それに気付かぬ少女の純粋さに笑いっていた。
平時おにぎり型に点灯する表情アイも、細い弧の形。

「(……俺じゃなくて、男の人が、ね)」

「此処のカプチーノな、あんまり甘くないぜ」
「お砂糖入れなきゃ喉を通らないんじゃないかい?」

クロリスと慧理を一度ずつ見ながら、青年は腕を組んで考えた。
HMPに主導権を握られるのは良くないと主張するファイターは多い。
他方で、ファイターは決定的な決断さえできれば良いという言い分もある。
戦闘においては、どっちもどっち。戦って強ければ無問題だ。

だが、日常生活に照らしあわせてみれば――。
彼女が相席をしてまでHMPカフェを選んだ理由の一端が見える気がして。
便利すぎて、あたたかすぎる機械……問題だ。

彼が思考を巡らせている内に、ウェイターが来た。
コーヒーとチョコレートフレーバー・パフを皿に乗せて。
青年がそれを受け取ると、バイスフリューゲルはパフへコンドルのように跳びかかった。

【我々はここで新米ファイターの皆さんの為に、味覚パフの説明をしなければなるまい
 HMPの嗅覚と、最近では殆どの機体についている味覚のセンサーを刺激する嗜好品だ
 少量の蒸気を伴い、形態は今世紀初頭に流行した電子タバコに近く、パフの名は化粧用スポンジめいた形に由来する
 ところで味覚センサーを最初に採用したHMPは警視庁に納入されたゾイノイド《ワッチドッグ》だ。この機種(以下略)】

「早緑さんは、学生さんで今は休みかい?」
「だとしたら良いねぇ。昼間からHMPショップに行けると、少しは空いてるだろう」

『おひとついかが〜♪うふふふっ♪』

バイスフリューゲルは、フレーバー蒸気に夢中になっている。
さっきまで彼女が回していたので、このままでは間が持たない。
だから。
HMPカフェに来たからにはこういう話題だろうと、青年は切り出すことに。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 20:22:17.00 ID:uUtPhYs8o<> >>470
 踏み込んだ一瞬、相手は怯んだようだった。
 そのせいか狙いが甘い――助かった。この程度ならば、無力化するのは容易い。
 右側頭部を掠める弾丸、僅かに左傾。ボディ中央を貫く弾丸、切っ先で弾く。残りは直撃ルートではない、放置。
 腰を、胸元を、肩を、チッと音を立てて何かが掠めていく。

【損傷:胴部八パーセント】
【損傷:脚部十一パーセント】
【損傷:左腕部九パーセント】

 それでも、このダメージ量だ。
 だが、この程度のダメージ量だ。
 左の剣を中段に、半身の構え。右足に全力を込めて幹を蹴り、浮翌遊する敵に肉薄する。
 だがこの刹那に相手も何かを吹っ切ったようだ。

(――いい主を持っておる)

 苦笑する。なにせ自分の主は作るだけ作ってそれ以上が出来ない人間だ。
 ああやって指示を出してくれるような――共に戦ってくれるような人ではない。
 けれど羨望はない。
 私は私の主が彼でよかったと、私の主こそが最高だと、そう断じれるから。
 だからこそ。

『負けられぬの』

 これは主と主の戦いでもあるのだから。
 それがたとえ、私一人の勝手な思い込みでも。
 左腕がすっと相手の体を隠す。その帯電、おそらく刀が触れればこちらも電撃を浴びるだろう。
 ――だが、攻めてはこない。
 だから私は勝ちを疑わない。
 一足一刀から一歩踏み込み。振りかぶりはしない。ピクリとも動かさない。
 もしも相手が迎撃するなら、それを防ぐためでもあり。この次の一瞬で放つそれを見切られぬためでもある。
 更に間合いが狭まる密着距離で、唸りを上げる妖刀を解き放つ。――引くのではなく、前に出す形で。
 突きだ。体重をかけて、前へと強く踏み込んで、その防御ごと頭部を貫く。刀神楽にはそれを成しうる鋭さがある。
 その電撃が私の自由を奪おうとも、この刀はお主の意識を奪うだろう。
 ドミネイターの装甲さえ貫通する全力の突き込み、その爪ごときで防げるか。
 この妖刀は私の全て、私に与えられた唯一無二の価値なのだから。
 それを、お主に――

『――防げるか?』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 21:09:02.43 ID:u8Y2T2/DO<> //>>457Kポイント使用

>>476
【きた、真っ直ぐだ。
 確かに木すら斬り倒すその切れ味をもってすれば、私の身を構成するプラスチックなど容易く貫くことが出来るだろう。
 私の左腕の電撃による麻痺に陥る前に、この剣先が私の頭を貫くと、その自信があるのだろう】

『見くびって、くれるなよ!』

【私の左手が貫かれる。その瞬間に刀を通じて相手HMPに電流が流れるはず。
つまり、この一瞬、この突きさえどうにかすれば勝機は、いや、勝利は私達のものになる!】

相手HMPの神速の突き。
驚異的な速度と威力、また一瞬敗北を確信しかける。
が、そんな弱気を頭の隅に押しやって、ただ愛機を信じることに専念する。
今から指示など出していられない。
愛機の1から5が最善なのだと信じる以外になにもなく、ただ歯痒い。

『――――!』

【刹那、意識が研ぎ澄まされていくような感覚。
 体を走る電気信号がはっきりと意識出来る。
 自分の手を貫いてから、刀の進みが嫌に遅く感じる。
 これならば、出来る。
 刀の突き刺さった手のひらを捻り、刀の進行を左側に逸らせるようにする。
更に首から頭を右に反らせ、突きを――――回避した】

『っ〜!っははは、まさか、という感じだが!
 電気ショックを受けて動けまい、今私が止めを刺してやる』

【相手は今、動くことが出来ないはずだ。
 ならば今、決めてしまう以外にないだろう。
 しかし左腕そのものはまだ生きているが、武器としてはもう使えまい。
 指先以外からバチバチと火花を散らす左手に目をやり確信する。
 なので私は右腕の機関銃を相手の頭部に突きつける。
 そして、こう言ってやるのだ】

『幕引きだ。刺激的な一時だったよ』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 21:49:14.84 ID:uUtPhYs8o<> >>477
//>>476 KP使用。
『ク、ハ』

 防がれた。
 こちらが打ちうる最高の一撃を防がれた。
 コールタールのように緩やかな時の流れの中、電流が少しずつ指先から全身を蝕む一瞬。
 確かに、それが避けられるのを見届けた。
 突き入れたままの左腕は、最早力を抜くことも叶わない。

『嗚呼――最高じゃ』

【警告:命令伝達系統に――】
 痺れが体を硬直させる。左腕は既に動作不能、幸いなのは硬直で済んでいることか。
 誰がどう見ても敗北は必至、だというのに気分は上々。これほど煮えたぎる日がかつてあったろうか。
 あぁ認めよう、私の勝ちは最早あるまい。痺れが首へ回り、胴へ回った。このまま腰を足を頭を食い散らかして、電気羊は嘶くだろう。
 だが、
 まだ動くなら負けはしない。
【不正動作を検出――】
 腰を捻転、脚部を振り上げ、宙へ身を横倒しにする。直後動作不良が腰へ回り、足を犯した。
 だがそれでも、体は動いた。
 振り上げられた足を振り子に、捻られた腰を原動力に、体が回る。
 力の入りっぱなしな左腕は未だしかと刀を握りしめ――その刀は未だに吠えている。
 私の命を無尽蔵に吸い尽くし、魔剣は一層震えを増した。
 振動剣を扱うときに、速さ以上の力は要らない。押し当てれば切れるのだから。
【――駆動率九十八パー――】
 バターを斬るような鮮やかさで。

『防げるはずが、なかろうて』

 その体を袈裟に切る。
 この体の硬直と引換に、相手を宙で輪切りにした。
 胴から下のない体では空は飛べまい。故に共に落ちるが必定。

『――幕引きじゃ。締まらぬがの』

【――セント低下。機能障害発生】

 切り倒した木は、この一瞬でようやく大地に到達した。
 思い切り叩きつけられた衝撃で、体がバウンドする。
 致命傷だなと、ぼんやりと思った。相手はどうだろうか、分からない。同じように地に落ちたまでは見たのだが――。

【損傷:脚部百パーセント。機能停止】
【損傷:腕部百パーセント。機能停止】
【損傷:胴部百パーセント。機能停止】

【損傷:頭部百パーセント。機能停止】

 もうこれ以上は、何も見えない。

//引き分けか勝利かは任せた……! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 22:19:29.21 ID:u8Y2T2/DO<> >>478
『な』

【ぜ動く!?全てを言葉にする前に、左手は肩から切り落とされ、次いで上と下、身体を両断される】

《...左腕喪失》
《胴体損傷:70%》
《...脚部喪失》

律儀に状況を知らせるDVNOに、見れば分かると悪態を吐きそうになる。
そんなことに意味などないが、しかしこの状況では何も手が出せない。
樹上から落ちる衝撃をどうすれば[ピーーー]ことが出来るのか。
右腕のマニピュレーターは余りに非力で、枝を掴んで身体を支えることなど出来はしない。
頭部か右腕、どちらかが完全に損傷してしまえばこの勝負を敗北してしまう。
どうすれば、どうすれば――――――

《頭部損傷:100%...機能停止》

――――――実質的に、敗北を告げるメッセージ。
DVNOに表れたその一文にたまらずタブレットを放りそうになるのを堪えてフィールグラムの中のルリを見る。
と、そこで気がつく。フィールグラム中央に投影されたメッセージに。

《Double K.O. Draw》

引き分け、どうやら相手も落下の衝撃で頭部破損を起こしたらしい。
……しかし、負けでない、そのことを喜ぶことは出来ない。
いや、実質的に負けなのだろう。今回の一戦は。
効果が終了し、通常の平台に戻ったフィールグラムからルリを広い起こしながらそう思う。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 22:35:28.18 ID:5DXR/1tko<> >>475

「あ、はい。わかりました。お砂糖を入れたほうがいいんですね」

無理して会話の体を繕うような反復。所在なげに手の組み方を変えて。
ただの日常会話すら不自由なほどの、どうしようもないコミュニケーション能力不足。

バイスフリューゲルが会話から抜ければ、余計に彼女は立場を失う。
HMPに関してだけなら、人並以上に集中できる、結果を出せる。逆に言えば、その他は何一つできないし手を付けない。

「え、えと……私、学生じゃないです。去年そつ……」

HMPの話題を振るのは間違ってない。ただその前の振りが慧理を悩ませた。
人に言うわけにはいかない身の上。かといって適当な嘘をつくような技術も無く。

「レディに年齢を答えさせるなんて失礼でしてよ?」

結果として、こうなってしまう。安心できるから寄りかかって、成長しない。
いや、間違った方向へ根を張りつつあるのかもしれない。

「慧理さんはこう見えて社会人です。HMPのリサイクルを専門にする技術者。
慧理さんは仕事が早いですから、時間に余裕があるのです」

そう語るクロリスは少し誇らしげで、同時に慧理と同じ類の脆さを感じさせる口ぶりだった。
『依存されること』に『依存』してしまう。互いに寄り掛かる姿を書いたのが『人』という漢字だとは言うけれど、度を過ぎれば互いに崩れてしまう。
いわゆる共依存――歪な未熟な愛の形。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 22:51:04.43 ID:uUtPhYs8o<> >>479
【DRAW!】
 そんな電子音を聞いて、恐る恐る目を開けると、ズタボロになったサクラが落ちていた。

「うわぁ……」

 DVNOの戦闘ログには随分と無茶なことが書かれている。
 感電した体が行動不能に陥る前に強引に体を回して、落下の衝撃で道連れにする。

「無茶苦茶だ……」

 戦法として成立していない。落下の衝撃で相手がダウンするかどうか分からないというのに。
 フィールグラムが平台に戻り、ぼてっと転がる華奢な体を拾い上げる。

『いやぁ、満足じゃ。楽しかったぞ主殿』
「……サクラ、帰ったらお仕置きね」
『えっ、いやあれは不可抗力でな、主殿? 私は別に好き好んで斬ったわけじゃ』

 素っ頓狂な声を上げるサクラに当たり前でしょと憤慨する。
 相手のHMPの惨状を見れば瞭然だ。左腕どころかボディまで斜めに両断、落下の衝撃であれじゃあ結構なダメージだ。

「すみません、バラバラにしちゃって……」

 相手の人に小さく頭を下げる。
 刀神楽は残酷な武器だ。一切の慈悲がない。
 ぼくはサクラをサクラが望んだように作り上げたけれど、それをみだりに許しているつもりはない。
 だから普段は約束なのだ。敵を斬るな、降参させろという約束。
 サクラがその手で相手を切る度、まるで殺しをさせている気分になるから。

『のう、おぬし! 久しぶりに高ぶったぞ、素晴らしい戦いじゃった!』

 そしてそんなこと、サクラは露も知らない。

『私はサクラじゃ! おぬしの名はなんじゃ?』

 無邪気に、気軽に、切り捨てた相手の名を聞いている。
 ぼくは小さくため息をついた。

「ぼくは国重静です。その、お疲れ様でした」

 苦笑を漏らしつつ、ぼくもまたサクラに合わせて自己紹介をした。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 23:03:25.08 ID:QABM12h10<> >>480

かく言う俺も大学生なんだが、今からもう学祭の準備で忙しくてね――。
三ヶ月後だってのにイカれてるよな、でも大会には…………………ん?

「(オイオイオイ?俺より年上?ナンデ?)」

――そう言う腹積もりだったので、目が、言葉が、飛び出そうになった。

「おー、そういう意識は無かったんだが……済まねぇな」

「にしても成る程、確かにHMPのプラスチック素材は再利用が極めて用意だし」
「フジムラ理論が多くを解決してくれたとは言え、CPUには未だに貴重なモンを使ってるって聞くぜ」
「今までは、特に気にしてなかったが」

資源再利用の必要性は、今世紀ずっと言われている事だ。
藤村博士とロボットの存在は日本国にかつてない繁栄を齎したが、彼とて神ではない。
人は、あるものをやりくりする。大事なことだと彼にも分かる
火星植民すら稚気じみた夢であるのだから、他から奪うなど不可能だ。

コーヒーを呷ると、彼はらしくないセンチメンタリズムに襲われる。
……バイスフリューゲルは、どう思っているのだろうか。

例えば、HMPを生物に置き換えて考えてみようではないか。
リサイクル業者はこの場合、葬儀屋のような気がするが、実際はそれよりおぞましい。
人間の世界には、血肉を鋳溶かして次世代の同類を生産するシステムはない。

感受性の高い方である彼女は、熱分解槽の虚空に何を観るのか。

『……あなた方は、お互いをとても大事にされているのですね』

フレーバーパフを味わい尽くしたか、振り向いてふと口を開く。
柔らかい言葉に隠された真意を、尋ねるべき……? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 23:12:29.37 ID:u8Y2T2/DO<> >>481
「まあすぐ直るし、大丈夫ですよ」

こちらに頭を下げる少年に片手を軽く上げて返答する。
HMPファイトをする以上破損は免れないし、破損した場合もメディカルポッドによって回復出来る。

『バラされたとは言え、こちらも額に風穴開けるつもりだったのだから』
DVNOから聞こえるルリの声が俺の返答を補強する。

『全く、素晴らしいまでに尖った性能だな。安定嗜好のナオヒロに見習ってほしいところだ』

なんだか嫌なニュアンスが含まれている気がするのだが……。

『私か。私はルリだ。このヘタレなナオヒロはナオヒロという』

「……さっきから毒吐きすぎ。……まあ、そういうわけで麻木 ナオヒロです」

『ふん、なら次は勝たせてほしいな。……それで……』

主を恨んで相手を恨まず。まあ相手を恨むよりマシか。

ルリが話している間にフィールグラム傍の備え付けメディカルポッドとタブレットを同期し、左腕を放り込んでスイッチを押す。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 23:29:23.34 ID:5DXR/1tko<> >>482

「いえ、良くあることですから」

この作り笑いだけはいくらか様になっている。気にしてない、という風に儚げに笑みを浮かべる。
先ほどまでの振る舞いと合わせてみれば、本当に良くあることなのだろうな、と分かるだろう。
実際、気にしていないのだ。大抵の日常会話は苦痛であり、そういう意味で年齢の話が特別辛いわけではない。


一度深呼吸をして。続く言葉はやはり小さく、けれど澄んでいて、それまでに比べればずっと滑らかな口ぶり。

「はい。最近は特殊なパーツが増えてきて、その……処分の仕方に困っている人も多いですし。ここ数年、こういう仕事は増えていく一方です」

嘘はつかない。けれど言いたくない側面は言わない。HMPに関してなら、できる。修理も製造も構築も、『救済』も……。その一点にだけ、慧理は誇りと自我を持つ。
処分に困った結果が不法投棄だという現実。授業をサボって、学生自体から増えていく『死体遺棄』を見続けてきたことも。
そして彼女の作り直すパーツの中に、違法改造品が含まれていることも。みんなみんな、胸の内に留めて、抱えて、自信にできる。

「たとえばヒヤシンスの繊維鎧、ジャバウォッキーの電子ウィルス。最新の技術がHMPに取り入れられるのは素晴らしいことです。
けど、開発側と再利用側の技術が釣り合っていないと、資源循環は成立しません。もっとたくさんの人に、こちら側の必要性を知って貰いたい……」

その技術不足な再利用側にいながら、こうして余暇を持てる彼女の立場についても、深くは語らない。
HMPに関してならできる。他の誰とだって対等に。それ以上に。なのにどうして。
心の底の疑問については、深く考えない。考えられない。だって彼女は、1つしかできない。

「……私に命を吹き込みなおしてくれた方をお慕いするのは、当然のことでしょう?」
「……クロリスは、怖くないから」

それは答えとしてどうなのか。言外の意味を多分に含んでいるのは、こちらも同じで。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/08(水) 23:42:54.07 ID:uUtPhYs8o<> >>483
「まぁそれは、そうなんですけどね……」

 修理すればいい、という発想は余り好きではないのだが、それを他人に言っても意味のないこと。
 やはりこういう考えでHMPファイトに臨むのは無理があるのだろうか。
 尖っている、と言われて、サクラはむんっと(声だけで)胸を張った。
 そんなに尖らせたつもりはないのだが……。

『人形が生意気にもかたわで戦おうというのじゃから、これくらいは出来んとの』
「生意気って自分で言う?」

 隻腕であることを誇る彼女の思考はよく分からない。
 というか、(多分にプロである父に頼ったとはいえ)自分で直したAIが、今では全く理解できない。

『ルリ、じゃな。覚えたぞ。またやろうの!』
「ナオヒロさんですね。……あぁ、どうにもお互い苦労してるんですね……」

 毒ばかり吐いているルリを見て、思わずぼやく。HMPはマスターをからかうようにでもできているのだろうか……。

 相手の修理を待っている間、サクラの損傷具合を確かめる。
 破損こそないが、この様子だとおそらく回路系がちょっと怪しいかもしれない。帰って一応調整だなぁ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 00:00:11.86 ID:IRqVSHpp0<> >>484

『……。』

28cmの矮躯は、自分の右腕を撫でるように観察し始めていた。
このパーツは特別というよりむしろ古典的だが、間違いなく扱いが難しい部類に入る。
高すぎる威力。こだわり。カスタムの際の親和性の欠如。
マニアの要請に応じた恐竜的進化。それを悪とは言えない……けど。

幸いにもご主人様は頭が硬いなりに何とかしてくれた。
なら、他は?わたしと同じコンベアの上を流れていった姉妹《はらから》は?

嗚呼……忘れよう、少なくとも、今は。

「そう言いつつ再利用業者は、詳細な情報を秘匿すると聞く」
「仕事柄、企業や個人への『誠意』による対応らしくて、悪くは言えないし」
「技術の集積場としても俺にゃ何とも言えんが、他は保健所や無縁仏の融合問題みたいに見える」

「……申し訳ねぇが、妙な話まで穿り出しちまったな」

ばつが悪そうに目を伏せる青年は与り知らぬ事だが……違法改造機の開発には、正に技術蓄積の意味もあるのだろう。
再利用側が開発側に先んじる。そして、少しでも多くが救われる。
自身の尾を食んで完全を象るヘビめいた苦痛を伴う輪廻。矛盾……?
言葉に詰まる――。

『いま……怖い、と申しましたが』
『折角蘇ったのなら、後は何が貴方を脅かすのです?』

一方のバイスフリューゲルは、どこか抉るような事を口にしてしまった。
言外に指摘した相互補完的な歪みが、より深く現れた気がしたからだ。

『私が申し上げる通りなら、大切な方』
『廃棄の恐怖などとは、もはや無縁でございましょうに』
『こうして、私やご主人様たちと、言葉を交わす目も有ると言いますのに……』

無自覚な辛辣さと仕切り癖は、『仲良し』に綺麗で居てもらいたいという気持ちの裏返し。
自分の言葉が何かを正していると、信じたいのだ。
辛い想像を振り払おうとしている今は、尚更のことと言えた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 00:06:02.27 ID:pCjt56WDO<> >>485
「こうやって直す度に、次はこうならないように勝とう。そういう感じに気合い入れ直しますから。
まあ、勝つために破損しなきゃいけないこともありますけど」

そう、さっきの試合のように。……負けたが。

『負けたじゃないか』

うるせぇ、分かってるよ。


『隻腕ならもっと安定するアセンがあると思うが……それではつまらないと君は言いそうだな』

「ファイト中の押せ押せの感じからしてそういう思考はしてそうだなぁ」

思考というか嗜好というか。

『次は私が完膚無きまでに勝って見せよう、サクラ。……ナオヒロの出来によるが』

「お前の出来の間違いだろうに。……まあ俺はそこまでですよ。
今は勝ち確からの逆転でちょっと不機嫌なだけで、普段はもうちょっと……素直?ですから」

ルリにつっこみ入れつつ、国重に一応ルリをフォロー。
いや国重に乗っても良かったのだが後が怖い気もするのだ。
危機察知は万全。

『……チョーシに乗るな』

あれ? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/09(木) 00:31:38.20 ID:NHgnSc8ao<> >>487
「あぁ、それは分かります。……っていっても、ぼくは機体方面でなんですけどね」
『最早偏執的じゃからの、主殿の『再設計』。キワモノしか作らぬ』
「そんなことないと思うんだけどなぁ……」
 首を傾げる。なんでみんなしてそう言うのだろうか、それが最適だからそうしているんだというのに……。

『私の場合は事情があっての。好き好んでこうなったわけじゃないのじゃが……しばらくしたら馴染んでしまってのぅ。最早両腕では戦えまいし、変えるつもりもないしの』
「まぁ色々事情はあったんですが、今は効率よりもサクラ自身の意向と相性を重視してます。接近戦では負けなしって方向に」
『その近接戦で負けたがの』
「うん、それは今後の課題」

 自身満々なルリちゃんの物言いに、サクラもふんと鼻を鳴らした。

『何を言うか、次はこっちがダルマにしてやるわい』
「サクラ」
『うぐ』

 きっちり相棒に釘を刺しつつ、彼女をメディカルポッドに入れる。

「あはは、そうですか。逆にこっちはさんざんっぱら暴れて満足してるみたいですけど……っと、もうこんな時間かぁ」
『おぉ、そろそろ帰らぬとの』

 一応の修理が完了したサクラは、ぐっと大きく伸びをすると、ぼくのカバンへ戻っていった。

「あ、えぇと。連絡先交換しませんか?」
『おぉそうじゃの、それがいい!』

 サクラが再戦を望んでいるようだし、こういう縁でHMPファイターとの繋がりを増やすのも悪くない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 00:33:15.55 ID:z1QrrMzho<> >>486

対するクロリスの背には、今も充電プラグが差し込まれたまま。
バッテリー消費を度外視した構築。短期決戦至上主義のなれの果て。
安定したパーツを繋ぎ合わせてわざわざ不安定に組み直された機体は、二人の合意の上。

慧理のもう一つの、あるいは本当の仕事にもっとも必要なのは、誰にも目撃されない速さ。だから平時から、速さを追求するようになった。
バイスフリューゲルの其れが恐竜的進化なら、これは……。

「そうですね……」
「慧理さん?」

明るく小洒落た店内の中、この一隅が静まり返る。
たとえば、体内に残った銃弾を取り出すための手術。異物は体内に長く残るうち、周りの組織と癒着してさも肉体の一部のように振る舞う。
人は傷を重ねて成長する生き物。進化とは遺伝子の傷跡の記録。なら治すとは何なのか。

「たとえば、何とか修理可能な子を」

「慧理さん。それは初対面の相手に話すような内容ではありませんわ。
あなたも、少し人の事情に深入りし過ぎです。配慮の無い優しさほど危ない感情もそうありませんことよ」

『たとえば、何とか修理可能な子を何日もかけて、エラーを取り除いて破片を取り除いて、綺麗に作り直して
――目覚めたその子が最初にやったことが、かつての主人への復讐だったり、なんて話、言えるわけないじゃないですか』
ついでに、その時HMPがデータ上ありえないスペックを発揮したりだとか、青薔薇によって事件が揉み消されただとか、当然言えるはずもない。

どうしようもないほど彼女たちは歪んでいて。歪みを抱えたまま成長してしまった。
互いが互いという異物を取り込んだまま癒着してしまったのかもしれない。

「この話題は場にふさわしくありませんわ。もっと別の、あなた達の話にしてくださらない?」

主人を思いやるHMPの声はとても優しい。
――配慮の無い優しさほど危ないものもない。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 00:57:58.20 ID:pCjt56WDO<> >>488
『静といったか、サクラが貴公の作品ならばサクラの言っていることが正しいと思うぞ』

「ルリ、初対面の人にそんなストレートな意見をぶつけるもんじゃありません」

なかなかひどいことを言うHMPだ。

【ナオヒロは自分も肯定していると分かっているのだろうか】

】結局どっちもどっちにひどいのであった【


「ほーぉ」

事情とやらがちょっと気になるが、こういう場合、言われないことは聞かなくて良いか。

『サクラの主人はサクラを汲んでくれるのか。羨ましい』

「俺が汲まないみたいじゃないか」

『そう言っているのだよ』

ぐぬぬ

『それと1つ訂正だ、負けたのはこちらだ』

「まあそうだけど、もうちょっと悔しそうに言えよ」

『ふん。……ダルマは困るから、そうなる前に蜂の巣にして握り潰してやるぞ』

気だけは強い。気だけは。

「連絡先?いいですよー」

いつの間にか補修し終わっていた各パーツをルリに装備し、鞄にしまう。

こちらとしても強いファイターの知り合いが出来るのはありがたい。
ポケットからケータイを取り出していくつか操作する <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 01:09:34.07 ID:IRqVSHpp0<> >>489

HMPの知能は人間に匹敵する。
その人間が歴史上、飽きもせずに繁くやってきた事は何か。

復讐という原理がHMPに見られた事は、その問いへの答えであり、次の問いへの結節点と見做せる。
次に始まるのは、なんだ。怨念を束ねた戦か、怨念を支配する為の法か。
或いは、戦を行うための法を遍く広める為の――創――《0101110101010010101101》

「白い翼のお嬢さん……何か勘違いしてるようだが。これは大人のトークだ」
「そりゃ、修理可能だと思ったらダメだって事例は腐るほどあるさ。本来はリサイクル屋だしな」

「俺達の医者も、基本的にはそうだろ」
「――ダメな時もある、だからこそ常に気吐いてるわけよ」

バイスフリューゲルを爪で小突いて、町田が笑う。
だが内心はとんでもない。思わぬ方向に話が転びかけて、焦っている。
幸いと言うべきか、優しい声は少し遅れた機先を助けてくれた。一見して、円満だ。
『死』に関るありきたりなテーマでもって、話を収束させる。最後の不適な話題。
スケープゴートめいて消費される。

そろそろ、カプチーノも届くだろう。いい頃合いだ……。

「バイスフリューゲル。慧理さん。……クロリス。次の大会の話でもしよう」
「まずは今回のメタゲームだが、俺は流行りの高機動高火力ヒューム対策にマキノとドミの混成が増えると――」

■■■■■■■

二人がコーヒーを飲みつくすまで、当たり障りの無い会話が続く。
あれだけ饒舌だったバイスフリューゲルは、相槌人形になっていた。
時折、マスターの少し突飛な発想を貶すぐらいで。

「……ま、バイスフリューゲルがコレだから結局ドンパチに終始するがね、俺は」

彼は席を立とうとするとき、そんな事を言った。
明言はしていなかったが、大会の参加予定者の一人らしく……。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 01:34:27.71 ID:z1QrrMzho<> >>491

感情がある以上、それはとても自然なことで。
感情が異常であるなどとは認められないほど優しかったから。
無理やり繋ぎ合わせた理は、気づけばリサイクルすべきほどにボロボロだった――。

結局今回も、それは修理も再利用もされないまま。

「注目度の低いフライメック系列は? 高度を活かした持久戦はそれだけで短期決戦モデルの天敵です」
「流行に乗った移り気なマスターはともかく、熟練者なら対策を用意しているものよ。そう、私達よろしく。
畢竟、自分の在り方を貫くことに帰着するのではなくて?」

――

上塗りされた平穏は剥されることなく。
会話は平和なまま終わりを迎える。

「あ、あの……」

と言って差し出すのは、シンプルな名刺。
シュバリエハート社――中堅どころのHMP開発企業――の支部の住所と、その電話番号。
特別研究員、という窓際なのかエリートなのか判断の付かない役職の他、彼女本人の情報は何もない。

受け取ってもらえれば、控え目に手を振って一人と一機を見送るだろう。

そんな彼女は、急な仕事が入ることも多いので、と言って大会には出ないことを明言している。

/おつかれさまでしたー。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 01:50:17.60 ID:IRqVSHpp0<> >>492

彼曰く、ある個人が業を極めているか云々より、粗製の使い手が増えることのほうが重要らしい。
だが熟練者以外は三下ファイターだろう、の見解は一致した。
三下の傾向を把握し、確実に食える事が強者の条件の一つなんだと。
そして、そうせずとも即座に対応できる――『猛者』こそ、本当に尊い感性を持っているのだと。

「ありがとう。コチラから出せるものは特になくて……すまない」
「今度があれば俺が奢るから、好きな味のパフを買ってやるといいよ」

ソフト帽を整え、勢いふりむくという気取った仕草
……をせずに受け取ると、ハットのつばに沈んだ目線を隠し、静かに謝した。

『(ご主人様、ピストルの使い方の説明はしなかったのですね)』
「(ああ。途中まで大会のライバルだと思っていたから)」
『(……恐らく、それで良かったのですわ)』

帰り道、二人が小声で交わした会話。僅かに怯えているのは、いつも姉のように振る舞う白翼。
真実を知らずとも……足音ぐらいは、聞こえていたのだろうか。

/乙ありでした! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/09(木) 19:47:25.53 ID:NHgnSc8ao<> >>490
「うーん……」

 必要条件を満たす最適を求めた結果なんだけどなぁ、サクラは。
 確かに腕がないのは変に見えるかもしれないけど……。

(――そもそも設定した条件がおかしいのじゃと、気づかないんじゃから恐ろしいのぅ)

「ナオヒロさんみたいに咄嗟に命令出せませんからね、ぼく。サクラに任せたほうが、強いですから」
『ようは丸投げじゃな。そのくせ相手を斬ると怒るんじゃ。理不尽じゃろ?』
「サクラ?」
『じょ、冗談に決まっとろう』

 本当ならファイトにだって連れ出したくないのだ。
 自分が苦心をして作り上げたサクラが傷つく様を見たくない。
 サクラが、傷つける様を見たくない。
 ――それが醜い自己満足だと分かっているから。

『実際問題、あのステージ相性でドローというのがの。しかも接近戦まで持ち込めておいてじゃから』
「特化型ですから、自分のテリトリーで戦って勝てないっていうのは……まぁ、今回はサクラが事を急いたせいかもしれませんけどね」

 サクラが一番嫌う戦法だが、ひたすら逃げてバッテリー切れを狙っても良かったのだ。
 刀神楽を使わなければ、サクラの電力容量は通常HMPの三倍。容量特化ボディよりも活動時間が長いのだから。
 もちろん刀神楽を振るう通常戦闘では、短期決戦を狙う必要があるわけだけれど。

『ぐぬ。……確かに性急だったのは認めるがの、次はこうはいかん』
「自身満々だなぁ」

 まぁ、そうやすやすと被弾するような機体ではないけれど。

「どうもです。……あの、ぼくこれでもエンジニア目指してるので、何か相談があったら遠慮なくください」

 連絡先を交換して、小さく頭を下げる。
 他人の機体を見て色々光る点を学びたいし、少しでも経験を積んで技術を高めたいし。

『あぁ、改造の相談はやめておいたほうが良いぞ。キワモノになるからの』
「そんなにはしないよぉ……」
『どうだかの』

 そんな無茶な改造はしないのになぁ。
 ぼやくぼくの隣、カバンから身を乗り出してサクラは肩をすくめた。

「それじゃあ、ぼくらはこれで」
『また会おうの! さらばじゃ!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 20:44:07.57 ID:pCjt56WDO<> >>494
『いや、今日のナオヒロはなかなかだったが、普段は酷いものだぞ』

「あ゙ー、まぁそうかも。計算立てた作戦は立てられたもんじゃないし」

『予想外なことがあればすぐに“退け”、だ』

ぐ、こいつ。
事実なだけに反論できない。
改善しようとは思ってるんだが……。

『斬ると怒るというのは妙な話だな。勝ちたくないわけではあるまいに』

対戦中ちらっと見たとき、国重君は目を閉じていたような気がする。
ルリが言うように、勝ちたくないということは、当然、ないだろう。
ということは、彼はバトル自体があまり好きではないのかもしれない。
HMPを作る側からすれば、自分の作品だろうとなんだろうとHMP同士が互いを壊し合う様は気持ちのいいものではないのかもしれない。

 少々ズレた解釈だが、ナオヒロは自分なりにサクラと国重の会話を噛み砕いていた。

「正直、あそこで突きを反らせたのは奇跡みたいなものですし、
確かに国重君が言うように、サクラさんが自分から攻めてくれたのもラッキーでしたね」

『結局、最後の落下を除けばダメージらしいダメージは与えられていないからな』

鞄の中からルリの目が俺を睨んでいるが無視無視。

『フィールドが変わればまた分からないぞ?
 私の装備も変わっているかもしれないなぁー?』

サクラさんを挑発するついでに強請ってくるルリ。無視無視

「こちらこそ。―――――そうですね、なにか頼むかもしれません」

ケータイを確認しながらサクラさんの助言に少々苦笑顔になってしった。
返したときには取り繕えていただろうか。

『あぁ、さらばだ!』

「ありがとうございました」

鞄から修理されたばかりの左手を振るルリ。
どこかにひっかけて壊すなよ、と茶化しながらHMPスペースを出る。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/09(木) 21:11:09.26 ID:NHgnSc8ao<> >>495
「わざわざ有利を捨てて突貫するよりマシですよ、きっと」
『女には打算をかなぐり捨てねばならぬ時があるのじゃ!』
「うん、それ追い詰められた時のセリフ」

 ここらへんは対照的なのかもしれない。
 大分無理をするサクラと、無理をさせないナオヒロさん。

「あ、あはは……」

 ルリちゃんの言葉にこちらも何か言おうかとも思ったが、やめておいた。
 そもそもこんな心がけでファイトに出ていること自体、ある種相手への侮辱なのだ。
 嫌々ながらやっているなんて、そんな相手だったらだれだって怒るだろう。

「ほら言われてるよサクラ?」
『うぐぐ……だが一発も当たらなかったのも事実じゃろ!』

 サクラの場合当たらないのが当たり前なのだが――。

 サクラの物言いを真に受けたのか、苦笑を隠しながらのナオヒロさんの返答だった。
 実を言えばあのアセンブルの微妙なちぐはぐさが気になってはいるのだが、流石に言い出すのは失礼だし……。
 そんなことを考えつつ、小さく一礼してその場を離れた。

 外は相変わらずうだるような暑さ。日差しで目が眩みそう。
 赤い信号。交差点の手前で立ち止まる。

「それにしても、電撃か……」

 ――ふと考える。
 相手の左腕に攻撃を当てた段階でスタン状態を受ける、と考えると、元々接近戦には一定のリスクがある。何らかの対策が必要だ。
 サクラは接近戦しか出来ないのだから、接近戦で不利を負う要素は可能な限り排除したい。電磁弾を弾いた時など、今回のような状況はいくらでも考えられる。
 絶縁体の柄か、しかしそうすると刀神楽への送電が難しい。その方法ならダイオードだ。あるいは鍔周辺を絶縁体にしてもいいかもしれない。
 何にせよ刀神楽への電力供給を妨げないようにしないといけないな……。

『あぁ、始まったか……。主殿ー、周りを見るのじゃー、青になっとるぞー、邪魔になってるのじゃー』

 サクラの言葉も耳には届かず、暑さも忘れて。
 それから気がついたのは、三十分ほど経った後だった。

//こんな感じでいいですかねー。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 22:40:05.44 ID:z1QrrMzho<> シュバリエハート社の系列店。マニアックなHMPばかりを販売するこの店舗は、他のショップに比べて比較的小さい。
平時は独特の静けさに包まれたある種の聖域である店内だが、今日は珍しく賑わっていた。

「リカバリー完了です。次の人、どうぞー」
「慧理さん、お身体は変わりありませんか? そろそろ休憩を挟んだ方が宜しいのではなくて?」
「大丈夫、クロリスが休んでる間に私も休めてるから」

一日限定のイベント。百円でシュバリエハート社員とバトル。勝てば店内のHMPパーツをどれでも一つ持って帰ることができる。

今回の相手は、エスニック調のワンピースの上に白衣を羽織った少女。
これまで担当していた長身な青年が病欠し、代わりを務めるピンチヒッター。
その大人っぽい格好をしようとして盛大に何か失敗した感じの服装が可愛らしく、妙な人気が出ていた。
横のつながりが強いマニアたちは互いに連絡を取り合い、一人一戦限りのイベント戦は昼から始まって日が暮れても絶え間なく続く。

これまでの店員と遜色無い強さだったが、高速紙装甲スタイルは少しのミスが敗北に直結する。
勝てるかも、という意識を持ちやすいのも、人気の理由の一つかもしれない。事実、何度か敗北直前までいっている。
しかしこの少女は、連戦の中で未だに一敗もしていないのであった。

(流石にちょっと疲れてきたかなあ……)

廃品リサイクルを専門とする早緑慧理は、普段通り異常なスピードでノルマをこなして、そして系列店への納品を手伝って、
そして病欠した店員に代わってさらに管轄外のイベント戦を担当しているのであった。

近年急に成長したシュバリエハートは社員数が少なく、他分野の仕事を手伝うことになることも多い。
とはいえ、二段階にお手伝いをすることになるとは慧理も思わなかった。白衣のままなのはそのためだ。

/深夜に食い込みそうなので、途中で凍結になる可能性が高いですが、それでもよければー。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 22:51:11.87 ID:l+slY3oso<> >>497
 マニアックなHMPを売る店には当然、それに似つかわしい人物が訪れる
 店内のパーツを物色していた彼は、盛況なイベントに出来た僅かな間隙に、す、と足を踏み入れてみることにした
 ネット上でも自分の作品を展示していたシンは、それなりに界隈では名前が売れている
 俄にざわつくマニアたちを余所に、対戦相手である慧理に挨拶をする

「どうも。いや、出るつもりはなかったんだけどね。ずいぶんと良い戦いをしているみたいだから、ちょっと血が騒いでね」

 そんな風にへらへらと喋りつつ参加料の百円を支払うと、筐体にHMPをセット

「その格好だと、内勤の人だよね。新興企業は、色々大変そうだね」

 労っているのか、なんなのか、ともかくやる気満々と思しき彼はDVNOを操作する

「フィールドはそっちが選択、でしたっけ?」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 23:05:17.11 ID:z1QrrMzho<> >>498

「あ、えーと……私、あなたの作品見たことあります! エクリプスの人ですよね」

当人ではなく愛機の名前で覚えているところが慧理の慧理たる由縁。
本当に嬉しそうに屈託なく笑うと、ただでさえ幼い顔がなおの事子供っぽく。

「大丈夫です。今とっても楽しいんですから。フィールドはこれまで通り、森林を選択しますね」

彼女のHMP同様、リカバリーの終わったばかりの森林フィールドが用意されている。
高木の生い茂ったフィールドは薄暗く、マスターからは俯瞰し辛い。
障害物の多い深緑のフィールド、森林。

早緑慧理が手に取ったHMPのHEADは、大手企業ホビーガーデンの代名詞フローラ。
その特徴は、草木の生い茂るフィールドでの性能向上。

「さあ、始めましょうか」
「もう第何幕だったかさえ分からないほどですが、このひと時をお楽しみいただけば幸いでございます」

心の底から楽しそうに。二人は言った。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 23:20:51.86 ID:l+slY3oso<> >>499
「ああ……ありがとう。まだまだ、理想の美にはほど遠いけどね」

 謙遜しているがその技術力は正規の技術者に勝るとも劣らないものだ
 何故そんな技術を持っているのかは、色々と事情があるのだが……

「森林か。花の女神の領域だね」

 HEADパーツに目を向けつつ優しく微笑んで

(性能の向上……何%だっけ? ん……まぁ、忘れないようにすればいいかな
 戦闘は今までのを見る限り近接特化。ステージの有利性はあっちに軍配があがるね
 それに、あの顔の造型は6版か……尖ってるね。対するこっちは、凡か)

 アネモネは他のシリーズのようにステージによる恩恵を受けないシリーズだ
 あくまでも素朴。だからこそ、サブストリームの中でも埋もれてしまった

「……ま、娘はどんな風に育ったかを母に見せてみようか」

≪システム起動≫

 森林ステージに降り立ったエクリプスは息を潜めるように降着装置を展開すると樹へと身を寄せた
 息を潜めたところでジャミング装置などを積んでいない以上レーダーに捉えられることは避けられない

「今日は少し、緩めに行こうか」
『承りました!』

 森林という遮蔽物の多い中、さて、どうやって三次元機動に特化した相手を穿つか……

(追加弾倉を交換しておくべきだったかな……まぁ、楽しむのが第一だね)

 ふむ、と頷きつつシンが指示を飛ばし、ゆっくりとエクリプスは樹上へと移動する <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/09(木) 23:39:51.42 ID:z1QrrMzho<> >>500

今日一日で、元々得意の森林ステージには完全に慣れている。
緑に閉ざされた世界は、もはや二人の箱庭。

「慧理さん!」
「え、あ……うん!」

初期位置から不動。まったく音をさせないまま、柄だけの剣を両手で掴む。
R.ARMズヴェルト。範囲の狭いバリアは特化型。そのバリアが守る狭い空間の中だけは完全無欠の異界。
L.ARMクラウソラス。電力を光刃に変える武器に、射程限界など在りはしない。大火力による自機への余熱はバリアで防ぐ。

数秒。エクリプスが樹上に上がりきる少し前。ちょうど木の葉の合間から陽光の欠片が覗く頃。
クロリスのレーダーがエクリプスを捉えた直後に、バリアとクラウソラスが同時に起動される。

「あなたに劇的な幕開けを。終幕にならないよう、御気を付けてくださいね」

限界を超えた出力を発揮したレーザーブレードが、木々を切り裂いて直接エクリプスに向かった。
クロリスから見て左から右へ。障害物など無いかのように振り回される刃は、音一つさせず。
焼き切れた木が発する煙と、数瞬遅れて断面から落ちる音のみが結果を伝えている。

開幕の超火力。弧を描く運動は、半径が長いほど先端が早い。光の刃はその名に恥じぬ速さで唐突に現れる。
両アームの武装を司るマスター慧理の操作と、クロリスの動きにブレはほとんど無く。刃は無駄な力を使うことなく本当にエクリプスの手前で現れる。
森林ステージで戦い続けたからこそできる、規格外の、あるいはチート臭い一撃。

L.ARM損傷率:5%
バッテリー残量:67% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 00:02:40.83 ID:T+h4At60o<> >>501
(開幕一閃か)

 何人もの相手がそれで一刀の元に断たれてきたのを見てきている
 それにこの攻撃の行く先は唯一の牙だ

(残念だけど――)

 こつ、とDVNOのモニタが爪で叩かれ、ドラッグ
 仮想モニタを放り投げる動きにも似たその動作の音
 エクリプスにはそれで充分

 轟、と爆音が響き右腕のカンディルが火を噴いている
 右腕に食らいつかんと天を引き裂きながら進み来る光の刃に、大口径の弾丸が突き刺さり、消失する
 元よりこれで消滅など狙った技ではない
 どうしたって銃には反動というものが存在する
 大口径になればなるほどそれは大きくなり、カンディルほどの巨大な機関銃ともなれば、本来は二脚などを展開する必要がある
 その強烈な反動を打ち消すために、エクリプスは発射の際には降着装置を用いて地面に体を固定するか、ブースターを吹かすことによって反動を強引に押し[ピーーー]という手段を普段はとっている
 だが、今、彼女はそのどちらも行ってはいない。どころか、右足のブースターは後退の為の火を噴かしていて――
 となれば結果は明白――綺麗な180度反転
 カンディルを切り裂くはずだった光刃が、左肩のホーンオブプレンティに突き刺さる
 ただの腕部パーツならば耐えられなかっただろう。だが、ホーンオブプレンティは元より防御力が極めて高いパーツであり、加えてその表面に加工が施されているため、その防御力は重量に似つかわしい超防御力を誇る
 さらにいえばそのHPは単体でHMPのHPポテンシャル値を引き上げるほどの数値である
 故に――

≪L.ARM――HP60%≫

 必殺であるはずの一撃は受け止められる
 そして

『がら空きですのー!』

 光刃が通ってきた軌跡。そこにあったはずの遮蔽物は今や全て消え失せている
 ご、と両足のブースター吹かしたエクリプスが、その場で倒立
 煌めく燐光を散らす翅が羽ばたいて、その状態で体を空中に固定。脚部ブースターが対反動用の吹かし方へと移り――

『お母様への、娘からのプレゼントです!』

 轟音を響かせてカンディルが火を噴いた
 とてつもなく不安定な状態から放たれたとは思えないほどに綺麗な弾道を描いて、カンディルの弾丸がクロリス目がけて飛んでいく
 狙うは胴体と足の間
 ヘッドショットなどの博打ではなく、確実に命中させることを意識した射撃だ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 00:26:01.68 ID:Nw0jdotTo<> >>502

「まあ、何回も見せてれば対策を取られるのは当然だよね」
「期待通り、楽しめそうですね」

攻撃後のタイミングを狙った、理想的な射撃。
それにまったく怯えることなく、クロリスは大振りの勢いのままに、その場で一回転。
失敗を悟った直後に柄のみに戻ったクラウソラスは、きっかり360°回転を持ってその輝きを取り戻す。

「レディへの贈り物は、しっかりと手順を踏んでからするものでしてよ!」

レーダーによる完璧な相手の位置把握。そこから直線軌道で放たれている以上、弾道は完全にデータ化できる。
弾丸の速度を計算する必要はない。到達までに返す刃が間に合いさえすればいい。この剣に、射程限界など無いのだから。

全身を最軽量のパーツで固めた構築。一撃ボディに入ればそれで終わりかねない凶弾は、しかし届かない。
遠心力、軽量機体、森林補正と勢いに、フローラver.6の誇りを込めて。一回転に合わせる踊るヒヤシンスの薄布が美しく。
銃弾がレーザー光で崩れ落ちる。斬られたのではない。灰に返ったのだ。

マスターの操作は完璧。弾速を始めから知っていて、誰かから指示でも受けていたかのように。最小の刃長で銃弾を止めた。
その結果をこれまた分かっていたかのように、クロリスは即座に次の行動に移る。切り落とされて積み重なった木々の隙間へと、クロリスは姿を消した。

「流石エクリプスさん……です。えへへー」

ものの一分も経たぬ間に、バッテリー残量はもうすぐ半分を切る。
違法改造でもしない限り到達の叶わぬはずの異常火力、その代償……。

L.ARM損傷率:6%
バッテリー残量:56% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 00:37:27.37 ID:T+h4At60o<> >>503
「映画か漫画の中の侍みたいだ」

 くすり、思わずシンが失笑を零すとまたDVNOの表面をクリック
 空中倒立をしていたエクリプスがカンディルを乱射。ブースターを殆ど吹かさずに姿勢を元のものへと戻す

(さて……あっちの目だけに見られてるのは些か以上に厳しいね
 かといって、呑気に移動すれば剣で死ぬ、と)

 これは厳しい相手だなぁ、と思いながら状況を確認
 こちらは射程ギリギリに陣取っているが、向こうの性能上昇のせいでレーダーから丸見え

(んー……やっぱり、アレ積もうかなぁ)

 カスタマイズに思考の一部を裂きながら、木々の隙間へ消えたクロリスへの対処を考える
 相手は超高機動の、それも間合いを無視出来る機体だ
 こっちの目の中に飛び込んでこない以上、自分には捉えることは出来ない

 と、なれば――

 クリック――エクリプスは、その場から後退。敢えて狙われるとわかっていて、周囲が見にくい場所へと姿を隠していく

(あんまり、スマートなやり方じゃないけどね) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 00:50:52.51 ID:Nw0jdotTo<> >>504

「今日はシュバリエハートのイベントですから、騎士って言ってもらいたいところですね」

二合が終われば、慧理は手を止める。彼女の役割は、扱いの難しいLR両アームの制御のみ。
それ以外はDVNOを通して戦況データや相手の情報を伝えるだけで、基本的な行動はクロリスに一任している。

「後退ですか。高速機体に対して、高度を活かした持久戦を挑むのは王道ですものね」

クロリスは小さな隙間を見つけて木々の合間を駆けて行く。
道が無くなれば宙返り。踵の刃で枝を切り落とし、真っ暗な中を駆け抜けていく。
風の神に愛された乙女の名を冠したHMPは、風そのもののように緑の中を疾走する。

遠距離武器としてクラウソラスを扱うなど、製造者の想定していない無理な使い方はやはりリスクが大きい。
相手が後退という手に出た以上、気軽に使ってバッテリー切れに誘い込まれるわけにはいかないのだ。

レーダーによって相手の位置を把握できているので、その走りに迷いは無く。
間もなく距離を詰め切ったクロリスの姿が枝葉の隙間より幽かに覗く。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 01:03:52.53 ID:T+h4At60o<> >>505
「騎士が銃を弾くっていうのは、なんだかイメージがないですね」

 騎士というと、やはり弓というイメージが強い
 時代を考えれば侍も弓ばかりを相手にしていたはずだが、この辺りは漫画の影響が大きいのだろう

「出来れば、殴り合いが理想ですけどね。生憎、手がないので」

 はは、と笑うが、そんな改造を施したのは自分である

――

 一歩、また一歩、一陣の風の如くに森林を駆け抜け間合いを詰めてくるクロリスが、アネモネヘッドのレーダーに映る
 移動速度はあまりにも速く、どう足掻いたところでエクリプスの速度では逃げ切れない
 かと言って上へ行くのは愚の骨頂。バッテリー切れの未来しか残ってはいない
 クロリスもバッテリー切れに悩まされているが、エクリプスもそれは同じなのだ

(ジリ貧だね……とにかく間合いに入れないことが大事だけど、この地形じゃ難しい。重鈍過ぎるしね)

 思考しつつクリック
 ちらちらと見え始めたクロリスの移動先を予測しつつ、カンディルが秒間十発の機関銃モードへと移行する
 連続して響く銃声は嵐のようで、排出された空薬莢が、樹の根に溜まっていく
 流石に樹を砕くのは不可能だが、枝程度ならば容易く撃ち抜けるはずだ

(……あの技が使えれば、ねぇ) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 01:23:50.21 ID:Nw0jdotTo<> >>506

「確かに、日本刀で銃弾を切る実験はあっても、西洋剣で銃と戦う話はあまり聞きませんね」

「銃士はサーベルも携帯したと聞きますしね」

会話に混ざりつつ、クロリスの体は機敏に動き回る。
バッテリー消費と引き換えに高性能なのは剣だけではなく、AIもだ。得意の森林フィールドの中でなら、弾道を読み取ることすらそう難しくはない。
しかし樹木に移動範囲を制限された状態ではかわし切れない部分も出てくる。そういった部分はなるべく枝を砕いて減衰した弾を、掠る程度に留めて受ける。

決して直撃を受けるわけにはいかない。捨て身の攻撃はできない。だから目の前の僅かな距離が、詰め切れない。
BODYの薄布に掠り、布辺が飛んでいく。HEADの長髪が飛んでいく。だが決してまともには受けない。
薄布は空気抵抗を減らすためのもの。髪は放熱と風速・湿度といった情報の計測器官。
それが削れていけば、僅かに、僅かにそのスピードにブレが出る。

ほとんど無傷でありながら焦燥感を覚えて。木々の中を飛び出し、一際高く天へと垂直に突きだした高木の側面に足をかける。
LEGパーツの刃が木に食い込み、樹液で濡れながら機体を支える。軽い機体ゆえに、意外にその立ち姿は安定していた。

天へ向かって一直線に。クロリスは走り奔り、空を目指す。


HEAD損傷率:7%
BODY損傷率:6%
R.ARM損傷率:3%
L.ARM損傷率:6%
LEG損傷率:4%
バッテリー残量:48% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 01:41:17.29 ID:T+h4At60o<> >>507
「まぁ、どちらかといえば、西洋剣が切る事に重点を置いてないから、なんだろうけどね」

 撃っても撃っても有効打にならないことに、エクリプスは内心で焦りを覚える
 だが、シンは正反対にそれが当然だと受け止めていた
 銃機だけで戦闘が決まるのならば、HMPバトルに於いて近接武器が栄えるはずがない
 高機動型HMPには、むしろ、銃撃が通じることの方が希だ
 特に一対一の状況ならば

(やっぱり、換装しておくべきだったかな)

 思考を幾つも並列して走らせながら、DVNOから伝わってくる情報と、フィールグラムから伺える戦況を見守る
 シンは、揺らがない
 ――だが、エクリプスは揺らぐのだ

 重力に抗い、天へと疾駆するクロリスの姿に、思わずエクリプスは見惚れた
 美しい、と正直に思った。とてつもなく輝いて見えた
 神話に讃えられる女神とは違う、肉食獣然としたその振る舞いは、確かな煌めきだった
 くやしい――彼女は、心の底からそう思った。AIを管理する人工知能が、その揺らぎを異常反応としてDVNOに伝える
 シンはそれを無視。ただ、彼女が伝えてきたその異様に、対処する戦術を返すだけ
 
 上を取られるわけにはいかない
 森林ステージはほとんど日が差し込まないが、今2体のHMPがいる高度ならばそろそろ陽が見えてくる
 そんな場所で上を取られてしまえば、カメラを潰される可能性がある
 無論、到達までの僅かな間隙にて撃ち落とせる可能性は零ではないが、あの無限射程の剣が閃く方が早いだろう
 だから、取れる策は数少ない
 こつ、とDVNOをクリックすると、エクリプスも上昇を開始した
 低燃費のブースターでは、疾駆するクロリスには追いつけないかも知れないが、座して待つよりもマシ――

――バッテリー残量:50% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 01:58:08.02 ID:Nw0jdotTo<> >>508

垂直な走りは難しい。当然だ。平地においては重心移動で味方につけられる重力は、空ではただ牙を剥くだけ。
軽い体はそよ風ですら微妙なバランスを揺さぶられ、一度足を踏み外せば真っ逆さまだ。

そんな困難な道だからこそ、その先の陽光が眩しい。

森林はクロリスのフィールド。何度も何度もこんな事も一度や二度ではない。
身体の重みを確りと感じながら樹を走り上がり、日を背にして落ちゆく感覚はとても心地よいことを良く知っている。

だから今回も駆けあがり、途中で敵対するHMPを追い抜き、そして頂点から舞い降りる。
清水の舞台から――。やはり彼女は騎士より武士に近いにかもしれない。

「いくよクロリス!」

「分かってますわ!」

樹上での急なターン。同時に両手でクラウソラスを握りしめ、体の回転に合わせて振るう。
刃に長さを節約したりなどはしない。既に見切った相手の機動力の、さらにその上。全力で下がっても、剣線の直線状に留まるなら逃れられぬ長さ。
それだけの長さの光刃を手に、体に乱回転をかけて落ちる。

一刀目だけはしっかいと狙いを定めた振りおろし。しかしその先の乱れ回転切りは、微風に左右される未知の攻撃。
どういった軌道になるかはクロリスの高性能AIをもってしても計算が追い付かない。

これまで散々クロリスを苦しめてきた重力と一体となって。文字通りの片腕である剣と一体となって。

それは振り回される。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 02:30:37.15 ID:T+h4At60o<> >>509
 追い抜かれた。でも、まだ、まだ負けない
 エクリプスは、"初めて"貪欲に勝ちたいと思った
 この美しい人に勝ちたい。私は、この人よりスゴイのだと証明したい
 根底にあるのはあのトラウマであるけれど、それが生み出す活力は十全を超える

 墜ちてくるクロリス。墜ちてくる光刃。光背を背負ったその二つは、光学カメラでは致命的に捉えにくい
 あるいは、今までの彼女ならば、ここで両断されるのを良しとしたかもしれない
 だが、今の彼女は諦めない
 レーダーのXYZ軸から墜ちてくる一刀目の落下地点を算出
 翅を羽ばたかせると同時、斜め上方向にカンディルを発射
 体勢が傾き、〆の字を描くように左腕が上へと向く

 剣先が掠る、などという生やさしい表現では足りぬ、明らかな両断が左腕を襲う

≪L.ARM....lost≫

 DVNOから合成音声が無機質に告げる
 両断された巨大な黴は、その内側を露出。詰まっていた多量の弾丸をボロボロと礫の如くに大地へと零した
 手痛い一撃と断言して良いだろう。だが、それは同時に、彼女の軽量化をも意味している
 重心が右へと傾いた彼女はブースターを吹かし、体勢を調整。おどろに揺れる二刀目に挑む
 墜ちていくクロリスを迎撃出来るとは思っていない。カンディルの要である、ホーンオブプレンティは既にない
 ならばこの右腕もまた重しでしかない――

「蝶は、繭を破る」

 ぽつり、シンが言葉を零した
 それはまるで呪文のように、エクリプスの心を飛翔させる

 飛べ、翔べ、飛翔べ――!

 おどろに揺れる光刃がヘッドパーツの右頬すれすれを抉っていく

≪HEAD HP25% 損傷甚大……これ以上の試合続行は、致命的な問題を≫

 シンはぶつりと、その無粋な警告音を切る
 DVNOはもう見ない。見つめるのは、目の前のフィールグラム
 天へと飛翔する、彼女の姿だけ

 稲妻の如く、踊りながら墜ちてくる光刃が、頭部を抜け、胴体腕部脚部へと墜ちていく

≪R.ARM...lost≫
≪BODY HP10%≫
≪LEG R,LEG被害甚大。機能停止≫

 両腕を失って、右足を失って、芋虫のように、ただ這うことしかできなくても、彼女には翼があるのだから

 致命的なダメージを受けながらも、未だ0となっていないエクリプスが、頂点へと達する

――バッテリー残量:15%

(次レスに続くんじゃ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 02:31:32.71 ID:T+h4At60o<> (>>510続き

「ねぇ、店員さん。モルフォシリーズの、特色って知ってるよね」

 美しさだけを追求したモルフォシリーズ
 ともすればロマン機体としか言われないその機体には、一つの特殊効果が付属している

「燐光を散らすっていう、あれ」

 羽ばたくたびに、翅から燐光を散らすという能力
 バッテリーを消費する為に、大抵のプレイヤーはそれを切っている
 それは、今この瞬間シンも同じく――だが

「あれってさ、羽ばたくときに微細な粒子を散布して、それに通電させることで、フィールグラムが投影する映像を散らせてるんだよね」

 なにもそれは、HMPの側から起動出来ないものではないのだ
 そして、"散布と、通電は、別個に実行出来る"

 日光を背負った、美しいブルーの翅を持った、もう足しか残っていない少女が地に落ち行くクロリスへと微笑む
 ――たぶんきっと勝てないだろう。この状態から勝てるはずがない
 ――でも、今はそれでいいんだ
 この気持ちを知った事が、大切。

『マスターは、ずっと待っていてくださったんですね』

 エクリプスは零すと同時、翼を何度も羽ばたかせた
 何度も、何度も何度も何度も――バッテリーが5%を切るまで
 結果、周囲に粒子が多量に散布された

「――その時君は美しい」 
『幻蝶乱舞!』

 空中に無数の蝶が羽ばたく
 まるで、夢のように――
 
『はぁああああああ!』

 そして、蝶たちは墜ちていく
 唯一残った足を、槍のように鋭く突きだし、バッテリー残量を考慮せずに降下するエクリプスに合わせて
 その翅が陽を乱反射する。幻像が幾つも結ばれて、揺らめく
 それが及ぼす効果は光学カメラの錯乱だ
 ただ、それだけ
 故に、AIが光学からレーダーに完全に判断を移行してしまえば、この特攻は容易く回避されてしまう
 どこまでも愚直で、馬鹿げた、けれど、渾身の特攻である <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 02:51:48.57 ID:Nw0jdotTo<> >>510 >>511

白熱するギャラリーも気にならない。赤く点灯するバッテリー表示も気にならない。
切り崩された高木が落ちゆくさまが美しい。新緑の紙吹雪が舞い散るさまは正しく幕引きに相応しい。

その体が緑の中に埋もれてしまう前に。
自らの横を落ちていく、切り落とした丸太を蹴り上げて。
トドメの一撃を加えようと。

そうして、頭上の幻想世界に目が眩んだ。

燦爛たる光塵。クラウソラスの作り出す極光の対極に位置する、淡く儚い光。
回転の中でレーダーの情報を整理するのを難しく、飛び跳ねた先が見当違いだということは、ジャンプの加速が薄れてきて、空に停滞する瞬間になってようやく理解できた。

しかし哀れかな、空中でのジャンプによって、意図せずしてクロリスはエクリプスの最後の一撃を回避してしまう。

けれど、認めなければいけない。認めざるを得ない。
エクリプスは美しい。美しくあれ、という設計理念は正しくここに実を結び、花開いた。
無限にして夢幻。一瞬にして永遠を心に刻み込む。

こういった、強さとは別の目標があることを、慧理は知っている。
そもシュバリエハートのHMPには強さだけを追求したパーツなどほとんどない。
社訓は『自分の道を進む者は、誰もが英雄である』――ならば、間違いなくこの相手は英雄なのだろう。

一人と一機は芸術を心に刻み込んで。否、この場の全員が心に深く深く刻み込んで。
そうして彼女の指はクラウソラスの起動を行った。

バッテリーは限界。バリアの展開は無理。己の両手をその光で焼きながら、光の剣がエクリプスに襲い掛かる。

バッテリー残量:4% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 03:01:38.49 ID:T+h4At60o<> >>512
 爆音と共に、蝶たちと一緒に、墜ちてきたエクリプスは衝撃に打ちのめされた
 高々度からの、最早落下と称していい速度の降下は、たった一本しか残っていなかった脚部に甚大な被害を与えた
 ぼきり、と音がして、中ほどから残った左足が折れる

≪LEG...Break≫

 夢の時間は、瞬きの内に消える
 幻惑の蝶たちは、素子を燃やし尽くして空へと消え去り、翅も甚大な損傷で幾つも欠損を抱えていた
 一瞬前まで輝いていた少女は、今や泥にまみれ、やがては舞い落ちてくる葉に飲み込まれていくだろう
 それは路傍の倒木となんら変わりはなく。けれど、最先端の素材を用いられた彼女たちは、森に還ることはない
 両手両足のない、顔の半分が抉られた、不気味なモニュメント
 それが、今のエクリプスだった
 けれど、彼女は満足そうな笑顔を浮かべている

『マスター』
「なんだい」
『楽しかったです』
「ならよかった」

 シンが笑った。同時、クロリスの光刃が、断頭台の刃の如くにモニュメントと化したエクリプスを両断した

≪全パーツ HP0≫
≪よって、戦闘はクロリスの勝利となります≫

 フィールグラムによって投影されていた森が消失する
 筐体より排出されたボロボロのエクリプスを受け止めたシンは、本当に満足そうな顔をしていた

「ありがとう。いい、ファイトだった」

 パーツが貰えないのは、残念だけどね
 と、附言したのは、おちゃらけたつもりなのだろうか <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 03:14:36.04 ID:Nw0jdotTo<> >>513

自身の刃がもたらす結果から、クロリスは眼を背けない。
この一点で、クロリスと慧理は違う。

たとえ義の無い戦いでも、たとえ理の無い戦いでも。刃の先をしっかり見据える。
それは戦闘者の常でもあるし、同時に咎負い人の責でもある。

まして美しい戦いなら当然その結果をレンズの中に収める。

泥と葉に埋もれ、壊れて汚れて千切れて墜ちて、それでもなお、エクリプスを、美しいと認めた。
羽根を失った天使に心の中で賛辞を送りながら、クロリスは慧理に拾い上げられる。

「お疲れ様でした。こちらこそ、良いファイトでした。ありがとうございます」

陳腐な言葉ながら、慧理の気持ちを素直に表現した言葉。

「綺麗でした」

シンプルながら、それ以外に言いようの無い、クロリスの感想。

「流石に疲れちゃいました。今日のイベント戦はこれでお終いにさせてもらいます。皆様、ありがとうございました」

祭りは終わり、観客は未だ冷めやらぬ感動を胸に、口々に感想戦を始める。
慧理は無地のハンカチで額の汗をぬぐい、クロリスはメディカルポットの中で眠りにつく。
戦いはほんの数分。けれど何時間分もの疲労を肩に感じて。

心地よい疲労の中、慧理は最高級の笑顔で、再度シンに笑いかけた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/11(土) 20:38:33.47 ID:sk8uuu78o<> 『では、両選手は前へ』

無機質な声が審判代わりに設置されている機械から発せられる
全国大会予選の会場となった市民ホールは熱気と夏のせいで蒸していたが、ほとんどの参加者はそんな些細な事を気にしてはいなかった
予選大会の参加者は非常に多い。なの予選の前半はチームをブロックごとに分けて大きな会場でまとめて行われる
これも競技の人口が非常に多く、特に日本は最もHMPが熱い場所だからだ

一回戦の相手は【エイティーキッズ】
前年度の予選大会ではチームの平均年齢が10台前後と若いながらベスト8に輝いた強豪チームだ
「おいあんた!早く並べよ!ちゃっちゃと一回戦なんて終わらせちまおーぜ」
声が大きいリーダー格が蟻村
チームでは唯一中型のウィークエンドウォーリアーを使用する
「帰りの切符は買ったの?帰りの駅はとっても混むのよ。気をつけてね」
チームの紅一点・山下
真っ白にペイントされたアルクトゥルスを操りパワーで押すのが得意だ
「ま、前回僕たちはベスト8だったけど、今度は優勝狙ってるからね。相手が悪いって事さ」
メガネをかけている少年が車谷
サー・ニルスが相棒で、見た目は頭が良さそうだが実はそうでもないのが悩み

『ステージが決定しました。では、礼!』

/奇数 市街地
偶数 ハイウェイ
ゾロ目 部屋 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/11(土) 21:03:15.91 ID:bzS5ocFg0<> >>515

対するチームのメンバーの一人は、大のおとなである。
お気に入りの探偵助手めいた服装から、ネクタイとハットを省いたクールビズ。
彼は町田与太郎。さっきの選手名コールで一番苦い顔をしていた男だ。

「オイオイオイ、これでヨタローコールでもされてみろよ!」
「全国大会史上初の自殺沙汰になっちまうぜ。なあ……バイスフリューゲル?」

軽口を叩きながらも、緊張した雰囲気。
それとコントラストを成して、待機中のHMPはぽよよんとしていた。

『ご主人様。私は麗しい心地ですわ。だから、前世紀の柔道家のような事を仰らないでくださいまし』
『声援を受けて負けるのが万死に値す恥だとして、勝てばよいではありませんか』

バイスフリューゲルと、それは呼ばれている。
ピンヒールの脚部と有翼の胴体、幅広の帽子を被った華麗な金髪女性を模した頭部。
そんなメインフレームと裏腹に無骨で攻撃的な、二丁の回転拳銃。
左右対称ながら態と崩れたバランスを持つ姿が印象的な、白い機体。

「いや、そう言うつもりはひとっかけらも無かったんだが、あれよ、」

ふたりの会話は審判の掛け声で絶たれた。

「はい……よろしくお願いします」

それとほぼ時を同じくして、超高密度のジオラマが台上に形成されていく。
HMPのいさおしの場フィールグラムに、彼のHMPも身を投じていくのであった。

なお他のメンバーも、既に彼の名前と大まかな人となり(ぬるい男である)ぐらいは知っているだろう。
その印象通りだと、今回与太郎は専ら頼る側になってしまいそうだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/11(土) 21:08:07.50 ID:nOYaqGk9o<> >>515
「いやーっはっはっはっはっ、市街地かぁ!」
『どうしたの、ラン。何がそんなに?』
「いやほれ、怪獣映画さエルちゃん」
「街をぶち壊す怪獣さまだぜ、エルちゃんの役目」
『あらひどいわ。私はこんなに可憐で華奢な森の乙女だっていうのに』

 胸を大きく反らして、けらけらと笑う女がいる。
 何が楽しいのか肩を揺らして、国重蘭花は大笑いしていた。
 チューブトップにロールアップジーンズという出で立ちはラフだが、彼女のスタイルを際立たせる。
 対してくねっと品を作るHMPはワンオフ機。登録名『パンドラ・ウェディング』、その名をエルピス。
 希望の名を与えられた彼女も、これまた美しく妖艶な作りだった。
 武装の一つも見当たらない様は見た目は人間とほとんど変わりなく、いっそ観賞用かと思わせる。
 戦闘に向きそうもないヒールなんかが象徴的だ。

「んー、そろそろ誓いの言葉を捧げますかね、花嫁ちゃん?」
『そうですね、パンドラの箱を開きましょう』
「んっんー、そしたら派手に行きましょうかね、っとぉ!」

 彼女は天高くそれを投げ上げる。
 一歩遅れて、エルピスも大きく舞い上がる。優雅で美しきムーンサルト。見た目に寄らない素晴らしい機動性で、彼女は長く宙へ躍り出た。
 そして、投げられたそれが、まるで当たり前のように着地する――それは獅子の胴体だ。
 重厚にして巨大な30cmほどのゾイノイドの四肢。だがしかし、どこにも顔がない。首のあるべき場所には、小さく穴が開いているのみ。
 そう、それが彼女のパンドラの箱。偽りの希望が収まることで元の鞘に収まるのだ。

『「――『スピンクス』」』

 二人の声が重なって、そしてエルピスは華麗に着地を決めた。
 あるべき場所に。獅子の首に。下半身を飲み込まれるように彼女はそれと一体化する。ヒールの先端はがっちりと接続され、エネルギーラインが開かれる。
 獅子の胴部がしなやかに宙返りをする――パフォーマンスではない。なぜならその一瞬、その動作こそが合体の動作。
 その一瞬で、彼女の背には翼が生えていた。
 あぁ、まさしく獅子女。スフィンクスの名の通り、翼を持つ人獅子だ。

『さぁ、激しく愛しあいましょう』
「足腰立たなくしてあげる!」

 相当好き勝手をやったこの女どもに、チームへの配慮など欠片もなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/11(土) 21:39:32.30 ID:kb/1H4tCo<> >>515
メンバーの一人、白いパーカーを羽織った少年が居た。
若干の緊張からかフィールドの前で周囲を見渡した、人の山―――まさか自分がこんなところに立つとは思っていなかったのだろう

『キンチョーすんなよ!』
その様子に対してフィールドに立っていた彼のHMPは笑いをこぼした。
青く輝く装甲に長く伸びた右腕のライフル、そして足に備え付けられた黄色いラインが光るホイール
背中のスラスターには通常は見られない独自の機構が見て取れる。
資料でならば恐らく何人もの人間が見たことがあるその立ち姿、それは太陽の次に明るいと称される星の名を持ったHMP
旧式でしかも希少価値の高いスチールセイリオスが実践の舞台で戦っているというこの光景

「ガブル……もう大丈夫だ、市街地ならこっちの得意フィールドだぜ!!」
自らの頬を叩き気合を入れなおすしぐさを行うと、ぐっとDVNOが映るPDAを握り締める。
ショップのお兄さんの誘いで出てみたチーム戦で、何のかかわりもない二人と組むことになったが……
この機会を無駄にしたくない。

「やるぞ!」
『オウヨ!!』
決意をこめたその声にパートナーは確かに答えてくれた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/11(土) 21:57:21.80 ID:sk8uuu78o<> フィールグラムから光が放たれ、やがてその光は木になり、建物になり、そして市街地となった
レンガ作りの洋風な雰囲気で、建物の背は低い
その為屋根に登り戦闘をしかける事も可能だろう
また、中心にはそれなりに大きな川があるので水中戦もする事ができる
まるで外国旅行をしたような気になるフィールグラムだが、そんな気持ちは生意気な子供達の声でかき消された

『おいィ、速攻で決めんだろォ!じゃあよオ!』
「わかってるさ!先手必勝!ランサーモードッ!」
「「おう!」」

蟻村が声をあげるとサー・ニルスを先頭にアルクトゥルス、ウィークエンドウォーリアーと一列に並んだ
まるで大昔のRPGゲームのようにピッタリと並んだ姿は「ランサーモード」の名に違わず槍のようであった

『よかったな!お前たちがこの大会で最初の犠牲者だ!』
『勝つのはミー達デース!』

大型HMPが全力疾走し、勢いよく突進する <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/11(土) 22:09:58.75 ID:nOYaqGk9o<> >>519
「さぁてぇ」

 蘭花はがたん! とタブレットを場においた。
 そこに表示されているのは当然のごとくDVNO、そのはずだ。
 だが、そこに表示されているモノの量たるや。
 数値データよりも多い操作パネルの数々。そこには合計で8×8×8個――512の行動司令が刻まれている。あの半人半獣の怪物を操るには、それほどの呪文を要するのか。
 そしてそれとは別に、エルピスの視界を投影するボタンもある。
 彼女たちの役割は明確だ。
 蘭花が回避を、エルピスが攻撃を。

『ラン!』
「あいよぉ!」
『「――【エキドナ】!」』

 そうて獣は宙返り。いや、だが何か様子が違う。
 獅子の身体が描いた円が、消えない。
 いや――そもそも獅子などどこにいたのか? そこにいるのは巨大な蛇だ。
 両手の代わりに翼を生やした、大きな大きなマムシである。
 エキドナ。空を飛ぶ蛇の怪物へと変じたエルピスは、まるで当たり前のように身をうねらせ、宙へと飛び上がった。
 そう、『パンドラ・ウェディング』は可変機体。
 変形することであらゆる状況に対応する、気の狂うほどの操縦難易度を誇るハイエンドモデルなのだから。

「いやぁ、貴方たち、それはちょっと早計にすぎましてよ、おーっほっほっほっ」
『そんな竹槍で、何を落とすと言うのです?』

 胴からせり出した四基のブースターが、半人半蛇の翼となる。
 ひらりと宙へ逃れた彼女は、腹部の高出力レーザーライフルで彼らを狙う。

「狙いは分かってるねぇ!?」
『一番後ろの頭でっかち!』

 大型は無視、数的有利を取るのが第一。
 愚直に多人数戦のセオリーどおりだった。

「ぃひゃっはぁー! エルちゃんのそそり立つライフルが火を吹いちゃうよぉ!」
『わたしぃ! 気持ち良すぎてトんじゃってるぅ――ッ!』

 そしてこの怪物コンビに、品性など欠片もない。
 最低の下ネタと共に、レーザーの青白い光が地上へと突き刺さる。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/11(土) 22:17:54.02 ID:bzS5ocFg0<> >>519

「スチールセイリオス、知ってるぜ。別名いつまでも再販しない君だな」

「(オットット……バイスの胴と足も同じようなもんだったか)」
「(隣のその子のインパクトに負けちまうのが、ちっと残念)」

町田がざっと確認した所では、負けず此方も混沌とした顔ぶれなこと。
セイリオスのフルセット。恐らく手入れはされているだろうが、いま見ても蓋し名機だ。
自分のバイス。こいつも、実はちょっと贅沢な機体だ。
そしてパンドラ……“あれは何なんだ?”。

残念ながら、時間切れだ。エキゾチックな情緒と殺意がフィールグラムに満ちる。
ここから先は、共に闘いながら測るとしよう――。

【どれ、ペンギンは(炎の)海に沈んでもらうとするか!任せたぜきらきら星の兄弟よ!】

チーム共有の文字チャットに、そんな気取った文言が現れる。
すでにしてバイスフリューゲルは地を蹴り、跳んでいた。
スマートヒール。少年の相棒を兄弟呼ばわりする理由となるパーツの一つ。

『騎士の時代が銃によって終わった事を教えて差し上げますわ』

屋根に乗り移る。この時点では、まだ翔ぶ必要はない。
レンガの目地に鋭い脚部を突き立てて、バイスフリューゲルは射撃姿勢を取った。
小改造で、安定用ランディングギアを付けているらしい――。

『――あなたも!妖精の国へ……』

BLAM!BLAM!
右では超高威力シェルを採用した《バプタイズ》が。
BLAM!BLAM!
左では、安定感のある《錦蛇》が火を吐く。どちらも――回転式拳銃だ。

『……連れて行きましょう!!マズルフラッシュが!導きますわ!ああん、ああーーーっ!!』

二本の銃はどちらも当然片手で保持され、弾丸はアルクトゥルスに向かっていた。
――自分は、盾を引き付けるべきだ。強力な切り払い能力を潰すため、連射。
すべてダメだったとしても正面は向かせまいと、彼女は大通りから脇にそれている。

特に右手に握られた《バプタイズ》は、重装機にも通じるストッピングパワーと威力がある。
ただし反動も高いようで、早くもバイスは海老反りに崩れかけているように見え、狙いも少しばらけていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/11(土) 22:25:46.99 ID:kb/1H4tCo<> >>519

『ヘッ・・・イチレツにならぶとはいいドキョウじゃねぇかヨ!!』

セイリオスの脚部に取り付けられたホイールが路面を擦った
摩擦によって生まれた白い煙と共に、セイリオスは機体を前方に向けたまま右に逸らしてのバックダッシュ。

ホイールによる脚部関節をほとんど使わない移動方法だからこそ可能とする体勢である。
大犬座の1等星の名を冠するだけあってそのダッシュ力は侮れない

「味方の機体は全部射撃タイプだ、遠慮しないで撃て!」

一応チームメイトのカスタマイズは確認している、セイリオスの兄弟機の胴体を持った射撃系HMP
もう一機はかなり変則的でパーツを換装するタイプらしいが……いきなり突っ込むなんてしないはずだ。

拓海の言葉を聞いたガブルのゴーグルに映し出されていた表情が変わった
それは免罪符を貰った悪がきのような顔で、差し出したのはライトではなくレフト

『そのジンケイじゃこいつはさけれねぇダロ!』

発砲音と共に銃口が文字通り火を噴く
いや……銃口に火を噴くという表現を使ってしまうのは間違いか。
火を噴くという表現が似合うのは撃ち出した弾の方だ、何を隠そうその正体は焼夷弾の代名詞であるナパーム

上手く当たれば対象を炎上させてくれる、敵チームは重装甲が多いのだから冷却に充電を持っていかれて有利に立てるはずだ。
更にこの地形ならば命中するしないにかかわらず路面を炎上させて道を塞ぐこともできるはず……

『ドカンだ!!』
反動によって左腕を後方に振りながら燃える弾が弧の軌跡を描きながら解き放たれた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/11(土) 23:09:31.17 ID:sk8uuu78o<> ばきっ、と鈍い音をたてて爆風があがる
あの攻撃をまともに受ければおそらく大損害
もしくはウィークエンドウォーリアーあたりが破壊されて試合終了だったであろう
しかし、それはまともに受ければの話
幕府から現れたのは左腕を失ったアルクトゥルス
そして地面を凍らしながら地上を『飛んでいる』サー・ニルス
そしその上に乗りながら火炎放射を放つウィークエンドウォーリアー
どのHMPもダメージは受けているものの危険なラインには達していなかった

「サー・ニルスだ」

名ばかりの監督、羽生コータローが真面目な顔で話を続ける

「ランサーモードの時にはもうあのサー・ニルス、既に水蒸気を撒き散らしていた」
「それで攻撃がきたと同時にレッグのパーツで凍らして盾を作った。だから直撃の時にあんな音がなったんだ」

しかし、真面目に羽生の解説を聞いている暇はない
高速移動しながら突撃する二体はなかなか捕まえられない
さらにアルクトゥルスもレッグのブースターを使い仲間とはぐれたHMPを狩るつもりでいる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/11(土) 23:34:16.12 ID:nOYaqGk9o<> >>523
(お、そっちに行ったかー。まぁ当然かな。支援支援ー)

 蘭花は軽快にタブレットを叩く。四基のブースターが全力で火を吹き、機体はトップスピードへ。
 相手の想定移動距離から着地座標を考え、相棒へと送信。

「おくじょー! かりょーくしえーん!」
『了解よっ!』
「『――【アラクネー】!』」

 空中でぐるりとループターン。円を描く動きは変形の合図。その姿は蜘蛛だ。追加パーツの胴体から、装甲に覆われたアームが爪を伸ばす。
 空中から速度のままに、送信された座標へと正確に着地。高所からの着地、その大きな衝撃を六本の脚部が綺麗にしなり、殺した。
 マキノイド型――だがその姿は鈍重巨大。あれはそう、安定度を求めただけだ。六脚がもたらす射撃反動抑制力、それだけを。
 全身から火器を露出させ、両手には短機関銃。
 蜘蛛の尻にはミサイルポッド、背にはロケットランチャー、前足にはライフルとレーザーライフル。牙のように顔を出すのは二本のハルバードか。
 どう見たって火力特化、そして落ちた位置はセイリオスを狙う敵の横腹。全ての兵器が火を吹けば、おそらく敵の全てを狙うだろう。
 彼女らに出し惜しみなどない。常に全力、常に最高。
 その燃料の一滴までもを燃やし尽くすような、情熱的な戦いこそが二人の「いつもどおり」だった。
 最も。

「ひゃっはぁ殺せぇ! 玉無しに興味はないわ! 玉有りならここでもいであげるぅ!」
『腰砕けになるまで楽しみましょぉ、ねぇっ!?』

 ――この二人のそれは、情熱的以前に下劣にすぎるが。

『私のような美女を前に目移りだなんて酷いわ! 乙女の私は傷つきました!』
「へっへいガァァァル! だったらそいつらに教えてやりな、女の色気ってやつをさぁ!」
『ああっなんて素敵なの! 想像しただけで私、私ぃっ!』
「おっとぉ忘れちゃいけねぇぜぇ! 火遊びしたんだぁ、きぃぃっちり火傷させてやるんだぜぇ!」

 そんなことを叫ぶ傍ら、蘭花の目は冷静にフィールドを見つめている。
 乱痴気騒ぎをしながら故に、彼女のそれは無意識なのだろうか。

「出るもん全部出し尽くす、快っ感ッ! おねぇさんが教えてあげるぅ!」
『私のあつぅいのにまみれちゃいなさい!』

 撒き散らされるは愛の弾幕。
 ミサイル、銃弾、ロケット弾。そしてレーザー。
 嚆矢として走るは青い光だ。火を吹き敵へ直進するロケット弾をヘッドに、ライフル及び短機関銃が弾丸を送り出し、その両脇をミサイルが固める。
 ミサイルとロケット弾とライフル、弾速の早いレーザーがサー・ニルスとその背のウィークエンドウォリアーを。氷の盾を乗り越えるための重爆撃。
 機関銃の二丁はアルクトゥルスを。こちらは足止めの意味合いが強い。
 継戦なんて考えない、全力の放出だ。ミサイルなんかは既に今ので半分ほどを撃ち尽くした。

(とはいいつつ)

 相手がこちらを向いたようなら、早めに離脱する心構えだ。当然エキドナで。
 セイリオスを破壊させるつもりはない。ターゲットを分散させ、セイリオスの離脱を助けるのが目的。
 もっとも――彼に合わせるつもりだが。

(うひひ、さぁどうする?) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<><>2012/08/11(土) 23:46:48.81 ID:bzS5ocFg0<> >>523

「ペンギンナイト……流石に、早緑さんとこの奴は違うな!?」

期待したダメージを与えられていない。不可視から可視に転じる防壁に、うなった。
セイリオスのナパームだけでは限界があるか。

彼が思案している間に、バイスフリューゲルは既に屋根を離れていた。
崩れた姿勢のままスプリング内臓の脚部で跳躍し、ぐるりと回転しながら、飛行体勢へ。

『あの殿方の片腕を落とせたのは金星ですわね』

曖昧な記憶を信じるなら、アルクトゥルスは確か強力な両手武器を持っていた筈だ。
だがこれで、全員射撃機であることだし、優先順位は下がる。
射程不足に喘ぐさまを、文字通り高みの見物としてやろう。

「バイスフリューゲル、兄弟を狙ってるのをどうにかすんだ」
「誤射はダメだ、屋根の上を飛びながら横に張り付いてくれ!」
『諒解ですわ』

命令に従うには、もう少し速度が必要だ……と思った瞬間、DVNOから指示。
セイリオス同様に特殊機能で速度を増す胴部、バットージェットの発動命令だ。

『うぅぁ、うぅっ、そんなに強くしては……あんんっ!!』

サブアームが彼女の意志とは別に動く。
これを想定していない頭部故、脳の一部を虫が這うような感覚が……嗚呼、嫌いじゃない。

金属棒の一本を引き抜くと、内部の磁石が連動して回転を始めた。
発生した臨時電力は背部サブブースターを起動させ、僅かな間だが弾丸めいた速度を発揮する。
この場合は、急発進においてだった。これで、『並走』できる。

『くすくす……ああー、チューリップぅ白い光がチラチラ見えますね!見えますか?』
『お空が!呼んでます!もうペンギンなんてやめて!私とハチドリになりましょ!!……きゃーははははっ!!』

BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!
火炎放射にサー・ニルスが突っ込まないと見て、彼の背と週末戦士の足に狙いを定めて。
路地の際に追い詰めるような二発ずつの連射。
一発目は既に撃鉄を起こしていたからか、なかなか精密な狙いで。
的確な判断だが、完全な電波。

電波を構成する頭脳集積回路の中身は、繊細さと冷徹さのミックスフルーツ。
バイスフリューゲルは愛の擁護者であると同時に、飢うる獣でもある。
悠々にして超然と振る舞う姫君の姿は、その二つを覆うヴェールにすぎない。
逆に、敵を撃ちながらお茶会に誘うような言動は、二つの融合だ。

EN:残り83%。
この速度に追いつこうとすると、少し消費が激しい。
なるべく早く片が付けば良いが。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/11(土) 23:55:54.22 ID:kb/1H4tCo<> >>523
氷の盾で防いだ―――コータローの声を聞き拓海はすぐさま現状の把握を急ぐ
画面越しには迫ってくる機影が1、それはサー・ニルスの上にウィークエンドが乗っているという状態

「……2機重なっているあいつを相手にするのはちょっと面倒か」

いや、レーダーには更に反応があった
残るアルクトゥルスだ、あれもこちらに近づいている

『チッ、デカブツがソロってならんじゃミチがせまいゼ!!』

こちらの仲間は2機とも上に居る、つまり1機だけセイリオスが独立しているということになる
となればセイリオスを狙ってくるのは当然の選択、何よりも市街地だけあって大型機が何体も来るとなると逃げ場が少ない。
味方の援護を期待するという方法もあるが氷の壁を作り出せるサー・ニルス相手にはいささか分が悪いか

拓海は地形に目を走らせる、あるのは壁と、木と、外灯とポスト―――
それらを確認し何かを閃いたらしい、DVNO越しにパートナーへと語りかける

「よし、抜けるしかない!」
『ンダナ!』

セイリオスのローラーが回転方向を変える、それは後に下がるものから前に出るためのものへ

突如セイリオスはライトのバレルランスを前ではなく横に広げる。
セイリオスは先ほどのバックで右によっていた、バレルランスが壁側を向くこととなる
つまり道を塞ぐという訳ではない

ホイールが空回転をするキュルキュルという音を奏でた後、先ほどのダッシュ力を遺憾なく発揮し走り出す。
更に背中に持つリボルスララスターが肩越しに前方を向き、シリンダーが高速回転の後停止する

『カードリッジロード!ファイア!!』
リボルスラスターに装填されていた弾丸のうち1組を消費する
するとどうか、後方へと噴出した赤い炎が尾を引き流星のごとき加速を生み出したではないか
そのまま電光石火と呼べる勢いで向かってくる――― <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/12(日) 00:36:14.68 ID:z21H4pqAo<> 「バラバラにならないよ!」
『そらソウでース。ばっと、練習シタとりっくぷれーガデキソウデース』

今ひとつこの試合で目だててない少女、山下は不服であった
もともと目立ちたがりな性格で、いわゆる「見せ」のプレーを好む傾向にある彼女にとって、ウィークエンドとサー・ニルスの合体攻撃は羨ましいものであった
しかし、ふてくされてる時間はい
二人に向けて光線が、弾丸が、迫る、迫る、迫る

『山下ァ!』

ギリギリまで引きつけて当然のようにジャンプするウィークエンドウォーリアー

「任せて!」
『おーけーデース』

フェリーレイクを使用し、ウィークエンドウォーリアーめがけて突進する
機関銃の攻撃を受けて両腕がもげるが、十分、そのまま勢いをつけて紙のようにかるいウィークエンドを蹴り飛ばす
狙いはもう一度スチールセイリオスへ

「「いっけええええええええ!」」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/12(日) 20:37:03.73 ID:vNR0LQKno<> >>525
「ひゅーっ! いいねぇ! あのコ飛びっぷり最高っ!」
『あぁ、美しい方ね! 私なんだか疼いてきたわ! はぁん、潤滑油漏れちゃいそう!』
「潤滑油のダブルミーニングとは、お主中々やりよるな」

 彼女たち狂人には、あれくらいのジャンキーこそが愛しき友人に見えるのだろうか。
 その飛行に感化されて、エルピスはいっそう高ぶっていた。

>>526
「いいねぇいいねぇ! かっこいいぞ少年!」
『なんて勇敢! 私も燃えてきちゃう!』

 その決断に惜しみない賛辞を送り、連射を中断。
 さぁ、ならば勇敢な彼らの援護に回ろう。
 この機体に、出来ないことなどないのだから。

「『【スピンクス】ゥ!』」

 再び四足獣へと戻った彼女は、大きく助走をつけて、屋上から跳んだ。
 それだけであればすぐに地に落ちただろう。だが、しかし。

『さぁ――私もトんじゃうわぁっ!』
「ひゃっほーぅ!」

 じゃこん、と音を立てて展開するブースター。エキドナの蛇の身を浮かせる第二の翼が、獅子の肩から顔を出した。
 飛行に適した姿ではない故に飛ぶとまではいかない。だが一瞬で最高速度へ乗った彼女は、その背の翼を広げた。
 高速の滑空。電力消費を条件に、その巨体は圧倒的な加速を見せる。
 地を滑るペンギンを獅子が狙う光景は、奇っ怪にすぎるものだった。

『あの子も彼もぉ! さいっこう過ぎてわけわかんなくなっちゃいそうっ!』
「たいちょぉう、仲間はずれはよくないなぁ、私も入れてくれないとぉ!」
『激しくしちゃうわ! 痛いのが気持ちよくなるくらい!』

 獅子の背中に格納されていたアームが伸びる。マニピュレータが武器を運ぶ。スピンクス形態の彼女は、こうして武器を変更するのだ。
 手にとったのは短機関銃、それも両手に一つずつ。獣の機動性を生かし、常に打ち込み続けるスタイル。
 そして彼女もまた混戦の最中へ踊り出た。狙うは、滑走するサー・ニルスだ。

(折れた聖剣は後回し)

 あれはもう突進しかできまい、だからスルーでいい。位置だけは常に把握。
 セイリオスに向かったあのキメラも大丈夫。古びようとも名機なのだ、即死するほど柔ではない。だから私たちはこいつに並ぼう。

『ペンギン肉って美味しいのかしら?』
「鳥肉と魚肉を足して二で割ったみたいな味だと思うよ」

 その重量を、強靭な脚部が送り出す。時折噴かすブースターが速度を与える。
 縦横無尽に地を駆け、短機関銃を頭部へめがけて叩きこむ。
 どのみち頭を外れたところでその図体にその機動性、避けるにも苦労がいるだろう。滑る動きじゃ急ターンは出来まい。

【充電残量:五十二パーセント】
(けどま、ちょっと飛ばしすぎてるかな)

 アラクネーの一斉射撃で二十パーセント。飛行用ではない、加速のためのブースター全開噴射で十パーセント。
 致し方ないのだ。特定の動作で大量のエネルギーを消費しなくては、万能にはなれなかった。それだけの話。
 だからこの機体は本来、その姿以上に繊細に、そして計画的に戦わなければならない。
 既に相手のアルクトゥルスは戦闘力を喪失しているのだから、最善手はひたすら引くことなのだ。
 僅かな有利を生かせぬような乱戦へと持ち込み、エネルギーを浪費する必要はない。
 だが――。

「クレバーさなんか必要ないね」

 勝つのは、一番楽しんだやつだ。

「エキゾチックにやっちゃいなぁ!!」
『私の激しいご奉仕でイっちゃいなさぁい!』

 銃弾の嵐を撒き散らし、彼女たちは走る。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/12(日) 20:38:47.58 ID:z21H4pqAo<> /かきなおし
色とりどりの弾丸が雨のように降ってくる
いや、雨と言うには少し暴力的か
おそらくバイスフリューゲル一体の射撃のみなら速度の差で避け切る事はできたであろう
しかし、またも変形した【アラクネー】の全身全霊の一斉射撃
選択肢を選ぶ暇すら与えない攻撃は全く面識のない物同士のコンビネーションとは思えないほどであった

『ペゲェー!(やべえ!)』
『ほげえええ!』

アラクネーが放った弾丸が二体を襲う
しかし、直撃するまえに氷の盾を再度作る事で紙一重て回避・・・はできなかった
直撃は避ける事ができたがサー・ニルスのボディとレッグは今の攻撃で大きく破損。破壊力が高すぎたのだ
このまま滑りながらの戦闘はほぼ不可能であろう


「わっ、こっちにむかって・・・あ!そのままフェリーレイク発動よ!」
『オヤスイごヨうデース』

後方でブースターの準備をしていた山下が慌てて指示を送る

「ペンギンちゃんを蹴っ飛ばして!」
『おーけー。どらいぶシューとデース!』

カタコトの騎士がブースターを使いペンギンへ向かって突撃する
そのままブースターの勢いをつけてセイリオスへペンギンをサッカー蹴っ飛ばすためだ
しかし、ウィークエンドは先ほどの攻撃で左腕が破損しほとんどのパーツが耐久値30%を切っている
サー・ニルスもボディとレッグの深刻なダメージのおかげでもう『飛べない』
外せば絶体絶命、それでも・・・
騎士とペンギンの距離はわずか25センチ。しかし、まだ足止めはできる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/12(日) 20:43:04.14 ID:vNR0LQKno<> >>525
「ひゅーっ! いいねぇ! あのコ飛びっぷり最高っ!」
『あぁ、美しい方ね! 私なんだか疼いてきたわ! はぁん、潤滑油漏れちゃいそう!』
「潤滑油のダブルミーニングとは、お主中々やりよるな」

 彼女たち狂人には、あれくらいのジャンキーこそが愛しき友人に見えるのだろうか。
 その飛行に感化されて、エルピスはいっそう高ぶっていた。

>>526 >>529
「いいねぇいいねぇ! かっこいいぞ少年!」
『なんて勇敢! 私も燃えてきちゃう!』

 その決断に惜しみない賛辞を送り、連射を中断。
 さぁ、ならば勇敢な彼らの援護に回ろう。
 この機体に、出来ないことなどないのだから。

「『【スピンクス】ゥ!』」

 再び四足獣へと戻った彼女は、大きく助走をつけて、屋上から跳んだ。
 それだけであればすぐに地に落ちただろう。だが、しかし。

『さぁ――私もトんじゃうわぁっ!』
「ひゃっほーぅ!」

 じゃこん、と音を立てて展開するブースター。エキドナの蛇の身を浮かせる第二の翼が、獅子の肩から顔を出した。
 飛行に適した姿ではない故に飛ぶとまではいかない。だが一瞬で最高速度へ乗った彼女は、その背の翼を広げた。
 高速の滑空。電力消費を条件に、その巨体は圧倒的な加速を見せる。
 地を滑るペンギンを獅子が狙う光景は、奇っ怪にすぎるものだった。

『あの子も彼もぉ! さいっこう過ぎてわけわかんなくなっちゃいそうっ!』
「たいちょぉう、仲間はずれはよくないなぁ、私も入れてくれないとぉ!」
『激しくしちゃうわ! 痛いのが気持ちよくなるくらい!』

 獅子の背中に格納されていたアームが伸びる。マニピュレータが武器を運ぶ。スピンクス形態の彼女は、こうして武器を変更するのだ。
 手にとったのは短機関銃、それも両手に一つずつ。獣の機動性を生かし、常に打ち込み続けるスタイル。
 そして彼女もまた混戦の最中へ踊り出た。狙うは、蹴り飛ばされて速度を得たサー・ニルスたち。

(折れた聖剣は後回し)

 あれはもう突進しかできまい、だからスルー。位置だけは常に把握しておけばそれでいい。

『ペンギン肉って美味しいのかしら?』
「鳥肉と魚肉を足して二で割ったみたいな味だと思うよ」

 その重量を、強靭な脚部が送り出す。時折噴かすブースターが速度を与える。
 縦横無尽に地を駆け、短機関銃を頭部へめがけて叩きこむ。
 どのみち頭を外れたところでその図体にその機動性、避けるにも苦労がいるだろう。滑る動きじゃ急ターンは出来まい。

【充電残量:五十二パーセント】
(けどま、ちょっと飛ばしすぎてるかな)

 アラクネーの一斉射撃で二十パーセント。飛行用ではない、加速のためのブースター全開噴射で十パーセント。
 致し方ないのだ。特定の動作で大量のエネルギーを消費しなくては、万能にはなれなかった。それだけの話。
 だからこの機体は本来、その姿以上に繊細に、そして計画的に戦わなければならない。
 既に相手のアルクトゥルスは戦闘力を喪失、サー・ニルスもダメージを受けているのだから、最善手はひたすら引くことなのだ。
 僅かな有利を生かせぬような乱戦へと持ち込み、エネルギーを浪費する必要はない。
 だが――。

「クレバーさなんか必要ないね」

 勝つのは、一番楽しんだやつだ。

「エキゾチックにやっちゃいなぁ!!」
『私の激しいご奉仕でイっちゃいなさぁい!』

 銃弾の嵐を撒き散らし、彼女たちは走る。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/12(日) 21:36:40.87 ID:72xH/MAP0<> >>530

強力な《バプタイズ》が咆えるたびに、バイスの身体は反動に圧される。
だが何という事か、彼女はそれを推進方向の変化で無闇に殺さず、翼で宙に輪を描いて戦闘機動を続けるのだ。
確かに、舞うようにも見えるかも知れなかった。

「くっ……。きらきら星の兄弟、気の散るもんは見てなきゃ良いんだが!」

彼女の場合、ニンフォマニアと言うよりは過激なトリガーハッピーである。
でも観客からは、彼女たちと同様、高度な比喩表現の使い手と思われているに違いない。

まさか、自分も……?
冷や汗を拭う彼を尻目に、バイスのおむすび型の瞳は微笑みを零したまま。

>>529

パンドラは、オーバーキル気味な火力を発揮していた。
火炎放射である程度道が狭まっているから、セイリオスのルートは限られるだろう。
本当に柔軟に働けるのは、恐らくバイスだけだ。

「おいお嬢さん、あの名前が長い奴の武器」
『火炎放射器とロケットパンチ。この場で脅威的なのは――』

向こうが弾幕なら、こちらはある程度の精密さを。
そして、飛行して離脱されたときに、直ちに追撃できる距離感を。

「……両方だ。頭を潰すのがベストだな!」

速やかなヨーイングを行い、飛行を屋根の上から路地に重ねていく。
機体表面の温度に上昇が見られるが、気流もあって飛びやすい事の方が遥かに大事だった。

FCSが示す円形のロック表示に、予測を踏まえた射線を重ねて――。

『終末の騎士様、南極のラン[ピザ]ーはもう終わりですのよ!!』

――BLAM!BLAM!
左手に構えた《錦蛇》が、逃げる頭めがけ二度連続で撃発。これで残弾はゼロ。
もしクリンヒットしたならば、既に損傷の大きいヘッドで耐えられるかは怪しい。
だが敵機は飛行型、いつでも空中に逃げられるはずだ。
もし交差、もしくは飛び越えるようにされたら、銃撃で潰すのは些か難しい可能性。
『錦蛇』の弾薬再生自動リロードにも、およそ5秒と総電力の一割程度が必要となるだろう。

右に握られた《バプタイズ》には、まだ一発の銃弾が潜んでいる。
果たして彼女は、最後にそれで何を為すつもりなのか。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/12(日) 21:55:08.51 ID:37eOXI1fo<> 『イッ!?』
激突を控えていたセイリオスであったが、相手の動きに目を丸くしていた。
なにぶん自分の突撃は相手の3機と合わせていたものだ。
しかしとんでもないコンビネーション、いやトリオネーション?とでも言うのだろうか、それによって急激に速度が上昇したではないか

「突っ込め!!」
そんな状態のセイリオスの躊躇や迷いを消し去ったのはパートナーである拓海の一言だった。
セイリオスは既に加速は十分、いまさら別の手段などない
そしてこの戦略自体も賭けという表現が可能なとんでもな物、これを行おうと思った時点でパートナーである拓海を信じたはずである。
それを再度確認する結果になっただけに過ぎない

『イクゾ!!』

飛び掛ってくるウィークエンドに対しセイリオスは跳躍して一歩踏み出た
だがセイリオスのレッグパーツは跳躍に適さない、その高さなど多可が知れている
つまり迫ってくるウィークエンドを飛び越えるようなことはまず起きない

グシャリ

硬いもの同士がぶつかり合う音が凍りついた路面に冷たく響く。

この音とともに曲がってしまったものが2つある
1つは街灯、先ほどから右腕のバレルランスは右側の壁を指す通せんぼのように伸ばしていた。
その体制のまま加速したのだったら道路脇に立った街灯にぶつかっても何もおかしくない
現に街灯は衝突した部位からくの字に拉げ、曲がった部分が平らになってしまっている。

そしてもう1つは―――セイリオスの軌道だ。
勢いをつけたまま足元を浮かせ、自身のすべてを右側にある街灯だけに任せたらどうなるか
バレルランスは棒でセイリオス本体は棒の先端に付いた錘、そして街灯は支点だ。
ぶつかった街灯を中心として右回りに機体が振り回されるだろう。
しからば真っ直ぐ向かっていたウィークエンドからしてみれば、突如としてセイリオスが横方向に急旋回をしたような光景と言える

フェイント―――それも地形を利用したとびっきりトリッキーな類
奇策(?)な合体技に対して奇策を用い抜け出したのだ、確かにこれならばあの陣形も『抜く』ことができただろう。
しかし状況がよくない、この戦術はあくまでウィークエンドが蹴り飛ばされる前の話
蹴り飛ばされたことで加速が付いたウィークエンドは拓海の想定していたタイミングから大きくずれた

「クッ……!」
《L.ARM:DAMAGE27% ―――YELLOW》

DVNOに映し出されたダメージの文字、レフトの肩にかけて青い装甲が大きく削り取られている
すれ違いざまでこの威力、その勢いがどれだけのものだったか思い知らされる
直撃しなかったのはまさしく拓海の奇策のおかげだろう、そして切り返すチャンスも生み出された。

『イマしかネェ!!』
ジャンプしたことでセイリオスには右への運動方向以外に上に向かう力が加わっていた。
それはまるで棒幅跳びのように、ガブルはセイリオスにしては高く飛び上がる
だが運動方向を維持した状態で向かう先は『壁』、むしろこの壁に向かうこと、叩きつけられることこそが拓海たちの狙いだったのだ

この状態で後ろ手にレフトを構える、そして撃つ。
後ろ側を打っているのだから照準を合わせるなんて事はまず無理、だからこの射撃は当てずっぽうだ
しかし先ほど見せたようにレフトはナパーム、攻撃範囲は広く命中こそしなくても爆発・発火範囲に収めることは不可能ではない

さらにこの発砲と平行して身を翻しながら足を壁につける様に体勢を入れ替える
それが壁に着地するという稀有な状況を生み出した。

『ンドリャア!!』

そこからボディそのものを回転させて生み出すAMBAC、即ち四肢の勢いによる反作用とホイールによる奪取を用いて今度は『壁を走る』
走ると入っても山形にタイヤ痕を残す程度のものだが、このときセイリオスは確かに壁を足場としていた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/12(日) 22:43:38.29 ID:z21H4pqAo<> 『ペギャアッ!』
「ごめんッ!でも、たえてくれっ!」

煙を撒き散らしながらヘッドに機関銃が直撃する
車谷のDVNOから鳴る警告音
ヘッドの耐久値も、徐々に連続する直撃音とともに減ってゆく
ギリギリだ、と山下は呟いた

「あぶねっ・・・ジャンプ!」

蟻村が叫ぶ
完璧に気を取られていてバイスフリューゲルはの注意を怠っていたのだ
ヘッドに一発弾丸直撃したが、二発目は間一髪、ブースターでよける事ができた
そのまま空中にウィークエンドウォーリアーの貧相な体は空中に晒される
それと同時にサー・ニルスのドリルがセイリオスにカスった

(しまった)

突然のセイリオスのトリッキーな行動。まさか狙っていたのだろうか
いや、そんな事はおそらくありえない
いや、しかし、どういう事だろうか
目の前のスチールセイリオスは壁を、まるでそこだけ重力が反転したようにして走っている
サー・ニルスはブレーキをかけるので精一杯、アルクトゥルスは攻撃に参加できる状況ではない、ならば・・・

「やるしかねぇ!」

右腕から放たれたロケットパンチ
それは確実にセイリオスの頭を捉えていた

(勝った!) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/12(日) 22:59:14.24 ID:vNR0LQKno<> >>531
 蘭花は静かにウインクを送った。
 諦めろ、という聖母のような微笑みである。

「がははー! ファッ○だー!」
『私ペンギンさんとは初めてだわぁ……!』

 ……性母?

>>533
『ラン! 援護は!?』
「――いらないよ」

 蘭花は見ている。
 放たれるであろうロケットパンチの弾道も、受けるセイリオスの表情も。
 どうあがいたって、エルピスの位置と装備では援護に入ることはできない。
 けれど彼女はなんの心配もしていない。

「こういうときはね、信じるの」

 息を吸った瞬間、ウィークエンドはセイリオスの頭部をはっきりと照準した。
 あぁ、きっとあれは必殺。セイリオスはその一撃で沈むだろう。
 けれど、彼は必ず、それを覆すに決まっている――そう信じる。

「――あの二人は、負けないって」

 その言葉に、エルピスは頷いた。
 そう。だからこっちはこっちの全力を。
 アームが伸びる。短機関銃を投げ捨てる。新たに掴みとるのは、二つのハルバード。
 この距離、この位置、この速度ならば――追いつくだろう。
 狙うのならばサー・ニルス。でかい的だ、まず外さないだろう。

【電力残量:三十八パーセント】
「さぁ、いくよエルピス!」
『えぇ、任せてラン!』

 もう一度、最大速度へのブースト。ストライドは大きく、まるで飛ぶような長さで。
 両手のハルバードを振りかぶり、弓のように引き絞る。
 速度と体重を乗せた一撃を。
 その一撃で叩き切るべく、彼女は全力で繰り出した。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/12(日) 23:12:38.27 ID:72xH/MAP0<> >>533

手をまるごと放りだしてのロケットパンチに、応援席の殆どが目を奪われた。
あれのために、前大会でエイティーキッズの後塵を拝した者も、そこには混ざっている。
核腕、の異名すらある破壊兵器――フランキー。

「南無三っ、今以外ないぜ!」
『言われずとも……やりますわ、やってみせます』

『ああっ、あああッ』

バイスフリューゲルは、後方へ『ケリ』を入れた。
それと同時に、バットージェットのサブアームが棒を引きぬく。爆発的旋回!

『さあ、妖精の国へ!!』

――――BLAM!!
影を喰らう程のマズルフラッシュを焚いて、飛び出す、バプタイズの最後の弾丸。
狙う先は、もちろんセイリオスを襲う拳型の凶弾だ。
うまく信管を外して撃墜できるか、爆発してしまうかは分からない。
だが、これしかない。
漏れる発射ガス。フレームがポップするような感触――エクスタシーを満身に浴びて、バイスは打ち出す。

……おお、まさに反動だ。
反動作用はバイスの身体を後ろに傾け、エビ反らせる。
その状態でジェットの出力を最大まで発揮し、高速背面飛行からのロールを彼女は始めたではないか。
程なくして正常な体位を取り戻して真っ直ぐ飛行する先に、隻腕のフライメック。

『ご招待!』

叫び声と共に、バイスフリューゲルは襲い掛かろうとするだろう。
まず、重みのある《バプタイズ》を空振りして、勢いをつける。
宙で翻る身体。閃く脚部の先端は、槍の穂先を想起させる鋭さであって。

『です・わ!!』

回転のかかった左足が、ふんだんに加速を乗せて。
残り僅かな耐久値に護られし、終末の騎士の頭部を捉えんとした。

うまくいった所で、バイスフリューゲルの脚部もダメージを受けるのは明確な硬度差。
それでも高速の大返しは、威力も奇襲性も侮りがたい。それも、射撃機のなら……! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/13(月) 04:07:01.59 ID:zxg9D+BYo<> >>533
ある程度高い目線になってわかったことがある、今の敵の配置だ。
サー・ニルスは先ほどの体当たりからの体勢を立て直している真っ最中
アルクトゥルスは味方が止めてくれている、この状況は一騎打ち――――

地面と平行になっている状態で飛びかかるにはセイリオスのレッグでは跳躍力が足りない。
そして素でのジャンプだった場合時間がかかりすぎてサー・ニルスとの合流チャンスを作ってしまう可能性がある

「このチャンス!」
『ムダにできネェ!!』

壁に文字通りその身を預けていたセイリオス、リボルスラスターのシリンダーが回転を始める
ロシアンルーレットを模した回転だが弾の装填率はあちらと違い100%だ。

「ロード!」
『カードリッジ・ファイア!!』
その弾を再び加速用の燃料として消費、青いセイリオスのボディとは対と成る壁を焼き焦がすほどの赤い炎が吹き出てくる
足りない跳躍力は文字通り爆発的な加速力で解決させた

レフト前腕に取り付けられたシールドが機械音と共に拳を包み込むナックルガードへと姿を変える。
そして真正面から飛んでくるロケットパンチに対し、突撃しながらこちらもその拳をたたきつける

『ナパーム・スマァァシュッ!!』

拳と拳のぶつかり合い、それは赤く燃える爆炎によってその激突を彩った。
炎が散り火の粉が青く凍った路面に降り注ぐ、セイリオスが破壊された際に生み出された爆炎であろうか

否、その視界を包むような真っ赤な世界を突っ切り
白い煙を纏いながら相反する色『青』、澄んだ美しい色で包まれたセイリオスが飛び出してきた

《L.ARM:DAMAGE25% ―――TOTALDAMAGE57%―――YELLOW》

左腕のナックルガードには黒く巨大な焼け跡が見受けられる、それは何かが爆発したことによって生まれたダメージ。
ナパームスマッシュはナパームは放ってそれごと殴る、パーツへの反動を無視した凶器の技
真正面からぶつかり合ったように見えたロケットパンチとナパームスマッシュの激突は、実際はその名称にもなっているナパーム弾がその間に入り込んでいたのだ

炎の壁を切り抜けたようにリボルスラスターの勢いは死んでいない。
驚異的な加速を維持したままウィークエンドへの突撃命令を実行しようとしている

「叩き付けろガブル!」
『ウオォォォ!!』

耐久力の半分を切ったナパームスマッシュを再び思い切り振りかぶる。
その拳は文字通りの爆裂拳、炎がうねりとなって赤で飲み込む炎滅拳
ひねりきった上体をに溜められた力を全て開放し、今度はセイリオスがウィークエンドのヘッド目掛けて真っ直ぐ己が拳を振り切った <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/13(月) 20:36:42.89 ID:lGD1u0UBo<> 「『ウソだ!』」

そう叫ぶしかなかった
今まで何十、何百ものHMPを沈めてきた拳が今ここで粉砕される
ありえない。常識では、こんなことは
奇跡だ、と羽生が呟いたがその声はすぐに観客の歓声にかき消された

「回避だァッ!」
『オッケ!』

ウィークエンドウォーリアーの脚部から煙が吹き出る。ブースターが付かない
予想外の自体、故障か?原因は不明

「サポート!」
『ピャッ!(無茶言うなよ!)』

スチールセイリオスが拳を突き破ったとほぼ同刻、ペンギンの爪が弾丸のように射出された
本来誘導ミサイルとして使うべき隠し玉だが今はそんな事は気しにていられない
何とかしてでも止めなければ、と考えたのであろう
しかしそれは余りにも浅はかな考えであった
スチールセイリオスは流星のようにウィークエンドウォーリアーへと向かってゆく

「ブースター!付いた!」
『いける!』

がつん
空中戦真っ只中の騎士の頭に、蹴りが直撃する
当たりは軽い、だが今のウィークエンドウォーリアーにはそれだけで十分であった
蹴りの衝撃でほんの一瞬、ノイズが入り行動が遅れたのだ
もう、避けきれない

「うわあああああああ!」

鳴り響く試合終了のブザー
勝負は、決まった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/13(月) 21:38:27.85 ID:IXrb2dYT0<> >>537

バイスフリューゲルの回路に、脚部耐久値73%を示す警告が走る。
彼女はそれに構う事無く双銃のラッチ・サムピースに指を伸ばした。
シリンダーがまろび出、続いて薬莢を11個エジェクト。

ウィークエンドウォリアーの残骸を筒状の抜け殻が叩く。涙のように転げ落ちて。
殆どその瞬間に、試合終了ブザーが、気違いの牛の様に鳴きはじめた。

『与太郎さ……いえ、ご主人様、良い指示でしたわ』

「(は、終わったの?)」

「――いやーいや、そうでも無いぜ?」
「相手のサイクルを火力で崩したのはパンドラだし、ココイチで気張ったのはセイリオス」
「追い撃ちがめざといって事なら正にそうだが……俺は探偵の卵だからなぁ」

『無精卵が』
「アーアー、とりあえず黙れ。……で、本当に勝ったんだよな?オイ?ねえ?」
『私は今、黙っていますわ』

最高潮に達した会場のテンションに混じって交わす会話は、抜けている。
さっきまでノリノリで指示していたのが、勝った瞬間に何が起きたのか分からなくなったのだ。
これが大会の勝敗。一瞬の差で決定される無慈悲な審判。

「(わーお、マジでやっちまった。相手は前回のベスト8?オイオイオイ!!)」
「(急増部隊だぜ俺たち?きらきら星クンと姉ちゃんの感性がビビッドなのは分かるがよ……)」

ブザーと会話が止まって少ししてから、急に胸が早鐘を打ち始めた。状況理解だ。
どんな顔をされているかと思うと、相手チームを直視する勇気も一気に失せる。
おとな気なんざ今更どうでもいいが、それとは全く別の問題で。

(((勝負あり!勝利チーム…………)))

周囲の音が、何より司会の声が、やけに滲んで聞こえる。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/13(月) 22:01:10.45 ID:4e45tIddo<> >>537
「『え、終わり?』」

 見事に唱和され、振るったハルバードがすっぽ抜けて飛んでいった。
 ドガン! とレンガの壁に突き立ったそれに目もくれず、二人は顔を見合わせる。

「『足りない……』」

 ここに来て、彼女たちの心境は完璧なシンクロを見せていた。
 有り体に言えば欲求不満である。それも破壊方面の。
 しかし彼女らが不意打ちのブザーに呆けている間にフィールグラムは機能を停止してしまう。

『はっ! そうよラン! 勝ったしカッコイイポーズ!』
「し、しまった! あぁっしかしタイミングを逃した! くそぉ!!」

 頭を抱える動作まで一致しているのだから、この二人のシンクロニシティは恐ろしいものがある。
 それでも次の瞬間には観客へと笑顔を振りまく辺りの切り替えの早さも一級であった。
 この二人、ファイターと言うよりパフォーマーに近いのではなかろうか。

(しっかし、いいなぁ二人とも)

 蘭花の目は仲間の二人に……そしてその機体たちに向けられる。
 レア物の名機、古き英雄スチールセイリオス。
 同じくレア物装備のキメラ機、ガンマン風の彼女。

(どいつもこいつも筋金入りのバカばかりで)
「――さいっこう」

 どのみち、誰かが攻めるならばそれに便乗したほうがいいのだ。攻める守るがバラバラであるよりは、前のめりに突っ込むくらいがちょうどいい。
 それを無意識にやってるような変人ばかりだからこそ、あの連携。
 いや、連携とは呼べまい。結局、各々が好き勝手やっていただけだ。ただひたすらに、自分のできる最善をもって攻め続ける――。

『すごいわね、ラン』
「そうだね、エルピス」

 ――それがちょっと噛み合った結果がこれだ。
 ならば、ならばもし……もっと噛み合わせたらどうなるだろう。
 想像するだけで血が滾る。闘争心で胸が弾けそうなほど。思わず体がファイティングステップを踏みだすのを、ぐっと堪える。
 代わりに天へと拳を突き上げる。高らかに、大きく、胸を張って、大言壮語をぶつけてやろう。
 熱狂に沸く観客席。嘶くようなエルピスの動きが、尚一層それを煽る。
 あるいは、チームに発破をかける勢いで。

「今年の優勝は――」
『――私たちがいただくわ!』

 優勝宣言をキメた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/13(月) 22:04:59.57 ID:zxg9D+BYo<> >>537
《L.ARM:DAMAGE25% ―――TOTALDAMAGE82%―――[DANGER!!][DANGER!!]》

静かになった戦場に、赤く点滅するDVNOから自爆によるレフトのダメージ報告が聞こえてくる
それは伝えてくる内容に反して勝ち鬨のように。

着地したセイリオスは路面にホイールを押し付け、機体をぐるりと翻しながらブレーキをかける。
その道筋に沿って削られた氷は欠片となって宙に舞う

そして凍りついた道路で落ち着いた後、背中から伸びるリボルシリンダーが中ほどからぱっくりと折れる。
カランカランと音を立て、直接露出したシリンダーから使い終わった2つ2つで計4個の巨大な薬きょうが落とされた

セイリオスは大ダメージを受けているその左腕を天へ真っ直ぐ伸ばし、さらに親指をより高くへ伸ばしたサムズアップの姿
その姿が表す意味は語らずもがなだろう。

「これで一回戦突破だ!!」
『ヨッシャ!』

そんなパートナーに答えるように、セイリオスに向けて右手を握りこみ親指を立てて答える
即席チームではあったが堂々の勝利

拓海はセイリオスに向けていたサムズアップを笑顔と共にチームメイトと監督に向けるのであった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/14(火) 02:04:05.38 ID:Y4ZBQ/OSo<> 「オッケイ!オッケイ!オッケイ!」

大きく飛び跳ねながら叫び声を上げる
それは紛れもなく自称監督の羽生であった
いや、羽生だけではない。ベンチも、観客も狂喜乱舞していた
それもそのはず。今ここに新しいスターが誕生したのだのだから

「・・・負けた」
『負けたね』
「負けちゃった、ね」

一方、前大会のベスト8であるエイティーキッズのメンバーはがっくりとうなだれていた
まさかの予想もしなかった一回戦負け
おそらく寄せ集めであるチームに期待していた観客は、ほぼ居なかったであろう
それでも、エイティーキッズのメンバー達の目の輝きは悲しさとは無縁のものであった

「…あんたら!」

蟻村が急に立ち上がる

「次は会う時は、負けないからな!」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/14(火) 21:11:11.82 ID:GpqrVFxso<> >>541
 立ち上がった少年を見て、にっと笑った。
 そうだそうだ、男はそうやって強くなるのだ。

「おう少年、再戦いつでも待ってるぞ!」

 びしっとそれだけ言い残して、エルピスへ手を差し出す。
 彼女はするりと追加パーツから身を下ろすと、私の手のひらへ乗った。そのまま肩へ導いてやる。
 追加パーツをカバンへ叩きこみ、颯爽とフィールドを後にした。

「まだまだ、これから」
『大口叩いたけれど、勝てるかしら?』

 小声でつぶやく彼女に、私は大きく笑いかけた。

「出来る出来ないなんて、馬鹿馬鹿しいぜエルちゃん」
『……そうかしら?』
「一番いけないのは勝ちにこだわることだよ。全力で楽しめないヤツはそもそも勝てない――それが遊びなんだってば」
『そう、ね』

 そうして私はベンチへ戻る。
 ぐっと親指を立てて、拳を前に突き出して。
 チームメイトへ、満面の笑みで告げてやるのだ。

「勝ってきた!」
『ふっふっふ、褒め称えなさい!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/14(火) 21:26:14.29 ID:U5117ZF10<> >>541

こうして見ると、一番テンションの推移に乗り遅れているのは青年である。
彼が次にエイティーキッズの面々と目を合わせたのは、再戦宣言のそのあとだった。

『うふふ、できればお茶も一緒にしたいのですけど……』
「あ、ああ。頑張れよ少年、こういうのは安心しないことだぜ」

指揮官は【与太郎】に、戦士はカマトトになり。
いまいち要領を得ない返答を残して、二人は控え室へ消えていく。

「お嬢さんグミ取ってくれ、ブドウの奴……って、疲れてるよな、お前も」

椅子に転がりこむ姿は、どうしようもないくらいハードさと無縁だった。
ただ心の奥底には次に向けての手応えがあるのか、
この後部屋で真っ先に感想戦を始めるのは、彼であったとか。

/このあたりですかね!数日間おつかれさまでしたぁ! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/14(火) 21:43:21.32 ID:U5117ZF10<> 【!コマーシャル!】

20XX年、世界有数の技術立国・日本。
高機動プラモデル――《HMP》は、老若男女のホビーとして空前絶後の存在となっていた。
HMPとは全高約30cmの小型ロボット。
頭・胴体・右腕・左腕・脚部の5パーツや手持ち装備を自在に組み合わせ、無限の可能性を発揮する。
超AIで共に語らい、多種多様な武器で共に戦う、君の仲間だ!

いよいよ始まる全国大会。蠢く闇。犯罪組織ブルーローズとは。それに立ち向かうEDENとは?
「ここだけ組換ロボット世界」で、新時代のバトルにダイヴせよ。
詳しくはウェブで、このURLをチェック!

【雑談】http://jbbs.livedoor.jp/game/54824/
【wiki】http://www59.atwiki.jp/kumirobo/pages/1.html

/各種リンクが埋もれてたので、スレも折り返し地点であることだし、ちょっと概要文付けて貼ってみます <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 20:52:37.59 ID:+bxr8Bfio<>
シュバリエハートの系列ショップ。隠れるように備え付けられた小さな扉をくぐり、中に足を踏み入れて
早緑慧理は、他の客から向けられた視線に耐えきれず顔を伏せた。ただでさえ控え目な歩幅がさらに小さくなって。やがて止まる。

「う……。普段より視線が痛い気がする。私何かおかしいかな、髪は一応梳かしたよね? 服に虫食い、とか?」
「先日アレだけ目立ちましたからね。気にすることはありませんわ。しゃんとなさい」

赤いキャミソールに透明感のあるブラウス。ふわふわしたスカート。相変わらず雑誌に載っていたのをそのまま摸倣した服装。
夏らしく明るい組み合せに、おどおどとした態度が相変わらずアンバランス。

眼鏡の上から顔を押さえて唸っているこの少女――実際は成人しているのだが――が、30人抜きを達成した噂の姫騎士なのだ。
定期的に行われる、店内のパーツを賭けたイベント戦。緊急の代理として立って連勝記録を塗り替えた少女は、既に有名人だ。

「さあ、入口の前にいては邪魔になりますよ。顔をあげて、笑うといいわ。今の私達に恥じることなんて何もないでしょう?」

くぐもった返事と共に慧理は顔をあげ、隠れる様に狭い陳列棚の間へと向かう。
そんなパートナーを守るように、薄青色のHMPは慧理の肩の上で堂々と直立していた。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/15(水) 21:13:36.54 ID:Koa5Q86Po<> >>545
「あれー、おっかしーな。もうちょっとこう、盛り上がってるって聞いたんだけど」
『場所を間違えたんじゃないの?』
「んなことないぜエルちゃん、シュバリエハート社で合ってるって」

 首を傾げる彼女も、それはそれで目立っていた。
 ロールアップのデニムに赤と黒のタンクトップを重ね着ている、どこか幼い感じのする成人女性。
 それだけならルーズな感じで済むのだが、生憎そう断じるには彼女の体は出るところが出すぎていた。
 胸を時折――視線に対して露骨に――揺らして見せる辺りはサービス精神なのか、悪魔的な何かなのか。

「あ、店員さーん」

 国重蘭花は、奥のカウンターを見つけるなりそこへ飛びついた。

「ここで対戦イベントやってるって聞いたんですけど、どこでやってるんですか?」

 日程という盛大な勘違いに気づかぬまま、彼女はわりと大声で恥を晒した。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 21:28:36.71 ID:+bxr8Bfio<> >>546

カウンターでぼーっとしていた青年はしばらく目をぱちくりさせて、それから何だか申し訳なさそうに答えた。

「それならきっかり一週間前に終わりました。次の開催は来月ですが……予約します?」

マニアックなショップで正社員を務める青年に女性経験は薄く、眼のやり場に困っておどおどと。
次第に顔の赤みが強くなっていく様子は少年のよう。

しばらくの間を置いて、また申し訳なさそうに、続ける。

「ただ、先週のイベントで活躍したピンチヒッターさんなら、あそこにいますよ。多分お願いすればきっともしかしたら対戦してくれるかもしれないです」

指差された先で慧理は間の抜けた声を上げ、その相棒クロリスは挑戦的に蘭花を見つめ返す。
少女は逃げる様に一歩後ずさり、背中に微傷特価品の箱の硬さを感じながら、不器用に微笑んで。

「えーと、やります?」

姿勢も表情も内気なまま。けれどその一言の中には、確かに喜色が混じっていて。
眼鏡越しに見上げる瞳は、その一瞬に爛々と輝いた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/15(水) 21:44:19.54 ID:Koa5Q86Po<> >>547
「は、え? 一週間前?」

 慌ててカバンを漁る彼女。イベントのチラシを引っ張りだして、あっ、と間抜けな声を上げた。
 顔を青くしたり赤くしたりと、随分忙しそうである。
 この時ばかりは青年をからかっている余裕もなかった。

「こ、これはお見苦しいところをお見せしまして……」
『ぷっ、ぷぷ……ださっ』

 ドゴン、とカバンを膝が蹴りあげた。わりと重い一撃がカバンへクリーンヒットし、中から悲鳴が上がる。

「ほう、活躍……とな?」

 導かれるままに視線を向ければ、おどおどとした少女が一人。
 だがしかし、蘭花はしっかりとその目を見ていた――あれは同類だと、胸の奥で誰かが叫ぶ。
 つまり、何においてもHMPが先に出てくるようなヤツだ。

『あら』

 相棒もまた、それを感じて嬉声を上げた。
 無意識に出た舌なめずりは、蛇の舌のようにちろりと赤い。

「もちろん」

 問われれば、そう答えるよりあるまい。
 ありがとね、と青年に投げキッスの一つでも送ってやる。――ほんの二、三秒だけれど、それのために目を離すのさえ躊躇われた。
 高ぶりを隠そうともせず、彼女はそちらへと歩いていった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 22:03:42.43 ID:+bxr8Bfio<> >>548

慧理に先導されていく先では、既にいた客が畏まって道を開ける。
狭い店内だからというだけではないし、大会予選での蘭花の試合ぶりを見ていた者がいたからというだけでも無い。
慧理とクロリスの戦いが、それだけインパクトの強い内容だったということ。特に某有名プレイヤーとの最終戦は話題になった。

「フィールドはランダムでいいかしら?」

充電用のコードを挿しっ放しの、軽装甲HMP。手に持つ武器は、剣の柄部分だけ。
見た目だけでも特徴的。無名の弱小装備とされる聖剣クラウソラスを知っている者は少ない。

「早緑、です。よろしく、おねがいします」

ぺこりと頭を下げるとぱっつんの前髪が揺れる。気弱な少女が成す戦いは、彼女の見た目に反して極めて激しい。
こちらも相手が同類だと感づいたのか、その言葉は普段より穏やかで、同時に普段より少し強い口調で。
強い意志を持って、一音一音はっきりと挨拶した。


戦いが始まるまえから、自然とギャラリーが集まり始めていた。
ざわざわと。「あの変形する奴だろ?格好良かったよな」「え、格好良いか?」「それよりあっちの開幕レーザーが……」
「あのお姉さんえっちぃな」「早緑さんの方がえっちぃだろ、いい加減にしろ!」ざわざわと。

戦う前から情報が漏れだしていた。

コンマ
01コロッセウム
23森林
45市街地
67湖畔
89氷河 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 22:07:56.56 ID:+bxr8Bfio<> 【森林】
高木の生い茂る森。枝葉に遮られて常に薄暗く、張り巡らされた根と柔らかな土が足を取る。
どこにでも用意されている基本的なステージだが、店によって細部は異なる。
この店舗の森林は、特に自然色溢れる険しい場所である。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/15(水) 22:24:14.81 ID:Koa5Q86Po<> >>549
「私は国重蘭花。よろしく!」

 びしっと片手を上げての一礼。
 彼女にとっては普段通りだったはずだが、その手が微かに汗ばんでいるのを感じる。
 あぁ、待ちわびている。
 あるいは恋焦がれる乙女のように、私は――あるいは私たちは、そこを望んでいるのだろう。
 相棒には何を言うまでもない、気が付けば彼女はカバンから這い出していた。
 その姿は清楚なようで、その微笑みはどうしようもなく淫靡で、野蛮であった。 
 武装の一つも持ちはしない、ただの人間とそう変わりのない体は、鑑賞用と断じれるだろう。
 布製のドレスを着ている姿は、ともすればHMPに見えるかどうかも怪しい。

『エルピスです。お見知りおきを』

 優雅に一礼をするのさえ、妖艶で。あるいは暴力的である。
 するりと彼女の手が腰のリボンを紐解き、滑らかな体をあらわにする。
 薄い装甲、戦闘には適さないヒールの高いパンプス。あぁ、この姿では、きっと誰にも勝てはしない。
 ニュンペーは美しくも悲劇の乙女。色恋に飲まれ、非業を迎える娘たちだ。

『誓いの言葉をあげましょう』
「ヴェールを脱いだ花嫁が何を言うか」

 だから、彼女は人をやめる。
 カバンから取り出されたのは重厚な獅子の胴体。知っている人はいるようだ。
 けれどこの場においては、派手なパフォーマンスは必要なかろう。
 厳かに着地した追加外装へと、エルピスは飛び乗る。

「いいよん」

 フィールグラムがステージを決める。
 森林――あぁ、フローラ系列の相手には有利か。そして巨大なこちらには不利。
 にわかに騒がしくなるギャラリー。魅せつけるような仕草は、残念ながら余裕が無い。
 獅子女の姿をとった彼女を見つめ、対戦相手の視線を感じ、思わずごくりと生唾を飲み込む。
 あぁ、見ろ。あんな気弱な乙女でさえ、あれほど積極的にさせるのだ。闘争に囚われた者というのは、本当に救いようのない醜さで――。

「さいっこうだね」
『えぇ、まったく』

「――お手柔らかによろしく、早緑ちゃん」

 本心とは真逆のセリフを放ち、エルピスは森へと身を投じた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 22:45:11.01 ID:+bxr8Bfio<> >>551

薄い装甲はこちらも同じ。透き通った青色の衣は、体を守るためではなく、より美しくより早く駆けるためのもの。
風と親しむためのボディラインは芸術的曲線を作り、紫陽花を模した髪飾りが室内灯を照り返す様は、涙に濡れた花弁の如く。

短い裾を持ち上げて礼を返すクロリスは、その美しさにおいてエルピスにとても近い。
後に風の神に見初められ、花の女神フローラと名を変える彼女は、もともとニンフの一人だったのだから。


森林。先週30連勝を成し遂げたフィールドが選出される。
このステージはもはや二人の箱庭。細部に至るまで熟知している。

けれど慢心はしない。自身と同じ色に狂った瞳を見せられては、余裕など持ちようがない。
相手は自分とは違って、大人びていて、格好良くて、堂々としていて、綺麗で。けれど間違いなく慧理と同じ病気持ちなのだ。
同業者、公に出来ない方の仕事以外で、こんな眼をする相手に出会ったのは始めてだった。
なんとなく、自分に指示を送ってくる人の中に一人に声が似ている気がして。
――蘭花の艶やかな髪に青薔薇の髪飾りを添えたら、似合うだろうなと思った。


大型にとっては動きづらい森林で、獅子の体を選んだ相手に対し、クロリスは舐めまわすように視線を動かし。
楽しそうにくすくすと笑って口を閉じる。楽しそうなマスターを見るのが楽しい。嬉しそうなマスターを見るのが楽しい。
困惑するマスターを見るのが、楽しい。


森に降り立つと同時、足元の木の根を蹴って跳躍。次いで跳んだ先の木の幹を蹴って反転。
太い枝に、LEGの踵の刃を突き刺して一度止まり、そのまま樹上へと消えていく。
親しんだフィールドゆえ、動きに一切の澱みは無く。険しい森は、けれど彼女の移動の妨げにはならない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/15(水) 22:57:14.86 ID:Koa5Q86Po<> >>551
 とは言うものの、森林というステージは厄介だ。
 木々を避けつつ進むことは、決してそう難しい話ではない。
 だが、この巨体はどうしても動きが大げさになりがちだ。大きな動きを阻害されるわけだから、窮屈な動きを強要される。
 対してあちらは見たところ軽量高速型。装備はおそらく熱量系の近接武器。
 厄介だ。まずは開けた地形を見つける――あるいは作るところから始めなければなるまい。
 体重を乗せたハルバードの一撃で切り倒すことは可能なはず。
 ほんの一瞬考えて、エルピスへと司令を送った。

「『――【エキドナ】』」

 円を描き、翼持つ蛇となった彼女は空へ昇る。
 どのみち森林のフローラ頭部にレーダーでは勝てない。索敵と、フィールドの選定を兼ねて空中へ。

『ラン、撃たないほうがいいわよね』
「そうだね、多分通じない」

 鬱蒼と茂った木々の隙間を縫えるミサイルなんてないだろう。
 高出力レーザーライフルの一本で高速機を捉えるのは無理がある。

「あくまで勝負は、降りてやるよ」

 低速で揺蕩うように飛行させつつ、場所と敵を探す。
 空中の相手へ出方を伺う――そんなつもりは毛頭なかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/15(水) 22:58:10.27 ID:Koa5Q86Po<> //安価正しくは>>552です
 (アカン) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 23:13:49.51 ID:+bxr8Bfio<> >>553 >>554

言葉は勿論、アイコンタクトすら不要。データなら共有できている。データなら収集できている。
この森林ステージにおいて、クロリスのレーダーから逃れるのは並大抵のことではない。
相手が飛び上がったことも分かるし、その飛翔が逃げるためのものではないのも分かる。

2人にとっては、その情報だけで充分。いつ、なにをするべきか、互いに良く分かっている。
まだ存在しない刃を、背の後ろからゆっくりと振るい。起動を示すパネルに指を乗せる。

ルーン文字の刻まれた柄を両手で握り、両ARMを起動する。
右手のバリアが余熱を防ぎ、左手の剣は躊躇無くその力を解放する。

光の剣。クラウソラス。その最大の特徴は、出力に上限が無いことであり
単純な破壊力とエネルギー消費の比を見れば、ハイパワーであればあるほど効率を増す。

右から左へ、クロリスから見て下方へと薙ぎ払う。狙うは相手の頭部。
上に昇って避けるにはその長い体が不便であり、下へ降りて避けるなら斬られた木々が落下してくるという追撃が待っている。

「どうなさいますか? 選ばれなかったニンフの乙女」

眩いばかりの閃光が、奔った。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/15(水) 23:30:37.07 ID:Koa5Q86Po<> >>555
 とりあえず、距離がある間は安全だ。一度この煩わしい木々を抜けて、空から索敵しよう。
 相手の装備は熱量系の近接へい、き――。

「う、ら――ぁっ」
『な――』

 有無をいわさぬ行動の強制、ブースターが全開になる。エルピスは弾かれるように真下へ飛んだ。
 回避行動は私の分野、彼女の体を強引にかつ全力で地上へと。その尻尾の先を、熱量の刃が掠めていった。
 落ちる木々、木々、木々。
 あぁ、これが普通のフライメックであったら困っていたかもしれない。

「蛇、なめんな――」

 許される限りの最大出力でブースターをふかして加速、加速、反転。
 迫り来る木々は、だがエルピスにとっては障害ではない。
 するすると、地を這うように、巻き付くように、うねるように。空中を縫いながら彼女は落ちる木々の間を抜ける。
 数度翼をぶつけつつも、落石ならぬ落木をどうにか上に抜けた。

【損傷:左腕部、八パーセント】
【損傷:右腕部、十六パーセント】

(嫌いじゃないよ、そういう動き)

 相手もまさかこれで沈むとは思っているまい。
 だが、初手でこんな大技をぶちかます相手だ。
 小動物めいたあの姿はとんだカモフラージュじゃないか。虫も殺せなさそうな顔をして――ケダモノのよう。
 ぞくりとした。
 背筋を痺れが駆け抜けていき、体が小さく痙攣する。

『ねぇラン』
「なぁに、エルピス」
『私、今すっごく興奮してるの』
「私も……ちょっとヤバい」

 陶酔する。
 あぁそうだ。自分たちはいつだって飢えている。
 あるいは目の前の彼女が――私を満たす相手ならば。
 あぁこりゃちょっとヤバいぞ。狂っちまいそうだ。

「我慢ならん」
『えぇ、まったく』

 反転。
 開所は出来た。ばらばらに切断された木々の切り口。ちょいと斜面だが、気にするものか。
 これほどの数があれば――足場にはなりうる。
 その上へ踊り出る。

「『――【スピンクス】』」

 獅子の爪が木にくい込み、固定する。いける。ならば行こう。
 駆け上がるようにして、扇状の開所の先端、光の剣を振るうモノへと接近する。
 両手に機関銃を持ち、ばら撒きながら。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 23:48:15.30 ID:+bxr8Bfio<> >>556

相手の移動の速さ、滑らかさが、初撃の結果を物語っていた。
この戦い慣れた森林において、クロリスはまさしく女神。檻の中の猛獣の行方など、手に取るように分かる。

だから木の合間をすり抜けていく相手に対して追撃を加えなかったのは、機動力不足でも索敵力不足でも無い。
戦略。クラウソラスの一撃を魅せれば向かってくると、分かっていたから。

この相手は空中へ逃げてこちらのバッテリー切れを狙うなんて戦い方に満足できる兵士ではなく、血気滾る戦士だと分かっていたから。

「しなやかだね。ただ振り回すだけじゃ当てられない」

「なれば、避けられない状況を作るだけのこと――」


前方には、ばっさりと切りそろえられた木の断面。相手のいる方に向かって傾いた丸い手頃な足場。
迫りくる獣と、散らかる銃弾。問題無い――この程度なら、想定内だ。

ふと、糸が切れたように、樹上からクロリスは落下する。その瞬間を良く見ていなければ、消えたように感じるかもしれない。
幹に踵の刃をかけて、止まればすぐさま跳躍し、幹を盾にし銃弾を防ぐ。銃弾が腹を掠る。弾幕が激しい。けれど走る。

木と木の間を駆け抜ける乙女は、その上の獣と同じかそれ以上にケモノ。
相手からこちらを視認することは難しいが、こちらから相手の位置を知るのは容易。目指すは相手の真下。

【HEAD】 100% 【BODY】 72%
【R.ARM】094% 【L.ARM】099%
【LEG】  100% 【ENE】  069%
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/16(木) 00:00:33.39 ID:OhE5ll91o<> >>557
「まぁ、当然かな」
『降りたわね』

 レーダーはかろうじて位置を捉えていたが、それも消えた。
 視界の外から、またあれで一撃を加えるつもりなのだろう。

「不利だね」
『不利ね』

 こう言いたくはないが、ステージの相性が悪すぎる。
 あちらにとって木々は足場でしかなく、こちらにとって木々は障害物でしかない。
 この差――絶対的な差だ。

(エルピスのどの形態でも直撃すれば無事じゃすまない。バリアユニットでも遮りきれる威力じゃない)

 はぁ、と熱っぽい息が漏れる。
 胸の奥が張り裂けそうなほどに灼熱する。
 クスリでもやったみたいな多幸感。脳内麻薬は垂れ流しだ。

『最高、最高よ……!』

 気が狂うような血流と神経のオーバルコースをパルスが駆け巡る。サーキットは崩壊寸前。
 そんな中でも、思考だけは冷静に。

「エルピス、気合で避けるよ」
『任せなさい』

 ――地上へ。
 なぎ倒され、降り注ぐ木々のデメリットはあれど――上では無理だ。勝ち目がない。
 考えうる手は少ない。だからそれを丁寧にたぐり寄せるしかない。
 まずは相手の地形を抉る一撃を避け続ける――。

【電力残量:七十七パーセント】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 00:16:58.00 ID:ywgkIWCVo<> >>558

一瞬一刹那が心地いい。この場所が自分の在るべき所なのだと実感できる。
普段は怖くてならない周囲の視線も蚊帳の外。呟きも感嘆も必要ない。ただクロリスと勝つことだけを考えていればいい。
相手がいるにも関わらず、自宅のシャワールームの如き安心感。怯えも萎縮も悩みも疲れも、何もかも洗い流されていく。

「良い展開だよ!」
「二の太刀は外しませんわ!」

相手が木々の中へ降りる選択をした瞬間、クロリスの軌道が変わる。
上へ。断面近くまで登り直すのにそう時間はいらない。

単純な平地でのスピードなら、クロリスはエルピスと互角かそれ以下だろう。
しかし森の中ではその関係は逆転する。小さな身体は利点、加えて頭の中に正確な地図が出来上がっていることの差は大きい。
上下関係の交錯は、エルピスのレーダーにクロリスの場所を教える結果をもたらすだろう。

しかし瞬時に場所が変わるのなら、一瞬捕捉されることなどそう痛くは無い。

上。真上を取った瞬間に、再度落ちていく。小さな身体を捉えて離さない引力は、地母神の彼女への嫉妬のようで。
空を切り裂いて落ちる様は、逆さに見れば天上へと昇る天使に見える。

真下に向かって、二回目のクラウソラス。重力が急速に距離を縮めてくれる。そう多くのエネルギーがいらない。
頭上より注ぐ極光の点は、暗い森の中で輝く一番星。見惚れれば、次の瞬間には星屑ならぬ鉄屑が出来上がる。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/16(木) 00:30:09.15 ID:OhE5ll91o<> >>559
(今度は上か――)

 慌てない。騒がない。相手が自分ならどうするか。
 交錯した瞬間、追うように一撃。
 確信めいた勘は、翻ってこちらを狙う相手によって事実と変わった。
 DVNOを叩いた一瞬、クラウソラスが輝く。
 光の槍に対して、エルピスは脚部のブースターを全開にして前へ移動、回避した。
 尻を僅かに焼かれながら。

『――ぐ』
「ふ、ふ」

【損傷:脚部二十八パーセント】
【損傷:追加外装二十一パーセント】

 ――かすっただけでこれか。
 追加パーツは脚部換算で、そしてあれほどのサイズだ。素のままでも防御能力は圧倒的。
 それをこうまで抜けてくる――直撃はバリアごと機能停止までありうる。
 だが。

「今度こそ、捉えた……!」

 強靭な四肢が木を蹴って、わずかに上へ。飛べはしなくても、滑空は出来る。
 ブースターは全開のまま、野獣のごとき身のこなしで反転したエルピスは、すぐ近くにいる同胞に機関銃を浴びせかける。
 一撃を貰うことも厭わない。
 あちらにとって、この機関銃の一発一発が致命傷になりうる――それを経験で知っているから。
 ねぇ、我が愛しの弟クン?

『堕としてあげるわ――!』

 吠え猛るエルピスと、両手の機関銃。
 雪崩を打って襲いかかる鋼鉄の暴威を従えて、彼女は空を駆けた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 00:49:42.96 ID:ywgkIWCVo<> >>560

「えっ!?」
「機動力・反応速度共に……。化け物なのは見た目だけではないようですね」

けれど直感的に、この展開を心のどこかで、待ち望んでいた。
もっと長く、もっと激しく。心臓が破れるほど、回路が焼き切れるほどの衝撃を望んでいた。

クラスソラスの刀身は短く、そしてこれから伸びていく。
腕はまだ振るっていない。森の中での落下は、行動停止を意味しない。

ズヴェルドのバリアで枝を弾く。僅かに落下方向がぶれる。隣の幹に届く。
右手を離したことでL.ARMが急速に焼けていく。指先の外殻が歪んで、内部機関が熱で狂う。
正確に計算された重量比が狂い、体が回る。踵から伸びる刃が樹皮を裂いて砕けることをもって、空中方向転換が完了する。

顔の前に手を突きだして頭部への攻撃を避け、くるりと刃を反すクラウソラスが銃弾を燃やし尽くす。
とはいえ数の前には不足極まりない防御。直撃こそなくても、掠っていくだけでも大ダメージ。特に左足を貫いた一撃は重い。

傷ついた部位から火花を散らしながら、風を切る音をたなびかせて

クラウソラスの切っ先が、機関銃を構えるエルピスへと向かった。
足元から頭上へと、綺麗に中心線にそって切り上げる形。

【HEAD】 91% 【BODY】 52%
【R.ARM】92% 【L.ARM】53%
【LEG】  32% 【ENE】  29% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/16(木) 01:10:05.39 ID:OhE5ll91o<> >>561
 あぁ、そうだ。そのとおりだ。私だってそうするだろう。
 なにせそれは当たれば必殺級の威力を持っているのだから。
 当てれば勝ち――。

「そんなわけないよね」

 直撃コース。現状空中での方向転換は不可能。被弾は確実。
 腕と、ブースターが両側に一個ずつ残っていればいい。
 わずかに身をよじって体を傾け、本体への直撃だけは回避する。

『が、ああ――ッ!!』

【損傷:脚部百パーセント。機能停止】
【損傷:追加外装九十八パーセント。脚部欠損】
【警告:電力不正放電状態。電力残量急速低下】

 右前足爪、胴体下部、左前足付け根、左後ろ足爪、破損。ブースター、左前方の一基が破損。追加バッテリー損傷。
 ――これでもう、走れまい。故にここで決めるしかない。
 そんなこと、互いに分かっているのに。

『終わらせるわよ!』
「合点承知ィ!」

 そう声に出した。

 ただひたすらに、前へ。
 無理な回避でバランスを崩し、螺旋を描くようにして軌道を落としても、前へ。
 この一瞬、地に堕ちるまでに、蜂の巣にする――!

「い、け……!」

 祈るような弾丸の嵐。
 再三の光刃の前に、それらが届くことを信じて、私は堪えるように呟いた。
 そうでなければ、気狂いのまま叫びだしてしまいそうで。
 それほどに、このサバトめいた戦いに熱狂していた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 01:26:56.82 ID:ywgkIWCVo<> >>562

もはや発声に用いる電力すら惜しい。

地面はもうすぐ。根が硬い。 光が眩しく身体が痛い。痛みが楽しく壊れて恋われる。
互いが互いを求めあう、それは原始的な愛の形に近く。

もう一撃。足りない電力を何とか補うためにズヴェルトのバリアを切って、顔を守るものが無くなってからが本番。
先に壊れ切るのはどちらか、地上までの一刹那、火力レース。

左手が焼けて焦げて溶けて落ちて。黒く変色した腕は機械類すら焼け落ちて、人のそれと見分けがつかない。
腹を貫かれて足を貫かれて腕を貫かれてついに頭部が貫かれる。

あらゆる攻撃が致命傷となりうるクロリスに、危険域を知らせるアラームなど無く。
ただ数値が削れていくのみ。

【L.ARM】8%

機体が壊れ切るよりも、バッテリーが切れるよりも早く、その手からクラスソラスが零れ落ちて。

銃弾の雨は不思議とその体をすり抜けて。

――鉛の雨が紫陽花の髪飾りを打ち抜いて、色取り取りな破片が飛び散って。

けれど、その脆いボディは、落下の衝撃に耐えきれない。

――花というのは、散りゆく瞬間こそがもっとも美しい。

           【機能停止】

加速のついた落下はあまりにも早く、クロリス当人には勝敗の把握すらできていない。
けれど地面に触れた瞬間の微笑みは、とても可憐な華であり。次の瞬間に打ち抜かれる落花だった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/16(木) 01:50:27.92 ID:OhE5ll91o<> >>563
 そして、この零秒の先。
 エクスタシー。

 ――ごしゃ、と音を立ててエルピスは落ちた。
 追加パーツを犠牲になんとか着地に成功。本体で着地したらおそらく即死だったろう。
 蕩けた頭でそう考える傍ら、ぼろりとエルピスが分離した。
 脚部が衝撃で砕け散ったようで、それで転がり落ちたということらしい。

「か……った、あ」

 フィールグラムが形をなくし、平面に戻る。そこへ上半身ごと倒れこんだ。
 胸が潰れて苦しいのだって、今では心地良い。
 腰砕けになるほどの戦いだった。――相棒に至っては本当に腰が砕けている。
 うつ伏せた顔の先に、エルピス。

『あ、ひぃ』

 あぁ、ちょっと不味いねこの顔。そっと手で包んでやって、とりあえず目を閉じさせた。
 私はこうまでなってない、と思いたい。
 ぽたり、と額から汗が垂れた。

 勝ったからこう、ではない。
 勝ち負け以前の問題で、終わったからこその脱力。
 こうなるまで戦ったのは、人生でわずか二度目なのだ。
 もう届かないようで、まだ先があるような……理性が吹き飛んだ一瞬。
 あらゆるものが溶け込んで、一か八かに分かれる絶対。
 ケモノとケモノがぶつかり合う刹那の、人間には分かり得ない感情。

「はっ」

 跳ね起きた。
 私をこうまでしてくれた相手――きっとどこかで渇望していた似た者同士の愚か者。
 恋焦がれていた一瞬をくれたヒトを、私はもう一度視界に収めた。
 こいつだ。この大人しそうな顔をしたやつが、あのケモノだ。

「さ、早緑ちゃん!」

 白状すると、この時の私は真面目にボケていた。
 お友達になってください、いやこれからもずっとファイトしようぜ、くらいのことを言おうとして、こんなことを口走ってしまったのである。

「――一生付き合ってください!」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 02:10:33.35 ID:ywgkIWCVo<> >>564
「クロリス」

なんと言葉をかければいいか、分からない。「お疲れ様」も「残念だったね」もきっと違う。
他にもっと言うべきことがあったはずで、けれど頭は回らない。

「キレイだね」

間違えた気がする。でも他に思いつかなかった。
やっぱり自分は駄目だと、熱の残る頭で自責する。


美の中では両方の岸が1つに出会って、すべての矛盾が一緒に住んでいるのだ。
――なんとなく、最近読んだ名作文学の一節が頭を過った。

そんな言葉は慰めにはならなくて。あと1コンマ、あと1ミリ。ほんの少しの調整で勝ち得たはずだと戦いを振り返る。
気付いたら眼の端に溜まっていた汗だか涙だか分からない液体を手で拭った。続いて溢れてくることは無かったから、きっと汗だったのだ。

それからようやくクロリスを手に取った。
それこそ首だけなんとか回収する、なんて事態になったこともある。グロテスクだ、などと怖がることは無い。
ただ、壊れたクロリスはいつもより輝いて見えた。


         「一生付き合ってください!」

自分だけの世界に没頭していた慧理を引き戻すには、その刺激は十分――十二分以上の衝撃。

    「え、あ、あう?……えと、私でいいんですか?」

断れず肯定できず。うやむやな返事で誤魔化す癖は、今回大変な結果をもたらした。
――遠回しな了承にしか聞こえない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/16(木) 02:34:22.26 ID:OhE5ll910<> >>565
「他に誰がいるのさ!」

 私をこうまでしておいて、そんなのありえない。
 もう一度、あの領域へ。
 混沌と秩序の融和した、あの零秒の先へ。
 一片までも闘争に染まりきった馬鹿な奴など、これ以上見つかるものか。
 好敵手、というやつだろうか。

「だからまた」

 息を吸い込む。
 ぞくぞくするほどの、乗るか反るかの戦い。
 これで終わりにできるようなら、こんな人間にはなっていない。

「勝負しよう! 次は完璧に勝つから!」

 ただ、戦いたい。
 そのときの私には、それ以外の何一つもなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 02:48:31.91 ID:ywgkIWCVo<> >>566

戦いを終わった後の慧理に、蘭花の視線を真っ向から受けるだけの精神力は残っておらず。
かといって眼をそらすだけの勇気も残っておらず。

吸い込まれるように蘭花の眼を覗き込んで、無言でこくこく頷いた。

クロリスがいたら、別の反応を取れただろうか。クロリスなら、何と言っただろうか。
急に寂しさに襲われて、手の中のクロリスを握りしめて、破片が痛い。

――「勝負しよう! 次は完璧に勝つから!」

その一言で観客が再度どよめき、ある者は安堵してある者は肩を落としていたことは想像に難しくない。


目の前の勝者の何と美しいことか。辿り着きたい。もっと、もっと先へ。
元より戻れないのは分かっている。ならせめて自分の選んだ道でだけは、一番前にいたい。

「次は、私です」

勝つとはっきり言えない自分がもどかしい。汗に濡れた服が邪魔で、いっそ脱ぎ捨ててしまいたい。
逃げ出したくて吐き出しそうで最高に気分が悪くて眼が回る。結局自分は何もできない。
クロリスと、得意の森林でさえ、自分は足りないんだ……。

笑えているのか自信が無い。でも、泣いてるならそれでもいいかな、と思った。

/お疲れ様でしたー! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/18(土) 22:20:40.47 ID:9gVqbhOwo<>  一回戦終了後の控え室
 まだまだ外では一回戦が行われている為か、厚い壁越しにもその熱狂が伝わってくる
 実際、控え室に設置されたモニタの中では白熱の試合が行われていた
 戻ってきたメンバーも、二回戦に向けてどのチームと当たってもいいように作戦を立ててみたり、機体の調子を確かめてみたりと大忙しだ

 こんこん、とそんな控え室の戸が控えめに叩かれる
 誰かが気付いてどうぞーと声を返すと、ゆっくりと扉が開く
 どうやら、同じショップ近郊を根城にしているファイターたちが、応援?やら野次やらを飛ばしにきたようだ

「一回戦勝利おめでとうございます。強敵でしたか?」

 そんな中、す、と大会に出ないことで有名なシンが一歩歩み出て感想を求めた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/18(土) 22:41:41.65 ID:iq4VP8pGo<> >>568
「おお有名人! いらっしゃーい!」

 蘭花はソファに寝っ転がって足をパタパタさせていた。
 チューブトップから盛大に谷間を覗かせて、ぴっちぴちのロールアップデニムを履いている。
 自宅並のくつろぎっぷりを発揮していた。

「んー、まぁトントンってとこかなぁ。私は苦労しなかったけど、代わりに頑張ったのはたくみくんだし」
『カウンターねじ込んで勝ちだなんて、カッコ良かったわね彼ら』

 相棒のエルピスも今は異形の追加パーツを装備せず、机の上に正座していた。
 布製の浴衣を着ているが、彼女のモデルじみた体型はあまり和装には合わないようだ。
 雰囲気を出すつもりなのか、抹茶パフを吸っている。

「まぁ私的には満足かなー。好き放題出来たしね」
『最後が肩透かしね。私にも一撃を入れさせろ、って感じ』

 小さな妖女には、わずかの容赦もないようだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/18(土) 22:54:07.38 ID:voL5XHHao<> >>560
「あ、いつぞやの。お久しぶりです」

少々なよなよした口調で、長髪の男が答える
感想を求めてきた男とは一度だけショップで野良試合をした事があるので顔は覚えていた
相手の方が覚えているかどうかは分からないが

「まあ、僕は何もしてないから、何も言えないんですけどね」

肩にのっていた羽生のHMP・ヒートが全くだとでも言いたそうな顔つきで首を振るが事実なのでしかたがない
実際、ベンチでは監督という名の置物と化している
さらには周りが調整修理と大忙しなのに一番ヒマそうにしているという怠慢ぶりである

>>569
「蘭花さん、そ、その格好はやめてよ…」

男に返事をした時とは別な感じで、またなよなよする
おそらく耐性がないのであろう。目のやり場に困っているのは一目瞭然だ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/18(土) 23:09:00.34 ID:9gVqbhOwo<> >>569
「妙齢の女性がそんなはしたない格好をしてるのは、男性陣の目の毒だよ
 あなたのそれはからかいを兼ねているんだろうけど、そういう振る舞いになれた人ばかりじゃないんだから気を付けないと」

 まぁ幾つもの格闘技を修めている彼女に襲いかかっても投げ飛ばされたり、技を極められるのがオチだろうが
 一応、そういう輩が湧くとも限らないのである

「チーム内の色恋沙汰で進んだのに誰も出れない、なんてなったら洒落にすらならない」

 やれやれ、と言った風に肩を揺らすと、くと笑みを浮かべて

「でも、まぁ……戦いはあっぱれでしたね。流石はパンドラ、と言ったところ、かな」

>>570
「うん、久しぶり」

 そう言ってにっこりと笑みを返して

「君は……監督役、なのかな?」

 忙しない周囲の選手を見回してそう推察する

「たぶん、この先、君も活きる場が訪れるよ
 チーム戦っていうのは、そういうものだから」

「そうだね……監督役なら、やっぱり情報戦かな?
 たしか、ショップ店員なんだっけ? なら、パーツにも詳しいよね
 各パーツの癖ぐらいなら、ある程度わかるんじゃないかな?」

 それなら、どういう風に当たればいいかを指示することも出来る

「僕は大会にはまだ出られないけど、今回の大会には期待してるから、さ」  <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/18(土) 23:21:14.88 ID:iq4VP8pGo<> >>570
「んんーぅ? 気になるんですかぁ監督ぅー。ほれほれぇ」

 ゆっさゆっさ揺らしてはけらけら笑う蘭花。
 初ですこと、と奥ゆかしく(そしてわざとらしく)微笑むエルピス。
 息が合いすぎである。

>>571
 そういう目で見ると、蘭花の体は無駄なく全身鍛えられているようにも見える。

「初なヒトを見るとからかっちゃうのが性分でねー」
『気をつけてくださいね、これただのビッチですから』
「酷いなぁ、もう。……あ、でも薄着な理由は暑がりだからだよ、うん」

 けらけらと笑う彼女に、からかい以上の色はない。
 誘っているような姿だって、彼女にとっては一種のカモフラージュで、ひとつの篩なのだ。
 ――その本質が闘争にのみ傾いているのだと、知る人は少ない。
 見た目に惑わされるような相手に興味が無いのだ……とも。

『ま、私にかかればこれくらいどうってことないですからね』
「ひゅー! 言うねぇエルちゃん」
『なんだかんだ回避行動しなかったから、今回ランはサボってたようなもんだしね?』
「まーねー」

 二人の分業制は、あるいは誰かから聞いているかもしれない。
 攻撃をエルピスが。回避を蘭花が。そんな分担を取るコンビは、あるいは珍しいかもしれない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/18(土) 23:44:30.95 ID:voL5XHHao<> >>572
「あーはいはいはい!しゅーりょーっ!」

顔を真っ赤にしながら両手をバタバタさせる
完璧に耐性がないようだ

>>571

「うん、そうだね…。がんばってみるよ」

昨日の敵は今日の友。
かつての敵のアドバイスは、どうやらかなりおおきな収穫だったようだ

「あ、そういや君のHMPはどうなったんだい。派手に壊れてたよね」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/18(土) 23:50:51.19 ID:9gVqbhOwo<> >>572
 鍛えられ上げ、締まっている体、というのは一種の美しさを有しているものだ
 きらり、とシンの眼光が怪しく光ったことに蘭花ほどの手練れならば気づけただろう
 その色は、陶酔?……いや、なんなのだろう
 法悦に至る聖女像の前で、涙を流す信心者のような――不埒な念を抱いたことに対する自罰にも似た奇怪な色も見える
 それでいて肉体を覗いているというより、もっと奥の……根元的な物を覗いているようにも見える
 ……ともかく、気味の悪い目だ
 性犯罪者の下卑た視線に似た、けれど、それとは全く性質を異にする奇怪な視線
 舐めるように見ているはずなのに、触れていない。まるで、ガラス越しに視姦でもされているかのような……奇妙な距離感がある

「まぁ、確かに連日暑いからね。こうも暑いと工房に篭もる気になれなくて、作業が進まない」

 けれど、そんな視線を向けていたとは露も顔に浮かべずに、彼は肩を揺らした

「へぇ、分業制か。……そういえば、この前腕の操作に専念しているファイターと戦ったっけ
 やっぱり、どちらか一方だけを担当する、というのは楽なのかな?」

 シンは、彼が立案した作戦をエクリプスが現場で改変しながら対処するという戦い方をしているファイターだ
 司令官型と言えば聞こえが良いが、かなりHMPの自主性に頼っているファイターともいえる
 そう言う意味で、彼は愛機を深く信頼している人物なのである

>>573
「エリは、今、機体の新調中かな。あの壊れ方はすごい綺麗だから、直すのは勿体ないからね。
 ケースに入れて飾ってあるよ。今度見に来るかい? たぶん、スケッチも捗ると思うよ」

 平然と、壊れた機体の美しさを語りながら、新機体について語り始める

「いままで、遠距離に寄りすぎた学習をさせすぎたからね。次は近距離を極めさせようと思ってる
 それが、『エクリプス』への最短経路だからね」

 シンが何事もなく告げた『エクリプス』という言葉には、酷い違和感が付きまとっていた
 機体名であるはずのそれは、もっと別の何かを指し示しているような……
 まるで、そう――今、彼が駆っているそれは、『エクリプス』ではないかのような……

「でも、暑くて作業にならないよ。これだから、改造したがりはいけないね」

 はは、と悪癖を笑ってみせる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/19(日) 00:08:26.64 ID:6VCRjgSXo<> >>573
「にっひひ。かーわぃー」

 けらけら笑ってそんなことを言うが、それ以上の追撃は止めにしたようだ。
 無論、何かを羽織ろうとするわけではなく、あくまでアピールの終了である。

>>574
 へぇ、と彼女はちろりと舌なめずりした。
 あぁ――こいつも、どこか壊れている。
 この安寧な世界にあって、異常者というのはどこかで惹かれ合うモノなのか。
 あるいは、彼女はそういう鼻が利くのだというだけかもしれない。

「好みじゃないけど、悪くないかな」

 小声で呟いた言葉は、人に届くにはあまりに小さい音だった。
 そして彼女もまた、それと悟らせぬよう取り繕う――健全な笑顔と冗談交じりの色気。彼女のペルソナはそれである。

「んーん、逆。互いの思考を同期させる作業が楽なはずないよ。
 私だってエルちゃんと同期取るのに一ヶ月まるごと特訓に使って、それで今も完璧じゃないんだから」
『あくまで合理的な判断なわけです。攻撃も回避も、両方同時に集中なんてできないでしょう? それが気に食わなかったんです。
 私は攻撃に集中する。ランは回避に集中する。そうすれば、攻撃にも回避にも集中できますから』
「ようやくリスクをリターンが上回ったかな、ってとこ。まだまだ先はあるよ」

 信頼というよりも、これは利害の一致だ。執念がより合わさった結果と言えよう。
 彼女らが望む戦いをするためになら、彼女らはなんだって捧げるだろう。
 それが努力というのだから安いものだ――二人はそう言っていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 00:36:04.61 ID:E8UYRT2Ao<> >>575
「まぁ、言われてみればそうだね」

 共に育った双子同士ですら呼吸を合わせるのは難しいのだ
 いわんやそれがそもそもの思考体系が違う機械相手では、どれほどの難度かは推して知るべしであろう
 一月、と蘭花は言った。
 ――であれば、あの光剣の担い手は、どれほどの時をあのHMPと過ごしたのか
 ふつ、と浮かんだ疑問を噛み殺して、今は目の前の女性との会話に集中する
 女性と面と向かって話しているときに、別の女性のことを考えるのは失礼だろう

「なかなか、長い道を歩いているみたいだね
 でも、その道を歩くのは楽しそうだ」

 思わず笑って肩を揺らす

「まー、僕は勘弁願いたい道だけどね。
 どうにも、堪え性がなくて、そういう特訓っていうのは苦手だよ
 なにか、特訓に耐えるコツっていうのがあれば、教えて貰いたいな」

 ははは、とそう冗談めかして言った後、小さな声で呟きを零した

「人機一体、か。理想とする物では、あるけど――」

 間に合わない、唇はそう動いたように見えた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 00:36:16.05 ID:kx6rJyFo0<> >>573 >>574 >>575

人波を潜り抜けてトイレから帰ってきたのは、探偵助手めいた服装の男だった。
波打つ黒髪、努めて大人であろうとしているが、生ぬるさの抜けない瞳。
ポケットに忍ばせているのは、タバコ――ではなく、コンビニで売っているグミの袋。

バイスフリューゲルのマスター、町田与太郎である。
二枚目半に更に半分付け足したような雰囲気の、胡散臭くもあり、イモ臭くもある男だ。

「……ん、お客さんが居るようで」
「どうも。自分、町田と言うものですが」

お気に入りのソフト帽を外す。気障に装って行う挨拶に、彼の親が与えてくれた名前は無い。
尤も荒田が試合を見ていたならば、普通に知っているかもしれない事だ。

スーパー狂人空間にあって、彼は実際常人である。
燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや、と言う諺のとおりに、つまらぬ視界で物事を語る可能性が高い。
なんとまあ、哀しい運命だろうか……。

/駄目な感じなら、無視して頂いて大丈夫です <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/19(日) 00:43:58.34 ID:0fNhWI7Ro<> >>574
「綺麗な壊れ方かぁ・・・うーん。そうだっけ?」

すこし無駄な話をするが、もともと羽生はしがいのない抽象画ばかり描いていたしがいのない画家であった
しかし全く持って絵が売れない。なぜなら彼の絵はあまりにも独特すぎた
好き嫌いのきっぱり別れる、毒々しくトゲトゲした絵ばかりだったのだ
そのくせに作品数は多く画材は沢山つかうため、生活費を親の仕送りに頼る日々が続いていた
これではまずいと思い今流行りの模型店に就職した。HMPに興味を持ち始めたのはこの時からだ

(なんか、この人、面白い)

そう羽生が思えたのはおそらく彼の中の芸術家的な嘘の狂気が
荒田の本物の、見えざる狂気に反応しているからかもしれない
もっとも、羽生が勝手に思っているだけだが

「あ、確かに熱いよね。うん。試合中ずっと汗だくだったよ」

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/19(日) 00:48:34.96 ID:6VCRjgSXo<> >>576
『愛ですね、愛』
「それと欲」

 コツ、と言われて彼女らが答えたのは、そんな言葉だった。

『戦いを愛して、戦いを欲した。そうでもしなければ、届かない世界があったから』
「――ねぇ、分かるかな。翼を持ったイカロスだよ。
 出たいんだ、私を幽閉するこの塔から。蝋の翼を広げて、目一杯に羽ばたいてるの――」

 そして飛びすぎた私は、炎に焼かれて堕ちるだろう。
 そう言われているのに飛ぶことをやめられない、哀れで愚かで醜いケモノ。

「なんてね」

 ぺろり、と舌を出して蘭花は笑った。

>>577
「やーやー与太郎さん! おかえり!」

 勿論、蘭花は下の名前で呼ぶ。
 遠慮容赦は、ない。

「荒田シンさんだよ、デザイン方面だと有名な人ー。あ、グミちょーだい、よたろーさーん」

 露骨な猫撫で声でゴロゴロお布施をねだる様は、猫のようだ。
 エルピスも流石に呆れている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/19(日) 01:04:02.41 ID:6VCRjgSXo<> 「おおっと、そろそろ私たちの番かな」
『あら、もうそんな時間?』

 よっこいせー、と起き上がる蘭花。抹茶のパフを楽しんでいたエルピスも、ゆっくりと立ち上がる。
 するり、と着ていた浴衣を脱ぎ去る姿は扇情的だが、それも装甲のない人型のエルピスだからこそか。

「ほいじゃー、ちょっくらいってきまーす」
『さようならぁー』

 ひらひら手を振って、二人は奥へと消えていった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/19(日) 01:11:07.78 ID:L1admBXfo<> 白いソファの人口皮が突如として盛り上がりむくりと起き上がる。
布から伸びているのは健康な少し焼けた肌色、その手は真ん中上にある顔へと動く

正確にはソファが動き出したのではない、ソファで寝ていた拓海が音に反応して起きてきた
まだ子供である彼はさすがに一回戦の疲れがきていた、だからみんなが居ない間にソファを占領して寝ていたのだ。
白いパーカーを好んで来ているが故に白い人口皮と色がかぶってそう見えたのだろう

「ふあぁ……」
まぶしいのか寝ぼけ眼を擦り周囲を見渡す。
まだ半覚醒状態のようで自分がなぜここにいるのか、ここはどこなのかはいまいち分かっていないらしい

「おはよーございます……誰?」
手元にあるPDAで時間を確認した後
周囲に居るのが誰だかいまいち分かっていないのにもかかわらず条件反射で一応挨拶だけはした <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 01:22:36.58 ID:kx6rJyFo0<> >>579

実際彼は、与太郎以下かも知れない。
落語の与太郎は演目によっては大工の棟梁をやっているし、「錦の袈裟」に至っては奥さんがいるのだ。
青年はモラトリアム中の学生で、女性との交際は一生無いかもしれない。

「はいはい、与太郎さん帰ってきましたよ、と」
「お陰であんたのロマンチック発言も一気に冷えちまったな?」
「こりゃ蝋の翼も当分溶けないさ、有り難く思ってくれ」

ただ、諦め加減なおかげで蘭花の態度に騙されないのは確かだった。
そろそろ慣れてきたようで、あしらおうとすると悲しくなるこの名を、反芻しながら。
彼はせめてもの反抗に、グミを目の前で口に運んでにやりと笑む。

>>576

「荒田シンさん……ああ、カンディルを付けてた機体の。顔は初めて拝見します」
「思い切ったアセンブルが良い。不勉強なもんでそう何点もは知らないですが」

彼は、荒田の方へ目をやった。
顔と名前を一致させられないのだが、雑誌でHMPの写真を見た事がある。

必ずしも趣味の合う相手では無さそうだ。
彼は情報量と趣味ありきのデザインよりも、機能の副産物的な美しさを望む。有機より無機を。
ただその二つが、全く重ならないという事もない。

「っと……もう少し話を聞きたかったですが、また俺達の出番のようで」

>>581

「俺だ!……え、あそこの人?」
「荒田シンさんだって蘭花さんが言ってたぜ。選手というよりはアーキテクトだなあ」

起き抜けで大丈夫か、そろそろ次の試合らしいぜ。
試合の緊張がぶりかえしてきたような少し細い声で言い、彼は机の上の箱状機械を開く。
白き翼の堕天使がはちみつ色の瞳を輝かせ、傷一つ無い姿でリブート。

「バイスフリューゲルはこのとおり。足以外はメンテだけで済む状態だった」
「きらきら星の兄弟はこっぴどくやられてたが、大丈夫か?」

万全な準備をしているだろうし、会場が用意した高性能ポッドもある。
ダメという事はありえないと思えるが、一応。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 01:23:08.24 ID:E8UYRT2Ao<> >>577
「ん? ああ、君は……町田くんか。
 試合、楽しく観戦させてもらったよ」 

 そうして、彼の姿を一舐めして

「相棒は……修理中かな? まぁ、結構ボロボロだったみたいだからね」

 次に向けて調整しないといけないしね、と小さく零す
 非参加者のはずなのに、微妙にこなれている感じがするのは何故なのだろう

>>578
「ああ。最高の散り様だったよ。……まぁ、最後の一太刀分は流石に穴埋めしたけどね」

 どうやら、手と脚のない胸像状態で飾ってあるらしい
 それを眺めてニヤニヤしているシンを見るエクリプスはいったい、どんな気持ちなのやら……

「気象も技術の発達で色々制御出来るようにはなってきてるみたいだけど、やっぱり、この暑さはまだまだどうしようもないみたいだね」

 はは、と笑って肩を振る
 まぁ、だからといって彼が常にTシャツなわけではないのだが

>>579>>580
「アイ、とヨク、か」

 なるほど、それは素晴らしい燃料だろう
 愛はどれほど費やしても湧いてくる燃料で、欲もまた同じく
 ならば、それを混合した合成燃料はいかほどのエネルギーを産み出すのだろうか

 そして、たとえ話の後には、ただ一言だけを返した

「君たちは、『美しい』ね」

 その美しいには、あまりにも多くの意味が籠められている
 剛く強欲で不屈で飢餓ていて渇望んでいる――
 美しさの裏にはいつだって破滅が影を揺らめかせている
 数世紀前のモデルたちが、拒食症と呼ばれるほどの体重を維持したように
 愛されたいと願う少女たちが、食物を吐き出してまで体を痩せさせたように
 
 命なんて、どうでもいい
 一瞬の輝きが欲しい
 そのためならなんだって払ってやろう
 足りない足りない足りない足りない――払って払って払ってもまだ届かない
 見果てぬ先に、決して手が届かないと知っていても、人は塔の上から飛んでしまうのだ
 たとえ死ぬとわかっていても
 なにも掴めぬかもしれぬとわかっていても
 尚、欲するから
 だからこそ
 ああ、その時、それは人を呪うほどに美しい

「――好きだな。そういう人は」

 臆面もなく。お世辞でもなく
 彼は、そう言った

 そうして、立ち去る彼女たちの背を見つめながら彼は考える

(もう少し、話してみたいな。……今度は、フィールドの上で)

 ふつ、ふつ、沸騰するように、小さな笑みが浮かび上がった

>>581
「こんにちは、ヒーロー。本拠が近いよしみで、応援をね」

 そう言って笑った青年は、人が良さそうに見えるが
 ショップでは度々不気味なHMPを駆っていたファイターであった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 01:36:57.36 ID:kx6rJyFo0<> >>583

「いんや。駆動系にそこまで無理はかけてないんです、これが」
「自分とこのやり方は余計な反動を余計じゃなくする運用法でね」
「フライで《バプタイズ》を使うのはバカだって、偶に言われるけれど実際そうでもない」

ぴかぴかになったバイスフリューゲルを手に乗せ、見せる。
ヘヴィロード社製の銃撃機《リベリオンアンセム》の頭部は、トイタイプながら特有のニンフェットを放っていた。
そこに無骨な銃器が重なることで、厭味のないクールな色気になる。

『お初にお目にかかりますわ。私はバイスフリューゲル』
『流石に蹴りは堪えましたけれど、概ねご主人様の言葉の通りです』

胴部と脚部は、名機アロイアルタイルのそれだ。
清楚な白に塗られたボディと翼に対し、ハイヒール状の頭部が淑やかさだけでないものを演出する。
ただし、それに気付くのは彼女自身であって、マスターではなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/19(日) 01:42:46.02 ID:L1admBXfo<> >>582
靄誰かが部屋から出て行くその後姿だけは確認できた
だがその目には靄のようなフィルターがかかっており、それが誰だかいまいち判別できない
細さから見るに女の人みたいだけど

「えぇっと」
そんなことをぼーっと考えている中、目の前に居る男が声をかけてきた
確か彼の名前は……

「おはようございます与太郎さん、二回戦……?」
目頭を人差し指で擦り視界を確保した後、もう一度PDAへ視線を落とす。
そこに記された時間は―――

「もうこんな時間!?」
先ほどまでの寝ぼけ状態はどこへか吹っ飛んでしまった
なるほどさっき部屋から出て行ったのは蘭花さん、出て行った時点で早々に気づくべきだった

「ガブルの修復はばっちりだよ、寝る前に済ませておいたからさ!」
ポッドの横に置いてあったスチールセイリオスの元へと駆け足でよって行く
その左腕部はダメージの痕を一切見せていない、修復は完璧に終わっているらしい

次にコンセントに直接接続されていた黒いボックスを取る
その中から出てくるのは銃弾の形を模したもの、リボルスラスターに使われるカードリッジだ。
12個すべてを取り出すとそれをセイリオスの背中に1つずつ装填していく

「ただ調節はまだだけど……たぶん何とかなる!」
そして背中から生えた充電プラグを引き抜いて腰のホルスターへと収めた

>>583
「ヒーローとか……あれはみんなが隙を作ってくれたから勝てただけだよ」
「間に合わなかったらミサイルでこっちが落とされてただろうし」

謙虚な台詞を言っているが少し照れくさそうにほほを赤らめている
歳相応の反応だろう

「次の試合も勝つよ!」
応援という言葉を聞いて、その機体に答えて見せると誓いの言葉を建てた

「急ごう与太郎さん!」
靴にローラーを取り付け、パートナーであるセイリオスさながらに走り出す
HMPとファイターは似るものだと言われるが、ここまでそっくりなのも珍しいだろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 02:05:00.40 ID:kx6rJyFo0<> >>585 >>583

「オイオイオイ、たぶん、は悪い兆候だぜ?」
『何、ご安心めされ。そういう時は大人が何とかしてくれますわ』
「……ハードル上げんじゃねえ、腹が痛くなるだろ」
『蘭花様はきっとやり遂げますわ、貴方は?』
「くっ」

バイスフリューゲルと与太郎は、基本的に間逆に近い性格だ。
頼れるお姉さんにとって、あるいはハードボイルド者にとって【らしくない】感傷に浸る事を除けば。
それでも良い関係を築けているように見えるのは、お互いあけすけだからだろうか。
ポーズは崩さないが、彼もバイスには自分から飾らない部分を見せている。

「応、行こうぜ兄弟!」
「……では、これにて。」

嗚呼、そういえば。

「(今こいつ与太郎さんって何回言ったけな……)」

町田さんって呼んでくれないか、と言いかけたが。
これくらいは、と声を喉奥に沈めて、バイスフリューゲルと共に二回戦の場へ走った。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 02:07:18.44 ID:E8UYRT2Ao<> >>584
「なるほどね。確かに面白い機動をしてたね。
 一時期、うちのもそんな機動ばっかりさせてたけど」

 まぁ、させていた、というよりは自ずからしていた、と言う方が正しかろう
 というか、フライメックにカンディルとホーンオブプレンティという重量超過な装備をしていたコイツの頭がおかしい
 そうして丁寧に挨拶を披露したバイスフリューゲルに、軽く頭を下げる

「こちらこそ、バイスフリューゲル。僕は荒田シン……って名乗らなくても、知ってるみたいだけどね」

 はは、微妙に有名だなぁと笑いながら

「うん、良い感じに使い込まれながら、ちゃんとケアもされてる。アセンも面白いし、好きだな。こういう子は」

 そうしてニコニコと見守りながら、試合に向けて慌ただしさを増していく部屋の音を楽しそうに聞いている
 どこか、懐かしそうに

「次もがんばってね、応援してるよ」

>>585
「そこを決めたからこそのヒーローじゃないかな?
 まぁ、そこで天狗にならないのは、素直に良いことだと思うよ」

 ふふ、とシンは笑って、慌ただしく準備を始めた拓海を見守る

「忘れ物はないようにね。案外、こういう時って大事な物を忘れがちだから」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/19(日) 21:38:06.80 ID:0fNhWI7Ro<> 「レディースエーンドジェントルメン!お集まりいただいた3万5000人の皆さん!ただいまより、準決勝を開催いたします!」

わあっ、と歓声があがり会場が熱気につつまれる
前年度ベスト8のエイティーキッズに勝利した事によって勢いづいたのか、準決勝まで彼らは勝ち進んでいた
他のチームが全く持って無名のこちらのチームに対して対策をほとんどとっていない事も大きいが、しかし
ただそれだけで勝ち進めるほど大会は甘くはない。ここにいる全員の実力があってこそ、ここまでこれたのだ

「両選手、前へ」

準決勝からは審判は人間、さらに観客も増え、そのうえやかましい実況までもつく
会場の雰囲気に飲み込まれないのも重要だ

「それでは礼っ!はじめっ!」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 23:00:39.60 ID:kx6rJyFo0<> >>588

ニンジャとスポーツマンは、奥ゆかしさを重視する生物である。
異論反論あることだろう。だが彼らの世界においては、試合と死合の一線を定める事は必須だった。

フィールグラムの中と外で深々と一礼しているのは、でこぼこな二人だ。
既に男子高校生の平均身長を超えようとしている長身で童顔の少女は、山田 佑美。
頭部のアンテナを含めて28cm。エアロニンジャの渾名は、バジリスク。

「勝ちましょう……いえ、きっと勝ってみせます!」

威圧的ですらある身体を起こすと、少女は背後に反って心身の緊張を散らす。豊満な胸が上下した。
山田、より、山だ!が適切な表現となりそうだ。
やはりと言うべきか、彼女は小学生バスケの世界では強力なセンターフォワードとして名が売れている。

これでチーム最年少の10歳は、女子の方が早熟な事を考えても納得しにくい。
だが彼女自身は、見てる方を不安にさせるような気弱さを孕んでいた。

『キャハハハッ、勝利のオマジナイたぁ、まったく小学生って最高だな!』
『折角だからこのイクサも最高にしようぜェれぃーすえーんどじぇんとるめーん!』

となると、やけに高翌揚してる方は、HMP。ヘビめいた視線は、品定めのように敵味方を走査する。
挨拶だけはしっかりやって見せたが、そこからはいかにも軽薄そうに振る舞い続け。
審判の真似、待機ボックス内で宙返り、やりたい放題。

『……そう、最高だ。一番良いのを頼まなきゃあ、ウソだよ』

――だが、舐めてかかって大丈夫な相手でも無さそうだ。

/ダイアモンドバックスのフォワード、ヤマダ・ユウミです。あわわ、優しくしてくれたら良いけど…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/19(日) 23:01:44.49 ID:kx6rJyFo0<> 【TYPE NAME】エアロニンジャ

【HMP SIZE】28cm

【HMP TYPE】ヒュームボット

【HEAD】カザミドリ
流線型のヘビっぽい頭。その真価は前傾姿勢での疾走時に発揮される。
二枚の飾り羽のような形の全方位ブレードアンテナの性能は、小サイズながら非常に高い。
絶えず移動する彼我の相対距離や周囲の地形を立体的に、即時に把握でき、情報の送受信も早い。
性格は攻撃的、かつ強さに対する在り方が真摯で、今も昔もニンジャは格闘を極めた奴が上を行くと考えている。

【BODY】カルイショウゾク
直球すぎる名のままに軽く、スカーフ型の可動ブースターで充分な加速を得る。
ブースターの形状により背中に生じたスペースには、冷却とブースターへの空気取り込み用のファンを装備。
分かりやすい弱点だが、機能している内は高機能であることの証とも言える。

【L.ARM】デン・カタナ
電気ショックで敵機の信号伝達を撹乱し、一時的に自由を奪う刀。
細身で、既にダメージのあるポイントや関節部への攻撃が推奨される。

【R.ARM】デン・ワキザシ
防御的な運用方を意識して、カタナよりも短めで、太く肉厚に設計されている。
マヒ効果は完備しているから、下手に殴りかかるのはかなり危険。

【LEG】ヒタンソウヘキ
ニンジャシリーズの生命線とも言える脚。この機体の場合は脹脛に推力偏向ノズルを内蔵している。
噴射口の向きを細かに制御し、加速はもちろん空中での姿勢制御にも貢献。
その圧力と細かな操作性は、長時間の壁走りすら可能としている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/19(日) 23:36:01.73 ID:6VCRjgSXo<> >>588
「んー……なんつーかね。見せ場がないよね、私たち」
『皆とっても優秀でね。私たちも窮地からの大逆転! とかしたいわ』
「それそれ。横っ腹を殴りつけるのはもう飽きたよ」

 ぐぐ、っと大きく伸びをして、彼女は気楽に呟いた。大きな胸が、これでもかと強調される。
 蘭花はまるで緊張の欠片もなく、自然体だ。むしろ半ば飽きつつあるのかもしれない。
 結構な重量のあるはずのエルピス(武装済み)を頭に載せている。少々重そうだ。
 勿論、そうしていることに意味などない。

「歯ごたえあったの、エイティーキッズだけだったしさー」
『ま、準決勝からは少しくらいまともになるんじゃないかしら?』
「種無しに用はないんだよねー、まったく」

 充電装置を引きぬかれ、エルピスは蘭花の頭から跳躍した。
 初っ端ぶちかましたような派手なパフォーマンスはない。
 だがその威容、その迫力だけで、彼女は十分に人目を引く。
 形態は獅子。腕組みをして敵陣を睥睨する姿は、異形と美貌も相まって何か神秘的なものさえ感じさせた。

『貴方たちは楽しませてくれるのかしら?』
「ま、どうであろうと叩き潰すけどね」

 慢心ではない。純粋な自信と、決意。いや自己暗示か。
 何であろうと全力で勝つ。彼女たちは至ってシンプルだった。

>>589
「うおお! エルちゃんあれ! おっぱい! ええ乳しとるぅ!」
『エロ親父か、あんたは……』
「おい! 歳の差十一だと! くそっどうなってんだ、乳にまでバスケットボール突っ込みやがって! 負けてられん!」
『違った、痴女だった』

 歳の差十一――まだ幼いといえる年齢で、それでも尚自分に迫る、乳。
 鷲掴みにしてぇ! などと思春期の男子のように騒ぎ立てつつ、何故か負けじと張り合う様は完全に子供だ。
 精神年齢も歳の差十一はあるのではないだろうか、無論蘭花が下で。
 少なくとも、弁えた大人のレディは公衆の面前で乳をアピールしたりはしない。

『お願いだから、乳を見てて私を見てない、とかやめてよね……?』
「大丈夫だ! 私が勝ってあの乳を好きにする!」
『自分のでやってなさい!』

 完全に痴話喧嘩である。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/19(日) 23:52:43.85 ID:0fNhWI7Ro<> 「アリフナくん。みてくださいよこの観客!この会場!素晴らしい!」
『民放主催のトーナメントとは大違いですね。数も、熱気も』
「ええ。しかしこんな時でも平常心。いつも通りやればまず負ける事はないでしょう」

いきなりの勝ち宣言。しかし、これが先崎天才という男である
30代に見間違われてもおかしくない貫禄のある顔立ちと圧倒的実力で最年少記録を打ちたて、今や完璧に将棋界のスター
多少自意識過剰になってもバチは当たらないであろう

「さて、対戦相手の皆さん。私からの贈り物です」

そう言って、先崎は何やらカード状のものを相手コート側に投げた

「帰り用の切符です。どうせ今日で帰るのでしょう。
スターティンメンバーの交通費くらい払うのが私の美学ですから」

…多少自意識過剰になってもバチは……当たりそうな気もする <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/20(月) 00:15:39.44 ID:RbzdjPgAo<> >>588
 被っていた帽子を上に放ると、それが落ちてくるまでの間に、軽いステップを踏んで、極めて短いダンスを披露する
 そのキレは、既にこの歳にして第一線で活躍しているというのも納得出来るものである

 同時フィールグラムの中でも、アフロヘアーのHMPがダンスを披露していた
 こちらのキレも、ファイターに勝るとも劣らない

 落ちてきた帽子を受け取ると、カツン、と踵を鳴らして顔を上げた

「さぁ、ShowTimeの時間だよ! 楽しんでいってね?」

 にしし、と笑う笑顔は、年相応
 だが、腕もまたそうかといえば――無論、そうではあるまい
 準決勝まで登ってきたその腕……侮れば断たれるのがオチである

『ステップサムライ――参るで御座る』

----

【TYPE NAME】ステップサムライ

【HMP SIZE】30cm

【HMP TYPE】ヒュームボット

【HEAD】アフロヘッド
大きなアフロの特徴的なサムライヘッド
至近距離での戦闘に秀でており、レーダー範囲は中距離
機体制御能力が非常に高く、どんな不安定な姿勢だろうと機体を制御出来ることが出来る
意外と知られていないことだが、巨大なアフロの中にはミサイルが隠されている
このミサイルはメインウェポンとして据えられるほどの威力を持っており、侮れば顔を吹っ飛ばされるのは必至である
ただし、装填数は一発のみであり、リロードは不可能。撃った後はアフロが更に爆発すると面白いことになる

【BODY】ローニンボディ
極端な軽量化の施されたボディパーツ
当たらなければどうということはない、というよりも、一刀にて散る花の美しさを追い求めたパーツでありHPは極端に低い
バッテリーは平均より少なめ
腰に武器をマウントすることの出来るスロットを二つ持っており、刀型の武器ならば二つまで保持することが可能

【ARM】ライジングムラサメソード
ムラサメソードシリーズの派生形であり、外人さんがアッパーになって作ってしまった変態装備
電磁抜刀、真空刃など、色々と楽しい機能が織り込まれている
攻撃翌力は折り紙付きであり、その一撃の威力は一刀の美学が詰め込まれた物である
BODYの腰に鞘が付いており、そこから抜刀、納刀を行う
片手でも扱うことが可能だが、武士の美学として両手持ちを行っている為、彼は武器を一つしか持てない

【LEG】ワンダーウォーカー
基本的にどんな場所であろうとも踏破可能な安定性を持つ、平均的なレッグ
走行能力、跳躍性能、ともに抜きんでたところはなく、装甲も分厚いかといえばそうではない
所謂普通の足だが、度重なる訓練によって、この脚部を用いての舞踏が可能になっている <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/20(月) 00:26:34.11 ID://QdDOXDO<> >>all
ナオヒロは悩んでいた。
というか苦しんでいる、と言った方がいいかもしれない。

「俺が出ていいものなのだろうか」

国重君に頼まれて参加したこの大会だが、まさかこんなことになるとは。
ことの原因である国重君のお姉さんをはじめ、チームメイトは皆一癖じゃ足りない癖者ばかり。
しかしその癖すら霞むほどに実力も一級品、HMPもなかなか見れないような機体ばかりだ。

『ふん、またヘタレているのか。
 舞台に立った以上覚悟を決めろ、情けない』

ヘッドセットを通して愛機が語りかけてくる。
見透かさせているのか、それとも外から見ても分かるほど酷い顔になっているのか。

「そりゃね、今までの試合見ていれば俺達の実力が劣ってるのは確実だし。
俺達の所為で負けた、なんてことになったらどうしようかって考えもするよ」

『私達が負けた所為で負けるようなら、それまでのチームなのだろう。
 ナオヒロ、自信過剰ならベクトルを逆に向けて欲しいところだな。
 それと、俺達と言って一絡げにしてくれているが、
 機体のことを言っているならもっと良いパーツを買ってくれればいいんだからなっ』

愛機は今日も不器用な発破をかけてくれる。
気負うなと言うのは無理な話だが、ルリの言葉に少し気が楽になったような気がした。

「そうだね、大会が終わったら国重君にメカニック的な意見を貰ったりして改良するのもいいな」

『う、……まあそうだな。サクラに手の内がバレるのは避けたいのだが……』

強請ってきた愛機に良い返事をしたはずが、なぜか愛機の声は先程までの勢いがない。
どうしたのだろうー(棒)
「……さて、よろしくお願いします」

なんだか対戦相手はイロイロと生意気だが、挨拶はしておこう。
チームの2人にも会釈をしながら開戦の時を待つ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/20(月) 00:34:17.12 ID:7A1esgpoo<> >>588
フィールグラムの前、不敵な笑みで腕を組むのは触覚の様に伸びた黒髪を垂らした悪い目付きの男。
 その右目を囲うはウロボロスの紋章、ドクロ模様の紅いシャツに黒いコートを羽織っている。
 ビジュアルで見れば明らかな悪。しかし、どういう訳か彼はこのチームに参加している。

 「(ふッ、慣れ合うツモリは無いが、どこかの大会に出場しているかもしれない"ヤツ"を探すのには必要な事……)」

男の前で優雅にレイピアを構えて立つのはその愛機。

 黒を基調とし、血のような赤でペインティングされたデザインはまさにTYPE-VAMPIRE 闇の住人-アンダーグラウンド-。
 右手に持った青く透き通る儚げな印象を持ったレイピアがMHPの血"エネルギー"を喰らう危険な刃と知るものは多い。
 頭部に装着されたオペラ仮面の右目には主と同じくウロボロスが刻まれており、危ない雰囲気を漂わせていた────。

 「満を持して登場したこの俺!名乗るならば"深淵より来たりし闇"シャドー……!」

会場の極一部が一瞬ざわめいた。シャドーと言えば闇の住人を名乗るヒールなキャラと賭けバトルで名を上げたまさに悪のファイターだからだ。
よもやチーム戦に出ているとは……。が、次の瞬間。会場に設置されていたボードに、バン!と出てきたのは今回の対戦メンバーの名前である。
その中の一つ。紗籐 影丸という表記を観戦者は見逃さなかった────。そして連鎖が始まる。

    (ん?あれなんて読むんだ、ルビは……さ、と…う。誰だ?あ、あいつ、サトーって名前だったのか!)(え、紗籐先輩!?何やってるんスか!)
 (案外普通なんだな……闇のファイターの癖に……) (あのお兄ちゃんわるいひとじゃないよ?ぼく、パーツのなおし方教えて貰ったし!)
   (なんだ、ただのだったのか厨二病だったのか……) (闇のファイターとか名乗ってたからビビってて損したわ……)

 『やったね。なんか目立ってるよカーくんっ!』

大舞台が故に色々なものが崩れ去った瞬間だった。
しかし、本当にガチもんの悪党だったらチームに入っているはずもなく、
彼が高校生である以上、普通に地元では知っている者は多かったという────。

>>592

 「……ぐッ……。誰がなんと言おうと、戦場に居る以上、俺は闇のファイター・シャドーだ……。」

何かをこらえるかの様に己の顔を覆い。投げつけられた切符を踏みにじり、フィールグラムを挟んで対峙する対戦相手を指の隙間から睨みつけると。

>>ALL 「舐めやがって……!あのガキども、泣かしてやるよ……ッ!泣かすぞ、おめーらッッ!!」

砕け散った彼は失う物は無いと言わんばかりに、物凄い勢いで真っ先に小学生の挑発に乗っていた。さて、それが幸と出るか不幸と出るか。

//紗籐です、よろしくお願いします! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/20(月) 00:41:31.35 ID:kUQOWC1Zo<> 【TYPE NAME】アナグマスナイプ
【MHP SIZE】29cm
【MHP TYPE】ヒュームボット

【HEAD】ヤグラ
高い視力を誇るヘッドパーツ
その他の性能は散々だがなんとステルス機能付き
ステルス中はレーダーにも映らないのでかなり強力
ちなみにステルスの制限時間は10秒。使用後は1分間使えない

【BODY】フナガコア
バッテリー抜群のボディパーツ。浴衣
しかしこの手のパーツに珍しく装甲は檄薄
軽さと安さを追求した結果、こうなってしまった
それ以外は特に特徴はなし

【ARM】スズメザシ
両手装備用の一応スナイパーライフル
威力バカ高いが消費電力、反動ともに凄まじい
さらにスナイパーライフルのくせに照準が糞性能という謎の武器
しかし見方のサポート次第では十分に化ける

【LEG】
でかくて重いが運動性能はさほど悪くはない
しかし走れないという大きな弱点があるので注意
装甲は割と強い方

【ETC】
どう見ても浴衣をきたキャストな見た目のゴツい棋士型HMP
騎士ではなく棋士なので注意が必要。わりと
ゴツい割には装甲が薄いので接近戦をかけられるだけで死ぬ
しかしステルス機能で移動してからのスナイプは結構強いかもしれなき <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/20(月) 00:49:08.01 ID:kUQOWC1Zo<> 「それでは…レディ、ゴーッ!」

大音量でドーム球場にゴングの音が響きわたる
準決勝が、始まった

「さあ、始まった準決勝!司会は俺、『バトルマスター改造王』でお送りするぜ!」
「解説の土田博士です」

/奇数 ビルの屋上
偶数 デパート
ゾロ目 城 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/20(月) 00:56:29.45 ID:kUQOWC1Zo<> /ビルの屋上
深夜の高層ビルの屋上。アメリカンな雰囲気で夜景がきれい
ちなみにビルから落ちたら即死。また、ビルからビルへジャンプで移動する事も可能
ビルには高低差があるので多少は隠れられる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/20(月) 21:38:44.06 ID:TPWIm2T60<> >>all

「ふぇ、ふぇえええ……ダメです、私おっきくなんて無いです……」

収拾の付かなそうな混沌が、ブザーの鳴る前から盤外に満ちる。
おっぱいの話をされれば、胸と顔を腕で隠そうとする。
桜色に染まった頬はそれでも隠しきれず、早熟ゆえに発情しているんじゃないか、と意地の悪い見方をする者も出た。
そしてチームリーダーの出すぎた真似には、諌める事もできずに怯えるばかりだった。

――自分もいつか、ああやって切り捨てられるんじゃないかと。
大きな身体に宿った小さな心は、いつも小さく震えている。

『ねー御大将ぉー、あいつ俺らのこと泣かすってよ! ん、ん、もう一人オチちゃったかなァ、エエッ?』

「!! ……な、泣かない、泣かされないし、泣かさせないもんっ!!」

『ギャハッ。嘘ついたらカラテだぞー?』

ところが、ある一人(>>595)は彼女の根っこ、芯を刺激してしまったようだ。
負けて流す涙は十把一絡げに弱さと結びつけてしまう思考は、良くない癖だが悪いとも言えない。

DVNOを、強く握り締める。現れた情景はハリウッド映画に出てきそうなスカイスクレイパー。
路地裏の一角には、ほの暗いバスケットコートを見出だせた。
それは少女の勇気の形であって、でも今日は、そこに落ちていけば負けるだけだ。

【「それでは…レディ、ゴーッ!」 】

『いいかなァてめェら、俺は忍ぶ気なんて毛頭無いんだぜぇ』
『だが生まれながらにニンジャって事で――自ずと、捉えられねぇようになってるのよ!』

試合開始と同時、ダイアモンドバックスの陣から、猟犬・エアロニンジャが放たれる。
比喩ではない。彼が追い詰め、ルートを示し、そして射手と武者が[ピーーー]。今までそうして勝ってきた。

ビル屋上を、まずはおよそ中程くらいまで進み出ようとした。
ここで周辺のレーダー情報をリーダー機アナグマスナイプとステップサムライとに送る。
それが終わればまた単独で突出し、機動性を活かした強行偵察だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/20(月) 23:06:09.53 ID:BBQfWypto<> >>597
「ひゃー。落ちたら死亡だってさエルちゃん」
『相手を蹴落とすのも面白そうね』

 ひとまずは四足歩行のままで様子を見る彼女ら。諸々の理由でチームのリーダーを務めている。
 少なくとも地形上はそこそこ有利だ。エルピスは落下しても変形すれば空を飛べる。
 ルリもホバー型で、ある程度飛行が可能だ。ミケは浮翌遊こそできないが空中ダッシュ持ち。
 少なくとも落下死はないところは、あちらにはない有利だ。
 だが。

「んー……あんまり好きじゃないけど」
『三十六計ってやつね』

 モードチェンジ、エキドナ。
 飛行形態になったエルピスは、するりとビルの影に隠れた。
 ――狙撃は、彼女の天敵である。

(相手が悪いなぁ……もう少し障害物がほしい)

 エルピスの防御性能は追加パーツに限れば重量級に見合ったものがある。数値だけ見れば、銃弾の一つで破壊されるような機体ではない。
 だが、それは追加パーツだけの話。剥き出しであるエルピス本体、上半身は装甲ゼロなのだ。
 バリアユニットの防御も、不意の一撃には対応できない。

『いつものカン、頼りにしてるわ』
「任せて」

 狙撃手がこのステージで射角を確保しようと思ったなら、やはり高いビルに陣取るはずだ。そこを警戒していれば幾分かはマシだろう。
 とはいえ、激しい移動の出来ないルリも狙撃するには易い的だ。おそらく何度か、こちらから射線に入る必要はあるはず。
 だがまだ動き出すには早い。ビルの後ろで待機しながら、蘭花は静かに時を待つ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/20(月) 23:50:43.19 ID://QdDOXDO<> >>597
「夜かぁ……ま、悪いことはない」

マスカドンナ・ヘッドのサーモカメラはこういったフィールドで映える。
早速、ルリはぐるりとフィールドを見渡して現在の状況を報せてきた。
サーモカメラ・ウィンドウに映る赤い影の位置と大きさをマップと照らし合わせて大凡の位置を予測していく。

『問題は、相手のスナイパーとこのイマイチ狭い足場だな』

【滑るようなホバー式移動でフィールドを広く使う戦法を得意とする私には、この程度の広さのフィールドでは飛び出しの恐怖が憑き纏う。
 慣性や衝突での反動など全てが私の敵になる。
 ……しかしそういったことの管理はナオヒロに任せた方がいいか。
 私が必要以上に慎重になってしまってはナオヒロがますます怯えてしまう。
 ならば、私は、】

『しかしこの程度、舞台を盛り上げるためのエレメントだ。そうだろう?』

【強気という仮面を被るまでだ】

【敵が迫ってきているのが見える。
 なにやら騒いでいるが、私の耳は安くない。どうでもいいことは聞いてやらん。
 奴は道を切り拓く露払のようだ。
 しかし、わざわざ拓かれてやる道理はない。奴にはここで終わって貰おう】

『忍ばぬ忍者よ、役を演じ切れぬのなら舞台を降りて貰おうか!』

【……しまった、ばっちり聞いてしまっていた。
…………まあいい。
 ナオヒロにああは言ったがこれはチーム戦。
 私達が負けようとチームが勝ちさえすればそれでいい。
 たとえスナイパーの凶弾に倒れることになろうとも、その前に目の前の奴を潰してしまえばいいのだ。
 数の利を相手に与えなず、スナイパーの居場所をメンバーに知らせる。
 私は両方出来る。
 勝利を立てるために身を犠牲にする戦士だなんて、実に美味しいじゃないか。なぁ】

『ナオヒロ。……いくぞ!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/20(月) 23:55:18.02 ID:7A1esgpoo<>
アンダーグラウンドのミケは隣に聳える自分の立ち位置よりも高いビルを見て唸っていた。

『「(面倒、だな…………)」』

言葉をかわさずとも二人の考えは一致していた。
空高き摩天楼は機体のイメージに違わず日陰者"アンダーグラウンド"にとってはやや苦手とするステージでもあった。尤も本当に陽の光が怖い訳ではない。
飛行できないのに比べればましだが、ジャンプ力が極端に低い彼は下から上への移動、高いビルへ登ったり、突き落とされた時の復帰を苦手としているからである。
しかし、背中のブースターのお陰で上からの奇襲や近い高さのビルへの飛び移りは得意なため一長一短ではあるのだが─────。

それに、敵の機体を知らない訳でもなく。

きゅる……。

『(狙撃ステルス汚い忍者にアフロかぁ)ここは、下手に動かずにここを拠点に援護に回ったほうが良いかな?』

キュル キュル キュル ル ル ル ル ル …………。ヴィィ─────────。
などと言いながらも、ゆるやかに左腕の高速回転射出機-"ファミリア・シューター"によるブーメランの回転が始まる。

「馬鹿か。啖呵切った以上、引き下がれるかヨ。下らねぇ。俺が出す最初の命令は────」

シャドーがフィールグラムの先を指さした。下される命令は事は分かっていた、分かりきっていた。ミケの瞳が赤く光る。
吸血鬼のスピーカーから放たれる低い声とは対照的だった幼い雰囲気が徐々に変わっていく。

『見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)。日陰者を炙り出せ!戦場を地獄の底に変えて来い!!』

狼の様な獰猛な“ソレ”へと。バチバチと激しく唸る。

『行くぜぇ……、ハラキリ野郎共ォ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!』

──咆哮。進撃を始める。背から火を吹きながら荒々しくマントをはためかせて狂戦士が戦場に踊りでた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/21(火) 00:22:20.56 ID:p943oUXho<> 「ふむ・・・。では、早速始めましょう」

受け取ったレーダー情報を読み取り、息を漏らす
その絵面はまるで年老いた軍師そのものであった
しかし、彼の顔立ちはなぜあんまりにも早熟なのか。肌にシミが浮かんでいる小学生なんてそういないだろう

「アリフナくん。いつも通りで行きましょう」
『了解』

返事と同時にHMPがレーダーから消える。ステルスだ
狙撃手にとって位置を知られる事は致命的。常に警戒を怠らないのが天才だ

『(ま、上位プレーヤーはみんなやってる事だけどね。警戒なんて)』

DVNOに表示されたMAPから1番動しやすく、狙撃に向いているポジションを見つけ、指でつつく
幸いにもその場所はかなりスタート位置から近かった
ゆったりとしたジャンプでビルからビルへ飛び移り、ポイントへ移動。この間僅か6秒である
機体の移動力を適切な支持でカバーした

(さて、後はゆっくり待つとしますか。) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 00:43:19.94 ID:gzChAUkNo<> 【高貴な喫茶店/侠気なお客様】

照明は暗く、アンティークを多く揃えた店内は静かな趣きに包まれている。
無地のテーブルクロスは心地よい肌触り。彩色秀麗なティーカップの中から紅茶が湯気を立ち上らせる。

そんな店内に似つかわしくない男と、HMPとがいた。

「ひゃっはー!!! ヤっちまえ! 相手は軽装甲なんだ、追加ユニット盾にして一撃入れちまえば瞬殺できるぜ! 最短記録のチャンスだ!」
『ヒャッハー!!!』

ノートPCの画面上に映し出されているのは大会の実況中継。
テーブルに置かれているのはHMP賭博の投票券だ。 

――与太郎と呼ばないで 試合時間:14分〜15分 途中脱落機:与太郎側無し

HMP賭博自体は容認されている。だが細かいオプションで倍率を大きく上げられるのは、違法賭博の特徴だ。
寄せ集めと目されたこのチームへの期待度はそう高くなく、だからこそ倍率はなかなか興味深い高数値を取っている。
そんな投票券が数枚。細かい条件を変え、全て「与太郎と呼ばないで」に賭けられていた。

まったく手入れされず伸び放題なヒゲは、ある種仙人めいた威厳を作り出し、
有名人がプライベートで使ってたりする高級サングラスが不思議と似合っている。
ラフな格好からは鍛え上げられた筋肉が覗いて見える。――どう見ても一般の人じゃない。

『ナイススピード!!!』

市販の変態機。速度の追求者、シュトゥルム・ドライ。しかし一般に知られるそれより一回り大きい。
科学繊維の毛は金属の身体の冷たさを隠し、生きた狼の存在感を醸し出す。
椅子の上にお行儀よく座った狼はなかなかの威圧感を持っている。

こんな困った客のせいか、店内は閑散としている。
けれど同時に、普段漂っている高級感と、そこから来る敷居の高さは消えている。

いつもなら訪れない客が来てもおかしくない。そんなおかしな客が相席を希望したとしても、きっとおかしくない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 01:05:14.35 ID:FVZjCGd5o<> >>592
「相変わらず、酷いHeelっぷりだねー」
 棋士としての先崎天才はリスペクトしているし、HMPファイターとしての戦い方も嫌うようなものではない
 だからこそチームリーダーを任せているのだし、背後を預けて戦うことが出来る
 だが、この人間性
 自分は"天才"なのだから、と驕るその傲慢さは、健一は好きではなかった
 健一も確かに天才だ。この年にして、世界を渡り歩けるほどで、引き手数多。
 実際、今日こうしてHMPファイトの大会に出ているのだって、かなり強引なスケジュール調整を行っている
 そんな現状だから、過去には天狗になったことだってある
 驕って驕って、俺について来さえすればいいのだと、他のダンサーを嗤ったことすらある
 ――けれど、だからこそ知っている
 人と人が力を合わせた時に発揮する力の凄さを
 集団で、心を合わせて踊るからこそ、健一は知っている
 一人では成せない形の美しさを
(この大会で、アマサトの鼻が折れてくれれば、いいんだけどねー……)
 自分が何かを言ったところで意味はあるまい
 驕りを折るとは己から発生するものだからだ
 それでも、一応言うだけ言っておこう
「アマサトー。あんま、刺激はNONOだよん
 君の目には羊に見えても、その実狼かもしれないんだから、さ」
 がおーと、吠えるようなボディサインを出して、リーダーを諫める
 
>>599
 顔を真っ赤にして、脅えた風にしている優美の肩を軽く叩く
 背が高くて、それもかなり精一杯だ。ちょうど、ジャンプするような形になる

「ユウミー? Relaxさ、Relax。アマサトのHeelっぷりは、今に始まったことじゃない
 それにビビってても肚ん中が重たくなるだけだよー?」

 そういって、にかっと笑い

「Smile Smile! ユウミは可愛いんだからさ! 笑って笑って!
 笑顔は力。特に美少女の笑顔は、世界を救えるSuperpower、だよ?」

 そうして、密かにその身長に憧れを持っているチームメイトを励まし終えると、自分もまたDVNOを手に取る

>>all
「わお、Skyscraper! P・Pが強そうなStageだね!」

 正直な話、ステップサムライにはそれほど向いたステージとは言えないだろう
 高低差を利用してある程度の誤認はさせられるとしても、相手方は飛行できるタイプが多い
 だが、アナグマスナイプを警戒して早々出てこないだろうから、今対処すべきは、燻りだしてくる相手の攪乱者

「ん〜……ま、でも、いつものように踊るだけだね
 Music……は、ないんだよね。んー……まぁ、仕方ない
 それじゃステップサムラーイ。期待してるよぉー
 Let's Dancing!」

『承り申した主上』

 斯くて主命を受けた武士は、疾走を開始する
 摩天楼の間と間を忍者のように飛び回るその姿は、まるでコミックヒーロー
 逐一更新される、エアロニンジャからのレーダー情報を確認しながら、ほとんど直感的に相手を見定める

(僕らが狙うのは)
〔あの吸血鬼で御座ろう〕

 言葉に出さずとも、二人の動きは一心同体
 喊声を上げて突っ込んできた吸血鬼相手を見据えながら、腰のムラサメソードに手を掛ける

『一刀の美学……いざ知らしめようぞ!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 20:49:42.74 ID:TClIEMIQ0<> >>605

肩を叩かれた佑美は、ひっ、と短く鳴いてからそッちに目を向ける。
くりくりとした大きな瞳。ドミネイターのボディに乗った晴神楽のヘッドの様に、ちぐはぐな顔。

「(いつも励ましてくれて、嬉しいけど……)」

佑美は毛色の違う人材だった。
他の二人の天才たちほどに、自分というものを信じてやった事がない。
《早くおっきくなりたいな》な周囲から羨望の的となる身体的特徴さえ、実はコンプレックスの種だ。

「……ありがとう、ごめんね」

優しさに応える笑顔は、健一と比べなくてもぎこちない。

>>all

『あァいあい、皆さん順調にトんできてますねェーッと!』

DVNOに浮かぶレーダーマップは、6つの光点の移動を絶え間なく映していた。
2つは青く、3つは敵対性を示すように赤い。そして最後の一つは緑色の矢印。

赤の2/3が及び腰なのは、おそらくスナイパーを警戒してだろう。
突撃者一、視覚によるとアンダーグラウンド。
挑発に乗った手前、打って出ずにはいられなくなったか。

なら、奴を二人で追い詰めて残りも誘い出すべきという考えに彼らは至った。
うかつに射撃をできず熱索敵・暗視も混乱する混戦状態で、闇から麻痺の刃を浴びせるのだ。

狙われがちなy軸の移動は、やるときは良いがやった後が難しい。
タイミング、元の位置へ戻ることの可否、着地の隙、戦線にどうしても穴が開く。これでさえ因子のほんの一部だ。

更なる抑止力と鳴るべきなのが、エアロニンジャである。
忍者の名に違わぬ跳躍力と、高性能のブースターが生み出す壁走り機能。
そして麻痺の力を持つ両手ウェポンをビル間の移動中に受ければ、どうなってしまうか?

「(まずは、健一くんのアシスト)」
『(デカブツは、見てからで間に合う。あのルリってのは……汎用SMGじゃんかぁ、誤射覚悟で撃って来れる?)』

ステップサムライよりも単純なルートで、ミケを追っていく。
デン・カタナとデン・ワキザシに通電開始。速力的には、仲間より後から出て抜き去る形だ。

「バジルっ!」
『バジルじゃねぇよぉ俺はバジリスク! 血を吸うんでなく、凍らす牙さッ!』

彼は走り過ぎながらの交錯を試み、そして右手の《デン・ワキザシ》を振るう。
剣か敵の手裏剣【エアロニンジャであるバジリスクにはそう見えるのだ】とぶつかる事を念頭に置いた、肉厚の刃。
だがそこから迸る電流は――己が力とするには、ちっと重すぎる。

【HEAD】 100% 【BODY】 100%
【R.ARM】100% 【L.ARM】100%
【LEG】  100% 【ENE】 96% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/21(火) 21:04:59.66 ID:3MFBaseSo<> >>599
「むむむ」

 蘭花はおっぱいを見ていた。
 訂正しよう、おっぱいを隠したりしている佑美を見ていた。

「あれは……」
『えぇい戦いに集中しろ!』
「――昔の私じゃないか……!」
『話聞けぇ!』

 蘭花は決してふざけているわけではない。
 だから一層質が悪かった。

>>all
(さて……)

 接近するNINJAとSAMURAI。真っ直ぐ強行偵察を仕掛ける忍者を見る限り、レーダーに優れたタイプだろうか。
 啖呵を切ったチームメイトを見て、エルピスは歩を進める。
 真正面から、とは行かない。

「エルちゃーん、我慢ねー」
『分かってるわ』

 少なくとも相手の狙撃手が奥に居続ける限り、ビルの間を進むエルピスを狙うことは出来ない。
 上に上がるときもビルの影ならば射角は通るまい。
 突出したアングラに合わせて大きく前進。ワンテンポ、味方のエンゲージを待って横合いへ飛び込める位置を作る。
 勿論この位置はレーダーに引っかかっているだろう。だからこれは相手への問いかけ。狙撃手の質を計っているのだ。
 相手が『どちらか』で対応が決まる。
 どれだけ頭の悪い煽りをしていても、実力は軽視していない。

(アラクネーでの援護はちょっと位置が悪いかな。二人が上手いこと誘導してくれれば、影に出来る場所はあるけど)

 ――そういう連携、してこなかったし話もしなかったなぁ。
 最初に愚痴を言ったのとは裏腹に、蘭花自身はチームメイトに合わせるタイプだ。マルチなHMPを操る以上そのほうが味方が生きる。
 言っては悪いが、即席のチームで優れた連携が取れるとは思っていない。だから蘭花のそれは多人数戦の基本に則る形だ。
 今回も、クロスファイアでダメージを取るつもりでいる。燃費を考えず、バリアユニットを起動しての一斉射撃も視野に入れているくらい。

(多分最初のエンゲージはミケちゃん、次エルピスで、理想は私を狙うもう一人をルリちゃんが狙うことだけど)

 特にナオヒロに自信の無さが伺える。ちょっとした懸念であった。
 自信の無さは動きを鈍らせ、判断を縮こまらせる。――悪い兆候だ。
 例えば目の前のあの女の子のように――。

「あー、発破かけたいー。みてらんないよぉ昔の私じゃんあれ」
『だから集中しろってんのよおらぁ!』
「アラホラサッサー!」

(――何にせよ、合わせてご覧に入れましょう。相手にも、味方にも) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/21(火) 21:19:18.97 ID:AS1wQlIeo<> >>605-606

──見えた。

オペラの瞳から覗かせる赤き閃光が黒き侍を捉える。
共にチームの前衛MHP。最初の対面は必然であった。


「奴はステップサムライ。遠中近に武器を備えた目障りな奴だ。近づけば電撃刀の餌食。距離を置けばミサイルが飛んできて斬撃まで飛ばせる」
「不用意に近づけば力で負け半端な位置じゃ手数で負け、離れれば火力で潰されるって訳だ────」


純粋な戦闘力では負けているという事だ。

赤外線レーダーが、別のルートから迫る忍ばざる隠者に反応。
戦場に一人飛び去せば集中砲火を受ける事は当然の報いであり軽はずみな行動と罵られても仕方が無い────。

 『 ウ ゛ ォ オ オ オ オ オ オ ッ ッ ! ! 』

だが、狂戦士は迷うこと無く敵に迫る。
主によって命じられた命令(サーチ・アンド・デストロイ)を遂行する、ただそれだけのために。

シャドーはニヤリと笑い瞳を見開くとと、右手の人差し指を天にかざす。


「フォーメーション。旋刃纏いし黒き守護者────」


掲げた指先を親指に変え。舌を出し、その横に親指を振り下ろしてポーズを決める。


「────闇の眷属従えし闇の一族に触れられるものなんざ誰もいねぇ!ヒャッハハァ!!上等だ!二体まとめてスクラップにしてやるよぉッッ!!!」


ガシャン、と左で激しくうなりながら高速回転していたコウモリ型ブーメランが外れる。
発射せずに外されたブーメランは自身の回転の勢いでグルン、とミケの周囲を一回転すると。
そのまま自動帰還システムで左腕に再び収まるはず。無意味な行動────。

“ J A M M I N G O N ”

が、しかし。それを行ったのが。アンダーグラウンドの“ミケ”なら話が別なのだ。
左腕に取り付けたセルフジャミングシステムでブーメランの帰還を妨害。だいたい、この辺という曖昧な位置情報でミケの周囲をグルグルと回り続ける。
斬り合いを苦手とするミケが編み出した。敵の肉薄を弾き飛ばし、射程を長くした改造レーザーブレイドレイピアで敵を刺し貫く接近殺しを目的とした陣形。

『ミンチ、ミンチ、ミンチぃ!!!!』

走りだしたら曲がれない。ミケはそのまま真っ直ぐにステップサムライに迫る。今のミケが近づくという事は高速回転刃が襲いかかると言うことでそれ自体が攻撃の意味を成す。


<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 21:53:23.82 ID:jecqJJRDO<> >>606
【忍者崩れの武器に馴染みの深いエフェクトが見える。
 スパークを起こすソレはなるほど、確かにバジリスクを思わせる働きぶりを見せるのだろう】

『しかしそんなもの、私だってもっているぞ』

【スタンガン機構が作動する。
 すぐには使用できないが、もとよりそんなつもりはない】

「紗籐君とラン[ピザ]ーは無理だけど、これなら出来るかな?」

【指示はやはり右腕での掃射……ではなかった。
 アフロ侍とのコンビネーションを図ろうとする忍者崩れへ高速接近、一定距離で前部スラスターを噴射しその勢いで跳ぶと言うもの。
 突撃したアンダーグラウンドへの誤射を恐れて攻撃を捨てたのかと一瞬疑ったがそうではない。
 上へ跳ぼうと前進の勢いは死なず、私は忍者崩れの頭上をアーチ型に超えるだろう。
 そこで撃つのだ。
 相手の不意をつく形になればよし、上からの射撃ならフレンドリーファイアなど起こり得るはずがない。
 例え読まれ、相手の刃が翻ろうと、その瞬間には私の左をお見舞いするのだ。
 共倒れ以上の結果をもぎ取ってやろう】

「ちょっとやっぱり無かった?これ」

【私がなにも言わないからかナオヒロは自信なさげな声を出す。
 空中での姿勢制御の方法は私任せだし、第一接近戦を挑むこと自体バカだ。
 バカだが……私は臆病者より勝利を欲するバカが好きだ】

『あぁ、バカだ。こんなもの――――!』

【スラスターを噴かし、突撃する】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/21(火) 22:21:45.52 ID:TClIEMIQ0<> >>608 >>all

『ねェー御大将、あいつらどっちがHMPだよ?』

国重嬢とはまた異質な絶頂状態にあるらしい彼らを、エアロニンジャは興味深げに眺める。
ふと口走ったが、御大将が返す冗談は特になかった。

「右にすぐ……切り落として」
『イィィヤーッ!』

彼の集音マイクに届いたのは、笑いの要素もない極めてプリミティブな命令。
それに従って彼が、ミケに噛ませるはずだった《デン・ワキザシ》の返す刃を振るえば。

キンッ! ……ジジジ、カランッ。

甲高い刃鳴りと耳ざりな電気ノイズを最後に、その手裏剣は死んだ。
電撃の毒は、斬撃が回転の勢いと拮抗している間に、帰還システムの中枢にまで回っていた。

敵機の武装の質も法則が有るとも思えぬ旋舞も、少女は確かに見切っていた。完璧な『ブロック』だ。
DVNO越しに見えるその胸は豊満!

『帰れると思うなよ、ヘビに睨まれたんだァ! ……カラテしてこうじゃないのぉ!』

>>609

その流れで、既に第二の敵機の急激な移動を検出していた。
もう少し長く手裏剣に手間取っていたなら、ルリの吶喊は完璧に功を奏していただろうか?

『ギャハハッ、ニンジャ舐めてんのかよてめェーッ!!』

彼もまたスカーフ型ブースターと脹脛の推力偏向ノズルを起動し、身を弾ませる。
真っ直ぐ天に向かって舞い上がることができない彼女とは違う、率直な軌道。
飛び越される筈だったのが、逆に跳び越して行った。

慣性に従って滑っていくだろう敵。
エアロニンジャは一筋の流星と化した瑠璃の光を背に、地へ。
パルクールめいた動作で脹脛から後ろに倒れ、回転で衝撃を殺しながら立ち上がり――身を捻り、ルリ達を見た。

【HEAD】 100% 【BODY】 100%
【R.ARM】90% 【L.ARM】100%
【LEG】  85% 【ENE】 91%

射撃は僅かに彼の身体を掠っていったようだが、負ったリスクに見合うとは言えないダメージだ。
ルリとミケはいま、スナイプ圏内かもしれない場所で、敵機二体に挟まれている。
ビル風を縫う異形の観察者の、二人の突撃者の値打ちが、問われる。

「(どうしよう、見方を変えれば私も挟まれてる……)」

そして、この状況へ導いた当人もまた岐路に立たされていた。 <> 1/2<>sage<>2012/08/21(火) 23:02:14.17 ID:FVZjCGd5o<> >>606
 ぎこちなく微笑み返された事に、ちくりと胸の奥が痛む

(ユウミ。そういうところが、僕にはとってもLovelyに見えるけど、その自信のなさはBADだね)

 自分で自分の道にケチをつけることほど、悪いこともない
 たとえどんな愚図だって、自分の歩く道を決めたのならばその道に誇りを持つべきだ、と健一は思う
 だって、それでは、後をついてくる者達があまりにも可哀想すぎる
 誰が好きこのんでケチを付けられた道を歩きたいと思うのか

(そういう意味で、この大会でユウミが何かを見つけてくれればいいんだけどねー)

 さて、花の事を考えるのはここまでだ
 ステップサムライは、既に"圏"に入っているのだから

「いつもの援護、期待してるよぉん」

 だから、そう告げると、DVNOを握る手に力を込めた

(続次レス <> 2/2<>sage<>2012/08/21(火) 23:02:49.67 ID:FVZjCGd5o<> >>608
「So Cool! 面白いね!」

 近接特化機体とは何かしら抜きんでたものが必要だ
 たとえば、距離を詰めるための速度や、姿を隠すジャミングやカラーリング
 例えダメージを喰らっても一発で相手を沈めるほどの超威力や、近寄るまでの間に避け続けるための回避能力
 もちろん、重装甲で来たる全てを踏破する者もいるだろう
 だが、そんな覇者じみた真似を出来るファイターは少ない
 目の前のヴァンパイアは、それを刃を纏うことによって成し遂げた
 その原理は、よくわからないが、実に面白い

「昔のカンフー映画みたいだね」

 回転しながら迫る刃。確かにこのまま突っ込めば、ステップサムライの装甲では削られて断たれるのがオチだろう
 だが――

「ねぇ、知ってる? 武って、舞に通ずるんだってさ」

 ダンス――特に健一が修めている種類のダンスなどは、直立した状態で踊ることの方が希だ
 ジャンプしたり、肩を使って回転してみせたり、地面ギリギリまで倒れ込むトリックだってある
 ――ステップサムライは、その全てを、修めているのだ

 幼少期にみたアニメーション。踊るように戦うサムライが格好良かった
 だから、HMPを手に入れて始めにAIに学習させたのは踊り方だった
 ダンスの研鑽を続ける傍らで、牛田健一という天才は、ステップサムライという一番弟子を育てていたのだ

 ――武は舞に通じる。故に、ステップサムライの機動は変幻自在
 その一歩をただの一歩と軽んじるなかれ。縮地八艘、そんな術は使えずとも、夢を見ているかのような機動は出来る
 ――舞は武に通じる。故に、その踊りは死の踊り(ダンスマカブル)
 見入っては成りませぬ。これは死へと誘う踊りが故に

 迫り来る回転刃の前に、ステップサムライの上半身が消失する
 否、それはそう見えただけだ。一瞬にして屈んだ――否、片手を地について極限の低姿勢
 特徴的なアフロヘアーの天辺を、回転刃が空振りする。僅かに毛先が削れたが、それがどうしたというのか?

 ぐ、重心が傾く――前へ前へ
 片手だけで、まるで両手でも使っているかのように、相手の至近へと至る

 確かにあの回転刃は危険だ
 だが、その軌道は見切ることが出来る
 どれほど小さな軌道であろうとも、絶対にミケとブーメランの間には隙間が出来る
 ――そこを通り抜けるというテクニック

「パーフォーマンス、しないとね。ダンサーだもの」

 ポゥと楽しそうに健一が声を上げると同時、ステップサムライは、ウィンドミルを開始する
 ずり、と摩天楼の頂を麻が削り、ローラーでもついているのかと疑うような動きで、ステップサムライが肩と背を使って回転
 折り曲げられていた足が伸びる――天空を貫くかのようにワンダーウォーカーが天へと抜ける
 まるで肉体にスプリングでも仕込まれているかのように、ステップサムライは極限の低姿勢から、上半身の筋肉を使って跳ね起きる
 さながら跳躍するように――事実、その脚は、ミケの肩よりも上へと伸びている
 それはただの回避か?
 いいや、違う――

 このダンスの最中、ステップサムライは"ただの一度として、柄から手を放していない”

『電磁抜刀(レールガン)六(むつ)――昇り竜』

 回転しながら飛び上がるステップサムライの腰にマウントされた鞘から、ライジングムラサメソードが抜き放たれる
 電磁抜刀という名の通り、紫電の光を纏って鞘から爆発的に射出されたソードは、文字通り迅雷の速度でミケの体を脚から上体、頭部へと抜けるようにして振るわれる
 軌道に残るのは、雷撃の紫。その様はさながら竜が天へと至るが如し――

【EN】 95% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/21(火) 23:37:05.70 ID:p943oUXho<> エアロニンジャのレーダーから送られてくるデータ
その中に乱戦状態の四人をよそに奇妙な動きをする機影が映っていた
怪しげな機体は、それまでは射角が通っていない隙間を移動していたのであろうか
しかし、突然にその機体はレーダーに映る位置に姿を表す

「罠、でしょうね。」
『おそらく』

アナグマスナイプの狙撃銃は威力が高い
しかし、狙撃銃の癖に照準機能が雑で、あまり意味をなしていない
ヘッドパーツの視力が非常に高いのはその弱点を少しでもカバーするためだ
さらに狙撃手にとって引き金を引くという行為はこちらの位置を知らしめてしまう可能性が多いにある
それならばやる事は一つ…あえて撃つことだ

『はあっ!』

銃声鳴っり、それと同時にステルスを展開する
狙いはアラクネーではなく、混戦地帯
スズメザシをチラつかせれば、多少は敵機の動きも窮屈になるかもしれない
もちろん味方を狙う事なんてしない。もう撃たないから気にするな、という内容のチャットを味方へ送る

(思いつきで行動してしまいましたが、どう転びますかね) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/21(火) 23:52:11.45 ID:3MFBaseSo<> >>613
 撃ってきた。こちらではなく乱戦地帯。
 当たるような弾ではない。牽制の一手。つまり乱戦地帯に直撃させる腕はないわけだ。

「ふぅん、芋か」

 結論、何も恐れることはない。
 位置は割った。射手は後方、陣地近くのビル。移動したかは知らない、どうでもいい、もう遅い。
 つまり、前線は三対二。数的有利はこちらが取った。

>>all
 ルリちゃんよくぞ突っ込んだ、と内心蘭花はホッとしていた。
 とりあえずはそれでいい――はずが、相手は綺麗に回避してみせた。

「ひゅう」

 軽い口笛の調子とは裏腹に、彼女の眉間には僅かな皺。
 判断は一瞬。DVNOを叩く指は早く、フィールドを見る目は鋭い。
 宙を舞う蛇が、風のように動く。

>>610
『面白い冗談ね、蛙は貴方の方でしょう?』

 水を差すのは、人魚のように顔を出したエルピスの美貌。
 否――翼のように広がった、ミサイルの群れ。その数は十六。
 そしてエルピスは蛇の尾を波打たせ、再びビルの海へと浅く潜行する。身を晒したのはわずか一瞬、実弾が撃たれて到達するより尚短い刹那だけ。
 だが放たれたマイクロミサイルは、火を吹いて忍者へと襲いかかる。
 ちょうど忍者の後ろから、面で押す爆撃。
 曲芸などねじ伏せて食らいつくコース。一度回避軌道を見た上で、それを許すような彼女ではない。

「タイミング合わせて!」

 ここで初めて、彼女は味方へ声をかけた。明確な指示の一言。
 ミサイルによる擬似的な挟み撃ち、どうするかはルリに任せる。回避ルートを塞ぐもよし、囮にするもよし。
 あまり指示するのは好きではないが……あの回避力は少々笑えない。即席でもコンビネーションが必要だ。
 ――あくまで彼女に合わせて、相手の動きを狩る。『二つ』の武器で。
 ミサイルがリロードに入った。残弾打ち切りではなく、マガジン入れ替えに近い。ミサイルの総数は十六×四セット、残り四分の三。
 エルピスはブースターを全開にして、忍者へと接近する。

【電力残量:八十八パーセント】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/22(水) 00:21:09.47 ID:EzXDf1sao<> >>609-610

────ブーメランは地に落ち、ミケの身を守る物は無くなってしまった。
しかし、たたき落としたエアロニンジャがルリの方向に飛んでいった事を考えれば結果としては及第点を与えてもいい。
いや、チーム戦である事を考えれば助けられたと言うべきだろうか?なんせ、今まさにステップサムライが放とうとした技は“乱戦では防ぐのが困難”だったからである。

では、エアロニンジャが離れ擬似的に1:1となったこの瞬間なら────?

>>612

「…………」

シャドーが手に持ったDVNOにとあるデータが連続で転送されてきていた。
それは、ミケのカメラのデータであり、カクカクと動くソレはひどくゆっくりとしたものだった。
こういうのを走馬灯というのだろうか、否。機械に命など存在しない────。

────これは、コマ送り画像である。
アンダーグラウンドのヘッドパーツ、レッドアイズはただ一点を見据える事を最も得意とする。マルチロックは出来ない。
標的が一つになると、飛び上がるステップサムライにレーダーが高速反応。突進していた時の勢いを生かし、片足立ちすることで振り返っていた。

見切っていた──。しかし避けるつもりは無かった。いや避けられない。
元々このような状態で回避できるようには出来ていない事もあり、回避のパターンが存在しない事でAIの演算スピードはさらに加速する。

「飾りじゃ無ェんだよ」

電磁抜刀──。撃ち出されると同時にそれは放たれていた。バチバチと光を帯びていたソレが──。
アンダーグラウンド最大の武器!エネルギー吸収剣“アブソープション”一突きが、
自慢の赤目が決して離さなかった右肩関節に向けて!

「一点集中“ワンポイント・ピアース”。撃ちぬけッッ!!」

アブソープションは斬りつけた相手のエネルギーを吸収。さらに直結させたバッテリーに流しこみ、自分の物できる。
ジェネレーターはアブソープションのレーザーブレイドジェネレーターに直結。
吸ったエネルギーを瞬時に刀身に変換し膨張させ切れ味を跳ね上げさせる。
それが装甲の薄い関節だったら、エネルギーが集中する技の発動時なら?

まさに、悪魔のカウンター技。相手の威力を低減させつつ上乗せしてくるのだ。

──デッド・オア・アライブ。電工の刃がミケの足に接触するその瞬間、その蒼き霊炎を纏いし刃が届こうとしていた。

>>613
アナグマの放った射撃には反応を見せなかった。いや、できなかったのだ。
このモードが発動した段階で一点のみに集中してしまうから。
──この状態で狙撃されていたらと考えると恐ろしいことではあるがAIの超反応だからどうしようもないか。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 00:47:34.53 ID:fHNWNiLDO<> >>610
【忍者崩れといえど忍者、思わず舌を巻きそうになる運動性能だ。
 奴の躯は流麗そのものに私をかわし、引き金を引くことすら出来なかった】

『……やはりバカはキライだ』

【ナオヒロのインカムに届かぬほど、この場で私だけに聞こえる声で悪態をつく。
 ナオヒロを責める訳ではない。責めるべきは私自身。
 翻弄され、攻撃が回避されても次の一手を打てなかったとは情けない】
>>all
スナイパーの狙撃もきた。
ニンジャの運動性能は想像以上、後方にはサムライ、あわやここまでかと思われた。
だが、

「国重さん……!」

ミサイルの雨がニンジャを襲う。
ルリのデッドエンドフラグを叩き折り、ニンジャにソレを突き立てる。
背後への退避も上空への遁走も許さぬミサイル群からニンジャが逃れる道はただ一つ。

『ここは通せない、ということだな』

【側面への退避に対しては右の機関銃が有効だろうが、
 ミサイルを迎撃してしまう可能性がある以上正面への発砲は難しい。
 私も巻き込まれてしまうだろうが、この左手を使うのがチームにとっての得策だろう】

【帯電しきった左手の五指がスパークする。
 相手の運動性能を考えれば一足で私を抜き去ることは容易いだろうし、その過程で刃を突きつけることも可能だろう。
 ならばどうするナオヒロ――】

「――行け!」

【インカムを通してナオヒロから短い指示が発せられた。
 プレスという奴だ、相手の出鼻を挫くようにスラスターが躯を進める。
 もとよりミサイルに巻き込まれる覚悟だったのだ、問題はない。
 背後のサムライが襲ってくる様子もない、アンダーグラウンドが対処してくれているのか。
 忍者崩れが突撃してこようと左腕が逃しはしない。
 幾多の敵を食らったであろう毒、それに自らも食われろ、バジリスクよ】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 01:00:52.15 ID:oJDY3n3Lo<> >>615
 刹那の攻防。それは最早DVNOでは捉え切れぬほどの僅かな時間に行われている
 事実その瞬間を完全に認識していたのは、戦場で向かい合う二機だけだったろう

 いざ放たれた必殺のカウンター
 狙われた肩。それは、抜刀という行為を行う以上、致命的な弱点となりうる場所だ
 そこに攻撃を打ち込まれれば、必然刀はそれ以上進まない
 ――それが、ただの抜刀ならばの話だ
 電磁抜刀(レールガン)の名は伊達ではない
 鞘内部に構築されている電磁レールによって超加速されて射出された電磁の刃は、刀身が向きさえすれば、それで意味を成す
 つまり、ミケがアブソープションを放ったその瞬間、最早腕は用無しとなりはてていたのである
 しかし、だからといって、ミケの攻撃が無意味だったか、といえばそうではない
 事実、影丸が狙ったように、電磁抜刀の瞬間、右腕にはかなりのエネルギーが供給されていた
 竜と号するように、暴力の塊であるライジングムラサメソードを御する為にだ
 故に、ミケのアブソープションは覿面に、その能力を発揮する

≪警告:EN残量減少≫

 凄まじい勢いで、バッテリーの残量が減っていく
 全力といっていいほどの供給をしていたせいで、直にバッテリーを刺されたのと殆ど同等のダメージを喰らったのだ
 そうしてたらふく電力を吸収したアブソープションが膨張する
 レイピアの如く細かった刀身は、今やバスタードソードもかくやというほどに膨張し、アームとボディの接続部位を両断する

≪R.ARM――LOST≫

 けれど、ステップサムライは悔しさなど欠片も覗かせては居なかった
 それどころか、その顔には満々の自信が湛えられていて――

『渡来の妖異殿。お主、このような格言を知っておられるか?』

 それはAI同士のみが理解できる超高速領域での会話
 実時間に換算するならば1ナノ秒も経ってはいないだろう

『誰が遺した言葉なのかは、寡聞にして知らぬで御座るが……それはこんな言葉で御座る――』

 にぃ、とナノ秒の中で、ステップサムライの顔が笑みの形に歪んだ気がした

『肉を切らせて、骨を断つ』

 右腕を断たれたステップサムライはそのまま、ミケの肩上を飛び越える――
 そして、それより早く、右腕という頸木を外された紫電の昇り竜が、その体を回転させながらミケの体を駆け上る
 紫という、暴虐の証を軌跡に残して

//KP使用 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 01:47:22.57 ID:5+l6pD370<> >>613

『何やってんだよォテンサイ野郎! 完璧に甘く見られてんじゃねえか!』

危機感を抱かせるどころかスズメザシの命中率の低さが露呈してしまった。
天才が取った戦略は下策、という結果だけが、バジリスクの攻撃的な知性を刺激する。

「大丈夫だよ、先崎さんには考えがあるんだからぁ」

少女が戦場の半身たるHMPにかける声には、錯乱の一つ手前のか弱さがあって。

「もしかして。焦ってるのかな……」
「先崎さん、まで」

消え入りそうな声を、果たして誰が捉えたと言うのか。

>>614 >>616

『その点、てめェらは良いぞ。毒蛇も痺れるぜ!』

マイクロミサイルが夜闇を切り裂いて飛翔した。さながらメデューサの髪の如く、
バジリスクのレーダー内に、急速に大量の熱反応が発生。
背後からは誘導弾の津波が迫り、前方には容赦ない《カラテ》を構えるルリがいた。

『おい、ニンジャって走るよなぁ』
『でもヘビって這うよなァ! ヌラヌラぁーってよ! エエッ!?』

その言葉に、佑美は何かを感じ取り――狼狽した。

「ふぇ、本気なの?」
『おう。バジリスクちゃん、このままじゃ正しく手も足も出ないんでさあ!』

「……わかった、ミサイルの軌道は私が見る……できる限り」
『ギャハハ! ちゃんとサボらせてくれよ御大将ォ!』

既にルリは馳せ始めていた。彼女とエルピスの視界の中でエアロニンジャは反転。
彼の視線が向かう先は斜め前方、即ち摩天楼の奈落。――自殺行為か!?

……常識的に考えれば、ギリギリまで惹き付けて切り返す、というのを想像できる設定ではあるが。
それは、少しでも迎撃手段がある場合に決めてとすべき戦術でしかない。

【1/2】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 01:51:53.29 ID:5+l6pD370<> >>all

背後で異様な電磁抜刀の音がニンジャの感覚を揺らす。サムライが刀を拾い直せるかは怪しい。
とは言えミサイルと身体が生き残っている以上、時間稼ぎ程度は任せられるだろう。

リーダー機エルピスは、ここまでの戦いの推移によって前線に引きずりだされた。
はっきり言って信じがたい火力の持ち主で、このままでは一太刀も浴びせられまい。
軽量機ばかりのチームである。敵機を全て蹂躙する余裕など、元より無い。

「(お願い、通して……徹させて!)」

身体は存分に温まり、抜けば花散る雷電の刃は、ぞっとするほど冷めている。
あの日和見野郎のケツにケリを入れてやるためにここまで整った状態は、今後想像もできぬ。

『――ぶっ走っぞ、オラァー!!!』

だから。
エアロニンジャは、全てのスラスター・ブースター類を激し、文字通りの爆走を開始した!

既に、4の2乗のミサイルが彼に狙いを定めていた。
彼が進行方向を変えると、温もり恋しいアヒルの子のように、ミサイルが追いかけてくる。
脅威的な速力は、いま何とか逃げ切ることができているが、すぐ目の前は断崖。

バジリスクは、全く動きを鈍らせることなくそこから足を前に伸ばした。
重力に従って落下していくその身体を、ミサイルが火の尾を引きながら追う。

最後の一本が飛び込む前から、夥しい爆発音が耳を劈いていく。

――全ての影が見えなくなって、数秒後。
垂直なビル壁を、斜めに、『龍』が如く駆け上がってくる者があった。

『キャーーーーハハハァッ! すげぇなぁ、鳥葬ってこんな気分かも知れんよぉ!!』

【HEAD】 70% 【BODY】 70%
【R.ARM】50% 【L.ARM】65%
【LEG】  85% 【ENE】 64%

何という事か。見まごうはずもなく、それは。
脚部を含め全身のブースターが可能とする壁走りによって、破壊驟雨をU字に切り抜けてきたバジリスク。
爆風は幾度と無く彼の機体を削り落とし、落下する煤にまみれながらも、原型をとどめたHMP。

「……まだ、終わりじゃないっ」

主幹となる脚部・胴部・頭部への弱点を最大限に抑えた回避と切り落としのテクは、バスケで鍛えた《彼女》のもの。

『オラ、カラテできんのかよ……エエッ、そこの色仕掛け姉ちゃんがァ!』

ブースト出力を維持したまま、彼はエルピスに向かっていく。
接近が成れば彼は大跳躍し、空中で回転。麻痺二刀での交差斬撃を浴びせようとするだろう。
有翼ヘビが剥き出している艶やかな女体に、特攻めいて襲い掛かる。

だがこの間、数秒とはいえルリとミケは事実上の放置モードだ。
あっさりインターラプトを仕掛けられるかもしれない、本当に賭けの一手。

【2/2】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 08:24:11.84 ID:oJDY3n3Lo<> >>617
(反応追加)

>>613
(アマサト、それは布石か何かのつもりなのかい?)

そう思わなければやってられないほどの一手だった
健一はテーブルゲームには明るくない
暇な時間をほとんどダンスに費やしてきたから、というのもあるし、何手も先を読みあって駒を動かすという行為は彼には向いていなかったからだ
それでも知識は一般人程度にはある
一見無意味に、あるいは悪手に見えるものでも後々相手を切り裂く攻撃となるようなものがあると
だが、少なくとも、現状の状況下で彼の指した一手は、ただ自分の居場所を明らかにしただけにしか見えない
事実、エルピスは攻勢に出てきた
たとえ昇り竜が決まったとしてもこのままでは圧殺される

(わざと侮らせようとしてる? それとも、まさか会場の雰囲気に飲まれたってわけじゃないよね……?)

天才はあの歳にして海千山千の怪物たちと渡り合っている化物だ
まさか、そんなことはないと思いたいが……
健一のDVNOを握る手に、我知らず力が篭った <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/22(水) 19:52:30.46 ID:E1sT8jgpo<> ここに来ての大失態
そう、冷静になれていなかったのは自分ただ一人
その事実を先崎は認めたく無かった
しかし現実は容赦ない。チームメイトからの冷たい目線が先崎に向けられる
考えれば考えるほど焦ってしまう。泥沼だ

『(マスターのメンタルは、実はかなり脆い
でもそんな自分を変えようと思って自身のある自分を演じていた。そのツケが回って来たのでしょう。多分)』
『(しかし、この状況を何としなければ)』

突然、アナグマスナイプがバックステップで他のビルに飛び乗る
幸い、ステルスはまだ何とか切れてなかった
素早く射撃体制に入り、照準をアラクネーの頭に合わせる
おそらく仲間ならばすぐに一連の動作がHMPの独断行動だと直ぐに気づくであろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/22(水) 22:00:19.27 ID:/060NoAoo<> >>619
「エルピス、いいよ」
『いい、のね?』

 天上の美声が狂気を孕む。
 美しき自然の乙女が、その野蛮な本性を剥き出しにする。
 暴虐、淫行、馬鹿騒ぎ。ギラついた瞳は獣のそれ。
 それでも彼女は最後の一線、主の許しを待っている。

「うん。――我慢しなくていいよ」
『うふ。りょうかぁい』

 だから蘭花が手綱を放した瞬間、彼女は吹き飛んだ。ミサイルを追うように真っ直ぐに。
 全開になったブースターが彼女に早さを与え、代わりにエネルギーが急激に食いつぶされる。
 逃げとか様子見とか、そういう動きを彼女は嫌う。
 ただ騒がしいぶつかり合いを、彼女風に言えば愛しあうことを求めている。

 だから、それがミサイルの群れを抜けてきた時、彼女は本当に――興奮していた。
 煽る一言は、彼女を射撃型だと決め付けてのもの。

『空手はできないけれど、寝技は得意よ?』

 状況は完璧だ。
 上へ駆け上がる相手のコース。
 狙撃の届かぬビルの谷間。
 格闘戦を挑む相手――。
 交錯する一瞬前にレーザーを撃ち出す。当たれば相手を縦に貫く威力がある。
 だが当たるはずがない、回避を強制する以上の意味は無い。こんな粗末なものでは、戯れるにも事欠くだろう。
 故に繰り出す本命はひとつ。
 光条が引いた尾が方針から離れた瞬間、彼女は花のように笑った。

『さぁ――愛し合いましょう』

 全身を強く捻転。ブースターは複雑に火を吹き、そこから先はコンマもない。
 ブースターの推力とアクチュエーターの躍動が合わさって、武器が生まれる。
 得てきた速度と積み上げた経験が重なって、破壊力が与えられる。
 尻尾だ。
 鈍重な追加パーツで構成され、強靭なアクチュエーターで動いていた尾が、今ここで破城槌として意味を成す。
 エルピスはそれを振り下ろした。しなやかに、強かに、薙ぎ払うように。

「さて」

 蘭花は鋭く三度端末を叩く。彼女の呪文は八×八×八、慣れ親しんだ指先が無意識に一瞬で入力を終える。
 防御系−バリアユニット−四重展開。刺し違えを許さぬ光の盾だ。
 無論、エネルギーの減りは更に悪化する。一瞬で二十パーセントを持っていった。
 エルピスにつられて、彼女の口の端も釣り上がる。
 追い詰めた。

【電力残量:六十七パーセント】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 23:05:06.54 ID:fHNWNiLDO<> >>618-619
 &
>>all

【回避の為とは思えぬ、制動距離を考えれば落下しかねない速度の遁走に、右腕の機関銃は追い縋ることが出来ない。
 そのまま本当に落ちていった忍者崩れ、それを追うミサイルの群れ。
 これがどういった戦略なのか計り知れないが、もう私が手を出せるところではなくなった】

『さて……どうする、ナオヒロ。アフロにいくか、それともスナイパーを撃ちに行けるか?』

「スナイパーの方は難しいかな。流石にさっきの射撃位置からは動いているだろうし」

一方サムライの方は――

「手出しできる状況じゃないかなぁ……」

『ちょっと待て、手持ち無沙汰じゃないか!』

「ちょっと待って、考えるから……!」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/23(木) 00:13:09.53 ID:FWx8VL6ao<> >>617

は地から駆け上がるもの。まさに雷撃が落ちた瞬間だった。

シャドーのDVNOが発光した。思わず目を背ける。
極大閃光。映しだされたものはミケの右目が残した最後の画像だった。

 『ばーか、……じゃないの?』

激しいダメージを受けた事で画面が切り替わり破損情報が表示される。

《HEAD破損状況65%》
《BODY破損状況50% - 残存バッテリー70%》
《L.ARM破損状況10%》
《R.ARM破損状況70% - 残存バッテリー120%》
《LEG破損状況50%》

《右カメラ破損 - 使用不可》
《右肩部損傷 - パワー60%低下》
《右足損傷 - 歩行・直立不可》

レイピアと刀が交差したのはつい先程の事。しかし、ミケの立ち位置は先程と変わっていた。
吹き飛ばされたミケはビルの上から弾き飛ばされるも、正面から受けたのが幸いしてか
バランサーのマントが顕在だったため瞬時に背中のバーニアを起動して隣のビルの屋上に倒れこむ様に滑り込んだ。


左足だけで体を支え上半身を起こしたミケの状態はと言えば。未だにバチバチと火花が飛んでいた。
右足の装甲は剥がれ制御コードが焼き切れていて、胴体の右半分は装甲がめくれ上がり、中身がむき出しの状態。
右肩装甲が吹っ飛びむき出しのコードに支えられた関節がグラグラとしていた。
オペラ仮面は真っ二つに割れ、むき出しになった右目のカメラに砂嵐が走っていた。
自慢のアブソープションはエネルギーがバリアになったのか顕在だったが右肩は上がらない。


 『これ、骨切られたのは君で肉を抉られたのは俺じゃんね……』

派手に吹っ飛んだ割に"数値上"は思ったより破損していない様に見えるかもしれないが──要するに体の右半分をふっとばされたのだ。

 「(エネルギーは十分、バーニアは顕在。右肩は上がらないだけで肘関節は曲がるみたいだな)」
 「(アフロ野郎のミサイルは鬱陶しいが、片腕とエネルギーを奪い取って距離も置いた。すぐには脅威にならねぇ!────なら、次にやることは……!)」

>>623

──残る武装。ギュインと音がした左手のギアが回転する音だ。ファミリアシューター顕在。ガシャンと肩から映えるブーメランにギアを取り付けて引きぬいた。
そして、シャドーは隣で唸るナオヒロに対して睨みつける様に目を合わせるとずいっと近づき相手に聞こえない程度の大きさの声で話しかける。

 「おい、ルリのニイさんヨ。ボーっとしてんじゃねえぞ!あのチキン野郎がいくら消えようとさっきぶっぱなしたって事は銃口が熱くなってるはずだろ、放熱が終わる前に探知をしねぇか!」

本名ではなくパートナーの名前で呼ばれた……。それはともかく────。
>>619-620,>>622 エアロニンジャに襲いかかるエルピス。そして壮絶なクロスカウンターが決まったミケとステップサムライ。
手持ち無沙汰?違うだろう?──残った組み合わせを考えれば。

 「──分かってんのか。俺達がこの有様っつーことは、勝負をキめんのは(アナグマスナイプを潰すのは)アンタかもしれねぇんだぞ!!座標──○▲■!」

択しから外して彼の自身の無さがその大役を自動的に選しまったのだろうか。
とはいえ、消えたアナグマは右に動いたか左に動いたか。おおまかなアタリが無ければ狙いは付けづらかろう、ならば────。

 『あいあいー。よい、ショットぉ!』

>>621

ミケは右膝を付いた状態のまま、左手で高速で回転していた漆黒のブーメランを投擲する。それは消えたアナグマスナイプが先ほどまで居た位置だ。
探知出来なかったが、シャドーにはアナグマが行った行動がばっちりと見えていた。ブーメランはアナグマの初期位置を中心点に、その周辺を派手に暴れ回り、ミケの手元に返ってくるだろう。
狙いを付けて放った訳ではないので攻撃は当たるかもしれないし、当たらないかもしれない。当たれば儲けもの、当たらなければブーメランの通らなかった位置に絞り込める────。

 「奴の機動力は並以下だ。この短時間にそうそう遠くには移動してねぇ─────。この俺がサポートしてやるんだからバッチリ決めろよ!!あのなめガキは絶対泣かすって決めらんだからなッ!」

なめガキ──それは舐め腐ったガキ。可愛いネコちゃんとはまったく関係ない。 <> 1/2<>sage<>2012/08/23(木) 01:08:19.66 ID:XFLWsVxwo<> >>624
 切り裂いた刀は、遙か彼方へと飛んでいく
 何処に飛んでいったかは、誰にもわからない

『それはどうで御座るかな』

 破損状態を見れば、確かにステップサムライは武器を失い、右腕も失った状態だ
 だが、まだミサイルもあるし、左腕に両足がある
 ――たかが腕一本、なくしたところでどうだというのか

「まだ両足がある。それだけで、僕らは踊れるんだよ?」

 言葉を口にしながらも、こちらから興味を失ったと見えるミケと、そのマスターを意識の端へと追いやる
 右足を失ったミケを気に留める必要はない
 今、気にすべきなのは――

(エアロニンジャと、アナグマスナイプ)

 まだアナグマスナイプは動かない
 エアロニンジャはあの怪物と一対一だ

 なら、ステップサムライがすべきなのは?

 考えようとした瞬間、アナグマスナイプが動きを変えた
 怒りが、脳味噌を沸騰させた

「――ステップサムライ。少しの間、僕は君から手を放すよ。その間、ミケと、ルリ。任せられる?」
『余裕、とは言えぬで御座るな。みさいるが残っているとはいえ、それは一発のみ』
「そうだね」

 何処へ飛んでいったかもわからない、ライジングムラサメソードを拾わない限り、攻撃翌力はもうほとんど無い。

「でも、いけるよね?」
『無論。主上の御心のままに』

 ――そして、ステップサムライの孤独な時間稼ぎが始まる

>>all

『とぅおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

 爆裂するように、ステップサムライが咆吼するや、走り出す
 片腕を失ったことで傾いた重心を利用しながら、踊るような動きで

『いざや、見なされ! 我が名はステップサムライ。主上が一番弟子にして、舞踏の伝道者!』

 大見得を切り、踊る踊る
 ルリの射線に入るように、ミケの視界を邪魔するように
 騒いで、騒いで、騒ぎまくる
 五月蠅いだけの存在だ
 攻撃翌力は、アフロに隠されたミサイルしかない
 無視しても構わないだろう
 だが、無視すれば鬱陶しいこと間違いない
 そうなるように、ステップサムライは踊る、踊る
 時に叫んで、時に両足を大きく廻して

 ――それが、自分が断頭台へと行軍する為に踊る、死の踊りだとしても <> 2/2<>sage<>2012/08/23(木) 01:09:07.39 ID:XFLWsVxwo<> >>621
 気が付けば健一は、あの口にすべきではないFから始まる四文字の単語を絶叫していた

「F**************************************K!」

 自動検閲によってその言葉はピーという間の抜けた音によって覆い隠された
 だが、彼が相応しくない言葉を吐き出した事実は変わらない

 ざ、とその体がぶれると気が付けば健一は天才の目の前にいる
 泥沼に沈んでいく、愚かな将が目の前にいる
 ――言葉より先に、拳が出た
 ダンスで鍛えた体から放たれる全力の一撃
 綺麗に決まったそれは、天才の体を吹き飛ばす
 これは歴とした暴力事件だ。証人は腐るほど居る
 マスコミは騒ぎ立てるかもしれない。もしかしたら、ツアーもキャンセルされる可能性もある
 違約金とか、謝罪とか……でも、今重要なのはそんなことじゃない――

 倒れ伏した天才を見下ろして、叫ぶ

「先崎天才! 棋士である君にとってフィールグラムは何に見える? そこで戦うHMPたちは、なんだ!」

 ダンサーである健一に、フィールグラムは舞台で、戦うHMPがダンサーに見えるように
 棋士である天才には、それが将棋盤に見えているのではないだろうか?

「いつまでガタガタ震えてるんだ?
 君はこの大会前……いいや、チームを結成するときに言ったろう?
 僕らは、大鷲だって」

 それは現代の将棋には存在しない駒だ
 全ての方向に自由に動くことの出来る、特別な駒
 天才である彼らを形容するには、ピッタリであろう
 凡人から見れば、彼らは何処にだっていけるように見えるのだから

 その言葉は、あまりにも恥ずかしくて驕ったものだったけど、どこかこいつとならチームを組んでも良いと思わせるほどの説得力があった
 下心がゼロだったとはいわない。でも、その一言で、確信したのだから

「そんな鷲が、今、見下ろすHMPに助けられてる
 恥ずかしいとは思わないかい? 悔しいって思わないのかい?」
「恥ずかしいなら頭を回せよ、悔しいならすぐ手を使えよ」

 ――練る為の知略は腐るほどあるだろう?
 ――その手にはDVNOが握られているだろう?
 
「王将は君のアナグマスナイプだ。そして指し手も、大鷲も君だ
 大鷲はまだ二枚ある。その大鷲と、まだ二枚盤面には駒があるだろう?
 棋士である君はそれをどう動かす? この状況から、勝つために君はどう指すんだ」

「答えろ、先崎天才!」

 ――天才棋士だというのならば、将棋を、指してみろ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/23(木) 02:06:32.25 ID:cz7Txzzwo<> >>626
頭の中は真っ白だった
ただ一回のミス。それが大きく先崎の心を動揺させてしまった
その虚ろな目は、フィールグラムではない何処かを見ているようだった

「がっ!」

突然飛んで来た拳。その痛みは、生まれて初めてのものであった
何が起こったのかわからず一瞬あっけにとられ、しばらく状況を理解するまで時間がかかった
そして、状況を全て理解すると同時に自分の愚かさと殴られた箇所からの激痛が交錯し、さらに惨めな気持ちになる
だか、やっと気づいた。そうだ、自分はフィールドに立っている!
ならやる事は一つ。仲間の為にも、全力で闘う事

「…目が覚めましたよ。」

先崎が顔を上げた
その顔つきは試合前の自身に満ち溢れた顔でもない、怯えたネコの様なかおでもない。勝負師の顔であった
ステップサムライは攻撃手段がミサイルのみ
問題は何段にも変形する化け物。奴と一対一ではかなり厳しい。さらにはバリアユニットまで張っている

「私が、バリアユニットの隙間を通し本体を狙う
直撃したら恐らく一瞬のふらつきがある筈だ。そこで、ミサイルをッ」

照準を合わせる。今度は先崎が、しっかりと本体へ
アラクネーから見れば左斜めからの射撃になるために普通に撃てば胴体に展開されるバリアユニットに弾かれてしまう
だが、根拠はないが慢心とは違う自信が先崎から溢れ出ている
今の先崎は奇跡でも起こせるかもしれない

「叩き込めッ」

閃光が、一直線にエルピスへ向かう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 02:10:02.75 ID:hIAi/FNO0<> >>625-626

健一くんが、リーダーを殴っている。
もしこういう事がいつか起こるとしたら、自分が標的になるのではないかと恐れていた事象が。
目の前で、全く違う人間を主演に据えて起こっている。

大鷲宣言のあの日、私はその遣り取りをどこか遠巻きに聞いていた。
選ばれたら逃げられない。せめて自在の羽ばたきを支えることができればと、懸命に戦い続けた。
その両翼が今、激しく縺れて――藻掻いている。傍目に痛々しく思えるほどに。

『そいつら狂おしいくらい男の子だよ御大将! 分かるわけねーからこっち集中しなァ』

バジリスクの言ってることは良くわかる。今自由にフィールグラム上を見られるのは、自分しかしない。
だけれど、この目は釘付けにされて…………。


【 ――その手にはDVNOが握られているだろう? 】


ビル街を包む暗闇よりもふかく深呼吸した。
カンペキに無意識に。
瞳はただ、一面に据える。

「ごめんね、健一くん、先崎さん」
「……私って、自分で思ってたよりとんでもないおバカさんだったみたい」

「いこう、バジル。バカでも……ゴールがどこかぐらいは分かるから」

ああ。
きもちの整理なんて、全然ついてないけれど。
私は呼吸が止まる程に、キレイなバケモノを見据えた。
泣いてないし、泣きたくもない。

ぎりぎりの際で、相手とぶつかりあう。
やることもできることも、どこに行ったって変わらないんだ。

私の代わりは、いないんだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 02:13:51.55 ID:hIAi/FNO0<> >>622

バジリスクはレーザーライフルの一閃を、軽快な横っ飛びで回避した。
そこで回転動作。なるほど、通常のHMPならこの連撃でお陀仏か。

『キャハハッ、じゃあピッタリくっつかねえと』

前傾姿勢。再度急加速し、必要な限り切り込んでいく。
長すぎる尾が屋根を砕く音を背に聞きながら、流線型のボディに傷はない。
遠心力兵器の攻撃圏内の向こう側へと、抜けていたのだ、紙一重で。
行動は彼のものだが、ルート選択は《彼女》、一歩ごとに迫る。

『なァ、なァ、なあァ〜〜〜〜〜ッ!!!』

止まらない。
レーダーマップ上では殆ど重なっている敵機の腰に、飛びかかった。

【HEAD】62% 【BODY】38%
【R.ARM】47% 【L.ARM】52%
【LEG】《DESTROYED》 【ENE】48%

これは、その瞬間のバジリスクの残存装甲とエネルギーを示したものだ。
バリア展開に巻き込まれた脚部は問答無用で切断され、飛び込む瞬間に他のパーツにも微細なダメージの蓄積。
終末喇叭めいた警告音が、足を失いヘビに近付いた彼を包む。

どこまでも、どこまでも紙一重で。

『俺のをたぁーっぷり注いでやる! ギャハハハーーーハハハッハヒヒヒヒヒヒャハハハハッハァァーッ!!』

多重の防壁の内側に至った彼は、エルピスを乱暴に抱擁しながら双剣を突き刺そうとした。
腰に回す手。刃の狙いは、腹部だ。ここから通電させてやる。
足が無い今、暴れられれば悪あがきの噴射はあっさりとフられて、キスの相手は屋根に変わろう。
だが電撃の毒は、一片の傷から忍び寄り、全てを終わらせるもの――。

「……パス!!」

ピピッ。
レーダー情報が、最新のものに更新された。
毒蛇の『牙』の中に、命中の感触はまだ無い。それからでは遅い――! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/23(木) 15:58:27.49 ID:uUTv4wA7o<> >>all
 蘭花は笑っていた。
 眩しいものを見るような目で、笑っていた。

「ねー、エルピス」
『なぁに、蘭花』
「いいねぇ、若いって」
『そうね。貴方もう若くないしね』

 けらけら、彼女は笑っている。
 エルピスへ飛びつくアフロの影。おそらくはこちらを狙っているであろう狙撃手の瞳。
 あぁ本当に、最高で、最高で、最高だ。

「ごめんねぇ、こんな大人げない大人で」

 蘭花が求める、狂おしいほどのそれではないけれど。
 彼らのそれは、純粋に――美しいから。
 心配だった誰かさんさえ、今ではあんなに戦士の顔。
 友情に勝るエネルギーはないのだろうか。

 あぁ、だから、負けられないのだ。

「カウントスリーッ!」

 叫んだ。
 腰へ張り付かれた一瞬、真上へブースターを噴射する。
 急上昇する二つの機影。しがみつくそれを叩き落す方法は数あれど、最善は一つだ。
 こちらが何か隙を見せた瞬間、鋼の槍がその身を貫くだろう。
 けれど私だって、一人で戦っているわけではないのだから。

「ツー!」

 ほら、彼らは見事に一皮剥けたよ。次は君の番。そうでしょう?
 君が誰かに劣っているとは思わないから。
 ねぇナオヒロくん、君はそこで立ち止まる人間じゃあないはずだ――!

「ワン!」

 果たしてそれが彼の耳に届いたことを、私は一度も疑わなかった。
 ビルの谷間から飛び出す一瞬、エアロニンジャはちょうど屋上に身を晒す向き。
 さぁ、さいっこうに格好いいとこ見せてちょうだい!
 私の出番はその後だから――! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/23(木) 21:10:01.99 ID:FWx8VL6ao<>

ミケは肩に取り付けられた最後のブーメランを左腕にはめ込んで回転させていく。
ビュルビュルと二枚の刃が回る音がする。自動帰還システムにより、放たれたブーメランが返ってくるのが見えたのだ。

「 (あの腐れニンジャがあっちに居るって事はまたコイツをひん曲がった棒切れに変えられる事はねぇって事だ) 」
「 (リーダーに張り付かせとくには鬱陶しいヤツだがミケがこのザマじゃ今更どうしようもねぇ……!) 」

その勢いは衰えず、──この様子では敵にかする事はなかったのだろう。
結局、探知の役に立ったかどうかは結果が出るまで分からないが、確かな事はまだ使い道が十分にあるという事────。

「 ミケ!アレをやるぞ!ぶっ放せッッ!! 」
『新しいパーツ、期待してるからね……。』

プロペラ代わりのつもりか左手を掲げ、思い切り左足で踏み込むとミケの体が浮き上がる────。
その次の瞬間、たなびくマント。背中のブースターが火を吹いた。

>>625-627

彼らの一挙手一投足がいちいち感に触った。自分があれくらいの年の時、あんな風に叱ってくる仲間は居たか?
助けてくれる友は居たか!?彼らは全てのおいて自分を上回るエリートだという事だ。
別世界過ぎて寸劇でも見ている様だ────シャドーの中に渦巻く感情はただひとつ、激しい嫉妬!


「お前が成果さえ出しゃアンダーグラウンドでもアンダーステージでも買ってやんよ。ったく、
ガキの分際で青春なんざ3年早ぇ……これだからムカつく存在だぜ“将来有望なお子様”って奴はよォ──!!」


足がイかれようとも、浮き上がってしまっては関係ない。バランスの問題で垂れ下がった右足が火花を散らしているがもはや些細な事。
どのみちこのまま動かなければタダのブーメラン発射砲台。出し惜しみする理由はどこにもない。残り少ない力を解き放ち、生き急ぐ吸血鬼は再び戦場に踊り出る。

爆走を始めるミケをブーメランが帰還しようと追尾する。直線上の閃光がシャドーの瞳に映り、口元を歪ませる。


「させるかよ、見えたぜ……!出し惜しみはねぇ、全弾くれてやるぜ、方向XX!撃てッ!!」


空中ダッシュしながらミケは器用に体を捻るとシャドーの指示通りの方向にブーメランを放って見せた。
アンダーグラウンドのターゲット数は1!狙うのは辛酸を舐めさせられたステップニンジャ?熱き魂を取り戻し、姿を表した大鷲アナグマスナイプか────。
答えはどちらでも無く、どちらでもある。ミケがブーメランを叩き込んだのは己を追尾するブーメラン!二刃の黒き翼は、激しくぶつかり合い────。

νの字を描き、ステップニンジャ、アナグナスナイプの2機に向かって襲いかかる! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 21:21:39.81 ID:eEKAGsbDO<> >>all

「紗籐君……」

年下の仲間からの熱い叱咤に、相手チームの姿が重なってこんな時なのに口角が少し上がってしまう。
ああ、彼らの傍にいるとその熱量で自分までが熱くなれるようだ。
だから、多少の無理をしてみたくなる。

「大丈夫。銃口の熱が無くたってHMPが稼動している以上サーモカメラは逃がさないよ。
……見えてさえいればだけど」

コンクリートに阻まれてしまえばステルスがあろうと無かろうとサーモカメラは用を成さない。
その辺りはレーダーとの一長一短。
しかしなにより、一番問題なのは

「ルリの脚じゃこのビル群を行くのは難しいから。
ほら、制動の効いた動きは出来ないからさ」

アナグマの位置は紗籐君の援護によっておおよその限定は出来ている。
しかし、そこに辿り着く為には結構な遠回りを強いられてしまうだろう。
ルリとアナグマでは射程の差も歴然、危険な橋だ。

「だから、ごめんね。
大人はより確実な方をとるよ」

丁度、ルリの目の前に翼の端が映った。
ボーッとはしていられない、急いでルリに指示を出す。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『ふ……先程と随分違うじゃないか。同じところを探すとすれば――』

【バカなところだろう。
 今度こそ本当に、作戦でも何でもない。
 だがまあそれだけにやることはシンプル。
 簡単ではないが、その方が私としてもやりがいがあるというものだ】

『アフロ!そこは私のぉっ……舞台だ!どけ!』

【スパークを続ける左手を刃のように鋭く構え、アフロに向けて突進する。
 貴様がそこにいては成すべきことがなせないだろう!】

『お、ぉおおお!』

【交差地点と到達時間を予測計算、速度を細かに調整する。
 ハートは熱く、心はクール。どこかで聞いた文句が頭を過ぎる。
 この攻撃が当たる必要はない。
 ただ一歩でも前に。より確実な一発のために。
 お誂え向きにアフロに向けて吸血鬼の攻撃も迫っている。
 これによって相手の選択肢はより狭く、こちらの選択肢はより広く。

 左腕の動きで牽制をかけながら忍者崩れが現れるのを待つ。
 ナオヒロはさくらの主人の姉君のHMPと同時に現れると言っていたが、羽根の見える今の段階ではまだ早い。
 速く、しかしゆっくりと。確実に、されど素早く。
 と、アフロと交錯するその瞬間、忍者崩れの頭部が上がってきたのが見える。
 怪物染みたHMPの腰に抱きついた形、こちらには気付いているのか、いないのか。
 ……いや、そんなことはどうでもいい。
 今のこの一瞬は、この交錯を抜けることが全てだ。次のことは次の瞬間に考えろ。
 左腕を大きく構えフェイントとし、右腕は腰溜めに。
 形はどうだっていい。アフロを抜ければ、抜けた瞬間にこの右を伸ばし忍者崩れが果てるまで、有らん限りを発砲する。
 後ろのHMPに当たる可能性は何故か頭から消えていった】


//サムライとニンジャ両方を縛ってしまいましたが、KP(>>594)使用させていただきます…。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 21:27:41.27 ID:VqHwY37vo<> 【夕刻の公園 / 日が沈めばまた明日】

夕陽が落ちていく。元々赤い色をしていた滑り台に、夕日の赤が上塗りされる。
安全性が問題となり、昔懐かしい遊具の類は、今の公園にはもうほとんど無い。
その代わりに、今の時代の公園では、ステージ数やフィールドサイズを調整した廉価フィールグラムが置かれ始めている。

子供たちはもう帰らなければいけない時間。今からファイトを始めるわけにもいかず、自然と雑談が始まった。

「一番クソなHMPってどんなだと思う?」「くらうそらすはゴミだよ! バッテリー消費ひどいし、すぐこわれるし」
「そーいうんじゃなくてさ、クズパーツ集めて作ったウンコロボをだな」「じゃあBODYは波動砲で追加バッテリー無しでいこうぜ」
「LEGはペンギンの鈍足がマジでザコ」「それ追加バッテリー付きじゃん」「大和ディスったらヒュームボット雷伝殴りでぶっころすぞ」

そんな子供らしい話に花を咲かせている横で、白衣の少女がぷるぷる震えていた。

「確かにフィールグラムの中での戦闘力だけを比較すれば優劣が生まれる点は否定しません!
ですが! 天上天下森羅万象、この世に不要なパーツなど一つとして存在しません!
全ての部品は製作者の理念をマテリアライズしたものです。勝利以外の目標だってあるんです!
フィールグラム以外の戦場で生きる戦士だっているんです! それをクズとかウン……などと形容するのは冒涜です!」

顔を赤くしながら、変に裏返った声で熱弁を振るう少女。
けれど無駄に小難しい言葉を使った反論は、子供たちには半分も理解されず。
ツチノコでも見たような表現で固まる子供たちを前にして、段々と居心地の悪さを覚え始め、やがて顔を伏せる。

「一時間後、この公園で待っていてください。本物のムーブレス波動砲バッテリー無しを見せてあげます」

先細りになっていく声はなんとも情けなく、言い終わると子供の視線から逃げる様に去っていった。


――


「クロリス。場所合ってるよね」
「ええ。子供たちは帰ったのでしょうね。時間が時間ですから」

傍らに二機のHMPを携え、少女が戻ってきたときにはもう夕陽は沈んでいる。
静かな空間。夜風が肌寒い。街灯の明かりが頼りなく、公園は侘しい。

「クェー!」

わざわざそのためだけに改造された波動ペンギンが泣いていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/23(木) 21:49:48.39 ID:gTZuDZf+o<> >>633
そんな夜風が吹く公園
ベンチに座り込む少年の視線が、そんな少女へと向いていた

着崩された制服がその少年が学生だと証明している

「……勝利以外の目的、ねぇ
 んで、いつになったら『本物』って奴が見れるんだ?」

皮肉げに、ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべる
挑発だろうか?
わざとらしく、その声は妙に公園に響いていた
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 22:02:43.82 ID:XFLWsVxwo<> >>630-632
 迫り来る吸血鬼のブーメランと、ルリの突進
 いずれか片方を防げば、もう片方は防げまい

〔時を稼ぐとは申したが、これは些か以上に辛いでござるな〕

 だが、それが主の命令ならば従うのが武士である
 [ピーーー]と言われたならば潔く腹をかっ捌いてみせよう
 ふ、と笑って、最善手をとらんと一歩歩み出す
 自分は今、肉の壁だ。ルリと名乗るあのHMPは自分を抜けねば、後ろを貫けぬ
 なれば、と敢えてその突進に自ら突進する
 到達時間を減らせば、それだけ加速が減少して威力が少なくなるはずだと、目算して――

 だが、その突進を回転方向を変えたブーメランが阻んだ
 νの字を描いて飛んでいたそれは、まるで、"ダウンバーストに巻き込まれた"かのように突如として下降して

『ぬ、ぅううう!』

 脚の致命的部位、距腿関節に挟み込まれる
 これでもう脚は動かない
 それでも、まだ、諦めない

『ぬぐああああああ!』

 進む、進む。手を伸ばす
 最後まで、諦めない
 ――だから、この手を前に

 けれど、奇跡は起こらない
 彼は既に、一度微笑まれているから
 今、女神が微笑んでいるのは相手だから

 伸ばした手は空を切る
 最善の計算をされたルリの突進が、ステップサムライを弾き飛ばす
 その衝撃で距腿関節が崩壊。ステップサムライはバランスを崩して転倒しそうになる
 
「待たせたね。一番弟子?」
『主上』

 地面に触れる寸前。愛おしい、主の声が聞こえた
 ステップサムライは最期の最後に、足掻いた
 まだ健在の左腕で体を支える
 既に隻腕隻脚。行くも戻るも難しい
 ――だが、もってこいの一撃があるではないか?

「一矢報いるよ! 棋士の打った最善手を活かす為にもね!」
『応――!』

 DVNOがタップされる
 そして――アフロが開いた

 まるで冗談のように開いたアフロの中に隠されていたのはミサイルである
 メインウェポンに据えるにも十全に足る攻撃翌力を誇る、最終兵器

「いっけぇ!」

 轟――と、爆裂する炎でアフロを更に巨大に太らせながら、ミサイルがルリの先にいる、エルピスを射抜かんと、往く! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 22:07:51.44 ID:hIAi/FNO0<> >>all

『おとなになるって哀しいなァ、エエッ!?』

ブーストの爆音に掻き消されるニンジャの声は、東西両軍に向けられたものだ。
いずれ、世代は交代する。役割の交代と言うことでもある。
ロボットである彼からすれば、それは遠巻きに眺める滑稽絵図に過ぎなかったが。

「子供って、諦めが悪いの――まだ何もできていないもん!」

御大将とて、いつまでも俺(おもちゃ)を気にかけてはくれないだろう。彼女は嘘吐きではないけれど、夢が重すぎる。
ならこの瞬間を愉しむまでだ。滑り落ちていく腕の力を振り絞り、食い下がる。あと数ミリをくれ!

『ギャ派@a、イってェ』

ルリのSMGから滂沱と溢れる弾丸は、この瞬間にも彼の全身を破壊。
BLATTATATA!! 頭部にも何発か刺さった。なんとも言えぬ奇妙な雑音が声を侵していく。

【――KP1使用】

『(('(%&'5ぇカ、てメ01001(’ mclェ――!!!!!』

おお、或いはその時に何らかのリミッターが解除されたと言うのだろうか?
バジリスクの諸手へ、残された殆ど全ての電力が奔流となって流れ込んでいくではないか。
デン・ケンとデン・ワキザシが、限界を超えた負荷に火花を散らした。

BEEP音の様な咆哮と共に放たれる最後の一刺し。
断末魔の稲光が装甲を貫けたかは曖昧だが、その熱と紫電は接触しているだけでも伝わりかねぬ!

【EN残量、残り5%、アンテナAに損傷大、レーダー情報共有の維持可能時間およそ3秒】

殆ど達磨になっちまッた。
もう、何かをやれと言われても困る。息を吸う様に、敵を捜すしか。
オーバーロードと銃弾の雨で機能停止した両腕を虚ろに投げ出しながら、彼は自由落下を始めていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 22:12:01.53 ID:VqHwY37vo<> >>634
「あれ? さっきの子供……じゃないですよね」

どう見ても別人だが、馬鹿にしているわけではない。
この少女――実際は少女と呼べる年齢ではないが――は人名や人の顔を覚えるのが苦手だった。
服装が変わると相手が誰だが分からなくレべル。街でばったり会ったクラスメイトが親しげに話しかけてくるも、誰だか分からず困惑した経験が多い。

「ええ。間違いなく別人ですね。身の程を知らない子供と言う点では同じようですが、ね」

どう相手をすればいいのか分からず口を閉ざした少女に代わり、女性形HMPが挑発を返す。
異形のペンギンはドリルクチバシの先を学生に向け、明らかな敵意を向けてくる。
気弱な主人を守るように、二機のHMPが前に出る。

「あ、あの……えーと。つまり戦いたいってことでいい……んですよ、ね?」

静謐に包まれた公園の中にあってさえ、その声は小さい。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/23(木) 22:20:01.35 ID:gTZuDZf+o<> >>637
ふぁ、と大きな欠伸
ソレに合わせるように、少年は立ち上がった

「良いじゃん、それが一番シンプルじゃねぇか」

戦おうぜ、と好戦的に笑う
その傍らに控えるは黒色のHMP

その全身は黒の外套に包まれ、その詳細はわからない
敵意を向けられて居ようとも、微動だにしない

「始めようじゃねぇか、勝ったほうが正しいだろう、ってな」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 22:28:59.07 ID:VqHwY37vo<> >>638

「そうですね。シンプルなのは良いことです」

声は小さい。それでもさっきより安定している。背筋を伸ばしてみても彼女の背は低く、青年に対しては見上げる形。
けれどそれは媚びや怯えの目線ではなく、挑戦者の鋭い視線なのだ。

慣れた手つきでフィールグラムを起動し、フィールドをランダム選択する。
異形のペンギンは高らかに再度鳴いた。

「くぇぇぇー!!!」

コンマ
偶数:市街地
奇数:草原 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 22:31:18.00 ID:VqHwY37vo<> 【草原】

一面に丈の長い草が生い茂っている平地。火気を使用すると燃える。
特に障害物は無く、延々と同じ風景が続く。小型機なら屈めば草の中に隠れられるが、大型機に隠れ場は無い。
草が根を張った地面は硬く、足場としては安定している。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/23(木) 22:40:24.20 ID:gTZuDZf+o<> >>639-640
目前に広がるのは草原
あまり、有利なフィールドではないな、と舌打ち

メタルカラーのHMPが微かに揺れたかと思えば周囲の草が風に流れるように吹き飛ばされた
この一瞬で切断したのだろう

「相手はペンギン野郎、か」

『―――――』

メタルカラーのHMPは何も語らず、外套の下から紅のアイカメラだけが怪しく光っていた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/23(木) 22:46:32.08 ID:cz7Txzzwo<> 「やはり、来ましたね」
『ええ』

スナイパー役のリーダー機が姿を表したのだ、狙わない手は無いだろう
夜空を切り裂く様なブーメラン。アナグマスナイプのレッグでは避けられない
しかし、避けれなくても…

『ぐっ!』

急所を外し受ける事は、辛うじて可能だ
しかし、DVNOに表示される数値を見なくても分かるほどの大ダメージ
腕はほぼ破壊され、脚も千切れている。恐らく、引き金もあと一回でも引ければいい方だ
だが、最悪の結果は免れた

「諦めませんよ…絶対に」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 22:53:34.64 ID:VqHwY37vo<> >>641

ペンギンが草原に降り立つ。その質量を受けて地面が揺れる。
この異様に前に長いBODY、波動砲の見た目のインパクトが強すぎる。果たしてこれはペンギンなのか……。

「カーネル! ゴー!」

まずはその鈍重な足でゆっくりと後退しつつ、左腕のミサイルポッド群蜂を相手に向ける。
ペンギンヘッドは射撃に適したパーツではない。優れたレーダーによって素早く相手を捉えるが、しかし射撃の細かい調整はできない。

だから早さと数で攻める。開幕のミサイル発射。速射重視の小型ミサイルで一撃。次いで密度重視の中型ミサイルで弾幕を作る。
精度は悪い。しっかりと見切れば避けるのは難しくない。けれど草原のフィールドにあっては、草が燃えることで戦場に二次被害を及ぼす。

周囲の草を切り裂いた地域での延焼は少なくとも、精度の悪さ故に散ったミサイルは周囲を火で包むやもしれず。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/23(木) 23:05:53.33 ID:gTZuDZf+o<> >>643
爆音

その炸裂音が響き渡るその瞬間、黒の外套が風に揺れる
地面と黒の機体の脚部の間が爆ぜるように反発
その黒の機体を空中へと押し上げた

『――――ッ!』

弾幕を張ったそのミサイル群を飛び越えるように飛翔したその機体だが
このままでは、着弾後燃え盛る炎にその身を焼かれる

だが、次の瞬間

空中を舞うその黒の外套から放たれた刃
真っ直ぐそのインパクトの強い巨体へと疾走

小さな刃だが、その速度は十分
下手な弾丸より高威力だろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 23:17:19.84 ID:VqHwY37vo<> >>644

あくまで砲撃は牽制手段。相手が遠隔射撃手段を持っていた場合、退き撃ちが一番困る。
開幕の攻撃で、この何だか分からないペンギンもどきを遠隔型だと思わせることができたなら、当たらずとも上々。


そして不得手な射撃攻撃後に、ただでさえ鈍重な足。避けられるはずも無く、刃は長大なBODYを捉える。
しかし早かろうが切れ味がよかろうが、一撃だけではその刃が持つ長さ以上を斬り裂くのは不可能。
強靭な装甲に傷をつけ、切り込みを入れることはできても、内部のバッテリーや波動砲制御機器にまでは刃は届かない。


相手の攻撃を受け切ることで相手を一時拘束。LEGの冷却機構をフル稼働させ、その足を凍りつかせようとする。
草が足元をおおい隠しているため、見ただけでは変化は気付けない。気付いて回避できるとしたら、反撃を行わないことの不自然さから、だろうか。

ヒット&アウェイに持ち込まれては厄介。空に逃げることを考慮し、ミサイルの先端を地面に向ける。
セオリーを無視した変態機。その動作から、どこまで意図を読み取れるか。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/23(木) 23:18:23.38 ID:uUTv4wA7o<> >>all
「せんきゅーっ!」
『後は私たちってわけね』

 剥がれ落ちる忍者の影。
 代わりにこちらを狙う大型ミサイル。

「いやぁファンキーだ、まさかアフロからミサイルとは!」
『笑ってる場合じゃなさそうよ?』

【警告:電磁ノイズ発生。追加装甲駆動部、稼働率八十パーセント減少】

「そうみたいだねぇ」

 追加パーツ駆動部とは、レーザーライフルの可動部と、尻尾だ。辛うじて飛行に支障は出ていないが、ミサイルを撃ち落とすには少々足りない。
 本体への通電は回避できているようだが、代わりに変形も封じられた。
 勿論、あのミサイルを振りきれるほどの速度は、パンドラには出せない。
 それだけではあるまい――銃口は、はっきりとこちらを向いている。
 しかし。

「ま、見せ場はこれくらいじゃないとね」

 臆することなど何もない。
 私が勝つことに、私は何の疑いも持ってはいない。

『そうね。――信じてるわ、ラン』

 頼もしい相棒もいることだし、だからそろそろ、本気でいこう。

『私を感じて』
「私に委ねて」

 ミサイルから逃げるように空へと舞い上がり、ぎこちない動作で体を相手へ向ける。
 まだ動くブースターを全開にして、追加パーツのエネルギーをありったけつぎ込んでいく。
 狙撃するには格好の状態。ただ突進する、動作はそれだけ。

 やることは単純だ。狙撃を避ける。ただそれだけ。

 ――世界が凍り付く。
 意識の一片までもがただそれのために集約され、私は私でなくなって、彼女も私と一緒になってもっとずっと深い所で繋がり合う。
 存在しないケーブルで脳と脳とを繋ぎあって、それでようやく彼女が分かる。
 HMPでも、人間でもない。
 最も原始的な単一の意思で構成された精神は、その狂いに狂ったサーキットを滑走して、熱を上げていく。
 神経パルスのデッドヒート。脳細胞が壊死するくらいのチキンレース。
 二人で唱えるのは、一秒を一年に変える魔法。

 この零秒の先へ行く。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/23(木) 23:30:03.50 ID:gTZuDZf+o<> >>645
刃がそのBODYを捉えた瞬間
リールを巻き上げるような、そんな機械音が周囲に響き渡る

ワイヤーの高速巻き上げ
その巨大なBODYと黒の機体
質量の差は歴然、引き寄せられる形で黒の機体は高速接近

そのワイヤーの引き合いで刃は外れるが移動には十分な速度

彼の必勝接近パターン
そう、油断した


『――――?』

高度を保てず、地面に一時着地
勢いを殺さず、そのままの勢いでペンギンへと接近……

草に覆い隠されたその冷却機構
地面に触れたその脚部は、氷結

その動きを封じられた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/23(木) 23:38:18.78 ID:FWx8VL6ao<> >>635

銃弾の嵐で達磨になりかけているニンジャを見てシャドーは口笛を吹いてククっと笑みを見せた。

「兄さん大人しい顔してやる時はやるんじゃねぇのよ!おっかねぇなあ?大人ってヤツはよ。あーやだやだ、俺はまだガキでいいぜ」

上機嫌にケラケラ笑い、ナオヒロボを茶化しながらカチカチとDVNOをいじり出す。

>>all

──WARNING!シャドーのDVNOに赤いその文字がいくつも刻まれる。
それに伴い、爆走するミケの体から薄っすらと煙が溢れ出てきていた。

『カーくん!僕の体なんか凄い音が鳴ってるよ!!!』
「そりゃそうだろ、ほとんど活動限界突破してるからな」『エ゛!!』

体の半分が大破数値上は50%のダメージ。しかし、当然大破した部品と連動している部分は沢山ある。
こんな状態でフルドライブしてしまえば放熱も上手く行かず、オーバーヒートする。エネルギーもどんどん減っていく事だろう。

「ほっといて爆装するくらいなら派手な花火上げた方が良いに決まってるだろ──?」『そういう所ってさ、────ダイスキ!』

右手に構えたレイピアが再び蒼き霊炎を纏い出した時、バランスが一気に崩れ、グルングルンとミケは回転を始める。

>>642

「テメーの土俵で語るなら飛車成ってヤツよ!!さあ、竜王がかっ飛んでくるぜ!!受けられんなら受けてみなッッ!!ヤろうぜ、命のやり取りてヤツをよォ!」
「喰らいなッ! 『 ス ト ー ム ブ レ イ カ ー 』 だ ッ ! ! 」

ストームブレイカー。
本来は左手で回転したブーメランを利用し、高速回転しながら斬りつける技だが重心が崩れまくったこの状態さらに崩せばこの通り。
必殺などと言ってはいるものの、右手が振れないから遠心力で振り回すしか無い──コレ以外に手のない最終手段。
しかし、この調子ではアナグマまで届かないだろう。ならばどうするか?その一撃は放たれていた。


激しい遠心力でミケの手を離れたレイピア、アブソープションがアナグマに向かってシャドーの言葉通り、飛んでいく!
手を離れた以上自慢のエナジー吸収はできずとも、その刀身に纏いしレーザーブレードは顕在。

その射線、アナグマスナイプの真正面!避けるのも撃ち落とすのも容易いシンプルな軌道────。
そう、だがそれが狙いでもある────この放って置いても潰れそうな死にぞこないの一撃のために弾の一撃でも機動力の少しでも使ってくれるなら儲けもの。

──潰しに来たのではない。これは“詰み”に来ているのだ。狙うのはただ一つ、完全なる勝利。

>>646

何故なら、厄介なニンジャから開放され、真の力を開放せし真打は既に迫っていたからである。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 23:42:47.82 ID:VqHwY37vo<> >>647
「ふぃっしゅ! 捕まえましたよ」

相手が目の前で止まっているのなら、BODYやLEGの鈍重さを差し引いてもなお攻撃は用意。

「クェェ!」

アブソープションを起動。細いレイピアは切るためでも突くためでも、エネルギーを吸い上げるための武器。
狙うは相手の左手。エネルギーを吸い上げる細剣は、バリアにあたってもエネルギーを吸い上げるという目的は完遂できるからだ。
籠手状のアームはバリアを展開する類のものが多いことを、経験上マスターである少女は知っている。
レイピアが、振るわれる。早くは無いが、腕を上げてかわしたところで、その先のボディに攻撃が向かうだけ。

LEGの出力はまだ止まらず。氷は周囲に広がり、厚さを増していく。
たとえ脱出したとしても、周囲は凍った草と凍りついたツルツルの地面とで、最接近を阻むだろう。

どうみても正気ではない構築は、草原のステージを上手く利用してビルド時点での差を埋めてきている。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/23(木) 23:55:07.96 ID:gTZuDZf+o<> >>649
左手を狙い、真っ直ぐ伸びる細剣

「――奪え<ツヴァイ>」

迫る細剣、ソレに応じるように左掌は開かれる
その掌部に搭載された紅色の孔

其処から溢れ出す同色の閃光は、エネルギーのオーバーフロー
エネルギーフィールドが広がりそれはバリアへと姿を変える

その細剣は突如現れたそのエネルギーの壁に一瞬動きを止める

開かれた掌が掴みかかるように、その細剣へと伸びていた
紅の閃光はその細剣を侵食するように、禍々しく纏われていく

『―――ウェポン・スティーラー』

機械的な、そんな音声が響き渡った
その瞬間、カーネル側のウェポンの表示が1つ消えるだろう

//KP使用>>644 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 00:07:46.30 ID:bsnfTgaco<> >>650
「えっ!?」

技術者の早緑をしても知らないパーツ。
相手の外部武装を奪う。そんな戦術が合法世界にあるとは思わなかった。
油断していた。甘かった。自分のせいで波動ペンギンの可能性が否定される。――駄目だ。ここで諦めるのはまだまだ早い。

武装を奪うまでの僅かな間。その間にエネルギーを少しは奪えている。
ミサイルは内部の火薬に点火するだけ。弾数制限がある分、電力消費は少ない。加えて移動しない足。
使った電力は、ほぼ脚部による冷却効果だけだ。ちょうど、相手から奪い取った少量の電力と釣り合う程度。

波動砲を打ち終えれば、ちょうどカーネルのエネルギーは空。これからのエネルギー消費を最小限にすればぎりぎり発射後にバッテリーが残る。
けれど相手の手にはエネルギーを奪い取るアブソープションがある。どう考えても不足。
冷却機構を切る。もはやインファイトは不利。

強靭なLEGが、相手同様に凍り付いていた足を引き剥がそうと動く。
次の瞬間、地面を向いていたミサイルポッドが火を噴く。小型の速射砲を三発。氷をぶち割りながら反動で浮き上がり、地面に向けて中型分裂弾を振り撒く。
こちらが脱出した直後に、相手の足元の氷も罅が入る。タイミングさえあえば回避できるだろう。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/24(金) 00:23:33.02 ID:goHjHn9Yo<> >>651
黒色と紅のエネルギーに侵食されるアブソープション
それを左に、ダガーを右に
左右に刃を構えると、迫り来る弾丸

それと同時に足元の氷結は砕けるが、反応は遅れる

射出されたダガーが、数発の弾き飛ばす
だがそれで迫り来る攻撃を防ぎきれない

アブソープションを投擲、それはダガーと同じように数弾攻撃を防ぐだけだ

真の狙いは

「―――エネルギーフィールド、全開ッ!」

アブソープションを放り出したその掌から溢れ出る紅の閃光
それが拳を覆うように展開し、分裂弾を弾き飛ばす

だが、全てを防げるはずもなく
装甲の薄い黒の機体の耐久度は目に見えて減っているのがわかる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 00:35:25.52 ID:nkp8ygaDO<> >>all
『――後は、待つのみか』

【忍者崩れは墜ちた。
 アフロも、もう戦闘継続は出来ないだろう。
 自分のやるべきことを完璧な形で完了出来たことに満足感を覚える。
 無論、これも仲間のアシストがあればこそ。
 今、その仲間は最後の足掻きによって確実な勝利への架け橋を作り上げた。
 その躯は半身を奪われているというのに、恐ろしい行動力と実行力だ。
 私は残念ながらクランクアップ、異形の怪物がスナイパーを討ち取ることを信じるだけだ】

「君もきっと2、3年すれば……いや、そうだね。
子供でいるって言うのは素晴らしいことだよ」

【ナオヒロは吸血鬼の主人になにやら格好つけている。
 ナオヒロ自身、まだ中途半端に子供の癖に】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 00:36:16.68 ID:bsnfTgaco<> >>652

当たるとは思っていなかった。ミサイルポッドの発射口回転は決して早いとはいえず、狙いも甘い。
空中に跳びあがる、ということの方を主目的として採用した武装だ。火力面では活躍していなかった。

「ケェェエエエエエエァ!!!」

それが、当たる。戦いの雄叫び。カーネルは勝とうとしている。ならば勝たなければならない。
慧理が一度目を閉じて再度開ければ、そこには異様な集中が満ちている。
不要なものなどない。パーツとは夢。そんな理想論を語っていた眼とは、違う。きっと少年と同じベクトル。
――負けない。 それが青薔薇の絶対のルール。勝負に負けようとも、試合に負けることは許されない。

LEGのスラスターを使い、姿勢をくるりと変える。クチバシを下に、足を上に。
それにともない、ミサイルポッドは自然と上空へ発射口を向ける。

速射砲を残っている分だけ上空へ発射。その反作用と、重力とを糧に、ドリルが眼下の機体に迫る。
回転。虚空を切り裂き、悲鳴を散らす。風の金切り声と背後の爆発音。

ドリルクチバシが勢いよく落ちてくる。
クチバシを避けるだけでは意味が無い。真に恐るべきはそのBODY。通常サイズを遥かに超えた大質量の下敷きになれば大ダメージは必然。
避けるなら大きく避けなければならない。それも、この凍りついた地面の上から、だ。

波動砲という浪漫を捨て去った時点で、この機体は同パーツのまま生まれ変わった。
目的も戦術も思想も捨てて、鉄の塊が墜ちてくる。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 00:50:31.67 ID:UgWYXWmG0<>
屋根に落下したバジリスクは、ご自慢の曲芸マニューバをできずにバウンドし続けた。
壊れた埴輪のように不恰好な下半身の欠落した姿が、荒れた風と踊る。

【HEAD】《DESTROYED》【BODY】14%
【R.ARM】《DESTROYED》 【L.ARM】《DESTROYED》
【LEG】《DESTROYED》 【ENE】0%

ややあって、殆ど何も残さずにエロニンジャは沈黙し、樹脂スクラップになった。
全機体のレーダー表示から消失。そしてチーム全体でリンクされていたデータの更新も停止。

少年少女の過ちと再生の記録は、もうじき完了する。
茶色の虹彩に許されたのは脱落した猟犬のぶんまで、その顛末を見届ける事だけだった。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/24(金) 00:52:16.15 ID:goHjHn9Yo<> >>654
バリアの連続使用、脚部スラスターの使用
ただでさえ少ないバッテリーは、既に殆ど残ってなどいなかった

素早く、残り残量での戦法を組み直す
だが、どう足掻いてもこの巨体を回避し、致命打を当たえる

たった一つ、分の悪い賭けだが一つだけ思い浮かんだ
空中で敵HEADパーツのHPを0にする

迫りくるはHEADパーツのドリル
高速接近し、ドリルを回避、そして全火力を食らわせる


「……バッカみてぇじゃねぇか」

―――だが、嫌いじゃない

脚部に搭載されたスラスターに火が入る

爆発音

弾き出されるように黒の弾丸とかしたその機体は、無骨な拳を大きく振りかぶる

風を切りながらも更なら加速
その残りエネルギーの全てを掛け、加速につぐ加速

一定間隔で響く炸裂音

真っ直ぐ、真っ直ぐ
その拳は、お互いの加速も相まって必殺の一撃

外れれば、その身は敵に貫かれ
当たれば――― <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/24(金) 00:59:40.71 ID:l3pCWXXHo<> >>all
『がっ…は…』
真正面に来たレイピアが胴体に突き刺さるる
避けられない事はなかった、しかしリーダーを狙う絶好のチャンス。ここで下手に避けてレッグなどのパーツが壊れては終わりだ。多少運任せでも掴み取りたかったのだ
たとえ、それが相手の想定内だとしても
ボディのダメージは残り8パーセント。危ない
満身創痍だ。殆どのパーツがボロボロで、バッテリー残量もあとわずか
ほとんどの観客はアナグマスナイプがこのまま倒れ、決勝行きは相手の名も知らない寄せ集め軍団になるるだろうと考えていた
しかし、フィールドに立つ者は諦めなど考えていなかった

「【俺たち】を…」
『「ナメるなあああッ!」』

スナイパーライフルを構え、高速でエルピスの頭を狙い、撃つ
ただ彼の中にあるのは勝利のふた文字のみ
積ませられる前に、こちらが積ます! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 01:08:44.95 ID:bsnfTgaco<> >>656
加速。加速。加速。巨体にかかる重力は暴力的なまでに強大。
けれど足りないと、そう感じた。

アンダーグランドな戦いで、最後に勝負を握るのは直感と運だ。
互いに勝つために全力を尽くせば、後に残るは才覚と天命のみ。
努力の差など生まれない。誰もが死ぬ気。そんな世界に、いたことがある。

逃げるどころか突っ込んでいく機体を認識する次の瞬間には、もう結果が出ている。
だからその選択は、相手LEGやBODYが見せる僅かな前動作、そして相手プレイヤーの表情と気配とを理由にして決めたもの。

残る中型ミサイルも、LEGの誘導ミサイルも吐き出す。この一点に賭ける。
さらなる加速度が機体を揺さぶり、常識の範囲の耐久性しかない両ARMが不穏な振動音を立てる。


ドリルが地面を貫く。氷の板が飛び散る。泥と土とが爆散する。四方八方へと法則なく飛ぶ。

その一つ。比較的大きな氷塊が、接近する相手へと向かって飛んだ。
力強く、綺麗なフォームで打ち出された拳が、氷を砕く。
それが原因となって、カウンターはいくらか逸れた。

爆発と衝撃と破砕と落下と殴打が重なる。
何が何だか分からないくらいにぐちゃぐちゃになった不協和音が狂ったように鳴り響く。

【HEAD】22%
【ENE】 71%

一撃必殺には、及ばない。

/KP使用 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/24(金) 01:28:03.21 ID:OY5+cYTzo<>
『カ゛ッ!』

高速回転してレイピアを投げ放ったミケはプツンと切れたガシャンとビルに落ちバウンドする。
後はそのままズルズルと落ちるていくのを待つ身。それを見てシャドーはふう、とため息を吐いた。

「おい、気合で持ちこたえろよ、完全勝利にならねぇじゃねえか」

『ガーガーピー(んな無茶な……)』

DVNOを弄りながら状態を確認する。辛うじてバッテリーが残っているだけの常態か。
もはや手の下し用のない戦況を眺めつつミケには新しいパーツを買ってやるにしても、
アンダーグラウンドは新しいのを買うか、修理するか、カリカリとスマホ端末を弄りながら考えていた。

アナグマスナイプの銃口はまだこちらを狙っていた。
うかつにもヒヤリとした。見ているしかないという状況はどうも慣れないものだ。

「(どう転ぶかね、頼むから俺を惨めな気持ちにはさせないでくれよ、お姐さんよ)」

次の瞬間勝負が決まるかもしれない──ゴクリとツバを飲んで迂闊にも思ってしまった。
それは、神にも祈らなかった彼の純粋な懇願だった。アナグマの最後の執念、認めざるを得ないのか。もう一度ため息を吐いた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(岐阜県)<>sage<>2012/08/24(金) 05:12:05.70 ID:goHjHn9Yo<> >>658
【HEAD】 0%
【L.ARM】 0%
【ENE】 3%


彼の端末に表示された情報は、無常にも彼の敗北を示していた

微かに残ったエネルギー
振り抜いたAPMパーツはその衝撃に耐えられず
他のパーツも壊滅的なダメージを受けている

何かを叫ぼうと口を開くが、そこからは何も漏れ出さない
首を軽く振るう

だが、これだけは、これだけは口にしなければ……



「俺の、俺達の負けた」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/24(金) 20:44:19.96 ID:nsLHiyx/o<> 【KP使用】

>>657
 DVNOからは、一切の表示が消えていた。ひとつだけ、ぽつりとパネルが残っているのみ。
 最早下すべき命令はない。より早い方がそれをするだけなのだから。
 シンクロニシティ。私は世界を肌で感じる。
 区切られた箱庭のような摩天楼を、私たちは掌握する。

 落下したミケくんと、影丸くんの祈り。
 立ち尽くすルリちゃんと、ナオヒロくんの信頼。
 砕け散ったエアロニンジャと、パートナーの戦意。
 踊り続けたステップサムライと、パートナーの情熱。
 満身創痍のアナグマスナイプと、パートナーの執念。
 その意識の揺らぎの一片までもを手に取るように理解する。

 ――エルピスの鼓動。エルピスの吐息。エルピスの感情。エルピスの感覚。そのすべてが、私と同一になっていく。
 手先の末端を舐めていく風の愛撫を感じ、『私』を狙う相手の熱い視線を感じる。
 愛しい、愛しい、偽りの希望。私を絶望の淵から捉えて離さない、素敵な貴方。最高の相棒。
 さぁ、零秒の先へ行こう。

 思い起こすのは、あの日のこと。
 まるで未来を見たかのようなあの動き。それに追随したあの一瞬。
 進まない時間の中で未来を見た――あの感覚を、もう一度!

 引き金を引く乾いた音。銃口から伸びる光。火薬が炸裂する音。私を貫くだろう、重苦しい銃弾。

 たったそれだけ。指がDVNOを叩き、体は自然と動きを見せた。
 まだそれは、弾丸が発射されるコンマ数秒前のこと。
 きっと予兆などないはずで、けれどそれは私が感じた真実だ。

 傾いた頭のすぐ右を、銃弾が通過していった。

「お、お」

 エクスタシー。
 思わず息を漏らしたのは、どちらか。
 心身合一、快感さえも二人で一つ。まして思考なんて、何をいわんや。
 まだ終わりではない。震える体を乱暴に、後ろから狙うミサイルがある。
 だがそんなもの、初めから歯牙にもかけていない。
 単純なこと。不要になった殻なら、脱ぎ捨ててしまえばいいのだから。

「エェェェェェェェェェルピィィィィィィィィィィィィィスッッッ!!!」

 ――【ニュンペー】。

 ばらりと翼が解け落ちた。次いで、体が自由になった。
 ヒールによる追加パーツとの接続が解除され、密着するように固定していた各部ががたりと開く。
 押し出されるようにして脚部下のカタパルトが上昇し、自由になった膝をたわめる。
 彼女は弾丸のように飛び出した。
 異形の殻を脱ぎ捨てた乙女は、息を呑むほどに美しい。

 ミサイルは追加パーツに直撃し、その巨躯を半分以上粉砕した。だがもう、そんなことは関係ない。
 お前にカラテが出来るのか、と誰かが問うた。
 空中で、ゆっくりと体勢を整える。
 接地していないから少々勝手は違うし、ハイヒール履いてなんぞもってのほかだが、ここはフィールグラムの上。そんな無法も許されるだろう。

 ズドンと重い音とともに、側頭部を粉砕する勢いで、完璧なモーションの回し蹴りが叩きこまれた。

 国重蘭花、空手道二段である。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/24(金) 23:27:35.23 ID:l3pCWXXHo<> スズメザシを放った反動でふわりと体が後ろへ浮かび上がる
その勢いで腕が千切れ、脚も外れた。ボロボロの状態で放った弾丸
しかし、それがエルピスの頭部を捉えることはなかった
機体と持ち主がまるで一つになったような動きで紙一重
最後の攻撃も避けられた

叫び声と共にエルピスの翼が落ちた
ゆらりゆらりと体制を整えての落下攻撃
ハイヒールを履いたカラテカが迫る
スローモーションの衝撃
DVNOのスピーカーから炸裂音
頭が砕け、血の代わりに人工知能が飛び散る
一瞬、間を置いての観客の歓声と悲鳴
3万5000人が、揺れた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 23:49:51.25 ID:2pWsDtkAo<> >>661-662
 起死回生を狙って撃ったミサイルは、追加パーツという巨大なフレアに食らいついた
 冷静さを取り戻した棋士の最後の一手は、けれど、"詰めろ"から逃れられない
 返したはずの王手は、食いつぶされた。そして、詰みという結末が壇上に広がる
 爆裂する――爆裂する――自分たちの勝利という栄光が、巨体と共に崩壊していく

「あ……」

 思わず、声が出た
 腹筋も、何も使っていない、ただ喉を息が通り抜けただけで産まれた音
 それは、堤防を最初に破った一滴

 胸の中で感情が爆発する。悔しさと悲しさ、色々な感情が混ざり合って胸の中を掻きむしる
 それをこのまま吐き出してしまいたい。ぶちまけて、無様に泣き転がりたい
 でも、こみ上げてくる熱い雫を、狭まっていく喉を、必死で押しとどめる
 ――男は涙を見せちゃァいけないよ
 その言葉は何のビデオで聞いたのだったか
 コミックじゃなくて、もっと古い、おじさんたちが刀を振り回す時代劇のフィルムを見たときだったかもしれない
 記憶えてはいない。けれど、体が覚えている。だから、必死に必死に歯を食いしばって堪え忍ぶ

 歓声の嵐が体を打ちのめす
 いつもならば喜びを持って受け入れるそれは、敗者にはあまりにも苦しくて
 ――とても懐かしい、苦い味がした

 ごくり、と唾を飲んで、決然と前を見る
 勝利に沸いている相手チームを見据える

 ふぅ、と深呼吸――どんな涙も、苦しみも、それで全部仕舞い込む
 少なくとも、今は、仕舞っておこう
 そうして纏うのは、剽軽なダンサーとしての仮面

「Excellent! 最高のFightだったよ!」

 そう、称賛の言葉を投げて、

「でも、次は負けないからね! 楽しみにしててよ」

 きししと笑った <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/25(土) 00:11:35.66 ID:/qxzkRM50<> >>661-662

ゴアめいた破裂を称える会場で、熱狂――まさに或る系統の狂気が炸裂していた。
完全には混淆せぬ乱雑さを持ちながら、強烈な指向性がそこにはある。

「うぅ、参りました……」

思わず、情けない言葉が口をついて出る。身も心もまいった。
蓋を開けてみればバジリスクは一度も攻撃を当てていない。あの電力過剰供給は事故に等しい。
目が覚めるのが遅すぎた。
隣の、飄々とした軟風に刃を隠すほどの少年さえ、涙を流している。

だけれど佑美は、それを堪えた。
自分が弱さを見せる資格などない。そう考えるだけならいつもと同じだけど。
今日の少女は、いっそ清々しく、されど笑うでもなしに、ただ朝の日差しに顔を晒すように振舞った。

『ギャハハハ! なんだてめェリアルカラテできんじゃねェの!』

バジリスクとて、もはや不満はない。

フィールグラムの中での戦いは、虚実の皮膜の間にあるもの。
全身で感じられる虚構が与える昂ぶりこそ、バジリスクの求めるもの。
だがそれも、最高と感じられなければ只の嘘に過ぎぬが。

今日の戦いは、確実に真実であった。そして、これから見られるかもしれないもっと美しいものへの助走だ。

『歌舞伎くんよぉ、来年の話は鬼が笑うぜ! まずは三位決定戦よなあ。エエッ?』

ただ、目の前の事を愉しむ。そこに未来があるかは与り知らぬが、希望は満載だ。

「決勝でも絶対に勝って下さい」
「私たち、思うんです。全国大会優勝チームへのリベンジが出来たら良いなあ……って」

「……わわっ、ごめんなさい、今のはちょっとだけ忘れて!」
『なーに言ってんだ』
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/25(土) 00:13:10.98 ID:/qxzkRM50<> /あ、喋ってるのはDVNO側がAIを中継しているという事で <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/08/25(土) 00:27:33.71 ID:TQ4GmZjvo<>  着地の衝撃を殺しきれず、エルピスは身を捻って受け身をとった。
 その際にぼきりとヒールが折れて、音を立てて転がる。
 私はそれを見届けて、くたりと座り込んだ。

「はは、は」

 ほんの僅か。指先が触れる程度。でも、そこへ届いた感覚がある。
 零秒の先――便宜的に私がそう呼ぶそこは、原理としてはきっと難しい話ではない。
 相手の呼吸を読んで、次の一手を見極めること。それをもっと極端にやる。
 空気の一片までもを理解すれば、未来を思い描くことは容易い。
 零秒。時間の経つ前に、その先へ行く事。
 ようやく入り口に立てたのだ。その境地へ。その世界へ。
 私はようやく、

「――届いた、んだ」

 強く握りすぎたのか、拳は真っ白になっていた。
 解きほぐすように指を剥がせば、じわりと緩やかに血が通っていく。
 気を抜けば意識を失いそうなくらいの疲労感。降りてくる気だるさは心地よく、それ以上に力を奪う。

 ふと顔を上げる。
 形を失っていくフィールグラムの上で、予想通りにエルピスは痙攣していた。大方、打撃で敵を叩き壊す快感に打ち震えているに違いない。
 視線をもっと奥に向ければ、涙したり、うつむいたりしている子供たちの姿。
 ぼーっとそれを眺めているうち、私たちが勝ったことに気がついた。

「おぉ……やったじゃん、私」

 普段ならば飛び上がってポーズの一つでも決めてやるところだけれど、今はとてもそんな元気はない。
 集中力を使い果たしたというか、なんというか。
 けれど流石に取り繕う分の元気は捻出しないと不味いので、死力を振り絞って背筋を伸ばす。
 笑おう、笑顔だ、まずは笑顔。次にポーズ、ピースサインとか。ドヤ顔もおまけ!

「どーうだ、みたかー! 私たちの華麗なる勝利を!」

 ぶいっ! と元気よくベンチへピース。
 チームメイトにはサムズアップ。
 相手チームには――。

「うんうん! またやろう! 今度は完璧に勝つからね!」

 心の底から感謝を込めて、再戦を受け入れよう。
 まだ年若い次代のヒーローたちへ、大きく手を振ってエールを送った。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/25(土) 20:39:33.51 ID:E8M0kKBDO<> >>all

大人顔負けの天才児達はしかしまだまだ子供で。
感情を剥き出して全力でぶつかってくる様は羨ましいようで眩しくて。
今も負けを直ぐにバネに変え、次の跳躍へのエネルギーにしてしまっている。
本当にHMPファイトを楽しんでいるのだろう。

「……しかし、今回は綺麗なまま終わったね」

『修理代が浮いていいじゃないか。少々蚊帳の外のようでつまらないが』

「ルリの立ち回りが上手かったんだよ、多分」

『ふん、そういうことにしておいてやろう。……ただ、多分をつけるな。情けない』

「ふへ、ごめんね」

【平地へと戻ったフィールグラムの上を行き、ナオヒロの元へ。
 確かに今回はエルピスという見るからに脅威なHMPがいたからそちらに戦力がいっていたのもあるだろう。
 吸血鬼がズタボロなのは真っ先に敵陣に切り込んだからか。
 こちらは少々待ちの姿勢をとっていたし。
 ……つまり私が無傷なのは】

『――ッお前のお陰ー…なのかもしれないがー、……お前がヘタレの所為だナオヒロー!』

「えぇっ、なにが!?」

国重さんのサムズアップに片手をあげて応えていたら、ルリが叫びながら殴ってきた。
なぜだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/08/25(土) 22:59:59.60 ID:dHWgtsnYo<>
「決め技が────蹴り……」

突っ込まざるを得なかった。厨二病の癖に意外と普通の感性の彼は。
しかし念願の勝利は勝利。やれやれ、と溜息を吐くと右目を閉じ、
ギリギリのせめぎ合いで勝利をもぎ取ったリーダーに対して物言わずに親指を立てて返した。

しかしながら勝利に対して手放しで喜ぶ様な事は無かった。彼が望んでいたものは手に入らなかったのだ。
負けた癖に自分の深い所にある感情を押し殺し、こちらの勝利を称えてみせた子供らしからぬ彼に対して、

「やっぱり、かわいくねーガキどもだな。悔しかったらガキらしく泣いても良いんだぜ、笑ってやるからよ?」

などとファイターらしからぬ悪態を付いてみせる。大人らしく爽やかに決められない所はやはり彼もまだ子供という事か。
そんな彼のジーンズの裾を引く者がいた。それはボロボロなまま、フラフラと主の元に戻ってきたミケだった。

『ねぇねぇ、カーくん?俺、頑張ったかな?ボロボロだよ?頑張ったよね?ほめてほめてー』
「その様じゃな……‥。まあまあって所だな」

と、ヒョイっとシャドーは猫見たくミケの首元を掴んで目の前に持ってきた。

「まあまあかー──そうだねぇ、まあまあだったねぇ。へへー……へへへー、次はもっと頑張るよぉ」

ピーピーガガー割れているが、それはとても満足気な幸せそうな声だった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 21:12:53.64 ID:p6pdnGeHo<>  今日も今日とて、ショップは盛況である
 夕暮れ時ということもあって、その混みっぷりは半端ではない

(さて……組み替えてからの初めての実戦だけど……ま、どうとでもなるかな)

 そんなことを考えながら、筐体にエクリプスをセットして
 フィールド選択をランダムに設定

「今日はよろしくね。いいファイトをしよう」

 挨拶は忘れずに、そう告げて――ぶぅんとフィールグラムが起動した

1.6 市街地
2.7 廃墟
3.8 ハイウェイ
4.9 闘技場
5.0 草原 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 21:17:34.12 ID:p6pdnGeHo<> >>669
【闘技場】
 読んで字の如く、闘技場である。 
 観客席も戦場に含まれているが、観客は皆無
 どれほど暴れ回っても、被害は出ない
 遮蔽物はなく、ただ高低差だけがある
 機体相性と、腕が全てを決める、単純ながらも奥深いステージだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 21:37:44.94 ID:F6ppysADO<> >>669
「ええ、よろしくお願いします」

ヘッドセット、タブレットとDVNOをはじめとしたいくつかのアプリは準備万端、ルリも既に筐体の中に入っている。
相手のHMPはかなり手を加えられていて、見た目からして不気味な雰囲気を纏っている、見かけ倒しであればいいが…。


「うーむ、闘技場かぁ。難しいな」

ランダムに選出されたフィールドは闘技場、遮蔽物らしい遮蔽物もなくシンプルなフィールドだ。
しかしそれだけに地力での勝負になりやすく、カードによっては完全なワンサイドゲームになることもある。
ルリはこのフィールドが苦手なわけではないが……まずは先手を打ち、その対応から見せて貰うことにしよう。

「ルリ、いこうか」

【ナオヒロからの指示は一定速度を保ちつつ接近、ポイントまで近付いたら掃射しつつ相手を中心に旋回、と。
 あまり面白い指示ではないが一手目だ、様子見なのだろう】

『始まりはゆったりと、か』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 21:50:40.59 ID:p6pdnGeHo<> >>671
 ず、と見世物の為に連れてこられた剣闘士のように、ゆらりと、その不気味なHMPは降り立つ
 ドクドクと脈打っているようにすら見える兜には、毒々しい色の羽根が挿されている
 まるでその色に合わせたかのように胴体に背負われている頭胸部も、また毒々しい
 上半身は兜から露出している顔と、扇状的な体毛の生やし方をした胴部、
 下肢に目をやれば、切り裂かれているかのように見えるスカートを守るように浮かぶ、苦悶に満ちた死人の顔が四列
 スカートの端から覗く脚は、錯視を狙っているのか膨張色が使われていた

「エリ。調子はどうかな」
『良好です! 視界よし、重量よし、バッテリーよしです!』
「一応脚を重くしてるから大丈夫だとは思うけど、重心が後ろに傾いたときはエネルギーは気にせず飛ぶんだよ」
『はい!』
「じゃ、行っておいで。いつものように、距離は取らないようにね」

 そんな不気味な外見とは裏腹に、明るい返答を返したエクリプスもまた前身を開始する
 その動きは奇怪と言うほかない
 風にはためくスカートは膨らんでは窄むを繰り返し、開閉するパラシュートのように空気抵抗を絶えず変化させ、
 まるで波打つように速度に緩急がつく
 相当に間合いが計りにくい――いったい、次の瞬間にはどの程度の速度で来るかが予測できない
 さらに予測の難しさを助長しているのはその足。
 戦場に似つかわしくないハイヒールは、闘技場の床に何か細工でもされているかのように滑るように大地を駈け、
 時に、足の方向転換を伴わずに直角に真横に移動しすらする

 ナオヒロの打った初手、掃射しつつの旋回は変更を余儀なくされるだろう
 あまりにも、その動きは奇抜に過ぎた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 22:21:33.47 ID:F6ppysADO<> >>672
【この相手、的を絞りにくい。
 掃射するにも旋回するにも相手の機動に振り回されてしまい縋り付くので一杯一杯、とても攻めている気にはなれない。
 鬱陶しいスカートによって足の動きから次の動作を読むことが出来ず、相手の進路の先読みも不可能だ】

『ナオヒロ!次を寄越せ!』

「って言っても、ロックオン武器があるわけじゃないしなぁ。
接近したらそれだけ挙動が唐突に感じるだろうから過度な接近はしないように」

取り敢えず掃射を停止、ゆっくりと後退、それに左右移動を織り交ぜて移動しつつ、相手の動きに慣れるよう観察を指示。
ルリに不利ではないと思ったこのフィールド、なまじ障害物がない分相手の挙動を縛るものもない。
ルリには不利ではないこのフィールド、相手にとっては有利でしかないようだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 22:42:02.95 ID:p6pdnGeHo<> >>673
 と……考えているナオヒロとは裏腹に、シンの考えは正反対を行っていた

(なかなか、詰められないね)

 確かに、脚部の変則軌道は予測も難しく攪乱にはもってこいだ
 けれど、それだけ
 あれは本来他のロイヤルローズと合わて、初めて真価を発揮する
 けれど、あれを使う気にはなれなかった
 だからこそ、欠点を補うための絡新婦之肚を使った

(フィールドに左右されすぎるアセン、というのも考え物かな)

 遮蔽物……あるいは、建造物でもいい
 何か有れば、そこを登って相手の裏をかけただろうに
 文字通り、罠を張って待つ蜘蛛のように

(でも……それだからこそ、面白いんだけどね)

 ふ、と思わず笑みを零しながらDVNOから指示を飛ばす
 長期戦に持ち込むのは、分が悪いからだ――

――

 伝えられた指示に、エクリプスは思わず首を傾げそうになった
 けれど、それをやれとシンが言うのならばやる
 エクリプスにとって、指示とはそういうものだ

『逃がしませんよー!』

 左右に移動しながら後退するルリに向かって、一気に脚部のブースターを吹かした
 瞬間的な高加速――1,2……機械の精密な2カウントの後、レームが伸縮、スカートが展開し、空気抵抗が増大
 急激な制動によって、慣性で体が吹っ飛びそうになる
 その慣性をハイヒールに伝達
 搭載された特殊機構が、伝達された慣性を変換、前身と同時、左へ流れる
 

『ご奉仕です!』

 轟――と音がして、右腕のムベンガが火を噴いた
 大口を開いたかのような楕円を描いた粒弾が、ルリ目がけて飛んでいく
 狙うのはボディだが、その楕円の大きさから言って、狙い通りに着弾すれば、両腕と腰を含む範囲までもがダメージを受けるだろう
 避けるにしても、円が大きい為に、大きく避ける必要がある
 少しでも、避け方を誤れば…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 23:19:18.71 ID:F6ppysADO<> >>674
唐突な直線突撃、と思えばそのまま左へ流れる。
なにを、と思った次の瞬間には砲口から弾丸が放たれた。
予め作成しておいた簡単な指示群の最適な組み合わせは、どれだ。
目を走らせ、タブレット面に指を滑らせる。

【弾丸は多分胴狙い、しかし当たればその衝撃は全身を揺らすだろう。
 指示はまだない、それはそうだ。
人間の思考速度はそこまで早いものではない。
 半とはいえAI、自分でどうにかしてみせる。
 迎撃は不可能、やはり回避が盤石。
 今後退している勢いをそのまま回避につなげよう。
 前部スラスターの勢いはそのままに、後部のアクティブスラスターを下に向けて噴射。
 高く、バック宙するような軌道で弾丸を跨ぐように避ける】

「っ!」

結局指示は間に合わず、ルリが自力で回避した。
しかし、その回避はあまりに隙だらけ。相手に次の行動への猶予をたっぷりと与えてしまっている。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/26(日) 23:35:35.48 ID:p6pdnGeHo<> >>675
 ――誤った?
 シンには、ルリの回避が狙った物なのかどうかがわからなかった
 パーツ構成を考えれば、あの状態で敢えて攻撃を誘って――という作戦は有り得る
 ルリの装備しているショックラッシュは強力なパーツだ
 間合いこそ狭いが、当たれば強制的な一時停止が待っている
 そこからの機銃掃射……あの位置ならば、間違いなくボディからヘッドを狙うことが出来る
 食い付いて良いものか……短い時間の間に、幾つもの対策が浮かぶ
 でも、と彼は思いだした

(……経験を積ませるには、良い機会かな)

 敢えて罠に飛び込ませる
 自力で対処させることによってエリに学習させる
 それが目的だろう?
 なら――

「貫いて、エリ」

――

 貫け、と言われたならばすべき事は一つだ
 左に流れ、正面を向いている体を、ヒールの踵を使って旋回
 ルリと正対するような状態にして、ブースト。一気に距離を詰める
 同時、背部のサブアームの二本がレールのように左腕の前に伸びる
 そして、通電――簡易のカタパルトと化した蜘蛛の脚の間を、エクリプスの持つミセリコルデが通り抜ける
 位置と、刀身の長さから考えて狙うのは頭――タイミングを外したなら胴

『レールガン、です!』

 ブースターによって加速した本体の速度に、爆発的な加速を加えた、慈悲の名を持つ短剣は、ルリを射抜かんと迫りゆく
 これを避けたのならば、ルリにとっては絶好の機会だ
 なにせ、カタパルトを通り抜けた後もその物体を持っているのである、腕部への負荷は非常に高く
 まだ、ムベンガのリロードは終わっていない
 加えて、流石のロイヤルローズも、前身を突然後退には出来ない
 ――少なくとも、このアセンでは不可能だ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/27(月) 00:09:59.08 ID:0mPW6C3DO<> >>676

【躯が徐々に上下正しい関係に戻っていき、同時に地へ降りていく。
 回避の成功に息を付く暇もなく、この間にも敵は眼前に迫ってきていた。
 見たとこと発言からして、腕ごとナイフを電磁加速させた突きだ。
 本命は頭、時点で胴、先程から確実にこちらを取る気できている。
 しかしこれは――――】

―――――チャンスかもしれない。
独特の挙動によって、距離を取られればこちらはジリ貧だ。
しかし相手からこちらに飛び込んできてくれているのなら……。
相手は攻撃姿勢、それも驚異的なスピードを持った突きで来ている。
この突きから次の攻撃に繋げるのは容易ではないはず。
骨も肉も斬らせれば、魂を取れるか――――?

「ルリ!」

先程出しかけていた指示を組み替え、即送信。

【ナイフの突きをボディで受ける。
 中量級のボディが簡単に抉られ、右の脇腹に風穴が生まれていく。
 それと平行してこちらも左手を伸ばす。
 帯電を始めたばかりのこの手では軽く触れただけでは麻痺させることは出来ない。
 確実に相手を掴み、逃がさないようにしたい。 ソレさえ出来れば、右のアイゼンゼクトがヘッドに風穴を空け返してやれるだろう】

『エグい指示をくれるようになったじゃないか……!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/27(月) 00:21:59.63 ID:etT8cZzfo<> >>677
 抉ったのが右脇腹で、伸ばしたのが左手だった、というのがルリの勝因であろう
 エクリプスは、咄嗟に回避行動を取ろうとしたが、抉り穿った以上、進行方向は限られていた
 僅かな一瞬の遅延。それが、明暗を分ける。それが至近距離での戦いだ

 乱射されるアイゼンゼクト
 幾ら兜を被っていると言っても、フェイスガードのないものである以上、真っ正面からの乱射に効果はない
 瞬きのうちに、HPが零になり、

≪エクリプス、ヘッドパーツHP0%。よって、ルリの勝利となります≫

 システムメッセージが流れ、フィールグラムの投影が消える

「んー……まだまだ、みたいだねぇ」

 あははははは、とシンは苦笑していた

『あれが決まってれば勝ちでした……』
「ま、次がんばろうか。 うん、なかなか面白い勝負だったよ、ありがとう」

  <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/27(月) 00:50:25.72 ID:0mPW6C3DO<> >>678
「こちらこそ、ありがとうございました。
最後までクレバーにやられていたらこっちが負けてましたよ」

実際、わざわざ直線の突進攻撃を取らずに遠距離から撃たれていたらこちらの攻撃が当たらない以上いつかやられていただろう。
というかあの脚部の特性を考えれば射撃型の方が安定するような……。
……もしかすればこのフィールドは彼のHMPにとっても有利ではなかったのかもしれない。
あの新絡婦の蜘蛛脚も最後の突きにしか使用していなかったし。


『ナオヒロ、回収して早くポッドに入れてくれ』

と、ルリから声がかかった。
損傷度32%の傷はやはり浅くないようで、戦闘終了時に倒れてから起き上がろうともしない。
今回は結果としてルリのバック宙が布石だった気もするので優しくしてやるのもいいかもしれない。
余計なダメージを与えぬように慎重にメディカルポッドに入れてあげた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/28(火) 23:02:26.64 ID:cIPNiSWSo<> 【回転寿司店 情報之海/回る魚は躍れない】

「ひゃっはー!」
『ヒャッハー!』

まだ開店直後の回転寿司店。店の名を情報之海。
HMPが板前をやっている、というのを売りにしているにも関わらず、決して調理作業を公開しようとはしない謎の店である。
注文は携帯端末を通して行い、頼んだ品が回ってくる形式。板前は客からは見えない位置におり、店内で見れるHMPは防犯用のものだけ。
訪れた客は口をそろえて「何だか不気味だった」という感想を口にする。何だかんだで味は良いので人気はある。

とはいえ朝方の店内にはまだ客も少なく……というか一人と一機しかいなかった。

「与太郎のナイス勝利で今日もご機嫌だぜ! 総計で18倍か、稼がせてもらったぜぃ!」

日に良く焼けた肌は健康的小麦色。細身の身体にバランスよくついた筋肉は美しく、ともすれば美青年と形容することもできそうだが
伸び放題のヒゲ。そして値の張るサングラス。最後にヒャッハー。完全に一般人じゃない顔をしていた。

『ゴキゲンだァ!』

狼型HMP。自壊系マゾヒスティックランナー、シュトゥルムドライをいくらか大きくした外見。
その狼が、店内を疾走している。わざわざパイプ椅子の下を潜り抜けて走っているというのに、段々と速度が増している。
なんとも迷惑な客だった。いや、HMPは寿司を食べないので、客ですらない。

そして速度を増しているのは男の方も同じだった。既に軽く五十皿。空の皿を積み上げて巨塔を打ち立てる。
なおも食べる速度は落ちず、男の食事スピードに比例して段々と寿司の回転が速くなっていく。
食べる回る走る。ゆっくりと、着実に、店内では速度の概念が暴走を始めていく。

平時から異様な雰囲気で知られる寿司屋、情報之海は今日も異様である。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/30(木) 20:26:05.79 ID:DUJR6sPso<> もう八時だというのに、S市の駅前は人で溢れていた
忙しそうなサラリーマン、仲の良さそうな男女、禿げ散らかした汚い小太りの中年
掻き分け向かう先は一つ。HMP会社「リグナス」が直営する模型店だ

「ウフフ、大会効果でうちの店も大繁盛。ボーナスこんなに貰っちゃった」
『あのオッサン店長も気前イイなァ、本当によォ!
お、あれがその店じゃねーの。まだ売り切れてねぇ見たいだぜ!』

リグナスの直営するショップ「チューインガム」は、定期的に自社ブランドの限定商品を発売している
そして、今日は限定HMP・「ARIKA」の発売日なのだ
フィギア会社に受注しただけあって美しい容姿と、ドミネーターに変形するという個性
そのため前評判はかなり高く、発売前から初日に売り切れ確実と言われていた
しかし、発売直前になってリグナスはARIKAを限定発売期間が終われば通常の商品として発売することを発表。よって需要はガタ落ちした
しかし、それでも人気と需要が一定以上あることは確かである

「あ、あれだ。最後の一個だよ!ラッキー!」
『よっしゃ、急いで店の中に入って買っちまおうぜ!』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 20:47:22.70 ID:XVjvzEfNo<> >>681

「新企画の始動は嬉しいし抜擢も嬉しいですけどッ」

喪服じみた黒のワンピースの上に、使い古された白衣。
凡そセンスの欠片も無い着回しをした少女が、駅前を疾走する。

速くは無い。けれど迫力がある。
そもそも走ることにあまり適していない安全靴。身体に対していくらか大きく、裾が邪魔になる白衣。
けれど人と人の合間を縫うルートを見出すことにおいては、少女は優れていた。

「どうして今日に限って早くあげれないかなあー!」

扉を半ばタックルのような形で押し開け、息を切らして店内に入る。
心底苦しそうな呼吸をしながら足を進める先は、一つだけ残った新製品ARIKAである。


――発売日に買うことに達成感を覚える人がいる。
――人に感想を伝えることに優越感を覚える人がいる。

「はぁ……はぁ……ぜはぁ……」

けれど彼女の場合は、単に早くそれを見て手に取って、できればばらして解析して改造してみたい、といった純粋な願望でしかなく。
そんな純粋な願いは、案外傍迷惑なものであったりして。

だらだら汗を流しながら周囲を牽制しつつ店内を進む少女には、鬼気迫るものがあった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/30(木) 21:09:30.85 ID:DUJR6sPso<> >>682
『うわァッ!こっちにくるぞッ』
「何が?」
『客…か?とにかく、こっちに走ってくる!きっとアレ目当てだ!』

羽生が後ろを振り向く、そこには白衣をきた女性が全力疾走する姿
走っている方角、そしてあの表情…狙いは確実にARIKA!
最後の一つを懸けた、和平案がない戦いが起こってしまったのだ

「くそっ!負けるか!」

白衣の女性に負けじと力一杯走る羽生
しかし、あまりにも遅い。女性との差はどんどん縮まっていく
もともと羽生は運動が全くできない人種だ
その事に本人は不満を持っていなかったし困りもしなかったが、まさかこんなところで損をするとは
広い店内で商品の棚をくぐり抜け全力疾走
ここに、HMPバトルとは別の戦いがあった

『今だ!手を伸ばせ!滑り込め!』

パッケージまであと3m、羽生の手が伸びてゆく

(やったか!?) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 21:20:09.51 ID:XVjvzEfNo<> >>683
いかに道を拓くことに優れていようと、既に出来ている距離の差を覆すには、少女の脚力は心もとない。
一歩。足りない。もっと大きく。もっと滑らかに。

イメージはできる。理想的な走り。抵抗を最小に、風を味方に、大地と共に。
靴の裏から感じる痛みにも似た抗力を、次の一歩のための推力に変えたい。

足りない。足りない。足りない。

柔軟にして自由な機械足に比べ、この身のなんと不自由なことか。

「それでも、HMPに関してはぁっ! 負けないんです!」

『後で筋肉痛に泣いても知りませんよ?』

瞬間。身体が重みを忘れる。
向かう先には目標だけがあり、障害物(ひと)が目の前から消える。

ランナーズハイにも似た高翌揚感の中、その一歩で距離が大きく縮む。
人の身体は常にリミッターがかかっている。必要とあれば人は普段の二倍程度の力は出せるもの。

――その一瞬に白衣から伸びる足は美しく、ともすれば陸上界からスカウトでも来そうなほどに効率的。

(届いたッ!)

/KP使用 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/30(木) 21:30:51.45 ID:DUJR6sPso<> >>684
「ああああああっ!」

顔面から見事にスライディング
あと一歩の、もう少しのところで、届かず
だが、こんなところで諦めるわけにはいかない
自分はこのARIKAを真っ先に買って早速改造したいのだ
今度の決勝では、土壇場で自分が出る可能性も…ある、たぶん
息を切らし、汗を玉のように流しながらゆっくりと立ち上がる
何としてでもこいつを手に入れなくては

「あ、あの…頼みます…身勝手なんですけど…譲ってもらえませんかね、それ…」

はあ、はあ、と大きく肩で息をして話を続ける
自己中心的な意見なのは百も承知だ

「タダでとは、言いません…HMPバトルで、どうにか…」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 21:43:03.53 ID:XVjvzEfNo<> >>685

「はぁ……あ……ぐ……うにゅー!」

片手にARIKAのパッケージを抱き、もう片方の手で右足を押さえて呻く。
本来インドア派の少女が、身に余る力を発揮した代償。ものの見事に足を攣っていた。

「嫌ぁ……」

とめどなく流れ落ちる汗。ある種マニアックな装い。妙な色気を帯びた拒絶。涙目。
その場に倒れて相手を見上げる少女。見下ろす男性。洒落にならない雰囲気になりつつある。

『こむら返りですね。足を伸ばして筋肉をほぐすのが有効だと聞いています
手間をおかけしますが、私のマスターの足を伸ばしてあげていただけませんか?』

『クェー……』

後から追いついてきたHMP。一機は女性系。一機は見た感じ未改造のサー・ニルス。
女性系HMPの方が、充電プラグをペンギンの追加バッテリーから伸ばしているのが特徴的だ。

「うー。にゃー。いぅー……」

それでもARIKAを離さないあたり、並々ならぬ執念である。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/30(木) 21:51:35.78 ID:DUJR6sPso<> >>686
「ま、マジですか…」
『ヒューヒュー!羽生くんかっちょいー!』

うるさいな、とヒートを一瞥
しかし、困った。正直な話をすると羽生は女性が苦手である
さらに目の前の女性の状況、ただ事ではない
そもそも自分は今、かなり息切れを起こしてるので、下手をすれば警察を呼ばれる可能性も
しかし、目の前で困ってる人がいるならば助けなければいけない
地面に座り込み、白衣の女性を足をやさしくほぐす

「大丈夫ですか…僕のせいですよね、申し訳ないです」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/30(木) 22:06:04.71 ID:XVjvzEfNo<> >>687

びくっと身体を縮ませるが、足を攣ったままでは逃げることもできず。
目を合わせずに、必死に息を整えようとするも、全力(超え)疾走の代償は未だ重い。

『くぇー』

荒い息とペンギンの鳴き声だけがこだまする店内。思いっきり迷惑だが、近づいて注意をするのもやり辛い。
自然、ある程度の距離を持って様子を伺う客が増えてくる。

ただでさえ熱い身体が羞恥で尚のこと赤くなる。逃げる術は無し。
眼を瞑れば余計に痛みと恥ずかしさと何だか冷たくてちょっと気持ち良かったりする手に意識にいく。
かといって目を開いていても、上を見れば他の客の視線、中段には足をもんでくれている男性。体勢上、そこ以外は見えない。

「うー……」

段々とその声は、痛みより恥ずかしさが強くなってくる。

『くぇー』

ペンギンのHMPがヒートの方に声をかけるが、そんな鳴き声で何が言いたいのかは伝わるわけもなく。
間延びした鳴き声は、変に静まり返った店内に良く響く。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/31(金) 21:15:06.58 ID:wYdoFFvco<> >>688
(え、何この空気)

妙に静まり返った店内に取り残された2人と3機
ぽつぽつ聞こえるのは適当にペンギンの言葉に答えるヒートの声だけ
やや暗い店内を照らすライトはスポットライトにも見えた
それにしても、とても気まずい

「あ、あの、足はもう、大丈夫なんですか」

どもつきながら、たどたどしい口調で問う
視線は微妙に合わせていない。この年にもなって女性が苦手など恥ずかしく無いのだろうか

「あ、あのー。もしよかった、バトル、しましょうよ」

言ってしまった
その場の空気に耐えきれず、不自然なタイミングで <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 21:31:50.76 ID:HZWP9cDqo<> >>689

「大丈夫じゃないですけど大丈夫ですから離れてください」

さっぱり意味が分からない言葉を早口で捲し立て、尺取虫のような動きで退却。当然ARIKAは抱きしめたままだ。
言葉にならない音を口の中でもごもご捏ねくり回し、時間をかけてようやく返事を作り出す。

「え、えとですね。私こんなに頑張って走るのなんて一年に一回あるかないかくらいでですね。
ついでにこんな痛い思いをするのも一ヶ月に一回くらいでですね。
それでARIKAを手放してしまったら何のためなのか分からないというか、採算の合わない設計は良くないというか……」

婉曲すぎて何を言いたいのか分かりづらい発言を要約すれば「バトルは構わないがARIKAを手放すは嫌だ」となる。


『くぇー、けーぃ、けー』 訳:この位置からだと良い感じなパンチラが拝めるぜ、お前も来いよブラザー。眼福だ。

同機体間ですら難しいニュアンスは伝わらない鳴き声。この場の誰にも、その意図は伝わらない。
けれどこのペンギンの場合、それで良かったのかもしれない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/31(金) 21:41:19.07 ID:wYdoFFvco<> >>690
『なーにいってんだこいつ』
「ヒート、あの機体は言語機能がついていないんだよ。そのぶんヘッドの性能がすごいんだ
あ、バトルいいんだ…。じゃあ、うん、よろしく」

思った以上にあっさりとOKしてもらえて拍子抜け
でも、ARIKAは手放さないあたり執念がすごい
しかし、そのままどうやってDVNOを操るのだろうか
そんな事を思いながらバトル用の台へむかいフィールグラムをセットする

/奇数 ハイウェイ
偶数 南極
ぞろ目 宇宙空間
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 22:00:17.03 ID:HZWP9cDqo<> >>691
「ちょっと今は操作しきる自信無いから……マニュアルでお願いできる?」

『マニュアルの意味が間違っている気がしますが……よろしくてよ。
すぐに終わらせてみせますから、慧理さんはその間反省していてください』

足を攣ったままどうするというのか、答えは簡単だ。HMPに完全に任せる。
両腕の起動権をクロリスに返し、当人は相変わらず足を押さえ、時折呻く。
目当てのHMPを手に抱きながら涙を流す姿は最高に満足げで、最低に通行の邪魔である。

『ハイウェイ……可もなく不可も無く、といったところでしょうか』

『くぇー!』

オペレーター無しで、クロリスはハイウェイに降り立つ。
代名詞ともいえる開幕一閃は無い。まずは相手の出方を見てみるつもりのようだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/31(金) 22:22:28.88 ID:wYdoFFvco<> フィールグラムから光が放たれる
やがてその光は真夜中の高速道路を形成した
何も無い一本道。HMPによっては大きく不利になるシビアなフィールドだ

「速攻だよ!ヒート、距離を取りながらガトリングを撒き散らして!」
『おうよ!』

紫煙とともにガトリングが爆音を鳴らした
相手のHMPの見た目的に、おそらくスピードと高火力を重ね合わせたタイプ
実際、最近その手のHMPは流行っているので当たっている確率は高いだろう
ならば近づかせないのが得策か
バックステップのリズミカルな音とガトリングの叫び声がハイウェイに響きわたった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 22:37:44.62 ID:m7f7ndPC0<> 「珍しいね。自分からパフを買って欲しいって言ってくれるなんて」
『わっはっは、月に何度かはそういう日もあるさね』

 Red_Rose HEAD_11を戴くHMPは、マスターと思しき少女の問いに微笑をもって答えた
 手元には、パフが二つある。紅茶とレモンの味覚嗅覚パフで、薄い赤と黄の分かりやすい色で塗られていた

 ふんわりと漂う蒸気には、人間にとってはかなり微量の香気
 それは窓越しに溶ける夕陽と手を取り合い、穏やかに傾く時を演出する。夏休み最後の日には、似付かわしいものだ

「レモンティー味単体より、そっちの方が美味しい?」
『ああ、違うねぇ』

 珍しい光景ではないが、HMPのパーツには少し奇妙な所があった
 アルクトゥルスの胴部とスリムな四肢のアンバランス。単純な形状ながら秘儀祭器のごとき異質さをもつ杖型の武器
 HMPに詳しい人間ほど、心のどこかを吸い寄せられてしまうかもしれない

/ひとまちです <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 22:38:32.55 ID:HZWP9cDqo<> >>693

『チェーンソーでの接近戦は捨てて来ましたか。合理的ですね』

何も無い場所は、クロリスの軽装甲にとっては不利であっても、クロリスの足にとっては不利ではない。
高加速、高機動。安定、柔軟。その体は速さを追求する作り。何もないフィールドは、まさしく高速疾走のための場所。

ようは相手のARMが動くより早く動けば、ガトリングの弾幕を避けきれる。単純明快、しかして無謀。
距離が離れている分、クロリスの移動で起きる角度変化は大きいが、それでも道路の横幅には限界がある。

走って走って向こう岸。ガードレールを蹴りつければ、踵の刃が傷跡を残す。大きく反対側へ飛び、転がって受身、跳ね上がる。
高速機体の真骨頂。銃器を相手にして避けきるだけの超速度。

(あれだけの連射速度、火力。いずれリロードなり排熱なりの必要が出てくるはず……)

相手に合わせてこちらも引く。一先ずは防戦に徹し、機を伺う。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 22:43:26.13 ID:hyQcJXpoo<> >>694
 夏休みの日、ということもあってか、周囲にはHMPと共に勉強している者たちも見受けられる
 席は殆ど満席状態だった
 だから、だろうか――

「失礼、相席いいかな?」

 純朴、という言葉をそのまま顔に仕立て上げたかのような青年が声を掛けてきた
 その肩からは荷物が多く入っているのであろう、膨らんだショルダーバッグが提げられていた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 23:00:34.64 ID:m7f7ndPC0<> >>696

『宿題にHMPを使うのって、わたしゃどうなんだろうかと思うよ』
「言われてみれば。高校生でそれやってると、ちょっとうーんって感じ」

 お盆のうちに宿題を片付けておいたから、欲深い世界を観察する神様のような気分でいられる。
 最後の聖戦、ペンを運ぶ音をBGMに。自分は自分で、激甘のコーヒーを楽しんでいた。勝利の味だった。

「うん、どうぞっ」

 そこで現れたのが、人のよさそうな青年である。
 少女は彼の波の立たない顔ではなく、重そうな荷物を興味深そうに見ていた。
 小さな声で、HMPはそこですか、とつぶやく。30cmとは案外に大きいもの。
 栗色のセミロングヘアと少し赤みを帯びた瞳に浮き上がるのは、小動物的な元気の良さと好奇心。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/08/31(金) 23:05:42.98 ID:wYdoFFvco<> >>695
『ありゃ!?』
「やっぱ軽いねー」

開幕からいきなりのアクロバティックな回避
いつの間にか湧いたギャラリー達から歓声が上がる
立ち上がった相手は引いてきた。この調子だとどうもガトリングは当たりそうにない
ならば、強行突破!こちらのバッテリーが切れる前に決着を付けよう

『逃げてばかりじゃ勝てないぜ!』

使い古された挑発のセリフを吐き、ブースターを発動。道を滑走路に変えて加速する
そのまま勢いを殺さないように大きく飛翔
空中から再度ガトリングを乱射したのだ
鉛の雨は、月明かりが反射して輝き、スポットライトのように再び彼女を照らした <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 23:11:18.38 ID:hyQcJXpoo<> >>697
「そうだね。でも、こういう在り方っていうのも、人間とHMPの歩み方の一種類なんじゃないかな」

 どうかと思う、と言っても、それは友達と宿題を写しあうのがHMPと共に解くということに変わっただけだ
 真面目にやる子はやるし、やらないやつはテストで痛い目を見る

「うん、本当は昼間に来て調整でもしながら、パフを上げようと思ってたんだけどね
 なかなか、意外と暇が無くてね。無職のはずなのに、おかしな話だよ」

 よいしょ、とおっさんくさく向かいの椅子に腰を下ろすと、ショルダーバッグの中身をテーブルに広げた
 出てきたのはタブレット型のPCと、太いHMPとPCの接続用ケーブル
 そして、不気味な造型をしたHMPだった
 もしかしたら、そのHMPをネット上で見かけたことがあるかも知れない
 彼にしては落ち着いた感じの改造という評価が多いが

『もう、出てもいいんですか?』
「うん、ついたからね」

 そんな外見とは打って変わって陽気な性格なHMPは、よいしょと、腰を下ろすと兜を取った
 Valkyrja_Thrudの美しい金髪が靡いた
 青年は愛おしそうにその髪の間を掻き分けると、図太い接続ケーブルを挿した

「これでよし……と。
 ああ、ごめんね。少し置いてけぼりにしてしまったかな」

 ははは、廻りが見えなくて仕方ないと笑うと

「君のHMPは……レッドローズをヘッドに据えているのか。それにしては、面白い性格をしているね。
 アセンも面白いし……その杖と脚は、ステイシスがデータだけをアップロードした奴だね
 誰かに作ってもらったのかい?」

 まさか、目の前の少女が自分でスクラッチしたとは想像だにしないのだろう <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 23:28:05.77 ID:HZWP9cDqo<> >>698

空から落ちる勢いの乗った弾丸はさらに速く、不安定な状態からの攻撃で弾が散る。
より鋭く、より広く。空中からの弾幕が襲い掛かる。

対するクロリスは彼女の代名詞、光剣クラウソラスを起動。平時より短い刃に、空中の敵に届くほどの長さはない。
振り回す熱量の刃と手元のバリアとが弾丸に対する簡易防御となるが、目的はそれではない。

『下手な鉄砲、弾の無駄ですよ?』

斬りつけるのは道路そのもの。海上を走る道路橋自体を切断する。

ミシミシと音を立てて傾く橋の間に出来た穴に飛び込み、踵の刃を断面に刺して道路の裏側に立つ。
道路自体を盾にすることで、空中弾幕を防御する。

冷たく重い銃撃の雨、彼女に傷をつけたのは、右の肩口を掠って外装を砕いた一発のみ。

【HEAD】 100% 【BODY】 92%
【R.ARM】97% 【L.ARM】92%
【LEG】  100% 【ENE】  76% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 23:42:15.00 ID:m7f7ndPC0<> >>699

「あたしも、DVNOで調べ事するのをブーディカに手伝って貰うことは良くあるけど」
『確かに一種類だねぇ。ただ、この子が日付を見て慌てても私は手伝わないよ』
「そんなことはめったにないし」

 レッドローズ頭のHMPは、若々しい容姿に反し母親のような考えを持っている。
 気高く瀟洒な若き姫君である基本プログラムからは、やはり大きく逸脱しているのだが、
 突き放すところで突き放す言動からして、根っこには新品当初のものが生きているようではあった。

「そういうことか、無職ね……わっふー、けったいな子!」
『おやまぁ、これは凝りに凝ったのが出てきたもんだ』

 現れた姿を、おおむねは魅力的だと感じた。言葉はなんだが、少女の目はきらきらとしてHMPに向かっている。
 良質なホラー映画のコンセプトデザインのようで、拘りが著しいものを好む彼女らにはストライク。

「HMPの学習機能の賜物だよね。……それにしてもちょっと間違ってる気がするけど
 杖と脚は、あたしが作ったの、夏休みだったから。見た目は完璧でしょ?」

 ステイシスは今となっては知人だ。
 だが少女はそれより以前に、毒力で魔術師の断片を作り上げることに成功していた。これからも、余程の事が無ければ彼には頼るまい。
 誇らしげに問う彼女。自由研究にしては上出来、いや……やり過ぎか。

『はん、性格が変わったとか、時間の流れがとか言われるけど、私は意識してないねぇ。正しいと思う方に行っただけさ!』

 やり過ぎといえば、彼女もAIの取替を疑うレベルの変容を遂げている。
 首にかけた金色の純装飾リング以外、見た目も声も変わりないのが、また珍しかった。 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/08/31(金) 23:47:39.53 ID:m7f7ndPC0<> /てすてす <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<><>2012/08/31(金) 23:54:15.54 ID:wYdoFFvco<> >>700
ブレードで橋を切り盾にするだなんて
このHMP、かわいらしい女性型だがかなりえげつない事をするじゃないか
それにしてもあのブレード、見たところかなり高威力
おそらく当たったら確実に一撃死。しかもリーチはあちらの方が長い
立ち回りにかなり気をつけなければ

『ムカつくねェ、あんたはよォー』

安い挑発に腹をたてながら地面に着地
煽るのは好きだが、逆は苦手か
さて、今度はこっちが待つ番だ
隙を逃さず一撃ぶち込めばすぐに有利になるだろうが、それが難しい
なぜなら相手はスピードが売りのHMP、そう簡単には当たらない <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 23:56:37.22 ID:hyQcJXpoo<> >>701
「ま、働くことが出来るうちが花だよ。とくに、僕みたいな人間はね」

 そう言って、愛おしそうにエリの髪に指を絡めると、もう片方の手でタブレットPCを操作し始める
 指の動きはあまりにも早く、精密だ
 どこか、職人然としている
 覗き込めば、複雑な数値で彩られた3Dの人体模型が投影されている画面が見えるだろう

「お気に召して頂いたようでなによりだよ。まぁ……これも、まだ発展途上なんだけどね」
『そうなんですか?』
「そうだよ。君はもっと綺麗になる」

 陶然と、そうHMPに語りかけるその姿は、さながら機械性愛者と呼ばれ蔑まれている人々のそれに似ている

「……夏休みの自由研究にしては、些か以上に難易度が高いね。
 将来、エンジニアか原型師になれるかもしれないな
 まぁ、優か秀は確定だろうね」

 データを作るのも大変だが、それを立体物――塑像に起こすのも難しい
 確かにデータ自体は、立体化可能なように作られてはいるが……
 技術的に不可能とされ、製品化が見送られたHMPというのをシンは知っている
 彼の目指すエクリプスの真の形も、同じようなものだ

「根幹は同じ、ということかな。まぁ、レッドローズの方向性はそれほど狭いものじゃないらしいからね
 唾吐するレッドローズもいるらしいよ」

 言いつつも止まらない手
 彼がデータを打ち込んでいるせいで、エクリプスは動けないようだが、本人は特に不満は無さそうだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/01(土) 00:11:26.94 ID:pbey/qu1o<> >>703

道路の裏側に隠れる形とはいえ、移動すれば踵の刃が音を鳴らす。奇襲をかけるには向かない。
かといってこのまま防戦を続けてバッテリー勝負に持ち込むつもりはさらさらない。

『結構。敵に気を使われても戦いづらくなるだけですから』

このしばらくの待ちは、相手が地面に降りるのを待ってのこと。

相手が地面に降りた直後、今度は下から刃が襲い掛かる。

足元からの一刀。慧理のサポートを無くしたため、刃の展開はいつもより早い。攻撃のタイミングと起動のタイミングが合っていないのだ。
夜の高速道路で極光は目立つ。道路の両端と先ほどの断面から漏れる光が、その攻撃を事前に教えてくれる。
避けるのは難しくない。先ほどの同じ長さの刃は、剣としては長い、という程度で、無限射程を名乗るほどの長さではない。
ある程度の跳躍力があれば、上にジャンプする形でも回避可能。普通の長距離武器と大差無い。

『さあ、本番はここからですわ!』

その攻撃のあと、切り開いた部分から飛び出して一気にヒートとの距離を詰める。
遠距離戦は終わり。銃器の扱いづらいクロスレンジでの戦いに持ち込む。 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/01(土) 00:21:00.93 ID:2IZK5u4i0<> >>704

 繊細すぎる手先に、目が釘付けになった。
 少女のイメージでは、彼にはマスプロダクトな大企業なんかより、思いの丈を全部吐き出せる小規模経営が似合う。

「そうか、それでも十分じゃないんだ……負けられないなっ」

 “ステイシス”のことが思い起こされて、嘆息した。超えてやるのが難しい人間が世の中には溢れてる。畏怖できるほどに。
 ただ、どこか安心できるのは、彼らのHMPへの愛着が透けて見えるからだ、
 もっと先へ加速していく。HMPが望む限りは、少女もそれを喜ぶしかない。

 人の性的嗜好をとやかく言う権利も彼女にはなかったことだし。
 万華鏡みたいな模型図を少しだけ盗み見て、やめた。

「そう言うお兄さんは、もうデザイナーなんじゃないの?
 将来……確かにまだ無理だよね、デッドコピーをつくってるだけだから」

 闘争心を刺激されたのか、引き締まった声で言う。
 平面の嘘を取り入れたHMPなんてものがあったら、少女は現実と取っ組みあった末に倒れてしまうに違いない。
 彼女は今の自分の弱さを認める強さは持っていたが、絶対不可能を悟るには幼すぎた。
 
『唾を吐く?そんな機能、どこで付けて貰うのやら』
「……きっと、需要があるんだよ。いや、これはいたいけなあたしを騙す冗談なのでは……」

 想像するだに、口の中が生ぬるく酸っぱくなる気がした。美しいものを探して、二人の視線はエクリプスに集中する。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/09/01(土) 00:31:57.87 ID:QbTn7M1eo<> 「避けて!」

羽生の声がややざわついた店内に響く
着地と同時に下からの攻撃が遅いかかって来たのだ
まかせろ、と返事をしてヒートはローリングで悠々避ける
罠、だということはなんとなく感じていた

『案の定じゃねーか』

ひび割れから飛び出す閃光は、一気にこちらへ向かう
間合いを詰められた、しかしそれがどうというのだ
こちらにはまだ近接武器がある

「いけッ」

再び羽生の声がふたたび響く
同時にヒートがローリングの体勢から体を捻ってジャンプ
そのままチェーンソーの重さを利用して高速回転。敵に縦回転して突っ込んだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/01(土) 00:47:52.71 ID:kP4848O/o<> >>706
「元、がつくけどね
 ……いや、フリーランスって意味では、今でも、なのかな」

 そういうと、タブレットを操作する手を止めた

「ああ、これはただのモーションデータだから、見ても大丈夫だよ。流石に公衆の面前で図面データは弄らないさ
 遠距離武装専門から近接武装に変えて試運転してみたら色々問題点が見つかってね
 新しいモーションデータが欲しかったんだけど、なかなかコレっていうのが見つからなくてさ」

 エクリプスの真の図面は、家のPCにしか入っていない
 あれを完成させるには、それこそステイシス辺りにでも意見を仰ぐしかないだろう
 ……HMPという枠組みの中で完成させるのならば、の話だが

「けど、芸術っていうのは、真似るところから始まるからね
 僕だって、最初は既存のフィギュアの腕を千切って切り張りするところから始めたんだ。
 そうやって……初めてオリジナルを作ったのはいつだったかな。たしか、大学に入ったぐらいだったかな?
 その年でそこまで出来るなら……そうだね、もしかしたら、ほんの数年でオリジナルを作れるようになるかもしれないよ」

 それが評価されるかどうかは別問題だが

「ああ、唾を吐くっていっても、そういうモーションをするってだけだよ
 実際に唾を吐くわけじゃない。……まぁ、そういう機能はつけられなくもないけどね」
『下品です! だめです! 綺麗綺麗しないといけませんよ!』
「ははは、そうだね」

 どうもエクリプスは、家政婦ロボのような性格をしているようだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/01(土) 00:49:27.23 ID:pbey/qu1o<> >>707

『乗ってきましたね。攻撃しか知らない子供は扱いやすくて何よりです』

光刃が道路を切り開いた直後、ヒートは空中に避け、クロリスは空中に躍り出る。
互いに空中。互いに空戦に向いた機体では無く、この状態からの移動は難しい。

ゆえに襲い来るチェーンソーを避ける術は無し。

『縦回転では無く乱回転で突っ込んでこられたなら、いささか受け辛かったかもしれませんが……』

右手をクラウソラスから離し、頭上にかざす。
ズヴェルト。範囲の狭いバリアは、その分右手を守ることにかけてはどんな防御用武装にも引けを取らない。

チェーンソーを右手で受け止める。力場が削れて高音が荒れ狂う。

互いに動作を制限された状態。ならば相手の一撃を受け止めさえすれば、こちらの攻撃が通しやすいのも道理。

『クラウソラスッ!』

これまでの二回とまったく同じ。光の線が、柄から伸びる。熱と光の純エネルギー。
バリアによる補助が無い今、左手が徐々に焼かれていくが、現在の控え目な刃長――通常のユーザーと比べれば十分長いが――なら反動も耐えきれる。
互いに地に足のついていない状態。地面はすぐそこながら、クロリスの足が地につくより、光がヒートに向かう方が遥かに早い。

【HEAD】 100% 【BODY】 92%
【R.ARM】91% 【L.ARM】69%
【LEG】  100% 【ENE】  42% <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/01(土) 01:25:54.82 ID:2IZK5u4i0<> >>708

「どうして雇って貰えないの?」

 少女はなかなかシビアなことを聞く、子供だから許されるという打算の上で。
 エクリプスを眺めながらパフに齧り付いていたブーディカが顔をしかめたが、気にしない。
 尊敬は見とれる程にしているのだ。ただ彼が、彼自身の意志は別として、埋もれていることが不思議だったから。

『嬉しいじゃないか、そうなったら。だけどサキの沸騰しやすい頭で出来るかい?』
「むーっ!からかわないでよね、けっこーホンキのつもりなのに」
『ほらほら、落ち着かないと。針穴をいくつも通してくような仕事なんだからさ』
「……むぅー」

 HMP商品の顧客をマスターと呼ぶ事が多いように、ふつう人とHMPの関係は、主が人に来る。
 この二人は別だった。お互いに対等だと思っている上で、傍目にはHMPの方が保護者のように感ぜられた。

『わっはっはっは、そうだねぇ。飾らないのも大いに結構だが、わざわざ汚れるのには同意しかねる』

 豪快に笑って、ブーディカは窓の外を見た。
 斜陽が地平線に身を投げ入れようとするまさにその時の景色。

『……サキ、そろそろ日が落ちてしまうよ。コーヒーを早いとこお飲み
 明日は久々に朝が早いんだから、今日はもうゆっくり休まないと』
「そう、じゃあ、自己紹介ぐらいしておくね。あたしは来宮咲で、この子はブーディカって言うの」

 ごくごくと、コーヒーを飲み干していって、

『サキ、零れてる!』
「えっほんと?……きれいきれいしないとね、あはは、は…………」 <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/01(土) 01:45:15.17 ID:kP4848O/o<> >>710
「正確に言うなら、好きで雇われてない、かな」

 会社に所属する、ということは大なり小なりその意向に左右されるということだ
 好き勝手にデザインが出来るわけではない
 よほどの天才でない限り、ウケを狙ったものを作らされる
 それが会社に所属するということ

「それに、僕自身の才能は、僕だけで一つの会社を回せるほどじゃないからね」

 シンの嗜好を反映したHMPはあまりにもニッチで、あまりにも尖っている
 過去に作りだしたクルーシャナリアも、闇に屠ったドゥーグァブルも――その方向性は、あまりにも先鋭的すぎた
 そして、今生み出そうとしているエクリプスも、また……

「まぁ、明日すぐにご飯が食べられなくなるかもしれない、ってリスクはあるけど、好き勝手出来るメリットはあるよ
 仕事がしたくなければしなくてもいいし、ニートみたいな生活がしたいなら貯金を切り崩して出来る
 ……まぁ、いつかは働かないといけないんだけどね」
『マスターは、怠惰なんですよー。起きてくるのも遅いですし
 用事があったとか最初に言ってましたけど、実際は寝過ごしただけです』
「それは言わないお約束」

 ははは、と笑って、咲の自己紹介にこちらも姿勢を正して返す

「僕は荒田シン。それで、この子が――」
『エクリプスです! お好きなように呼んでくださいね!」 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/01(土) 02:11:36.07 ID:2IZK5u4i0<> >>711

「シンとエクリプス。覚えたよ、じゃあえっぷーって呼ぶ!」
『……こんな子ですけど、よろしくお願いします』

 咲は奔放な少女だった。大人の対応を身につけたシンとは違う。
 それを支えるブーディカの苦労の重さは、思いがけないようなものではない。。

「なんだ、自分で蹴ってたんだ」

 想像通り、彼は世界の圧力を嫌う人であった。
 どっかへこませないと、みんなと同じ部屋には入れない。専用の家を作るのも大儀なり。
 でも、小金稼ぎに信条を折るなんてことは、極力やりたくないだろうと思う。

「お金って難しいなぁ、もうやんなっちゃう!」
『暫くは、技を磨けば良いんだよ。猶予は長かないが、こういう参考を集めるぐらいの時間はあるさ
 ……た・だ・し!お寝坊は私が許さないよ!!』

「それくらいは良いじゃない、もう3年アレもしてないし、十分頑張ってるよぉ」
『おねしょかい?』
「なんで言っちゃうの!?ブーディカのバカ!」

 ぽっと、頬を朱色に染めた彼女には、色気は無かったが不思議な艶があった。少し邪な魅力と言えそうなものが。

「……うう、恥ずかしいし、夜になっちゃうし、もう帰ります」
『別に恥ずかしくなる必要は無かったんだけどねぇ』
「シンさん、エクリプス、今度はバトルでもしようね」

 パフなどを回収すると、二人は家路につこうとするだろう。
<> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/01(土) 02:48:36.73 ID:kP4848O/o<> >>712
『えっぷーですか? はじめてです、そういう可愛い感じの呼び方! 好きです!』

 どうやらエクリプスは大喜びのようである

「はは、まぁ、将来目指すのなら、一応気には留めておいた方がいいと思うよ」

 そうして、まさかのおねしょ発言には思わず耐えきれずに失笑してしまった

『わーお……』
「くくく……いや、ごめんね。そうか、そうか……おねしょ……うん、仕方ないよね、女の子は、そういう構造だからね」

 そうしてどうにか笑いを噛み[ピーーー]と、バトルの誘いに頷いた

「うん、その時までにはモーションを改良しておくよ」
『楽しみにしてますねー!』

 そうして残された二人は、またタブレットの操作を始めた…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/09/01(土) 19:13:08.17 ID:QbTn7M1eo<> >>699
/KP使用

閃光の剣が襲いくる
ヒートのAIに、自分が真っ二つになる映像がはっきりと浮かんだ

『ちィッ』

掴まれたチェーンソーの刃を、まるで銃の様に射出。刃はクロリスの左手に突き刺さった
そのまま射出した勢いでこの場から脱出。気まぐれの改造が、ほんの一瞬だけ奇跡を起こした
しかし、完全よけ切る事は不可能だった
ボディには痛々しい閃光の跡が刻まれ、2つ有るバッテリーのうち一つが熱で使い物にならなくなっている
致命傷には至らないが、電力的に大きな打撃を食らってしまったのだ
このままではバッテリーが持ちそうにない

「突ッ切って!時間がない!」

返事がかき消される程の作動音をたてて、着地の直前にブースターを発動
狙うはヘッド。高速移動しながらガトリングを構え、もう一度狙う <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/01(土) 23:00:32.50 ID:pbey/qu1o<> >>714

『っ!?』

クロリスの戦い方は、荒唐無稽に見えて実際は理詰め。

そもそも受ける側に回る以上、相手の行動を予想し、それに対する最善手で戦う形になるのは必然。
どんなに奇抜な戦術を取ろうと、戦略レベルではセオリー通りに動いている。

『わざわざメインウェポンを使い捨てにするほどのメリットがあるとは到底思えませんが……』

だから、こういった詰将棋のような戦いを好むタイプは、想定を大きく逸脱した状況が苦手だ。


着地と同時に地を蹴って距離を取るのは、本来はそう悪い選択ではない。基本的に彼女に射程負けはないのだから。
だが、クラウソラスの刃長を一定に設定している今、それは残念ながら悪手。

――時間が無い。
相手の発言がひっかかる。詰めの一手をかわされた以上、厳しいのはこちら。
消費を抑えてもやはりクラウソラスは重い。このまま逃げられればバッテリーを先に切らすのはこちらのはず……。
相手バッテリーの損傷という結論に達するまでに費やした数瞬は、この場では手痛いタイムロス。

『くっ……』

高速機動での弾丸避けは、先手を取ってこそ可能な技。相手が銃口を向けるよりも早くその場を離脱することで成立する。
相手が狙いをつけてからでは、いかにクロリスでも回避は間に合わない。

だから、身体を丸めてバリアを展開。カバーしきれない部分は捨てる。どうせ今の左手ではクラウソラスはもう使えない。
両腕を捨て、相手のガトリングのリロードを期待するしかない。

バリアの守るHEAD部分は無事。しかし狭いバリアで守りきれる範囲はそう広くは無い。
格パーツの耐久がガリガリと削れていく。

【HEAD】 100% 【BODY】 52%
【R.ARM】87% 【L.ARM】11%
【LEG】  62% 【ENE】  37% <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/01(土) 23:49:22.43 ID:xRtoBYlDO<> 某ホビーショップのHMPコーナー、バトルスペースにて。
時刻は夕刻になりかかったころ。年齢層の入れ替わりが始まる時間帯だ。
これから始まるバトルも、この時間帯ならではの年の差バトル。
しかし子供といえども侮ることは出来ない。
子供の柔軟な発想から生まれるアセンや戦術はこちらの思考を越えていく。
けして手など抜くことは出来ない。
HMPファイトはいつだって真剣勝負だ。

「宜しくお願いしますね」

『あぁ、即興劇を始めるとしよう』

ヘッドセットを装着、DVNOを始めとするアプリを起動したタブレットを構える。
フィールグラムに待機していたルリがお辞儀をするような動作をしたとき、ランダムに設定していたフィールドの選出が始まった。


//コンマ
//0.9 海岸
//1.3.5 パーキング
//2.4.6 草原
//7.8 岩石地帯 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/01(土) 23:55:19.89 ID:xRtoBYlDO<> パーキングエリア
ハイウェイステージから独立したの駐車場ステージ。
一見乗用車やトラックが壁に使えそうだが、乗用車は爆発するオブジェクトなので要注意。 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/02(日) 00:15:04.87 ID:E/vQPMj50<> >>716

 夏休みが終わってしまったと言っても、別に土日までは消えてなくならない。
 だから、夕涼み――エアコンでやるのは良いのだろうか――も兼ねて咲とブーディカはホビーコーナーにやって来ていた。

「劇かー、踊り方なんか知らないけれど、歌うぐらいは出来るよ。ってことでよろしく」

 栗色のセミロングヘアがなびく。赤みがかった瞳に、休み明けの憂鬱はもうない。
 元気いっぱいな彼女は、HMPと常に共にあった。

『フィールグラムでは無礼講さね。目一杯、悪い女を演じさせておくれ』
「ブーディカったらいつもウルサイくせに、戦うときは結構やる気なんだから!」

 騎士鎧のボディと細くしなやかな肢体が対照的な、金髪碧眼のHMPは頷いた。
 フィールグラムの中の戦いはさっぱりしていて好ましい。
 よほどでなければ、非情は挨拶で相殺されてくれるのだから。

 緞帳が上がり、用意された舞台は埃臭さが伝わってきそうな駐車場。狭いステージと言える。
 だが室内戦と野戦、基本的な都市オブジェ、危険なギミックが凝縮された傑作でもある。

「派手に行こう、派手にさ!」

 咲がDVNOのパネルを爪で弾き、フェアリーレイクの発動を命令、ほぼラグなく実行された。
 ホーリーグレイルから腕へ腕から杖へと、収束された電力が流れ込む。
 
『見晴らしが悪いんだよ。ここはねぇ!』

 レッドローズらしからぬ雄叫びと共に、杖よりの電撃の網が車群の四分の一ほどを覆った。
 初っ端から車の破壊、相手の飛行能力はさほどでないと踏んで、視覚・移動を遮る爆壁を作る気でいる。
 休憩所の建造物はまだ遠く。彼女は爆炎の壁の向こうで、待ち構えた。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/09/02(日) 00:43:06.37 ID:bQwY5v5DO<> >>718
―――――っ!
……ほら、これだ。読めやしない。
爆発するという特性から、戦術に組み込まれることも少なくない車両群を開始直後に除外するとは。
自分達にもたらされる利便性よりも相手に良いようにされる危険、
それを回避するためなのか知らないがなんにせよ思い切ったことをしてくれる。
更に開始から即座にこれだけの範囲を焼く火力、これも非常に厄介だ。
車の爆発によってサーモカメラによるサーチも潰された。

『ふふん、のっけから盛り上げてくれるじゃないか。
 私は、嫌いではないぞ』

【一旦区切ったのはナオヒロは好きではないだろうが、という意味も含ませるためだ。
 さっさと作戦を立てて貰わないといけないのだ、時には厳しさも必要だろう。
 ともかく、作戦指示がくるまでは任せて貰おう、この私に】

『文字通り身を焦がれる、というのも芸の肥やしにはなるかもしれないな!』

【迷うことなく炎に向かって前進、更に前後スラスターを使ってアーチを描くようにして縛炎の中を突っ切っていく。
 炎の中に居る時間は極々僅かだが、全身が蝕まれていくような感覚にゾクリとした。
 それが恐怖なのかスリルなのか、はたまたマゾヒズムなのかは分からないが、ともかく炎を突破する。
 アイゼンゼクトを左腕とボディで覆うようにしながらも銃口だけは前に。
 ちらとでも見えれば、撃つ】

《頭部損傷:損傷度8%》
《胴体損傷:損傷度11%》
《左腕損傷:損傷度9%》
《右腕損傷:損傷度6%》
《脚部損傷:損傷度13%》
《その他:機体温度上昇。パフォーマンスに影響無し》 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/09/02(日) 01:03:08.56 ID:KEf/S8Dbo<> >>715
いくら撃っても頭部は無傷
刃でバリアを潰そうとしたが、威力が足りなかったようだ
これは良くない。なぜなら少々、いや、かなり弾を損してしまった
頼む。何処でもいいのでパーツを破壊してから壊れてくれ
と、心の中で祈った瞬間に、がこん
ヒートの左腕から音が鳴った。左腕には空転するガトリングが、情けなく取り付けられている

『やっちゃったよ!』

弾切れ。それは相手にとって絶好のチャンス
特にチェーンソーが失われたこの状況では、弾切れを起こした時点でほぼ積み
つまり死を意味するのだ

「多分…大丈夫。いや、マズイけど」
『本当にだぜ。残りくらい確認しとけよ!』
「う、うるさいな。でも、とにかくそのままブースターを噴射するのはやめないで」
『お?』
「相手が近づいてきたらマフラーを敵のヘッドに向けて飛ばすんだ」
『それでそのまま適当に左ストレートでもぶち込むって事か。うまく行きそうに無いな』
「う、うるさいなー」

どうせならこんな初心者じゃなくてベテランがよかったぜ。と、悪態をつきながらも
穴だらけの「悪あがき」を実行するつもりなヒート
どうせなら、最後とまで泥臭く足掻こう <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/02(日) 01:08:45.76 ID:E/vQPMj50<> >>719

 攻撃と同時に急降下を始めたエネ・ゲージは88%まで水位を下げる。
 DVNOとにらめっこする咲は、笑顔の後ろ側で技術不足を再三悟らされた。
 見た目ほどの威力はない技のために、1割強の電力消費を強いられる。杖を完全再現できていれば、少しは軽いというが。

「愛は一途か。だから前も見えないということ?」
『いんや、見えてるよ、あの子には。迂回すれば簡単に迎えうたれるのがねぇ』

 Red_Rose HEAD_11のバイザーが、エンゲージに備えて気高い碧眼を覆う。
 威厳に満ちた獅子面様に変形したメットの奥で、双眸は凄みを伴い、睨みをきかす。
 細かなステップを刻み、後退する。少しずつずれながらも、詰まっていくニ者の距離。

 刹那、炎の屏風が突き破られ、歴々とした二人の姿。カメラの相互監視が始まった。
 ブーディカは、小刻みな動きをすぐさま横に切る。
 セミホバーの脚部はその勢いを保存して、軽くは無い機体を安定した速度で左方へ流していく。
 それから一度地上に降りて、あたりまえの旋回。ホバー機としては異常に機敏ってことになるのだが。

《胴体損傷――――損傷度4%》
《右腕損傷――――損傷度8%》

 特攻に柔軟な移動を当てて、ダメージを流れ弾に抑えた。だが、次に向かい合うときにはそうも行かないと思われた。
 しかしすぐに反撃できないのは、今はレッグと杖へのエネルギー供給を自然に任しているからだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/02(日) 01:20:13.45 ID:wu24TNXao<> >>720
ガトリングは耐えきった。耐えきったが、満身創痍はこちらも同じ。
元よりクラウソラスでの一撃必殺をコンセプトとした機体。
剣を失えば脆くて速いだけ。足が痛めばもはや脆さしか残らない。

『なんて、無茶苦茶な……』

剣の柄を右手に持ち替え、すぐさま相手のHEADへ向かって投げ付ける。
ARMとセットの武器。左腕が破壊されれば、ただの金属塊でしかない。目的は相手の気をそらすこと。

投げてすぐさま走り出す。試合も大詰め、エンドラン。
大した距離ではないが、破損した身体では走りづらい。走るためのBODY、駆けるためのLEG。
全体をスピードに傾けた設計は、逆にどこを攻撃されてもスピードが落ちる。

狙ってカウンターを入れる余裕は、十二分にあるだろう。

【HEAD】 98% 【BODY】 37%
【R.ARM】82% 【L.ARM】0%
【LEG】  42% 【ENE】  22% <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/09/02(日) 01:42:24.97 ID:bQwY5v5DO<> >>721
範囲攻撃に併せて軽やかな挙動、最近のHMPの高火力化高速化の波は恐ろしい。
しかし、このHMPの速度自体は殆ど中量級のルリと大差ない。
逃げ切られて潰されるという展開はそこまで心配しなくていいだろう。

「あっちの方が小回りは効くみたいみたいだね。
速度で置いてかれてるわけじゃない以上厄介なのはそこ。
だから、ショックラッシュで牽制しながらアイゼンゼクトを確定で入れられる距離まで詰めていこうか」

口頭での指示と平行してタブレットからも補足を入れる。
相手のHMPがまだどれだけの動きをしてくるか分からない以上、突っ込みすぎるのはまずい。

【ショックラッシュのスタンガン機構が発動、徐々に指先からスパークが起こり始める。
 バチバチと吼えるコレを構え、指示よりも勢い付けて相手に迫る。
 動かぬうちに距離は詰めておきたい】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<>sage<>2012/09/02(日) 01:42:59.56 ID:KEf/S8Dbo<> >>722
「今だ!」

ブースターを切ってギリギリまで引き寄せてから、首に巻いてあったマフラーを外した
外されたマフラーは鋭くなった疾風に流されてクロリスの視界を覆い隠そうと不規則に動く

『最後に一発ぶち込まねえと、気が済まねえんだよ!』

地面を蹴り、丁度マフラーで体が隠される位置へ移動
そのままヘッドに左ストレートをぶち込む用意をする
しかし事故は起こるものだ。ストレートを打つ直前に、ヒートの体が一瞬ぐらつく
慌ててDVNOを確認すると、そこには基準値を上回るパーツ温度が表示されていた
オーバーヒートだ。ブースターやガトリングの酷使が原因か
ふたたび顔面にストレートを打つ体勢に入るが、この一瞬の隙は大きい <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/02(日) 02:07:55.38 ID:wu24TNXao<> >>724

『自分の一発で勝負を決めるのが勝者というもの』

何か来るだろうと予想はできても、対抗する手は無し。
マフラーがカメラモニターを遮り、痛んだ足では緊急回避も間に合わない。

咄嗟にバリアを起動して頭部を庇うが、攻撃は来ない。オーバーヒートだ。
ここで一か八か相打ち覚悟の攻勢に出ていれば形勢逆転となっただろうが、経験と冷静さが裏目に出る。

一旦後ろに引いてマフラーを振り払う。目の前には拳を引いて今にも打ち出そうとするヒート。

『まったく、読み辛いことこの上無い……』

今度こそ、相手と切り違える覚悟で。右足での回し蹴り。
格闘戦を意識した足ではないが、カウンターの形が決まれば威力は十分。相手が避けに回れば、踵の刃のリーチが光る。

直後、ストレートパンチを受けてクロリスは倒れた。
軽い体が空を舞い、落ちて、外装をいくらか散らす。

HEADへのダメージは大きく、すぐには立ち上がれない。それまでにもう一撃入れば、間違いなく終わりだ。

【HEAD】 19% 【BODY】 37%
【R.ARM】82% 【L.ARM】0%
【LEG】  42% 【ENE】  15% <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/02(日) 02:14:23.08 ID:E/vQPMj50<> >>723

 電撃使いの対峙、一撃入れられただけで無防備な身を晒すのに、得意な距離は重複。
 些細に見える選択が、唐突に正体を現し勝敗の分水嶺となる。

 最近流行の高機動短期決戦カスタムには、その選択回数と精神の負担を最小化する利点がある。
 確かに、そういうやり方には極度の集中が必要だ。
 逆説――集中しない瞬間など、ここではありえない。

「さすがに、大人は賢いね……」

 ブーディカがこのままの速度を出していれば、牽制合戦でジリ貧だ。
 半端な飛び出し方をしたらショックラッシュの豪腕の、思う壺となる。

 旋回を終えた時に、ルリとブーディカの間は思っていたより狭い。
 長柄武器のため、寝かせたHMP一機分離して叩けるのは強みだが、打撃翌力の違いは歴然。ペースを取るにはどうすべきか。

『怖い腕だこと、振るいたくてたまらないみたいさね?』

 ブーディカは、相手が指示内容より先鋭的な思考にあることを読み取った。
 咲はそれを示唆する細かな発言を拾って、次なるコマンドを行う。
 脚部に蓄積された電力が、ブースターを機動したのだった。
 フェアリーレイクからは杖に力が注がれ、ドルイドの儀式のように神秘的に光り輝く。

 魔術師の断片、そのレッグは、10秒程度の充電を解き放つことで急加速を行う。
 ショックラッシュの腕はまだ完全には機動していなさそうに見える、ただし、通常の突撃では間に合わない。

「ヒット、エンド、ラーン……」

 “あの人は今”に相当する番組を見て以来、微妙にハマっている一発ネタが声になって飛び出た。
 二人の狙いは、痺れの効果を素早く帯びさせた杖での先手。
 出されなくてもいやらしいショックラッシュアームめがけて、自分ごと一本の武器になるような突きが飛んだ。
 
 理にかなった奇策のつもりで繰り出しているが、幻惑するような含みはない。ただ対応できるか。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(北海道)<><>2012/09/02(日) 02:30:59.05 ID:KEf/S8Dbo<> >>725
「ど、どうしたの…」

あと一撃食らわせれば相手が沈む事は誰の目にも明らかだった
しかし、ヒートは動かない。パンチを打った直後の体勢のままで固まっているのだ
何度声をかけても反応がない。もしや、と思いDVNOを確認した時には全てが終わっていた

「やっぱり、ね」

現実とは非情な物だ
勝利を目前にしても、少し運が悪ければ物にできない事も有る
バッテリー切れによるヒートの反則負けで幕を閉じたこの勝負の総評は、その言葉で足りてしまう
あの時少しでもタイミングが早ければ、もう一撃入れる事ができた

「ありがとう。いいバトルだったよ」

ぽつんと呟き、ヒートを抱き上げながら店内を後にする
その後ろ姿はバトル終わった後とは思えない程、小さかった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/02(日) 02:49:20.70 ID:wu24TNXao<> >>727

バッテリー切れというのは嫌なものだと、クロリスは思う。
正規の形で無い終了はAIへの負担も大きいし、何より電源の落ちる瞬間の感覚は、頭部破壊以上に死に近い。
バッテリー切れがルールによる敗北なのではなく、ルール違反による敗北となるのも頷ける。

立ち上がって最初に見た光景が、そのバッテリー切れだった。

バトルが終わったら、ARIKAは渡してしまおうと思っていた。自分以外のHMPが慧理の周りに増えるのは嫌だ。
負けたならそれを理由にすればいいし、勝ったとしても健闘を讃えてとか適当に言ってしまえば、きっと慧理は逆らわない。

けど、そんなことを言う間も無く、相手は店を飛び出して行ってしまった。

『これでよかったのかしら』

心の中では分かっている。相手の方がずっと正しい。
涙を見せない強さも、ありがとうを言える強さも、きっと、とても正しい。

あれだけ強く思っているなら、新製品などに頼らずに2人だけで強くなればいいと思うのは、HMPの側のわがままなのだろう。
セット製品のうち、使われないHEAD、起動しないAIが生まれるのは、嫌だ。けれどARIKAを相手におしつけても、それは何の解決にもならない。
悩み過ぎて他のHMPに悪感情を抱くのも嫌なら、そんな悩みを相談できない慧理との微妙な関係も辛い。

あの真っ直ぐな二人が、答えが見つけてくれればいいな、と。
そう思って、クロリスは戻る。店員に助けられて椅子に座られてもらい、そのままぐったりしている情けないマスターのもとへ。

/お疲れ様でした。長時間の絡み、ありがとうございます。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/02(日) 10:20:22.25 ID:bQwY5v5DO<> >>726
ボディからのエネルギー供給にまた範囲攻撃をするつもりかと身構えたが、違う。
電撃の杖をそのまま格闘武器としてきたのだ。
それだけならまだいいが、敵の行動は急加速と組み合わせての突進。
突然の加速によって生まれた速さは体感では更に増して感じられる。
これは俺では対応できない。
俺では、だ。
ただ一言、任せたとだけルリに伝える。

【いつぞやのサクラとの試合が思い起こされる。
 たまたまか、あの時サクラが放った突きと同じ様に今回も左腕で受けることになりそうだ。
 ただあの時と違うことがある。
 サクラの狙いはあくまで左腕の奥にあるヘッドだった。
 更に、サクラの獲物は途轍もなく鋭利な刀、目の前のものは帯電する杖。
 帯電する杖は厄介だ。スタンを狙う上でリーチは大きな利点となる。
 しかし、サクラの刀程の殺傷能力はあるまい。
上手くやれば全身麻痺にならないようにすることが出来るはず。
 あの1戦の経験がこの瞬間へ繋がる。
 指先だけで杖を去なせば両者の間で放電が相殺、ショックラッシュはショートするかもしれない。
しかし、全身に麻痺の毒が廻ることはないだろう】

『――――……!』

【あの時と違い眼前に左腕はない、視界はクリアー。
 飛び込んでくる相手に合わせて左手は柔らかく手刀を作り、指のみが杖と触れるように挙動を調整する】 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/02(日) 11:25:05.97 ID:E/vQPMj50<> >>729

 ぐるりと、手の中で回りながらしごき出される杖。
 頭や胸への攻撃をアームで守らせて、結果的に目論見どおりに運ぶようにしなかった。
 どうせ同じ所に当たるなら、挙動を予想しやすい方が良いからだ。
 はたくか、逸らすか、腕力を信じて杖ごと殴ってくるか――

『わっはははは、拳一つでやるもんだ!』

 五指の電極と杖の先端が衝突し、青白い閃光が焦げ臭い空気を弾けさせる。
 ぶつかり合ったものに等しく苦い電気の味が染みていく。

 咲は状況を確認した。放電システムに不調発生、しかし、重くはない。
 これはショックラッシュのスタンガン機構がフルチャージされる前に飛び込んだおかげか。
 ブーディカははずみを食らったが、杖を掴まれて引き倒させるまえに短く持ち直して、二歩ぐらい左へ飛び退いた。

「逃がさないぞー!」

 ホバーでにじり寄り、ライトアームへフェイントに近い振り下ろしを狙う。
 相手が都合よく受けてくれたなら、後退りながら急に肩の入れ方を変え、杖を根本から持って“長く”し、側頭部を叩かんとする。
 機関銃で暴れられたら分が悪いから、牽制を加えながら殴り続けないといけないのだ。
<> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/02(日) 20:20:12.09 ID:bQwY5v5DO<> >>730
《左腕損傷:損傷率31%》
《その他:左腕に異常有り。詳細は→》

予想は付くが、一応矢印をタッチし詳細を確認。
表示された内容は大きく分けて3つ。
1つはスタンガン機構の使用不能を報せるもの。
1つは親指以外の指が伸ばした状態で固まったというもの。
最後の1つはショックラッシュ・レフトのパワーダウンを報せるものだ。
どれもこの試合中の復旧は叶わないだろう。

「ルリ、駄目なのは左腕だけ?」

『スタンガン機構の安全装置のお陰でな。
 しかしだめということはないだろう?こうして腕は動くのだから』

「動けば大丈夫、って訳でもないでしょ」

軽口を叩けるなら大丈夫か。
まだ碌に傷も与えていないうちからたった2つしかない武器のうち、
1つが破損したのだからAIに影響があるかと思ったが太い性格をしていてくれて助かった。
もしこれが虚勢だとしても、根元から折れてないなら戦える。
相手は一旦退いたものの、尚も接近戦を挑んでくる。
こちらは近接戦の要が破損した身、

「付き合う道理はないでしょ」

ルリに指示を送り、自分は次への展開を考える。

【相手の杖の放電も今は使えないはずだ。
 だからこその接近戦なのだろう。
 勿論、こちらにそう思い込ませる為のブラフの可能性もあるが……。
 しかしここはブラフだとしてもそれに乗るしかない。
 格闘戦では殆ど左腕しか使えないというのに、その左腕がこのザマでは。
 リーチも状態も相手が優位、それを引っくり返す為には】

『追われる身というのも悪くない。勿論、形によるがな』

【左後方へ向けて急発進、そのまま相手の杖2本分ほどの距離を保つように心掛けながら右腕で滅多撃ち、これがナオヒロの作戦だ。
 相手が杖を振り下ろしを行ってくる、体は下がり始めている、このまま圏外まで逃げられるか?】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/02(日) 20:59:35.56 ID:E/vQPMj50<> >>729

 打擲が浅く空を切った。
 本命ではなかったが、寸止めを利かせるほど浅くも無くて、追撃は間に合わない。

 炎の向こうに逃れる方法もあるが、振り切れるだけの速度を出せば反則負けが近付く。
 現時点でゲージは65%近くまで縮んでいるのに、離脱と接近を繰り返すのはハイリスク・ノーリターン。
 しかも幼い少女は、こんなにはっきり見えている敵をみすみす逃すのを許せなかった。

「道理じゃないかもだけど、無理でもないよ。ブーディカ、ちょっと我慢して!」
『あいよ』
 
 前方へステップしホバー開始、相手はもう銃を構えている。
 《胴体損傷:損傷率17%》《右腕部損傷:損傷率18%》《左腕部損傷:損傷率19%》
 可能な限り堅牢なボディと杖で受ける事を意識しながら、追いすがっていくブーディカ。
 フェアリーレイクは推進装置としての面相を呈し、空中滑走に重たい疾さを加える。だが、まだだった。
 
 杖を限界まで長い半径で振るえば、当たらないこともない立ち位置だが、そうしない。
 あの少女にしては珍しく、慎重策にでも出ているのだろうか。
 だがこれでは、ブラフとして電撃を管理しているなんて事は無いと気づかれてしまうはずだ。 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/02(日) 21:01:12.39 ID:E/vQPMj50<> /名前忘れ <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/02(日) 22:20:42.03 ID:bQwY5v5DO<> >>732
【右肩を杖が掠っていったが、それでズレた分の照準は直ぐに修正。
 相手は前進を止めぬままに更に速度を上げてきた。
 ボディ背面のパーツはエネルギー供給から推進器へと役目を変え、一旦は離れた距離を一気に詰められる。
 既に1本分の長さが消えている。
 ここは既に相手の間合い、エネルギー供給は行えないと思うので電撃は来ないだろうが……】

相手のこの突撃、電撃の使用は不可能と見ていいのだろう。
しかしこのまま距離を詰められていったのでは辛い。
どうにかこれを打破したいが……。

「カウンター…とか?」

いや、杖もあるし、相手の質量を考えればこちらが跳ね返されて終わるのは確実だ。
どう考えたって愚策……!?

「ちょ、今のは指示じゃない!」

ヘッドセットは発言を拾っていて、ルリは何故かスラスターを切り替え一瞬停止した後、一気に前進。
訂正してもルリは止まらない、まあここで止まっても尚更ピンチになるだけだが…… <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/02(日) 22:51:06.41 ID:E/vQPMj50<> >>734

「そうだったの?」

 咲はナオヒロの発言に面食らっていた。
 こうやって騙し合うのが大人の世界なのかと思うと、胸の中にさざ波が起きる。

 しかし余りにも迫真な声に驚かされただけでもあって、呼吸を継げばすぐ冷静になった。
 こっちが焦ったら相手の“思惑通り”。

「――結局、出たとこ勝負でいくっきゃないんだけどさ!」
『良い響きだこと、賛同はしないけどねぇ!!』

 ブーディカは右肩が顔を隠す程に杖を大きく振りかぶり、なおも加速した。
 さも、密着せずに頭を打ち据えようとしているように見える。

 だがブーディカは、ここまでのイタチごっこで脚部に充填されていたエネルギーを解放。
 そんなことをすれば加速は歯止めが効かなくなって、ルリに体当たりをかける事に、
 
『ダァァァァァァァーーーーーッ!!』

 なる。それこそが、少女とHMPの望みであった。
 武器を警戒された状況で、敢えて何も使わずに襲いかかる。間合いも速度も、本来の想定とは全く変化させて。
 ホーリーグレイルのマイナス要素である重さが、こういう時に生きるのだ。ラガーマンのように。

 ただし重心は大いに傾き、当てたとしても相手と団子になりながら転がり続けるだろう。
 いわゆる、捨て身タックルだ。 <> 麻<>sage<>2012/09/02(日) 23:40:24.47 ID:bQwY5v5DO<> >>735
「あー……」

思っていたよりも大きい声になっていたようで対戦相手の少女に怪訝そうな顔をされてしまった。
こういうときは何だか気恥ずかしい。
と、フィールグラム上ではまたも変化が。
相手の攻撃は杖による打撃ではなくボディの重量を生かしたタックルだった。
こちらも前進している以上激突はすぐそこ、ルリはどうするつもりなのか。

【速度が乗ればそれだけ他の方向からの攻撃に弱くなる。
 そういうわけで前進してみたが……。
 相手の攻撃はタックル、全身の重量を前に向けた凶悪な一撃だ。
 しかし、重心が集中している分こちらの攻撃が上手く行けばそれだけ大きく崩れるはず。
 攻撃は杖を想定していた分こちらの初動が早くなってしまったが、どうなるか】

ルリのとった行動は足払い?だった。
激突の瞬間に小さく丸まり、頭を庇いつつ左腕から相手HMPの足元に突っ込む。
左腕を始めとして全身を揺らすダメージ。
吹っ飛ばされるルリ、はたして相手はどうなったか、タブレットからフィールグラムに視線を戻す。 <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/03(月) 00:03:11.57 ID:8xrf3mq50<> >>736

 相手を巻き込むはずが、ブーディカは想定外に浮き上がっていた。
 最後の一歩の踏み足を崩され、勢いを多めに残したままに前に出てしまい、間抜けな浮翌遊感を覚える。
 杖を相手に引っ掛けて巻き込めていれば良かったが、あの構え方では無理な相談だ。

「むむーっ!」

 咲は迷いの無い手捌きでブーディカの動きを補正するが、限界がある。
 フェアリーレイクを目一杯暴れさせて相棒の為にできた事といえば、頭を打ち付けるのを避けることぐらいで。

『ぐあっ!』

 鎧を纏った女王は、熱く灼けた露地に身を投げる、投げさせられる。
 ルリからすれば少し前方で、重さ故に受け身らしい受け身も取れずに這い蹲っている。
 本来ならば、相手に自分の味わう痛みをクッションとして負わせる気でいたのに。
 
 だがフェアリーレイクが発光し、脚部に急発進のためのエネルギーを供給しようとし始めた。
 早いところ頭を機関銃で蜂の巣にしなければ、またダメージレースで負ける事になるだろう。
 最大のチャンスを逃してはならない。
  <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/03(月) 00:33:45.70 ID:QY8WOpVDO<> >>737
『あまり無理はするものではないな……』

よろよろと立ち上がったルリは傷付いた体に鞭打って試合にピリオドを打とうと歩を進めていた。
DVNOによれば全身で平均41%の損傷率、見た目では擦り傷のようなものばかりなので内部は相当なようだ。
右腕を真っ直ぐ前に構えてから、一歩……スラスター推力で一歩というのもおかしいが、兎に角、進むことで集弾性を上げていく。
そして2秒ほど進んでから、引き金を引いた。
狙いは全弾で頭部、だがダメージからか少々銃口のブレが大きいか? <> 来宮咲&ブーディカ<><>2012/09/03(月) 00:59:39.46 ID:8xrf3mq50<> >>738

 当然ブーディカは抵抗し、咲はバックアップのために鬱血するほどDVNOを握りしめて戦った。
 杖をコンクリに突き立てて、脚部に物理・電磁双方の力を込める。
 放電機構の回復を確認した。このまま跳躍し、頭上から雷を浴びせてやろうと

《頭部損傷率100%……破壊》

 ――世の中には、間に合わないこともある。
 頭部に集中して放たれた弾丸は、まさに立ち上がろうとしたブーディカをそのまま眠らせた。
 ずたずたになった頭は、最期まで敵を見据えたままに。
 
 それを見返したなら気付くだろう、ブーディカは防御力の一助となっている兜を失っていた。気づかぬ間に。
 そう言う時の運と激しい実戦の回数の違いという必然が重なって、咲は負けた。


「ごめんね、ブーディカ。焦ったら終わりだって思う時点で焦ってたかも……」
『まあ反省会は後だよ。しっかりと挨拶をしようじゃないか、サキ』

『ありがとうございました!』
「ありがとうございましたっ」

『……さて、あれを的確にいなすとは、ルリは場数を踏んでるだろう。それも、速い相手と
 自分らの流れにすっかり引き込んだと思ってたけど、主導権なんて一瞬で移るもんだ
 長く戦ってるつもりでも、勝った気でいると忘れちまうねぇ』

 彼女の名の由来であるローマ帝国に反旗を翻した古代ブリテンの女王は、序盤の攻勢は凄まじく、最期はあまりに呆気なかった。
 その御代の推して儚きこと、勝ちを急がずゲリラ戦を続けていれば、少しは違いもあったろうか。
 だが冷徹な判断に徹することはHMPにとっても容易ではない。

「それを指示したのはナオヒロさんでしょ。フェイントしながら実際に良い選択をするなんて、スゴイよ!
 あたしももっと、ブーディカと仲良くなりたいなぁ。じゃないと意識してはできないよ、あーゆーの」
『(怪我の功名だと思うんだけど、お互いのために言わない方が良いかねぇ……)』 <> 来宮咲&ブーディカ<>sage<>2012/09/03(月) 01:02:59.51 ID:8xrf3mq50<> /セリフがなんかおかしい。「あたしももっと、ブーディカと仲良くなりたいなぁ」は「あたしももっと、ブーディカと一緒に色んな相手と戦わないとなぁ」ということにしておいて欲しい。
/後出しじゃんけんみたいで、情けないですが。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/03(月) 01:29:13.61 ID:QY8WOpVDO<> >>739
「かーなーり、危ない橋だったなぁ」

『後退していたらそのまま潰されていただろうな。
 まあ今も勝利したからいいものの、ガタガタで嫌になる』

「帰る前にスペース借りて中見てみなきゃね。
家にないパーツが壊れてたら買ってかないと」

取り敢えずはボディの修復が先だが。
元に戻ったフィールグラムからルリを拾い上げるとメディカルポッドへ。
会話はタブレットを通じているので問題はない。

「こちらこそありがとうございました。
最近は速いタイプが流行ってるから戦う機会も多くて」

「ただ、軽量なタイプが多いから君のブーディカみたいな重量を武器にするタイプとのファイトは貴重な経験になるよ」

『逆転は舞台を盛り上げるエレメントだからな。
  互いに削り合うような試合でなければオーディエンスも私達も楽しめないさ。
 ……ま、逆転を演出出来ずにそのまま圧殺されていたかもしれないのだが』

偉そうにいうルリだが、まあ『逆転はたまたまですが難しい試合を勝てたので楽しかったです』程度の意味だろう。多分。

 因みにルリの名前の由来は……いや、いいか。

「いやぁあれはルリの独断専行でね、ちょっと恥ずかしかったな。あれ」

『ナオヒロにフェイントを入れる技量も度胸もないからなぁ』

 気を使われたことに気付かぬ2人。
 自らネタバレにいってしまった <> 来宮咲&ブーディカ<>sage<>2012/09/03(月) 02:03:30.28 ID:8xrf3mq50<> >>741

 レトロな魔法少女アニメのように首なしで静止したブーディカ。咲は慎重に捕まえた。
 メディカルポッドの温かな胎内に救い上げ、杖を武器ラックに収め。

「ブーディカ、重いってよ」
『別に良いんじゃないかい? HMPなんて、重くなったり軽くなったりしてナンボさ、組み替えロボットなんだから』
「あ、そうだね……」

 誂っても、受け流すのではなく正面から受け止めて投げ飛ばされてしまう。
 エレガントさを好むレッドローズらしからぬ直截で通俗な言い回しだが、不思議と賤しさはない。

 そうして母娘のような友人のような二人を、ナオヒロの衝撃の告白が横から襲った。

「そうだったの?」

 さっきと同じようで、決定的に違う言葉が返った。
 最大出力のクラウソラスに匹敵する威力の、少女のじっとりとした睥睨がナオヒロに照射される。
 事を深刻にしようとして言葉を使うなら、咲は彼という現実に幻滅したのだ。
 言うまでもなく、本当は笑って流せるレベルの失望だが。

 逆にルリの株はもとから高かったのに、今は青天井である。
 
『まぁフィールグラムの上では動いて結果を出せばいい。信頼が無ければ、勝手には動けない。ルリたちはしっかりやった……そうだね?』

 フォローを入れる彼女も、どちらかと言えばルリに肩入れしているようだった。
 黙ってたのを無駄にされたら、しょうが無いかもしれない。

 ああっと、後ろでは台待ちのファイターが目でそれとなく催促していた。
 ブーディカが小声で伝えると、頷いて、

「でも、次はあたし達が勝っちゃうよ。ブーディカのパーツの完成度にも気を使う
 チャンスを引っ張りこむだけの実力があるって、示さないとね
 ……じゃ、また会おう!」

 手を振りながらくるりと身を翻して、去っていくだろう。
<> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/03(月) 02:38:50.11 ID:QY8WOpVDO<> >>742
「いやー、重量負けしてる相手に突っ込めなんて言えないよ、俺。
ペットは飼い主に似る、とも、子は親に似る、とも言うけど、ルリの思い切りの良さは俺を反面教師にしたんだろうなー」

それとアセンのせいもあるかもしれない。
引き撃ちや狙撃のようなスタイルはルリのアセンでは不可能だし。

「まあ本当に前進を指示してたとしても、相手に嘘を吐くようなことはしないよ。多分」

 少女からの視線も言葉もあっさり受け止める。
 子供の言うことだから気にしない、と言うわけでなくどちらかというと開き直っているような感じを受けるかもしれない。

『戦っているのは私なのだから、信頼するのならナオヒロから私に向けてだろうな』

ルリは辛辣なことを言っているようだが、信頼していないとは言っていない。
素直じゃないのか本当に信頼していないのかはルリのみぞが知るところだが。


「その時はお手柔らかに頼むね。それじゃあ、また」

 小さく笑いながらこちらも手を振り替えす。
 最近の子供はやはり侮れないなぁ、などと思いながらその背を見送った。

『子供相手にその宣言はないなー』

うるさい <> 玖城 孝太郎<>sage<>2012/09/05(水) 22:06:22.93 ID:lwbyWsImo<> HMP専用ショップの一角
対戦スペースの一つを占領するように、大げさに椅子に座り込む男

気だるそうに座るその男は
何処かの高校の制服を着崩し、小型の端末を弄っていた

「……へたればっかかよ」

周囲に視線を向けるが、すぐに端末へと視線が戻る
どうにも対戦待ちのようだが、ひどく態度が悪い <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/05(水) 22:08:36.81 ID:djH7/brjo<> >>744
「そういう態度は、感心しないな」

 見るからに不良くさい男に話しかけたのは、純朴そうな青年だ
 腰からホルダーを提げているところを見るに、彼もまたHMPファイターか

「どうも対戦待ちみたいだけど、そんな喧嘩売ってるような態度じゃ、誰も寄りつかないよ?」

 そういう彼は変人か

「ま、いいや。自信満々に対戦相手を待ってるっぽい君と勝負してみたいな。どうだい?」 <> 玖城 孝太郎<>sage<>2012/09/05(水) 22:19:58.28 ID:lwbyWsImo<> >>745
「……ん、あァ?」

端末からシンの顔へと視線を向け
小さく、挑発的に微笑むと座っていた椅子から立ち上がり
端末をポケットへと滑らせた

「やるってんなら、相手になるさ
 んじゃ、始めようじゃねぇか」

男の横には黒のHMP
そして、その言葉とともにバトルフィールドが形成され始めた


//戦闘フィールド:コンマ末尾
05森林
16市街地
27山岳
38闘技場
49雪原
<> 玖城 孝太郎<>sage<>2012/09/05(水) 22:21:00.64 ID:lwbyWsImo<> 選択されたのは、闘技場

円形の観客席に囲まれた石の床
遮蔽物は何もない

ただ、戦いの為だけのフィールドだ <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/05(水) 22:26:24.72 ID:djH7/brjo<> >>747
(また闘技場か……)

 どうやら闘技場と縁があるらしい
 前回の敗北は記憶に新しい。無論それを乗り越える為の策は幾つか用意してきた

「……ま、なるようになるしかないね」

 さて、と呟きながら筐体にエクリプスをセット、DVNOの電源を入れてモニター開始

――

 どしん、と闘技場の東側にエクリプスが登場する
 毒々しさと不気味さを湛えた彼女は、ぐるりと周囲を読みとると、両手の武器を構える

『マスター』
「ん?」
『今回も私が自由にやっていいんです?』
「やってみたいなら、任せるよ」
『――はい!』

 自律行動を許可されたエクリプスは、身構えたまま、相手の出方を窺う <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/05(水) 22:33:49.55 ID:lwbyWsImo<> >>748
黒、ブラックメタルカラーのHMPがエクリプスの前に立っていた
目の前の男のHMPはこれなのだろう

黒のHMPは、右手に装備した盾を構えると
力強く、大地を蹴る

爆音

激しい炸裂音が響き渡ったかと思えば、その黒のHMPは空中へと駆け出していた
石の床に亀裂が入っている
爆音は、黒のHMPはの移動用装備が発動したのだろう

空中に飛び上がったHMPは盾を構えたまま、エクリプスの方へと体を向ける
その瞬間、放たれるダガー
高速で疾走するその刃は真っ直ぐ、エクリプスへと迫り、加速する <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/05(水) 22:51:04.53 ID:djH7/brjo<> >>749
 早い
 まず最初に抱いた感想はそれだった
 パーツ構成を見て、短期決戦型の高速機であることが理解できる
 だが――

(それにしては、些か偏りすぎてるね)

 左腕のアレはウェポンスティーラーか
 取り回しは悪いが、扱いこなせればあらゆる相手に勝利できる
 エクリプス相手ならばムベンガを奪い取れば勝利、か

(……さて)

 データを見ても、DVNOを操作する気は全くない
 これは、シンの戦いではない
 エクリプスの戦いなのだ

――

 ご、と爆音を響かせ闘技場の床を砕き飛翔した眼前のHMP
 早い。速度域は全出力を投じた際のこちら以上か
 ――軽量型。武装を考えるに近接機
 アーキテクトが使うHMPである、その記憶野には一般的なパーツの性能群が記憶させられている

(あの左腕はなんでしょう?)

 大きな腕だ。掴まれれば逃れるのは難しいだろう
 だが、そういう使い方をする腕なら、自分は知っているはずだ
 知らない、ということはそういうものではないのだ

(警戒、しましょう)

 当座、対処すべきは左腕ではなく弾丸の如く射出されたダガーである
 Valkyrja_Thrudのアイカメラ性能ならば、見切れない速度ではない
 とにかく、あの左腕が脅威だ
 隙を見せるような動きをすべきではないだろう

(なら――)

 普通に、剣で弾く
 放たれた弾丸の如き剣を、左腕のミセリコルデで弾きとばす
 刃同士が高速で擦れ、火花が撒き散らされる
 衝撃は重く、思わずサブアームを一本加えることで、どうにか衝撃を受けきった

『次はこっちから行くですよ!』

 轟と、LEGパーツ Stratosphereが火を噴いた
 高出力ブースターが重量のあるエクリプスの体を吹っ飛ばす
 その軌道は直線ではない
 さながら空気を破壊しながら進む雷の如くに、スカートの抵抗を活かしながら空中でジグザグの軌跡を描いて、空にある黒のHMP目がけて跳躍する
 狙うのは自分から見て左側、ウェポンスティーラーが伸ばしにくい、盾の方向へと <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/05(水) 23:05:38.04 ID:lwbyWsImo<> >>750
射出したダガーは、敵の剣によって防がれ
弾かれた刃は飛び上がるエクリプスの右側の床へと叩き落された

空中をジグサグと機動を小刻みに変えながら進むエクリプスに対し
黒のHMPは、空中で移動を可能にする程のブースターは搭載されていない

だが、地面に叩き落されたダガーとその機体を繋ぐワイヤー
ソレを巻き上げることで、自分を引き摺るように強制的に移動
エクリプスとは逆
弧を描くような機動で右側へと逸れていく
エクリプスの接近を避けるかのように

アクティブシールドを起動させずただ、盾として使用しその身を守りながら地上と急落下していく

「……チッ」

空中では、勝機は薄い
だが逃げの戦法は、彼にとっては好みではなく

いや、好み云々よりも彼のセッティングではエネルギーを少し消耗するだけで勝ちは薄まっていく <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/05(水) 23:12:54.73 ID:djH7/brjo<> >>751
 ダガーを巻き取ることによる高速逃避
 あのダガーに何か仕掛けがあったことに気づけなかったということを、エクリプスは恥じた

(マスターなら、気づいてたのに)

 自分はまだまだ未熟。そんなことわかっている
 だから、戦って戦って、もう要らないよと言われないように使える女になるのだ

『行かせませんよ!』

 呆然と佇むつもりはない
 この跳躍だって、十数パーセントのバッテリーを費やしているのだ
 無傷で帰すつもりなんてない

 多少距離は離れている。有効射程からはギリギリだろう
 でも、当てられる距離。当たれば効果のある距離

『噛まれてください!』

 躊躇せず、右腕のムベンガを放つ
 重々しい反動と共に、縁を描くファングショットが黒のHMP目がけて突き進む
 離れれば離れるほど、ダメージは低くなるが、巻き取る速度以上にムベンガの弾丸は早い
 盾によって重要部位は隠されているが、命中さえすれば衝撃と、強烈な麻痺効果による制動を掛けられる

 中って、そう心の底から願いながら、空を行く弾丸を見守る
  <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/05(水) 23:30:04.53 ID:lwbyWsImo<> >>752
放たれる散弾
この手の銃は、高威力で近距離というのがお決まり

一撃でも食らえば、この低装甲では一溜まりもなく
射程内、現在の兵装では避けられる距離でもない
ならば、防がなくてはならない

この一枚の盾だけでは、防ぎきれない
ならば、ならば

―――更に、盾を重ねれば良い

『――OverFlow』

そこに響いたのは、機械音声
右の盾を構え、左の拳を突き出す

左の掌部の朱の孔から溢れ出す、赤のエネルギー
盾ごと覆い隠すように溢れ出したエネルギーフィールドは、銃弾の威力を軽減させ
防ぎ切れなかった銃弾は、実盾によって防がれた

《EN残量 58%》
銃弾を防ぎきり、地面へと着地した代償は
半分近いエネルギーの消耗だった

だが、空中のエクリプスを待ち構えるように
その左腕は構えられたままだ
<> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/05(水) 23:36:28.97 ID:djH7/brjo<> >>753
 受け止められた、という事実に、思わず絶望を感じる
 今の自分は飛んで火にいる夏の虫だ
 このまま落ちれば、間違いなくダガーやあの左腕に喰われるだろう
 肝心要のムベンガが通らなかった以上、頼れるのはミセリコルデだけだ

 ――ならどうすればいい?
 奴に捕まらないような位置に落ちればいい
 幸いにしてまだ慣性は生きている
 加えてムベンガを撃った事による反動で、姿勢は変わっている

 飛翔することはできない
 けれど、跳躍と、落下速度の軽減程度は出来る

 エネルギー残量――『83%』
 まだまだ行ける

 ご、と空中で花が咲くようにしてブースターが灯った
 慣性のままに移動していたエクリプスの体が加速、闘技場の主戦場である大地ではなく
 観客席目がけて一気に移動を始めた <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/05(水) 23:46:25.04 ID:lwbyWsImo<> >>754
BODYパーツから再び、ダガーが射出される
次の狙いはエクリプスではなく、闘技場と客席を隔てる壁

その壁に深々と突き刺さったダガーとソレを繋ぐワイヤー
ソレを巻き上げる事で、先ほどと同じく加速を得る

だが、先ほどと違う点があるとすればここは地上
LEGパーツは、地面に擦り、徐々に消耗していく
時折、飛び上がることで地面との接点を減らしてはいるが
無駄なエネルギーも使えない、LEGパーツの耐久度は犠牲にするしかない

エクリプスを追いかけるように真っ直ぐ駆け抜けていくが
ブースターを使用したエクリプスには追いつけず
射撃装備も持たない黒のHMPは、ただただエクリプスを追いかけるだけだ
<> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/05(水) 23:53:57.53 ID:djH7/brjo<> >>755
 追いすがってきた
 ある意味それは理想的な展開ではあったが、今この場ではあまり歓迎出来るものではない
 ムベンガのリロードはまだ終わらない。もう少し、掛かる
 故に出来るのは接近戦だけだ

 どしん、と重々しい音を立ててエクリプスが観客席に着地する
 すり鉢状の観客席は、高低差がある
 互いに近接武器しかない今、この高低差を活かして時間を稼ぐしかエクリプスに勝利の道はない

(逃げ回るっていうのは、マスターは好きじゃないですね)

 それに、美しくないし、満足の出来る戦い方ではない
 勝利に拘泥するな。大切なのは結末ではない
 勝てばいい、なんていうのは意味がない
 マスターからエクリプスが教わったのは、そういうこと

(だったら――)

 選択肢は一つしかあるまい

 ――逃げからの反転、一挙に攻勢に出る

 レームを稼働させて抵抗を操作、ブースターを点火して、加速
 すり鉢状の闘技場を転がり落ちるように、加速しながらエクリプスが黒いHMP目がけて突っ込んでくる! <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/06(木) 00:11:01.69 ID:vku4X/C0o<> >>756
迫り来るエクリプス
それに迎えつ様に、消耗したLEGパーツを起動させ
小型のスラスターに火を入れる

炸裂音を響かせながら、壁を駆け上がるように飛翔

そして、突撃してくるエクリプスとすれ違い様に

『――WeaponStealッ!』

その左の掌部がエクリプスの装備しているショットガン<ムベンガ >をまさに盗み取るように奪う
それはスリ、というよりは強奪
奪い取るように強引に、引き千切るように野蛮に
その巨大な腕にはショットガンが握られ、エクリプスの頭上まで飛翔したその機体は
エクリプスを嘲笑うかのように、ソレを構えた

//>>749KP使用 <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/06(木) 00:19:57.92 ID:Hi/alZAyo<> >>757
 盗られた――
 なるほどあれはそういう武装だったのかと納得すると同時、思わず笑みが零れた

 ――だって、まだムベンガのリロードは終わっていない
 あれは確かに強力な武装だ
 当たりさえすれば相手を麻痺させられる
 けれど、その代償がリロード時間の長さと装点数一発という極端な調整
 使い慣れていなければ、その事を知らない
 リロード終了までにはまだ僅かな猶予がある、その間に決着を付ければ、勝てる

 ブスーターを切り、ハイヒールを接地
 強烈な負荷が脚部に掛かるが、仕込まれた機構が慣性を吸収すると同時、解放
 ぐるり、とロイヤルローズが見せるような反転をその場でこなし、跳躍
 二本のサブアームがレールとなって、ミセリコルデの軌道上に展開
 そこに刃を乗せて、悠々と天から見下ろす黒のHMP目がけて、高速の突きを放つ
 それは単発ではない
 撃った瞬間、引き戻され、腕の負荷限界ギリギリまでの酷使を行う連続突き
 三段の五月雨。それが、シンが新しく入力したモーションデータだった

【L.ARM――HP60%】
【エネルギー残量――45%】  <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/06(木) 00:40:53.28 ID:vku4X/C0o<> >>758
ショットガンを構えたまま、硬直する黒のHMP
リロードは終了しておらず、その引き金は引かれない

更に下からは高速の突き
迫り来るソレを防ぐ術はない
エネルギーフィールドを発生させるには、武器を捨てる必要があり
盾は、ソレを防ぐだけの防御力はない

徐々に迫るその刃
重力に従い落下、LEGパーツから刃に向かていく黒のHMP

消耗したLEGパーツは刃による一撃を受けただけでその耐久値はほぼ0
だが、その瞬間起動するスラスター
刃を押し返すように炸裂するスラスターは一瞬だが、HMPを上昇させた

その一瞬、その飛翔が再装填を完了させる

『――Reload』

<<LEGパーツ損傷率 100%>>

その構えられたショットガンの引鉄が、引かれた <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/06(木) 00:43:51.28 ID:Hi/alZAyo<> >>759
 真っ正面からのムベンガの一撃は、ヘッドからボディを満遍なく囓り、もぎ取った

【HEAD――40%】
【BODY――60%】

 HPが見る間に吹き飛んだ
 さらに、これに加えて硬直という効果が発生する
 ヘッドパーツに発生した硬直は必然的に全身の硬直へと繋がる

 まだ諦めてはいないが、無理だろう

(これは負けですねぇ……)

 惜しかったなぁ、と正直思った <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/06(木) 00:53:24.92 ID:vku4X/C0o<> >>760
その左手に構えたショットガンを放り投げる

HEADパーツの顎が禍々しく開かれた
まるで飢えた狼のようなソレは、笑っているかのようにも見える

「……終わりだな」

倒すだけならば、右のチェーンソーでも良いだろう
ダガーでも良い

だが、黒のHMPはソレを選択はしなかった

左の巨腕
その掌が開かれ、エクリプスのHEADパーツへと向かい、掴み掛かる

<<EN残量 32%>>

ああ、十分にENは残っている
その腕は、強奪するだけの腕ではない

バリチッ、バリチッ、と火花が散るような音が響いた

『――OverFlow』

無常に響く機械音声
それは、あのエネルギーフィールドの発生を告げていた


地面は、もうすぐそこまで迫っている <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/06(木) 00:57:51.97 ID:Hi/alZAyo<> >>761
『ごめんなさい、マスター』

 それが、最期の言葉だった

【HEAD――0%】

 勝利は黒のHMPがもぎ取った
 
 ぱちぱちぱち、と拍手の音が響く

「いやはや、負けちゃったなぁ。ウェポンスティーラーなんて面白い武装積んでるHMP初めて見たよ」

 ははは、と負けたのに何処か嬉しそうに青年は言う

「やっぱり、ムベンガはピーキーすぎるねぇ。とは思うんだけど、やっぱり積んじゃうんだよねぇ」

 この気持ちわかるよね?と馴れ馴れしく話しかけた <> 玖城 孝太郎/ツヴァイ<>sage<>2012/09/06(木) 01:02:04.62 ID:vku4X/C0o<> >>762
「……何、笑ってんだよ」

負けて笑う青年へ、睨みつけるように視線を向け
HMPを回収する男
気に食わない、と口にせずとも、その態度にわかりやすい程現れていた

嘆息
面倒な奴に絡まれた、とでも言いたげに
視線を外すように反転し、シンへと背を向ける <> 荒田シン/エクリプス<>sage<>2012/09/06(木) 01:08:45.49 ID:Hi/alZAyo<> >>763
「おやおや……まぁ、悪い子ぶるのはほどほどにしなよ、と余計なお世話だろうけど言っておくよ」

 慈しむように頭部の壊されたHMPを回収しながら青年は言う
 
「いつかそれは、全部返ってくるからね」


「過去は追いかけてくるんだ。何処まで逃げても。
 安全な場所なんて、ないんだよ」

 不思議な言葉を残して、シンもまた立ち去る <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/10(月) 18:03:46.10 ID:sSXgBKFT0<> 早緑の人、あなたが誰かはわかっている。
能力者スレでは今、俺、すなわちウェインの人を主軸にした復興が進んでいるんだ。
あの頃のロールに今も素敵な思い出があるなら、是非参加して欲しい。
ttp://www2.atchs.jp/nrsbbs/ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/17(月) 21:56:32.66 ID:15J53jKDO<> =某HMP専門ショップ。店主が脱サラして始めた個人営業の店舗だ。
 フィールグラムやメディカルポッドの他、小さいながらも改造ブースを備えておりアイディアはあるが場所はない親父ファイターや子供ファイターに贔屓にされている。
 脱サラしてショップを開いただけあり、店主のHMPの知識は結構なもの。
 独自にパーツやフィールドのデータベースを作り上げ、レジ横のPCでそれを公開している。
 それや店主を活用することでアセンや改造についてのアドバイスを受けることが出来るのだ。=

「サードアーム……うーん、違うな。副腕ってのは面白いけど……」

『やはりコンセプトを固めてから改めて来るべきじゃないか?
 大きくアセンを変えるつもりなら明確な目標が必要だと思うのだが』

「パーツを見ながらこれっていうのを探そうと思ったんだけど……」

『HMPのパーツが何種類あると思っているんだ、日が暮れるどころでは済まないぞっ』

「いやぁ本当その通りだよ。……来店して2時間経ってるもんなぁ」

=そう言って一息ついた青年が一人。
 店内をあちらへ歩きパーツを見、タブレットになにかを打ち込んでは今度はこちらへ歩き同じことをする。
 そんなことを繰り返して、発言によれば2時間、正確には2時間と21分。
 店長を除く店員からは怪訝そうな顔で見られ、自分のHMPからは呆れられながらもナオヒロは次のパーツに手を伸ばした。= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/18(火) 12:24:21.39 ID:SdYCZIxpo<> >>766
 伸ばしたナオヒロの手に、なんだかひどく柔らかいものが横から当たった
 それは、HMPのパーツとは違う、血の通った温度がしていて、なんだかとてもすべすべとしていた

「あ……申し訳ありません。お先に、どうぞ」

 視線を向けてみれば柔らかなオレンジ色をした着物を着た少女がいるのがわかるだろう
 艶やかな黒髪は姫カットに纏められていて、佇まいは正しく日本人形のようだ
 身長の低さが、その印象を助長している
 和の極み、とも言えるような格好に似つかわしいようにデコレーションされたタブレットは、言われなければ小物のようだ
 彼女は控えめに申し訳なさそうな笑みを浮かべていた

『まったく、そうやって押しが甘いから欲しいものを横からかっ攫われちゃうのよ』

 と、もごもご、とその肩を登ってきたものがいた
 それは紫色をした蜘蛛だ。HMP絡新婦であろう
 肩上でくるりと回転、変形した彼女は、見るも鮮やかな紫の着物を着ていた
 蜘蛛の巣のような紋様が彩るその着物は、恐らくは手製の代物であり、かなり手が込んでいる

『買い物なんて捕ったもん勝ちなんだから。もっと強くいかないとダメさね』

 どうやらこちらは主とは違い、かなり勝手な性格らしい <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/18(火) 21:10:57.00 ID:6iKO0AhDO<> >>767
「あ、いえ、私は買うつもりはないので……。どうぞ」

【ナオヒロはこういう状況はあまり得意ではない、というか苦手だ。
 それが欲しいものでもそうでなくても譲り合いになってグダグダになる。
 既に先のことを考えて焦っているのか体温が上昇している。
 こういう時サーモカメラは役に……たってるのか?
 ……しかしこの女子、控え目な発言の割に派手な外見をしているな】

『そうだぞナオヒロ、そのHMPが言うとおりだ。
 そうやって日頃から遠慮しいしい生きているからファイトも締まらないんだ』

「う、うるさい」

巨大な蜘蛛にギョッとしていたらルリに好き放題言われてしまった。
反論できないのが悲しい。
この話題を続けるのはちょっと俺の精神的にまずいので話を逸らそう、うん。

「えと……新絡婦だっけ、着物は手作りですか?」

『なんだ、HMPをダシにナンパか?それにしてはセンスないな』

……あれ、墓穴掘った? <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/18(火) 21:50:19.91 ID:zLJWAC8lo<> 「いやーあっついねぇ、ホント」
『夏なのにね。思わずセンサー切っちゃうくらい』

 広い公園のベンチの上へ、彼女らは荷物をあさっていた。
 一人は女性だ。どこか幼い顔には清々しい笑みを浮かべている。服装はトレーニングシャツとトレーニングパンツ、いかにも運動しますといった様子。
 かたやもう一人はHMPである。すらりとした女性型のボディは機械というよりも人形を思わせる精巧さ。その上に、彼女もミニチュアのジャージを着ていた。
 スポーツバッグにはタオルや空のペットボトルや制汗剤、小さな救急箱まで入っている。

 女性――国重蘭花はかいた汗をタオルでふきつつ、スポーツドリンクのペットボトルを開けた。

「次なんだっけ?」
『ランニング終わって、空手ね』
「はいよぉ」

 蘭花はぐっと背伸びをするとベンチから跳ね降りた。
 猫足立ちで構えを取る。型稽古だ。
 その様子を逐一見続けるのは、彼女の相棒であるエルピス。今日はトレーナー代わりである。

『足運びズレてるわよ』
「ありゃ、八極拳混ざったかな今の……んん?」

 などと言っている傍ら、ふと左手のバスケットコートを見た。
 何か懐かしい顔を見た気がしたのだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/18(火) 22:16:23.19 ID:/7ycDYOE0<> >>769

――ゴールを睨んでいた少女は、殆ど予兆なく跳んだ。
ふわりと浮かび上がる、身体。ミニバスの世界では主流でないワンハンドシュート。
淀みなくも力強いフォームは、嫋やかさと底知れぬパワーを矛盾なく内包する。

『おっ……そいつで50回だぜ』
「ふぇえ、私そんなにやってた?」

すん、と小さくネットが揺れて。
落ちたボールをすぐさまキャッチするなんてことは、外す要素が無いからこそ出来る行い。
その時、自販機の上に乗って練習を監督していたニンジャ姿のHMPが声をかける
キリの良い数字に当たったが、まだ続けられないことも無さそうだ。

そう思った時、彼女の汗ばんだマルーンの髪を聞き覚えのある声が撫でた。

「……あ、国重さん、お久しぶりです」
『国重ぇ? どこだよどこだよォ。……居たァ!」

ボールを手に取ったままそちらを向いた少女、佑美の肩の上にニンジャが飛び降りる。
彼女にとっては先生のようなものだから、笑顔と共に会釈したが、ニンジャ……バジリスクは落ちなかった。
いつもながら高い足場だが、今はもう慣れたものだ。

『意外と近くに住んでやがったんだなァ。まぁよ、滅茶苦茶遠いわけも無いんだが』
『オイ……ここで再戦のと、おっぱい揉ませるってのと、同時に片付けちまうか、エエッ?』
「ええっ! おっぱいは……、だめです……」

二人の関係性も、大体は前と同じような感じだった。
ただ佑美はいきなり泣き出したりはせず、たどたどしくもちゃんと主張をしている。
5号球で胸を隠そうとして、却って尚更その谷間の大きさを強調してしまうのだが……。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/18(火) 22:36:23.61 ID:zLJWAC8lo<> >>770
 すとんとボールがリングを抜けた瞬間、蘭花は両手を振って歓声を上げた。

「ナイッシュー! 佑美ちゃん久しぶり!」
『そこの忍者も決勝戦以来ね。お久しぶり』

 カバンをひっつかんでやぁやぁとコート脇へ移動する蘭花。
 エルピスも肩に腰掛けている。

「あぁ、ここからだと結構距離あるかな? 毎回マラソンがてら遠出してるんだよね」
『概ね20キロくらいかしらね』

 細い体のどこにそんな体力があるのか、あるいは佑美には分かるかもしれない。
 使う筋肉だけを無駄なく育てている形は、スポーツ用のモノよりもしなやかで、暴力的だ。
 格闘技全般に触れ続けた彼女だからこそだろうか。唯一の無駄は胸と尻くらいのものだ。

「再戦かー、今日は気分じゃないなぁ。おっぱいは揉みたい」
『今日のランは運動モードなのよねぇ……』

 HMPファイト狂の蘭花だが、たまにこうして無性に運動したくなる時があるらしい。
 元がアウトドア派の彼女だから当然といえば当然なのだが。

 というかそんなことより彼女はボールにあたって潰れるおっぱいを凝視していた。
 その若々しい魅力に、彼女はごくりとつばを飲み込んだ。

「あるいはおねーさんのを揉んでもいいんだぜベイビー」
『公衆の面前ではやめなさいね』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/18(火) 23:01:07.38 ID:/7ycDYOE0<> >>771

「そ、それほどでもないです。試合でなければこれくらい」
「でも走りこみは大事ですよね。今日は、ほとんど息抜きに来ましたけど」
『御大将は池で鯉を眺めてるのが楽しいんだってェ』

何につけても基礎体力であるという見解は、佑美にも一致する所だった。
天然自然の法則をよく捉えて育て上げられた肉体は、興味を惹かずにはいない。

これで自分より背が高ければ、と思うのは贅沢か。
……おっぱい話が無ければ、もう少し、じっくりと観察していただろう。

「うぅ、あかりちゃんみたいな事を言わないで下さい」
「自分のも揉んで良いよ、って言って帳消しにするの……ひきょうですよぅ」

あかりちゃん、というのは彼女の学友か、チームの仲間か。
となるとこの胸は、彼女が属するコミュニティーにおいても羨望や悪戯の対象らしい。むべなるかな。

『ギャハハハッ。しっかし、乗り気じゃねェお前とカラテしてもダメだな!』
「そう、だね。やるなら万全を期して。それに、みんなも一緒だったらもっと良いな……」

バジリスクの笑い方は相変わらずだ。
だがその構成は、フル・エアロニンジャから変更が加えられていた。武器が全く違うのだ。

新たなL.ARMはボムシュリケン。HMPの外殻に突き刺さる棒手裏剣に爆発機構を仕込んだ代物。
命中の後に爆破すれば内部にまでダメージを与え、そうでなくとも周囲を破壊する。
名前は勿論、ボウとボムをかけたシャレ……ガイジンの聞き間違えから考えたらしい。

そしてR.ARMは、国重たちが知らないわけのない武装だった。

『んん、どうした御大将ォ、なんか思い出してんのかァ?』

――ライジングムラサメソード。あの試合では、別の機体が装備していた奇天烈エレキテル・カタナ。
それを視る佑美の目には、卒業アルバムを捲っている時のように。
優しくも、どこか寂しさに濡れた感じがあった。
そのバストは豊満だ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/18(火) 23:20:22.53 ID:zLJWAC8lo<> >>772
「そだね、体は全ての資本だよ」
『まさか格闘技がHMPファイトで生きるとは思わないけどね、普通……』

 そういう彼女だが、背は佑美よりも一回り低い。やや小柄な部類だ。
 丁度目の前にメロンが二つある形である。

「しっかしおっきいねぇ」
『ダブルミーニングのつもりなら出直しなさい』
「そのあかりちゃんって子ともお話したいなー。まぁおっぱい周りの苦労は身に覚えがあるけどね」

 まるきり自慢だが、蘭花のスタイルは身長以外は抜群である。
 若人に彼女らの体つきは毒に過ぎると、身を持って経験していた。……もっとも、彼女はそれで一皮剥けてしまったのだが。

『そうねぇ。メリハリは大事だし』
「チーム戦かぁ、それもいいね」

 忍者のそれと違って、エルピスは全く変更はない。
 というよりも、彼女のそれをアップグレードするなら、まずは追加パーツなのだろう。
 懐かしい武器を見て、彼女は僅かに目を細めた。
 あのシャイな少年とダンサーボーイの、壮絶な相打ち。
 脳の裏側まで白熱したあの戦いを思い出して、彼女は無意識に口角を釣り上げていた。

「また次の大会で、あのメンバーでもう一度やろう。次は私が完璧に勝つからね!」

 彼女は自信たっぷりに言い放った。
 たゆんと大きく胸が揺れた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/18(火) 23:45:15.14 ID:/7ycDYOE0<> >>773

佑美の恐ろしいところは、これでまだ10歳だと言う事だ。
最終形態では180cmなど優に越してしまうだろうし、バスケに打ち込むようになってからも自分の背は嫌いだった。
背を縮めようと思って迷信に走り、肉中心の食生活と筋トレを早い段階で始めた。
お陰で……これ以上ないくらい、運動に適した巨体が誕生してしまったのだ。

視線がまっすぐ胸に向かっていること、自動的に見下ろしている事を、強く意識する。
かぁっと頬が赤くなって、身体が熱を帯びるのを、なんとか堪えようとしていた。

「は、はい。こんなに大きいのなんて、邪魔なだけなのに……」
「国重さんは、そう思わないんですか? だとしたら、どうして…………。」

最近は背の高さや自分自身が、少しずつだけどダメじゃなくなってきた。
が、胸だけは別。こんなものが付いている理由が、いまいち納得できない。
国重の自信溢れる態度にも、疑問符が浮かぶばかり。

『ギャハハ、一太刀で終わらせねェぞ。ズタズタに噛み裂いて叩き落としてやるよ!』
「そんなおっかない事にはならないけれど、勝ってみせますっ」
「オーバーロードが無ければ一度も攻撃を当てられてないなんて、囮役にしても」
「……、すっごく、悔しいですから!」

ボールを片腕に移し、右手に力を込めて打ち振ると、負けじと豊満な胸が上下する。
とりあえずこの子は無意識に揺らすのをやめるべきだと思う。切実に。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/19(水) 00:04:00.18 ID:aKESk7b/o<> >>774
「だってそりゃ、私は私が大好きだもん」

 まるで当たり前のように、彼女は言った。

「胸がデカいのも、背が低いのも、全部ひっくるめて私だからね。後はそれを好きになるか、嫌いになるかの違いだよ」

 両腕を組んでやれば、腕の上に胸が乗って強調される。
 蘭花はいつものひまわりのような笑みを浮かべた。

「好きなものなら、誇れるでしょ?」

 彼女にとってそれは当たり前の論理なのだ。
 生まれながらの戦闘狂が、戦いを嫌わないのと似たようなもの。
 淫靡妖艶な美女であるから、己の体を嫌とは思わない。
 全ては自分が自分であるために――彼女は今日も胸を揺らすのだった。

『言ってくれるわね。今度は綺麗にダルマにしてあげるわ』
「こっちも序盤隠れながらっていうのが気に食わなかったしね」
『そうね、狙撃くらい華麗に避けてみせなくちゃ』

 あの日の熱を思い出すと、訳もなく体が疼く。
 望む世界はまだまだ遠く、入り口に指先が触れただけでしかないけれど。

「うんうん、その意気その意気! 私も負けてられないぜぇ!」

 彼女は胸を張って、佑美をそう励ました。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/19(水) 00:36:55.87 ID:VxFyh7rg0<> >>775

「好きに、なる……」

やはりそれしかない。根本的な解決と言うなら、より完全な手段は存在しないと。
分かっていても、佑美は悩み足りずにいて、胸の重荷は取れない。

変わりたいと願っていても、それは一朝一夕では成らないもの――。

『良いんじゃねぇの? 少なくとも、あかりは御大将の胸を好んで揉んでる筈だぜ、からかっちゃいねぇ』
『ここは一つ、お返しにさわさわしてやるのどうだよ。違いが分かるぜ、エエッ!』

「……バジル、暫くコールドマッチャ・パフあげないよ」
『おおいえおおうお。国重の姉チャンもああ言ってるのに、逃げて良いのォ?』
「も、揉むかどうかは別問題だよぉ」

居合わせた者たちがそれぞれなりに励ますも、まだ先は長い。

とは言え彼女は未来ある小学生。おいおい難しいことにもパスを得るだろう。
バジリスクは楽観的だった。
そこに、刹那の存在でしかない自分についての皮肉も交えてだが。

それすらも些細な事。今度こそ、虚実皮膜の間の世界で、思う様暴れてやりたいものだ。

『まぁとにかくだ。またダンサー坊主にダセぇ所見せらくねぇだろ、俺もだよ畜生!』
「うんっ……精進します。それと、坊主なんて言っちゃダメ!」
『ああ、歌舞伎野郎だったかナァ……』
「もうっひどい!」

■■■■■■■

「……では、私たちそろそろ行きますね。少し買い物もありますから」
『首を洗っても無駄だぜ! 粉々に砕け散るからよ! ギャハハッ』

幾つか会話を交わした後に、彼女たちはそう言って別れようとするだろう。

「ふぇぇえええ!!??」

手の代わりに剣を振るバジリスクに、マスターはわけのわからない悲鳴を上げながら顔を逸らした。

……今まで話題にしなかったが、どうしてこの二人はタッグを組んでいるのかしら。
<> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/19(水) 01:13:40.22 ID:odCrjgzvo<> >>768
「よろしい、んですか? ありがとうございます」

 小さく首を傾げながらも、譲って貰ったことに仄かな笑みを浮かべて返し、パーツを手にとって眺め始める
 小さな目がきらきらとパーツを眺める様は、実にのどかな眺めだ

「え? あ、はい。この蜘蛛の巣の柄を出すのが難しくて、何度も失敗しちゃいました」
『金の無駄だからやめなって言ったんだけどねぇ』

 ちなみに、所謂反物を使用してわざわざ変形機構に巻き込まれないように作ったのである
 いくらお抱えの職人がいると言っても、馬鹿げた道楽であろう

「紅恋(くれん)、女性がいつまでも裸体でいるものではありませんよ?」
『色香で誘う妖怪が、着物ピッチリってのもどうなのさ』
「それは……秘された香り、というのがあるでしょう。チラリズム、というのだったでしょうか?」

 確かに醸し出されるエロスというのはあるが、少なくともこの年の少女が口にするようなものではない

『言わんとすることはわかるけどねぇ……どう思うよ? お二人さん』

 むっちりとした肉感を更に強く感じさせるような着物の着方をした絡新婦がそう問い返す <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/19(水) 12:54:20.91 ID:403xmWLDO<> >>777
少女の見た目から感じられる年齢は中学生くらいだろうか、
しかし、それに似つかわしくない雰囲気や佇まい……と、HMPの趣味を持っている。
今こうしてパーツを手に瞳を輝かせる様を見て、ああやっぱり子供か、と思う程度には自分の中学生位の頃との乖離を覚えた。

「手が込んでますねぇ。でもHMPが裸って……まぁリアルタイプだと裸といえば裸か……」

『私も服を着ていないという意味では裸なのだろうが……、私に服を着せるのは違うものなぁ』

HMPとは奥が深い。
そう言えば、このHMPは着物のまま変形を行っていた。
まさかファイトの際も着たままなのだろうか。
いや、変形機構を遮らない=ファイトする、と言うわけではないだろうが。


『こんなティーンズにかかってるかも微妙な女子からチラリズムという単語が聞かれるとは』

「しかも拘っていらっしゃる……!」

《新絡婦》のようなある種マニアックな機体を使っているのだからそういう拘りがあってもおかしくない。
おかしくないのだが……こんな少女だとやっぱりおかしい気がする。
そしてHMPからのキラーパス。
聞いてきた相手がタメや親しい間柄ならおちゃらけて返すが、では初対面の女子中学生にはなんと返すのが正解なのか。

「……中学生にはまだ早い?」

『私みたいにトイロボットにすればそんなこと気にしなくて良いぞー』

……結局逃げてしまった。
結局エロいと思う、とか言えない、言えないよ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/19(水) 18:32:42.40 ID:aKESk7b/o<> >>776
「これを佑美ちゃんに言うのはどうかと思うんだけど」

 蘭花は腰に手を当てて、そう切り出した。

「なんだって、実践と失敗の繰り返しでしょ? 変わりたいなら、まずは変えてみなきゃね――差し当たっては揉み返してやるとか」
『台無しじゃないの痴女め。佑美ちゃん、こうはならないでね』

 けらけらと彼女は笑っていた。
 何が楽しいのか、心底清々しい笑い声だった。


  * * * 


「そっかー。私はここで体動かしてくよ」
『またフィールドで会いましょう。砕け散るのは貴方だけれど』

 珍妙な悲鳴を上げる彼女に苦笑を漏らして、蘭花は大きく両手を振った。

『……思わぬ出会いだったわね』
「そうだねー、今日はいい日だ」

 その姿が見えなくなると、ようやく彼女は手を下ろした。
 そして、静かに構えをとる。ゆるやかに足を引き、猫足立ちで半身になった。
 緩やかに動き出すその体。一切のブレなく等速で円弧を描く左足。
 スローモーションビデオでも見ているかのような、流水のごとき後ろ回し蹴り。
 全身の筋肉の動きを余さず確認し、彼女は動きを怒涛へと変えた。

「負けてられない、ねっ!」

 空中を斬り捨てる勢いで、鎌のごとき脚部が一閃される。
 まるで誰かと戦っているかのように、彼女はその日練習を続けていた。 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/19(水) 22:29:47.80 ID:odCrjgzvo<> >>778
「裸というか……その、目のやり場に困る装飾と言いましょうか」
『それが売りなんだってばさぁ』

 絡新婦の素体は、女性の裸身を体毛が覆い込んでいくという扇情的なものだ
 乳首や性器の露出こそないとはいえ、些か以上に子供に見せるには目のやり場に困るデザインをしている
 だが、だからこそ、そのエロさに気を取られると絡め取られる、というのが基本戦術なのだが

「い、一応、ティーンですよ!? 来年には中等部に上がるんですから……」
『そういうところ気にする辺りはまだ餓鬼だねぇ』
「気にしないで開けっぴろげにするおばさんにはなりたくありません」
『わお、辛辣』

 女は産まれたときから女であり、女を捨てたその瞬間からもう二度と女には戻れないのである
 恥じらう乙女に色香を感じる者はいるだろうが、セール品を買いあさるおばさんに色香を感じる者はそうそう居るまい

「むぅ……」

 どうやらナオヒロの逃げは、お気に召さなかったらしい
 子供扱いしないでよ、と言ったところか

『だーから、そういうところが餓鬼だってのにねぇ。
 いやはや……しかし、確かにトイボットなら金掛けずに服なんて作らなくてもよかったのにねぇ』
「……あなたが、呼んだんじゃないですか」
『あー、あー人間独特の感覚はわからないなー』

 リリカの言う呼ぶ、というのは俗に言う商品に呼ばれるというアレだ
 ある種運命的なものを感じるというか……まぁ、ロマン溢れるものいいであるのに違いあるまい <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/20(木) 00:07:30.37 ID:s6WcQG8DO<> >>780
「……あー」

《新絡婦》は確かにそういう感情を煽るデザインだった。
日頃あまり意識していないが30cmは結構大きい。
フジムラ理論もあって、HMPの造形は正に、微に入り細を穿つものになっている。
もうリアルタイプHMPはある程度の年齢制限を……かけても対戦相手が使っていたりしたら無意味か。


「来年中等部って?……まだ小学生かっ……!」

『厳密に言えばティーンズでもないな。小学校6年なら12か11だろう』

ますます《新絡婦》がミスマッチだ。
《新絡婦》はなんかこうもっと良い意味で酒臭いような煙草臭いようなHMPのイメージだったのだ。
それが小学生って。しかも女子って。犯罪なのではなかろーか。
性格的にはこの少女と《新絡婦》、バランスが取れているように感じるが……。

「……小学生って背伸びしたがるよねぇ。俺はもう一回小学生出来るならやりたいものだけど」

『その辺りの感覚は私には分からないが、“呼ぶ”というのは分からなくない』

「え、俺呼ばれた覚えないよ」

『分かるか分からないか、ということだ。誰が呼んだと言った。
 人間と殆ど変わらない自我を持ち、人間以上の頭脳を持つ我々だ、そういう浪漫も悪くない』

ルリは、結構ロマンチストだ。 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/20(木) 01:04:41.64 ID:CcJv7ORBo<> >>781
「むぅぅぅぅ……」

 まぁ、12ではティーンズとは言えまい
 それでも背伸びしたいお年頃なのは、確かである
 ……その背伸びと蜘蛛形HMPを選んだことに関連性があるかはともかく

『ははは、言われてらぁ
 まーねー、そういうお年頃だもんねぇ』
「おだまりなさい!」
『へーへー」

 こほん、と少し頬を赤らめてリリカは佇まいを正す

「とにかく、まぁ……その、そういうわけで私は紅恋と一緒にいるのです」
『ま、よちよち歩きのひよこちゃんだけどねぇ』
「た、確かに初心者にもほどがありますけど……そこまでハッキリ言わなくても」
『それで、ま、色々パーツを吟味してみよって思ってパーツショップに来たわけさ
 そちらさんも、アセン換えかねぇ?』 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/20(木) 01:56:13.63 ID:s6WcQG8DO<> >>782
「ははははは」

HMPとその所有者として見れば異様でも、“呼ばれた”というだけあっていいコンビなようだ。
聞いたところ長いこと一緒にいるというわけではなさそうだが、既に関係はそれなりに築けているように思える。
子供の素直さと成熟した女性(のようなAI)の大らかさが上手く噛み合ったのか。

『初心者で《新絡婦》とは通だな。“呼ばれて”いたとしてもよく買おうと思ったものだ』

ルリの言わんとすることは分かる。
可変機は、まずそれぞれの形態の特性を熟知していなければならない。
でなければ変形をするべきところ、しない方が良いところを読み違え自爆してしまうこともある。
それなりの技量を持つファイターならば歴戦の勘でどうにかしてしまったりもするが。
初心者ならば可変でない機体でまずはそういった技術などを掴んでいく方が上達は早いだろう。
しかし、この少女は勝つこと“だけ”が楽しい訳ではないはずだ、多分。
初心者であるならまだまだファイトしているだけで楽しめるだろうし、性格的にも子供特有の飽きっぽさが感じられない。
試行錯誤して苦労を重ねた分だけ後々伸びることもある。
なにより小学生、物事を吸収する能力も優れているだろう。

「まだ若いし、すぐに強くなれると思いますよ」


「ええまあ。
最近はバトルの高速化高火力化が進んで今のアセンだと厳しいので。
小型武器の火力の上昇に伴って得意な重量級が減ってしまったのも痛いですね。
それでまあ高速機に高速機をぶつけるんじゃ面白くないし、何かないかなぁ、と」

『奇をてらったアセンをしようにも腕がないのだからどうせコケるがな』 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/20(木) 11:25:39.41 ID:CcJv7ORBo<> >>783
「まぁ……どうして蜘蛛なんて選んだの、って学友からはよく言われますけれど
 でも、蜘蛛ってなんというか、独特の強さがある、というか」
『ま、おかげで初心者坂登るのにも一苦労ってさ』

 可変機、特に動物へと変形するようなHMPは、HMP運用のみならず、その動物に対する造詣も求められる
 無論、知識を持たずとも運用することは可能だが、自然という厳しい環境の中で生み出された技を知らないのは、些か以上に損失が大きい
 
「上手く、なれるといいんですけど……」
『そー言う前に、まずは読書やめて特訓さね』
「でも、蜘蛛のことを知らないと、上手く運用できないのではないですか?」
『しらんよ、そんなん』

 へーへー、と息を吐く紅恋に、リリカは溜息を吐くばかりだ

「ははは……難しそうですね」
『でかいだけの棺桶か……でも、そう思わせておいた方が、ファイターとしてはいいんじゃないのかい?
 人間、想像を裏切られたときにすぐ対応出来るもんじゃないよ』
「どうして紅恋が誇らしげにそんなこと言うんです?」
『データベースの力、さ』

 ははは、と笑う姿はあまりにも人間然としていた <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/20(木) 16:19:55.23 ID:s6WcQG8DO<> >>784
「マキノイド、っていうか虫が魅力的なのは同意します。
HMPで言えば、出来ること出来ないことがはっきりしていて、勝ちパターンに嵌ればとことん強い印象ですね」

逆を言えば、パターンを確立できないと相当苦戦を強いられるということだ。
《新絡婦》はその辺りの欠点を人型形態がカバーしているが、それによって求められる戦術も高度なものになる。

『蜘蛛の特性を理解するなら本よりも映像の方が理解が深まるんじゃないか?
 教材みたいなのでないのか?ナオヒロ』

「俺に聞かれても……。
まあ、でもそちらの……紅恋さん?が言っているように実際に動かすこともして、《新絡婦》の特性も覚えていった方がいいかもしれませんね。
《新絡婦》を動かすのには蜘蛛の知識と併せて+αがいりますし」

たしか、《新絡婦》の基本形態はヒュームボットの筈だ。
変形の条件もあって、ヒュームボット形態である程度戦えなくては蜘蛛について知識をつけても意味がなくなってしまう。

『まあ、やりたいようにやるのがいいさ。
 プロでもないんだ、楽しくやるのが一番だろう?』

「……そうだなぁ。楽しいに越したことはない。
重量型相手のヒット&アウェイが成立しなくなって爽快感って意味じゃあんまりあんまりだったからなー」

「意表を突く、想像を裏切るのも決まれば中々爽快そうですねぇ」

『ナオヒロの腕じゃ決める前に撃沈だろう』

「……そこはまあルリがどうにかしてよ」

先程から鞄から上半身だけ出したルリに毒を吐かれまくる。
アセン変更に不満があるのか不安があるのか。
ちょっとパーツを悩みすぎたかもしれない。 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/20(木) 20:42:56.21 ID:CcJv7ORBo<> >>785
「そうですね……特に蜘蛛、なんかは自分の領域に如何に引き込むか、っていう話になりますし……」

 一口に蜘蛛、といっても全ての蜘蛛が巣を張るわけではない
 アシダカグモのように徘徊性の蜘蛛もいる
 HMP絡新婦は造網性と徘徊性の二種を併せ持つHMPだが、どちらかといえば造網性の傾向が強い

『だーから、1に特訓、2に特訓、3に特訓なんだってば』

 机上で理論を捏ねるよりも、実戦で経験値を積んだ方が良いこともある
 特にHMP初心者にはその傾向が強いだろう
 理論対策を考えなければならないのは、もっと後になってからだ

「うーん……なら、もしよければ、ですけれど。
 そのうち、お手合わせ願えますか?」 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/20(木) 22:04:34.00 ID:s6WcQG8DO<> >>786
「待ちのスタイルって焦れるし緊張感張りっぱなしだしで俺には出来なさそうですなー。
駆け引きも得意じゃないし。
……その点、君は駆け引きにおいては相手が勝手に侮ってくれるかも、っていうアドバンテージがある……のかな?」

小学生だからといって侮ってかかる人種は実はそこまで多くない気がする。
子供の発想力や頭の柔らかさ、それをHMPの優れたAIが補強することで大人顔負けの戦績を持つことも多い。
自分に身近なところでは予選大会のエイティーキッズやダイアモンドバックスがその代表といえるだろう。


『特訓もいいが、闇雲な特訓は成長の糧にならないぞ。
 なぜ負けたのかなぜ勝てたのか、それをきちんと考えないと……』

ルリの顔が上を……俺の顔に向く。

『こうなる』

ひどい。

「…………そうですね、私でよければお相手します。
糧になるかは分かりませんけど」 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/21(金) 00:28:12.59 ID:hZa7CuiXo<> >>787
「どうでしょう……HMPのメインターゲットは低年齢層だったと思いますから、あんまり侮って掛かってこられる方はいないのではないかと」

 たとえファイターがどんな年齢

『まー、反省は大事ってことさな』

 ははっ、と紅恋が笑う

「分析が大事、ってことですね」

 そういってリリカはくすりと笑う
 どうやら、目の前の悪い見本からキチンと学んだようだ

「では、ええっと、自己紹介を
 羽麻リリカ、こちらは紅恋です」
『うーっす』
「もう……では、また今度。このお店で、勝負しましょう」

 そう言ってリリカは淡く微笑んだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage saga<>2012/09/21(金) 07:22:14.07 ID:snEWf44A0<> これで大丈夫か?

【名前】白銀 黄金(しろがね おうごん)
【性別】男
【外見】小学6年生 ゲットーシリーズを基本としたパーツを使う
【詳細】熱血なほう ゲッ○ーロボが大好きでゲットーシリーズをこよなく愛する

【HMP NAME】ゲットーロボマイカスタム
【TYPE NAME】ゲットーロボ
【HMP SIZE】50cmとかなりデカイ
【HMP TYPE】翼のある人型
【HEAD】ゲットーヘッド
・ゲットーシリーズのヘッドパーツ
 かなり硬い
 耳部分に6連装ロケットランチャーが搭載されているがリロードは出来ない
【BODY】ゲットーボディ
・ゲットーシリーズのボディパーツ 黒い翼がある
 かなりの容量があり、物凄く重いしかしそれでも超高速で飛べるが、同時にバッテリー消費量も凄い
 腹部にレーザーカノン砲もあるが、バッテリーが一気になくなるため、滅多に使わない
【L.ARM】ファイヤートマホーク&普通の腕
・簡単に言うと斧、ただし斬る部分がとっても熱い
 R.ARMのヘヴントマホークと合体させて『デビルトマホーク』にできる
【R.ARM】フリーズトマホーク&普通の腕
・こちらも斧、ただし斬る部分がとっても冷たい
 L.ARMのヘルトマホークと合体させることによって『デビルトマホーク』にできる
【LEG】スルーレッグ
・慣性の法則を無視した動きが出来るレッグ


【ETC】
ある地方限定的にやっていたゲッ○ーロボの会社から許可を得て作った作品
その地方でそのゲッ○ーロボを毎日見ていたため、このパロディのゲットーロボをすぐさま買う
配色は基本がオレンジで、黒いラインが入っている、ほとんどゲッ○ーロボと同じ見た目

格闘戦特化で、デビルトマホークはキセキポイントを使わなければ合体させることは出来ない
その代わりそのデビルトマホークはかなりの威力を誇る、いわゆるロマン武器である

AIは、そんな燃費の悪い体を無視して攻撃する接近戦特化
ただし、それでも避けることが基本とされている <> 麻木ナオヒロ<>sage<>2012/09/21(金) 12:53:40.10 ID:EA25MoWDO<> >>788
「子供を相手にすると慢心しちゃったりすることがあるんですよ、これが。
カードゲーマーや育成ゲームの対人戦をよくやる人にその傾向が強いような」

まあ、高校時代の友人のことなんだが。
HMPファイトが2対2だと言うことを理解しきっていなかった彼は後々小学生に惨敗を喫していた。

「えー…まあそういうこと、なんでしょう」

ルリがいるとメンツもなにもあったものじゃない。
いつかルリに認められればこの毒舌から卒業できるのだろうか。

『私はルリで、こいつはナオヒロだ』

「麻木ナオヒロです。分かりました、その時は良いファイトを」

=そう返して、ナオヒロも小さく笑みを作った= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 22:14:25.37 ID:EWjK83TNo<> 『いやぁ、久しぶりじゃのう』

 そのHMPは随分と上機嫌だった。
 和服を思わせるすらりとしたシルエット、腰に提げられた日本刀。ヘッドには装甲はなく、放熱性の高いカーボンファイバーの糸の束。
 だが、彼女には右腕がない。大和撫子を思わせる美しい姿を、その一点が強烈に汚し、また際立たせていた。
 黒髪をふわりと風になびかせ、隻腕の剣士は大地に立つ。

『それもこれも、主殿がゴネるからじゃの』
「……だから嫌なんだってば、ぼくは……」

 対してその主は、複雑そうな顔で相棒を見ていた。
 小柄で細身で中性的な姿は男らしさの欠片もなく、顔立ちも然りだ。見ようによっては女性にも見えるかもしれない。
 彼はしゅんと肩を落として、DVNOを僅かに叩いた。

 対照的な二人だが、それもそのはず。
 少女は戦いを好み、少年は戦いを嫌っているのだ。
 もっと言えば、少女は斬り捨てることを至上とし、少年は壊れることに嫌悪を抱く。
 だから主が乗り気でないのは当然で、従者ばかりが気合を入れるのも当たり前なのである。

「……相手が来なかったら帰るからね、サクラ」
『すぐに来ると、主殿も分かっとるんじゃろう?』

 隻腕の少女――サクラは、そう不敵に微笑んだ。
 その主である静は、小さくため息をこぼすばかり。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/21(金) 22:21:14.77 ID:VJG4iZ/s0<> >>791
『おうおうおう!、随分とテンションが低いじゃねぇか?、あぁ!?』
まるで不良のような言葉遣いで背中に両方の先端に斧がついている物を担いで持つHMPがひとつ

その姿は全体的に黒で、赤いラインが入っており、頭部は二本の角が生えていてまるで鬼のようだった

「で、いきなりですけど、よろしくおねがいします」
小学六年生、一目でなんとなくわかる少年が歩いてくる

『ほらほら、やるんだろう?、とっととおっぱじめようぜ!!』

そんな礼儀正しい主とは裏腹にそのHMPはやる気マンマンだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 22:33:31.87 ID:EWjK83TNo<> >>792
『来たの』
「……そうみたいだね」

 静はもう一度ため息をついた。
 人が来たからには、やるしかないのだ。自分がいる場所はファイターが立つ場所。
 嫌々ながらなん相手に失礼だろうから、せめて今だけはペルソナを被る。
 そうして、静は人当たりよく微笑んだ。

「こちらこそ、お手柔らかに」
『血気盛んじゃの。良いことじゃ』

 戦意をぶつけられ、サクラは楽しそうに口の端を歪めた。
 あくまで流水の如き気配は崩さぬまま、獰猛な本性を剥き出しにしていく。

「フィールグラムはランダムでいいかな?」

 静はそう聞き返しながら、いくつかフィールドに操作をする。
 異存がなければ、すぐにステージが決まり、戦闘が始まるだろう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 22:37:12.34 ID:EWjK83TNo<> /ステージ決定
01 森林
23 ハイウェイ
45 決闘場
67 摩天楼
89 渓流 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 22:38:45.91 ID:EWjK83TNo<> ・決闘場
 阻むものの何もない、円形のコロッセオ。
 純粋なぶつかり合いにおいては最適だが、それ故に機体相性やファイターの腕が問われる。
 なお、高い壁を乗り越えれば観客席への移動も可能。とはいえ遮蔽物の無さは変わらない。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/21(金) 22:38:52.24 ID:VJG4iZ/s0<> >>793
「…主殿はどうやら乗り気じゃないみたいですね」
そんな相手の本質を見抜いて言う

「でも…コイツがバトらせろバトらせろうるさいんです、すみません」
コイツ、と指差すのは自分のMHP
『うるせー!、俺は戦いてぇんだ!』
と、言う自分のMHP

「まぁ、というわけで、すみません。
あ、自分は白銀 黄金といいます、このMHPはブレスガーゴイルです
貴方達は?」
『自己紹介なんてやってられっかよ!、フィールドは何処でもいい!、さっさとやるぞ!』

ブレスガーゴイルはそんなことどうでもいいと切り捨て、戦いを迫る <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 22:48:57.14 ID:EWjK83TNo<> >>796
「あはは、まぁ……」

 愛想笑いで誤魔化すしかない。
 ――この感覚は、おそらくファイターという人種には理解し得ないらしいから。

「国重静です。こっちはサクラ……枯桜です」
『ふん、もう御託はよかろ。あちらも乗り気のようじゃしの』

 サクラがそう呟いたのと同時、フィールグラムがステージの選定を終えた。
 光を撒き散らし、壇上に世界が構築される。
 今回のステージは……。

「決闘場か」
『分かりやすくていいのぉ』

 砂と土の地面に円形のフィールド。ローマを思わせるコロッセオだ。
 向い合って等距離に、彼女と相手は立っている。
 今にも襲い掛からんとする黒い鬼を前に、静は最後に眉をひそめた。
 サクラはそんな主へ、微笑んでみせる。

『安心するがよい、私は負けんよ。……なるべく傷付けんようにするから、堪忍しておくれの』
「……分かった」

 それが不可能であろうことは分かっていても、彼はそう頷くより他になかった。
 戦いは既に不可避の段階まで来ていたからである。

『晴神楽弐式改『枯桜』。いざ、参るぞ』

 戦闘開始のブザーとともに、サクラは鋭く一歩を踏み出した。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/21(金) 22:53:55.27 ID:VJG4iZ/s0<> >>797
「まぁ、理解は出来ますよ、ある程度」
と、愛想笑いをこちらもうかべる

「国重さんですね!、よろしくおねがいします!」
『お、決闘場か!、いいね、俺の一番好きな場所だ!』

ブレスガーゴイル(以降ブレス)は決闘場を見てうれしそうな声を上げる

『いくぜぇ!、ゆえなんたらぁあああああ!!』

故桜が一歩噴出したときにはすでにブレスは飛び上がり、そのトマホークを回転させて、その勢いをのせたまま
故桜の頭上から振り下ろそうとする!! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 23:08:12.45 ID:EWjK83TNo<> >>798
「そう、ですかね」

 思わず苦笑が漏れる。
 彼の言葉が社交辞令かそうでないか、静には判断がつかなかったのだ。
 彼はただ立ち尽くし、嬉々として破壊の渦へと身を投じるサクラを見守るしかない。

 そのサクラは、湧き上がる獰猛な感情とは裏腹に冷静だった。

『たわけめ。「れでぃ」の名を間違えるでないわ』

 皆無に等しい装甲は、そのトマホークの刃の掠める一撃でパーツの機能を止めるだろう。
 だが振りかぶる一瞬で、彼女は既に右へ一歩跳んでいる。
 縦の斬撃では届かぬ位置へ滑るように移動していた。
 彼女は極端な高機動HMPだ。高速でも軽量でもなく、高機動。単調な一撃を被弾するような機体だとすれば、そもそも戦いに出すこと自体が間違いだろうから。
 そして、左の腕が腰へと伸びる。
 片手で器用に鯉口を切り、右脚を地に触れさせた一瞬で構えを作る。
 ――居合い抜き。
 いかなる所業か片手によって繰り出されるそれは、しかして健常者の一閃と何ら変わらぬ速度でもって、黒鉄の鬼を切り裂かんとする。

『『枯』桜じゃ。覚えておけ』

 その刀が高く嘶く。
 鋼鉄の装甲さえも紙のように引き裂く絶対の超振動剣が、吠え猛る。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/21(金) 23:15:42.73 ID:VJG4iZ/s0<> >>799
「フフ、こんな子供がこんなこといったら
そりゃ驚きますよね…」
と、笑いながら言う

『性別なんざ俺達にゃねぇだろう!!?』
と、反論しながら振り下ろす

しかし外れたと同時にトマホークが地面に刺さる
『ちぃっ!』

そんな居合いをトマホークの反対側を持ち、体を一直線にさせてなんとか避ける

『やるじぇねぇかよ!!、燃えてきたぜぇえええええええええええ!!!』
そういいながら、トマホークを掴んで地面を抉って取り出す

「こら!、バッテリーを考えろ!!」
と、黄金の忠告が飛ぶが全然聞こえていない

『オラァ!』
そして今度は横に振る <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 23:29:54.50 ID:EWjK83TNo<> >>800
『つくづくたわけじゃの』

 横薙ぎに振りかざされるトマホークを前に、サクラは回避する素振りを見せなかった。
 否、必要がないのだ。
 その手のそれは、妖刀『刀神楽』は、鉄の塊を斬り捨てる程度はわけもないのだ。

 何より、サクラは苛立っていた。
 枯桜の名は、死した己に与えられた命そのものなのだから。

『私の名を――』

 音さえ置き去りにした横一閃、残光が尾を引き、空気を裂く。
 切断に音は残さない。あるとするならば、妖の吠え猛る声のみだろう。
 両断されたトマホークは、大地へと落ちていく。

『間違えるでない』

 ――超振動剣『刀神楽』は、打ち合った全ての武器を切断する。

 一つ武器を無力化し、サクラは更に懐へと踏み込む。
 彼女を打ち据えるには、鉄の塊はあまりにも無力だった。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/21(金) 23:33:51.61 ID:VJG4iZ/s0<> >>801
『ちぃっ!』

自分の武器がなくなったことに舌打ちするそぶりを見せる

『…チッ、あんまこの攻撃は好きじゃあないだがな!!』

と、ブレスはいやいやながらいうとその頭部の口部分が開く

『燃え尽きろ!!』

そしてその口部分から銃口が飛び出し、そこから炎が出てくる <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 23:41:42.56 ID:EWjK83TNo<> >>802
 サクラは僅かに驚き、そして舌打ちをした。
 炎を切ること自体は不可能ではないが、絶え間なく放射されるそれを切り捨てろというのは、流石に無理がある。

『あぁ、暑いのは苦手じゃ。よく分かったのぉ』

 サクラは炎を掻い潜るように身を伏せ、そして後ろへ大きく跳んだ。
 彼女独特の両足で踏み切る跳躍は、数歩の間合いを開けるのには十分だった。

『であれば、そうじゃの。鬼ごっこと行こうか』

 その容姿を皮肉って、彼女は更に後ろへ一歩跳んだ。
 最早何が飛んできてもおかしくはない。腕にバルカン、いやロケットパンチを仕込んでいても納得するだろう。
 だが、それだけ兵装を積み込めば必ず何かがオミットされるはずだ。

『ほれ、鬼さんこちら』

 一度引き、追ってきたところを仕留める。
 サクラは静かにプランを固め、もう一歩後ろへ跳ねた。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/21(金) 23:45:52.23 ID:VJG4iZ/s0<> >>803
『へっへ、効果的中ってかぁ?』

そういいながら火炎をとめる

『いいぜぇ、俺のスピードを越せると良いけどな!、…故桜さんよ!』

さっきまで全然呼ばなかった名をようやく呼ぶ

『いっくぜぇええええええ!!』

背中から黒い翼が生える!
そして同時に飛び、一気に前に行く!!
しかも一直線じゃなくグルグルと明らかに慣性の法則を無視している動きだ!

「ばっ、バカ!、そんな動いたらバッテリーがぁああああああああ!!」

そんな叫びも届かず、3秒もすれば既に故桜の目の前に来ていた!

『オラァ!』

そう叫びながら、右手で殴ろうとする! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/21(金) 23:58:26.46 ID:EWjK83TNo<> >>804
『――枯桜だと言っておろうが』

 その声に、先程までの余裕はなかった。
 窮地のそれではない。
 激怒のそれだ。

 立ち止まった一瞬から、彼女はようやく本気を出した。
 むしろ主の言い分を忘れたと言ったほうが正しいのかもしれない。

『人の名も呼べぬ猿が。見世物一つも出来んのか』

 どのみちこちらへ来るのだから、そんな幻惑にとらわれる意味は無い。
 彼女には滑稽にさえ映っている。
 殴りかかるその拳へ、何の躊躇いもなく妖刀を振りぬく。
 その重厚な装甲さえも彼女にとっては意味が無い。
 バターを切るように、突き出された拳は切り捨てられた。

 刀神楽の連続使用で、バッテリーはほどほどに落ち込んでいる。
 十分以上だとサクラは笑った。

 最早何の躊躇いもない。体を上下に泣き別れさせるべく、サクラはその胴へと震える刀を横へ薙ぐ。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/22(土) 00:06:30.90 ID:AKuzwKqi0<> >>805
「…すみません、アイツ、本気で名前が聞き取れなかったみたいっす」
と、黄金は静に言う

「後でキツク言っておきますんで…」
と、申し訳なさそうに言う

そしてチラリと目を向けると、見事に真っ二つになったブレスの姿


『ちっくしょう!、ボロ負けかよ!!』
と、真っ二つの姿のまま愚痴る
凄いシュールだ
幸い、ボディのつなぐ部分を切れたので、バッテリーは斬られていないため、喋ることはできる

『あぁ〜あ、三日ぶりの戦闘がボロ負けかぁ…おめぇ強いなぁ
えっと…枯桜だっけ?』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/22(土) 00:25:16.87 ID:WWrSVlwCo<> >>806
 ガランガランと音を立てて、巨体は輪切りにされた。
 凄絶な一刀である。振りぬいたまま残心するその姿さえ、気魄に満ちているように感じられた。
 どうも何もない、完璧な一撃必殺。
 そこから何が放たれようが、動けない相手に何の脅威を抱けようか。

 フィールグラムが機能を停止してからようやく、サクラはゆっくりと残心を解き、刀を振り払って鞘へと収めた。


 少年の言葉にどう返事をしたものか、静は考えあぐねていた。
 ボロボロの不法廃棄品だったサクラにとって、枯桜という名とあの体は新たな生命と言っていい。
 そうでなくても、名前を間違えられ続けて怒る気持ちは分かる。
 とはいえ悪気があったわけでもないようなので、頭ごなしに怒ることも出来ない。

「まぁ、気をつけたほうがいいと思うよ……」

 結局、無難に一言忠告するに留めた。


『当たり前じゃ。この私が接近戦で負けるはずがなかろう』

 サクラは辛辣に言い放った。
 ヒューマニックな顔は、随分と眉をひそめている。
 相当機嫌を悪くしているらしい。

『ようやく覚えたか小童。次はもう少し頭を使うことじゃな』

 サクラはそれだけ言い残して、踵を返した。
 そのまま静のカバンへ潜り込む。
 静はそれを困った顔で見ていた。まったくどうしたらいいやら、というところである。

「……おあいこってことで一つ」

 彼にはそう言うより他にはなかった。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/22(土) 00:29:42.35 ID:hPBKP2zY0<> >>807
「えぇ、コイツの言葉遣い、なんとかしときますんで」

申し訳なさそうな顔をして誤る


『くっそう、何時かその腕に追いつけるようにしてやる!』
と、意気込むが、ヒョイっと掴まれる

「まったくお前は…」
『おい黄金!、次はもっと接近戦特化に…』

言い切る前にパーツ袋のなかにいれて黙らせる

「いえ、もともとコイツが悪いんで。
えっと、枯桜さんも、本当にすみませんでした」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/22(土) 00:38:20.89 ID:WWrSVlwCo<> >>808
「サクラのことも気にしないでいいよ。あんまりそういうの好きじゃないから」
『……お主は悪くなかろ。気にすることはないぞ』
「サクラもこう言ってるし、ね」

 後を引くのは好きではない。もとよりそういう後々の事を考えるのも嫌いな質だ、いわんや人間関係をば。

(……後でサクラのゴキゲン取ったり注意したりしなくちゃなぁ)
「それじゃあ、ぼくらはこれで」

 内心の憂鬱を押し殺して軽く礼をし、にこやかにその場を離れる。
 ついでに脳内にあるサクラの地雷メモに、名前を間違えることと書き加えておくことにした。 <> 白銀 黄金
◆Jzg1H2DTNc<>sage saga<>2012/09/22(土) 00:40:42.39 ID:hPBKP2zY0<> >>809
「いえ、本当にすみません。
ちゃんと灸を据えておきますんで、それでは」

そういいながら自分も歩いていく

「…まったく、君は少し失礼すぎだろ」
『うるせー!、ちくしょう、次は絶対勝ってやるぅー!!!』

//お疲れ様でした <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/23(日) 00:17:24.30 ID:jP+twzdxo<>  都内某所にあるバーの入り口に、一人の女性が立ち止まった。
 赤いパーカーにダメージデニムという出で立ちは男らしくもあり、しかしパーカーの上からも分かる豊満な胸がそれを払拭していた。
 肩に乗せた女性型のHMPが、不安そうにその顔を見やる。

『居酒屋だって飲食店でしょ、まずいんじゃないの?』

 HMPだってホビーであるから、飲食店で堂々とひけらかすのはマナーに反する。
 彼女はそれを心配しているようだった。
 しかしその主は、豊かな胸を大きく張って答える。

「ところがぎっちょん、ここはHMPカフェならぬHMPバーなのさ」

 彼女、国重蘭花がここを発見したのはつい今朝のことだ。
 HMPの総合雑誌に載っていたのを見て、夜に行こうと即断即決したのであった。

「お値段するけどHMPを『酔っ払わせる』パフなんかもあるみたいでさ」
『そりゃあいいわね。一度でいいから酔っ払ってみたかったのよ、私』

 その話を聞いて意気揚々としだすHMP、エルピス。
 蘭花は相棒を引き連れ、大人の空間へと足を踏み入れた。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/09/23(日) 00:45:31.79 ID:vHfV8odDO<> >>811

=店の奥側、カウンターの端に蘭花の知る顔があった。
 服装はジーンズにTシャツ、その上に一枚羽織っただけというラフなもの。
 サラミとチーズをつまみにビアーグラスを傾けている。
 しかし、顔つきはあんりよろしくない。といっても無理してビールを飲んでいる、とかではない。
 ここの売りを考えれば、自ずと原因は分かるだろう。=

「まだ早いよ、来たばっかじゃん。まずは普通のパフで我慢してって」

『来たばかりもなにもお前は飲んでるじゃないか。
 なら私だって飲んで良いだろう?』

「俺は初めて飲む訳じゃないし。
 てかお店に迷惑かけないとも限らないから後でって、最初に言っただろー」

『お前は融通が聞かないなー。空気に流されるのも必要だぞ?』

「少なくともそれは今じゃないんじゃ」

=入り口から遠いこともあり、蘭花達が入店したことにはまだ気付いていないようす。
 しょうもない言い合いを続けている= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/23(日) 01:00:52.23 ID:jP+twzdxo<> >>811
「お、ナオヒロくんだー。やっほ」
『あら、お久しぶり』

 中に入るや否や見知った顔を見つけた蘭花は、そちらへずんずん向かっていく。
 エルピスも片手を振り振り挨拶をする。

『奇遇ね、こんなところで会うなんて』
「いつも通り仲いいねぇ。相席いいかな?」
『って言いながら座ってるじゃない……』

 蘭花の行動は早かった。典型的な「考えるより先に手が出る」タイプであるから、断りを入れた時には既に着席していた。
 酒の場は無礼講、と顔に書いてあるあたり、反省する気は微塵もないようだ。

 そして勿論、ナオヒロに取っては不幸なことに、彼女らは場の空気を作る側である。

「いいじゃんねぇルリちゃん。お酒飲む所でジュースなんて、子供じゃないんだしさ」
『まぁべろんべろんに酔ったランの危険度を考えると、飲ませたくない気もするけど』
「ちょっとちょっと、そんなに飲む気はないってば。過ちは繰り返さない女ですから」

 ……一度やらかしているらしい。
 不安げな――というより信用出来ないといった顔のエルピスをよそに、彼女はメニューをまくる。

「エルちゃん、HMP用のパフもこっちと同じだけ種類あるみたいだよ。……あ、カクテルあるじゃんらっきー」
『へぇ、ホントだ。どれがいいかしらね』
「お金はあるし、ドンといけドンと」

 快活である。そして二人とも、初っ端から飲む気でいた。

『とりあえずオススメは?』
「あ、じゃあまずは安めの赤ワインにしとこう。元ネタ準拠でね」 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/23(日) 01:55:57.43 ID:vHfV8odDO<> >>813
「あ、国重さん。どうも」

『国重姉……ランカか。座れ座れ、そして言ってやってくれ。
 ついでに訂正するが、仲良くなんてなー!仲良くなんてなー!』

「……あれ、お前まだ酔ってないよね?」

HMPの癖に場の空気に当てられてるのかルリの言動が少々おかしい。
既に座っている国重さんに座るように促すし、結局俺とルリは仲良く……なんなんだ。
こんなのに酒を投入するのは非常に不安……。

『そうだよな、私達HMPは吐いたりするわけではないものな。
 飲めるところでは飲まなくてはなー!』

「吐きはしないだろうけどもっと物騒なもの引っ提げてるじゃないか。
武装はロックかかってるし、充電コードで移動距離もたかが知れてるけどさぁ……」

『石橋も叩き過ぎれば割れる。慎重も行き過ぎればヘタレビビリチキン野郎だ。
 こうして2人だけではなくなったんだ、この場合空気は?』

「……流される場合」

『ふふん。さあ、私にぴったりのパフを見繕ってくれ。
 まあやらないと思うが、ノンアルコールにするような興醒めな真似はするなよ?』

国重さんの援護射撃の下、元に戻った?ルリに言い負かされてしまった。
これはもう諦めてパフをくれてやるしかあるまい。
取り敢えず初飲みと言うことで、飲みやすいものを探すかー。

「……エルピスさんも苦労してたのか。HMPじゃ人間の介抱は無理だもんなぁ」

横目横耳にした表情会話にちょっと同情。

「――――よし。じゃあミモザにしようか」

ざっくり言ってしまえばシャンパンのオレンジジュース割だ。
このカクテルにしたのは飲みやすさもあるが、パフで炭酸がどう処理されているのかちょっと気になったのもある。
丁度ビールも空いたので、ミモザパフと一緒に自分にもミモザを注文する。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/23(日) 21:28:07.57 ID:jP+twzdxo<> >>814
「うひひ、ツンデレいただきましたぁー!」
『……平常運転で悪いわね、二人とも』

 けらけら笑う蘭花は普段通りに絶好調で、そういやこいつ本当に素面なんだろうかと思わせる。
 むしろ酔っ払っていて欲しいかもしれない。

『いやまぁ、方法はなくもないんだけどねぇ、ラン?』
「……エルちゃん、お願いだからもう足の指はやめてね」
『ナオヒロが溺れたらルリもやるといいわよ。落下蹴りを当てる練習だと思って、がすっと』

 残酷極まりない、あまりにも非道な手口だ。
 追加パーツを装備したエルピスなんかの落下攻撃なんぞ、人間に食らわせていい攻撃ではない。
 その威力たるや、思い出させただけで蘭花を引かせるほどであった。そりゃあ酔いも醒めるだろう。

 などと話しているうちに、赤ワインが届いた。当然ワインとミモザのパフも一緒である。
 形もこだわってあるのか、グラスにストローという形。ストロー部分が味覚センサーを刺激する、パフに当たる部分なのだろう。
 サイズもHMPに合わせたスケールだ――つまり持続時間は長くない。流石嗜好品といったところだ。実際の酒より安いとはいえ。
 それでもミモザのようなロングカクテルには十分な量があるようだが。

『お、これが噂の』
「さぁさぁナオヒロくんも一緒にね」

 すっとコップを掲げる仕草は、お決まりのアレである。
 飲みと言えば欠かせないものだ。

「『かんぱーい!』」 <> 麻木ナオヒロ<>sage<>2012/09/23(日) 22:25:38.84 ID:vHfV8odDO<> >>815
『ツンデレ?私はいつだってデレデレだよ。なぁナオヒロ』

「だとしたら、お前のツンがどれ位の尖りっぷりなのか気になるなー」

エルピスさんに少々気を使わせてしまったようだが、賑やかな人は結構好きだから問題無い。
第一酒の席なのだからこれ位テンション高くても……あれ、この人まだ飲んでないんじゃあ……。
酔ったらどうなるのか、気になるような怖いような。

「足の指に落下蹴り……、痛いなあそれは痛い。」

タンスの角に小指とはよく言うが、それよりも威力がありそうだ。
酔いを醒ますっていうか完全に攻撃……。
でも俺にデレデレなルリならそんな事はしないと信じてる。信じたい。

『私の脚では練習がいるな……』

不穏な呟きが聞こえた気がするが多分きっと気のせいだな。

「お、どうも。ほれルリ」

『これがそれか。ほう、形もいい感じじゃないか』

物珍しそうにミモザパフを眺めるルリだが、まずは、

「ほら、ルリ。」

『ああ、分かっている』
「『乾杯っ』」

と、乾杯して直ぐにルリはパフを吸引する。
マスカドンナの頭部には口も鼻もない為、傍目には楽しめているのか分かり難い。

『なかなか美味しいじゃないか、これ。
 色といい匂いといい柑橘かと思ったが、そうでもないのだな』

一口では特に変化は見られない。
まあ相当弱くもなければ一口でどうこうなることはないだろう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/23(日) 22:50:33.95 ID:jP+twzdxo<> >>816
 からん、と打ち合わされたグラスが、済んだ音を立てた。
 バーテンさんいわく、パフの方はアルコール度数に相当するパラメータが大雑把なので、例えばウィスキーのクーラーだったら酔いやすさはどれも同じなんだという。
 何故かHMPごとに酒への耐性が違うが、そこらへんは不明とのこと。

「んー、安物! 浴びるように飲むにはこれね」
『ギリシャかローマか、って話ね』

 ストローで酒というのもちょっと違和感のあるものだが、飲み物の雰囲気を出すにはこれが限界だろうか。
 製作者の苦心が伺えるなぁ、とぼやきつつ、蘭花は一気にワインを飲み干した。

『ってか、やっぱり飲みまくる気じゃないの!』
「てへっ。……いやほら、今日は介抱してくれる人がいるしね」

 ぱちりとわざとらしくウインクをキメる蘭花。その肘をエルピスがどつく。

「まぁ、うん、気をつけるよ?」
『飲まないってさっき言ったのは嘘なわけね』
「二言がないのは男だけだからね」
『あぁルリ、タイミングは多分大丈夫だろうから、コツは勢いよ。威力出ないと思ったらいっそ一回転してみるといいかも』
「の、飲みません! 酔っ払いません!」

 エルピスが蘭花の手綱を取る光景は珍しいかもしれない。
 慌てて話題を切り替える蘭花だった。

「そうだナオヒロくん、最近どう?」
『また面倒くさい絡み方ね』 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/23(日) 23:31:04.72 ID:vHfV8odDO<> >>817
『んー、発泡感というのか分からないが、確かにセンサーを軽く刺激される感覚があるな』

「ほほう、発泡感の再現もしようとしてるのか。
最初はパフの形もハンペンみたいなものだったけど、技術は日進月歩だなぁ」

実際にルリがどう感じているのかは分からないが、どうやら炭酸も再現しているらしい。
炭酸は味ではないから再現は難しいと思ったのだが、メーカーさんの努力はすごいなぁ。

「わー、もう1杯空けたんですか。早いですねぇ」

=ナオヒロは中身を1/3ほど減らしたグラスをカウンターに置き、サラミを摘む。
 ルリは静かにパフの味を吟味しているようだ=

「エルピスさんほどじゃないですけど、俺が国重さんを介抱するのは確かにちょっと大変そうですしねぇ。
ルリじゃもっと無理ですし、程々にお願いしますよ?」

エルピスさんに既に釘を刺されているが、俺も一応言っておこう。
国重さんの体では酔い潰れて寝てしまったら大変だ。
そうあることでもないが、変な輩に絡まれても酔った国重さんを守りつつやり過ごすのは骨だろう。

=とか思っているナオヒロだか、頬はほんのりと赤くなってきていた。=

「最近ですか?そうですねー、ルリのアセンを変えてみようかと思ってます」

最近どう?と聞かれて真っ先に浮かんだ話題がHMPというのもどうかと思うが、まあ両者の接点なのだから問題無いだろう。

『最近の流行りは高速機になってきているからなー、運動性能の高いものがいいと思うんだがどうなんだろうな?』

ルリが会話に混ざってきた。が、いつの間にかカウンターに座り込んでいる。
ちょっとキている?
喋りはまだ通常時とそこまで変化ないが <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/24(月) 00:09:13.94 ID:d8XE443po<> >>818
「華奢な女一人運べないでどうする男の子ー?」
『いや、ランは寝るほうじゃなくて、こう……むぎゅ』

 蘭花はにこやかにエルピスの口をふさいだ。
 まぁこの女は酔拳的なものを持っていそうな気さえさせるだろう。

「まぁ確かに、ルリちゃんに今の環境は辛いかな。ショックラッシュが当たらなかったり?」

 つるりと顎を撫で、蘭花はルリを見やる。
 エルピスはなんとなくルリの目の前に座った。

『これは弟クンの受け売りだけど、下手に自分の強みを潰さないほうがいいわよ』
「どこまでアセンを変えるか、かなぁ。速度に速度なんてのはナンセンスだと思うよ、私」

 ――蘭花自身が公言しているが、蘭花はアセンが苦手だ。
 基本的に理詰めでなければならないアセンブルという中に置いて、感覚派の蘭花に介入できる余地はない。
 だが、感覚でしか掴めないものもあるらしく。蘭花のそれは、環境の理解に役立っているようだ。
 私が戦うときに考えてることだけど、と蘭花は前置きして、話しだした。

「速度を早く一撃を重く、っていうスタイルはリスクを一瞬に抑えることで結果的なリスク量を減らすわけだよね。だから倒し切れないみたいな、継続してリスクを負わされる状況は弱いわけじゃん。
 ついでに言うとアセンも薄く極端になるしね……サクラちゃんとか。だから個人的には、生半可な攻撃は効かないぞ、カウンターを取れるぞって状態にしておく」
『例えばサクラ相手なら、徹底的に距離を取るわね。接近戦は分が悪すぎ』
「その上で二択じゃないかなぁ。結局相手は攻め手のなさが災いして強引に出るしかないから――そこを叩くか、さらに引くか。戦術的にはそんなもんだと思うよ」

 長くなっちゃった、と呟いた矢先、蘭花の手元に錆色のカクテルが置かれる。
 今度は一気に煽るわけではなく、ちびちびと舐めるようにし始めた。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/24(月) 00:48:57.53 ID:gY2cjLUDO<> >>819
「いやぁ、寝て運ぶにしても酒乱で運ぶにしても、国重さんの体は私には毒ですからねー」

【ヘラヘラ笑うナオヒロだが、セクハラだぞ。それ】


『ショックラッシュもアイゼンゼクトも両方厳しいな。
 どちらも牽制にしかならないから、最近は特効戦術ばかりだ』

「フットワークでも翻弄されるしな。速度そのものは出るんだけど」

蘭花の言う速度に速度はナンセンス、というのは個人的に賛成だ。
自由度の高いHMPでそんなことをするのも、対戦の流れとしても面白くないと思うからだ。
……しかし、ルリの強みって何だろうか。

『高速機に仕事をさせない、言うは易いがやるには難い。
 サクラも近接武器しかないが、あの瞬発力を封じ込めるのは骨が折れる。
 対峙して、こちらの射撃が悉く斬り捌かれる様は無い肝が冷えた。
 引き撃ちを主体にすれば違うのかも知れないが』

私は堪え性がなくてな、と言うルリ。
こいつも結構闘争心が前にでるタイプだ。
助けられることも多々あるが、それが裏目に出ることも少なくない。

「ダブルトリガーで硬い機体、うーん、面白くないような気もしないでもない」

=ミモザを手に取り、大きく呷る= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/24(月) 20:39:03.06 ID:d8XE443po<> >>820
『我慢よ、我慢。目一杯焦らされた後の一瞬はすんごいわよ?』
「仮想敵をサっちゃんにするなら、空中に誘き出すとか。補助推進を持ってないタイプの高速機は足場がなければ動けないし」
『そこまでしても捨て身の特攻仕掛けざるを得なかった相手もいたわね』
「あのペアはまた別というか……ね」

 次はおそらく通らないという確信がある。無限に伸びる光の刃、神の炎を振りかざす妖精と、その小さな主。
 僅かに起きた身震いを、酒で誤魔化す。
 今はまた別の話をしよう。勝負はまたいつでも出来る――今度は、もっと完璧に。

「そしたらいっそ近距離型にしちゃうのが手っ取り早いんじゃないかな。普通はすぱっと割り切ったほうがいいって言うし」
『結局は私たちがどうしたいかよ、ルリ。なんたって戦うのは私たちだからね』
「んーあー、撃ち落されるのが嫌なら面攻撃がおすすめかなー。ボム系?」
『接近戦でそれじゃ自分も困るでしょ……ショットガンとかね』

 アセンのセンスは本当になさそうだ。HMPから一方的にアセンを教わるファイターというのも珍しい絵面である。

 ナオヒロのセクハラじみた発言に、エルピスは先んじて呆れ顔をしていた。
 この性根の捻じ曲がった女に、セクハラだとか猥談を振るべきではないのである。

「私は別に、ナオヒロくんなら大丈夫だけどなぁ……?」

 ちろりと唇を舐める赤い舌。僅かに机へ身を預ければ、ハイネックのカットソーに隠されたふくらみが、机に乗せられて柔らかに形を変える。
 どう見ても誘っているとしか思えない。

(面倒な女よね、ホント)

 エルピスには、そういう楽しみがイマイチ分からない。
 せいぜいが初な男はちょっとかわいい、くらいである。
 エルピスは大きくパフを吸った。酔っ払ってみれば少しは分かるかもしれないからである。

『気をつけてねナオヒロ、こういう女に下手に出ちゃダメよ。全身毒だらけなんだから』

 ともあれエルピスに出来る事といえば、せいぜいが忠告くらいである。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/24(月) 21:47:44.62 ID:gY2cjLUDO<> >>821
『私はどちらかというと受動的な刺激よりも能動的な刺激を好むのでな。
 大好物を前に時間無制限の待てをされるか、好きなだけ食べていいと言われるかなら後者をとるよ』

「サクラさんは仮想敵というよりは、ある種目標……ですかねぇ。
隻腕で武器は一つ。国重君は戦闘参加はしない。
そんなハンデを抱えているのにあれだけヒリつくファイトを行える。
驚嘆モノです。
……あー、フライメックですか。
運用の癖のこととか考えてたらついヒュームボット縛りで考えてましたけど、フライメックも面白いですね」

『ただ、高速機相手にフライメックで近距離戦は些か無謀だな。
フライメックならやはり射撃メインが安定するか』

「今のアセンからすれば中距離程度からの射撃メインでフライメックにしてもそんなに苦労はないんじゃない?」

『しかし、スリルを感じられる機会は近距離型の方が多いだろう』

【ここにきて、意見の食い違い。
 これは安定志向のナオヒロとではあってしかるべきものだが。
 エルピスの言を借りて言いくるめるのも良いが、まあ、今の少々ぼやけた頭では碌な議論になるまい。
 一旦平行線を保つとしよう】


「はは、ありがとうございます国重さん。
そのお言葉だけで胸一杯ですよ」

=お礼につまみでもどうです?などと良いながら半分ほどになったサラミとチーズの小皿を指差す。
 行儀悪いが、新たに注文すると妙な間が出来てしまい冗談染みた空気が流れてしまう為だろう。
 軽いノリを保つ為の行いということで、一つ。
 因みにナオヒロは一瞬ずつしっかりと蘭花の動きを見たが、現在目線は次のカクテル探しにメニューの上だ=

「全身毒だらけだと最後に食う皿はなにになるんでしょうね。
国重さんの場合はー…国重君?や、エルピスさんかな。」

【ナオヒロもアルコールがいい感じに回ってきたようで、口が滑らかだ。
 こうなってくるとちょっと気持ち悪いのがキズだな】

=サーモカメラでナオヒロを見てそう思うルリ。
 余裕そうな彼女だが、座ったまま動こうとしない。
 立てば足がふらつくのだろう、そして、それを美しくないと思っているのだ= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/24(月) 22:22:48.40 ID:d8XE443po<> >>822
『あぁナオヒロ、それ間違いよ。弟クンはね、サクラにいろんな命令を始めっから詰め込んでるの。
 極端な特化型だから、行動の最適化はとっても楽でしょ。ただ近寄って斬るためのあらゆる手法を習得したAIがあれば、ファイターなんか無用の長物』

 私たちとは全く逆ね、とエルピスが珍しく不機嫌そうに答えた。
 己の主が、満面の笑みでそこにいるからである。

「えっへへ。静はすごいでしょ。ダメな私が唯一世間様に誇れる、大事な大事な自慢の弟なんだもの」

 蘭花は誇らしげに目を細めた。
 エルピスはそんな蘭花をみて、ぶすっとした顔でそっぽを向いた。

『そこのブラコンはほっといていいわよ。
 ……そうね。近接型フライメックなんてのも面白いと思うわ。滅多にないしね。高いとこからまっすぐ突っ込むだけで、簡単に威力は出せるし。
 まぁそこらへんは二人で決めることだけど』

 ひどーい、などと相棒に文句を垂れる蘭花も、ナオヒロの差し出すサラミにつられて一瞬で機嫌を直した。現金な性格をしている。

「ナオヒロくんは釣られないかー。っていうか、ファイターの男の子ってみんななんか色気に強いよねぇ。枯れてる……は言い過ぎだけど」

 ぐいっとカクテルを煽ると、蘭花はにやっと笑った。

「静は私なんか目もくれないからなー。というわけでエルピス、食べていい?」
『人形の体でよければ、どうぞ? ランなら許してあげるわ』
「やったね、流石相棒。きっと体の方も相性抜群間違いなしだぜ!」
『あらやだ、今夜は寝れそうにないわね』

 最早ただの猥談である。
 もっとも、彼女ら二人はわりかし普段からこんな感じではあるのだが。
 しかしながら、描写を躊躇うような隠語までぶっ放すあたりはやはり酒の力か。
 蘭花はほんのり頬が赤いし、エルピスは外見はともかく、動きに精彩がない。

「まぁでも、私の毒に一番やられてるのは私だよ、きっと」

 蘭花はそんなことを言って、小さくウィンクをした。
 そして追加を頼んだ。ジントニックである。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/24(月) 23:09:12.17 ID:gY2cjLUDO<> >>823
「あぁ、なるほど……。しかしまぁ、それに辿り着くまでを考えれば」

『とんでもないな。ナオヒロ、お前にあれだけ特化させる度胸があるか?』

「ご想像通り、ないねぇ」

例えサクラさんを目指したアセンをするとして、色々と考えてしまって結局なにかしらの遠距離武器を持たせてしまうだろう。
第一、軽く言っていたがAIを最適化するも作業も相当なものだろうに。

「国重さんも、国重君の自慢の姉なんじゃないですか?
ダメでもないでしょうし」

=ソルティ・ドッグを発注しながら、自虐的な発言に言い返す。
 ナオヒロからすればエルピスを使いこなし、高い実力を誇る蘭花も十分に輝いているのだろう=

「そうですねー。ちょっと後々話し合ってみます。
……色々アイディアありがとうございます」

【エルピスに対して小さくお辞儀するナオヒロ。
 なんかすごく酔っ払いらしい】


「いやあ二十歳過ぎてあわあわするのもアレですし、この場合釣られても餌だけ持ってかれちゃいますし。
釣られないように自制心マックスですよー」

ソルティ・ドッグを受け取り、ぐいっと一口。

「……ふぅ。……しかしまあ、あっぴろげですなぁ」

全部毒って会話まで毒だった。
エルピスさんも毒っぽいぞ。頑張れ国重君

『毒毒毒毒言っているがそれってつまり淫乱と言うことか?』

いやいや <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/24(月) 23:42:55.07 ID:d8XE443po<> >>824
「本気で勝とうと思ったらどこかでそういう苦労は必要だと思うな」
『私たちも連携のために随分苦労したしね』
「まぁでも、限度は守らなきゃダメ。――求めすぎちゃ、ダメだよ」

 そう、何かを得ようと思ったら対価を払う必要が出てくるのだ。
 努力を、資金を、あるいはもっと大事な何かを。
 そして当然のごとく、払ったものは取り返せないのだから。

「そう言ってくれると嬉しいけど、学歴もないバイトもしてない夢もない、ついでに色恋沙汰もない……所謂ダメ人間ってやつだよ、私」

 運良くEDENに誘われて、職こそ決まってはいるけれど。

「結局、おもちゃに人生捧げちゃったバカ女だもの。この時代にあって、したいことが戦いっていう辺りがもうさいっこうにダメ」
『……ほんとにね。こういう人種は生きていくには苦労するわ。こうはならないようにね、ナオヒロ』

 その時の彼女の顔は、いつもの明るい彼女ではなかった。
 歩いて行くたびに破滅を迎えていくような、まるで麻薬を吸い続けてでもいるかのような、刹那的な雰囲気。
 彼女の全身を蝕んだ毒は、もう二度と抜け切らない。なぜなら、それを抜こうとしないからである。

 ――それも一瞬。
 次の瞬間には、明るくにこやかちょっぴりエッチないつもの国重蘭花がそこにいた。

「んふふ、お酒に任せてイロイロ忘れちゃってもいいじゃない。なくしてから気付くものもあるさー。差し当たってはおねーさんが受け止めてあげよう」

 あっついなぁーなどとわざとらしく言いながらパーカーを脱ぐ蘭花。

『そうねルリ、これは確かにただのビッチよ。男にホイホイ腰振って黄色い声上げてる変態。醜いでしょう?』
「ちょっと、流石にひどくない? デコピンすりゅよ……するよ?」
『ぷぷっ、もうろれちゅがまわらないんでしゅかー? おしゃけはもうやめにしまちょうねぇー?』
「ぐぬぬ……!」

 エルピスもだいぶはっちゃけていてどうやら失念しているようだが、蘭花もそういえば結構飲んでいるようだ。
 ……ストッパーがいなくなったことに気付くことが出来るのだろうか。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/25(火) 00:36:13.80 ID:rCLdGYlDO<> >>825
「―――――……。あぁ」

そうか、もうそういう段階なのか。
しかし、言われなければ気付かなかったと言うことは、自分はまだ熱を持っていると言うことだ。

【なぜかナオヒロに指先で顔を撫でられる。
 酔いとは別で細くなった瞼の奥の瞳は私を愛でるように見る。
 それは本来なら悪い気はしない筈なのに、何故か今一瞬、それが恐ろしく感じられた】

『……結局、大切なのは楽しむことだ。気負いすぎるなよ』

【自分でも何故こんなことを言ったのか分からない。
 ナオヒロもきょとんとした顔で私の顔を見、今は少し笑ってすらいる。
 これが酔いという奴なんだろうか、意図しない言葉が零れてしまった】

『さっきのは気にしないでくれ、酔っていたようだ』

「いや……ありがとうな」

【なぜか礼を言われた。……酔っ払いは分からないな、わたしもこいつも】


「学歴は俺も大したこと無い3流大ですし、バイト以外はおんなじですねー。
ダメ人間2人です。
あ、でも国重さんは色恋しようと思えば簡単じゃないですかー?」

=そのスタイルにその美貌ですし、など言いながらグラスを傾ける。
 余談だが、ミモザに比べてペースが速い=

「いっそプロ入りはどうですか?
それだけで食べるのは難しいかも知れないですけど……」

『ま、夢もないっていうならテスト受けるくらいやってみれば良いんじゃないか?』

=2人してフォローのような無茶ぶりをかます。
 沈んだ様子の蘭花を励ますつもりなのか分からないが、なんかズレてる=

「脱いだら体冷えますよ。あと自制心は忘れませんからね」

=紳士気取りなのだった=

『この前の《新絡婦》もだが、いわゆるナイスバディという輩は淫乱がデフォルトなのか?
体を持て余すというのはつまりナイスバディは余っていると言うことなのか?』

なんかルリがおかしなことをエルピスさんに向かって語り出した。
ちょっと面白いから後でDVNOの会話ログを保存しておこう。

「国重さん、結構飲んでますよね。一旦ノンアルにします?」

=とか言いながら自分はソルティ・ドッグを飲み切る。
 そして氷の入っていないお水をマスターにいただく= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/25(火) 21:15:18.53 ID:/kQiR6kEo<> >>826
 ファイターってやつはどいつもこいつもろくな人間がいやしない。蘭花は笑った。
 こんな普通の青年までその毒牙にかけようとするのだから、HMPというやつは本当に、人間を狂わせる才能がある。
 今日のそれが酒のせいであればいいと、柄にもなく蘭花は思った。
 ――そのくせ、どこかで待ち望んでいる。
 彼がこちらへ来ると考えるだけで、体が疼く。

「あは、ありがと。でも恋愛はなんというか、飽きたというか。清い交際ってやつを経験したけど、足りなかったというか。
 好みの人ってのも、実はピンと来ないんだよね。多分感覚では分かってるんだけど」

 蘭花はそこで空になったグラスを置いた。
 中の氷が、からんと音を立てて崩れた。

『なんだかんだで、ランの彼氏いない歴って四年はあるでしょ?』
「もっとあるかな。六年くらい」

 そう考えると寂しく感じてくるなぁ、と彼女はぼやいた。
 それをどうとも思わない辺りが寂しい。

「プロかー、それもいいなぁ。エルちゃん、どうよ?」
『雑魚は淘汰される環境なんでしょ? 最高じゃない。まぁ、その分色々面倒事も増えそうだけど』

 エルピスは自信満々に答えた。己は淘汰する側だという自負が滲み出ている。
 蘭花もそれはそれで楽しそうだと小さく頷いた。

『そりゃ心は体と無関係じゃいられないからね。そういう目線で見られ続けたり、うつっちゃうものよ。
 ストレートに行くならAIは体のイメージに合わせるだろうしね。
 あるいはこんな主だと、朱に染まればってこともあるかな』
「持て余してるぞー、私は今余り物だぞー。……え?」

 へらへらとおどける蘭花を指で示しつつ、エルピスはそんなことを言う。
 確かに、エルピスの狂乱っぷりは蘭花に共通するところがあるだろう。

『まー真面目な話をすると、私みたいに変に造形に凝ってるHMPはね、色々別の用途があるらしいわよ。アングラな方面で。
 妖艶な美女のAIなんかは定番だし、『都合がいい』んじゃないの』
「昔っからドール系のネタはあるしね。もっと下に向けたやつも。
 ……あ、じゃあお言葉に甘えておこうかな」

 ナオヒロの提案に、わりとすんなり頷いた。
 顔は結構赤くなってきているが、なんだか平時よりも素直になりつつある……?

『あ、ラン。私もノンアルコールの欲しいわ。このロングアイランドアイスティーってやつ』
「えーっと……それカクテルだよ?」
『えっ?』 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/25(火) 23:00:54.56 ID:rCLdGYlDO<> >>817
国重さんの笑みの訳は分からない。
俺とルリのやりとりからなにかを感じとったのだろうか。
もしかしたら単純に微笑ましいと思っただけかもしれない。
しかし、きっと、彼女に俺の本心は、恐れは、悟られることはないだろう。
彼女は、あちら側の人間だ。

「恋愛の刺激はHMPファイトを越えられなかった、みたいな感じでしょうか。
恋愛に刺激を求めるか、安らぎを求めるかは人によりますけど……国重さんは刺激派っぽいですよねぇ」

『恋愛感情なんて私は知らないが、好みのタイプなんて視野を狭めるだけでない方が良いものじゃないのか?』

=ナオヒロは大学入学後、なんとなく告白を受けてなんとなく付き合い、なんとなく振られていた。
 その時の彼女曰わく、なんか思っていた恋愛と違ったそうだ。
 結局、それから特に浮いた話はない。=


「エルピスさんは蛇と蜘蛛と……ライオン?バリバリの捕食者ですねー」

目立つHMP、ファイターの花もある。
実力は言うまでもない。
この2人ならスポンサーの目に留まりやすく、エルピスさんの言う面倒事のいくつかはそれで片付くのではないだろうか。
まあタレント性を求められたりして逆に面倒が増えるかも知れないが。


『私はマスカドンナのAIだからなぁ、体の云々とは遠い。
 しかし、朱にというが私はヘタレないしナオヒロは前向きになっていないぞ』

「俺もお前も薄い色か、近い色だったんじゃない?染まりようがないような」

【確かにナオヒロは薄い感じがする。
 しかし私は薄く無いだろう、おい】

「アングラな用途かぁ。
普通にBJDの代わりとかの比較的健全なのはともかく、あんまり下の奴はちょっと分からないなぁ」

まあちょっと分からない、であって全く分からないわけではない。
しかしやっぱりそれってどうなのよ、という感じだ。

「じゃあこちらどうぞ。つってもただの水ですけどね」

=そう言うとカウンターの上を滑らせて蘭花に手付かずのグラスを渡す。
 この距離ならふつうに渡せ、と思わないでもないが男の子はちょっと憧れるよね。
 しかしどうせならソフトドリンクを奢るくらいすればいいものを。
 こんなだから振られたのだ、多分=


『カクテルの名前は訳が分からないな……』

【アイスティーというのに酒なのか】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/25(火) 23:58:49.45 ID:/kQiR6kEo<> >>828
「その通りその通り。心の底からこの人だっ、ていう恋は未経験だからなんとも言えないけど……。
 まぁ、退屈でなければどっちでもいいかな」
『ランはそういう暴論で片付ける癖を何とかしなきゃね。
 ルリは結構ロマンチストなのかしら、今時理想の相手と恋に落ちるなんて無理よ、無理。ちょっとだけ惹かれるくらいから付き合って将来考えてくのが普通なんだから、ある程度は絞っとかなきゃ』

 エルピスはそこまで語って、はたと口を閉じた。

『……なんでHMPが恋愛について語ってるんだろ……』

 虚しくなったエルピスは、肩を落とした。
 ストロー状のパフに口をつけて、もう中身がないことに気付く。

「まぁライオンかなぁ」
『正直目立つのは分かってるけどね。興行試合だかなんだかに駆り出されたりとか、そういうのが嫌ね。
 私はただ殴り合いたいだけだもの』

 シンプルに戦って勝てばいい世界ならば、彼女は喜んで飛び込んだだろう。
 金や利権が絡めばそうはいかない。二の足を踏む理由はそれだ。

『まぁ、HMPとマスターってのは自然と似通うものよ』
「そうだね。初めてHMP選んだ時も、それこそ一目見てこれだってぴんと来たんだよね」

 蘭花は僅かに目を細めた。
 エルピスは少しだけ瞑目した。

「お、っとっと。やりたくなるよね、これ」

 滑ってきたコップをばしっとカッコつけて受け止める。
 水一杯でもやりたくなるものだ。むしろお高いカクテルでこれやってこぼしたらもったいない。

「えへ、ありがと」

 蘭花は満面の笑みで水を一口飲んだ。
 普段より幾分も子供っぽい仕草だ。……普段も子供っぽいところはあるのだが。

『……順調に酔っ払ってきてるわね……』

 エルピスもロングアイランドのパフを一口吸った。
 いつの間に注文したのだろうか。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/26(水) 00:44:17.53 ID:STLgBqnDO<> >>829
「退屈でなければ、ここが難しいですよね。
特別楽しくはない、でも退屈でもない。
そう言うの、俺はなんか憧れますけど、国重さんみたいなタイプはそうでもないのかな?と。
多分、楽しいと退屈がきっぱりしているんでしょうね。
楽しくはない、なら退屈だし、退屈ならわざわざ一緒にいなくても良い、みたいな」

=恋愛経験乏しい奴がこんなこと語っても滑稽ですが、と保険の自虐をしながらグラスを揺すりる。
 氷とグラスが軽い音を立てるのを聞き、次の発注を考えることにした。=

『確かに、私達も理想の相手の下に行くとは限らないしな』

【言って、ナオヒロの方を、見ない】

『しかしそれでも、それが運命的な、本当の出会いだと信じたいのが乙女心というやつだよ』

【いつの間にか空になったパフを傍らに置き、真上を向く。
 僅かに揺れる視界の中、映るのはただの照明だが、その更に上には星灯りがある。
 街の灯りでそれは殆ど見えないが、確かにそこにあるのだ。
 運命というものもそういうものだと……酔っているとはこういうことか。
 お寒いことを考えてしまった】

「HMPの視点での恋愛論も面白いと思いますけど。
エルピスさんは結構庶民的なリアリスト、と」

=ルリが天井から自分に視線を移したことに気付かないまま、ナオヒロはエルピスに茶々を入れる=

「プロにも色んな種類がありますし、試合に比重の大部分を置くのも出来なくはないと思いますけど。
思いますけど……まあ全部ファイトっていうのは無理でしょうねぇ」

そこはしょうがない。
プロとはそういうものだ。

「そちらも、相当仲良いですよね。微笑ましい」

『そちらも、とはなんだ。も、とは』

「だってデレデレなんでしょ?」

【ぐぬぬ】


「あ、やばい。今のキュンとしちゃいますねー」

=今の、とはグラスを受けとった後の蘭花の笑顔のことだ。
 子供っぽい満面の笑みは普段のどこか飄々として妖艶さを押し出す姿とのギャップがある。
 顔付きからすればこちらの方が似合っていて、頬がアルコールで赤みを増していることも拍車をかける。
 色々相俟ってキラースマイル。
 まあキュンとしたからってナオヒロに蘭花をどうこうする気(合い)はないのだが=

「……あれ、エルピスさんなに飲んでるんです?……あと、お水をもう一杯。」

=ナオヒロの一手は話題を逸らすことだった。
 受け取った水も飲み、冷却= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/26(水) 18:44:30.51 ID:9giZZLK0o<> >>830
「そう、かなぁ? ……あぁ、そうかも。退屈だと、いろんなこと思い出しちゃうから。
 でもナオヒロくんの言ってることも分かるよ、私」

『まぁその通りかもね。夢見てないとらってらんないって気持ちも分かるわ。
 でもね、今に満足してれば夢なんて見ないものよ。そういう意味では確かに、私はリアリスト。
 私はランのために生まれてきたんだから――見る夢だって、ランと一緒じゃなきゃね』

 ぱちりとウインクをして、エルピスはそう宣ってみせた。
 蘭花はぐっと目をつむり、口元だけをどうにか緩めた。

「仲がいい、かぁ。……どうかな、エルピス」
『好きよ、ランのこと。貴方のエゴに振り回されるの、私は大好き』
「そっか。よかった」

 蘭花は困ったように笑って、エルピスの細い体をそっと手に取り、抱きしめた。
 壊れ物を扱う時の繊細さで、大切な物を奪われまいと掻き抱くように。


「そ、そんなこと言われてもなぁ……」

 蘭花はもにょもにょと口を動かして、うつむいた。さっきよりも頬が赤い。
 ほめられて素直に恥じらう姿は、いつもの超然としたそれとは百八十度方向が違った。
 明らかにいつもの蘭花とは様子が異なっていた。
 快活で凛々しくアホくさいいつものそれが剥がれ落ちたようで、今はしおらしいというか可愛らしくなってしまっている。
 ……普段からこうであればもう少し周囲の苦労が減るのだろうか。

 エルピスはこりゃもうできあがっちゃったかな、とため息をついた。

『あぁこれ? さっきランが言ってたカクテル、気になったからつい。ほんとに紅茶『っぽい』味がするのね、すごいわ』

 そういってパフを吸い込むエルピスは中々上機嫌だ。
 彼女はテンションこそ少し高めだが、あまり酔う様子を見せない。強いのだろうか。

『ナオヒロ、気をつけてね。何度も言うけど、その子はただのビッチだからね』
「わ、私そんなに経験ないよ……?」 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 21:04:41.06 ID:zeJ9nvHRo<>  夕暮れ時のショップは盛況と言うほか無い
 フィールグラムには長蛇の列が出来、展示されたパーツ前にはアセンに悩む少年たちがタブレット片手に唸り声を上げている
 
 そんな中、フィールグラムに並ぶ列の最前線、ちょうどバトルを行おうとしている少女がいた
 今時珍しい、藍色の着物を纏い、ぱっちりと姫カットにしているその様は、正しく日本人形と言えるだろう
 筐体に愛機をセットした彼女は、正面に立つファイトの相手へと優雅に一礼する

「では、お手合わせよろしくお願いします」

 店員の手によってランダムフィールドに設定されているフィールグラムが起動、戦場をランダムに選出する

0.5 摩天楼
1.6 ハイウェイ
2.7 闘技場
3.8 森林
4.9 仮想空間 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 21:06:22.12 ID:zeJ9nvHRo<> 『ハイウェイ』
 主戦場となるのは立体交差が幾つも重なるジャンクションであり、その様相は迷宮と称するに足るほどのものである
 障害物自体はほぼ存在しないと言って良いが、立体交差を利用した高低差の活用が求められる
 跳躍力に優れた機体や、飛行能力を持つフライメックに有利なステージであろう
 また、レーダーの見方を誤ると、奇襲を受けることの多いトリッキーなステージだ <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 21:13:04.29 ID:EA5+Ng8u0<> >>832
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
見た目小学生の男の子が礼をする
しかし相方は

『ひゃっはー!!、久しぶりのバトルだぁ!!、張り切っていくぜぇ!』

鬼を思わせる二本角、全体的に黒く、真紅のラインが入った大型の体だ

そしてフィールドに入る

『ちっ、ここかよ…まぁいい、いくぜぇええええ!!
…ってまた同じようなヤツかよ!!』

そういいながら、ブレスガーゴイル(以後ブレス)はとびまわりながら一気に近づく

『でりゃああ!』

そして両手で持つ両方の柄に斬る部分のついた斧、デビルトマホークを相手の真上から真下に振り下ろす <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 21:20:17.48 ID:zeJ9nvHRo<> >>834
「紅恋、任せましたよ」
『合点承知のすけ、さ』

 さ、と降り立った花魁は、喧嘩煙管を手に眼前のハイウェイを眺める

『んー、飛び回り甲斐のありそうなステージじゃないのさ。ふふ、楽しみだね』

 そうして、一歩踏み込んだ彼女は、突進してきたブレスガーゴイルを見るや、ふ、と笑う

『猪突猛進。嫌いじゃないけどね』

 は、と笑うように口を開いて見せた瞬間、その体が真後ろへと引っ張られる
 いつの間に発射していたのやら、その尾部に取り付けられた蜘蛛の腹部パーツから糸が、近くの高架の柱に伸びている
 それを高速で巻き取ることによって、彼女は瞬間的な後退を披露して見せたのである

『蜘蛛相手に、それは分が悪すぎるよ』

 ひゃは、と笑った彼女は後退中に体を反転、蜘蛛形態へと形を変更
 高架の裏に張り付くようにしながら、糸を辺りにばらまき始める <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/26(水) 21:21:38.07 ID:STLgBqnDO<> >>831
『私は今に満足していないからな、エルピスの言うことに準拠するならロマンチストに違いない。
 私はナオヒロの為になんて生まれてきてやっていないからな。
 見る夢は、ナオヒロの見る夢の1歩先さ』

それじゃあ、俺は停滞していられないなぁ。
ただ、片目のライトを一瞬消して無理矢理ウィンク仕返すのは無理があると思う。
変なところで対抗意識出して、こいつ。

「向こうはあんな感じだけど、ルリは俺のことどう思う?」

『……ふふん、聞きたいか?』

「……遠慮しとくよ」

『ふ、意気地無しめ』

=女同士の友情を確認しあう蘭花とエルピスに対して、こちらはなんとも言い難い。
 ナオヒロが遠慮しなければルリはなんと言ったのだろう。
 しかしそれはもう闇の中だ。
 ナオヒロはダメ出しされると思ったのだろうが、今のルリは酔っているのだ。
 面白いことをいったかもしれないのに=


「なんでそこで照れるんですか。一杯目の頃とキャラ違いますよしっかりしてください」

『自分の不用意な発言が招いた事態だ。
 きっちり精算するんだな』

【ちょっと面白い感じになってきたな。
 遠隔でDVNOを起動、録音を実行。
 後でからかってやろう】

「……酔った国重さんは確かに危険でした」

=誰に言うでもなく零す。
 エルピスの言おうとしていた酔い方とはなんか違う感じするが、確かに飲み過ぎると危険なのは本当だった。
 身の回りにいないタイプの酔い方で、ナオヒロは対処の仕方が分からないのだ。=

「エルピスさん程々でお願いしますね……。
国重さんが向こう側に行ってしまったら俺にはどうにも出来ないかもしれないっす」

主に理性が。
国重さんに手を出すのは俺のことだし万に一つもないと思うが、しかし俺の理性とヘタレさが絶対ブレイクされないとも限らない。
念には念を、ということで今のうちからエルピスさんにヘルプを求めておこう。

「もし国重さんがエルピスさんがいうようなビッチさんなら、お互いの為にも早めに、ね?」

本人は経験ないと言っているが、念押しなのでそこは流しておく。流してもいいよね。 <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 21:26:45.78 ID:EA5+Ng8u0<> >>835
「あっ、そういえば自己紹介がまだでしたね。
白銀 黄金です、相方はブレスガーゴイル、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる
そしてフィールドでは…

『ちぃっ!』
避けられたことに舌打ちする音を出すブレス

『蜘蛛の糸…よし!!』
なにを思いついたのか、糸に頭を向ける

『伝われ!、火炎!!』
口部から銃口が飛び出し、その銃口から火炎が放射される!
自分の周りにある糸を全て焼き払い、さらにその火炎は糸を伝わって出す者へ行く! <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 21:39:49.96 ID:zeJ9nvHRo<> >>837
「私は、羽麻リリカ。こちらは、紅恋と申します」

 にこにこと微笑みながら自己紹介を返す
 なんともまぁ、微笑ましい光景である

――
『まぁ、ねぇ』

 本来の蜘蛛の糸ならば、そう易々と燃えはしないのだが、生憎彼女が作っているのは代替糸である。
 完璧にその性質を模倣出来てはいない。どうしたって欠点がある

『所詮は代替……ってことさね。ま、本命じゃないしね』

 吐き出す糸を切ることによって、延焼を避けた紅恋は、機敏な動きで高架裏へと隠れ、ブレスガーゴイルの視界内から消えてしまう
 レーダーには映っているだろうが……何をしているのかわからないというのは、この相手には厄介だろう <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 21:43:11.64 ID:EA5+Ng8u0<> >>838
「はい、よろしくお願いします」
こちらも微笑み返す

--
『ちぃっ!、何処行きやがった!?』

そういって、キョロキョロ見渡すが

『だぁもう面倒くさい!!』

そういうと、背中から黒い翼が生える

『空から探しゃいいだけだ!!』

と、大きな声で言うと、飛び上がる…警戒心がほとんどなく <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 21:51:57.86 ID:zeJ9nvHRo<> >>839
『おー、探してる探してる』

 しめしめ、と言ったところか
 今のうちとばかりに、紅恋は高架中を縦横無尽に駆けめぐり随所に罠を張り巡らせ始める
 静音モーターを使っている絡新婦は、音というものを殆ど発生させない
 更にいえば、その濃紫色の着物は、闇の中に良く紛れる
 レーダーを使いさえすれば、すぐに場所はわかるだろうが……視認はかなり難しいだろう
 また、紅恋もわざわざ見つかるような場所にはなるべく出ず、殆ど影の中を移動している……
 時間稼ぎ、と思われるかも知れないが、これが絡新婦の戦い方である <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 22:05:52.60 ID:EA5+Ng8u0<> >>840
『うーむ、見えん』

そういうと、ハッとして気づく

『レーダーがあったじゃん!!』

…今ようやく気づいたようだ

そしてレーダーを使う

『…そこかっ!?』

隠れていると思わしき部分に向けてトマホークを振り下ろす! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/26(水) 22:09:43.04 ID:9giZZLK0o<> >>836
『確かに全部ナオヒロ任せじゃ、歩くにも一苦労しそうだしね』

 さらっと毒をぶつけてケラケラ笑っているエルピスに、容赦はない。
 主があんなんだからこそ、彼女はいつも以上に調子を出しているようだ。

『そこで二の足踏んじゃうとことかね』

 ナオヒロをいびる彼女は楽しそうだ。
 エルピスはにやにやと笑いながら、カクテル・パフを口にした。


「あー……うん……」
『そりゃ違うわよ、アレ作ってるだけだし』
「ちょ、ちょっとエルピス」

 今のは本性とはちょっと違うけど、とエルピスは言う。
 幼児退行というか、甘え上戸というか泣き上戸というか、心の虚飾が取っ払われるというか。
 蘭花の酔い方はそういうモノだ。普段のペルソナを失った分、感情がダイレクトに表に出てくると言えばいいのか。
 そう考えると可愛いものだが、ガードの甘さが尋常じゃないせいで勘違いを引き起こすことも多い。
 しかも結構な箇所に地雷を持っていて、たまに爆発する。彼女の本性も隠しづらくなってくるのだが――。
 少なくとも今日はそっちの心配はないかな、とエルピスは胸をなでおろした。
 こういうとき、ナオヒロの安定志向(と、いうか尻込み気味な姿勢)に助けられる。
 あとは彼が無自覚に地雷を踏まないかどうかである。

 相棒の暴露に困った顔でうつむく蘭花。
 どうしてそうなのか――と問われたら、どう返そう。彼女の頭の中はそれでいっぱいだった。
 悪い人ではないし、格別ぶっ飛んだ人ではなくてもつまらない人ではない。嫌われるのは嫌だ。それは怖い。
 そういう後ろ向きな「彼女本来の」思考が、普段無視し続けた感情が、表に出てくる。
 一連の感情演算サーキットは結果として、伏せがちにしながら上目遣いでナオヒロをちらりと見るという動作を弾きだした。

『まぁ、今日は――いい意味でも悪い意味でも――ナオヒロだからこうなってる感じね。
 嫌いな相手とかの前はほんとにね。忘れもしない大学の飲み会……』
「え、エルピス、その話はやめてよぉ……」

 泣きそうな顔で相棒の肩を揺する蘭花……という、誰だこいつレベルの激しい違和感。
 むしろ普段からこうであって欲しいという層がいそうだ。完全に別人である。

『ナオヒロが吹っ切れる所は見てみたいかも。ねぇルリ?
 あぁまぁ、多分そうなっても空手二段の力を味わうくらいで済むと思うから安心していいわよ。
 いやでも、ここからナオヒロが意外なトークスキルで口説き落とす可能性……?』

 エルピスは謎の思考モードに入った。
 なんだかんだでこいつも酔っ払っている。それは間違いない。

「だ、だからそんなんじゃないってばぁ……!」
『そうよねー、実はまだ』
「み、未経験でもないよ! 高校時代に一度あるもんっ!」

 涙目になってナオヒロとエルピスを交互に睨む蘭花。
 いつもの姉御肌な蘭花がやればチンピラもちびる迫力だったろうが、今の蘭花にそんな力はない。いいとこハムスターだ。
 しかも自分が何を暴露したのか思い至って顔を真っ赤にするオプション付きである。

『まぁこういうランならむしろ酔い潰れてもなんとかなるわ。普段はわりと高確率で悪い方に転がるんだけど、日頃の行いね』

 などとしたり顔で語るエルピス。
 しかしまだまだ飲み足りないという意思が透けて見えた。
 つまりは切り上げるつもりはないということらしい。普段以上に横暴だ。

「そうだ、ナオヒロくん」

 と、そこでうつむいていた蘭花が顔を上げた。
 上げてすぐ、また下を向いた。

「あ、えっと、国重さんじゃなくて、その。名前で呼んでくれないかなって」

 ――ナオヒロの受難は続く。 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 22:13:19.82 ID:zeJ9nvHRo<> >>841
『一々声出して攻撃するのやめたほうがいいよ』

 ざっくり、そう言いつつ姿を現したのは、たった今トマホークを振り下ろしたのとは少し位置のずれた場所
 何故レーダーを搭載をしていないはずの彼女が、ブレスガーゴイルの攻撃に気づけたかと言えば、それは先ほど彼女が言ったような理由に加え
 先ほど撒き散らした糸である
 バーニアを吹かして飛行する以上、気流の乱れが生じる
 複雑な計算が伴うが、その乱れによって伝わってくる振動から相手の現在位置を特定するのは、蜘蛛にとって必須の技術である
 蜘蛛の糸は、敵を絡め取る為の罠であると同時に感覚器の延長なのである

『さぁさぁ、追っておいでなさーい』

 そう言って、紅恋は素早い動きでまた高架の影へと消えていく
 見え見えの誘いである
 乗る必要性はないが…… <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 22:32:24.39 ID:EA5+Ng8u0<> >>843
『テメェに言われる筋合いはねぇ!!』

そう怒鳴り返す

『待ちやがれ!!』

そういうと、左腕を翳す、するとそこからムチが飛び出る!! <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 22:39:01.87 ID:zeJ9nvHRo<> >>844
『待て、と言われて立ち止まるのは阿呆だけよん』

 余裕綽々と言った様子で、紅恋は何処までも冷静に戦場を舞う
 翳された左手、そこより伸びる鞭に対しては糸を射出することによって対処する
 伸びる鞭は空中で糸と絡み合い勢いを失って落下、紅恋には届かない

『そういうのの扱いはこっちの方が上なんさねぇ』

 はは、と笑いながら後退する彼女の姿が完全に高架の影に隠れた
 レーダーでは若干の高低差が発生したことが表示されているが……

――

「まぁ、紅恋ったら……ごめんなさいね。口が悪くて」

 ニコニコと笑っているが、その実、この少女も考えていることはそう大差ない
 腹黒、と言ってしまえばそうだが、金持ちの子弟、それも大、のつくような連中はえてしてそんなものである
 なにせ、パーティーというなの婚約相手の品評会を開くような連中なのだから

 着物の裾に隠すようにして、リリカは紅恋に指示を飛ばしている
 時にそれは却下され、時に採用される
 二人三脚であった <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 22:43:56.94 ID:EA5+Ng8u0<> >>845
『ちくしょうめぇ!!』

そういうと、走ってそっちにいく


--
「いえ…構いませんよ、ブレスはバカなんで気にしません」

と、純粋に微笑みながら言う

「ハァ、貴方がうらやましいです、ちゃんと指示を出してそれを実行できる相方がいて…」

どうやら気づいていたらしい

「ウチの相方は自分勝手で、突撃して、いつもやられて…既に5連敗ですよ…、どうにかならないかな…」 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 22:50:22.68 ID:zeJ9nvHRo<> >>846
 突っ込んだ先、そこにあるのは蜘蛛の巣である
 粘着性の糸で編まれたそれは、その太さも相まってかなりの強度を誇る
 火焔放射機があるから一掃するのは容易いだろうが、あまりにも邪魔なのは確かであり、
 そして、それにばかり気を取られていると――

『ばぁ!』

 突っ込んだブレスガーゴイルの真後ろ、高架から吊されるような形で、紅恋が浮かんでいる
 その手は人間形態へと変形しており、喧嘩煙管が握られていた
 彼女は発声と同時、手にした煙管を振るい、ブレスガーゴイルの頭部を強かに打たんとする

――
「ん……信頼関係が足りないんじゃないでしょうか」

「誰だって、見下している……というと失礼ですが、とにかく信を置いていないような相手の命令なんて聞こうとはしませんよ
 特に、社会構造で上に立ってる相手でもない限り」

 HMPと人間の関係は人間優位と思われがちだが、決してそうではない
 思考する頭を持っている以上、幾らでも人間を下に持ってくることは出来る
 それだけの演算性能をHMPは持っている

「だから、まずは信頼されることじゃないでしょうか。
 こいつの言うことを聞けば勝てるんだ、と刷り込むこと。
 ――まぁ、調教と言ってしまえば、とても楽なのでしょうけど」

 すらすらと言っているが、内容は酷いものであった <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/26(水) 22:55:58.81 ID:STLgBqnDO<>
>>842
「エルピスさん厳しいなー」

【苦笑いで返すナオヒロ。
 あぁやっぱり私の主人は情けない。と、出ない涙が頬を伝うぞ、こら。
 エルピスの言うことには同意も同意だが、負け惜しみか反論の1つもしないのはどうかと思うぞ】

「……あ、エルピスさん頭に埃付いてますよ。取りますからちょっとこっちきてください」

【違うことで反撃にでるのか。
 しかも髪に埃など付いていないぞ、多分。
 視界の揺れで断言は出来ないが、きっと嘘だ。
 女々しい、女々しいぞナオヒロ】

=なお、エルピスに忠告はしないもよう=


「背伸び系女子かー。(萌え)ポイント高いですよこれは」

【お前の嗜好なぞ聞いていない】

「自分を守る為にも虚栄は必要ですけど、やっぱり疲れますよね。
他人には中身を見られないから虚栄で外を飾る。
けど、誰かにそれを破ってほしい欲求もある。
でも虚栄が独りでに作られ出して、誰も破ってくれなくなって、結局お酒の力を借りて自分から破っちゃう。
……発散出来るときはしちゃわないと、いつか大変ですよ?」

【ランカのお陰で血の巡りが早くなったからかアルコールの吸収も上がったようだ。
 勝手に解説して、その自分の解釈で他人を諭す。
 他人の為の利己。
 自分の為の謙譲。
 ……なあ、そのかったるい講釈はお前のことなんだろう?ナオヒロ。
 酒を飲んでも自分で壁も壊せないヘタレなところは違うようだが】

『……男は我慢の生き物だそうだ。
 怒っては、泣いては、投げてはいけない。
 理不尽も横暴も飲み下して生きていくものなんだと。
 意外なトークスキルはともかく、ここで吹っ切れることはしないだろうな』

=AIにのみ許された超高速領域(>>617)でエルピスにのみ話す。
 静寂もほんの刹那、次の瞬間にはナオヒロを茶化すルリ。=

なんだこの生き物は。さっきからボディに恐ろしい1撃を連打してくる。
自爆て。アピールしまくりの癖に初心て。

またこの小さい悪魔がっ……!悪魔がっ……!

「え、あ、はい」

「蘭花、さん」

【あ、こいつ流されたな。
 反射で言ったな。
 酔いって……怖いな。】 <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 23:02:13.85 ID:EA5+Ng8u0<> >>847
『ぐえっ!』
即効で糸に絡み付いてしまった

『や、やべぇ!!』
なんとか出ようともがくも、さらに絡みつくばかり

--
「信頼関係…そういえば…」
顎に手を置き、考える

「ありがとうございます!」
そう、純粋に嬉しそうに笑う

「…」
なにかを囁く様に言う

--
『…!、ナイスだ黄金!!』
と、嬉しそうな声を上げると、翼が動き出し、糸を切り裂いて飛び上がる

『こんなこともあろうかと、黄金が用意しておいたウィングカッター!!
ナイス指示だ黄金!!』
と、感謝の気持ちとともに落としたトマホークを拾う

『さぁて、はんげ…!?』
攻撃しようとした瞬間に動きが止まる

『…チッ、わぁったよ!!』
と、返事をすると飛び上がる
いったいどんな指示を…? <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 23:11:46.68 ID:zeJ9nvHRo<> >>849
『ちっ』

 必殺となるはずだった煙管の一撃は、紙一重で潜り抜けられた
 蜘蛛は悔しさを噛み殺して、再び高架の裏にへばり付き
 息を殺しながら、動き回る

――

「あら……敵に塩を送ってしまったみたいですね」

 ふふ、とリリカは淡く微笑む
 その笑顔、小学六年生が浮かべるにしては、どうにも底の見えないものであった

 ごめんなさいね、とDVNOに打ち込むと、紅恋は、気にするなと軽く返してきた
 どうやら、勝負の先行きに大きな変化が起こったとは思っていないようだ

(でも、こうしてみると、やっぱり火力不足ですね……
 改造、するにしてもそういう技術はありませんし、どうしましょう) <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/26(水) 23:18:23.90 ID:EA5+Ng8u0<> >>850
『次はだまされないぜ…』
そういいながら、降りる

『OK、わかった』
そういうと、慎重に歩く

--
「ありがとうございます!、大事なことに気づきました!」
と、言って純粋な笑顔になる

その性質、真逆

「…よし」

--
『…お!、わかったぜ!』
と、返事をする
そして

『そこかぁ!?』
と、言いながら高速移動して1秒もたたずにレーダーに反応があると思わしきところに飛び、トマホークを振り下ろす! <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/26(水) 23:26:21.62 ID:zeJ9nvHRo<> >>851
 振り下ろされたトマホーク
 実際それは大抵のものを引き裂くのだろうが……

『糸、ってのはこういう使い方も出来るんさね』

 そのトマホークが空中で止まっている
 それはいつの間にか人間形態へと変形した紅恋が、副腕に持たせている分厚い塊のせいだ

『蜘蛛の糸ってのは、すごい繊維でねぇ』
「ケブラーに匹敵するほどの強度を持つそうです」

 絡新婦が作りだしているのは、それの類似品であるが、その強度はそれほど劣るものではない
 ではそれを積み重ねればどうなるか? ――答えは今目の前にあるそれである
 たった数センチ……その糸の塊を、トマホークは貫けない

『ほーむ、らん――ッ!』

 攻撃を受け止めた瞬間こそが最高の隙である
 紅恋は、先ほどと同じように、ブレスガーゴイルの頭目がけて煙管を振るった <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/27(木) 00:08:23.63 ID:3ghG1uBJ0<> >>852
『「なんだって!!?」』

二人してハモる

『ぎゃばぺぇえええええ!??』

奇妙な叫び声をあげながら星になる

--
「負けですね…」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/27(木) 00:12:31.67 ID:1knJhzNco<> >>848
『ん、ホコリ?』

 無警戒にナオヒロへ近づくエルピス。
 なんせナオヒロだから大丈夫だろうという、半ばバカにしたような安心があった。


『背伸びっていうか、うーん』

 エルピスがちらっと顔を伺うと、蘭花は首を横に振った。だから彼女は口をつぐんだ。
 なまじ素直だからわかりやすくていい、とエルピスは思う。

『わりと古風なのね、ナオヒロって。
 まぁ、でもなんでこう、酔っぱらいを刺激するか……』

 エルピスは頭を抱えた。
 地雷というならまさにそれで、結局蘭花はそっちのほうに問題があるのだから。

「――そっか。それが、普通なんだね」

 ぽろり、と蘭花は呟いた。
 剥がれ落ちるような声だった。
 話すまいと思っていたのに、と蘭花は口元を歪めた。

「私ね、戦いたいの。
 生まれた時から思ってたんだ。何をしても満足できない。足りないって。
 だから人と分かり合えなかった。ぜーんぶ同じに見えた。のっぺりしてるんだよ、全部。
 でも戦ってる時の私は満足してる。その時だけ、世界が色づいてる気がする。勝った瞬間、足りない私が綺麗に埋まって、人間になれる気がする。
 その時だけは――分かり合える。一番シンプルに、人のことが理解できる」

 それは彼女の零秒の先。
 人の考えさえも予測したがったのは――それが彼女にとっての交流だったから。
 勝ちたい、その意思だけであっても、彼女はその時人間だ。

「だから私のあの仮面はね、一番勝負に強い私なんだ。何にも動じず、誰にも頼らず、なんでも笑って蹴散らしていく――そんな私」

 それが国重蘭花の正体だ。
 心の一片までも、勝負事に全てを賭けた大馬鹿者。
 言葉にすれば容易くて、けれどその実は地獄に似た世界。何一つとして興味を惹かれないこと。世界のすべてが均一で、色のない状態。
 そこから抜け出したくて、戦いに身を投げ出して、結局蘭花は仮面を被った。

 太陽に焼かれるイカロスだ。
 塔から出たくて、空へ飛び出し――その世界に取り付かれたヒト。

「そういうナオヒロくんのこと、教えてよ」

 本当に、こんなことを言わせるのは酒の力以外にない。
 欲求だと言えば――彼女のそれはそういうもので。
 それを発散しようとするなら、彼女にはもう、他人を頼る以外には残されていない。

「そんなに言うなら――助けてください」

 誰にも頼らない国重蘭花は、そんな仮面を打ち破るのにさえ精一杯だった。 <> 羽麻リリカ/紅恋<>sage<>2012/09/27(木) 00:17:20.30 ID:Au4+Habpo<> >>853
「ありがとうございました」
『ま、後半の動きは悪くなかったね』

 そうしてリリカは一礼、紅恋は微妙な褒め言葉を掛ける

 そしてフィールグラムが待機状態へと移行し、バトルは終了した

「なんだか色々と掴めたようですし、がんばって強くなりましょうね」

 そう言うとリリカは人混みの中に紛れてしまう
 身長が小さいので、すぐに見えなくなるのだ <> 白銀 黄金/ブレスガーゴイル<>sage saga<>2012/09/27(木) 00:20:10.37 ID:3ghG1uBJ0<> >>855
「こちらこそ、ありがとうございました」
『次は絶対に巻けねぇ!!』

正反対な反応をしながら、黄金たちも帰る <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>saga<>2012/09/27(木) 01:43:26.62 ID:16Sjm7X60<> 【関東地方某所/ホビーショップかっぱどきあ】

自分のシフトが終わった後も私服で店に残り一戦交えるのが、遠見鈴鳴という女の習わしだった。
5時間近く、遠巻きにHMPファイトの喧騒を聞く拷問の後にやるファイトは格別なのだ。
その拷問⇔必要経費。世の中はバイトと呼んでいる。

ただし付け加えておくなら、ここがコンビニやスーパーだった場合、彼女は就労できるかすら不確かだ。

「どうしてみんな、クリーチャーを見るような目でわたしを見るのでしょう」
『仕方あるまい。キャプテンが近付いただけで、常連の8割は逃げるから恐ろしいことよ』

「……わたしはファイトしたいだけなのに」

次に、彼女のパートナーを見てみよう……中性的な声をしている。
パーツではない布のマントと三角帽で身を固めたHMPのカスタムは、遠目には窺い知れない。
だがそんな不気味さではなく、オーナーについての風評こそが試合を遠ざける本因。

『気が合う。だが、無垢な少年に虐殺の記憶を植え付けて大人のお姉さん恐怖症にするのはキャプテンだぞ』
「男の子の気持ちはわかりません。殴られると喜ぶんじゃないのですか?」

ほら、こんなことを真顔で言う。
一般的な少年少女なら、あまり積極的にこの浮世離れした物言いの主と付きあおうとは思わないし、思ってほしくない。

ちなみに今日も「かっぱどきあ」は盛況、現在開いているフィールグラムはここだけだ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/27(木) 02:08:52.66 ID:DVoM+/sso<> >>857

少数精鋭を無駄に追求したシュバリエハート社の人手不足は激しい。
一つのことしかできない天才系変態と何でもできる便利系変態の二種類からのみ成る組織で、後者の人間が雑務をやることになるのは必然。

HMPに関して、という条件下で便利な変態側に属する彼女は、社外に出ることも多い。
もう一つの仕事の観点から、社内にいなくても誰も不審に思わないポジションは好ましく、積極的に外回りを引き受けているのだ。

「さ、行こうかクロリス」
「この地域は初めてですね」

それでもって仕事帰りにHMPショップに寄るのが彼女たちの習慣だ。

扉を開けて、中へ。この空気が変わる瞬間が好きだ。HMP狂いが集まった空間が一番落ち着く。
汗臭かったり、あるいは機械油の臭いがしたり。意味を成さない奇声やら必殺技名叫びやらが、好きだ。

一通り店内を見渡して、特に希少なパーツが無いことを確認して。
その上でまたもう一周回ってみたりして。特に目当ても無く中古パーツストレージを漁ったりして。

ようやく満足したように手を握って頷く。これでよし、と機材を点検するように。

「えと、空いてます、か?」

最後に向かうのは残った対戦スペース。
最近買ったばかりの秋物の服を正し、何度か「変じゃないよね?」とパートナーに確認を取って、向かいの女性に話しかけた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/09/27(木) 21:47:56.08 ID:9CuJzbMDO<> >>834
「――ほら、とれたっ、とぉー?手が滑ったー(棒)」

=髪には本当に、小さな糸クズが付いていた。まずはそれを取る。
 勿論、それでは終わらない。
 糸クズを取った手と逆の手が滑った(?)振りをして、エルピスの頭を人差し指で軽く突いた。
 ……所詮この程度である。
 ちょっかいを出し終えると蘭花に向き直り、表情を引き締めた。=


「俺は蘭花さんを助けたりなんて出来ません」

=突き放すような言葉。
 しかしそれは拒絶ではなく、ただ事実告げただけだ。
 蘭花が心に抱える歪みを取り払う言葉を持っていない。
 闘いを求める蘭花に比肩する実力もない。
 ナオヒロに出来るとすれば、ほんの僅かな気休めを与えることだけ。
 しかし、それはしない。
 求めるものはそうじゃないと分かっているから。
 だから、精一杯がむしゃらに手を伸ばす。
 蛇を掴むか獣の尾を掴むか、小さな掌を掴むのか、分からないままに=

「今の蘭花さんに俺はどう映っていますか?
俺という個人は、蘭花さんの中で1つの個になっていますか?」

「俺は蘭花さんのこと分かりません。全然知りません。
普段の溌剌としてて常に余裕そうで下ネタ飛ばしまくってる蘭花さんも、
今の初心で素直でいっぱいいっぱいな感じの蘭花さんも、何考えてるかなんて分かりませんよ。
でも、そりゃそうです。普通そうです。
だって他人ですから。
経験でなんとなく分かるようになっても、それは予測です。その人を理解したんじゃないんです。
俺はまだ蘭花さんのこと全然分からないから、蘭花さんが何をして欲しいのか予測つきません」


「――――俺は好きなものに本気で取り組むのが恐いんです。
自分が好きになって、面白くて始めたものが、段々と苦痛になって嫌いになっていくのが恐ろしい」

【ランカに言葉を紡がせず、ナオヒロは自分語りを始めた。
 ナオヒロは別にランカ程切羽詰まった人間ではない。
 しかしそれは、モルヒネのような怠惰の毒に沈んでいるからに他ならない。
 一度砕けた精神は前進することを拒否し続けている。】

「唯自分が楽しむだけじゃ気にしてなかった上と下を、本気になれば意識してしまう。
先の見えない上と迫ってくる下、上がっても足掻いても、引きずり落とされ沈んでいく。
好きだから楽しくて、勝てるから面白くて、接戦を演ずる毎に呑み込まれて。
それが止まる。
停滞する。
限界を突き付けられる。
自分は高みには行けないんだって、宣告される。
俺はそれが恐ろしいかったんですよ」

=ナオヒロが今までにぶつかり続けたのはなんてことはない挫折。
 誰もが一度は経験する、能力の壁。
 越えて行くか、諦めるか。人によって様々だがナオヒロは諦められずに壁を越える側だった。
 ――しかし、越えて先に進むことは出来なかった。
 壁を越えることで、明瞭さを増す実力差。
 努力の質の違いと才能を思い知らされる。
 空を目指し、梢に辿り着こうとする虫ケラを待つのは捕食者の翼=

「闘うほどに感じられなくなっていく。
あんなにも溢れていた喜びや楽しさが消えてしまう。
そうなってしまったものが増える毎に存在まで否定されていくようで。
俺は停滞を恐れているのと同じ位に、停滞を望んでいるんです」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/27(木) 23:19:28.60 ID:1knJhzNco<> >>859
『は?』

 つん、と突かれて、間抜けな声が出た。
 仕返しだと判断するには、それは彼女にとって小さな抵抗だったのである。
 しかも気づいた頃には笑い飛ばせる空気ではなくなっていた。

『やるならもっと堂々とやりなさいよ……』


「俺という個人は、蘭花さんの中で1つの個になっていますか?」
 ただ、彼の言葉を聞いていた。
 ふいにリフレインするのは、今まで聞いてきた沢山の言葉。

 ――ともだちでしょ? なのになんで?
 ――蘭花は、俺のことなんか見ちゃいないだろ?
 ――子供ぶらないで。私のことなんか気にも留めちゃいないくせに。

 置き去りにした彼らの言葉。
 私は今まで、誰かを誰かと思ったことがあっただろうか。
 もっと本質的なところで、他人の区別が曖昧ではなかったか。
 私と、他人。国重蘭花の世界は、いつだってそういうふうに分けられてはいなかったか。
 そうやって私はいつだって隠していたのではないか。
 人と楽しみを共有できない欠損を。貪欲に戦いを求める本性を。

「ふ、つう……?」
「――だって他人ですから」

 あぁ、そうだ。たしかにそうだ。誰だって知らない人のことなんて理解できるはずがない。
 でも、じゃあ、私が置いてきた人たちはどうだったのか。
 親友だったあの子も、恋人だった彼も、大切だったはずの人も――私の中では、結局赤の他人だったのか?

 いや……きっと、そうじゃない。
 そうじゃなくて、私はいつだって隠していただけ。

 うまく回らない思考が、彼の声で中断される。
 まるで子供のような私のお願いを、彼は律儀に聞いてくれるというらしい。

「本気になるのが……怖い?」

 彼の見ている世界は、やはり私には理解の出来ない領域だった。
 私にとって戦いは呼吸のようなもので、本気であればあるほどそれはいいことだ。
 絶対に届かない世界を見せつけられたら、私はそこを目指してしまう。
 蝋の翼を目いっぱいに羽ばたかせて、青空の向こう側へ羽ばたくように。
 けれど彼は、そこで落ちてしまうという。
 戦いでのみ感じ取る私と。
 戦うたびに失っていく彼と。
 逆なのだ。そんな相違を、私は変だと思ってしまう。

「そっか」

 ――そこまで考えて、ふと、思い至った。
 私たちにとってそれはきっと、何らおかしな事じゃあないんじゃないか、と。

 イカロスは鳥のように飛んだけれど、鳥ではない。
 だからイカロスは、どれだけ空を飛んでも、鳥のことは分からなかっただろう。
 きっとみんな、誰かのことを理解しようと必死なのだ。
 色も形も似通う世界で、一つ一つの違いをどこかで見出そうとしているのだ。
 そしてそれと同じくらい、自分のことを理解されようと必死なのだ。ともすればおかしく見える人との違いを、理解して欲しいと思っている。

 分かり合うというのは双方向だ。分かるということとは違う。
 私を知らせて、貴方を知ることなのだから。

「怖がってたら――隠してたら、見えないのか」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/27(木) 23:19:46.63 ID:1knJhzNco<>  私が分かり合えなかったのは、相手を理解出来なかったからじゃなくて。
 みんながそうしてくれたように、私を見せようとしなかったから――。

 それは、私に足りなかったうちの一つ。
 みんなが知っている初めの一歩を、私はそこでようやく理解できたのだ。

「やっと、分かった――分かったよ、私」


 差異が浮き立つ。私はとは明確に違う。
 敗北しても挫折しても、私は立ち上がり続けたから。

「ナオヒロくん」

 でも――私はそれを知っている。進むたび、何かを乗り越えるたび、何かを失い続けた経験が私にはある。
 失うことはつらいことだ。

「例えば私はさ、学歴とか私生活とか、恋人とか親友とか、色んなものをなくしてきたけど」

 だけど、失わなければ得られないものがあって。
 それはきっと、失ったものと同じくらいに輝かしいものだと信じられる。

「でも私は、おんなじくらいにいっぱいのものを手に入れたよ。
 学歴の代わりに職にはつけた。恋人の代わりに相棒がいる。親友なんて、昔よりも増えたくらい」

 きっとそれが私と彼の違いなのだ。
 失くしたその先を知っているかどうか。

「立ち止まったりぶつかったりして、道が見えなくなって、大切なものを沢山なくして。
 失くしたたびに泣いて喚いて死にたくなって、ずっと悩んで苦しんで。
 でも――続けている限り、手に入るものだってあるんだ」

 才能なんて糞食らえだ。努力で負けたなら、努力しなおせばいい。
 手前の壁を乗り越えられたのだから、次の壁を乗り越えられないわけはない。

「失くしたら、それ以上のものを求めていく――それって、私だけの考えかな。強い私の、一人よがりな考えかな」

 彼と私は明確に違う。
 きっと私は空飛ぶ鳥で、彼は小さな虫けらなのかもしれない。
 けれど鳥だって、初めは蛇に食われるただの卵だ。――芋虫だって、蝶になれば空を飛べる。

 そこで言葉につまって、私は開けた口を閉じた。伝えたいことの、きっと半分も伝えられていない。
 そっとエルピスの頭を撫でた。
 そうだ、エルピスだって、失くした後で得た相棒だった。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/28(金) 00:39:59.32 ID:Q47IOGQDO<> >>860-861

伝えたかったことは脳で上手く言語化出来ず、口からでた言葉の群れは全く統率がとれていなかった。
しかし、なんとか蘭花さんの考えに食い込むくらいのことは出来たらしい。

「そうですね、その考えは強者のエゴです」

=羽ばたくための翼を手に入れて蝶になろうと、鳥を食うことは出来ない。
 どう足掻いても食われる側だ。
 しかし、それでも蝶になれば鳥と同じか、それに近い景色を見ることが出来る。
 目指した高みの更に上、そこからの景色を見ることが出来るのだ。=

「でも、ありがとうございます。壁に当たったときの為にアドバイス、覚えておきます。
HMPファイトなら俺を100%支えてくれる相棒もいますしね」

【ナオヒロの目が私を見る。
 別に私は支えてなどやってやらないが、野暮なことは言わないでおこう】


グラスを口へ運び、一口水を飲む。
だらだらと喋り過ぎて口が渇いてしまった。
日頃あんなに喋らないからなぁ、なれないことはするもんじゃない。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/28(金) 21:36:45.13 ID:lCZwWmuyo<> >>862
 伝えたいことは伝わらない。これがエゴだなんて、分かっている。
 私は私を強いと断じれるけれど、私がいつでも強かったとは絶対に言えなくて。
 それはきっと、経験しなければわからないのだ。
 乗り越えて、失って、掴みとった時に、それで良かったと思うこと。
 終わらない絶望はない。乗り越えられない壁はないんだ。
 ――ちょうど今、私がひとつ理解したように。
 エルピスの手が、私の指を掴み返す。

「そっか……。
 ねぇ、最後に一つ聞かせて欲しいな」

 だから、それだけは聞いておこう。
 彼は結局、肝心なことを言ってない。

「ナオヒロくんは――どうしたい?」

 立ち止まることをよしとするのか、乗り越えることを望むのか、それとも、その両方か――。
 私にはわからないから。

 グラスの水を飲み干して、ほぅと小さく息をつく。
 少ししゃべりすぎた気がする。
 元々言葉にするのは苦手な性質なのに、よくもまぁこれだけ難しいことを長々と話せたものだ。
 お酒の力さまさまだ。


『――ホントに意外なトークスキル発揮しちゃってるし』

 エルピスは呆然としていた。
 ドッジボールじみた会話の応酬ではあったが、それが何やら蘭花の心に響いたらしい。
 これ一回で綺麗に解決したとは思えないが、取っ掛かりが出来たようだった。

『お酒ってすごい』

 カクテルの半ばを消費して、エルピスはそう漏らした。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/29(土) 20:09:27.22 ID:RVepUosDO<> >>863

突っ込まれた。
言わずに有耶無耶にすることは出来なかったようだ。
俺はどうしたいのか、そんな事は何時だって決まっているんだ。
しかし、答えてしまえば、言葉にしてしまったら。

『……』

【黙りを決め込み、今に居座るのか。
 それでもいいだろう、私は責めはしない。軽蔑もしない。
 いままでと変わらずにお前の傍にいるよ、ナオヒロ。
 だがナオヒロ、あれだけ言って、言わせておいて、自分は違う舞台に立っていると思うのか?】

『――敢えて言う、ランカとお前は同じ舞台に立っているんだ。
 なら……するべきことは1つだろう?』

【決断しろ、見せてみろ、聞かせてくれ、ナオヒロ。
 お前の定めた道とその先を】


「…………俺は、負けたいと思ったことは一度もありません。
負けを覚悟したことは何度もあります。
壁を越えて、停滞してる時は特に。
何度も何度も負けて、結局、そのもの自体からも遠ざかって。
そんなことばっかりで。
それでも、負けに向かって進んだことはありません。
何時だって勝ちたかった。
だけど、――――俺はやっぱり失いたくない」

=“だけど”、一見不可解なこの接続詞だが、蘭花は意味を理解できるだろう。
 常に手を抜かずに闘い続けてきた蘭花ならば、敗北による喪失の大きさも知っているはずだ。
 しかし、勝ちを諦めることで、失うものは限りなく小さくできる。
 勝ちへの切符を手放すことで、負けを正当化できる。
 「どうせ勝てなかった」「勝てないことは知ってた」「負けたって始まってすぐに分かった」そんな言葉にして、敗北の責任を何かに押し付けてしまえる。
 場所が悪かった、相手が強すぎた、調整が不十分だった、なんて風に。
 それをナオヒロは選ばなかった。
 敗北を重ねても勝利を掴もうと抗った。
 その結果何かを失おうとナオヒロは勝たないことを選ばなかった。
 抗い続け、負け続け、失い続け、“好きなもの”に対する思いを失っていった。=

「失くした以上のものを手に入れていけるのは先に進めるからです。
停滞してしまったら、失う以上のものは手に入らない」

=蘭花とナオヒロにはどうしようもない溝がある。
 それは壁を乗り越えた先。
 蘭花は越えて、先に進んだ。
 ナオヒロは越えて、潰されてきた。
 蘭花は勝つことで何かを捨て、しかし大きな何かを得てきた。
 ナオヒロは負けて、何かを奪われて続けてきた。
 勝って得るものと負けて奪われるもの、ナオヒロと蘭花はその割合が殆ど逆だったんだろう。
 勝って得たものよりも負けて失ったものが大き過ぎたのだ。
 その結果が“本気になることが恐い”に行き着く。
 本気になるというかのめり込むというか。ともかく、そうなってしまえば失い続けることになるからだ。
 本気にならないことで、得るものは極々小さくなった。代わりに失うものも小さくなった=

「結局、本気になることが怖いとか言い始めた時点で俺はもう勝負事なんてやっていけないのかもしれない。
それでもまだ俺、HMPファイトが好きです」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/29(土) 22:32:41.82 ID:HuTkdlGco<> >>864
 あぁ、それはそうだ。
 私だって、なくそうとしてなくしたわけじゃない。
 立ち止まったことは何度もある。大切な物を失った恐怖は、私にだって覚えがある。
 というか、恋や友や大切な物を捨ててきた私が失ってみろなどと言うのも馬鹿馬鹿しい話だ。

 それでも、彼は諦めなかった。
 たとえ二の足を踏んでいるとしても、彼は決して、楽になりたいわけではなかった。
 そんな状態を、私はきっと知っている。

 私は勝ち続けた。少なくとも、彼よりも。
 おそらくそれは必然だったんだろう。
 私にとって、HMPファイトは全てだった。
 彼にとって、HMPファイトは全てではなかった。
 それを彼に求めるつもりはない。私のような人種は大好きだが、それは自ずから至る場所だ。

「そっか」

 それでも、彼は「勝ちたい」と言った。
 それでも、彼は「好きだ」と言った。
 私には、それで十分だった。

 それをどう言葉にすればいいのか、私には分からない。
 私は思いを語る術を持たない。――言葉にするのは、いつも苦手だ。
 だから、私はいつもどおりに笑うことにした。
 うまく笑えているかはわからないけど、それ以上は野暮だと思ったから。
 だから、私はいつもどおりに言うことにした。
 うまく伝えられるかはわからないけど、それ以上はないと思ったから。

「勝負しよう、ナオヒロくん」

 私は強い。それを疑うことはない。
 私は勝つ。負けないのではなく、勝つ。それは決定事項だ。それは疑ったことはない。
 私は奪い取る側だ。技術も覇気もなんだって、私に奪えないものはない。それは疑うまでもない。

 それでも、私は「勝ちたい」から始まった。
 それでも、私は「好きだ」から続けていた。

「私が、完璧に勝つから――」

 そうだ。きっと戦いの中で、私たちは失っていく。
 戦いを続ける限り、きっと失くしてしまわぬものはない。

 けれどそんなの、誰が決めたんだ。
 失ってしまえば悲しいだけだと、誰が決めたんだ。
 得たものは全て良いものなのだと、誰が決めたんだ。

 ■■は私じゃ奪えないと――いったい誰が決めたんだ。

「――私の世界を、教えてあげる」

 きっとそれが、私にできる精一杯だから。 <> ルリ&麻木ナオヒロ<>sage<>2012/09/29(土) 23:23:43.11 ID:RVepUosDO<> >>865

『いいだろう、相手になる』

【ナオヒロが口を開くより早く、私が宣戦布告に返す。
 ナオヒロも断るつもりはないだろうが、それを私に聞かなかった。
 これは2人のことなのに、私の了承を取ろうとしなかった。
ならば、私が答えてもいいだろう】

『お前達は強い。
 言うまでもなく、私たちよりも』

【だが私は勝つ。
 私が勝って、夢に、もう1歩先へ、踏み出す。】

『ランカ、お前にナオヒロの世界の一端を見せてやる』

=ルリは苛立っていた。
 無自覚なまま、蘭花と自分自身に対して。
 それはパートナーたる自分では出来ないことを蘭花がやろうとしているから。
 失う恐怖をルリは理解できない。
 ナオヒロの恐怖を分かち合うことも、取り除くことも出来なかった。
 一般論通りの慰めなら知っていた。
 しかし、それではナオヒロを前に進めることは出来ないことも知っていた。
 だからルリはナオヒロの傍にいることしかできなかった。
 なのに蘭花は、ルリよりもナオヒロに近付いた。
 急に現れて、ナオヒロを導こうとしている。
 ルリの苛立ちは、
 自分よりナオヒロを理解して、自分に出来ないことをやろうとする蘭花に対する
 嫉妬、だった。=

『お前に、停滞を与えてやる』

=その時、ロックされているはずのショックラッシュ・レフトのスタンガン機構が起動。
 パチ、と一瞬、左手がスパークする。
 そのときナオヒロが手元のDVNOで確認すると、ロックはしっかり掛かったままであった。= <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/09/29(土) 23:49:17.69 ID:yUtNNWcMo<>
ここはとあるショップ────。

一つのフィールグラムを二人のファイターが対峙していた。

フィールグラムの前、不敵な笑みで腕を組むのは触覚の様に伸びた黒髪を垂らした悪い目付きの男。
その右目を囲うはウロボロスの紋章、ドクロ模様の紅いシャツに黒いコートを羽織っている。

なんか闇のオーラっぽいふいんき(何故か変換できない)を漂わせている男は、不敵に笑う。

「ククク……。さあ、始めようぜイノチの駆け引きってヤツをな……ッ!お前は見せてくれるカナ?本物の証ってやつをヨ」

フィールドに立つそのパートナーもまた、彼と似た雰囲気を持っていた。

『……』

黒を基調とし、血のような赤でペインティングされたデザインはまさにTYPE-VAMPIRE 闇の住人-アンダーグラウンド-。
バランサーである自慢のマントを拡張して、体に纏う事によって両腕を隠している。
間違いなくカスタマイズされているとみて間違い無いだろう────。

いかにもなヒャッハー人種。しかし、他の客や特に怯えている様子は無い。ていうか遠目に楽しそうに見ていた。
その中の一人である、キモオタ風の男が眼鏡をくいっとさせながら、感想を漏らした。

 {うーむ、今回のシャドー氏のカスタマイズは読めませんな……、自慢のダッシュ力を弱体化させてまでして隠す意味とは……}

彼の名前(ファイターネーム)はシャドー!闇のファイターを自称しているが、派手なリアクションで地味に名物ファイターとなっている男である! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/09/29(土) 23:59:10.27 ID:HuTkdlGco<> >>866
『ま、そーなるわよねぇ』

 ただ一人、エルピスだけが気楽だった。
 蘭花の思いも相手のどうこうも分かっていて、そして彼女には関係ない。

 いや、その気持ちはルリと同じだ。
 彼女は身も心も蘭花のためだけに作られた正真正銘のオンリーワン。
 支え導く役割は、確かに相棒のものだ。彼女の悩みにナオヒロが何がしかのきっかけを与えたことに、思うことがないわけではない。
 私がもしもそこにいられたら、私はもっと私らしくいられたのか。

『御託はいいのよ、御託は』

 けれど、彼女にとっては些細なこと。
 なぜなら彼女は蘭花の手足で、だから彼女は単純だったからだ。

『ぶつかり合って、頭の中真っ白にして、エクスタシーにトばされたいのに、浮世のゴタゴタなんて持ち込まないでほしいわ。
 特に――嗚呼、今度はとっても楽しそうなんだから』

 だから彼女はそれらを鼻で笑い飛ばす。
 シンプルで、明確。そうであることが、何より蘭花を引き立てると知っている。
 己が苛立ち、悩み、悲しみ、疑うことなど、それこそ何の意味もない。
 蘭花が己を信頼していると知っているから。
 それで蘭花が良い方向へと進むと、知っているから。

 この場において言葉は不要。魂同士が触れ合わねば、きっと望みは叶わない。
 エルピスはそれを明敏に察知していた。

『だから、もういいでしょう?』

 結局それらは戦意へと収斂していく。
 なんて単純なんだろう。エルピスは笑った。

『酔った頭じゃつまらないわ、明日にしましょう。場所は……あぁ、ここの近くのホビーショップが広いわね。
 ラン、いいわよね?』
「うん、いいよ」
『そっちは?』

 問うまでもないこと。これは宣誓だ。
 角笛を高らかに吹き鳴らすようなもの。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
(中部地方)<>sage<>2012/09/30(日) 00:27:24.91 ID:0TDSaVOKo<> >>867

「ああ、始めよう。ただし本物かどうかは君が決めることではないがね」
対峙するもうひとりが応じて返す。

ゆったりと言って返す少年は異邦人。金色の髪、緑色の瞳、極めつけに褐色の肌。
160cmを少し超える程度の身長の彼は、己とは違う周囲の中にあって冷静そのもの。
眼前のファイターのアッパーなテンションにも呑まれず、普段通りに笑みを浮かべる。

そして、彼のパートナーも、シャドーと呼ばれた相手のものと向い合っても遜色ない雰囲気を醸し出していた。

『―――』

GREAT ELDERS。
HMP大国日本ではなく、米国で開発・生産された機体だ。
紫のボディの殆どを毒々しい黄色の衣で覆い、ヘッドパーツをも黒灰色のゴーグルで包み隠す。
唯一捉えることの出来るのは、右手で地を突く一本の杖。武装の類はそれだけだ。
杖の先端には蛸をモチーフとし、翼や爪を追加させたようなオブジェ。


お互いにマシンは寡黙にして何も語らず。代わりというように異邦人の少年――リチャード・エイクリーがフィールグラムに、そしてその先にいる相手に手を伸ばす。

「ああ。始めよう!」

フィールドは闘技場。全体に平坦なこのステージの縁で、彼の機体はゆるやかに動いた。
地に垂直に突いていた杖の中頃を持ち、傾け、敵へ向け。そのまま敵の動きを伺う。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/09/30(日) 00:46:15.08 ID:DgCXtlGmo<> >>869

「はッ、機体と同じでガキの癖に可愛げの無ぇ。まあいい、精々楽しませて貰うぜ、化物退治は“ダンピール”の役目だからなぁ!」

ダンピール、半吸血鬼。つまりは両腕を純正から変えたのはそういうコンセプトらしい。

シャドーは端末を持っていた腕を振るうと、沈黙していたアンダーグラウドのミケ。
しかし、主の命が下ると、それを待っていたと言わぬばかりにそのオペラ仮面の下に潜む真っ赤な瞳がゆらりと線を描く。

『あっははっははぁッッ!行くよぉ!何が出るかなぁ……!コわい、ワクワク、ドキドキ!?』

バーニアの機能は低下していてもその脚部のダッシュ性能は機体の平均を一歩抜けたものには変わりない。
不気味に両腕を隠すマントをはためかせながらミケは戦場を激しく駆ける。

その軌道は円。“GREAT ELDERS”の背後に回りこむような形である。
そして、距離は詰めてこない。むしろジワジワと離れていく。
そこから、その腕には遠隔装備が取り付けられていると予想ができる────。
<> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/09/30(日) 00:51:41.68 ID:KO4AMlXDO<> >>868

『……あぁ、楽しみだな』

=エルピスに対し、ルリは言葉少なに返す。

 ルリとエルピスのもっとも明確な差違は、“誰のために生まれたのか”。この一点だろう。
 蘭花の為のワンオフであるエルピスと、全ての人の為の市販品であるルリ。
 ルリとナオヒロの距離は、エルピスと蘭花の距離よりも少しだけ遠い。
 その距離の差が今のルリとエルピスの態度に明確に現れているといえる。=

「えぇ、では明日。
明日は胸を……いや、俺も勝ちにいきます」

胸を借りる、とは言わない。
何時もならば言ってしまうそれは弱気の表れだから。 <> リチャード&アジフ<>sage<>2012/09/30(日) 01:26:32.41 ID:0TDSaVOKo<> >>870

「可愛げで生きていけるというならいくらでも可愛くなるというものさ
 そして……速度のあるタイプのHMPか」

そして速度を単純な攻撃でなく、一定の距離を保つために使用してくる。
不気味な相手だと呟いて。

「アジフ。先に仕掛けるぞ」

『がっ――――てん』

アジフと呼ばれた機体は、応じると同時に動き出していた。

動きは単純。前へ向けた杖を、勢いをつけて横薙ぎに振るう。
その動きが、フィールグラムにエフェクトを生み出した。

それは空中を駆け抜ける波紋。杖の先、蛸のオブジェを中心に生み出された大いなる波。

波は輪となり、フィールドを二次元的に捉えて360度、全方位に広がった。
距離を離されたために速度とスタン効果は随分弱まるものの、エフェクトは未だ消えず、ミケへも届く。
もしも当たれど、ダメージは皆無。しかし代わりに数秒間のスタンが発生するだろう。
跳躍して避けるか、射程範囲外へ退くかしない限り回避は困難。

「化物退治、と言ったかね。ならば言おう。この異形を倒してみよ、と!」 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/09/30(日) 02:10:30.32 ID:DgCXtlGmo<> >>872

「ノリの悪いガキだと思えば倒してみせろたぁ、言ってくれるじゃねぇの。
だが、ガキの癖に上から見下ろしてるつもりでイやがるのは気に入らねぇ、潰しがいのある事だぜ!!」

リング上に広がっていくスタンウェーブ。
アンダーグラウンドには飛行性能は無く、ジャンプ力もないため、飛び上がるのはもっとも不得意とする行為。
日本の機体を彼が熟知していたかは分からないが、かなり有効な攻撃である────。

「ちッ、範囲攻撃とは糞うぜぇのが来やがったな。コード=ブレイク・ハンマーだ!」

『少し早いけどしょうがないね』

ミケは身にまとったマントを左腕で思い切り剥ぎとって正面に向けて投げ飛ばした。
バーニアの火力にも耐えるバリア性能のあるマントだ。障壁代わりにするつもりなのだろうか──?


早くも明らかになった、両腕は────。
左腕にはアンカーを発射できる騎士の手甲「カンディンスキィ」!!
右腕を成す獣の腕に持たれるは、軽量型半自動狙撃銃「竜爪」!!

だが、このタイミング。その姿は投げ飛ばしたマントで隠れ、アジフにはまだ見えないだろう。

──次の瞬間。

シャドーは指示端末を握りしめた右手を突き出す様に構える。

「カンディンスキィ射出、突き破れ!」

投げたマントに対して、騎士の手甲からアンカーが射出される。
アンカーはバリア性能のあるマントをアンカーに纏い、エフェクトを突き破った。

マントを纏ってしまっているせいでアンカーとしての機能は無いが、
ダッシュした勢いを合わせて射出したその激突時の破壊力はまさに鉄槌。
エフェクトを吹き飛ばした勢いをそのままに、凄まじい勢いでアジフに向かって襲い掛かる。 <> リチャード&アジフ<>sage<>2012/09/30(日) 16:10:27.57 ID:0TDSaVOKo<> >>873

「ガキだガキだと見下ろしているのはそちらではないかね。
 この戦いに―――否、万事において年齢などは大した問題ではないよ。まずはそれを理解させてやろう」

マントを剥いだ敵の機体、その内部は未だ確認できないが、敵の意図は、

「サイドシフト!」
『行動、回避―――』

声を上げ、同時に機体が動きを生む。
地面を蹴る右足。同時に足裏のスラスタが唸りを上げる。
体はミケへ向いたまま、低空のサイドスライドで位置を移動。
マントに覆われたアンカーの弾丸をやり過ごす。そして着地と同時に敵を見て、

「成程、遠距離仕様かね」

理解と同時、思案する。
今相手が取ったのは回りくどい方法だ。それも、マントという替えのないパーツを消耗して。

「一度限りの手にしては惜しみなく使うものだね。――アジフ」
『がっ――――てん』

ならば次はどう守る。
そう問いかけるようにして、再度同様の波が来る。先程と同様、威力皆無のスタン効果だ。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/09/30(日) 17:55:07.64 ID:DgCXtlGmo<> >>874

放たれたバリア付きアンカーはアジフの後方に飛んでいき、ガシャンと地に落ちた。

「────ま、そりゃ、防げねぇな?」『ねー』

放たれたアンカーはミケの動きを制限し、エフェクト圏内からの脱出を困難にしてしまう。
バリアとなるマントも既に無く、ミケの赤い瞳が砂嵐の様に変化────スタンされてしまう。

墓穴を掘ったかにしか思えない。しかしながら、随分と余裕がある様なのが気になる所だが。
それが本物の焦りに変わるかどうかはリチャード達の対応次第ではあるだろう。

海外の機体であるにも関わらず、シャドーという男。このエフェクトがどういう力を持っているかは知っている様子────。
この手の機体の操り手として、“GREAT ELDERS”という機体はチェックに値するものだったという事なのだろう。 <> リチャード&アジフ<>sage<>2012/09/30(日) 19:27:06.28 ID:0TDSaVOKo<> >>875

こちらの行動と敵の結果に対し、1組は困惑していた。
一機は言葉を失い、一人は思わずして呟く。

『―――』
「無策にも程があるだろう……!」

思考が声となって漏れ、その声を聞き冷静を取り戻す。
無策なわけがない、と。何故ならば、

「あの余裕はなんだ、まるでこちらの手を知っているかのような―――」

ブラフの可能性もある。しかし、そうと決め付けるのは早計に過ぎる。
恐らく知っていたのだろう。相性が悪いからこそ。
異国の地に生まれた、この国では未だマイナーな機体の情報をも有していたのだろう。

「光栄なことだ、と言おうか……」

兎に角、この状況をどうするか、だ。
一見して有利なこの状況。
しかし、もしも相手がスタンに対して解答を得ているならば、迂闊な行動は勝負を決めかねない。

「アジフ、トラペゾヘドロン」
『展開、左腕―――』

声と同時に左手が動く。前腕部分が左右に展開し、盾のような広がりを生む。
その盾を前にして、アジフは行く。スタン状態に陥っているミケから視線を外さず、一歩一歩と近づいていく。

もしミケに接近することが叶ったのなら、右手の杖を振り上げて、敵の頭部へ向け思い切り振り下ろすだろうが――果たして。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/09/30(日) 20:13:39.46 ID:DgCXtlGmo<> >>876

「ククク……。育ちの良さそうなぼっちゃんは知らないかもしれねぇが、この国のネットの海には"ヤバイ奴らの集会所みたいなもん"があってなぁ」
「趣味に関しちゃ、手に入らない情報はねぇ訳よ……!絶賛取寄せ中って訳ヨ。」

それはもしかして……にちゃ……。

沈黙するパートナー。迫る敵。振り下ろされようとしている杖。
絶体絶命。しかし、男は、シャドーは不敵に笑ってみせた。

「────知ってるか?」

DVNOを正面に構え。映しだされたコンソール画面をリチャード画面を見せ付ける。

「"ブラオリッター"のワイヤーアンカーはDVNOと連動しているんだぜッッ!!カンディンスキィ、回収!」

器用に中指を使ってボタンをタッチすると、巻取りが開始される。
スタン状態にあり、力が抜けているミケは逆にアンカーの方に向かってかッ飛んでいく!
ミケはガリガリと手甲が地面と擦れて火花を散らしながら迫るアジフを横切る様にすり抜ける。

「オイ、こら、いつまで寝てやがる!!」

その言葉に反応したかのように、砂嵐となっていたミケの赤い両目が復活する。

『あれ?ここはどこ?僕はダレ?でも分かるよ────』

アンダーグラウンドの頭部レッドアイズは、高性能な一点集中狙い型、いかなる場合でも一点のみならターゲッティングし続ける事が出来る。
引きずられながらガタガタと揺れながらも狙撃銃「竜爪」の標準は────真っ直ぐにアジフに狙いを付けていた!!

『キミは────ソコだねッッ!!』

「《ワンポイント・ピアース》だッッ。撃ち貫け!!」

「竜爪」の引き金に力が入る!威力は高くはないが、その狙いは正確に──右足首関節に狙いを付けていた!

<> リチャード&アジフ<>sage<>2012/09/30(日) 21:01:57.92 ID:0TDSaVOKo<> >>877

「……!」

真横を掠め、先に飛ばしたアンカーへと抜けていくミケを視線で追いながら、リチャードは自らの不覚を感じずには居られなかった。
背後のアンカーに気付いていなかったわけではない。落下の音も耳に残っている。
ただ、知らなかったのだ。
DVNOによって操作しているとは考えもせず、HMPによる操作と思い込み、敵を無力化した時点で勘定から外してしまっていた。

そして正確無比の狙撃が来る。
アジフの右足首への直撃は装甲の薄い関節部を撃ち貫き、小さな悲鳴を生む。
バランスを崩しかけた機体は右手の杖で辛うじて体勢を保ち、ゆっくりと片膝をつく。

「まったく、そんなネットワークがあるとはね……随分フェアじゃないじゃないか。
 それに、DVNOに連動と言ったね?とんだ勉強不足だよ、これは」

眉尻を下げ、笑みを濃くして軽口を発する。己の不覚を紛らわし、同時に思考を落ち着かせる時間稼ぎも試みて。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/09/30(日) 22:43:02.97 ID:DgCXtlGmo<> >>878

「出し惜しみしねぇってのは大正解だったな。いくら手の内を隠そうが、
確かそいつのオツムは大層オリコーにできててこっちの正体をアバきだしちまうだろうかなぁ」

『だから、先手必勝の不意打ち技、決めさせてもらったのさっ!』

シャドーとミケはお互い、サムズアップしていえーいと成果をたたえ合う。仲の良い事で。

「ま、こっちが知らなかったら、知らなかったらでエゲつねぇ事になってたからな。情報の差。これが長生きするって事よ、ククク」

『くくく。トシノコーってヤツだねカーくんっ!』

いや、言うほど別にそんなに年が離れてる訳ではないのだが……。

「さて────」

ワイヤーの巻取が完了し、立ち上がる。
相変わらず、狙撃銃の銃口はしっかりとアジフに向けられており。
次の狙いは、自慢の杖を握る右手首────。

『あーゆーれでぃ・バイバイ?』

うまく一撃を入れたが、不意打ちの様なもので、何度も同じ手を取れる訳ではないだろう。
しかし、アドバンテージを先に取ったのはこちら。

威力は無くとも正確な一撃を放つ狙撃銃でじわりじわりと差を付けていく算段の様だ。
右手首に狙いを付けた引き金に力が入る。

「確かそいつに遠隔武器は無かったよな?そのまま突っ立ってるなら狙撃させてもらうだけだが、勝ち目がねぇなぁ?どうするよ?ん?」

まるで何かに期待しているからという声色で、リチャードに問いかける。
彼が求めているのは逆転劇。ヒール的に作り上げられたキャラクター、
先手必勝のバトルスタイルはそういう場面を作るためのものでもあった。

 何故か、────? そのほうが盛り上がるからである!!

アニメーションや漫画では、日常的に巻き起こるソレらの現象も現実ではそうそう起るものではない。
逆転された結果負けるつもりという訳ではなく。彼は、そういった非現実的な“ヤマ場”を求めて戦っているのである。
<> リチャード&アジフ<>sage<>2012/10/01(月) 00:36:39.29 ID:7EVdIeNoo<> >>879

勝ち目がない。その言葉に呼応するようにパートナーを見る。
片足を失っただけとはいえ、機動力を失ったのは痛すぎる。
まして武器情報やヘッドパーツの思考特徴すら知られているとなれば――

―――違うだろう。そうではない。
己を知られているから勝てないのではない。敵を知らないから勝てないのだ。
理由を外に求めるな。己の中の未熟に問え。


『宣言―――』
アジフが発声する。

「――――言おう!!」
リチャードが続く。

「このリチャード・エイクリーとアジフは、いずれ必ず敵を打倒する!
 上から見下ろし悦に浸る悪役気取りを、必ずや引きずり落としてやる!」

主が右腕を大きく振って示す。相方が呼応して右腕に力を入れ、杖で支えて右足を浮かし立ち上がる。
撃たれれば終わりだ。だが撃つだろうか。目の前の、この状況の先に愉悦を見出そうとしているようにも見えるこの一組が?
撃たないだろう。此方が答えを出すまでは。そう敵を信じて、愉悦の上に胡座をかいて座する。

「―――すべての不覚を雪ぎ、勝利をもぎ取ってやろうとも!」


同じ事だ。同じ事をすればいい。
敵が情報を得ているなら、情報からは予測できないことをすればいい。

杖を手離す。
支えを失い、倒れかけのタイミングで左足裏とボディパーツ、衣に隠れた腰背部のスラスタを起動。
バランスを崩しながらも、不安定な弧を描きながらも機体は速度を得てミケへと向かい。

近づくことが叶ったならば、体を捻りながら足首より先の欠損した右足の蹴りを、ボディパーツへ向け繰り出すだろう。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/10/01(月) 01:42:00.77 ID:aQZOTL40o<> >>880

「無知なガイジンの坊ちゃんを一方的にボコったて言うんじゃ名前に傷が付くよなぁ、良いことを教えてやるよ」

で、でたー!!冥土の土産!!シャドーは腕を組んで語り始める。

銃口は既にアジフにロックオンがかけられている。
しかし、ミケは主の命が下るまでその引き金を引くことは無かった。

「アンダーグラウンドっていうのは、一点狙い型の機体。今は変えてるが、その武器はレイピアとブーメラン」
「特にレイピアは最強でな、相手のエネルギーをぶんどっちまう恐ろしい武器よ」
「それを活かすのが、脚部と頭部!頭部は複数ロックオンが苦手だが、一点狙いなら狙いが一切ブレねぇし夜目も聞くッ!」
「そしてその脚部!抜群の安定性で頭部で狙いを付けた敵を正確な踏み込みで貫く!!これは射撃にも通ずる所がある!」

「なぜ、パーツを変更したか?換装した両腕には元の装備と似た特性を持っているからだ!射撃武器は相性が良さは当然だが、」
「カンディンスキィのワイヤーアンカーショットは飛ばして戻すという特性がブーメランに近いものがあり、AIの互換性が高い!」

『来てるよ、カーくん!』

リチャードは勝利への宣言をした、迫るアジフ、しかしシャドーは喋り続ける。
ミケはただ、構え続けるだけだった────。
だが、ニヤリとほくそ笑みながら感情を高ぶらせ、荒ぶる口調で言葉を放つ。

「自慢の杖を捨てて接近戦、狂ったか?大層な言葉を口にしてくれたが、ソレで本気で勝つ算段があるみたいだな?面白ぇ!」
「だが、もっと教えてやるよ!!遠近両用のこの機体をあえて遠隔に寄らせたか!ミケ!!」

目の前にまでやってきたアジフを見据えながら、ミケはまっていましたと言わんばかりに楽しそうな音声でそれに答える。

『ああっ!そうだね!"竜爪"っていうその名前の意味を!!』

眼前に現れた敵にに対し、“竜爪”を構えるミケ。しかし、それは先程までの“射撃”の構えではなく────。

『そして────』

「『アンダーグラウンドっていう機体の真髄をな(ね)!!』」

シャドーは言った。換装した装備には元の装備と似た特性があると!左腕の説明はした。しかし右腕がまだだ。
狙撃銃とレイピアの────“共通点”。それは────。

「ワンポイント・ピアース(格闘)ッ!!」

アジフの蹴りが襲いかかるその瞬間、“竜爪”の銃口の先から、ブレードが展開される。
────そう、銃剣。軽量型半自動狙撃銃「竜爪」には銃剣の装着に対応しているのだ。

胴体に壊れた右足の蹴りを受けつつ、クロスカウンターの如く、
銃剣の刃が真っ直ぐにアジフの胴体のド真ん中に襲いかかる! <> リチャード&アジフ<>sage<>2012/10/01(月) 21:23:40.08 ID:7EVdIeNoo<> >>881

「ああ、勝つとも!」

酔狂と見られようが、リチャードは手放した杖のことを振り返りはしなかった。
杖を振って行動不能にしても、ワイヤーを使って逃げられてしまっては片足の現状では追いつけない。
それよりも、これより先の行為に、それを捨てるだけの価値があると信じているからだ。

「耐えろよ、アジフ―――!」
『がっ――――てん』

こちらの動きに対して撃ち込まれるのは銃撃、あるいはアンカーであると予想していた。
しかし実際に来たのはそれとは異なるもので、

「尽く外しているね……だが最早問題ではないよ!」

要は耐えられるか否か、だ。寧ろ近接武器が来たことは僥倖とすら思える。

「耐えろよ――そして撃ちかませアジフ!」

蹴りが入る。それに対してカウンターとばかりに竜の爪刃が来る。
胴部分へ迷いなく迫るそれに対して、アジフは止まらず、寧ろ勢いを入れるかのように背部のスラスタを唸らせて。
入った蹴脚の膝を曲げ、少しでも2機の間の距離を縮めようと試みながら。
空いた両の手で、ミケの肩部を掴もうと手を伸ばす。

『届――――』

竜の刃は既に胴部を突き割いた。スラスタの低い叫びに呼応するように、更に深々と刺さっていく。
既に此方の機体はもう先長くない。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/10/02(火) 21:26:43.19 ID:ps7803J6o<> >>882

「──かないんだなぁ、これが」

蹴りが入った脇腹がバチバチと悲鳴を上げる。
胴体のバランスが崩れ、やや膝が曲がり出力が低下してはいるものの。
────両の腕は簡単に届く事はなかった。

突き刺さったのは銃身の先にあるブレード。
長い砲身がつっかえ棒の様な形になっている。
逆に言えば、それさえ無ければ容易に辿り着ける状況。

『んー、機龍に乗った巨大ロボ的な王子サマを待ち望める程度には乙女な僕でも戦場で能面と抱きあう趣味はないかな?』

差し出せる腕に対してひょうひょうとした音声で軽口を叩くミケ。──ていうか、女だったのか……。

「ハッハ────ッッ!!ハハハハハぁーんッ!!何をしてくるかと思えばジャッパニーズSUMOUでも取ろうってか?この、おバカさんが!」
「素手で武器持った奴に敵わねえっつーのはこの世界(フィールグラム)でも変わらねぇんだよ。手前共がそれに特化してない以上はな!」

両手を腰に当て、高笑いするシャドー。残った盾の様な左腕を見て。喉を鳴らすように笑うと、真っ直ぐに戦場を指さした。

「折角残った装備もそれじゃあ……。クッ。クククク……」

このまま力比べが続けば、狙撃銃の銃身などひとたまりもないだろうが、そんな心配をする必要などどこにもない。
このシチュエーションになったならば、やるべき事はたった一つ。突き刺さったブレードは銃口の先の敵を真正面に捉え続ける。

「ヒャッァー!!この距離ならバリア(シールド)は張れないなッ!フィ↑ニー────ッシュ!!」

────そう、接射。ミケはシャドーの掛け声と共に指先に力が入り、引き金を引くだろう。

『君が抱くのは十字架がお似合いってコトさ?さよーならー────ドーンッ!!!!!』

たとえ威力の低い弾丸だろうと、薄い装甲を打ち破れる以上、
既に楔の入った相手を接射で貫く程度なら難しい話じゃあ無い。
体のド真ん中に" 穴 "が開く訳だが──────。生きるか死ぬかの世界。

この状況に対し、アジフは引くか、尚も進むか。はたまた別の何かか。勝負は、もうすぐ決まろうとしている─────。
<> リチャード&アジフ<>sage<>2012/10/02(火) 23:42:04.05 ID:ib6LZig9o<> >>883

『く、ぐ――――』

千切れんばかりに伸ばした両腕は砲身の距離の分がどうしても届かない。
根本まで貫いたブレードに傷つけられた背部スラスタは異音を唱え、既に勢いの多くを失っている。

「残念ながら相撲は経験がなくてね」
『―――相模?相模?』

惜しい。というか軽口を叩く余裕はないだろう。自分もだが。
などと考えていると、それは来る。


「ここで銃撃……!」

シャドーの言う通り、これでフィニッシュとなると考える。これを自分の力で覆す事ができると考えるほど楽観的には出来ていない。
ならば、

「ならば今は―――、そう。今は、その十字架を甘んじて受けようとも」

静かに宣言するとともに、零距離で放たれた弾丸がアジフの体を貫いた。
アジフは一度大きくのけぞった後、伸ばしていた両腕をだらりと重力に従わせ―――完全に沈黙。
戦いの結末である。 <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/10/03(水) 01:45:57.67 ID:Nh8pYlMDo<> >>884

「今は───」『「ね」?』

ふっ、と笑うと。
────ミケは突き刺さった銃剣を引き抜くとくるりを振り返った。
その前を見れば、シャドーが既にその体勢を取っており、ザッ!と両手を内に向けてクロス。

「究極勝利!」『ショーリっ!』

びしぃ!と観客(という名の店の客)に勝利のポーズを決めて見せた。
再びぐるり、とコートを翻しながらターンして再びリチャードに向き直ると。

「ふッ。またライトニングSHOWに会えなかったぜ」

※ライトニングSHOW、またの名前を雷 勝とは一昔前のHMPジャパニーズアニメーションの主人公だ!
機転を利かせた“一発逆転”が持ち味のスーパーファイターだ!(人はソレを主人公補正と呼ぶ)

「代わりに良いもん見れたし良いとするか。そいつの右腕は中々鬱陶しかったぜ」『ねー』
「────ま、俺だったら……」

右手を銃の形にして、上げ、店に展示された機体を撃ちぬくポーズを取る。
そこにあるのは、type-ゾノノイド・バニヨネット。
両腕に優秀な射撃パーツの付いたMHPで今回、ミケの右腕を担当もしていた。

「コイツと合わせるがなぁ」『わくわくしちゃってるっ!どきどき?』

要するに射撃パーツ。相性や結果論に過ぎないが、確かに射撃パーツがあれば攻撃を当てるチャンスはいくつかあった──。
アドバイス、というよりは自分の改造プラン。左腕の性能で回避出来たとはいえ、2次元スタンウェーブは厄介で評価は高かった。
というか、事前に機体を知っていたという事もあって、実際に見て喰らって欲しくなった様である────。

ふう、と指先を吹くと。ミケがぱかりと開けたケースにずり落ちそうになりながら飛び乗る。『わぎゃ!』
────あ、落ちた。胴体から足に来たダメージの治療が終わってないからだ。それをシャドーがひょいっと持ち上げてしまった。

「うーし、そんじゃあなー、リチャード・エイクリーさんよー」

戦闘中とは打って変わって随分と緩いノリ………。じゃあな、と片腕を上げながら、ポケットに手を突っ込みながらふらふらと出て行こうとする。
散々ガキだの、ガイジンだの坊ちゃんなどと言ってくれたが、最後にはきちんと名前で呼んだ──。と思いきや、ピタリと歩みを止めると。

「顔ぉ洗って出直してきな!ヒャッハハハァ────ッ!!」

振り向きざまに中指で下マブタを引き下げて笑うと、捨て台詞を吐きながら高笑いして走って店を出ていくだろう──。
パーツの事を考えていたら外面が一瞬素に戻ってしまい、やばいと思ったのだ。キャラは大事ですよね。
<> リチャード&アジフ<>sage<>2012/10/03(水) 02:48:44.95 ID:vj2bJdNqo<> >>885

「宣言した以上は、当然というものだろう?」

言葉を返しながら中心を穿たれた相棒を労うように手で抱く。
残念を思うと同時に得た多くの課題を胸に、笑みとして形にする。
そして相手が勝利宣言をする間、無言で店内の客を見渡して、

「完全に対処しておいてそれを言うのは卑怯だと思わないかね?」

言って、示されたパーツを見る。
遠隔武装があればたしかに違った可能性も示されただろうか。

「考えておこう。一度この国のカタログにも目を通さなければいけないな」

自分が使うこと以上に、相手に使われた時のことも考えて。情報を得なければならないと。

「……ああ」

試合中とは随分印象が違うものだ、とか。そもそもいつ名乗った、とか。
そういった疑問を浮かべている内に、続きの言葉が来て、

「そうさせてもらおう。そして次こそ―――」

否、重ねて言う必要はないだろう。
結果は大敗を上回り惨敗、だがどこか充実を得た表情で、去り行くシャドーら一組を見送った。


/絡み乙&ありがとうございましたー! <> シャドー&ミケ<>sage<>2012/10/03(水) 19:20:20.64 ID:Nh8pYlMDo<> >>886
/お疲れ様でしたー! <> 荒田シン<>sage<>2012/10/03(水) 22:51:42.93 ID:RdpV4LC4o<>  夕暮れ時のHMPカフェ
 愛機と共にお茶や読書を楽しむ中にあって、シンは、異彩を放っていた
 その傍らにHMPは無く、手元に置かれたスケッチブックの上では、鉛筆が踊り、一つ、また一つと人を、HMPを分解した絵が完成していく
 それは人体模型にも似ているが、何かもっと別の目的をもって描かれているようにも思える

「……なかなか、思い至らないね」

 くるりと指先で鉛筆を廻すと、頭の脇を掻く

「40cmの制約、か……」
 
 どうやら悩みは深いようだ <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/03(水) 23:02:06.87 ID:N1MEctubo<> >>888
『最早日課じゃのう』
「気分転換にはいいしね」

 静とサクラもカフェにやってきていた。
 いつものように静は端末を叩き、サクラはその横でパフを楽しむつもりだが。

「席が空いてないなぁ」
『こりゃ相席じゃの』
「今日は気分転換にしとこうか……」

 とはいえ相席をしようにも、満席ばかりで難しい。
 一通り見渡して、静はようやく空いてそうな席を見つけた。

「あのー。相席、いいですかね?」 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/03(水) 23:09:42.68 ID:RdpV4LC4o<> >>889
 突然、声を掛けてきた青年に、シンは柔和に対応する

「ん? ああ、構わないよ
 ……あ、荷物が邪魔だね。
 少し待ってくれるかな」

 そういうと、テーブルの上に散乱していた筆記用具を掻き集める
 色鉛筆。定規……果たして何に使うのかよくわからないものまで

「さ、どうぞ。
 流石にこの時間だと、やっぱり相席も考慮しないとね」

 ははは、と苦笑いしつつ、スケッチブックの端を鉛筆で叩く
 どうやら悩んでいる時の癖のようだ

「……ん、君のHMPは、ずいぶん面白い形をしているね
 特化型、かな?」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/03(水) 23:21:56.77 ID:N1MEctubo<> >>890
『かたじけない』
「ありがとうございます」

 小さく頭を下げて、静は席についた。
 サクラも静のカバンからするりと抜け出して、机に降り立つ。

「すみません、邪魔しちゃったみたいで……。サクラ、いつものでいい?」
『うむ』

 などと言いつつ手早く注文を済ませた。

「あ、あはは。まぁ、特化型ですね」
『腕が無いくらいにはの』

 飄々と言ってのけるサクラには、右腕が存在しない。
 隻腕の大和撫子、欠損した少女というデザインは人目を引くし、気分のいいものではないかもしれない。
 ちなみにそういう方面では垂涎モノらしい(姉談)。

「そちらのは設計図……っていうよりデザイン画ですか?」

 静もまた、シンの手元に興味を示した。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/03(水) 23:36:23.01 ID:RdpV4LC4o<> >>891
「しかもそれは……追加電源だね。だいぶカスタムしてあるから、流石に元のはわからないけど
 一式は晴神楽弐式だから……近接特化、かな?
 僕も前片腕のないHMPを駆っていたけど、独特の重心移動をするから近接機だと、相手は大変だろうね」

「なんてなぞなぞじみたものはいいかな。ごめんね、趣味なんだ
 それでー、うん、デザイン画……って言っても、まだまだ方向性が下りてこないんだけどね
 ……んー、初対面の人にいきなり話すのもあれだけど、そろそろ子供が中学に入るんだよ
 だから、その子のプレゼントにでも、と思ってるんだけど……どうしても、趣味が入っちゃってね」

 ははは、と笑いながらスケッチブックの上に描かれた数々を指さす
 それらは五体満足ではなく、HMPの部位を一つだけ取りだして描きだしたものだ
 腕、足、胴、そして頭部
 そのどれもに、植物、あるいは機械、別の動物と言ったものがめり込んでいる
 それらは悪質なコラージュのようでもあり、シュルレアリスムじみてもいた
 率直に言って、気味が悪いのだ
 とてもではないが、子供にプレゼントするような代物ではない

 もしかすると、静は同じアーキテクトとして、彼が誰であるかを察することが出来るかも知れない

「昔はもうちょっと上手く削ぎ落とせてたんだけど、ね。やっぱり、殻にこもってちゃだめだなぁ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/04(木) 21:16:54.79 ID:cSv3+7fIo<> >>892
「大和のアームですね。あれの大部分は装甲だったので、全部取っ払って、ちょっと整形して。
 まぁ……確かに独特ではありますね。両腕を振らずにバランスを取らせるのは難題でした」
『初めは走るのも苦労じゃったがな。慣れじゃよ、慣れ』
「……という通り、最終的にはサクラの自己学習に任せましたね」

 AIや戦闘プログラムの大部分は、静が技術者である父に多大な助力を得て組み上げたものだ。
 片端の剣士というモーションデータの製作が困難を極めたせいで、AI自身の学習によってモーションを決定するという手段を取っているくらいにはキワモノである。

「お子さん……ですか?」

 静は少々驚いた。中学生の子がいるほど老けているようには見えないのだが。

「あぁ、自分の趣向を凝らしたくなる気持ちは分かりますよ。それに」
『開発者の業と言うべきじゃろうか……それに、これはまた』
「――いい趣味ですね。幻想的です」
『しゅうあ……えっ?』

 サクラは間抜けな顔で振り返った。
 静はあくまでにこやかである。

「荒田シンさんですよね? 作品は何度も拝見してます」

 見間違えようもない。植物に蝕まれた人間のようなデザインはエクリプスのそれだ。
 アーキテクトもデザイナーも目指す彼が知らないはずがない。

「あ、ぼくは国重静です。しがない開発者見習いです。こっちは相棒の『枯桜』」

 静はぺこっと頭を下げた。
 サクラはというと、何やら青ざめた顔で戦慄している。

『主殿、もしやそういう……思い返せば開発機殆ど女性型じゃ……』

 強烈なデコピンがサクラの額に叩きこまれた。のけぞった勢いで後頭部を床(人間目線での机)に打ち付けるくらいの一撃であった。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/04(木) 21:54:14.37 ID:myUHcd34o<> >>893
「自己学習に任せるか、モーションデータを作るか、は難しい問題だよね。
 実際、隻腕の剣士を捜してくるのは今の時代、かなり難しいしね」

 フジムラ理論による技術の発展は、義肢の世界にも革命をもたらした
 ミリ秒以下で遣り取りする達人たちにとってすればやや不満らしいが、ほとんど元の通りの感覚で動かすことの可能な義肢が販売されるようになっている
 
「それに、特化型ならいいけど、汎用型だとモーションデータを増やしすぎて容量がギリギリに、なんてことにもなるしね」

 自虐するようにシンは笑う。恐らく、過去にそういうものを作り上げてしまったことがあるのだろう
 静の驚き顔に、シンは苦笑いする。

「ん? ああ、見えないかな?
 うちの家系は、代々老け顔でね。一定の年齢を超えると、歳が逆転するんだ。
 若い頃は、おっさんおっさん言われたけど、今じゃ若い若い言われて、参ってしまうよ」

「ああ、素直にシュールと言ってくれて構わないよ
 自覚はしてるから」

「でも、……まぁ、あの子は、僕みたいな趣味にはならなかったみたいだからね
 親の趣味を押しつけるわけにはいかないし、それにあんまりワンオフ機らしすぎてもいけない
 中学とか、そういうまだ幼い頃は、イジメの原因にもなりかねないしね」

 とんとん、とスケッチブックの端を叩いて、描いたデザインに丸や×をつけていく

「ワンオフでありながら、一般機じみている。なかなか、難しい課題を自分に課したものだなと思うよ」

 それに、そんな曖昧な機体ではイマイチ気持ちがよく伝わらないだろう
 ただでさえ、一緒に暮らしてはいないのだから
 全てを"彼女"に押しつけて、僕はHMPとだけ生きようとしているのだから
 けれど、僕があの子を愛していることは本当のことで
 だからこそ、こうして頭を絞っている

 顔を顰めながら、静の名乗りに、少しぴんと来たことがあったらしい

「どうもこんにちは。荒田シンです
 国重静くんか。
 ん……国重……もしかして国重蘭花さんと、関係があったりするのかな?
 年齢的に……姉弟、かな? 
 それと開発者見習いって言ったね
 彼女のエルピス……もしかして、君の習作かな?」

 当てずっぽうな問いかけだ
 正解するかどうか、どうでもいい

「もしそうなら、君は見習いどころじゃないよ
 立派な一人前さ。……まぁ、一人前を何処で定義するかによるけど」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/04(木) 22:35:33.80 ID:cSv3+7fIo<> >>894
「えぇ、本当に。最初はまともに刀も振れませんでしたし。
 ぼくじゃ無理でしたから、基礎となる剣術モーションを与えて、それをベースにひたすら反復学習させて効率化しました」
『今となっては逆に、両腕で剣を振れると思えんのう』

 中身が完全に隻腕用に調整されてしまったが故の弊害というか、おそらくサクラはこれから一生片腕で戦い続けるだろう。 
 その手法は人間が運動を身につけるのと同じだ。ひたすら基礎を繰り返し、サクラはその動きを達人の域まで洗練した。
 なまじ機械であるから動きは精密、だからこその学習速度であった。

「あぁ、ぼくも覚えがありますね。あれもこれもってわけにはいかなくて、でも切り捨てるのはいただけませんしね。
 あくまでぼくの経験ですけど、サクラみたいな子は自己学習に任せたほうが良い仕上がりになりましたね。
 汎用型であればモーションデータを極力減らして、思考や戦闘理論の方を詰めるのがベターでした。尖る必要はないので、多彩さを活かす方向ですね」

 HMPの話となると、どうにも長引く。
 職業病である。おそらく語らせたらどこぞの戦闘狂よりも長い。

「あ、すみません。そういうつもりじゃなかったんです」

 ぺこりと小さく頭を下げて、静は言った。
 シンを老け顔と言うのなら、静はもう見たまんま童顔である。しかも女顔。
 心の底でちょっとだけ羨ましがったりもしつつ、静は続けた。

「いえ、ぼくは好きですよ。機械と生物のグロテスクな融合って昔からありますしね。
 何より……情熱が感じられるとこが、一番」

 偏執的であることを、静は悪だとは言わない。
 強い情熱は最高の動力源だ。そこから生まれる物はやはり輝いて見える。

『その悩みは主殿には無縁じゃの。好き放題作るだけじゃしな?』
「あ、あはは……いやでも、そう作れって頼まれたらそう作るよ」

 少なくとも見た目は、と静は付け加えた。

「あれ、姉さんとは知り合いですか?」

 素っ頓狂な声を上げて、彼は目を瞬かせた。

『世界は狭いとはいうが、これはまた』
「まったくそのとおりです。ぼくの姉は国重蘭花ですし、姉さんのエルピス――パンドラ・ウェディングの設計もぼくが担当しました。
 とはいえ、技術方面はプロの方に協力を仰いだんですけども……」

 苦笑して頬を掻く静。
 一人前だとほめられても、その表情は変わらない。

「シンさんにそう言ってもらえると自信になります。
 でも、納得行く機体が一人で作れたら見習い卒業って決めてるんですよ」

 自分にはまだ足りないものが多すぎる、と静はひとりごちた。
 それらを全て乗り越えるまでは、彼は見習いを名乗り続けるのだろう。

「サクラ、パフ来たよ」
『おぉ、待ち望んだぞぉ』

 机に置かれたパフにサクラは飛びついた。
 なにせ男二人が機械油臭い会話をしているから、割り込む余地があまりないのである。要するに暇なのであった。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/04(木) 22:56:30.28 ID:myUHcd34o<> >>895
「目指したのが汎用、じゃなくて万能。だったからねぇ」

 苦笑いしながらシンは言う
 当時、"彼女"たちと額を突き合わせて思いついた案がそれだった
 考え得る限りのモーションデータを詰め込んで、それの死角や苦手とする動きをぶつける事による絶対的優位
 結果出来上がったのは器用貧乏を極めた、ファイター次第で屑にも何にでもなるHMP

「そうだね。結局の所、特化した状態を僕らには察することしか出来ない。だから実地で学ばせた方が早い
 習うより慣れろ、の理屈だね
 エクリプス一型はそういう方向性で詰めた。二型も、似たような感じ
 三型は汎用型の学習をさせないといけないから、やっぱり理論を詰め込む感じになるんだろうね」

 まぁ、まだ三型はデザインすら上がっていないのだが

「ん? ああ、別に気にしてないから、謝ったりしないで
 本人がネタにしてるものを謝るネタにされると、困っちゃうから。そういう時はただ笑ってくれるとありがたいな」

 はは、と笑うと、冷え切っているお茶を口に含む

「そう言ってくれるのはありがたいけど、だからと言ってそこに胡座を掻くと、待っているのは袋小路だけだからね
 芯は忘れないようにして、色んなものを取り込んでいく、っていうのも大切だよ
 自分にとってどう、じゃなくて、クライアントにとって、どう。っていうこともあるしね
 まぁ、だいたいは自分で没にした奴って、後から見直すと没にした理由が納得出来たりするものだけど」

 何をモチーフにするか
 デザインというのは日常の中に溢れかえっている
 今こうして、使っているカップだって、誰かが考え出したデザインの結果だ
 必要なのは、嗅覚

「ああ、この前の地方大会でね。ちょっと顔見知りのショップ代表だったから、挨拶したんだよ。
 なかなか、あの機体は面白いね。追加パーツを利用した事による、四形態の行き来
 ……思いついたとしても作るところまでこぎ着けられるのは、なかなかないね
 耐久性もそうだし、なにより操縦の難易度がおかしなことになる
 君の姉、蘭花さんあってのあの子なんだろうね」

 どれほど道具が優れていようと、それを使う人間によってそれの価値は上下する
 人を殺せる銃が悪いのか、人を[ピーーー]人が悪いのか。そういう話だ

「なるほどね
 しかし、納得いく機体かぁ……その基準に当てはめると、僕もまだ見習いだなぁ」

 頂は見えている
 けれど、そこに至るまでの階梯が足りない
 一つ、また一つ、習作という名の階段を設けて、そこに近づいていくのだ

 しゃしゃしゃ、と気付けばまたシンの筆が動いていた
 まるで、元々描いてあったものを浮かび上がらせるようにしてスケッチブックに描かれるのは、パフを食むサクラだった <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/04(木) 23:35:40.25 ID:cSv3+7fIo<> >>894
「その通りだと思います。作り手は取り込むことをやめたらそこでおしまいですよね」

 まったくのゼロから全てを完成させるような天才ではない。
 制作の段階で、必ずどこかからインスピレーションを受けるものだ。
 あるいは以前小さな少女からアドバイスを貰ったときのように、人の意見は時に自分にはない視点を提供してくれる。
 静は何度も頷いた。

『人に頼まれてモノを作るような行儀のいい職人じゃなかろうに。
 主殿もそうじゃが、お主もじゃろ?』

 サクラのそれは半ば確信めいた問いかけだった。
 我が道を往く者特有の匂いがするのだ。それのために全てを投げ打つような。

「パンドラは、実のところ耐久性もないし操縦性は最悪ですよ」

 静はまたも苦笑した。

「変形って聞こえはいいですけど、ようは四形態それぞれで全く別のHMPですからね。
 弱点も剥き出しですし、強引な動きをすればバッテリーを大きく食います。
 どれか一つに絞らないで欲張ったツケがそういう部分に出てしまって。
 仕方ないので、無理難題を押し付けてきた姉にツケを押し付け返した形ですね」

 静は頭を掻いた。あれは随分な傑作だと自負しているが、プロの助けもあったし、何より想像通りの一品ではない。
 次に姉へ作るときは、今度こそ一人で完成させようと静かに決意していた。

「やっぱり、シンさんでも自由には行かないものですか」

 当たり前といえば当たり前だが、彼は溜息を付くようにそう漏らした。
 失望などでは勿論なく、感動あるいは理解だ。
 望みどおりの存在を生み出すというのは、やはり誰にとっても難題なのだと。
 そこに至るまでに無数の試行錯誤を繰り返し、技術を磨き見識を深めていかねば。
 目指す場所は遠い。静は小さく笑った。

「あ、ほらサクラ、サクラのスケッチ」
『ん……? おぉ』

 言われて振り向いたサクラは、スケッチブックに描かれるそれを見て目を丸くした。
 片手で器用に頭をかいて、サクラは視線を逸らした。

『な、何やらこそばゆいのぉ』
「あはは。ありがとうございます」 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/04(木) 23:52:12.88 ID:myUHcd34o<> >>897
「今は……難しいけど、昔は出来てたよ。
 そういえば、……いつから、出来なくなったんだろう」

 思いだしてみると、わからない
 少なくとも会社にいた頃は出来ていた。退社してからも、しばらくは出来ていた
 けれど、今は趣味をつぎ込んでいる
 ――境界線は、どこだった?
 ちり、と頭の奥が痛む。思い出すべきことではないような気がする
 ならば、忘れておけばいい――少なくとも、今は

「いい姉弟だね。そういうキャッチボール、嫌いじゃないよ」

 たとえるなら、それは、共作する時のものに似ている
 デザインとAIと、お互い投げ合っていいと思うものを作る
 ボールが何処に飛んでいくのか、最後まで誰にもわからない

「ああ
 でも、一歩一歩、近づいているよ
 たくさんの資源と、時間を費やして、ね」

 あるいは、魂すらも――捧げて、あの子を産み出すために

 最初に描いた写実的なそれの横に、デフォルメしたものをさっと描く
 片方はシャープさを増した、鋭利な刃物然としたもの。
 もう片方は、ファンシーな、女の子にも受け入れられそうな可愛らしい絵柄
 こんな絵も描けるのか、とそう思うようなものだった

 そこで、ころり、と鉛筆を置いて

「ちょっと、ティーン向けの作品からは離れてるから、参考に歳の近そうな君に訊きたいんだけど
 君よりも年下の世代って、どういう風なHMPが好まれてる傾向があるのかな。
 出来れば、女の子の情報が欲しいんだけど」

 つまり、彼の子は娘ということだ

「やっぱり、可愛い系、なのかな」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/05(金) 23:15:32.67 ID:8OrxZXQOo<> >>898
『――本当、匠というのは難儀なものじゃ』

 サクラは嘆息した。
 彼女の主もそうだし、彼もまた相違ない。意味とか理由など、複雑なものではないのだ。
 シンプルに作りたいものがあるから作る。それ以上もそれ以下もない。
 そういう人種だからこそひたむきで、色々なことが二の次だ。

 少なくとも、サクラの目にはそう映る。
 重要な何かを見落としたまま走り続けているような――そんな風に。

『きゃっちぼーるなんて生易しいもんじゃないのぉ。どつき合いじゃ、ありゃあ』
「……まぁ、『姉さんだったら大丈夫か』で片付けた部分が多いのは否めないけどさ」

 いい姉弟といえばそうだろう。デコボコだが噛み合っている。
 例えば姉が戦い、弟が作るといった塩梅に。
 噛みあいすぎて一周回った結果、共同作業は小さな戦争の様相を呈していたが。

「へぇ、そういう絵も描けるんですね」
『お、この鋭そうな絵はいいのぉ』

 静は目を丸くした。

「うーん……ぼくも詳しく調べたことはないんですけど」

 静は軽く頭を捻って、記憶を掘り下げた。
 普段通うホビーショップの様子、少女の扱うHMPの形状、容姿。
 ぱっと思いついたのは【魔術師】の再現をしてのけたあの子だったが――いや、彼女は例外だ。失礼な話だが。
 しばらく記憶を精査して、静はとりあえずの結論をつけた。

「まぁ順当に一番人気なのはホビーガーデンの『マトモな方』でしたね。可愛らしいだけじゃなくて、花に似た外見はとっつきやすいんだと思います。
 七篠さんのとこは質実剛健で職人気質って感じですけど、その分晴神楽とかエンジェル系みたいな綺麗系がホビーガーデンに競ってたはずです。
 シュバリエハートのナイト系が次点。格好いいというか、白馬の王子様的なものを見ているみたいで。
 総じてまずはデザインから入る子が多いと思います。
 後はその子の趣向ですね。可愛いのが好きか、綺麗なのが好きか、格好いいのが好きか」

 まぁこれ、身の回りのショップを見ての感想ですけど。静はそう付け加えた。
 よくもまぁ人のHMPまで見ているものだとサクラは呆れた。

「なので、プレゼントだったらまずはその子の趣向を知るとこからだと思いますよ」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/05(金) 23:19:40.27 ID:8OrxZXQOo<> ※エンジェル系
 七篠工業がシリーズとして送り出すフライメック系列。
 実在の天使をモチーフに(とはいえ名称は大きく変えて)製作されているタイプ。
 特徴は壮麗かつ神聖。光学兵装に長け、比較的遠距離攻撃に優れる。
 天使の輪なんかはオミットされているが、これは海外に出品する際の宗教的な配慮。英語名も『Shining Fairy』。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/05(金) 23:50:22.88 ID:4U1Xw+5Mo<> >>899
「ドッヂボール、の方が近かったみたいだね」

 くく、と笑ってその答えに笑ってみせる
 
「うん、まぁ、手広くやってたからね。気付いたら、自然とね
 それに、他人に見せるときは敢えてこのファンシーな絵柄で描いてみることもあってね
 ほら、写実的だと、不気味だろう?」

 実際仕上がってくる方は後者なのだから、堪ったものではないが
 植物とかと共生する可愛らしい女の子、あるいは精霊といったキャラ付けならば、受け入れられなくも、ないかも、しれない

「やっぱり、デザインが関門だよねぇ」

 HMPを始めるに当たって、入門機とされている機体がオーソドックスな見た目をしているのはその要素が強い
 たとえどれほど操りやすい優れた機体であろうと、HMPが玩具である以上、決して変えられない入り口だ

「あの子の趣味、趣味ね……うん、そうだね。今度、逢うときに訊くことにしよう
 あげたいもの、をあげた日には目も当てられない」

 それは幾ら何でも好き勝手が過ぎるというものだろう

「貴重な意見ありがとう。
 お礼、と言ってはなんだけど、ここでの飲食代は僕が払おう。
 情報は金なり、ってね」

 楽しそうに笑みを浮かべるとスケッチブックのページを捲る
 そうして、また真っ白なページの上で、鉛筆が踊り始める
 果たして、それはどれだけの間を置いてのことだったか

「……ああ、そういえば。君はEDENにも行くことが多いかい?」

 ふ、とそんな問いかけが飛んできた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/06(土) 18:02:41.42 ID:JiCx6Y71o<> >>901
「あぁ、なるほど……」

 静が納得する傍ら、サクラは「いや、それはない」とばかりに小さく首を振った。
 可愛らしく誤魔化しても不気味なものは不気味だ。

「ただデザインがいい、ってだけではなくて、モチーフがティーンの少女に合ったものだと受け入れやすいんじゃないでしょうか。
 不思議の国のアリスだとか、白雪姫だとか、有名なお伽話は彼女たちの間にも浸透してますから」

 これは現職の意見だから間違いない、と静は心中ひとりごちた。
 少なくとも、デザインを疎かにしたHMPはどれだけ性能が良かろうが売れない。

「え、いやそんな、大丈夫ですよ。きちんと調べたわけじゃないですし」

 両手をぱたぱた振って遠慮する静。
 姉の知り合いとはいえ、会ったばかりの人に奢らせるのは気が引けた。
 そんな静の袖をサクラは引っ張って、

『主殿、パフをもう一つ頼むのじゃ。あんみつで』

 強烈なデコピンを食らって吹き飛んだ。

 シンがスケッチブックに向かう間、静も端末を叩いていた。
 新作HMPの情報のチェックや大規模掲示板の巡回程度だったが。
 作業の邪魔はすまいと思ったのである。

「EDEN……ですか?」

 その質問にきょとんと目を丸くする。
 あまり聞かれない質問だったのだ。

「姉さんに連れられて、週一くらいで。パンドラの調整、ぼくが専任なんですよね。
 向こうのほうが設備がいいので」

 勿論それが姉の一言であることは疑いようがないだろう。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/06(土) 19:02:35.31 ID:JjJoAp5lo<> >>902
「有名な御伽噺、か……その辺りも、リサーチが必要そうだね」

 サボってたツケが廻ってきたよ、と苦笑しながらシンはこめかみの辺りを鉛筆の尻で掻いた

「若いうちは、奢られておくのも大事なことだよ
 負い目……とまではいかないけど、そういうことをされた、ってことで縁が出来たりするからね
 ああ、すいません。あんみつのパフを」

 とまぁ、そんな風に強引に奢ることを承諾させてしまうのである

――

「週一、か。なら、ちょうど良いかな。
 一つね、伝言を頼まれて欲しいんだ。
 ほら、最近、幽霊HMPだとか、捕食HMPだとかの噂があるだろう?」

 それは、にわかに騒がれ出した噂である
 路地裏や河川敷などに不法投棄されたHMPが、突如として動き始めるのを見た、だとか
 同じく、そういった場所に投棄されているHMPを喰っているHMPがいただとか、かなり不気味な噂だ
 あまりにも目撃証言が多く、また何らかの犯罪の片鱗かもしれないということから、
 その件については近々、EDENが調査に乗り出すことが決まっている

「本当はメール辺りで直接連絡を取るのが一番なんだろうけど、彼女は僕からのメールを拒否設定にしてるから
 だからといって、あまり確証のある話でもないから、EDENその物に情報提供ってわけにもいかないんだ」

 そういうと、彼はやにわにスケッチブックの一ページを切り取った

「と、理由ばっかり説明して肝心の相手の名前を上げてなかったね
 伝えて欲しい相手は、EDEN所属白宮エィリ」

 アーキテクトとして、他のワンオフHMPにも気を配っているのならば、静もあるいはその名を知っているかもしれない
 クルーシャナリアと呼ばれる、トイボットタイプの――曰わく、万能型――HMPを駆る才媛の名だ
 HMPのみならず、白皮症であるが故の外見的特徴からも、有名である女性

「たぶん、デスクワークか、訓練生の面倒を見てることが多いだろうから、
 ちょっと君の目的地からは外れるかもしれないけど、その人にこの紙を添えて、伝えて欲しい」
 
 差し出されたページには、昆虫らしいフォルムの絵――恐らくはHMPのもの――が描かれていた
 それは、屈強な上肢を持ち、下肢は、馬の胴にも似た長いものをしている。
 最大の特徴は、その下肢の背に乗せられたカプセルにも似た半球だろう
 緻密に描かれたその内部は、何処か、工場の製造ラインにあるロボットアームに似たものが並んでいる

「過去が追いかけてきたかもしれない、って
 たぶん、そういえば理解して貰えるはずだから」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/06(土) 21:07:53.49 ID:JiCx6Y71o<> >>903
「あぁ、ありますね。不法投棄HMPを食うっていうのがどういう仕組みなのか気になってたんですけど。そもそもそれをどう再利用するのか……」
『そういえば、蘭花も仕事じゃなんじゃと騒いでおったの』

 まぁ姉はガッチガチの戦闘部隊で、勿論あの姉に調査なんて器用なことができるはずもないのだが。

「白宮エィリ――クルーシャナリアの人ですね。……どんな人だったっけなぁ。
 過去が追いかけてきたかもしれない――ですね。分かりました、伝えておきます」
『なんじゃこの、珍妙なHMPは』

 まず真っ先にHMP名が出てきて、しかも特徴的な本人の外見に関しては忘れているあたり、彼のそれはもう職業病の域を出ているかもしれない。
 次いでサクラがスケッチブックの切れ端を覗きこんで首を傾げた。静もつられてその絵を見て、目を見開いた。

「……生産プラント? 嘘でしょう、そんな」

 静はばっと顔を上げた。

「まさか――これ、HMPを?」

 彼は何を想像したのか、僅かに顔を青ざめさせて――。
 そして、僅かに瞳を輝かせた。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/06(土) 21:57:17.47 ID:JjJoAp5lo<> >>904
「昔ね、盛大な莫迦がいたのさ」

 懐かしむような、それでいて、悔いるような
 そんな、曖昧な声音で、シンは語り出した

「EDENの仕事は難しく、そして数が多すぎる。
 発生する案件数に対して、人員が少なすぎるんだ。だから、必ずしも、案件に適正のある人間が派遣されるとは限らない」

 それは、少数精鋭の組織であるが故のどうしようもない事情だ
 人間は、一カ所にしか存在することは出来ない
 だから、例え、Aという案件よりもBという案件に適正が高くとも、A案件の方が先に来てしまえば、本来、向かえば容易に解決できたはずのB案件は別の人間が解決する、ということが発生しうる
 それに――

「ワンオフ機――うん、良い言葉だよ
 自分のためだけの機体。格好いい言葉だよね、うん、誰もが喉から手が出るほど欲しいだろう
 事実EDENに務める正規隊員は、ほとんどがワンオフ機体を使っている
 でも、それは――わざわざ、その機体の為だけに調整されたパーツや、熟知した技師が必要になる、ということでもある」

 では、派遣された先で、それの為に調整された物品が必ず手にはいるのか?
 無論、補給物資を持たずに任務に赴くということはありえないだろう
 けれど、持っていける物の量には限りがある
 確かにたかが玩具のパーツだ。多量に持っていくことは可能だろう
 でも、整備用の器機はどうだろうか?

「物流は前世紀に比べれば遙かに改善された。でも、まだ、一瞬で届くとか、そういう芸当は出来ない」

 距離があれば時間が掛かる。もしも、その途中で事故でも起きれば――?

「もし仮に、パーツが手に入らなくなったら? 換えのバッテリーが手に入らなくなったら? もしも、技師が腕を壊してしまったら? 突然死んでしまったら? 器機の故障……ああ、なんでもいい。要因は腐るほどある」

 ワンオフ機は、たった一つの要因が壊れただけで崩れ去る、砂上の楼閣にも等しい危ういもの
 ――その莫迦は、そう考えた

「だから、その莫迦は考えたんだよ。
 なら、技師が死なないようにすればいい。なら、パーツはその場で作ればいい。
 でも、モーターやバッテリーは流石に作れない。なら、敵から奪えばいい」

 違法HMPに使われているモーターやバッテリーである
 さぞや良い働きをしてくれるだろう

「……そうして、考案されたのがこのHMPだよ
 ドゥーグァブル。まぁ、ドワーフと素直に言うのが厭だったから、ちょっとそれっぽい言い方にしてるだけだけどね」

「確かにHMPは最大40cmという制約がある――けれどね、パーツごとにバラしてしまえば、一つ一つのサイズは大したことないんだよ」

 無論例外はある。
 だが、今噂になっているような、一般的に売られているHMPなら? 捨てられるような、弱いと蔑まれるようなHMPなら?
 五体をバラしたときのサイズは――

「……でも、このHMPは実現不可能な机上の空論でしかなかったんだよ
 当時のメディカルポットはまだまだ大型で、HMPに組み込めるような代物じゃなかったからね
 今でこそ、武器弾薬を技術の応用で精製する、とかそういう武器も出てきたけど、当時はもっと大きくて、笑ってしまうくらいのサイズだったんだ
 だから、その莫迦は、このHMPの案を廃棄して、別の道――どんな案件にも対応出来て、専門的な技師が必要ではない
 それでいて、唯一であるという矛盾に満ちたHMPを作った――という、お話だ」

「それにね、噂はもしかしたらただのバグかもしれない。捕食なんてバグがどうしたら発生するかはわからないけどね
 ……だから、過去が追いかけてきた、かもしれない。なんだ」

 そう言う荒田シンの目は、狂気に満ち満ちていた <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/06(土) 22:52:26.32 ID:JiCx6Y71o<> >>905
 ワンオフ機の宿命。静は小さく頷いた。
 メディカルポッドはデータさえあれば機体を容易く修理してくれる。けれど。

「ワンオフHMPを真の意味で理解しているのは、そのアーキテクトただ一人――」

 あらゆる調整は、アーキテクトただ一人にのみ委ねられる。
 まだ未熟なぼくが、パンドラ・ウェディングの全調整を一任されているのと同じだ。
 HMPは、決して独りでに修復することはない。
 HMPは、決して自ずから成長することはない。

 だからその場でパーツを奪い取り、機体内部で組み換え、新たなパーツとして作りなおせばいい。
 物資調達のための、兵站用HMP――。

「修理型……機体内部での、武装の生成……」

 おそらく彼は、それを生み出した相手に心あたりがあるのだろう。
 いや、知己なのだ。彼の語りを聞けば、最早そうとしか思えない。
 けれど静は何も言わなかった。


 サクラはその端正な顔を歪めていた。
 ――彼女もまた、不法投棄HMPである。

『さしずめ餓鬼と言ったところか……腐肉漁りとはの』

 そうなってしまった経緯はともかく、彼女はそれに嫌悪感を抱いていた。
 廃棄されたHMPがそれほどに多いという事実にも。それを無残に食い散らかしていく存在にも。

 怒りに近い。そして恐怖が先立っている。
 己もまたそうであったから――一歩間違えれば、自分も。
 拾われたのはずっと昔だ。

『……っ』

 では、何か?
 私は救われて、彼らは救われぬ。それを――見過ごせというのか。
 救われた側の己が、悠々と彼らを見下せというのか――。

『主殿っ……!』

 だから、サクラは声を荒げた。
 そして声を失った。


 静は笑っていた。
 小さく、静かに、笑っていた。
 狂っているというのなら、彼の方も負けてはいない。

『ある、じ……?』

 サクラは、その顔に心当たりがある。
 例えば、パンドラ。あの追加パーツの機構を思いついた時の彼の楽しげな顔。
 例えば、アルカナシリーズ。もれなく全ての機体を、彼は笑顔で組み上げた。
 例えば――彼女の一番最初の記憶。
 枯桜を生み出した時の、HMPと初めて触れた時の、彼の笑み。

 見つけてしまったのだろう。
 彼の中で燻っている執念の矛先を――。

「――そうですね。分かりました。この件はきちんと伝えておきます」

 そわそわと、彼の指先が踊る。彼にとって付随事項はどうでもいい。
 ただ、そこにはそういうモノがあって。そういうものを作ることもできるというのが、彼にとっての重要事項なわけだから。

「しかし、バグですか。兵站用から略奪用にとは、なんとも皮肉というか、現実的ですね。昔の軍隊みたいじゃないですか」 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/06(土) 23:16:34.00 ID:JjJoAp5lo<> >>906
「まぁ、アレは専用のAIあってのものだからね。
 バグ……というか、もしも、だけど予想が当たっているのなら、過去を掘り返した輩は適切なAIを作れなかったんだろうね」

 HMPは何も機体性能だけで決まるわけではない
 AIの影響というのは計り知れないものだ
 それは人間だって同じだろう
 同じ人間とは思えないような発想を、理論を紐解く人々がいるのだから

「いや、あるいは……示威的な使い方をしたいのかもしれない
 誰に向けてのメッセージかはわからないけど、ブルーローズが青いバラを残していくように
 その過去を掘り返すことで、その人物は、莫迦に近づいたと言うことを声高に叫びたいのかも、しれないね」

 まぁ、贅沢を尽くしたくだらないことだけど、と何故か、自分のことのようにシンはそれを一蹴して
 そわそわと、指先が踊り始めた静を一瞥して、サクラに視線を落とす
 少しだけ、申し訳なさそうに――彼は目を細めた

 そして、スケッチブックを閉じると、シンは立ち上がる

「――さて、僕は、そろそろお暇しようかな。
 ああ、支払いは僕のカードに付けておくから幾らでも好きなだけ頼むといいよ
 伝言を頼まれてくれたお礼、ってことで」

 そうして、立ち去ろうとして、思いだしたように彼は一枚の名刺と、小さなメモリカードを差し出してきた

「こっちは僕の連絡先
 もしかしたら、こっちからまた何かお願いすることもあるかもしれないから、あとで連絡を入れておいてくれるかな?
 それで、こっちのカードは、さっきの紙と一緒にエィリに渡しておいてくれるかな?
 一応ウィルスチェックはしてあるけど、もしも気になるようなら中身を覗いてくれても構わないよ
 いつ、そういうウィルスが仕込まれるか、わかったものじゃないからね」

 それに見られて困るデータは入っていないしね、とそういうとシンは支払いを行ってカフェを出て行った <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/06(土) 23:54:09.91 ID:JiCx6Y71o<> >>907
『己のミスを取り返そうともせんのか、それとも意図通りなのか。どちらにせよ気に食わん話じゃ』

 サクラは眉尻を釣り上げた。

「よく――わかりませんね。近づけたことを誇示する意味が。
 だってそれ、結局たどり着けなかったんでしょう? 自分は出来損ないですってアピールして、何か得られるんでしょうか?」

 静は当たり前のように首を傾げた。
 目指す場所に『近づいた』ということは、『まだ着いていない』ということだ。
 彼には全く理解が出来ない。
 そもそも、人に到達を知らせる意味さえ分かっていないのだから。

「……ありがとうございます」

 その点に関して何を言っても無駄だ、と静は観念した。
 せいぜいサクラの浪費に釘を刺すくらいしかできることはあるまい。

「あ、はい。重ね重ねありがとうございます。
 分かりました、これもですね」


 さようなら、と手を振って、静はシンを送り出した。
 彼は深く息を吐いて、椅子にぐったりと身を預ける。

『主殿』

 サクラの呼びかけに、静は小さく笑った。

「どうしたの、サクラ」
『――いや。些末事じゃ。気にするでない……』
「変なサクラ」

 静は笑った。
 笑って、端末を引っ張りだした。
 一応先ほどのメモリーカードの内容も精査するとして、本題はそちらではない。

「そうだね。ぼくはこの方面は専門外だから、完成するのはずっと先になりそうだけど。
 ――サクラ。ぼく、ようやく見つけたみたいだ」

 何を、と問うまでもない。
 この小さな主は、今までずっとそれを追い求め続けてきた。

「ぼくの目指すべきものの、完成形」

 それを作ることに、意味は無い。
 ただ技術者として、究めたい。
 静の原動力はそれ以上でも以下でもないのだ。

 その瞳には、確かに熱狂が渦巻いていた。

「――まぁでも、まずは目先のことからはじめようか」
『……そうじゃな』

 それも一瞬。ふっと色を消した彼は、静かにサクラの頭をなでる。
 とりあえずは、貰ったデータの精査。それとアルカナシリーズ二機の仕上げ。
 よし、と気合を入れて、静は作業を開始した。 <> 荒田シン<>sage<>2012/10/07(日) 00:38:52.69 ID:7Qex4qouo<> >>908
 メモリーカードに入っていたのは、幾つかの書類ファイルと、クルーシャナリア用追加モーションデータと記された圧縮ファイル
 1枚の設計図と、恐らくはそれのデザイン画と説明用と思しきラフ絵を纏めた圧縮ファイル
 そして、不気味極まる、絵が数百枚、圧縮ファイルとして封入されていた

 書類ファイルに記されているのは、なんてことはないメールで聞けばいいような内容が半分
 もう半分はHMPのマニュアルと、見積もり書だ
 マニュアルは、整備初心者向けのものなのだろうか? 非常に細かな指示が書き込まれていた
 おそらく、これに従えば静もこのHMPを整備可能だろう
 見積書はやけに高級なパーツを使っているかと思えば、マイナーなパーツを使っていたりと、少し面白いものだった

 問題は、残りの設計図と、絵

 片方は、ついさっきシンから手渡されたページに記された、『ドゥーグァブル』を正統発展させたような機体だった
 昆虫さは失われ、頭部は丸く小さな皿のようなものに、
 機体前面部には重厚な装甲が配され、城塞のような趣になっている
 そして、最大の特徴である背後のポッドは半球から観音開きの平たいものとなっており、
 その側面部分には六本ほどのシリンジを挿入可能――図では、真っ白な粉状のものを詰め込んだシリンジが挿入されていた
 何体ものHMPがこの部分から武器を取り出したり放り込んだりする、少し可愛らしい四コマ漫画のようなものが描かれている
 どうやら、この部分は台としての機能も備えているようで、さらっと描かれた不気味な蔦まみれの少女が上に乗って、独特の凹みを備えた肩に狙撃銃を添えて、構えている様が描かれていた
 設計図の名前部分にはEmbrasure(仮)という記入があった
 全高40cm TYPEはドミネイター
 チームとしての運用を第一に考えた機体なのだろう

 絵は、一人の女性を少しずつ分解していく過程を描いたものが、百枚ほど。グロテスクな内容ではあるが、切り口のせいかそれは医療標本に似ている
 HMPの皮膚をはいで、本当の意味で素体である機構を描いた物が、五十枚前後。時折、思いだしたように一カ所にだけ皮膚を貼り付けたりするのが、趣味が悪い
 
 そして、最後の百枚
 それは、幻想的、なんていう言葉では表せない
 グロテスク……も違うだろう。いいや、確かにグロテスクなのだ
 肉と機械が食みあう様を緻密に表した筆致は確かに気持ちが悪くなるようなものだし、
 その隙間を縫うようにビッシリと生える植物の芽や、ハニカム状の糸などは思わず全身に掻痒感を起こさせる代物だった
 けれど、全体を通して、奇妙な神秘さ……幻想の中から出てきたような、不可思議な印象を覚える絵たち

 だが、アーキテクトとして、平面を立体に、立体を平面に落とせる者として
 その百枚を通して見た後に、脳内でそれを再生すると一つの形が浮かんでくるのに気付くはずだ

 体を機械と植物に侵され、けれど、それを侵し返すかのように、それらの表面から人間の器官を発生させている少女の形を


 そして、その画像ファイルが入っていた圧縮ファイルのタイトルは

『Total Eclipse』 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/08(月) 22:27:54.38 ID:zoYXBcJNo<> ※ >>810から>>871までのあらすじ ※
 新規開店のHMPバーで出会った国重蘭花と麻木ナオヒロ、エルピスとルリ。
 和やかに始まったはずの突発的な酒盛りは、意外な方向へと転がった。

 ――俺は好きなものに本気で取り組むのが恐いんです。
 怖がってたら――隠してたら、見えないのか。

 噛み合わないはずの正反対の二人が、互いに互いの心情を吐露して。
 あるいは当然の帰結なのか、HMPファイター二人は戦いの約束を交わし、そして別れた。

 そして、翌日――。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/08(月) 22:28:06.70 ID:zoYXBcJNo<>  大手ホビーショップのフィールグラムは、今日貸切になっていた。
 蘭花が前もって予約を入れたのだ。時間だって相手へ連絡済みである。
 別段人だかりが出来ているわけではない。フィールグラムが静かな以外は、全くいつもの光景だった。

 試合開始まであと数分もない。
 蘭花は――ビルの階段に座り込んでいた。

 ひどく緊張しているわけではない。適度な具合だ。
 体調が悪いわけでもないし、月のものでも勿論ない。――コンディションは万全だ。
 瞑目して座り込む姿は、精神統一でもしているのかと思わせる。
 冷たくなった秋の風が吹き込んで、頬を撫でる。彼女のシャギーボブが風に吹かれて緩やかに踊った。

『ラン』

 その隣から、エルピスが声をかけた。
 彼女もまた床に腰掛け、足をぶらぶらとさせている。

『調子は?』
「最悪」
『気分は?』
「……わかんない」
『らしくないわね』
「だって、どうしたらいいかわかんないもの」
『でも、勝つんでしょう?』
「――当然」

 蘭花は強く言い切った。
 エルピスはにやりと笑みを浮かべた。

『勝てば官軍負ければ賊軍。世界はいつだって勝者が正義で回ってる。勝者が強いのよ。それは当たり前だわ。
 ――伝えたいことがあるなら、勝ちなさい。ランの言いたいことは分かるから。勝者の全ては強さなのよ。言葉ひとつだって、強く響くわ」
「……そうだね。それしかないんだ」
『分かっているならそれでよし。――時間よ』
「うん――行こう、エルピス」

 蘭花は立ち上がって、エルピスに手のひらを差し出した。飛び乗る相棒を肩へと導き、階段を登る。
 繋ぎっぱなしの充電コードがふわりと揺れて、かちゃりと小さく音を立てた。

『ところでラン、どうして調子悪いのよ?』
「……心情の問題かな。昨日一晩考えたら――なんだかとっても、腹が立ってきてさ。昨日の私とナオヒロくん、まとめて殴り倒したい気分」

 蘭花は笑った。
 いつもよりも優しげに、いつも以上に熱を込めて。

「さぁ、行こうエルピス。今日だけは、『負けられない』」

 そうして、彼女は戦場へ降り立った。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/10/08(月) 23:11:04.90 ID:zbDA7auDO<> >>911
=蘭花と対照的に、ナオヒロは30分ほど前からフィールグラムに待機していた。
 DVNO他ルリに関するアプリを何度も見直し、万全の状態を目指していた。=

……普段よりも周囲の音がよく聞こえてくる。
フィールグラム周りに人がいないせいか、緊張のせいか。
心臓はいつもより早く鼓動し、指先に至っては僅かに震えてる始末だ。

『情けないな、なにをそこまで緊張している。
 相手の実力に怖じ気付いた……そんなことはないだろう?』

【きっと、このファイトは勝とうが負けようがナオヒロの何かを変えるだろう。
 それが初めから分かっているから震えるのだ。
 変化に対するのは恐れか、武者震いか】

『いいかナオヒロ。HMPファイトに絶対はない。
 勝ちに指が掛かっても気を緩めるなよ』

「……負けそうになっても諦めるな、じゃなくて?」

『言うと思ったが、そんなことでどうする。
 ――私達は勝つのだよ。
 さあ、幕が開くぞ』

蘭花さんの姿を認め、ルリから充電コードを引き抜く。
その手のままルリをフィールグラム上へ連れ出した。

「――どうも、蘭花さん。
始めましょうか」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/08(月) 23:36:56.49 ID:zoYXBcJNo<> >>912
「よろしく、ナオヒロくん」

 思ったよりもスムーズに言葉が出たことに、私は小さく安堵した。
 昨日のこともあるし、変な対応になったらどうしようと思わないでもなかったけれど、杞憂だったようだ。

 言いたいことはいくつもある。
 伝えなきゃいけないことはいくつもある。
 けれどそれは、きっと言葉だけでは伝わらない。
 だから――私はここに立つのだ。

「ごめんね、遅くなって」
『ま、待つのは男の義務だしね』

 こんな時でも軽口を叩くエルピスは、やっぱり頼りになる。
 彼女に繋がる充電コードをそっと引きぬいて、いつものように、獅子の脚部を侍らせる。

「前もって伝えた通り、フィールドはランダム。時間は無制限だよ」

 そう宣言する間にも、フィールグラムがフィールドの選定を開始する。
 光りだす舞台。壇上で、ニンフは優雅に獅子と交わる。
 スピンクス――獅子女となったエルピスは、その巨躯をほぐすように身震いをして、立ち上がった。

 何か一言声をかけようと思ったけれど、何か気の利いた一言が思い浮かぶわけではない。
 いつだって思ってる当たり前のそれも、今だけは言葉にするのが憚られる。

 これほど心が踊るのは、いつ以来だろうか。早緑ちゃんのときとは違う。
 もしかしたら初めてなのか、いやそうに違いない。勝つ以上を求めた事は、きっと今まで一度もなかった。
 だから、今はただ全力でいよう。
 この翼が溶け落ちるほどに、高く――。

/ステージ選択
12 ハイウェイ:夜
34 超高層ビル
56 闘技場
78 海岸
90 森林 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/08(月) 23:39:43.88 ID:zoYXBcJNo<> 森林
森林系ステージはいくつかバリエーションが存在するが、今回は見上げるような巨木の生い茂る深い森。
木々それ自体の間隔は広いが、代わりに40cm以上も根が隆起している部分があり、相対的に高低差の存在するステージ。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/09(火) 00:08:04.50 ID:6PxhTgnDO<> >>913
「そうですね、待つのも甲斐性です」

『こんなところで甲斐性見せてもな』

エルピスさんの軽口に多少緊張が解ける。
ルリの毒舌もいつも通りで、HMPのハートの強さが少し羨ましい。


『……森林、か。サクラとやりあったver.よりは私向きだな』

「ただ、エルピスさん向きでもあるね。
っていうか、フィールド相性じゃエルピスさんの方に軍配かな」

『あのHMPなら6割のフィールドでアドバンテージがとれるだろうよ。
 ――――さて、無駄口はここまでだ』

言って、ルリは木々の間を疾走する。
頭部は上下左右へ動き続け、サーモカメラへ情報を与える。
しかし木々の群のせいであまり遠くまでは見渡せず、先手を打つことは難しいだろう。常に気が抜けない。

「エルピスさんの本体はやっぱり高さからして狙いにくいからね。
どうにかしてショックラッシュぶち当てたいかな」

それには接近することが第一だが……

「落下攻撃ってのも無理だなー、このフィールドじゃ」

こうしている間にも互いの距離は縮んでいる筈だ。
早いところ案を立てなければ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/09(火) 22:46:24.40 ID:Inj1TCvyo<> >>915
 エルピスは森林を緩やかに駆け抜けていた。
 そこまで速度を出しているわけではなく、フィールドの確認をしながらの行軍である。

「森林、か」
『……どうかしらね。気付かれたらちょっとまずいわ』
「避けて通るのは無理そう?」
『見る限りでは無理ね』

 パンドラ・ウェディングは確かに万能だ。
 あらゆる場面において極力不利を被らないことを目指したHMPなわけだから当然である。 
 だが、パンドラは万能であっても全能ではない。覆しようのない差というものは存在する。
 色々な問題点を強引な手法で解決しているからこそ、歪みがそこかしこに生まれている。
 必然的に肥大化した機体サイズに端を発し、陸上でのブースターや飛行中のバリアの電力消費など、今まで露呈してきた弱点は数ある。
 だが、もっとも単純で大きな弱点が、この機体には存在する。

『根の絡み合ってる辺りは足場になりそうね。ホバー脚部だからこそ』
「届く?」
『――届くわ。多分クリーンヒット』

 露出した上半身だ。
 追加パーツの装甲は大型の中でも比較的頑丈で、通常のHMPではそんな脚部にしか近接攻撃が届かない。
 だが、上半身は一切の装甲が存在しない。
 それこそ素体パーツの強度以上の防御力は存在せず、特に頭部は銃弾の一つで破損するほどに脆弱だ。
 パンドラの接近戦の妙はその装甲に任せたクロスカウンターであり、そのためのいくつかの技術を彼女たちは保有している。
 だがそれは、相手と自分が同じ大地に立っていることを前提とするもの。
 ここのような――丁度自分の上半身と同じ高さに相手が来るような状況は、彼女にとって大きな不利をもたらす。
 打ち上げる形で狙われるからこそ、後退という選択肢が生まれ。
 見下ろす形で戦えるからこそ、前進という選択肢が強い。

「でも中距離戦は無理だ」
『弾の無駄ね。――引きずり降ろせるように頑張るわ』
「気付かないようなら押し潰して。気付くようなら強引に避けるから、よろしく」

 獅子の脚部がしなやかに駆動する。
 静かに、かつ力強く、エルピスは森の中を駆け抜けていく。
 接敵まで、そう遠くはない。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/10(水) 15:08:32.63 ID:dvGoe1zDO<> >>916
「ルリ!10時辺り!」

一瞬、ちらりとサーモカメラ・ウィンドウに赤が映ったのを目の端で捉える。
咄嗟に声を出せてよかった。危うく通り過ぎてしまうところだった。
しかしここで息は吐けない、まだ何も始まっていないのだから。

【後部スラスターを急停止、代わりに前部スラスターを始動させてブレーキとする。
 言われた方へ顔を向ければ、確かに、巨体が木々の間からちらりと見えた】

『この位置からだと殆ど正面衝突だな。
 どうする、ナオヒロ。
 迂回して横から行くか?』

進行方向には木の根によって一段高くなっているところがある。
あそこを足場に出来れば、エルピスさんの本体へ攻撃を通し易くなっている。
しかし、高さの分だけ発見もされやすい。
第一既に警戒されているだろう、それなりの手を考えている筈だ。
正面から突撃か、側面へ奇襲か。
前者はリスクもリターンも大きい。後者は……接近する以上はやはりリスクの方がやや大きいか。

「始まったばかりだけど、ちょっとチャレンジしてみようか」

手早くタブレットを操作し指示を作成、ルリへ送る。
内容は突撃。
ただし、あの地区大会の時の形で。
根で高さを補強しても飛び越えるのは苦しいかもしれないが、接近することに意義がある。
先手を取り、少しでも勝利を引き寄せる。
……まあ既にルリが発見されていて泳がされているのかもしれないけど。

『さて……かますぞ』

【スラスターを全開に、一気に加速。
 根に飛び乗った瞬間からアイゼンゼクトをぶちかまし、エルピスの動きを見つつ前後スラスターの併用で飛翔する算段だ。
 空中でも力ずくで軌道変更は可能、易々とカウンターを貰ってはやらんぞ】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/10(水) 22:39:45.72 ID:AcUyIeZ1o<> >>917
「来た」
『いくわよ』

 獅子の背からアームが伸び、長大なハルバードを取り出した。エルピスはそれを両手で掴む。
 注意深く相手の動きを見つつの前進。射撃戦など最初から考慮にも入れていないと言わんばかりだ。
 武装選択から一目瞭然、接近戦闘で圧[ピーーー]る。

(――まぁ、不利だけどね)

 相手の左腕は、当たれば確かにゲームを決めうる力がある。
 無論カスらせるだけで済ませる自信はあるが、少々荒っぽい賭けだ。

 エルピスは進行上の根を大きく飛び越えて、ルリの少し前へと着地する。
 その瞬間、ルリは根を足場に着地していた。当然アイゼンアクトが火を吹く。
 高さのアドバンテージは解消され、銃弾は純粋に素体の方を狙っている。――懐かしい。これには何度か苦しめられた。

「ま、そうだよね」

 けれど、それは織り込み済み。
 蘭花は鋭く指を走らせれば、なくなったはずの高低差が新たに生まれる。
 ただし今度はエルピスを下にする形で。
 真実彼女は獣のように身をうつ伏せて、弾丸をやり過ごした。

 それ
『射撃は、むかーしに克服済みよ』

 スウェービングの要領だ。大きく身を沈めて体幹をずらし、攻撃を避ける技術。 
 ただしそれを、人間などよりずっとしなやかで強靭な獣の四肢で行うのだ。キレも、深さも、尋常ではない。
 たとえそこで銃口を下げようが、エルピスは即座に体を上へ切り返す。
 普通の機体は横にしか避けられず、上に飛べば下には降りれない。だがエルピスは、接地しながらに『下へ降りれる』。
 弱点を狙う射撃型相手に編み出した、上下への切り返し――。

『来なさい、ルリ』

 それでも相手は前進してくる。故にエルピスは迎撃の姿勢を見せる。
 蘭花はじっと機をうかがっている。
 おそらくこの距離では、直立したエルピスを飛び越えるだけの高さは出ない。よくて上半身が上回るくらいだ。
 その高さを飛んでくるなら、なんとかなる。
 だが相手もバカではない。こちらが無策だとは考えまい。
 だから食いつかぬようなら――押し潰す。

「受けて立つよ」

 初っ端、一度目の勝負所――蘭花は口の端を釣り上げた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 00:19:43.98 ID:1+ecAZkVo<> シュバリエハート社系列のHMPショップ。
小さな扉にこれまた小さく名前が記され、中の見えない作りも相まってまるで隠れるように存在する店舗。
知る人ぞ知る、なんとも商売っ気に乏しい場所である。

希少なパーツが確保されていたり、精度の高い調整サービスが受けられたり、HMPショップとしての質は高い方なのだが
逆にいえば一部のマニア向けな場所であり、当然ながら客層は狭く、店内に人は少ない。

「ん、今日も相変わらずだねー。ここにいると落ち着く」
「この静謐さは得難いものですが、商業店舗としては大いに問題がありますね」

一定の常連客がいる一方、新規顧客を獲得する気など微塵も無く。
HMPショップにあるまじき静けさをカラーとしている有様。

秋物のワンピースの上に、なぜか白衣。店員なのか客なのか分からない格好をした少女の他、対戦スペースに人はいない。
HMPバトルをしたいなら、この少女と、その膝の上の女性型HMPしか相手はいないだろう。

「けどまあ、静かな環境で戦える場所って貴重だよ? 少しの足音にも気を使い、時にはマスターの靴音が相手の気を逸らす武器になったり
そんな戦いができるお店はそうそうないし、このままであって欲しいなー」
「慧理も良い年なのですから、静けさをもっと純粋に楽しめてもいいと思うのですが」

そんな店にいる以上、やっぱり通常の思考回路の持ち主ではないようで。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 00:41:40.35 ID:bproOLFi0<> >>919

 行動範囲の近くに、HMPショップがあると聞いた。
 一つ上の、と冠が付いた店のようだから、さぞ繁盛しているのだろうと考えて散策すること35分。

「ここ、だったのか」

 個人経営かと見紛うほど小さな店構えをそう判定するには、結構な時間がかかってしまった。
 本当にやっているんですかねぇ、と声が耳元で響く。
 入れば分かるさ……答えると、非自動ドアを叩いて、その――少女は、未知の世界に足を踏み入れた。

 その途端、目の前に広がる隠れ家。
 扉が閉まる音すらも、何かの啓示のように意味深に感じられる静けさ。

「これ、やってるって事で良いんだよな」
『確かに開店はしているようで。でも、営業していると言うのかしら?』
「ああ……そう考えたくなる気持ちは結構わかるが」

 小さな頭から触角のように伸びた二本の髪が、ハテナマークを宙に引く。
 あれか、これはいわゆる職人の店という奴なのか?
 店員らしき人が見えないのは、奥でHMPの修理やハイクリアランスパーツを扱う精密な作業をしているからだろうか。

 それを踏まえて、目の前にはHMPを抱えた少女。
 私はHMPを背後に浮翌遊させた少女。

「(最悪、暇はしない)」

 どうだろう。相棒の不安はもっともだが、このままでもできる事はある。

「やぁ、早速だけどファイトしないか? ……そこの、君だが」

 相手の実年齢などは特に意識せず、彼女は白衣の少女?に挑戦した。
 若々しい白皙が、戦いの予感ににんまりと綻ぶ。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 01:05:27.44 ID:1+ecAZkVo<> >>920

「あら、珍しいですわね。今日は特にイベントもありませんのに」
「新しい人が来るのはいいことだよ。一応ここもお店なわけだし」

振り返ることもせずに語るHMPと、視線だけで来客者を追う少女と。
妙に警戒心の強い反応を見せたのは最初の一瞬だけ。

「はい。やりましょう」

少女は屈託の無い笑顔で、申し出を受けた。
きらきらした眼で見つめる先は、相手ではなくその後ろのHMP。

「ARIKAですね。一応、ちょっとばらして変形機構を調べてみたことはあるけど、戦うのは始めて。楽しみだね、クロリス」
「私でよろしいのかしら? あまり初対面の相手に適した戦い方ではありませんが」
「大丈夫。こわくないから、きっとエクリプスの人とかエルピスのお姉さんとかと同じタイプの人種です」

慣れた手付きでフィールグラムを操作し、設定を始めている。
多店舗に比べて妙にステージ数が多いあたりも、この店舗の特徴の一つ。

「あ、えと、ステージはランダムでいいですか?」

一旦口籠るのも含めて、何度も繰り返された一連の言葉。
年齢差などまるで考えることもなく、常に対等に。

弱気なマスターに代わって、そのHMPが相手の少女を睨みつけた。
敵意というより、値踏みするように。全力でいって大丈夫か、と。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 01:29:58.83 ID:bproOLFi0<> >>921

「この変形、凄いよな。手に取るまで絶対に髪の毛に絡むって思ってたんだ」
『ヒィ、バラしたんですか……百花様には出来そうにもないもので、安心ですねぇ』
「できるが? HMP研で教えてもらったんだ」
『ゲッ、いつの間に』

 百花(ももか)。
 そんな名前で呼ばれた少女は、ファイターとしてはまだ若葉マークの付くレベルだ。
 二人の会話からは、伸びしろはあるが未熟な使い手の姿が伺える。

「なんだ、そのエクスカイザーとかエルヴィスとか言うのは……。
 ン、ステージの事ならそれで良い。どこが有利かも分からないしな」

 よって彼女は、著名なHMPの名前や、その存在で作り手をアイデンティファイすることに慣れていない。
 今度同輩にでも聞いてみるか、と思っていると、HMPの視線に気づいて。
 
 強く固めた拳で、反対の掌を叩く。
 パン、と小気味よい音がすると同時、右腕でハンドヘルドDVNOの液晶カバーが開き。
 “初心者”の少女は、一層笑みを大きくした。
 下らん手心など不要だと告げるが如く、不敵に。

「そうそう、私は賀東 百花。こいつはフランシスカだ。
 望月学園中学って、知っているかな。そこの女子HMP研にいる。よろしくな」

『……逃げるなら今のうちですよぉ、フッフッフ』
「逃がすな。私は戦いたい」
『は、はい。分かってますよっと』

 もし学生プレイヤー事情に詳しいなら、望月学園中学の名前は聞いた事があるだろう。
 数年前から強豪として知られているので、期待感を擽ってしまうかもしれない。

 だが――少し注意深ければ、こう言う事にも気づく筈だ。
 『女子HMP研なるものが表舞台に立った時は、一度もない』……と。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 02:04:14.82 ID:1+ecAZkVo<> >>922

「ですよね。BODYの造形が本当に良く出てきていて、通常時と戦闘機とで風を受ける向きが変わっても、両方で風圧を上手く受け流す構造!
可変機の悩みどころを内部構造ではなく外部装甲だけで解決したあたり、感動的でした」

少女漫画チックに輝いた眼で、そのまましばらくマニアックな感想を述べ続ける。
配電の細かな気遣い、ガトリングのエネルギー効率の良さ、ぎりぎりなラインの利率。
狭く深い知識が小声で途切れることなく無限連射。店内の静けさの中ゆえ、聞き取るのに不便は無いが、だからこそ無視し辛い。

一方で、クロリスと呼ばれたHMPも、強気に出た相手マスターを見て嬉しそうに笑っていた。
BODYから続く薄布の端をつまんで、簡単に礼。遊び無しに初めからフルスロットルにいくことの宣言。
邪気の無い笑みは、突き詰めればケモノのもの。肉食獣がもっとも優雅に笑うのは、爪を立てる一瞬だ。

「早緑、です。すいません。ものの名前を覚えるのは苦手な方なので、次会った時名前を忘れちゃってても許してください」

専門用語を連発していた本人が言ってもまったく説得力が無いが、嘘ではない。
ようは、ただのHMP狂い。この店の常連なんて、大半がHMPに人生捧げっちゃったような馬鹿なのだ。
望月学園、と聞いても場所も偏差値も知らないが、「何年前のHMP大会で何位」とかそんな情報だけ出てくる変人なのだ。

「女子HMP研、ですか。ごめんなさい。やっぱり単語覚えるのが苦手で……初めて耳にしました」
「肩書など関係ありませんわ。慧理さんのおっしゃったとおり、あれは此方側に近いようですから」

かくして、舞台は整う。

「さあ、始めましょうか」

この隠れ潜むHMPショップの静けさは、いつだって嵐の前のもの。

0 天候:豪雨→再選択
1 森林
2 月面都市
3 市街戦
4 砂浜海岸
5 サッカーコロシアム
6 HMPショップ
7 湿地草原
8 湖畔
9 岩礁海岸 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 02:10:00.88 ID:1+ecAZkVo<> 月面都市

基本的には市街戦と同じつくり。巨大なドームが都市を覆ってはいるが、十二分に高いためにフライメック同士の戦いでもない限り邪魔になる心配は無い。
ただ一つ違うのは、重力が弱いという一点。全てのHMPが通常とは異なる感覚での戦闘を強いられる。
特に高機動機体は勢い余って壁に激突して自滅なんてこともわりと良くある酷いステージ。シュバリエハートオリジナル。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 02:40:18.04 ID:bproOLFi0<> >>923

「そうだ。事実、ARIKAは両形態において効率の差はあれど、推力のみならず揚力をも活用して飛んでいる
 加えてヘルメットの赤外線センサーと高感度アンテナだけがファイターモード時に露出する構造!
 滑走車輪も一応だが存在し、完全変形に拘るリグナス社の心意気が見て取れるではないか!」

 早緑のお経のような言葉をトレースするように、しかし音量はずぅっと大きく。
 企業宣伝までやってのけた百花は、あははは、と笑いながら頭を掻いた。 

「……というのは、半分以上友達の受け売りだがな。言ってることは良く分かる
 こいつ、すごく良い機体なんだよな」

 どうやら彼女の知人の一人以上は、早緑とだいたい同じ民族系統に属するようだ。

『エヘヘヘッ、んもう、分かってるじゃあないですか百花様ぁ!』
「ああ。お前は、素晴らしいよ」

 強かに言い聞かせる言葉は、パートナーの不安定で満ち干きの激しい精神を支えるため。
 こうやって繋がりを確認するからこそ、フランシスカは私の無茶にどこまでも従ってくれる。
 餌で釣ってるから最善とは言えないし……何だか、変な自信を付けてしまったが。

「……月面都市? はじめて見るぞ
 現実通りなら、あそこの重力ってここの1/6だったか?」
『少ないエネルギーでたっぷり飛べますね』
「ぶつからなければ、な」

「さて……そっちも心配してくれるな。私個人を、忘れられないようなバトルにしてやるから
 勿論、こいつの事もだが!」

 小さな胸を目一杯張って、漆黒の瞳に覇気が爆ぜる。
 重ねた手の上にフランシスカを呼び、更にそれをフィールグラムの台上に降ろした。

「ゆくぞフランシスカ……出動(ロールアウト)!」

 調子に乗りやすいパートナーは、さっきの言葉でだいぶ気分がノってきているようだ。
 それがいい。お互いの心境が近いほうが、当然ながら同調率は上がる。

『へいっ! 迎え撃っちゃいますから、よぉーく見てて下さいよ!
 さーさあ、かかってきやがれってんです!!』

 背景に暗闇、星、20世紀の名言そのままに青い地球。
 形作られる果てしなく蒼白な月の大地。
 全高30cmの戦乙女(バルキリー)は、ふわりとその一点に降り立った。

 ――――バトル、スタート。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/11(木) 21:18:49.18 ID:FzqQfcxDO<> >>918
【刹那、敵が消えたかと錯覚する。
 速度重視の私の眼は即座にエルピスを捕捉し直すが、体の方はそうもいかない。
 銃口で追うのは愚策、接近されたことで飛び越えも出来そうにない、停止も不可能。
 ならば――――】

『来いと言われてほいほい行くほど軽い女ではないぞ?』

【後部スラスターを停止し、前部スラスターを全開に。
 体が浮き上がると同時に前部スラスターはそのままに、後部スラスターを断続的に解放する】

以前のとあるファイトから、実戦で使えるように練習していた技だ。
前進の勢いからのバック宙は高さは出ないが回転が速く隙が少ない。
これで過剰になった速度を殺し、距離もとることが出来るはず。

「あの斧?槍?……ハルバードか。ちょっと辛いね。
接近するには苦労させられるよなぁ」

一応、ショックラッシュは準備するよう指示を出す。

「空振りとかして欲しいところだけど……」

安いフェイントではこちらが逆に隙を晒すだけ。
……や、ちょっと練った程度でも駄目だ、そういう相手とファイトしているのだ。
ならばどうすればいいか。
答えは出ていた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 21:58:39.31 ID:1+ecAZkVo<> >>925

ステージに立つまでの感覚からして違う。
水の中に沈み込んでいくよう。それでいて空気は軽い。

この店舗に通い慣れた慧理とクロリスですら、まだ数回しか経験したことの無いレアステージ、あるいは地雷。

「珍しいものを引きましたね。開幕一刀で終わらせるのが惜しいくらいです」
「ううん、まずは動きを慣らしていこう」
「慧理さんがそう言うのでしたら」

見た目はありふれた市街ステージとそう変わりない。1/6の重力下、通常より無理をした設計が可能になり、少々奇抜なデザインの建築物が見受けられる程度。
四角いビル群がもっとも効率的な形状であることに変わりは無く、したがって街の大部分は見慣れた作りだ。

「では、ひとまずお手並み拝見といきましょうか」

まずは軽く地面を蹴って、建物と建物の隙間へと潜り込む。
想像以上に高く跳び上がったことにクロリス自身少し驚きつつ、左右の壁を蹴り続けて細い隙間を進んでいく。
初めはゆっくりと、そして段々と速度を増しながら、常に狭い場所を選択し、針の穴を通すようにして飛びぬけていく。

重力が小さい分、跳び上がる動きは大きくなるが、その分落下にかかる時間は長くなる。
ブースターの類をもたず、軽さと脚力で高速機動を実現するクロリスにとって、滞空時間が延長されるのは隙が大きくなるのと同義。下手に空中には出れない。
だから、こういった狭い場所などを選んで壁蹴りで空に拘束される時間を極力削る。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/11(木) 21:59:25.25 ID:8bb60Lj7o<> >>926
「つれないなぁ。女の誘いを断るなんて」
『草食系ってやつかしらね』

 ひらりと宙で切り返したルリを見て、蘭花は内心で口笛を吹き鳴らす。
 ヒュームボットは基本的に、速度を出せば出すほど空中での方向転換が苦手だ。だが相手はホバー型とはいえ、あの速度を綺麗に相殺して見せた。
 侮っていたわけではない。これは純粋にこちらの想定外だっただけ。
 いや、それを侮っていたと言うのだろうか。
 蘭花はちろりと舌なめずりをして、一層笑みを深める。

 ルリが切り返した一瞬後、ずん、と爪が地を掴んだ。

『まぁでも、こちとら肉食系女子だからね』

 獅子の体が馬力を生み、それがなめらかに大地へ伝達される。
 腰、膝、爪へと動いていくエネルギーの奔流。モーターは全力で回転し、機体はその力で持って前へ飛ぶ。
 爆発を思わせる重い踏み込みが初速を生み出し、起動したブースターが後押しする。
 噴射したのはほんの一秒にも満たない。だがそれで、機体は十分な速度を得た。

『来ないなら、こっちから行くわ』

 その間、エルピスはハルバードを片手で構え直す。そして後背へと手を回し、新たに武器を掴みとった。
 30cm近くある長大なハルバードをもう一つだ。それを片手で扱える程度には、エルピスの本体にも馬力があるのだ。
 ――ルリの左手を警戒したのか、彼女は柄を長く持った。
 弓を引き絞るような形で、右の斧槍を後ろへタメる。
 初手は突進からの突き込みだ。当たればでかく、隙は少ない。槍は突進でこそ輝くものだ。
 一応左の斧槍はフリーにしておく。外した後追撃するかは状況次第、ショックラッシュを防ぐために使うこともあるだろう。

 エルピスの突進を見つつ、蘭花は慎重に機を伺っていた。
 回避も勿論だが、いつでもそれができるようにだ。
 スピンクスの形状を生かした構え。四足歩行とその高さを前面に押し立てた一撃は、あの左手ごと押し潰すには最適だ。
 今日は全力を出し切ると決めている。手の内を全てさらけ出すつもりで、全力で彼を叩きのめす。

「受け止めてね、ナオヒロくん?」

 犬歯をむき出しにして、蘭花は笑っていた。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/10/11(木) 22:49:19.43 ID:FzqQfcxDO<> >>928
『誰彼誘うような女に釣られるものか』

【ショックラッシュが徐々にチャージされていくのを感じながらの着地。
 ナオヒロからの指示には『またか』とも『いつも通りだな』とも返そうかと思った。
 しかし目の前に半人半獣が躍り出てきて、軽口を叩く余裕は消え失せる】

2本のハルバード。
正直予想外も良いところで、こちらの戦術を思いっ切りぶち壊しにしてくれた。
大振りの武器が2つ。
通常のHMPならばそこまで恐れるものではないが、目の前のHMPは普通でない。
下半身は安定感、柔軟性、パワー、どれも高い水準にあり、上半身を補強する。
両腕の武器に振り回されることがないとなると先程以上に攻め倦ねることになる。
武器がマルチウェポンであるハルバードだということもそれに拍車をかけていた。

「左右あるうちの右の突き。
なら右に逃げる……ってのも出来ない。
突きの構えだとしても、薙払いへの転換も出来るし。
斧が付いてるからダメージは十分食らうし。
2本目かぁ……、本当困るな」


「はい、受け止めますよ。ファイトでなければ」

【ランカの軽口に返す余裕があるのかナオヒロ。
 作戦はまだ来ていない。
 エルピスとの距離はもう殆ど無い、こっちで勝手に――――】

『遅い!』

【やっと来た。
 しかし、内容はとんでも無いもの】

『前々から思っていたから今言うが!前向きと無謀は違うからな!』

【作戦内容は、
 「槍の穂先と動きを連動。止まる瞬間にアイゼンゼクトを発砲」
 と言うものだ。
 つまり、槍の突きにあわせて後退、腕が伸びきった瞬間に合わせて発砲、と。
 槍の柄を長く持っているからそれにあわせて下がれば他の攻撃も当たらない
 また、柄が長い分引き戻しには時間がかかり隙になる。
 言いたいことは分かるが、無茶をさせてくれる】

『〜〜!……来いエルピス!』

【前部スラスターを爆発させながら目の前の獣に啖呵を切る。
 もう後戻りは出来まい。
 アイゼンゼクトの補正も出来ていないが、それくらいは見逃せよ、ナオヒロ】 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 23:04:49.69 ID:bproOLFi0<> >>927

 空を見ようとしなければ、空を掴もうとしなければ、拍子抜けするほど普通の街並みだった。
 フィールド形成途中は白い岩の色で覆われていた足元も、いつの間にか平坦な人工土壌に変わっている。

『閉月美人の私が月の上に立ってるなんてねぇ
 本物じゃありませんから感動もそこそこ、ってとこですが!』

「でも凄いじゃないか。現実の月には、今も大きなうさぎが描かれてるだけなんだからな。
 クドリャフカが大気圏を飛び出して以来、地球の生命体はまだ一つの天体も寝床にできていないんだぞ!」

 そう考えると、この幻想をもう少し噛み締めてもいたいが。

「……無駄話でごめん。さあ、バトろうか」

 やってやりましょう! そう威勢よく声を上げて、フランは飛び上がり、姿を歪めた。
 フライトモードへの変形は1秒以内に完結し、よほどの近距離で無ければ隙にはならない。
 下翼エンジンと脚部ノズルの四発が、控えめに青い火を噴く。
 足と比べれば、翼の勝手はまだマシだ。

 高性能レーダーの導きの内にクロリスの位置を捉えたフランは、直ちに建造物の密集地帯へ向かった。
 誘いこまれたつもりは無い。
 敵の決定打と呼べそうな武装は一種類。若葉マークの少女でさえ知ってるほど極端な武装ただ一つ。
 攻撃のタイミングを相手に選ばせてしまうよりは、まず切り込んでいく。

『ほれ! ほれ! ほれ! ほれ! ――ほーれっ!!』

 噴射炎が光の柱の如く太くなったのが、そのしるしだった。急加速。
 路地から追いやるように、砲火の開始。
 上空を縦に横に飛翔しながら、レーザーガトリングと翼部マイクロミサイルを呵責なく浴びせかけていく。
 クロリスと比べれば自由に高さを選べるのが、熟練者相手にあえてフライメックの常套手段に訴えることを可能とする。

 旋回のタイミングをつかめば切り返して回避は十分にできる弾幕の厚さ。
 だが追いすがることを牽制するように、機体尾部でH字様の旋回ビーム砲塔が睨む。
 さらに頼みの綱の建造物は、少しずつ破壊されていくだろう。

 攻撃は強引に潰されなければ約5秒、先の丸まった十字を描く軌道で続いた。
 この時点で、フランに残された電力は85%程度。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/11(木) 23:28:59.91 ID:8bb60Lj7o<> >>929
『あら、でも本気よ?』

 エルピスは微笑んだ。獣を思わせる微笑みだ。
 獅子の体は着地し、また大きく伸び上がろうと力を貯める。
 形状からして、エルピスの腰は回らない。だからその分を別の箇所で補うしかない。
 初めは脚部から、膝を伸ばし、重心を前へ、右肩を後ろから突き出し、折りたたんだ肩を開き、肘を開き、手首を伸ばし、その一連の動作にエネルギーを乗せる。
 砲撃にも似た重い一撃が解き放たれる。
 ――が、それが突き刺さることはなかった。

『っ――!』

 ルリは大きく後ろへ後退し、槍を躱してのけた。
 切っ先がほんの僅かに届いたのみ。追撃が届かない間合い――アイゼンアクトは、はっきりとこちらを照準している。
 完全なカウンター。後の先を取られたエルピスでは、それに対応することは出来ない。

「――やるね」

 だが、それを補うのがファイターだ。
 それが外れた瞬間すでに、蘭花は入力を終えていた。

 左右への回避は間に合わない。上体は硬直中。これでは切る札はひとつしかない。
 迷いはない。失う物は多いが、しかしそれを躊躇うことに意味は無かった。
 伸び上がった体が更に浮き上がり、前足が大きく振り上げられる。
 嘶くように天高く爪を振り上げるその姿は、壁画に描かれる獅子に酷似していた。
 獅子の体が上半身を持ち上げたのだ。その高さは、ゆうに60cmを超えている。
 ――まるで本体を隠すように。

 エルピスの格闘戦を支えるのは、大きく上へと爪を振りかぶるというだけの動作だ。
 これがどうして有効なのである。
 中近距離の相手では、追加パーツの影に隠れて上体は狙えない。
 振り下ろす爪の一撃は大型でさえ押し潰す威力があり、回避されても今度は本体が一撃を繰り出す。
 騎兵が歩兵を踏み潰すのと同じだ。その巨体を存分に生かしたスタンピング。
 それを防御に使わせられたのは、彼女にとって大きな痛手であった。

【損傷:追加外装三パーセント】
【損傷:脚部二パーセント】

 銃弾が装甲にめり込む。だが致命傷には程遠い。
 アイゼンアクトはもともと威力に優れた武器でもないのだ、ダメージなどクリーンヒットさせねば望めまい。
 その一瞬の間に、エルピスは武装を変更する。アームがハルバードを奪いとって、新たな武器を握らせる。
 短機関銃の二丁持ちだ。
 相手を追い払うための弾幕である。
 片手と両手、どちらのほうが弾が多いかは自明だろう。
 エルピスは不安定な態勢から銃弾をばら撒きはじめた。狙いは甘いが、積極的に当てるつもりもない。

(やられたなぁ……)

 蘭花はそれを冷静に見ている。

(もう一度……通じるかどうか。ショックラッシュ相手に博打はまずいなぁ。ナンセンスだね、うん)

 スウェービングとスタンピング、こちらは手札を二枚切った。
 それでダメージが取れていないのは少々困った事態である。
 しかも相手は状態異常攻撃持ちだ。どちらかと言えば装甲タイプのエルピスには、もう射撃戦しか残っていない。

「一本取られちゃったな――」

 蘭花は小さく息をついて、意識をはっきり切り替えた。
 侮っていた部分があったのだ、きっと。彼の言葉のせいかは知らないが。だからもう、それはやめにしよう。
 弱くなどない。彼は強い。だから、こっちももっともっと全力を出さねばならない。

 楽しげに笑う蘭花だったが、その目は全く笑っていなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/11(木) 23:30:48.66 ID:1+ecAZkVo<> >>930

「閉月羞花。花の女神たる私は、しばし恥じらいを持って逃げ回るとしましょうか」

純粋な速度だけで上空から襲い来る兵器を避ける。
緩急をつけた加速で弾幕との境界線を走り続け、ぎりぎりのところで火器より少し前を行く。

とはいえ、ジグザグに壁と壁の間を往復するクロリスと、遮蔽物の無い上空を直線で飛べるフランシスカでは速さの差は必然。
加えてまだクロリスの動きは手探りの段階、トップスピードに至っていない。

だから弾幕が途切れるよりも、弾幕に捕まる方が早かった。
弾幕の渦中、前後左右の全方向から迫る火器の雨。

「なかなか、楽しめそうですわ」

壁を蹴っての方向転換。ARMパーツズヴェルドのバリアを起動。
点における絶対防御を旨とする力場は、十分な速度があれば武器としても機能する。

横の高層ビルの窓をぶち破り、中へと避難。
続くミサイルが建物の上層部を壊していくより早く、向かいの窓から飛び出す。

僅かに稼いだ時間を使い、下へ。この月面ステージで脚力を活かすためには、上へ跳ぶ動きの方が有利だ。
平時とは違う軌道はそれだけで相手に計算を狂わせるし、何より一瞬で上空への距離を詰める択は魅力的。

「さあ、鬼さんこちら」

未だ反撃の手は無く、 バッテリーを極力温存したままクロリスは逃げに専念している。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 00:11:02.25 ID:Q6zNLKUh0<> >>932

『月に叢雲……花に風ですよ?
 ビルの中で雨宿りはさせませんがねぇ』

 半壊したビル屋上に、ロボットモードに変形しながら最低限の自由落下時間で着地。
 悪党じみた紅いアイセンサーが、油断なく地上で動くクロリスを睥睨する。
 左腕に固定されたシールドから飛び出す、サディスティックな単分子カッター。
 獲物を前に舌なめずりは、優勢(と思い込んでいる)時のフランの基本行動パターンだ。

(低重力下での跳躍力を活かそうなど、誰でも考えることだろう)

 互いに態とすれ違い、心の臓に触れ合えない所を、DVNOからじっと眺める百花。

(だがあのHMPは速すぎる。現に弾幕を凌がれてるし、バリアもある)
(高さを取れているのは結構だが、問題はその後だな。ミサイルが切れたら、蓋もできなくなる)

 跳躍には落下が伴うとはいえ、相手は刹那の瞬発を活かす格闘型。
 もし自分が得意なVR格闘ゲームなら、小足を見て迎撃、みたいな無理も利かせられるのだが。

「フラン、怖くないのか?」
『……誰が怖いもんですか。相手が小さく見えるってことは、私が勝つってことですよ!』
「そうかぁ。なら、後は任せてもいいんだな」
『い、いや……それはちょっとねぇ、職務放棄ですわよ百花様っ?』

 この子に、アドリブ全開のバトルはまだ早いのだ。
 デビュー前から、傷だらけだったこいつには。
 
『ほっほれっ、来なさいよ臆病者!!』

 やけくそ気味にフランが叫ぶ。銃身が唸る。
 クロリスの動向をなぞるように、ビームガトリングが放たれ続けるだろう。
 時折高い建物に光線が流れて、不規則にガラスや瓦礫が落っこちてくる。

『……あら』

 長さは殆ど13秒。正確にはもっと空転が続いていたが、エネルギー供給を一時的にDVNO側で切ったのだ。
 
 弾切れと誤認させられればいいが、仕様は把握されているはず。
 これは、残り電力を3/4以下にしないためのファイター側からの調整という面が強い。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/12(金) 00:26:33.46 ID:2lNnC2/DO<> >>931
「――――っ……一息も吐いてなんかいられないな」

ルリはよくやった。
ギリギリのタイミングで出した無茶な指示を完遂したのだ。
CPUには指示の先を補完できる程の容量は無かっただろう、なのに俺は反撃に対してフォロー出来なかった。

《胴体損傷:損傷率9%》
《左腕損傷:損傷率2%》
《脚部損傷:損傷率5%》

弾幕の一部と槍のダメージ、合わせても僅かなものだが、それが後々大きな差になることは明白だ。

=ルリが突き放されたことで生まれた距離。それを挟んで睨み合う2機。 蘭花に対してナオヒロも内心焦り、じれていた。
 先程のカウンターを決められず、エルピスが距離を変えてきたこと。
 バック宙回避という曲芸を早々に見せてしまったこと。
 ルリは2つの武装と並みの防御力しか有していないこと。
 諸々がナオヒロにプレッシャーをかけていた。=

【ナオヒロからの指示が来た。
 不規則に減速と加速を繰り返しながらの蛇行前進だ。
 引いたまま闘いはやはりジリ貧、前に出るしか無いか。
 しかしこの指示……私が補完しろと言うことだろうか】

=指示のまま前に出るルリ。
 ルリもあまり余裕がなかった。
 だから指示をそのまま行ってしまった。
 焦りは思考を浅くする。=

ショックラッシュはフルチャージに近いはずだ。
本体なら掠るだけ、追加装備から触れること。
これを目標に……目標?

「間違っ……!」

=気付いたときには、もう遅い= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 00:51:28.35 ID:EcFO2ZUao<> >>933

「成功した臆病者を堅実派を呼び慣わすものです。臆病は特徴であって欠点ではありませんよ?」
「クロリスは臆病でも堅実でもないと思います」

月面の特殊環境に慣れ始め、クロリスの疾走はなお早さを増していく。
壁を地面同様に扱い、自由自在に飛び跳ねる姿は月の兎も見惚れるほど。

ぎりぎりのところでの回避は、限界が近いのではなく、無駄を省く余裕の表れ。
避け続けたところで敵の攻撃が途絶える。

(一応ARIKAの構造は把握している。砲身冷却のタイミングはもう少しあとだった気がするけど……。改造されている可能性もありますね。
僅かにビーム攻撃が鋭い気がしますが、低重力ゆえに地表の空気がいくらか薄く、空気レンズでの拡散分が少ない、って線も。
まだステージが把握しきれてないのもあって判別がつかない。でも誘いだとしても、攻めに転じるきっかけは欲しかったところ)

「まあ、受け手にまわるばっかりは好きじゃないよね?」
「こうみえて私は尽くすタイプですわよ?」
「じゃあ、これまでの分、しっかり攻め尽くしてあげて」

戦闘機形態をやめ、インファイトを受けてくれるなら断る道理は無い。

地面に痕が残るほどのジャンプから、空中を落ちてくる瓦礫を足場にしての二段跳躍。
この都市では、重力を振り払ってなお御釣りがくる。投擲用に石片を拾いつつ、空へと飛び上がった。

そのままフランシスカに向かって跳びかかり、刃のついた足で蹴りかかる。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 01:39:13.34 ID:Q6zNLKUh0<> >>935

「なるほど……」

 月の重力のもとでは、瓦礫や窓ガラスの落下すら遅くなる。
 こういう細かい事情を把握していくことが、HMP使いとしても、人としても、成長の近道なのだろう。
 細部を研ぎ澄ました上で、豪快さが許される。

「じゃあ、今度は応用編だな。いいかねフラン?」

 声より早くDVNOから飛んだ指導の下に、フランは後方へ跳躍した。
 だが、それだけでは一本の刃となって襲い掛かるクロリスを押し留めるには些か不足。

 しっかりと冷却された銃身を握り締め、さっきまで居た所のまわりを乱れ撃つ。
 ふわりと巻き上がる粗い破片の質量と、光弾による二重の壁。
 それは、空を切る蹴りから直結して使える足場を相手に与える事にもなるが。

 更にミサイルを撃ちこむ事で、爆散しながら尚細かく砕けていく瓦礫。
 攻撃範囲も威力も低く、スピードだけが取り柄の武器だが、ばらける弾道が却って鬱陶しい。

『まだ、まだ……』

 爆炎の向こうで、飛び込むガトリングの光と音は絶えることなく。もうすぐ20秒に達しようとしていた。
 反対に掻き消されていくのは、フランの内部機構がガチャガチャと立てる音。

 ――変形。

 射撃が止む直前、戦闘機と化した彼女がビルの向こう側に――否。
 レーダー上のクロリスめがけて、猛スピードで突っ込んでいった。
 由緒正しき変形ロボットの必殺技、ビークルモードでの特攻だ。

 回避できなければ、下手な砲撃など話にならない重さと速さに出遭う未来が待っている。致命傷もあり得ないとは言えない。
 そうでなければ、ヒット&アウェイを1セット終えた二人は次の一手を巡らせるだろう。
 弾くか、避けるか、切るか。何にせよ、無様に受けるのも逃がすのも本意ではあるまい。

/すいません、途中で一度意識を失ってました
/今日のところはこれで許してください…… <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 01:43:24.87 ID:Q6zNLKUh0<> /ああ、まだ冷却が完全じゃないので20秒は撃てませんし、そんだけ撃ってたら確実に避けられてますね
/もう撃てなくなる直前で飛び出した、ということで手打ちをお願いします <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/12(金) 22:28:08.38 ID:EMlmNQTHo<> >>934
 エルピスは短機関銃を格納すると、両手にライフルを取り出した。
 片方は飛行形態の主砲となる、高出力レーザーライフル。
 もう片方は射程と命中性に優れた単発式の実弾ライフル。
 短機関銃は中近距離で扱うことを想定した武器で、集弾性が悪くリロード時間も長い。
 無駄弾を撃つつもりはない。射線を通すのにも苦労するステージなのだから、当てられる時に確実に当てるほうが都合がいい。

 蘭花はそれでも機を伺っている。
 こういうステージで、こういう性能差だから、必ずどちらかがどこかで意表を突かねば戦況は動かない。
 この距離ならば、タイミングを計ればルリも接近は不可能ではない。
 しかしこれ以上距離を離せば射撃は届かず、最悪相手を見失う事態になりかねない。
 追いつかれるぎりぎりのラインを後退しつつ、時折射線が通るたびに銃弾を送り込む。
 だが相手もさるもの、不規則な加減速に照準が定まらない。
 故に膠着。この状態を続ければ、どちらかのバッテリーが尽きて終わるだろう。

【電力残量:八十九パーセント】

 一瞬とはいえ、先程ブースターを全開にした反動が出ている。
 燃費をバッテリー容量で補っているわけだから、このままゆっくりと戦い続ければ激しい消費はせずに済む。
 それでも消費率はあちらとトントン、おそらくこちらがタッチの差でエネルギーを切らす。
 なにより、この戦いをバッテリー切れなんて終わりにはしたくない。

 その時、蘭花の目は確かに見出した。
 相手の焦りを。そこから生まれた綻びを。

「エルピス」

 声をかける一瞬、既に機体は前へ出ている。
 四肢が地を食むように機体を押しとどめ、ブースターと合わせて巨躯を急激に反転させた。
 全開にされるブースター、飛行に適さぬ形で強引に得る最高速度。代償として、エネルギーもまた急激に減少した。

「ぶっ壊せ」

【電力残量:七十パーセント】

 一瞬で五分の一を食い散らかして、獅子は宙を飛ぶ。
 異常に長いストライド、滑空とさえ呼べるほどの一歩の長さ。
 獅子が地に足をつけたのは、愚かにも思い違いをした子羊の前。

 ゲームの趨勢を期する力があれど。
 その左手は決して、必殺ではない。

『一撃必殺ってのを教えてあげるわ……!』

 縮こまる肢体。
 地を蹴った前足は後ろへ、空を切る後ろ足は前へ。巨大な胴の中でエネルギーが凝縮され、後ろ足がついに大地に爪を立てる。
 寸分の狂いなく伝達される力のうねり。伸び上がるようにして前へ出る体。引いた足は振り出され、そこには凶悪な爪がある。後ろ足から腰へ伝わり、胴を介して前足へ。
 まるで爆発したかのよう。
 その巨体の強靭な前足が、ルリのボディへと振りぬかれる――! <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/12(金) 23:06:24.18 ID:EcFO2ZUao<> >>936

レーザーガトリングとミサイル弾だけで二重。さらに瓦礫砂礫を加えた弾幕に隙間など無い。
得意の機動力で細かな隙間を縫う回避は通用しない。加えて方向転換の効かない空中。回避のしようがない。
装甲を捨てて速度特化を選んだクロリスの場合、下手をすればこれだけで機能停止しかねない。

「相性差だけではないみたいですね。良い判断です」
「オールレンジ対応、超高速機。加えて応用も効く。クロリスとは別のアプローチで、同じものを目指してる感じかー。ライバルだね」
「ご冗談を。好敵手とは実力の拮抗した相手を指す言葉でしょう?」

クロリスが最も苦手とする、広く弱い弾幕攻撃。それに怯えることなく、クロリスはできないはずの回避行動に移った。

拾っておいた石片を上空へ投げ、その反作用で着地を早める。
落ち込む勢いでそのまま足を曲げ、次のジャンプへ向けて力を再利用。
垂直に上空へ逃げることで弾幕を大きく回避する。

しかし砕け散った瓦礫同士がぶつかって無作為に散った二次弾幕の範囲は存外に広い。
かわし切れずに体の節々に小さなダメージが蓄積する。

空中に逃れた直後、間髪入れずに来る相手の突撃。途絶えることの無い連撃がクロリスを追い詰める。

「攻める時は、攻め尽くす。そう宣言しましたわよね?」

だが、詰めに向かって進んでいるのはクロリスも同じ。
石片を投げた場所から垂直に飛べた、その位置に石片があるのは自明の理。

真っ直ぐに向かってくるフランシスカに、石片を蹴りつける。
フランシスカの速度の分だけ、ぶつかった時の衝撃も大きくなるだろう。

「いきますわよ」
「分かってる! 私が合わせるから、クロリスのタイミングで」

だがその狙い澄ました蹴りによるカウンターすら、次の攻撃のための布石にすぎない。
真正面から力で押し切るなら、衝撃で一瞬速度が落ちるはず。回避行動を取ればやはりスピードは一瞬落ちる。

彼女の代名詞、鑑賞用呼ばわりされることも多い高消費ハイリスク光学兵器、クラウソラス。
両手でクラウソラスを握り、バリア展開と同時に出力をフルに。相手のスピードが落ちる瞬間を狙って、大きく横に薙ぐ。
重さを持たない光の刃は、重力の変化を受け付けず。地球よりいくらか空気の薄い環境、光学兵器は好調だ。

エネルギー総量の半分近くを注いだ長大な刃がビル群を両断する。
月は己では輝けないというが、そのとき、月面都市は太陽もかくやの光に包まれていた。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/13(土) 00:20:40.92 ID:oWXDwRwE0<> >>939

『ひっ、あそこまで被弾を抑えるなんて。んなファンタジーあり得ません』
「ファンタジーであるものか! ……むしろ、余りに合理的なんだ
 でも、良かったよ。まぐれであれをやられるより、ずっと」
『自分はとにかくたっぷり当てたいんですけどねぇ』
「私もだ。だからこそだろ?」

 クロリスの瞠目すべき艶舞は、二人に真のHMP格闘が放つまばゆい煌めきを当ててなお余り有った。
 それでも少女は自分の限界を定めようとはせず。
 実際に戦闘するHMPも、悪態をつきながらもその命令を信じて守り続ける。

 飛行体の腹部に移動していた左腕シールドから、ギザギザの刃が飛び出した。
 ビルの上からクロリスを追っていた時に弄んでいた、拷問器具じみた危険武装・単分子カッターだ。
 実際に単分子で構成されている訳ではないが、ミクロ級のブレードチップが際限なく振動して生み出す威力は凄まじい。

 その機構を、石塊に刃が触れる直前後のみ作動する。
 飛行軌道と速度には理論上の最低近くまで抑えられたブレが生じる。
 このコンマ以下の判断は、動体視力がモノを言う世界を知っている百花の差配。


「ああっ、遅いっ――!!」


 ……そこまでやって得たものは、敗北だった。
 まさにARIKAの機首が危うくクロリスの胸を抉るかというところで、三角形のシルエットが光の渦の中に溶ける。
 クラウソラスが薙ぎ払われたとき、そこには塵芥も残らない。

 ゲームセット。空中に泣き別れのビル上部を浮かばせたまま、セカイが凍りつき、収束していく。
<> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/13(土) 21:26:34.26 ID:EyFzf7tDO<> >>938
目標と手段がすり替わってしまった。
近付くこと自体は正しかった筈だ。
しかし、ショックラッシュを食らわせることを第一にしてしまった為に、近付き過ぎた。
勝つ為にはここで急いた行動はするべきではなかった。
地力で劣るのならば、クレバーな戦いを意識し、相手を揺すり、先程のようなカウンターを繰り返しながら攻め時を待つべきだった。
のに、焦った。
攻めるためだけの行動をとってしまった。
それが、この結果を作りだした。

《頭部損傷:損傷率14%》
《...右腕喪失》
《胴体損傷:損傷率42%》
《脚部損傷:損傷率35%》

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【目の前に現れた獣の巨躯。
 咄嗟に右脚部スラスターの出力を高め、体を左へ向ける。
 瞬間、右腕の感覚が消え失せた。
 弾き飛ばされたようにバランスを崩しながらもそのまま左方向へ走り距離を取る。
 その時になって、やっと私は自分の右腕の顛末を見ることが出来た。
 ……酷い有様だ】

『……酷いのは腕だけに止まらないか』

大小のプラスチック片にまで粉砕された右腕と、爪痕の残されたボディとレッグ。
頭部に受けたダメージは微力だが、ほんの少し掠っだだけでこれなのだからえげつない。
更にエルピスさんの両腕から放たれた弾丸によって、装甲は幾箇所も削られた。

「ごめん、ルリ。
――――でも、まだだ」

この僅かな間で一気に均衡は崩された。
牽制兼中距離メイン火力は失われ、全身にダメージを負った。
圧倒的な不利に怖気が走る。
が、急激に不利になったことでか逆に頭は落ち着いた。
ここまでやられて、開き直ってしまったのかもしれない。

「重心は気合いで補正入れて。
今のトータルのデータと駆動率送るから、調節頼んだ。
作戦は……これで」

【続けざまに送られる言葉とデータ。
 そちらの処理を第一にとり、ナオヒロへの返答はしない。
 左腕だけで取れる戦術は限られている分読まれ易いだろう。
 特にエルピスはサクラと近い。接近戦型との闘いは苦にならないはずだ。
 全く、随分と追い詰められたものだ】

『ここからの逆転はなかなか劇的で面白いと思わないか?
 ギャラリーが少ないのが難点だがな……!』

【右を押さえ、左を強く。
 スラスターの出力を調整し、左腕を右に折り曲げて重心を出来るだけ中心に寄せる。
 多少蛇行するが、これはこのファイト中は補正できないだろう。
 せめて有効に使わせて貰うさ】

射撃は先程の同じような挙動で回避するように、接近戦になれば崩れた重心を最大限活用よう指示。
所詮付け焼き刃だ、どこまで出来るから分からないが、ショックラッシュならば触れるだけで形勢を持ち直せるはず。
バッテリー容量は曲芸やショックラッシュを行った今でも、残りは67%、まだまだ戦える。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/13(土) 22:18:43.56 ID:y5rdQpuko<> >>941
 振りぬいた勢いのまま前方へ駆け抜ける。
 当然既にブースターは切ってある。無駄な消費は論外だ。

『逃したわね』
「一撃必殺、教えてあげるんじゃなかったの?」
『うるさいわね、たまには失敗だってするわよ』

 どうにか姿勢を持ち直した相手を見て、蘭花はつるりと顎を撫でた。
 中々面倒だったアイゼンアクトは木っ端微塵だ。これで格段に有利はとれたし、だからこそ、ここからが勝負だ。
 ちらりと視線を彼に向ければ、中々どうして諦めるつもりはないらしい。
 そりゃ当たり前だ、と小さく笑った。そう簡単に諦めてもらっては困る。

 エルピスは幾度かトリガーを引き絞る。
 銃弾が木々を削り、地を穿つ。光条が宙を焼く。
 しかし――。

『あぁ面倒ね、ふらふらするんじゃないわよ、このっ』

 ルリのその不規則な前進に、無駄弾が溢れるばかりだ。

(――わざとじゃないのか。もうまっすぐは走れないんだね、ルリちゃん)

 蘭花は直感でそれを悟った。
 彼女の動きの無駄や無意味さが、その勘を裏付ける。
 エルピスは口でこそ苛ついているが、狙いはいつも以上に正確で慎重だ。
 それでも、中々当たらない。
 ダメージ的に有利は取ったが、膠着した状況は変わらない。
 次に不意をつかれるのはこちらかもしれないことは忘れるな。

「しばらく様子を見よう。我慢ね、エルピス」
『りょーかい』

 エルピスは緩やかな坂のように生えた木の根を登った。そのまま乗り越えるコースだ。
 距離は一定に。無理な動きはせず、相手の出方をただ伺う。
 思いつく選択肢は二つ。相手がどちらに出るか、はっきりさせておきたい。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/14(日) 00:18:55.48 ID:Um2+XgGDO<> >>972

《頭部損傷:損傷率20%》
《左腕損傷:損傷率23%》
《胴体損傷:損傷率48%》
《脚部損傷:損傷率44%》

2種類の銃撃は尚もルリの身を削り取っていく。
まだクリティカルなものはないが、ボディとレッグはこれ以上ダメージを負うとまずい。
早く距離を詰めて、攻めることが出来る状況を作りたいが……先程の二の舞は踏むまい。
第一現状、あまり速度を出しては危険だ。
転倒するということも無いとは言えないのだから。

「っ、坂かぁ」

早速難所だ。
急なわけではないが、この程度の角度でも今のルリは気を使った方がいい。
しかし離されすぎるのも辛い、慎重さと大胆さをあわせ適切な速度で進みたい。

「……どうしたもんか」

エルピスさんに数秒遅れて、ルリも坂の頂点に達する筈だ。
そこでこの坂を降りるべきか、否か。
降りるならば直ぐにか、待つべきか。
遠距離武器が無く、走行に不備がある以上、距離を取られるのはマイナスだ。
しかし、なんとなく誘われているようにも感じる。
ほいほいと降りるのも、また危険な予感。

「……詰めて行こうか」

誘われているにしても着地の瞬間狙いの攻撃があるにしても、予想していれば対処のしようもある。
待って、なにもなかったならば無駄に相手へ時間を与えてしまうだけだ。
だから行く。
ルリも根を乗り越え、蛇行しながらもエルピスを追う。
バチリと、エルピスを威嚇するようにショックラッシュが鳴る。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/14(日) 00:50:10.87 ID:B5CGOHb8o<> >>943
(追っては来るか)

 蘭花はそれを見て、覚悟を決めた。

「いこっか、エルピス。待つのは性に合わないしね」
『やっとね』

 坂を降りれば、ルリの姿は一旦見えなくなる。
 そのタイミングで大きく前に跳び、少し距離を稼ぐ。
 素早く方向転換し、来るであろう方角から少しだけ斜めに構え、エルピスは宙返りをした。

 ――【アラクネー】。

 六つの足が大地を掴む。ハルバードの牙が打ち鳴らされる。
 蜘蛛となったエルピスは、機体がしっかり固定されていることを確認すると、おもむろに全ての武器を展開した。
 武装の内訳は、高出力レーザーライフル、ミサイルポッド、短機関銃二丁、ライフル、ロケットランチャー。蜘蛛の背からそれらが顔を出していた。そのうち機関銃を両手に持ち、エルピスは構える。
 その全てを一点に向ける、とは行かない。機構の関係上、例えばロケットランチャーは前方九十度への砲撃が不可能だし、ライフル系も真正面へは撃てない。
 それでも、一斉射撃は強烈だ。
 機関銃二丁は両手に保持され、腰の左右からはライフルが顔を出している。ロケットランチャーは背の中央で発射される時を待ち、ミサイルポッドは機体の後部だ。平均的なHMPが武装を二つ持っていると仮定すれば、実に三倍の火力。
 強烈な電力消費を代価として、アラクネーは極端な高火力を実現する――。

「これでどうだ」

 機影を見た瞬間、その暴虐が解き放たれた。
 ルリを狙えるのは両手の機関銃とレーザーライフル、それとミサイルのみ。これでも通常の二倍。
 ロケットランチャーが狙うのは近くの巨木だ。数発もねじ込めばおそらく折れるだろうから。
 銃器を持たぬルリはどうするのか――。

【電力残量:五十六パーセント】

 すり減るエネルギーゲージを横目に、蘭花はじっとルリを見据えていた。 <> 麻木ナオヒロ<>sage<>2012/10/14(日) 01:40:47.66 ID:Um2+XgGDO<> >>944
【坂を降り、目に入ったのは異形の蜘蛛。
 そして、次の瞬間には圧倒的な力の嵐が吹き荒れる。
 全身を砕かんとする暴力をすり抜け、掠らせながら前へ出る】

《頭部損傷《頭部損《頭部《頭部《頭《《頭部損傷:損傷率53%》
《左腕損傷:損傷率《左《左腕損傷:《左腕損《左腕損傷:損《左腕損傷:損傷率61%》
《胴体損《胴《胴体損傷:損傷《胴体損《胴体損傷:損傷率69%》
《脚部損傷:損傷率47%》《脚部損傷《脚部《脚部《脚部損《脚部損傷:損傷率65%》

DVNO上に幾重にも重なって現れるウィンドウをまとめて消去し、カメラアイの映像からルリを出来る限りナビゲーションする。
これだけの攻撃密度の中では直撃を避けると次の攻撃を直撃してしまう。
出来る限り避け、避けられないなら掠って進むことを目指すが、もう半壊にまで追い詰められた。

【倒れてくる巨木に対して体勢を低く、左腕を左斜め前に伸ばし転倒する勢いで潜り抜ける。
 柔道の受け身のように回転して立ち上がり、更に一歩。
 ミサイルをショックラッシュで逸らし、受け流した】

この瞬間に気付いた。
【ショックラッシュのスタンガン機構が起動していないことに。】
多重に表れたウィンドウのせいで今まで気付くことが出来なかったのか。
【こんなことに気付かないほどに追い込まれていたのか。】
ちらと見れば、ボディを庇い続けていた左腕の損傷率は80%に達していた。
【装甲は吹き飛び、内部保護装甲が剥き出しになっている。】
これでは、起動しないのも納得だ。
【このまま両腕を、もがれるのか】

『っまだぁ!』「まだだ!」

大きくなった蛇行を抑え込まずに半ば横を向くようになりながら、体を捻りもがくように前に進む。
射線をずらすよう、射線同士をぶつけるような移動を目指す。

【スラスター推力は大きく落ちた。
 前に進むためにホバー脚部で地を蹴る。
 これだけでダメージが蓄積するが、もうエルピスに、手が】

《脚部損傷:損傷率100%...機能停止》

=平時ならばあと2秒あれば届く距離で、ルリの脚は崩れ落ちる。= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 22:19:49.64 ID:CTI+EFOPo<> >>940

既に無改造なARIKAの特性・能力限界は研究済み。足を攣りながら初日に確保した執念は生半可なものではない。
その慧理がゴーサインを出した以上、クロリスは必勝を期して剣を振るう。

「チェックメイト」

光刃一閃。結果を見る必要さえないし、見たところで今更どうしようもない。

戦略級の大破壊をもたらしながら、月の建物はすぐには壊れない。
断面に沿って崩れ落ちるビルの動きは遅く、スロー再生のよう。

その後のクロリスには、取れる行動が無い。
限度を超えた大火力は、ズヴェルトのバリアでも軽減しきれず。両手は焼き付いて溶け出して固まりだしてもはや機能しない。
空中でとれる行動などもはやなく、ゆっくりと崩れ落ちる建物を回避する術はない。

完璧な一撃必殺を目指した戦いは、それゆえに完璧には終われない。
数秒後の破滅を予感させながら、フィールグラムは初期化を始めた。

「おつかれさまでした」
「楽しませていただきましたわ」

ぺこりと頭を下げて笑う動作は慧理もクロリスも同じ。
だからこそ、その表情の違いが際だつ。

「えとですね! 途中、改造されているのかどうか悩んだんですけど、どうだったんでしょうか。
慣れないステージだったので、性能が測りづらくて。素のまま調整しただけとも、火器を強化したようにも思えて難しいところでした」

すぐに慧理はすぐに感想戦に移ろうとする。
クロリスを手の中においたまま話し出すのは、相手にメディカルポッドを譲る意図もあるが、なんとも伝わりづらい。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 22:56:42.20 ID:jtbZcvVC0<> >>946

「あはは、まさか。私にはまだHMPを改造して仕上げる技能も無い。
 そう言う未熟さが、戦ってて自分でも良く分かる良い試合だったなあ。ありがとう、早緑さん!」
『ふん……』

 DVNO内とHMPの頭脳間とで、常時データリンクがあることは知られたことだ。
 この場合もフランシスカの記憶と意識は一瞬でまるっと端末側に移動している。
 これはフジムラ理論誕生から数年後、量子コンピュータの技術の高まりと、バックアップ記憶の「非ロボット道性」への批難から生まれた形式。

 ゆえに、DVNO側からのスピーカーから発される声の内容も、さっきの試合の流れを汲んだものとなる。

『――チクショウです、次は見てろってんです!
 百花様、私にもあの剣を。空からバラバラにしてやりますよ! 同じ武器なら負けやしません!』

「それなら、ARIKAのパーツは一個も使えないぞ。最悪ミサイルが暴発するし砲身も溶けるだろ」

『う……それもそうですが』

 あまりにも失礼な対応、でも百花は密かにその口ぶりを喜んで、わずかに口の端を緩めた。
 自信と対抗心に、いつも見せる臆病さが今だけは呑まれているからだ。
 じっくりと甚振られなかった、ということも勿論あるだろうが。

「すまないな。
 でもフランシスカさ、別に買うのは良いぞ? ただ、どこで売ってるんだっけかな、あれは」

 早緑にも尋ねるように目を動かす少女。
 シュバリエハート社の製品でも有名な方だろうに、どうやら本当に何も知らないらしい。
 DVNOをメディカルポッドの方に持っていきつつ、途中で首を傾げた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 23:45:33.98 ID:CTI+EFOPo<> >>947

「ですよね。間違ってなくてよかったですー。
元々の形で各パーツの繋がりが強いので、改良の余地が少ないんですよね。
手を加えた分だけ他の部分が歪んで、手に入るのは情報面の強みだけ、ってことになっちゃう」

こういった話のときは本当に屈託なく笑える。

細かな改造の話にいけないのは少し残念だが、ああいった互換性の少ない可変機なら仕方ない。
完成された機体には敬意を払うし、作り手とは別の方向から理解を目指す繰り手というのも、エンジニアから見れば嬉しいものだ。

「フライメックは高度差を活かして 安全にダメージを重ねていくのが常道でしょうに。
敗因を武装に帰するのはいかがなものかと思われますが?」

王道から進んで外れた一点特化型がさとすというのも妙な話。
勝者の威厳をかさに着た姿は似合っていたが、闘い方とは真逆。常に上から見下ろすのはARIKAの方だ。

「でもまあ、ワンショットに秀でたフライメックがいてもいいと思うよ?
うちもシュトゥルムツヴァイみたいなの出してるわけですし、一概に切って捨てるわけにはいきませんよ」

「王道を外れていいのは、王道をまっとうできる者のみ、と聞いたことがありますが?」

失礼なのはこちらも同じ。マスターへの歪な敬愛は、他人の軽視にもつながる。
慧理をたしなめる立場のクロリスが、同時に慧理の能力を認めた結果、こういったことになった。

微妙な空気を察して間に入る能力など慧理にはなく、だからこそ純粋な行動は流れを変えるのにちょうどいい。

「クラウソラスは人気無いですからねー。基本的に観賞用なので、改造用に買い足す人もいないですし。
単品での商品なので、他のパーツ目当てに買われることもありませんし。多分今は奥のほうじゃないでしょうか。ちょっと取って来ますねー」

飛び出すようにして出て行った慧理は転び掛け、誤魔化し笑いを浮かべて。
狭い店内を小走りで抜けるのは慣れた様子。カウンター裏へ消えていく。
中にいるらしき誰かの挨拶に曖昧な返事を交わして、しばらくすればクラウソラスを持って出てくるだろう。

パーツサイズに合わせた小さな箱に、似つかわしくない高さの値段が書かれている。
せっかくの凝ったデザインと、会心の出来の写真が隠れるほどの勢いで能書きやら仕様やらが書かれたパッケージは良くも悪くもシュバリエハートらしい。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 00:17:02.79 ID:5xPxVZv/0<> >>948

「クレバーにちくちくと装甲を啄むより、常に狙いに行く方が良いだろ?
 私とこいつの精神統一がいつまでも続く訳でも無いし……美学、だしなっ!」

『別にARIKAだってそーんなぶっ飛んだ武装は無いんですけどねぇ
 突撃は百花様の教えです。だから、やれるんです』

 その考えを改める気が無いのにフライメックを使うのには理由があるのだろう。
 ARIKA、あるいは可変戦闘機型HMPへの拘泥を促す何か。
 なにを思うのか。小さな拳を固めて叫ぶ少女の傍らに、フランシスカの表情はない。
 今は実体すらも。

「戦いの王道とは何か、それは、相手を――ぶっ飛ばす事だ。……分かりやすいだろ?」
 
 DVNOを機器にセットして、最後はどこか重さのある声で言った。

「ふむ。ところで今更ながら、君は店員だったんだな」
『へーっ、意外ですねぇ、へへへっ』

 かしゃかしゃと、ポッドは仮想金型の中のARIKAを立体化しようとする。
 それが終わろうかという時に、ちょうど早緑が帰ってきた。
 危なっかしい姿にかける声の響きは、心配げでもある。かなり歳の差あるのに。

「それにしても、実際高い。在庫処理でこれか」
『ロイヤルローズとかと比べたら格段にマシですよ、だから買って買って百花様ぁ!』
「あれは比べちゃいかんだろ! ああ、もちろん買うぞ……敵を知り己をうんぬん」

 箱を早緑から受け取って、それを縦横に回転させながら見る。
 設計思想とか、神話のネタだとか、嫌いな人も居るだろうが知識に飢えた少女にはなかなか魅力的なものだった。
 そしてその背後には、既にポッドで処置を終えたフランがロボットモードで着いてきている。

「確かに強き剣とはいいものだ。フランシスカは、斧の名前だけど」

 箱を一度返し、少女は財布を取り出した。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 00:22:21.49 ID:5xPxVZv/0<> /あぶねー貼り忘れたところがありました

 箱を一度返し、少女は財布を取り出した。
 その時、店内にちらほらとクラウソラスの箱にあったのと同じロゴを見て、ようやくははぁと合点がいった。

「……それを作る職人もまた、私は好きだな」
『敬意、って奴ですかい?』
「信仰に近い」

 自然にこんな歯の浮くような台詞を吐いているが、彼女はかなり背の低い子供である。
 声色も、文面から想像できるのよりいくらかキーを高くして想像してもらいたい。
 学内ならともかく、大人の前ではちょっと滑稽なのであった。内容自体は、素直でさっぱりしているのだが。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/15(月) 00:23:41.36 ID:oFeDkhjjo<> >>945
 ――じゃあさ、ナオヒロくん。

「エルピスッ!」
『こ、の……っ!』

 ルリは、いやマスカドンナは、そう早い機体ではない。
 瞬発力に優れた機体ではないし、最高速度のある機体でもない。
 けれど、それは超えていく。
 鋼鉄の礫雨に打ち据えられ、吹き付ける爆風に身を飲まれても。
 台風のごとき暴虐を、その機体は超えていこうとしている。

 これはきっと、彼にとっての壁なのだ。
 目に見える形で可視化された、圧倒的な力の違い。火力の差。振るわれる暴力と言う名の障害。

 ――好きだから楽しくて、勝てるから面白くて、接戦を演ずる毎に呑み込まれて。
 それが止まる。
 停滞する。
 限界を突き付けられる。
 俺はそれが、恐ろしかったんですよ――。

 だがどれだけ抜けてゆこうと、目指す場所は台風の中心。
 強風は、暴風へと変わっていく。
 吹き荒れる銃弾の雨が彼女の装甲を削りとり、その左腕さえも打ち据え、砕いていく。

 ――じゃあさ、ナオヒロくん。

 これが壁だと言うのなら、彼らはそこでぶつかった。
 まるで断崖、阻む暴力の壁は厚い。
 超えて超えて、装甲も武装も失って、それでも前へ進み続けた小さな機体は、ついに足さえ失った。
 それ以上、前に出ることは出来ないだろう。
 嵐に立ち向かうための足が、そこで折れてしまったのなら。

 ――闘うほどに感じられなくなっていく。
 あんなにも溢れていた喜びや楽しさが消えてしまう。
 そうなってしまったものが増える毎に存在まで否定されていくようで。
 俺は停滞を恐れているのと同じ位に、停滞を望んでいるんです――。

【KP使用】

「違う、だろぉ……っ!」

 あの日の私もナオヒロくんも、ついでにHMPの二人もまとめてぶっ飛ばしたい気持ちで一杯だ。
 負ければ悲しい。挫折するのは辛い。そうして失っていくのが怖い。
 だからそこで立ち止まってしまえば、何も失わずに済む――それは、違う。違うんだ。

 ――じゃあさ、ナオヒロくん。
 君がそこから逃げ出したとき、君の思いはどこへ行くの?

 勝ちたいと思って磨き続けた技術も、負けたくないと思って打ち込んできた時間も。
 勝った時に得た喜びも、それを目指していた時の楽しさも。
 頑張って頑張って、身をすり減らしてでも戦い続けた君の全ても。
 君と一緒に戦い続けた、君の相棒の全ても。
 もういいやと思ったなら、それは無意味になっちゃうのに――。

 俺は、負けたいと思ったことは一度もありません。
 だけど、――――俺はやっぱり失いたくない。

 ――なのに、君は立ち止まるの?

「――ビビんな、戦え、男だろぉ――っ!」

 それは、至極単純な彼女の本音。
 負けた時の損失よりも、やめた時の喪失のほうが大きいだろうと。
 たったそれだけを伝えるのに国重蘭花は苦労して、結局――その思いを、拳に乗せた。
 八つ当たりのように吠える銃。
 愚かにも足を止めようとする子羊を食い散らかそうと、蜘蛛はその魔手を伸ばし――そして、 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 01:04:37.20 ID:V3xkwNcio<> >>949

敵を倒す以外の戦いだってある。

その場に残されたクロリスは、そんな言葉を飲み込んだ。
結局は目的と手段が逆だっただけ。やったことは変わらない。これから続けていくことも、何も変わらない。

何か代わりの発言を考えてみても、何も思いつかない。一人では満足に動けないのは、主人と同じ。
反論は諦め、素直に慧理を待つことにして、クロリスは沈黙した。


「店員では無いんですが……まあ似たようなものだと思ってもらって大丈夫です」

箱を差し出して営業スマイル。HMPが関わる限りは何だかんだで十全に仕事をこなす。
もっとも、多少出来るお姉さん然とした笑みは、会計を終えればレシートと共に消えて行ってしまうのだが。

「費用勘定は一番最後に回す感じですからねー。売れないのを前提にして高値をつけてる有様で……。ごめんなさい」

「ええ。たとえ金属の身といえど、私達は生きている。ならば慧理さん達の仕事は、神の所業です。
その技術に捧げるのは、敬意より信仰がふさわしい」

神妙な顔で賛辞を聞く慧理に、相手を子供だからといって侮る気持ちなど無い。
見た目で人の年齢を見抜くなど到底できず、「だって人って大体みんな同じ色して同じパーツもってるんですよ? 同一機種のマイナーチェンジは二桁内に収めてもらいたいです」
とか言ってしまうほどに突き抜けている。外見で人を判断「しない」のではなく「できない」

「いや、信仰っていうと届かないものみたいに感じちゃいますし、そんなに畏れ多いものじゃないですよ?
たとえば負けた時、こんな機能があれば、なんて想像をしたり、あるいは自分なりに考え抜いてパーツの端をちょっと削ってみたり。そんなのの延長だと思うの。
えーと……あなたもやってみればいいんじゃないかな。分からないことがあったら手伝いますよ?」

差し出した手は、決して天上からのものでは無く。
同じく背の低い慧理の目線は、百花とそう変わりない。
おずおずと御釣りを差し出す手は、同じ高さからのものだった。

聞いたばかりの名前さえ忘れてしまってるあたりで台無しだったが。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 01:43:28.33 ID:5xPxVZv/0<> >>952

 会計を終えて、品物を受け取る。小さいので小物入れで何とか運べそうだ。

『古い玩具の再販や限定品と同じなのかしら、シュバリエハートさんって』
「つまり、同じ気分でずっとパーツを作り続けられるぐらいにはファンが居るってことか」

 一面では、競争が熾烈な大衆向けパーツの世界よりも楽かもしれない。
 追従してくれるマニア層のためだけに、常に小さな波紋を起こし続けることは。
 クラウソラスのあらゆる点への拘りを見る限り、手間を惜しむことはありえなさそうだが。

『初めて意見が合いました。私も自分のことはロボット生命体だと思ってるんですよ!
 故に、技術者には責任が伴うので。よーく分かって頂きたいものですねぇ
 百花様、あなたもHMPをバラす技術なんて仕入れてきて……』

「痛くしないから大丈夫だ。メンテナンスのためにも必要だし、ノズルにゴミは入れられない。
 お前が言っている事は確かだけど、早緑さん達はおっけーだろ?」

 少女のにしし笑いには、常に信頼が宿っている。
 だから時として残酷なのかもしれない。知識では追いつき切れないことがこの穢れた世界にある。

「高度に発達した技術はうんぬん、だ。私からすると、神業に見えるよ
 ……良いのか? じゃあ、何か思い付き次第聞いて貰おうかな」

 ――その時、二人の目線の間に、しゅんっ、とフランが飛び込んだ。

『私を扱うなら、私のマスターの名前だけは覚えてください。
 賀東 百花……百花様です』

「ン。別に、私は気にしてないぞ。ああは言ったが、戦ってたらHMPに目が行く方が大きいもんな」

『百花様です!』

 どうしようかな、呟いて苦笑する少女の手がフランシスカに伸びる。
 手の中にその小さな身体――玩具としては十分大きいが――が収まると、フランは不服そうにそっぽを向いて黙った。

「さて、下見のつもりで来ていい買い物をしてしまったな。今日はこのあたりにして置こうと思うんだが」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 03:03:10.88 ID:V3xkwNcio<> >>953
収益を考えず、納得できるものを作ることだけを考える姿勢は、その純粋さにおいてもっとも神に近い。
細部まで拘りぬいて、代わりに値段が犠牲になるのも、今では苦笑と共に受け入れられている
一部のファンだけに寄り掛かっても、十分やっていけるだけの土台がある。

けれどその小規模経営に満足せず、近年じわじわと頭角を現している社の裏側を見たら、この少女はどう思うのだろう。

青薔薇の花言葉は、神の祝福。
自分なりの信念に沿った一人と一機は、そのあり方に疑問を挟むことは無い。


「うん。責任は分かってるつもり。大丈夫。私が間違えそうになっても、クロリスが見ていてくれるから」

「自立する意志くらいは持っていただきたいものですが」

時間と感情が紡いだ信頼関係は、絡まり合って解けない。
深い絆、といえば聞こえはいいが、絆とはもともとは家畜を繋ぐ綱。しがらみ、呪縛、束縛。
下手に付き合いを持てば、絡まった糸の中に取り込まれるかもしれず。その意図を分かろうとしたところで、眼を回すのが関の山。

「あー……一年くらい付き合いが続けば覚えられると思います。頑張ります。
1のアウトプットに10のインプットが必要、ってのは本当のことなので、新鮮なアイディアに触れられるのは本当に嬉しいです。
むしろ私を助けるくらいのつもりでいいですよー」

「慧理さんはこの通りの人ですから。どうしてもというのでしたら、私が代わりに記憶してあげましょう。
賀東、百花。光栄に思いなさい」

申し訳なさそうに顔を伏せて、困った笑みを浮かべる慧理。それを守るように堂々と立つ光剣の騎士。
童話じみた取り合わせは、童話じみた影を隠し持つ。

「はい。ありがとうございました。また来てくださいねー」

軽い気持ちで付き合いをもってしまって、いいのだろうか。

慧理は相手がドアの向こうに消えるまで手を小さく振り続け、そして連絡先を告げていなかったことに気付いた。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2012/10/15(月) 19:39:40.87 ID:5xPxVZv/0<> >>954

『……そうですか。ほんと、人間あってのHMPですこと』

 小声で毒づくHMPを宥めるように、少女は手の中のフランを胸の方に抱き寄せた。
 さっきまで一応は楽しげに話していたのに、今このときはあからさまな悪意が言葉に含まれている。
 
 済まなそうに頭を下げて、少女は去っていったが……。

【KP1発動】

「あーっ、早緑さん、まだいるか! 色々と忘れていってしまったぞ!」

 数分後、突然に開かれるドア。
 彼女は約束を取り付けたわりに何もしていなかったことを、確かに思い出していた。
 だがそれ以上に、とんでもないことを忘れているのに気付いたのだ。

 クラウソラスのパッケージと早緑の連絡先。
 二度目こそしっかり回収して、百花は慌ただしく店を出ていくのであった。

/ロールありがとうございました! 楽しかったです <> ルリ&麻木ナオヒロ<>sage<>2012/10/15(月) 22:05:31.56 ID:7v21N0dDO<> >>951
やはり、届かない。
隔てるものは高く、広く、深い。
拒絶され、近付けない。
後少し、それがどこまでも遠い。

【ランカが何か叫んでいる。
 聴覚素子が異常を来したのかノイズが混じって聞き取り辛い。
 しかし、昨日の今日だ、内容を聞かずともランカの言わんとすることは分かる。
 だが、どんなにナオヒロに語りかけようと私がこの様では――――】

『……そう、だな』

【私が止まってどうする。
 昨日までは私がナオヒロをどうこうなんて出来なかった。
 しかし今は、この場では、私でなくては出来ないことがある。
 私がナオヒロのパートナーなのだから、この戦場では私だけが唯一無二。
 ランカでもエルピスでもなく、私が私だから出来ること。
 ナオヒロの一歩先を行く私が、立ち止まってはナオヒロも先には進めない。
 ナオヒロが立ち止まろうと私は進むのだ。】

蘭花さんから檄が飛ぶ。
でももう、闘いたくても切る手札もない。
これが――、と、ルリの体に動きが生まれる。
なにも指示は出していない。
いや、この状態で俺に出せる指示はない。
ルリは一体なにをしようと言うのか。
俺はただ、見つめるだけしか出来ない。

【銃口が私を見ている。
 ここに留まれば蜂の巣だ。
 だから、だから――――――】

》KP使用《

=後ろに倒れ込み、もはやデッドウェイトとなった脚部で銃弾を受ける。
 限界値を越えた先で更に重ねられた衝撃によりレッグは破壊され、左股関節から下と右膝から下がその身を外れる。
 それによって軽くなった体を左腕一本で無理矢理に体を持ち上げると、肘を屈伸、地面からの反発でルリの体が跳ね上がる。
 殆ど達磨になりながら、左腕でエルピスに掴み掛かろうと身を捩る。
 と、ボディに被弾、機能が停止する。
 しかしルリは手を伸ばす。
 ナオヒロ1人では届かなかったところに、私が届かせてやれると証明するために。
 失うことの、その先を見せるために。
 ルリが、ナオヒロの傍にいるために。=

「っ……ルリ!」

=指先がエルピスに――――届く。= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/15(月) 22:47:54.03 ID:oFeDkhjjo<> >>956
 そして、それは届かなかった。
 伸ばした爪の隙間をくぐり抜けて、彼女はこちらへと牙を剥く。

『本当、こういうのは好きじゃないんだけど』

 エルピスは、端正な顔を精一杯歪めて、皮肉げに笑って見せた。
 みしり、と嫌な音がする。
 放電機構を失おうとも、足と右腕と胴を失おうとも、華奢な素体一つ握りつぶすくらいわけはない。

『あぁ……もう、聞こえてないか』

 その頭ごと握り締められ、エルピスは最後に一言呟いた。
 音にならないそれを、唇だけで言葉にする。

 ――貴方の勝ちよ、ルリ。

【損傷:頭部百パーセント。機能停止】

「あぁ」

 蘭花は小さく声を漏らした。
 断末魔にしてはあまりに――生気の抜けた声だった。

「負けちゃった」

 蜘蛛の巨体は、がしゃんと音を立てて倒れた。 <> 麻木ナオヒロ<>sage<>2012/10/15(月) 23:24:00.09 ID:7v21N0dDO<> >>957

――損傷率:99%》

あと1%、たった1%。
どこかでダメージを受けていれば、頭部以外の全損により勝敗は逆転していただろう。
何故ここまで破損して尚動くことが出来たのか、疑問をぶつけるようにフィールグラム上のルリを見る。
崩れ落ちた蜘蛛に引っかかるように重なりながらルリもこちらを見ていた。
文字通り仮面を被ったマスカドンナのヘッドに、何故かこの時は表情が見えた。

「ルリ。……ありがとう」

消え行く森の木々。
ただの平台に戻ったフィールグラムからルリの体とその残骸を拾い集める。
そして、崩れそうなルリを右手で抱えながら、ライバルサイドを見据えた。

「蘭花さんエルピスさん、ありがとうございました」

=勝ったというのに、あまり温度の変わらぬ声。
 実感が足りないのか、しかしそれは当然かもしれない。
 最後の交錯はナオヒロの手を離れて起きたことだから。
 実際にはなにも離れていないのだが、それがナオヒロに伝わるには少々言葉も時間も足りなかった。
 置いていかれた、そんな風に感じているのかもしれない。
 その感覚を正してやれる愛機はしかし、現在システムの立て直し中で言葉を発することはない。= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/15(月) 23:58:46.31 ID:oFeDkhjjo<> >>958
「――ねぇ、ナオヒロくん」

 ――フィールグラムが稼働を停止する。
 静かで、小さくて、呆気のない幕切れ。
 勝敗は決した。幻想の森は役目を終えて、無機質ないつもの平面へと姿を戻す。

 私は俯いていた。
 握りしめた拳が痛くて、けれどそれを振り上げるわけにはいかない。

「ルリちゃんは、前に進んでみせた。諦めなかった。だから、勝った。
 君は、どうだった? 諦めてしまった君は――今、何か感じてる?」

 声が震えるのを抑え切れない。
 精一杯喉を振り絞って、どうにか声を出している。

「諦めたら水の泡だ。どれだけ練った策も張った伏線も、――まだだ、って思いだって。
 それまで積み重ねてきたもの全部、諦めた瞬間消えてなくなるんだよ」

 楽しかった思い出も。勝てなかった悔しさも。
 苦しくても、辛くても、そこから逃げ出したら全部消えてなくなる。
 いつか磨り減り、忘れ去られる思いでも。
 積み重ね続ける限り、そこにあった事実は消えないのに。
 諦めてしまったら――それまでの全てを消し去ってしまう。

 真正面から突っ込んだあれは、きっと上策とは呼べないもので。
 だから当然のように、あの機体は銃弾の中で散っていくはずだった。

「けど、勝った。
 ルリちゃんが、それでもと願ったから。――諦めなかったから」

 あの負けず嫌いのエルピスが納得するくらい――この私が認めざるを得ないくらい、完璧な逆転勝利。

 蘭花は顔を上げた。
 その顔は、怒りで確かに震えていた。

「――負けた私が言うべきことじゃないけど。
 勝ったのは君じゃない。ルリちゃんだ」

 それほど最後の一瞬は圧倒的で、完璧で、無駄がなくて、美しくて――虚しかった。

「君が諦めなかったら、今その手の中でルリちゃんは笑ってたよ。
 けど――君は最後に失くしちゃったでしょ」

 ぽたりと、手のひらから血が垂れた。

「ルリちゃんが勝つって――自分たちが勝つって、その思いを失くしちゃったから。
 今君は、喜ぶことも笑うことも、相棒と会話だってできやしない――!」

 本当に、悔しかった。
 ルリちゃんが、あれほど毅然と立ち向かったのに。たった一人で私たちを超えていくくらい、強い思いで立ち向かったのに。
 そのパートナーが――どうして、あんな顔をしているのか。
 武装をなくし、ダメージを負い、ひたすら射撃を繰り返す相手に接近しなければならない。そんな絶対的な不利を覆して勝って見せたのに。
 その立役者であるべき彼が、どうして喜ぼうともしないのか。

 どうして、こんなことも伝えられないのか――。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/16(火) 23:02:59.12 ID:TbjgBbNDO<> >>959
「蘭花さんの言う通りです。
俺は脚が全損した時に、策を見つけられなかった。
策を見つけられなくて、負けたと思ってしまって」

=動き、溢れる感情を抑えきれない蘭花に対して、淡々と話すナオヒロ。
 今まで失うことを繰り返す中で自分を納得させることには慣れてしまっていた。
 弱い自分を受け入れると言えば聞こえはいいが、その実ただ感情を騙しているだけだ。
 その場しのぎに感情を誤魔化して痛みを鈍化させるだけ=

「ルリは俺の手を離れていってしまいましたから、蘭花さんの言うように、この勝負で俺は勝っていな

『ランカよ、やはりフィールグラムの上では私の方がナオヒロに近いようだな』

=ナオヒロの開き直りに割り込んだ声。
 システムが再起したルリのものだ。
 くびが回らないのか、顔も向けずに言葉を続ける=

『ナオヒロがヘッドセットを付けていなければ私にも聞こえないほど小さな声だった。
 しかし私は確かに聞いたよ。
 ナオヒロは最後に私の名前を呼んだ。
 だから私は掴めたんだ、勝利を』

【ナオヒロは確かに諦めた。
 しかしそんなこと小さいなことだ】

『ナオヒロは勝利を信じなかったかもしれないが、しかし私のことは信じたのだよ』

『私を勝たせるためにナオヒロは全力を尽くしてくれた。
 最後まで私を導こうとしていた。
 最後には勝ちを諦めても、しかし最後の最後には私を信じた。
 ――――勝利は私達のものだ、ランカが、ナオヒロが私の勝ちだと言っても!
 私は、私達の勝利だと言い続けるよ』

=ルリが喋り切る前に、DVNO起動したタブレットをフィールグラムの上に置いてナオヒロは蘭花達に背を向けていた。
 開き直りが封じた感情は不意打ちに弱い。= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/17(水) 20:20:20.27 ID:kDkKv5kCo<> >>960
 正直に言えば、混乱していた。
 私には分からない。勝負を諦めても相棒を信じている――そんなの、ありえることなのだろうか。

『あー、負けた負けた。気分悪いわ。ああいうガチンコで負けるのがいっちばんキツいのよね。気力で負けたってのは、言い訳がきかないし』

 DVNOからエルピスの声が響いた。
 ちらりと視線を向ければ、端末からは晴れ晴れとした声で笑っているエルピスがいる。
 その声にちょっとだけ落ち着かされた私は、エルピスの機体をそっと拾い上げた。

『まぁ、ランには分からない世界よ。
 なんていうか、ランにはそもそも必要ないっていうか。普通はね、あんな弾幕の中で足が止まったら負けを覚悟するわよ。
 それを覆せると根拠もなく信じれる方がおかしいっていうか。そりゃ強さとはまた別の、どれだけ馬鹿かって話なんだけど――』

 ってか早く直しなさいよ、と思い出したように声を上げたエルピス。私はそれに従って、メディカルポッドに彼女を突っ込む。
 機体が修復されていく間の暇潰し、といった風に、エルピスは面倒そうに続ける。

『要するに、こういうことよ。
 ランと私は人機一体。だから意思の齟齬がない。齟齬が起きたら戦えない。
 ナオヒロとルリは、そうじゃない。だから意思の齟齬がある。齟齬があっても戦える。
 だからさ、私たちは繋がり合って戦うけど。あの二人は――支えあって戦ってるわけ。どっちかが挫けたら、どっちかが叩きなおすわけよ』

 修復には三十秒もかからない。
 蓋を開ければ、問題なく動くエルピスの姿がある。
 よっこいしょ、と彼女は獅子の身体から飛び降りる。追加パーツは自動で形状を変更し、スリープモードへ。

『徹頭徹尾一切を諦めないランには分からない世界よ。相棒の奮戦で、諦めた思いが再起するってのは。
 初めっから揺るがないランには分からなくて当然よ。普通の人間は揺らぐのが当たり前なんだから。
 特にナオヒロなんて、天然記念物並みに普通だしね?』

 エルピスはぐっと大きく伸びをして、ウインクを一つ、あちらへ投げた。

『ルリだってワンオフ、いやオーダーメイドじゃないのよ。初めから一定の信頼を持って生まれてきたわけじゃない。
 市販のHMPで、普遍的なAIで、作りたての時はナオヒロのことなんか微塵も知らなくて。でもだからこそ――あぁ、いや、これ以上は悪いか。今のなしね。
 まぁとにかく、信頼の形は一つじゃないってこと』

 エルピスは時々、私もびっくりするくらいに人間だ。
 驚いて目を見開いている私に、エルピスはにやっと笑ってそう締めくくった。

『本当、こういうのは嫌いなんだけど。
 ――ま、でもさナオヒロ。この頭の足りない馬鹿はともかく、もーちょい喜んだらどう? ルリはさ、あんたのため――あぁいや、今のなしなし。
 っていうか、勝った相手が誰だか分かってる? なんでか勝手に終わってるみたいな顔されるの、負けたこっちはすっっっっごいむかつくんだけど!?』

 元気にわいわいと騒いでいるエルピスを見ている。
 未だによく分かっていないけれど。相棒ってのは大事なんだな、と漠然と思った。

「よく、分かんないや」

 多分、彼ら二人分が私一人分なのだ。
 でもそれは悪いことじゃなくて、それもまたひとつのあり方で。
 だから、そうか。

「――おせっかいってやつだったかな」

 そういうのは、もっと親しい人の役目なんだろうか。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/17(水) 22:18:12.27 ID:EXNgxbVDO<> >>961
『お節介?ふふん、酔っていなくとも弱気なことを言うのだな、ランカ』

【一度、素?を見られたからその辺りガードが甘くなっているのかもしれないが】

『私達が支え合っていくのだとしたら、それは今日からだ。
 今までは馴れ合っていただけだな』

【ナオヒロが立ち止まったとき、一緒に立ち止まってしまっていたから。】

『ランカ、お前がいなければ私達は進むことも出来なくなっていただろう。
 ナオヒロの方は一朝一夕でどうこうなるものではないが、ランカから色々と影響されるところもあるだろうさ。
 どうだ?ナオヒロ』

=鼻を啜る音がして、一拍置いてからナオヒロは振り返る……途中で、せっつかれてルリとパーツ片をメディカルポッドへ。
 蓋を閉めて、やっと完全に向き直った。
 そして伏し目がちに話し出す=

「そうですね、このファイト自体が意味ありましたから。
 だからありがとうございました、蘭花さん。あ、エルピスさんも。」

=蘭花に軽く頭を下げるナオヒロの声は少々鼻にかかっていた。
 そこから伏し目がちだった理由も察せられる。=

「あぁそうだ、エルピスさん天然記念物並に普通って何ですか、褒めてます?
それと、今はもう普通に嬉しいですよ。
やっぱりちょっと信じられない部分もありますけどね」

=顔を上げると笑みの顔でエルピスに言って、目を2人からメディカルポッドに移す。
 破損が非常に多い上、その度合いも激しいからか少々時間がかかっている。
 もう少しかかりそうだと分かるとナオヒロは鞄から1つのHMPを取り出した。
 首がないが、《マスカドンナ》だ。
 パーツを拾った段階でモーターやシャフトの一部がイカレているのが分かったので、
 予備として持ってきたボディにすげ替えようというわけだ。= <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/17(水) 23:04:52.60 ID:kDkKv5kCo<> >>932
「ん、いやさ……人間関係とか私の苦手分野だし……ね?」
『普段テンション高くして誤魔化してるだけだしね。まるきり嘘でもないけど、あれ』

 彼らに今更誤魔化しを入れる必要はないし。
 それでも別に弱気になっていたというわけではなくて、そう、――ちょっと羨ましかっただけ。

『だってさ、ラン?』
「……そっか。無駄じゃなかったんだね」

 私がどれくらいのことを出来たのか、わからないけど。
 ルリちゃんがあの時前に出たのが、私のおかげだっていうなら。

「よかった。ほんとに……よかった」

 私は今どんな顔をしているだろうか。普段の私よりは、優しい顔でいるだろうか。
 涙ぐむ彼を見て、ふと思う。
 ――そういえば、人のためになろうとしたのって、いつぶりかな。

『褒めてる褒めてる。今時すり減るまで何かに挑める人って希少だしね』
「っていうか、『普通に』ってつけてるあたりがもう」
『普通よね』
「ねー」

 くすくすと、相棒と二人笑い合った。
 本当に、びっくりするくらい彼は普通なのだ、きっと。
 私には分からない――私の知らないものを一杯持ってる人なのだ。
 ごそごそとボディの交換を始めた彼の背中を見て。
 唐突に、自分が負けたことを思い出した。

「そうだ、ナオヒロくん」

 ならば言わねばならない。負けっぱなしは性に合わないし、気に入らない。
 私は強く、勝ち続ける私でいたいから。
 エルピスがにやっと笑って私を見上げる。
 その頭をそっと撫でて、私は――いつものように、にやっと笑ってみせた。

「――また、勝負しよう。今度は完璧に勝つから!」

 いつものようにそう言い切った私は、どんなふうに笑っているだろうか。
 あぁそうだ。君ともっと、勝負がしたい――。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/17(水) 23:52:35.80 ID:EXNgxbVDO<> >>963
『ふん、1人の人間を変えようとしておいて人間関係が苦手もあるまいに』

=茶化すように言うルリだが、現在首だけである。
 メディカルポッドから取り出されると、すぐにボディのすげ替えを始められたのだ。
 今は《マスカドンナ》各部位とヘッドの同期をDVNOを介して行っている最中だ=

「なんか照れちゃいますねー」

『……』

=ルリが前に出たのは、蘭花のおかげというか蘭花のせいというか。
 愛機としての意地、若しくは矜持、だったのだろう。
 ルリ自身はこの辺りまだもやもやと抱えるのみで明確な言葉にはできていないようだが。
 まあ可愛く言ってしまえば焼き餅であるわけで、ルリとすればそれはあまりスマートでない。
 なので認めにくいのもあるだろう。=

「今のはー…あー、はい。普通です」

褒めてると言われたが、なんか……うん。
普通は悪いことじゃないと思うが、思うが……。

『……はぁ』

【この辺りの情けないオーラもどうにかならないものか。
 まあこの方が先に立つにも甲斐がある……のか?】


「はい。――――また闘いましょう。
次はもっと余裕を持って、勝ちます。きっと」

自分はHMPファイターだ。
再戦を跳ね退けるようなことは出来ない。
蘭花さんは強い。
しかし今日は勝つことが出来た。
この次も勝てるかはわからない。
しかし、何度も闘い続けることで俺も高みへ至れるかもしれないのだ。

それに、蘭花さんが昨日言っていたことから深読みすれば、再戦の誘いは光栄なこと……なのだろう。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/18(木) 20:39:03.97 ID:0IrUa1ONo<> >>963
 ともすれば情けない姿に、エルピスは思わず苦笑を漏らした。
 本当、あんな主だったら大変そうである。

『首輪でもつけさせたほうがいいかしら』
「わー、倒錯的な発想」

 まぁあれも信頼の形だ、ということで納得しておこう。エルピスはそこら辺で思考を打ち切った。
 なんで私はあんなんに負けたんだ、という思うと、むかついて仕方がないからである。
 失礼極まりない思考であった。

 蘭花は楽しそうに笑っていた。
 なにせ負けるとは思っていなかったのである。
 侮っているつもりはない。純粋に、自分は勝てると信じていた。
 鼻にかけるつもりもなければ驕り高ぶる気持ちもない。そういうのは弱さだ。
 ――ただそう、だからこそ、彼らに負けたのが心に響く。

「余裕なんてちょっともあげないよ――私もなかったんだから」
『その通りよ。次こそ泣いて許しを請わせてやるわ!』

 エルピスは威勢よく言い放つ。
 蘭花はそんな相棒に小さく笑った。本当に、頼もしいというか、その通りだ。
 鼻っ柱をへし折るくらいの勢いでいなければ、私らしくないし、なによりもっと勝負したいと思った。
 そりゃあそうだ。私たちにはないものを持ってるんだから。
 私と『違う』人で、ここまで勝負したいと思ったのは――あぁ、もしかして、初めて?

 何か言おうと思って、結局何も言えずに口を閉じる。
 この感慨は、どうやら言葉に表せそうにはない――きっと、多分、やっぱり、拳で語るしかないんだろう。
 だから、何も言わずに――ただ笑っていることにした。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/18(木) 22:50:56.73 ID:HrRriLsDO<> >>965
「首輪?」

『そうすると私が変態に使われる変態HMPのようじゃないか』

「あぁ、やっぱり俺に付けるってことなのな……」

=ファイトが終わり、その余韻の中でも2人は早々に気が抜けてしまったようで。
 ナオヒロは張り続けていた糸が切れてしまったのだとしてご容赦を。
 ルリは……不貞不貞しいだけか。=

『泣いて許しを請う?
 それはお前のすることだよ、エルピス』

「こら、挑発しない。
でも、ま、泣いて許しを請うなんてするつもりありませんけどね。」

相手を挑発できるような立場じゃないのに。ルリの不遜さも程々にお願いしたい。
まあ俺が引け気味な分を補っているんだから、強くは言えないけど。
だから俺も、少し強気なことを言ってみる。

『ランカも何時までも笑っていられないようにしてやるからな。
 せいぜい今のうちに笑っておけ』

……俺の発言で図に乗ったか?
確かにさっきから蘭花さん笑っているけど、そこに噛み付くとは思わなかった。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/18(木) 23:23:07.34 ID:0IrUa1ONo<> >>966
『言ってくれるわね、ホントに!
 あぁっもうホントこういうのは嫌なのよ! 負けると何言っても負け惜しみじゃない!』
「ルリちゃんも中々きわどく煽ってくねー」

 エルピスが地団駄を踏みながら暴れている。気持ちは分かる、と蘭花は苦笑した。
 ルリの煽りスキルの高さは中々侮れない。

「まぁ許しを請われようが請われまいがブチのめすけど。興醒めする分、手荒になるかな?」

 蘭花もにっこり笑顔でそんなことを言ってのけた。
 エルピスは『そう! それよ! そういうことよ!』と謎の納得を見せていた。
 さっきから妙にテンションが高い。

「ホント? じゃあ楽しみにしてるね。笑ってられないくらいの勝負なんて、経験ないからなぁ」

 蘭花はあくまで笑顔で応じた。心底楽しそうな笑顔である。
 というか、楽しくて楽しくて仕方がないのだろう。今までの話的に、この女から笑顔を奪うのは至難の業だろう。

『あんまり煽りすぎて違う意味で笑えなくさせないでよ。キレて笑わなくなったランはそう、悪鬼羅刹よ。酔って絡んできた男をランは――』

 蘭花の放ったデコピンで、エルピスはもんどり打って倒れた。

「あ、そうだ。丁度いいしご飯食べに行かない?」

 沈黙したエルピス(確実に頭部ダメージ有り)をむんずと掴み、蘭花は輝くような笑顔でそういった。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/18(木) 23:52:04.00 ID:HrRriLsDO<> >>967
『ふはははは、存分に悔しがるがいい!
 そうして冷静さを失えばこちらとしても倒しやすいからな!』

ルリのテンションが奇妙に高いのはシステムの再起動が今一だったのか、それともただ単にノってきちゃっただけなのか。
どちらにしてもいい加減にする頃だ。
頭を軽くつついてこちらを向かせ、アイコンタクトとジェスチャーで諌める。
表情の変化は有り得ないが、顔の角度やカメラアイの発光具合でなんとなく分かってくれたことを読みとる。
多分、分かってくれただろう。多分。

「はは、お手柔らかに。
蘭花さんが笑えもしないような勝負にならないよう頑張りますね」

ルリの発言を曲解して利用する。
しかし実際、蘭花さんが笑うことも出来ないファイトってどんなレベルなのだろうか。


「蘭花さんが笑えないことになったら、俺はその瞬間もっと笑えないことになりそうな……。
エルピスさんご忠告ありがとうございま、」

あ、倒れた。
エルピスさんの自業自得っぽいけど、大丈夫なのだろうか。
大丈夫か。

「いいですね、お供させて貰いますよ」

あんな笑顔で誘われて断れる男がいるだろうか。いや、いない。
エルピスさんが猛禽に捕まった小動物みたいになっているけど、多分突っ込まないでいいところだろう。
こちらもパーツやヘッドセットをカバンへ放り込み、ルリを手に乗せてカバンへ誘導する。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/19(金) 22:57:06.84 ID:zBT8TmVko<> >>968
「よっぽど引け腰でなければ、二人なら大丈夫だと思うけどなぁ。
 今日もちょっと肝が冷えたしね――あ、いや、これ勝った方のセリフだ」

 エルピスをカバンに突っ込み、蘭花はむむむ、と唸った。

「怒っても滅多に手ぇ出さないから大丈夫だよ。――骨の二、三本は折っちゃうしね。
 ……あ、そうだ。ナオヒロくんも格闘技やる? いざってとき役に立つよ? 空手なら道場紹介出来るし」

 至極真面目な顔で彼女はそんなことを言った。無論、そんな時は来なくていいのだが。
 ちなみに本人そのつもりはないが、無闇に人を殴るな、という基本の訓示を本心から守るくらいには、ストイックな格闘家である。

「それはそれとして、どこ食べに行こうか?」
『……ぐぬぬ、痛い』
「あ、起きた」

 蘭花がナオヒロにそう尋ねたのと同時、ずぼっとエルピスがカバンから顔を出した。
 非常に不機嫌そうな顔である。

『あー、気分悪いわ! スカッとしたい! ラン、飲むわよ。これから昨日のトコ行くわよ!』
「いや、こんな昼間っから――もしかして、お酒ハマった?」
『うん、お酒大好き』
「それでナオヒロくん、どこ食べに行こうか?」
『無視するなっ、夜でもいいから! お酒! お酒! ――むぎゅ』

 エルピスをカバンに押しこめながら、蘭花はナオヒロの顔をのぞき込んだ。
 いつかのような、柔らかい笑顔を浮かべながら。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/10/20(土) 20:39:01.88 ID:ax5jz+pDO<> >>969
『ちょっと、か。
 いつかその肝、冷えっぱなしにさせてやりたいものだな』

=ルリがカバンから顔を突き出して蘭花に返す。 先程までのような挑発するものと違う、チャレンジャーとしての発言であった。=


これは本当に怒らせてはいけない。
本能が告げるとかでなく、しかし考えるまでもなくダメだ。
どの骨とは言わなかったのが逆に恐ろしい。
まあ、元々怒らせるつもりはないけども。
や、さっき怒らせたけども。

「格闘技ですかー。
最近全然運動してなかったし、この歳からだとどっか痛めちゃいそうですねー」

まあでも、男として格闘技に憧れは無くもないけど。


「ま、昼間から飲むのも無しじゃないですけど……ノンアルで行きましょうか」

『アル中HMPか……』

いや、まだアル中ではあるまい。

「ま、そんなわけでお酒は一旦無しで。
今からはー…ファミレス?」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/20(土) 21:15:15.82 ID:MmKSvKjyo<> 「最後はホントに一瞬の攻防だったしね、冷やす暇もなかったかな」

 蘭花もそう言って肩をすくめた。

「まぁショックラッシュには警戒させられっぱなしだったけどね。ああいう装備の対処ももっと考えとかないとなぁ……」


「筋肉痛はともかく、痛めるような下手な運動しなければ大丈夫だって。健康にもいいし体も引き締まるしかっこいいしおすすめ」

 あまり運動していないようであれば、まぁ筋肉痛は避けられまい。

『あのほろよいって感じの感覚、癖になりそう』
「……エルピス、ザルだなぁ……」

 相棒の意外な一面に苦笑いが漏れる。
 あのアルコールパフ、どっかで都合してきたほうがいいのかな、と蘭花は内心で考えた。

「そうだね、ファミレス……あ、私HMPアリのとこ一つ知ってるけど、そこでいいよね?」 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/10/20(土) 21:58:43.38 ID:ax5jz+pDO<> >>971
『常時あれか……流石に無理だな』

「ショックラッシュはあるだけで威圧になりますけど、接近戦に持ち込みにくいのが難点ですねぇ。
だからって右腕をライフルやなんかにするとそれは接近戦で役に立たないという。
うーん、アセンって難しい」


「そうですねー。
久しぶりに体動かすことするのも良いですね」

大学に入ってからは必要単位分とちょっとしたレジャー程度の運動しかしていなかったから体も弛んできていたし。
脂肪がのっているわけではないが、気付いたら平らな体になってしまっていた。

「因みにルリは?」

『酔った状態はあまり私好みではないな。
 たまには良いかもしれないが、そう毎日飲みたいものじゃない』

酔いが抜けるまで真っ直ぐ歩けない直立できない、そんな有様はルリにとっては失態でしかなかったか。
ま、何回か飲むうちに慣れるだろう。

「あ、はい。じゃあ案内して貰っても良いですか?」 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/20(土) 22:41:39.32 ID:MmKSvKjyo<> >>972
『いっそ割り切るのも手かもね? ショックラッシュに特化するか、あるいは捨てて射撃に転向するのもありだしさ』

 ようやく真面目な顔でエルピスは言った。
 アセン絡みは、少なくとも蘭花よりは頼りになる。

『えー、いいじゃないああいうの。フワフワした感じはまた別の快感がね』

 どうやらエルピスはお酒の虜となったようだ。
 ニュンペーの名の通りか、と蘭花は苦笑するしかない。バーに入るまでは窘める側だったのだが。

「まっかせなさー……い、と」

 案内を快く受けて、蘭花はナオヒロの手を取ろうとし、そしてすぐに引っ込めた。
 さっき爪が食い込んでそのままだったのである。
 気づかれないように自然に手を隠すが、果たして誤魔化せたやら。

「ちょ、ちょっとお花を摘みに……」

 とりあえず洗ってこよう、と蘭花はそそくさとその場を離れようとする。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/20(土) 23:22:51.23 ID:ax5jz+pDO<> >>973
「瞬発型のアセンで速攻型、ロマンはあるなー。
射撃特化だと……今までの蓄積がないからちょっと苦労するかもしれないか。
ルリの性格的に突っ込んでっちゃいそうなのも難だよね」

『ふん、悪かったな。
 射撃特化は兎も角、いっそショックラッシュを取っ払ってしまうのは悪くないな』

「テーマから組み直しかぁ。
……この前のフライメックとかも視野に入れつつ考えてみるか」

=エルピスの案を軸に話し込む2人。
 目の前に蘭花達がいるのだからそちらと会話しろ、会話=

「欲望に忠実だなぁ……」

『ランカに飲み過ぎるなと言っていたのは誰だったのか』

これからこの人達と飲むときはストッパーがいないことを忘れないようにしよう。

「――どうぞ、ここでまってますから言ってきてください」

=言って、蘭花を見送るナオヒロ。
 その様子をカバンから見ていたルリがナオヒロに問う。=

『ランカの手のひら、見えていなかったわけではないだろう?
 絆創膏も持っているだろうに』

=ルリのショックラッシュには絆創膏が何枚か入ったジップロックが。
 と言っても普通の絆創膏なので手のひらに貼るにはあまり適さないのだが=

「うん、まあ。
でも蘭花さんが黙って行ったんなら俺が騒ぐことじゃないかな、と。
隠したいことなら気付いても気付かぬ振りでいいでしょ」


『見て見ぬ振り、は良い意味で使われなかったと思うが』

「……確かに」

とちったかなぁ、これ。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/20(土) 23:48:54.62 ID:MmKSvKjyo<> >>974
 流水に手のひらを当てて、流れる血を洗い落とす。

「バレてた……かなぁ」
『まぁ、隠せたとは思えないわね』
「ぐぬ」

 爪の間にも肉がえぐれたのが挟まっていた。
 それを丁寧にこそぎ落とす。幸い血はすぐに止まった。

「……あぁ、そっか、負けたんだっけ」

 ぽつりと蘭花は零した。
 爪にこびり付いて乾いた血も、水で少しこすれば剥がれ落ちた。

「――久しぶりに、あんな負け方しちゃったなぁ」

 じゃばじゃばと水が弾ける音にまぎれて、呟いたいくつかの言葉は消えていった。
 エルピスは何も言わずに、カバンの中で目を閉じている。

「ん。反省会は帰ってからだね。……今は、笑顔でいなくちゃ」

 楽しくて、嬉しくて、面白くて、でも――負けたら悔しい。
 それが真に迫った戦いであるほど、悔しいし、悲しい。
 蘭花は小さく頭を振って、濡れた手をぴっと振って水を切り、ハンカチで拭いた。
 手のひらから血がにじむ様子はない。
 ぐっと握ってみても、当座は大丈夫そうだ。

「……よし、行こうか」
『そうね、待たせるのも悪いし』

 カバンを手に取る。生地と擦れて、手のひらが僅かに痛んだ。
 大丈夫。これもまた、よくあることだ。


「やー、おまたせ。ごめんごめん」

 軽く手を合わせて小走りで彼の前に行って、今度こそ彼の手を取った。
 痛みは、ない。

「さ、早く行こ行こ!」

 ぐいっと彼の手を引いて、いつものように横暴に。
 ――この痛みを知られないうちに、早く行こう。 <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/10/21(日) 00:13:37.85 ID:OMEtiM2DO<> >>975

「いえ、待つのも甲斐性ですから」

『またそれか』

「……うわっとと」

呆れたように言うルリに苦笑を返して、置いていかれないよう蘭花さんの手を握り返す。
ただし、力を込めるのはは指先だけに。
手のひらは少し空間を作るように柔らかく。
格闘技を修めていてもやっぱり手の感じは女性だなぁ、なんて、蘭花さんに失礼だろうか。 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2012/10/21(日) 20:59:03.53 ID:gHSHPT7lo<> >>976
「待ってるばかりじゃ逃げられちゃうぞー?」

 けらけらと笑って、しっかりと彼の手を握り直す。

 こんなに人の事情に踏み入ったのも、自分の事情を話したのも、初めてだった気がする。
 けれどそれもいいかな、と今は思えた。
 笑っていたいし、ちょっとくらい近づいてみたいし、何より負けてしまったし。
 だからこの手が痛まないうちは、私は笑顔でいようと思う。
 負けて悔しがるのは、後にしようと思ったから。――結構凹むし、心配かけそうだし。

「ほらほら、早く! そろそろお昼だし、混んじゃうよ!」

 彼の手を引いて外へ出る。
 目的地はちょっと遠いけれど、頑張って歩いていこう。 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/03(土) 23:30:58.60 ID:HqU3SJsko<> 割と大きな都市部に位置するおもちゃ屋
一昔前は模型や単純な電気駆動の機械ばかりだったその店に代わりに並ぶ商品は
意思を持つ人形 HMP

そのHMPばかり並ぶ陳列棚の近場に存在するフリーの戦闘スペース

そこに一人の少女が背を伸ばしていた

「うーん・・・と・・・」
最初に自分の側 フィールグラムの片側に一つのHMPを置いた少女―――否さ幼女は長い黄色の髪の毛を流しながら裏手に回り

「・・・よいしょ・・・と」
裏手 "まだ"人のいない相手の側にフリルの沢山設えた衣服のその小さな隙間から取り出した赤い練り物
蟹蒲鉾をあろう事かフィールグラムの上に置くのであった

HMPの戦場に何たるものを置いているのだろうかこの幼女は <> 羽生<><>2012/11/03(土) 23:44:22.98 ID:0hxf2aQao<> 「ねえ、バトルしないかな」

羽生は少女から見て向かいのフィールグラムに立つと、馴れ馴れしく話しかけた
最近仕事以外でHMPを闘わせる事が少なくなってしまった羽生は、相棒のヒートに無理やり電器屋へ連れていかれ、誰でもいいので自分を闘わせるよう命じられたのだ
HMPに無理やり、というのも変な話であるが、押しに弱いので仕方ない。

『ラッキー!相手はまだ子供じゃん、復帰戦はイタダキだぜ!』
「うるさいな、失礼だよ。聞こえるよ」 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/03(土) 23:52:56.80 ID:HqU3SJsko<> >>979
「んー・・・?」
フィールグラム側のレバーを無造作に動かしていた幼女は声に気づいて顔をあげる

俗に言うロリータファッション より万全を期すのであればスティッククッキーでロリータなファッションの幼女はそのフリルを翻し
「べつにいいですけど・・・」
自身の側 自分の相棒を置いたままのそちら側へと回り込み
懐からかなり大型の携帯端末を取り出して
「ゆだんしてるといたいメ みるですよ?」
舌っ足らずな発音はそのままに端末の画面をフリックし

『グリット1―――油断を突く鼠になれるのか!?』
そんな事を言い出す機体を横目にスイッチを押した幼女に呼応するように フィールグラムの立体映像が形を持ち始める

//戦闘フィールド:コンマ末尾
05森林
16市街地
27山岳
38闘技場
49雪原
<> 戦闘フィールド<><>2012/11/03(土) 23:56:34.11 ID:HqU3SJsko<> 森林

見つかりにくい見つけにくいの代名詞
銃弾を遮る大量の樹木や落ち葉を掻き分けながら大木を薙ぎ倒す刃物群
天候は極めて良好 虫の鳴き声も静かにちらついている

ちなみに蟹蒲鉾は取り除いても何の問題も無い <> 羽生<><>2012/11/04(日) 00:09:26.97 ID:2e4rgzGfo<> 数々の奇人に囲まれ準決勝までタダ乗りした羽生は
既に強者と弱者の違いをオーラだけで感じ取る事が、なんとなくできるようになっていた

この子供は強者だ

羽生は、何故か向かいにいる子供の目を直接見る事ができなかった
どこが怖いのか、何故目を合わせれないのか、それは羽生自身もわからない

(闘えばわかる、かな)

フィールグラムが生い茂る森林を写し、巡る思考は途絶れてぴしゃり
気持ちの入れ替えが大事だ。深呼吸をして、ゆっくりDVNOを強く握り締める

「ヒート、走り回れ!ガトリングの用意はしっかりね!」
『おうよ!』 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/04(日) 00:20:56.71 ID:Kr9iJS54o<> >>982
見ただけで強さがわかる 強者と弱者の違い
本能による察知か 或いは情報の収集力か

「・・・むむむ・・・」
いつも通り 全く持って不調の無い結果を示す端末の画面
その端末と見えない赤い糸で結ばれているHMPは言うなれば無骨

四つの足は馬のように互い違いに歩を進め
しかしケンタウロスとは異なる装甲板のような胴体の接合部分は四つの足のちょうど真ん中部分 さながら蜘蛛のようでもある
そんな胴体からぶれる事無く腰だめに構える二つの銃口は 恐ろしいほどに長く太い
更に全体を包む迷彩色のそれは森林の中では天然のステルス装置と成り得る

だが
『グリット0―――矛盾した長短に悩まされたァ!』
無機質な男性の声は感嘆符を端末に届く声量で表現しながらもフィールドを四つの足で後退し続ける

そう この状況ではステルス機能を果たす森林が此方の柱を妨げて攻撃のしようが無いのだ

「・・・これじゃめいさいのいみがねーです・・・」
一応の打開策はあるが代償は大きい
ならば無理して歩を進める必要は無い あくまで此方は狙撃兵
待つ事ならば慣れている <> 羽生<><>2012/11/04(日) 00:35:11.38 ID:2e4rgzGfo<> >>983

「ヒート、レーダーに反応アリ。でも・・・」
『確かに、怪しいなコリャ』

レーダーに映る巨大な影は、まるで時が止まったのかのように動かない
単純な操作ミスか、それともまだ作戦が決まっていないのか

「罠なのかな。それとも・・・」
『もしかすると、チャンスかもしれないな』
「そうだとしたら、やっぱり」
『答えは一つ!』

巨大なガトリングをレーダーが指す方角へ構え、全力全射!
虫達のざわめきが聞こえなくなる程に、爆音鳴らしガトリングを回す <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/04(日) 00:47:10.65 ID:Kr9iJS54o<> >>984
「!」
彼女が端末越しに騒音を聞いたのと
『グリット0! 接近警報!!』
端末越しの実況音声の発信源が体を動かしたのはほぼ同時だった

『グリット1! グリット2の情報探知能力を見誤っていたァ!』
「はくへいせんっぽかったからつっこんでくるとばっかりおもってたです・・・!」
四つの足に取り付けられたブースターが音を立てて木々の間を潜り抜ける
落ち葉が中空を舞いながら此方へと向かう弾丸を回避しようと試みる
『被弾・・・被弾!被弾!』
律儀に一発喰らう毎に音声を再生する憎い仕様は旧式足る所以か
『グリット1延べ被弾数列挙! 腕部四発!左腕部三発! 胸部三発! 系十発!』
「そんしょうほうこく!」
『グリット1! この程度で倒れるほどヤワな作りはしていないという事かァ!』

落ち葉や木の根によって僅かに速度に緩急を付けさせられる
その僅かな ガトリングで広がった木々の隙間も縫うように
『グリット0! 【五夢】発砲許可!』
「よろしい!いけです!」

機械の体が旧式の腕が単調な頭脳が
ただただ直線に放たれるその軌道を阻害されない瞬間を模索し

「ごぶんの―――いち」
発砲 <> 羽生<><>2012/11/04(日) 01:03:03.98 ID:2e4rgzGfo<> 『いってええええええ!』

砕け散るガトリングの砲身。完全に、避け切れなかった
掠っただけであの威力、侮れない

「進めェ!進めェ!」

それでもガトリングをパージし、機械へと超直進
勢いよく地面を蹴り高く舞い上がり、そのまま空からブースターで斜めに急降下!

「速攻だ!持久戦じゃこっちがくたばりそうだしね!」 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/04(日) 01:17:57.74 ID:Kr9iJS54o<> >>986
『被弾!被弾被弾被弾!!被弾!!』
「うるせーですー!!」
列挙される損害報告とAI調整の出来ない口頭での報告が混ざり合い端末は赤色のウィンドウで埋め尽くされている
「と、とりあえずそんしょうほうこく!」
『グリット1!完全に相手の出方を見誤っている!』
気のせいかそう言葉を放つHMP四柱側の声にノイズが混ざりあっていた
中指薬指のマニュピレーターが折れてたり いつの間にやら肩につけた装甲板も継ぎ目に銃弾を喰らったのか遠くへ吹き飛んでいた
歴戦の勇士っぽい塗装が地面から打ちあがる泥で殊更際立ててある

あくまで此方は待つ機体だ
その待ちを壊される 有体に言ってしまえば神風、速攻、強襲
そのどれもが幼女たちにとって手痛い言葉だ

『グリット2ロスト! すかさず敵を見つけようと体を回りこませ―――』
すかさずHMPがぐるりと安定した胴体を左右それぞれ九十度に捻ろうとするが
「うえです!!」
それよりも早く叫ぶ幼女の声 人間特有の直感と言うべき言葉で示唆したその先には倒すべき敵を見つけたが

『グリット1!右腕部損傷拡大!』
「げぇっ・・・」
リアルで変な声が出る 反動の強いスナイパーライフルを撃てるほどの耐久値を残していないのだ
『グリット1 換装まで後8秒!』
「わなみおうせん!」

すかさず左腕を構え引金を引き続ける
こちらのスナイパーライフルは威力がない分損害の多い中でも撃てる事は可能だ

だが此方は銃撃の精度を上げるためにどうしても動く事が難しくなっている! <> 羽生<><>2012/11/04(日) 01:32:39.05 ID:2e4rgzGfo<> >>987
「う、うまく行きすぎてるっヤバイヤバイ!」
『ボケてんじゃねーよ!このまま行けば俺たちの…勝、ち……?』

突然の事だった
ヒートの動きが、だんだんと鈍くなっていき、そして止まった

「おい!どうしたんだよ!嘘だろ!?こんな時になんてさ!」

オーバーヒートだ
高火力と高機動を実現するために、ヒートの装甲は脆く、熱放出が少ないものが選ばれている
そのため本来ならガトリング後のブースターはかなり危険なので、要所でなければ使わない。
しかし羽生はヒートを熟知している。なのでいつもなら大会でアガった時以外はこんなミスはしない
だが長らく店でのゆるいバトルしかしていなかったせいで感覚がニブッてしまったのだ

「ぴ、ピンチだあああああ!!」

羽生の叫び声が、無常に響く <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/04(日) 01:48:08.31 ID:Kr9iJS54o<> >>988
『グリット2・・・急に動かなくなってしまった・・・?』
「どうさミス・・・です・・・?」

だらりと下がった右腕パーツにはガトリング豪雨の最中にどうにか換装出来たトの字マシンガンが据え付けられていた
流石に使い物にならないスナイパーライフルが地面に刺さっている言うのは酷いとは思うがこれだってれっきとした戦闘スタイルだ

『グリット1!聊か不服そうな表情を見せている』
「ひょうじょうって・・・うごかねーのしってるです・・・?」
端末のほうでもあくまで感情は色でしか表示されない
ちなみに今の色はどどめ色だ よくわかんねえ

「まぁ・・・わたしのはそのためのたんぱつこうせいともいえるです・・・」
重要なのは使い過ぎないことだ
四柱に備え付られた機銃やマシンガンだって装甲が爆ぜて熱が漏れやすくなれば連射したって構わない
被弾前提のカスタマイズ ボロボロになったって構わない 生きて帰ればそれで良い 替えは幾らでも在るのだから

「こほん・・・じせいのくをいっく」
わざとらしい咳との合間に四柱は徐々にヒートへと距離を近づけ 身体全体を照準とするように向き直ればマシンガンの引金を引き絞り
『グリット2! 嘗めてかかって 痛い目に! あってしまった 今宵の戦ァ!』
風情は皆無だが確かに五七五七七ではあった <> 羽生<><>2012/11/04(日) 02:02:44.99 ID:2e4rgzGfo<> >>989
『うおおおお復活だああああッ!』
「遅いよ」
『ギャフン!』

DVNOに映る敗北のふた文字
頭に大量の風穴を開けて倒れこむ相棒
これらの意味を理解するには、すこし時間が掛かってしまった

「あちゃー、やっちゃった。キミ、強いんだね」

それくらいしか感想は出なかった
いや、それ以上感想を言いたくなかった
なんだかそのうちポロっと言い訳を言ってしまいそうな気がしたからだ

「じゃあ、僕はパーツでも見てこようかな。パーツも修理しないとね。それじゃっ」

フリースペースを去る時、羽生は何か小声で独り言をぽそりと漏らした
誰も羽生の独り言に気づかなかったが、羽生の表情は、とても悔しそうだった

/お付き合いありがとうございました
<> ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/11/17(土) 23:30:40.56 ID:R+ZvaKNDO<> 【某ホビーショップ、その一角。
 HMPコーナーの隣にはいくつかのフィールグラムが。
 そのうちの1つで、まさに今闘いの火蓋が切られようとしていた】

「それじゃあ、よろしくお願いします」

『ふむ、やりやすいフィールドになればいいが……』

ライバルサイドに会釈する俺の横で、ルリが珍しく弱気なことを言っている。
そのワケは現在のアセンにあるのだろう。
今は普段のごった混ぜではなく、《マスカドンナ》一式なのだ。
その装備の都合上、得意不得意がはっきりした《マスカドンナ》では苦手フィールドを踏むとかなり辛い。
火力も速度もない為、闘技場のようなフィールドだけは避けたいが……。
ランダムではどうなるか分からないからなぁ。 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/17(土) 23:39:52.72 ID:DKBoL3R2o<> >>991
「よろしくですー!」
むしゃむしゃと口に蟹蒲鉾を運びながらてきぱきとHMPをセットしていく幼女の姿がある
その白いフリルごてごての衣装に赤い蟹蒲鉾はコントラストとして並び

そしてそれ以上に幼女のセットする緑色のHMPがコントラストとなっている
『グリット2!尻込みしている様だがどうしたと言うのか!?』
「・・・わかったらすげーです・・・こっちはしょたいめんですー」
漫才のボケと言わんばかりの緑色 迷彩色のHMPが四つの足でフィールグラムに降り立つ

「じょうたいはりょうこうですー」
どこからともなく灰色の小型戦艦が携帯端末を幼女のほうへと運んでいく
その端末を眺めながら
「・・・いつでもいけるですよー?」
不敵に微笑んだ フィールド依存してるのは此方も一緒だというのに である <> ナオヒロ<>sage<>2012/11/17(土) 23:48:20.59 ID:R+ZvaKNDO<> >>992
「さて、じゃ……始めよう」

相手の少女は既に準備は万端らしい。
なのでさっさとフィールグラムを展開、ランダムに選出されるフィールドは――――

//コンマ
07海岸
14廃墟
28闘技場
36岩山
59森林
//続きます <> ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/11/18(日) 00:00:23.59 ID:OulWeqUDO<> 【森林 日中

日本の森をベースにしたタイプの森林フィールド。
木々の間隔はまちまち、まれに拓けた場所もある
あまり太い木はないが、背は高く、枝が多い。
しかし季節を反映するのか葉は色付いていて薄暗さはあまり感じない。
でこぼことした地面を落ち葉が覆っているため、ヒュームボットは注意が必要。】

「うーん、まあ悪くはないフィールドだよね」

『闘技場なんかに比べれば、だが』

【廃屋や打ち捨てられた屋敷、研究所跡地なんかが美味しいのだ。
 あまり拓けたフィールドでは私の装備は生きないし、ランダムな障害物はこちらを味方するとは限らない。】

『なかなかスリリングなものになりそうじゃないか……!』

【脚部形状はこういうフィールドの走行に適しているとは言い難いが、駆ける】

「サーモカメラにまだ反応は無し。
先手がとれないとキツいから、サーチはしっかりね」 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/18(日) 00:08:46.52 ID:Wt2/NKZVo<> >>994
「でじゃう゛ですー」
辺りに広がり始めるフィールドを見て幼女は小さく顔をしかめた

『グリット1!非常に歩きにくそうで苦労しているようだー!』
などと言ってはいるのだが彼のHMPは四本足
脚立に備え付けられた高度調整用の補助パーツのように足場の組み合いを調整
慣れるまで多少時間は掛かったが普通に歩いているようだ

と言うより問題はこれからだ
「せんさーはんのうは?」
『グリット1!未だ目標を発見せず!』
「むぅ・・・」
『グリット2!ニンジャスーツでも着込んでいるのだろうか?』
「にんじゃすーつ・・・?」

彼女の持つ端末に備え付けられた擬似聴覚機能には反応が全く持って存在しない
枝も多く視認による補足も難しい
「・・・せめてはでなばくおんでもあればいいです・・・」
方向の目星も付けなければ二つ構えた長大なスナイパーライフルもただの棒切れだ
今はただ 何か手がかりを探すように落ち葉を跳ね上げながら後ろへ下がるばかりである <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/11/18(日) 00:32:42.02 ID:OulWeqUDO<> >>995
「……止まって。見える?」

『?……ああ、通常視覚では見にくいが、おおよその場所は分かる』

相手のHMPは迷彩系の塗装を施されていた。
この森林でも多少なりとも効果を発揮しているということか。
しかし、

「サーモカメラで見れば一発……っと。
回り込んでスモークと同時にグレネード、先ずは攪乱だ」

『了解、……しかし私の脚の駆動音が小さいとはいえ、落ち葉の擦れる音がな。
 どこまで近付けるか』

【こちらの前方やや左側を歩く相手HMPを、左側から強襲する形を取る。
 下がる相手の視界に入らぬよう、大きく弧を描きながら徐々に距離を詰めていく。
 寄れば寄るだけ音が立ち、しかし止まっては視界に食われる。
 慎重に迅速に、どこまで迫れるか。
 一応を考え既に右手にはグレネードが握られ、スモークの準備も万端だ。】 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/18(日) 00:48:22.43 ID:Wt2/NKZVo<> >>996
「うーん・・・」
『グリット0! 打開策を!』
「わぁーってるです!」

御年幾つか詳細には読めないが中々に年不相応の掛け声と共に端末の別窓を開く
ちらと見た機体構成を必死に手繰り寄せながら広大なネットの海を駆け回る
(がいけんはあきらかにいんふぁいたーです・・・でもここまでおとがしないということはおんみつけいいんふぁいたー・・・?)
インファイトへ持ち込む方法は幼女が知る限りは二種類
射程距離まで静かに近づくか
射程距離まで気づかれるよりも速く近づくか である

幼女の機体 四柱は前者後者それぞれに対抗するための策は ある

速く近づくのであればそれを打ち貫く大黒柱を用意する
静かに近づくのであれば大黒柱を捨て 場を乱す柱を用意する

(がたいをみるにたんじかんくどうしき・・・だとすればうごいてないはずはないです・・・)
読みづらい脳内思考の結論は
「よつはしら! ひだりてぱーじです!」
『グリット0!アイアイ!!』
腰に揃えられた左腕が突如不思議な動きを見せる
雨に濡れた犬が水を切るようなその動作の後 構えられてあった長大なスナイパーライフルは地面に落ち葉を掻き分けて刺さり

「ししゅうそうてん! えんきんりょうよう!」
非対称な二つの柱
近づいているのならば数多の弾丸が場を乱し
遠のいているのならば一発の弾丸で撃ち貫く

「さぁ・・・どこからでもかかってくるです・・・!」
興奮した口調でそう呟くと口についた蟹蒲鉾の切れ端をペロと口へ送り込んだ <> 麻木ナオヒロ&ルリ<>sage<>2012/11/18(日) 01:07:02.80 ID:OulWeqUDO<> >>998
【少女の読みは当たらず、しかし遠からずと言ったところだ。
 では正解は何かというと、《マスカドンナ》は遠近どちらもこなせない、こうなる。
 カメラアイは中、近距離向けになっているが、マニピュレーターを始めとして全体的に非力で格闘戦には不向き。
 しかし前述のカメラアイでは狙撃戦も捗らない。
 ではこのHMPは何を勝ち筋に据えているかと言えば……】

『――――!』

【奇襲。
 肉眼でもはっきりと相手を視認できる距離まで接近に成功。
 更にそこから踏み込み、およそ15歩分の距離まで詰めた。
 そこで背部のスモークディスチャージャーを起動しチャフにもなる白煙を周囲に放出する。
 と、同時に当初の予定通りハンドグレネードのピンを引き抜き、サーモカメラで相手を確実に捉えながらそれを投げつける。
 投げたならば、煙に紛れて後退、再度大きく左に弧を描きながら背後を取ろうと走る】 <> ペイスト・クラブ/四柱<><>2012/11/18(日) 01:18:49.88 ID:Wt2/NKZVo<> >>998
『グリット2!補そ―――ロスト!』
「はいーぃ!?」
そんな突拍子も無い声が出るのも致し方なし
幼女の捕らえたカメラの前では煙に包まれたHMPの姿がかなり近いところにまで来ていたのだ

「っ・・・! けむりからろくじほうこうにかいひこうどう! ししゅうはてきとうにばらまけです!」
『グリット2! 完全に相手の虚を突いた!』
冷静に判断する四柱の声が今は若干煩わしい

腰ダメに据えたトの字型の小型マシンガンが上下にぶれながら弾丸を吐き出す
セミオートのそれを三点バーストで打ち続けなが―――
「グリット0! 爆薬を視認!」
「なっ! ばくはよそくじこくは!?」
「グリット1! 通常視界のため解析不能!」

今回ばかりはレーダーの選択を間違えた
狙撃はあくまで人の目なのだ
ならば狙撃銃を持つこの機体が通常視界でないと言う方が可笑しい話ではないか
その分 詳細の判別も出来ないのだが <> 麻木ナオヒロ&ルリ<><>2012/11/18(日) 01:39:24.49 ID:OulWeqUDO<> >>999

《右腕損傷:損傷率7%》
《脚部損傷:損傷率5%》

【白煙の壁を貫いて弾丸が喰らいつかんと飛んでくる。
 サーモカメラでは銃口を正確に見ることが難しいために、デタラメな射撃にも身を削られてしまう。
 だが、これはしょうがないとして割り切らせてもらう】

『さあ、ドッカン』

ルリが言うと同時に、投擲したハンドグレネードが相手HMPの足下付近で炸裂する。
後退は充分だったようで、どうにか巻き込まれはしなかった。
また、爆発によってスモークが散ってしまったが、爆発の衝撃で相手は即座のカウンターを打てないだろう。
この隙に回り込みたい。 <> 1001<><>Over 1000 Thread<> ☆.。 .:* ゜☆.  。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
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